過去ログ - ハルトマン「渚にて」
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1: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/01(金) 20:38:16.44 ID:/8LqzrKnO
1947年。人類とネウロイの戦争は、『核(コア)爆弾』の登場で幕を閉じた。

開発当初は圧倒的な破壊力でネウロイを追い詰めていた連合軍も、素材となるネウロイの『核』が不足すると形勢は逆転。

カールスラント、オストマルク、オラーシャ、ロマーニャ……ネウロイの巣食う地から何百何千というミサイルが放たれ、世界中に核の雨が降り注いだ。

熱線は形あるもの全てを焼き尽くし、強烈な爆風の前には大抵の防護手段は無意味だった。
かろうじて生き延びた者も、ネウロイの瘴気を帯びた放射性降下物(フォールアウト)を防ぐことは出来ず、弱りきって息絶えていった。


……そうして人類は、長い、永い眠りについた。


ただ一人、私を除いて。

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2: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/01(金) 20:40:24.23 ID:/8LqzrKnO
「おはよう、トゥルーデ」

枕元に置いてある写真立てには、トゥルーデと私が写った写真が納められている。私がカールスラント空軍に入隊したころの写真で、トゥルーデが撮影を許した数少ない一枚でもあった。
時刻は午前6時前。
私の一日は、トゥルーデの遺影に挨拶をして始まる。


3: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/01(金) 20:41:01.30 ID:/8LqzrKnO
食堂に降りたら携帯用コンロに火を付けて、シチュー鍋で水を沸かす。その間に顔を洗って歯を磨いて、髪の毛を軽く整える。
終わる頃にはちょうどお湯が沸いてるから、インスタントコーヒーの粉と砂糖を入れて溶かす。
乾パン、缶詰のポークビーンズ、ドライフルーツと甘ったるいコーヒーが今朝の朝食だ。

私がこんなにテキパキ支度できるなんて、トゥルーデがいるときは思いもしなかったよ。
以下略



4: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/01(金) 20:43:26.96 ID:/8LqzrKnO
朝食の後は、通信室で定期放送をする。
無線、有線、モールス信号、空砲、あらゆる通信手段を使って生存者へ呼び掛ける。
街のスピーカーはほとんど壊れていたけど、瓦礫の中から使えそうなものを探して、シャーリーの遺したノートを見ながら配線したらどうにか動いた。
サンキューシャーリー。

以下略



5: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/01(金) 20:45:16.21 ID:/8LqzrKnO
放送が終わると、いよいよパトロールの時間。

バックパックに食べ物と水、薬や包帯、折り畳みスコップやらロープなんかを詰め込んで、完全防備で行く。もちろん私の食料調達も兼ねているので、スペースは余分に空けておく。

最初の頃はMG131を持ち出したりしたけど、ネウロイの姿が見えないことが分かってからは拳銃だけ携帯してる。あとはコンバットナイフ。これで十分だ。
以下略



6: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/01(金) 20:46:32.02 ID:/8LqzrKnO
「おーい。誰かいないかぁ」

めちゃくちゃに破壊されたローマには、私の声だけが響く。
視界の端から端まで崩壊した建物で埋め尽くされていて、ネズミ一匹見当たらない。
私が黙ると、聞こえるのはざくざくと地面を踏み越える自分の足音だけだ。
以下略



7: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/01(金) 20:47:52.29 ID:/8LqzrKnO
核が落ちてくる6日前、リーネはネウロイとの戦いで命を落とした。
あんなに臆病だったリーネが、一歩も退かずに最期までネウロイを倒そうとしていた。
リーネの遺体はブリタニアに帰れただろうか。


以下略



8: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/01(金) 20:49:14.89 ID:/8LqzrKnO
核が落ちてくる3日前、シャーリーが独房に入れられた。
夜になるとルッキーニが怯えてうるさいと、ついひっぱたいてしまったらしい。
次の日には出てきてルッキーニに謝ってたけど、もはやルッキーニの心はまともとは言えない状態だった。


以下略



9: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/01(金) 20:50:57.74 ID:/8LqzrKnO
核が落ちてきた日の朝方。
トゥルーデはなんだか忙しそうに走り回っていた。尋ねてみると、地下の独房に食料と水を運んでいるらしい。どうしてそんなことをするのと聞いたら、トゥルーデいわく地下は地上よりも核攻撃のダメージを防げるそうだ。

どうやらトゥルーデが一人で思い付いた計画のようで、回りに手伝おうとするやつはいない。しょーがないから手伝ってあげるよと言ったら、お前に任せていたら戦争が終わってしまう、おとなしく地下で待ってろと言われた。
もちろん人の言うことをおとなしく聞く私じゃないので、普通にトゥルーデを手伝った。


10: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/01(金) 20:52:51.75 ID:/8LqzrKnO
「トゥルーデはこの戦争、勝てると思う?」

「ん……」

トゥルーデは私の質問に少し言いよどんでから口を開いた。
以下略



11: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/01(金) 20:55:40.07 ID:/8LqzrKnO
今日はここまでです。
今更になりますが多分鬱展開なので注意して下さい。



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/08/01(金) 20:58:21.11 ID:6KCG63ts0

ストパンの鬱は心惹かれるものがある


13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/08/01(金) 21:19:33.73 ID:AZFl0iYZ0

期待してる


14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/08/01(金) 23:34:34.28 ID:Uohqh6+ZO

期待して待ってるよ


15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/08/02(土) 00:03:47.02 ID:B66lyEzI0
娘typeのエーリカ&ウルスラの絵よかったね


16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/08/04(月) 17:38:25.84 ID:iGZBjhfrO

ニパなら生きてそう


17: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/04(月) 23:36:42.33 ID:7YXMVe5HO
――――


ふと、意識が現実に引き戻された。

以下略



18: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/04(月) 23:37:15.97 ID:7YXMVe5HO
はやる気持ちを抑えて、かすかな音を頼りに発信源を絞り込む。
音が大きくなるにつれて、私の期待も少しずつ膨らんでいった。
……ん、この辺りだな。

たどり着いたのは、おそらくパン屋か洋菓子店だったであろう小さなテナント。ドアには鍵が掛かっているけど、店先のショーウィンドウが粉々だから、出入り出来そうだ。
以下略



19: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/04(月) 23:38:07.74 ID:7YXMVe5HO
バックパックから懐中電灯を取り出して、周りを照らしてみる。
床も天井も柱も木造の、優しい感じのする造りだ。熱線のせいで炭化してるし、ホコリまみれだけど。
床に転がってる小さくて黒いのは……もしかして、パン?

店の奥には、大きなオーブンやミキサーがそのままの姿で残っている。小麦粉や砂糖が無いか探して見たけど、見当たらないなあ。
以下略



20: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/04(月) 23:38:37.35 ID:7YXMVe5HO
2階はここの店主とその家族が使っていたであろう居住スペースになっていた。風で部屋中が荒らされ放題なこと以外は、ごく普通の家だ。

「もしもーし」
やっぱり反応なし。でも、あの音はまだ鳴ってる。もしかしたら動物か何かかもしれない。
それで十分だ。とにかく他の生き物の温もりを感じたい。
以下略



21: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/04(月) 23:39:28.37 ID:7YXMVe5HO
西に傾いた太陽の日が差し込む寝室には、キングサイズのベッドがひとつ。遺体は見当たらない。空襲警報を聞いて、店そっちのけで防空壕に避難したのかも。
クローゼットに納まっていた服は、どれも私には大きすぎるか小さすぎるかのどっちかだった。これから冬になるし、手頃なサイズがあれば拝借しようと思っていたんだけど。

さて、本命の音の原因を突き止めないと。
ベッドの下にはいない。
以下略



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