過去ログ - 阿良々木暦「ひなウルフ」
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13: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/12/11(木) 23:23:07.03 ID:ey41gLLW0

「灰芥。ハイガラシと呼ばれる、千疋狼を起源にする狼の神だ。狼は大神と書かれることもあるように、地域によっては信仰の対象になる……お前みたいにな」

「お兄さん……只者じゃないっスね」

「馬鹿を言え。僕はただのしがないアイドルのプロデューサーだ」

余所見をしていたせいで七味まみれになってしまった牛丼を箸でつつきながら、更に続ける。

「灰芥は一般的な神様に準じて、人の願いを叶えるそうだな。灰を振り撒いてその地を豊かにしたり、時には花を咲かせるなんて事も聞いたことがあるぞ」

「花ねえ。咲くんスかね、そんなもん」

やったことないからわからない、というのが正直なところだ。
花咲か爺じゃあるまいし。

「……その姿が荒木の願いなのか?」

「そうっスよー」

その姿、というのはこの格好の事に相違ない。
眼鏡を外して軽く化粧をし、ミニスカを初めとする露出の多い、扇情的な服装。
いつものジャージ姿とはかけ離れた格好だ。

「男の人はこういうの好きなんでしょ?」

「ああ好きだ。大好きだ」

生卵をかき混ぜ、紅生姜と共に牛丼にぶっかける。
ここの紅生姜美味いんスよね。

「だがお前が神としての仕事をしているのは充分承知の上で言う。荒木から離れてくれ」

「……なんでっスか?」

「僕が何も知らないと思っているのか」

「なんの事ですかねえ。アタシにゃさっぱり――」

「最近、この周辺で肩口に噛み跡がある意識不明者が続出してる……お前、夜中に荒木の姿で、『人を喰ってる』だろう」

思わず口元が歪む。ああ、やっぱり人間て面白いっスねえ。

「別に……いいじゃないっスか。アンタに迷惑かけてる訳でもないし、アタシだって建前の良心はあるんだ。狙ってるのはナンパしてくるチャラ男だけっスよ?」

そう、あの日もナンパして来た二人組を『喰った』。
オオカミなんだから人を喰うのは当然でスよね?

牛丼やバーガーみたいなジャンクフードも好きだけど、一番アタシが好きなのは、人のエネルギーだ。
誤解しないように言っときますけど、物理的に食べる訳じゃないっスよ。
人間て、そんなに美味くないんスよね。
こうして食べる牛や豚の方がよっぽど美味いっス。

でも人間の持つエネルギーは垂涎のごちそうだ。

「迷惑なんだよ。お前が荒木の姿で人を襲ってるのも問題なら、何よりそんな事を荒木が望んでいるとでも思っているのか」

この他人への無関心が是非ともされる時代に、会ったばかりの女相手にあれこれ干渉して来るお人好しっぷりは評価すべきでしょうかね。

とはいえ、鬱陶しいんスよ、アンタ。



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