鷺沢文香「特別な一日にこそ、何でもないひとときを」
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◆TOYOUsnVr.
[saga]
2018/10/27(土) 12:00:07.86 ID:kQQBGx/C0
○
やっとの思いで意を決し洗面所へと辿り着き、顔を洗います。
ひんやりした水によって、ぱちんともう一段ギアが上がったような心持ちになりました。
もちろんそれは錯覚でしかなく、速度自体にそう変化はないのでしょうけれど。
さて、と手早く寝巻きを洗濯機へと放り込み、秋の朝の冷たさから逃げるように自室へと舞い戻ります。
寒さは着る衣服に悩む余裕を奪ってくれるという点で優秀と言えるでしょう。
思い悩む時間を短縮できるのですから、こと忙しない朝に於いては非常に。
そんなくだらないことを考えながら、今日の衣服へと着替えると、次いではドレッサーの前へ座り、あれこれと化粧品を机上へ並べます。
朝の支度のなかに、もう当然のように入っているこのお化粧という工程すら、数年前の私にはなかったものであることを考えれば、人生は何があるか分かりません。
などと、よくわからない感傷に浸りながら、自身の顔を粧していく私なのでした。
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