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とある魔術と木原数多 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/14(日) 23:09:34.90 ID:LMfoLk.0


最初に簡単な注意を


・主人公は木原数多と木山春生になります

・作者が台本形式を苦手としているため、セリフの前に名前はつきません

・恋愛要素が入ってきますが多分甘くなりません

・少し残酷な描写が含まれます


これらの点を踏まえて、お付き合いしてくださる方はよろしくお願いします



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昔、スリに間違えられた @ 2024/03/16(土) 17:01:20.79 ID:TU1bmFpu0
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さくらみこ「インターネッツのディストピアで」星街すいせい「ウィキペディアね」 @ 2024/03/16(土) 15:57:39.74 ID:7uCG76pMo
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今日は月が……❤ @ 2024/03/14(木) 18:25:34.96 ID:FFqOb4Jf0
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アサギ・とがめ・新生活! @ 2024/03/13(水) 21:44:42.36 ID:wQLQUVs10
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2 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/14(日) 23:10:25.18 ID:LMfoLk.0


人口の8割を学生が占める街、学園都市。

彼ら子供達は、特別な脳開発(きょういく)によって「超能力」と呼ばれる異能の力を手に入れている。

その多くは実生活で大して役に立たない程度の能力しか持たないが、中には軍隊と戦えるレベルの圧倒的なチカラを行使する者も存在するのだ。

当然ながら。

それほどのチカラを持つ学生を抱える学園都市には、小説20冊を割り当てても尚終わらないほどのストーリーが用意されている。

――だがここでは、そんな学生達の話は語られない。


このちっぽけな、誰の目にも留まらないような片隅で語られるのは。

残る2割――科学者(おとな)達が繰り広げた、とある歪んだ物語。
3 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/14(日) 23:11:14.92 ID:LMfoLk.0

第17学区の特別拘置所


『幻想御手(レベルアッパー)』事件と呼ばれる、1万人もの学生に生じた昏睡事件をとある少女が解決してから3日後。

まだ日が出たばかりの早朝、その事件の首謀者である木山春生を訪ねる者がいた。


「久しぶりだな木山ちゃん。じーさんの実験に参加してた気弱ちゃんが、まさかこんな派手な事をするとは思わなかったなぁ」


その面会に来た男の姿を見て、木山は驚愕し――次いで激怒した。


「貴様……木原数多か!」

「嬉しいねぇ。実験の手伝いをしてただけの俺を、フルネームで覚えてくれたなんて」


彼女の怒りをニヤニヤと受け流すのは、白衣を着た長身の男。

顔に特徴的な刺青を彫っていながら、木山春生と同じ学園都市の天才研究者。

そう。

面会人は、この特別拘置所にいる誰よりも悪党な存在――木原数多だった。
4 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/14(日) 23:12:18.41 ID:LMfoLk.0

「忘れるはずが無い……貴様が木原幻生の一族で、あの実験の真の目的を知っていたのは分かっているんだ!」

「おいおい、落ち着けって。幻生のじーさんと俺は遠縁だし、あのチャイルドエラーも全員生きてるんだろ?」

「ふざけるな! 今もあの子達は目を覚まさないままなんだぞ……それが分かっているのか!」

「OK、じゃあその哀れなクソガキ共の健やかな回復をお祈りします。これでいいですかー?」

「な……」


あまりにもひどい木原の態度に、木山は言葉を失う。

だが木原は、彼女のそんな様子を一顧だにしないでこう告げた。


「大体、『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム) 』の代わりに1万人のガキ共を利用しようと考えた木山ちゃんが、俺を責めるってどーなのよ」

「……それは!」

「可愛い教え子のためならぁ? 無関係な人間を巻き込んでもぉ? 全然構いませんってかぁ?」


そこまで言うと、木原はその顔に浮かべた笑みの種類を変えた。

楽しげなニヤニヤ笑いから、どこか深く淀んだ得体のしれないソレに。


「――その通りだぜ! 大正解だ木山ちゃんよぉ!」

「……何を、言っている……?」


子供のようにはしゃいだまま、木原は弾んだ声で喝采を送る。
5 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/14(日) 23:12:17.21 ID:sac2lwQ0
キターーー
待ってたよ!
6 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/14(日) 23:13:20.54 ID:LMfoLk.0

「目的の為なら何だって利用するべきだ。そんな覚悟も出来ねえようじゃ科学者とは言えねえよなぁ!」

「いやー、俺は本気で嬉しいんだぜ、木山ちゃん」


そう言いながら彼が取りだしたのは、特殊な麻酔ガス入りのスプレーだ。


「俺らクズへの仲間入り、心からオ・メ・デ・ト・ウ」

「!」


ブシュー、と木山の顔に直撃したガスは、一瞬で彼女の意識を奪い取った。

何一つ抵抗できないままぐったりと倒れた彼女を見て、木原はスッと無表情になる。


「よし、さっさと連れてくぞ」


その声に応えたのは、彼の部下である『猟犬部隊』の1人だ。


「了解。……木原さんも一緒に待機所へ?」

「ん? いや、俺は後で合流するわ」

「そうですか。では我々は先に帰還します」


部下はそう言うと、あっさりと拘置所の牢を開けて木山を運び出した。

その光景を見ていた木原が退屈そうに漏らした、独り言に気付くことなく。


「――ようこそ黒く染まったシンデレラ。カボチャの馬車へご招待、てか?」


ましてや、木山が気絶した時に落としたロケットになど目もくれず。

唯一気付いた木原は、それを一瞥すると遠慮なく踏み砕いた。


「まあ、行先は素敵なお城じゃなくて地獄なんだけどな」
7 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/14(日) 23:14:09.72 ID:LMfoLk.0

『猟犬部隊』のとあるアジト


木山春生が目を覚ましたのは、誰かに頭を小突かれたからだ。


「ちょっと、いい加減起きなさいよ」

「……ここは……?」


床に寝かされていたらしく、体の節々が痛む。

それを我慢してゆっくり起き上ると、目の前にいた2人の女性の片方が溜息をついた。


「珍しく木原さん直々にスカウトしたっていうから、どんな人間かと思えば……てんで使えそうにないんだけど?」

「状況の把握も出来ていない相手に、それは酷よナンシー」

「それ止めて。何がナンシーよ、馬鹿みたい」

「そう? 互いを呼びあえる名前は、こんな私達にとって貴重だと思うけど」

「はいはい。本当ヴェーラは変わってるわ」

(……)


どうやら性格のきつそうな黒い短髪の女性がナンシーで、明るく人懐っこいセミロングの茶髪がヴェーラらしい。

たが、どうみても2人は日本人に見える。
8 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/14(日) 23:15:27.76 ID:LMfoLk.0

「ここはどこだ? それに、君達は日本人ではないのか?」

「はぁ?」


木山の疑問に、ナンシーがとても嫌そうな顔をして首を振った。


「どう見ても日本人に決まってるでしょ。だから嫌なのよコレ」

「?」


頭が疑問符だらけの木山に、ヴェーラが端的に回答する。


「気にしないで。ナンシーとかヴェーラっていうのは、コードネームなの。私達はとっくに名前を失ったから」

「コードネーム、だと……?」

「あんた、木原さんから何にも説明受けてない訳?」


ナンシーのその言葉を聞いて、ようやく木山は自分が意識を失う前の事を思い出した。


(そうだ。私は木原数多によって、あの特別拘置所から連れ出された)

(……だが何のために?)

(確か彼女……ナンシーは、スカウトがどうとか)

(スカウト……?)
9 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/14(日) 23:16:27.10 ID:LMfoLk.0

(確か、特別な境遇にある犯罪者は学園都市の暗部へ送られると聞いた事がある)

(まさかこの私が、暗部落ちとは……)


「人の話を聞いてる?」

「!」


自分の状況を分析していた木山に、ナンシーが怒りを露わにして詰め寄った。


「質問ぐらい答えろっての。説明は受けたの?受けてないの?」

「あ、ああ、聞いてない」


ますます不機嫌になったナンシーは、チッと舌打ちしてそっぽを向いた。

代わりにヴェーラが、おどおどする木山に優しく説明する。


「詳しくは後で木原さんから聞けるでしょうから、簡単に言うけど」

「ここは『猟犬部隊』のアジト。私もナンシーもその一員。リーダーは木原さん」

「『猟犬部隊』……か。本物を見るのは初めてだ」

「おめでとー。ついでにここにいるのは、男女問わず軽蔑に値するクズばかりだから気負わなくていいわよ」
10 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/14(日) 23:17:25.54 ID:LMfoLk.0

ヴェーラの冗談(ではないのだが)に、木山は力なく口元を歪めた。

その雰囲気が気に食わなかったのか、ナンシーが再び話しかけてくる。


「あんた人事みたいだけど、自分も今日からその仲間入りって言うのは分かってんの?」

「まあ、それぐらいは。拒否権は無いのだろう?」


「またしても大正解だぜ、木山ちゃん」


いつから話を聞いていたのか、タイミング良く会話を遮って木原がアジトに入ってきた。

特別拘置所で見たときと違って、両手にマイクロマニピュレータと呼ばれる金属製の精密作業用グローブを付けている。


「……念のため聞くが、私が黙って貴様の言う通りにするとでも?」

「分かってるくせに、そういう無駄なハナシは止めようぜ」


木原が取りだしたのは、木山のかつての教え子の写真。


「人質ぐらいは用意してるって、想像付いてたんだろ?」

「……クッ」


悔しそうに歯を食いしばる彼女の姿を見て、木原は交渉は終わったと判断したらしい。

写真を無造作に放り捨てると、すぐに本題を話し始めた。
11 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/14(日) 23:18:44.81 ID:LMfoLk.0

「汚れ仕事を引き受ける『猟犬部隊』にようこそ。今日からしっかり働いてもらうぜ」

「……私はただの科学者だ。銃に触れたことも無い私に、戦いなんて無理だと思わなかったかね?」

「言ってくれるなあ木山ちゃん。『幻想御手』を使って大暴れしてたのはどこの誰よ?」

「だが、すでに『幻想御手』のネットワークは存在しない……」

「じゃあ、“また”作るか。ぎゃはははは! 今度は1万人と言わず100万人ぐらいに聞かせんのはどーよ!」

「何を馬鹿な!」


出来るはずが無い。

データは全て消去したし、一度事件を経験した学生が怪しい音楽ファイルに2度も引っかかるとは思えない。


(そもそもそれだけ大勢の人間に、短時間で特定の音楽を聞かせるなど不可能だ)


頭ではそう分かっているのだが。
12 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/14(日) 23:19:55.64 ID:LMfoLk.0

目の前の男は、どれだけ突拍子もない事でも、実現させてしまいそうな雰囲気を持っている。

だが、木山の警戒を彼はあっさり否定した。


「冗談だって。そもそも木山ちゃんを戦闘要員で補充した訳じゃねーし」

「では、何のために彼女をスカウトしたのです?」


予想外の言葉に、ナンシーが首を傾げた。

ヴェーラも意外そうな顔で木原を見つめる。


「これは、他の連中が集合してから説明するつもりだったんだけどなぁ」


いつになく機嫌の好さそうなリーダーに、部下の2人はむしろ恐怖を感じるが。

木原はその怯えを感じ取った上で、逃がさないように1歩近づいた。



「これから『猟犬部隊』の戦う相手は大きく変わる。――『魔術』って知ってるかオイ?」




木原数多率いる『猟犬部隊』が魔術と交差するとき、物語は始まる――!

13 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/14(日) 23:21:28.52 ID:LMfoLk.0

今日はここまでになります

と言う訳で、原作のストーリーを完全に無視した物語の始まりです

原作では死なないキャラが死んだり、その逆もあります

『猟犬部隊』のみなさんはそれなりに活躍する予定です

登場するのは魔術師が多くなります

どこまで続くか分かりませんが、最後まで頑張ります

では、おやすみなさい
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/14(日) 23:35:56.54 ID:V7Fb3Mc0
とりあえず、乙
15 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/14(日) 23:44:15.48 ID:cOeOgtUo
楽しみが増えた嬉しい乙
16 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/15(月) 02:36:29.34 ID:wfeeTmYo
前作から引き続き
楽しみにしてますよ。
17 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/15(月) 08:45:52.14 ID:LtZww2w0
>>1
相変わらずの投下スピードと着眼点
期待しまくりだぜ
18 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/15(月) 21:00:47.33 ID:AaMHZ3co
木原先生の台詞回しが悪くていいなww
19 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/16(火) 00:23:28.01 ID:lU3eNU20

こんばんはー、さっそくのレスありがとうございます

では、投下


『猟犬部隊』のとあるアジト


――「これから『猟犬部隊』の戦う相手は大きく変わる。――『魔術』って知ってるかオイ?」


木山春生は、言われた言葉の意味が本気で分からなかった。


(“まじゅつ”とは何だ?)

(一体木原は、この私に何をさせたい……?)


だがそれは、周りにいたナンシー達も同様らしい。

2人は互いに目を合わせると、代表してヴェーラがおずおずと手を挙げて質問した。


「あの……それは何らかの暗号や比喩ですか?」

「いやいや違うぜ。チチンプイプイ、アブラカタブラ、そんな感じのお伽噺に出てくる“魔法使い”の事なんだわ」
20 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/16(火) 00:24:58.71 ID:lU3eNU20

ますますもって意味が分からない。

思わず笑ってしまった木山は、そのままの表情で吐き捨てた。


「何を言うのかと思えば……。ここは学園都市だぞ。それに、貴様は曲がりなりにも科学者だろう」


かつては超能力も、魔法と同じくオカルトの領域だった。

しかし今では、投薬・電気ショック・催眠術を用いた“脳の開発”によりそれを実現している。

そして実現しているからこそ、逆に魔法や魔術といった非論理的な現象を決して認めない。

木原数多もそういう科学者の1人ではなかったのか。


「気持ちは分かるぜ、木山ちゃん」


専門分野こそ違えど、実績からすれば木山よりも優秀なはずの科学者は、あっさりと彼女の侮蔑を受け入れた。


「だが科学者だからこそ、感じた事があるはずだぜ?――“違和感”ってヤツに」

「……」

「まあ俺だって、子供が信じる魔法そのものがあるなんざ思ってねぇ。けどな……」

「この世界には、俺らの知る理論だけじゃなく“全く別の理論”が存在している可能性がある」


どこか挑発的な木原の態度に、木山が僅かながら興味をひかれたその時。
21 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/16(火) 00:26:00.85 ID:lU3eNU20

「木原さん、ただ今戻りました」

「……デニス、機材を乱暴に扱うなって言ったろ」


猟犬部隊の男2人が、アジトへ戻ってきた。


「遅ぇよバーカ。着替えは後だ。テメェらも座って話を聞け」


あらかじめ話があると知らされていたのか、その2人は無言で頷いた。

後に自己紹介されて知ったが、2人のコードネームはデニスとマイク。

メンバーで一番若く、敬語を使う金髪がデニス。少し言葉が乱暴で、灰色の髪をしているのがマイクだ。


「よし。じゃあ続きな」


本腰を入れて会議を始めるつもりの木原が、幾つかの書類を取り出した。


「さっき言った『魔術』っていうのはあくまで仮称だ。学園都市の“外”で開発された超能力の、な」

「……そんな話は、聞いたことが無い」


この世界で唯一超能力開発に成功したのが、ここ学園都市だ。

それ以外に能力者は存在しない――はず。
22 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/16(火) 00:27:09.14 ID:lU3eNU20

「俺も初めて聞いた。だが驚く事じゃねぇ」


木原が資料をめくりながら、適当に木山の話を受け流す。


「その最大の特徴は、十字教を始めとする“宗教観念に基づく異能の行使”ってところか」

「宗教……『自分だけの現実』ではなく、信仰心を土台にしているという事?」


ナンシーの訝しげな呟きに、木原が多分な、と同意した。


「どうもその『魔術』とやらは、学園都市(きぞん)の理論とは一線を画す別物らしい」

「で、それが?」

「気が早いな、大事なのはここからだぜ木山ちゃん」


木原は再び資料をめくり、興味深い実験動物を見つけたといわんばかりに目を輝かせる。


「上からの報告によれば、その『魔術』を使う人間――便宜上『魔術師』と呼ぶが、そいつがこの学園都市に侵入した」


その場がシン、と静まり返る。

学園都市外部で開発された能力者が存在するというのがすでに眉唾物なのに、それが今近くにいる?

あまりにも信じられない事だった。
23 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/16(火) 00:28:03.91 ID:lU3eNU20

「ポカンとしてるんじゃねぇよ間抜けども。……そんな面白そうなモノ、見逃す手は無ぇよな?」

「じゃあ、『猟犬部隊』の私達はこれから……」

「当然、それの回収作業を行う。ヘマしたらぶっ殺す」


ヴェーラの言葉を遮って、木原が宣言した。


「その為の特別編成だ。『猟犬部隊』でも、まだ役に立つ方のお前らを呼んだ理由はこれで分かったな?」

「ナンシー、ヴェーラ、マイク、デニス、そして念のため作戦に参加する俺も含めて5人で作戦を行う」

「了解」


マイクの同意は、その場にいる全員の総意として受け止められたらしい。

満足そうに頷いた木原が、具体的に作戦を詰めようとする。

その前に、木山が慌てて質問した。
24 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/16(火) 00:29:32.43 ID:lU3eNU20

「待って欲しい。その魔術師捕獲作戦に、私を呼んだ意味は?」

「察しが悪いなー木山ちゃん。大脳生理学を専門にしていたから。これで分かるよな?」

「ああ、分かったよ。……捕まえた後で、能力の解析を私に行わせるつもりか」

「もちろん、徹底的に頼むぜぇ。じゃねーと、多分そいつは“もっと酷い事になる”からさ」

「……」


恐らく、木原が自分を『猟犬部隊』に呼びこんだのはそれだけではあるまい。

木山はそう思いながらも、黙って従うほかに道は無かった。


「さぁて、『対魔術師用特別編成隊』の初陣だ。楽しくなってきたなぁ!」

「……木原さん、その学園都市に侵入した『魔術師』の名前は?」


ナンシーの疑問に、木原は歌うようにしてこう答えた。







「本名は不明だが、コードは付されてたな。確か……禁書目録――インデックスだと」



25 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/16(火) 00:30:16.41 ID:lU3eNU20

今日はここまでです

流石に猟犬部隊は人数が多いので、主に登場するキャラを限定させてもらいました

今さらですが、この話に高校生以下の能力者は登場しません

妙な縛りを付けてしまいましたが、暇つぶしに読んでいただければ幸いです

では、おやすみなさい
26 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/16(火) 04:48:57.56 ID:D7d4BoDO
乙! まさかのインデックスさん!


ちなみに、数多さんはナユタンの実験には関わってないって事でおk?
27 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/16(火) 06:18:53.18 ID:b.eFG9co
ま、普通はこうなるわなww>インデックスさん
28 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/16(火) 10:14:57.99 ID:mlsxLpQ0
>この話に高校生以下の能力者は登場しません
すげぇ縛りだな
主要キャラほとんど登場できないぞ
29 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/16(火) 12:31:59.16 ID:ltFWo1go
ステイルは14歳だということをふと思い出した
30 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/16(火) 16:04:20.47 ID:lAQMhwDO
以下って高校生も含む?
超電磁砲組と絹旗あたりがアウトくらいだと思ってた
31 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/16(火) 18:22:13.34 ID:tGVahcAO
むぎのんはセーフ
32 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/16(火) 19:49:30.71 ID:.8fOX.HA
高校生以下=高校生を含む
高校生未満=高校生を含まない
33 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/16(火) 22:40:07.46 ID:ylb3zgwo
猟犬部隊に一方さんが殺される…だと…
34 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/17(水) 00:36:21.05 ID:g5AwYjs0

こんばんはー、レスありがとうございます

>>26
偽典の話は出てきませんので、そうなります
ただし木原一族の設定は、一部内容に取り入れるつもりです

では、投下


7月27日午前10時、第7学区のとある大通り


打ち合わせと言うよりは、木原の一方的な説明だけで作戦が立案されて15分。

夏休みに入ったばかりで学生達が溢れる大通りに、ヴェーラとマイクがカジュアルな格好で歩いていた。

本来『猟犬部隊』は、重武装で敵を殺戮する事を基本戦術としている。

だが、今は真昼間で大勢の人間がいるのだ。

その前でいつものように行動する事は、あまりにも馬鹿げている。

よって木原は、ひとまず標的を見つけ出してから人気のないところへ誘導するよう指示を出した。
35 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/17(水) 00:37:36.82 ID:g5AwYjs0

まるでデートのようなおしゃれな格好をしている自分に、ヴェーラが溜息をつく。


「相手の能力が不明なのに、こうも“涼しい格好”だと不安になりません?」

「しょうがないだろう。そもそもこの作戦は普段と違いすぎる。文句ばっか言って手間をかけさせんなよ」

「はいはい」


ヴェーラを諌めはしたものの、不満の感じ方で言えばマイクの方が上だった。


(あの人に逆らうつもりは毛頭ないが、今回はあまりにも話が馬鹿げてる)

(学園都市以外の“超能力者”だと……?)

(そんなもの、存在してたまるか)


『よーし。奥にある公園が見えたな? そこにいる愛しの“魔法使い”の様子を観察した後、可能であれば回収しろ』

『ま、可能じゃ無くてもやってもらうけどよ。分かったか?』


同じように辺りを歩いている(はず)の木原が、マイクの思考を無線で遮った。
36 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/17(水) 00:39:11.99 ID:g5AwYjs0

「こちらマイク。了解です」

「まずは私とマイクで、それとなく探ってみます」


同じく無線を聞いたヴェーラが、緊張気味に公園に目を向ける。


『……しかし、相手が大能力者(レベル4)、いや強能力者(レベル3)並みの力を持っていた場合どうするんだね?』


通信に割り込んだのは、アジトで部隊の情報管理を担当している木山だ。

出会ったばかりの『猟犬部隊』とはいえ、目の前で怪我したり殺されたりするのを見たくは無い。

銃器も持たずに接触した場合、相手の能力によっては一方的に攻撃されるかもしれないのだ。


(まあ、木原(あのおとこ)だけは死んでくれて構わないのだが)


それでも、木原は彼女の心配を鼻で笑った。


『別にこいつらの代わりは幾らでもいるし。とりあえず無様に負けたら腹ァ抱えて笑ってやるよ』

『……せめてこちらにも、能力者がいれば良かったのにな』
37 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/17(水) 00:40:10.20 ID:g5AwYjs0

『ぎゃはは! うちに“モルモット”はいねーよ。――なあマイク?』

「……」

『? まさか彼は……』

『詮索ばっかりすると嫌われちゃうぜぇ木山ちゃん』


それっきり、無線は反応しなくなった。


(……あの男は、人を苛立たせる天才だな)

(それにあの余裕が気になる。ひょっとして、あいつは相手の能力をすでに知っているのか……?)

(いや、そんなはずはない。知っていたら情報を共有するはずだ。そうしないメリットが無いんだからな)

(だとすると、単に自信の表れかもしれない)


どこか腑に落ちないものを感じながらも、彼女は進展を待つしかなかった。

そして事態は、彼女の思わぬ方に進展する。
38 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/17(水) 00:41:27.37 ID:g5AwYjs0

木原のもとに報告が届いたのは、それからわずか1分後の事だ。


『こちらマイク。回収目標なんですが……』

「おお、随分早いな? で、どうした?」

『どうやら、その……すでに目標は気絶しているみたいです』

「気絶だと?」


自らも公園に向かっていた足を、思わずその場で止める。

極めて珍しい事に、彼の顔に浮かぶのは困惑だ。


『はい。意識を失ってベンチに寄りかかっていました。とりあえず回収します』

「……ん。じゃあそのまま全員待機所へ戻れ」

『了解』


無線を切った後、木原は頭を掻いて大げさに嘆いた。


「しっかし盛り上がらねぇなー。どーすんだよ」


ただし口元には、得体のしれない笑みを残したまま。
39 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/17(水) 00:42:37.22 ID:g5AwYjs0

7月27日午前11時、『猟犬部隊』のとあるアジト


外部で開発された能力者――インデックスは、到着と同時に目が覚めたらしい。

彼女は席に降ろされた直後、出迎えた木山に日本語でこう言った。


「おなかへった」


容姿が日本のモノではないのに日本語を流ちょうに話した事や、さらにその内容が予想以上に下らなかった事。

それらの要素が相まって、泣く子も黙る『猟犬部隊』の面々は互いに顔を見合わせる。


「何言ってんだこのクソガキ。状況理解してねーのか」


木原でさえも、呆れたようにそう言うしかなかった。


「行き倒れの私に、ご飯をくれるんじゃないの?」

「どう考えたらそんな結論になるのよ……」

「?」


ナンシーの突っ込みにも、インデックスはきょとんとした顔をする。
40 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/17(水) 00:44:17.18 ID:g5AwYjs0

このままでは、イライラした木原が彼女を『学習装置(テスタメント)』へ無理やり押し込みかねない。

そう思った木山が、コンビニのおにぎりを取り出した。


「……とりあえず、こんな物しかないが」

「わあ、あなたはとても良い人だね。いただきます」

「よし、それで……」

「おかわりくれると嬉しいな」

「……」


それから7つほどおにぎりを食べたところで、ようやくインデックスは食事を終えることになる。
41 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/17(水) 00:45:09.08 ID:g5AwYjs0

久しぶりにお腹が満たされてご満悦のインデックスに、木原が本題を突きつけた。


「とりあえず、残念な知らせだクソガキ」

「え?」

「テメェが学園都市に侵入した人間だって事ぐれぇ分かってる」

「あ……」

「……つーかよ、俺はこういうのめんどいから嫌なんだよなぁ。ヴェーラ、後話せ」


が、途中で嫌になってヴェーラに丸投げした。

それはいつもの事なのか、ヴェーラは嫌な顔一つせずに後を引き継いだ。


「はっきり言うわ。私達は犯罪者より性質の悪い集団よ。今あなたを生かしているのは、その前に聞きたい事があるから」


その言葉に、インデックスが何かに思い当たったかのようにハッとする。


「まさか、あなた達も“魔術結社”なの……!?」

「魔術……ねぇ」


まさか向こうからその単語を言われると思っていなかった木原は、それまでの退屈そうな態度を一変させた。
42 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/17(水) 00:46:18.67 ID:g5AwYjs0

「あれ? でも、ここにいる誰からも魔術の気配を感じないんだよ……?」

「私達が聞きたいのはそれよ。学園都市外部で開発された異能が、実在するのかどうかって事」

「良く分からないけど、当然魔術はあるよ」

「……本気で言ってるのか」


あまりにも堂々と宣言された為、マイクはバカバカしいと笑う事が出来なかった。


「いいねいいね、非科学なんてモノがあるなら是非見てぇ!」


逆にテンションを上げた木原が、銃を片手にインデックスに近づく。


「で、それをお披露目してくれるんだろうなぁオイ?」


それに対するインデックスの返答は、意外なものだった。


「私には魔力が無いから、魔術を使えないの」

「……そうか」


そう言い放つと同時、木原は躊躇なく銃を彼女に向けて――。


「じゃあ、もう用はねえな」


彼女が何かを言うよりも早く、ダンダンダン!!と発砲した。
43 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/17(水) 00:47:20.57 ID:g5AwYjs0

今日はこれにておしまいです

能力者についてですが、高校生を含む子供は登場しません

上条当麻及びそのクラスメイト、レベル5の7人や暗部組織に所属している能力者も同じです

ただし魔術師はステイル、アニェーゼ、エツァリのような年齢でも出てきます(土御門は除外)

正に誰特な話ですが、それでも見てくださる方はよろしくお願いします

では、おやすみなさい
44 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/17(水) 00:50:04.62 ID:JMhTxGQo
なるほど、純粋に学園都市暗部(大人サイド)VS魔術サイドなんだな・・・
コレは面白い
45 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/17(水) 00:58:26.95 ID:/ycJrp6o
木原神拳は歩く教会を突破せしめるのだろうか?
46 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/17(水) 01:28:33.76 ID:2pZmz5w0
竜王の殺息が出てきたら木原さん達どうすんだろ?
47 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/17(水) 01:42:06.38 ID:wMdR7Xg0
乙!
木原くンマジ容赦ねぇ!
48 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage ]:2010/11/17(水) 03:30:49.40 ID:bctgd/.0
科学サイドの大人縛りは大変そうだけど頑張って!!
オッサン大好きの俺は期待してる。
49 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/17(水) 11:40:23.45 ID:OR7SWxo0
>>1
どう考えても魔術サイドの方が強いはずなのに
木原クンなら何とかしちゃいそうで困る
50 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/17(水) 18:00:18.17 ID:795ofnYo
>>45
いや無理だろ。
アレはあくまで対一方さん反射用だし
51 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/17(水) 19:03:09.53 ID:dqzcFSMo
新しくできてた。
別人さん、全作品読んでるぜ。大ファンだ。がんばれ愛してる
52 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/18(木) 15:41:56.11 ID:VdAf13E0
>>46
そこが一番気になるな
あえてやられ役の猟犬部隊をメインにしてる以上、何か考えはあると思うが

とにかく続きに期待!
53 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/19(金) 00:17:35.76 ID:vjiNtik0

こんばんはー、沢山の優しいレスに感謝です

では、投下


『猟犬部隊』のとあるアジト


目の前で起きた光景に、木山は心底驚愕した。

木原が、一切の迷いなく弾丸を幼い少女に叩きこんだ事――ではない。

至近距離で3回も銃撃された少女が、何事も無かったかのようにその場でポカンとしている光景にだ。

例え防弾チョッキを着込んでいたとしても、あの距離から撃たれれば骨の1つや2つは折れるだろう。

だがインデックスは、全く痛みを感じてないのかケロリとしている。


「い、いきなり攻撃するなんて、あまりにひどいかも!!」


訂正。

結構怒っていた。撃たれたとは思えないほど、元気いっぱいに。


「確かに、ここなら魔術師も追ってこれないかも!と思って高い塀を乗り越えて侵入したけど、何も撃たなくても良いんじゃないかな!?」

「……お前、何で生きてる? 能力が使えねぇっていうのはブラフか?」
54 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/19(金) 00:18:58.31 ID:vjiNtik0

そんな彼女が黙らざるを得ないほど真剣な声色で、木原が静かに問い詰める。


「私が魔術を使えないのはホントだよ。銃が効かないのはこの服のおかげ」

「服? その修道服は、どう見ても防弾チョッキじゃねぇぞ」

「これは、『歩く教会』っていう極上の防御結界なの」


話を聞く気になったのか、木原が無言で続きを促す。


「トリノ聖骸布を正確にコピーした布地を、その織り方・糸の縫い方・刺繍の飾り方まで、全て計算して修道服に仕立て上げてあるんだよ」

「……」

「その強度は法王級(ぜったい)で、あなた達で言うなら核シェルターって感じかな」

「物理・魔術を問わず全ての攻撃を受け流し、吸収しちゃうんだから」


得意げに語るインデックスを前にして、『猟犬部隊』のメンバーは沈黙した。

普段なら戯言として一笑に付す話だが、事実撃たれても平気なのだから信じるしかない。


「……良いねぇ、学園都市の科学技術じゃどうやっても不可能な現象だぜ。もう少し詳しい話を聞かせろ」


誰よりも早く状況に適応した木原が、あっさりと銃をしまう。

代わりに取り出したのは、インデックスの話を記録し、調査するための超小型パソコンだ。


「どうやら、思った以上にタノシイ事になってきたな」
55 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/19(金) 00:20:17.17 ID:vjiNtik0

それから30分ほどかけて、木原達はインデックスから様々な話を聞いた。

十字教と魔術世界、世界中に存在する魔術結社の事。

未だメンバーのほとんどは半信半疑であるものの、とりあえず彼女の言葉を疑うそぶりを見せる者はいなかった。

インデックス自身については、本人曰くイギリス清教のシスターで、1年前より昔の記憶は思い出せないらしい。

だが、木原にとって重要なのはそんなことではなく。


「完全記憶能力を利用した、10万3千冊の魔道図書館!」

「つまり俺ら科学者の知識とは全くベクトルの違うものを、その頭に記憶してるって事だろオイ!」


魔術の知識という“宝物”を、彼女が大量に持っているという事だ。


「それだけじゃねえ。こいつの知識を、幾つもの魔術結社が狙ってやがるときたもんだ」

「はい。学園都市外部の能力者の情報を入手する、という観点から見ればこの上ない人材です」


ナンシーが同意したように、インデックスほど木原の目的に符合する人間はいないだろう。

まず彼女自身には他の誰よりも魔術知識がある。

そして、保護しているだけで彼女を狙ってやってくる魔術師と戦える。


(最高の釣り餌じゃねーか。これは愉快な事になりそうだ)
56 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/19(金) 00:21:24.76 ID:vjiNtik0

心の底から楽しげな木原とは対照的に、冷や汗を流す木山がこう聞いた。


「それで、これからどうするつもりなんだ?」


木山のような常人(しでかした事を考えれば、そうは言えないのだが)からしてみれば、木原の喜びようはまるで理解できない。

このままインデックスを匿えば、絶えず魔術師に狙われる。

言わば自分から爆弾を抱え込むようなモノではないか。

いかに知らない知識を取り入れるためとはいえ、頭がいかれてるとしか思えない。

そしてそんな木原に黙って従う『猟犬部隊』も、木山には納得いかないものだった。

尤も彼らの場合には、見たことも無い魔術師を相手にする方が、木原の不興を買うより千倍もマシだから従っているに過ぎないのだが。


「これから、か。……とりあえず、アレだ」

「ん?」

「『学習装置』で脳のチェックだろ」

「彼女の記憶した、魔道書の知識とやらを取り出すのか」


木山がそう言った直後。


「だ、ダメ!」


突然、インデックスが首を大きく横に振った。
57 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/19(金) 00:22:27.13 ID:vjiNtik0

「私の記憶している『原典』は、普通の人が読んだら一発で廃人になっちゃうようなモノしかないの」

「だから、『てすためんと』が何かは良く分からないけど、絶対に中身を見ようとしちゃダメ!」


必死な様子でそう訴えるインデックスを見て、木原が何かを思案する。

木山は、彼なら無理やりにでもそれを実行するかもしれないと思っていたのだが。

意外な事に、木原はインデックスの頼みを何故か受け入れた。


「あー。直接出力しなくても、テメェが状況に応じてしっかり解説できるんなら“今は”それでイイ」


つーか『学習装置』を使う理由はそれじゃねぇ、と木原は真剣な顔をして言う。


「テメェの矛盾した状態が納得いかねえから調べるだけだ」

「え? え?」


混乱するインデックスに聞こえないように、木原が内緒話を始めた。
58 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/19(金) 00:23:42.17 ID:vjiNtik0

「あのな、完全記憶能力を持つのに記憶喪失ってあからさまにオカシイだろーよ」

「言われてみれば確かに……」

「だろ木山ちゃん? 過去の記憶で残っているのは10万3千冊の知識だけで、残りは全てすっからかんて言うのはありえねえ」

「この子に本の知識がある以上、完全記憶能力に異常は無い……」

「そ。けどな、だったら他の記憶を覚えていないって言うのは妙だろーが」


脳の専門家でもある木山が、愕然としたように言葉を紡ぐ。


「――完全記憶能力は、意味記憶をエピソード記憶と“共に”記憶する」



木原はつまらなさそうに話を続けた。


「当然だよなぁ。普通の人間は字の読み方を記憶しても、誰とどうやってどんな風に学んだのか、つまりエピソード記憶は忘れちまう」

「でも完全記憶能力者は、覚えたときの状況を全て記憶している。つーかその時のエピソード記憶が消えてんなら、そもそも完全記憶と呼べねェ」

「じゃあ、この子の脳は……」

「完全記憶として両立してなきゃおかしいはずの記憶が、片方だけ失われてる。結論は単純だぜ」

「誰かが意図的に弄ったって事以外考えられないよな?……スゲェな!10万3千冊の知識以外を、全て削り取るなんて!」
59 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/19(金) 00:25:09.46 ID:vjiNtik0

「だがそうすると、その理由は……?」

「おいおい、頼むぜ木山ちゃん。そんなの分かりきってるだろーが」

「?」

「考えてみろって。犯人は誰だ?」

「仮にこいつの知識を狙う人間の仕業だったとして、こうするメリットはあるか?」

「俺なら中身を読み取った後、他の誰にも読まれないように“魔道書”の記憶を消すか、まあ命を奪うな」

「なのに、わざわざエピソード記憶の方を消して、しかも1年間放置する理由は存在しねぇだろ?」

「だったら犯人は1つしか考えられないよなぁ?」

「このガキに魔術知識を仕込んだイギリス清教が、自分達で管理しやすくするために手を加えたんだろう」

「まさか……正気の沙汰とは思えない……!」


絶対に逆らわなくさせるため、全ての思い出を奪う。

科学者(じぶんたち)よりも趣味が悪い魔術師(じんしゅ)が存在する事を知って、木山は言葉を失った。

だが、さらにおぞましい事を木原は平然と口にする。



「賭けても良いが、連中がただ記憶を奪っただけで済ますはずはねぇ」
60 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/19(金) 00:28:43.01 ID:vjiNtik0

「例えば俺なら、大事なモルモットの逃走を防ぐため脳に爆弾やバルーンを仕込む。……逃げたら殺せるようにな」

「反吐が出る」

「あっそ。けど同じ事をこのガキはされてるはずだぜぇ。その“魔術”ってやつでよ」

「記憶の限定破壊すら可能な以上、脳を利用した絶命方法なんざ幾らでも用意出来るはずだからな」


否定は不可能だった。

木山の『感情』は有り得ないと叫ぶが、『知性』はそれぐらいはするだろうと冷静に告げていたからだ。


「イギリス清教にいずれ戻らないと、確実に死ぬ。つまり逃げ続けることは不可能。だから虎の子であるこいつをほったらかしにしていた」

「だが、これは油断を招いたな。……連中は致命的なミスを犯した」

「ミス、だと?」

「そうさ。学園都市(おれら)の領域に、こいつが逃げてきた事。ぎゃははは!」


脈絡もなく、弾けたように笑い出す木原。

腹を抱えてヒーヒー笑う彼の姿は、正気を失っているかのようにも見える。


「笑えるぜ! 誰が作り上げたかは知らねぇが、残念でした!」

「“脳を弄る”事にかけて、俺ら以上の適任は存在しねェ!」

「そのために、『学習装置』を……?」

「そう! こいつにどんな“爆弾”が仕掛けてあっても、脳に直接アクセスする『学習装置』の相手になる訳がないからなぁ」


木原の宣言が、アジトに響き渡った。


「――勝負といこうぜ魔術! カビくせェ信仰心とやらのチカラをこの俺に見せてみろ!」
61 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/19(金) 00:29:51.29 ID:vjiNtik0

途中から蚊帳の外だったインデックスが、静かに木原に問う。


「あなたは、何をする気なの?」

「良く聞け。俺は木原数多、科学者だ。これからテメェの記憶喪失の原因を探る」

「……それは無理なんだよ。私の知りうる魔術では、どうにもならなかったもん」

「だろうな。むしろそんな知識を教えておくはずがねぇ」

「じゃあ何が出来るって言うんだよう」

「決まってる。俺達が扱うのは科学だ。……デニス、『学習装置』の準備!」


木原の号令に、デニスが慌てて従った。

その姿を横目で見ながら、インデックスはそれでも首を横に振る。


「ハッキリ言うね。これ以上私に関わらないで」

「あ?」


木原は、初対面で銃弾をブチ込んだ自分の事を彼女が信じていないからそう言ったのかと思った。


「今さら逃がすかよ。10万3千冊には手を出さないつってんだから大人しく――」

「“違う”よ」

「……?」
62 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/19(金) 00:31:04.80 ID:vjiNtik0

「さっきも説明したけれど、私は魔術師に追われてるんだよ?」

「このまま私と一緒にいたり、ましてや私の脳(なかみ)を知るような事があれば、“あまた”は殺される」

「あまたはいきなり銃を撃つような恐ろしい人だけど、それでも私の所為で殺されるのは見たくないから」


だが、インデックスにはあきらめにも似た笑顔だけがあって。


「それに、他の人はおにぎりをくれた優しい人達だから巻き込みたくないんだよ」


その声は、どこまでも思いやりと優しさだけに溢れていて。


「私の事は忘れてしまうのが一番いいかも」


――故に、どこまでも木原をムカつかせた。


「話聞いてたか、クソガキ?」

「あ……」


彼はインデックスの襟を片手で掴んで持ち上げると、咳き込む彼女にこう言った。


「俺は“優しい”からもう一度だけ言ってやる。今さら逃がすかよ」

「ゴホ、ゴホ」

「魔術師が俺を殺しに来る? 実にご機嫌な話だろーが!」
63 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/19(金) 00:31:13.65 ID:oIJwdQI0
期待
64 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/19(金) 00:32:34.40 ID:vjiNtik0

「何を、言ってるの……?」

「分っかるかなぁ。殺し合いなんて些細な事は問題じゃねーよ」

「テメェらは俺の知らない知識を持っている、俺はそれをもっと知りてぇ」

「そのためならテメェを誰からであろうと保護するし、誰であろうと殺す」


ドサリ、と手を離されたインデックスが床に落ちる。

彼女の顔は、9割の混乱と1割の“記憶にない感情”で彩られていた。

相手がどんな悪党で、最低の人間であろうと。

今まで彼女は、記憶にある限り一度として『保護してやる』と言われた事は無かったから。


先ほどとは違った笑顔に涙を浮かべて、インデックスはゆっくり言葉を紡いだ。


「……じゃあ。私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」


これが彼女の、最後通牒。

今まで木原がいた『科学の世界』と、インデックスがいた『魔術の世界』。

それらを隔てる扉を開ければ、2度とその扉は閉じる事は無い。

だからこそ、木原は。


「地獄か。どーするよ、楽しみ過ぎて眠れねぇぞ?」


一瞬の逡巡も見せずに、その扉を蹴り破った。
65 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/19(金) 00:33:52.49 ID:vjiNtik0

今日はここまでで終了です

恐らく次の投下で序章が終了します

ちなみにステイルと神裂はインデックスを見つけていません

原作よりも科学サイドとの仲が険悪で、学園都市侵入許可が下りなかったからです

本編で説明できるほどの筆力が無い事を謝罪します

では、おやすみなさい
66 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 00:55:33.25 ID:7aJvG2Yo
なんだろう、すっごいワクワクしてきた
67 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 01:00:55.21 ID:gSopIRco
木原くン対ねーちんが物凄く楽しみだ
68 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 02:16:05.03 ID:cZM08Woo
自分の好きなキャラの多くは出ないから不安もあったんだが
この展開は流石に新鮮過ぎて楽しみだ
69 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 07:36:25.93 ID:EpBfs5Qo
木原くンマジキチカッコイイ
70 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 12:14:21.04 ID:yaxGq1M0
何だ何だよ何ですかァ?
木原くンが調子に乗りすぎだと思うンですけど
こんな面白ェ話には一方通行さンが登場するべきじゃないンですか?
71 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 12:28:04.85 ID:/YE20hYo
おいおい木原くンカッコよすぎだろ
72 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 12:54:15.13 ID:XLpHVZUo
やばい、面白そう過ぎる
期待で胸熱wwww
73 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 18:52:21.28 ID:J7vMo3.o
最近読んだSSの中では掴みは抜群だな
続きに期待してる
74 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 20:59:40.42 ID:4Bu3jdY0
やべえ木原くンがアンデルセンばりの超身体能力で神裂を倒すところが頭からはなれねえ
75 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/20(土) 01:13:59.10 ID:YvePQYY0

こんばんはー、予想以上の期待にガクブルですがレスありがとうございます

では、投下


7月27日午後6時、『猟犬部隊』のとあるアジト


実際に『学習装置』を使えたのは、木原がインデックスを保護すると言ってから6時間以上経過してからだった。

木山の提案で、先に頭部MRIを始めとする各種検査を行う事にしたのである。

だが、それも簡単にはいかなかった。

知らない機械を怖がったり、検査の邪魔になる『歩く教会』を着替えるのをインデックスが嫌がったからだ。

大量の食べ物を片手にヴェーラと木山が1時間ほど説得しなければ、彼女は決して頷かなかっただろう。

そして5時間ほど苦労して入手した情報を、多角的に分析しながら最後に『学習装置』で脳の異常を治療する計画である。

検査の為に渋々ながらも入院服に着替えたインデックスが、『学習装置』を被りながら木原を見つめた。
76 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/20(土) 01:14:50.14 ID:YvePQYY0

「約束だよ、絶対に魔道書の中身は見ないでね」

「さっきも言ったろーがよ。ここでテメェを騙す意味はねえって」

「……うん」

「専門書ってのはな、素人が解説無しで読んだところで役に立たねぇように出来てる」

「俺が、そんな無意味な事をするほど馬鹿に見えるか?」

「そうだね、私はあまたを信じるよ」

「なら黙ってろ。……飴やるから」

「わあ。あまたは意外と優しいところがあるんだね?」

「……ああ、俺は“優しい”って言ったろ」


こうして、機械に繋がれたインデックスは静かに目を閉じた。

操作を担当する木山が、最終チェックを無事に終えた事を報告する。
77 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/20(土) 01:15:47.56 ID:YvePQYY0

「……中枢神経へのアクセス成功。意識の消失を確認」

「上々。他の検査結果はそろそろ出たか?」

「想像以上にヒドい事になっている。彼女の記憶喪失は単純な逆行性健忘じゃなかった」

「あー?」

「海馬体が、奇妙に一部分だけ壊死している。恐らくは――」

「思い出せないんじゃなくて、記憶した情報が物理的に存在しないのか」


そりゃ徹底してんな、と木原が顔の知らない術者を称える。


「こんな状態なら、記憶の回復は不可能だ」

「ああ。――幾らあの医者でも、こればっかりはなぁ」

「?」

「何でもねぇよ木山ちゃん。で、爆弾の方は見つかったかよ?」


木山が素早くキーボードを操作して、1つのデータを提示した。


「この口腔内画像によれば、喉の奥に奇妙なアザが存在している」


さらに別のデータを、モニターに並べて指し示す。


「そして脳循環検査、脳波検査、頭部MRIの結果を複合させると……」
78 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/20(土) 01:16:55.41 ID:YvePQYY0

カタカタと響くキーボードが、まるでカウントダウンのようにアジトに響く。


「そこから“分析不能”の圧力が血液と脳波にかかっているし、脳内の科学物質の働きを阻害している」

「ヒュー、ほとんど死人並みの活動レベルだぜ!」

「こんな現象、どう考えても起こるはずがない。このままではもう何時間も持たずに死んでしまう」

「このままならな。ちゃっちゃと治療を始めるとするか」


科学者2人が、黙々と『学習装置』に必要な情報を入力する。

と、それまで黙っていたナンシーが木原にこう質問した。


「あの、木原さん。一体どうやって、分析不能の障害を解決するおつもりですか?」

「馬鹿だな、障害を除く方法なんざ決まってるだろ」

「え……」

「例えば、床に高圧電流が流れていたとする。理由は不明。そこを安全に進む方法は?」

「……ゴム靴のような絶縁体で、足を保護します」

「じゃあそれがコンセントの漏電じゃなくて能力者の電撃だったら、何か対策は変わるか?」

「いいえ」

「ま、当たり前だな。どちらも電気である事に変わりはねえんだから、ゴム靴を履けば感電しねェ」

「これも同じだ。結果をもたらす理屈が不明でも、“脳との接続”を断ち切れるならそれで解決だろ」
79 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/20(土) 01:18:25.73 ID:YvePQYY0

木原はそう語りながら高速で『学習装置』を動かし、脳に悪影響を与えている部位との繋がりを完全に切断する。

さらに脳波を正常な状態に修正し、2度と“爆弾”が作動しないようにプロテクトを施した。


「よっしゃ、これで完――」


異変が起きたのは、その瞬間。

まだ目覚めないはずのインデックスが、静かに両目を開いたのだ。


「――警告、第三章第二節」

「オラ、どいてろノロマども!」


誰よりも早く反応した木原が、その場にいた全員を押しのける。

今やインデックスの目は、赤い魔法陣によって不気味に輝いていた。

そしてそのままズルリと起き上り、無感情な瞳で木原を射抜く。

その拍子に外れた『学習装置』のヘルメットが、空しく音を立てて転がっていく事など誰も気にしない。


「Index-Librorum-Prohibitorum――禁書目録の『首輪』、第一から第三まで全結界の断絶を確認」

「なるほど、爆弾じゃなくて首輪な訳ね。俺の趣味にピッタリだぜ」

「再接続準備……失敗。『首輪』の自己修復は不可能」
80 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/20(土) 01:19:23.46 ID:YvePQYY0

「となれば、連中が“次”に考える事も俺と同じだな」

「現状、10万3千冊の『書庫』の保護のため、侵入者の迎撃を優先します」

「そりゃそうだよなあ! 秘密を知った人間は抹殺! お決まり過ぎて笑えるぜ!」


展開についていけない猟犬部隊を放置して、木原が戦闘態勢に入る。


「――『書庫』内の10万3千冊により、接続を切った魔術の術式を逆算……失敗。該当する魔術は発見できず」

「そりゃそうだ、魔術じゃねーんだからよぉ!」

「これより侵入者を確実に破壊するため、特定魔術『聖ジョージの聖域』を発動します」


バギン!と背筋の凍るような音を出しながら、インデックスの両目に輝く魔法陣が拡大した。

そして信じられない事に、その中心から空間に亀裂が走る。

誰もが呆然として我を失う中、木原の笑い声だけが木霊した。


「見ろよテメェら! 聖書が飛び出す絵本になった瞬間だぜ!」


ところが、彼の嬌声は誰の耳にも届かなかった。

同時に亀裂がベギリと一気に広がり、またその音が笑い声をかき消したのだ。

そして、その奥から現れた破滅が――全てを破壊し尽くす光の柱がゴッ!!と全てを切り裂いた。
81 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/20(土) 01:20:22.32 ID:YvePQYY0

この場に魔術を知る者がいれば、絶望して全てを諦めたかもしれない。

あらゆる魔術の中でも群を抜いて凶悪な一撃、『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』はそれほどの凄まじさを誇る。

それでも、全てを予測していた男にはまだ笑みが残っている。



「いや全く、“脱がしておいて正解”だぜ!!」



木原は、その場にあった極上の防御結界――インデックスが脱いでいた『歩く教会』を、右手にグローブのように巻きつけて光の柱へ突き出した。


「お、おおォォォォォォォォ!!」


質量のある光に押されそうになりながらも、木原はその場に踏みとどまった。


――「その強度は法王級(ぜったい)で、あなた達で言うなら核シェルターって感じかな」

――「物理・魔術を問わず全ての攻撃を受け流し、吸収しちゃうんだから」


あの時。

インデックスの修道服は、木原の銃弾をものともしなかった。


(それを見たなら、コレを利用出来るって思わない方がどうかしてるぜ!)


故に、緊急時には役に立つと木原は踏んでいたのだ。

事実『歩く教会』は、『竜王の殺息』の光を四方八方へ弾き飛ばしている。

だがそこで、彼はある事実に気がついた。
82 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/20(土) 01:21:25.65 ID:YvePQYY0

(ちっ、これは……)

(巻き付けた服が、徐々に溶けていきやがる……!)

(それほどまでに威力が強すぎるのか! 後一分持つかどうかってトコだろう)


純白の修道服が、ジュゥゥ……と嫌な音をして、まるで燃やしたかのように黒く染まって溶けていく。

念のためにグルグルと何重にも巻いて強度を上げているのだが、それでも崩壊は時間の問題だった。


「このままの攻撃を続行。侵入者の持つ結界を破壊するまで、残り40秒です」

「おあああ!……何してる愚図!今のうちにアレに『学習装置』を再装着しやがれ!」

「りょ、了解!」


木原に発破掛けられたマイクが、急いで指示に従う。


「――警告、第六章第十三節。新たな敵兵を確認」

「!」


新たな敵を感じ取ったインデックスが、放っている光ごと首を振りまわしてマイクを狙おうとする。

だが、


「駄目なんだよなぁ」


その瞬間に、インデックスはガクリとよろめいた。




「よお、……“飴”は美味かったか?」




83 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/20(土) 01:22:31.58 ID:YvePQYY0

木原がインデックスに与えた飴は、学園都市が『オランザピン』(薬品名ジプレキサ)と呼ばれる成分を基にして特別に調合したものだ。

これはセロトニン受容体とドーパミン受容体を主体として、様々な神経伝達物質の受容体に働きかける非定型抗精神病薬である。

――そして副作用に強い「立ちくらみ」をもたらす事がある。

この飴はその副作用を強化してしまった失敗作で、急に立ったり首を回したりすると極めて高い確率で立ちくらみを引き起こすのだ。


「テメェが公園で行き倒れていたってことは、普通の人間と同じように体調不良で体の機能が働かなくなるっていう意味だ」

「どれだけ強い能力を使えようと、体が普通の人間なら薬が効く」


今も恐るべき光を1人で抑えつけながら、木原が得意げに語る。

すでに『歩く教会』は8割が消滅し、尚も光の侵攻は止まらない。


「――戦闘思考を変更、起きた現象を解析……」

「そして記憶喪失で魔術以外の知識が無いテメェに、これは解析不可能だ」


9割が溶け切った『歩く教会』に、木原の右手から噴き出た赤が彩りを添える。

そんな状況でも、彼は終了宣言(チェックメイト)を忘れなかった。


「もう、これでおしまいだぜ?」
84 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/20(土) 01:23:21.64 ID:YvePQYY0

インデックスが分析に費やした時間は、わずか数秒。

その瞬間の些細な体の硬直と、思考の停止。

彼女が結論を出した時、ゲームは終わっていた。


マイクが被せた『学習装置』を、インデックスが疑問に思うより早く。

木山がスイッチを押して、強制的に脳波をコントロール。


「―――警、こく。最終……章。第、零――……」


まるでコンセントを引っこ抜いたかのように、全ての魔術が消え去った。


「ぎゃはは! スゲェ!スゲェ!スゲェよマジで!」


後に残るのは、勝者の咆哮。


「今もゾクゾクしてやがる! これが魔術、俺達の知らない理論か!」



この日。

光の羽が舞い落ちる事はないまま。

誰かの記憶が消える事のないまま。


それでも世界は、大きく歪んでしまった。
85 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/20(土) 01:24:16.83 ID:YvePQYY0

今日はここでお開きです

ここまでが序章になります

正直展開やトンデモ理論で納得できない部分が多いかとは思いますが、どうかご容赦ください

次回はインデックスのその後、及び新たなる魔術師の登場になります

では、おやすみなさい
86 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/20(土) 03:00:40.42 ID:l0fZXMAo

歩く協会がなくなってしまったインさんの服装やいかに
87 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/20(土) 03:27:09.75 ID:knH3q/go

ピンセットでもつなげられないんだよ
88 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/20(土) 10:50:21.38 ID:COr4xoEo
かがくの ちからって すげー!
89 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/20(土) 12:11:04.42 ID:Hm8KPMko
いいSSだわ。
90 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/20(土) 19:53:50.47 ID:l81hRFEo
こういう発想か〜面白い。無粋な突っ込みなんて思い浮かばねえや。
続き期待してる。
91 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/20(土) 23:02:03.16 ID:44GAgrEo
はじめて木原くんに惚れた。
上条さんよりすげーんだけど
92 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/21(日) 01:29:05.73 ID:1ni54Xwo
ぶっちゃけアニメ一部しから知らないけど、このキャラを調べたらマジ惚れた。
いい造詣すぎんぞ
93 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/22(月) 00:46:17.33 ID:aOTk48k0

こんばんはー、木原くンの人気は凄いですね

原作のハッチャケぶりには及びませんが、これから少しでも追いつけるように頑張ります

では、投下


7月28日午前8時(日本時間)、ロンドンの聖ジョージ大聖堂


英国では深夜0時を迎えているこの時間。

イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会』の本拠地であるこの場所で、1人の男が激昂していた。


「あの子が学園都市の手に堕ちただと!?」


それに追随する形で、2メートル超の日本刀を持つ女も声を張り上げる。


「一体どういう事ですか最大主教!」

「……」


対し非難の矛先を向けられた人物は、悠然とした態度を変えない。
94 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/22(月) 00:48:45.71 ID:aOTk48k0

「答えてください最大主教! あの子が敵の手に堕ちる事は無いと言ったのはあなたじゃないですか!」

「ステイルの言う通りです。あなたがそう言ったから我々はここで待機していたというのに、これでは話が違います!」


男の名はステイル・マグヌス。ルーンを極め、炎を司る優れた実力を秘めた魔術師だ。

そして女は神裂火織。七天七刀や鋼糸を自在に操り、白兵戦を得意とする『聖人』で、その強さは類を見ない。

そんな実力者らを前にしても、最大主教ローラ・スチュアートは彼らに注意を欠片も向けていなかった。


(これは如何な事なのかしらね)

(魔術の知識を持たぬ科学サイドが、禁書目録の『自動書記(ヨハネのペン)』を打ち破るなど)

(それだけではなし)

(探知術式によりければ、すでに『首輪』もその効果を失いし後との事)

(まずい。もしも奴らが魔道書を解析せしめることが出来るのであれば……)

(世界のバランスが、大きく傾く……それも魔術サイドにとって悪い方へと)

(其れを阻むためには、禁書目録を回収する必要がありけるのよ)
95 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/22(月) 00:50:04.62 ID:aOTk48k0

だが、それには大きな問題が存在していた。

まずは、魔道書の中身を知ろうとした者を自動的に排除する『自動書記』すら退けるほどの実力者が相手だと言う事。

さらに、状況的には学園都市側が記憶喪失の少女を保護した事になっている事。

彼女を取り戻すために大軍を送れば、当然学園都市と戦争する事になる。

そしてその場合。助けた学園都市とそれを狙うイギリス清教、どちら側に非難が集中するかは想像に難くない。


(何よりも問題になりけるのは……)


そのインデックスが。

対魔術師用の魔術師として、誰よりも特化している10万3千冊が――敵に回るかもしれないという事。

彼女が自分に施された術式を知れば、イギリス清教を恨んで学園都市側についてもおかしくないのだ。

何しろ彼女には過去の記憶は残っておらず、学園都市の人間に命を助けられたという事実だけがそこにあるのだから。


(故に必要なのは、大軍による制圧ではなし。少数精鋭による電撃作戦であるわね)

(一度禁書目録を回収さえしてしまえば、後はどうとでもなりたるのだから)
96 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/22(月) 00:53:31.53 ID:aOTk48k0

ローラが出した結論は、つまりこう言う事だ。

大勢の魔術師を送り込むには、時間がかかる。

そしてその間に学園都市が迎撃準備を整えれば、魔術と科学の総力戦となるだろう。

立場的に悪役となるイギリス清教が、時間の経過と共に不利になる総力戦に持ち込む意味は無い。

ましてやインデックスがいる以上、時間をかければかけるだけこちらの情報は提供されていくことになる。

ならば先ず、腕の立つ魔術師を相手の準備が整うより前に送り込む。

それでインデックスを回収してしまえば、事を荒立てることなく全ては解決する。

例え彼女を保護している人間を殺したところで、自分から魔術に関わろうとする人間がまっとうな人間のはずはない。


「「最大主教!!」」


極めて僅かな時間で、ローラはこの結論を出した。

そして、ようやく何度も自分に呼びかける魔術師2人に目を向ける。


「煩き事ね。そう何度も述べずとも、禁書目録に起きた事態は分かりているのだから」

「じゃあ、さっさとどうするか言ってみろ!」

「落ち着きてステイル。何よりも優先すべきは禁書目録の身柄の保護でしょう?」

「……」

「すぐに『必要悪の教会』の魔術師を派遣して、あの子を取り戻すという事ですね」


ローラの言葉を聞いて落ち着いたのか、神裂が先ほどよりも冷静にそう言った。
97 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/22(月) 00:54:17.59 ID:aOTk48k0

「そうよー。このまま時間をかけたれば、禁書目録が“洗脳”されて我らに敵対するやもしれないのだから」

「ならば、僕が行く! そんな卑怯な連中に、あの子を1分1秒でも預けておくわけにはいかない」


そう言ってステイルが立ち去ろうとした直後。


「相性を考えなきゃ。あなたの魔術は、拠点防衛に特化したルーンでしょう」

「君は……!」


ようやくその場に現れた4人目の魔術師が、彼を押しとどめた。


「禁書目録の誘拐、ね。……実に愉快な話になってんじゃねーか」

「回収には私が行く」

「科学サイドの人間が魔術(わたしたち)の領域に踏み込んだらどうなるか、しっかり叩きこんでやるよ」


優れた探索能力と、圧倒的な戦闘力。

その両者を兼ね備えたゴーレム術式の使い手にして、誰よりも科学と魔術の住み分けを望む者。


「……ねえ、エリス?」


ゴスロリ服でその身を包む『必要悪の教会』所属魔術師、シェリー・クロムウェル。

インデックス回収の為、イギリス清教は彼女の派遣を決定した。
98 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/22(月) 00:55:16.51 ID:aOTk48k0

同時刻、『猟犬部隊』のとあるアジト


インデックスが目を覚ました時、最初に見たのは隈を濃くした木山の顔だった。


「起きたのかね? 体の調子は?」

「えっと、おなかすいたかも」

「……ふう」


木山は疲れたように溜息をつくと、温かい肉まんをインデックスに差し出した。


「食べるといい」

「あなたは本当に良い人だね!」


嬉しそうに肉まんを食べる彼女に、木山は困惑したような笑みを見せる。


「私は悪人さ。それも救いようのないほどに」

「とてもそうは見えないんだよ?」


何も知らないインデックスの反応に、木山は返答できなかった。


「……昨日はあまりにも色々な事がありすぎた、少し参ったな」


突然留置場から木原によって連れ出され、猟犬部隊に所属する事になり、魔術という存在を知った――だけではない。

直にその目で魔術を見て、感じ、命を脅かされたのだ。

これまでの常識を嘲笑うかのような1日は、木山を心身ともに疲弊させていた。
99 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/22(月) 00:56:38.67 ID:aOTk48k0

(だが、本当に大変になるのはこれからだろう)

(あの男は、一体どうするつもりだ……?)


全ての原因をもたらした男、木原数多は今ここにいない。

右手の怪我を治療するとともに、部隊の拡充を図るとの事だ。


「魔術があれだけヤベェって分かった以上、『対魔術師用特別編成隊』の質を上げる必要がある」

「それにおあつらえ向きの人間に心当たりがあるんで、ちょっと交渉してくるわ」

「言っとくが時間はねぇぞ。俺らがあのガキを保護した以上、明日にでも回収のため“魔術師”が来るかもしれん」

「それも、あのガキに細工を施したイギリス清教の連中がな」


既に木原はローラの考えを予測しており、その迎撃対策に出かけている。

そしてあわよくば、2人目の実験標本(まじゅつし)を手に入れる気なのだ。


そんな中唯一戦闘要員ではない木山には、代わりに別の仕事が任されていた。

つまり。


「ところで、私の服はどこなのかな?」

「……どこから説明しよう……」


この何も知らないインデックスに、現状を分かりやすく教えることである。


「まずは、君に仕掛けられていた妙なアザからかな?」


その説明は、1時間以上にも渡った。
100 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/22(月) 00:57:14.95 ID:aOTk48k0

短いですが、今日はこの辺でおしまいです

科学サイドの学生が出ない代わりに、続々と大人を出すつもりです

次回早速その1人が登場します。(すでに誰か予想できているかもしれません)

では、おやすみなさい
101 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/22(月) 04:56:16.48 ID:.fPU2wAO
おやすみなさい
102 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/22(月) 08:55:33.87 ID:fn8BlmQ0
乙乙
シェリ−逃げてー!

つーかローラの腹黒さがハンパ無いな
洗脳呼ばわりとか悪質すぎる
103 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/22(月) 18:03:55.75 ID:..k1y8.o
首輪を破壊した相手にシェリー単体送り込むってどーなの……
104 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/22(月) 21:13:01.45 ID:HJaJ.Awo
強制詠唱持ちのインデックスいるのにシェリーを送り込む最大主教……
つまりこれは
105 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/22(月) 23:50:25.85 ID:f46W4kDO
強制詠唱は自動制御で対応出来る筈。まあ最悪失敗してもつっちーに監視させて敵戦力把握しようって腹黒か


ゴーレム技術と科学ロボのハイブリット…胸熱
106 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/23(火) 00:22:07.89 ID:U6Ig0ADO
この人の作品って別につながってるわけじゃなかったよね?
107 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/23(火) 00:33:57.73 ID:97aXeIMo
>>106
この作品だけ完全に独立した作品とのこと
108 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/23(火) 20:39:01.30 ID:lPgByTgo
>>107
さらに全て面白いときた
109 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/24(水) 00:18:52.54 ID:xztMDF20

こんばんはー、レスありがとうございます

>>102-105
ローラの腹黒さはこれから顕著になります
期待せずにお待ちください

では、投下


7月28日午前9時、第7学区のとある病院


この病院には、噂にすらならないほど完ぺきに隠蔽された診察室兼治療室がある。

当然、そこで治療を受けるのはまともな人間ではない。

今ここにいる男――学園都市の暗部組織『猟犬部隊』のトップ、木原数多ももちろんそうだ。

医者である『冥土帰し』は、彼の顔を見て一瞬嫌な顔をしたものの、黙って彼を迎え入れた。

治療も終盤に差し掛かると、ようやく医者が患者に話しかけ始める。


「ふう。一体これは、どんな状況で付いた傷なんだい?」

「……やっぱ気になるか」
110 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/24(水) 00:19:43.11 ID:xztMDF20

「単に火傷しただけじゃこうはならない。見たことも無い状態だったんだ。だから原因を気にするのは当然だろう?」


『冥土帰し』が、鋭い視線を彼に向ける。

そこには普段の温和そうな雰囲気からは想像できないほど、力が込められていた。


「まさか用心深い君が、実験の暴発を引き起こしたとかいうつもりじゃないだろうね?」

「似たようなモンだなぁ」

「……?」

「ハハッ、ひょっとして俺も歳かなー」


やばい、洒落にならねぇ。と木原は包帯を巻いた右手を天井へかざす。

彼はこうして、大事な事はいつもはぐらかしてしまう。

それでも『冥土帰し』が彼を拒否しないのには理由があった。


「言っておくけどね。僕が君を追い出さないのは、あの男を止めてくれたからなんだよ?」

「何度も言ったろーがよぉ。幻生のじーさんを捕縛したのは上からの指示。勝手にやりすぎて自滅しただけだ」

「……まあ、そう言う事にしておくね?」
111 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/24(水) 00:20:31.32 ID:xztMDF20

かつてチャイルドエラーを利用した、『能力体結晶』の投与実験が行われた。

その実験を主導していたのが、木原数多の親戚である木原幻生だ。

だが、彼は実験が失敗した直後に行方不明となっている――表向きは。

実際には木原数多の指揮する『猟犬部隊』によって捕えられ、今もとある場所に監禁されているのだが、それを知る者はほとんどいない。

ましてや、何故木原幻生ほどの人物が上層部に目を付けられるほどの失態を犯したのかなど、知る者はいない。

……この木原数多以外は。

故に『冥土帰し』は、幻生を止めた彼を自分の病院へ入れることも許しているのだ。

もちろん、彼が善意で幻生を失脚させたわけではない事ぐらいは分かっている。

何しろ彼は、性根の腐った悪党なのだから。

それでも、結果として幻生による犠牲者はアレ以上増えなくなったという事実を、『冥土帰し』は忘れない。
112 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/24(水) 00:21:11.11 ID:xztMDF20

「あ、そうだ。1コ頼みがあるんだが」

「ん? 幾ら借りがあるとはいえ、君の悪趣味な作戦に利用されるのは癪なんだけどね?」

「これから一両日中に、重症の患者を連れてくる」


『冥土帰し』の言葉を無視して、木原はそう断言した。


「だからベッドを空けて、準備万端整えておかねーとヤバイかもなぁ」


木原の言い方は、文法としては何かを頼む時のモノではない。

だがそれでも、言わんとする事柄は理解できる。

彼は、誰かを重症に陥らせると予告しているのだ。

そして『冥土帰し』の知る限り、彼は言った事は必ず実現させる。


「……」


返事も聞かず立ち去った男の後ろ姿を見て、医者は力なく肩を落とした。
113 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/24(水) 00:22:14.59 ID:xztMDF20

同時刻、『猟犬部隊』のとあるアジト


木山から説明を受けて1時間。

自分に施されていた術式を聞いたインデックスは、明らかに動揺していた。


「『必要悪の教会』が、私の記憶を……」

「状況から見て、間違いないだろう。君の喉にあるその――模様?も、そこの術式らしいじゃないか」

「……うん。いざという時私を殺す為の……『首輪』だった」

「私達がそれを無力化した以上、命の危険はもうないはずだ。安心したまえ」


そう言いながら木山が9個目の肉まんを差し出すと、インデックスはゆっくりとパクついてきた。

数秒で肉まんを飲み込むと、彼女は静かに会話の続きを始める。


「でも覚醒めてた私と戦うなんて、命知らずもいいとこかも」

「だろうね。正直、私は今も震えが止まらない」


(あの男が彼女の服を使わなければ、間違いなくあの時全員死んでいたはずだ)

(それほど圧倒的なあの光……学園都市の能力区分で言えば、間違いなくレベル5以上のチカラだった)

(学園都市以外で開発された超能力、か)

(あんな馬鹿げた能力と、本気でこれから戦うつもりなのか――あの男は)
114 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/24(水) 00:23:17.15 ID:xztMDF20

だが何よりも大切なチャイルドエラーの生徒は、人質に取られている。

彼女らの居場所を知っているのは木原だけである以上、木山にドロップアウトは許されない。

そんな事を知らないインデックスは、木山の憂鬱に気付かないまま話を続行した。


「幾ら『歩く教会』でも、10万3千冊の魔道書にかかれば一溜まりも無いのに」

「そのようだね、現に君の服は灰になってしまった訳だし」

「本当に……自殺志願者だって、ここまで無茶はしないんだよ」


(そんな可愛げのある存在なら、とっくに死んでくれていただろうに)


木山が嘆息した通り、木原は自殺志願者の対極に位置している。

わざわざ『歩く教会』を傍に置いていた事といい、特殊な飴を与えていた事といい、入念な準備をしていた。


(ただ、それでもあの男が全てを予測できるはずはない)

(真に恐ろしいのは、土壇場で怯まない精神力)

(起こりうる状況の対策を施し、且つイレギュラーにも即応してみせる事こそが脅威なのだ)
115 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/24(水) 00:24:25.76 ID:xztMDF20

現在木山は、立場的には木原の部下という事になっている。

だが、彼は将来的には倒さなくてはならない“敵”だ。

その事を考えれば考えるほど、彼の恐ろしさが重しのように圧し掛かる。


「それで、私をこの後どうするつもりなのかな?」

「!」


逆らう手段のない木山は、今は木原の指示に従うほかに道は無い。

木山は彼の指示通りに、インデックスに『装備』を手渡した。


「えっと……これは何なのかな?」

「詳しい事は私も知らないが、『猟犬部隊』の装甲服らしい」


ちゃんと君のサイズに合わせてあるそうだ、と木山は呟く。

昨日行われた検査の時点で、すでに木原が発注していたらしい。


「君は、あの修道服が発信機になっていると言ったね。当然それが壊れた事も伝わるのだろう?」

「……うん」

「おまけに『首輪』が外れた以上、すぐにでも魔術師が派遣されてくるはずだ」

「――と、あの男が言っていた」

「あまたが?」

「ああ。だからそれに備えてコレを着てもらう」

「……重くて暑そうなんだよ」

「我慢してくれ。流石に君の服のような馬鹿げた防御力はないが、それでも銃弾やナイフの刃を防ぐ程度なら問題ない」

「うー……」


不満げに唸るインデックスだが、それでも現実は変わらない。
116 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/24(水) 00:25:44.97 ID:xztMDF20

「あの男は、君を魔術師から守るためにある決定を上に認めさせた」

「?」

「対魔術師用のアドバイザーとして、君を『猟犬部隊』のメンバーに迎え入れたんだ」

「え、えー!」

「落ち着いてくれ。私も無理やり参加させられているが、今逆らうのは得策とは言えない」

「けど……!」

「何故ならあの男は容赦がないからだ。初対面の君をあっさり撃ち殺そうとしただろう」

「……」

「例え逃げたとしても、あの男からは逃げきれない」

「……!」

「君が今まで逃亡できたのは、相手が魔術師だったからだ。だが『猟犬部隊』はそうじゃない」

「……」

「魔術以外ではただの少女に過ぎない君を、捕まえるのに10分も必要としないだろうね」

「――だから“利用”したまえ」


それまでとは声色の違う提案に、俯いていたインデックスが姿勢を起こした。
117 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/24(水) 00:28:18.35 ID:xztMDF20

「魔術師からも猟犬部隊からも追われている以上、どちらかに就いて様子見をすればいい」

「その点この学園都市は、魔術師から身を隠すのに最適だ」

「……うん」


再び伏せたインデックスの頭を、木山が不器用そうに撫でる。


「いずれ必ずチャンスは来る。それまでは我々を盾にするといいさ」

「……そんな事を言ってくれるなんて、やっぱりあなたは良い人だね」

「もう一度だけ言っておくが、私は善人じゃない」

「――良い人間が、こんなところに来るはずはないのだから」


結局インデックスは、木山の提案を受け入れて『猟犬部隊』に正式に加わる事になった。

118 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/24(水) 00:29:51.84 ID:xztMDF20

7月28日午後2時、学園都市統括理事会


――『報告は受けている』

――『けど、アレにそこまでの戦力を持たせるのは危険ではありませんこと?』

――『仕方あるまい。現状、外部能力者の迎撃は彼以外不適格だ』

――『木原一族の天才児、か。結果を残しているならそのまま使い潰せばいいじゃろう』

――『……面倒はキライ……』

――『そうは言うが、警備員(アンチスキル)を使う訳にも行かねーんだろ?』

――『では彼の申請通り『猟犬部隊』と『………』を統合しますか?』

――『ああ、そうしよう』

――『そうですね。既に先手を取ったのはわたくし達です、このまま彼に任せて様子見でいいのでは?』

――『異議なし』

――『異議なし』

――『異議なし』

――『異議なし』

――『異議なし』

――『ここに統括理事会の合議が成立。『猟犬部隊』リーダー木原数多には了承の旨を伝えましょう』




――『しかし面倒よね。もう何十年も“統括理事長がいない”とはいえ、面倒な合議制を取らなくてはいけないなんて』

119 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/24(水) 00:30:49.20 ID:xztMDF20

今日はここまでになります

話の進みが遅いですが、多分これからは展開が速くなると思います

では、おやすみなさい
120 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/24(水) 00:36:38.96 ID:xKClNYAO


統括理事会の人達ってやっぱりエヴァみたいにモノリスで会話かな?
121 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/24(水) 05:56:44.33 ID:G.1OZxso
シェリークロムウェルがくるよ!
122 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/25(木) 03:20:34.86 ID:EqS6w.co
アレイ☆がいないだと…
123 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/25(木) 09:49:06.57 ID:x9Q5nYM0
インデックスが猟犬部隊の服装かー
相変わらず>>1の発想は面白い
続きに期待
124 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/26(金) 01:29:17.06 ID:iSCMxRA0

こんばんはー、毎度遅い時間で申し訳ないです

では、投下



7月29日午前10時10分、学園都市第6『門(ゲート)』管理室


今さらの話だが、学園都市は周囲を高さ5メートル・厚さ3メートルの壁で囲まれている。

普段はバスや電車も遮断されているので、飛行機で来るか徒歩で『門』を通過する以外に入る方法は無い。

その『門』を監視している警備員(アンチスキル)15名が、全員負傷して血まみれになっていた。

中には明らかに重症だと思われる状態の人もいる。


「こちらナンシー、侵入者の映像を入手しました」


だがそれらの惨状を目にしながら、救助に当たらないどころか怪我人を足蹴にしている人間がいた。

木原数多の指示を受けた『猟犬部隊』が、“敵”の情報を手に入れる為に管理室のデータを強奪に来たのだ。

事件が発生してから数分で現場に現れるというスピードは、並大抵のものではない。
125 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/26(金) 01:29:56.20 ID:iSCMxRA0

『よっし、とっとと俺らの方へ回せ』

「了解」


木原の声に顔をしかめながらも、ナンシーが手早く記録を送信する。

その間マイクが、残された情報から侵入者の移動経路の割り出しにかかっていた。


「……妙だな」

「何が?」


マイクの訝しげな声に、ナンシーが眉をひそめる。


「情報によれば、侵入者は第7学区の駅前大通りへ向かったようだ」

「は!?」

「ここを派手に破壊していった事といい、侵入者にしては動きが“目立ちすぎる”」

「何考えているのかしら?」

「……とりあえず、あの人に報告はしておく」
126 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/26(金) 01:30:45.84 ID:iSCMxRA0

同時刻、『猟犬部隊』のとあるアジト


部下の報告を聞いた木原は、『獲物』の映像を見ながら黙り込んだ。

学園都市に侵入者が現れたのは午前10ジャスト。

それからわずか2分も経たないうちに、彼の元には様々な報告が寄せられていた。

もちろんそれは『猟犬部隊』のリーダーとして、多くの権限が彼に与えられているからでもある。

だがそれだけではない。

そもそも警備員のような公的組織から情報を素早く入手できるなら、わざわざ今部下を派遣してなどいないのだから。

にもかかわらず、情報の伝達が極めて早く行われた理由は1つ。


(……野郎、どういうつもりだ……?)

(マイクの言う通り、侵入にしては動きがデカ過ぎる)


その破壊活動があまりにも凄まじく、目立ってしまったからに他ならない。

127 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/26(金) 01:31:34.30 ID:iSCMxRA0

(即座に魔術師を送り込んでくるのは予想通りだが……これじゃ意味が無ェ)

(連中の最優先事項は、あのガキを至急回収する事)

(学園都市(おれら)と戦争する事が目的じゃねぇはずだ)

(じゃあ、何でこうも挑発的にブチかました?)

(どうして人通りの多い所へ向かっている?)


隣にいる木山も、相手の行動の真意を掴みかねているのか唸るばかり。


(考えられるのは……)

(テメェの能力に、絶対の自信があるからこその蛮勇か――)

(――囮!)

(派手な破壊行動で俺らの目を引きつけて、その隙に隠密行動に長けた別の人材がガキを回収する)

(可能性としてはこれが最も高いな)


そこまで思い至った木原は、さらに熟考する。

敵はゴスロリドレスを身に纏い、笑いながら警備員を粉砕する魔術師。

この場合、手駒をどう配置すべきだろうか。
128 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/26(金) 01:32:51.26 ID:iSCMxRA0

(アレが囮だとしても、戦闘力を見る限り放置できるレベルじゃねぇしなあ)

(つーかあの能力は何だ……?)

(映像を見たところ、『念動力』を利用した地形操作のようだが)


あの女魔術師は、自由に地面を操っているように見える。

学園都市を守る警備員が、まるで相手にもされていない。


(正面から戦った場合、『猟犬部隊』の手持ち装備だと……ちっとばかし厳しいな)


『猟犬部隊』の武装は、拳銃、サブマシンガン、ショットガン、さらに各種爆薬と言ったところだ。

他にも携行型対戦車ミサイル等の兵器も用意できるが、数は少ない。

地面を自由に隆起させるあの魔術師には通用しない、と木原は予測した。


(『六枚羽』を使用出来りゃいいんだが、ケチくせぇ上が拒否るだろーしなぁ)


『六枚羽』とは、学園都市最新鋭の無人攻撃ヘリである。一機で250億円もするので、おいそれと使用許可を貰えるものではない。


(残る手段は……あー、最悪だぜ)

(いきなり“この手”を使う羽目になるとは思わなかったが……)

(『猟犬部隊』をガキの護衛に回す必要がある以上、仕方ねェ)
129 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/26(金) 01:34:08.15 ID:iSCMxRA0

極めて珍しい事に、木原はうんざりとした顔を浮かべた。

そしてマイクとナンシーに一旦帰還するように指示を出すと、待機所にいた部下全員にこう告げる。


「良く聞け。あのゴスロリ女は囮の可能性が高い」

「まさか他に侵入者が?」

「あくまで可能性だ、黙ってろ馬鹿」


口をはさんだデニスに舌打ちをして、木原が話を続ける。


「しかも映像を分析した限り、テメェらの武器じゃ相手にならない」

「だからアレは“相手が出来る”ヤツらに任せる事にした」

「え、それって……?」


新しい戦力の補充が認められたのだろうか。

ヴェーラがそう思って問いかけるが、木原はこの場では教えなかった。


「こっちの話だ。昨日のうちに、上の許可は取り付けたからよ」

「とりあえずテメェらのやる事は、恐らく既に侵入したであろう本命の魔術師に、あのガキを奪われないようにする事だけ」

「えらく簡単な話だろ? 分かったら武装整えて警戒してやがれ」

「り、了解!」


木原の殺気を感じたデニスとヴェーラが、慌てて武器の点検を開始する。
130 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/26(金) 01:35:10.71 ID:iSCMxRA0

その様子を眺めながら、木原はとある人物へ連絡を取った。


「……俺だ」

『……………!』

「うるせェな、殺すぞ?」

『……、……!?』

「はー? データは送ったろーが」

『………………』

「そーそー。接触するポイントを後で送れ」

『………………』

「死にたくなけりゃ頑張って働くんだなぁ、モルモット?」

『……………!』


ブチィ、と鋭い音がして電話が一方的に切れる。

電話相手がキレて、自分の携帯を握りつぶしたらしい。


「よし、たった今話は付けた」


どう見てもそんな雰囲気ではなかったのだが、木原の中では伝達は終了したとみなされた。


「アイツは無能だが、あのゴスロリ女の相手程度なら出来んだろ」
131 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/26(金) 01:36:23.55 ID:iSCMxRA0

「あ。ヴェーラ、あのガキを連れてこい」

「了解」


隣の部屋でTVに夢中になっていたインデックスを、木原が呼んだ。

お気に入りのアニメを邪魔されて不機嫌な彼女だったが、木原の冷たい目が反抗を封じてしまう。


「早速、テメェを狙った魔術師サマが現れたぜ?」

「……」

「装甲服を着ろ。こっからは殺し合いだ」

「……あの服暑いんだもん」

「はぁ?」

「それにキツイし」

「嘘吐くんじゃねぇよ、キツイって言うほど胸も尻も出てねーだろ」


その瞬間、ギラン!と目を輝かせたインデックスが、木原に噛みつこうと飛びかかった。

だが当然のように彼は身をかわし、代わりに後ろにいたデニスが頭を噛まれて悲鳴を上げる。


「ぎゃああああ!?」

「何で避けちゃうのさバカバカバカバカ!!!!!」

「避けられたって分かってるなら俺を噛むなぁ!」


昨日から何回かインデックスは木原に噛みつこうとしているが、何故か毎回噛まれるのはデニスの役目になっている。
132 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/26(金) 01:37:19.97 ID:iSCMxRA0

「クソ煩ぇ。言う事聞くか死ぬかの二択だ、選べクソガキ」

「……うー、分かった」


結局インデックスは、サイズを合わせているにも拘らず、妙にブカブカに見える装甲服を装着する。


「大体、あまたにはデリカシーが……」


インデックスの文句は、そこで途切れた。

何故なら、床に有り得ないモノを見つけたからだ。

彼女の視線を追った木原も、それまでの退屈そうな表情を一変させた。


「こりゃあ目玉、か?」


答えは、この場にいない人間から齎される。


『――――見ぃつっけた』


この場にいる誰とも違う、退廃的な女性の声。

怯えて武器を構えるデニス達をしり目に、木原は声の主を瞬時に看破した。
133 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/26(金) 01:38:18.97 ID:iSCMxRA0

「学園都市に侵入した、ゴスロリ女か」

『おや、もう情報が流れているのね』

「んー? あれだけ暴れりゃ当然だろーがよぉ?」

『うふ。うふふ。それにしては、あなたは随分余裕なのね』

「……」

『けどまあ、禁書目録の所在は掴めたし……』


その声に含まれた嗜虐的な響きを感じて、当のインデックスが口をはさんだ。


「土より出でる人の虚像――そのカバラの術式からすると、あなたも『必要悪の教会』の魔術師だね?」

「アレンジの仕方がそっくりだもん」

『ふー。どうやら“洗脳”されて敵に回ったって言うのは確かな様ね』

「何言って……」


女性の声が、一気に暴力的な色を帯びる。


『めんどくせぇがやる事は一緒、さっさと終わらせてやるか』
134 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/26(金) 01:39:15.76 ID:iSCMxRA0

「チッ、間抜けども撤収の準備!」


気がつけば、目玉の数が数え切れないほど増えていた。

その1つを踏みつぶしながら、木原は部下を連れてアジトを後にする。


(あのゴスロリ女、探査能力も保有していたのか!)

(作戦を変える必要があるな)


彼は高速で打開策を考案しながら、木山にキーを放り投げた。


「木山ちゃん、運転ヨロシク」

「これは、私の車の!」

「そーそー。木山ちゃんのランボルギーニ外に持ってきてあるから」

「何時の間に……!?」

「おーいおい。運転技術も一流だってとっくに知ってるし。ホラ急げよ!」


助手席に木原、後部座席にデニスとヴェーラ及びインデックスを載せて、猛スピードで車が発進した。


『フン、下らない。あれで逃げたつもりなのかしらね』

『――追いな、エリス』

『パーティはこれからでしょう、愚かな科学者さん?』
135 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/26(金) 01:40:15.62 ID:iSCMxRA0

今日はこれでおしまいです

次回も新しい大人キャラが登場する予定です

ちなみに木山先生の車は、コミック版のレヴェントンとアニメ版のガヤルドお好きな方をご想像ください

では、おやすみなさい
136 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/26(金) 01:41:58.22 ID:uWK7cCwo

明日遅刻すんなよー
137 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/26(金) 12:06:46.93 ID:rAbmMBc0
>嘘吐くんじゃねぇよ、キツイって言うほど胸も尻も出てねーだろ
木原くんマジ外道

とばっちりをうけたデニス涙目wwwwww
138 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 08:56:08.45 ID:RNhc2f20
更新速度落ちた?(゜◇゜)
139 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/27(土) 11:13:29.98 ID:eO/slIAO
ランボルギーニの乗車人数…
140 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 11:24:14.68 ID:A8EUVNIo
四人は無理だね
141 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 17:10:26.61 ID:vb6/TwEo
ガヤルドは二人乗りだしな

超電磁砲じゃ3人乗ってたけど
142 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 17:16:02.91 ID:j4p67Ls0
学園都市仕様に改造してるに決まってンだろォが
143 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 21:29:06.93 ID:vb6/TwEo
たしかにガルウィングドアのガヤルドは存在しないしなww
144 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/28(日) 02:00:38.78 ID:TiffOz.0

こんばんはー、そして重大なミスすいません

ランボルギーニって後部座席存在しなかった……

ちゃんと確認しないとダメですね

というわけで、今から>>133以降を投下します

申し訳ありませんでした

145 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/28(日) 02:01:49.19 ID:TiffOz.0

「チッ、間抜けども撤収の準備!」


気がつけば、目玉の数が数え切れないほど増えていた。

その1つを踏みつぶしながら、木原は部下を連れてアジトを後にする。


(あのゴスロリ女、探査能力も保有していたのか!)

(作戦を変える必要があるな)


彼は高速で打開策を考案しながら、ヴェーラ達に指示を出した。


「テメェらはそのガキ連れて32番へ移動しろ」

「はい!」

「途中でマイク達と合流。到着したらシェルターの障壁降ろして待機な」

「しかし、あの侵入者の能力を見る限り、障壁が役に立つとは――」

「ウゼェ」


デニスの出しゃばった意見を聞いて、木原は彼の顔面に右ストレートをゴッキィ!と叩きこんだ。


「言われたとおりに動け、クズが」

「も、申し訳ありません」

「アレの方は気にしなくていい。他に侵入したかも知れねぇ敵に気ぃ配れって言ってんだ、分かるかー?」

「……了解」
146 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/28(日) 02:03:18.67 ID:TiffOz.0

そのままデニスとヴェーラは、インデックスを連れてワゴン車で出発した。

彼らとは反対方向に向かう木原に、唯一残った木山が声をかける。


「何故私や貴様は乗らないんだ?」

「俺と木山ちゃんはこっち」


木山に目を向ける事も無く、彼は持っていたキーを放り投げた。


「2人でドライブデートしよーか。あ、運転はヨロシク」

「これは、私の車の!」

「そーそー。木山ちゃんのランボルギーニここに持ってきてあるから」

「何時の間に……!?」

「おーいおい。運転技術も一流だってとっくに知ってるし。ホラ急げよ!」


助手席に木原が乗り込むと、猛スピードで車が発進した。


『フン、下らない。あれで逃げたつもりなのかしらね』

『――追いな、エリス』

『パーティはこれからでしょう、愚かな科学者さん?』
147 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/28(日) 02:04:27.31 ID:TiffOz.0

7月29日午前10時30分、第7学区道路


木原がナビした目的地を見て、木山は驚きの声を上げた。


「本気なのか……!?」

「おお、当然」

「“侵入者のところへ自ら出向く”だと……何を考えている……?」

「ちっと気になる事が出来たからよぉ、直にお会いしたくなっちゃったんだなーコレが」

「あの映像を見たのにか? 彼女の能力は恐ろしく破壊的で……」


警備員を易々と退けた実力は、どう考えてもレベル4以上だと木山は判断している。

だが木原は。


「んー、正直そこはどうでもいいんだわ」


心底どうでもよさそうにそう言って、彼女の意見を相手にしなかった。


「?」

「っつかよ、戦闘に関しては相手が出来るヤツに話しつけたって言ったろーが」

「……」

「問題なのは、さっきあのゴスロリ女が言っていたセリフ」
148 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/28(日) 02:05:16.90 ID:TiffOz.0

――『――――見ぃつっけた』

――『けどまあ、禁書目録の所在は掴めたし……』


「もしも自分が囮だと分かっているなら、あのセリフは出てこねェ」

「ありゃあ、本気で自分の力だけでガキを回収するつもりだったって事だ」

「彼女が囮かつ探索担当で、本命にその情報を伝達したという可能性は?」


木山の疑問に対し、木原は首を横に振った。


「それなら、俺らが探索された事に気付かないよう、もっと上手く隠蔽すんだろ」

「わざわざ無駄にこっちの警戒心を高める必要はねぇからな」

「つまり、だ」

「ゴスロリ女は、1人で俺らと戦うつもりって訳よ――少なくとも本人はな」


木原がクツクツと喉を鳴らし、次いで弾けるように爆笑した。


「ぎゃーっはっはっは! 良いねぇ、イカれてんぞ!」

「ひゃはは、どんだけ自信過剰なんだぁ!?」

「この学園都市相手に、単身で勝てる訳ねーだろバーカ!」
149 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/28(日) 02:06:38.47 ID:TiffOz.0

木山は、無言で侵入者のいる駅前へ向かう。

と、それまで顔をクシャクシャにして笑っていた木原が笑みを引っ込めた。


「……だが解せねぇのは、それを許した相手上層部の思惑だ」

「あのガキに仕掛けられていた『首輪』やら『自動書記』を見る限り、イギリス清教のお偉い様は俺並みに性格がイイ」

「そこは同意するよ」

「だろー? そんな人間が、敵地に単独でイカレ女を寄こすとは思えねェ」

「まさか、イギリス清教は彼女に自分が囮だと知らせていないのか……?」

「ああ。俺ならそうするな。何しろこっちには10万3千冊っつー切り札がある」

「それを知っていながら単独派遣するのは、こっちに『どーぞお召し上がりください』って餌を渡すようなモンだ」

「だがそう甘くはいかねぇ。……エグイ保険の1つや2つ、掛けているハズなんだよ」


それが、長い間学園都市の暗部という闇に生きてきた木原数多の予測。

彼が気になっているのは、当然ながら侵入者や迎撃に出向いた“彼ら”の安否では無い。

せっかくの面白そうな玩具(まじゅつし)が、自分の手元を離れるかもしれないという可能性――ただそれだけだった。
150 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/28(日) 02:07:56.48 ID:TiffOz.0


木原達が侵入者の元へ到着した時、既に戦闘が始まっていた。

木山を車に残したまま、木原だけがその血の匂いのする戦場へ踏み込む。

その場の戦況は一方的で、勝者は優雅に佇んでいる。


「よお、楽しそうだな侵入者」


倒れている敗者を踏みつけて、平然と木原が勝者に声をかけた。

それに対し、勝者――シェリー・クロムウェルはフン、と鼻を鳴らす。


「うふふ。わざわざ死にに来たの? 殊勝な事ね」

「そう見えるか?」

「は、余裕のつもり? 戦う気なら、とっとと来やがれ」

「……あー」


そう挑発された木原は、近くをキョロキョロと見回して落ちていた鉄パイプを拾い上げた。

しかしシェリーは、それを見て脱力したように息を吐く。


「……それで何が出来んだよ?」

「言っておくけど、このエリスを前にしたら、誰も地に立つことなどできはしない」
151 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/28(日) 02:09:10.48 ID:TiffOz.0

そう言う彼女の隣には、4メートル超の巨大な石像が屹立している。

そして石像は、彼女の持つオイルパステルが一閃すると同時に、爆音のような雄叫びをあげた。


「スゲェな、お伽噺のゴーレムそのものかよ」

「科学者如きに褒められても、ちっとも嬉しかねーな」


嘆くようにそう呟くと、シェリーは鋭い視線で木原を射抜く。


「……足元で転がってる連中が見えていないのかしら?」

「ひゅー。見事に『駆動鎧(パワードスーツ)』15人が全滅してんな」


学園都市の技術によって編み出された、身体能力を強化するための『駆動鎧』。

極めて高い防御力と攻撃力をもたらすはずのソレが、全て無残に破壊されていた。

その光景を目にしながらも、木原から余裕が失われる事は無い。

逆に苛立ったのはシェリーの方だ。


「気に食わねぇな、その余裕。それとも現状の把握が出来てねーのか?」

「……んー、駄目だなこりゃ。このゴスロリ女、本気で調子に乗ってんぞ」

「話が通じないみたいね。もういいわ、とっととあなたも潰す事にしましょう」

「潰す? 俺を? どうやって?」
152 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/28(日) 02:10:14.17 ID:TiffOz.0

死の宣告を受けても平然としている木原を見て、シェリーが顔をしかめる。


「今さっきテメェが褒めそやした、ゴーレムで、だっ!!」


破壊をもたらす石像が、シェリーの指示を受けて1歩踏み出した。

そして巨大な腕を木原へと向ける。

そのまま振り下ろせば間違いなく彼は血だるまになって死ぬ――が。








「そっかそっか。何か勘違いさせちゃったみたいだな」

「あァ?」

「俺が評価したのは『能力』であって、『殺しの腕』じゃねーんだわ」


直後。

高く振り上げられた石像の腕が、轟音と共に粉砕された。


「なに!?」
153 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/28(日) 02:12:01.53 ID:TiffOz.0

理由は、“ロケットパンチ”の直撃。

4メートルの石像よりも大きい『超大型駆動鎧』が、スポーツカーよりも速く接近しながら腕を射出したのだ。


「そこの間抜け。テメェが得意げになってボコボコにしたのは『MAR(先進状況救助隊)』――昨日付で俺の指揮下に入った特殊武装チームだ」


木原がそう言い放つと同時、『超大型駆動鎧』が石像に殴りかかりながら大音量で呼びかけた。


『あぁぁぁぁまぁぁぁぁたぁぁぁぁぁぁ!!!!』

「ギャハハ!いつものキャラはどーしたよテレス?」

『テメェ、よくも人の部隊を……!』

「キレる相手が違うぜー、ちゃんと面白いネタはくれてやるから仕事しろモルモット」

『クソが!』


石像を抑え込む『超大型駆動鎧』に乗っているのは、『MAR』の“元”隊長テレスティーナ・木原・ライフライン。

木原数多と同じ一族で、木原幻生の孫娘でもある彼女は、兵器開発のスペシャリストだ。

『MAR』が木原の申請により『猟犬部隊』に統合された為、彼女は彼の部下として命令に従わなくてはいけなくなった。

だがそれは彼女にとって耐えがたい事らしく、その憤りは先の会話の後携帯を握りつぶすほど。

それでも木原への反抗を許されない彼女は、その怒りを敵である石像にぶつけている。


「はは。何だ、そりゃ……?」


突然生命線であるゴーレムを封じられたシェリーは、力なく笑うしかない。


「コレで何が出来るかって聞いたな、まぬけ」

「! エリ……」

「正解はコチラ♪」


声を掛けられたシェリーが、咄嗟にオイルパステルを振るうよりも速く。

木原の手にある鉄パイプが彼女の頭に振り下ろされた。
154 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/28(日) 02:13:16.22 ID:TiffOz.0

今日はこのあたりでおしまいです

えー、言い訳がましくなりますが、シェリー大好きです

もちろんローラも

テレスティーナは主人公ではないですが、この話で重要な役割を担います

何しろ魔術サイドとの戦力差が激しいので


では、おやすみなさい
155 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/28(日) 02:17:47.57 ID:r4Vt6Xgo


総合的な戦力ならいざ知らず、☆やドラゴンなしでは0930で終わってしまうよねぇ
156 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/29(月) 09:45:26.61 ID:h/4UV6Mo

木原くぅんがイケメン過ぎて辛い
157 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/29(月) 09:57:34.91 ID:Nu1AB/o0
テレスティーナのふとももにおにんにんはさみたいよぉ
158 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:04:01.57 ID:YSrjHk.0

こんばんはー、書きたいことがうまく描写できなくてスランプ気味です

とりあえず根性で頑張ってみます

では、投下


7月29日午前11時、駅前の大通り


入念に3、4発ほど頭部を殴った木原が、シェリーの意識が完全に無い事を確認するのと同時。

彼女の操るゴーレムが、テレスティーナの『超大型駆動鎧』によって貫かれた。

その一撃は偶然にも安全装置であるシェムを拭いとり、ゴーレムはボロボロと崩れ落ちる事になる。


「こうも簡単にいくかよ、魔術師?」

「戦力の大きさに対して戦術が素人以下。……無駄が多いっつーか何つーかよぉ」


あきれ果てたようにそう言うと、木原はシェリーを縛り始めた。
159 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:04:49.26 ID:YSrjHk.0

だがこの時木原は、まだ魔術師と呼ばれる人間の生き方を理解していない。

今回シェリーをたやすく捕獲出来たのは、虚を突いた作戦が成功しただけである。

彼女はその全力を出してなどいなかった――すなわち『魔法名』を名乗らないままだったのだ。


「テレス、こいつを例の病院に送り届けろ」

『……チッ、殺しゃ良いのに』

「したら分析できねーだろーが。それが終わったら、待機所へテメェも来い」

『ちゃんと見合った報酬(データ)は寄こ――――』


ブチィ!!

その時。

『超大型駆動鎧』のスピーカーから流れる声をかき消すほどの、異様な音が響いた。

見れば、学園都市製の特殊な縄を引き千切り、シェリーが意識の無いまま立っている。

火事場の馬鹿力のようなものだろうか、と木原は考えた。

何しろあの縄は、成人男性であっても引き千切る事は不可能な代物なのだから。

無理に解いた代償として、彼女の両腕は肘から下がグシャグシャに砕けている。

それでも彼女は痛みを感じていないかのように、1歩木原へと歩みよった。
160 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:05:59.90 ID:YSrjHk.0

「……マジか」

「――フフフ、初めましてということになりけるのかしら――」


しかも彼女の口から、今までとは全く異なる鈴のような声が発せられた。

ただしその声に含まれる闇色は、シェリーのそれと比較にならないほど濃く……そして深い。


「何者だ」

「――予想はしていると思うたのだけれど?――」

「……おい、ショットガン」

「は、はい!」


木原のリクエストに、意識を取り戻した『MAR』の隊員が即時に従った。


「――そのような野蛮なもの、出さずとも会話は行えしものよ?――」

「名乗れ、もしくはその体を吹っ飛ばす」

「――ふう、選択肢を奪う事で会話の主導権を抑たるとは、なかなか面白き趣向だろうけど――」

「――それが通用する相手かどうか、もう一度考えてみたりてはどうかしら――」


のらりくらりといなされた木原は、無言でショットガンをシェリーの体に撃ち込んだ。


(あの医者なら、死体じゃねぇ限り何とかするだろ)

(この場で引き下がって、相手に心理的優位を―交渉の余地を―与えたままには出来ないからな)
161 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:06:55.04 ID:YSrjHk.0

「――迷いなしとは、恐ろしき事ね――」


だがその散弾は、謎の爆発によって全て迎撃されてしまった。

煙の中から無傷の人影が笑いかけたのを見て、木原は頭をガリガリと掻きむしる。


「――この肉体で争うのは無益なこと、名前ぐらいは名乗りたるわよ――」

「……」

「――ローラ・スチュアート。イギリス清教の最大主教(アークビショップ)なのだけど、知りえるかしら?――」

「初耳だ」


そう答えながらも、木原は警戒心を最大まで高めた。

イギリス清教のトップ。

あのインデックスに『首輪』やら『自動書記』やらを施したのは、恐らく彼女なのだから。


「――用件は簡潔明瞭。禁書目録の身柄を引き渡してもらいたいのよん――」

「代わりにテメェが素っ裸でここに来て俺の研究材料(モルモット)になるなら、考えてやっても良いが」


ザザザリザリ!!と、両者の間で得体のしれない“何か”が駆け抜けた。
162 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:08:16.02 ID:YSrjHk.0

「――それなりに頭の回る人間かと思いしや、戦争を望みし愚か者とはね――」

「笑えるな。こうも早く大将が出張ってる事自体が、そっちの余裕の無さを浮き彫りにしてんだよ」

「――勘違いしているのやもしれぬけど、これは善意よりの警告なのよ――」

「あ?」

「――禁書目録が学園都市にいるとなりければ、十字教最大宗派『ローマ正教』を始めとした魔術サイドが、必ず行動を起こすと言うてるの――」

「なるほど、実に刺激的だ」

「――やれやれ、そちらの犠牲を憂慮しての言ではなしよ。禁書目録を他の魔術結社に奪われる事だけは防がぬと……――」

「知った事か」


これ以上の会話は無意味だと判断した木原が、一方的に話を断ち切ろうとする。


「――では、やはり力づくで事を為すしかないのかしらね?――」

「!」


不穏な気配を察した木原が、咄嗟に『超大型駆動鎧』の陰に伏せる。

刹那、シェリーの体が眩い光球と化し、膨張――爆発して半径30メートルを焼きつくした。
163 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:09:33.33 ID:YSrjHk.0

「……大した保険だ」


瓦礫の山を蹴飛ばして、木原がゆっくりと起き上る。

傍にいた『MAR』の駆動鎧の酸素ボンベを奪うことで酸欠からも逃れた彼は、ほぼ無傷だった。

ゆっくりと周囲の被害を確認しながら、彼は浮かない顔をした。


(あのゴスロリ女は死んだのか?)

(ついてねぇな。あんな“パフォーマンス”に利用されるとは)

(……ローラとかいう女は、俺を本気で殺す気じゃあなかった)

(この程度で死ぬような使い捨ての人材ならそれでよし、死ななくても警告としては十分以上の効果を発揮するってトコだな)

(そもそも戦争を避けたいあの女が、学園都市の人間を殺して喧嘩を売るとは考えにくい)

(つまり、こっちからクソガキを手放すよう仕向けた脅しに過ぎねェ)


随分と舐められたものだが、『情報流出に対する保険』と『敵対組織への警告』という2重の意味を持つ自爆は、効果的な手法でもある。

木原自身も使った事がある手だ。


(とりあえずは、他に侵入したかもしれねぇ魔術師への警戒を優先すべきだな)

(保険が1つとは限らないもんなぁ)


そもそも今回木原がシェリーの元へ来たのは、敵の掛けた保険を警戒したためだ。

まんまとそれが成功されてしまった以上、ここに長居する理由は無い。


「テレス、待機所へ行け」

『……とんだ茶番じゃねーか。人の部下が何人死んだと思ってんだ?』

「どーせ特に使えねぇ人材を寄せ集めて、『超大型駆動鎧』が到着するまでの時間稼ぎにしてたんだろ?」

『まあな』
164 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:10:27.83 ID:YSrjHk.0

7月29日午後1時、『猟犬部隊』32番待機所


離れていたおかげで爆発に巻き込まれなかった木山の車で、2人は新たな拠点に到着した。

すでにそこにはマイクやナンシーといった部下が勢ぞろいしており、インデックスを護衛している。

ここは地下に造られたシェルターの一室で、地下研究施設と徒歩で行き来が出来る特殊な待機所だ。

今現在そこの会議室に、『猟犬部隊』と『MAR』の精鋭が合わせて10名ほど座っている。

事件の顛末をざっと説明した木原は、これから部隊がどう動くか説明を始めた。


「とりあえず、やるべき事は2つだ」

「1つ。侵入した可能性のある魔術師を、捕縛または殺害」

「2つ。これからの戦いに備えて、武装の強化」

「魔術師への対応は、俺を中心に『猟犬部隊』がそれを行う」

「武装については、テレスを中心にして開発を急がせろ」


木原の命令を聞いて、テレスティーナが話を引き継いだ。


「半分は見たことない顔だし、自己紹介から始めましょうか」

「『MAR』のテレスティーナです。今回は、外部能力者との戦闘に有用な兵器を、とのオーダーですので……」


説明を始めながら、彼女が会議室のモニターを操作する。

そこに現れたのは、『駆動鎧』に装着可能な新型兵器だった。
165 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:11:39.58 ID:YSrjHk.0

「これはレベル5の第3位、『超電磁砲』を解析して造ったモノです」


その言葉を聞いて、木山がピクリと反応した。

彼女にとっては良く知る少女が、不意に話題になったからである。


(よくよくあの子とは縁があるようだ)


思わず過去の記憶に浸っているうちに、テレスティーナの説明は進んでしまった。


「――という事で、現在改良を進めています。いずれはさらに小型化できるでしょう」

「次に装甲服についてですが……」

「ストーップ、俺に良い案がある」


話を遮断されたテレスティーナがムッとするが、この場で木原に逆らえる人間はいない。

渋々と口を閉ざすと、彼に発言を譲った。


「悪いが、そもそもテメェを呼んだのは“こいつ”のためでな」


それだけ言うと木原はモニターを操作して、一見すると場違いな映像を映し出した。


「これは……!」


それを見て、木山達『猟犬部隊』だけが動揺を露わにする。


「……修道服?」


逆にテレスティーナは、意味が分からず首を傾げた。

そんな彼女に、木原は大きく頷いて説明する。


「その通り。『歩く教会』って言うらしいんだが」

「――こいつを量産化しろ」
166 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:12:40.10 ID:YSrjHk.0

それまで退屈そうに黙っていたインデックスが、大声を上げた。


「そんなの、出来る訳ないんだよ!」

「そうでもねぇ。すでに服としてのデータは全て登録してある」

「材料はただの布切れなんだし、後はそれに込められた魔術要素を追加すればいいだけだ」

「けど、トリノ聖骸布を正確にコピーしたり『教会』の要素を完全に加えるなんてあなた達には無理だもん!」

「ああ、そうだな。――けどそれがどうした?」

「え……」

「おいおい、ここに“そういうの”の専門家がいるだろーが」


木原の言わんとしている事が分かったのか、インデックスが顔色を青くした。


「わ、私に作らせるって言うの!?」

「実際に開発すんのはテレス達がやるさ。要は服の型紙をテメェが用意すればいいだけのこと」

「当然その情報も頭にあるんだろ?」


そう問われて、インデックスは力なく項垂れた。
167 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:13:44.79 ID:YSrjHk.0

「ある……けど、それは簡単にはいかないかも」

「そもそも誰でも作れるなら、魔術師はみんなこれを着ればいいんだから」

「それに……」


一呼吸置いて、インデックスは木原に訴える。


「きっとそれを教えれば、私はイギリス清教を裏切る事になるんだよ?」


そう。

科学側に身を寄せるだけでなく、意図的に魔術側の情報を流出させるという事は。

どう考えても裏切り行為に他ならない。

それを聞いた木原は。


「で?」


一言どころか一文字で切り捨てた。
168 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:14:44.75 ID:YSrjHk.0

「で?、って……」

「考えてみろクソガキ。そもそもテメェが1年間追われた理由は何だ?」

「……っ」

「テメェの記憶を好き勝手消してきたのは誰だ?」

「いや!」

「『首輪』をつけて、テメェを殺そうとしたのはどこのどいつよ?」

「やめて……」

「常人が見れば狂うっていう本を、10万3千冊を覚えさせたのは一体どんな連中だ?」

「もう、やめて!!」


涙を流しながら懇願するインデックスに、木原は囁いた。





「――それはイギリス清教じゃねーか」





169 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:15:51.11 ID:YSrjHk.0

「うぅぅぅ……」

「裏切るも何も、向こうはテメェをただの道具としてしか見ちゃいなかった」

「だがな、インデックス。テメェは人間だ」

「人間……」

「ならばそこには感情がある。寂しさは? 悲しみは? あるべき怒りはどこだ?」

「……」

「なあ。俺らを利用して、復讐しろよ」

「そんなの……」

「何も引き金を引けって言ってる訳じゃねぇ。復讐は俺達がしてやるから、その準備を手伝えばそれでいいんだ」

「けど……」

「良く考えろ。仮に復讐する気がないにしても、俺達への協力を拒む必要は無いよなぁ?」

「……」

「心の中で何を考えていたって構わねぇ、信仰を捨てろとも言う気も全くない」

「ただ、俺たちに協力してくれればそれでいい」
170 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:16:43.56 ID:YSrjHk.0

この中で一番木原を知っているテレスティーナが、インデックスから目を背けた。

あの木原数多が、本気でこんなセリフを吐く訳が無い。

元々彼は他人を思いやることなどしない男である。

先の言葉は、一見すると慈愛の含んだ言葉に見えるが、彼は自分の目的の為なら平気で他人を誑かせる類の悪党だ。

現に木原は、インデックスがコクンと頷いたのを見ると、テレスティーナに目でこう言ってきた。


――「やっぱりな。一度“堕ちた”人間は、何があろうと戻れねェ」

――「だからそう言うヤツは、必ず他者を堕とそうとする」

――「クズが無くならねぇ訳だ」


涙ながらに協力をする事にしたインデックスが、震える声で木原に1つだけ尋ねた。


「あまたは、神様を信じてないの……?」

「いいやあ?」


ゆるゆると首を横に振ると、木原は。


「カミサマがいるかどうかは知らねーが、1つ確かなのは……」

「もしいたとしたら、俺みたいな悪党1人殺せねぇ無能って事だな」


そう言って、くすくすと嗤ってみせた。
171 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/11/30(火) 02:18:40.47 ID:YSrjHk.0

今日はここでおしまいです

これよりインデックスはイギリス清教と敵対します

ちなみに木山先生は、テレスティーナとは初対面で彼女が木原一族だということをまだ知りません

次回は魔術サイドに焦点を当てる予定です

では、おやすみなさい
172 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/30(火) 03:02:52.42 ID:Xtp/GnIo
木原くん有能すぎるな
乙です
173 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/30(火) 03:28:56.44 ID:PKAetIQ0
シェリーェ…
174 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/30(火) 04:11:15.76 ID:lOef5woo
おやすみー

まさか最大主教が出てくるとは思わんかったわwwwww
175 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/30(火) 08:02:53.20 ID:FPckkBo0
木原一族の清々しいまでの外道っぷりは読んでて楽しいです。

しかしこの話、この調子で進んだらどうなっちゃうの?
176 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/30(火) 10:27:35.12 ID:bz00qOko
木原くンがハーレム形成する
177 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/30(火) 12:10:22.95 ID:g5dPLtA0

歩く教会の量産化とか、発想がおかしいだろwwwwww

木原コンビの活躍に超期待!!
178 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/30(火) 12:12:25.67 ID:LV7CjR2o
どうなるかわからないから楽しいんじゃないか
つかこんな扱いのシェリーは初めて見たな
179 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/30(火) 13:10:06.50 ID:x8035nYo
シェリー…
180 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/01(水) 00:44:57.30 ID:wMbmdvco
いま思ったんだが聖人って身体的特徴がキリストに似ているから強いんだろ?ならクローンつくれば強くね?
181 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/01(水) 00:52:09.36 ID:vLPoGoEo
まずどうやって聖人のDNAを入手するかだな
182 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/01(水) 01:01:01.86 ID:wGVxuZAo
劣化して使い物にならなそう
183 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/01(水) 01:11:43.75 ID:5wMyBv.o
妹達と大して変わらない結果に終わりそうな気が・・・
184 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/01(水) 01:26:28.81 ID:hsEtFkDO
自分だけの現実が重要なのに、感情がほとんど無い妹達を作ったから失敗したんじゃね?
聖人ならある程度までは上手くいきそう。
185 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 10:50:14.58 ID:yHTnwdg0
ミサカと天草式でかっこいいシェリーを書いたのってこの>>1だよね?
一転してこの扱いとか落差が激しすぎるぜ……
186 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/01(水) 11:21:38.11 ID:5zHo2gU0
木原くんみたいな悪役は魅力があっていいね。
187 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/01(水) 12:15:55.40 ID:hN76pHgo
>>185
そだよ。だから「シェリー大好きです」は説得力があるし信じるけど、
だからこそこの展開には驚いたww
188 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/02(木) 00:44:18.52 ID:jrZ3euM0

こんばんはー、レスが多くてびっくりしました。

どうもありがとうございます。

>>180
虚数学区の噂に
『世界中の偉人・聖人のDNAを保管し、その解析の結果、ボタン一つでいくらでも天才を製造できる『才人工房(クローンドリー)』がある』
というのがありますよね。この話でもいずれ出すかもしれません。


では、投下


7月29日午後2時(日本時間)、ランベス宮のとある一室


その部屋は、謎に包まれたこの建物の中でもとりわけ異様な雰囲気を醸し出していた。

辺り一面に不可思議な魔法陣が刻み込まれており、中央には馬車を象った大理石が置かれている。

そして何よりも奇妙な事に、その石の馬車には1人の女性が力なく仰向けに倒れているのだ。


「……グ……お、ああァァァァ……?」


その女性は完全に意識が無いにもかかわらず、まるで悪夢にうなされているかのように激しく悶えている。

何しろ彼女は体の半分以上が焼け焦げて、一部は炭化している部分すらあるのだ。

彼女――シェリー・クロムウェルの無残な姿を眺めていたステイルが、煙草の煙を無造作に吐いた。
189 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/02(木) 00:45:52.97 ID:jrZ3euM0

「フー……、エリヤの伝承を基にした瞬間移動術ね。初めてお目にかかったが随分悪趣味だ」

「うるぅぅぅぅぅぅぅ……」

「自らを炎とし、敵に一撃を与えて離脱させた、か」

「元は単なる移動術式のはずなのに、よくもここまで悪趣味な変異を実行したな」

「流石は最大主教。シェリーほどの魔術師に、気づかれずにこんな術式を施すとは恐ろしい」


同僚の変わり果てた姿を見て、それでもステイルは淡々と言葉を紡ぐ。

あの最大主教がシェリーの派遣を決定したのは、この保険を掛けていたからだ。

シェリーは優れた魔術師であると同時に、寓意画・紋章などに隠された意味を読み取る、暗号解読のスペシャリストでもある。

学園都市にその知識までも渡すわけにもいかないので、最大主教は彼女にも秘密でこの術式を仕込んでいた。

もしも彼女が敵の手に堕ちる事があれば、その身を犠牲にしてでも強制的に帰還させるために。


「ぞ、ご、おぉぉぉぉぉぉ!」

「やれやれ、聞くに堪えないね。だがこれは当然の報いでもある」

「――あの子を助け出せなかった以上、この程度の罰は甘んじて受けてもらわないと」


そう言うと、ステイルはこの部屋を後にした。

移動術式の影響で精神を破壊されたシェリーに、憐みのこもった視線を1つも向けないで。
190 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/02(木) 00:47:29.50 ID:jrZ3euM0

同時刻、『猟犬部隊』32番待機所


現在木山は、1人でアイスコーヒーを飲んでいた。

隣の研究室では、『歩く教会』の性能データを見たテレスティーナが、目の色を変えて解析に取り組んでいる。

インデックスも彼女に付いていったため、この広い部屋には木山以外誰もいない。

兵器開発については門外漢だし、何より進んで木原数多の計画に協力する義理も無いので、こうして暇を持て余していた。

そしてその時間は、必然的に彼女の思考を活発化させる。


(……魔術……)

(あのゴーレム使いの他にも、魔術師は学園都市に侵入している)

(そうあの男は言っていたが)

(そもそも、一体どれほどの魔術師がこの世界に存在するのだろう?)

(あの少女――インデックスの話を聞く限りでは)

(魔術とは、「才能の無い人間がそれでも才能ある人間と対等になる為に生まれた技術」で)

(『才能』とはすなわち超能力の事だと言っていたが)


そこに決定的な矛盾が存在していることに、彼女は気づいた。
191 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/02(木) 00:48:28.67 ID:jrZ3euM0

(『超能力』の開発に初めて成功したのは、学園都市が世界で初めてだ)

(だがその学園都市が誕生したのは、今からおよそ50年前)

(……どう考えても、『魔術』の方が歴史が古い)


そう。

『超能力』に対抗するために『魔術』が生まれたのならば、当然『超能力』が先に存在してなければおかしい。

だが超能力の歴史はわずか50年。実用レベルの能力ともなると、その発生からわずか20年ほどしか経過していないのだ。

対し魔術の歴史は、人類史の初期から見受けられる。

もちろんその全てが本物ではないだろうが、少なくとも魔術を追い求めていたのは事実だ。


(インデックスの言葉が真実だとすると――)

(超能力の始まりは、学園都市では無い……?)

(だとすれば、“最初の超能力者”は誰なんだ?)

(人類に魔術を追い求めさせる契機となったそのチカラは、一体……?)
192 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/02(木) 00:49:32.66 ID:jrZ3euM0

答えの見えない思考の渦に、ぐるぐると入り込む。

そんな彼女を引き戻したのは、あの男だった。


「難しい顔してんなぁ、木山ちゃん」

「!」

「……何か面白いコトに気づいたか?」


足音どころか気配すら完全に消して現れた木原が、ニヤニヤと笑いながら話しかける。

口元に浮かぶ笑みとは対照的に、その目は誤魔化しを許さないほど真剣だった。


「いや、何でも無い」

「いーからいーから。早く聞かせてくれよ」

「だから大したことではないと……」

「俺に木山ちゃんを殴らせんなよ。な?」

「……っ……貴様はフェミニストだったか?」

「違う違う“逆”だよ。俺ぁさっきの事で今エンジン温まってんだ。――1度殴り始めたら木山ちゃんが死ぬまで止めらんねぇ」


まるでどこかのチンピラのような言い草だが、木原の言葉はそれとは決定的に異なる部分がある。

すなわち――只の脅しでは無く、本気で殴り殺すつもりがあると言う事だ。

今の木原に逆らえば、問答無用で惨殺される。
193 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/02(木) 00:50:30.22 ID:jrZ3euM0

「……1つ気になったのだが……」


結局木山は、超能力の始まりについて疑問を感じた事を全て説明した。

それを黙って聞いていた木原は、パチパチと拍手して彼女を褒め始める。


「中々面白い着眼点じゃねーか。魔術を生みだす切っ掛けとなった“最初の超能力”とは何なのか、ね」

「俺も詳しい話を聞いた訳じゃねーが、一つだけ心当たりがある。『原石』ってヤツだ」

「聞いたことが無いな。『原石』……?」

「定義としては、学園都市の超能力開発の環境と全く同じ環境が自然界で整った場合に超能力を発現させた天然の能力者――ってことらしい」

「つまり、偶発的、自然発生的に超能力開発を受けた人間がいると?」


あまりにも可能性の低い話に、木山が否定的な態度を見せた。


「もちろんその数は極めて少ないらしいがな」

「……」


そこまで言って、木原はある事を思い出した。
194 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/02(木) 00:51:43.67 ID:jrZ3euM0

「おお、そう言えば。噂じゃ、あのナンバーセブンも『原石』って話だぜ」

「分析不能と称された、第7位の子か。単なる能力開発のイレギュラーだとばかり思っていたのだが……」

「そうじゃねぇ。学園都市の開発を受ける“前”から、妙なチカラを持っていた」


まあ書庫(バンク)には乗って無いんだがな、と木原は話をまとめた。


(自然に生まれた能力者……『原石』こそが最初の超能力者なのだろうか)

(このまま魔術に関わっていく以上、その方面からのアプローチも考えなくてはいけないのかもしれないな)


いずれ木原をどうにかするつもりとはいえ、しばらくは彼に従って魔術師と戦わなくてはならない。

魔術という未知の概念を相手にするのだから、とっかかりは多いに越したことは無いと木山は判断した。

195 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/02(木) 00:52:43.91 ID:jrZ3euM0

この話題は終了したと見たのか、木原が別の話を持ち出す。


「そういやあ、ちょっと面白い事を考えた」

「?」

「ゴスロリ女を拘束した時、イギリス清教のトップ様は俺にこう警告してきたんだ」

「『禁書目録が学園都市にいると分かれば、十字教最大宗派『ローマ正教』を始めとした魔術サイドが、必ず行動を起こす』ってな」

「それだけじゃなく、『禁書目録を他の魔術結社に奪われる事だけは防がないといけない』とまで言いやがった」

「つまり一口に魔術サイドと言っても、連中は友好関係には無いって事だ。まあ宗教史を見ればわかりきった事だが」

「それが?」

「分かんねーか。俺の目的は魔術を知ることであって、戦争じゃねぇんだ」

「いや戦争しても全然構わないがよ、どうせなら“手札”は賢く使わなきゃな?」

「貴様、まさか……!」





「十字教最大宗派『ローマ正教』に、こっちからラブコールを送ってみようぜ」


世界を揺るがすような考えを、木原はさらりと口にした。

196 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/02(木) 00:53:31.17 ID:jrZ3euM0

短めですが、今日はここまでになります

これからますます原作と相反する展開になってきます

次回は再び魔術師との戦いになるかと思います

では、おやすみなさい
197 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/02(木) 01:06:21.05 ID:r/H4vmI0
投下乙
そこでローマをそう使うとは。
アンタはほんとに最高だなww 次も期待してるよ
198 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/02(木) 01:15:54.04 ID:t41PT7.o
木原くン頭ぶっ飛びすぎだろwwwwww
199 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/02(木) 01:27:34.54 ID:cOmRwkDO
禁書を餌に魔術側の人と取引とかすんだろうなーとは思ってたがローマ聖教とはwww
乙!次も楽しみにしてるぜい
200 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/02(木) 02:46:52.10 ID:/.K.9mQo
次回は相手的に捕獲出来そうだな
精神ぶっ壊して廃人にしちゃったら使えないじゃん最大主教wwww
201 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/02(木) 10:57:10.58 ID:Ht7qXiE0
乙!!

魔術の生まれた理由とか、原作でも明かされてないのに挑戦的だなあ

結局他に魔術師は侵入してるのだろうか?
202 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/02(木) 16:09:37.20 ID:8VWb86Yo
やはりこの>>1は発想が違う。乙
203 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/03(金) 10:28:43.50 ID:EUVWvKs0
確かに考えてみれば、インデックスはイギリス清教を恨んでもおかしくないな
闇に落ちたインデックスとか俺得だぜ

でもちょっと木原くン無双過ぎる気がするけど 
204 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/04(土) 07:11:33.78 ID:zOYhJR.o
木原くンが無双しても違和感がない不思議。
テレスとは違うね!
205 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/05(日) 01:05:37.63 ID:PiECq460

こんばんはー、レスありがとうございます

ちっともスランプが解消されないので短めですが、ご容赦ください

では、投下


7月30日午前10時、『猟犬部隊』32番待機所


この地下シェルターの警護を部下にさせながら、木原はインデックスと話をしている。


「なるほど、一口に魔術と言ってもその傾向はそれぞれ大きく異なるのか」

「うん。魔術はそれぞれの国の文化と適合して、その種類を無数に増やしてきたから」

「……それほど広まった割には、世界の大多数は魔術を単なるオカルトとしてしか見てねーが?」


木原がそう疑問を口にすると、インデックスは即座に否定した。


「そうでもないんだよ? 今でも魔術と宗教は世界の半分を支配しているんだから」

「……半分ねェ」
206 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/05(日) 01:06:34.50 ID:PiECq460

「疑ってるね? 魔術が公にされていないのは、単に敵対する魔術師に対して情報を秘匿するためなの」

「なるほど。超能力と違って、魔術は手順さえ正しければ誰でも使えるんだったな。だから種類を増やしながらも今まで隠蔽されてた」

「その通りなんだよ。誰でも使えるからこそ、不用意に情報を漏らす訳にはいかない」


その言葉を聞いた木原が、抑えきれない好奇心を滲ませてこう言う。


「……なら、“俺にも”魔術が使えるって事だよな?」

「それは無理かも」


だが、インデックスは再び否定。


「何故だ?」

「宗教防壁どころか、宗教観そのものが希薄なあまたが魔術を使えば……きっと精神を蝕まれてしまうから」

「……そーかい。じゃあ“今は”それでイイか」


以前と同じ事を言って、木原はその話を一方的に終了した。

そしてタイミング良く現れたテレスティーナが、インデックスから『歩く教会』の説明を聞く為に連れていく。
207 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/05(日) 01:07:47.74 ID:PiECq460

インデックスが立ち去った今、部屋にいるのは木原と木山の2人だけだ。

前日に気になる事を聞かされた彼女が、事の進展を木原に尋ねる。


「ところで、向こうからの返事はどうなったのかね?」

「まだ来てねぇよ。当然だろ?」

「どんな返事を送るにしても、だ。まずは情報の裏を取って、しかもお偉い様達で対応を協議する必要がある」

「……なるほど」

「まぁざっと一週間ほどは掛かると見たね、俺は」


――ローマ正教。

世界113ヶ国に教会を持ち、実に20億を数える教徒を従えている魔術サイド最大勢力だ。

インデックスの話では、その大半は魔術の存在を知らないという事だが。


(だからこそ、それを束ねる“上”は想像もつかねぇ魔術師のハズだ)

(何しろ2000年前の昔から、魔術を管理、利用してきたんだからなぁ)

(現在では20億の信仰を一手に引き受ける、史上最大の宗教組織)

(――ああ、楽しみだ!)

208 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/05(日) 01:08:41.11 ID:PiECq460

「木原さん、報告を」


まるで遠足を明日に控えた小学生の様な無邪気さで、ローマ正教の返事を待つ木原。

そんな彼に、警備を交代して部屋に戻ってきたナンシーが声をかけた。


「ん?」

「偵察衛星の情報、及び各種移動経路の人員リストを見る限り……他に魔術師が侵入したとは考えにくいようです」

「……妙だな」

「ええ、ですが事実です。イギリス清教は、本当に侵入者1人だけであの子を取り戻せると思っていたのでしょうか?」

「それはねぇだろ。そうは思っていなかったらこそ自爆の用意をしやがったんだからな」

「では?」

「それを踏まえりゃ、考えられるのは2つだ。魔術師が何らかの方法でバレねぇ様にすでに侵入しているか、あるいは……」


そこまで言うと、何故か木原は口ごもってしまった。
209 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/05(日) 01:11:53.48 ID:PiECq460

「木原さん?」

「あーあーあーあー、どーすっかなー?」

「おい、何がどうしたのか説明してくれ」


木山の言葉も無視して、彼は部屋を歩き回り始める。


「……人数は増えてない上で……侵入方法……入れ替わり……変装、いや『肉体変化』か……?」

「タイミング……ゴスロリ女の派手な行動……警備員……」

「それにもう一つ……」

「『自動書記』……貴重な10万3千冊……自爆装置?……いや、俺なら遠隔操作……!」

「……可能性……文化的背景……現状把握……申請して……よぉーし!」


何かをブツブツと呟きながら、やがて彼は1つの結論に達した。


「ちょっと上に『例のアレ』申請してくるから、ナンシーはマイク達と合流して別任務な」

「?……はい」


木原が何を考えついたのか分からないので、ナンシーはいつもと違って明快な返事が出来なかった。

だがそんな事はどうでもいいのか、木原は彼女を無視して内線でテレスティーナに連絡を取り始める。
210 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/05(日) 01:13:36.90 ID:PiECq460

「おー、ちょっとガキを連れてくぞ」

『はぁ? テメェがガキをここから出したらマズイつったんだろーが!』

「いいんだよ。魔術師が侵入してる可能性はあるが、そっちの問題は今からマイク達4人に片付けさせっから」

『ああん? だからって、外に連れ出す理由にはなんねーぞ? つかまだ来たばっかりじゃ……』

「ちょっとばかしガキの知識が必要なんだよ、いいからさっさとしろやモルモット」

『……チッ』


乱暴に通話が切られ、すぐにインデックスが部屋に戻ってきた。


「どうしたのあまた?」

「お出かけだ」

「ホント!?」


今まで待機所から出してもらえなかった彼女が、嬉しそうに目を輝かせる。


「待て、この子をどこへ連れて行く気なんだ?」

「安心しろよ。木山ちゃんも一緒にお出かけすんだから」

「で、場所はどこなのかな? 美味しいレストランだと嬉しいかも」


インデックスの質問に、木原は只一言。


「第23学区」


そう答えるだけだった。
211 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/05(日) 01:14:57.32 ID:PiECq460

7月30日午後2時、学園都市第6『門(ゲート)』管理室


マイク達4人は、木原の指示で再びここを訪れていた。

ちなみにシェリーによって昨日破壊されているので、現在封鎖されて無人となっている。

彼らはお馴染みである漆黒の装甲服を身に纏い、以前とは異なる手掛かりを検索している最中だ。


「見つけた」


そんな中、ヴェーラが目的のモノを発見して声を上げた。


「警備員の死体が2つ。隠すように床に埋められているわ」

「昨日の事件ではこちら側に死者はいないはず。やはりあの人の言う通り、入れ替わりやがったか」


敵の侵入の証拠を掴んで警戒したのか、マイクがショットガンを強く握り締めた。


「敵にとって予想外だったのは、私達が10分もしないうちにここに来た事」


ナンシーが悔しそうに言葉を引き継ぐ。
212 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/05(日) 01:17:55.34 ID:PiECq460

「だから怪我した警備員のふりをして、そのまま病院に行くしか逃げ場が無かった。……これって私達の失態よね?」


あの時ナンシーとマイクは、侵入者のすぐ近くにいながらそれに気づかなかったという事になる。

そしてそれは、最も危険な人物の怒りを買う事を意味していた。

恐ろしさで震えるナンシーに対し、マイクが冷静に打開策を提案する。


「今さら言っても仕方ない。――行くぞ、侵入者を捕獲してミスを挽回しなくちゃな」

「「「了解」」」


彼らが何よりも恐れるのは、リーダーである木原数多(ごしゅじんさま)だ。

今から戦うであろう魔術師よりも、遥かに敵に回したくない存在として見ている。

だからこそ。

『猟犬部隊』はその名に相応しく、獲物を捕えるために全力で駆けるのだ。



――例え獲物が、これまでに出会ったことのない存在だとしても。

213 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/05(日) 01:19:07.80 ID:PiECq460

今日はこれでおしまいです

思ったよりも話が進まなくて申し訳ないです

次回こそ、魔術師との戦いになります

そして木原くンの先読みはどこまでいくのか……

では、おやすみなさい

214 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/05(日) 02:13:49.49 ID:tFFAS3Uo


次回も期待してるんだよ!
215 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/05(日) 02:24:21.48 ID:1QBzDSgo
おつおつ
216 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/06(月) 00:53:20.61 ID:Az2T8YIo
さてどんな魔術師なのか…
乙です
217 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/06(月) 10:44:32.59 ID:6TUCItM0
>「……人数は増えてない上で……侵入方法……入れ替わり……変装、いや『肉体変化』か……?」
木原クンの頭の回転が異常


               ∧_∧_∧
            ___(・∀・≡;・∀・) ドキドキドキ
             \_/(つ/と ) _
           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
        |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:| :|
        |           .|/

                       _∧_∧_∧_
        ☆ パリン 〃   ∧_∧   |
          ヽ _, _\(・∀・ ) <  続きマ……
             \乂/⊂ ⊂ ) _ |_ _ _ __
           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/| .  ∨ ∨ ∨
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   _  ___
   \>,\/

          <⌒/ヽ-、_ _
          <_/____ノ
218 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:13:47.15 ID:rrwXxCY0

こんばんはー、相変わらずの時間ですが投下します

>>217
そのパターンのAAは初めて見ましたww


では、投下


7月30日午後2時30分、第8学区のとある警備員付属病院


死んだはずの警備員2名が入院している病院は、すぐに割り出す事が出来た。

恐る恐るナンシーが木原に報告すると、彼はしばらく逡巡して1つの指示を与える。


『聞かなくても分かんだろーがバカ。その成り済ましを生け捕りしろ』

「はい。すでに例の病院に到着していますので、即座に作戦を開始します」

『あー、待て待て。テメェら無能が考えなしに突っ込んでやられたら、俺が出張らなくちゃいけねーだろ』

「そのような心配は……」

『あ゛?』


木原の不機嫌な声に、ナンシーが体をビクリと震わせた。
219 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:14:59.34 ID:rrwXxCY0

「も、申し訳ありません」

『この作戦の結果次第では覚悟しとけ。……アイ・カメラを作動しろ、集音マイクもだ』


今木原がどこにいるのか、マイク達は知らない。

だがこちらの映像と音声を拾って、逐一指示を出すつもりのようだ。

とマイク達は思ったのだが、木原は予想外の事を言い出した。


『ま、ちょっと“こっちも”ゴタついててよ、俺ぁ手が離せねーんだわ』

『だから専門家の指示を仰げ』

「専門家……?」


指示通りに装備のスイッチを入れたところに、場違いな幼い少女の声が届く。
220 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:15:33.86 ID:rrwXxCY0

『うわー、TVが映ったんだよ!あまた、これは何ていう番組なのかな?』

「……?」

『違ぇよ。それはあいつらが見ている映像だ。……それを見て気付いた事があれば、警告と指示を出せ』

「まさか、あの子に指示役を任せるおつもりですか?」


幾ら相手が得体のしれない魔術師とはいえ、こんな子供に従うのは釈然としない。

そんな思いでヴェーラが口を挟むが、当然木原は相手にしなかった。


『じゃあ死ぬか?』

「……」

『最初から黙ってろ。じゃあ狩りを始めやがれ』
221 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:16:46.89 ID:rrwXxCY0

標的は、現在3階の一般病棟にいるらしい。

こんな日中に装甲服が病院へ突入すれば、間違いなく目立つ。

よって『猟犬部隊』は、スモークを使って周りの目を潰す事にした。

彼らが装備しているゴーグルを通せば視界は確保できるが、それ以外の人間は濃い暗闇で完全に目を奪われる。


「作戦開始、突入」


マイクの号令に従って、黒煙に覆われた病棟を猟犬部隊が駆け抜けた。

そして標的がいる病室の扉をけ破って突入。

だが、そこには。


「……誰もいない……?」

「呆けないでデニス。どうやら連中は、私達に気づいて逃げ出したみたいね」


うろたえるデニスを横目に、ヴェーラが冷静に嗅覚センサーを取り出した。


「うん、標的の『匂い』をキャッチ。追いかけましょう」

「油断するなよ、相手の見た目に惑わされるな」


マイクがそう警告して、再び病棟を駆けだした。
222 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:17:56.49 ID:rrwXxCY0

病院の地下エリア


突然行われた襲撃に、魔術師は尻尾を巻いて逃げるしかなかった。

しかも運の悪い事に、暗闇の中手探りでようやく見つけた階段は下にしか伸びていない。

他の病棟へ向かう扉は鍵がかけられており、こうして地下まで来てしまったのだ。

その追われている魔術師の男が、自分達の置かれた境遇を嘆く。


「まさか、こんな白昼堂々襲ってくるとは思いもしませんでしたよ……」

「そもそもどうして私達の事がバレたのだ!?」


それを聞いて声を荒げたのは、もう1人の魔術師――それも女だ。

成り済ました警備員の死体を発見されたと判断した2人は、それぞれ医者と看護師の姿に化けている。

だがそれでも、敵は自分達を的確に追ってきている気がしてならない。

その為2人は、怪しまれない程度に早足で病院を脱出しようと試みていた。
223 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:18:38.62 ID:rrwXxCY0

「バレた理由ですか。偶然か、はたまた何らかの根拠があったのか……とにかく逃げ切らなければ、マズイ事になります」

「そんなことは分かっている!」

「落ち着いてください、ショチトル」

「何故貴様はそうものんびりとしていられるのだ……!」

「大丈夫です。あなたの事は、絶対に自分が守ってみせますから」

「こ、こんな時に何を……」

「おや、気に障りましたか?」

「もういい!」


ショチトルと呼ばれた女性が、歩く速度を速めて男から距離をとる。

だがそれでも、小さな囁きは彼の耳に届いていた。



「……死なないでよ、エツァリお兄ちゃん」

224 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:19:34.42 ID:rrwXxCY0

(一体、どうしてこんな事になったのでしょうか)


猟犬部隊の標的――その名をエツァリという魔術師は、心の中で自分の数奇な運命をたどっていく。

彼とショチトルは、元々『翼ある者の帰還』と呼ばれる中米最大の魔術結社に所属していた。

だがある時行われた実験で、彼らの運命は激変する。

ショチトルの体に、『魔道書の原典』が書き込まれたのだ。

書き込まれた『原典』は、『生と死に関する時間』の内容だけを抽出し、宗教的な論説にまで発展させた『暦石』。

その術式の威力は絶大だが、引き換えに彼女の肉体を“消費”していくというあまりにも馬鹿げた結果をもたらした。


(全ては、そこから始まった……!)


それを許容できなかったエツァリは、強引に彼女から『原典』を引き剥がしてしまう。

当然、『原典』を自分が受け継ぐ事を承知の上で。

――だがそれは、組織に対する裏切りになる。

そしてエツァリも、こんな事をしでかした組織にこれ以上残るつもりは毛頭なかった。


(だから自分は、ショチトルを連れて国外逃亡をしました。が……)
225 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:20:28.84 ID:rrwXxCY0

組織からは逃げ切ったものの、そのまま“めでたし”になるほど世界は優しくない。

ほどなくして、『原典』所持の罪でイギリス清教の魔術師に2人は捕まった。

エツァリは、そのまま処刑されるのを待つばかりだと思っていたのだが。


――「初めまして、なのよん」

――「……あなたは?」

――「ローラ・スチュアートと言いけるの。最大主教と言えば、理解したりているでしょう?」

――「そうですか、あなたが。まさか直々に処刑に?」

――「違いたるわよ。ちょっと取引をしたくてね」


処刑の代わりに命じられたのは、学園都市への潜入だった。

『必要悪の教会』のメンバーが1人派手に暴れるので、その隙に侵入し『禁書目録』へ近付きなさい、と。

選ぶ自由など、当然与えられなかった。


(問題は、相手の動きが予想以上に早かった事)
226 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:22:10.06 ID:rrwXxCY0

エツァリとショチトルは言われたとおり学園都市に入り込んだが、そこで誤算が生じる。

『門』をシェリーが破壊してからわずか10分で、謎の装甲服の部隊が現れたのだ。

その時まだ現場に留まっていた2人は、とっさに重体の警備員を殺して入れ替わった。


(そして病院に搬送された後は、隙を見て行動を開始するつもりだったのですが)

(……こうも早く自分達の存在に気付くとは)


このまま見つかれば、イギリス清教の依頼は達成出来なくなる。

そうなれば待つのは死のみだ。


(いえ、そもそもそこからして妙でしたね)

(イギリス清教の秘宝とも言うべき『禁書目録』の奪還に、何故自分達のような外部の魔術師を使おうとしたのでしょう?)

(死んでも構わない使い捨ての駒だから?)

(あの最大主教が、そんな単純な考えで動くとは思えませんが)

(それに、自分達が『禁書目録』を連れて逃走するかもしれないと、予想していないのでしょうか?)


妙な例えだが、この状況は誘拐された社長令嬢を探すために警官ではなく囚人を利用しているようなモノなのだ。

普通なら、当然信頼している警官を使うはず。

下手をすれば、今度は囚人が社長令嬢を誘拐したり殺したりするかもしれないのだから。


(では何故? 自分の頭では、これ以上考えても結論は出そうにありませんね)


あのローラの思惑など、分かるはずが無い。

エツァリはそう判断すると、現状打破に意識を集中した。
227 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:23:13.84 ID:rrwXxCY0

標的の進行方向は、手に取るように分かる。

相手は外見を変えられるようだが、『匂い』にまでは意識が至っていないらしい。


「間もなく接触するわ」


思ったよりも楽勝だ、とナンシーは感じた。


(そもそもイニシアチブを取ったのはこちらなのだから、当然なんだけど)

(……正直、同情するわ。木原さんを敵に回したなんて)


そんなナンシーの緩みを敏感に感じ取ったのか、マイクが注意を飛ばす。


「油断するなって言ったろ。相手を侮ると、必ず痛い目を見る」

「アンタと一緒にしないで頂戴」

「チッ……」


マイクが口うるさいのはいつもの事だが、何故か今日は特に気に障る。

もう一言ぐらい言ってやろうかと思ったその時、デニスが割り込んできた。


「いたぞ、そこにいる2人だ!」

「OK、生け捕りなのを忘れないでね」


ヴェーラが返事をして、一気に部隊を展開させる。
228 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:24:30.51 ID:rrwXxCY0

「いたぞ、そこにいる2人だ!」


追手の声が聞こえた瞬間、ショチトルは愕然とした表情を浮かべた。


「くそ、奴らは外見以外で私達を追跡出来るのか!」

「走りますよ!」


エツァリが彼女の手を引いて走り出すが、向こうの方が足が速い。

相手は追跡用の訓練をしているのか、重武装にもかかわらずみるみるうちに距離を詰めてきた。

しかしその時、エツァリはあるものを見つける。


「アレだ!」


咄嗟にエツァリは、アレ――廊下に設置してあった防犯シャッターのスイッチ――を押した。


「!!」


ガゴン!と重たい音を立てて、分厚い金属製の隔壁が瞬時に降りてくる。

挟まれそうになったナンシーが、慌ててバックして事なきを得た。
229 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:25:48.49 ID:rrwXxCY0

「厄介な事を!」

「だから油断するなと言ったろーが」


怒るナンシーに対し、マイクは面倒くさそうに吐き捨てる。


「ショットガンじゃ厳しいわね……どうする?」


ヴェーラがそう尋ねると、


「ランチャー持ってきます!」


装備を調達する為にデニスが戻ろうとした。




「いや、その必要はねーよ」


だがマイクはそれを止めると、ポケットからパチンコ玉を取り出して笑う。
230 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:26:46.57 ID:rrwXxCY0

「これで少しは時間が稼げるでしょう。今のうちに……」


エツァリの言葉は、最後まで続かなかった。

ミシィ、ゴキ、メキャ、ボキ!!

そんな感じの破壊音が、辺りに轟いたからだ。


「強化シャッターが!?」


もちろん音だけではない。

鉄壁の隔壁が、音に比例して粉砕されていく。

その光景は、魔術師の2人から見ても異様だった。

何故なら、隔壁を粉砕したのは強力な破壊兵器では無く、只のパチンコ玉だったからだ。

しかも物理的にありえない事に、パチンコ玉はゆっくりと進み続けている。


「『絶対等速(イコールスピード)』」


隔壁の向こうから、追手の声が聞こえてきた。


「残念だったな、思惑が外れて」

「フ……」


追い詰められたエツァリは、それでも笑って見せた。
231 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/07(火) 01:28:45.31 ID:rrwXxCY0

――能力者が登場しないとは言ってないぞ?

という訳で、個人的なお気に入りキャラ登場です

今日はここでお開きになります

次回は木山先生達の視点を書くつもりです

ショチトルの原典融合は、学園都市も学芸都市も無関係です

あとこの話のエツァリは、海原にはなりません

美琴を好きにもなりません(何か彼のアイデンティティーが失われそうですが)

代わりに別の人物と恋をする予定です

では、おやすみなさい
232 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/07(火) 01:40:02.61 ID:Y4yh4sDO
乙!モルモットは絶対等速さんだったか
能力の応用を考えるのが楽しそうだなー

さあエツァリにストーキングされるのは誰だ
233 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/07(火) 02:06:45.62 ID:wyphHfMo

海原でも美琴ラブでもないエツァりに残されたアイデンティティーは・・・
ああトライアングルパンテノールの槍があったか
234 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/07(火) 03:30:22.87 ID:rBv7JS6o
多くの歴史がズレている世界だし、そういうエツァリも確かにありうるという事か
益々先が読めずに楽しみだなぁ・・・ww
235 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/07(火) 11:24:39.57 ID:ofe/ZLM0
絶対等速さんだと……
ちくしよう、悔しい! 飛んでやがるなぁ別人ーッ!! 展開のての字も分かんねー
ぞ!?
236 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/07(火) 12:28:05.95 ID:tDZXFCwo
>>235
どこをたて読み?
237 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/07(火) 12:56:19.62 ID:ofe/ZLM0
>>236
すまぬただの改行ミス
しかもsage忘れてた

泣きたい
238 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/07(火) 19:46:53.92 ID:nQbzJ1.o
これはエツァリとショチトルの
絡みが見れるのか
239 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 09:32:06.83 ID:e.VR4p60
せっかく面白いんだから変な縛りは要らないと思うけどなぁ
この世界での一方通行や上条さんが見てみたい
240 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/08(水) 19:57:11.29 ID:9mIgdaU0
>>239
それじゃいつもと同じだろ。
せっかくの世界観なんだから>>1に任せようぜ
241 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/09(木) 01:26:04.59 ID:rYr5By60

こんばんはー、レスありがとうございます

予告通り木山サイドをお送りします


>>239
ごめんなさい。一応縛りは守るつもりです


では、投下


7月30日午前11時30分、『樹形図の設計者』情報送受信センター


少し時間は遡り、『猟犬部隊』がエツァリ達と接触するより前の事。

鼻歌交じりにキーボードを叩く木原の事を、木山は本気で殺してやろうかと思っていた。


(この男……だから私をここに連れてきたのか!)


ここは、『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』と呼ばれる超高度並列演算器と、唯一交信が出来る施設だ。

『樹形図の設計者』は、正しいデータを入力さえすれば、完全な未来予測(シミュレーション)を可能にすると言われている。

木原は数分前、上層部に申請してその使用許可を取り付けていた。

242 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/09(木) 01:27:12.83 ID:rYr5By60

(あれほど私が望んでも許されなかったというのに……)


そしてそれこそが、木山に激しい怒りをもたらす原因である。

かつて彼女は、意識不明に陥った教え子を救う為に『樹形図の設計者』の使用申請を23回も申し出たが、全て却下されたのだ。


「木山ちゃん、怖い顔してんじゃねーよ。念願叶ったんだからさ?」

「貴様……!」


歯をギリギリと食いしばる彼女に対し、木原は予想外の事を言い出した。


「俺の指示通りに働いた後なら、ちょっとばかし俺は“目を離す”から好きに遊んでろよ」

「な……」


それは信じられない言葉だった。

あの木原が、“上”に逆らってまで木山に便宜を図る。

当然、何らかの思惑があるに違いない。


(何のつもりなのだ、あの男は?)

(だが、これはまたとない機会でもある)

(あの子達の為に、なんだってすると誓ったんだ)

(躊躇う理由など、在りはしない……!)


だが木山は、敢えてそれに乗っかった。

例え木原がどのような計画を立てているとしても、このチャンスを逃す訳にはいかないからだ。
243 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/09(木) 01:28:07.18 ID:rYr5By60

それから2時間ほどして。

2人の科学者は、『樹形図の設計者』に新しいシュミレーションプログラムのひな形を入力し終えた。

それは元々存在した『能力の発現状況をシュミレートするプログラム』を流用していたので、ごく短時間で完成に漕ぎつけたのだ。

ちなみにインデックスは、木原が用意した大量の昼食を食べてお昼寝中である。


「おし、システムに異常はねぇな」

「……ああ。ソースコードのバグも確認されなかった」

「じゃあ自由時間にしてやるよ。精々頑張れ」


木原はそう言うと、本当に木山から“目を離し”てモニターを眺め始めた。


「……」


そして。

木山は自分の教え子を救おうと、再び『樹形図の設計者』へアクセスをする。

隣にいる男の口元が、わずかに上がっている事に気づかないで。
244 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/09(木) 01:29:17.38 ID:rYr5By60

同時刻(日本時間)、バチカン


学園都市にいる1人の科学者から、驚くべきメッセージが届けられた。

その報告は、直ちにローマ教皇の耳にも入る事になる。

しかし、この事態を自分1人で判断するべきではないと彼は結論づけた。

代わりにローマ正教の行動方針を委ねられたのは、教皇の「影の相談役」として設置された『神の右席』だ。

そのメンバーのうち3人が、学園都市の科学者――木原数多にどう返事をするべきか現在話し合っている。


「どうやら、イギリス清教の『禁書目録』が学園都市の保護下にあるのは事実の様であるな」

「とんだ失態をしでかしましたねー。よりにもよって異教のクソ猿が魔道書図書館を手に入れるとは」

「しかも図に乗ったこの科学者は、私達と取引しようと持ちかけてきてる……虫唾が走るわね」


アックアの報告に、テッラとヴェントが憎々しげな表情で侮蔑の言葉を吐いた。

元々2人は、科学サイドを敵視しているのだ。
245 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/09(木) 01:30:33.95 ID:rYr5By60

「そうは言っても、このまま捨て置くのはマズイのである。聞けば『必要悪の教会』の魔術師が、禁書目録の奪還に失敗したとか」

「だから? 言っておくけど、私は科学サイドの人間と慣れ合うなんて絶対に認めない。必要なら学園都市を私が潰してやる」

「異教徒と取引なんて、こちらがバカを見るだけですからねー。手っ取り早く奪っちゃいましょうよ」


木原が申し出た事は、『魔術』の共同研究。

禁書目録の知識及び学園都市の技術を提供するので、代わりにローマ正教の持つ魔術を全て明かして欲しいというものだ。

だが当然、そんな提案を受け入れる事など2人は考えられない。


「っていうか、今が絶好のチャンスじゃないの」


好戦的な口ぶり。

舌なめずりをしそうな表情で、ヴェントが声高く主張した。


「科学サイドに捕縛された、修道女を救う――そんな大義名分で堂々と禁書目録を私達のモノにできる」

「ぬ……」

「いいですねー。異教徒とはいえ、一応は十字教のシスターですから。アレが持つ知識は貴重ですし」
246 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/09(木) 01:31:40.72 ID:rYr5By60

この場の空気が、学園都市と交戦することにほぼ決まりかけたその時。



「いかんなぁ。まんまと相手の策略に乗せられているようでは」



ようやく姿を見せた『神の右席』最後の1人が、その全てを言葉で切り裂いた。


「どういうことであるか?」

「やれやれ。まさかお前らは、向こうが本気であんな申し出をしてきたと思っているのか?」


そう嘲笑するのは、『神の右席』のリーダーでもあるフィアンマだ。

彼の言葉の意味が分からないので、他の3人は無言になるしかない。


「俺様には分かる。キハラとかいう科学者は、むしろ学園都市を攻めて欲しがっているのさ。つまりは挑発だな」

「何……?」
247 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/09(木) 01:32:33.14 ID:rYr5By60

「驚く事かヴェント。少し考えれば一目瞭然なんだが」

「ですが、何故です? まさか本気で我々に勝てると思っているのですかねー?」

「それもあるんだろうが、それだけじゃない」

「?」

「向こうはすでに禁書目録を所持している。となれば後足りないのはそれを扱う“魔術師”だろう」


フィアンマの発言は、3人に大きな衝撃を与えた。

特に科学嫌いのヴェントは、目を見開いて愕然とする。


「ま、さか……この私達も捕獲して、モルモットにするつもりだった!?」

「ああ。俺様達がこの提案に乗るならそれで良し、挑発に乗って魔術師を寄こすのもそれで良しって事さ」

「……何と言う事であるか。それで、どうするつもりなのかね?」


アックアの疑問に対し、フィアンマは。


「こう返事をしようか」
248 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/09(木) 01:34:29.59 ID:rYr5By60

7月30日午後2時30分、『樹形図の設計者』情報送受信センター


部下からの連絡を受けた木原は、その対処をインデックスに任せて自分の作業を続けている。

彼がここに来たのは、元々そのためだからだ。


(木山ちゃんは作業に夢中で、イイ感じに俺から“目を離した”)

(ガキどもをエサにした甲斐があったぜ)


プログラムを素早く組み立てるには、どうしても彼女の協力が必要だった。

だが、今している作業を彼女に見られるのは、面倒極まりない。

故にわざわざ、彼女の好きな様にシュミレートをさせている。


(ハハ! テストは完了! 廃棄寸前の人工衛星メモリに異常ナシだぜぇ)

(これで『樹形図の設計者』にデータを送っても問題は無いって事が確証された!)


その間に木原が行っていたのは、“とあるデータ”を機械的に保存できるかの実験だ。

そしてそれは、たった今成功した。
249 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/09(木) 01:35:44.33 ID:rYr5By60


(まぁ当たり前だよな。なにしろデータは全て文字情報に記号や画像)

(情報そのものがアンタッチャブルな代物だったら、そもそも本に書き起こすことは不可能)

(それを0と1のデジタルデータに変換するぐらい、出来なきゃおかしいもんなぁ)

(あのガキが情報を保存出来ているのは、本人に魔力が無いから)

(そして、『樹形図の設計者』にも魔力は無いんだぜ?)


木原が『樹形図の設計者』に保存している“とあるデータ”とは、『学習装置』に保存された記憶を展開したものだ。

廃棄寸前の人工衛星メモリ内でそれを文字情報に変換したが、特に異常は発見されなかった。


(ちくしょう、自分の目で見れねぇのが悔しくて仕方ねーぞ!)

(だがまぁ、利用できるのならこれで我慢するか)
250 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/09(木) 01:36:35.76 ID:rYr5By60

すでに文字情報はデジタル化されているので、木原が今見ても0と1の羅列でしかない。

だが、『樹形図の設計者』はそれを正しく読み取っている。

インデックスの記憶から抽出した、10万3千冊の『原典』を。


(よしよし、よしよしよしよしよしよし!!)

(データの入力は終了、後はこれを元にさっき作ったプログラムを作動させればオシマイだ)


――『樹形図の設計者』は、正しいデータを入力さえすれば、完全な未来予測(シミュレーション)を可能にすると言われている。

そして正しいデータとして、10万3千冊の『原典』はここにインプットされた。

つまり現在の『樹形図の設計者』は―――。


(学園都市製の『禁書目録』の完成だぜ、ざまーみろ!!)


あのインデックスと同等の、対魔術解析能力を手に入れたという事だ。
251 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/09(木) 01:37:23.92 ID:rYr5By60

今日はここまでになります

この話が原作と異なる最大の点の1つは、『樹形図の設計者』が現存しているという事です

せっかくのチート要因が1巻で破壊されてしまったので、ここではバカバカしいぐらい重要度を上げてみました

もちろんそれ自体が魔術を使える訳ではないので、今後もインデックスさんの重要度は変わりませんが(強制詠唱とかね!)


後、お詫びをここでさせてもらいます

これからは更新がかなり不定期になります

一応週1程度の頻度で投下するよう頑張ります

楽しみにしている方がいらっしゃったら、申し訳ありません

では、おやすみなさい
252 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/09(木) 01:39:27.15 ID:cecymkco


やべぇ、木原くンが超かっこいい
253 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga sage]:2010/12/09(木) 01:42:09.36 ID:WvuKhLM0
乙!
そういや竜王の殺息であぼんしてないんだったか
上条さんや一方さんは科学サイドでちょくちょく事件に巻き込まれてる、
という感じだと脳内補完してるから大丈夫なんだよ!
それにしても作者の発想は半端無いな
254 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/09(木) 02:40:21.54 ID:vp25XaQo
乙々

ヤベェ、魔導図書館2号館とか
応用性には欠けるが処理速度がダンチ
255 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/09(木) 04:09:28.37 ID:QWx1VADO
樹形図の設計者「あまた、お腹空いたんだよ!!」
256 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/09(木) 09:32:51.55 ID:KkCD1fo0
乙乙
木原くンの暴走が加速しすぎて息も出来ないぜ
更新が遅くなるって言っても週1なら全然早いほうだよ
とにかく面白かった!
257 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/09(木) 12:47:16.79 ID:oA8XZhUo
学園都市の禁書目録だと!?
やはり天才か...
258 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/09(木) 14:08:27.19 ID:jDomP6Mo
木原くン超かっけえ
259 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/10(金) 12:03:14.43 ID:w1kXbkc0
フィアンマが良い感じに敵役しててwwktk

実際の所、ハードディスクみたいなメモリに原典は保存可能なのかな
そんなアイディア考えもしなかったけど
260 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/10(金) 23:50:28.99 ID:VPk7HJ2o
すばらしいな>>1は・・・
261 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/11(土) 15:37:16.35 ID:iaEj6CM0
この≫1の作品ってミサカと天草式以外って何?
誰か詳細求む。
262 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/11(土) 15:41:57.80 ID:Si7ZFKso
>>261
常盤台破壊計画?(途中から乗っ取り)→とある暗部の心理掌握
だったかな
263 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/11(土) 22:36:30.90 ID:RxWYjoo0
>>261
http://www35.atwiki.jp/seisoku-index/pages/489.html
↑ここにこの作者もssまとめが全部ある
全部かなりおもしおいお
264 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/12(日) 02:59:43.78 ID:wV1fKmk0
>>262-263
サンクス!!ありがとう!
265 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 16:47:13.27 ID:e2acf0w0
そろそろ木原くンでマジキチ成分を補給したいれす(。ヘ°)ハニャ
266 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 21:46:12.83 ID:QUqP31co
かーっこいー!
267 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/14(火) 01:29:37.99 ID:iXLCyWg0

こんばんはー、励みになるレスありがとうございます

少し時間が取れたので、短いですが投下します



7月30日午後2時45分、病院の地下エリア


4人の敵に銃口を向けられたエツァリは、状況を打破する方法が1つしかないと判断した。

運悪く地下に追い込まれているので、金星の光を利用するトラウィスカルパンテクウトリの槍という主武器は使えない。

しかもその術式は、多人数を相手にするのに向いていないのだ。

ならば。


「降参しましょう、抵抗はしません」


隙を突くしかないではないか。


268 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/14(火) 01:30:17.51 ID:iXLCyWg0

あっさりと両手を挙げたエツァリに、ショチトルが信じられないモノを見た、といった表情を向ける。

だがそれを黙殺した彼は、ゆっくりと跪いて抵抗の意思が無い事を示す。

同時にショチトルも跪かせながら、小声で彼女にこう告げた。


(即座に自分を射殺しなかったことから見ると、どうやら彼らに下された命令は捕縛の様です)

(自分が持つ『原典』は未だ不安定ですし、ここは素直に従いましょう)

(だがしかし……!)

(それに彼らは恐らく『禁書目録』に通じています。機会を待って入れ替われば……)


結局ショチトルは、エツァリの言う通りにするしかないと判断し、悔しがりながらも抵抗を諦めた。
269 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/14(火) 01:31:00.28 ID:iXLCyWg0

あまりにもあっけない結末に、意表を突かれたのは『猟犬部隊』だ。

まず間違いなくここで激戦が始まるものだと思っていたのに、結局は銃弾を一発も発射することなく戦いは終わってしまった。


「……デニス、木原さんに連絡しろ。撤収する」

「了解」


取りだしたパチンコ玉をそっとしまい、マイクが迅速に指示を飛ばす。

当然彼は、この医者と看護師に化けた侵入者を信じてなどいない。

そしてそれは、無線越しに報告を受けた木原も同じだった。


『分かってんなマイク、連中は隙を突く気だ』

「ええ。油断などしません」

『ならいい。そいつらは姿を自由に変えられる見てぇだし、戻ってきたテメェらが妙な行動をしたら遠慮なく一発カマすからな』
270 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/14(火) 01:32:00.66 ID:iXLCyWg0

「……こいつらが俺達に成り済ます気だと?」

『あー? 当たり前の話をさせんなカス。連中があのガキを狙ってる以上、それ以外考えられるかよ』

「失礼しました。では待機所へこいつらを連れて行きます」

『――いや、ちょっと待て。逆に隙を作れマイク』

「……は?」


突然の指示に、マイクは思わずうろたえた。


『アイ・カメラはまだ作動してんだし、俺とガキにあいつらが魔術を使うところを見せろ』

「それは……」

『他のメンバーには内緒で、こうするんだ』


木原の悪趣味な命令に、マイクは抗う術を持っていない。

一言了解、と呟いて命令を忠実に実行した。
271 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/14(火) 01:33:19.86 ID:iXLCyWg0

その後猟犬部隊は、エツァリとショチトルに銃を突きつけながら、病院の駐車場に止めてあるワゴン車まで連行。

そして自分達の車に乗り込む直前、マイクは手榴弾を向かいの車へ誰にも気付かれないように放り投げる。

捕えた侵入者は後部座席に縛り付け、真ん中の座席にデニスとナンシーが座った。助手席はヴェーラだ。

何食わぬ顔でマイクが運転席の扉を閉めて、待機所へ戻り始めたその瞬間。

『絶対等速』の能力を解除された手榴弾が、時間差で向かいの車を爆破した。

ドォォン!と凄まじい振動が発生し、猟犬部隊の車が急停止する。


「何事!?」

「敵襲の可能性がある!デニスは車内で待機。残る3人で付近の警戒だ!」


ナンシーの叫び声を圧倒するかのように、マイクが大声で指示を出す。

咄嗟の出来事で判断力の低下していたナンシーとヴェーラ、そしてデニスの3人はマイクの指示に従った。


「付近を確認する、いくぞ!」


一瞬で車外に飛び出たマイク達は、まさに猟犬のごとく散らばっていく。

唯一車に残ったデニスも、ショットガンを構えて外にいるであろう敵を警戒する。

――そう、“外”にいるであろう敵を。


272 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/14(火) 01:34:20.24 ID:iXLCyWg0

それから5分ほど経過して、マイク達が車に戻ってきた。

結局敵を見つける事は出来なかったので、ナンシーは不機嫌そのものだ。

そのイライラを、1人車で待機していたデニスにぶつけている。


「あの爆発は何なのよ一体……デニス、あんた敵を見てないの?」

「……ああ」

「ふん、使えないわね」


ナンシーがそう言っている最中、ヴェーラはふとある事が気になった。

後部座席で縛られている2人が、やけに大人しい。


(まあ、これから先の処遇を考えれば仕方ないのかな)

(あーあ、カワイソー)


助手席でそう思っているヴェーラは、マイクが無言で後ろを眺めていた事に気がつかなかった。

ましてや、この状況が全て木原の計画通りであることなど。
273 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/14(火) 01:36:04.34 ID:iXLCyWg0

7月30日午後3時30分、『猟犬部隊』32番待機所


無事に侵入者を捕縛したという連絡を受けた木原は、とある指示をマイクに出した。

そしてそれも問題無く実行され、すでに木原とインデックスはモニターでそれを確認済みだ。

今は彼らの帰りを待ちながら、この後の計画を練っている。


(順調順調と言いたいトコだが、問題はコレだよなぁ)


『樹形図の設計者』情報送受信センターから帰ってきた木原が悩んでいるのは、新しいシステムの利用法だった。

すでに魔道書の情報は『樹形図の設計者』に送信しているものの、現時点ではこれを上手く活用することは出来ない。

何故なら『樹形図の設計者』から魔術情報を“受信”するには、先のセンターまで赴く必要があるからだ。

『樹形図の設計者』はその性能の高さゆえに、センター以外からの利用は不可能にされている。
274 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 01:36:57.25 ID:YD2gPYwo
お、リアルタイム更新キター
275 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/14(火) 01:37:13.07 ID:iXLCyWg0


(魔術師が出てくる度にセンターへ行くのは馬鹿らし過ぎるし)

(そこに籠りッきりって訳にもいかねェ)

(やはりアクセス用の小型端末を用意するのがベストだ)


もちろん技術的にはそれを作るのに問題無いが、自由度の高いアクセス権限を持つのはそう簡単ではない。

その権限を手に入れるには、統括理事会の合議により承認を得なければならないからだ。


(だが現状を鑑みると、上が俺にそこまでの特権を与えてくれるはずはない)

(下手にアクセスした結果、『樹形図の設計者』の利用権限を失いましたじゃ笑えねぇぞ)

(さーて、どーすっかなー)


目の前に立ちはだかる難問を、木原は楽しげに解き始めた。
276 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/14(火) 01:38:34.26 ID:iXLCyWg0

7月30日午後3時(日本時間)、ロンドン


早朝のロンドンを、2人の魔術師が足早に歩いている。

その両者には共通の苛立ちと不安、そして渇望が存在していた。


「……僕はともかく、君が行くとなれば事はただでは済まないぞ」

「だからと言って、もうこれ以上待つのは不可能です」


大柄な神父の警告に、長刀を携えた女性が即座に反応する。


「……」

「あの子が大切なのは、あなただけではないのですよ――ステイル」

「それは分かっているさ。それに『聖人』が一緒となれば心強いというのも認める」

「ではそれで良いでしょう。もう最大主教の計算とやらに振りまわされたくは無い。この手であの子を取り戻せるなら、いかなる罰も恐れません」

「分かった。じゃあ、行こうか神裂」



「――あの子の囚われている、学園都市に」
277 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/14(火) 01:39:13.39 ID:iXLCyWg0

今日はこの辺りで一旦お開きです

戦闘が物足りない方申し訳ありません

マイク達の雄姿はもう少し後になります

では、おやすみなさい
278 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 02:56:22.43 ID:H6bWASso
木原クンどうすんだろ
乙です
279 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 08:32:25.62 ID:KrJo3qQ0

え……デニス……え……?
そしてねーちんキター!!

280 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 01:07:44.52 ID:aUDbm.Ao
相変わらずの安定感
281 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 12:03:43.29 ID:si36qSc0
ここの木原くンは中毒性が高いな
早く続きが読みたいぜ
282 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage sage]:2010/12/15(水) 19:54:57.26 ID:5xcLhDk0
樹形図の設計者に魔道書のデータをコピーしたのはいいけど、
問題はコピーをした、つまり樹形図の設計者に魔道書のデータを書き込んだのが
紛れもない木原だってことですかね。

インデックスとは違い、木原には魔翌力があるし、下手したら、「樹形図の設計者」自体が魔道書の原典となりかねないんじゃ……
で、魔道書の原典を自分で読まずに、人に読ませずに使おうとすると、19巻のテクパトルのように原典に殺される可能性が……
283 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 20:00:28.93 ID:ObtyiEIo
0と1の集合体でしかないデータに魔方陣的な防衛機能とか付くのかな?
まあ下手な予想はせずに続きを待つのがいいでしょう。
284 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/16(木) 12:59:05.33 ID:blF1vwA0
木原個人には魔力があるだろうけど、書き込み方法は単なる電波送信だし魔力の有無は関係ないような気がするけどなあ

っていうか樹形図の設計者自体が原典になったところで、攻撃方法があるのか?
エツァリの原典みたいに、巻物が伸びる感じで地球に迫って来たり?
そしたら学園都市オワタ
285 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 13:17:29.81 ID:u4pzUzso
あくまでツリーダイアグラムは解析装置でしょ
魔術まで使えたらインデックスが用済みに
286 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 21:27:28.88 ID:F.Dl6nco
インデックスの脳内情報をそのままデータ化しただけだから
復号するまでは1と0の羅列だろう。
mp3ファイルは復号するまで音楽でもなんでもないしそれと同じようなもんでしょ。
しかも脳内情報をまとめて放り込んでるからたくさんのmp3をzipで固めた感じというか。
287 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 23:41:33.62 ID:lOSCJRI0
魔導書が力を持つのは書き手が知らず知らずのうちに魔翌力を織り込むからだろ?
デジタルでそういうことは起こらんだろう
288 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/17(金) 10:45:44.57 ID:LvAGzY20
しかし考えれば考えるほど発想がイカれてるぜ
289 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage sage]:2010/12/17(金) 21:10:49.55 ID:aepT/GM0
「電子情報が魔道書化するか」すごく気になりますね。

「魔道書の朗読テープ」「魔道書を取った写真」「それがデジカメのデータだったら」「魔術の講義ビデオ」……

どこまで「原典」になるんだろう?
290 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 22:26:17.72 ID:IoiDtQQo
とある魔術の講義映像
291 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 22:56:17.23 ID:TrtEOLEo
複写は結構原典の機能を持ってないって言ってた
情報の毒素が薄められるかららしい。ところどころ言葉を置き換えてるんだろうが。
292 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/18(土) 02:13:16.06 ID:VcooIEM0

こんばんはー、レスありがとうございます

とりあえずこの話では樹形図の設計者が原典になることはありません

何せしっかりとした根拠とか説明とか作中で出来そうもないので……

樹形図の設計者が話の主軸になるのはしばらく後の予定です

では、投下



7月30日午後4時00分、『猟犬部隊』32番待機所


侵入者を連れて戻ってきたナンシー達『猟犬部隊』が、暗い顔をして木原の前に進み出た。

看護師に化けたショチトルを引っ張りながら、ナンシーが頭を下げてこう言う。


「も、申し訳ありません木原さん。侵入者の1人に車内で自殺されました」

「……」

「どうやら毒を用意していたらしく、気付いた時にはすでに死んでいて……」
293 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/18(土) 02:14:32.91 ID:VcooIEM0

彼女の言葉に促されるように、医者の姿をした死体が部屋に運び込まれてきた。

木原はその死体に近づき、顔や体の特徴をつぶさに観察してフムフムと頷いている。


「木原さん……?」

「スゲェな、さっぱり理論が分からねぇ。皮膚どころか骨格まで変異してやがる」


続く言葉に、マイク以外が動きを止めた。


「ホント最高だぜ。まさかこれが“デニスの死体”だなんて思えねーよなあ?」


バッ!!

咄嗟に“デニス”が身を翻して木原に襲いかかろうとするが、一瞬早く先んじたマイクによって拘束されてしまう。

そして悔しそうに呻く“デニス”を、マイクが無表情で床に押し付けた。

それでも抵抗しようと彼は暴れるが、近づいた木原が頭をゴシャ!と踏みつけて大人しくさせる。
294 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/18(土) 02:15:53.60 ID:VcooIEM0

「エツァリお兄ちゃん!!」


その光景を見た看護師が、悲痛な叫び声をあげた。


「うーし、御苦労。今日はツイてんな、イイモノが見れたわ」

「な、何故……自分の事が……?」


デニスの姿に扮したエツァリが、痛みに顔を歪めてそう問いかける。


「あ? テメェの行動を思い返してみろよ」

「……?」

「人間ってのは余裕を失うたびにドンドン行動が単純になってくモンだ」


木原はそう蔑むと、アイ・カメラで撮影された映像を再生した。

襲撃に備えて車から離れたふりをしたマイクが、車内の様子を克明に記録したものである。

そこにはアステカ魔術の護符により、姿を変える魔術師の姿が浮かび上がっていた。
295 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/18(土) 02:17:45.23 ID:VcooIEM0

「まさか最初から……!?」

「おお。あっさりと俺の思惑に沿って誘導されてくれてアリガトウ」


そして木原は、未だに状況の把握が出来ていない他の部下にも説明を行う。


「まぁ事は単純でな。最初の予期せぬ襲撃で思考力を奪い、次いで突然の光明を指し示してそれに縋りつかせただけの事」


元々エツァリは用心深い性格で、入れ替わる際にはいつも入念な観察を行っていた。

だが、今回は突然捕縛されたのでそんな時間は作れない。

オマケに直後の敵襲で、さらに状況は混迷した。

その攻撃に対応するため部隊は散らばり、好都合にも一番下っ端と思われる人物と1対1になれた。


(この機会を利用して入れ替わるしかないと思ったのですが……)

(まさかその時点で、すでに心理的に操られていたとは)


その光明に至る全てが木原の計画。

侵入者の魔術を観察する為に、敢えて部下の命を捨て駒にしたのだ。
296 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/18(土) 02:18:51.76 ID:VcooIEM0

「全く……信じられません」

「何が?」


空々しく聞き返す木原に、エツァリが吠えた。


「こうもアッサリと仲間の命を生贄にした事ですよ!」

「何言ってんだ、実際殺したのはテメェだろーが」


しかしながら、そんな怒りで揺らぐほど木原は正しい人間ではない。


「持っていた毒であっさりと殺して皮を剥ぐ……おかげでガキが泣きだして大変だったんだからなー?」

「それは……」


その言葉に、今まで沈黙していたインデックスが赤い目を再び濡らす。

魔術の解説の為に一緒に映像を見ていた彼女は、自分の知っていた人が殺された事に泣きだしてしまったのだ。

本来なら歯止めとなるはずの木山は、現在別室で『樹形図の設計者』のシュミレート結果を元に教え子の回復方法を模索している。

デニスが死ぬ原因を作った木原は、その隙に『デニスを殺したのは魔術師』という事実のみを強調。

マイク達が帰ってくる前に、あらかじめ自分にとって都合のいいようにインデックスの精神を誘導していた。
297 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/18(土) 02:19:54.64 ID:VcooIEM0

「……あなたが、あの禁書目録……?」


インデックスが反応したことで、ようやくエツァリとショチトルは彼女の存在に気がついた。

それまで視界に映らなかったのは、あまりにも彼女の覇気が無かったせいか。


(こんな子が10万3千冊の『原典』を記憶しているとは、とても思えません)


『原典』1つで死ぬ思いをしているエツァリにしてみれば、『禁書目録』は遥か高みに位置する存在だ。

てっきり、もっと風格や老獪さが溢れているものだとばかり思っていたのだが。

赤い目でこちらを睨みつけるその様子は、まるで手のかかる子供みたいで。

妙な親近感を抱かずにはいられなかた。


(想像以上に可愛らしい外見をしていますが、似合わない漆黒の装甲服がそれを塗りつぶしているかのようです)

(……こんな時に、自分は何を考えているのでしょう)


だが、そんな思いは次の瞬間霧散する。

外見がどうであれ、彼女はイギリス清教の誇る『禁書目録』なのだから。
298 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/18(土) 02:22:23.82 ID:VcooIEM0

「あなたが使う魔術はアステカのモノだね?」

「皮膚を利用した護符を作って、相手と入れ替わる……昔から伝わる有名な変身魔術なんだよ」

「!」


驚くエツァリ達を無視して、木原がインデックスに質問する。


「術式に必要なものは? 自由度はどうなってる?」

「15センチほどの皮膚さえあれば、自由に相手の姿を真似る事が出来るの。それに護符が破壊されない限り、何度でも変身は行える」

「もっと言うと一度変身すれば、解除するまでそのままでいられるんだよ」

「…………」


その言葉を聞いて、木原は何かを思案しだした。

僅かな時間静寂が訪れるが、それをインデックスの警告が打ち消す。


「上着に隠している黒曜石のナイフは取り上げた方が良いかも」

「んー? それもヤバイのか?」


木原が素早くエツァリの装甲服からナイフを取り出すと、インデックスはそれをじっと見つめてこう指摘した。


「やっぱり。これは『トラウィスカルパンテクウトリの槍』っていう霊装なんだよ」
299 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/18(土) 02:23:43.00 ID:VcooIEM0

それから5分ほど彼女の説明を受けた木原は、さらに難しい顔をして考え込む。


「“金星の光を浴びた者全てを殺す”か……金星の光を利用した分解術式ねぇ」

「おい確認だ。分解する物体の大きさは関係ない、そうだな?」

「うん」

「人を始めとする生き物全般にも効果がある」

「……うん」

「十分だ。すると……」


しばし黙考した木原だが、やがてそのナイフをエツァリの眼前の床に突きたてた。


「マイク、放してやれ」

「了解」


自由になったエツァリは、木原の考えが読めずに困惑する。


「どうするつもりですか?」

「俺にそのナイフは使えねーし……返すわ。どーせここは地下だから、金星の光とか無意味だしな」

「……」
300 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/18(土) 02:24:48.20 ID:VcooIEM0

恐る恐るナイフを拾い上げたエツァリに、木原は1つの提案をした。


「とりあえず、テメェらの持つ術式についてもっと調べさせてもらおうか」

「断ると言ったら?」

「同じ事だ。……モルモットか瓶詰めか。キレーに脳みそ切り分けてやる」

「やめろ!」


話に割り込んできたのは、ショチトルだ。


「私は何でも言う事を聞く!だからエツァリに手を出すな!」

「ショチトル、何を馬鹿な事を……!」


互いに庇い合おうとする2人を見て、木原は面倒くさそうに拳銃を取り出した。

そして銃口をエツァリに向けて、馬鹿にしたようにこう告げる。


「愛って素晴らしいな。心が洗われるようだぜ」

「けどこのままその使い古された小説みたいな展開を続けるのはゴメンだな。俺ぁそろそろエンディングが見てェ」

「何せホラ、感動しすぎて鳥肌がヤベーんだ。……で、どっちが瓶詰め?」
301 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/18(土) 02:25:45.98 ID:VcooIEM0

銃を向ける木原に対し、ショチトルは必死にこう言った。


「エツァリは天才だ。私より数段上の魔術師なんだ、だから殺すな!」

「いいえ、ショチトルは『死体職人』と呼ばれ、死者から残留情報を入手するスキルを持っています。彼女こそ有用なんです!」

「何を言っている!それを言うなら貴様は『原典』を所有して……」


2人の言い合いを、ダァン!と響く銃声が強引に終わらせる。

銃口から昇る煙を吹き消して、木原がニヤリと笑った。


「思った通りにペラペラ喋ってくれたのは嬉しいぜ、予想以上にソソる話が聞けそうだ」

「つーか折角の魔術師を、そう簡単に殺すかよ間抜け」

「な……」


思わず絶句するエツァリに、木原は当然のようにこう語る。


「まずは能力の詳細と境遇を説明しろ。簡単な面接だ。有能な人材なら俺が使ってやる」

「いつだって『猟犬部隊』はメンバー募集中だからな」

「働きに応じて報酬だってやるし、刺激的な毎日が送れる事を請け合うぞ」




「ただし人権は無いがな」
302 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/18(土) 02:28:07.78 ID:VcooIEM0

今日はここで終わりです

原典つながりという事で、エツァリ→インデックスは前々から考えていました

徐々に猟犬部隊のメンバーが増えていますが、それほど大所帯にはなりません

今さらですが、この話では原作では死なないキャラが死んだりその逆もありますので注意して下さい

では、おやすみなさい
303 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/18(土) 02:29:27.76 ID:NzWP83wo
木原クンマジ猟犬
304 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 02:31:02.22 ID:JUFQVME0
木原さんがかっこよすぎて困る
305 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/18(土) 02:31:39.19 ID:9DY6KmEo
このインデックスは、本当にガキなんだな
306 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/18(土) 02:32:53.68 ID:0KtWp3Ao
セリフ回しがステキ
307 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/18(土) 06:26:51.58 ID:tx0U3Two
魔術と科学の複合部隊になってまいりました
素晴らしい
308 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/18(土) 10:26:37.41 ID:TZAHUKIo
他のSSの話になるが
天使同盟と同レベルのとんでも組織になりそうだな
309 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/18(土) 16:54:42.04 ID:Iur6dQIo
エツァリラブな俺としては登場しただけでもテンションがやばい
310 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/20(月) 08:39:05.97 ID:VsjPltM0
エンディングがちっとも想像できないんだけど、どうなる事やら
今一番続きが気になってるSSだぜ
311 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/20(月) 12:41:35.06 ID:FY1a00.o
毎度展開の読めなさは異常だな。楽しみでしょうがない
312 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/21(火) 01:26:09.84 ID:VzsZ36I0

こんばんはー、いつもレス感謝です

>>305
そうですね、原作よりも精神年齢が幼い感じです
今までの記憶がない上に、逃げ続けてばかりの生活でしたから仕方ないと思います
おまけに保護者がアレでは……

では、投下


8月1日午前10時00分、『猟犬部隊』32番待機所


エツァリとショチトルが『猟犬部隊』に加入しておよそ2日が経過した。

あの日。

自分達の境遇を明かした2人は、木原の要請で正式に学園都市の保護を受ける事が認められた。

ただし当然ながら、それには彼の部下として汚れ仕事を引き受けるという前提条件が付く。

新たな魔術師の参加を、木原は両手を叩いて喜んだ。

他人と入れ替わる事が出来るスキルや、死体から情報を入手できる魔術はこの暗部(せかい)で極めて役に立つからだ。

唯一木山だけは表情を曇らせたが、それでも抗議するまでには至らなかった。
313 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/21(火) 01:27:32.16 ID:VzsZ36I0

それだけではない。

木原に隠し事は出来ないと踏んだのか、エツァリは早々に『原典』を所持している事を告白した。

それを聞いた木原は、インデックスに命じて彼の持つ『暦石』の上手な利用法を分析させる。

いつイギリス清教の刺客が襲ってくるかも分からない以上、彼の身を守るためにはそれが必要だと説き伏せて。

エツァリ達が、自分と同じくイギリス清教の魔術師に狙われていると聞かされたインデックスは、結局その言葉に同意した。


「でも『暦石』を戦いに利用するには、最低でも1週間以上は掛かるかも」

「構わねぇ。そもそも戦力として期待してる訳じゃねーし」

「?」

「とりあえず、頑張ってモノにしろよ“デニス”?」

「……ええ、了解です」


ちなみに、エツァリはデニスの姿でいるように指示されている。

コードネームもそのままデニスのままだ。

その理由について、木原は誰にも明かしていないが。
314 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/21(火) 01:28:32.20 ID:VzsZ36I0

そして今。

事件が起きたのは、夏の日が全てを照らす午前10時の事だった。

各種モニターを確認していたヴェーラが、鋭く警告を発する。


「木原さん、監視衛星からの報告です!」

「お!」

「……学園都市外部から、侵入者が2名『壁』を生身で飛び越えて来ました」

「映像、出ます!」


ヴェーラが素早くキーボードを操作して、待機所の巨大スクリーンに映像を流した。

現在『猟犬部隊』には、監視衛星の画像を自由に取得できる権限が与えられている。

それも、警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)よりも優先的にだ。

実際に外部能力者が侵入し、かつ撃退したという結果を鑑みて統括理事会が許可を出したからである。

その特権をフルに活用して、新たな獲物を木原は待ち構えていた。

315 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/21(火) 01:29:44.45 ID:VzsZ36I0

「赤髪の男と、日本刀を携えた女か……」

「この映像を見る限りじゃ、女の方は化物じみた運動能力を持ってやがんな」


信じられない事に、その女性は男を抱えたまま軽々と5mの壁をジャンプして乗り越えたのだ。

それを見たインデックスが、あっと驚きの声を上げる。


「この2人は、見た事があるんだよ。……私を何度か追ってきたから」


それを聞いた木原は、目を細めてモニターを凝視する。


(なるほど、そーすっと……)

(このガキを利用できるな)


ややあって、木原はインデックスに問いかけた。


「よしインデックス、2人の使う魔術は分かるか?」

「赤い髪の方は、炎を操る魔術師なんだよ。ルーンを使ってた」

「炎……」
316 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/21(火) 01:30:27.10 ID:VzsZ36I0

「でも問題なのは、日本刀の方かも」

「へえ?」

「多分、彼女は『聖人』なんだよ」


それから『聖人』の身体能力を聞かされた木原は、流石に呆れたように呟いた。


「スゲェな、肉体強化の能力がアホに見える」

「彼女と戦おうとするのは、ハッキリ言って無理があるかも」

「……けどアレだ。『聖人』っていうのは生まれながらの身体的特徴によってそのチカラを得ているんだろ?」

「? うん。それがどうかしたの?」

「いや、只の確認」


木原が考えていたのは、『聖人』の攻略方法――では無い。

317 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/21(火) 01:31:02.79 ID:VzsZ36I0

(つまりコイツは、肉体そのものに大きな価値がある)

(それはイイ。実にイイな)


その“先”だった。


「よし、とりあえず連中の戦力を見てぇ」

「どうしますか?」


木原のオーダーに、ナンシーが機敏に反応を示す。


「決まってんだろ。1人の善良な市民として、侵入者は警備員に通報しなきゃいけねーよな?」

「了解。ついでに警備ロボも向かわせます」

「うし、ちゃっちゃとやれ。後実験用の“特別車”を一台ココに用意しろ」


学園都市の闇に巣くう悪意が、静かに2人に牙をむいた瞬間だった。
318 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/21(火) 01:31:55.30 ID:VzsZ36I0

8月1日午前11時00分、第7学区のとある大通り


侵入者の1人、ステイルはうんざりしたように溜息を漏らした。

今まで一時間ほど近く、警備員や警備ロボの襲撃に遭っていたからである。

そのほとんどは神裂が対処したが、ステイルも戦わざるを得なかった。

おかげで攻撃用のルーンを準備する事も出来ず、辺りに人払いのルーンを刻むことでようやく一息つけたのだ。


「やはり、魔術による隠匿術をしておいた方が良かったかな?」

「……この街では意味が無いでしょう。統括理事会の目を誤魔化すことはできませんし、なによりあの子がいるのですから」


長刀で警備ロボを粉砕した神裂が、ステイルの言葉を否定する。


「しかし派手に暴れてしまったね、見つかると面倒だ」

「ええ。私達の目的は、あの子を取り返す事1点のみです。間違っても戦争を望んでいる訳ではありません」


その後2人は、二手に分かれてインデックスの捜索を開始した。
319 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/21(火) 01:32:30.68 ID:VzsZ36I0

同時刻、『猟犬部隊』32番待機所


時を同じくして。

頃合いと感じたのか、ようやく木原が部下に指示を与え始める。


「よし、そろそろ作戦を開始するか」

「獲物は上手い具合に分かれてくれたし、2チームで戦闘を行う」

「……チーム分けは、どうしますか?」


マイクの疑問に対し、木原は。


「良く聞け、男の方の相手をするのは――――」

「で、では……!?」

「ああ。女の相手は――――って事だ」


その大胆不敵な作戦に、誰もが言葉を失った。
320 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/21(火) 01:33:35.36 ID:VzsZ36I0

8月1日午前11時30分、第7学区のとある広場


「少し、よろしいかしら?」

「……」

「今第7学区は、外出が一時的に禁止されているのを御存じ?」


インデックスを探していたステイルは、1人の女性に声を掛けられた。

ただし、間違ってもそれは友好的なものではない。


「……それよりも、随分と仰々しいモノを着こんでいるようだが?」

「あら、これでも抑え気味なのよ。お気に入りは調整中だから」


その女性――紫色の駆動鎧を着たテレスティーナが、どこか歪な笑顔をステイルに向ける。


「とりあえず、侵入者であるアナタの身柄を確保したいのだけど……」

「悪いが、こう見えて忙しいんだ。実力行使させてもらおう」

「ふふ、嬉しいわあ。私もその方が好みな――の!!」


言葉が終わらないうちに、駆動鎧の腕がステイル目がけて振り下ろされた。

彼はその一撃を後退して避けるが、MARの精鋭及びマイク達『猟犬部隊』が音も無く彼を囲み始める。


「やれやれ、準備不足だが仕方ない。――顕現せよ!」


そして広場は、紅蓮の炎で包まれた。
321 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/21(火) 01:34:24.24 ID:VzsZ36I0

同時刻、第7学区の駅前


鋼糸による人払いの結界を無視して、一台の巨大なトラックが神裂の前に姿を見せる。


(いかに私が結界系の術式を苦手にしているとはいえ、これは……)

(ビンゴ、と考えるべきでしょうか)


そしてトラックは、神裂の目の前で悠然と停車した。

助手席のドアを開けて現れたのは、1人の男。


「ついてねーな。外出禁止令を申請したら上の連中に怒られちまったぜ」

「でもまぁ、緊急事態だし仕方ねェよな?」


この場にそぐわぬ軽口をたたく木原を見て、神裂は顔をしかめた。
322 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/21(火) 01:35:03.05 ID:VzsZ36I0

「あの子を……インデックスを返してもらいます」

「おいおい、名前ぐらい聞かせろって」

「……神裂火織、と申します」

「木原数多、こう見えて研究者だ。インテリなんだぜ?」


顔の刺青を指差して、木原は愉快そうに喉を鳴らす。

だが神裂は、表情をピクリとも変えない。

そして。




「んじゃま、自己紹介も済んだところで――」

「――殺すわ魔術師」



世界に20人しかいない『聖人』に、木原は宣戦布告した。


323 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/21(火) 01:36:17.18 ID:VzsZ36I0

今日はここで終了です

次回より

テレス&猟犬部隊 VS ステイル

木原くン&??? VS 神裂ねーちん

をそれぞれ書いていきます

では、おやすみなさい
324 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 01:44:37.10 ID:88nRP1U0
投下乙
ついにきたか。木ィ原ゥンサイドが聖人とイノケンをどう攻略するのか楽しみだぜ
325 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 01:46:43.51 ID:rVsLBwDO
ついに二人とのバトルか、次回が楽しみだ。乙!
326 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 01:50:32.71 ID:Wh/zwbMo
>>324
ねーちんはともかく、ステイルさんは本体が弱点だから……
327 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 02:01:46.49 ID:sJq97uE0
おつおつ
ステイルさん強いはずなのに勝てるイメージが沸かない…
328 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 05:15:59.29 ID:uAgbBwDO


ステイル「そこらにあるものをすべて利用した多重構成魔法陣・・・こう言った小細工は・・・
僕 に は で き な い な
。」ドヤ

ステイルの向上心なんてこんなもん
329 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 09:16:02.33 ID:QfoFzN60
乙だにゃー
随分戦力が偏った気がするけど、
木原くンなら1人でも問題なさそうな気がする不思議!
330 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 15:01:40.40 ID:C/o0HWoo
>>317
何故かここの木原さんのセリフで、ねーちんが木原さんの肉奴隷にされるところまで妄想できた
331 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 20:26:07.44 ID:JaTyYE20
服装も痴女みたいだしな
332 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/22(水) 10:14:08.26 ID:gzlbzVg0
>>330-331
こんなところにズタズタの肉塊が転がってる……

そういえば、木原神拳を習得している木原くンはひょっとして聖人なんじゃないだろうか?
333 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 16:15:24.80 ID:yO/5qAI0
まぁ実際、ステさんも弱いわけではないんだけどなぁ…
334 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 17:29:11.82 ID:gkRt7v2o
仕方ないのかも知れんが性能が尖ってるからなぁ
335 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/23(木) 02:23:48.79 ID:W2KNkIAO
最初の中ボスだから弱く見えるのはしょうがない。
336 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 02:31:06.69 ID:LnA9MHA0
こンな時間にageンな

期待しちまったじゃねェか
337 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/24(金) 01:52:53.86 ID:VZhXJn20

こんばんはー、レスありがとうございます

今回はねーちんの場面になります

では、投下


8月1日午前11時35分、第7学区の駅前


戦いの宣言と同時に木原が取りだした武器を見て、神裂は表情を険しくした。


(彼が持っているアレは、『枕槍』でしょうか?)

(……私の弱点である“槍”を用意している……ただの偶然、いや、そんなはずはありません)

(恐らくあの子から、すでに私が『聖人』である事を聞いたとみるべきですね)


枕槍というのは、文字通り枕元においておく護身用の短槍だ。

その長さが1mほどしかないので、近距離を弱点とする槍の中では比較的接近戦に適している。

当然学園都市の材質と技術で作られているので、その強度は語るまでも無い。

338 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/24(金) 01:53:46.00 ID:VZhXJn20

だが、それでも神裂は木原を脅威には感じなかった。

確かに人間を超えるチカラを持つ聖人は、その成り立ち故に“刺殺”を弱点としている。

しかし言ってしまえば、刺されなければどうという事は無いのだ。

術式を掛けられていない只の槍を持ちだしたところで、聖人のチカラは小揺るぎもしないだろう。


(見たところ彼は普通の人間。ここで斬るのは容易いでしょうが、私の目的は……)


神裂は相手の力量を把握した上で、それでも戦おうとはしなかった。


「誤解があるようですので、先に話をさせてください」

「んー?」

「私はあなたと戦うつもりはありません。その事を説明したいのですが」

「……へえ」


神裂の生真面目な提案に、木原はあえて乗る事にした。


「分かった。俺は平和主義者だからな。“ゆっくり”と話し合おう」

「助かります、話の分かる人で良かった」
339 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/24(金) 01:54:41.56 ID:VZhXJn20

まず神裂は、木原に対し自分の所属を説明する。


「私は、イギリス清教『必要悪の教会』に所属している魔術師です」

「……インデックスと同じ組織か」

「ええ。彼女は私の大切な親友なんですよ」

「証拠は?」

「アルバムがここに。彼女と一緒に撮った写真が中に入っています」


差し出されたアルバムを受け取ったにもかかわらず、木原はそれを開かなかった。


「確認しないのですか?」

「ああ。写真なんざ幾らでも誤魔化しがきくからな」

「私が嘘を付いているとでも……っ」

「いやあ? 信じるよ、信じる」


持っていたアルバムをヒラヒラと振って、木原がそう言うと。


「では、あの子を渡してください。私達が保護します」


ここぞとばかりに神裂が本題を述べる。

しかし木原は、それでもニヤリととぼけてみせた。

340 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/24(金) 01:55:45.22 ID:VZhXJn20

「けどよぉ、そうすると妙だよなー」

「?」

「インデックスは、この1年間お前に敵として追われていたって言ってたぜ?」

「……それは事実です。少し長い話になりますが、全て説明しましょう」


それから神裂は、インデックスが一年ごとに記憶消去をしなければ死んでしまう事などを30分ほどかけて木原に伝える。

もちろんそれは、全て木原が把握済みの事ではあるが。


(なるほど。あのイギリス清教のトップ様は、記憶のしすぎでガキが死ぬと教え込んだ訳ね)

(魔術師は一般常識も知らないと見える)

(そんなチープな嘘にアッサリと引っかかるんだから、救いようがねぇよな)

(……さて、どうする?)

(幾つか計画は立てているが、この場合……)

(とりあえず、もう少し揺さぶってみるか)
341 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/24(金) 01:56:42.55 ID:VZhXJn20

木原はそう結論を下すと、再び口を開く。


「話は分かった。が、1つ聞くぞ?」

「はい?」

「――テメェら魔術師っていうのは、どいつもこいつも嘘吐きなのか?」


明確な敵意を含んだ言葉に、神裂が表情を凍らせた。


「な、にを……?」

「インデックスの記憶を消す必要があるだなんて残酷な嘘をついて、どういうつもりかって聞いてるんだ」

「嘘ではありません!」

「嘘だ。現に、記憶消去のタイムリミットを過ぎた今でもピンピンしてるぜ?」

「それは」

「そうやって俺達を騙そうとしたって、そうはいかねぇ!」

「違います!」

「インデックスは魔術師に追われて苦しんでいた。その全てはテメェらの所為って事だろう!」


聞く人が聞けば、あまりの空々しさに寒気を覚えるかもしれない。

木原は神裂が真実を知らされていないのをいいことに、彼女を悪党として糾弾したのだ。
342 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/24(金) 01:57:36.53 ID:VZhXJn20

(さーて、どうでる?)


木原の言葉に打ちのめされた神裂は、それでもギュッと長刀を握りしめた。


「……とりあえず、事実を確認しなければなりません。あの子に会わせてもらえませんか」

「断ると言ったら?」

「無理やりにでも。ですが、私はあなたを攻撃したくはない」

「そうか、残念だ」


突如として、木原の纏う雰囲気が変化する。

科学者としてのソレから、暗部のリーダーとしての禍々しいソレへと。


「本当に残念だ。テメェが悪人なら、利用価値があったのに」

「幾らクズとはいえ、善人は役に立たねぇんだよ」


その雰囲気を感じ取った神裂が、静かに臨戦態勢に入った。


「……どういう事か、説明を」

「ギャハハ! 面接は不合格って事だよ間抜け!」
343 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/24(金) 01:58:24.49 ID:VZhXJn20

そう言いながら木原は、持っていたアルバムを地面へ放り投げる。

ドサ、と落下したアルバムから何枚も写真が散らばった。


「あのガキを渡す? せっかくのエサを手放すわけねーだろ!」


もはやインデックスを名前で呼ばなくなった木原が、写真の1枚を踏みつけて吠えた。


「どちらにしろ、今のテメェはあのガキの敵だ。連れ戻そうだなんて考えが甘いんだよ」

「貴方と言う人は……!」


七天七刀の柄に右手を伸ばして、神裂が怒りを露わにする。


「なぁ、教えてくれよ。ガキの記憶を消した時、どんな気分だったんだ?」

「あのガキはどんな態度で最期を迎えた? 泣いたのか? それとも心配掛けないように笑った? きっと恐怖で震えてたんだろう?」


木原の挑発に、神裂はギリギリと歯を食いしばり――そしてこう言った。


「黙れ!!」

「何も知らないくせに、知ったような口を利くな!」

「今までに、どれだけ私達が苦しんだかも分からないで!」
344 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/24(金) 01:59:28.96 ID:VZhXJn20

聖人の怒りを目の当たりにして、それでも木原は動じない。


「何言ってんだ、勝手に記憶を消して悲劇を作り出したのはテメェ自身じゃねーか」

「大切な思い出を無くされるのが耐えきれなくて、敵として振る舞ってきたんだろうが……」

「とんだクズの所業だぜ」

「自己満足の行動しかしてねぇのに、あのガキを救ってきたつもりだったのかよ?」


完全に頭に血が上った神裂が、爆発のような咆哮を上げた。


「――うるっせえんだよ、ド素人が!!」


「何度思い出を作っても、繰り返しそれがゼロになる――それを……!」


耐えきれなくなった木原が、思わずブハッと噴き出した。


「オイオイ、勘弁してくれよ。流石の俺も心が痛むぜ」

「テメェは何度もあのガキの記憶を奪い取っていたのか――聞いたなインデックス?」

「!」


木原の乗っていた大型トラックから、神裂の良く知る少女の姿が現れる。

ただしその表情は、憎悪で染まっていた。
345 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/24(金) 02:00:38.12 ID:VZhXJn20

「……あなたは、私を追っていた敵なんだよ」

「あ……、」


今の彼女に、神裂達と仲間として過ごした記憶は一欠片も残されていない。


(記憶が無いのは当然、何しろ私がこの手で消したのですから)

(それでも――)


神裂には、どうして彼女が記憶消去をしないままで平気なのか分からない。

だが、今まで記憶消去をしなければ彼女が死んでいたのは事実なのだ。

なのにこうして無事な姿を見せられると、その事実さえ揺らいでしまう。


「ガキの知識はちゃーんと有効活用してやるから、テメェは安心して死ね」

「させませんよ!」


(そうだ。あの子に何が起きたのか、そんな事は取り戻してからゆっくり考えればいい)

(今やるべきことは、この非道な男からインデックスを助ける事!)


『聖人』の能力を生かして、インデックスを連れ去ろうとしたその瞬間。


「止めとけよ、無理にさらうのは。じゃねぇと仕込んだ爆弾がガキの頭を吹っ飛ばすぜ?」


木原がその動きをけん制した。
346 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/24(金) 02:01:35.52 ID:VZhXJn20

「く……どこまでも最低な人ですね!」

「これぐらいで褒めんなよ」


木原が枕槍を片手で持ちながら笑う。



(インデックスが敵側にいる以上、魔術は使えません)

(ならば鋼糸で……)


七天七刀を構えた神裂が、ついに木原への攻撃を決意した。


「警告です。我が『七閃』の斬撃速度は、一瞬と呼ばれる時間に七度殺すレベルです。それでも抵抗しますか?」


7つの鋼糸を操る神裂の術式は、単純な物理攻撃である為インデックスの干渉を受け付けない。

常人である木原に、それを回避する方法は無いはずだ。


「一瞬に七度殺す? ホントに頭が悪ぃなテメェは」


それなのに彼は、神裂へ怯むことなく1歩近づいた。
347 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/24(金) 02:04:26.42 ID:VZhXJn20

「人間は一度しか死なねーだろーが。一瞬で一度殺せりゃ十分だろ。それとも威力が弱い所為で七回も斬らなきゃいけねーのか?」


そう言いながら、木原はトラックにいる木山に骨伝導を利用した無線で指示を出す。


「愚かな……七閃!」


直後、7つの斬撃が烈風と共に――――来なかった。

張り巡らされていた鋼糸は、全てその瞬間に巨大トラックへ引き寄せられてしまっていたからだ。

それだけではない。

七天七刀も、恐ろしい力でトラックに引き寄せられている。

神裂が聖人で無ければ、とっくに手を離れていたはずだ。

唖然として刀を握り締める神裂に、木原が一言。


「ここをどこだと思ってやがる、学園都市だぞ」

「電磁石って知ってるか?」
348 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/24(金) 02:05:21.73 ID:VZhXJn20

今日はここまでになります

次でねーちんルートは終了する予定です

では、おやすみなさい
349 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/24(金) 02:07:52.35 ID:P/KY3Kwo
木原クンマジ悪党
そこにシビれるあこがれるッ!!
350 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/24(金) 02:10:07.71 ID:C/VwSn.o

木原の老獪さとインデックスという攻略本付だと勝ち目無いなー
ステイルも駄目でしょうww
351 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/24(金) 02:26:51.71 ID:D6Bpq6DO
乙!武器は封じた。あとは聖人パンチをどうするかだが…
木原くンなら普通に槍で応戦しそうだから困らない
352 :Are you enjoying the time of eve? :2010/12/24(クリスマスイブ) 10:30:52.16 ID:Lkk6.5E0
乙乙
木原くンはいちいち言葉がエグいな
追い込み方に惚れ惚れするぜ
353 :Are you enjoying the time of eve? [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 11:22:22.57 ID:I4wRbwDO
ねぼしならぬ、でじし
354 :Are you enjoying the time of eve? [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 11:29:36.83 ID:eSgDKs6o
でじしで吹いたw
355 :Are you enjoying the time of eve? [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:56:38.22 ID:BnUbO4wo
上条さんが攻略できなかった鉄線をとある科学の超電磁石パワーで止めたかww
乙!あいかわらず投稿早いし楽しいな!
356 :MerryChristmas!! [sage]:2010/12/25(クリスマス) 01:30:58.76 ID:3djRJgIo
ここから木原くンが神裂に肉弾戦で挑めそうで困るw
357 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage]:2010/12/25(クリスマス) 12:12:33.09 ID:y4ZbQEw0
>>351
>>356
結局困るのか困らないのかどっちなんだwwwwww

分かるのは木原くンがかっこよすぎると言うことだけか
358 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage]:2010/12/25(クリスマス) 17:57:06.44 ID:0KgvFIAO
まさに“悪の華”
359 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:13:01.44 ID:OyuEBC20

こんばんはー、レスありがとうございます

では、投下


8月1日午後12時20分、第7学区の駅前


木原の用意したトラックには、学園都市が開発した強力な電磁石が搭載されていた。

電磁石と言うのは、文字通り電気を流すことで磁石となる装置の事だ。

しかも発電機はトラックに積まれていない。

衛星からワイヤレスで電力を受け取ることで、そのスペースの分大きな電磁石の設置を可能にしている。

尤も、そんな説明をする気など木原には全くなかったが。


「人間の力で抵抗できるような磁力じゃねーんだけど、流石は聖人サマって事かな?」

「……」

360 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:14:19.58 ID:OyuEBC20

神裂が武器にしているのは、玉鋼を主成分とする日本刀。

周りに張ってあった鋼糸も含めて、全てが鉄を含んでいるのだ。

衛星からの監視映像やインデックスの助言を受けた木原は、即座にこの実験トラックの使用を申請した。

付近一帯に避難命令が出されたのは、そのためである。


「……どうやら本気で私と戦うつもりなのですね?」

「んー?」


けれども。

自分の武器を封じられて尚、神裂は戦意を喪失してはいなかった。

震える腕で七天七刀を抑え込み、鋭い目で木原を睨んでいる。


「確かにこの状態では満足に刀を振るえませんが……私は『必要悪の教会』所属の魔術師、この程度の危機は初めてではありません!」

「そうか。じゃあ使えよ“魔術”を。俺とガキの前でな」

「……」


木原の自信たっぷりな態度に、神裂は口を噤んだ。
361 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:15:11.78 ID:OyuEBC20

(魔術と武器の両者を抑え込んで、勝ったつもりなのでしょうか)

(ですが、少し考えが甘かったようですね)

(魔術と武器が使えないとしても、普通の人間であるあなたを倒す事は可能なんですよ!)


聖人である神裂なら素手で十分木原を圧倒できる。

彼女はそう判断すると、七天七刀を放り捨てて彼に駆け寄った。

それを見た木原はハイな笑みと共に枕槍を構える。


(甘甘だぜェ、魔術師! テメェの行動理念や性格はすでに把握済みなんだよォ!)


武器を捨てて向かってきた神裂に対し、木原は敢えて自分から近づいた。

しかも彼女の攻撃が直撃する位置に。


「バカな……!」

「さあ、殺してみろ!!」


咄嗟に神裂は、殴る為に突き出した拳を引き戻して後退した。
362 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:16:12.24 ID:OyuEBC20

何故ならば。


(あの威力のまま私のパンチを受けていれば、間違いなく彼は――)


木原がわざと接近したことで、最高威力で攻撃が当たってしまうからだ。

そうなれば間違いなく、聖人の一撃は彼を死に至らしめていただろう。


「どうしたよ魔術師、俺を“殺して”みせろって」

「正気ですか!」


けれど、神裂に人は殺せない。誰も殺せない。

例え相手がインデックスを悪用しようと企む木原であってもだ。

幼い時より彼女は、『選ばれなかった』人全てを救いたいという願いを心に宿している。

その強い思いこそが、神裂が魔術師として生きる理由で。

何よりも曲げる事の出来ない信念なのだから。


――そして木原は、よりにもよってその信念を利用する。
363 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:17:18.99 ID:OyuEBC20

「やっぱり、殺せないのか善人!」

「その化物じみたチカラで、俺みたいな悪党の命を奪う事も出来ないのか!」


すでに木原は、神裂が敵を殺せない事を確信していた。


――「決まってんだろ。1人の善良な市民として、侵入者は警備員に通報しなきゃいけねーよな?」

あらかじめ送り込んだ警備員は、全員気絶しただけ。


――「私はあなたと戦うつもりはありません。その事を説明したいのですが」

武器を持って現れた木原を前にして、会話を求めたあの態度。


――「警告です。我が『七閃』の斬撃速度は、一瞬と呼ばれる時間に七度殺すレベルです。それでも抵抗しますか?」

あれだけの挑発を受けながら、怒りで心を染めながら、それでもまだ降伏を求める心の甘さ。


結論を出すには十分すぎる材料が揃っていたのだ。
364 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:18:01.17 ID:OyuEBC20

(そもそも殺しを厭わない人間なら、その力を使ってさっさと俺を殺していた)

(“その対策”も立てていたとはいえ……とんだ期待外れだぜオイ)

(さーて、問題はこの後どうするべきかだが……)


その時、無線を通じて木原に連絡が入ってきた。

とある人物からの報告に、木原は目を輝かせる。


(そうだよなぁ、このままじゃ退屈だ。遊び心が必要だぜ)

(どうせなら、仕上げは完璧に施さなきゃ失礼ってモンだ)

(ハハッ! コレはいいエンディングになる!)
365 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:18:33.89 ID:OyuEBC20







それからの出来事は、恐るべき悪意により引き起こされた。










366 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:19:31.45 ID:OyuEBC20

突然、トラックの運転席が開く。

そこから飛び出した木山がわき目も振らず逃走した。

呆気にとられる神裂をしり目に、木原は楽しくて堪らない、と言った様子で一言。


「狙いはトラックだ、やれ“デニス”」

「ええ、分かりました」


木原の背後に隠れた少女が、黒曜石のナイフを取り出し――。

巨大なトラックが轟音を立てて崩壊する。


「なんのつもりで……」


神裂の言葉が木原に届くより早く。

電磁石に流れていた高圧電流が燃料に引火し、先の音を遥かに上回る爆音と共に大爆発した。

そして煙が晴れたとき、すでに木原とインデックスの姿をした少女は姿を消した後。


「……逃がしませんよ!」


聖人の速度なら、すぐに追いつくことが出来る。

神裂はすぐにその後を追いかけた。
367 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:21:36.99 ID:OyuEBC20

8月1日午後12時30分、第7学区駅前近くのとある小さな通り


神裂が木原達に追いついた時、彼は両手をゆっくりと広げてみせた。

その右手には枕槍を所持している。


「ヤベェ、見つかっちまったな」

「降伏を。トラックを使って逃走時間を稼いだつもりでしょうが、無駄でしたね」


そう言いながら、神裂は七天七刀を木原に突きつけた。

電磁石が破壊されたことで、再度武器を使えるようになっているのだ。


「それにしても、今になって怖気づきましたか?」

「……フ」

「?」

「フ、ハ、ヒャーッハッハ!」


それに対する木原の返答は、爆笑。
368 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:22:47.33 ID:OyuEBC20

「笑えるな! 人も殺せない弱者が、何を得意げに語ってんだよ!」

「目的の為なら誰だって殺すべきだ。そんな覚悟も出来ねえようじゃ魔術師とは言えねえよなぁ!」

「……あなたは間違っている!」

「なら殺すんだな!!」


神裂の糾弾に、木原はそれ以上の声を張り上げて圧倒した。


「話し合いなんかで解決できると思ってんじゃねーよ!」

「必要なのは殺し合いだ! 俺が生きている限り、ガキは解放されねェ!」

「俺が率いている『猟犬部隊』は、これからも誰かを殺すし誰かを地獄へ叩きこむ!」

「テメェが俺を殺さない以上、これから起こる悲劇は見殺しにするって意味だぜ!?」


木原の言っている事は、あまりにも理不尽で一方的だ。



だがどうしようもなく事実でもある。


369 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:24:08.34 ID:OyuEBC20

すでに対話が無意味だと分かっている以上、神裂は覚悟を決めるしかなかった。

彼女の一番の目的は、木原に利用されているインデックスを助ける事なのだから。

ここまで来て迷うほど、神裂は未熟ではない。


「……私は、今まで死んで良い人間などいない。そう思っていました」

「違うな、この世界には殺しても構わねぇ人間しかいないんだ」


どこまでも食い違う意見。


「それでも……あなたは、あなただけは生きていてはいけない!」

「生きていてはいけない、か。そんなモンは単なるレッテル貼りでしかねぇ。殺しに大層な理由をつけるのは三下だ」


まったく異なる信念。


「参ります。Salvere000(救われぬ者に救いの手を)!」

「さあ、殺しの手本を見せてやるよ」


あまりにも生き方のベクトルが反対。

そんな2人が、自分の全てを掛けて激突した。




「――唯閃!」

370 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:25:06.15 ID:OyuEBC20

神裂が放つ一撃は、その名を唯閃と言う必殺の抜刀術だ。

天草式十字凄教の技法を元にしており、その上聖人の力を引き出すこの奥義は天使すら切り裂く事が出来る。

木原が枕槍を突きだすよりも早く、人間の反応できる速度を超えて七天七刀は彼を真っ二つにした。


――ドシュッ!!


「な……」

「こんなもんか」


なのに。
371 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:26:28.89 ID:OyuEBC20

神裂が木原を斬った瞬間、“背後”から彼女は心臓を枕槍で貫かれていた。


「残念だったな、化物」

「う、ぐ……」


聖人の弱点である槍が心臓を貫いている以上、神裂はもはや動く事すら不可能。

それでも彼女は、一体何が起きたのかを知ろうとした。

そして目を凝らし――愕然とする。

確かに両断したはずの木原の姿は、まだ目の前でゆらりと存在していた。

揺れ動くその姿は、まるで――。


「……蜃気楼……そんな、事って……」


絶対に考えたくない仮説が、急速に神裂の頭に浮上する。
372 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:27:14.63 ID:OyuEBC20

そしてそれは、真実となった。


「すまない、神裂」

「だが僕は誓ったんだ。あの子の為なら誰でも殺す、いくらでも壊すと。ずっと前にね」

「す、テイル……!」


通り沿いにあるアパートの屋根から、神裂の同僚だった炎の魔術師ステイルが姿を見せる。

何故かその隣には、インデックスの姿もあった。


「何故……」


最後の呟きは、悲しい事に後ろにいた木原にだけ届き。

世界に20人といない聖人の1人神裂火織は、皮肉にも唯一殺そうと思った人間の腕の中で息を引き取った。

373 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:28:35.72 ID:OyuEBC20

完全に標的が死んだ事を確認した木原は、その遺体を担いで撤収の指示を出す。


(あそこまで言えば、幾らこの女でも全力で攻撃するのは予測出来る)

(それこそが狙いだった事に、こいつは結局気付けなかった)


あの過剰なまでの挑発と追い込みは、神裂に唯閃を使わせるよう誘導する事が目的だ。


(『聖人』は目で見てから銃弾を避けられるような化物だし、普通に攻撃したところで意味がねェ)

(ならば隙を作ればイイ。そして最大の隙は、全力で攻撃をしているその瞬間)

(急ごしらえの作戦にしては、上々と言うべきだろうな)

(たまにはあのモルモットも役に立つって事か)


元々木原は、神裂を殺すために策を幾つか用意していた。

そこにテレスからの無線が入り、急きょ作戦を変更したのだ。


(わざわざトラックをぶっ壊して、作戦場所を変更するのは手間だったがしょうがねーな)

(仲間を直接死に至らしめる事に加担させれば、これから『猟犬部隊』で使いやすくなるからなぁ)


スタスタと歩く木原が、屋根から降りてきたステイルの前で立ち止まる。

そしてわずかに苦渋の色を浮かべるステイルへ、そっと一言。


「蔑むべき『猟犬部隊』へようこそ。心から歓迎するぜ」
374 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2010/12/27(月) 01:29:26.01 ID:OyuEBC20

今日はこの辺りで幕引きです

言うまでも無いですが、私はねーちん大好きです

注意書きをするとネタばれになりそうなので、事前に警告をしませんでした

気分を害された方は本当に申し訳ありません


さて、ステイルに一体何が起こったのか!?

次回は時間を遡ってステイルサイドをお送りします

ですが、ここで1つお知らせです

今回が恐らく年内最後の投下となります

次回投下は未定です

なるべく早めに戻ってくるつもりではいますが

では、おやすみなさい

そして良いお年を!

375 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 01:31:55.29 ID:ya0hZywo
ねーちん死亡…だと…おつ

相変わらず面白いうえに展開がよめん
あとデニス…木原はどうおもってるのだろうか
376 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 01:45:31.06 ID:oZfjXjg0
研究のためにねーちんの遺体はバラバラに…
377 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 02:04:28.66 ID:T1Eet.Mo
ねーちん……

なぁに、第二、第三、あるいは量産型ねーちんが
378 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 02:10:23.28 ID:XkNIw.so
乙!

シェリーといいねーちんといい俺の嫁が悉く……
379 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 02:36:57.02 ID:AVeDTMQo
聖人の肉体さえ手に入ればいいってところか…
380 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 02:50:07.54 ID:xYSPcXoo
原作とは逆にイギリス清教がみるみる弱体化していくな、ローマ正教1強状態か
381 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 02:51:24.49 ID:dWew86DO
まあ生きてても利用出来ないし、聖人だから生け捕りは難しそうだしなー。

ステイルパート超期待
382 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 03:15:02.67 ID:eoyT70U0
乙 続きが楽しみすぎる
383 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 10:35:05.53 ID:Oq8CNZoo
>>380 今のところ魔術師3人、聖人の身体を手に入れた学園都市とローマ聖教の2強だろ
384 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 15:42:19.96 ID:VzY52wAO
>>377
妹達のクローン技術応用して単価18万のねーちんとか出そうで怖い
まあ実験自体この世界であるか知らんけど
レベル5の量産くらいならやってみて失敗してそうだが
385 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 00:50:31.24 ID:vcQRU.DO
おっぱい片方くれ
386 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/28(火) 11:03:04.45 ID:nD7U/Mc0
アックア「聖人の肉体に興味があるのなら、遠慮せずに触るといいのである///」
387 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 19:52:10.73 ID:EwDvaN2o
素晴らしい大胸筋……///



ふぅ
388 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/30(木) 12:58:45.55 ID:MhuLL.AO
今追いついた。

そもそも脳が扱うデジタルデータは機械の扱うbitとは情報量が圧倒的に違い
機械がそれをbitに換算するのは大変な筈。
いくら元が「全て文字情報に記号や画像」とはいえ、それを記憶しているのが人間である以上
「それを0と1のデジタルデータに変換するぐらい、出来なきゃおかしい」とか一体どんなトンデモ科学を使ったんだ木原くンwww
389 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga sage]:2010/12/30(木) 14:22:03.12 ID:p3gnEb60
>>388
一方通行を倒すのに、AIMジャマーとかじゃなく木原神拳使う人だし…
390 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/30(木) 15:57:49.49 ID:TKNP7aU0
脳のデータはテスタメントで機械的に読み取れるし
ツリーダイアグラムは地球上の気体の分子1個1個の軌道を全て計算して天気予言が出来る頭のおかしい代物なのを忘れてないか
391 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/30(木) 21:29:57.57 ID:zIBdvqM0
つまり
回答一。木原くンですから
回答二。ツリーダイアグラムですから

という事か
392 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/30(木) 21:48:48.41 ID:BiimW7Io
それ以前に学園都市だからで片付けられるんだけどな
393 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 00:47:29.47 ID:0cpywQMo
そもそも原作がかまちーですし
394 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 01:06:51.49 ID:7.rB422o
それを言ったらおしめえよ
395 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! :2011/01/01(正月) 08:55:20.77 ID:9Yfi.wAO
つくづくねーちんと木原くンは相性が悪かったな
単純な戦闘力なら間違いなく聖人が勝っていたのに
396 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 12:29:13.38 ID:Au9ZDboo
それ言ったらここの木原くンと相性のいい相手なんていない。
情報が渡った時点で勝ち目ない。
397 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [sage]:2011/01/03(月) 00:30:53.25 ID:XR8BVfU0

お久しぶりです。沢山のレス本当にありがとうございます

なんだか周りにはほのぼのしたりニヤニヤ出来るような素敵なssが溢れているのに、
どうして自分はこんな救いようのない話を書いているんだろう?
と、ふと考えてしまうぐらい、この先も人が死んだり悲しんだりします

一応明日の夜に続きを投下する予定です
では、おやすみなさい

本編投下できずに申し訳ないです
398 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/03(月) 00:50:17.54 ID:psMdjcDO
黒い話は好きなので充分ニヤニヤしてるんだぜ。予告嬉しいんだぜ。
明日の楽しみが出来た
399 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/03(月) 23:31:35.36 ID:mWvKUbg0
今日じゃない……のか

しえん
400 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/03(月) 23:54:11.62 ID:/bzdgTM0
予告きたか!楽しみだなー 
401 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/04(火) 00:51:38.11 ID:1zCM47E0

こんばんはー、遅くなって申し訳ないです

少し短いですが、お付き合い願います

では、投下


8月1日午前11時00分、『猟犬部隊』32番待機所


時刻は遡り、侵入者を感知した後の作戦会議。


「よし、そろそろ作戦を開始するか」

「獲物は上手い具合に分かれてくれたし、2チームで戦闘を行う」

「……チーム分けは、どうしますか?」


マイクの疑問に対し、木原は。


「良く聞け、男の方の相手をするのはテレスと猟犬部隊4人、それにMARから数人ってトコだな。あ、ショチトルも同行させる」

「で、では……!?」

「ああ。女の相手は俺と木山ちゃん、そして“デニス”の3人って事だ」
402 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/04(火) 00:52:52.69 ID:1zCM47E0

あまりに戦力が偏った指示に、マイク達は返答が出来ない。

唯一テレスティーナだけが、眉をひそめて抗議する。


「……女の方が厄介だってのに、どういうつもり?」

「分かってねーなぁ。あの女と警備員との戦いをちゃんと観察すりゃ、むしろこっちの方がやりやすいって丸わかりだろーが」

「……?」

「とにかく、油断するなよモルモット。失態を見せたらテメェでも遠慮なく心臓(パーツ)採取だからよ?」

「ふん。『超大型駆動鎧』が調整中でも、侵入者1人ぐらいどうとでも出来るっつーの」


その時、唯一名前を呼ばれなかったインデックスが会話に加わった。


「私は、どうしたらいいのかな?」

「決まってる。――留守番だ」
403 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/04(火) 00:54:17.55 ID:1zCM47E0

「え!?」

「下手に現場に連れて行って攫われたら、元も子も無いじゃねーか」

「……」

「だから、代わりに皮膚を寄こせ」


それにピクリ、と反応したのはアステカの魔術師2人だ。


「まさか、この子の姿になれと?」

「当たり前だろうデニス。2人ともガキに化けておけば、敵はどちらも魔術を使えないからな」

「……もし偽物だと気付かれたらどうするのだ?」


ショチトルがそう尋ねるが、木原はその心配を一蹴した。


「戦局はこっちがコントロールするんだ、気付く暇すら与えないように攻撃の手順を組め」

「ま、その辺はテレスが熟知しているから問題ねーしな?」


そのまま答えを聞かずに、木原はインデックスに向き合って薬品を取り出す。


「これは麻酔だ、皮膚を切る痛みは無ぇから安心しろ」

「……でも……」

404 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/04(火) 00:56:43.52 ID:1zCM47E0

「今までお前を追ってきたアイツらの前に、バカ正直に本人を連れて行くのはアホすぎる」

「だが『禁書目録』がいると思わせるだけで、アイツらの行動は制限可能なんだ」

「――頼む、俺達に力を貸してくれ」


殊勝にも丁寧に頼み込む木原だが、当然これも作戦の1つだ。

手っ取り早く腕の一本を切り落とす程度、彼は毛ほども躊躇しない。

インデックスから無理やり皮膚を剥く事と、自発的に提供させる事。

彼が後者を選んだのは、単に後々の作戦効率を考えたからだ。


(あのゴーレム使いがやられた直後に敵地(がくえんとし)に乗り込んできたって事は、それだけの理由が存在するって意味だ)

(今この状況で魔道書を狙う連中が来るとも考えにくい)

(となれば十中八九、あのガキの知り合いだろう)

(コイツの姿を見せるだけで動揺を誘えるし、場合によっては……)

(なんにせよ、“全て”の条件が整うまではガキを有効活用しなきゃな)

(……大切な『魔道書図書館』サマだし)


誰よりも。

ひょっとしたら、あのイギリス清教よりも。

木原数多こそがインデックスを人間扱いしていない事に、当の本人は最後まで気付かなかった。
405 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/04(火) 00:57:34.16 ID:1zCM47E0


8月1日午前11時35分、第7学区のとある広場


自分を取り囲んだ敵に対し、ステイルは落ち着いて炎剣を振るう。


(どうやら、先ほど戦った人員とは“種類”が違うらしい)

(人を殺す事に手慣れている……科学側の暗殺部隊ってところかな)

(……相手をするだけ無駄だろう)


警備員や警備ロボとは異なり、駆動鎧やショットガンで武装を固めている敵を前にして。

ステイルはこの場からの退却方法を考え始めた。


「――ちょっと待って欲しいんだよ」


自分が最も大切にしている少女の声が、その耳に届くまでは。
406 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/04(火) 00:59:42.34 ID:1zCM47E0

思った通りに動きを止めた侵入者の姿を確認して、テレスティーナは満足そうに笑った。


「アッヒャッヒャッヒャッヒャ! その反応からすると、やっぱりただの敵じゃねーって事か!」

「な、ここに連れてきていたのか!?」

「テメェは自分の身を心配しろや、魔術師!」

「く……」


テレスティーナの操る駆動鎧が、高速でステイルに殴りかかる。

結果目の前にインデックスがいるにも関わらず、ステイルは引き下がらざるを得なかった。

ルーンを極めた天才魔術師である彼は、優秀なその実力を持って数多の魔術結社を1人で灰燼へ還した実績を持っている。

ただし、相応の犠牲を彼は支払っているのだ。

すなわち体力や接近戦能力。

ひたすらにルーン魔術のみに特化した彼は、それ以外の全てが一般的な魔術師よりも弱まってしまった。
407 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/04(火) 01:01:17.94 ID:1zCM47E0

(仕方ない、ここで使うしかないのか……?)


引き換えに得たチカラは強力だが、事前の準備が欠かせない。

そしてそれはまだ完了していなかった。


(周りに配置したルーンはおよそ一万枚、万全には程遠いが……!?)


ステイルの思考を遮るかのように、マイクが閃光手榴弾を幾つか放り投げた。

――『絶対等速』の能力を使って。


(なんだこの遅さは!?)


不気味に迫ってくる脅威に対し、ステイルは炎剣で薙ぎ払おうとするが。


「甘いな、魔術師」


炎剣が到達する直前にマイクは能力を解除した。

そして閃光手榴弾は、重力に従って落下する。


「!?」


薙ぎ払う為にそれを凝視していたステイルは、当然閃光も見る事になり。


「う、わあぁぁぁぁぁ!」


学園都市製の光が、彼の視界を焼きつくした。
408 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/04(火) 01:02:17.42 ID:1zCM47E0

作戦通りに事が運んだので、マイクは安堵を隠せない。

そもそも能力のこういった変則的な使用方法は、猟犬部隊に入ってから木原によって仕込まれたものである。

もしもそれで失敗していたら、間違いなく木原によって殺されていただろう。


「よし、ナンシー捕獲しろ」

「了解」


両目を覆って叫ぶステイルを捕まえようとして、猟犬部隊が走る。

が、テレスティーナがそれを阻んだ。


「テメェら避けな!!」

「!」


もしもその警告が無かったら、今頃ナンシーは炭になっていたかもしれない。

先ほどの炎剣とは比較にならない熱量が、ステイルの前に猛然と現れたのだ。
409 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/04(火) 01:03:19.91 ID:1zCM47E0

「その名は炎、その役は剣(IINFIIMS)」

「顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ(ICRMMBGP)」

「――魔女狩りの王(イノケンティウス)!!」


ステイル・マグヌスという天才魔術師が、1人の少女の為に己を犠牲にして習得した絶対のチカラ。

それは、まさに魔術を象徴する怪物。

紅蓮の炎が人の形をとり、全てを圧倒して君臨した。


「炎の巨人だと……信じられん」


あまりに非現実的な光景に、ステイルを囲んでいた全員が唖然とする。


「悪いが、僕の視界を奪ったぐらいで勝った気にならないでもらえるかな?」

「あの子がここにいる以上、君達を焼きつくして保護するまでだ」


この時、ステイルの視界が回復していれば。

テレスティーナの表情に。

インデックスの姿をした少女の表情に。

違和感を感じたかもしれなかった。


――だが、そんな未来は訪れない。
410 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/04(火) 01:05:40.63 ID:1zCM47E0

今日はここでおしまいです

昨年は励みとなる沢山のレス、本当にありがとうございました

今年も投下頑張りますので、少しでも暇つぶしになれば幸いです

恐らく次回でステイルサイドが終了します

では、おやすみなさい
411 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/04(火) 01:23:36.78 ID:QeUm9Gso
ちょっともう変則的な使い方の考え方がすばらしすぐる
絶対等速をそう調理するだなんて>>1
絶対等速かっこよすぎ濡れた
412 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! :2011/01/04(火) 03:12:40.19 ID:hUU4DSM0
ぎゃああああ!
毎度毎度続きが気になる終わり方をしやがって!なんて鬼畜なんだ!
>>1乙!
413 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/04(火) 09:21:54.20 ID:J/nYpaso

ステイルは性格も容姿もイケメンなのにね
勝つためにらなにかが、何かが足りない……
414 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/04(火) 13:38:49.29 ID:sFm2dys0
まあ14歳の少年だからなww
415 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/04(火) 15:21:49.33 ID:6cbN2ZAo
>>413
根性だな
416 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/04(火) 22:19:55.16 ID:Fc.B2KEo
>>413
補正
417 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/04(火) 22:42:23.48 ID:rNmzJ2so
>>413
強引さだな
418 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/04(火) 22:54:15.81 ID:zt6nSoAO
>>415-417
どれも木原くンの前だと霞むんだが
419 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/05(水) 06:11:40.92 ID:I.M13a6o
絶対等速さん頑張ってるな
420 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/05(水) 09:30:18.99 ID:kt2PlDM0
小学生にやられるような雑魚キャラが随分出世したなぁ
421 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/05(水) 10:10:18.50 ID:Gv1qUD2o
バカとハサミは使いようてな感じ
422 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/05(水) 12:53:30.00 ID:z7ehmUAO
ステイル(イノケンティウス)強過ぎヤバいと思ったのはオレだけか……
423 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/05(水) 13:30:53.24 ID:k1gyjfo0
>>422
普通に学園都市なら摂氏3000℃は余裕だしな
ステイルくんはいらないかもね

ルーンも仕掛けがわかれば猟犬部隊の鼻で即効駆除できるし

天才魔術師ェ・・・
424 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/05(水) 16:25:51.60 ID:pDmzqwDO
絶対等速さんの能力のON、OFFの汎用性パネェな。
限界重量があるかもしらんが正確な空輸、爆撃も可能じゃまいか。
凄く遅いけどね!
425 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/06(木) 01:04:11.93 ID:d4kQwz.0
炎の塊な能力の癖に火炎放射器でまわりを焼き払われたら消え去るイノケンティウス・・・
426 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/06(木) 15:59:20.38 ID:7aHNj160
最初の戦いの時はスプリンクラー(笑)でやられたしな
今でも不思議なんだがコピー機のインクって水溶性だったっけ?
427 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/06(木) 16:20:25.03 ID:k8CQ5sYo
紙が溶けたんじゃなかったっけ?
428 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/06(木) 16:24:56.96 ID:nU.aiDko
ステイル「コピー紙は水で溶けるほどヤワじゃないんだよ!残念だったね!」
上条「でもインクは落ちちまうんじゃねーか?」
ってやりとりだったはず
禁書の世界では溶けるんだよきっと!
429 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/06(木) 18:03:00.60 ID:2EDH5z6o
コピー用紙に万年筆で手書きしたんだよ
430 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/06(木) 20:27:22.48 ID:cHZrqTYo
しょーもない所でレベルが低いな禁書科学
431 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/06(木) 22:55:57.89 ID:VTxDPC.o
>>430
ねぼしを忘れたか?
432 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/06(木) 23:24:55.20 ID:vkLpKg6o
ここまでテンプレ
433 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:28:52.17 ID:QXt/Z5Y0

こんばんはー、こんな時間ですが投下します



8月1日午前11時50分、第7学区のとある広場


燃え盛る炎の巨人を前にして、テレスティーナは舌打ちした。


(あー、殺せないのってタルいわね)

(とっとと撃ち殺しゃ早いっつーのに、生け捕りとか言いやがってあの数多(ゴミ)が!)

(にしても……どうやら超能力と違って、アレは自律行動をとれるらしいな)

(めんどくせえ、こいつを使うか)


彼女の装着している駆動鎧の右手。

そこに備わっているのは、『書庫』に登録されている御坂美琴の能力を解析して作り上げた、超電磁砲(レールガン)だ。

連発こそ出来ないが、その分一撃の威力は並大抵のものではない。
434 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:29:46.92 ID:QXt/Z5Y0

木原数多の指示は魔術師の生け捕り。

である以上ステイル本人を狙う訳にはいかないが――。


(あの炎の巨人を、吹っ飛ばしてやんよ!!)


ステイルを守るように立ち塞がるイノケンティウスなら、攻撃しても構わないはず。

そう判断したテレスティーナは、全力で超電磁砲を発射した。


「これで……!」


炎とは全く異なる人工的な青白い光が、轟音と共に眼前のイノケンティウスを跡形も無く吹き散らす。

テレスティーナはにんまりと笑みを浮かべようとして、そのまま凍りついた。


「呆れるね、そんな事で僕のイノケンティウスを破れるとでも?」

「……んだとぉ……どうなってやがんだ、あァ!?」


周りに散ったはずの炎が、ビュルン!!と得体のしれない音をたてて再び集合したからだ。
435 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:30:39.47 ID:QXt/Z5Y0

(強力な自己再生能力……?)

(いや、燃焼現象を固定化する能力か?)

(あの超電磁砲の威力なら、ごく短時間とはいえ燃焼に必要な酸素量を周辺から弾き飛ばすハズだけど)

(……魔術……ねえ)


理屈はともかく、現状ではあの炎の巨人を無力化するのは不可能らしい。


「炎を攻撃しても、無意味なんだよ」

「!」


そこに聞こえてきたのは、インデックスに化けたショチトルの声だ。

ステイルに疑われないように、そしてステイルを追い詰める為に、魔術の解析を行っている。

その方法は極めて簡単だ。

今までの戦いをアイ・カメラで見ていたインデックス本人が、無線でショチトルに適切な指示を出しているだけ。

そうする事で、彼女は本物と全く同じ言動をとる事が出来るのだ。

無論、これも木原の作戦である。
436 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:31:36.84 ID:QXt/Z5Y0

「この魔法はルーンを使った迎撃魔術。辺りに刻まれたルーンを消さないといつまでも倒せないの」

「ルーン? 古代言語の?」

「そう。多分、この広場一帯に張られた紙1つ1つにルーン文字が書かれているのかも」


スラスラと魔術を看破していく少女の姿に、ステイルが歯ぎしりした。


「……君は、何故こんな奴らに……!」

「あなたは私の敵だから」


インデックスの指示による言葉ではなかった。

それは紛れもないショチトルの本心。

かつてエツァリとショチトルは、『原典』所持の罪でイギリス清教の魔術師に捕まっている。

捕縛者は他でもない――ステイルと神裂だ。


(組織から私を助けてくれたエツァリお兄ちゃんを、よくも捕まえてくれたな)

(絶対に許さない。お前も、あの得体のしれないキハラも!)
437 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:32:27.15 ID:QXt/Z5Y0

エツァリを人質にされているので、その木原に利用されていると知りながら従うしかない。

となれば、その行き場のない感情は当然ステイル1人に向けられる。

その悲痛な姿を見ていたテレスティーナが、心の中で嘲った。


(まんまと乗せられやがって、バカじゃねーの)

(これも全部あの数多(カス)の思惑どおりだって事に、どうして気付かないのかねえ)


エツァリにはショチトルを、ショチトルにはエツァリを。

互いを人質にすることで、表面的な反抗を抑え込む。

それだけではない。

あえてこの段階で“敵”であるステイルと対峙させることで、現在おかれている状況を作りだしたのはイギリス清教だと思い込ませる事が出来る。

――インデックスと同様に。


(せいぜい憎むのね。その感情ごと利用してあげるから)

(……ふふ。素直な子供って本当にステキ)


既にこの時。

悪意と言う名の『糸』は、静かに魔術師達に絡みついていた。
438 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:34:42.24 ID:QXt/Z5Y0

インデックスの助言を受けたテレスティーナ達は、迅速に行動を開始する。


「ブルーマーブル、付近一帯を“清掃”しな!」

「了解!」


MARのブルーマーブル隊5名が、思い思いの武器で辺りのコピー用紙を塵にしていき。

さらに、付近の清掃ロボを大量に広場に呼び寄せた。

只でさえ数の足りていなかったルーンが、みるみるうちにその姿を消していく。


「けど、その前に……イノケンティウス!」

「お前の相手は俺達だ」


焦って指示を出すステイルへ、マイク達猟犬部隊が立ち塞がった。


「邪魔だ素人が!」

「ナンシー、ヴェーラ、あの炎の移動速度は覚えたな?」

「ええ。一定の距離を取ったまま時間を稼ぐわ」


イノケンティウスはかなりの脅威だが、自動追尾ゆえか標的を追う際に一定のタイムラグが発生する。

1対1で倒さなくてはならないならともかく、複数の人間で単に逃げ回るだけなら。

相応の訓練を受けた『猟犬部隊』にとって不可能な任務では無くなるのだ。

何しろここは学園都市。

異能を相手に戦う事など、日常茶飯事なのだから。
439 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:35:49.61 ID:QXt/Z5Y0

こうなってしまえば、後残るのは目の見えないステイルだけ。

戦力を分断されたステイルに、テレスティーナが一瞬で肉薄した。


「ほーら、手品はオシマイなのかしら」

「!」


高速で繰り出されたローキックが、ステイルを狙う。


(殺さない程度には手加減してやんよ!)


だが、またもテレスティーナの目論見は外れる事になった。


(……感触が……ない!?)

(バカな、一体何をした!?)


直撃するはずの蹴りが、手応えの無いまま空を切る。

確かにその場にいるはずのステイルが、奇妙に揺らいで笑ってみせた。
440 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:36:39.32 ID:QXt/Z5Y0

「確かに、僕では勝てそうにないな」

「――だから一先ず退散するとしよう」


その背後では、ルーンを消されたイノケンティウスが儚く消えかかっている。

それでもステイルの声色は、余裕が感じられた。


(幻覚……うざってえ真似を!)


テレスティーナが歯ぎしりするが、どこにもステイルの姿は確認できない。

このまま逃がすと厄介だ、と彼女が焦燥を覚えるより早く。




「……悪いが、俺達『猟犬部隊』は一度狙った獲物を逃がさない」



静かにマイクがそう告げた。
441 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:37:48.45 ID:QXt/Z5Y0

「ヴェーラ、“どこ”だ?」

「そこから右に8m、前に12m。インデックスの後方に反応アリね」


直後、指示通りの場所をナンシーが体当たりした。


「ぐはっ」

「残念でした。姿を隠したぐらいじゃ私達は誤魔化せないわ」


隠れてインデックスを連れて行こうとしたステイルが、うめき声を上げる。

すでに蜃気楼はかき消えて、彼はその姿をハッキリと晒してしまっていた。


「何故、だ?」

「俺達は鼻が利く、それだけの事」

「……くそ、こんなところで!」


マイクの冷徹な声に対し、ステイルが無念を叫ぶ。

人の視界を欺く蜃気楼では、匂いまでは操れない。

ヴェーラの持っていた『嗅覚センサー』は、ステイルの居所を完全に探知していたのだ。
442 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:38:51.80 ID:QXt/Z5Y0

幾つか計算外の事がったとはいえ、無事に標的を捕まえた事にテレスティーナは満足していた。

もしもこの作戦を失敗したら、間違いなく木原の怒りを買っていたのだから当然だが。


「殺すなら、さっさと殺すといいさ」


そんなテレスティーナに対し、拘束されたステイルが挑むように言葉を発した。


「あぁ?」

「言っておくが、僕からイギリス清教の情報を得ようなんて考えても無駄だよ」

「……」

「拷問にかけたところで、絶対に口を割ったりはしないからね」

「……」


じゃあ死ねよ。

そんな風に投げやりになるテレスティーナだが、ふとある事を思い立った。


(そういえば、数多(クズ)から面白い報告が来てたな)

(イギリス清教による非人道的な記憶利用だっけか)

(コイツはその事を知ってんのかねえ)


その情報を使ってみるか、と呟いてテレスティーナはステイルに近づく。
443 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:39:48.93 ID:QXt/Z5Y0

「ねえ。今から話す事を聞けば、世界が変わって見えるかもしれないわよ?」

「何を言っている……?」


今さら丁寧に語りかけてくるテレスティーナに、ステイルは怪訝な表情を見せた。

それから15分ほどの時間。

他ならぬ自分の所属していたイギリス清教が、何よりも大切な少女を今まで苦しめていたと聞かされて。


「最大主教が、そんな事を……!」


ステイルは極度の混乱状態に陥った。


「今も無事なあの子の姿がその証拠。記憶のしすぎで人が死ぬなんて有り得ないわ」

「あの子を助けたいのなら、私達と共に行動しなさい」

「……」

「今死ぬよりも、ここであの子と一緒に生きた方が幸せだと思うけど?」

「……」


それからたっぷりと100秒近くが経過した後。


「……分かった。あの子を守れるなら、幾らでも無様に生きてやる」

「そう、良い子ね」


イギリス清教『必要悪の教会』所属の魔術師、ステイル・マグヌスの猟犬部隊入りが決定した。
444 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/07(金) 01:40:27.18 ID:VxHlBnY0
キテター
445 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:41:06.43 ID:QXt/Z5Y0

(ここまでやれば十分か)

(……いや、どうせなら完璧に心を折っておこう)

(おもしれー事思いついたし)


「じゃあ、最初に頼みたい事があるのだけれど?」

「いきなりかい」

「そうよ、言わば入社試験ね」

「何をすればいいんだ?」

「簡単よ。――あなたの元同僚を殺すお手伝いをしてほしいの」


ステイルは、言われた言葉の意味が本気で分からなかった。


「まさか、僕に神裂を殺せと!?」

「あの女、神裂っていうの。……別に直接手を下す必要はねーよ。そのお手伝い」

「そんな事出来……」

「言っておくがな、」


抗弁するステイルを、テレスティーナは一言で抑えつける。
446 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:41:57.25 ID:QXt/Z5Y0

「もし逆らうなら、今ここであのガキの頭を吹き飛ばす」

「な!?」

「考える時間は3秒。その間にハイと言いな。さもなきゃガキの脳みそとご対面ね」


楽しげに追い詰めるテレスティーナは、わざわざ猶予など与えない。


「3、2」

「待て、言う通りにする!」


結果ステイルは、そう言うしかなかった。



「良く聞け数多、面白い事になったぞ」

『んー?』

「ちょっとした余興なんだけど」


後は、地獄まで一直線。

その作戦を気に入った木原により、即座に事態は進展する事になった。
447 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:42:47.91 ID:QXt/Z5Y0

8月3日午前10時00分、『猟犬部隊』32番待機所


木原の手により聖人である神裂が葬られ、同時にステイルが猟犬部隊に入ってから2日後。

その日も、いつもと同じように研究が進められていた。

――彼らに1通の手紙が届けられるまでは。


「ようやくのお返事か」


仰々しい封筒を見た木原が、送ってきた相手の名を見て思わず笑う。

だが、その中身を一読すると一気に表情を変えた。


「……バチカンへの招待状、だと……」



世界の揺らぎは、さらに加速する。
448 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/07(金) 01:43:48.05 ID:QXt/Z5Y0

今日はここまでとなります

次回よりローマ正教編って感じでしょうか

今回はとにかくテレスティーナのキャラ作りにメチャクチャ苦労しました

凡人以上木原くン未満の思考力と、木原一族特有の残虐さ

それでいて木原くンとはまた異なる悪党ぶりが少しでも描写出来ていればいいのですが

では、おやすみなさい
449 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/07(金) 01:54:02.57 ID:q9jnDkko
乙です。
木原一族マジ外道。
450 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/07(金) 01:58:39.43 ID:NNufHGMo


木原くンみたいな清々しいまでの悪党とはまた違った、女特有のねちっこさみたいのがあるよね>テレス
451 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/07(金) 02:00:49.65 ID:przqQwDO
乙っした!
テレスさんはお上品モードと外道モードの切り替えが素敵ですよね★
いよいよローマと腹の探り合いか、教皇様の登場を地味に期待
452 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/07(金) 02:56:11.39 ID:/EPQ1VY0
そろそろ猟犬部隊は修道服を着た奇妙な集団になるな…
453 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/07(金) 07:50:40.88 ID:Cg/LmUDO
タイトルで食わず嫌いしなくてよかった
454 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/07(金) 08:28:24.16 ID:mS3RR.so
木原一族ぱねぇw
幻生はでないのかね
455 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/07(金) 11:06:48.71 ID:2MfMGpw0
乙だにゃー
っていうかテレスの木原くンに対する呼び方がひどすぎるwwwwww
ゴミ・カス・クズとか、どんだけ嫌ってるんだwwwwww
456 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/07(金) 18:19:40.62 ID:QhhfW.AO
猟犬部隊の前ではステイルもご覧の有り様か……

原作で一方通行にアトラクションにされたとは思えぬ活躍ぶりだな
457 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/07(金) 21:34:09.47 ID:xpLLsAco
猟犬たちが相変わらず素敵だ
458 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/08(土) 15:01:21.71 ID:G6s5x7I0
インデックス(ショチトル)「貴様がイギリス清教か」
インデックス(エツァリ)「落ち着きましょうよ」
インデックス(魔道書図書館)「気味の悪い光景なんだよ!」

ステイル「……」
459 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/08(土) 16:47:17.27 ID:bxkA6gAO
>>81ちょくちょく書き貯めてる浜面禁書で使おうと思ってたネタがwwwwwwwwwwww被ったwwwwwwwwwwwwwwwwww
460 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/08(土) 17:57:09.68 ID:pCmlbRc0
>>452
嫌なもん想像させんじゃねえよwwwwwwwwww
461 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/08(土) 18:20:52.27 ID:7436fRco
しかし武装が近代的になったアニェーゼ部隊とあんまり変わんない罠
462 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/08(土) 21:10:37.86 ID:A7bm8yQo
>>459
浜面なら使うよな。
もうなんでも使うってイメージがある。
463 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/09(日) 02:24:06.28 ID:d.Ik00s0
原作を見てない俺がアニメ2期13話を見てきたんだが
ステイルさん本当に強いのか疑問になってきた
464 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/09(日) 04:03:47.64 ID:EaUEsnIo
ルーンカードの枚数がそのまんま戦闘力みたいな人だからねぇ
465 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/09(日) 10:55:56.03 ID:0TIUPUAO
戦闘中にこけちゃうステイルさんじゅうよんさい
466 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/09(日) 15:10:22.35 ID:7P7mO5Uo
>>464
絶対天草式に研修にいったほうがいいよね
467 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/10(月) 00:34:59.62 ID:MsYUSFAF0
ステイルは猟犬部隊にルーンカードつけて、死んだら起爆する仕事をすればいいんだ!!

そうすれば足手まといには…
468 : ◆Q7pSHpMk.k [sage]:2011/01/11(火) 00:23:11.51 ID:sAaDdYBn0

こんばんはー、いつもレスありがとうございます

>>459
木原「おや」
木原「お前さ。この『製作速報』に最近参加したヤツだろ」
木原「ルールが分かってないようなら教えてやる」
木原「ここはssの集まりだ。かぶりなんてものはねえ」
木原「浜面禁書っつー面白そうなモノを書かないんならぶっ殺しちまっても構わねぇんだよ」

という訳で、書いて下さいお願いします


後、ステイルはここから大活躍するかもしれませんよ!


では、投下
469 : ◆Q7pSHpMk.k [sage]:2011/01/11(火) 00:24:38.14 ID:sAaDdYBn0

8月3日午前10時20分、『猟犬部隊』32番待機所


木原数多、テレスティーナ、そして木山春生。

『対魔術師用特別編成隊』の科学者3人は、ローマ正教からの手紙を前に打ち合わせをしていた。


「『……今回の話を切っ掛けに、両者の関係が深まる事を期待しております』……ねえ」

「ハッ、向こうの真っ黒な思惑が透けて見えるようだぜ、なあ木山ちゃん?」


テレスティーナと木原の言葉に対し、木山は憂鬱そうに返事をする。


「……それで、一体貴様はどうするつもりなのだ?」

「そりゃーこうして招かれた以上、謹んで招待を受けるつもりだが」


ローマ正教からの手紙には、2週間後にバチカンの聖ピエトロ大聖堂で会合を行いたい旨が記載されていた。

それもローマ教皇自らの名前で。
470 : ◆Q7pSHpMk.k [sage]:2011/01/11(火) 00:26:01.26 ID:sAaDdYBn0

「しかし、どう考えてもこの招待はおかしいだろう。『聖ピエトロ大聖堂』で会合を開くなんて聞いたことが無い」

「分かってるって木山ちゃん。そもそもあそこはローマ正教の本拠地で、一般見学用に解放されている場所以外は厳重に封鎖されているからな」

「きっと魔術的な仕掛けが、わんさか有るんだろーよ」


ま、詳しい事はあのガキに聞けば分かんだろ、と木原は余裕の表情を見せる。


「つまりこれは、こっちを誘い込んでんだ。魔術の共同研究を本気で提案したなら、当然こっちに来れるはずだ、とな」

「それが分かっているなら、尚更断るべきだ。これは今までと事情が違う」


こうして木山が焦るのには理由がある。

今まで木原達が魔術師に勝ってきたのは、学園都市が戦いの舞台だったからだ。

科学技術を容赦なく使えるホームだからこそ、こうまで圧倒できただけの事。

聖ピエトロ大聖堂はそうではない。

魔術サイドでも最高クラスの城塞であり、しかもバチカンという国自体がローマ正教の術式の支配下にある。

木原のような科学サイドの人間にとって、アウェイ以外の何物でもないのだ。


「……ダメダメだなぁ、木山ちゃん。ちっとばかし考えが浅いぜ?」


それなのに木原は、敵の本拠地へ行くと宣言した。
471 : ◆Q7pSHpMk.k [sage]:2011/01/11(火) 00:27:05.64 ID:sAaDdYBn0

「何を言っている!? こっちは何人も魔術師を倒しているんだ! 最悪の場合、バチカンで殺されてしまう!」

「んー。俺の心配かよ?」

「バカな! 貴様に死なれては、あの子達を助けられないだろう!」


そっちかよ、残念だなぁ。と木原はニヤリと笑う。

微塵もそんな感情を持っていないのに。

それが分かっているからこそ、木山は苛立ちを覚えるのだ。


「まあ少なくとも、今回の会談に限って言えば切り抜ける方法は有る。ここは堂々と敵情視察をさせてもらおうじゃねーか」

「切り抜ける方法……?」

「それよりも、問題はメンバーの選抜だよなぁ。どーすっかなー」


最早木山への関心を失ったのか、彼女に目もくれずに木原はブツブツと呟き始めた。

そして木山を置き去りにして、別の部屋へ歩き出す。

テレスティーナも研究所へと向かった。
472 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/11(火) 00:28:43.82 ID:sAaDdYBn0

32番待機所には、別室として広い戦闘訓練所がある。

現在そこで戦闘訓練を行っているのは、猟犬部隊の正規メンバーではなく――。


「何の用だ、科学者!」

「おいおい落ち着けよ。そうやって殺意ビンビンにするのは、ガキのガキのクソガキって証拠だぜ?」

「――そうだろステイル?」


元イギリス清教『必要悪の教会』所属の魔術師、ステイル・マグヌスだった。


「……一刻も早く消えてくれ」

「そう嫌うなよ、傷ついちゃうだろーが」

「ふざけるな!」


ステイルが『猟犬部隊』入りしたその日。

インデックスの姿が偽物である事を知った彼は、激怒して木原に掴みかかった。

だがルーンの準備すらしていない彼が、天才的な格闘センスを持つ木原に勝てるはずもなく。

そのまま手酷くボコボコにされてしまった。

正に犬の調教と同じく上下関係を叩きこまれた彼は、インデックスを人質にされている事もあり比較的素直に従っている。
473 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/11(火) 00:29:47.99 ID:sAaDdYBn0

「黙れよ駄犬。俺が来たのは、単純にテメェの調子が気になったからだ」

「……悪くは無い。後は反復して慣れるだけだ」

「そうそう。駄犬が処分されない為にはそうやって這い蹲ってりゃイイ」


木原がステイルに行った事は、それだけに留まらなかった。

ルーン魔術はその性質上事前の準備が不可欠である。

通常は霊装を準備したりルーン文字を刻む所を、ステイルはカードをばら撒く事で高速化を成し遂げた……が。

木原はさらなる策を彼に与えた。


――「カードってのはあらかじめ大量にストックできる反面、剥がされやすいという欠陥も持つ」

――「……それがどうした?」

――「カードよりも速く設置可能、それでいて容易に無効化されない方法がある」


現在彼は、その新しい方法を実践中なのだ。
474 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/11(火) 00:30:41.93 ID:sAaDdYBn0

ソレを片手で握りしめながら、ステイルは悔しそうにこう吐き捨てた。


「全く、上手く考えたものだ。この方法なら確かに準備は早いし、ルーンを剥がすことも不可能」

「魔術師には、この発想は厳しかったかよ?」

「ああ。だがそれ以上に厄介なのは、コレだと僕はお前に反抗する術を奪われているって事さ」

「ギャハハハ、何せ好き勝手扱えるカードと違うからな。その程度の首輪で文句言うんじゃねーよ」


ステイルの戦力強化と同時に、彼の反抗を抑え込む2重の策。

全てが目論見通りに言った事で、木原は満足そうにクツクツと喉を鳴らした。


「よし、訓練は一旦止めて中央の会議室へ行け。ローマ正教から招待状が来た」

「!」

「迅速にな」


そのまま返事を聞かず、木原はさらに別の部屋へと向かった。
475 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/11(火) 00:31:57.31 ID:sAaDdYBn0

32番待機所のトレーニングルームでは、マイク達猟犬部隊がエツァリと一緒に体を鍛えている。

日常的にデニスの姿でいるよう指示されたエツァリが、ウェイトトレーニングを終えてショチトルから飲み物を受け取った。


「ありがとうございます、ショチトル」

「礼などいらん。……体は大丈夫なのか?」

「ええ、勿論。いつも気にかけてもらって申し訳ないですね」

「な、何を馬鹿な! 別に気になどしていない!」


顔を赤くして否定するショチトルだが、エツァリはその意味が分からず首を傾げるだけ。

それを傍から見ていたナンシーが、やってられないと言わんばかりに顔を背けた。


「……」

「ちょっとナンシー、何を羨ましそーに見てた訳?」

「アホな事を言うと殺すわよヴェーラ」

「……下らねぇ」


女性2人の会話を聞いて、マイクがポツリと言葉を落とす。


(魔術師が加入したことで、微妙に猟犬部隊の雰囲気が変わったかもしれないわね)


ヴェーラはふとそう思った。

それが良いか悪いかは別として、こんな空気もアリかも、と。

尤もそう感じられたのも、あの男が来るまでだが。


「全員、会議室へ行け。今後の打ち合わせだ」

「「「「「了解」」」」」


木原の指示を受けた彼らは、飛び起きるようにバタバタと会議室へ向かった。

悲しい事に、彼らはどこまでいってもクズの猟犬でしかない。
476 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/11(火) 00:33:33.84 ID:sAaDdYBn0

その後木原が向かったのは、地下研究所だ。


「あ、あまた!」

「……走ると転ぶぞ。テレス、進捗の報告を」


そこにいるのは数人の研究者と、責任者のテレスティーナ。そしてインデックスだ。


「『歩く教会』はまだまだね。一度試作が出来たけど、本物のスペックデータの1/100が限界だったし」

「……そうか。理由は?」


そこに口を挟んだのはインデックスだ。


「多分、魔力の循環が上手く行ってないんだよ。もうすこし十字教の概念を理解してほしいかも」

「ならモルモット、死ぬ気で理解しろ」

「クソが、死ね。こちとら常識を粉々にされてんだぞ」

「知った事か。出来なきゃ殺す、そう言ったぜ」

「……チ、もう少し時間を寄こせ。後、別の楽しいオモチャならマシなのが完成してる」

「オモチャ?」


テレスティーナがそう言って取り出したのは、大きなスピーカーだった。
477 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/11(火) 00:34:35.80 ID:sAaDdYBn0

「私が以前作った『キャパシティダウン』を改造した、『対魔術師用キャパシティダウン』ってとこね」

「効果は?」

「実験データが絶対的に不足してるけど、十字教を根幹とする魔術師相手なら5分程度の無力化が見込めるわ」

「このガキの 『魔滅の声(シェオールフィア) 』を音声データにして、その対象を広く浅く設定したのよ」


テレスティーナの説明を聞いた木原は、しばらく考え込むとやがて頷いてこう述べた。


「面白いな。いずれ実践に投入してデータを取ってやるよ」

「……当てがあんのか?」

「まーな。それよりさっきの件で会議だ。全員会議室へ戻れ」

「あまたあまた、私はお腹がすいた」

「……うぜぇ」


しがみ付くインデックスに一瞥をくれないまま、木原は廊下にスタスタと出て行った。
478 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/11(火) 00:36:33.18 ID:sAaDdYBn0

そして、木原が最後に向かったのは。

彼以外入室を許されない、待機所のVIPルームだ。

6台ものコンピュータに占領されているので狭く感じるが、木原はそれを苦に思っていない。

彼が素早くキーボードを叩くと、やがて通信専用のモニターが光り、1人の男が恐縮したように応答した。


「……な、何の用だ……?」

「あァ? 寝ぼけてんのか?」

「ヒッ、ち、違う!」

「そりゃ良かった。んじゃあさっさとそっちのほーこくしてくれよ、天井ちゃん?」


彼の名は、天井亜雄(あまいあお)。こう見えて優秀な科学者だ。

特にクローン技術に関しては、木原数多の数段上を行くと言っても過言ではない。


「……あの素体の複製は問題ない。ただ……」


臆病な研究者の煮え切らない態度にイライラした木原が、ガン!と机を蹴り上げる。

その音に怯えた天井が、慌てたようにペラペラと喋り出した。
479 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/11(火) 00:37:52.82 ID:sAaDdYBn0

「の、残る問題は各個体の統率だ!」

「兵士として見た場合、統一された意思を持たせる方が便利だろう!?」

「その方法と、いざという時に反抗を抑えるストッパーが、考えつかない!」

「なるほど。そりゃーテメェじゃ無理だわな」

「? 何か妙案が?」

「当然」


(あのガキに聞いた通りなら、聖人のアレを使って個体の管理が出来るだろーよ)

(ま、物は試しだな)


木原の『妙案』が分からずに混乱する天井の後ろでは。

先の戦いで死んだ聖人と同じ外見をした人間が、およそ数十人ほど特殊な容器の中でプカプカと浮いていた。

そう、誰よりも争いを拒んだ聖人。

――神裂火織が、目を開けることなく――。
480 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/11(火) 00:38:29.24 ID:sAaDdYBn0

今日は以上で打ち止めです

とりあえずローマ正教と対面する前に、学園都市側の現状を一部描写してみました

そろそろ物語が新たな展開を迎えるかもしれません

では、おやすみなさい
481 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 00:51:57.82 ID:LIh67NTB0
神裂のクローンとかwktkがとまらないぜ
482 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 01:05:18.75 ID:ZNXTmcogo
この先の展開が待ち遠しいです、と火織は思わず心中を吐露します。
483 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 01:06:03.47 ID:28Ex/Zzto
その口調は固定なのね
484 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 01:09:40.65 ID:XfKZ/p5/0
>>1 乙なんだよ!
485 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 01:16:57.51 ID:HTLMhytM0


やっぱり能力者と違い身体的特徴ってのが聖人だからクローンのスペックはオリジナルと一緒になんのかな?とりあえず期待
486 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 01:26:10.28 ID:AaAy0DYAO
>>468

>>459だけどここで歩く協会が被ったお陰で新しい案が出た。ありがとう。

乙ー。本当に先が予想出来ない
487 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/11(火) 12:15:59.94 ID:87bAoH2M0
いつも乙
ステイルが原作よりも強化されつつあるにゃー
ねーちんのこともあるし、続きを所望するぜよ
488 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 12:53:18.13 ID:E7iGzO7AO


ちっとも木原くンの考えが読めない……悔しいビクンビクン

後以外にもテレスが有能で驚いた
489 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 14:21:46.34 ID:JPv5KhQAO
一人貰って良いっスか
490 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 15:44:13.73 ID:Wwr2sK8ho
何だこの暗い世界
餓鬼がドンパチやってるより大人が頭使ってる方が楽しすぎる
491 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/12(水) 08:51:56.76 ID:4Mhrvd4DO

ロリねーちん……

かおり「かおり……八才です」

492 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/12(水) 12:07:55.39 ID:CsmsdRZ40
木原くン、本気で聖人クローンをやりやがった……!
この先ますます目が離せないな
493 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/12(水) 15:41:31.12 ID:el6dsvQAO
かおりが増えるよ…やったね木原ちゃん!
494 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/13(木) 22:01:01.06 ID:bH1SfapA0

こんばんはー。今日の深夜に投下する予定ですが、板の移設に伴い当スレもスレッドムーバーを利用して移転したいと思っています

すべてが順調に移行した後で、またお会いできれば幸いです

では、また



SS・小説スレは本日、移民大会議を行います。(板が新しくなります)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1279375638/

495 :真・スレッドムーバー :移転
この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
496 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/13(木) 22:19:02.34 ID:RRo3hD+A0
移動完了……なんですかね?

とりあえず新天地ですがよろしくお願いします

それではまた後ほど
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 22:19:46.11 ID:O3eEL8iro
引越しお疲れ様です
498 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/14(金) 02:17:20.63 ID:NGP7zlcV0

こんばんはー、こんな時間になってしまいました

スレの引っ越しやら何やらがあったせいか投下量が少ないのですが、ご容赦ください

では、投下


8月14日午後6時00分、学園都市統括理事会


――『大方の準備は整いましたな』

――『ローマ正教との会合、か。俺ァそーいうの想像するだけで蕁麻疹が出る』

――『向こうは世界の裏を支配する十字教最大宗派じゃ。あの異端児、今度こそくたばるかもしれんのう』

――『そうならないように、わたくし達は彼の申請通り“この”用意をしてきたのですよ?』

――『……面倒はキライ……』

――『その通りだ。だがこのチャンスを生かせば、我々はさらに躍進できる』

――『躍進は大いに結構だけどよ、今回の交渉、学園都市の全権を木原数多に委任して本当に大丈夫なんだろーな?』

――『仕方あるまい。彼が最も適した人材だと『樹形図の設計者』が判断したのだから』

――『うむ。魔術師とやらに勝利した実績を鑑みれば、認めざるをえまい。無論、結果次第ではあの異端児を適正に“処分”する事になろう』

――『ええ、わたくし達はすでに準備をしてあげたのですから、後は彼が良い結果を持ち帰るのを待てばいいだけです』

――『……じゃあ、話はオシマイ。木原数多に、ローマ正教との交渉における全権を委任する。……いい?』

――『異議なし』

――『異議なし』

――『異議なし』

――『異議なし』

――『異議なし』

――『ここに統括理事会の合議が成立しました。木原数多にはわたくしから通達しておきましょう』
499 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/14(金) 02:18:15.65 ID:NGP7zlcV0

同時刻、『才人工房(クローンドリー)』


学園都市に古くから存在する、1つの研究所。

只の都市伝説でしかないはずの、馬鹿げた施設。


――「世界中の偉人・聖人のDNAを保管し、その解析の結果、ボタン一つでいくらでも天才を製造できる『才人工房』がある」


この研究所に正式な名前は存在しない。

その代わり。

学園都市に無数にある研究所の中で、唯一都市伝説通りの名を冠することが許されている。

そんな真っ黒で狂った場所に、木原は満面の笑みで立っていた。


「成功したか!」

「あ、ああ……。これで管理は可能なはず……」


それに対し引きつった顔で返答したのは、クローン技術研究者の天井だ。
500 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/14(金) 02:19:16.50 ID:NGP7zlcV0

彼らの視線の先では、大きな培養器が1つ稼働している。

その中にいるのは、外見年齢10歳前後の美しい少女。

ピクリとも動かない彼女の様子を見て、木原は満足そうにこう述べた。


「うし。こいつはさしずめ……『管理個体(ベーシック)』ってトコだな。“退院”までどれぐらい掛かる?」

「……こ、これにも『学習装置』による各種データの入力は終えているが……万が一に備えて、2,3日は時間をもらいたい」

「そーすっと、バチカンから帰ってきた頃にご対面か」


天井が慎重になるのも無理はなかった。

何故ならこの幼い少女は、成人男性を遥かに凌ぐ運動能力を保持しているのだから。


(天井がビビるのも無理はねぇ。なんせこのガキだけは、オリジナルの完全なコピーだしな)

(……その慎重さが、仇にならなきゃいいんだが)
501 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/14(金) 02:20:08.44 ID:NGP7zlcV0

少しの懸念を感じながら、木原が辺りを見回す。

そこでは『管理個体』以外にも、およそ50人ほどの神裂火織のクローンが培養器で眠っていた。

幼い『管理個体』と違って、その見た目は18歳前後――神裂本人とほぼ同じに見える。

ただし彼女達は、全員が敢えて遺伝子を調整された“劣化コピー”だ。

保有する身体能力も、オリジナルの15%程度でしかない。

もちろん、木原がそう指示したのには理由がある。

クローンを完全な支配下に置く為だ。


神裂の遺体を手に入れた直後。

インデックスから聖人の事を詳細に聞き出した彼は、クローンを統率する1つのアイディアを思いついた。

『聖人』があれほどの強さを持つのは、偶像の理論により、神の力をその身に宿すことができるから。

より詳しく言えば、『聖痕(スティグマ)』を解放することで上位の力を宿すのだ。
502 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/14(金) 02:21:13.50 ID:NGP7zlcV0

(ポイントは、偶像の理論にある)

(姿や役割が似ているもの同士はお互いに“影響”しあい、性質・状態・能力などとしても似てくると言う魔術理論)

(つまり『聖痕』は、一種の感応器官として働いているって事だ)


そこまで思い至った木原は、即座に『樹形図の設計者』への交信許可を取った。

幾つかの魔道書のデータを参考に、1つのシュミレートを実行したのだ。

すなわち、『聖痕』同士の共鳴実験。

オリジナルの『聖痕』を基礎データとして設定し、それに対しどれだけ劣化すれば支配関係を築けるか。

何日もかけて、彼と天井はそのパターンを解析することに成功した。


(まあ、伊能忠敬の『大日本沿海與地全図』が、そのお手本になるとは予想外だったがな)


偶像の理論を利用することで、オリジナルに逆らえないクローンが手に入る。

後は幼い基礎(ベーシック)を支配すれば、必然的に全てのクローンが木原の意のままだ。
503 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/14(金) 02:22:16.51 ID:NGP7zlcV0

ただし、偶像の理論だけでは確実性に欠ける。

強制力はともかくとして、クローン同士の正確な意思疎通には限界があった。

そこで木原は、『学習装置』による脳波コントロールも活用する。

遺伝子レベルで刻まれた『聖痕』を、脳を弄ることで感じ取りやすくしたのだ。

魔術と科学のデータを併せ持つ『樹形図の設計者』は、その有り得ない方法を実現させた。

その成果を噛み締めて、木原は再度周りを見回す。


(ずいぶんと苦労したが、それに見合うだけのモノは手に入れた……)

(オリジナルの15%とはいえ、常人を超える戦闘能力を持つ兵士)

(それも、反抗不可能かつ高度な連携を誇る完璧な兵士!)

(遺伝子レベルでの特殊な処理が必要な為、生産コストが掛かるのが欠点だが……)

(完成すれば、俺の計画は大きく前進する!)


その時、木原の携帯から無機質なコール音が鳴り響いた。

思わず舌打ちをしながら、会話に応じる。
504 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/14(金) 02:23:12.11 ID:NGP7zlcV0

「何だ?」

『申し訳ありません。バチカンでの会合に備えた、打ち合わせの時間です』


聞こえてきたのは、部下であるマイクの声だ。


「あー、すぐ行くわ。選抜メンバーは集合させておけ」

『了解』


パチン、と携帯を折りたたみ、木原は名残惜しそうに退室を始めた。


「じゃあ調整は任せた。しくじるなよ?」

「も、もちろんだとも……」


天井の弱気な声を背に浴びて、『才人工房』を後にする。


(お楽しみは後回し。まずはバチカン、ローマ正教と楽しい会合(せんそう)を始めよう)

(さーて、少しは俺を興奮させてくれよな)

(こっちはすでに、準備万端なんだからよ)


後にローマ正教が『屈辱の一日』と呼ぶ事になる会談まで、残り3日。
505 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/14(金) 02:23:43.97 ID:NGP7zlcV0

今日はここまでになります

最近投下速度が遅い事、申し訳ありません

まだまだ続けていきますので、これからも何とぞお願いします

では、おやすみなさい
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 02:24:46.40 ID:MfBirZflo
ロリねーちん……ゴクリ
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 02:27:45.04 ID:oyM/ZbY4o
乙なんだよ!

ロリでもやっぱりふけ・・・ゲフンゲフン
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 05:00:56.42 ID:7sZZRDVio
かんざきさんじゅっさい前後
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 07:03:19.75 ID:YI93eewAO
ロリカオリたんちゅっちゅしたいな
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/14(金) 09:10:11.25 ID:tJO4mlrv0
変わらぬ面白さに盛大な乙!
偶像の理論を応用した、魔術版のネットワークを構築するとはさすが木原くン


ところでロリっ娘ねーちんを僕にくれませんか?
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 12:35:00.69 ID:4MOeWbgAO
ダメだ、ロリねーちんが可愛いって事しか分からない
地図って何の話だ
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 12:40:41.21 ID:n0Pj1EQ1o
>>511
原作7巻の天草式が用いる”渦”の解説の所あたり読めば分かるんじゃなかろうか
読み返しもせず適当に言ってるけど
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 01:01:49.65 ID:ZaVXFUH90
神が包茎だったら聖人だらけになるな
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 12:32:11.75 ID:4T2Cj74DO
ユダヤ人はカツレイするんだよ!
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 12:55:39.38 ID:HNfxeEuWo
あれは聖人の大量発生を防いでいたのか、ユダヤすげえ。
516 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/16(日) 02:47:44.06 ID:bAyVkt5N0

こんばんはー、夜更かしは子供の特権!ということでこんな時間ですが投下します

ロリねーちんの出番はしばらくお待ちください

では、投下


8月17日午後1時50分、バチカン『聖ピエトロ大聖堂』へ向かう車中


ローマ正教との会談当日。

イタリアへ到着した木原達は、ローマ正教の準備した車で早速大聖堂へ移動していた。

すでに完全な敵地となった異国の地で、木原以外の選抜メンバーは緊張した様子を隠せない。


「おいおい、今からそんなんでどーすんだ?」


楽しそうにそう尋ねる木原に対し。


「……申し訳ありません」

「すぐに落ち着きます」

「お前は、この重大さが分かっていないから……!」

「あ。あまたあまた、向こうの魔術結界の中に入ったかも」


マイクとヴェーラ、ステイル、そしてインデックスがそれぞれこう答えた。
517 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/16(日) 02:51:15.31 ID:bAyVkt5N0

ちなみに今回木原に同行しているのは、彼ら4名だけだ。

他にも、別働隊としてエツァリとMAR3名が近くで待機している。

だが木原は、そちらの必要性をさほど感じていなかった。


(統括理事会への申請は無事通ったし、計画通りに事を運ぶぐらいはやらなきゃなぁ)


悠然と構える木原を横目で見たマイクが、その見た目に違和感を感じて目を細める。

現在木原は特殊メイクで派手な刺青を隠し、さらに髪も黒く染め直してあるのだ。

高級そうなスーツを着ている事もあってか、外見はどこにでもいそうな一般人そのものと言えるかもしれない。

――その禍々しい空気を纏っていなければ、だが。


(……そろそろか)


車は遅滞なく目的地まで進み、バチカンは1人の怪物をその腹へ飲み込む事になる。
518 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/16(日) 02:52:34.20 ID:bAyVkt5N0

8月17日午後2時00分、バチカン『聖ピエトロ大聖堂』


それから10分ほどして、車は無事に大聖堂へ到着。

学園都市から来た客人5名は、とある立ち入り禁止の部屋へと案内された。


「遠い日本からようこそ、私はあなた方を歓迎します」

「心温まるお言葉、本当にありがとうございます。今日この日が、私達にとって実り多いものとなりますように」


ローマ教皇マタイ・リースのあいさつに、木原は流暢にイタリア語で応じてみせる。

傍に控えていた教皇の通訳が、驚きで一瞬固まった。


「……見事な発音ですな。実に大したものです」

「それほどでもありません」


そう、この程度大したことは無い。

そもそも言語の習得は、単語の記憶と会話の反復で有る程度簡単に行える。

日常会話を行えるレベルなら、とうの昔に学びきっていた。

他にも幾つかの言語を話せるが、彼としては片手間で終えてしまった雑事でしかない。

文法パターンを理解することで、複数の言語を同時に習得してしまえば尚の事。
519 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/16(日) 02:53:20.29 ID:bAyVkt5N0

木原はそう思いながら、辺りを油断なく見まわす。


(……予想外の展開に対し、欠片も動じないヤツが1人。要注意だな)


そのごく僅かな警戒を感じ取ったのか、その“要注意人物”が刹那の間微笑んだ。


「ふむ、彼が気になるのですか?」


遅れて反応したローマ教皇が、木原に対し気遣うように説明をする。


「彼は私の書記官です。同席しても?」

「……もちろんです。ぶしつけな真似申し訳ありません」


一旦は視線を外すものの、木原はローマ教皇の言葉を信じなかった。


(は、書記官にしては随分と派手な格好をしやがる)

(――よりにもよって真っ赤なスーツとは、な)
520 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/16(日) 02:54:18.07 ID:bAyVkt5N0

件の“要注意人物”である書記官――『右方のフィアンマ』は、自分を警戒した木原を心の中で褒め称えた。


(この俺様に注意を向けるとは、ローマ正教へ喧嘩を売ってきただけの事はある)

(保護呪文を掛けてある以上、服装だけで俺様に反応する事は出来ない)

(このわずかな時間の行動だけで、警戒に値するとみなされたって訳だ)

(面白いな)


『神の右席』のリーダーである彼がここにいるのは、自分の目で敵を見定める為。

そしてその判断は、どうやら間違っていなかったらしい。


((さて、ようやく楽しくなってきたな))


立場が違うのに、どこか似通った2人の邂逅。

その始まりは、これからの激動を微塵も感じさせないほど静かだった。
521 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/16(日) 02:55:31.23 ID:bAyVkt5N0

それから1時間。

スタートこそ平和だった会合も、徐々に険悪なムードが漂っている。

その理由は、木原が持ちかけた『魔術』の共同研究の大前提。

禁書目録の知識及び学園都市の技術を提供する代わりに、ローマ正教の持つ魔術を全て明かす事。

ローマ教皇の想像を超えて、木原はそれを徹底させようとした。


「何度でも言いましょう。このバチカンに掛けられた魔術全てを教える事など、到底承服出来ぬ」

「しかも、我々が所有する霊装全てを一旦そちらに明け渡すなど、無理な話」


ローマ教皇の言葉にも、苛立ちが見て取れる。


「実に残念です。こちらとしては、誠意を見せたつもりなのですが」

「……このあまりにも一方的な提案で、かね?」

「それが力の差故だと、御理解されていないので?」


言葉こそ丁寧だが、木原の発言から今まで隠していた傲慢さが顔を見せ始めた。
522 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/16(日) 02:56:13.40 ID:bAyVkt5N0

「その発言は、十字教軽視と判断してもよろしいのですかな?」

「いいえ、純然たる事実ですよ。宗教と科学、どちらが世界を支配しているかご存じないとでも?」

「……確かに、表だって世界を動かしているのは科学サイドであるというのは認めよう」

「ふむ」

「だが、これまで世界の裏を治めてきた魔術サイドを舐めないで貰いたい」


室内の雰囲気が激変した。

嫌でも頭を下げさせるような、圧倒的な凄味が辺りに満ちる。

魔術師であるステイルなど、歯を食いしばらなければその場で跪きそうなほどだ。

そんな中にあって、木原は。


「――笑わせるなぁ、オイ」


ポツリと。

ぞんざいな日本語でそう言いながら、作戦を次の段階へ移行させた。
523 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/16(日) 02:57:13.70 ID:bAyVkt5N0

「分かりました、この話は一旦おしまいにしましょう」

「……」


突然木原が1歩引く姿勢を見せたので、ローマ教皇は無言で警戒する。

だが、続く木原の発言は彼にとって予想外なものだった。


「それよりも、私の“ある仮説”を聞いてもらえませんか?」

「と、言いますと?」

「魔術と超能力、その深い関係についての仮説ですよ」


そう言いながら木原が取りだしたのは、世界で最も多く存在する本――聖書だ。


「魔術というモノは、『才能の無い人間がそれでも才能ある人間と対等になる為に生まれた技術』だそうですね」

「……それがどうかしたのですかな?」

「ご存じのとおり、そちらでいう才能――『超能力』を生み出したのは私達学園都市です」

「ですが、『超能力』が世間に公表できるほどの完成を見たのはわずか20年ほど前」

「対し『魔術』の歴史は極めて古い」

「となれば、人々が『魔術』を生み出した理由――最初の『超能力』とは何だと思います?」
524 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/16(日) 02:58:02.23 ID:bAyVkt5N0

木原が何を目的としてこんな話をしているのか、ローマ教皇は分からなかった。

だから彼は、ゆっくりとこう尋ねる。


「……何を仰りたいのですかな?」


質問された木原は、これまでと全く変わらぬ表情でこう言った。


「厳密な意味で最初の超能力者とは言えないでしょうが、世界で最も影響を与えた超能力者に心当たりがあります」

「彼が行った最初の奇跡は、水を葡萄酒へ変える事」

「!」

「一定の事象を観測し、『自分だけの現実』をもって歪んだ現実へと置き換えた」

「貴様……!」

「正に超能力のお手本です。彼の弟子達は、その強すぎるチカラに憧れて魔術を追い求めた」




「――そう。他ならぬ、イエスキリストですよ」

525 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/16(日) 02:58:51.99 ID:bAyVkt5N0

木原の予測した通り、この言葉の効果は劇的だった。


「貴様……言うに事欠いて、神の御子を愚弄するか!」


十字教の根幹を否定したも同然の発言に、ローマ教皇は激怒する。

だが、そもそもそれが木原の目的だった。

イエスが超能力者かどうかなど、彼にとってはどうでもいい。

重要なのは――。


「まさか。私が嘲笑するとすれば、それは十字教そのものですよ」

「な……」


これでローマ正教を、表舞台へ引きずりだせるという1点のみだ。


「あなた方は、どうして魔術が歴史の陰に消え去るかのようにコソコソとしているか、全くお分かりでないようだ」

「神への信仰は、魔術を強化すると同時に限定させた」

「呆れるしかない。その力の源を、ただ『神』と呼んで触れようともしなかったのだから」
526 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/16(日) 02:59:52.75 ID:bAyVkt5N0

これまで木原が魔術を研究してきて、気付いた事がある。

魔術を知れば知るほど、十字教は“邪魔”になっているという事だ。

確かに、その成立において大いに役立ったのは事実だろう。

だが。


(すでに、十字教の時代は終わっている)

(未だにみっともなくしがみ付くテメェらが、どうにも鬱陶しくてしょうがねーんだ)

(こうして自分の目で見て、確信したぜ)


それはすでに、木原にとって無用の産物でしかない。

例え20億の信徒を抱えていようが。

例え2000年の時を経ていようが。

木原にとって、価値は無いのだ。


「下らねェ。既にこっちの目的は達成したし、そろそろ帰るとするか」


今までの丁寧なイタリア語から一変、日本語で部下に指示を出す。

特殊メイクも引き剥がし、整えていた髪を掻き毟る。
527 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/16(日) 03:01:34.56 ID:bAyVkt5N0

あまりに暴力的な変化を目の当たりにして、それでもローマ教皇は冷静にこう告げた。


「止まってもらおうか。貴様をこのまま放置しておけば、いずれ大きな災厄となるだろう」

「……で?」

「貴様の身柄を拘束し、学園都市統括理事会との交渉材料にする。私は争いを望まない」

「優しさで涙が出そうだな。けどよぉ、具体的にどうやって俺を留める気だ?」

「ここがどこだか、理解が追い付いていないようだな。ここは学園都市ではない。聖ピエトロ大聖堂だぞ」


気がつけば、辺りを40人ほどの魔術師が囲んでいる。

絶対に木原達5人を逃がさんとして。


「あーあ、これは困った」


その時。

武器すら持っていない木原の口元が歪んだ事に、フィアンマ以外は気付かなかった。
528 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/16(日) 03:02:23.39 ID:bAyVkt5N0

今日はここで終了となります

ローマ正教編はまだまだ続きます

アニメ禁書目録Uのイタリア編、映像で見ると映えますね

個人的には動くビアージオが楽しみです

では、おやすみなさい
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/16(日) 03:09:16.27 ID:sQ1FryWAO
いいねいいね〜
おつかりぃ
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 09:43:59.30 ID:ytADcyXAO
やっとおいついたぜ

木原の原作レイプが爽快だな、学生がいないのもいい

つまり俺のツボだ!
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 10:38:14.97 ID:Y4UjdE+30
上条はもう、要らない
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 10:40:27.41 ID:4T5+LAKRo
お前みたいのが要らない
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/16(日) 10:54:17.00 ID:NU/uIFh80
原作じゃあ「キリスト」という名前は出さず「神の子」と呼んでなかたっけ?
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 10:58:47.03 ID:ytADcyXAO
>>533
キリスト教、キリストのワードは宗教的にアウト
ほかにも微妙に変えてあるはず
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 12:08:28.25 ID:rwf5ij5eo
宗教踏みすぎてこりゃアニメ化はムリダナーと思ってたが、一応ぼかしてあったのか
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 14:53:32.90 ID:dal9GgLSO
キリストの12使徒の名前は出てるけどイエス・キリストは「神の子」で表記されてるな。

あと天草式の誰かの台詞に「隠れキリシタン」という表記があった
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 15:09:52.65 ID:qJ2kCPXao
マホメットな人たちが出てこないのはやっぱりアレだからかねぇww
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 16:48:02.41 ID:GhEo+djAO
親しい友人と宗教絡みで絶縁した俺には辛い話題
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 16:59:04.04 ID:hLWISngAO
フィアンマ以外の神の右席はこの場にいないのか

色々とこの先を予想出来て楽しいな
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 17:58:48.85 ID:UnDVGkuAO
日本の神道が出てこないのもうわなにs
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 18:03:58.17 ID:z689KKuqo
>>540
闇咲「…」
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 18:35:16.59 ID:ApIyG/AGo
神崎さんじゅっさい18万
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 18:40:38.98 ID:wCOJAdNdo
1
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 23:23:33.30 ID:aAVFt/FH0
ロリねーちんの一般販売はまだですか?
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/17(月) 09:58:42.35 ID:9w/y/Xod0
敵地のど真ん中で大ピンチ……今こそステイルの出番だな!
いくんだイノケンティウス!
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/17(月) 15:09:54.05 ID:/MrV42pAO
ピンチと言うよりはこうなるように相手を焚きつけたって感じだな
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/17(月) 21:12:49.41 ID:NNXSCUX70
乙!
次回が楽しみです
548 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/18(火) 00:53:16.26 ID:E6SBzOo50

こんばんはー、いつもレスありがとうございます

>>533
すいません。「神の御子」だと話の流れ的に不自然だったので、名前を出させてもらいました

では、投下


8月17日午後3時10分、バチカン『聖ピエトロ大聖堂』


魔術師に囲まれたにもかかわらず、木原から余裕は消えない。

ローマ教皇がそれを怪しむよりも早く、傍に控えていた魔術師の1人が声を荒げた。


「よりにもよって、この大聖堂で無礼を働くとは……よもや許されると思ってはいないだろうな!」

「……配置魔術は解析できたか?」


しかし木原は、それを無視してインデックスに質問をする。


「ううん、ダメなんだよ。以前来た時と同じで、ここの防衛魔術は絶えず変化しているから……解析は無意味かも」

「予想通りか。これで完全に用は無くなったな」


スレが壊れたところ、直します。。@荒巻 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/operate/1161701941/
549 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/18(火) 00:56:12.36 ID:E6SBzOo50

かつてインデックスは、魔道書の原典を記憶する為にこの大聖堂の地下にある『大書庫』へ来た事がある。

その彼女を持ってしても、大聖堂を始めとするバチカンにかけられた魔術を解析する事は出来ない。

多種多様な魔術が複雑に絡み合い、かつ刻一刻と変化し続けている所為だ。

ローマ教皇ですら解除出来ない防衛魔術は、ハッキング不可能の強固な結界として機能している。


(まあ、これで簡単に解析出来たら拍子抜けもイイトコだしなぁ)


その時、恫喝を無視された魔術師が顔を赤くして木原に詰め寄った。


「いつまでも舐めた態度を……」

「なあ」


正面に立ち塞がった魔術師を見て、木原がようやく彼と会話をする。


「?」

「テメェさあ、自分が場違いだってまだ分からねーのかよ?」

「……?」


日本語が分からなかったのか、魔術師が混乱した表情になった。

その様子を観察した木原が、流暢なイタリア語でローマ正教の人間全員へこう問いかける。


「俺ぁ空港から直接ここへ来たからよぉ、満足にニュースも見てないんだわ」

「……なあ、この時間のトップニュースを教えてくれねーかな?」



スレが壊れたところ、直します。。@荒巻 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/operate/1161701941/
550 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/18(火) 00:57:00.28 ID:E6SBzOo50

木原の唐突な問いかけが、魔術師達の動きを止めた。

ローマ教皇も例外ではない。


(待て。この男は、何を言っている……?)


そう考えて間もなく、ローマ教皇は得体のしれない悪寒を感じた。


(ニュース……まさか!?)


そしてその悪寒は、紛れもなく正しかった事がすぐに証明される。


「教皇聖下、これをっ」


別の部屋にいた1人の魔術師が、慌てた様子でポータブルTVを持ってきたのだ。

そこには――。

スレが壊れたところ、直します。。@荒巻 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/operate/1161701941/
551 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/18(火) 00:58:02.45 ID:E6SBzOo50

『繰り返しお伝えします。本日、バチカン『聖ピエトロ大聖堂』にてとある歴史的な会談が実現されました』

『ローマ教皇聖下が、自ら学園都市の科学者を招待し、科学と宗教の歩み寄りを模索されたとの事です』

『今までの学園都市とバチカンの関係は、決して良好なものと言えませんでしが、これを切っ掛けに――』


木原に詰め寄った魔術師が、恐る恐るチャンネルを変える。

今度の映像は、大聖堂を生中継しながらの報道だった。


『情報によりますと、公式に招待を受けたのは学園都市の科学者「木原数多」氏を代表とする5名であり』

『現在もここ『聖ピエトロ大聖堂』にて会談中です』

『また、同氏は優れた科学者としても有名で――』


次のチャンネルも、その次も。

日本を始めとする他国のTV局までもが、こぞってこの会談を取り上げていた。


「どういう事だ!? 何故こちらの許可も無く、この事が報道されている!?」

「それも、ここまで大々的に注目されているとは……!」


歯ぎしりしながら喚く魔術師に、木原がわざとらしく驚いて見せる。


「おーおー、一体誰が情報を漏らしたんだ?」


スレが壊れたところ、直します。。@荒巻 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/operate/1161701941/
552 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/18(火) 00:58:55.05 ID:E6SBzOo50

全く信じられないよなァ、と言って。

慌てふためく魔術師を放置したまま、木原が大聖堂から出ようとした。

即座に何人かの魔術師が立ち塞がるが、彼はそれを一笑する。


「おやぁ? 世界中が注目している“お客様”を、手荒に扱う気かよ?」

「くっ」

「素人が。ここはすでにテメェらのホームじゃねぇ」


そう木原が断言すると、タイミング良く大勢の人々の歓声が届いた。

サンピエトロ広場に、一般大衆が集まっているのだ。


「言っておくが、俺の血液中には特殊なナノマシンが注入されている」

「意味が分かるか? 俺の肉体状況は、全て学園都市が把握してるんだ」

「俺を殺したり、操ろうとして魔術を掛けたら一瞬でそれが世界中に暴露されるってワケ」

「もしそうなれば、世論が沸騰する事間違いなしだぜ」

「……お優しいローマ教皇サマは、争いを望まないんだろう?」


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553 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/18(火) 00:59:32.50 ID:E6SBzOo50

ニヤニヤと笑う木原に、思わずローマ教皇が唸る。


「何と言う卑怯な……貴様がそこまで矮小な人間であったとはな」


だがそんな彼の侮蔑も、木原にとってはまるで意味を為さない。

むしろ最大限の賛辞を受けたかのように、ぎゃは、と噴き出した。


「そーんな悔しそうな顔すんなよ、楽しくなっちまうだろ?」


そう言いながら、そっとローマ教皇に近づいて。

歌うようにこう言った。




「なあ。世界の表を支配する科学サイドを、舐めんじゃねーぞ」





スレが壊れたところ、直します。。@荒巻 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/operate/1161701941/
554 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/18(火) 01:04:46.83 ID:E6SBzOo50

今になって、世界中の報道機関がこの会合を取り上げた理由。

もちろん言うまでも無く、木原の策略だ。

ローマ正教の招待を受けた彼が、統括理事会へ要請し、実行させたのである。


(ここは確かに敵地、学園都市じゃねえ)

(だったら話は簡単だ。敵の自由を奪う事で危険は回避できる)

(自由を奪うには、注目を集める事が手っ取り早い)

(俺の挑発に乗って、わざわざ招待状なんざ送りつけてきたのが失敗だったな)


ローマ正教の信徒は20億人と言われるが、その大多数は魔術を知らない。

しかも科学技術の恩恵に与っている。


(世界の“裏”を魔術は支配した。それはつまり、“表”には出てこれねーって意味だ)

(魔術の最大の欠点は、そこにある)


今ここで、公式に招いた科学者に万が一の事があれば。

どちらが悪者になるかは言うまでも無い。

報道機関の大多数は、学園都市のコントロール下にあるのだから。


(かなりの金をばらまく事になったが、これで4つの目的は達成できた)

(――チェックメイトだぜぇ、ローマ正教?)


一つ、ローマ正教の攻撃を防ぐ事

二つ、ローマ教皇の方から科学者を招待したと報道することで、世論における学園都市の立場を優位に持っていく事

三つ、科学と宗教の歩み寄りを報じて、『十字教徒』と『魔術師』が異なる存在だと心理的にアピールする事



そして四つ目は。
555 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/18(火) 01:05:38.23 ID:E6SBzOo50

一体、如何なる方法を使ったのか。

木原は一瞬で刺青を再び隠し、髪を整えた。


「さーて、全員帰るぞ」

「了解」


今度こそ。

木原は悠々と、大聖堂を出ていく。

そして、外へ1歩踏み出す直前になって。

手を出せないままのローマ教皇達に、木原は優雅に一礼して見せた。


「これからの私達の関係が、良好なものとなるようお祈り申し上げます」


そして扉を開けた瞬間。

木原達は、集まった群衆と報道陣にあっという間に囲まれた。

幾つかの質問に丁寧に答えながら、彼はバチカンを後にする。

大勢の記者を連れ立って歩くその姿は、まるで。

――凱旋そのもだった。
556 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/18(火) 01:07:03.11 ID:E6SBzOo50

同時刻、イギリス『ランベス宮』最大主教の部屋


TVから流れるニュースを、ローラ・スチュアートは楽しそうに眺めていた。

その目に映るのは、かつてシェリー越しに対峙したあの男と……禁書目録。


「随分とまあ、派手にやりけるのねー」

「“聖人”神裂を倒して、鼻息が荒くなるのは仕方無き事だけれど」

「肝心かなめの足元は、ちゃんと見えとろうかしら?」

「……すでにこちらは、いつでも貴様の首を刎ねられたると言うのに」


ローラから漏れた恐ろしい独り言は、誰の耳にも届かない。


(されど、こうまで注目を浴びたりし現状で事を起こすのは、愚の骨頂)

(しばし禁書目録を利用して、向こうの情報を得る方が得策かしらね)

(まあ、そう思わせる為にこの報道を準備したりしは、褒めてやるべき事なのよ)


それこそが、会談を報じた四つ目の目的。

この報道で、傍目にはローマ正教と学園都市はお互いに距離を近づけた事になる。

同じ“十字教”カテゴリーのイギリス清教が荒事を起こせば、先の理由でローマ正教が困るのだ。


(……あの男、優秀なのは疑い無き事なれど)

(魔術サイドの真の恐ろしさを、未だ知り得ぬようだし)

(いずれその身が亡びる瞬間、きっと後悔したるのだろうな)


この先木原に待ち受ける事を予感して、ローラがクスクスと笑みをこぼす。

『自動書記』の遠隔制御霊装を、右手で弄びながら。
557 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/18(火) 01:07:39.94 ID:E6SBzOo50

今日はこの辺りでおしまいです

次回は木山先生が主役の予定です

最近影が薄くて申し訳ない……

では、おやすみなさい
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/18(火) 01:13:20.40 ID:Rxbvz0oIO
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/18(火) 01:22:05.95 ID:G1gnHRzQ0
乙!
次の更新もお待ちしております
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/18(火) 01:58:17.80 ID:sJU30ph40
乙ううううううううう
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/18(火) 02:09:44.78 ID:8+8q3nZAO

初戦は木原くン大勝利か……
神の右席がどう反応するかな
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/18(火) 03:59:17.77 ID:/t9xcqWSO
乙なんだよ!
ここのローラ様は相変わらず黒いなー。
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/18(火) 07:09:49.73 ID:D+lDKXbAO

表の科学と裏の魔術って意味では原作よりしっかりしてていい
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/18(火) 10:36:11.26 ID:yM7NzwXNo
ローラは猟犬部隊の魔術師やクローンかんざきさんのことは知らないんかな
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/18(火) 10:50:12.76 ID:csE+0TuU0
>>564
派遣した魔術師の裏切りはともかく、クローンの存在は知らないんじゃないかな

>>1
色々歪んだ世界がこの先どうなるか、楽しみにしてます
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/18(火) 20:39:43.42 ID:JDc5FLA7o
腹黒ーラwwwwww
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/18(火) 20:40:05.86 ID:M3ZyRcFuo
さすがの最大主教、ローラさんは不気味な貫禄があるね。
けど、致命的な勘違いをしてんなー。
「“聖人”神裂を倒して、鼻息が荒くな」っている?
いやいや、木原がそんな真っ当な神経してるわけないじゃんww
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 10:08:46.35 ID:lEwmhTFa0
ロリねーちんのためなら、喜んで猟犬部隊に入ろう
それにしても、アレイスターがいないせいか木原の暴走が止まらないな
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 20:42:16.78 ID:DaFW7x8AO
カオリネットワークか
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 21:37:50.52 ID:i8LH3jBAO
ってカオリはカオリは上目づかいであなたを見つめてみる
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 23:52:23.04 ID:bZmhmgZOo
木原「寝ろ」
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 00:59:15.47 ID:0JZ66SVIO
木原くン、予想通りこれを一蹴…………ッ!!
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 02:04:20.60 ID:L9rh2yAVo
わかったよってカオリはカオリはあなたの布団にもぐりこんでみりたり
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 20:42:59.94 ID:b3gCCpju0
オイ誰だロリねーちんの真似してるのは




俺の血が足りなくなるだろ
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 20:45:39.45 ID:Tem5BJoIo
斬られたか
576 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 00:54:02.12 ID:RWdORxXl0

こんばんはー、レスありがとうございます

クローンの描写ですが、原作の妹達とはだいぶ異なります

それでも見逃して下さる方は、しばしお付き合いください

では、投下


8月18日午後1時00分、『才人工房(クローンドリー)』


バチカンから無傷で帰還した木原は、すぐにクローンの確認を始めた。

彼を出迎えたのは、『管理個体(ベーシック)』と呼ばれる10歳程度の少女。

調整を終えたばかりの彼女が、テトテトと駆けよってくる。


「初めまして、ますたー。私はべーしっくです」

「……『学習装置』による教育は終了しているんだよな?」

「はい。後は肉体の成熟に伴って発音などが改善される予定です」

「何で漢字は完璧なんだ。カタカナだけが妙な発音なのは、『学習装置』が悪い所為か?」


その言葉に、後ろに立っていた天井がコクコクと頷いた。
577 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 00:55:37.90 ID:RWdORxXl0

「バ、バグではない。スペック的な限界だった。なに、大した問題ではないだろう?」

「……ま、いいか。成体クローンは?」


その言葉に応じて、3人のクローンが音も無く姿を見せる。

七天七刀ほどの名刀ではないが、学園都市製の軽くて丈夫な日本刀を全員が所持していた。


「03号より報告。既定のプログラムの入力は、すでにクローン全員に行われました」

「16号の推察。管理個体の発音は、4か月と12日で完全に治ると思われます」

「29号より要請。現在生産されたクローン64体へ、この後の指示をお願いします」


完全に無表情且つ無感動。

かつて木原が殺した神裂とほとんど同じ外見にも関わらず、その態度はあまりにも異なっていた。


「おー、何か気持ち悪ぃなー」


そんなクローン達へ、感心したように嘲りの言葉をぶつける木原。

それでも眉一つ動かさないクローンを見て、今度こそ木原は満足そうに笑みを浮かべた。
578 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 00:56:53.99 ID:RWdORxXl0

そして近くにあったキーボードを高速で叩き、命じたとおりのデータが入力されている事をすばやく確認する。


「よし、管理権限もちゃんと設定されている……」

「と、当然だ。クローンの管理者は『猟犬部隊リーダー・木原数多』になっている」

「それに……万が一にも有り得ないが、もしも反抗されたら『管理個体』から強制コントロールが可能だ」


冷や汗を流しながら、天井が自分の完璧さをアピール。

そのまま、そそくさと研究所を後にしようとした。

最後まで黙って聞いていた木原は、ちらりと『管理個体』を横目で眺めて――。


「御苦労さまだな、天井ちゃん」

「……で、その右ポケットに入ってるブツはどーする気だ?」


天井の背中を思いっきり蹴飛ばした。
579 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 00:58:05.85 ID:RWdORxXl0

ガターン!!

派手な音を立てて転倒した天井が、ヒィィと怯えながら後ずさる。

幼い『管理個体』が驚き、その場でうずくまって涙目で震えた。


「な、な……」

「バレてねーと思ってたのか、クズ野郎」

「監視カメラには、何も映っていないはず……」


抗弁する天井に木原が近づき、今度は顔面を蹴り飛ばした。

グシャリ、と鼻が潰れて鮮血が噴き出る。


「こっちには、監視カメラ以外にもテメェの行動を見る方法が有るんだよマヌケ」

「……う、あ」


基本的に他人を信用していない木原は、自分の留守中に天井が裏切る可能性を考慮していた。

故に監視カメラとは違う“別の方法”で、天井の行動を逐一観察していたのだ。


「ま、大方クローンの生成データだろうな」

「ち、ちがう……」
580 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 00:59:00.48 ID:RWdORxXl0

碌に動けない天井のポケットから、データの入ったメモリーカードを取り出す。

そして木原は、勢い良くそれを踏み砕いた。


「雑魚に過ぎないテメェが、こんな事を計画するなんて驚いたぜぇ」

「……唆したのは誰だ?」


天井は答えない。

だが、その怯えた表情から木原は事実を読み取った。


「なるほど。つくづく救えねーな……俺の一族は」


驚愕する天井をしり目に、木原は苦々しさを含んだ声で首謀者を侮蔑する。


「そろそろこの俺が目触りになって、妨害をしてきやがったか。……これだから無能は面倒なんだよ」


木原の推測通り。

天井を抱き込んだのは、同じ木原一族の人間だった。

華々しい成果を上げる彼の事が、気に食わないと感じたのである。
581 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 00:59:59.39 ID:RWdORxXl0

(幻生のじーさんの事もあるし、そろそろ手を打っておかなきゃマズイな)

(こっちは魔術師相手に忙しいっつーのに、鬱陶しいにもほどがある)

(……ステイルとマイクあたりに、対処をさせておくか)


「い、イヤだ、死にたくない!!」

「あ」

木原が対処法を考えている僅かな時間に、天井が逃げようとして駆けだした。

それでも木原は慌てずに、近くにあった椅子を天井目がけてぶん投げる。


「ぐふぅ!?」

「ん。すとらーいく」

「落ち着けよ天井ちゃん、“俺は”テメェを殺したりしないぜ?」

「ほ、本当か……?」

「ああ。優秀な研究者を、無駄に殺す訳ないだろ」


そう言いながら、木原はゆっくりと手を差し出した。

一瞬迷いながらも、天井がその手を掴んで立ちあがる。


「に、二度とこんな事はしない!」

「そりゃ結構。だが、心配しなくていいぜ天井ちゃん」
582 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 01:01:10.77 ID:RWdORxXl0

「それはどういう……」

「やれ」


ザン!ザン!ザン!


天井の体から、3本の刀が冗談のように飛び出た。

3体のクローンが、それぞれ刀を背中から突き刺したのだ。


「あ、あ、あ、あ、あ」

「天井ちゃんは優秀な科学者だし、テメェの研究結果をテメェの体で確認したいだろ?」

「喜べよ。クローンの調整はパーフェクトだぜ」

「……あ、あ、あ、あ……ぁ」


刺し傷や鼻、口といったあらゆる部位から真っ赤な血が溢れだす。

わずかに身じろぎした天井は、やがて目をひっくり返して――絶命した。
583 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 01:02:01.44 ID:RWdORxXl0

「16号より報告。命令を遂行しました」

「03号より提案。死体の処分は焼却をお勧めします」

「29号の懸念。『管理個体』の精神状態が不安定です」


クローンに言われて、木原が後ろを振り返る。

言われたとおり、『管理個体』がその小さな体を震わせていた。

その顔は涙でグシャグシャになっており、ヒックヒックとしゃっくりまで起こしている。


(感情のコントロールが未完成……まあその方が扱いやすいか)


「……じゃ、調整しておく。テメェらは死体を片付けた後、全員培養器の中でスリープモードのまま待機しろ」

「03号は了解。指示通りに行動します」


クローンが死体を処理するのを横目で見ながら、木原は『管理個体』を抱きかかえて部屋を後にした。
584 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 01:03:07.66 ID:RWdORxXl0

8月18日午後3時00分、『猟犬部隊』32番待機所


『管理個体』の調整を終えた木原は、待機所にいる木山へ話しかけた。


「ちょっと頼みがあるんだ、木山ちゃん」

「何故私に……その子は誰だね?」


木原の手を握る『管理個体』を見て、木山が驚愕の声を上げる。

しかし当の本人は、落ち着いて自己紹介を始めた。


「私はべーしっくです。よろしくお願いします」

「……君は……一体……?」

「被検体名、神裂火織のくろーんです」


そう言い終わると、彼女はペコリ、とお辞儀した。


「説明しろ! これは一体何の冗談だ!?」

「もちろん説明すっから、落ち着けよ木山ちゃん」


激昂する木山をなだめながら、木原は事の次第を30分ほど説明する。
585 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 01:04:50.12 ID:RWdORxXl0

「貴様が殺したあの人の、クローン……何て事を……!」

「しつけーな。すでに生産は順調に行われてるんだし、気分を切り替えた方がいいぜ?」

「どこまでも……最低だ……っ」

「じゃあ、このガキどもを殺すか?」

「!」


木原のその言葉は、木山を怯ませた。

殺した人間のクローンを造り、兵士として操るなど断じて許されない。

許されないのだが――。


「……止めてくれ、彼女を殺すな」


すでにここに存在している女の子を、見殺しにしていいはずもないのだ。


「流石木山ちゃん、優しいなぁ。こいつの面倒を見てくれるなんて」

「……なに?」

「良く聞け『管理個体』。今からこの木山春生がテメェの教育係だ」

「分かりました。べーしっくの教育を、よろしくお願いします」
586 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 01:05:50.26 ID:RWdORxXl0

もう一度、ペコリと頭を下げる『管理個体』。

だが、木山は納得がいかず声を荒げた。


「勝手な事を!」

「いやいや、元教師なら適任じゃねーか」

「けど、私は子供が」

「――嫌い、か?」

「っ……」


言葉尻を奪って、木原が問いかける。

この状況において、最も卑怯なやり方だった。


(この男、私の過去を分かっていて……!)

(わ、たしは――)


その隣にいる『管理個体』の姿が、かつての教え子と重なって見える。
587 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 01:06:38.94 ID:RWdORxXl0

――センセー。

――木山センセー。

――センセーの事、信じてるもん。


(そうだ。私は、あの子達を助け出すまで……立ち止まるワケには……)

(クローンかどうかは関係ない。これ以上、子供たちの犠牲を出させはしない!)


木山の出した結論を読み取った木原が、乱暴に彼女の頭を撫でた。


「そーこなくっちゃな。ヨロシク頼むぜ」

「必要なモノは揃えるから、遠慮なく頼め」

「そのガキはとっても大切だからな」


それだけ言い捨てると、木原は2人を残して退室する。


「「……よろしく」」


後に残された2人が、どちらも不器用な微笑みを見せあった。
588 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 01:08:11.97 ID:RWdORxXl0

8月18日午後3時40分、『猟犬部隊』32番待機所


待機所の廊下を歩いていた木原に、ヴェーラがおずおずと話しかける。


「すいません、木原さん。少しお聞きしたい事があります」

「何だ?」

「……どうして」

「あ?」

「どうして、木山春生だけは本名で呼ぶのですか?」


訪ねたヴェーラの眼差しは、偽りなく真剣だった。

若干の焦りすら感じられるほどに。


「それに、あの管理個体の世話を彼女に任せたんですよね?」

「どうしてそこまで彼女を特別扱いするんですか?」

「……」


クズばかりを集めた『猟犬部隊』にあって、ヴェーラは少しばかり特殊だった。

強盗を働いた後無理やりスカウトされたマイクのように、他のメンバーは全て悪事の結果ここにいる。

しかしヴェーラは、『何でこんな所へ堕ちたのか想像がつかない』と言われるほど一般的な人間だ。

そもそも彼女は悪事を犯していない。

唯一彼女が他人と違う点があるとすれば、それは。


「木原さんにとって、特別なんですか?」


知れば誰もが目を背けたくなるような男に、恋をしたという事だけ。
589 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 01:09:25.26 ID:RWdORxXl0

殺される可能性があったとしても、木原に近づきたかった。

人として扱われないと分かっていても、木原の役に立ちたかった。

彼を追いかけて『猟犬部隊』に入ったヴェーラにしてみれば、あからさまな特別待遇を受けている木山は恐ろしい存在だ。

しかし。

木原の答えは、彼女の予想とはかけ離れたものだった。


「木山ちゃんにコードネームを付さない理由は簡単だ」

「潰れないようにする為、それだけ」

「……どういう意味です?」

「木山ちゃんのやった事――『幻想御手』事件――自体はえらく派手だったが、そこに悪意はねえ」

「その本質は善人で、『猟犬部隊』に相応しい人間じゃなかった」

「が、皮肉にも木山ちゃんは、『猟犬部隊』にとって必要なスキルを持っていた」


ヴェーラが、ごくりと唾を飲み込む。


「強制的にスカウトしたものの、そのままお前らみたいに扱えば、いずれ罪悪感に耐えきれなくなって駄目になっちまう」

「だからこそ、精神を繋ぎとめる“希望”が必要なんだ」

「自分の教え子を助け出して、日常(ひかり)の世界へ帰るっていう希望がな」

「分かったか? 敢えてコードネームを付けない事で、無意識のうちに自分は元に戻れるかもしれないと思わせる」

「たったそれだけで優秀な人間をコントロールできるなら、安いものだろう?」


そう言葉を締めくくる木原に対し、ヴェーラは何も答えられなくなった。
590 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 01:10:26.86 ID:RWdORxXl0

誰よりもクズである木原は、だからこそ誰よりも理解している。

過去の行動は、決してチャラにはならないと。

例え未来で1万人の命を守ったところで、過去に殺した1人には全く関係ないという事を。

故に彼は、決して止まらない。

反省も後悔もしない。

そんな事をしたら、過去に作り上げた無数の肉塊に対して失礼ではないか。


「その辺が木山ちゃんは甘いからなぁ。まだ自分が救われると勘違いしてんだ」


もう話す事はないと思ったのか、そのまま木原は廊下を歩いて行ってしまう。

残されたヴェーラが感じたのは、少しの安堵と圧倒的な寂寥感。


(……木原さん……)

(あなたは……)

(……………)
591 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 01:11:43.74 ID:RWdORxXl0

同時刻(日本時間)、バチカン


自ら『屈辱の一日』と呼んだ会談の後、神の右席4人が話し合いをしていた。


「ふざっけんな! あんだけ虚仮にされて置いて、このまま済ますつもり!?」

「落ち着けヴェント。状況を見るのである」

「そもそも、フィアンマ自らが同席していながら、この結果はどういう事なんですかねー?」


言葉こそのんびりしているが、テッラも憤りを隠せない。

異教徒によって良いようにあしらわれたのだから、当然かもしれないが。


「正直、あの男があそこまでやってみせるとは思わなかった。俺様の想定外だったのは認めよう」

「へえ、アンタがそんなこと言うなんて珍しいわね。……で、どーすんの? 私が殴りこみに行ってこようか」

「待て。あそこまで大々的に報じられたのである。大っぴらに敵対行動はとれまい」


アックアが冷静にそう告げるが、ヴェントはそれを鼻で笑った。


「そんなこと知るか。私が潰すと決めた以上、それは絶対なの」

「だが……」


その時2人の口論に割って入ったのは、テッラだ。


「まあまあ、私に少し考えがあるんですよ」


ひどく酷薄な声で、彼は楽しそうにこう言った。


「『C文書』を使いましょう。異教のクソ猿に、神の力を教えてやりましょうかねー」
592 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/21(金) 01:12:42.37 ID:RWdORxXl0

今日はここでお開きです

猟犬部隊にも、1人ぐらい乙女がいてもいいよね?

という妄想で、ヴェーラはああなりました

原作を読んでからずっと、こんな理由だったら楽しそうだと思ってたので

次回は木原一族(雑魚)VSステイル、マイクの混合部隊

管理個体に生じた問題と、その解決方法

のどちらか(又は両方)をお送りします

では、おやすみなさい

593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 01:14:43.86 ID:sOtRaQ8ko
ベーシックたん可愛いよベーシックたん
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 01:38:55.07 ID:qvXrRF5ho
べーやん「センキュゥ!」
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 02:01:49.23 ID:RzAsrAsSO
ベーシックが可愛すぎて生きるのが辛い。

そしてテッラとヴェントからカマセ臭がプンプンするww
木原くンが負ける絵が浮かばねえwwwwww
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 06:52:00.52 ID:hwc0itIBo
カンザキは本人みたいに魔術使える設定なのか?
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 07:08:36.25 ID:2uAfN8GAO
でも魔術サイドはチート多いからなー
使徒十字とか酷すぎだろww

そこら辺のパワーインフレは扱いにくい…
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/21(金) 10:06:38.42 ID:n7RRsNtx0

ヴェーラ切ないなー
実は木原くンが木山先生を好きじゃないかと思ってたのに、想像を超えて外道だったぜ
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 16:51:05.00 ID:ShCsTTBf0
乙乙、いやー実に外道。
だがそこがいい。
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 00:17:22.65 ID:7AJi7HYz0
>>596
使えないだろ 

でも一応聖人だし、歩く教会のレプリカが完成したら魔術サイドにも十分対抗できるはず
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/22(土) 11:02:09.00 ID:c1gcSRv80
しかし、あまりにも木原くンが無双しすぎている気がする
もう少し小者でも良かったんじゃないか?
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 12:45:10.89 ID:hlQiAfZDO
まあ木原クンが賢いというよりは周りがアホという印象が強いのはあるな
でもこの無双木原クンすら為す術なく一方さんに無惨にブチ殺されるのかと思ったら胸熱
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 13:22:01.73 ID:AO6E8XL4o
そりゃ敵に当たる前に攻略本装備ですから
周到に準備してれば木原くンじゃなくてもいけますよ

それでいうなら敵の本拠地でよくやったと思う
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 19:24:54.33 ID:3aVZcCBDO
まだ一方さんの黒羽みたいな不測の事態が起きて無いからなー。
事前情報有り予測範囲内じゃ負ける気がしない。
不測の事態に対し、撤退や命令以外の猟犬メンバーの機転での木原くン生存パターンに期待。という願望を晒してみます。
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 21:49:42.94 ID:zpEVZyvAO
知恵と機転と観察で無双するからむしろ良い。
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 16:36:05.91 ID:UW8eJl520
なんとなく木原数多でググったらこのスレにたどり着いた。
俺ってツイてるな。
607 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/24(月) 00:42:01.11 ID:AN2ATYb30

こんばんはー、レス感謝です

>>596
インプットされていないので、“今は”使えません

>>602
周りがアホなのは、筆者がアホなので勘弁してください

>>604
不測の事態は、これからの展開を期待せずにお待ちください


では、投下

608 : ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/24(月) 00:42:50.26 ID:AN2ATYb30

8月19日午前9時00分、第5学区のとある研究所


極端に静かなその研究所を見て、マイクは面倒くさそうに吐き捨てた。


「……クソッ、警戒されてんな。少々厄介だ」

「なんなら、君は1人でお留守番でもしているかい?」


それをバカにした口調でからかったのは、同じ『猟犬部隊』のステイルだ。

彼も木原の命令で、神父服からマイクと同じ装甲服へと着替えてある。

いや、厳密には少しだけ異なる仕様になっているが。

そんなステイルに対し、マイクは顔も向けずに言い返す。


「調子に乗るんじゃねぇよ魔術師。ヘマしたらどうなるか分かってんだろうな?」

「ふん。言われた事ぐらいこなして見せるさ。……あの子の為にも」


言い合う2人を見て、背後に従っている『猟犬部隊』10名が不安そうに顔を見合わせた。
609 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/24(月) 00:44:15.33 ID:AN2ATYb30

昨日の段階で、木原は自分に敵対した一族の人間を潰す為に『猟犬部隊』を召集。

今回は相手が魔術師ではないので、『対魔術師用特別編成隊』以外の一般隊員を用意したのだ。

もちろん、彼らは魔術の事など何も知らない。

そんな彼らを指揮するリーダーとして、マイクとステイルが選ばれた――が。

つい最近殺し合いをした2人の仲は険悪そのもので、今にも互いを攻撃しそうな雰囲気を見せている。


(大体、何故俺がこの男と……)

(能天気なヴェーラ辺りに任せてくれればいいものを)


文句ばかりのマイクだが、やがて諦めたように任務に集中した。


(メンバーに文句があろうと、任務を失敗する事は許されない)

(下らない任務は、さっさと終わらせるに限る)


それはステイルも同じようで、作戦時刻が近づくにつれて表情は真剣なものに変わっていく。

そもそもこの任務にステイルが選ばれた理由は、彼の新武器を実戦で試す為なのだ。
610 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/24(月) 00:45:04.92 ID:AN2ATYb30

良い実験材料が手に入ったと喜んでいた木原の顔を思い出して、ステイルがこめかみをわずかに痙攣させる。


(あの男……自分の親族が敵に回ったというのに、嬉々として実戦データを求めるとは)

(つくづく科学者というのは、頭のおかしい人種だ)

(しかしあの子を守るには、このまましばらく耐える必要がある)

(そうだ。相手が誰であろうと、容赦なく焼き殺す)

(……もう僕は、すでに戻れないところまで来ているのだから)


ステイルの瞳が、ほの暗い闇色に染まる。

彼は昨日、木原から『管理個体』を紹介された。


――「き、きみは!?」

――「初めまして、すている。私はべーしっくです」

――「ど、どういう事なんだ、一体……!?」

――「そーんな風に驚いたら、このガキが可哀想だろー?」

――「彼女は、神裂にそっくりだ!」

――「当然だろうが。クローンなんだからよぉ」


それから語られた信じられない出来事は、14歳の彼にとってあまりにも重かった。
611 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/24(月) 00:45:57.06 ID:AN2ATYb30

(神裂……すまない……)

(死して尚、あの男に利用されるなんて思ってもみなかったんだ……)

(……この責任は僕が必ず取る)

(あの男は、この僕がいつか必ず殺す)

(絶対にこの手で……!)


そうするには、何よりも力が必要だ。

木原に叩きのめされてその事を痛感したステイルは、その力を身に付けるまで大人しく言う事を聞こうと決めた。


(ここにいる、あの男の一族)

(所詮、同じ穴の狢なんだろう? ならば、遠慮はいらない)


新たな武器を握りしめるその表情は、正に魔術師と呼ぶにふさわしく、どこか悲痛なものを感じさせる。

それでも彼は、止まらない。

いや、止まれない。

そうしてチカラを求める事が。

――木原の狙い通りなのだと、心のどこかで理解していても。
612 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/24(月) 00:46:59.56 ID:AN2ATYb30

同時刻、第7学区の常盤台中学学生寮


その石造り三階建ての巨大な洋館は、古めかしい見た目と裏腹に厳重なセキュリティが施されている。

夏休みという事もあり、中からは学生の楽しそうな声が聞こえてきた。

そんな平和な光景から、最も縁遠いはずの男。

木原数多が、その門の前に立っている。

彼の隣にいるのは、外気の暑さで項垂れている木山と、興味深そうに周りを見回す『管理個体』。


「ますたー。ここですか?」

「ああ。俺の知り合いの中じゃ、コレしか思い浮かばなかったからよぉ」

「だが……本当に、この子の事以外には巻き込まないんだな?」

「ぎゃは。木山ちゃんは疑い深いな、俺を信じろって」
613 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/24(月) 00:48:22.68 ID:AN2ATYb30

彼らがここにいるのには、理由がある。

『管理個体』の世話を木山に一任したものの、彼女では力不足だったのだ。

それは教育者としての力量の比喩ではなく、文字通りの肉体的な“力”の話である。

体格こそ幼い『管理個体』だが、彼女は『聖人』神裂の正確なコピーだ。

しかも他のクローンを管理する為に、ごくわずかだが『聖痕』を常時開放している。

そんな不自然な調整を施された『管理個体』は、未だに力を御する事が出来ないままだった。

昨日あの後、すでにベッドと箪笥、そしてテーブルを破壊している。


(あのガキが言うには、本来聖人は『赤ん坊の頃から、その力を安定させる手段を無意識に実践している』らしいが)

(クローン制御用に『聖痕』を弄ったおかげで、それが不完全になっちまった)

(俺とした事が、こんな見落としをしていたとは)


幾ら『学習装置』と言えども、聖人の力の抑え方などインプット不可能。

つまりそれ以外で、莫大な力を持てあまさないように、上手な制御法を学ぶ必要がある。

問題はさらに存在した。

『管理個体』は『学習装置』で木原の命令には絶対服従しているが、木山に対してはそうではない。

彼女を木山の反抗に利用されない為の処置だったが、それはつまり木原以外には『管理個体』を止められないという意味にもなる。

精神年齢の幼い彼女が、もしも木原の留守中に暴れたら。

それを確実に止める為の方法を、用意する必要がある。

この2つの問題を、木原はとある人物の力で同時に解決しようと考えた。
614 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/24(月) 00:49:27.45 ID:AN2ATYb30

学生寮の敷地に、木原が1歩踏み込もうとしたその瞬間。


「止まれ。1歩でもその先に入れば、只では済まさん」

「なるほど、大したセキュリティだなオイ」


女性。見た目は20代後半だろうか。

華奢な体に似つかぬ力強さが、体中から感じられる。

眼鏡の奥の鋭い眼光は、あの木原相手に怯む様子も無い。

この寮内に存在するあらゆる高性能なセキュリティよりも、信頼のおける守護神。

あの御坂美琴や白井黒子ですら恐れる、鬼の寮監が声をかけた。


「……木原数多か。すぐに消え失せろ」

「ほう。俺の事を覚えていてくれたとは光栄だ」

「忘れるものか。あの一族で私と互角に戦えたのは、貴様ぐらいのものだったからな」

「いやー、懐かしいなぁ。もう10年以上前の話だもんな」


その言葉に、寮監の表情が険しくなる。

しかし木原は、それを無視して話を続けた。


「俺以上の異端者だったとはいえ、それでも結構な話題になったんだぜ?」







「テメェが“一族”を裏切った事はな」



615 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/24(月) 00:50:26.71 ID:AN2ATYb30

隣にいる木山が、驚いたように体をピクンと反応させる。

しかし寮監は、それでも冷静だった。


「……消えろと言ったが?」

「褒めてんだぜ? 常盤台の寮監に就任したって聞いた時は、腹抱えて爆笑したわ」


中には泡吹いた人間もいたぐらいだ、と木原はケラケラ嗤う。


「ま、一族の中じゃ落ちこぼれだったから、深く追及はされなかったみてーだが」

「なにしろ木原一族のくせに、昔からガキが大好きだってんだからな」

「異端者も異端者、スゲェ浮いてたろ?」


木原の発言を、寮監は一蹴した。


「異端なのは貴様らの方だ……外に出てそれが良く分かったよ」
616 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/24(月) 00:51:21.31 ID:AN2ATYb30

「言うねぇ。けどそんなお優しいテメェが、格闘センスだけずば抜けていたってのは皮肉だよなぁ」

「……私に喧嘩を売りに来たのか?」

「まさか。ちょっと頼みごとにな……オラ、挨拶」


木原に背中をされて、『管理個体』が1歩前に出る。

流石の寮監もポカンと口をあけるが、それには気付かない。


「初めまして、あなたがべーしっくの家庭教師ですか?」

「……家庭教師?」


唖然とする寮監の声が、学生達の喧騒の中に紛れることなく『管理個体』に届く。

ここにきてまた1人の大人が。

木原の起こす世界規模の狂乱に、強引に巻き込まれた。
617 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/24(月) 00:53:25.51 ID:AN2ATYb30

今日はここでおしまいとなります

アニメのビアージオさんが予想以上に格好いいのは、やはり声優さんの力でしょうか

前作だと思いっきり悪役にしてしまいましたが、結構キャラクターとしては好きなので嬉しい限りです

(今頃は猫用トイレの砂になっている彼に黙とうをします、とレイはほくそ笑みます)

寮監=木原一族なのは、完全に作者の趣味です

この先、偽典・超電磁砲の内容が一部入るかもしれません

読んでなくても問題が無いように配慮しますので、どうかご容赦ください

では、おやすみなさい
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 00:56:32.60 ID:OnWDk8Koo

ここで寮監が出てくるのは完全に予想外だったぜ
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 01:00:57.29 ID:U0igygrAO
なるほど、だから寮監はあんなに強かったのか
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 01:09:05.52 ID:QH0zNpRDO
あんなに強いのも木原一族とするだけで納得できてしまう不思議
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 06:54:13.02 ID:MJufPPAAO
天草式の話読んだけど超面白かった
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 09:59:43.22 ID:eXbIUtAG0
あれー?何か一気に戦力が増強された気がするけど。あれー?
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 12:33:22.17 ID:OeLrQZBAO
シリアスSSで寮監が出るのを初めて見た

木原くンとどっちが強いのかな?
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 14:13:41.83 ID:LKA/bVyJo
寮監のビジュアルはどこかテレスたんに通じるものがあるなあと前から思ってたんだよ!
思ってたのにびっくりしたわチクショウ……>>1の配役が上手すぎる
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 17:14:17.51 ID:dv37q9eAO
配役は成る程だが、実際複雑だなww
よし大圄先生連れて来い
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 23:53:55.95 ID:v63SYxC/o
そういえば寮監は猟犬部隊3人(4人?)を瞬殺したことあるんだよなww
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 02:03:36.09 ID:bK019KMAO
偽典ということは、那由多を期待してもいいんだな?
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 10:11:19.18 ID:5luy7vZp0
>>627
残念ながら、高校生以下の能力者は登場しないらしい


それはそれとして1乙
続きを楽しみにしてます
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 12:41:41.84 ID:rYzjRVGAO
>>625
これ以上犠牲者を増やすなしwwww
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 13:13:24.11 ID:Bc0Iv3+Yo
>>1ってミサカと天草式の以外にも何か書いてる?
面白いからあるなら読みたい
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 16:56:33.83 ID:5sIZo/rt0
べーしっくたんはエスパーかおりになりますか?
632 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/27(木) 02:39:28.84 ID:7BSHLspQ0

こんばんはー、いつも遅くて申し訳ないです

>>630
>>262の作品です
興味を持って下さりありがとうございます


では、投下


8月19日午前9時20分、第5学区のとある研究所


その男は、木原一族の中でもとりわけ警戒心が強かった。

昨日。

自身が抱き込んだ天井亜雄と連絡が取れなくなった1時間後には、念のために契約していた傭兵10名を呼びつけている。

すでに彼らは研究所内を巡回中であり、敵が来ればすぐにでも対応する事が可能だ。

しかしそれでも、男は怯えて地下の特別室へ引きこもっている。

外からはロックを解除出来ないその部屋にいるのは、男と、特別に信用した傭兵2名だけという徹底ぶりだ。
633 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/27(木) 02:40:40.79 ID:7BSHLspQ0

(天井のボケが! しくじりやがって!)

(あの数多のことだし、間違いなくオレの事はバレたはず……)

(すぐにでも何らかの手を打ってくるだろう)


男は、部屋をうろうろと歩きまわりながら打開策を考える。


(隠蔽や偽装は、数多相手じゃ分が悪い)

(誤魔化しのきく相手じゃないからな)

(にしても、あのクズは研究成果の1つも満足に持ってこれないのかよっ)

(……落ち着け。んな事より、重要なのは……)


男の思考は、そこで止まった。

突如として、ズゥーン!という重低音が研究所に木霊したからだ。

男は10秒ほど呆然としていたが、やがて気を取り直してこう叫ぶ。


「も、もう来たか!? くそぉ、全員で侵入者を殺せ!!」


だがその指示よりも早く、辺り一帯に銃声が響き渡った。
634 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/27(木) 02:41:40.23 ID:7BSHLspQ0

パチンコ玉を使って扉を破壊したマイクが、流れるように部下に指示を出す。


「出口は封鎖してあるな? まずはこのフロアを制圧する。――作戦開始」

「了解」


重武装の猟犬部隊が、指示に従って索敵範囲を広げる。

彼らの持つショットガンから放射される明かりが、壁一帯を舐めまわす。


「!? な……」


運悪く1階を警戒していた傭兵が、愕然として攻撃しようとするが。


「邪魔だ」


逆にショットガンの直撃を受けて、体中を穴だらけにした。

その死体の装備をチェックしたマイクが、舌打ちと共に周りへ連絡する。


「……外部の傭兵が護衛にいる。すでに俺達の攻撃を予測していたらしい。全員警戒を怠るな」

『!』


すでに周りに散らばった猟犬部隊が、無線越しに驚いたのが無線機から伝わってきた。
635 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/27(木) 02:42:42.86 ID:7BSHLspQ0

その様子を感じて、マイクの後ろにいたステイルが溜息と一緒にこう漏らす。


「やれやれ。標的は1人のはずじゃなかったのかい?」

「黙れ。全員殺せば問題ない」

「皆殺しか。……結局僕のやる事は、どこだろうと変わらないらしい」


そんなステイルの自嘲を、マイクは完璧に無視した。


「貴様の準備は終わったのか?」

「今やっているだろう。なに、この調子ならすぐに終わるさ」


突入からわずか1分ほど。

すでにこのあたりの壁一面には、ルーンの刻印が刻まれている。

木原の用意した新しい武器を使いこなしながら、ステイルは魔力が充満するのを感じた。


「……よし、問題ない。これで随分“警戒”がやりやすくなる」


そして武器を構えながら、マイクとステイルはさらに奥へと進む。
636 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/27(木) 02:44:05.25 ID:7BSHLspQ0

砂皿緻密(すなざらちみつ)は、プロのスナイパーだ。

本来彼は護衛の仕事などしないが、今回は通常の3倍の報酬を用意された。

悩んだ末、敵対者を“殺す”任務と言う事でこの仕事を請け負っている。

それも始めは、研究所外部で見張りをしたいと主張したのだが、依頼主が頑として認めなかった。

偵察衛星を味方にしている木原には、外での待ち伏せは意味が無いというのがその理由だ。


(……そろそろ、か?)


代わりに彼が潜んでいるのは、研究所内の地下へ向かう階段。

その階段の最下部の陰に隠れて、標的が来るのを待ち受けていた。

すでにエレベーターは使えなくしてあるので、敵が護衛対象を殺すにはここを通るしかない。

研究所という狭いエリアの中では、数少ない待機場所と言える。

そこで待ち構えていた砂皿が、大量の発砲音に混じった微かな足音を感じ取った。


(来たな)


現れたのは、年若い赤毛の男。

だがその姿を見て、砂皿は疑問を感じた。
637 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/27(木) 02:44:51.12 ID:7BSHLspQ0

(装甲服は着ているのに、何故武器を持っていない?)

(……懐中電灯1つで、何をする気だ?)


赤毛の男――ステイルが持っていたのは、銃ではなく懐中電灯。

その光を壁中に走らせている。


(……妙な事をされる前に、片を付けるか)


ステイルが下まで降りてきて、その無防備な背中を晒す。

こちらに気づいていない。そう思った砂皿は、ステイルの後頭部に銃弾を叩き込んだ。


「――なんだ、後ろにいたのかい?」


その光景は、冷静沈着な砂皿をして動揺させた。

確実に当たったはずの弾丸が、まるで冗談のようにステイルの体をすり抜けたのだ。

それだけではない。

銃弾が飛んで行った先、研究所の壁が様相を変えていた。


(っ、何の“模様”だコレは――!?)


ステイルが懐中電灯の光を当てた壁には、砂皿が見たことも無い謎の模様が『焼印』のように焦げ付いている。

予想外の事態に困惑する砂皿に、蜃気楼のように揺れるステイルは苦笑した。
638 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/27(木) 02:47:38.68 ID:7BSHLspQ0

ステイルが持っていたモノは、懐中電灯ではない。

懐中電灯に偽装した、学園都市製の超高出力レーザーだ。

すなわち、ルーン文字をレーザーで焼きつけるための道具である。

秒間20回の連続点灯を可能にしたこの装置は、振りまわすだけで辺りの壁にルーンを刻む。

しかもダイヤルを切り替える事で、ステイルの扱う30のルーン全てに対応できる。


(全く、あの男は悪趣味な物を作ったものだね)

(これなら、カードを飛ばして張る為の魔力もいらない)

(カードと違って、直接ルーンを焼きつけてあるから簡単には剥がされない)

(……そして)

(この道具は、木原の許可が無ければ動かない。僕にとって、ルーンを封じられたようなものじゃないか)

(つくづくあの男にとって都合のいい事だ)


それだけではない。

猟犬部隊のショットガンにも、小型ではあるが同じ装置が組み込まれた。

それにより、さらに高速かつ組織的にルーンの設置が行われるようになる。

つまり。

すでに1階は、制圧と同時にルーンも整えられていたのだ。

そしてこの地下も、近くの壁はルーンが刻まれた後。
639 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/27(木) 02:48:50.99 ID:7BSHLspQ0

そんな事を知る由も無い砂皿に、ステイルは笑顔で宣告する。


「ああ、君は知らないはずさ。そして知る必要もない――コレが何なのか、なんてね」

「そうだろう? だってここで死ぬんだから」

「!」


その時、砂皿が咄嗟に反応出来たのは、ステイルの声が自分の真横から聞こえたからだ。


「灰は灰に――――――塵は塵に――――――吸血殺しの紅十字!!」


ステイルの両手から噴出した炎剣を、際どいながらも下に転がって交わす。

再度炎剣を構えるステイルを前にして、砂皿はジリジリと後退するしかない。


(まさか、能力者なのか?)

(……どうする)


先も述べたとおり、砂皿はスナイパーだ。

このような近距離での戦いに向いていない。
640 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/27(木) 02:49:58.76 ID:7BSHLspQ0

(いや、この男の動きをみる限り、勝つ見込みはある……)

(ただしそれなりに時間は掛かる)

(その間に他の敵に囲まれては厄介だ)

(ここは引いて、武装を整えるべきか)


守るべき依頼主は、奥の部屋に閉じこもっている。

あそこの扉は頑強で、そう簡単には突破できないはずだ。


(それに、相手が能力者とは聞いていない)

(こちらは傭兵。あの無理難題を押し付ける依頼人に、命を掛ける義理も無いしな)


そう判断すると、砂皿はステイルにナイフを投げつける。


「く……無駄だ!」


飛んできたナイフをステイルが炎剣で薙ぎ払う。

しかしその間に、砂皿は階段を駆け上がった。


(……重火器が必………)


そしてそれが、砂皿の感じた最後の感覚になる。
641 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/27(木) 02:51:09.18 ID:7BSHLspQ0


蜃気楼を使ってステイルが先行するのを見届けたマイクは、地下階段の上で待機していた。

部下が順調に傭兵を駆逐していくのを無線で聞きながら、右手で握った“ある物”を弄る。


(あの魔術師が、さっさとケリをつけてくれればいいんだが……)

(そうならねえ場合、俺が始末する必要がある)

(……油断はしない。もう二度とな)


かつてマイクは、郵便局を狙って強盗をした事がある。

その時、一瞬の油断により小学生に取り押さえられた。

後は地獄(ここ)まで一直線。

だから彼は、決して油断すまいと決意した。

そして皮肉にも、その事が彼を優秀な猟犬部隊へと成長させたのだ。


「……!」


敵の傭兵が階段を駆け上がる気配を感じたマイクは、躊躇なく右手の物を放り投げた。

そしてそれは階段上部に、異様な遅さで広がっていく。
642 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/27(木) 02:53:10.91 ID:7BSHLspQ0

かつて、『絶対等速』を戦闘に活用するにあたり。

殺傷力強化の為より大きなものを動かそうと考えていたマイクに対し、学園都市で最高の能力開発者である木原はこう言った。


――「分かってねーな。テメェの能力は、むしろ小さいものを使うことに最適なんだ」

――「ちっとばかし『自分だけの現実』を鍛えりゃ、イイ線いくかもしれねーぞ?」


そう。マイクが投げたのは、木原の用意した『鉄粉』だ。

等速直線運動を続ける粉末に、柔らかな人体が突っ込んできたらどうなるか。

答えは、砂皿がその身をもって示した。


「お、あああぁぁぁぁぁぁぁ!?」


粉末に飛び込んだ砂皿が、一瞬で真っ赤に染まる。

そのまま顔を抑えて崩れ落ち、のたうちまわった。

その皮膚は切り刻まれ、眼球は抉られ、肉と言う肉は寸断されている。

砂皿はしばらく痙攣していたが、やがて完全に息絶えた。


「……悪いな、傭兵」

「きっとアンタは、俺より遥かに優秀な殺しの腕を持っているんだろう」

「――だが、超能力の前では何の意味も無い」

「だから俺は、ここにいる」


それから10分後。

研究所を完全に制圧した猟犬部隊によって、木原一族の1人が粛清された。
643 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/27(木) 02:53:41.52 ID:7BSHLspQ0

今日はここでお開きです

砂皿さんの扱いが悪い事を謝罪します

他のssで誰かがカッコイイ砂皿さんを書いてくれると嬉しいです

ちなみに『頑強な扉』は、例によって例のごとく大量のパチンコ玉で粉砕されました

次回は木山&ベーシック、おまけに寮監のターンです

では、おやすみなさい
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 02:58:56.44 ID:1fJQFxoJo

絶対等速エグイwwwwww
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 03:11:43.64 ID:20w7NY0fo

絶対等速の使い勝手が良すぎるな
考えてみればこれもベクトル操作の一部か・・・
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 09:10:02.26 ID:ntRrgJuIo
この使い方は思い付かなかったな
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 09:28:08.29 ID:hMwZU8iC0
乙!
毎回の事ながらこの発想の豊富さはスゴイ
投げたものが粉末なら壊れようにも壊れないもんな
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 11:24:44.58 ID:lm38l9PQo
おー、魔術の結界でも同じ事出来るな。
コインの表側で砂撒いて裏側にいる奴が気付かず突っ込んで挽肉ww
そのうちそういうことする魔術師でないかな。
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 12:48:35.11 ID:0EIZROWIO
つーことは例えば虚空に腕を振るだけで手に触れた埃を弾丸にしちまうこともできるのか。
ベクトル操作系ぱねぇ
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 13:20:18.21 ID:h5q2aEJco
絶対等速さんとステイルさんがカッコよすぐる
頭脳の提供元たる木原さんが合わさることで生まれるすさまじい発想だ
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 16:06:21.23 ID:ufRzkx5AO
ここまで来たなら政治的な要素キボンヌ
木原の魔術なだけで世界狂わせるくらいの
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 21:25:44.57 ID:Z8lgylxDO
質量無制限よりも個数無制限に重きをおいて自分だけの現実を鍛えた感じか…
作者の発想力に超脱帽です。
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/28(金) 12:05:32.96 ID:GA8oJ+xt0
PSP禁書の木原くンが良い感じに悪党だった

ひろし声がああもムカツクなんて思わなかったよ

あんな雰囲気でねーちんを嬲ったかと思うとゾクゾクする
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 15:01:15.58 ID:q+8rAt+DO
ただのエロオヤジじゃねえか
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 16:45:43.62 ID:sbQqk5/Po
ベクトル操作というかベクトル固定って感じかね。
確かに小さい物の方が脅威だわ。
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 19:26:10.69 ID:ALHZzjFeo
>>653
気のいいおっさんから悪人までバッチリだからな
新鬼武者は、ビックリの胸糞悪さだった
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 19:27:55.17 ID:e2wuAZPLo
すばらしい発想力だなー乙
658 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:44:02.72 ID:0HGeB+gm0

こんばんはー、レスありがとうございます

PSPゲームの木原くンマジ猟犬

あの声がつくと最高に悪党っぽいですね

では、投下


8月19日午前10時00分、『猟犬部隊』32番待機所


マイクを始めとする『猟犬部隊』が、敵対した木原一族を抹殺している頃。

木山と寮監、そして『管理個体』は待機所へ戻っていた。

木原は別の用事があるので出かけている。

寮監が依頼されたのは、木原が待機所を留守にしている間だけ『管理個体』の家庭教師を行う事だ。

当然最初は断固拒否していた寮監だったが、『管理個体』の事情を説明されると渋々ながら同意した。

このまま木原に預けておいては、どんな事をされるか分かったものではない。

それに彼女の目から見ても、『管理個体』の身体能力は異常だった。

このまま放置しておけば、いずれ大きな事故をまねく事になる。

そう判断しての家庭教師役だ。
659 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:45:04.35 ID:0HGeB+gm0

そして今、寮監と『管理個体』は戦闘訓練所で肉体の制御方法を特訓している。

身体トレーニングが畑違いの分野だと自覚している木山は、現在別室で研究データを整理していた。


(……ふう。ようやくあの子達を治す目処が立ったというのに……)

(肝心かなめの、その居場所が分からないのではどうしようもないな)


7月の終わりに『樹形図の設計者』でシュミレートを行った結果、木山は教え子を助ける方法をすでにほとんど確立している。

しかし今も昏睡状態に陥っている教え子は、木原の手で彼女の知らない場所へ移された。

木山を『猟犬部隊』の一員とし、また命令に従わせる為の『首輪』となったのだ。


(実に滑稽じゃないか)

(この街の全てを敵に回しても止まる訳にはいかない、と)

(そう自分に誓ったはずなのに)

(この学園都市は、私の想像を超えるやり方で対処してきた)


木山が脱力して肩を落とす。

それに応じて、腰かけていた椅子がギィ……と嫌な響きを奏でた。

テーブルに置かれた空っぽのコップに、虚ろな表情の木山が映り込む。
660 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:45:59.77 ID:0HGeB+gm0

(何が刑務所の中だろうと、世界の果てだろうと、だ。……私の想像は甘すぎる)

(ひょっとすると)


その時木山の脳裏に浮かんだのは、花飾りが特徴的なとある少女の姿だ。

頭に銃を押し付け、その引き金を引こうとした自分を止めた優しい彼女。


(あの時、死んでいたほうが良かったのかもしれないな)

(これから先、私は何度命を奪う事になるのだろう)


今となっては、自分を止めた少女達の姿が果てしなく遠い。


(それでも、もう私には……)

(あの子達を絶対に救うという目標。それに縋るしか道は無い)


憂鬱な気分を無視して、今度は今まで戦った魔術師のデータを分析していく。

ところがそれは、彼女にとって意外な人物によって中断する事になった。
661 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:46:45.30 ID:0HGeB+gm0

「忙しそうなトコ悪いんだけど、少しお話しても良いかしら?」

「……構わないよ。コーヒーぐらいならすぐ用意するが?」

「じゃあお願いしようかな」


テーブルの向かいに座ったのは、ヴェーラだ。

昨日の木原との会話にも関わらず、不安は消えなかったらしい。

そして数分もしない内に、木山がコーヒーの入ったマグカップを2つ持ってくる。


「ミルクと砂糖は、セルフでお願いするよ」

「ありがと」


そういいながらも、ヴェーラは砂糖もミルクも入れなかった。

顔に似合わず、普段からブラックを愛飲しているのだ。


「それで、用件は何かね?」

「……そのー、えと、あの……」

「?」

「き、木原さんの事なんだけど」
662 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:47:27.18 ID:0HGeB+gm0

要領を得ない返答に、木山が首を傾げる。

やがて覚悟を決めた様子のヴェーラが、決然とこう聞いた。


「あなたは、木原さんの事をどう思っているのかなって……」

「無論、一刻も早く消えて欲しいと思っているが?」

「あ、そりゃそうよね……変な事聞いたわ。あは、あはは」

「ふむ。どうにも妙な態度だが、大丈夫なのかね?」


明らかにおかしい様子のヴェーラを見て、木山は鈍い警戒心を働かせた。


(まさかあの男に頼まれて、部隊の調査をしている訳でも有るまい)

(……あの男なら、私の敵愾心など調べるまでも無く承知しているはずだ)

(とすると、この話の目的は何だ?)


再度沈黙するヴェーラを、木山が睨みつける。

しかしそれも10秒程で終わりを告げた。
663 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:48:37.79 ID:0HGeB+gm0

「……誰にも話してないんだけど……実は私、元は只の公務員だったのよ」

「この学園都市で?」

「ええ。文部科学省の命令で、第1学区に出向してきたペーペーの国家公務員」

「なるほど。『独立行政区視察制度』か」


学園都市は、日本国内にありながら独自の法や軍隊を所有している。

それは行政についても同じだ。

統括理事会が任命した人間が、公務員の代わりに道路開発や消防、各種監査機関等を取り仕切っていく。

ただしそれは完全に放任されたという訳ではない。

学園都市の行政が問題無く行われているか、公務員によって厳しいチェックを受けなくてはならないのだ。

その為の『独立行政区視察制度』である。


「問題が起きたのは、私が来てから2ヶ月後なの」

「……」

「教育施設の運用状況を確認している中で、私はある事に気がついた」

「待て。教育施設だと?」
664 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:49:25.89 ID:0HGeB+gm0

とある予感を感じた木山が、顔を青ざめて言葉を発する。

その意味を感じ取ったヴェーラが、コクリと頷いた。


「政府内でも、『置き去り(チャイルドエラー)』の問題がある事は当たり前だけど知られているわ」

「それでも学園都市側の報告はいつも、研究による余剰利益で十分に扶養出来るというものだった」

「ところが……私の把握したデータによれば、教育施設にいるはずの子供の人数が明らかに足りていない」


当然だろう、と木山は思った。

あの実験があるまで彼女も知らなかった事だが、学園都市は『置き去り』をまるでモルモット同然に使い捨てる。

幾つものおぞましい実験が行われ、多くの子供がその尊い命を失った。


「まだ怖いもの知らずだった私は、それを見過ごせなかったの」

「だから……特に疑わしかった研究所に、半ば強引に査察を執行したわ」
665 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:50:10.83 ID:0HGeB+gm0

2年前、第13学区のとある研究所


研究者達の鬱陶しそうな視線を感じながら、それでも彼女は足早に歩く。


「先ほども申しましたが、この研究施設の報告は明らかに誤りがあります」

「すぐに、施設内にいる『置き去り』全員と会わせてください」


明らかに動揺した様子で、研究者の1人が前に進み出た。


「突然そのような事を言われても……こ、困りますよ」

「報告が正しいなら、問題無いはずです」


立ちはだかる研究者を無視して、さらに彼女は奥へと進む。


「……どうしますか、所長?」

「仕方ありませんなぁ。丁重に、ご案内しましょうかねぇ」


笑ってそう言ったのは、この研究所の所長を務める男だ。
666 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:51:28.06 ID:0HGeB+gm0

年齢は50代後半。

見事なまでにツルツルの頭に、趣味の悪いちょび髭。

オマケにそのバランスの崩れた顔には、片眼鏡(モノクル)が冷たく光っている。

嫌でも生理的嫌悪感を起こさせるその男が、自ら研究所を案内した。

ただし、それは間違っても子供達の所へではない。


「……ここは何です?」

「まあまあ、奥へどうぞぉ?」


彼女が連れてこられたのは、とりわけ頑丈な扉に隔てられた1室だ。

12畳ほどの狭い室内に、子供たちの姿は見当たらない。

疑問を感じて振り返り――そこで初めて彼女は戦慄した。

所長以下、研究者全員が自分に笑みを向けていたのだ。


「あ…………」

「さ、扉を閉めなさいねぇ」


ガチャン!と大きな音を立てて頑丈な扉がロックされる。

逃げられないと彼女が悟った時、すでに事態は手遅れだった。
667 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:52:19.30 ID:0HGeB+gm0

「さてさて、どうしましょうかぁ?」

「こんな事をして……正気ですか!?」

「黙りなさいねぇ!」


所長の掌が、彼女の頬を張り飛ばす。

想像以上の力で引っぱたかれた彼女は、壁に寄りかかるまでフラフラと後退した。


「私達の邪魔をするなら、それなりの報いを受けてもらわねばねぇ?」

「ひっ……」


逃げられない密室の中。

恐怖に震える彼女を、所長は楽しそうに壁に押し付けて。

彼女が流す涙を舌でベロリと舐め取った。

668 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:52:53.02 ID:0HGeB+gm0

「成人女性のサンプルは、この街ではそれなりに貴重ですしぃ」

「いや、いや」

「体中をバラバラにしてあげましょうかねぇ」

「ああ、でも彼女は出向した役人でした……隠蔽はどうしましょうかぁ」


彼女は愕然とした。

ここで死ぬのか。

彼女は絶望のあまり声も出ない。

目を堅く閉じ、これが現実ではない事を祈るだけだ。








「ぎゃはは! そうだな、研究所が丸ごと焼失しましたってのはどーよ?」





669 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:54:45.39 ID:0HGeB+gm0

ザワリ、と一瞬で空気が変わった。

この場にいるはずの研究者とは明らかに異なる声色に、彼女がそっと目を開ける。

そこにいたのは――派手な刺青を顔に施した白衣の男。

閉じられたはずの扉が、何故か音も無く解放されていた。


「中にいる職員共々、真っ黒焦げになりゃーイイだろ?」

「お前……木原数多!?」

「ハイ正解。ご褒美にテメェは、焼殺から銃殺へランクアップだぜ」


誰も反応できなかった。

パシュ、と信じられないほど小さい音がして、白衣の男の名を当てた研究者が崩れ落ちる。

突然の惨劇に、所長が泡を食って怒鳴った。


「な、何故お前のような人間がここにいるのだぁ!」

「んな事も分かんねーのか無能。じゃあそのまま死ね」


パシュ、パシュ、パシュ。

連続して銃弾を撃ち込まれた所長は、そのまま何も分からず死亡した。

それだけではない。

周りにいた研究者全員が、流れに沿うかのごとく次々と額を撃ち抜かれた。
670 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:55:47.47 ID:0HGeB+gm0

「あーあーあー。ついつい全員サービスしちまったじゃねーかよオイ」


弾もったいねーなー、と頭を掻く木原。

やがて木原は、唯一生きている彼女に目を留めるとキョトンとした。


「おや、気ぃ失ってなかったか。面倒が1つ減った」

「え、え、え?」


彼女の脳の情報処理能力が限界を軽く超えて、状況把握が不可能なだけなのだが、木原は全く気にしない。


『木原さん、施設内の制圧完了です』

「遅ーよ間抜け。死ね。とっとと研究所に火を点けろ」

『了解』


部下との通信を終えた木原が、彼女に声をかける。


「おい。死にたくないなら歩け。それとも愉快な焼死体になるか?」


それが、ヴェーラと木原数多の最初の出会いだった。
671 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/01/31(月) 02:56:49.51 ID:0HGeB+gm0

今日はここでおしまいです

有言不実行に定評のある私を、どうかお許しください

ちょっと思ってた以上にヴェーラを絡ませたくなって、過去の捏造までしちゃいました

ほとんどオリキャラみたいで申し訳ないです

次こそベーシックのターン(予定)です

では、おやすみなさい
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 03:19:24.97 ID:RUJkyA0to
おやすみさん
乙です
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 10:16:51.39 ID:Ro1pn7Vf0

なんだコレ
木原くンがヒーローみたいじゃね?
惚れちゃいそうだぜ
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 10:35:11.67 ID:56OTsECAO

そらヴェーラも惚れるわ
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 13:46:45.38 ID:VF6/VzRAO
本人に助けたつもりは無いだろうし、あってもついでだろうけど
これは惚れる
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 18:45:22.81 ID:C2Nv65BAO
ヴェーラはエリートだったのか
これは日本政府の参戦フラグ……?
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 01:31:34.00 ID:kt3WW6sAO
民主党VS猟犬部隊
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 01:45:12.02 ID:x7rPmjOSo
数秒で霞が関が血の海になって終わりだ

そして学園都市が日本国を乗っ取り、国民全てが能力者または研究者の究極の理系国家へと……
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 01:59:45.27 ID:Te4FBggFo
そこまでいくとどこまで情報封鎖出来るか疑問だな
それに魔術側に開戦の口実を与えかねんだろう
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 12:17:07.07 ID:fEJ7qyu40
C文書、日本政府、猟犬部隊、聖人クローン……ふむ
木原くンの躍進はどこまでいくのやら

個人的にはアレイスターの居ない統括理事会が気になるな
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 21:53:46.69 ID:a3F/DAwAO
確かに、何でアレイスターが居ないのかは重要っぽい。
死んだのか、あるいは隠れているのか?
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 00:11:19.39 ID:tCNrJk0qo
アレイスターがいないって事は、原作のプランがいくつか行われていないって事になるのかな?
果たしてこの街には幻想殺しは存在するのか…

個人的にはサラっと出てきてサラっと死んだ亜雄くんの方が気になるわww
やっぱクローン計画に躓いてさっさと暗部落ちしたのかね
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 01:12:36.35 ID:wCG4FMNno
そういや天井死んで一通さんの計画とかどうなってるんだろ
日付的には美琴とアイテム戦の真っ最中のはずだけど
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 01:20:46.16 ID:Tpy3Z1NCo
☆が死んでる時点で大幅に歴史は変わってると思うからどうなってるとも想像できるよな
出てこない事考えると学生連中は平和を享受してるんじゃないかと思う
事件が自分達の認識外でしか起こってない事で彼らが介入して来る余地を無くしてる的な意味で
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/02(水) 01:22:53.49 ID:WT17NuSB0
レベル5の量産計画頓挫して、そのままレベル6シフト計画が始まらなかったっていうのが無難だろうな
つまり一方さんのお供は缶コーヒーのみ…
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 22:27:38.15 ID:ahfr+qKoo
ウルトラマンウェアがあるじゃないか
687 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:03:36.73 ID:a4TAB2T60

こんばんはー、レスに感謝です

アレイスターについては言及を控えさせてもらいます(つまり、察してください……)

では、投下


8月19日午前10時30分、『猟犬部隊』32番待機所


「その後本来なら、私は記憶を消された上で帰される予定だったみたい」

「……それが、何故『猟犬部隊』に?」


ヴェーラの過去を聞いた木山が、心底不思議そうに問いかけた。


「護送中の車内から見た景色が、違うのよ」

「?」

「それまでまともな生活をしてきた私は、正義ってヤツを無邪気に信じてきた」
688 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:04:49.66 ID:a4TAB2T60

まるで脈絡のない言葉を並べるヴェーラに、木山は無言で続きを促す。


「正しい事をしている自分が、理不尽な目に遭うはずが無いって考えていたの」

「でも、それは大きな間違い」


残っていたコーヒーを一気に飲み干し、ヴェーラは淡々と述べる。


「あの研究所で、私の正しさは無力でしかなかった」

「そう。あの場を征服したのは、木原さんの鮮烈で圧倒的な悪意。私の正しさなんてゴミ以下の価値しかなかったわ」

「……そう思ったら、今までの世界が急に色褪せて見えて」


窓の外を見て愕然としたわ、とヴェーラは笑う。

そんな彼女に対し、木山はかける言葉を見つけられなかった。


「それ以来私は、世界がモノクロでしか見えない。唯一色鮮やかのは……あの人だけ」

「……」


何を馬鹿な。詩人のつもりか。あの男の本性を知っているはずだろう。

頭に浮かんだそんな言葉を、木山は最後まで口に出せなかった。
689 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:06:34.70 ID:a4TAB2T60

代わりにたった一言。


「それで……君は全てを捨てたのか?」

「ええ。木原さんに頼みこんで、『猟犬部隊』の一員にしてもらったわ」

「あの人は、すぐに研究所に偽の焼死体を用意したの。だから私は、書類上とっくに死んでるって訳」

「……」

「随分話が長くなっちゃったけど、これが木原さんについて質問をした理由よ」

「……その……君は……今も?」


不器用な木山の質問の意図を、ヴェーラは正確に把握した。


「ええ。今も、そしてこれからもずっと」

「――私は木原さんが好き。あの人の為に生きているの」


それは、今まで木山には見せた事のない笑顔だった。

無邪気で、なのにどこか妖艶な。

恋する女性のソレだ。
690 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:07:37.69 ID:a4TAB2T60

「しかしあの男は……」


あの木原が、他人に恋をしたり……ましてや愛したりするだろうか。

絶望的な未来しか想像できない木山が、ヴェーラに待ったをかけようとする。

しかしそれは、突然の轟音により阻まれた。


ゴキ、メキャ、ズン!!

形容しがたい破壊音が、隣の戦闘訓練所から響いたのだ。


「一体何が……!?」

「行ってみましょうか」


急いで2人が訓練所へ向かう。

微妙に歪んだ扉を開けると、そこにはぺこぺこと頭を下げる『管理個体』がいた。

その顔は真っ赤で、良く見ると涙目になっている。
691 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:08:40.89 ID:a4TAB2T60

「申し訳ありません。べーしっくがご迷惑をお掛けしました」

「いや、気にしなくていいよ。それより怪我は?」

「ありません」


木山が怒らなかったので、少しほっとしたように答える『管理個体』。

その元気そうな様子を見て本当に怪我は無いと判断した木山が、寮監に何があったのか尋ねる。


「それで、何事かね?」

「はい。一通りの肉体制御訓練を終えたので、ちょっと遊具で遊ぶ事にしたのですが……」


ちらりと寮監が横に目をやる。

そこには、原形を留めないほど粉砕された積み木が散らばっていた。


「この子が悪い訳ではない。すこし興奮した所為で、有り余る力を制御できずに積み木を握りつぶしてしまったんです」

「……ああ、なるほど」


ここに来て早一ヶ月近く。非常識にも慣れた木山が、静かに頷いてみせる。
692 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:09:31.48 ID:a4TAB2T60

「それでショックを受けたこの子が、癇癪を起して積み木セットを……扉へぶん投げたんです」

「あの轟音の正体は、それだったのか」


納得した木山が、気遣うような目を少女に向けた。

幾らクローンとは言え、『管理個体』はまだ幼い。

思うように遊ぶ事すら無理という状況では、イライラの1つや2つは仕方ないだろう。


「迷惑をかけてすまないね……」

「仕方ありません。事情はともかく、この子を放置するのは確かに危険です」

「……力の御し方を学ばなければ、遠からず“この子が”壊れてしまうでしょう」


頭を下げた木山に、寮監が柔らかな声でそう告げた。


「乗りかかった船です。大丈夫、遠からず制御方法は……」

「あの」


寮監の言葉を遮ったのは、他でもない『管理個体』だった。
693 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:10:42.62 ID:a4TAB2T60

「ますたーはどこですか?」

「……木原数多の事を言ってるのかね?」

「はい。べーしっくは、ますたーに会いたいです」

「…………」


何とも言えない沈黙が、室内を包み込んだ。

それを破ったのは、寮監の特大の溜息である。


「……はあ。そう言えばあの男、何故か昔から子供に好かれやすい性質だったな」

「まさか」

「本当ですよ木山先生。あれが顔に刺青をした理由を知っていますか?」

「いいや」

「懐いてくる子供が鬱陶しいから、だそうです」


一般的な子供(某第1位含む)には効果があった刺青も、特殊な成り立ちの『管理個体』には通用しなかったらしい。


「それで、ますたーはいつごろ帰りますか?」

「確かあの人は、統括理事会や他のお偉いさんと会談があるって言ってたけど……まあお昼には帰るんじゃないのかな」


ヴェーラのセリフを聞いた『管理個体』は、にぱあ、と笑顔を見せる。


「ではべーしっくは、それまで良い子で待ちます」

「……ああ」


一体、あの男のどの辺に子供が懐く要素があるのか。

ある意味では魔術よりも遥かに難しい問題に直面した木山は、頭を疑問符で埋め尽くす事になった。
694 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:11:51.04 ID:a4TAB2T60

同時刻、とある場所


その時木原がいた“とある場所”では。

この学園都市には似つかわしくない、レトロな黒電話が使用されていた。

当然ながら、使用者は木原数多その人だ。


「――なるほどな。本気で言ってんのか?」

『ああ。“俺様と組め”木原数多』

「交渉するなら、メリットを提示しろよ」

『やれやれ、俺様を試そうとしてるのか?――ローマ正教最暗部、神の右席のトップたるこの俺様を?』


電話の相手は、先の会談において書記官の仮面を被っていた男。

ローマ正教の実質的なナンバーワン、『右方のフィアンマ』だ。


「……」

『なあ木原数多。この俺様が、お前の仕掛けた策を見抜けていないとでも?』

「……」
695 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:13:15.20 ID:a4TAB2T60

『お前の計画に必要なモノを、俺様は用意出来る。そして俺様の計画には、お前達が役に立つ』

「……ローマ正教を裏切る気か?」

『ローマ正教などどうでも良い。まぁ、もっと広い意味での十字教社会の事を考えていないと言えば嘘にはなるが』


一瞬の、奇妙な空白。


『基本的には俺様の行動は俺様のためのものだよ』

「そうか、なら問題はねぇ。これでようやく“良好な関係”が築けそうだな?」


科学と魔術。

彼らは互いに正反対の世界にいるにも拘らず、どこか似通った精神構造をしている。


『ああ。とりあえず10件ほど、適当な魔術結社の人数と拠点を教えておこう。好きにすると良い』

「……策を見抜いているというのは、ブラフじゃないらしいな」

『愚問だ。“収穫”を楽しみにしている』

「ああ、精々カミサマに成功を祈っておくんだな」


話は終わったと判断して、木原が電話を切ろうとした。
696 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:14:11.34 ID:a4TAB2T60

『ああ、一つだけ伝え忘れていた』

「へー?」

『俺様と電話していて、満足にニュースも見てないんじゃないか?」

「……」

『――この時間の“トップニュースを見ておけ”よ。ローマ正教の強硬派は、すでに行動を開始している』

「……わざわざ丁寧に警告か」

『何しろ学園都市と言うせっかくのオモチャだ、耐久性はチェックしないとな?』


会談の時とは真逆の状況。

不穏な言葉を手土産に、今度こそ通話が終了した。


「…………」


無言になった木原が、部屋にあるやはりレトロなブラウン管のTVを点ける。


「……世界規模のデモ、ね」


そこに映し出されていたのは、科学サイドへの歩み寄りに抗議する群衆だった。
697 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:15:39.23 ID:a4TAB2T60

それも小さなものではない。フランスやドイツを始めとする、ヨーロッパ各国で行われている大規模な抗議活動だ。


(これをローマ正教が引き起こした?)

(つまり、人々の思想を操る魔術、あるいは霊装が存在すると?)


学園都市の人口は、およそ230万人。

ローマ正教の信徒は、およそ20億人。

単純な数で言えば、戦力差は比較にならないだろう。

だが、話はそう簡単ではないのだ。

そもそも木原が相手にしているのは、『魔術師』であって『十字教徒』ではない。

だからこそ彼は、先の会談を報じる事でローマ正教という『十字教組織』を抑え込んだ。

魔術と宗教を明確に分離させることで、敵を絞る為に。


(連中は、その逆を狙った)

(十字教徒を戦力として取り込むことで、学園都市を追い詰める気だ)


そしてその目論見は、大規模なデモ活動という形で実現しつつある。

この状態が続くなら、いずれは学園都市の経済活動が成り立たなくなるだろう。
698 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:16:36.47 ID:a4TAB2T60

そこまで考えた木原は。


「はっ、間抜けのアイディアはこんなもんかよ!」

「……クソ下らねェ」


心の底から、相手を嘲笑った。


(魔術サイドは“裏側”にいてこそ意味がある)

(それなのに、こうやって“表側”へ大々的に干渉しちまった)

(その時点ですでに半分負けてんじゃねーか、ゴミ共が)


十字教との戦争すら考慮してある木原にとって、この事態は予測の範疇だ。

すでに統括理事会も、超音速ステルス爆撃機等の各種兵装を準備している。


(さて、どーするべきか)


この事態に対処するには、まず相手がどのようにこの状況を作ったのか見破る必要がある。

しかしそれも、“彼女”なら問題はないはずだ。


(いっそこのまま、統括理事会がビビるほど追いつめてくれると嬉しいんだけどなぁ)

(その方が研究が捗りそうだし)


そんな事を考えながら、木原は宇宙に浮かぶ“とある衛星”に思いを馳せた。
699 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:17:44.28 ID:a4TAB2T60

同時刻、『才人工房』


学園都市内で、物資の運送を請け負っている業者は数少ない。

何故なら、学園都市の性質上“外に漏れてはいけない重要物品”を頻繁に扱うからだ。

厳しい審査や監視があるので、必然的に業者は限られてくる。

そんな業者の中でも、とりわけ機密度の高い仕事ばかりを請け負う会社。

運搬があった事実すら隠蔽するようなとある業者が、大量の荷物をこの研究所に搬入していた。

彼らはその荷物の中身も、届け先の事情も、決して知ろうとはしない。

極めて機械的な動きで荷物を倉庫に積むと、そのまま無言で立ち去った。

そして。

業者が姿を消してからピッタリ1分後。


「……」

ぞろぞろと現れた神裂のクローンが、荷物を開けて確認作業を開始する。

彼女達が開封した荷物の空き箱には、取扱注意の文字と共に。




――『発条包帯(ハードテーピング)』 と、書かれていた。

700 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/04(金) 01:18:17.06 ID:a4TAB2T60

今日はここまでです

木原くンが子供に好かれやすいとか、刺青を顔にした理由とかは全てねつ造です

次回はインデックス、そしてアステカ組のターン(予定)です

では、おやすみなさい
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 02:06:06.68 ID:aIVzQHszo
おつおつ
そういえば右手の怪我はもう大丈夫?
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 07:19:28.24 ID:VTWNtrqvo

管理個体ちゃんかわいいです
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/04(金) 08:53:21.60 ID:cSiMtonM0

発条包帯でクローンを強化するのか!考えてあるなー

木原くンの刺青理由には爆笑したわwwww
子供に好かれやすいとか、意外すぎるwwww

704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 12:25:41.08 ID:QuOXLA6AO
フィアンマと木原くンが手を組むとか胸熱だな
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 19:42:48.07 ID:Y63gK9CSO
べーしっくちゃんマジ天使。
そして次回のインさん達の話に超期待。
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/05(土) 08:48:36.23 ID:JXjZHTPW0
ロリと科学者とか俺得すぎるwwww
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/05(土) 16:17:07.93 ID:9EDIXOEAO
乙です
統括理事会にも死亡フラグが……

そろそろツリーダイアグラムの出番かな
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/05(土) 18:10:47.67 ID:bNbYb1fDO
次回久しぶりにショチトルが見られると聞いて
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/05(土) 20:30:00.94 ID:rahwbWLZo
意表をついて一話まるまるテクバトル(屍)オンステージ
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 12:06:06.48 ID:X3ezPfuK0
ヴェーラのフラグがヤバイ
マイクとヴェーラにそれぞれ掘り下げがあったから、ナンシーにも期待
そしてベーシックがかわいい
711 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/08(火) 02:01:31.67 ID:4J8QApEv0

こんばんはー、レスありがとうございます

では、投下


8月19日午前12時00分、『猟犬部隊』32番待機所


もしかしたら、想像出来ない光景かもしれない。

彼らを知っているものなら、尚更に。


「うん、美味しいんだよ! この唐揚げがもっと欲しいかも!」

「ちょっとは遠慮しろ、クソガキ」

「むー。そういうあまただって肉ばっか食べてると思うけど!」

「あの……べーしっくも……もうちょっと欲しいです」

「……ん」


大皿に乗っている唐揚げを、木原が3つほど『管理個体』の皿に取り分ける。

それを見て怒り心頭になったのはインデックスだ。


「な、何でベーシックには甘いのかな!?」


キーキーと怒る彼女だが、右隣に座っていたエツァリが唐揚げを渡したことで機嫌を回復させた。
712 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/08(火) 02:02:39.98 ID:4J8QApEv0

「ありがとうなんだよ、エツァリ」

「いえいえ。他に何か食べたいものはありませんか?」

「えーと、そっちの海鮮サラダが食べたいな!」

「はい、どうぞ」


ニコニコ顔でサラダを持ってくるエツァリに、ショチトルが静かに声をかける。


「エ、エツァリ。その……私にも少しくれないか?」

「分かりました。ではお皿を出して下さいショチトル」


エツァリとインデックスの話が終わったので、彼女の左にいるステイルがここぞとばかりに酢豚を差し出した。


「インデックス、こっちも欲しいだろう?」

「あ、それも大好きなんだよ!」

「良かった。たくさん食べてくれ」



「…………何なの、この空気」

「知らん」


この場にある大量の料理を作ったナンシーの独り言に、向かいに座るマイクがそっけなく返答。
713 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/08(火) 02:03:46.22 ID:4J8QApEv0

そう、彼らは完全無欠に昼食中だった。

意外に思うかもしれないが、『対魔術師用特別編成隊』は基本的に全員で食事を取る。

その為、待機所の食堂は賑やかなものとなっていた。

現在ここに居ないのは、研究が大詰めを迎えてフィーバーしているテレスティーナだけだ。

※木原が帰ってきたため、寮監は帰宅している


「木山センセ、そこの塩取ってくれる?」

「これか」

「ありがとー」

「しかしヴェーラ、私を先生と言うのは止してくれないか」

「えー。じゃあ木山ちゃん?」

「……もういい。好きに呼びたまえ」


各自バラバラに食事をしないのは、敵対勢力を警戒しての事だ。

魔術師と戦っている以上、いつ攫われたり入れ替わったりされるか分からない。

個人行動を極力減らすことで、その危険性を避けようというのがその理由である。
714 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/08(火) 02:04:26.74 ID:4J8QApEv0

――ただし、これは建前だ。

実際はもっとシンプルな理由が存在している。

すなわち、インデックスに外食させていては無駄に資金が吹っ飛ぶから。

どうせなら全員で揃って食事をして、時間の無駄を省きたいと言うのもある。

故に彼らは、食事を当番制で用意しているのだ。



ちなみに。

リーダーの木原は、肉以外を決して料理しようとしなかったので当番から外された。


715 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/08(火) 02:05:41.35 ID:4J8QApEv0

8月19日午後4時00分、学園都市統括理事会


――『あの異端児、随分と面倒な事をしおって。幾らの経済損失を被ると思っておる!』

――『ふむ。しかしこのデモは、些か不可解と言わざるをえないだろう』

――『その通りです。わたくしはあらゆる角度から大衆心理分析を行いましたが、この抗議活動は不自然極まりないと結論付けます』

――『んで、どーするよ? 一々叩き潰すのは手間だぜ』

――『……面倒はキライ……』

――『それについては、木原数多から報告がある』

――『ほう。打開策を提案してきおったか?』

――『現刻から72時間以内にこの状況を改善する、と』

――『なに……?』

――『本気なのか?』

――『実に面白いですね。わたくし達は静観していろと言う事でしょうか』

――『ただし、条件があるらしい』


木原が提示した条件を、統括理事会の一人が読み上げる。

その条件を認めるか否か、彼らは1時間ほど悩んだ。

そして、結論が出る。


――『じゃあよォ、この提案を承諾するっつー事でいいな?』

――『異議なし』

――『異議なし』

――『異議なし』

――『異議なし』

――『異議なし』

――『ここに統括理事会の合議が成立した。異端児の成果を期待するとしようかの』
716 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/08(火) 02:06:49.47 ID:4J8QApEv0

8月19日午後2時00分、『猟犬部隊』32番待機所


統括理事会が会議を開く2時間前。

会議室に呼び集められたのは、インデックスやエツァリ、ショチトルにステイルといった魔術師だ。


「やっぱり、今回使われている霊装は……『C文書』の可能性が一番高いんだよ」


木原から事の次第を聞いたインデックスは、ハッキリそう言った。


「教皇が宣言したことを強制的に『正しい』と信じさせる。それこそ信じられねぇ話だな」

「む、疑うの?」

「まさか。それぐらい出鱈目なモノじゃなきゃ、今回の不自然なデモは説明出来ねーよ」


感心したように言う木原を、黙っていたショチトルが睨みつけた。


「それでどうするのだ? C文書はバチカンに設置して使う霊装なのだろう?」

「……」

「まさかこの状況で、再びバチカンへ行く気か?」

「……それなんだけどよ」




「本当に、C文書は“バチカンだけ”でしか扱えないのか?」


717 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/08(火) 02:07:54.75 ID:4J8QApEv0

木原の問いかけに、インデックスはどういう事?と首を傾ける。


「あのローマ教皇の態度を見る限り、こんなデモを起こすとは考えにくいだろ」

「それは……」


バチカンで対峙した時、ローマ教皇はどんな態度だったか。


――「止まってもらおうか。貴様をこのまま放置しておけば、いずれ大きな災厄となるだろう」

――「貴様の身柄を拘束し、学園都市統括理事会との交渉材料にする。私は争いを望まない」


(そうだ。学園都市を潰す為に信徒を利用すると言うのは、ローマ教皇の行動パターンと一致しない)

(それにあの会談からわずか2日しか経ってねぇ)

(うんざりするほど大勢いる枢機卿の意見が、こうも早く纏まるとも思えねーし)

(恐らくは、そういう正規のルートを飛び越えたところでこの霊装は使われた)

(じゃなきゃこのスピードは説明がつかないしな)

(それが出来るのは、間違いなくあの『フィアンマ』とか言う奴の同類だろう)

(……可能性としちゃ、十分考えられる)


そこまで考えた木原は、インデックスにこう問いかけた。


「なあ、仮にC文書をバチカン以外で扱うとしたら、どこが考えられる?」


アビニョンの名が挙げられたのは、それから10分後だ。
718 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/08(火) 02:09:11.37 ID:4J8QApEv0

さらにそれから30分ほど費やして、木原は自らの考えの裏付けを取った。

アビニョン周辺の航空写真、物資の移動記録、バチカンからの渡航記録等。

それらを分析した結果、木原はC文書がバチカンではなくそこにあると判断する。


「完成したクローンの初陣に丁度いい。世界を混乱させるローマ正教の野望を、打ち砕こうじゃねーか」

「しかし、堂々と兵士を――それもクローンを――フランスへ送り込むなど不可能では?」


エツァリが疑問を呈する。

それに同意して、ショチトルも首を縦に振る。


「エツァリの言う通りだ。あの地域は今も暴動が続いているんだぞ」

「いやいや、そこは学園都市ならではのやり方があるから心配すんなって」

「……?」

「俺は、今学園都市を出る訳にいかないから……作戦の指揮をマイクに任せよう」

「エツァリとショチトルは、同行して指示に従え。いいな?」


こうして、『アビニョン攻略作戦』が始まった。
719 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/08(火) 02:10:19.69 ID:4J8QApEv0

8月19日午後6時00分、同時刻、天草式十字凄教のとある拠点


「教皇代理、全ての準備は整いました」

「……そうか。なあ対馬、俺は今でも信じられんのよ」

「私もです。まさか、あの方が……我らの女教皇が、殺されたなどと……!」


その言葉を聞いて、教皇代理と呼ばれた男が拳を握る。


「この身を焦がすような怒り、抑えようにも抑えられんのよな」

「はい」

「木原数多。この男だけは、俺の手で――」


その先を言う前に、天草式のメンバー50人が彼の前に姿を見せた。

同じ気持ちを抱く仲間を前にして、教皇代理――建宮斎字(たてみやさいじ)は厳然と告げる。


「行くぞ。我らが敵の待つ、学園都市に」
720 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/08(火) 02:12:44.08 ID:4J8QApEv0

同時刻、胤河製薬学園都市支店


統括理事会の許可を得た木原は、木山を連れて製薬会社を訪れた。


「何故、私まで連れてきたのかね?」

「ここにはよぉ、木山ちゃんが会いたい人間がいるんだわ」

「……誰の事だい?」

「もーすぐ会えるから、ちょっと我慢しろって」


はぐらかされた木山は、大して期待もせずに木原の後に従う。


(どうせ、教え子に再会させるつもりもあるまい)

(この男に期待したところで、裏切られるのが関の山だろうしな)


そんな事を思っていると、やがて2人は研究棟の地下3階へ到着した。

不可解な事に、そこはまるで牢獄のように鉄格子が一面に並んでいる。


「なんだここは? まるで牢屋じゃないか」

「大正解だぜ木山ちゃん。ここは悪人を閉じ込める牢屋なんだよ」


その時だ。

フロアの一番奥。頑丈な鉄格子の向こうから、場違いに楽しそうな声が届いたのは。


「おや、まさか君が来るとは……会えて嬉しいよ、木山君」


そのおぞましい声を聞いて、木山は失神するかと思った。

自分にとって、絶対に忘れられない人間の声。

全ての悲劇の発端が、そこに監禁されて笑っている。



「き、はら、幻生――!?」
721 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/08(火) 02:13:22.12 ID:4J8QApEv0

今日はここで終わりとなります

次回からは『アビニョン遠征組』と『学園都市残留組』に分かれます

交互に書いて行くつもりですが、残留組の方が比較的出番多めかもしれません

では、おやすみなさい
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 02:29:02.66 ID:TtxhzlNDO
乙っす!
絶対等速さん責任重大だな。頑張れ
そしてついに来たか天草式。管理個体は残留かな?遭遇時が楽しみで仕様が無い
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 02:31:37.10 ID:B6CGb5m3o
絶対等速さんの過去エピソードからの強化にはマジ惚れるでえ
あと統括委員会がなんとなく怪しい 今まで委員会は流し読みしてたけどなんか怪しい人がちらほらいる
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 02:41:40.31 ID:2PvykqcUo
天草式対量産型ねーちん来るのかな
オラワクワクしてきたぞ
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 02:59:48.58 ID:sK2WYiS7o
今更だけど統括理事にレベル5が数名紛れている気がする…
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 06:55:20.53 ID:d/JTgeI3o
予想厨はマジで死んだほうがいい
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 07:05:03.34 ID:TECgUg5Lo
先回りのネタ潰しも程々にしておくべきだにゃー
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 08:15:14.55 ID:HkgW4hTJo
こんだけ予想が当たらないSSも珍しいけどなーww
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 12:17:43.37 ID:G/JF8fSSO
肉料理しか作らない木原くンのご飯食べて肉しか食べなくなったチビセラレータ想像して悶えた
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:14:45.91 ID:rfghDF9AO
ほのぼのした食事風景にメチャクチャ和んだ
と思いきや幻生が出たりするから、このSSは油断できない
とにかく続きが楽しみ
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 08:15:36.19 ID:/Vw6zzNIO
そういえばここのインデックスは皮を剥がれたままなんだよな?
学園都市の超技術で既に完治してるのか?
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 09:18:30.54 ID:AEoPs00K0
冥土帰しが木原の腕を治療してたし、インデックスも治ってるんじゃない?

っていうかここで天草式が出てくるのはヤバイんじゃないだろうか
過去作で素晴らしい天草式を書いた>>1の事だから、きっと凄いことになるに違いない
(主にシェリー的な意味で)
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 12:15:17.17 ID:VbcWrBjIO
全員爆散だと……
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 18:54:11.68 ID:CEj9rF6Mo
木原「ステイル、だいばくはつだ」
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 21:19:59.86 ID:IDZJuVT60
そげぶでどうにかなるような甘い世界じゃないな上条じゃ説教もさせてもらえず殺される
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 21:20:47.33 ID:pimHIeOlo
そういうのいいから
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 00:18:08.85 ID:COATEsA00
というか木原くンと敵対した時点で死亡エンドしか予想できないんだが…
木原くンはホンマ歩く死亡フラグやでえ・・・
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 00:36:46.17 ID:tal7zWyf0
>>737
その言い方だと「この戦争が終わったら結婚しよう」とか言ってる爽やかな木原くンが(ry
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 01:02:15.14 ID:J020aezAO
小さな一方通行の写真とか持ってたりするのか。

普段はクソガキとか罵ったり、
なついてくるのをウザがったり、
ろくなものを食べさせないけれど、
いざというときには「俺も一緒にいたかった」と……

あれ?
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 02:30:31.52 ID:mr6b79Cfo
なにその木原くン天使フラグ
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 08:51:16.06 ID:K/hob4Ouo
最新刊の天使通行の顔を木原くンにすげかえたコラを考えたけど
スキャナがないからできないわーマジできないわー
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 18:05:09.49 ID:X+UF17/W0
クワガタじゃ木原クンには勝てないな

テレスさん超頑張れ
743 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/11(金) 02:47:28.58 ID:xlxk0yiT0

こんばんはー、レスありがとうございます

では、投下


8月19日午後6時10分、胤河製薬学園都市支店


以前も記した事ではあるが、ここでもう一度言及しておこう。

かつて学園都市において、1つの実験が行われた。

置き去りに『能力体結晶』を投与するという、統括理事会肝入りの実験である。

結論から言うと、その実験は失敗した。

被験者である子供達の能力が暴走を起こし、彼らは意識不明の重体に陥ったのだ。

その悪名高き実験を主導していたのが、木原幻生。

木山の直属の上司だった彼は、実験の失敗後行方が分からなくなっていた。

木原数多率いる『猟犬部隊』によって捕えられ、ここに監禁されている事など誰も知らない。


「懐かしい……本当に懐かしいよ木山君。それに噂では、随分と興味深いシステムを開発したそうじゃないか」

「確か『幻想御手』と言ったかな?」


そう確認する幻生の顔は、ニコニコと楽しげだ。
744 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/11(金) 02:48:42.40 ID:xlxk0yiT0

だがしかし、それは木山にとって警戒心を高めるだけである。

なにしろ彼はその笑顔を、あの実験直後の惨劇を目の当たりにしても浮かべていたのだから。


「よくもそんな顔をしていられる……!」

「落ち着けよ木山ちゃん。そんなにムカつくなら後で殺していーからさ」


激昂する木山を、木原がダルそうに押しとどめた。


「だからちょっと待ってろ。まずは、このじーさんに会いに来た用件を済ませねーとな」

「おやおや。随分と偉くなったようだねえ、数多?」

「黙ろうかクソジジイ。いい加減自分の立場を把握しろや」


幻生は、『木原一族』の中でも中心的な人物だった。

数々の輝かしい功績を手中に収め、多くの役職を兼任している、言わば学園都市の重鎮である。


「ほほう、立場ね。確かに、今となっては私の生死を握っているのは君だろう」

「いやはや……まさかこの私が、一族の異端児に裏切られるとは思ってもみなかったよ」
745 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/11(金) 02:50:01.02 ID:xlxk0yiT0

笑顔は変わらないのに、幻生の声だけがどこか毒を含むものへと変貌した。

それを正面から受け止めた木原は。


「そーかい。そりゃ残念だったなぁ」


淡々とそう言い返して、相手にしなかった。


「手っ取り早く用件だけ言うか。テメェの肩書が必要だ――U.E.G.F特殊客員教授の肩書がな」


U.E.G.Fは、その正式名称を『United European Gastroenterology Federation』と言う医療専門家の非営利組織だ。

名前の通り、ヨーロッパ各地で消化器系疾患の治療研究を行っている。

そして幻生は、学園都市代表としてその臨床研究に参加していた事があった。


「テメェの肩書を使えば、フランスへ“研究設備や医療物資”を怪しまれずに輸送する事が出来る」

「大規模な暴動が起きているあそこにアイツらを送り込むなら、この方法が一番確実だ」


つまりは、偽装。

いかにローマ正教がネットワークを張り巡らそうと、畑違いの医療組織にまで目を届かせる事は不可能である。

そして万が一偽装工作に気付いたとしても、表だって攻撃をする事が出来ない。

救援に来た医療チームに手を出せば、ローマ正教以外の人間が敵に回るからだ。

これが木原の策である。
746 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/11(金) 02:50:50.63 ID:xlxk0yiT0

「ま、その無駄に集めた肩書を、精々有効に使わせてもらおうか」


返事を聞かず、木原は幻生に書類を差し出した。

本人による直筆の署名が必要だからだ。

それをチラリと横目で見ると、幻生はしばし逡巡する。

そして何故か、一瞬木山の事を見て――納得したかのように頷いた。


「好きにすると良い。私の興味を引く結果が出る事を期待しているからね」

「うぜぇ」


かくしてその日の夜のうちに。

『C文書』が眠るアビニョンを目指し、マイク率いる遠征部隊が出発した。


メンバー:マイク、ナンシー、エツァリ、ショチトル、クローン20体
747 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/11(金) 02:52:00.43 ID:xlxk0yiT0

8月20日午前4時30分、『猟犬部隊』32番待機所


翌日早朝、新たな侵入者が現れたという報告が木原の元に届けられた。

その人数は約50名の大所帯。

これまでにない侵入規模である。

しかも不可解な事に、侵入者はこの学園都市内に広く散らばり、その行方を眩ませたのだ。

人工衛星による監視は続けられているが、現在居場所を把握している侵入者は半分にも満たない。


(恐らくは、下水道を始めとする地下ブロックへ身を隠して移動しているんだろうが……)

(少しばかり面倒な事になったな)


木原が厳しい顔をするのは理由がある。

彼は基本的に、相手の情報を出来る限り入手し分析してからでなければ戦おうとしない。

インデックス、シェリー、エツァリ、神裂、そしてバチカン訪問。

全ての戦いにおいて、彼は事前の準備をしてから事に当たった。

その用意周到さがあったからこそ、これまでの作戦が思い通りに成功している。

だがしかし、侵入者の情報が得られないのでは適切な準備が行えない。
748 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/11(金) 02:52:44.78 ID:xlxk0yiT0

(あの聖人と戦った時のように、警備員に通報するか?)

(いや、見つけ出す事は出来ねーだろうなぁ)

(ゴーレム使いやステイルの時とは違って、奴らは自分の力を誇示しない)

(つまり各個人にそれだけの戦闘能力は無え)

(そしてその事を、奴らはしっかりと認識していやがる)


自分の力を正しく理解し、かつ冷静に行動できる敵は脅威だ。

挑発が通じず、驕りによる隙も見せない。


(……待てよ)

(そんな魔術師らしからぬ連中が、何故この時期にわざわざ侵入してきた?)

(ローマ正教とのニュースを見ているのなら、今学園都市と敵対する事がどれだけヤバイか分かっているはずだ)


本当に冷静に行動しているのなら、彼らは今ここに来るはずが無い。

その事に気付いた木原が、連鎖的に思考を働かせる。
749 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/11(金) 02:53:42.10 ID:xlxk0yiT0

(『C文書』を現在進行形で使っている以上、ローマ正教の差し金じゃない)

(イギリス清教……?)

(いや、それも妙だ。聖人を殺されたというのに、明らかにそれより劣る人材を派遣するとは考えにくい)

(そうなると残る可能性は)

(……この状況下でも、学園都市と敵対する理由がある第三勢力)


様々な可能性が、木原の脳裏に現れては消えていく。

インデックスの魔道書を狙った魔術結社――有り得るが、これだけ注目を浴びている今のタイミングで事を起こすとは考えにくい。

魔術サイドと科学サイドを引き裂こうとする工作員――すでに『C文書』が発動している以上、工作の意味が無い。

漁夫の利を狙う、学園都市の敵対研究機関――本当にその気なら、もっと事態が悪化するのを待ってから行動するはず。


(少しばかり脱線したか)

(にしても……コソコソとネズミみてぇに隠れながら、連中は何を狙っている?)


その時。

パチリ、と木原が驚いたように瞬きをした。
750 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/11(金) 02:55:11.17 ID:xlxk0yiT0

(狙い。そうか、狙いか!)


侵入者の目的。

インデックスの知識以外で、学園都市に来た理由とは何か。


(そもそも工作だの技術漏えいだのを狙うなら、人数がおかしい)

(これだけ慎重に姿を消すのなら、もっと目立たぬよう少人数で来るはず)

(つまり連中が目的を達するには、それなりに人数が必要って事だ)


それだけの人数を集めて、彼らは何を狙っているのか。


(さっき自分で考えた事ばかりだ。今までの魔術師よりも、こいつら1人1人の戦闘能力は劣ると)

(なら結論は明快だ。この大人数はそのまま、戦力の増加が目的だろう)


では、それだけの戦力で何をしたいのか。


(決まってる。ここまで慎重に行動する連中が、漠然とした目標で動くはずが無い)

(そう、ガキの知識以外で狙う価値が有り、戦力を必要とするのものは1つだけ)

(科学サイドにおいて、現状敵が標的とする人間は1人だけ)

(こいつらの目的は――)


(――この俺の命だ)


ならば、それに相応しい歓迎の準備が必要になる。

まるで友人が遊びに来たかのような気軽さで、木原は部屋を後にした。
751 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/11(金) 02:56:39.25 ID:xlxk0yiT0

同時刻、ロシア成教『現象管理縮小再現施設』


「……」


ローマ正教と学園都市の会合を報じるニュースを、無言で眺める1人の修道女。

いや、修道女と言うにはかなり個性的な格好をしているのだが。

ワンピース型の下着にも似たスケスケの素材と黒いベルトで構成された拘束服を着用し、その上から赤い外套を羽織り、リード付きの首輪をしている。

ハッキリ言って変態チックだ。

しかしこの服装は、彼女――サーシャ・クロイツェフの意思によるものではない。


「……」

「あれー、サーシャちゃんったらまたこのニュースを見てるの?」

「第一の解答ですが、その通りです。分かったら邪魔をしないで立ち去ってください」

「いやん、そんな冷たいサーシャちゃんもス・テ・キ」

「……」

「あ、相手にされていない!? くぅぅ……もう、こうしちゃうゾ☆」

「!?」
752 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/11(金) 02:58:06.32 ID:xlxk0yiT0

突然サーシャの背後に抱きついて、彼女の胸を容赦なく揉んだ女性。

その名をワシリーサと言う赤服の修道女は、サーシャの所属する『殲滅白書』のリーダーを務めている。

サーシャが拘束服を着ているのも、全てワシリーサの指示だ。

常日頃よりこの上司にセクハラをされているサーシャは、問答無用で金槌を振りまわした。

それで2,3発ほどワシリーサの頭を打ちすえて、彼女はため息交じりに問いかける。


「第一の質問ですが、あなたはニコライ・トルストイ司教様に呼び出されていたはずでは?」

「あんなジジィよりも、サーシャちゃんとお喋りする方がいいもーん」

「……第二の質問ですが、責務という言葉の意味を理解していますか?」

「むいーん」


答えになっていない返事をするワシリーサ。

さらに問いただそうとして、サーシャが口を開こうとする。

しかし、それよりも一瞬早くワシリーサがこう述べた。




「そんなことよりさー、一緒に日本へ“旅行”しに行かない?」



混迷する世界の流れは、未だその道すら見えていなかった。
753 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/11(金) 02:58:44.70 ID:xlxk0yiT0

今日はここでおしまいです

書いてる自分が言うのもなんですが、ちっとも終わりが見えてこない……

付き合ってくださる皆様には感謝でいっぱいです

次回は遠征組も書く予定です

では、おやすみなさい
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 11:17:30.28 ID:u298VwLAO

ワシリーサ参戦!?
さすがに木原くンまずいんじゃないか
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 12:05:31.15 ID:0bNSj687o
やっべおもしれー!!
乙乙ッ!!
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 17:59:10.18 ID:y3/8+FWto
乙でした〜
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 20:02:14.97 ID:LxoBFbuto
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:42:59.11 ID:3iLVjq8DO
乙ッ!
残留組の危険度が一気に跳ね上がったな。オラわくわくしてきたぞ!
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 12:04:08.36 ID:t/z4IeuAO
今アニメ見たら、幻生の肩書きってしっかり描写されてたんだな。
>>1はネタの利用方法がハンパなく上手い
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 12:09:53.81 ID:HmCXK1Tfo
かまちーが言うだけ言ってほったらかしたネタや終わったネタ、
もしくは可能性を秘めながら一定の用法でしか使われないネタをここぞと使ってくるなww
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 13:47:49.36 ID:qyx+ddDDO
まるで木原くンのような情報活用ぶりだな


はっ、もしかして>>1が木原くn
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 19:52:32.80 ID:06Iu6etIO
あれ、>>761が見えないんだけd
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 17:35:33.34 ID:5WRNFvMV0
>>761は猟犬部隊によって極秘裏に抹殺されました
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 16:57:40.12 ID:FmQj4tUw0
天草式逃げてー!!
765 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/16(水) 02:43:38.58 ID:gQSw72sE0

こんばんはー、レスに感謝です

投下速度が遅くなって申し訳ないです

では、投下


8月20日午後5時00分、アビニョン『教皇庁宮殿』近くの博物館


フランスは経度が高く、夏とはいえ日照時間は短い。

すでに日が落ちて辺りは真っ暗。

辺りで起きていた暴動も、ひとまず小康状態を保っている。

そんな時間帯での事。

U.E.G.Fの指示により運搬された『救援物資』が、辺りの病院が大量の負傷者で身動きが取れないという理由でこの博物館に届けられた。

勿論事実は違う。

が……それを知る者も、知ろうとする者も、この場にはいない。
766 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/16(水) 02:44:51.82 ID:gQSw72sE0

ガチャン!と無骨な音を響かせて、コンテナが次々に解放される。

油断なく辺りを見回して、リーダーであるマイクがその姿を現した。


「よし、作戦を開始する。あの人の言う事が正しければ、目標のブツは『教皇庁宮殿』にあるはずだ」

「分かってるわよ。……にしても、あの“お人形さん”は役に立つんでしょうね?」


そう疑問を呈するナンシーは、見慣れない迷彩服に身を包んでいる。

彼女だけではない。

マイクやエツァリ達全員が、第6軽機甲旅団隷下のフランス陸軍『第1外人工兵連隊』の格好をしていた。

要するに、アビニョンに駐屯しているフランス外人部隊に成り済ましているのだ。


「05号の疑問。お人形さんとは、我々クローンの事でしょうか?」

「06号より報告。全ての準備が整いました」


連れてきたクローン20人が、マイクの前に整列した。

彼女達は同一である顔を隠す為、すでにマスクを装着している。


「ナンシー、7人ほど連れて先行しろ。残った本隊は俺と一緒に宮殿を封鎖する」

「了解」


短く返事をすると、ナンシーは速やかに先遣隊を引き連れて出発した。
767 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/16(水) 02:45:53.94 ID:gQSw72sE0

本体に残っているエツァリが、静かに話しかけたのはそれから少し後だ。


「……ローマ正教の誇る『C文書』を、これだけの手勢でどうにかしようとするなんて……正気とは思えません」

「ふん。あの人は性質の悪い事に、正気でこう言う事を平然とやってのける人間だ」

「堪りませんね」

「ああ。けどな、それでも『猟犬部隊』を率いていられるのは――あの人が『絶対』だからだ。覚えておけ」

「努々忘れないように心がけましょう」


諦観したような微笑みを浮かべ、エツァリが肩をすくめる。

彼の手には、黒曜石のナイフが握られていた。


「すでに自分は大罪人です。最早、魔術の世界に居場所は存在しない」

「ならばこそ、足掻く甲斐がある。……行きますよ、ショチトル」


アステカの魔術師が、アビニョンの地を駆ける。

全てを失い、それでも残った希望に縋りつくかのように。
768 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/16(水) 02:47:11.69 ID:gQSw72sE0

8月20日午前9時00分、とあるデパートの清掃室


侵入者の居場所は依然として掴めない。

そんな中、“景品”である木原はとある人物の元を尋ねていた。

相手は『人材派遣(マネジメント)』と呼ばれる、裏稼業の紹介屋だ。

普段なら客に対し親しげな態度を取っているはずの彼は、現在ひどく怯えている。


「聞いてくれ。あ、アンタに盾突く気は欠片も無かったんだ!」

「おいおい、何言っちゃってんの。あのウスノロに傭兵共を紹介したのはテメェだろーがよー?」

「金の為だ! まさか、よりにも寄ってアンタとやり合っていたなんて想像も……」

「嘘はイケナイぜ? 情報に通じているテメェが、肝心の敵を知らなかったハズはねーよなぁ?」


天井を抱き込んだ、木原一族の人間。

あの時彼が揃えた傭兵は、全てこの『人材派遣』が提供していた。


「……どうか……頼む……!」


それを追及された彼の顔色は、すでに青を通り越して真っ白だ。

無様に震えるその姿を見て、木原はやれやれと首を振る。


「よし、じゃあタダ働きしてもらおうか。しっかり結果を出せば今回だけは見逃してやる」

「分かった、何でもする。何をすれば良い?」


その言葉を聞いて、木原はニヤリと口元を歪めた。
769 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/16(水) 02:48:22.04 ID:gQSw72sE0

同時刻、第7学区の地下街


大勢の通行人でごった返す地下街を、建宮と諫早が歩いている。

完璧に周りに溶け込んだ彼らは、通信術式を使って仲間と打ち合わせをしていた。


『教皇代理、やはり第7学区で大規模な戦闘があったのは間違いなさそうです』

「ほう……何か掴めたのか?」

『ごく僅かですが、魔術の痕跡を確認しました。多分これは、カバラの術式かと思います』


そう報告したのは、第7学区の駅前を調べていた五和と呼ばれる少女だ。

彼女は天草式の探知術で、シェリーとの戦闘場所を見つけ出したのである。

建宮は店を眺めるふりをして自然に立ち止まると、やはりそうか……と小さく漏らした。


『こっちの広場にも反応が。これはルーン魔術なんすかね』

『結構な力の持ち主だったみたいよ、このルーンの主は』


さらに広場から通信をしてきたのは、香焼という少年と対馬と呼ばれる女性。

やはり同じように探知術を使って、ステイルの繰り広げた戦いの場を発見したのだ。


「そうすると、やはりこの第7学区が一番怪しいのよな」

「うむ。対魔術戦闘が起きたこの学区を、重点的に調べればよかろう」
770 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/16(水) 02:49:41.00 ID:gQSw72sE0

建宮の言葉に、隣の諫早が同意した。

そして、決定的な言葉がもたらされる。


『教皇代理。……女教皇の……術式です』

「!!」

『駅前近くの小道で、発見しました……』


涙声でそう告げる少女、浦上の報告によって建宮の策は固まった。


「よし、対象区域を第7学区に絞れ。ヤツはここにいるとみて間違いないのよ。探査結界を張り巡らすぞ」

『応!!』


対象とした人物の動きを把握する術式が、散らばった天草式のメンバーによって組まれていく。

完全発動にはしばらく時間が掛かるが、この術式が完成すれば木原の居所は全て掌握可能だ。


(逃がしはしないのよな、木原数多!)


そして結論から言えば。

彼らはこの術式により、木原の居場所を突き止める事に成功する。

だが、ここは学園都市だった。
771 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/16(水) 02:50:51.00 ID:gQSw72sE0

8月20日午前9時30分、『猟犬部隊』32番待機所の入り口


それは偶然である。

ただし――極めて悪質な、最悪と言っていい偶然だ。

その時五和は、携帯ストラップとペットボトルを使って探査術式を組み上げつつ付近を捜索していた。

優れた魔術師でもある彼女が不意に感じたのは、極めて微細な違和感。

通常ならまず気付かないであろうその感覚に、彼女は足を止めた。


(これは……霊装のような……?)


五和が反応したのは、研究所で造られている『歩く教会』の魔力だ。

地下深くに存在している未完成の霊装。

そのごく僅かな力の漏れを、偶然にも彼女は察知してしまった。


(気のせい?……でも、一応確認ぐらいはしておこうかな)


ボロボロのペナントビルに偽装された『猟犬部隊』のアジトの扉を、そっと開ける。

無人のビルをしばらく探索した五和は、巧妙に隠された地下階段を発見した。
772 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/16(水) 02:51:32.55 ID:gQSw72sE0

(これって……)


『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を取り出して、五和は中へ進む。

残念ながらこの時、彼女は通信術式で仲間を呼ぶことを失念していた。

突然姿を見せた謎の隠し部屋に、注意が奪われてしまっていたのだ。


「……嘘みたいです」


ボロボロの外側とは対照的に、内部は極めて新しい設備が整っている。

そのあまりの変化に言葉を失う五和。


「あら、可愛いネズミちゃんがいるじゃない」

「!」


背後から聞こえた声に、慌てて五和は飛びのいた。

相手の姿を確認するよりも早く、彼女は槍を構える。


「あらあら、驚かせちゃった? ごめんなさいね」

「……」


五和に話しかけた女性は、とても友好的な笑顔を向けた。

しかし五和は、さらに緊張感を高めるしかない。

何しろその女性――テレスティーナは、紫色のスマートな駆動鎧を身に付けているのだから。





「お詫びに、今ここで貴女をグチャグチャにしてあげる」


773 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/16(水) 02:52:29.47 ID:gQSw72sE0

今日はここまでです

進みが遅くて申し訳ないです

禁書アニメが楽しみですね

動く木原くンが待ち遠しいです

では、おやすみなさい
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 02:54:10.20 ID:OswCrq6ao
顔芸が来たぞー逃げろー
おつおつ
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 03:00:57.29 ID:YFhw+yDpo
五和逃げてー
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 08:40:23.24 ID:1YDub1/IO
さらば五和
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 09:37:27.47 ID:+Ug+SFry0
し、死亡フラグは立てすぎると逆に生存フラグになるってばっちゃが言ってた!
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 11:49:19.54 ID:LdfBtSnU0
上条さーん!
早く来てくれー!!
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 12:15:46.42 ID:Ie3BGx9l0
俺の嫁が……
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 12:30:35.45 ID:cUmp09Zio
うわー
頭だけ残されて機械に繋げられ棒読みで助けをもとめる五和が目に浮かんだ…
鬱だ
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 12:39:05.07 ID:cTqIrxGAO
五和急展開wwww

是非ともぐちゃぐちゃにして欲しい
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 12:40:40.95 ID:puDPaaudo
予想に反してテレスフルボッコ
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 15:21:22.11 ID:Km6lb5zIO
五/和
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 16:44:40.29 ID:PJd/0OM5o
待て、五和も結構やるはずだ。テレスくらいならなんとかなる。

木原くンが来ないといいね!
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 20:18:48.21 ID:jmwCYe8Qo
なんでエツァリとショチトルは木原クンに従ってんだ?
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 20:22:46.89 ID:1qsG6dn5o
ダブル人質
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 20:38:50.92 ID:jmwCYe8Qo
>>786
頭に爆弾でも埋め込まれてるんだっけか?それがないなら一緒に行動できてるみたいだし木原クンに従う理由ないよな
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 21:03:46.77 ID:gQSw72sE0

>>787
元いた組織に追われ、イギリス清教に狙われてる2人だぞ?
それに対抗できるような隠れ蓑は学園都市ぐらいだろう
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 21:09:05.99 ID:gQSw72sE0
自己解説すいません
私事でイライラしてました
申し訳ありません
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 21:10:59.19 ID:Itzwyj7Fo
木原含む猟犬部隊をミナゴロシにしての逃亡→超困難。
仮に成功しても→イギリス清教に追われる身なので生存は超絶困難。
          →それに加えて学園都市からも追われることになる
          →それにそれに加えて学園都市に一度身をやつしていたということで情報を目当てにほかの組織(魔術・科学両方)からも追われることになる

どう見ても積んでます本当にありがとうございました
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 21:33:31.56 ID:puDPaaudo
もう木原くンの皮剥いじゃえよ
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 00:05:55.74 ID:Jxs3wDu2o
木原神拳が会得できなくてそのうち死んじゃう
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 09:56:46.64 ID:mTHcZnOP0
五和もそうだけど、テッラが気になるな
聖人20人を相手に勝ち目有るのか?
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 11:25:54.07 ID:qiWbSeSC0
テレスが初号機を起動したようです
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 12:41:55.60 ID:vtBdvRJAO
テッラだしなあ

アックアかヴェントかフィアンマ
なら勝てる気がするけど、
テッラだしな
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 12:49:42.53 ID:Y7HA4eZxo
テッラの魔術はかなり微妙だからな
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 14:52:20.67 ID:z7XIz8Qe0
テッラの魔術は凶悪だろ
使い方と精度によるけど
小麦なんか飛ばさずに鞭でも持って
人体を下位に鞭を上位にすればメッチャ死ぬぜ
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 14:54:03.90 ID:Y7HA4eZxo
適当な盾や手甲で止まります…
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/17(木) 16:56:54.00 ID:tfill4WR0
それどころか相手も鞭をもっていたら死んでしまいます……
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 17:55:11.51 ID:6//cyvrro
テッラ不憫すぎて泣いた
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 17:59:37.30 ID:Y8rMlYpU0
だってテッラだし
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 18:22:10.87 ID:0r6I7xFpo
ぶっちゃけ武器とか防具に小麦粉仕込まれたら相手強化しちゃうよね
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 18:27:45.23 ID:FmCWDHp10
ぶっちゃけ「俺を上位に他を下位に」で体当たりする方が強いよね
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 18:35:31.77 ID:tWZuobC5o
>>803
『他を』ができたら最強じゃね
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 18:42:59.11 ID:Y7HA4eZxo
>>803
最低でもある程度の括りが必要なのだろう
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 19:27:16.44 ID:ELYizXSUo
初見はともかく二度目は呑気に「優先する 」とかいってる間に殺されそう。

「詠唱時間が長ぇし無敵モードの内容てめぇでばらしてどうすんだよ、馬鹿が」
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 19:29:08.80 ID:t4reQy1Eo
他だとテッラの体当たりで地球がヤバイ
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 23:51:29.72 ID:qiWbSeSC0
てか小麦粉なんてつかったら禁書が大好きなアノ現象で板倉がヤバいな
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/18(金) 02:22:57.85 ID:+REaBplAO
勘違いすんな!
テッラが弱いんじゃなくて神の右席の他のメンバーが強すぎるだけだ!
テッラでも一方通行くらいなら瞬殺できると思ってる。
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/18(金) 03:25:51.83 ID:gZBBb9WCo
強さ議論になるからこれ以上レスしないけど
一方通行って通常能力モードでガブリエルの一掃食らっても死なず、さらにその後天使モードまであるんだぜ?
ガブリエルよりは弱いであろうアックアに瞬殺されたテッラさんが、瞬殺できるとは・・・
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/18(金) 09:48:05.41 ID:Iheii3ezo
更新したと思った胸のときめきを返せ
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/18(金) 14:58:22.58 ID:uoGQtleAO
不憫なテッラ・・・

光の処刑が完成してたら
フィアンマよりも強かったのかもね
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/18(金) 15:43:58.89 ID:ye82i0MGo
処刑は完成してたらこっそり最強
実はフィアンマでさえ知らなかった幻想殺しの真の姿を知ってたりとテッラさんすごいんだよテッラさん

なんかそのうち再登場しそうだわ・・・フレンダも(似)となって帰ってきたし
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/18(金) 15:50:06.21 ID:b55JJt7Wo
テッラは神だと思っている。
7年ほど前の正月休みに両親とローマのテッラ実家(観光客向けの店)に
食べに行った時の話。
両親と3人でテーブルを囲んで食事をしているといきなりテッラが
玄関から入ってきた。観光客向けの店に似合わない修道衣ないでたちで。
テッラが「私いつものですねー」と言って二階へ上がろうとすると、
店内にいた観光客集団が「テッラさん!」「テッラさんかっけー!」などと
騒ぎ出し、テッラが戻ってきてくれて即席サイン会になった。
店内に13、4人ほど居合わせた客全員に店内にあった色紙を使い
サインをしてくれた。
観光客達がテッラの所属するローマ正教の信徒だとわかったテッラは
いい笑顔で会話を交わしていた。
そしてテッラは「またですねー」と二階に上がっていき、店内は静かになった。
私と両親はテッラの気さくさとかっこよさに興奮しつつ
食事を終え、会計を済ませようとレジに向かうと、店員さん(カズ妹)が
階段の上を指差しながら
「今日のお客さんの分は出してくれましたから。また来てくださいね」と。
あれには本当にびっくりした。
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/18(金) 20:54:00.16 ID:3c4t03VKo
改変するならきっちりやれよ
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 22:46:53.74 ID:xL6/NahB0
しょうがないさ テッラだもん
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 00:00:05.31 ID:m0LoqmPDO
今日は木原くンの日だってのにおまえらときたら・・・
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 01:20:37.97 ID:ioSTvo5AO
テッラ大人気だな
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 01:23:10.16 ID:TDOTe3D/o
テッラさんディスったら黒猫に呪い殺されるからな
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 01:26:15.72 ID:Fanr1jDoo
木原さん記念日真紀子
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 02:44:39.83 ID:MVd92djZ0
アニメの木原神拳がただ殴ってるようにしか見えない
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 12:13:10.33 ID:RP2Q6DW60
特殊な格闘技って映像化されると普通に殴ってるようにしか見えないよね
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 12:16:56.64 ID:3uMfcq9+o
見た目は普通に殴ってるだけだろうしな
それ故に直前で引き戻すってのがチート技術
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 12:33:46.40 ID:4y/XMF8DO
木原くンカッコいいなwwwwwwwwww
声が野原ひろしなのにwwwwwwww
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 15:15:26.33 ID:7JWhyNjMo
あれ、殴りぬいてるように見えて実は何十発も多段ヒットしてるんだぜ
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 15:22:36.00 ID:S9g8kMuIO
>>824
>声が野原ひろしなのにwwwwwwwwwwwwwwww

そんな貴方に
つホランド・ノヴァク
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 16:00:32.99 ID:SSXxT3Bqo
ホランド格好いいけど声が野原ひろしだよね
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 16:26:43.92 ID:QqR66sJ5o
そんなあなたに
アリー・アル・サーシェス
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 17:12:34.24 ID:ioSTvo5AO
そんなあなたにラッド・ルッソ
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 21:32:46.51 ID:4y/XMF8DO
そんなあなたに
木原数多
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 21:43:56.63 ID:p5glJXC4o
まあ結局ひろしなンですけどね
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 22:02:49.84 ID:TDOTe3D/o
アクセラさんの本名は苗字が漢字2文字名前が3文字の古風な名前

野原 進之介

!?
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 22:33:26.43 ID:RhedkNDAO
とうとう追いついちまった……続きが気になりすぎてヤバい。
木原さんカッコよすぎ。
徹底した悪ってのは明らかに正義よりもカッコいいな。
大概の物語じゃカッコ良く散っちゃうけど。
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 23:07:05.93 ID:m0LoqmPDO
>>832
ケツだけせいじンwwwwwwww
835 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/20(日) 01:58:03.34 ID:02/KCVoe0

こんばんはー、沢山のレスありがとうございます

テッラと木原くンの人気が凄いですね

アニメの動く木原くンが想像以上にカッコよくて大満足です

猟犬部隊の末路も今からワクワクですね

では、投下


8月20日午後5時20分、アビニョン『教皇庁宮殿』入り口


先行したナンシー達が、音も無く入り口に集結する。


「ちゃっちゃと済ませましょう。内部の人数を確認して」

「22号が受諾。……センサーに反応、9名の生体反応を確認しました」


ナンシーの命令に、遅滞なくクローンが返答した。

それを聞いた彼女は沈黙すると、即座に脳内で分析を行う。
836 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/20(日) 01:59:07.94 ID:02/KCVoe0

(想像してたよりも敵の数が少ないわね。仮にも連中の切り札を保管してる場所だっていうのに)

(……それだけの戦闘能力を持った魔術師が、中に詰めてるって事かしら)

(例えば、1人で軍隊を相手取る事が出来るレベル5クラスの化物がいるのかも)


尤も、それは今さらの話ではあるのだが。

ナンシーとしては相手が油断してくれている事を期待していたのだが、どうやらそう上手くはいかなかったらしい。


(まあ、私は指示をするのが仕事。木原さんの用意した人形が幾ら壊れようと、知った事じゃないしね)


ヴェーラと異なり、ナンシーは猟犬部隊に相応しい悪人である。

自分以外の命に価値など欠片も見出していないし、必要なら凄惨な拷問だって行う。

ましてや、兵士として製造されたクローンに憐憫の情など抱くはずが無い。


「中に居る人間は全員殺していいわ。ただし、『C文書』だけは現物を持ち帰る事」


その命令を聞いたクローンが、ギュバッと音を立てて教皇庁宮殿へ突入する。

直後。

宮殿の中から、魔術師のものと思われる悲鳴が響き渡った。
837 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/20(日) 02:00:00.90 ID:02/KCVoe0

そもそも『C文書』を破壊するだけなら、とっとと爆撃でもすれば良い。

あれは『原典』ではなく只の『霊装』であり、自己防衛機能は備わっていないのだから。

もちろん国際的に非難を受けるのは間違いないが、そこは上層部がどうとでも理由をつけて対処するだろう。

にもかかわらず、このような潜入行為をしたのは何故か。


(木原さんも面倒な注文をしてくれる……あれを手に入れてどうするのかしら)


木原数多が、人心を操るその霊装を欲しがったからだ。

言うまでも無いが、彼がそれを求めたのは自分で利用する為ではない。

ただ単純に、研究者としての好奇心。

それだけだ。


「ナンシー、本隊の展開も完了した。俺達もいくぞ」

「了解。さあて、ドジだけは踏まないようにしないとね」


クローンの後を追って、指揮官であるマイクとナンシーも宮殿へ入る。

中では、予想外の光景が広がっていた。
838 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/20(日) 02:00:40.86 ID:02/KCVoe0

8月20日午後5時30分、アビニョン『教皇庁宮殿』近くの庭園


クローン部隊が宮殿内部で戦っている頃、エツァリとショチトルは別のアプローチで『C文書』を無効化しようと動いていた。

すなわち地脈の切断。

現在『C文書』をアビニョンで使えるのは、バチカンと魔術的なパイプラインが出来ているからだ。

その流れを曲げてしまえば、霊装の効果は失われる。

インデックスの助言を受けた彼らは、そのポイントを探している最中なのだが。


「ふう、これは骨が折れそうです」

「言うなエツァリ。元々が専門外の分野だし、仕方ないだろう」


地脈の利用に長けたわけでもないアステカの魔術師にとって、この仕事は容易ではなかった。

インデックスから大まかな場所は知らされているが、慣れない地理の中ピンポイントで地脈を特定するのに手こずっている。


「この近くで間違いないはずですが……」


エツァリがそう言いながら、庭園の樹木を観察する。

ショチトルから、切迫した声が発せられたのはその時だ。


「伏せろエツァリ!!」

「!」
839 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/20(日) 02:02:57.87 ID:02/KCVoe0

ドッ!!と暴力的な音がするのと同時、何らかの“白い攻撃”がエツァリに襲いかかった。

ギリギリで反応した彼は、芝生を転がって荒い息を吐く。

ショチトルの声がなければ、直撃を喰らっていたかもしれない。


「これは……小麦粉……?」


半ば呆然としながらそう呟くエツァリに、楽しげに声がかけられた。


「おやおや。やはり近距離から放たなければ精度が落ちるみたいですねー」


声をかけたのは、一見して異様な雰囲気を感じさせる男だ。

痩せぎすの体に緑色の礼服を着ており、先ほどの小麦粉を『白い刃』として右手に持っている。


「U.E.G.Fからの救援物資だなんて名目で、本気で私を誤魔化せると思っていたんですかねー」

「そうは思いませんか、学園都市なんかに従属している裏切り者さん?」


男の声にショチトルが怯えて、エツァリの服にしがみつく。


「……エツァリお兄ちゃん……」
840 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/20(日) 02:03:56.67 ID:02/KCVoe0

ショチトルが怯えるのも無理はない。

皮肉にもエツァリはそう思った。

同じ魔術師として、絶対的な差がある事が十分に感じられたからだ。


「せっかくですし、名乗りぐらいは上げておきましょうかねー」

「ローマ正教神の右席が一人、『左方のテッラ』と言います」

「あっちはすでに手を打っていますし、私の出番は無いと思っていましたけれど……」

「丁度いい暇つぶしになりそうですねー。少しは楽しませていただけるとありがたいのですが」


それでも、ここで殺される訳にはいかない。

決意を固めると、エツァリはショチトルを守るように1歩前に進み出た。


「ご期待に添えるか分かりませんが、精一杯足掻いてみましょう」

「自分にも意地がありますから」


相手に向けた黒曜石のナイフが鈍く光る。

夜の闇の中、魔術師同士の激闘が始まった。
841 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/20(日) 02:04:57.08 ID:02/KCVoe0

同時刻、アビニョン『教皇庁宮殿』


遅れて宮殿に入ってきたマイクとナンシーが見た光景。

それは、常人では相手にならないはずの聖人クローンが、1人の男にまとめて吹っ飛ばされるというものだった。

しかも何人かの魔術師はすでに殺してあるものの、肝心のC文書を扱う術者はその“彼”が庇っているので生きている。

そんな想定外の出来事に驚くマイク達に目を向けると、“彼”は淡々とこう述べた。


「理解しがたいのである。聖人に匹敵する力を持つ兵隊が、こうも大勢いるとはな」

「噂では、極東の聖人が学園都市で殺されたらしいという事だが」


言葉を止めた“彼”が、ズン!!と重機じみた音を立てて持っていた巨大なメイスを床に叩きつける。

そしてそのまま、学園都市の人間を鋭い眼光で射抜いた。


「このような所業、許されるとは思っていまい」


同じ人間とは思えないような巨大な気配が膨れ上がり――。


「死人をも利用する傲慢さ、この『後方のアックア』が粛清する」


破滅をもたらす嵐に匹敵する、圧倒的なチカラが襲いかかった。
842 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/20(日) 02:06:24.35 ID:02/KCVoe0

8月20日午前9時30分、胤河製薬学園都市支店


テレスティーナと五和が対面している同時刻。

研究棟地下3階の、一番奥。

それぞれが各自の思惑に従って行動している中。

木山も、その例に倣って行動を起こしていた。


「おや、また来たのかい木山君?」

「……」


嬉しそうにそう喋る幻生に、木山は答えない。

そして彼女の手には、かつて自殺に使おうとした拳銃が握られている。


「しかも随分と物騒なものを持ちこんでいるじゃないか」

「……」


一瞬で自分の命を断てる武器を目にしても、幻生は笑みを崩さないまま。

だがすでに木山の目は、寒気がするほど真剣だ。

ゆっくりと拳銃を幻生に向けると、ようやく口を開いた。


「……私は、犯した過ちをここで清算する」

「ふむ?」

「あんな悲劇、二度と繰り返させはしない」

「そのためなら私は“なんだってする”」



徐々に綻びを見せる木原数多の計画。

あるいはそれこそが彼の計算通りなのか。

その答えを知る者は、本人以外誰もいない。
843 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/20(日) 02:06:58.04 ID:02/KCVoe0

今日はこのあたりで終了となります

次回は木原くン、テレスティーナ、ステイル編を投下する予定です

……だんだん場面が増えて大変な事になってる

では、おやすみなさい
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 02:11:23.22 ID:AcfU746Io
こ、これはマズイ
散々テッラを微妙扱いしてきたが仮にも4大天使の属性を持つ神の右席
VS魔術師で後れを取るとは思えん
アックアの方は木原くンが何か手を打つだろうしテレスティーナに"いいヒト"が接触してるから切り抜けられそうだ
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 02:40:50.21 ID:tTDNtyFAO
クローンが聖人に匹敵っておかしいような
確か20%位しか出ないんじゃ無かったっけ
聖人は身体的記号と魔術的記号が似てるから
身体的記号だけだと際だでも50%程度だろうし
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 02:50:54.65 ID:rdh+3lM00
>>845
取り敢えず>>699を見るんだ
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 03:06:00.75 ID:dGHgUw1Fo
ただの聖人じゃあ二重聖人のアックアには・・・
あれ、つんでね?
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 03:29:58.86 ID:AV73UM4W0
テッラとかいちいち上位とか言ってる間に分解されそう
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 03:34:55.09 ID:goAKELfgo
必死に早口言葉の練習してるテッラさんに萌えた
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 07:58:16.85 ID:yWOHhLaV0
木原くン今回はさすがに負けるか?
いや、ないか。

だとするとどう切り抜けるかが楽しみです。
作者に期待します!
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 08:49:30.93 ID:8LkRdyIAO
次はかませ…じゃなくて天才魔術師ステイルくんの登場か
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 12:38:32.02 ID:tTDNtyFAO
>>846
素でハードテーピングの事忘れてた・・・

光の処刑はよくわからん
アースブレードは間に合って
アックアには間に合わないって・・・
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 13:06:43.00 ID:AcfU746Io
アックアは術式知ってたから複合攻撃でも食らったんだろ
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 14:03:33.67 ID:dGHgUw1Fo
不意打ちで上位がほにゃらら言う前に音速で接近して真っ二つにしてたじゃないか

あれ、でもアースブレードのときも音速の不意打ちだったし詠唱はしてなかったような・・・
はっ!?誰かテッラさんの遺体を確認したか!?鏡花水g
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 14:45:04.29 ID:9ZN16qUCo
なにいってんのこいつ
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 15:06:22.51 ID:kI0DyXBTo
テッラさんは天使なんだよ
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 17:55:48.53 ID:Te8qLMFDO
>>854

お前なんでそこまで読んでて次の巻読んでないんだよ
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 09:05:48.73 ID:05CFnkIu0
テッラさんなんでOPに出てないの?
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 10:27:38.57 ID:VGRVO7rp0
>>858
子供が怖がるからだろ
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 16:21:41.39 ID:+TyAHZwe0
イヤイヤイヤ、予想外の展開だわ
なんでこのタイミングでアックアが出てくるんだよ!?
完全に予想を外されて悔しい
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 18:00:37.15 ID:o7WeeVWs0
見つけて一気に読んでしまった
おもしれーというか発想がすごいというか
ところで那由他んには木原神拳の使い方とか教えてたのにテレスはモルモットとか、親戚なのに態度が違いすぎますよ数多さんwwwwwwwwww
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 20:38:19.13 ID:B38vN7cZo
あまたんマジ外道(褒め言葉)
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 22:36:25.72 ID:wKbcYlVAO
全盛期のアックアはやべーな。
マッハ2〜4は出せんだろ?
どうやって速度に対応出来すんだろうな。
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 23:08:53.83 ID:B38vN7cZo
木原くンだって音速を超えて空飛んだことがあるじゃないか
余裕余裕
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 00:15:45.20 ID:Wdy6MEY50
>>864
体をプラズマ化することだってできるんだぜ?
866 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/23(水) 01:42:21.06 ID:atb0L5/g0

こんばんはー、レスに感謝です

>>861
だってテレスティーナってババ(ry

では、投下


8月20日午前9時40分、『猟犬部隊』32番待機所


『駆動鎧』の腕が、五和の眼前に迫る。


「……っ」


人間の出せる速度を超えた一撃を、すんでの所でかわした。

だがそれでも。

空気を裂く勢いで振り下ろされた攻撃は、五和の心を凍らせるには十分で。


「……はあ、はあ……」


距離を取ってテレスティーナを睨む彼女の眼には、紛れもなく恐怖の色が存在している。
867 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/23(水) 01:43:39.24 ID:atb0L5/g0

「おいコラ、避けてんじゃねえよ。ちゃっちゃと死んでくれないと面倒くさいでしょうが」

「な……」


そのぞんざいな口調は、まるで視界に映ったハエに対するかのようだ。

しかしそんなテレスティーナの態度を見て、逆に五和は落ち着きを取り戻していく。


「この人じゃない。目的に集中しなきゃ……」

「あ? 何が?」

「我らの女教皇様は、こんな人にやられはしない」

「だーかーらー、誰の話をしてんだっつうの!」


もう一度殴りかかるテレスティーナ。

けれども、今度は五和は逃げない。

――ガッキィィ!!

自身の持つ『海軍用船上槍』で、暴力的な打撃を受け止めて見せた。


「……妙な現象だな、どうなってやがる?」

「魔術による強化ですよ。敵地へ潜入するというのに、私達が何の対策も講じていないと思っていたんですか?」
868 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/23(水) 01:44:36.13 ID:atb0L5/g0

樹脂を利用した、“成長する”防御魔術。

樹木の年輪を象徴するこの術式は、その限界を迎えるまで文字通り耐久力が増幅する。

いかに駆動鎧の破壊力が凄まじいと言えども、聖人の一撃すら耐えるこの槍を破壊することはかなわない。

そして。

その槍をテレスティーナに向けて、五和は宣言した。


「次は本気であなたを倒しにいきます。ですが、その前に1つだけ」

「我らの女教皇様を死に追いやった張本人――木原数多はどこですか?」


投げかけられた言葉を聞いた直後。

黙って話を聞いていたテレスティーナは、耐えきれなくなって噴き出した。


「ぶはっ、良くもまあそうペラペラ戯言をほざけるよなぁ、お馬鹿さーん!」

「!」

「けどなぁ、テメェみたいな馬鹿があいつに挑んだところで、相手になる訳ねーんだよぶわぁーか!」


テレスティーナは笑いながら、兵装の1つであるグレネードランチャーを準備。

そしてシュコン!と言う音がして、全く戸惑いのない一発が発射された。
869 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/23(水) 01:45:24.12 ID:atb0L5/g0

「そんな!?」


響く轟音、粉砕される壁。

近距離で発射された弾丸は逸れたものの、破壊の余波で五和は冗談のように転がっていく。


「ぐ、つぅ……」


圧倒的な火力を持ち出したテレスティーナは、それでも不満顔だった。


「ああん? 何だよ、調整がイマイチじゃねえか」


そのまま倒れた五和に近づくと、彼女の腹部を蹴り上げる。


「がはぁ!」

「オラ、もう一度さっきと同じ寝言を言ってみろや!」


一度だけではない。

何度も執拗に蹴りつけ、踏みつぶす。


「ごふっ」

「相手を見て物を言えっつーの」


止めとばかりに全力で蹴る。

だが、予想した衝撃は訪れなかった。
870 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/23(水) 01:46:12.36 ID:atb0L5/g0

(空振り……!?)


駆動鎧の足に残るのは、五和の着ていたトレーナーのみ。

ここにきて、テレスティーナが初めて驚愕の声を発する。


「身代りか!」

「言いましたよ、次は本気で倒しますと」


敢えて攻撃を喰らい、術式の準備を完了させた五和が不敵に笑う。

すでに辺りには、彼女の武器が張り巡らされていた。


「――七教七刃!!」


7本の鋼糸がテレスティーナ目がけて襲いかかる。

そして極細の刃は、彼女の駆動鎧をバラバラに切断した。


「これで……!」


生身の肉体を晒すテレスティーナに、五和が肉薄する。

この条件なら。あの『駆動鎧』さえなければ。

確実に勝てるはず。

攻撃の刹那。

テレスティーナが、勝利を諦めたのか笑っているのを見て取った。
871 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/23(水) 01:46:40.66 ID:atb0L5/g0











――それが、五和の見た最期の光景である。













872 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/23(水) 01:47:44.77 ID:atb0L5/g0

8月20日午前9時00分、第7学区のとある広場


木原が『人材派遣』と接触し、また天草式が結界を張り始めたのと同じ頃。

ステイルは情報入手の為、監視衛星で居場所が分かっている敵に接触を行う。


――現在居場所を把握している侵入者は半分にも満たない。


それはつまり、裏を返せば半数近くの侵入者の居所は知れているという意味だ。

ならばまずはそこから当たるのが常道である。

木原本人は用心深く姿を隠しているが、手駒までそうする必要性はない。

とりあえず彼らと戦って、情報を多く入手する事。

それがステイルに下された命令である。


『む、何か大きな術式を組み始めたかも。急いだ方が良いんだよステイル』

「分かった。もうすぐ到着するから安心すると良い」


ちなみに、インデックスがカメラと無線で援護しているのも木原の命令だ。


(こんな形で彼女と一緒に行動する事になるなんて、皮肉にもほどがある)

(神様を恨みそうだ)

(……やっぱり、イギリス清教を抜けて正解だったのかもしれない)

(僕のような――救いようのない罪人は)
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 01:48:15.37 ID:8ghnBnEmo
いつわあああああああ
874 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/23(水) 01:48:28.46 ID:atb0L5/g0

広場でルーンの痕跡を発見した香焼と対馬は、その場で探査術式を展開していた。

女教皇を殺した相手への恨みで気が狂いそうだというのに、そんな素振りは表に出さない。


「……」

「……!」


雑誌を読むふりをしていた対馬が、異変を察知して顔を上げた。

やや遅れて香焼も気付く。


「……行くわよ香焼。近くで魔力が増大してる」

「しかもこれ、ルーンじゃないすか?」

「そうね、きっとここで戦っていた魔術師と同じだと思う」

「けど、侵入した魔術師は学園都市に捕まったって、イギリス清教は言ってたんすよ?」

「もしかしたら、隙をついて逃げだせたのかもしれないわ」


とにかく様子を見に行きましょう、と駆けだす対馬。

香焼も急いでその後に従った。
875 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/23(水) 01:49:29.03 ID:atb0L5/g0

タイミングがいささか遅い事を承知で、とある事実を述べさせてもらう。

天草式十字凄教に神裂火織の死去を伝えたのは、当然ながらイギリス清教だ。

『必要悪の教会』に所属する魔術師とはいえ、神裂は元々天草式のトップだったのだから連絡は当然である。

しかしながら、イギリス清教最大主教ローラ・スチュアートは幾つかの事実を報告していない。

すなわち、自身の部下の裏切り。

禁書目録という魔術世界の禁断兵器が、学園都市の手に堕ちている事。

これらの事をローラは意図的に隠したのだ。

その理由は、奇しくも木原と同じ。

かつて木原が、デニスを利用してエツァリ達の行動を観察したように。

学園都市が如何にして魔術師と戦うのか、絶対記憶能力を持つインデックスを通して逐一把握するためである。

そもそもローラは、その気になればインデックスを自由に操れるのだから。

最初こそインデックスを取り戻そうと試みたものの、木原達がシェリーを完封した時から作戦は切り替わっていた。

保険として用意したアステカの魔術師と、『自動書記』の遠隔制御霊装。

そちらを使い、学園都市が“食べ頃”になるまで静観する作戦に。

つまり天草式は、デニスと同じく捨て駒として利用されたのだ。



当然、後の悲劇を予見できるはずが無い。
876 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/23(水) 01:50:31.14 ID:atb0L5/g0

広場の近くにある路地裏。

そこに駆けこんだ香焼と対馬が見たものは、自嘲して顔を覆う魔術師だった。


「なるほど、君達は神裂の……少し考えれば分かる事だったね」

「天草式、だったかな。ここに来たのは復讐のためかい?」


赤髪の魔術師が、同情するような視線を投げかける。

既に彼は、侵入者の正体が“分かってしまった”のだ。


「女教皇を御存知でしたか」

「ああ、僕は彼女の同僚だったから」


対馬の質問に、どこか泣きそうな雰囲気で答える魔術師。


「そして、彼女が殺されたのは僕の所為だ」

「!?」

「許してくれとは言わない。全身全霊をもって僕を恨んでくれ」

「神裂の事も、これから僕が君達にする事も」


路地裏いっぱいに焼きついたルーンに対馬が気付いた時、すでに戦いは終わっていたも同然だった。
877 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/23(水) 01:51:23.28 ID:atb0L5/g0

今日は以上で終了です

次回はどの部分を投下するか検討中です

もしも、早くここの場面の続きが見たい、という意見があれば教えてください

では、おやすみなさい
878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 01:52:21.74 ID:HPyvkcNAo
乙ー
相変わらずエゲツねぇな
テッラとアックアが気になるな
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 01:54:30.06 ID:bVPLMSN2o

天草式の中核組退場〜
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 03:30:39.30 ID:5SiyOZ2Y0

続き待ってます
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 03:43:54.21 ID:I43ztGRDo
おつおつー
早く続きがみたいわー

しかし常時黒ローラなんだなww
ドSババァ美少女かわいいよ
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 10:10:54.83 ID:RSZMhhaIO
妥当に考えれば頑張りそうなキャラ達が次々脱落して行くw
痺れて憧れざるを得ない
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 11:44:13.93 ID:+MAr4U920
誰もが分かっていたことだけど、残留組は負ける気がしないな
引き替えに遠征組が相当ヤバイことになってる

というわけで是非遠征組の続きをお願いします
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 14:52:37.47 ID:unVC2TwXo
突進してくるアックアに絶対等速を掛けることが出来れば…
前に槍固定しておくだけでゆっくりズブズブ刺さっていく。
アックア重いからむりかww

そんなわけでフランス組が気になる
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 16:53:06.93 ID:Rf7BcqPMo
槍衾に突進していく騎兵みたいだな
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 23:50:54.31 ID:tui3uYYf0
ステイル切ないな
つーかこんなにも強そうなステイル初めて見た
天草式からも生き残りがいると嬉しいけど……
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 23:52:59.37 ID:vVB19hhzo
五和が死ぬのも仕方がない
なぜならこれは戦争だからだ
It's war.
なんちて
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 23:58:19.53 ID:+G/Ne6g00
>>887
【一行で審議中】( ´・ω)(´・ω・)(`・ω・´)(・ω・`)(ω・` )
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 00:40:57.82 ID:wcmxmHDeo
>>887
深くにも
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 01:26:09.07 ID:Gwt7KY6fo
>>887
オレは評価するよ

ステイルの活かし方がすさまじい
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 02:27:55.95 ID:gUd7a/7AO
木原無双な感じしたけど、魔術側もそうとうあれだよなww
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 07:26:20.27 ID:u66G9D5DO
>>887

水嶋先生ェ・・・
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 18:08:01.56 ID:oUMA9nQz0
なんか、この救いようの無さは虚淵ワールドに通ずるものがあるわ……
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 19:50:53.71 ID:h3QFzLTYo
うっしゃあああああああああ五和ざまぁああああああああああああああああああ
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 23:01:36.39 ID:qWVxYRgAO
アニメしか観てないけど五和って結局なんだったのか
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 23:10:36.14 ID:YVNqaRhuo
>>895
おしぼり
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 00:14:11.97 ID:uvc2fmIyo
キャラの行動が裏目で泥沼にはまるんじゃなくて、理不尽な展開がいきなり襲ってくるから
どちらかと言えば虚淵玄より野島伸司かな。
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 00:18:07.98 ID:6wleS9imo
聖人崩し
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 01:05:24.24 ID:+eqj9BqL0
毎回調整がイマイチなテレスさん


おちゃめでいいです…
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 11:43:57.48 ID:Kqr3XsnRo
その辺が木原くンとの差なのかな
901 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/28(月) 02:54:23.66 ID:bfyCyS/i0

こんばんはー、いつもレスありがとうございます。

>>887
何故か木原くンが別室に呼んでいましたよ?


では、投下


8月20日午後5時40分、アビニョン『教皇庁宮殿』近くの庭園


左方のテッラ。

神の右席の1人。

対峙しただけでも、魔術師としての格の違いが感じられる。

そんな相手に勝つには、油断している今のうちにケリを付けるほかない。

だからエツァリは迷わず攻撃した。

『トラウィスカルパンテクウトリの槍』と呼ばれる、金星の光を利用した攻撃魔術。

すでに日没から時間が経っており、金星はほとんど沈んでしまっているが――まだ光は届く。
902 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/28(月) 02:55:09.36 ID:bfyCyS/i0

(見たところ、彼の服には『歩く教会』のような防御機構は備わっていない)

(ならばこれで……!)


あらゆるものを分解する滅びの光が、テッラの体へ直撃しようとした。

だが。


「――優先する」


確かに当たったはずの魔術は、何の効果ももたらさない。

むしろ、必殺の魔術を馬鹿にするようにテッラが嘲笑する。


「この私に、“その程度の魔術”が通用するとでも?」

「……そんな」


あの一瞬で、どんな魔術障壁を構築したと言うのか。

エツァリがこの現象を分析しようと試みる。

ところがそれよりも早く、後ろに居たはずのショチトルがテッラに接近した。

『マクアフティル』というアステカの剣を、両手で掴んで振り下ろす。

エツァリを守ろうとする彼女の行動は、しかし無意味なものとなった。
903 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/28(月) 02:55:48.84 ID:bfyCyS/i0

「優先する。――剣の動きを下位に、空気を上位に」


テッラがそう言うと、ショチトルの持っていた『マクアフティル』が縫いとめられたかのように動かなくなる。


「優先する。――人肉を下位に、小麦粉を上位に」


そして唖然としている彼女目がけて、小麦粉のギロチンが襲いかかった。


「ショチトル!?」


エツァリが叫ぶ。

彼が、所属していた組織を抜け、イギリス清教に追われ、学園都市の闇に飲み込まれた理由。


(死なせて、たまるか……)


褐色の少女を助けるため。

エツァリはそのまま庇うように彼女を抱きしめて――。



瞬間、彼は背中を縦に切り裂かれた。


904 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/28(月) 02:57:16.92 ID:bfyCyS/i0

同時刻、アビニョン『教皇庁宮殿』


遺伝子を調整されて、オリジナルの15%しか力を持たないクローン。

その欠点を解決する為に、木原が用意したのは『発条包帯(ハードテーピング)』だ。

超音波伸縮性の軍用特殊テーピングであるそれは、人間を軽く粉砕するほどの筋力を与える。

通常なら、使用者への負担が大きいので実用は出来ない代物なのだが。

劣化したとはいえ『聖人』の身体能力を保持している事と、『学習装置』で負担の少ない運用方法を教え込まれた事。

クローンはこの2点をもって、『発条包帯』を実戦で扱う事に成功した。


――だがしかし、二重聖人のアックアにはその小細工が通用しない。


「ふん!!」


マイクとナンシーへ迫るアックアに、クローンが6人ほど抵抗しようとして弾き飛ばされた。


「クソ、何なんだよあれは!」


クローンが相手した事で僅かに生じた時間。

その隙にマイクが、自分の周囲に鉄粉を撒き散らす。
905 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/28(月) 02:58:33.76 ID:bfyCyS/i0

「む……?」


その粒子に直撃したメイスが、動きを止めた。

『絶対等速』の能力を応用した、鉄粉の障壁である。

以前砂皿には攻撃として利用したが、元々この使い方は防御用なのだ。

マイクの能力の特徴は、等速直線運動が遅い事。

それは攻撃の観点からは欠点となるが、見方を変えれば遅さを用いた“絶対の壁”を作れることを意味する。

絶対に一定の方向へゆっくりと進む鉄粉は、その間どんなものも通さないのだから。


聖人のチカラを受け止める謎の能力に、アックアは僅かに口を緩ませる。


「ほう、面白いな。学園都市の能力であるか」

「だが、こっちの方は簡単には止められないのである」


対照的に、マイクは顔色を青くする。


「舐めやがって……こんな化物どうしろってんだよ」


何故なら、アックアの背後で“あるもの”が唸りを上げてマイク達を狙っていたのだ。
906 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/28(月) 02:59:16.84 ID:bfyCyS/i0

「ちょっと、アレはまずいんじゃないの!?」

「分かってんだよ!」


ナンシーが指差した先にあるのは、水だ。

アックアが何よりも得意とする、水の魔術である。

宮殿の地下を通るパイプが破壊され、凄まじい量の水が溢れ出ていた。

いかに鉄粉の障壁が絶対でも、水はその隙間を通り抜けてマイク達を襲うだろう。

要するに、相性が最悪なのだ。


「神の右席が通常の魔術を使えぬ事、そして私は例外的にその縛りを受けていない事など、説明する必要もあるまい」

「ナンシー!」


マイクの焦った声をかき消すように、濁流と化した水がゴボゴボと接近する。


「貴様らも兵士なら、死ぬ覚悟は出来ていて当然である」


そして宮殿内に、この場に似つかわしくない異様な音が響き渡った。
907 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/28(月) 02:59:59.23 ID:bfyCyS/i0

操られた水が全てを飲み込んだ音――ではない。

メイスによって肉体が砕かれる音――でもない。

もっと“人工的”で、どこかおぞましい音だ。

その音を聞いた途端、アックアは魔術の制御を失って片膝をついた。


「……ぬ、あぁぁぁぁ!?」


しかも、今までと打って変わって苦悶の表情を浮かべている。


「……良くやった、ナンシー」

「死ぬかと思ったわよ」


文句を言うナンシーの手にあるのは、小さなリモコン。

宮殿を包囲している本隊が設置した、とある音響兵器のスイッチだ。

音の正体は、テレスティーナが開発した『対魔術師用キャパシティダウン』である。

“十字教を根幹とする魔術師相手なら5分程度の無力化が見込める”という音が、アックアを跪かせた。
908 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/28(月) 03:00:45.26 ID:bfyCyS/i0

このテレスティーナが開発した装置は、インデックスの『魔滅の声』を下地にしているが、オリジナルとは少々異なっている。

『魔滅の声』は集団心理を利用する技術なので、同じ思想を持つ人間がある程度集まった状況でしか大きな効果を発揮しない。

対しこの『対魔術師用キャパシティダウン』は、個人相手にも攻撃力を持つ。

インデックスと違って、より直接的に脳の構造にダメージを与える事が出来るからだ。

この辺は機械の面目躍如と言ったところか。

効果時間が短かったり、細かなチューニングが必要だったりと欠点もあるのだが。


(……思ったよりも、効果が高いな)


マイクがそう思うのも当然だ。

彼らが幸運だったのは、相手が後方のアックアだった事。

神の子と聖母の両方の身体的特徴をもつ彼は、ある意味で十字教の象徴のような魔術師だ。

さらに、二重の加護を得ている彼の力は莫大で、その分制御が困難でもある。

対十字教用のキャパシティダウンは、そのコントロールも乱してしまう。

要するに、相性が最高なのだ。
909 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/28(月) 03:01:29.72 ID:bfyCyS/i0

ここに来て形勢は逆転した。

音を苦に感じないクローンが、まとめてアックアに飛びかかる。


「……この程度で、勝てると思ったのであるか!」


だがしかし、メイスを振るうアックアは明らかに精彩を欠いていた。

再度クローンを薙ぎ払おうとするものの、何人かがしがみ付いて離れない。

コピーとはいえ、クローンも聖人なのだ。


「よし、あの人の計画通りだ。このまま任務を遂行するぞ」

「分かってるわよ」


猟犬部隊の2人がアックアに背を向ける。

彼らの目的は、アックアの撃破ではなく『C文書』なのだ。


(後はこのまま、撤退すれば……)


ドン!!という音が宮殿一帯を振るわせたのは、その時だった。
910 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/28(月) 03:02:14.44 ID:bfyCyS/i0

8月20日午後5時50分、アビニョン『教皇庁宮殿』近くの庭園


血飛沫を上げて崩れ落ちるエツァリを見て、テッラはフンと鼻を鳴らす。


「所詮この程度ですか。まあ一介の魔術師風情が、私に勝てるはずも無いんですがねー」

「エツァリお兄ちゃん!?」


ショチトルの悲鳴に、エツァリは答えない。

泣き叫ぶ彼女へテッラが1歩近づく。


「おやおや、嘆く必要はありません。あなたも、すぐに同じ場所へ送って上げますからねー」

「あ……あ……あ……」

「やれやれ、異教の猿はこれだから困るんです。さ、首を出しなさい」


小麦粉のギロチンが、今度こそショチトルを狙う。

パシィ!!


「はあ?」


思わずテッラが呆けた声を漏らした。

彼の刃が、何かによって止められたのだ。
911 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/28(月) 03:03:07.20 ID:bfyCyS/i0

止めたのは、能力者でも、魔術師でも、それどころか人間でもない。

エツァリの着ていた装甲服から飛び出た、“巻物”だった。


「……ふ。流石は『原典』……そう簡単に死なせてはくれませんか」

「貴様、どういう事だ!?」


倒れていたエツァリが、何事も無かったかのように立ち上がる。

確かに致命傷となった背中の傷が、完全に癒えていた。


「大したことではありませんよ。不甲斐ない自分に、『原典』側から補助があったようです」


周りに広がった巻物を、エツァリが受け止める。

その表面がザラついて、粉末が嵐のように舞った。

粉塵の中、デニスの仮面を剥がした魔術師がテッラを見据えて二度目の宣告。


「もう一度、あなたの力を見せて戴きましょうか」

「何……?」

「死ねない『原典保持者』と、ローマ正教トップの魔術師。最後に立っているのはどちらでしょうね?」
912 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/02/28(月) 03:03:38.44 ID:bfyCyS/i0

今日はここで終わりです

ナンシーとかヴェーラがアニメで動いていると嬉しくなりますね(末路はともかくとして)

次は残留組の場面をお送りするつもりです

では、おやすみなさい
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 03:04:30.00 ID:i8tgMLD4o
お疲れさん
ちょうどリアルタイムで見てたわwwww
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 06:27:36.73 ID:kTUkHAnDO
魔術用キャパシティダウンはご都合主義を感じる・・・
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 07:55:03.77 ID:X9C2FSZAO
そこはテレス△で良いんじゃね?
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 08:06:31.32 ID:DgNSzWZD0
>(後はこのまま、撤退すれば……)
フラグ立てちゃらめぇぇぇぇぇぇぇぇ!
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 08:24:02.67 ID:Ej72V6EAO
エツァリかっこいいな…幸せになってほしいマジで…
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 12:19:54.62 ID:QVQsnddG0

遠征組は波乱だなぁ
どっちが勝つのか予測が難しい
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 18:46:44.02 ID:ZrfS/7nIO
>>914
そういうチートアイテムがないと天然チートの聖人には勝てないからな
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 19:00:27.02 ID:KEPO9K6SO
>>914
正直、ご都合主義以外で勝つ方法が思い浮かばない無理ゲーアックアww
まぁ、少し残念に思ったのは否定しないがテッラVSエツァリが熱くて気にするほどでもなかった
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 19:23:42.40 ID:5W93VKB8o
なんかガッカリ展開
フィアンマもこんな感じか
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 20:06:13.99 ID:i8tgMLD4o
なあに、きっとテッラさんの活躍でアックアさんも助かるよ
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 22:21:56.94 ID:t0J+bsUAO
まあ、仮にも神の右席のメンバーが
ただの原典に負けるとは思えないが・・・
テッラだしなぁ
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 23:13:09.50 ID:ryzw9qZ8o
ああ見えてもインデックスが丹精こめて十字教教義のスキマを非難したのを
木原一族が手を加えたわけだから少しは効いていいんじゃないかな
むしろアックアの力はここからだよ まあ見てなww
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 00:44:05.06 ID:i3UAiHcDO
それは実現しないフラグ
だがやっぱまだ一波乱有りそうな感じだ。量産型ねーちん達の危険が危ない。
そこを颯爽とマイクさんが助(ry
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 00:44:07.26 ID:ME0jxLaAO
ここからテッラ無双
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 06:09:13.95 ID:qMvW9G9AO
>>921多少チート的な何かないと科学側はかなりキツイでしょww
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 09:10:51.53 ID:ALBQyh5b0
魔術師用キャパシティダウンは前々から用意してあったわけだし
ガッカリと言うほどでもない気がするけど
ここで決着が着かなかった以上、また何かしらのどんでん返しが起こるのは確定的に明らか
 
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 13:47:14.01 ID:io3a5YZeo
虚数学区を発動すれば魔術サイドはイチコロなんだけどねえ
アレイスターも残念がってたけど学園都市の中でしか使えないのがネック

そういえばこの世界はアレイスターが消息不明だから切り札である虚数学区やカザキリが使えないのか・・・
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 15:00:17.24 ID:BBMrYQGF0
>>929
それよりもMNW使うと高校生以下の能力者がでることになるから無理
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 18:47:53.71 ID:k6PSX5d60
つーかこの世界はそもそも妹達は製造されてるのか?
天井クンがクローン作成で出たからフルチューニングはいるかもしれないけど
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 19:39:00.72 ID:vjCklJQAO
個人的には量産計画はまではあって、レベル6シフトが無いイメージ
まあ妄想で補完ですな
つーかこのスレの残量もそろそろなくなってきてるのか
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 20:57:07.88 ID:GJRpiX8AO
フィアンマはこんな感じにはならないでしょう


あの右手があるんだし
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 00:27:44.84 ID:9SSmCn+O0
そういえばアレイスター不在だっけ
いつか登場するんだろうか
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 11:58:31.52 ID:UjkKVber0
ここのエツァリはイケメンだな
原典を使うSSなんて久しぶりに見た

個人的には木山先生がもうちょっと活躍して欲しい
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 16:59:38.97 ID:4vs9lm0AO
フィアンマの右手はインデックスが
いないと制限付きだからきつい
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 17:19:37.32 ID:B0eSp5jZo
無制限化にいるのは当麻の血肉じゃね?
インデックスがいることで得られたのは1京うんたら…じゃなくて10万3000の魔術とその知識じゃね?
界をグリグリしたり天使降ろしに必要な
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 17:37:12.14 ID:ZVc4cZGgo
右腕の固定化にも10万3千冊は使ってるし考察で埋めんなし
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 21:28:27.38 ID:cK3vQfzp0
このスレが埋まってもすぐに第二第三のスレがうんたらかんたら
940 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/03(木) 02:03:18.70 ID:fYr1TVwy0

こんばんはー、レスありがとうございます

>>929-932
いつか聞かれると思ってましたが、今回の投下でその部分を少し言及します
詳しくは後書きをご覧ください

では、投下


8月20日午前9時20分、とあるデパート近くの大通り


『人材派遣』との取引を終えた木原が車中に戻ると、タイミング良くステイルから連絡が来た。


「よお、待ちくたびれたぜ。相手の情報は?」

『……侵入してきたのは、神裂の仲間である天草式十字凄教の人間だ』

「天草式? 聞き覚えがあんな。確かあれは……」


木原の思考を遮って、ステイルが話を続ける。


『どうせあの子から詳しく話を聞くんだろうから、僕からは1つだけ言っておこう』

「何だ?」

『彼ら天草式は、隠密行動に長けた戦闘集団だ。悠長に構えている場合じゃない』
941 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/03(木) 02:04:16.70 ID:fYr1TVwy0

対魔術師機関としてその名を知られる『必要悪の教会』。

そこの元メンバーであるステイルのセリフは、言葉に表せない重みがあった。

しかし木原は、それを平然と受け止める。


「ご忠告どーも。んで、そこに居た天草式の奴らは処理したのか?」

『ああ。……たった2人しかいなかったが、どちらも焼き殺した。これで満足かい?』

「十分だ。死体の処理は下っ端に任せていいから、テメェはそこで待機してな」

『何故?』

「仲間をやられたと知った連中が馬鹿みたいにそこに来るだろーから、友釣りの要領で全員殺しとけ」

『っ……』


無線越しに言葉を失うステイル。

彼がいる路地裏はルーンが設置してあるので、ここで戦うならまず後れを取る事は無い。

つまり、彼自身が凶悪な罠となっているのだ。


「安心しろって、念のためにヴェーラを行かせる。MARからも4,5人寄こすしな」


まるで見当違いな慰めを最後に、無線は終了した。

尤も、木原はそれを承知の上で言うのだから始末に負えない。
942 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/03(木) 02:05:48.10 ID:fYr1TVwy0

彼は続けざまに部下へ連絡を取り、ステイルの応援に向かわせた。

そして無線機を放り投げた彼は、それまでの楽しげな表情を一変させて厳しいものへと変える。


(問題は、今もコソコソ隠れている半分の方か)

(陽動組と強襲組にチーム分けしたのか、あるいは……)

(まずは情報の確認が先だな)


放り投げた無線機とは別の、さらに高性能な通信機のスイッチを入れる。

相手の返事を待たないで、木原は鋭く問いかけた。


「インデックス、聞きたい事がある」

『え?』


その後10分ほど費やして、木原は天草式の事をインデックスから教わった。

彼女の知識から、天草式の基本的な構造や成り立ち、得意とする戦闘形態などは分かったものの……。


(肝心なのは、奴らの考え方だ。どんな行動基盤を持っているのかが不透明なのは困る)


木原が直接戦うには、まだ情報が不足している状態だった。
943 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/03(木) 02:06:53.09 ID:fYr1TVwy0

神裂の仲間ならば、彼女と似ているタイプの魔術師なのだろうとは予測がつく。

しかしそれだけでは決定打に欠けるのだ。


(……俺が動くとしても、『人材派遣』の結果を見てからで十分だろう)


木原が打って出る時間まで、幾ばくかの余裕が出来た。

その時間を利用して、彼はとある工作を行う。


(とりあえず、奴らが得意なのは集団戦闘らしいし……)

(その連携をバラバラにしてやろーか)


時刻は、午前9時30分。

猟犬部隊の待機所へ五和が入り込んだ時間。

彼女以外の天草式のメンバーは、香焼と対馬に連絡がつかなくなった事に気付いて動揺する。

教皇代理である建宮は、これを緊急事態と判断。

即座に近くにいる仲間を急行させた。


天草式十字凄教は、固い絆で結ばれた優秀な集団だ。

何よりも仲間を大事にするその姿は、誇り高いと言って間違いない。

――そう。

木原と言う悪意と戦うには、あまりにも絆が強すぎた。
944 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/03(木) 02:07:40.10 ID:fYr1TVwy0

8月20日午前9時50分、『猟犬部隊』32番待機所


五和が、テレスティーナを目指して駆ける。


「これで……!」


そのまま槍を振るおうとして――ガクリ、と彼女は倒れ込んだ。

理由は手刀。

走る五和よりも尚早く、背後に居たクローンが首筋に一撃をお見舞いしたのである。

聖人並みの身体能力を持つクローンが相手では、反応することすら叶わない。

五和1人で仲間の補助が無い現状では、仕方のない事だった。

テレスティーナが気絶した彼女を足で蹴り、ペッと唾を吐く。


「敵の中枢だっつーのに、1人しか警備がいないと本気で思ってたのか。この馬鹿」


彼女の言う通り、この待機所にはクローンが数人配備されている。

学園都市に50人もの侵入者がいると分かった時点で、これぐらいの備えをしておくのは当然だった。


「04号の疑問。彼女をどうしますか?」

「あん? 使い道はイロイロあんだろ。とりあえず研究所へ運んでおけ」
945 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/03(木) 02:08:35.01 ID:fYr1TVwy0

面白えモルモットが手に入った、と喜ぶテレスティーナ。

そのまま五和は、地下の奥にある魔術関連の研究所へ連れて行かれた。


(幸い、あの裏切り者(寮監)は『管理個体』と一緒に常盤台へ外出中だし)

(気付かれる前に弄り倒しましょうか)


気絶した五和を、クローンが手術台の上にテキパキと乗せる。

そして無表情のまま、五和の頭部に『学習装置』を装着した。


「じゃ、あんたは引っ込んで見張りを続けなさい」

「04号は了解。施設内の警備に復帰します」


1人になったテレスティーナが、目を輝かせて機材をセット。

彼女が漏らした独り言は、誰の耳にも届かない。




「さて、あなたの限界は“どこ”かしらね?」


946 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/03(木) 02:09:21.54 ID:fYr1TVwy0

8月20日午前9時35分、胤河製薬学園都市支店


木原幻生は、木山の言葉を聞いて世にも嬉しそうに顔を綻ばせた。


「“なんだってする”ね。木山君もようやく科学者らしくなったじゃないか」

「な……」

「知識を追い求める科学者とは、そうでなくては」


幻生の不気味な迫力に、飲み込まれそうになる木山。

震えそうになる手を必死で押さえて、銃口だけは外さないように歯を食いしばる。


「頭をちゃんと狙いなさい。有言実行は大切なことだからね」

「う……く……」

「私の脳をここに撒き散らし、眼球を踏みつぶし、その綺麗な手を血に染めて、優しい先生としてあの子達を迎えに行ってあげなさい」

「あ、あ、あ……」

「どうかしたのかね? 何事も経験だよ木山君――」


かつて木山が尊敬していた教授時代と、全く同じ態度で殺人をほのめかす幻生。
947 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/03(木) 02:10:21.27 ID:fYr1TVwy0

「殺しづらいというのなら、場を和ますために少しお話をしようじゃないか」

「……」

「せめて死ぬ前に、君に1つだけ聞いておきたい事があったんだ」

「……?」

「聞けば、君の作った『幻想御手(レベルアッパー)』は脳波のネットワークを利用した演算機器ということだけど……」

「一体どこから、こんなアイディアが出てきたんだい?」

「それは……」


口ごもる木山に、幻生がネットリとした視線を向ける。


「木原一族ですら考案しなかった、脳波のネットワークを構築するという大胆な着想」

「これは教え子時代の君からは、考えられないものだよ」






「――そのアイディアを教えたのは、一体誰かね?」





948 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/03(木) 02:11:32.73 ID:fYr1TVwy0

今日は以上で終了となります

投下前に少し書きましたが、この話では『妹達』が存在しません

ですが物語冒頭にあるように、レベルアッパー事件は起きています

これが『樹形図の設計者』と並んで重要な転換点になります

次の投下は、様子を見て次スレをたてる事になると思います

一応埋まる前に来る予定ですので、残量は気にしないでも大丈夫です

では、おやすみなさい
949 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 02:20:06.50 ID:uPL++sPro


よかった、ビリビリは今日も憂いなく上条さんにビリビリしてるんだね
950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 03:59:22.43 ID:RrudHAa/o
1から追いついた
何コレ格好いい
wwktk
951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 09:10:44.04 ID:EjLrFqic0
これはまた予想外
原作だと妹達の存在をヒントにしてレベルアッパーを思いついたんだっけ

そして五和……かわいそうに
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 10:48:09.59 ID:jrGu8we7o
あとなんかがリンクしてっていうと春上さんがらみかねえ?
助けたい子供たちに降りかかった悪意を下地にってのは
かわいそすぎか。
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 11:57:10.44 ID:ylH624dAO
妹達がいなくて脳関連の研究……うわぁ嫌な予感。ケーキじゃないよな
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 12:13:57.76 ID:mUfVMIx80
ステイル容赦ねーな
原作だとそんなイメージなかったんだけど
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 13:56:08.84 ID:XnCg2R1DO
じゃあ一方通行さんは罪を負ってないんだな…

でも一人ぼっちなのか
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 16:42:44.57 ID:C46K9xRB0
それこそ木原くンがいるじゃないか
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 19:50:43.49 ID:SxA89RC9o
>>954
邪魔しようとした一般人(当麻)にいきなり炎剣ぶつけて焼き殺そうとする程度には容赦ないぞ
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 15:02:27.18 ID:pQ4zQvL80
全ての清掃ロボにルーン付ければステイル無敵じゃね…?
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/04(金) 15:05:19.45 ID:4N9ApE/30
高校生以下の能力者が出ない以上
レベルアッパー事件に他の要因があるのは当然か
期待で胸がどす黒くなるな
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 22:06:19.92 ID:xBtdn14zo
ステイルのルーン模様を理事会の力で学園都市の最新ファッションブランドのロゴとして流行らせれば無敵じゃね?
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 22:17:40.23 ID:X+42nrP3o
>>960
他の魔術師に即バレして狙われるだろ
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 23:02:56.54 ID:xBtdn14zo
木原くンのワクワク☆学園都市に入った時点で魔術師は・・・
963 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 23:52:04.21 ID:X+42nrP3o
>>962
ステイルがいつでも発動出来るになって
木原[ピーーー]だろ
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 00:02:28.22 ID:Uazac16Wo
しかし木原神拳
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 00:34:32.75 ID:xlFgFmlP0
学園都市中のモニターに木原くンの権限でルーンが表示できるようにすればなんとか
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 12:31:28.66 ID:VWAEnCbB0

アレイスターがいないある意味平和な世界なのに、この得体の知れない悪寒はなんだろう
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 14:15:01.22 ID:5Iy7l9iG0
むしろアレイスターが居ないからこそ
状況をコントロールする人が無くて混迷してるんじゃないの

木原くンは優秀だけど、学園都市の全権を担ってる訳じゃないし
統括理事会や日本政府も完全な味方じゃない
結構ギリギリの綱渡りだよ

968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 19:22:50.47 ID:10mBNZL6o
暴力団とかマフィアの組織は残ってるのにボスだけいなくなった感じ。
下っ端が迷走しやすい分危険かも。
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 22:51:20.80 ID:4uDL/5M3o
中ボスクラスを集めてラスボスと戦っているような感じだな
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 12:05:20.66 ID:hb15CoZ/0
学園都市の科学力は原作基準なんだよな
アレイスターなしでも発展してるのは凄いのかどうか
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 12:54:53.21 ID:+GErCzUvo
本当の意味で超能力の原理を把握してるのは多分☆だけなので凄過ぎる
972 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/08(火) 02:32:47.86 ID:9yqQJL380

こんばんはー、レスありがとうございます

これがこのスレ最後の投下になります

では、投下


8月20日午後5時55分、アビニョン『教皇庁宮殿』近くの庭園


何事も無かったかのように攻撃態勢を取るエツァリに、ショチトルが囁くように尋ねる。


「大丈夫なのか……?」

「はい。安心してくださいショチトル」


エツァリを囲むように浮かぶ粉塵を見て、テッラが憎々しげに吐き捨てた。


「まさか、『原典』を使う魔術師だったとは思いませんでした。少しばかり面倒な事になりましたねー」


戯言を最後まで聞いてやる理由は無い。

原典の粉末と言う“猛毒の嵐”が、悠然とたたずむテッラへ牙を剥く。
973 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/08(火) 02:34:05.17 ID:9yqQJL380

「……理解力に欠けているようですねー。“少し”の意味が分かっていますか?」


そして。


「――優先する」

「!」


常人なら骨も残さず食い尽されるであろうその攻撃を、テッラは真正面から受け止めた。

その平然とした表情が、『原典』による攻撃ですら意味が無い事を何よりも明らかにしている。


「残念ですが、これが格の違いというモノです。例え『原典』でそこそこタフになろうと、勝ち目はありません」


ゴバッと空気を切り裂いて、今度はテッラの操る小麦粉が刃となって襲いかかった。

原典の粉末と、小麦粉。

奇しくも似たような形状の『武器』が、互いに噛みつき、引っ掻き、爪を立てる。

本来なら圧倒的に原典よりも質が劣るはずの小麦粉が、テッラの魔術によって互角以上の力を振るっていた。


(く、力負けしている……!)


この原典を文字通り肉体に刻んだショチトルならば、己の肉体と引き換えにさらなる力を引き出せたはずだ。

しかし現在原典は、かつての所有者である彼女を離れてエツァリのものとなっている。
974 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/08(火) 02:34:49.71 ID:9yqQJL380

「おやあ、考え事をしている余裕があるのですかねー?」

「優先する。――人肉を下位に、小麦粉を上位に」


エツァリのごく僅かな思考の合間を縫って、テッラが刃を振りまわす。

その矛先は――。


「これ以上、お兄ちゃんの足手まといになってたまるか!」


叫ぶショチトルが、『マクアフティル』で小麦粉を受け止めた。

衝撃で剣が吹き飛ばされるものの、彼女は斬られていない。


(やはり、あの術式は……)


それを見たエツァリが、テッラの術式の弱点を察知した。


「しぶといですねー、イライラします」

「させませんよ!!」


間断なくショチトルに迫る第二波を、原典の嵐が迎え撃つ。

暴風の余波を受けて転がるショチトル。

その拍子に、彼女の持ち物である小物や化粧品、アステカのお守りなどが散乱した。
975 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/08(火) 02:35:28.72 ID:9yqQJL380

「霊装としての価値は無し……只のゴミですか」


ほんの一瞬身構えたテッラが、小馬鹿にしたようにお守りである石を踏み砕く。


「あ……」


確かに、あの石に魔術的な意味は無い。

あれは学園都市の空港で売っていたチープな模造品だ。

それでも。

日本と言う異国の地で、アステカの文化に出会えると考えもしなかったショチトルは衝動買いをしてしまう。

内緒で購入しておき、後でこっそりエツァリにプレゼントしてやろうと思ったのだ。

こんな命のやり取りをしている状況なのに、何故かショチトルはお守りを壊された方がショックだった。


「ほら、遅いんですよ」

「が、はあ!?」


そんなショチトルの眼前に、胸部を一閃されたエツァリが落下する。
976 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/08(火) 02:36:07.67 ID:9yqQJL380

大事な人のそんな姿を見て、ようやく彼女は正気に戻った。


「よくも!」


まるで獣のように飛びかかろうとする彼女を、エツァリの微かな声が呼びとめる。


「駄目……ですよ……テッラに……正面から……挑んでも……勝てません」

「ようやく理解しましたか。では、さっさと死んでほしいものですねー」


ゴボッと血を吐きながら、エツァリがゆっくりと立ち上がる。

そのまま自分の体で隠すようにして、彼は“ある物”をショチトルに手渡した。


(これを、あなたが使ってください)

(……!)


その意味を理解したショチトルが、テッラに気づかれないように小さく頷く。

ヨロヨロと起きたエツァリには、微かな笑みがあった。


(チャンスは一度、失敗は許されない)

(自分に出来るのはコレしかありません)



(――どうか許してください、ショチトル)
977 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/08(火) 02:37:00.96 ID:9yqQJL380

「『原典』をフルに使って、このザマですか」

「ええ。自分でも情けなくなりますよ」


テッラの挑発に、静かに返答する。

胸を斬られたエツァリだったが、原典のおかげで傷はすでに塞がっている。

それでも、何度も致命傷を受けた所為ですでに死人のような顔色だ。

肉体的にはともかく、精神的に限界が近い。


(この『原典』を辛うじて掌握していられるのも、あと数分が限度ですね)


残る気力を振り絞って、粉塵と化した『原典』をテッラに叩きつけた。


「優先する。――原典の動きを下位に、小麦粉を上位に」


が、それも無駄。

全てを小麦粉で阻まれて、逆にエツァリ自身にはじき返される始末。

彼はそれを承知の上で、さらに何度もテッラへ攻撃を繰り返す。

――そしてことごとく返り討ちにあった。


「まだ足りないんですかねー?」


無様に地を転がるエツァリに、呆れたようにテッラが言葉を放つ。

978 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/08(火) 02:37:31.68 ID:9yqQJL380

しかし。

エツァリの耳に、テッラの言葉は届かない。


(ようやく、ここまで来れた……)

(目的は半分達成したも同じ)

(これ以上の我慢は、後一回)


無理な特攻を繰り返したつけか、彼の回復は遅くなっている。

体のあちこちから血が吹き出て、今にも死にそうだ。


「お、おぉぉぉぉぉぉぉ!!」


正真正銘、全力を掛けて。

ベッタリと濡れる右手を振りかぶり、エツァリは最後の突進をした。
979 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/08(火) 02:38:23.59 ID:9yqQJL380

雄叫びを上げるエツァリを、テッラは醒めた目で見つめる。


(所詮は異教のクソ猿、最後まで愚かでしたねー)

(このまま嬲るのも哀れですし、死なせてあげましょうか)


小麦粉の刃が、テッラの意のままに踊りだす。


「優先す……!?」


その時、テッラはエツァリの狙いに気付いた。

彼が突っ込んでくるその後ろで、ショチトルが“黒曜石のナイフ”を構えている。

『トラウィスカルパンテクウトリの槍』による、分解魔術。

異教の魔術であるが故、テッラは詳細を知らなかったが。


(あの魔術の直撃は、マズイ事になりますね)

(……仕方ありません、優先術式を組みなおしましょう)

(半死人の拳など、問題にするまでもありません)





「優先する。――魔術を下位に、人肌を上位に」



980 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/08(火) 02:39:07.41 ID:9yqQJL380

その言葉を聞いた瞬間、エツァリは勝利を確信した。


(やはり、彼の魔術はその対象が1つだけに限定される)


その予測を決定づけたのは、さきほどの攻撃だ。

ショチトルが、『マクアフティル』で小麦粉を受け止めたあの時。

原典すら相手取る強力な魔術なのに、あの剣1本で攻撃を受け止められた。

つまり、優先の順位は融通が利かない。

再度剣相手に設定を変えなければならなかったのだ。


(恐ろしい魔術師なのは認めましょう)


恐らく、エツァリではどんな代償を払ったとしても追いつけないような高みに位置する魔術師。


(魔術や原典すら無力化するあなたに、自分が勝てる道理は無い)

(今までならば)


そう、アステカの魔術師エツァリではどう足掻いても勝てない。
981 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/08(火) 02:40:02.17 ID:9yqQJL380

だが、今のエツァリは魔術師ではなく『猟犬部隊』……いや『対魔術師用特別編成隊』の一員だ。


(あのナイフに、意味などないんですよ!)


『トラウィスカルパンテクウトリの槍』は、只のフェイク。

金星が沈み、辺り一帯に粉塵が舞うこの状況下では利用出来ないのだ。

術式を知らないテッラが、それに気づくことは不可能だった。


(自分の腕1本と引き換えに――)


魔術だけを警戒していたテッラの顔に、エツァリの濡れた手が直撃する。


(あなたの命を戴きましょう!!)




ボン!!

直後、エツァリの右手に付着していた“液化爆薬”が炸裂。

彼の右腕と、テッラの頭部が――冗談のように庭園に転がった。
982 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/08(火) 02:40:53.67 ID:9yqQJL380

「エツァリ、しっかりしろ!」

「しょ、チトル……?」


エツァリが意識を失ったのは、ごく数秒だった。


「くそ、『原典』が修復してくれるんじゃないのか!」


どういう意味だろうかと彼は考えて、すぐに思い至った。

右腕が、回復していない。

しかしそれは、予想の範疇だった。


「恐らく、未熟な自分が調子に乗って『原典』に頼りすぎた為でしょう」

「え」

「腕1つ無くしたぐらいじゃ死なないと判断したんじゃないですかね?」


あっさりと言ってのけるエツァリに、ショチトルは涙目になる。


「泣かないで下さい、あなたのおかげで勝てたんですから」

「ぐす……泣いてない……エツァリお兄ちゃん……」
983 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/08(火) 02:42:10.43 ID:9yqQJL380

テッラの攻撃で、ショチトルの荷物が散乱した。

その荷物の1つ。

化粧品の中に、液化爆薬を混ぜたクリームがあったのだ。

暗部に供給される学園都市製の道具だが、上手い事偽装されたらしい。

エツァリはそれを利用しようと考えた。

テッラに特攻をしてわざと吹っ飛ばされ、クリームの落ちた場所まで自然に行く事が出来た。

後はそれを右手に塗りつけて、優先術式を外させた上でぶん殴ればいい。

上手く行くかは五分五分の賭けだったが、それは成功した。


「さあ、そろそろ『C文書』の奪取が終わる頃です」


このまま学園都市に帰り、また戦いの渦へ赴くのだろう。

そんなエツァリの予感はしかし、外れる事になる。



「驚いたのである。テッラを破るとはな」

「な……」


あのテッラよりも遥かに危険なチカラを感じさせる男。

後方のアックアが、巨大なメイスと共に現れた。
984 :別人 ◆Q7pSHpMk.k [saga]:2011/03/08(火) 02:43:41.44 ID:9yqQJL380

今日はここまでになります

予告通り次回からは、新しいスレで投下します

次スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1299519780/

これからも見てくだされば幸いです

このスレは、次回投下までに1000いかなければHTML化依頼を出します

長々とお付き合いありがとうございました

では、おやすみなさい
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 02:45:11.53 ID:dggC4s4jo


 ッラになっちゃったか……
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 02:48:00.83 ID:JwH5vV7Po
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 03:35:40.91 ID:5NYLRK95o

ッラって逆に言いやすい
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 03:38:38.76 ID:ucfBizQ1o
乙!

理事会も気になるし、アックアさんも登場ってどんだけかっこいいんだこの話…
次スレも楽しみにしてます!
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 06:50:17.45 ID:flQyRCQIO
アックアさんマジ無理ゲー
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/08(火) 09:39:39.95 ID:acH0FVW7o
おつ
はやく五和の限界をみたい!
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 12:10:57.83 ID:qNlEP81J0
おつおつ
テッラ様が死んだ…ショックだ
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 12:24:43.48 ID:hsKYbNDqo
まぁテッラって奇襲するか2種以上の攻撃法をもってるだけで意外と倒せるスペックだもんなー
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 13:54:04.14 ID:lIEUjh7D0
板倉ああああああ
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 14:03:51.44 ID:dH0DZsc5o
正直初撃を避けきって弱点を把握出来れば門外漢の大能力者以下でも勝てるよな
大半は初撃で倒れるだろうけど
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 20:40:43.81 ID:weEz2Hcoo
うめ
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 21:45:41.95 ID:pZlD0Nxbo
ウメェ・・・
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:14:33.43 ID:sTPrpE5Ro
梅田
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:15:41.03 ID:JwH5vV7Po
うめだより
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:19:19.39 ID:sTPrpE5Ro
梅田999
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:30:57.90 ID:DFC4iY6Qo
次スレも木原クオリティ
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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うわぁ・・・べんぞうさんの中・・すごくアッタ界ナリ・・・ @ 2011/03/08(火) 22:15:14.31
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ここだけ修羅場の戦場。コンマ00で死亡 @ 2011/03/08(火) 22:11:16.68 ID:sTycuaLc0
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バリウム飲んだ後のウンコ食べたらまた白いウンコが @ 2011/03/08(火) 22:07:37.83
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この板不謹慎だよ @ 2011/03/08(火) 22:03:23.08
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(^ω^;) @ 2011/03/08(火) 21:22:57.34
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