1: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:20:42.84 ID:xpCfEu5V0
山田太郎は激怒した。
必ず、かの桃色卑猥の本を取り戻さねばならぬと決意した。
太郎には勉強が分からぬ。太郎は、中学の学生である。
授業では居眠り、宿題はせず、いつも悠々自適に遊んで暮らしてきた。
けれどもエロに対しては、人一倍に敏感であった。
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2: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:21:27.09 ID:xpCfEu5V0
放課後を告げる鐘が鳴る。
太郎は人がはける折を見て、隣のクラスに足を運んだ。
同志の一人、岡勝(おかまさる)に猥本を借りる約束をしていたのだ。
3: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:22:01.44 ID:xpCfEu5V0
『レポートは捗っているか』
これは仲間内で決めた暗号であり、『モノは持ってきたか?』という意味になる。
「エロ本持ってきた?」などと単刀直入に聞けるはずもない。
4: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:22:38.78 ID:xpCfEu5V0
勝は太郎の方へ向き直った。しかしどこか浮かない様子であった。
目線を外して下を向き、床に向かって言葉を漏らした。
「いや、途中から難しくなって……」
5: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:23:30.51 ID:xpCfEu5V0
しかし太郎は、勝の言ったある単語が引っ掛かった。
『いや、「途中から」難しくなって……』
つまり勝は猥本を持ってきていたのだ。
6: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:24:10.67 ID:xpCfEu5V0
「誰だ?」
端的な問いに、勝は「鈴木」とだけ言葉を返す。
その名前を聞くや否や、太郎はすくりと立ち上がると足早に教室を後にした。
7: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:25:06.76 ID:xpCfEu5V0
中学生はエネルギーの塊である。
若く、日々その熱量を持て余す彼らは毎日その捌け口を探しており、
溜まったエネルギーは何かしらの方法で発散させなくてはならない。
8: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:25:48.20 ID:xpCfEu5V0
では、そんな中学生からエロを取り上げたらどうなるか。
タダでさえ若きエネルギーが有り余っている所へ上記の相乗効果によって
他の場所も色々モリモリエネルギーを余らせ始めるのだから
9: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:26:32.16 ID:xpCfEu5V0
さて、ここからが負の連鎖の始まりである。
睡眠不足は授業への集中力低下させ、集中力の低下は学力の低下へと繋がってゆく。
若者の力が衰えれば、近い将来、国力の低下は避けられない事態になるだろう。
10: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:27:18.42 ID:xpCfEu5V0
さらに言えば、先程の例は人間の三大欲求、即ち『食欲』『性欲』『睡眠欲』のうち、
『性欲』と『睡眠欲』の実に二つもが踏みにじられている。
太郎は何かの授業で次のような言葉を習った。
11: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:28:02.70 ID:xpCfEu5V0
大体、鈴木も男なのだ。
男であれば、過去に自分が受けた苦しみが分からない訳でもないだろう。
例え猥本を見つけたとしても、「もう持ってくるんじゃないぞ」と注意すれば良い。
12: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:28:40.92 ID:xpCfEu5V0
職員室の扉を勢いよく開ける。
ズカズカと中へ大股で踏み込む。
鈴木はいる。自分の机に座っている。
13: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:29:19.25 ID:xpCfEu5V0
「先生!」
怒鳴りにも似た声を鈴木の背中に浴びせかける。
だが鈴木は別段気にした様子もなく、
14: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:29:53.25 ID:xpCfEu5V0
何かまずい事をしただろうか。
いや、『今日は』いかがわしいモノなど持っていない。
何か言われる筋合いは無い。何か取られる筋合いも無い。
15: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:30:37.29 ID:xpCfEu5V0
「家庭訪問をしようと思ってな。お前、自分の成績がどうなっとるか分かるか?」
鈴木は声色を落として喋りながら、太郎の前にB5大の白い封筒を二つ突き出した。
「こないだのテスト結果と、クラスの成績表だ。親御さんに渡しとけ。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/06/28(土) 18:30:43.28 ID:l5BJyPSr0
スラスラ読めて面白い
17: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:32:41.51 ID:xpCfEu5V0
太郎は矢の如く職員室を飛び出した。当初の目的は保留とする。
何故なら、自身も猥本没収の危機に瀕しているからだ。
会談は太郎の部屋で行われるだろう。理由は家の間取りにある。
18: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:33:32.07 ID:xpCfEu5V0
単純に考えるなら、このまま急いで帰って猥本を隠せばよい。
しかし太郎の頭は最悪の事態を想定していた。
鈴木が家に一報を入れるという事である。
19: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:34:14.51 ID:xpCfEu5V0
太郎には竹馬の友があった。佐藤健太である。
健太も勝と同じく、志を同じくする者の一人である。
彼らは、
20: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:35:00.95 ID:xpCfEu5V0
コールがやけに長く感じる。
太郎はトントンと爪先を地へ打ち続けた。
6回目のコールの後、ガチャリと受話器を上げる音がした。
21: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:36:33.99 ID:xpCfEu5V0
太郎は受話器をフックに叩きつけ、すぐさま駐輪場へと駆け出した。
鍵を外し、ヘルメットを被り、颯爽とサドルに腰を据える。
そして両手でハンドルをガッシリと握る。
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