14:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:49:33.41 ID:u50g9+A20
しかし、やっぱり動きが硬い。一番の問題は。
私は顔を伏せたまま文香の両肩に手を置くと、ぐっと力を込めた。
「ひゃっ!?」
驚いた文香は肩をすくめたが、そんな抵抗を無視して肩を揉み続けた。
「文香、だいぶ凝ってる。なんとなく予想してたけど。凝るよね、色々と」
「ちょっと……奏さん……?」
「それに、本を読み過ぎ。普段からもっと動いた方がいいわよ」
「ですから一体……痛っ!」
「あら、ごめんなさい」
余りに硬すぎたせいで、強くやり過ぎてしまったようだ。私は力を弱めて、先ほどより優しく肩を揉む。
「奏さん……?」
髪の向こうから、文香が私を見上げてきた。蒼い瞳が微かに潤んでいるようだった。
「リラックスよ、リラックス。腕をダラーンとさせて」
私は揉むのを止めて、肩を緩めるように左右に揺らし始めた。
「えっと、あの」
「トレーナーさんが言ってたでしょ。クラゲになった気分で。クラゲって、どうやって泳いでいるか、文香は知らない?」
「泳ぐのではなく……海流に……身を任せているんです」
「そう言うこと」
私の言いたいことを理解したようだ。ゆっくりと両手をだらりとたらすと、私の起こす振動を受け入れるようになった。
それに合わせるように、肩からもこわばりが抜けていく。表情も、だんだんと穏やかになっていく。
目を閉じて、まるでうたた寝でもしているかのようだった。
そのまま、眠ってしまって私の胸にでも倒れこんでくるんじゃないのか。そんなことを考えてしまう程に。
リラックスは出来たようだけど、ここから踊るとなると、すぐに強張った動きに戻りそうだ。
ちょっとした考えが、私の脳裏に浮かんだ。
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