15:名無しNIPPER[saga]
2014/12/24(水) 00:58:25.83 ID:/uXU+UIh0
でも…… その日の私はそれどころじゃなかった。
うららかな日差しの中を行き交う、上流紳士婦人の笑顔。
はしゃぎ回る子供たち。
幼い女の子が覚束ない足取りで私に近寄ってきて、小さな野の花を私に差し出した。
その先で両親らしい、見るからに品の良い男女が笑顔をこっちに向けている。父親が帽子を取って私に挨拶をする。
私は女の子の頭を撫でて花を受け取り、精いっぱいの笑顔で両親に挨拶を返した。
背を向けた女の子は転ぶこともなく、両親の元へ駆け戻っていく。私は彼らの姿が角を曲がって消えるまで見送った。
そして花を胸ポケットに挿し、うつむきがちになって歩き出す。下唇の内側を噛みしめて。
知っている。大抵はこうやって心が折れるんだってこと。
(「悪魔の末裔」って誰。ここにいる私がそうなの?)
戦いへの準備と気持ちの整理のための一日だったのに、覚悟がぐらついている。
私は重苦しい気分を引きずったまま、運河沿いのカフェの屋外席に座った。
お茶を口にして、椅子の背もたれに体を預け目を閉じる。胸のざわめきが収まっていくのを確かめつつ、深い息を繰り返す。
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