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澪「りっちゃん」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/06(月) 23:05:12.12 ID:sUwaXtY0
「みおちゃんをいじめるなー!」

「げっ田井中だ」

「めんどくさいやつが来ちゃった…」

「田井中には関係ないだろー!」

「みおちゃんはわたしの大事な子なの!」

「ほらみおちゃん、いこっ」

「う、うん…」
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/06(月) 23:08:43.17 ID:sUwaXtY0
「ねえりっちゃん…」

「いいよーお礼なんか」

「…おてて痛いよ」

「あっ!ごめんね」

「…何でいつも助けてくれるの?」

「言ったでしょ!みおちゃんはわたしの大事な子だからだよ」
3 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/06(月) 23:17:50.71 ID:sUwaXtY0
「…そっか」

「みおちゃんは、わたしのこと大事ー?」

「うん、大事」

「じゃあ、好きー?」

「大好きだよ」

「両思いだね!」

「ふふふ、そうだね」

「今度は引っ張らないから、また手繋いでもいいー?」

「…いいよ」
4 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/06(月) 23:28:39.47 ID:sUwaXtY0
昔のわたしたち。

ひょんなことからそんな話になり、彼女は過去を話し出した。

話を遮ろうとするわたしを尻目に。

唯、ムギ、梓の3人は目を輝かせる。

彼女の話は止まらない。

「勝手にしろ」

そう言ってわたしは、ベースをいじり始めた。

思い出したくない、と心で思いながらも、わたしの頭の中はその頃に舞い戻る。
5 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/06(月) 23:33:16.47 ID:sUwaXtY0
「りっちゃん」

「みおちゃん」

わたしたちはかつて、お互いをこう呼び合っていた。

そんなに遠くない記憶。かれこれ4年ほど前まで、ごく自然に。

ある時を境に、「りっちゃん」という呼び名を使わなくなった。

正確には、使わないよう彼女に言いつけられたんだ。

その頃のわたしたちは、今はもういない。
6 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/06(月) 23:57:54.11 ID:8GXJr/Q0
ほうほう、頑張って
7 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/07(火) 00:28:28.95 ID:qij25b60
近くに住むわたしたちは、幼稚園、小学校、中学校と、当たり前に同じ場所へ通った。

幼稚園まで同じだったことは、彼女の記憶にないらしい。

他人が聞くと、彼女を「薄情」だと言うかもしれない。

でも、それも仕方ない。

内気でおとなしいわたし。
元気で落ち着きのない彼女。

共通点なんてまったくない、正反対の二人だった。

仲良くなったのは、小4の時。

彼女がわたしの内気を克服しようと、特訓してくれたのがきっかけだった。

恋愛感情なんて、あの頃はまだわかってなかったと思う。
8 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/07(火) 00:31:21.11 ID:qij25b60
それはいつものように、彼女の家に遊びに行ったある日のことだった。


「みおちゃん、ちゅーしたことある?」

「あるよ?」

「え!誰と誰と??」

「パパとママ」

「それはなしだよ〜」

「じゃありっちゃんは、キスしたことあるの?」

「キス!?みおちゃん、おっとな〜!」

「…パパママ以外とちゅーしたことあるの?」

「あるよ〜」
9 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/07(火) 00:37:29.67 ID:qij25b60
「えー…誰?」

「ちっちゃい時のさとし!その頃は可愛かったんだよ〜」

「さとしもなしだよー!」

「家族以外とはしたことないよ」

「わたしと一緒だね」

「じゃあみおちゃん、ちゅーしよう!」
10 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/07(火) 00:40:08.13 ID:qij25b60
「ええ!?」

「だって好き同士はちゅーするものだよ!」

「でも…」

「わたしのこと、嫌い?」

「…好きだよ?」

「じゃあいいでしょ?」

「でも…」

「みおちゃんとちゅーしたい!」

「じゃあ…いいよ」
11 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/07(火) 00:45:11.12 ID:qij25b60
「みおちゃん、目閉じて?」

小さな心臓が破裂しそうだったのに対し、柔らかく当たる唇。

彼女から、頬に軽く唇を当てるだけだった。


「ははは、みおちゃん顔真っ赤!」

「だって…恥ずかしいよ…」

「トマトー!」

「…りっちゃんのばか」

「みおちゃん、すっごく可愛い」

「…りっちゃんも可愛いよ」
12 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/07(火) 00:47:53.96 ID:qij25b60
「ほんと?」

「うん、可愛くて大好き」

「じゃあ今度はお口にしてもいい?」

「…うん」

こうしてわたしは初恋の相手と、お互いのファーストキスを交わした。


人前でこそしなかったが、それからたくさんのキスをした。

手を握りながら、軽く唇を当てるだけのキス。

幼いながらに、心が満たされていくのがわかった。

顔を離しては、二人して幸せそうな笑顔を作った。
13 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/07(火) 00:59:52.10 ID:qij25b60
本当は気付いていた。

一般的に、わたしたちの行動はおかしいということ。

いつから気付いてたのかはわからない。

二人だけの時に、こっそり唇を重ねていたんだから、

本当は最初からわかっていたのかもしれない。


それでも幸せだった。

そう、幸せだったんだ。
14 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/07(火) 01:02:59.80 ID:qij25b60
とりあえずここまで
次は中学編になります
書き溜めはあるけど未完、展開迷ってる部分あるから読んでくれる方に頼るかも
15 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/07(火) 01:13:15.90 ID:r0J2oaIo
おおおお続きが気になる・・・
16 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/07(火) 01:13:35.83 ID:U6QYjnM0
期待
17 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/07(火) 03:14:29.63 ID:.yBcY46o
わーい澪律わーいわーい
18 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/08(水) 00:38:01.26 ID:1FsEBsIo
自分の妄想と同じこと書いてくれてる!
かなり期待してる!
19 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 21:52:39.32 ID:OURaMbQ0
中学に入る。

紺のベストに白いシャツ、若草色のリボン。

新しくて、少し大きめの制服。

少し緊張しながら彼女を迎えに行った。

約束の時間より少し早かったのに、彼女は玄関先に立っていた。

今まで私服だったからか、滅多に目にしなかった彼女のスカート姿。
20 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 21:59:53.05 ID:OURaMbQ0
「りっちゃんがスカート…ふっ」

「何がおかしい!」

「ごめんごめん、だって今まで私服だっただろ?
 
 スカート姿ほとんど見たことなかったから…」

「…笑うほど変?」

「ううん、似合ってるよ」

「あ…そりゃどうも」

「顔赤いぞ?…トマト!」

「うるせー!…みおちゃんも似合ってる、可愛いよ」

「…ありがと」

「…よし、行くか!」


そう言うと彼女は、わたしの腕を引き意味なく走った。
21 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 22:04:21.99 ID:OURaMbQ0
短い式が終わり、クラス分けのプリントが配布される。

自分のクラスを確認すると、次は彼女の名前を探した。

…一緒だ。


「みおちゃーん!」

「りっちゃん!何組か見た!?」

「見た!一緒だな!」

「うん!よろしく!」


無邪気に抱き合って喜んだ。

これからも一緒に居れる、そう思うと顔が緩んで仕方なかった。
22 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 22:22:33.21 ID:OURaMbQ0
それからも変わらず、登校も下校も一緒だった。

変わったとことと言うと、同じくらいだった二人の身長に差が出来たこと。

男女が互いを意識し始めて、境がくっきりしたこと。

誰かと誰かが付き合ってる、なんて噂話で盛り上がるクラスメイトたち。


その頃だったと思う。

彼女への気持ちが「恋」だと自覚したのは。

ただの友達じゃない。

彼女は、わたしの好きな人。
23 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 22:44:24.48 ID:OURaMbQ0
いつもと変わらない通学路。

まだ桜が舞っていたと頃だったと思う。

どちらが言い出したわけではないが、わたしたちは人通りの少ない道を使っていた。

他愛もない会話をしながら歩く。

周りを気にすることもなく、手を繋いで。


その日は少し、彼女が待ち合わせに遅れてきた。

「遅いぞ」なんて言いながら、まだ余裕はあった。

急ぐわけでもなく歩いていると、たまたま同じクラスの男子に出会った。

彼はわたしたちに近づき、茶化すようにこう言った。

「なあ、何で手繋いでんの?レズってやつ?」
24 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 22:51:35.40 ID:OURaMbQ0
たちまち顔が赤くなっていくのがわかる。

本当はすぐに逃げ出してしまいたかった。

思わず握った手に力がこもる。

何も言い返せない、そんなわたしの顔を覗いて彼女が言った。 


「違う、ただの友達だよ」
25 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 22:58:02.23 ID:OURaMbQ0
そう言うしかなかったんだ。

わたしもきっと、言い返すのであれば選んだ言葉。

それなのに少し悲しくなって、手を離して下を向いてしまった。


「ほーら、行くぞ!」

彼女はにっこり笑って、離した手をまた繋いで走った。
26 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 23:00:21.29 ID:OURaMbQ0
勉強はあまり好きではない。

だからと言って、それを怠る勇気もないわたしは、

黒板の文字をせっせと写し、テストでは平均以上の点が取れた。

気付けば周りは、わたしを「優等生」と呼んだ。


でもその日は朝のこともあり、授業が頭に入ってこない。

少し不安になって、ぼんやりと彼女の方に目をやった。
27 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 23:03:38.78 ID:OURaMbQ0

彼女はいつも、授業を寝て過ごしたり、

ノートいっぱいに誰かの似顔絵や、変な落書きをしている。

真面目とは程遠い存在だった。

今日もノートに何かを書いている。黒板を写している様子もない。

何かを書き終え、ノートの1ページをちぎった。

すると急にこちらに目線を向け、不意に目が合う。

教師が背を向けているのを確かめると、丸めた紙をわたしへ投げた。


「今日放課後あそぼ」
28 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 23:07:47.66 ID:OURaMbQ0
うん、と首を縦に振ると、彼女はにっこり笑った。

そして机に顔を伏せた。

それ以降、彼女はどの授業もずっと寝て過ごしていた。


その日の放課後、約束どおり彼女の家に寄った。


朝のこともあり、何となく空気が重くて、居心地が悪い。

そんな中、彼女が口を開いた。


「なあ、うちらさ」
29 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 23:10:27.60 ID:OURaMbQ0
「友達なんだし、もうああいうのはよそうな」

「ああいうの?」

「手繋いだり、キス…したり?」

「…何で?」

「言ってんじゃん、友達だからだよ」

「…りっちゃん、わたしのこと嫌いになった?」

「…その『りっちゃん』っつーのもナシだな」

「今までこう呼んできたじゃん」

「親友なんだからさ、他人行儀に『ちゃん』なんて付けなくて良いだろ」

「…何それ」

「とにかく『りっちゃん』『みおちゃん』ってのは禁止!
 
 …今までどおりにいかないんだよ」
30 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 23:14:03.82 ID:OURaMbQ0
それから、彼女はわたしを呼び捨てするようになった。

わたしの方は、うまく彼女を呼び捨て出来なかった。

「ねえ」だとか「ちょっと」だとか、

とにかくただ二文字を口に出来なかった。


「りっちゃん」と呼んでしまうと、彼女はそのたびに怒る。

「そんな呼び方するな」と言った。

…他の友達はそう呼んでいるのに。
31 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 23:17:43.46 ID:OURaMbQ0
ついこの間までは、手を繋いで歩いた道。

それがもう、触れることすら許されない。


今まで気にも留めなかった、同性という壁。

それを彼女は急に、わたしたちの間に高く高く隔てた。

『親友』という言葉を使って。


それからのわたしたちは『親友』だった。

彼女はわたしに、普通に接してきた。

あくまでも普通に、友達として。

戸惑いながら、わたしはそれに付き合った。

…律、と呼べないまま。

それしか、彼女の隣に居る方法がなかったんだ。
32 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/08(水) 23:21:28.31 ID:OURaMbQ0
今日はこの辺で
書き溜めはあるんだけど、シーンごとの会話文しか書いてないから
間を詰める文章を書くのに時間が掛かってしまう…
会話文だけで話し進めるのが苦手なもんで、地の文ばっかですまん
33 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/08(水) 23:58:04.48 ID:sKIvWoAO
たまらん
34 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/09(木) 00:51:16.06 ID:fcMxS8oo
地の文読みやすいから全然平気よ
たまらんけど切ないな・・・
35 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/09(木) 01:45:54.24 ID:uBNxmzYo
いい!すごくいい!
続き待ってる
36 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 22:13:15.95 ID:P1qxwMw0
中3の春から、わたしは受験に向けて塾へ通い始めた。

それでもまだ、彼女とはよく遊んだ。

どこかに出掛けると、たくさんのカップルを目にする。

幸せそうな笑顔を目で追っては、自身の現状に落胆する。

こんなに近くに居て、どうして苦しいんだろうと。

そんな気持ちを払拭するように、好きでもない勉強を頑張った。
37 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 22:16:10.28 ID:P1qxwMw0
その頃から、彼女はよく音楽の話をするようになった。

たくさんのCDをわたしに持たせ、感想を聞かせろとせがむ。

目を輝かせる彼女と同じように、わたしも音楽に夢中になった。

今部屋にあるCDのほとんどは、彼女が薦めてくれたもの。

きっと彼女が居なければ、ここまで音楽も好きじゃなかっただろう。

詩を書き始めたのもその頃だった。
38 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 22:20:55.70 ID:P1qxwMw0
新しいDVDを買ったから、と呼ばれた彼女の家。

1枚のディスクが終わる頃、彼女は「これだ!」と言い出した。


「わたしはドラム、澪はベースな!」

「…勝手に決めるな」

「え?澪はベース選ぶと思った」

「いや…その通りだけど」

「だろ?わかるよ、澪のことは」


そんな言い方をされると、期待してしまう。

また…あの頃に戻れるんじゃないか。


その期待もまた、すぐに崩れてしまうんだ。
39 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 22:28:40.14 ID:P1qxwMw0
「今日クラスの奴に告白された」

急に電話を掛けてきたと思えば、この内容だった。


「…そっか」

「…そんだけ?」

「…わたしに何て言って欲しい?」

「普通、『おめでとう』とかだろ」

「…おめでとう」

「ありがと。じゃあ、そんだけだから」
40 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 22:42:34.41 ID:P1qxwMw0
会話にしてたったの1、2分だった。

相手の名前は聞いていない。

「おめでとう」なんて思えるはずがなかった。

なのに本当の気持ちは、言葉になりたがらない。

今までのすべてが消えてしまった気がした。

彼女はその人と付き合うんだろうか。

…嫌だよ。


電話を切ってすぐ、彼女からメールが入る。


From りっちゃん

「明日からそいつと学校行くことにしたから、澪は先に行って」
41 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 22:46:00.66 ID:P1qxwMw0
ディスプレイを涙が打った。

大きく息を吐いて、シャツの袖でディスプレイを拭う。

メニュー画面に戻り、電話帳の「ラ行」から彼女の名前を探した。


りっちゃん_

りっちゃ_

りっち_

りっ_

り_

_

り_

りつ_

律_
42 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 22:49:52.98 ID:P1qxwMw0
次の日、わたしは一人で登校した。

いつもより随分早く着いて、教室は鍵が掛かっていた。

職員室に鍵を取りに行って戻ると、もう数人の生徒が教室が開くのを待っていた。


「あれ?今日秋山さん一人なんだ」

「…そうだよ」


席に着いて、カバンから本を取り出す。

教室で本を開いたのはいつ振りだろうか。

段々空席が埋まっていく。

それまで止むことがなかった話し声が、急に止んで、また大きくなった。

彼女が言う「そいつ」が誰か、その時に知ってしまった。
43 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 22:55:04.17 ID:P1qxwMw0
「あいつら付き合ってんの!?」

「マジかよ、いつからだ?」

「あいつ、前々から田井中のこと好きだったもんな」


「それで秋山さん一人だったんだね」

「あの二人付き合ってるのかな?」

「秋山さんに聞いてみようよ」


こそこそと上がる声が耳に入る。

何でわたしに聞くんだよ。

…本人たちに聞けよ。
44 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 23:00:41.07 ID:P1qxwMw0
「ねえ秋山さん、あの二人付き合ってるの?」

「何でわたしに聞く?」

「だって仲良いし、友達でしょ?」

「友達だよ、ただの」

「じゃあ知ってるんじゃないの?」

「さあ。…本人たちに聞いてくれる?」


やっぱり秋山さんって難しい子だね、なんて小さな声で話しながら二人の女子が離れていった。

「りっちゃーん」と言いながら、今度は二人して彼女に近づく。

わたしには許されない、あの呼び名で。
45 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 23:02:49.20 ID:P1qxwMw0
「ねえねえ、一緒に来たの?」

「そうだよ」

照れるそぶりもなく、そう答える。


「付き合ってんの?」

「お前らに関係ある?」

不機嫌そうな顔をしたのは、彼女も女子二人も一緒だった。


調子乗っちゃってやな感じだね、今度も二人はそう呟いた。
46 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 23:06:24.23 ID:P1qxwMw0
「澪、1時間目移動だぞ?用意しろよ」

「ああ、ごめん」

「先行っちゃうぞ」

「ちょっと待って!…律」

この日初めて、わたしは彼女を律と呼んだ。
47 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/09(木) 23:08:25.34 ID:P1qxwMw0
とりあえずここらで。
今日明日でもうちょい書けるようにしたい
48 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/09(木) 23:27:01.33 ID:PmFXM2AO
もうやめてあげて…
ハッピーエンドになるんだろうか 読んでて苦しい
49 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/09(木) 23:34:16.22 ID:DO/gpoDO
続きが気になるな
50 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 00:21:09.48 ID:HDLVEpc0
その日から1週間、一人で登校した。

毎朝わたしが教室の鍵を開けた。

この教室で読み終えた本は、1冊だけではなかった。


なのに週が明けると、彼女も一人で登校してきた。

また教室がざわつく。
51 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/10(金) 00:22:08.12 ID:ku07dZEo
気になるよーーー
52 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 00:24:18.93 ID:HDLVEpc0
「え、もう別れちゃったわけ?」

「えらく短いな」

「うわー、もうフラれちゃったか」


「今日は別々なんだね」

「終わるの早かったね」

「やっぱ付き合ってなかったのかな?」

「また聞いてみる?」

「どうでもいいよ、もう」
53 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 00:28:34.32 ID:HDLVEpc0
ざわつく周囲を気にすることもなく、彼女が近づいて来る。

「みーお!」

「なに?」

「わー、冷たい反応」

「…何だよ?」

「何読んでんの?」

「本、小説だよ」

「よく読めるよなーそんなの」

「…律にはちょっと難しいかもな」

「うるせー!…で、さ」
54 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 00:30:27.49 ID:HDLVEpc0
「ん?」

「…また明日から一緒に学校行こ」

「…あいつはいいのかよ」

「一緒に行くのやめたから」

「…勝手な奴」

「ごめん、でも澪と一緒に行きたい」

「…わかった」
55 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 00:34:00.68 ID:HDLVEpc0
わたしたちはまた、二人で登校するようになる。

本当は突き放してやりたかった。

これ以上わたしの気持ちをかき乱さないで、と。

それでもわたしは弱いから、結局は受け入れてしまう。

…彼女を好きで仕方ないから。

気持ちを消さなきゃ、といくら思っても、

彼女を拒絶するのが、とても怖かったんだ。
56 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 00:37:51.38 ID:HDLVEpc0
寒くなるのに比例して、受験勉強が忙しくなる。

相変わらず塾に通って、夕飯はそこで食べる毎日。

彼女と遊ぶ機会も減った。

公立も私立の桜高も、A判定が出るまでに勉強した。

何かを目指すというより、

余計なことを考えないために、ひたすらホワイトボードの字を追った。

学校では、受験へ向けての授業も多くなってきた。

教師の話を受け、彼女が話しかけてきた。
57 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 00:40:50.76 ID:HDLVEpc0
「澪って桜高受けんだよな?」

「うん、公立と併願だけどな」

「じゃあわたしも桜高受けよっと」

「…律、ちゃんと考えたほうがいいぞ」

「何せ近いし?」

「そんな理由で決めることじゃないんだ」

「だって正直どこでもいいし、澪と一緒でいいや」

「…簡単に言うけど、桜高も結構頑張んなきゃ厳しいぞ」

「専願なら何とかなるって」

「…勝手にしろよ」
58 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 00:43:40.99 ID:HDLVEpc0
必死になっている素振りはなかった。

いつも通り、授業中は寝て過ごしている。

わたしの心配をよそに、テストの点は急に上がっていた。

今まで恒例だった、わたしに泣き付いてくることもない。


「わたしが本気になればこんなもんだよ」

得意げに言った彼女は、合格通知を手にしていた。

わたしも見事、合格。
59 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 00:47:46.17 ID:HDLVEpc0
公立の試験に落ちてしまえば、このまま彼女と一緒に居れるかもしれない。

試験会場に向かう道のりでは、そんなことが頭に浮かぶ。

それは試験が開始しても、頭について離れなかった。


合格発表の日、わたしの番号はそこにない。

ただ呆然と、掲示板の前に立っていた。

悲しいとか、そんな気持ちはなかった。
60 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 00:50:43.24 ID:HDLVEpc0
「どうだった?」

「…落ちた」

「そうか…」

「うん」

「…残念だったな」

「落ちたものは仕方ないよ」

「まあさ、同じ高校行けるんだし…わたしは嬉しいよ」

「…そうだな」
61 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 00:53:00.39 ID:HDLVEpc0
励まそうとする彼女をよそに、わたしは妙に落ち着いていた。

…受かるわけがないよ。

名前だけ書いた解答用紙で。


「落ちたよ」

その報告に、ママは少し悲しそうな顔をした。

パパは笑って、頭を撫でてくれた。


わたしはこれからを、彼女と一緒に過ごすことを選んだ。
62 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/10(金) 00:59:04.30 ID:HDLVEpc0
次から高校生編。
続きは12/10中に投下予定
ちょっと自分書いてるくせに澪が不憫でならない…ごめん澪
63 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/10(金) 01:02:49.69 ID:8mT/7..o
乙乙続き待ってる!
2人とも幸せになってほしい・・・
64 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/10(金) 01:13:29.89 ID:ku07dZEo
乙!
65 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/10(金) 01:49:50.36 ID:bQrPgFko

なんというかこのまま本編に続くと考えたら
また違った趣が本編にも出てくるな
66 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/10(金) 02:37:51.71 ID:l9vyqoAO
みおー!
67 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 12:47:57.51 ID:dHTdNAw0
入学式。

新しい制服に袖を通す。

大きく息を吐いて、姿を映した鏡から離れた。

履きなれない革靴を履いて、彼女の家へと向かう。

ちょうど3年前を思い出しながら。


あの時と同じように玄関先に立っていた彼女は、わたしに気付くなり大きく手を振る。

紺色のブレザー、青いタイ。

今まで見てきた彼女とは少し違って見える。

思わず目を反らしてしまった。
68 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 12:51:27.45 ID:dHTdNAw0
「おっはよー!似合ってんじゃん」

「…律はシャツ入れる、でボタン閉める」

「へいへい、相変わらずお堅い娘さんだこと」

「最初くらいちゃんとしろよ」

「…そうだな、これから高校生編始まるわけだし!」


そう意気込んで、少し前を歩いていた彼女は振り返った。

こちらを見る彼女は希望に満ちた笑顔だった。
69 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 12:54:02.20 ID:dHTdNAw0
「そう言えばさ、中学の入学式もこうだったよな」

「ああ…律のスカート姿が新鮮で」

「あの時の澪ひどかったよな、人のこと見るなり笑うんだもん」

「ちゃんとその後褒めたぞ?…可愛いって」

「…そうだったっけ?覚えてねーや」

「…ほら、急がなきゃ遅れるぞ」
70 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 13:01:46.58 ID:dHTdNAw0
覚えてない、か。

もしかすると、幻だったのだろうか。

あの幸せな時間たち。

もう、それでいいのかもしれない。

そろそろ見切りをつけなくちゃいけないんだ。

早く「友達」という居場所に落ち着かなくちゃ。

友達でいいから、せめて「特別」で居たい。

そう思った。


春なのにまだ肌寒くて、澄んだ空気。

これから始まる3年間。

その3年の間に、ちゃんと「友達」になれるのかな。
71 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 21:45:13.16 ID:2/RNink0
幸か不幸か、また彼女と同じクラスになる。

「やったな!」と喜ぶ彼女を見て、複雑な気持ちだった。

ちょうど3年前の、あの時のようには喜べない。

嬉しいけど…辛い。

また彼女に一喜一憂する毎日が続く気がした。

出来るだけ、自分の足で歩こう。

自分で考えて、自分で選ぼう。

いつまでも彼女に依存しててはいけない。
72 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 21:50:11.45 ID:2/RNink0
中学の頃、部活には入っていなかった。

高校では、あえて何かに打ち込んでみよう。

彼女以外に何かを見つけなくては。

そう思って、文芸部に入ることにした。

本は好きだし、ものを書くことにも興味があった。

何より、彼女はそれらに興味がない。

彼女と距離を取るには絶好の場だ。
73 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 21:54:31.91 ID:2/RNink0
それなのに、彼女はわたしの方へ駆けてくる。

そしてまた腕を引いて走る。

わたしはまたそれを拒めないんだ。


文芸部への入部希望用紙は破られた。


彼女が入部を希望した軽音部は、廃部寸前。

それが彼女を

「このまま行けばわたしが部長」

という更なる期待へ駆り立てた。
74 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 21:58:15.63 ID:2/RNink0
「どうするの?」

「入部希望者を待つ!」

「…待つの?」

「待つ!」


「…帰ろっか」


入部希望者は来なかった。

代わりに、合唱部への入部希望者が訪ねてきた。

強引に勧誘する彼女に呆れ、帰ろうとする。

すると彼女は思い出話を始めた。

…わたしの記憶にないことも。
75 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 22:04:20.62 ID:2/RNink0
「捏造すんな!」

「…何だか楽しそうですね」


「キーボードくらいしか出来ませんけど、わたしで良ければ入部させてください」

そうして入部を決めたのが、ムギ。


「ありがとう!これであと一人入部すれば…」

わたしも…人数に入ってる。

その後1週間、入部希望者は現れない。

軽音部らしい活動はほとんどしなかったが、3人で過ごすのは楽しかった。

何よりこんなにやる気になってる彼女を見ると、見放せないわたしが居た。

友達として、彼女を応援しよう。

そう思った。

すると、タイミングよく入部希望者が訪れる。

それが唯。
76 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 22:07:47.82 ID:2/RNink0
なのに、入部を止めると言う唯。

必死で引き止めたのは、彼女もムギも、わたしも一緒だった。

演奏だけでも。

その言葉に食いついて、そのまま唯は入部を決めた。

これで4人揃った。

彼女の、わたしたちの軽音部のスタートだ。


唯のギターを買うためにしたバイト。

ほとんど遊んだ合宿。

初ライブにしてトラウマになった学祭ライブ。

クリスマスもトラウマを残して、唯の家で年明け。

一年があっという間だった。
77 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 22:16:44.30 ID:2/RNink0
部活動と言うよりは、遊んでばかり。

部長と唯はすぐにだらけるし、ムギはああ見えて意外とおてんば。

何故かわたしが、必死で4人をまとめようとしていた。

入学当初の意気込みは、気付けば消えていた。

彼女への思いも消えることはなかったが、段々収まりかけていた。

いつの間にか、居心地のいい場所を見つけた。
78 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 22:23:12.39 ID:2/RNink0
2年に上がり、4人の中でわたしだけ別クラスになった。

唯とムギを連れて階段を上がっていく彼女。

「寂しい…」と囁いてみたものの、少しホッとしていた。

不安もあったが、同じクラスには和が居た。

人見知りのわたしでも、すぐに打ち解けることが出来た。

なるべくこの穏やかなまま、楽しい高校生活を終えたかった。


新歓ライブも成功し、1人ではあるけど入部希望者が現れる。

それが梓。

5人になっても相変わらずの軽音部だった。
79 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/10(金) 22:27:48.63 ID:2/RNink0
とりあえず高1終わり。
展開なくてだれるな…次あたりで澪の回想終わり、リアルタイムで展開するつもり
どうかお付き合い願います。
80 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/10(金) 23:21:48.08 ID:QscHNkso
せつねえええええ乙
81 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/11(土) 00:08:37.90 ID:IDWPaWw0
毎日毎日続きが気になるなぁ・・・
82 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/11(土) 00:11:37.38 ID:ZyE5gXco

ここからどうなるのか楽しみだ
83 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 23:23:38.38 ID:b3O79ps0
2度目の学祭ライブ。

梓のテンションはいつも以上だった。

ふわふわ時間を鼻歌で歌ったり、「楽しみ」って顔に書いてある感じ。

仕方ない、梓にとっては軽音部初めての舞台だから。

他のメンバーも、いつもよりは少なからずはりきっていたと思う。

1年の時のライブDVDを見せられてしまい、わたしの意識は遠のいた。

そんな時、和が部室に現れた。
84 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 23:27:20.49 ID:b3O79ps0
「去年にもこんなことがあったな…」

そう言って彼女を一発殴った。

講堂の使用申請書は出されてなかった。

バンド名が何か、で揉めたりしてる間に、和が去ろうとする。

「じゃあ書類、後で生徒会室に持ってきてね」


唯は立ち上がって和に声を掛けた。


「たまには帰りにお茶しようよ」

「わかった、後でメールする」


その後、唯がギターの調子が悪いと言い出した。

帰りに、みんなで楽器屋に行くことになる。
85 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 23:30:25.87 ID:b3O79ps0
「じゃあわたし、ここで待ってるから…」

「澪、レフティフェアやってるよ?」

ずらりと並んだ左利き用ベースが目に入る。

おもちゃを見つけた子どもの様に、その場から動けなくなった。

ギターの調整も終わってもそれは続いて、そんなわたしを律が引っ張る。

聞き分けのない子どもを諭すように。
86 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 23:38:07.98 ID:b3O79ps0
するとわたしは、バランスを崩して尻もちをついてしまった。


悪いのはわたしだった。

なのにわたしは謝れなかった。


「バカ律」

そう言うと、律は少し驚いたように固まった。


唯が和と約束がある、というから着いて行った。

3人でおしゃれなカフェに入って話していると、彼女が急に現れた。
87 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 23:42:10.75 ID:b3O79ps0
「うちの澪がいつもお世話になってまーす」

「ちょっと律…」

「なに?何かやなの?」

そんなことを言って、会話に割り込んでくる。

困惑するわたしと和。

ムギと梓も離れた席に居て、困った様子でこちらを見ている。

唯は目の前のものに夢中になってる。

…それでも彼女は構わず、そのまま1人話し続けた。
88 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 23:47:16.83 ID:b3O79ps0
次の日の昼休み。

和とお弁当を開いていると、また彼女が現れた。


「これから学園祭までは、昼休みも練習するから」

お弁当も直す暇も与えてはくれない。

強引に引っ張られ、部室に向かう。

その間、お互い一言も言葉を発しなかった。


部室に着くと他のみんなが居て、楽器の調整をしていた。

きっと急に彼女から呼び出されたのだろう。

いつも以上にちょっかいを掛けてくるから、イライラしてしまう。
89 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 23:49:37.88 ID:b3O79ps0
「練習するんだろ?」

「するよ〜」


「もう教室戻るぞ!」

「ふーん、戻れば?悪かったよ、せっかくの和との楽しいランチタイムを邪魔してさ」


「和」という言葉に力を込める。

どうやらそこが気に入らないらしい。


ムギと梓が場を和ませようとした。

重い空気をまとったまま、練習に入った。
90 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 23:53:30.22 ID:b3O79ps0
なのに、彼女のドラムは「彼女」らしさがなかった。

リズムは完璧だし、うまく力が抜けてる。

なのにどことなく、「良さ」を感じないものだった。

「調子が出ない」と言い残し、彼女は部室を出て行った。


次の日も、その次の日も部室に来なかった。

部室はおろか、朝も待ち合わせの時刻に現れない。

何の連絡もなかった。
91 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 23:56:50.74 ID:b3O79ps0
「練習しよう」

そう言ったものの、不安は隠せない。

さわ子先生は、代わりを探すことを提案した。


「りっちゃんの代わりはいません!」

ムギは少し震えながら言った。

その通りだ。

わたしが一番思っているはず。

…彼女の代わりなんて、居ない。
92 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 23:59:50.32 ID:b3O79ps0
2−2を覗いてみると、ちょうど唯とムギがこちらにやってきた。

変に取り繕おうとしているわたしを見て、2人がこう言った。


「りっちゃんね」

「学校休んでるの」


放課後、律の家を訪ねた。

昔から何度も上った階段を上がりきると、ドアの向こうから彼女の声が聞こえた。
93 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 00:02:46.16 ID:QzYG4M60
「みーおー?」

「超能力者か」

「わかるよ、澪の足音は」


ベッドで横になる彼女。

そこにもたれ掛かるわたし。

カーテンが閉まっていて、薄暗い。

テーブルには風邪薬と、ドラムスティックに教則本。

何となく落ち着くこの部屋。

普段なら、照れくさくて言えないようなことも言った。

すると彼女は目を潤ませて、笑った。
94 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 00:04:47.48 ID:QzYG4M60
「寝るまでそばに居てよ」

そう言ってわたしに甘える。

今度は彼女が、聞き分けのない子どもだった。

「やれやれ」と笑って、ベッドに腰掛ける。

まだ熱があるという彼女の手は暖かい。


手を繋ぎながら、また少し話をした。

少し和にヤキモチを妬いたと彼女は言った。

澪が誰かに取られる気がした、と。

恥ずかしがることもせず。


「だって澪は、特別な友達だからな」
95 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 00:08:34.43 ID:QzYG4M60
…そんなこと言うの、ずるいよ。

本当に色んな話をしたのに、

わたしたちはお互い、昔の話だけは避けていた気がする。


少しの沈黙。


「わたし、まだ律のこと…」

言いかけてやめた。

彼女が寝息を立てていたから。

寝息を立てていなかったら…いや、それでもやめてたのかな。
96 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 00:12:04.99 ID:QzYG4M60
1人ぼーっと、昔を思い出していた。

幸せだったあの頃。

1つ1つ、思い出す度に胸がキュンとした。

彼女の手を少し強めに握りなおした。


軽音部のメンバーが来ても、手は握ったままだった。

茶化すように言った、あの男子の言葉を思い出す。

それでも、この手を離そうとは思わなかった。
97 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 00:14:12.73 ID:QzYG4M60
やっぱり、まだ諦めきれないよ。

気持ちも消せないし、思い出も大切なんだ。

昔みたいに、好きって言いたい。

その上で、ちゃんと断ってくれるなら諦める。

思い出も、捨てるから。

でも、見ないフリを続けて、友達でいるなんて。

それならいっそうのこと、もっと遠くに行って。

『親友』なんて言葉使って、届きそうで届かない場所にいないでよ。

いくら『特別』でも、友達じゃ嫌だよ。
98 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/12(日) 00:16:44.06 ID:QzYG4M60
今日の分、投下終わり。
まだ澪の回想から抜け出せなかった…
もうちょい続きます どうぞよろしく
99 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/12(日) 00:27:42.42 ID:4AJtabAo

ちょっととは言わずにもっと
100 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/12(日) 00:45:04.03 ID:/U384nco
自然に本編に繋がってる
うまいな
続き期待してるよ
101 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 22:59:02.41 ID:.Vlxss60
段々と寒くなっていく。

わたしの思いの方は、どんどん元に戻っていく感じ。

どんなに思っても、どうにもならない。

あの頃に戻れるとは思えないし、高校生活も半分を過ぎた。

何か楽しいことがある度、彼女と居れる時間が減ることを憂いだ。


やり場のない思いを、書き起こした。
102 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:03:38.45 ID:.Vlxss60
どんなに寒くても ぼくは幸せ
白い吐息弾ませて 駆けてくきみを見てると

切り揃えた髪が とても似合ってる
でも前髪を下した きみの姿も見てみたい


わたしが男だったら、なんて思って『ぼく』と書いてみた。

普段歌詞を書くつもりでも、唯や彼女に邪魔されてなかなか書けない。

でもこれだけはすらすら書けた。

胸の中にある気持ちをただ文字にして、

少し前向きに、言葉を弾ませればいいだけだった。

ムギは明るい曲しか作ろうとしないから、合わせるにはその必要があった。

でも本当の理由は、歌詞の中くらいはこの気持ちを

「うれしい」と言いたかった。
103 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:07:13.63 ID:.Vlxss60
「新しい歌詞、郵便受けに入れとくから」


彼女には先にそう伝えておいた。

その辺りから、彼女は様子が変だった。

話しかけても聞いていない様だし、急に立ち止まって話を変えたり。

やっぱり、そう思った。

露骨過ぎたんだろう。

だからわたしにあんな態度なんだ。
104 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:14:49.60 ID:.Vlxss60
しばらくして、また普通に接してくれた。

何もなかったように、ただ普通に。

それでも彼女は、相当歌詞が気に入らないようだった。

「あの歌詞はなしだから」

そう言って、歌詞はボツになってしまった。

また…友達なんだから、って言うのかな。
105 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:20:03.26 ID:.Vlxss60
部活が終わって、5人で歩く。

唯は梓に何やらちょっかいを出してるらしく、

ムギは彼女と今日の宿題について話してる。

わたしはその2組を少し後ろから見ていた。

電車通学のムギとは駅で別れて、次はわたしと彼女が並んで歩く。

特に話すこともせずに。


いつもの信号に着いたところで、まだじゃれ合っていた2人とも別れる。

姿が見えなくなったところで、彼女が口を開いた。
106 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:26:34.84 ID:.Vlxss60
「どうしたんだよ、黙りこくっちゃって」

「…何であの歌詞ダメなんだ?」

「いや…あれはないだろ」

「何で?」

「何でも」

「…わたしの、気持ちだから?」

「はあ?」

「わたしの気持ちだよ、あれ。わかってるんだろ?」

「なあ澪…もうさ、昔のことは忘れろよ」
107 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:29:55.49 ID:.Vlxss60
「忘れるってなんだよ」

「もう…わたしたち高校生だぞ」

「だから何?」

「そろそろ物の分別つけなきゃ」

「言ってる意味がよくわかんない」

「過去に囚われるな、ってこと」

「それが忘れるってことなのか?」

「そうだな」
108 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:36:02.12 ID:.Vlxss60
そこからは、どちらも口を閉ざしたままだった。

彼女の家に着いて、

「じゃあな」

って彼女は言ったけど、それに応えることもなく歩いた。

自分の家の前も過ぎて、ただただ歩いた。

涙なんて出ない。

手袋をしていない手がかじかんで、感覚がなくなっていく。

心もだってそうなればいいのに。

「どんなに寒くても ぼくは幸せ」

それが言えるのは、掛けてくる彼女が居なきゃダメだった。


いっそ体ごと、この寒さに溶けてしまえれば、そう思った。
109 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:41:22.45 ID:QzGX0Ico
今日初めて見つけて読み始めたんだけど中々切ない…支援だわさ
110 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:41:56.22 ID:.Vlxss60
それが、つい昨日の話。

それなのに、何で。

何で彼女はみんなの前で、昔の話を始めるんだ。


全部を話すわけじゃない。

ある部分を避けて、隠して、彼女は話してる。

楽しそうに、笑いながら。
111 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:44:55.78 ID:.Vlxss60
わたしは長椅子に掛けてベースをいじる。

みんなに背を向けて、顔を見せないように。

頭に流す曲のルート音だけ弾いてみる。


「忘れろよ」


彼女がそう言った、過去を思い出さないように。

思い出したくない、こんなに苦しいなら、もう捨ててしまいたい。
112 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:47:47.79 ID:.Vlxss60
話の間、唯が、ムギが彼女を呼んでる。

「りっちゃん」と、そう呼ぶ。

それすらも聞きたくない。

わたしには許されない、その呼び名。


この数年で、大抵の曲弾きこなせるようになった。

そんな指に、ルート弾きはとても退屈だ。

彼女のドラムがあれば、楽しいのに。

手を止めてしまう。

今度はその手で、流れてきた涙を拭った。


わたしの背中が気になったのか、彼女は話をやめた。
113 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:51:05.58 ID:.Vlxss60
律「…そろそろ練習しようか」

唯「えー!もっと聞きたいよ!」

紬「唯ちゃん、もう練習に入らなきゃ」

梓「…そうですね、練習しましょう」


きっと彼女はこちらに目をやったんだ。

それに気付かないのは隣に座る唯だけで、

他の2人は、わたしを見る彼女の視線に気付いたんだろう。


4人は座るわたしを通り過ぎて、楽器の元に向かう。

顔を見られないうちに、いつものポジションに立った。
114 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:55:49.57 ID:.Vlxss60
紬「最初は何やる?」

唯「ふでペンにしよう!」

梓「最初のソロ、ミスらないでくださいよ!」

律「ふでペンな、じゃあいくぞー」


ワン、ツー、スリー


彼女がカウントを取る。

唯のソロはうまくいって、ムギも梓もいつも通りバッチリだ。

彼女のドラムは相変わらず走ってる。

わたしのベースは…うまく弾けてるのかな。


イントロが終わってもボーカルは入らなかった。
115 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:58:35.81 ID:.Vlxss60
唯「あれ?澪ちゃん、歌わないの?」

澪「ああ…ごめん、唯が歌って」

唯「うん、じゃあ最初っからいこう?」



キミの笑顔想像して いいとこ見せたくなるよ
情熱を握りしめ 振り向かせなきゃ

愛をこめてスラスラとね さあ書きだそう
受け取ったキミに しあわせが つながるように


彼女は笑顔になんてなってくれないし、

受け取っても、彼女の幸せには繋がらないんだ。
116 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/13(月) 00:02:31.61 ID:EwgE5wE0
本日分終了。
やっと澪の回想抜けました
この澪はブレブレで、りっちゃんは冷たくて…
二人のファンの方申し訳ない。
名曲もこんな方向で使ってしまって、どうしてこうなった…ww

それでも投下毎にレスくれたり、支援ありがとう
本当にやる気になります。もう少しお付き合い願います。
117 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/13(月) 00:09:30.03 ID:IICH8HEo
律の本心と次回の投下を楽しみに月曜と戦ってきます(>'A`)>
118 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 00:10:47.11 ID:KQS97Jko
乙乙
119 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 00:19:13.29 ID:z9xIQ3Mo
切なさがハンパない…
りっちゃんの本心が楽しみだな
120 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 01:09:19.34 ID:Z5Ct0Fco
胃が…

胃が悲鳴を……

おつかれれれれれ
121 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 03:50:01.06 ID:2qlMq6.o
澪しゃん……
122 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 12:20:51.26 ID:3Qk014oo
みおーーーーー
幸せに…幸せにしてくれ!
123 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 00:26:43.06 ID:VzbSIL60
唯のボーカルは調子がよかったと思う。

でも聞きたくなくて、わたしの手元は狂った。

自分で作った、指が覚えてるようなフレーズなのに。


みんながわたしの不調を察知する。

結局この曲しかやらずに、帰ることになった。


帰り道では、みんなが明るく振舞っているように見えた。

会話はわたしの頭に入ってこなくて、気のない相槌を繰り返す。

ムギと別れてからも、しばらくそれは続いた。

もうすぐ、唯と梓とも別れる信号に着く。

すると、唯が思いついたように提案した。
124 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 00:31:59.10 ID:VzbSIL60
唯「そうだ、今日あずにゃんはうちに来るんだよね?」

梓「はい、純と夕飯をごちそうになります」

唯「2人もおいでよ!ムギちゃんはもう電車かな?メールしてみよう!」

律「だってさ、澪どうする?」

澪「わたしは…いいよ」

唯「そっかー…」

律「ならわたしも…今日は遠慮するわ」

唯「…みんな揃う時の方がムギちゃんも楽しいよね」


唯が残念そうな顔をして、手に取った携帯をしまう。

ごめんな、と彼女が苦笑した。
125 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 00:37:21.79 ID:VzbSIL60
律「…じゃあ、この辺で」

唯「うん、また明日ね〜」

梓「失礼します」

澪「…またな」


今度は彼女と2人きりになる。

彼女はため息をついて、わたしの顔を見る。

少し見つめられただけなのに、涙が浮かんできた。
126 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 00:42:04.32 ID:VzbSIL60
律「なあ…泣いてんの?」

澪「うるさい」

律「そんな顔すんなよ」

澪「もう…ほっといてくれよ」

律「出来るかよ…うち寄ってけ」

澪「行かない」

律「…そんな目で家帰せないだろ、ママに心配かけるぞ」


ふらふらと彼女の家に引かれて行った。

今はその腕を振り払う気力もない。
127 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 00:48:51.41 ID:VzbSIL60
彼女はわたしだけ先に部屋へ通した。

陽も落ちたこの時間は、電気を付けなければ薄暗い。

それに構わず、わたしはベッドに腰掛けた。

電気がなくたって、この部屋のことはわかった。

あの頃からほとんど変わらない。

わたしたちはこうも変わってしまったのに。


彼女が部屋に入ると、やっと明かりが灯った。

水滴のついたボトルをわたしに手渡す。
128 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 00:53:35.95 ID:VzbSIL60
律「ほら、水しかないけど」

澪「…ありがと」

律「…まだ怒ってる?」

澪「そんなことないよ」

律「…怒ってんじゃねーか」

澪「怒ってない、ただもう…嫌だ」

律「わたしのことが、嫌?」

澪「…そうだよ」
129 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 00:58:40.05 ID:VzbSIL60
律「…ひどいこと言うよな」

澪「ひどいのはどっちだよ…」

律「わたしはただ、幼なじみとの思い出を話しただけだ」

澪「隠してる部分もある」

律「隠したわけじゃない」

澪「でもある部分だけ、避けてる」

律「…そんな話出来るかよ、友達の前で」

澪「何で?わたしたち…」

律「うちらはお互いを大事にしすぎてただけ、そうは思えない?」

澪「それだけじゃない!わたしは律のこと…」

律「…言わなくていいよ」
130 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 01:03:11.36 ID:VzbSIL60
澪「…聞けよ」

律「…聞かなくても知ってる、わかってるから」

澪「じゃあ何で…」

律「聞いたってどうにもならない」

澪「しようとしないだけだよ」

律「口に出したら…終わっちゃうんだ」

澪「それでもいい、嫌いでも何でもいいから…もう目を反らさないでくれよ」
131 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 01:08:09.88 ID:VzbSIL60
律「あの時のこと忘れたか?澪…手、離しただろ」

澪「…今なら離さないよ」

律「でもいつか、また離したくなるかもしれない」

澪「そんなことない!」

律「それでも…世間は許してくれない」

澪「どうだっていい、他人のことなんか」

律「そんな他人に指差されて…友達ですらいれなくなる」

澪「そんなの、本人次第だろ?」

律「ずっとそう言えるか?」
132 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 01:13:35.99 ID:5UHIKAQo
きてたー
133 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 01:17:18.61 ID:VzbSIL60
澪「律が受け入れてくれるなら、言えるよ」

律「今度はわたしが手を離したら?」

澪「あの時の律みたいに、また腕引いて走る」

律「それでも、振り払うかもしれない」
 
澪「『友達』って言葉で逃げて、手も繋げなかったよりはマシだ」

律「逃げる方が楽なことだってあるんだよ」

澪「…だから全部なかったことにするってわけか」
134 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 01:21:43.40 ID:VzbSIL60
律「そういうわけじゃねーよ」

澪「昨日はそう言った」

律「忘れろって言っただけだよ」

澪「同じだろ?」

律「…そうだな」

澪「そうだよ…」
135 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 01:24:01.34 ID:VzbSIL60
少しの沈黙を挟んで、彼女はまた話し出した。


律「…何で女同士じゃダメなんだろうな」

澪「わたしはそんなこと思ってない。律が勝手に…」

律「…一般的に、だよ」

澪「…何も生み出さないからだろ」

律「子どもが作れない、ってことか」

澪「…そういうこと」
136 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 01:28:47.51 ID:VzbSIL60
律「そんなの、不妊症のカップルもそうじゃねーか」

澪「それが理由で別れる人だっている」

律「本当に好きなら関係ないってのにな」

澪「お前が言うなよ…」

律「…人のことは言えない、けどだ」


本当に好きなら…。

好きだけじゃ、乗り越えられないこともあるんだろうか。

大丈夫だって今は言っても、口だけなら何とだって言える。

彼女が言うように、またあの時のように。

いつか手を離すかもしれない。

数分前に言った言葉にすら、自信が持てないわたしなら。
137 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 01:33:40.54 ID:VzbSIL60
澪「…そうもいかないのかもな、実際」

律「病気だっていうのにな」

澪「…わたしも病気ならよかったのに」

律「おい…いくらなんでも不謹慎だぞ」

澪「病気なら、治るかもしれないんだろ…」


この気持ちが『病気』なら、少しは報われる気がする。

彼女への気持ちが『治る』ものなら、こんなに苦しまなくていいのかもしれない。
138 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 01:37:44.98 ID:VzbSIL60
ベッドに腰掛けるわたし。

ベッドに上がり、壁にもたれ掛かっている彼女。

また訪れる、沈黙。

不意にベッドが軋んで、鈍い音を立てる。

すると同時に、肩に重みと温かみを感じた。

ふわっと柔らかい香りがして、彼女が後ろからわたしを抱きしめた。
139 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 01:39:57.49 ID:VzbSIL60
律「ごめん、ちょっとだけ」

澪「…やめろよ」

律「ちょっとでいいから、このままで居たい」

澪「やめろって言ってるだろ…」

律「…わたしのことそんなに嫌?」

澪「…嫌」

律「…じゃあ、嫌いって言って?」

澪「…嫌いになれたら良かったよ」
140 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 01:43:53.14 ID:VzbSIL60
本日分終了。
投下の時季を間違えたかな 思った以上に年末忙しすぎる…
あと5,6回投下+αで終わる予定
随時書き直してるから予定通りいくかわからんが…
今年中に完結を目標に、まだまだ続けます。
141 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 01:59:09.93 ID:kZV8Cd2o
乙 毎回楽しみにしてるよ
りっちゃん・・・澪しゃん・・・(´;ω;`)ウッ・・
142 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 01:59:26.32 ID:fDXa0jIo
かぁ〜
女同士だとダメとかつれえわー
かぁ〜
143 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 02:06:44.32 ID:dQZ/LCQo
ほどよく切なくていいな〜このSS
144 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 02:33:26.13 ID:C5ZC9WIo
ちょっと総理大臣になって法律変えてくる
145 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 08:17:03.19 ID:EUWkXhso
あー続きが気になる!
146 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 18:36:40.71 ID:UR2ipmo0
嫌いになることなんて出来なかったよ。

たとえ好きな人にそう望まれても、わたしには無理だ。

もし、いつか気持ちが消えたとしても、

『嫌い』になんて、なれるわけなかった。


そのまま、離れてくれない彼女の腕を払う。

ただそれだけのつもりだったのに、華奢な彼女の体はベッドにゆっくり倒れた。

わたしは構わず、腕を立てて彼女に覆いかぶさった。
147 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 18:40:08.32 ID:UR2ipmo0
澪「いつもいつも、律はずるいよ」


彼女の唇に自分の唇を重ねた。

あの頃とは違う緊張が体を支配した。

顔を離して、じっと彼女の目を見つめる。

じんわりと赤く、滲んでいた。

彼女の表情からは、何を考えてるのか読み取れない。
148 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 18:43:39.92 ID:UR2ipmo0
「何で涙浮かべてるんだよ」

「泣きたいのはわたしの方だ」

「やめて欲しいなら、払いのければいい」

「泣くほど嫌なら、喚いて暴れればいいだろ?」

「…りっちゃんのばか」


再び唇を押し当てる。

今度は彼女の唇を開けさせ、舌に触れた。

頭が真っ白になって、息が苦しい。

お互いの唾液が交じり合って、どこまでが自分のものかわからない。

1つになって、2人のものになる。
149 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 18:47:50.93 ID:UR2ipmo0
「聞きたくないって言われても、わたしは今も律が好きだよ」

「律とこういうことしたいって思う」

「あの頃に戻りたいって、思ってる」

「…律が望んでも、嫌いになんてなれないよ」


いっそ、すべてを壊してやりたい。

幸せだった時間を、わたし自身で壊したい。

彼女が『なかったこと』だと言うのなら。
150 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 19:30:06.34 ID:UR2ipmo0
それから何度も何度も、唇を当て、舌に触れた。

わたしの行為に、彼女は抵抗しなかった。

だからと言って、受け入れるというわけでもないようで、

ただの人形のように、じっとしている。

そんな彼女に苛立ちすら覚えた。

いくら繰り返しても、あの頃のような気持ちにはなれなかった。


本当に壊してしまった、そう実感した。
151 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 19:37:36.35 ID:UR2ipmo0
火照った体が急に冷えていく感じがして、彼女から離れた。

少し乱れた服を直し、カバンに手を掛ける。


律「…澪?」

わたしの名を呼ぶ彼女の声は、とても弱々しいものだった。


律「待って、行くなよ」

澪「…呼び止めて何になる?」
152 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 19:44:51.37 ID:UR2ipmo0
顔も見ずそう言うと、黙って部屋を出て階段を下りた。

扉を開ける音と、追いかけてくるような足音が聞こえた。

構わず硬い革靴のかかとを踏んで、逃げるように玄関を出た。


携帯を取り出す。

時刻は9時を回っていた。

時間だけ確認すると、電源を切った。


家に帰ると、すぐ自分の部屋へ入る。

ママの声が聞こえた。わたしを呼んでいる。

聞こえない振りをして、制服のままベッドに倒れ込んだ。

さっきまでの出来事とか、これからのこととか、

それらすべてを考える余裕はなかった。
153 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 19:51:15.01 ID:UR2ipmo0
気付かないうちに寝てしまっていたようだ。

まだ朝とは呼べない、ほとんど何も見えない時間帯だった。

昨日1人で入った彼女の部屋より、この部屋は暗くて冷たい。


切っていた携帯の電源を入れる。

午前4時半を過ぎた頃だった。

誰からの連絡もないみたいだ。
154 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 20:01:37.27 ID:UR2ipmo0
数時間前の、自分で今までを壊した瞬間を思い出す。

寒さが原因ではない、震えが止まらなくなった。

自分の気持ちを押し付けて、ひどいことをした。

好きでいる資格もない。

彼女に『嫌い』なんて言葉を求められても、当然だ。

また携帯の電源を切って、浴室に向かう。

やっと涙が出たのは、汚い体にシャワーを浴びせた時だった。


髪の濡れたまま、またベッドに倒れ込む。

だんだんと朝に向かっているようで、ブラインドから光が差し込む。

鳥のさえずりが聞こえて、そんな少しの音ですら耳障りだ。

聞こえないように、布団にもぐって遮断した。
155 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 20:05:20.33 ID:UR2ipmo0
そのままどれだけ経ったかわからないけど、しばらくしてママが起こしに来た。

「体調が悪い」と適当に言って、学校に連絡してもらった。


通学途中の生徒の声や、車の走行音。

それらの耳障りな騒音も止んだ。

ママも出掛けたようだ。

やっと起き上がってみると、時計はもう12時を過ぎていた。

また携帯の電源を入れてみると、メールが数件入っている。
156 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 20:08:11.29 ID:UR2ipmo0
From 和

「ノートのコピー取っておくから、安心してゆっくり休みなさいね。」

同じクラスの和だけではなかった。


From 唯

「澪ちゃんもりっちゃんも来ないの?寂しいよ〜!」


From ムギ

「2人が居ないと放課後が寂しいです。明日には元気になってね?」


2人は別のクラスなのに、わたしの欠席を知っているようだ。

…彼女も学校を休んでいるらしい。

すると不意に画面が切り替わって、携帯が振動する。
157 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 20:16:04.90 ID:UR2ipmo0
…彼女から電話。

通話ボタンを押すだけなのに、指が動かなかった。

何を話そうって言うのだろう。

昨日のことを謝ればいいのか?

迷っているうちに携帯は振動をやめて、またメールの画面に戻る。


戻ったのもつかの間、わたしの手の中でまた忙しく震えた。
158 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 20:20:06.31 ID:UR2ipmo0
澪「…はい」

律『学校休んでるんだな』

澪「…そうだよ」

律『わたしもなんだ』

澪「知ってる、唯とムギからメール来てた」

律『わたしが澪来てるか確認してもらったんだ』

澪「それで2人も知ってるんだな」

律『そうだよ』

澪「…で、何」
159 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 20:25:57.96 ID:UR2ipmo0
律『今から会えない?』

澪「…何で?」

律『…話したいことがあるから』

澪「…会えない」

律『…顔も見たくないくらい、嫌ってことか』


顔も見たくない、なんて違う。

彼女に合わせる顔が、わたしにはないんだ。

わたしの言葉を待たず、彼女は話を進める。
160 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 20:29:10.73 ID:UR2ipmo0
律『…まあいいや、今家だろ?』

澪「うん」

律『見せたいものあるから持ってく』

澪「何?」

律『…見ればわかるよ、郵便受けか…入らなかったらドアのとこに置いとく』

澪「…わかった」


数分後、遠くから人の歩く音が聞こえた。

少し上げたブラインドの隙間から覗くと、彼女だった。

吸い込まれるようにわたしの家に近づいて、立ち止まる。

玄関までの少しの階段を上ると、彼女の姿はわたしから見えなくなった。
161 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 20:32:21.51 ID:UR2ipmo0
それから少しして、階段を下りる彼女が見えた。

階段を下りきると、また立ち止まってわたしの部屋のほうを見る。

わたしがとっさに隠れると、また彼女の足音が聞こえた。

足音が遠くなっていくのを確認して、わたしは玄関先に出た。


郵便受けを確認する前に、ドアの前に置かれたものに気付く。

単行本のような厚さの冊子が積まれていた。

1冊を開いてみると、わたしの名前を見つけた。

…彼女の日記帳だった。

全部を部屋に持ち帰って、順に読んでいく。

何ページに及ぶ日もあれば、数行で終わる日もある。

書いてない日だってあった。

確かに彼女の字だったけど、今よりずっと幼い字から始まっていた。

時間も忘れ、夢中で彼女の字を追った。
162 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 20:35:17.73 ID:UR2ipmo0
○月○日


今日から日記をつける。

中学上がってからつければ、キリがよかったけど…

ちょうどいい機会だし、今日からはじめようと思う。

楽しいことは、読み返して思い出せるように。

かなしかったことは、書き残して、安心して頭から消せるように。


…じゃあ、日記スタート。(次のページ!)
163 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 20:39:12.17 ID:UR2ipmo0
とりあえずここまで。
夜中にもっかい投下するかも?
ここからりっちゃんの日記になって、りっちゃん視点で今までを振り返ります
重複する点もあるし、ひらがなが多くなります
女子高生の手書きだと言う演出として…なので、読みにくいと思いますがご理解ください
164 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 21:02:44.93 ID:inBhU7co
おぉ乙こーゆーお話大好きよ
165 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 22:01:25.18 ID:EUWkXhso
これぞ律澪!って感じだな
大好物です
続きも期待してるよ
166 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 22:02:45.97 ID:kZV8Cd2o
ついにりっちゃんの本音が・・・
167 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 22:41:46.55 ID:UR2ipmo0
○月○日


今日学校行くとき、待ち合わせにちょっと遅れた。

でもみおちゃんは待ってくれてた。

「おそい!」っておこったのに、みおちゃんは笑ってた。


いつもと同じように手つないで歩いてたら、同じクラスのやつに見られた。

で、「レズ」って言われた。

みおちゃんがかなしそうな顔して、手をはなした。

だから、「ただの友だちだよ」ってごまかした。


学校についてからも、そのことで頭がいっぱいだった。

みおちゃんに手紙かこうと思ったけど、何て書けばいいかわからなかった。

だから、「放課後あそぼ」ってだけ書いて、みおちゃんに投げた。
168 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 22:44:10.21 ID:UR2ipmo0
それから、ねてるフリして今日何話そうか考えた。

わたしが好きだと、みおちゃんがつらい思いする。

だからみおちゃんに、手つなぐのもちゅーするのもやめようって言った。

「何で?」って言われた。

「りっちゃん、きらいになった?」って聞かれて、むねが苦しくなった。

だから、「りっちゃん」って呼ぶのもなしって言った。

みおちゃんのこと大事だけど、大事にしすぎちゃだめなんだ。

わたしがみおちゃんを守ってあげなきゃいけない。

だからわたしも、今日から「みお」って呼ぶことにした。
169 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 22:47:13.26 ID:UR2ipmo0
○月○日


みおが「りっちゃん」って呼ぶから、ちょっとおこった。

「他の子は呼んでる」ってみおもおこったけど、他の子とはちがう。

みおは特別だもん。

そう呼ばれると思い出して、ドキドキする。

だから呼ばないでほしい。



○月○日


今日みおと出かけた。

いっぱいカップルがいて、うらやましいなって思った。

本当は、みおとも手つないで歩きたい。

…女同士だもん、無理だけど。
170 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 22:49:54.40 ID:UR2ipmo0
○月○日


みおは塾に通うんだって。

あんまり遊べなくなるのかな?さみしーな。



○月○日


みおにCD貸した!

じゃあみおは「これいいね」って言ってた。

だから、新しく出たライブのDVD買うから一緒に見ようってさそった。

本当はもう持ってるけど、みおと一緒に見るまでガマンしよっと。
171 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 22:54:59.93 ID:UR2ipmo0
○月○日


みおとDVD見た!

見るのガマンしててよかった。

むちゃくちゃカッコ良かった!

「バンドやろうよ!」って言ったら、「いいよ」って言ってくれた。

みおとバンドやれたら最高だろうな。

「みおはベースな!」って言うと、「勝手に決めるな!」っておこられた。

みおはベースやると思ったのに。

じゃあ、やっぱり正解だった。

みおのことはわかるもん、わたし。

みおは歌もうまいから、ボーカルもやればいいのに。

でもベースでボーカルってあんまりいないよな。

なんでだろ?
172 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:03:01.72 ID:UR2ipmo0
○月○日


クラスのやつに告白された。

別にきらいじゃないけど、ことわった。

「他に好きな人いるから」って言うと、「だれ?」って聞かれた。

教えなかった。教えられないから。

じゃあ、「一緒に学校行こう」ってさそわれた。

「みおと行ってるから」って言っても、「お願い」って言われた。

「考えとく」って言った。

みおの反応が気になって、電話した。

どうでもいい、って感じだった。

無理やり、「おめでとう」って言わせた。

くやしくなって、「そいつと学校行く」ってメールした。

あいつにも「一緒に学校行けるよ」ってメールしたら、すぐ返事来た。

みおからは返事来なかった。
173 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:06:44.02 ID:UR2ipmo0
○月○日


あいつと待ち合わせして、一緒に学校行った。

何の話もしなかった。

学校につくと、そのこと聞かれた。

何かムカついたから、「お前らに関係ある?」って言った。

「調子乗ってる」とか小声で言われて、もっとムカついた。

みおは何も聞いてこなかった。

小学校のときみたいに本読んでた。

「移動だぞ」って言うと、「待って!」って言って、

わたしのこと初めて「律」って呼んだ。

自分でそう呼べって言ったのに、何か、さみしかった。
174 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:08:04.59 ID:UR2ipmo0
○月○日


毎朝つまんない。

ていうか、苦痛。

向こうは会話しようと必死だし、わたしはわざと「うん」とかしか言わない。

みおとなら、会話なくてもつらくないのに。
175 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:10:17.52 ID:UR2ipmo0
○月○日


「一緒に行くのやめよう」って言った。

「つまんなそうだもんな」って、笑いながら言われた。

「秋山もさみしそうだし…」とも言ってた。

周りにもそう見えたのかな。

そうわたしにも見えてたけど、期待しちゃいけないんだよな。


来週から、また一緒に行こうってさそってみよう。
176 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:13:02.61 ID:UR2ipmo0
○月○日


何てさそっていいかわかんなくて、結局1人で行くことにした。

クラスのやつらがまたざわついたけど、今度はだれにも聞かれなかった。

みおはまた本読んでた。

話しかけると、ちょー冷たかった。

「また一緒に学校行こう」って言うと、「勝手なやつ」って言われた。

そう言われても、一緒に行きたかったから謝った。

じゃあ「いいよ」って言ってくれた。

…良かった。
177 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:15:29.15 ID:UR2ipmo0
○月○日


進路の授業がうざい。

先生の話、ほとんど聞いてなかった。

でももうすぐ受験だし、卒業なんだなって思った。

前みおが桜高の話してたのを思い出した。

桜高なら近いし、制服かわいいしいいかなって思った。

女子校だから、誰と誰が付き合ってるとかうざい会話もなさそうだし。


やっぱりみおも私立は桜高受けるんだって。

「みおと一緒でいいや」って言ったら、「勝手にしろ」だって。

ちょっとくらいよろこんでくれたっていいじゃん。
178 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:17:37.03 ID:UR2ipmo0
○月○日


桜高の赤本買ってきた。

やばい、意味不明。

母さんに「桜高受ける」って言ったら笑われたし。

自分の娘に失礼だぞ!!!

「だから塾に通いたい」って言ったら、通わせてくれるって。

「みおちゃんと同じとこにすれば?」って言われたけど、それはいやだって言った。

必死なとこ見られたくないから。


でも近所に塾はそこしかないから、結局家庭教師つけてもらうことになった。

「家庭教師ならサボれないからね」ってまた笑われた。

…サボるつもりないし!

みおと同じとこ行けるかもしれないんだからさ。
179 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:22:06.57 ID:UR2ipmo0
○月○日


初めて家庭教師が来た。きれーなお姉さんだった。

最初だからって、志望校の話とかした。

「相当がんばらなきゃね」だってさ。

先生を最初っからなやませてしまった。


先生も桜高出身らしい。

「何で桜高行きたいの?女子校だよ?」

って言われた。

「好きな人が受けるから」

とは、言えるわけなかった。
180 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:24:35.44 ID:UR2ipmo0
○月○日


入試。

みおと一緒に行ったけど、むちゃくちゃキンチョーしてた。

わたしもしてたけど、その顔見たらちょっと笑えた。

試験は…出来た、と思う。

みおは大丈夫だろうけど、わたしは受かるかわかんないな。

授業もねちゃってたし。

今までがムダになりませんように…。
181 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:30:05.94 ID:UR2ipmo0
○月○日


結果発表の日。

なんと…なんと…!合格!!!

本当は心配だったし、むちゃくちゃうれしかったけど、

ちょっと見栄はって、「こんなもんだよ」とか言ってみおにカッコつけた。

みおも受かってたけど、あいつは入学するかわかんないし。

同じ高校行けたらうれしいけど、みおのガッカリする顔見たくない。

公立の入試も受かるといいな。がんばれー!
182 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:32:59.43 ID:UR2ipmo0
○月○日


みおが公立落ちた。

何て声かけていいかわからなかった。

「同じ高校行ける!」ってよろこんでも、きっときず付けるし。

でも、思ったよりショックではなかったみたい。

「わたしはうれしいよ」って言ったら、「そうだな」って言ってた。

でもうれしそうじゃなかった。

そりゃそうか。

でも…これからもみおと一緒にいれる!

みおにはわたしがついてなきゃ心配だからな!
183 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 23:38:18.58 ID:UR2ipmo0
ここで今日分は終わり、次はりっちゃんの日記・高校生編へ
りっちゃん視点ってより、なんか同じこと書いてる気がするわ…
もうちょい練れるよう頑張りまっす
184 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 23:41:34.95 ID:inBhU7co
おつつーです続きが気になるお話だねぇ楽しみです
185 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 23:42:17.29 ID:PaRk1S.o
心が洗われるな

よいスレだ
186 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 00:05:53.28 ID:OGWYx1Eo

なんかちょっと泣けた
187 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 01:12:43.02 ID:LR/YNZQo
心がチクチクする…いい切なさ加減
188 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 01:56:32.44 ID:vGON7jYo
いいなこのSS大好きだ
良い感じに律視点だと思ったが
189 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 22:46:51.24 ID:qpxMwd.0
○月○日


みおと一緒に入学式に行った。

中学の時みたいに、むかえに来てくれた。

遠くからでも制服が似合ってた。

「似合ってんじゃん」って言っても、「シャツ入れろ」とか言っておこられた。

笑ってほしかったな。

「中学のときもこうだったな」って言うと、

スカートがどうのってあの時みたいにちょっと笑われた。

やっと笑ってくれた。

「その後ほめたよ」って言われて、急に照れて覚えてないってウソついた。


またみおと同じクラスになった。

わたしはうれしかったけど、みおはあんまよろこんでくれなかった。
190 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 22:56:10.59 ID:qpxMwd.0
○月○日


クラブ見学にみおをさそった。

もちろん…軽音部!

でもみおは何とかって部に入る、って入部希望用紙持ってた。

だいたい何する部活かよくわからん。

だから破いてやった!

でも軽音部はもうなくなりかけ…らしい。

じゃあこのまま行けば部長じゃん!!

にげようとするみおを音楽室まで引っ張った。

待ってたら、ムギが来た!!

ムギは合唱部に入りたかったみたいだけど、うちらのコンビ見て入ってくれるって!

みおのおかげだな、ありがと。
191 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 23:01:52.23 ID:qpxMwd.0
○月○日


部員来ない。

なぜ!?



○月○日


入部希望者あらわる!名前は唯!

と思ったら入部やめたいって言われるって…。

みおもムギも、必死で引き止めてくれた。

ムギは合唱部に入るつもりで、みおも他の部に入りたがってたのに…。

本当に、2人をさそってよかった。

そして唯も入部するって!

4人集まった!よかったーーー。


わたし(部長):ドラム
秋山 みお :ベース
琴吹 つむぎ:キーボード
平沢 唯  :ギター

がんばるぞー!
192 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 23:17:30.51 ID:qpxMwd.0
○月○日


今年を振り返ってみる。

1年ってちょー短いな。

みおと桜高入って、同じクラスになって、

唯とムギに会って、4人でバンド組んで。

さわちゃんが部活受け持ってくれて、わたしが部長。


合宿もほとんど遊んじゃったけど、行けてよかった。

初めてのライブはキンチョーした!

でも、本当に楽しかった。

みおはスゲー気にしてるみたいだけど。

やっぱみおのボーカルは好評だった!わたしの目に狂いはない!

次は唯も歌えるといいな。
193 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 23:19:39.17 ID:qpxMwd.0
思い出ってほとんど部活。

その部活も遊んでばっかり。

でもそんな時間も必要だって思う。

みおはおこるけど、ちゃっかり楽しんでくれてる。

引っぱり込んだこと、感謝してもらおう!


このメンバー本当に最高!

みんなが軽音部入ってよかったって、思ってくれてますように。
194 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 23:30:41.59 ID:qpxMwd.0
○月○日


もうすぐ学祭!

なのにいつものようにお茶しちゃううちら。

梓は初めてのライブが楽しみらしく、鼻歌とか歌ってる。

かわいー奴。

それなのに…またやってしまった。

和が急に部室に入ってきて、なんとかかんとかって言って、

みおになぐられた…。


部活終わって楽器屋行こうって話になった。

つくと、みおが入りたがらない。

でも「レフティフェアやってる」って言ったら走っていった。
195 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 23:35:55.94 ID:qpxMwd.0
唯のギターの不調も直り(しかも何故かタダ)

楽器の前から動かないみお引っ張ったら、みおがこけた。

謝らなきゃいけないのに、謝れなかった。

「バカ律」って言われて、ショック。

唯が和とお茶するって言うのに、みおもついて行っちゃった。

何かそわそわして、ムギと梓連れて追いかけた。


みおは笑ってた。

さっきまでおこってたのに、くやしい。

だからジャマしにいった。

わたし最低だな、って思ったけど、やめられなかった。

自分にムカついて、家帰って冷たいシャワー浴びた。

ちょー寒い。
196 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 23:44:40.90 ID:qpxMwd.0
○月○日


昼休み、1組の教室行ったらみおが和と笑ってた。

何か、わたしの知らない人に見えて、あせった。

みおが遠くに行っちゃうような…そんな気がした。

昨日のこと謝って、練習しようってさそいたかっただけなのに、

無理やり和から引きはなして、引っぱって部室に連れて行った。

弁当もまだなのに。

部室にはわたしたち以外も先に来てた。

みんな楽器の調整してるのに、みおにちょっかいかけて、わざとおこらせた。

みおが「帰る」って言うと、「帰れば?」って言ってしまった。
197 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 23:48:24.74 ID:qpxMwd.0
いやみな言い方で、

「和との楽しいランチタイムをジャマして悪かったな」

とも言った。

みおがむちゃくちゃおこった。

みんな困った顔して、結局練習始めても、わたしは途中で教室戻った。

だれに何も言わないで、部活も休んだ。

家帰って、和にみお取られちゃうって思って、泣いた。

みおはわたしの物じゃないのにな。


かぜ引いたっぽい。
198 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 23:50:17.80 ID:hGRv9ns0
ぐあああぁ…これは悲しいぃ…
199 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 23:52:29.64 ID:qpxMwd.0
○月○日


こんな時期なのに、もう何日も練習してない。

みんなに迷わくかけてるな。

…わたしのヤキモチで。

ほんと最低だよ、わたし。



○月○日


とうとう熱出た。

学校休んで、病院行った。

もう寝る。



…続き。

あれから寝てたら、みおが来た。
200 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 23:56:24.84 ID:qpxMwd.0
足音でみおってわかったら、みおが「超能力者か?」って言った。

みおはおこってない、って言ってくれた。

他のみんなも、おこってないらしい。

…良かった。

帰ろうとするみおを引き止めて、寝るまでそばにいてもらった。

久しぶりに、手をつないだ。

みおの手は冷たかったけど、あったかい気がした。
201 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 23:58:50.48 ID:qpxMwd.0

それから色んな話をした。

みおが和に取られる、って思ったことも、

みおが特別だってことも。

それからみおは何も言わなくて、だんだん眠くなってきた。

ぼーっとなってきた時に、やっとみおが何か言おうとした。

何言おうとしたか何となくわかったけど、寝たフリした。

ちょっと期待したけど、続きは言ってくれなかった。

聞いちゃダメだよな。

突き放したのはわたしなんだから。


起きたら1人だった。

軽音のみんながおみまい来てくれてたみたい。

みんなありがとう。
202 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/17(金) 00:00:56.61 ID:LNy4UVo0
○月○日


結局講堂なんとかかんとかを提出しなかった。

また和が部室来て、一緒に生徒会長に頭下げてくれた。

みおだけじゃない、和にだってひどいことしたのに。

「ええ人や!」とか言ってごまかしたけど、

本当は謝んなきゃいけない。

唯の幼なじみだし、みおが友だちになる奴だ。

悪い奴なわけないし。

うちのみおをよろしく。


…唯がかぜを引いた。すみません。
203 :>>193>>194の間にこれ :2010/12/17(金) 00:03:18.00 ID:LNy4UVo0
○月○日


新入部員あらわる!

ちっちゃくてかわいい1年、梓!(多分こんな字)

梓はギターうまくて、まじめな感じ。

唯はあせってた。

お茶飲んでると、ギターさわってた梓にさわちゃんがキレた。

すると梓も急にキレた。

ちょっとみおっぽい。

顔もちょい似てる。


とりあえず5人になりましたー!

部長がんばります!
204 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 00:07:49.37 ID:LNy4UVo0
中途半端だけどここで。
>>203を飛ばしてしまったorz
話にそこまで影響しないけど、りっちゃんはみんなのこと大事にする子だから一応
書き溜めがつきました 納得できるもの書けなくて…投下スピード落ちそうです
楽しみにしてくれている方がいましたら、ほんとすみません
205 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 00:39:02.52 ID:FqcrM3co
ゆっくりでもいい、完結まで読み続けるぞ!
206 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 00:52:29.53 ID:53t6P5Qo
乙乙
ゆっくりでいいから納得できるものを書くんだ!
207 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 01:00:15.76 ID:RVPsSZMo
おつおつ
次も楽しみに待ってるよん
208 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 01:55:28.73 ID:C9jbWVIo
完結さえすれば私は一向に構わん

おつかれさん
209 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 22:59:04.83 ID:JP5lPbI0
○月○日


ライブ、無事?成功!!!

一時はどうなるかと思ったよ…。

まあこれも原因はわたしなんだけどな。

代打・さわちゃんのギターはバッチリだったけど、

やっぱりうちらは5人で1つなんだ、そう思った。

誰か1人欠けてもダメ。


りつ・みお・ゆい・つむぎ・あずさ +さわこ

けいおん 大好きー!

(唯の言葉パクった☆)
210 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:03:36.68 ID:JP5lPbI0
○月○日


クラスのギャル軍団が集まって、彼氏の話をしてた。

その輪に入って、唯とムギはキャッキャしてた。

2人のテンションが下がらず、昼休み突入。

昼休みごはん食べてたら恋の話になった。

2人は初恋すらまだらしい。おこちゃま〜。


そこからは質問ぜめ。

「初恋はいつ?」

「付き合ったことある?」

「キスは?キスは??」って…テンション上がりすぎだろ。
211 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:07:46.55 ID:JP5lPbI0
全部ちゃんと答えた。

初恋は小学生だったし、付き合って…はないけど、

その子とキスしたって。


きゃー!どんな人?

きゃー!りっちゃんおとなー!

きゃー!顔あかーい!

ってさわいで、本当に2人ともうるっせ。


「みおには言うなよ」って言うと、

「みおちゃんも知らないことなの!?」って。


…みおは知りすぎてるくらいだよ。

初恋の相手がどんな人かも、2人ともよく知ってるよ。
212 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:12:54.65 ID:JP5lPbI0
○月○日


郵便受けに変な手紙が入ってた。

これ…ラブレターなのかな。



○月○日


あのラブレターもどき、みおが書いた歌詞だった…。

びっくりしたのと、がっかりしたのと…うれしかった。


でも…ダメなんだってば…。
213 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:17:23.88 ID:JP5lPbI0
○月○日


生理来た。

別に男に生まれたかったわけじゃないけど、

何で女なんだろうって、来るたび思う。

男に生まれてたらなんか違ったかな。


ちょーはらいてー。
214 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:29:20.28 ID:JP5lPbI0
○月○日


「何であの歌詞ダメなの?」

ってみおが聞いてきた。

「何でも」って言うと、「わたしの気持ちだから?」って…。

うれしいよ、すっごく。

うれしいけど…。

「昔のことは忘れろよ」って言った。

みおだけじゃない。

わたしにも、そう言い聞かせなきゃ。


別れるとき、こっち向いてくれなかった。

だんだん小さくなっていくみおを、家にも入らず見てた。


忘れなきゃいけない。

一緒にいるには、友だちじゃなきゃダメなんだ。
215 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:39:56.11 ID:JP5lPbI0
日付はどんどん新しくなって、残すは昨日のページになった。

絵だったり、彼女の好きな曲の歌詞だったり、

他のことも確かに書いてあるけど、自分の名前の多さにびっくりした。

わたしの知ってることも、知らないことも、

たくさん、この中に詰まってた。


彼女はただ、わたしを突き放していたわけじゃないんだ。

彼女なりの考えで、それを選んだ。

彼女なりに、わたしと同じように、きっと悩んでた。

苦しんでいるのは、わたしだけじゃなかった。

それなのにわたしは、ただの被害者みたいな顔をして。

解ろうともせず、彼女にあんなことをしてしまった。
216 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:45:36.77 ID:JP5lPbI0
休むことも忘れて、ただ字を追った。

足りないものを、1つ1つ埋めていくように。


彼女は昨日のことも書いてるんだろうか。

書いてるとしたら、何を、どんな風に?

不意にページをめくる手が止まる。

ため息をついて、またページを進めた。

…何が書いてあっても、自分の目で確かめよう。

どんな風に責められても、受け止めよう。
217 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:49:40.01 ID:JP5lPbI0
○月○日


今日、みおの背中をたくさん見た。

背中って正直だよな。

高校入って、バンド組んで、ずっとみおの背中見てきた。

こんなにかなしそうな背中、初めて見たよ。


「病気なら治るかもしれない」なんて言わせた。

見てられなくて、わたしからはなれていく気がして、

後ろから抱きついた。

もうそんな背中を見なくて済むように。


はなれないで、って思った。

はなれるなら今にして、とも思った。

だから「キライ」って言わせようとした。

わたしは勝手だ。
218 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:52:33.13 ID:JP5lPbI0
みおにキスされた。

胸がぎゅーってなった。

キスってこんなかなしいものだったっけ。

昔すぎて忘れちゃった。


向き合っても、やっぱりかなしい顔してた。


みおが出て行った。

本当に、はなれてった。

もう苦しいのも終わるかな。

最後も、背中しか見せてくれなかった。
219 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:55:01.59 ID:JP5lPbI0
日記はそこで終わっていた。

ところどころ文字が滲んで、その部分は濡れたように紙質が変わってる。

涙の跡だ。

そのまま閉じたのか、隣のページには何も書いてないのにインクで汚れていた。

そのページを何となく撫でてみた。

すると、少し指に引っかかる。

1ページ開けて、裏に何か書いてあるようだ。

そのページを開いてみる。



「澪へ」
220 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/18(土) 23:57:50.13 ID:JP5lPbI0
りっちゃん日記終了。
次はりっちゃんから澪へ宛てた手紙になります
会話文のみですが、書き溜めも作れました 仕事しろよ自分ww
またの投下を今しばらくお待ちください…
221 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 00:12:11.70 ID:3WfMOygo
おつかれ!

ここでお預けだと!

いつまでも待ってるわよおおおお!!
222 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 00:22:22.70 ID:IlUCynYo
おつおつ
いつもいいところでぇ…
223 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 02:21:31.69 ID:sy/RuXQo
乙乙乙
一番いいところで終わった・・・だと・・・!
224 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/20(月) 02:03:53.65 ID:ljeo5EQo
一気にここまで読みました!乙です!!
225 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 01:07:15.84 ID://2ZuK20
澪へ


ここまで読んでくれてありがとう。

一緒に居てくれてありがとう。

今までありがとう。

それから…ごめんなさい。

何回お礼言って、何回謝っても足りないくらい、ずっと澪は一緒に居てくれた。


澪が言おうとした言葉は、きっと一番聞きたい言葉だった。

なのに、聞けば終わるって思ってた。

だから「キライ」って言わせようとした。

結局あんな形だったけど、聞いた瞬間、少しホッとしたんだ。

もう、苦しいのも終わるんだって。
226 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 01:16:24.99 ID://2ZuK20
なのに呼び止めてた。

それが何になるかなんて、聞かれてもわかんなかったよ。


澪が離れて行って、追いかけてもこっち見てくれなくて、

楽になるどころか、からっぽになった。

もっと苦しくて、悲しくて、心のどっかを失くしたみたいだった。

おもちゃ取り上げられた子どもみたいに泣いた。


情けないって思っても、止まらなかった。
227 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 01:22:14.34 ID://2ZuK20
澪を守らなきゃって思ってやってたことが、

結局は自分しか守れてなかった。

澪を理由にして、それが正しいって思い込んでた。

結局、自分が逃げるのに必死だった。


自分勝手に振り回して、たくさん傷つけて、本当にごめん。

澪のことになると、わたしはいつも自分勝手になる。

忘れろって澪に言って、自分に言い聞かせてたんだ。

思い出を捨てられなかったのは、わたしだった。


澪にはわたしが居ないと心配、とか思ってたけど、

こんなわたしにこそ、澪が必要だったんだ。
228 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 01:31:15.63 ID://2ZuK20
終わる、って思った。

終わった、って思った。

なのに、終わらせたくないって思ってる自分がいる。

自分で手放して、また求めて、本当に勝手だよな。


顔も見たくないってわかってる。

それでも、わたしはやっぱり自分勝手だから、

澪に会いたい。

今日17時、公園で待ってる。
229 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 01:34:52.87 ID://2ZuK20
気付けば外は暗い。

時間も忘れ、彼女の4年間が詰まった数冊を読んでいた。

時計を確認すると、もう20時を回っている。

部屋着にコートだけ羽織って、何も持たずに家を出た。


行かなくちゃ。

…彼女が待ってる。
230 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 01:46:08.07 ID://2ZuK20
とりあえずここらで
小出しにしてすみませんww本日中(昼?)にまた投下すると思う
残りあと2場面+α(予定) そろそろ終わる…最後までよろしくお願いします
231 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 01:47:30.05 ID:HXrWQIwo
おつつーくぅせつねぇな
232 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 08:20:54.16 ID:7NXy7TIo
おつおつ
233 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 09:23:26.15 ID:PepaGrU0
おつ
まぁないとは思うけどりっちゃんが死ぬ展開は無しね、悲しいから
234 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 21:07:38.60 ID:5xPjQm60
もう居ないかもしれない。

そう思うよりも先に、わたしは夜の街を駆けていた。


「公園」と言っても、この付近にはたくさんある。

なのに足は迷うことなく、彼女が言う「公園」へ向かっていた。

外灯も少ない公園に人影が見えた。

ブランコに腰掛けて、彼女が下を向いている。

昔のわたしもこんなだったのかな。
235 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 21:12:48.42 ID:5xPjQm60
澪「…律っ!」

律「…何で来たの?」

澪「何でって…お前が呼んだからだろ!」

律「…そうだけどさ」

澪「待たせてごめんな」

律「いいよ、来てくれたから」

澪「…ずっと、待ってたの?」

律「ここに居たよ」

澪「5時から、ずっと?」

律「うん、ずっと」
236 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 21:16:19.21 ID:5xPjQm60
澪「来ないと思わなかったのか?」

律「思った、だから聞いた」

澪「…連絡くらいしろよ」

律「携帯置いてきちゃってさ」

澪「こんなに寒いのに…帰れよ」

律「もし澪が来てくれたら、呼んだのに悪いじゃん」

澪「わたしが最後まで読むとは限らないだろ?」

律「うん、だから賭けた」

澪「来ないと…どうするつもりだよ」

律「ずっと待つよ」

澪「…限度ってものがあるだろ」

律「…でも待ってたら来てくれたよ?」
237 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 21:37:49.88 ID:5xPjQm60
澪「そうだけど…」

律「じゃあ何で澪は来てくれたの?」

澪「…わかんない」

律「…本当は、顔も見たくなかっただろ」

澪「…合わせる顔、なかっただけ」

律「何で?」

澪「何でって…わたし律にひどいことしたんだよ?」

律「…ああ、訴えたら勝てるかもな」

澪「…そうしてくれていいよ」

律「冗談だって」
238 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 21:41:38.79 ID:5xPjQm60
澪「…怒ってないの?」

律「ないよ」

澪「…怒れよ」

律「怒んない」

澪「怒ってくれよ!」

律「怒んないから」

澪「…りっちゃん」

律「…そう呼ばれても、もう怒んないよ」
239 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 21:46:05.49 ID:5xPjQm60
澪「…バカ律」

律「バカだもん、知ってるだろ?」

澪「…とりあえずどっか入ろ、バカなのにまた風邪引くぞ」

律「やだ」

澪「何でだよ」

律「ここがいい」

澪「どうして?」

律「ここで、澪に話しかけた」

澪「ああ…あの時」

律「きっとあれが、始まりだから…でももう終わっちゃった?」
240 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 21:52:31.98 ID:5xPjQm60
なんて答えればいいんだろう。

そう思うと、次の言葉が見つからなくて。

壊そうと、あんなことをしたけれど、やっぱり終わらせたくない。

だから、わたしはここに来たんだ。

言葉を探してる間にも、冷たい風が頬に当たる。


澪「…ちょっと待ってて、何か温かいもの買ってくる」

律「やだ!もう行っちゃやだよ…」
241 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 21:58:57.37 ID:5xPjQm60
彼女はそう言って、やっとこちらを見た。

少ない外灯に照らされて、目がキラキラ光る。

瞬きをすると、それは頬を伝って落ちた。

落ちた滴をこの目で追う。

一瞬のことだったけど、どうしていいかわからなかった。

わたしが彼女の立場だったら、わたしはどうして欲しいだろう。

彼女は、どうしていたんだろう。

そう考えて、自然に彼女へ手を伸ばしていた。
242 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 22:06:13.29 ID:5xPjQm60
澪「…買ってくるって言っても、財布持ってないや」


そう言って、笑って見せながら彼女の肩に腕を回した。

不意に抱きしめられた彼女の肩に力が入る。

それは一瞬で、すぐにまた力が抜けていく。

反比例して、わたしは腕をきつく結んだ。
243 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 22:14:00.59 ID:5xPjQm60
澪「律は終わったって思ってる?」

律「もう…終わればいいって思った」

澪「そっか」

律「…でも終わらせたくないって、今思ってる」

澪「…わがままだな」

律「…わがままで、自分勝手で、情けない奴だよ」

澪「…もういいから」

律「…何でだろう、寒いのにあったかいな」

澪「うん、そうだな」
244 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/21(火) 22:18:22.00 ID:5xPjQm60
律「…ありがと」

澪「もう落ち着いた?」


そう言って離れようとすると、彼女はわたしの腰に手を回した。


律「…このままがいい」

澪「…わかった」

律「ごめん、泣いたりしたら澪が悪いみたいだよな」

澪「いいよ、気が済むんなら」

律「手伸ばせば、すぐ触れられたのに…何で早くこう出来なかったんだろ」
245 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:28:37.19 ID:5xPjQm60
今日はここで。
次は公園パート後半、明日かあさって、もしくは二日に分けて投下予定
>>233 りっちゃん死なないよ!りっちゃんが死ぬって話は他のSSで筋書き作ってるから…
だからその展開はまた今度にします。りっちゃんごめんね
246 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:36:39.71 ID:r5CzISoo
続きを楽しみに、明日も過出勤がんばってきます(>'A`)>
247 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:39:48.55 ID:HXrWQIwo
おつです、胸が締め付けられるとはこうゆうことなのか続きまってます
248 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 01:20:54.53 ID:o.VdnH6o
あああー毎度のことながら胸に来るな・・・
続き待ってます!
249 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 05:08:28.02 ID:Q5oePbco
うおおおおおおおおおおつかれえええええ!!!!!

250 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/23(木) 22:28:33.81 ID:LdqadRI0
澪「わたしのこと、思ってくれたからなんだろ?」

律「…それもただの言い訳だよ」

澪「それでもいいよ」

律「ただ自分が怖くて、澪を理由にして逃げてたんだよ」

澪「もう、わかったから…言わなくていいよ」

律「…全部読んだ?」

澪「読んだよ」

律「字、汚かっただろ」

澪「汚いって言うより、幼い字だった」

律「最初は中学入った頃だもん」

澪「日記つけてるなんて知らなかったよ」

律「しかもほとんど澪のことばっか…ひいただろ」

澪「ううん、ただ」
251 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/23(木) 22:34:15.17 ID:LdqadRI0
律「…ただ?」

澪「知らないこと、たくさん書いてあった」

律「…人に言えないことの吐き溜めにしてたから」

澪「高校受験も、頑張ってたんだな」

律「うん、必死だった」

澪「…律も、知らないことあるよ」

律「澪のこと?」

澪「うん、負け惜しみに聞こえるかもしれないけどさ」

律「何?」

澪「公立、わざと落ちた」

律「…は!?」

澪「名前だけ書いても、受かんないものだな」

律「当たり前だろ!何でそんなこと…あんなに頑張ってたじゃん」

澪「…律を、選んだから」
252 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/23(木) 23:21:07.39 ID:0utEoB60
律「…バカじゃねーの」

澪「バカでいいよ」

律「ほんとバカだよ」

澪「それだけ、大切なんだよ」

律「…澪はさ、綺麗で頭良くて、みんなに好かれて。
  
  将来いい仕事に就いて、いい奴見つけて、きっと幸せになれる。
  
  …何でそう出来るのに、本当にバカだよ」

澪「…そんな風に、人の幸せ勝手に決めるな!

  そこまで思ってくれるなら…一緒に居てくれよ」


自然と腕に力がこもる。

そうすると、彼女の涙がコートに滲みて、肌まで伝わってきた。

冷たいはずなのに、やっぱり何だか温かい。


澪「それがわたしの幸せだよ」
253 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/23(木) 23:32:53.30 ID:0utEoB60
澪「律が一緒に居てくれて、2人で笑って、それが幸せ」

律「…わたしの幸せも、多分澪と一緒」

澪「じゃあわたし、律を幸せに出来るね」

律「うん、して欲しい」

澪「だから、終わったでいいよ」

律「…え?」

澪「もう終わらせよう?…またここから始めるんだ」

律「…また、ここになるんだな」

澪「うん、ここで」

律「…わかった」

澪「ほら、だから笑って?どうやれば律みたいに人を笑わせられる?」

律「わたしは…自分が笑うために、澪を笑わせてただけだよ」

澪「じゃあ、笑わせて?」

律「…澪、大好きだよ」
254 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/23(木) 23:39:51.92 ID:0utEoB60
澪「ありがとう、わたしも大好きだ」

律「…好き同士はどうするか知ってる?」

澪「うん、昔律から教えてもらった」


ブランコに腰掛ける彼女に合わせ、その場にしゃがみ込む。

涙で少し濡れた頬に、軽く唇を当てた。

今よりずっと幼い頃、彼女がわたしにしてくれたように。


律「ははっ…ほんとに幸せだ」

澪「…じゃあ今度は、口にしてもいい?」

律「…いいよ」
255 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/23(木) 23:45:29.94 ID:0utEoB60
それから何度もキスをした。

さっきまで鎖を握っていた、彼女の冷たい手を取る。

昨日のように、無理やり口を開けさせるようなことはしない。

お互い、自然と舌を絡ませていた。

また頭が真っ白になって、胸がぎゅっとなる。

それに合わせて、彼女の冷えた手が温まるよう、ぎゅっと握った。
256 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/23(木) 23:48:57.38 ID:0utEoB60
澪「…ほら、明日は学校行かなきゃ。帰ろっか」

律「そうだな、行こう」


手を握ったまま立ち上がって、公園を後にした。

いつもより、だいぶゆっくり2人で歩く。

これからの話になって、

あれがしたい、これがしたい、と2人で言い合った。

白い息がたちまち消える中、彼女が真剣な顔で切り出した。
257 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/23(木) 23:51:24.98 ID:0utEoB60
律「…うちらのこと、軽音部のみんなには話そう」

澪「いいの?」

律「うん、大事なことだから」

澪「…みんななんて言うかな」

律「大丈夫だよ、あいつらは」

澪「反対されたり、変な目で見られるかもしれないぞ?」

律「もしそうなったら、逃げよう」

澪「…辞めるのか?」

律「それくらいの覚悟でな。でも大丈夫、わかってくれるよ」


そう言って彼女は、握った手を強くした。
258 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/23(木) 23:54:35.97 ID:0utEoB60
律「あのさ、結構恥ずかしいんだけど」

澪「ん?」

律「きっと今じゃなきゃ言えないから、ちゃんと聞いて」

澪「何だよ?」

律「わたしが忘れろって言ったことも、澪を傷つけてきたことも、変わらない事実だけどさ」

澪「だけど?」

律「変わらない過去も、いいものに思えるように、歩いていけるといいな」

澪「…ほんと、恥ずかしいこと言ったな」

律「うん、顔赤いと思うから見んなよ」

澪「どれどれ?」

律「みーるーな!」

澪「…でもさ」

律「ん?」

澪「わたしもそうして、律と歩いていきたい」
259 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/23(木) 23:57:18.03 ID:0utEoB60
律「…よかった、ただ恥かいただけじゃなかった」

澪「律って、本当は恥ずかしがり屋だもんな」

律「うるせー!…恥ずかしいついでにさ」

澪「何?」

律「月が綺麗ですね」

澪「え?うん…そうだな?」

律「…やっぱりこんなんじゃ伝わんないじゃねーか」

澪「ん?あー…わかった」

律「いや、今のは忘れて」

澪「わたしも、月が綺麗ですね」
260 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/24(金) 00:00:01.77 ID:Gl8M7zY0
ってことで、仲直り成功。
案外あっさり仲直りしちゃいました 少々物足りませんな…
最後のくだりもいらんかったかもしれん しかし後悔はしていない
次は最後、カミングアウト編
軽音部のみんなはどんな反応をするか?よろしくお願いします
261 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/24(金) 00:00:59.89 ID:/XeFiHso
ぼくも幸せ!!!!
262 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/24(金) 00:13:35.83 ID:mLCjlyQo
2人とも幸せで本当によかった!!!!!
最後まで楽しみにしてます
263 :めりーくるしみます [sage]:2010/12/24(クリスマス) 04:12:38.77 ID:0RDjZX.o
うはwwww素敵なプレゼントをありがとう!!
264 :めりーくるしみます [sage]:2010/12/24(クリスマス) 04:35:48.34 ID:JvrPWtMo
乙!
軽音部の面々の反応も気になる
265 :Are you enjoying the time of eve? :2010/12/24(クリスマスイブ) 11:07:40.49 ID:i9JzlWYo
とりあえず紬は大丈夫だ
266 :Are you enjoying the time of eve? [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 15:32:00.27 ID:O2zAT1.o
俺も大丈夫だ
267 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/26(日) 12:56:58.79 ID:oVQfp82o
GJ
まあ、カミングアウトせんでも全員にバレバレだろうがww
268 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/26(日) 21:57:36.04 ID:p1GM.HA0
裏で唯と和が同じことしてると予想
269 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 03:10:22.80 ID:5u3cFCMo
>>268
奇遇だな
270 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 04:45:20.16 ID:k0fGRxgo
まて、そこは唯憂にすると俺得
271 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 05:25:54.11 ID:GwD4DL6o
唯梓なら俺得なんだがな
272 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 14:53:49.60 ID:O5.Th3I0
いつもより早く家を出る。

いつもより早いはずなのに、何より大切な笑顔がそこにあった。


律「早くない?」

澪「そっちこそ」

律「だって澪に早く会いたかったから!」

澪「…こっちこそ!」

律「あらやだ、バカップルですわねー」

澪「…はいはい、ほら行くぞ」

律「今日早いから寄り道していこーぜ」

澪「こんな朝から?」

律「うん、ちょっと散歩だ」
273 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 14:58:42.15 ID:O5.Th3I0
いつもなら通らない道を行く。

昨日の公園の前も通りかかるが、お互い照れてか見ないフリをした。

中学生の時、手を繋いでるところを見られた場所にも行った。

そこで、彼女はわたしの手を取る。


律「…逃げる練習でもするか」

澪「…逃げることになるのかな」

律「わかんないけどさ、絶対手離すなよ!」

澪「…わかった」

律「ほら、走れー!」

澪「ちょっと律!早いって!」


彼女は無駄に、力いっぱいわたしの手を引いて走った。

少し前のめりに、転びそうにもなったけど、

何があっても離すものかと、しっかり彼女の手を握った。
274 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:04:21.20 ID:O5.Th3I0
遠回りをしたけど、走ったせいかだいぶ早めに学校に着いた。

教室はまだ開いていなくて、職員室に寄って鍵をもらった。

1人で教室に居ると、中学のあの時を思い出した。

彼女との登校をやめた1週間。

…大丈夫。

あの頃とは違う、わたしは1人じゃない。

何があっても、わたしには彼女が居るから。


ちらほらと人が集まりだした。

しばらくすると和も来て、わたしを見るなり声を掛けてくれた。
275 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:06:35.95 ID:O5.Th3I0
和「おはよう、もう体調はいいの?」

澪「おはよう、良くなったよ」

和「昨日は律も休みだったから、軽音部の練習もなしで唯と帰ったのよ」

澪「…悪いことしたな」

和「心配してたわよ、あんたたちのこと」

澪「そっか、謝っておくよ」

和「唯はね、2人がケンカしてるんじゃないかって言ってたのよ」

澪「…そんなところだな」

和「あら、いつから?」

澪「いつだろ…ずっと前から、になるかな」

和「そう…気付かなかったわ」

澪「でも…もう大丈夫だよ、わたしたちは」


自分に言い聞かせるように、笑って見せた。

やがて担任がやってきて、いつもとなんら変わりない1日が始まった。
276 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:11:25.29 ID:O5.Th3I0
出来るだけ放課後のことを考えずにいると、あっという間に放課後になった。

きっと彼女は今日、みんなに話すだろう。

部室の前に着くと、ドアの前から騒がしさが伝わる。

明日もそうであってほしい、そう祈りながらドアを開けた。


唯「あ、澪ちゃん!」

梓「もう体調はいいんですか?」

澪「うん、昨日は悪かったな」

紬「いいの、元気そうで何より」

律「…よし、澪来たな」
277 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:14:57.20 ID:O5.Th3I0
律「梓、練習したいと思うけどちょっと時間くれ」

梓「何でしょうか?」

律「個人的な用で悪いんだけど、みんなに話がある」

唯「なになに!?」

紬「何だかドキドキするわね〜」

律「…というわけだ、澪もいいな?」

澪「うん…いいぞ」

律「じゃあとりあえず…唯と澪、席替え!」

唯「席替えタイム!」


嬉しそうに唯がこちらへ来る。

わたしは席を譲って、彼女の横に座った。
278 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:17:21.46 ID:O5.Th3I0
唯「ムギちゃん、あずにゃん、お邪魔します!」

紬「唯ちゃんたちだけずるい…」

律「えっとじゃあ…ムギと梓、席替え」

紬「わ〜い席替え〜」

梓「…何が始まるんですか」

律「いいからいいから、座って」


律「じゃあ、本題に入る」


彼女が立ち上がると、みんなの視線がそちらに集まった。


律「えー、わたくし田井中律と」
279 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:20:30.11 ID:O5.Th3I0
律「…田井中律と?」


わたしの顔を覗き込んで、もう一度言った。

とっさにわたしも立ち上がった。


澪「あ…秋山澪は…」

律「このたび、真剣にお付き合いさせていただくことになりました!」


さっきまで騒がしかった部室が静まり返る。

誰の顔も見れず、ただじっと机を見つめた。

わたしの右手に、彼女の手が伸びてきた。

それに少し驚いて前を見ると、みんなの視線がわたしたちの手に集まっていた。
280 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:22:40.26 ID:O5.Th3I0
唯「うわあ…」

紬「あらあら…」

梓「えっと…」


唯は驚いたように笑ってて、ムギは頬に両手を当ててうっとりしている。

…梓は耳まで真っ赤。


律「…そういうことだから、よろしく」

澪「…よろしく」

唯「…りっちゃん!」


勢いよく、唯まで立ち上がる。
281 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:24:39.09 ID:O5.Th3I0
唯「初恋が実ってよかったね!」

梓「え?」

紬「え?」

律「は?」

唯「え!?違うの!?りっちゃんの初恋の相手って澪ちゃんのことでしょ!?」

律「ちょっ…バカ!言うなよ!」

紬「合ってるのね!?」

唯「言ってたでしょ!?その子とキスしたって!」
282 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:30:30.96 ID:O5.Th3I0
梓「キ、キス…」

律「あ!もう!バカ!」

紬「あらあらあらあら」

唯「合ってるよね!?わたし間違ってる!?」

律「いやいやいや」

唯「ムギちゃんもその話聞いたよね!?」

紬「うん、聞いちゃった〜」

唯「ほら!」

澪「唯…ちょっと落ち着いて」
283 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:35:04.27 ID:O5.Th3I0
律「…合ってるよ!わたしはずーっと前から澪が大好きだよ!」

唯「きゃー!」

紬「きゃー!」

澪「…ちょっとわたしが恥ずかしいからやめてくれないか」

律「りっちゃんの初恋実ったよ!ほら拍手でもしろよ!」


文字通りのやけくそで彼女が拍手を促すと、

先ほどまでと打って変わって、また騒がしい部室に戻った。
284 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:38:26.26 ID:O5.Th3I0
唯「お二人さん!おめでとう!」

紬「おめでたいわ〜」

唯「ほら、あずにゃんも!」

梓「お、おめでとうございます!」

紬「梓ちゃん顔真っ赤〜」

唯「うぶってやつだね、あずにゃん!」

梓「…結婚式には呼んで下さい!」

澪「…いきなり話が飛躍したな」

紬「結婚式だって、オシャレして行かなきゃ!」

律「…ちょっと、気が早いって」

唯「女の子同士でも結婚出来るんだね!」

梓「あ…」

紬「それは…」
285 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:43:13.10 ID:O5.Th3I0
澪「…唯、無理だよ」

紬「…今の日本じゃ、ね」

唯「あ、そうだよね、ごめん…」

律「…それは出来ないけどさ、わたしは誰よりも澪が好きだから!」

梓「…それでいいと思います!」

紬「りっちゃんかっこいい!」

澪「ちょっともうこの辺で…」

唯「あ!」

紬「唯ちゃんどうしたの?」

唯「結婚式しよう!ここで!」
286 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:50:17.59 ID:O5.Th3I0
唯「ほらほら、そうと決まればケーキだよ!」

紬「どんとこいです!」


わたしたちそっちのけで準備をする2人。

梓は手伝おうとするが、まだ動揺してるのかただうろうろしてるだけだった。


唯「ちょっと2人はお外で待ってて!」


ついにわたしたちは、部室の外へ追いやられた。
287 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:54:02.86 ID:O5.Th3I0
律「…何か、良かった、な?」

澪「…良かった」


急に緊張が解けて、その場に座り込んだ。

それに合わせて彼女もしゃがみ込む。


律「…幸せになろうな」


そう言ってキスをされた。

誰かに見られたんじゃないか、と周りを見渡すが、

ドアの向こうは相変わらずバタバタしている。

周りにも、誰も居なかった。


澪「…そうだな」


そう答えて、キスを返した。
288 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 15:57:59.85 ID:O5.Th3I0
唯「準備できたよー!」


その声に立ち上がり、2人でドアを開ける。

するとムギがキーボードで結婚式の曲を演奏する。

唯と梓は目いっぱいの笑顔で、これでもかと拍手をくれる。

わたしたちはゆっくり、手を繋いで机に向かって歩いた。

机にはたくさんのケーキが並んでいる。


唯「それでは、ケーキ入刀!」
289 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 16:04:27.11 ID:O5.Th3I0
梓がフォークをわたしたちに手渡す。

ムギのキーボードの曲調は変わって、優しい曲になった。

いつか観た、アニメ映画の曲だった。

魔法じゅうたんに乗って、世界を見渡しながら2人で歌っていた記憶がある。

英語の授業で、歌詞を訳したことがあった。


――誰もダメだと言わない

――どこへ行けとも言わない

――夢をみているだけなんて言わないよ


そんな詞だったと思う。
290 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 16:10:04.38 ID:O5.Th3I0
1本のフォークを2人で握り、ケーキの先に差してみる。

唯と梓がうっとりこちらを見て、拍手。

ムギもつられ、キーボードから手を離してまた拍手。

本当の『結婚式』とはかけ離れていたけれど、

わたしたちは互いの顔を見て笑いあった。

不意にドアが開いて、さわ子先生が入ってきた。


さわ子「あら、何事かしら?」
291 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 16:14:04.78 ID:O5.Th3I0
唯「結婚式だよ!」

さわ子「…2人の?」

唯「そうだよ!拍手!」

さわ子「はいはい、パチパチ」

律「…反対しないの?」

さわ子「本人たちがよければいいんじゃない?」

紬「わたしもそう思います!」

梓「同じくです!」

さわ子「それにしても、生徒にも先越されるのね…」

律「ははーごめんね?」

さわ子「はあ…何かよくわかんないけど、澪ちゃんりっちゃんおめでと」

澪「…ありがとうございます」
292 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 16:21:04.81 ID:O5.Th3I0
さわ子「それより早く食べない?」

唯「さわちゃん…」

梓「あなたって人は…」

紬「まあまあ」

さわ子「お腹すいたんだもん!それより何で相談してくれないの!?」

律「いや、何か急に結婚式しようって唯が言い出したから…」

さわ子「ウエディングドレスくらい作ってあげたわよ?」

唯「さわちゃん先生、すごい!」

さわ子「まあいいわ、ほら『あーん』とかしちゃいなさいよ」

紬「待って!わたし写真撮る!」

唯「わたしもー!」

梓「わたしも撮るです!」
293 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 16:27:16.89 ID:O5.Th3I0
その日は結局、1度も練習しなかった。

だけど梓は怒らなかったし、みんな祝福してくれた。

わたしたちはそれからずっと、笑顔だった。


それから時は過ぎて、同学年のわたしたちと和は全員同じクラスになった。

担任にはさわ子先生。

和にもわたしたちのことを話すと、みんなと同じよう祝福してくれた。

毎朝の待ち合わせも変わらず、楽しくてかけがえのない時間を過ごした。
294 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 16:34:16.08 ID:O5.Th3I0
唯と彼女は相変わらず、先生からの呼び出しを食らう。

和とお互いの幼なじみの苦労話になると、ムギは目を輝かせた。

和を部室に招き、唯の話をしていると呼び出された2人が遅れてやってきた。


「いろんなことがあって、人は強くなっていくってことだよ」

ため息をつきながら彼女が言った言葉。

何が彼女にそう言わせたかはわからなかったけど、わたしたちもその通りだった。

その言葉のおかげで、あれだけ拒んだ昔話も、笑って話すことが出来た。
295 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 16:40:05.15 ID:O5.Th3I0
あっという間の高校生活が終わった。

淡々と卒業式が終わり、また部室に集まる。

今まで平気な子していたのに、梓が大泣きした。

やっと、自分の痛みを表に出せたんだ。

そんな可愛い後輩のために曲を贈った。

泣いていた梓は、今度は泣きながら笑っていた。

さわ子先生と和も来て、次は5人で演奏した。


部室を出て、張り詰めていたものがわたしから一気に流れ出した。

そんなわたしをなだめてくれたのは、また彼女だった。

泣いても、また笑えるんだ。

これからも、ずっとそうであればいいな。
296 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 16:43:40.54 ID:O5.Th3I0
澪「おい、早くしろって」

律「待って、まだ今日の日記書いてない」

澪「トラックが先に着いちゃうぞ!」

律「10分で書ける!」

澪「…今も付けてるんだな」

律「うん、もう日課ってやつ?」

澪「読みたい!」

律「読ませません」

澪「だってひーまー」

律「ジタバタしない!」
297 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 16:46:41.17 ID:O5.Th3I0
○月○日


今日、生まれ育ったこの家を出る。

高校3年間、本当に色んなことがあった。

毎日楽しかった!

辛いことも、苦しいこともあったけど、どれも大切な思い出。

桜高入って、軽音部立て直して、みんなでバンド組んで。

3年は、ライブも劇も大成功!

しかもみおとロミジュリ!クラスのみんなに「コンビ」なんて言われて…

うれしいやら恥ずかしいやら…うちら、バレてたのか!?

ライブはほとんど覚えてないくらい、全力でやりきった。

みんな泣いてたのに、梓は泣かなくて…本当はあいつが一番泣きたかったよな。

最後の最後で、やっと表に感情出してくれて、部長はうれしかったよ。

頑張れ、次期部長!

…梓ならやれるよ。おーえんしてる。
298 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 16:49:11.06 ID:O5.Th3I0
本当、泣いたり笑ったり、忙しかったな。

そして軽音部、みんな無事大学合格!

きっとこれからも忙しくなるな。

唯、ムギ、そしてまた…みおと一緒だ。

「みんなと一緒がいい」とか言ってたけど、

大学までわたしと一緒を選ぶなんて、みおちゃんかわいすぎだろ!

そしてそんなみおちゃんと、今日から同棲しちゃいます!
299 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 16:52:38.38 ID:O5.Th3I0
みおとは本当、色々あったけど…

わたしちょー幸せ。

わたしもみおを幸せに出来てるかな?

これからも一緒にわたしと笑っててください。


―――りっちゃんより。


律「…よし!」

澪「書けた?」

律「おう!」

澪「じゃあ…行くか!」

律「よっしゃー!」
300 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 16:59:34.09 ID:O5.Th3I0
ということで終わり!
最後くそ長くなった。アホかww
素人の拙い文をここまで読んでいただいたみなさま、本当に感謝しております。

あとがき
ただ子みおと子りっちゃんを書きたかっただけから書き始めたこのSS
でもそれだけじゃ甘々になるし、本編でも暇あらばいちゃつきやがる2人だから…
ってことですれ違わせました!

それでも2人は笑いあっててほしいから、ハッピーエンドで。
近日中、番外編・同棲生活のとある1日を投下予定。
よろしくお願いします。
301 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 17:00:41.80 ID:hqLSS0Mo
乙!

番外編楽しみ
302 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 17:06:53.44 ID:v7sYLOo0
乙〜
にしてもよく書けてるなー・・・
・・・もしや体験d(

番外&次回作に超期待させていただきますね!
303 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 18:07:21.58 ID:UeDHVmYo
乙だッッ他カップルの組み合わせを否定する気は毛頭無いけど、律澪はやはり王道だよね
番外編・次回作期待してますぜ

>>289に出てきた、授業で英訳したという歌、題名を教えていただけないですか?
304 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 20:41:31.82 ID:IkRaPBco
305 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 00:21:29.73 ID:daxV94Io
超乙!泣いた!
番外編楽しみにしてます
306 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 04:00:13.52 ID:wjbcB6Io
すごい良かったよ
307 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 19:05:21.82 ID:TCE03hAo


曲はアラジンか
たまにカラオケで歌うけどいい曲だよね
308 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/29(水) 22:32:43.81 ID:UKc3QKM0
>>303
遅くなったけど、>>307の通りアラジンのA whole new worldだよ
実際ケーキ入刀で使われたりする。みたい
結婚式行ったことないから知らんがww
感想ありがとうございます 年末年始の休み中に投下できそう!よろしくお願いします
309 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 21:11:30.28 ID:xhG.0OQ0
番外編「とある1日」


時計はやっと2時を回った頃だろうか。

間接照明だけをつけたこの部屋は、息が白く濁るのが見える。

そんな部屋に1人、ベッドの隅でじっとしている。

桜舞う入学式から数ヶ月、季節は冬になった。

わたしは相変わらず、律と共に生活をしている。

不意にキーッという、自転車のブレーキを握る音が外から聞こえた。

…律が帰ってくる。


階段を上がる足音に耳を澄ます。

その音が止んで、鍵を開ける音が聞こえる。

わたしはゆるむ口元を戻し、目を閉じた。
310 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 21:21:47.95 ID:xhG.0OQ0
広めのリビングと寝室だけのこの部屋。

2人で住むには少し狭いけど、窮屈でもない。

わたしは本屋、彼女は居酒屋でバイト。

互いに過度な干渉もしないが、休みは極力一緒に過ごす。

そんないい距離感で、少しリズムの違う生活を送っている。

今日も彼女の帰宅は深夜。

わたしが先にベッドに入ることが多い。


薄暗いこの部屋のドアが開いて、彼女がベッドに近づいてきた。

わたしは目を閉じて、寝たフリをする。

不意にベッドが少し沈んで、唇に柔らかい感触がした。
311 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 21:29:07.91 ID:xhG.0OQ0
律「…みーお、起きてんだろ」

澪「…何でバレた」

律「バレるも何も…ちゅーした瞬間、にやけてんじゃん」

澪「うるさい」

律「はは、可愛い奴め」


この瞬間がたまらなく好き。

起きているとキスしてくれないから、たまに寝たフリをする。

でも、大抵バレてしまうんだ。
312 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 21:36:23.40 ID:xhG.0OQ0
澪「…おかえり、今日は早かったな」

律「うん、閉店前に客全員帰ってさ」

澪「お腹は?何か軽く作ろうか?」

律「いいよ、明日1限あるんだろ?」

澪「そのくらい平気だ」

律「シャワー浴びて日記書いたら寝るからさ、澪はベッド暖めてて」

澪「うん、わかった」


彼女が部屋を出て、わたしは壁の方に体を向ける。

今も彼女は日記を付けている。

自身の日記、それに加えてわたしとの交換日記。

あれからも日記を読みたがるわたしに、彼女が提案してくれた。
313 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 21:44:27.21 ID:xhG.0OQ0


澪「律、日記読ませて」

律「嫌です」

澪「前は自分から読ませたくせに…」

律「…その話はやめてくれよ」

澪「律のけち」

律「澪の日記読ませてくれるならいいぞ?」

澪「わたし付けてないから」

律「付ければいいじゃん」
314 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 21:49:18.86 ID:xhG.0OQ0
澪「読ませるために?嫌だ」

律「だろ?読ませるために付けるもんじゃないんだって」

澪「前は読ませたくせに…」

律「だーかーらー!」

澪「ふん、バカ律」

律「…じゃあさ、お互い読ませるために日記付けるか?」

澪「…交換日記?」

律「そう、それなら時間合わなくてもお互い何してたかわかるじゃん?」

澪「続くかな?」

律「わたしは中学から続いてるぞー?」
315 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 21:53:39.02 ID:xhG.0OQ0
澪「…そうだな、今日バイト前に買ってくる!」

律「おう、頼んだ」

澪「どんなのがいい?」

律「普通の大学ノートでいいんじゃね?」

澪「可愛くない」

律「じゃあうさちゃんとかくまちゃん以外」

澪「ねこちゃん?」

律「…まあ何でもいいけどさ」
316 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 21:58:46.55 ID:xhG.0OQ0
澪「律見て!買ってきた!」

律「おお、澪にしてはマトモ」

澪「でね、シール貼ろう」

律「うわーメルヘンなシールばっかり…」

澪「文字シールも買った!」

律「じゃあまずお互いの名前だな」




2人並んで、シンプルな表紙にシールを貼った。

『みお & りつ こうかんにっき』

その日記もそろそろ、2冊目に入ろうとしている。
317 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 22:04:51.79 ID:xhG.0OQ0
浴室から、シャワーが床を打つ音が止んだ。

しばらくすると、今度はキッチンの方から何かの音がする。

…やっぱりお腹空いてたんだな。

今日はわたしも閉店までバイト先に居たから、何も作ってない。

コンビ二のサラダと、インスタントのスープで済ませてしまった。

何か作ってあげてれば良かった。

ため息をつくと、また息が白く濁った。


律が戻ってどのくらい経っただろう。

少し眠いけど、まだ寝たくない。
318 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 22:11:58.61 ID:xhG.0OQ0
寝室のドアが再び開いて、律が入ってきた。

首だけそちらに向け、彼女を迎えた。


律「まだ起きてんの?早く寝ろよー」

澪「なかなか寝付けないんだよ」

律「あー音立ててたしな、ごめん」

澪「ううん、そうじゃない」

律「1人で寂しかった?」

澪「…そんなとこ」

律「澪ちゃんは甘えんぼさんですわねー」

澪「うるさいです」

律「はいはい、電気消すぞー」

澪「ん、ありがと」
319 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 22:19:20.80 ID:xhG.0OQ0
律「澪の足冷たいな、暖房つけるか?」

澪「ううん、律がいると温まるから」

律「何かエロいな、その発言」

澪「バカ律」

律「はいはい、温めてあげるからなー」


後ろから優しく腕を回してくれる。

シャワーを浴びたばかりの体温は、本当に温かかった。
320 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 22:24:34.52 ID:xhG.0OQ0
澪「はー、温かい」

律「落ち着く?」

澪「うん、すっごく」

律「じゃあ澪、こっち向いて」

澪「えーやだ」

律「何でだよー」

澪「ちゅーされるもん」

律「さっきにやけてたくせに〜、どの口が言う?」

澪「この口だ」

律「そんな口にちゅーしてやる!」
321 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 22:29:51.18 ID:xhG.0OQ0
上半身を起こし、顔をこちらにやろうとする。

すると彼女は勢い良く、壁に額をぶつけた。


律「…いってー!」

澪「今すごい音した!ゴンッ!て!」

律「笑い事じゃねーよ、マジ痛い」

澪「撫でてあげる、痛いの飛んでけー」

律「そんなんじゃ治んねー」

澪「どうしたら治る?」

律「澪がちゅーしてくれたら治るかも」

澪「はいはい」
322 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 22:34:59.77 ID:xhG.0OQ0
澪「…治った?」

律「バッチリ!」

澪「それは良かった」

律「いい夢見れそうです」

澪「じゃあ寝るか」

律「うん、手貸して」

澪「冷たいだろ?」

律「握ってれば温まるよ」
323 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 22:40:53.06 ID:xhG.0OQ0
澪「そうだな」

律「任せなさい」

澪「お願いします」

律「じゃあ、おやすみ」

澪「…おやすみ」


彼女の手が、わたしの手に熱を移す。

握った手が離れないように、

そう意識していると、寝ているのか起きているのかわからなくなる。
324 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 22:45:53.65 ID:xhG.0OQ0
まだ真っ暗なこの部屋で、目覚ましがけたたましく鳴った。

その音に反応し、彼女は寝返りを打つ。

わたしは思いっきり伸びをして、アラームを止めた。


律「ん…おはよ」

澪「ごめんごめん、まだ寝れるよ」

律「うん…もうちょっと寝る」

澪「うん、おやすみ」


そう言って、頭を撫でる。

布団をかけ直してあげると、彼女は幸せそうに目を閉じた。
325 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 22:48:01.37 ID:xhG.0OQ0
「澪は寝相が悪いから」

そんなことない、とは思っているけど、

彼女がそう言うから、わたしはいつも壁側で寝ている。

彼女を踏まないよう慎重に跨いで、セミダブルのベッドを出た。

顔を洗ってリビングに行くと、テーブルには交換日記。

…そして、朝食。

夜に作っていたのはこれだったようだ。
326 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 22:51:57.89 ID:xhG.0OQ0
○月○日  律


今日は唯と講義で一緒になった!

今度鍋でもやろうって話になってさ。

うち呼んでいいよな?ムギと梓と5人で!

ってそんなを話してたら、教授に見つかって出て行けって言われた…

おとなしくその場を去った2人だったとさ。

りっちゃん、ちょっとだけ反省しています。


学校出た後はブラブラ買い物した。

いいフォトフレーム見つけたから買ったんだ。

アルバムから1枚写真抜いたけど、おこるなよ?

テレビのよこに飾ったから見といて。
327 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 22:57:15.59 ID:xhG.0OQ0
バイトはいつもどおり。

よっぱらいに絡まれるのもなれたもんだ。

もう忘年会の予約がチラホラ入って、ちょっとこわいけどな…。

つかれたけど、やっぱみおの顔見ると生き返るな。


そんな愛するみおに、簡単だけど朝ごはん作ってみた。

温めるとよりいっそうおいしくお召し上がりいただけます。

りっちゃんの愛情たっぷりだから、心して食べるように!

冷ぞう庫にヨーグルトとサラダもあるからなー。

じゃあ、いってらっしゃい。
328 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 23:01:12.56 ID:xhG.0OQ0
テレビの横…確認してみると、確かに目新しいフォトフレーム。

近づいてみると、2人の写真が入れられている。

部室での、『結婚式』の写真だった。

心なしか、2人とも今より幼い。

写真の苦手なわたしが、思いっきり笑顔で写った写真だ。

それを見た今のわたしもきっと、写真と同じこの笑顔なんだろう。

彼女も飛びっきりの笑顔で、一番彼女らしい表情だ。


冷蔵庫からヨーグルトとサラダを取り出す。

テーブルに置かれたフレンチトーストの横に並べてみる。

「朝からこんなに食べきれないぞ?」

笑顔のまま、1人そう呟いた。
329 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 23:04:19.74 ID:xhG.0OQ0
急いで身支度を終え、後は家を出るだけだ。

玄関すぐの寝室のドアを開ける。

まだ寝息を立てている彼女に近づく。


澪「朝ごはんありがと、おいしかったよ」

律「…」

澪「…いってきます」
330 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 23:10:04.54 ID:xhG.0OQ0
いってきます、のキスはわたしから。

ただいま、のキスは彼女から。

この家では寝ていることが多い2人。

それが自然に出来た、わたしたちの決まりだった。

寝室のドアノブに手を掛けたとき、ベッドの方を振り返る。

彼女の口元がゆるんでる。

…寝たフリ。

ああやって冷やかすくせに、彼女も一緒なんだ。

そんな彼女を見届けて、少し大きな声で言ってみた。


「幸せだな、わたし」
331 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 23:17:31.75 ID:xhG.0OQ0
番外編終わり!
本当にお付き合いいただきありがとうございました!
書き忘れてたけど、>>14に書いた展開迷ってるって部分は、律の日記パート
当初は軽音部巻き込んで仲直りさせるつもりだったんだけど、
2人の問題だから2人で解決させてるため、律の日記になりました。
当初の予定では、軽音部内にもう1カップルできる予定だった
そのパートは自分的に気に入ってるから、また別にSS作る予定

…だったんだけど、ラブラブ律澪考えるのが楽しすぎるww
これで終わろうと思ってたんだけど、2人が付き合いだしてからのこともこのスレでやっていいかな?
構わん続けろ、だの 当初と違うならやめれ、だの ご意見いただけると嬉しいです
ともあれ読んでくださった方々、本当にありがとうございました!
332 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/30(木) 23:29:44.56 ID:iRVcPis0
お疲れさまでした!
・・・続編をこのスレで?
構わん、続けろ。っというわけでボクは超期待しますね。

今年の終わりがけにまさかこんな感動させていただき、本当にありがとうございました。
来年も超がんばってください!
あ、いや体壊さない程度で
333 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/30(木) 23:35:12.75 ID:Kbm5OcMo
甘々だなこの2人…大好物です
にやにやしながら読んだよ
続きも期待してる!
とりあえず乙!
334 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/31(金) 01:50:45.59 ID:7OfQ3nQ0
同棲・・・ダト・・・!?けしからん、もっとやれ
とりあえずは乙ですた
335 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 13:01:17.21 ID:PGNDqOYo
長い間、乙でした。

どこが番外編だよ!
我々の業界ではご褒美です!
ご褒美はいくら貰っても嬉しいんです!!
336 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 18:29:24.73 ID:4QQrTrco
とりあえず完結乙!!!!
律澪はいくらでもおいしく頂けるので今後の話も書いてくれたら嬉しい!


337 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 21:47:51.85 ID:8LPP9tYo
うむ素晴らしい
338 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 01:38:25.14 ID:bXVk/Z.0
あけましておめでとう! >>1です
皆さんレスどうも!このまま書き続けることにします
同棲生活をはじめ、また高校時代の付き合いだしてからの出来事を投下したいと思います
自分で書いてて、CV再生が上手く出来ないのでそこを今後の課題にしたい
何卒よろしくお願いします
339 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 02:03:12.38 ID:zkB6AFQo
>>338
あけおめ!
去年は素晴らしい律澪をありがとう!!

今年もキュンキュンさせてくれ!!
340 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! :2011/01/01(正月) 02:28:13.37 ID:gCx1m960
あけおめ
続きぃ?待ってるじぇ
341 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 02:37:28.76 ID:ddsTZUE0
あけおめ

ところでいつぐらいに投下されるの?
目安的なの知りたいんだけど

あと>>340、ageられると投下きたと勘違いするから
できればsageにしてくれ・・・ませんか
342 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 12:58:08.59 ID:K7s1yEM0
>>341
んーどうだろう…ほぼ全部を書き溜めて、投下毎に修正かけるから遅筆ではあると思う
自分の予定(希望)としては週1〜2で1つを投下、長ければ数日に分けてって感じで
343 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 18:28:51.92 ID:cprbsNso
気長に待ってるので頑張って書いてくださいなー
応援してるお!
344 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/03(月) 23:36:53.40 ID:c8ZuMvE0
>>342

把握しました、わざわざごめんね
じゃ、がんばってください
345 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 18:53:09.41 ID:wvVps/yIo
りっちゃん澪ちゃん移転だよ!
SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/

346 :真真真・スレッドムーバー :移転
この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 21:32:16.54 ID:uQbG5ej30
>>346

おながいしますよー
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 21:33:07.92 ID:uQbG5ej30
ってこれメッセージかうわあああ恥ずかしい///
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 22:12:19.44 ID:vkod/m+ko
>>1です
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1291644312/

上記に移動となりました。
そちらでもお付き合いお願いいたします!
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 22:14:05.42 ID:vkod/m+ko
あ、間違えたww
>>1です。停滞しててすみません
来週辺り投下再開したいと思っております
今後ともよろしくお願いします!!
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 22:19:52.88 ID:uQbG5ej30
>>350
あ、今度こそ本物だ←
こちらこそ末永くよろしくお願いします
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 23:41:24.08 ID:mz/tCMAuo
昨日から降り続いた雪が、地面を白く飾る。

いつも通り、わたしは彼女を家まで迎えに行く。

いつもより、少し送れて彼女は顔を出した。


「ごめん!」

そう言った彼女の息は、白く濁ってすぐに消えていった。

どちらからともなく、歩き慣れた道を踏み出した。
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 23:43:57.22 ID:mz/tCMAuo
律「はー、超寒いな」

澪「うん、雪積もるのも久しぶりだ」

律「ただ寒いよりはマシだよな、雪積もってる方が」

澪「気分的にな」

律「雪の日って傘さすのか?迷って結局置いてきた」

澪「これくらいなら平気じゃないか?一応持ってきたけど」

律「せっかく持ってるんだ、させば?」

澪「ベースも濡れるしな、律も入れよ」

律「お、ありがと」


1つの傘に2人並んで入る。

たまたま通学路で出会った唯に、その姿を冷やかされた。
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 23:45:17.18 ID:mz/tCMAuo
唯「あ、お二人さん!」

律「唯か、おはよー」

澪「おはよう」

唯「おはよ〜、相変わらず雪をも溶かすアツアツっぷりだね!」

律「う、うるせー!」


さすがに3人では役に立たない傘を閉じる。

すると唯は突然走り出し、こちらを振り向いた。
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:46:02.70 ID:mz/tCMAuo
唯「2人のジャマはしないよ〜、ごゆっくり〜!」

澪「ああ、唯!」

律「いいよ、ほっとけ」

澪「せっかく声掛けてくれたんだぞ?」

律「唯なりに気遣ってくれたんだよ、甘えようぜ」

澪「…そうだな」


そう言って傘を開く。

彼女は少しこちらに寄って、また同じようにわたしの傘へ入った。
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:47:14.57 ID:mz/tCMAuo
律「それよりさ、今日の予定は?」

澪「家族で外食するよ」

律「そうか、楽しんでな」

澪「うん、ありがと」

律「…少しだけ時間あるか?」

澪「うん、パパが仕事から戻るまでなら」

律「じゃあ少しだけ、会える?」

澪「大丈夫だよ」

律「よかった、じゃあ放課後な」

澪「うん、またな」


階段に着いたところで彼女と別れた。

教室に入ると、和がこちらに近づいてくる。
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:48:04.03 ID:mz/tCMAuo
和「おはよう、寒いわね」

澪「だな、なかなか起きれなかったよ」

和「唯もこの時季はいつも寝坊よ」

澪「だから今日は一緒じゃなかったのか?さっき会ったよ」

和「いいえ、今日は生徒会の用があってね」

澪「朝から大変だな」

和「好きでやってることだもの、…それより澪」

澪「どうした?」

和「誕生日おめでとう」
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:49:13.64 ID:mz/tCMAuo
澪「ああ、ありがとう!」

和「こんなものしか用意してないんだけど、良かったら」

澪「…すごいな!これ手作りか?」

和「ええ、上手く出来てるかはわからないけどね」

澪「ありがとな、喜んで頂くよ」


和がくれたものは、手作りのクッキーだった。

シンプルなバースデーカードが添えられていた。


――今日はわたしの誕生日だ。
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:50:24.64 ID:mz/tCMAuo
午後の授業も終わり、放課後を知らせるチャイムが鳴った。

HRを済ませ教室を出ると、梓が壁にもたれ掛かっている。


澪「梓?」

梓「あ、澪先輩…」

澪「部室、行かないのか?」

梓「あ、いえ…澪先輩のお迎えを任命されまして」

澪「そういうことか、じゃあ行こうか?」

梓「もう少し…ちょっと遠回りしてもいいですか?」


梓は携帯を見てそう言った。

誰かに時間稼ぎを指示されているようだ。
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:51:12.48 ID:mz/tCMAuo
澪「ああ、いいぞ」

梓「すみません、…本当は律先輩が迎えに行くべきだって言ったんですが」

澪「そんな、梓が来てくれては嬉しいぞ?」

梓「なら良かったです、律先輩も意外に照れ屋ですね」

澪「あいつは昔からそうなんだよ、本人は隠してるつもりだけどな」

梓「何でも知ってるんですね」

澪「伊達に幼なじみしてないよ」

梓「今はそれ以上の関係ですしね」

澪「…先輩をからかうもんじゃないぞ」


クスクスと笑う可愛い後輩。

恥ずかしさもあったが、その姿に釣られて笑ってしまった。
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:52:14.22 ID:mz/tCMAuo
梓「えっと…よし、大丈夫です」

澪「開けるぞ?」

梓「どうぞ!」


机には、いつも以上にたくさん置かれたお菓子。

ホワイトボードには「ハッピーバースデー」の文字。


倉庫からぞろぞろと出てくる3人。


「みーお!」

「澪ちゃん!」

「澪ちゃ〜ん!」

「澪先輩!」


「お誕生日おめでとう!!!」
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:53:46.61 ID:mz/tCMAuo
澪「あ、ありがと…」

唯「いくつになったの?」

律「いや、お前と同じ17歳だ」

唯「あ、そっか〜」

紬「うふふ」

梓「笑えません…」

唯「それより今日はお楽しみですね、りっさん」

律「あー…そうだな」

紬「りっちゃん照れてる!」

梓「照れてますね、かなり」


みんなにまた冷やかされ、赤くなる彼女。

わたしもみんなにちやほやされ、誕生日を大いに楽しんだ。

4人で選んだというプレゼントは、前から気になっていた古いジャズのCDだった。

お茶を飲んで、お菓子を食べ、みんなで笑って。

今日もまた、練習はほとんどしていない。
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:54:26.68 ID:mz/tCMAuo
雪は止んでいた。

朝さしてた傘を地面につき、2人きりで歩く。

彼女の家に近づくと、彼女はこちらも見ず話し始めた。


律「…あのさ」

澪「どうした?」

律「家ついたらメールして、着替えて迎えに行く」

澪「うん、わかった」


どこに行くとか、何をするとか、あえて聞かずに返事をした。

彼女と別れると、そこから走って家に向かった。

「ついたよ」

そうメールして、わたしも急いで着替えた。
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:55:01.05 ID:mz/tCMAuo
数分後、彼女が迎えにきてくれた。

着替える、と言っていたのに、コートを羽織っただけに見える。


澪「着替えは?」

律「いや、これでいいんだ」

澪「そうか」

律「それより行くぞ、時間ないし」

澪「わかった」


自然に手を引かれ、またあの公園に向かった。

あの時彼女が座っていたブランコの方まで歩いて、並んでブランコに腰掛けた。
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:55:46.80 ID:mz/tCMAuo
律「寒いな…」

澪「うん…」

律「澪、やっぱ立って?」


そう言われ、その場に立った。

彼女はこちらに近づいてきて、また自然にわたしの手を取る。

「キスされる」

そう思ったけど、彼女はわたしの正面に立っただけだった。
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:56:22.39 ID:mz/tCMAuo
律「手冷てーな」

澪「さっきまで鎖握ってたからな」

律「ここに入れたら温かいぞ?」


そう言って、握ったわたしの手ごとポケットに突っ込んだ。

深いポケットの奥で、何か角張ったものが手に当たった。


律「何かあるだろ?」

澪「うん、何だろ?」

律「見てみれば?」

澪「そうする」
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:57:08.98 ID:mz/tCMAuo
取り出してみると、小さくて可愛い箱。

開けると、シンプルで可愛いペンダントが入っていた。

この前、金欠って言ってたのはこのせいか。


律「誕生日おめでとう!」

澪「わっ…」

律「澪に似合うと思って目付けてたんだ、どう?」

澪「…なあ律」


「ありがとう」

そう言おうとしたのもつかの間、間髪入れずに彼女がまた言葉を発す。
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:58:32.25 ID:mz/tCMAuo
律「生まれてきてくれて、ありがと」

澪「ちょっと…わたしが言おうと思ったのに」

律「わたしが言いたいんだ!」

澪「だってこれ、プレゼントだろ?わたしがもらったのに…」

律「いいの!」

澪「お礼言うのはわたしだろ?」
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:59:32.46 ID:mz/tCMAuo
律「澪に出会えて、好きになって、色々あったけど…こうして付き合えてさ、

  たくさん幸せもらってるから、その感謝とお返しだから」

澪「…もう、なんだよ」

律「お前こそ、何で泣くんだよ?」

澪「泣いてないよ」

律「泣きながら笑って、変な顔」

澪「うるさい!」


わたしがそう言うと、彼女は一歩わたしに近づいた。

涙が伝った頬に唇を当てる。


律「涙なんか、これからわたしが食べてやる!」
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/16(日) 00:00:34.32 ID:v3CajcWCo
律「…澪、大好きだ!」

澪「わたしだって…負けてないからな!」


思わず抱き寄せた。

目の前にいる彼女が、ただ愛しくて仕方なかった。


律「ちょ、澪…ほら、付けて見せて?」

澪「じゃあ律が付けてくれる?」

律「了解、ちょっと屈んで」


彼女に背中を向けて、少し膝を折る。

首筋に冷たいチェーンが当たって、少し驚く。

そんなわたしを、彼女が笑った。
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/16(日) 00:02:43.59 ID:v3CajcWCo
律「いいぞ、こっち向いて」

澪「どう?」

律「似合ってる、可愛いよ」

澪「ありがと、大事にする」

律「ほら、もう帰んなきゃ」

澪「本当はさ、付き合いだして初めてだし、律と過ごしたいんだけど…」

律「気にすんな、これからずっと誕生日祝えるだろ?」

澪「…うん、じゃあ帰ろっか」

律「はい、手貸して」


手を繋いで公園を出た。

ちょうど朝と同じように、また雪が降り始めた。
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/16(日) 00:03:38.11 ID:v3CajcWCo
澪「あ、雪」

律「ほんとだ、明日も降るのかな」

澪「…もし降っても、また傘置いてこいな」

律「入れてくれるのか?」

澪「うん、ダメ?」

律「いやいや、お願いします」

澪「また誰かに冷やかされるな」

律「見せ付けてやろーぜ!」

澪「まあ、そうだな」

律「…雪溶かすくらいに、アツアツな姿をな!」
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 00:07:46.43 ID:v3CajcWCo
澪誕!!ということで、今日急いで書きました。
時間もなく、全然修正もかけてないやっつけだけど…自分も、きっとりっちゃんも澪の誕生日祝いたいはずなので!
滑り込みセーフってことにしてください

ちなみに>>367
「この前、金欠って言ってたのはこのせいか。」

は次回投下予定の初デート編に繋がります
時空列逆になってるんで、よろしくお願いします

ではでは、またの投下に…
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 01:01:38.66 ID:jBJ8cnWTo
澪律は正義
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 08:16:53.74 ID:O+OGC9aso
おつおつ!
ふたりとも初々しいぜ
次も楽しみに待ってるよん
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 21:37:27.23 ID:goBIAB5Po
律澪の甘々大好物です
乙!
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:29:36.18 ID:T0Hb6y2eo
番外編「冬の日」



その日は朝から雪が降っていた。

お正月、クリスマス、冬休みなどのイベントも終わり、

その雰囲気を引きづった、ふわふわした空気が学校内に充満している。

授業を終えて、相変わらずのこの部室。

わたしたち5人はいつものように、ムギの紅茶で冷えた体を温める。
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 21:31:39.48 ID:T0Hb6y2eo
律「ふー、温まるな」

唯「やっぱこれだね!」

梓「これ飲んだら練習しますからね!」

紬「ふふ、今日のおやつはマドレーヌよ〜」

唯「マドレーヌ大好き〜」

梓「…もう」

澪「でも本当に寒いな、指がかじかむ」

唯「ほら、あずにゃんの手も冷たいよ」

梓「さりげなくこっちに来ないで下さい、で離して下さい」

唯「冷たいのは手だけじゃないね…」
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 21:33:04.57 ID:T0Hb6y2eo
律「お前らほんと仲良いな」

唯「えへへ」

梓「えへへじゃないです」

紬「そういうお二人はどうなの〜?」

澪「へ?」

唯「とぼけちゃって〜」

梓「デ、デートとかしないんですか?」

律「あー…」

澪「デート…」
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:36:23.05 ID:T0Hb6y2eo
律「澪…デートする?」

唯「え、まだしてないの?」

澪「えっと…」

律「昨日、学校帰り…」

紬「制服デートね!?」

唯「青春ってやつだね!」

澪「…コンビニ行っただけだ」
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 21:36:58.94 ID:T0Hb6y2eo
唯「それだけなの!?」

澪「律がお腹すいたって言うから肉まん買って、あ、でも律は金欠で」

律「澪の肉まん半分もらって、『うまいなー』って」

梓「うわー…」

唯「かっこわるーい」

紬「りっちゃんにはガッカリよ…」

律「まあ、それは否定出来ない…」

唯「うーん…それ以外は?」
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 21:38:52.31 ID:T0Hb6y2eo
律「んー」

澪「特には…」

梓「そんなの変です!お二人は付き合ってるんですよね!?」

唯「結婚式は済ませたんだもん、むしろ夫婦だよ!」

律「いや…普段から一緒だし、な?」

紬「な?ってわたしたちに言われても…」

澪「…特別どっか行こう、とはまだなってなかったかな」

唯「…そんなだから和ちゃんに嫉妬しなきゃいけないんだよ」

律「何だと!?」
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 21:40:08.66 ID:T0Hb6y2eo
梓「そうですよ」

律「梓まで!?」

紬「女の顔してたわね、あの時のりっちゃん」

律「わたしは女だ!」

唯「ほら澪ちゃん、黙ってないで何か言わなきゃ!」

澪「…律とデート、したいな」

紬「…きゅん」

唯「…きゅん」

梓「…きゅん、です」
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 21:41:12.71 ID:T0Hb6y2eo
律「まあこの話は後でゆっくりな、澪」

澪「…うん」

律「梓!練習するぞー!」

梓「都合悪くなったらそれですか…」

澪「…そうだな、体も温まったことだし」

唯「澪ちゃんまで!」

紬「まあまあまあまあまあまあ」

唯「6回!」
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:42:37.73 ID:T0Hb6y2eo
2、3曲合わせただけで、その日の練習は終了。

どんどん冷えていく部室。

それに耐えられなくなった5人は、薄暗い廊下に出た。


わたしはムギと梓と並んで、彼女は唯と並んで前を歩く。

唯は彼女に耳打ちをする。

何を話しているのかは聞こえなかったが、

彼女は首をかしげたり、唯を小突いたり。


その様子から、話の内容はきっと…今日話題になったあのことだろうと思った。
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:43:31.61 ID:T0Hb6y2eo
ここ最近みんなで居るとき、わたしたちが並ぶことは少なくなった。

寂しい気もする反面、お互い意識してのことだから少し嬉しくもあった。


彼女は時々こちらを振り返る。

わたしと目が合うと慌てて前を向く。

次は唯も振り返り、こちらに笑いかけ、また前を向く。

唯に釣られて、笑いそうになるのを堪えた。

隣のムギと梓はお構いなしに、目と目を合わせて笑っていた。
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:44:57.05 ID:T0Hb6y2eo
ムギと別れ、唯と梓とも別れ、2人きりになった。

会話も特になく、ただただ歩いた。

少し前を歩いてた彼女が急に立ち止まる。


律「澪、明日時間あるか?」

澪「…デート?」

律「土曜だしな、出掛けよっか」

澪「デートなのか?」

律「…そうだよ!好きあってる2人が出掛けるならデートだろ!」

澪「律、ちょっとちょっと」

律「何だ?」


そう言って、彼女の頬に触れてみた。

寒さもあるだろうけれど、異様に熱を持っている。
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:46:00.15 ID:T0Hb6y2eo
澪「…あったか、照れてるんだな」

律「うるっせ…」

澪「でも、どこ行くの?」

律「お金ないから、ただブラブラになるだろうけど…」

澪「お昼ぐらいなら出すぞ?」

律「だめだ!」

澪「昨日肉まん食べたくせに」

律「…くそっ」
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:47:17.24 ID:T0Hb6y2eo
澪「大体なんで金欠なんだ?お年玉いっぱいって自慢してただろ?」

律「ああ…まあな、色々」

澪「考えて遣えよな」

律「いや、こんないい金の遣い方はしたことないね」

澪「何買ったんだ?」

律「それはー…まあ、いいだろ」

澪「そう、言いたくないならいいけど…」

律「とにかく!お金かからず遊べる方法考えるから!」
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:47:52.08 ID:T0Hb6y2eo
澪「うん、わかった」

律「よし、そういうことで」

澪「なあ律」

律「ん?」

澪「…楽しみに、してる!」

律「おう、任しとけ」
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:48:33.63 ID:T0Hb6y2eo
澪「律は?」

律「何がだ?」

澪「楽しみ?」

律「もう…決まりきったこと言わせんな!」

澪「少しくらい言ってくれたっていいだろ…」

律「…超楽しみだよ」


そう言って彼女はわたしの手を取った。

特に話すこともなく、心地良い沈黙のまま家路を歩いた。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:49:05.36 ID:T0Hb6y2eo
夕飯とお風呂を済まし、宿題も片付けた。

後はベッドに入るだけ。

そんなとき、携帯から聞き慣れた着信音が流れた。


澪「もしもし」

律「起きてた?」

澪「んー、そろそろ寝ようと思ってたところ」

律「あーごめんごめん」

澪「大丈夫、どうした?」

律「明日のことなんだけどさ」
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:50:40.68 ID:T0Hb6y2eo
澪「決まった?」

律「明日4時頃にうちに来て」

澪「4時?そんな時間から遊ぶのか?」

律「うん、わたしが夕飯作るからさ、一緒に食べよう」

澪「ふふ、わかった」

律「あと明日は泊まりな、おばさんに言っておけよ」

澪「え…泊まり?」

律「久しぶりだろ、まずいか?」

澪「いや、いいけど」
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:52:12.18 ID:T0Hb6y2eo
律「大丈夫、みんな親戚んち行ってわたししかいないからさ」

澪「あ、うん…」

律「…襲わねーよ、安心しろ」

澪「わ、わかってる!」

律「…なら決まりな!」

澪「でも、律も親戚の家行かなくていいのか?」

律「澪と約束あるからって断った」

澪「そうか、悪いな」

律「あと温かくして来いよ、出掛けるから」
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:53:16.38 ID:T0Hb6y2eo
澪「ご飯の後?」

律「うん」

澪「どこに?」

律「まだ内緒!じゃあゆっくり寝ろよ!」

澪「…ん、おやすみ」

律「おやすみ〜」

澪「…」

律「…」

澪「…えっと」

律「…早く切れよ」

澪「律だって」


そんなやり取りが数分続いて、やっと切れた電話。

握り締めた携帯を見つめ、余韻に浸る。

それが終わったのは、やがて暗くなったディスプレイに自分が映った時だった。
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 21:54:31.66 ID:T0Hb6y2eo
「早く寝なきゃ」

わざと口に出して、ベッドに入る。

そう意気込んだくせに、なかなか寝付けない。

暗い部屋の中で、何度も寝返りを打った。

意識が薄れていく度に、明日のことを考えてしまう。

律と2人で遊ぶのは、当然初めてじゃない。

なのにこんなにドキドキして、顔も熱くなって。


誰が見ているわけでもないのに、隠すように深く布団へ潜り込んだ。
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 21:58:00.67 ID:T0Hb6y2eo
とりあえずここまで。
次はりっちゃんが澪をデートに連れて行きます

このスレでやりたいことが多すぎて、色んなパートの書き溜めに中途半端に手を付けてしまって…整理するのになかなか時間かかってますww

少し長いお付き合いになりそうです よろしくお願いします
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 23:26:05.66 ID:W/OH7H80o
ふおおおおおおおおおおおお追いついたあああああ
最高すぎるよ!!期待してる!!
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 00:32:09.41 ID:SbWv5F9No
だめだ読みながらニヤニヤしてしまうwwwwww
続き待ってるよー!おつ!
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 10:49:28.61 ID:QlpY2BNHo
デート編に期待してまっすwwww

もう一つCP作るなら唯紬か紬梓を希望
ムギがいつも一人で寂しいぞ
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 22:53:19.95 ID:863ytFDSo
明るくなった部屋で目を覚ます。

目覚ましはかけていない。

なのに、いつもと変わらない時間に起きてしまった。

朝食をとって、シャワーを浴びて。


からかわれる、とはわかってるけど、おしゃれして行こうかと思った。

買ったはいいが、なかなか着れないでいるワンピースを引っ張り出す。

姿見の前で、ワンピースを肩にあててみる。
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 22:54:15.68 ID:863ytFDSo
「うーん…」

可愛い、って言ってくれるかな。

気合入れすぎ、って笑われるかな。

鏡の前で、何度も表情と角度を変えた。

すると、その姿を見ているように彼女からのメールが入る。


From 律

「防寒具一式持ってくるように!
 あと言い忘れてたけど、今日はスカートやめた方がいいぞ〜」


…超能力者か。

いつか言った言葉を口にして、ワンピースをクローゼットへ戻した。


そわそわと時計を何度確認しても、さほど時間は経っていない。

ため息をいくつもついて、時間が経つのを待った。


いてもたってもいられなくなったわたしは、結局いつもと同じような格好で外に出た。
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 22:54:44.36 ID:863ytFDSo
冷たい風がこちらに枯葉を運ぶ。

それを少し蹴飛ばしたりしながら、冬の空気を楽しんだ。

寒さに負けず走り回る小学生や、まるでこちらに興味ない野良猫。

いつも目にするものだったけど、何だか今日は違って見えた。


行き先も決めずに歩いていると、近くの河原に着いた。

自販機でココアを買って、草野球をぼーっと観戦しながら過ごした。
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 22:55:24.95 ID:863ytFDSo
そろそろ陽も西の方へに傾いてきた。

時間を確認すると、そろそろいい時間になっている。

冷えたココアの缶を捨て、彼女の家に向かった。

インターホンを鳴らすと、応答することもなくバタバタとした足音が近づいてくる!


律「いらっしゃい!」

澪「ああ、お邪魔するよ」

律「お昼いつ食べた?」



澪「朝しか食べてないぞ」

律「お腹空いてる?」

澪「ううん、大丈夫」

律「よかった、まあすぐ用意するからさ」

405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 22:56:18.53 ID:863ytFDSo
澪「わたしも手伝うよ」

律「いいよ、お客さんなんだから」

澪「でも待ってる間暇だし…」

律「マンガでも読んでろ」

澪「…律と一緒にキッチン立ちたいなー、なんて」

律「あー、はいはい」


待ってろ、そう言って彼女はその場を離れた。

戻ってきた手には、エプロンが握られてあった。
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 22:57:02.46 ID:863ytFDSo
律「ほら」

澪「え、いいよ」

律「服汚すぞ?」

澪「そんなに不器用じゃないぞ?」

律「でもほら」

澪「何だよ」

律「…エプロン姿、見たいし?」

澪「…もう」


「仕方ないな」

わざとそう言いたげに、彼女の手からエプロンを手に取った。
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 22:59:05.77 ID:863ytFDSo
澪「で、何すればいい?」

律「ああ、じゃあ生姜すって」

澪「しょうが?」

律「うん、生姜焼き作るから」

澪「生姜な、わかった」

律「生姜だけに?」

澪「しょ、しょうが、ないな〜」

律「…はい、手を動かす」

澪「な…律が言わせたんだぞ!」

律「なあ、何か緊張してる?」

澪「う…まあ、少し」
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:00:05.40 ID:863ytFDSo
律「初デート、だもんな」

澪「…そうなんだよ」

律「何かごめんな、こんなんで」

澪「ううん、律と入れるだけで…その」

律「あーもう…可愛い奴」

澪「…もうちょっとオシャレしてくればよかった」

律「澪ちゃんは十分可愛いぞ〜」

澪「そうやってまた茶化す」

律「本当のことだし、それにさ」

澪「何だよ」

律「…エプロン、似合ってるぞ」
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:00:39.83 ID:863ytFDSo
澪「…ありがと」

律「何か若奥さんって感じ」

澪「やめろよ、恥ずかしい」

律「2人で肩並べて台所立つなんて、新婚さんみたいだな」

澪「…そうだな」

律「色気ない料理だけどさ、家庭的でいいだろ?」

澪「うん、あったかい感じ」

律「生姜は体温まるからな、スープにも入れちゃいます」

澪「生姜のフルコースか」

律「今日は寒くなるらしいから、いっぱい食えよ」

澪「うん、楽しみ」
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:01:16.74 ID:863ytFDSo
手際のいい彼女に、少し悔しくも感心しながら手伝った。

最初の緊張はどこへやら、笑い合って夕飯は出来た。

食卓にずらりと並ぶ料理。

向こう側は空いているのに、何故か肩を並べて食べた。

どこへ行きたい、何がしたい、そんな話をしながら。


律「ふー、食った食った!」

澪「お行儀が悪い!」

律「誰も見てないんだからいいだろ〜?」

澪「わたしが見てるぞ」

律「もっと女の子らしい方が好き?」

澪「そんなことないけど…」

律「じゃあいいじゃん♪」

澪「…まあな、でこの後何処行くんだ?」
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:02:03.99 ID:863ytFDSo
律「あー、まだ内緒」

澪「お店とか閉まっちゃうぞ?」

律「いいんだよ、誰も居ないところ行くから」

澪「誰も居ないとこ?」

律「そうだ、とりあえず9時頃家出るか」

澪「うん、わかった」


それから2人でテレビを観て過ごした。

CMに笑ったり、くだらないものも彼女とだといつも以上におかしかった。
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:02:48.95 ID:863ytFDSo
律「よし、そろそろ支度するか」

澪「そうだな」

律「ちょっと待ってて」

澪「んー」





律「みーお」


そう言って、座ったわたしの腰に伸びる手。

少し甘えた声に「何だよ」なんて応えて振り返ると、

何かが腰に貼り付いて、暖かさを感じた。
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:03:22.94 ID:863ytFDSo
律「ほら、カイロ」

澪「何だ…カイロか」

律「何だと思った?」

澪「別に?」

律「もう〜澪はやらしいんだから〜」

澪「そういうんじゃないから!」

律「えー、じゃあちゅーしないの?」

澪「…する」
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:04:16.18 ID:863ytFDSo
律「あー…もう!」

澪「わっ…急に抱き付くな!」

律「何でからかうつもりなのに、こっち照れなきゃいけないんだよ」

澪「っ知らないよ…」

律「…好きだよ」

澪「バカ律」

律「…澪も好きって言ってくんなきゃやーだー」

澪「…好きだよ?」

律「…よかった」
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:04:45.44 ID:863ytFDSo
澪「…でも何でそんなにカイロあるんだ?」

律「父さんが忘年会のビンゴで当てたんだ」

澪「へえ…」

律「もっといいもん当てろよって思ったけど、今日やっと役に立つよ」

澪「そんなに寒い場所なのか?」

律「外だからな、ほら後ろ向いて」


白い服を着てるように見えるほど、お互いにカイロをいっぱい貼った。

手袋とマフラー、耳あてまでして、暗くなった表に出た。

昼間に1人で歩いた道を2人で歩く。

数時間前と逆戻りして着いた先は、昼間1人で来た河川敷だった。
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:05:34.88 ID:863ytFDSo
律「よし、着いた」

澪「ここ?何するの?」

律「天体観測ってやつだよ」

澪「…ふふっ」

律「何だ?」

澪「律っぽくないなって」

律「乙女が星見ちゃ悪いか!」

澪「誰に入れ知恵された?」

律「…唯」

澪「やっぱり」
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:06:17.99 ID:863ytFDSo
律「唯がさ、『今の時季は星が綺麗だよ』って」

澪「そうか」

律「まあさ、自分でもキャラじゃないかなって思ったよ」

澪「でもさ、こういうの好きだよ」

律「ロマンチストですからね、澪さんは」

澪「ここに連れてきた律さんに言われたくありません」

律「でも、来てよかったよ」

澪「…綺麗だな」
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:07:20.54 ID:863ytFDSo
律「…流れ星見えるかな?」

澪「難しいんじゃないか?」

律「何だよちくしょー」

澪「お願い事したいの?」

律「うん、内容は聞くな」

澪「わたしと一緒だといいなって思う」

律「多分一緒だよ、だから言う必要ないだろ?」

澪「…そうだな」


隣に座る彼女は、片手だけ手袋を外した。

何となく不器用に、その手が伸びてくる。
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:08:01.53 ID:863ytFDSo
澪「ん?」

律「手」

澪「繋ぐの?」

律「うん」

澪「何で手袋外すんだ?」

律「直接…な」

澪「ああ、そういうことな」

律「澪は外さなくていいよ、寒いし」

澪「こっちの方が暖かい気がするから」

律「…ならいいけど」


冷たい手と手を握り合う。

もちろん手袋の方が暖かいんだけど、気持ち的に。

半分に欠けた月と満天の星。

首が疲れるのも忘れて、ずっと見上げていた。
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:09:16.40 ID:863ytFDSo
律「澪はさ、月と太陽どっちが好き?」

澪「んー、太陽かな」

律「へえ、意外」

澪「月も好きだけどな、太陽って何か…」

律「何か?」

澪「…律みたいだから」

律「恥ずかしいこと…言うなよ」
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:09:55.71 ID:863ytFDSo
澪「でもさ、太陽ってみんなを照らして、元気になれるだろ?
  
  律が笑うとつられて笑っちゃう、だから似てるんだ」

律「…そんなの、澪だって」

澪「え?」

律「気付けば見守ってくれてて、暗いところでも綺麗で…月って澪みたい」

澪「…ありがと」

律「中にうさぎさん飼ってるメルヘンなところもそっくり」

澪「…はいはい」

律「…だからわたしは、月のほうが好きだな」
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:10:30.13 ID:863ytFDSo
澪「…あのさ」

律「何だ?」

澪「月が光るのは何でか知ってるよな?」

律「いや知らん」

澪「小学校の時習っただろ…」

律「記憶にございません」

澪「…まあいいや」

律「何でなんだ?」
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:11:01.33 ID:863ytFDSo
澪「月を照らすのは太陽なんだ」

律「よくわかんねー」

澪「…月は太陽が照らすから輝けるんだ、だから月は太陽がいなきゃダメなの」

律「ああ…そういう事ね」

澪「だから…やっぱり似てるよ、わたしたち」

律「そうだな、澪が居ないと…笑う気になんないし」


彼女が笑ってみせると、息が白く濁った。
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:11:40.14 ID:863ytFDSo
澪「…寒いな」

律「もう帰るか?」

澪「ううん、もうちょっと」

律「…どんなに寒くても、ぼくは幸せ?」

澪「な…やめろよ!」

律「いいじゃん、あれ好きだよ」

澪「ダメだって言ったの、律だろ」

律「…本当はすげー嬉しかったよ」

澪「なら…いいけど」
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:12:31.76 ID:863ytFDSo
律「やっぱりさ、ムギに曲付けてもらおうぜ」

澪「え?それはやだ!」

律「何でだよ!」

澪「だって…あれ律のことなんだぞ?」

律「みんな知ってるんだから気にすることないだろ」

澪「知ってるからこそ恥ずかしいんだ!」

律「でもさ、澪の気持ち、作品に残したい」

澪「恥ずかしくて歌えないよ…」

律「唯に任せよう!ならいいだろ?決まりな〜」


そのまま反論も出来ずに、彼女の意見は通ったことになったようだ。

それ以上何も言えなかったのは、

彼女の『嬉しい』という言葉が聞けたからだと思う。

少し前に、ダメだと否定されていた気持ち。

今ではそれを、こんなに綺麗な空の下で喜んでくれている。

そんなに幸せなこと、探したってなかなかないよ。
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:13:33.59 ID:863ytFDSo
律「あー、そうだ」

澪「何?」

律「…キスしても、いい?」

澪「うん…する」


結局流れ星は見ることが出来なかったけど、きっとこの日を忘れないと思う。

星に願いを唱えなくたって、わたしたちは大丈夫だ。

そう思った。

その気持ちが伝わるように、握った手を少し強くした。

暗くて見えないけど、顔を離すと、確かに彼女は笑った。


それから少しして、手を繋いだまま家へ戻った。

外は寒かったけど、平気だったのは生姜だけのおかげじゃないだろう。
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:14:28.91 ID:863ytFDSo
月曜の放課後、いつものように部室へ向かう。

わたし以外はもう揃っていた。

唯は相変わらず梓に抱きついて、彼女はムギと何か話してる。


紬「あ、澪ちゃん!」

澪「遅れて悪い」

紬「いいの、それより歌詞見せてもらえるかな?」

澪「え?」

律「この前話したじゃん、ムギに曲つけてもらおうって」

唯「え、なになに〜?新曲?」

梓「やりたいです!わたしにも見せてください!」
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:15:20.80 ID:863ytFDSo
澪「えっと…これなんだけど…」

唯「『どんなに寒くても、ぼくは幸せ』…ふむふむ」

梓「あ…」

紬「あらあら」

澪「ど、どうかな?」

唯「のろけてるね〜」

梓「のろけてます、完全に」

紬「素敵ね!」

唯「りっちゃんへのラブソングだよ〜このこの」

律「へへ、よせやい」

紬「見せつけてくれるね〜」

梓「ほんとですね」
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:16:14.55 ID:863ytFDSo
澪「や、やっぱりやめよう!」

唯「だめだめ、だよね?ムギちゃん!」

紬「うん、もうメロディーライン浮かんじゃった〜」

澪「わたしは歌わないからな!」

唯「わたしが歌うよ〜」

梓「意味なくないですか?」

紬「ベースとドラムをガンガンに絡めましょう!」

律「あ…何か、言うんじゃなかったかも…」

唯「澪ちゃんにはコーラス入れてもらおう」

梓「…楽しみです!」


こうしてからかわれながら、新曲を作ることになった。

少し恥ずかしいけど…。


なんか、うれしいね。
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 23:32:17.53 ID:863ytFDSo
番外編「冬の日」終わり!
長らくお待たせしました。そして文章も長いwwほんとすみません

今のところ、あと4個か5個くらい番外編やりたいなーっと思ってる
>>400ごめんなさい、このSSでは他カプは予定ないです
でも紬梓の構想はあるので、どこかで目にとまると嬉しいです

時系列は以下の通り。

>>1->>399   本編(小〜高校)
  ↓
>>377->>429 番外編「冬の日」(高校)
  ↓
>>352->>372 澪誕(高校・「冬の日」の数日後)
  ↓
  ↓
>>309->>330 番外編「とある1日」(大学)
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 23:34:35.92 ID:863ytFDSo
*訂正

>>1->>299   本編(小〜高校)
  ↓
>>377-429  番外編「冬の日」(高校)
  ↓
>>352->>372 澪誕(高校・「冬の日」の数日後)
  ↓
>>309->>330 「とある1日」(大学)
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 00:06:27.71 ID:ly8l4fhT0
乙!いやー、ニヤニヤしすぎてやばい
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 00:57:29.68 ID:HF5cKGqso
おつおつ!!
甘々ですなー良きかな
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 02:15:57.38 ID:qT8HpVZ7o
気持ち悪いぐらいニヤニヤした!乙!
次回の投下もたのしみにしてます

435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 00:13:42.81 ID:1Jo0Jvwoo
番外編「京都」


「今年は同じクラスになれるといいな」


そんな話をしていたのは、もう2ヶ月も前のこと。

大げさにも泣いたわたしを、彼女は笑った。

唯やムギ、梓に和までがわたしに同じような言葉を掛けた。

その度わたしは、少し顔を赤くしてこう答えた。


「ほんと、良かったよ」


高校生活最後の1年間。

さわ子先生の邪な思惑もあり、軽音部は全員同じクラスになった。
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:14:14.66 ID:1Jo0Jvwoo
冬は過ぎて、桜も散った。

彼女とわたしは相変わらず。

放課後はお茶と練習、休みの日は2人でどこかへ出掛ける、そんな日々。

ほとんど毎日顔を合わせるのに、

『おはよう』と『おやすみ』のメールを欠かさない。

どうせ朝の第一声は『おはよう』だし、

寝る前は電話で『おやすみ』だと言うのに。


毎日2回ずつの挨拶が、明日から少しは1度だけ。

今日から数日、知らない土地で彼女と過ごす。

――修学旅行、わたしたちは京都に来ている。
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:14:43.71 ID:1Jo0Jvwoo
いつも通りマイペースな唯に、いつも以上のテンションな彼女。

好奇心旺盛なムギも加わって、わたしたち4人の班は何度も叱られた。

けれど、振り回されるのは慣れっこだ。

わたしだって、少し肩の力を抜くことが出来ればいいのに。

いつだって自分という人間に囚われて、眉を吊り上げてしまう。

半ば惰性のように、わたしは何度もため息をついた。


紬「あ、澪ちゃん席替わろうか?」

澪「何で?」

唯「りっちゃんの横が良くない?」

澪「ああ…気を遣わなくていいよ」

唯「じゃありっちゃんとわたしが替わる?」

律「唯もいいって」

唯「えー、つまんないのー」


新幹線もバスの座席も、隣には座らなかった。

みんなで仲良くしたいから、極力2人で居ることは避けている。

それでも相変わらず、みんなは面白がりながらも応援してくれているみたいだ。
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:15:12.53 ID:1Jo0Jvwoo
金閣寺に行き、抹茶を飲み、北野天満宮にも行った。

学問の神様…だって言うのに、罰が当たるほどみんな騒ぎまくって。

全員1つの絵馬にバラバラの願いを書く。

お守りを買うさわ子先生の後ろを、走って何往復もした。


さわ子「こっち来なさい!」
 
律「ところでさわちゃん、何のお守り買ったの?」

さわ子「それは…その…」

唯「もしかして?」

紬「縁結びかしら!?」

律「切羽詰ってんのな…」

さわ子「いいじゃない!教師が恋したって!」

唯「わたしも買おっかな…」

澪「唯、ここは学問の神様で有名なんだぞ?」

唯「そりゃあラブラブな2人には必要ないもんね」

律「なっ…」
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 00:16:06.29 ID:1Jo0Jvwoo
さわ子「あら、それは違うわよ?」

紬「確か、今ある縁をずっと結びつけるって意味もあるんですよね?」

さわ子「そうそう、お揃いで持ったりするのよね」

唯「へ〜、じゃあさわちゃんは2つ買ったの?」

紬「唯ちゃんそれは…」

さわ子「うるさいわねえ…1つよ」

律「澪、聞いたか?」

澪「え?うん」

律「お揃いで買うぞ!いそげー!」

澪「わっ…引っ張るな!」

紬「あらあら」

唯「仲良しだねえ」

さわ子「子どものくせにっ…」
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 00:16:32.27 ID:1Jo0Jvwoo
澪「もう、急に走ってびっくりするじゃないか」

律「だって縁結びのお守り欲しいだろ?」

澪「うん…欲しい」

律「だろ?じゃあ決まりな!2つくださーい!」

澪「あっ、お金…ちょっと待って、財布出ない」

律「いいよ、わたしが買ってやる」

澪「そんな、悪いよ」

律「いいんだって、このくらい」
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:17:13.36 ID:1Jo0Jvwoo
律「みんなの前じゃ恥ずかしくてさ、いつもふざけちゃうから…2人の時はカッコつけたい」

澪「律…」

律「その代わり倍返ししてもらうけどな〜」

澪「…結局それか」

律「ほら、付き合って初めてのお揃いだぞ!大切にしろよ?」

澪「はいはい」


わざと呆れた顔をして、彼女の手からお守りを受け取った。

そうでもしないと、顔がゆるんでしまうから。

手の中のお守りを大切にカバンにしまって、唯たちのところへ戻った。


宿に戻ってもお菓子を食べ散らかす唯。

枕投げを仕掛け、人一倍の大暴れを見せたムギ。

振り回した枕をさわ子先生に当て、踏みつけられる彼女。

電気を消した後も笑う3人に疲れ、布団に入るとすぐ意識がなくなった。
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:18:09.07 ID:1Jo0Jvwoo
次の日は何故かサルを見に行き、和の班と合流するも道に迷い…。

何かが吹っ切れるように、やっとお腹の底から笑った。

それは夕食まで続く。

隣で彼女が笑わせるから、箸を持つ手が振るえ、上手く食べられなかった。


さすがの3人も疲れたようで、その夜はすぐ電気を消した。

…はずだった。

電気を消して振り返ると、闇に浮かぶ人の顔…。


律「…みお」

澪「うおぁぁぁ!離せ!離せええ!」

さわ子「うーるーさーいー」

律「…誰?」

さわ子「先生です!」
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:18:45.66 ID:1Jo0Jvwoo
さわ子「まったく旅行中も変わらないわねえ…あんたたち」

律「スッピンのさわちゃんが怖さ10倍増しだな…」

さわ子「ああん?」


さわ子先生を怒らせ、しっかりお仕置きをされる彼女。

頬を赤くして布団に突っ伏していた。

帰ろうとした先生を唯とムギが引き止める。

結局お菓子をやけ食いしながら愚痴る先生。
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:19:22.53 ID:1Jo0Jvwoo
さわ子「まあいいわ、でもねあんたたち」

澪「ん?わたしですか?」

さわ子「そうよ、さっき抱き締め合ってた2人!」

澪「そ、それは…!」

律「あれはさわちゃんが脅かすから澪がビックリして…」

紬「でもりっちゃんも、しっかり抱きかかえてたよね〜」

唯「わたしも見たよ〜」

律「うるさいっ」

さわ子「…ねえ、本当に付き合ってるのよね?」
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:19:53.10 ID:1Jo0Jvwoo
唯「さわちゃん、野暮なこと聞くね〜」

律「なに、ダメって言うのか?」

さわ子「そうじゃないわよ、確認よ確認」

律「…付き合ってるよ、縁結びのお守りも買ったしな」

さわ子「そう、なら一応忠告しておくけど」

律「何だよ」

さわ子「旅行とは言え学校行事よ、ハメ外し過ぎないようにね」

唯「わあ…」

紬「それって…」
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:20:42.42 ID:1Jo0Jvwoo
澪「ちょっと先生、何言ってるんですか!」

律「わたしたちはまだ清いぞ!」

紬「あらあら」

唯「…まだってことは、ねえ?」

律「…おっと」

澪「おっとじゃないだろ…」

さわ子「2人のことを否定はしないわよ、でも一応ね」
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:21:17.40 ID:1Jo0Jvwoo
唯「大丈夫!りっちゃんが夜這い出来ないように離れて寝かせるから!」

律「お前はわたしを何だと思ってるんだ!」

唯「いざとなったら、ムギちゃんが投げ飛ばしてくれます!」

紬「どんとこいです〜」

さわ子「よろしくね、ムギちゃん」

律「何だよお前ら…」

さわ子「…澪ちゃんもよ?」

澪「わたしですか!?」

さわ子「そういうことはおうちでして下さい」
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:21:44.78 ID:1Jo0Jvwoo
律「わかってるよ!」

唯「て言うことはあれだね」

紬「おうちではするんだって」

唯「やらしいね〜」

紬「そうね〜」

律「澪、耳ふさげ!毒されるぞ!」

澪「わかりました」

さわ子「まあ…仲が良いのはいいことよ」
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:22:30.03 ID:1Jo0Jvwoo
さわ子「でも浮かれ気分で悪乗りしちゃダメよ!」

律「…はいはい」

さわ子「はいは1回!」

律「はーい」

さわ子「…まったく、わかってるんだかいないんだか」

律「わかってるよ、なー澪」

澪「う、うん…」

さわ子「じゃあ残り少ない修学旅行、…新婚旅行にもなるのかしら。

    とにかく節度を持って、楽しんでね」

唯「さわちゃん…」

紬「先生…!」


そう言って、先生はその場で寝た。

その時はまったく疑問を持たなかったが、今思えばおかしな話だ。

案の定、さわ子先生は他の引率の先生に連れて行かれた。
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:22:58.48 ID:1Jo0Jvwoo
暗くなった部屋で、色んなことを考えた。

彼女たちと過ごす高校生活もあと数ヶ月で終わる。

みんなきっと別々の道に進んで、部活のことも修学旅行も、思い出話になる。

その時、彼女は隣に居てくれるかな。

…縁結びのお守りもらったし、大丈夫だよな。

それにしても、新婚旅行、か…。

恥ずかしいな。


…うーん、何か寝れない。トイレでも行こう。

電気をつけるわけにもいかず、枕元にあった携帯を手にする。

これくらいの灯りなら誰も起きないだろう。


「…澪か?」
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 00:23:59.23 ID:1Jo0Jvwoo
とりあえず今日はここまで
アニメ本編なぞり過ぎてちょっと飽きてきたかな…
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 03:39:55.77 ID:9b2J6sCJo
澪ちゃんりっちゃん優勝おめでとう!
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 00:44:54.74 ID:SdfAqRuYo
おつ!毎回楽しみにしてます

本編なぞってても澪視点だし全然退屈じゃないよ
>>1の好きなようにしたらいいのさ
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:42:41.51 ID:vTw/zdqko
澪「律?」

律「声大きい、みんな起きるぞ」

澪「ああ、ごめん」

律「寝れないのか?」

澪「うん、何かな」

律「はは、わたしも。少し話そうぜ」


唯とムギを踏みつけないよう気をつけて、2人でふすまの向こうの廊下へ出た。

廊下へ一歩踏み出すと、木で出来た床が軋んで音を立てる。

声こそ出さなかったけど、何故か顔を見合わせて笑った。

壁にもたれ、並んでその場に座り込んだ。
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:43:09.58 ID:vTw/zdqko
律「どうだった?京都は」

澪「んー、もっと名所巡りしたかったけど、楽しかったかな」

律「よかった、怖い顔してたから心配だったんだ」

澪「わたし?」

律「うん、ずっと」

澪「それは律たちが騒ぐからだろ?」

律「でもさ、こんな時くらい肩の力抜けばいいのに」

澪「…本当はわたしも思ってたんだ、そう出来ればいいのにって」

律「簡単だよ、りこぴーん!」

澪「くっ…」

律「ほら、笑うとこんなに可愛い」
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:44:03.37 ID:vTw/zdqko
澪「…もう」

律「本当に思ってんだからな?」

澪「はいはい、ありがと」

律「…また来ような」

澪「うん、一緒に来よう」

律「次は2人で、ちゃんと澪が行きたいとこ付き合うよ」

澪「楽しみにしてるよ」

律「その時は、北野天満宮にも『仲良くやってるぞ』って報告しなきゃ」

澪「じゃあ次はわたしがお守り買ったげるから」

律「2つもいらないだろ?」

澪「お守りは1年経ったらお焚き上げしなきゃならないんだよ」
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:44:30.41 ID:vTw/zdqko
律「何で?」

澪「今までありがとうって、感謝を込めて」

律「じゃあ1年に1回は京都来きゃいけないな」

澪「お焚き上げは何処の神社でもいいんだけどな」

律「やだ!京都旅行するんだ!」

澪「毎年?」

律「毎年だよ、『ここで新婚旅行したな〜』って思い出しながら」

澪「新婚旅行、か…」
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:44:58.79 ID:vTw/zdqko
律「…さわちゃん、何だかんだで応援してくれてるんだな」

澪「そうみたいだな」

律「でもあらぬ誤解をされてるみたいだ、特にわたし」

澪「普段の行いが悪いからだぞ」

律「でもさ、実際いつもわたしからだよな」

澪「何が?」

律「手繋ぐのもキスすんのも〜」

澪「だって恥ずかしいから…」

律「いつかの夜はベッドの上で襲ったくせに〜」

澪「なっ…」

律「…怒んなよ」
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:45:38.92 ID:vTw/zdqko
律「…倍返し!」

澪「えっ?」

律「今日のお守り倍返し!」

澪「どうしろって言うんだ?」

律「今日は澪が積極的になる番ってことだ!」

澪「何言ってるんだよ…隣に2人居るんだぞ?バカ律」

律「寝てるんだから平気平気」

澪「さわ子先生にも言われただろ?ハメ外すなって!」

律「でも今がいいんだもん」

澪「わがまま言うな!」

律「ねえみーおー」

澪「…甘えてもダメっ」
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:46:09.52 ID:vTw/zdqko
律「わたしだって恥ずかしいんだぞ?こんなこと言うの…」

澪「じゃあ何で急に…」

律「女らしいかな〜って…」

澪「…ははっ」

律「…澪まで笑う」

澪「他に誰が笑ったんだ?」

律「唯の奴、失礼だろ?」

澪「気にしてるのか?」

律「ちょっとはな、わたしだって女だし?」

澪「わたしはいっぱい知ってるよ、律の女の子らしくて可愛いところ」

律「…なら、ちゅーしてくんなきゃやだ」
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:46:50.86 ID:vTw/zdqko
澪「お前なあ…」

律「じゃないと叫ぶぞ!」

澪「子どもか…」

律「澪がちゅーしてくれないって叫んじゃいま〜す」

澪「ああもう、わかったよ!」

律「え、マ」


言葉を遮るように、彼女の目の前に顔をやる。

そこまではいいものの、それ以上は踏み切れなかった。

確かに暗いけど、何も見えないわけではない。

合わせていた目を思わず伏せた。
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:47:22.39 ID:vTw/zdqko
律「…叫ぶ」

澪「…させない」


そう言って、唇を押し当てる。

今まで何度もしてきたことだけど、

まだ慣れてはくれないようで、鼓動は激しくなった。

すぐ側にいる友人たちのせいだけではないようだ。

体重を預ける片手。

手持ち無沙汰になったもう片方の手で、彼女の髪を撫でた。

顔を離すと、漏れた彼女の息が温かく触れた。

少し、見つめ合って。

頭に置いてた手を、彼女の頬へ持ってきて。

また静かに顔を近づけ、唇を触れ合わせた。
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:48:14.60 ID:vTw/zdqko
軽く開いた唇の隙間に、ゆっくりと舌先を入れ込む。

わたしの動きに彼女が付いてくる。

頬に触れていた腕の力が抜けて、彼女の肩から手の甲まで滑っていく。

彼女は手を返して、指を絡めてくる。

何かに応えるように、ぎゅっと手を結んだ。

頭がボーっとする。

胸も苦しい。

なのに、なかなかやめようとは思わなかった。


どのくらいこうしているんだろう。

そんなこと、もう考えられなかった。
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:48:54.28 ID:vTw/zdqko
「はあ…」


お互いの息が自然と漏れて、体勢を元に戻した。

さっきまでのことが嘘のように、まともに顔を見れそうになかった。


澪「…これで足りる?」

律「ん〜…どうだろ」

澪「わかんないのかよ」

律「何かさ、今何も考えられない」

澪「わたしも…」


わたしは知っていた。

こうしなくたって、彼女は叫んだりしない。

「ごめんごめん」と、からかい過ぎたことを笑って謝るだろう。

彼女も知っているだろう。

わたしも、いつだってこうしたいと思っていることを。
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:49:27.29 ID:vTw/zdqko
律「…何か澪じゃないみたいだった」

澪「…お前がせがむからだろ」

律「そうなんだけど、な」

澪「…嫌だった、とは言わせないぞ」

律「言うかよ」

澪「そ、そうか」

律「何やってんだろうな、うちら」

澪「…ほんとに」

律「…しかもトイレの前、そしてジャージ」

澪「言うなよ…」
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:50:16.71 ID:vTw/zdqko
律「でもさ…ありがと」

澪「やめろ、思い出すと恥ずかしい」

律「…今日上手く寝れないかも」

澪「うん…じゃあ眠くなるまでここに居ようか」

律「わたし何も喋れないかもよ?」

澪「大丈夫、隣に居てくれれば」

 ・
 ・
 ・
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:50:43.80 ID:vTw/zdqko
紬「唯ちゃん唯ちゃん」

唯「ん〜…もうちょっと」

紬「ほら朝よ、起きて〜」

唯「ムギちゃん…眠いよ…」

紬「いいもの見れるよ?」

唯「ん…なにぃ?」

紬「見て見て、ほら2人」
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:51:27.01 ID:vTw/zdqko
紬「こんなところで寝てるよ?」

唯「わあ、ラブラブ」

紬「可愛いね」

唯「可愛いね」

紬「やっぱり帰りは」

唯「隣同士にしてあげようね」

紬「それがいいね」

唯「えへへ」

紬「うふふ」

唯「…もうちょっと寝ても大丈夫?」

紬「2人が起きるまで寝たフリしててあげようか」

唯「そうだね、ちょっとだけおやすみ」

紬「ちょっとだけおやすみなさい」

 ・
 ・ 
 ・
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:52:09.10 ID:vTw/zdqko
目覚ましがわりに掛けていた携帯のアラームが響く。

そう言えば、この携帯だってお揃いだな。

京都に来て、もう1つお揃いが増えた。

秘密と呼べるような、夜も出来た。

…眠い。首痛い。背中痛い。

硬い壁にもたれ、朝を迎えたようだ。

隣には口の端によだれを垂らす彼女。


―――ここで寝てしまったようだ。
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:53:00.66 ID:vTw/zdqko
澪「律、起きろ」

律「ゲル状…?」

澪「何言ってんだ」

律「いてっ…殴ったな」

澪「起きろ、朝だ」

律「何か体だる…」

澪「…ここで寝てたからな」

律「うっそ…」

澪「2人にバレないうちに起こすぞ」

律「わかった!」
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:53:27.21 ID:vTw/zdqko
律「おい唯!ムギ!」

澪「起きろ!朝だ!」

唯「あ、おはよ…」

紬「朝ね〜」

律「いつまで寝てるんだよ〜」

唯「えへへ」

澪「えへへじゃない、起きろ」
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:53:54.35 ID:vTw/zdqko
唯「だって〜、ムギちゃん」

紬「仕方ないね〜」

唯「ね〜」

律「何だ?」

澪「…変な2人」


数時間後には、京都駅のホームに生徒が並ばされる。

つい数日前の覇気は何処へやら、みんな疲れた顔をしている。

唯とムギはそれに反して、ニコニコ楽しそうだった。

時々耳打ちをして、頷き合って。

その姿を不思議そうに、残されたわたしたちは眺めている。
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:54:31.75 ID:vTw/zdqko
唯「あ、新幹線来た!」

紬「唯ちゃん!」

唯「あれだからね、あれ!」

紬「あれね、あれ!」

唯「よし、急げ〜!」

紬「わ〜!」

澪「こら!危ないから走るな!」

律「ほっとけよ、元気な奴ら…」
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:55:14.79 ID:vTw/zdqko
澪「…あれ?」

唯「何〜?」

律「仲良いな、隣同士座って」

紬「この方がいいもんね〜?」

律「…ま、どこでもいいけど」

澪「そうだけど、な…」

唯「ほら、2人も早く座って」

紬「ほらほら〜」


ほとんどが眠る車内で、ひとしきり彼女と唯は騒ぐ。

それにも疲れたようで、唯はムギにもたれ。

彼女はわたしにもたれ、寝息を立てていた。
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:56:09.23 ID:vTw/zdqko
紬「寝ちゃったね〜」

澪「そうだな、幼稚園児みたい」

紬「澪ちゃんは眠くないの?」

澪「ん〜少しだけ」

紬「だと思った〜」

澪「ん?どうして?」

紬「ううん、何でもないよ?」

澪「そう?」

紬「そうよ〜」
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:56:44.85 ID:vTw/zdqko
澪「ならいいけど…」

紬「うふふ」

澪「…変なムギ」

紬「澪ちゃん、わたしもそうするし、寝ていいよ?」

澪「そうか、ありがと」

紬「…そうだ、ブランケット貸してあげる」

澪「いや、特に寒くないから大丈夫だぞ」

紬「りっちゃんと使って、ほら」

澪「うん…でも何で?」

紬「そっちの方がいいと思うからかな〜?」

澪「…ありがとう」
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 22:57:29.19 ID:vTw/zdqko
ムギからブランケットを受け取る。

意味ありげに、ムギは「ふふ」と笑った。

彼女の膝に掛けて、わたしの膝にも掛けて。


あ、見えなくなる。

そういうことか。

ムギが笑みをこぼしながら目を閉じた。

それを見届けて、ブランケットの下で彼女の手を握った。
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 22:59:51.49 ID:vTw/zdqko
番外編「京都」終わり!
甘えるりっちゃんを書きたかった。
それに応える澪が書きたかった。

ムギが何をどこまで知っているかはわかりません。
次はケンカさせてみようと思います…少し胸が痛いけどまた次回!
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 23:21:33.68 ID:07AP88LZo
おつおつ
りっちゃんかわいいいいい!!!
キャラの動かし方が凄くうまいな
次回も期待してます
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/02(水) 21:24:10.63 ID:HIs0SgRV0
流石ムギ同志は格が違った

この二人はやっぱ可愛いのう
そういえばもうすぐばれんたいんだね チラッ
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 23:15:30.08 ID:E8Ug1EHo0
>>1
おつおつおー
バレンタインか・・楽しみだなー
かなしいってかちょい鬱なのもたまにはほしいなと思ってたら・・個人的には最高!複雑だけど
さて、バレンタインでケンカなのか?
んー・・ケッコウ重そうだな、だとしたら。てかムギ空気読みすぎ惚れた
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 00:59:34.85 ID:a4PiePvNo
『もしかして…怒ってる、の?』


電話の向こうの声に冷静になって…少し返答を考える。

怒ってはいない。

わたしたちにとって、ムギは大切な仲間だ。

やましいことなんかないって、わかってる。

ただ…何だろう、ヤキモチ?

わたしの知らないことを、こんなに楽しそうに笑って。

わたしのことは、こんな風に話してくれる?

そう思うと、何だか少し悔しくて。

なんて言ったら、面倒くさい奴と思われちゃうかな…。
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 01:01:12.11 ID:a4PiePvNo
「何でその時わたしも誘ってくれなかったんだよ!?

 …わたしもムギと遊びたかった!」


やりきれない気持ちをごまかす。

するとわたしの言葉は、思った以上に強い口調になってしまった。


『…誘ったじゃん』


呆れたように彼女は言う。

それはそうだけど…。


『…ていうかさ』
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 01:01:40.00 ID:a4PiePvNo
律『わたしが誘っても来なかったのに、ムギとは遊びたいんだな』

澪「…そう言うわけじゃないよ、勉強したかったし」

律『さっきの言い方だとそうは聞こえないけど?』

澪「それは…何て言うかその…」

律『…会いたいって思ってるのはわたしだけなんだな』

澪「…そんなわけないだろ!」

律『じゃあ何だって言うんだ?』

澪「…」

律『…黙るなよ』
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 01:02:10.25 ID:a4PiePvNo
律『だいたいさ、少しくらい嫉妬とかしてもいいんじゃねーの?』

澪「…そのためにムギと遊んだのか?」

律『違うよ、でもさ』

澪「…何だよ」

律『…わたしばっかり好きみたいじゃん』

澪「何でそうなるんだよ…」

律『ムギと比べられて、1人で傷ついてさ…わたしバカみたいだな』

澪「比べてなんかないだろ!」

律『…もういいよ、じゃあな』
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 01:02:46.70 ID:a4PiePvNo
電話はそこで切れて、無機質な音だけが耳に届く。

そういうつもりじゃなかったのに…。

わたしだって好きだよ。

好きだから素直になれなくて、そんな言い方しか出来なくて。

格好つけて、強がって、今みたいに後悔して。

…バカなのは、わたしの方だ。


わたしたちは昔から、よくケンカをする。

それでも気付けば元通りになってるし、

大抵言葉なんてなくても、仲直り出来ていた。

でも、付き合い出してからは初めてだった。


握った電話はそのまま鳴らず、『おやすみ』のメールも来なかった。
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 01:03:18.56 ID:a4PiePvNo
次の約束もしていないし、夏期講習も終わった。

このままいけば、始業式まで顔を合わせない。

…会いたいと思ってるのは、わたしだって同じだ。

でもしなきゃいけないことは他にもあって、

彼女を理由に、それを疎かにはしたくなくて。

今となっては、ただの言い訳に過ぎないけど。

こんなはずじゃなかったのに。


思わず手の中のある電話を、ベッドへ投げる。

衝撃は布団に吸収されて、跳ね上がることもなかった。

それすらも少し寂しく感じた。

…寝よう。

電気を消すと、この部屋は途端に真っ暗になった。
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 01:05:55.15 ID:a4PiePvNo
短いけどとりあえずここまで
ていうかタイトル忘れた…
番外編「ケンカ」でいいかな、うん

バレンタインエピは今のところ用意してない…申し訳ない
書けたら投下します!では次回…
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 02:30:49.21 ID:mri0Ux+Go
おつおつ
待ってるよ
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 10:29:57.60 ID:3lHWbVm70
おつー
ケンカはここまで?それとも今後影響してく?
まあ恐らく後者だろうけろ
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 00:37:06.97 ID:ytAE2oP0o
毎度おつです
生々しいのはくるなあ
女同士だからこそって部分が面白い
いやおもしろいとか言ってる場合じゃないけどww
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 14:50:30.81 ID:0W0wBUkpo
首元の不快な寝汗で目を覚ます。

生ぬるい空気がこの部屋に充満していた。

昨日ベッドへ投げつけた携帯を手にする。

充電が減っているだけで、特に変わりはないようだ。

『おやすみ』のメールも、『おはよう』のメールも着ていない。


「はあ…」

ため息を一つついて、シャワーを浴びた。
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 14:52:44.54 ID:0W0wBUkpo
髪を乾かし、その髪を結んで机に向かう。

エアコンの音に、シャーペンの芯が紙に当たる音が混ざる。

携帯は手元に置いてるけど、至って変化はない。

…集中しなきゃ。

そう思い、電源を切る。

なのに度々気になって、手を止めた。

彼女のことが頭をよぎる。

これの繰り返しで、机に向かう時間と進み具合は比例しなかった。

あまり眠れなかったせいか、欠伸も絶えない。

夜、頑張ればいいか。

服もそのまま、ベッドに潜り込んだ。
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 14:53:17.05 ID:0W0wBUkpo
少し、のつもりが、随分時間が経っていたみたいだ。

夕飯だと呼びに来たままの声で目を覚ます。

味もあまり気にせず、ぼーっとしたまま夕飯を口に運ぶ。


「じゃあわたし、勉強するから」


食事も済ませ、それだけ言って席を立つ。

昼間の分を取り返さなきゃ。

部屋のドアを開けると、エアコンの冷たい空気が顔に当たった。
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 14:53:48.66 ID:0W0wBUkpo
椅子に座って、ノートと参考書を開いて。

それでもペンを持つ気にはなれなかった。


「律…」


思わず口にするその名前。

こんな時になって、どれだけ好きか気付く。

こんな時に、もったいない。


――電話しよう。

素直に、謝らなきゃ。
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 14:54:53.92 ID:0W0wBUkpo
携帯の電源を入れる。

起動までかかる時間すらもどかしい。

やっと起動した携帯に、次々受信するメールたち。

受信メール…11件?

古いものから順に読んでいく。



From 律 

「おはよー」
_________________________

From 律 

「無視すんな!!!」
_________________________

From 律

「みーおー」
_________________________

From 律

「ねえみーおー」
_________________________

From 律

「怒ってる?」
_________________________
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 14:55:48.71 ID:0W0wBUkpo
From 律

「み」
_________________________

From 律

「お」
_________________________

From 律

「す」
_________________________

From 律

「き」
_________________________

From 律

「や」
_________________________

From 律

「き」
_________________________
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 14:56:19.06 ID:0W0wBUkpo
澪すき焼き?

…ん?

「き」のメールが着たのはつい先ほどのようだ。

今掛けたら出るかな。

よし、電話しよう。

少し落ち着くために、音楽を掛けた。

聴きなれた、大好きな曲が入ったディスク。

アコギのイントロに、呼び出し音が重なった。
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 14:57:45.08 ID:0W0wBUkpo
律『澪?』

澪「うん、今大丈夫?」

律『大丈夫だよ』

澪「すき焼き食べたの?」

律『ん?食べてない』

澪「え、そうなんだ」

律『何でだ?』

澪「すき焼きって、メール」

律『あーそれは…』

澪「うん?」
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 15:00:16.78 ID:0W0wBUkpo
律『ていうか、何で無視するんだよ!』

澪「違うよ、携帯の電源切ってた」

律『…寂しいだろ!』

澪「ごめんごめん、勉強してて」

律『…そっか、仕方ないな』

澪「…でもさ、結局違う言葉ばっかり考えて集中出来なかったよ」

律『…わたしのこと?』

澪「そうだよ」

律『えっ』

澪「自分で聞いたくせに」
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 15:01:16.94 ID:0W0wBUkpo
澪「…会いたいのは、わたしだって一緒」

律『そっか…』

澪「好きだよ、律」

律『…わたしも好き』


もし誰かが一部始終を知って、誰もがわたしが悪いって言っても。

彼女は、素直になれないわたしに気遣って謝る。

でもそれじゃダメなんだ。

素直にならなきゃ、また彼女を傷つけて、後悔することになるから。
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 15:02:31.26 ID:0W0wBUkpo
澪「…ごめん、本当はすごく嫉妬したんだ」

律『ん?ああ…いいって』

澪「でも面倒くさいって思われたくなくて、あんな風にしか言えなかった」

律『そんなこと思うわけないだろ?』

澪「なら…良かった」

律『わたしも面倒くさい奴になっちゃって…ごめんな』

澪「そんなこと思うわけないだろ?」

律『…なら良かった』
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 15:03:53.15 ID:0W0wBUkpo
澪「…同じだな」

律『うん、本当に』

澪「好きなのも、会いたいのも、本当に一緒だよ」

律『はは…幸せ〜』

澪「…で、すき焼きって何?」

律『それは…続きがあって』

澪「何?」

律『…また直接言うよ』

澪「そうか」
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 15:04:29.26 ID:0W0wBUkpo
律『…なあ、音楽聴いてる?』

澪「聴いてるよ」

律『わたしその曲好き』

澪「いいよな、これ」

律『うん、それCDの何曲目だっけ?』

澪「2曲目だよ」

律『わたしも掛けよっと、澪は止めて』

澪「ん?わかった」
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 15:05:39.24 ID:0W0wBUkpo
律『よし、最初から掛けて』

澪「はい、掛けた」

律『おんなじとこ聴いてるな』

澪「そうだな」

律『繋がってるな』

澪「繋がってるね」

律『この曲さ、澪からの着信音にしてるんだ』

澪「…うそ」

律『え、ダメ?ラブソングだけど…』

澪「ううん、違う…わたしもこれにしてる」

律『え、マジか?』

澪「うん、本当」
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 15:06:06.18 ID:0W0wBUkpo
律『あの 澪「あのさ」

律『あ、ごめん何?』

澪「ううん、律から話して」

律『…やっぱ、一緒に聴きたくない?』

澪「…思った」

律『…うち来る?』

澪「うん、会いたい」

律『おいで、曲止めて待ってる』

澪「すぐ行くね」
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 15:08:34.08 ID:0W0wBUkpo
とりあえずここで!
あっさり仲直りしました 泥沼化期待した方がいましたらごめんなさいww
次はりっちゃんち編
今日中にまた投下するかも
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 15:52:18.81 ID:CtTHLS+co
キャッホーイ!
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:15:15.66 ID:Oq39ayvYo
仲直り!おつおつ
期待して待ってるよん
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:23:18.64 ID:0W0wBUkpo
靴もまともに履かず、玄関を飛び出た。

夏の夜。

少しマシにはなったが、それでも外は暑い。

額ににじむ汗も気にせず、彼女の家まで走った。

彼女の家に近づくと、小さな人影が見えた。

足音に気付いたのか、こちらに手を振っている。

わたしも大きく手を振って、彼女の元に駆けていく。
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:23:44.66 ID:0W0wBUkpo
澪「お待たせ!」

律「走ってきたのか?」

澪「うん、汗かいちゃった」

律「冷たいもの入れてくる、先に部屋行ってて」

澪「ありがとう、行ってるな」
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:24:10.80 ID:0W0wBUkpo
律「はい、召し上がれ」

澪「いただきます」

律「あ、音楽掛けなきゃ」

澪「ほんと、続きからだな」

律「そりゃー澪が来るの待ってたからな〜」


ベッドに腰掛けるわたしの隣に彼女が座る。

少しジュースを口にして、ため息をついて、また口を開く。
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:24:47.47 ID:0W0wBUkpo
律「もうちょっと、近く行ってもいい?」

澪「何だよ改まって…いいよ」

律「へへ〜」

澪「嬉しそうにしちゃって」

律「嬉しいもん」

澪「わたしもだけどな」

律「…もう怒ってない?」

澪「最初から怒ってないよ」
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:25:42.77 ID:0W0wBUkpo
澪「律は?」

律「わたしも怒ってないよ、ちょっと寂しかっただけ」

澪「そっか、よかった」

律「…よし、背中向けて」


彼女の右手が背中に伸びてくる。

指を立てて、何か書こうとしてるようだ。
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:26:11.57 ID:0W0wBUkpo
澪「ん?何?」

律「さっきの続き」

澪「すき焼きの?」

律「そう、すき焼きではないけど」

澪「直接言うんじゃないのか?」

律「まあいいじゃん、何書いてるか当ててみ〜」

澪「ふふ、ちょっとくすぐったい」


細い指が背中をすべる。

くすぐったさを我慢しながら、その指先に神経を集中させる。
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:27:07.33 ID:0W0wBUkpo
―みおすき やきもちやいて ごめん―


律「…わかった?」

澪「うん」

律「答えは?」

澪「ヤキモチやいてごめん?」

律「正解!じゃあこれはー?」
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:27:34.43 ID:0W0wBUkpo
―しゃれこうべ―


澪「しゃれこうべ?」

律「そうそう」

澪「何でしゃれこうべ?」

律「怖がるかなって思って」

澪「怖くないよ?」

律「何だつまんない、じゃあ次〜」
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:28:11.13 ID:0W0wBUkpo
―りつ すき―


澪「律好き」

律「ありがと〜」

澪「ずるい、答えただけなのに」

律「だって言わせたかったんだも〜ん」

澪「そんなことしなくても言うよ?」

律「あ、えっと、じゃあ次!」

澪「はは、照れてる」
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:28:46.33 ID:0W0wBUkpo
―あい  …ん?


澪「あれ、わかんなかった」

律「間違えた、やり直す」


―あいしてる―


澪「…わかった」

律「答えは?」

澪「背中向けて、わたしも答え書く」

律「はいどーぞ」
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:29:14.45 ID:0W0wBUkpo
―わたしも―


澪「わかった?」

律「…それ答えじゃなくねー?」

澪「でも…こう答えたかったんだ」

律「そっか…良かった」

澪「もしテストだったら丸もらえるかな?」

律「満点だよ、わたしには」
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:30:11.07 ID:0W0wBUkpo
―ぎゅって してもいい ?―


澪「えっとね」

律「ちょっと難しかったかな、小さい字も入ってるし」

澪「うん、それに律が照れて早く書くから」

律「何だ、わかってんじゃん」

澪「何となくだけどな」

律「じゃあ、答えは?」

澪「いい、に決まってる」


彼女が腕を回して、わたしを横から抱きしめる。

肩にあごを乗せて、見つめられる。

少し照れてしまって、まともに顔を見れないけど、

何となく、彼女が微笑んでるのがわかった。
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:30:46.97 ID:0W0wBUkpo
律「唯ってさ、どんな気持ちで梓に抱きついてるんだろ」

澪「梓が可愛くて仕方ない、とかじゃないか?」

律「好きなのかな?」

澪「まあ人としては好きだろう、それが恋かはわからないけど」

律「もしそういう好きなら、辛いだろうな」

澪「そうか?」

律「わたしは澪に抱きつくと、少しだけ切ないよ」
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:31:25.19 ID:0W0wBUkpo
澪「…どうして?」

律「気持ち高ぶってさ、離したくないって思う。だから」

澪「じゃあ、離さないでいいだろ」

律「どんどん欲張りになって、キスしたいって思っちゃう」

澪「…なればいいんじゃない?」

律「欲張ってもいいと思う?」

澪「いいと思う」

律「なっちゃおうかな」

澪「…なっちゃいなよ」
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:31:58.55 ID:0W0wBUkpo
少し体勢を正して、彼女の顔が寄ってくる。

ゆっくり目を閉じると、唇が触れ合った。

離してはまた合わせて、その繰り返し。

少し経つと、次は舌も合わせてみる。

今まで何度もこうして来て、何度も繰り返しても幸せだと思える。

昨日から今日にかけて、少しケンカっぽくなってしまったけど。

時々ケンカもして、それでも笑い合えるわたしたちでいたいな。


…そう思っていた時、現実に引き戻された。
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:32:30.99 ID:0W0wBUkpo
澪「んん、律!」

律「何だよ、いいところだったのに〜」

澪「だって、だって今!」

律「今、何?」

澪「…今、胸触った」

律「欲張りになれって言いましたよ?」

澪「でも、急に!」

律「予告するべきだった?」

澪「そういう意味じゃなくて!」
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:33:12.23 ID:0W0wBUkpo
律「…なあ澪」

澪「…はい?」

律「うちら付き合って何ヶ月?」

澪「去年の年末から、今8月だから…8ヶ月くらい?」

律「じゃあ初めてキスしたのは?」

澪「…小学生」

律「つまりはもう8年ほどだ、ベテランだな」

澪「まあ、そうかもな」

律「…そろそろ先に進んでもいいと思わない?」

澪「先って…」

律「…そういうことだよ?」
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:33:42.54 ID:0W0wBUkpo
澪「…んー」

律「嫌ならいいんだけどな」

澪「何て言うか、ね」

律「澪が今のままを望むなら、それで」

澪「…そういう言い方、ずるい」

律「…じゃあ、どうよ?」

澪「まださ、心の準備が…」
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:34:12.13 ID:0W0wBUkpo
律「じゃあ心の準備しよう!」

澪「そうだな、準備」

律「来週な!」

澪「え!?」

律「遅かった?」

澪「違う!早いよ!」

律「…でもさ、来週うちの父さん出張で、母さんも付いて行くんだよね」

澪「…うん」
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:34:39.10 ID:0W0wBUkpo
律「聡も生意気に部活の遠征試合とかで、帰ってこないんだよね」

澪「…そうか」

律「来週しかないと思わねー?」

澪「来週か…」

律「だから決まり、その日泊まりに来て?」

澪「…わかった」

律「まあさ、まだ無理でもお泊り来いよ。一緒に寝たい」

澪「…そうだな、そうする」

律「楽しみ?」

澪「…ちょっと、怖いかな?」
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:37:41.06 ID:0W0wBUkpo
番外編「ケンカ」終わり!
結局いちゃいちゃ。そして次回…ちょっと大人になってもらおうかと思う
書けたら投下、書けなかったら飛ばしちゃうかも
まあ書いたら「エロ注意」てことで!

最近書いてすぐ投下してるから誤字脱字拾えてない…おかしな点は脳内で訂正お願いします。
では次回投下もよろしくね。
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:03:38.81 ID:KzUjNObHo
おつおつでした
いちゃいちゃしすぎ!甘過ぎて吐いたよ
エロでもなくても期待してるよ
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 11:02:34.74 ID:K1f8CVmO0
おつ。
きたい。ちょうきたい
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 11:16:53.81 ID:JLhcJ3la0

泥沼はなかったのですね、嬉しいけど残念だ..

とりま期待
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 23:08:30.47 ID:AzBWFurFo

こいつら結局いちゃいちゃしやがってww
エロ期待!エロなくても待ってるよー
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 23:15:45.48 ID:ph71Ga7po
やっと追い付いた
エロいの超楽しみにして待ってます
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 11:18:26.24 ID:6tI670euo
番外編「はじめての夜」


律「じゃあお風呂入ろっか」

澪「…そうだな、お先にどうぞ」

律「バカ」

澪「え?」

律「一緒に入るんだぞ?」

澪「…やだ!」

律「何で?」

澪「恥ずかしいだろ…」

律「今更?」

澪「だって…」
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 11:19:40.28 ID:6tI670euo
律「合宿も修学旅行も一緒に入っただろ?小学生の時のお泊り会だって」

澪「でも…」

律「…それに、今からもっと恥ずかしいことする予定なんだけど?」

澪「…」

律「…何か言ってくれよ」

澪「ああ…ごめん」

律「まあさ…わたし入ってくるから、気が向けばおいで」

澪「うん…わかった」
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 11:20:31.05 ID:6tI670euo
約束の日が来た。

心の準備と題したこの1週間。

なるべく一緒の時は、今日のことを考えないようにした。

でもやっぱり意識してしまい、何だかぎこちなくて。

彼女もそれをわかっているのか、この1週間はキスも手を繋ぐこともなかった。

そうしているうちに今日が来て。


…どうしよう。

お風呂でも入って落ち着こうかな。

あ、今まさに彼女が入ってるんだった…。

えっと…。

意識しすぎだよな、うん。

…行こう。
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 11:21:41.95 ID:6tI670euo
お風呂場まで行って、脱衣所で鏡を見る。

強張った自分の顔にため息をついた。

あくまでも自然にしてなきゃ。

緊張したように服を脱いで、ゆっくり戸を開けた。


澪「開けるからこっち見るなよ!」

律「はいはい、遅いぞー」

澪「気が向けばって言っただろ?」

律「そうだけど、のぼせちゃうよ!」

澪「…ごめん」

律「まあ湯船来いよ」

澪「まだ体も洗ってないぞ?」

律「うちらしか入んないし、かけ湯でいいって」

澪「ん…じゃあ」
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 11:23:09.64 ID:6tI670euo
体に温かいシャワーを軽く浴びせて、背を向ける彼女の横で湯に浸かる。

壁に掛かるタオルだけをただ見つめた。

時々そこから落ちる滴。

それが浴室の床を叩く音が聞こえるくらい、2人は静かだった。

湯気がたち込める中、沈黙を破ったのは彼女だ。


律「…普通、一緒に風呂入るってなれば向き合うと思うんだけど」

澪「うーん、そうかな」

律「肩並べて入るのはおかしくないか?」

澪「…でも何か今、律の顔見れないよ」

律「はは、何だそれ」

澪「律はさ…平気なのか?」
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 11:24:23.46 ID:6tI670euo
律「さあ、どうだろうな。…もう出るわ、じゃあごゆっくり」

澪「ああ、待って後ろ向く」

律「はいはい、部屋行ってるから」


小さな水音を立てて、彼女は湯から上がった。

1人になってまた考える。

すると何だか、お湯のせいだけじゃなくのぼせそうになった。

早く出よう。

すばやく、でも丁寧に全身を洗って、彼女の部屋に向かった。
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 11:25:47.51 ID:6tI670euo
律「おかえりー、早かったな」

澪「あ、うん…のぼせるといけないからな」

律「ていうか2人とも部屋着って…色気ねえな」

澪「仕方ないだろ!…お風呂入っちゃったし」

律「そう怒るなよ、ほら冷たいジュースあげるから〜」

澪「…ありがと」


冷房で冷えた部屋。

彼女は髪を下ろして、首にはタオルを下げている。

確かに色気のかけらすらなかった。

でもそれが今は、妙に安心出来た。

ベッドに座る彼女の隣に掛けて、冷えたペットボトルを受け取る。

口に運ぶこともせず、ただ握る。

冷たいボトルが気持ちいい。

でもそれは手の中にあるからで、急に頬に当てられると驚き以外の何でもない。
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 11:26:46.73 ID:6tI670euo
澪「ひゃっ…何するんだ!」

律「ひゃっ、だって」

澪「ビックリするだろ!」

律「だって澪、心ここにあらずなんだもーん」

澪「う、うるさい!」


振り上げた拳の着地点をなくして、情けなくゆっくりと下ろす。

すると彼女はにやっと笑って、わたしの顔を覗き込む。


律「緊張してんのー?」

澪「…当たり前だろ!」

律「んー、どれどれ?」


ふわっとシャンプーの匂いが舞って、わたしの胸に耳がピッタリとくっつく。

既に乱れ始めていた心拍数が、また跳ね上がった。
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 11:28:12.35 ID:6tI670euo
律「あは、ドキドキしてる」

澪「…それは!律が急に冷たいのほっぺに当ててくるからだ!」

律「…それだけ?」

澪「…じゃないかもしれない」

律「もう、素直になれよ〜」

澪「だって…」

律「…平気じゃないよ」

澪「…ん?」

律「わたしも平気じゃない、だってほら」


わたしの手を取って、彼女は自分の胸に触れさせる。

手のひらには、かすかに振動が伝わってきた。
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 11:29:03.93 ID:6tI670euo
律「ライブより、やばいかも」

澪「…ほんとだ」

律「うん、うちら一緒だろ?」

澪「そうだな…」

律「…やめるなら今だぞ?」

澪「うん、と…」

律「どうする?」

澪「えーっと…」

律「とりあえず、電気消してみよっか」

澪「…そうだな」


その前に音楽をつけて、やっと電気を消して。

この部屋の明かりは間接照明だけになった。

鼓動はまだまだ、大きいままだった。
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 11:29:38.13 ID:6tI670euo
律「…よし」

澪「…おかえり」

律「とりあえず、こっち向いてもらおうかな」

澪「ん…」

律「で、久々にキスしようかな」

澪「言うなよ…」

律「はは、ごめんごめん」


彼女の腕が首に回る。

ゆっくりわたしの頭を撫でて、軽く唇が当たって。

段々と深いキスに変わっていく間、わたしの髪を指にくるくる巻きつける。

腕を下ろすと同時に、彼女の指からもするりと髪がほどけていった。
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 11:31:38.35 ID:6tI670euo
だいぶ期間が空いて申し訳ない。
とりあえず今回はここまでで
実はエロ書いたことない 難しいww
書き溜め作ってまた来ます
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 11:48:21.00 ID:T4JROf+ho
おつおつ
待ってたよ〜なんかこっちまでドキドキするなwww
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 15:37:13.46 ID:ij+AKwis0
乙ー
いやー、ウブいな・・・
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 22:49:28.51 ID:8v0sne9AO
続き期待
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 01:43:51.99 ID:d0JAtIp+o
律「…澪、横になろう」

澪「うん」


軽く押されるように、ベッドに倒れこむ。

自分の髪から、先ほどと同じ柔らかい香りがした。


彼女はわたしの腰元にまたがるように、わたしを見下げていた。

髪が顔に掛かって、表情がよく見えない。

頬まで手を伸ばして、掛かる前髪を押さえる。

すると、彼女の小さな手のひらがわたしの手を包み込んだ。
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 01:44:18.93 ID:d0JAtIp+o
律「どうしたの?」

澪「律が見えないから」

律「ここに居るぞー」

澪「ふふ、よかった」

律「ちゃんと、見てるから」

澪「…この電気も消そうよ」

律「わたしが見えなくなるだろ?」

澪「でも…恥ずかしいし」

律「わたししか見てないのに、それでも嫌?」

澪「…ううん、いい」
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 01:45:05.93 ID:d0JAtIp+o
律「だろ〜?」

澪「うん…律には見ててもらいたい」

律「…あーもう!」

澪「…ん?」

律「…こんなに好きで、どうしよう?」


触れていた手を握り直して、そのまま下ろして。

もう片方の手を、わたしの方に伸ばす。

頭を優しく撫でながら、困ったように彼女が笑った。

その笑顔につられて、つい口元がゆるんだ。

そんな顔が見れたんだから、やっぱり電気を消さなくてよかった。
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 01:46:11.23 ID:d0JAtIp+o
律「なあ澪、嫌だって思ったら言うんだぞ?」

澪「うん、わかってる」


顔が近づいきて、彼女の髪がわたしの顔に掛かった。

少しくすぐったくて、顔をそらしてしまう。


律「こっち向いてくんなきゃキス出来ない」


そう言って、彼女の顔が追いかけてくる。

今度は自分から唇を当てた。

意識が触れ合う舌に集中していく。

掛けていたはずの音楽は、もう耳には入ってこなかった。
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 01:46:53.20 ID:d0JAtIp+o
先ほどまで頭を撫でていた彼女の手は、わたしの胸の辺りに下がってくる。

軽く胸に触れられて、びくりと肩を上げた。


律「大丈夫だから」

澪「うん…」

律「ていうか、でっけー」

澪「…そういう、言い方やめてよ」

律「ごめんごめん、あまりに自分のと違いすぎて」

澪「…そうか」

律「それより、痛くない?」

澪「うん、大丈夫」

律「…気持ちいい?」

澪「…よく、わかんない」
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 01:48:35.24 ID:d0JAtIp+o
律「服の上からだからかな」

澪「どうだろ…」

律「…よし、上脱がすぞ」

澪「うん…」

律「バンザイしてみ?」


裾を捲り上げて、服が一気に脱がされる。

脱いだ服はベッドの外に投げ捨てられた。

適度に冷えていたこの部屋も、下着になると肌寒い。

少し鳥肌が立って、「恥ずかしい」なんて思う間はなかった。


澪「律…ちょっと寒い」

律「布団かけよう、ほら」


素肌に当たる布団は心地良かった。

彼女も布団に潜り込んで、横に寝転ぶ体勢になった。
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 01:49:06.23 ID:d0JAtIp+o
律「可愛いブラしてんのな」

澪「ん…まあな」

律「今日のために?」

澪「…そんなとこ」

律「…ちなみに聞くけどさ」

澪「…何だ?」

律「わたし以外に、こういうことしたことは?」

澪「…ないに決まってるだろ」

律「じゃあ、キスは?」

澪「…ないよ」
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 01:49:52.90 ID:d0JAtIp+o
律「そっか、よかった」

澪「あるわけないだろ」

律「もう『パパとママ』って言わないんだな」

澪「…いつの話だ」

律「初めてキスした時の話〜」

澪「…そうだっけ」

律「忘れた?」

澪「…覚えてるけど」
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 01:50:35.47 ID:d0JAtIp+o
律「あの時はまさか、ここまで一緒に居れるなんて思わなかったよ」

澪「そうだな」

律「…色々あったし?」

澪「…それはもういいだろ」

律「そう言ってくれれば嬉しいけどさ」

澪「…今律と居れて幸せだから、それでいい」

律「…恥ずかしいやつ」

澪「…ほんと、わたし何言ってるんだろうな」

律「でも、わたしも同じ気持ちだよ」

澪「…よかった」
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 01:51:17.39 ID:d0JAtIp+o
澪「…律は?」

律「ん?」

澪「…わたし以外と」

律「あー、ないない」

澪「そっか」

律「あの頃からずっと、澪が好きだよ」

澪「色々あったけどな」

律「…もういいってさっき言ったくせに」

澪「冗談だよ」

律「…わたし以外と、しちゃだめだぞ?」

澪「…うん、律もだからな」
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 01:52:32.77 ID:d0JAtIp+o
律「頭上げて、腕枕してやる」


軽く頭を上げると、枕の間に彼女の腕が滑り込んだ。

またキスをしながら、彼女の手のひらがわたしの胸を包み込む。

指がそれぞれの力を入れて、ゆっくり優しく。

何となく、大事にされている気がした。

少しずつ感覚が変わってきて、思わず顔をゆがめた。


律「ていうかブラ邪魔、取るぞ」

澪「うん…」

律「肩少し上げて」

澪「…こう?」

律「そう、いい子いい子」
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 01:54:08.15 ID:d0JAtIp+o
くしゃくしゃっと頭を撫でて、そのまま背中まで手をやる。

互いに引っ張り合うホックに手を掛けて、一つずつ外していく。


律「うわ、3連かよ…」

澪「ん?おかしい?」

律「…大きいと3連なんだって」

澪「…でも2連のも持ってるよ」

律「…わたしのは全部2連です」

澪「…どんまい」

律「何だと〜?」

澪「いや、何て言っていいか…」

律「…こんなのさっさと取ってやる」
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 01:55:48.55 ID:d0JAtIp+o
…ここまで!
お待たせして申し訳ない。
そしてまだじらす形になったwwすまん
まだまだ長くなりそうです…ではでは次回
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 02:23:27.48 ID:DMW0OMCTo
おつおつ
ゆっくり書いてくれ
楽しみに待ってる
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 22:28:09.18 ID:dQs0DRvr0
焦らずに頑張れ
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 00:25:35.60 ID:/o4qJdcFo
大丈夫かな?
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 13:34:27.82 ID:e/xQg0GIO
ういうい
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/03/23(水) 20:06:45.16 ID:kitddJuTo
死んだのか
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/03/24(木) 23:01:20.43 ID:SdngS5q10
おいおいまさか本当に…
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 23:08:32.98 ID:IbzaJspLo
避難してるだけだよきっと
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/03/31(木) 23:44:47.78 ID:Xz9FpH2io
ホックが取られ、肩紐がひじ辺りまでずり落ちた。

それに手をかけて、彼女が剥ぎ取る。

自分の胸があらわになったと同時に、頬が紅潮していくのがわかった。


律「うわー…」

澪「…なんだよ、もう」

律「大きいなーって…」

澪「そればっかり…」

律「…やわらけー」

澪「…もう」


直に触れる手から温度が伝わってくる。

生暖かい息が一気に流れ出た。

そんなわたしを、意地の悪そうに彼女が見つめる。
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/03/31(木) 23:45:56.53 ID:Xz9FpH2io
澪「…見ないでよ」

律「見ててほしいって言ったくせに〜」

澪「うるさい…」

律「じゃあ見ない」

澪「そう…」

律「もっと近づいたら見えないもんな」


元々近くにあった顔がより一層近づいて、唇が重なった。

どちらからともなく舌も触れ合わせてみる。

どんどん唇が濡れていくのがわかった。
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/03/31(木) 23:48:07.23 ID:Xz9FpH2io
今度は顔を離して少しずらし、彼女の舌は耳に触れた。

形をなぞる様に舌は這う。

喉の奥の方から濡れた声が漏れた。

自分からこんなに艶っぽい声が出るなんて、思ってもみない。

それを止められなくて、ぎゅっと目を閉じた。


彼女は気にすることなく手も止めず、どんどんと顔を下へとずらしていった。

枕にしていた彼女の腕が、するりと抜けた。

とうとう布団に潜り込んで、今度は胸にまで舌が当たる。

次は吸い付いたようで、思わず体がびくりと跳ねた。

……暑い。
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/03/31(木) 23:48:55.52 ID:Xz9FpH2io
澪「律、律」


呼びかけると、一旦それらをやめて彼女が顔を覗かせた。


律「…ん〜?」

澪「暑い…」

律「わたしも、汗かいてる」

澪「布団…」

律「まくる?」

澪「うん…」

律「…見えちゃうぞ?」

澪「別にいい…」
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/03/31(木) 23:51:09.63 ID:Xz9FpH2io
「じゃあ」

そう言って、腰の辺りで布団を折り返す。

再び彼女は胸に吸い付く。

わたしは手を伸ばして、彼女の頭を撫でてみた。

その今まで見たことない光景が、少し可笑しいと頬が緩んだのは一瞬だった。

初めて味わう感覚と恥ずかしさが混ざり合って、すぐに何も考えられなくなる。


腕を顔に乗せ、口をひじで塞ぐ。

すると彼女の動きは止まって、わたしの手首を取った。

振り払おうとも、きつく握って離してはくれない。


澪「…やだ」

律「繋いでようよ」

澪「やだってば…」

律「大丈夫だから。聞かせてよ」
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/03/31(木) 23:52:58.75 ID:Xz9FpH2io
握りなおして、指を絡めて。

お互いの手に汗が滲んでいるのがわかった。

再び不規則に刺激が与えられる。

撫でるような舌が、冷たいのか温かいのか。それすらもわからなかった。


「そろそろ…下触ろうと思います」


かしこまる様な言い方で、彼女の声が聞こえた。

確実に耳へと届いていたが、返事はしなかった。


律「…澪?」

澪「…なに」

律「下触るぞ?」

澪「……」

律「いいの?」

澪「ん…聞かないでよ」

律「いいんだな」
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/03/31(木) 23:54:28.43 ID:Xz9FpH2io
お待たせして申し訳ない。
県名の通り、被災も非難もしていません。
ものすごく詰んでますが、ちゃんと終わらせますので…とりあえずここで。
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/03/31(木) 23:56:48.79 ID:Xz9FpH2io
書き忘れ
生存報告すらせずスミマセンでした…
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 00:00:51.08 ID:Px7uHCKco
キテター!
無事でなによりだ。続きwwktkしてまってるぜ
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 03:12:21.74 ID:1qynSq4IO
ふんす!
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 08:25:38.76 ID:26xw4HELo
生きてたか良かった
期待して待ってるよ
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 23:51:42.01 ID:cyRo/Fpfo
1ヶ月経った
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2011/05/02(月) 06:33:03.44 ID:xT4fjLni0
待つ事には慣れている
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/02(月) 19:15:09.74 ID:dZqfmzNko
3ヶ月書き手のレスが無ければ削除するってよ管理人さんが
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 15:08:49.39 ID:PfCnQu0No
2ヶ月経った
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2011/06/03(金) 22:57:33.10 ID:zI6MuQWt0
誰もが諦めかけていたその時…!
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 23:10:27.64 ID:88mNfidSO
勝手にageる奴って、マジでなんなの?バカなの?
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/03(金) 23:27:52.59 ID:VGBr5O2K0
>>587 そんなこと言わないのwwwww
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/03(金) 23:59:58.03 ID:nkYO7EWC0
更新きたとかおもったのにな
できればsageてレスしてくれよな

>>588
大阪府・・・>>1
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/04(土) 00:00:31.92 ID:UDXDf3RH0
更新きたとかおもったのにな
できればsageてレスしてくれよな
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 15:36:02.35 ID:WtcTP1O4o
三ヶ月経っちゃうよー!
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/06/29(水) 22:11:54.72 ID:rttACD6So
腰までかけていた布団を全部まくられる。

わたしの腰元にかかる彼女の腕を握って、その動きを止めさせた。


澪「…やだ」

律「…やめとく?」

澪「…じゃなくて」

律「ん?」

澪「…律も」

律「何がだよ?」

澪「律も、脱いでよ」
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/06/29(水) 22:12:53.39 ID:rttACD6So
律「は?何でさ」

澪「…わたしばっかり恥ずかしいもん」

律「でも意味ないし」

澪「…やだ!」


起き上がって彼女のTシャツの裾を掴む。


律「ちょまっ…ちょっとちょっと…待てって」

澪「ほら、脱いで」

律「手を離せ!」

澪「脱がす」

律「わかったわかった自分で脱ぐから!」
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/06/29(水) 22:15:16.74 ID:rttACD6So
律「…だからその、あっち向いてて」

澪「恥ずかしいの?」

律「うるっせ」

澪「…はいはい」


少し笑って、わざとらしくそっぽを向く。

音楽は既に止まっていた。


律「はい、続き」

澪「…律」
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/06/29(水) 22:17:23.51 ID:rttACD6So
抱きつくように、彼女の背中に腕を回した。

彼女も腕を回そうとした時、ブラのホックに手をかけた。


律「え何…やめろよ」

澪「これも取ろうね」

律「何でだよ意味わか」

澪「ほら早く」

律「わかったって、わかったからさーもう、手離せ」

澪「わたしがやる」

律「…やっぱ、だめ?」

澪「だめ」
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/06/29(水) 22:20:51.58 ID:rttACD6So
律「…あんまり、見んなよ」

澪「見てないし」

律「それはそれで、何か」

澪「見てほしい?」

律「…何だろ、この形勢逆転された感じ」

澪「悔しい?」

律「うるせー!」

澪「…これでお揃いだな」

律「…じゃあ続き!」


肩を軽く押されて、頭が枕に沈む。

部屋着のパンツに手をかけられる。

もうその腕を止めることはしない。

ショーツに手をやり、ゆっくりと足首まで下ろした。

その二つから脚を抜いて、ベッド脇に放り投げた。
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/06/29(水) 22:21:28.00 ID:rttACD6So
律「よし、膝曲げてみ」

澪「…こう?」

律「…股閉じてどうすんだよ」


膝と膝が離される。

彼女はその間にちょこんと座り、わたしの秘部へと手を伸ばす。


「わあ…」


粘膜に滑るように指が這う。

自分が今どうなっているかを知らされた。


「こうなっちゃうんだ…えろ」
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/06/29(水) 22:23:55.81 ID:rttACD6So
ひと撫でした後、彼女の指が皮ふを軽く叩く。

その動きに合わせ、水音が小さく響いた。


律「…ほら、聞こえる?」

澪「…知らない」

律「知らないフリしてるだけだろー」

澪「…うるさいよ」

律「音が?」

澪「…意地悪」

律「さっき澪も意地悪した」

澪「…してないよ」

律「した。だから仕返し」
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/29(水) 22:25:46.20 ID:rttACD6So
お待たせしました。
待っててくれた方々、本当にありがとう。
お待たせしたわりに今回はここまでです。
申し訳ないです。ちゃんと終われるよう努力します。
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 22:36:07.11 ID:WtcTP1O4o
おつおつ!
続きが読めて本当に嬉しい
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 23:27:41.52 ID:CPHT7RfSO
お待ちしておりましたよ
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 23:43:26.71 ID:93HIJuN/o
きた!期待超期待
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/30(木) 01:49:22.32 ID:5dkTLPcDO
待ってたよおおお
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 22:03:01.13 ID:dlWCTxG00

続きも楽しみに待ってます
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/02(金) 05:06:35.59 ID:p49AbvWTo
よさこい!
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/13(火) 18:37:43.50 ID:cw5btQhl0
早く続きが欲しいけど終わってほしくない…なんなのこれ
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/16(金) 16:55:16.48 ID:MHM8dIWp0
もう少しで3か月たつけど、まだかな…
気になって仕方ないからよき形で終わらせてもらいたい
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/30(金) 15:37:17.89 ID:nIirTfMSO
三ヶ月経ってしまった……。
このままHTML化されてしまうのか?(´・ω・`)
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/01(土) 00:30:29.31 ID:nivde5Lgo
>>1
生存報告でもいいから何か書き込みしないとHTML化されちゃうよ
大好きなSSなんでこのまま終わりは悲しすぎる・・・
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/01(土) 00:51:39.31 ID:Z5czSgEjo
書いてる人ツウィッターやってるみたいだから、
同じくツウィッターやってる人は呼び掛けてみたらどう?
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/01(土) 10:51:27.95 ID:mxBf32/1o
終わりだよ
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/04(火) 22:12:09.38 ID:OgOq/Kewo
ただ待つのだ……
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/04(火) 23:49:37.24 ID:6XPQUk7Yo
いや誰かマジで作者に教えてやれよ
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