過去ログ - 阿良々木暦「ひなウルフ」
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3: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/12/11(木) 22:54:13.55 ID:ey41gLLW0

「早くしろよ、俺ってば難しい日本語読めねーんだからさぁ。心優しい俺もそろそろご割腹だぜ?」

「それを言うなら立腹だ。ハラキリしてどうするんだよ」

「ハラキリとか超ウケる。やってみてくれよ」

「やるのは僕なのかよ!」

「……?」

と、少し離れたところで背の低い男と金髪美人のカップルがいちゃついていた。
いや、あれをいちゃついている、と表現するには少々語弊があるかも知れないけれど。
一目で女の方に主導権があると見受けられるのは、男の人に合掌っスね。
まあ、決して仲が悪そうではないから、双方合意の上でのあの様子なのだろう。

それにしてもあの二人はこんな朝から、何をやっているのだろうか。
彼氏がいない(というか、作り方が良くわからない)身としては羨み妬む場面なのかも知れないが、残念ながらアタシにはカップル相手に嫉妬する程の矜恃は持ち合わせていなかった。

……ん?
そう言えば女の人がさっき俺って言ってたような……男?
男にしては随分な美人っスけど……まあ、いいか。
この頭の状態なら男も女も同じようなものだ。

「あの、すいません」

突然の呼びかけに、それが自分に向けられたものだとは気付かなかった。
周りを見渡すも、見事にアタシしかいない。

「…………え、あ?」

アタシっスか?と言おうとして、声が出ないことに気付いた。
代わりに自分に指を差す。
二、三度咳払いをして喉を整える。

「ちょっといいですか?」

見たところ、普通のお兄さんだった。年は、高校生から大学生、といったところだろうか。
身長もアタシとそんなに変わらないし、危険人物そうな外見でもない。
硬度の高そうなアホ毛が特徴的だった。

……アホ毛っていいっスよね。
漫画を描く身としては、アホ毛は欠かせないファクターのひとつだ。
アタシもキャラ作りのためにアホ毛が欲しいところだけど、アレは多分、産まれ付いてのモノなのだろう。

「すみません、道を教えて欲しいんですが」

どうやら道に迷っていたらしい。
この辺りでは見ない二人組だし、観光客だろうか。
観光にしてはこんな住宅街にいるのも変だし、こんな時間にというのも少し不自然だ。
怪しいことこの上ない。

「言いたいことはわかりますが……決して怪しい者ではありません、よ?」

アタシの怪訝な視線に、男の人が気まずそうに苦笑いをする。語尾に疑問符がついているあたり、本人も怪しいとは理解しているのだ。

……まぁ、いいっスか。
少々怪しい、くらいがこのご時世では逆に安心なのかも。



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