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お題を安価で受けてSSスレ - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/19(水) 15:12:14.38 ID:U33v8KJK0
ちょっとSSのお勉強的な意味合いも込めて
安価で指定されたワードから膨らませる感じでSSでも書こうかなと。
ここで全盛の禁書とかはわからないので【魔王】だとか、抽象的というか幅の広いお題を頂きたい

まずは>>4>>7から出されたお題を元に書こうと思う
そこまでに人が来るかはわからんが
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713062467/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 15:28:10.78 ID:mRHhszlRo
人が来るか分からん状態にしては安価が少し先過ぎるかもねといいつつ支援
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 15:32:49.93 ID:rF3t0AJAO
ksk
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 15:58:33.93 ID:6ghuUK1SO
ストリートファイト
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 16:02:56.12 ID:Su5hgyru0
>>7に期待kskst
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/19(水) 16:21:44.64 ID:6TkQEI7DO
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/19(水) 16:22:33.26 ID:6TkQEI7DO
ヨーヨー
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 16:24:24.13 ID:yu7FqoRAO
ヨーヨーで戦闘とな?
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 17:30:15.28 ID:owDAoSt30
どうすんのこれ・・・
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/19(水) 17:37:22.45 ID:U33v8KJK0
オッケーちょっと練ってくる
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/19(水) 20:12:04.83 ID:o1CDFlCb0
ブリジットか
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 21:17:16.12 ID:Su5hgyru0
遊戯王の初めの方読んでくる
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/19(水) 22:20:07.14 ID:6TkQEI7DO
>>12
俺もどちらかと言えば皆のアイドルブリジットちゃんよりそっちを考えてた
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 22:30:57.30 ID:YVLJXmDAO
超速スピナーが頭に浮かんだ俺は……
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 22:52:56.69 ID:+InqI5IZo
スケバン刑事スレと聞いて……
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 00:56:14.97 ID:Jk+05/3do
幽々白書ってのがあってだな
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 23:26:07.47 ID:+MPdqhHIO
なるほど。つまり今日のキルアスレってわけだな
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [おっぱい!]:2011/01/21(金) 14:41:22.21 ID:ohUHKWsAO
>>1こねぇな
>>1以外がこのスレ使うってダメかな?
SS初心者の練習場になると思うんだが
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 15:25:24.10 ID:80Xu3HkAO
良いんじゃないの?>>1は来てないみたいだし
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 21:18:06.01 ID:nL18SsFAO
早くしないとブリジットスレになるぞ

ブリジットちゃんちゅっちゅ
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 21:25:01.65 ID:ohUHKWsAO
じゃあ、お題>>23>>25
思い付いた奴から書いてもヨロシ
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 22:03:58.87 ID:fqiS181Jo
>>4 >>7
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 22:32:05.20 ID:6UmYyY7Oo
ストリートファイト
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 22:57:39.41 ID:fqiS181Jo
kskst
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 23:02:00.04 ID:6UmYyY7Oo
ヨーヨー
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 23:06:01.38 ID:sfhia2bno
じゃあ俺も乗っ取るぜ!
27 :たけし君と僕。(1/3) [sage]:2011/01/21(金) 23:07:30.62 ID:sfhia2bno

「ほーら、犬の散歩だよっと。お次は世界一周!」

 自慢げに、僕は空き地で友達たちに色々な技を見せていた。
 小柄だけど手先が器用な僕は、クラスで一番ヨーヨーが巧かったからだ。

「すごいすごい!」
「もっとやって!」
「よし、じゃあ次はね――」

 みんなの褒め言葉で嬉しくなって有頂天だった、僕の手から。

「おい、俺にも貸してみろよ!」

 ヨーヨーが、強引に奪い取られた。
 こんな事をするのは決まってる。たけし君だ。

「返してよ!」

 僕がそう言っても、たけし君は聞いてくれなかった。

「嫌だね。お前に使われるより俺が使ってやった方が、こいつだって喜ぶぜ!」

 そう言いながら彼は手を高く、僕には届かないところへ上げる。

「うう……」

 たけし君は背が高かった。
 たけし君は力が強かった。
 たけし君は足が速かった。
 だから、たけし君はガキ大将だった。
 だから、たけし君に逆らう奴はいなかった。

 僕だって、そうだった。
 だけど。



 ――それが、どうした。



「返して!」

 届かなかった手を、伸ばす。
 それは、確かに――
28 :たけし君と僕。(2/3) [sage]:2011/01/21(金) 23:08:37.80 ID:sfhia2bno
「……あのころは若かったなあ」

 机の引き出しから出てきたものを見つめ、僕は一人ごちた。
 あれは、思い出すだけで顔が赤くなる、だけど何よりも大事な思い出だ。
 ケンカなんてしたこともない僕が、初めて他人を殴った日。

「おい、片付けもしないで何を見てるんだ……って、ヨーヨー?」
「ああ、思い出の品ってやつだよ。分かる?」

 質問に質問で返す、僕は少し意地悪だったかもしれない。
 だけど。

「懐かしいな。これって確か、お前と初めてケンカしたときのヨーヨーだろ?
 今までずっと持ってたなんて物持ちいいな、お前」

 あっさりと答えられて、びっくりした。
 僕にとっては思い出の品でも、この人にとっては大した物じゃない。
 そう思ってた。

「なんで憶えてるの?」
「なんでって聞かれてもな……そう言うってことは、お前だって憶えてたんだろ?」
「そりゃまあね、初めて君を――その、叩いた日だし」

 ちょっと口籠もったのは、もう少し柔らかい表現をしたかったからだけど。
 あいにくと僕のボキャブラリーじゃ難しかったので、仕方なく無愛想に答える。

「だからだよ」

 でも、そんな僕よりぶっきらぼうに答える彼は、困ったような顔で。

「お前と初めてケンカした日のことだから、憶えてるんだよ。ずっと」

 とても、恥ずかしいことをのたまった。
29 :たけし君と僕。(3/3) ◆zdjPYVneyY [sage]:2011/01/21(金) 23:10:34.78 ID:sfhia2bno
「……たけし君。顔、真っ赤だよ」
「分かってるようっせぇな!」

 怒ったように言うけど、これは照れているだけだ。
 長い付き合いだし、それくらいは分かる。
 とは言えあまりからかうとこの部屋から逃げ出しそうだし、これくらいにしておこう。

 それに、本音を言えば。

「まあ……嬉しい、かな」

 こんな事を言う、僕の顔も少し赤かったと思う。

「お、おう……そうかよ」
「うん。この子が生まれてきたら是非とも教えてあげたいくらいにね」
「ちょっと待てぇっ!」

 お腹に手を当てて微笑む僕に、たけし君は慌ててるけど。
 こんな嬉しい言葉、教えてあげないわけにはいかないと思う。
 まだまだ言い訳を続けてる、たけし君には悪いけど。

「――僕も、ずっと憶えてる。今までも、これからもね」

 怒ったように見せかけて、本当はただ照れているだけ。
 子供の頃からちっとも変わってない、分かりにくくて解りやすい君と。
 今こうなれた切っ掛けがあの日だから。

「ん、何か言ったか?」
「ふふっ。さてね、言ったかもしれないね。
 そんなことよりあっちの片付けもまだなんでしょう? 早く行きなよ」
「お前な……あとできっちり白黒つけてやるからな!」

 立ち上がって部屋を出る、彼の背中をそっと見上げて、僕はお腹をさすった。

 いつか、この子に教えてあげよう。
 古ぼけたヨーヨーの遊び方と、それがきっかけでケンカした日のことを。

 きっと、ね。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 23:11:44.61 ID:sfhia2bno
おーけーやっぱ無茶振りだろこれ…。
風呂入ってきますノシ
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 02:10:00.26 ID:sxpiGhrf0
まだ半分くらいしか書ききってないけど、投下してもおkなの?
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 02:27:41.66 ID:d7c8rWQAO
別に問題ないと思うが題名くらいは名前欄に書いてくれるとありがたい
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 16:40:57.79 ID:QsBoR4HKo
進まないからお題
>>35
>>40
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 16:41:38.88 ID:fQx6HhFAO
加速
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 18:43:04.03 ID:d7c8rWQAO
勇者
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 22:36:14.67 ID:WVXzZiVIo
ksk
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2011/01/22(土) 23:10:53.99 ID:EGyKAYnD0
kskあげ
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/22(土) 23:16:00.67 ID:J3HFVfhd0
(ksk*・∀・)ムギュッ
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/22(土) 23:17:09.57 ID:mBhcIymX0
女体化
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/22(土) 23:18:09.18 ID:mBhcIymX0
もいっちょ!!
女体化
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 23:18:20.64 ID:Fqsel/iSO
結局「書きやすいお題が出るまで安価を延々パスし続けるスレ」になるんですか
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 23:19:58.55 ID:WVXzZiVIo
>>41
>>27-29
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/22(土) 23:20:40.87 ID:mBhcIymX0
>>1が逃げたのがなぁ
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 05:24:32.13 ID:qlwxUKIoo
いま夜勤中だから、帰って一眠りしたらやるわ。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 16:51:37.17 ID:IY++fEax0
>>44はやくしてくれ、頼む
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 17:36:35.09 ID:ckZBwvNAO
ちょっと乗っ取りさせてください

勇者「やい魔王!倒しに来たぞ!」

魔王「うるさいなー。そーれっ」

ボワン

勇者「なっ…む、胸が重い!?」

魔法使い「あたしよりでかい!?」ガーン

魔王「ふふふ。秘術、女体化だ!」

勇者「女体化だと…」

魔王「諦めて我の嫁になれ。勇者!」

魔法使い「wktk」

勇者「やめて!なんか魔法使いがわくわくしてるから!」

スレ汚しすいませんでしたー
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 18:53:52.42 ID:bL3TRpbK0
wktk
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 19:51:16.51 ID:LZSFvQSDO
携帯はSSとか手出すなよ
大人しく読むだけにしようぜ
49 :勇者・女体化 [saga sage]:2011/01/23(日) 21:30:24.06 ID:SjDZFx4H0
「おい、こりゃどういうことだ賢者」
 朝目が覚めていきなりに股辺りと胸元辺りに違和感を感じた俺は、喚きたくなる衝動を抑えつつ宿屋で隣の部屋を取っていた賢者の元へ直行した。
 俺の身に降りかかったこのメルヘンチックでファンタジィな災厄はまず間違いなくこいつのせいで引き起こされた物だろう。
 ベッドの上に可愛らしくちょこんと座りながら眠たげにその眼を擦る賢者を半眼で睨みながら、俺は彼女に詰め寄る。
「説明しろ。今すぐ」
「勇者様はー、女の子の方が良いと思いますー」
「意味がわからない」
 全く要領を掴めない賢者の返答に、俺はこめかみを押さえ呻いた。
 これで賢者と名乗れるのだから世の中間違っていると思う。
「男なんて汚らわしいだけですよー」
 ニコニコとそこそこに可愛らしい笑みを浮かべた賢者は、その顔とは印象を真逆にする台詞をのたまう。
「何ですかあの生き物は。家畜以下も同然の生き物が勇者と名乗るだなんておこがましい」
「お前が賢者と名乗るのも相応におこがましいわ」
「と、いうわけで勇者様は女の子になって頂いた方が相応しいと思った次第ですー」
「つまり俺はお前の男嫌いのとばっちりを受けたのか?」
 その問いに、「はい〜」と呑気に頷く賢者。
「ふっざけんな! 早く戻せバカ! 女の体じゃ剣が振れないし胸が邪魔だろうが!」
「あれ……? 勇者様は「女の子の体になったから逆ハーレム作るぞー」なんて言うと思ってたのに変ですね」
「アホか。どうでもいいわそんなもん」
 俺の両肩には王様や国民を始め、たくさんの人たちの期待、希望がかかっている。
 逆ハーレムだの何だの、そんなどうでも良いことにうつつを抜かしている暇があるなら、今すぐにでも魔物を数体屠った方が余程世のためになる。
 目の前の女とて、腐っても賢者と呼ばれる者。それくらいの分別はあると思っていたのだが。
「勇者様の気持ちもわかりますけどー。勇者様は最近張り切り過ぎなんですよ」
「そうか? いつもと変わらん」
「だからほんのちょっとの息抜きも込めていかがです?」
「何が如何です、って……、おい、何で俺をベッドに引き込む」
 急に俺の腕を取った賢者が、勢いよくその手を引いた。当然つんのめる形になって、賢者と共にベッドにダイブする形になってしまう。
「賢者は人生経験が豊富ですからねぇ……。うふふ」
 いつの間にやら俺を押し倒すような形でこちらを見下ろしている賢者が、ぺろりと紅い舌を出し唇を舐めた。いつも抜けているわりに妙に色っぽい仕草にドキリとする。
 と、いうか心なしかその瞳が熱を帯びているような気がするのは気のせいか。
「きっと楽しんで頂けますよ」
「ちょ、待て、どこに手を伸ばし……ひゃうっ!?」
 妖艶な笑みを浮かべた賢者はそろそろと俺の下腹部に手を伸ばし、下着をまさぐって今はブツが取っ払われてしまった俺の秘部をするりと撫でた。
 直後触られた部位から押し寄せる謎の感覚に、声が震える。
「今日はお休み、いっぱい楽しみませんとー」
「待て、賢者、やめ。男は汚らわしいって……」
「今の勇者様は、女の子なんですよー」
 言って、賢者は空いていた手で俺の膨らんだ胸をまさぐり――

以下略
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 00:34:05.97 ID:XPH8SxUjo
わっふるわっふる
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/24(月) 11:42:36.35 ID:nv7WYNpAO
続きはまだか
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 17:58:51.51 ID:0p4cjefAO
>以下略
おい



















おい
53 :ヨーヨーファイター 浩太 1/13 [sage saga]:2011/01/25(火) 14:33:35.52 ID:wZIW9EgU0
空気を読まずに前のお題で一つ失礼しますぜぃ

13レス、一投下50行オーバーっす。 興味無かったら読み飛ばしお願いするぜぃ

お題[ストリートファイト][ヨーヨー]

 日本のメーカーは、多くの玩具を生み出していった

メンコ、ビーダマから始まったものが、現代ではベイブレード、ビーダマン……

 それらの玩具は最初、ただの子供の玩具であったが、時代が替わると共に意味を変えていった

ミニ四駆は空を駆け、ビーダマンは狙撃兵器となり、ベイブレードは自然災害を引き起こした

これは…… そんな時代の、一つの玩具の物語である……
54 :ヨーヨーファイター 浩太 2/13 [sage saga]:2011/01/25(火) 14:37:25.27 ID:wZIW9EgU0
〜〜〜〜〜 街の空き地 〜〜〜〜〜

ガキッ! ドカッ! スイーツッ!

子分1「お、おいっ!? 炎郎さん圧されてないか!?」
子分2「バカなこと言うんじゃねぇよ! んなわけあるか!」

バキィッ!!

炎朗「っっ!! テメェいい加減にしやがれぇ!!!」 ブオンッ!

キュイィィィィィンッ!!!

子分1「炎朗さんが スーパーレベルトリック:ロケット の体勢に入ったぞ!!」
子分2「こりゃ出るぞ!! 炎朗さんの必殺技が!!!」

[trick success!! --- missile ball]

炎朗「行け!! ミサイルボールッ!!!」

ゴゴゴゴッ!!

子分1「技が決まった! これを避けられるわけがない!!」
子分2「あの生意気なガキもこれでお終いだぁ!!」

バシュウウウゥゥゥッ!!


??「……フンッ…」 ブンッ!

ガキイイィィィンッ!!

炎朗「な、なんだとおおぉぉ!?」

「「 ヨーヨーで防いだぁ!? 」」

炎朗「お、俺のとっておきが……」

??「……大した事ないねアンタ」

炎朗「なっ!? 貴様は一体……」

??「この程度の輩に名乗る名は持ってないよ、それじゃ」 ブオンッ!

キュイイイィィィンッ!!!!!!

炎朗「こ、このトリックは!? まさかハイパーレベル!!」

[trick success!! --- sonic boom]

炎朗「う、うわあああああぁぁぁぁ!!!!」
55 :ヨーヨーファイター 浩太 3/13 [sage saga]:2011/01/25(火) 14:40:20.96 ID:wZIW9EgU0
〜〜〜〜〜 学校 〜〜〜〜〜

バシッ!

浩太「ぎゃふんっ!」

「んじゃあ掃除頼んだぜ、ノロ太!」
「ちゃんと片せよ」
「告げ口したら絶交だかんなー!」

浩太「うぅぅ…… う、うん…… わかったよ」

「よーし! サッカーやんぞー!!」
「おぉー!」
「さっさと校庭行こうぜー!」

  「コラーー!!!」

「やべぇ! あの女が来たぞ!!」
「うわっ! 逃げろー!!」
「じゃ、じゃあな! ノロ太!」

ワーワー………

香織「あ、こらっ! 逃げるなー!!」

浩太「か、香織お姉ちゃん……」

香織「ったく、またあいつら浩太に押し付けて…」

浩太「お姉ちゃん、僕は大丈夫だから……」

香織「大丈夫って何がよ! 浩太ももっとシャキっとしなさい!!」

浩太「で、でも、僕はお掃除好きだし…… 」

香織「はぁ〜、ねぇ浩太」

浩太「ん? なぁにお姉ちゃん」

香織「あんたの優しいところは良いとこだけど、あんな奴らに優しくする必要ないのよ?」

浩太「そ、そうかな……」

香織「そうなの! それに、これはもうイジメじゃない! 浩太は怒っていいのよ?」

浩太「そうかな……」

香織「……はぁぁ、浩太って優しすぎるのよ…」カチャッ

サッサッ……

浩太「お、お姉ちゃん! 掃除なんてしなくても…」

香織「いいの! 一人より二人の方がはかどるでしょ?」

浩太「それはそうだけど……」

香織「早く終わらせて帰りましょ?」

浩太「……うん…」
56 :ヨーヨーファイター 浩太 4/13 [sage saga]:2011/01/25(火) 14:42:02.73 ID:wZIW9EgU0
〜〜〜〜〜 校庭 〜〜〜〜〜

ワーワー、ギャーギャー!

「いくぜ! はやぶさシュート!!」
「うおおぉぉ! タイガータックル!!」

「お、おい…… アレは…!?」

炎朗「………」

「え、炎朗だ! 炎朗が来たぞ!!」
「炎朗って、NIP小最強スピナーの…… ”ロケットの炎朗”か!?」
「お、おい! 目を合わせるなよ…!!」

炎朗「……チッ…」

子分2「あの野郎強かったですねぇ、炎朗さん」
子分1「お、おいバカッ!」

ギロッ!

子分2「す、すみません……」

炎朗「ったく…… ん?」



香織「ほらっ! さっさと歩きなさい!」

浩太「ちょ、ちょっと待ってよ、まだ靴が…… あっ」

ドテッ

香織「もう、どんくさいわねぇ」

浩太「ご、ごめんなさい…」


子分1「ありゃあNIP小のマドンナ香織ちゃんと、隣に居るのは……」

子分2「……誰ですかねぇ、炎朗さん」

炎朗「俺が知るわけねぇだろうが!!」

子分2「す、すみませんっ!!」

炎朗「クソがっ……… ん?」

子分1「ど、どうしましたか? 炎朗さん」

炎朗「……いい事を思いついたぜぇ」
57 :ヨーヨーファイター 浩太 5/13 [sage saga]:2011/01/25(火) 14:44:33.41 ID:wZIW9EgU0
香織「だから、もっとしっかりしなさいって」

浩太「そう言われても……」

ドンッ

浩太「ギャッ、す、すみませ」

炎朗「あぁ!? んだテメェ!!」

浩太「ひ、ひいぃぃ……!!?」

炎朗「おいガキ、ごめんの一言すら言えねぇのか?」

浩太「あ… その…… ご、ごめんなさ」

炎朗「あぁ痛ぇなぁ…… こりゃ慰謝料だな」

浩太「え、そ、そんなぁ…!?」

香織「ちょっとアンタ! 何バカな事言ってんのよ!!」

炎朗「ぁあ? ……おぉ! 誰かと思えぁ香織じゃねぇか!」

浩太「香織お姉ちゃんの… 知り合い……?」

香織「クラスで調子に乗ってるバカよ」

炎朗「そうだな…… よしガキ、お前を許してやる」

浩太「え? その……」

炎朗「……代わりに香織、お前俺と付き合え。 それでチャラだ」

香織「ハァ!? 何言ってんのよ!!」

炎朗「嫌か? そんじゃ仕方ねぇな…… ガキ、一週間後までに慰謝料十万だ」

浩太「じゅ、十万……円…!?」

香織「はぁ…… 浩太。 こんなの聞く必要ないよ、早く帰りましょ」

子分1「おぉっと、そう簡単に帰すかよぉ」

子分2「へへ、素直に炎朗さんの言う事聞いてりゃいいんだよぉ」

浩太「!?」
58 :ヨーヨーファイター 浩太 6/13 [sage saga]:2011/01/25(火) 14:52:31.45 ID:wZIW9EgU0
浩太(ふ、不良の人が…… いっぱい…!?)

炎朗「逃げられねぇだろ? だから香織、さっさと俺と付き合えや」

香織「絶対に嫌!」

炎朗「絶対にか?」

香織「フンッ!!」

浩太(あわ、あわあわ…!!)

炎朗「……なら仕方ねぇ。 このガキを半殺しにするか」

浩太「!!?」

香織「ちょっと! なにふざけた事言ってんのよ!!」

炎朗「そいつは俺にケガさせたんだぜ? ならこのガキも痛い目見なきゃチャラじゃねぇだろ」

香織「っ!! バッカみたい!! 警察を呼ぶわよ!!」

炎朗「おいおい、俺はただヨーヨーバトルをするだけだぜ? なぁ」

子分1「そうだ! これはイジメじゃねぇよ!」

子分2「警察なんかが来ても意味ねぇよ!」

浩太「そ、そんな……」

炎朗「ま、つまりだ…… 十万持ってくるか、香織が俺の彼女になるか選べってことだ」

浩太「!?」
59 :ヨーヨーファイター 浩太 7/13 [sage saga]:2011/01/25(火) 14:55:28.56 ID:wZIW9EgU0
浩太(そんな…… 僕のせいでお姉ちゃんがあんな奴の彼女に…!? そんなの嫌だ!)

香織「あんた、最っ低ね!!」

炎朗「いやぁ、付き合ってみりゃ俺って結構優しいって思うぜぇ?」

浩太(でも十万円なんて大金、持ってこれないし……)

子分1「嫌ならこのガキボコボコにしちまいましょうぜ!」

炎朗「いや、俺だってそんなことはしたくねぇんだぜ? だから聞いてくれや」

香織「っ………」

………

香織「……わか」

浩太「…わかった」

炎朗「……ぁあ? なんだガキ?」

浩太「…そ、そのヨーヨーバトルっていうの…… 受けます」


香織「えっ…… こ、浩太…?」

炎朗「もう一回言ってみろ、ガキ」

浩太「ヨーヨーバトルを受けますっ!!」

手下1「はぁ!? お前なに言ってんだよ!」

手下2「クソガキ! お前に用はねぇんだよ!! 黙って」

炎朗「……わかった。 なら一週間後、この校庭でバトルだ」

手下1「え、炎朗さん!?」

浩太「わ、わかりました……」

炎朗「じゃあな、首を洗って…… 精々病院でも探しておきな」

手下2「ちょっと! 炎朗さん!!」

………

手下2「ちょっと、炎朗さん! なんで引いたんですか!?」

炎朗「……あのガキ… 俺を舐めてやがった……」

手下1「え、炎朗さん…」

炎朗「冗談じゃねぇ…… ぶっ殺す…!!」
60 :ヨーヨーファイター 浩太 8/13 [sage saga]:2011/01/25(火) 14:58:25.00 ID:wZIW9EgU0
香織「ちょっと! 大丈夫なの浩太!?」

浩太「……ねぇお姉ちゃん」

香織「なに? 私に出来る事だったらなんでも」

浩太「ヨーヨーバトルって、なに?」

香織「……浩太、知らないで受けちゃったの…?」

浩太「う、うん……」

………


その後、浩太はヨーヨーを買い、練習を積んだ……(色々な都合で略)

そして、一週間後……


炎朗「よぉガキ、逃げねぇで来たことだけ褒めてやるよ……」

浩太「あ、ありがとうございます……」

「おい、NIP小最強の炎朗とノロ太がヨーヨーバトルだってよ!」
「マジで!? ノロ太殺されるんじゃねぇか!?」
「ノロ太馬鹿だな…… あいつ…」

香織「………」

炎朗「さてガキ、ルールは無制限、武器の使用以外は何でも有りでいいな?」

浩太「は、はいっ!!」

炎朗「さぁ! はじめようか!!」

審判「ヨーヨーファイト! レディーッ、ゴー!!」
61 :ヨーヨーファイター 浩太 9/13 [sage saga]:2011/01/25(火) 15:02:09.98 ID:wZIW9EgU0
炎朗「さぁて、まずは小手調べだ」ブォンッ!

「え? なんで炎朗はロングスイーパーなんだ?」
「遊んでるんだろ、相手はノロ太だし……」

[trick success!! --- hammer ball]

炎朗「さぁて、まずはこのヨーヨーでぶっ叩いてやろうと思うが、お前はどうするんだ?」

浩太「……っ… ロングスイーパー!!」ブオォンッ!

[trick success!! --- hammer ball]

炎朗「はぁ? まぁいい、こんな最初で終わるなよな!!」

ブンッ!! ガキンッ!!

浩太「ひいぃぃ……!!」

炎朗「……ほぅ? 同じロングスイーパーで弾いたか」

浩太「フッ… フッ… フッ…!!」

炎朗「だが、んなもんいつまで続くかな!!」ブンッ!

ガキンッ! バキンッ! ガチッ!

「すげぇ…… あれをロングスイーパーだけで防いでるよ…」
「……でもよ、おかしくねぇか?」
「なにがだよ?」
「ノロ太の奴、ロングスイーパーやってから他の技をやる気配がないんだけど……」
「そういやそうだな」


香織(当たり前でしょ! 浩太はまだ…… 他のトリックが出来ないんだから!!)
62 :ヨーヨーファイター 浩太 10/13 [sage saga]:2011/01/25(火) 15:06:12.42 ID:wZIW9EgU0
バチンッ! ガンッ! ガキンッ!!

炎朗「………」ヒュルルルッ

パシッ

浩太「フッ!…フッ! ……?」(ヨーヨーを手元に戻した?)

炎朗「……お前、それ以外出来ねぇだろ?」

浩太「!!?」

炎朗「ハッハッハ! やっぱりそうかよ初心者が!!」

浩太「……っ…」

炎朗「さぁて、本当はガキ如きにこんな技使わねぇんだが……」

浩太「……っ……!?」

炎朗「特別に見せてやるぜ!!」ブォンッ!

キュイィィィィィンッ!!!

「炎朗が スーパーレベルトリック:ロケット を始めたぞ!!」
「出るぞ! 炎朗最強の必殺技が!!」

ポンッ バシッ!

[trik success!! --- missile ball]

炎朗「喰らえ!! ミサイルボールッ!!!」

ゴゴゴゴッ!! バシュウウウゥゥゥッ!!

浩太「は、速……!?」

バキィッ!! ボカァンッ!!

浩太「うわあああぁぁぁ!!」

「すげぇ! ノロ太に直撃して爆発したぁ!!」
「あのスピードじゃ誰もも防げねぇよ!」

香織「浩太っ!!?」

浩太「………」プスッ プスッ…
63 :ヨーヨーファイター 浩太 11/13 [sage saga]:2011/01/25(火) 15:09:17.51 ID:wZIW9EgU0
手下1「さすが炎朗さんだ…… 本来 ロケット は威力の高い簡単なトリック… でも隙だらけになる欠点がある」

手下2「しかしトリック成立は技が成功さえすれば良い……

 そこに目を付けてトリックが成立するギリギリの所でヨーヨーをキャッチするってことで隙を取っ払っている!」

手下1「あの炎朗さんがヨーヨーを持つって事は…… 銃を持ってることに等しいんだ!!」

浩太「……ぅ…」プスッ プスッ

炎朗「ん、まだ意識があんのか? まぁ俺もまだやり足りなかったしなぁ」

香織「っ!?」

「おい、炎朗のやつまだやる気か……?」
「あの相手、死んじまうんじゃねぇか……」
「って、ね、ねぇ香織! 何処に行くの!?」

炎朗「さぁて、簡単に終わるじゃねぇぞ?」

ズサァッ!!

炎朗「……そりゃぁ何の真似だ? 香織」

「か、香織!!?」
「香織さんがあの子供を庇ってる!?」

香織「もういいでしょ…… 勝負はついているわ!!」

炎朗「勝負かぁ…… んなもんどうでもいいんだよ」

香織「な、なにを…… 言って…」

炎朗「そのガキはなぁ、俺を舐め腐ってくれたんだよ…… 許せるわけねぇよな?」

香織「なに言ってんのよ!! そんなことで…」

炎朗「そんな事じゃねぇんだよ!! そんなガキが俺様をだ!!」

浩太「………」プスッ プスッ

炎朗「勝負の決着なんてしらねぇよ! コイツをぶっ殺す!!」

香織「……っ…!!」

炎朗「……だがよぉ、お前が俺と付き合うってんなら許してやってもいいぜぇ?」

香織「!?」

炎朗「さぁ、どうする?」

………

……

香織「……わかっ」

浩太「……嫌だ」

「「「「「!!?」」」」」

炎朗「……てめぇ、何つった?」

浩太「そんなの…… 絶対に嫌だって言ったんだ!!」
64 :ヨーヨーファイター 浩太 12/13 [sage saga]:2011/01/25(火) 15:13:26.98 ID:wZIW9EgU0
浩太「お姉ちゃんは僕に話してくれた…… 本当に好きな人が出来た時、その人と付き合うんだって!」

香織「こ、浩太…」

浩太「お姉ちゃんが誰が好きかはわからないけど…… 少なくともお前みたいな奴じゃないっ!!」

ピキピキピキッ!!

炎朗「てめぇ! いい度胸じゃねぇか!! 望みどおりにぶっ殺してやるよ!!」

浩太「おまえなんかにまけるもんかぁ!!!」ブオォンッ!!

ギュウイイイイィィィィィィンッ!!!

炎朗(……そういえばコイツ… さっきのロングスイーパー中にヨーヨーを戻したか…?)

「またロングスイーパーかよ……」
「あれ? さっき炎朗が何度もロングスイーパーやってたけど… 浩太は?」
「そういやアイツ…… 一度も手に戻さず、全部受けてなかったか?」

浩太(で、でもどうしよう…… 僕はこれ以外のトリックが出来ないのに……)

??「 犬の散歩 をやれ!!」

ピクッ

浩太「犬の…… 散歩…」

炎朗(犬の散歩だと? あんな技ただの脅しにしかならねぇじゃねぇか!!)

浩太「た、確か…… ヨーヨーを地面に…」

炎朗(ただ地面から、足に微妙な衝撃がくるだけ…… 転ばせる事すら出来ねぇクソ技だ!!)

ギュウイイイイィィィィィィンッ!!! ガガガガガッ!!!!!

炎朗「なっ!?」

「あ、あれがヨーヨーと地面の擦れる音なのか!?」
「ノ、ノロ太の癖に!!」

浩太「あ、あとは…… 手元に戻すっ!!」 パシッ!!

[trick success!! --- ground shock]

ゴゴゴゴッ……!!

炎朗「な、なんだと!! なにが起こってるんだ!!」

香織「地面が…… 膨らんでる…!?」

ピカァッ!! ドドドドドッ!!!

炎朗「な、なんだぁ!? こりゃアースクエイク並みじゃねぇか!!」

ドドドドドッ!!!!

炎朗「う、うわあああぁぁぁぁ!!!」

ドカアアアァァァンッ!!!

炎朗「ギャーーーー………」

……キラッ♪

手下1「え、炎朗さーん!!!」

手下2「炎朗さんが、お星様になっちまったぁ!!」
65 :ヨーヨーファイター 浩太 続かない [sage saga]:2011/01/25(火) 15:16:40.77 ID:wZIW9EgU0
審判「……よし、ただいまの試合。 炎朗戦闘不能の為、勝者! 浩太!!」

ワァー!! ワァー!!!

「すげぇ! すげぇぞ浩太!!」
「やるじゃねぇか! 浩太!!」
「炎朗に勝っちまいやがった!!」

浩太「…え…… え…?」

香織「……ほら、浩太。 アンタの勝ちだってさ」

浩太「え、あ…… はいっ!」

香織「……浩太、ありがとね」

浩太「え、う、うん」

ワァー!! ワァー!!!

浩太「……そういえば、あの声誰だったんだろ……」

ワァー!! ワァー!!!


??「浩太…… か… まだ初心者みたいだけど…」

ワァー!! ワァー!!!

??「……面白くなってきたじゃないか…」

to be continude......?



うん、駄SSの長レス スマソ
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 16:43:28.03 ID:Ec2wsD3Jo
ボンボン系かコロコロ系かジャンル分けに困る所ですね

個人的には入り、1レス目で面白そうと思えたので良い作品になってると思います
今アラサーぐらいの人間にはグイグイきますね。笑
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2011/01/30(日) 23:49:47.82 ID:hQ5eA8Qs0
亀レスですが乙であります
このスレだけでも埋めたいので>>68>>70
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 23:55:33.91 ID:oqqp3kSAO
剣道
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 15:05:13.05 ID:vVDHJs6AO
加速

もし安価踏んでたら臭いフェチ
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2011/01/31(月) 16:11:40.09 ID:8XJVwPEl0
男の娘
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 19:28:42.69 ID:m4C+EIFNo
これはバンブーブレードの予感
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/14(月) 01:55:43.83 ID:nHncdbYSO
割り込み失礼
誰かお題出して下さい。>>74>>76で書きます
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 01:59:15.82 ID:WGFdP0uAO
ksk
安価ならヤンデレ
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/14(月) 19:03:57.90 ID:ajYw61TDO
ガチ王道フィンタジー
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 19:13:10.63 ID:ajYw61TDO
>>74
ごめん、フィンタジーってなんだろ…ファンタジー

も一回踏んだらkskst
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 20:24:25.50 ID:wPTrl6RSO
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 23:03:17.43 ID:es91nxTvo
ガチ王道ファンタジーと虫か。
>>72期待。
78 :72 :2011/02/16(水) 03:47:02.39 ID:r0kQ1PTSO
一応出来ましたが

・お題から外れているかも
・地の文ついてます
・その上駄文

なので、あまり期待せずにお読み下さい
79 :玉繭物語 [saga]:2011/02/16(水) 03:50:51.18 ID:r0kQ1PTSO
雲一つ無く、満ちた月の光を潤沢に受けて仄かに浮かび上がる夜。

都市の暗がりを男が駆けていた。

「ハァ……ハァッ……!クソッ!しつっ…けぇんだよ!!」

丸く膨らんだ麻袋を落とさよう走る男の背後からは四、五の罵声と足音。
男は追われている最中であった。

我武者に逃げ続け、自分の庭とも言える優位領域から大きく抜け出し、ひたすらに右へ左へと道が続くことを祈りながら逃げ回っている。

しかし、石造りの壁に囲まれた世界でその足音は大きく増幅されて響き、後続にその位置を正確に教えてしまい撹乱にはならない。

運とスタミナが男の勝ちの街道であった。

そして、その実に儚い命綱は四度目の方向転換で容易く千切れ去った。

「うげっ!」

右に大きく曲がった先で石壁が目の前に大きく立ち塞がる。
袋小路。迷路の中の正解ではない終着点。

「ハァ…ハァ…散々、逃げ回ってくれたなぁ…」

彎刀を携えたならず者達が次々と集まり、男の唯一動ける道を閉ざしていく。

「さぁ!追い駆けっこは終わりだ!その手に抱えてるモンを大人しくこっちに渡しな!」

対して男は返せと言われた荷物の袋以外には何も携帯していない上に一人である。

全てが不利に進んでいた。

「大人しく渡しても……ハァ、どうせ殺すんでしょうに……」

「そりゃそうだが、楽に殺してやるんだよ。痛いのは嫌だろ?」

月光に照らされた鈍い銀色の刃が、ゆっくりと圧力をかけながら歯も持たぬ窮鼠ににじりよる。

厄介事を避ける此処の住民達の加勢は望めず、賄賂で買われている憲兵も近付きはしない。
例え来たとしても、追い詰められているこの男も悪を働いている最中。

絶命の窮地。右を見ても左を見ても抜け道等という都合の良い代物は用意されていない。

奇跡でも起きなければ、落命の運命は変わらぬだろう。

「……ッチ。正体バレんなって社長に言われてんのに……」

そう、例えば魔法のような。

「アギトッ!」

《ダメダメだねぇ、アベルト》

突如として降り掛かった姿無い声にアベルトと呼ばれた男の前の空間がひび割れる。

「なっ……!」

絶対的優位を保ってきた追跡者達に動揺が伝播する。

「てめっ、まさかっ!!」

裂け目から湾曲した長い牙のような顎を持ち、頭部から触覚を伸ばし、金属質の光沢を発する黒い鎧を纏った人より僅かばかり大きい昆虫が、六の足を軋ませ、四の羽を鳴らし躍り出た。

「魔法使いぃっ!!」

「今ごろ気付いても遅い」

アベルトが呼び出した昆虫の背に飛び乗り、そこに巻かれた縄を握る。

「アギト、一点突破だ!」

《了解》

虫の体躯が前方に大きく傾く。

「……ッ!クソガァァァァッ!!」

そして、圧倒的な戦力に当てられ自棄になった者共が振り下ろす剣撃の雨も気にせず、影をも置いていくような速度で飛翔した。

消えた後の路地には、砕かれた金属と長く尾を引いた血肉の絨毯が残された。
80 :玉繭物語 [saga]:2011/02/16(水) 03:53:42.60 ID:r0kQ1PTSO
精神は大いなる力を生み出す源
この星に無限に広がる恩恵を抱く腕

魂は大いなる知を読み解く源
この星の記憶と結び付き知恵と知識を写す瞳

神はこの力と知を生けるもの全てに等しく与えた


だが、その真価を引き出す為の肉体には違いを創造した

故に

草は草としての力と知しか得られない

魚は魚としての力と知しか得られない

鳥は鳥としての力と知しか得られない

人は人としての力と知しか得られない

だが

稀に精神を肉体の呪縛から解き放つものが居る

そうしたものは

獣であれば魔物や霊獣と呼ばれ

人であれば魔法使いや呪術師と呼ばれる

ただ

虫は精神が解放され力を得ても虫と呼ばれる

彼等は神に最も愛された生命

精神の解放は生まれし時より済まされている

虫は虫のままで強大なのだ

彼等が解き放つのは魂

知を貰い受けて

智を芽生えさる

肉体さえも自由である彼等は

賢者、龍、神使、聖霊……

呼び名は姿や人により移ろうが

彼等自身は

仙蠱

己のが身をそう名付けている
81 :玉繭物語 [saga]:2011/02/16(水) 03:54:45.45 ID:r0kQ1PTSO
貿易都市キサロ。

人工的に作られたオアシスを中心に砂漠を歩く砂虫や砂の海を回遊するワームに対する堅牢な石壁に覆われた鉄の道一華やかな都市。

「俺ってやっぱ運が良いよなぁ」

《観測者がいないというのは助かったね》

アベルトはその街の露店が立ち並ぶ賑わい盛んな大通りを軽快な足取りで進んでいた。
その肩には一匹のクワガタが乗っている。

「間抜けな敵のお陰で減給されずに済んだからな。見ろよ、この額」

懐から数字の並ぶ青い紙を取り出し、誇らしげに肩の住人へと見せ付ける。

一見それだけしか書かれていないように見えるが、そこには特殊なインクで口座の番号から本人証明の為の経歴まで、ありとあらゆる高次の個人情報が記されている。

これを銀行に持っていけば硬貨と交換が出来るというもので、大量の硬貨が回るこの交易都市で持ち運びの安全性や信頼性を高めるために開発され、今や国中に広がっているシステムだ。

《良いお酒が飲めそうだね》

同輩もその額を見て、来る未来を幸せに描いている。

「アギト君はお酒禁止ですぅ」

《なにっ!?》

肩の虫、アギトの声が喜びから驚きに移る。

「キミは酒癖悪いから」

《……も、もうしない!》

抗議を開始する前にアベルトから睨まれたアギトがたじろぐ。
咎められる心当たりはあるらしい。

「三回目とか笑えないので駄目ですぅ」

《い、家で飲むさ!》

「一回目は家でしたけど」

《うぐっ!》

それ以上の言葉を失ったアギトを見て、アベルトが鼻を鳴らした。

漠迦にしたワケではない。
彼はアギトに。そしてアギトを甘やかしていた自分に勝てたことを誇っているのだ。

「あっ!おい!」

しかし、そんな彼の心中など知るよしも無いアギトは機嫌を損ねたのか、羽を広げ肩から飛び立ち、縫うように人々の雑踏を避けてその奥へと消えてしまった。

「……」

アベルトは暫く友の消えた先を見つめ立ち尽くしていたが、周囲を行き交う人々の迷惑そうな視線を感じると足を動かした。

(まぁ、飯になったら帰ってくるか)

はぐれてしまえば人を探すのさえ困難な群衆。その中で虫を見付けだすなど、砂漠の中からたった一粒の砂金を探すようなものだろう。

その面倒さの前にアベルトは楽観的な方向に考えを働かせ、帰路へ歩みを進めようとした。

刹那、一つの黒い影が高速でアベルトを強襲した。

「……ッ!」

アベルトは咄嗟に首を仰け反らせ頭部を狙った体当たりをかわしたが、影の攻撃は終わらない。

五月蝿い音で顔の周りを飛び回り、払い除けようと伸ばされる手の間をすり抜け、隙を見付けては小さな体躯をぶつけてくる。

そして、こう叫ぶ。

《お酒買ってー!買ってよー!》

「ウゼェ!超ウゼェ!!」

蝿の姿となり実に不快極まりない方法で駄々をこねるアギトから逃れようと、アベルトは飛ぶ罵声や文句を無視して人を掻き分けながら走りはじめた。
82 :玉繭物語 [saga]:2011/02/16(水) 03:57:26.98 ID:r0kQ1PTSO
少しの後、家へと辿り着いたアギトとアベルト。
その手には布地に包まれた酒瓶が三つ程握られている。

結局、アベルトはアギトの執拗なまでの追撃に敗北したのだ。
しかし、完敗と言うわけでも無く、後ろめたい過去のあるアギトとを何とか説き伏せ、アルコール度の低い酒と西方からの渡り酒であるワインで手を打って貰うことには成功している。

最も、ワインは少々高価であり、アギトの飲酒量を考えれば決して楽な契約ではないのだが。

それでも、借金生活はもうしないだろうと安堵していた。

《……待って》

ノブへと伸ばそうとした手に制止の命令。

《血の匂いがする》

警告が囁かれた。

「へぇ」

アベルトは口元を歪ませ、落ちて割れないよう酒瓶を腰に縛り付け安全を確保した。

「泥棒さんならお仕置きだな」

両腕を前へと突き出し魔力を送る。腕の刺青が青白い輝きを放ち、突き出された手に雷球が具象される。

《開けるよ、アベルト》

「何時でもどうぞ」

ドアが開かれる。

部屋は凄惨な様子だった。
窓は割られ、家具食器はひっくり返り、倒された水瓶から零れた水が絨毯を濡らし、見知らぬ客人が三人程居座っている。

日除け用の布で顔全体を覆い隠し、両刃の分厚い剣を構えた男が二人。
血を流して倒れているフードを目深に被った小柄な少女が一人。

「泥棒さんじゃねぇようだが、人の家で強姦たぁいただけねぇなぁっ!!」

雷球を男達へ撃ち出す。

「……あれ?」

雷球はまともに命中した。
だが、男達は大したダメージを受けた様子無くアベルトの方へ剣先を変え、ドアに向かい跳躍した。

「うぉっ!」

体重を乗せて振り下ろされた重撃を横に転がり回避する。
次いで繰り出された二人目の蹴りも交わし、後方へ跳びずさると再び魔力を練り出した。

刺青の発光を見た男の一人がアベルトの魔法を阻止しようと、得物である剣を投躑する。

「アギト!」

《分かってるよ》

アベルトを貫く意志を込められ一直線に飛来する剣を一匹のクワガタが受け止める。

クワガタは剣を顎に挟んだまま身体に横の回転を加え、受けた攻撃を同じ相手へと投げ返した。

「食らいなっ!」

当然もう一人の男が剣を降るってそれを弾いたが、その行為により生まれた隙を新たな斬撃が飲み込む。

アベルトの魔法により精製された無数の氷刃が降り注ぎ、一人は避ける術無く切り刻まれた。

家の中へと退避した男も先を読んでいたアギトにより、侵入と同時に鋭い突撃を受け野外へと弾き出され、そのままの勢いで壁に叩きつけられ沈黙した。

《死んでないよね》

「……命なんて始めからねぇみたいだがな」

致命傷を受けた男達の体が崩壊を始める。

《こいつら、土人形か》

「さっき利きが悪かったのはこのせいだな」

アベルトは二体の土の残骸を踏み砕き砂状にして広げると、後の処理は風に任せ、残された衣服と剣を回収して家に戻っていった。
83 :玉繭物語 [saga]:2011/02/16(水) 03:58:35.51 ID:r0kQ1PTSO
「あーあー、散々に荒らしてくれちゃって」

改めて部屋の様子を見回し、その惨状を認識してため息を漏らす。

後片付けと壊された窓と食器にかかる費用を思うと涙が出そうであった。

《この子はどうする?》

「いや、そりゃまぁ、助けますけど……」

アベルトは腰に下げた酒の中からワインでない一本を消毒用に抜き取り、少女の側へ腰を下ろした。

見ると、出血箇所は2つ。
長く裂かれた腕とフードに覆われた頭部。

自ら飛び込んだのか、土人形に投げ込まれたのかは判らないが、その傷の付き方から窓を割ったのはこの少女と判別した。

腕はその時引っ掛け、頭は着地の際に打ち付けたのだろう。

「帯とタオル持ってきてくれ」

《はいはい》

緊急を要する程の怪我ならば消毒してからの回復術も考えていたが、どうやらその必要も無いようでアベルトはほっと息を漏らした。

回復魔法は便利だが、寿命を削る魔法だからだ。

《持ってきたよ》

アギトから道具を受け取り、帯で少女の腕の傷より少し上位置をきつく縛り、傷自体はタオルで押さえる。

簡単な止血を済ませ、近くの医者に連れていこうと少女を担ぐ。
その拍子にフードが彼女の頭からずり落ちた。

「えっ……?」

《……!》

露になった少女の顔に二人の意識が吸い寄せられた。

傷口から流れる血はあるが、顔は何の変哲も無い、幼い子供らしい可愛らしい顔立ちだ。

異質は隠されていた目より奥。

髪は染色でも出せないような鮮やかな空色を写し、耳は三角の形をしている。
そして何より、この少女には触角が生えていた。

「……虫?」

《いや、血が赤いんだ。この子は確かに人間だよ……》

これが、二人と触角の生えた少女との出会い。
そして、騒乱の物語の始まりであった。
84 :まゆー [saga]:2011/02/16(水) 04:00:34.69 ID:r0kQ1PTSO
以上です
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 13:55:45.44 ID:R/V/Z6XDO


俺の好みではなかったです!
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 07:36:10.32 ID:ep52n2DN0
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) :2011/03/21(月) 20:56:51.82 ID:cAjoecaAO
どなたかお題をプリーズ!
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) :2011/03/21(月) 20:58:11.62 ID:cAjoecaAO
安価指定するの忘れてた。>>89で頼みます
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/21(月) 21:02:58.60 ID:tYvSuznDO
ハートマン軍曹
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/03/21(月) 21:09:21.08 ID:cAjoecaAO
>>89
フルメタルジャケット…? 了解であります、ハートマン軍曹! 少々お時間を頂きます。今しばらくお待ちください
91 :拝啓、ハートマン軍曹へ親愛を込めて [sage saga]:2011/03/22(火) 01:24:56.45 ID:OtQgydJAO

『貴様らは人間ではない。両性動物のクソをかき集めた値打ちしかない!』

テレビから垂れ流される罵詈雑言。借りてきた映画のDVDは海外の古い戦争物だった。

『話しかけられたとき以外は口を開くな。口でクソを垂れる前と後に“サー”と言え。分かったかウジ虫ども!』

指導官であるハートマン軍曹が吐く暴言は聞くに耐えない。借りて来たことを後悔する程に。

『俺の使命は役立たずを刈り取ることだ。愛する海兵隊の害虫を!分かったか、ウジ虫ども!』

こんな作品をオススメの棚に陳列していた近所のレンタルショップ。誰のセンスか知らないが、今はとても恨めしい気分だった。

「最後に見る映画がこんな作品とはな」

なんとなく感傷に浸りたい気分だった。理由はある。あるけれども…。

「ウジ虫ども…か」

それを思い出したいわけではないのだ。

「たしかに俺はウジ虫だ」

とびきり惨めで救いがたい馬鹿で、だから独りだけ死に損ねた。自分以外はみんな死んだのに。

92 :拝啓、ハートマン軍曹へ親愛を込めて [sage saga]:2011/03/22(火) 01:27:04.16 ID:OtQgydJAO

結婚前、最後の遠出。婚前旅行というやつだ。

自分と彼女と、彼女の両親を連れて。一泊二日の小旅行になるはず、だった。



『事故に遭われたのは〇×県在住の―――・・・・』



手術しなければ失明する。医師に言われた。

却って好都合だった。なぜなら男が手放した命は、彼が手で触れる前に潰えてしまったから。

そうしてぬくぬく、自分だけが生き長らえた。その時、男には全てがどうでも良くなっていた。

『まるでそびえ立つクソだ!』

画面の内で、軍曹が叫ぶ。

「…仰る通り」

ただしそれは水で流れることはない。異臭を放ち、虫にたかられる。

そうして流し損ねたクソは、男の癒えない傷となる。消えない傷跡となるのだ。

自分は軍曹が言う通りのウジ虫で、未だここから飛び立つことは出来ていない。

自らの傷跡から発せられる異臭に惹かれ、それにたかる。離れることは出来ない。

そして離れないために、男は光を失う。

93 :拝啓、ハートマン軍曹へ親愛を込めて [sage saga]:2011/03/22(火) 01:27:59.99 ID:OtQgydJAO

画面上から発せられた、甲高い銃声。

ハートマン軍曹は死んだ。突然のことだった。

彼がウジ虫と呼んだ士官たち。その中の一人に、ハートマン軍曹は殺された。

「死んだのか」

いつの間にか、画面に見入っていた。

「あんたは間違っていたのか?」

誰も答えない。

「ウジ虫たちが正しかったのか?」

誰も答えない。

映画は続く。答えは出ない。

「…俺は多分本当に、ウジ虫なんだろう」

だから男は考えるしかない。この映画の答えを。

「俺はウジ虫だ。愛する人も、その家族も…俺が殺してしまった」

すべて自分が悪いのだと、ずっと考えていた。旅行など企画しなければ、彼女との結婚など考えなければ、彼女と…出会わなければ。

光を捨て、そしていつかは命も同じように。当然、そうあるべきだと思っていた。それが当たり前だと思っていた。

しかし、当たり前のように彼らをウジ虫呼ばわりしていた軍曹は死んだ。

彼は間違っていたのだろうか。

94 :拝啓、ハートマン軍曹へ親愛を込めて [sage saga]:2011/03/22(火) 01:30:45.28 ID:OtQgydJAO

結局、男は手術を受けた。

光を失ってしまっては。命を失ってしまっては。

映画のDVDを返しに行くことも、借りに行くことも出来ないから。

あの日の答えはまだ見つかっていない。

男にはそれを見つけるために、光が、命が必要だった。

「聞こえるか、ハートマン軍曹」

聞こえてなくとも、構わない。

あなたに聞きたいことがある。

答えはなくとも、構わない。

ただひとことだけ、言わせてほしい。

「俺はまだ、生きていても良いのだろうか。幸せを求めても良いのだろうか」

誰も答えない。それでも男は微笑んだ。

まだ、答えを探す時間はある。

ウジ虫と鬼軍曹と、どちらが正しかったのか。白黒付けるための時間は、十分に残っているのだ。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/03/22(火) 01:33:37.69 ID:OtQgydJAO
終わりです。これでも結構がんばりました
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/22(火) 04:43:46.14 ID:MUxUUJDDO
この前見た映画テキトーに言っただけなのよく考えつくなぁ…。凄いっす!乙!!
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/04(水) 00:41:22.15 ID:hUqNItcK0
SS製作者総合スレで出発した

【創作】文章構成練習総合スレ【添削】

という企画をここでやろうとしています。


このスレを再活用する形となりますが、もしこのスレでなにかしようとしていた人がいて、
そんなのおかしい!と言う人がいたら名乗り出てください。出直します。

一応方向性はここのスレタイに近いものは有りますので、
一緒にやってくれるならうれしいです。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/04(水) 00:41:49.74 ID:hUqNItcK0
あげ
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/04(水) 01:34:31.04 ID:vHiD/y7h0
>>97
乙!
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 04:12:36.76 ID:hUqNItcK0


【創作】文章構成練習総合スレ【添削】

SS製作において文章の作り方に悩んだことはないですか?
ここはそういった悩みを抱いたことのある人が集まりお互いに議論しながら、
自らの文章力を向上させていこうとするスレです。


基本は、設定されたお題に沿って短編SSを投下し、
それを読んだ人から感想・指摘・添削を受け、
自らの癖や分かりづらい表現に気付いていく。というものです。


もちろんプロットの書き方や展開・構成の組み方のような文章力以外の事などで
雑談や相談をしてくれても構いません。


できるだけ多くの人に参加してほしいので、SSを書いたことがない人でも
一度試しにここで書いてみたり、読んだのなら感想をつけてみたりしてください。

101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 04:13:30.09 ID:hUqNItcK0
■お題について
・基本は安価で指定して設定します。
 安価を受けた人は数行程度のお題を練ります。できなければ再安価をお願いします。
 お題の内容は、適当で構いませんが、読んでみてある程度情景が想像でき、
 表現方法がたくさんあるようなお題が、書き手も読み手もやりやすいので
 細かくシチュエーションを設定してみてもいいでしょう。

・小説などの文章もありですが、この場合元の文章の“改変”と“シチュエーション変更”に分かれます。

 前者 “改変”
「俺は猫だ。名前はまだ無いんだよね」

 後者 “シチュエーション変化”
「貴様、何者だ!?」
「我が輩か? 我が輩は猫である。名前はまだ無いっ!」

 後者だと話の幅が無限に広がりますね。


■お題の制限時間について
・お題が設定されてから24時間以内を、SS投下の制限時間としています。
 しかし、24時間以内に一つもSSが投下されなかった場合はこの限りではありません。


■お題の更新頻度について
・現在は、一週間経ったら更新となってます。
 しかし、スレ利用者数によって変わることもあります。柔軟に相談しながらやっていきましょ。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 04:14:19.87 ID:hUqNItcK0
■短編SSの投下について
・投下量は、1レスが目安になります。多くても3レスには収めましょう。1レスでの制限は80行です。

・短い文の中にお題で指定されたもの全てを入れなければならないということは有りません。
 三行くらいで短いものでもOKです。書き方は自由だっ!!

・地の文形式のSSが多くなるかも知れませんが、ここでは台詞形式で参加してくれても全く問題ありません。
 少し難易度高くなることもかもしれないけれど、全体的に地の文が多い中でその新しい切り口は
 きっと自分だけじゃなく、他の人にもプラスになるはずです。参加は自由なのだぁーー!!


■感想について
・感想の内容が馴れ合いのようになることはできるだけ避けるべきだと思われます。
 なぜなら、そういった感想は相手の為にも、自分の為にもならないことが多いからです。
 しかし、自分が書いた短編SSに感想を書いてくれた人に感謝するくらいは許されるはずです。thx!
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 04:15:35.14 ID:hUqNItcK0
■SS製作に役立つツールについて

SS製作者総合スレで情報収集しているSS作成を手助けしてくれるWebサイトやソフトです。
その中で、ここでも使えそうなものを置いておきます。有効活用して下さい。

【サイト名】weblio類語辞典
【URL】http://thesaurus.weblio.jp/
【用途】語彙の補完に

【サイト名】翻訳と辞書Index
【URL】http://www.kotoba.ne.jp/
【用途】辞書の辞書。まずはサイトマップをみてカテゴリからお目当ての辞書を見つければいいんじゃないかな!?


■[ 関連スレ ]
SS製作者総合スレ5
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1304363458/
【創作】文章構成練習総合スレ【添削】 に至るまでの経緯を知りたいなら見ておいたらいいじゃない!
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 04:16:39.88 ID:hUqNItcK0
テンプレはここまでかな?あとは説明ですな。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/04(水) 05:14:16.05 ID:hUqNItcK0
お題の具体例せつめぇぇぇい

SS製作者総合スレで文章練習してみた時のお題をコピペして貼ってみる。

――――――――――――――――――

・小説形式に脚色してください。
・一人称三人称は問いません。

中学校の昇降口
どんよりとした曇り空
女子学生が帰ろうとしている
女子学生(傘を持ってこなかった)
空を見上げる
雨がぽつぽつと降ってくる
女子学生「どうしよう」
悩んだ後、雨にぬれながら走り出す
                    SS製作者総合スレ5 の >>12 より抜粋
――――――――――――――――――

どうだい。わかりやすいだろう?
何がいいってんだって?お題を読んだだけで情景が目に浮かぶようじゃないか!
しかも、しかもだっ!「一人称三人称は問いません」だってさっ。
ますます制約がなくなってフリーダムだろう!でもカオスじゃない。ふっふっふ。
ま、何が言いたいかってーとな。
お題は具体的だろうが、抽象的だろうがある程度想像が膨らむようなものがいいのさ。
書き手も。読み手にとっても。
例のこいつなら、場面こそ限定されるが心の動きはかなり多様に表現できる。
現に、このお題で書いてみたSSに同じものは一つとしてなかった!!

―――なに?あんたも書いてみたいって?そうそう、その意気だっ!
書いてみたいという熱い気持ちが良作を生み出すのさっ。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/04(水) 05:39:05.17 ID:hUqNItcK0
書き手が特記すべき内容は書くのやめますぅ。だから説明はこんだけですぅ。

お題についての記述がテンプレ・説明に長々とあるけど、別にそんなに丁寧にやる必要はないっす。
例えば、“春”というお題でも十分書けるんです。
型を気にして畏まる必要はないっちゃ!!自由 is freedom. え?同じ意味?うるせー馬鹿
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 07:02:56.32 ID:uGMQeyUAO
スレ移行に伴う新規お題は募っていいのかな?

作者スレで書きそびれた人のいる>>105はまだ有効だろうし、
何なら>>106の“春”もありだろうけど

試しに安価で指定って形式を……
反対意見が特になければ、新規お題その1>>110
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/04(水) 07:19:40.16 ID:7veJtNsZo
kskst
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/04(水) 08:58:46.26 ID:uJkmWa8w0
かそく。
安価とっちまったら。

主人公の性別不問。
時間帯不問。
真夏の校舎裏。
告白。
結果は、告白した方は涙で終わるもの。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2011/05/04(水) 10:27:27.59 ID:elXOatomo
同じく安価とってしまったら

主人公は特に問わないが、設定として戦闘に慣れている
時代・時間・場所問わず
何らかの目的を急いでいる
行く手を敵(強さ・数問わず)に阻まれる
戦闘に突入する
主人公は『宝石』をモチーフにした武器or能力or技を使用
短時間で戦闘に勝利
時間を気にし、目的達成を急ぐ


恋愛系が多いので、こういうのもありかなと
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 10:30:35.17 ID:qak9e7+uo
おお、俺の好きそうなお題だ
期限はいつまでにする?
俺としては今はGW中で時間がある人が多いし、今日の夜中か明日の正午ぐらいまでがいいと思うんだけど
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/05/04(水) 10:31:23.53 ID:vd0zJFcAO
小説形式に脚色
一人称三人称は不問

高校の屋上
晴々とした青空
昼間からいる男子生徒
フェンスを越えて校舎の端に座っており、足はブラブラさせた状態
ボーッと空を見上げている男子生徒
「そんな所にいたら危ないぞ」と後ろから声がかかる
声に気づいて振り返る男子生徒


こんな感じかね?
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 13:26:06.32 ID:4SeMmB4Io
おお、移行してたのか。テンプレ乙

>>111
24時間後でいいんじゃね?
俺好みなお題だけど脹らませすぎない様気を付けないとww
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/04(水) 13:41:17.86 ID:hUqNItcK0
安価つけるの忘れてたですねー。thx!

戦闘描写かっ!ちょっとネタをねるねるねるねして来る。

>>111
そうだな。新規にスレ立てした訳じゃないから気付かない人も多いかもだし、
GW中はある程度利用者が定着するように盛んにやってもいいかもなっ!!

てことで>>110明日の正午までってことでOK?
これはSS投下の時間であって感想・添削はいつでも受付。24時間深夜営業可。


>>109>>112も素晴らしいお題thx!



もし、作者スレで>>105のお題でまだ書きたい人がいたら晒してください。
遅いなんてことはねーですよ。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga sage]:2011/05/04(水) 18:03:10.39 ID:tSkmlIyL0
>>105のお題で書いてみました。

 今日は朝から寒かった。お母さんに傘を持っていきなさいって言われたけど持ってこなかった。
授業が終わり私は学校の昇降口を出た。空は今にも泣き出しそうだった。でも今直ぐに帰れば間に合いそう。靴を履き替え校庭に出ようとした時だった。
首筋に冷たい物が当たったのを感じた。思わず手を広げた。手にぽつぽつと雨が当たった。私は昇降口に慌てて戻った。直ぐに雨は本降りとなった。
とても傘無しで帰れる雨じゃない。私は暫く雨の止むのを待った。

 昨日お母さんと喧嘩をした。売り言葉に買い言葉。止まらなかった。喧嘩が終わっても私はお母さんと口をきかなかった。朝になってお母さんがはじめて口にした
言葉が『傘を持っていきなさい』なにさ、今更そんな事言ったって私が許すとでも思っているの。お母さんの言うことを無視して飛び出した。

 雨は止む気配はない。他の生徒は傘をさして次々と帰っていく。次第に帰る生徒の数が疎らになっていった。校庭はもう水溜りができている。運動部も休み。
辺りは静まり返った。雨の音だけが響いている。私一人が昇降口に佇んでいた。帰ってもまたお母さんと喧嘩するだけ。もう家に帰らなくてもいいかもしれない。
でも私は昇降口から出られなかった。どうして。雨に濡れるのはそんなに嫌じゃないのに。誰も居ない。だれも話し相手がいない。寂しい。

 就業時間が近い。そろそろ校門が閉まる時間。私はまだ雨を止むのを待っていた。もう薄暗くなった。校門から誰かが来るのが見えた。先生かな。
校門を閉める準備を始めたのかもしれない。しかし校門を過ぎてこっちに近づいてきた。見覚えのある傘、服、姿。
私は自然に涙がこぼれてきた。お母さん。お母さんが迎えに来てくれた。お母さんの片腕には私の傘があった。でも涙はまだ見せたくない。
私は昇降口を飛び出した。雨で涙を隠すだめに。

終わり。
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/04(水) 18:39:34.61 ID:hUqNItcK0
(ネタを)ねればねるほど、色が変わって……。うんまいっ!(テーレッテレー)


>>110
薄暗い路地裏を 走る 走る 走る―――


ただひたすらに逃げる。ここで奴らに捕まる訳にはいかない。
だが、こういう場面ではそうそう逃げ切れるものではない。お決まりってやつだ!コンチクショー。

893「ヘイ。にいちゃん。ちょっと止まってもらおうか」

追いつかれた。893がぞろぞろと手下を連れて現れる。
ってか俺はこいつらから逃げてたはずなのになんで前から現れんの?

青年「あー。すいませんでした。
どうしようもなかったんですぅ。妹が病気で仕方なく…みたいな。許して」

893「てめェ…。ヤクザもんから泥棒するたぁ頭おかしいんじゃねェの。どうなるか分かってる?」

青年「んー…あれですか。指詰めってやつですか?
でも俺カタギなんでちょっとそういうのは遠慮願いたいっす」

893「…あー。駄目だこりゃ。完全に頭イっちまってるよ。おい!―――やれ」

893が手下の男たちに命令する。
うわー。この人たち、ナイフとか日本刀持ってるよ。警察は何してんだろうね。全く。

青年「そんなに返してほしいんならこっちはお返しします。それっ!」

手に持っていた、宝石が入った袋を中身がばらばらに飛び散るように放り投げてやった。
ヤクザどもは呆気にとられてやがる。この隙に俺はこの狭い路地裏の壁を交互に蹴って
屋上までよじ登る。某配管工のマネではない。決して。

893「なっ!こいつなんてことしやがる!!」

手下「頭っ!ど、どうしやす!?」

893「とにかく宝石をさっさと書き集めろっ!奴が盗った現金なんざどうでもいいが
宝石は失くしたらヤベェ。全員で回収だ!絶対に全部見つけろっ!」

手下「奴はどうするんで?」

893「あぁん?決まってんだろ!―――探し出してぶっ殺死!!」


――――

屋根伝いに走って逃げる。その手には万札が数枚握りしめられている。

青年「へへっ。こんだけあればしばらくは妹の薬代には困らないな!
宝石は売れば足がつくからな。いくら高価でもいらねーや。
待ってろよっ、妹!兄ちゃんがもうすぐ薬を持って帰ってやっからなっ!!」


青年は 走る 走る 走る ――――自身の薄暗い未来へと向かって
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/04(水) 20:35:11.17 ID:qak9e7+uo
>>115
話の組み立ては好きです
でも文章的には同じようなフレーズが続いているような気がして読み心地が悪い
言い回しを工夫したほうがいいと思う
けど、俺は読み心地しか考えない人だから参考になるかはわからない

ageときます
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 20:35:37.10 ID:eabRzgADO
>>116

スピード感がある
ハートフルコメディ調なのかと思って読み進めていったため、"自身の薄暗い未来へと向かって"という最後の表現に少しだけ違和感を覚えた
設定がわかりやすくて、読みやすい

違和感を覚えたというのは、ただの自分の好みです
893の生臭さというか、宝石を拾うところと主人公の逃げるために宝石を持ってきたのかな? という計算高さが読んでいて面白かった
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 20:44:01.92 ID:eabRzgADO
>>110


人生何が起こるかわからない、とはよくいったものだ。
路地裏で不良に囲まれる、なんて屋敷を出る前は考えもしなかった。日も暮れかけている。こっそりと抜け出してきた手前、一刻も早く帰らなくてはいけないというのに。 
さてどうしたものかとポケットに手を突っ込むと、じゃらりと行き掛けに突っ込んできた宝石に指が触れる。こいつらはどうせ金目的だろう、自分の坊っちゃん然とした格好をふりかえって軽く後悔した。素直にこれを渡してやってもいいのだが、彼らのげひた笑みを見ているとどうもそんな気持ちにもなれなかった。

「ちぃーっと持ってるだけの金を渡してくれればいいんだぜぇ?」

「そうそう! 痛い目にあいたくなけりゃあなぁ」

ギャハハハハ
彼らは汚い歯茎を剥き出しに笑いあう。

――気持ち悪い

考えるよりも先に、足が出た。反撃されるなどとは思ってもいなかったのだろう、蹴りだした足は綺麗に男の股間に当たった。

「――ッ」

やばい。
素早くポケットから1粒2粒取りだし、もう一人の男の目をめがけて振りかぶる。

ガッ

思いもよらず良い音がした。低い呻き声。どうなっているのか見るのも怖い。いつも召し使いを撒き慣れていているとはいえ、まさかこんなに上手くいくとは思わなかった。宝石は慰謝料代わりだと捨て台詞を吐き捨て、路地裏から逃げ出した。




逃走も戦闘の一部かなぁ
スピード感が全然無いのは、無駄なことをたくさん書いてしまうからかorz
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/04(水) 20:58:37.14 ID:VjztFbjAo
比喩表現や文章力を批評し合うのではなく、お題に枝葉を付けて作った話を批評し合う方に
重きを置いてやればいいの?
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 21:09:25.67 ID:hUqNItcK0
>>118
thx!893がヤクザっぽくないから、どこかコメディっぽい仕上がりになったでござる。
最初は台詞形式でいこうかと思ったんだけど、知らないうちに地の文が入っていたでござる。


>>115の感想
一目みて、いきなり文字が多く見えたからどうなんだろうと思ったけど、
読み終わってみれば案外読みやすかった。あっさり豚骨ラーメンみたいな。

順を追って女の子の見たもの、思ったこと、気分が詳細に書かれているので、
読み終わった後に、「ここはどういうことなんだろうか」と悩まなかったことが
読みやすかった要因だと思う。中学生らしさもよく出来てる。


短い文章が並んでいるのは、中学生らしさを出すための演出だろうか?
日記の一ページを持ってきたような感じを受けた。
もう少し表現を節約してコンパクトにした方がいいかも。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 21:24:35.79 ID:hUqNItcK0
>>120
比喩表現におかしいと思うところがあれば指摘し、
文章力があっておもしろいと思うのなら、おもしろいと思った部分を
挙げて感想を書き、逆に変だと思うなら指摘してほしい。

話の構成そのものを批評してくれてもOK。

しかし、これらの要素を出来るだけ入れようとすると感想を作るだけでも
結構手間なので、流し読みして気になった所を一行くらいで挙げて感想とするのもOK。

つまり

なんでもありですな。思うがままに感想をつけてみてくんろ。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 21:28:35.19 ID:qak9e7+uo
>>110

 路地裏の光景が高速で背後に流れる。酸素を食い尽くし何よりも早く前進する。
 いや。何よりも早くは無理だ。
 人間の走行速度は約秒速7メートル、分速にして420メートル、時速にして25.2キロ。
 それだって早い方で、さらに言えば走破すべき距離に依存する。人間は永遠に走ることはできない。
 しかし、間に合いさえすれば後はどうでもいい。

 彼の呼吸は乱れることなくいたって規則的だった。そこに焦りはない。ただ、使命の吐息だけが冷えている。
 街は闇に沈む。空気は冷たく冴え渡り、それでも彼の身体は熱い。
 その時行く手に闇より暗い影が立ちあがった。

 彼は躊躇しなかった。必要もない。ここにいるのは自分と、後は敵だけだ。
 鋭く吐息を吐き、その足元に飛び込む。そこから逆立ちの要領で相手の顎を蹴りあげ――手応え。だが、鉄のような感触。

「――!」

 悟って横に身体を逃がす。それまで頭のあった位置を鋭い気配が通り抜けた。
 距離をとって立ち上がる。しかし相手は、

「ッ……」

 目の前だった。重い一撃。腹に衝撃をもらって彼は後方によろめいた。
 ついで二撃目、三撃目。それぞれ頭と胸にもらって彼はようやく距離をとることに成功した。

「……」

 腹に鈍痛、頭から血の気配。視界がわずかに揺らぐ。目の前の影は黒い。
 彼はちらりと腕時計を確認した。時針は十二を指そうとしている。
 彼は口を開いた。

「あんた……」

 まだ若い、少年の声。

「多分ツいてない」

 彼は再び突撃を開始する。影も合わせて地を蹴った。
 交錯の瞬間。彼はその一瞬に意識を尖らせた。影の拳がゆっくりと見える。
 重い衝撃。彼はその一撃に揺さぶられながらしかし、その内側に半歩踏み込む。
 手が伸びた。相手の左胸の上。

「――凍れ」

 ただ一言。それだけで終わった。
 ずるりと崩れ落ちた影を一瞥し、

「……」

 彼はすぐに走り去った。
 残された死体は何も語らない。その心臓があった位置に宝石のように結晶化した心臓を抱えたまま。
 夜の吐息は冷たかった。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 21:30:14.64 ID:qak9e7+uo
長えなごめん
オーフェンみたいな泥臭くも奇抜な戦闘を書きたひ……
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 21:36:34.89 ID:qak9e7+uo
>>116
こういう頭の使い方は好き。軽快さもいい
でも人によっては寒く感じるかも。まだおもしろおかしくできる要素はある
個人的に気になったのは、「完全に頭イってる」って台詞
青年があんまりイカレてることいったように見えないからちょっと違和感
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 21:40:00.53 ID:qak9e7+uo
>>123
「早い」と「速い」間違えてた
推敲不足、スルーよろしく
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 21:42:25.28 ID:qak9e7+uo
>>119
確かにスピード感はない
でもこの話には必要とは思えない
文章の読み心地が好き、主人公のどこか不敵な感じが好き
なんだかわくわくしました
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/04(水) 22:18:37.14 ID:I5LQy2H30
>>110

 舌打ちに続けて嘆息し、彼は立ち止まる。
 敵は二人――いや、一人追加で三人か。
 いずれも目つきの悪い男。おそらく金で雇われたごろつきだろう。
 彼の行く道を遮るように、横一列に並んでいる。

「急いでるんで、退いて貰えると嬉しいんだけど……まあ無理な注文だよねえ」

 無言の肯定と共に懐から各々の武器を取り出す。
 構えたのは、品性のかけらも感じられない物騒で粗野な鈍器や刃物。
 彼はもう一度嘆息し、袖口を振って無作為に石を一つ取り出した。
 転がり出たのは、赤。

「ルビーか、そんじゃ火だな。まだ肌寒いし丁度いいかね」

 小ぶりな茶羽ゴキブリ程度の大きさのそれを二本の指で摘んで笑う。
 その能力について説明されているのか、三人はわずかに緊張感を増した。
 彼は笑みを消して静かに目を閉じ、一拍置いてから開く。
 彼がしたのは、ただそれだけ。
 
 ただそれだけで、場の空気が一変した。
 否、塗り潰され支配された。
 三人のごろつきは直感的に理解してしまった。どちらが弱者で、誰が強者なのかを。
 短絡的な欲望に釣られ、自分達は冥府へしか続かない道に踏み込んでしまったことを。
 この圧迫感は殺意では無い、敵意でも害意ですらも無い。
 故に、ただ無感情に『壊される』。その未来が鮮明にイメージ出来てしまう。

「さて、それじゃあさよならだ」

 燃えるような赤が天にかざされた。
 陽光を受けて、赤は輝きを増す。
 裏路地の暗闇を焼き尽くすような輝きは、陽光などでは説明できないほどに膨れ上がり――

「嘘じゃこんのクソボケがあああああああ!!」

 呆けていた三人、その真ん中の男の顔面に、輝く赤が飛んできた。
 天にかざされていたそれを彼が全力投球したのだと気付くと同時、眉間にヒット。
 
「ぐおっ!? ごげぶっ!!」

 それに続けて、不意を狙った彼の膝がクリーンヒットして鼻を砕いた。
 なすすべなく汚い地面に倒れる男の顔をついでに踏みつけ、彼は笑顔で別れを告げる。

「そんじゃあねー。そのなんか赤くて綺麗なただの石ころは、お近づきの印にプレゼントしよう」

 高笑いしながら、彼は颯爽と(且つ割と全力で)走り去った。
 残った二人は、ポカンとしたままその背中を見送る。



……あれ、宝石じゃないじゃん
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/04(水) 22:21:42.17 ID:VjztFbjAo
暴言と言いがかりにまみれた批評をしてやるぜ

>>115
良い話なんだけど、冒頭部分で「今日は朝から夜だった」を連想してしまった。
つかみが弱い。

>>116
短い文章の中に三人称と一人称が混じっているのに違和感。
セリフの前にキャラ名は要らないんじゃね?

>>119
改行の使い方が書き慣れてない感じ。
げひたじゃなくて、下卑た(げびた)だぞ。

>>123
「冷えている」「冷たい」「熱い」が集中して書かれていて散漫な印象。
目の前の影は黒い→影が黒いのは当たり前じゃん。
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/04(水) 22:30:56.23 ID:VjztFbjAo
>>128
大きさの例えがおかしい。 いくらなんでも小ぶりな茶羽ゴキブリは無いだろw
「嘘じゃこんのクソボケがあああああああ!!」→前後と文章と矛盾してないか?
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 22:32:03.92 ID:qak9e7+uo
>>129
マジだ、俺温度が好きなんだなww
当たり前のことをさも意味ありげに言ってしまうのも俺クオリティーなのか
ちょっと今書いてるSS読み返してくる!
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 22:42:40.67 ID:qak9e7+uo
>>128
文章は整ってるなー、そして予想を裏切られたなーwwと思う反面、なんだかwwktkしないなと思った
これは人のこと言えないんだけど、物語の背景があまりにぼかされているからと推測する
なんで急いでいるのか、「彼」はどういう人物なのか描写を増やせばいいんじゃないかなと
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/04(水) 22:44:58.74 ID:vHiD/y7h0
>>110
マズイ。非常にマズイ事になった。少年は、頭を抱える。
「……素直に逃げときゃよかった」
「よくもウチのノブをやってくれたなぁ、このヤロウ」
「キッチリ落とし前は付けさせてもらうぞ」
目の前に広がる、不良包囲網。いくら喧嘩慣れしてるからって、徒手空拳でやり合うには多すぎる人数だ。
少年は、半ば現実逃避的に、こうなった理由を思い出す。
カツアゲされそうになった。
一人なら余裕、そう思って殴り飛ばした。
結果その辺から仲間がぞろぞろ、そして今の状況。
なんとたったの3STEP。いくらなんでも、お手軽すぎる。

少年はため息をつき、片手を揚げた。
「ハァ……勿体ねぇな」
「あ?」
少年の意味不明な言動に、近くにいた不良の一人が怪訝な顔をする。
直後。
ドサッと、軽い音をたて、その男の体が倒れた。
「サファイアーーその石言葉は、『深い海』」
いや、その男だけではない。見れば、辺りを囲んでいた不良達が、全員地面と抱擁状態にあった。
少年の揚げた手から、青色の粉がこぼれ落ちる。
「こんな高価なヤツ、使いたくなかったんだけどなぁ」
軽く言い捨てて、少年はその場を後にした。
再び、深夜の路地裏を静寂が包む。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/04(水) 22:47:51.50 ID:vHiD/y7h0
上手くまとめれんかった……
自分でも意味不明。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/04(水) 22:52:44.88 ID:ZCOkcjSAO
>>110を書いてみました。
ただ水晶は宝石なのか?


少女が一人、暗く湿った裏路地を駆ける。
何かを大切に抱きながら。
水溜まりに足を突っ込み派手に水しぶきをあげるが、彼女はそれを気にせずただ走る。
吐く息は荒いが足取りに一ミリの迷いもない。目は真っ直ぐに前のみを見つめていた。
ふと、少女の足が止まる。
彼女の前、狭い路地一杯に薄汚い笑みを浮かべた男達が立っていた。
「どいて」
少女は顔の表情を変えずにただそれだけを言った。
男達は笑う。

「お前がいったってアイツは負けるぜ?」

「俺らのボスに勝ったやつはいないんだよ」

「なあ、どうせならいっしょに遊ぼうぜ」

ゲラゲラと笑う男達。
だが少女は動じない。
ずいっとその中の一人が少女の腕を掴もうとする。
と、何かに気付いた。

「……水晶?」

少女が抱えるのはソフトボールほどの透明な水晶。

「そうだよ」

少女がそう言い、軽く何かを唱える。
すると水晶からフラッシュのような光がほとばしり、暗く湿った裏路地を照らした。
光が弱まったときには彼女の行く手を阻む者はいなかった。

「待っててね――私もいっしょに戦うから」

そう呟きまた少女は駆け出す。
彼女は孤独に戦う彼の背を追う。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 22:57:36.22 ID:eabRzgADO
>>127
スピード感を無理矢理出そうとしなくてもいいのかな
ありがとう!

>>129
下卑たか……道理で変換できなかったはずだよ、もうやだ恥ずかしい
改行は形式段落無視してましたorz
がんばります、ありがとう
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 23:03:29.87 ID:eabRzgADO
>>119今更訂正
げひた→下卑た

俺馬鹿すぎる
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga sage]:2011/05/04(水) 23:13:07.63 ID:tSkmlIyL0
>>115です
自分の投下しているスレとは違う意見が見れてよかったです。
またちょくちょく来るかな。
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 02:52:15.23 ID:BycKmUNk0
>>119
スピード感については問題が見当たらない。

擬音擬態語は使わないという小説を書く際の基本原則があるが、
自分はこんな原則はクソくらえだと思ってるんで、『ギャハハハハ』『ガッ』を
使うことはいい。
ただ、使うのならもう少し読み手に伝わりやすい効果音を選んだほうがいいかも。あと派手に。思い切りよく。

『ガッ』はその前に目にあたる事が分かっており、
あとに思いもよらず〜どうなっているか見るのも怖いとあるのだから少し的確でない印象があった。

おそらく『ガッ』→『ぐちゅ』がいいかと。目だからね。

あんたのげひたで、げひたると崩壊したwww(……)
誤字は書いた側からすると恥ずかしいけど読んでる側からするとそれほど気にならないから気にスンナ。
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 03:07:13.91 ID:5vArAPrjo
>>110
時間に追われ、近道――人気の無い裏路地を進んだのが間違いだったのかも知れない。
立ちはだかる三つの人影を前に、俺は舌打ちをした。

「時間が無いっつーのに……!」

重厚な鎧、濃藍のローブの女、簡素な革鎧を着た青年。
コスプレでないならば、頭のおかしい集団ということになるだろう。
現代社会のそれも日本に、こんなファンタジックな姿をした者などいない。普通ならば。

だが、残念なことに、俺はこの三人組の姿がコスプレでも無ければ、
それなりにまともな思考を有しているらしいことを知っていた。
彼らと対峙するのは、これが初めてではないからだ。

「今日こそは、我々と共に来て貰おう」
「異世界に、ってか」

鎧の男の低い声に、俺は言葉を返す。
斜め掛けしたスポーツバッグが重い。動くには限度がある。

「そう……我々の世界に、だ」
「アンタらもしつこいな! そんな得体の知れないトコよりも
 俺にゃ今すぐ行かなきゃいけない場所があるんだよ!」

彼らは力尽くで俺を連れ去ろうとするだろう。
場所が場所だからと一瞬躊躇したが、俺はズボンのポケットへと右手を突っこんだ。
彼らと対峙するのは初めてではない。
同時に、彼らの仲間らしき者達との対峙も少なくはない。

「来るぞっ!」

叫んだのは、やはり鎧の男だった。

ポケットに入れていた物を掴み、親指と人差し指でつまんだそれを、
俺は突き刺す勢いで彼らに向けた。
どこにでもあるような、角の取れた小石だ。

女は何かを詠唱し、青年は俺の方へと駆けてくる。

右の手にあるものに、自己のエネルギーを注ぐイメージを抱く。
石は――まるでペリドットのような、透き通った若草色の鉱石へと変化した。

衝撃を司る「魔宝石」だ。

「その道、開けてもらおうかあ!」

叫ぶと同時に、俺は魔宝石を発動させる。
石と同じ緑に色づいた空気の層、衝撃が彼らの方へと波及する。

「ハッ、甘いなッ!」

革鎧の青年は笑みを浮かべ、俺を目掛けて飛びかかってきた。
ローブの女も、鎧の男も、表情こそは見えないものの動揺する素振りは見られない。
反撃を読まれていたという事だ。

だが、そんな事は解っている。

若草色の魔鉱石を地へ落とし、掌を上に、残りの三本の指を開く。
掌には、琥珀色の魔宝石が乗っていた。

「甘いのはどっちだろうなあ?!」
「なっ!」

「衝撃」の発動はフェイクだ。
俺は隠し持っていたもう一つの魔宝石、「束縛」の力を解き放った。

崩れ落ちるように膝を突く三人の襲撃者。
予測出来なかったと言わんばかりに言葉を失う彼ら。
そりゃあ、そうだろう。
魔宝石の扱いに慣れたとはいっても、三人同時になんて、俺にだって自信は無かったのだから。

だが、自信など無くとも、男にはやらねばならぬ時がある。
若草色の魔宝石を拾い、俺は駆け出した。
例え一時凌ぎであろうと、目的地に向かう事が出来るならば俺の勝ちだ。

「じゃあな!」

――彼らの話を聞く限り、同情すべき点はあるだろう。
だが、彼らに手を貸す気は一切無い。
異世界の事情なんざより、俺には学校の単位の方が大事なのだから。
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 03:07:45.63 ID:5vArAPrjo
お題が結構面白い感じだったので、浮かんだことを詰め込んだら大変な事に
1レスである程度読めそうな感じを目指しました。そのせいで行数ギリギリです…
影響されるのが心配で、まだ他の方のレスを殆ど見ていないので
色々と被っていたらすみません
目的とかフェイクとかをミスリードするのが苦手なので
その辺に何か思う点がありましたら指摘頂けると幸いです。

楽しかったことは楽しかったけど
趣旨的に間違ってる気がするので次から広げすぎない様にした方がいいだろうなあ…
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 03:21:52.20 ID:BycKmUNk0
>>123
もう少し物語の背景がほしかったけど、字数的にはこれ以上増やせないな。
どっかの部分とくっつけて説明しちまおう。

細かい訂正。影は黒い → 影は濃い

「……」 や「―――」の多用が見られる。もう少し喋らせてもいいかも。
でないと“…”の効果性が失われる。特に「……」 はなくてもいいかどうか悩む。

人間の走行速度の知識や戦闘描写が細かく書かれている点は評価。
十分読み手をぐっと引き込む要素足り得る。
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 03:31:20.69 ID:BycKmUNk0
>>141
>趣旨的に間違ってる気がする

全く問題ない。最後ワロタw
感想は改めて書く。
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 03:46:05.79 ID:5vArAPrjo
>>143
問題ないか、じゃあ次からも調子に乗ろう!
学校落ちは正直誰かと被るだろうなあと思っていたけど、被って無くて逆に驚いた

何度も見返した筈なのに、投下して既に5つぐらいミスを見つけて辛いorz
今最も必要なのは推敲スキルだと思った。とりあえず指摘される前に一番しょうもない箇所を訂正

(58行目)若草色の魔鉱石を地へ落とし→若草色の魔宝石を地に落とし
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 03:51:11.24 ID:BycKmUNk0
>>128
全体としてきれいにまとまってる。ただ他でも言われてた通り
茶羽ゴキブリはちょっとwでもなんか笑えたから続けていれば他の人との差別化になるかも。
その場合はこれだけじゃなく、他の表現にも一々気をつけないといけないが。

一番感心したのは、地の文の前にあるスペース。
違和感に気付いてメモ帳に張り付けてみたら地の文の前に空間を入れて、
台詞と違って段差があることが分かった。段差をつけることで、より見やすくしてあるんだな。
これは参考にさせてもらう。地味だがこういうのは大好きだ。いい配慮。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 04:07:36.46 ID:BycKmUNk0
>>133
うまくまとめられなかったと言ってるが、そんなことはない。
状況がわかりやすく書かれてる。

ただ、「サファイアーーその石言葉は、『深い海』」 とまで言ってるのに
攻撃がなんか普通。なにがあったのか分かんない。

『深い海』と言ってるので、
物質を液状化させる魔法で不良たちの下半身をアスファルトにめり込ませるとかどうだろう?

出来るだけ台詞と事象に関連性を持たせた方がいいかと。気になったのはそれくらい。他はいいと思う。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 04:43:42.97 ID:BycKmUNk0
>>135
水晶は宝石だし、おそらく金、銀なんかも同じ扱いしても別に問題ないはず。

場面としては裏路地となっているが、荒野とかの方がなんかしっくりくる話に思えた。
あと、そんな大きな水晶をどこから取り出したのかとかは気にしてはいけないんだろう。
特に何か指摘することが見つからなかった。

富竹フラッシュ少女の今後に期待。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 05:09:21.02 ID:BycKmUNk0
>>140
世界観が素晴らしい。最後のオチのギャップもいい。よく想像されていることが分かる。

ミスはどこか分からなかったが、別に推敲して投下するほどのもんでもないんで
あんま気にせずやってくれ。

魔宝石を数種持っており、それぞれに効果が付与されていることが分かった。
しかし、衝撃のあとに束縛を使ったことが果たしてフェイントになっていたのか
どうかわからない。小さな力でも活用次第では大きな効果を得るような
戦闘も見たい。能力を環境とうまく活用して戦う様も、SSを作る上で考えないといけない
要素となってくるからだ。能力に頼るとマンネリ化するから。
この短い文章では難しいけどな。
ただ派手さがあったのはいいと思う。主人公のキャラも伝わった。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 05:25:13.57 ID:Plz/PCKdo
>>133
まとまりはあると思う。むしろまとまりすぎて話がもうちょっと大きくてもいいような気もする
ただ既に言われてる通り、『深い海』と実際の効果との関連性が薄いんじゃないかと
それ以外はいうことが思いつかないっす
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 05:26:01.84 ID:BycKmUNk0
余談だが全体の印象として


今回やたらくおりてーが高かった気がする。ここは初めてか?力抜けよ。(※一回目です)

ただ気になった所が一つ。違うのもあるが、場面が路地裏ばっかw
まぁ俺も路地裏なんですけどね。

誰か路地裏以外で書いてくれる人いねーかなー。壁‖∀・)チラッ

という訳でage
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 05:31:40.13 ID:Plz/PCKdo
>>135
>吐く息は荒いが足取りに一ミリの迷いもない。目は真っ直ぐに前のみを見つめていた。
ここいいなー、少女の決意がシンプルながら伝わってくるなーと思った。
ただ、話としてはまだまだ練り込みようがあると思う。
逆にいえばそれくらいしか突っ込めない
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 05:39:09.66 ID:Plz/PCKdo
>>140
簡単に順番なんぞ付けるべきじゃないとも思うが、設定、話の練り込みでは今のところ一番面白いと思う
続き、背景を知りたい気になるし学校オチも面白かったし
文章的にもケチつけらんない。っていうかミスどこよって感じ
まあ、それでも無理やり細かいケチをつけるならば、
>俺は魔宝石を発動させる。
そのまんま過ぎるのは好みじゃないから、解き放つ、とかはどうだろう。ホントに好みの話で小さい指摘だけど
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 05:49:33.09 ID:Plz/PCKdo
>>142
やっぱり話と設定が薄いよね
なんとかドッキング説明できるよう訓練積んどく
あと、確かに読み返してみたら沈黙使い過ぎだった
これで自覚なしとかもうね

>>150
確かに路地裏オンリーワロスww
まあ昔から路地裏はきな臭い出会い系なサイトだから意識が引っ張られるのはしかたない
お題からなんとなく路地裏ー! って雰囲気が漂ってるもん
俺も他の場所の話を読んでみたいな
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 07:58:28.12 ID:ffcgwmMDO
>>139
そんな基本原則があるのか……下卑たも含めて自分ばかすぎワロエナイ
ぐちゅっか! 自分のイメージしてた音とぴったりで、うわああすげえええってなった。勉強になる、ありがとう!
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 08:04:48.89 ID:ffcgwmMDO
>>140

世界観がしっかりしていて、情景が頭に思い浮かんだ
アクションが派手で気持ちがいい
宝石も、他にどんなものがあるのか……? と考えさせられて、わくわくした
面白かったです
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 11:57:19.76 ID:BycKmUNk0
ぐぬぬ…。
路地裏以外で書いてくれる人…!
もし少し書いてたり、構想ができてたりしたら正午で〆切となってるけど
遠慮なく投下しちゃってくんろ。せっかくだから見せてほしい。

さて、一応正午で〆切なんでもうすぐ安価だしまっせ。
時間制限はまた24時間でもいいんだけど、そうしたらまた〆切時間が正午になるから
できれば明日の夜零時でいきたい。普通正午に安価出せる人ってすくないだろうからね。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 11:57:56.17 ID:BycKmUNk0
そしてあげ忘れる
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 12:02:25.20 ID:BycKmUNk0
とりあえず>>110のお題はここまでということで。
出来れば>>110の人にも感想がほしかったが。

安価出しますねー。

次のお題
>>160
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/05/05(木) 12:58:54.39 ID:5SboGwyAO
主人公の性別は不問
家族絡みで複雑な過去がある
世界観は問わず
お金好き
主人公の戦闘力は中ぐらいで、お金好きがアピールされる描写希望
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 12:59:28.71 ID:QubPabds0
主人公は問わず
天気は雨で墓前で立ち尽くしている
雨がポツポツ降り出す中で主人公は悔やむ
悔やんでいるさなかで怪物が出現する
怪物はその世界で周知の物、異形の物、どちらでも可
第三者が現れ、主人公に力を与える(目覚めるでも)
主人公が怪物を倒すが、その時に道具で倒しているのが条件

普通かな?
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 12:59:56.59 ID:Plz/PCKdo
ちょっと変則的なお題出してみる
文章再構成系


「上野発の夜行列車 降りた時から 青森駅は 雪の中
 北へ帰る人の群れは 誰も無口で
 海鳴りだけを聞いている」


ある本で名文と紹介されていたご存知津軽海峡・冬景色
あ、でも歌詞を勝手に使うのは問題あるかな
もしまずいなら下ので
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 13:03:36.51 ID:Plz/PCKdo
ああ駄目だったか……
ところで思いついたんだけど、イラストでのお題もどうだろう
貼り付けたイラストから物語・文章を構築する、みたいな
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 13:06:20.83 ID:QubPabds0
>>162
文章の方がバラエティとかが豊富に思えね?
絵だと自然にキャラや舞台が固定される場合とかない?
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 13:12:00.27 ID:Plz/PCKdo
>>163
確かにキャラや舞台は強烈に固定されるね
だけど、文章で表現できない物語背景等については案外ゆるゆるな気がする
やってみないと分からないけど
まあ一応考慮しとく程度に考えてもらえれば
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 13:36:37.09 ID:BycKmUNk0
>>162
俺はおもしろいかと思う。いろいろ試してみたい。失敗を恐れずに。

あとちょっと違うけど次の安価誰か別の人がやってくれたら、
お題に映画のワンシーンをもって来ようと思ってる。

『第三の男』っていうちょっと古いやつだけど。
安価とれたら参考資料も同時に提示するし。
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 13:41:39.91 ID:5vArAPrjo
次のお題が出ている中、申し訳ない

>>148>>152>>155
もっと指摘されるかと思ってたので逆にびびってる。レスありがとう!
気付いたミスは寝て起きたら半分ぐらい解らなくなったので、多分その程度の事だったのだと思う
「解き放つ」は下の方で使ってしまったから、表現重複を避ける為に上では使わなかったけど
確かにそのまんますぎて別の言葉の方が良かったかもなあ…
衝撃→束縛の言い訳は考えていたのだけれど削ってしまった…(「3人同時に〜」という部分に辛うじて)
もっと他に削れる場所があったのにな…主に前半
それかどうせ2レス使うんだから、いっそ2レス目に本文続けてもよかったかもしれない
戦闘シーンは考えるのも書くのも本当に苦手なんで、レスが特に有り難い。今後の参考にします!

>セルフ添削・反省(誤字以外)
・行数配分を考えてなかったせいで後半が説明不足
・「重厚な鎧、濃藍の〜」後から「女」「青年」を加筆したせいで鎧だけ浮いてる
・「反撃を読まれ〜」タイミング的に反撃に当たるか微妙。
(この表現を使いたいならどっちかの行動をずらすべきだったかも)
・束縛の発動時もなんかエフェクト付けた方がよかった

長くてごめん。でも感想レスを元にお礼レスという形で噛み砕くとより勉強になってる…気がする


>>150
人目に付かない→乱暴な事もしやすい・見られてはまずい力も使いやすい
ってのもあるだろうなあ。トラブルの起こりそうなイメージ、というのも大きいだろうけど
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 13:43:31.17 ID:5vArAPrjo
好きとか面白いとかを言語化するのが苦手なので、結果的にちょっと辛口かもしれない
作法とか細かい表現のミスとかは解らないです。ごめん。主観も多いんで適当に聞き流してください

>>116
「『宝石』をモチーフにした武器or能力or技」は正に「この発想はなかった!」って感じだった
「頭イって〜」は俺もちょっと引っかかったかな
>893「なっ!こいつなんてことしやがる!!」
発言直前の行動描写のせいか、宝石より某配管工的行動のインパクトの方が強くて
そっちの行動に掛かってるのかと思って一瞬「ん?」と思った
その辺りの引っかかりを除けば全体的にテンポがよくていいと思う

>>119
場面的に(少なくとも前半は)スピード感は無くてもいいと思う
前半の詰まり具合と後半の改行の多さに違和感を覚えた
文章自体を変えないならば、地の文をもう少し改行した方がいいと思う
描写自体は丁度いい量だと思うよ

>>123
舞台の暗さがちょっと解りづらい
「光景が高速で背後に流れる」「腕時計を確認」程度には明るいのか
でもその割には「気配」「闇」と言った単語やほぼ無言の鉤括弧で
暗さを強調している感じなので、結果的にどっちで読んでも違和感を感じる
アクションは格好良いと思う

>>128
茶羽ゴキブリは個人的にはアリだと思ったww
>「嘘じゃこんのクソボケがあああああああ!!」
誰が言ったのかちょっと解り辛い
口調の変化もあって最初は真ん中の男が言ったのかと思った
最後の括弧は省いてそのまま書いてもいいんじゃないかと思った以外は
地の文はくどすぎずあっさりしすぎずで個人的に好き

>>133
「深い海→地面張り付け」は上手いこと考えたなあと思った
ただそれだとタイガーアイとかもう少し大地をイメージ出来る石の方がいいかもしれない
…けど、石言葉知らないから何とも言えない…例に出したタイガーアイだとインパクトに欠けるしな…
途中で空白行を挟むのなら、最後の一文の前にも挟んでいいんじゃないかなあと思った
地の文のテンポの良さが個人的に好み

>>135
意味深さの割に背景をぼかしすぎている気がする
表現・描写の練習だとしても情報を減らすか説明するかした方がいいかも
水晶を使った部分が少々あっさりしすぎているような。多分好みの問題ですが
後は…「抱える」だともっと大きいサイズのものをイメージしてしまうか。ソフトボール大だと握る…?
正直、文章自体には好みの問題レベルの箇所しか気になる点はなかった



本当にどれもクオリティ高いから、重箱の隅を突くようなレスになってしまった…
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 14:30:31.53 ID:Plz/PCKdo
>>167
そう言えば暗さについては考えてなかった
ちゃんと舞台を克明に想像しないと駄目だな
トンクス
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 14:38:39.87 ID:BycKmUNk0
>>166
感想に対する感想はあった方がいいかもしれない。
自分だけじゃなく、他の人も勉強になるし。むしろそれがこのスレの本分のような気がする

という訳でちょっと今回チャレンジしたこととかを以下に。

>>110のお題で>>116を書いた訳だが、
今回のコンセプトは地の文の節約と比喩表現を出来るだけ削除すること。

お題に、短時間で勝利とあったのでスピード感がある情景がまず頭にあった。
しかし、そうしたら普通に地の文を書くと相性が悪い気がした。とくに比喩表現。
『まるで〜のように』という表現は今回は封印し、地の文に一人称目線での状況の解説を入れることで、
ある程度地の文を読む煩わしさを解消できたかと思う。手法としてアリかどうかは分かんないけど。

ただ、壁キックだけは異常に表現しにくくて、
某配管工というキーワードを入れることでなんとかした。出来たかどうかは知らん。

最後の一文は要らなかったかも知れない。自分の癖が出てしまった。
今回使った主人公は俺に書かせると多分最後死ぬし。
コメディ風タッチから無理に以後の絶望展開を暗示させようとして違和感がでた。


貰った感想を総合して、出た所見はこんな感じ。thx!的確な意見ばかりだった。
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/05/05(木) 14:52:43.65 ID:5SboGwyAO
>>160
これ漫画とかならよく見そうな展開だけど小説だとムズイな
シリアスな場面からバトルに突入して第三者とか長編ならまだしも短編でやるならカオスになるだろ
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 14:55:49.78 ID:BycKmUNk0
>>170
全部入れなくてもいいのよ。

むしろ逆に三行くらいで収めたりすると
SUGEEEEEEEEEってなるかも!
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 15:10:46.36 ID:5vArAPrjo
シチュは限定されるだろうけど、書く事自体の難易度は前回とあんま変わらない気がする
とりあえずSS投下は6日中迄でおk?
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 15:22:34.31 ID:BycKmUNk0
>>172
えーと、6日の24時で。7日の0時。グリニッジ子午線準拠で。

その方が安価出しやすい。
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 15:28:58.94 ID:ffcgwmMDO
>>160

 「いや有り難い。送りの方まで用意してもらえるとは」

 酒でふらつく足を何とか前に出しながら、隣りの男の顔を除きこむ。傘をさしているため見辛いが、提灯の光で照された男の顔は、いかにも平凡な下手人といったものだった。

 「いえいえ旦那、雨も降っておりますのでね……ときに近頃この辺りで妖がでるという話を知ってますかな」

 "妖"
 突然出てきた不吉な言葉に眉を潜めた。せっかく心地好い浮翌遊感に身を任せていたというのに、これで醒めてしまったらどうしてくれる。

 「はぁ……いや知りませんな」

 「何でも侍に母を殺された復讐にと、化け猫が現れるとか」

 口をつぐむ。
 たらりと汗が背中を伝ったのがわかった。腰に掛けた刀が、ずしりと重さを増したように感じる。

 「旦那? どうされました、ほら彼処の橋の辺りで出るそうですよ」

 男が指した方向へ顔が向いてしまう。ざああああ、雨の音が一層激しくなったようだ。見てはいけないと頭の中でガンガンと警報が鳴り響く。

 ――にゃあ

 違う。出てきたのは何のへんてつもない普通の猫だった。はぁ、と力が抜ける。

 「あらまぁ、どうしたんです? 旦那がやったわけではあるまいに」

 くすくすと笑う男が憎らしい。無礼なと言ってやりたいところだが、そんな気力も無い。

 「それとも、何か心当たりでもおありで?」

 ドキリと心臓が高まった。何故だか、隣の男の顔が見れない。
 
 「畜生を試し切りにでも利用なさった経験でも?」

 ドクンドクンドクン――、心臓の音がやけに明瞭に聞こえる。ふと腰が軽くなったかと思うと、そこで意識が途切れた。


―――――――――――
―――

 母を殺された。人間に。刀を持っていた。あれは侍と言うらしい。
 動かなくなった母から、僕は離れることができなかった。腐った臭い。蠅が集る。人間は汚らわしいと言って、母を棄てた。
 僕は母が殺された橋から離れることが出来なくなっていた。
 雨、雨。すっかり毛が濡れてしまっているのに、身体が冷える感覚もない。変なの。
 向こうから、人間が歩いてくる。二人。片方の人間は見たことがあった。知ってる。あの人間を、僕は知ってる。母を切った、人間だ。ずくり、濡れているはずの身体がまるで燃えているように熱い。憎い、悔しい、母を殺したあの人間が――。
 
 ――ならば、殺してしまえばいい

 頭の中で、声がした。張られていた糸がぶつりと切られてしまうような感覚。目の前が真っ赤に染まった。




 「お見事」

 パチパチと手を叩く音がした。もう一人の、男。僕は刀を握りしめると――、刀?

 「君のお母上の血を吸ったのはその刀だよ、そして君がこの男を殺したのもその刀だ」

 男はニマニマと笑う。頭が混乱する。この男はなんだ? いや、そもそも自分は何故この刀が持てている?
 
 「それに大した理由は存在しないな。――君が化け猫になったからだという他ない」

 思考を読んでいるかのように、男は饒舌に言葉を発する。

 「化け猫?」

 「やぁこれは愉快。人語も話せるのか」

 楽しそうに笑う。

 「そう化け猫、妖だ。……自分がこれから何をしたらいいかわからないかい?」

 「だったら私についておいで」

 男はそう言うと、カランと下駄を鳴らして歩いていった。別段ゆっくりでも、速くもなく、"ついてきたかったらついてくればいい"とでも言うように。
 一瞬の迷い。雨が血をどんどんと流していく。僕は刀を背にしっかりと縛りつけると、小さくなりかけている男の影に向かって駆け出した。
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 15:31:01.83 ID:ffcgwmMDO
このお題難しいな……思いもよらず長くなってしまった。あと厨ニ全快orz
また誤字がありそうでビクビクしてる
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 15:57:09.05 ID:BycKmUNk0
>>174
見事に全ての要素を取り入れてるな。読みやすさがいい。中二さは感じなかった。

表現がうまくなってるように思えた。改行は携帯だから難しそうだな。
下手人の感じなどから今後の作風もイメージしやすいから、読者に負担がない。

>腰に掛けた刀が、ずしりと重さを増したように感じる

>ふと腰が軽くなったかと思うと、そこで意識が途切れた

へと続き、刀が相手方に移ったことが分かるようになっているのか?
うまい表現だと感心する一方、侍が腰から真っ二つに斬られて
腰から下が軽くなったのかとも思ったり。

もし出来たら侍が“どのように”斬られたのかもほしかったかも。

読みやすいし、情景もよくイメージできたので読んでいておもしろかった。
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/05(木) 16:50:23.08 ID:/0Fr7acso
>>174
面白かった
和の雰囲気というのか、全体に漂っていて引き込まれる感じがあったね

ただ地の文と台詞が交互あるいはそれに近い形で現れるのは少し読みにくいかも
ちょっとずつまとめて塊にしてしまった方が読者には優しいかな?
意識して交互にしているというならまたそれもそれで手法なのかもしれないが
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/05(木) 17:35:32.23 ID:/0Fr7acso
>>160

墓前に花を捧げ、目をつむる。
上げた線香は雨に浸されていた。



水滴が少しずつ体を濡らす。
私のちっぽけな、からっぽの両手は、雨除けになんてならなくて。





(どうして私は、こんなところにいるんだろう)





耳障りな笑い声を皮切りに。
不協和音がだんだんと混じり出す。
いやなものが、どろどろが、私の耳を、目を、世界を、塗りつぶしていく。





(どうして私にできるのは、こんなことだけなんだろう)





意識を手放し、



そして取り戻す。




ノイズは晴れて。
閑寂とした空気の中に、一つの声が響き続けていた。


『また会えたね』




全身の生ぬるい液体が、雨によって少しずつ洗い流されてゆく。
いつしか握り締めていた棒っ切れを投げ捨て、手の動きを雨に同調させる。









どうして私は?
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/05/05(木) 18:19:02.69 ID:5SboGwyAO
>>160で書いたら大長編になっちまったorz
短くしたつもりなのに…

あと>>176のIDwwwwwwwwwwwwww

>>178
なんかポエムみたいな綺麗な小説だな
けど手の動きを雨に同調させるってなんぞ?
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 18:52:19.25 ID:BycKmUNk0
>>178
昔私は“お前のSSは改行が多くて間延び感がある”と言われました。それから私は反省し、
複数段改行する時は、それが本当にいるのかどうか考えるようになりました。
なのでこの言葉はもう私には必要ありません。あなたにあげます。どうぞ。活用して下さい。

まぁ、改行はともかくとしてちょっと話の全体が分かりにくいな。
短編SSでは起承転結の“起承”や“転結”のみをくり抜きSSとします。
いくら短編でもこれらを単独で使用するのはきつい。“起”だけを使うにしても
最後に“承”のにおいを残さないと格好が形成されない。見たところこれは、
“起”だけでしかもそれも途中でしかないような気がする。(もしくは結か?)

敵の姿がイメージできない。もう少し、わかりやすく。わかりやすーく。丁寧に。
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 18:58:01.70 ID:BycKmUNk0
ID?なんて読んだんだ?
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/05/05(木) 19:05:58.60 ID:5SboGwyAO
IDの最後がウンコだwwww
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 19:24:34.59 ID:hHECD+kK0
ちょっと訂正>>174
何でも侍に→何でもお侍さまに
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 19:25:01.96 ID:hHECD+kK0
パソコンから見てみたら、読みづらさに愕然とした。
一文ごとに改行した方が良さそうだな。

>>176
>刀が相手方に移ったことが分かるようになっているのか?
そのつもりでした。
どう切られたかとか考えてなかったorz
最後にその描写を入れるべきだったと反省
アドバイスが的確で勉強になります、ありがとう

>>177
改行を一文ずつやれば良かったかな
パソコンから見て読みづらいなと思った
ちょっと凹んでます
アドバイスありがとう!
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 20:31:11.19 ID:BycKmUNk0
  ノ|
 ( ̄ ̄ )
( ̄ ̄ ̄ )   だれだよ!こんなとこにうんこしたやつはっ!
( ̄ ̄ ̄ ̄)
  ̄ ̄ ̄ ̄
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 21:13:31.18 ID:CpZY5lgAO
どうにか体裁を保てたので、やっと読める&感想が書ける。
だいぶ遡るけど、いいよね?
今回は自分も2辛ぐらいで。


>>116
青年のキャラはよく立っていて好みなのだけど、
戦闘描写と、戦闘慣れしてる設定は弱いと思った。勝利してないしww
最後の一行が、これまでの雰囲気と一変、味わい深くて印象的。

>>119
同上。
率直に言って、戦闘慣れと勝利を書いてないのが片手落ち感。

>>123
この文体は好きだ。秋田を彷彿とさせられる。
って、そういう意識だったのね……どおりで。
「吐息」使いすぎの気がした。使命の吐息、鋭い吐息、夜の吐息。
緊張感を出すには相性のいい単語だろうけど、頻出は逆効果かも。
下から2行目、心臓表記がまるっきり重複で、ここまでのテンポを阻害するのでは。
単純に「その左胸に」でいいかと。

>>128
主人公はイリュージョン使い?「言葉の重み」能力者?
そう読めるぐらい、場の支配描写が唐突かつ大仰に見える。
主人公が描いたイメージを相手に投射できる何らかの説得力が欲しいところ。
でないと、残された二人だけでなく、読者もポカンと見送る羽目に。

>>133
割とツッコミ所なさげ。
一点、少年に急いでる描写が見当たらないのが残念。

>>135
上手い……。
背景に想像を巡らせる文も散りばめられていて、改善点を挙げられない。
いずれ名のある書き手さんと見受けた。

>>140
大作キタコレ。やや長かったけど一気に読めた。
「衝撃」が「束縛」のフェイクだってよりは、後者のコントロールのための布石、
あるいは(何度か対峙してるから)前者がいなされて咄嗟の機転で後者、なんかのが扱い慣れを強調できるかも。

187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/05(木) 21:39:31.51 ID:eZCP35B0o
>>160
乗り遅れ気味ですが参加させてもらいます。よろしく


私の前で、立ち尽くす彼。肩に落ちる雨粒。水を弾くコート。

「・・・・」

私の前で、肩を震わす彼。声をかけることは、できない。

「人殺し」

「疫病神」

責められ、傷付き、そして彼は今でも自らを責め続けている。

「お前は死んだ。俺のせいで死んだ」

雨音にかき消されそうなほど小さな声で、彼はつぶやく。

左手のくすり指。誓いの指輪に、手を掛ける。

やめてと叫びたくても、声は出ない。それはすでに失われてしまったものだから。

「許してくれ」

無機質に冷え切った石。その上に置かれた指輪。古くなったそれが放つのは、くすんだ色の輝き。

立ち上がった彼は、これからどこへ向かうのだろう。それはひょっとすると、私の知らない女性(ひと)の元か。

「そんなの、全然うれしくないよ」

うれしくない、けど。先に約束を破ったのは私だから。

『一緒に、幸せになろう』

「・・・・ごめんね」

遠ざかる彼の背中。声をかけることは、出来ない。

水を弾くコート。雨はもう降っていない。
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 21:42:36.08 ID:Plz/PCKdo
>>186
俺の基本は秋田禎信
だから、彷彿としてもらえればどう言った意味でもうれしい
吐息は確かに多かった。気に入った表現を乱発するのが俺の悪い癖っスね
心臓は後から気付いた。推敲って大事!
アドバイスthx
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 21:58:30.57 ID:5vArAPrjo
>>186
レスサンクス!
成る程、加えて自分で考えていた理由よりスマートで説得力もあるww
発想力を鍛えないとなあ…


ところで任意で鳥付けるとかどうだろう、と思ったけど馴れ合い臭が濃くなるか…?
「前回と比べて〜」とか聞きやすくなりそうと思ったんだけども
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/05(木) 22:01:45.65 ID:ffcgwmMDO
ageとく
>>187
辛口かも

死んだ彼女の視点から書かれているのかな?
設定として書かれている、敵の出現・第三者からの覚醒(?)・道具を使って敵を倒すというのがあまり感じられなかった
暗に書かれているのかもしれないが、それだとしても分かりにくいかと
私の知らない女性〜のところで、主人公のキャラクターが最後ぶれているようにも感じられた
主人公の心理描写がもっとあった方が良かったかもしれない
最初と最後のコートの描写は好き
対比しているようで、一つのシーンが綺麗に切り取られているように感じられた


191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/05(木) 22:37:47.22 ID:eZCP35B0o
>>190
感想ありがとうございます。辛口の方が参考になることが多いのでうれしいです

視点は死んだ『私』のもの。時系列は『私』の死から十数年後?です

>>160に明記された設定
敵?→彼を責めた人々、私の死
第三者→私の知らない女性
覚醒→私の死から彼が解き放たれる
道具で倒す→誓いの指輪を外すことで

こんなつもりで書いてみました。
しかし書いている途中で話に浸ってしまい、自分の中だけで完結させてしまった・・・。これでは伝わりませんよね

『彼』の心理は、それとなく行動で示したかったもですが上手くいかず・・・天気や風景とリンクして表現すれば良かったかもしれません
ちなみに最後の行、コートが弾いた水は雨ではなく彼の涙・・・なんてどうでもいい話ですね

物語を簡単にまとめると、恋人の死を引きずった男がひとりの女性と出会い、再び生きる気力を取り戻す話。
こんな感じでしょうか。表現できていない箇所も多いですが、こう書くとありふれていますね。
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/05(木) 23:21:20.00 ID:+lCoa5IAO
>>160

初めての墓参りは雨だった。

私はこの墓の下で眠る両親を、助けることが出来なかった。
私が強ければきっと二人は死ななかったはずなのに。
後悔が胸を圧迫し、知らず知らずに涙が溢れる。
涙は雨と混じって、どちらがどちらなのか境界線が曖昧になる。
泣いちゃだめ。もう泣かないって決めたのに。

涙を拭っていると、前触れなくすぐ傍でメキャリと音がした。
何かを一思いに潰したような。
一気に心臓が冷たくなった気がした。
顔をあげると二メートルはある怪物が立っていた。
片目が潰れている。
…あれは、父さんと母さんを殺した怪物じゃないか?

「……ああ、……ぅあ」

こわい。
私もこのままだと殺されてしまう。でも仇を取りたい。
矛盾した思いが私の身体を縛り付ける。

強くなりたい。こいつに勝てるような、強さを!

「強さをお望みですか、お嬢さん?」

突然後ろから声がして、ハッと振り返る。
場にそぐわないラフな格好をした男性が立っていた。

「説明は後ってことで。はいコレ」

いきなり渡されたのは日本刀。
戸惑いながら柄を握りしめると力が湧くような気がしてきた。

「うわあぁああぁぁぁぁ!!」

覚悟を決めて怪物へ斬りかかる。
腹を切る。足を刺す。腕をバラす。顔を真っ二つにする。
気がついたときには怪物はバラバラだった。
緑色の体液がそこらに飛び散っている。

「おめでとう」

男の人はパチパチと拍手をした。
雨に濡れて寒そうだ。

「君は、その刀に選ばれた」
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/05(木) 23:23:18.60 ID:+lCoa5IAO
>>135ですが評価ありがとうございます
水晶の大きさについて考えたほうがいいですね…
なかなか物の大きさは実物がないとイメージしずらいですね
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/05(木) 23:37:40.18 ID:/0Fr7acso
>>179
アドバイスありがとうございます。
シャワー浴びてる感じを想像してもらえれば

>>180
アドバイスありがとうございます。

自分なりに改行には意味を持たせてますけど、確かに間延びするってのもあるんですね
その言葉はありがたく頂戴します

起承転結については、起を暗に前提して承の部分を書いたつもりなんですが
シーンを切り取りすぎてわかりにくくなってるのもそう言われてみればといった感じです
行間にある程度読み手さんの想像の余地を挟んでほしいと、あえて表現は省略してますが
行き過ぎた場合、それは手抜きと感じられてしまっても無理はないですね
もう少し丁寧に描写するよう心がけてみます。
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 23:53:25.94 ID:CpZY5lgAO
160には、怪物が敵とは指定されてないから
「墓前で現れるもの→幽霊」
「倒す→吹っ切る、昇華する」
という非対立的・観念的な組合せが立てやすいのかも?

ちなみに自分が書こうと試みていたのも同様だった。
ひゃぁ……危なかった〜

>>187
厳密には160の指定は「墓前で悔やむ主人公に怪物を倒させるべく第三者が現れる」と読めるので、
現実で彼の支えになった女性を登場させたほうが条件にかなってたと思う。
それが却って語り視点の子の未練を断つほうへ、という描写も出来るし。

あとあなたの書いた話は自分の書こうとしたのと大部分の要素が被ってたので、未練断たれましたww
どれだけ清廉な思いでも、これからを生きていく人間の足枷になるくらいなら
化けて出るべきじゃないよね、的なニュアンスで。
(含みが違ってたらゴメン)
196 :>>160 1 [sage]:2011/05/06(金) 00:02:53.86 ID:fdmazF4AO
余りにロングかつ普通の展開過ぎてワロタwwww
長い文章でも大丈夫って方だけ読んで下さればww



雨がポツポツと降り、男の体を冷やす
熱した心と体を冷やそうとする雨だったが、残念な事に力不足であり、男の激昂している体を冷やすことは敵わなかった

「うおおぉぉぉぉ!!」

もう何度目だろうか

男が墓前の前で雄叫びをあげる
先程まで遠くまで響いた後、ゆっくりと消えていた叫び声が雨音で掻き消される様子を見るに、雨の働きは無駄じゃなかったと見える

「すまない…すまない…」

幾百を超える謝罪の声
男は何度も墓の前で頭を下げる
その様子をみるのは目の前の墓石のみ
だが墓石は何も告げない

「私だけが生き延びてしまった…私だけが…」

男は一人だった

戦前まで男の心は信頼と愛に満たされていた
しかし戦争中、信頼と愛を男に注ぎ込んだ仲間は皆、死んでしまった

男を残して

男は一人だった

仲間の中には家族との再会や故郷に帰る事を待ち望んでいる者達がいた
身寄りのない男には羨ましかった

彼等が生き残るべきだった
彼等こそ生き残らなければならなかった

あの怪物さえいなければ―――

その言葉が男の頭に浮かんだと同時に、男の背後で足音が聞こえた

「!?」

バッと男は条件反射に近い形で振り返ると同時に剣を構える
197 :>>160 2 [sage]:2011/05/06(金) 00:03:23.20 ID:fdmazF4AO
同時に剣がキン、という甲高い音を立てて二つに分かれた

「ここまで…来たのかよ…」

男は目の前で剣を折った、人とも獣とも似つかぬ『怪物』を睨んだ
黒い体毛で覆われた赤い目をした化け物
そうとしか形容ができず、他に形容すべき言葉が男には思い付かない

コイツが仲間を殺した
コイツが自分を孤独にした
男の心に怒りが渦巻く

グルルという擬音に近い声を上げ、怪物が男に襲い掛かった

「チィ!」

怒りが起こるにも戦う事ができない
男はしゃがみながら怪物と距離を取る事に尽力する

男に戦う力はない

しかし男の頭には逃げるという選択肢はなかった
友が、仲間が眠る墓の前だったから

「命を賭して戦ってくれた仲間の前で無様な姿は晒せない」

男は不器用だった

『ならばここで[ピーーー]』

目の前の怪物がそう言ってるように見えた
男は死を覚悟し、仲間との再会を願った

「剣を構えろ!」

「!?」

突如声が響く
同時に怪物と男が声のした方を見た
そこには黒髪の男が立っていた

「剣を構えろ!お前はまだ戦える!」

黒髪の男の力強い声に押され、男が折れた剣を構える
同時に、剣にズシリと重みが加わった気がした

「斬れ!」
198 :>>160 3 [sage]:2011/05/06(金) 00:05:34.49 ID:fdmazF4AO
男が折れた剣を振り、怪物に刃を当てる
するとザン!という音と共に、怪物の腕がバターのように軽く斬れ、吹き飛んだ

「とどめを!」

黒髪の男が言うが否や、男は既に怪物の頭に向けて剣を振りかざしていた

「仲間の恨み!少ないが持って行け!」

怪物の体に剣が刺さると同時に怪物の体が四散する
何処からか仲間の笑い声が聞こえた気がした

辺りを見回すと黒髪の男は消えていた
握っていた剣も、いつの間にか重みを感じない、刃の折れた無様な剣に戻っていた

剣の事はいい、あの男にお礼は言いたかった
それが男の心残りだった

「王様、何処にいかれますか?」

「なに。戦友の墓参りだ」

男は今日も戦友の元へ向かう
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/05/06(金) 00:06:31.36 ID:fdmazF4AO
無理やり終わらせた感しかないwwww
駄目だコリャww
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/06(金) 00:22:49.50 ID:WIfeujLh0
>>199
長編乙!
俺は批評とか出来ないから、そのへんは他の人に任せる。
怪物の大きさが描写されてないのが、ちょっと気になった。
人間大、二本足って感じに解釈していいのかな?
201 :>>160 1/2 [sage saga]:2011/05/06(金) 00:41:25.83 ID:vyFP6b0Yo
十字の墓前にて立ち尽くしていた青年は、しとしとと降り始めた雨に押される様に跪いた。
栗毛の髪からは水が滴り落ち、黄枯茶のコートの右袖が揺れる。
――右腕欠損。
腰に携えた愛剣は、利き腕を失った今となっては意味を為さない。

雨に濡れた草木の臭いが、青年の鼻孔をくすぐる。
青年は痛みを覚え、かつて腕が付いていた場所を、コートの上から左手で覆った。



世界の頂点に君臨するのは、竜族だ。
人々は竜の恐怖に怯え、日々を暮らす。

彼は力ある「ドラゴンスレイヤー」だった。
そして、この墓に眠る人間――幼い頃、兄の様に慕っていたその人も。
しかし、何れも過去形である。

若きドラゴンスレイヤーだったその人は、この森の向こうで命を散らした。
その人の生を奪った竜を憎み、青年はドラゴンスレイヤーを志した。
平和を脅かし、大切な人を亡き者にした竜が、青年にはただ憎かった。



半月前に対峙した竜は、勝てぬ相手では決してなかった。
同種、同格の竜と対峙した事は数知れず、それらより格上の竜を相手取った事も少なくはない。

同業者達との連携ミス、情報不備、竜側の援軍、そして……一瞬の気の緩み。
些細なミスと不運の積み重ね、それによって失ったものは、あまりにも大きすぎた。

利き腕が無ければ、剣は振るえない。
剣が振るえなければ、青年の力は皆無に等しい。
力が無ければ、竜族に復讐を果たす事など到底出来ない――!

……死者が物言わぬのは知っていた。
例え、この雨が涙雨の様だとしても、所詮は単なる雨に過ぎない。
しかし、力を失って、真っ先に来ようと思ったのはここだった。

あの人が殺されるのを、ただ見ることしか出来なかった自分が悔しかった。
片腕をもがれただけで何も出来なくなる自分が悔しかった。
けれどやはり、何よりも竜が憎い。

そして、そんな青年の気持ちを知ってか知らずか。

「……」

森の向こうより、羽ばたく音。
直接見ずとも青年には解った。雨音に混じるこれは、小型の飛竜の羽音だ。
青年は跪いたまま、静かに森の上空を見遣った。

案の定、だ。
暗緑の色をした飛竜が、青年目掛けて一目線に飛来しようとしていた。
小型と言えど、小屋程度の大きさはある。
以前の青年ならば軽くあしらえただろうが、利き腕の無い今は、太刀打ちなど到底出来ない。
逃げねば命は無いだろう。まだ、飛竜との距離は十分にある。

だが、青年は動かなかった。
決して怯んだ訳ではなかったが、しかし彼は動けなかった。
憎悪を多大に含んだ絶望と言っていいのかもしれない。
命を奪われる事に対する絶望ではなく、あまりに無力な自分に対しての絶望――。

――チカラを

「……え?」

唐突に耳を掠めた、女神のような柔らかな声。
雨音に掻き消されるであろう程小さく、青年は言葉を漏らした。
返事は返ってこない。しかし……。

「右腕、が」

左の掌が唐突に唐突に感じた、右肩から伸びる弾力。コートの袖は静かに脹らむ。
そして、懐かしい様な右手の感覚。

「幻肢痛、じゃない……?」

感覚では確かにそこにあるが、だがそこには何もない。
しかしまるで、透明な腕が生えたような。
青年は、その「腕のようなもの」で剣を抜くことを試みた。
202 :>>160 2/2 [sage saga]:2011/05/06(金) 00:43:05.22 ID:vyFP6b0Yo

「抜けた……!」

シャリンという音と共に引き抜かれた愛剣は、手品の如く宙に浮く。
だが、青年には確かに己の手で握る感覚があった。
雨の中、刀身の輝きは青年にとっての希望の光。

襲い来る飛竜に抗う様に、青年は剣を構える。
やがて、自らに飛び掛かってきた竜を避けるように青年は飛び上がると、
かつて慕っていた人の愛剣を、竜の頭部に振り下ろした。



最近大陸で有名な、右腕を大層な籠手で覆ったドラゴンスレイヤー。
白き剣を振るう原動力は、竜に対する憎しみだという。

彼は一度右腕を失い、戦線を退いた事があるらしい。
にも関わらず、彼の右腕は現存する。
その不可思議さ、不気味さが相まって、彼には様々な噂が付きまとう。

噂には尾鰭が付きすぎて、真実を知るのは彼のみである。



----------

長い!長すぎる!!地の文ばっかりだから特に!!!

プロローグ(第0章)風か回想風。飽くまで風。
疑似三人称にしたかったのだけれど途中から殆ど一人称状態だ…
そして脚色しすぎてお題が行方不明。ドラゴンなファンタジーが書きたくてつい…

このお題なめてた…想像以上に難しかったぞ…!
1レス入んねえええ!!と思ったら複数レスの先駆者がいたので削るのやめた
力を与えたのが誰というのを考えなかったので、ひょっとすると
第三者指定が守れていないかもしれない
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/06(金) 01:07:58.49 ID:Cp/GljQRo
>>201
読みやすく、それでいて密度のあるいい文章だと思う
正直突っ込む所があんまりないんだけど

まず、利き腕のない人間がわざわざクソ重い剣を持ち歩くかな?ってのが疑問に浮かんだ
墓に剣を供えようとしていたとか、そんな理由付けがあればよかったかなと

それから、第三段落において語り手が青年になったり天の声になったりで少し混乱した
◇で段落を区切るなら、特別な狙いがない限りそこは統一しておいた方が
全体として統一感が出ると思う

第三者指定は守れてるんじゃないかな
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/06(金) 01:09:00.67 ID:4gOfsCQpo
>>195
感想ありがとうございます

確かに条件的には『彼』の支えになった女性をしっかりと登場させた方が良かったかもしれません
その方が『私』の最後のセリフにも重みが出たのかなぁ
しかしあくまでも『私』と『彼』の物語だと認識していたので、彼女の姿をはっきり描くという発想には至りませんでした
終わるのは『私』と『彼』の関係で、そこで彼女を登場させるのは蛇足だろうな、と

さて、ありふれた物語と自覚はしていましたが、やはり被ってしまいましたか。申し訳ない
ただ、ここは評論の場ですから被りを気にせず投下してみても良かったのではないでしょうか
今回感想を頂いたことで気づかせてもらえたこともありましたし、近しいテーマの作品と見比べることでもっと色んなことに気が付けるのではないかな、と
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 01:18:20.44 ID:x+sRkqFo0
感想が書けないっ。
SSを投下出来ないっ!
もうっタイムリミットっ!!

もし、書き手でなくここの短編SSをロムっている人がいればぜひ感想をお願いしたいです。
このスレではお題を受けてSSを投下しただけでは、本来の目的の半分も満たせていません。

短いSSですが、書くのにそれなりの時間ネタを考えて見直して投下している人も多いはず。
そう思わせるだけのクオリティがあります。だから短いけれど書き手自身の癖や好む展開傾向は
反映されています。語法などもまた然り。指摘してくれることは非常に書き手の利益になります。

SSを書いたことがない人も積極的に参加し、練習してみてください。

SSにしても感想にしても短いもので結構ですのでよろしくお願いします。
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 01:27:46.02 ID:nxEWjxcDO
>>201-202

文章が上手い!
ファンタジーで、描写が頭に浮かびやすいというのは、凄いと思う。
何故、使えないというのに愛剣を持っていたのかを、
(愛剣で愛着があるからかとも思ったが、それならそれを)
もう少し描写して欲しいと思った。
最後の文章に今一違和感を覚えた。
前の文も"る"で終わってるからかな、とも思ったが、
その尾ひれのついた噂を前に書いた方が良かったかもなと。
細かすぎる点なので、
辛口かと思います。
全体的な爽快感が心地好かった。
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/06(金) 02:11:29.56 ID:4gOfsCQpo
感想を頂くだけでは申し訳ないので、一行感想を付けさせてもらいます

>>192
主人公の心情描写はわかりやすくて良かった。ただ、怪物とラフな格好の男性に関してはもっと描写に力を入れる必要があったと思う。

>>196-198
文中からは言い回しに捻りを加えようと努力した様子が伺える。ただそれが読者に違和感を与える結果に働いてしまっているのが残念。
最後の三行は素晴らしいが、その前後の文章や余韻に気を配るともっと良い。二行になってしまった

>>201-202
短い文章の中で物語の世界観や青年の境遇を読み手に伝える技術はすごい。
ただそれはドラゴンファンタジーという使い古されたテンプレに依る部分も大きいと思う。読者的にも想像し易いシチュエーションなので
もっと作者独自の表現や設定(見えない右腕はすごくツボでした)が見えてくればオリジナリティも増すと思う。三行になってしまった

こんな感じでしょうか。辛口ですが悪意はないので勘弁してください
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/06(金) 02:15:04.06 ID:nxEWjxcDO
現時点での>>160のお題でのSSをまとめてみた。

>>174
>>178
>>187
>>192
>>196-198
>>201-202

ついでにage
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/06(金) 02:50:12.97 ID:x+sRkqFo0
助かる。おいらもage
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/06(金) 03:16:33.32 ID:Nm9XyEY10

>>160
3レスには収めましたけど、かなり長くなってしまいました。
でも、せっかくなので投下させてもらいます。


--------


朝方から振り続いていた雨は、昼時を過ぎた頃になってその勢いを増していた。
高台に建立された寺の境内は、薄暗闇に包まれていた。
普段であれば、村の子どもたちの喧騒に溢れている頃合いであるが、今日は子どもたちの声は聞こえない。
雨がしとどに降る中では、誰も彼も、村人は家に引っ込んでいた。


寺の背後では、村唯一の墓地が広がっていた。
ここでも雨音以外に聞こえる音は無かった。
しかし墓地の隅、一つだけ他の墓と離れた位置に設置された墓の前に、彫刻のように立ち尽くす影があった。

若い男だった。
簡素な着物を纏い、腰には一振りの刀。
左手で傘をさし、男は身じろぎ一つせず、目の前の墓石に視線を注いでいた。

小さい墓石だった。 角が欠け、供え物のひとつも見当たらず、ろくに手入れをされている様子が
見られない。
あまりにも粗末な墓だった。

体の横で握り締められた男の右手が僅かに震えていた。


不意に、男が視線を上げた。
視線の先には林が広がり、その中に仄かに光る一つ目があった。

雨でぬかるんだ地面を叩きながら、それは林の中から這い出てくる。
それは身の丈三メートル程の亜人であった。 体中が鱗で覆われており、尻には蛇の尻尾を生やしている。
顔の真ん中にある一つ目は、男の握りこぶしほどもある大きさだった。

亜人は空腹の肉食動物のような瞳で、男を睨みつけていた。
半開きの口からは狼のような牙が覗き、だらりと垂れ下がった細長い舌が、ひび割れた唇を舐た。

男は傘を捨て、素早く腰の刀に手を伸ばした。
同時に亜人が地面を蹴った。
その巨体を裏切る俊足で、亜人は一息の内に距離を詰めると、丸太のような腕を振りかざした。


211 :書くのを忘れていました。 少しだけ残酷な描写があります :2011/05/06(金) 03:20:29.07 ID:Nm9XyEY10


男はとっさに刀を抜くのを諦め、横っ飛びに体を投げ出した。
亜人の腕は空を裂き、走ってきた勢いそのままに数メートルも走り抜けた。
墓石を蹴散らし、ようやく立ち止まった亜人は鷹揚に回頭した。
しかし次の瞬間、それは強かに、体を地面に打ちつけた。


「無事でございますね」


地面を転げた男に、不意に声がかけられた。
男が顔を上げると、目の前には黒装束に身を包んだ老人がいた。
いつそこに現れたのか、男は分からなかった。
まるで影のように現れたその老人は、人当たりの良い笑顔を浮かべた、好々爺という言葉がピタリと
当てはまる男であった。

影のように音も無く現れた彼は、地面に横たわったままの男に手を差し出した。
男はそれを無視して立ち上がり、亜人へと視線を投げた。 男の目が見開かれた。

亜人はうつ伏せに倒れ、その背中には三本の槍が突き刺さっている。
その傍らには、やはり黒装束に身を包んだ三人の男が佇んでおり、亜人に鋭い視線を投げていた。


「槍に痺れ薬を仕込みました。 最早指一本動かせますまい」


老人の言葉に、男は彼に視線を移した。
久方ぶりに孫に会う叔父のように頬を緩める老人に、男は眉間にしわを刻み、視線を鋭くした。


「……貴様らは、一体……?」

「刀を」 と、老人は背中に背負った包みを手にして、言った。 「あなた様に刀を届けに参りました」


包みから出てきたのは、漆塗りの鞘に収まった刀であった。
見事な誂えであった。 はたしてこの鞘一つとってもどれ程の値がつくのか、男には想像つかない。
気付けば、男の視線は刀に釘付けになっていた。
大きく息をつくと、男は刀から視線を外し、喉から声を絞り出した。


「刀なら持っている」

「その刀では切れませぬ」 と、老人は低い声で言った。 「あれにはまだ息があります。 
この刀でなくては首を落とせませぬ」

「刀はあるといっている!」


男は腹立たしそうに低い声で答えると、腰に挿した刀を抜いた。
そして切っ先を老人に突きつけ、彼は老人の顔をねめつけた。
老人は笑みを引っ込めると、彼の視線を真っ向から受け止め、それから彼の刀へと視線を滑らせた。


「そのこぼれた刃では、彼奴は切れませぬ」


212 :書くのを忘れていました。 少しだけ残酷な描写があります :2011/05/06(金) 03:23:02.28 ID:Nm9XyEY10


ギラリと光る目で、老人は男を射抜いた。
男は息を飲んで、老人の二の句を待った。


「例えその刀が万全であろうと、彼奴は切れません。 この刀でなければなりません。
 そしてあなた様には、切らねばならぬ義務と……理由があるはずです」


老人の視線はどこまでもまっすぐだった。
あるいは、人の心まで見透かしてしまえると思えてしまうほどに鋭い。

男は歯を食いしばってその視線に耐えていた。
老人の視線が動いた。 その視線を追うと、先程の粗末な墓場の跡があった。
墓石は、先程の亜人の突撃で粉砕されていた。


男の手から刀がこぼれ、空いた右手で老人の差し出す刀の柄を握った。
見事な刃文を持つ刀身が、雨粒を裂いて抜き放たれた。
その刀身は古今あらゆる名刀に引けを取らない美しさを持っていた。


「鞘は私が……。 邪魔になりましょう」


男は老人の言葉に一つ頷き、そのまま抜き身の刀を構え、亜人の元に歩き出す。
亜人の傍らにいる黒装束の三人が、亜人の上体を持ち上げた。
無理矢理に亜人を座らせると、首を前に差し出させる。 
亜人の顎が微かに痙攣を起こした。


「ゆくぞ」


亜人の傍らに立った男が、大上段に刀を構えた。
見開かれた亜人の瞳がぎこちなく動いた。

刃が振り下ろされた。
一拍の空白の後、血の雨が降った。


--------


設定とか何も考えずに、頭に浮かんだイメージをそのまま書きました。

情景や各キャラの行動、男の心理などを読者がイメージできるように書いたつもりですが、
上手く表現できたでしょうか?

ちなみにイメージした世界観は石川賢の世界観。
なので最後の行には、戦いが続いていく事を暗示させてみました。

213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/06(金) 03:58:59.20 ID:4gOfsCQpo
>>210-212
余計なお世話かもしれませんが、一行感想付けさせてもらいます

文章表現力が高く場面も想起しやすい。物語としての完成度はかなりの物かと。しかしその弊害として、分量が多くなりがちのように思います。
男が墓の前にいた理由や黒装束の正体など、読み手に予想・空想をさせるポイントが存在している点は非常に魅力的。とても興味を惹かれました。
即興的に思いつきで書いた作品とのことですが、思わず続きを要求したくなる出来栄え。こんな時間ですが楽しませてもらいました。ああ、三行だ
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2011/05/06(金) 06:03:59.29 ID:9X8Y0KWlo
>>160のお題SS投下します
自スレ更新の息抜きのつもりで書きましたが、1レスに収めるのがやっとでした。いや難しい
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2011/05/06(金) 06:06:08.45 ID:9X8Y0KWlo
「カサを忘れたわ」

 三滴目が落ちてきたとき、少女は石碑に向かって言った。
 
「でも、もう二度とあなたのせいにはできないわね」

 持ってきたのは、形見となってしまったむき出しナイフ一本。
 墓石に供えたそれを、ただ立ち尽くして眺め続ける。

「きっとわたしのせいなのね」 

 雫がくすんだ刀身にぶつかり、小さな光を放った。
 次第に雨足が勢いをつけ始める。

「雨が降るわ」

 この近辺で夕方の雨がどれだけ危険か、少女が知らないはずがなかった。
 ここに来たのは、抜け殻のような日々に、ある種のけじめをつけるためだった。
 だから背後に突然『それ』の気配を感じた瞬間も、少女は微動だにしなかった。
 
「なによ」
 
 少女は振り向くこともせず、ナイフを眺め続けていた。
 雨は、刃先をすべて濡らす程度に強くなっていた。

「こわくないわ」

 うなだれたような華奢な背中に、『それ』はじわじわと迫っていく。
  
「本当よ。わたし、怖くないもの」

 少女は言い放った。
 『それ』は間合いに入るや、その覚悟に満たされた小さな背中めがけ、容赦なく飛びかかっていった。



 数瞬が去った。
 少女も『それ』も、目を丸めていた。

 すぐに糸がきれたように『それ』は血しぶきをあげ、乾いた音を立てて雑草の上に倒れふした。
 少女は右手に握りしめたナイフに目を向けた。
 血に染まったナイフはくるんと放られ、格好をつけるようにつかみとられた。

「あなたは誰」

 さして驚きもせず、少女は自分の胸元に問いかける。
 すると少女の左手が伸び、指先でそっとナイフの返り血をすくった。
 右腕に描かれた血文字は降りしきる雨が邪魔をしたが、筆跡を元にすんなり読み取ることができた。

「そう。あなた、自分の名前がわからないのね」

 少女の親指が立てられ、上下に揺さぶられた。
 少女は「ばかな格好させないでちょうだい」と前置きした上で、わずかな沈黙をはさんだ。
 そして。
 
「あなたは」

 まで言いかけて、口をつぐんだ。
 感極まったわけでも、知ってしまうのが怖かったからでもない。 
 ただ漠然と、ここで確かめてしまうことではないような気がしたから。それだけ。

「まあいいわ。お礼はいうけど、用が済んだなら出ていってちょうだい」

 しかし少女の手のひらはピンと伸ばされ、さらに両腕が交差された。
 少女は大げさなバツで示された返答に軽く言葉を失い、やがて嘆息を漏らした。
 
「あなたのせいで台なしだわ。何もかもよ」

 それを受けて少女の両腕は慌てふためき、血文字で謝罪の言葉を並べようとしたところを
「くだらないことさせないで」と制された。

「いすわる気なら、わたしの言う通りにして。そうね、まずは――」

 気がつけば雨足はすでに弱まりを見せていた。
 少女は、今日初めて空を見渡した。
 遠く――ずっと遠く彼方の雲の合間から、やわらかな陽光が差し込んでいた。

「カサを取りにいってもらおうかしら」
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 07:58:14.71 ID:nxEWjxcDO
何となく、
感想/評価が少ない印章を受けるな
一言でいいから皆書こうぜ!
とはいえ俺も今は時間がないので、
またあとで感想書く
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/05/06(金) 07:58:32.91 ID:fdmazF4AO
>>200
>>207
感想dクス
やっぱり無理に捻り加えたりしちゃ駄目だよね
次からはもっと簡単にしてみます

ちなみに怪物の大きさ等は全く考えてないので>>200さんの解釈で結構です
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/06(金) 08:23:14.65 ID:Fy9dp/KTo
ならばっさりとした箇条書きになっちゃうけど感想つけようかな
素人目線だから俺の言葉は気にしないでいいよ

>>210-212
なかなか内容が濃い しかしそのせいで長い
地の文の語尾が「〜た」のパターンが多い
会話文はお見事
寺の背後では〜 → 寺の背後には〜 というようにしたほうが自然に感じる場所がいくつかある
なんだかんだで高レベル
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 15:11:23.95 ID:Nm9XyEY10

>>215
少女の心境の変化がよく表現されていて上手いと思います。
少女と墓に入った人との関係や、少女の彼に対する思いなど、読み手の想像力が刺激されます。


>>213
物語の導入を意識して書いたので、続きが気になると言ってもらえたのはとても嬉しい。
ありがとうございます。


>>218
>>地の文の語尾が「〜た」のパターンが多い
以前に同じようなことを指摘されて気をつけたのですが、足りなかったようです。

>>寺の背後では〜 → 寺の背後には〜 というようにしたほうが自然に感じる場所がいくつかある
いわれて見れば確かに……推敲が足りなかったなぁ。
もう一度見直してみます。

そして指摘されたとおりいくらなんでも長すぎたので、次回は短く纏めるようにします。
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 15:32:18.76 ID:nxEWjxcDO

>>174

>>178

>>187

>>192

>>196-198

>>201-202

>>210-212

>>215


増やしてみた
こうやって並べると系統がわかって面白いな
シチュエーションが限られているからか、
同じような話が多い気がする
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 15:49:41.70 ID:nxEWjxcDO
>>210-212

お見事!
と言いたくなった。
ありがちな展開ではあるが、
それを読ませる文章の上手さがある。
贅沢を言うと、意外性も欲しかった
けれどそのぶん、
すんなりと頭に入らなく、
いくつかつっかかるところが気になった。
一番気になったところとして、
>古今あらゆる名刀に〜
一文が長いのかな
少しくどい気がする
どこかで区切る、
または短く表現した方が良いのではないか

細かすぎるかな
あんま気にしないでください
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/06(金) 18:26:15.55 ID:hMGlMEcAO
>>215
三行感想つけさせてもらいます

少女が持つ強かさと儚さが魅力的に映った。嫁にください
ただ、中盤以降では幾つか判然としない描写があり、そのせいで物語から置いけぼりを食らった気になる。
文章は書き慣れているようで、読者を引き込む上手さもある。完成度高し
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 20:54:52.52 ID:vyFP6b0Yo
感想レスが少ない気がするのは今日が平日なせいだと思う
後は前回以上に力作揃いで辛口レスをする為に読み返すにはちょっと大変とか…?
なんか突っ込みしないといけないみたいな空気になってるかもしれないけど
浮かばない方はそのまま面白いというレスでいいと思う。読んでくれた事が解るだけで嬉しいよ!

あえて無理矢理にも突っ込み所を探した無駄に偉そうな超辛口感想行きます
というかレベルたけーよ…! 重複・意図的なものへの誤った指摘があったらすまん
反論歓迎、むしろしてもらえる方が感想の質も上げられるので有り難い

受け入れ過ぎるも個性の喪失に繋がりかねないので、適当に聞き流すか取捨選択してください。
後、当方「初見で意味を理解する力」が非常に弱いので(正直対象外にしていいレベル)、その前提で


>>174
これだけ濃いものを一レスによく収められたなあ…
「母を棄てた」人間は侍でいいのだろうか。屍に詳しくないので勘違いだったらすまんが、
ハエが集まったり死臭がするのってそんなに直ぐなんだろうか…?
中盤の猫の回想・心境の書き方は、前後の文とも区別出来ていい感じだと思う

>>178
詩・一場面としての回想としてはアリ。SSとしては独りよがりすぎる
良くも悪くも、初見では状況が解らない。同調する感じで噛み締めていけば、心情はよく理解できる
狙った効果の方で参考にしてください

>>187
物語が完結している風な割には説明不足な感じ。
「人殺し」「疫病神」が発言主自身に対する言葉には見えないので初見は混乱した
テーマの置き換えという点に於いては確かに説明をされないと全く理解出来ないけれど
発想の幅という意味では個人的にアリだと思う。
説明されて「成る程!」と思える置き換えが出来るようになれば尚良し

>>192
最後の一言が、物語が始まりに過ぎない事を予感させるのと同時に
これで終わっても違和感の無い、非常に後味のいい〆だと思う
「雨に濡れて寒そうだ」という状況に合わなさそうな一言も効果的
強いて言うと、もし刀が鞘に収められたまま渡されたのなら
鞘から抜く描写が欲しかったかな。勘違いだったらごめん。
直ぐ使える状態で渡されたにしても、それが解る描写が欲しい感じ

>>196-198
冒頭、主人公が立ってるのか座ってorしゃがんでいるのか微妙な感じ
お題の通り取れば立っているんだろうけど「うおおぉぉぉぉ!!」 だと感情が高ぶりすぎて
墓に縋っている方が自然な感じがする。後々剣を構えるだけでは立っているというには弱い気が
最後三行の「男」が主人公のその後なのか、力を
(普通に考えれば前者なのだろうけど、読み返してみると後者の様にも思えたので)
後、そこの舞台変更が唐突すぎるので、もう少し空白を開けるなり何なりした方が良いかもしれない
どことなく俺が投下したのと状況が似ている様で似ていないようなそんな感じだったので
色々と参考になった反面気になる点も見えちゃった感じ。すまん。

>>210-212
好みというか、今まで自分が見てきたもののせいだろうけど
「亜人」という言葉は和風な世界観ではあまり使われないので違和感を感じた
(気になって調べたら元々は英語を訳したものみたいですね)
ただ鬼・妖怪も定義に含まれるみたいなので、本当に個人的な好み。他の方が同じ事を思うか自信ない
ちゃんとした一完結作品ではなく、浮かんだ一場面と言う前提なので伏線消化については考えなくていいかな
続きが気になる、引き込まれるSSだと思った

>>215
登場するものの正体にわからないものが多すぎて、ちょっともんやり感は残った
でもそれは1完結作品として見た場合であって(綺麗に始まって綺麗にしまっていたのでついそう見えた)
場面の切り抜き・プロローグならば問題ないと思う
> 少女は「ばかな格好させないでちょうだい」と前置きした上で、わずかな沈黙をはさんだ。
ここの「前置き」が問い掛けにかかっている様にも、沈黙に掛かっているようにも取れて
ちょっと変な感じがしたけど単に俺に国語力が無いだけかもしれない


自分の投下分に頂いたレスへのお礼、反省(セルフ突っ込み)は後々
しかし>>220が本当に有り難い。纏めサンクス
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 20:58:16.80 ID:SktxAL6vo

 彼は泣いていなかった。
 彼自身そう信じていたし、小雨が顔を濡らしていたので、誰かが見ていたところでどの道分からなかったはずだった。
 だったら、泣いているか否かは彼が決めることだ。だから、彼は泣いていなかった。

 雨が苦い。冷たく彼の身体を濡らし、早朝の冷気がさらにそれに追い打ちをかける。
 日はまだ地平の下。風は吹かない。小高いその丘の上には彼と、それを囲む草花、それとどこにでもありそうな大きめの石。
 石はただそこにあるだけで意味を見出すのは彼だった。墓標。
 彼は細く長く、息を吐いた。ひりつく喉の奥をなだめるために。

 丘からは、白い靄に薄く包まれた平野が見渡せた。彼女はここが好きだった。だからここにした。
 それは過去形。過ぎ去ったこと。
 それでも感傷に浸ってしまうのは、きっと風が吹かないせいだろう。
 彼は丘から地平を見やった。
 靄がかかるその大線の上に、うずくまる黒い影が見える。彼は目を細め、それから足を踏み出した。

 この世に未練はないわ。
 かつて、死にかけの彼女はきっぱりと言い放った。どこまでもどこまでも潔い声で、彼は一抹の寂しさを覚えた。
 それを彼女に伝えると、彼女はきょとんとした。
 あなたは何を言ってるの、と。
 あまりに本気の顔で言うので、彼は寂しさを通り越して、少しだけ微笑んだのだ。

 近付くほどに、その影は大きいことが分かった。
 見上げる角度で、彼の身長四つ分。物言わぬその体は、だがなにがしかの力と地の底から吹きあげる息吹を感じさせる。
 彼は五十メートル程の距離を空け、

「……」

 その化け物と対峙した。
 息を吸う。
 地を蹴り、距離を詰めた。風が引き裂かれ耳元で鳴る。どこか泣き声にも似ていた。

 化け物に反応はない。彼は一気に駆け寄ると、その体表に跳びつく。
 その出っ張りに手をかけ、足をかけ、登る。雨で滑るが、必死で喰らいつく。それほどもしないうちに頭部にたどり着けそうだった。
 だが、中ほどまで登ったところで化け物に動きがあった。
 それはあまりに急激で、凶暴だった。彼は振り落とされて、地面に叩きつけられた。背中に鈍く激しい痛みが走る。
 化け物は立ち上がると、彼をおいて歩き出した。

 それは彼女の墓の方向の方向。彼は力の限り叫んだ。意味のある叫びでもなく、痛みのうめきに近かったが。
 化け物の背は見えていたが、それでも動けなかった。その間に化け物は彼女の墓までいくだろう。小さなそれを踏みつぶすだろう。
 もう一度叫ぼうとした。その時だった。

「立ちたまえ」

 涼しい声が聞こえた。それと同時に彼の鈍痛が吹き去った。
 彼は即座に立ちあがり、その声の聞こえた方向に向き直る。
 男がいた。若くはないが老いてもいない、そんな男だった。
 助けられた彼は、しかし男を睨みつけた。
 しばしの沈黙があり、それから男の言葉。

「いいのかね?」

 指さす方向に化け物。行く手には小さな墓。
 彼は少しだけ逡巡し、それから化け物の方に向き直った。

「持っていけ」

 男が彼に小さな包みを投げる。彼は受け止め、中を確認し――舌打ちし――それから走り出した。
 化け物の歩みは遅かった。目的があるようにも見えない歩み。追い越すのは容易。ちょうど丘の目の前だった。
 彼は丘にかけのぼる。駆け上った勢いのまま、化け物の頭部に飛び込んだ。
 その眉間につきつける。

 ――その昔、一つの過ちがあった。
 彼女は覚悟を決めていたが、彼は諦めることができなかった。
 だから彼は、彼女に永遠の命を与えることにした。それが過ち。
 彼は、ある男に頼ったが、失敗だった。
 彼女は永遠の命を手に入れたものの、それはもう彼女ではなかった。

 彼は引き金を絞った。衝撃とともに視界が涙に滲んだ。
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 21:23:04.96 ID:SktxAL6vo
感想。あまりためにならないことうけあいだよ!

>>174
下手人の使い方はこれで合ってるっけ? なんか犯人とか、殺人者とかそういう意味だったような
それが気になった以外は雰囲気がよく出ていてよかったと思う

>>178
この空白感は好きな半面、改行使いすぎじゃないか? とも思ったり
あと手の動きを雨に同調させる、が説明なしじゃどうしても分からんかった

>>187
お題回収不足感(あくまでも「感」ね)が悔やまれる
あとは、台詞があからさまと言うか、違和感を覚えた。もうちょっと工夫しないといけないと思うけど、どうアドバイスしていいかわからないや、ごめん
ついでに>>191の、彼が再起するという描写が分かりにくかった。「もう自責の念に耐えきれない、逃げてしまえ」という後ろ向きな印象を覚えた

>>192
分かりやすいのはいいのだけれど、分かりやす過ぎてどうも
シンプルさの中に、奥深さも欲しいところ


とりあえずここまで、続きはちょっと待ってほしい
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/06(金) 21:33:12.53 ID:RJmDF7/9o
長めの話が多いせいで感想が書きにくい状態になって気がする
10行までとか、設定の追加禁止とか、もう少し縛りをきつくした方が良いんじゃなかろうか
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/06(金) 21:39:11.86 ID:WIfeujLh0
>>226
感想は書きやすくなるが、今までと同じ分量のお題をその制限は書き手として厳しい。
お題の形式を簡単にしてくれるならいいが……
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 21:43:15.72 ID:nxEWjxcDO
10行までは厳しいんじゃないか?
基本1レスで大丈夫だと思う
追加設定禁止については
難しいんじゃないだろうか
というか、そこまで縛りがあると
読むのもあまり面白くないかと
個人的な意見ですが。
まぁ確かに内容が詰まっていて、
3レスとかだと読むの大変だけど
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 21:45:16.82 ID:vyFP6b0Yo
今のお題形式は発想の練習にもなるからなあ
まあでも、中心になる人物ぐらいはもう少し指定してもいいかもしれない
せめて性別か年齢だけでも

とりあえず書き手はどこら辺気になるかとか
どういうつもりで書いたとか、投下した時点で多少触れておく方がいいんじゃなかろうか
そうするとその点が気になったとか大丈夫だとか突っこみやすい気がする
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 21:50:08.13 ID:SktxAL6vo
>>196
擬音はあってもいいと思うけど、俺の感覚では多すぎに感じた
一般的には雰囲気を軽くする傾向があるのでご使用の際はお気をつけて

>>201
台詞で言わせるのはもったいないなと個人的に感じたものがいくつか
心の声にしてしまえば時間経過が少ないし、スピード感が出せたりすると思う
特に「抜けた……!」のとことかは、主人公にあまり時間的余裕がないから有効かも

>>210
迫力があるな―と感じた
何がそうさせるんだろう、その技術ほしい
最後の一行からの読み取りはちょっと俺には難しかったです

>>215
台詞でリズム感が出てる一方、ちょっと多すぎかな、と思った
それ以外はなんだかくすぐられるような面白さがあってよいかと
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/06(金) 21:57:40.09 ID:nxEWjxcDO
締切まであと少し
ということでage
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/06(金) 22:16:49.23 ID:RJmDF7/9o
>>227
勉強会の意味合いがあるのなら、相手に伝わりやすく
なおかつ独自性のある短い文章にチャレンジするのもアリだと思うんだけどね。

読む側の視点としては冗長なものが多すぎる。
比喩表現がくどいし、言い方を変えただけのしつこい描写にも食傷気味だ。
なんていうかさ、過剰なんだよ。
アイドルが驚いたときに両手を頬に当てるようなオーバーなジェスチャー
アクセサリーをごてごてと身につけた、髪の毛にメッシュが入ってるおばちゃん
そういうものと同じ匂いがする。

10行にまとめるのがきついなら、逆に30行くらいのお題で書いてみて欲しいわ。
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 22:22:05.17 ID:THXsQBY20
>>232
30行くらいのお題か…フム
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 22:31:33.58 ID:nxEWjxcDO
>>232
何でそう喧嘩腰なんだ…

30行くらいというのは良さそうだな
感想も書きやすそうだし
お題を出す側も難しそうだが…
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 22:32:51.10 ID:THXsQBY20
今、15行くらい書いた
死にたくなった
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 22:34:29.24 ID:vyFP6b0Yo
>30行のお題
プロットならいけるか…?お題出す側も頭捻らないと駄目だけど
書きたい物が書ききれる気がしなかったから、今回20行弱のプロットを立てたけど
これですら2レス行ってるからなあ…
後、それをやるなら、今度は締め切りが24時間だと短すぎる気がする


…この流れで投下するのも気が引けるけど感想のお礼と反省です。非常に長くてごめん。改善点大杉。
振り返るついでに誰か一人のお役にでも立てば…いいな…

>>203>>206>>207>>230
レスありがとう!
いつも独りよがりでごてごてさせがちだから「読みやすい」等の意見があって安心した
文末の違和感は後で自分でも感じましたorz
「真実を知るのは〜」を最後に持ってきたかったのだけれど、そうか、
二つに分けて上下に挟めばよかったのか!
予想以上に時間がかかったせいで、後半がだれてしまったので
(発言に無意識に頼ってしまったのも多分それです…)何とか集中力というか持続力を鍛えたいところ

剣は完全に盲点だった。最初は正に墓にぶっさしに来た、という設定だったのだけど
青年が剣を手放すのが想像できなかったのと、「憎い憎い憎い→憎んでたら竜がきちゃったよ」
な流れが結果的にテンポよくなってしまって
第三段落末で故人の剣だと書いたしいいかなーと思ってしまってた
そう言えば剣は重いよなあ…そんな初歩的な事すら忘れてたorz
>しかし、力を失って、真っ先に来ようと思ったのはここだった。
この行の後に1,2行足すだけで随分変わっただろうな…勉強になりました。

テンプレに頼った部分は確かにかなりあったかも
しかしこれ以上要素を足すと更に伸びてしまうと言うジレンマ…ううむ
(実際、テンプレに頼って第二段落を大幅にカットしたので)

第三者視点は守れていたようでよかった
ただ、どうせなら最終段落も疑似三人称にしてしまって
青年が「見えない右腕を得た理由」も探している事にすればよかったと後から自分で思いました

視点は飽くまで疑似なので意図的なところもあったのだけれど
しかしそれにしてもやり過ぎな部分はありますね…確かに、後々読み返して混乱した
>そして、そんな青年の気持ちを知ってか知らずか。
ここの「青年の」をカットするだけで多少滑らかになるかな、と思ったり思わなかったり
疑似三人称は結構やるから今後気を付けよう…


今回はとにかく自分自身の文調(三人称)に対する感想が欲しかったのだけれど、
憎々しさを表現するには一人称が最適…結局間を取って疑似三人称を採用(最終段落のみ三人称)
とりあえずドラゴンなファンタジーが描きたかったのと、
お題を見てぱっと「右腕喪失→透明な右腕を授かる」というのが浮かんだのでそれを柱に

それと、セルフで突っ込み。些細なのを挙げ出すときりがないので二つだけ
・「小型と言えど、小屋程度の大きさはある。 」まだ遠目だし「あるだろう」とかの方が良かった
・心の声は『』で表現すればいいことに後から気がついた…何故だか二重鉤括弧が浮かばなかった
これなら青年の心境をダッシュに持って来れたなあ…と
(地の文形式の時は、括弧で心の声を表現するのは避けたいタイプなもので)
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 22:39:23.95 ID:vyFP6b0Yo
守れていたのは第三者視点じゃねえよ…第三者指定だよ…orz
あんまりに意味が変わってしまうので訂正
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 22:53:48.16 ID:x+sRkqFo0
時間なくて感想二つしか書けてないし、この二回目のSS全部読めてないから
ネタ被りあるかもだけど書いちゃう。グロ注意。万が一被ってたらスマソ。


さて、諸君!ようやくこの日が来た。憎き奴に復讐するこの日がっ!
第一次大戦では我々は負けた…。完敗だった!成す術なく約半分の同胞を失ったっ。
まさか奴があのような凶悪な兵器を隠し持っていたとは……。

しかし!例の兵器には弱点があったっ。それを知った我々は今日この日まで一ヶ月間
耐え忍んできたっ!綿密な調査と計画を練り、仲間を増やし、準備してきたっ!

今こそ立ち上がる時!我ら一万の兄弟の総力をもってして、仲間の仇を討つのだっ!!

カサカサカサカカサカサカサカサカサカサカサカサカサカカサカサカサカサッ
カサカサカサカカサカサカサカサカサカサカサカサカサカカサカサカサカサッ



「窓は……OK。閉まってるな。外は雨か。まぁいいさ」

  奴が来たぞっ。皆手筈どうりに動け!

「よし。あとは水を入れてっと。ふっふっふ。これで奴らも終わりだぜっ」

  馬鹿な奴め。喜んでいられるのも今の内だっ

「うおー!すげぇ煙だな、やっぱ!これなら奴らも一溜りもないだろう。
 そろそろ俺も外に出ないとな。あれ?」

がちゃがちゃ

「は?な、なんだこれ!…ドアが開かない…だと?くっ、くそ!」

「な、なんなんだ!これは!?何かが向こう側で引っかかってるのか!?
 そうだ!窓!窓を開けてっ―――!」

「く…動かない!ピクリともしないなんてっ!どうなってやがる!!」


  ―――無駄だ。窓が開くことはない。その窓のサッシには我らの卵がびっしりと産み付けられている。
  ドアは貴様が部屋に入ると同時に我らが事前に用意した木片でしっかりとつっかえ棒がしてある。
  お前はもうこの部屋から出ることは叶わんのだよ。

  思えば長い戦いだった。大戦敗北後から我らはすぐに貴様を打倒する計画を実行に移していたのだ。
  白亜李族の長に頭を下げ、木片の加工を頼み、我らはこの一カ月間仲間を増やすことに専念したっ。
  また窓に卵を産み付ける役目の者はこの一カ月!ただの一度も卵を産むことなく、ただひたすらに耐えたっ!
  
  確かに我々は非力だ。この地に住む家獣猫にでさえ何もできない矮小な存在だ。
  だが!我々の真の力はその数を活かした攻撃にある。我々が力を合わせれば自身よりずっと大きな木の棒
  でも動かせるのだっ。さあ、悶え苦しめ!我々の仲間が受けた苦しみを!散っていった仲間が眠るこの地で貴様も味わうがいいっ!!


「これはっ!まさか奴らの仕業なのか?う…もう煙が……っ!俺が!俺様が…こんな所で!
 く、くそうっ!おのれっ!―――――G!」バタッ


こうして我々は一時の安息を得た。しかし、これは我らと奴らの永きに渡る戦いの序章に過ぎなかったのだ。

―――我々は呉貴武利族。闇に住まう者なり!
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 22:58:03.52 ID:x+sRkqFo0
矛盾点は見逃して。ギャグだし。
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 23:06:02.70 ID:ekzqKMou0
>>223
>ハエが集まったり死臭がするのってそんなに直ぐなんだろうか…?
しばらく時間が経ってから、腐って片付けられた風に表現したかった。
うん、頑張ります。
難しい。
>>225
また馬鹿やらかしたあああああああっ
調べてみたらそういう意味でしたorz
使用人とか小姓的な意味を持たせたかったんです
うわあああああああっ
恥ずかしいorz
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 23:15:53.98 ID:x+sRkqFo0
変なタイミングで投下してスマンかった。あと引用符付け忘れた。
>>160のお題で
>>238を書いた。

なんか深いSSが多かったのでギャグを作ってみたくなった。
読み返したら、とても読めた文章ではなかったので今とても恥ずかしい気持ちです。申し訳ない。


ちなみに感想のことが話題になってたけど、俺の場合で悪いが
今日は平日だったから読む時間も感想つける時間も中々確保出来なかった。
多分同じような人も多いんじゃないかと思う。

ただ、やっぱ1レスに収めといてくれた方が感想つける身にもありがたいな。
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 23:20:31.98 ID:THXsQBY20
>>238
とりあえずゴキブリホイホイの大切さが分かったSSだった
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 23:20:40.65 ID:vyFP6b0Yo
まあGWももうすぐ終わるし、最初のテンプレには週1って書いてるし

土曜24時(日曜0時):安価
日曜24時(月曜0時):投下締め切り
以下次の安価の日まで感想のみ

次の次からはこんな感じでどうだろう
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/06(金) 23:26:55.67 ID:RJmDF7/9o
安価だけ取って、後でお題提出でも良いの?
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 23:31:08.80 ID:ekzqKMou0
>>238
俺の好みによるところが大きいと思う感想です。
あまり気にしないで下さい。

あったっ。のような言葉が多く見られたが、
あった! の方が良いと思う。何か違和感を感じました。
あと、
雨の中墓前に立ちつくす・第三者の介入はどこかちょっとわからなかった。
俺の読解不足かもしれんが。
あと!の後は空白があった方が読みやすいかな。
>こうして我々は一時の安息を得た。
>しかし、これは我らと奴らの永きに渡る戦いの序章に過ぎなかったのだ。
の繋がりがいまいち分からない。
ギャグを書いている人はいなかったので、新鮮でした。
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 23:33:02.88 ID:x+sRkqFo0
>>244
安価とる→次のお題決定

その決定後でお題提出?

どゆこと?
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 23:34:43.47 ID:ekzqKMou0
>>243
これで良いと思う。
丁度これで一週間周期なら土日になるし。
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/06(金) 23:37:08.12 ID:RJmDF7/9o
>>246
あれ?今まで安価取る時に直接お題書いてなかった?
外れたけど良さげなお題もあったので、わざわざ書いたけど
没ってのはもったいないと思った
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 23:37:32.59 ID:ekzqKMou0
>>244
それはグダるので、無しだと思う。

>>246
安価だけとって、お題はその後で出すってことだと思うよ
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 23:41:55.18 ID:vyFP6b0Yo
締め切りが24時間しかないから
安価は10分以内有効とかならいいんでね?と思ったけど確かにグダるか

次の安価は30行縛りでなくていいんかな
30行お題と出来れば1レスというのは両立させるのは苦しい気がするし
特に縛りが無いままなら普通に安価取りに行きたいんだが
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 23:44:14.46 ID:JgHLrouAO
お題を共有した様々のSSが読めるのは喜ばしいけど、
感想をつけるものって前提で読むには多いや、正直。
というわけで今夜は軽く触れる程度に。御免。

>>239
カフェオレ吹いた。
感想どころじゃない(良い意味で)

>>224
あくの強い文体が好み。
惜しむらくは…自分的にはokなんだが…我が呼び声、ですね

>>201-202
長編から切り抜いた一場面でなく、一幕完結の体が好印象。
最後の数行だけ取っても、ここのお題として十二分に魅力的。

>>197
[ピーーー]は[らめぇぇっ!]


全部は無理だなぁ
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 23:45:55.11 ID:ekzqKMou0
30行縛りの賛同者があんまいないから、
次は普通でいいんじゃないかな。

俺は安価を出したくてウズウズしてる
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 23:48:09.73 ID:ekzqKMou0
>>251
みんな、ってか俺もだが、
そんな長く書かなくてもいいんだぜ!
一行感想でもおkだと思うんだ
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 23:48:25.32 ID:x+sRkqFo0
>>245
正直雨の中墓前に立ちつくすの要素はほとんど入れられなかった。
第三者の介入は、シロアリとバルサン。
バルサンは“第三者が現れ、主人公に力を与える”というお題を意訳して
第三者によってつくられたバルサンをGが利用し人間を倒す、という感じで作った。

“っ”の多用はギャグなので全ての表現を大袈裟にしよう、という意識で書いたからだと思う。
たしかに見た目変だな。

感想thx!ギャグで滑ると見るに堪えないよぅ。
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/06(金) 23:54:26.66 ID:x+sRkqFo0
ああ、安価取ってからお題を練ってあとで発表ってことか?
今まで直接書かれてたから勘違いした。スマソ。

でも既に次のお題は考えてあるんだけどな!
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 23:56:49.16 ID:JgHLrouAO
>安価とお題

例えば、仮にだけど。
このあと0時に「次のお題は>270」と指定されたとする。
それとは別に「お題その2>272」「お題その3>275」
とかあっても何の不都合も無いと思うんだ。如何?

>三十行

その縛りで書いた方が表現力向上に向いてると思ったら、安価取ればいいんでない?
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 23:57:44.31 ID:ekzqKMou0
よし、締め切りってことで。
今回は結構難しいと思ったけど、投下は多かったな。
次お題安価は>>260
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 00:01:30.71 ID:h2ra2siqo
安価取ったら30行も可なのかw
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 00:01:54.35 ID:BAILAUvF0
え、終わり・・?
間に合わなかった・・・?
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 00:02:00.85 ID:VhhYWIyOo
安価なら

舞台は薄暗い〜真っ暗の何れか
優等生vsアンチヒーロー的思考の持ち主 の戦闘
場にはこの二人しかいない
何れも性別は男で人間若しくは人型、年齢は20歳以下で同い年程度(明記任意)
他に何らかの身体的特徴の共通点有
第三者の直接介入禁止(精霊などに力を借りて術を発動する感じのは可、召喚・使い魔の類は不可)
戦闘中に、どちらか、若しくは両方が何れかのタイミングで涙を流す事
最後はアンチヒーロー側の寸止めで戦闘が終わる

ごめんただの俺得
条件云々があったので多少厳しめにしてみた。難しすぎるだろうか…一番目のお題と多少被り気味
全部盛り込むのは無理という方は盛り込めなかったお題を明記すると吉


ついでに今北用テンプレ>>100-105
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 00:04:31.94 ID:JQHATGlU0
うわ、ごめん……パソコンの時計狂ってて2分くらいフライングしてた
まじでごめん
安価を出すことにワクワクしすぎた
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 00:05:02.65 ID:jjgywDhm0
kskst

>>256
その提案は製作者スレで言ったやつだな。ただ三つある内のどれにするかとか、
三つを組み合わせるなら、その組み合わせの際の方法を話し合ってなかったので
テンプレに書かなかったのよ。スマソ。
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 00:05:21.23 ID:h2ra2siqo
お題というより設定に近いな
またバトルだし、今回パス
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 00:06:28.44 ID:BAILAUvF0
ゴメン前回のお題のヤツ出し損ねたんだけど間に合う?
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 00:08:02.49 ID:JQHATGlU0
土曜24時(日曜0時)からスタート
日曜24時(月曜0時)投下締め切り
以下次の安価の日まで感想のみ
次の安価日は一週間後の来週の土曜24時(日曜0時)でおk?

266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 00:08:55.54 ID:jjgywDhm0
ちょっとだれか劉鳳とカズマ呼んできてー
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 00:15:46.57 ID:jjgywDhm0
>>259なんだけど、
もし今いる人が了承してくれるなら貼ってもらいたいんだが、ダメだろうか?
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 00:17:00.78 ID:VhhYWIyOo
安価取ったのはいいが自分でも描けるか正直不安である
よく考えたらここまで全部バトルだったか…すまん、考えてなかった
今日土曜日だから明日もう一回やってもいいと思う

>>251
感想thx!
自分の場合、腕が訛らないように書く習慣をつけたい(スレ持ってないので)、
そしてそれに感想もらえてスキルアップ出来ればラッキーという意図で参加しているので
比較的長くなってしまって申し訳ないです。今回はプラスに傾いたようでよかった


続いて感想。勿体ないし、>>264>>267も投下しちゃっていいと個人的には思う

>>224
「小さな包み」だけだと銃(読み違いでなければ)程の大きさは想像出来ないかな、と思った
銃は携帯していたのかとも思ったけど、それが解る描写が見あたらなかったので
内容の読み落としあったらごめん。見た目以上にさらりと読めて、個人的に好きな文章

>>238
あのお題でギャグを描けるとは…!ギャグは読み専だから辛口感想書けないっす
強いて言うと段落下げは無くてもいいんじゃないかと思った
269 :264 [sage saga]:2011/05/07(土) 00:19:46.59 ID:BAILAUvF0
了承サンクス。
とりあえず貼ってみるがバンバン辛口コメ頼む。
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 00:22:03.38 ID:NoicTXoAO
>>265
お題の有効期限が24時間、には異論ないけど
お題の決定は週にひとつだけ、は賛同しかねる。

0時(あるいはそこから数分間)のたびに安価を打てるようにしてもいいのでわ
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/07(土) 00:22:26.09 ID:rWXqcEPoo
個人的には二日くらい執筆期間あってもいいんじゃないかと
金曜24時(土曜0時)からスタートでどうか
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 00:27:30.82 ID:BAILAUvF0
「うざったいなあ、オイ」

 少年は雨が嫌いだった。雨だと外で遊べないから。そして何よりも――

「ああチクショウ。雨とかホント消えればいい。天気なんて晴れと曇りと雪だけで十分だ。そう思うだろ? オマエも」

 眼前の墓石に目をやる。添えられた花束は雨に打たれ、まるで母親に叱られた子供のようにしょげていた。
 ――無縁仏。ただ石を積んだのと大差ない。少なくとも、少年にはそう思える。

「なんでこんな日に来ちゃったのかなあ。つか家の水道閉めたっけ。ああクソ、お前のためにわざわざ時間割くとかありえねえ」

 今更後悔しても遅い。すでに少年の服は水濡れである。周囲に人影はない。それも当然といえば当然なのだが。
 深夜2時に墓場を訪れる人間など常識的に考えてそうそういないだろう。

「ほうらお客さんだ。時間帯が時間帯だからか? それともお前の呪い? そりゃああんまりだぜ、俺だって殺したくて殺したわけじゃあない」

 墓の下に埋まっているソイツは、以前少年によって命を散らされた存在。殺した者、殺された者。そしてもう一つ――殺された者、の肉親。
 寄生虫、という言葉がある。
 文字通りそれは『虫』だ。ならばそれが虫でなければ? もっと禍々しく忌々しい存在であれば?
 その問いを究極的に問い詰めていった先にあるのが『寄生獣(きせいじゅう)』だ。
 姿形は問われない。ただ人にとり憑き、人を乗っ取ることができれば、それは『寄生獣』と呼ばれる。今少年の後ろに佇む人間のカタチをした何かも、墓石の下に埋まっているのも、それだ。追記しておくと彼らは非常に湿気を好む。故に雨の日は彼らが活動しやすい。

「はあ、いやいやこればっかりは宿命なんだよね。『ハンター』の逃れられない運命ってヤツ?」

 振り向く。黒い影が視界の隅から反対側へ疾駆した。頬に何か触れた――感触は衝撃に、衝撃は激痛へと変貌する。

「あがぁっ!?」

 背後に立っていたのが二メートル近くの大男と気づいたころには、少年は頭から地面に激突していた。

「――――ッ! 名乗りはなしか、オニーサンより賢いんじゃねえの!?」

 地を揺るがす唸り声と同時、丸太のように太い腕が振るわれる。生憎、並みの反射神経しか持ち合わせていない少年はそれに反応することができない。
 直撃した。
 ゴキリ、という嫌な音が少年の首から響く。
 首の骨がへし折れる。頚椎が叩き折れる。脳からの電気信号が途絶え、体はピクリとも動かなくなった。


「ここで死ねたら楽でしょうね」


 声が舞い降りた。大男は声の主を探し視線をさまよわせる。居た。倒れた少年の上。浮いている――馬鹿な、ありえない。

「Bランク『ベヒモト・ワズイルト』……あら、この間彼が殺した『アンバタ・ワズイルト』とは同系列なのね」

 人間で言えば兄弟かしら、と声の主は他人事のようにぼやいた。
 そのままゆっくりと降りてくる。地上にその二本の足が着いた。外見は女性だ。白いワイシャツは第二ボタンまで開かれており、中から黒いブラジャーが一部分だけひょっこりと見えている。胸部は膨れ上がっており顔立ちも整っている。ナマな言い方をすれば、美人であった。下半身は黒いデニム生地のズボンを履いていた。世間一般にブラックジーンズと呼ばれているものだ。裾はまくりあがっており、細い足首が姿を覗かせていた。

「ほら起きなさいよマイダーリン。死んでる暇なんてないわよ」

 女性は手を頭上へと振り上げた。それだけで上空の雨雲が一斉に吹き飛ぶ。少年と女性のいる地点のみが太陽光を浴びる。そのまま振り下ろす。吸い込まれるようにして指先が首を衝き。
 世界が白銀に染まった。
 一瞬か、数秒か、それとも数分いや数時間か。どれほどの間視界が塗りつぶされていただろう。予想することすら億劫になる程度には、退屈な時間だった。すでに女性の姿はない。ただ少年が大地に立つのみ。

「……『死体じゃないと変身できない』って絶対システムとして間違ってるぞ、コレ」

 ぼやいても返す相手はいない。やれやれと息をつくと、少年はいつの間にか自分の目の前に突き立っていた日本刀を引き抜いた。鞘などない、というよりは不要だ。女性が変貌したこの刃は『寄生獣』しか切れないのだから。

「んじゃやりますか。準備運動抜きでもオッケーだろ? え?」

 少年と大男の間隔は十メートル強。それだけの距離を吹っ飛ばされたということだが、少年の体には傷一つない。当然だ、『ハンター』は一度死ななければ戦闘状態に変身できないが、変わりに変身さえすれば生き返り、負傷した箇所は全治するのだ。手負いのまま『寄生獣』と戦うのは敗北のリスクを高めることとなる。元より目の前にいる『寄生獣』を待ち構えていた少年としては、さっさと殺してほしくて仕方なかったぐらいだ。

「形状変化、螺旋」

 刀が歪んだ。先端からぱっくりと二つに裂けていく。二分割された刀身がうねりうねり渦を巻く。それは相手を砕き貫くためのカタチ。掘削用としては唯一無二のカタチ。
 ドリル。
 十メートルの距離を少年はコンマゼロ何秒の世界で詰めた。瞬きをする暇すら与えずドリルの先端が大男の腹部に当てられる。


「トンネル開通、ってな。開通記念パーティーはあの世でオニーサンとしてくれや」

 あっという間に螺旋が回転したかと思えば、そのまま勢いよく大男の腹部を突き破った。ぶちゃりと何かが潰れ、辺りに撒き捨てられる。人の喉から飛び出たとは思えない咆哮はすぐに止んだ。
 回転が止まると、すぐに螺旋が勝手に解けていく。渦は二本の直線に、それらは重なって一本の太刀に。

「あーあ、服がぐっちゃぐちゃだ。一張羅なのにどうしてくれんだクソ」

 これだから、これだから雨は。

「うざったいなあ、オイ」

 少年は雨が嫌いだった。雨だと外で遊べないから。そして何よりも――仕事が増えるから。
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 00:30:45.95 ID:jjgywDhm0
>>268
段落下げはいらなかったか。thx!チャレンジ精神でいろんなジャンルに挑戦するのはいいが
正直笑いどころが無かったな。反省。

お題の出し方について少し話し合いが必要なのかもな。
製作者スレで大体のことはやったつもりだったけどやっぱ穴はあったな。
ちょっとテンプレ急ぎすぎたか。二重にはんせー。
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 00:33:44.32 ID:BAILAUvF0
締め切りすぎてごめん。

>>262
俺もお題は複数あっていいと思う。単一だと書き手の差が出やすいけど、自由度がなさ過ぎる
そして>>271に同意。

金曜に安価張って日曜から次の日曜まで作品掲載、金曜までは感想タイム――って二週間かかんのかよ俺の提案だと
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 00:40:27.75 ID:PvIROTzDO
最初はGWだから何回かお題で
基本は一週間って話だったが、
それももっと考えた方がいいかね
お題は複数の方がいいって意見も多いけど、
もう2つくらい安価出した方がいいかね
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 00:40:58.27 ID:h2ra2siqo
>>272
遠慮無くボロクソにしてやろう

雨だと外で遊べないから。→小学生かと思ったら全然そうじゃないっぽい
水濡れってなんだよ、日本語不自由すぎるぞ
――馬鹿な、ありえない。→三人称でこれは無いわ
黒いデニムのズボンがブラックジーンズなのは当たり前だろうが
一回変身した後は、どうやって元に戻るんだ?
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 00:43:57.56 ID:VhhYWIyOo
執筆期間が二日になるなら、お題が複数有る場合
余裕のある人もそれはそれで幾つもお題に挑戦出来ていいね

というか>>260は一日で変わるつもりで出したから単一お題で一週間引っ張られると申し訳なくて死ぬ
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 00:48:25.06 ID:PvIROTzDO
じゃあ執筆期間を
本日0時から日曜24時(月曜0時)までの2日間
お題をあと2つ安価出す
感想期間として1週間は長いという意見が多かったため、水曜24時までの3日間
良ければ安価出す
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/07(土) 00:53:00.65 ID:rWXqcEPoo
(安価三つ→執筆二日→感想三日→)×n
この形で進んでいくという理解でいいかな
自分は問題ないと思うます
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 00:57:13.76 ID:1SB5R5kl0

>>278
まだ始まったばかりなので、その方法を試すのは賛成です。


>>224
物語の背景が見える構成になっているので、読んでいて好感を持ちました。

ですが一箇所、読んでいて突っかかる部分がありました。
『この世に未練はないわ』から始まる段落は、主人公である彼の感傷を表現しているように思います。
なのでこの段落の内容は、彼が墓石に意識を集中して感傷に浸っている間に持ってきた方がいいと思います。

そうすると、彼が墓から丘にいる影に視線を移すことで感傷を断ち切ったことを表現できます。
すると男が影に向かって歩き出してから飛び掛るまで、アクションだけを描写できるようになり、
よりスピード感が出せそうです。

>>230
210-212は叙実的に描写することを念頭に置いて書きました。 少し比喩も使いましたが。
感情表現は、人物の動きや風景だけを描写して婉曲的に表すことに気をつけました。

やり過ぎるとくどくなりますが、上手くすれば独特の緊迫感が表現できると考えています。

281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 00:59:51.60 ID:VhhYWIyOo
>>272
すまん、よくよくみたら>>264>>267も同一人物か
辛口でいくぜ

女性の容姿だけが細かくて不自然
男性作家が女性の描写だけやたら細かい、ってネタを思い出したw
> 一瞬か、数秒か、それとも〜
この辺の表現はくどい割に示したい時間が頭に入ってこない
>、『ハンター』は一度死ななければ戦闘状態に変身できないが〜
この辺りは説明的すぎる。ゲームの取説でも読んでる感じ。

…でも、なんやかんやで主人公のキャラ、ゲームを彷彿とさせる口調は結構好み


>>278
感想の感想(+反省)が木曜以降もokならば俺は問題無し
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 01:00:40.34 ID:BAILAUvF0
>>276
ホントに容赦ねえ

水濡れとか今見直して気づいた
ずぶ濡れと間違えたっぽいけど果てしなくハイで打ったから正直わけ分からん
三人称と一人称がごっちゃになるのは多分癖になりつつあるからヤバイ
ブラックジーンズごもっともすぎてワロタ、けど作者だから笑えない
一回変身した後? ノーモーション・ノーエフェクトだよ!

>>278
それに落ち着けたほうが安心だな
ていうか曜日じゃなくて>>279みたいな日数で数える方式ってことだよな?
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 01:03:30.38 ID:jjgywDhm0
安価2つだすのか?それはちょっちまってほしい。
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 01:03:50.41 ID:PvIROTzDO
>>279そんな感じです
>>281おk。そんな厳しく括っても問題出そうだし
>>282そのつもりです

じゃあ今回問題あったら次回変えていく方向で。

ということでお題安価>>290>>293
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 01:05:44.38 ID:PvIROTzDO
>>283
あ、まじで?
あと1個の方がいい?
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 01:06:37.78 ID:VhhYWIyOo
ん、二日ってのは余裕のある人の多い休日(土日)に執筆ってことだと思ってたんだが
まあ平日なら二日でも何とかなりそうだが…
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 01:08:53.01 ID:VhhYWIyOo
平日なら二日って何だよ…二日なら平日、だよorz
安価の合計は2でも3でもどっちでもいいかな。多すぎてもアレだけれど
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 01:09:29.12 ID:PvIROTzDO
うーん、
とりあえず今回はこれでやってみるか。
問題ありそうなら次回変えよう
でも2日あれば大丈夫じゃないかな
今日は平日だったが結構投下されたし
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 01:13:10.14 ID:PvIROTzDO
じゃあ今回は実験的意味も含めて、
お題は>>260
追加で安価>>290>>293
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 01:13:28.83 ID:h2ra2siqo
3つともバトル物は勘弁な
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 01:14:29.08 ID:PvIROTzDO
安価近すぎたスマン
お題は>>260
追加で安価>>300>>303
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 01:18:00.75 ID:jjgywDhm0
安価をあと2つ出して、お題を3つそろえる。
3つのお題の内、一つを選び短編SSを書き投下。という流れと理解しているが、ちょっと思うところがある。

一つのお題をお互いに書くことは、それぞれの書き方の癖や様々な違いを認識出来る、という利点があると思ってた。
これは感想を書く時、SSを投下後他の人の作品と自分のSSを見比べてどこがどう違うか、
また、他の人の表現を見ることで参考に出来る部分を見つけやすいという利点はかなり大きいんじゃなかと考えたりします。

お題を3つ出してそれぞれを別々に書くのではお互いのSSを比較出来なくなる。

もし、3つお題を用意した後に一つに統合するということだったら吊ってきます。
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/07(土) 01:18:08.65 ID:PvIROTzDO
>>278-279
期間としてはこれで
お題の数とかも問題あったら
次回から減らしたりしていけばいいんじゃないかと

ついでage
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 01:19:12.19 ID:h2ra2siqo
がんばってお題を考えていたら安価が変わっていたでござる
まぁいいけど
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 01:20:59.06 ID:PvIROTzDO
>>292
まぁそれは思うところもあるんだが、
意見が上手くまとめられない俺が駄目なんだろうな
正直どうしたらいいか混乱してる

安価下
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/07(土) 01:22:25.80 ID:rWXqcEPoo
とりあえず今回はやってみればよいのではないかな
黎明期だし試行錯誤も必要だろう
これでやってみて、比較するのに作品数が足りなくなるようなら減らせばいい
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/07(土) 01:23:33.84 ID:PEh8gAJu0
ごめん。敢えてのぶった切り
お題が三つあってどれ使っても良いってことじゃなかったんだ
製作者総合でのネタを出した者なので一応自分のイメージ書いとく
>>1お題→「ヨーヨー」
>>3ジャンル→「西部劇」
>>5主人公→「適当な名前」
三題話のイメージだったんだ
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/07(土) 01:26:31.26 ID:rWXqcEPoo
>>297
三題話はちょっと統一感なくなりすぎるんじゃないかwwwwww
でもそれはそれで試してみてもいいかもしれないね
>>260の安価がすでにある以上今回それは厳しいと思うけど、次回とかで
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 01:27:49.25 ID:VhhYWIyOo
>>300>>303>>297みたいな再安価を出せb(ry

ksk
安価下
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 01:27:54.92 ID:h2ra2siqo
>>297
システムとしては笑点に近いな
単発ネタで、三行以内でエロいキスの描写募集みたいなのも面白いかもと思った
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 01:28:55.81 ID:jjgywDhm0
安価下

>>297
だよな?俺もそう思ってた。ただそれだと話にまとまりが出にくいから賛成はあまりしてなかったんだが。

自分も向こうで提案した時、3つお題を出し合って何らかの方法(投票など)でどれか一つに決定する。というものだったんだ。
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/07(土) 01:29:58.23 ID:PEh8gAJu0
>>298
と思う。
そもそも「文章練習」という一点のみで同じスレが使えると思っただけで
この一連の流れと組み合わせようって意図じゃなかったんだ
で、敢えてぶった切らせてもらった。すまん
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 01:33:17.83 ID:h2ra2siqo
え? なに?
俺、お題出していいの?
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 01:33:30.67 ID:jjgywDhm0
ちょっとごちゃごちゃになってしまったな。

とりあえず安価に関する事がまとまってないので、今募集している安価は保留してもらってもいいだろうか?
本当にすまん。移行を急ぎすぎた俺の責任だ。申し訳ない。
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/07(土) 01:34:17.60 ID:PEh8gAJu0
で、今回は>>260単独でどうだろうかという提案
および三題話がしたい場合は安価を「三題話」か何かでとって再安価を散らす、
でどうだろうかという提案
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/07(土) 01:35:17.28 ID:rWXqcEPoo
いいんじゃない
再安価は余計ぐだりそうだww
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 01:35:45.14 ID:VhhYWIyOo
>>303結局安価取ってから考えるのはグダるから駄目って感じじゃなかったか
他の方の意見も聞きたいが
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/07(土) 01:37:42.42 ID:dmkLUl750
流れ的にかなりぐだりそうだから今回は>>260だけに賛成
またバトルものだけど……
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 01:38:32.28 ID:jjgywDhm0


執筆期間については決定でいいだろうか?
>>278

安価について

1、3つ(現在は2つ)安価を出し、書き手はその中から好きなものを選びSSを投下。どれを選んでもいい。

2、安価を3つだし、それぞれをつなぎ、一つとし短編SSを書く。

3、安価を3つ出し、投票などの方法で一つに選び、決定したお題で書く。

4、安価は一つ。
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 01:39:02.25 ID:PvIROTzDO
俺どうしたらいいか混乱して涙目
安価無駄になったし、
>>260単体でいいと思う
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 01:41:17.10 ID:PvIROTzDO
>>309
4で
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 01:41:17.55 ID:NoicTXoAO
>>272
辛口を希望とは恐れ入る。
276で指摘されてる点以外では……

>声の主は他人事のようにぼやいた

ぼやいてない。台詞と表記の食い違い。

>予想すら〜退屈な時間だった

退屈な時間は既に過ぎたのだから、それを「予想する」のは根本的に時制がおかしい。

>一瞬か、数秒か、数分いや数時間か

これは多分少年が意識を失ってから復帰までの主観(推測)かと読めたものの、
死んで変身するプロセスがわかってる本人からしたら数時間はない。
主観込みでなく完全に地の文なら、尚更浮く。変身プロセスの発光が数時間は無い無いww

こんなものかな。
ハンターの仕事に嫌気が差しつつも戦い続ける少年のキャラはお題にうまくマッチしてると思えた。
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 01:43:21.21 ID:h2ra2siqo
誰かが仕切る場合は一人に任せて、仕切るやつは人の意見に左右されず
多少叩かれるのを覚悟してでも強引に進めないとグダるだけじゃないか?
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/07(土) 01:45:23.93 ID:PEh8gAJu0
>>309
基本は>>260>>160系の長文御題で4
2がやりたい場合は「三題話」で安価とって短く散らす

が良いかな、と
もう一個埋もれてるスレあったから「別スレでやれ」でも良いんだけど
過疎りそうでなw
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 01:46:05.47 ID:jjgywDhm0
>>313
今この場はとりあえず進行してもいいだろうか?

この企画の発案者じゃないがテンプレを勝手に作った訳だし。
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 01:46:48.60 ID:VhhYWIyOo
>>260単体把握。申し訳なさに悶えながら頭捻るわ

>>309
次回の話なら俺的には1(の2つ。3つはやはり多いかもしれない)かな
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 01:47:42.72 ID:h2ra2siqo
>>315
任せる、好きにしろ
今のままでは何も始まる気がしない
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 01:53:02.14 ID:NoicTXoAO
>>309
1で。

あと303なんかの例を見るに再安価方式を支持。
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 01:54:53.50 ID:jjgywDhm0
一応現在のお題の出し方は>>309にあります。

漏れがあるなら言ってください。さらに有効と思われる案があるなら出して下さい。

現在、
4が二票

次回に1が一票

>>316は今これからのお題についての票もお願いします。

次回からどうするかはまだ話し合いません。とりあえず今どうするかです。
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 01:57:31.68 ID:h2ra2siqo
>>319
いちいち人の意見を聞くな、おめーが自分で決めろ
いつまで経ってもおわんねーぞ
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 01:59:42.73 ID:jjgywDhm0
>>320
OK。だがあなたは少し頭を冷やしておくれ。
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 02:00:08.25 ID:VhhYWIyOo
>>320
非常に言いにくいですがそろそろ言わせてください
安価潰したお前が言うなwwwww

>>319
一回安価2つでやってみたい気もするが1に入れちゃうと同票になるな
一応1で、でも5分ぐらい経って他に意見が無ければ無効票にしてくだされ
後抵抗無ければ鳥付けてもらえると解りやすい
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 02:03:31.93 ID:h2ra2siqo
>>322
わりぃw
お題、後は書き込むだけだったんだがw
324 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2011/05/07(土) 02:04:24.25 ID:jjgywDhm0
同票になった場合も考えてたけど、とりあえず今はおいらがきめちゃうよ〜。

お前ではいかん!というなら考えますー。
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 02:06:29.94 ID:h2ra2siqo
うい
よろ
おまかせ
326 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2011/05/07(土) 02:13:56.55 ID:jjgywDhm0
グダるのを回避できるということが大きな動機で

>>260を次のお題とさせてもらいます。


しかし、ID:h2ra2siqoは公平性が最も高いと思われる投票で決めようとしたのはなぜか考えてもらえるとうれしいです。
あと興奮するのも理解できなくはないですが、口調は少し考えてください。お願いします。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 02:23:51.58 ID:PvIROTzDO
お題了解
難しいお題だな
投下されたSSを読むの楽しみ

h2ra2siqoは何でそんな喧嘩腰なんだ…
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 02:25:24.49 ID:h2ra2siqo
>>326
SSに限らず、2chでイベントっぽい事をやる場合
アンケ取ったりして人の意見を聞いていたら話が進まないよ。
329 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2011/05/07(土) 02:29:36.27 ID:jjgywDhm0
そいじゃあ、次回からどうするかなんですけど1の案も人数がいたことなので
1、3つ安価を出し、書き手はその中から好きなものを選びSSを投下。どれを選んでもいい。
を次の案としましょう。

もしこの方法で何かしら問題があるならば、
3の案である、安価を3つ出し、投票などの方法で一つに選び、決定したお題で書く。
を試してみればいいでしょう。一応4との中間案でもあるので。

2の案に関しては追々考えます。2の案形式なら4の案形式の中にも組み込める訳ですし。

引用符貼っておきます>>309

>>100-105のテンプレ・説明ではなかったんですが、お題にそれほど縛られて書く必要はないです。
実際二回目のお題で私は、お題の文章をかなり意訳して短編SSとしました。
それもまた個性・価値観であり、人によって文章の受け止め方が違うのは当然です。
それにいろいろなものに縛られて書くよりも自由に書いた方がおもしろいですよね。




感想について。次に行きます。
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/07(土) 02:30:02.73 ID:PEh8gAJu0
創作なんかやるやつは我が強いしな〜
お前が言うな?w
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 02:31:49.42 ID:VhhYWIyOo
後ここ厳密には2chじゃないしなあ
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 02:35:53.02 ID:1SB5R5kl0
>>329
とりあえず了解
試験期間ってことでいろんな方法を試していきましょう

さて、ちょっとSSを考えてこよう〜っと
333 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2011/05/07(土) 02:40:25.74 ID:jjgywDhm0
ごめーんね。1の案についてもう一つ。
お題が複数ある場合でも投下する短編SSについては一人一作でお願いします。


ああっ!それとそれと〜!
一つの短編SSの長さについてもありましたね。

一つSSの長さについて。
2回目のお題の際、一つのSSが長いから感想が書きにくいんじゃね?という意見がありましたね。
それも理由だと思います。ただ今日は平日だったので感想をかける人が少なかったという理由もあります。
実際今回は自分がそうだった訳で……。あ、どうでもいいですか?すまんこ。

できるだけ1レスに収めてください。としか言いようがないです。
30行でどうこうすれば〜?という意見もありましたけどそれはもうお題に添付すべき領域です。
ちょっとルールとしては厳しいかもしれません。



次こそ感想について。
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 02:40:52.63 ID:NoicTXoAO
SSを書くのはもっとストイックであるべきという主張があるんでないかな。
自分にも、そして他者にも厳密さ厳格さを、みたいな?
それは別に間違ってはないと思うけど

以前の枝葉どうこうも30行も、言ってることは限られた条件下での表現力向上って点で筋は通ってたし。
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 02:46:17.66 ID:NoicTXoAO
>お題が複数ある場合でも投下する短編SSについては一人一作でお願いします。

なん……だと……

1は書きづらいから2を書いて、返す刀で3を既に発表されてる作品を踏まえたりしつつ書く、なんてのは原則ダメか

にょろ〜ん……
336 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2011/05/07(土) 02:46:26.24 ID:jjgywDhm0
なるー。まぁ少し考えさせて下さいね。
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 02:51:33.36 ID:VhhYWIyOo
>お題が複数ある場合でも投下する短編SSについては一人一作でお願いします。
今回余裕が有れば視点別で投下しようかと思ったけどそれもアウトか…ふーむ

多分手抜き防止的な意味合いもあるんだろうけど
辛口意見の多いスレに手抜き投下する人もそういない気がするし
日付跨いだらID変わるからわかんないし

後は作品の増えすぎ的な問題か…


>>334
大きな目的は同じでも、具体的に求めているものが皆違うのが難しいね
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 02:53:39.11 ID:PvIROTzDO
一人一作でいいと思うなぁ
一人がそんなに投下しても…って思うし
"踏まえて書く"というのは、前回に投下したSSから考えればいいんじゃないかな
なんだろ上手く言えないけど、
前回書いたSSと比べて評価して欲しい場合は、前回のに安価つければいいと思う
339 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2011/05/07(土) 02:56:13.95 ID:jjgywDhm0
>>335
でもやっぱりそうするとあなたが必要とする感想レスも増えますよね。
感想レスの独占とは言いませんが、やはり同じ人のSSがいくつもあると
感想を書く人の負担も増えます。ごめーんね。

書くこと自体は自由です。ここでの投下の自粛をお願いしてるだけであって
自分がSSを書いてるスレに投下するのは自由です。その場合はここの宣伝もしてくれるとうれしいなって。





つ、次こそは感想に行くぜっ。
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 02:57:29.40 ID:1SB5R5kl0
一つのお題に対して書けるのは一作までとすると言うのはどうだろう?

複数お題がある時はお題の数だけSSを書けるようにすれば、精力的な人は複数SSを投稿できるし、
実際にSSが書かれるお題が偏ることもある程度は防げるんじゃないかな
341 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2011/05/07(土) 03:13:14.86 ID:jjgywDhm0
>>337
スマン。手抜き防止的な意味合いはあんまり考えてなかったわ。
むしろ自分はここに投下するSSは適度に手抜きでも構わないと思ってたり。

練習スレなんでどの程度頑張るかはその人次第。その辺は自分で調整して下さい。
ちなみにまたまたまたまた自分の例ですけど、私はここにSSを投下する時は
何かしら今までにやったことの無い事に挑戦しています。

例えば、製作者スレで実験をやった時は比喩表現でどこまで相手に伝わるか。
一回目は地の文の節約、比喩表現の削除に。
二回目はギャグに。まぁスベりましたけどね。。。

でも、手を抜いたとは言いませんけど割と全部適当に作りましたよ。
それでも感想をもらって、しっかりと収獲はありました。thx!

もし、一人一作に問題があるようでしたら次回が終わってから教えてくれるとうれしいです。
今回に拘らなくともいくらでも機会は今後もあると思います。にょろ〜ん





もしかしたら次感想について
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 03:28:49.36 ID:VhhYWIyOo
ああ、すまん
手抜きというか、4つも5つもぽんぽん投下していく様なイメージをしてた
こんな時間だから人少ないし、そもそも今回に至っては関係すらないしで
突っこむのは野暮だったかも

なんか批判しまくってる風で申し訳ない…
方針打ち出してくれてるから意見を述べやすくてこちらとしては助かる。感謝
343 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2011/05/07(土) 03:44:09.07 ID:jjgywDhm0
寝る人は寝てくださいね〜。明日にちょっと長いですけど読んでくれれば幸いです。


感想を書いたことのある人は分かると思いますが、読んで思った事を全て感想に書こうと
したら結構な時間がかかってしまった!という経験があるかも知れません。

私は一回目の感想は全部に書きましたけど、朝までかかりました。
ただこれは自分の中での実験であって、自分が感想を書くと一体どれくらいかかるのかというのを
計っただけなので、だからどうだということはありません。

感想は短いものでいいですし、全ての短編SSにレスをつけなければならないということもないです。
でも、ここに短編SSを投下したなら出来れば2つは感想をつけてみてほしいです。
そんでもって出来ればまだ感想がないものにつけてくれるとうれしいです。

このスレでは 書く労力 < 感想をつける労力 になりやすいです。はっきり言って否定できません。
ですが、人の書いたSSを読んで感想をつける作業は中々に勉強になります。
おかしいと思う箇所があったらその人のSSを読んだだけで参考に出来ます。
人の振り見て我が振り直せ、とか反面教師ってやつですな。いい言葉すなぁ。


まぁ、何が言いたいかというと感想は短いものでもいい。
そもそも別にSSを書かなくても人のSSを読んで何か感想を持てばそれだけで勉強になる。ということです。



次にテンプレを見直してきます。特にお題のとこ。
344 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2011/05/07(土) 03:54:56.95 ID:jjgywDhm0
>>342
こんなやり方が批判されない方がおかしいですよ。
一人であれこれ決めて、集団で何かやるなんてことが出来るわけがない。
だから意見や指摘がないと私も道標が無くなって何をすればいいのか分からなくなってしまう。
なんでもいいんで気になったら言ってくれるとうれしいです。

司会進行役がいないとスムーズに動かないのは事実ですけどね。
でも、私もいつもできるわけじゃないですし。

出来れば次あたりから、何か決める場合は司会進行役を募り、
あれこれ物事を進めてくれるとうれしいです。
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 03:59:31.73 ID:VhhYWIyOo
毎度毎度特定の人に任せるのも申し訳無いですもんね…負担やらが
進行はよっぽどでない限り厳しいけど外野でやいやい言って僅かにでも役立てるのなら

任せっきりで申し訳ないんですが、気付けば締め切りから100レス近く伸びちゃってるんで
長文投下後に最低限見て欲しいところ的な安価を貼っておいた方がいいかもしれない。俺もう寝るんで
346 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2011/05/07(土) 04:08:12.86 ID:jjgywDhm0
>>345
了解
347 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2011/05/07(土) 04:58:54.06 ID:jjgywDhm0
ちょっと事情で時間がないんで引用符とかだけ。

執筆期間
本日0時から日曜24時(月曜0時)までの2日間

感想期間
水曜24時までの3日間

今回のお題
>>260

今回のやり方はこれまで通り。だが、
今回は短編SSの長さには気をつけて。1レスに収めて。
感想はSSを書いて投下したなら他の人にも2つはつけて。

司会進行役を募って。(明日私は顔を出せるのは夕方か夜になるので誰か代わって)
司会進行役は酉つけるのかな?


次回からの方針
>>329

条件を厳しく行きたいというひとは次回の安価で。3つあるのでちょうどいいでしょう。
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 04:59:40.49 ID:jjgywDhm0
あげときます
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/07(土) 05:11:14.63 ID:0vb3YXYAO
乙なのです

以降は作品投下と感想投下かな。どんな作品が読めるか楽しみだ
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 09:14:23.93 ID:Qnkhd/fho
なんだか盛り上がっててうれしい半面、言いだしっぺなのになんもしなかったこの申し訳なさ
また話しあうような時には参加させてくださいな

感想返し
>>251
応えよ獣かー、俺の中で秋田の影響は底知れないものがあるらしい

>>224
包みは銃だけど、確かに大きさの認識が間違ってたっぽい
指摘どうも

>>280
構成はそっちの方がいいな
あんまり深く考えてなかったから参考になる
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 09:18:21.83 ID:Qnkhd/fho
次に
ここって腕を上げるための雑談ってありかな?
製作者総合スレじゃスレチ気味の技術に突っ込んだ相談なんかがしたいのだけれど
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/07(土) 13:41:32.53 ID:SxF8P/D5o
>>351
技術に突っ込んだ相談て向こうのスレでも全然スレチにはならないと思う。なので相談があるなら向こうでするのが適切でしょう
ここでは自分の作品に付いた感想の返しでならともかく、個人的な相談事はするべきではない
雑談が増えれば自然と馴れ合いになるだろうし、ここが批評の場であるならそれはむしろ排除するべきでは
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 15:27:05.82 ID:Qnkhd/fho
>>352
文章力を多面的に底上げするのがここの目的だと捉えていたからありかと思ったが、確かにそれもあり得る話
とりあえずはあっちに持っていってみるよ

あと、過去に文章作成に関して講義を行ったSSスレがあるんだけどその紹介はしてもいいかな?
禁書のだけど、文章自体について論じているのでオリジナル他にも十分応用できると思う
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 15:32:40.71 ID:tvPzXKQZo
過去にたぶん出ててかつ全然急がない話だけど
物書きの比率が高い板なんだから、もっと文章鍛錬のスレが4、5スレぐらいあってもいいと思うんだ

ここみたく(といっても再利用だけど)
地の文投下の辛めの感想という本格派(?)スレなんて今までほとんどなかったし
しかもそれがこれだけ盛況なんだから、本腰入れてもロスにはならんと思う
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 15:41:31.83 ID:Qnkhd/fho
文章鍛錬法に4、5種類あるという認識でいい?
俺には思いつかないから解説をお願いしたいところ
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 16:40:04.71 ID:VhhYWIyOo
ここや製作総合と差別化出来るなら立ててもいいと思うが、難しい気がするな
あんまり変わらない感じだったら人が分散するだけだし

後、相談事NGならテンプレの

>もちろんプロットの書き方や展開・構成の組み方のような文章力以外の事などで
>雑談や相談をしてくれても構いません。

ここ削るなり線引きを解りやすくするなりせんといかんね
これだとお題外の相談とかもアリだと取れるから。と言うか俺もアリだと思ってた
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/07(土) 19:29:21.10 ID:NoicTXoAO
こんばんは。
>>260のお題が限定的で難問だからか、未だ書かれてない様子。
邪道ながら二次創作で先陣つかまつる。
以下本文。

陽はとうに沈み、夜の帳が下りて随分経つ。
潮騒が一際響く浜辺で向き合う若者二人。
誰の目にも明らかな一触即発の気配を漂わせながら。
もっとも、二人の対峙を見るものは海だけだったが。

青年が皮肉げな調子で沈黙を破る。

「くどいな君も。俺には長年温めた夢がある。安い正義感からの説得で諦めたりするものか」

投げ掛けられた不遜な言葉に、しかし少年は一歩も引かず反論する。

「僕が正義かアンタが悪か、そんなのはいい。だけど……その夢とやらの為に彼女を脅かし、皆を利用しようってんなら……見過ごすわけにいかないんだ!」

激する少年に、鬱陶しそうな表情を隠しもしない青年。

「ご立派なことだ。いや、もう会話の時間は終わりにしよう。これ以上ヒーロー気取りには付き合えない」
「同感だね。こっちだってアンタの暴挙には付き合えないし、付き合わせないさ、誰も」

発した言葉が耳に届く間もあればこそ。
青年は倒れ込むような動きから低く駆け、一息に距離をつめた。

(くそっ、先手を取られた。これじゃあ選べる対応は限られるか)
反射的にバックステップ。足を刈られるのは辛うじてかわすが、続く連撃に少年の体勢が崩される。

「そこだ!」

裂帛の気合いとともに繰り出された青年の拳が決まると思われた瞬間。
圧倒的に不利な位置の少年、苦し紛れに手元のそれを掴み、放つ。

「ぐっ、……目潰しとはな。ヒーローらしくもない」

青年は短い動揺から立ち直り、瞬きして砂粒を洗い流す。
霞む視界に乗じて少年がここぞと反撃に転じるが、青年の隙は虚構だった。

何らの前触れもなく、青年の手中には白く発光する剣が収まっていて。
首筋にヒタリと突きつけられたそれがために、少年の攻勢はたちまち殺された。

「さて。以前の借りは返させてもらった。余興はここまでだ……」

うそぶく青年。
少年も怯まず応える。

「ああ。やっぱり決着をつけるには“向こう”に行かなきゃな」

両者の間に更なる緊張が高まり、高まり――
二人同時に思いの丈を乗せて叫ぶ


『アプリボワゼ!!!』
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 20:43:19.44 ID:jjgywDhm0
>>357
ちょっと元ネタ知らなかったから、かもしれない感想で感想書いちゃう。

最後に決め台詞で締めていて、元ネタを知っている人なら読んでいておもしろいと
感じる展開なのかもしれない。人物を青年、少年と表記することで元ネタが分からない人に
調べさせるようにする意図があったのかも知れない。自分は調べたよ。

一つ気になったのは、
>(くそっ、先手を取られた。これじゃあ選べる対応は限られるか)という台詞。
戦闘中に()で人物が考えてた内容を入れたことで少し戦闘が悠長な感じになった。
これは地の文の中に人物が考えてた内容を入れてしまうという方法で解消されることが多いな。
多いというだけで、それがうまいかどうかは別として。

二次創作を書いた人は今までいなかったので乙と言いたい。
自分もスクライドとかで書いてみようかと思わせてくれた。
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 21:23:52.96 ID:jjgywDhm0
>>351-356
相談はありだと思ってテンプレに書きました。

短編SSを書いて感想や指摘をもらうことによって新たに疑問が生まれることもあるかと思います。
そういったときは遠慮なくここでその疑問を聞いてもいいんじゃないか。という考えのもとでした。

テンプレに、
>もちろんプロットの書き方や展開・構成の組み方のような文章力以外の事などで
>雑談や相談をしてくれても構いません。
と書いたのは、あまりスレが堅苦しいというか、殺伐とした雰囲気にならないように、
聞きたいことがあれば聞いてもいい、という形が理想だと考えたからでした。

また、ここで相談せずに製作者スレで優先的に相談すべきという意見が見えましたが、
このスレで生まれた疑問なのに、このスレで質問・相談はいけないというのはどうなのか、とも思ったり。。。
ただ、何かしらふと思いついた相談ごとなら製作者スレの方に相談する方が好ましいと思います。
ですので、ここでは厳格に相談禁止とするのはちょっとやりすぎだと思います。
雑談は抽象的すぎていろんなやりとりが含まれるので、誤解を招くだろうと思う人が多いようなら削るべきだと思います。

>355
の文章鍛練法について種類がいくつかあるの?というレスがありましたが、
いじわるな言い方をすると、文章鍛練法は書き手の数だけあります。
まぁ、それはいいとして文章力を向上させる為の方法は多分以下の3つの内どれかに分類されます。

1、とにかく書く。書きまくる。(書いた後、見直す作業も含め)
2、人の作品・文章を読む。(ありとあらゆる文章。自分が参考に出来ると思ったものすべて)
3、人に聞く。(掲示板、文章上達の為の本やサイトを読む、覗くなども含む)

このスレでもこの3つを全てこなすことは可能だと思いますが、もしどうしてもこれらは別々でやるべきだと
思うなら、別スレを立てることも選択肢としてはアリでしょう。しかし、先ほども言ったように
単なる質問なら製作者スレがあります。また、人が分散する等のデメリットもあることを承知の上でお願いします。


長文スマーソ
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 21:30:39.20 ID:jjgywDhm0
すまん。読み返したらおかしなこと言ってたわ。
>>352
>自分の作品に付いた感想の返しでならともかく
と書かれていたんだな。見えてなかった。ごめん。ほぼ同意見ですぅ。
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 21:47:54.56 ID:Qnkhd/fho
じゃあ、このスレで出たというかお題に関する疑問なんだけどいいかな?
もし駄目な質問ならスルーお願いします
疑問としては、アンチヒーローというものがどういったものかわからないんだ
だからそこから今回のお題につまってる


一応wikiで調べて、代表は「正しくないヒーロー」と認識した
一つは目的は道徳的だけど、手段を選ばないヒーロー
これは分かりやすいから特に疑問はないや

疑問なのが、世界平和のためにとかそういう目的では戦わないヒーロー
でもじゃあ、普通の悪党との違いって何?
目的と手段はともかく結果的にいいことしてればおkってことだろうか
それとも単純にカッコよければいいってことかな
なんとなく思い浮かんだのが蝶人パピヨンだけれど
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 21:58:12.76 ID:PvIROTzDO
>>361
その人によって受け取りが変わる。
それもこの1つのお題でやる意味だと思う。
自分なりの考えをぶつけて書いてみようぜ!
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 21:59:53.80 ID:Qnkhd/fho
>>362
なんかすごい納得したthx
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 22:00:13.04 ID:VhhYWIyOo
安価取った人間だけど「誤用じゃない方の確信犯」なイメージで使っちゃった
悪党とアンチヒーローは両立する事も多いと思う
というかアンチヒーローは立場によっては悪党に捉えられる事の方が多い気がする
まあでも>>362のいう通りだし、間違ってる可能性も否定出来ないので参考程度に

どうせ限定的にするなら背景やら何やらまで指定した方が
やりやすかったかもしれんなあと反省。今後出す方反面教師にしてください…
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/07(土) 22:10:35.92 ID:NoicTXoAO
>>361
>アンチヒーロー

260のお題は、仮に、その中にヒーローアンチ(英雄否定観・主義者)を含むものとして受け止めた。
つまるところ「アンチヒーロー」は大きく二者類の解釈が成立すると思われる。

一つは今言ったヒーロー存在に否定的な人物。
も一つはあなたが挙げたような王道でない(あるいは外道な)ヒーロー。
犯罪に手を染めるものをヒーローと呼べるかって議論はあるかもだけど、悪の華みたいな言葉もある。
現代ではカリスマなんて表現が幅をきかせてるね。
怪盗はヒーロー足りうるか、神業的なクラッカーはどうか?
そりゃまあ…それらはヒールと呼称したほうがより違いが分かりやすいんだろうけど。
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 22:29:01.87 ID:NoicTXoAO
>>358
早速の感想ありがとん。
調べてくれたんだ……恐縮です。

たしかに、知らない人でも「お題を踏まえた、読める文章」たれっていう挑戦意識があったから
固有名詞はわざと避けたし、特定できる用語も最後にした。
関心を喚起できたなら嬉しいなー。

>思考の描写

ここ上手く地の文に組み込めなくて。読む上で流れの邪魔かとは気にしつつ……工夫が足りなかった


余談。
>二次創作を書いた人は〜

実わ最初の「少女、雨天」も二次で書いてたけど、特定ワードが一つもないので誰にもそうとは認識されないorz
好評だったし内容的に連続してるしで調子にのって自スレに張ろうとしたが、ド忘れした。
ネタバラシ部分になるから今更張ったものか苦悩中
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 22:29:31.02 ID:Qnkhd/fho
>>364
参考にさせていただこう
あと、お題出すのは難しいよな
30行指定の案もあったけど、もしそれをするなら30行以内で書けるお題にしなきゃいけないし

>>365
ヒーローアンチ。そういうのもありか
まあでも共通する身体的特徴という条件からして、「相反する正義」みたいな対立の方が個人的にはやりやすいかな
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/07(土) 22:36:05.85 ID:opOXKyqXo
>>260
 かつて世界を救った少女がいた。
 彼女は滅びに向かう世界を再生し。
 姿かたちを一切残さず消え去った。
 ただし、共に旅をした少年達の心に、深い深い傷跡を遺して。

****************************************

「お前のやり方は間違っている」

 二人の少年が対峙している。
 互いに敵意を隠そうともせず。

 声を発した少年はヒーローと呼ばれている。
 この世界を救ったヒーローだと。

 声を受けた少年は反逆者と呼ばれている。
 救済の阻止を企んだ反逆者だと。


「何が間違っているの?」

「誰かの未来と引き換えに助けられても、絶対にあいつは喜ばない」

「僕は喜ぶからね」

 その声色に感情はない。
 只々淡々と、台本を読むように。
 その様子に、ヒーローが歯を食いしばる。

「もういい」

「それなら、力ずくで止めるだけだ」

 月光を反射しながら、剣が抜かれる。
 それを向けられてなお、反逆者は微動だにしない。


 疾駆と共に、その剣尖を首元へ突きつけられて、なお。  

「相変わらず甘ちゃんだね」

「その刃をあと少しだけ、突き出すこともできないんだね」

 そう言って、
 反逆者は前へ進む。
 刃は首を貫く。
 柄が首を貫く。
 腕すらも。

「もう僕は、人間ではないのに」

 ずるりと、ヒーローを反逆者が通り抜ける。
 その瞳に透明な雫をたたえながら。
 反逆者は背中から無機質な翼を生みおとし、ヒーローは地面に縫い止められる。

「さよなら兄さん。 あとのことよろしくね」

 そして一方は空を裂いて飛び立ち、もう一方は声の限りに制止を叫ぶ。
 世界と同化した私は、彼らの行いをただ見守る。
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 22:37:38.36 ID:PvIROTzDO
なんか書いていると
お題の条件をいくつか忘れたりするよな
書き終わってお題見直してみると
いくつか抜けてたりするよな

……どうしよう
いや直すしかないけど


というか本当に投下少ないな
二日間だからかな
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/07(土) 22:38:21.16 ID:opOXKyqXo
バトル物は本当に難しいな
人の動きをスピーディかつくどさなしに描写できる人は本当に凄いと思う
今回は極力丁寧に書いてみたので、よろしくお願いします
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 22:50:48.83 ID:PvIROTzDO
>>368
>ずるりと、ヒーロー〜
が分かりにくい。
反逆者はハッキリと見える幽霊みたいになってるの?
"助けられ"
"世界と同化"
が今一繋がらなかった。
あまり少女が犠牲になっているという風に感じられなかったからかもしれない。
俺の読解力の問題かな。
全体的には、わかりやすく読みやすい。
好きな文章でした。
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 22:54:51.07 ID:VhhYWIyOo
>>260
ここでやるのも間違ってる気がするけど、SSというより小説形態の書き方の練習
文字が詰まっててごめん。ついでに疑似三人称リベンジ
今回は(少し説明を足している以外)作中切り抜きのイメージ
形態上固有名を付けてしまったけど明確なネタ元は無い、でもありがちではある



 裏通りを随分と入り込んだところで、灰色の眼と髪を有した少年はついに決心した。
「アラン」
 少し前方を歩く、暗紫の服を着た少年に向かって彼は呼びかける。
 振り返った少年は、銀の鎧を着た少年を見て口を開いた。
「……ラルフ」
 意外にも、その声に動揺は見られなかった。後を付けられていた事に、気付いていたとでも言うのだろうか。
 髪の長さこそ違えど、同じ髪色と瞳に、よく似た顔、声。理由は簡単、双子だからだ。
 だが、鏡を通して見る自分の姿とは全く違う。生きてきた環境が、ある時期を境に二分されたからだ。
 長髪の弟、アランからは殺意が感じ取れる。だが、ラルフは剣に手を伸ばさなかった。
「七年ぶりだね」
「もう、そんなに経つのか」
 僅かな月明かりの元、アランが武器を構えようとする。
「お前の噂は聞いているよ」
「俺も噂を聞いている。……貴族の犬めが」
「気持ちは解る、でも――」
 言いかけて、ラルフは剣を引き抜いた。
 構えたと同時に刀身にかかる重圧。刃同士がぶつかる鋭い音。二つの短刀と、詰め寄ったアランの姿。
 漸くラルフは弟の顔を見る事が出来た。左頬には七年前と同様に、入れ墨――奴隷の刻印が在った。


 アランの武具は力に劣るが、ラルフの装備の速度に勝る。
 続け様の第二撃をラルフは避けたが、三撃目を肩に受けた。低い金属音が響く。鎧に救われたらしい。
 シルエットが伺える程度に距離が開く。何とか体勢を持ち直し、ラルフはアランの顔を凝視した。
アランもまた、こちらを真っ直ぐに見つめてくる。その表情を伺うには、今日はあまりにも暗すぎた。
 口を開いたのは、アランであった。
「あんたが何を言いたいのか、俺には解るさ」
 でも、と彼は言葉を続ける。
「あんたには、俺の気持ちなんて分かりゃしない……!」
「それはっ……」
 それ以上は、言葉が詰まって出てこなかった。
 八つの頃に離れ離れになって以降、アランが具体的にどの様な人生を歩んで来たのか、ラルフには解らない。
しかし、弟が脱走し、テロ組織に加入しているという事だけはかねがね聞いていた。そして弟の言動を見るに、
それは事実だったのだろうと唇を噛む。
 奴隷の証である入れ墨は、ラルフの右頬にも同様にあった。刻まれた主の名への嫌悪など今のラルフには無いが、
それは彼が恵まれているからである。彼自身、その事は自覚していた。
 アランの言葉もまた、ラルフのその幸運を知っているからこそのものなのだろう。
 籠手の下の両手が汗ばむ。
「――それでも、お前を止めてみせる!」
 言うや否や、ラルフは地を蹴った。
「綺麗事を!」
 横っ飛びに位置を変えるアランを、ラルフは急停止して目で追った。アランの装束は闇に紛れるのに
適した色をしている。見失う訳にはいかない。
 瞬きをした隙に、だ。
 気配が背後に移った事に彼は気付く。慌てて顔を逸らすも僅かに遅く、右頬を裂くような痛みが走った。
その場所から血生臭さと共に液体が顔面を伝うのが解る。量が多くはないのが幸いかもしれない。
 構え直そうとラルフが正面を向いたのと同時に、アランが壁を蹴って飛び掛かってくるのが見えた。
思わず、ラルフの喉から音が漏れた。
 防がなければ――そう思ったのも束の間、音と共に剣がラルフの手から離れ、弾け飛んだ。
 続けざまに感じる、押し倒すような力。背中の痛みを感じ、次いで人一人分の重みを感じた。
己の首元に突きつけられた2つの刃先を認識するまでが、ラルフには酷くスローに感じられた。
 ただ、彼には呆然とするしかなかった。
 ラルフが思うよりもずっと、アランの方が上手であった。今の今まで手を抜いていたというのか。
 斬られた方とは反対側の、左頬――丁度、刻印のある辺りに何かが落ちた。
「俺は」
 アランの声が、震えている。
 続けざまに落ちてくる雫、涙。
「泣いて、いるのか?」
 少しの沈黙の後、絞るような声で。
「あんたが憎い……けど、傷つけたいのはあんたじゃねえんだよ……!」
「アラン……」
 同じ遺伝子を分かち合い、八年の時を共に過ごした二人。しかし、異なる環境に置かれた七年間は、
彼らを全く異なる人間に至らせるには十分すぎた。
 それを改めて理解したラルフには、刃先が己の首から離されるのを、ただ黙って見ている事しか出来なかった。



アクションを書くのが苦手とは言え主人公動け
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/07(土) 23:14:23.64 ID:VhhYWIyOo
>>372
すまん最終行訂正。これじゃあ首飛んでるみたいじゃないか…
刃先が己の首から離されるのを → 刃先が己の首元から離されるのを
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 23:19:46.88 ID:NoicTXoAO
>>368
膨らませ甲斐のある設定だと強く思わされる。

世評はともかく実際に世界を救ったのが彼女なら、
いまヒーローと呼ばれる彼もまたアンチヒロイズムを抱えている可能性があるわけだ?

文量の問題があるろうけれど、二人のキャラを変更せずに少し重い展開にも出来たかな。
たとえば、

>兄「お前のやり方は間違っている」

弟「それは、彼女のやり方が間違っていたと認めたととっていいのかい兄さん」
とか

>兄「誰かの未来と引き換えに助けられても、あいつは絶対喜ばない」

弟「出来るなら兄さんの気持ちは彼女に伝えておくよ」
とか。


「世界と同化した私」の、見た光景への思いが全く書かれてないのが逆に味わい深い。

私が拡散してしまったから、かつての自分を大切に思う余り対立してしまった兄弟へ向けて、
1,止めることも声をかけることも出来ない。無力感。
2,人間立った頃の感情が世界規模で希薄化(霧消)してしまったため、何の感慨も湧かない。

まるきり対称的な両方の意味に取れる。
実に深い……ッ
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/07(土) 23:42:59.19 ID:opOXKyqXo
感想ありがとうございます
ゆっくり読ませてもらっています、今はとりあえず他の作品に感想を

>>357
地の文が独特ですね
比較的堅めの表現がかえって、場の緊張感を感じさせてくれました
ただちょっと台詞回しでスピード感を削っているようにも感じました
「僕が正義か……」の文が自分の環境だと強制的に改行を受けてしまって、読みにくくなっていたので
それはちょっともったいないかなと思います
あと”……”の位置も、工夫の余地があるかなと

>>372
これはまたチャレンジャーな
塊でずどーんと文字を見せられたときの「うっ」って感覚がすごかったですね
ただ、それを乗り越えて読みに掛かれば、驚くほどスムーズにいけたので
そこは文章構成とテンポの扱いに優れているということなんだと思います
あまり突っ込みどころはないんですが、文量が多いためか一読した時に二刀と一刀の差を見落としたので
この形式でやるなら多少過剰なまでに強調したほうがいいかなと思いました
文全体のバランス等々、難しいとは思いますが
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/07(土) 23:45:57.63 ID:h2ra2siqo
 二人は、とてもよく似ていた。
 けれども彼らはそれを認めない。
 二人は、少しだけ違っていたのだ。

――虎と豹のように
――槍と矛のように

自分こそ正しいと信じて疑わず、自分と違う者は全て敵にしか見えなかった。
だから……戦わなければならなかった。






「はあ? なに言ってんすか? 一番可愛いのは澪でしょ!」

「アホか! りっちゃんがいっちゃんに決まっとるやろが!」

 ここは秋葉原。地獄の一丁目。
 夕暮れ前から始まった不毛な論争は、日が落ちた今もなお続いている。
 あれほどいた野次馬は二人の痛々しい言動に耐えきれず既にいなくなっていた。

「それ、ただのマイナー趣味じゃないんすか? どうせアンタ、麻奈実とか加奈子とか箒とか鈴が好きなんでしょ?」

「だからなんやねん! みんな可愛いやんけ! お前なんかどぉぉぉせ、黒猫やらシャルやら人気があるキャラにばっかり飛びつく萌え豚やろが!」

 黒縁のユニクロが叫ぶ。

「はあああああああああああああ!? 人気があるからだけで萌えるわけないでしょ、可愛いから萌えてんすよ! アンタこそ人と違う自分カッケーとか思ってんでしょ? あーやだ。だっさ!」

 メタルフレームのしまむらも叫んだ。

「うっさい、ボケ! サブヒロイン萌えがなに調子に乗っとんねん。 黒猫なんぞただのかませやん。八巻、まだ読んでへんのんか!」

「え?」
「え?」

しまむらの発言にユニクロが怯んだ。
怯んだユニクロを見て、しまむらも怯んだ。
訪れた沈黙に通り過ぎようとしていた通行人の足も止まった。

「もう八巻、出てるんすか?」

泣きそうな顔でユニクロが問いかけた。

「フライングで買える店、知っとるからな」

「黒猫……どうなったんすか?」

しまむらは答えられない。言えば、ユニクロが壊れてしまう気がしたから。

「この前、黒猫のねんどろいど買って、ドールも予約したんすよ」
「ゲームはちょっと不満で、八巻にすげー期待してたんすよね……」

涙をにじませたユニクロの肩に手を当て、しまむらは彼のために言葉を選んでこう伝えた。

「今回はちょっと残念やったけど、まだ終わったわけやあらへん」

「……マジすか?」

「ホンマや。別にそこまで黒猫に悪い話ちゃうしな」

「そっすか」

落ち着いたユニクロを見て、しまむらは胸をなで下ろした。
彼は勝つ事が好きだが、泣かせる事は好きではなかった。

「そこのメイド喫茶行かへんか? オムライスおごったるわ。なんやったら八巻読ましたろか?」

「あそこはカレーの方がおすすめっすよ」

「はあ?」
「はあ?」

――戦いはたぶんまだ終わらない
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 23:53:34.89 ID:PvIROTzDO
>>376

面白い!
あえて言うなら、
>壊れてしまう
に少し違和感を覚えた。
これはもう好みの問題だけど。
まさかこのお題でこうなるとは、
まとまりも良い。
自分がオタクだからかな
こういうネタは大好きです。
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 00:06:03.52 ID:XyOaFpaDO
>>260

 「仕事では随分な人気者なんだって?」
 久し振りに同窓会で会った友人に、そう言って笑われたのを思い出す。真面目にやっているから、と返すと、優等生なのは変わらないなと苦笑いされた。
 俺はヒーローで、世の中に害をなす怪物を倒すことが仕事である。まだヒーローになってから3ヶ月というところだが、業績は、すこぶる良い。
 「君も慣れてきただろうから」その言葉と共に渡された1枚の辞令書。自分のデスクに戻り、文字に目を通す。
 「俺1人、か」
 思わず吐きそうになった溜息を、慌てて呑み込んだ。

――――――――――――――――
――――――――――

 幼稚園のバスジャックをしかけた怪物らを、ようやく倒したころには、もう日は暮れかけていた。
 大勢の子供に感謝され、俺はマニュアル通りの笑顔を返す。
 「"ヒーローの、やるべきことをやっただけさ"」
 姿が見えなくなるまで、めいっぱい手を振る園児たちに手を振り返した。こきり、と首を鳴らすと、会社に戻る前に一息吐こうと自販機の前に立つ。どうせ会社に戻れば、タダの珈琲が飲めるのだ。ならば、と並んだボタンの間に目を泳がせていると、げしりという背中からの衝撃と共に前につんのめった。
 ポチリ、――ガコン。指の辿る先には、コーラの写真。炭酸は、苦手だ。舌打ちをして後ろを振り返ると、幼稚園児くらいの小さな男の子が立っていた。額には、小さな切り傷。それを見て思い出す。そうだ。怪物の中の1匹が、まるで人質にするかのように傍にいたのは――、この子供じゃなかったか。
 もう皆帰ったというのにまだ残っていたのかと思いながら、背中にうっすらと汗が伝ったのがわかった。やばい、舌打ちなんて"ヒーローのするもの"ではない。慌てて、"ヒーローらしく"笑いなおす。
 「"どうしたんだい? もう悪い奴等はいないんだよ"」
 「うるさい! この悪党め!」
 ――悪党。耳慣れない言葉に、思わず真顔になった。
 「あの怪物は悪い奴だったかもしれないけど! 言ってたんだ! 無理矢理やらされてるって! だから……なのにっ」
 顔をくしゃりと歪める。目に涙が溜まるのがわかった。首を大きく振る。強く拳を握ると、ぐいと目元を強く拭った。
 「〜〜っ」
 ――ゲシッ
 思い切り蹴り飛ばされる。男の子はキッと俺を睨みつけると、太陽の沈んでしまった方向へ向かって駆け出した。マニュアルを表情に浮かべることもできないまま、去ってしまった方向を見つめる。頭が状況にうまくついていかない。目を白黒させながら、自販機の口に手を入れた。ぷしゅり、炭酸の抜ける音がする。
 「……そんなこと、言われてもなぁ」
 戦闘の際についてしまった額の傷を、そっと指でなぞった。目線を靴先に落とす。
 怪物の事情なんて、知らないし。そう、小さく、口のなかで呟いた。
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 00:08:43.18 ID:XyOaFpaDO
年齢のお題が入ってません
一方的に蹴る=戦闘にした
戦闘描写が苦手で、逃げに走るにしても
もう少しあるんじゃないかと反省
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 00:10:13.18 ID:vpgjN6aAO
>>376
教えてくれ五飛
ユニクロは優等生なのか?
ゼロは何も答えてくれない……

良い腹筋運動を促してくれたことに感謝wwww
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 00:11:31.31 ID:Xltx0Fp8o
>>372もう一個誤字訂正。2段落13行目、右頬と左頬が逆(入れ墨があるのは双方左)
完全小説形式はミスにより気付きづらくなっていかん、まだありそうだ…

他の方の感想は遅くとも感想期間中には投下しますorz


>>375
実は普段はこの書き方の方が多いもので、ついやってしまった
硬派な方が多いからと甘える形になってしまったけど、あんまりやらない様にしようと思います
空白行は容易にテンポを伝えてしまうので練習の趣旨上敢えて避けたけど
スムーズに読めたと言ってもらえて嬉しい
上の推敲云々も含めて、この形式だと空目も数倍警戒しないといけないなあ…
空目に関しては自分では全然解らないので指摘頂けてよかった
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/08(日) 00:14:31.97 ID:XSU7OYcD0


>>372
段落の最初を字下げしているが、やはり改行がないと読み辛い。
せめて台詞と地の文の間に、改行が欲しい。

戦闘描写は分かり易くていいと思います。

強いてあげれば、最初に裏通りの様子を描写して、読者に舞台をイメージさせると、
より雰囲気が出ると思う。


>>376
始めの比喩はとても素敵だと思います。
これから始まる戦いを盛り上げる上手い文章だと思います。
ただ一つ、

これのどこがヒーローとアンチヒーロだよwwwwwwww
本当アイディアの勝利だと思います。
笑わせてもらった。


上の方でアンチヒーローについて議論があったので、
今更だけどwikiのアンチヒーローの項目を張ってみる。

http://p.tl/9f5j

383 :>>260現時点SS [sage]:2011/05/08(日) 00:28:10.25 ID:XyOaFpaDO

>>357

>>368

>>372-373(訂正)

>>376

>>378
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/05/08(日) 00:39:30.40 ID:E4eg+KHMo
>>260

 薄暗闇に言葉を流し込む。

「俺ぁ誰が死のうとかまわないと思ってる」

 続ける。

「ああ、誰も彼も死んじまえ。てめえも一緒だ消えちまえ」

 そして締めくくる。

「あいつに死んでほしいなら、同じくらい死ねと望まれるって知った方がいい」
「そうか」

 ようやくあった返事に、俺はほんの少しの満足を覚えた。
 ひんやりとした月光がストリートを照らす。道路の上だが、舗装はあちらこちら穴だらけでその用をなしていない。
 まるで俺たちの正義のようだった。まったくもって役に立っていない。対面の男を眺める。

「準備はいいか? 俺はできてる」

 俺の確認に意味はない。俺たちは他の全てを捨ててきた。ならそれくらいの準備だけでもできてなきゃ阿呆だ。
 俺たちは阿呆か? その点においてはノーだ。他の点では知るべくもない。
 肩からゆっくり力を抜いた。後は言葉は必要なかった。腰の重みにだけ意識を移す。

 その時に気付く。先ほどまで気付かぬ微風が吹いていたことを。今は吹いていない。
 意識を尖らせ、ようやくわかったこと。
 尖る殺意の先にあいつがいる。

 それは唐突に訪れた。不意に落とされる首斬り刃のように。
 銃声は一発。どれだけもったいつけようと、ただそれだけ。
 俺はさっさと拳銃をしまって歩き始めた。対面の影は二歩目で崩れ落ちた。

「俺に勝てるわきゃねえだろが。知ってんだろ、おい」

 近寄って告げる。月明かりに照らされて、広がる黒い染みがある。
 そいつは火傷痕のある手に拳銃を握り締め、弱弱しく震えた。
 俺の手にも火傷跡。その無粋なじゃじゃ馬を扱っていれば誰にでも押される烙印だ。
 それでも意味を見出しちまうのは、きっとそれこそ無粋なことだと思う。

「兄貴、俺ぁ行くよ」

 もう聞く者もいないが。

「あいつが待ってる」

 風が再び吹き始めた気もしたが、分からない。風の気まぐれなんぞ俺は知らない。
 振り返って歩き出す。その時気付いた。頬に伝う生ぬるい感触。よくよく考えればずいぶん前から流れていたそれ。
 俺は舌打ちしてそいつをぬぐった。だが、どうしても拭きとれない。ああ、涙が止まらねえ。
 あいつを守ると誓った日から、俺は涙と縁を切った。なのにちっとも止まらねえ。
 どうにもやるせない気持ちで、俺は身体を引きずった。その先に光はないと知りつつも。
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 00:41:42.66 ID:E4eg+KHMo
普段三人称をメインに扱っているため一人称は不得手
そこらへんに言及した感想もほしいっス
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/08(日) 00:47:48.24 ID:qgMhGmAUo
>>384
どの台詞が誰の台詞なのかわかりにくい

>>「俺ぁ誰が死のうとかまわないと思ってる」
>> 続ける。
>>「ああ、誰も彼も死んじまえ。てめえも一緒だ消えちまえ」
>> そして締めくくる。

同じ人物が言ってるんだろうけど、ああが返事に見えて相手の台詞と錯覚してしまう
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 01:08:31.53 ID:E4eg+KHMo
言いがかり的ちょい辛感想をば

>>357
迫力があってよい
しかし、「長年温めた夢」という言葉は、個人的に優しく感じたので浮いている気がした
あとはもう言及されてるけど(先手を〜)が長いかと

>>368
ちょいと無機質な説明が多いかな
物語りの中で説明してもらえると個人的には好感
限界はあると思うけど

>>372
丁寧な描写は好き
ただ一点、押し倒すような力、はような、じゃなくて押し倒してるんだから別のに置き換えた方がよさげ

>>376
やられた
言うことがない

>>378
この夕焼けげな雰囲気はいいなー
文章うまいし、特に突っ込めないっス
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 01:13:18.83 ID:E4eg+KHMo
>>386
最初の台詞三つは難題だった
一息に言わせるのは抵抗あったし、長い地の文で区切るのもつらいし
結局こうなったけど、別んとこで失敗してたかthx
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/08(日) 01:30:51.24 ID:vpgjN6aAO
>>372
他の人の言う通り、空行が無くても読みづらくなかった。
お題に関して。
「戦闘中落涙>寸止めで戦闘終了」とあるので、細かく言うと今作は順序が逆だね。

>>378
拡張性の高そうな物語に、期待を煽られる読後感。
「身体的共通点」を額の傷でクリアしてるのも、とても自然で感嘆。
ただひとつ。寸止めについて少し話し合う場を持ちたいが

>>384
戦闘中に落涙(した)の描写は挟みにくいよなぁ…と。タイミングの縛りが強いよね、これ。
直接の描写が見当たらないけど、銃声が一発ということは、兄は弟を撃つのを割り切れなかったんだろうか?
考え方が逆になるが、寸止めが条件なだけに、情に邪魔されて撃てなかったのかな。
あと、要望どおり一人称に言及。
護衛者である主人公が守るべき人を「あいつ」と呼称しているのに、
>(自身の)尖る殺意の先にあいつがいる
と襲撃者である兄も「あいつ」呼ばわりしているのは、どうかな。ヤツとかでよかったんじゃない?



自分が散々苦戦を強いられたお題なだけに、他の人の文章を読むのがとても楽しい。
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 01:39:31.17 ID:E4eg+KHMo
>>389
実のところ寸止め条件を忘れてたなんて言えない
まあ殺したって表現ないしいいよね! ……だめか
あいつ表記はそう言えば引っかかってたのに忘れてたよどうも

気のせいながら、文章力が上がってきている気がする
いやそんなすぐあがるわきゃないが
少なくとも書くことに抵抗はなくなってきたよーな
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/08(日) 01:40:40.00 ID:xhrF3EpD0
>>260

「何故です。何故抵抗しようともしないんです」
こいつは、どうしてもこんなに僕を苛立たせる。
「誰でも生きなきゃならないんですよ。殺されて良い理由がないんですよ」
状況を変え、言葉を変え、何度同じ意味の言葉を繰り返したのだろう。
その度に返ってくるのは、暗い、見上げるような眼差し。
「何か言ったらどうです!」
叩くように肩を突き飛ばすと、そのままびしゃりと水溜りに尻餅をつく。
どうしてこんなにもなすがままなのか。
「僕よりも、あの人よりも、君は強いでしょう。なのに!」
そうだ。本当はわかっているのだ。苛立つ理由。
こいつは自分に出来る事をしようとしない。
力を持っているくせに振るおうともしない。
「…………ない」
「え?」
小声過ぎて聞きとれない。
「ぼくには、できない」
「…………」
「そんなことをするくらいなら死んだほうが、マシ」
「それは、嘘だ」
目の前が、かっと赤くなる。
「それだけは、嘘だ」
「え?」
「証明してやるよ!」
自分が裂けるように目を見開いているのがわかる。
そのままつり上がった目尻が裂けていくような感覚。
「変身!」
憤怒の形相がそのまま仮面となり、異形の甲冑が僕の身を包む。
これは、力だ。振るわれるための力だ。
「インパクト!」
赤熱した感情のままに右拳を振り下ろす。
「ここで、消えてしまえ!」

「死にたく、ない」
「まだ、死にたく、ない」
滂沱と頬を流れる涙。そして、その涙の流れのままに顔が割れていくのが見える。
「変、身」
瞬間、悲哀の仮面が姿を現し、
「インパクト」
へたり込んだままの姿勢からただ振るわれただけの左腕が僕の拳を弾く。
「クロス、インパクト」
冴え冴えと青く光った右の拳が突き出されてくる。
肩を狙っているのは分かるが反応できない。当たって、しまう。

「「!!」」
羽音が聴覚を揺らし、僕を吹き飛ばす直前だった拳がひかれる。
情け?優しさ?…………違う。こいつも感じたんだ。
僕らにだけ聞こえる音。ヤツ等が人を襲う時にたてる喜悦の羽音。
「ごめん。行ってください」
「見ろ。どこが死んだほうがマシだ。僕は間に合わなかったぞ」
「ごめん。ごめん」
へたり込んだ姿勢のまま腕と足の力だけを使って飛び退る。
重ねて、跳躍される。もう、追えない。

「誰だって死にたくないんだよ。だから一緒に」
踵を返して走り去る背に、叫んだ声は届いただろうか。
自分の嘘に気づいただろうか。或いは、僕の嘘に?
いや、でも、そうだ。行かなければ。
力は、振るわれなければならない。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/08(日) 01:43:36.33 ID:xhrF3EpD0
昨夜お題をぐだらせたので賑やかしをせねばと思って書いてみた。
BGMが悪かった。反省はしているw
正直最初お題長いと思ったが「アンチヒーロー」が面白かった。ヒーローのアンチ(反)
ヒーロー的でない。と読み替えた。
良いお題だった。

さて、次は読む。で、感想書く。
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 01:44:51.19 ID:XyOaFpaDO
>>387
そんな雰囲気イメージでした、ありがとう!

>>389
"アンチヒーロー側の攻撃で戦闘終了"に脳内変換してたorz
いやもう本当にすいません…よく見ろよ寸止めやん……どこに目を付けてんだよ俺…まじすいません……
避けさせて「寸止めだよプギャーwwwwww」な展開にすれば良かったって今更すぐるorz
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/08(日) 01:53:54.03 ID:vpgjN6aAO
>>391
死んだほうがマシと言ってしまうほどの厭戦をアンチヒーローくんにもたらした背景が気になる。
せめて匂わせる程度の描写はほしかった。
条件的には何の不備もなく。さすが。
スーパーヒーロータイムの、中でも仮面ライダーの香りを連想させられた。
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 02:01:37.32 ID:E4eg+KHMo
>>391
舞台と明度の描写が少なくて、ちょいと想像に難い
次に、設定を読み取るが難しいなと感じた
死にたくないから抵抗する、の抵抗が誰への抵抗なのかが俺の貧しい読解力じゃきつかった
あと、“あの人”の掘り下げもできればした方がいい気がする
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/08(日) 02:07:00.19 ID:qgMhGmAUo
>>391
これは、力だ。振るわれるための力だ。→これは、力だ。振るうための力だ。
力は、振るわれなければならない。→力は、振るわなければならない。

こういう風にした方が良かったんじゃないかなぁ
あと、嘘というのがどの部分なのかわからなかった
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 02:07:40.96 ID:XyOaFpaDO
>>391
物語の途中として読むなら、凄くいい。
けど、これ単体ということだと背景があまり描写されていないためか状況がよくわからない。
俺の読解力の問題かもしれんが。
あと「インパクト!」が楽しすぎる。真似して大声で言いたい。ヒーローものっぽくて楽しい。凄い楽しい。「インパクト!」
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/08(日) 02:54:55.65 ID:xhrF3EpD0
お前が言うな大賞に自薦する勢いで感想戦
技巧的な部分に絞ってみました

>>357
二次、難しかったと思います。
元ネタの分からない自分にも大まかなキャラクターは伝わりました。
四行目「もっとも、二人の対峙を見るものは海だけだったが。」
に「そこだけ軽い」という違和感を覚えました。
意図したのならば意図したとおりに軽くなってます。

>>360
時勢の変化に改行を上手く使っていると思います。
「対句」という表現をしたいと思いますが、
対応させた台詞と地の文の運びも上手いです。
同一人物の台詞が連続する部分だけ違和感を感じました。
と、最後の一文「世界と同化した私は、彼らの行いをただ見守る。」
もこの流れならば再度改行が欲しかったかと。
唐突だと感じてしまいました。

>>372
ほぼイチャモンなんだ。すまない。
でも、こんな感想もあると思って聞いて欲しい。
三文字名前カタカナ三文字名前カタカナ。混乱した。
厚みのある「読ませる」ための文章なんだけど、
その度に一瞬でも「これどっち?」って思わせるのは損だと思うんだ。
「読ませる」ために意図してるんなら意図通りです。
じゃぁ、次のアンタの作品を読ませてほしい
(CVバーボンハウス)

>>376
発想の勝利。
このお題で一番想像しやすい「リアル」なキャラクターを造形した時点で勝利
ヒラコー絵だろうが浦沢絵だろうが浮かばせたら勝利
自分も含めてワンシーン切り取りに成りがちな中、スラップスティックスで一話終わらせて見せた勝利

>>378
これも良い発想
ヒーローを演じているという「アンチヒーロー」も感じました。
「マニュアル」という「アンチヒーロー」の必殺技の不発ということで如何か。

>>384
これは声に出して読みたい文章。
それだけに「そうか」にもっと違和感があっても良かったかもしれません。
或いはいっそ地の文に組み込んでしまって流すのがよかったかも。
文のテンポにはしっかり合っていますが「俺」しか居ないのに若干「俺」が多いかな、とは思いました。

感想戦に一時間、だとw;
バーボンハウスでキャラクター崩れたの許して
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 02:59:02.57 ID:Xltx0Fp8o
同じくお前が言うな大賞に自薦しつつ、今書ける文だけ辛口で。
内容重複且つ確認済だったらすまんぬ。難癖レベル、主観が殆どなのでご了承を
こっちが勘違いしている事柄もあるかもしれん…

>>357
元作品を知らないからおかしな指摘があったらすまん
既に指摘の入ってる括弧文字、「反射的に」という言葉に矛盾を感じるから
俺はばっさりカットの方がいいかと思う
若しくは、「これじゃあ〜」をカットして一つ下の行に持ってくるか
気になったのはそこぐらい。味のある良SS
どうでもいいけど、こっちの勉強不足で「裂帛の気合い」の意味が解らなかったから
ぐぐったらアンサイクロペディアが出てきて(゚Д゚)

>>368
>「もういい」
>「それなら、力ずくで止めるだけだ」
前の発言が ヒーロー→反逆者→ヒーローで続いていたから
最初は別人の発言に見えて混乱。行間を詰めるぐらいしか対処策は浮かばないが…
>ヒーローは地面に縫い止められる。
この辺りの表現がちょっと解りづらすぎるかも
詩的で綺麗な感じのSS

>>376
実はこの板にいながらけいおん以外は全部解らないのだが
それでも十分面白かった。説明の量が適切なんだと思う
>ユニクロが壊れてしまう気がしたから
ここは俺も最初違和感を感じたけど、この急にシリアスな表現が飛び出す事で
逆に笑える効果も狙えるし難しいところ(ワンテンポ置いて吹いた)

>>378
視野が狭いせいで最初「辞令」が「指令」の誤記だと思ったのは秘密だw
学生さんとかだと同じ勘違いするかもしれんけど、辞令書の方が会社な感じはするよなあ
>自販機の口に手を入れた。ぷしゅり、炭酸の抜ける音がする。
ここまでが超が付くほど滑らかだっただけに(だったからこそ?)、「手を入れた→ぷしゅり」だけで
「缶を取りだして開ける」動作に繋がらなくてちょっとだけ詰まった。ぶっちゃけ好みの問題
上記の通りすんなり頭に入ってきて、情景も浮かんでよかった
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 03:15:47.27 ID:Xltx0Fp8o
感想返し。レスサンキューでした。そしてごめん長い
凄い勉強になった。勇気出していつもの文体のを投下してよかった

>>382
改行の指摘は覚悟していたけどやはりか…検討してみます
(そんなにこの形式で参加するつもりはありませんが)
戦闘描写は分かりやすいと聞いて安心。後は想像力かー
舞台は全然書けていないことに途中で気付いて加筆したのですが
やはり全然足りないか…反省

>>387
言われてみれば!
何の違和感もなく書いてた…次から気を付けます

>>389
全然細かくないです
予定では最後に飛び掛かってた時点で涙を流す筈で、
描写も三つぐらい考えていたのですが、どれを使っても違和感が出たので諦めました
完全に力不足だ…次は全部盛り込めるように頑張ります

>>390
バーボンwww
たまーに完全小説形式(という言い方でいいのか?これ…)で参加するかもしれません
嘘みたいだろ…ラルフの名前は最初「アドル」だったんだぜ…
(双子だから名前は近い方がいいのかねえ、というしょうもない理由)
正直名称変更した後も自分で混乱してた。やっぱり駄目だったかー
意図は全くしていないです。そうか、逆手に使う方法もあるのか!
401 :>>260現時点SS [sage]:2011/05/08(日) 03:22:52.55 ID:Xltx0Fp8o
※右側の安価は投下直後のコメント・訂正・追記

>>357

>>368>>369

>>372>>373 >>381

>>376

>>378>>379

>>384>>385

>>391>>392



余計かも知れないけどコメント諸々の安価も追加。間違ってたら修正頼む
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/08(日) 03:43:42.56 ID:xhrF3EpD0
感想ありがとう戦
というか私が言われてるのは見事に背景が描写不足!なんですね。
これはもう皆様に「ご指摘本当にありがとうございます。」
としか言えません。肝に銘じます。

こうなると加筆してUpが一番の指摘御礼な感じなんですが、それは無しなんでしたよね。
これを伸ばそうとした時に直に生きる指摘で俺得が悪いくらいです。
や、延ばす予定はないんですけど。

>>394>>395>>396>>397
感謝
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/08(日) 03:49:19.57 ID:qgMhGmAUo
>>377>>399
「壊れてしまう」に違和感があったかああ!

わかりやすい文章でコメディだけど、地の文はあくまで真面目にをテーマにしてたんだが
この部分だけ直せてなかった。
「崩れ落ちてしまいそう」という表現なら違和感も減ったかな?

提出期限が0時までだと思い込んでいたので、見直す時間があまり無かったせいもあるけど
逆にあまり見直さなくて良かったとも思ってる。

基本的に辛口で毒舌なので他の人のSSに対する感想については出来るだけ嫌がられないよう
ぼちぼちさせてもらいます。
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/08(日) 06:04:30.03 ID:xhrF3EpD0
今更ですが>>398の感想の>>360>>368宛てです
地震で起こされたついでに来てみたら間違ってた
ということで寝なおし
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 06:11:47.94 ID:E4eg+KHMo
感想返し
>>398
声に出して読みたくなるのは狙って書いてたけど、実際には二つ目の台詞しかリズム良くないっていうね
「そうか」の違和感はどういうことかよくわからないっス、できればもっと詳しい解説お願いしたいっス
「俺」はちょっと気になったけど、やっぱりそうか多かったかthx
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 06:28:55.07 ID:E4eg+KHMo
ところで、個人的に感想って物語書くよりムズイと思う
物語の上達にもつながると思うので、感想の書き方についても誰かにご教示いただきたい気分だぜ
好き嫌い、または印象という漠然とした視点書くことが多いから、ここをこう直すとよいみたいな具体的な改善方法を書けるようになりたいしね
まあ他の人の感想見てその視点をパクるので十分いけるとは思うけど
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/08(日) 07:47:17.68 ID:c9EanCGBo
感想お返しします。
アドバイスありがとうございました、長いです。

>>371
そうですね、ちょっと一般常識でありえない行動なので説明はもう少しあるべきでした
冒頭に少女のワンシーンを入れればよかったかなとも思います
わかりやすさが今回の課題だったので、そう言ってもらえて嬉しいです。

>>374
ここまで読み込んでくれると書いた甲斐もあります
アンチヒーローがどちらであるかということ、私がどのような存在であるかということは
あえてぼかしてみたんですが、楽しんでいただけたようで凄く嬉しいです
もう少し台詞を増やして話に重厚さを出すというのは確かに魅力的ですね
量との兼ね合いもありますが、チャレンジしてみます

>>387
地の文を無機質にしたのは、一応意図的ではあります
ただそれで読みにくさを招いてしまっても問題ですね
その辺も含めて冒頭に少し丁寧な物語りを入れればよかったかな、参考にさせてもらいます

>>398
同一人物の台詞が続いた時に読みづらいのは、本当に悩みで……
現状わかりにくいのは事実ですし、なんとかして直します
最後は確かに改行入れた方が余韻も出ますし、いいですね
対句表現は好みで入れたがる癖があるので、評価してもらえてとても嬉しいです

>>399
台詞の件については、正直指摘のとおりです。
課題として次回に活かしていきます
詞的な雰囲気というのは短文と韻、それから対句によるものなんでしょうか
それ自体は自分の好みによるものですが、全体に漂うとSSとしての空気がまた違っちゃいますね
小奇麗にまとめすぎないよう、もう少し細かな動きも描写してみます。
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 08:34:36.22 ID:E4eg+KHMo
>>407
感想返しにさらに突っ込むのも無粋だと思うけど、間違って伝わっているような気がするので失礼をば
地の文が無機質、なんじゃなくて、背景の説明の仕方が無機質に感じたんスよ

冒頭、彼女が世界を救ったことについて、そして、「声を発した少年はヒーローと〜」「声を受けた少年は反逆者と〜」
これはそのまま端的に説明されている
それはシンプルで負担が少なくていいんだけど、その代わりそうなの? 以上の感想が持てない
履歴書で、「僕は責任感のある人間です」とだけ書かれているような感じ
もうちょっと物語で説明してもらえれば説得力みたいのが増すと思う、ということ

もし「いやそれが狙って書いたことで、感想についても正確に理解してたよ?」という事だったら申し訳ないっス
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/08(日) 12:01:01.31 ID:vpgjN6aAO
おはよー
ここまで投下への感想は落ち着いたので、軽く感想返しのほうも。

>>375
やっぱり堅いかぁ。前も似た意見聞いたし、根本的に文語脳なのかも。
これで普段はラブコメ書いてるってんだから、文体と擦り合わせが足りてない可能性ががが

>>387
長年温めた計画、みたいな意味合いでかけたけど、そうか優しい印象にもなっちゃうか。
計画と書かなかったのは夢とする理由があったからなんだけど、この組み合わせは要再考と憶えておくよ。

>>398
情景描写を下手に擬人化めいたものにしたのは失敗だったかー。
軽くなるという意識は無かったから、参考になる。

>>399
返す返すも、カッコで心理を抜き出したのは安直だったと思い知る。
アンサイクロペディアは勉強になるね……二流wwww


感想見て思うのは「違和感を感じた」がチラホラあって、意外。
感感俺俺じゃないんだから。いやボケか、ツッコミ待ちなのか?
中にはちょっと前に普通に「違和感を覚えた」と書きながら、そのあと「感じた」とも書いてたりする不思議。
やはりこの文章力スレならではのさりげない釣りと見た。そんな餌で釣られクマー(AAry


次のお題タイムまで自スレのほうを書き進めるのが順当なのだが、ここ読んで考えさせられ若干及び腰になる罠
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 12:31:38.71 ID:E4eg+KHMo
>>409
再び感想返しに
「長年温めた夢」なんだけども、俺が反応したのは「長年温めた」の部分
いやもうこれは個人的な感覚の問題だと思うのだけれど、長年温めるっていうのは、大事に大事に抱えて、優しく優しく育んで、ってイメージがあるんスよ
母性を感じるとでもいうんだろうか、なんとなくアンチヒーローのクールさに合ってないような気がしたわけなのです

あと俺は、長年温めた〜と来ると(創作的な)ネタ、アイディアという言葉を尻にくっつけたくなるので、
一種オタク的なイメージとアンチヒーローのクールなイメージが俺の中で反発しちゃってるのかな―とも思う

俺の中での話すぎて申し訳ないっス
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 13:06:52.57 ID:Xltx0Fp8o
>>409
しまった
「頭痛が痛い」「違和感を感じる」の類は少し気を抜くとすぐやってしまう…orz 特に普通のレスでは
言語化する事に慣れてきたからこそこういった初歩的な部分を気を付けないと駄目だな
気付かせてくれて感謝
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 13:16:16.41 ID:Xltx0Fp8o
ただ、読み専さん(ここにいるのか知らんが)はあんまり作法・表現ミスとか気にせず
レス付けちゃっていいと思う。感想レスの敷居が高くなっちゃいかんので連投すまん
俺も感想レスの時はあんまり気にせず書いちゃってるしなー
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 13:56:24.70 ID:OjqT9Wng0
感想はもうそれぞれでいいと思うな。

具体的な指摘をしようとする時は、書かれたSSを読んで「ここが少し微妙だな」と感じた部分があったなら
その部分を引用符(>)なりをつけ、コピって持ってきて、その後に自分ならこうするという例を書けばいい。

個人的には表現方法の指摘はもっとあってもいいと思う。
動作・現象を文字で表す時に、相手に情景が伝えるのを手助けするのが比喩表現。
単に動作を書いただけでは中々イメージが持てないときに、パッと読者の頭に情景が浮かぶようにし、
短い文章で伝え、文字数を節約するもの。いつも文字数を減らせるとは限らないが。
小難しい言い替えは比喩表現の本来の目的と異なる。むしろ逆効果になってしまうんですね。
もっとストレートに書いてもいいじゃないかなぁと思う点が多いです。

ただし、人物の心情機微に関してはこの限りではない。考察の余地を残す必要がある場面は多々あるので。
まぁ、短編でこの余地を残しすぎてはなんだか分からなくなってしまいますけどね。


でもでも、何度も繰り返しになるけど、感想は一行程度の短いものでも構わないんですね〜。
変に気負う必要はないんですねー。
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 14:11:11.73 ID:Sy23VYVc0
ではまず他の作者様への感想から

>>357
元ネタ知りませんが、普通にサクサク読めました。
ただ、まばたきするだけで砂を目から洗い流せる、ってのが少しおかしいかなと思いました。

>>368
なんか文体とか展開とかがすごく透き通ってます。バトルのはずなのに清々しく読める。オチは全然清々しくないのに。
というわけで文体と中身のギャップが一番感じたことです。もうちっと細かくねちっこく描写したら一致するかなと思います。

>>372
地の文がちょっと固まりすぎてて読みづらかったです。セリフをもうちょっとバラけさせたらいい配分になったんじゃないですか?
いや俺もいい配分で書けたこととかないけどね

>>376
クソッ、シリアスばっかの後だったからかモロ腹筋にヒットしたww
けど読み終わった後にところどころ地の文に遊びがあったり急にシリアスになってたりして、緩急がついてるなーと思わされたな。

>>378
戦闘……か?
若干のお題回収不足感は否めないけど、ヒーローの心情とかはよく伝わってきて良かった。
ていうかこれは幼稚園児に蹴られてつんのめって、間違って炭酸を買っちまったんだよな? その辺だけイマイチ伝わらなかったな。あくまで俺の個人的な意見だけど。

>>384
一人称だったら、どのセリフが誰のなのかを明確にしないとヤバイぜってコメントしたかったけど既出でしたスマソ。
それ以外は特に気にならなかったかな。もう少し「俺」って単語を減らせればもっと読みやすいかと。

>>391
固有名詞が結構出てきてたのが印象に強いかと。ただ描写が曖昧な点が少し多くて、状況がハッキリとは読み取れませんでした。
これはよく読み返したい文章。最後の一文がメッチャインパクト強くて、できれば最初の方にバンと出してくれたほうが良かったかもです。


さて散々長文かいたけどところどころ敬語が剥がれてる……こういう雑なくせに長い感想が、他の人が感想書きづらい元凶なんだろうな。
日本語の勉強しなおすか。

というわけで投下してみる。
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 14:12:22.82 ID:Sy23VYVc0
 その日、多くの人に危機が降りかかった。近年稀に見る規模の立てこもり事件により、約1300人の命が風前の灯火となったのだ。
 同日。立てこもり事件が発生した高層ビルより二つほど通りを挟んだ薄暗い裏路地に、二つの人影があった。

「どいてくんね?」
『拒否します』

 短いやり取りの後、片方の人影――ベージュのコートを羽織り、ポマードでオールバックに固めた金髪をしきりに触っている――が煩わしそうにため息をついた。かけたサングラス越しに視線を腕時計にやった。時刻は午後七時ジャスト。
 まだ十代にも見える外見である。コートのポケットに入っているタバコは今年からやっと吸えるようになったものだ。以前からコソコソと嗜んではいたが。

「どーしてくれんだテメェ。後30分で妹の誕生日パーティーなんだよ。バースデーパーティーなんだよ。大事なことなので二度言いました」
『二度手間ですねこのシスコン野郎』

 もう一方の男性は無感動に応答した。こちらはファー付きの白いダウンジャケットを着ている。黒髪はうなじの辺りで一本に束ね腰まで垂らされていた。片方と同じく若々しく見える。

『誕生日パーティーなど後回しです、引き返しなさい。立てこもり事件により1300の人間が生命の危機に瀕しています』
「知るか」
『あなたとて曲がりなりにも『機密特捜機構』の人間でしょう。人々の安全を守るのが使命であるはずです』
「そんなもん大真面目に考えてんのは上のお偉いさん方だけだっつーの。他のメンバー見てみろって。コンパ、ネトゲ、バイト、里帰り、ラブホ……せっかくの休暇だ、みんなやりたい放題ってのが普通だろ」
『最後のはあなたでしょうが』
「だって逆ナンっつうのはヤってオーケーサインだろ」
『相も変わらずの色情魔っぷりですね』
「悪い、生まれつきだ」
『よく妹に手を出しませんでしたね』
「マイシスターは俺の聖地だからな。むしろ女神か。この仕事だって妹養うためにやってるんだし」

 調子のいい口論を続けながらも、互いの動向を探る。彼らは戦いのプロフェッショナルだ。
『機密特捜機構』なる組織は、増加する凶悪犯罪に対抗するため、充実した装備と戦闘に長けたエキスパートを集め結成された。日夜凶悪犯罪と戦う彼らにも休暇はある。
 そんな貴重な休暇の時に限って、この立てこもり事件である。

「……これが最後通告だ。どけ。俺は仕事か妹の危機でない限り動かねえ」
『返答は変わりません。拒否します。引き返し、人質たちの救出に協力しなさい』
「それこそ拒否だ。仕事じゃなきゃ、何人死のうがカンケーねぇ。誕生日パーティーが俺にとっての最優先事項だ」
『――――なら』

 白いジャケットが脱ぎ捨てられた。両手のサブマシンガンが照準を正面の男に重ねる。二つの銃口を向けられた金髪の男は、驚いた様子もなくおどけた口調で話しかけた。

「おうおう力ずくか。いいねいいね嫌いじゃないぜ、その眼」
『特注の特殊電撃ゴム弾です。直撃すれば失神は免れませんよ』
「上等だ。来い」

 一方もコートから拳銃を取り出す。サプレッサー付きのそれを指に引っ掛けくるくると回しながら、男は唐突に消えた。
 瞬間、サブマシンガンの引き金が引かれる。視界を横切る影を追う、が捉えられない。

「おっせえ! んなスピードじゃ三輪車にも追いつけねえぞ!」

 咄嗟にサブマシンガンを構えていた男は後ろへ飛び退いた。ゼロコンマ数秒をおいてその場に拳銃より射出された9mm弾が何発も突き刺さる。内一発が片方のサブマシンガンを貫き、飛び散った破片がグリップを握っていた手や腕を裂く。金属質な騒音が響いた。

『は、や』
「違うな。テメェが遅すぎるだけだ」

 拳銃を持った男が着地、したかと思えば目にも止まらぬ速さで飛びかかってきた。迎撃するため残ったサブマシンガンを向けるが、左足の横なぎの蹴りに銃口を逸らされる。
 そのまま押し倒された。右膝がアゴに直撃し拳銃が額に突きつけられる。引き金に指が一度かかり、すぐにほどかれた。

(格が違いすぎる――これが、私の限界か)

 あっさりと勝負はついた。悔しさに黒髪の男は歯を食いしばった。
 そこで頬を伝う液体に気づいた。

『…………お見事。さすが期待の新人ですね』
「うぜえ。つか右膝超いてえんだけど」

 コートについた汚れを打ち払いながら、金髪の男は立ち上がった。拳銃をポケットに戻し、代わりに反対側からハンカチを引き抜いた。

「垂れてんぞ、オイル」

 目から流れ出していたのは涙ではなく潤滑油だった。男は機械仕掛けの身体を持った、サイボーグなのだ。

『……失礼します』

 ハンカチでオイルを拭う彼を見ながら、男はふと唇を開く。

「そういやテメェは専ら後方支援だっけ? 確か己のエゴのために全身をサイボーグ化した元マッドサイエンティストには華々しいヒーローは向いていないとかナントカ」
『…………』
「テメェ馬鹿だろ。誰かを救うのに、救う側の事情なんざカンケーねえだろ。誰が救えるのかじゃねえ、誰でも救えるんだよバーカ。誰だってヒーローになれるんだっつうの」
『………………私、は』

 分かったら行ってこい、と男は犬でも追い払うように手で払う。彼がまだ立ちすくんでいる間に、男は誕生日パーティーへと向かってしまった。

 この日、多くの人々に危機が降りかかった。そしてこの日、多くの人々が危機から救われた。
 人命救助に協力し、多大な貢献を果たしたのがサイボーグであったことから、これより日本にて空前のロボットブームが起こるのだが、それはまた別の話である。
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 14:13:53.82 ID:Sy23VYVc0
壮絶な仕事の押し付けだけでした、という乱文。
ていうかageちまったよ俺マジカスorz
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/08(日) 14:40:59.99 ID:vpgjN6aAO
ageてもイインダヨ!

>>415
感想は任せろーバリバリ

といきたいところだったけれど、読んでみたら実にコメントしづらい完成度。密度高い。

ご存知SSという表記の意味は幾つかあり、415はショートショートとしてかなり簡潔に完結していると見受けた。

この文章をお題に「別の話」を捻り出すのはさぞやり甲斐がありそうと思う。これが胸熱か……
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 14:47:44.50 ID:E4eg+KHMo
>>414
台詞については悔しいけど言葉もねえや、一人称は訓練しとかないと

>>415
あまり褒めすぎると馴れ合いになるが、なんだこれ(褒め言葉)。個人的ドストライク
違和感を覚えるところがほとんどなく、だいぶ書きなれてるんだろうな、と思わされた。ああ、強制的に思わされた
褒めると止まらなくなるので、無理やり批評する。ホント無理やり

>拳銃を持った男が着地
それまで滞空?してた、ってことなんだろうけど、滞空って姿勢変えにくいし、隙にならないかな?
そこだけ時間が伸びているうような、スピード感の減退を感じた

>(格が〜)
ここだけがらりとサイボーグさんの雰囲気が変わってる気がする
『』じゃないからだろうけど、雰囲気の変化を狙ったわけじゃないからちょいと考えた方がいいかも

あと細かいけど潤滑油って、目から出るもんなのだろうか
頭部って潤滑油を使う機構がないってイメージ。詳しくないけど
どうでもいいが、ロック●ンX漫画の影響でロボの目からでるのは冷却水という個人的決めつけ
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 15:14:36.86 ID:XyOaFpaDO
>>414
一発でも蹴りを入れれば戦闘ry
すいません自分でもあんま回収できてないなと思います
バトル描写が苦手で正直逃げました
"つんのめって間違って買った"描写をしようとしました
やっぱわかりにくいか…
文章をもっと単純にすればいいのか、詳しくすればいいのか
わかりにくいとは思うんだけど、
どう書いていいのかわからないorz
語彙を増やせってことだろうか…いや文章力か
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/08(日) 15:17:28.17 ID:2T2DupQA0
>>415
凄い完成度。文章に関しては、俺のレベルでは突っ込むことが出来ない。
ただ、俺の読解力不足だったらすまんが、
黒髪の人は金髪の人に人助けをさせようとしたんだよな?
それなのに『失神は免れない』銃弾使ったら意味なくね?と思った。
上で言ったとおり俺の読解力不足だったなら、分かりやすく説明してくれると助かる。
いや、偉そうに言える立場じゃないよなゴメン。
どうか分かりやすく説明してください。
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/08(日) 15:21:52.29 ID:qgMhGmAUo
>>415
感想や批評ではなく、読んで感じた疑問なんだけど
なんでアンチヒーローはサイボーグより速くて強いの?とか
サイボーグなのに9o弾が当たった位でダメージ食らうの?とか
20歳未満でマッドサイエンティストだったの?とか
膝蹴り食らっただけで目からオイル出るのってポンコツ過ぎじゃね?とか色々思った。

俺、アンチヒーローアンチなんで、このお題のSS読むの苦痛なんだよね。
特に>>415はアンチヒーローすぎるくらいアンチヒーローなのでサイボーグの人が負けてマジでイラッとしたわw
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 15:25:56.22 ID:XyOaFpaDO
>>398
マニュアルというアンチヒーローの必殺技の不発……
ごめんなさいどういう意味か教えてください
自分バカすぎ泣ける
>>399
>ぷしゅりと〜
た。た。で続くからって無理に入れました
取り出して、立つまでの描写入れるか迷ったんだけど、
細かすぎるかなと省いてしまった。失敗ですね
辞令書については仰る通りです、嬉しい
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 15:32:31.89 ID:XyOaFpaDO

>>415
戦闘がかっこいい!
面白かったです
>男は〜サイボーグなのだ
この描写はいらない気がする
後の説明でわかるし
これは個人の好みだけど、
>以前からこそこそ〜
>コートのポケット〜
は倒置法? 使う必要ないと思う
少しひっかかった
全体的に完成度高いっす
424 :215(1/2) [sage saga]:2011/05/08(日) 15:36:02.95 ID:Fy/r/bzvo
>>215を書いたものです。どさくさにまぎれて、200レス以上前に投下したときに頂いた感想のお返しをします
自分でも感想もらいっぱなしで放置はさすがに無いと思いましたので……
日を跨ぎましたが、ちゃんとご本人の方々に読んで頂けるかどうか。本当に遅くなって申し訳ありませんでした

>>219
拙作に「心境の変化がよく表現されていて上手い」との言葉、身に余ります
読み手の想像力を刺激できたのが本当であれば、活字作品の理想を遂げたということ
お褒めいただき恐縮です。ありがとうございました


それからそちらはお題に投稿された方ですね
こちらが感想を頂いておいてそちらに感想を送っていないのも無礼極まりないので、この場を借りて>>210-212の感想を
言うまでもなくあくまで個人の感想なので、参考までに聞かれてください

真っ先に目についた残念な点は
>亜人の腕は空を裂き、走ってきた勢いそのままに数メートルも走り抜けた
の文にて、和風の世界観が展開されているにも関わらず「メートル」という単語を使用していたこと
参考までに、歴史物でこういった「露骨な」現代の単語を使用することは、一部ではタブーとまでされています
たとえ読者への配慮でこのような単位を用いたのであったとしても、個人的にはいただけないと思われます
ここは「間(けん)」や足の歩幅などで表現してほしかったです

またすでに感想に言われているように、地の文にて「〜た」の表現が多すぎて臨場感が薄らいでる気がしました
ただ一文一文が非常に読みやすく、淡白さの味もあるので、これはまったく許容範囲かと思います

最後の「血の雨が降った」は、悪く言わせてもらえば安直な気がしました
なぜなら差し出された形の首を切り落とした場合、血が吹き出るのは真横で、上には吹き上がらないからです
戦いが続いていくことを暗示するのであれば、返り血や物音の継続などの方が場面に適したかもしれません

特に気になったのはそれらくらいで、総評すると作品の完成度は高いと思います!
一文のサイズや間の取り方、表現の選び方や台詞の置き方など、細かいところも(上から目線ながら)十分及第点と思いました

>設定とか何も考えずに、頭に浮かんだイメージをそのまま書きました
とありますが、脳内イメージを文章に起こしてこれだけ洗練させられるのは素晴らしいです
しばらくお題スレに張り付いていますので、機会があればまた書かれてください


>>222
あえて少女の感情をあまり地の文で表現しないようにしたのが功を奏したようで何よりです
しかし残念ながらお嫁にはあげられません、申し訳ありません

中盤以降は確かに、おとなしく少女の身体に霊が憑依したことを率直に表現するべきでしたね……
いま読み返してみてもはっきり失敗でした。ご指摘ありがとうございます

>文章は書き慣れているようで、読者を引き込む上手さもある。完成度高し

その実はまだまだ未熟なことも自覚しておりますが、こういった言葉を投げかけていただくと自信・向上心がつきます
この場限りながら、光栄の至りですと答えさせてください。ありがとうございました
425 :215(2/2) [sage saga]:2011/05/08(日) 15:38:20.29 ID:Fy/r/bzvo
>>223
このお題を1レスに収めようと思ったら、すべてを端折るかたちで場面の切り抜きにせざるを得ませんでした
しかし確かに、読者のことを考え、何も引っかかりが出ない程度に判然とした展開にするくらいの善処はできたかと思います

「前置き」と「沈黙をおいて」は完全に推敲不足です。この文章は明らかにおかしい
これでいいやと流し読みで甘えたりせず、よく目を通すべきでした
やはり全体的に力量・配慮不足ですね。教訓とさせていただきます。ご指摘ありがとうございました


またこの場を借り、そちらのお題投下の感想も書かせていただきます

全体的に少し漢字の変換率が高いような気がしました
自分はすらすら読めたのですが、人によっては読みづらいかもしれません
あえて変換しなかったり、ひらがなで間に合う表現を選んだりして
文を読み解くスピードを上げやすくするのも手と思います

>襲い来る飛竜に抗う様に、青年は剣を構える。
>やがて、自らに飛び掛かってきた竜を避けるように青年は飛び上がると、

この二文はちょっと違和感を感じました
「襲い来る→飛び掛ってきた」の重複がマズイのでしょうか? 「やがて」のテンポが悪いのでしょうか?
はっきりした理由は分かりかねますが、大事な場面なのでもう少し改良を検討してもよかったかと思います

全体的には、短い中で十分な世界観が引き立っているように感じました
また後日談のような締め方も、簡潔かつ後味もよく成功していると思いました!

お題が難しかったのには同意です。起承転結が決まっていると収めるのに苦労しますよね
けれどもこういった場での難題というものは、良し悪しともあれ達成すること自体に意義があると思います
お互い頑張りましょう

>>230
言われて見直し、他の投稿と比べてみてとても納得しました。これ台詞多いです
台詞と地の文の比率は難しい課題ですね。ご指摘感謝します
くすぐられるような面白さとまで表現していただき、書き手冥利に尽きます
面白いと言われるだけで人一倍に甲斐性・満足を感じる性質なのです。ありがとうございました


こちらもこの場を借りてお題投下(>>224)への感想を――

>彼は五十メートル程の距離を空け〜対峙した
空けすぎかもしれませんね
最初から銃撃を意識したのならともかく、丸腰で肉弾戦をするには遠すぎではないかと
またそのくだりで、素手の彼は巨躯の化け物に対し、具体的に何を仕掛けようとしたのかという描写も必要と思いました

さらに銃を受け取って確認したとき、舌打ちした彼の心境がつかめませんでした
男の手助けが不快だったから? それに頼らざるを得ない状況が歯がゆかったから?
別の表現だとどうだったのでしょうか……ダッシュで囲んでいることもあって、少々浮いているようにみえました

短い文章に収めているせいで仕方ないことと思いますが、キャラが起こす行動の動機が飲み込めない部分が見受けられました
しかしストーリーは重厚ながら分かりやすく、風景の描写やアクションなど地の文での魅せ方のテンポもかなりいいと思いました
よければ別の文も拝読したいので、また執筆されて下さい!
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 16:40:45.67 ID:OjqT9Wng0
>>415
描写がかなり細かく書かれてるのに、スムーズに読めた。いらない情報をしっかり削ぎ落として
表現していることが分かる。キャラ、状況、戦闘が読み手にちゃんと伝わっていて読みやすい。

お題の“アンチヒーロー”がまさしくそれ、というものでしっかり書けている。
どのぐらい書けているかと言うとそれが嫌いな人をイラッとさせるほど。さすが。

しっかり構想が練れていることに関しては言うことなし。
内容が“アンチヒーロー”における王道のものだったので、次回は少し邪道の内容にしてみて、
捻ったものにするとより練習になるかも。
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/08(日) 17:59:24.01 ID:XyOaFpaDO
今日の夜の締め切りまでに、
たくさん投下されるだろう予感!

wktkついでにage
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/08(日) 18:13:18.07 ID:qgMhGmAUo
専ブラ使ってるけど安価が多すぎて、自分のに対するレス以外は
誰がどれにしたレスで、どれがどのレスへの返しなのかごちゃごちゃで
全然分からなくなってきたw

もし他の人もそうなら、直近に投下されたもの以外はレスが付きにくいんじゃないだろうか
投下するなら今がベストのタイミングかもしれない
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/08(日) 18:55:25.55 ID:xhrF3EpD0
新着作品感想とレス返し

>>415
上手ぇなぁ。畜生。バーボンも出せやしねぇ。
ということで褒める練習。
お題を生かした良作と思います。
ここを読むような人であれば無理なく想起できるであろう「ありがちな組織」と
「ステレオタイプなキャラクター」を無理なく動かしきっていると感じました。

や、オリジナル作品を書いてあるところにこんなことを書いたら
けなしている以外のなにものでもないんですが、ここは鍛錬スレなのでひとつw

>>405
私は全部流れを意識した「読める」文になってたと思ったんですが。

「あいつに死んでほしいなら、同じくらい[ピーーー]と望まれるって知った方がいい」「そうか」
まで一息で読むと流れる気がするんですが、でも、この「そうか」って、
地の文も含めて唯一他の人の言葉なので、こんなに軽く流してしまって良いのかなぁ、と。

台詞がだんだん長くなっていって、地の文も少しづつ長くなっていって、という流れに乗るならば

男は短く「そうか」と言った

ぐらいに組み込んで改行したほうが流れだけを見たらスムーズな気もするし。

長々と書いたけど実は一行改行で良いのかも知れないw

>>409
違和感は有ったり無かったり覚えたり感じたりしません?
頭痛が痛かったり馬から落馬したりとかはしないし、
勿論「既視感」みたいな「訳語」だから「既視」と「感」が切り離せないものでもないから、
「違和を感じ」てもおかしいことも無いと思いますし。

>>414
他の方からの指摘もみて「あー、出せてないなー」って思ったのが
「ヒーロー君は逆に力におぼれかけてる」感じだったんですね。
いただいた指摘、しっくりきました。
勿論描写不足もありますが。ありがとうございます。

>>422
必殺過深読み炸裂させてしまっただろうか
いや、ヒーローとして描写されてるけど、「会社員ヒーロー」として描写されてるので、
一般的な「ヒーロー像」ではないよね、と。
「納得行かないからヒーローにも蹴りを入れる子供」を「ヒーロー」に読み替えれば、
マニュアルに頼む会社員ヒーローはアンチヒーローなのかな、と。
謎の深読み。気にしないで

>>428
感じるんだ。自分へのレスだけはしっかり返すんだw
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 19:26:42.16 ID:E4eg+KHMo
>>425
そういえば巨躯の化け物に対する第一打は考えてなかった、主人公も俺も焦りすぎww
さて、次に言い訳じみてくるけど、
銃を受け取っての舌打ちはそれによって改めて彼女(化け物)を殺さなきゃならないという事実を確認したから
しかも(これも描写が足りなくて伝わらなかったと自覚はしていますが)銃を渡してきた男は彼女を化け物にした張本人
こりゃー舌打ちしたくもなる……んじゃまいか多分。それで矛盾がなければ、課題は描写の仕方っスね
キャラ行動動機も確かに描写不足。精進します

>>429
なあるほど、主人公の台詞と兄貴の台詞がリズム的に一体化しちまってるのか
自分は流れを考えてるようで考えてないことがよくわかった
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 19:46:00.60 ID:OjqT9Wng0
やっべ。もう〆切だな。まだ書こうっていう頭にも入ってないけどまだ間に合うかな。。。


次回のお題は、
安価を3つ出し、お題を3つ設定します。好きなお題を一つ選び書いてください。
書ける短編SSは一人一作でお願いします。

創作期間と感想期間はどうしようか。
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 19:57:50.99 ID:XyOaFpaDO
感想期間は今回と同じく三日間でいいと思う
執筆期間は木曜0時からだから…ワカンネ
平日だしな
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/08(日) 20:06:12.53 ID:qgMhGmAUo
スレがもったいないという理由で安価を100、105、110みたいにするのではなく
100、101、102みたいにするのは貧乏性すぎるか?
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/08(日) 20:06:32.37 ID:vpgjN6aAO
三つのうち一つだけって縛りが、どういう効果を生むのか……今からドキがムネムネ
お題はともかく安価は狙っていきたいな。

>期間

現状挙げられてる「創作2日、感想3日」のままでいいのでは。
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/08(日) 20:15:48.69 ID:vpgjN6aAO
あと今のうちに確認されたい点あり。

0時の安価で501,502,503と指定されたとする。
このとき安価先の501や502,503が、安価指定を狙ってたりお題以外のレスだった場合について。

0時の人が欠けた部分を再安価する?
それとも、あくまで安価先の人が改めてお題を掲示する?

ここ、意見割れて決まってなかったような
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 20:20:26.27 ID:XyOaFpaDO
再安価か、安価下でいいと思う。
あと不安に思った、
安価出すの木曜だよな?
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 20:21:17.29 ID:OjqT9Wng0
>>433
いやそれでいいと思う。範囲を広くすると安価に関係ないレスが入ることもあるし。
連続でいこう。

とりあえず「創作2日、感想3日」でいこうかな。平日だから参加出来ない人もいるかもだけど
ここで書く機会はいくらでもあるし、時間があれば参加してくれ。


皆は自分のSSは書けてるのか?ここで短編SSを書くのと感想書くことばっかで
本来のSS書きの活動の手は止まってないだろうか?

最初にお題更新を一週間としたのは、そういった意味合いのため。
なので次回が終了したら、一週間案も考えてもらってもいいだろうか?

またそれと同時に次回終了時に安価の方法について議論の時間を設けてほしい。
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 20:33:54.19 ID:c7bP/PtF0
>>437
創作期間二日って短くない?個人的な感想だけど。感想期間は三日で十分というかベストだと思う。
このままだとスケジュールがギチギチで、他のSS執筆が進まない。



遅れて感想返しと説明。

>>417
ショートショートはそれなりに書いてるぜ(キリッ
とか高校生が言ってもマジ説得力皆無な罠。こういう感想は励みになるからマジサンクス。

>>418
やっぱ滞空は失敗だったか……どうせなら壁キックコンボでかく乱させるとかすりゃ良かったorz
サイボーグさん(←この呼び方気に入った)の雰囲気が変わったのはホントに計算外。つまり失敗orz
潤滑油に関しては思いつきでやった。ロボットが涙流すならオイルかなーと。くそっ、冷却水は盲点だった……

>>420
『失神は免れない』→一度気絶させて現場に運び強制突入させる
ということだったんだがやはり説明不足か。完全にこちらの落ち度でした。もっと明確な説明を心がけなければ……

>>421
なんでアンチヒーローはサイボーグより速くて強いの?サイボーグなのに9o弾が当たった位でダメージ食らうの?20歳未満でマッドサイエンティストだったの?膝蹴り食らっただけで目からオイル出るのってポンコツ過ぎじゃね?

何 一 つ 言 い 返 せ ね え

一つ言い訳すると、アンチヒートーはすごくつよくてすごくはやいんだよ!

>>423
倒置法……背伸びしすぎたか。慣れないテクを無理に使おうとするとやっぱボロが出るな。以後気をつけなければ。

>>426
アンチヒーローを伝えられているならこの上ない喜び。
邪道か……正直一ひねり加わった話になると書けなくなる。思考が安直なんだよなあ。

>>429
「ありがちな組織」と「ステレオタイプなキャラクター」は俺の大好物さ!
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 20:40:49.19 ID:OjqT9Wng0
>>435
基本は安価を受けた人がお題を練って提示する。出来ないなら再安価。
放置されたら誰でもいいんで、決まってない安価数分の安価出してくれ。
放置かどうかの判断は30分くらいでいいかな?
お題が書きこまれていたなら今まで通り。
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 20:42:30.84 ID:XyOaFpaDO
>>429
なるほどなぁ
大して何も考えずに書くから、
こう指摘されると
あぁそれがいいなぁって思う。
ということで、
ここは深読みじゃなく、そういう設定だったということで一つ! あ、だめ?
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 20:54:12.34 ID:OjqT9Wng0
>>438
短いか。じゃあ決定はまだにさせてくれ。

個人的には、今日を境に更新期間を一週間にしたい。ちょうど日曜日だし。本当は土曜日の24時がいいんだけど。
しかし、やる気満々の人はそもそも一週間はなげーよ!って言う人も多い。更新期間についての意見がほしい。


あと、自分の本来のSS活動がちゃんと出来ている人のみ参加してほしい。
ここはあくまで練習場だってことは忘れないでほしいな。
もし、この根本的な部分も変えるべきと言うなら、その話し合いもしよう。
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 20:56:00.38 ID:E4eg+KHMo
うんまあぶっちゃけちゃうと、本来のSS
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 20:59:30.48 ID:E4eg+KHMo
しまった途中送信
ぶっちゃけちゃうと、本来のSSと同じかそれ以上楽しいんだよなここ。個人的にだけど
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/08(日) 21:06:31.13 ID:c9EanCGBo
やっと全部読めた

>>376
ヒーローアンチヒーローというよりかは二項対立を感じましたwwwwwwww
冒頭の凛とした空気が澪にかっさらわれた時「あー負けたわー」とか思いました
自分は壊れて〜のくだり嫌いじゃないですね、後半のしみじみした(?)空気がそこで作られたと思います

>>378
短文を隙間なく詰め込むっていう手法もあるんですね
地の文が一つ下げられているせいで、ほぼ全ての文の左列が揃ってしまっているのが
少々読みにくさにつながっているかなと思います
でもこういう叙情的な書き方は暖かくていいですね、こんど真似してみたいです
自販機に手を入れる→ぷしゅりは前にもある通り、表現を工夫して缶を手に取る描写があればよかったかなと

>>384
「あいつに死んでほしいなら」「そうか」と、この文の間に改行がないのですが
その直後にようやくあった〜と続いている所に違和感を覚えました
口火を切り出してからようやく、といった意味なのだろうとは思いますが
主人公の感じるやるせなさが端々に漂っていて、全体として馴染みやすい文だと思います

>>391
力と振るう、この二つが節々に織り込まれているのはやはり最後の一文を書きたいがためなのでしょうか
せっかくだから全段落に入れてしまうとか、やりすぎるくらい強調してもよいかなと
あとちょっと読みにくさを感じました。
主人公の口調がですますから命令に移った辺りは感情の昂ぶりとかなんでしょうか
でも最初のシーンから苛立ってますし、ここは統一したほうが読み手に優しいと思います

>>415
驚くべき読みやすさですね……
強いて言うなら、『は、や』の所がワンテンポ置かされるせいで
少しスピード感が削られているのではないかというところですが、自分の読解力の問題かもなのでなんとも
バトル描写の上手さに痺れました
445 :>>260お題現時点SS [sage]:2011/05/08(日) 21:12:10.81 ID:Jcg6OCX/0
追加※右側の安価は投下直後のコメント・訂正・追記

>>357

>>368>>369

>>372>>373 >>381

>>376

>>378>>379

>>384>>385

>>391>>392

>>415
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/08(日) 21:20:13.26 ID:vpgjN6aAO
そうか、次回安価は木曜だったっけ。把握。

>>441
長いと思うものの、言われてることは尤もなので、反対はしづらい。
期間が1週間ならせめて二本目もいきたいってのは、企画の主旨にもとるかな?

本来の活動。
自己申告ではちゃんと出来てるはずながら、そもそも間隔が広いから胸を張って言えるものでもなく。
うちの読者さんがここ見てて催促されたりだとかはさすがにないだろう……たぶん、メイビー

>>443
示された課題に一斉に取り掛かる楽しさはあるよなー。
基本書き手ばかり集まってるだけあって、表現・解釈・展開など気付かされる点も多いし。
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 21:22:55.17 ID:Jcg6OCX/0
>>444
>短文を隙間無く詰め込む手法
すいません携帯だからです手法なんて大層なもんじゃないです
今パソコンから見たら、うへっ見づれえwwwwwwって思いましたorz
缶を手に取った描写がないから、どうしても急になってしまいますもんね
えっなんでいきなりプルタブ開けてるの?
って感じに。ってわかってるなら投下する前に直せってゆー
叙情的は意味がわからなくて調べました馬鹿すぎオワタwwwwww
勉強になりました
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 21:33:00.54 ID:E4eg+KHMo
>>444
感想どうも
>文の間に改行がない
それはきっと書き方・形式の違いかと
俺の場合改行は読みやすさを考慮して要所(台詞と地の文の間など)に入れるだけで大きく区切る意味合いはない
だから隣り合っていようが別の台詞は別の台詞、という形式
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/08(日) 21:39:21.61 ID:qgMhGmAUo
>>あと、自分の本来のSS活動がちゃんと出来ている人のみ参加してほしい。

1年以上書いてない半引退状態で、リハビリ代わりに参加させてもらったんだけど
俺みたいなのは出入り禁止?
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 21:49:38.26 ID:OjqT9Wng0
確かに楽しいと思う。それに収獲もたくさんあるとも思う。
ただここで短編SSを書くことに没頭して自分の書いていたSSが放置されるようであれば、
それは個人的にとても悲しい。元々SSが好きで自分も書き始めた訳で。

皆が一本書きあげたSSを読ませてほしい。中途半端はいくない。


“何か”を書きたくてSSを書き始めたのならそれを完了させてから。
もしくは>>446のように余裕をもって参加してくれるとうれしいなと思います。

>>449
>俺みたいなのは出入り禁止?
まさか!歓迎に決まってんだろ。言わせんな恥ずかしい。
まぁ、物事を決める時なんかは冷静な態度でいてほしいけどな。
でも辛口感想はいいと思うんだぜ。thx!
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 22:03:01.12 ID:Xltx0Fp8o
金曜24時(土曜0時)安価
日曜24時(月曜0時)投下締め切り
次の安価の日まで感想

>>243で書いたのとほぼ同じだけど、俺的にはこんな感じがいいかなあ
これ以上期間が延びるなら、一人1作品縛りだとちょっと寂しい
後、お題の間隔が二週空くと廃れそう

>>449
俺なんてここ来るまでNIPでは読み専だったぐらいだからいいんでね?
長編向けのネタばかり浮かぶのに長編が書けないからなんだがorz
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 22:05:39.26 ID:OjqT9Wng0
>>446
>期間が1週間ならせめて二本目もいきたい

二本目……。どうだろうな。でも2つ書いたら感想は4つだな。
どういても書きたい?魅力的なお題が2つあればそう思うかな?
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/08(日) 22:12:42.04 ID:qgMhGmAUo
別に毎回参加する義務があるわけでもないし、3日に1回くらいでも良いと思うけどな
書く時間だってそんなにかからないだろうし(俺の場合は40分程)
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 22:17:05.57 ID:OjqT9Wng0
>>451
期間についてはそんな感じだな。そのレス見逃してたわ。スマソ。
それでいて感想についてはいつでも受付でいいと思う。
更新期間が一週間以上になることはないと思う。

なんというか、ちょっと物足りないと感じるくらいの方がいいように思うんだが。
おもしろいし、収獲もあるけど週一でしかない。みたいな。
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 22:29:33.93 ID:OjqT9Wng0
>>453
自制……出来るのであれば。
ただこの企画が始まってから自分の書いてるSSがほとんど進んでない人もいるんでないかなーと。

なんとなく気になって覗いちゃうでしょ?皆が書いてるでしょ?必ず感想もらえるでしょ?
書きこんじゃうんだなー、これが。 
と推測。
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/08(日) 22:29:56.72 ID:qgMhGmAUo
>>454
なるほどね。
短いスパンで継続する事によって生じる中毒性ではなく
期間をおく事でわくわく感を煽る方法も良いかな。
製作者スレ過疎ってるし。
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/08(日) 22:58:02.99 ID:vpgjN6aAO
>>452
>魅力的なお題が二つあれば〜
どうしてもというか、そういうケースもあるんじゃないかなぁ、ぐらい。
無論、意見を募って当面禁止と決まったらそれに不服を唱える気はないのよ

>>456
住み分けしたからにはね、進行速度に差がつくのは予想の範疇じゃまいかん。
別に過疎って程では……今日だけで20くらい進んでるし、平常運転でしょ>作者スレ

にしても一本40分は凄い。
357なんかは、お題に当てはまる思い付きまでに数時間、打ち込みとチェックだけでも3時間はかかった始末
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 23:09:43.08 ID:OjqT9Wng0
>>457
過大解釈したかも。スマソ。

>思い付きまでに数時間、打ち込みとチェックだけでも3時間
そのレスよんで、やっぱ一人一作の方でいいように思えてきた。
まぁお題によっては違うんだろうけど。
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 23:10:33.55 ID:OjqT9Wng0
>>457
過大解釈したかも。スマソ。

>思い付きまでに数時間、打ち込みとチェックだけでも3時間
そのレスよんで、やっぱ一人一作の方でいいように思えてきた。
まぁお題によっては違うんだろうけど。
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 23:10:58.50 ID:OjqT9Wng0
>>457
過大解釈したかも。スマソ。

>思い付きまでに数時間、打ち込みとチェックだけでも3時間
そのレスよんで、やっぱ一人一作の方でいいように思えてきた。
まぁお題によっては違うんだろうけど。
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/08(日) 23:11:00.49 ID:XyOaFpaDO
というかあと一時間な件
今日あんま投下されてないなってことでage
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/08(日) 23:29:01.23 ID:xhrF3EpD0
110 7
160 10
260 8
こんなもんなんじゃないかなー
バトル物続いたし

つか、重いな。>板
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 23:45:22.60 ID:XyOaFpaDO
今回二日間の執筆期間だったからもっとあるかと……こんなもんか
ほんとに板重いな
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/08(日) 23:55:44.45 ID:OjqT9Wng0
駄目だ三分の二まで出来たが間に合わない。くそぅ
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/08(日) 23:59:21.47 ID:xhrF3EpDo
最終的に決まったのは二時だしな
まだ二時間あるぞw

どうせ次は木曜まであくんだし
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/09(月) 00:01:13.49 ID:q5tH1DIDO
締め切り

……かな?
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/09(月) 00:03:32.49 ID:ATJRImYG0
すまん。構わず締め切ってくれ。
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 00:07:41.41 ID:q5tH1DIDO
じゃあ一応締め切りで
>>467は午前2時までに投下できそうだったら、投下しちゃおうぜ!
ってことで感想タイムです
今回のSSは>>445にまとめてあるよ!
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/09(月) 00:58:53.06 ID:ATJRImYG0
お題+台詞形式のみという自分ルール発動。パクリという名のおまーじゅ。ほぼ二次創作に近い。またしてもひどい出来だ。

>>260
「まてっ!」
『お前は……さっきの屋敷のやつか。追いかけてきたのか?どうやって?』

「貴様っ!屋敷から盗ったものを返してもらおう。貴様が盗ったその赤い石は先生が後生大事にしていたものだ!
絶対に渡すわけにはいかない。返せっ!素直に返す気がないのなら……力ずくでもっ!」
『おっと!そう言うなって。お前じゃこれの価値は分からないだろう?俺が有効活用してやるって』

「ちょこまかと!お前がそれの何を知ってる!それは博士の形見で私にとって大事な物だっ」
『ああ、お前にとっても大事なものだろうよ。何せこれはお前を創り出した親のようなものだからなぁ。ふふふ』

「は?何を言って」
『まぁ、黙って聞けよ。お前これがなんて呼ばれてるか知ってるか?』

「そんなことどうでもっ!」
『よくないんだなぁ、これが。これはな、賢者の石と一般的には呼ばれている』

「そんな名前聞いたこともない。デタラメでうやむやに出来るとでもっ!」
『思ってない。ちょっと黙れ。一般的とは言っても一般人は知るはずもないんだが。
この石があればあるものが作れるため裏社会ではかなりの高値で取引されているものだ。
そのあるものとは……人間』

「……は?」
『人間を作るためには、材料がいる。その材料とは生きた人間。一人の人間を作るのに必要なその数は約20人。
これで作られた人間をホムンクルスという。石を核にして犠牲になる20人の体のパーツを寄せ集めて作られる』

「…話を聞いたのが無駄だったようだ」
『そうかい。でも一つだけ答えろ。お前、月に一度だけ寝る部屋が違ってたりしなかったか?幼少期の記憶は?』

「……今はそんなことどうでも」
『さっきの話は途中だ。作ったあと生命を維持するためにはまた人間が必要になる。月に一回体のどこかを交換しないといけない。
まぁこれは死んでいてもいいが。例えば臓器だけとか。あともちろん幼少期の記憶もない』

「私がそれだとでも?そのほむなんとかって奴に。馬鹿馬鹿しい。幼少のころの事はかなり曖昧だが全く記憶が無いわけじゃない」
『それがお前のものならな。お前、たまに自分の記憶ではない記憶を見る事が無いか?』

「!そ、それは夢のようなもので誰でもあることだと…」
『先生が言っていたか?』

「し、しかし証拠など無いだろう!もういい!憲兵に」
『それは“元になった”人間の記憶。…しかし、まぁいいぜ。どうしてもというなら証拠を!』

どちゅ

「!―――がはっ」
『見せてやる』

「!!なっ……!」
『さて、心臓を貫いたから普通の人間なら即死のはずだが……生きてるな?それはお前の核が心臓ではないからだ」

「くっ………くぅ」
『ふっ。いい眼だ。その絶望した眼が見たいがために長々と説明してやったんだからな。くくくっ。
無様な姿だ。めそめそと。いっそここで殺してやった方がお前の為だなぁ?え?』

「…………う、うぅ」
『――だが俺は殺してやらない」

「!な、なぜ」
『その方がお前は苦しむだろう?先生様が今まで交換の儀式をしていただろうが、それはもう無理だ。だがお前が直接食えば同じこと。
生きてみろよ。そうすれば再び俺と出会うこともあるだろう」ダッ

『ふははは!生きろ!そしてまた会おうぜ!―――兄弟!!」
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/09(月) 01:01:03.37 ID:ATJRImYG0
遅れて出しておいてさらに訂正。スマン。
五行目 博士 → 先生
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/09(月) 01:04:01.26 ID:ATJRImYG0
訂正箇所が多くありすぎて訂正出来ない。もういいや。台詞の入れ忘れもあるし。
酷評頼む。
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/09(月) 01:25:52.57 ID:TPF3J+Mf0
取り合えず不自然なまでの説明口調が気になった。
読者側には、少し匂わせるぐらいでいいんじゃないか?
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/09(月) 01:37:40.34 ID:ATJRImYG0
>>472
焦ってたから作ってる時は気がつかなかったけどたしかにこれはひどい。
もうね、何か何やら。

前に台詞形式に挑戦しようとして結局出来なかったから今回そうした訳だけど、
全く情報が入れられずにこうなってしまった。もうやらない。

少し匂わせるようとすると、必ず後になにかしらの形で地の文を入れなくちゃいけなくなって
一度全没にした。そんで開き直ってキャラに説明させた。開き直るべきじゃなかった。
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 02:17:42.91 ID:m2aVdA3AO
正式に感想期間ということで、個々へのとは別に今回の一連を振り返ってみる。

>優等生vsアンチヒーロー

が提示されたお題なわけだけど、前者にヒーローを据えたものが多かった。対比が際立つからだろう。
そんな中で主人公を(ヒーロー然としてない)優等生という限られた条件に止めた>>372が光る。
また>>391も、変身ヒーローだが、それ以上にいかにもな優等生らしさが焦燥という形でよく表されている。

次にアンチヒーロー。
情状酌量の余地や、悲しい背景を持つものが目立つ。それはそれで各人趣き深くあり、
ただ、一読して倒されるべきと認識される悪役がもっと配されてもよかったかも。
彼にはこんな同情に値する背景があった……なんてのはキャラの掘り下げとして有意義に違いないにしろ、
時には対決のカタルシスを妨げ、興醒め要因になりかねない諸刃の剣。
魅力的な悪役を描くことの困難さが浮き彫りになったんじゃなかろうか。
>>415は悪役でこそないが異彩を放った。
世界の大事より自身の大事を優先する、アンチヒロイズムの一種の典型を見た気がする。


自分のイメージでは優等生的な思考こそアンチヒロイズムに結び付きやすかったので、
今回相対するものと課題されたのはかなり刺激的でwktkだった。

ヒーロー幻想への苦悩を滲ませるヒーローを描いた>>368
表向き完全なヒーローたらんとするあまり、害悪の排除に一切の情けをかけないヒーローを描いた>>378
信じるものの掲げた正義を守り通すため、阻むものは肉親でも討つ護衛者を描いた>>384

どれも見方を変えればアンチヒロイズムを内包していて、
そのアンバランスさがとても気にかかるキャラだった。


最後に、「寸止め」を最も粋なかたちで見せてくれた>>376に賛辞を送って、〆としたい。

皆お疲れさまでした

追記>>469
タイムラグがあったので上記に感想を含めなかった。ごめんよ。
後で読んでから改めてレスさせてもらおう
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/09(月) 02:35:13.88 ID:ATJRImYG0
まとめ乙。こういうのいいな。締まりがでる。

今回は書くよりも読むことで勉強になった。
>>474後だしになってスマン。
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 03:15:10.13 ID:bhUKo3810

上手い事まとまらなくて間に合わなかったか……次頑張ろう
では、自分も幾つか感想を

>>378
ヒーロー、というよりサラリーマンの哀愁が伝わってくる、良い文章だと思いました。
けどせっかく間違って炭酸を買わせたのだから、炭酸を小道具として使うともっと雰囲気が出せると思います。
例えば、炭酸の刺激の良さをあるべきヒーローのカッコよさに例えて、主人公にはその味が舌に触った、とか。

まぁ、ありきたりっちゃありきたりかも知れませんが。


>>384
主人公のやるせなさが伝わってくる、読みやすい文章だと思います。

>「あいつに死んでほしいなら、同じくらい[ピーーー]と望まれるって知った方がいい」
>「そうか」
この二つの台詞の間に地の文を挟んで、主人公以外に誰かがいる事を表現した方がいいかも。
というか、対峙している相手の描写が少なく、実態が掴めない。
なんとなく幽霊と戦っている感じがした。
死体があるのだからそうでない事は明らかだけど。


>>391
どの台詞を誰が言っているのか、ちょっと分かりづらい。
地の文が、戦闘を拒否するヒーローの動作をほとんど説明していないから、状況が想像しにくいのだと思う。
設定自体は、物語の背景が気になる興味深いものでした。


>>415
かなり完成度が高いです。
なので、重箱の隅をつつくような指摘になってしまいます。 ご容赦を。

>視界を横切る影を追う、が捉えられない
金髪はジャンプ、つまり縦方向に移動したのに、『視界を横切る影』というのはミスだと思います。
この一文からでは、私は、金髪が横方向に駆け出したと思いました。
しかし舞台となっているのは薄暗い路地裏、とてもそんな横幅があると思えないので違和感が残り、
後で『着地した』と説明されて、そこでジャンプしたのだと分かりました。
なので金髪がサイボーグさんの視界から消えてから、どんな風に移動したのか――それこそ
『壁を蹴り上げ跳躍した』などと――描写できるとよくなると思います。

>彼がまだ立ちすくんでいる間に、男は誕生日パーティーへと〜
サイボーグさんが押し倒されてから、立ち上がった描写が無いのが引っかかりました。


>>469
反省は次回に生かそうぜ。

SSは展開が急すぎる。
特に賢者の石の材料が人間であると明かすところ。 もっと間を取って雰囲気を作らなければ、
衝撃の事実でも驚けません。

同じように自分がホムンクルスだと知らされた男からも、驚きや動揺が伝わってきません。
男に荒唐無稽と笑い飛ばさせた後、続く泥棒の言葉に沈黙させる、などをして緊張感を作る必要があると感じます。

477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 03:24:59.47 ID:bhUKo3810

感想ついてに、、遅まきながら>>160で書いたSSの感想に対する返事をお返します。
うっかり返事をしなかったものもあったもので、返事が遅くなって申し訳ありません。


>>221
>すんなりと頭に入らなく、
>いくつかつっかかるところが気になった。
国語力が足りないようです。 もっと自然な文章を心がけて練習します。


>>223
>「亜人」という言葉
化物のイメージの元がゲッターロボの爬虫人類だったので、『亜人』という表現になってしまいました。
和風な世界観を考えていたので、鬼や妖怪という表現の方が良かったかもしれません。


>>424
メートルに関しては考えていませんでした。
書いてて違和感があったけど流してしまっっていたので、参考になりました。

>「〜た」の表現が多すぎて臨場感が薄らいでる
なんとなくリズムが単調になるとは思ってたけど、臨場感が薄らいでるとは気がつかなかった。
何が悪いのか、今まではぼんやりとして分からなかったけど、はっきりと意識することができました。
ありがとう。

>返り血や物音の継続などの方が場面に適した
確かに『血の雨が降った』じゃ安直ですね。
血の雨が降った事と本物の雨が降り続いている事から、血の雨が止まない事を表現したかったんですが……
これでも表現が足りてませんね。


助言だけでなく、皆さんからお褒めの言葉も沢山いただき、本当にありがとうございます。
いろいろと気付かされたことが多く、とても参考になりました。

失礼しました。
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/09(月) 03:52:43.13 ID:1gxapWWro
感想期間だけど参加者は粗方感想書いてるから
あとは参加者以外の人が感想を書いてくれるのを
木曜のお題決めまで待ってるだけなんだよね
ちょっと寂しい
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 16:02:41.27 ID:q5tH1DIDO
>>474が格好良い
こんなまとめ感想書きたいけど、書ける気がしない

ってことで
俺なりのまとめ感想です

前回に続き、シリアスなものが多かったため
>>376は目立っていたように思う
自身戦闘描写が苦手なため、このように多くの戦闘描写を読めたのは勉強になった
…ほとんど書かれてしまっているため書くことがないな
普段自分からは書かないお題で書くというのは、難しい、けど面白かった


感想期間になると一気にレスが減ったな
何らか考えた方がいいのだろうか

480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/05/09(月) 16:07:35.16 ID:9FzFkllso
感想だけの時間ってのがやっぱダレるんじゃない?
ちゃんとログ追えてないけど、木曜までって長いと思う
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/09(月) 16:22:00.74 ID:mnNUx5vAO
SS投下されたら、そのつど感想がついてかたらなぁ
投下されたSSの量も考えると、感想期間なくしてSS投下期間だけでもいいんじゃないかね
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 20:13:42.68 ID:q5tH1DIDO
>>481
俺もそんな気がする……
それか執筆期間と感想期間を完璧に分離…ってそれは無理だな
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/09(月) 21:01:07.53 ID:ATJRImYG0
そもそも感想期間は決めてなくて、いつでも受付という形だったからな。
今回は感想期間が設定されてたけど、最初は感想期間だけで時間を取るとは思ってなかったり。
感想期間をそれはそれでとると考えてた人が多そうだったのでそのままにしたけど。

まぁそれでもこの企画は週一でいいと思ってるんだが。


寂しい、ダレるとの事なんでちょっと考えてくる。
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/09(月) 21:15:49.45 ID:M+ix6CkD0
「感想期間」にどうしても意味を持たせたいなら
「執筆期間」と「投稿時間」を分けてしまえば良いんだけどね

金曜24時お題確定→土日執筆期間→作品投稿は月曜日中のみ→火水感想期間

あ、これは提案ではなく雑談な。手もある。ってだけでこうしたいわけじゃないw
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 21:31:59.25 ID:q5tH1DIDO
執筆感想分けずに、
三-四日間くらいで回してもいいんじゃね?とも思ったり
一週間でも何日間でも、しばらくすれば毎回投下する人は少なくなるだろうし
自分のスレが疎かになることもあんまないんじゃねっていう雑談
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 22:10:57.37 ID:r348Nj1p0
流れ的には感想タイムが不要って感じだな
確かに感想のほとんどは執筆タイムの最中、作品が投下された直後に張られてる
それを考えると俺は作者側として>>484に大賛成だな
回す期間が長すぎるとダレたり過疎ったりするからその辺の調整はみんなでやろうや
全部のお題にすべての作者が執筆する必要はないから、三日四日でも大丈夫な気もする
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 22:20:29.90 ID:x7PRnOm9o
執筆感想一緒にするならば、土日二日間の部と平日五日間の部に分けることを提案する
一人一作に限定すればなかなかいいペースだと思うし、曜日で今何やってるか分かるのは大きいのではないかと
あ、今月曜日だ、お題が決まってるはずだから久しぶりに参加してみるか、みたいな
まあ、ペースは人数に依存するし、提案の一つとして
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/09(月) 22:32:34.72 ID:M+ix6CkD0
ぽんぽんと雑談だけ出してく
まず、ここは「お題練習本スレ」にして安価は一つ。週一回開催 と決めちゃう
ここは絶対。揺るがない。

で、別スレで本スレ日程優先。まだやりたいなら
「絵(図?)を見て30〜60分で一本。とにかく書けるところまで」とか
「安価三つまとめて一本書いてみれ」とか
「別スレだけど参加できる人だけでサイクル回すよー」とかを開催する手もある
「日ごろの練習法晒せ。皆で挑戦しようぜ」も面白いかも

あ、三題話に固執してる岩手が居るけどホントに雑談なので気にしないようにw
土日執筆でも隔週で参加できるかどうかくらいなんで

自分のスレ持ってる人が「練習に熱中し過ぎて書けない」とかは他の人が容喙する事ではないよね。うん
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 22:33:14.81 ID:x7PRnOm9o
と思ったら曜日依存のやり方はもう>>484にあったな
よく読んでなかったスマソ
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/09(月) 22:52:51.94 ID:ATJRImYG0
>>488
>ここは絶対。揺るがない。
週一で決定?FA?週二の案は別スレの話になったのか?
もうここでは検討しないということ?一応現行案をまとめようと思ってたんだが。

練習云々は個人的な考えを言いすぎた。スマソ。
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/09(月) 22:58:38.71 ID:M+ix6CkD0
>>490
落ち着いてくれ〜。私はただ雑談してるだけなんだ〜
やり方は色々あるんじゃね?って言ってるだけだなんだ〜
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/09(月) 23:02:47.32 ID:ATJRImYG0
ごめん。言い方がまずかった。問い詰めてるとかじゃないんだ。
二度目のスマン。一応自分用にまとめてもいい?
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/09(月) 23:12:21.76 ID:M+ix6CkD0
だなんだってなんだ〜
落ち着いてないのは俺だったorz
>>492
取り敢えず金曜24時にお題決まるまでは
勝手に1サイクルやっちゃうのも、
進行方法をつめるのも自由だと思うんだ。
まとめてみれば良いと思うんだ。
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/09(月) 23:21:09.23 ID:1gxapWWro
みんな、好き勝手言ってるみたいなので俺も言ってみる。

勉強会とかイベントとかそういう大げさなものじゃなくて
勉強にもなる書き手のお遊びとして、もっと軽く考えてはどうだろうか?

・誰かが安価のレス番を決めて、お題を決める
・お題が決まってから48時間が書く時間
・感想はその都度、書いて行く
・感想が出尽くし、新しいお題に移りたい人が次の安価のレス番を決める
・以下繰り返し

決定事項は期間が48時間という事だけで、お題の数・条件・制限等は
言い出しっぺが、その都度決める。
締め切りを1,2時間過ぎても、まぁいいじゃんwwwのアバウトさで
もっと気楽にやってもいいんじゃないかなぁ。

言い出しっぺがいるという事は、仕切るつもりのやつがいるという事で
細かくルールを決めてそれに従うよりも、活発で積極的なスレになると思う。
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/09(月) 23:30:55.99 ID:ATJRImYG0
>>493thx!

とりあえずお題更新のペースについて出てる案は、
1、4日‐3日(月火水木・金土日)日24時と木24時でお題更新

2、5日‐2日(月火水木金・土日)日24時と金24時でお題更新

3、セカンド別スレ(>>488)

4、執筆期間と感想期間とは別に「投稿期間」を作る(金曜24時お題確定→土日執筆期間→作品投稿は月曜日中のみ→火水感想期間 )

5、とりあえず週一更新(土24時お題更新)

更新とはお題の終了と次期お題の安価のこと。何かおかしいとこあったらおせーてー。
一応金曜までの暇つぶしと2の案の平日にできることなんかも考えた。

感想期間についてはそれだけで時間をとる必要はないかな、と思う。
その意見も多かったし、4の案以外はそれについては考慮してない。
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/09(月) 23:31:25.57 ID:ATJRImYG0
>>493thx!

とりあえずお題更新のペースについて出てる案は、
1、4日‐3日(月火水木・金土日)日24時と木24時でお題更新

2、5日‐2日(月火水木金・土日)日24時と金24時でお題更新

3、セカンド別スレ(>>488)

4、執筆期間と感想期間とは別に「投稿期間」を作る(金曜24時お題確定→土日執筆期間→作品投稿は月曜日中のみ→火水感想期間 )

5、とりあえず週一更新(土24時お題更新)

更新とはお題の終了と次期お題の安価のこと。何かおかしいとこあったらおせーてー。
一応金曜までの暇つぶしと2の案の平日にできることなんかも考えた。

感想期間についてはそれだけで時間をとる必要はないかな、と思う。
その意見も多かったし、4の案以外はそれについては考慮してない。
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/09(月) 23:32:34.51 ID:ATJRImYG0
今日もまた……重いです。連続スマソ
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/09(月) 23:58:20.61 ID:ATJRImYG0
>>494
アバウトさや気楽さについては同意。最初に目指してたものでもあるしな。
ただ俺はそれに加えてゆったりさも加えたいと思ってたり。

やっぱこのスレは自SSを書くための糧にしてほしい、という気持ちはあるしなぁ。
でもこれは個人的すぎるんだよなー。スレの人達の好きなようにやるべきだしな。

一応時間のある時に出来ること考えた。
・感想や指摘を元に手直しした先の短編SSを再投下。(ただこれは製作者スレでの実験でとりまナシって事になってる)

・さらに細かい、より具体的な添削、指摘。

・感想の解説(※要解説)

・自身の練習法公開。

・文章作成の基本、注意事項、タブー(禁止事項)について。ちょっと感想の解説と被る。
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/10(火) 04:58:06.94 ID:ck0EfMcNo
一応感想期間なのに何だろう、この出遅れ感…
辛口という名のいちゃもん感想。見当違いな事を言っていたら反論頼む

しかし最初から全体的なクオリティは高かった気がするけど
回を重ねる毎に更に増してってるな


>>384
> その時に気付く。先ほどまで気付かぬ微風が吹いていたことを。今は吹いていない。
> 意識を尖らせ、ようやくわかったこと。
意識を尖らせる以前の「気付かぬ微風」の存在を認識するのは少し変かな、と思った。
気になったのはそれ位。完成度高い

>>391
誰の視点か解り辛い。思考上での言葉と実際の口調が異なる場合は
同一人物であることをより強調しないと混乱してしまうかも(特に短編では)
既に指摘されているけど、特に3段落目の状況が解らない。特撮見ないからかもしれんが
後やっばり場面描写がもうちょっと欲しいかなあ

>>415
設定も解りやすくキャラも生き生きしてた。以下すごく細かいこと
>片方の人影――ベージュのコートを羽織り、〜
この辺の説明がくどいかな、と思った。ダッシュ使わず普通に地の文に組み込んで
「ベージュのコートを羽織った人物が煩わしそうにry。
オールバックに固めた金髪をしきりに触りながら、かけたサングラス越しにry」とかの方がいいかも。
>あっさりと勝負はついた。〜
「〜た。」が三つ続いてるせいで説明的に見え過ぎるかも
>確か己のエゴのために
一文が長いので、流石にどっかに読点が一つぐらい欲しい

>>469
台本形式ってのは鉤括弧の前に名前が入れられてる形式の事だと思ってたから、一瞬「ん?」ってなった
感嘆符・疑問符の後に文章を続けるときは、符号の後ろにスペース入れる方が多分読みやすい
(台本形式でそこまできっちりやらなきゃいけないか、と聞かれても肯定しきれないのでお好みで)
二人のやり取りを1組ずつペアにして空白入れてるから、テンポが悪く感じる様な
一つの鉤括弧に内容を詰めすぎている感じがするので、今回のような鉤括弧で区別する形式だと
同じ発言者の鉤括弧を並べて分けてもよかったかなーと感じた
…これを全て鵜呑みにされると作風ががらりと変わってしまうと思うので、適当に取捨選択してください
どこまでオマージュしているのか解らないのだけれど、題材と展開は結構好き
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/10(火) 05:24:52.23 ID:ck0EfMcNo
次いで感想返し+α。レスサンクス! 今回も収穫沢山で勉強になった

>>414
今回は行数を心配しすぎてアクション描写を改行せずに詰めてしまったのも原因かもしれない
加えて「……」「……?」の類の鉤括弧を出来る限り避けたいタイプなせいで難しい…
アクションはやっぱりまだまだ試行錯誤しないといけないなー

>>425
うーん、言われてみれば確かに…
これでも何処其所を余計に変換しなくなった分、マシではあるのだけれどorz
漢字漢字した文章を読み書きするのが好きなせいかもしれません。檸檬がバイブル
スピード感のある場面では漢字比率を減らして、読ませる速度を意図的に調整するのもアリかもしれん…!
具体的に指摘いただいた二文も確かにおかしい…「襲い来る」「飛び掛かる」の距離感が似ているからか

>>474
なにこれ興味深い
当初「vsアンチヒーロー戦」という指定で取る予定だったものの折角だから指定しちまおう、と
「優等生」指定を付加したので、逆に思った以上にヒーロー物が多くて驚いたw
彼女取り合いリア充物が無かったのが内心ちょっと意外(>>368が近いけど)。層の問題か
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/10(火) 05:48:47.12 ID:yI0v9tfno
優等生VSアンチヒーロー思考の持ち主との『戦闘』
第三者の直接介入禁止(『精霊などに力を借りて術を発動する感じのは可、召喚・使い魔の類は不可』)

この2行のせいで、優等生=ヒーローのバトル物になるのは当然の結果だと思うんだけど
なぜ彼女取り合いリア充物が書かれると思ったのか不思議でたまらない。
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/10(火) 06:12:47.40 ID:ck0EfMcNo
>(『精霊などに力を借りて術を発動する感じのは可、召喚・使い魔の類は不可』)
これ記述したのは飽くまで第三者が居ないという事の強調と
不特定の精霊から力を借りる系の魔法とはおkって事を言いたかったから
でもよく考えたら「場に二人しかいない」指定で事足りたw

お題出す時点で一応何パターンか想定してたけど
やっぱり「この発想は無かった!」てな話が殆どだったな。読んでいて面白かった
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/10(火) 20:24:16.78 ID:kbQ57xxk0
まだ感想書いてない分を時間をかけて書いていく。
今回感想書きづらい。みんなうまいから。

>>368
人物の説明の書き方が好み。簡潔で無駄がない。余計な部分を全て削った感じ。
ただ戦闘描写にはちょっと削っている部分が多い気もした。もしくは言葉の選択かも。

>疾駆と共に
>反逆者は背中から無機質な翼を生みおとし、ヒーローは地面に縫い止められる

きれいな単語を戦闘描写の中で使いすぎるとリアリティが感じにくい。違和感を感じる人もいる。
一瞬で距離をつめ、とか地面に這いつくばる、のようなよく使われる言葉でもいいように思う。
読んでいて時間が常に一定で、読むスピードに緩急がもう少しほしいように感じた。


>>372
戦闘描写の地の文が丁寧すぎる。読んでるうちに文字を読む頭になって脳内イメージがぼやけてくる。
二文を一文にするくらいでちょうどいい。スピード感のある言葉を選んで、表現を立体的に。

また、別に気になった文。
>見失う訳にはいかない。
>瞬きをした隙に、だ。
この間はせめてもう一段改行がほしかった。

瞬きの隙ですら見失いかねない―――その思った刹那。

(ここに驚いたことがわかる表現)
背後の気配に気付く。

でもいいかも。
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 20:48:53.53 ID:KcY/SLGAO
イッツァ感想ターイム

>>469
酷評とまではいかないけどチクチクさせてもらうよー

『追いかけてきたのか?』の直後の『どうやって?』が全く活きてないように見える。
盗賊の逃走経路が秘密の抜け道だったり、獣道だったり、果ては空路だったり?と空想を掻き立てられはするけど。
あるいは常人の足では到底追い付けない速さで屋敷から離れたのを遠回しに表現しようとしてるのかな?
答を設定してたなら、文中で回収されたかった。

些細な点ながら[舞台は暗い]が無いようなので、
会話の最初あたりに『こんな暗い中をご苦労なことだ』とでも添えれば
同時に盗賊キャラのシニカルさを自然と印象づけることも出来るかと。

>私がそれだとでも?そのほむなんとか

吹いた。
文字表記のおそろしさ、シリアスなやり取りなのに「ほむなんとか」で唐突に和みウェーブ。ほむほむ!ほわわ……

こんなところかなぁ。
最後の引きが強く今後のエピソードに期待をさせるのが上手い。
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/10(火) 21:16:16.58 ID:ck0EfMcNo
>>503
レスサンクス!
うーん、やはり課題はスピード感か…。文字を読む頭になってしまう、というのは盲点だった
形式的に追加で改行を入れるのは厳しいけど、他にもやりようあったなあ…と指摘頂いて気付いた。反省orz

しかし、特別意識していなかった自分ルールがいくつも見えてきた
直す直さないは別だけども、直さないものはもちっとその分頑張らないとな…

ところでダッシュは三点リードと一緒で2つセットで使うのが原則だと思ってたんだけども
ググったら三点リード程も言及されてなくて不安になってきた
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 21:24:21.15 ID:tptBKB2DO
>>469
辛口で感想書かせていただきます
面白いし、ストーリー展開も好き
けど、台詞と台詞の間が繋がらない
不自然な会話に思える
特に最初の方の台詞の繋がりが急に感じる
一つの台詞が説明口調なせいかもしれない
長くなるかもしれないけれど、もっと会話文っぽくした方が良いかと

507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 21:25:55.33 ID:tptBKB2DO
俺もダッシュは2つで使うものだと思ってた
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/10(火) 21:48:31.33 ID:kbQ57xxk0
>>504
thx!
全くうまく書けなかったことは自覚してるけど、すでに言われた通り反省は次に活かしていこうと思う。
>『どうやって?』が全く活きてないように見える。
その通りです。台詞入れ忘れました。。。
なんもいえねぇ。ちなみにもう一か所台詞入れ忘れてる。
ほむほむw変なテンションで書いたことを認めます。
>>476
まさしく、としか。描写はいつも分かりやすく書こうと思ってたんだけど。
とにかく入れづらい表現が多かった。次頑張る。thx!
>>499
形式は変なのかもしれん。普段こういった書き方しないからあまり詳しくない。ならやるな?その通り!
スペースも参考になる。鉤括弧も指摘された方が不自然さが和らぐように思う。
指摘してくれたとこは全部その通りだし参考にさせてもらう。thx!
オマージュは鋼の錬金術師で、賢者の石とホムンクルスの設定だけをパクリンチョ。
人の作り方は違うけど。まぁそこはSSには入れ忘れたけど!
>>506
書いた人間が読んでも不自然さMax。最後に行くまでに思ってたより行を消費していまい、急展開になった。
台詞だけだとやたら行数食う。お題にもよるだろうけどやっぱ短編では地の文が無いときついかも。thx!


むしろ三点リーダーを一つだけで使いたいと思う場面って結構ある。でも駄目となってるけど。
縦書きと横書きの違いは関係ないのかな。ダッシュを三つで使うことも多いんだけど。
――― ←これで見た目ちょうどいい長さに感じる。
――

…うぬぬ。……うぬぬ。
うぬぬ……。うぬぬ…。
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/10(火) 22:00:37.17 ID:ck0EfMcNo
俺もなんやかんやでレスや台本形式だと三点リードは一つにする方が多いな
文章ルールを優先するか、読みやすさを優先するかは人それぞれか
ここは前者を優先する人が多そうだけど

今回は投下時に小説形式って前置きしてたから指摘返ししちゃったけど
もし気分を害してしまったらすまなかった
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/10(火) 22:32:53.21 ID:KcY/SLGAO
>三点リーダ

ごく短い間を表すって機能だけ重視するなら、敢えて一つで使われるケースは少なくないんでない?

いま自分のスレを見直したら六割から七割は単独で使ってた。
一人称だし、って影響も大きそう。

台詞やモノローグのちょっとした修正、
一瞬考え込むとき(まぁ…とか)、
困ってたり慌ててたり(うぅ…とか)、
感情の急激な盛り上がり、
目前の相手へ距離を取ろうとする、
絶句の表現、
嘆息、
欠伸、
照れ、
寝言、
弛緩、
(´・ω・`)


なんやかやで頻出してるなぁ…
原則破り甚だしい。
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/10(火) 22:48:03.52 ID:kbQ57xxk0
擬音擬態語とかでも言えることだけど、なんにでも例外はあるからなぁ。
そもそもSSでそこまで畏まって書く必要はあるのかどうか分からないし。
もう好きに書くようにする。しちゃう。
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/10(火) 23:34:07.64 ID:kbQ57xxk0
>>376
他で言われてることを書かなかったら何も書くことがない。
おもしろかった。見事にバトルを回避したな。

>>378
どうでもいいと思えるほどむちゃ細かいけど、
>吐きそうになった溜息 → 吐き出しそうになった溜息
もしくは、前に“思わず”とあるのなら“思わず溜息を吐きだした”と書いた方が自然。

>コーラの写真。炭酸は、苦手だ。 
はPCから見ると改行がほしく見えるけど、携帯であることを考えれば脳内補完コースになるか。
少年が蹴りを入れるシーンのことは既に言われてるし、もうない。
文章が全体的に雰囲気にあっていてより内容を分かりやすくしている。こういう情景は好み。


>>384
「俺ぁ誰が死のうとかまわないと思ってる」 「ああ、誰も彼も死んじまえ。てめえも一緒だ消えちまえ」
を繋げて一文でもよかったかも。
他でも言われてるけど、「そうか」にもう少し余韻がほしかった。
口調や全体の雰囲気から銃士は少し汚いおっさんをイメージしてしまった。
きれいにまとまってる印象。


>>391
>これは、力だ。振るわれるための力だ。
>力は、振るわれなければならない。
振るわれる為のとは、何のために振るわれる力なのか。
助けるために振るわれるのか、悪者を倒す為の力なのかをはっきり書いてしまってもよかったかも。

変身からの攻撃なんかは結構書く人によっては字数を多くかけて書くけど、
これくらいあっさりしてる方がやはりイメージしやすさやスピード感を考えれば
ちょうどいいように思える。

正直にいうと「自分の嘘に気づいただろうか。或いは、僕の嘘に?」で 嘘がどのことが分からなかった。
最初に「それは、嘘だ」と言っていたところにかけているのかと考えたり。
アンチヒーローの嘘は「僕にはできない」なのだろうか?
ヒーロー(僕)の嘘とは、アンチの方に嘘を言っているようにも思えないから、むしろ自分に対する嘘なのか。
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) :2011/05/11(水) 14:06:07.21 ID:g/aTYjwIo
次のお題決定までまだ一日あるし、アドバイスを受けて書き直したバージョンを投下するとか
俺ならこう書くとアレンジした物を投下してみる(書いた人が希望した場合のみ)とかどうだろう?
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 15:14:12.03 ID:inbTGHVDO
なるほど、勉強になりそうだな。
じゃあ試しに、
>>378をアレンジして投下してもらえると嬉しいです。
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 15:17:59.21 ID:inbTGHVDO
>>512
つきそうになった溜息のつもりで、
吐きそうと書いたんだが、
はきだしそう、の方が良さそうだな
蹴りは……本当に反省してます……
そういってもらえて嬉しい、ありがとうございます
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/11(水) 16:14:16.64 ID:Nn2GU1rS0
>>378
>>514

「仕事では随分と人気者なんだって?」

 久し振りに同窓会で会った友人に、そう言われたのを思い出す。真面目にやっているから、と返すと、変わらないなと苦笑いされた。
 俺の仕事はヒーローだ。
 ヒーローは、怪物を倒すことが仕事である。まだこの職についてから3ヶ月というところだが、業績は悪くない。
「君も慣れてきただろうから」という言葉と共に渡された1枚の辞令書に、自分のデスクに戻って目を通す。

「俺1人、か」

 無意識に出掛かった溜息を、慌てて呑み込む。

――――――――――――――
―――――――――

 幼稚園バスをジャックしかけた怪物らを、少々手間取りながらも撃退した。
 大勢の子供に感謝されながら、俺は夕陽を背負ってマニュアル通りの笑顔を作り、台詞を発する。

「"ヒーローのやるべきことをやっただけさ"」

 めいっぱい手を振る園児たちに手を振り返しながら、現場を離れた。
 こきり、と首を鳴らす。今日も疲れたので会社に戻る前に一息吐こうと自販機の前に立った。
 どうせ会社に戻れば無料で珈琲が飲めるのだからと、並んだボタンの間に指をふらふらと泳がせていたら、不意に背後から体当たりを食らった。
 つんのめった拍子にボタンを押してしまう。ガコン、と出てきたのはコーラの缶だった。――炭酸は、苦手なのだけど。
 舌打ちと共に苛立ちを隠さずに振り返ると、幼稚園児くらいの小さな男の子が立っていた。額には、小さな切り傷がある。
 その傷を見て、ようやく思い出す。1匹の怪物に人質のようにされていた少年だ。
 まだ残っていたのかと思いながら、背中にじわりと汗をかいた。
 やばい。舌打ちなんて"ヒーローのすること"ではない。慌てて、"ヒーローらしい"笑顔を作ってから話しかける。

「"どうしたんだい? もう悪い奴等はいないよ?"」

「うるさい! この悪党め!」

 悪党。
 ざらついた耳障りのする言葉に、思わず笑顔を崩してしまう。

「あの怪物は悪い奴だったかもしれないけど! 言ってたんだ! 本当はこんなことやりたくないって、だからっ……なのに!」

 顔がくしゃりと歪み、みるみるうちに目に涙が溜まっていく。
 それを否定するかのように大きく首を振る。拳を硬く握ったまま、ぐいと強く目元を拭った。

「〜〜っ」

 ガスッ、と思い切りすねを蹴り飛ばされる。
 男の子はキッと俺を睨みつけると、太陽の沈んでしまった方向へ向かって駆け出した。
 マニュアル通りの表情を浮かべることもできないまま、去っていく少年の背中を見送る。
 イレギュラーな状況に思考が追いつかない。目を細めてから一度強く瞑った後、自販機からコーラを取った。
 プルタブを開けた。ぷしゅ、と暢気な音がする。

「……そんなこと、言われてもなぁ」

 戦闘の際についた額の傷を、そっと指でなぞった。自販機に背中を預け、暗くなった空を仰ぐ。
 そういう仕事なんだよ、と誰にでもなく呟いてから、口にコーラを流し込んだ。
 妙に甘ったるいくせに、舌が痛い。
 炭酸は、嫌いだ。
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/11(水) 16:18:02.89 ID:Nn2GU1rS0
ちょっと縦に長くなったけど、こういうとこでは横に伸ばさない方が読みやすいっぽいので
多分読みやすさ重視。なんとなく若干雰囲気かわっちゃったのはごめん
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/11(水) 23:16:07.46 ID:3+vV3/8E0
間開いちゃったけど作品感想とレス返し

>>469
当事者以外の「驚き役」「解説役」が出せないこのお題下で台詞のみ。
正直に、私は断念しました。厳しかったと思います。
お題は捕らえられていますし脳内では某ダークファンタジーな絵できちんと動いてくれました。
ただ、やはり「…」と「―」で「間」も表現していますが限度はありますね。
単純に台詞をもう少し区切ることでも「説明くささ」を抜けるのではないかと感じました。

>>444>>476>>499
とレス返しをしようと思ったんですが、言い訳しかでてこない。
感想ありがとうございました。とだけさせて頂いて

>>513に救われて改稿を投稿したく思います。
せめてものお礼代わり、と言いつつ俺得なだけですが読んで貰えれば。
改稿前58行(改行含む)
改稿後80行(改行含む)
改稿時間約1時間、です。

無しだったら無視でw
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/11(水) 23:16:53.07 ID:3+vV3/8E0
「こんな所に居たんですか」
「うっわっっっっっっ!!」
敢えて在り来たりの言葉をかけた筈だった。
だのに、なんで飛びのいて、しかも水溜りに嵌るのか。
こいつは、どうしてもこんなに僕を苛立たせる。
大丈夫かと言い掛けた言葉を僕は飲み込んだ。
「山の中に潜めば、助けを呼ぶ声は聞こえないと思ったんですか」
「一日中じっとしていれば、誰からも見つけられない。そう思ったんですか」
「ヤツ等に、虫共に見つからなければ、殺されることもない?…………あの人のように」
矢継ぎ早に問いかけても、答えはない。
ただ、日没間近の弱い光の下でも、「あの人」という単語に肩が震えたのだけは分かった。
片足を泥水に浸して立ち尽くすその姿はとても頼りなげに見える。
それでも、僕はこいつを連れ戻さなければ。戦いの場に。
力は、振るわれなければならないのだから。

「誰でも生きていたいんですよ」
「虫共のやりたいように、ただ殺されて良い理由なんてないんですよ」
状況を変え、言葉を変え、何度同じ意味の言葉を繰り返したのだろう。
その度に返ってくるのは、暗い、見上げるような眼差し。
「力があるなら、抵抗しなければならないでしょう」
「力の無い人たちのためにも。…………何か言ったらどうです!」
つかつかと近寄り、叩くように肩を突き飛ばすと、そのままびしゃりと水溜りに尻餅をつく。
どうしてこんなにもなすがままなのか。
「僕よりも、あの人よりも、君は強いでしょう。なのに!」
そうだ。本当はわかっているのだ。苛立つ理由。
こいつは自分に出来る事をしようとしない。
僕よりも力を持っているくせに振るおうともしない。

「…………ない」
何かを否定した声は小さ過ぎて聞きとれなかった。
「…………」
「ぼくには、できない」
無言の視線が効いたのか。今度は辛うじて僕の耳に届く。
「…………」
「そんなことをするくらいなら死んだほうが、マシ」
目の前が、かっと赤くなった。
「それは、嘘だ」
「それだけは、嘘だ」
感情のままに言葉が重なる。
「証明してやるよ!」
自分が裂けるように目を見開いているのがわかる。
そのままつり上がった目尻が裂けていくような感覚。
「変身!」
憤怒の形相がそのまま仮面となり、異形の甲冑が僕の身を包む。
これは、力だ。振るわれるための力だ。
「インパクト!」
赤熱した感情のままに右拳を振り下ろす。
「ここで、消えてしまえ!」

「死にたく、ない」
「まだ、死にたく、ない」
滂沱と頬を流れる涙。そして、その涙の流れのままに顔が割れていくのが見える。
「変、身」
瞬間、悲哀の仮面が姿を現し、
「インパクト」
へたり込んだままの姿勢からただ振るわれただけの左腕が僕の拳を弾く。
「クロス、インパクト」
冴え冴えと青く光った右の拳が突き出されてくる。
肩を狙っているのは分かるが反応できない。当たって、しまう。

「「!!」」
衝撃を覚悟した瞬間に聞き覚えのある羽音が聴覚を揺らす。
僕を吹き飛ばす直前だった拳がひかれた。
情け?優しさ?
「ごめん。行って、ください」
違う。こいつも感じたんだ。
僕らには聞こえる音。虫共が人を襲う時にたてる喜悦の羽音。
拳を引いた不自然な姿勢から、真直ぐに僕の目を見返してくる。
「嘘吐き。どこが死んだほうがマシだ。僕は間に合わなかったぞ」
「ごめん。…………ごめん」
「僕だけ行かせる気ですか?」
「嘘吐きは……………………ごめん」
僕をしっかり見上げていた視線が落とされる。
差し出した僕の手は無視され、へたり込んだ姿勢から足の力だけを使って跳ばれた。
重ねて、跳躍される。もう、追えない。
「誰だって死にたくないんだよ。だから一緒に」
踵を返して走り去る背に、叫んだ声は届いただろうか。
自分の気持ちに気づいてくれただろうか。
嘘吐きは…………。僕?
いや、でも、そうだ。僕は行かなければ。力は、振るわれなければ。
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 00:08:21.17 ID:zs0pwo/DO
感想期間終了
安価お願いします
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/12(木) 00:13:49.61 ID:zs0pwo/DO
age
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/12(木) 00:19:53.90 ID:2mRi92os0
一応の流れとしては次は金曜24時だと思ったんだが。

お願いしますじゃなくて>>520が仕切って始めてるならありかもよ?
ただ、その場合48時間で行くとか、ここから執筆3感想2でとか宣言も込みでな
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 00:25:19.95 ID:zs0pwo/DO
あれそれって次からじゃなかったっけ?
今回はとりあえず最初に決めた通り執筆2感想3でやるものかと思ってた
雑談が多いせいか、混乱するな
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/12(木) 00:30:09.25 ID:lukllWKZo
>>519
間違いなく改稿前の方が良かった。
冒頭の台詞が地味になってる分、つかみも弱くなってる。
予備知識があるのを前提にしたような話の書き方で
読む側に対する考慮が欠けているのではないだろうか。
『振るわれなければ』という力に従属しているようにも取れる書き方をするのであれば
望まぬ力を無理矢理与えられたという類の描写が必要だったと思う。
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/12(木) 00:31:20.98 ID:2mRi92os0
主に雑談の犯人は俺だが、実は俺もよく分からん
よってやる気があってそのとき出来るやつが仕切れば良いのではないかという雑談
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 00:39:49.81 ID:zs0pwo/DO
なるほど
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/12(木) 00:43:47.07 ID:2mRi92os0
>>524
お、レスd
今度はそっちに引っ張られたか。難しいなぁ。
「望まぬ力を与えられた」ところまで「仮面ライダー」的な予備知識に頼っていたつもりはなかったんだけど、
そのつもりで書いていたと言われても仕方ないな。
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/12(木) 00:56:22.95 ID:ElXye05oo
感想期間中の議論は読み流し程度にしか見てないから間違ってるかもだけど
俺も>>523と同じだと思ってた

前回のお題決定時の議論通り

・執筆期間2日(土曜0時)感想期間とりあえず暫定で3日
・安価三つ
・投下は一人一作まで
・投下した人は最低2つは感想書くこと推奨

以上で間違い無ければ勝手ながら安価出す
感想期間は開催間隔確定したら調整してくれい
週1にするんだったら平日二日固定だときつい気がするので
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/12(木) 01:03:31.50 ID:ElXye05oo
後ここからは俺の個人的意見なので、反映させるなら次回のがいいと思うしスルーしてくれてもおkだが
感想期間はアリにして、その期間に

・他人の作品のリメイク(投下時に許可する旨が書かれている場合)
・感想を受けての改稿
・書かなかった方のお題を用いたSS(お題が複数ある場合)

これらを投下してもいい事にしてはどうだろうか?
感想は投稿期間の作品優先で、それらに感想を付けた人が気が向けば付ける程度の扱いで
個人的には期間中は作品投下するのが精一杯なので感想期間ある方が楽でいいんだが…
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 01:03:47.47 ID:zs0pwo/DO
感想期間を無くした方がいいって意見しかなかったからな
感想期間も執筆期間も一緒にしちゃっていいと思う
って勝手に俺が言っていいのかわからんが
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/12(木) 01:04:06.67 ID:2mRi92os0
>>528
・執筆期間2日(土曜0時)感想期間とりあえず暫定で3日
「土曜0時」を重視してた

でも仕切るんなら良いと思う
安価も用意してないし今回は感想参加になると思うが、やることは良い事だ
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 01:07:39.21 ID:zs0pwo/DO
まぁ仕切ってくれるなら助かる
任せます
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/12(木) 01:09:33.35 ID:ElXye05oo
間違えた土曜0時“まで”、だよorz
正直週1派だから土曜0時安価の方がやりやすいんだけどね。でも少数派か…

議論纏めるのはちょっと環境的にきついので
空白期間が出るのを避ける為にとりあえず安価出す?程度の気持ちだったんだが
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/12(木) 01:22:33.93 ID:ElXye05oo
この状況で安価3つも埋まるか心配ではあるけど、とりあえず>>528の条件で安価
感想期間終了(=次回安価)は人の居そうな時間帯に議論してください
決まらなければ火曜0時安価で

>>536>>537>>538
安価取った後、10分以内にお題の指定が来なかった場合は再安価
(でも今まで通り安価自体にお題を書くこと推奨)
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/12(木) 01:42:50.53 ID:zs0pwo/DO
age
安価下
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 01:44:09.99 ID:zs0pwo/DO

男女の別れ(人間に限らず)
年齢設定は中学生-高校生(またはそれに相当する年齢)は不可/それ以外は自由
必ず"ロボット"というキーワードを入れること(文中に意味合いを含ませるも可、あくまでキーワードとして使って下さい)



今まで戦闘ばかりだったので趣向を変えてみた

537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/12(木) 01:51:57.18 ID:ElXye05oo
ううむ 時間的に埋まらんか

舞台は現代日本、時間帯は午後(0-12時)
男女(人間)最低一人ずつは登場させる事
「鳥」を登場させる事(種類は問わず)
登場人物に「勘違い」をさせる事
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 02:20:26.44 ID:Hnpqu1670

案外埋まらないものだな


舞台はカジノ
ブラックジャックでディーラーと勝負をする若い男
100ドルを賭け、配られたカードは絵札とエース以外の二枚
ディーラーの見せ札は10
三枚目のカードを引くか止めるか、男に問いかけるディーラー
男はしばらく無言を通し、やがてどちらかを選択する

・男の正体(金持ちか貧乏か、現地人か旅行者かなど)
・男にとっての100ドルの価値(擦ってしまっても構わない端た金か、なけなしの100ドルかなど)
・勝敗
これらは自由に設定してください

ただし、ディーラーの伏せ札はキングで、合計は20です

参考までに、ブラックジャックのルールについてwikiのページを貼っておく
http://p.tl/X3sa
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/12(木) 02:35:45.37 ID:lukllWKZo
もうちょっと>>105を参考にしようよ
まあ、いいけどさ
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/12(木) 02:36:45.71 ID:ElXye05oo
時間が時間だからなあ
12時代に安価出来ればよかったんだが…

とりあえず>>536-538から好きなお題を一つ選択、投下は土曜0時迄
まあ安価遅かったし数時間ぐらいなら遅れてもいい気がする
平日だからあまり投下は無いかもしれんけど、それを含めての実験ということで
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/12(木) 02:39:09.66 ID:ElXye05oo
>>539
埋まるまで時間あったし文句あるなら自分で安価取ってくれよちくしょー
前回みたいに決めすぎてもきついから、良いお題出すのって結構難しいよ
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 02:43:54.79 ID:zs0pwo/DO
>>539
あんな良いお題は難しい
ってか安価埋まるまで間隔随分あったんだし、そういうお題で安価取ってくれ
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 02:52:53.61 ID:Hnpqu1670
>>539
一応情景が浮かびやすいように設定したつもりだったけど的外れだったかな?
一レスに纏められる内容だとも思ったけど…
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/12(木) 02:56:46.65 ID:VnFX5bnUo
>>538を書きたかったが男にもディーラーにもエースが使えないからキツくて挫折してしまった……
せめてディーラーの伏せ札が不明だったら……と思ったがお題スレだからなんとか頭ひねって書くわ
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/12(木) 03:07:05.41 ID:VnFX5bnUo
男の二枚目は決まってないじゃないか
なんか早とちりしてたわ ごめん
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 03:30:01.88 ID:Hnpqu1670
>>545
男が三枚目のカードを引く場合、そのカードがなんであるかは自由に設定してください

それにしても少し条件が厳しすぎたか
お題出すのを甘く見てた…反省しなくちゃだな
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/12(木) 03:56:03.88 ID:lukllWKZo
>>543
いや、君のはいいと思うよ
俺も暖めているネタはあるんだけど毎回タイミングを逃してしまう
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 05:41:25.10 ID:5xRXCSfho
少年は、間違いなく彼女のことが好きだった。
愛。
年端も行かぬ彼の語るその言語に、どれだけの重みがあるだろうか。
それを幼稚な思い込みだと、ままごとの延長だと笑うものもいるかもしれない。
しかし、少年の想いは幼さ故に純粋なものだった。
その感情は堅く、他人の評価などに揺るがされはしない。
少年は、間違いなく彼女のことが好きだった。

「………………、どうして?」
ぽつり、と口をついて出たのは、単純な疑問の声。
それは確かに誰かへ宛てた言葉だったが、降りしきる雨の中、その声はあまりにもか細い。
だが、目は口ほどに物を言い――少年の見据える先、言葉の届かなかった「誰か」が反応を示す。
「――――――」
発されたのは、音。
少年の小さな声とは、まず根本を異にする、ただの音。
言葉未満のそれを耳にした少年は、とうとう感情を抑えきれなくなった。
「どうしてっ!」
堪らずに叫ぶ。
今度は、雨に負けないだけの声量で。
雨に負けないほどに涙を流しながら。
少年の胸中で錯綜する想いが、それぞれの粒に乗って流れ出、頬を伝う。
その中に、取り零してはいけない何かを見つけたような気がして、少年は慌てて涙を拭った。
「――――、ぁ、――」
不意に。
手が伸びる。「誰か」から、少年へ。
「え――?」
泣き濡れた少年の瞳が驚愕に見開かれる。
「―か、な――。泣か――で」
音が、次第に心を得てゆく。
それだけのことが、どれほどの無理か、少年は知っていた。
だから、こんこんと溢れる涙もそのままに、少年は「誰か」に縋りつく。
「誰か」――少年の愛した、彼女へ。
彼女は、伸ばした手を静かに少年の頭に置き、緩慢な動作で滑らせる。
「泣かないで」
彼女が言う。
少年が唸る。
――ノイズ混じりの、それでも充分に澄んだ声。
   内の歯車が覗く、それでも充分に柔らかな手。
   四肢のうち片腕と両脚を喪い、それでも充分に愛おしい人――
守りきれなかった。
守られてしまった。
幼い少年の心には確かな後悔が在り、それは容赦なく彼を苛んだ。
「なん、で、ぼく、なんかを、」
最後まで言い切ることは出来なかった。
身体の半分以上を砕かれてもなお絶やされなかった笑顔が、そこで始めて憂いを纏ったからだ。
「なんかじゃないよ」
彼女は優しく、諭すように言った。
「あなたはにんげんだから……あなたは、それだけで、なんかじゃ、ないから」
淡々と言葉を連ねる。
少年はただ嗚咽を繰り返すばかりだった。
「わたし、は、あ、な、たをま、もりたか、ったか、ら。わた、しは《言語化に失敗》、だから。わたし、は――あなたがだいすきだから」
静かに、彼女から零れ落ちてゆくものがあった。
砂のように、水のように、急速に彼女の中から喪われてゆくものがあった。
それを少年は止められない。世界中を探したとしても、それは誰にも止められない。
少年はそれを痛いほど知っている。彼女も、悲しいほど解っている。
だから彼女は、最期の最後まで、優しく微笑み、毅然として、さも当たり前のように、残酷なまでに不器用な言葉で、少年を悲しませないように、尽きかけた命で――

「わたしは、へいきだから」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

>>536で書いてみた

自己評価:長い。言葉を飾り過ぎている。もうちょっと地の文に湿り気が欲しい。ラストの一言への持って行き方が強引?
自己弁護:ただ、長編もののワンシーンとすればクライマックスにあたる箇所なので、多少の演出過多はやむなし?

ところでもう書いて問題なかった?まだだったらすまんこ
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/12(木) 12:37:22.85 ID:lukllWKZo
硬いというか仰々しい等というか、文体のせいで主人公が子供に見えない
後、個人的で申し訳ないが死にネタは大嫌いだ
死が悲しくて泣けるのは当たり前で、死にネタで泣かせようとする意図が見えた時点で萎える
550 :名無しNIPPER [sage]:2011/05/12(木) 21:13:49.11 ID:axH6+JKAO
>>536

 「終わったかい?」
 と、ばあちゃんが聞いてくるので、俺はもう少しだ、と答える。
 俺は壊れたテレビを修理していた。俺にとって、機械の修理は自分の身体をいじることと同義だった。つまり、俺はロボットというわけだ。
 俺だって生まれつきロボットだったわけじゃない。小さい頃、親に捨てられて、組織に拾われた。そして、機械の身体に改造された。機械の身体は殺人に向いているからだ。
「ばあちゃん、終わったよ」
 俺はそう言ってテレビをつけてみせる。 「おっ悪いね、わたしゃ機械はわかんないからね」
 なぜだか、誇らしげにばあちゃんは言う。それにしてもばあちゃんとも今日でお別れだ。仕事でヘマして傷ついた俺を助けてくれたことには感謝している。
 「でも、テレビ直さない方が良かったんじゃないか?」
 「なんでだい?」
 「だって、ばあちゃんテレビつけたら、ずっと消さないだろ?環境に悪いつーの」 ばあちゃんはやれやれというような仕草をしてから、まくしたてる。
 「だいたい環境がなんだい。環境を悪くしたのは人間なんだよ、今さら環境をよくしたいなんて自分勝手だろ。ほんとに環境のためを考えるなら、絶滅するしかないんだよ」
 「ばあちゃんも人間だろ」
 「わたしゃ、もうじき死ぬからね、後のことなんて知らないんだよ」
 俺は苦笑するしかない。もう行くよ、俺はばあちゃんに別れを告げる。
 「あっ、ちょっと待っておくれ」
 玄関まで来たところでばあちゃんに呼び止められる。
 「言い忘れたことがあった」
 そこで、俺はばあちゃんが感動的な別れのセリフとか、また会えたらいいな、みたいな言葉を言い出すのかと少し思ってしまった。もちろん、それは綺麗に裏切られることになる。
 「さっきの話だけど、よく考えたら、あんただって人間だろ?」
 今さらそれかよ――俺は躊躇いもなく、組織の禁則事項を破る。
 「俺はロボットだぜ?」
 「そうかい、わたしゃ機械はよくわかんないんだよ」
 少しは驚いてくれよ、そう言って俺は外に出た。



―――こいつはもういらないな。俺は拳銃に弾が入ってないことを確認して、それをペットボトルの回収ボックスに押し込んだ。分別にご協力くださいと書いてあるのが目に入ったが気にしない。きっと、ばあちゃんは許してくれるだろう。
 環境なんて、そうまくしたてるばあちゃんの顔が浮かんできて、俺は笑う。
551 :名無しNIPPER [sage]:2011/05/12(木) 21:16:20.15 ID:axH6+JKAO
>>550

もしかして、男女の別れって恋愛限定だったかな。
読み返して思ったけど…
そうだったら、お題違いすいません。
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/12(木) 23:12:56.29 ID:u+UJadfto
>>536
「夢も希望もねぇな」

二十代も半ばに差し掛かったフリーターもとい俺の口から漏れた言葉は、なんとも弱気なものだった。
工業高校を出て就職したはいいものの、不況の煽りを受けて仕事は会社ごとなくなって。
次の職を探すためハロワに通いつつ、コンビニバイトと日雇い派遣の仕事で生計を立てる毎日。
そんな俺の唯一と言っていい娯楽は、目の前のPCに表示された一つのソフトウェア。
―――初音ミク。

ビールを用意して、適当にシャッフルボタンを押す。
懐かしい曲がスピーカーから流れ出した。

『今日からはあなたがご主人様〜♪』

高校生くらいの頃から何度も再生した曲だけれども、その輝きは当時感じたそれと全く変わっていない。
そういえば自分が工業高校に進んだのも、この子に影響されたからではなかったか。
はあ。思わず溜息が漏れる。あの頃の俺は、随分と色々な夢を持って生きていたっけ。
片手に握ったビール缶が、何故かとても軽く思えてしまって、そのまま一気に飲み干す。

「……ぐ、うっぷ」

せめてのストレス発散用にと買った酒なのに、それで気分が悪くなってるんじゃあ救いがない。
溜まりに溜まった疲労とストレスも手伝い、視界がぼやけ始めた所で、
何かおかしなことに気付いた。

パソコンの前に青い影。髪の色は青。髪の型はツインテール。
黒と灰を基調とした服に白い体を包み、ピンポイントにあしらわれた青は髪によく映えている。
そいつはこっちに視線を向けると、こんなことを言ってきた。

「マスター、遊びに行きましょう!」

俺は何を見ている?

**********************************************
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/12(木) 23:13:41.51 ID:u+UJadfto

「いやー、楽しかったですねマスター!」
「あーすっげえ楽しかったな、特にミクが俺とジェットコースターを連結したせいであわや死にかけたアレとか」
「もうそれは何度も謝りましたからー」

人間の順応能力とは恐るべきものだ。結局あの後遊園地に出かけ、半日遊び倒して部屋に戻ってきた。
なんでミクが俺の部屋にとか、そんな些細な疑問はどうでもよく、ただこの夢のような時間を楽しんでいたかった。
そんなことを思いながら、台所で動き回るミクに目をやる。俺の視線に気付いたのか、満面の笑みと共に声が返ってきた。

「もうすぐできますから、待っててくださいね」
「いい匂いだな、何かすることないか」
「じゃあ、お皿出してもらっていいですか? その大きい奴を一枚お願いします」
「あいよ」

しまいこんでいた大皿を一枚出し、渡す。
ありがとうございます〜と言いながら受け取ったミクは、台所へ向き直る動作の中派手にずっこけた。

「ふぇえええええええん」
「ああほら、怪我してねーか? あとはやるから湿布でも貼っておけ」

割れた皿を片付け、慣れない手つきでおかずを盛り付ける。
あまりに俺の手際が悪かったため、結局手伝ってもらう羽目になり、文句を言われてしまったが。
それよりもう、腹が減ってしょうがないんだ。盛り付けのことはもういいだろ。
そう伝えると嬉しそうに、じゃあ食べましょう、と言ってくれた。

「いただきます」
「いただきます」

思えばそれを言うのも、とてつもなく久し振りで。
それを言う相手が目の前にいることが、どうしようもなく嬉しいと感じた次の瞬間、
頭痛に襲われた。


「あっ………………がっ……………………」

頭全体がグラグラと揺さぶられるような痛み。こらえきれず、床に転がった。
明滅する意識を必死に上へ向けると、そこには何かを悟ったようなミクが、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「晩御飯、食べてほしかったな」
 何を言ってるんだ。これくらい大したことない。

そう言おうとしたのに、口は全く動かず声も出ない。
ただそれでも、ミクに意思は伝わっているようで。

「ごめんなさい」
 どうして謝るんだ。

「歌うことしかできないはずの私が、こんなことをしようとしたから」
 こんなことってなんだよ。

「ただのボーカロイド、ソフトウェアにすぎないのに」
 俺の目の前にいるんだから、そんな訳ないだろ。

「今日あなたにzgjkf伝えた言葉も、感情も、ほとんどが詞kxとして曲としpkrsて私に打ち込まれたもの」
 …………。

「作ghtられて4年も経っていなfhjyい私には、それが限界で」
 ……。

「それhhzjyrsでも、楽gdwwrsしかgzったです」
 …。

俺の言葉をあざ笑うように、ミクの姿がぶれる。声にはノイズが混じりひどく割れる。
そんな馬鹿な話があるかと憤ろうにも、体は動かず、さらに頭痛は酷くなる。

『ありがとうございました、マスター。 さようなら』

無理やりに笑顔を繕って、彼女は悲しみに満ちた声を発する。ほとんど聞き取ることはできなかったが、唇から無理やり読み取った。
その一声を皮切りに、世界はめちゃくちゃに歪む。苦痛は全身に広がる。痛覚以外の感覚が消えた。
だがそれでも、最後の一瞬まで俺は目を開け続けた。たった一つの思いを全力で込めて。


―――目を覚ましてみれば、そこはいつもの俺の部屋で、ビール缶を左手に握り潰していた。
そいつをゴミ箱に放り投げ、ついでに大皿を一枚叩き割ると、ロボット工学を専門に扱う研究機関を全力で調べ始める。
君がただのソフトウェアで、意思を表出させる術を持たないというのなら。
君の感情を表現するためのハードウェアを、君の体を、作り上げてやる。
かつての夢と希望を取り戻した俺に、不可能への恐怖は欠片もない。
パソコンから流れる歌声はいつもと変わらないはずだけれども、なぜかどこか、嬉しそうに聞こえた。
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/12(木) 23:16:24.56 ID:u+UJadfto
>>552-553
2レスになってしまったので悩みましたが、どう推敲しても減らなかったので投下してしまいました
何よりも量がまず問題なので、削れる所のアドバイスがあればお願いします
全体としては丁寧な心情描写を意識しています。ミクさんかわいい
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/13(金) 04:29:14.94 ID:BC5nwiYI0
ちょっと初心に戻って書いてみた。>>537


 カツ カツ カツ

階段を登る。一歩一歩を踏みしめて。

 カツ カツ カツ

男性は登る。大好きな歌を口ずさみながら。

 “いま 私の 願いごとが”

   “かなうならば 翼がほしい”

男性の年齢をこの長い階段を登ることは考えれば楽な事ではない。すでに何百段と登ってきて、体力的には相当きついだろう。
それでも男性は歌うことをやめない。もうすぐ屋上だと思うと、気分が昂って仕方ないのだ。

 “この背中に 鳥 のように”

   “白い翼 つけてください”

決してうまくはない。しかしその歌声はどこか耳を傾けたくなる、そんな声だった。

「ふぅ。やっと屋上か。風が強いな」

「だが、やはりここから見える夜景はまさに絶景だな」

カンカンカンカンカンカンッ
たった今男性が登ってきた階段をまた誰かが登ってくる音がする。しかし、こちらは先ほどとは違い、急ぎ足で。

「社長っ!!」

「もう“社長”ではないよ。
 ……君か。どうしたのかね?」

「どうしたもこうしたもっ。社長が『今まで世話になった』と置手紙をして突然いなくなるからっ!
 私はてっきり!てっきり…………。その、心配しましたよ」

「それはすまなかった。つい心の赴くままにな。……ところで君は何を使ってここまできたのかね?」

「はい?ええっと、途中までエレベーターで。途中からは階段も結構使いましたけど」

「いかんなぁ。君は私よりも若いんだから階段を使わなきゃ。私なんて30階から階段を使ってここまで登ってきたぞ。
 まぁ、でも私がここにいるとよくわかったな。さすがは私の秘書だ」

それだけ言って男性は再び夜景に向き直ってしまった。
女性の方からはその顔をうかがい知ることは出来ない。

「社長は高い所が好きですから」

「ああ、私は高い所が好きだ。あらゆることに置いて、な。

 ―――しかし、今、私は富とか名誉ならばいらないけれど、翼がほしい」

自らの力で積み上げ、ここまで登り詰めた。その道中は決して楽なものではなく、
孤独で、冷たく、静かで、それらはまさに“試練”であった。
そして登り詰めた者だけに見える景色を前にして、男性は何を思い、何を感じたのか。
それは誰もわからない。
最後に彼は、ただ一言呟いた。


       綺麗だ、と


556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/13(金) 04:34:20.81 ID:BC5nwiYI0
訂正 ちょっと直し忘れてる。

>「はい?ええっと、途中までエレベーターで。途中からは階段も結構使いましたけど」

 「はい?ええっと、途中までエレベーターで。ここに来るまでは階段も結構使いましたけど」
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/13(金) 05:06:08.05 ID:BC5nwiYI0
また台詞入れ忘れてる。もういいや。今度から推敲してから投下するようにすれば。
指摘するとこ満載だけど、感想おねげーします。
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/13(金) 17:25:12.99 ID:Dyvt0nRJ0
男性の年齢を〜ってところ、
文の順番間違ってないか?
文脈から見るに、

男性の年齢をこの長い階段を〜
     ↓     
この長い階段を登ることは男性の〜

もしくは

男性の年齢を考えればこの〜

だよな?
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/13(金) 20:05:05.07 ID:BC5nwiYI0
>>558
ホントだわ。変なとこで切り取ってある。
しかも「この長い階段を登ることは」はここに入れようとした文ですらない。
ごめんちゃい。thx!

>>555訂正
男性の年齢をこの長い階段を登ることは考えれば楽な事ではない。

男性の年齢を考えれば楽な事ではない。
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/13(金) 23:56:48.69 ID:f/l2UTrIo
さっきお題の存在知ったんだけどもうまにあわねえおわた
執筆期間二日って短くないか……
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 00:02:49.16 ID:nwT+c+Kco
とりあえず締め切りかな
安価遅かったからまだ書いてる人が居たら1,2時間ぐらい遅れてもおkだと思う

…安価出したからには書きたかったんだが、SSどころじゃない事態になって参加出来なかったorz
感想は明日書く


>>560
前々回(前回じゃない)お題決定時の議論を参考に日程出した
確かに平日だと2日はきついな…
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 00:03:34.98 ID:XBKolbrH0
ぎりぎりの滑り込み
お題は>>538

--------

カジノの中は、むせ返るような熱気に満ちていた。
何千台ものスロットマシーンの音、コインの弾ける音、人々の歓声と落胆のざわめきが渦巻いている。
その渦の中、男はブラックジャックに興じていた。
若い男だった。 白いジャケットにジーンズを合わせ、ピカピカに磨かれた茶色の革靴を履いていた。
その革靴はカジノの薄暗い照明中で輝いていた。 恐らく革靴のつま先を覗き込めば、顔が映るであろう。

彼は長らく、ブラックジャックのテーブルに腰を据えていた。
彼はテーブルに対し斜めに、足を組んで座り、自慢の革靴を放り出している。
眉間にはシワがより、固く結んだ唇からは食事前のトラのような唸り声が上がった。

目の前で、ディーラーが手早くチップをさらっていった。 事前に交換したチップは、これで全て
失われた。 最早かけるべきチップは残っていない。


「ミスター、まだ続けますか?」


ディーラーが不敵に笑った。 男はジロリと視線を投げ返すと、ジャケットのポケットに手を滑らせた。
ポケットの中には一枚の100ドル札。 これは遊びの金ではなかった。 擦ってしまえば、明日の朝食すら賄えなくなってしまう。
動きを止めた男に、ディーラーは一瞥をくれカードをシャッフルした。

唐突に、歓声が上がった。
見ると隣のテーブルでは、金髪の美女がディーラーから大量のチップを渡され、それにうっとりとした視線を注いでいる。

美女が顔を上げた。 一瞬男と視線が交わり、彼女は軽くウインクを返した。

男はポカンと口を開けると、慌てて口の端を吊り上げて、笑った。 彼の眉が跳ね上がり、彼は
流れるようにジャケットから100ドル札を取り出すと、テーブルに叩きつけた。


「100ドルだ! これに賭ける!」


男は居住まいを正し、低い声で宣言した。 ディーラーは笑みを引っ込め、鋭い手捌きでカードを配る。
男の手札は9と8。 悪く無い手である。 十分に勝負に出られる手であった。

しかし、男の額に汗が滲んだ。 強い喉の渇きに襲われ、舌が歯茎に張り付いた。
ディーラーの見せ札は10。 その下の伏せ札が8以上であれば、彼は負ける。


「ミスター! カードを引きますか? それとも止めますか?」


ディーラーの低い声が、男の耳朶を叩いた。 ディーラーの視線は剃刀の刃であった。
男は縋るように隣のテーブルへ視線を投げた。 金髪の美女が、こちらに向けて笑みを浮かべている。
気付けば、男はテーブルを叩いていた。 即座にカードが滑り込まれる。 数字は……4。


「ぃよっしゃーっ!」


合計21。 男の勝利であった。
ディーラーが悔しそうに開いたカードはキング。 首の皮一枚でもぎ取った大金に、男は舞い上がった。
男はイスを回転させ、美女に視線をやった。 勝利の喜びを美女と分かち合いたかった。
それだけの金を、彼は手に入れたのだ。

不意に、彼の背後からスーツ姿の大男が現れた。 大男は彼の視線を遮り、美女へと近づいていく。
美女は立ち上がり、その大男へとしな垂れかかった。 大男が彼女の背に腕を回し、キスを落とした。


「ミスター、まだ続けますか?」


呆然と立ち尽くす白ジャケットに、ディーラーが声をかけた。


「……いえ、帰ります」


そう答えた男に、勝利の余韻は無かった。

563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 00:25:03.81 ID:ZGDkyks00
あれ?もう〆切だっけ?感想まだ書けてねー。土日に書きます。
>>548

>>550

>>552-553

>>555

>>562
土曜日0時だから今か。

ただ、金曜24時土曜0時は一週間にお題二回更新ペースで都合のいいやり方というだけであって
別に今回このやり方に合わせなくちゃいけない訳ではないと思う。どっちにしても感想期間は
それはそれで時間をとるなら意味ないし。

今回の条件>>528
前回の議論では感想期間については触れられていない。その後の雑談で感想期間はあまり意味がないという
意見が多かったけど、特に何か決まったということはない。なので今回の条件でも感想期間については前回と
同じ3日間ということになった。

土日を感想期間にして消費するのはもったいない気がするんだけど……。

いっそのこと今お題更新してしまって、週二ペースにすることもできる。
ただ今人がいないな……。週一でいいと思う人がどれくらいいるかも分かんないし。
週一ペースについて発言していた人は自分で、あともう一人週一でといっていた人がいたが、
おそらく多くの人が週二ペースかそれ以上の更新ペースを支持していたと思う。

一応今は感想期間と言うことなので、このへんのことをこの土日にゆっくり決めていってもいいと思うんだが。
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/14(土) 00:30:33.81 ID:ZGDkyks00
あげとく

せっかく安価考えて三つも出してもらったことを考えるとちょっと投下数が寂しいと思う所もあるだろうし、
その辺のことも話し合ってもいいんじゃないかと思う。

ちなみに更新ペースの案を一応まとめてある。
>>496
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 00:36:18.07 ID:nwT+c+Kco
>>563
纏め乙、週1主張してたのは多分俺だな
感想三日は飽くまで暫定なので、人(特に仕切れる人)が居るようなら
昼辺りにでも安価出してもいいと思う、休日だし。
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 00:48:08.93 ID:/n1xdxbAO
まとめおつ〜
感想はまたあとで。

>496でいうと第一案か第二案が妥当なんじゃないかな
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/14(土) 01:23:50.56 ID:ZGDkyks00
>>566みたいにわかりやすい意志表明がいくつかあれば仕切る人も楽なんでないかと。
自分は2の案で。

次回安価はできればあまり急がず、更新ペースがある程度決まってからの方がいいかも。

とりあえず前回の条件や方針に関するレスも引っ張っとく。
>>329
>>347
>>528

雑談とかの部分はざっと流し読みしておけたらいいかと。
仕切る人はあれこれ方針を積極的に出していった方がいいのかも。

今人いない感じだし、これらの事を考えるのは明日からだな。
明日になったらまた人が来ていますように……。いや来てくださいお願いします。
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 03:08:13.66 ID:XBKolbrH0

>>563
纏め乙、です
感想は後にさせてもらいます

>>496の2案に一票

それと、お題3つというのは多すぎたように感じる
>>537>>538は一つずつしか書かれてないし、週二でお題を変更するなら、お題は一つにした方がいいかも
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/14(土) 04:03:37.44 ID:AaoBYo6Lo
面倒くせぇ
今決めようぜ
期限は5/15(日)深夜2時
お題はひとつ
安価は572
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/14(土) 04:21:33.21 ID:AaoBYo6Lo
ksk
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/14(土) 04:22:16.21 ID:AaoBYo6Lo
ksk
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/14(土) 04:24:46.51 ID:AaoBYo6Lo
昼下がりの公園
笑っている女
男が怒っている
女「関係ないでしょ」
男が声を荒げ、思わず拳を振り上げる
女の笑みが消え、男を睨み付ける
我に返った男が辛そうな顔で女を抱きしめる

幼女「なんであのおねえちゃん笑ってるのに泣いてるの?」
大人になれば分かると母親が微笑みながら答える
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/14(土) 10:19:14.60 ID:8D/3OGWAO
>>496
2か5が良いと思う
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/14(土) 20:32:12.57 ID:MYTPLrPao
>>548
結のシーンだけ切り抜いた感じですね
「、」「――」「……」などで台詞が頻繁に区切られてますけど
その一方で文全体の密度が高いために、ちょっと演出が噛み合ってない印象を受けました
個人的には、想像に任せるあるいは匂わせる程度に留める部分があってもいいと思います

>>550
主人公がロボットであること、ばあちゃんとお別れであること等の重要な要素が
いずれも文末にひょいっと書かれていたために、一読した時は読み飛ばしてしまいました。
あと最後ロボットが拳銃を捨てた理由がどうしても……
ばあちゃんの語り口にはいい雰囲気が出てると思います

>>555
>もうすぐ屋上だと思うと、気分が昂って仕方ないのだ。
ここの部分がナレーションなのに断定口調になっていて、あれ、と感じました
地の文が元社長視点かと思ってしまったので、ここは直した方がいいです

あと読点の後ろに三点リーダを続けると違和感の元になりやすいので、スペースなり入れた方がいいかと
有名な歌を元にして書かれただけあって、雰囲気や心情には馴染みやすいんですが
歌詞を台詞に残そうとするあまり、言い回しに違和感がある部分も見られました。

>>562
渋い雰囲気の主人公かと思いきや衝撃のラスト
序盤で作り上げた主人公のダークなイメージをさらっと崩して終わったお陰で
文全体になんとなくオチがつけられたような、肩透かしをくらったような
よく分からないけどやられたなあって感じですね
強いて言うなら、主人公の若さについては言及しない方がより序盤の重厚さが出るかなと思いました


人減っちゃったね…
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/14(土) 20:36:28.77 ID:ZGDkyks00
感想
>>548
地の文を丁寧に書いたことがわかる。台詞もよく書けてると思うからすんなり感情移入できると思う。
演出過多を気にしてるようだが、自分で書いてある通りラストシーンならこれで問題ないと思う。

ただこのSSの評価はかなりシビアになると思う。なぜかというと、このようなシーンは定番王道だから。
誰もがどこかで一度は目にしたシーンで真新しさがない。どこかに一工夫ほしい所。でないと記憶に残らない。
人によっては途中で読むのをやめてしまうこともあるかも。

このシーンからさらにあれこれ付け加えてみるとか、設定変えてみるとか。
いろいろ考えてもっと発展させてほしい。
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 20:44:13.42 ID:ZGDkyks00
>>574
thx!どっちも自分がよくやる書く時の癖だ。
寝ぼけて書いてたし、今回はそれがより顕著に出たかも。
気をつけるようにする。

歌詞は男性風の口調にするかどうか結構迷った。
意見参考にさせてもらう。


今レスしろ、と言われても出来ないかも。
とりあえず淡々と感想書いてく。
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:08:35.69 ID:ZGDkyks00
>>550
もうちょっと書いてもいいんだぜ。銃を捨てようと決意するまでにあるはずのロボット少年の心情が
せめて一言か二言ほしかった。

少年をロボットに変えた科学者なんかを回想とかで登場させて、おばあちゃんの台詞と
対比させるようにすると説明が綺麗にできるかも。入れるとするなら最初か、空白部分。
もちろん少年に捨てるに至った理由をそのまま言わせてもいいし、最後に地の文で
捨てた後の少年の心情を書いてもいい。いろいろとやり方はある。
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/14(土) 21:42:23.14 ID:/n1xdxbAO
今回(前回かな?)は書かなかったので感想だけというのもびめおな心境。
…まあいいじゃん

>>548
文章に突っ込む所はないように思う。ただ独自性が見えないのが残念。
言っちゃ悪いけど、長編のクライマックスよりむしろ導入部としてのほうが受け容れやすい。

>>550
男が自分をロボットと称する点に、もう少し皮肉げなニュアンスを含ませたら良かったかもという印象。
>生まれつきロボットだったわけじゃない
〜のなら(あくまで人間ベースの)改造人間なわけで、
ロボットのように命じられるまま殺人を続けてきた悔恨に触れるとか、
あるいはそんな生き方を改めようと思い立った転機を匂わせるぐらいは欲しいところ。

>>552-553
主人公のキャラがいい。典型的な「少年の心を持ったまま大人になったような」
良し悪しでもあるか…と思いながら、応援したい気持ちにさせられる。
でも、ゴメン、心理描写が丁寧とは見えなかった。

>>555
薄い!
いや、失礼。
お題の中で唯一の制約的な指定[勘違い]がアッサリ流されているし、
三題噺の作り方で書いたのであれ掴みが弱い……というか無かったように見える…
[午後]ならではの、あるいは[鳥]に関連した[勘違い]を書くお題だったのではと、差し出がましく言ってみる。

>>562
地の文が実に文語文語していて、臨場感、緊迫感、文句ナシ。
テンポもいい。
最後の、これまでとの落差にやられた。痛快作、って言っていいのかなww


最新>>572のお題の難度の高さは凄いね
文章表現力以前に、未だ整合性のある状況を思い描けないでいるorz
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:56:01.76 ID:ZGDkyks00
>>552-553
お前さんが日々どんな妄想をしているかがよくわかった。
たしかに丁寧に書いてある。感情移入が容易。2レスある割には読むのに時間がかからなかった。
情景をイメージしやすかったということ。日々の妄想の賜物だな!

削るところと言えば、細かい所をあげればちょっとくらいは字数を減らせるけど
それじゃ意味がないな。大胆に削るなら晩飯を作る場面は削ろうと思えばできなくはないけど、削りたくないよな?
普通の短編SSとして見れば全く長くはないし、これ以上削ったら雰囲気が損なわれるだろうから
もうこれでいいんじゃね、と思う。ミクさんかわいい

ただ、作風を少し変えてもいいというなら他にもやりようはあるかも。
最後の大皿やビールから、夢オチを強調して、大皿を割って終わり。
そのまま話を締めて終わらせることもできる。話としてはおもしろくないけど。

主人公は大学出、院出、にした方がいい。もしくは潰れた会社がその関係の業界のものだったとか。
その方が最後の部分につながりやすい。なんというか最後を読んで、
この男が夢をみて失敗していく様が少しだけイメージされてしまった。
だからこそさっきの夢オチ終了が思い浮かんだのかも。
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/14(土) 22:17:16.25 ID:+ZEyoTgko
なんでだろうね 〆切月曜0時までだと思ってたわ
お蔵入りハハッワロス
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 22:21:57.21 ID:ZGDkyks00
>>580
人いないしこっそり晒せばバレないって誰かが言ってた。
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 23:46:27.22 ID:ZGDkyks00
>>562
〜だった。みたいな文の終わり方が多いから文をもう少し繋げてもいいかも。
わかりやすいし、ギャグ風なオチもついてるので、まさに短編SSって感じ。
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 23:55:45.99 ID:XBKolbrH0

>>548
地の文に湿り気を帯びさせたいのなら、もっと客観的に、二人の様子を書いてみるといいかも
場面が連想できるように叙述的に書いてみると上手く行くかもしれません


>>550
アイディアはとても面白い

けど読んでて、幾つかつっかかったところがあります
他の方が指摘しているように、説明不足が原因かと


>>552-553
話として纏まっているので、削るところは見当たらないと思います

ただミクが登場する前に、主人公の部屋の狭さや汚さを描写して鬱屈な雰囲気を描けたら
ミクの明るさが際立つんじゃないかと思う


>>555
叙情的に書こうとしたら、心理を表現したい人物の周りにいる人物や風景を描写すると効果的だと思う

だから後半の、男性に声をかけられない女性の表情や仕草を描写すると、男性の達観した様子が
もっと描けるんじゃないかな

せっかく女性を登場させたのに、ただ来ただけになってるのが残念

584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 02:29:11.69 ID:ol/wEuJr0
感想のお返しです

>>578
勝負の緊張感が表現したかったので、達成できたようでほっとしています
お陰で臨場感や緊迫感を重視した書き方に自信が持てます
三枚目な男のオチは思いつきだったのですが、上手く機能したようで、こちらも嬉しいです


>>574
>主人公のダークなイメージ
勝負の緊張感が主人公にダークなイメージを付加させたようです
特別主人公にダークなイメージを持たせる意図は無かったので、この視点は新鮮でした

>主人公の若さについては〜
それは気がつきませんでした
短編だと、読者にイメージさせるために描写しないことも必要なのですね


>>582
>〜だった。みたいな文の終わり方
前にも指摘されたことで、どうもクセになっているみたいです
ちょっと見直してみよう
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :2011/05/15(日) 11:13:00.84 ID:JPp23ehAO
>>572難しすぎる。
どうしても、他人から見て微笑ましい帰結に解釈できない。
自スレを切りのいいところまで進めて、いざとやって来たものの…これは降参かもしれない。

他力本願だけれど誰か先鞭をつけてくれるよう期待。
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/15(日) 12:22:29.88 ID:niClHtYIo
>>578
そう見えてしまったってことは、どこかしらに描写を省いてしまった部分があったんですねぇ…
もう少し文字にしなければいけない場所があったってことなんでしょうか
精進します。

>>579
ご察しの通り日々の妄想の賜物です、はい
その分心情の推移については書きやすかったので、それが功を奏したのでしょうか
このテーマで書く以上はこの分量が限界なんですね、読み易かったと言って頂けて助かります
大学院出ってのは全然思いつきませんでした
最初の設定は比較的適当だったので、もうちょっと詰めるべきでしたね

>>583
仰るとおりです
もう少し主人公の序盤風景を描写すべきでした…
大皿の伏線とか全体の雰囲気も向上させられますね、次回に活かしたいと思います

感想返しです、毎度本当にありがとうございます
そして>>572が難しすぎて泣きそう
587 :名無しNIPPER [sage]:2011/05/15(日) 13:22:19.57 ID:NKG8aQGAO
感想ありがとうございます


やっぱり、皆さんに指摘されているように説明不足だったみたいです。
もう少し丁寧に書けば良かったと後悔。
言い訳を言わせてもらえば1レスにまとめようとしたことかな……でも、他人に理解できないようではいけないか。
これからはもう少し、他人に読ませることを意識しないといけないと痛感しました。
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/15(日) 16:27:43.31 ID:niClHtYIo
>>572
「おーっすビリビリ、何してんだ」
「アンタに伝えることがあってね、待ってたのよ。あとビリビリ言うな」
「伝えること?」
「能力なくなっちゃったから、外部に転校するわ」

いつもの公園、いつもの自販機の前。
明るい日差しが差し込むその場所で、私はアイツに別れを告げる。
全身に満ちた絶望を悟られないよう、努めて明るい声で。

「……はい?」
「何度も言わせないでよね、転校すんのよ。これでアンタともお別れね」
「イヤイヤ何言っちゃってますかミサカミコトさん。能力なくなったにしても、無能力者の上条さんも学園都市で暮らしてますことよ」
「アンタのどこが無能力者だってのよ。一回も私に勝たせてくれなかったくせに」
「いや、でもシステムスキャンでは無能力者って」
「システムスキャンで無能力者って出てもね、能力はあるのよ。ただ力が弱くてそこに分類されるだけ」
「ああ、それは小萌先生から聞いたことがあるけど」

「……今のわたしは、正真正銘何の能力も持っていない。
 ”超電磁砲”としてのわたしを支えていた『自分だけの現実』も『AIM拡散力場』も、跡形もなく消えてしまった。
 ”能力の素質なし”って宣告される、普通の人間になっちゃったんだ」

そして、沈黙。
訪れた静寂に耐えられず、慌てて二の句を紡いでしまう。

「まあ、それもそれで悪くないわよ。普通の生活ってのにはずっと憧れてたし、外の世界ってのにも興味はあるし、
 わたしがいなければ、妹達に無用な負担がかかることもきっとない。それぞれの生活を送れるはず。
 短い付き合いだったけど楽しかったわ。せいぜい元気にやんなさいよ」



「……本当にそう思ってるのかよ?
 お前がこの街で積み上げてきたものは、その程度で諦められるものだったってのか?」

静かな怒りを受けて、
完璧に作り上げた笑い顔が崩れていく。
私はその言葉に、何を返せばいいのか分からなくて、
ひたすらに汚い逃げ向上を吐いてしまう。

「アンタには、関係ないでしょ。
 能力を失ったわたしなんて、この街には必要ない」

「――――何を言ってやがるんだテメェはッッッッ!!!」

ぐい、っと胸倉を掴まれ。
引き寄せられる。

「お前がいなくなって悲しむ奴が、一体どれだけいると思ってやがるんだ?
 もしお前が自分の事を、能力以外に何の価値もなくて、学園都市のどこにも居場所がなくて、
 出て行くしかないと思ってるのなら、そんな幻想は俺が残らずぶち殺してやるよ」

そうしてアイツの右腕が上げられる。何度も何度も、私の雷撃を止めてきた右腕が、今の私には光ってさえ見えた。
その右腕が私の幻想を殺してくれたら、どれほどよかっただろう。
笑顔を繕うのは止め、視線を思いっきりぶつけながら、一つの書類を突きつける。

「残念ながら、幻想なんかじゃないわ」
「…………何だよ、これ」
「学園都市統括理事長直々の印よ。ここにいる資格は君にはない、だってさ」
「そんなもん、無視してやれば」
「期日内の退出が認められなければ、わたしだけじゃなく、親戚縁者まで学園都市から追跡されるみたいね」

そこでアイツの言葉は止む。これは幻想でもなんでもなく、現実なんだ。ただ逃れようのない現実。
書類を握りつぶして、眼を伏せたところで、胸倉を掴んでいた手が離れて、そのままさらに抱き寄せられる。

「何でだよ……! お前、そんな形で追放されて、それでいいのかよッ…………!」

「あたしだって、アンタと、みんなと、離れたくなんかないに決まってるでしょ?
 でもさ、こうしてアンタの腕に抱かれただけで、もういいかなって思っちゃうんだ」

「……諦めるんじゃねえよ。能力がどうとかの下らない理由で、住んでた街を追い出されるなんて馬鹿な話があるか。
 今は無理でも、俺達と会ってバカ話して追いかけっこして笑える日常を、絶対に取り戻してやる」

その力強い言葉は、今度は私の心に響いた。
ぽろぽろ、ぽろぽろと、瞳から透明な雫が零れるのが分かる。

「うん、お願い、約束だからね」



「こもえ、抱き合うのは百歩譲って許すとしても、何で短髪は笑いながら泣いてるのかな?」
「インデックスちゃんも、大人になれば分かるのですよ」
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/15(日) 16:29:08.51 ID:niClHtYIo
>>588
あまりにお題が難しかったので、比較的動かしやすい禁書でやってみました
長い台詞を言わせるのが難しいんですよね…… 今回は「」の中に改行を入れてみたんですが
母親の条件だけぶっちしました、ごめんなさい
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/05/15(日) 17:54:16.95 ID:oql8XX/k0
男の子が女の子に手を上げた。

ぴしゃりと乾いた音はここまで届いた。
制服姿の二人が視線をぶつけるようにしながら、じっと佇んでいる。

昼下がりには娘と公園を散歩することが日課になっていた。
そんな平穏な一時がしばし中断される。
目の前のカップルを、私は娘共々息を呑んで見守った。

「おねえちゃんとおにいちゃんがケンカしてるよ。とめなくていいの?」

止めるべきでないケンカもある。第三者が口を挟んではいけないケンカもある。
幼い娘にはまだ分からないのだろう。

「大丈夫、すぐに仲直りするからね」

娘の頭を優しく撫でた。
それなりの確証はある。自分も通った道だから。

娘はなおも不安げに、私の脚にしがみつく。
この子があの道を通るのはいつになるだろう。


「関係ないわけないだろっ!」

びりびり空気を震わせるほどの大声。
公園の木々がざわめいたのは、男の子の怒鳴り声のせいだろうか。それとも、春の強風のせいだろうか。
どちらにしても、娘がこの緊張した状況に怯えていることには変わりない。

私から見ればただの痴話ゲンカでも、娘からすれば若い男女の大ゲンカだ。
震える娘をふわりと抱き上げて、背中をさすってやる。

「大丈夫だからね」

青春、という時期にはよくあることなんだよ。
そんなことを娘に言っても分からないだろうから、心の中でそっとつぶやく。


その時、男の子が女の子を抱き寄せた。
そしてまるで宝物を扱うかのように、ゆっくりと慎重に背中に手を回す。
髪を丁寧に撫で上げながら、何かを呟いた。

私と娘は目を見合わせる。

「ほらね、ちゃんと仲直りしたでしょ?」

娘が嬉しそうに頷いた。

「おにいちゃんたち、はるかとおかあさんみたいになかよしだね」

親子愛とは違ったものなんだけど、娘にその違いが分かるはずがない。
恋愛が何かを知るには、娘は幼すぎるのだ。
今はただ、そうだねと首肯してやれば十分だろう。


「……あれ?」

娘がきょとんとした顔を浮かべた。
何事かと思い、カップルの方へ目をやる。

「あのおねえちゃん、なきながらわらってるよ?」

なるほど、と思った。
仲直りをしたのに、何で泣いているのか分からないのか。
それも、綻びきった笑顔を浮かべながら。

嬉しいときにも人は泣くものだ。

泣くときは悲しいとき、笑うときは嬉しいとき。
単純で無邪気な世界に暮らす娘には、笑顔と涙が混じる複雑な感情は想像できないのだろう。

「大人になれば分かるよ」

そう、あと十年もすればあの青春がやってくる。
私が十年も前に終えたあの時代が。

青春に向かう者、通り過ぎた者。
そして、まっただ中にいる者が混在する、不思議な午後の一時。
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/15(日) 20:48:57.51 ID:eWxaWHeyo
期限24時間延ばす?
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 20:49:43.59 ID:vRoEy58y0
いらんだろ
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/15(日) 20:56:48.78 ID:dQ0GzvlV0
>>589
上琴厨の俺としてはものすごく掘り下げてほしい話だぜ……
しかし「インデックスちゃん」に違和感を覚えた。
「シスターちゃん」じゃなかったかな?
あと、非常に個人的な意見で申し訳ないんだが一言。
無理矢理入れたせいか、最後のセリフで緊迫感がなくなってたかも。
こういうのもアリだとは思うが、俺的には何だかスッキリしなかった。

>>590
とても綺麗にまとまっていて良かった。俺では注意すべきところが見つけられない。
風景が頭の中に自然と浮き上がってきたし、改行の使い方も上手くてスラスラと読めた。
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/16(月) 00:15:38.18 ID:nyumkK9uo
>>590
参考になりそうなことが言えないです
読んだ後に余韻まで残る良作だと思いました
強いて言うならパンチが……いやでもこの空気壊したくないですね

>>593
これは恥ずかしい
シスターちゃんにお説教されてきます
最後で少しゆったりした空気にして終わりたかったんですが、緊迫感あるまま終わらせる方がって方もいらっしゃるんですね
確かに少々お題にとらわれすぎた感は否めないので、気をつけます
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 00:10:10.34 ID:s01YT6IAO
感想

>>588
禁書よく知らない自分からしたらパーフェクトに見えた。
前後の流れから「関係ないでしょ」は本心と裏腹、否定されたい言葉のはずで、
それでも男を睨み付けるくらいの余程圧倒的な現実、苦味と希望の両方が残る別離、綺麗な帰結に納得しきり。

>>590
視点が母娘の側に置かれているのに驚き。この発想はなかった。
男女の事情や心理を描写せずあくまで憶測というかたちに留めることで、
見えない悲喜への関心を否応なく引き寄せる妙手。
一本も二本も取られた感。
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 00:14:26.52 ID:s01YT6IAO
何故か次のお題更新がスルーされてるけど、これは現時点暫定的に安価しないで感想期間にあてるっていう認識でok?
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/17(火) 00:22:17.11 ID:PvFPL4rg0
よくわからん。
面倒くせぇ、って言って深夜にお題更新した人が何かしらのアクション取ってくるのかと思ってたけど動きがないな。

なんならまた酉つけて今後の方針を決めてみる。
一度やったことだし、そこまで反対されないだろう。
なんかもうね。スレの私物化とか考えて慎重に意見出してたのは無意味だったようだ。
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 00:32:23.81 ID:s01YT6IAO
匿名掲示板でスレの総意とかありえないし、いいんでない?仕切っても。

平日は時間が取りづらいと察せられるので、執筆期間は四日程度を提案。
599 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2011/05/17(火) 00:47:02.58 ID:PvFPL4rg0
仕切るっても今ちょっと忙しいからいつでもは来れないって事を先に断わっておくよ。
自分の書き溜め中のSSもあるしね。

スレの総意なんて得られる訳がない事は重々承知だが、それでもできるだけ意見はほしいし、聞くつもり。
他にあれこれやってくれる人がいたら嬉しいし。俺にできることは他の人にもできる。
別に誰かじゃなきゃいけないなんてことはない。

>>598
執筆期間4日なら、お題更新は一週間になるけどOK?

ちょっと考えてくる。




一度このスレから離れた人がまた来てくれるようになるかどうかはわからないけど、
もし時間があって、まだ興味があるならまたこの企画に参加してみてください。
600 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2011/05/17(火) 00:48:59.89 ID:PvFPL4rg0
勘違い。執筆期間4日でも一週間にはならないわ。スマソ。
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 00:58:33.48 ID:s01YT6IAO
>>599
あぁ、前も言ってたもんな>いつでもは…
忙しいなか乙乙

更新は496の一案か二案でいいのでは。
そこらも含めて、次回更新時までにまた意見を募るのもありかとは思うけど

ここ最近ひとが減ったのは、皆自分のssで順調に筆が走ってるんだよ。きっと。
うちもラストまで巻いてみたから次は参加できそうだし
602 : ◆jPpg5.obl6 :2011/05/17(火) 01:51:44.55 ID:PvFPL4rg0
感想期間は特に定めず、
>>588

>>590
の感想はいつでも受付で。今後も同じ。


お題更新ペースは、>>496の2の案。
“5日‐2日(月火水木金・土日)日24時と金24時でお題更新”
でとりあえずいきます。

安価でお題を決めるとき以外は基本的に執筆期間であり、感想期間です。

週二なので安価は1つで。条件をつけたい場合はお題の中に組み込んでみてください。
お題は安価の時に直接書きこんでくれた方がいいです。ちょっとくらい遅れても待ちますが。

投下SSは一人一作などの事は今までと同じ。
感想は一作投下につき、他の人のSSにも2つお願いします。従来通りです。

SSの再投稿は自由ですが、とりあえずその前に感想を書く方を優先してください。

〆切後のSS投下は、一応投下してもいいか聞いてみてください。
お蔵入りさせるのはちょっと寂しいと思うのでOKなら遠慮せず投下してください。
少し遅れたくらいなら気にすることはないでしょう。この辺はその都度判断すればいいと思います。


なんか抜けてたら教えて。

603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/17(火) 01:57:59.64 ID:PvFPL4rg0
>>601
thxとしかいえない。また参加してください。

意見はいつでも出してください。


一日少ないけど、安価出しときます。次回更新は今週金24時で。
安価>>605
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 03:30:27.62 ID:EIaHb59I0
>>603
お疲れ様です

感想期間は特別に設けず、今までどおり、SSが投下されたらその都度感想をつけていくんですね
>>602には、特別不足はないと思います


さて、今回はどんなお題になるかな?

605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/17(火) 03:56:13.36 ID:JiSDFZW9o
登場人物は主人公とその居候の二人
それと他に脇役を最低でも一人登場させる
性別や年齢は問わない。脇役の立ち位置も友人から第三者まで自由
舞台は家の中かその周辺(家が視界に収まる範囲)、時間帯は夕方
居候が主人公を糾弾する。主人公の反応は自由
最終的に二人は和解するが若干のわだかまりを残す

こんな感じでどないでっしゃろ
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/17(火) 09:14:06.09 ID://C3CqHgo
>>602
乙乙、異論はないです
ちょっと体調崩して暫く作品も感想も書けん状態だけど、余裕が出来たら参加するお
季節の変わり目だから同じ様な人もいそうだ
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/17(火) 15:45:24.99 ID:Zep24TdAO
ここって下げ進行なの?

SSを投下したら、分かるように上げようかと思ってるんだけど、大丈夫かな?
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/17(火) 16:27:36.36 ID:vjqKN37DO
上げても問題ないと思う

誰でも参加できるスレだし
というわけであげ
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/17(火) 22:05:56.48 ID:ORg1VflOo
>>602-603
遅くなりましたが乙です

現在スレ立てしようかしまいかで迷っているのでそれが解決したらまた参加させてもらいます
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/17(火) 22:26:00.64 ID:PvFPL4rg0
お題thx!

>>606
まずは隊長を整えてくれぃ。お大事に。

>>607
あげちゃってー。

他の人も余裕をもって参加してくだせい。thx!
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :2011/05/21(土) 00:05:31.37 ID:dzF+qYsAO
やっぱり平日は時間が限られるからか、それとも今回お題の縛りが厳しかったからか

駆け込み投下もありだろうけど、取りあえず次のお題は>>615ヨロシク
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/21(土) 00:20:48.36 ID:AIGaryVN0
>>611
thx!

ちょっと今週本気で忙しかったから書けなかった。
投下が一本も無いのは寂しいので明日中に一つ投下させてくれ。
>>605申し訳ない。
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/21(土) 00:42:27.43 ID:zUsJ5cJ1o
>>605のお題で、[たぬき]ネタ以外を思いつく奴が存在するのか?
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/21(土) 01:24:04.37 ID:hwlUUDpLo
まあ正直どこまで限定すべきかよく分からなかったから構わんよ
自由過ぎたらお題提供する意味が無いし、限定し過ぎたら大勢で書く意味無いし難しいね
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 09:50:03.69 ID:9+Uuge9/o
展開数パターン考えられたから今回のお題は縛り的には問題ないと思う
ただ今五月病でSS書けない状態なんで投下できんけども…
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/21(土) 10:30:46.51 ID:AIGaryVN0
テーマは 「旅」


場面の指定はなし(自由に)
旅人がヒッチハイクをしている
旅の動機が分かるように書く
旅人はこのまま旅を続けていていく事に迷い(悩み)がある
車(乗り物ならなんでもOK)が通りかかり乗せてもらう
このドライバーとの邂逅によって旅人の心情に変化が生じる
旅人はもう少し旅を続ける事を決意する


主人公などは自由に決めてください
お題文はどのように解釈してもOK(この旅自体が誰かの心情の比喩であってもいい)
幻想的なものでもリアリティのあるものでも思うように書いてください
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/21(土) 10:35:27.70 ID:AIGaryVN0
>>613
え!? ああ、ドラえもんね! う、うん気付いてたよ。気付いていたとも!!
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/21(土) 11:12:09.88 ID:zUsJ5cJ1o
カジノとか居候とかヒッチハイクとか日本人には縁の薄いお題が続くなぁ
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/21(土) 11:34:40.21 ID:AIGaryVN0
>>618
615が安価だったんだから五月病がお題でもいいよ。
なんかすごく日本人ぽくないか?
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/21(土) 11:46:31.67 ID:AIGaryVN0
変な言い方になった。
>>615の事を悪く言った訳ではない。すまん。
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/21(土) 12:51:42.43 ID:9+Uuge9/o
UWAAAAごめん!安価素で気付いてなかったorz
>>616でいいと思う、「五月病でSS書けない」がテーマでもいいけどさw
622 : ◆jPpg5.obl6 :2011/05/21(土) 18:18:37.01 ID:AIGaryVN0
じゃあ、「五月病でSS書けない」をお題にしちゃう。

これは細かい設定は案があれば好きに追加しちゃって〜。
まぁみんなSS書きなんだから割とスラスラ書けるかもなw
旬だし、中々の良題だな。本人にちょっと期待。

今回決まるの遅かったり人数的な問題もあるから期限はちょっと延ばすか。
来週金曜くらいでいいかな。
もっと書けるという人は>>605を書いてみて。

変な感じで変更になったけど自分で自分のテーマを放棄するわけだから、まぁ大丈夫だろう。
一応酉つけとく。
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/21(土) 18:46:16.64 ID:JXAS9NEAO
>>622
水を注すようで悪いけど、>>616の設定でアイディアが浮かんで書こうとしていたんだ。
>>616の設定を放棄するとあるけど、投下しちゃダメかな?


後、今回は『五月病』と>>605のお題で二作書いても良いって事ですか?
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/21(土) 18:52:50.02 ID:9+Uuge9/o
流石に確定までに書き始めちゃった人はいいんじゃないだろうか
かく言う自分も>>615-616の五月病おまけ状態でもう半分書いちゃってたりする
一人一作の一番の理由が感想の負担だった気がするんで
感想不要でもう一つ投下してもいいなら、日本舞台でもう一つ書きたくはあるが…
>>622で謎の期待されてるし。感想批評は出来れば今書いてる方で欲しい)
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 20:58:50.63 ID:hkrg6xRy0

>>624
>>623だけど、楽しくなったから>>616でSSを書いてみるよ
上手い事書けたら投下しようと思うけど、一応、>>622の意見も聞きたいな

626 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2011/05/21(土) 21:17:18.98 ID:AIGaryVN0
とりあえずすまんかった!!(謎の期待含む)


もうですね、書けるんなら書いておくれと。
今の状況で一人一作にこだわる必要は皆無。
>>605でも
>>616でも
>>622でも
書けるんなら書いちゃってくらさい。
ただ一つのお題については一作の方がいいかも。
一つのお題につき二作もう書きてる、という人は言ってくんろ。考える。


お題更新は金曜24時で。
今回はかなり柔軟にやってみよう。
あれこれやってもそれなりに融通がきく感じで。好きに書いてー。


さすがに次からはもうちょっと状況を整理してやり方を考えるよ。
でもそれは次からにするのです。そう“次”から。
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/22(日) 16:58:13.39 ID:tycQA9OK0
>>605を書いてるんだが、地の文の一人称三人称で困っている。

感想で、指摘だけじゃなく改善方法も貰えることを期待して未完成状態で書きこんでもいいんだろうか。
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/22(日) 17:31:17.32 ID:D6V3woVAO
>>627
文章力を上げることが目的なのだから、どんな事でをんでいるのか言ってくれれば問題ないよ

629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/22(日) 18:41:49.02 ID:D6V3woVAO
ごめん、意味不明な文になってたorz

悩み事の相談がしたいのだと思うから、未完成を投下して意見を仰いでも問題無いと思うよ
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/22(日) 19:46:35.28 ID:tycQA9OK0
>>629
了解!thx!
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/23(月) 18:33:01.59 ID:QOagTXs90
これはいつからが投下期間なのだろうか……?
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/23(月) 19:56:26.02 ID:2Dp2xXeL0
いつ投下しても大丈夫ですよっと
感想も同じく

投下期間じゃないのは安価とってる間だけ
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/23(月) 19:59:50.69 ID:2Dp2xXeL0
安価とってる間だけってのは変なので訂正。

今のお題募集が〆切になって、次のお題が決まるまでが投下期間外になるかな。
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/23(月) 20:08:46.11 ID:QOagTXs90
>>632
おk、じゃあ俺が先陣を切るとしますかね。
ちなみにお題は>>605です。
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/23(月) 20:10:07.25 ID:QOagTXs90
「クソ兄貴、また女の人連れ込んだでしょ!」

 妹から飛んでくる罵詈雑言に、男は思わず顔をしかめた。
 男は眠そうに欠伸をしながら冷蔵庫に近寄り、卵を取り出した。それを片手で割ると、あらかじめ熱していたフライパンにぶちまける。金髪をくしゃくしゃと掻き毟り、面倒くさそうに妹を見やる。

「あーもーうっせぇ。学校帰りなんだからさっさと着替えてきなさい」
「話は終わってない! ウチは、その、そういうことする場所じゃないの!」

 家をラブホ代わりに使うな、と言いたいらしい。確かに妹はもう高校生、思春期真っ只中である。そんな彼女が兄の部屋を掃除する度に長さや色がまちまちな頭髪を見るのはさぞ苦痛だろう。
 以前ちょうど情事の最中に出くわしてしまった時は一週間口を利いてくれなくなった。完全に男の自業自得ではあるが。

「はいはい。分かった分かった」
「返事は一回!」

 すかさず、サーイエッサー! なんて『まるで本物の軍人がするように本格的な敬礼』を返す男に、妹はため息をついた。

「じゃあ着替えてくるけど、覗かないでよね!」
「誰が覗くか。お前はもうちょっと家主に対する敬意というものをだな」
「あ、ブラのホック外れた」
「さっさと部屋に上がりなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


 ほどよく焼きあがった卵生地をあらかじめ盛りつけておいたチキンライスにかぶせる。ケチャップでなんと書くか男は迷った。ハートマークは陳腐なので以前モナリザを書いた時は兄妹揃って食欲が消し飛んだ。あまりにリアル過ぎて、見てるだけでめまいがしたのが忘れられない。

「やっぱ今度は魔法少女リンドバーグ☆ジェノサイドフォルム(毎週日曜朝8時に大人気放映中)でも……チッ」

 男の呟きは、ポケットから鳴り響いた携帯の着信音にかき消された。乱暴にそれを引き抜き、通話ボタンを押す。スピーカーを耳に押し当てた瞬間、けたたましい銃声が鼓膜を震わせた。

「オイ、生きてるか?」
『なんとか大丈夫です……用件は分かりますね?』
「分からねえな。この間誕生日パーティーへの道を塞いだ罰だろ。俺には関係ねえ、そこで死んでろ」

 向こう側から聞こえた機械質な声にそう返し、さっさと通話を切ろうとする。『いや、待ってください』と焦りの見えない平坦な声がそれを阻んだ。

『これは『任務』です。アナタの家に輸送部隊が向かっているのでそれに従ってください』
「後はなんだ、楽しい楽しいフライトか?」
『スカイダイビング付きで代金は特別支出落ち、なんともお得ですね』
「……お前、だんだん人間らしく戻ってきたけど、性格がマイナス方向に突っ走ってねえか?」
『気のせいです。ではまた、戦場で』

 プツンと通話は切れた。銃声にまぎれて船の駆動音と波の音がした、ということは場所は海上だろう。相手は密輸シンジゲートあたりか。

「おーい」
「ん、何よ?」
「ちょっと旅に出てくる、明日の晩飯までには帰ってくるから」
「はあ!? ちょっ、この間は誕生日の晩御飯にすら遅刻したのに、性懲りもなく私を放置!?」
「知り合いがハワイ沖でクルージングしてるらしいから、遊びに行ってくる。いやービキニのお姉さんって俺大好きなんだよね」

 言い訳にしても最低である。自らの性的嗜好を実の妹に暴露する兄がどこにいるのだろうか。

「っ、っ、こんのッ……大バカクソ兄貴ぃ――――――――!!」

 ぎゃーすかと喚く妹の頭に手を置き、男は今までにないほど優しい声色で告げる。

「分かった。これからはそういうこと、しない」
「…………」
「だからお前は、帰ってきた俺にお手製の料理を振る舞えるよう、料理を勉強してくれ」

 台無しだった。

「……ったく、分かったわよ。さっさとどっか行っちゃって」

 まるで犬を追い出すように手を払う妹に、男は優しく笑いかけ、わしわしとその頭を乱暴になでてやった。

「行ってくる」
「……行ってらっしゃい」

 必要なものはすべて輸送部隊が用意してくれている。男はまるで散歩にでも行くかのように、玄関へと歩く。革靴を履き振り返れば、妹がなでられた頭を触っている。
 それを見て――自分の『聖域』を見て、男の中で何か和らぐものがあった。ドアを開ける。引っ越し業者のトラックに偽装した輸送車へと歩く男は、もう振り返らなかった。


 妹は閉じるドアを見て、その場に崩れ落ちた。

「ひっぐ……バカ、バカ、バカ兄貴」

 彼女が兄の『異常』に気づいたのは遠い昔だ。外出して、憔悴した様子で――もっとも最近はそんな様子微塵も見せないが――帰ってきた時、服から何かがこぼれ落ちたのを見た。
 薬莢、だった。
 この国には『機密特捜機構』なる組織がある。そしてその存在は、ごく一部の人間しかしらない。無論、この少女とて例外ではない。が、兄が何か危険なことに関わっているというのは想像がつく。思えば誕生日の時も彼は遅れたが、あの日は高層ビルで立てこもり事件が起きていたはずだ。まさかとは思うが、兄はそれに関わっていたのだろうか。疑念の連鎖は止まない。
 妹は床に涙をこぼし続けた。
 兄が帰ってくるのは、まだまだ先の事である。
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/23(月) 20:17:33.84 ID:QOagTXs90
どっかで見たことある? はい、俺>>415です。
新たに話を作るのは面倒だったので設定を引っ張ってきた。
第三者は電話でしか登場してないけど、これはお題回収不足か……な?
わかだまりが若干どころじゃないのは置いといて、感想お願いします。
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/24(火) 03:17:14.40 ID:6Phwbr5H0
自分の書いてるやつが全然出せる形にならないので先に感想書いちゃう。

>>635の感想
以前書いたSSの設定を再利用はいいと思う。お題の解釈は自由。
なので、要素が少なからず入っているなら回収不足なんてありえない。

少し細かい所から。全部は書けないけど。

>「……お前、だんだん人間らしく戻ってきたけど、
→ 〜人間らしさが戻ってきたけど、
後、“けど、”の部分は男のキャラに合わせて調整できるかと。

>妹は床に涙をこぼし続けた。
表現を変えてみるとよりいいかと。
書いた後に一度朗読して、突っかかる部分がないか確かめる作業がおススメ。


SSの文章として見ればもう十分な出来だと思うんで、別に今の感じで書き続けるのもありだと思う。
だけど、前にも同じような事を言ったけど少し書き方を変えてみるのもいいんじゃないかと。
この文章を読んで、可もなく不可もなしとは言わないけど、無難な印象を受けた。
文章の書き方は他にもたくさんあるので、いろんな本を読んで調べてあれこれ試してみるといいと思う。
まぁ、しっくりくるような文書がすぐ書けるようにはならないけど。


……自分のやったことのない書き方をするとものすごく疲れるから、正直どうするかは勝手だと思う。
ただ、本人が気付いてるかどうかはわからないけど、ちょっと壁にぶち当たってる感じがするんだよねー。

今回の感想……辛口すぎるな。スマソ。個人的思った事なんであんま真に受けないでほしい。
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 15:11:36.68 ID:RHP5hsTp0
>>635の感想です
いっそシリーズ化して欲しいと思った。 サイボーグ君もいい性格になってきたみたいだしね。
それでも読んでいて突っかかる部分があったので、幾つか挙げてみます。


>男は眠そうに欠伸をしながら冷蔵庫に近寄り、卵を取り出した
この一文だと、寝起きの男が料理の支度に取り掛かったばかりのように感じられた。
手始めに卵を料理しようって感じで。
本当ならチキンライスを仕上げているのだから、男がどこまで食事の準備を進めていたのか、簡単な
描写が欲しかったかなっと。


>この国には『機密特捜機構』なる組織がある。そしてその存在はそしてその存在は、ごく一部の人間し

かしらない。
この一文が浮いているように思う。
妹の心情描写をしているのだから、妹の知らない組織の説明は、ここでは蛇足になっている。
『機密特捜機構』の説明をするのなら、男が現場に輸送される時など、組織の一員として誰かが動く時に挿入する方が、流れが自然になるかと。


細かいところをつっつくような感想になってしまったけど、ご勘弁を。
639 :名無しNIPPER [sage]:2011/05/25(水) 18:57:11.14 ID:0tEqrZ+AO

 目の前を車が横切った。僕はそいつに向かって親指をたてた。運転手は僕の方をちらっと見て、顔をしかめて通りすぎる。
 これで何人目だろうか。
 停まってくれないのはまだしも、人の顔を見て、その場で嫌な顔をするのは少し失礼過ぎるだろ。僕はそんなことを呟きながら、ひたすらに親指をたて、車が停まるのを待っていた。

 車が停まってくれたのは、それから三時間後。23台の車が通りすぎたあとの銀色をした小型車だった。
 運転席には若い女の子が座っていて、ガラスを下ろし、僕に話しかけてきた。
 「きみはここで何してるの?」
 「何ってヒッチハイクじゃないか。だから君は停まってくれたんじゃないの」 
 「違うって、わたしが聞きたいのはなんでそんな格好でヒッチハイクをしてるのかってこと」
 「その前に君は僕を車に乗せてくれるのかな?」
 急がないといけないんだ悪いけど、と僕は言う。彼女はわざとらしくため息をついてから答えた。
 「いいよ、乗せてあげる。ただし、わたしの質問に答えてからね」
 「質問?」
 「だーから、なんでそんな格好してるわけ?」
 ああ、と僕は呟き、答える。
 「ピエロなんだ」
 僕はピエロの格好していた。顔にはあの独特のメイクしてあり、滑稽な服を着ている。
 「英国大道芸団って知ってるかな?」
 ああ、あの大陸を渡り歩くサーカスね と彼女は答える。
 「僕はその団員でピエロなんだ。だから、こんなメイクをしてる。寝坊したんだ、そしたら置いてかれた」
 「じゃあ、こんなときくらいメイク落とせばいいじゃない」
 簡単には落とせないんだと僕は言う。
 「僕は生まれたときから、このメイクを施されてるんだよ。優秀なピエロ一家なんだ。面白いだろ?」
 「それ、全然笑えないって」
 彼女は言って、助手席のドアを開ける。まさか、ピエロと旅することになるとは、と呟くのが聞こえた。
640 :名無しNIPPER [sage]:2011/05/25(水) 18:58:12.48 ID:0tEqrZ+AO

 「ねえ、そういえばどこまで行くの?」 彼女が聞いてくるので、僕は次の公演地を答える。
 「それって、随分遠いよね?」
 「だから、君の行き先で下ろしてくれればいいよ」
 彼女は少し考えてから答えた。
 「いいよ、そこまで行ってあげる。どうせ、今すぐしなきゃいけないことなんてないし、それにピエロを乗せてくれるような人なんてそうはいないって」
 ありがとうと僕は深く感謝を述べ、それから言った。
 「だけど君は乗せてくれてる」
 「わたしはもの好きなんだよ。妹にも言われたことあるよ。お姉ちゃんは男を選ぶとき注意したほうがいいって、変なやつを好きになるから。確かに今まで付き合ったやつはろくでもなかったな」 
 「今は誰かと付き合ったりしてるの?」 「ううん、夜の仕事をしてるから。さすがにこりたよ」
 僕はそれを聞いて、なぜだか悲しくなった。彼女にそれがわかったわけじゃないだろうけど、こう言った。
 「夜の仕事っていってもエッチなやつじゃないよ。生まれもったものは生かさないと。きみと同じで」
 彼女はそう言って笑う。彼女が笑うと確かにキュートだった。だけど、僕はこう言う。
 「自意識過剰だ」
 たしかに、と彼女が言うので僕もつられて、笑った。

 車内の雰囲気が和やかになったところで僕は先ほどから気になっていたことを聞いてみた。
 「この車スピード出しすぎじゃないか?」
 「じゃあ、ルールって何のためにあるか知ってる?」
 逆に彼女が尋ねてきたので、僕は少し考えてから、あたりきりの答えを口にした。 「破るためとか?」
 「ぶっぶー。正解は格好つけるためだよ。国とかが自分に自信がないからさ、なんとなくそれなりにみえるように作って安心してるんだよ。」
 「斬新な意見だ」
 僕は答えた。彼女が走らせる車は時速120キロで走り続けている。
641 :名無しNIPPER [sage]:2011/05/25(水) 18:59:49.66 ID:0tEqrZ+AO

 僕らが目的地につくまでに一週間ほどかかった。その間に団長から二回の電話があって、公演までには間に合いそうだと僕は言った。僕らは道中色々なことを話した。 例えばこんなことだ。
 「ねえ、きみはやめたいと思ったことはないの?そのーピエロのまま、ずっと旅することに」
 「あるよ。いつだって考えてたよ。だけど、これはつまり僕の運命なんだ」
 「だけど、女の子にはモテないじゃないかな?」
 「まあね。ピエロは恋しちゃいけないんだ」
 「それって、悲しくないの?」
 「火の輪をくぐるライオンよりはましだよ」
 このときには、僕はもう彼女に対して、特別な感情を抱いていたんだと思う。

 そんなふうにして、僕らは目的地についた。車から降りるときに書くものを探したけれど、見当たらなかった。だから、僕はポケットから、次回の公演のチケットを取り出して、もう片方のポケットから取り出したペンでそれに電話番号を書き入れた。 そして、それを彼女に渡して言った。
「これはお礼に。明日、公演があるから良かったら来てくれるかな。さらに良かったら電話をくれると嬉しいんだけど…」
 彼女はすぐに答えた。
 「ピエロは恋しちゃいけないんじゃなかったっけ?」
 「ルールはなんていうのは格好つけるためにあるんだ」
 僕は言い返す。クールなふうを装いながらも、心の中では、思い届いてくれよ、と叫んでいた。多分、ステージの上だって、んなふうに思ったことはない。たくさんの観客を笑わせるより、ずっと難しくて、ずっと意味がある。彼女を笑わせられないんじゃピエロ失格だ。
 すると、声が聞こえた。
 「妹の言うとおりだよー。わたしは変な人ばかり好きになっちゃうんだ」
 彼女はとびっきりの笑顔をしている。
 「となりに可愛い女の子がいれば、きみの旅だって、きっと素晴らしいものになるって。たとえ、ピエロのままだってね」
 僕は嬉しくてしょうがなかったけど、あえてこう言う。
 「自意識過剰だ」

 きみの演技を見せてもらおうかなー。彼女が言って、僕らは二人で広げられたテントまで、手を繋いで歩いていく。
642 :名無しNIPPER [sage]:2011/05/25(水) 19:03:41.05 ID:0tEqrZ+AO
お題は>>616
長くなってすまない。あんまり投下がないので少しくらいいかなと。
削るのも技術のうちだが、俺には足りないみたいだ…
感想お願いします。

感想に関してはそのうちに書くつもり。
643 :名無しNIPPER [sage]:2011/05/25(水) 19:40:25.75 ID:0tEqrZ+AO
 上手いと思った。参考にしたいくらい。淡々とした文章が、雰囲気にもあっていていて良かった。

 前の人がだいたい言ってくれているので、それでもあえて挙げるとすれば、途中に入る、である調が少し雰囲気にあってなかったので気になった。

 ただ、雰囲気になんていうのは、受けとる側によっても変わるので、あまりあてにしないでくれ。
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 19:47:21.83 ID:hB/Jq/+c0

>>639-641
主人公とヒロインの掛け合いがテンポよく、引き込まれました
そのために特別長いとは感じず、読んでいて突っかかるところもありませんでした

ただもう少し、ヒロインの仕草や表情を描写してもいいと思います
そうしてヒロインの魅力をより表現できると、深みが増すのではないかと

645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/26(木) 21:35:14.04 ID:hB/Jq/+c0
>>616のお題で投下します


見渡す限りの荒野が、地平線の果てまで広がっていた。
乾いた大地は灰色の砂で覆われ、その上を、南北に渡って道路が舗装されている。
道路は車両が十分に行き返る幅があった。 その白んだアスファルトの上にはラインが引かれ、
車道を二車線に区分しているのだが、ラインは消えかけ、ほとんど用を成していなかった。
歩道は整備されておらず、私は車道に沿って、砂利道をひたすらに歩いていた。
砂利道には土気色の雑草が生えていた。 あるいは枯れているのかも知れない。

一陣の風が吹き、砂埃が舞い上がった。 今朝から断続的に吹きすさぶ風に、私はせめてもの思いで
帽子を目深に被っている。 私の耳に聞こえるのは風の音と、私が砂利を踏みしめる音だけだった。

太陽が中天からやや西に傾いた頃、背後から車のエンジン音が聞こえてきた。
この荒野にエンジン音が響いたのは、今朝から数えて、これで五回目だった。
その内の四回は、私を追い越して地平線の彼方に消えてしまっている。 私は肩越しに視線を投げた。

中型のトラックが一台、こちらへと近づいていた。
私は歩幅を狭め、トラックが近づくのを待った。 トラックが十分に近づいてから、私はゆっくりと右手を上げる。

トラックは私の横を通り過ぎていった。 それは古い形式のトラックであったが、よく磨かれた、
綺麗な車体をもっていた。 エンジン音も快調で、よくよく手入れが行き届いていることが窺える。

やおらトラックは速度を落とし、私の数十ヤード先で停車した。
パワーウインドが下げられ、筋肉質な腕と強面が突き出される。

「旅人とは珍しいね」 と、強面は白い歯をむき出しにして、言った。 

その言葉に、私は唇の端を持ち上げて、笑った。 「まさか……止まるとは思わなかった」 と、
私の口からうわ言のような言葉が零れた。

「苦労したみてぇだな、兄ちゃん。 まぁ乗れ、近くのモーテルまであと数十マイルもある。 
 もたもたしてると日が暮れちまわぁ」

喉を震わせて笑う男に、私は曖昧に頷いてトラックへ近づいた。 助手席に乗り込み礼を述べると、
強面は右手を上げて答えた。 柔らかいシートに体を預けると、流れるようにトラックが発車した。

「それにしても兄ちゃん、一体なんだってこんなところを歩いてたんだ?
 こっから先あるのはガソリンスタンドとモーテルくれぇなもんで、後は永遠砂漠が続いているだけだ。
 砂漠観光だなんてツアーがあるって言うが、ここにはピラミッドなんて洒落たもんはねぇぜ」

私は窓の外に一瞥を投げた。 唇を舌で舐めてから、口を開いた 

「取材を……そう、取材をしようと考えていたんだ」
「取材? するってぇと兄ちゃん、アンタ作家か何かか?」

男の声が弾んだ。 私が頷くと、彼は目を輝かせてこちらに一瞥を送った。

「なるほど、だったらこんなところまでやって来るのも合点が行く。
 なぁ先生、良けりゃお名前を教えちゃくれませんかね?」

私はもう一度、視線を窓の外に投げた。 雲一つ無い空を、一羽の鳥が飛んでいた。
雄雄しく空を舞うそれは、恐らく鷲であろう。 私はしばし鷲を眺め、それから男に視線を戻して、名乗った。

男が私の名を呟いた。 私の名に合点がいかないようだ。 無理も無い、私の本は売れたためしがない。

646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 21:38:02.24 ID:hB/Jq/+c0

「駆け出しでね……名前は売れてないんですよ」
「いや、これはとんだ失礼を……。 しかしお陰で、一つ楽しみができましたよ。
 仕事が終わったら、さっそく先生の本を買いに行きまさぁ」
「お世辞はいらないよ」
「世辞なんかじゃありませんよ。 実を言うと、俺ぁこんな面をしてますが、本を読むのが好きでね。
 酒を一杯やるよりも、本を一冊読んだ方が性に合うんでさ」

私は男を観察した。 六フィート五インチは下らないであろう大男で、鉄板でも仕込んだような厚い胸板と
丸太のような手足を持っている。 ジーンズにシャツというラフな格好で、彼の皮膚は浅黒く、
短く顎鬚を蓄えていた。 黒髪は短く刈り上げられ、肉の厚い鼻はブルドックのように潰れている。
濃い眉毛の下の灰色の瞳は、眩しそうに細められていた。

「先生、今俺のこと変わり者だと思ったでしょう」

図星だった。 私は取り繕おうと口を開いたが、それよりも早く彼が言葉を続けた。

「この面で本が好きだというと、大抵のヤツは目を丸くするんでさ。 またそいつらの面が愉快でしてね!」

がははっ、と男は豪快に笑った。 ライオンの咆哮のような笑い声だった。

「しかしね先生、似合わねぇ趣味って言われますが、バカにしたもんじゃありませんぜ。
 昔あるところに良い所のお嬢様がいた。 麦の穂を思わせる金髪と、今日のように澄んだ空色の目を持つ別嬪さんだ。
 俺ぁちょっとした縁で、その別嬪さんと話をする機会を得たんだが、またこれが鈴の音のように可愛らしい声でね!
 おまけに気立ても申し分ないと来た!
 ……だがよ先生、普通俺みたいなトラック野郎は、そんな女とはそれっきりで終わりよ。
 何しろ住む世界が違ぇや。 お近づきになれただけで奇跡さ」

「ところが、あなたはそうではなかった」

男はくすぐったそうに肩を揺すった。 「アイツは現代アメリカ小説が好きなんだ。 
例えばチャンドラー、ダシール・ハメット、ヘミングウェイ……俺と全く趣味が同じだった。
彼女以上に話せる女はいなかった。 俺たちは時間を忘れて語り合って、最後にもう一度会う約束をした。
俺たちは確かに恋に落ちたんだ。 そして……」

男が手を伸ばして、助手席側のダッシュボードから一枚の写真を取り出し、私に差し出した。
受け取ると、それには彼と、彼に肩を抱かれた金髪の美女の姿があった。
美女は大きくなった自分のお腹を撫でながら、こちらに微笑みかけている。

「八ヶ月だ」 彼の声には活力が漲っていた。 「経過は良好だと、医者が太鼓判を押してくれた。
俺ぁ幸せ者だよ」

それからモーテルに着くまで、私たちは大いに語り合った。
彼が語るのは、かつて聞いたことの無い素晴らしいロマンスだった。
男の口の上手さといえば、私が時間の経過を忘れる程であった。
そして私は、彼のリクエストで自分の簡単な来歴を語った。
彼のロマンスに比べれば刺激の少ない物語だが、それでも彼は私の話に興味深げに相槌を返してくれた。

647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 21:40:13.74 ID:hB/Jq/+c0


「短ぇ間だったが、楽しかったぜ先生」

モーテルの前にトラックを止め、男は笑みを湛えて言った。
差し出された手を握り返し、私もまた、笑みを浮かべた。 そして荷物の中から一冊の本を取り出し、
彼へ差し出した。 私の書いた小説だった。

「ありがとう。 これは僕の本なんだが……良ければもらってくれ。
 ガソリン代の代わりになるといいんだが……」

「こりゃぁ嬉しいね。 ガソリン代の代わりなんてとんでもねぇや」 と、男は満足気に頷いた。
「ついでと言っちゃなんですが……こいつにサインをしてくれませんかね?」

私は不意を打たれた。 彼が何を言ったのか分からず、間の抜けた声を上げてしまった。
男はそんな私に構わず、受け取った本をこちらに突き出し、

「いつか先生が有名になった時、自慢になります。 女房も喜びます」

人好きする笑みを浮かべる男に、私は敵わなかった。 結局、私は見返しの部分にサインをした。
震えるペン先を落ち着けるのに、酷く苦労した。 自分の本にサインを書くなど、初めてのことだったのだ。
酷く体がむず痒い。 私の字は決して上手いとは言えなかったが、それでも男はクリスマスプレゼントのように
本を喜んでくれた。 

「ありがとうございます先生。 新刊も楽しみにしてますぜ」

私は滑るようにトラックを降りた。 酷く喉が渇いて、早くモーテルで一杯やりたかったのだ。
「先生!」 と、そんな私の背に声がかけられた。

「四日後、仕事終わりにここに立ち寄ります。 その時もし必要だったら、街まで送って行きますぜ!
 それじゃぁ、取材頑張ってくだせぇ!」

そう言って、彼はトラックを走らせた。 ぐんぐんとトラックは小さくなっていき、私はトラックが
豆粒のように小さくなるまで見送っていた。 しばらくして、私はモーテルに足を向けた。

いつの間にか、風は凪いでいた。 モーテルは決して大きくはなかったが、清掃が行き届いている。
四日間の宿としては申し分なく、静まり返った荒野は執筆には打って付けだった。

私はノートパソコンを持ってくるべきだった。 必要のないものは置いてきてしまったのだ。
メモ帳は荷物に紛れているが、余白は少ない。 部屋にノートが備えてあることを期待して、私はモーテルの扉を開いた。

648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 21:45:21.18 ID:hB/Jq/+c0
以上です
長くなってしまって申し訳ありません
どうしても一纏めにして投下したかったので…

男はトラックに乗るまで鬱屈した気持ちでいて、運転手との交流で前向きに変わっていったのですが、
それが伝わったでしょうか?
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/27(金) 09:16:36.25 ID:fbOko5O+o
地平線が見えるような荒野の道路に歩道が整備されてないのは当たり前じゃね?とか
古い形式のトラックなのにパワーウィンドウとか
数十マイルや数十ヤードの曖昧すぎる表現とか
現代アメリカ小説じゃなくてハードボイルド小説が好きでいいじゃんとか
1レスにまとめられるだろとか、いろいろ思った

ごめん、俺、ヘミングウェイの小説が面白いと思ったこと無いんだ
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/27(金) 23:52:40.59 ID:asGwEpjPo
>>616+α
リアル五月病からのリハビリと思って浮かんだものを書いたら異様に長くなったごめん。
一週間あると思って途中まで書いて放置していたら締め切りスレスレに…そしてまさかの200行越
後から気付いたけど設定が某スレと似てた。すみません。好きです。後>>645とも若干被った…
多分居ないと思うけど、もし>>513のアレンジみたいな事をやりたい方がいたらどうぞ
(そもそも投下タイミング的におkなのかどうか微妙だが…)
----------

酷く憂鬱な気分だった。
「雨雲に覆われた様な」といったところだろうか。
それとも、「鉛の様に重く」「底なしの沼に沈んでいく」という感じだろうか。
何れにしても、月並みだ。

旅人が一箇所に留まるには、確固たる理由が必要なのだ。
無気力という理由では不十分、それを言い訳にするのは愚の骨頂。
だから四日ぶりに太陽の下に這い出して、岩石砂漠の真っ只中、
辛うじて道と呼べるその端で、ある種の焦燥の元、ヒッチハイクを試みていた。

……まさか、「竜乗り」が引っかかるとは思わなかった。



低空飛行する深緑の巨体に揺られながら、僕はただ黙っていた。
巨体とは言っても、それは他の生物と比較しての話だ。
竜の中では比較的小型、若しくは幼生――の筈だ。

竜なんて、そうお目にかかれる代物ではない。
大きな街を訪れた時に数度見たぐらいだ。背に乗るどころか、触れるのも初めてである。
鞍は竜乗りの青年が座る一席しか取り付けられていないが、
広げた翼の御陰で落ちることもなく、思っていた程も乗り心地は悪くない。

しかし、気になっている点が一つあった。

「あの……」
「なんでしょう?」

青年が振り向いて、そのブラウンの瞳をこちらに向けた。

「あなたはその……何処かに仕えているんですか?」

これまで見た竜は、例外なく国や街、貴族などの紋章を掲げていた。
だが、この竜には紋章入りの装具が見あたらないのだ。

「……いいえ、私はしがない旅人ですから」

本当に?
そう思ったのも束の間、青年は進行方向をむき直してしまった。
言葉が返される前の、僅かな間が気になっていた。
けれど、これ以上は聞けない、聞いてはいけない。

「奇遇ですねー、僕もなんですよ!」

ああ、白々しい。
心を覆う雨雲が厚くなったのか、心自体が更に重く沈んでいったのか。
とにかく、心がまたマイナスへと傾いた。

今度は、青年から質問が投げかけられた。

「旅を始められてから、まだ日は浅いのですか?」
「そうですね、一月半ぐらいです」
「あぁ、やはり。ザックが新しい様に見受けられたので」

つい、バッグパックの肩ベルトを右の手で握りしめた。
魔法道具であるが故に重みも質量も控えめではあるが、今はそれではない何かがとても重い。

「楽しいだけの時期を過ぎて、少し辛くなる頃合いですね」

そして、その言葉にどきりとした。

「うっ……」
「図星でしたか」

再び振り向いた青年の顔は、悪戯っぽく笑っていた。
漏れた呻き声は肯定に等しく、今から否定するのは難しいだろう。

「何かお悩みでもあるのですか? これでも私、それなりに旅を続けていますから、
 先輩として何かしらアドバイス出来るかも知れませんよ」

厳しくとも誤魔化しの言葉を吐くべきか、悩みを打ち明けるべきか。
暫く、僕は黙り込んだ。
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/27(金) 23:53:12.63 ID:asGwEpjPo



「……僕は、小話を描くのが好きなんですよ」

諦め、という言葉が全てを内包してくれるかもしれない。
青年の後頭部に視線を遣って、僕はぽつりと語り出した。

「小説ではなく?」
「ええ、小話」

小説と呼ぶには恐れ多く、詩と呼ぶには文章的すぎる。
だから、小話。

「いい趣味をお持ちですね」
「趣味、趣味ねえ……」

呟いて、僕は頭を抱えた。
掻き上げた髪が風に靡く感触。太陽の光が鬱陶しい。

「ここ数週程、急に描けなくなったんですよね」
「それはそれは……スランプですか」
「かもしれない、です」

描く事に対しての欲求の喪失。
無理矢理筆記具を手にしても、何も言葉が浮かばない。
それは中継宿に泊まっていたこの数日も同じだった。

「僕はですね、旅をして世界の色々な場所で言葉を綴るのが夢だったんですよ」
「素敵な夢じゃないですか」
「その為に何年もお金を貯めて、やっとここまで来たんです」
 ……でも、本当にそれでいいのかなって」

あー、と青年が小さく頷くのが解った。

「いざ実行に移してみて、現実が見えてきたという感じでしょうか」
「……意外と、旅自体は順調だったんですけどね」

もしかすると、順調すぎたのかも知れない。

「気付けば……孤独感とか疎外感とか、不安とか――」

何を初対面の人間に打ち明けているのだろう。
愚かしいと思いながらも、言葉は止まらなかった。

「何で、こんな気持ちを抱えながら旅をしているんでしょうね」

最後にそう言って、唇を噛んだ。
涙声になりかけている、と自分で解ったからだ。

青年はやはり、前を向いたままだった。でも、それでいい。
この、恐らく情けないであろう顔を他者に見られるのは、とてつもなく恥ずかしい。



「……羨ましいですね」
「え?」

不意に投げかけられた言葉。

「私は、私の意志だけで旅を始めた訳ではありませんから」

そんな事を言われると、心が更に締め付けられてしまう。
「自分の意志」などという言葉は、自分でも何度も言い聞かせて来たのだから。
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/27(金) 23:54:07.74 ID:asGwEpjPo

「あなたは、違うんですか?」
「……」

察してくれ、と無言で言っていた。
無言でこちらに向けられた顔は、やはり笑っている。

「私は、この竜と一緒に旅をしていますから」
「あ……」

言い加えられた一言が、答えに等しかった。
紋無しの竜――具体的な理由等は想像の域を超えないが、
あまり喜ばしくない理由である事はそれだけで理解できた。

とても無配慮な事を喋ってしまったと後悔した。
今すぐ竜から飛び降りて、穴掘って埋まりたい程に。
最もそれは例えであって、そんな度胸など一切無いが。

心なしか、心臓が痛くなってきた。

「望んで旅に出た訳ではありませんが、私は今幸せですよ」

それは彼の事実なのか、それとも僕への気遣いなのか。

「ひょっとすると、期待値の問題かも知れませんね」
「期待値……」
「夢というものは、何処までも美化されていくものですから」

一呼吸置いて、青年が言葉を続けた。

「一月半前となりますと……旧暦末辺りから旅を始められたんですよね」
「ええ……如の月の終わりから」
「成る程」

うんうんと微笑みながら頷く青年は、どこか飄々としている。
話し相手である僕の心境とは全く噛み合っていないが、不思議と嫌悪は感じなかった。

「極東の国では、この時期特有の倦怠感を「皐月病」と呼ぶらしいですよ」
「皐月、病……?」
「ほら、今月は皐の月じゃないですか。皐の月の病で皐月病とのことです」
「へえ……初耳です」
「まあ、病名というよりスラング、俗語ですからね」

皐月病、と小さく繰り返してみた。
何処か涼しそうな響きなのに、意味するのが倦怠感だとは。

「旧暦始めに環境が変わった人に起こりやすいそうです。貴方のもそれかもしれません」
「……対処策は?」
「そうですねえ……」

少し唸って、青年は人差し指をぴんと立てた。

「楽観的になることですね」
「え……そんな単純な」
「案外難しいですよ」

青年は笑っているが、しかしふざけているとしか思えなかった。
確かに難しい、いや、難しすぎる。

「……単純ですけど、でもそれが出来ればこんなに悩んでいないですよ……」
「ははっ、でしょうね。もしかすると、時間が解決してくれるかもしれません」

青年の眼が穏やかで物静かな色になった、気がした。

「旅人とは、「流動」する生き物ですから。立ち位置も、心も、何もかもが」

――ああそうか、と思った。
なにが「そう」なのか解らないが、とにかくその様な、結び目が一つ解けたような感じがした。
ただ一つ解った事。僕は、「何か」を難しく考えすぎていたのかもしれない。



空は相変わらず底抜けに青く、光は熱と共に容赦なく降り注ぐ。

状況は殆ど変わっていない。
未だ胸の内を覆う雨雲は去らず、心は重く、水面にも浮かんでこないが、
今なら、僅かながらも文字が綴れそうな気がした。
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/28(土) 00:17:23.82 ID:GHiF+Ck+0
〆切だな。書くと言っておきながら結局投下出来なかった……

今回は3レス使うSSが多かったな。
お題が深く考えてしまうようなものだった事が関係してるかな。

文章を作るってのは本当に難しぃ。
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/28(土) 00:28:31.87 ID:g82VAxu2o
今回一番投下数の多い>>616に限れば

【起】旅人がヒッチハイクをしている
【承】車(乗り物ならなんでもOK)が通りかかり乗せてもらう
【転】このドライバーとの邂逅によって旅人の心情に変化が生じる
【結】旅人はもう少し旅を続ける事を決意する

こんな感じで起承転結が決まってるもんだから
「起だけ」とか「結だけ」とかってのをやりづらいのと

・旅の動機が分かるように書く
・旅人はこのまま旅を続けていていく事に迷い(悩み)がある

この指定がある為に説明に行数を裂かないといけないのが
3レスばかりだった理由かな、という個人的考察
(後人少ないから長くてもいいやーっていうのと)

正直俺の書き方だと3レスに収まるかも相当心配だった。(時間の問題もあったけど)結構説明省いたし
ただ、お題が悪いという意味ではない。大変ではあったけど面白かった
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/28(土) 00:52:08.45 ID:GHiF+Ck+0
>>654
なるー。
次はそれも考えてお題設定してみるかの。
短めの文章で書けるテーマでなんかいいのないかな〜。

少し趣向を変えて、「キャラの説明」とか「舞台・状況の解説」
みたいなのをお題にしてみるとか。
「あらすじ」のみで投下、起承転結における場面を限定するとか。

なにか軽い文章でセンスの出やすいお題ってないかな。
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/28(土) 00:54:13.86 ID:CeUXj2j0o
全部お題拾ったのを書いてみたが、中身無いのに3レスくらいかかりそうだから見送ってしまった
うん、欲張りは良くないな
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/28(土) 00:59:09.80 ID:g82VAxu2o
写真かなんか一枚引っ張ってきて
「風景扱いでも写真扱いでも何でも良いからこの描写を含めること」
みたいなのも面白そうだなと以前思ったが、引っ張ってくる写真が無かった。
後うっかり含めて安価結構取ってしまってるので暫く安価は避けたい

…正直自分で出したお題だとインスピレーション湧きにくいんだよなorz
後誰とは言わんが他人の出したお題に文句言うの止めようぜ。皆出し辛くなるから

>>656
書き終わってるなら折角だし投下しようぜ
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/28(土) 01:03:14.06 ID:GHiF+Ck+0
>>656
おいらも今回は見送りっす。気軽に書こうぜ。

写真かー。それもアリいいなー。
ちなみに今お題安価とってやろうって人いるのか?
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/28(土) 01:33:27.30 ID:GHiF+Ck+0
一応また>>602でいくけど、期間が短いようなら見直そう。

安価だけ出しときます。
次回のお題
>>662
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/28(土) 01:34:34.64 ID:GHiF+Ck+0
age
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/28(土) 01:39:41.15 ID:g82VAxu2o
短時間に何度もレスすまんぬ。書ける内に感想。
正直どれもこれもレベル高すぎて、俺のレベルじゃ批評無理だわ…
でもべた褒めばっかだと馴れ合い化しそうなので無理矢理いちゃもん付ける
無理矢理なのであんまり気にすんな!見当違いな事言ってたらスルーしてくれ!

>>635
モナリザ吹いたwww設定の再利用は全然okだと思うよ
>「だからお前は、帰ってきた俺にお手製の〜
その後の反応も含めて台無しだった、って言うには少しインパクトが足りない気がする。
> この国には『機密特捜機構』なる組織がある。
最終段落の前半が妹視点に近い状態で進んでいるので、その中で上記の一文があると
「疑念の連鎖」って感じが薄れるかもしれない…と思ったら既に指摘されていたぜ…

>>639
展開はえー、と個人的に思ったけど多分恋愛物のSSを全く読まないせいだろうな。レス数制限あるし
一人称小説としていいと思う。正直最初はえらい説明調だなあと思ったけど
逆に主人公のキャラが伺えてよかった。
飽くまで一意見なんだけど、地の文中の発言内容に鉤括弧があったりなかったりするので
いっそ付けるか付けないか統一してしまった方がいい気がする。ぶっちゃけ暫く改行漏れかと思ってた。
若しくは発言の長さで有無を統一するか
後舞台・時代設定がちょっと解りづらいかなあ。電話って事は現代だと思うけれど。
周辺の状況だけでもいいから、冒頭付近に少し説明が欲しいかも

>>645
荒野被りとか関係無しに個人的に好みだ。鬱展開じゃなくてちょっと幸せになったw
幾ら運転手が本好きでも、「取材」と聞いたら作家よりまずマスコミとかそっちを連想しそうだけど
もしかしてこれって日本人的な発想なのかな…詳しくないからわかんね
もしそうでないなら数言で済むだろうし、その手のやり取りを加えると滑らかだとは思ったけど…
>私はノートパソコンを持ってくるべきだった。 
この一文に、翻訳書籍の様な不自然さを感じた
舞台が舞台なので意図的なものだったらスルーして下さい

※要らん話:現実世界の灰目は色素の薄い人が殆ど、と思っていたのでSSに突っこむのも野暮と思いつつ
指摘しようとしたけど、ぐぐってもろくに資料が見つからなんだ
所詮wikipedia(笑)の知識なので自信ない。誰か眼の色とかに詳しいサイトを知っていたら教えて下さい



やりとり一つ(「見せて下さいよー」>「エーヤダー」な物書きあるある)入れ忘れた事にさっき気付いて呆然としてる
そして安価下
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/28(土) 02:05:23.65 ID:g82VAxu2o
ごめんちょっと言葉不足だったので追記
ノーパソ云々の一文に関しては、意図的な文体にしても
そこだけ極端に違和感があると言いたかった(通しで読んでてそこでひっかかったので)
トラック降りるところとか気にならなかったのに何でだろうなあ…偶々そこで引っかかっただけかも

しかし時間的な問題か人いないな。とりあえず安価下しときます
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/28(土) 23:01:28.65 ID:g82VAxu2o
安価下した俺も悪かったが誰もお題書きに来ないとかw 連投は気が引けるが…
人が全く居ない、という訳ではないと信じて、俺が書いたんじゃないけど>>159とかどうだろう
で、これでやるにしても一日じゃきついし、締め切りはまた金曜24時がいいんじゃないかな
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/29(日) 00:34:49.96 ID:BHJVn6cw0
>>663
いいと思う。

他にも採用されなかったお題安価は
>>109

>>112

>>161

あたりがあるな。これらのどれでもいいようにしてみる?
期限は何ならこれから一週間で行ってみようか。土曜24時締めきりにして。
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/29(日) 18:13:59.87 ID:BHJVn6cw0
人いるかどうかわからんがとりあえず、
>>664で一週間やってみますよー。
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/31(火) 01:06:21.00 ID:DUzbA2mho
見ていない訳じゃないんだが…
自分のスレを持とうと思って書き貯めを始めた途端余裕がなくなった。並行できる人本当に凄いと思う。
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 18:46:18.46 ID:nknLLC2e0
>>666
同じく。自分のSS書いてたらとても同時にはできない。
以前は展開に詰まって息抜きでやってたが、今は早く自分のSSを進めたいからなぁ。
668 :名無しNIPPER [sage]:2011/06/02(木) 22:28:41.93 ID:Ul2Iuk0AO
>>112

 ――懐かしいな。俺は校舎の屋上から、下を眺め、思う。ここに来たのは3年ぶりだった。俺は実に簡単にフェンスの向こう側にいき、そこに座る。足は行き場がなく、ぶらぶらしていたが別に怖くはなかった。 
 「こりゃー落ちたら確実に死ぬよな」俺は誰に言うでもなく、呟く。なんたって、実証済みだからな。ここから飛び降りて死んだ生徒がいるというのは、有名な話だった。
 校庭では、生徒たちがせわしなく動いていた。あるものは早く学校から解放されようと走り、あるものは部活動に精を出している。
 カキーンと心地よい金属音がしたので、そちらの方を向くと、野球部が紅白戦のようなことをしていた。音のわりには弱いあたりだなと俺は思う。その横でサッカー部がボールを追いかけているのが見えた。そして、その2つの部活を避けるようにして、陸上部が走っている。どれも、俺がいた頃と何も変わってない。
 「君」しばらく、そんな光景を眺めていると、ふいに後ろから声をかけられる。まさか、声をかけられるとは思ってもいなかったので、驚き、振り返る。
 「そんなとこにいるとあぶないと思う」俺は男の姿を一瞥する。背は低く、当然だか学生服を着ている。そして、男はどこか面白がっているようだった。
 「視えるのか?」俺は尋ねた。
「厄介なんだ。得したことなんかないよ」ため息をついた後、男は俺を指差し、言った。
 「昼間に出てくるなんてルール違反だ」
669 :名無しNIPPER :2011/06/02(木) 22:37:16.96 ID:Ul2Iuk0AO
人いなそうだけど一応投下してみた。
感想お願いします!

670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 17:17:46.88 ID:KOYiAI0V0
>>668
読点をあまり使いすぎるとテンポが悪くなる。
それといくつか癖があるようだな。
>下を眺め、思う。
>向こう側にいき、そこに座る。
>言うでもなく、呟く。
>指差し、言った。
>驚き、振り返る。

>まさか、声をかけられるとは思ってもいなかったので、驚き、振り返る。
リアルタイムで事が進んでいる感じがほしかった。
驚き、振り返る。 → 俺は驚いて振り返った。
こんな感じで。読点も減らせる。

文末の言葉をもう少し慎重に選ぶとまた印象が変わると思う。
話はいいと思う。けどこれは短編以外でやるとするなら、視点移動に気をつけなければいけない文章かも。
普段書いているSSでは注意を。


投下があれば感想は書くよ。
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/06/03(金) 19:26:00.46 ID:A4zeWWgVo
>>668
俺も句読点が多すぎると思った
加えて「説明的な文章」と「心情をそのまま書き写した様な文章」が混ざっていて変な感じ
せめてどちらかに統一した方がよさそう
後、凄く細かいけど、中盤「〜る」で終わる文章が三つ続いたのがテンポ悪いかなと思った
…というか内容が>>670とほぼ一緒だな…ごめん

話の組み立ては結構好き
この手の内容は登場人物の状況が今一はっきり把握出来ないまま終わる事も多いのだけど
その辺りは自然に読み取れた
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 19:31:05.27 ID:A4zeWWgVo
ごめん別に句点は多くなかった…

締め切りは土曜24時だっけ。滑り込み投下に期待
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 00:28:21.43 ID:5t4yJ+pS0
まぁ〆切な訳だが、
お題は
>>109

>>112

>>159

>>161

でしばらくいこうか。
というか何かお題のアイデアがあれば自由に投下してください。
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 00:29:01.19 ID:5t4yJ+pS0
まぁ〆切な訳だが、
お題は
>>109

>>112

>>159

>>161

でしばらくいこうか。
というか何かお題のアイデアがあれば自由に投下してください。
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 21:41:24.02 ID:OTf6yLJA0
過疎り始めたけど、これはみんな本スレに戻っていったってことだろうか
嬉しいような悲しいような…
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 22:19:54.95 ID:lsBUaxylo
ようやくSS一つ終わったし、そろそろ復帰しようと思う
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 22:43:11.66 ID:lsBUaxylo
ざっと過疎中の読んでみたけどレベル高いな
俺も頑張ろう
678 :お頼み申す。久々だからオーソドックスに行ってみました。 [saga]:2011/06/12(日) 19:15:10.41 ID:VBqldvbno
>>109


 日が暮れかけても蝉たちは合唱をやめない。
 そのかしましい声々を背景に、やや間を置いてから目の前の彼女はつぶやいた。

「……ごめんなさい」

 俯いたその表情はよく読めない。
 ぼくは口を開いてなにか言おうとして、それでも何も言えなくて。

「そう……そうか」

 風船から空気が抜けるごとくに言葉を吐き出した。
 彼女はなおも謝罪を告げ、それから足早に歩み去る。ぼくはそれを見送った。

「……」

 愛の告白は単純なものだった。

「好きです。付き合ってください」

 再びそれをかみしめて、苦い思いが胸に広がるのを見下ろした。ああ。
 彼女と出会ったのは春先だった。ぼくはとにかく孤立していた。
 別にいじめなんかはなかったが、それでもぼくは一人だった。
 まわりの壁は見えないながらもアクアリウムのごとく分厚くて、一人の寒さは厳しくて。
 だから、それを越えてくる者がいるなんて、考えもしなかったのだけれど。

「隣、いいかしら」

 中庭ベンチで読書のぼくに、声かけしたのが彼女だった。
 特に会話らしい会話もなかったけれど、それから毎日ぼくらは隣同士で読書した。
 彼女は、ありきたりな言葉だけれど綺麗な娘だった。
 見た目ももちろん麗しかったけれど、そのたおやかな振る舞いがぼくはとにかく好きだった。
 優しくページを繰る手、静かに物語を撫でる眼差し。
 何よりその口元の笑みが幸せそうで、ぼくはそれを見ているだけで、何かが報われるような気がしたのだ。
 好きだった。

「それ、何の本?」

 勇気を出して放った言葉は、彼女の微笑みにたどり着いた。ぼくと彼女はそれから少しずつ話すようになった。
 一人じゃないという実感は、とても具合のよいもので。彼女の雰囲気柔らかく。
 ぼくは久方ぶりに安らぎというものを覚えたのだ。
 帰り道を歩きながら、ぼくは静かにこっそりと。涙を流してふき取った。

 彼女が引っ越さなければならなかったことを知ったのはそれから数日後のことだった。


 (了)
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/13(月) 02:19:31.12 ID:hevMGKNj0
>>678
視覚的にも文章的にも読みやすい。スラスラ読めた。
書いてからしっかり読み返して、違和感があった部分を取り除いて修正してる感じ。
いつもそれをやるのは厳しいけど、その内慣れてくるかと。頑張ってほしい。

表現が凝ってていいと思う。わかりやすい言葉が選ばれてる。
一人称では小難しい言葉を多用すると、読みづらくするだけになる場合がある。
これくらいで個人的にはちょうどいいように感じた。

下から二行目
ぼくは〜
帰り道〜
の所は、ぼくは〜と、帰り道〜の文とで時点が変わっているので、改行するなら
この二文の間だったかもしれない。

時点が変わる文章の先頭には具体的な時期や場所を書くといいかと。
>中庭ベンチで読書のぼくに〜、が先頭。
この先頭の前に、「新学期に入り、ぼくは新しいクラスになじめずにいた」
みたいな一文があるとまた時点移動がイメージしやすい。
ちなみに関係ないけど、この文を入れたなら、「隣、いいかしら」 のセリフは、
声をかけてきたのが彼女だった、の後に来るな。

>風船から空気が抜けるごとくに言葉を吐き出した。
どちらが言葉を吐き出したんだろうか、と少し思った。主語がほしい。


長々と感想を書いたけど、十分にくおりてーは高いと思うです。
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/13(月) 09:09:17.40 ID:RIMYA7pfo
>>679
感想どうもー
構成の方法について言及してもらってるね
確かに俺は読みやすさ重視だからそういう指摘は助かる
特に時点については参考になったthx

これから週に一回は投下しにきたいな
681 :清涼感を求めてみました。お頼み申す [saga]:2011/06/19(日) 19:28:55.89 ID:DffbznSxo
>>112

 抜けるような青空は、それこそ人の心すら吸い上げる。時速数十キロの勢いで。
 風は涼しく、日射しは優しく。
 その男子生徒は見上げたまま目を細めた。

「……」

 校舎の屋上、その端っこ、フェンスすらも乗り越えて。
 彼は座って足をぶらぶらと。
 思うことは何もなく。
 それでも耳を傾けて。

「……」

 沈黙以外はそこにない。
 それでも世界のぐるりは彼を見守り、何かを語りかけていた。
 ああ。彼は思った。
 このまま飛んでいけたらな、と。
 声がかかったのはそんな時。

「そんなところにいたら、危ないぞ」

 それは優しい少女のもの。
 振り向くその先、風に吹かれて、彼女はそっと微笑んでいた。

「やあ」
「うん」

 彼女はフェンスに近付くと、それを掴んで彼と同じように見上げた。
 風は涼しく、日射しは優しく。
 彼女が目を細めるのが見えた気がした。
 やはり沈黙、それでも囁き。

「そっちに行ってもいいかな?」

 彼が頷くのを見届けて、彼女はフェンスに足をかけた。

「……見るなよ?」

 何のことかな? そらっとぼけて彼は町を見下ろした。高台のそこからはその全てが見渡せる。
 存外軽い音を立て、少女が隣に着地した。

「ここ、いいね」

 彼女は言って、隣に座った。
 彼は無言で肯定し、

「あ」

 無言で彼女の手を握った。
 風と日射しは相変わらず穏やかだった。
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/20(月) 04:40:20.59 ID:tjD13VsEo
>>681
ちょっと辛口になりますが、ただの批評家気取りの戯言なのであくまで参考程度に

全体的に情景描写の置き方がちぐはぐな感じがしました
体言止めも多いので詩的要素の濃い世界観ですが、自分はどうにもその世界観に馴染めませんでした
以下数ヶ所気になったところを

>時速数十キロの勢いで。
いきなり出端をくじかれた気分です。倒置していながら後の文章に関与せず、浮いてます

>その男子生徒は見上げたまま目を細めた。
「見上げたまま」の前後にもう一文節欲しいかもしれません

>それでも耳を傾けて。
思うことは何もないのに耳を傾ける?
以下の地の文のくだりも含め、筆者の伝えたいことが図りかねました

>やはり沈黙、それでも囁き。
ニュアンスは分かりますが、さすがにこの一文はやっつけ過ぎなので練り直すべきと思います

>風と日射しは相変わらず穏やかだった。
締めの一文としてはいまひとつのように思えます。あまり余韻が残りません
風と日射しが一緒くたに穏やかと表現されてるせいで、むしろこれまでのタメの文より地味になってる気がします
「清涼感を求める」とのことなので、僭越ながら日射しの描写は捨て、
「ひときわ涼やかな風が通り過ぎた」「風音とともに少女の髪が吹き流れた」などとした方が感じが出るのではないでしょうか


逆に良かったと思えた点は、人物の具体的な言動からなる展開の仕方です
少女との掛け合いの(いい意味での)淡白さは自分好みでしたし、「見るなよ?」の一言は本能のどこかをくすぐりました
手を握った後の描写も欲しかったところですが、あえてここで止めたところも業とみました


精進すべき身でありながら偉そうなことばかり書いて申し訳ありませんでした
以上の駄文でもし何かを得られたなら幸いです。ここまで読んでいただいてありがとうございました。では
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 07:48:47.02 ID:Z6ZcJh/Vo
感想どうもー
おお、なんだかこてんぱんですな
特に反論もできないので、参考にしつつ精進させてもらいます
最も参考になったのは締めの一文
提示してもらったものの方が明らかに涼しい
余韻を残す大事な部分なのでこれからは気をつけたいと思います
684 :名無しNIPPER [age]:2011/06/29(水) 09:33:18.20 ID:ApUj8/IAO
過疎ってるんでSS投下age

>>112
心地好い春風が流れる平日の昼間

大抵の社会人は仕事に行き、大半の学生は自身が所属している学校の校舎で勉学に励んでいる時間

彼は体育の時間でもないのに、自身の所属する校舎の外にいた

このパターンに該当するものがあるなら、サボりか、何か事情がある生徒のどちらかだ

そして彼は前者に該当する

別段、学校をサボる生徒など珍しくない

誰にだって「授業をサボりたい」だの「学校休みたい」だのといった欲望は持っているはずだ

持っていないのなら、その人物はよほどの真面目くんか、幸せ者に違いない

だが、彼は珍しかった

サボる事が、ではない
サボる場所が、珍しかった

学校の屋上
フェンスを乗り越え、屋上の端に座っている
足は端からはみ出して宙ぶらりん

一歩でも間違えたら死に繋がりかねない状態でサボっていた

もし誰かが悪ふざけでトン、と肩を押しただけでも少年は屋上から転落し、地面に叩きつけられた挙げ句、真っ赤なトマトジュースで頭が深紅に染まりかねない

そんな危険性を察した賢い友人は何度も少年に注意を促す

だが、問題のその少年はいい天気だ、などという脳天気な事を考えながら空を眺めているだけだった

そして今日も少年は空を眺め続けていた

「今日も空が青い…」

少年はその顔をいわゆる「マヌケ面」にしながら、ボーッと空を見上げる

彼の頬に渦巻き模様が描けるならば、さぞかし、お似合いだろう

「こんな昼間から生徒がサボりとは感心しないなぁ」

不意に声がかかり、少年の顔が通常の面構えに戻る

脳天気な少年でもマヌケ面を人に晒す趣味はないらしい

「さらに言うなら、そんな所にいると危ないぞ」

先程からするのは高い女性の声

無論、少年からそんな声が出るはずがない

少年が声のする方を振り向く
すると、そこには少年の見知った顔があった

「委員長…」

少年がそう呟くと同時に委員長という名の死に神から、少年に対して死刑宣告が下される

「君、今日の放課後に漢字の書き取りだ。安心しろ。20000字で許してやる」

委員長の言葉を聞き、少年は肩を落とした
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 18:08:30.73 ID:hpGeOUH3o
亀だけれども

>>684
ちょっとまわりくどい表現が多い気がする
例えば
>このパターンに該当するものがあるなら、サボりか、何か事情がある生徒のどちらかだ
>そして彼は前者に該当する
これとかは単純に彼はサボりだと言いたいわけだけど、わざわざ遠回りさせている
別に使っちゃいけないことはないんだけど、同じようなのが多い気がするので、あまり頼りすぎない方がいいかと

申し訳ない、これくらいしか批評できないや
686 :次は投下 できれば批評お願いします :2011/07/10(日) 18:10:39.00 ID:hpGeOUH3o

>>159


 狭くはないが、あまり綺麗でもない。
 ベッドとテーブルが一つずつあるだけの殺風景な、もっと言ってしまえば安っぽいホテルの一室だ。
 どこか淫靡な気配を漂わせるそこで、だが艶っぽい雰囲気など露ほどもなく男と女が向かい合わせに座っていた。
 いや、男と少女といった方が正しいか。

「では、取引は成立だ」

 無機質な男の声。この世の全てに興味がないと言わんばかりのそれ。
 自分にも興味はないのだから、声は情報の伝達という最低限の意味さえも失いかけているのだろうな、と少女は思った。
 了解の意を示し、彼女は一抱えほどの鞄を前に押し出した。かなりの重量がある。
 紙の束でも腕に軽く痺れを走らせる程の重さにはなるのだ。
 男は頷くこともせずにその取っ手をつかむと立ちあがった。

「こちらが提供できる情報はこれが全てだ」

 差し出す手に数枚の紙。受け取るが鞄と違って重みはない。だが、彼女には大事なものだ。
 取り戻すのに欠かせないものなのだ。

「ええ」

 ありがとう。とは決して言わない。天地がひっくりかえっても言うことはないだろう。
 男がこちらに背を向けた。

「……」

 昔――そうだ五年ほど前だ、と少女は思い出した――ひとつの家族があった。
 その家族はお世辞にも裕福とは言えなかったが、それでも居心地は悪くなかった。

 少女はおもむろに手のひらサイズの鉄の塊を取りだすと、男の背中に向かって引鉄を絞った。
 小さな破裂音。男の身体がこわばり、そして倒れる。
 しばしの沈黙をはさんで少女は静かに落ちた鞄に歩み寄った。
 引き開け、一束、取り出す。

「やっぱりわたしのところにあるべきよね、これは」

 紙幣の表面を撫でる視線はどこか熱っぽい。
 そのままそれに口付けし――肩に衝撃を受けて倒れ込んだ。
 幸い拳銃はまだ手の中にあった。しかし二撃目を受けて部屋の壁際まで吹き飛ぶ。
 打たれた腹部が激しく痛んだ。唾液を胃液を吐き散らす。
 持ち上げた視界に黒い影が映った。背中をまともに撃ち抜かれたというのに、男は平気で立っていた。

「取引は成立した。反故にするつもりか」
「お金はわたしのものよ……いつだってね。あなたたちになんて渡すものですか」

 声は震えていたが、拳銃を持つ手は持ちあがってくれた。

「わたしのものよ……! わたしにはこれが必要なのよ!」

 昔、一つの家族があった。お世辞にも裕福ではなく、得るために何かを失う必要があった。
 大事でないものがなくなり、次第に大事なものまでなくなり、彼女は最後に姉を失った。姉は売られていったのだ。

(わたしは絶対に姉さんを取り戻す!)

 あの家族の居心地は悪くなかったから。
 彼女は再び引き金を絞った。
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/10(日) 23:39:30.85 ID:VcW/dleRo
>>686
改善できそうな点として思ったところを。

・「〜のだ、〜なのだ、〜なるのだ」 はあまり好ましくない
 文法の細かいところだけれど、ちょっと崩した表現という印象を受ける。
 会話文なんかで軽く使うにはいいけど、シリアスな中身と一致していない気がする。

・地の文の人称が分かりにくい
 終始「彼女は〜、少女は〜」で書いてるから、これは三人称視点だと判断できる。
 けど、その中に少女の心情が一人称視点で含まれているように見える。
 痛みの描写などにそれが顕著。
 あとぶっちゃけ彼女と少女を使い分ける意味はあったのだろうか?

全体としては好きな文章だった
一文が短く、テンポも良かったからさらりと読めた
強いて付け加えるなら「家族の居心地は悪くない」って日本語として合ってるのかな、ちょっとわからん
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 04:46:05.28 ID:rdAf8mWro
批評ありがとう、もう人がいないもんだと思ってたから何だか安心しちゃいました

家族の居心地……確かに違和感があるような
書いてた時は分からなかったけど、今度から気をつけよう

地の文の人称については今回、三人称だけれども神視点ではなく少女の視点を採用しています
三人称一元とかいう描写法です
それで心情や痛みの描写をしたのですが、それでも違和感があるようでしたら教えてもらえると助かります

以上です、ありがとうございました
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/11(月) 08:42:20.54 ID:cX6lX9IJo
>>688
三人称一元は知ってるけど、三人称である以上視点は神じゃないかな
三人称一元と一人称では心情描写可能な範囲がちょっと違う
一人称でしか書き得ないレベルの心情描写が入ってるように思えたんだ
俺の考えすぎだったらごめんよ
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 18:14:40.70 ID:rdAf8mWro
>>689
なるほど、違和感がある以上何かしら不備があるんですねきっと
三人称一元が一番好きなので、もっと練習します
ところで、自分は三人称一元は一人称の「私」なんかをそのまま「彼」なんかに置き換えられるものだと思い込んでました
心情描写可能な範囲が少し違うということですが、よければ解説をお願いできないでしょうか
691 :スペース挟めなくて見にくく、申し訳ありません [saga]:2011/07/11(月) 20:05:41.65 ID:rdAf8mWro

>>536


 笑い出したいような泣きだしたいような。でも驚きににも似た心地よい緊張と、どこか神性すら感じる厳かさからくる胸の痺れ。
(ああ……!)
 将来子を得て、そしてその子が初めて立って歩いた時の感動はきっと、この心の震えに似ているのだろう。
 ぎこちなくゆっくりであろうとも、確かに歩を進める“彼”を見て、わたしはあの時そう思ったのだ。

 大きく軽快な破裂音の連なりが耳を貫いた。
 拍手の音で、意識を過去の揺らめきから現在に戻す。
「では西本くんの前途を祝して、カンパーイ!」
 教授が大声を張り上げてグラスを掲げた。「乾杯!」とわたしの周囲からも声が上がる。
 わたしは沈黙したまま。グラスは申し訳程度にひょいと持ち上げてみた。
 そんな小さな動作でも、身体に空いた穴から空気が抜けるような気がした。もしくは心に空いた穴からか。
 ありがとうございます、と穏やかに笑う西本くんを見ていると、無性に胸を掻きむしりたくなるような衝動に襲われた。
 だから、西本くんの送別会には出たくなかったのに。

 海外の大学への留学。相手側の大学教授からの直々のご指名。事実上のヘッドハンティング、みたいなものだ。
 西本くんはこの分野で確かな実績があったし経験も豊富だったから、将来は漠然と“すごい人”になるんだろうな、なんて考えてはいたけれど。

 大学の作業所を利用した会場は、夏の夜にも関わらずなかなかに涼しかった。
 でも、わたしは居心地の悪さを感じて、しばらく会場をぶらぶらした後こっそり裏口から抜け出した。
 ため息。見上げると星と月が綺麗だった。
 肉眼ではわからないほどゆっくりと夜空を滑っていくそれらを見つめてどれほどたったろうか。
「渡辺?」
 むわっとした暑さにそぐわない、春のような柔らかい声に、わたしははっとして振り向いた。
「……主役が抜けてきていいの?」
 肩から力を抜き、少しぶっきらぼうに言う。西本くんは笑い、「大丈夫」と言うと隣に来て、さっきのわたしと同じように夜空を見上げた。
「あの日の夜を思い出すなあ……」
「……」
 あの日の夜、とは。わたしたちが、張り裂けそうなほどの胸の痺れに動けなかったあの夜。
 いてもたってもいられない歓喜を、どこか遠いところに思い出す。記憶を共有する沈黙があった。
「わたしはさ」
 意識せずに口を開いていた。
「ライバルだと思ってた、あなたのこと。あなたにだけは負けたくないってね」
「……」
「だから今のこのやるせなさも、あなたに負けたっていう事実に打ちひしがれているからって勘違いしてた。
 あなたが選ばれたのにわたしも選ばれないのは悔しいって」
 西本くんはゆっくりとこちらに視線を下ろすと、「違うのかい?」とやはり穏やかに言った。

 あの日の夜を思い出していた。
 わたしたちは数年前、二人で奮闘していた。小人ほどの大きさのロボットを自分たちだけの手で歩かせる、ただそれだけのために。
 数日間作業所にこもり続けた。徹夜も一日二日ではない。それでもやりがいはあった。

「あの子が歩いてくれたあの日は、やっぱり夏の夜だった」
「うん」
「ガタガタと十数歩だけ。でもわたしは泣いちゃった。うれしくてうれしくて」
「……うん」
 西本くんは微笑んだ。「ぼくも泣きそうだった」と。
「わたし……あなたとずっといっしょにロボットを作っていたい」
 一言目は伏し目がちに。
「わたしは西本くんのことが」
 次の一言はしっかり目を見て。たとえ手が足が震えようとも。
「……ぼくもだ」
「じゃあ――」
「でも行くよ。もっと遠くに歩いていきたい、歩かせてやりたいから」
 涼しい風が吹いた。
「いつか、君と一緒に」

 数日後、仲間たちと飛行場に彼を見送りに行った。
 別れを告げて、それ以降は振り返らずに西本くんは歩いていった。
 ゆっくりと、でもしなやかに。
 その偉大な背中は。
(……)
 どこかあの小人ロボットにも似ていた。
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2011/07/11(月) 21:09:03.18 ID:lcJKLkbL0
オレも書いてみる >>536を会話だけで


「ロボットなら良かったのに」

「どうして?」

「だってロボットなら、別れるとき、涙なんか流さなくて良いだろ」

「そうかしら? ロボットだって涙くらい流すわよ」

「それは多分オイルだよ」

「夢がないのね」

「ロマンがないんだよ」

「どっちも一緒よ」

「かもな」

「うん」

「それじゃ、行くよ」

「気をつけてね」

「ハハ。そっちもな」

「うん」

「バイバイ」

「またね」

「来世でも、君に会えるのを願って」

「私もあとから逝くわ。おじいさん」
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 21:20:09.55 ID:rdAf8mWro
>>692
シンプルで整っていて個人的に好感。長々と書いたこちらのと比べるにつけてなんだか負けた気分
ただ、夢がない、ロマンがないのくだりが特に意味もなく思わせぶりでちょっと違和感かも
(もし深い意味があったのなら見落としです、申し訳ない)
でも台詞形式の弱点になりがちな説明台詞もないし良いと思います
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2011/07/11(月) 21:43:02.86 ID:lcJKLkbL0
>>593

「夢がない」とおばあさんが言ったのは、ロボットは涙を流さないと断言する
おじいさんの現実感への皮肉

「ロマンがない」と言ったのは、もう自分達はロマンを追いかけてる年でもないという皮肉。
つまり、「もうそんなロマンチックな事言ってもいい年じゃない」と悟っておられる的な……

けど、おばあさん的には夢だろうがロマンだろうが、そんなものに大差など無く……「どっちも一緒よ」と。


まあ、二人で皮肉を言いあってるだけの場面です
そんなに深い意味はないのであまり気にしないでいいと思う
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 21:47:34.17 ID:rdAf8mWro
なるほど、ほんのりと意味があるんだね
話の筋に大きな転換を与えなくともそういうのは好きです
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/11(月) 23:08:32.77 ID:cX6lX9IJo
>>690
うーん、解説までとはいかなくても私見くらいでいいなら

地の文ってのは「誰か」の語りな訳だ
この「誰か」が登場人物の一人になるのが一人称
この「誰か」が登場人物でない『誰か』になるのが三人称
この『誰か』があたかも登場人物の心情を全て見抜いているかのように見えるせいで、神視点とも呼ばれる
一元は一人の心情を『誰か』が描写するもの、多元は複数の心情を『誰か』が描写するもの

だから登場人物の心情を三人称一元で書くとき、それは『誰か』ってフィルタを通すわけじゃん
当然このフィルタには色も何もないけれど、でも何の影響も及ぼさないかって言うと少し違うと思ってる
ものすごく端的な例を挙げるなら

一人称:痛い
三人称一元:彼女は痛いと思った

みたいに、『誰か』の観測をある程度前提とした文になると思う
ただ、それに囚われすぎると文がワンパターンになるから、そこは腕の見せ所のはず

例::痛い。痛い。そんな弱音を口の中で噛み殺し、少女は身体を震わせながら立ち上がる。

とか
まあ、あんまり深く捉えないで欲しい、そう考える人も一応一人はいるって程度に
誰もが違和感を覚えない文なんてのも難しい話だしね
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 23:15:37.19 ID:rdAf8mWro
>>696
なるほど、難しいですけどニュアンスは伝わりました
参考にします、ありがとうございました
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/12(火) 11:48:01.80 ID:kWxuQpNYo
まだ>>536を書いてもいいのかな?

「ねえ、前の彼女と別れた理由はなんだったの?」
「はは、知りたい?」
「うん、知りたい」
 僕は思わず笑ってしまった。
 当時はかなりショックだったはずなのに今はただ純粋におかしい。時間の流れのおかげなんだろうか。
「その子はね、ガンダムをロボットって呼んだんだよ」
「へ?」
「うん、ただそれだけ。その事で僕が怒っちゃってね」
「それでお別れ?」
「くだらないだろ?」
「ふふ。うん、くだらないわね」
 彼女はクスクスと頬をゆるめる。
 その笑顔はとても魅力的で、僕はこの笑顔に惹かれたんだ、といまさらながら気がついた。
「そう、だから僕達が別れる理由もくだらない事なんだよ」
「原因が私の浮気だったとしても?」
 さっきまで笑っていた彼女の目が曇る。けれどそこには後悔の色はなかった。
 僕は涙が出そうなのを隠すためになるべく軽妙に口を開いた。
「違うよ、僕達が別れるのは君が目玉焼きにソースをかけたからだ」
「あら、私はしょうゆ派よ?」
「それじゃ駄目だよ。僕もしょうゆ派だもの」
「ふふ、分かった。私はソース派であなたはしょうゆ派だから私たちは別れる。ほんとにくだらないわね」
「くだらなくないよりはいいよ。こうやって違う誰かと笑い合える」
「そう、たしかにそうね……。じゃあそろそろ行くね?」
「うん、身体に気をつけて」
「そっちこそ」
 閉まるドアを見つめながら僕は思う。
 このさき彼女以上に誰かを好きになるかどうかは時間の流れだけが知っている。
 いま僕に出来ることはまだ見ぬ恋人と笑い合うために涙を流すことだけなのかもしれない。
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 21:54:05.42 ID:JAx6dsdlo
>>698
これもシンプルでいいなー
重大な事をあえて軽く扱う、みたいなささやかな強がりは大好き。で、次に批評

シンプルゆえに文章関係で特に引っかかったことはなかった
後は内容で、ちょっと話が薄いかなと感じた
掘り下げがあると味わいが増すかも
例えば……過去のエピソードを加えるとか? ちょっとわからない
全体としては好きな文章なので、批評できるのはこれくらいです、申し訳ない
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/12(火) 22:52:41.29 ID:kWxuQpNYo
>>699

ありがとうございます
地の文が苦手故に文章が極端にゴテゴテしたりシンプルになったりしてしまいます
日々精進、ですね
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 01:35:58.25 ID:3NWwrY+0o
誰か>>691の批評もお願いできないだろうか
力作なんだ
……感想がないのも感想、かもしれないけど
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 02:33:47.45 ID:z4aJsHzmo
>>701
最初の一行がくど過ぎて、それ以降飛ばし飛ばしに読んでしまったよ。
小人のような大きさでは、大きさが想像できなかった。
格助詞で終わるのが多すぎる。
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 02:47:52.00 ID:3NWwrY+0o
>>702
ぐはぁ、やっぱり装飾過多の文章だったか……反省
確かにロボットの大きさも曖昧だなあ
大きさ表現のミスは前もやっちゃったので気をつけよう
格助詞については、読み返してみたけど、十六行目の「けれど」で終わる奴しかわからなかった
できれば追加の解説をお願いしたいです
ありがとうございました
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 02:58:50.93 ID:3NWwrY+0o
いやあれは接続詞か
指摘されてるのは台詞の方なのかな
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/13(水) 03:49:49.52 ID:rGuTdXolo
>>703
格助詞とかは分からないけど、確かにちょっと装飾過多っていうか、テンポが悪いかも
長編の一文とかだったら気にならなかったけど、この長さでこの入りだとね
或いは普通の本だったらまだ気にならなかったかもしれないけど
話自体は結構好きよ
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 07:39:55.31 ID:3NWwrY+0o
>>705
どうも
力作は力作でも、力みすぎの作だったかー……
今度はちょっと肩の力を抜いて書く
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/14(木) 13:21:54.38 ID:ag8UuRoEo
>>109

 お父さん、そこにいますよね。お盆だから帰ってきてるんでしょう?

 私は今あなたが死んだ場所に立っています。
 
 落ちてくるとき、どんな気持ちでしたか?
 
 怖かったですか? 安心しましたか? 後悔しましたか?
 
 私を産もうとするお母さんが憎かったですか? 
 
 それとも私が憎かったですか?
 
 私はずっとお父さんが病気で死んだと聞かされてました。でも違ったんですね。
 
 私の担任はお父さんの同級生だった橋田先生です。
 
 橋田先生が教えてくれました。お父さんは自殺したんだって。
 
 恋人が妊娠して耐えられなくなって屋上から飛び降りたんだって。
 
 何に耐えられなかったんですか?
 
 周りの目ですか? 学校を退学になることですか? 自由に遊べなくなることですか?
 
 そんなに私が邪魔だったんですか?
 
 少なくともお母さんは私を邪魔者扱いしませんでしたよ?
 
 近所で何を言われてもいつも笑ってました。学校を辞めてずっと私のために働いてくれました。
 
 でもそんなお母さんでも、たまに寝ながら泣くんです。
 
 ごめんなさい、ごめんなさいって泣くんです。
 
 聞いてます?
 
 ああ、そうそう報告があったんです。
 
 私のお腹の中に赤ちゃんがいるんです。あと7ヶ月で生まれます。
 
 さっきこの子の父親にその事を告白したんです。ここで。
 
 私手足がガクガクでした。きっとあなたのせいだと思います。ほんとに怖かった。
 
 彼なんて言ったと思います?
 
 よかった、嬉しい、ありがとう。それに三人で幸せになろうねって言ってくれたんです。
 
 もう顔中涙と鼻水でグジャグジャでお世辞にもかっこよくなんてなかったけど。
 
 ……でも、本当に嬉しかった。私も釣られて泣いちゃいました。

 あんなに泣いたの久しぶりな気がします。多分生まれてきたとき以来かな。

 あ、ここ皮肉ですよ? 分かりますよね?

 まあとにかく、そういう訳で私にはあなたのために流す涙は残ってません。

 報告はそれだけです。もうここにも来る事はないでしょう。

 あなたにとってもその方が嬉しいでしょう? 私も嬉しいです。 

 それじゃあ。

 ……そうだ、最後に一つだけ言わせてください。

 「あんたなんか大嫌い」

 あなたの最愛じゃない娘より、校舎裏から愛を込めないで。
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/14(木) 14:12:41.80 ID:UC7lD1g7o
親子揃ってDQNかよw
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/15(金) 18:49:24.21 ID:x0vODkjRo
>>707
要らないかもしれないけど批評を
リズムがよく、するすると読むことができました
言葉の選び方が上手いのだと思います

ただ内容については>>708で、あまり印象よくないかな、とww
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/17(日) 14:48:34.96 ID:qROyTc1ko
>>707
とても良かったです
主人公はただ淡々と想いを述べているのに、何故かするりと感情移入が出来ました
最後の一文でまたやられたって感じで

しいて言うなら、この文章に三点リーダはいらなかったかなとか
ちょっとそこでテンポが削がれてしまった気がしました
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 17:51:52.33 ID:3RNaMLYEo
飛び降りるくらいだから、てっきり別の男の種かと思った
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/17(日) 20:17:05.93 ID:6b8WCbDvo
>>709

ありがとうございます。
主人公が優等生なのはあんまり面白くないなと思っているのでこんな感じになりました
結果印象が良くなかったみたいですね


>>710

ありがとうございます。
三点リーダは作中での急な話題や場面の転換のときの違和感を和らげてくれるような感じがします。
個人的にテンポよりそっちのほうが大事な気がするのですがどうなんでしょう?
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/18(月) 11:24:14.71 ID:27dr636jo
 >>536 

 「ねえ、おにいちゃん」

 「なに?」
             
 「わたしたちもうすぐ『おわかれ』なんだって」

 「うん、わかるよ。パパもママもうれしそうだもん」

 「やだなあ」

 「そうかい? ぼくはたのしみだよ。パパがいってた『うみ』をみてみたいんだ」

 「『ずっといっしょ』じゃなくなっちゃうんだよ?」

 「でも『りんご』たべたいんだろ?」

 「うん。だってだってママがすごくおいしいっていうんだもん!」

 「ここからでたら『うみ』にもいけるし『りんご』もたべれるよ」

 「でもおにいちゃんと『いっしょ』じゃないよ」 

 「ちがうよ。『ずっといっしょ』じゃないけど『いっしょ』にはいられるんだ。ママがいってたよ」

 「わたししらない」

 「ねててきいてなかったんだろ。これならたのしみだろ?」 

 「そうだね。うん、たのしみ! あ、そうだ」

 「なんだい?」

 「おにいちゃんがねてるときにねママがいってたの。ここからでたら『おもちゃ』かってくれるって」

 「『おもちゃ』? なにそれ」

 「わかんないけどわたしには『おにんぎょう』でおにいちゃんには『ろぼっと』なんだって」

 「『おにんぎょう』に『ろぼっと』か。どんなだろう」

 「きっとかわいくてかっこいいんだよ」

 「そうだね、たのしみだ……あ!」

 「もう『おわかれ』みたいだね、おにいちゃん」

 「うん。ぼくがさきにいくよ」

 「えー? わたしがさきがいい」

 「ばかだなあ。ぼくがさきにいかないと『おにいちゃん』にならないだろ?」

 「そっかあ。おにいちゃんあたまいいね」

 「ぼくたち『ふたご』なんだからきっときみもあたまがいいよ」

 「だったらいいなあ」

 「じゃあいくよ」

 「うん、じゃあね」

 「うん、またあとで」

  
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/19(火) 04:47:04.63 ID:AfPIUyVVo
>>713
前の台詞だけの人かな?
これは面白かった
何の別れだろうと思ってたらそうくるとは、って感じで
文章? にも問題は見受けられないし、良作だよ
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/19(火) 04:56:51.01 ID:+7oXs1d5o
>>713
ほとんど同じ流れの話を見たことがある
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/19(火) 10:49:35.97 ID:ZJd3IgP4o
 >>714

 ありがとうございます。おっしゃるとおり>>707を書いたものです。
 本当は母と子の出産での『別れ』を書こうと思ったのですが、
 どうしてもうまく書けずこのように双子の会話文のみになりました。
  
 >>715

 >>713を書いてるときに思ったのが『これもう誰かやってそうじゃね?』
 まあ設定が被るなんてよくあるしいいや、と思ったんですが、
 流れも一緒だとは……結構凹みます。わりと上手く書けたと思っているので余計に。
 もし覚えてれば参考までにその作品名を教えてもらえませんでしょうか?


 

 あと、このスレを読み返したら投稿されたSSが三連続で自分のでした。
 これってまずいですかね? まずいようなら少しの間自重します。
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/19(火) 10:50:04.10 ID:ZJd3IgP4o
 >>714

 ありがとうございます。おっしゃるとおり>>707を書いたものです。
 本当は母と子の出産での『別れ』を書こうと思ったのですが、
 どうしてもうまく書けずこのように双子の会話文のみになりました。
  
 >>715

 >>713を書いてるときに思ったのが『これもう誰かやってそうじゃね?』
 まあ設定が被るなんてよくあるしいいや、と思ったんですが、
 流れも一緒だとは……結構凹みます。わりと上手く書けたと思っているので余計に。
 もし覚えてれば参考までにその作品名を教えてもらえませんでしょうか?


 

 あと、このスレを読み返したら投稿されたSSが三連続で自分のでした。
 これってまずいですかね? まずいようなら少しの間自重します。
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/19(火) 18:30:37.65 ID:d2R0LiD00
>>717
投下の間隔は空いているし、過疎っている現状では、連投でも問題ないと思う
それで人が戻ってきたら儲けものだしね

>>713
会話のテンポがよく、漢字が使われていないわりに読みやすかった
ただ、ここでの『ロボット』は外にある楽しいものの一つという扱いで、キーワードとして成り立っていないのが残念

同じように>>698も、『ロボット』はくだらない理由の一つとして引き出されていて、キーワードとしては微妙かなと思う
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/19(火) 22:26:32.59 ID:ZJd3IgP4o
 >>719

 ありがとうございます
 せっかくなので色々書いて修行させていただきます
 もっとも筆の早さが気まぐれなので書けるかどうか分かりませんが……


 それとキーワードの方ですが少し勘違いしてたみたいですね。
 他の方のSSを読んで分かりました。 
 次からは気をつけます。
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/23(土) 13:50:11.21 ID:bzxqkXBDO
時期的にそろそろお題を変えてみてもいい気がする
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/23(土) 14:20:25.49 ID:9UVblwPho
 >>720

 同感、だけど上みたいに安価で決めるのはこの過疎状況だと……
 てなわけで提案
 お題は随時募集、で書き手はその中で選んで書く
 当初の趣旨とだいぶ違うけど人がいないからしょうがないかなあ、と
 好き勝手言ったけどふと思いついただけなんでまずいようなら無視してください
 

 

 
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/23(土) 19:58:03.15 ID:BZqtsEjg0
真新しさも欲しいし、お題変更は賛成
安価関係なしに二つ三つお題募集してみるのもいいかも

一つのお題で書き比べする事がしづらくなるかもしれないけど、この際仕方ないと思う
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2011/07/23(土) 22:34:09.31 ID:VWfTj4dG0
お題もそうかもしれないけど、たまにはageたほうがいいんじゃ
埋もれてる気がするよ
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:47:59.58 ID:KqQjM8JDO
基本age進行でいいんじゃないかな

お題

その日の仕事がおわり、静かになった学校の椅子に座り、僕は天井に向かって呼び掛けた。
「(自由に台詞をお願いします)」
天井で、コトッと、音がした。

この文章に繋がるような話で他の条件はなし
放課後の時間割から抜粋させていただきました

725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/24(日) 00:01:54.13 ID:yNPRXKYHo
夏休みだし、人増えるかな?

・お題
場所は夏の海
友達に誘われてナンパにチャレンジ
手違いで知り合いの女の子に声をかけてしまう
友達にバレないようにしてドツボにはまるが、女の子からの好感度はUP
別の知り合いにバレて、空気が微妙になる
一緒の電車で帰ることになり、空気を変えようと歯の浮くような台詞を言って笑われる
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/24(日) 16:48:21.55 ID:YcZhEOnqo
 >>742 長くなったので改行してません。見づらくて申し訳ないです。

 この仕事は好きか、と聞かれたらそうでもない、と答える。
 愚痴りながら丸つけする同僚に文句しか言わない保護者。
 そしてどこか人を馬鹿にしたような笑顔の生徒たち。
 少なくとも素敵な職場と人に胸を張れるようなところではないことは断言できる。
 教師なんて言ってしまえば体の良い茶坊主でしかない。
 
 薄っぺらい笑顔を浮かべ問題が起きないよう起きないよう子供の機嫌をとる毎日。
 奴らはまるで一寸法師のようだ。
 小さい体で人の腹の中に飛び込んで、針の刀で胃をチクチク、チクチク。
 胃痛を抱えながら僕は今日も放課後の教室でテストの採点を続ける。
 やけに0点が多い。
 
 中学校の期末テストで0点なんてそうそうでるものじゃない。
 おそらく仲間内で示し合わせてわざとやっているのだろう。
 何が面白いのか分からないが、とにかく奴らは意味のない陰湿さが好きらしい。
 また胃を刺された気がした。
 痛みに耐え切れず僕は赤ペンを置く。
 
 そして上着の内ポケットからタバコとライターを取り出し、思い切り煙を吸うとようやく痛みが和らいだ。
 放課後の教室でタバコを吸うなんて職業倫理的にまずいのは分かってはいる。
 けれど、教室という子供たちのフィールドで紫煙をまき散らすという行為は、
 どこか白い壁にペンキをぶちまけるような快感に似ていてやめられない。
 「そういえば親父もよく吸ってたな」
 
 ふと思い出したことがある。
 超が付くほどのヘビースモーカーだった親父も教師だった。
 自分の中で決めた線引きがあるらしく僕の前ではタバコを手にとるようなことはなかったし、
 僕がタバコに触るだけで怒鳴られた。
 けれど一回だけ親父が僕の前でタバコを吸ったことがある。
 
 僕が中学生のとき、自室の屋根裏部屋にいたところ急に部屋に煙が立ち上ってきた。
 なんだろう、と思って床の板間から下を覗くと親父がうまそうにタバコを吸っていたのだ。
 すると僕に気づいたのか親父はバツの悪そうに笑ってボソッと「お前も一本どうだ?」と呟いた。
 僕は何も答えずにさっさと布団に潜った。
 数分して親父が下の部屋から出て行く気配があっても僕は布団の中で寝付けずにいた。
 
 大人になってから考えると真面目な親父のらしくない一面に戸惑っていただけなのだが、
 当時の僕はよく分からない胸のモヤモヤが本気で怖かった。
 親父の生徒がその日万引きで捕まったのを知ったのは随分たってからだった。
 そんな親父も長年の喫煙が祟り一昨年肺がんで死んだ。
 病床で僕は親父に教師になったことを報告した。
 
 「そうか、がんばれよ」
 親父はそれだけ言って眠ってしまったけれど、その口元の笑みはあの時の笑顔にそっくりだった。
 そうか。
 今あの笑顔を思い出せば分かる。
 親父の胃の中にも一寸法師がいたんだ。
 
 だから親父はあんなにタバコを吸い、腹の中の一寸法師供をいぶして弱らそうとしてたのだ。
 子供たちが一寸法師なら僕ら教師は鬼だ。
 けれど謝って逃げればいい鬼と違って僕らはどこにも逃げられない。
 ただ黙って腹の中で一寸法師が暴れるのをただじっと耐えるしかない。
 けれどやはり鬼だって泣きたくなる時だってあるのだろう。
 
 だからあの時の親父のタバコと笑顔は鬼の涙だったのかもしれない。
 鬼の涙が笑顔というのもなかなか皮肉が効いている。まるで教師という職業そのもののようだ。
 僕は天井を見上げる。当然人の気配なんてない。
 けれど今は猫でも鼠でもゴキブリでもいい。僕の涙を見てくれる何かは居るはずだ。
 僕は短くなったタバコの火を消すと採点の残りと日報の残りにとりかかった。
 
 不思議といつもよりいいペースで仕事が片付いていく。
 そして最後に判子を押して日報を閉じた。
 ゆっくり背伸びをし、タバコに火を付ける。
 その日の仕事がおわり、静かになった学校の椅子に座り、僕は天井に向かって呼び掛けた。
 「お前も一本どうだ?」
 天井で、コトッと、音がした。    
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/25(月) 19:19:39.64 ID:wABXeEOao
 >>726

 安価ミスりました
 >>724です
 申し訳ないです
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 23:00:24.82 ID:1xyRBbUj0

>>726
長文だけど、読みやすい文章でスラスラ読めた
主人公が記憶の中の父親と自分を重ねて、仕事で疲れた自分を癒すというのはいい構成だと思う

ただ、この父親が息子の部屋でタバコを吸った事に違和感を感じた
それも教え子が万引きで捕まった日に、うまそうに吸っていたところに、父親の悪意を感じる
普通そんな事件が起きたら、タバコをうまそうに吸う事はできないだろう
それでもタバコがうまいなら、ひょっとして父親は生徒が捕まって喜んでるのか? と考えてしまう

そんな風に考えると、子どもの部屋でタバコを吸った事も『白い壁にペンキをぶちまけるような快感』
を得るために吸っていたのかなって思えてしまった
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 16:19:48.04 ID:Tsvv8Zrco
>>726
書きなれてる感じがした
物語の流れが上手というか
気になったところは「体のいい茶坊主」
初めて見た表現なので調べてみたのだけれど、使い方に間違いはないだろうか
ちょっと違和感がありました。以上
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/27(水) 16:25:48.79 ID:Tsvv8Zrco
>>537

 雀が視界をよぎった。
 その背後、青空と雲とが視界を満たしている。
 自分は仰向けであるらしい、と彼は理解した。背中を風の圧が押している。心地よい浮遊感。
 視界は空に固定され、身体の感覚はぼやけ、何一つ自由はなかったものの、
(俺、飛んでる……!)
 そう思った。爽快感が駆け巡る。しかし、それを否定する声があった。
「飛んでは、いませんよ」
 女のものだ。その主の姿は見えなかったが。あえて言えば空の向こうから吹き下ろしてくる風のようだった。
(誰だ……?)
「さあ、誰でしょうね」
 女の声はそっけない。
(俺は、一体……)
 彼は、自分に記憶がないことに気付いた。いつの間にか“飛んで”いた。いや、女の声を信じるのなら飛んではいないのだろうが。
「あなたは今、落ちています」
 え。彼は呆気にとられる。落ちてる、だって?
 女は彼に構わずさらに続けた。
「今までずっと、落ち続けています」
 意味がわからない。彼は訝しく思い、声の主を探そうとしたが、やはり視界は動かなかった。
「少しお話を、しましょうか」

「あるところに一組のカップルがいました。仲の良い二人でした」
 語る女の声に特別感情は込められていない。だから、仲の良い、といわれてもその一瞬はぴんとこなかった。
「仲のよい二人でしたが、いつしか女性の方は、男性の方を裏切るようになりました。
 彼女の愛情は彼以外へと向くようになりました」
 空は抜けるように青い。だが、太陽は見えない。同じように声の主である女も見えない。
「それを知った男性は絶望し、その身を空へと投げ出しました。五年ぐらい前の話です。おしまい」
 それが俺と何の関係が。彼がそう問う前に、女はさらに言葉を重ねた。
「地縛霊というのを知っていますか?」
 何らかの思いの強さのために、死んだその場所にとどまっている、もしくは縛られている霊のことだ。
「当たりです」
(……それが、俺なのか?)
 言われたわけではないが、彼はようやく、ぼんやりと理解した。
(俺は恋人に裏切られ、身を投げ、そして悔いの念で心だけはいまだ落ち続けていると)
「その通りです」
 なんとも現実味のない話だった。だが、実際自分はいまだ落ち続けている、と彼は認めた。
 これは落下の感覚であり、決して浮遊のそれではない。
「わたしはあなたを助けに来ました」
(助けに来た?)
「ええ。あなたの魂を救います」
 救う。だが、そうはいってもだ。彼には記憶がなかった。悲しみも怒りも、それに実感もない。
「それでいいんです。それならば行けますよ」
(どこに?)
「多分、とても良いところです」
 それはあまりに漠然としていたが。彼はどことなく心を惹かれた。
 彼女の言うことが本当ならば、自分はもう五年間、ずっと落下し続けている。
 もしかしたら、魂とか心とかいったものがだいぶすり減っているのかもしれなかった。
(……行きたいな)
 自然と、そう思っていた。
「行けますよ。私がお手伝いします。空を見ていてください。光が見えますよね?」
 いつの間にか、視界いっぱいの空の中心に、太陽のような光があった。優しく降り注ぐそれ。
「そしたらそれを見つめていてください。あなたをお送りします」
 それからゆっくりと。それこそ眠るように、彼の意識はかすれていった。

 あるビルの屋上、五年前にできた落下防止用のフェンスの前に、少女がいた。
 肩までの黒髪を風になびかせ、青い空を見上げていた。
「よかった、気付かれなくて」
 彼女は、固く結んでいた口を解くとそう言った。
 それなりに強い日差しが、コンクリートの床面を照りつける。
 ここは以前、ある男性が突き落とされた場所だった。自殺ではなく他殺。
 動機、というよりか物事の原因は痴情のもつれだ。激しくもみ合った挙句、男性はビルから落下した。
「だってそうよね。飛び降りたのに空が見えるわけないじゃない」
 飛び降りるには絶好の空の下。彼女は投げやりに笑った。
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/27(水) 19:14:40.06 ID:1WSnGMaPo
 >>728

 ありがとうございます。
 父親が僕の部屋でタバコを吸ったのは、僕が『鬼の涙』を見てくれる誰かを探したように
 息子に泣いている姿を見せたかったから、というつもりで書きました。
 またタバコを『うまそうに』吸っていたのは父親の落胆を強調するつもりでした。
 酒やタバコがうまいのは嬉しいことがあった時より落ち込んでいるときだと思いますので。
 ただ、それが読み手に伝わらないのは決定的な力量不足ですね。申し訳ないです。
 これからも精進します。

 >>729

 ありがとうございます。
 『茶坊主』という表現は昔読んだ小説であった表現(何の本かは忘れました)
 なので多分あっていると思いますが、正しいところは分かりません。
 いずれにせよ違和感の覚える表現はあまり使うべきじゃありませんね。勉強になりました。

 >>730

 こういう最後にどんでん返しがあるのは大好きです。
 最初の主人公が仰向けになっている描写が、少しくどいかな? 
 と思いましたが最後のオチまで読むと必然性があっていいと思います。

 文章のほうで少し気になったのが次の部分。

 「地縛霊というのを知っていますか?」
 何らかの思いの強さのために、死んだその場所にとどまっている、もしくは縛られている霊のことだ。
 「当たりです」

 全体が主人公が『彼』の三人称小説なのに、ここは地の文がまんま主人公のセリフ?なのが違和感を感じました。
 他にもそういうのがところどころ見られます。文体は最後まで統一しないと読みづらさの原因になります。
 あとは違和感があったというわけじゃありませんがこの部分。

 「飛んでは、いませんよ」
 女のものだ。その主の姿は見えなかったが。あえて言えば空の向こうから吹き下ろしてくる風のようだった。

 作中で新たな人物が出てくる時は読み手は少し頭を切り替えなければなりません。
 なので

 「飛んでは、いませんよ」
 女のものだ。
 その主の姿は見えなかったが。あえて言えば空の向こうから吹き下ろしてくる風のようだった。

 という風にすると短い文二行で読者がパッと「ここで登場したのは女なんだな」
 と頭が切り替わるので、その後に改行して描写をいれたほうが読みやすいと思います。

 長々と失礼しました。以上です。
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 20:13:36.73 ID:Tsvv8Zrco
>>731
文体はそうですね、前々から同じように指摘されていて研究中です色々と
違和感のない形に持っていけるよう努力します
改行関連も勉強になりました
どうもでしたー
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 13:07:17.38 ID:S3tOY1Df0
お題をひとつ

・「過ぎた時間は戻らない」のセリフ。どこに入れても可。口調が多少変わっても可。
・登場人物が「買い物」をすること。

734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/07/31(日) 23:22:23.72 ID:7zK5PSsAO
>>733
長くなってしまいましたが感想お願いします。

 駄菓子屋『猿菓子』は僕が小学生の頃と変わっていなかった。
 錆び付いて開きにくいドアやあちこちが染み付いた壁、それらと対比するようにカラフルな駄菓子たち 、なにもかもが20年前と同じで懐かしい。

 昼過ぎの駄菓子屋には、当然というべきか人の姿はまったく見あたらなかった。子どもたちが現れるのは学校から解放された後の夕暮れ時だ。

 僕は駄菓子たちの前に立って、これにしようか、あれにしようか、ひとつひとつ駄菓子を手にとって眺める。
 そうしているうちに僕はなぜこんなことをしているんだろうな、という気になってくる。

 今日、僕は会社を辞めさせられた。
 僕は会社の金を横領していた。自称ミュージシャンの弟がバイクで人身事故を起こして至急金が必要になったのだ。幸い盗んだのが少ない額だったことと、会社が外聞を恐れたことで刑罰をうけることはなかった。

 僕は選んだ駄菓子を持って、それをカウンターに置く。少ししておばちゃんが現れた。このおばちゃんはずっと昔から、この駄菓子屋を趣味でやっているらしい。僕が小学生の頃よりもさらに老けているように見えた。髪はひとつ残らず白くなり、顔に刻まれたしわもより深く、より多くなっている。

「あんたあれだろ、万引きの常連だった、たかしだろ」
駄菓子の値段を計算しながら、おばちゃんが言った。
僕は、人違いですよと答えるかわりに言う。
「変わっちゃいましたね、あのころとは。変わって、そしてもう時間は戻らないんですよ」
もちろん、僕がそのとき考えていたのは横領で会社をくびになったことだった。
「なんも変わらないさ。ここも昔からずっとこうだし。万引きのたかしは今も万引きのたかしさね」
おばちゃんは駄菓子を袋に入れて、僕に手渡す。僕はそれを苦笑しながら受けとる。万引きのたかしは誰か知らないが、自分のことを見透かされた気がした。
「あっそうだ」
おばちゃんは思い出したように棚まで歩き、戻ってくる。そして僕の袋に小さな黄色い飴の袋を放り込んだ。
「たかしそれ好きだったじゃないか。だから、おまけだよ」
僕は礼を言って、駄菓子屋を後にする。

 駄菓子屋を出ると、僕はおばちゃんがくれた黄色い飴をなめる。口のなかにレモンの甘酸っぱい味が広がって、なんだか感傷的な気分になる。涙が出そうになったから、無理に笑おうとしたら、へんな顔になった。
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2011/07/31(日) 23:23:57.91 ID:7zK5PSsAO
>>733
長くなってしまいましたが感想お願いします。

 駄菓子屋『猿菓子』は僕が小学生の頃と変わっていなかった。
 錆び付いて開きにくいドアやあちこちが染み付いた壁、それらと対比するようにカラフルな駄菓子たち 、なにもかもが20年前と同じで懐かしい。

 昼過ぎの駄菓子屋には、当然というべきか人の姿はまったく見あたらなかった。子どもたちが現れるのは学校から解放された後の夕暮れ時だ。

 僕は駄菓子たちの前に立って、これにしようか、あれにしようか、ひとつひとつ駄菓子を手にとって眺める。
 そうしているうちに僕はなぜこんなことをしているんだろうな、という気になってくる。

 今日、僕は会社を辞めさせられた。
 僕は会社の金を横領していた。自称ミュージシャンの弟がバイクで人身事故を起こして至急金が必要になったのだ。幸い盗んだのが少ない額だったことと、会社が外聞を恐れたことで刑罰をうけることはなかった。

 僕は選んだ駄菓子を持って、それをカウンターに置く。少ししておばちゃんが現れた。このおばちゃんはずっと昔から、この駄菓子屋を趣味でやっているらしい。僕が小学生の頃よりもさらに老けているように見えた。髪はひとつ残らず白くなり、顔に刻まれたしわもより深く、より多くなっている。

「あんたあれだろ、万引きの常連だった、たかしだろ」
駄菓子の値段を計算しながら、おばちゃんが言った。
僕は、人違いですよと答えるかわりに言う。
「変わっちゃいましたね、あのころとは。変わって、そしてもう時間は戻らないんですよ」
もちろん、僕がそのとき考えていたのは横領で会社をくびになったことだった。
「なんも変わらないさ。ここも昔からずっとこうだし。万引きのたかしは今も万引きのたかしさね」
おばちゃんは駄菓子を袋に入れて、僕に手渡す。僕はそれを苦笑しながら受けとる。万引きのたかしは誰か知らないが、自分のことを見透かされた気がした。
「あっそうだ」
おばちゃんは思い出したように棚まで歩き、戻ってくる。そして僕の袋に小さな黄色い飴の袋を放り込んだ。
「たかしそれ好きだったじゃないか。だから、おまけだよ」
僕は礼を言って、駄菓子屋を後にする。

 駄菓子屋を出ると、僕はおばちゃんがくれた黄色い飴をなめる。口のなかにレモンの甘酸っぱい味が広がって、なんだか感傷的な気分になる。涙が出そうになったから、無理に笑おうとしたら、へんな顔になった。
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2011/07/31(日) 23:25:54.66 ID:7zK5PSsAO
すまんage忘れた
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/07/31(日) 23:28:36.89 ID:7zK5PSsAO
連投すまん…
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/08/01(月) 10:57:22.40 ID:lTEK35fbo
 >>735
 
 風景や人物の描写が巧く読みやすかったです。
 短い分で場面を想像させられるのはすごいことだと思います。
 
 ただ内容で気になった点は一つ
 おばちゃんと話す前の主人公の心情があまり見えてこないことです
 『僕はなぜこんなことをしているんだろうな、という気になってくる』
 だけだと悲しんでいるのか、怒っているのか、情けなく思っているのか分かりづらいです
 作品が大人と子供を対比させる作りになっているので
 読み手のもつ子供とは純粋な物というイメージに釣り合うほどの大人の弱さ、情けなさ
 を書かないと、なぜ主人公が飴を舐めて感傷的になったのか伝わりづらいと思います

 以上です
 偉そうな人間の戯言だと思ってください


 
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(dion軍) :2011/08/01(月) 12:13:38.10 ID:tNl3+CqB0
>>735

描写はうまいですね。キレのいい情景描写は好みです。

おばちゃんが「僕」と「万引きのたかし」を誤認した理由が「僕が会社の金を横領したこと」と関係がある点を強調した方がいいかなって気がします。

「僕」が「会社の金を横領」した理由も、弟のためよりも、もっとくだらない理由にした方が「僕の後悔」を引き出せる気もします。例えば遊ぶ金ほしさだとか、しょーもない女に貢いだとか。



740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/08/01(月) 19:11:53.41 ID:JdbYXx3AO
>>738
ありがとうございます!
たしかにそれは必要な描写でした…
説明不足になってしまうことが自分の課題だと思っているので、やはりまだまだですね。精進します。


>>739
ありがとうございます!
そうですね…やはり説明不足でした。
会社の金を横領した理由については、いつまでたっても子供のままの弟というのを表現したかったのですが、あれでは伝わりづらいですし、今思うと的外れな気もしますね。


まだいろいろと試行錯誤の段階で、とても勉強になりました。ありがとうございます。
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 16:24:14.04 ID:ddlUlKGDO
age
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/08/10(水) 23:32:50.37 ID:X2CW5hyAO
支援
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 23:30:33.16 ID:piH5le9y0
age
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga]:2011/08/18(木) 23:00:08.59 ID:rNBPlCLb0
久しぶりにお題を一つ

・夕暮れ
・夢から覚めた(覚める)
・セリフ「一度も考えたことない」
745 :名無しNIPPER :2011/08/24(水) 01:12:26.85 ID:+kRFeM4AO
 夢の中いると思った。もう何度も観た光景だからそれがわかる。
 夢の中はいつも夕暮れだった。沈みかかった夕日が目の前に広がる果てのない海を、俺の座る浜辺を、オレンジ色に染めあげている。なんだか火星みたいだなと、俺は思った。見たことあるわけじゃないけど、なんとなくイメージとして。
 夏の終わりの海には人気がなくて、その代わりというべきか、たくさんのクラゲが海を漂っている。
 そんなクラゲたちをぼんやり眺めていると、突然その一匹がこちらに向かってきた。海から傘の部分を顕にし、次に触手の部分が外に出て、最後にはふんわりと宙に浮かび上がる。
 今までにこんなことはなかったので俺は驚いたが、夢の中なのでクラゲが宙に浮かんだことに関しては特に不思議に思わなかった。
 クラゲが俺の前に立ちはだかり言った。「夢から覚めた気分はどうです?」
「ここが夢だ」
「ううーん。そういう考え方もありますよね」
 夕日がクラゲを透過しているので、クラゲは真っ赤な色をしているように見える。まるで火星人だ。火星の海で火星人と遭遇。夢にしてはなかなかの傑作だ。
「でも、例えばこうだったらどうします?実は地球は宇宙人に侵略されていて、その攻撃として地球人は夢を見せられているとしたら。楽しい夢からは覚めたくありませんからね」
 俺は笑った。
「馬鹿らしい」
 クラゲはその言葉の意味についてしばらく考えていたが、やがて言った。
「でも、今の現実がほんものだという確証はあるのでしょうか?」
「ない。でも朝になればこんな夢は忘れる。なぜならこれはにせものだからだ」
「ふうむ」
 そして、沈黙。
 波が押し寄せる響きだけが聞こえる。
 俺はふと彼女のことを思った。今の現実にいる彼女。決して百点なんか取れそうにないが、それでも解答欄を全部うめて30点を取るような彼女。
「嘘だ」
「うそ?」
「俺はたぶんこの夢を忘れないと思う。そして、現実を疑って過ごすだろうな」
 俺は昔からそうだった。猜疑心が強くて、愛情だとか正義だとかいうものを信じきることができなかった。
「だけどまあ、にせものでもいいよ」
「あれれ」
「それも悪くない気がするだろ?」
 クラゲは笑った、ように感じた。
 そして言った。
「馬鹿らしい」
746 :名無しNIPPER :2011/08/24(水) 01:15:04.49 ID:+kRFeM4AO
「ねえ、起きてよ」
 瞼を開くとそこは当然俺の部屋だった。カーテン越しの光が眩しくて、もう一度目を閉じる。夢の名残がそこにはあって、それすらも少しずつ消えようしていた。
「おーい、起、き、ろ」
 彼女が耳元で大声で叫び、暴力的にまどろみから引き剥がされる。
「なんでいるんだ?」
「鍵が開いてた。泥棒に入られても知らないよ」
「もう、入られてるさ」
 彼女はおおげさに頬を膨らませて言う。「ねえねえ、そうやって午後2時まで寝てることで人生を損してるって気づいてる?」
「考えたこともなかった」
「やれやれ」
 俺は彼女が誰かに似ていると思った。そうだクラゲだ。夢の中にいたあのクラゲに似ている。どこがどう似ているのかはわからないがとにかく酷く似ている。これじゃせっかくわすれられそうな悪夢を彼女を見るたびに思い出してしまうじゃないか。
「そんなに寝てたんだからさぞ楽しい夢を見ていたんでしょ」
「悪夢だったさ」
「ふうん。どんな?」
「火星人が地球を侵略しようとして、俺を言いくるめようとするんだ」
「なかなかおもしろそうな気もするけど」 言われてみればそうかもなと俺は思った。


少し長くになってしまいましたが感想お願いします。
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/08/24(水) 01:16:01.71 ID:+kRFeM4AO
すいませんお題は>>744です
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/07(水) 09:44:01.72 ID:slod9wnz0
SS作家様よろしくお願いします!
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
初恋ばれんたいん スペシャル PS版は あまりのテンポの悪さ,ロードは遅い(パラメーターが上がる度に、いちいち読み込みに行くらしい・・・)
のせいで、悪評が集中しました。ですが 初恋ばれんたいん スペシャル PC版は テンポ,ロード問題が改善して 快適です。
(初恋ばれんたいん スペシャル PC版 プレイをお勧めします!) 初恋ばれんたいん スペシャルはゲームシステム的にはどうしようもない欠陥品だけど。
初恋ばれんたいん スペシャル のキャラ設定とか、イベント、ストーリーに素晴らしいだけに SSがないのが とても惜しいと思います。
(初恋ばれんたいん スペシャル PC版は XPで動作可能です。)
2. エーベルージュ
科学と魔法が共存する異世界を舞台にしたトリフェルズ魔法学園の初等部に入学するところからスタートする。前半は初等部で2年間、後半は高等部で3年間の学園生活を送り卒業するまでとなる。 (音声、イベントが追加された PS,SS版 プレイをおすすめします。)
同じワーランドシリーズなのに ファンタスティックフォーチュンSSは多いのに似ている 魔法学院物なのに ネギま、ゼロの使い魔 SSは多いのに
エーベルージュのSSがほとんどありませんでした。
3. センチメンタルグラフティ2
センチメンタルグラフティ1のSSは多いのにセンチメンタルグラフティ2のSSがほとんどありませんでした。
前作『センチメンタルグラフティ1』の主人公が交通事故で死亡したという設定でセンチメンタルグラフティ2の
主人公と前作 センチメンタルグラフティ1の12人のヒロインたちとの感動的な話です
前作(センチメンタルグラフティ1)がなければ センチメンタルグラフティ2は『ONE 〜輝く季節へ〜』の茜シナリオ
を軽くしのぐ名作なのではないかと思っております。(システムはクソ、シナリオ回想モードプレイをおすすめします。)
4. ONE 〜輝く季節へ〜 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。) SS
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
個人的には 「呪い」 と「花言葉」 を組み合わせた百合奈 シナリオは Canvas 最高と思います。
Canvasの他のヒロイン SSは多いのに Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSSがほとんどありませんでした。
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD 〜支配者の為の狂死曲〜
似ている 伝奇バトル吸血鬼作品なのに 月姫、Fate、痕(きずあと) SSは多いのに
MinDeaD BlooDのSSがほとんどありませんでした。
8. Dies irae
9. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒 SS
10. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世 SS
11. TYPE-MOON
(1) 逆行最強化断罪スーパー慎二がペルセウスを召還する SS
(2) 凛がイスカンダルを召還するSS
(3) 逆行最強化慎二 OR 四季が 秋葉、琥珀 OR 凛を断罪する SS
(4) 原作知識有憑依最強化( 漫画・アニメ・ゲーム すべての作品 技術使用可能。 EX) ダイの大冒険、bleach、エヴァ)
慎二 OR 四季が秋葉、琥珀 OR 凛を断罪する SS
(5) ロアの転生体が 慎二
(6) アルクェイドに 吸血されて 死徒化
12. ゼロの使い魔
(1) 原作知識有 助演 憑依転生最強化( 漫画・アニメ・ゲーム すべての作品 技術使用可能。 EX) ダイの大冒険、bleach、エヴァ)SS
(ウェールズ、ワルド、ジョゼフ、ビダーシャル)
(2) 原作知識有 オリキャラ 憑依転生最強化 SS
(タバサ OR イザベラの 双子のお兄さん)
13. とある魔術の禁書目録
(1) 垣根 帝督が活躍する OR 垣根帝督×麦野沈利 SS
(2) 原作知識有 垣根帝督 憑依転生最強化( 漫画・アニメ・ゲーム すべての作品 技術使用可能。 EX) ダイの大冒険、bleach、エヴァ) SS
(3)一方通行が上条当麻に敗北後もし垣根帝督がレベル6実験を受け継いだら IF SS
14. GS美神
(1) 逆行最強化断罪 横島×ダーク小竜姫のSS(非ハーレム 単独カップリング ルシオラ も除外 )
15. EVA
(1) 逆行断罪スーパーシンジ×2番レイ(貞本版+新劇場版)のSS
(2) 一人目のレイが死なないで生存そのまま成長した一人目のレイが登場する(二人目のレイは登場しない)
P.S
エヴァンゲリオンのLRSファンフィクションで、レイの性格は大体二つに分かれます。
1.白痴幼児タイプのレイ
LRSファンフィクションで大体のレイはこの性格のように思えます。
白痴美を取り越して白痴に近いレイであり、
他人に裸や下着姿を見せてはいけないという基本的な常識も知らず、
キスや性交等、性に関する知識も全然無いか、それともほとんどありません。
このタイプの場合、逆行物では、シンジがレイに常識や人間の感情等を一つ一つ教えていくという「レイ育成計画」になってしまいがちです。
このタイプは、アニメのレイに近いと言えるでしょう。
2.精神年齢が高く、大人っぽいレイ
1番の白痴幼児タイプとは違って、他人に裸や下着姿を見せてはいけないという
基本的な常識くらいはあり(見られたとしても恥ずかしく思ったりはしないが)、
キスや性交等、性に関する知識は理論的に知っており、自分の自我が確立している、
(命令には絶対服従だが)感情表現がより豊富です。
このタイプの場合、 コミックスのレイに近いと言えるでしょう。
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/07(水) 09:44:54.20 ID:slod9wnz0
16. BlackCat
(1) BlackCatの禁書目録のクロスオーバーSS
(2) イヴ×リオンのSS
17. 鬼切丸
鬼切丸×鈴鹿のSS
18. MURDER PRINCESS マーダープリンセス
カイト×ファリスのSS
19. 式神の城
玖珂光太郎×結城小夜 OR 玖珂光太郎×城島月子のSS
20. 大竹たかし DELTACITY 全2巻
21. ヴァンパイア十字界
(1) 蓮火×花雪 OR 蓮火×ブリジット
(2) とある魔術の禁書目録×ヴァンパイア十字界のクロスオーバーSS
22. 地獄少女
(1) 不合理な 地獄少女の被害者(e× 看護婦、1期の看護婦、2期の 拓真を助けに来てくれた若い刑事、秋恵) 家族・恋人が 地獄通信に 地獄少女と仲間たちの名前を書くSS
(2) 極楽浄土の天使 OR 退魔師が 地獄少女と仲間たちを断罪するSS
(3) 拓真の 地獄少年化SS
二籠の最終回で拓真が地獄少年になるのかと思ってたんですが・・
地獄少年 ジル : 所詮この世は弱肉強食。 強ければ生き弱ければ死ぬ。
拓真 : あの時誰も僕を守ってくれなかった。
守ってくれたのはジルさんが教えてくれた真実とただ一振りの超能力
・・・だから 正しいのはジルさんの方なんだ。
23. 真・女神転生CG戦記ダンテの門
ダンテ× ユーカのSS
24. スレイヤーズ
魔翌竜王ガーヴが慎二に転生 ワカメ魔翌竜王シンガーヴ無双
25. るろうに剣心
志士雄真実が禁書世界に転生
26. CODE:BREAKERととある魔術の禁書目録のクロスオーバーSS
27. ガンダムWとエヴァのクロスオーバー SS
28. ロードス島戦記 IF
(1) ナシェルのロードス統一
(2) ロードス島戦記の破壊の女神カーディス復活 VS ロードス連合軍
(3) 新ロードス島戦記の終末の巨人復活 VS ロードス連合軍
29. ときめきメモリアル4
30. WHITE ALBUM2
31. Canvas3、Canvas4
32. Piaキャロットへようこそ4
33. クドわふたー
34. Rewrite
35. 星の王子くん
36. SHUFFLE! Love Rainbow
37. Vermilion -Bind of Blood-
38. CROSS†CHANNEL〜In memory of all people〜
39. ToHeart2 DX PLUS
40. A.G.II.D.C. 〜あるぴじ学園2.0 サーカス史上最大の危機!?〜
41. Rewrite
42. 世界征服彼女
43. D.C.Dream X’mas
44. White 〜blanche comme la lune〜
45. FORTUNE ARTERIAL-赤い約束-
46. 眠れる花は春をまつ。
47. いろとりどりのセカイ
48. すきま桜とうその都会
49. 11EYES-RESONA FORMA-
50. アネイロ
51. 夏雪〜summer_snow〜
52. 電激ストライカー
53. グリザイアの果実
54. 君がいた季節
750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 19:18:55.49 ID:5LdIGujUo
>>745
二ヶ月越しの感想を。遅れて申し訳ない

雰囲気作りが上手だなと感じた
夢を見て、それから醒めるまどろんでいるような空気が文章でしっかり作られているというか

気になったところは"彼女"の特徴を表した文の
>決して百点なんか取れそうにないが〜
というところ
これは分かるようで分からない表現を狙ったのだと思う
けれど、少なくとも自分には意味不明という方向に強く傾いてしまっているので、もし気が向いたら違う表現を探ってみるのがいいかと

以上っす
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/10/31(月) 23:52:39.98 ID:enfAxvUio
>>538

 スロットマシンのリールが勢いよく回転する音とコインの奏でる甲高い音。
 それから人の歓声やあるいは罵声。他にも雑多な騒音たち。
 うるさいといえばうるさいのだが、慣れてしまえば実はどうということもない。
 カジノを住処とするディーラーであれば、むしろ静寂に近い。
 だからいちディーラーの彼も普段それらを意識することはない。ないのだが。

「……どうなさいますか?」
「……」

 それでもふと音が耳朶を叩く感触が気になることがあった。今がそうだ。
 ここはカジノの片隅、彼が担当するブラックジャックのテーブル。
 その前の椅子には一人の男が足を組んで座っていた。
 よれよれとくたびれたスーツ。本人も疲れたような空気をまとい若くもないが別段老けているわけでもない。
 ディーラーには見なれた姿だった。いつもこのテーブルに来る。

「ミスター?」

 この男には特徴が二つあった。
 まずは目だ。どこを見ているか分からない。
 今も手の中のカードに視線を落としてはいるが、手札を確認し吟味しているというわけではなさそうだった。
 カードのもっと向こう側を見ているような雰囲気があった。ともすれば、この勝負をどうとも思っていないようにすら見えた。
 格好からするに、男が賭けた百ドルはそう安いものではないはずだったが。
 もう一度声を掛けようとしたとき、男が動きを見せた。
 手の平を下に向け、水平に振る。追加のカードは要らないという合図だ。
 実のところディーラーには男がそうすることが分かっていた。いつもの事だからだ。
 これが男の特徴の二つ目。決してヒット(カードの追加)はしない。

 ディーラーは黙って目の前の二枚の札、そのうち伏せてあった一枚を表にした。キング。見せ札十のカードと合わせて持ち数は二十。
 ついで男が手札を晒した。三と五。持ち数は八。

「ミスター、今日こそは伺ってもよろしいでしょうか」

 たまらずディーラーは声を上げた。限界だった。

「私の見せ札は十でした。あなたの手札ではヒットを選択しなければ私に勝つことはできません。なぜいつもスタンドしかしないのですか」

 もちろんディーラーのバーストを狙ったのかもしれない。だが、それと毎回スタンドを選択することは話が別だ。
 ディーラーは男を真っ直ぐ見据えた。疑念と同時に怒りも感じていた。
 これでは自分がからかわれているかのようではないか、と。

 男からの返事はなかった。
 相変わらずどこを見ているのか分からない視線で、一応はテーブルの上のカードらを射抜いていた。
 返事はなかった。

「ミスター?」
「……俺は」

 不意に男が口を開いた。
 返事を諦めていたディーラーは驚いた。実のところ彼と言葉を交わしたのはこれが初めてだ。今までになかったのだから、歴史上初めてだ。

「俺は、とどまることも、一つの選択としてありだと、思う」

 不器用なしゃべり方だった。もし熊がしゃべったらこんな感じだろう、とディーラーは少し変なことを考えた。

「一歩を踏み出すことが、先へ進むことが、全てだとは、思わない」
「それは一体……?」

 男は組んだ足を解いて立ちあがった。そのまま背を向けて歩き去る。一度もディーラーと視線を合わせることはなかった。
 呼び止めようと思ったが、それは何故かできなかった。
 また今度聞けばいい。そう気付いたのは少し後だ。
 だが、男は二度とカジノには訪れなかった。
 待っていたが、存外に待ち焦がれていたのだが、訪れなかった。
 ディーラーの疑問は今もまだ、そのまま胸の内にある。
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/01(火) 11:04:01.94 ID:v2inlwsZo
>>751 未熟者の感想ですが

難しいお題なのによくできているなあ、というのが第一印象
個人的にあんなにお題の条件が多いと凝り固まった文章になってしまいがちなので羨ましいです
文自体も引っかかるところはありませんでした

ただ内容のほうで少し
この文章だけで完結するとなると客の男の言動が不可解すぎて投げっぱなしな感じがします
モヤモヤが残ると言うか
長編の冒頭だとしたら良い感じで謎を読み手の頭に残せるのでいいと思うのですが……

以上です

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753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) :2011/11/01(火) 15:26:14.78 ID:nWqAZIbDO
久々に人がいるな
支援

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754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) :2011/11/01(火) 18:44:26.31 ID:evjbdTxio
 >>744 

 熱狂の残滓が抜け切らない甲子園のグラウンドを夕日が優しくゆっくりと染め上げる。
 俺と雄二はその中で大きく影を伸ばしながらキャッチボールをしていた。
 バシンッ。
 毎日聞きなれた音も不思議と今日はやけに遠くに聞こえる。
 「なあ、お前の子供の頃の夢って何だった? ほら、学校で七夕のときとかに書かされただろ」
 「野球選手」
 「はは、俺もだ」
 雄二はまるで俺の答えが分かっているみたいだった。
 バシンッ。
 ボールを受け取るたびに手が痛む。ボールってこんなに硬かったっけ? グローブってこんなに薄かったっけ?
 なんだか変な気分だ。
 「なあ、甲子園で優勝するなんて考えたことあるか?」
 「いや、実を言うと一度も考えたことがない」
 「おいおい、頼むよキャプテン。まあ俺もだけどさ」
 「……」
 「優勝したんだよな。俺たち」
 バシッ。
 ボールが重い、走らない。こんなの初めてだ。
 でもその理由は俺が、俺と雄二が一番良く分かっていた。
 「加藤、すごかったな」
 「ああ、甲子園決勝でノーヒットノーランだもんな」
 「うん、すげえよ。あいつ」
 バッ。
 「あ」
 ボールはグローブをかすり、バックネットの方に転がっていく。
 「本番じゃなくてよかったな」
 「うるせ」
 楽しそうに笑う雄二を無視してボールを歩いて追いかける。監督に見られたら怒鳴られるけど今は二人しかいないから平気だ。
 土で汚れたボール拾いあげる。ただもう投げる気にはなれない。
 雄二も何も言わずにグローブを下ろす。
 「雄二。加藤はプロになるかな」
 「ああ、あいつみたいなのがプロになるんだ」
 「だよな。お前はこれからどうするんだ?」
 「んー。おやじの工場を継ぐかな。お前は?」
 「多分大学に行く。合コン三昧の馬鹿な大学生になるよ」
 「いいな。俺も呼べよ」
 「やだよ。加藤選手の元チームメイトってことでモテるのは俺だけでいいんだよ」
 「なんだよそれ」
 「はは」
 俺はもう野球をやらないかもしれないし、やるかもしれない。ただ俺の野球人生は今日で最後だ。
 右手にあるのはいつものボール。いつものように握り、いつものように振りかぶる。
 「いい球頼むぜ」
 雄二の応援。
 うん、いつも通りだ。
 誰もいないスタンドにいつものように精一杯投げた。
 高く、高く。
 俺たちの引退ボール。
 高く、高く上がったボールはあっという間に落下する。
 誰にも取られず、客席に当たり
 トーンッ
 と跳ねた。
 それは夢の終わりを告げる合図だった。 

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755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(静岡県) [sage]:2011/11/01(火) 21:05:27.27 ID:qY6iM1Feo
>>754
俺が随分前に出したお題を消化してくれてありがとう。

素晴らしい作品だと思う。こういう風に消化されるとは思わなかった。
雰囲気も出ているし登場人物も活きている。
欲を言えばちょっと季節感が希薄かな。甲子園大会が終わった晩夏なのか
少し時間を置いた初冬か、それとも卒業前の春先なのか。

ともあれ、いい作品だと思う。俺が自分でお題を消化した小作が恥ずかしくて
出せなくなっちゃったよ。

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756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/01(火) 23:19:47.83 ID:5MktxGrDO
>>754面白い、と単純な感想をもった
雰囲気がいい
例えるなら教科書に載っているような文章だと思う
このお題で、こうきたか……やられたっと思わせる
ショートショートの模範、とても良かったです

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757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/01(火) 23:29:16.96 ID:5MktxGrDO
>>744


 「おい起きろ。男子禁制の撤廃要求だってよ」
 内心またかと思いつつ、デスクに重なったFAX用紙を一枚摘まみあげた。
内容は変わらず「何故女性ばかりが尊重されるのか。男女平等とは何なのか」
といった文句が表現を変えつつもずらりと並べられている。
 夢から醒めたばかりと言わんばかりの寝ぼけ眼で、
高橋はこてんと首を傾げた。
 「これ全部ですか?」
 「そう。これ全部」
 目で確認しただけでも二十枚以上はある。
 高橋ははぁと溜息なのか返事なのかどちらとも取れない声を漏らすと、
鈍い足付きでパソコンの前に座った。
今にも突っ伏して寝てしまいそうな様子である。
眠気覚ましにと紙コップにコーヒーを注いでデスク横に置いてやると、
高橋は座ったままの体勢で小さくお辞儀をして見せた。
 ――何十年か前には、女人禁制を問題に女性差別が訴えられていたのだそうだ。
しかしそれは徐々にエスカレートしていき、
現在においては女人禁制ではなく男子禁制とされることが多くなった。
そしてそれは国技においても同じであった。
 「えぇと、そもそも女性の出産や生理は」
 「バカ。そこまで書かなくていいんだよ、神事なのでとだけ書いとけ」
 「はぁい」
 キーボードを叩く音が軽快に鳴り響く。
 外はもう暗く、太陽が赤く空を染めていた。
 (……原始、女性は太陽であった、か)
 初めは正しかったであろう道が途中から歪曲していくのは珍しいことではない。
そして変化していくのも歴史の流れであると思う。
それでも何か腑に落ちないものを感じるのは、
自分が懐古的な人間だからであろうか。
 「もうすぐ外回りの人たちが帰ってくる時間ですかね」
 「へっ、あ、あぁ」
 いつのまにか考えに耽ってしまっていたようで、思わず変な声を出してしまった。
 高橋の怪訝な視線に思わず目線を逸らす。
 「……なぁ高橋」
 「はい?」
 「相撲を女性しか見れないってのはどう思う?」
 「はぁ、まぁそりゃ女性の半裸姿の取っ組み合いなんて興奮しちまいますからね。男子禁制で良いと思いますけど」
 「じゃあこの投書みたいな――」
 「男性が相撲を組むって? そんなこと一度も考えたことありませんよ」
 だからわからない、そう言外に言われた気がした。
 言葉を詰まらせていると、ガヤガヤと外が騒がしくなってきたのがわかった。
 「帰ってきましたね」
 「……あぁそうだな」
 磨りガラス越しにいくつかの影が見える。
 高橋の手に握られた白い紙コップは、うっすら内側から黒く染まっていた。



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758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/01(火) 23:44:51.18 ID:y6ii2Ik3o
>>755 >>756
ありがとうございます。なんだかべた褒めでむずがゆいです。
確かに時期が伝わる描写がありませんね。
脳内で夏の甲子園決勝の直後、と思っていたんですがほんとに思っていただけになってしまいましたね
以後気をつけます。



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759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/01(火) 23:46:23.10 ID:EaqsWD6Wo
>>752
感想は諦めてたけど、まさかもらえるとは。ありがとうございます
内容の件は自分でもちょっとなあと思ってたので改善できるように頑張ります

>>754
雰囲気がいいですね
才能ある人とは違う、自分の現実を見つめる寂しさがあるというか
短い文で改行していてやや細切れすぎるかなとは思いましたが、逆にいえばそれくらいしか指摘できるようなところがありませんでした

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760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/01(火) 23:58:12.63 ID:EaqsWD6Wo
なんか微妙ににぎわってきてる

>>757
目の付けどころというか、発想が面白かった。文章自体にも違和感はありませんでした
気になったのは改行のはさみ方ですが、これは総合でもいろいろな見方が出ているので引っ込めときます

このまままた少し活気が出るといいなあ

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761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) :2011/11/02(水) 00:48:12.53 ID:ri8dVnNDO
>>733

 「いくら?」
 「ハッピャクエンデス」
 ロボットは目玉を点滅させると、金属音を鳴らしながら小銭口を開いた。
僕は財布から五十円玉を十六枚取り出すと、一枚一枚丁寧に差し込んでいく。
最後の一枚を小銭口に入れると、ロボットはまた金属音を鳴らしながら小銭口を仕舞う。
 「カクニン、カクニン。トオカカン、ノ、ハヤオクリシマス」
 「うんお願い」
 間髪入れずに僕は首肯する。
ロボットは再び金属音を鳴らした。
点滅していた目玉がバチリという音と共に強い光を発する。
目の前が真っ白に染まったかと思うと、僕の意識はそこで途切れた。



 ――目を開くと、そこには苺と生クリームでデコレーションされた大きなケーキがあった。
スンと息を吸うと、甘い香りが鼻孔をくすぐる。
 「さぁ、たかし。誕生日おめでとう!」
 「お母さん!」
 「今日はたかしの誕生日だからね。私も久しぶりにたかしに会えてうれしいよ」
 久しぶりの母の顔は少し疲れていて、自分の誕生日のために無理をして仕事を出てきてくれたというのが感じ取れた。
 「僕もうれしい! 誕生日が待ちきれなかったぐらい!」
 なんたってあのロボットだって使ったんだから!
禁止されているのを忘れて、思わずそう口を滑らせようとしたところで、僕の言葉は止まった。
 「そうかい? じゃあさっきあげたプレゼントも大事にするんだよ?」
 「……え?」
 「何だ気に入らなかったのかい」
 母の嬉しそうな顔が曇り、僕は慌てて首を振った。
 「ううん! 気に入ったよ! あぁ僕早くケーキが食べたいな!」
 「あぁごめんよ。さて切り分けようか」



 母がまた仕事に出掛けた後、僕は家中の至るところをひっくり返した。
しかし、見つからない。
プレゼントらしきものはどこにもなかった。
 「ロボットロボット。僕の過ぎちゃった時間を少しだけ買うことはできないかしら」
 「アナタハ、ジカンヲ、カワレタデハアリマセンカ」

 ロボットの返事はにべもない。
けれど母がせっかくくれたプレゼントだ。

 「そこを何とかならないのか」
 「スギタジカンハ、モドリマセンヨ」
 「じゃあどこにあるのかだけでも」
 「アナタガ、カクシタンジャア、アリマセンカ」
 「ええっ!? まさかあ。僕は隠したりなんてしてないよ」
 「イイエ、アナタガカクシマシタ」
 話が全く通じない。
僕は頭に来てしまい、ガンとロボットを蹴り飛ばした。
ガチャガチャピーピー
金属音が鳴り、点滅していたロボットの目玉がビカリと光った。




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762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) :2011/11/02(水) 01:02:50.83 ID:ri8dVnNDO
ageられてなかったのでもう一度
また活気づけばいいんだが

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763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sagasage]:2011/11/02(水) 01:27:04.95 ID:Uzy/1ip5o

 日が天頂から幾分傾きし頃のこと。
 町の小さな公園の一角、そこに尋常ならぬ殺気が満ち満ちていた。

「お主、上様を裏切る心づもりか!」

 太く、張りのある男の声が響く。
 ジャングルジムを背にして立つ声の主、肩を怒らせ目を吊り上げ今にも火を噴かんばかり。
 その険しい視線の先にいる女は、対照的に涼しい笑顔。

「関係ないでしょ」
「関わりなきことはあるまい!」

 女のすげない声にかぶさる男の怒声。
 彼女はついと視線を外すと、脇の滑り台に目をやった。
 何かを言おうと口を開き、だが何も言わずに口をつぐむ。

「上様に楯突く者は例え妹者であろうと許さぬ!」

 男は声を荒げ、言うが早いか拳を振り上げた。
 鍛え上げられた肉。磨かれた骨。
 鋭い呼気と共に放たれた凶拳は、空気を幾万にも引き裂くと女に向かって突進した。

 同時だった。女の笑みが消えた。
 視線が男に突き刺さる。ねめつけるその目の光がどこか悲しく思われた。
 長い空白。男の拳は女の眼前に力を失っていた。
 沈黙があった。深淵をのぞき込むかの如く深く静かに。

「妹者」

 男が拳を解く。そのままゆっくりと女を抱きしめた。

「帰ろう」

 悲しく声が震えた。



 同刻、公園の脇を通る母子があった。娘がふと公園に目をやり訝しげに声を上げる。

「なんであのおねえちゃん笑ってるのに泣いてるの?」

 母は同じく公園の中に目を向け、その二人をじっくりと眺めた。
 その眼鋭く、数拍の間があった。

「母上?」

 ふっ、と。母の口から微笑の吐息が漏れた。
 大人になればわかる。それだけ言うと、母は歩きだした。
 娘はその背中と公園の二人をしばし見比べ首をしきりに傾げた。そののち母を追って小走りに駆けていった。
 その背後。男が静かに崩れ落ちた。
 女の貫手に血の赤色。

 大人になればわかる。修羅の道の険しさは。
 母のつぶやき、誰の耳にも入ることはなく。
 日がまた少し傾いた。


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764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/02(水) 01:38:29.20 ID:Uzy/1ip5o
忘れてた。お題は>>572
自分で書いといてアレだけど良くわからないものになりました

>>761
すみません、落ちというかどういうことかが分からなくて感想が書けません
文章は子供らしさが出ていてちょうどよい塩梅になっていると思います

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765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/02(水) 18:26:12.75 ID:5jpsaWc0o
>>761
お題の条件を組み合わせて時間を買うっていうのはなかなか面白い発想ですね。
ただオチの部分が少し分かりにくいかな。
例えば時間を飛ばす合図をロボットに特定のセリフを喋らせる、などしたほうがオチが分かりやすいかと思います。
あとプレゼントを隠す、の意図がよく分かりませんでした。もし『僕』を怒らせるためだけのものだったら少し意味深すぎるかもしれません。


>>763
うーん、ちょっと良くわかんなかったです。説明不足かな、と思いました。
SSで特殊な世界観の話をやろうとすると説明が不足したり過多になったりして難しくて書きづらいですよね。
だからこの板でもオリジナルは勇者と魔王などのある程度みんな共通した世界観をもっているSSが多いのだと思います。
とはいえこの世界観で長編を書いたらどうなるのかな、という興味はかなりありますね。
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/02(水) 20:49:03.84 ID:Cup+oWaro
ここはひとつ新しいお題がほしいっす
だれかカモーン
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) :2011/11/03(木) 08:17:43.92 ID:ZrsuwQbDO
お題

(○○の中は自由で)「そのネコがぼくのところにやってきたのは、ある○○のことです」という文章を入れる(改変OK)

登場人物(動物)が「死」に関係すること

引用/絵本「ネコとクラリネットふき」から



768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/03(木) 08:21:22.67 ID:ZrsuwQbDO
>>760
お褒めの言葉、ありがたく受けとめさせていただきます
文章の改行はまたパソコンから確認し、自分でも考えながらいろいろと試してみようと思います
ありがとうございました
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/03(木) 11:04:12.21 ID:jQkcUElHo
>>767
黒猫のみーくんが僕のところにやってきたのは、ある秋の夕ぐれ時のことでした。

みーくんは仕事帰りに公園のベンチで缶コーヒーを飲んでいる僕の目の前を横切って、珍しく僕の横にちょこんと腰を下ろしました。

「おや、みーくん、こんな時間に珍しいね。これからお仕事?」

「ん、まあねー。それよりちょっとお話しない?」

みーくんは少し気だるくて退屈そうな声でそう答えました。みーくんは名前の連想を裏切って、実はメス猫です。なぜみーちゃんでなくてみーくんなのかは、長い付き合いになる僕も知りません。

「あなたもお仕事だったの?」

「うん。今日は割りと楽な仕事だったなあ。いつもこう楽だといいんだけどね」

「あなたも大変ね。私は基本歩くだけだから楽なんだけど。時間に間に合いさえすればいいんだから」

「いろいろ大変な時もあるけど、まあ、仕事だから仕方ないよね」

みーくんとお仕事の話をするのは極めて珍しいので、僕はちょっとびっくりしました。お互いの仕事には干渉しないのが僕とみーくんの長い間の不文律だったからです。

「あなた、別のお仕事したいと思ったことないの?」

「もうそういう気持ちも忘れたなあ」

そう答えて僕はふと嫌な違和感を覚えます。

「私たち、長い付き合いだったわね。永遠に続くかと思ってたんだけどね」

「……」

「……できればあなたへの仕事はやりたくなかったの。本当はお仕事の時に話しかけるのは禁止なんだけどね」

「……そっか。僕にもその時が来たんだね。僕はこれから何になるんだろう?」

「……分からない。でも死神ではない何かになるのは間違いないわ」

みーくんは少し眠たそうな大きな目を僕に向けてそう話しました。みーくんの眼は大きくて吸い込まれそうです。

「僕の後は誰が死神をやるの?」

「それも分からないわ。でも誰かが来て、また何千年も死神の仕事をやり続けるんでしょうね」

「みーくんは、……死なないの?」

「それも分からないけど、いつかは私も寿命が尽きる時が来るはずよ」

「そうなのか」

「……私、ホントは、……あなたに……」

みーくんは大きな目を伏せてみーと鳴きました。みーくんの鳴き声に少し感情が篭っていることに気が付きました。これも初めてかもしれません。僕に残された時間はもう少ないようです。

黒猫のみーくんは死期が近いことを予告するのが仕事、僕たち死神は尽きた寿命を集めるのが仕事。寿命の尽きた僕の抜け殻は仲間の死神が拾っていくことでしょう。

「……もうそろそろよ」

みーくんは元の気だるそうな声に戻ってそう言いました。僕もいろいろな思いはありますが、ここは男の子の沽券にかけてしっかり答えておくべきだ、と思いました。

「みーくん、今までありがとう。……じゃあね」

みーくんは最後にみーと鳴きました。しかしその鳴き声は意識が薄れる僕には半分しか聞こえませんでした。
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/03(木) 11:05:40.21 ID:jQkcUElHo
ぶっちゃけ、お題が難しすぎでした。

現行死神スレの作者さん、ごめんなさい。
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/03(木) 20:58:47.59 ID:0sLMXYfK0
>>767

その猫が俺の家にやってきたのは、夏休みの終わり日だった。
家の外からも聞こえたにゃーという泣き声。
嫌な予感がしつつ、家の扉を開けると、そこには一匹の虎猫が座っていた。

なんでも母親が河原で捨てられていた猫を拾ってきたらしい。
やれ川に流されそうになってただの、このままでは死んでいただの言っていたのを良く覚えている。
当時子供ながらに、あんた猫を飼いたいから、適当に理由付けしてるだけだろうと思ったし、実際その猫が死んだ後も別の猫を他から貰ってきた時心底幻滅したものだ。
――閑話休題

その猫はトムと名づけられた。母親が『トムとジェリー』が好きだった。理由はそれだけである。虎猫なんだからトラでいいだろうという俺と姉と父親の意見は見事に却下された。

トムは基本、俺とは仲が悪かった。
一度、どうもトムは俺の上で寝ようと思って飛び乗ってきたことがあり、その時トムが襲い掛かってくるものと勘違いした俺は必死に抵抗し、あろうことかトムをぶん投げてしまったのである。
ちなみにその時のトムの着地は見事なものだった。

それ以来、トムとはずぅっと険悪な関係だった。
話かければひっかかれる。頭をなでようとすればひっかかれる。
餌をあげなきゃひっかかれる。ま、ようするに基本ひっかかれた。

・・・・・・ただ、俺が親に怒られて泣いてた時、学校でいじめられて帰ってきた時、何故かいつも傍にいてくれたのもトムだったのだ。
いつもひっかくくせに、その時だけはただ俺の近くで眠っていた。
何か意図があったのか、たまたま寝たかっただけなのかはわからない。
ただ、それに俺が救われていたのも、また確かだった。

そんなトムが死んだ。
交通事故だったらしい。
事故を起こした相手は顔面蒼白だったらしく、このお金をやるから許してくれといい、
それを親はうちの猫の死を金で買えるかとぶちぎれたそうだ。
・・・・・・気持ちはわかるが、突然飛び出してきた猫に対して対応しろっていうのもまた酷な話なのではないか。

姉は泣いていた、父親も母親もこの時は意気消沈していた。
俺は別段泣きもしなかったことで、何故か母親に叱られた。
あんたに人の心はないのかと言われたが、大きなお世話である。
大体こっちはその現場も見てないし、いつかひょっこり帰ってきそうな気がしていたのだ。

そして、季節がたち、母親が二匹目の猫をもらってきて、その猫にトムと名前をつけた時、はじめて俺は泣いた。そして怒った。
お前にとってトムはあの虎猫一匹じゃなかったのか!ふざけんじゃねぇ!・・・・・・と
そう叫んだ俺は、父親に抑えられ、そしてその事を母親に怒られた。
多分そこで初めて俺は、トムの死を認識できたんだと思う。

その後俺は社会人となり、家を出て行った。
家には今、三匹目の猫がいる。
二匹目の猫も交通事故で死んでしまったが、三匹目のこいつは結構しぶとい。
今度こそ、普通に最後まで生きてほしいな。
このお題を見て、そんな事を考えた。
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/03(木) 20:59:39.11 ID:0sLMXYfK0
こんなでいいのだろうか
趣旨間違えてたらスレ汚しごめん
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/03(木) 22:17:53.39 ID:Lq6J78cho
>>771
読ませる良い文章だと思うが、お題とはいえ死ネタはやっぱり嫌いだ。
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/04(金) 20:31:00.64 ID:4+B1OC/jo
>>765
なんかこう、正直説明不足以前の問題だったよね、ごめんね……
今度は真面目に書きますのでお許しを

>>769
ですます調の柔らかな地の文が好みです
何か注文をつけるとすれば、読んでいてちょっと風景が浮かびにくかったので情景描写の補強が必要かもしれません
とはいえ、空気を壊してしまっては元も子もないので注意深く検討してください

>>771
「俺」とトムの距離感が心地よかったです
自分からは特に注文はありません
775 :769です :2011/11/04(金) 21:09:41.17 ID:9UQMVzmTo
>>774

コメントありがとう。確かに情景描写が足りないですね。いつも台本形式がメインなのですっかり情景描写が頭から飛んでました。

あと自分で書いたのを読み返してみて思ったのが、僕の前を横切ったのがみーくんの仕事だったと気が付くところがポイントになるんですが、もう少し重みを付けた方が良かったかな、と。

また次のお題が出たら頑張ってみます
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sagesaga]:2011/11/05(土) 23:29:59.24 ID:qsEqpdX7o
>>605

 日が急角度に傾き、そろそろ休日の終わりを覚悟しなければならない時刻だった。
 私はしずしずと近付いてくる憎き月曜日の気配に恐れおののきながら、それでも外見は平静を装い横臥していた。
 本当ならばイヤイヤと転げ回り月曜日などなくなってしまえと罵声を吐き散らし、
ひいては猥褻のひとつやふたつで時間の神に抗議するところであったが、先週妹に怒られたので自粛している。
 仕方なく残された時間をかみしめながらの不貞寝だった。

「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」

 冷たい声が浴びせられたのはそんな夕方のことだ。
 名の知れた小説の一節である。清く精神の高みを目指す一人の馬鹿男が放った、世の誇り高き怠け者たちへの大胆不敵な挑戦状である。
 しがないいちサラリーマンの私としては断固それに反論したい。いやいやだってかったるいじゃんと。
 私は半身を起して振り向いた。視界に仁王立ちする少女がおさまる。彼女はじろりと私を見下ろした。
 夕日を後ろから浴びてその顔は暗く陰っている。だが冷たく光る瞳は見える。
 再び彼女が口を開いた。

「朝食を食べてからの二度寝。昼に起きて昼食。その後布団にもぐりながら漫画読み。それが済んでのアニメ鑑賞――これが兄さんの今日一日の行動です」
「素晴らしい。充実しているな」
「どこがですか」

 しみじみと言う私に、彼女は忌々しげに吐き捨てた。

「仮にもわたしの兄ならばもっとしっかりとしていただきたい」

 それを聞いて、私はある痛ましい事件を思い出した。「お兄ちゃんには夢がないね」から始まり殺人に終わったあの悲劇。
 そのニュースを知ったときと似た気配を感じて私は戦慄した。

「居候が知ったふうな口を聞くな」

 妹は実家を離れて私の安アパートに寄宿している。高校に通うのにこちらの方が都合がいい。だが。

「あなたに養われた記憶はありません」
「なんという恩知らず」
「どの口が言いますか」

 まあ実際のところ。炊事洗濯掃除は妹が全てこなしているので、例えば彼女に出て行かれれば遠からず滅びるのは私の方だ。
 座りなおしながら分の悪さを認めて切り替える。

「人の生き方に注文をつけるもんじゃない。無粋だ」
「わたしの人生に関わる事だから言っているんです。こんな兄がいるなんて知られればこの上ない恥なんですよ!」
「お前の人生など知ったことか!」
「それが兄の台詞ですか!」
「やーい、ばーか!」
「きいい!」

 その後しばらく口論が続き必死の攻防が繰り広げられたが、チャイムの音によって一時中断となった。
 私は妹に一睨みをくれて玄関に向かった。

 扉を開けると宅急便の制服を着た壮年の男性が姿を現した。
 サインと一抱えの段ボール箱を交換しそのまま彼は去りゆくかに見えたが、ふと肩越しに振り返り、

「仲がいいね」

 と、ちらりと笑って歩き去った。

 そのことを妹に話すと、「聞かれた!」と彼女は頭を抱えた。彼女にとってはこれすら恥なのだろう。
 どことなく疲れた様子で口論の続きを始める気配はない。
 私はというと、先ほどの男性のナイスミドルと言わざるを得ない最高の笑顔に毒気を抜かれていた。
 以上の推移により、私たちのいさかいはなし崩し的に和睦を迎えたのである。

 ちなみに。届けられた段ボール箱の中身は農家をやっている実家からの差し入れだった。
 ニンジン、ジャガイモ、タマネギ、リンゴ。
 カレーを作れという無言の圧力を感じる取り合わせだが、妹はわざわざニンジン料理をチョイスした。
 ニンジン嫌いの私である。さしあたってはこの嫌がらせの切り抜け方、そして仕返しの方法を考えなくてはならない。
 月曜日が近い。
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/05(土) 23:52:17.15 ID:lRGHhWJTo
 >>776

 いいですね。こういう軽い感じの文章は好みです。良い意味で頭を空にして読めますね。
 ライトノベルの冒頭のような空気を感じます。
 文章自体も特に引っかかるところもありませんでした。良作だと思います。
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/11/06(日) 11:09:30.60 ID:wEi2dqH70
>>776

乙です。思い当たる節があっていろいろと俺の心に痛いSSですね。
平凡な日常を切り抜いた感じがいいほのぼの感を出していると
思います。

お題を忠実に守ったらお話として見ると抑揚に欠ける展開になった
のは仕方がないところでしょう。それをまとめてしまうところに力量を
感じます。次からはトリ付きで書いてもらえると嬉しいかも。
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) :2011/11/08(火) 18:29:23.12 ID:bSxcOGYs0

次のお題もらってもいい?ちょっと猫のは俺には書けないっす
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 18:38:28.32 ID:6HufzzDDO
お題

少女が片想いの相手に告白をしようと相手を待ち伏せしている。
告白は上手く行かず、失敗する。
少女は諦めない。


登場人物の年齢性別は自由。
場所は自然に関するところ。

781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) :2011/11/08(火) 19:21:06.16 ID:8lq0uC2IO
お題

・落とし物
・青色
・セリフ「これぐらいは当たり前」
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(山口県) [sage]:2011/11/08(火) 20:37:53.15 ID:S4flT57Vo
>>780
 告白ってどんな感じなんだろう。私はしたことがないからわからない。
 でも、そんな私にも好きな人ができました。

 同じ学校に通う一つ年上の先輩。

 名前は北之城毅(きたのじょう つよし)。

 自然が大好きな先輩が、週末に富士山に登るという情報を聞きつけた私は、今こうして
富士山の七合目で待ち伏せしています。

 どうして七合目かというと、脚が疲れてこれ以上登れなかったから。てへっ。

 さあ、協力してくれているお母さん(43)の情報によれば、もうすぐ北之城先輩がここに
やってくるはず。

「北之城先輩!」

 先輩の前に飛び出そうとしたその時、

「何をやってるんだキミ!」

 突然見ず知らずのオッサンが私を制止したのだ。

「何ですかアナタは」

「それはこっちの台詞だよ。ダメじゃないか」

「え?」

「今は富士山駅伝の真っ最中なんだよ!」

「はい?」

 なんと、北之城先輩はただ富士山に登るだけでなく、富士山駅伝に参加していたのだ。

 先輩素敵過ぎる。

 その後、先輩がヨットで小笠原諸島へ向かうという情報をキャッチした私は、父島辺りで
待ち伏せしようと密かに計画しています。

 ああ先輩。必ず、あなたの大好きな自然の中で告白を成功させてみせます!
783 :こずみっくてきななにか [sage]:2011/11/09(水) 08:21:35.59 ID:+Be44PY/0
>>781 

今からずっとずっと昔、ボクはある落し物をしてしまったんだ。
それはとても小さな種だから、探すのはきっと骨が折れるんだろうな、と思ったものさ。
事実それはその通りで、ボクがその落し物を見つけたときにはずいぶん時間が過ぎてしまっていた。

「……綺麗だなぁ」

その“落し物”だったはずのものは、とてもきれいな宝石になっていたんだ。
すぐ近くにある大きな火の玉に照らされて、その宝石はきらきらと青くきらめいている。
でも、その宝石の中に住んでいる小さな生き物は、なんだがとても困っていたみたいなんだ。

こっそりと聞き耳を立ててみたんだ、誰にも気付かれないようにね。
すると原因はすぐにわかった。あの大きな火の玉が、どうも悪さをしているらしい。
あの宝石は元々ボクのものなのに、火の玉はそれを食べようとしているみたい。
ちょっと面白くないな。

だからボクは、その火の玉をぎゅっと鷲掴みにした。
ばちばちまっかな炎がボクのてのひらをくすぐる。ちょっと気持ちいいかも。
そしてそのままぱくりと一口。なかは熱々で、口の中がやけどしそうになったけど。

「結構おいしいかも。お腹もすいてたし、丁度よかったな」

半分くらいの食べ残しを、ぎゅっと丸めてもとの場所に戻しておいた。
しばらくすると、なんだか耳元が騒がしくなってきた。

「助かった!」「奇跡だ!」

なんて、とても嬉しそうな声が沢山聞こえてきた。
ボクも嬉しかったんだ。ここまで来る途中だってこんなに騒がしかったことはなかったから。

「これくらいは当たり前だよ、ボクはカミサマだからね」

届くかな?届かないかな?わからないくらい小さく呟いて。
ボクはその宝石に背を向けた。んーっと大きく背伸びをして、そろそろ出発しようかな
なんて考えてた。
落し物を持って帰るのを忘れていたけど、それは気にしないことにしたんだ。
だってまたいつかふらりと寄ったとき、みんなが“地球”って呼んでいたこの青い宝石を
また、見ることができるかも知れないからね。
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(dion軍) :2011/11/09(水) 17:49:17.44 ID:uUJXAo/P0
>>781 

「……落としたの?」

男はソーサーにカップを戻しながら女に聞いた。男の家の小さなダイニングテーブルには女が
買ってきたケーキとコーヒーが並んでいる。女は小さく頷いた。男の質問はただの確認でしか
ない。

「どこで?」

その声には少しだけ非難めいた響きがこもっていた。男の向かいに座って所在なさげにケーキを
つついていた女は、それを敏感に感じ取って恐縮する。

「うーん、分かんないけど多分ケーキ買いに寄ったデパートで……」

「まったく、よくあんなもんを落とせるもんだ」

「……ごめんなさい。ぐすっ」

女は消え入りそうな声で謝り、涙声で続けた。

「……私、もうあなたと一緒にいる資格ない……」

「え?」

「だって、あなたから借りたDVD傷つけちゃったし、あなたにもらった指輪もなくしちゃった
し、あなたがうちにあいさつに来た日は風邪で寝込んでたし……ぐすっ、わーん」

女を泣き出してしまった。男はやれやれと暖かいまなざしで見つめて、優しく言う。

「ばかだな。そんなのお前の今までのドジ歴からみたら全然たいしたことないじゃん」

「……どーせ、私はドジだもん。ぐすっ」

「筋金入りのどじっ娘のお前と一緒に暮らすと決めたんだ。これぐらいは当たり前すぎて怒る気に
 もならないよ」

「……ぐすっ」

「大丈夫だよ。あんなのただの紙切れだ。もう1回書けばいいだけだよ」

「……ぐすっ。うわーん、ごべんなざああいいいい」

男の言葉を聞いて女は再び泣き出してしまった。男はしょーがねーな、まったく、と呟きながら、
がさごそと自分のカバンから青色の線の入った紙を取り出した。

「ほれ。どうせお前のことだからなんかするだろうと思ってもう一枚もらっておいたよ。婚姻届。
もう落とすなよ」

「……あなた。……だいずぎいいいいい。うわーん」

785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) :2011/11/09(水) 17:54:25.07 ID:btrcdzJV0

注1:婚姻届は地方によっては青くないところもあるようです。てゆーか青の方が少数派?

注2:婚姻届は個人情報が超満載です。こんなもの落としたんなら男のように余裕かましてては
   いけません。ブチ切れましょう。


>>783の話のスケールがでかすぎて卑屈になりそう  
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) :2011/11/09(水) 18:12:55.46 ID:2ahA77uDO
>>781



馴染みの反物屋に新しく入荷したという反物を見に行ったその帰り道のことである。
川沿いには草が手入れもしていない状態で生え散らかっていて、「猫の死体を踏んでしまってもわからないわ」などと思いながらも歩いていると、知らぬ男が唐草模様の上着を着て何やら悩ましい様子でしゃがみこんでいる。
興味をそそられて、「どうなさったの?」と話を振ってみると、男は被った手拭いを抑えながらこちらに顔をあげた。
しかし手拭いが翳りを落として表情までは窺えない。
「大切なものを落としてしまって」
「あら。あたしも探してあげましょうか」
「そんな、お嬢さんに悪いですよ」と首を振る。
「構わないわ。どうせ帰っても家事を手伝わされるだけだもの」
そう言うと男は可笑しそうに声を漏らして、「それならお願いします」と頭を下げるものだから、少女は恥ずかしそうに頬を紅く染めた。
「それで、どのようなものをお探しかしら」
「このぐらいの、青の、硝子玉です」
男は空に小さな丸を描いて見せる。
「青の硝子玉?」
「人から貰ったものですが、なんでも珍しいものらしくて」
それを聞いて「そうよね、初めて聞いたもの」と返しそうになるのを喉から出る寸前でぐっと抑えた。
男は続ける。手拭いが風を受けて小さくはためいた。
「大切なものなんです。――でも、猫の死体を踏んで吃驚した拍子に落としてしまって」
「間抜けな奴だなぁと自分でもそう思います」
男の声がどんどんと尻窄みになるのを聞いて、少女は何も答えずにすとんとしゃがみこんだ。
「どの辺りに落としたのかわかるの?」
「あっはい。貴女が立っている辺りで落としたので、本当にここ周辺だと思うんですが」
その言葉を聞いて少女は土を軽く触ると、何かを一瞬考えるように顎に指をかけ、立ち上がり水辺に近づいていく。
あと一寸もしないところでまたしゃがみこむと、「ねぇ」と男に呼び掛けた。
「これかしら?」
指に摘まんで見せたのは、青の硝子玉だった。



「何であんなすぐに見つけ出せたんですか?」
お礼をしたいという申し出を断り、やっとのことで引き下がったかと思うと、男はそう聞いてきた。
「それは――……貴方この辺りの人じゃないでしょ」
「えっ」
「貴方みたいに目立つ人が来たら、すぐに噂になるもの」と男の髪を指差すと、男はぎょっと体を強張らせた。
「気づいていたんですか」
「まぁね……日本語があまりにも上手いから、最初は気付かなかったけど」
男は手拭いを脱いでくしゃりと髪を掻きあげる。
「こんな容姿でも日本育ちでして。それで、何故?」
「ここね。歩いていると気づかないぐらいほんの少しだけ、川に向かって傾斜しているのよ。だから硝子玉なら転がっていくだろうと思ったし」
「それを知らない私は地元の人間ではないだろうと?」
「そういうこと。この辺りの人にとってこれぐらいは当たり前に知っていることでね」
「そうですか」と男は肩を落とした。
「……私は混血でして。ここに幼いころに別れた母がいると聞いて会いに来たんですよ。母は私を忘れているかもしれませんが、一目だけでも会いたくて」
「その硝子玉はお母様に?」
「はい」
少女は何やら納得するように頷くと、男に向き直る。
「貴方の瞳にそっくりね」
男は目を見開くと、手に持った硝子玉と少女を交互に見て唇を開けた。
それがあまりにも間抜けに見えて、少女は思わず吹き出すと男は慌てて口を閉じる。
「大丈夫よ、忘れてないわ。きっと」
「さて探し物も済んだのだから」と少女は踵を返す。
「あのっ」
顔だけを振り向かせた少女に、男は硝子玉を空に透かせながら、
「ありがとう!」
嬉しそうに微笑んだ。


787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 18:20:21.41 ID:2ahA77uDO
>>784
ラノベ的で読みやすい反面、物足りないと思いました。
文章に引っ掛かる場所はありません。
ただ物語の一部分を抜き出した、といった印象は受けました。
読みやすくてよかったと思います。
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 18:28:44.92 ID:2ahA77uDO
>>783
文章は柔らかい調子で良かったと思います。
けれど世界観が少しわかりづらいかなと。
神様のキャラクターが漫画的過ぎるのかもしれません。
これは個人の意見でしかないし、正しいかもわかりませんが、もう少し淡白なキャラクターでもいいかなと思いました。
全体の雰囲気としては絵本ねようで良かったと思います。
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 20:45:13.02 ID:e9fN04Slo
>>777,778
遅れましたが感想にお礼を。ありがとうございます
指摘の通り物語に起伏がないというか、だから何? みたいな話になってしまいました
これからは文章だけでなく内容にも気を使っていきたいと思います

トリについては、恥ずかしいですしこういったスレにはそぐわないと思いますのでやめておきます。すみません
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 21:11:16.41 ID:e9fN04Slo
>>782
文章について言えば、ですます調とそうでないところがやや不調和を起こしているように見えます
自分だけかもしれませんし混ぜていけないことはありませんが、混ぜる場合は気をつける必要があるかと
内容については自分もユーモアセンスが足りないので難しいですが、それぞれの場面のボリュームがないせいかあまり笑いにつながってないように感じました。

>>783
絵本的で面白いです
それでも一応批評?するなら、たまに語り聞かせる口調から独り言のように変化する箇所があって、少しばかり違和感があったような気がします
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 21:36:28.39 ID:e9fN04Slo
>>784
地の文が人物の外面の描写のみだからか、なんとなく文章がほのぼのとしたシーンにそぐわないような気がしました
あとは、泣き声がそれらしくなかったように思えます
泣く様子を台詞だけでなく地の文でも描写するといいかもしれません

>>786
和風な雰囲気が心地よいです
特に指摘できるところはありませんが、
>「大切なものなんです。――でも、猫の死体を踏んで吃驚した拍子に落としてしまって」
>「間抜けな奴だなぁと自分でもそう思います」
ここが話者が変わっていないのに区切られていてちょっと引っかかりました


以上です
ヘタクソな批評ですので、あまり深刻にならずに参考にできるところだけ参考にしてください
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sagesaga]:2011/11/11(金) 00:05:45.68 ID:ykBOTRfso
>>616

 風が吹いていた。故郷とはどこか違う大陸のそれ。
 強くではない。どこまでも広がる草原がさらさらと囁く程度。
 俺は道の端に座り込んだままそのかすかな声に耳をすませていた。
 空を見上げると天頂に太陽があった。この草の海に足を踏み入れた朝からもう数時間が経過したことになる。
 ひ弱な俺の両脚はとっくに音を上げていて、もう一歩も動けそうにない。

 やはり馬を借りるべきだった。後悔は一時間前、すでに背中に追いついてきていた。
 馬になんか乗ったことがないから不安だとか、金に乏しいから少しでも節約したいなどと考えるべきではなかったのだ。
 今からでも引き返すべきかもしれない。空の向こうに伸ばした視線を来た道に落とした。
 その時ようやく彼に気付いた。

 彼はその時黒い点にすぎなかった。地平よりやや下、黄土色の道の上をゆったり進む点だった。
 馬とそれに乗った人間と気付くのにはしばらくかかった。気付いたところで俺は鞄からカメラを引っ張り出して立ち上がった。
 彼が近付いてくる間、数回シャッターを切る。
 しわが多く日焼けしたその顔をはっきり視認できる距離になったところで、カメラを下ろし代わりに右腕を水平に伸ばした。
 ぴんと立てた親指を見て、彼が馬を止めた。土埃にうっすら汚れた民族衣装が、わずかに衣擦れの音をたてた。

 言葉はほとんど通じなかった。それでもかたことの単語でどうにか先に進みたいことは伝わったようだ。
 かくして俺は彼の後ろで馬に揺られていた。
 会話はなかった。彼はとても静かな人間で、あれこれ俺に訊いては来なかったからだ。
 ただ一度「お前はなんだ」という趣旨の問いかけを受けた。
 カメラを見せると、どこか興味深そうに視線を注いだ。だがそれだけだった。
 彼は多分俺を記者か何かだと思っただろう。実際は違う。写真が趣味なだけの若者だ。

 まだおれが大学にいた頃だ。写真展を見た。
 別にどうしてもそうしたかったわけではない。本当に気まぐれというか偶然だった。
 学生特有の倦怠感を引きずって街中を歩いていたところ、それに出くわしたのだ。
 そんな俺にふさわしく、展示されている写真を撮った人間は無名で大半はどこか独りよがりの退屈な写真。
 あれもこれもいまいち響かない。だが、たった一枚だけ例外があった。

 草原を走る馬の群れ。風をきって、他の何もかもを置いてきぼりに。そしてどこまでも地平を目指し、走っていく。
 冷静に見ればそう優れた一枚でもない。やや遠すぎるその光景は臨場感に欠けていた。欠けていたのだが。
 その日の内に、安いカメラを買った。安かったが、生活費は削れた。ただ、後悔はしなかった。

 ――代わりに今、そのツケとばかりに後悔している。俺の写真は、俺を満足させてくれない。

 彼と俺は二日を共に過ごした。
 何事もなかった。心を揺さぶる見事な風景にであうことなど皆無だった。何事もなかった。
 彼には近くの町に案内してくれるように頼んだ。そこからの帰郷も考えた。

 そして、彼と別れる日の朝の事だ。俺はあまりの寒さに目を覚ました。
 季節は夏だが、ここは一年中あまり気温は上がらない。尿意を覚えて寝袋から這いだした。
 用を足して、寝袋の位置まで戻って、そこで気付く。記憶していた場所に、彼はいなかった。
 彼との交流は希薄だった。言葉が通じないせいもあったが、仮に通じていたとしてもそれほど親密になっていたとも思えない。
 そのせいか、あまり気にならなかった。それでもなんとなく近くを探すことにした。

 草原に一本、木が生えているのが見える。俺はそれを目指して進んだ。
 茫漠とした緑の海の中、目印と言えるものはそれしかなかった。まるで俺の人生のようだと思った。
 ならば目指したところには何があるのだろう。自嘲する。ならきっとそこには何もない。そうだ、今までと同じく。

 右前方から朝日が顔を出した。同時に俺は木の近くにたどり着いた。
 木の根元。馬を傍らに彼が腰をおろしていた。それが目に入った瞬間、俺は思わず立ち止った。
 彼のしわの多い横顔に朝日が当たり、深い陰影を刻んでいる。目は遠く、生まれたばかりの朝日を眺めている。
 あまり大きくない体つきが少しばかりたくましく見えた。日に照らされた民族衣装がうっすら輝いた。
 俺はあの写真を思い出す。カメラを持ってこなかった事を痛烈に後悔した。
 だからその光景を、目に焼き付けた。脳に刻み込んだ。忘れたくないな、と思った。

 数時間後、町に着いた俺は彼と別れた。彼は何事もなく去っていった。俺は馬を借りた。
 明確な風景があればそれでいい。なければないでそれもいい。まだ見ぬ光景を目指して俺は進む。
 また彼に会うことがあれば、現像した俺の写真を見てほしいな。ちらりと思った。
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/11(金) 00:43:50.47 ID:s6xKKF9zo
 >>792

 いいですね。若者のモラトリアムをうまく描いていると思います。
 お題を性質上長くなりすぎてしまいそうですが、1レスでよくまとまっているな、と感心しました。
 気になったのは朝日を眺める『彼』の描写です。少し淡白かな、と感じました。
 他の場面と同じように描写すると、この重要な場面が埋もれてしまうような印象を受けます。
 もっと『くさい』(という言い方が合っているか分かりませんが)描写にしてもいいと思います。
 
 以上です。
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/11(金) 01:52:58.73 ID:ykBOTRfso
>>793
感想どうもです
自分もなんとなく上手くないなと思っていた"朝日を眺める『彼』の描写"ですが、ずばり指摘されてしまいましたね
濃い?描写ができないことが弱点のようなので、なんとか克服していきたいと思います
ありがとうございました
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/12(土) 07:11:40.74 ID:G0JKgipto
>>724

 僕が担当する教室には小人が住んでいる。
 靴屋さんが眠っている間に靴を仕立ててくれる、そういう類のやつだ。
 彼らと話なんてしたことはないし、それどころか姿を見たことすらないのだけれど、彼らは確かにそこにいる。

 僕がこの小学校に新任で入って来た時のこと。
 ちょうど、その教室の担当だった年配の女性の先生が入れ替わりに異動していくところだった。
 彼女が教室に案内してくれて、僕はこれからの職場となる小さな戦場を感慨深い目で見回した。
 その顔がよほど緊張して見えたのだろう。彼女は笑って励ましてくれたのだ。
「大丈夫、彼らも歓迎してくれてるわ」
 彼女が指さす黒板のかどっこに、ようこそ、と一言だけ書かれていた。
「この教室には小人がいるの。彼らとは仲良くしなさいね」
 その時はただの落書きに不思議なことを言うもんだなと思ったが、彼女もとりたてて詳しく説明しようとはしなかった。

 新しい年度が始まって、学年が上がった子供たちが教室に入ってきた。
 僕は新四年生の担当で、まだまだはしゃぎたい盛りの彼らには手を焼いた。
 ときには落ち込むようなこともあって、仕事の後に教室でぐったりしていたのだけれど、そんなときにはたまに不思議なことがあった。
 黒板の片隅に「がんばれ」と一言書いてあったり、なくしたはずの万年筆が教卓の上にあったり、
子供たちが掃除を怠けたせいで汚れていたはずの床が綺麗になっていたり。
 大したことではなかった。けれど不思議なことには違いなかった。だからふとあの先生が言っていた小人の事を思い出したのだった。
 その時はまだ信じる気にはならなかったけれど。

「佐藤の馬鹿野郎!」
 ある日のことだ。教室に入った僕の耳に叫び声が飛び込んできた。
 びっくりしてその方向に目をやると、なんと男の子二人が取っ組みあって喧嘩の真っ最中。
 僕は慌ててその周りで当惑している子供たちの間を抜け、掴みあう二人を引き離した。
 それでも言葉でなじり合う二人をなだめてどうにか話を聞き、周りの子の話を統合すると、つまりこういうことらしい。
 その日は夏休みが終わって数日が経っていて、教室の後ろには夏休みの自由研究や工作の作品が並んでいた。
 田中君の作った船の模型もその中にあった。大人の僕の目にもそれはなかなか良い出来で、もちろん田名君もそれを気に入っていたようだ。
 だが、佐藤君が誤ってその船のスクリューを折ってしまったのだ。
「わざとじゃないもん……」
 佐藤君はうなだれてつぶやいた。

 その夕方、僕は教室で頭を抱えていた。どうしたもんかな。つぶやいた。
 目の前には船と、それから破損したスクリューがある。
 怒り心頭の田中君をなだめるには僕が直すと申し出るしかなかったのだが、今それを後悔していた。
 スクリューを手にとって眺める。それはなんと木を彫って作られたものだ。
 そこから細い棒が伸び、船の本体とつながるようになっているのだが、それが今はぽっきり折れている。
 スクリューと棒は一体となっていて、棒だけ取り替えることはできない。棒は細くて接着剤でくっつけることもできそうにない。
「困ったなあ」
 悩んで悩んで二十一時を回った頃、僕は仕方なく帰ることにした。
 とりあえず明日の朝、何か道具をそろえて直そうと思ったのだ。

 そして翌朝。
「ありがとう先生!」
 田中君がすっかり直った船を抱えて、僕に顔一杯の笑みを見せた。
 僕は曖昧に笑って答えた。自分が直したわけじゃないからだ。
 朝教室に入ると、スクリューは船にくっついていた。あれ、と思ってもう一度見てもやはりちゃんとくっついていた。
 継ぎ目があまり目立たない見事な修理。僕は呆けてそれを見下ろした。
 黒板を見ると「かし一つ」とあった。
 菓子一つに見えたので、お菓子を買って教室に置いて帰ったところ、翌日には消えていた。

 それから二年。僕が担当した子供たちは昨日、元気に卒業していった。
 とても良い子たちで、僕にちゃんとお礼を言ってから笑顔で去っていった。
 僕は確かに頑張った。けれども子供たちが笑顔でいられたのは、間違いなく教室の小人さんたちのおかげなのだ。

 その日の仕事がおわり、静かになった学校の椅子に座り、僕は天井に向かって呼び掛けた。
「来年もよろしくな」
 天井で、コトッと、音がした。
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/12(土) 09:45:50.75 ID:RRVaqnAQo
 >>795

 小学校という舞台に合っている丸みのある文章でよかったと思います。
 教室の後ろにおいてあった絵本を思い出しました。
 ただそれゆえに内容が少し物足りないかなと感じました。
 少し裏切られる部分があってもいいと思います。
 
 あと個人的に”かし一つ”の部分は大好きです。

 
 以上です。
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/12(土) 13:33:27.83 ID:G0JKgipto
>>796
確かにひねりがないんですよねー……
実は自分の書く物に共通する弱点です
克服できるように頑張ります
あと"かし一つ"は自分も気に入ってます

以上、ありがとうございました
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sagesaga]:2011/11/12(土) 21:55:12.79 ID:G0JKgipto
>>725

 降り注ぐ紫外線は細胞の一つ一つをまんべんなく刺激する。
 それによって傷ついた細胞はしわしみの原因となり、また癌へと発展する恐れを含んでいる。
 したがってそれをすすんで浴びようとする者はよほどの酔狂かもっと言えば馬鹿であると考えられる。
 かわいそうに、心を病んでまともな判断ができないのかもしれない。
 つまり、と俺は静かに断定した。

「ここにいるのは救いようのない阿呆ばかりということだな」
「はあ?」

 隣の友人が呆けた声を出した。高校での俺の数少ない友人の一人だが、彼を無視して俺は周りを見渡した。
 海である。太陽は容赦することなくその緩やかかつ激しい殺人光線を投げかけており、白い砂はそれを反射してさらに人体を蝕もうとする。
 砂浜に集う愚かな人々は気付かない。自分が緩やかに死に向かっているなどとは。
 だが、自分もまた同類であることを認めざるを得なかった。
 なぜならしかるべき装備を身につけず、愚民と同じく半裸で殺人光線を浴びているのだから。

「皮肉だ……」
「何がだよ」

 せわしなく周りを見回しながら友人が応じる。彼は一通り周りの人々、特に女性について観察を終えると、こちらに向き直った。

「健一、お前ここに来た理由を忘れているんじゃないだろうな?」

 俺は頷く。覚えている。

「お前に協力すれば新たな境地にたどり着ける、だったな?」
「黙ってればイケメンなのによ……」

 友人はため息をついて、こちらに手を振った。「とにかく行くぞ」だそうだ。
 彼の後について歩きだしながらここへ来た理由を思い出した。俺は自身を高めるためのメソッドとしてここにいる。
 友人曰く、男性の対極にいる女性という存在との積極的な関わりを持つことにより、自身の存在を昇華させるとのことだ。
 俗な言い方をすれば「ナンパ」と言うらしい。

「ほら、行け!」

 友人に押し出されて一人の少女の前につんのめった。実のところ気は進まなかったのだが、これも修練の一つだ。
 俺は口を開いた。

「君、俺と新たな次元に――」

 そこで息を詰まらせた。目の前の少女に見覚えがあったからだ。

「あ、けんちゃ――」
「初めましてマドモアゼル。あなたにお会いできて光栄です!」

 俺の名前を呼ぼうとした"俺の従妹"を、言葉で強引にやりこめる。
 驚いて目を瞬かせる彼女にさらに言葉を重ねた。

「ああ、あなたはなんて美しいんだ。ここから立ち去ってほしい程に!」
「う、美しい……? ……えへへ」

 はにかむ従妹と、背中に突き刺さる友人の訝しげな視線。曰く「お前キャラ変わってんぞ」
 だが、なりふり構ってはいられない。彼女は、超人を目指す俺の唯一の弱みだからだ。
 このまま力技で押し切る! そう決めたときだった。

「あやこー」

 従妹の後ろからもう一人、同じぐらいの年齢のポニーテール少女が姿を現した。

「あれ、健一さんじゃん。綾子の従兄兼彼氏の」

 彼女は屈託なく笑った。

「彼女に会いに海まで追いかけてきたんですか?」

 帰りの電車で友人はぶーたれた。曰く、「なんだよ彼女持ちかよ」
 一方俺は隣にひっつく従妹兼彼女に身体をかたくしていた。
 女性との交際など男の弱みでしかない。従妹に告白したのは一時の気の迷いだった。

「あはは、仲いいですねー」

 従妹の友人がからかってくる。この空気はどうにも居心地悪い。
 俺は最後の賭けに出た。

「あー……世はなべて事もなし、だな」
「何それ」

 俺の彼女がくすりと笑った。
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/12(土) 22:11:34.95 ID:DnURtMpoo
 >>798

 ひょっとして>>776の方ですかね。同じ空気を感じます。
 こんな風に軽い感じの文章は羨ましいですね。機会があったらぜひご教授願いたいです。
 内容の方ですがお題の縛りが多いのによく出来ているなあ、と思いました。文章力のなせる技なのでしょうか。
 唯一気になったのは改行でしょうか。書き手によって改行の仕方はまちまちだと思いますが、自分の目にはその基準があいまいに感じました。

 以上です。
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/12(土) 22:35:00.61 ID:G0JKgipto
はい確かに>>776も自分です
軽い雰囲気が伝わったようで良かった良かった
実は自分が真似しているのは森見登美彦さんなので、もしよかったらそちらを参考にしてください
改行については全くその通りだと思います。地の文と台詞で機械的に分けてみたのですが、自分でもなにかしっくりきませんでした
もっと見やすい形に加工できるように研究してみます

以上、ありがとうございました
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sagesaga]:2011/11/14(月) 03:37:34.93 ID:S4noOvbto
>>733

 荒野の風が少しばかり夕暮れのストリートに吹き込んできた。
 乾燥して砂も混じっているその風は、向き合うガンマン二人の頬を無遠慮に撫でて吹き去っていく。
 二人のうち、背の高い一人はその風に目を細め、もう片方は帽子をかぶりなおした。
「覚悟は、いいか?」
「一年前に済んでるさ」
 男たちの距離は、話すには少々離れていた。約五ヤード。決闘の距離。
 家屋は並んでいるが彼らの他には誰もいない。この近くに人は寄りつかない。一年前からだ。
「……そうか。そうだな」
 そう言って、背の高い方がほんのわずかに目を伏せた。

◆◇◆◇◆

「過ぎた時間は戻らない」
 その声は酒場の喧噪の中でもなぜか良く聞こえた。まるで魔法がかかっているとでもいうように。
 背の高い男はその声を聞いて出口に向かいかけた足を止めた。
 手にはいましがた買った酒のボトルの重みがある。大した重量でないが、それが滑り落ちそうになった。
 声のした方に目をやる。席の一つに座った帽子の男がこちらを見ていた。にこりともせず彼が言う。
「久しぶりだなリック」
 途端苦いものが確かに口の中に広がるのを彼は認めた。
「アルバート……」
 返答の声は、低くかすれた。
「まあ座れよ」
 帽子の男が対面の椅子を示す。背の高い男は少しのためらいを見せた後、ゆっくりと近付き腰を下ろした。
 間があった。帽子の男が酒をあおった。ずいぶん前から飲んでいる様子に見えたが、特に酩酊しているようには見えない。
「酒は強いんだよ。知ってるだろ?」
 やはり笑わずに帽子。
「それにあの日以来、俺は全く酔えなくなった」
 帽子の男の目が冷たく光る。背の高い男は黙ってその目を見返した。
(あの日、か)
 耳に過去がよみがえる。
 金を出せ。女もだ。いいかお前ら逆らうんじゃねえぞ。
 そしてあの女の悲鳴。自分の拳銃からの発砲声。その後の沈黙という名の静寂も。
 女の悲鳴。今も背の高い男の夢に響き渡りその睡眠を浅く短いものにする。
「メアリーは死んだ」
 帽子の男がうめく。俯いて、表情が読めなくなる。
「お前に殺された」
 怨嗟にも泣き声にも聞こえた。

◆◇◆◇◆

「メアリーはお前が殺した」
 ストリートの上の、つまり決闘の場において、それはただの余分なものにすぎない。
 うらみがましい声、そしてその声を聞いて胸に湧く悲しみも。
 背の高い男は事務的に確認した。
「お互い銃は一つ。距離は約五ヤード。好きなときに抜いて好きに撃つ」
 帽子の男はそれを聞いてもいない風に続けた。
「お前は、俺が彼女のことを愛していた、それを知っていたくせにだ」
 背の高い男もそれを無視して続ける。
「立会人は無し。勝った方は負けた方をきちんと埋める。それ以後は忘れて生きる」
「お前は義務を優先する、そういう男だよ」
 帽子の声に、背の高い男は黙った。

◆◇◆◇◆

「決闘だ」
 帽子の男がそう言うのを、背の高い男は驚きもせずに受け入れた。
「いつだ」
「明日の夕方」
「どこで?」
「あの日の悲劇の舞台でだ」
 それだけ言うと、帽子の男は立って酒場を出ていった。

◆◇◆◇◆

 銃声は一発。いやかぶさった二発分の銃声が一つに聞こえた。
 同時、夕日が地平線に姿を消した。
 短い沈黙。それから人間が地面に落ちる音。
 背の高い男は腹に空いた穴を見つめながら、ゆっくりと声を出した。
「俺だって彼女を愛していたさ」
 痛みは感じなかった。胸を鋭く突きさす悲しみに比べればそんなもの、とリックは思った。
「だけれど町の平和には代えられない……俺たちは保安官だったからな」
 倒れ伏しながらも顔を上げる。うずくまるアルバートが見える。胸に銃弾を受け、絶命している。
「あのクソ強盗どもが彼女を人質にとりさえしなけりゃな……」
 リックはどうにも涙が止まらないことに焦りを覚えていた。腹から流れる血よりもそれは重大だった。
「ああ、まったくだ。過ぎた時間は戻らんな」
 あの悲劇よりも前、三人で笑いあっていた日々を思いだしながら。リックの意識は途絶えた。
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/14(月) 10:57:13.24 ID:RpiO0zmr0
>>801

西部劇っぽい雰囲気がいいですね。ただお題の「買い物」はクリア
していないような・・・・。

登場人物が帽子の男=リック、と背の高い男=アルバートの2人だけど
どっちがどっちか分かりにくいですね。最初に名前が出てきているので
その後はリック、アルバートで話を進めてもいいのではないかと。

それとせっかくだから、もう少し細部に西部劇らしさを入れたらいいの
ではと思います。長さとのバランスでもあるのですが、5,000字ぐらいの
お話しにして過去に起こったことを丁寧に描写すると面白さがアップする
だろうなと思います。
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 13:33:09.47 ID:IQHr5AdWo
物語はそのままで、文章だけ変えてみるのも面白いと思うんだけど
興味のある人はいないかな
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 17:54:37.08 ID:pyRl0MkIO
>>803
面白いと思うよ。同じプロットでみんながそれぞれSSを書くってことでしょ?

プロットの出し方のさじ加減が難しいけどね。あんまり細かいプロットだと、書き手
の違いが出ないし、ゆるすぎると物語がばらばらになるよね。

賛同者が何人かいるんだったら試しにやってみる?

あと、このスレに貼られたショートショートは結構良作佳作があるからこのまま流してしまうのは惜しい気がする。
どっかにまとめておけないもんかな。
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 17:56:56.62 ID:S4noOvbto
>>802
一応お題は
>いましがた買った酒のボトル
でクリアしたつもりでいましたが弱かったですね。反省

それから、リックとアルバートが逆です……
相当分かりにくかったようですね。これも反省して出直します

西部劇らしさは読み返したら確かにあまりありませんでした
これは補強できるようにします

過去の描写についてはにおわせる程度で想像力をくすぐることを狙ったのですが、技術が足りなかったようです
まずは丁寧な描写をできるようになって、それから再度挑戦したいと思います

以上、ありがとうございました
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 17:59:45.37 ID:S4noOvbto
>>803
自分もそれに賛成です
そういうお題によってより書き手の個性を比べることができて面白いかと
ただ、やっぱりお題の出し方が難しいですね
今までに出たショートショートから引っ張ってくるのはどうでしょうか
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 18:07:30.61 ID:S4noOvbto
>>804
確かにこのショートショートの蓄積を流してしまうのは惜しい
でも、まとめブログはここの内輪臭が強くて厳しいでしょうし、やるなら自分たちでwikiでも作るしかないですね
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/14(月) 18:55:31.05 ID:S4noOvbto
>>744

「金を出せ! 女もだ! いいかお前ら逆らうんじゃねえぞ!」
 がらがらと不快な声が響く。
 町の南。他と同じく脇に家屋が並ぶストリートの上で、大男が声を張っていた。
「逆らえばこいつの頭が吹き飛ぉぶ!」
 右手に大型拳銃。左腕に顔を蒼白にした女。
 リックは十数歩離れて彼を睨みながら、胸の奥で盛大に悪態をついた。

 隣から飛び出そうとする気配を感じて、小さいしぐさで制する。
 いつものように帽子をかぶったアルバートが小声でこちらに告げた。
「このままじゃメアリーが」
「分かってる……」
 それでもどうしようもない。
 突如町を襲った強盗の頭である大男、その腕に首を締められ涙を浮かべるメアリーを助ける手段は今のところなかった。
「近付くなよ保安官。この女の命が惜しけりゃな」
 こちらに銃を向けるでもないが、その気配を漂わせながら大男が凄む。
「よくもまあ俺の可愛い兄弟たちを殺してくれたじゃねえか」
 あちらがこちらに銃を向けてくれればその瞬間を狙って反撃ができる。だがそれは強盗も理解しているだろう。だから膠着状態だ。だが。
「ガンベルトをはずして地面に置きな」
 強盗は容赦なかった。

 一瞬躊躇し、相棒と目を合わせ――それから頷く。
 迷いはあったが選択肢はなかった。リックとアルバートはガンベルトに手を伸ばした。
 その時だった。
「お姉ちゃんを放せ!」
 一番近い家屋から小さい影が飛び出した。存外にすばやい走りで強盗に迫る。
 強盗が反射的にそちらに銃を向けた。
 メアリーが悲鳴を上げた。
 同時に銃声が鳴った。

 ああ――あれはもう、一年前のことになるのか。

◆◇◆◇◆

 真紅の輝きが瞼の上から目をつきさした。うめき声を上げて、リックは瞼を持ち上げた。
 ぼんやりと視界がかすむ。そのかすむ視界に丸い何かが浮かんでいる。
「気分はどうかね」
 人の顔だった。窓から差し込む夕日の光を浴びて深く陰影を刻んでいる。
「ロック牧師……」
 その知り合いの名をつぶやく。驚くぐらいにかすれたその自分の声を、しかし彼は冷静に聞いた。
「俺は……」
「南区に倒れていたよ。腹を撃ち抜かれてね。ここは医者の家だ」
 弾丸は抜けた。内臓は多少傷ついたが問題ない。大きい動脈も外れた。牧師は淡々と説明した。あったであろう死体のことは言わなかった。
「銃は……」
 リックはそれを遮って声を上げた。
「君の銃ならここだよ」
「くれ……」
 牧師は黙ってそれを横たわるリックの胸の上に置いた。

「……あの時。走り出た子供を強盗は狙った」
 しばしの間をはさんでリックの口から、言葉ががぽつりとこぼれ出た。
「俺は、子供を助けるためにメアリーごと強盗を撃ち抜いた」
 牧師は静かに彼の言葉を聞いていた。
「相棒は――アルバートは撃たなかった」
 それからまたしばし言葉を切った。切って、続けた。
「メアリーは最期に悲鳴を上げた。なんて言っていたのかはわからない」
「その銃」
 牧師がそれを指さした。
「……自害するのかね?」
「無様に一年間生き延びてきたが、それは一度も考えたことないな」
 言って、胸の上の銃に両手を置いた。
「笑うか、牧師殿」
「いいや」
 リックのその姿は祈っているようにも見えた。
 それは神への祈りか。それとも去っていったものへの哀悼か。それとも救い難い自分への慰めか。
 夕日がゆっくり姿を消した。
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 18:59:18.66 ID:S4noOvbto
過去を丁寧に書くといいとアドバイス頂いたので、同じ設定でもう一つ書いてみました
もしよければ感想・批評お願いします
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 20:15:02.26 ID:PGtygZReo
 >>806

 それでも面白いかもしれないけど作者さんの許可が必要じゃないかな。
 もしやるなら何人かに自分がここで書いたSSの安価を貼ってもらって、そこからお題を選ぶとかしたほうがいいかもしれない。

 >>808

 >>801より格段に読みやすくなっていると思います。ただそれに反して西部劇っぽさが薄れてるかな、と感じました。
 西部劇などのイメージは読み手の頭のなかですでに固まっているので、テンガロンハットやカウボーイなどの小道具を使うとぐっとらしくなると思います。

 以上です。
 
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東) [sage]:2011/11/14(月) 20:24:08.11 ID:+1qxJ5GAO
>>809
自分は新着レスを下から見るので、上にあるらしいver.1を読まないまま808だけで先ず感想を。

>ああ――あれはもう、一年前のことになるのか

時制の切り替えが表記とややずれているようにも感じられたので、
>◆◇◆◇◆

の後に回想の頭を置いたほうが文章の途切れはスムーズにならせると思った

808だけで、あったであろう死体=哀悼の対象…=決断を違えたアルバート?と読めて
彼の性格設定の直接的な描写が808には無いにもかかわらず、それをうかがわせる書き方はとても魅力的。
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 21:40:21.92 ID:S4noOvbto
>>810
>SSの安価を貼ってもらって
確かに無断じゃ不味いですね。もし安価を貼るなら自分も協力したいです

>小道具
"西部劇らしさ"はどうやったら出せるんだろうと思ってたら、そういえばそういう方法がありましたね
すっかり忘れてました。参考にさせてもらいます

>>811
時制の切り替えは確かにおかしいですね。気をつけます
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/14(月) 22:07:33.45 ID:+Iw+9Mpoo
>>808

いいですね。最初の作品と合わせるとぐんと深みが出たと思います。

あと付け加えるなら相棒保安官だったリックとアルバートの性格の違い
ですよね。同じ緊急事態に直面しながら、同じ愛する女に向かってリックは
銃を撃ち、アルバートは撃たなかった、あるいは撃てなかったのか。

西部劇らしさを強調するための小道具を使うと言う>>810さんの意見には
賛成です。例えば最初の作品でリックが買ったのは酒じゃなくてバーボン
、強盗が持っているのは大型拳銃じゃなくて5インチのピースメーカーと
書くだけでぐっと西部劇っぽさが出ると思います。

ちなみにプロテスタントでも自殺は禁忌ですから、聖職者である牧師に
「自害するのかね?」というセリフを言わせるなら、相応の注意が必要で
す。
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 22:22:06.89 ID:S4noOvbto
>>811
すみません、途中送信してました
>彼の性格設定の直接的な描写がないにもかかわらず〜
自分でも気付きませんでした
そこに気付いて指摘できる批評力をうらやましく思います

>>813
そういえば二人の違いは、ただあるだけでそれ以上意味がある描写になってませんね
もう少し詰めるべきだったかもしれません

>バーボン、ピースメーカー
なるほどその手が合ったか! 今度からは下調べをしっかりやります

>自害
……知りませんでした
言わせるならもっと戒めるような、とがめるようなニュアンスを含ませるべきでしたね。指摘、ありがとうございます

あと、こちらで言うのもなんですが、総合の戦略・戦術の例示もありがとうございました
815 :1レスにおさまらなかったくやしい [saga]:2011/11/15(火) 15:32:43.52 ID:zRbR25Mco
>>767

 そのネコがぼくのところにやってきたのは、ある夜のことです。星がよくながれる夜でした。
 彼は白いネコなので、月明かりにてらされて丘の上のぼくからはのぼってくる彼がよく見えました。
 彼はちょっと変わったかっこうをしています。頭にはシルクハット、胸に蝶ネクタイ。手にはステッキをもっていて、二本足でゆったりとのぼってきました。
「やあ君、こんばんは。それからはじめまして」
 彼はぼくのそばまで来ると、ていねいにおじぎをしました。
「こんばんはネコさん。はじめまして」
 ぼくもすわったままで彼におじぎしました。彼は小さいので、すわったままでぼくと目のたかさが同じでした。

「何をしているのかね?」
 彼はぼくにたずねました。
「星を見てたんです」
 ぼくは答えて夜空を指さしました。
「ほら、ながれ星があんなにたくさん」
 ちょうどぼくの指さすさきで、星がすーっと流れていきました。
「そうかい、実はわたしも彼らを見にきたんだよ。となり、いいかね?」
 ぼくがうなずくと、彼はとなりにちょこんと腰を下ろしました。
 見上げるさきで、また星がかけて行きます。
「きれいだね」
「きれいですね」
 ぼくらは小さいこえでうなずき合いました。

「ネコさんはどこからきたんですか?」
「北のほうからだよ」
 ぼくは北で走りまわるさむいさむい風を思いました。きっとすごくさむいんだろうなあ。
「ははは。たしかにさむいが、がまんできないほどじゃないよ」
 でもぼくはさむさが苦手です。冬の朝はなかなかおきられません。
「わたしも冬の朝は苦手だなあ」
 彼はくすくす笑っています。
「でも、いいものも見られるんだよ。知ってるかね?」
 ぼくはふるふると首をふりました。
 彼はぼくの目をじっと見てから、
「君はひみつを守れるかい?」
 と言いました。
 ぼくはひみつが得意だったので、しっかりうなずきました。

「わたしは星が生まれるところを見たことがある」
 ぼくはびっくりして彼を見つめました。
「北のあるところで彼らは生まれるんだ」
「それはどこ?」
 ぼくが聞くと、彼はこっそり教えてくれましたが、ひみつなのでここには書けません。
 なんでも星はそこで生まれるようなのです。
「星はさいしょはただの石ころみたいなものだ。そこらに転がっていてもわからない」
「光らないんですか?」
「ああ、光りもしない」
 ぼくは手もとにあった石をとりあげました。これももしかしたら。
「ははは。それはないよ」
 彼はとてもおかしそうに笑いました。
「北にしかいないんだから」
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/15(火) 15:33:53.21 ID:zRbR25Mco

 ぼくは石をかるく上になげました。
「そうだね。星たちもある日そういうふうに空にのぼる。だれにも見られないようこっそりとね。それから空の空気をすって光り出すんだ」
 ぼくは感心しました。星はそうやって今見ているような星になるんだ、と。
 今も北で生まれているのかもしれないなと思って北のほうをながめます。
「そうだな。今夜も星になったやつがいるかもなあ」

 またながれ星が走りました。ぼくはぼーっとそれを見ていました。
 と。そこで気付いて彼に聞きました。
「じゃあ、星は死にもするんですか?」
 彼がすこしだまって、それからゆっくりうなずきました。
「ああ、死にもするよ」
「死んだ星はどうなるんです?」
 彼は前足を持ち上げて指さします。空。そしてながれる星。
 ぼくは分からず首をかしげました。
「星は、ながれ星になって死をむかえるんだ」

 ぼくはまたびっくりして彼を見つめました。
「ながれ星になったら、死んじゃうんですか?」
「彼らは光る星になって空で長いあいだかがやきつづける。でも、それが終わるとながれ星になるんだ。それが最後」
 また、星がひとつながれました。
 ぼくはとつぜん悲しくなって立ちあがりました。空を見あげ、でもどうしようもなくて。
「泣かなくていい。それが彼らの生き方だ」
「でも」
 彼はすわったままぼくを見あげて笑いました。
「死ぬ、と考えるから悲しくなる。ちがうよ。彼らは遊びにいくんだ」
 ぼくはわからなくなって、たちすくみました。

「死んだら、そこで終わりじゃないんですか?」
「星はね。長く長く光りつづけるんだ。それこそたいくつでしかたなくなってしまうくらいね。だから、彼らもがまんできなくなったら遊びにいく」
「どこに?」
「それはわたしもしらない。でもながれ星になるくらいいそいでいるんだ。とってもいいところにちがいない」
「天国?」
「どうだろうね」
 彼は言って、立ちあがりました。
「わたしはこれで帰るよ。君と話ができてよかった」
 そのままゆっくりと丘をおりていきました。

 この手紙が書きあがったらぼくはちょっと出かけます。
 どこかは書きませんが、北のほうです。星の生まれるところを見てきます。
 寒いだろうからたくさん服を持っていこうと思います。
 帰ってくるのはいつごろになるかな。帰ってきたら、また彼と話がしたいな。
 じゃあ、いってきます。

 大好きなママへ。
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 19:05:09.42 ID:6+57pQtIO
そろそろ新しいお題行ってみたくならね?
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 19:31:30.30 ID:zRbR25Mco
新しいお題に行くなら>>803も検討したいな
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 20:11:14.32 ID:FB4of7YDO
お題>>378のストーリーで書く


>>803は↑といった感じでいいんだろうか
あまり上手いものではないし、書きづらいかな
それとも既存の話からとってくる感じ?>桃太郎とか
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 20:18:23.66 ID:zRbR25Mco
>>819
自分で書いたものだったらOKじゃないかな
とりあえずそれでやってみたらどうだろう
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 21:01:58.82 ID:FB4of7YDO
では
お題>>819
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/15(火) 21:02:58.75 ID:T98td+ipo
やってみようかと思ったけど、どこまで変えていいのか分からんぞな
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 21:08:26.97 ID:zRbR25Mco
確かに難しい
押さえるべきポイントを自分で決めて、それ以外は思い切って変えるしかないんじゃないかな
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/15(火) 21:14:52.59 ID:FlTAHn5AO
あ、懐かしい。
それ>>378投下された頃からもう半年もたつのか…

また読んで、ちょっと咀嚼してみようかな
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sagasage]:2011/11/15(火) 21:52:16.38 ID:zRbR25Mco
>>819

「うるさい! この悪党め!」
 その甲高い声に突き刺され、俺は思わず口ごもった。
 夕暮れの日射しが背中を焼いた。

「仕事では随分な人気者なんだって?」
 久しぶりに同窓会であった友人はそう言って笑った。相変わらず優等生だな、とも言った。
 ヒーロー業を始めてもう三カ月だ。真面目にやれば当然結果もついてくる。そして、その結果に見合った仕事もおのずと入ってくる。
「君ももう慣れてきたからな」
 上司から渡された辞令書には一人で仕事をこなすようにとの旨が記載されていた。
 ため息を吐きかけ、気付き、呑み込んだ。

「おのれ……」
 幼稚園のバスジャックに失敗し、足元に倒れ伏した怪物を静かに見下ろす。その頃にはもう日は暮れかけていた。
「ありがとう!」
「"ヒーローの、やるべきことをやっただけさ"」
 マニュアル通りに笑って、マニュアル通りに返す。もう何度も繰り返してきて、慣れた。
 子供たちを見送った後、会社に戻るために足を踏み出し、ふと目に入った自販機に近寄った。
 硬貨を入れ、点灯するボタンをぼんやりと見た。
 ヒーロー業初仕事の時も、そういえば自販機によって、先輩におごってもらった。あの頃は笑っていた気もする。
 ふと出そうになるため息を堪え、重い腕を持ち上げた。
 押したボタンに応じて、コーラが取り出し口に跳ねた。舌打ちする。俺は炭酸は嫌いだ。
 嫌いなそれのボタンを押してしまった理由は、背後にいた。
 こちらを睨みつける小さい男の子がいた。彼が俺を蹴ったのだ。
 俺は笑顔を作って話しかける。
「"どうしたんだい? もう悪い奴らはいないんだよ"」
 額に傷があった。怪物が人質に取った子供だった。
 自分のうかつさに改めて胸の奥で舌打ちする。まだ帰っていない子供がいたとは考えなかった。先ほどの舌打ちは、間違いなく聞こえただろう。
 子供が何も言わないので、もう一度口を開いた。
「うるさい! この悪党め!」
 俺ではない。子供の甲高い声。出かけた言葉は吹き消されるように霧散した。
「あの怪物は悪くない! 無理やりやらされてたって……! ほんとはやりたくなかったって……!」
 子供は言葉尻を泣きそうに震わせると、拳を握った。
「あ」
 再び蹴られて、俺は声を漏らした。子供はいつの間にか沈んでいた太陽の方向に走り去っていった。
 その背中を見つめながらしかし、俺は間抜けに口を開けているしかなかった。

 自販機の口に手を入れる。とり出した缶を開けると空気が抜ける音がした。自分の身体からもした気がした。
 そんなこと、言われてもな。
 口をつけると、炭酸が苦く広がった。
 怪物の事情なんて知らないよ。
 心の中でつぶやいた。
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 21:53:43.01 ID:zRbR25Mco
ストーリーが決まっているから手をつけやすかったけど、反面どこまで変えるかが難しかったよ
でもなかなか勉強になるなこれ
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/16(水) 06:10:05.01 ID:57vHYtnko
>>780

 そこに容赦という概念は存在しなかった。雪山には厳然とした死の法則しかない。
 身を切るような寒風が、比喩でなく本当に身体の一部を切りとっていったかのようだ。
 指をはじめとする身体あらゆる個所の感覚がない。彼女は恐慌と平静の狭間でそれを認めた。
 辺りはまだ暗い。それでも大丈夫、夜明けが近い。自分を励ました。

 彼女はテントから出た。寒風に身体を持っていかれないように前傾姿勢。
 そのまま小高い丘まで歩いていくと、そこに伏せて薄明るくなってきた地平に双眼鏡を向けた。
 何も見えない。夜の底に白く大量に沈殿する雪以外には。
 吐いたため息が、凍って白色にかすんだ。
 まだ目標は現れない。もう待ち続けて数日経つ。
 ちらりとテントの方を振りかえった。もうあそこの食料はほぼ尽きた。
 今日が最後だった。今日中に来なければもう引き返さなければ命にかかわる。
 いや、もう寒さも身体にしみこみ深刻な損傷を招き始めている。昨日からうまく動かない左手はそろそろ壊死し始めているかもしれない。
 失望と絶望。ないまぜになった感情が、風と一緒に胸の内で渦巻いた。

 そこで三十分ねばった。朝日が二時の方向に顔を出し、朝の訪れを告げていた。
 それも歓迎すべきことだったが、本当に訪れてほしいものは現れない。
 引き時を悟った。
 立ちあがって、粉雪舞う中をテントに引き返した。

 テントの中で荷物をまとめる。
 それらにじっと視線を落とし、諦めきれないなにかを感じた。
 使命は死を凌駕するか。深遠な命題だったが、明らかに無理があった。
 荷物を担ぎあげ、外に出ようとした。その時だった。一際強い風が吹いた。
「!?」
 まず衝撃が襲った。間をおかずに目の前に星が瞬き、押しつぶされる。
 テントが崩れた。そう悟るのにしばしかかった。
(しまった……)
 動けない。弱った体には雪山用の重いテント材を押しのけるだけの力はなかった。
 死が目の前にあった。絶望に、最後の糸が切れた。
 途切れる意識。しかし、その中で誰かが自分を優しく抱き上げるのを感じた。

◆◇◆◇◆

「で。君はなんであんな雪山なんかにいたんだい?」
 警官がベッドの彼女に問うた。前もって別の警官に説明したのだが、確認のためだろう、再び聞かれた。彼女は前と同じ言葉を返した。
「告白です」
 警官の表情は変わらなかった。前もって聞いていたため驚かなかったのか、それともいまだ信じられないのか。
「本気ですよ?」
「伊達や酔狂であんなことする人間がいてたまるか」
 警官はにこりともせずに彼女に返した。

 病院のベッドに寝たまま、彼女は壊死まではしていなかったもののいまだうまく脳に従わない左手を見た。
「彼は自然が好きなんです。いつもどこかしら旅をしていて。なかなか会えないから、こうするしかなくて」
「これはシリアスなのかな、ギャグなのかな」
「わたしを運んでくれたのは彼なんですよね?」
 警官は表情を動かさずただうなずいた。
「彼は今どこに?」
「待つという選択肢はないのかね?」
 警官は質問には答えなかった。
「さっき言ったように、彼はなかなか家には帰らないんです。それに」
 窓を見ると、朝の空に雪が舞っていた。
「彼とは街ではなく、自然の中で出会ったんです。なら告白も自然の中でって」
「サハラだ」
 彼女は警官の方に顔を向けた。
「彼は、次はサハラ砂漠に行くと言っていたそうだ」
「ありがとうございます」
「無茶はするなよ。彼も望んじゃいない」
 警官が病室を出ていった。わたしは身体を起こして、左手を見た。握って、それから開いた。
 ぬくもりが、そこに残っていた。気がした。
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 06:11:10.86 ID:57vHYtnko
お題コンプまであと一個
これが終わったら俺、新しくSS書くんだ……
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 07:44:14.71 ID:57vHYtnko
そうだ、あと贅沢言ってごめんだけど、>>815-816>>825にも感想もらえるとうれしい
一行、もしくは面白いか否かの一言でもいいのでもらえると助かるな
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 11:49:43.59 ID:fpZ8W8aIO
>>815

これはやり取りが思わせぶりすぎて流れが分かりにくい気が。最後の母親あての
手紙が唐突すぎて、ぼくが何をしに北へ向かうのか分からなくなってるよ。

あと雰囲気が俺の書いたみーくんと死神によく似てるのはまあご愛嬌ということ
で。猫と死ぬことがお題だとこういうファンタジーになっちゃうよね。

>>825

やっぱり同じストーリーを書き直しても同じストーリーにしかならないかなあ。
当然だけど。プロットが同じで話をそれぞれが作るというよりも、これだとリ
ライトだよね。

この話を元に改編するなら
・俺=ヒーロー
・怪物に襲われた幼稚園児を助けた
・人質に取られた園児から反撃を食らった
・なんだかなあという気分

これだけを残して後は作者が自由に物語を作ることにしないといけないと思う。

これは作品じゃなくてお題の出し方の問題。
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 12:45:37.14 ID:JrqdOLlDO
>>830
>雰囲気が俺の書いたみーくんと死神に似てるのはまぁ御愛嬌ということで
自分大好きすぎんだろ。おごりすぎ

>>827
文章は特に問題はないと思うが(細かいところは個人の味だと思うため、読んでいて引っ掛からないかという程度にしか見ていません)、
何か落とすところがあるのかと思いながら読んでいたぶん、最後まで読んで肩透かしを食らった
彼に関する何かしらのオチが欲しいと思った
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 18:49:50.97 ID:57vHYtnko
>>830
感想ありがとう
分かりやすいストレートな童話を狙ったんだけど、思わせぶりになってしまったようで反省してる
全体が手紙だったのだけれど、これもちゃんと伝えられずに無念。また同じジャンルを書くことがあれば改善したい

それで、雰囲気がよく似ているとの事だけど
確かに同じですます調で、これも同じくしゃべるネコとの会話によってストーリーが進む。
でも>>769よりも『耳をすませば』を意識してた俺にはそれ以外は特に賛成できない
>>831の言うとおり、ちょっと自分が好きすぎるんじゃないかな

次にヒーローの件
確かに流れはほぼ同じ。目新しいものはないと言っても差し支えない。だからその面では失敗
でも、原文で多かった音語擬態語を減らして雰囲気を変えたり、主人公のやるせなさを増幅して描写してみたりした
まあ結果として伝わらなかった訳で、これも失敗だったけれど、どこを残してどこを変えるかは各人の感性に任せる、でいいと思うよ
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 18:52:36.06 ID:57vHYtnko

>>831
実は文章は多分現時点の俺の最高潮のもの。だからその方面には満足している(客観的に見たらまだまだだろうけれど)
でも、内容面は警官が言う「シリアスなのかな、ギャグなのかな」に表されている通り中途半端を一応自覚していた
本当は>>798とかのときと同じように書こうとしたのだけれど失敗
次回があれば成功させよう
感想ありがとうでした
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/17(木) 03:29:20.01 ID:lYSIuYDqo
>>781

 落とし物をした。貝殻を使って作ったキーホルダー。
 記憶の中の彼女が、また少し遠のいた。
「生きていれば、これぐらいは当たり前」
 強がる自分のつぶやきはいかにも空々しかった。

 一応探し回ったのが、落し物は結局見つからなかった。会社、いつも利用する駅、帰り道の上。どこにもない。
 いつもより少し余計に疲れた体を、沈む心と共に布団に押し込んだ。
 そして、夢を見た。真っ青な夢。空と海の交わるところ。
「海って、いつも違う顔をしてるよね」
 そうかな。と俺は返した。
「そうだよ」
 彼女の顔は見えない。堆積した時間の層が、俺の視界をそして記憶を、曖昧にしている。
 あんなに愛おしかった彼女の顔が思い出せない。
「今日は笑ってる」

 目を覚まして、しばらくぼーっとした。少し泣いた。
「疲れてるのかね?」
 いつもはやたら厳しい部長までが心配してくれた。
 そうかもしれません。俺は自嘲気味に微笑んで頷いた。
 今日もまた、道の上に視線を注ぎながら帰り道を歩いた。
 だが気付く。落とし物をしなくても、俺はいつも通り俯いて歩いていただろう。

「今日は怒ってる」
 夢の中の彼女は俺にいたずらっぽく笑った。
「いたずらしたのがばれちゃった」
 何をしたの? と、俺は訊いた。
「カニさんをね、ちょっとからかったの」
 俺は笑った。海も結構つまらないことで怒るんだなあと。

 落とし物はやはり見つからない。
 仕事が手につかない。書類の上を目が滑る。
 自然、記憶の中に意識は飛ぶ。
 青い青いあの夢の中へ。

「今日は泣いてる」
 それは俺にも分かった。こんな悲しい海を見たことはなかった。
 どうして? 俺は問うた。君も泣いてるの?
「お別れだから」
 え?
「わたしは行かなきゃいけないの」
 そんな。俺は呆然とした後、彼女に手を伸ばそうとした。ちょっと待ってよ。
「もう行かなきゃ」
 彼女は泣きながら微笑む。俺の手は届かない。
「これ、あげる」
 俺の手は、彼女の代わりに貝殻のキーホルダーをつかんだ。

 がくんと衝撃が走って、慌てて目を瞬かせて。
 帰りの電車内であることを悟った。俺はぶつかってしまった人に軽く謝罪して、ため息をついた。

 次の日。俺は海にいた。会社は休んだ。
 秋も終わりにさしかかり、どこかどんよりとした空。海もやはり暗い。あの夢とは何もかもが違った。
 少し波打ち際を歩いて、記憶を過去に伸ばした。

 昔、好きな娘がいた。海のそばの町だったので、よく一緒に海を見た。
 だいぶ親しい付き合いで、実は俺は彼女が好きだったのだけれど、彼女は都会に行ければならなくなって引っ越していったのだった。
 貝殻のキーホルダーはそのとき一緒に作った物だ。あの時もこっそり泣いていた。
 俺は数年後、未練たらしく都会に出た。

 意識を現在に戻すと、足元に貝殻があった。ただ、あれとは形も大きさも色も違った。
 拾ってみるとやはり軽い。
「……」
 そろそろ。と思った。そろそろ、進むべきなのかもしれない。
 あるものを落とせばあるものを拾う。世の道理だ。「これぐらいは、当たり前」とつぶやく。
 貝殻をポケットにしまった。
 その時、声がした。
「海が、笑ってる」
 俺は驚いて振り向いた。
 女が一人、海を見ている。長い黒髪を冷たくなってきた風になびかせて。
 彼女はゆっくりこちらを向くと、こちらに手を差し出した。
「落としたよ」
 その手の上に貝殻のキーホルダー。
 俺は何も言えないまま。それでも泣きそうに顔をゆがめながら、笑った。
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 03:30:33.31 ID:lYSIuYDqo
よし、コンプリート
長く占領気味で申し訳ありませんでした
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/11/17(木) 22:32:12.81 ID:eQ10JgzDO
定期age
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/18(金) 17:19:52.85 ID:KTsrxaEko
またわがまま言って申し訳ない
>>834に一言でもいいので感想もらえないだろうか
参考にしたいんだ
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東) [sage]:2011/11/18(金) 20:31:54.44 ID:XCrUdxeAO
久しぶりにちょろっと感想

>>834
ドラマチックよりは詩的な印象。
仮に「俺」を「男」に置き換えたら劇の本のように見えるかも。
いわゆる、探すのを止めたとき見つかることもよくある話…系のでふか。
男はともかく、彼女の顔(キャラ)が見えないのがやや物足りないような

>>827
短編として独自性が色濃く出ていてとても印象深かった。
ただ、同一設定のシリーズを読みたいとは思えない。
良くも悪くも断片でこその味わいと思う

>>798
好きです。
あとは『歯の浮くような台詞』をクリアしたら完璧だった
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/19(土) 01:38:35.62 ID:uksSMhyOo
>>838
感想ありがとう

>>834の彼女の描写、確かに少ない
いや少ないのもそうだけど、効果的な描写ができていないね
精進するよ

>>827は俺も続編は書けないだろうなと思う
悪い見方をすれば読む側を引き込むことができていないってことで、もうちょっと上達したい

>>798のお題、『歯の浮くような台詞』はどうにも思いつかなかった……
適切な台詞を言わせるための訓練が足りていないのだと思う
ちょっと勉強してくる
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/11/21(月) 02:05:10.36 ID:kw3xQSM+0
>>825
ヒーローのやるせなさを強調するのであれば、ヒーローが子ども達を見送る場面で
理想的なヒーローを描写するとよくなると思う。

例えば、解放された子ども達に暖かい言葉をかけてやったり、お礼を言う子どもの頭を撫でてやったりな



このヒーローらしい振る舞いが、続く主人公の本心と対比されてストーリーの印象が強くなる
また、主人公には何があったのか、と彼の背景にも関心を持ってもらえると思う
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/21(月) 12:05:14.89 ID:V7eLnsFno
>>840
なるほど、強調するにもやり方があるという訳ですね勉強になります
内容面には特に(相変わらず)自信がないのでそういう方法で補強できそうです、ありがとうございました
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/21(月) 13:15:58.16 ID:GDefpBL9o
この場合は話を変えたらダメだろ
主旨から外れてしまう
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/21(月) 15:11:55.20 ID:Pk8LvX0AO
>>842
>>378にも助けた園児を見送る場面はあるし、そこの描写に手を加えるのは許容範囲だと思うけど
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/21(月) 15:23:28.16 ID:GDefpBL9o
そんな添削みたいなやり方でやって楽しいの?
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/22(火) 11:15:19.47 ID:JHp5y6/AO
添削し合うのもこのスレの主旨の一つだし、元のストーリーを変えず書き直すのなら、自然と添削することになると思うよ

そもそもこのお題は、それぞれがとんな風に添削するのか比較することが狙いだと考えていたのだけど

846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/11/23(水) 20:05:26.26 ID:bqn2xhjDO
age
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/11/24(木) 07:42:13.70 ID:6nNfx28Qo
時間を持て余しているんだけれど、自分が前書いた奴を書き直して投下ってアリかな?
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/24(木) 09:33:23.45 ID:7UdCbwSAO
いいんじゃね?
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/24(木) 15:46:49.65 ID:9XPI9TxDO
前はそれは止めた方がいいって流れだった
でも過疎ってるからなぁ…
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/25(金) 08:00:50.84 ID:QM5b2+47o
なるほど
じゃあ、完成してもなお新たなお題が出てなかったら投下するってのでどうだろう
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/25(金) 16:17:44.07 ID:/WRgyKDAO
書き直しを投下した例もあるし、投下できるなら投下してもいいと思う

……俺も書き直してみようかな
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/25(金) 16:40:23.55 ID:QM5b2+47o
完成もしたし、じゃあお言葉に甘えて投下させていただきます
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/25(金) 16:43:38.24 ID:QM5b2+47o
>>123

 通信機からの声は、相変わらず感情を読み取ることすら困難なほど平坦だった。
「帰還のための合流は三分後。急げ。地点は――」
 指示を頭に叩き込み、了解の意を告げる。それから彼は通信機を懐にしまって地面を蹴った。

 路地裏は暗闇に沈んでいた。距離感も疾走感も全て黒く塗りつぶされておぼろげだ。
 ただありもしない酸素の味をかみしめて、何よりも速く前進する。
 いや、それは幻想で、何よりも速くは不可能ということはよく分かっていた。
 人間の走行速度は秒速約7メートル、分速にして420メートル、時速にして25.2キロ。
 それだって早い方で、さらに言えば走破すべき距離に依存する。人間は永遠に走ることはできない。
 とはいえ間に合えばそれでいい。間に合わなければ――それもいい。どうせ自分の代わりはいくらでもいる。自嘲気味に彼は認めた。

 目標地点まであと100メートルといったところだろうか。彼は暗闇に影が立ちあがるのを視認した。
 だが視認してなお立ち止まらなかった。
 駆け込んだ勢いのまま影の足元に飛び込み、逆立ちの要領で影の首に蹴りを放つ。そこに躊躇はない。
 ここには彼と、そして敵しかいない。そういう意味で特別な場所だ。

 不意をついた必殺の――実際殺すつもりだった――蹴り。足裏に硬い感触。
 そう、硬質の、まるで鉄のような――
(……鉄?)
 失敗を悟った時には頭に衝撃を受けて転がっていた。
 間を空けずに飛んでくる蹴りを身体のあちこちに受け、ようやく起き上がることに成功したときには体中が悲鳴を上げている。
 舌打ちして、彼はちらりと左手首を見た。蛍光を放つ時針は残り時間が少ないことを告げていた。

 影が静かに踏み込んでくる。それに対して彼は鋭く囁いた。
「あんたも俺もツいてないな」
 懐に手を入れ、掴んだそれを投げつける。
 それが命中したところで影は止まらない。だがその勢いはわずかに殺がれたようだった。
 投げつけたのは通信機。どうせまた新たに支給される。彼と同じだ。代わりはいくらでも。

 影の拳をかいくぐり、その左胸にそっと触れた。
「――凍れ」
 それで終わりだった。すれ違うように彼は駆け抜け、影は崩れ落ちた。
 彼は駆け続ける。影はもう動かない。心臓が宝石のごとく結晶化してしまっては動けるはずがない。
 駆けながら彼は思う。いっそ自分のこの心臓も凍らせてしまおうかと。
 夢想だけで我慢した。夜の闇は、いつの間にかまた少し濃くなっていた。
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/25(金) 17:05:59.95 ID:61z4NVQeo
>>853
文章が全てにおいてくどい
わかりにくい部分はあったけど、前の方が良かった
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/25(金) 18:03:30.99 ID:QM5b2+47o
>>854
指摘ありがとう!
確かにくどさに注目すると(もちろん他にも問題は満載だろうけれど)、ギトギトしてるのが特に浮き彫りになりました
描写が上手くなかった&描写が必要なポイントの取捨選択ができていなかった(いちいち流れを阻害している)、
あとは、主人公の心情描写?を混ぜたのでウェット気味になったものと推測します

今後は完成品をもっと削ってみようと思います
他にもまだまだ改善点はあると思うので、もしよかったら教えもらえるとうれしいです
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/28(月) 15:31:59.47 ID:EuL2W7P/o
 >>767

 俺の指定席に黒猫が一匹、先に座っていたのはある暑い夏の日の夜のことだった。
 「失礼するよ」
 軽く挨拶してからいつものように柵を越え、指定席である陸橋下の線路の上に寝そべった。レールがひんやりとして心地いい。
 終電はとっくに終わり、始発までこの線路上には俺しかいない。いや、今日は先客がいたから一人と一匹だろうか。
 隣を見るとそいつは身動きひとつせず、自分の身体と同じ色の空を見上げている。
 お隣さんがこんな図太い奴ならば気にする必要もないだろう。俺は上体を起こすとコンビニで買ったしょっぱいだけの焼き鳥にかぶりつき、缶ビールで喉に流し込んだ。
 軽くゲップをして今座っている線路の先を見る。子供の頃のことが胸をかすめた。
 こうやって線路の先を見るのが好きだった。一日中駅の椅子に座り、どこまでも続く線路の更にその先にあるものを妄想していた。
 この先には見たこともない建物があって、そこには色んな人が住んでいるんだ。もしかしたら本にあった魔法の世界につながっているのかもしれない。そう思うだけでワクワクが止まらなかった。
 でも今の俺は知っている。
 この線路は40qほどしか続いていなくて、そこにはどこにでもあるビルが立ち並び、同じようなスーツを着て眉間にシワを寄せて働くつまらない人間しかいないことを。
 そして俺もその一員だということを。
 本当につまらない人間になってしまったんだと思う。
 生きているのがつまらない。今日を食べるために働くだけの毎日だ。
 だから死んでしまおうと思った。死のうと思い、こうやって夜中の線路に寝そべり朝を待ったのはちょうど一年前のこと。
 結果は失敗だった。
 朝になると闇で覆われていたレールの無機質な冷たさが顕になり、それが死の恐怖そのものとなって俺を線路の外へ追いやってしまうのだ。
 それからも何度となく試みても死の恐怖に勝てることはなかった。
 「俺、なにしてんだろうな」
 これはいつになったら俺を遠いところをへ連れていってくれるのだろう。腰掛けていた線路のレールに触れながらそんなことを思っていると柔らかい物が手に触れた。
 黒猫の尻尾だった。柔らかい毛を油と埃が覆っているような感触がする。野良猫なのだろう。
 こいつは俺に似ている。そう思った。いや俺がこいつに似ているのかもしれない。
 生ゴミを漁るこの黒猫の姿を想像すると、俺の会社での姿とかぶって見えた。
 「おい、お前も生きているのがつまらないんだろ?」
 黒猫は大きく尻尾を振った。俺にはそれが頷いているように見えた。
 「そうか、じゃあ一緒に死のうか」
 誰かと一緒ならば。今日こそ死ねるかもしれない。
 俺は優しく黒猫を抱きしめようと手を伸ばした。
 優しく、優しく。
 右手にガリッという嫌な音と一緒に痛みが走ったのはそのときだった。
 引っ掻かれたと分かるのに少し時間がかかり、そのせいで俺はまだ手を黒猫に向けたままだった。
 俺の手の先にいる黒猫は全身の毛を逆立たせ、「フーッ!」と俺を威嚇している。
 「冗談じゃない」「一人で勝手に死ね」「俺を巻き込むな」
 猫の言葉は分からないが、そんな類のことを言っているのは分かる。どう見ても一緒に死んでくれる雰囲気ではなかった。
 黒猫はそのままジリジリと後退りすると、バッと振り返りすごいスピードで夜の闇に溶けていってしまった。
 俺は黒猫が消えた先をしばらく見つめていた。すると右手に痛み以外になにかが流れている感覚に気づいた。
 右手を眼前に持ってくると鉄の臭いがした。それは明け方の線路のレールの匂いにそっくりだった。
 「とりあえず止血しなきゃな」
 俺は線路から腰を上げた。
 辺りはまだ真っ暗。朝が来る前に帰るのは初めてだな、と気づいたのは家に帰ってからだった。
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/28(月) 23:02:36.14 ID:h0pD7fkKo
>>856
書くこと以上に感想批評は苦手なので、話半分に聞いてください

まず文章力や表現力に目を見張りました
かなり書き慣れてるように見えますがどうでしょう
特に
>朝になると闇で覆われていたレールの無機質な冷たさが顕になり、それが死の恐怖そのものとなって俺を線路の外へ追いやってしまうのだ。
の一文が印象的で、上手い表現だなと思わされました

反面、物語の内容面では、ちょっと分かりにくいところが(個人的には)ありました
「人生がつまらない」から「死んでしまおう」の思考の流れに引っかかりを覚えたというか
そこをもうちょっと丁寧に描くといいんじゃないかなと思います

ヘタクソですみません、以上です。失礼しました
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/28(月) 23:03:43.01 ID:h0pD7fkKo
次は投下
まだ新しいお題が出ていないので、また書き直しをしてみました
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sagesaga]:2011/11/28(月) 23:06:59.60 ID:h0pD7fkKo
>>384

 薄暗闇に言葉を流し込む。
「俺ぁアイツ以外の誰が死のうとかまわないと思ってる」
 いかにも少年といった声の高さ。
「誰も彼も死んじまえ。テメエも一緒だ消えちまえ」
 だから俺は自分のそれが嫌いだ。締めくくる。
「アイツに死んでほしいなら、同じくらい死ねと望まれるって知った方がいい」

 しばし待った。吟味の間をはさみ、対面の男がゆっくりと口を開いた。
「……そうか」
 大した内容ではなかった。だが俺はそれに満足した。

 月光がストリートを照らす。穴ぼこだらけのそれらは本来の役目を果たしていない。
 まるで俺らの正義のようだ。まったくもって意味がない。
「準備はいいか? 俺は出来てる」
 確認にだって意味はない。互いに全てを捨ててきた。なら覚悟くらいしてなきゃ阿呆だ。
 俺らは阿呆か? その点についてはノーだ。他の点では知るべくもない。
 肩からゆっくり力を抜いた。あとは言葉は必要なかった。腰の重みに意識を移す。

 対面の男はゆっくりと深呼吸した。ように見えた。肩が上下したわけでもないし呼吸音が聞こえたわけでもない。
 それでもその気配はあった。さらに見間違いでなければ涙も流した。
 だが幻想だ。互いに情は捨てている。だから――

 それは唐突に訪れる。銃声は一発。どれだけもったいつけようとただそれだけ。
 俺はさっさと銃をしまって歩き始めた。相手は二歩めで崩れ落ちた。
「俺に勝てるわきゃねえだろが。知ってんだろおい」
 近寄って告げる。月明かりに照らされて広がる黒い染みがあった。
 そいつは火傷痕のある手で拳銃を握り締め、弱弱しく震えた。
 俺にもおそろいの火傷痕。こんなじゃじゃ馬をあつかっていれば誰にでも押される烙印だ。
 それでも意味を見出しちまうのは、きっと無粋なことだろう。

「……ぁ」
 肩を撃ち抜かれたそいつは、顔だけを上げて何かを吐きだそうとした。罵声か命乞いか、それとも別の何かか。
 だが言葉は出てこない。まだ熱い拳銃を口に差し込まれてはしゃべれない。
「兄貴、俺ぁ行くよ。もう追ってくるな。次は殺す」
 銃身をくわえたまま何かを言いかけた兄の頭に、銃床を叩きつけて意識を奪う。
 引き金を引いても良かったがそうした。多分、気まぐれだ。そうにちがいない。

 立ちあがって振り返って。俺はゆっくり歩き出した。アイツが今も待っている。
 その時ふと気付いた。頬を伝う生ぬるい感触。いつの間にやらながれていたそれ。
 俺は舌打ちしつつそれをぬぐった。だがどうしても拭きとれない。ああ涙が止まらねえ。
 アイツを守ると誓ったその日から、俺は情とは縁切った。だから――こんなの認めねえ。それでもちっとも止まらねえ。
 どうにもやるせない気持ちで、俺は身体を引きずった。その先に光はないと知りつつも。
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sagesaga]:2011/11/30(水) 03:36:13.11 ID:l1oGg55Ko
>>681書き直し

 抜けるような青空は人の心すら吸い上げる。からかうようにふんわりと。
 やわい上昇気流の風に乗せ、空の果てをどこまでも。
 ゆっくりゆっくり伸びをして、男子生徒はあくびに目を細めた。

 風が撫でる校舎の屋上のその片隅。フェンスすらも乗り越えて。
 脚をぶらぶら宙に泳がせ、広がる町並み見下ろしながら。
 小鳥のさえずり小耳にはさんで、彼は少し微笑んだ。

「……」

 沈黙だけがそこにある。世界はだんまり素知らぬ顔で、ぐるりを静かに囲んでる。
 やはり空ははるかに遠く、飛んでいきたいそう思う。
 声がかかったのはそんなとき。

「そんなところにいたら、危ないぞ」

 優しい声に振り向くと、少女がそこに立っていた。
 涼風に髪をなびかせて、彼女はそっと微笑んだ。

「やあ」
「うん」

 彼女はフェンスに近寄ると、彼と同じく空見上げ、ほんの少し目を細めた。
 やわい上昇気流の風が、二人をゆっくり押し上げる。
 しばしの間をおいてから。

「そっちに行っても大丈夫?」

 彼の頷き見届けて、彼女はフェンスに脚かけた。

「……見るなよ?」

 何のことかとすっとぼけ、彼は遠くに目をやった。
 手の届かないその彼方。
 やっぱり飛べたらいいのに、そう思う。
 存外軽い音を立て、彼女が隣に着地した。

「ここ、いいね」

 言って隣に腰掛ける。彼は無言で首肯して。

「あ」

 静かに彼女の手を取った。
 風が涼しく吹き抜けた。
861 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 23:04:05.59 ID:i3wGIdBKo
久しぶりにお題行ってみましょうか

・昔話
・涙
・「ここまで来たら・・・・」
862 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 18:21:29.36 ID:uzXRFM8AO
>>856
死にたいと思っていても実行できない主人公の臆病さと、彼の気力の無さがよく表現されていると思います
文章が上手いので、特に指摘するところがありません
男がこの後どう行動するのか、とても興味がわきました

>>859
前回のアドバイスが生かされて、読みやすい文章になっています

>>引き金を引いても良かったがそうした
『そうした』が兄の頭を殴ったことを指していることは分かりますが、段落が変わっているので少し不自然だと思いました
『引き金を引いても良かったが、そうはしなかった』のように、『引き金を引くこと』を指示する方が自然かと
>>860
前作よりも情景描写が細かくなっているので、前作よりも読みやすくなっています
863 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sagesaga]:2011/12/16(金) 23:37:02.45 ID:co86iikmo
>>861

 駅で昔の友人に出くわした。
 幾年を経た後のどことない隔絶を感じ、それでも昔話には花が咲いた。
 最近のこと、昔のこと。小一時間話しこんで笑いあって。だが言い知れない寂しさを覚えて、彼と別れた後に私はこっそり涙を流した。

 昔はその友人を含む男どもで、一緒になって馬鹿をやっていた。大学生で金はなかったが時間だけはたっぷりあった。
 徒歩で県をいくつもまたぐ旅をやってみたり、荷物を持たずに物価の安い国に飛んでみたり。
 死にかけた事もなくはない。東南アジアの小国で物騒な地区に迷い込んだときは実際危なかった。
 だが、それでも楽しかった。ひねった表現などなくともよい。ただただ楽しかった。
 あの頃私たちには見えない翼が生えていた。

 大学を出て、それぞれに社会にもぐりこんで。いつしか私の翼は動かなくなった。
 出社と退社の無限サイクル。頭の上げ下げ繰り返し。すり減る何かと鬱積する何か。
 社会のよどんだ空気が、喉を静かに下りてくる。私は静かに窒息した。

 気付くと会社の屋上だった。
 見下ろすと、足元のはるか下方に色とりどりの車の流れが見えた。
 肩越しに振りかえると落下防止のフェンスの網目。いつの間に乗り越えたのか、覚えていない。
 少しの沈黙と逡巡をはさんで。
「ここまで来たら……」
 とだけつぶやいた。

 私たちには見えない翼が生えていた。
 今は飛べるかそれとも落ちるか。
 私には分からない。
 ほんの一歩。踏み出した。
864 :初心にかえる [saga]:2011/12/18(日) 19:20:54.32 ID:zFbleAYfo
>>105

 放課後の校舎に最後のチャイムが響く。どんよりとした曇天の下、どこかさびしげに。
 冬が近く、空気は冷えていた。凍える程ではないけれど肌寒さは覚えるくらいには。
 その女子生徒は一人、昇降口に立って鞄を探った。あいにく折り畳み傘は入っていなかった。
 空を見上げると、その鼻の先を雨粒が叩いた。

「どうしよう」

 つぶやくが、雨脚は強まるばかり。どうしようもなく立ちつくす。
 うす暗くなった町並みは陰気に俯いていた。
 雨にくすむ家々、黒くにじむ電信柱。気温がまた下がった気がした。
 遠く、校門の外に猫が横切った。濡れた身体を震わせながらゆっくりと。
 彼女はそれらを透明な瞳に一つ一つおさめると、鞄を頭上に持ち上げ駆けだした。
 雨の中に制服の背中が消えた。
865 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/19(月) 21:06:54.66 ID:Y4GR3SKmo
>>109

「好きです」
 え。間抜けにも俺は聞き返していた。真夏の早朝、校舎裏。後ろを振りかえった格好で。
 告白。その言葉に思い至ったのは数秒後。それでも俺は訳が分からずに声の主を見つめた。
 しばらく間を開けて、彼女はもう一度言った。
「好きです……!」
 訳が分からないのは相変わらずだったが、きっぱりと言い切るその潔さはとても眩しいと。そう思った。

 時間は少し前にさかのぼる。
 俺たち陸上部の面々は、朝のトレーニングを終えてグラウンドを歩いていた。
「あっちぃな」
 一人がそう言って、数人の同意の声が上がる。
 俺も汗でぐっしょりと濡れたトレーニングウェアの首元を開いて空気を送り込んでいた。
「さっさといって飲みもん買おうぜ!」
 また誰かから声が上がり、俺ともう一人をおいて全員が駆けていく。
「お前も行かなくていいの?」
 俺は後ろを歩く後輩に声をかけた。彼女は笑って「平気です」と答えた。

 うちの学校はグラウンドから校舎までが長い。歩きながら後輩としばらく話した。
 それぞれの近況、効果的なトレーニングについて、それから――
「もうそろそろ大会だな。調子はどう?」
「上々です」
 優秀な彼女だ。今年もまた良い結果を残すだろう。
「先輩は、どうです?」
「……ぼちぼちかな」
 俺は前を向いたまま、自分の脚に意識を移した。かつてはインハイのトラックを駆けていた脚。
 何か重いものが胸に生まれた。たぶん、今年も駄目だろう。
「今年で最後か……」
 つぶやくと、後輩の視線を背中に感じた。
 校舎裏に差し掛かる。その間、会話は一時途切れていた。
「好きです」
 その沈黙を貫いて、唐突に後輩の声が背中を叩いた。

 足を止めて、もう一度「好きです」と繰り返した彼女は、泣きそうな顔でこちらを見つめた。
「大丈夫ですよ、先輩。今度こそインハイに行けますから」
 その瞳が揺れている。彼女が言いたいことをようやく悟って、俺は視線を自分の脚に下ろした。
 去年、事故にあって傷んだ脚。もうろくに走れない過去の栄光の残滓。
「いえ、インハイに行けなくても。わたし、走ってる先輩が好きなんです。だから」
 そう言って、彼女はうつむいた。

 俺はしばらく黙って考えていた。
 もう風になれないと知って泣いた夜のこと、今度の大会をもって陸上競技を自分の人生から捨て去ろうと決めた朝のこと。
 考えて。俺は手を伸ばした。
「あ……」
 声を漏らす後輩の頭をくしゃくしゃと撫でて、俺は無理やり笑顔を作った。
「行こう」
 後輩の目から涙があふれた。
「アクエリアスおごってやるよ」
 風が吹いた。二人の間を駆け抜けた。
866 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sagesaga]:2011/12/21(水) 16:19:56.69 ID:A3WND1rLo
>>110

 さわやかに透明な朝の日差しが王都の大通りに降り注いでいた。今日も良い一日であることを知らせる春の陽光。
 日に照らされた道脇に立つ大時計が十時を指した。その大時計の前をせわしく駆け抜ける影がある。
「やぁっべえ……」
 上等なシャツを風になびかせ石畳の上を全速力で走るその少年は、肩越しに大時計を一瞥し焦った様子で声を漏らした。
 指定の時間が近い、目的地は遠い。まばらな人の間を縫うようにすり抜ける。
 十代半ばにふさわしく軽快な疾走。左手中指にはめた指輪の宝石が光った。
 息を弾ませ角を曲がる。しかしその瞬間、
「おーほほほほほ!」
 大通りに甲高い笑い声が響き渡った。

 道の先に立つドレスの少女を見てとって、少年は足裏で砂利をこすりながら立ち止まった。
 舌打ちをかまし、睨みつける。
「んだよ、またお前か。少しは懲りろよな」
 鋭い視線に刺され笑い声を止めた少女は、しかし全くそれを気にしていない様子だった。道行く人々の視線を集めてなおひるむ様子もない。
「懲りないのはあなたの方ですわ。いい加減に諦めてわたくしのものにおなりなさい!」
「親同士が決めた婚約なんぞ知ったことか!」
「あなたも分からず屋ね。これは逃れられない運命なのよ」
「それこそ知ったことかよ!」
 名家の一人娘とのやりとりはおおむねいつも通りだった。だが、今日の少年にはそれすらも煩わしい。
 肩越しに大時計を振りかえる。時間はとうに過ぎていた。これ以上遅れれば間違いなく殺される。冷や汗が背中を伝った。
「いいから通してもらうぞ!」
 少女に向きなおり、少年は地を蹴った。選んだのは強行突破。
「彼を取り押さえなさい!」
 対して少女は手を振り上げた。その瞬間、どこからともなく黒服の男たちが大挙して押し寄せてきた。
「今日こそはわたくしとのデートに付き合ってもらいますからね!」

 掴みかかってくる黒服の内、一人目の手をかいくぐり二人目をかわす。三人目の手は右手でそらし、すれ違いざまに腹に膝を打ちこんでやった。
「何やってるのよあんたたち!」
 倒れる黒服に少女が怒鳴る。四人目を蹴り飛ばした少年は、少女の方に駆けだした。
「来なさい!」
 少女が手をこちらにさしのばす。その先に光の粒が集まり輝き始めた。周りの黒服も同じように光球を生みだす。
 気合の声は全員同時だった。少年に向かっていくつもの光が殺到した。

 まともにくらえば気絶は免れない攻撃を目の間に。しかし少年はうろたえることはなかった。走る速度は緩まない。
 そのままに少年は左手を空にかざす。その中指、指輪の宝石が光を放った。
「我が呼び声に応えよ!」
 少年の咆哮。落雷を疑うほどの轟音が鳴り響く。周りの無関係の人々が逃げていく。悲鳴が響き渡るその中で。少年の左手に刃が現れた。
 気合とともに振り下ろされるそれ。空間を幾千に引き裂き、光球を吹き消し、それでも衝撃はおさまらない。
「きゃああああ!?」
 吹き飛ばされて少女が倒れる。その脇を少年が駆け抜けた。
「悪く思うなよ!」
 少年は叫ぶ。
「こっちだって命がかかってんだ!」
 待ち合わせ場所で待っているであろう鬼の化身のごとき交際相手、幼馴染の顔を思い浮かべて身を震わせて。少年はさらに走る速度を上げた。
867 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/21(水) 16:22:57.78 ID:A3WND1rLo
俺からもお題

「上野発の夜行列車 降りた時から 青森駅は 雪の中
 北へ帰る人の群れは 誰も無口で
 海鳴りだけを聞いている」

この文章から連想して掌編を書くこと
連想なので、上野や青森駅などの地名は無視してよい
868 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/21(水) 17:14:57.46 ID:FYhh7ZDAO
>>867
 「どうなってんだよ、これ……」

終点の青森駅で夜行列車を降りた瞬間、俺はとんでもない光景を目にした。

駅全体が雪に埋もれ、蟻の抜け出る隙間すらないのだ。

ふと振り返ると、ついさっき夜行列車が走っていたはずの線路にも、途中から真っ白な絶壁がそびえ立っていた。

他の乗客達も、ようやく状況が把握できたようだ。

恐怖にかられた乗客の一人が白い壁を掘り始めたが、突然崩れた雪に埋もれ姿が見えなくなる。

あまりに絶望的な状況に誰一人口を開く者がいない。

皆、気がついているのだ。

白い壁が、次第に自分たちを中心とした円の半径を狭めていることに。

迫る雪の立てる海鳴りのような音を聞きながら、俺は何も出来ずただ佇むしかできなかった。
869 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sagasage]:2011/12/21(水) 17:24:56.75 ID:A3WND1rLo
>>868
そう来たかwwwなかなかのセンスwww

いや、それを置いても瞬発力があると思うし、それに見合った文体をきちんと選べてると思います
面白かった
870 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/21(水) 17:45:18.10 ID:FYhh7ZDAO
>>869
ありがとう。
うまく予想を裏切れたようで良かった。

書いたらお題出すんだっけ?


お題
・密室
・男と女
・激しい物音


以上から連想される掌編をお願いします。
871 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 18:33:53.54 ID:VSb2h+1uo
>>870
本のページをめくる音と住人の息遣いだけがその部屋には存在している。

男の読む本はSF小説のようだ。
そこには男の他には一人の少女がいる。

少女が読むのは絵本である。

ゆったりとした空気がその部屋には流れる。
高い窓からは日差しが差し込み、重く閉ざされたドアも外界の雑音を遮ってくれると思えば重苦しくは感じない。

そんな静かな空間の中、少女が突然大声を上げた。

その声に驚いた男はひっくり返りその上に本の山が崩れ、静寂が一瞬で崩れた。

「……だいじょうぶ?」

「……ん、いつも急に声出すなと言ってるだろ」

「ごめんね?でもくまさんが撃たれそうになって――」

一生懸命読んだ本の内容を身振り手振りで説明する。

本が崩れてからの部屋は打って変わって騒がしい。

変わらぬ日常を楽しんでいた。
872 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 18:42:37.84 ID:A3WND1rLo
>>870
別に書いたらお題を出す、みたいな決まりはないよ
でもお題は把握、どうもです

>>871
穏やかな空気を良く表現できていると思う
でも一応役に立つかどうかわからないアドバイスをするとすれば、静寂から騒がしく変化するんだから、その対比を強調するともしかしたらいいかもしれない
簡単な方法としては静寂を強く印象付けるために、普段は聞こえない小さなもの音の描写や息遣いなんかを心もち詳細に書いて、それを唐突に破る、とか
873 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 18:51:02.32 ID:VSb2h+1uo
>>872
ありがとう

874 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 18:53:23.13 ID:FYhh7ZDAO
>>871
素敵です、特に前半の表現は情景が目に浮かぶようで。

何となく大槍葦人の描く淡い感じの一場面が思い浮かんだ。

エロネタか殺人事件ネタが来ると思ってたけど、綺麗にかわされた……

875 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sagesaga]:2011/12/21(水) 20:55:41.62 ID:A3WND1rLo
>>870

 この世界には既に希望はなかった。奇跡の類も、それに付随するであろうあたたかな幸福も。
 すでに十数年前に遠ざかった大戦は、しかし確実に地球を蝕んでいた。
 そして、当然ながらそこに生きる人間に残された時間も長くはなかった。
 だから彼女らはそんな世界に対して回答を出すことにしたのだ。
 決別。この世界との。それが答え。

「早く乗り込みなさい!」
 彼女は後ろをうかがいながら、十三歳になる息子の背中を押した。
 筒を立てたような広い部屋、"脱出装置"の前。無骨なそれは静かに彼女らを見下ろしていた。
 息子は振りかえって言う。
「母さんも! 早く!」
 それは出来ない。彼らが追ってきている。荒廃した世界でねじくれた信仰を育て上げ、全てを無に帰そうとする愚者たちが。
「わたしが時間を稼ぐわ! あなたは早くこれを起動させるの!」
「でも!」
「急ぎなさい!」
 息子は何かを言いたげにした後、コンソールに向かっていくつかコードを打ちこんだ。
 起動に時間はかかるまい。だが、それでも足りない。
 彼女は拳銃のスライドを引いた。通路から足音がする。間もなく来る。
「出来たよ母さん!」
「行きなさい!」
 別れを告げる間もない。彼女は通路に向かって拳銃を構えた。

 ――だが突如その背中が引っ張られた。


◆◇◆◇◆


 認めない。彼女は閉じた"脱出装置"――宇宙船の扉の前で膝をついた。
 狭い部屋が彼女を囲んでいる。腹に響く轟音も。ここは"脱出装置"の中。本来彼女がいるはずのない場所だった。
 なぜ、などと問うことなくとも分かっていた。息子が彼女を放り込んだのだ。時間を稼ぐために自分は外に残って。
 認めない。彼女はにじむ視界の中でつぶやいた。
 揺れるそこかしこ。世界脱出の過程。
「なんでッ!」
 思い切り扉を叩いた。
『さよなら、母さん』
 最後に聞こえた囁き。愛を告げる声。何よりも大切な者の最期。
 身体を震わせ嗚咽を漏らすことしかできない。
 しばらく轟音は船体を揺らし続け、やがて静かになった。
 彼女のすすり泣く声だけが、いつまでもいつまでも船内に聞こえていた。
876 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 21:11:03.06 ID:VSb2h+1uo
>>875
これ好き
こういう世界観の話書きたいけど俺には無理だから憧れる
877 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 21:31:03.39 ID:vKW/5w2IO
>>867
目が覚めると一面真っ白の世界にいた。
自分が誰なのか、ここにいる理由も、ここが何処なのかさえ男は知らない。
覚えていないのではない、知らないのだ。

調和を崩すのに罪悪感と快感を半々に感じながら足跡を濃く残すように一歩一歩前へと進む。

何故そうしようと思ったかはわからない。
だが、歩かなきゃいけないと思った。

しばらく進むと灰色の薄汚い布に包まる老人を見つけた。
老人に問う、ここは何処なのか。

「ここは音を聴く為の場所。無闇に口を開いてはいけない」

再度問う、音などどこにある。

「聴こうとすればいい」

耳を澄ましてみた。
真っ白の老人と自分だけの世界に音が生まれた。

心地よい波のような音だ。

老人の横に腰かけ音に心を溶かす。

目を覚ますと、夜行列車は予定通り故郷についた。
アナウンスが聞こえる。
荷物をまとめ、ホームに降り立つと雪が舞っていた。

男は先ほどの世界とこちらの世界、どちらが夢なのかと自身に問う。

人と建物とでごちゃごちゃとした風景は男の心を締め付ける。

“幻の老人”を男は羨ましく思った。

男は音を聞くために口を閉ざし、耳に神経を向ける。

心の言葉をなくしてしまった群衆の声は聞こえず、人々は無口だ。

――ここは音と自分だけの世界。

どこからか老人の声が聞こえた。

調和のない世界になんの感慨もなく足跡を残す。
その足跡は他者に踏み消されすぐ消える。

帰る場所はあそこなのだろう。
人々は各々そこを目指す。
878 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 21:56:32.25 ID:A3WND1rLo
>>876
最近書いても書いても感想日照りだったからありがたい……

>>877
主人公の台詞を地の文に含めることで雪の中の静けさを表現できており、適切な選択だと思います
音をテーマ?に書き、透明感もあって個人的に好感です

気になったところとしては、
>調和を崩すのに罪悪感と快感を半々に感じながら
記憶がないのに気楽過ぎるかな、と。ただ、これは夢の中(もしくはみたいなもの)なのであまり気にしなくてもいいかもしれません

もうひとつは、目が覚める前と後であまり区切りがしっかりしていないように思えること
これは改行のタイミングを整えるのと目が覚めたところの描写を増やすとよいかと

以上です
879 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 00:11:35.05 ID:y8HQDPbDO
>>870


 部屋の隣から、何かを落としたかのような激しい物音がした。また何かドジでも踏んだのだろうと、眉を少し潜めただけで気にせず本に目を通す。地球というシンプルな表題を付けられたこの本は、写真を中心に形成されている。まだ見ぬ郷土に夢を馳せるのが、ここ最近の日課であった。
 (トウキョウ……ニューヨーク、コンビニエンストア)
 写真を指で触れながら、知らず知らずに溜め息を吐いていることに気が付く。本当に地球をこの目で見ることは出来るのか。こうして夢を馳せることが無駄になって終わってしまうのではないか。死んだ母は言った。「あなたの代で地球には着くはずだから」。しかしその母も――私にとっての――祖母に聞いたものであるという。私は瞼を閉じると、改めて深い溜め息を吐いた。
 そのとき、勢いよく扉が開いた。
 「オイ!」
 「え、何よどうしたの?」
 ズカズカと大股で歩いてくる男に目を丸くする。男は困惑したような、笑みを無理矢理抑えつけているような表情で、女の持っている本に手を伸ばす。何をする気かと呆気に取られていると、あっというまに本をひったくられた。男は何処かのページを探すように捲り始めた。が、すぐに困ったように眉尻を下げて
 「……なぁ。地球の写真ってどこにあるんだ?」
 「は? 何よいきなり本を奪っておいて……貸して」
 「悪い」
 内表紙を開く。
 「これよ、これ」
 で、それがどうしたの――と聞こうと口を開く。しかしそれが言葉になることはなかった。男は女の手を取ると、そのまま駆け出した。
 「ちょっと!?」
 女は転けそうになりつつも、男に呼びかけるも男の返事はない。開いたままの扉を潜り抜け、広間に入る。ドクリ、と心臓が高まった。床には片付け途中だったのであろう本が散らばっていて――。男は女を振り返った。心臓が早鐘のように鳴り響く。
 「――窓を見てみろよ」
 顔をあげると、そこには――。
 

880 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/22(木) 00:27:56.77 ID:y8HQDPbDO
ここのageのタイミングがワカラン
一応age
881 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 02:08:12.13 ID:58dal/CVo
>>867

 終点。上野から乗ってきた夜行列車を、人々と共に降りる。
 帰ってきた。青森。俺の生まれ故郷。

「………………」

 当然のように雪が降っていた。それは深々と宙を泳ぎ、音も無く地に積もっていく。
 その様に感化されたわけではないだろうが、人混みの中にあっても聞こえるのは足音くらいのものだ。
 誰もが自然と静寂を作り、それが雪と共に降り積もっていく。

「…………」

 人々は病んでいるわけでも、落ち込んでいるわけでもない。
 ただ、ここから始まるものは無い。彼らは帰っているだけで、故に余計な言葉は要らない。
 ここは終着駅だ。生き生きと活動するものは、この場には無い。

 そして、その中でも俺は異質だ。
 この地に俺の帰る場所は、もう無いのだから。

「……」

 けれど、ここは終着点だ。終わる場所。雪が降り積もり、静かに溶ける所。
 だからここに来た。ずっと探していた人が、ここにいないことを知っていても。
 終わらせるために、来た。

「――。……あぁ」

 不意に、聞こえた。
 同時にそれが何なのかも思い出す。海だ。
 この地にあって唯一、始まりも終わりも知らずに波打ち続ける海。その波の音。

 海を見に行こう。
 そこでこれまでの全てを終わらせて、その後にゆっくりと始まりを探そう。
882 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 02:36:03.14 ID:qbc2KaeLo
>>879
過不足ないすっきりとした文章で、するりと読むことが出来ました
構成面では最初の激しい物音が伏線になっていて、シンプルながら良い作りだと思います

ただ内容面でいえば、起承転結の起だけで終わっていて盛り上がりに欠ける気がします
あくまで自分だったら、と言う話になりますが、まず主人公の地球への想いなんかを描写します
地球には何があるかを主人公に想像させたり地球について母から話を聞く主人公の過去をはさんだり。つまりそうやって設定を説明つつ起と承を作ると言うわけです
それから最初に張った伏線を元に、地球を窓の向こうに見つけた二人目を登場させて"転"を作って締めとすると思います
参考になるかどうかは分かりませんが一応

>>881
この物語にただよう雰囲気というか、物語の骨組みというか、そういうものが自分の趣味にドンピシャでした
こういうなんだか取り残されたようなわびしさみたいななにかは大好物

指摘としては、文体が何か前向きjな印象を受け、主人公に訪れる終わりよりも始まりの方を自分としては意識しました
きっと主人公が「終わり」に対して何かマイナスなイメージを抱く心理描写がないことが原因だと思います
もちろんそれを狙っていたのならごめんなさいですが、もし違うのならば改善の余地があるかと
883 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/22(木) 02:40:56.63 ID:qbc2KaeLo
>>879
すみません追加で
もし地球を窓の向こうに見つけた二人目を転とする場合は、
>「あなたの代で地球につくはずだから」
この関連は書かないか、もしくは「やはり私の代でも到達は成らないようだ」みたいに否定しておいたほうが予想を裏切れるかもしれません
以上です
884 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/22(木) 05:27:35.60 ID:qbc2KaeLo
>>112

 抜けるような青空が、彼の心とは裏腹にどこまでも高く澄んでいる。沈んだ心の底から見上げるそれはいつも以上に高く思えた。
 胸中の汚泥が、青空からの光を浴びて腐臭を上げていた。振り仰いだまま重いため息をついた。

 風が冷たかった。高校の屋上、フェンスすらも乗り越えて、端っこも端っこで、その男子生徒は座って静かに足をブラつかせていた。
「そんな所にいたら危ないぞ」
 後ろから低く穏やかな声がする。振り向くと、着崩したスーツ姿の男が一人煙草をくわえて佇んでいた。
「……先生」
 先生と呼ばれた男は、ゆっくり男子生徒の方へ向かって歩き、フェンスの手前で立ち止まった。煙草を手に取り煙を吐き出す。
 そして見上げてつぶやいた。
「いい天気だな」
 生徒は答えなかった。

 雀らしき小鳥の鳴き声が聞こえた。
「禁煙ですよ。ここ」
「そうか」
 男は答えたが、煙草を消す様子はなかった。
 間をおいてから言う。
「最近どうだ?」
 生徒はもう一度空を見上げた。答えずに、沈黙が落ちた。男の煙を吐く呼気が聞こえた。
「最悪です」
 生徒がようやく口を開く。
「最悪ですよ」
 繰り返して、言った。

「クラスにはもう、ぼくの居場所はありません」
「……」
「だから逃げだしてきたんです」
「そうか」
 生徒は俯いた。
「ぼくが悪いんですかねえ……」
「さあな」
 生徒が軽く笑う声がした。寂しげな笑い声だった。
「それ、教師の台詞じゃないですよ」
 そうか。男は気のない返事を繰り返した。
「ねえ先生。ぼくもう一歩逃げることもできますよ。ここから、よいしょって」
「うん、そうな」
「でも怖いんです。先生も一緒に逃げません?」
「いいよ」
 生徒がまた笑った。

 また沈黙が落ちた。雲が流れ、時折太陽にかぶさり薄い影を地上に投げかける。
「さ、戻ろうぜ」
 男が煙草を地面に投げて火を消した。
「はい」
 生徒は静かに答えた。
「でももう少しだけ……」
 屋上からは町を一望できる。それだけではない。もっと遠くも見ることができる。
 ……だが、それだけだ。そこに行くことはできない。そんな無力感。
 男子生徒の髪を、風が撫でて、吹き去った。
885 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 14:47:29.74 ID:5mvtVoHIO
>>112
振り返ると校内一の問題児がいた。

腰まで伸びた美しい黒髪を靡かせ妖艶な笑いは不気味さをも感じさせる。

――こんな昼間からなにやってるの?というか今は夏休みだよ?

今まで一言も言葉を交わしたことは無いにも関わらず、彼女はまるで数年来の友人の如く気軽に言葉を発する。

そんな彼女を無視して足を空中に放り出したまま、寝転ぶ。

――だから、そんな所にいたら危ないよって言ってるじゃない

彼女はクスクス笑いながら、僕の顔を覗き込む。

空が見えない。そういうと彼女は不満そうに空より私のほうが綺麗でしょ?と言った。

真夏の高校。野球部の聞き取れない叫び声と蝉の声。
校内には人はいない。
彼女も諦めたように空を見上げる。

――だめでせう

そして、突然口を開く。

宮沢賢治の眼にて云うだとすぐわかった。

――あなたのほうからみたら、随分さんさんたるけしきでせうが、私から見えるのはやっぱり――

「綺麗な青空と透き通った風ばかりです」

幻の彼女を消すように、一人呟く。

これは二年前のこの日、初めて彼女と出会った日の思い出だ。

そして今。

「あぶねーぞそんなとこにいたら……お前も来てたんか……お前はあいつに心底惚れてたからなぁ」

その日と同じように寝転んでいると、担任の先生が屋上に上がってきた。

「あいつは全てに絶望して、ここから身を投げたのかなぁ……本当に問題児だよ、クラス中、いや学校中を泣かせるなんて。まぁ、そんだけみんなから好かれてたってことだな……その内に秘める絶望に誰も気づかずにいただけだったけどさ」

やたらと喋りながら、煙草に火をつけた。

「問題児だよ、あいつは」

煙草の煙と一緒にやりきれぬ思いを吐き出す。

一瞬の静寂。蝉すらも鳴きやんだ。

「僕は気づいてたんです。彼女が死んだ時も僕はここにいた。でも僕に彼女は救えないと思ったんです」

立ち上がり、先生の方を向く。

「だけど、やっと答えが見つかりました……これからご迷惑をおかけします」

そしてそのまま身体を宙に踊らせる。

――本当だ、見えるのは綺麗な青空と風だけだ。

「ね、死の場面なのにこんな清々しい詩を書けるなんてすごくでしょ?」

彼女が微笑んだ気がした。
886 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 16:26:45.02 ID:YFDZ1dDIO
すごくいいんですが、最後の決めゼリフの誤字が、、、、
あまりにも惜しすぎる
887 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 16:57:11.58 ID:5mvtVoHIO
>>886
お恥ずかしい///
888 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 04:42:21.29 ID:l4KhSiaDo
>>885
気になった点は一つだけ
"彼女"が絶望していた、ということですが、なんだか唐突な気がしました
目にて云うで多少ほのめかされている気もしますが、もう少し、あとほんの少しだけどこかに彼女の絶望を示した方がいいかもしれません
ただ、彼女の絶望には"僕"以外誰も気付かなかったということなので、いじる必要がない可能性も多々あります。気をつけて吟味してください

あとは文句のつけようがなく、誤字があったのがこちらまで悔しくなるような快作だと思います
何より雰囲気がずば抜けています
目にて云うも効果的に使われていて、どこかやりきれないわびしさみたいなものをよく表現できているかと
偉そうに書きましたが、本当ならばこちらがいろいろアドバイス頂きたいくらいの腕だと思います
以上です、失礼しました
889 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 04:47:22.80 ID:l4KhSiaDo
失礼、目にて云うではなく眼にて云うでした
890 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/23(金) 10:33:22.87 ID:kTDGGs0EP
お題ください
891 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 10:41:43.63 ID:onKnFi8IO
>>890
主人公の性別不問
喫茶店
懐かしい音楽が流れてくる
主人公は時間をきにしている

お題出すの難しいwwww
こんな感じでも大丈夫?
892 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/23(金) 11:13:06.94 ID:kTDGGs0EP
>>891
主人公の性別不明と見間違えて
どう書けばいいんだ……って悩んでいたけど性別不問かwwwwww

お題サンクス
挑戦してみる
893 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 11:15:31.91 ID:onKnFi8IO
>>892
書きおわったら俺にもお題くれ
894 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 11:30:13.91 ID:XvTc7VGWo
>>893
じゃあ俺からお題を

・ひと気がない場所
・振り返る
・セリフ「今度こそ」

895 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 11:32:13.18 ID:onKnFi8IO
>>894
ありがとう
896 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 12:20:31.91 ID:onKnFi8IO
>>894
目を覚ますと全く知らない人の気配が全くしない部屋にいた。
そして、突然の自分を呼ぶ声に少年は振り返る。
声はどこから聞こえてくるかわからない。
後ろからも前からも左右からも聞こえてくるように感じた。

「さぁ、二百五十六回目の挑戦だ。今度こそそこを脱出してみたまえ」

謎の声は楽しそうに笑う。
少年は恐怖に怯えながら、ドアノブをひねる。が開かない。

自分が閉じ込められている事に初めて気がついた。

ドアをひっかくように叩くと、そこに血の乾いた様な色の黒で鍵を探せ、と書いてあるのを発見する。

「……か……ぎ……?」

一人つぶやく。

そして、自身の右手の人差し指から出血しているのに気がつく。が、その傷もすぐに“治った”。


「クククク、殺しても死なない化け物、いいものを拾ったものだよ」

モニターを眺めながら、男は笑う。

――前は脱出に成功した瞬間頭を撃ち抜いてやった……今度はどんな風に殺してやろうか……。

男は口元を歪める。

モニターには泣きそうな顔で部屋を物色する少年が映っていた……。
897 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 19:27:06.41 ID:l4KhSiaDo
>>896
文章的には特に目立った不足はないはずですが、失礼ながらどこか書き慣れていない印象を受けました
もし当たりならですが、数をこなす必要があると思います(もちろんインプットも忘れてはいけません)

具体的な指摘をするならば、突然の声に少年は振りかえった、とあるのに実際に台詞が書かれるのが三行を費やした後なのがまず気になりました
次にこれは個人的な好みもありますが、「クククク」と笑い声を台詞に書いてしまうのは安っぽくなってしまうと思います

内容について言うならば、閉じ込められ何度も殺される不死身の少年と、それを監視して猟奇的な遊びに興じる男の話ということは分かりましたが、
それ以上の情報がなく背景について理解できませんでした。
たとえばなぜこういう状況になったのか、男の目的はなんなのか、少年は誰でなぜ不死身なのか、などです
そして何より致命的なことに、この後どうなるのかといったことに興味がいまいち湧きませんでした。

失礼なことを書いて申し訳ありません、けれども真剣に書いたつもりです。ご容赦を(ていうか人のこと言える腕ではありませんが)
以上です、失礼しました
898 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/23(金) 20:37:59.11 ID:l4KhSiaDo
>>159

 いつそれを決意したのだったか。彼は自問した。
 実の母が死んだ時だったような気もしたし、二番目の母親が死んだ時だったような気も、三番目の母親の連れ子、義妹が死んだ時だった気もする。
 とにかくいつにしろ既に決意していたのは間違いない。ただ、行動は起こさなかった。そういう意味では今日初めて決意したと言えるかもしれない。
 しかし、いつかはこうするとは決めていた。

 青年は静かに階段を上っていた。右手の重みを確かめながら。
 狭い階段だった。かなりの大きさがあるこの館には似つかわしくない。
 なぜそうなのかといえば、話は簡単だった。人が大勢通る場所ではないからだ。
 ここに来るのはあの悪魔と、それへの生贄しかいない。彼とて今日まで近付くことはなかった。

 階段を登りきると、短く狭い廊下と、その突きあたりに扉があった。
 青年は耳をすませた。
「――! ――!」
 声がする。くぐもった悲鳴。扉は厚いのであまりよくは聞こえない。『そういうこと』をするために作られている。
 青年が扉を開くと、最初に目に入ったのは大きなベッドだった。この広い部屋のほとんどを占めるそれ。そして次に目に入るのは――
「ああ! ああっ!」
 絡まり合う肌色だった。
「……」
 うす暗い寝室に隠されたなまめかしい営み。粘液の立てる静かに耳障りな音。
 だが異常なのは、その二人の内、女の顔がひどく腫れあがっていることだった。顔に黒くこびりついているのは鼻血の跡だろう。
 小太りの男が唐突に腕を振り上げる。次の瞬間、腰をこすりあう女の腹に打ちおろす。女のうめきが聞こえた。

 青年はしばらくそれを眺めていた。男女はそれに気付く様子はなかった。それぞれに必死の様子だった。
 一通り眺め終えた後、青年は右手を持ち上げた。銃声。そして聞こえたかも分からない肉を貫く音。遅れて女の悲鳴。
 小太りの男は頭を撃ち抜かれ、女にのしかかっていた。女は疲労困憊の様子で、恐慌に身を震わせながらも抜け出すことは出来ない様子だった。
 女。かつて彼が愛した女性。しかし今は、醜く顔を崩して泣いている。
 青年はそれに背を向けた。

 館の狭い一室、金庫の前で、彼は黙々と札束を鞄に移していた。
 泣きたい気分だったが、涙は一滴もこぼれてくれなかった。遅すぎたのだ。もっと早くこうしていれば少しは泣けたはずだ。
 父は狂人だった。青年の最初の母親、つまり血のつながった彼女は、あの男の異常性癖によって死んだ。その次の母も、さらにその次の母が連れてきた義妹も。
 愛した人々はあの狂人に次々殺された。もう何も残っていない。
「……」
 だから、彼にはもう今手にある紙幣の束しか信ずるに値するものがない。
 たとえそれがいかに空虚なことであろうと、彼は金を取る手を止めなかった。
 館は何も語らない。暗く沈むのみ。まるで彼の行く末のように。
899 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 20:44:47.32 ID:onKnFi8IO
>>897
いや、普段書かないような雰囲気にしようとして盛大に事故ったかんじが自分でもしてたwwww

900 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 20:52:44.62 ID:52Gjzi2jo
>>894

 初めて見たその場所は、とても広かった。
 およそ視界を遮るものが何も無い広々とした空間。
 滞ることの無い風が駆け回り、遮るものの無い光が俺へと降り注ぐ。
 空も、広い。

「はじめまして、で良いんですよね」

 背後からの声に気付くのは一瞬送れた。
 風のような、自然な声だった。尖っているようで滑らかなようで、つまりは不思議な声だった。
 一度も聞いたことの無い、けれどよく知っている声だった。
 その声の主がいることは知っていた。彼(或いは彼女か)以外は誰もいないことも。

「ずっとお会いしたかった、と言っても信じてはいただけないでしょうか」

 当たり前だ、と思う。
 肯定と否定の両方。会いたかったことは分かっているし、それを信じようとも思えない。
 声の主がどんな人なのかは知らない。それでも、ずっと会いたかったのだろう。
 親愛と憎しみと憐憫と尊敬と、それら全てをぶつけたかったのだろう。
 信じるつもりは無いが分かる。会いたかったのは、俺も同じだ。

「それでも構いません。さあ、始めましょうか」

 それが何を示すのか、何が始まるのか俺は知らない。けれど知りたいとも思わない。
 複雑な意味のある多くのものは、この場においては無意味でしかなかった。
 無意味なものだけが唯一、俺に語りかけてくるものだった。
 ゆっくりと、振り返る。そこには絶対に自分しかいない。ここには俺以外は誰もいない。
 それはどんな姿をした自分だろうか。どんな表情で、どんな景色を見ているのだろうか。

 振り返る。

「はじめまして、で良いんだよな」

 風が気持ち良い。日差しが温かい。空が綺麗だ。
 爽快の二文字で、俺の全てが満たされる。

「今度こそ」

 何度目なのかは知らないし知りたくもない。
 けれど、次は無い。

 俺が笑う。
901 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 20:53:17.58 ID:52Gjzi2jo
勢いで書いてみたが着地点が微塵も見えなかった。
反省はしている。
902 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 21:11:54.77 ID:l4KhSiaDo
>>900
不思議な雰囲気のする文章ですね

しかし、着地点が見えなかったとおっしゃる通り、こちらにも内容が上手く伝わってきませんでした
その原因として、ストーリーが曖昧なのはもちろんのこと、
>尖っているようで滑らかなようで
>一度も聞いたことの無い、けれどよく知っている声
>肯定と否定の両方
>会いたかったことは分かっているし、それを信じようとも思えない
というふうに、相反するものを一緒に並べる表現が多かったせいかなと思います

以上です
903 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 21:13:00.19 ID:OIbw6T0DO
>>882-883
ありがとうございます
掌編を起と勘違いしてしまったというのもあるのですが、それを抜かしても中途半端感は否めません
おっしゃるとおり、女の気持ちの土台をきちんと描写すべきでした
この反省を生かし次回は起転結を作ることに気を付けたいと思います

掌編って今調べたがごく短い話ってことなんだな…やっちまった
904 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/24(土) 10:04:55.84 ID:SxnfNXCao
>>894

『今度こそ』
それがじいちゃんの最期の言葉だ、とばあちゃんは教えてくれた。葬儀が終わったあと、ばあちゃんの部屋で話していた時だった。
「まったく、あの人らしいねえ」
たしかに。俺は制服の詰襟を緩めながら笑った。まっすぐ仕事一筋に生きてきたじいちゃんらしい。
研究者だったじいちゃん。いつも数字の羅列された紙をにらめ付け、あーでもないこーでもないと唸っていた姿は今もはっきり思い出せる。
薬で朦朧とした頭の中でじいちゃんは最後まで数式と格闘していたのだろう。
「死ぬ間際で『今度こそ』か。かっこいいな」
「そりゃそうですよ。私の自慢の旦那ですもの」
ばあちゃんは笑顔でのろける。葬儀中もずっと笑顔だった。
闘病生活が長かったから覚悟はもうとっくにできていたみたいだし、何よりじいちゃんを笑って見送れたことが嬉しかったらしい。
「でもばあちゃん寂しいんじゃない? 最後の最後で研究の事なんて」
「なにがだい?」
「だって研究の時の口癖だったじゃん。それ」
研究者の仕事は失敗することだ、が持論だったじいちゃんは実験が上手くいかない度に「今度こそ、今度こそ」と魔法の呪文のようにつぶやいていた。
そんな執念のせいか、じいちゃんの研究はそれなりに成果があり、有名だった。弔電の一つにノーベル賞受賞者の名前があったときはさすがに驚いたけれど。
それだけにばあちゃんが少しかわいそうに思えた。最期の時ぐらい研究の事なんて忘れても良かったんじゃないだろうか。
けれどばあちゃんは俺の心中とは真逆に声を上げて笑い出した。
「ふふふ、そういやあんたには話してなかったねえ」
「なにが?」
「あの人との馴れ初めさ」
学生時代、じいちゃんがばあちゃんの家に下宿したのが二人の出会いらしい。
「私に一目惚れだったらしいよ。若い頃は綺麗だったからねえ」
はいはい、とあしらいつつ先を促す。
「出会ってから半年後ぐらいかねえ。あの人から求婚されたのは」
「なるほど、それで結婚したんだね」
「うんにゃ、断ったさ」
「は?」
意外だった。ばあちゃんがいかにじいちゃんが好きだったか生まれてからずっと見てきたから。
「若かったからねえ。勉強ばっかりの堅物にしか見えなかったんだよ」
「それじゃ、どうやって結婚……」
「あの人からもう一度結婚しよう、って言われたのさ。いや一度じゃきかないねえ。何度も何度も、かね」
真面目を絵に描いたようなあのじいちゃんが? 同じ人に何度も求婚? 
「嘘でしょ?」
「本当の話さ。あの人の友達に聞いたんだけどね。私に振られる度愚痴ってたらしいよ『今度こそ、今度こそ』ってね」
「あのじいちゃんが、ねえ」
それこそ本当に意外な話だった。
「最後には私が折れたってわけさね。今思えばいい買い物だったよ」
またばあちゃんはまた声を出して笑い出した。
ずっと亭主関白だと思っていたけど、今考えればばあちゃんのいうことにじいちゃんが逆らったことは一度も見たことない。惚れた弱みというやつなのか。
じいちゃんが最期に頭の中で闘っていたのは数式ではなく自分を振り続けたばあちゃんだったのだ。
なんだか無性におかしくなった。おかしくなって俺も腹を抱えて笑った。
部屋が二人の笑い声で包まれる。すると背後でじいちゃんの遺影が抗議するようにカタッと倒れた。
「おやおや、からかい過ぎたかねえ。恥ずかしがり屋だったからねえ、あの人」
どっこいしょ、と立ち上がり、遺影を直すばあちゃん。たったそれだけなのにその姿はとても幸せそうだった。
人は死ぬときに一瞬で自分の人生を振り返るという。走馬灯と言うやつだ。
振り返った中で一番輝いている人が今際の際に自分の目の前にいる。それはどんなに幸せなことなんだろうか。
そんなことを考えていると一人の女の子の顔が頭の中に浮かんだ。同じクラスで席が隣のあの子。俺の十数年の人生で一番輝いている人だ。
俺はしびれた足に力を込め立ち上がった。葬儀中オフにしていた携帯を起動させながらばあちゃんに尋ねる。
「ねえばあちゃん。誰もいない部屋ってどこかな」
葬儀のため日本中から親戚が泊まりにきたから広い家なのに空いてる部屋ほとんどなかった。
「あの人の書斎は誰もいないんじゃないかい。なにするのさ?」
なんだか気恥ずかしいから俺は「がんばってくる」とだけ答えた。するとばあちゃんも「そうかい、がんばって」とだけ言ってくれた。
ばあちゃんの部屋を出て、じいちゃんの書斎に向かう。単に人がいない所を探していただけなのにじいちゃんの書斎とは。なんだかおあつらえ向きすぎる気もするけどちょうどいい。
携帯を操作して通話ボタンを押すとトゥルル、という呼び出し音が流れた。
俺は彼女に二度目の告白をするつもりだ。
「今度こそ、今度こそ」
俺が魔法の呪文を唱えていると携帯から「もしもし」と声がした。

905 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 10:41:05.73 ID:+JHPbkj8o
>>904
素晴らしい。素晴らしすぎるぞ。相当感動した。
このお題からこういう話をひねり出すのを才能って言うんだな
登場人物を俺とばあちゃんの二人に絞ったのが良かったね

906 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 11:08:34.42 ID:FyAXpvHKo
>>904
とてもあたたかい文章でほっこりしました
飾らず無理のない柔らかな文章の成せる業だと思います

しかし、さらに目を引くのはその内容でした
伴侶を亡くした祖母をありきたりに悲しませるのではなく、むしろ明るく描いているのが印象的です
そしてその背景も違和感なく描けていると思います
自分はステレオタイプなものしか書けないので羨ましいです
別のも読んでみたくなりました

以上です
907 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 21:09:18.27 ID:ysW1GJexo
>>905-906

ありがとうございます
なんだか褒めすぎだろ、と思うんですが……
まあ、好評みたいでよかったです
908 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 21:12:31.39 ID:wK4IalGjo
お題頂戴
909 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 21:29:39.53 ID:ysW1GJexo
>>908

老人と若者

セリフ「だからなに?」(改変OK)

難しいな、こんな感じ?
910 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 21:52:43.58 ID:pF7Cl+T4o
>>907
まあ、ろくに感想ももらえない素人の自分が練習がてらにやってる批評なので、本当にその内容の通りかはもちろん保証できません
確かに褒めすぎた感はあります
でも一応思ったままを書いてますし、特に指摘できる改善点も見つからなかったということで勘弁してください
911 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 01:10:44.30 ID:9MwdMPoAo
>>909
ありがとう
書いてみる
912 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 09:37:19.00 ID:0wLVS6kDO
>>904面白かった
お婆ちゃんのキャラがいいな
展開も綺麗にまとめられていて、読みやすかった
913 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 22:34:16.72 ID:r82kMu/3o
>>909
 あれは――いつだったか忘れたが、俺がうんと幼い頃の春の終わりだろう。恐らく俺の一番古い記憶。
 どこだったかも忘れてしまったが、花の方の桜が咲いていた。その一本以外のものは残らず散っていたのに、だ。
 それを見上げた爺さんが複雑な面持ちで、寂しげに言った。

『俺と同じだ、みっともねえ』

 その言葉と表情は、未だに忘れられない。

………………

 その爺さんが割と危篤らしい。
 そう聞いても、俺はあまり動揺しなかった。
 一応飲み込んでみた「だからなに?」という薄情に聞こえる台詞を、一考の後やっぱり口に出す。
 当然お前はアホかと怒られたが、俺はアホではない。
 危篤だからどうしろと言うのか。あの爺さんは元から死に損ないだというのに。


 爺さんはいい歳した爺さんだ。なんでか戦争の時に若かった爺さん残して部隊が全滅した程度にはいい歳だ。
 そんな話は幼くアホな俺にはよく分からなかったのだが、いつもに増して険しい顔をしていたから黙って聞いていた。
 常日頃、爺さんはよく言っていた。

『俺はあの時死ぬべきだった』

 俺には意味は勿論分からなかった。
 だから俺はいつもアホ面をしていて、だから爺さんはいつもそのアホ面を見て言い直す。

『あの時の木の桜の花と同じだ、散るべきときに散れなかった。哀れで惨めでみっともねえ野郎だよ』

 いつもそんな風に言っていたから、素直な俺は爺さんを全く尊敬せずにスクスクと育った。

………………

 一応会いに来たものの、今会っても何を言えというのか。
 かと言ってここまで来て何もせず帰るのも変な話だ。仕方ないからその無様な顔を一目拝んで帰ることにした。

 顔を見てびっくりした。なんか色々機械とかに繋がれた爺さんは、まさに無様だったからだ。
 もう[ピーーー]ばいいのにと言いたくなるくらいにみっともなく、爺さんは生きていた。

「すごく哀れだな、桜」

 名前を呼ぶ。
 聞こえるのか反応出来るのか、それも分からない程度には惨めな爺さんはしかし反応した。
 こちらを向き、笑って言う。

「だから、どうした」

 笑う。
 分かっていたが少し安心した。忘れていない。当然俺も忘れない。

『散るべきときに散れなかったんだ、もう仕方ねえから無様だろうが惨めだろうが枯れ果てるまで生きてやるよ。それが義務ってもんだろ』

 爺さんはいつもよく分からない話をしていた。
 素直でアホな俺は分からないなりに真剣に聞いていたから、よく覚えている。
 そしてその話は、いつもこう言って締められる。

『だからよ、いつか俺がくだらねえ弱音とか吐いたらぶん殴ってくれねえか。生憎もう他にアテがねえんだ』

 素直な俺は一応頷いていたのだが、この頑固な爺さんがそんな弱音を吐く姿はまるで想像出来なかった。
 別にアホだったからでは無い。何せ未だに想像出来ないのだから、きっと誰にも想像も創造も出来ないだろう。
 だから幸いなことに、俺は大好きな頑固爺さんをこれまで一度も殴ったことがない。
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 18:27:25.53 ID:hnxJMp/fo
>>913

遅ればせながら批評を

真正面から生と死を受け止める『爺さん』の泥臭さとかっこ良さが『俺』を通して伝わって来ました
これは自分が出したお題ですが、やはり『老人と若者』をお題にする以上『生と死』がテーマになるだろうなと予想していました
その通り意を汲んで頂いて嬉しいです

気になった点ですが作中の視点移動が少しばたついてるかな、と思いました。一つの場面の描写をもう少し深くしてもいいかもしれません
あと最後の部分ですがテーマの『生と死』を絡めた描写にするともっと味わいが深くなると思います

以上です
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 20:33:12.92 ID:T/gxrC/8o
>>913
自分の力量じゃろくな批評ができないので遅いながらも感想をば

情報の少ないお題からよくこれだけの話を作ったものだと感心しました
立体的というか、こういう話が本当にあったみたいな説得力があるというか
個人的には死に損なった未練がましさ一色でないところが好きです
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/17(火) 16:41:12.60 ID:0H5+f3MFo
>>891

夏休み最終日だからか、いつも溢れている学生たちの姿はなく、喫茶店『ジュリエッタ』には閑暇の時間が流れている。
つまり今日の客は私達2人だけであり、コーヒーの香りとマスターの気まぐれなBGMを独占中という訳だ。
しかしそんな贅沢を享受しておきながら私の目の前のこの男、加藤友樹の表情はどこか不満気で、コーヒーを啜ると小さく「にがっ」と眉根を寄せた。
「ミルクぐらい入れればいいじゃない?」
「アホか、コーヒーの香りが死ぬだろ。冒涜だよ冒涜」
不味そうに飲むほうがよっぽど冒涜じゃない、という反論は胸にしまっておく。言い返したが最後、どこかで聞き齧ったコーヒーのうんちく話を延々聞かせれることになるに決まってる。長い付き合いだから予想がつく。
だいたいそれらしいことを言っているけどこいつにコーヒーの味が分かるわけがないのだ。かっこつけたいだけのくせに。どうせ何かの雑誌に『ブラック男子がモテる!!』とでも書いてあったのを鵜呑みにしたのだろう。
友樹を見るたび思う。『素直』という言葉の最上級は『アホ』なのだと。
呆れながらカップを持ち上げると中が空になっているのに気づいた。新聞を読んでいるマスターにアイスコーヒーを注文して、そのついでに掛け時計を見る。
4時52分。
勝負の決着まであと8分。
私の視線に釣られたのか友樹も時計を見つめていた。そして大きく大きくため息を付いた。
「はあ、今年はダメだったなあ」
今年も、でしょ? という言葉もそっと胸にしまう。これだけ色々しまってるんだからそろそろ私の胸も膨らんでもいいのではないだろうか、と思わないでもないが残念ながら言葉に体積はないようだくそったれ。
「やけ食いしてやる」
「なんでお前がヤケ食いすんだよ? まあどうせお前の金だからいいけど。忘れてないよな?」
「覚えてるわよ。夏休み開始から8月31日5時までに告白が成功すれば友樹が私にここの代金全部奢る。ダメなら私があんたに奢る。でしょ? もう中1の時から5年連続で奢らされてるんだから忘れないわよ」
「残念ながらも今年もゴチになります」
「まだ分からないわよ?」
「分かるよ。今年告白した全員からもう振られてんだ」
「どうかしらね?」
訝しげな友樹の視線を受けて内心ほくそ笑む。今年は大丈夫。作戦を用意したのだ。
ちょうどアイスコーヒーを持ってきたマスターに目配せをする。するとそのままカウンターの裏手に姿を消した。マスターはこの作戦の協力者だ。
少し緊張。でもまだグチグチ言っている友樹を見るとなんだか肩の力が一気に抜けてしまった。
「クソーなんでだよ」
だってあんた本気で告白してないじゃない。と、この言葉も胸にしまう。どうせ膨らまないけどしまう。
「そりゃあ振られてすぐ違う女の子に行くからでしょ。女子の中であんた評判悪いわよ?」
「まじで!?」
「よかったじゃない、女子の注目の的よ?」
「そんな注目嫌だー!!」
そんな友樹の叫び声を合図にしたかのように店のBGMが急に変わった。軽快なギターにポップな曲調。この店では珍しい洋楽の曲だった。
この曲は私がリクエストしたもので、数年前友樹が買った昔のヒット曲を集めた洋楽のアルバムの一曲だ。洋楽を聴く奴はモテるんだ、という欧米の少子化問題を無視した友樹の発言はさておき、存外いい曲で二人でよく聞いたものだ。
さて、今の時間は4時57分50秒、あと2分10秒。
後もうすぐだ。友樹を見るとまだうつぶせで落ち込んでいた。
「だってメンズノンノに『女性はどんな人からでも告白されたら喜ぶ』って……」
まだ言うかこのアホは。せっかく二人の思い出の曲まで流してるってのに。なんだか腹が立ってきた。少しいじめてやる。
「確かにね。この前隣のクラスの子に告白されたけど、まあ嬉しかったかな」
「な!?」
一瞬で跳ね起きる友樹。うんうんいい反応だ。もう少しいじめてやれ。
「ほら、野球部の沖田くん。エースで学年トップは優良物件よね」
「そそそ、そうか。で、ななんてへへ、返事したんだ?」
「少し考えさせてって」
嘘だ。本当はすぐにお断りした。
「へ、へー」
友樹のカップを持つ手がガチャガチャ震える。
かわいい、友樹のこういう素直さに意地の膜を貼ったようなリアクションは嫌いではない。が、もうそろそろそれも終わりにしていいのではないか。
私の前だけそんなに意地を張り、挙句照れ隠しで他の女の子に玉砕するフリをする。このアホらしいといえばらしいがいい加減それに付き合うのも飽きた。そろそろはっきりさせるべきだ。今日はそのための作戦だ。
いじめてすっきりしたところで時計を確認。
59分32秒。あと28秒。いい頃合いだ、作戦開始。
「ねえ、友樹。今かかってるこの曲覚えてる?」
28、27、26
「ん、え? ああ」
21、20、19
「曲名ど忘れしたんだけどなんだったっけ?」
15、14、13
「えっと、ちょっと待てよ?」
9、8、7
「…………」
6、5
「なんだっけ?」
4、3、はやくしろ。
「ああ、そうだ]
2、はやく。
『I Wanna Be Your Lover』」
1、まにあった。
「うん、私もよ」
「へ?」
0
店の時計から5時を報せるチャイムが鳴った。この勝負私の勝ちだ。
『8月31日5時までに告白が成功すれば友樹が私にここの代金全部奢る』
さっき言ったばかりだ。間違いなく勝利条件は達成だ。少し焦ったけど日和って今日まで作戦を引き伸ばしてきた私が悪いのだからしかたない。まあ結果オーライだ。
早速祝杯のアイスコーヒーを飲む。それにしてもホットにしなくてよかった。さっきからやけに頬が熱い。
そうだせっかくだから友樹にもなにか頼んでやろう。どうせ友樹のお金だ。
「友樹、なに飲みたい?」
けれど友樹は固まって答えてくれない。
しょうがない。友樹の好きな甘いココアでも頼んでやるか。
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 08:31:12.77 ID:OLgaExW5o
>>916
こんな青春送りたかった……
まあそれは置いとくとして、かなーり遅ればせながら感想を

忙しいのと文章量が多いのとで敬遠していたけれど、実際読んでみるとかなり読みやすかったです
一人称の長所である主人公への感情移入が上手く出来ているかと
あとは登場人物の特徴(意地っ張りな友樹等)が上手に描写されていたと思います
細かいところにも割と凝っているように見受けられ、参考になりました

以上です
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 07:59:43.14 ID:plUG+vdMo
>>891

 こつこつこつ。テーブルとペンの演奏が小さい音で、だが強くわたしの鼓膜を叩いている。

 と、他人事のように言ったところで、喫茶店のテーブルをペンでつついているのはわたしの手だ。
 うるさいのならばやめればいいのだが、どうにも手が止められない。
 焦燥感と苛立ちと、あと何やら追いかけられているような恐怖感と。
 非力な女性でしかないわたしは、それらに押しつぶされないように必死でテーブルをペンで叩き続けている。
 こつこつこつ。

 時間にはまだ早い。腕時計を何度も確かめ、それは分かる。
 しかし、それはわたしを安心させてくれない。むしろ、迫りくる刻限がわたしの息を詰まらせる。
 この仕事に就いてから数年。熟練してきた、とまでは言えないまでも業務内容には慣れたつもりだ。
 理不尽なことは数えればきりがないが、それでも仕事には満足している。
 だが、と思う。新米の頃はもっと楽しんで働いていた気がする。

 空になったカップを見て、コーヒーの追加を注文する。
 おかわりをついで去っていったウェイターはこの間まで付き合っていた彼にどことなく似ていた。
 彼は言っていたっけ。わたしはいつも苛立っているからそばにいるのがつらい、と。
 半分あっていて半分外れている。わたしは苛立っていたけれども、それは怯えていたからだ。
 何に、と明確に説明することはできない。それはそういうものだ。分かっていたら怖くない。
 こつこつこつ。

 最近思う。わたしはずっとこうなのだろうか。
 こう、というのがどうなのかはこれもまた明確には説明できない。
 ただ思う。ずっとわたしはわたしでないままなのだろうかと。
 ペンを持つ手が止まった。それでも頭の中でこつこつこつ。

 喫茶店内に流れる音楽が切り替わった。
 今までだって何度となく切り替わっていたのだが、唐突にそれを意識したのは、それが聞き覚えのあるものだったからだ。
 緩やかで、どこか郷愁を誘うメロディー。ちょっと考えて思いだす。『カントリーロード』

 昔はよくそういう音楽を聞いていた。乏しいお小遣いで買ったiPod。
 友達が持っていたそれが欲しくなって、結構頑張ってやりくりしたのだ。
 気に入った音楽を紹介し合ったり、相手の趣味をからかったり。
 バンドを組もうか、なんて大真面目に話し合ったりもした。
 そういえば、分かれた彼とも音楽つながりで知り合ったんだっけ。

 涙がこぼれた。些細なことだけれど。
 わたしはどこに置き忘れてきたんだろう。

 いつの間にか時間だった。
 待ち合わせていた仕事相手がやってきた。
 そのときわたしは決めた。この案件が終わったら、少し休みをもらおう。
 そしてちょっと立ち止まって、落とし物を探してみる。
 拾い直せるなんて思わないけれど、それでも何を落としたのかぐらいは知りたい。

 手に持っていたままだったペンを.、胸ポケットにしまった。
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/07(火) 08:00:46.22 ID:plUG+vdMo
スレの終わりも近いし、それまでしばらく練習に通いつめようかと思います
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/11(土) 22:58:32.25 ID:ego1eYnSo
>>894

 一陣の風が、鋭く彼の脇を吹き抜けた。
 振り返ると仕切り用具に阻まれながらも回転を続ける球が見える。
「15-0!」
 審判の声が無慈悲に響いた。
(ち……くしょう!)
 悪態を口に出さないようにするのは、かなりの骨だった。

 これが最後の大会であることは、考えるまでもなく彼は分かっている。
 そして、これ以上先の大会には進めないであろうことも。
 認めなければならない。卓球の才能が自分にはない。認めなければならないが、
(まさかここまでとはよ……)
 ただの一ポイントも、取れやしない。

 上には上がいることぐらい彼だってとっくに知っていた。
 血反吐を吐くまで素振りしようが血便出るまで走りこもうが、追いつけない領域があることぐらい痛いくらい理解していた。
 そんな理不尽は、この生活の裏側に確かにあったから。

 サーブ交代。球を放る。鋭く切る。
 文句なく彼の最高の技術。だが相手の返球は危なげがない。
 必死で身を切り返し、球を追う。返す。
 だが同時に悟る。こちらは人間が球を追っている。相手は球の方が人間を追っている。
 圧倒的な反射能力の差。絶望的なセンスの溝。
「っ――!」
 相手のスマッシュが卓球台の角を激しく打った。
 既に彼の返球能力の外側だ。追いつけないことはすぐに分かった。それでも追った。
 喉を裂く咆哮。床を蹴り離す足。
 それでもやはり追いつけるわけがない。もんどりうって床に転がった。

 しばらくは起き上がれなかった。
 寒さとは確かに違う冷気が身体をしんしんと冷やした。
「っ――なんでだよ!」
 叫び声が上がる。自分の声だと気付くのに時間がかかった。
「なんで俺じゃねえんだよ!」
 彼ではない。彼には才能がない。彼は選ばれなかった。彼ではない。

 なみなみならぬ沈黙が流れた。彼は身動きせずにうずくまっていた。
 先ほどまでの大会会場の喧噪がないことに気付いたのは、すぐ後だった。
 訝しく思い、彼は顔を上げた。
(……白い)
 大会会場ではなかった。
 どこまでも白くかすむ無音。そこにはだれもいない。ただ一人、彼だけが存在していた。
 見覚えのないその場所。
「……」
 だが、なぜだか懐かしい。
『一緒に卓球やろうぜ!』
 声ではない声が響いた。数年前に彼を卓球に導いた言葉を乗せて。聞き覚えのある声だった。
(ああ……)

 数年前、ヒーローがいた。
 いつもふざけている癖に、ここぞと言うときは必ず決める。やることなすこと垢ぬけていて、誰もがそいつを尊敬する。
 彼の目標だった。
 そのヒーローがある日、彼を卓球に導いた。
『え?』
『卓球だよ、知らねえの?』
 うれしかった。
 その日から必死で練習し、必死で実力を磨いてきた。ヒーローに少しでも追いつくために。
 そうだ。俺は、ヒーローと同じ場所に立ちたかったんだ。
『負けんな! 男はど根性だかんよ!』

 喧噪がもどってきた。いつの間にか卓球題の前に立っていた。
 手には球とラケット。そして向かいには試合相手。
 審判の方を見ると、早く試合を再開するよう促された。
「……」
 サーブのため、構える。胸の奥にぬくもりが残っているのを感じた。

 相手のスマッシュが台を叩く。驚異的なまでの速度。
 それでも――
「今度こそ!」
 球を追って、彼は床を激しく蹴った。
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 22:59:09.16 ID:ego1eYnSo
ピンポン大好きです
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/02/25(土) 05:32:19.87 ID:QmxMmBVAO
お題
・ジャンルはラブコメ、エロ以外なら何でも可
・主人公は男性、ヒロインは女性

・決め台詞が「なあ…スケベしようや…」
(そのままの意味でも構わないし、そう捉えられた、逆に言ったが違う意味に捉えられたという描写でも構わない)


君達の名作に期待する
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/03/11(日) 21:49:11.05 ID:yAUiukd7o
>>891

 これはもう、間に合わないかもしれない。
 そう思うと、私は無意識に右手のカップを人差し指で引っかいてしまう。
 いつからのものか覚えていない、しかし確実に私に染み付いている癖。
 私は少なからずストレスを感じているのだろう。

「ごっめーん、遅れちゃった」

 そんな男性の声がして、私はそちらに目をやる。
 緩んだ表情の男性が、先程から店内にいる女性の横に座る。どうやら恋人と待ち合わせをしていたようだ。
 人差し指はより強くカップに爪を立てる。

「もぉー、――君ったら時間にルーズなんだからぁ」

 余分な糖度を含む、過分な声が無意味にゆったりと発せられる。
 良いから早く出て行ってくれと思う。こっちはただでさえ焦れているというのに。
 彼らの存在は私には関係の無いことだが、それでも認識の内にあっては完全に無視は出来ない。

「ごめんな、ちょっと飼い犬がさぁ」

「えー? ――君って犬飼ってたのー?」

 どうでもいい雑談が始まってしまった。それが私をより一層苛立たせる。
 そんな話はとっとと済ませてどこかへ行ってしまえ、と言いたくなる気持ちを抑え込む。
 彼らは私には関係の無い人間だ。関わる動機はあっても合理性は無い。
 彼らのことなどどうでも良いが、それでもストレスは少なからず生まれる。

「その犬が本当に可愛くってねぇ」

「もー、私と犬のどっちが」

 その時、音楽が聞こえてきた。
 懐かしい音楽だ、最後に聴いたのは百年ほど前だったか。
 夕方になったから子供は家に帰れ、そんな意味合いの音楽が町中に流れる。
 そしてそれは偶然にも、期限を知らせるものでもある。
 ああ、間に合わなかったか。私は軽く脱力し、緩く息を吐いた。

 午後五時、とある喫茶店の奥で爆発が起きた。
 ごく普通にガスに引火しただけの、ごく普通な爆発事故である。
 店内にいた人間は即死。あのカップルも例に漏れない。

「……まぁ、関係無い人間のことだからどうでもいいけれど。かわいそうな二人」

 しかし私にとって関係のある人間はこの店の主だけだ。彼の魂をしっかり導かないと、上司がまたストレスでハゲてしまう。
 そしてそれ以外――この場合当てはまるのはあの二人だ――の面倒を見るのは、イレギュラー担当の奴の仕事だ。
 実はその彼と飲み行く約束があったのだが、この分だと彼は残業だろう。
 仕方無いから一人で飲むことにして、私はさっさと仕事を済ませて帰るか。酒の肴には丁度良い悲劇だし。
 ああ思い出したら泣けてきた、彼の飼い犬はこれからどうなってしまうのだろう。
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) :2012/03/18(日) 04:27:36.53 ID:eDo9CHk2o
>>767

 その猫が私のところにやってきたのは、ある週末のことだ。
 私がいつものように家に帰ると、さも当たり前といった風に軒下で昼寝をしていたのだ。

「もしもし。どこの猫だね君」

 聞いても返事は無い。まあ当たり前か。
 老いた猫だ。人と(特に男と)違って毛はもさもさだが、なんだかくたびれた座布団のようにべちゃっとしている。
 詳しくないから種類は分からないが、まあ雑種だろう。そこら辺にいそうな感じ。

「もし?」

 言いながら軽く撫でて確認するが、やはり首輪などは無い。
 近年は居場所を知らせるマイクロチップなるものもあるらしいが、残念ながら日本ではあまり普及してないらしい。
 それなりに人に世話されていた感はあるし(撫でても逃げないし)、恐らく飼い猫ではあると思うが。

 一応マイクロチップの確認に医者のところにでも連れて行こうか迷ったが、止めた。
 多分、この猫はもう長くない。
 最初から半ば分かっていたのだが、もう一週間も持たないだろう。

 昔からそうなのだ。
 この家は私が幼い頃から、何故か老猫がよく住み着いていた。
 命の終わりを目前に控えた、老いきった猫が。
 
 なんでも、昔から飼い猫というものは死期を悟ると飼い主の前から消えてしまう。
 そしてその猫達はどこか誰の目も届かないところで死を迎える――らしい。
 定説では体が弱った猫が静かな場所で体を休めようとしてそのまま死んでしまう、ということなんだそうだが。
 実際のところは、猫に聞いても答えてくれないから分からない。

 そしてこの家はその“体を休めるに適した静かな場所”として猫に広く認識されているらしい、何故か。
 確かにこの家に流れる空気は、非常にゆったりしたものだが。猫にもそれが分かるのだろうか。
 まあ何にしろ、この猫も我が家で体を休めるつもりのようだ。

 猫が死を認識しているかどうか、これもまた猫に聞かないと分からないことだ。
 命というものがあり、それがある限りは生きて、それが終われば死ぬ。そんな認識が猫にあるのかは分からない。
 そして聞いても彼らはきっと答えてはくれない。或いは答えてくれたところで私には猫の言葉は分からない。
 猫の本心など、人間には分からない。

 だから、私は彼らに何一つ強制しない。分からないから、分からせようとも分かろうともしない。
 結果としてここで緩やかに死を迎えてしまうのであれば、それを静かに見取ろう。
 何もしないことが、私が彼らにしてやれる唯一のことだと思う。

「まあ、ゆっくりしていくと良いよ。だがエサは安物だぞ」

 彼は弱々しくにゃあと鳴いた。その音の儚さとは裏腹に、響きには確かに非難の色が混ざっていた。
 猫とは往々にして図々しいものである。
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/03/18(日) 05:44:12.52 ID:SpA8ZXHAO
>>922



この病院に入院してもう二十年近い。人間とは不思議な者で死なないと思っている人間の方が圧倒的に死にやすく、今日にも天からお迎えがくると身構えていた方が長生きはするもんだ。
元気に騒いでいた爺も、百まで生きると豪語していた爺もいつの間にかあっさりとその生を終えて逝った。
「なぁ、ナース」
人を名前で呼ばない偏屈爺として有名な儂はいつも余計なお世話に来る若い女に声を掛ける。
「あら、珍しい。お爺さんから声をかけて貰うなんて」
「頼みがある……」
儂は独身者であるが故に女性を嫌っていた。
男尊女卑。古臭いと言われようと戦前はその考え方が当たり前であり、男が頭を下げるなんて言語道断だった。
「ケベって知っとるか?」
「けべ?」
「ふらんすって国のベッドなんじゃよ」
興味が無いのか、隣のベッドの男の子の点滴を変えながらてきとうに相槌を打たれる。
「えろう寝心地がいいらしくての……このベッドをそれにしてくれんか?」
「またまた、無茶言うんだから」
苦笑気味に言われる。
が、儂の思いは燃え上がるばかりーー
「頼む、ナース、儂のお願いじゃ」
「っ!? も、もうっ。お爺さん!? 急に掴まないでください」
「…………駄目かの」
肩を落として呟く。
「…………もし、ですよ。そのベッドにしてくれたら……お爺さんは私を好きになってくれますか?」
「なっ……」
絶句する。孫どころか曾孫くらいの年の差があるおなごが顔を真っ赤にしてそんな事を言うのだ。
「じょ、冗談や嘘じゃないです……もしお爺さんがあたしを好きだって言ってくれるならーー」
顔を俯かせてそんな事を呟く。
「……長生きはしてみるもんじゃの」
いつ天から迎えが来るかそんな事を考えていた毎日だった。
けれども今日からは生きる気力が湧き上がる。
「ケベじゃ、ケベ!!」
「もう、はしゃぎすぎです……」
その時ーー心臓に鈍い痛みが走る。
「うっ…………ぐぁっ」
「お爺さん!?」
なるほどーーもう、そんな時間なのか。
儂は最後にナースの手を取る。








「なぁ…スケベしようや…」
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/03/28(水) 17:07:13.75 ID:yeH7LGcTo
>>909

 僕は大学の卒業式を終えて、大学前の公園に来ていた。大きな桜の樹のある広い公園。
 冬の終わり。すこし冷めた空気の中、春を待つ気配を漂わせながら桜は立っていた。まだ開花はしていない。
 近くまで歩いていくと、樹の下に誰かがいるのが分かった。
「あら元気ない顔ねえ」
 その老婦人は、まるで顔見知りのように笑顔で声をかけてきた。
「……どこかでお会いしましたっけ?」
「そんな顔してると幸せが逃げちゃうでしょ」
 老婦人は完璧に無視してみせた。あまりに自然な流し具合だったので戸惑うことすら忘れた。
 そんな僕を尻目に、婦人はカーディガンを羽織り直すと頭上に広がる桜の枝を見上げる。
 つられて視線を上げると、桜の花のつぼみが目に入った。小鳥が一羽飛んできて、そのそばにとまった。

 綺麗な桜の下には死体がある。
 当時だってそんなたわごとを信じるほどに子供ではなかったが、そこに何か心惹かれるものを見出せないほどに子供でもなかった。
 桜の根元には死体がある。

「学生さん? 今日卒業の」
 顔を下ろした老婦人が問うてきた。首肯すると、婦人はおめでとう、と言う。僕はそれには答えずに訊き返した。
「ここで何をなさっているんですか?」
「別に何も。何かしてなくちゃいけなかった?」
「そんなことは」
 ありませんが。言い切る前に老婦人は「実はね」と口を開いた。
「わたしは桜の精なのよ」
「は?」
「今年は寒いのが長かったでしょ? だから咲くのが遅れちゃって」
 老婦人は呆気にとられた僕をそのままに話を続ける。
「もうひと踏ん張りなんだけれど」
「それは、大変ですね」
 頭のおかしい人。普通ならばそう思うのだろうが、老婦人の雰囲気がなんとなく“それらしかった”ので僕は素直にうなずいた。
「何かお手伝いしましょうか」
「気持ちだけ頂いておくわ」
 婦人はため息を一つつく。
「明日には開花出来るかしら」
「……咲くといいですね」
 老婦人が微笑んだ。そうね、と。

 夜の闇の中、桜の樹の根元にシャベルをつきたてた。硬い土がそれに反抗した。
 かまわず土を掘り返す。数十分。汗の噴き出す額を涼しい風が冷やす。
「大変ねえ」
 声がしたのはその時だ。肩越しに振り返ると老婦人がそこにいた。夜の闇の中で、そのやわらかい雰囲気はどこか燐光を纏っているようでもあった。
 僕が黙っていると、婦人は首を少し傾けた。
「こんな夜更けになにをしているのかしら」
「死体を埋めるんです」
 僕の乾いた声に、しかし彼女に動じた様子はなかった。
「あら誰の?」
「僕のです」
 そうなの。老婦人は穏やかに目を細めた。
 そのまま彼女は何も言わなかったので、僕は穴掘りを再開した。
「僕が死んだら穴を埋めてもらえませんか」
「引き受けてもいいけれど、理由を訊く権利はあると思うわ」
 僕は手を止めて少し考えた。
「くだらないことです。あまりにくだらなくてありふれているので、特に聞く必要もないと思います」
「そう」
 彼女はそれ以上追及してこなかった。拍子抜けはしたが、手は止めなかった。
 誰も僕には興味ない。そのことにはいつしか気付いていた。
 友人はいないではなかったが、どれくらい親しいつき合いをしていたかを問われれば、僕は口をつぐむほかない。
 自分が決定的に一人であることを理解したのは実はつい最近だった。
 桜の幹が黒々としていた。

 穴が適当な深さになった。俺はシャベルを放って、懐からナイフを取り出した。それを首筋にあてがう。瞼を下ろす。
「桜はね」
 唐突に老婦人が口を開いた。
「桜は死体の血で色づくわけではないの」
 僕は聞かずにナイフを握る手に力を込めた。
「目を開けて」
 その言葉に従ったのはただの気まぐれだった。最後に映る景色はなんだろう、と気になったのだ。その視界が真紅に染まった。
 死んだのかと思った。上を向いたままそう思った。だが違った。
「桜は、死人を慰めるためにそのつぼみを解くの」
 視界を埋めたのは咲き誇る桜の花だった。満開の。
「それが……どうしたっていうんですか」
 呆然と、呟く。何か深い意味を思って発した言葉ではなかった。ただ、呆気にとられながらも思ったのだ。これは僕の慰めにはならない。
「生きて」
 その声を共に意識を失った。
 翌日、桜の花びらに包まれて目を覚ました。しばらくぼうっとして、それから再び目を閉じた。
 何も考えたくない。それでも、朝のまだ弱い日射しは、どこか優しかった。
927 :お題>>922 [saga sage]:2012/05/07(月) 18:49:26.50 ID:Vqt/pioro
「ねえねえスケベしよう!」

 じりりりり。目覚ましが鳴る。夢から覚める。
 僕はいつものようにそれを叩いて黙らせた。
(今日は……あいつと一緒に遊園地に行くんだっけか)
 寝起きの頭でぼうっと考えあくびを一つ、改めて目覚ましの表示を確認すると待ち合わせまでもう時間がない。黙考すること約五秒。
「まいっか。あと十時間」
「なんでよ!」
 枕に頭をゆだねた僕のみぞおちに、鋭い衝撃が叩き込まれた。僕はおぼげと短く悲鳴を上げる。
「うぐぐっ……なんでお前がいるんだ」
「あんたがなかなか出てこないから!」
 ベッドから半分ずりおちながら見上げると、ジーンズ、ジャケットと目に入って、活発そうなショートヘアにたどり着く。怒り狂った視線が僕を突き刺していた。
「わたしが待ってるのに二度寝ってどういうことよ!」
 幼馴染の怒声を聞きながら腹をさすって、ようやく声が出るようになったところで呟く。
「"お前が待ってるのに"、じゃなくて"お前が待ってるから"だよ」
 二度目の悲鳴を上げる事となった。

 春の日差しが暖かい。優しい光で肌を撫で、少し暑いくらいにも感じる。僕は眩しさに目を細めながらまだ引かないみぞおちの痛みに辟易としていた。
「急いでよ。時間がもったいない」
 あんたが寝坊したせいだからね、と早足で遊園地の入口に向かう幼馴染を、僕は半眼で見やった。
「お前の折檻がなければもう少しは早かったと思うんだ」
「屁理屈はいらないの」
「いや屁理屈じゃないけど」
 だいたい、と僕は続ける。
「そんなに時間が気になるなら一人で来ればよかったんだ。僕が朝弱いのはよく知ってるだろ」
「あんたと一緒に来るって条件で友達に入場券を譲ってもらったのよ」
 僕は訝しく思って眉を寄せた。それって友達になんの得があるんだ。
 「わたしだって知らないわよ」と彼女は振り向かずに言った。その時だけ若干歩きがぎこちなくなった。嘘をついたときの彼女の癖であることを僕は知っている。
 遊園地に入って、さて僕たちは立ちつくした。
「……どうする?」
「どうする、って……」
 呆れて僕はうめいた。
「だって。遊園地なんて初めて来たもの」
 だが分からないでもない。僕たちは電車を乗り継いで賑やかな界隈に出てきた。つまり割に田舎じみた場所に住んでいるので、こういうところに慣れてない。
 まあだから、話を振られたところで僕にだってどうしようもない。
「とりあえず」
 と僕は視線をさまよわせて、
「あれにでも、乗ってみる?」

「つまんなかった」
 観覧車から降りた彼女が言った。
「あんたってセンスないよね」
 僕はむっとして口を結んだ。
「初っ端から観覧車って。こういうのって締めに載るもんじゃないの? 夕方とかにさ」
 だが乗った方も乗った方だ。僕が言うと、彼女は一蹴した。
「あんたの意思を尊重してあげたのよ」
 まったく。ものはいいようだ。
「しかも恋人同士の乗り物じゃない。まだ早いっつーの」
「はいはい」
 僕はうんざりと手を振って――はたと気づいた。まだ早い? 彼女の方を見やると、もうこちらに背を向けて歩き始めていた。
 その後もぱっとしなかった。乗るもの入る建物みんな面白くない。
 きっとこいつとは相性が悪いのだ。こういう場所は本当に仲の良い者同士で来た方がいいに決まってる。
「もういいわよ」
 僕を睨みあげて彼女が言い放った。
「そんなに文句タラタラなら帰って」
 言い終わるや歩き去っていった。見ていると、お化け屋敷にずかずかと踏み込んでいく。
(ホラー映画とか苦手なくせに)
 僕はため息をついてそちらに背を向けた。

「ねえねえ、スケベしよう」
 とは、僕たちが小さい頃に、僕たちの間だけで流行った言葉だった。
 僕たちなりのキスの隠語で、ちょっといやらしくしておふざけ効果を狙っていた。気恥ずかしさを紛らわせる意味もあったように思う。
 僕たちはたまーに、「スケベしよう」と言ってはキスをしていた。
 あの頃はあいつも結構可愛げがあった。どうしてこういやなやつになってしまったのか。
 出口が見えてきた。僕はゆっくりと歩をゆるめていった。
「大人になったら結婚しようね!」
 これも事あるごとに二人で言い合っていたことだった。しばらく僕は黙考して。それから踵を返した。

 お化け屋敷の前まで行くとなにやら人だかりができていた。
 怪訝に思って近付くと、人の会話が耳に入ってくる。
「女の子が気絶したんだって」
 人の壁をかきわけ進むと果たして彼女が担架に寝かせられていた。
 友達を名乗って近付くと、お化け屋敷のスタッフらしき男性が説明してくれた。
「いやえっと、わっと脅かしたらこう、ぱたりと」
 つまりはそういうことらしい。
 膝をついて肩をゆする。声をかける。
「おい、起きろって。人が見てるだろ」
 きっと物珍しさに写メも撮られてる。ちょっとムカついた。独占欲だろうか。
 ゆすってゆすって起きなくて。僕はばかばかしくなって耳元に口を近づけた。
「なあ……スケベしようや……」
 幼馴染はその瞬間目をぱっと目を開くと、僕を見つめ、それから顔を赤くして僕の頬を張った。
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/05/09(水) 01:41:25.58 ID:07/0XyjGo
お題:妄想ヒーロー

本当はただの人。しかし、自分の妄想を信じ込むことによってヒーローに…?

929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/09(水) 08:51:50.00 ID:un1KpVh8o
>>928

 彼の毎日は至極平坦である。
 いつものように朝早く起き、朝食をとり、出勤・帰宅を繰り返す日々。
 容姿もぱっとせず野暮ったい眼鏡によれたスーツ。
 平凡をそのまま人型にしたような男だが、実は彼には誰にも言えない秘密があったのだ!

「や、やめてください……」
「むっ」
 出勤の道すがら、彼は一人の女性を見かけた。
 めったにお目にかかれない見目麗しき可憐な女性だった。彼女はなんと大柄な悪漢にからまれていた!
「へっへっへ。お嬢さんちょっとお茶でもしませんかぁ?」
 なんという破廉恥! なんという恥知らず! ついでに言えば誘い文句が古すぎる!
 悪漢は下卑た笑いを洩らすと、女性の腕をむんずと掴んだ!
 女性は泣きそうに顔をゆがめて周りを見回し――眼鏡越しに出勤途中の彼と目があった。
 さて、平平凡凡たる彼には二つの選択肢があった。
 一つは全てを見なかったことにして会社に出向く道。そしてもう一つは――
「やめたまえそこの君!」
 果敢にも悪漢に挑み、女性を助け出す道だ!
「あぁん? なんだてめえは」
 悪漢はトゲの生えた肩パッドとモヒカンを最大限みせつける格好で平凡男に向き直った。いや……もう平凡男ではない。
「変身!」
 さっと眼鏡を取り払い、懐からタイムカードを取り出す。違う。それはただのタイムカードではない!
 ぴかっと光るヒーロータイムカード。目のくらんだ悪漢が瞬きの後に見たものとは……
 白を基調としたヒーロー服。逆立ったヒーローヘアスタイルにヒーローサングラス。ヒーローブーツにヒーローウォッチ。
 何でもヒーローをつければ許されると思いこむ怠慢がそこにはあった。
「ヒーロー見参!」
「ぬう、お前は! 最近ここらをシメているヒーロー野郎!」
「いかにも! いいか悪党、今去れば許してやる。しかしやると言うならば……」
「ふん! 御託は要らねえ! 行くぜ!」
 二つの影が交錯した!

「ふぅ……今日もいい妄想だった」
 朝の道の上にあって満足な顔で汗をぬぐう平凡男が一人。
 快活に笑みをもらし、ふとそれを誰かに見られなかったかと心配し、それがないと分かるとまた笑みをもらす。
「いやあ強敵だった。まさか秘奥義・モヒカンチョップを使ってくるとは」
 そう、全ては彼の妄想だったのだ。
 彼は所詮平凡なサラリーマン。ヒーローではないし、この平和な日本にはモヒカントゲ肩パッドの悪漢もいないし、ついでに言えば可憐な女性も少ない。
 妄想は良い。そう言った悲惨な現実から僕らを助け出してくれる。
 と。
「や、やめてください……」
「へっへっへ。お嬢さんちょっとお茶でもしませんかぁ?」
 角を曲がったところで女性のか細い声と男の野太い声がした。そちらを見やると……
「……なんだあれ」
 モヒカントゲ肩パッド、ついでにナナハンバイクの男が仰天レベルの美人さんをナンパしていた。
「あぁん!? なんだお前?」
 ふとこちらに気付いたモヒカンが大声を上げる。
 平凡男にはひとつしか道はなかった。すなわち全てを見なかったことにして――
 そのとき胸元からハラリと何かが地面に落ちた。
 見下ろすと、そこには妄想の中と寸分たがわぬヒーロータイムカード。
「え……え?」
 彼の前にもうひとつの道が拓かれた! すなわち!
「助けてください!」
 女性の声が響く。彼はカードを拾い上げた。
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/09(水) 08:59:02.19 ID:un1KpVh8o
お題からちょっとずれた
あとタイムカードをよく知らないから勘違いしている気もする
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/09(水) 20:47:50.75 ID:I3aVBfsIO
やべぇ、思いつきのお題だったのにかなりwktkする…

続きが読みたくなったよ!
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/09(水) 22:01:35.88 ID:DHhhu2Lzo
>>928

 俺くらいの年頃の奴にはありがちだと思うが、よく「教室にテロリストが来たら」という妄想をする。
 最新の銃器で武装した百人規模のプロフェッショナル達が、学校全体を人質にとるのだ。

 そこで颯爽と立ち上がるのが俺である。
 俺は音のような速さで犯人達を次々となぎ倒す。銃弾を視認して避け、ナイフを裏拳で叩き折る。
 ただ一人のヒーローの前に、テロリスト達はなす術もなく制圧されてしまう。

 そこまで考えて俺は窓の外を眺めて溜め息をこぼす。分かっているのだ、そんな器では無いことくらい。
 現実とはそんなに都合の良いものではない。例えテロリストなんて来た所でたかが知れている。
 俺は無力だ。

「現実なんてそんなもんだよな。はぁ、ヒーローになりてぇー」

「動くな!!」

「おーい、馬鹿なこと言ってないで授業に集中しろー」

 先生に叱られて前を見ると、なんともプロい感じのテロリストが今まさに教室を占拠しようとしていた。
 数は十と三。俺は一瞬、もとい入ってくる前からずっと呆けてしまっていて、それが余計だった。

 リーダー格であろう男が、教壇の前に立つ。そして何かを言おうとした瞬間にはもう叩き伏せられていた。
 今のは委員長のデコピンだ。デコピンで一万人抜きの記録を持つ男だから、遠隔デコピンくらい余裕だろう。

 事態が把握しきれていないだろう犯人達は、しかし素早く銃を構えてこちらを威嚇する。
 しかし更に素早かったのは隣の……名前覚えてない女子だ。だって可愛くないんだもの。
 彼女は銃口がこちらを向いた瞬間に全ての銃を『掴み』、全て窓の外へと放り投げた。
 相変わらずなかなかの流麗さだ。掴むだけならクラスでも上位の方だろう。

 だがテロリストは挫けない。動揺は隠せないものの、即座に予備の銃器やナイフを取り出した。
 そこでようやく俺が走る。音を追い越した俺の拳は、防弾チョッキの上から衝撃を叩き込む。
 呻いて倒れる犯人を通り過ぎ黒板に着地した俺。その左右から、別の犯人が俺に向けて武器を構えた。
 片方はナイフ、片方は銃。俺は一瞬考えて銃のほうを向き――瞬間、銃弾が発射される。

 殆どゼロ距離から放たれた銃弾。まあぶっちゃけ止まって見えるので、無難に避けて顔面をぶん殴る。
 さて次はナイフだと思い振り向くが、既にナイフの奴は風紀委員の鋏で校則を遵守させられていた。
 一息ついて教室を見回す。前から入ってきた八名、後ろから入ってきた五名。その全てが制圧されたいた。

「……現実なんてこんなもんだよな」

 俺はもう一度溜め息をこぼす。やっぱり現実とはそこまで甘いものでは無い。
 音速越えようが銃弾見切れようが、そんなのはヒーローの器では無くただの人でしかない。
 テロリストを倒したくらいで誰が驚くのか。
 ヒーロー名乗りたかったら突然変異の巨大怪獣くらい一蹴出来ないといけないのだ。

「辛勝なら出来る自信あるんだけどなぁ」

「おーい、授業中に席を離れるなー」

 先生から亜光速の拳骨を貰い、俺は廊下の窓から空中に投げ出される。
 しょせん俺なんて、妄想の中でしかヒーローになれない小物なのだった。ああ世知辛い。
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 14:32:17.10 ID:wnylMJ4Jo
>>105

 昇降口から出ると、重たい空が待っていた。
 女子学生は振り仰ぎ、傘を持ってこなかった事を思い出した。
 家に着くまでには間違いなく降りだすだろうな、と憂鬱に予想する。
 小さく自嘲の笑みを浮かべた。最近ついてないことばかりだ、と。

 特にこの間のピアノコンクールは上手くなかった。
 いつものように指が動かない、と焦り、その焦りがまた別の焦りを生み。
 一番になれる力はあったのに。そう言って悲しく笑う母の顔を思い出した。

 鼻先に冷たいものが跳ねた。
 雨粒が地面を静かに叩く音が次第に聞こえ始め、大きくなる。
「どうしよう」
 これからどうしよう。
 続けることに意味はあるか。折れた自信を抱えたまま、自分はまだ進めるか? 自問する。
 しばらく無言で考えて。
 彼女は雨の中に飛びだした。
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/05/12(土) 04:59:17.48 ID:GzWJzT9Do
>>109

 夜の校舎裏にじじっと音がして、夜にも鳴く蝉はいるんだねと君は笑った。

 難しいと思っていたけれど、夜の学校に忍び込むのはそれほど骨ではなかった。
 田舎の小さなものなので、セキュリティーにも力は入っていない。
 一般に解放されて、昼は多くの人がいたであろうプールにも誰もいなかった。僕と君は存分に泳いで楽しんだ。
 仰向けに浮かんで一緒に空を見上げる。天の川がひどく綺麗に見えた。
 どんなに離れてしまっても。と君が呟いた。見上げる星は一緒だね。

 校舎裏の小高い丘に寝そべって、僕らは再び天の川を眺めていた。
 でも僕は時々ちらちらと君の横顔を盗み見ていた。
 月明かりに照らされて、それは天の川と同じかそれ以上に美しく見えた。
 手をそろりと動かす。君の右手のそばをさまよって、でもそれ以上勇気は出ずに引っこめようとした。
 ふんわりとしたぬくもりが僕の左手を包んだ。びっくりして見やると、君は笑って僕の手を握っていた。
 好きだよ。脈絡もなく僕は囁いていた。僕は君が好きだ。
 彼女は笑顔を崩さずにこちらを見つめていた。
 でも、それはどこか悲しげにも見えて、僕は次第に目頭が熱くなるのを感じた。

 夜の校舎裏にじじっと音がした。君は僕から目をそらさないまま、夜にもなく蝉はいるんだね。そう笑った。
 どんな暗闇の中でも、鳴かずにはいられなかったんだろうね、と。

 ああ、どうしてこんな時ばかり星が綺麗なんだろう。
 ぼんやりと星の明かりが空に滲む。遠い遠い空。
 君が遠くに行ってしまっても、やっぱりそこで輝き続けるんだろう。
 そうだね。僕は見上げるよ。どこかで君も同じ星を見上げていることを願って。
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/14(月) 14:12:16.85 ID:FCEbJPeuo
>>110

 春のうららかな日差しが、ビルに挟まれた広いストリートに降り注いでいた。まだ日が昇って二時間ほどだが、これから暖かくなるであろう気配を漂わせている。
 街路の木々は風に葉を揺らし、小さなささめきを生んでいた。
 そして日に照らされてゆっくりと温度を上げるアスファルト。その上を駆け抜ける一人の男がいる。
「くそ……いそがねえと!」
 彼は小さく悪態をつき、速度を上げた。

 既に額からは汗が吹き出し、必死の形相で走り続けている。
 真っ直ぐ続く街路。メインストリートの舗装を蹴り剥がす勢いで疾走する。
 と。二十歩ほど先の角から、一人の女性が姿を現した。
 男は気づいて速度を緩める。女性はメインストリートの真ん中まで歩き、男の前に立ちふさがった。

「おはようございます、旦那さま」
 メイド服姿のその女性が優雅に一礼する。男は完全に立ち止まると、朝の挨拶に応えることなく彼女に対して構えを取った。
「っかしいな。確かに悟られずに出たはずだったんだが」
「あの方の命令ならば、どんな瑣末なことでも見逃すことはいたしません」
 彼女はくすくすと笑う。
「旦那さまを止めよ、とのことです」
「邪魔はするなよ。俺が魔術省勤務の執行官だって知らないわけじゃないだろう?」
「ええ、これ以上なく存じ上げております。ですが」
 笑みにほそまった目の奥の眼光が、表情はそのままに鋭く尖った。
「あの方の命令は絶対です」

 男は舌打ちすると、一つ二つのことを頭の中で転がした。
 すなわち、時間がないということ、そのために衝突を避ける方法はないかということ、そして――
 もし時間に間に合わなければ死ぬよりもつらい苦行が待っているということ
 男は数秒を置いて。戦いのために飛びだした。

「ふッ!」
 飛びだした勢いのまま男は拳を突き出す。
 牽制の一手だが、避けるために道が開ければよし、開かずに受け止められればそれは次の一手に結びつくという一撃だった。
 メイドは案の定姿勢を下げると受け止めてみせた。男は次の一撃を叩き込もうとし――飛び退いた。
 
 一瞬前まで男の首があったいちを何かが飛び去った。風切音だけを残したそれは、恐らく吹き矢の類だろう。
 目だけを動かし飛んできた方向を見やると、黒服の男たちが数人、固まってめいめいに飛び道具を構えていた。
「金剛石壁!」
 叫び、地面に手をつくと、地中の鉱物が凝縮してできた壁が立ち上がり飛んできた凶器らを防いだ。

 が、気は抜かずに地面を転がる。追ってきていたメイドの一撃が空を切った。
 すばやく立ち上がって低く蹴りを放つ。踏み込んできていたメイドの足を捉えてその動きを潰した。
 メイドが動揺する。動揺したならば、技が鈍る。鈍れば次の一撃は防げない。
 鋭く呼気を吐き、両手を突き出す。メイドの腹部に手の平が埋まりその身体を弾き飛ばした。

「くっ!」
「へっ、ざまあ!」
 言って倒れた彼女の脇を駆け抜ける。
 しかしメイドはまだ諦めていなかった。
「させません!」
 叫びと共に街路樹が振動を始めた。そして間をおかず、見える範囲にあるそれらが、めいめいの場所からすっぽ抜けた。
 空中に浮かんだ木々は走る男の先に飛び、集まると、またたく間に巨人の姿を取った。
「樹人! その人を止めなさい!」

 一拍置いて――樹人とやらは動きが鈍かった――樹人が拳を振り上げる。ただ、避けるのは難しくない。
 しかし。男は真っ向からその軌道に飛び込んだ。
「はっ! お前の本気か。懐かしいな!」
 彼女が本気ならば、こちらも本気でそれにこたえなければならない。男はそう決めた。
 樹人の拳が勢いよく振り下ろされた。男はだが足を止めない。代わりに口を開いた。
「金剛石刃!」
 途端、男の掲げた手の先に、不可視の力場が生じる。ただ、不可視とはいえ、光の屈折により、ぼんやりとそれは見えなくもない。
 ダイアモンドの刃。そう見えた。

「はッ!」
 一閃。轟音が響く。地面も少しは揺れたかもしれない。
 樹人が裂けて、断片が地面に降り注いだ。
 呆然とするメイドたちを尻目に、男は疾走を再開する。
「悪いなこっちは急ぐんだ! なにしろ爆安缶詰市が俺を待っているんでな!」
 叫んで角を曲がる。
 そうだ。自分は急がなければならない。これを逃せばメイドの言うあの方――彼の妻が作る殺人料理を口にしなければならないのだ。
(少しは上達しろよな……)
 彼はため息をつくと、食糧確保に向けて驀進した。
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/18(金) 15:09:09.39 ID:kFGwZ3HLo
>>112

 抜けるような青空というけれど、今日の空はそれでは表せない程に澄んで高く、遠い宇宙まで見通せそうに思えた。
 高校の屋上は周りの建物よりもそれに少しだけ距離が近い。
 油断すれば地球の重力がわたしたちを地面に括りつけるのをサボって、天高く吸い上げられそうな気分にもなる。

 昼休みを過ぎてさらさらと陽光が降り注ぐその場所の端っこ、フェンスを越えて校舎の縁。そこに人影が見えた。
 うちの高校の制服を着て、少し身体が揺れているのは足をぶらぶらとゆすっているからだろうか。
 彼は身体を大きく後ろにそらし手をついて、空を見上げていた。

 ともすれば死のにおいをそこに感じないでもない。
 少し間違いが起きればまっさかさまにはるか下の地面にたたきつけられてしまうだろう。
 なのにそこにあるのは括りつけられることを良しとしない、底抜けの自由さだった。

 わたしはため息をついて口を開いた。
「そんな所にいたら危ないぞ」
 彼は少し首を傾けて、でも振りかえらないまま返事を返してきた。
「委員長」
「授業は出ないの?」
「そっちは?」
「あなたを呼び戻すように言われたの」
「なるほど」
 彼は言って、しかし立ち上がる気配は見せない。

「落ちるわよ」
「転落死? それとも落第のこと?」
「どっちも」
 言いながらわたしはフェンスに近付き、それをはさんで彼のちょうど後ろに立った。
 空を見上げるその透明な目が見下ろせる。わたしは彼の視界に入っているはずだったが、彼に反応はなかった。

 上空からヒバリだろうか、鳥がさえずる声がかすかに聞こえる。
 わたしも彼に倣って見上げてみたが、その鳥の姿を見つけることはできなかった。
「そっか。気をつけないと」
 何のことか分からず視線を戻すと、彼が立ちあがっていた。縁ギリギリで、わたしは背筋が凍る感覚を覚えた。
「転落も落第も嫌だしね」
 うーん、と彼は伸びをする。

 そう言う割にかなりのんきに見えたけれど、わたしはそれどころではなかった。
「危ないでしょ! 早くこっちに――」
「じゃあ戻ろうか」
 ピョン。彼の姿が消えた。

 全く予想をしていなかった事態に、一瞬頭がフリーズした。
 それから一気に血が下がる感覚を覚え、やっと何が起こったかを理解する。
 慌ててフェンスに飛び付きのぼって上から覗き込む。
 けれども、そこから見える光景は最悪の想像とは遠かった。

「どうしたのさ」
 どうやら教室の窓の外に張り出したベランダのような足場に、彼は着地したらしい。
 わたしは脱力してついフェンスの上から落ちそうになった。
「委員長も早く来なよ」
 言って、彼が姿を消す。がらがらと窓を開ける音がする。
 ただいま戻りましたー、とか声がして、一瞬教室の呆気にとられた静寂の後、先生が怒鳴る声がする。

 まったくもって、自由なことで。
 わたしはため息をついて、フェンスから降りた。
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 15:11:05.15 ID:kFGwZ3HLo
底抜けの自由さを表現しようとしたけど上手くいかないと独り言

それにしてもあと63レスとは、結構先が長いや
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage saga]:2012/05/24(木) 23:48:14.54 ID:8oo2UOh+o
底抜けの自由さを表現するなら、学校からエスケープをすればいいのではないか。
と思ったら、出席日数が足りなくて落第なんだね、面白い。

前半と後半の雰囲気が変わっているのに、青空の下で一つの物語が纏まっているのが良いね。
好きな雰囲気でした。

939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/25(金) 11:49:28.20 ID:GdeuJPpjo

>>159

 瓦礫を押しのけたその下に、彼女はいた。
 完膚なきまでに押し潰されて、既に面影は留めていないものの、体躯の小ささからかろうじて娘の方だと分かった。
 途方もない悲しみが押し寄せてくるが、泣いている時間はないと彼は自制した。
 まだ妻の方を探さないとならない。だから泣くのは後。
 擦り切れた手を痛みにこわばらせながら、それでも彼は瓦礫に挑み続けた。

 これは昔のこと。八年も前の話。

……

「どう思う、アルジャーノン。わたし悪くないわよね?」
 暗闇に沈むその場所で、彼女は小さく囁いた。
 四角く光る、ディスプレイと思しきわずかな光源以外にはそこを照らすものはない。
 だが、とりあえず彼女は不便を感じてはいなかった。

「ええ? あなたまでそんなこと言う? ひどすぎじゃないそんなの」
 相棒の返事を聞いて、顔をしかめながら彼女はパネルに指を這わせる。
「アルジャーノンたらいっつもパパの肩を持つんだから」

 それを聞いて相棒がキーキーと抗議してくる。彼女はうんざりとそれに応じた。
「はいはい分かったわ。今度からは正式にお小遣いをもらえるようにする。これでいいでしょ?」
 がんばってるのはわたしなんだからへそくりくらい多めにみてくれてもいいじゃない。
 ぼやきながらいくつかパネルを叩くと、ディスプレイの表示が変化する。
 彼女は口笛を鳴らしてその横にある扉の前に立った。

 低い音をたてて開いた分厚い扉の向こうはやはり暗闇だった。
 踏み込むと、足音の響き方からかなり広い空間になっていることが分かる。
「すっごーい!」
 その空間にうずたかく積まれているそれを見て、彼女が歓声を上げた。
「これ全部金塊よ。これだけあればママを作る分には絶対足りるわね!」
 わたしもパパに褒めてもらえるし、お小遣いもたっぷりもらえるわ。
 そう付け加えて振り向いた瞬間、ライトの明かりが彼女を照らし、衝撃がその身体を貫いた。

 銃声は倒れると同時に聞こえた。さらに数発の銃弾が撃ち込まれ、彼女の身体が跳ねた。
「……金庫破りたぁ、なかなか時代がかってるな」
 近付いてきた足音は二人分。片方が呟き、片方は無言。
「死んだか? 死んだよな?」
 確かに彼女はもう動かないように見えた。

「警報は作動してないが、なぁんかおかしいと思って来てみたらこれだよ」
 うんざりと例の男が喋りつづける。
「ここまで侵入を許しちまったんだから、きっと明日ボスにどやされるぜ。やってらんね」
 無口な方の男は、ゆっくりと彼女の方に近寄ってきた。その身体運びに油断はない。

「おい?」
 不審に思った饒舌な方の男が声を上げる。
 無口な男は彼に少女の腕を指示して見せた。銃創がある。しかしそれは……
「なんだ? 機械? ……アンドロイド?」
「あーもう! また傷がついちゃったじゃない!」
 少女の声が上がった。

……

 かつて妻と娘を失った男は、彼女らを取り戻す事を誓った。
 あらゆる方法を模索し、血を吐くような試行錯誤を重ね、たどりついたのはアンドロイドとしての疑似蘇生だった。
 五年の歳月かけ、彼は"娘"の方を作り上げることに成功した。

……

「アルジャーノン、やっちゃって!」
 二人の男めがけて、彼女の肩から小さい影が跳び上がる。
 彼らは反応しようとしたのだろう。しかし間に合うことはない。
 破裂音が響いた。それから焦げ臭いにおい。
 ネズミ型ロボットから発せられた強烈な電撃をくらって、二人は倒れた。

 数分後。
 大きなトランクを引きずって、裏路地を少女が歩いていた。
「そうよね。あれだけ金塊がたくさんあっても、持ち出せる量は限られてるわよね」
 うんざりとため息をつき、古びたトランクを振り返る。
「ボディにも傷がついちゃったし、修理代もひいたらあんまりのこんないかなあ……お小遣いの分」

 肩に乗った相棒が再びキーキーと声を上げる。
「まあ確かに。お仕事ってそういうものよね。我慢するわ」
 お小遣いをためておしゃれして、母親作りにかかりきりの父親を振り向かせるという彼女の野望が達成されるのは、まだまだ先になりそうだ。

 東の空が白み始めていた。
 さしあたっては誰かにみられる前に隠れ家に戻らなければならない。
 彼女は歩みを速めた。
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/29(火) 14:55:45.63 ID:7t3n70cXo
>>160

 乾いた砂の上に、風化によって朽ちかけた石がある。
 ここに置いたときには一抱えほどあったはずのそれだが、今はところどころ削れてなくなってしまっているようだった。
 だが、目印としての役割までは放棄していない。
 あれからもう一年、と彼は確認した。

 見渡す。辺りはどこまでも乾ききっており、かつては都市を形成していたであろう何かの外壁や建材が砂の合間にちらほら見えるのみだ。
 吹く風も生命を拒むように冷たく、無愛想に過ぎ去っていく。
 彼にしても無骨な保護服を着こまなければここでは生き延びることすらできない。
 世界はそんな、致命的なまでに亀裂を広げていた。

 再び視線を足下の石に落とす。
 それは特に何か加工がなされているわけではない。ただ手頃な石を置いただけのものだ。
 彼が一年前、そこに置いた。
 友人の人間としての生が終わった場所を示す目印。墓標だ。

 あの日、その友人の"死"を悼んだのは彼一人だった。
 隊の仲間にはその余裕はなかっただろうし、彼とてそう大きく違いはなかった。
 だが、あの事故のあと、彼は嗚咽を抑えることができなかった。
 そして今この瞬間も後悔がじくじくと心をさいなんでいる。
 だから自分には事を為す義務があると思うし、使命もまたあると信じている。

 荒野に砂埃が舞い上がった。先ほどまでもたびたび視界を曇らせていたが、今回のそれは一際大きかった。
 スモッグが空を覆ってうす暗いが、砂の幕の向こう側に影が立ち上がるのが見えた。
 通信機に囁く。目標発見、行動を開始する。
 砂埃が吹きすぎると、そこにいたのは人間に似ていて、しかし決定的に異なる何かだった。

 彼は脇に置いてあった小銃をとりあげた。ゆっくりと移動を開始する。
 目標には気づかれていたろうが、まだ距離があった。
 マスク越しで視界は狭い。その真ん中にそれが映っている。
 慎重に、しかし十分に近付いたところで、引き金を引いた。
 手の中に衝撃が弾けた。

 だが、それは発砲によるものではなかったようだ。
 既に手中に小銃はなかった。遠くで重いものが砂に衝突する音が聞こえた。
 同時に力を受けて背中から倒れ込む。
 もがくが身動きが取れない。目の前には異形。

 それは人型をしているが、人ではない。
 ぬらぬらと光る体表。四肢は人間と同じだが、異様に長く、爪が鋭い。
 今も彼の保護服に食い込み、動きを封じていた。
 マスク越しに荒い息が吹きかかる。むき出した歯茎が視界に入る。
 彼は背筋に冷たいものが走るのを感じた。

 人間が怪物化するようになってもう長い。
 それは何らかの汚染によるものだと言われているが定かではない。
 ただ、確かに、一定の割合で、人々は人間をやめていった。
 目の前の異形がその成れの果てだ。
 かつて友人だったこともある。しかしもうすでに友人ではない。決して。

 あの時、苦しみながら変貌していく友人を前に、彼は何もできずにいた。
 何かするべきだった。それがたとえ友人の命を奪うという選択でも、友人が望む限り、やってやるべきだったのだ。
 今も後悔している。

 銃声が響いた。
 目の前の異形が飛び退った。
 駆け寄ってくる足音がする。抱き起こされて、無事を問われる。
 その上司に彼は懇願した。俺にやらせてください。俺が、やるべきなんです。
 上司は何も言わなかった。ただ、大振りのナイフを一本取り出して、彼に渡した。

 彼は咆哮して駆けだした。異形の速さに敵うわけはない。
 それでもやらなければならないことはある。
 肩に喰らいつくかつての友人、その胸に彼は、ナイフを突きこんだ。
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/14(木) 16:47:23.53 ID:Rx9kMhLIo
>>260

 薄暗がりに細く吐息を吹く。冷えた空気がすぐにそれを白く染めた。
 儚げに漂い、ぼんやりと渦を巻くように消えていくその靄は、彼の気持ちを代弁しているようにも思える。それを横目に、彼は歩き続けた。
 気温は低い。コロニーの外縁に近付くほどにそれは顕著になる。
 数十年前に厚い灰の層によって閉ざされた空からは熱エネルギーの供給が極端に少ない。
 外界は酷く凍えている上、コロニーの温度調節機能が縁まで回りきらない、それゆえの現象だった。
 コートの襟もとから忍び込む冷気に、彼は身を震わせた。

 歩く道にはひびが入り、ところどころ隆起し舗装がはがれていた。道に沿って並ぶ建物も損壊が激しい。
 薄闇がそこかしこに蔓延り、彼の孤独を必要以上に強調する。周りに彼以外の気配はなかった。
 いや。
「こんな夜更けにお出かけか坊ちゃん」
 男の声がした。前方からだ。

 坊ちゃん、と呼びかけてきた割に、その声は歳経た気配がなく、むしろ若い。
 自分とそう変わらない、と思ったし、事実同い年だ。格好まで似ている。
「ちょっと月を見にね」
 彼が言うと、相手は苦笑したようだった。
「お前はいつの時代に生きてるつもりなんだよ」
 コロニーに月はない。だが外にはある。いや、かつてはあった。
「それでも、見に行くんだ」
「そうかい」

 道は広かった。たとえ相手が立ちふさがろうが回り込んで進むことは可能に見える。
 だが、通してはもらえないことは気配で分かった。
「そうだ。俺はお前を行かせるわけにはいかねえ」
「どうして」
「一人でこの小さな世界の終わりを食い止められる、お前はそう思ってるんだろ?」
「……」
「俺はそれが気に食わねえ。思い上がりもはなはだしいんだよ馬鹿のウィル」
 実際、相手は言葉に続けて唾を吐きながら、苦々しく顔をしかめてみせた。

 ウィルと呼ばれた少年はふと頬を緩めた。
「君は僕を惜しんでくれるんだね、ロック」
 ロックはそれには答えなかった。代わりに言う。
「俺はお前を止めるぞ。その鼻っ柱を折ってやる」
 言うと同時に、ロックを中心に空気が渦を巻いた。

 先ほどの通りその場所は酷く冷えている。しかし、その風は火傷をしそうなほどに熱かった。
 ロックが右腕を掲げると、コートのその部分が燃え落ちた。外気にさらされたその素肌には幾重にも刻まれた文様が見える。
 彼が腕を振るうに合わせて火球が発生した。一つ一つが致命的な熱量を持っていることは見てとれた。
 ウィルは同じく右腕を掲げ、袖をまくった。同じく現れる似た図案の文様。
 眼前に迫る火球に対して腕を振ると、発生した冷気がそれをかき消した。

 が。
「おせえッ!」
 ロックが駆けこんで来ていた。燃え盛る右手が鋭く突きこまれる。狙いは顔面だ。反応が間に合わない。
 眼前に迫る業火の塊。その熱で触れないながらも火傷を起こす頬の痛み。
 だが、その時ウィルが見ていたのは目の前にある死ではなかった。
「――泣かないで」

「……泣いちゃいねえよ。馬鹿」
 夜風が頬に触れた。やはり冷たいそれは、頬の火傷をぴりぴりと冷やした。
「僕は行かなきゃいけない。僕にしか……できないから」
 ロックはそのときにはもう顔を伏せていた。燃え盛っていた拳も、今は少しも空気を焦がさずウィルの目の前で止まっている。
「お前じゃなくてもいいじゃねえか……なんでお前なんだよ。ヒーローになる必要なんか、ねえのに」
「コロニーに脅威が迫っている。戦う力を持っていて、それを振るう意志もあるのは僕だけ」
 それから思いついて、付け加える。
「守りたい親友がいるのもね。だからだよ」

 ロックは俯いたまま黙り込んだ。
 もう彼は邪魔はするまい。そう判断してウィルはその横を通り抜けた。
 歩きながら見上げる。暗いコロニーの天井があった。月は見えない。
 いつか、見えることはあるだろうか。人類の過ちの帳が取り除かれ、彼ら二人が望む世界が、時代がやってくるだろうか。
 わからない。それでも、彼はコロニーのゲートに向かって歩き続けた。
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/14(木) 16:50:01.49 ID:Rx9kMhLIo
早く埋めたい、でもまだ60レス近くある
まあのんびりいくしかないか
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/14(木) 22:04:45.46 ID:4WHN44vDo
新しいお題欲しい
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/14(木) 22:17:46.92 ID:Rx9kMhLIo
ちょっと待ってて
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/14(木) 22:21:42.37 ID:Rx9kMhLIo
・テーマ:絆
・本というキーワード
・セリフ「愚図は嫌いだよ」

難しいな。良問の出し方とかあるんだろうか
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/15(金) 18:58:31.30 ID:q6BXC4Nxo
>>536

 お久しぶりです、お元気ですか。
 ――と、丁寧な書き出しで驚きましたか? もしそうだとしても無理はありませんね。私は小さいころから変わらずがさつな娘だから。
 でも、今日は少し意識して背筋をしゃんとしてみたいと思います。

 お父さん、お母さん。今までありがとう。
 二人がいなければ、今の私はありませんでした。大切に育てていただいて感謝してます。
 それはもちろん喧嘩して、つっけんどんな態度をとってしまったこともあるけれど、それでも二人の優しさと愛はいつも感じていました。
 もっとも、わたしはそれに鈍感だったわけですが。

 わたしがいきなり結婚すると言いだした時も、ぎすぎすとしてしまったことを思い出します。
 お母さんはそんないきなり、と驚いて困惑していましたね。お父さんは……いつも通りだったようですが。
 その日、二人と遅くまで話して――というより言い争って――わたしは、すんなり認めてもらえないことに不機嫌になっていました。
 特に、お父さんのわたしへの言い聞かせ方に、かーっとなってしまって。

 お前はいつも性急だね。もっと落ちついて考えなさい。お父さんはこう言いました。
 わたしは、まるで自分が考えなしだと言われたような気になってしまって、今では本当にその通りだったなと分かるのですけれど。
 でも、その時のわたしはこう思っていました。
 あなたみたいなロボット男に何が分かるのよ、って。

 気を悪くしないでくださいね。わたしの意地が悪いのだと思ってください。
 お父さんはいつも規則正しくきっちりかっちり生活していて、それはわたしからみたら病的に感じられて。
 融通は利かないし、柔軟性はないし。
 と。愚痴になってしまいました。ごめんなさい。でもとにかく、視野の狭いわたしにはそう思えてしまったのです。

 お父さんは運動会の時も授業参観の時も、そしてわたしの誕生日にもそばにいてくれないことがありました。
 忙しかったのですよね。でも、狭量なわたしはいつも不満に思っていました。わたしよりも仕事が大事なのだなと拗ねていました。
 いまでは、それも家族を支えるための大事なことだと分かるのですけれど。

 唐突ですが、わたしを産んでくれてありがとう。
 こんなわたしをこの世に招いてくれてありがとう。
 わたしは、とても幸せです。お母さんと、お父さんの間に生まれて、幸せです。
 これからも幸せに生きていきたい。これも親孝行だと思うから。

 お父さん。今も忙しいでしょう。
 結婚式に出られないこともあるかもしれません。でもわたしはお父さんの気持ちを分かっています。
 今までありがとうございました。彼と一緒に最高の家庭を作ります。

 大好きなお父さんとお母さんへ。二人の娘より
947 :つづき [saga]:2012/06/15(金) 18:59:25.07 ID:q6BXC4Nxo

「手紙、読みました?」
「ああ」
 返事はいつものように平坦だった。佳代子はそんな夫に苦笑して、彼の前にご飯を盛った器を出した。
 ロボット、というのは言い得て妙かもしれない。この人はそういう性質がある。
「読んでどう思われました?」
「別に」

 やはり特に感慨もなさそうな声だ。ただ、手の中には大きい本がある。いや、アルバムだ。
「あらかわいい」
 覗きこんで佳代子は笑った。幼いころの娘の姿がそこにあった。無邪気に笑って父親の腕の中にいる。
 当の父親はむっつりと口を一文字に結んでいる。
「こんな小さかった子が、もう結婚ですか」

 夫は写真の中と同じように口を結んでいた。
 いや、微妙に違う。震えるその口元を見ながら、微笑して彼女は夫に背を向けた。
「早く食べてしまってくださいね。冷めちゃいますから」
 鼻をすする音が、静かに食卓に流れた。
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/15(金) 19:00:02.95 ID:q6BXC4Nxo
話の都合上、レスを分けさせてもらいました
949 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/06/15(金) 19:03:22.82 ID:zUH4J8dAO
お題:幕末。槍使い。悲恋
950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/15(金) 19:55:48.45 ID:wdd1y05Ko
>>945

その建物は俺にとって最も恐ろしい魔王と、最も美しい姫のいる城だ。
その魔王が悪者で姫が囚われの姫だったらまだ乗り込むのにそれほど勇気はいらないと思うんだが……。
しかし現実は魔王が勇者から姫を守っているという構図である。
ツバを飲み込み扉に手をかける。
そして、その扉を押すとからんからんと来客を告げる鐘が鳴った。

―― いつも思うけど、私設“図書館”だろ?
なんで鐘なんかつけてんだよ……。

その鐘の音を聞くと、一人の女の子がカウンターから顔を出す。
彼女は俺の先輩だ。

「あ、また来てくれたの?嬉しいなぁ……みんな一回は来てくれるんだけどさ」

花のように素晴らしく甘く美しい笑顔だと、俺は思っている。
そして、本当に花のようにその笑顔が誰にでも向けられると言う事も知っている。

―― そりゃ、魔王のせいだよ。

俺は緊張でうまく笑えてなかったと思うが、なんとか笑い、軽く頭を下げその図書館内に入ろうとした。
しかし、そこで魔王が出てきてしまった。
今までここを通れたのは三回だけだ。もう二ヶ月は通っているのに……。

「愚者は嫌いだ、と言ったよな?」

声だけで人を殺せそうな迫力を持っているが、最近少し慣れたようだ。最初の頃は本気でビビって、冗談ではなく小便を漏らしそうになったからな。今では“お姫様”と話すよりも、この魔王と話す方が気が楽なくらいだ。

「す、少しでも賢くなるためにこうして本を読もうかなぁ……と」

「ケッ、毎回毎回同じ事を言いやがって」

あんたもだろ!……とは流石に言えなかった。

「……お前の狙いはわかっているぞ?
俺の目が黒いうちは、大事な娘に愚か者は近づけさせん」

ニヤリと笑いながら、魔王はそう言った。

「……俺だって、諦めませんよ?
二ヶ月も魔王に即死技くらい続けて諦めるなんて……それこそ愚者ですからね」

なんとか勇気を絞り出し、そう言ってのけた。
まぁ、魔王にはダメージなんかないんだろうけどさ。

「……魔王、だと?」

「やべ」

魔……先輩のお父様の目がキラリと輝いた。

そして、一歩ずつ俺の方へ寄ってくる。

「はは……ネーミングセンス良く無いですか?」

「あぁ、気に入ったよ……。とりあえず今日は帰れ」

「嫌です」

「帰れ!……どうせ明日また来るんだろ?」

魔王は言ったあと、しまった!と言う顔をした。そして、バツが悪そうに大きく舌打ちすると、奥に引っ込んで行った。

〜〜〜

「おとーさんって実はあの子好きだよね」

夜、私は二ヶ月間毎日通ってくれる男の子の話をお父さんに振ってみた。

「……誰があんなやつ」

「ほら、あの子って言っただけで通じてる」

「……チッ、もう寝ろ」

「はいはーい。明日も来てくれるといいね?」

「……はぁ、ったく」

私は知っている。不器用なお父さんは、不器用なりにあの子を気に入ってる事を。
951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/15(金) 20:40:28.54 ID:q6BXC4Nxo
>>950
ちとぬるめだけど、こういう人のつながり大好き
またお題が欲しい時は言ってくれ。ぜひ書いてほしい
ていうか埋めるの手伝ってほしい
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/16(土) 20:51:01.85 ID:ynUZh4FIO
>>891

〜〜〜

「この曲……」

俺はつい、声を出してしまった。
それは、ある意味思い出深い曲だったからだ。

―― なっつかしいなぁ……。確か失恋した俺を凹まそうってあいつがかけて、俺よりそいつが凹んだんだよな。

思い出し、微笑む。

だが、その微笑みもすぐに消えた。

―― あの頃は良かった。

そう、あの頃は……。

夢を語っていられた。
時間に縛られることもなく、自由に描いた未来を夢見ていられた。

そういやあいつも言っていたな、サラリーマンにはなりたかねぇ、って……。

俺もそう思ってたし、二人で会社作って楽しく生きようなんて話もしたな。

でも、現実なんてそううまくはいかねぇよな。

俺はこうして喫茶店でやっすいコーヒーのみながら時計を二分おきくらいにみて、一分に支配されて生きてる。

あーぁ、人生ってなんなんだろ?

あいつは、元気かなぁ……。

とりあえず、曲の通りにこの煙草が終わったらいくとしよう……ちょうど外は雨が降ってるしな。


953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/17(日) 23:24:10.56 ID:lo+GSlUDO
>>952

無理のない文体で読みやすい。
ただ内容の方も無理がなかったのでもう一味欲しかった。
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/17(日) 23:36:54.83 ID:0e6moaaLo
>>953
批評サンクス
これはまぁ、実体験というかまんま俺のその時の状態書いたんだ
こういう現実を、面白く書けるようになりたいものだね
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/18(月) 20:52:06.82 ID:VpAPbbBno
読みやすかった乙
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 01:21:40.12 ID:GCQFq3mlo
ほうら
どんどんお題をだしてごらん

前にさかのぼってお題探すのだるいんだよねwwww
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 15:21:30.22 ID:VR9dTtFWo
そうポンポンとお題出せないからとりあえず>>949はどう?
あと、もしよければ今までのお題すべてを安価つけて示すけど
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 15:46:46.42 ID:VR9dTtFWo
やっぱり暇だったから勝手にお題安価リストアップしてみた。よかったら使ってくれ
>>105
>>109
>>110
>>112
>>159
>>160
>>161
>>260
>>536
>>537
>>538
>>572
>>605
>>616
>>724
>>725
>>733
>>744
>>767
>>780
>>781
>>861
>>870
>>891
>>894
>>909
>>922
>>928
>>945
>>949
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 16:33:36.58 ID:jP31C7rIO
>>958
暇人過ぎワロタ
ありがとう、かくわ
ちなみに槍使いのは幕末がよくわからんからかけない
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 16:52:42.61 ID:VR9dTtFWo
べ、別にあんたのためにやったんじゃないんだからね!
っていうか、お題は一通りコンプリートしてて、安価はほぼ全てメモってあった

幕末については俺もよく知らんが、調べて書くのも練習になるんじゃないか?
俺はやってみるよ
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/19(火) 17:27:02.30 ID:VR9dTtFWo
>>494

 お上が全て正しいと思ったことはない。間違いを為すのが人というもので、それが世の理というもので。
 だから大三郎は、自分もまた正しくはないであろうことは知っていた。
 正しくないのならば、少なくとも正しくないと思われているならば、斬られることも覚悟せねばならなかった。

「わたしは行くよ、おみつ」
 大三郎がそう言って立つと、彼女は一見には普段通りの眼差しで見上げてきた。
 特に不安がるでもなく、引き留めるでもなく。
 ただ一言、言って頭を垂れた。
「今まで、楽しゅうございました」
 まだ見ぬ先を見ているのではないか疑うほど勘のよい女だ。やはり恐らくは、今夜が最後なのだろうと彼は思った。
「わたしも楽しかったよ」

 家屋を出ると、冷えた空気が頬を撫でた。日暮れが近く、町並みは薄暗がりに沈みかけている。大三郎は道を右に歩き始めた。
 行く手に山の稜線が見える。赤く染まった空を持ち上げて、だが山は次第に夜に呑まれる。
 夕日が背中から照りつけて、そこだけが少しあたたかい。彼女のぬくもりを背中に感じているような気にもなる。
 もうあれとも会えぬと思うと、引き返したくなる気がじんわりと湧いてきた。だが、それはできぬことぐらいは心得ている。

「お前」
 後ろから声が聞こえたのはその時だった。ぴたりと足を止める。
「大三郎だな」
「ああ」
 振り向かずに彼はため息をついた。来た。この時が。
「ならば斬る。覚悟せよ」
 鯉口を切る音が耳に届き、それと同時に大三郎は地を蹴った。

 横っ跳びにかわした影の名残を刃が駆け抜ける。止まらず追ってくるそれに向き合いながら、大三郎は二手、三手と体を捌いた。
 そして横に伸ばした手で掴む。槍。
「ぬ!」
 相手の驚きの声がする。無理もない。襲撃を予想し隠しておいた事などだれが予想できようか。
「シッ――!」
 大三郎は相手の動揺を、槍で突いた。

 時は幕末。尊王だ、攘夷だ、いや佐幕だなどと世が騒がしい時代である。
 人は考え方により真っ二つに割れ、口角に泡を飛ばし、斬った張ったの大騒ぎ。
 大三郎の周りでも討幕の機運が高まっていた。
 が、その中で大三郎だけはそれにうなずけずにいた。彼は愚直に過ぎた。
 そのためのこの状況である。

 飛び込もうとする相手の足を打ち、留め、喉を突く。
 相手はすんでの所でかわしたが、返した槍の石突きで胴の中心を抉ったところで、相手は倒れた。
 が、右手からさらに人の気配。ただの通行人ではないことはすぐに分かった。
 そちらに顔を向け、槍を振るう。振り下ろされていた刀が、甲高い音を立てて逸れていった。
「まだまだ!」
 だが、そう長くはもつまい。事実、背後にさらにいくつもの気配。これは反応しようがない。
 大三郎がその時思い浮かべたのは、想い人がかつて見せた、ひそやかな微笑だった。
 世はいまだ混乱の渦中にあり、その中で散った、一人の男、その誰にも知られぬ最期であった。
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 17:28:13.95 ID:VR9dTtFWo
安価間違えた
>>949
963 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 13:45:02.28 ID:rgOQ5QwDO
>>961 読みやすい文章でスラスラ読めた。さして指摘するところはないけど一点だけ。倒幕派がわざわざ狙うんだからそれなりに力を持った武士なのだろうからそこらへんの描写があるといいと思う。
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/20(水) 13:46:14.52 ID:++s6Hx0ko
>>949

少年は大きくため息をつき、河原でゴロンと寝転がった。
つくづく己の小賢しさが嫌になる。他の門下生達のようになるほど、先生の仰るとおりだな、としたり顔で頷いていればよかったのだ。
「これからどうしようか」
道場を追い出されたばかりの少年には今日の宿もなければ飯もない。脇に転がっている長年振り続けてきた一本の古びた木槍だけが彼の持ち物だ。
はあ、ともう一度ため息して「なんとかなるさ」と本心でない己を鼓舞するためだけの言葉を口にした。
幸い今日は雲ひとつない晴れ。とりあえず今日は野宿だな、と少年は心に決め今日はもう寝るか、とあくびをすると大きな影が顔の上に覆いかぶさった。
「おんしゃなにしよりゃ」
覆いかぶさった影、もとい縮れ毛の大男は興味深そうに顔を覗きこんでいた。とっさに少年は脇にある木槍に手を伸ばす。
「ちゃちゃちゃ、そう警戒せられん。わしは桶町千葉道場の坂本いうもんちゃ」
「坂本竜馬! 北辰一刀流免許皆伝の……」
少年は慌てて手を引っ込める。刀も抜かず名も名乗った相手に刃先を向け続けるのは武芸者のすることではない、と考えたのだろう。
そもそも相手は江戸中に聞こえた小千葉の筆頭。名もない槍術道場の一門下生だった少年とはどうにもならない腕の差というものがある。
刃先の代わりに少年は「小千葉の筆頭が何の用ですか?」との言葉を坂本に向ける。すると、坂本は口元をニカッと緩めた。人懐っこい笑顔をする男だった。
「そうじゃな、表情がころころ変わっちょって面白かったち、声をかけたんちゃ。まあとにかくなにがあったか話してみんしゃい」
「別に何もありません」
「嘘はいかんぜよ。なんもない男があんな顔するわけないち」
坂本の口元は相変わらず笑みを浮かべたままだ。しかし自分を見据えるその目に嘘をつくことが出来なかった。少年はつらつらと今日のことを話し始める。
「僕の槍の先生が仰ったんです。短筒は卑怯者が使う道具だ、近づいて仕合う根性のない者がそんなものを使うんだ、と。その言葉を僕は疑問に思いました。槍も本来刀の間合いの外から攻撃するもの、そこにどんな違いがあるのだろうか、と。
そのことを口にすると先生は激昂されて。お前は破門だ、さっさと出ていけ、と……坂本さん?」
少年が見やると坂本は大きな体躯を小さく縮こませてぶるぶる震えていた。よく聞くとクックックッ、と絞るような声が聞こえ、ついに坂本は腹を抱えて笑い出してしまった。
「やはり僕の言ったことはおかしかったのでしょうか」
坂本の笑いに少し拗ねたようにつぶやいたこの言葉に坂本が返事をしたのは数分経ってからだった。
「クックックッ、すまんすまん、あんまりにおんしが真っ直ぐものを言いよるもんでの。いや、しかしおんしはなんも間違ったことを言っちょらん。短銃も槍もどっちも人を殺す道具、戦争の道具。戦争に卑怯、正々堂々なんてありゃせんきに」
「ならば先生はなぜあんなにお怒りになられたのでしょう」
「悪いがおんしゃの先生は時勢が見えず駄々をこねてる子供なんちゃ」
「時勢、ですか」
少年は聞き返す。坂本の話はなぜか引き込まれるような力があった。
「おんし武芸ごとは好きか」
間髪入れずに「はい」と答えた。破門を言い渡されたばかりなのに、である。
「いい目をしちょるな。武に恋する目ちゃ。しかしな、いくらおんしが武芸に恋焦がれても武芸がおんしの身を立ててくれるような時代はもう来ん。黒船は見たことはあるがや?」
「浦賀のですか? はい一度」
「ありゃあすごいぜよ。どんな剣術の達人でもありゃ斬れんしどんな槍の名人でも穿けん。戦争になったら日本は間違いなく負けるぜよ」
「ま、まずいですよ。坂本さん」
慌てて周りを見渡す。もし役人に見つかったら死罪ものの言葉だ。
「まずいもなにも本当のことちゃ。それにそのことに反論がないち言うことはおんしもそう思うちょるんがや?」
首肯で答える。確かに武芸は好きだが槍一本であの船に敵うなんて思ったことはない。
「じゃがな、お偉いさん方はそう思うちょらん。おんしの先生と同じちゃ。このままじゃと日本は滅ぶ」
少年はうんうん、と坂本の言葉に聞き入ってる。坂本の考えは少年の頭の中にピタリとはまっていた。
坂本はそんな少年の顔見て、更にニヤリと笑みを深めた。
「そんじゃ、質問ちゃ。どうしたら日本は生き残れるがや? どうしたら黒船に勝てる?」
急な質問に少しうろたえながらも少年は考える。
人は刀に勝つために槍を使う、槍に勝つために短筒を使う、短筒に勝つために大砲を使う、大砲に勝つために黒船を使う。じゃあ黒船に勝つには?
「……! 日本も黒船を持てばいいのではないでしょうか!」
「クックッ、正解ちゃ。今の時代の力は武じゃなく知識ちゃ。武じゃ黒船は手に入らんきに」
坂本の声を聞くと少年は全身の血が熱くなったような感覚を覚えた。有り体な言葉を使えば興奮していたのだ。自分が出した答えが日本を救えるかもしれないという事実に。
少年の心の臓は初めて槍を握ったときよりはるかに早く脈を打っていた。するとどんどん次の疑問が頭に浮かんでくる。
「で、ではどうやったら日本は黒船を持てるのでしょうか」
「日本では無理ちゃ。だからわしは世界へ出ようと思う」
「せ、世界!?」
この人は身だけじゃなく考えることがとにかくでかい。少年は坂本の言葉に腰を抜かしそうになった。
「世界は広いちゃ。清の国には千里を超える城壁があるちゃ。それに米利堅には……」
その後一人の少年と一人の大人は、いや二人の少年の目をした男たちは夜が明けるまで世界と日本のことについて語り明かしたのである。
二人は別れ際こんな言葉を交わした。
「坂本さん、僕が武芸に恋をしていたように坂本さんは世界に恋しておられるのですね」
「ちゃちゃちゃ、そんなはっきり言われるとこっ恥ずかしいぜよ」
ひとしきり笑い合うと二人は踵を返し、逆の道を歩き出す。
「恋していた、か。うれしいぜよ。あんな男と世界に行きたいもんちゃ」
道場への帰り道での坂本のそんな独り言は残念ながら叶うことはなかった。

少年は坂本と別れたその足で、江戸を出奔した。父の生まれ故郷の長州まで日銭を稼ぎながら旅をし、松下村塾の門を叩いた。新たな力を手に入れるために。
その後少年は吉田松陰が処刑されるまで大いに学び、同期の塾生のつてで桂小五郎の下で働くことになる。そこで己の知識を武器に活躍した。
今日、少年の名は歴史に残っていない。しかし歴史を動かしたとある大事件に彼は関わっている。
慶応三年十月二十四日、京都近江屋にて。
薩長同盟を快く思わない一部の長州藩上層部の命により元少年は坂本竜馬暗殺を敢行した。
もう一度言うがこの坂本竜馬暗殺の犯人の名は歴史に残ることはなかった。
彼が世界に恋焦がれながらも、とうとう叶わなかったかつての恩人の脳漿が垂れた姿を見て涙を流した事ももちろん歴史には残っていない。
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 15:14:52.17 ID:+wZZqilqo
>>963
批評サンクス。指摘が的確でためになる

>>964
すんげえ。俺と違ってちゃんと幕末してる。
加えて槍使い、悲恋というキーワードもよく考えて活用してあっていうことなし
改善点探しは俺には無理だから、誰か代わりにやってくれ
最後に聞きたいんだけど、幕末には元々詳しかった? それともにわか仕込みでもここまでいけるもんなの?
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 20:23:04.34 ID:+YjhRpuzo
>>965
感想ありがとう
別に幕末は詳しいってわけじゃないけど、『修羅の刻』って漫画での幕末編を参考に書いてみた
ってか今回の坂本竜馬のモデルがまんまこの漫画の坂本竜馬だったりする。あとウィキ見ながら補強したって感じ
第一いろんなとこに史実と違うところとかあるから、そこらはまあ、ご愛嬌ってことで
あと土佐弁はウィキ見ながら書いただけなんで高知の人が読んだら激怒されそう
でも土佐弁じゃない竜馬てのもなんかなあ、って思ったんで。地元の人ごめんなさい
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 21:53:46.08 ID:+wZZqilqo
>>966
なるほどサンクス
あと、その漫画に興味が出たから今度探してみるよ
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/20(水) 22:04:23.90 ID:+wZZqilqo
>>537

 出社時に通る道の角っこに小鳥屋がある。あまり大きくもない店。表にはオウムの籠が出ていて、
「オハヨウ」
 とか、
「イラッシャイマッシー」などとあの特徴的な声で客引きをしている。
 通りすがりに横目で見やると、首をかしげ、くりくりした目で見上げてきた。
「オハヨウ?」

 ある休日の昼下がり、俺はなんとはなしにその店に足を踏み入れた。
 小奇麗でさっぱりしていて、思ったより動物的な臭いはしてこない。ただ、客の気配はなく、繁盛しているようには見えなかった。
 中は入口から真っ直ぐに狭い通路が伸びていて――というほど長い通路でもないが――、その両脇に鳥かごが高く積まれている。
 奥は座敷のようになっていて、暗く、しかし誰かがいる気配がした。

 ところで俺は、特にペットが欲しくてここに踏み入れたわけではなかった。
 過去に家で猫を飼っていたことはあるのだが、俺は特に世話をした覚えもないし、猫の方も俺には懐かなかった。
 ならばなぜここを訪れたかというと……いや特に理由はないのだが。
 それでもしいて言うならば、なんとなくの親近感だろうか。籠の中で必死にさえずる小鳥たちは、会社という籠で必死こいてる自分たちによく似ている。

 小鳥たちは、思ったよりうるさくはなかった。穏やかに、ひそひそ話すように鳴いている。
 怪しい来訪者を目にして何事かを囁き合っているのだろうか。俺はふと居心地悪さを覚えた。
「あ、いらっしゃいませえ」
 その時、奥の方から声がした。軽い足音がして、声の主が顔を出す。
 その女性は俺を見ると、軽く微笑んでこう言った。
「わあ、久しぶりのお客さんだ」
 俺の心がピョンと跳ねた。

……

「いらっしゃいませー、って君か」
 彼女が俺の顔を見て笑った。
 あれから数週間。俺は時たまこの小鳥屋に顔を出すようになっていた。
「どの子にするかは決まったの?」
「いや、まだ」

 端的に言おう。俺は彼女に恋をした。あの日、一目見たときからだ。
 こんなに綺麗な人が出社の通り道に住んでいたことに気づかなかったのはちょっとした驚きだった。
 幸せの青い鳥はすぐ近くにいるとはよく言ったものだけれど。
 俺は小鳥たちを眺める体を装って、彼女を横目で盗み見た。
「ほらスティーブ、元気ぃ?」
 彼女は座敷に座って、メジロを籠から出して構ってやっていた。
 その姿はなんだかとても優しくて、俺はそれを見ているだけで幸せな気分になれたのだ。
969 :つづき [saga]:2012/06/20(水) 22:06:09.01 ID:+wZZqilqo

「あの、美紀さん」
 時は過ぎて、初対面からもう一ヶ月。俺は彼女と正座で向き合っていた。
「なに?」
 俺の真剣な目に、彼女はだがいつもの優しげな笑みで応じた。これから言うことに緊張していたおれは、それにいくらか救われる心地がした。
「俺、どの子をもらうか決めました」
「あら、ホント?」
 俺は一度、気づかれないように深呼吸し、唾を呑んだ。そしてゆっくりと首肯する。
「どの子?」

 俺は、意気地無しだった。小中高と挑戦という言葉と無縁に生き、面倒事から逃げて生きてきた。
 空を飛ぶことに恐怖を覚え、挙句の果てに籠におさまった哀れな小鳥だ。
 だが、それも今日で終わりにする。

「その子は、ですね。とても明るくて、優しい子です」
 一言一言、区切るように言った。
「この店をたった一人で盛りたてて、一生懸命やっている子です。とても綺麗で、可愛くて、実は一目見たときから好きでした」
「そんなに……」
 彼女は目を丸くして口に手を当てた。それに合わせて俺は勢いよく頭を下げた。
「だからお願いします。僕に――」
「分かりました」
 彼女の声は決然と響いた。俺はゆっくりと顔を上げた。彼女の笑みと目があった。
「よろしくお願いしますね」

……

「オハヨウ!」
 手に提げた籠のオウムが元気よく言う。俺は脱力してしまって、それに反応すらできない。
「なんでこうなる……」
 俺は先ほどの顛末を思い出した。

『あなたのお気持ち分かりました』
 いつもと違い、丁寧な言葉で彼女は言った。俺は心臓が歓喜に跳ねるのを聞いた。
『思えばあなたはずっとこの店に来ていましたが、心は初めから決まっていたようでしたね』
 俺はうなずいた。
『そんなあなたにならあの子を任せられます』
 俺はまた頷きかけて――首をかしげた。あの子?
『ピーちゃんはちょっとやんちゃですが、いい子ですから可愛がって上げてくださいね』
 ちょっと待った、ピーちゃんて……
『この店の看板娘、オウムのピーちゃんですよ』

「はぁ……」
 なんだかとてつもないすれ違いをしてしまった。高鳴っていた鼓動も、今は平常運転を越えて運休を申し立てている。
 俯くと、ピーちゃんと目があった。
「ガンバレ!」
「はは……」
 力なく笑う。まあ、その通りだ。まだチャンスはある。俺の意志が続く限り。
 でもとりあえずは籠を置くために部屋を片付けなきゃな。考えながら、帰路についた。
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 22:12:46.36 ID:+wZZqilqo
埋め切るまでもう少しだね

そこで1000を目前に俺から新しいお題
・今まで投稿された作品の中から一つ選んで、オマージュ作品を作ること

以前、上手い盗作(語弊があるかも知れないけど)は、その作品を自分なりに吸収するのに役立つとどこかで読んだのでこういう出題にしてみました
よかったらどうぞ
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/21(木) 20:21:07.37 ID:8beaMFdfo
>>970
難しいな
設定借りるだけでもオマージュと言っていいのかな?
オマージュ作品ってのはただの二次創作とは違うわけだろ?
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/21(木) 20:39:27.85 ID:krIfW31Go
>>971 基本的に各人のやり方にお任せしたいと思う

でも、とりあえず手元にある本の「上手い盗作の仕方」なるものを見ると、例えば元ネタが桃太郎であれば

・主人公はどこからともなくある男女の元へやってきて育てられる
・育った主人公は遠隔地の敵を倒しに行く
・主人公はお供を得る
・敵の討伐に成功。凱旋する

というふうに抽象化して骨を抜き出し、そして別の肉をつけるといった方法をとると力がつく。らしい
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/22(金) 09:35:47.67 ID:pcp4HTTMo
>>538

「どこかで見た顔ですね、ミスター」
 カジノの中は騒がしく、向かいの男は聞きとれなかったようだった。
 訝しげに顔を寄せる彼に、ディーラーは同じ言葉を繰り返した。
「ああ」今度は聞きとったらしい男が頷いて見せた。「そうかもな」

 男が百ドルをテーブルに放り出した。
「これで行く」
「もしかして有名な方なのですか?」
 ディーラーはカードを配りながら問いかけた。
「もしそうなら存知あげずにすみません。このカジノが私の全世界なもので」
 言うと、男は意味ありげににやりと笑った。笑っただけで何も言わなかった。

 カードを配り終え、見せ札は十。その隣の札は伏せてあるが、ディーラーは長年の経験から、かなり良い手であることがなんとなくわかった。
(さて……)
 と一息つき、
「どうなさいますか、ミスター」
 男はしばらく手札を吟味したようだった。だが、表情から分かる。次の手は既に決めていて、それに覚悟を流し込むだけ、それだけの間だった。
 男がテーブルを威勢よく叩いた。カードが男の下に滑りこんだ。

 男の舌打ちが聞こえた。彼はカードを三枚ともテーブルに放る。
 絵札が一枚に、九と五。合計二十四。バーストだ。
 ディーラーが伏せ札をめくると、絵札が現れた。合計は二十。
 自分の勘が間違っていなかったことに自信を改めて固くし、ディーラーは男に微笑んだ。
「惜しかったですね。判断は間違っていませんでしたが、さすがに運が悪かった」

 それにしても、とディーラーは続けた。
「よくその手札でヒットを選びましたね」
「俺は賭けごとに目がねえんだ」
 男が目を光らせる。剃刀のように鋭く、危険なにおいがする輝きだ。ディーラーは知らず身を引いた。
「たとえ準備が万全で、段取りもよく、運びも悪くない。そんな状況でもスリルは楽しみたい。そんな性分だ」
 沈黙が落ちた。男とにらみ合ったまま、時間が止まる。
 コインが別のテーブルを叩く音と、スロットマシーンのリールの音だけが聞こえた。

「……ミスター」
 ディーラーはやっとのことで声を押しだした。数秒の間にかすれて、カサカサの声だったが。
「まだ続けますか?」
「いや、あれですっからかんになっちまった」
 男が頬を緩めて言った。張りつめた空気もまた急に緩んだ。ディーラーは拍子抜けして、同じように笑った。
「それは大変だ。これからどうなさるんですか?」
「こうするさ」
 男が懐から金属音と共に取り出す。それは――

「見覚えがあると言ったな。そうかもしれねえ。俺は指名手配中の強盗団。その頭だ」
 ディーラーは固まったままその金属の塊を見つめていた。正直に言って、男の言葉は聞こえていなかった。
「今日の稼ぎ場はこのカジノって決めてたんだ」
 周りの喧噪が聞こえる。熱中の気配を感じる。この異常な状況に、誰も気づいていない。
「周到に準備してきたつもりだが、あんたに気づかれれば少しは不味い。不味かった。そういう賭けだ」
 時間が引き延ばされる。男の言葉がゆっくり聞こえる。
「ゲームには負けたが、勝負は俺の勝ちだ。あばよ色男」
 銃声が響いた。
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/22(金) 11:15:51.41 ID:caUyj8QIO
>>972
それって結局オマージュしようと思ったSSが選んだお題で書くことになるんじゃね?
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/22(金) 11:36:00.06 ID:u7bOwecvo
設定やあらすじや結末はそのままで
視点や台詞の言い回し、比喩表現とかを変えたら良いんじゃないかな
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/22(金) 17:19:43.34 ID:pcp4HTTMo
>>974
ざっと見た感じ、そうなるのとならないのとがある
でもまあ確かに良問ではない。気が向いたらやる程度に考えてほしい
もちろん>>975みたいなやり方でもおk
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/23(土) 15:09:02.86 ID:+l60yjuno
>>970>>415より)

「待て!」
 夕闇迫る山中の道は、当たり前だが走るのに向いていない。それでも長兵衛は必死で友人に追いすがった。
 早く引き返さねば村の危険は明々白々。既に何人か殺されているかもしれない。一刻も早く友人を連れてもどらねばならぬ。
 だが当の友人は少しも歩みを緩めない。こちらを振り向きすらしない。
「待てったら!」
 肩をつかんだところで、ようやく源一郎は足を止めた。

「俺には関係ない」
 彼がそう言うであろうことは長兵衛にも分かっていた。
 彼の兄が盗みを働いたせいで酷い村八分にあっていたのだ。村が山賊に襲われたとて今更それを助ける義理……はあるにしても、気持ちがそれを認めないはずだ。
 それでも長兵衛が諦めるわけにはいかない。
「今、村は山賊に占領されている。皆捕まって、広場に集められてる。殺されるかもしれない。助けられるのは俺たちだけだ。分かるだろう」
 言いながら彼の前に回り込む。源一郎の冷たい視線が刺さるが、焦りがその鋭さを忘れさせてくれる。
 その目を強く見返すが、源一郎は何も言わなかった。
「源! その中には"かよ"もいるんだぞ!」

 長兵衛と源一郎とかよ。三人は小さいころから一緒だった。
 生まれた時期が近く、親たちが田畑に出るときにはひとまとめに預けられ、それこそ兄弟のように育てられてきた。
 源一郎が村八分にされるに至ってその間柄もぎこちなくなったが、それでも心は通じているはず、と信じていた。信じていたのだ。
 だが源一郎の表情は変わらなかった。

「いいか源一郎。俺たちは先生に剣を習った。今こそそれを役立てる時だ。先生も言っていた」
 かみしめるようにゆっくり言う。
「二人でなら、できる。二人でないと、できない」
「どけ」
 だが、源一郎はにべもなく切り捨てた。
「俺は行く」

 長兵衛は怒りのあまり源一郎の胸倉をつかみ挙げようとした。が、それより早く幼馴染は身を引いた。
 その目を見て悟った。
「……そうか」
 刀に手をかける。鯉口を切る。
「なら俺の屍を踏んで行け!」
 一息に刀身を引き抜いた。

 彼の突進を、源一郎は身構えながらも静かに見返していた。
 なにがしかの危険を感じたが、怒りは止まらない。そのまま振り下ろす。刃は空を切る。
 次の瞬間には長兵衛は倒れて、大量に唾をこぼしていた。
「がッ――」
 見えなかった……わけではない。避けられ、柄頭で水月を一撃された。
 見える程度には実力に差はない。だが、避けられない程度には差がある。

 痛みを飲み下し、身体に鞭打ち、長兵衛は上体をはね上げた。そのまま刀も切り上げ――眼前に突きつけられた切っ先に動きを止めた。
 絶句する。抜く手も見せずに源一郎は抜刀していたらしい。
 しばらく沈黙が落ちた。長兵衛はゆっくりとうなだれた。

「相手は五人。お前一人でも十分に戦える」
 源一郎の平坦な声が聞こえる。
「なんとかしたいなら、一人でやれ」
「そんなに村の皆が憎いか?」
「……」
 長兵衛はうなだれたまま、呟いた。
「かよは……かよはお前を好いているのに」

 源一郎はゆっくりと一歩退いた。同じくゆっくりと納刀する。
「そんなことは関係ない」
「関係ある!」
 思わず顔を上げて長兵衛は叫んだ。
「関係ないことがあるものか!」
「お前、かよを好いているんだろう」
 おもわず長兵衛は息を呑んだ。
「だが己に助ける資格がないと思いこんでいるんだろう」
「それは……」
「それこそ俺の知ったことか。そんな事情知ったことか。好いているのだったらお前が助けろ」
 それが離別の言葉だった。
 幼馴染で、友人で、そして兄弟同然の彼は、もうそのどれでもなくなって、夕闇の中に消えていった。

 薄暗がりに嗚咽が漏れた。
 悔しさと寂しさと、そしてやるせなさがないまぜになって長兵衛を包んでいた。
 もう動けない気もした。が、それでも行かなければならない。
 足に力を込めると、意外とすんなり身体は持ちあがった。心の方はさすがにそうもいかなかったが。
 それでも、行かなければならない。
 長兵衛は一度だけ彼が消えた方を見やった。それから踵を返し、駆けだした。
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 15:11:45.73 ID:+l60yjuno
とりあえず自らやってみたけど結構いける気がする
わりと面白いなこれ
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 15:17:21.71 ID:mXyvQeQao
俺が狙っていた奴を先にやられた……だと
まあ中身違うし良いか
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 18:23:03.11 ID:+l60yjuno
当時頭一つ出ている印象でかなり強く記憶に残ってたからオマージュ元にしたけど、まさかのかぶりか
でも言う通りで完全一致なんてあり得ないし気にしないで投下してほしい
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/27(水) 17:00:09.32 ID:YR3H3Ff2o
>>733

 実家に帰ったのは、特に用事があっての事ではなかった。
 ただ単に、休暇に時間が余ってやることもなく、それでいて何もせずにはいられなかった、それだけのことだった。
 だが少し考えれば分かる通り、そんな曖昧な理由で戻ったところで特別やることが生まれるわけでもなく。
「散歩でも行くか」
 つくづく帰ってきた意味がない。

 外はむわりと熱っぽい。半歩分、熱気に押し返されてから歩きだす。
 はるか上空から照りつける熱線と、足元から這いのぼるアスファルトの熱量と。
 どこからともなく聞こえる蝉の声がそれらと相まってどうしたって逃れられない夏真っ盛り。
 百メートルほど行ったところでたまらず木陰に逃げ込んだ。

 特別田舎というわけでもないが、間違いなく都会ではない。
 山が近く木々が密集し、小規模な林となっている区画もある。ここはその辺縁だった。
 瑞々しく広がり日を遮る枝葉を見上げていると、ふいに思い出すことがあった。
『ここが俺たちの基地な!』
 あれも林の中、木漏れ日を受けてのやりとりだった気がする。

 小さな丘に、木々が特に集まっている箇所があった。
 彼と親友はそこに小さな隠れ場所を作り上げた。
 得意げに笑い合って、ふざけて転げまわって。
 楽しいことがあればそこにいたし、へこんだ時もそこにいた。何にもなかったときにもそこにいたから、いつもそこにいた計算になる。
 ずっと一緒だったし、これからも一緒であることを疑いはしなかった。
 それでも。

 親友が、引っ越すと言った時、それが何を示すか彼には良く分からなかった。
 引っ越す先を言われてもピンとこなかったし、親友があっけらかんと言うので、さらに混乱していた。
 落ちついて考えて、理解がゆっくりと形を成し、そのときに出てきたのは怒声だった。なんでだよ。と。
 親友はまあ、そういうことだから、とだけ言って、立ち去ろうとした。その肩をつかもうとして、でも失敗してよろめいて、彼は叫んだ。ふざけんなよ。
 親友はなにも言わずに去っていった。その後のことはよく覚えていないが、夕日の色と、蝉のうるささだけはよく覚えている。

 その後しばらくして、親友からの手紙が届いた。手紙には一言。
『基地に埋めた。掘れ』
 俺がこんなに悔しいのに、なんでお前はそんななんだよ、と彼は怒りたいような、泣きたいような気分だった。
 意地を張って結局親友の指示は無視した。
 でも、今なら行ける気がする。

……

 過ぎた時間は戻らない。そんなことを実感するのは、これが初めてではないが。それでも呟かざるを得ない。
「過ぎた時間は……戻らねえな」
 見上げたフェンスは何も語らない。
 もう七年ほど前になるらしい。秘密基地のあった丘は、崩されてなんとかいう工場になっていた。

 近くにあったコンビニに入って、タバコとライターを買った。
 タバコは吸ったことなどなく、当然詳しくもないので、一番端のものを頼んだ。
 店を出て開封したそれをくわえ、火をつける。手慣れていないのでずいぶん間抜けに見えたことだろう。
 思い出す。親友は、感情が高ぶっている時は逆に何でもないような態度をとることが多かった。もちろん悲しい時も。

 慣れない煙に咳きこんだ。涙の出るまでごほごほやって、結局基地には何が埋まっていたのか思いを馳せた。
 彼が自慢していたおもちゃの飛行機だったかも知れないし、何か手紙だったかも知れない。知れない、知れない。過ぎた時間は戻らない。
 咳を催すタバコは結局捨てて踏み消して、彼は西の空を見上げた。
 あの日と同じ夕日の色。蝉の声。でもやっぱりあの日とは違うはずだ。
 寂しさにも似た涼風が吹きすぎ、日が暮れる。
982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/27(水) 17:09:34.63 ID:YR3H3Ff2o
残り二十切ったな。あともう一息
もしよければ新しいお題でも出そうか?
983 :982 [sage]:2012/06/29(金) 18:55:12.36 ID:aWk0vWD5o
お題は要らない感じかな
じゃあ今日も投下させてもらおう
984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/29(金) 18:57:14.53 ID:aWk0vWD5o
>>744

 ゆっくりと靄が晴れるようにして目が覚めた。瞼を夕日が焼いていたらしい。窓から差し込む赤をぼうっと見上げて、それから上体を起こした。
 夕暮れ。町はこの時間にしか見せない顔をして、これからやってくる夜、その気配に備えている。
 あくびを一つ。伸びをしてから立ち上がった。

 眠っている間に夢を見た気がする。もうおぼろげになってしまって思い出せないから、大した夢ではなかったはずだ。
 思い出せるのは何だか悲しかった事だけ。その断片はただの日常と変わりないあれこれだったから、悲しむ要素なんて一つもなかっただろうに。
 それでもどこか胸がしくしくと痛むのは、ただの日常こそが物悲しいものだからなのかもしれない。

 目的も目標もなく過ぎていく毎日は、演目が終わった後もライトを落とし忘れた舞台の上のようで、むなしくて。
 ならばと立てる予定もどこかうすら寒いはりぼてみたいで、人生は生まれた瞬間から死ぬまでの退屈なベルトコンベアでしかなく。
 奇跡を信じられずに生きていくことは絶望にも似ている。

 夕日が町の陰に隠れる。それでも空はまだ明るい。今日という日の最期の抵抗を思わせる。
 でもいくら抵抗したところで終わりは来る。重く黒い緞帳が、今日という日にとどめを刺す。
 長い暗闇、静かな死の予感。

 しかしそれでも明日はやってくる。むなしいけれど、どこか愛おしい今日を引き継ぐためにやってくる。
 だからかもしれない。
「一度も考えたことないな」
 毎日というサイクルに決定的な終わりを差し込もうとは考えない。
 窓枠をつかむ手に少しだけ力を込めて、口元を引き締めた。
985 :やたら長い [sage saga]:2012/06/30(土) 18:59:12.28 ID:JxPLyvzCo
>>970>>415

 その日、彼女は生まれた。
 決して多くの人に祝福された誕生ではなかった。そもそも夫婦は互いに天涯孤独の身だった。
 現にその知らせを聞いたのは、医者を除けばその当人二人と、両者共通の唯一の友人ただ一人のみ。
 その上、妊婦は出産の後事切れた。それでもその夫――彼女の父親はその生命の誕生を心から祝福した。
 彼女の母親と同じように、大粒の涙を流しながら。

 そして数年後のその日、事件は起こる。



 二度目の爆発を合図に、向かい合った二人は同時に銃を構える。
 片方はスーツを着こなした気難しそうな男だ。容姿だけ見ればその辺にいる会社員にも見える。
 が、眼鏡の向こうの瞳が全く違う。それは人を殺せる者の眼だ。

「動くな」

 その視線に気圧されながらも、もう片方の男は怯まない。
 スーツの男とは対照的に、今彼らがいる路地裏が似合うような男だ。
 やや赤みがかった黒髪が、暗がりによく馴染む。

「久しぶりに姿を見せたと思ったら。一応聞きますが、事態を正しく把握していますか」
「これは俺の役目だ。お前は帰って大人しくケーキ食べてろ」
「誕生日パーティーなんて知りませんよ。事態の収拾が最優先です」
「あの子に自分一人だけで誕生日を祝えって言うのか」
「そんなこと言って無いでしょう。知らないと言っただけです」
「お前しかっ、いないだろうが!」

 黒髪の男が引き金を引く。
 飛び出した銃弾はスーツの男性の足元に突き刺さり、地面を削った。

「時間が無いのでこれが最後の警告です。退きなさい、打つぞ」

 警告は沈黙によって無視される。スーツの男は銃口を睨んで嘆息し、眼鏡を外した。
 それと同時に黒髪の男の真横まで、数mの距離を一歩で詰める。

「相変わらず鈍い野郎だ」

 避ける隙はおろか、表情を変える暇さえ与えられなかった。
 銃のグリップで側頭部を強打され、黒髪の男は狭い路地の壁に叩きつけられる。
 地面に崩れ落ちながら、彼は前々から分かりきっていた事実を理解してしまう。勝てない。
 いくら元々の所属が所属だとはいえ、自分とは違い実戦から遠ざかって長いというのに。

「無理に立とうとしないことです。色々と保障しませんよ」
「ぐっ、……組織、的な、無差別テロだぞ。少々腕が、立とうが、命の保障は」
「誰かが止めないと、あれはどんどん加速して大勢の人を巻き込みます。今止めれば最小限の犠牲で済む」
「お前は、それで、良いかもしれない。でも、残されるあの子は、どうなる」
「だから知らねえって。物事には優先順位というものがあります」

 スーツの男は銃を懐に収め、少し名残惜しそうに眼鏡を投げ捨てた。
 そのまま黒髪の男の横をゆっくりと通り過ぎていく。

986 :続き [sage]:2012/06/30(土) 18:59:51.02 ID:JxPLyvzCo

「この世の中は、常に誰かに犠牲を強います。あの子の命だって、彼女の命を犠牲にした」
「知ってるよ、嫌ってほどに」
「当たり前のような平和だってそう。裏で誰かがそれを脅かし、裏方の誰かの犠牲でなんとか保たれてきた」
「……犠牲じゃ、ない。やるべきことを、やった。それだけだ」
「でも、何も一人で犠牲になることは無いでしょ。痛みは分かち合うものだろ」

 再三の爆発。今こうしている間にも、誰かが犠牲になり続けている。
 その痛みを黒髪の男は良く知っていた。この数年で味わい尽くした。
 だがこれは違う。今痛んでいる誰かはきっと、守りたいものの為に覚悟を決めた人間では無い。

「だからって……お前が犠牲になる、理由にはならねえ」
「一人で全部背負い込もうとする馬鹿がいるんだ。仕方無いでしょう」
「これは、俺の、失敗だ。お前には、関係無い……ッ!」

 無理矢理に黒髪の男は立ち上がる。
 自分はとうに覚悟を決めた人間だ。全ての痛みを背負って、誰かの痛みを肩代わりすると決めたのだ。
 だから邪魔はさせない。ましてこの現状は半ば自分のせいでもあるのだから、余計に。

「確かに最後にミスったようですね。それでも裏の連中がこれだけ派手に動いたんだ、チェックに変わりないでしょう」

 あとは犠牲を最小限に抑えるだけ、とスーツの男は続けながら、無造作に足を振るう。
 簡単に足を払われた黒髪の男は再び地面に倒れた。
 それを確認し、彼も再び歩き出す。

「ヒーローなんて誰にでもなれます。――でも、あの子の父親は一人だ」
「……ッ」
「最後の仕上げくらい任せろ。娘一人残して過労死なんて笑えない」
「待、て」
「まあ、精々こんな無法者を代理に据えた自分を恨め。俺はテメエみたいな心優しい人間じゃねえんだよ」

 そしてもう振り返ることは無かった。
 それが唯一無二の友人を見た最後。



 いつの間にか降り出していた雨も、そろそろ止みそうだった。
 スーツの男性は血に塗れた両足を折って、道の真ん中に倒れこんだ。

「悪かったな、誕生日一緒に祝ってやれなくて」

 すっかり戻ってしまった口調で、空の向こうへ呟く。
 代理は終わりなのだから、もう口調や身嗜みに気をつける必要も無い。

「代わりに、プレゼントは奮発したから。数年分、精一杯甘えてやれ」

 だいぶ静かになった。
 やはり犠牲は出たけれど、それでも彼女の生きる世界はこれでまたしばらく平和であり続ける筈だ。
 彼の友人がそうあれと願ってきたように。だから、これで満足しようと思う。

 彼は穏やかな表情で瞼を下ろす。
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/01(日) 03:45:33.08 ID:8AJGhkTao
>>894

〜〜〜

誰も足を止めないその音楽家の奏でる音が僕は好きだった。
けど、この国で音楽は流行らない。
この国は芸術を壊された国だから。
絵もないし、彫刻もない、もちろん音楽なんて洒落たもんもない。
それが普通で、音楽なんか奏でるやつは下手したら犯罪者よりひどい扱いを受けるんだ。

なぜかって……そんな事は知らない。
大昔は芸術を愛していたらしいけど、何時の間にかそれは恐怖の対象になっていたんだ。

だから、僕はこの音楽家が最初は意味がわからなかった。
空き缶や泥水や、ひどい時は生ゴミを投げつけられてもその人は演奏をやめなかったんだからさ。
そして、段々惹かれた。

今日も、僕は一人ギリギリその音が聞こえる人気のない路地裏でぼんやりとしている。

「……今度こそ」

でも、それじゃダメなんだ。
美しいと思った物を、正直に言えないなんて、間違ってるんだ。
間違った事にただ従うなんて死んでるみたいだろ?
やっとそれに気づいた。あの音楽家のおかけで。
だから、僕は決めたんだ。

「ありがとうって言うことを。
素敵な音楽を、そして、僕を生き返らせてくれてありがとうって」

僕は勇気を振り絞り、一輪の花を持って題名の無い音楽を泣かせるように奏でる音楽家の元へと歩み寄って行った。

僕が近づくと、その音楽家は驚いたような表情で演奏を一瞬止めた。
そして、僕が続けてって小さく言うと本当に嬉しそうに綺麗に笑った。



もしかしたら本当はただ、その音を、その音楽家を笑わせたいと思っただけなのかもしれない……。

988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/01(日) 03:46:12.09 ID:8AJGhkTao
ミスった
振り返る忘れてたwwww
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/01(日) 04:13:38.84 ID:8AJGhkTao
>>744

〜〜〜

夕暮れに包まれた黄昏色の屋上で僕は彼女と話していた。

――ねぇ、前にも言ったけど空より私の方が綺麗でしょ?

聞こえないふりをして、夕日が綺麗だな、なんてつぶやくと彼女は長い髪をひらひらさせながら僕に近づいてきてすぐ横に腰掛けた。

危ないよ、と言うと彼女は寂しそうに笑った。

――大丈夫よ。君がいるもん。

何故、寂しそうなのかはわからなかった。

――こひ人よ、お前が優しくしてくれるのに、私は強情だ。

彼女がそう言った瞬間、僕の視界から空が消えた。

――……なんの味がした?

いたずらっぽく笑う。

――ねぇ、私と付き合ってくれる?

今度は寂しそうに笑った。

――私は……。

「おまへのことを思つてゐるよ……だろ?」

目を覚ますと彼女と話した屋上で僕は一人ぼっちの自分を見つけた。

「そんな事……一度たりとも考えたことなかったよ。
だって、君が僕なんかを、好きでいてくれたなんて」

もういない彼女に笑いかけてみた。

――幸福なんだ、世の煩ひのすべてを忘れて、いかなることとも知らないで、私は
おまへに尽せるんだから幸福だ!

「中原中也の無題か……本当に君は、強情だったよ」

ゆっくり立ち上がり、フェンスを登り屋上の内側へ戻った。

「でも、わかったよ。
君が求めた幸せの意味が――」

――一年かかっちゃったけどさ……どこまでも真っ直ぐだった君なら待っててくれてるだろ?

その日見上げた空も、やっぱり綺麗な青空で透き通った風ばかりが目立っていた。


990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 20:19:02.38 ID:1PmtneO/o
>>983
今更だがお題クレヨン
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/03(火) 16:54:27.65 ID:6wPh2AqKo
>>990

昔話オマージュ(日本昔ばなし、グリム童話etc)
主人公はNOTいい子


ところで次スレはどうするのかね?
個人的にはあったほうがいいな。たま〜に書きに来てるくらいだけど
人は少ないけど、のんびり進行してってもいいんじゃないか
次スレ立てるならテンプレも実質>>100とは変わってきてる(お題の期限がなくなったり、age推奨だったり)から、変えるなら意見を聞かせて欲しい
あとスレタイも、もうちょっと文章添削スレっぽくするのもありかな、と
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/03(火) 17:01:03.66 ID:hZNOPxyBo
製作者スレに相談した時は次スレいらないってことで大体まとまった
類似スレに文才スレがあるっていうのが大きい
あっちの方が感想ももらいやすいよ

それにしてももう十切ったのか。長かったような短かったような
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/03(火) 17:58:29.67 ID:IyiZQH9IO
でもあっちのが後に立てられたスレだよな
まぁ、いいけど
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/03(火) 20:24:13.50 ID:hZNOPxyBo
どっちが先に立てられたとかよりも過疎の問題が大きい
類似した二つのスレがあって二つも要らない(と思う)、なら人が少なくもうすぐ終わる方を落とすのがまあ適当かと
自分はこのスレを終わらせるために結構通てたつもりだけどこのスレが終わったら離れるし、少なくともさらに一人は減る
見た感じ、残りは三人いるかも怪しい感じ
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/04(水) 20:43:01.28 ID:CcVCh7PXo
>>781

 突然なんにも書けなくなった。
 モノを書く才能を落としたんじゃないかってくらいほんとになんにも。
 頭の中がどうにもすっからかんで、僕は途方に暮れてしまった。

 物語を綴るのが好きだった。形にこだわらずに結構色々書いてきたつもりだ。
 それはまあ単なる趣味に過ぎなかったけれど、それをすることで何か満たされるような心地にはなれたのだ。
 どうしてかそれができなくなった。
 神が降りてくる、なんて言い回しがある。それと逆で、どうやら僕は神さまに見離されてしまったらしい。

 そして街をさまよっていた。
 落とし物を見つけようというのではないが、歩き続けている。
 日がゆっくりと天上を滑り、沈み、街に明かりがともるまでずっと練り歩いた。
 そんな日が数日続いた。

 気づいたら、視界いっぱいが青かった。海だ。
 水平線で空の青と海の青が閉じている。
 おかしいなと思った。海は家から結構遠かったはずだけれど。
 しばらくしてあまり気にならなくなった。来れたからここにいる。それに疑問を挟むのは愚かなことだ。

 そこにあったテトラポッドに腰掛けていると、腰の曲がったおばあさんが通りかかった。
 重そうな荷物を両手に提げていたので、荷物持ちを申し出た。どうせ時間は余ってる。
 おばあさんと並んで歩く。どうやら足が悪いようで、歩みは遅い。
 それに関してなんとなく気まずい思いを引きずっていると、おばあさんが口を開いた。
 何年も生きているとね、これぐらいは当たり前。
 あまりにさっぱりとした口調で言う。
 事故だけどね、まあ仕方ないよ。生きているだけめっけもん。それに見合う幸せもあったよ。

 おばあさんと別れて、僕は来た道を引き返し始めた。
 海の風が涼しい。日が水平線に触れている。水面がきらきらと綺麗だった。帰るのは夕方になるだろう。
 ふう、と息をつく。何だかさっぱりした気分だ。
 頭はまだまだ空っぽで、物語たちは息をひそめているけれど、なんとなく大丈夫な気がした。
 帰ろう。その背中を風がそっと押してくれたように思った。
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 21:03:07.03 ID:0J22ojjVo
>>991

むかしむかし、ある所に三匹の豚がいました。
その豚は本当に例えるのもおぞましい邪悪な豚です。

その豚の住んでいる森に一月前狼さんも住み始めました。

「オウオウ、狼さんよぉ……」

今日も三匹の豚は狼さんにいちゃもんをつけます。

狼さんと仲のいい小鳥さんは「あのような豚食っちまえ、君には立派な牙があるじゃないか!」と言いますが心優しい狼さんは、豚を食べようとはしません。
狼さんは普段から木の実など草食動物のような食生活をしているのです。肉食なのに。

そんなある日、狼さんは新しい家を作る事を決意しました。
初めは藁で、次はコンクリートで、その次は鋼鉄で。
でも、どの家もことごとく豚に壊されてしまいます。

最後に狼さんは、レンガの家を作り、煙突をつけました。
そして、小鳥さんに言うのです。

「新しい家は中にたくさんご馳走を用意したんだ」

それを聞いた豚は、狼さんが小鳥さんと話に夢中になっている時に煙突から忍び込みました。
煙突の下にはぐつぐつ煮えたお鍋があり、そのお鍋はぶくぶく太った豚三匹をいれてもあまりある大きさのものでした。

あっちっちと豚三匹は外に出ようとしますが、外に出ようとした豚を何時の間にか帰ってきた狼さんはぶん殴りました。

「やっと、肉が食える。
狩りをするよりしばらく草とか食ってりゃ月に一度くらいはたんまり肉が食えるからなぁ」

なんと、狼さんは演技をしていたのです!

「あー、でもお前らには感謝してるよ。
お前らが俺をかわいそうな狼さんにしてくれたからすぐに森の肉どもと仲良くなれた」

狼さんの口には血がついています。

「しっかし、あの小鳥は美味かったぞぉおおお」

そして、豚を睨みながらにやりと笑いました。

〜〜〜

なんだこれww
オマージュってむずいな
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/04(水) 21:45:23.09 ID:CcVCh7PXo
>>991

 太陽系辺境、"地球"とかつては呼ばれていた惑星。
 その僻地にポッドと名付けられた少年がいた。
 名前はある男女が付けた。ポッドは彼らにいつも聞かされていた。彼は本当の子供ではないと。
 数年前のある日だ。女の方が荒野で救難カプセルを見つけた。中には少年が眠っていて、彼女は自分たちの住処に連れて帰ったそうだ。
 だから名前はポッドだ。

 ポッドは"両親"が好きではなかった。優しくはしてくれるのだが、それがどこか余計によそよそしくて、うすら寒くて。
 自分が彼らの本当の子供ではないことがなんだか気にかかって、その優しさに応える気が起きなかった。
 彼の日課は虫を潰して遊ぶことだった。自分より小さいものをどうにかできるのは、純粋に愉快だった。
 世界中がこんなふうに、自分の意思でどうにかなればいいのにと思っていた。

 そんなある日のことだった。日課の虫潰しから帰ると彼らが話している声が聞こえた。
 異形なるものの話。他の惑星がそれらによって壊滅したらしいと。
 いい機会だと思った。家を出た。

 送り出されての旅路ではなかったが、気分は晴れやかだった。
 街なる人の多いところに行って、惑星間の移民船に忍び込んだ。
 もちろん真っ直ぐ異形たちの所へ行けるわけでもない。
 忍び込んで移動するにも限界はあった。なので、次の惑星では働いて路銀を稼いだ。

 ところでその惑星は故郷よりも発展の度合いが進んでいて、ロボットやアンドロイドがあふれていた。
 いつものようにゴミ捨て場に寝場所を探していると、ロボットが捨てられているのが目に入った。
 直せそうなものが三体。"両親"の教育で、そのあたりの技術はあった。
 修理が終わると、ロボットたちは目を覚ました。
 飛ぶ機能を持つものと、すばやいものと、センサーの鋭敏なもの。
 従属回路は生きていた。彼らはポッドの手足となった。

 数カ月後、ポッド達はその惑星の軍隊から惑星間移動船を奪って、宇宙にいた。
 数時間で異形たちのいる惑星に近付くと、封鎖を突破して飛びこんだ。
 移動船を出ると、どこまでも広がる草原だった。ポッド達は、早速異形の駆逐を始めた。

 異形たちは人間に近い姿をしていた。だが人間よりはるかに強靭だった。
 一体一体殺していては体力も武器も持たないと判断したポッドらは、異形たちが作っていたコロニーに火を放った。
 焼け出されて出てくるものを一体ずつ引き裂いた。

 そうしてまた数カ月がたった。異形の残りも少なくなった。
 最後の異形にとどめを刺そうとした時、その異形は口を開いた。兄弟、と。
 ポッドが驚いて手を止めると、異形はさらに言う。
 兄弟。満足か。
 どういう意味かポッドが問うた。

 ポッドは虫を潰すのが好きだった。
 世の中全てが自分の意のままにつぶれればいいと思っていた。
 手始めに、自分の両親を引き裂いた。彼らは嘘をついていたから。

 彼らの嘘。ポッドはある意味彼らの本当の息子だった。人造人間を人間と認めるならば、だが。
 ポッドは彼らによって造られた。細胞を培養して、縫合して、造られた。
 彼は両親の最後の作品だった。それ以前のものは異形と呼ばれた。そういうことだ。

 彼は世の中の全てが自分の意のままにつぶれればいいと思っていた。
 だからそうすることにした。
 涙を流して、彼は足を踏み出した。
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 21:49:24.43 ID:CcVCh7PXo
どの昔話を元にしているかはなんとなく伏せてみる

>>996
オマージュっていうかパロディっぽい
いや、あまりオマージュ等に詳しくはないから正確なところは分からないけれど
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 22:08:46.56 ID:0J22ojjVo
どの昔話元にしてるかきこうとおもったのにwwww

パロディか
まず、違いがよくわからんww

例えば三匹の子豚を豚じゃなくて人間の世界でそれっぽいことやる話を書いたらオマージュっぽい?
なんかしっちゃかめっちゃかな文だけど言いたいこと伝わったら嬉しいww
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 23:21:57.34 ID:CcVCh7PXo
やっぱりバラそう。元ネタは桃太郎でした

>>999
調べた感じ、元ネタを「茶化す」のがパロディで「真似る」のがオマージュとかなんとか
元ネタをほぼそのまま使っていたのが俺にはパロディに見えたのかな。人間世界でやるとかすればオマージュっぽくはなるのかも

さて、これでお題スレも終わり
皆、お疲れさまでしたー
1001 :1001 :Over 1000 Thread
               | ///////i!、\ \ ヽ
   、 ,          |/// / ツ/// /i 1!、 \ ヽ ヽ
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  .cト、   /⌒し    |!i从/i∧i! i::::    ili!'__iI!--―'' ナ`-ト
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    O  -|―|‐    .|./i i i|/∧ : :: ヾ-'"        / ;;;::リ'
         !_       | .|/i i!!リi ヽ:: :: ::|li、´ ̄ ̄ ̄ ̄ン ;;;: /
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【あきぽん】いきなり仲の良い友人と付き合って一周年!10!【てんぼん】 @ 2012/07/04(水) 22:53:19.77 ID:0k890cESO
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学長「では、感応石を使って、新入生の専攻属性を調べましょう。」 @ 2012/07/04(水) 21:56:08.13 ID:2XT91I6t0
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ここだけ魔王の城 ただしコンマ00で魔王様に怒られる @ 2012/07/04(水) 20:45:50.71 ID:xPCMZmL0o
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