過去ログ - 鷺沢文香の元いた古書堂の常連の話
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8:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 01:07:45.11 ID:21UZx+iqO
店にも慣れてきた、よく晴れた日、恐らくは換気の為にレジ横の窓が空いていた、彼女は、いつも通りに本を読んでいた。
不意に、風が吹いて、カーテンが靡いた。

たなびくカーテンの隙間から差し込む光が、全ての始まりのように思えた。
ふわりと流れる黒い髪が、割れそうな程に白い肌が、何もかもが輝いて見えて。誇張でもなんでもなく、素直に女神の存在を信じるほどに美しかった。


9:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 01:08:30.34 ID:21UZx+iqO
その日から、彼女が本を読み終えるのを待つことにした。
この店の隅には、椅子と机があった。買った本、ないし買うか迷っている本を読むスペースだと勝手に解釈し、そこで本を読んで待つことにした。
何より、この位置ならば彼女が良く見えるのだ。気持ち悪いなんて言わないで欲しいが、僕は彼女に触れるなんておごましいと、本気で思っていたのだ。


10:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 01:09:03.80 ID:21UZx+iqO
待つと言っても、精々2時間程度で彼女は1度顔を上げる、そのタイミングで会計を済ませて店を出る。
暇な学生身分がここで役立つとは思わなかった。稀に数時間待つことになるが。僕以外の客はまったく来ないので安心して待つことが出来た。
また、時間帯によってはお爺さんが店番をしているが、その時は本来の目的を果たせばいいだけなので問題は無かった。


11:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 01:09:54.42 ID:21UZx+iqO
店の隅で本を読むのは、本当にいい時間だった。同じ空間で本を読んでいる、そう思うとそれだけでも、とても嬉しくなった
まったくの気のせいではあるのだろうけど、少しだけ近づけた気分になれたんだ。


12:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 01:11:11.16 ID:21UZx+iqO
そうやって日々を過ごしていくなか、1度だけ会話があった。
いつも通りに顔を上げる瞬間を見て、会計へ進む、本を受け取って、僕の顔を見た。
「もしかして……待っててくれたのですか…?
? ? もしそうなら、ごめんなさい。」
そう言って、また視点を下に向けた。
以下略



13:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 01:11:43.06 ID:21UZx+iqO
それ以降、会計の時の表情が少しだけ柔らかくなった。会話はないけれど、柔らかい表情になった彼女はよりいっそう美しかった。

ただ、終わりも突然訪れるのである。


14:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 01:12:17.64 ID:21UZx+iqO
少しずつ、少しずつ、変わらないまま、彼女は進んでいった。
僕はそれに気付かず、阿呆のように止まっていた。
見ている人と、見られる人は、知らずのうちにスケールが大きくなっていたのだ。


15:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 01:12:45.17 ID:21UZx+iqO
ある日を境に、彼女が店番に出なくなった。
来る日も来る日も来ないので、お爺さんにそれとなく尋ねたいが、何故か聞くのが怖かった。
聞くことで、何かが終わってしまう気がしたのだ。
今思うと、早いか遅いかの違いでしかなかったのに。


16:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 01:13:49.00 ID:21UZx+iqO
街のテレビで彼女を見た。
前髪を上げて、見たことのない笑顔で歌っている彼女がいた。
相も変わらず美しくて、眩しくて。
そこで初めて彼女の名前を知った。

以下略



17:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 01:14:37.39 ID:21UZx+iqO
短いですが終わりです。ありがとうございました。
ふみふみのキャラ違くね?っていうのがあったらごめんなさい。


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