過去ログ - 最初のファンから、駆け出すキミへ(小日向美穂If小説)
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4:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 00:18:05.44 ID:3RRQd8Ra0
呼び鈴の音で目が覚めた。時刻は六時半。もぞもぞとベッドから這い出してワイシャツをハンガーごと窓枠の出っ張りからもぎ取る。
俺の名前は坂門淳(さかど あつし)。熊本の田舎に住んでる、どこにでも居る陸上部の脳筋だ。そして俺には物心付く以前からの幼馴染が居る。
「あっちゃーん!まだ寝てるのー?朝練遅刻するよー!!」
ガララッと玄関の戸の開く音、トントンと階段を登る音、そして部屋の扉が開いた。
「えぇっ、まだ着替えてないの!?ほんとに遅刻しちゃうよ!?」
上半身裸の俺を見て慌てて目を背けるこいつが俺の幼馴染の小日向美穂だ。
「分かってんよ、お前勝手に人んち上がるなって言ってんだろ……」
顔を背け、耳を赤くしたまま美穂は手を振って答える。
「でっ、でも私が起こさないとあっちゃんいっつも寝坊するから……」
「もうガキじゃねーんだからいいっての。」
口ではそう返すけれど、美穂が起こしてくれないと遅刻するのは事実なので強くは言えないし、有難いとも思ってはいる。ただ、それをちゃんと言えたことは無い。
淳の家は農家なので祖父母も両親も早くに起きて淳を放って様々な所へ出掛けてしまう。
なので淳は自分で起きて祖母が作り置きしてくれる朝食を温めて食べなければいけないのだが高校生になった今でも一人で早起きする事が出来ない。以前町に出かけた時に目覚まし時計を買ったが、翌朝自分の手刀でスヌーズのボタンを壊していた。
「じゃ、じゃあご飯あっためておくから早く着替えて降りてきてね!」
美穂はこちらを向かないまま降りていった。着替えながら何となく、この日常はいつまで続くのだろう、と思った。普通に考えれば高校生の男女の距離感としては異常だし、大学生になればお互い大学に通う為に一人暮らしをしなければいけなくなる。きっと、長くてもあと三年――
ふと、胸がちくりとした。
目を擦りながら朝飯を食べて、ママチャリの荷台にゴム紐でボストンバッグを括り付ける。腕時計が示す時間は六時五十五分。これなら朝練にも間に合いそうだ。
「ほら、早く行こうよ。」
「んー。」
家の前の道は家の裏の畑を中心に大きくU字の坂道になっている。丁度その中間地点の辺りに美穂の家があり、坂道の終わりは桜並木になっている。
「もうすっかり葉桜だねぇ。」
自転車を流しながら後ろで美穂が呟く。
「そろそろ中間テストだなー。」
「私は大丈夫だけど。あっちゃんはちゃんと高校の勉強分かってる?」
「当たり前だろ、余裕だわ余裕。」
「へぇー、じゃあ学年順位下だった方が上だった方にでこポンタルト!」
――いつか終わるとしてももう少し、この日常を楽しんで居よう。そう思った。



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