18:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:14:42.07 ID:FRtckmfc0
「……」
「……」
何を言えばいいかわからない。
いくら言葉を探しても見つからない。
でも、郁代に伝えたい気持ちは、いっぱいいっぱいある。
感謝も、好意も、尊敬も、信頼も。溢れるほどに。
(……伝わってほしい)
「!」
強く強く願ううち、ひとりも自然と郁代の背中に手を回し、きゅっと抱き寄せていた。
胸の鼓動は恥ずかしいくらいにうるさいけど、郁代の心に少しでも自分の気持ちが通じるなら、構わない。
郁代がもぞりと動くたび、くすぐったさで声が漏れる。
毛布の中に二人分の体温がこもり、肌がじっとりと汗ばんでしまう。
温かすぎて、幸せすぎて、このまま溶けてしまうんじゃないかと思うほどに、あつい。
それでもひとりは恥ずかしがらずに、一生懸命に郁代を抱きしめ続けた。
通じますように、伝わりますようにと、心から祈りながら。
「……あ、あの……伝わりましたかね」
「……んー、まだみたい」
「えぇぇ……」
「もっと強く抱きしめてくれたら、いけるかも」
「……ぅぅ」
目をぎゅっとつむって、さらに深く抱きしめるひとり。
郁代はひとりの髪をくしゃりと指に絡ませ、首筋に顔を埋めた。
(……ありがとう)
恥ずかしさで何も考えられないのか、ぷるぷると小さく震えるひとりの頬に、郁代はそっと口を寄せた。
――――――
――――
――
―
26Res/37.15 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20