過去ログ - ビッチ・2
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19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/20(水) 00:20:21.67 ID:23PR5ugqo

 声は少しだけ優しくなったようだった。そしてとても静かに麻季に言った。

『これは前にも言ったよ。君は忘れているかもしれないけど』

『何だっけ』

『あのときわたしはこう言ったの』



『玲菜を救ってあげられなかった絶望に博人は悩んでいるんだね』

『今の彼は、鈴木先輩と麻季の浮気によって苦しんだ挙句、最愛の娘を残して死んだ玲菜
のことだけを考えているんだと思う。正直、君と先輩のことなどどうでもよくなちゃって
るみたい』



『それが今では君と博人はすごく仲がいい夫婦に戻れた。そのきっかけはわかるでし
ょ?』

『・・・・・・奈緒?』

『正解。奈緒が引き取られて博人には生き甲斐ができたんだと思う。自分が何もしてやれ
なかった怜菜に対して、ようやく自分がしてあげることができたんだって。それは幸せな
家庭で奈緒をきちんと育ててあげること。彼にとってはそのためなら浮気した君のことを
許すくらい何でもなかったんでしょうね』

 麻季はその言葉に衝撃を受けた。でも彼女の心にはどこかで覚めた部分があった。多分
そのことを麻季は前から感じ取っていたのだろう。幸せなはずなのに得体の知れない不安
を感じていたのはそのせいだったのかもしれない。

『じゃあ、博人君は本当にはあたしのことを許してないの? あたしのことを嫌いになっ
たままなの』

『そこまではわならない。本当のところはわたしや君にはもう永久にわからないと思う
よ』

『ふざけんな! 先輩と浮気して博人君の気持を試せてけしかけたのはあんたでしょう。
今になってそんなこと言うなんて』

『わたしのせいじゃないよ。あのときと今とは事情が違うもん。こんなことになるなんて
わからなかったし』

『何言い訳してるのよ』

『神様じゃないんだからさ。まさか怜菜が鈴木先輩といきなり離婚するなんて思わなかっ
たし。まして離婚してから産んだ自分の娘にあんな命名をするなんて』

『・・・・・・』

『それに一番誤算だったのが怜菜の死だよ』

『・・・・・・うん』

 本当はもう、麻季にも声の言いたいことは理解できていたのだ。


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