速水奏「文、奏でる」【モバマスSS】
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4:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:29:54.28 ID:u50g9+A20


 変わった人だったけど、スタッフの人だろうか。

 それとも綺麗な人だったし、案外、私と同じようなアイドルにスカウトされた人か。


 その可能性を、私は振り払った。アイドルをするには……なんというか、ちょっと抜けすぎている。

 彼女が読んでいた本はなんだったのだろうか。もしいつか、事務所で再びすれ違うことがあれば、聞いてみても面白いかもしれない。そんな機会があればだけれど。


 私は指定された階でエレベーターを降りて……途方にくれてしまった。

 あまりにも大きなフロアで、どこに行けばいいか全然わからなかったから。

 受け付けの人は道順も教えてくれてたけど……私は少し緊張していた。行先は覚えていてもその道のりは頭から抜け落ちていた。

 廊下をちょっと覗き込む。長い廊下が延々と続いているように見えた。扉もいくつもあって、まるで別の学校に迷い込んだみたいだ。


 立ちつくしていても仕方がない。一つ一つ、名札を確認していくしかないか。


 そう思って歩き出そうとしたとき、ポンと気の抜けた音がホールに響いた。

 私とは別の人が、この階にやってきたようだ。こんな場所で立ち呆けしていたら、変な子に思われてしまう。私はともかく進もうと思ったけど、すぐに考え直した。


 気取らず、やってきた人に聞いた方が早いか。

 私は振り返って、開いたエレベーターに向き直った。




「あっ」


 と、声を漏らしたのはどっちだっただろう。


 エレベーターから降りてきたのは、先ほどの女性だった。






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