過去ログ - 阿良々木暦「ひなウルフ」
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2: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/12/11(木) 22:36:35.36 ID:ey41gLLW0



001



覚束ない足取りで、見慣れた街を歩く。

まだ早朝でしかも日曜日ということもあって通勤する人の姿も少なく、通学する子供たちの姿も見えない。
ジョギングをするおじいちゃんと、朝が早い休日出勤のサラリーマンのおじさんがちらほら見えるくらいだ。
今日もお勤めご苦労様っス。

車も滅多に通らないこともあって、朝方に近所であるここを散歩するのが好きだ。

デッドラインを越えた後の朝は、原稿を仕上げるために無理やり上げたテンションの余韻と、ようやく〆切の恐怖から抜け出せる開放感から、何とも言えない気分になる。
臨界点に近い疲労に、朦朧としてはいるものの嫌にすっきりと際立つ意識。一度でも横になったら二日は眠り続けられるであろうと確信できる程に磨耗した身体が軽く感じるのは、全身の何処にも力が入らないからだろう。

「あ゛あ゛ー…………うぅ」

二十歳の、ましてや女の子が出すとは思えないゾンビの如き重低音の唸りが、喉の奥から呼吸と共に排出される。
そういえばここ三日ほど、誰かとまともに会話もしていない。
余談だけれど人は会話をしないと会話の仕方を忘れる事がある。
前、無茶なスケジュールを組んで二週間くらい部屋にこもりきりの時があったけれど、その後、声の出し方を忘れてまともに喋れなかったことがあるのだ。
修羅場あるあるその1っス。
人間、何事も程々にこなさないといけないといういい教訓だったっス。

欠伸を噛み殺して空を仰ぐ。
爽やかな朝の光は、開き切った瞳孔を眼鏡越しに暴力的に刺激する。
太陽の光に灼かれるような感覚は、まるで吸血鬼になったようだ。

きっと今のアタシはかなりひどい顔をしているのだろう。
ゾンビのような顔を見られるのに抵抗がある訳ではないが、他人様の気分を害する可能性がある限りは人が増える前に、そろそろ退散しよう。
入稿も終えたことだし、向こう三日はオフだ。
とりあえず丸二日は惰眠を貪ろう。
今なら隕石が落ちてきても眠っていられる気がする。



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