8: ◆IWuyJvzLOZKF[saga]
2014/12/27(土) 07:29:25.20 ID:HSj1W9VK0
人体に悪影響を与える可能性があるものを個人で処分しておけというのは何だか酷な話の気もするが、少女の相手をするよりはずっとマシだ。
一刻も早くこの場を去りたいという思いが強いため、上条は少女の要求に素直に従う。
「分かったよ、半分に折って捨てておけばいいんだな?」
「ええ、お願いね」
やはり今日の少女の様子は少しおかしい。
いつもの好戦的な性格が鳴りを潜めているのもそうだが、言葉の一つ一つが何処か素直なものになっている。
これだったら普段も少しは話が通じそうなものなのに……。
ただこれまでの少女とのやり取りを鑑みるに、今日が例外だと思っておいた方が良いだろう。
「それで話が終わりだったら、俺はそろそろ行くぞ。 じゃあな、ビリビ「御坂美琴」」
ようやく解放されて帰ろうとした上条だったが、再び少女の声がそれを遮る。
「私には御坂美琴って名前があるって、いつも言ってるでしょうが」
そういえば少女の名前はいつも聞かされてはいた。
しかし会うたびに勝負勝負と鬱陶しい上に、命の危険がある電撃まで飛んでくる。
上条にとって目の前に立つ少女は迷惑な存在でしかなく、出会ってからというもの自分から関わりを持とうと思ったことなど一度もない。
だが今日は「偶々」荒事を抜きに、ほんの少しだけ話をする機会があった。
そのせいか普段は完全に聞き流してしまう少女の名前も、今は頭の片隅に留めておく程度の余裕がある。
「へいへい。 じゃあな、御坂」
「……じゃあね」
今度こそ上条はその場を後にする。
改めて名前を覚えた美琴の気配をまだ背中に感じるが、振り返るようなことはしなかった。
少しだけ話が通じたからといって、別に上条と美琴が仲良くなった訳でもない。
次に会えばいつものように電撃が飛んでくるだろう。
そんな日常が幸せだとは間違っても思えないが、きっとそれが上条と美琴の本来あるべき姿だ。
そして鉄橋を渡りきったところで一度だけ後ろを見るが、もう美琴の姿を見つけることはできなかった。
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