【ぼざろSS】あなたの温度
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17:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:13:53.63 ID:FRtckmfc0
 ひとりが黙ってぷにぷにし続けていると、驚くべきことが起こった。
「手だけじゃ……だめかな」
「?」
「えい」
「ぐえっ!」
 ただひたすらぷにぷにされ続けていた郁代は、するっと手をひっこめたかと思うと、ベッドから転がり落ちるようにして、布団で寝ているひとりの上にばふっと覆い被さった。
「ちょちょちょ、喜多ちゃん!?」
「ん〜……このあたりかしら」
 毛布をめくって中に入り、溺れるようにあたふたしているひとりを抱き込む郁代。
 どうやら心臓と心臓を密着させたいらしく、もぞもぞと位置を確かめている。
 しばらくすると納得のいく位置が見つかったのか、ひとりを抱きしめる体制のまま動かなくなった。
(あっ、あわわゎゎ……)
 突然の事態に動揺しすぎて、急激に胸が高鳴るひとり。そんな鼓動までもがダイレクトに郁代へと伝わってしまい、恥ずかしさでさらに加速していく。

「こうしてれば……伝わらないかな」
「えっ……」
「こうして……心と心をくっつけていれば……ひとりちゃんの気持ちが私に伝わって……私の気持ちがひとりちゃんにも伝わって……一緒になれないかな」
「……」

 郁代の髪の香りが、ふわっとくすぐる。
 郁代の身体の熱さ、重さ、柔らかさを全身で感じる。
 飛び出しそうな心臓が奏でるとくん、とくんという音だけが、二人を包む。

「そういえば……人間の心って、どこにあるのかしらね」
「ええと……どこでしょう」
「心臓が心なの……? でも、物事を考えたりするのは頭だから……脳の中?」
 そう言って郁代は、ひとりの額に自分のおでこをくっつける。
 ひとりはぎゅっと目をつむり、息を止めてぷるぷると震えた。
 こんなの、恥ずかしすぎる。

「むっ、胸だと思いますっ、脳じゃないです」
「やっぱりそうかしら」
「そうですよっ」
「そうね……ひとりちゃんのこと考えてると、胸がきゅっとなるときがあるから……やっぱり胸かしらね」
 郁代はまた一段と深くひとりの身体に密着し、胸と胸を重ね合わせた。
 なんだか、お風呂にいるときの何倍も熱い気がする。


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