【ぼざろSS】あなたの温度
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4:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 13:55:16.35 ID:FRtckmfc0
(いや、待てよ……?)
 誰かに泊めてもらわなくても、要は一晩明かせればいいのだ。どうにかして明日の朝を迎えられれば、とりあえず学校が始まっていつもどおりの平日になる。これから約12時間、なんとかして時間がつぶせればいい。眠れなくても、一晩くらいなら徹夜したって平気だろう。無理に結束バンドの誰かにお願いして関係が険悪になるくらいなら、そっちの方が何倍もいい……後藤ひとりの思考回路は、そんな答えに辿り着いてしまった。
 だが問題はこの寒さだ。今日は今シーズン一番といってもいいほどに冷え込んでいる。しかも気づけばうっすらと霧雨まで降り出した。都内で雪が降るのは珍しいが、今夜の寒さは本当に雨が夜更け過ぎに雪へと変わりかねない。しかし、それなりに気合をいれなければコンビニすら入ることができないひとりにとって、どこかの店に避難するというのも敷居が高い。24時間営業の店はあるだろうが、そんなところに一人で入って知らない人に絡まれた日にはこの世の終わりだ。そもそも女子高生が深夜まで店にいたら、客だけでなく店員も気にするだろう。

 人がまったくいなくて、誰にも見られなくて、女子高生がいても違和感のない、雨風がしのげる暖かいところ。そんな実在しないユートピアを求めてあてもなく下北沢をさまようひとり。まず目に入ったのは小さな公園だった。とりあえず立っているだけで疲れてきたので、ベンチにそっと腰掛けてみる。
「ひっ!?」
 もっと状態をよく見てから座ればよかった。霧雨の粒をたっぷりまとったベンチに座った瞬間、ひとりの体温はその無機質な素材に一気に奪われ、思わず鳥肌がたった。こんなところに座るくらいなら立ち続けた方がまだマシだ。
 小走りで公園をあとにし、スカートの濡れた部分が肌に当たらないように気を付けながら、とぼとぼとあてもなく歩く。このままどこにも行くことができなければ、本当に朝になるまでに凍死するだろう。気づけばひとりはスマホで人間が凍死する条件を調べてしまっていた。低体温症どころじゃない、きっと翌朝には氷漬けになっているに違いない。
 そんなスマホのバッテリーも残り数十パーセントしかないことに気付き、慌てて画面をロックしてポケットにしまう。
 こんな調子でこまめに見ていてはすぐに電池切れになりかねない。さすがにこのスマホすら使えなくなってしまうと、いよいよもって「死」が見えてくる。誰かにメッセージを送るにしても、事前に誰に送るかを決めてからだ。


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