【悪魔のリドル】兎角「一線を越える、ということ」
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30:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:41:32.24 ID:u1xI7N2CO
土曜日、つまりは本日の朝。兎角はいつもより遅い時刻に目覚めた。
遅いと言ってもまだ七時にもなっていないのだがそれでも普段の兎角からしてみれば遅い起床であった。
兎角は洗面所の鏡で自分の顔を見る。体調は悪くはなさそうで、むしろここ数週と比べれば大分生気があった。晴との関係の修復の目処が立ったことでストレスが軽減されたのかもしれない。自分の体の単純さに思わず苦笑する。だが確かに自分でわかるくらいに心も体も軽かった。
『晴の言うことは何でも聞いてください』
兎角は一昨日の晴との約束を思い起こした。厳密には兎角はまだ許されてはいない。今日はその正念場である。しかしそこに気負いはない。むしろ全力でわがままを言ってほしいとすら思っていた。
部屋の扉がノックされた。兎角はどうぞと返事をした。
「おはよう、兎角さん。今日の約束、大丈夫?」
「問題ない。仮にあったとしても無視するさ」
「ふふっ、ありがと」
入ってきた晴はまだ部屋着であった。実際予定の時間までは二時間近くある。では何をしに来たのかと兎角が尋ねると今日の予定の確認に来たそうだ。
予定事態は前日にメールで知らされていたので簡単な確認作業だったがただ一つ、兎角が知らされておらず且つ重大な問題があった。
それはこのデートは千足・柩との合同、つまりダブルデートであるということであった。
当然兎角は驚いた。
「本気か……?その…………、……桐ヶ谷達と一緒に行くというのは」
言うまでもなく晴から見れば千足は自分の恋人と関係をもった人物で、また柩にしても兎角は憎むべき相手であるはずだ。
しかし当の晴は笑顔を崩すことなく頷いた。
「そうだよ。……イヤだった?」
兎角は晴の思惑がわからず呆然とするが、それでも晴がそれを望んでいるのなら兎角に拒否する選択肢はない。
「いや……お前が望むのならそれでいい」
兎角がそう言うと晴は「よかった〜」とまた笑顔を見せた。
この時兎角は今日初めてわずかばかりの緊張をした。晴の意図が読めなかったからだ。いや、晴だけではない。おそらく柩もこの思惑に関わっているはずだ。しかし柩にしたってメリットがあるとは思えない。
兎角は色々な可能性を考えてみようとするが、その思考は晴の言葉によって中断させられた。
「それでね、兎角さん。もう一つお願いがあるんだけれど……」
「あ、ああ……何でも言ってくれ」
「あのね、今日一日『コレ』を付けててほしいんだけど……」
そう言って晴はポケットから取り出した『ソレ』を兎角に見せた。
それを見た瞬間改めて兎角の思考は停止した。
晴の手の中にあったのは親指大のピンクの卵形のもの、いわゆるピンクローターであった。
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