9:名無しNIPPER[sage saga]
2024/04/15(月) 21:24:24.79 ID:HdnryJIo0
10分ほど待っただろうか。ついに、その時がやって来た。
裏口から出てきた菜々さんに、俺は素早く走り寄った。
「菜々さんお疲れ様です」
「あっ、〇〇さん!お疲れ様です!」
「菜々さん、僕とけっ____」
「聞いてください!菜々、夢が叶ったんです!」
―――――え?
「今日の昼間、大手事務所のプロデューサーさんが来て、菜々をスカウトしてくれたんです!
もちろん、事務所に所属したからって、すぐにデビュー出来るわけじゃないですけど、とにかくこれで、実家に帰らなくてよくなりました!
これも全部、一生懸命私を応援してくれたファンの皆さんと、〇〇さんのおかげです!!」
そんなことを話す彼女は、これまで見てきた中で一番の笑顔をしていた。
当然だろう。長年の夢が叶ったのだ。
だが私は、そのことを素直には喜べなかった。
「おめでとう、ございます」
ポケットの中の指輪を握りしめ、押し出すように、呟く。
「ごめんなさい。今日中にやらなきゃいけない仕事があるのを思い出しました。
今から、会社に戻らなければなりません。さようなら」
そう言い残して、俺は駆け出す。
菜々さんの呼び止める声が聞こえたが、無視して俺は走り続けた。
家に帰って、生まれて初めて、俺は吐くまで酒を呑んだ。全てを洗い流したくて・・・。
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