過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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2:以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします[saga]
2012/02/11(土) 17:46:00.72 ID:SSZUNYll0
――また、救えなかった。

いつもの病院、白天井。
無機質で生活臭に乏しいこの空間が、暁美ほむらは昔からずっと嫌いだった。
そして中学二年のある日を境に、この病室がより一層嫌いになった。
ほむらは凡そ温かみの感じられない無彩色の一室で目を覚ます度に、逃れ様のない無力感に襲われる。
この部屋での目覚めそのものが、ほむら自身の不甲斐なさの象徴なのだ。

壁に掛けられたカレンダーには、前日までの全ての日に×印が付けられ、退院日と転入予定日が○で囲まれていた。
そして、今日は退院日。
長らくの入院生活を続けてきたほむらという少女にとっては、本来は喜ぶべき記念日の筈なのだが、
主治医や看護士の祝詞も、彼女の心には何の感慨も齎すことはなかった。

時間遡行者、暁美ほむら。
鹿目まどかという少女の死を切欠に魔法の使者キュゥべえと契約し、未来から来た魔法少女。
まどかとの出会いをやり直すことを自身の願いとし、祈りの為に戦い続ける者。

一度目は立ち上がらなかった自分に憤り、戦う力を手にした。
二度目は奇跡の再会に歓喜し、隠された真実に慄き再び立ち上がった。
三度目は協力を仰ぐも訝られ、悉く自壊し、最後には護る筈の命さえ自ら奪った。

全てを救うことなど私には出来はしない、と。
ならば、せめてまどかだけは救ってみせる、と。
今度こそ。今度こそは。

何度、そう誓ったことか。
友人との約束の履行をこそ最上の使命とするほむらの想いは、不履行という現実に踏み躙られる。
まどかの未来は、例えるなら糸の様に細く頼りない、ただ一本の道だ。
僅かでも道を間違えれば、まどかという少女に一月先の未来は来ない。

鹿目まどか。決してこれから一箇月以上、生きられない女の子。

まどかを救う道筋を求め、繊細な心を磨り減らし、感情を殺して戦い続けるほむらの一途な祈りは、
今日この日までただ一度の例外もなく、裏切られ続けてきた。
幾度となく涙を流し、心に消えない傷をつけ、胸の内に膿を溜めながら、ほむらは足を引き摺って前に進む。

幼少の頃より、ほむらを苦しめてきた宿痾に打ち勝った筈の小さな胸には、
最早手の施し様がない悪性の病巣が拡がっていた。
癒す術は、一つしかない。

――鹿目まどかの救済。
それが叶わぬ限り、まどかのみならずほむら自身も未来永劫、救われることなどない。
このまま蹂躙され続ければ、ほむらは絶望という病魔にその身を蝕まれ、祈りも呪いと成りて無惨に朽ち果てる。

ほむらには、もう、まどかを救う以外に生きる目的も理由も存在しなかった。
それは前途ある十代半ばの少女には、余りにも過酷で不毛な人生と言えた。

だが、仮に。
ほむらが目的を完遂し、一箇月の間まどかを護り切れたとして、それは果たして救済と言えるのか――?



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