過去ログ - GOSICK ～From Manchuria with Love【SS】 -SS速報VIP

過去ログ - GOSICK ～From Manchuria with Love【SS】

↓ 1- 覧 板 20

126:名無しNIPPER[sage]
2015/11/19(木) 21:11:55.89 ID:O9pwM/m5O
乙ー

127: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/11/20(金) 18:16:24.15 ID:XX45sdvyO
～～～～～～～～～

一等区画の通路には点々と壁に沿って石油ランタンが掛けられていた。
頼りない光ではあったが歩くのにはさして難儀しなかったし、長々と続くランタンの列を見ていると乗組員の血の滲むような苦労が目に浮かぶようだった。
長々と続く通路の先は暗く滲んでいて、先の見えない殺人者との戦いの行く先を暗示しているように久城の目には映った。

128: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/11/20(金) 18:17:55.90 ID:XX45sdvyO
ロビーは不気味な程に静まり返っている。
普段とはまるで違った顔を見せる船内に、久城は戸惑っていた。

「船の全図は大体頭に入っているから心配するな」

129: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/11/20(金) 18:19:39.16 ID:XX45sdvyO
「はい、ご用命は…？」

扉を開いた男は、一目見ただけでも疲れ切っていると分かる位の汗だくの額を突き出した。
制服も完全に崩れていて、見た目以上に歳を重ねた風である。

130: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/11/20(金) 18:20:13.38 ID:XX45sdvyO
まごついている船員に少女はフリルだらけの服の隠しポケットから幾ばくかの紙幣を取り出し、素早く船員の手に握らせた。

「他言無用で。出来れば、人払いの出来る場所が良い」

先程までの弛んだ顔はどこへやら、紙幣をきびきびと懐にしまい口を真一文字に結んで背筋を伸ばした船員は、すかさず二人の訪問者を別の空き部屋に案内した。

131: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/11/20(金) 18:21:01.77 ID:XX45sdvyO
「それで、聞きたいこととは…？」

船員は部屋に入るとすかさず気を利かせてランタンを灯し、椅子を勧めた後に小声で尋ねて来た。

「ぼくたち、実はとある極秘依頼を受けた探偵でして…ある一人の船員の男を追っているのです」

132: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/11/20(金) 18:21:59.32 ID:XX45sdvyO
「ああ、やっぱりご存知ですか」

「日野と言う男ですよ…」

とりあえず、殺人者の名前が分かったのは大きいだろう。

133: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/11/20(金) 18:23:23.59 ID:XX45sdvyO
「ところがあいつも謹慎中なのに懲りずに博打をやって借金をこさえましてね。今度はヤバい所から金を借りた…恐らくあなたがたの依頼者からだと思うんですが」

「余計な詮索をするな。続けろ」

少女は男を睨み付けた。

134: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/11/20(金) 18:24:37.55 ID:XX45sdvyO
「問題は謹慎中の奴がどうやってこの船に転がり込む事が出来たかって話なんですがね…。探偵さん方、出港前に新聞を読みませんでしたか？」

「ああ、あのコラムだろう？」

「そうです、奴は例のコネを使って自分の従軍経験を認(したた)めた随筆を客船の記事と一緒に新聞社に売り込んだんですよ。ああいう系統の美談はアメリカでは何よりの広告になりますからね…」

135: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/11/20(金) 18:25:14.61 ID:XX45sdvyO
「成る程、で、君はあんな場末の休憩所で一人何をしていたのかな？」

少女の思わぬ質問に男はまたも口籠った。

「ああ、いや、その…見た目には気を遣っているつもりなんですが、私もトシでしてね…。こうやって体を休ませてやらんと耐えられんのですよ」

136: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/11/20(金) 18:26:11.54 ID:XX45sdvyO
「しかし、探偵さん達に一つ忠告をしておきたいのですが…。あいつ、どうやら追っ手が乗船している事に気付いているみたいですよ？」

「追っ手？」

久城は反射的に聞き返してしまったが、椅子の下では少女が久城の足を容赦無く踏みつけていた。

137: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/11/20(金) 18:38:07.05 ID:XX45sdvyO
>>135 ミス

誤：つまりサボタージュということか、結構。

正：つまり一人サボタージュということか、結構。

138: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/11/20(金) 19:24:50.15 ID:XX45sdvyO
「あいつは貴方達の存在に気付いてるってことですよ。しかしまさか私がその追っ手と直々に話をすることになるとは思いませんでしたがね…」

「相部屋の奴の話によると毎晩、『銀髪が…銀髪が…殺さないでくれ…』って魘されているらしいですよ」

「随分と気付かれない様に腐心したのだがなあ…」

139: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/12/03(木) 20:26:19.55 ID:+nT2b751O

「あ、それで…他に聞きたいことは…」

「無い。ご苦労だった」

140: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/12/03(木) 20:26:49.80 ID:+nT2b751O
二人は再び暗い通路を歩いていた。

「本当は怠けている船員を適当に捕まえてやるつもりだったんだがな」

「しかしこれは…」

141: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/12/03(木) 20:27:16.33 ID:+nT2b751O
「過程と結果を『欠片』の不足で取り違えていただけだ」

142: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/12/03(木) 20:27:56.89 ID:+nT2b751O
墨を滲ませた闇が久城と少女を取り囲んでいる。
相変わらず少女は何の迷いも無く一寸先の闇へと向かい歩みを進めて行く。
久城の足取りは重い。
通路には二人の硬い足音だけが響いていた。

143: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/12/03(木) 20:28:22.93 ID:+nT2b751O
「あの女のところだ」

女、というと騒ぎの元凶になったあの婦人のことであろうか。
あの時はまともな対話が出来そうにも無い様子であったので、今更話を聞くのか、と久城は訝しんだ。

144: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/12/03(木) 20:28:51.94 ID:+nT2b751O

暗闇に目が慣れていたのか、周りよりやや明るいそこに入った途端に一瞬だけ視界がぼやけた。
眩しい光の先にちらちらと影が踊っている。
やっと目が見えるようになると、一等区画の通路の突き当たりの扉が大きく開かれているのを確認できた。
扉の奥からは二人の船員らしき人影が薄く伸びている。

145: ◆plZ0A1BUbA[saga]
2015/12/03(木) 20:29:44.28 ID:+nT2b751O
「火の玉…火の玉…」

少女に促されるまま恐る恐る女の近くまで歩いて行った久城は、何かに取り憑かれた様に虚ろに目を見開いて口をぱくぱくさせていた女を見て背筋を凍らせた。
女はとても自分たちと対話出来る状態には見えなかった。

146:名無しNIPPER[sage]
2015/12/31(木) 06:35:10.80 ID:/8tFlNmPO
保守

146Res/71.29 KB

↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。

VIPサービス増築中！
携帯うpろだ|隙間うpろだ

Powered By VIPservice