過去ログ - モバP「白坂小梅はみえている」
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9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/25(月) 21:57:53.71 ID:d5tGG4Gs0

まず入ったのは児童養護施設の廃墟だった。

天井が崩れていたり、足場が不安定だったりする箇所が多いので、
事前に耐久性に問題がない場所だけを選んでロケを行うこととなっていた。

中はカメラマンの周辺を照らすライトと、小梅の持つ懐中電灯のみの明かりしかなかった。
雰囲気を出すため、とはいえ、ここまでやるのだ。さすがに不安だった。
ここまで暗いと、スタッフさんも恐怖に息を呑んでいた。俺もまた、そうだった。

ぎし、ぎし。
うぐいす張りのような廊下を軋む音だけが響いていく。
どこからともなく子供の笑い声が聞こえてきそうで、恐くもあり、悲しくもなった。

ときおり設置されている鏡にライトが反射し、スタッフさんも声を上げる。
誰もいないはずの廊下を、ただ怯えながら進んでいく。

山奥の廃墟ということで、火災以降放置された自然が多々見受けられた。
伸びっぱなしの木々も、枯れ木となって足元に佇んでいたりする。
ふいに吹いてくる風が、残りの葉を揺らしてさらなる恐怖感を煽っていた。

「あ、カメラさん…あ、あそこ…撮ったら、映る…と思います」

指示をもらったカメラマンが指の先にアングルを切り替える。
俺たちは誰も歩を進めては居ないのに、廊下を軋む音が響いた。

「撮れた…と、思います…もう、いない、から…」

「ここ、は…もう、映らない…と、思う…」

わかりました、では、出ましょうか。
その一声で、緊張感は一気に緩んだ。

誰も彼もが、ふぅ、と溜息すらついていた。




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