14: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/12/11(木) 23:24:57.10 ID:ey41gLLW0
「ごちゃごちゃとうるさいっスねえ。アタシは折角この子の為にやってるって言うのに」
まあ、アタシにとっちゃそんなのは口実でしかないんスが、何事も対価なしには成し得ないのはいつの時代だって同じだ。
ギブアンドテイクじゃないっスか。
「何が荒木の為だ。この似非神様が」
似非っスか。
まぁ、確かにそうっスね。
神様になるには大きく分けて二種類方法がある。
一つは奉られること。
これが王道っスね。
もう一つが、アタシのように元がどうしようもない悪たれの場合だ。
アタシは過去、散々悪さをした狼の怪異、千疋狼だ。
けど人を喰って、畑を荒らして、やりたい放題のところを名のある専門家に封印された訳なんスけど、それが供養という形で祠を作られ、年月を経て神格化し、灰芥と呼ばれるようになった。
とはいえ、元がショボい怪異ですから、アタシはもう『個』ではなく『公』に近い。
アタシの意思なんてないに等しいから、こうやって人の身体を触媒にしないとまともに思考すらも出来ない。
だから、取り憑く人間よって指向性も変わる。
病気を治して、とか純粋な願いは、どんなに本意でなくても叶えてやらなくちゃならない。
それが神様の仕事っスからね。
その点、この女の願いは、アタシにとってとても都合がいい。
「もしそうだったとして、アンタが荒木比奈を知っているとして、アンタごときに何が出来るんスか」
残りの牛丼をかきこんで器を置く。
何に片足突っ込んだのか知りませんが、下手に首突っ込むと棺桶に突っ込みまスよ?
こちとら一応、腐っても神様なんスから。
「お前を止めることが出来る」
「……やれるもんなら、やってみろよ、人間」
「生憎、僕は人間じゃあないんでな」
味噌汁をすすりながら、そんな事を言う人間。
……人間じゃない?
いや、確かに限りなく人間に近いが、微妙に臭いが違う。
「もう一度聞くぞ。『それ』が荒木の願いなんだな」
牛丼を食べ終えたお兄さんが、真面目な顔で詰め寄る。傍から見たら、牛丼屋で喧嘩する迷惑なカップルに映ることだろう。
気に食わないお兄さんだ。
アタシを化外の存在だと認識した上でのその態度は、少しだけ褒めてあげてもいいっスけど。
瞳孔が開く。
犬歯が鋭く研磨される。
喉が小さく唸りを上げる。
「ああ、そうだ。ダサくて女の子っぽくないアタシなんて、嫌に決まってんだろ」
これはアタシだけの言葉じゃない。
他でもない、荒木比奈の願いだから。
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