鷺沢文香「特別な一日にこそ、何でもないひとときを」
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◆TOYOUsnVr.
[saga]
2018/10/27(土) 12:00:34.59 ID:kQQBGx/C0
○
最後に香水を一吹きして、身支度は完了と相成りました。
宝石箱からネックレスをいくつか取り出して、鏡の前で何度か付け替えます。
こちらは少し華やか過ぎるでしょうか、こちらだと衣服の色と同化してあまり目立ちません。
といった試行錯誤ののちに、ネックレスを選び終わったとき、見計らったように携帯電話が私を呼び付けました。
画面上にでかでかと表示される、プロデューサーさんのお名前。
「お疲れ様です。鷺沢です」
とりあえず、と応答時の定型文を以て、電話を受け、プロデューサーさんの声を待ちます。
『おつかれ。それとおはよ』
「はい。おはようございます」
『どう? ちょっと早いけど出られそう?』
「はい、問題ありません」
『よかった。ごめんな今日は。もう四、五分で着くと思うから』
「いえ、そんな。プロデューサーさんのせいではないのですから……」
『あはは、そう言ってくれるとちょっとは気持ちが楽になるよ。それじゃあ、また』
プロデューサーさんがそう言って、私が「はい」と返すと、携帯電話はつーつー、という電子音を吐くのみ。
やはり、朝食を食べている時間はなかったようです。
起床した当初の見立て通り、と言えましょう。
……こんなことを誇っても何にもなりませんし、もう十五分ほど早く起きていればいいだけの話ではあるのですが。
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