過去ログ - 梓「ミッドナイト・エスケープ」
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7: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/01(水) 10:49:16.55 ID:w+Y5NOKn0
 私は、憂を愛してる。だけどそれは、ふたりぼっちでいる
逃げ場所を作ることなんかじゃ、決して無いんだ。無かったんだ。

 もっともっと、憂を、憂が抱えるその想いも、丸ごと愛していたい。

 憂が愛したその人は、私にとっても、意味は違えど、愛しい人だから。
 だから、私が飲み込まないといけないのは、愛せないと
諦める事じゃなくて、どんな事があっても、きっと憂を愛してしまうということ。

 「このままでもいい」なんてそんな、優しさでも、愛でもなかったんだ。
 
「ねぇ、憂……? 私ね、もうどんな憂でもいいんだよ」

 憂の両手にすっぽり収まった身体を跳ねるように私は振り向き、両手で憂の顔を包み込む。
 私の手、冷たいかな? こんな小さな手じゃ、涙は拭いきれないかな?
 ごめんね。だけど、ほら、やっぱり。ぐしゃぐしゃの泣き顔だって、こんなに愛しい。

「憂が唯先輩の事をずっと好きだってことは、百も承知の上で私は憂といる」

「私は申し訳ないくらいだよ、憂の弱みに付け入るみたいなやり方で、憂に近づいたこと」と続けると、
憂は叱られている子どもみたいな顔で顔を歪ませながら泣きじゃくる。

 それでも、ほら、こんな時なのに。この静けさを壊さないくらい
声を殺してる。そんな君でさえ、ほんとに、本当に大好きなんだ。

「梓ちゃんは……いい……の……? こんな私で……こんな、たった一人も決められない私なんかで……!」

「うん、いいよ。もしも憂が憂のこと、許せないなら、私が憂の分まで……許してあげる。
憂が、唯先輩と私、二人分の想いを抱えているのなら……! 私は、
憂と私の二人分、許してあげる……! 許してあげるからぁ……!」

 大好きな人の涙は伝染する。小さな子どもみたいに泣くその姿は、その姿だけで、心が震える。涙が溢れる。
 涙を止めてあげられない情けなさと、小さい命を慈しむような温もりが、綯い交ぜになってこみ上げる。

 愛しい。たまらなく愛おしい。
 だから、私は伝えたい、今こそ、今だからこそ。私のために、君のために。


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