過去ログ - 梓「嵐の夜に」
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14:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:01:17.37 ID:Ljuzcmhc0
「ごめんね、遅くまで付き合わせて」

「いえ…呼び出したのはわたしですから…」

「そっか。そうだったね。それに明日は休みだし。ちょっとくらい遅くなってもいっか」
以下略



15:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:01:51.28 ID:Ljuzcmhc0
ここまで悩んで考えてくれるだけでうれしかった。
だからわたしがちゃんと言葉にしてきもちを伝えなきゃ…!

そう思って顔をあげた瞬間、わたしの目に映ったのは唯先輩の涙だった。

以下略



16:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:02:21.27 ID:Ljuzcmhc0
☆☆☆


めっっちゃ、おもしろかったなぁー!!
…と鼻息を鳴らしながら律先輩が両手をあげた。
以下略



17:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:03:14.29 ID:Ljuzcmhc0
怪獣が光線を吐いて街を破壊するシーンを見て、正直胸がスッとした。
もし今のわたしに光線を吐き出す能力があれば、きっとその力で世界を滅ぼしてしまうだろう。
フられたくらいでそんなふうに考える自分がひどく子どもじみてるなんてわかっているけれど、今はもう、目に映るもの全部が憎たらしかった。
月曜日がやってくるのがいやだ。どんな顔して唯先輩に会えばいいのかわからない。台風で学校が壊れてしまえば登校しなくて済むけれど、今夜中には近畿地方を抜けるらしい。ねぇゴジラ、どうかその光線で学校を壊してくれない? …そんなの無理に決まってる。だからわたしは逃げ出すことに決めた。背中にリュックを背負って、今日、この街を出る。そして誰もわたしのことを知らないところへいく。それから…。



18:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:03:47.07 ID:Ljuzcmhc0
「あずさー?? どしたー???」

わたしの目の前で律先輩が右手をぶんぶんと振っている。
はっと気がついて笑ってごまかそうとしたけれど顔が固まって表情がつくれない。なんでもないです。そう無愛想につぶやいてわたしは早足で歩き出した。律先輩もあわてて後ろからついてくる。


19:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:04:22.65 ID:Ljuzcmhc0
外に出るまでもなく、一階に降りてくるとものすごい雨の音が、館内に響いていた。
リュックの中から折りたたみ傘を取り出してじっと見る。アーケードの下にいる間はいいけれど、バス停まではしばらく歩かないといけない。はげしい雨風に吹かれれば、こんなちっぽけな折りたたみ傘くらい、簡単にふっとばされてしまいそうだ。けれどいまさら憂鬱な気持ちに浸ったところで何がどうなるわけでもない。傘が折れて多少濡れるくらい仕方ない…多少なら。


20:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:05:08.07 ID:Ljuzcmhc0
「思ってたよりずいぶんはげしいな」

律先輩はあくびを噛み殺しながらそう言った。

「なぁ梓。これから予定ある?」
以下略



21:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:05:52.45 ID:Ljuzcmhc0
どれくらいここにいるつもりですか?
雨がマシになるまで。
は? そんなこと言ったらいつになるかわかりませんよ。
だってこんなに雨降ってたらぜったい濡れるじゃん。

以下略



22:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:06:29.80 ID:Ljuzcmhc0
閑散としたアーケード街の入り口あたりのビルに入り、そこの一階で受付を済ますと、わたしたちはエレベーターに乗って3階まであがった。
こんな台風の日に働いているアルバイトの人たちは、一体どうやって帰るつもりなんだろう。けれどわたしたちだってひとのことは言えない。

歌い終わった律先輩はコーラの入ったコップを手に取り、一気に飲み干した。

以下略



23:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:07:09.31 ID:Ljuzcmhc0
歌えば喉が渇いて、喉が渇けば飲み物が欲しくなり、なにかを飲めばトイレに行きたくなり…
部屋の外からも止むことのない雨と風の音が聞こえてくる。勢いは弱まるどころかますます強まるようだった。

「なくなってたから補充しといた」

以下略



24:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:07:38.94 ID:Ljuzcmhc0
「雨、どう?」

「まだけっこう降ってますよ」

「そっかぁ」
以下略



25:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:08:40.91 ID:Ljuzcmhc0
「台風ってさぁ、好きなんだよね」

びゅうびゅう風が吹いて、ざぁざぁ雨が降って、いろんなもんがぜーんぶ吹き飛ばされて流されてぶっ壊されてくみたいでさ、なんかさぁ、すっきりするっていうか、わくわくするっていうか。

「不謹慎ですね」
以下略



26:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:09:38.55 ID:Ljuzcmhc0
「歌ってすこしは気ぃ晴れた?」

「………!」

「こーんな台風の日にさ、そんなでっかいリュック背負ってバス停に一人で座ってりゃ、なにかあったのかも〜って思うに決まってるだろ」
以下略



27:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:10:23.13 ID:Ljuzcmhc0
ゆさゆさと身体を揺すられているのに気づいて目を開くと、前髪を垂らした律先輩がそこにいた。
寝るときは外してるっつーの。わたしが目を覚ますと、恥ずかしそうに顔を背けてカチューシャをつけた。

ビルの外に出ると、雲の合間から日差しが差し込んでいた。眩しく思わず目を背ける。
晴れたなぁ。晴れましたね。いま何時ですか? いま? えーっと…ちょうど6時。バス動いてますかね? たぶんな。家帰ってシャワー浴びてそれからすぐ学校か…。律先輩は憂鬱そうに呟いてちいさくあくびをした。
以下略



28:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:11:37.91 ID:Ljuzcmhc0
「迎えに行きます」

「いーよ、別に」

「行きます。だってそうじゃないと律先輩、二度寝して遅刻するでしょ」
以下略



29:名無しNIPPER[sage]
2016/08/20(土) 23:14:14.88 ID:gOZ0cTTJO

最近けいおんSS見かけなかった上に、好みな文体だったから凄い良かった


30:名無しNIPPER[sage]
2016/08/20(土) 23:54:42.40 ID:y6g2BBzJO
よき……

すっごい久しぶりにけいおんSS見た気がするけど、とっても良かった



31:名無しNIPPER[sage]
2016/08/21(日) 00:59:07.70 ID:SiWL9gs7O
すごいなあ
こういうの書けるようになりたい


32:名無しNIPPER[sage]
2016/08/21(日) 08:01:48.14 ID:Xg779tUAo
きめぇ自演乙


33:名無しNIPPER[sage]
2016/08/21(日) 11:23:24.38 ID:6JVFCfzao
さわやかな読後感でした。



34:名無しNIPPER[sage]
2016/08/22(月) 10:43:41.32 ID:TVVrY9nB0
上のほうは自演臭半端ないけど、悪い作品ではないね



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