8: ◆ao.kz0hS/Q[sage saga]
2017/07/14(金) 02:32:46.05 ID:Vq3CUo2i0
どんな間柄でも多少なりとも上下があるものだが、今この瞬間は間違いなく、菜々さんが上にいて、僕は遥か下にいた。
いつもの弄られキャラは影も形も無い…。いや、普段の彼女以上に僕自身が弄ってオーラを出しているだけなんだろう。
でもそれがわかっていてもどうしようもない。
一秒毎に自分が下だと思い知らされることになるのに、菜々さんの瞳から目を逸らすこともできないのだから。
「ナナは…ナナはプロデューサーさんのことを……」
何度目かの甘い声音に溺れそうなっていると、不意に窮屈さによる痛みが股間に走った。
手で覆って隠そうとするよりも早く、僕の些細な反応を見逃さなかった菜々さんにそのテントに気付かれてしまう。
内臓が踊っているような胸の高鳴りに恥辱と罪悪感まで合わさって、最早泣きたくなっていた。
でも何故か彼女の悲鳴はいつまでもなくて、それどころか唇は更に僕へと近づいて。
「あぁぁ〜…プロデューサーさん……」
呼気で耳の産毛が震える感覚は疼きと区別がつかなかった。
触れているのと変わらないようなこの距離では、唇を開く際の唾液が切れる音さえもハッキリと聞き取れてしまう。
手を伸ばせば触れられるポニーテール、熱くて優しい体温、桃色に湿った吐息、脳髄に滲み込むフルーツの香り、心を撫でる甘い囁き…。
バイノーラル録音なんて単なる代替物でしかなかったことを、そのとき初めて知った。
血の流れはもう自分の意思ではどうやっても止められない。
「ウサミンボイス、そんなに良いんですか…? 嬉しいです……」
菜々さんのすべてに僕のすべてが完膚なきまでに魅了されていく。
そして同時に強烈なまでの劣情が僕の性道徳を瓦解させていた。
気付けば職業倫理なんてものも消え失せていて……―――
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