過去ログ - 最初のファンから、駆け出すキミへ(小日向美穂If小説)
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名無しNIPPER
[sage saga]
2017/04/03(月) 00:20:11.49 ID:3RRQd8Ra0
上り坂の入口でまた美穂とはち合わせた。
「あ!あっちゃん!!」
いつにも増して機嫌が良いらしく、立ち漕ぎでこちらに向かってくる。
「ん、お疲れ。どうしたんだよ、随分ご機嫌みたいだけど。」
「私、アイドルになれるよ!なれるんだよ!!しかも美城プロ!!」
「えっ……」
それは――
「そっか……やったな!夢、叶ったじゃん!」
「うん、それで……あ、あっちゃん?なんで泣いてるの!?」
「え……あぁ、きっと嬉し泣きだよ……」
「違うよ。」
そりゃあお前なら分かるよな、畜生。
自転車を立てて美穂の肩を掴む。
「ひゃっ!?」
数年ぶりに触れた美穂の方は淳の手のひらには小さく、とても脆いものに感じた。
「美穂、俺さ。」
「う、うん。」
美穂は照れるような、怯えるような様子で固まっている。
これが最後のチャンスになるかもしれない。だから。
「俺さ、ずっと――」
言いかけた時、いつか聞いた声が聞こえた気がした。
「あいどるになりたい!」
「っ!!」
手を放して、自転車を押して振り返らず駆け出す。胸がいっぱいになり、視界が涙で滲み、嗚咽が込み上げてもなお家を目指す。
「あっちゃん!待ってよあっちゃん!!」
追う美穂の声も淳には届かない。陸上部の淳に美穂が追いつける訳もなく淳は家に入ってしまった。
「あっちゃん……まってよ……」
息も絶え絶えに淳の家に着いた美穂はいつもの様に淳の家に入ろうとドアに手を掛け、そして初めて躊躇った。
「あっちゃん……」
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