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明るい魔まマ 魔法少女まどか☆マギカ 〜私の大切な人〜 -
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1 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/04/03(日) 01:16:14.11 ID:8GUEOo26o
杏子「画面の前のアンタ。ちょっと、顔貸してくれる?」
杏子「このスレは魔法少女まどか☆マギカの二次創作スレだ」
杏子「といっても、既存の多作品とのクロスSSや変態ほむら等が出てくる百合SSのスレじゃない。一応エロ描写は最後の方にあるらしいが」
杏子「作者曰く、明るいまどか☆マギカだそうだ」
杏子「正直、原作レイプなんじゃないかとあたしは思う」
杏子「だから、今ならまだ引き返せる。そういうのが気に入らないなら今すぐブラウザを閉じるんだね」
杏子「誰も死なない、ハッピーエンドを目指す。愛と希望の物語だそうだ」
杏子「……これから始まるSSには原作に登場しない男のオリジナルキャラクターが出てくる」
杏子「作者曰く、今この解説を読んでるアンタや、まどか☆マギカの各スレ住人、双葉のとしあきや「」といった連中がモデルなんだと」
杏子「何でも、アンタ達の書き込みを見てて、アンタ達をまどか☆マギカ世界に放り込んだら面白そうだと思ったらしい」
杏子「あたしの出番は中盤からだから、そいつとの面識はないんだが、かなりの馬鹿野郎らしい」
杏子「一応、そいつの存在理由だとかもその内説明されるらしい。広げた風呂敷は畳まないとな。二次創作だったら特に」
杏子「ん? ああ、アンタ達が心配するのは良くわかってるつもりさ」
杏子「一歩間違えば作者の分身自己投影スーパーキャラが、原作設定をぶち壊してハーレムを作るだけの糞作品になるからな」
杏子「このSSの作者はそういうの嫌いだから、幻想殺しだとか、超能力だとか、異能の力だとかそういったまどか☆マギカの設定を破壊するような反則技は出さないそうだ」
杏子「それから大した事もしてないのに、出てくる女全員にやたら好かれてハーレムを作ったりとか、そういうのは絶対にない」
杏子「まあ、ぶっちゃけエロゲーやギャルゲーみたいなもんだね。こつこつとお目当ての女一人に好かれるように頑張って惚れさせるみたいな」
杏子「ギャラクシーエンジェルとか、舞-HiMEとか、サクラ大戦とか、これらのゲーム版みたいなもんだと思ってくれ。仲良くなることはあってもハーレムは絶対にない」
杏子「結構長いしまだ4話までしか出来てないけど、一応完結させるつもりはあるらしいよ。おそらく12話前後のはず」
杏子「まあ、タダで暇つぶしできるんだから別にいいよね。気に入らきゃブラウザ閉じればいいだけだし」
杏子「さてと、これで説明は終わりかな。ああ、そうそう。主人公は原作同様、鹿目まどかだそうだ。描写がそんな風に見えなくても、あくまで主役はまどかだ」
杏子「大事な事だから、2回言わせてもらうよ。アンタ達をモデルにしてる奴は良い言い方をすれば準主役、悪く言えばあたし達が幸せになる為の道具なんだとさ」
杏子「これで本当に説明は終わり。それじゃ始まるよ。こんな話に付き合ってくれる物好きなアンタは、また中盤であたしと会おうぜ」
1.5 :
荒巻@管理人★
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【ギルデッドエネミー】ウルフ「まるでじゃんけんだ」 @ 2025/07/16(水) 01:49:20.03 ID:ryYxoR/vO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752598160/
■ 萌竜会 ■ @ 2025/07/15(火) 00:40:24.35 ID:LBAUOkqwo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752507623/
■ 萌竜会 ■ @ 2025/07/15(火) 00:39:16.20 ID:qbAcbrETo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752507555/
猫饅頭 @ 2025/07/14(月) 19:14:21.34 ID:1knELuPaO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752488061/
(安価&コンマ)コードギアス・・・ @ 2025/07/13(日) 22:27:49.60 ID:9f2ER2kw0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752413269/
KU-RU-KU-RU Cruller!Neo @ 2025/07/13(日) 21:55:45.76 ID:YIcI6tEGo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752411332/
ひたむきに! @ 2025/07/13(日) 20:04:58.82 ID:YMv4024Yo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752404698/
今日の疑問手 @ 2025/07/13(日) 19:07:12.02 ID:ZqmtXqZ3o
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752401231/
2 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:19:54.39 ID:8GUEOo26o
「――ありがとう」
――何もかもが壊れた世界。
――そして、たった二人だけ世界に残された少女達。
「全部忘れて幸せになってね。後は私がやるから」
「待って!!」
「さよなら、ほむらちゃん」
別れを告げる少女の胸から放たれた眩い光が、ほむらと呼ばれた少女を飲み込む。
「どうしてぇぇぇぇっ!!」
暖かい光の中で木霊する、悲しみに満ちた叫びが、少女と共にこの世界から掻き消されていく。
「――元気でね。私の友達」
魔法少女まどか☆マギカ 〜私の大切な人〜
――透き通るような青空の下、今日もまた、人々のいつもどうりの生活が始まる。
近年、開発が進み徐々に人口の増えてきている地方都市、見滝原市。
小さな子供達は親に連れられて幼稚園へ、大人達はそれぞれの勤める会社へと忙しなく、そして学生達は気の合う友人達と、他愛もない会話を楽しみながら学校へと赴く。
日本中どこでも見る事の出来るありふれた光景。平和な街の平凡で、かけがえのない一日が今日もまた始まろうとしていた。そんないつもの風景の中、市立見滝原中学校へと向かう生徒達。
「おっす社(やしろ)」
見滝原中学の制服を着た眼鏡をかけた少年が、学校へと続く遊歩道で前を歩いている少年に声をかける。
少年の名は社芳文(やしろ よしふみ)。見滝原中学に在籍する3年生だ。
「ああ、おはよう天瀬」
声をかけられ芳文は振り返り、友人に返事を返す。
「なあなあ、昨日のひだまり三期見たか?」
「ああ、お前がハマってる深夜アニメだっけ?」
「そうそう、やっぱ宮ちゃんかわいーよな」
「いや、内容知らんから説明されても」
「宮ちゃんのかわいさがわからないなんてもったいねぇなぁ」
「その宮ちゃんってキャラがどれくらいかわいいのか知らんが、俺は現実の女の子のほうがいいぞ」
「何言ってんの? 俺とおまえは彼女いない歴15年のモテないコンビだろ。いい加減現実を見ようぜ。現実は残酷だが二次元は裏切らないんだから」
「あのな、この年で恋愛諦めるってどんだけだよ」
「さっきも言ったじゃんか。現実は残酷だって。どうせ俺らにゃゲームや漫画みたいな出会いなんてないんだからよ」
「……あほらしい。俺は先に行くぞ」
「あ、おい。待てよ社ぉ」
二次元の良さについて熱く語ろうとする友人に呆れて、芳文は歩みを進める。
3 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:20:25.78 ID:8GUEOo26o
「あははは、まどかのママは相変わらずだなぁ。あんなママがいて羨ましいよ」
「親子で恋のお話とか出来るのって素敵ですよね」
「そ、そうかなぁ」
「あ!? まどか前!!」
「……え? きゃ……!?」
「うおっ!?」
遊歩道の横道からお喋りに夢中になっていた三人組の少女の一人が、背後で騒いでいる友人を尻目に歩いていた少年の胸に、おでこをぶつけて後ろに弾かれるように転んでしまう。
「いたっ!!」
「あ!? ごめん!! 大丈夫かい?」
尻もちを付いた少女に慌てて手を差し出す芳文。
「は、はい、大丈夫です……」
申し訳なさそうな表情で尋ねてくる黒髪の少年の顔と、少年から差し出されたその手を2度ほど交互に見て、おずおずと差し出された手を取る少女。
「本当にごめん。ちょっとよそ見してて……」
「いえ、私も友達とのお話に夢中になって、前を良く見ていませんでしたから……」
そう言って、少年に謝る赤いリボンのショートツインテールの小柄な少女。
(……かわいい子だな。下級生かな)
「……ああ、うん。それじゃお互い様って事でいいかな」
「……あ、はい。すいませんでした」
少年の言葉にぺこりと頭を下げる少女。
「まどか!! 大丈夫!? ケガとかしてない!?」
「うん、大丈夫だよ、さやかちゃん」
「よかった……。鹿目さんにケガがないようで良かったです」
「ごめんね仁美ちゃん、心配させちゃって」
少女の友人二人が心配そうに声をかけるのを見ながら、少年は小さく呟く。
「――鹿目まどか、か……」
今日初めて出会った年下のかわいらしい少女は「それじゃあ、私達はこれで」ともう一度ぺこりと頭を下げると二人の友人と共に去って行った。
「おい社、あの子達と知り合いなのか?」
後ろで様子を見ていた友人の問いかけに首を振って答える。
「いや、知らない子達だ。多分2年生だろう。3年生の中では見た事がない」
「登校途中で女の子とぶつかるなんて、漫画みたいな体験しやがって!! ちくしょー!! 羨ましいぞ!!」
友人がふざけながら少年の首にヘッドロックをかける。
「バーカ、一歩間違えば女の子にケガさせてたかもしれないんだぞ。そんな事を羨ましがるな」
力任せに友人のヘッドロックから抜け出しながら、芳文はきっぱりと言う。
「そう言われりゃそだな。まあ、確かにかわいい子達ではあったが、学年も違うみたいだし、もう関わる事もないだろうし、別に羨むほどでもないか」
「そういう事だ。ほら、さっさと学校行こうぜ。遅刻しちまう」
「あ、待ってくれよ!!」
2人はそんなやり取りをしながら、学校へと向かったのだった。
4 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:21:51.00 ID:8GUEOo26o
☆
キーンコーンカーンコーン……。
一日の授業の終わりを告げるチャイムの音と共に、クラス中が活気づく。
男子生徒達と女子生徒達は、それぞれ気の合う友人たちと共に、これからどこに寄ろうかなどとと相談しながら次々に教室を出ていく。
「おい、社。帰りにちょっと駅前寄ってかね?」
「別にいいけど」
友人の誘いに芳文は頷いて席を立つ。席を立った芳文の視線の先に一人の女生徒がいた。
「ん? どうかしたのか?」
「……ああ、あの子、いつも一人だなって思ってな」
「ああ、巴マミか。彼女、美人だけど人付き合い悪りぃらしいぞ」
そんな会話をする芳文達の視線の先には、一人黙々と帰り支度をしている同級生の巴マミの姿があった。
教科書を鞄に詰め終わり、巴マミは席を立つと教室を出て行こうとする。
「巴さん」
芳文が声をかけると、彼女はきょとんとした顔で立ち止まる。
「さよなら」
芳文がそう挨拶をすると、彼女は少し驚いた顔をしてから、柔らかい微笑を浮かべて「さよなら」と答え教室を出て行った。
「なんだ、社。巴に気があるのか?」
「ちがう。別にクラスメイトに別れの挨拶をするくらい普通だろ」
「普通、ねえ……」
「さてと、俺たちも帰ろうぜ」
「そうだな」
芳文は天瀬にそう促すと鞄を手にして席を立った。
☆
「じゃーな」
「ああ、また明日」
オタク趣味の友人に付き合って、アニメイトやゲームセンターで放課後の一時を過ごした芳文は友人と別れ、帰路へと付く。
「ちょっと遅くなったな。夕飯はコンビニ弁当あたりで済ませるか」
芳文は誰もいない自宅への帰り道を急ぎながらそう呟く。既に日が落ちて辺りは夜の闇に包まれている。
「……少し近道するか」
早く家に帰ろうと、普段通らない人気のない道を進んでいく。人っ子一人いない寂れた公園を歩いていると、不意に制服のポケットの中から携帯電話の着信音が鳴った。
「はい。もしもし……ああ、父さん。大丈夫。何も問題ないよ」
海外に単身赴任中の父親からかかってきた電話に対応しながら、公園の中を歩いていると、今朝ぶつかった女の子――鹿目まどか――と、まどかがさやかちゃんと呼んでいた少女の二人が寄り添うように立っていた。
(……こんな時間に女の子だけで危ないな)
こんな人気のない公園に女子中学生二人だけで何をしているのだろうか。電話先の父親に相槌を打ちながら少女達の方へと歩みを進めていくと、二人の少女の視線の先に見知った顔を見つけた。
(……あれは、巴さん?)
クラスメイトの巴マミ。彼女は何かを掌の上に載せて目の前に差し出す。
――すると、不意に周囲の景色が変わり始める。
「――え?」
芳文が戸惑いの声を上げるとほぼ同時に、定期的な間隔で街灯の立っている公園の遊歩道が、見た事もない、口で説明するのも憚られる様な奇妙な空間に変わっていた。
プツッ、ツーツー……。
先ほどまで繋がっていた携帯電話の通話が突然途切れる。慌てて携帯の液晶を覗き込むと、電波状況を知らせるアンテナマークが圏外へと切り替わっていた。
5 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:22:37.26 ID:8GUEOo26o
「な、なんなんだ? ここは一体?」
余りに突然の状況の変化に戸惑っていると、巴マミがまどかとさやかの二人を連れて異空間を進み始める。
「あ!? とにかく追いかけてみるか……」
芳文は慌てて女の子達の後を追う。
(こんな訳のわからない状況であの子達は何をしようとしているんだ? ……それとも、俺みたいに巻き込まれたんだろうか?)
とにかく状況がわからない上、女の子達を放っておくわけにもいかない。芳文は急いで少女達の下へと走っていく。
「うわっ!?」
あと少しでまどか達に追いつくという所で、突然足場が崩れ、大きな穴へと変わる。芳文は咄嗟に崩れていく地面を思い切り蹴って横に飛び、そのまま地面をごろごろと転がる。
「あれ?」
「どうしたの、まどか?」
「今、男の人の声がしたような……」
「気のせいよ。鹿目さん、基本的に魔女の結界の中へ入れるのは魔法少女だけなの」
「気のせい……なのかな……」
まどかは背後をちらっと振り返りながらそう呟くと、マミとさやかの後に続いて結界の中を進んで行った。
「あ、危なかった……。なんなんだここは……」
こんな危ない場所に女の子達だけでいさせる訳には行かない。芳文はそう思い立ち上がると、周囲に気を配りながら、急いで少女達の姿が消えた先に向かって進んでいった。
まどか達にどれくらい遅れて到着したのだろうか。
やがて迷路のような狭い通路を抜けた先にある、広大なドーム状の空間に辿り着くと、何発もの銃声が鳴り響いた。
「なんだ!? 銃声!?」
慌てて駆け出した芳文の眼前に、まるで得体の知れない不気味に蠢く、ドス黒い肉塊のような怪物を宙に浮いた複数のマスケット銃が狙撃している。
「なんだ、あれ……」
あまりの光景に絶句して立ち尽くす芳文。怪物が黒い炎の塊を吐き出す。その黒い炎を軽やかなステップで躱す少女。
「!? あれは……巴マミ……!?」
怪物と戦っている人物は芳文のクラスメイトの巴マミだった。
先ほどまでの見滝原中学の制服ではない、魔法少女服姿の巴マミの姿に芳文は困惑する。
「な……なんなんだ……。これは……」
怪物はマミを殺そうとでたらめに炎を吐くが、マミはことごとく躱してマスケット銃を次々と顕現させ、怪物に弾丸を撃ち込んでいく。
「マミさーん!! がんばれー!!」
「マミさーん!! がんばってください!!」
声のした方へ芳文が視線を向けると、芳文の出てきた通路とは別の通路の先、光り輝く壁によって、マミと怪物の戦っているドームと遮断された通路から、さやかとまどかがマミを応援していた。
よく見るとまどかの腕の中には、白いぬいぐるみのような物が抱かれている。
マミはまどか達に微笑んでみせると、マスケット銃を次々と顕現させて怪物に弾丸の雨を浴びせる。
このまま行けばマミの勝利は確実だ。さやかとまどかがマミの勝利を確信して、笑顔でマミの戦いを見守っていたその時、肉塊から鋭く伸びた触手がまどか達を守る光の壁に叩きつけられた。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「わあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「鹿目さん!! 美樹さん!! この!! あなたの相手は私よ!!」
マミは大量のマスケット銃を顕現させて怪物に撃ち込むが、怪物は銃弾を受けて尚、マミを無視してまどか達を守る光の壁を触手で殴り続ける。
ガシンガシンガシンガシン……!! パリーンっ……!!
「!? しまった!!」
触手による連続攻撃により、光の壁が遂に粉砕されてしまった。マミは慌ててまどか達の元へと駆け出すが、別の触手に足を絡め取られて、そのまま宙づりにされてしまう。
「二人とも逃げて!!」
マミが叫ぶとほぼ同時に、壁から、地面から、天井から、小型の怪物が湧き出てきて、まどかとさやかの二人を取り囲もうとする。
「あ、あぁぁ……」
まどかが怯えた表情でぬいぐるみを抱えたまま、後ずさるのを庇うようにさやかがバットを構えて立つ。
「このおぉぉぉぉぉぉっ!!」
バットで小型の怪物に殴り掛かり、何とか一匹を殴り飛ばすが別の一匹がさやかに襲い掛かる。
「くっそっ!! こっちくんな!!」
さやかが必死にバットを振り回すが、多勢に無勢。それにただの女子中学生に複数の怪物を倒す事など出来ない。じりじりと怪物達に囲まれていく。
「さやかちゃん!!」
まどかが叫んだその時だった。
「――え?」
バシュッ!!
マミを宙づりにして拘束していた怪物から、何の前触れもなく、先端が鋭利に尖った肉の槍がまどか目掛けて撃ち出された。突然の出来事にまどかは呆気にとられた顔で立ち尽くす。
「鹿目さん!!」
マミの悲痛な叫び声が結界内に木霊する。
(……私、ここで死んじゃうのかな)
高速で飛来する肉の槍を呆然と見つめながら、まどかはそんな事を考える。
6 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:23:29.22 ID:8GUEOo26o
「くっそおぉぉぉぉっ!! 間に合えぇぇぇぇっ!!」
不意にガシッと肩を掴まれて、宙を舞うまどか。
バスッ!! 壁に突き刺さった肉の槍が壁を一瞬でドロドロに溶かして、そのまま地面へと落ちて地面を溶かしながら沈んでいく。
ズザザザ……。
「大丈夫!?」
「――え?」
地面の上にまどかを抱きしめながら横たわった少年が、腕の中の少女に声をかける。
「ケガとかしてないね!?」
まどかを抱き起しながら、芳文は尋ねる。
「――え……は、はい」
何が起こったのか、理解出来てないまどかが頷くのを確認すると、芳文は立ち上がり、さやかに群がる怪物に駆け寄り殴り飛ばす。
「え!? 誰!?」
「それ貸して!! 早く!!」
突然の乱入者に驚いて、硬直するさやかの手の中からバットをひったくると、芳文は竹刀を構えるようにしてバットを構え、次々と怪物を殴り飛ばしていく。
「ふんっ!!」
マミの魔翌力が込められたバットで殴り飛ばされるたびに、怪物達は体の半分以上を陥没させて破裂し、霧散して消滅していく。
「あ、あなたいったい……!?」
宙づりにされたマミが驚愕の表情で突然の乱入者に問いかける。
「そんなの後だ!! こっちは何とかしてみせるから、そっちのでかい方を早く!!」
ろくに話をした事もないクラスメートに叱咤され、マミは慌てて気持ちを切り替えると魔翌力を両手に集中させる。
「卑怯な手を使って!! 許さないわよ!! ティロ・フィナーレ!!」
巨大なマスケット銃を顕現させて、マミは自分を宙づりにしたままの巨大な怪物を跡形もなく消し飛ばす。
怪物の本体が消滅すると同時に、マミを拘束していた触手も霧散し、マミは空中で一回転して優雅に着地する。
そして、ぐにゃりと空間が歪み、元いた公園へと風景が切り替わっていった。
☆
「はあ……はあ……」
複数の怪物を殴り倒し、芳文は荒い息を付きながら、バットを杖代わりにして呼吸を整える。
「鹿目さん!! 美樹さん!! 大丈夫!?」
制服姿に戻ったマミが、へなへなとへたりこんだまどかとさやかの元に駆け寄る。
「あ……マミさん……」
「な、何とか……」
「ごめんなさい!! まさか、私を無視してあなた達に攻撃してくるなんて……」
マミはへたりこんでいる2人を抱き寄せて謝罪する。
「あなた達が、無事で本当に良かった……」
マミは心の底からの思いを込めて2人を抱きしめるのだった。
「巴さん」
呼吸を整えた社は事情を聞こうとマミに話しかける。
「あなた……たしか、社君?」
「ああ、君のクラスメイトの社芳文だよ」
「……あなた、何なの?」
「……は?」
まどかとさやかを自分の背後に、庇うようにしながら立たせてから、マミは芳文を問い詰める。
「なぜあなたが魔女の結界の中にいたの? あの中には魔法少女か素質のある人間しか入れないはずなのに!!」
「……はい? ちょっと待って。説明を聞きたいのはこっちなんだけど……」
自分の知らない、出来ないはずの事をやってのけたイレギュラーな存在にマミは警戒しながら、キっと芳文を睨みつける。
「ちょ……まいったな……」
マミの視線に困惑しながら、芳文がぽりぽりと頬を書いていると、マミの背後からまどかが前に出てくる。
「鹿目さん!? 私の前に出てきちゃ駄目よ!!」
「……でも、この人は私とさやかちゃんを助けてくれました」
そう言ってまどかはぺこりと頭を下げる。
「あの……助けていただいてありがとうございました。こうしてみんな無事なのはあなたのおかげです。本当にありがとうございました」
「……」
「あの……?」
礼を言ったのに、じっとまどかを見つめたまま黙っている芳文に、まどかがおずおずと問いかけると、芳文は涙目になって答えた。
「どういたしまして!! ああ、まどかちゃんはいい子だなぁ……。がんばった甲斐があったよ!!」
突然の芳文の言動にまどか達はぎょっとする。
「な……何なのあなたは……」
「なんか訳のわからん事が起きて解決したと思ったら、今度はクラスメイトに親の仇みたいな目で見られるし……。今の言葉は嬉しいよ!! 傷ついた心が癒されたよ!!」
「な……それじゃ、まるで私が悪役みたいじゃない……」
マミはばつが悪そうにそう呟く。だが、すぐに気を取り直して芳文に食って掛かる。
「というか、なんであなたが鹿目さんの名前を知っているの!?」
「なんでって言われても。今朝初めて会った時も、さっきまでも、さんざんそっちの青い子がまどか、まどかーってこの子の名前呼んでたし」
「青い子って言うな!! あたしの名前は美樹さやかだ!!」
青い子呼ばわりされてさやかが憤慨する。
「ああ、さやかちゃんて言うのか。俺は社芳文。よろしく」
そう言ってナチュラルに差し出された、芳文の手を思わず取って握手してしまうさやか。
「あ、こりゃどうもって……そうじゃなくて!!」
「うん?」
不思議そうな顔で首を傾げる芳文に、さやかはため息をついて手を放す。
「……はあ、なんか、もう、どうでもいいや」
「マミさん……」
まどかがおずおずとマミを上目遣いに見つめる。
「はあ……。とりあえず、お互いの事情を話しましょうか」
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2011/04/03(日) 01:23:30.16 ID:cjhrjZcso
ふぁいと
8 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:24:24.68 ID:8GUEOo26o
☆
「……ふーむ。魔女と戦う魔法少女、か」
マミから事情を聞いた芳文は腕を組みながらそう呟く。
「つまり、巴さんが今までずっとこの街を守ってきた魔法少女で、まどかちゃんとさやかちゃんは魔法少女になれる素質がある女の子で、現在は魔法少女の研修中って所かな」
「ええ。そうよ」
「巴さん」
「何かしら」
「今までずっと一人でこの街の人達を守っててくれたんだね。本当にありがとう」
芳文は深々とマミに頭を下げて心の底からの礼を言う。
「ちょ、なんであなたがお礼を言うの?」
「なんでって、当然だと思うよ。みんなが笑って暮らせる街なのは君のおかげなんだから。何度でも礼を言うよ。ありがとう、巴さん」
「……」
マミはくるっと背を見せると目元を擦りながら言う。
「べ、別に、お礼を言われる事じゃないわ。それが私の使命なんだから……」
涙声でそう芳文に返すマミを、まどかとさやかは微笑みながら見ていた。
「そ、それであなたはどうして魔女の結界の中にいたの?」
初めて他人に感謝された事で思わず出てきた嬉し涙を拭いて、マミが尋ねる。
「ああ、帰りが遅くなって近道しようとしたら、今朝ぶつかった女の子達が二人だけで人気のない公園にいたんだ」
「暗いし危ないから、おせっかいかなと思ったけど、人気のある所まででも近くで見守っといたほうがいいかなって近づいたら、君がいて急にあの結界だっけ? あの中に巻き込まれたって訳」
「おかしいわね。普通の人間は結界の中に入れないはずなんだけど……」
「うーん。……実は俺、霊感が強い方なんだ。子供の頃から良くない物が見えたりとかあったから、多分それでじゃないかな」
「霊感って……そんな訳が……」
「いや、でも実際それくらいしか思い当たる節がないし……。ところでずっと気になってたんだけど、まどかちゃんが抱いてるそのぬいぐるみ、なんか動いてない?」
芳文の言葉に3人は顔を見合わせて驚いた表情をする。
「あなた、キュゥべえが見えるの?」
「キュゥべえってそのぬいぐるみの事? 結界の中でもまどかちゃんがずっと抱いてたから大事な物なのかなって思ってたけど……。なんかさっきからしっぽがぴこぴこ動いてるし。……まさか、それ生き物なの?」
「これは驚いた。男で僕が見える人間なんて、君が初めてだよ」
「うおっ!! ぬいぐるみが喋った!! っていうか口元動いてないし!! 何この不思議生物!!」
「僕はぬいぐるみじゃないよ。魔法少女に魔女と戦う力を与える魔法の使者さ」
「おお……。なるほどなるほど。……つまり、巴さん達の淫獣って事か!!」
「……いんじゅう?」
まどかが、聞いた事のない言葉に首を傾げて?マークを浮かべる。
「漢字で淫らな獣と書いて淫獣。魔法少女や魔女っ娘のお供のマスコットは全部、そういう通称なんだとアニメ好きの友人が言ってた」
「僕は淫獣なんかじゃないよ」
「女の子と一緒に寝たりとか、一緒にお風呂に入ったりとか、着替えを見たりとか、そういったハッピータイムを体験した事が一度もないってんなら、お前さんは立派な魔法の使者だ」
「ハッピータイムって……」
「な、なんだかなぁ……」
「あ、あははは……」
マミとさやかが呆れて、まどかが困った顔で苦笑いする中、キュゥべえと芳文は無言で互いの顔を見つめあう。
「……」
「……」
どれくらいの間、無言で見つめあっただろう。芳文が沈黙を破った。
「……あるのか。じゃあ、やっぱり淫獣だな」
「……まどか、僕この子嫌い」
「あ、あははは……」
そんな芳文とキュゥべえのやりとりに、キュゥべえを抱いているまどかはただ困った顔で苦笑いするだけだった。
「ところで、君は本当に何なんだい? 魔法少女かその素質のある子にしか僕は見えないはずなんだけど」
「さっきも言ったろ。ただ霊感が強いだけの人間だって」
「本当に? 実は女の子とか……」
そう言ってキュゥべえは、芳文の頭からつま先までをじろっと見る。
「あははは、キュゥべえ、いくらなんでもそれは無理があるって」
芳文の顔を見ながらさやかがけらけらと笑う。身長170センチくらいある男子中学生のどこをどう見たら女の子に見えるのか。黙ってさえいれば、結構整った顔立ちをしているけどとさやかは心の中で呟く。
「……謝れ」
「謝れ!! 淫獣!!」
「ちょ!? 社先輩!?」
突然激昂した芳文がまどかの腕の中から、キュゥべえの頭を鷲掴みにして奪い取り、宙づりにする。
「君を女の子かもと言った事に怒ってるのかい? それなら謝るよ」
「俺が怒ってるのはそんな事じゃない!! 大体こんなむさくるしい女の子がいてたまるか!!」
「社君落ち着いて!!」
マミが慌てて止めようとするが、芳文は激しい口調で言い切る。
「いいか!! 女の子ってのはな、柔らかくて、暖かくて、いい匂いがして、汗臭い男なんかとは全然違う存在なんだよ!! 俺みたいなむさくるしい男を例え話でも同列の存在にするんじゃないっ!!」
「謝れ!! 世界中の女の子に謝れ!! とりあえず、まどかちゃん達に謝れ!!」
「……え、えーと、ごめん、まどか、さやか、マミ」
芳文の言動に圧倒されたキュゥべえが素直にまどか達に謝ると、芳文はうむと頷いてキュゥべえを地面に降ろす。
「え、えーと……」
困惑するマミ達の足元にそそくさと駆け寄り隠れるキュゥべえ。
「とりあえず、こっちの事情はさっき話した通りだよ」
芳文は困惑するマミ達にさわやかな笑顔で話しかける。
(……な、なんなの、この人)
マミ達はただただ困惑するだけだった……。
9 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:25:11.11 ID:8GUEOo26o
☆
「……それで、君達は毎日人々に仇なす魔女や使い魔を探して、倒して回ってるって訳か」
「ええ、そうよ」
「誰にも知られる事なく、感謝されることもなくずっと?」
「ええ」
「これからも?」
「そうよ」
芳文の問いにマミは淡々と答える。
「そうか……。君は本当に正義の味方なんだな」
「そんな大層な物じゃないわ」
マミの返事に、芳文は一瞬だけ何かを考え込む仕草を取ると、マミに真剣な顔で切り出した。
「……俺にも何か手伝える事はないかな」
芳文は真剣な眼差しでマミに問いかける。
「え?」
「役に立つかわからないけど、俺も君達の役に立ちたいんだ。俺も、誰かの役に立ちたい」
芳文のその言葉に、マミは複雑な表情をして目を伏せると、真剣な表情で目を開いて低い声で返答する。
「あなたじゃ無理よ」
マミは淡々とそう答えると、魔法少女の姿になり、首元のリボンをほどき、芳文目掛けて放つ。咄嗟に横に飛んで芳文は躱す。
「何をするんだ!!」
「マミさん!? 何を!?」
まどかが突然のマミの行為に驚いて叫ぶ。
「あなたを拘束して、魔法で記憶を消すわ」
銃弾並みの高速で蛇のように迫るリボンを次々と紙一重で芳文は躱す。
「うわっ!!」
「……へえ。あなたすごいわほね。まさか今のを避けるとは思わなかった」
「確かに、普通の人間にしてはやるね。さっきの戦闘の時もそうだけど、元々の身体能力や反射神経、戦闘センスがずば抜けて高いんだろうね。もし女の子だったら是非魔法少女になってもらいたいくらいだよ」
マミの賞賛の言葉にキュゥべえが同意する。
「――でも、それだけ。いくら身体能力が高くても、普通の人間が魔女に関わろうとするなんて自殺行為よ!!」
避けたはずのリボンが複数の魔法のロープに変わり、芳文を拘束しようと再び襲い掛かる。
「くっ!!」
右手、左手、右足、左足、胴と次々に飛んでくるのを躱し続ける。
「すごい……。あんな速いのを躱し続けられるなんて……」
さやかが思わず感嘆の声を漏らす。
「……」
無言で芳文を睨みつけるマミの右手にマスケット銃が顕現し、芳文に向けられる。
「っ!? マミさん駄目ぇ!!」
まどかの悲鳴を掻き消すようにマスケット銃のトリガーが引かれる。
「……うわあぁぁっ!?」
――だが、マスケット銃から放たれた弾丸は芳文の眼前で光り輝く広範囲ネットに姿を変える。
魔法のネットを被せられた芳文は、その場にもんどりうって倒れこむ。
「あなたは何も見ていないの。何も知らないの。その方がいいから……」
マミは芳文の頭に魔法の光をかざそうとする。
「……そうやって、全部自分達だけで抱え込むのか?」
「そうよ。世の中には知らない方が良い事もあるの」
「……わかったよ。そこまで言うなら忘れる。もう関わらない。その代わり、記憶は消さないでくれ」
「……」
「一人くらい、いたっていいだろ? みんなの為にがんばってる女の子がいる事を、知ってる奴がいたって」
「……」
芳文の真剣な表情にマミはため息をひとつ付くと、拘束魔法を解除して背を向ける。
「……絶対にもう、私達に関わろうとしない事。――もし、また関わろうとしたら命の保証は出来ないわ」
背を向けてマミはまどか達の方へ歩いて行く。
「……あの子達を助けてくれた事には感謝してる。ありがとう」
それだけ言うと、立ち上がった芳文に振り返る事無く、まどか達を連れてマミは去って行った。
芳文はその場に立ちすくんだまま、マミ達の去って行った夜の闇をいつまでも見続けていた……。
10 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:25:43.63 ID:8GUEOo26o
☆
――魔法少女と魔女との戦いを目撃してから数日後。
夕焼けの中、芳文は一人街中を当てもなくふらふらと歩いていた。
(……今日も、あの子達は魔女退治をしているんだろうか)
いくら魔法少女とはいえ、女の子だけをあんな化け物と戦わせ、事情を知った男の自分が見て見ぬふりをする。芳文は無性に自分自身が情けなくなった。
(……本当に、俺には何も出来ないのか)
無力な自分が情けない。不意に芳文の脳裏に幼い少女の泣き顔がよぎる。
(あの時と同じか……。我ながら情けないな)
無力感に苛まされながら、歩いていると横から小さくて暖かい何かがぶつかってきた。
「っ!? まどかちゃん!?」
芳文にぶつかってきたのはまどかだった。泣きそうな顔で、息を切らせている。
「どうしたの!?」
まどかの尋常じゃない様子に、芳文は思わずまどかの両肩を掴んで問い質す。
「び、病院に魔女が……っ!! マミさんに早く知らせないと!! さやかちゃんとキュゥべえが!!」
今にも泣き出しそうなまどかを、芳文は優しく諭す。
「落ち着いて。役に立つかわからないけど、病院の方はとりあえず俺が行くから。君は巴さんに急いで連絡するんだ」
「で、でも……」
マミと芳文の公園でのやりとりを見ていたまどかは、芳文の申し出に何と答えたものかと戸惑う。
「ほら、急いで。女の子が危ないっていうのに、男の俺が見て見ぬふりなんて出来ない。君の友達は巴さんが来るまで守ってみせるから!!」
「わ、わかりました!! さやかちゃんの事、お願いします!!」
「ああ、わかった!!」
まどかが駆け出すのを確認すると、まどかが来た方向に向かって芳文は走り出した。
「いた!!」
芳文が病院の敷地内で、キュゥべえを抱いたさやかを見つけて駆け寄った瞬間、魔女の結界が展開し、芳文達を飲み込んだ。
「あ、あれ? 先輩、なんでここに!?」
結界の中で芳文の姿を見つけたさやかが驚く。
「さっき、まどかちゃんに会って事情を聞いたんだ。君だけを放っておくわけにいかないだろ」
「君、マミの忠告を聞いたんじゃなかったのかい? いざとなったらさやかは魔法少女になれるんだよ」
キュゥべえの呆れたような言葉に臆することなくきっぱりと芳文は言い返す。
「それでも、放っておけない」
「君もお人よしだね。何のメリットもないだろうに」
「……でも誰かが側にいてくれるのは嬉しいよ。やっぱりキュゥべえと二人だけじゃ怖かったし……」
キュゥべえの言葉を遮るようにさやかがそう口を挟む。
「俺がどれだけ役に立つかわからないけど、巴さんが来るまでは守ってみせるから」
「あはは、なんか騎士様のおでましって感じかな」
「そういう風に思ってもらえるように頑張る。それで、これからどうする?」
「とりあえず、魔女が孵化するかもしれないから、それを見張ろうと思うんだけど……」
「近づいても大丈夫なのかい?」
「僕がいれば、テレパシーでマミは迷わずに僕達の所に来れるから、今のうちに魔女の居場所を僕等で探しておくんだよ」
「なるほど。それじゃ行こうか」
キュゥべえの言葉に頷いて、芳文とさやか達は結界の中を慎重に進み始めた。
☆
――数十分後。
「バ、バカっ……こんな事してる場合じゃ……」
「帰りに解放してあげる。そこで大人しくしてて」
芳文達に遅れて結界に突入したマミとまどか。
マミは何を考えて行動しているのかわからない、謎の魔法少女暁美ほむらを魔法で拘束して、まどかと共にキュゥべえからのテレパシーを頼りに結界の中を進んでいく。
結界の中を進む途中、まどかはマミに魔法少女になるという決意、夢、思いを語る。
マミはまどかの言葉に今まで寂しかった、怖かったと本音を語り、まどかもそれを受け止め二人の間に確かな友情が芽生える。
(体が軽い……。こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて……。もう、何も怖くない!!)
魔法少女になってずっと孤独だった少女は、これまでにない幸せな気持ちで、次々と使い魔達を打ち倒し、結界の中を突き進んでいく。
やがて、扉を開いた先にはさやかとキュゥべえ、そして魔法少女の存在を知ったイレギュラーの少年がいた。
「――どうして、あなたがこんな所にいるの!?」
二度と関わらないと言ったはずなのに、何故? マミが芳文を問い詰めようとするとまどかがマミの腕を掴んで言う。
「ごめんなさいマミさん。私がお願いしたんです。さやかちゃんとキュゥべえだけじゃ心配だったから……」
「……はあ」
まどかの言葉にマミはため息をひとつ付くと、まどかのおでこに人差し指を当てて微笑む。
「しょうがない子ね。お説教はあとでたっぷりするから覚悟してね」
「は、はい!!」
「社君、関わるなって言っておいてなんだけど、今回だけこの子達をお願いしてもいいかしら?」
「ああ。なるべく役に立ってみせるよ」
「お願いね。出来るだけ早く済ませるから」
そう言って、マミが孵化しかけの魔女の元へ駆け出そうとするのを、芳文は声をかけて押し止める。
「巴さん、悪いんだけど、何か武器をひとつ魔法で出してくれないかな。一応、もしもの事があった時の為に」
前回の戦闘時、マミは無数のマスケット銃を出現させていた。おそらく武器をひとつくらい作り出す事など造作もないだろう。芳文はそう考え、マミに武器の製造を頼む。
「……そうね。何かリクエストはあるかしら?」
「出来れば剣を。昔、剣道やってたから」
「了解。剣ね」
マミが両腕を広げて意識と魔翌力を集中させると、マミの両腕の間に両刃の剣が一振り出現する。
「うん。ありがとう」
芳文が確かな重量を持ち、刀身をキラリと輝かせている剣を受け取って、礼を言うと同時に魔女が孵化した。
11 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:26:49.09 ID:8GUEOo26o
「マミ!! 魔女が孵化したよ!!」
「オッケー!! 今日は速攻で片づけるわよ!!」
孵化して足の長いイスの上に、ちょこんと乗った愛らしいぬいぐるみのような姿の魔女。
マミはイスの足を顕現させたマスケット銃で叩き折り、魔女を落下させると、落ちてきた魔女を銃で殴り飛ばす。
壁にぶつかって足元に転がった魔女を踏みつけ銃弾を叩きこみ、撃ち込んだ銃弾から伸ばした魔法の糸で魔女を天高く拘束し、マミは巨大なマスケット銃を顕現させる。
「ティロ・フィナーレ!!」
必殺の閃光が魔女の胴体に大きな風穴を開ける。
「やったぁ!!」
さやかが歓喜の声を上げ、まどかが笑顔になる。勝利を確信したマミが笑顔になる。
「――っ!? まだだ!!」
芳文は天高く拘束されて撃ち抜かれた魔女の口内から、別の何かが姿を現すのを見た。その瞬間、芳文はマミの元へと全力で駆け出した。
ぬいぐるみのような魔女の口の中から、巨大な蛇のような体に大きなピエロの顔が付いている魔女が飛び出して、ものすごい速さでマミへと迫る。
「――え?」
あまりに突然の予期せぬ不意打ちに、勝利を確信していたマミの動きが止まる。マミの眼前へと迫った魔女の口が大きく開かれ、そのままマミを噛み砕こうとする。
今、正にマミが噛み砕かれる瞬間――。
「このおぉぉぉぉぉぉっ!!」
ヒュンッ!!
マミの元へと駆け寄りながら芳文は、魔女目掛けて思い切り剣を投げつけた。
ドスッ!!
マミの頭に今にも噛みつこうとしていた魔女の左目に深々と剣が突き刺さった。
いきなり乱入してきた第三者に左目を潰された魔女が、上空へと上昇しながら空中でじたばたと痛みにのた打ち回る。
カラーン……。
魔女の左目に突き刺さった剣が、血の涙で抜け落ちて地面に落ちる。芳文は落ちた剣を走りながら拾うと、まだ呆けたままのマミの元に駆け寄る。
「巴さん!! しっかりしろ!!」
「っ!!」
肩を掴まれ揺さぶられ、マミは我に返る。
グオォォォォォォォォォォォッ!!
目を潰されて怒り狂った魔女が、大口を空けてマミと芳文に喰いつこうと猛スピードで迫る。
――その速さはとても避けきれない。
「っ!!」
芳文は咄嗟にマミを突き飛ばす。
「社君っ!?」
間一髪、マミは助かったが、芳文は抉り取られた地面ごと、魔女の口内に飲み込まれてしまった。
「あ、ああ……社君……」
「そんな……先輩が……」
「ひっ……や、やだ……こんなの、嘘……」
――芳文が魔女に喰われた。
目の前で起きた惨状に、マミもさやかもまどかも激しいショックを受ける。
マミとさやかはあまりの光景に呆然と立ち尽くす。
嬉しそうにもぐもぐと咀嚼する魔女の顔を見て、まどかは恐怖に顔を引きつらせてへなへなとその場にへたり込む。
12 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:27:21.28 ID:8GUEOo26o
グオォォォォォォォォォォォォォォォン!!
突然、芳文を喰った魔女が苦しそうな顔をして、ぺっと何かを吐き出す。
「ってぇー!! や、やばかった……」
地面に背中から叩きつけられ、芳文は痛みに顔をしかめながら立ち上がる。
「社君!?」
「先輩!?」
「よ、良かった……」
芳文を吐き出した魔女は、口の中を血だらけにして、空中を大口を開けたままのた打ち回る。魔女の口内は、芳文によって剣で滅茶苦茶に切り裂かれ、突かれ、青い舌には深々と剣が突き立てられていた。
「巴さん!! あいつの口の中をもう一度狙うんだ!! さっきあいつは最初の奴の口の中から出てきた!! 口の中からケツの先まで貫いてやれ!!」
「わかったわ!! ……ティロ・フィナーレ!!」
マミが顕現させた巨大マスケット銃から放たれた凶暴な閃光が、魔女の口内から体の先端まで内部を焼き尽くしながら、もう一つの椅子の上に乗っている人形ごと貫いた。
ティロ・フィナーレによる内部からの破壊に、魔女が跡形もなく爆散する。
シュゥゥゥゥゥン……。
結界が消え去り、周囲の風景が病院の敷地内へと戻る。
「社君!! 大丈夫!?」
変身を解いたマミとさやか達が慌てて駆け寄る。
「あ、ああ、大丈夫だよ。ちょっとばかりやばかったけどね……」
「無事で良かった……」
「ん? 心配してくれるのかい?」
芳文の軽口にマミは目に涙を浮かべて叫ぶ。
「当たり前でしょ!!」
「……そっか。うん。ありがとう」
「お礼を言うのはこっちよ。あなたがいてくれなかったら今頃私……」
あの魔女に噛み砕かれて、そして……。
今になって背筋が凍る。がたがたと震えが止まらない。
「……少しは役に立てたかな?」
「ありがとう……社君」
マミは心からの礼を言う。
「それにしても、先輩よく助かったよね。それにあのでかい魔女が、最初のぬいぐるみの魔女から出てきたのにもすぐ気付いたし」
さやかの問いかけに、芳文はああ、と言って答える。
「俺、視力良いんだよ。あの魔女の口からなんか出てくるのが見えたから、慌てて巴さんの方へ走ったんだ。喰われなかったのは単に運が良かったんだと思う」
「あいつの片目を潰してやったから、遠近感が狂ったんだろうな。もし地面ごと喰われなかったら、今頃俺はミンチだよ」
「丁度魔女の舌の上に飲み込まれたから、巴さんに作ってもらった剣で、滅茶苦茶に斬って突き刺してやったら、吐き出された。ただそれだけだよ」
芳文のミンチという言葉にマミ達は震え上がる。本当に自分達は恐ろしい、危険な目にあっていたのだと……。
「……さてと、巴さん。ちょっと相談があるんだけど」
「……何?」
「あのさ、巴さんとの約束だけど……破ってもいいかな?」
「え?」
「やっぱり無理だ。一度知ってしまったのを見て見ぬふりなんて出来ない。だって俺は……」
芳文はそこで一旦止めて、マミ達の顔を見回して口を開く。
「――バカだから」
「バカだから、女の子だけを戦わせて見て見ぬふりなんて、出来ない。だから、俺も一緒に戦う。俺に何が出来るかなんて判らないし、何も出来ないかもしれない。それでも……俺は、君達と一緒に戦いたい」
芳文の宣言。マミ達はその言葉に押し黙る。そして……。
「……本当に……いいの?」
おずおずとマミが尋ねる。
「うん」
「今回みたいな事がこれからもあるのよ?」
「大丈夫。みんなで力を合わせれば乗り越えられる。それに、正義は勝つって言うだろ?」
そう言ってウインクをして見せる。
「……馬鹿ね」
「ホント、先輩ってバカだよね」
「おいおい……。まあ、バカなのは否定しないけどさ」
マミとさやかの言葉にそう返すと、マミとさやかは笑顔を見せる。
「とりあえず、これからよろしくでいいかな?」
芳文がそう言って手を差し出すと、マミは少し戸惑いつつ、両手で芳文の手を取る。
「……ありがとう」
「よっしゃー、仲間が増えたよ!! やったねマミさん!!」
「ええ!!」
さやかの言葉に、マミは飛び切りの笑顔で頷いた。
マミにとって、今日という日は最高の1日だった。
キュゥべえはさやかの足元で、マミが死を覚悟した時に解けたマミの魔法から逃れたほむらは遠く離れた場所から、それぞれ無表情のまま3人を見つめる。
魔法の使者と黒の魔法少女が何を思っているのか――それは、当人達にしかわからない。
「……」
まどかはひとり、笑顔のマミ達から離れた場所で、じっとマミ達を見つめる。
「――マミさんもさやかちゃんも先輩も、怖くないのかな……」
マミと共に魔法少女になると約束した。もしも何かあっても強くてかっこいいマミが守ってくれる。マミと二人でならきっと頑張れる。
――そう、思った。
しかし、現実は厳しかった。無敵のヒロインだと思い込んでいたあのマミですら、もしかしたら死んでいたかもしれないほどに熾烈だった。
「私、怖いよ……。あんなのと、これからずっと戦い続けるなんて無理……」
マミとさやかは仲間が増えた事を喜んでいる。
だが、まどかはただ、怯えて震えるだけだった。
――魔女への恐怖に怯える少女はまだ、己の過酷な運命を知らない。
「怖いよ……嫌だよぅ……」
つづく
13 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:29:02.31 ID:8GUEOo26o
第1話 「……本当に……いいの?」
おわり
14 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:29:55.84 ID:8GUEOo26o
第2話 「私、死にたくない……」
――どこまでも続く闇の中を疾走するひとつの人影。
まるで、見る者すべてを吸い込んでしまいそうな、深くて暗い闇の中を疾走する影。
――黒衣の少女は深淵の闇の奥で、異形の影と対峙する。
不意に異形の影から小さな影が複数生まれ、おぞましい金切り声を上げながら少女へと襲い掛かる。
異形の影達は少女を蹂躙しようと、少女の前後左右上空から、少女を取り囲むようにして襲い掛かる――が。
小さな影達が少女の華奢な体を引き裂こうとしたその瞬間、少女の姿はまるで幻のように消え去り、影達は連続して発生した爆発に巻き込まれ跡形もなく霧散する。
そして次の瞬間、自らの生み出した影達の後を追うように、異形の影も連続して発生する爆発に飲み込まれ、跡形もなく木端微塵に粉砕されて消滅した。
深い闇は消え失せ、街明かりが深夜の世界を照らす。
いつの間に移動したのか。
黒衣の少女は、小さな廃工場前にある道路に立てられた明滅する街灯の上に立って呟いた。
「――おかしい。こんな魔女、私は知らない」
☆
「ティロ・フィナーレ!!」
マミの放った必殺の一撃がぬいぐるみの姿をした魔女の胴体を貫いた。
「やったぁ!!」
さやかが歓喜の声を上げたその瞬間。
魔女の口から飛び出したピエロの顔をした、巨大な蛇のような魔女がマミの頭を首から喰いちぎる。
一瞬で頭を噛み砕かれ、絶命したマミの体を貪り喰う魔女。
肉片一つ残さず、マミの体を喰らいつくした魔女はにやりと笑い、ものすごい速度でさやかとまどかへ迫ってくる。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
――チュンチュン……。
「……夢」
窓の外からスズメの囀りが聞こえる。カーテン越しに朝日に照らされたまどかの額と体は、寝汗でぐっしょりと濡れていた。
「まどか、朝からシャワーなんて珍しいじゃん」
「……うん、ちょっと寝苦しかったからかな」
母親と洗面台の前でそんな会話をしながら、まどかは別の事を考える。
(――どうしよう。マミさんと会うの……嫌だな……)
昨日、マミと魔法少女になって一緒に戦うと約束した。あの時のマミの嬉しそうな顔がまどかの脳裏によぎる。
(……でも怖いよ。私、さっきの夢みたいな死に方嫌だ……)
魔女の触手に貫かれる自分。魔女に生きたまま噛み砕かれて絶命する自分。そんな悲惨な最期がどうしても脳裏によぎってしまう。
(何年も魔法少女をしてたマミさんだって、あんな簡単に殺されそうになったのに……。私なんかじゃ魔法少女になってもすぐ殺されちゃうよ……)
「まどか、どうかしたのかい?」
朝食の席で、元気のないまどかを心配して父親が声をかける。
「……え。うん、大丈夫……」
「ねーちゃ、だいじょぶ?」
「まどか、本当に大丈夫か?」
幼い弟と母親もまどかの様子を心配する。
俯いたまま、ちらっと家族を見る。
――もし自分を変えようとすれば、すべてを失うことになる。転校生の暁美ほむらに言われた言葉が脳裏によぎる。
魔法少女になって、魔女に殺される無残な最期。こうして自分の身を案じてくれる優しい家族達との別れ。恐ろしい魔女への恐怖といった感情がどうしてもまどかの心を蝕む。
(……嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だっ!! もう怖いのは嫌だよ!! 私、死にたくない!!)
「まどか、もし具合が悪いなら、今日は学校を休みなさい」
まどかの様子を心配した父親の言葉に、まどかは力なく頷くのだった……。
15 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:30:34.67 ID:8GUEOo26o
☆
ギッギッ……。
「……社君?」
「なんでしょうか、早乙女先生」
「君は私の授業中に何をしてるのかしら」
「はい。鍛えてます!!」
「授業中にする事ですか!!鍛えるなら放課後にしなさい!!」
まどか達の担任で、マミと芳文のクラスの英語の担当教諭でもある早乙女和子先生が、ハンドグリップで握力を鍛えながら、手首に括り付けた鉄アレイを上下させている芳文を叱る。
「大丈夫です先生。先生の授業はちゃんと聞いています!! それに、時間がないんです。一刻も早く少しでも強くならないといけないんです!!」
「何を言ってるんですか君は!!」
ギッギッ……。
「見ててください!! 先生!! 僕は絶対に強くなってみんなを守ってみせます!!」
「守るって誰からですか!!」
「それは言えません!! ただひとつ言えるのは先生、教え子の事を信じてください!!」
ギッギッ……。
「……先生、あなたの事がわからないわ」
「先生、人は言葉と言葉で分かり合える素晴らしい生き物だと思います」
「だったら、鍛えるのをやめなさい!!」
「すみません!! できません!!」
「あ、あなたねぇ……!!」
芳文に対して早乙女先生が怒りを爆発させようとしたその時、芳文は真剣な表情で先生の顔を見つめて真摯な声で言う。
「先生、僕は先生の授業大好きです!!」
「な、突然何を言い出すの社君」
「先生の授業はとても為になります。だから一分一秒でも無駄にするべきではないと思うんです!!」
「社君……」
「先生がしてくださる授業、最高だと思っています。先生がつまらない男に引っかかった時の体験談……それを話してもらえて僕は幸せだと思ってます!!」
「……え?」
「先生がつまらない男に引っかかるたびに、その事を話していただく度にちょっとだけ、いい男になれた気がするんです!!」
「……」
「なあみんな!! そう思うだろう!!」
芳文は席から立つと、ハンドグリップと鉄アレイの運動を休めることなく、クラスを見回して言う。
「先生の授業を聞く度に、みんな少しずついい男といい女に成長しているんです!! 先生、これからもずっと、僕らに人生の道しるべを示してください!! 僕らの反面教師として!!」
(うわあ……)
ざわざわ……。芳文の言葉にマミを含めたクラス全員が、顔を引きつらせて同じセリフを胸に抱く。
「さあ!! 先生!! 授業の続きをどうぞ!! それで、コーヒーに入れる砂糖の量くらいで、ごちゃごちゃ言ってくるつまらない男にひっかかって、先生はどうしたんですか!? さあ!! さあ!!」
「……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
ぼろぼろと涙を流し、涙をキラキラと振り撒きながら、早乙女先生は教室を飛び出していく。
「ああっ!? 早乙女先生っ!? どこへ行くんですか!? 授業を!! 授業をしてください!! 早乙女先生ーっ!! カムバーック!!」
「よっしゃぁぁぁっ!! 自習だぁぁぁっ!!」
呆然と成り行きを見持っていたクラスメイト達の中から、芳文の友人の天瀬が叫ぶ。
ワイワイガヤガヤ……。
それに釣られて数人の男子生徒と女子生徒達が騒ぎ出す。
「何を言うんだ!! みんなも静かにしろよ!! まだ授業の時間だぞ!! 早乙女先生ーカムバーック!!」
『おまえが言うな!!』
クラス全員のツッコミが入る。
「え?」
『そこで首を傾げるな!!』
「……えーと、これは噂に聞く学級崩壊ってやつか。うん。俺、15年間生きてきて初めてだよ。学級崩壊だなんて。早乙女先生も大変だな。うん。いくら公務員でも教職なんて就くもんじゃあないな」
『……』
「なあみんな。俺達もう中学3年生じゃないか。もうちょっと大人になろうぜ。この年で学級崩壊なんて、親が聞いたら泣くと思うんだ」
『おまえが言うか!!』
クラス全員のツッコミが入る。
「おお、みんな息ぴったりだなあ。うん。これは体育祭や文化祭の時いい結果が出せるに違いない。いいクラスだ」
ビッとクラス全員に親指を立てて見せる芳文。
『……』
「うん? みんなどうしたんだ?」
首を傾げる芳文。
(バ、バカだ!! こいつ、本物のバカだーっ!!)
クラス全員が芳文への共通認識を抱いた瞬間だった。
16 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:31:51.28 ID:8GUEOo26o
☆
「……それで、社先輩はさっきまで職員室に連行されたってわけですか」
「そうなんだよ。俺、別に悪い事してないのに」
「いや、あなた十分酷い事してるから」
「えー」
「何故そこで、不思議そうに首を傾げられるのかしら、あなたは」
放課後。早乙女先生を泣かせた件で担任教諭に呼び出しを喰らった芳文が合流してから、マミとさやかと芳文は3人で街中を歩く。
「まあ、確かに授業中に鍛えてたのは、悪い事だったかな」
「……社君。その事じゃなくて、早乙女先生につまらない男にひっかかったとか、反面教師とか言った事の方が問題なのよ」
「えええっ!? そうなの!?」
「……はあ」
マミが呆れた顔でため息をつく。
「なんてこった……。俺が原因で学級崩壊が起きのか……」
「いや、考えるまでもなくあなたが原因だから」
「……よし、明日気が済むまで、早乙女先生に殴ってもらおう」
「やめなさい。今のご時世に体罰なんて先生が振るえるわけないでしょ」
「あははは……。早乙女先生がホームルームの時元気がなかったのって、先輩のせいだったんだ」
さやかが乾いた笑みを浮かべて言う。
「……はあ、いい男への道は遠いなあ。そういや、まどかちゃんはどうしたの?」
「なんか体調が悪くて休むってメールが……」
「……ああ、女の子、ひでぶっ!!」
『それ以上言ったら殴るわよ』
声をハモらせて放たれたマミの平手打ちと、さやかのボディブローを喰らって芳文の言葉が途切れる。
「……痛いよ、二人とも」
「デリカシーのない男子は嫌われるわよ」
「先輩の変態」
「ひでぇ……。女の子女の子してるまどかちゃんの事だから、昨日の事でショックでも受けて寝込んでるのかなって言おうとしたのに……」
『え?』
「いや、ずっと戦ってきた巴さんや気の強いさやかちゃんと違って、あんなに優しくて女の子女の子してるまどかちゃんなら、ひどいショックとか受けててもしょうがないかなって……」
『……』
「えーと、よくわからないけど君達二人を怒らせるような誤解を招いたのかな、俺って」
「……さあ、次の場所に行きましょうか」
「そうですね」
芳文を殴った事について、何もなかった事にするのを決め込んだ二人はさっさと歩いていく。
「あ、ちょっと。……俺、なんで殴られたんだろう?」
首を傾げながら、芳文は慌てて二人の後を追うのだった。
17 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:33:22.87 ID:8GUEOo26o
☆
――街中を歩き続けて一時間ほど経った頃、繁華街の路地裏にて。
「!? ソウルジェムに反応が出たわ!!
マミの左手に載せられたソウルジェムが明滅している。
「行くわよ、二人とも」
マミが先導して進むのを後についていく二人。
マミが足を止めると周囲の風景が異世界へと変化していく。
「巴さん、あれは魔女なのかい?」
マミ達の視線の先で、まるでイタチのような姿をしたカラフルな色の使い魔が一体、ふよふよと宙に浮いている。
芳文の言葉にマミは魔法少女の姿に変身して答える。
「いいえ。あれは使い魔よ」
「なるほど。あいつはグリーフシードだっけ? 倒しても落とさないんだよね」
「そうよ。でも放置したら人を襲って、元になった魔女と同じ姿になって、また新しい使い魔を産むから倒さないと」
「オーケー。それじゃ、あいつは俺が相手するよ」
「社君?」
「俺の役目は巴さんの魔翌力を無駄に使わせない事。使い魔は俺が何とかする。巴さんは魔女を倒す時に全力全開。もちろん、魔女戦の時は囮でも何でもして出来うる限りサポートする」
「大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。魔女相手だったら勝てないだろうけど、使い魔なら勝てると思う。とりあえず巴さん。剣一本出して。流石に素手じゃ倒せないから」
「社君、無理はしないで」
「了解」
マミが剣を一本顕現させて、芳文に渡す。
「一応聞いとくけど、これ出すのって魔翌力沢山使ったりする?」
「大丈夫よ。剣一本作るくらいの魔翌力なら、普段使ってる銃を一丁出すのとたいして変わらないから」
「それ聞いて安心した。んじゃ、行ってくる」
芳文はそう言って剣を構えて使い魔へと向かって走り出す。
芳文に気付いた使い魔は、前足をまるで刀の刀身のように変形させると、ぐるぐると全身を回転させながら、猛スピードで芳文目掛けて突っ込んでくる。それはまるで小型の竜巻だった。
「危ない!!」
さやかが叫ぶと同時に、芳文は紙一重で使い魔の突進をかわして、横なぎに剣で斬りつける。
ギギギギッ!!
使い魔の回転する刃と芳文の剣が金属の削られる音を鳴り響かせる。
「ちっ!!」
背後にバックステップで飛ぶと、使い魔は芳文の足元目掛けて突っ込んでくる。
「社君!!」
マミが叫ぶのと同時に、芳文はその場で思い切りジャンプして、先ほどまで立っていた場所へ突っ込んできた竜巻の中心部へと剣を突き刺した。
中心部を剣で串刺しにされた竜巻が回転を徐々に緩めていくと、頭頂部から股間までを串刺しにされた使い魔がその無様な姿を晒して、ビクンと一度震えるとそのまま霧散して消滅する。
「やったあ!!」
さやかが歓喜の声を上げる。
「社君!! 大丈夫!?」
マミとさやかが芳文の元へ駆け寄ると同時に周囲の風景が元の風景へと戻る。
「ああ、大丈夫だよ。流石ベテラン魔法少女の作った剣だ。鈍い音がしてたけど刃こぼれひとつしてやしない」
芳文が手にした剣を掲げて見せるとマミは引き締めていた表情を緩めて変身を解く。マミの変身が解けると同時に剣も消滅する。
「……ふう。それで俺は役に立てたかな?」
「ええ。あなた普通の人間のはずなのに、まさかこんなに強いなんて思わなかったわ」
「先輩よくあんな速い攻撃避けられたよね。あたしだったら、あんなの避けられないよ」
「いやいや、そんなに褒めないでくれよ。俺なんてまだまださ。……それにしても使い魔であれなんだから、あれの元になった魔女とやりあう時は気を付けないといけないな」
「そうね。さっきの使い魔と昨日の魔女もそうだけど、いつも現れる物よりも強い魔女と使い魔がこの街に現れてるみたいだから、気を引き締めないとね」
「ああ」
「……なんか、あたしやまどかがキュゥべえと契約しても、マミさんの役に立てるか不安になってきちゃったよ」
さやかが不安げに呟く。
「大丈夫さ。もし魔法少女になったとしても、君やまどかちゃんが一人で戦わないといけないわけじゃないし、一人だけで戦うなんて事は巴さんと俺がさせない」
芳文はそう言ってさやかの頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
「社君の言うとうりよ。美樹さん」
そう言ってマミは優しい顔で微笑んでみせる。
「……はい」
さやかは笑顔でマミに返事を返す。
18 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:34:50.11 ID:8GUEOo26o
「うん。やっぱり女の子は笑顔が一番だ」
「で、先輩はいつまであたしの頭を撫でてるのかな」
「……ああ、ごめん。気を悪くしたなら謝るよ」
芳文は慌ててさやかの頭から手をどかして謝る。
「いや、別にいいんだけど。なんていうか、子供扱いされてるみたいでさ」
「中学生なんてまだまだ子供だと思うけどな。図体ばっかでかくなっても親に頼らなきゃ生活出来ないし。俺も君達も」
「そりゃそうかもしれないけど……って、いや、そうじゃなくて!!」
「社君、あんまり美樹さんをからかったら駄目よ」
「別にからかったわけじゃないんだけどな……」
「所で先輩ってさ、女の子の頭撫でるの慣れてるの? 随分自然に撫でてくれたけど」
「……ああ、妹がいたんだよ」
「先輩って、妹がいるんだ」
「ああ。性格がちょっとさやかちゃんに似てるかな」
「へえー。ちょっと会ってみたいかも」
「……それは無理だな。悪いけど」
「……え?」
「社君、いた、って……」
「うん。もういないんだ。この世界のどこにも」
「あ……」
マミとさやかがばつが悪そうにするのを見て、芳文は明るく声をかける。
「さあ、まだパトロールするんだろう? 行こう、二人共」
「……そうね。行きましょう美樹さん」
「……はい」
三人は再び街中の探索に戻るのだった。
☆
翌日もマミとさやかと芳文は放課後、三人で魔女や使い魔を探して街を探索していた。
「今日もまどかちゃんは休みか。大丈夫かな?」
「一応メールは打っておいたけど、返信がないんだよね。ホント、まどか大丈夫かな」
「美樹さん、鹿目さんってもしかして体が弱いとか?」
「いえ、まどかは別に体が弱いとかそういうのないですけど」
「……そう」
さやかの返答にマミは俯く。
「まあここ数日で色々あったし、しょうがないさ」
「……そうね」
「そういや、淫獣は? 昨日今日と見かけてないけど」
「僕は淫獣じゃないよ」
「あ、キュゥべえ」
建物の影から出てきたキュゥべえが、さやかの肩の上に駆け登る。
「丁度良かった。ねえ、キュゥべえはまどかの所にいたんでしょ。まどかの体調どうなの?」
「まどかなら、肉体的には健康そのものだよ」
さやかの問いかけに、いつものポーカーフェイスで答えるキュゥべえにマミが尋ねる。
「……キュゥべえ、それはどういう意味なの?」
「そのままの意味だよ。まどかは精神的に参ってるって事」
「それはこの前の魔女戦のせいか?」
「おそらくそうだろうね。マミや君があの魔女に喰い殺されそうになったのが、相当ショックだったんだろうね。あの日の夜も随分うなされていたし」
「……それで、おまえさんはどうしてたんだ?」
「とりあえずまどかが落ち着くのを待ってから、契約するかどうか聞いたんだけど、怖いから嫌だって泣きながら拒否されたよ」
「おい!! 慰めるてあげるとか他に出来る事あるだろうが!! まどかちゃんがそんな状態の時に契約を持ちかけるってお前に人の心はないのか!!」
芳文がキュゥべえの態度に怒って、鷲掴みにしようとするのをマミが腕を掴んで制止する。
「社君、キュゥべえに当たってもしょうがないわ。それに元々、彼女には命を懸けてまで叶えたい願いも魔女と戦わないといけない理由もないんだから……」
マミはどこか寂しそうにそう言うと、さやかに向き直りさやかの目をじっと見つめながら語りかける。
「美樹さん。あなたも契約をするかどうかは慎重に考えてね。あなたの願いが本当に命をかけてまで叶えたい願いなのかどうかを」
「あなたは人の為に願いを使おうとしているみたいだけど、それでもし、あなた自身が報われなかった時の事もしっかり考えて。その場の感情だけで契約しては絶対に駄目よ」
「……わかりました」
マミの言葉にさやかはしっかりと頷いて答える。
「僕としては契約してくれるならどんな願いでもいいんだけどね」
「てめえは少し黙ってろ淫獣」
空気の読めないキュゥべえの頭にぎりぎりとアイアンクローを芳文はかましてやる。
「痛いよ」
「だったら余計な事を言うな」
「……そうね。キュゥべえはもう少しデリカシーと言う物を持った方が良いわ。さあ、今日はここまでにして解散しましょう」
「そっか。それじゃ二人とも家まで送ってくよ」
「大丈夫よ。まだそんなに遅い時間じゃないから」
「あたしも大丈夫。ここからなら家近いから」
「そう? まあ無理にとは言わないけど」
「ありがとう、社君」
「それじゃ、マミさん、先輩、また明日」
「うん、また明日」
キュゥべえを肩に載せたまま、さやかが手を振って去っていく。
「じゃあ、私もここで」
「ああ、また明日」
「ええ」
マミも踵を返して去っていく。マミの背中が少し寂しそうに見えたが、芳文はマミとまどかに何があったのか知らないので、マミにかける言葉が見つからなかった……。
19 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:36:02.21 ID:8GUEOo26o
☆
「……帰るか」
マミとさやかの姿が見えなくなった頃、残された芳文はそう呟いて歩き出す。
(……巴さん、まどかちゃんの事を淫獣に聞いた時、寂しそうな顔してたな)
マミの寂しそうな顔を見て、まどかとの間に何かあったのかなと、考えながら歩いているその時だった。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
通りかかった公園の中から、女の子の悲鳴が聞こえた。
「悲鳴!?」
芳文は悲鳴が聞こえた方角へと走り出す。
「どこだ!?」
公園の中に飛び込んだ芳文の目の前で、ナイフを持った30代くらいの小太りの男が、地面にへたりこんでじりじりと後ずさる女の子を襲おうとしていた。
「てめえ!! 何してやがる!!」
芳文は男を怒鳴りつけながら、男の顔面に渾身のパンチを叩きこむ。男は前歯を数本へし折られ、電灯に叩きつけられるとそのままずるずると地面に倒れ伏す。
男が完全に失神してピクリとも動かなくなったのを確認すると、芳文は襲われていた女の子に振り向いて優しく声をかける。
「もう大丈夫だよ……って、まどかちゃん?」
芳文が助けた女の子は見滝原中学の制服を着たまどかだった。よほど怖かったのだろう。目に涙を浮かべてがたがたと震えている。
「今日学校休んだって、さやかちゃんに聞いてたんだけど……。立てる?」
芳文が手を差し出すと、まどかはおずおずと手を掴んでくる。
「よっと……?」
まどかの手を取って立たせてやると、足取りがおぼつかないのか、よろよろと芳文の方へと倒れこんでくる。
「大丈夫? ケガとかしてない?」
まどかの小さな体を優しく受け止めて尋ねると、まどかは涙をぽろぽろと零して嗚咽を漏らす。
「怖かった……。怖かったよう……」
「大丈夫。もう大丈夫だから」
芳文はぽんぽんと優しく肩を叩いてやる。
「う、うえぇぇぇぇぇぇぇんっ……」
よほど怖かったのか、まどかはしばらく泣き続けた。
「……ぐす」
「もう、大丈夫かな」
「ぐす……はい」
「どうしてこんな所に一人でいたのか、聞いてもいいいかな?」
まどかが落ち着くのを待って芳文は疑問を切り出す。
「さやかちゃんからは、今日も学校を休んだって聞いてたけど……」
「……」
「言いたくないなら、言わなくてもいいよ。それじゃ、家まで送ってあげるから」
「……先輩は、マミさん達と魔女退治してたんですか?」
「うん。今日は見つからなかったけど、昨日は使い魔を一匹倒した」
「……先輩は怖くないんですか?」
「まどかちゃん?」
「……私、マミさんに会うのが怖かったんです。一昨日、先輩がさやかちゃんを助けに行ってくれた日、マミさんと約束したんです」
「魔法少女になってマミさんと一緒に魔女をやっつけるって。マミさんの側にいるって。なのに……」
まどかの瞳にまた涙が溜まる。
「あの時、マミさん達が殺されそうになったのを見て私、怖くなって……っ」
「マミさんみたいに誰かの役に立ちたいって、マミさんと一緒なら、何にも出来ない今の自分と違う自分になれるって……っ。それなのに、怖くって……っ!!」
ぽろぽろと涙を流しながら、まどかは苦しい胸の内を吐き出す。
「マミさんはあんなに喜んでくれたのにっ……!! マミさんみたいになりたいのに……っ!! どうしても恐怖の方が強くて、契約なんて出来なくて……っ!!」
「マミさんに会わせる顔がないよ……っ!! 怖いのは嫌だぁ……。私、死にたくない……。嫌だ、嫌だよぉ……」
「まどかちゃん。泣かないで」
芳文は優しくまどかの頭を撫でてやる。
「怖いなら、それでいいじゃないか。無理に魔法少女になる必要なんかない」
「でも!! でも私!!」
「上手く言えないけどさ、別に一緒に戦うだけがすべてじゃないと俺は思うんだ」
「……え?」
「俺は君達と知り合って日も浅いから、間違ってる所もあるかも知れないけど……言わせてもらうよ。君はひとりぼっちだった巴さんの側にいるって約束したんだろう?」
「……はい」
「側にいるのは何も戦場でなくてもいいんじゃないかな。普段の日常生活では友達として側にいてあげればいい。巴さんが戦いに行くなら、彼女の無事を願って帰りを待っててあげればいい」
「それで、彼女が帰ってきたらおかえりなさいって言ってあげればいい。それでいいじゃないか」
「……」
「どこまでやれるかわからないけど、俺が君の代わりに巴さんと一緒に戦うから。だから君はそのままの君でいればいい」
「でも……」
「それとも、君の知ってる巴さんは、戦う意思のない他人を無理やり戦いに巻き込むような人なのかな?」
芳文の言葉にまどかはきっぱりと言い切る。
「マミさんはそんな事しません!!」
「うん。知ってる。だから、謝ろう。彼女もきっとわかってくれるはずだから」
「でも……」
「このままじゃ、君も巴さんも苦しい思いをするだけだよ。一人で言う勇気が出なければ俺も一緒に謝ってあげるから」
「……マミさん、許してくれるでしょうか?」
「大丈夫だよ。彼女は優しい人だから」
「……はい」
涙をぬぐってまどかはようやく笑顔を見せる。
20 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:38:16.42 ID:8GUEOo26o
「やっと笑ってくれたね」
「え?」
「女の子は泣いてる顔よりも笑顔の方がかわいいよ」
「……」
かっとまどかの顔が赤くなる。
「さ、帰ろう。家まで送ってあげるから」
「……はい。……あ、でも」
「どうしたの?」
「その、実は今日、学校ずる休みしちゃって……」
「……ああ、それで今日はずっと外で時間潰してたって事か。制服姿なのも納得がいったよ」
「あぅ……はい……」
ばつが悪そうにもじもじするまどか。
「うーん、流石にご両親に怒られるのはしょうがないね。学校から連絡の一つくらい行ってるだろうし」
「……どうしよう」
「そうだなあ……。とりあえず、帰り道で一緒に言い訳を考えてあげるよ」
「すみません……」
「気にしなくていいよ。……あ、あいつどうしよう。とりあえず警察に連絡した方が良いかな」
芳文はそう言って、倒れている男を見る。
「!?」
先ほどまで失神していた男が、いつの間にか立ち上がって、まるで幽鬼のようにふらふらとナイフを片手に芳文達の元へ歩いてくる。
「ひ……」
怯えるまどかを背後に庇いつつ芳文が優しく語りかける。
「大丈夫だから安心して。もう一度ぶっとばして警察に突き出してやるから」
芳文が男をもう一度殴り飛ばそうとしたその時だった。
茂みの中から、公園の出入り口から、ナイフや割れたビール瓶、ドライバー、バットといった、凶器を持った男達がふらふらと目の前の男と同じように、芳文達の元へと向かってくる。
「なんだこいつらは!?」
「先輩!! あの人達の首元に!!」
震えながらまどかが指差すその先に芳文が視線を向けると、ふらふらと歩いてくる男達の首筋に奇妙なタトゥーが街灯で照らされて確認出来た。
「あれは……!? たしか魔女の口づけとか言う……」
街の探索中にマミから聞いた情報と一致する。
「まずい!! 魔女の口づけを受けた人間が集まるって事は、この公園のどこかに魔女の結界があるって事か!!」
「そんな……」
芳文の言葉にまどかが顔面蒼白になる。
「くそ、巴さんなら気付いたんだろうけど……!!」
魔法少女ではない芳文とまどかには魔女の気配はわからない。せめて最初の男に付けられた魔女の口づけにもっと早く気付いていたら、すぐにこの場を離れられたのに。
「まどかちゃん、この場は逃げて巴さんを呼ぶよ!!」
「は、はい!!」
芳文は襲い掛かってきた男を殴り飛ばすと、まどかの手を掴んで走り出す。
公園をあと少しで出られるというその時――。
「っ!? しまった!!」
ぐにゃりと公園の風景が変わり出す。
「くそっ!!」
芳文は慌てて、携帯を取り出してマミに電話をかける。
「はい、巴です」
運良くマミが電話にすぐに出た。
「魔女だ!! 3丁目の運動公園」
ブッ、ツーツー……。
結界が出来上がり、携帯の通話が遮断される。芳文とまどかは完全に閉じ込められてしまった。
21 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:39:05.76 ID:8GUEOo26o
「あ、あああ……」
まどかががたがたと震えだす。先日の恐怖がまだ抜けていないのか、まどかは顔面蒼白になっている。
「大丈夫。何とか俺達の居場所は巴さんに伝えたから。すぐに巴さんが来るからね」
怯えるまどかを安心させようと、優しく話しかけたその時、周囲の物陰から黄緑色の毛玉が複数現れた。
「使い魔か!! くそ!! こんな時に!!」
毛玉の中心に一本の切れ目が入りぐぱあっと上下に開くと、不規則に並んだ鋭く尖った歯が生えているのが確認出来る。毛玉はブルブルと震えると、芳文達目掛けて噛みつこうと飛んでくる。
「ちっ!!」
芳文は毛玉の側面を裏拳で殴りつける。殴り飛ばされた毛玉はぽよんぽよんと地面を跳ねて転がると、何事もなかったかのようにまたブルブルと震えて飛んできた。
「くそっ!! せめて何か武器があれば!!」
再び飛んできた毛玉を、先ほどの一撃と同じように裏拳で叩き落とすと、まどかの手を掴んで走り出す。
「巴さんが来るまでの辛抱だから!!」
「は、はいっ!!」
囲まれる前に別の場所に逃げようと走り続ける二人。
「あっ!?」
だが使い魔から逃げる途中で、まどかがでこぼこした地面につまずいて、転びそうになる。
「まどかちゃん!?」
慌てて、まどかの体を支えると使い魔がまどか目掛けて飛んでくる。
「くっ!!」
バシュッ!!
まどかを庇った芳文の左肩が使い魔の歯で切り裂かれ、血が噴き出す。
「まどかちゃん行くよ!!」
自分を庇ってケガをした芳文に対して、言葉が出ないまどかの手を掴むと、再び走り出す。
結界の中を進んで行くと途中大きな斜面に出くわした。背後からは使い魔が迫る。
「道がない……。ど、どうしよう……」
「……まどかちゃん、目を閉じて、しっかり歯を食いしばるんだ」
「え?」
「早く!!」
「は、はい!!」
芳文に叱咤され、まどかは慌てて指示に従う。芳文はまどかを抱き寄せお姫様だっこの体勢にして、まどかが怪我を出来るだけしないように抱きしめながら、大きな斜面に飛び込んだ。
ズザザザザザザザザザザザ……。
背中を斜面で削られながら、芳文はまどかにケガをさせないよう力を込めて抱きしめたまま、斜面を滑り落ちていくのだった……。
つづく
22 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:40:13.01 ID:8GUEOo26o
第3話 「……本当に、一緒に戦ってくれるんですか?」
「……まどかちゃん、もう目を開けていいよ」
斜面の底で、芳文はまどかに話しかける。
「……ここは?」
「さっきの斜面の底。どうやらここには使い魔はいないみたいだ」
「先輩、背中が……」
「……ああ、滑り落ちる途中で引っかけたかな。それよりまどかちゃんはケガしてない?」
芳文の背中は制服がボロボロに破れて、肌が露出して擦り傷や切り傷だらけだった。
「わ、私は大丈夫です」
「そうか、良かった」
「せ、先輩、血が……」
「大丈夫。見た目ほどダメージないから。後で巴さんに治してもらうから気にしないで」
「……っ」
まどかはハンカチを取り出すと、芳文の出血部を押さえる。
「ごめんなさい……。私のせいで……」
「君のせいなんかじゃない。気にしないでいいから」
「……きっと、私が嘘吐きで弱虫だから、罰が当たったんです。先輩まで巻き込んで、こんな……」
まどかはぽろぽろと涙を流して芳文に謝る。
「泣かないで。君のせいなんかじゃないから……」
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
芳文の言葉にまどかは泣きながら、謝り続けるのだった。
☆
「……先輩、聞いてもいいですか?」
「何かな?」
「先輩はどうして、マミさんのお手伝いをしようと思ったんですか?」
斜面の底で使い魔達から身を隠しながら、まどかと芳文はマミの到着を待っていた。
まどかは芳文にずっと疑問に思っていた事を尋ねる。
「ああ。そんな事か。巴さん達だけに全部押し付けて、見て見ぬふりをしたくなかったから」
「先輩は願いをキュゥべえに叶えてもらったわけでもないのに、そんなケガをしてまでどうして……」
「……願いか。……俺にはそんなものないな。あえて言うならただ、誰かの役に立ちたい。それだけかな。君は願いがあるのかい?」
「……私は、何の取り柄も特技もないし、このまま色んな人に迷惑ばかりかけて生きていくのが嫌で、そんな自分を変えたくて……」
「……それで、一度は魔法少女になろうと思ったのかい?」
「だけど、やっぱり怖くなって……。私は弱虫で嘘吐きで……」
「だったら、これからがんばって自分を変えればいいさ。わざわざ危険と隣り合わせの魔法少女になる必要なんかない。それに、君の身にもし何かあったらご両親が悲しむだろう?」
「……はい」
優しい家族の顔を思い出して、まどかは芳文に頷く。
「大丈夫。すぐに巴さんが来る。絶対無事に家に帰してあげるから」
芳文はそう言ってまどかを安心させようと微笑んでみせる。
「……どうして、先輩はそんなに優しいんですか?」
「……俺が?」
「はい」
「……俺は優しくなんかない」
まどかの言葉に、芳文はつい自嘲気味に返してしまう。
「……え?」
「……俺は、たった一人の妹を見殺しにしたんだ」
「せ、先輩……」
異常な状況下の中で恐怖に怯えるまどかの手前強がってはいたものの、所詮芳文も一五歳の少年でしかなかった。
今まで誰にも吐いた事のない呪詛を思わず吐き出してしまう。
「俺はさ、いらない人間なんだよ。……俺さ、小さい頃に実の母親に捨てられてたんだ」
自嘲気味に笑いながら芳文は幼い頃の事を思い出す。優しかった母親が、ある日突然冷たくなった日の事を。
魔女の結界の中に成す術もなく閉じ込められ、どうする事も出来ない状況下の中で辛い思い出を思い出した芳文は、まるで吐き出すように言葉を繋ぐ。
「何でも母親が記憶喪失になって倒れてた所を、親父が拾って面倒を見てるうちにお互い情が湧いて結婚して生まれたのが俺なんだってさ。いくつの時だったかな……」
「ある日突然母親が冷たくなった。ふとしたきっかけで記憶が戻ったんだと。それで俺と親父ははい、さようならさ。こっちは記憶があろうがなかろうが母親だから、慕ってる訳。けど母親はなんて言ったと思う?」
芳文は苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てる。今までずっと隠して生きてきた暗い感情が、異常な状況下に置かれた事で次々と口から湧いて出る。
23 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:41:50.53 ID:8GUEOo26o
「近寄るな、汚らわしい、お前なんて産まなきゃよかった、だってさ。当然親父が怒って母親とは大喧嘩。母親はいなくなった。母親がいないのを不憫に思ったんだろうな。その後親父が新しい母親と再婚したんだ」
「新しい母親には娘がいてさ、俺と妹……実の娘を分け隔てなく実の子として可愛がってくれた。その後親父が病気で死んだ後も、お袋は俺を引き取って育ててくれたんだ」
「その後、死んだ親父の親友だった今の親父とお袋が再婚して、俺は社芳文になった。親父もお袋も妹も血の繋がりはないけれど、三人共俺を家族として扱ってくれた。妹とはケンカばかりだったけど、幸せだったよ」
「社の実家のじいさんが剣術の道場やっててさ、そこで家族で暮らしてたんだけど、ある日、じいさんに破門された弟子が道場と家に放火したんだ」
「じいさんと母親はそいつに刺殺されて、妹は燃えて崩れる家の下敷きになって……。泣きながら叫ぶんだよ。助けてって。それなのに、俺は助けようとしなかったんだ」
「燃え盛る炎の中で熱い、痛いって泣き叫ぶ妹を見殺しにして逃げたんだよ。もう助けられないからって勝手に諦めてさ。出張中だった親父が戻ってきた時には生きてるのは俺だけだった……」
「……今でも夢に見るんだ。あの時、どうして逃げたりしたんだろうって。あそこで死ぬべきだったのは俺だったのにって。妹が生きてれば君と同じ年齢だったのに」
「生きてさえいれば、いつか人生を共にするパートナーと巡り合って、子供を産んで、幸せになれるはずだったのに」
「結局の所、俺が誰かを助けたいって思うのは只の自己満足なんだ。見殺しにした妹の姿を勝手に他の誰かに重ねて、守ろうとしてるだけなんだよ。だから、俺は優しくなんかない」
「勝手に傷ついて勝手に死んでいけばいい。誰にも必要とされない、いらない人間だから。助けを求めてる妹を見殺しにして逃げるような最低の人間だから」
「だから、傷つくのは俺だけでいい」
「……」
「……つまらない話をしてしまったね……ごめん。ちょっと異常な状況が続いてたせいでどうかしてた。こんな時だからこそ、俺がしっかりしないといけないのに。我ながら本当に情けないよな……」
今まで抱え込んでいた実の母親と自分自身への黒い感情を、異常な状況下で気が滅入っていたとはいえ、知り合って間もない女の子に全部ぶちまけてしまった事を後悔しながら、芳文はまどかに謝った。
「……っ」
「……どうして、君が泣くの?」
「だって、先輩が悲しい事言うから……。いらない人間だからとか、そんな悲しい事、言わないでください……」
「……」
「先輩が怪我をしたり、死んだりしたら、先輩のお父さんやお友達だって、悲しむのに……」
「……俺はもう、親父の重荷でしかないし、ダチも只の腐れ縁で付き合ってくれてるだけだから。俺がいなくなっても誰も悲しんだりしないよ」
(……何を言ってるんだ俺は。この子にこんな事を言ってもしょうがないのに。俺は本当に最悪のクズだ……)
「そんなのってないよ……。そんなの、絶対おかしいよ……」
まどかは泣きながら芳文の顔を見つめて言う。
「私、そんな事考えてる先輩に守ってもらっても嬉しくない……。それでもし先輩が死んじゃったりしたら……」
「……」
ズズズズズズン……。
まどかの言葉を遮るかのように、突然地響きが鳴り響く。
「……何だ!?」
ズガアァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
斜面を突き破って、巨大な黒い球根のような姿をした魔女が、芳文とまどかの目の前とその巨体を現す。
「魔女か!! くそ!!」
ヒュンッ!!
球根の形をした魔女の上面と下部から黒い触手が何十本も伸びて、その内の一本がまどか目掛けて飛んでくる。
「っ!!」
ドスッ!!
先端が鋭利に尖った触手が、咄嗟にまどかの前に立ちふさがった芳文の右肩を貫く。芳文の肩を貫いた血まみれの触手の先端がまるで蕾から花が咲くように開き、中からギロリと目玉が現れまどかの顔を見つめる。
「ひぃっ!!」
血まみれの触手から覗く目玉に見つめられ、あまりの恐怖にまどかはへなへなと腰を抜かして座り込んでしまう。
ズルッ!! 芳文の右肩から触手が引き抜かれると、別の触手が飛んでくる。
ヒュンッ!! ヒュンッ!! ヒュンッ!! バスッ!! バスッ!! バスッ!!
「くっ!!」
芳文は腰が抜けて立てないまどかを庇って、左下腕、右の太もも、左わき腹を突き刺される。今度はどの部位も貫通しなかった。
「ぐ……」
ヒュンッ!! ヒュンッ!! ヒュンッ!! バスッ!! バスッ!! バスッ!!
「くそ……っ!! こいつ、遊んでやがる……っ!!」
その気になれば、心臓を一突きにして芳文をすぐ殺せるのに、この魔女はまるでまどかを怯えさせる為に、芳文を嬲り殺しにしようとしてるようだった。
ヒュンッ!! ヒュンッ!! ヒュンッ!! バスッ!! バスッ!! バスッ!! ヒュンッ!! ヒュンッ!! ヒュンッ!! バスッ!! バスッ!! バスッ!!
24 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:43:43.45 ID:8GUEOo26o
「あ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁっ……」
芳文はその場から一歩も動く事無く、まどかを庇って全身を触手に撃ち貫かれ続ける。まどかは目の前の凄惨な光景に涙を流しながら怯える事しか出来ない。
「……泣かないで。巴さんがもうすぐ来るはずだから」
ヒュンッ!! ヒュンッ!! ヒュンッ!! バスッ!! バスッ!! バスッ!!
怯える少女に優しく語りかけながら、芳文は耐え続ける。
ヒュンッ!! バスッ!!ブンっ!! ズガァァァァンッ!!
触手が左肩を貫通する。魔女はそのまま芳文の体を軽々と持ち上げると、まどかの目の前で思い切り、背中から地面へと叩きつけた。
「ガハッ!!」
芳文が吐血する。
「先輩!!」
「に、逃げるんだ……」
ヒュンッ!! 触手がまるでムチのようにまどか目掛けて叩きつけられる。
バシィッ!! バキベキ……。
まどかを庇って立ち上がった芳文の右肩が触手の一撃で砕ける。
「ぐ……」
「やめて……。もうやめて……!!」
まどかの弱弱しい悲痛な叫びが結界内に木霊する。
「誰か、誰か助けて……。先輩が死んじゃう……」
魔女の触手が芳文とまどかをまとめて貫こうと撃ち出される。
「誰か……」
撃ち出された触手を見つめながら、まどかが悲痛な声を上げたその時だった。
魔女の結界の中ですべての時間が止まった。
「……まどか!!」
魔女もまどかもなにもかもが動きを止めた世界。その中を暁美ほむらが駆け寄ってくる。
「まどか!! 良かった、無事で……」
制止した時間の中でまどかに外傷がないのを確認して、ほむらは安堵する。
「……君は、魔法少女、か?」
「!?」
自分以外の何物も動く事の出来ないはずの世界で、突然声をかけられてほむらは驚いて振り返る。
「良かった……。その子を頼むよ……」
全身を触手で貫かれ、右肩を砕かれ、あばらも数本折られて、気力だけで立っていた芳文は片膝を地面に着きながら、ほむらにまどかの事を懇願する。
「あなたは……。何故、私の時間停止を受け付けないの!?」
自分以外すべての時間を止める魔術を使うほむらは、目の前のイレギュラーな存在に驚く。
「……さあ? それより早く、その子を安全な場所へ……」
「……」
「早く……」
「……あなた、まだ動けるかしら」
「……なんとか」
「そう。それならこの場は一旦引くわ。付いてきて」
ほむらはそう言うと、まどかを抱き上げて走り出す。
「……」
芳文は激痛に耐えながら、ほむらの後を追う。
「時間停止が切れる……」
ほむらは魔女から50メートルほど離れた場所で、まどかを地面に降ろすと芳文の元へ跳躍して、芳文の元へと着地する。
「じっとしてて」
ほむらは芳文に肩を貸すと、再び跳躍してまどかの元へ着地する。
「あの魔女は私が片づける。あなたはその子と一緒にそこでじっとしていて」
ほむらがそう言って、芳文の腕を自分の肩から下して背中を向けると同時に、時間停止の魔術が解除される。
(……あの子、前にどこかであったか? さっき肩を借りた時、なんだか懐かしい感じがしたような……)
(――いや、気のせいだ。あんな子俺は知らない。……もしかして、このダメージのせいで感覚や精神がおかしくなってるのか? もしそうだったら、俺ももう終わりかな……)
芳文はそんな事を考えながら、その場に片膝を付いてはあはあと荒い呼吸を繰り返す。
「……ほむらちゃん?」
まどかがほむらに気付いて声をかけたその時には、すでにほむらは魔女の元へと跳躍していた。
「!? 先輩しっかりしてください!!」
ほむらが魔女の元へ向かってすぐ、自分のすぐ側で全身血まみれで片膝をついている芳文に気付いて駆け寄る。
「……大丈夫だから。気にしないで」
「そんな!! こんなにひどいケガをしてるのに!!」
「……俺の事なんていいんだよ。君が怪我をしてなければそれで」
「そんな事言わないでください!! せめて止血を!!」
まどかが制服の袖を引きちぎって、芳文の止血をしようとする。
「……俺の事なんて気にしなくていいから、魔女が倒されるまで隠れてるんだ」
「でも!!」
「……大丈夫だから。もしここで死ぬ事になっても、絶対君だけは家に帰してあげるから」
芳文のその言葉にまどかは怒って叫ぶ。
「先輩のばかっ!! ここで先輩が死んだりしたら、悲しむ人達がいるのに!!」
「……君を庇ったのは俺の身勝手だ。君が気に病む必要はない」
「っ!! 本気で怒りますよ!! 先輩が死んで悲しまない人がいないなんてないよっ!! 私だって、先輩に死んでほしくないっ!!」
「……」
「お願いだから、いらない人間だからとか、そんな悲しい事を言わないでください……」
まどかは泣きながら芳文に懇願する。
「……ごめん」
芳文はまどかに素直に謝った。まどかは泣きながら制服の上着を破いて、芳文の止血を試みる。
25 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:45:59.20 ID:8GUEOo26o
ズガガガガガッ!! ドカーンッ!!
ほむらと魔女の戦闘の音が結界内に鳴り響く。
「社君!! 鹿目さん!!」
魔法少女の姿になったマミとキュゥべえが、狂った結界の中でやっと見つけたまどかと芳文の元へ駆け寄ってくる。
「マミさん!!」
「社君!? ひどいケガ……!!」
「マミさんお願いです!! 先輩を助けてください!! さっきから血が止まらなくて!!」
「わかってる!! 社君、じっとしてて!!」
マミは芳文に両手を翳して、治癒魔法を行使する。マミの魔法で止まらない血が徐々に止まっていく。
ドカアァァァァァン!!
「ぐっ!!」
ほむらが触手に捕まって壁に叩きつけられる。
「なんなの、この魔女は!? 私はこんな魔女知らないっ!!」
戦闘を開始してから、ほむらはマシンガンと爆弾を併用して速攻で片づけようとしたが、この魔女はすぐに再生してしまう。
この魔女を倒すには手持ちの武器では火力が足りない。どんどんほむらの表情に焦りの色が色濃くなっていく。
「まだこんな所で!! 力を無駄遣いするわけにはいかないのに……っ!!」
左腕の盾から手榴弾を取り出して、口で安全ピンを引き抜き投げつける。爆発と共に魔女の触手が数本と本体の一部が消し飛ぶが、すぐに再生してしまう。
(……どうする? ここは引くしかないか)
右足に絡みついた触手の切れ端を左足で蹴落として、脱出のプロセスを考える。だが、考えをまとめる間もなく、複数の触手が再び襲い掛かってくる。
「くっ!!」
ほむらはシールドを展開しつつ、攻撃を躱す。相手を完全に消し去る火力がない現状、逃げる以外の選択肢はない。
だが、まどかとあのイレギュラーの少年を連れてどうやって逃げるか。ほむらはどんどん追い詰められていく。
「ほむらちゃんっ!!」
魔女に追い詰められたほむらが、魔法で張ったシールド越しとはいえ壁に叩きつけられる姿を見て、まどかが悲痛な叫びを上げる。
「……巴さん。俺の治療はもういいから、あの子に加勢してあげて」
ようやく止血だけは終わった芳文が、マミにほむらへの加勢を頼む。
「何言ってるの!? 血が止まっただけで、まだ治癒は終わってないのよ!! あなた自分の状態をわかって言ってるの!!」
こんな状態で生きてるだけでも不思議なくらいなのに、と言いかけてマミは言葉を飲み込む。まどかが今にも崩れ落ちて泣き出しそうな顔で芳文とマミのやりとりを見ていたから。
「……大丈夫。俺はこんな所で死ぬ気はないから」
そう言って、マミとまどかの顔を交互に見て言う。
「命を粗末にするつもりはないから。今は、あの子と協力して一刻も早く魔女を倒すんだ。あの魔女は一人じゃ勝てない」
「……でも」
「あの魔女は複数の人間を操って通り魔をさせてる。一刻も早く倒さないと駄目だ。だから!!」
「……わかったわ。彼女と協力してあの魔女を倒す。鹿目さん、社君の事お願い。無茶しないように見張ってて」
「わかりました」
まどかの返事を聞いて、マミは魔女の元へと高く跳躍した。
マミは空中で自分の周囲に大量のマスケット銃を顕現させ、魔女に向けて一斉斉射する。
魔女の触手が複数千切れ飛び、魔女本体にも複数の銃痕が出来上がる。
「まだ生きているかしら。暁美ほむらさん」
マミは壁際に追い詰められていたほむらの前に着地して、魔女から目を逸らすことなく問いかける。
「……巴マミ」
「やっかいな相手ね。あれだけの銃撃を浴びせたのにもう再生してるなんて」
「……あれを倒すには一撃で跡形もなく消し飛ばすか、再生する間を与えないように連続で攻撃して潰すしかないわ」
「そのようね。社君の頼みだから今回は手を貸してあげるけど、あなたは私に協力する気はあるかしら?」
「……この状況では嫌でも共闘するしかないわ」
「なら、速攻で片づけるわよ」
「……」
マミの言葉に返事をする事もなく、ほむらはマシンガンを取り出して、魔女を銃撃しながら走り出す。
「行くわよ!!」
マミはベレー帽を手に持って振ると、複数のマスケット銃を地面に突き立った状態で顕現させて、魔女の周囲の地面に一発ずつ撃ち込んでいく。
地面に撃ち込まれた弾丸から光り輝く魔法の糸が伸びて、触手ごと魔女を絡め取り雁字搦めにして拘束する。
「暁美さん!! いくわよ!! ティロ・フィナーレ!!」
ほむらに叫ぶと同時に、マミは巨大なマスケット銃を顕現させて魔女に向けて発射する。
「――っ!!」
――カチリ。
ほむらの盾のギミックが作動し時間停止の魔法が発動して、すべての時間が停止する。ほむらは停止した時間の中で、魔女の周囲に複数の爆弾を設置して、安全圏へと離脱する。
――カチン。盾のギミックが停止し、再び時が動き出す。
バシュン!! ティロ・フィナーレによる砲撃で魔女の巨体に大きな風穴が開いた瞬間、ほむらの設置した爆弾が次々と連鎖爆発を起こし、魔女は完全に灼熱の炎に飲み込まれていく。
「――終わったわね」
マミがまどか達の元へ戻ろうとしたその時だった。
ヒュンッ!!
「――え?」
爆炎の中から一本の触手が飛んできて、マミの背中を横なぎに殴り飛ばした。
ズガアアアアアンッ!!
背中から強烈な不意打ちを喰らい、マミは壁に叩きつけられそのまま気を失ってしまう。
「そんな……」
26 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:48:10.30 ID:8GUEOo26o
あれだけの攻撃をしたのに魔女はまだ生きていた。半分に割れたサッカーボールサイズの欠片から、マミを襲った触手をうねうねと伸ばしている。
ボコボコと音を立てて、サッカーボールサイズのこぶがどんどん出来あがり、やがて最初の姿へと再生を終える。
ヒュンッ!!
信じられない光景に呆然となるほむらを触手が絡め取り、ギリギリと締め付ける。もう一本の触手が気絶しているマミを絡め取り、ギリギリと締め付ける。
ブンブンと触手がマミとほむらを振り回して、マミとほむらの体をそれぞれに叩きつける。
「がはっ!!」
ほむらが吐血する。触手がほむらとマミを思い切り上空に持ち上げ、そのまま思い切り地面に叩きつけた。
ズガアァァァァァァァァァンッ!!
地面に叩きつけられたマミとほむらの変身が、魔女の触手で作られたクレーターの中で解ける。二人とも完全に戦闘不能だ。
「マミさん!! ほむらちゃん!!」
マミとほむらが敗北する瞬間を見せつけられ、まどかは悲痛な声で叫ぶ。
ヒュンッ!!
まどかの叫び声に気付いた魔女の触手が、まどか目掛けて撃ち出される。
恐ろししい速度で迫り来る死への恐怖に、まどかが目を閉じた一瞬の後。
……ドスッ!!
鈍い音がした。
「が……ぁ……」
恐る恐るまどかが目を開くと、まどかの目前に立ちふさがった、芳文の左胸が触手に貫かれていた。心臓への直撃は免れたものの、明らかに致命傷だ。
ズルッ……。
触手が引き抜かれると、芳文は前のめりになって倒れる。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 先輩!! 先輩!! 死なないでぇっ!!」
まどかは目の前で自分を庇って、致命傷を受けた芳文の半身を抱きかかえて半狂乱で泣き叫ぶ。
「がは……ごめ……ん。守って……あげ、られなくて……」
「死なないで!! お願い!! 死なないで!!」
「逃げ……る……ん、だ……」
それだけ言い残して、芳文の意識が途絶える。もう長くない。
「あ、あああ……」
――ほむらとマミが負けた。今はまだ生きているが、このままでは二人とも殺される。
そして、芳文はまどかを庇って致命傷を負い、直に絶命する。
絶望的な状況に追い込まれて、まどかは泣きながらがたがたと震える事しか出来ない……。
27 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:49:06.90 ID:8GUEOo26o
「……まどか」
それまでずっと沈黙を保って、事の経緯を見守っていたキュゥべえが、まどかに語りかける。
「状況は絶望的だ。だけど、君ならこの状況を打破することが出来る」
「……キュゥ……べえ」
「嘆きも悲しみも、全部君が覆せばいい。君にはそれだけの力が宿っているのだから。君が望めば、万能の神にだってなれるはずだよ」
キュゥべえはまどかにニコリと笑顔を見せて語りかける。
「さあ、言ってごらん。君はどんな願いでソウルジェムを輝かせるんだい?」
「わ、私は……」
まどかは倒れているマミとほむら、そして芳文を見て目を閉じる。誰かを助けたいという願い。マミ達を守りたいという気持ち。そして魔女への恐怖。それらの感情がまどかの心の中で渦巻く。
「っ!? 先輩!?」
まどかの腕の中で、芳文の体が一瞬だけ弱弱しくびくんと震え、そして……。
「お願い!! この人を死なせないで!!」
――それは、咄嗟に出た言葉だった。
「それが君の願いかい?」
キュゥべえの問いにまどかは頷く。
「……私、魔法少女になる。マミさんもほむらちゃんも絶対死なせない」
「……わかった。契約は成立した。君の願いはエントロピーを凌駕した。さあ、受け取るといい」
キュゥべえの言葉と共にまどかの胸から、ピンク色に光り輝く、まどかの掌の上にすっぽりと収まるほどの大きなソウルジェムが生み出される。
まどかの体がふわりと宙に浮く。
ソウルジェムから放たれる光が芳文の体を包み、致命傷を受けた体の損傷をどんどん修復していく。
そして光り輝くソウルジェムは形を変えて、まどかの胸元にチョーカーの飾りとして装着された。
まどかの全身が淡い光に包まれ、先日マミとさやかに喫茶店で披露した、魔法少女の衣装へとまどかを変身させる。
やがて変身を完了したまどかはふわりと地面に着地した。
――今、ここに最強の魔法少女が誕生した瞬間だった。
28 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:50:02.92 ID:8GUEOo26o
ヒュンッ!!
魔女の触手がまどかに向かって飛んでくる。
「っ!!」
咄嗟に左手を前に出した瞬間、まどかの前方に淡いピンク色に輝く光の壁が一瞬で展開されて、触手を跳ね返した。光の壁に跳ね返された触手は一瞬でボロボロになって消滅する。
「……うぅ。俺は……一体?」
「先輩!?」
意識を取り戻した芳文が起き上がる。
「……まどかちゃん? ……その、姿は?」
「まどかに感謝するんだね。願いで君の命を救ったのはまどかなんだから」
キュゥべえが芳文に経緯を簡単に説明する。
「君、魔法少女に……」
「……なっちゃいました」
そう言って、まどかは芳文に複雑な胸中で微笑んでみせる。
「まどか!! また攻撃が来るよ!!」
キュゥべえの声と同時に新しい触手が飛んでくる。
「っ!!」
芳文がまどかを庇おうと動く。
「駄目えっ!!」
まどかが叫ぶと同時に再び光の壁が展開し、芳文とまどかを触手の攻撃から守る。光の壁に触れた触手はボロボロと崩れ落ちていく。
「すごい……」
芳文が感嘆の声を上げると、キュゥべえがいつものポーカーフェイスで淡々と説明する。
「まどかは他者の命を救う事を願って魔法少女になったからね。誰かを守る為の力は元々の素質も相まって人一倍だよ。おそらく何者もまどかの張るシールドを突破することは出来ないだろう。そして……」
魔女はしつこく新しい触手を生やして攻撃するが、そのどれもがまどかの作り出した光の壁を破る事はおろか、ヒビひとつ入れる事さえ出来ずにボロボロと崩れ落ちていく。
すべての触手を自滅に近い形で失った魔女が、新たな触手を作り出そうとする。
その期を逃さず、まどかは数日前に想像していた自分の武器を作り出す。
――それは、すべての魔を滅する為に、必殺の一撃を放つ為の弓。
ギリギリギリ……。
弓を引き絞り、魔翌力で作り出した矢を放つ。
ゴウッ!!
まどかの放った矢がすさまじい勢いで魔女の頭頂部に命中した瞬間、凶暴なまでの破壊力を秘めた光の矢は巨大な円球を作り出し、魔女の体の三分の一を飲み込んで消滅させた。
魔女は失った肉体を再生しようとするが、まどかに破壊された部位はいくらやっても再生出来ない。
「願いの関係で魔法少女としての能力が守護に特化してるとはいえ、最強の魔法少女であるまどかの攻撃はどんな魔女も打ち砕く」
「もしも願いで魔女の殲滅を願っていたなら、あの一撃で魔女は跡形も残さずに消し飛んでいただろうね」
「……これが、まどかちゃんの力」
キュゥべえの解説と、目の前の光景に芳文は驚き言葉を失う。
魔法少女になったまどかの力は圧倒的だった。
まどかは魔女にとどめを刺すべく、弓に魔翌力の矢を番える。
ギリギリギリ……。
まどかが弓を引き絞り、再び矢を放とうとしたその時だった。
魔女の下部から触手が二本伸び、気絶しているマミとほむらを拘束して、まるで見せつけるように宙づりにする。
「あれじゃ、まどかちゃんが攻撃したら二人とも巻き込まれる!!」
ボコボコボコっと音を立てて、魔女の全身から触手が生え、まどか達に向かって一斉に襲い掛かってくる。
「っ!!」
まどかは番えていた矢を消すと、咄嗟に右手を翳してシールドを張る。当然、まどかのシールドは魔女の触手を全く寄せ付けない。
だが、魔女は何度も何度もしつこく攻撃を繰り返してくる。
「っ!!」
シールドが破られる事はないが、片手でシールドを張っているまどかは弓を使う事も出来ない。
「まずいね。流石のまどかもシールドを張りながらの攻撃は出来ないようだ。このままだといずれ魔翌力切れに追い込まれるだろう」
キュゥべえのその言葉に、芳文は決意を固めてまどかに叫ぶ。
「……まどかちゃん、俺が二人を助けに行く!!」
「そんな!? 無茶です!!」
「無茶なんかしない。……もう絶対に命を無駄にしたりしない!!」
「先輩!?」
「俺は君に救われたんだ!! この命も、自分自身をどうでもいいと思ってた心も!! だから俺はもう絶対に死なない!! 君と共に戦う!! 君を絶対に守る!! そして、全員で帰るんだ!!」
まどかは芳文の目を見つめる。まどかの瞳に映る芳文の目は、もう、自分の命を粗末に扱おうとしていた時の目ではなくなっていた。
「……本当に、一緒に戦ってくれるんですか?」
「ああ」
芳文の力強い返事にまどかは一瞬目を伏せた後、芳文の顔を見つめてはっきりと言いきった。
「……わかりました。私と一緒に戦ってください!!」
「ああ!! わかった!!」
芳文は力強く頷いてみせる。
29 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:51:36.69 ID:8GUEOo26o
「でもいったいどうする気なんだい? 君自身にはあれと戦う為の魔翌力はないはずだよ」
キュゥべえのその言葉に、芳文は真剣な表情でまどかの顔を見つめて頼む。
「……まどかちゃん。剣を作ってくれないか。君の皆を救いたいという願いを込めた最強の剣を。――それさえあれば、俺がどんな相手も切り伏せて、君の前に道を作ってみせる」
いつの間にか、すべての触手をまどかのシールドで失った魔女は攻撃が止めていた。新しい触手を作り出して攻撃を再開しようと、ぶるぶると小刻みに揺れている。
まどかは魔女の様子を確認するとシールドを解除して、魔女が再び触手を作り出して攻撃をしかけてくるまでの短い時間に、芳文の為の剣の作成に取り掛かる事を決める。
「……はじめてだから、上手くいくかどうかわからないけれど、やってみます!!」
まどかはマミがやっていたように両手を広げると、意識を両手の間に集中させる。
(――大丈夫。絶対に出来るはず。皆を守れる力を、願いを、この一振りに込めて作り上げるんだ!!)
まどかは強く強く願いと魔翌力を込める。
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ……。
やがて、まどかの願いが込められた最強の剣が顕現する。
――それは、淡いピンク色に光り輝く、クリスタルのように透き通った美しい刀身を持つ、長大な一振りの剣。
――最強の魔法少女の、決して誰一人命を失わせないという祈りと、全員で魔への勝利と共に帰還するという願いが込められた最強の剣。
――後に、芳文とまどかによって名づけられる、この最強の剣の名前は――マギカ・ブレード――。
「……出来た。出来ました!!」
「ありがとう。それじゃ、行ってくる」
芳文はまどかが祈りと願いを込めて作り出した最強の魔法の剣――マギカ・ブレード――を受け取り、両手で構えると、魔女に向かって走り出す。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
ヒュンヒュンヒュンッ!!
芳文に気付いた魔女が複数の触手を飛ばしてくる。
ザンザンザンッ!! パアァァァァァァァンッ!!
芳文が振るう剣に斬り落とされた瞬間、触手は光の粒子になって跡形もなく消滅する。
「すごい威力だ!! さすが、最強の魔法少女が作ってくれた剣!!」
芳文の剣を握る手には、まるで紙を切るような手ごたえしかしない。
ザンザンザンザンッ!!
芳文は飛んでくる触手をすべて斬り飛ばす。
ヒュンッ!!
芳文が斬撃を終えた瞬間を狙って、一本の触手が飛んでくる。
「チィっ!!」
振り下ろした剣をそのまま地面に突き立てて、剣を支点にして触手を蹴り飛ばす。
ドパアァァァンッ!!
芳文が蹴りつけた触手が空中で爆ぜる。
「!? なんだ!?」
咄嗟に放ったただの蹴りに異常な破壊力があったのに芳文は驚く。
「……いや、さっきまでのみんなの攻撃でこいつが弱ってただけか」
地面が光の粒子になって飛び散り、剣がフリーの状態に戻る。芳文は気持ちを切り替え、魔女の胴を横薙ぎに斬りつけると、続けてマミの捕まっている触手を斬り落とす。
胴体の前半分が斬撃と刀身から発生する破壊エネルギーで消し飛ばされ、魔女があまりのダメージにのた打ち回る。
「巴さん、しっかり!!」
芳文は落下するマミを片腕でキャッチして、揺さぶり起こす。
「う……社君?」
「後方にまどかちゃんがいる!! そっちに退避して!! 早く!!」
「え、ええ」
マミは一瞬で魔法少女の姿になると、芳文の指示に従う。
「……あとはあの子を!!」
魔女が複数の細い棘のような触手を銃弾のように発射する。
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
芳文の目には機関銃並みの速さで飛んでくる棘触手が、まるでスローモーションのように遅く見えた。飛んでくる物をすべて切り払い、ほむらが捕まっている触手を切断する。
落ちてくるほむらを片腕でマミと同じようにキャッチすると、魔女目掛けて剣を思い切り投げつける。
ヒュッ!! ドスッ!!
胴に深々と剣を突き立てられた魔女が、刀身から流れ込んでくる破壊エネルギーで内部崩壊を起こし始める。
芳文はほむらを抱きかかえ、まどか達の方へと走り出す。
「今だ!! とどめを!!」
「はい!!」
ギリギリギリ……。バシュッ!!
まどかは限界まで弓を振り絞って魔翌力の矢を放つ。
まどかの放った矢が魔女に命中した瞬間、ゴゥッと音を立てて矢が炸裂して、魔女の全身をピンク色に輝く円球状の破壊エネルギーの中へと飲み込んでいく。
やがて光り輝く円球が消え去ると、そこにはもう何も残っておらず、魔女のいた地面は巨大なクレーターになっていた。
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥン。
結界が消え去り元の公園に戻ると、地面にはグリーフシードが転がっていた。周囲には魔女に操られていた男たちが倒れている。
30 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:54:27.78 ID:8GUEOo26o
「終わった……」
気を失ったほむらを抱きかかえたまま、芳文は呟く。
「……まどかちゃんと巴さんは?」
芳文が周囲を見回すと、すぐ近くに二人とも立っていた。芳文は二人の元へと向かう。
「まどかちゃん」
芳文が声をかけた瞬間、まどかはその場に力なくぺたんと座り込む。
「あ、あはは……。安心したら、腰が……」
腰が抜けたまどかは力なく笑う。
「まどか!!」
魔女の結界の外で、マミ達の無事を祈って待っていたさやかが、まどかの元へと駆け寄ってくる。
「まどか、あんた魔法少女に……」
「……なっちゃった」
魔法少女の姿のまどかに驚いたさやかの問いに、あはは……と笑って答えるまどか。
芳文は座り込んでいるまどかの側に辿り着くと、まどかに心からの礼を込めて言葉をかける。
「……良く頑張ったね。ありがとう、まどかちゃん」
芳文がそう声をかけると、まどかの瞳から涙がつうっと流れ落ちる。
「あ、あれ? なんで、涙が……」
まどかは慌てて、涙を拭うが涙は止めどなく流れてくる。
「……あれ? あれ?」
「……鹿目さん」
それまで黙ってさやかや芳文とのまどかのやりとりを見ていたマミが、まどかに声をかけるとまどかはびくん、と一度震えて恐る恐るマミの顔を見る。
「あなた、とうとう……魔法少女になったのね……」
マミはどこか複雑そうな顔で言う。
「……はい」
「……ごめんなさい。私がもっと強かったら、あなたを契約せさずに済んだのに」
マミはまどかの側へしゃがんで、まどかの涙を指で拭いながら謝罪する。
「そんな……。謝るのは私の方です。私、マミさんと約束してたのに……」
「……いいの。もう……いいのよ」
マミのその言葉に、まどかはマミに抱きついて泣き出す。
「……ごめんなさい、マミさんごめんなさい!! 私がもっと早く勇気を出してたら、みんなケガをしなくて済んだのに!!」
「……でも、最後はがんばってくれたじゃないか。おかげでみんな生きて帰ってこられた」
芳文の言葉に、まどかは顔を上げて芳文を見る。
「君は臆病なんかじゃない。誰よりも勇気がある女の子だよ」
まどかは芳文のその言葉を聞いて、顔をくしゃくしゃにしてマミの胸で泣き出す。
「怖かった……。怖かったよう……。うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ……」
泣きじゃくるまどかをマミは黙って、優しく抱き続けてやるのだった……。
☆
「……うぅっ」
まどかが泣き止んで落ち着いてきた頃、ベンチに寝かされていたほむらが目覚めた。
「っ!? 魔女は!?」
慌てて跳ね上がると、キュゥべえがマミとまどかの足元からほむらに話しかける。
「魔女ならまどかが倒したよ。暁美ほむら」
「!?」
ほむらが視線を向けた先には、泣き腫らした顔でマミに寄り添っているまどかがいた。
マミもまどかも、まだ魔法少女の姿のままだ。
「まどか!! あなたなんで!? 私言ったわよね!! あなたは鹿目まどかのままでいればいいって!!」
ほむらはまどかの姿を見て感情を露わにし、まどかに駆け寄るとまどかの両肩を掴んで叫ぶ。
「どうして契約なんてしたの!! どうして!!」
「ほ、ほむらちゃ……」
「やめなさい!! 鹿目さんが契約してくれなかったら、全員死んでいたのよ!!」
「口を出さないで!!」
マミが止めに入るが、ほむらはマミを睨みつける。
「わかっているの!! 魔法少女になるって事は、いつ死んでもおかしくない事なのに!! どうして!!」
「い、痛いよ、ほむらちゃん……」
半狂乱のほむらに対して、マミもさやかもまどかも驚いて硬直していると、間に芳文が割って入る。
「落ち着いて。なってしまった物はもう、どうしようもないだろ」
「っ!!」
芳文が肩を掴んだ瞬間、ほむらはそれを振り払い、まどか達から距離を取る。
「何も知らないくせに口を挟まないで!!」
「……じゃあ教えてくれないか。なんでそんなに必死なのかを」
「それは……」
(言えない。言えるわけがない)
芳文の問いかけにほむらは俯いて言葉を濁す。
「……まどか、あなたは私の忠告を聞かなかった事をきっと後悔する。いつか、あなたは家族も友人も自分自身の未来も失うことになる」
「……それって、どういう……意味……なの?」
「……いずれわかるわ」
(……その時は、私がこの手で楽にしてあげる)
ほむらが心の中で最悪の結末への覚悟を決めたその時だった。
31 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:56:06.12 ID:8GUEOo26o
「……そんな時はこないね」
「……?」
芳文がほむらのに言葉を否定して言い切る。
「まどかちゃんは何も失ったりしない。俺と巴さんとさやかちゃんが付いてるから」
「……馬鹿馬鹿しい。あなた達に何が出来ると言うの」
「出来る出来ないじゃない。するんだ。何もなくさせたりしない。この子を傷つける奴は俺が許さない」
「……勝手にすればいい。どうせあなたには何も出来ないし、そんな力もないのだから」
ほむらはそう言い放つと、くるりと背を向け去っていく。
(……守れなかった。また、守れなかった)
ほむらは一人、涙を流しながら去っていく。
(……結局、私にはまどかを守る事は出来ないの? 私はただ、まどかを守りたかっただけなのに)
ほむらは涙する。ただ一人、救いたい少女の事を想いながら……。
(力が欲しい……。まどかを守れる、救える力が欲しい……)
☆
ほむらが去った後、芳文達はマミのマンションに寄って、芳文の止血の為に破いたまどかの制服を処分し、マミのお下がりの制服をまどかに着せて、芳文とマミとさやかはまどかを自宅まで送って行った。
その後、さやかとマミも自宅まで送っていった芳文は、自宅近くにある深夜の公園で一人佇んでいた。
その公園に捨てられている一台の放置車両。芳文はそれに近づくと思い切り蹴り上げる。
ズガアァァァァァァンッ!!
車体裏から内部メカとボンネットまで含めて、容易く芳文の蹴りが貫通した。
「……」
ズドンッ!!
芳文が車体前部に無造作に放ったパンチが、簡単に内部メカごと車体を貫通する。
「……」
貫通した穴に手をかけて、力を入れる。
簡単に車体が頭より上に持ち上がった。
――ガシャアァァァァァァンッ!!
芳文が無造作に投げ捨てた放置車両がぐしぐしゃにつぶれる。
「……なんだこれ。……俺の体、どうなってるんだ?」
一人呟く芳文の疑問に答える者は誰もいない。
ただ静かに、夜は更けていくのだった……。
つづく
32 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 01:58:49.47 ID:8GUEOo26o
第4話 「……あなたは何者なの?」
――まどかが魔法少女になってから、あっという間に数日が過ぎた。
狂った結界の中で、まるで巨大な大砲のような姿をした魔女が、ぐるぐると上下左右に回転しながら、滅茶苦茶に紅く燃え盛る炎の玉を発射する。
「このぉっ!!」
マミは飛んでくる炎の玉を躱しながら、手にした二丁のマスケット銃を放つ。マスケット銃から放たれ地面に着弾した弾痕から、魔法の糸が伸び魔女を拘束する。
ドカンッ!!
拘束された魔女の銃口から、強引に放たれた炎の玉が魔法の糸を引き裂いて、マミに迫る。
「マミさん!!」
後方でキュゥべえを抱いて戦いを見ているさやかを庇うようにして、弓を片手に成り行きを見守っていたまどかが叫ぶと同時に、マミの前方にまどかのシールドが展開され炎の玉を受け止め消滅させる。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
魔女がでたらめに放ち続ける炎の玉を、まどかが作り出した剣で斬り払いながら、芳文が魔女へと突っ込んでいく。
ドスゥッ!!
剣を魔女の砲口へと思い切り突き立て、芳文は剣から手を放すとバックステップで離脱する。
「巴さん!! いまだ!!」
「ティロ・フィナーレ!!」
一瞬で巨大なマスケット銃を顕現させたマミが、マギカ・ブレードを突き立てられ内部崩壊を起こしている魔女を跡形もなく消し飛ばした。
シュゥゥゥゥゥゥゥゥン……。
結界が消え去り、グリーフシードがコツンと音を立てて地面に落下する。
「やったあ!!」
さやかが歓喜の声を上げる。
「お疲れ様、巴さん」
芳文はそう声をかけて、グリーフシードを拾いマミへと放る。
マミはそれを受け取り、芳文に返事を返す。
「社君もお疲れ様」
「マミさん、先輩、大丈夫ですか?」
まどかが駆け寄って尋ねる。
「鹿目さん、お疲れ様。私は平気よ。鹿目さんのシールドのおかげでね」
「まどかちゃん、お疲れ様。俺も平気だよ。流石、最強の魔法少女の剣だ。あれさえあればどんな相手だって斬り伏せられるよ」
「そんな……。私なんてまだまだですよ。さっきだって、せっかくマミさんと先輩が隙を作ってくれたのに、矢を炎の玉で阻まれて魔女に当てられなかったし……」
マミと芳文の賞賛の言葉にまどかは照れながら返す。
「大丈夫だよ。まどかがもっと経験を積めば、相手の攻撃を貫通する矢にしたり、任意の場所へ誘導して当てられるように撃つ事も出来るようになるはずだよ」
さやかの腕の中から、するりと地面に降り立ってキュゥべえがまどかにアドバイスする。
――まどかの放つ矢は、当たった瞬間に巨大な魔翌力の円球へと変化し、あらゆる物を飲み込み破壊、消滅させる。
だが、裏を返せばどんな小さな物にでも当たった瞬間に発動してしまうので、先ほどの魔女のように大量の火球を撃ってくる相手は相性が悪かった。
いくら破壊力があっても、現時点で貫通能力がないまどかの矢は、今回の相手には相性が悪すぎた。
33 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:01:06.74 ID:8GUEOo26o
「いやいや、それ言ったら俺なんかもっとまだまだだよ。せっかくまどかちゃんが作ってくれた剣なのに、いまだに全然使いこなせてないし」
「そうね。あの剣は本当にすごい威力があるものね。社君がもっと強くなれば、あれを使って一人で魔女を倒せるかもね」
「手厳しいなあ、巴さんは」
「そうかしら? これでもあなたの事は認めてるつもりよ」
「そう?」
「ええ」
「……そっか。それはとっても嬉しいなって」
「先輩、それ私のセリフ……」
そんな三人のやりとりにさやかが口を挟む。
「でもさあ、先輩ってホント、ただの人間なの? なんていうかさ、強すぎてとてもあたしと同じ人類だとは思えないよ。よく魔法少女のマミさんやまどかの動きについていけるよね」
「……。はっはっは。お兄さんは毎日鍛えてるからねぇ!!」
さやかの悪気のない、何気ない言葉に芳文は一瞬複雑な表情になるが、すぐに笑いながらさやかの頭をくしゃくしゃと撫でて答える。
「もう!! また子ども扱いして!!」
「いやいや、そんなつもりはないんだよ。何ていうか、撫でやすい位置にあるからつい」
「つい、で女の子の頭撫でるって!!」
「ごめんごめん。本当に嫌ならもうしないよ」
「まあ、別にいいけどさ」
「そう?」
「でもまどかにまでしたら駄目だかんね!! この子は男子に免疫ないんだから!!」
「さ、さやかちゃん……苦しいよぉ」
さやかがまどかに抱きついて芳文に釘を刺す。
「あー。ごめん、こないだつい、まどかちゃんの頭撫でちゃった」
「何ぃーっ!? まどかそれ本当!?」
「う……うん」
まどかは先日の公園での事を思い出して、赤面しながらさやかにこくんと頷く。
「何て事……。あたしの嫁が先輩の魔の手に落ちてたなんて……」
さやかが激しくショックを受けた顔でよろよろと崩れ落ちる。
「……なんてこった。こんなにかわいいまどかちゃんがさやかちゃんとそんな深い仲だったなんて……。お兄さんちょっとショックだよ」
さやかの態度に、よろよろと後ずさりながら、芳文はショックを受ける。
「……巴さん」
「何かしら」
「百合も同性愛もあるんだね。……俺、初めて本物を見たよ」
「私にそんな事言われても……。こういう時、何て返せばいいのかしら?」
「ちょ!? 違いますから!! さやかちゃんは大切な親友ですけど、そういうんじゃありませんから!!」
「いいのよ、鹿目さん。愛の形は人それぞれだから」
「巴さんの言う通りだよ。お兄さん応援するよ」
「だから違うのにぃ……。それにさやかちゃんには他に好きな男の子がいるし……」
半泣きでまどかが呟く。
(……うわあ。何この子。かわいすぎる)
マミと芳文が同じ感想を抱く。
「ちょっと、まどか!!」
まどかに片思いをばらされて、さやかが慌ててまどかをがくんがくんと揺さぶる。
「さ、さやかちゃん落ち着いて……」
「……へぇー。さやかちゃんには好きな奴がいたのか」
「……」
芳文の言葉にさやかの顔が赤くなる。
「へえ……。美樹さんも隅に置けないわね」
マミがそう言うと、さやかはますます赤くなる。
「そうかそうか。さやかちゃんもやっぱり女の子なんだなあ。その相手と上手く行くといいね」
芳文がそう言うと、さやかはますます真っ赤になって黙り込んでしまう。
「……ああっ!! もう!!」
真っ赤になって俯いていたさやかが、キっと顔を上げて早口でまくしたてる。
「先輩もマミさんも意地悪だ!! 大体あたしをいじるよりまどかをいじくったほうが楽しいでしょ!!」
「ええっ!?」
さやかの叫びにまどかはびっくりする。
34 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:02:35.59 ID:8GUEOo26o
「何て事を言うんだ。こんなにかわいいまどかちゃんを弄ぶなんて、お兄さんそんなひどい事出来ないよ」
芳文はまどかの頭を良い子良い子と撫でながら、さやかにそう言い返す。
まどかは赤面して俯いてしまう。
「だったらあたしならいいって言うの!?」
「うん」
「即答!?」
「だってさあ、まどかちゃんいぢめたりしたら泣いちゃうよ。ねえ巴さん」
「そうね」
「マミさんまで!!」
さやかが憤慨する。
「おお、よしよし。兄ちゃんが良い子良い子してあげるから落ち着こうな、さやちー」
「さやちー言うなっ!! 子供扱いすんなーっ!!」
「うふふ。何ていうか、社君と美樹さんってまるで兄妹みたいね」
「えーっ!? こんな意地の悪い兄貴嫌ですって!!」
マミの言葉にさやかが嫌そうに返す。
「ひどいなあ。俺はいつだって紳士なのに」
「どこが!?」
「あ、あはははは……」
まどかはそんなやり取りを苦笑いしながら見ていた。
「さやかちゃんもいいけどさ、どうせならまどかちゃんが妹の方が良いな」
「……え?」
いきなり話を振られて、まどかがびっくりする。
「お兄さん的にはさやかちゃんが妹でもいいんだけど、どうせならまどかちゃんみたいな大人しい妹が欲しい」
「えぇぇぇぇっ!?」
「大人しくなくて悪うございましたね」
「まあまあ、美樹さん」
さやかがむくれるのをマミが宥める。
「という訳でまどかちゃん。一度でいいからお兄ちゃんと呼んでくれないか」
芳文が真剣な表情でまどかを見つめる。
「え、えーと……」
「じー」
「あ、あぅ……」
「じー」
「そ、その……おにい……ちゃん……」
芳文に期待に満ちた目でじっと見つめられ、まどかは仕方なく恥ずかしそうにモジモジしながら、顔を真っ赤にして上目づかいで小さく芳文をおにいちゃんと呼ぶ。
「ぐはぁっ!!」
芳文が両手で頭を抱えて思い切り仰け反る。
「ヤバイ。ヤバイヤバイヤバイ!! 巴さんこれはヤバイよ!!」
ぐるんと姿勢を正して芳文は興奮した表情でマミに同意を求める。
「これが……!! これが!! 妹萌えって奴なんだね!!」
「いや、あなたのおかしな性癖に同意を求められても」
「いや!! 巴さん、君ならきっとわかってくれるハズなんだ!! まどかちゃん!!」
芳文はマミの背後に回り、マミの両肩に手をかけてまどかに向き直らせ、まどかに頼む。
「今度は巴さんにお姉ちゃんって言ってあげて!!」
「えぇぇぇっ!?」
「ちょっと社君!?」
困惑するマミとまどかを気にする事無く、芳文は叫ぶ。
「さあ、まどかちゃん!!」
「え、えっと……」
「さあ!!」
「あ、あぅ……」
「さあ!!」
「えっと……お、おねえ……ちゃん……」
芳文の時と同じく、まどかは真っ赤になってもじもじしながら、上目使いでマミの事をおねえちゃんと呼ぶ。
「はうっ!?」
ズキューン!!
マミの心に今までに感じた事のなかった衝撃が走った。
マミはふらふらとまどかの側に歩いていくと、ギュウっとまどかを抱きしめる。
「マ、マミさん、苦しい……」
「鹿目さん、あなた、家の子になりなさい」
「ええええっ!?」
「うむ。巴さんにもわかってもらえたようで何より!!」
芳文はうんうんと腕を組んで頷く。
(だ、だめだこいつら……。早く何とかしないと……)
35 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:04:02.61 ID:8GUEOo26o
マミに抱きしめられて、マミの豊かな胸で窒息しかけているまどか。その様子を見て満足そうにうんうん、と頷いている芳文を見てさやかは心底呆れ果てる。
「ん? どうしたんだい?」
呆れているさやかに気付いた芳文がはさやかに声をかける。
「べ、別に……」
「そうか!! まどかちゃんばっかり可愛がられるのにやきもち焼いてたんだね!!」
「いや、別にあたしは」
「ごめんなぁ。気付いてあげられなくて。巴さん!!」
「……何? 社君」
「いくらまどかちゃんがかわいいからって、まどかちゃんばっかり構ってちゃ駄目だよ。さやかちゃんがやきもち焼いてる」
「だから別に焼いてないってーの!!」
「あら……。そうだったの? ごめんなさいね」
「ごめんなあ、寂しかったよなあ。さあ、君もまどかちゃんみたいに俺と巴さんの事、お兄ちゃん、お姉ちゃんと呼んで甘えてもいいのよ!!」
両手を広げて笑顔で叫んだ芳文の言葉に、マミも頷いて笑顔でさやかを見る。
「……」
笑顔の芳文とマミをじっと見つめていると、二人ともぷるぷると震えているのがわかる。明らかに笑いを堪えているようにしか見えない。
(二人してあたしをからかって……。このままからかわれてやるのもシャクだし……)
さやかは一度静かに深呼吸して気分を落ち着かせると、クールな対応をする事に決めた。
「はいはい。そろそろ他行くよ、馬鹿兄貴。マミ姉もいいかげんまどかを解放してやらないと、まどか窒息しちゃうからね」
「ば、馬鹿兄貴……」
「マミ姉……」
芳文とマミがずーんという擬音を立てて俯く。
(あれ……。ちょっと言い方が悪かったかな……)
さやかが自分の言動をちょっと後悔し始めたその時、芳文とマミがお互いに顔を見合わせて言う。
「これはこれで!!」
「いいかもしれないわね!!」
「……」
(……なんかあたし、良い様に遊ばれてる!?)
結局、芳文とマミのほうがさやかよりも一枚上手だった……。
「マミまで社芳文にわざわざ付き合って、一体何をやってるんだか。訳がわからないよ」
「……きゅぅ」
そんなやりとりをキュべえは不思議そうに見つめながら首を傾げ、まどかはマミの胸に抱きしめられたまま、マミの豊かな胸で窒息死しかけているのだった……。
36 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:05:17.19 ID:8GUEOo26o
☆
「今日のお昼の事なんだけど、社君が友達と一緒に、いきなり教室でお好み焼きを作り始めたのには驚いたわ」
「ええー? 先輩、教室でお好み焼きって……」
パトロールを終え、四人は学校での出来事を話しながら、それぞれの自宅へ帰る為に歩いていた。
「本当は焼き肉にしたかったんだけどね。予算の都合でお好み焼きになったんだ」
「学校で焼き肉って……」
さやかが呆れた顔をする。
「まったく、あなたどうかしてるわ。教室にガスコンロを持ち込んで、昼休みにお好み焼き作り始める人なんて初めて見たわ」
「あ、あははは……」
まどかは苦笑いしながら会話に耳を傾ける。
「でもさ、作り立ては美味かったろ?」
「まあ、確かに美味しかったけれど」
「あれ? マミさんも食べたんですか? 先輩のお好み焼き」
さやかがマミに尋ねる。
「強引に押し付けられたのよ。教室にいた人達みんなに振る舞ってたみたいだし」
「みんなで食べたら美味しいよね」
「それで自分の分を無くしたら意味ないでしょ」
「うん。ちょっと分量の計算失敗したかな」
「……それじゃ先輩、お昼食べてないんですか?」
まどかの疑問に芳文は首を振って答える。
「ううん。巴さんが代わりに自分の弁当くれたんだ」
「仕方ないでしょ。何も食べさせずに魔女探しに連れて行くわけにもいかないし」
「女の子の作った弁当もらったのなんて、生まれて初めてだよ。美味しかった」
「……そう? 口に合ったのならいいのだけれど」
「良かったじゃん先輩。こんな事でもなきゃ、女の子の手作り弁当なんてきっと食べられなかったよ」
さやかが意地悪そうに笑いながら芳文に言う。
「ぐ……。事実なだけにお兄さん傷ついたよ。それにしても巴さんって料理上手だよね。将来巴さんと結婚出来る相手は幸せだろうな」
「お世辞を言っても何も出ないわよ」
「いやいや、俺はお世辞とかそういうの嫌いだから。これ全部本心」
「……そう。ありがとう。あなたのお好み焼きも美味しかったわよ」
「それは良かった」
「マミさん、先輩のお好み焼きって本当に美味しかったんですか?」
「ええ」
「へぇー意外。あたしも食べてみたいなー」
「それじゃ、今度さやかちゃんとまどかちゃんにも食べさせてあげるよ。まどかちゃんと一緒に俺達のクラスにおいで」
「先輩、それ本当?」
「嘘なんかつかないよ」
「期待してるからね先輩!!ねっ、まどか!!」
「……もう、さやかちゃんたら」
「……」
「……どうしたの、巴さん」
芳文は俯いて考え事をしているマミに声をかける。
「……うん。さっき、社君が言ってた事なんだけど……。今の生活が終わる未来なんて想像出来なくて……」
「あ……」
「マミさん……」
同じ魔法少女になったまどかは、何と言っていいのか戸惑い、まだキュゥべえ契約していないさやかも言葉が出ない。
「……終わるさ。巴さんもまどかちゃんも戦わなくて良くなる日々がきっと来る」
「先輩……」
「だってさ、魔法少女って言うくらいなんだからどんなに長くても、普通に考えて一九歳くらいが定年退職の時期だと思うんだ。二十歳過ぎてまで魔法少女とか、そんなの絶対おかしいよ!!」
「……年齢でやめられればいいんだけどね」
芳文の楽観的な言葉に、マミはため息をひとつついて返す。
「じゃあ、俺達が大人になるまでに魔女を全部滅ぼそう。もしそれが出来なければ、次世代の魔法少女にバトンタッチ出来るまで頑張ろう。大丈夫、君達が元の暮らしに戻れるその日まで俺も力になるから」
「……ありがとう。社君」
「ありがとうございます。先輩」
マミとまどかが芳文にお礼を言うと、芳文は自分の胸を叩いて言う。
「任せなさい。お兄さん、がんばっちゃうよ!!」
「先輩って、ホントお調子者」
「ひでえ!! せめてポジティブと言ってくれ」
さやかの言葉に傷ついた顔をしてみせる芳文を、マミとまどかはクスクスと笑いながら見ている。
37 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:06:59.34 ID:8GUEOo26o
「君は本当に変わっているね。何のメリットもないだろうに」
まどかの肩の上に乗っているキュゥべえが、いつものポーカーフェイスで芳文に言う。
「見返りなんていらねえよ、淫獣。俺が好きでやってるんだから」
「本当に変な人間だね。君には願いとかないのかい?」
「なんだよいきなり。おまえさん俺の願い叶えてくれんの?」
「まさか。ただ単に聞いてみたくなっただけだよ」
「あっそう。俺の願いね……。そうだなぁ……。ああ、ひとつだけあったわ」
「先輩の願いって?」
興味津々といった感じでさやかが尋ねる。マミとまどかも興味があるのか、じっと芳文の答えを待っている。
「ハーレム」
『……は?』
あまりに予想外の返答に、さやか達はきれいに声をハモらせて固まる。
「だからハーレム。かわいい同世代や年下の女の子達やきれいな年上お姉さん達を大勢はべらせるのは男の夢だよね!!」
「……先輩、それ本気で言ってる? なんつーか、それってすごく男の欲望に忠実すぎる願いだよね!?」
さやかの問いかけに、芳文は自信満々の表情で答える。
「もちろん嘘だ!!」
「おい!!」
さやかがが突っ込むと、芳文は真剣な顔になって言う。
「だってさ、そんなの女の子達に失礼だろ。俺はたった一人の心から愛する相手と一緒になれれば、それが一番幸せだと思うし」
『……』
まどか達は黙って芳文の言葉に耳を傾ける。
「まあ……なんだ、俺の夢なんてそんなもんさ。誰かに叶えてもらうようなもんじゃない。自分で叶えるさ」
「随分小さな夢だね、社芳文」
「ほっといてくれ。いつか好きな相手と巡り合って、一緒になりたいって思うのがそんなにおかしいか?」
「いや、別におかしいとは思わないよ。君が言うように、人間はそうやって子孫を作って増えていくんだろう? だったらそれは生物として正しい事じゃないか」
「おまえに言われると、何だかひどく馬鹿にされてるような気がするよ」
そんなやりとりの後、まどかがおずおずと芳文に上目遣いに話しかける。
「あの……先輩」
「なんだい? まどかちゃん」
「その、私は先輩の夢、素敵だと思います」
「そっか。ありがとう」
「いえ……」
「意外。あなたってけっこうロマンチストだったのね」
マミが優しい顔で言う。
「……巴さんまで、そういう事言うのかい」
「いいえ、それは素敵な夢よ。羨ましいくらいに」
「……いつかきっと、巴さんとまどかちゃんには運命の出会いとかがあるさ。俺もその時を迎えられるように手助けするから」
「……ありがとう」
「お礼ならさっき聞いたよ。俺が好きでやってるんだから、気にしないで」
「本当に変な人間だね。社芳文」
「変変言うなよ淫獣。それじゃまるで、俺が異常者みたいじゃないか」
「マミとまどかの手助けをしても、君には何のメリットもないのに。僕にはそれが不思議でならないんだ」
「あのな淫獣。人間ってのはな、おまえさんみたいに損得勘定だけで動く奴ばっかじゃねえんだよ」
「本当にそうなのかな。今気付いたんだけど、もしかしたら、君はマミかまどかのどちらかに、特別な感情を持っているんじゃないのかい?」
「ちょ、キュゥべえ!?」
「何言ってるのよキュゥべえ!!」
キュゥべえの言葉にマミとまどかが顔を赤くして慌てる。
「……は? 何言ってんのおまえ。一緒に戦う仲間にそんな感情持つわけないだろ。第一、俺なんかが巴さんやまどかちゃんと釣り合う訳ないだろうが」
「……さりげなく卑屈だよね、先輩って」
さやかが小さく呟く。マミとまどかは赤くなったまま、複雑そうな表情でキュゥべえと芳文の様子を見ている。
「そうなのかい? 君くらいの少年はもっと異性に対して、色々な欲望を持って接するのが一般的だと思うんだけど」
「……何だよ、色々な欲望って」
「例えば君が、マミやまどかと交尾したいと思っていたりとか。君くらいの年齢の少年なら、大抵そういった欲望があるのが一般的だと思うんだ」
「……」
芳文が無言でまどかの肩に乗っているキュゥべえの頭を掴み、宙づりにしてぎりぎりと頭を締め付ける。
「今のは正しくなかったようだ。交尾というのは、人間以外の動物同士や昆虫同士の生殖行為を指す言葉だったね。すまなかった。訂正するよ」
キュゥべえはポーカーフェイスで宙づりにされたまま、先ほどのセリフを言い直した。
「例えば君が、マミやまどかを相手に、セックスやエッチと言われる生殖行為をしたいと思っていたりとか。君くらいの年齢の少年なら、大抵そういった欲望があるのが一般的だと思うんだ」
ビターンっ!!
芳文はキュゥべえを地面に叩きつける。
「痛いよ」
「殺されないだけありがたく思え淫獣」
芳文とキュゥべえのそんなやりとりを尻目に、キュゥべえの放った言葉にマミとまどかは更に真っ赤になっていた……。
「キュゥべえ最低」
顔を赤くしたさやかがキュゥべえを非難する。
「どうして君達はそんなに怒っているんだい? 訳がわからないよ」
マミとまどかからの無言の非難にもどこ吹く風。
キュゥべえは不思議そうにそう言うのだった……。
38 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:09:08.56 ID:8GUEOo26o
☆
「……あれ?」
帰り道の途中、とあるホテルの前でまどかが足を止める。
「鹿目さん、どうしたの?」
マミが足を止めたまどかに尋ねると、まどかは左手をホテルに向けて、中指に着けた指輪をソウルジェムに変化させる。
「あのホテルから、魔女か使い魔の反応がした気がして……」
まどかの掌の上に鎮座する大きなソウルジェムが微かに明滅して、まどかの言葉に信憑性を持たせる。
「確かあのホテルってかなり古くなって、客があんまり入らないからつぶれかけてるんだっけ」
さやかがそう言うと、芳文はマミに尋ねる。
「どうする巴さん。つぶれかけとは言ってもまだ従業員とかいるだろうし。ああいう場所にすぐ乗り込むのは俺達じゃ難しくない?」
「魔女がもう少し成長して、中の人間を操り出すタイミングで踏み込んだらいいんじゃないかな」
まどかの肩の上からキュゥべえが放った言葉をマミは即座に否定する。
「駄目よ。そんな悠長な事をしていて被害が出たらどうするの」
「マミさん、どうしましょう?」
まどかが困った顔で尋ねる。
「確かあのホテルって温水プールがあって、宿泊客以外にも有料で開放してたはずだよ。昔来た事があるし」
さやかがそう言って、マミの言葉を待つ。
「それじゃ、明日プールに来たお客として潜入調査してみましょうか」
「それがいいかもしれないな。もしかしたら、プールの方にグリーフシードがあるのかもしれないし」
芳文がそう答えると、マミは頷く。
「そうですね。多分、プールの方にグリーフシードがあると思います」
まどかはそう言うと、ソウルジェムを指輪に戻す。
「幸い、明日は休みだし午前中に水着を買いに行って、午後からここに来ましょう」
「わかりました、マミさん」
「じゃあさ、明日あたしとまどかとマミさんの3人で水着買いに行こうよ」
「そうね」
「うん」
「三人とも潜入捜査するのに、わざわざ水着買うの? もったいなくない?」
芳文の言葉に女子三人は驚いた顔で聞き返す。
「社君、プールに行くのに新しい水着を用意するのは当然でしょ」
「わざわざ買わなくても、学校指定の奴じゃ駄目なの?」
「学校以外の場所でスクール水着なんて、恥ずかしくて着れないよ!!」
さやかが憤慨する。まどかもこくこくとさやかの後ろで頷く。
「そんなもんかな。女の子って大変だなあ」
「社君、あなたはもう少し女心と言う物を知るべきね」
マミの言葉に芳文は首を傾げながら答える。
「そう言われても。自慢じゃないが俺は女の子にモテたためしがないし、女の子の友人なんて君達だけだからわからないよ」
「……と・に・か・く!! 明日の午後二時にここで待ち合わせするわよ。いいわね」
「了解。去年の水着まだ履けるかな……」
全然マミ達の心情が理解出来ていない芳文は、去年の水着をどこに仕舞ったか思い出しながら、マミに頷くのだった。
「こういう男の事を、この国じゃ唐変木と言うんだよね」
「黙れ淫獣」
39 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:11:03.31 ID:8GUEOo26o
☆
「……うーむ。こりゃまた寂しい所だなぁ」
翌日の午後。新しい水着を買ってきたまどか達と合流し、ホテルの中に入ると開口一番芳文はそう言った。
「お客さん、全然いませんね……」
「なんかさ、働いてる人達もやる気なさそう……」
「いかにも魔女や使い魔に付け込まれそうな雰囲気ね……」
まどか達も芳文と同じ感想を思わず漏らす。
「見滝原は開発が進んでるからなぁ。どうしてもこういう、施設の古い所は寂れてしまうんだろうけど……。これはひどいな。よくもまあ営業してるもんだ。これじゃ赤字なんじゃないか?」
「とりあえず、中に入りましょうか」
マミがそう促すと、まどか達は頷く。
まどか達三人が女子更衣室へ歩いて行くと、後ろをキュゥべえがとことことついていく。
「まてや淫獣!!」
芳文がキュゥべえの頭を鷲掴みにして宙づりにする。
「いきなり何をするんだい、社芳文」
「それはこっちのセリフだ淫獣。何当たり前のようにまどかちゃん達の後についていくんだ」
「僕は魔法の使者だよ。彼女達魔法少女の側にいるのは当然じゃないか」
「ふざけるな!! 女子更衣室と言う男子禁制の魅惑空間に、巴さん、まどかちゃん、さやかちゃんという可愛い女の子が三人も入るんだぞ!! そんな素敵パラダイスにてめえだけ行かせてたまるか!!」
「い、いきなり何を言い出すのあなたは……」
「あ、あははは……」
「あぅ……」
かわいい女の子と言われた事に、マミ達は顔を赤くしながら、キュゥべえと芳文のやりとりを見守る。
「何か勘違いしていないかい、社芳文。僕は人間じゃないからね。彼女達の成長途中の未熟な裸体を見てもなんとも思わないよ」
キュゥべえのその言葉に、まどかとさやかが頬を膨らませてキュゥべえを睨む。
「ほう……そうかそうか。だったら俺と一緒に男子更衣室の方へ行こうか。もしかしたら、男子更衣室にグリーフシードがあるかもしれないしなあ」
「男子更衣室からはそんな気配を感じないよ」
「探してもないのにわかるものか。そら行くぞ淫獣」
「嫌だよ。彼女達の裸体に興味はないけど、わざわざ男の裸体なんて見たくないし」
「それが本音か淫獣!! なんだかんだ言ってまどかちゃん達の裸や着替えが見たいんじゃねえか!!」
「勘違いしないで欲しいんだが、どうせ着替えを見るのなら、君のよりもマミ達のほうがいいと言うだけだよ」
「無関心を装っても無駄だ淫獣!! まどかちゃん達の純潔は俺が守る!! 成敗!!」
ズボッ!!
芳文は胸元を広げるとキュゥべえを自分の服の中に突っ込んだ。
「汗くさいよ!!」
「汗臭くて当たり前だ!! 待ち合わせ時間まで鍛えてたからな!!」
「まどか、さやか、マミ!! 助けて!!」
「さあ、着替えましょう二人とも」
「はーいマミさん」
「それじゃ先輩、また後で」
「ああ。三人ともまた後で」
三人はキュゥべえの懇願を無視して、更衣室の中へと消える。
「見捨てるなんてひどいよ三人とも……。僕が一体何をしたというんだ」
「悪意がなければ、何を言ってもいいという訳じゃねえんだ淫獣。彼女達の前じゃなかったら、制裁として俺のパンツのなかに突っ込んでやったのに」
「それだけは嫌だ!!」
「だったら大人しく従え。いくら人がいなくてもいつまでもうだうだやってて、事情を知らない人間に見られたら俺は頭のおかしい人間じゃないか」
「どうしてこんな事に……。訳がわからないよ……」
力なく嘆くキュゥべえを服の中に入れたまま、芳文は男子更衣室の中へと入っていくのだった。
40 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:14:25.36 ID:8GUEOo26o
☆
「……遅いなあ、三人とも」
「……そうだね」
一応更衣室の中を調べてから、さっさと着替えを済ませた芳文はキュゥべえと共に、プールサイドで三人がやってくるのを待つ。
「やっぱりあれかなあ」
「……何がだい?」
疲れ果てた様子のキュゥべえが無表情のまま尋ねる。
「女の子が三人もいるんだから、色々あるんだろうな」
「……色々って?」
「例えば、さやかちゃんが『うわあ、マミさんってやっぱ胸おっきい☆ ほらまどか見てみて』とか」
「……」
「それで巴さんが『もう美樹さん、私の胸は見世物じゃないのよ』て返したりとか」
「……」
「んで、まどかちゃんが『いいなあ……。私もマミさんみたいにスタイル良くなりたいな……』とか」
「そういう女の同士ならではの、キャッキャッウフフ☆トークとかしてんのかな」
「……さあね」
「つれないな淫獣。せっかくおまえさんが好きそうな話題振ってやってるのに」
「何度も言うけど僕は淫獣じゃ」
「せんぱーい!! おまたせー!!」
そんなやり取りをしていると、水着に着替えたさやかが手を振って走ってきた。その後をマミが歩いてくる。まどかはマミの後ろに隠れるようにしながら歩いてくる。
「ジャーン!! どうよ先輩!?」
さやかが芳文に新しい水着を披露する。
年齢相応に成長した健康的なスタイルにブルーのビキニが良く似合っている。
「おっ。いいんじゃないかな。良く似合ってるよ」
「へへーん。ありがと先輩」
芳文の言葉にさやかは嬉しそうに笑顔を見せる。
「お待たせ社君」
さやかに遅れてやってきたマミが芳文に声をかけてきた。
中学三年生とは思えないほど豊かに育ったバストとくびれた腰つき。マミのグラマーな身体を白いビキニが引き立てる。
「……ああ。そんなに待ってないから気にしないで。巴さん、その水着良く似合ってるよ」
悲しい男の本能か、思わずマミの胸に目が行きそうになる。芳文は慌てて目を逸らしながらマミを褒める。
「そう? ありがとう」
(……しかし目のやり場に困るな。魔法少女の格好の時も大きいとは思っていたけど、水着だと特に際立ってるし)
「ほーらまどか。いつまで隠れてるのさ。人に見せる為に新しい水着買ったんだよ」
「さ、さやかちゃん……。だって恥ずかしいよ……」
マミの後ろに隠れているまどかの腕を掴んで、さやかが強引に芳文の前に引っ張り出す。
「ほら先輩。まどかの水着姿どうよ? かわいいっしょ?」
「さ、さやかちゃん……」
芳文の前に引っ張り出され、まどかは恥ずかしそうにもしもじしている。
つい先日まで男子と話す事などほとんどなかったまどかは、同年代の男子に水着姿を見られ、とても恥ずかしそうにモジモジしている。
「……」
白い水玉のピンク色のビキニを着たまどかの身体は、普段の制服姿と魔法少女の姿に比べ、出るべき所がしっかりと出ているのが確認出来た。
成長途中のまどかの身体は、小柄な体格にしては割と胸も大きい。どうやら着やせするタイプのようだった。
大人と子供の中間、大人の身体へと成長途中の少女の身体に芳文は思わず見入ってしまう。
「先輩、黙ってちゃわかんないよ。まどかは先輩的にどうなのさ?」
「あ、ああ……。その、すごく良く似合っててかわいいよ」
芳文が素直に本音をポロっとこぼすと、まどかは恥ずかしそうにますます顔を紅く染めるが、嬉しそうな顔もする。
「良かったわね、鹿目さん」
「あぅ……」
マミにそう言われ、ますますまどかは恥ずかしそうにしている。
「つーかさあ、先輩。なんかまどか一人だけ、あたしやマミさんに比べて特に褒めてない?」
さやかがいひひと意地悪そうに笑いながら芳文の脇腹を肘で突く。
「そ、そんな事はないよ。三人共新しい水着が良く似合っててかわいいよ」
芳文は慌ててフォローを入れる。
「なーんか取ってつけたような言い方だよねー」
普段からかわれるお返しとばかりに、さやかはここぞと芳文に畳み掛ける。
「いや、友人達の中から一人だけ贔屓なんてしないって。ただ、まどかちゃんって着痩せするんだなあって驚いたから」
「えぇっ!?」
芳文の言葉にまどかが真っ赤になる。
「まどかちゃんが着痩せするタイプだなんて、思わなかったから驚いちゃって。お兄さん思わずドキドキしちゃったよ」
「〜〜っ!!」
爽やかな笑顔で芳文が放った言葉に、まどかは沸騰しそうなくらい真っ赤になる。
41 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:16:15.84 ID:8GUEOo26o
「爽やかな笑顔で堂々とセクハラすんな!!」
ドゴォッ!!
「ぐはあっ!!」
さやかのひじ打ちが芳文の脇腹にめり込む。
「社君、いやらしい事を言う男子は嫌われるわよ」
マミの追い討ちの言葉に、芳文は涙目になって反論する。
「誤解だよ!! 三人共!!」
「どこが誤解なのさ。どう聞いてもさっきのセリフはセクハラじゃん」
「そうね」
さやかとマミは聞く耳持たずと切り捨てる。
「俺にはまどかちゃんにセクハラしたなんて意識はないんだ!! 照れくさくなってつい、口に出ただけなんだ!!」
「……どう思います? マミさん」
「そうねぇ。自覚のないエロスは悪よね」
「エ、エロス……」
ガーンと擬音を立てて、芳文は崩れ落ちる。
「なんてこった……。俺の紳士としてのイメージが……。たった一言の失言で地の底に落ちてしまった……」
芳文は床に両手をついて、愚かな自分への悔し涙を流し先ほどの言動を悔やむ。
「……良く言うわ」
「先輩の一体どこに、紳士なんてイメージがあるの?」
「あああああああ……」
マミとさやかの追い討ちを喰らい、芳文は更にへこむ。
「あ、あの……先輩。私……その、もう気にしてませんから……」
己の行為に後悔し嘆く芳文にまどかが声をかける。
「あ、あああ……」
芳文は目の前に立つまどかの顔を見上げると、まどかの両手を握り泣きながら叫ぶ。
「……ありがとう。……ありがとう!! まどかちゃん!! やっぱり君は俺の天使だ!! 鬼のような巴さんとさやかちゃんとは大違いだよ!! まどっちマジ天使!!」
「あ、あははは……」
芳文の予想外の反応に、まどかはマンガのような大きな汗をかきながら、乾いた笑いを返す。
「……誰が鬼ですって?」
「……そもそも、まどっちて何さ?」
「まどかちゃんの略でまどっち。かわいい愛称だろう?」
まどかの言葉で立ち直った芳文は、マミとさやかにそう言って親指を立ててみせる。
キラリン。
さりげなく芳文の歯が光る。
「……鹿目さん。あまり社君に気を許したら駄目よ」
「そうだよまどか。こんなエロス大魔人に気を許したら最後、妊娠させられちゃうよ」
マミとさやかがまどかの肩にそれぞれ手を置いて忠告する。
「おーい二人とも!! いくらなんでもそこまで言われる覚えはないよ!! 俺から心のオアシスを奪わないでくれ!!」
「それにさっきから二人ともセクハラセクハラ言うけどさ、俺がもしこういう事言ったとしたなら、その時にセクハラと言ってくれ!!」
芳文はそこまで言い切ると、マミのつま先から頭までを見回してから口を開きまくしたてる。
「例えばこうだ!!」
「魔法少女姿を見た時から思っていたけど、巴さん色々育ちすぎ!! 一体どんな食生活してきたらこんなけしからんバディに育つんだ? 寒い日に抱っこして寝たら、ふかふかしてそうだし暖かそうだ、とか!!」
「……」
そこまで言うと、今度はさやかのつま先から頭の上まで見回してから口を開いてまくしたてる。
「年齢考えたら当たり前だし、むしろこれが普通なんだけど、さやかちゃんは巴さんに比べて色々残念だなぁ。巴さんとひとつしか年違わないのに。神という存在がいるのなら実に不公平だ」
「せめてあと少し、巴さんのボリュームをもらえたら、片思いの相手もイチコロだろうに。ああ、この世に神はいないんだな、とか!!」
「……」
「例えばこういう事を言ったなら、責められてもおかしくないけどさ!!」
「……言いたい事はそれだけかしら?」
「……それが先輩の本音って訳だね」
マミとさやかからゴゴゴゴ……という擬音が聞こえる。二人の顔は笑っているが目は笑っていなかった。
「ひっ……」
マミとさやかの様子にまどかが怯える。
42 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:18:15.99 ID:8GUEOo26o
「ねえ、美樹さん」
「なんですかマミさん」
「このお馬鹿さんにね、どんな制裁加えたらいいと思う?」
「とりあえず、死刑で」
「気が合うわね。私もそれを考えていたところよ」
二人はお互いの顔を見合わせて頷くと、笑顔で芳文の側へと歩いてくる。
「え? 二人ともどうしたの? 今のは例え話だよ?」
二人はうろたえている芳文の言葉を無視して、芳文の左右に移動すると、芳文の耳をそれぞれひっぱりながら囁いた。
「とりあえず、向こうの物陰に行きましょうか。……久しぶりに」
「キレちゃったよ」
ぐいぐいっ!! ずるずる……。
「ひぎぃっ!! ちぎれる!! 耳がちぎれる!!」
「鹿目さん、ちょっとここでキュゥべえと待ってて」
「すぐ帰ってくるから」
笑顔でそう言うマミとさやかに、まどかはがたがたと震えながら、こくこくと頷いた。
「あ、あの……あまり乱暴な事は……」
芳文の耳を引っ張って、物陰へと引きずっていくマミとさやかに、まどかが恐る恐る声をかけると、二人は笑顔のまま言い切る。
『心配しないで、これはただの修正だから』
そう言って芳文を物陰に引きずり込む
「ひぎぃぃぃぃぃっ!!」
数十秒後、芳文の悲鳴が物陰から鳴り響いた……。
「悪意がなければ、何を言ってもいいという訳じゃないんだろ? 愚かだね、社芳文
澄ました顔でキュゥべえは呟くのだった。
43 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:19:28.06 ID:8GUEOo26o
☆
「いてててて……。ひどい目に遭った……」
マミとさやかに修正された芳文は、ふらふらとまどかとキュゥべえの元へと戻ってくる。
「あの……。先輩、大丈夫ですか?」
「……大丈夫だよ。ああ……君だけだよ、こんな俺に優しくしてくれる天使は」
「マミとさやかにシメられたばかりだというのに、君も口が減らないね」
「……やめてくれ、もう思い出したくない」
(……マミさんとさやかちゃん、先輩にいったい何をしたんだろう?)
まとかが芳文に乾いた笑いを返しながら、修正と言う名の罰としていったい何をされたのか疑問に思っていると、キュゥべえがとことことまどか達から離れていく。
「キュゥべえ、どうかしたの?」
「ちょっと用事を思い出したんだ。悪いんだけど後は君達だけで何とかしてくれるかい?」
「え? う、うん。わかった」
「すまないね。それじゃまどか、また後でね」
それだけ言うと、キュゥべえは去って行った。
「さてと、まどかちゃん。そろそろグリーフシード探そうか」
「はい。所でマミさんとさやかちゃんはどうしたんですか?」
いくら待っても戻ってこない二人の事をまどかは尋ねる。
「ああ、二組に別れて探すことになったんだ。彼女達は向こうを調べてるよ」
「そうですか」
「うん。とりあえず、俺達はこっちを調べよう」
「わかりました」
まどかと芳文はとりあえず、プールサイドの周辺などを探してみる。
「どうかな?」
「ソウルジェムに反応はありませんね」
「うーん。もしかしたらプールの中とか?」
「そうですね。それじゃ私中に入って調べてみます」
「うん。でも水の中に入る前に準備運動しておかないとね」
「そうですね」
芳文の言葉に頷いて準備運動をした後、まどかはプールの中へ入っていく。
「俺も行こうか?」
「大丈夫です。もしグリーフシードを見つけたら、すぐに呼びますから。先輩はまだ見てない所やプールの隅を探してください」
「了解。気を付けてね」
「はい」
まどかはプールの中に入ると中を歩きながらグリーフシードを探し始める。
「さてと、まだ見ていない所は、と……」
「社芳文。ちょっといいかしら」
芳文が振り返ると、黒い水着姿の暁美ほむらが立っていた。
「ああ、君か。この前はありがとう」
「別にあなたに礼を言われる覚えはないわ」
「いや、まどかちゃんを助けに来てくれたし、俺の事も助けようとしてくれたじゃないか」
「……」
芳文の言葉に、ほむらは何も言わず、じっと芳文を見ている。
「えーと、確か……ホームランちゃんだっけ? 名前」
「……ほむらよ。暁美ほむら」
「ああ、そうそう。言われてみれば確かに。そういやまどかちゃんがほむらちゃんって呼んでたっけ」
「……」
「それで、俺に何か用かな? 暁美さん」
「……あなたは何者なの?」
「うん? もしかして、俺の事が知りたいの?」
「そうね」
「そうか……。俺は社芳文!! 絶賛恋人募集中の一五歳!! 魔法少女巴マミさんのクラスメイトさ!!」
爽やかな笑顔でキラリンっと歯を光らせて親指を立ててみせる。
「そんな事に興味はないわ」
「そんな言い方びといや。君が俺の事知りたいって言ったくせに」
芳文はいじけて床にのの字を指先で書く。
44 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:21:47.02 ID:8GUEOo26o
「私が知りたいのは、何故あなたが魔女や使い魔を視認する事が出来るのか。そして何故、私の時間停止を受け付けないのかよ」
「そんな事言われてもわからないよ。昔から良くない物が見えたから、霊感が強いせいじゃないかな」
「そんな事があるはずがない」
「そう言われても、見える物は見えるんだからしょうがないよ。それに君の魔法に対してだって、君にわからない物が俺にわかる訳がないし」
「……」
「質問はそれだけかな?」
「……そうね」
「それじゃ、今度はこっちから聞いてもいいよね。それじゃ質問します」
「……」
「その角度、好きなの?」
「……? 言ってる意味がわからないわ」
先ほどからほむらは首を傾げたままだったのを芳文は尋ねたのだが、質問の意図を理解してもらえなかった。
「うーん。うまく伝わらなかったか。もうちょっと女の子とのトークを修業せねば」
芳文は首を傾げながらぼやく。
「……」
「それじゃ、次の質問です」
「……せっかくプールに来たのにさ、そんなに長い髪してるんだから、まとめないと泳ぐ時邪魔じゃない?」
「余計なお世話よ」
「それもそうだね」
「……」
「それじゃ、次の質問です」
「……まだあるのかしら」
「君はまどかちゃんの友達なの? なんかすごく彼女の事を気にかけてるみたいだけど」
「……違うわ」
「そうなの? それじゃなんでまどかちゃんを気にかけてるのかな」
「あなたには関係ない」
「……そうか!! わかったぞ!!」
「……」
「君は確か転校生なんだよね。そこから導き出される答えはただひとつ!!」
ビシッとほむらを指差して芳文は自信満々で答えを告げる。
「かわいいまどかちゃんに一目ぼれした、真正のレズっ娘である君は、まどかちゃんを危ない事に巻き込みたくないんだ!!」
「……」
「そしてあわよくば、まどかちゃんと友達以上の関係になろうとストーキングしている!! これで合ってるかな?」
「……あなた、私にケンカを売っているのかしら」
ほむらは無表情のままだったが、その目は怒りに満ちていた。
「すみませんでした、会長!!」
芳文は背筋を正して頭を下げて謝る。
「……会長って何?」
「まどっち見守り隊会員ナンバー01の暁美ほむらさんの事。ちなみに会員ナンバー02が巴さんで、03が俺」
「そんなものになった覚えはないわ。それとまどっちって何」
「まどかちゃんの略でまどっち。かわいい愛称だろ? 俺が考えたんだよ」
「……」
「まどっち見守り隊の会長が嫌なら、俺が会長になってもいいかな?」
「……勝手にすればいいわ」
「よっしゃあ!!」
芳文がガッツポーズを取るのをほむらは冷めた目で見る。
「……」
45 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:23:27.08 ID:8GUEOo26o
「うーん。ノリが悪い子だなあ。お兄さん困っちゃう」
「……もういいかしら?」
ほむらは背を向けて去ろうとするが、ほむらの背中に芳文は声をかけて引き止める。
「あれ? もう帰っちゃうの?」
「……」
「せっかく来たんだからまどかちゃんに会っていったら? すぐ近くにいるから呼ぶよ。ほら、あそこに」
「余計な事をしなくていいわ」
「だって、せっかくここまでストーキングしてきたのに」
「あなたはそんなに早く死にたいのかしら」
「ごめんなさい」
ほむらは呆れたようにひとつため息をつくと、芳文に問いかけた。
「あなたは普段からそんな風に振る舞っていて、疲れないのかしら?」
「……何の事かな」
「別にいいわ。私には関係ない」
「そっちこそ、クールなふりしてんの疲れない?」
「何の事かしら」
「別に。あっ!? まどかちゃんが溺れてる!!」
「!?」
バシャアアアアンッ!!
「なーんちゃって。別に泳いでるわけじゃないから溺れるわけないしね。やっぱなんだかんだでまどかちゃんが気になってるんじゃないか」
まどかを助けにプールに飛び込んだほむらに対して、芳文は苦笑いしながら呟く。
「さてと、あの子が戻ってきたら何て言って謝ろうか……。やっぱりビンタのひとつふたつ、甘んじて受けるべだよなぁ……」
天を仰ぎながら呟く。
バシャバシャバシャ……!!
視線を下してまどかの元へ向かったほむらの姿を探すと、まどかは一人でプールの中を歩いている。
「あれ? もうそろそろまどかちゃんの所に着いててもおかしくないだろうに」
バシャバシャバシャ……!!
「さっきからすごい音がしてるけど、なんだ?」
芳文がプールの中を確認すると、ほむらが溺れていた。
「っ!? おいおいっ!!」
バシャーン!!
芳文は慌てて飛び込むと、水の中でもがいてるほむらの側に速攻で辿り着き、ほむらのおなかに手をまわして、顔を水面に出してやる。
「ぷはっ!!」
バシャバシャバシャ……!!
「ちょ、暴れないで!! すぐ外に連れてくから!!」
暴れるほむらに殴られ、ひっかかれながら、芳文はほむらを抱きかかえてプールの隅までたどり着く。
「ごめん。まさか君が泳げないとは思わなくて」
「……」
プールから上がってから、ほむらは背を向けて座り込んだまま、黙り込む。
「でも、なんだかんだですぐに駆けつけようとする辺り、やっぱりまどかちゃんの事を大切に思ってるんだね」
「……」
「……その、本当にごめん。悪かったよ」
「……」
「……せめて何か言ってほしいな」
「……」
「そうだ、お詫びに泳ぎを教えてあげようか」
「……必要ない」
「そう? まあ無理にとは言わないけど、泳げた方が色々便利だよ」
「……人間は浮くように出来ていない」
「いやいや、浮くって。それに女の子なら、男にはない二つの浮き袋があるから浮くはず……」
そう言ってから、さっき正面から見たほむらの水着姿を思い出す。
――悲しいくらいに絶壁だった。
「暁美さん、元気出して」
「……あなたに言われたくないわ」
「俺の母親も小さかった」
「……あなたは何を言っているのかしら」
「そりゃあもう、悲しいくらいに小さかったけど、一応俺を産んで母乳で育てたんだ。だから小さくても大丈夫だよ」
「……」
プルプルとほむらの肩が振るえている。
「あれ? どうしたの震えたりして。 トイレなら早く行った方がいいよ」
「っ!!」
ほむらは立ち上がると芳文を睨みつけ、そして。
パアーンっ!!
とうとうキレたほむらは芳文を平手打ちした。
「……っ!?」
左の足首に痛みを感じ、体制を崩す。
「おっと」
芳文はほむらの身体を受け止める。
「大丈夫? 溺れた時に足がつったのかな」
「……放して」
「ん? ああ、ごめん」
芳文はほむらを座らせる。
46 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:26:11.95 ID:8GUEOo26o
「……あのさあ」
「まだ何かあるの?」
「変な事聞くけど、怒らないでくれるかな。……俺、君とどこかであった事あるかな? なんていうか、最近とかじゃなくて、こう、ずっと前に」
「私はあなたの事なんて知らないわ」
「そっか、やっぱそうだよな」
「……何故そんな事を聞くの?」
「うん。先日、魔女の結界の中で肩を貸してもらった時と、さっき君に触れた時に感じたんだけどさ……なんていうか、懐かしいような、そんな感じがして」
「気のせいよ。私はあなたなんて知らない」
「やっぱそうだよなあ。なんでそんな風に感じたんだろう。こんな無愛想な子なら一度会えば絶対忘れないし」
「……悪かったわね、無愛想で」
ほむらが芳文を睨んだその時だった。
「あれ? ほむらちゃん?」
まどかが芳文の所へ戻ってきた。
「まどかちゃん、どうだった?」
「見つかりませんでした」
「そっか」
「ところでほむらちゃんと先輩は何をしてたんですか?」
「ああ。暁美さんもここのグリーフシードの気配に気づいて調査に来てたんだ。それでちょっと怪しい部分があったから調べてもらってたんだよ」
「そうだったんですか」
さらりとついた芳文の嘘をまどかはあっさりと信じて納得する。
「うん。でもちょっと無理させちゃったかな。暁美さんの足がつっちゃったみたいで、今は休んでもらってるんだよ」
「大変!! それなら救護室に行かないと!!」
「それには及ばないわ。少し休めば治る」
「駄目だよ!! そんなの!!」
「うん。無理は禁物だよね。まどかちゃん、肩を貸してあげて」
「はい。ほむらちゃん、行こ」
「……」
まどかはほむらに肩を貸して、後に続く芳文と救護室の方へと歩き出した。
47 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:27:34.14 ID:8GUEOo26o
☆
「すみません。友達が足がつっちゃって……」
三人が救護室に着くと、中には誰もいなかった。
「誰もいないね。ホントここの従業員はやる気がないなあ」
「……」
「ほむらちゃん、とりあえず座って」
まどかはイスの上にほむらを座らせる。
「さてと、とりあえずマッサージするか」
そう言って芳文はほむらの足首にマッサージを開始する。
「触らないで」
「触らないとマッサージ出来ないよ。俺が嫌ならまどかちゃんにしてもらう?」
「鹿目まどかの手を煩わせる必要はないわ」
「それじゃ我慢して。俺の手が汚いと思うなら、後で消毒すればいい」
「そうさせてもらうわ」
「ひでえ!!」
そんなやりとりをしながら、マッサージを済ませるとほむらの足は歩けるようになった。
「……さてと。まどかちゃん。グリーフシード探しに戻ろうか」
「はい」
「暁美さん、その……色々とごめん」
「……もういいわ」
そう言ってほむらは去ろうとする。
「それじゃ行こうか」
「先輩、ここも一応調べた方が……」
「そうだね。まどかちゃん頼むよ」
「はい」
まどかが指輪をソウルジェムに変化させて周囲を調べる。
「!? 先輩、ほむらちゃん、私のソウルジェムに反応が!!」
ソウルジェムが微かに光っている。
「っ!!」
「ここにあるのか!!」
芳文は救護室の中を探しまわる。
「どこだ!?」
ベッドの下や、カーテンの裏などしらみつぶしに探し回る。
「見つけた!!」
やがて、壁に掛けられた時計が不自然に傾いて掛けられているのに気付き、時計を外すとグリーフシードがあった。
「どうしよう。まだ孵化しそうにはないけど……」
「下手に手を出さない方がいいわ。ショックで孵化しかねない」
まどかがどうしたものかと考えていると、ほむらがそう忠告する。
「まどかちゃん、剣出して」
「は、はい」
まどかは一瞬で変身すると、剣を作り出して芳文に渡す。
「……どうするつもり?」
ほむらの問いに、芳文は剣先をグリーフシードに向けて答える。
「壊す」
グサ。パアァァァァァァァンッ。
魔女さえ簡単に切り裂くまどかの剣を突き立てられ、グリーフシードはあっけなく木端微塵に砕けて消滅した。
「ミッションコンプリート」
剣を突き立てた姿勢のまま、まどかに芳文がそう告げると、まどかは安心した顔で変身を解いた。芳文の握っている剣も消滅する。
「さあ、巴さんとさやかちゃんの所に戻ろうか」
「はい」
「……社芳文」
「ん?」
「あなたの右脇のそれは?」
芳文がグリーフシードを刺した時に見えた、赤い切り傷のようにも見えるアザの事をほむらは尋ねる。
「ああ、生まれた時からあるアザだよ」
「……そう」
「これがどうかしたの?」
「ケガをしてるように見えたから聞いただけよ」
「ふーん。別に痛いとかないから心配しなくてもいいよ」
「私があなたの事を心配しないといけない理由なんてないのだけれど」
「あっそう。それじゃまたね、ホームランちゃん」
「私の名前はほむらよ」
「名前で呼んでもいいのかい?」
「お断りよ」
「それは残念だ。さ、まどかちゃん、巴さん達に報告に行こう」
「は、はい。ほむらちゃん、また学校でね」
「……ええ」
48 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:29:34.10 ID:8GUEOo26o
芳文とまどかが去っていくのをほむらは一人残って見送る。
「暁美ほむら」
一人残されたほむらにかけられた声の主に、ほむらは振り向く事も無く返答する。
「インキュベーター。何の用」
「君に一つ、尋ねたい事があってね」
夕焼けのカーテン越しにキュゥべえのシルエットが影となって映る。
「答えてやる義理はないわ」
ほむらはキュゥべえを無視して出て行こうとする。
「君のソウルジェムは、一体どこにあるんだい?」
「……」
ほむらはキュゥべえの問いに、一言も答える事無く去って行った……。
☆
「ほら、まどか。どんどん食べなきゃ」
「さやかちゃん、そんなに入らないよ……」
「このケーキ、紅茶に良くあうわね」
プールを出てから、まどか達はケーキと紅茶が美味しいと評判の店に芳文を引っ張ってきて、疲れた体を美味しいケーキと紅茶で労わっていた。
「とほほ……。しばらくパスタ生活だな……」
セクハラの罰の一環として、三人のケーキと紅茶代を奢らされる事になった芳文は一人だけ水を飲む。
「ところで社君。もし魔女が孵化したらどうするつもりだったの?」
「うん?」
マミに突然問い詰められて、芳文は思わず聞き返す。
「せっかくパーティを組んでるんだから、一人で突っ走らないでね」
「ごめん」
「今度からは、行動する前に連絡して」
「うん」
「良かったね先輩。マミさんに心配してもらえて」
「美樹さん!! べっ別にそういう訳じゃないわよ。もし目の前で社君に何かあったら、鹿目さんが悲しむでしょ!!」
「あーっ、ほらまどか。マミさん照れてる照れてる」
「もう、年上をからかわないの」
「はーい、ごめんなさーい」
芳文は目の前でじゃれあう少女達の姿を見て、絶対に最後まで、彼女達の力になる事を胸に誓うのだった。
つづく
49 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/03(日) 02:33:05.52 ID:8GUEOo26o
杏子「とりあえずここまでだ」
杏子「まあ見てる奴がいるのか疑わしいけどな」
杏子「一応中坊だからテスト期間とか文化祭の話もやるらしい」
杏子「あたしはいつ出られるんだろう……」
50 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2011/04/03(日) 19:33:23.45 ID:NIHxoI1/o
まどかが契約しちゃったから最期がどうなるか気になるな
楽しみにしてるよ、頑張ってくれ
51 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/03(日) 23:28:58.11 ID:tx92YDuJo
続き期待
52 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/04/04(月) 15:02:14.51 ID:IMTIRSNno
男オリ主で王道ギャルゲー展開だけど面白い
まどかが魔法少女になってるからこの先の展開に期待
53 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/05(火) 02:54:12.51 ID:ZHcMG8S7o
杏子「果たして需要があるのかわからないが、5話目だ」
杏子「今回はさやかの話になる」
杏子「あたしはいつさやかに会えるんだろう……」
54 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/05(火) 02:54:55.70 ID:ZHcMG8S7o
第5話 「何もしてあげられないなんて嫌だよ……」
ヒュンッ!!
芳文の投げつけた剣が、腕の生えた犬小屋の姿をした魔女の胴体に突き刺さる。
「巴さん!! まどかちゃん!!」
「オッケー!! ティロ・フィナーレ!!」
「はい!! いっけえぇぇぇぇっ!!」
マミの顕現させた巨大マスケット銃による砲撃が魔女の胴体に風穴を開けた次の瞬間、まどかの放った一本の矢が十八本に分裂して雨のように降り注ぎ、魔女の腕や胴体に突き刺さる。
胴体に突き立てられたマギカ・ブレードと一本の矢が互いに触れた瞬間、巨大な光り輝く魔翌力の円球を生み出し、魔女を飲み込むと跡形もなく粉砕消滅させた。
シュゥゥゥゥゥゥン……。
カラーン……。
結界が消え去り、グリーフシードが地面に転がる。
芳文はグリーフシードを拾い上げるとまどかに手渡す。
「はい、まどかちゃん。お疲れ様」
「ありがとうございます。先輩もお疲れ様でした」
「社君、鹿目さん、お疲れ様」
「巴さん、お疲れ様」
「マミさんお疲れ様です」
互いにねぎらいの言葉をかけあう三人の姿を、さやかはきゅぅべえを抱いたままじっと見ている。
「さやか、なんだか今日は元気がないね。いつもなら真っ先にマミ達の勝利を喜ぶのに」
「……うん」
キュゥべえに生返事を返しつつ、さやかは交通事故に遭い入院している幼馴染の事を考えていた。
(……あたしがキュゥべえと契約すれば、恭介の手を治してあげられるんだよね。でも……)
まどかが魔法少女になってしまったあの日、マミに言われた言葉が胸によぎる。
(……あたし、どうしたらいいのかな)
55 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/05(火) 02:55:59.80 ID:ZHcMG8S7o
☆
「必殺技」
帰り道で唐突に芳文がマミ達に切り出す。
「社君、いきなりどうしたの?」
「いや、まどかちゃんは巴さんみたいに必殺技を作らないのかなって」
「え? えーと、私なんてマミさんに比べてまだまだだし、必殺技なんて夢の又夢かなって……」
「そうかな? まどかちゃんの放つ矢は必殺技みたいなもんだと思うけど。さっきの分裂する矢とか」
「そうね。確かに言われてみれば、鹿目さんの攻撃はは一撃一撃が必殺技みたいなものよね」
「そ、そうですか? でも、特に名前とか思いつかないし……」
「マジカルアローとかでいいんじゃない?」
「却下。そんな安直な名前はエレガントじゃないわ。ねえ美樹さん」
「……え? そうですよねっ!! ていうか適当過ぎるし!!」
「ひど!! まどかちゃんはどう思う?」
「え? え……と、ちょっと……恥ずかしいかなって……」
「ガーン」
まどかに苦笑いされながらやんわりと拒否されて、芳文は膝から崩れ落ちて地面に両手をついて落ち込む。
「……ところで先輩は必殺技とかないの? 何とか斬りとか何とか突きとか」
「ないよ、そんなもん」
さやかの問いにパンパンと膝を払いながら答える。
「社君、人に勧めておいて、自分の必殺技は考えないの?」
「……うーん。あ、そうだ。必殺技じゃなくて、剣の名前を考えるよ」
「剣の名前、ですか?」
「うん。現在、俺が作ってもらえる剣は巴さんの剣とまどかちゃんの剣の二本。これに名前を付けよう」
「そうだな……。まどかちゃんの剣は……。うーん。そうだなあ……。マギカ・ブレードってどうかな?」
「マギカ・ブレード?」
聞きなれない単語にまどかは頭の上に?マークを載せて首をひねる。
「先輩、マギカってどういう意味?」
さやかの問いに芳文は意味を説明してやる。
「ラテン語で魔法のって言う意味だよ。魔法の大剣だから、マギカ・ブレード」
「なかなかいい名前なんじゃないかしら」
「……マギカ・ブレード」
マミの感想を聞きながら、まどかは自らの祈りと願いを込めて作り出す剣の名前を呟く。
「どうかな? まどかちゃん」
「はい!! かっこいい名前だと思います!!」
よほどマギカ・ブレードと言う名前が気に入ったのか、まどかはぱあっと笑顔になって芳文に頷く。
「気に入ってくれたようで良かったよ。次からはマギカ・ブレードと呼ぼう。それじゃ今度は巴さんの剣の名前を付けよう」
「どんな名前をつけてくれるのかしら」
「よし。マミさんソードと名付けよう」
『……』
三人が絶句して固まる。
「……どうして、私の剣はそんな名前なのかしら」
こめかみを片手で押さえて呆れながらマミが尋ねる。
「だって、巴ソードとか、マミソードじゃ語感が良くないじゃないか」
「そんな理由?」
さやかが芳文のあんまりな答えに呆れる。
「……ねえ社君。もしかして、さっきのマギカ・ブレードって最初は……」
「うん、本当はまどか・ブレードって名づけようと思ったんだ。まどかちゃん・ブレードとか鹿目・ブレードだとなんか語感が悪いし。まどか・ブレードだと語感が良いよね」
『……』
「で、なんとなくマギカって言葉が思いついたから、マギカ・ブレードに改名したんだ」
「……まどか、あんた名前がまどかで良かったね」
「……あんまり嬉しくないよ、さやかちゃん」
「……社君。せめてもう少しマシな名前にしてくれるかしら。お願いだから」
「えー。いい名前だと思うんだけどなぁ」
「なんだか馬鹿にされてるみたいで嫌なのよ。もう少し真面目に考えて」
「うーん。刀身の長さとか厚さ的にブレードと言うよりはソードだしなあ。ソードの前に語呂のいい文字をつけるとして……。そうだなあ……」
「閃いた!! 魔法はマジカル!! 巴マミさんのマジカルで出来る剣!! 命名!! マミカルソード!!」
『……』
あんまりと言えばあんまりな命名とネーミングセンスに、さやかもまどかも開いた口が塞がらなかった。
「……もうそれでいいわ」
マミは軽い頭痛を感じながら、もうどうでもいいとばかりに芳文に言うのだった……。
56 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/05(火) 02:56:53.53 ID:ZHcMG8S7o
☆
――爽やかな春の陽光の下で、今日もまた見滝原市に暮らす人々の一日が始まる。
学校や職場へと向かう人々の行き交う朝の風景の中、さやかはまどかを学校へ行く途中の道で待っていた。
「ふわあぁぁぁぁ……っ」
昨夜も魔女退治の為に夜遅くまで、まどか達と共に見滝原市内を歩いて回ったさやかは、帰宅後宿題を片づけるのに手間取り寝るのが遅くなってしまった。
大きく口を開けてあくびをしてると、不意に声をかけられる。
「おはよう、さやかちゃん」
「あ、先輩。おはよー」
さやかに朝の挨拶をしてきたのは芳文だった。
「なんか随分眠そうだけど、あれから夜更かしでもしたの?」
「いやー、ちょっと宿題片づけるのに手間取っちゃって。寝るのがいつもより遅くてね」
「そっか。明日からテスト週間だし、勉強は大事だよね」
「あー、そういやそうだっけ。すっかり忘れてた」
「まあ最近魔女退治で忙しかったから、忘れてもしょうがないね。でも学生の本分は勉強なんだから勉強も頑張らないとね」
芳文のその言葉にさやかは本気で心配そうな顔をして尋ねる。
「……先輩、何か変な物でも食べたの?」
「ひでえ!!」
「だってさあ、先輩が勉強なんて似合わない事言うんだもん」
「ぐぬぬ……。さやかちゃんの中では俺はどういう扱いなのか、すごく気になる」
「あたしの先輩へのイメージ? うーん。……バカ?」
「……むう。あながち間違いではないが、もう少しオブラートに包んだ言い方をしてくれてもいいと、お兄さんは思うぞ」
「今更先輩相手に遠慮もへったくれもないっしょ?」
「まあいいけどさ。まどかちゃんともう一人の友達の子はまだ来ないの?」
「今日、仁美は日直で先に学校に行ったから、あたしはまどかが来たら一緒に学校へ向かうよ。先輩こそ初めて会った日に一緒だった友達はどうしたの?」
「ああ天瀬の事か。あいつは毎日深夜アニメをリアルタイムで見てるみたいでさ、よく寝坊するんだ。登校途中で会えば一緒に学校行くけど、別に待ち合わせとかはしないかな」
「ふーん」
かわしたやーくそくーわすーれなーいよ♪
さやかの制服のポケットから携帯のメール着信音が鳴り響く。
「あ、まどかからのメールだ。……何々、忘れ物したから一度家に戻るね。悪いけど先に行っててだって」
「そっか。それじゃ学校行こうか」
「えー? 先輩と二人で一緒に登校して噂とかされたら恥ずかしいし」
「さらりとひどい事言うね。まあ無理にとは言わないよ。でもお兄さんちょっとショックだよ。俺はさやかちゃんの事友達だと思ってたのに、さやかちゃんはそうは思ってくれてなかったんだね……」
芳文はいじけてしゃがみこむと、地面にのの字を人差し指で書く。
「ちょっ、冗談だって冗談。本気にしないでよ先輩」
「……ホントに冗談?」
「冗談冗談。普段馬鹿ばっかりしてるくせに、こういう時だけいじけないでよ」
「……だってさあ、妹みたいに思ってる子に冷たくされたらへこむよ」
「あたし、先輩の妹なんだ?」
「迷惑かな? 俺にそんな風に思われてるの」
「……うーん。……別に嫌じゃないよ。先輩はバカだけどいい人だし」
「そっか。うん迷惑じゃないならいいんだ!!」
「バカは否定しないんだね……」
「妹にバカと言われたくらいで怒る兄貴はいません!!」
芳文はそう言って、くしゃくしゃとさやかの頭を撫でる。
「わ、また子ども扱いするし!!」
「子ども扱いじゃないよ。愛でてるだけ」
「一緒だって!! ったくもぅ……。ほら馬鹿兄貴、学校行くよ」
「あいよ、さやちー」
「さやちー言うな!!」
芳文とさやかは学校へ向かって歩き出した。
57 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/05(火) 02:58:36.73 ID:ZHcMG8S7o
☆
「ところで先輩、ちょっと聞いてもいい?」
「何かな?」
学校へ向かいながら、さやかが隣を歩く芳文に尋ねる。
「先輩ってさ、マミさんとまどかの事どう思ってんの?」
「巴さんは見滝原魔法少女隊のリーダーでまどかちゃんは隊員1号。んでもって、さやかちゃんは隊員2号で俺は下っ端戦闘員」
「いや、そういう意味じゃなくて。女の子としてどう思ってるのかって事」
「……なんでそんな事聞きたいの?」
「だって本人達がいる所じゃ聞きにくいじゃん。あたしの事は妹って言ってたけど、あの二人の事はどう思ってるのかなって」
「意外だ。さやかちゃんなら本人達の前でも気にせず、ズバズバそういう事聞いてきそうだと思ってた」
「先輩の中であたしはそういうキャラだったんだ。これは一度じっくり話し合う必要があるかもしれないね」
「拳を鳴らしながら言わないで欲しいな。……ごめんなさい」
「よろしい。それで実際の所どうなの?」
「……そうだな。巴さんは高翌嶺の花ってとこかな。今までずっと一人で、みんなの為に戦ってくれてた彼女の事は人間として尊敬してる」
「まどかは?」
「超かわいい俺の天使」
「……」
「……」
一瞬の沈黙の後、さやかは真剣な顔で尋ねる。
「……先輩ってさ、まどかの事好きなの? まどかは大切な親友だから、ちゃんと答えてほしい」
「その好きがどういう意味かは置いておいて……。あの子の事は人間として好きだよ。とても優しい心を持っているいい子だと思う。ただここだけの話、正直に言うと魔法少女にしてしまった事をすまないと思ってる」
「……どういう意味?」
「そのまんまさ。戦いが怖いって泣いてたあの子を俺が弱かったから……。魔女から守りきれなくて契約させてしまった。だから俺はあの子に救われたこの命であの子の事を絶対に守る」
「……」
「もういいかな?」
「……うん。変な事聞いてごめんね先輩」
芳文の返答を聞いて、さやかは俯いてしまう。
「どうしたの? なんか元気ないみたいだけど」
「……あのさ、先輩。真剣に答えてほしいんだけど……」
不意にさやかが足を止めて、芳文の顔を見上げて真剣な顔で尋ねる。
「……何かな?」
「あのさ、先輩はたったひとつの奇跡を他人の為に使うのってどう思う?」
「……内容にもよるけど、やめておいた方がいいと思う」
「どうして?」
「君が魔法少女になって、いつ死ぬかもしれない戦いに命をかけて挑み続けるのをそいつは望むのかな?」
「……」
「もし君の身に何かあったら、君のご両親やまどかちゃんはどう思う? 君に奇跡を起こしてもらった奴はその事実をもし知ったとしたらどうすればいい?」
「……」
「少なくとも俺がそいつの立場だったら嫌だね。自分の事を想ってくれている相手に、自分の知らない所で危険な事に命をかけて挑み続けられるなんてごめんだ」
「でもまどかだって……。先輩の為に願いを……」
「まどかちゃんには本当に申し訳ない事をしたと思ってるよ。でも俺はあの子に命を助けられた事を知っている。あの子には本当に感謝している。あの子の為になる事ならなんだってしてやろうと思ってる」
「だけど君が奇跡を起こしてあげたい相手は、その事を知る機会があるのかい?」
「……だったら、あたしはどうすればいいの? あたしはただ、好きな人の動かない手を治してあげたいだけなのに」
「……」
「あたし、奇跡も魔法もあるのに、何もしてあげられないなんて嫌だよ……」
「……まどかちゃんに頼んでみようか」
「え?」
「まどかちゃんの魔法なら、そいつの手くらい治せるんじゃないかな」
「でも、あたしの個人的な願いの為にまどかに魔法を使わせるなんて……。それに魔法を使ったらまどかのソウルジェムが濁るし……。まどかにだけ戦わせて願いだけ叶えてもらうなんて虫が良すぎるよ……」
「優しい子だな、さやかちゃんは。大丈夫だよ。グリーフシードのストックなら溜まってきてるし」
「……でも」
「忘れたのかい? 俺の役目は彼女達の魔翌力を無駄に使わせない事だよ? まどかちゃんならそいつの手くらい簡単に治しちゃうさ。それに……」
「まどかちゃんなら、親友の君の為になるなら喜んで魔法を使ってくれるはずだよ。……ね、まどかちゃん」
芳文がさやかの背後の人物にウインクしてみせる。
「さやかちゃんの為ならいいよ。私で良ければ力になりたいな」
「……まどか」
さやかが振り返ると、そこにはまどかが立っていた。
「ごめんね。さやかちゃんと先輩のお話立ち聞きしちゃって。あれから急いで走ってきたんだけど、真剣なお話してたから声かけられなくて……」
家に忘れ物を取りに戻って急いで走ってきたまどかは、丁度さやかの「好きな人の動かない手を治してあげたいだけなのに」と話している所からこれまでの話を聞いていた。
「まどか……」
「まどかちゃん、さやかちゃんの為に魔法使ってあげて」
「はい!! もちろんです!!」
「ありがとう、まどか……」
笑顔で芳文に頷いて快諾するまどか。さやかは目に涙を浮かべてまどかに礼を言うのだった。
58 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/05(火) 03:01:21.67 ID:ZHcMG8S7o
☆
その日の放課後、パトロールに行く前にさやか達は上条恭介の入院している病院へとやってきた。
『……さやかちゃん、上条君は?』
『……大丈夫。寝てるよ』
病室の外で待っているまどかに、さやかは病室の中からテレパシーでそう答える。
(恭介……)
ベッドの上で眠っている恭介の顔には流した涙の跡があった。
『……まどか、お願い』
『うん』
まどかは病室の中に入ってくると、恭介の眠るベッドに歩み寄り、左右の掌の間に癒しの魔法を生成する。
淡いピンク色に輝く癒しの光を恭介の動かない腕に当てる。
ポウ……。
時間にしてわずか数秒。
『……さやかちゃん、終わったよ』
『ありがとう、まどか』
『ごめんね。本当は完治させてあげたかったんだけど』
『ううん。いいんだよ。いきなり完治なんて不自然だもん』
まどかは癒しの魔法の威力を押さえて恭介の腕を治した。それは今後のリハビリで元に戻せる程度にまでの治癒。それは芳文とマミからの意見を汲んだ結果でもある。
いきなり完治させるのは不自然だし、絶対に治らないケガを完治させるのはまどかにそれ相応の魔翌力を使わせる事になる。
必要最小限の魔翌力で恭介を治療させたのは、まどかとさやかにお互い必要以上の負い目を負わせない為の芳文達なりの気配りだった。
『それじゃ、先に下に行ってるね』
『うん。まどか、本当にありがとう』
まどかが病室を出ていくと、さやかは恭介の動かない手を両手でそっと包み込む。
「んん……。さやか……?」
恭介が動かない筈の、痛みも何も感じない筈のその手に暖かい感覚を感じて目を覚ます。
「恭介……」
「……おかしいな。もう僕の手は何も感じない筈なのに……。さやかの手の暖かさを感じるんだ……」
「……これは、夢、なのかな?」
恭介のその言葉にさやかは目に涙を浮かべて、微笑んでみせる。
「現実だよ……。奇跡も、魔法も、あるんだよ」
☆
「上手くいったみたいね」
「はい。もう大丈夫だと思います」
「そっか。良かった」
病院の外で待っていたマミと芳文にまどかは結果を報告する。
「マミさん、先輩。……私、魔法少女になって良かったって思います。……こんな私でも、さやかちゃんの笑顔を取り戻せたから」
そう言って微笑むまどかの笑顔は清々しい笑顔だった。
マミと芳文はそんなまどかに優しい顔で頷く。
「さあ、魔女退治に行きましょうか」
「ああ」
「はい」
三人は魔女退治に向かうべく病院を後にした。
☆
「おーい!! まどかー!! マミさーん!! せんぱーい!!」
病院を後にして、一五分くらい経った頃、さやかが三人の名前を呼びながら駆け寄ってくる。
「さやかちゃん? 上条君は?」
はあはあと肩を震わせているさやかにまどかが尋ねると、さやかは親指を立ててみせる。
「良かったね、さやかちゃん」
「まどかのおかげだよ!! ありがとう!!」
「きゃっ!!」
さやかがまどかに抱きついてお礼を言う。
「さやかちゃん、その上条君に付いててやらなくていいの?」
芳文の問いにさやかは頬を膨らませて言う。
「もう面会時間終了!! っていうか、なんで三人共あたしを置いていくかな!?」
「だってねえ、巴さん」
「美樹さんの願いは叶ったんだから、もうキュゥべえと契約する必要もないし……」
「確かにあたしの願いはまどかが叶えてくれたけどさ!! あたしまだ魔法少女になるのやめたなんて言ってないよ!!」
さやかの言葉に芳文とマミはお互いの顔を見合わせ困惑し、まどかは驚いてさやかの顔を見つめる。
「今はまだ、他の願いなんてないし、あたしなんかが契約してもマミさんやまどかの足元にも及ばないだろうけど……」
「あたしだって魔法少女の事を知ったあの日から、ずっとみんなと一緒だったんだよ。あたしも連れて行ってよ!! 役に立たないかもしれないけどまどかやマミさん、先輩が戦ってるの放っておけないから!!」
さやかのその言葉にマミとまどかは微笑んで頷く。
「やれやれ。さやかちゃんにも困ったもんだな。願いが叶ったのにわざわざ危ない事に首を突っ込もうなんて」
芳文の言葉にさやかは笑いながら言う。
「馬鹿兄貴の馬鹿が移ったのかもね。あたし先輩の妹なんでしょ?」
そう言ってさやかはウインクしてみせる。
「やれやれ。しょうがない子だな」
芳文はそんなさやかの頭を笑いながらくしゃくしゃと撫でてやる。
さやかはくすぐったそうに目を細め、とびっきりの笑顔でまどか達に笑ってみせるのだった。
つづく
59 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/04/05(火) 03:20:22.05 ID:ZHcMG8S7o
杏子「「とりあえず今回はこれまでだ」
杏子「まりょく たかねのはな この2つの言葉を漢字にして投稿すると勝手に誤植されるのは何故なんだ?」
杏子「まあ別にいいけどさ」
杏子「ついでだから武器の解説もしてあげるよ」
杏子「まずマミカルソード。…・…ひでえ名前だ。これは魔界村で例えるなら槍に相当する武器だ。もっともオーソドックスで扱いやすいが、魔女にダメージを与えることは出来てもトドメを刺しきれない」
杏子「次にマギカ・ブレード。こいつは劇中最強の武器だ。魔界村で例えるなら、サイコキャノンやプリンセスの腕輪に相当する。魔女だけでなく、結界、障害物、魔女の吐く弾、有機物無機物関係なくどんな物も存在も破壊する」
杏子「斬る、刺すのアクションの後、攻撃した対象物の切断面から破壊エネルギーを流し込み完全消滅させる。斬らなくても刀身に触れただけで対象物を破壊するので真剣白羽取りも出来ない」
杏子「まどかが振るえば更に威力が増すんだが、マギカ・ブレードは重い上に刀身が長く取り回しが悪い。まどか自身に剣を振るうスキルと保持するパワーがないので実質、社背芳文の専用武装だな」
杏子「形状のイメージとしてはGEAR戦士電童の暁の大太刀や熱血最強キングゴウザウラーのキングブレードだな」
杏子「ちなみに現時点で劇中未登場だが、あたしが作った剣やアニメ本編でさやかが使ってる剣もその内使われる」
杏子「さやかの剣はマミの物より細身で軽い為、連射が効くけど威力が弱い。魔界村で例えるならナイフだそうだ。当然魔女への決定打にはならない」
杏子「こんなとこかな。それじゃまたな」
60 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/04/05(火) 21:18:24.38 ID:BaFZFggSo
>>59
さやかが魔法少女にならない展開は良かった
この調子で全員救ってあげて欲しい
続きも期待してるぜ
>>まりょく たかねのはな
メール蘭をsageじゃなくsagaにすれば誤変換や[ピー]が
普通に表示されるようになったと思う
61 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/05(火) 23:31:03.24 ID:spe1RPu5o
ageたくない場合は「sage saga」とか入れるといい
62 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/04/09(土) 14:49:35.32 ID:fqKCGPw70
高翌嶺ってsaga推奨だったのか
なんかそこはかとなくメアリー・スーと厨二の香りがするが面白いので問題ない乙
63 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/04/10(日) 02:36:23.83 ID:h1jZU67Oo
杏子「ようやくあたしの出番だ」
杏子「今回はギャグ控え目。そろそろ物語もターニングポイントに差し掛かろうとしている」
杏子「果たしてどれだけ読んでる人間がいるのかわからないが、投下だ」
64 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 02:37:09.69 ID:h1jZU67Oo
第6話 (……どっちが本当の先輩なのかな)
街外れにある、人気のない寂しい場所。
一人の少女が開発途中の鉄塔の上に座り、人々が生きている証である夜闇を照らす街の灯りを眺めながら、チョコレート菓子をほうばりつつ傍らに佇む契約の獣に問いかける。
「――なんであたしが、わざわざマミのテリトリーに行かなきゃなんないのさ」
「あの街は今、強力な魔女が大量発生しているんだ。正直言ってマミ達だけじゃ手が回らないんだよ。だから君にも手伝ってほしいんだ」
「……はっ。ごめんだね。なんであたしがマミの手伝いなんか……。おい、あんた今、マミ達って言ったか?」
「ああ。今あの街にはマミともう一人、最近僕と契約した新しい魔法少女がいる。それと、僕の知らない魔法少女ともう一人のイレギュラーもね」
「あんたが知らない魔法少女ねえ……。んで、もう一人のイレギュラーってのは?」
「マミの同級生の少年だよ」
「は? 今なんっつた? 男ぉ? なんで男が魔法少女に関わってくんのさ?」
「僕にもわからない。彼は何故か僕の姿を視認し、魔女や使い魔の姿も視認することが出来るんだ」
「そんな事があるもんなのかい?」
「いや、こんな事は初めてのケースだよ。その少年はマミ達に協力して魔女と使い魔を退治している」
「ふうん……。あんた、魔法少女になれる少女以外とも契約したんだ?」
「してないよ。彼は純粋に善意だけでマミ達の手伝いをしているようだ」
「はあ? そんなバカがいるのかよ」
「それがいるんだよね。何のメリットもないのに。訳がわからないよ」
「まったくだ。何の得があるんだか」
「それで杏子。手伝ってくれるかな?」
「……そうだね。この辺の魔女も粗方狩りつくしたし……」
キュゥべえに杏子と呼ばれた少女はすっと立ち上がると、キュゥべえに不敵な笑みを見せて言い放った。
「ここらでそろそろ、正義の味方ごっこしていい気になってるバカどもをぶちのめしてやるのも面白そうだ」
65 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 02:38:03.41 ID:h1jZU67Oo
☆
キーンコーンカーンコーン……。
午前中の授業がすべて終了した事を告げるチャイムの音が、校内に鳴り響く。
「それではテスト週間の為、本日の授業はこれで終了です」
まどか達の担任である早乙女先生が、続けて教師が日中は遊んでいる生徒がいないか街を見回りしているので、外で遊んでいて指導されたりしないよう、各自自宅等でしっかり勉強するようにと締めくくった。
「あー、やーっと終わったぁ。まどか、マミさん達のとこ行こ」
さやかが弁当を持って、まどかの所へやってくる。
「うん」
まどかがそう返事を返すと、仁美が二人に話しかけてくる。
「あら? テスト期間は午前中で授業が終わりますのに、おふたりともお弁当を持ってきたんですか?」
「これから3年の先輩達とお昼一緒に食べて、図書室で勉強見てもらうんだ」
「そうなんですの?」
「うん」
さやかの答えを聞いた仁美がまどかの方を見ると、まどかはこくんと頷いてさやかの言葉を肯定する。
「おふたりとも3年生にそんな仲の良い人達がいたんですね」
「んー、まあ最近知り合ったんだけどね」
「そうなんですか。また機会があれば私にも紹介してくださいね」
「うん。仁美ちゃんはこれから、家庭教師の先生が来るんだよね」
「そうなんですの。本当はまどかさんとさやかさんと一緒に勉強したいのですけれど」
「そうだね。仁美はその後も御稽古事があるんでしょ? 大変だね」
「仕方ありませんわ。それではまどかさん、さやかさん。また明日」
「うん。仁美また明日」
「仁美ちゃんばいばい」
仁美が教室を出ていくのを見送ると、まどか達は3年の教室へと向かった。
66 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 02:38:32.25 ID:h1jZU67Oo
☆
「あれ? あそこにいるのって先輩じゃない?」
教室を出て3年の教室に向かう途中、さやかがまどかの袖を引いて歩みを止めさせて話しかける。
「ほんとだ。隣にいるのって、確か男子の体育の先生だよね」
「先輩、また何か馬鹿な事やって叱られてんのかな」
「さやかちゃん、そんな風に決めつけちゃ先輩に悪いよ」
まどか達の視線の先で、芳文が購買で買ってきたらしいパンとコーヒー牛乳を手に、体育教師に呼び止められていた。
まどか達が見ていると、体育教師が何か話しかけているのを、芳文がのらりくらりとかわしているようだった。
「あら? 鹿目さん、美樹さん、まだ残っていたの?」
不意にまどか達に声をかけてきた人物に、二人は思わずびくっと震えて振り返る。
「あ、先生」
「先生はどうしたんですか?」
「ちょっと教室に忘れ物をしちゃってね。あなた達は?」
「3年の先輩と一緒にお昼を食べてから、図書室で勉強を見てもらうんです」
「そうなの。図書室での勉強はいいけど、下校時間には家に帰りなさいね。……あら? また武田先生、社君を勧誘してる」
「……勧誘?」
「先生、あれって先輩がまた馬鹿やって怒られてるんじゃ?」
「違うわ。武田先生は剣道部の顧問をしてらっしゃるから、社君を部員にしたいのよ。……二人共、社君の事知ってるの?」
「まあ知ってるっていうか、あたしとまどかの友達だし」
「そうだったの。へえ……。鹿目さんに男の子の友達ねえ……。今度お母さんに教えてあげなきゃ」
先生はふふふと含み笑いしながら、まどかを見て言う。
「せ、先生!! 先輩はそういうんじゃありませんから!! ママに変な事吹き込まないでください!!」
「えー? どうしようかしら?」
「うぅー」
友人の娘をからかう女教師と真っ赤になって困った顔をしているまどか。さやかはまどかに助け舟を出しつつ疑問を先生に尋ねる。
「それで先生、先輩が剣道部って?」
「あら、社君の友達ならあなた達の方が詳しいんじゃないかしら」
「いやあ、最近友達になったんで、実はまだ知らない事の方が多いんですよ」
「まあ、社君の友達なら教えてもいいか。彼は昔ね、剣道の天才少年って言われてたの」
「そうなんですか?」
「ええ。小学4年の時に、大人の有段者に勝ったりとかしてたから結構な有名人だったのよ」
「それ初耳。それで先輩、あんな強かったんだ」
「でもね、その後……ちょっと良くない事があって、剣道やめちゃったらしいのよ。私も人から聞いた話だから詳しくはは知らないのだけれど」
「……」
『俺はいらない人間だから』
まどかは魔女の結界に芳文と一緒に閉じ込められた時、芳文の言っていた言葉を思い出す。
「……彼ね、1年の最後にこの学校に転校してくるまでは、すごく荒れていたらしいけれど。……今はそんな風に見えないしね。武田先生は彼をもう一度剣道の道に戻したいらしいわ」
「……先輩が荒れてたって?」
さやかの疑問に先生は頬に手を当てながら答える。
「とてもそんな風には見えないし、そんな悪い子に見えないからただの噂だと思うんだけどね。何でも1年の時に数人の高校生を半殺しにしたとか」
「先輩がそんな事……」
まどかは信じられないという顔で呟くが、魔女や使い魔との戦闘時の動きを見る限り、先生の言った事を実行できるだけの実力はありそうだとも思ってしまう。今の芳文からはとても想像出来ない行為だが。
「まあ私も人から聞いた話だし、本当かかどうかは知らないけどね。なんでもその高校生たちが公園でふざけてて、小さな女の子にケガをさせたのに謝りもしなかったからとか何とか」
『……』
「いやだ。こんな事まであなた達に言う事じゃなかったわ。ごめんなさい。私ったら教師失格ね……」
無言の二人に先生は慌てて謝罪する。
「ごめんなさい。別にあなた達の友人を悪く言ったつもりはないの。今言った事だって……」
「あれ? まどかちゃん、さやかちゃん。これから巴さんの所に行く所?」
いつの間にか芳文がまどか達の元へ向かってきながら話しかけてくる。
「あ……今のはただの噂だから、気にしないでね。それじゃ私行くわね」
ばつが悪そうに先生は歩いてきた芳文と二言ほど話し、去って行った。
67 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 02:39:27.94 ID:h1jZU67Oo
☆
校舎の屋上に登り暖かい日差しの下、四人で昼食を済ませてから、マミが今後の予定を切り出した。
「昨日の夜に言ったように、昼間は見回りの先生達が街を見回っているから、テスト期間中の魔女探しは夕方からにしましょう」
「はい、マミさん」
「あー。テスト勉強なんてかったるいなぁ……」
「勉強は学生の本分。日中は勉強しないとね」
芳文のその言葉に、さやかは真剣な表情で言い切る。
「先輩が勉強なんて、すっごく似合わない」
「ひでえ!! お兄さんこれでも意外と勉強出来るんだよ!! 少なくとも、さやかちゃんやまどかちゃんに2年の勉強教えてあげられるくらいには!!」
「なーんか嘘くさいなあ。赤点ギリギリ回避とかなら、勉強が出来るとは言わないんだよ?」
「ひ、ひどい……。さやかちゃんの中で、俺はどこまで馬鹿扱いされてるんだろう……」
「だってねえ……。普段が普段だし」
さやかがちらりとマミを見ると、マミはさやかに頷いてさやかを肯定する。
「そうねぇ」
「巴さんまで!? 畜生……。誰からも期待されないなんて……。くそっ!! なんて時代だ!!」
勝手に溢れてくる涙を手で拭きながら、芳文は嘆く。
「あ、あの、先輩……」
誰にも期待されていない自分に涙している芳文に、まどかがおずおずと話しかける。
「……何かな」
「その……もし良かったら、私の勉強……見てもらえますか?」
「あ、あぁぁぁ……」
芳文にはまどかの姿が後光の射す天使に見えた。
「もちろんだよ!! お兄さんに任せなさい!!」
まどかの手を両手で優しく包み何度も頷く。
「駄目だよまどか!!」
さやかが慌ててまどかの肩を引いて、自分の方へ振り向かせる。
「まどか、あんたは優しすぎる!! あたしは親友として、あんたがわざわざ成績落とすのを見て見ぬふりなんて出来ないっ!!」
「さ、さやかちゃん……」
「同情じゃいい点取れないんだよ!? 今ならまだ間に合う!! あたしと一緒にマミさんに勉強教えてもらおう!!」
まどかの両肩をがっしりと掴みながら、さやかは真剣な表情でまどかを説得する。
「ふ……はははははは……っ!!」
突然、芳文が笑い出す。さやか達がぎょっとなって振り返ると、芳文が泣きながら叫んだ。
「そこまで言われて黙ってられるかあ!! 俺の本気を見せてやる!! 巴さん、勝負だ!!」
芳文はビシィっと、マミに人差し指を突き付けて宣言する。
「俺はまどかちゃんに勉強を教えて、全教科さやかちゃんよりいい点を取らせてみせる!!」
「えぇぇぇぇぇぇっ!?」
芳文の突然の宣言に巻き込まれ、まどかが素っ頓狂な声を上げる。
「一教科でもさやかちゃんがまどかちゃんよりいい点を取ったら、そっちの勝ち!! まどかちゃんが全教科さやかちゃんよりいい点を取ったらこっちの勝ちだ!!」
「……それだと、あなたと鹿目さんの方が不利なんじゃないかしら」
「ハンデだよ、ハンデ。まどかちゃんの方が生徒として優秀そうだしぃー♪」
マミの疑問に両手を頭の後ろで組みながら、芳文は口笛を吹きつつ答える。
「そんな……。私、得意科目とかほとんどないのに……」
「……なめんじゃないわよ!! 全教科総合得点とかならともかく、いくらなんでも1教科すら勝てないわけあるもんか!!」
「ほうほう、すごい自信だなー。それじゃ、もしこっちが負けたらこの前行った駅前の店で、君達に好きなだけケーキと紅茶を奢ってあげよう」
「そっちが勝ったら?」
「別に何もしなくていいよん。どうせまどかちゃんが勝つのは確定事項だしぃ。あ、まどかちゃんにはご褒美として何でも好きな物ご馳走しちゃうからね」
既に勝った気でいる芳文の態度にさやかがブチ切れる。
「上等じゃん!! ハンデなんて馬鹿な事言い出した事後悔させてやるから!!」
「ふふん。後で吠え面かかないようにね」
「ど、どうしてこうなるの……」
「はあ……。しょうがない人達ね……」
まどかの嘆きとマミのため息をよそに、さやかと芳文は互いに火花を散らせるのだった……。
68 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 02:39:55.75 ID:h1jZU67Oo
☆
四人が図書室にやってくると、既に何人かの生徒達が席を陣取って勉強していた。
「あそこが開いてるわね」
二人ずつ対面する格好で座れる席が丁度空いていた。
最初に座ったマミの隣にさやかが、さやかの前にまどかが、まどかの隣に芳文が座る。
「それじゃ、始めましょうか」
静かにマミがそう言うと、三人はこくんと頷いた。
「まどかちゃん、明日のテストは何をするの?」
「数学と科学と国語です」
「ふむ。範囲は?」
「ここからここまでです」
「なるほど。それじゃ、数学からやってみようか」
「はい」
芳文はまどかの説明を聞くと、真面目な顔で言う。
「わからない所があれば聞いてね」
「はい」
まどかが問題集を解き始めると、芳文は科学の教科書を出して自分の問題を解き始めた。
「うーん……」
どうしてもわからない問題にひっかかり、シャーペンをノートに走らせるのが止まる。
「どこ?」
ひょいと隣の席から身を乗り出して、芳文が尋ねる。
「あ……」
芳文の体が顔の近くにきて、まどかは思わず声を出してしまう。
「ああ、これか。ここはね……」
芳文が非常にわかりやすく丁寧にまどかに公式と解き方を解説する。
「わかったかな?」
「は、はい。大丈夫です」
「そっか。それじゃもう少し先の範囲もやってみよう」
いつもの馬鹿な態度と全然違う芳文に、まどかは思わずドキリとしてしまう。芳文はそんなまどかの様子に気づく事もなく、解説を続けるのだった。
「……じゃあ、答え合わせしてみようか」
それからもまどかが途中何度か詰まっていると、芳文はすかさず解き方を教えていく。驚くほど的確でわかりやすい教え方のおかげで、まどかは順調に問題集を解いていった。
「……うん。オーケーだ。それじゃ、おさらいしてみようか」
そう言って、芳文はまどかが問題集を解いてる間に、教科書の範囲の中からさらさらと問題を抜き出して、一枚のテスト用紙として作成しておいた物をまどかの前に置く。
「数学の先生は竹原先生だったよね。去年出された問題の大体の傾向から作ってみた。これ解いてみて」
「わかりました」
まどかは芳文の出した問題を驚くほどスムーズに解いていく。
「出来ました」
「ん……」
芳文は採点チェックを済ませると、まどかにアドバイスする。
「合格。これなら大丈夫。後は家で引っかかった所を復習して。次は科学をやろうか」
「はい。お願いします」
それからもまどかと芳文はどんどん問題集を進めていった。
『……』
そんな光景の中、信じられない物を見たという顔で、さやかとマミが絶句していた。
69 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 02:40:22.68 ID:h1jZU67Oo
☆
――その日の夜。
パトロール中に発見した、無人の駅構内にある魔女の結界の中へ、まどか達四人は突入していた。
そこは、セーラー服が吊るされたロープが複数張られた、青空の広がる世界だった。
「うわわわわっ!!」
ロープしか足場のない結界内で、魔法少女でないさやかは必死に落下しないようにロープにしがみついている。
「さやかちゃん、じっとしてて!!」
さやかのすぐ側で、ロープの上に立っているまどかが魔女の元へと走るマミと芳文をフォローすべく、弓を片手に成り行きを見守る。
「社君、落ちないように気を付けて!!」
「わかってる!!」
マスケット銃を二丁両手に持ったマミが、不安定なロープの上を走りながら、マギカ・ブレードを両手で構えながら隣のロープの上を走る芳文に叫ぶ。
芳文の靴にはマミのかけた魔法で、ロープにまるで磁石のように張り付くようになっている。
「巴さん来るぞ!!」
足の代わりにもう二本の両腕を生やした、首のない巨大なセーラー服姿の女子学生の姿をした魔女のスカートの中から、鋭利な刃の付いているスケート靴を履いた女子学生の下半身が大量にマミ達に向かってくる。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
マミよりも数メートル上の位置にいる芳文が、マミの丁度上空で立ち止まり、次々と飛来してくる使い魔達をマミの元へ辿り着く前に斬り捨てていく。
芳文の攻撃をサポートすべく、マミはマスケット銃を撃っては捨てて新しい銃を顕現させを繰り返す。
「チッ!! キリがない!!」
芳文は使い魔を斬り捨てながら吐き捨てる。
魔女のスカートからは、何度芳文とマミが斬り捨てて、撃ち抜いても、無尽蔵に生み出されて襲い掛かってくる。
「これじゃ、ティロ・フィナーレを撃っても、魔女に届く前に威力が殺されてしまうわ!!」
マミも思わず愚痴を吐いてしまう。
このままではジリ貧だ。
「先輩!! マミさん!!」
まどかが分裂する矢を放って二人をサポートする。複数の矢が使い魔を消滅させて、その内一本の矢が魔女へと迫る。
だが、その矢も魔女に辿りつく前に、新たに生み出されて飛び出してきた使い魔に当たり、魔女へと届かない。
「あっ!? ……このぉっ!!」
まどかは再び分裂する矢を放つが、先ほどと同じように新しく生まれてくる使い魔に阻まれて、魔女へと矢が届かない。
70 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 02:41:04.24 ID:h1jZU67Oo
☆
「……おかしい。あの魔女はここまでの力はなかったはず」
結界の外から、ほむらはまどか達の戦いを見て一人呟く。
「……助けに行くしかないか。……こんな所で魔力を無駄遣いしたくはないけれど」
そう呟いて魔法少女の姿へと変身し、結界の中に突入しようとしたその時、不意に背後に現れた気配に気づきほむらは振り返った。
「……へえ。あたしの気配に気づくとはね」
「……佐倉杏子」
ほむらの振り返ったその先には、燃えるような赤い髪のポニーテールの少女が立っていた。
「あんた、どこかであったか? なぜあたしの名前を知っている?」
初対面のはずのほむらに自分の名前を呼ばれ、杏子は魔法少女の姿へと変身し、いつでも攻撃出来るように得物である槍を構える。
「あなたと争うつもりはないわ」
ほむらはそう言って変身を解く。
「……」
杏子はしばらく槍を構えていたが、はあと一息ついて変身を解く。
「あんたがキュゥべえが言っていたイレギュラーか。そして、あと一人は……あいつか」
結界の中を見て杏子がそう言うと、ほむらは踵を返す。
「なんだ。助けに行かないのかい?」
「向こうは魔法少女が二人いる。私の助けは必要ないわ」
「……ふん。あたしに手の内は見せないって訳か」
「……」
「まあいいや。あんたを片づけるのは後だ」
「……あなたは何をしにこの街にやってきたのかしら?」
「自分のテリトリーの魔女を狩りつくしたからに決まってるっしょ」
「……」
「ついでに、正義の味方ごっこをしていい気になってるいけ好かない馬鹿どもをぶっ潰す。ただそれだけさ」
「……そう」
ほむらは杏子の言葉にそう返すと、そのまま去っていく。
「待ちな」
杏子の言葉にほむらは振り返りもせず立ち止まる。
「あんたはあいつらの仲間じゃないのか?」
ほむらは髪をかき上げながら振り返り、杏子に言い放った。
「――違うわ。私は無駄な争いをしようとする馬鹿の敵。ただそれだけよ。あなたはどっちかしら」
感情の籠らない目で杏子を見つめながら、ほむらはそれだけ告げて去って行った。
「――ふん」
71 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 02:41:33.18 ID:h1jZU67Oo
☆
「先輩!! マミさん!!」
結界の外での出来事など知る由もないまどか達は、魔女に苦戦していた。
魔女の猛攻は止む事がなく、芳文とマミを襲う。
「くっ!!」
「このぉっ!!」
やがて、芳文の斬撃とマミの銃撃の隙を付いて、使い魔達の攻撃が二人に届き始める。
芳文とマミは肘打ちや蹴りを駆使しつつ、使い魔達の攻撃を捌くがどんどん追い詰められていく。
「先輩!! マミさん!!」
まどかは咄嗟に両手を魔女に向ける。
ガキィィィィィィィィンッ!!
淡いピンク色に輝く光の壁が、魔女の上下前後左右に展開され、一瞬で魔女を囲む。
四角い箱状になった淡いピンク色のシールドが、魔女を閉じ込めてしまった。
まどかの箱状シールドは、マミ達に向かおうとする使い魔を消滅させ、逃げようと暴れてシールドに触れた魔女にダメージを与える。
「巴さん!! 今だ!!」
「ええ!! ティロ・フィナーレ!!」
マミの放った巨大マスケット銃による砲撃が魔女に迫る。
「やったあ!!」
さやかが勝利を確信して叫ぶ。
ガキイィィィィィィィンッ!!
だが、マミの砲撃はまどかのシールドに当たった瞬間、鈍い音を立てて霧散してしまう。
「あっ!! ご、ごめんなさい!!」
まどかは初めて使用した拘束シールドを消すタイミングを間違えてしまった。
「鹿目さん!! もう一度よ!!」
マミはまどかの失敗を咎める事無く、もう一度同じ攻撃をしようとまどかを叱咤する。
「は、はい!!」
(まどかちゃんのシールドは味方の攻撃も弾くのか。いや、待てよ……。この剣は、あのシールドと同じまどかちゃんの魔力で出来てるんだから……)
「二人とも待って!! まどかちゃんはそのまま魔女を拘束してて!!」
芳文はそう叫ぶとマギカ・ブレードを構えたまま、走り出し別のロープに飛び移っていく。そして魔女の側にまで辿り着くと、魔女目掛けてマギカ・ブレードを投げつけた。
ヒュンッ!!
投擲されたマギカ・ブレードはまどかのシールドをすり抜けて、使い魔を生み続けている魔女の腹部に深々と突き刺さる。
マギカ・ブレードの刀身から放出される破壊エネルギーが、魔女を体内から崩壊させ始める。
魔女は新しい使い魔を生みだせなくなり、シールドの中でのた打ち回りながら、マギカ・ブレードによる破壊エネルギーでじわじわと内部からその巨体を崩壊させていき遂に消滅した。
シュゥゥゥゥゥゥン……。
魔女の消滅と共に結界が消滅する。
72 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 02:42:37.20 ID:h1jZU67Oo
「……やれやれ、どうにか終わったか」
しがみついていたロープが消え去り、地面に落ちそうになったさやかを、マミが魔法のリボンで助けるのを見ながら芳文はズンっと音を立てて着地しながら呟いた。
地面に落ちてきたグリーフシードを回収して、まどか達の元へと向かう。
「二人とも、お疲れ様。魔力を結構使ったみたいだけど大丈夫?」
芳文がマミにグリーフシードを手渡して尋ねると、マミとまどかは変身を解いてそれぞれのソウルジェムを見る。
「私のはもうそろそろ限界かもしれないわ」
「私のはまだ大丈夫そうです」
マミのソウルジェムはかなり濁っていた。まどかのソウルジェムは隅の方がほんの少しだけ濁っている。
「とりあえず、二人とも今手に入れたグリーフシードを使った方がいいんじゃない?」
「そうね。鹿目さん、二人で使いましょう」
「はい、マミさん」
マミとまどかはグリーフシードにそれぞれのソウルジェムの穢れを移す。
「このグリーフシードはもう使えないわね。これ以上穢れを吸わせると新しい魔女が孵化するかもしれないわ」
まどかが使い終わったグリーフシードを見て、マミがそう言うと芳文は慌ててまどかの手からグリーフシードをひったくる。
「大変だ!! まどかちゃんマギカ・ブレード出して!!」
「は、はい!!」
芳文の剣幕にまどかは慌てて変身するとマギカ・ブレードを生成し手渡す。
芳文がグリーフシードを放り投げて、マギカ・ブレードを一閃させると、パアアアアアアアンッという音を立て、空中で真っ二つに斬られたグリーフシードが粉々に砕け散って消滅した。
「別に壊さなくても、キュゥべえに渡せば始末してくれたのに」
芳文とまどかの慌てた様子に、クスクスと笑いながらマミがそう言うと、芳文は驚いた顔で聞き返す。
「え? いつも淫獣が始末するの?」
「ええ」
「……そっか。まどかちゃんに剣作ってもらった分無駄だったかな。ごめん、まどかちゃん。無駄な魔力使わせちゃって」
「大丈夫です。気にしないでください。いつも先輩が手伝ってくれるおかげで、私もマミさんも魔力の消費を抑えられるんですし」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「ところでさあ、さっきマミさんの攻撃はまどかのシールドに弾かれたのに、なんで先輩の攻撃は通じたの?」
三人の戦いをじっと見守っていたさやかが、疑問を口にする。
「簡単だよ。マギカ・ブレードはまどかちゃんが作った物だよ。そして魔女を拘束していたシールドもまどかちゃんの作った物。同じ力で出来てる物同士なら弾かれないかなって思って試してみたんだ」
「なるほど。それで魔女を倒せたって訳ね」
「そういう事になるかな。まあマギカ・ブレードがシールドを果たしてすり抜けるかどうか、それともシールドごと破壊するのかに賭けた……っていうか、実験だったけどね」
「結果は、マギカ・ブレードは私のシールドをすり抜けるって事だったんですね」
「そうなるね。それに、今後の戦いに有効に使えるかもしれないヒントが見つかったしね」
「え?」
「例えば、まどかちゃんが今回初めて使ったシールドを使ったあの拘束魔法……。いや、封印魔法かな。あれで魔女を完全に封印して俺がマギカ・ブレードで叩き斬るとか。まあ、俺とまどかちゃんの必殺技かな」
「私と先輩の必殺技……」
「まあ今回の相手みたいにでかすぎる相手とか、空中の相手とかに使うには何らかの改良を加えないといけないけど。戦略バリエーションの一環として使わない手はないと思うよ」
「そうね。後は私がティロ・フィナーレを撃つ瞬間に前方のシールドだけ解除するとか、色々使い方はありそうだし」
「……私、もっと頑張ってマミさんと先輩のサポートを出来るように、封印魔法を頑張って使いこなせるようになりますね」
「俺もまどかちゃんと巴さんの負担を少しでも減らせるように頑張るよ」
「はいっ」
芳文のその言葉にまどかは笑顔で頷くのだった。
73 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 02:43:41.83 ID:h1jZU67Oo
「さてと、みんな疲れたでしょ。今日はもう帰りましょうか」
「そうだね。それじゃ、三人共送っていくよ」
マミの言葉に芳文は頷くと、いつものように三人を家まで送っていく事を申し出る。
「今日はもう遅いし、美樹さんは私が送っていくわ。社君は鹿目さんを送ってあげて」
「それはいいけど、巴さんが帰りに一人になるんじゃ?」
「心配してくれるのは嬉しいけど、私は魔法少女よ?」
「まあ、変質者とかが出てきても巴さんのほうが強いから心配はないんだろうけどさ、女の子を夜道に一人で歩かせるのはちょっと」
「ありがとう。優しいのね」
「……」
マミのその言葉に芳文は無言で、どこか複雑そうな顔をする。まどかはそんな芳文の様子を見て結界の中に閉じ込められた時の事を思い出してしまう。
「あれ、どうしたの先輩。そんな顔して」
無言の芳文にさやかが声をかけると、芳文はいつもの調子で軽口を叩く。
「ああ、いつも厳しい巴さんに褒められたからびっくりしちやって。思わず固まっちゃったよ」
「私、そんなに厳しいかしら」
「うん。もう少し優しくしてくれると嬉しいなって」
「例えば?」
「殴るのはやめてほしいな」
「あなたが殴られるような事、言わなければ殴ったりしないわよ」
「俺はいつだって紳士なのに。どうしていつも誤解されてしまうんだろう」
「はあ……。良く言うよ。自覚がないってどうしようもないよね、マミさん」
「そうね」
呆れた表情でさやかが同意を求めると、マミも頷いて同意する。
「ひでえ!! ……まあいいや、それじゃ二人ともまた明日。行こう、まどかちゃん」
「はい。マミさん、さやかちゃん。また明日学校で」
「ええ。また明日」
「まどか、先輩に変な事されそうになったら大声上げるんだよ」
「俺の天使にそんな事しないよ!!」
「どうだか。男はみんな狼だって言うし」
「ひでえ!!」
「あ、あははは……」
そんなやりとりの後、芳文とまどかはマミ達と別れてまどかの家へ歩き出した。
「すみません、いつも送ってもらって」
「気にしないで。女の子を家まで送るのは男の役目だから」
まどかと芳文は夜道を歩きながら、そんな会話をする。
「……」
「……」
やがて話すことがなくなり、お互いに無言で夜道を歩きながら、まどかは隣を歩く少年の横顔をちらっと見上げる。
いつもマミやさやかの前では馬鹿な事ばかり言って、マミ達に修正される三枚目の少年。
まどかには今隣で歩いている少年の顔が、普段とは違って見えた。
普段、馬鹿な言動ばかりしてマミ達を呆れさせている芳文。
魔女との戦闘の時に、頼りになる芳文。自分が危ない時にかけつけてくれて、守ってくれた少年。
(……どっちが本当の先輩なのかな)
「……まどかちゃん、どうかした?」
不意に芳文がまどかに声をかける。
「え?」
「何か、言いたい事か聞きたい事でもあるのかな?」
「いえ……。別にそういう訳じゃ……」
「そう? それならいいけど」
そう言ってまどかを見る芳文の目は優しい目をしていた。
(……っ)
まどかは思わずどきっとしてしまう。
前にさやかと電話で話していた時、芳文の話題が出た事を思い出す。
黙ってさえいれば、それなりに整った顔をしているのに、馬鹿ばっかりやってるから台無しとさやかが言っていたのを思い出す。
まどかは芳文の顔を見て、なるほどと思った。今、こうしている芳文と誰かの為に戦っている時の芳文は確かにかっこいい。まどかはそう思った。
「まどかちゃん!!」
不意に芳文がまどかの手を引く。
「……え?」
まどかの小さな体が、芳文の腕の中にすっぽりと納まる。
ブロロロロロロ……。
一台の車が、芳文達の歩いている狭い道を制限速度をオーバーしながら通り過ぎていく。
「危ないな。こんな夜中にこんな狭い道をあんなスピードで」
芳文の腕の中で、まどかが真っ赤になる。
「まどかちゃん、ケガとかしてない?」
「は、はい……」
真っ赤になりながら、まどかが頷く。
「あ……ご、ごめん」
まどかを抱き寄せたような体勢に気づき、芳文も顔を赤くして謝る。
「い、いえ……」
その後、まどかと芳文はお互いに無言のまま、まどかの家まで歩いて別れたのだった。
74 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 02:44:26.49 ID:h1jZU67Oo
☆
――次の日の午後も図書室に四人は集まってテスト勉強に励んでいた。
お互いに昨日の夜の事を記憶の片隅に追いやりながら、芳文とまどかはテスト勉強をする。
「ここでちょっとひっかかっちゃったか。でも、もう大丈夫だね。合格」
まどかのテストの問題用紙を自己採点して、まどかが間違えてしまった所を教えてやりながら、芳文が合格を告げる。
「ほっ……」
「さあ、明日のテスト範囲を進めようか」
驚くほど効率良く勉強がはかどる事にまどかは驚きながらも、いつの間にかわからない所があれば積極的に芳文に尋ねるようになっていた。
次の日のテスト本番も確かな手ごたえをまどかは感じつつ、勉強会は続いていった。
――そして、すべてのテストが終了し、テストの解答用紙が返却されてきたその日の午後。
「それじゃあ、テストの点数を見せあおうか」
「はいっ」
芳文の言葉にまどかはにこにこと上機嫌で、すべての解答用紙を机の上に出す。
どの解答用紙も90点以上だった。しかもまどかが苦手だったはずの数学は96点だった。
「……」
まどかの解答用紙を見て、さやかの顔が引きつる。
「さあ、さやかちゃんの解答を見せてごらん」
芳文の言葉にさやかは大きな汗をかいて無言で固まる。
さやかの点数も以前よりは上がっていたが、まどかほど良くなかった。
「……そ、それよりも魔女探ししなきゃ!! テスト期間の初日に一匹しか出なかったなんておかしいし!! 調査しなきゃ!!」
さやかの苦し紛れのその言葉に、芳文はにこりと笑って言う。
「そうだね。じゃあ俺とまどかちゃんの勝ちっと」
「……ああもうっ!! 本気で悔しい!!」
「ふふん。お兄さんとまどかちゃんが本気を出せばこんなもんさー♪」
両手を頭の後ろで組みながら、芳文はそう言って口笛を吹く。
「うー。すっごく悔しい……」
「……信じられない。まさか社君に負けるなんて……」
さやかだけでなく、自分自身の総合点数が芳文に負けた事にマミもショックを受けていた。
「先輩のおかげでこんなにいい点が取れました。ありがとうございました」
まどかが嬉しそうにお礼を言うと、芳文は優しく笑いながらまどかの頭を撫でて言う。
「まどかちゃんががんばったからだよ。俺はちょっと手助けしただけだから」
「えへへ……」
まどかは嬉しそうに笑う。
「……なんか二人とも前より仲良くなった?」
さやかがまとがと芳文に尋ねる。
『え?』
まとかと芳文が思わず声をハモらせる。
「あら、二人とも息ぴったりね」
マミがそう言ってからかうと、まどかがかあっと赤くなる。
「おいおい、二人ともからかわないでくれよ。まどかちゃんが困ってる」
芳文がさらりと受け流す。
「あーもう、まどかは一々可愛いなあ!!」
まどかにさやかが抱きついて言う。マミはクスクスと笑いながらじゃれてる二人を優しい顔で見守っている。
(あ……)
さやかに抱きつかれながら、まどかが芳文の方を見ると芳文の耳が赤くなっていた。
芳文もさやかにからかわれて、照れているのを顔に出さないようにしていたのに気付き、まどかはなんとなく嬉しく思ってしまうのだった。
75 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 02:46:38.94 ID:h1jZU67Oo
☆
その日の深夜。
魔女も使い魔も見つからなかったパトロールの帰り道。マミは芳文にまどかを家まで送らせて、自分はさやかと一緒に歩いていた。
「マミさん、マミさんは先輩の事どう思います?」
「どうって?」
「異性としてどう思ってるのかなーって」
「いい人だし、頼りにはしてるけどそういう目で見た事はないわ」
「あらら、先輩かわいそう。マミさん脈なしかあ」
「嫌いじゃあないけどね。それに彼、そういう目で私の事見てないわよ」
「そうかなあ」
「そうよ。彼が見てるのは鹿目さんだしね」
「あ、やっぱそう思います?」
「なんとなくだけどね」
そんな話をしながら歩いていたその時だった。
「!? 美樹さん、使い魔の反応があるわ!!」
脇道の方から、使い魔の移動する気配を感じたマミが、鋭い目つきでソウルジェムを手に載せて反応を確認しつつ、さやかを庇うように立つ。
「マミさん、先輩とまどかを呼びますか?」
「いえ。社君達を待ってる間に逃げられてしまう。私だけで倒すわ」
マミがそう答えて駆け出すのをさやかが追いかける。
脇道に入った瞬間、使い魔の結界が展開されて深夜の世界がカラフルな世界へ変化する。
「ぶうううん!! ぶううううん!!」
子供の落書きのような姿をした使い魔が楽しそうにふよふよと飛び回っている。
マミはマスケット銃を一丁顕現させると、容赦なく使い魔目掛けて発砲した。
バン!!
マスケット銃から放たれた弾丸が使い魔を貫くその瞬間。
キィィンっ!!
使い魔の目の前に突然飛んできた槍の刃先に、弾丸が弾かれてしまった。
「ぶううううん!? ぶううううううんっ!!」
使い魔は弾丸と槍の金属音に驚き、慌てていずこかへと逃げ去ってしまう。
「おいおい、相っ変わらず無駄な事してんだな」
「あなたは……っ」
「卵を孕む前の鶏締めてどうすんのさ。前にも言ったよね」
「佐倉杏子……っ」
マミとさやかの前に姿を現した赤の魔法少女は、不敵な笑みを浮かべながら、たい焼きを口にくわえて引きちぎった……。
つづく
76 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 02:48:48.32 ID:h1jZU67Oo
杏子「あたしの出番少ないな……。つーか嫌な奴だな……」
杏子「次回こそあたしの活躍があるハズだ!!」
杏子「次回に続く!!」
77 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/10(日) 03:53:19.27 ID:h1jZU67Oo
杏子「大阪、NIPPER、徳島、チベット、反応ありがとよ」
78 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/11(月) 11:26:45.82 ID:DLt5FvGDO
支援。がんばれー
79 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/14(木) 00:58:19.51 ID:qUa664fYo
杏子「地味に更新だ」
80 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/14(木) 00:58:45.99 ID:qUa664fYo
第7話 「だって、同じ魔法少女だもん」
「魔女が人間を喰ってグリーフシードを孕み、それをあたしら魔法少女が喰う。前にも言ったよねぇ!!」
杏子はそう叫ぶと槍を多節棍へと変化させ、マミに目掛けて叩きつけた。
マミは一発限りの弾丸を撃ち終わったマスケット銃の銃身で、杏子の槍を払いのけていた。
「ふん。やるじゃないか」
杏子は不敵な笑みを浮かべながら、まるで蛇のようにうねうねと蠢く多節棍状の槍を自身の周囲に張り巡らせる。
「……あなたがなぜ、この街にいるのかしら?」
マミは新しいマスケット銃を顕現させて、構えながら杏子に問う。
「この街には今、大量の魔女が発生してるって聞いたからさ。狩場の獲物を狩りつくしたらよその狩場に来るのは当たり前っしょ」
馬鹿にするような杏子の言い草に、さやかが怒鳴る。
「あんた一体何なのよ!! 同じ魔法少女なのになんでマミさんに攻撃してくるのさ!!」
「……あ? マミの子分か? マミに聞いてないのかい。魔法少女ってのはな……」
杏子はさやかを小馬鹿にした態度でそう言うと、マミに再び攻撃を仕掛ける。
「アンタ達みたいに仲良しごっこしてる奴ばっかじゃないんだよっ!!」
マミは杏子の攻撃を躱しながら、マスケット銃を杏子に発砲する。
キィンッッ!!
多節棍の節で弾丸を弾き返して、杏子は槍を再び構える。
「……以前言ったわよね。もう二度と会いたくないって」
マミが撃ち終わった銃を投げ捨てて、新しい銃を二丁顕現させると両手に一丁ずつ構える。
「それはこっちのセリフさ。けど、アンタがいつまでも正義の味方ごっこしてんなら、いいかげん排除するしかないよね」
一触即発のマミと杏子。だがその間にさやかが割って入った。
「何言ってんの……。あんただって魔法少女なんでしょ!? なのになんでよ!! 魔法少女ってみんなを守って希望を振り撒く存在なんでしょ!!」
以前、マミとキュゥべえが言っていたその言葉を、さやかは杏子に向かって叫ぶ。だが杏子は心底呆れた顔で返した。
「馬鹿かアンタは。魔法ってのはね自分の為だけに使うもんだ」
「……だから、使い魔を放置して人を襲わせて、グリーフシードの為だけに自分の邪魔になるマミさんを襲うって事なの」
「そうさ」
「……最低」
さやかは侮蔑を込めた視線で杏子を睨みながら吐き捨てる。
「あんたは最低だ!! あたしはあんたみたいな魔法少女認めない!!」
「ただの人間のアンタに認めてもらう必要なんかないね。死にたくなければ引っ込んでな!!」
杏子がそうさやかに叫ぶと同時に、さやかを庇うように立つマミとの間に赤いフェンス状の結界を作り出し、マミとさやかを分断する。
81 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/14(木) 00:59:37.03 ID:qUa664fYo
「マミさん!!」
「大丈夫。あんな人に負けたりしないわ」
「ふん。以前のあたしと同じだと思うなよ!!」
マミと杏子が再び激突する。
杏子の槍がマミの弾丸を弾き、弾丸を撃ちきった銃身でマミが杏子の槍を捌く。
射撃に有利な間合いを取られまいと、接近戦に持ち込んでくる杏子の攻撃をマミは捌くので手一杯だった。
連続で撃ち出される突きをマミは片方のマスケット銃で払いのけ、もう片方の銃で殴りつける。
銃身による打撃を杏子は槍で巧みに捌く。
お互いに決定打を与えられぬまま、二人の戦いは膠着状態に陥った。
――どれくらいの時間にらみあっていただろうか。
二人はほぼ同時に動き、発砲と突きを繰り出す。
弾丸と槍の刃先がお互いの胸を貫こうとしたその瞬間。
――すべての時間が停止した。
「っ!?」
「なんだっ!?」
マミと杏子は自分たちの置かれた状況に驚き、周囲を見回す。
お互いの攻撃で相打ち寸前だったはずなのに、気付いた時には二人ともお互いに10メートルほど離れた場所に立っていた。
先ほどまで自分達が戦っていた場所には、黒の魔法少女が立っている。
「あなたは……!?」
「てめえ!! 今何をした!?」
マミと杏子がほむらに驚きと敵意を込めた視線を向ける。
「……巴マミ、佐倉杏子」
ほむらは長い髪をかき上げながら、静かに告げる。
「近い内に、この街にワルプルギスの夜が来る」
「な……!?」
「ワルプルギスの夜、だと?」
「そうよ。あなた達も魔法少女なら、ワルプルギスの夜がどういう物かわかるでしょう?」
「……どうしてあなたがそんな事を知っているのかしら?」
「……」
マミの問いにほむらは答えない。
「……あなた達が決着を付けたいというなら、私は止めない。だけどその決着を付けるのはワルブルギスの夜を倒してからにしてほしい」
「あんたにそんな指図される覚えはないね」
「指図じゃないわ。あなたもワルプルギスの夜には、一人だけでは到底勝てないという事くらい理解出来るでしょう?」
「……」
「……今は私の言う事が信じられないでしょうね。けれど、ワルプルギスの夜は必ずやってくる」
「……あなたは、私達に共闘しろと言いたいのかしら」
マミの問いにほむらは一度目を伏せると、マミを見つめて頷いた。
「……あなた達には、私と共にワルプルギスの夜と戦ってほしい」
「ごめんだね、あたしには関係ない」
「ワルプルギスの夜を倒さないと、他の街にも被害が出る。そうなったら、あなたのグリーフシード集めにも影響が出るはずよ」
「……」
82 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/14(木) 01:00:04.02 ID:qUa664fYo
「どうしても嫌だと言うなら、無理に協力しろとは言わない。けれど、ワルプルギスの夜と戦う為の戦力を潰されるのは困る」
「もしあたしがマミともう一人の魔法少女を潰すと言ったら?」
杏子が挑発的な口調で尋ねると、ほむらは感情のこもらない声で言い切る。
「私が初めて会った時の言葉を覚えているかしら」
「……ふん。しらけちまった。この決着は次に付けてやる」
杏子はそれだけ言うと、ビルとビルの間を交互に蹴って駆け上りながら、立ち去る。
「……巴マミ。ワルプルギスの夜がいつ来るのかまではわからない。気を抜かないで」
それだけ言うと、ほむらは踵を返し去っていった。
(……もうやり直しは効かない。どんな手を使ってでも、せめて魔女にだけはさせない)
「……マミさん、ワルプルギスの夜って? それにあの佐倉杏子って奴も」
「……美樹さん、鹿目さんと社君にはこの事はまだ言わないで。暁美ほむらの言葉が信頼に足りるのかまだわからないし……。それに佐倉杏子の事はあの二人には教えたくない」
「……わかりました」
残されたマミとさやかはそれだけ言葉を交わすと、夜の闇の中、これから起こる出来事に一抹の不安を感じながら立ち尽くすのだった……。
☆
翌日の放課後、まどかとさやかとマミの三人は喫茶店に集まっていた。
「ごめん、三人共お待たせ」
学校の掃除当番を終えて、遅れてやってきた芳文が合流する。
「あ、お姉さん、俺アメリカンコーヒーね」
ウェイトレスに飲み物を注文して、マミの隣の空いてる席に座る。
「お、淫獣。久しぶりじゃないか」
マミの膝の上でキュゥべえが、サンドイッチをもぐもぐと食べているのに気付いて、芳文は声をかける。
「僕は淫獣じゃないよ」
「そうかい。それで巴さん、今日はどの辺りをパトロールする?」
芳文はキュゥべえの否定の言葉をスルーしつつ、おしぼりで手を拭きながらマミに尋ねる。
「そうね、今日は大体この辺りかしら」
マミは地図を取り出して、テーブルの上に広げるとパトロールの範囲を指差しながら説明する。
「オーケー。それじゃ、コーヒー飲んだら出発しようか」
芳文がそう答えると、見計らったかのようにまどかが一冊のノートを出して、芳文に話しかけてきた。
「先輩、この前先輩が言っていた必殺技をちょっと考えてみたんですけど……」
まどかはそう言って、ノートを開いてテーブルの上に載せ、芳文に見せてくる。
必殺技と言う言葉に興味が湧いたのか、マミとキュゥべえとさやかもどれどれと覗き込んでくる。
まどかのノートには以前、マミとさやかに見せた魔法少女の衣装の時と同じ、可愛らしいイラストが描かれていた。
「……これ、俺?」
ノートの左側のページに、両手でマギカ・ブレードを持ち、丁度顔の隣に刀身が来るよう、上段に構えている芳文らしい人物がディルフォメされて描かれている。
「はい。まずこんな感じで先輩に剣を構えてもらって……」
まどかは芳文のイラストを指差し、右のページに指をずらす。右のページには弓矢を構えているまどかのディルフォメイラストが描かれていた。
「私が、後方から先輩が持ってる剣の柄と魔女に、三本に分裂する矢を撃ちます」
まどかがページをめくると、最初のページに描かれた芳文のイラストがノートの中央に描かれ、黒い怪獣のような姿をした魔女のイラストが左のページに描かれていた。
右のページに描かれたまどかのイラストは三本の矢を放ち、一本が芳文の持つ剣の柄に、残りの二本が魔女に向かって飛んでいく様が描かれている。
「この一本の矢で、マギカ・ブレードに更に魔力を与えつつ、推進力も与えます」
まどかは更にページをめくる。
「この時、残りの二本が先に魔女に着弾した後、マミさんの拘束魔法みたいに魔女の動きを止めます」
魔女が光り輝く光の結界に封印されているイラストを指差しながら、ノート中央のイラストに指をスライドさせる。
剣の柄からジェット噴射が発生し、それを構えた芳文が飛んでいるイラストが描かれていた。
「このまま、動けなくなった魔女を剣から発生する魔力の噴射で高速飛行しながら、先輩が斬り裂くんです」
そこまで説明して、まどかは芳文の顔を見て尋ねる。
83 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/14(木) 01:00:31.83 ID:qUa664fYo
「どうでしょうか?」
「うーん。封印魔法で動きを止めて俺が斬るのはいいんだけど、剣に推進力を与えて俺が飛ぶとかそんな事が出来るのかな? これでもし飛べるんなら、空中の敵も斬れるけど」
自信満々で提案された必殺技に、芳文は真剣に考えながら答える。
「まどかの魔法は願いや祈りを力として具現化する物だからね。まどかがその気になれば出来るはずだよ」
キュゥべえが口を挟む。
「ふむ。それなら一応出来るって事か。けど、そもそもどれくらいの時間飛べるのかとか、剣一本からの噴射で姿勢制御出来るのかとか、色々改善点もありそうだし……」
「……やっぱり、駄目でしょうか?」
しゅんと項垂れながらまどかが言う。
「いや、別に駄目じゃないけどさ、でもこれだと俺よりまどかちゃんに負担かかりすぎないかな?」
「当たらない攻撃を繰り返したり、ずっとシールドを張り続けるよりは、魔力の消費も少ないと思うんですけど……」
「ふむ……。まどかちゃんがそう言うなら、次の使い魔戦か魔女戦で試してみようか?」
「はい!!」
芳文の言葉にまどかは嬉しそうに頷く。
「……ねえ、まどか。これどこのロボットアニメ? 小さい頃にテレビで似たような技が出るアニメを見たような気がするんだけど」
それまで黙ってやり取りを見ていたさやかがまどかに尋ねる。
「ええっ!?」
「……私も昔、これに似たような必殺技が出てくる番組を、テレビで見た事があるような気がするわ」
マミもまどかにそう言うと、まどかはもじもじと恥ずかしそうに答える。
「その……。昨日、一度家に鞄を置きに帰った時に、弟が再放送のロボットアニメを見ててそれで……」
まどか達の住む地域では、昔から夕方に何度も再放送されているロボットアニメがあった。
丁度子供達が幼稚園や小学校から帰ってくる時間に、何度も何度もしつこいくらい再放送されているので、さやかとマミにも見覚えがあったのだった。
そのアニメのロボットは巨大な剣を取り出した後、敵をエネルギーフィールドで拘束し斬るのが必殺技だった。
ちなみに無駄に凝った作画といまだに別の番組で使われ続ける専用BGMのおかげで意外と有名だったりする。
「……俺、ロボット?」
芳文が思わず漏らすと、まどかは慌てて訂正する。
「違います!! どっちかと言うとヒーローです!! あ……」
自分の口走った台詞に、まどかはかあっと赤くなってしまう。
「……ヒーロー、か。んじゃ、これからもそんな風に頼ってもらえるように、頑張りますか」
芳文は明後日の方を向きながら、軽口を叩いてみせる。
顔を背けている芳文の耳が赤くなっているのに、マミとさやかは気付いてしまう。
そんな風に赤くなっているまどかと芳文の様子を、さやかとマミはにやにやと笑いながら見ていた。
「それにしても、まどかも懲りないねえ。こういう妄想ノートを先輩にまで見せちゃうなんてさ。そもそも先輩を飛ばそうなんて発想が出てくるあたりなんていうか、ねえ」
マミと知り合ったばかりの時の事を思い出しながら、さやかがまどかをからかう。
「……あぅ」
さやかにそう言われると、まどかは物凄く恥ずかしくい事をした気になってしまい、赤くなってしゅんと俯いてしまう。
「懲りないって、前にもあったの?」
「マミさんと知り合ったばかりの頃にね。この子ったらわざわざ魔法少女の衣装を描いてきて、あたし達に披露したんだよ」
芳文の疑問にさやかはあっさりと答える。
「さ、さやかちゃん!! ひどいよぉ、先輩にそんな事教えちゃうなんて……」
まどかが恥ずかしそうにさやかを非難する。
「そっか。かわいいなあ、まどかちゃんは」
芳文がそう言って笑うと、まどかは真っ赤になって俯いてしまう。
「あう……」
「まあ、他人が持ってない力を手に入れたら、必殺技とか考えたくなるのもしょうがないよね、巴さん」
「……え? そこでどうして私に振るのかしら?」
「いや、巴さんの動きとか、必殺技とか、どう考えても影でこっそり考えたり、練習したりしてたんだろうなって思って」
――ピシッ。
芳文の何気なく放ったその言葉で場の空気が一瞬で凍りついた。
(うわぁ……。あたしもまどかもなんとなく心の中で思ってても、あえて口にしなかった事を堂々と言うなんて……)
さやかは顔を引きつらせながら、マミと芳文の動向を見守る。
84 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/14(木) 01:01:24.66 ID:qUa664fYo
「やっぱりアレだよね。巴さんにもノートに必殺技の名前や決めポーズ書いたりとか、鏡の前でスタイリッシュアクション決めてみたりとか、そういう時期もあったんだよね」
「あああ、あなたは、いいい、いったい、ななな、何をいいい言ってるの、かしら?」
マミが激しく動揺しながら、問い返す。
「え? もしかして練習もせずにあのアクションと必殺技が出来たの? やっぱりすごいな巴さんは」
――ピシッ。
芳文のその言葉で再び空気が凍りつく。
(もうやめて!! マミさんのライフはもうゼロよ!!)
さやかが心の中で叫ぶ。
「さっすが、見滝原魔法少女隊のリーダー!! マミさん素敵!! マミカルスタイリッシュ最強!!」
芳文の言葉に、プルプルと肩を震わせながらマミは叫ぶ。
「……あなた、私にケンカ売ってるの!?」
良く見ると、マミの目尻に涙が溜まっていた。
「え? どうして? そういう事してる巴さんを想像したら、かわいいなとは思ったけどね。別に巴さんの事を馬鹿になんてしてないよ」
「か、かわ……!?」
首を傾げながら芳文の放った言葉に、マミは思わず赤面してしまう。
「あれ? どうかしたの?」
顔を左右にぶんぶんっと振り、マミは気持ちを落ち着かせると芳文に疑問を問いかける。
「な、何でもないわ!! それから見滝原魔法少女隊って何なの!?」
「ああ、リーダーが巴さんで、隊員1号がまどかちゃんで、隊員2号がさやかちゃんのチームの事だよ」
「また勝手にそんな名前付けて……。まあいいわ。それで社君のポジションは何なの?」
「俺? 下っ端戦闘員かな」
「……はあ。あなた、変な所で卑屈よね……」
「じゃあ、巴さんの奴隷と言う事で」
「なんでそうなるのっ」
「ああ言えばこう言う。女の子って難しいなあ。わけがわからないよ」
キュゥべえの口調を真似て芳文は言う。
「わけがわからないのはあなたよっ」
「人間は言葉と言葉でわかりあえる生き物だよ。だからお互いにもう少しわかりあえるよう、トークしてみようか」
「あなたとはわかりあえる気がしないわ……」
「えー。する前から諦めるなんて、そんなのってないよ。そんなの、絶対おかしいよ」
「……どの口が言うのかしら」
「先輩、それ、私のセリフ……」
呆れた表情のマミとどこか腑に落ちない顔のまどか。そんな二人の様子に気付いてるのか気付かずか、芳文は話を続ける。
「あっ。今気付いたんだけど。する前って言葉、なんかいやらしい事をするみたいな響きだよね。でも俺にそんなつもりはないから勘違いしないでね。もうセクハラ扱いされて殴られるのは嫌だ」
「……もういいから、少し黙っててくれるかしら」
掌で顔を押さえながら、どうでも良さそうにマミはひらひらともう片方の手を振って見せる。
「……なんてこった。巴さんに呆れられてしまった……」
芳文はがっくりとうなだれて、テーブルの上に突っ伏す。
「あ、あははははは……」
マミと芳文のそんなやり取りに、まどかはマンガのような大きな汗をかきながら笑うしかなかった。
「こういうのを夫婦漫才っていうんだよね?」
キュゥべえが無表情のまま口にしたその言葉に、マミが真っ赤になって物凄い勢いで否定する。
「違うわよ!! 誰がこんな馬鹿な人と!!」
「そうだぞ淫獣。これは漫才などではない。女の子にモテない俺が唯一、貴重な異性の友人達と出来る貴重な会話なんだ」
キュゥべえにそう言うと、芳文はマミの方へ向き直り真剣な顔で口を開く。
「そういう訳なので、どうか見捨てないでください。女王様」
「誰が女王様よ!!」
「いや、なんとなくムチとかボンデージとか装備したら似合いそうだなと思って」
「……」
「……」
「一度本気で死んでみる?」
「ごめんなさい」
「……ねえ、さやかちゃん。ムチとかボンデージって、先輩は何の話してるのかな?」
まどかは頭の上に?マークを浮かべながらさやかに尋ねる。
「まどかは知らなくていい事だから」
「そうなの?」
「そうなの!!」
さやかは芳文の馬鹿さ加減に呆れつつ、純粋なまどかの疑問にそう答えるのだった……。
85 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/14(木) 01:02:16.97 ID:qUa664fYo
☆
「魔女も使い魔も見つからなかったね。数が減ってきたのかな」
パトロールを終え、芳文は三人に意見を求めて話しかける。
「……たまたま今日は見つからなかっただけよ」
「やっぱそうかぁ。魔女根絶の日は遠いなぁ」
マミの返答に芳文は軽く返す。
「明日は違う範囲を調べた方がいいかもしれませんね」
まどかがマミにそう意見を述べる。
「そうね」
「それじゃ三人共家に送ってくよ。ここからだと誰の家が近いかな」
「私は美樹さんと帰るから、社君は鹿目さんを送ってあげて」
順番に家に送るという芳文の申し出にマミはそう答える。
「わかった。それじゃ巴さん、さやかちゃんまた明日。まどかちゃん、行こう」
「はい。マミさん、さやかちゃん。また明日学校で」
「ええ。社君、鹿目さん、また明日」
「先輩、まどかまた明日ね」
四人は二組に別れて帰路へと着く。
「マミさん、魔女が見つからなかったのってやっぱり」
「……多分、佐倉杏子が狩って回ってるんでしょうね」
まどか達と別れた帰り道、マミとさやかは赤の魔法少女の事を口にする。
「このままだと、いつかまた鉢合わせするんじゃ……」
「そうね。いくらこの街が広くても、追い求めてる物がお互いに同じなのだから、彼女との衝突は避けられないでしょうね」
「あいつと会ったら、まどかも先輩もなんて言うだろ……」
誰かの為に役に立ちたいと言って憚らない、お人よしのまどかと芳文にグリーフシードの為に人を襲わせるような、非情な魔法少女を会せたらどうなるのか。
マミとさやかの悩みは尽きなかった……。
☆
「今日は必殺技試せなくて残念だったね」
「ちょっと残念です」
まどかを家に送る帰り道。芳文とまどかはそんな話をしながら並んで歩く。
「そうだ。必殺技の名前は考えてあるの?」
「名前まではまだ……」
「そっか。まどかちゃんと一緒に出す技なんだから、名前か合言葉があると連携が取りやすいと思うんだ」
「言われてみればそうですね。でも名前や合言葉って言われてもすぐには……」
「シンプルなのでもいいんじゃないかな。例えばマギカ・ブレード・ファイナルアタックとかそういうのでも」
「うーん。それじゃあ、名前も考えてみます」
「うん。かっこいい名前を頼むよ。俺が考えるとまた巴さん達に呆れられそうだから」
「が、がんばります」
「うん」
まどかの返事に芳文は優しい顔で頷く。
(……そういえば先輩、いつも二人の時は私の歩幅に合わせて歩いてくれてるよね)
足の長さが違うので、当然まどかの方が歩くのが遅いのだが、芳文はいつもまどかの歩幅に合わせてゆっくり歩いていた。
穏やかな時間の流れる中、まどかは今更ながらその事に気づく。
「どうかした?」
「いえ、宿題が結構出てたの思い出しちゃって」
慌てて別の話題を振る。
「そっか。俺も帰ったらやらないとな」
「苦手な数学だからちょっと憂鬱です」
「まどかちゃんが良かったらまた勉強見てあげるよ」
「ありがとうございます」
「うん。まあ俺にはそれくらいしかしてあげられないしね」
(……そんな事ないのに。それに、いつも優しくしてくれるし……)
まどかはそう思ったが、恥ずかしくて口に出せなかった。
そんな風に二人が薄暗い夜道を歩いていたその時だった。
まどかと芳文はほぼ同時にぴたりと足を止める。
「……まどかちゃん」
何となく嫌な感じがしてまどかに尋ねる。
「……はい。魔女の結界が近くにあるのを感じます」
まどかは左手の中指に嵌めた指輪をソウルジェムに変化させて、魔女の反応を探す。
「こっちです!!」
まどかが路地裏に駆け出すのを芳文が追う。
そしてまどかと芳文が辿り着いたその先には、ボロボロの空家がありその庭に魔女の結界が出来上がっていた。
「先輩、誰かが中で魔女と戦っています!!」
まどかの言葉に芳文は頷き、まどかに言った。
「行こう」
「はい!!」
86 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/14(木) 01:03:52.83 ID:qUa664fYo
☆
「くそっ!! なんなんだよこいつは!! 斬っても斬っても再生しやがる!!」
まどかと芳文が見つけた魔女の結界内では、杏子が一人で魔女と戦っていた。
その魔女はまるで大きな黒い球根のような姿で、上部と下部からおびただしい数の触手を生やし、触手で杏子を攻撃してくる。
「くそっ!! これでも喰らいやがれ!!」
杏子は奥の手である巨大な槍を顕現させる。
槍の柄は節々が別れて鎖で繋がっている。それはまるで巨大な蛇のようだった。
「くたばれ!!」
杏子の叫びと共に巨大な槍が球根の魔女を襲う。
ズガアアアアアンッ!!
魔女は中心から真っ二つに引き裂かれ、ぐちゃぐちゃに押し潰される。
「へっ、ざまあみやがれ!!」
杏子が勝利を確信した瞬間、ヒュッという風切り音と共に、魔女の分断された下部から生えた触手が飛んできて、杏子の右肩を撃ち貫いた。
「……え?」
一瞬、何が起こったのか理解出来ず、杏子が視線を自分の体に向けると触手が自分の肩を貫いているのが見えた。
「……ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
自分の肩が貫かれているのを理解したその瞬間、耐え難い激痛が杏子を襲う。
ずるり、と触手が引き抜かれると別の触手が杏子の足に絡みつく。
杏子の足に絡みついた触手が杏子の身体を軽々と持ち上げ、そして。
ズガアアアアアアアンッ!!
触手は杏子を思い切り地面に叩きつけた。
「ガハッ!!」
激しい痛みを全身に感じながら、杏子は吐血する。
ズガアアアアアアアンッ!! ズガアアアアアアアンッ!! ズガアアアアアアアンッ!!
「が、あ……」
何度も何度も地面に叩きつけられ、杏子にはもう抵抗するする力は残っていなかった。
(体が動かねえ……。脊髄をやられたのか……)
何とか逃げようとするが、ぴくりとも体が動かない。すでに杏子の変身は解けていた。
(は、はは……。こんな所で死ぬのか……)
分断したはずの魔女がぼこぼこと音を立てながら、元の姿へと再生する。
(……おかしいな。魔女が人間を喰って、魔女をあたしが喰う。そういう物のはずなのに)
触手が杏子の首と両腕両足に絡みつき、宙づりにすると首を締めながらその体を引きちぎろうとする。
「が……」
(あたしはこんな殺され方して終わりなのか。これが、報いなのか……)
杏子の意識が途切れそうになったその時、風切り音と共に杏子の体を拘束していた触手が消滅した。
体を拘束していた触手が消えた事で、落下していく杏子を触手ではない物が優しく受け止めた。
「まどかちゃん!! この子の治療を早く!! 死にかけてる!!」
杏子を救ったのは芳文だった。マギカ・ブレードを片手に、瀕死の杏子を抱きかかえて後方のまどかの元へと戻る。
「ひどい!! すぐ治してあげるからがんばって!!」
芳文が地面に寝かせた杏子の傍らに膝立ちでしゃがみ込むと、まどかは両手で治癒魔法を発生させて、普通なら再起不能のはずのケガをじわじわと治していく。
「あ、あんた達は……」
「喋っちゃ駄目だよ!! じっとしてて!!」
まどかの治癒魔法を受けながら、杏子が視線を横に向けると芳文が一人で魔女と戦っているのが目に入った。
やがて、まどかの治癒魔法で杏子のケガが全快する。
「もうこれで大丈夫だよ。どこかまだ具合が悪い所あるかな?」
「あ、ああ……。大丈夫だ」
「良かった」
戸惑っている杏子ににっこりと微笑むまどか。
「っ!! それどころじゃない!! あんたの連れが一人であの魔女に!!」
「大丈夫だよ」
「何言ってんのさ!! あの魔女は強い!! 助けないとあいつ殺されるぞ!!」
「大丈夫。あの人は強いよ」
まどかは芳文を信頼しきった表情で言い切り、視線を杏子から魔女と戦う芳文へと向ける。
杏子も釣られるように魔女と戦う芳文へ視線を向けると、魔女が芳文に圧倒されていた。
連日の魔女退治と自己鍛錬、そして一度戦った相手。これらの要素に加え、芳文の手には最強の切り札が握られている。
87 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/14(木) 01:04:21.79 ID:qUa664fYo
「再生怪人は弱いのがお約束だろ? じゃあな、バケモノ」
最強の魔法少女の祈りと願いが込められたすべての魔を消滅させる剣ですべての触手を断ち切られ、全身をバラバラに斬り裂かれ、魔女は跡形もなく光の粒子になって消滅していく。
かつて、まどかを魔法少女へと契約させるきっかけになった魔女と同じ姿をしたこの魔女を、芳文はたった一人で葬り去った。
シュゥゥゥゥゥゥゥン……。
結界が消滅し、グリーフシードがコツンと音を立てて地面に落ちてくる。
芳文はグリーフシードを拾い上げると、呆然としている杏子とまどかの元へと歩いてくる。
「良かった。ケガ治ったんだね。さ、ソウルジェム出して」
呆然自失の杏子は芳文の言葉につい、ソウルジェムを出してしまう。
コツン。
芳文がグリーフシードを杏子のソウルジェムに当てる。
シュゥゥゥゥゥンッ。
限界近くまで穢れが溜まってしまった杏子のソウルジェムが浄化される。
「お、おい!!」
「まどかちゃんも」
「はい」
芳文はまどかのソウルジェムも杏子と同じように浄化してやると、限界の近いグリーフシードを宙に放り投げ、マギカ・ブレードを一閃させクリーフシードを木端微塵に粉砕消滅させた。
「これでよしと」
「おい、あんた。何の真似だ?」
「何が?」
「とぼけるな!! なんであたしを助けた? なんであたしにグリーフシードを使った?」
信じられない行動を取る二人組に杏子は警戒しながら怒鳴る。
「なんでって、ねえ」
芳文と顔を見合わせお互いに少し困った顔をしてから、、まどかは杏子に向き直り微笑みながら言い切った。
「だって、同じ魔法少女だもん。助けるのは当たり前だよ」
「……は?」
「うん。まどかちゃんの言うとうりだよ。それに、目の前でちょっと頑張れば助けられる命があるのにさ、見て見ぬふりなんて出来ないよ」
「何言ってんのさ、あんた達……」
「何って、そういう物じゃないの? 魔女は呪いを振り撒く存在で、君達魔法少女は希望を振り撒く存在。みんなの命を守るために戦ってくれてる魔法少女は助けあうべきだよね。まあ、俺は見ての通り男だけど」
「……」
「あの……。良かったらあなたの名前、教えてほしいな。私、鹿目まどか」
「俺は社芳文」
まったく悪意も何もない顔で名前を名乗られ、杏子は毒気を抜かれてしまう。
「……っ!!」
居た堪れなくなって、杏子は魔法少女の姿へ変身すると、その場から物凄い勢いで近隣の建物の屋根を飛び越えながら去ってしまった。
「くそっ!! なんなんだあいつら!! あんな馬鹿達見た事ねえ!!」
夜の闇の中を飛びながら、杏子は誰にともなく叫んだ……。
つづく
88 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/14(木) 01:05:40.46 ID:qUa664fYo
杏子「……終わり。言っとくけど、まどかの剣がすごいんだからな。勘違いするなよ!!」
89 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉)
:2011/04/14(木) 01:59:15.92 ID:5YtCkUZo0
更新乙。そして支援。
久々に食い入るように見られる作品を見つけられて嬉しいです^^
90 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/04/14(木) 06:58:20.26 ID:3dtD7A05o
お疲れ様でした
91 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(九州)
[sage]:2011/04/15(金) 00:37:47.47 ID:GYhMt2RAO
乙〜
92 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/16(土) 12:49:55.30 ID:LbZtiNzro
杏子「続編制作の息抜きに裏設定投下」
杏子「マギカ・ブレードの製造コストは魔力の矢3本分だ」
杏子「マミカルソードの製造コストはマスケット銃1丁分」
93 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/16(土) 12:57:24.16 ID:LbZtiNzro
杏子「このSSの魔法少女まどかの攻撃力をパチンコ玉として例えると、アニメ本編のワルプルギスを一撃で倒した4週目まどかの攻撃力はバスケットボール」
杏子「アニメ本編のワルプルギスを一撃で倒した4週目まどかの防御力(バリア)をトレカ1枚として例えると、このSSの魔法少女まどかの防御力はあんたらが持ってるアニメのポスターと言ったところか」
杏子「同じ素質でも願いの関係で完全に防御特化してるのがこのSSのまどかだ。今後はこのまどかの力がカギになる」
杏子「じゃ、またな」
94 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/16(土) 18:24:47.67 ID:R6yXKOwIO
>>1
見て読むの後回しにしてたけど、読み始めたら一気読みしてしまったぜ
俺みたいにオリキャラってだけで敬遠してる人が多そうでもったいない
95 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/16(土) 19:34:23.10 ID:kRjfucl3o
俺もオリキャラだから敬遠してたけど
読んだら結構面白かったわ
でも何でこんなに感想少ないんだろう?
96 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
:2011/04/17(日) 01:44:51.24 ID:apTXli0AO
単に需要がないからだろう
このスレ見てる奴なんてほとんどいないんじゃないか?
97 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/04/17(日) 01:57:07.00 ID:c7LYqZg4o
>>96
毎日チェックしてる俺に謝れ
98 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/17(日) 06:11:00.00 ID:q5WP2SdIO
需要ならあるでよ
ここよりアルカディアでやった方が受けそうなのは否めないが
NIPってオリキャラにはかなり厳しいよな
99 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/04/17(日) 19:34:41.75 ID:EbqLFZ59o
杏子「今から第8話を投下するよ」
杏子「需要があろうがなかろうが、物語は進む」
杏子「そういうもんだよね、SSなんてさ」
杏子「それじゃ始めるよ」
100 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/17(日) 19:35:11.51 ID:EbqLFZ59o
第8話 「みんなが一緒ならどんな困難にも、きっと打ち勝てるはずだから」
『なんで……。なんで、こんな事に……』
血まみれで倒れている妹。
血まみれで倒れている母親。
――そして、首を吊っている父親。
かつて、少女はたったひとつの奇跡を願った。
けれど、手に入れたのは孤独。
誰にも頼らない。
誰にも頼れない。
自業自得の人生。
すべて諦めて、割り切って、受け入れて。
見知らぬ他人を糧にして、ただただ、生き続ける人生。
自分の邪魔をする相手は許さない。
自分が生きるのを邪魔する相手は絶対に許さない。
今までだってそうしてきた。
これからもそうするはずだった。
――そんな時だった。
少女がお人よしの魔法少女とイレギュラーの少年に出会ったのは。
少年の言った言葉が胸に突き刺さる。
『魔法少女は希望を振り撒く存在。みんなの命を守るために戦う魔法少女』
「……そんな訳、あるかよ」
少女は一人、この街で人々の生きる証である、夜の街を彩る灯をホテルの一室から見つめながら、誰にともなく呟いた。
101 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/17(日) 19:35:38.02 ID:EbqLFZ59o
☆
「あれ? まどかちゃんは?」
放課後の見滝原中学校昇降口で、さやかと合流した芳文が尋ねる。
「まどかは保険委員の仕事でちょっと遅れるって」
「そっか。時間かかるのかな?」
「いや、そんなに時間かからないって言ってたから、ちょっと待ってれば来るよ」
「そっか」
「そっちこそ、マミさんは?」
「掃除当番だよ。先に言っててだって」
「それじゃ、まどかが来たらいつもの喫茶店でマミさん待とう」
「そうだね。そういえば昨日の夜、会った事のない魔法少女に会ったんだけど、さやかちゃんは会った事ある?」
芳文の言葉にさやかは佐倉杏子の事を思い出し、一瞬顔が強張る。
「……どんな子?」
「真っ赤な魔法少女の服で、髪型がポニーテールの子だった」
「っ!? その子と何かあったの!?」
今にも芳文に掴み掛りそうな勢いで、さやかが問い詰めてくる。
「いきなりどうしたの? 昨日の帰り道で魔女に苦戦してたのを見つけたから、まどかちゃんと俺で助太刀したんだけど……。その子、何も言わずにいなくなっちゃったんだ」
「……それだけ?」
「うん。それで休み時間の時に巴さんにも聞いたんだけど、何だか上手くはぐらかされちゃって。それでさやかちゃんにも聞いてみたんだけど」
「……あたしは知らないよ」
さやかは視線を逸らしながら、芳文に対して嘘を付いた。
「そっか。あの子、誰なんだろ」
「先輩はその子にまた会ったとして、どうする気なの?」
「とりあえず、仲間にならないか誘ってみようかなって」
「……何の為に?」
「何の為って、そりゃ、仲間が多い方が魔女退治は有利だし。それに、今後その子が強い魔女を見つけた時、その子一人だと危ないじゃない」
「……戦力がいるって言うならあたしが魔法少女になるよ。そんな子放っておけばいい」
「いきなりどうしたの? なんでそんな怒った顔してるの?」
「……だってさ、助けられたのにお礼も名前も言わずに立ち去るような子、仲間にしても不協和音にしかならないよ!!」
「そうかな。ただ単に恥ずかしがり屋なだけとかかも」
(あいつはそんなタマじゃない)
どこまでも好意的な芳文の言葉にさやかは心の中で毒づく。
「しかし、巴さんもさやかちゃんも知らないって言うなら、あの子は誰なんだろう。よその街から来たのかな?」
「通してくれるかしら」
芳文が赤の魔法少女の事を口にしたその時、ほむらがやってきて芳文とさやかの隣をすり抜けようとする。
「あ、ほむほむ。おひさー」
「……ほむほむって何」
「君の愛称」
「そんな呼び方される覚えはないわ」
「駄目?」
「当たり前よ」
芳文の軽口に対し、表情一つ変える事無く淡々と返すほむら。
「うーん、相変わらずだなあ。もう少しこう、なんていうか、皆と和気藹々と」
「馴れ合いは好きじゃない」
ほむらは芳文の言葉を遮り、ばっさりと切り捨てる。
「つれないなあ。そんな風にいつまでもコミュニケーション障害を患ってると、友達出来ないし結婚も出来ないよ?」
「余計なお世話よ」
「先輩、そんな奴ほっとけばいいよ」
「こら、同級生にそういう事言っちゃいけません。お兄さんはさやちーをそんな妹に育てた覚えはありません!!」
「育てられてないし、さやちー言うな!!」
「……」
芳文とさやかの漫才を無表情でスルーしながら、ほむらは下駄箱から外履きを取り出して上履きから履き替え、その場を立ち去ろうとする。
102 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/17(日) 19:36:03.69 ID:EbqLFZ59o
「あっ。ちょっと待って」
「……まだ何かあるの?」
芳文に呼び止められて、ほむらは顔だけ振り返り尋ねる。
「へい彼女!! これから僕と喫茶店行って、素敵で有意義な午後の一時を過ごさないかい!?」
「嫌よ」
「即答で断られた!?」
「そんな誘い方でOKもらえると思ったんかい!!」
さやかが芳文にツッコミを入れる。
「くそう……。自信あったのに……。この俺の素敵トークで、どうしようもないコミュ障のほむほむを籠絡して、見滝原魔法少女隊の一員に勧誘しようと思ってたのに……。いきなり序盤で躓いてしまった!!」
『……』
ほむらとさやかは二人揃って無言のまま、かわいそうな子を見る目で芳文を見る。
「……美樹さやか」
「……何よ、転校生」
「あなた、この子と付き合ってて疲れない?」
「日常生活だと結構、いやかなり疲れるわ」
「……そう」
「ひでえ!! しかもこの子扱いかよ!! 俺の方が学年上なのに!!」
「……」
「畜生……。そりゃそっちの方が精神年齢上かもしれないけど!! 中二にしてはなんか妙に達観してるけど!! て言うかなんかそこはかとなくババ臭いけど!!」
「……あなた、そんなに早く死にたいのかしら」
「ごめんなさい」
ほむらはため息をひとつ付くと、踵を返して立ち去ろうとする……が、数歩歩いた所でくるりと振り返り、芳文に言い放つ。
「私はまだ若い。ババ臭いと言われるのは心外だわ」
「それじゃあ、もう少し年頃の少女らしく、優しくフレンドリーに接しておくれよ」
「お断りよ」
芳文の言葉に、冷たく返す。
「やめてくれないか!! その角度で見下すのは!!」
「……」
「……」
「……本当にバカな子」
ほむらはそう言うと、今度こそ本当に去って行った。
「……さやかちゃん」
「……何? 先輩」
「俺って、バカな子かな?」
「うん。ものすごく」
「……例えば、どういう所が?」
「とりあえず、さっきのやりとりだけでも、もうありえない。あんな誘い方でホイホイ付いてくる女の子なんていないし」
「……自信、あったんだけどなあ」
「……一体どこから、そんな自信が出てくるのか知りたいよ」
項垂れている芳文に呆れてさやかがため息をひとつ付くと、芳文は顔を上げて叫ぶ。
「……いや、俺は間違ってない筈なんだ。相手がコミュ障のほむほむだから通用しなかっただけで!!」
「……」
芳文のあまりの馬鹿さ加減に、さやかが無言で呆れていると、まどかがやってきた。
「さやかちゃん、お待たせー。あ、先輩。お待たせしちゃってすみません」
「待ってたよ!! 僕のマイエンジェル!!」
「え?」
呆気にとられて立ち止まったまどかの目前へ、芳文はマミのようなスタイリッシュな四回転を決めながら着地すると、床に片膝を突きながら、掌を上にして両腕を左斜め上にまどか目掛けて突き出しながら叫ぶ。
それはまるで、恋愛物の劇のワンシーンのような構図だった。
「ねえねえ、とってもキュートでプリティなマイエンジェル!! 僕と一緒に、喫茶店でプリンでも食べながら、素敵で有意義な午後の一時を過ごさないかい!?」
「……え? え? えと……。はい……」
目をパチクリとさせながら、まどかはつい頷いてしまう。
「よっしゃあ!! まどかちゃんがオーケーしてくれたよ!! 見たかいさやちー!! やっぱり俺の素敵トークは女の子に通用するんだ!!」
自信満々のドヤ顔でさやかを見ながら芳文は叫ぶ。
「んな訳あるかぁぁぁぁっ!! まどかもあっさりオーケーするんじゃないの!!」
「え? え? 何? 何なの?」
何が何だかわからないまどかはただ、困惑するだけだった……。
103 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/17(日) 19:36:45.11 ID:EbqLFZ59o
☆
「まどかもさあ、あんなふざけた誘われ方されて、オーケーするってどんだけなのさ」
「で、でも、せっかく先輩が誘ってくれたんだし……」
まどか達三人は喫茶店で遅れてやってきたマミと合流し、魔女と使い魔を探してパトロールをしていた。
マミがソウルジェムを手に歩くのに続いて芳文が、まどかとさやかは芳文の後ろに付いて学校を出る時の事を話しながら歩いていく。
「鹿目さん、美樹さん。おしゃべりは一旦そこまでよ。使い魔がいるわ」
路地裏へと続く薄暗い脇道に明滅するソウルジェムを向けながら、マミが注意する。
「行こう」
芳文の言葉に三人が頷き、四人は路地裏へと歩みを進める。
周囲の風景がぐにゃりと歪み、四人の前に使い魔がその姿を現す。
まるでイタチのような姿をしたカラフルな色の使い魔が三体。使い魔達は四人に気付くと、前足を刀の刀身のように変形させ、ぐるぐると全身を回転させながら、猛スピードで突っ込んでくる。
「あれは前に倒した奴と同じ奴か。……三匹いるな。巴さん、剣よろしく」
「オッケー。社君、お願い」
マミは一瞬で変身を済ませて、マミカルソードを一振り顕現させて芳文に渡す。
小型の竜巻がひとつ、芳文の正面から突っ込んでくる。
芳文は剣を正面に構え、一閃させた。
頭頂部から股間まで一撃で切断された使い魔が、左右に生き別れになり消滅する。
もう一つの竜巻が、地面を抉りながら突っ込んでくる。
芳文はそれを飛び越えてかわしながら、剣を使い魔の頭上から突き立て串刺しにすると、使い魔を串刺しにしたまま最後に突っ込んできた竜巻に叩きつける。
ガリガリガリガリ……バキン!!
マミカルソードで串刺しにされながら回転していた使い魔の刃と、最後に突っ込んできた使い魔の刃がぶつかり合い、双方の刃が砕け散る。
ズバッ。
そのまま剣を振り下ろし串刺しにしていた使い魔ごと、最後の使い魔を真っ二つに斬り裂いた。
シュゥゥゥゥゥゥン……。
「討伐完了」
芳文が三人にそう言うと、マミが変身を解きマミカルソードが消滅する。
「うわー。先輩強すぎ。なんかまた強くなった?」
あっさりと三匹の使い魔を倒した芳文にさやかが言う。
「まあ一度倒した奴と同じだしね」
「マギカ・ブレードでならともかく、まさか私の剣であの使い魔を唐竹割りにするなんて驚いたわ」
「そんなに驚いた? でもほぼ毎日戦ってるんだから、そりゃ強くもなるさ」
「それにしても、短期間の間に強くなり過ぎじゃないかしら」
「……鍛えてるからね」
マミとさやかの感想に、芳文はそう答えてまどかに視線を向ける。
「先輩、お疲れ様でした」
「うん」
まどかの労いの言葉に、芳文は優しく笑って頷くのだった。
104 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/17(日) 19:37:35.48 ID:EbqLFZ59o
☆
芳文が使い魔を葬り去ってからもしばらくパトロールを続けた後、ここ最近の習慣に従ってマミとさやか、まどかと芳文の二組に別れて四人は家へと帰って行った。
さやかはマミと、佐倉杏子の事を話しながら帰宅する。
結局、まどかと芳文にどう説明するかいい案が思い浮かばないまま、マミと別れてさやかは自宅マンションに帰ってきた。
「なんだ。二人ともまだ仕事から帰ってないんだ」
共働きの両親が帰宅していないのに気付き、さやかは一人遅い夕食を取ろうとする。
「って何も作ってないし」
夕食の代わりに、テーブルの上に置かれていた母親からの置手紙に目を通す。置手紙には急に出かけなければいけなくなり、夕食が作れなかったと書かれていた。
置手紙と一緒に二千円札が一枚置かれているのに気付き、さやかはそれをポケットの中の財布にしまうと、冷蔵庫の中を確認してから再び外出する事にした。
「……さてと、おなかすいたし早く帰って作ろう。んでお釣りはおこずかいとしてもらっちゃおっと」
夕食の材料を24時間スーパーで買ってきて、家にある材料と合わせて、何を作ろうかと考えながら歩いていたその時だった。
「え?」
脇道に入った次の瞬間、さやかは結界の中に取り込まれていた。
「う、うそでしょ? なんでこんなとこに!?」
先刻、パトロール中に芳文が倒した使い魔の同一種が一匹、ふよふよとさやかの目の前で浮いていた。
ギュルルルルルル……。
たまたま自分が移動していた所に、運悪く遭遇してしまった哀れな仔羊に気付いた使い魔が、小型の竜巻と化してさやかに迫る。
(嘘……。こんなとこであたし殺されるの?)
両目を見開いたまま、目前まで迫ってきた使い魔から逃げる事も出来ず、さやかは呆然と立ち尽くす。
死を覚悟してぎゅっと両目を閉じる。
ズガガガガガガッ……!!
鈍い音がさやかの耳に響いた。
竜巻がさやかの立っていた地面を抉りながら沈んでいく。
「……あ」
誰かに抱き寄せられている暖かい感覚を感じ、我に返ったさやかが目を開くとさやかの視線の先には、さやかが軽蔑して嫌っていた赤の魔法少女がいた。
視線を杏子から逸らすと、竜巻がさやかの立っていた地面を抉りながら沈んでいくのが見えた。
「な、なんであんたが……」
さやかの問いに答える事無く、杏子はさやかの身体を抱き寄せていた左腕をさやかから放して、使い魔の方へと振り返る。
「なんでよ!? なんであんた……!?」
背を向けて、槍を構えた杏子の左腕が赤く染まっているのに気付き、さやかは絶句する。
ギュイィィィィィィィィンッ!!
地面から飛び出してきた竜巻が、杏子目掛けて飛んでくる。
杏子は槍を思い切り打ちつけるが、高速回転する使い魔の刃に穂先を弾かれてダメージを与えられない。
ガキイィィィィィィィィィィンッ!!
「チッ!!」
杏子は力任せに穂先で使い魔を弾き飛ばす。
弾き飛ばされた使い魔が再び突撃してくる。だが、使い魔が杏子に近づく事は出来なかった。
「喰らえ!!」
使い魔を弾き飛ばした後、杏子は巨大な槍を顕現させ使い魔目掛けて撃ちこむ。
自身のサイズを遥かに超える巨大な槍に、腕の刃を粉々に粉砕されながら、ぐちぐちゃに全身を貫き叩き潰され、使い魔は完全に消滅した。
シュゥゥゥゥゥゥゥン……。
使い魔が完全に滅びた事で、結界が消滅する。
(……なにやってんだ、あたしは)
変身を解いた杏子は、掌の上に載せた自身の濁ったソウルジェムを見ながら自問する。
「なんで、あたしの事助けてくれたの?」
背後からさやかに声をかけられ、杏子は振り返る。
「あんた、グリーフシードの為にしか戦わないって言ってたのに……。それ濁らせてまでして……。どうして?」
「……さあね」
杏子はそう答えると、ソウルジェムを指輪に戻して立ち去ろうとする。
「待ってよ」
さやかが杏子の右手を掴んで引き止める。
「なんだよ」
105 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/17(日) 19:38:22.52 ID:EbqLFZ59o
「その……。ごめん。あたし、あんたの事勘違いしてた。この前は酷い事言ってごめん。それと、助けてくれてありがとう」
杏子の手を掴んだまま、杏子の顔をしっかりと見つめ、さやかは謝罪と感謝の言葉を口にする。
「べっ別に。こんなのはただの気まぐれさ。あんたに礼を言われる筋合いはないよ」
杏子はさやかから視線を逸らしながら、気まずそうに答える。
「あたしは美樹さやか」
「……あたしは」
「杏子でしょ。佐倉杏子」
「……ああ」
「あっ。あんたの左手」
「ん? ああ、さっきのか」
杏子の着ているヨットパーカーの左袖が赤く血で染まっていた。
「ごめん、あたしを助けた時にケガしたんだよね」
「別にいいよ、こんくらい」
「あたしの家、すぐそこなんだ。寄って行ってよ」
「は? なんでだよ」
「それ、すぐ洗わないとシミになっちゃうし、ケガの手当てだってしないと」
「いいよ、そんなの」
「駄目。あたしまだちゃんとお礼してないし」
「強引な奴だな。別にいいって言ってんだろ」
杏子はさっさと立ち去ろうとするが、さやかが譲らない。
グー。キュルルルル……。
不意に杏子のおなかが空腹を訴える音を響かせる。
「あんた、おなかすいてんの?」
「悪いかよ。なんか食欲なくてあんまり食ってなかったんだよ。さっさと帰って腹ごしらえしたいんだから、いいかげんその手を放せよ」
「じゃあ、助けてくれたお礼にご飯作ってあげる」
「は?」
「ほら、行くよ」
「お、おい……」
面喰っている杏子をさやかは強引に、自宅へと引っ張って行った。
☆
「ほら、洗濯するからそれ脱いで」
「いいって言ってるだろ」
「駄目だってば、ほら!!」
自宅玄関で上がるのを拒否する杏子から、無理やりパーカーを脱がせて洗濯機の場所まで持って行き、洗濯機に放り込むとスイチを入れる。
「ほら、上がって上がって」
玄関で立ったままの杏子に促すと、観念したのか杏子は小さく「お邪魔します」と呟いてさやかの自宅に上がりこんだ。
「親は二人とも仕事でいないから、気を使わないでもいいから」
先ほど律儀に挨拶してから家に上がった杏子に、さやかは笑いかけながらそう言いい、救急箱を持ってくる。
「さ、ケガ見せて。あ……」
リビングのソファの上で、そっぽを向いている杏子の左手を取って見ると、血で汚れてはいたがすでに傷口は塞がっていた。
「……魔法少女はこれくらいのケガなら、魔法で簡単に治せる」
「そうなんだ。知らなかったよ。いつも社先輩がマミさんとまどかを守っててさ、二人にケガとかさせた事なかったから」
「……マミはともかく、あの二人は何なんだい? なんで他人の為に戦おうとするんだ?」
杏子の問いに、さやかは杏子の血をウエットティッシュで拭きながら答える。
「……まどかはさ、ずっと自分に自信がなくって誰かの為に立ちたいって言ってた。けど、以前マミさんが魔女に殺されそうになって、魔法少女になるのを一度は諦めたんだ」
「……」
「先輩は先輩で、どうしてかわからないけど魔女を見る事が出来てね。魔法少女の事を知って、マミさんだけに戦わせて見て見ぬふりなんて出来ないって、魔女退治を手伝ってくれるようになったんだ」
「だけど、ある日まどかが魔女に襲われて、助けに行ったマミさんともう一人の魔法少女が、魔女に負けて殺されそうになってさ。先輩もまどかを庇って致命傷を負って……」
「ずっと魔女と戦うのが怖いって泣いてたのに、まどかは先輩の命を助ける為にキュゥべえと契約して魔法少女になってさ。それから先輩はまどかの事を守る為と、マミさんの手助けの為にずっと戦ってくれてるんだ」
「まどかも本当は怖いはずなのに、いつも誰かの為に一生懸命戦ってるんだ。それに、あたしが契約しなくてもいいように、あたしが願いで治してあげたかった幼馴染の事故で動かなくなった腕も治してくれた」
「……馬鹿だ。他人の為に願いを使って他人の為に戦おうなんて、大馬鹿だ」
杏子は吐き捨てるように呟く。
「じゃあ、なんであんたはあたしを助けてくれたの?」
「……あたしは」
「最初会った時は気付かなかったけど、あんた嘘ついてるよね。わざと悪人ぶってる」
「……マミさんと戦ってた時も、わざわざ結界張ってあたしとマミさんを分断してたけどさ。あれだってただの人間のあたしに危害を加える気がなかったからでしょ」
「……」
「本当にあんたが悪人だったら、あそこでわざわざ結界張る必要なんてない。どうせあたしには何も出来ないんだから気にせずマミさんと戦ってりゃいいんだしさ」
「……勝手に決めつけないでくれ。もしあたしが、あんたの事をマミへの人質にするつもりで、さっき助けた事とかも全部演技だったとしたらどうする気なんだ」
「あんたはそんな事はしない。そもそもそこまで腐ってないし、さっきも言ったけど何か事情があって悪ぶってるだけに見える」
106 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/17(日) 19:39:19.30 ID:EbqLFZ59o
「……あんたも、あの二人やマミの奴に負けない馬鹿だな。勝手にあたしの事理解した気になって。どんだけお人よしなんだよ……」
「これまで一緒に魔女退治に関わってきて、先輩の馬鹿やまどかのお人よしが移ったのかもしれない。けど、あたしは今の自分が嫌じゃないよ」
「……長い話になるよ。聞く気あるかい?」
「……うん」
「……わかった。そっちにばっかり一方的に話させるのはフェアじゃないからな。話してやるよ」
そう言って、杏子は悲しい過去をさやかに話して聞かせる。
かつて、人々を救おうと父が頑張っていた事を。
けれど、誰も耳を貸してくれず自分達家族はいつも貧しい暮らしをしていた事を。
そんなある日、キュゥべえと出会い父の話をみんなが聞いてくれるように願った事を。
父と魔法少女の自分とで、光と影のように人々を救おうと希望に満ちていた頃の事を。
そして、奇跡のからくりが父にばれ、魔女と呼ばれ家族を永遠に失い孤独になった日の事を。
「奇跡ってのはタダじゃない。希望を祈った分だけ、同等の絶望が撒き散らされるんだ。そうやって差し引きゼロにして世の中は成り立ってるんだよ」
「……だから、全部自業自得だって割り切ってる訳?」
「……そうさ」
そう言って、杏子は自嘲気味に笑う。
さやかはそんな杏子に向けて、今思っている事を素直に打ち明ける。
「……まどかが魔法少女になった時の事だけどさ、まどかがいつか魔法少女になった事を後悔して、何もかもなくしてしまうって暁美ほむらに言われた時にね、先輩がこう言ったんだ」
「何もなくしたりしない、何もなくさせたりしない、自分とマミさんとあたしが付いてるから。まどかの為に何も出来ないとしても、何かしてみせるんだって」
「あんたの言う希望と絶望が差し引きゼロって話のとうり、いつか本当にまどかもあんたみたいに絶望する時が来るのかもしれない」
「けど先輩の言葉が、存在が、あたしとマミさんの存在がきっと何とか出来るって思うんだ」
「……なに言ってんのさ」
「だから、あんたもあたし達の仲間になりなよ。先輩とまどかなら歓迎してくれるし、マミさんにはあたしから話してあげるから」
「……」
「……一人は寂しいよね。けどさ、みんなが一緒ならどんな困難にも、きっと打ち勝てるはずだから」
「……」
「すぐには無理でも、考えてみてよ。あ、ご飯作ってくるから待ってて」
そう言って、さやかは席を立つとキッチンの方へと向かう。
「あ、あんた何食べたい物ある?」
さやかが振り返って尋ねると、そこに杏子の姿はなかった……。
107 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/17(日) 19:40:30.56 ID:EbqLFZ59o
☆
「さやかちゃん、それ何?」
翌日の放課後。
パトロールの道中、芳文がさやかの持っている紙袋の事を尋ねる。
「人からの預かり物。どこかで会ったら返そうと思って」
「ふーん」
(……杏子、今も一人で戦ってるのかな)
さやかは紙袋に視線を向けながら、何も言わずいなくなった杏子の事を思う。
「先輩、向こうから魔女らしい反応があります!!」
まどかのソウルジェムが強く明滅している。
「行こう、みんな」
芳文の言葉にまどか達三人が頷く。
四人はソウルジェムの反応のある場所へ急ぎ、魔女の結界内へと突入する。
「くそっ!! こいつがあの使い魔の親か!!」
結界の中では杏子が一人、魔女と戦っていた。
その魔女は巨大なイタチにもキツネにも見える、四本の足のない胴体と首だけの白い獣の姿をしていた。
九本の尻尾のような物が、背中と腹部から生えており、魔女は尻尾のような物をぶわっと広げて胴体の周囲に張り巡らせる。
それは球状の網のように展開され、高速で回転を始める。
ギュイイイイイイイイインッ!!
巨大な白い円球が周囲に漂うね自らの使い魔達も結界内の構造物も何もかも巻き込んで、粉々に粉砕しながら杏子へと迫る。
「チッ!!」
自分目掛けて突撃してくる魔女の攻撃を躱すが、真空の刃が周囲に発生して、杏子の腕や太もも、頬に切り傷を付ける。
「喰らえ!!」
真空刃によるダメージに構わず、槍を突き立てる。
ギギギギキギギ……バキンッ!!
杏子の槍は穂先から粉々に砕け散る。
「何だと!?」
慌てて槍を手放して距離を取ろうとするが、魔女が杏子を粉々にしようと突っ込んでくる。
回避が間に合わない。
自慢の槍さえ打ち砕いた魔女の攻撃を、防御が苦手な杏子が魔力でシールドを張っても防ぎきる事は出来ない。
杏子が死を覚悟したその瞬間、淡いピンク色に輝く光の壁が杏子の眼前に現れ、魔女の突撃を阻止していた。
「よかった!! 間に合って!!」
まどかが安堵の言葉を漏らしながら、シールドを展開し続ける。
「杏子!!」
さやかが杏子に駆け寄る。
「大丈夫!?」
「……さやか」
「佐倉さん、あなた美樹さんを助けてくれたそうね」
本体を守る為と敵を排除する為の尻尾をまどかのシールドで失った魔女を殲滅するべく、大量のマスケット銃を自身の周囲に顕現させながらマミが隣に舞い降りて言う。
「私の後輩を助けてくれてありがとう」
まどかのシールドが消える。
マミが天に掲げた右腕を振り下ろすと同時に、大量のマスケット銃が一斉斉射され、魔女の本体に無数の風穴を開ける。
「三人共、そこを離れて!! まどかちゃん、やるよ!!」
「はい!!」
マミがさやかと杏子を両脇に抱きかかえて離脱する。
芳文がマギカ・ブレードを両手で上段に構える。
108 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/17(日) 19:41:00.16 ID:EbqLFZ59o
「先輩、行きます!!」
まどかがそう叫んで手にした弓で三本の魔力の矢を放つ。
放たれた三本の矢の内、二本が魔女の左右にそれぞれ着弾し、封印魔法を展開する。
眩いピンク色に輝く円球に閉じ込められ、魔女は脱出しようともがくがまったく身動きが取れない。
魔女の封印が完了すると同時に、まどかの放った三本の矢の最後の一本がマギカ・ブレードの柄に着弾し、剣の中に吸い込まれるように消えていく。
キイィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!
マギカ・ブレードの魔力と撃ち込まれた矢の魔力が共鳴し、マギカブレードが眩い金色の光を放つ。
マギカ・ブレードから放たれる光で、芳文の全身が金色に輝いて見える。
マギカ・ブレードの柄からギュイィィィィンッと言う音と共に、強力な推進力が発生する。
たんっ。
芳文が軽く跳んで地面から両足が離れたその瞬間、ものすごい速度で芳文は飛んだ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
マギカ・ブレードを構えたまま、一瞬で魔女の眼前に辿り着いた芳文は封印魔法で拘束された魔女を左斜め下から斬り裂き、そのまま右斜め上からも斬りさく。
一瞬で四分割された魔女にとどめの唐竹割りを叩き込み、芳文は魔女の上を飛び越えながら地面に着地しながら、そのままマギカ・ブレードの推進力の勢いで地面を削っていく。
ゴッ……!!
封印魔法が内部で細胞のひとかけら残すことなく崩壊消滅していく魔女を飲み込みながら、徐々に小さな円球へと縮んでいき、最後に花火のように光り輝く粒子を飛び散らせながら消滅した。
「やったあ!! 先輩!! 出来ました私達の必殺技!!」
魔女が消滅し、結界が消滅していくのを確認しまどかが嬉しそうにはしゃぐ。
「うわわわわわっ!!」
「え?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
マギカ・ブレードの推進力がまだ残っていたのか、芳文があちこち飛び回っている。
「ま、まどかちゃん!! 剣消して!! 早く!!」
周囲の建物に被害を出さないように剣を巧みに動かして、あちこちを飛び回る芳文が叫ぶ。
「は、はい!!」
慌ててまどかが変身を解くと同時に、芳文の手の中からマギカ・ブレードが消滅する。
地面に向けて飛んでる最中に剣が消えて、芳文はなすすべなく墜落する。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! どいて!! そこどいて!!」
目の前にさやかが立っているのに気付き芳文は叫ぶ。
「さやか!!」
咄嗟に杏子がさやかをマミのほうへ突き飛ばす。
突き飛ばされたさやかをマミが受け止めたのを、杏子が確認した次の瞬間。
芳文が杏子目掛けて突っ込んできた。
咄嗟にマミがリボンを芳文目掛けて放つ。
ドシイィィィィィィィィィィィィィィィンッ……。
「いてててて……」
「杏子!! 大丈夫!?」
土埃の巻き上がる中、さやかの心配する声に杏子は地面に座り込んだ状態で返事を返す。
「あ、ああ……」
咄嗟にマミが放ったリボンが芳文の突撃の威力を殺したおかげで、杏子は大したケガをせずに済んだようだった。
モニュ。
「ひゃんっ!!」
スーハー。
「ひゃわっ!!」
杏子が可愛らしい悲鳴を上げる。
『あっ』
さやかとマミとまどかが、土埃の晴れた杏子の様子を見て綺麗に声をハモらせ、絶句する。
「?」
杏子が視線を下に向けると、芳文が自分の股間に顔を突っ込みながら、両手で胸を揉んでいた。
「――!?」
一瞬で杏子の顔が真っ赤に染まり、そして。
「き、きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
杏子の絶叫が周囲に響いた。
109 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/17(日) 19:41:36.20 ID:EbqLFZ59o
☆
「い、いたいよぅ……」
杏子にボコボコに殴られた芳文がぴくぴくと体を震わせながら、地面に横たわっている。
「せ、先輩、大丈夫ですか? ごめんなさい、私のせいで……」
「いたい……」
まどかが横たわる芳文の頭を両手で持って、自分の膝の上に載せて治癒魔法をかけてやろうとしたその時だった。
「あれは不可抗力なのに、ひどすぎる……。そりゃ、ちょっと嬉しかったけど……」
「……」
「へぶっ!!」
無言でまどかが芳文の頭から手を放した事で、芳文が後頭部を地面にぶつけてのた打ち回る。
「……先輩のえっち」
そう言って拗ねるまどかに、芳文は気付く事さえ無く痛みにのた打ち回るのだった。
「杏子、これ」
そんなまどか達を尻目に、さやかは杏子に紙袋を渡す。
「……これ、あたしの」
「生きてるあんたに返せてよかった」
さやかのその言葉に視線を逸らせながら、杏子は紙袋をぎゅっと抱きしめる。
「ふふ……」
「……なんだよ」
微笑ましそうに笑うマミを杏子は睨みながら尋ねる。
「いえ、あなたにもかわいい所があるんだなって」
「な!?」
「それに、いい所もあるんだってわかったから少し嬉しくてね」
「ふ、ふん!!」
マミから視線を逸らす杏子に、さやかが昨日の提案の答えを尋ねる。
「それで、杏子。昨日の話なんだけど」
「……無理だ。今更自分の生き方なんて変えられないよ」
「一人で変えられないなら、みんなと一緒に変えればいいじゃない」
いつの間にか起き上がった芳文が、後頭部を摩りながら杏子に言う。
「一人はみんなの為に、みんなは一人の為にってね。そういうもんじゃないの。仲間って」
「……仲間」
「そうだよ。杏子ちゃんも一緒に戦ってくれるんなら、それはとっても嬉しいなって。私、そう思うの」
まどかが杏子に微笑みながら言う。
「マミさん……」
さやかが不安そうにマミを見る。
「これから人々を守る為に力を貸してくれるのなら、私からはもう何も言う事はないわ」
マミがそう言うと、さやかはぱあっと表情を明るくする。
「……あたしは使い魔は狩らない」
「もちろん。それは俺の役目。俺の役目はただひとつ。魔女と戦う為に君達の魔力を無駄遣いさせない事だからね。使い魔は全部俺が倒す」
「……変な奴だな、あんた」
「良く言われるよ。俺はいつだって紳士なのに。いつも誤解されて巴さんやさやかちゃんに殴られるんだ」
「あなたが馬鹿な事しなければ殴らないわよ」
「人は言葉と言葉で心を通わせることが出来るんだよ。まず言葉でわかりあおうよ」
「はあ……。口ばっかり達者なんだから」
「それ以外も達者だよ」
110 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/17(日) 19:42:15.33 ID:EbqLFZ59o
「例えば?」
「最近新必殺技を考えたんだ。巴マミさんを崇拝する者だけが使用を許される必殺技。その名も!! ティロ・フィナーレ(斬撃)!!」
そう言って剣を連続で振る仕草をしてみせる。
「それただの斬撃!! あなた、私の事ばかにしてるでしょ!?」
「ええ!? そんな事ないのに。どうしていつも誤解されてしまうんだろう」
「もういいから、少し黙っててくれるかしら」
「はーいマミさん」
「……あんた、マミの尻に敷かれてんのか?」
マミと芳文の突然始まった漫才に、呆気にとられながら杏子が尋ねる。
「そんなご褒美もらった事ないよ!!」
「……は?」
「女の子に踏まれるのって男にとってご褒美なんだよ」
「……あんた、そういう趣味があるのかい?」
「ないよ!! 巴さんに乗っかられたら潰れてしまう!!」
「私はそんなに重くないわよ!!」
「じゃあ、試してみよう」
そう言って、マミの腰を掴んで持ち上げようとする芳文の脇腹に、さやかの肘打ちが入る。
「さりげなくセクハラをするな!!」
「ぐはあっ!!」
「……先輩のえっち」
まどかも不機嫌そうな顔で芳文に言う。
「!? 誤解だよまどかちゃん!!」
「知りません!!」
「あぁぁぁ……。とうとう俺の天使にまで愛想を尽かされてしまった……」
芳文は涙を流しながら地面に両手を付いて嘆く。
「……ぷ」
「杏子?」
ぷるぷると震えながら俯く杏子にさやかが声をかけると、杏子は顔を上げて大笑いする。
「あはははははははははっ!! 馬鹿だ!! 確かにさやかが言うとうりの馬鹿だ!!」
「な、なんてこった……。新しい仲間にまでこんな早く馬鹿として認識されてしまった……」
芳文はますます落ち込んでみせる。
「まあ、そんなに落ち込みなさんなって。食うかい?」
どこからか取り出したたい焼きを嘆く芳文に差し出す。これは杏子が気を許した相手への行為だった。
「いただきます」
「あ、おい!!」
ガツガツムシャムシャ……。
芳文は杏子が持ったままのたい焼きに、顔を近づけてそのまま平らげてしまうと、突然嗚咽を漏らし始めた。
「う、うぅぅぅ……」
「お、おい……。どうしたってんだよ」
「天国のお母さん、やりました!! 生まれて初めて、女の子に「はい、アーン」ってしてもらえました!!」
顔を上げて両手を組み、祈るような仕草をしながら芳文は叫ぶ。
「そんな事言ってねえ!!」
「え?」
「どうしてそこで不思議そうに首を傾げられるんだオメーは!!」
「……杏子、この人はこういう人だから。一々本気になっちゃ駄目だよ」
「そうよ。佐倉さんもすぐに慣れるから」
「あんたら、苦労してるんだな……」
さやかとマミの言葉に杏子は心底同情する。
「まあそうなるかな」
「そうね」
「ひでえ!!」
そんな芳文を尻目に、まどかが杏子の側へとやってくる。
「あの……」
おずおずと話しかけてきたまどかに、杏子は出来るだけ優しく聞き返す。
「なんだい?」
「これから、杏子ちゃんって呼んでいいかな?」
「……ああ」
「よろしくね、杏子ちゃん」
杏子の肯定の言葉に、そう言って嬉しそうに笑うまどか。
「ああ、よろしくね。まどか」
杏子はそんなまどかに優しく微笑み返すのだった。
つづく
111 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/17(日) 19:49:04.29 ID:EbqLFZ59o
杏子「つづく」
杏子「あ、まどかと社の必殺技の名前募集中だそうだ」
杏子「恥ずかしい名前、かっこいい名前大募集!!」
杏子「余談だが、社の名前は本当は○○とか二葉としあきとかにするつもりだったらしい」
杏子「話の都合上マヌケに見えるんで、アニメのスポンサーの名前をもじって社芳文にしたそうだ。あんたらの分身みたいなつもりで書いてるらしいから、脳内で自分の好きな名前に変換するのもありかもな」
杏子「ちなみに作者の脳内ではこの話はギャルゲー風なので、2話で寂しそうに去っていくマミをもし追いかけていたら、マミルートに突入してたらしい」
杏子「じゃ、またな」
112 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/04/17(日) 23:12:24.91 ID:YVIWy/Gyo
お疲れ様でした。
113 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/18(月) 03:28:53.21 ID:Suym29puo
馬鹿、鈍感、セクハラ魔人
見事にエロゲ主人公なオリキャラだな
でも面白いから許す
114 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/19(火) 01:30:25.62 ID:tpm/Iuxd0
大変だ、このギャルゲー面白いのに選択肢が表示されないバグがある…!
115 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/19(火) 08:09:55.68 ID:uB/jWTmIO
マミさんルートの選択肢が出ないんだが
116 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/04/19(火) 17:25:33.37 ID:CAXsyHKAO
マミさんは初期の頃にフラグ立てないと駄目
しかもちょっとしたイベントで好感度上げるたびに、調子に乗って死亡フラグ立てる
もう何も怖くないとかひとりじゃないとか言いだしたら注意
あんこちゃんとちょっと仲良くしたら、いきなり射殺された上、魔女になったし
117 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/19(火) 19:23:16.86 ID:m9STyt4Xo
攻略の難易度は
超難:ほむら
難しい:マミ、さやか
普通:杏子
易しい:まどか
となっております
全員攻略すると隠しキャラが出ます
118 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/19(火) 20:12:08.30 ID:9zmjKVEIO
>>117
隠しキャラ……QBか
119 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2011/04/19(火) 22:46:25.05 ID:Fw5eevYbo
仁美ちゃんに決まってるだろ
ついでにさやかの魔女化も防げるしな
120 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/19(火) 23:36:10.71 ID:jNkl+q0do
ほむらルートに挑むも結局QBに
「僕たち友達だよね?」と言われるのは日常茶飯事なのである
121 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/22(金) 15:32:50.23 ID:00SFTVVDO
ここのまどか達は幸せになって欲しい。
122 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/22(金) 16:25:32.52 ID:xTRk7x+xo
誰かが一人欠けたら
それはもうハッピーエンドじゃない
123 :
◆YwuD4TmTPM
[sage]:2011/04/22(金) 18:58:47.12 ID:5DZaGWPw0
>>122
木更津キャッツアイの「野球は九人いなきゃできねえだろ」を思い出した。
124 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/22(金) 18:59:14.31 ID:5DZaGWPw0
oh…酉外し忘れ
125 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/23(土) 04:44:30.60 ID:yNXDH6w/o
必殺技の名前…某アニメ的に考えて
マギカサンダークラッシュ
マギカファイナルアタック
マギカ・キング・フィニッシュ
とか
上の3つが参戦した某ロボット大戦のオリジナルロボの技から
マギカ・シグヴァン
が良いと思うます!
126 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/24(日) 12:11:52.17 ID:Rg/WcB7qo
杏子「今夜で中部の放送も終わりか……」
杏子「あの終わり方は想定の範囲内だから、この世界での今後の展開は変わらないけどさ」
杏子「>120-121 何も心配しなくていいさ。最後に勝つのは愛と勇気だろ?」
杏子「>125 採用。この世界のまどかがかっこいい名前だって喜んでたぞ」
杏子「GW中には完結させたいそうだ」
次回予告
杏子「あたしとあんたとマミの三人だけで戦う?」
マミ「鹿目さんを戦わせない理由は?」
ほむら「ワルプルギスの夜は強い。常に誰かに守られながら戦ってきたあの子はこの戦いにはいらない」
ほむら「私達は一人でも戦う覚悟と痛みを知っている。けれど、今のあの子にはそれがない。ワルプルギスとの戦いで、戦いの痛みを知れば心が折れるかもしれない」
ほむら「率直に言うわ。あの子を守りながら戦う余裕のある相手じゃないの」
ほむら「あなたには、鹿目まどかと美樹さやかを連れて逃げて欲しい」
ほむら「いいから逃げなさい!! お願いだから私の言う事を聞いて!!」
第9話 「絶対、逃げたりしない」
127 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/04/24(日) 13:38:28.35 ID:f5KzyyHIo
こんな名作を見逃していたとは・・・・!
完結期待してますぜ
128 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/24(日) 14:15:48.87 ID:2rpLYKF7o
>>117
> 全員攻略すると隠しキャラが出ます
まどか様マジ女神
129 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/24(日) 16:34:36.43 ID:BHJbg/UEo
アニメも最終回を迎えたがいやはやこちらはどうなることやら…
あと
>>111
で言われるまで主人公の名前の元ネタが芳文社と気付かんかったww
130 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/04/25(月) 01:18:00.09 ID:lvdmj210o
ぶっちゃけほむらさんだけだとバッド一直線だしな≫まどか
131 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2011/04/26(火) 15:23:07.60 ID:BstANnloo
期待
132 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/04/29(金) 01:20:06.46 ID:MmxeS0iuo
杏子「更新開始だ」
杏子「無駄に文章量が増えていく。予定の12話を超えそうらしい」
133 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/29(金) 01:20:33.46 ID:MmxeS0iuo
第9話 「絶対、逃げたりしない」
狂った結界の中、まどか達五人は新たな魔女と対峙していた。
シルクハットを被ったヤギの頭蓋骨をした魔女。窪んだ眼球の穴からはクリスタル状の塊が複数飛び出しており、そこからクリスタルの内蔵を孕んだハトの骨の姿をした大量の使い魔が生まれ続ける。
「うおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
芳文がマギカ・ブレードを振るう度に、大量の使い魔達が消滅していく。
「先輩!!」
後方から、さやかを庇うように立つまどかが分裂矢を放ち、芳文のサポートをする。
「俺とまどかちゃんで使い魔を押さえる!! 二人は魔女を!!」
芳文の言葉にマミは頷くと、槍で使い魔を斬り伏せている杏子に叫ぶ。
「佐倉さん、行くわよ!!」
「しょうがねえな!! 合わせろよマミ!!」
左右に散開し、槍を構え、魔女目掛けて杏子が跳ぶ。
杏子と自分に向かって分散し襲い掛かってくる使い魔を、マミは大量のマスケット銃を顕現させて1匹も残さずにすべて撃ち落とす。
「終わりだよ!!」
全身に魔力の炎を纏った杏子が、魔女に突撃し真っ二つに斬りさいて着地する。
「危ない!!」
使い魔を殲滅した芳文が、着地して無防備な杏子の身体を掴んで、その場を離脱する。
杏子の立っていた場所に、巨大な人骨の掌が振り下ろされ巨大なクレーターが出来る。
「巴さん!! 後ろ!!」
「マミさん!!」
芳文が叫ぶと同時にまどかのシールドが展開され、マミを襲おうとしていたもう一つの掌が弾かれてバラバラになる。
「チッ!! なんだよコイツは!!」
杏子が毒づく。
真っ二つにされた筈の魔女が再び復元すると同時に、中から青白く光る光球が飛び出し、まどかのシールドでバラバラになった掌の残骸に吸い込まれる。
すると、瞬時にバラバラになった掌が復元される。
「あれが魔女の本体か!!」
芳文が叫ぶと同時に、掌から光球が飛び出し、物凄い速度で頭蓋骨と左右の掌の間を行ったり来たり繰り返す。
その間も使い魔が絶え間なく生み出され襲い掛かってくる。芳文とマミと杏子が使い魔をすべて倒した時には、骸骨と掌二つの三体が浮いていた。
134 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/29(金) 01:21:11.00 ID:MmxeS0iuo
「あの中のどれかに、本体がいるのか。使い魔どものせいで見失っちまった」
「本体を潰さないとまた復元するわ。社君、どうする?」
槍とマスケット銃を構えながら、杏子とマミが芳文の左右に立ち芳文の意見を待つ。
「……このままだと消耗戦になる。相手は三体、こっちは三人。同時に必殺技で殲滅しよう。杏子ちゃん、君にもあるんだろ? 奥の手」
「……ああ。これ以上消耗させられるよりはマシだしな。やってやるよ」
「よし。じゃあ二人とも、俺に合わせて。まどかちゃん!! やるよ!!」
「はい!! 行きます!!」
芳文がマギカ・ブレードを構える。
後方からまどかが三本の矢を放つ。
高速で射出された二本の矢が骸骨の魔女の上下に着弾し、眩いピンク色に輝く円球状の拘束空間を展開し動きを完全に止める。
最後の一本がマギカ・ブレードの柄に吸い込まれ、マギカ・ブレードに込められた魔力と共鳴し、金色の光を発生させながら更なる破壊力と推進力を与える。
たんっ。
芳文が軽く跳ぶと同時に、一瞬で魔女の目前へとマギカ・ブレードによる高速飛行で、辿り着く。
「マギカ・シグヴァン!!」
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
まどかの叫びと芳文の気合いと共に、一瞬で骸骨の魔女が芳文の斬撃によって四分割される。
「ティロ・フィナーレ!!」
マミの巨大マスケット銃による砲撃で、左の掌が中心に大穴を開けて粉々に砕け散る。
「喰らえ!!」
杏子が顕現させた巨大槍が右の掌を木端微塵に粉砕する。
ズバアァァァァンッ!!
とどめの唐竹割りを叩き込みながら、魔女の上を一回転しながら飛び越え着地しながら、芳文は地面を削りつつ魔女へと向き直る。
ズザザザザザ……。
両足に力を込めて、地面を削るのを止めると、芳文は未だ柄から魔力の噴射を続けているマギカ・ブレードを両手でぶんぶんと頭上、右側面、正面、左側面へと移動させながら振り回す。
やがて噴射が消え、刀身の輝きが収まるのを確認して地面に剣を突き立てると同時に、封印魔法の内部で魔女が完全消滅し、光の粒子を撒き散らす。
「やったあ!!」
四人の勝利にさやかが右手を振り上げて歓喜の声を上げる。
シュウウウウウウウン……。
結界が消滅し、グリーフシードがコツンと音を立てて地面に落ちてくる。
135 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/29(金) 01:22:07.32 ID:MmxeS0iuo
「三人共、お疲れ様。さあ、ソウルジェム出して」
「ああ」
「お願い」
「はい」
芳文がグリーフシードを拾い上げ、杏子、マミ、まどかが差し出したソウルジェムの穢れをグリーフシードに移す。
三人分の穢れを吸って限界寸前のグリーフシードを放り投げると、マギカ・ブレードを一閃させ木端微塵に粉砕消滅させる。
「これでよし、と」
そう言って、手にしたマギカ・ブレードを下ろすと杏子が興味深そうな目でマギカ・ブレードを見る。
「しっかし、その剣とんでもない威力だよな」
「まあ、まどかちゃんが作ってくれた剣だしね」
「これさあ、あんただけじゃなくて、あたしとマミとまどかも持って戦えば無敵なんじゃないか?」
「杏子ちゃん、わたし剣なんて扱えないよ」
「私も剣術はちょっと」
「なんだよ。魔法少女の癖に情けないな。ちょっとそれ貸してくれる?」
「いいよ。もう刀身の魔力は消えてるみたいだけど気を付けて。はい」
「ああ、サンキュ?」
ズドン!!
芳文から手渡されたマギカ・ブレードの余りの重さに耐えきれず、杏子はマギカ・ブレードを落としてしまう。
「なんだよこれ!? 滅茶苦茶重いじゃねえか!!」
「そうかな?」
「あんた……よくこんなモン振り回せるな……」
「杏子、そんなに重いの?」
「とてもじゃないが、こんなモン扱えねえよ」
さやかの疑問に杏子は忌々しげに答える。
「どれどれ……」
さやかが地面に落ちたマギカ・ブレードに近づいて持ち上げようとする。
「んーっ!! ……駄目だ。ビクともしないわ」
「そんなに重いの?」
興味が湧いたのか、マミもマギカ・ブレードを持ち上げようとする。
「ん……!! 駄目ね。とても持ち上がりそうもないわ」
「ていうかまどか、アンタどういう作り方してのさ。こんなモンとても実戦で使えないって」
杏子が呆れながらまどかにそう言うと、まどかは地面に落ちているマギカ・ブレードに近づき、持ち上げようとする。
「そんな事言われても……。よいしょ……」
自らの祈りと願いを込めて作り出した剣を、まどかは両手で持ち上げようとするが、1ミリすら地面から離れない。
「……どうしよう。重くてちっとも持ち上がらないよ」
「そんなに重いかな」
ひょい。
「あ」
芳文はあっさりとマキカ・ブレードを持ち上げると、ひゅんひゅんと片手で振り回してみせる。
「おいおい……。なんでそんな重いモンを軽々と扱えるんだよ」
杏子が驚いた顔で尋ねる。
「君達が女の子で、俺が男だからじゃない?」
「んな訳あるかよ。あたしら魔法少女は魔力で身体能力上げてるんだから、普通の人間より力だって体力だって上なんだぞ」
「俺、いつも鍛えてるし」
「そんな理由でそんなモン、軽々と振り回せる訳ねえ。アンタ、本当に人間?」
杏子の言葉に一瞬、複雑そうな表情をするが、芳文はいつもの調子で軽口を叩く。
「……ひどいなあ。魔女こそ見えるけど一応人間だよ」
「まあいいけどさ。結局、それはアンタにしか使えないって事か」
「そうなるのかな。まあこれが重いなら、それだけまどかちゃんの祈りと願いが強いって事だし」
「そんなもんかね。ところでまどか、さっき叫んでたマギカなんとかって何さ?」
「え?」
「そう言われてみれば、さっき叫んでたよね。まどか、なんて言ってたの?」
「えっと……マギカ・シグヴァン」
杏子とさやかの問いに自信なさげに答えるまどか。そんなまどかに芳文は優しく声をかける。
「まどかちゃん、必殺技の名前決めてくれたんだね」
「はい。どうでしょうか?」
「俺はかっこいい名前だと思うよ」
「本当ですか?」
「うん」
「えへへ……。先輩が気に入ってくれたなら良かったです」
136 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/29(金) 01:24:08.39 ID:MmxeS0iuo
「……マミ2号かよ」
杏子が芳文に褒められて、嬉しそうにしているまどかを見ながらそう呟くと、マミがムッとした顔で尋ねる。
「佐倉さん、どういう意味かしら?」
「別に。一々必殺技の名前とか、緊張感がない奴らだなって思っただけさ」
杏子のその言葉に芳文が口を挟む。
「そんな事はないよ。それに連携取る時や作戦建てる時にさ、技の名前があると意思の疎通がしやすいし」
「そんなもんかね」
「そんなもんだよ、あんこちゃん」
「あたしの名前は杏子だ!!」
「駄目?」
「当たり前だ!!」
「えー。かわいい愛称だと思うんだけどなぁ」
「な!? からかうんじゃねえ!! 潰すぞ!!」
「別にからかってないのに。あんこちゃんは短気だなあ」
「てめえ!!」
「女の子がそんな乱暴な言葉遣いしちゃ駄目だよ。まあそういうとこも可愛いと思うけど」
「な!?」
芳文の言葉に顔を真っ赤にする杏子に、さやかがいひひと意地悪な笑みを浮かべながら言う。
「おやおやー? 杏子顔真っ赤だよ」
「うぜー!! ちょーうぜー!!」
顔を赤くして叫ぶ杏子の様子を見て、さやかはにひひと笑いマミもクスクスと笑う。
「……」
そんな四人のやりとりを無言で見つめながらまどかは思う。
(……先輩って誰にでもかわいいって言うんだ)
「……ん? まどかちゃん、どうかしたの?」
「……え? べ、別に何でもありません!!」
芳文にそう声をかけられ、まどかはそっぽを向きながら慌ててそう答えるのだった。
☆
魔女を倒した後、パトロールを再開した五人は神社の近くを通りかかるとざわざわと喧騒が聞こえてくる。
「あ、お祭りやってますね」
まどかが神社の方に夜店が開かれているのに気付き、傍らを歩いている芳文に言う。
「ほんとだ」
「なあ、せっかくだから何か食ってかないか」
杏子がさやかとマミに言う。
「あたしは別に寄ってもいいけど」
そう答えてマミの方に視線を向ける。
「……そうね。少しくらいなら」
「よっしゃ!! さやか行くぞ!!」
「あっ!? 待ってよ杏子!!」
夜店の方へ駆け出す杏子の後をさやかが慌てて追いかける。
「仲いいなあ、あの二人」
「そうですね」
「私達も行きましょうか」
「うん」
「はい」
まどか達三人も杏子とさやかの後を追いかけた。
「こういう場所で食う食い物ってなんで美味いんだろうな」
焼きそばを食べながら杏子がさやかに言う。
「そうだね。みんな一緒だから特に美味しく感じるのかも」
「……かもな」
神社の石段に腰掛けながら、杏子、さやか、まどか、マミの四人は屋台で買ってきた物に舌鼓を打つ。
「はい、まどかちゃん。巴さん」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
持ちきれないので、二回に分けて飲み物を買ってきた芳文が、まどかとマミに飲み物を手渡す。
「なんか、こういうのっていいわね」
マミがトロピカルドリンクを手にしみじみと言う。
「そうですね。ずっとこうやってみんな一緒だといいのに」
マミの言葉にまどかが微笑みながら同意する。
「……」
だが、芳文はそんな二人に背を向けて、無言で明後日の方へ鋭い視線を向けていた。
「……社君?」
「先輩、どうしたんですか?」
マミとまどかの問いかけに芳文は答えない。杏子とさやかも芳文の様子に気づき視線を向ける。
「……畜生」
『……え?』
芳文が漏らした呟きに、四人が思わず声を揃えて疑問を口にする。
「こんな所でいちゃつきやがって!! 魔女の口づけでも喰らって別れちまえばいいんだ!!」
四人が芳文の視線の先に目を向けると、一組のカップルがいちゃいちゃしていた。
『……』
四人が無言で視線を芳文に戻すと、芳文は血涙を流しながらギリギリを歯を噛みしめ、爪が掌にくい込むほど拳を固く握りしめていた。
「畜生……。俺ももっとイケメンに生まれたかった……!!」
『……』
「そうしたら、彼女の一人くらい出来たかもしれないのにっ……!!」
『……』
四人はそんな芳文に呆れながら、屋台で買った食べ物を食べる。
137 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/29(金) 01:25:20.46 ID:MmxeS0iuo
「……社君、男の嫉妬は見苦しいわよ」
マミがたこ焼きに爪楊枝を刺しながら、芳文にそう声をかけると芳文はくるっと振り返り言う。
「それもそうだね!! ありがとう!! 少しだけいい男になれた気がするよ!!」
そう言って再びカップルの方へ向き直り叫ぶ。
「へんっ!! 別に羨ましくなんかないもんね!! そっちの彼女より、こっちが連れてる女の子達の方がかわいいからな!! ばーかばーか!!」
『……』
「誰一人脈なんかないけどな!! 畜生!! 羨ましくなんかないぞ!! ばーかばーか!!」
カップルは二人の世界に入ってて芳文の言葉に気づいていない。
『……』
四人は心底呆れつつ食べ物を口に運ぶのを再開する。
「社君、恥ずかしいからそういうのやめてね」
「うん。ごめんよマミさん。僕もっと大人になるよ」
マミに諭されている芳文を尻目に、杏子が隣に座るさやかとまどかに話しかける。
「……さやか、あいつと付き合ってて疲れないか?」
「最近は慣れてきたけど、結構疲れるかも」
「まどかも大変だな」
「え? わたし?」
「あんた、あいつと付き合ってんだろ?」
「ええ!? 誤解だよ杏子ちゃん!!」
「なんだ、違うのか」
「そ、そうだよ!!」
「まあ、あんな馬鹿じゃそんな気になるわけないか。わりいわりい」
そう言って笑いながら謝る杏子。
「黙ってさえいれば、それなりに整った顔してると思うんだけどね」
「そうだな。でもあの性格で全部台無しじゃん?」
「言えてる。なんであんな馬鹿なんだろあの人」
笑いながら芳文に対する意見を述べる杏子とさやかに、まどかが言う。
「……でも、先輩は優しいよ。戦いの時だってすごく頼りになるし。それに……」
ぼそっと小さく呟くように言葉を繋ぐ。
「かっこいいし」
「……は?」
「まどか、今なんて言ったの?」
「な、なんでもないよっ」
杏子とさやかに最後の言葉を聞き返され、まどかは慌ててごまかすのだった。
☆
いつものように二組に別れて、まどかを芳文に送らせ、さやかを家まで送っていった帰り道。
マミと杏子の二人は近すぎず遠すぎずという、微妙な距離を保ちながら、それぞれの帰路へ着こうとしていた。
「そう言えば佐倉さん、あなたは今どこに住んでいるの?」
「……ホテル暮らしさ」
「そのお金はどうしてるの?」
「……」
マミの問いに杏子は答えない。
「……あなたが良かったらだけど、私の家に来る?」
「……」
「私一人暮らしだから、あなたが寝泊まりする場所くらい提供出来るわよ」
「なんでそんな事が言えるんだよ。あたしとあんたはそんな関係じゃないだろ」
「そうね。でもそれはもう過去の事よ」
「……随分お人好しになったもんだな。社とまどかの影響か?」
「そうかもね。それにチームを組む以上、あなたの所在がはっきりしてた方が都合がいいでしょ?」
「言っとくけど、金ならないぞ」
「いらないわよ。お客様からお金なんか取る訳ないじゃない」
そう言ってマミは微笑む。杏子はぷいっと顔を逸らしながら、小さく呟くように言う。
「……明日」
「ん?」
「明日にはホテル引き払ってくる」
「ええ。あなたが寝る為の布団を用意しておくわ」
「……ふん」
杏子がそっぽを向きながらそう答えたその時。
138 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/29(金) 01:26:20.74 ID:MmxeS0iuo
「巴マミ、佐倉杏子」
いつの間に近づいていたのか、二人の背後からほむらが声をかけてきた。
「あなたは!?」
「いつの間に!?」
まったく気配を感じさせる事無く、背後を取られた事に警戒しながら、マミと杏子はほむらに向き直る。
「もうすぐワルプルギスの夜がやってくる」
ほむらは表情を変える事無く、淡々と二人に告げる。
「暁美ほむらさん。どうしてあなたにそんな事がわかるのかしら?」
「そもそも、この街に以前にもワルプルギスが来たなんて、聞いた事ないぞ」
「……統計よ。今までの、ね」
「それで、あなたはどうしたいのかしら」
マミの言葉に、ほむらは二人の顔をじっと見つめながら言う。
「どうか、私と一緒にワルプルギスの夜と戦ってほしい。あれには私だけでは勝てない」
ほむらのその言葉に、マミと杏子はお互いの顔を見合わせる。
「……ワルプルギスの夜か。まああたしとあんた、マミとまどか、それに社も戦力に入れれば勝てるかもな」
「いいえ。ワルプルギスの夜との戦いに赴くのは私とあなた達の三人だけよ」
杏子の言葉を、長い髪の毛をかき上げながら、ほむらは否定する。
「あたしとあんたとマミの三人だけで戦う?」
「鹿目さんを戦わせない理由は?」
人間である芳文はともかく、最強の魔法少女であるまどかを除外する理由は何故なのか。
マミと杏子はほむらにその理由を問う。
「ワルプルギスの夜は強い。常に誰かに守られながら戦ってきたあの子は、この戦いにはいらない」
ほむらの言葉にマミは言葉を失う。確かにほむらの言うとうりだった。
まどかの契約時の状況による負い目から、確かにマミは必要以上にまどかの事を気にかけて戦ってきた。少なくとも一度も前線に立たせた事はない。
「私達は一人でも戦う覚悟と痛みを知っている。けれど、今のあの子にはそれがない。ワルプルギスとの戦いで、戦いの痛みを知れば心が折れるかもしれない」
ほむらの言葉に、マミと杏子は自分達がまだ駆け出しだった時の事を思い出す。たった一人で戦いに明け暮れた日の事を。
何度も危険な目に遭い、痛い思いをし、心が折れそうになったのは一度や二度ではない事を。
「率直に言うわ。あの子を守りながら戦う余裕のある相手じゃないの」
「……あたし達三人だけで、勝算はあるのか?」
「三人いれば何とかなるわ」
「……そうね。ベテランの魔法少女が三人もいれば何とかなるでしょうね。けれど、社君と鹿目さんが黙って私達だけに任せてくれるとは思えない」
「そちらは私が説得する。社芳文には鹿目まどかと美樹さやかの二人を連れて、この街から逃げてもらう」
マミの言葉に、ほむらは感情の籠らない言葉で、静かにそう答えるのだった……。
☆
マミと杏子がほむらに共闘を申し込まれた翌日の夜。
「土曜日なんだけどさ、用事があるからみんなに合流するの夕方からでいいかな」
パトロールの帰り道で、芳文がまどか達に言う。
「別に一日中魔女探しをする訳じゃないから、それはいいけど」
マミの返事に、芳文は申し訳なさそうに言う。
「助かるよ。どうしても外せない用事があるんだ。終わったらすぐ合流するから」
「なんだ、女にでも会いに行くのかい?」
杏子の軽口に軽口で返す。
「んー。まあそんなとこ」
「……え?」
杏子と芳文のそんなやりとりに、まどかが驚いた顔をする。
「ん? どうかした?」
「い、いえ、別に何でもありません」
「そう?」
結局、それ以上この話題が続く事は無く、この日はそのまま解散したのだった。
――そして土曜日の午後。
まどか達四人はなんとなく全員集まって、ファミレスで昼食を取り街をプラプラと歩いていた。
「おい、あれ社じゃないか」
杏子が人込みの中を歩く芳文を見つけて、まどか達に教える。
「ホントだ。これから誰かに会いに行くのかな」
「あら? 社君花束を持ってるわ」
「おいおい……。あいつ本当に女に会いに行くのかよ」
「……」
杏子達のやりとりを無言で聞きながら、まどかは芳文の背中を見つめる。
「なあなあ、どうせヒマだしさ、ちょっとあいつの後付けてみないか?」
「それはちょっと悪趣味じゃないかしら」
「あいつがどんな女に会いに行くのか、興味ないかい?」
「何、杏子。先輩の事気になるのー?」
「ばっか、何言ってんだよ。そんな訳あるかよ。まあ嫌いじゃあないけどさ、あの馬鹿をそんな目で見た事ねーよ」
「あーあ、先輩かわいそう。マミさんだけでなく杏子も脈なしかあ」
「そういうさやかはどうなんだよ?」
「あたしにとって先輩は兄貴みたいなもんだしね。向こうもあたしの事妹だって言ってるし」
「なんだ、そうなのか」
「そうだよ。あっ。追いかけないと先輩見失っちゃう。ほら、まどか行くよ!!」
「ちょっ!? さやかちゃん!?」
さやかが強引にまどかの手を引く。
四人は芳文に気づかれないようにこっそりと後を付けていく。
139 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/29(金) 01:27:50.87 ID:MmxeS0iuo
「なんだかどんどん人気が少なくなってくね」
「あいつ、こんな人気のないとこで待ち合わせしてんのか?」
「ていうか、たしかこの先は……」
さやか達に、無理に引っ張りまわされる形で連れてこられたまどかは、困った顔で三人のやり取りを聞きながらどんどん歩いていく芳文の背中を見る。
そのまましばらく後を追っていくと、そこは霊園だった。
「あ……」
「……なんだ、墓参りかよ」
「……三人共、帰りましょう」
マミが三人にそう声をかけたその時だった。
背中を向けたままの芳文が、静かに良く聞こえる大きさでまどか達に言う。
「いつまで隠れてるのかな?」
「やべ!? 逃げるぞ!!」
慌てて杏子がさやかの手を引いて駆け出し、マミも咄嗟に後を追いかけてしまう。
「……え?」
まどかが気付いた時には三人は物陰に隠れてしまっていた。
「……まどかちゃん」
「あ……」
いつの間にかこちらに振り返っていた芳文に、まどかは見つかってしまった。
「……まどかちゃんだけ?」
「……は、はい」
まどかはさやか達を庇って力なく頷く。
「俺の後付けてきたの?」
「ごめんなさい……」
しゅんと俯いて弱弱しく謝る。
「……別に怒ってないから」
そう言って、芳文はまどかの頭を優しく撫でてやる。
「でも、こういう事はもうしないようにね」
「ごめんなさい……」
「さてと、それじゃ用事済ませてくるからちょっと待っててくれるかな。終わったら一緒に街の方へ戻ろう」
「あの……ここって……」
「ああ。妹と母さんが眠ってる場所なんだ」
以前、結界の中に閉じ込められた時に、芳文が言っていた義理の母親と妹の事をまどかは思い出す。
「あの……。私も先輩のお母さんと妹さんに、お参りしてもいいですか?」
「……うん」
芳文とまどかは芳文の妹と母親の眠る墓の掃除と、お参りを済ませると、二人並んで街へと歩いていく。
「墓の掃除手伝ってくれてありがとう」
「いえ……」
「家の親戚少ないから、まどかちゃんもお参りしてくれてきっと喜んでると思う」
「そんな……。わたし、いつも先輩にお世話になってるから……」
二人並んで歩きながら、芳文はまどかに事情を話す。
「……今日、二人の命日だったんだ」
「……」
「今まで、二人が死んだあの日からずっと、ここに来ることが出来なくてさ……」
「……どうして……ですか?」
「……前にも言ったけど、妹を見捨てた自分なんて、いつ死んでもいいって思ってたから。妹と母さんに合わせる顔がなかったんだ……」
「……」
「けど今は違う。今はもうそんな事思ってない。君と出会って、君に命と心を救われたあの時から」
「……」
「今はこの命が尽きるその日まで生きようと思ってる。この命で誰かを救えるのなら、その誰かの為に戦い続けようと思ってる。今日は二人にその事を報告に来たんだ」
「……」
「妹は俺の事を許してくれないかもしれないけど……。その事を伝えて謝りたかったんだ」
「……大丈夫です。きっと、妹さんは先輩の事を恨んだりしてないと思います」
「……」
「先輩はいつだって優しくて、私やマミさん、さやかちゃんと杏子ちゃんを助けてくれました。そんな先輩の事、天国の妹さんが嫌いになったりする筈ないじゃないですか」
「……ありがとう」
まどかの言葉に、芳文は静かにそう答える。
芳文の中の呪縛がまたひとつ消えた瞬間だった。
140 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/29(金) 01:30:29.97 ID:MmxeS0iuo
☆
――芳文とまどかが街中に戻ってきた頃、不意に強い雨が降り出した。
「まどかちゃん、こっち!!」
テレパシーでマミ達と会話していたまどかの手を引いて、芳文は近くの軒先に非難する。
「傘持って来ればよかったな、びちゃびちゃだ……」
そうぼやいてまどかの方へ振り返ると、まどかも濡れ鼠になっていた。
白いブラウスが雨で透けて、ブラの紐や肌が見える。
芳文が慌てて視線を逸らすと、まどかも自分の状態に気付いたのか、顔を赤く染めて恥ずかしそうに自らの肩を抱く。
「こりゃ当分やみそうもないな。まどかちゃん、ここからちょっと走れば俺の家だから、俺の家に来る?」
「え?」
「いや、変な意味はないんだ!! 家、乾燥機モあるしさ、それにこのままここにいると、まどかちゃん風邪引くかもしれないし!! まどかちゃんがシャワーとか使ってる間俺、家の外に出てるから!!」
そう言って、芳文はまどかの返答を待つ。
「先輩が良ければ……」
「うん。じゃ行こう」
芳文とまどかは雨の中走って、芳文の住むワンルームマンションへと急いだ。
「はい、タオル」
「ありがとうございます」
玄関先でタオルで雨水を拭きとると、芳文はまどかを自宅へ招き入れる。
「これ、まだ下ろしてないやつだから。ちょっと大きいかもしれないけど、服が乾くまで我慢して」
学校指定のジャージの新品をまどかに渡し、風呂場に案内する。
「洗濯機と乾燥機とシャワー、自由に使っていいから。まどかちゃんが風呂場使ってる間は俺、外に出てるから終わったら電話して」
それだけ矢継ぎ早に告げると芳文はさっさと、新しい服に着替えて自宅を出て行った。
まどかは内心申し訳なく感じながら、洗濯機に着ていた服を入れてスイッチを入れると、シャワーを浴びさせてもらう。
シャワーを済ませ、先に洗って乾燥機にかけた下着を着け、借りたジャージに袖を通して、風呂場から出てくる。
「……これが先輩のお家なんだ」
そう呟いてまどかは部屋の中を見回す。
ベッドとテレビと机とノートパソコン。教科書と参考書のみが収められた本棚と小さなタンスにいくつかの生活必需品。
マンガヤ小説、CDプレイヤーといった嗜好品の類が全くない部屋。
自分の部屋やマミの部屋と比べて、あまりに生活感のない部屋にまどかは戸惑う。
「あ、先輩に電話しないと」
まどかが携帯電話で芳文に電話をかけると、芳文は二人分のケーキと缶のホットレモンティーを買って戻ってきた。
「はい、どうぞ」
「いただきます」
戻ってきた芳文にケーキを進められ、まどかはケーキに口を付ける。
「俺、紅茶とか入れないから缶のだけどごめん」
「いえ、そんな……」
二人で無言のまま、ケーキを食べて紅茶を飲む。
「何にもなくて驚いた?」
「えと……ちょっとだけ」
「実は俺、趣味とかなくてさ。妹が死んでから、そういう楽しみ持つのってどうなんだろうって思ってて」
――ピンポーン。
不意にチャイムが鳴り、会話が中断される。
「誰だろう。ごめん、ちょっと待ってて」
そう言って席を立つ芳文。
まどかが待つ事数分後。四〇代くらいの男性と共に芳文が戻ってくる。
「はじめまして、芳文の父です」
男性がまどかにそう挨拶をしてぺこりとお辞儀する。
「は、はじめまして。わたし、社先輩の中学の後輩で鹿目まどかと言います」
まどかは芳文の父親に、慌てて姿勢を正して自己紹介をし、ぺこりと頭を下げる。
「芳文に、こんなに可愛らしいガールフレンドがいるとは、知らなかったよ」
そう言って人当たりの良さそうな笑顔でまどかに笑いかける。
「あぅ……」
まどかは顔を赤くして俯いてしまう。
「知ってのとうり、せがれは口数も少ないし無愛想だけど、これからも仲良くしてあげて」
「父さん、余計な事は言わなくていいよ」
「何を言う。かわいい息子の嫁さん候補に挨拶するのは父親の務めだろう?」
「彼女はそんなんじゃない。ごめん、まどかちゃん気にしないで」
「照れるなよ息子」
「照れてねーよ、糞親父」
顔を赤くしながら、まどかは上目遣いにそんな二人のやり取りを見るのだった。
141 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/29(金) 01:31:25.45 ID:MmxeS0iuo
☆
やがてまどかの服の洗濯と乾燥が終わり、芳文とまどかは芳文の家を出た。
芳文の父親は墓参りと芳文の様子を見る為に、仕事の合間を縫ってやって来た為、芳文達と一緒に家を出てそのまま帰って行った。
「まどかちゃんごめん。親父が変な事ばっか言って。気を悪くしたよね。嫁候補だとかさ。後でちゃんと誤解は解いておくから」
「そんなに気にしないでください。優しいお父さんですね」
「……うん。俺にとっては本当の親父も同然かな」
そんな会話をしながら、マミ達との合流場所へ向かう。
「……まどかちゃん。今だから白状するけど……。巴さん達の前の俺は本当の俺じゃない」
不意に芳文が立ち止まり、真剣な表情でまどかに告白する。
「……え?」
「親父が言ってたよね、無口で無愛想って。それが本当の俺なんだ」
「……」
まどかは無言で芳文の顔を見つめながら、芳文の言葉に耳を傾ける。
「俺さ、他人と触れ合うのが苦手なんだよ。素の自分を見せて嫌われるのが怖いんだ。だから全部計算ずくで馬鹿やってるんだよ」
「……」
「口数が少なくて無愛想なコミュ障。何の趣味もないつまらない人間。それが本当の俺なんだ」
「……わたし達を助けてくれる気持ちも嘘なんですか?」
「それは嘘じゃない!!」
まどかの問いに芳文はきっぱりと答える。
「まどかちゃんと二人だけの時に今まで言った言葉は全部本心だよ。誰かの為に役に立ちたいという気持ちも、巴さん達を仲間だと思う気持ちも、君を守りたいと思う気持ちも嘘じゃない!!」
「……知ってます」
芳文の言葉に、まどかは柔らかな笑みを浮かべて言う。
「先輩はいつだって優しくて、わたし達を助けてくれました。嘘だったらそんな事出来ません」
「……ごめん」
「謝らなくてもいいです。誰だって、相手によって態度変えるの当たり前ですし」
「そう言ってくれると助かるよ」
「本当の先輩を知ってる人って、他にもいるんですか?」
「親父と天瀬と君だけだよ。俺、友達少ないし」
「そうですか」
そう言って、まどかはふふっと笑う。
「俺、何かおかしな事言ったかな?」
「いえ。本当の先輩を知ってる女の子が私だけって、なんか嬉しいなって」
そう言って笑うまどかに、芳文は思わずドキッとして顔を赤くする。
「あれ? 先輩どうしたんですか?」
「な、なんでもない」
まどかに顔を覗き込まれそっぽを向いて答える。
「本当に?」
「……からかわないでくれよ」
「いつも先輩がしてる事なのに?」
「あれは……演技だし」
「じゃあ、これも演技ですよ」
そう言ってまどかはクスクスと笑う。
「参ったな……。まどかちゃんがこんな意地悪な子だと思わなかった」
「今までの先輩のおかげですよ。こういう事も出来るようになりました」
まどかはそう言ってぺろっと舌を出して笑う。
「やれやれ。これからはもう少し自重しないといけないな」
「そうですね」
芳文とまどかは顔を見合わせて笑いあう。
この日は今までまどかについていた嘘と、亡き家族への暗い感情が消えた、芳文にとって忘れられない一日になったのだった。
142 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/29(金) 01:32:58.09 ID:MmxeS0iuo
☆
その日の深夜。
まどかを自宅に送り届けた後、芳文は日課の自己鍛錬を始める。
片手で逆立ちして、腕立てをしていると背後に気配を感じて片手で跳びあがり、空中で姿勢を正して地面に手を付きながら着地する。
「俺に何か用かな?」
「……ええ」
月明かりに照らされたその人物は暁美ほむらだった。
「女の子がこんな時間にうろうろするのはお兄さん感心しないな」
「……」
「いくら魔法少女でも、女の子なんだから」
「〜〜芳文」
ほむらの言葉に芳文の顔から笑みが消える。
「……どうして俺の本当の名字を知っているんだ?」
「……」
「調べたのか?」
「……そうよ」
ほむらの言葉に、芳文は無表情でぶっきらぼうに返す。
「何の用だよ」
「それが本当のあなた?」
「人の触れられたくない部分に、土足で上がりこむ相手に演技とはいえ、優しくしてやる義理はないね」
「……そう」
芳文に無表情で冷たく言い放たれるが、ほむらも感情を見せる事無くそう呟く。
「で、何の用だよ」
「……」
「用がないなら俺は帰る」
「……あなたの本当の母親の名前は?」
「なんでそんな事教えてやらなきゃいけないんだよ」
「……確認よ」
「何を言ってるのか理解出来ないな。なんで赤の他人に教えてやらなきゃいけないんだ」
「いいから答えて」
「……チッ。マドカだ。円の華と書いて円華。言っておくがあの女が記憶喪失の時の名前だからな。実名じゃねえぞ」
「……」
「もういいだろ。気分が悪い。俺は帰る」
「何も聞かないのね」
「おまえあの女の親戚か何かか? 今更そんな事に興味なんかないね」
「……そう」
「じゃあな」
そう言って立ち去ろうとする芳文の背中に、ほむらは感情の籠らない言葉を投げかける。
「もうすぐ、この街にワルプルギスの夜と呼ばれる強力な魔女が現れる」
「何?」
「ワルプルギスの夜は一般人には天災として認識される。結界の中に潜む必要もなく、ただ破壊だけを撒き散らす」
「なんでそんな事を知ってるんだ?」
「……」
「まただんまりか。必要な情報を寄越さない相手を信じると思うか?」
「私を信じなくてもいい。あなたには、鹿目まどかと美樹さやかを連れて逃げて欲しい」
「何を言ってるんだ? そんなにやばい相手なら全員で協力して戦うべきだろうが」
芳文の言葉に、ほむらは初めて語気を荒げて叫ぶ。
「いいから逃げなさい!! お願いだから私の言う事を聞いて!!」
「嫌だね。俺は絶対、逃げたりしない。まどかちゃんだって、巴さん達の事を絶対に見捨てて逃げたりしない」
「あなたに、ワルプルギスの夜と戦わないといけない理由なんてない」
「理由ならある。まどかちゃんは絶対逃げないだろう。俺はあの子を守ると誓った。だからあの子が戦うなら俺も戦う。それが俺の運命だ」
143 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/29(金) 01:33:42.87 ID:MmxeS0iuo
「……違う」
「は?」
「以前も、その前も!! あなたはいなかった!! そんな運命なんてない!!」
いきなり感情的な言葉を投げつけられ、芳文は思わず面喰ってしまう。
「なんだよいきなり。俺があんたに心配される筋合いなんかないはずだが?」
「いいからまどかを連れて逃げなさい!!」
「断る。そんな事を命令される筋合いはない」
芳文の言葉を聞いて、ほむらは魔法少女の姿に変身すると、左腕の盾から銃を取り出して芳文に向けて構える。
「何の真似だ」
「どうしても言う事を聞かないというなら、ここであなたの手足を撃ち抜く」
「それでどうする気だ」
「殺しはしない。よその街の病院へ運んであげるわ」
「まどかちゃんにも同じ事するつもりじゃないだろうな」
「……あなたは知る必要はないわ」
ほむらの言葉を聞き、芳文はつかつかとほむらへ向かって近づいていく。
「撃てよ」
「近づかないで!! 本当に撃つわよ!!」
ほむらの目前に迫り、片手でほむらの銃を右手で掴むと自分の左胸に銃口を向ける。
「だから撃てっていってるだろ。こんな風に!!」
バアァァァァンッ!!
芳文がほむらのトリガーにかけた人差し指を自分の親指で押して発砲する。
「な!?」
芳文の心臓目掛けて発射された弾丸を芳文は左手で受け止めていた。
親指と人差し指で掴んだ弾丸を、ほむらの目の前でペシャンコに潰してみせる。
「見てろ」
目の前の光景に呆然とするほむらの目の前で、放置されたままの以前破壊した放置自動車を掴み宙に放り上げる。
ズドン!! ズトン!! ズドン!! ズドン!!
落ちてきた自動車のフロントに無造作にパンチを放ち、内部メカごと貫通させてみせる。
ズガアァァァァァァァァァンッ!!
穴だらけになった自動車が地面に落ちる寸前に、思い切り蹴り上げると車体が真っ二つに裂ける。
「……なによそれ」
信じられない身体能力を見せた芳文に、ほむらは呆然となる。
「あの日まどかちゃんに命を救われた時から、こういう事が出来るようになったんだ。なんでこんな事が出来るのか知らんが、俺はこの力であの子を守る」
芳文はそう言うとほむらに振り返りもせず去って行く。
「……うあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
背後から嗚咽が聞こえたような気がしたが、芳文は振り返らない。
「絶対に誰も死なせるものか」
芳文は自分自身に言い聞かせる様に呟いた。
――その日、AM4:00。
見滝原市上空にすさまじい雷雲が発生した。
つづく
144 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/29(金) 01:36:52.26 ID:MmxeS0iuo
杏子「次回に続く」
杏子「ワルブルギスはラスボスじゃないから、まだ当分続くらしい」
杏子「文章量が勝手に増えくせいで終わりが見えないそうだ……」
杏子「あと、1で言ってるが社は主役じゃないぞ」
杏子「じゃーな」
145 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2011/04/29(金) 01:42:49.63 ID:g626MnAbo
.,−'''''~~~ ̄ ̄~~''' - 、
\ ,へ.人ゝ __,,.--──--.、_/ _,,..-一" ̄
\ £. CO/ ̄ \ _,,..-" ̄ __,,,...--
∫ / ,、.,、 |,,-¬ ̄ _...-¬ ̄
乙 イ / / ._//ノ \丿 ..|__,,..-¬ ̄ __,.-一
.人 | / ../-" ̄ || | 丿 / ). _,,..-─" ̄ ._,,,
マ .ゝ∨ / || " 丿/ノ--冖 ̄ __,,,,....-─¬ ̄
( \∨| " t−¬,,...-一" ̄ __--¬ ̄
ミ ⊂-)\_)` -一二 ̄,,..=¬厂~~ (_,,/")
.⊂--一'''''""|=|( 干. |=| |_ (/
/ ( / ∪.冫 干∪ 人 ` 、 `
/ ) ノ '`--一`ヽ 冫
く.. /
. ト─-----イ |
∪ ∪
146 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/04/29(金) 02:13:46.06 ID:3rjfyAJXo
お疲れ様でした。
・・・・・・・人間やめたのかな・・・・・・・・・・。
147 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/29(金) 03:20:02.34 ID:d8Kl1Pg7o
乙彼〜
いやあパロっただけのモノとは言え自分が考えた技名を使われると
嬉しい反面恥ずかしいなあwwww
148 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/04/30(土) 01:47:27.16 ID:Yf8LprY3o
杏子「更新するよ」
149 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/30(土) 01:47:59.65 ID:Yf8LprY3o
――最初は気が付かなかった。
何故、魔女やインキュベーターの存在を見る事が出来るのか。
何故、私の時間停止を受け付けないのか。
不思議だった。
今までのどの時間軸にも、彼は存在しなかった。
あの日、彼の右脇のアザを見た時。
疑問が疑惑に変わった。
――そして、彼から本当の母親の名前を聞き出したその時。
私は確信した。
彼は私の……。
第10話 「もう絶対死なせない」
……あれはいつだっただろうか。
遠い昔、私は彼女に助けられた。
自分に自信がなくて、いつも弱気だった私に手を差し伸べてくれた、たった一人の友達。
私は彼女が殺されるのを黙って見ている事しか出来なかった。
そんな自分が、そんな結末が許せなくて……。
私は契約の獣と契約を交わした。
最初の時間逆行で、私は彼女と同じ存在として共に戦った。
けれど、彼女を救う事は出来なかった。
そして残酷な真実を知った。
その次の時間軸で、私は彼女と仲間達に前回知った事実を話した。
結果は誰も真実を認めない。受け止められない。
仲間同士での殺し合いになり、最悪の結末へと至った。
私は自らの手で、一番救いたかった彼女の命を奪い、再び過去へと戻った。
――もう、誰にも頼らない。
私は一人で戦った。
戦って戦って、戦い抜いて。
そして、ワルプルギスの夜に敗北した。
最後は私が救いたかった少女が、世界を滅ぼす存在に成り果てるという、今までで最悪の結末だった。
150 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/30(土) 01:48:26.26 ID:Yf8LprY3o
――繰り返す。
――私は何度でも繰り返す。
たった一つの出口を求めて、悠久の時間の中を繰り返す。
――そして、最後の時間軸で迎えた最後の時。
私は彼女にすべてを話してしまった。
彼女は私に微笑みありがとうと言った。
傷ついて動けない私を、守りたい世界を守る為、彼女は魔法少女になった。
動けない私のケガを彼女の魔法が優しく癒していく。
彼女は私の左手の甲から、私の魂の結晶を外すと私の胸に押し当てて……。
人として死んだはずの肉体に、再び人としての生命の灯を宿らせてくれた。
――その時だった。
私達に目もくれず、破壊の限りを尽くしていたあの忌々しい魔女が、彼女を攻撃してきたのだ。
私を庇って防戦一方に追い込まれる彼女。
魔女の猛攻に耐えきれず、吹き飛ばされる小さな体。
――私が。
――私のせいで。
因果の糸に絡め取られた少女が、目の前で傷ついていく。
私にはどうする事も出来ない。
私は泣きながら彼女の名前を叫ぶ事しか出来ない。
傷だらけになって、ボロボロになって。
それでも彼女は立ち上がると、私に微笑みながら言った。
「――ありがとう」
「全部忘れて幸せになってね。後は私がやるから」
「待って!!」
「さよなら、ほむらちゃん」
別れを告げる彼女の胸から放たれた眩い光が、私を飲み込む。
「どうしてぇぇぇぇっ!!」
暖かい光の中で木霊する、悲しみに満ちた私の叫びが、私と共にこの世界から掻き消されていく。
「――元気でね。私の友達」
最後に見たのは、魔女の放った魔力の波動に飲み込まれる彼女の姿。
私はまどかの最後の言葉と共に、光の奔流にの中で、意識を失ったのだった。
151 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/30(土) 01:48:56.67 ID:Yf8LprY3o
☆
気が付いた時、私の視界に入ったのは知らない天井と、20代くらいの男性だった。
光の奔流に飲み込まれた私は、すべての記憶を失っていた。
まどかと出会う前の、まどかを救おうと決意する前の弱々しい自分。
それが、彼に拾われた時の私だった。
名前も過去も何もかも忘れた私は、どこにも行くあてもなく、頼れる人もいない。
不安に負けて涙を流す私を、彼は優しく慰めてくれた。
私が保護された場所は、気のいいおばさんが経営するアパートだった。
私を拾ってくれた彼と、彼の友人と、他に数人の気のいい人達が住む、昔ながらのアパート。
そこで私は第2の人生を歩む事になった。
自分の事を知る手がかりを何一つ持っていなかった私に、彼らは新しい名前を付けてくれた。
マドカ。
円の華と書いて円華。
それが私の新しい名前。
彼らは私に好きな名前にすればいいと、いろんな名前を提案してくれた。
その中のひとつ、まどか、という名前を提案された時。
私は無意識の内に涙を流していた。
そんな私の様子を見て、彼は「きっと大切な人の名前だったんだね。いつか記憶を思い出せる日まで、その名前を名乗ったらいいんじゃないかな」と優しく言ってくれたのだった。
――半年後、私はおばさんの養女になった。
おばさんは早くに夫を亡くし、子供がいなかった事もあってか、私の事を本当の娘のように可愛がってくれた。
青樹円華。
それが私の、彼女の娘としての名前。
私は彼女の事を本当の母親のように慕った。
幸せだった。
ソウルジェムと共に記憶を失った私だが、身体能力は魔力で強化した時のままだった。
私にそんなつもりはなかったのだが、私は学校ではかなり目立つ存在だった。
全部断ったが、在学中何人かの男子生徒に告白された事もあった。
私が通う事になった中学校の女子達には、そんな私が気に入らなかったらしい。
記憶を無くして、まどかに出会う前の弱い自分に戻ってしまった私が、彼女達にいじめられるようになるのに、そんなに時間はかからなかった。
けれど、私は不幸ではなかった。
私を引き取ってくれた義母が、私を助けてくれた彼が、同じアパートに住む彼らが、私を助けてくれた。
私が辛くて悲しい時、私が一人で泣いている時、あの人達は私を優しく包み込んでくれた。
私は幸せだった。
私が高校2年になった時だった。
義母が交通事故で亡くなった。
私は泣いた。声が出なくなるまで。涙が枯れ果てるまで泣いた。
そんな私の側に、彼はずっといてくれた。
それから高校を卒業して一か月後。
私は亡き義母の残してくれた花嫁衣装に身を包み、彼の妻になった。
そして三ヶ月後。
――私は妊娠した。
152 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/30(土) 01:50:04.58 ID:Yf8LprY3o
☆
この身に子供を宿して十ヶ月後。
私は元気な男の子を出産した。
同じアパートに住む彼らも夫も、とても喜んでくれた。
赤ちゃんの世話なんて一度もした事のない私にとって、この子の育児は大変な物だった。
けれど、夫は子煩悩だったし、彼らも何かと気にかけてくれたのがありがたかった。
子供を連れて買い物に行けば、知らないおばさんや老夫婦に良く声をかけられた。
かわいい赤ちゃんだね、お母さん似だね、そんな風に言われるのが嬉しかった。
この時の私は、自分が元々心臓の病気だった事も忘れていたのだが、私の子供は特に大きな病気をする事もなくすくすくと成長していった。
ただひとつ不安だったのが、私に似たのか人見知りする性格だった事だ。
生まれた時から可愛がってもらっていた、アパートの住人達や夫には懐いていたが、物心つく頃には知らない人に話しかけられると、私の後ろに隠れてしまうようになっていた。
男の子なんだから、もっと女の子に頼られる様な強い子になりなさい、といつも言い聞かせていたのを今でも覚えてる。
私は記憶喪失とはいえ、愛する夫と可愛い子供に恵まれ幸せだった。
けれど、そんな幸せも長くは続かなかった。
それは子供が三歳六か月になった頃の事だった。
高校時代の数少ない友人に、会いに行った帰り道。
子供を抱いて横断歩道を歩いていた時の事だった。
子供がいずこかを指差して私に言った。
「ママ、変なのがいるよ」
この子の指差す先に目を向けると、そこにはあの忌々しい契約の獣が、背を向けて去っていくのが見えた。
――この時、私はすべてを思い出した。
子供を連れて自宅に戻った私は新聞を見て確信した。
私は自分が元いた時間から、二十一年も過去に飛ばされてきた事を。
それからの私はこれからどうするべきか迷った。
今の私はソウルジェムを失った、ただの一児の母。
けれど十二年後に、インキュベーターがまどかに接触しようとするのはわかりきっている。
翌日、私は子供を連れて鹿目家へと向かった。
庭で父親と遊んでいる幼いまどかの姿を確認し、これからどうするべきか悩んだ。
幸せそうに笑っている幼いまどかと、私の幸せを願ってくれたあのまどかの顔が脳裏で重なる。
私は一体、どうすればいい?
この時の私はまだ、自分が掴んだ女の幸せを捨てる事が出来なかった。
――結局、私はこの時間にいるはずのもう一人の自分に任せようと考えた。
義母も夫も私の身元を探し出そうと手を尽くしてくれたが、当然てがかりひとつ見つからなかった。
だが、今の私には記憶がある。
私は自分の幼少期の記憶を頼りに、この時間の暁美ほむらを探した。
別にこの時間の自分を見つけたからといって何かある訳ではない。
ただ、今の自分の代わりにまどかを守ってくれる自分がいる。
それを確認すれば、今まで過ごしてきた暖かくて優しい生活に戻れる。
それだけだった。
――だけど。
153 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/30(土) 01:50:59.57 ID:Yf8LprY3o
どこを探しても、もう一人の私は見つからなかった。
それどころか、私の両親も、親戚さえも、誰一人見つからなかった。
この時間に、暁美ほむらは私しか存在しないのだ。
本来存在する暁美ほむらを私の存在が上書きしてしまったのか。
それともこの時間軸が、この世界が今まで私の存在してきた時間と違うのか。
私に確かめる術はなかった。
ただ一つはっきりしている事は、このままではこの時間のまどかを守る者は誰もいない。
また、まどかが悲しい結末を迎える事になる。
それだけだった。
☆
子供を寝かしつけ、私は一人縁側で夜空を見上げながら無力感に苛まれる。
もう一度、魔法少女の力が使えれば……。
私は強く強く願った。
――その時だった。
何度も私を違う時間軸に飛ばしてくれた相棒が、九年ぶりに私の左腕に出現したのだ。
私はかつてのように時間停止を試してみる。
以前と違い、停止出来る時間にタイムリミットがある。
他に試したその他の魔法も、以前よりパワーダウンしているが、使える。
まどかが私を完全な人間に戻しきる前に、ワルプルギスの夜が不意打ちしてきた事で、私は今のソウルジェムがない状態でも魔法が使えるらしい。
ソウルジェムを失ったこの体で魔力を使い切れば、ただの人間になってしまうだろう。
ソウルジェムを失った事で魔女にはならないが、グリーフシードで魔力を回復する事も出来ない。
半魔法少女。
それが今の私。
翌日、私は子供と夫の前で、記憶を取り戻した冷血な暁美ほむらを演じて家を出た。
泣きながら追いかけてくる子供を突き飛ばし、振り返りもせず私は去っていく。
涙が止まらなかった。
あのまどかは私が憧れたまどかじゃない。
あのまどかは私を助けてくれたまどかじゃない。
そんな言葉が私の心の中で何度も囁く。
――だけど。
私はもう、十分幸せだった。
本当なら、女の幸せなんて手に入るはずはなかったんだ。
あの子は、本当なら当たり前に手に入るはずの幸せさえ、手に入れる事無く、大人になれずに死んでしまう。
そんな運命あんまりだ。
あの子には幸せになる権利がある。
優しい家族と、大切な友人に囲まれて、希望に満ちた未来を手に入れるべきなんだ。
――だから、私は……!!
あの子が中学二年生になり、私が転校してくるはずのその日。
私は魔力で彼女と同じ子供の姿に戻り、そして。
――あの日、普通の人生を歩んでくれる事を願って別れたはずの、たった一人の私の息子。
芳文と再会した。
154 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/30(土) 01:51:36.38 ID:Yf8LprY3o
☆
まどかを連れて逃げるように説得に行ったはずが、芳文の異常な身体能力を見せつけられ、私は呆然となりながら自宅へ戻ってきた。
眠る気にもならず、ベッドの上で壁にもたれかかっていると、外から物凄い雷音が鳴り響いた。
「まさか……!!」
慌てて外に飛び出すと、上空にスーパーセルの予兆が出ている。
「……ワルプルギスの夜!!」
私が駆け出すのと同時に、一際大きな雷鳴が鳴り響き、あの忌々しい魔女がその巨体を現した。
「!?」
眩いピンク色に輝く矢が、ワルプルギスの夜に突き刺さるのが見える。
ワルプルギスの夜は多少のダメージを受けたようだが、笑いながら矢の飛んできた方向に向けて攻撃を開始した。
「まどか!!」
何て事だ。
まどかはたった一人で、他の仲間と分断されている。
私はまどかの元へと走る。
「もう絶対に死なせない!!」
つづく
155 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/04/30(土) 01:53:54.91 ID:Yf8LprY3o
杏子「次回、いよいよワルプルギスとの死闘が始まる」
杏子「果たして、全員無事に生還出来るのか?」
杏子「次回 第11話 「きっと来てくれる」につづく」
156 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/04/30(土) 02:24:21.54 ID:GlfoIYn4o
お疲れ様でした。
・・・・・・・・Damn it!
これもまた宿命なんでしょうかねぇ・・・・・・・。
願わくば、彼らの未来に女神の加護のあらんことを………。
157 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
:2011/04/30(土) 10:35:40.88 ID:TS+5HIqAO
…ママほむ
158 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/30(土) 12:31:24.01 ID:4t9slyJao
いろんなところに張られていた伏線が一気に回収されたな
>>30
とかで表現的にあれ?って思ったものも伏線だったとは
親父が今のほむらを見たらどうするんだろ
159 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/04/30(土) 13:58:26.39 ID:TS+5HIqAO
ママほむの旦那死んでるし
160 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/04/30(土) 15:05:48.90 ID:G0fTV6UQo
こ、これが噂の超展開・・・・!
161 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/30(土) 18:34:05.04 ID:BtcCNgvVo
>>159
読み返してみたらそうだった
158は忘れてくれ
162 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/30(土) 20:32:39.66 ID:iCkMKOeYo
かーちゃん!
163 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/01(日) 13:29:11.76 ID:oVhm166Lo
杏子「単発レスだよ」
杏子「実は社の生い立ちは最初から決まってたんだが……」
杏子「薄々このスレ見てるアンタ達は気付いてたんじゃないかな」
杏子「あの馬鹿とほむらの関係について」
杏子「本編でネタバレになるから描写しなかったが、社の目の色はほむらと同じなんだ」
杏子「髪の色も顔立ちも実は全部母親似なんだ、設定としては」
杏子「見た目はピクシブとかの性転換ほむらを短髪にしたみたいな容姿かな」
杏子「赤ん坊の時とか女の子に良く間違われたらしい」
杏子「首を傾げたりとか、微妙な角度……通称シャフ度とかを取る癖も母親と同じ」
杏子「好きな女のタイプまで母親と同じ。元の性格もな」
杏子「ずば抜けた戦闘センスとかは、親父が強い男だったんで、そういうのは親父似」
杏子「勉強が出来たのは単純に趣味がなくて、こつこつ家で努力してたのと元々の知能指数の結果」
杏子「ちなみに女装させるとどこぞのロリコン魔術師みたいに美人だそうだ」
杏子「じゃーな」
164 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/05/01(日) 15:25:27.59 ID:b21rAYWso
>>163
>好きな女のタイプ
この一言で全て納得した
165 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/02(月) 06:19:47.65 ID:K6G9P5cho
それにしても知らぬ事とは言え母親にセクハラする社くんパネェっす
166 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/02(月) 11:25:17.48 ID:Q0zuXy9No
ふむふむ。
社くんは”失われたほむほむのソウルジェム”となにか関係があるのかな、
とは思ってましたが・・・・・・・まさかこうだったとは・・・・・。
一歩間違えたら若作りの母親とふぉーりんらぶとか、
好きな人が男とかになってたわけですな。
ほむほむ実年齢35歳位ですか・・・・・見た目は兎も角、精神的に中二女子やるのは
大変だったろうなぁ………。
まぁ、仲直りしてほしいものですね。
167 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/02(月) 20:50:10.85 ID:VbERy33To
杏子「息抜きの新作らしい。
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1304326234/
」
168 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/05/03(火) 00:45:11.60 ID:+bqnNHYAO
この話のほむほむ経産婦なんだよな…
旦那にヤられまくったんだろうな…
処女は勿論下手すりゃファーストキスも旦那が初めての相手なんだよな…
やっぱり尻の穴とかも開発されたんだろうか
169 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/05/03(火) 09:33:02.17 ID:jPkxohcXo
胸が厚く・・・熱くなるな・・・
170 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/03(火) 20:14:02.77 ID:0m4FtFjCo
当然全員生き残るんだろうな?
バッドエンドは嫌だぞ
171 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/05/03(火) 20:59:43.41 ID:oX3mDiGao
杏子「単発レスだよ。現在書き溜め中」
杏子「>166 大体そんなとこ。ほむらは4月に結婚して、7月後半に妊娠発覚。その時が約3か月。大体10か月前後の妊娠期間を経て4月5日に芳文出産。一応肉体的には19で出産してるから、劇中だと34歳だと」
杏子「ちなみに劇中期間では現在6月で衣替えしてる。アニメ本編とは期間が違うんだ」
杏子「>168-169 一応各キャラのファンに配慮してそういう露骨な描写はしないそうだ。つーか、初期ほむらの性格+クールほむら×親父のエロなんて誰が得するんだだってさ」
杏子「関係ないけどもしこれがギャルゲーやエロゲーだったら、ほむらルートは魔法少女4人攻略後に解禁される隠しシナリオ扱いだろうね。アンタ達の好きな名前が付けられる親父でほむら攻略、もしくはほむら視点の物語」
杏子「>170 多分大丈夫。読んでくれた読者が読んでよかったと思ってくれるようなラストにするつもりらしいよ」
172 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/04(水) 00:09:12.09 ID:T3EZ6zRYo
杏子更新開始するよ」
173 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/04(水) 00:09:50.14 ID:T3EZ6zRYo
――夢を見ている。
――あの子が転校してきた日にも見た夢。
ここではないどこか。
今の自分とは違う自分が、白と黒の迷宮を走る。
そして、辿り着いた先。
そこで目にした光景。
巨大な逆さまの魔女が破壊を撒き散らし、すべてを灰塵へ変えていく。
そして、そんな破壊の化身にたった一人で挑み、敗北する彼女。
そんな絶望の光景。
――あの子は誰?
――わたしの知っているあの子と同じ子?
――傷ついた彼女を見て、決意を決めるわたし。
――あのわたしは誰?
――なんとなくだけど……わかる。
――彼女はわたしだけど、わたしじゃない。
『――あなたは、誰なの?』
夢の中のわたしに向かって、そう口にした瞬間、わたしは夢から目覚めた。
第11話「きっと来てくれる」
174 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/04(水) 00:10:52.11 ID:T3EZ6zRYo
「――まどか。まどか、起きて」
「……キュゥべえ。どうしたの」
枕元に立つキュゥべえに起こされたまどかは目元を擦りながら、時計を見る。
「まだ夜中の4時前だよ。どうしたの?」
「それどころじゃないんだ。まどか。もうすぐワルプルギスの夜がやってくる」
「ワルプルギスの夜?」
「超弩級の魔女だよ。この魔女は結界に潜む必要もなく、現実世界に干渉して、ただ破壊だけを撒き散らす非常に厄介な相手だ」
「そんなにすごい相手なの!?」
「ああ。しかもこの魔女は一般人には天災として認識される。早く倒さないとこの街は壊滅だ」
「そんな!!」
「この魔女はとても一人では太刀打ちできないだろう。すぐにマミ達と合流して迎え討つんだ」
「わかった!!」
まどかは急いで着替えると外へと飛び出す。
まどかが家の外に飛び出した直後、すさまじい雷音が鳴り響き、夢で見た巨大な魔女がその姿を現す。
「あれが、ワルプルギスの夜!?」
ワルプルギスの夜から、すさまじい魔力を感じ取ったまどかは、瞬時に魔法少女の姿へと変身する。
まどかに気付いた魔女は、さまざまな動物の姿をした使い魔を生み出し、まどかの元へと解き放った。
「っ!?」
まどかは弓を顕現させて分裂矢を放つ。
放たれた魔力の矢は18本に分裂し、まどかの元へと飛来する鳥型使い魔と、大地を揺らしながら進軍してくる歩行動物型使い魔を一撃で消滅させる。
まどかは続けて、必殺の魔力を込めた一撃を放つ。
ワルプルギスの夜の巨大な歯車に当たった矢が炸裂し、巨大な光球へと変化し、歯車の一部を飲み込んで破壊する。
だが、あまりに巨大な魔女にとっては、ほんの僅かばかり体の一部が欠けただけにすぎなかった。
魔女は笑いながら、まどかへと迫る。
「キュゥべえお願い!! みんなを呼んできて!!」
まどかはキュゥべえにそう叫ぶと、返事も待たずにワルプルギスの夜の元へと駆け出した。
民家の屋根の上を跳躍しながら、ワルプルギスの夜に向かって叫ぶ。
「こっちだよ!!」
まどかは少しでも被害を減らす為、民家のない開発区域の方へとワルプルギスの夜を誘導する。
ワルプルギスの夜は笑いながら、まどかの誘導におびき寄せられるかのように、まどかを追いかけてくる。
やがて開発区域へと辿り着くと、まどかは魔力を込めた一撃を放とうとする。
175 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/04(水) 00:11:39.08 ID:T3EZ6zRYo
――ゴァッ!!
ワルプルギスの夜の放った魔力の波動に、まどかの小さな体が吹き飛ばされる。
「きゃあああああっ!!」
シールドを張る間もなく、まどかは地面の上を転がる。
「痛……」
魔法少女になって初めて受けた痛みと、たった一人での戦闘にまどかは挫けそうになる。
ワルプルギスの夜が笑いながら、開発途中のビルを破壊しながら浮かせて、まどか目掛けて投げつけてくる。
「っ!!」
咄嗟に両手でシールドを展開し、飛んでくるビルをシールドで消滅させながら受け止める。
――アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。
魔女の嘲笑と共に、大地が揺れる。
まともに立っていられず、まどかはその場に倒れ伏してしまう。
「――あ」
笑いながら迫ってくる魔女の姿に、まどかは震え上がる。
(駄目だ……。こんなの、わたしだけじゃ勝てないよ……)
――アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。
魔女が笑いながら迫る。
(こわいこわいこわいこわい!! 助けて!!)
怯えるまどかの脳裏に、優しく微笑む仲間の魔法少女達の顔が。いつも守ってくれる少年の顔が過る。
魔女の放つ波動が大地を激しく揺らし、まどかの体を再び吹き飛ばす。
「あぐっ!!」
開発途中のビルが、激し音と共に崩れて瓦礫の山になる。
まどかは地面を転がりながらその光景を見て、家族が家の下敷きになっている姿を思わず連想してしまう。
「……逃げるもんか」
まどかは逃げ出したい気持ちを投げ捨てるように、そう呟いて顔を振りながら立ち上がる。
「ここで逃げたら、みんな死んじゃう……」
優しい家族の顔が、大切な親友達の顔が、まどかの脳裏に過る。
「絶対逃げるもんか!! これ以上何も壊させない!!」
ワルプルギスの夜に向けて両手をかざす。
ワルプルギスの夜の前後上下左右に淡いピンク色に光り輝く魔力の壁が展開され、その巨体を巨大な箱状の捕縛結界へと封じ込める。
――アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。
封印魔法の中で魔女は笑いながら破壊の波動を解き放つ。
「う、ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
まどかはワルプルキズの夜を自由にさせまいと、全力で封印魔法を展開し続ける。
ジジジ……。
まどかの胸元にあるソウルジェムが徐々に黒くなっていく。
「……負けないっ!! マミさん達が来るまであなたの好きにはさせない!!」
まどかによって封じ込められたワルプルギスの夜は、そんな彼女をあざ笑うかのように笑い続ける。
「きっと来てくれる」
まどかは必死に封印魔法を展開し続けながら、自分に言い聞かせるように呟いた。
「……先輩」
176 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/04(水) 00:12:54.93 ID:T3EZ6zRYo
☆
「……あれがワルプルギスの夜か」
「佐倉さん!! 鹿目さん一人じゃ持たない!! 急ぐわよ!!」
「ああ!!」
ワルプルギスの夜の出現に気付いたマミと杏子は、夜の街を疾走する。
民家の上を飛びまわりながら、少しでも最短ルートでまどかの元へ辿り着こうと二人は走る。
「おいマミ!! まずいぞ!!」
「まさか!! ワルプルギスの夜の影響なの!?」
天高く跳躍しながら眼下の街を見て二人は叫ぶ。
複数体の魔女と使い魔が、結界から這い出して現実世界へと現れる。
通常なら、絶対に起こらない光景に二人は焦りの色を隠せない。
「チッ!! 放っておくわけにもいかねえな!!」
「二手に分かれて、速攻で片づけて鹿目さんと合流するわよ!!」
「ああ!!」
マミと杏子は二手に分かれて、現実世界に現れた魔女の元へと向かう。
(鹿目さん!! 私達が行くまで死なないで!!)
(すぐ片づけて行くからな!! 待ってろよまどか!!)
☆
深夜に突然鳴り響いた轟音と地震。
眠りの淵から飛び起きたさやかが自室の窓から見た光景。
それは親友の放った魔力の矢が、巨大な逆さまの魔女に突き刺さる瞬間だった。
「まどか!!」
さやかはパジャマの上から上着だけを羽織った姿で、靴をもどかしげに履きながら自宅を飛び出す。
「あれが、転校生が言ってたワルプルギスの夜……!!」
さやかは走る。
何も出来ない普通の人間でしかない自分。だけど、大切な親友がたった一人で戦っているのを見て見ぬふりなんて出来ない。
さやかはそんな思いを胸に走る。
途中、二度ほど起こった地震で転んでしまい、ひざを擦りむいてしまったが、痛みを堪えて再び走り出す。
スピーカーで行われる避難勧告の指示が聞こえてくる。
さやかはそれを無視して走る。
そして角を曲がったその時。
目の前に異形の魔女が現れた。
何かに祈り続ける黒く染まった女性のシルエット。
その背中から鋭い触手が複数生えている。
「――え?」
さやかに気付いた魔女が、背中から生えた触手でさやかを串刺しにしようとする。
「さやか!!」
ズガアアアアアアアアンッ!!
間一髪、駆けつけた杏子に抱き寄せられて宙を跳ぶさやかの視界に、先ほどまで立っていた場所が触手で砕かれているのが目に入った。
「馬鹿野郎!! さっさと逃げろ!!」
魔女から距離を取った場所に着地して、杏子は怒鳴りつける。
「だって!!」
「今回はいつもと違うんだよ!! さっさと逃げな!!」
さやかの言葉を遮って杏子は怒鳴ると、魔女へ向かって走り出す。
177 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/04(水) 00:13:20.40 ID:T3EZ6zRYo
「くっ!!」
魔女の触手を次々と槍で斬り裂いていく杏子。
だが斬り落とされた触手から、棘の生えた蔦が伸びて、杏子の体に巻きつく。
棘が杏子の体に突き刺さり、血が滴り落ちる。
「杏子!!」
「何やってんだ馬鹿!! さっさと逃げろ!!」
杏子の体が触手に殴り飛ばされる。
「ガハッ!! 逃げろさやか……」
「あたしは……」
立ち尽くすさやかの足元に、音もなくキュゥべえが現れる。
「あたしは逃げない!! 友達を、仲間を見捨てて逃げたくない!!」
さやかはそう叫ぶと決意を胸に、足元のキュウべえに宣言した。
「キュゥべえ!! 契約を!! あたしは大切な友達を助けたい。みんなの力になりたい!!」
「――美樹さやか。君の願いは?」
「みんなと共に戦える力が欲しい!! まどかを、マミさんを、先輩を、杏子を助けられる力が欲しい!!」
「わかった。契約は成立した。さあ、受け取るといい」
キュウべえの耳が伸び、さやかの胸から蒼く輝くソウルジェムを生成する。
「さあ、受け取るといい。それが君の力だ」
さやかはソウルジェムを手にし、魔法少女へと変身する。
――今、ここに5人目の魔法少女が誕生した。
魔女の触手が杏子を貫こうとする光景に、変身を完了したさやかが叫ぶ。
「杏子!!」
さやかはマントを翻して10本のサーベルを顕現させ地面に突き立てる。
今まさに杏子を貫こうとする魔女に、サーベルを連続で9本投げつける。
神速の速さで飛来したサーベルに全身を貫かれて、魔女の動きが止まる。
剣を1本手にして、杏子を縛り上げる蔦を切り裂く。
「大丈夫?」
「……ばっかやろー。他人の為に契約なんかしやがって……」
さやかに抱き起されながら、杏子は悪態をつく。
「他人なんかじゃないよ」
さやかはきっぱりと言い切る。
「あたしは大切な友達を……仲間を守りたかったんだ。だから……」
「後悔なんて、あるはずがない!!」
触手を再び伸ばしてくる魔女の攻撃を剣で切り払いながら、さやかは叫んだ。
「……ばっかやろう」
「自覚はあるよ!! あんまバカバカ言わないでよね!!」
飛んでくる触手を切り払いながら、さやかは叫ぶ
「あーっ!! こんな馬鹿放っておけるかよ!! さやか、あたしについてこい!!」
頭を掻きながら、杏子はさやかに言う。
「……あたしはまだまだ駆け出しだからね。頼りにしてるよ、相棒!!」
「……へっ。相棒か……」
杏子が槍を構える。
「悪くないな!!」
杏子とさやかはお互いに笑みを浮かべながら、魔女へと向かって走り出した……。
178 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/04(水) 00:14:19.06 ID:T3EZ6zRYo
☆
「くそっ!! まさかこんな風に分断されるなんて!!」
芳文は夜の見滝原市街を走りながら思わず愚痴る。
「まどかちゃん、みんな、無事でいてくれよ!!」
仲間の安否を祈りながら、芳文は上空に浮かぶ巨大な逆さまの魔女の元へと走る。
「あれは!?」
時折起こる地震で、道路が裂けたり、塀が崩れるのを避けながら走っていると、上空の魔女が見慣れたピンク色の光に包まれるのが見えた。
「まどかちゃん!!」
――まどかがたった一人で戦っている。
その事実に芳文の心に焦りを生む。
「くそっ!!」
走りながら思い切り跳躍すると、民家の屋根の上に着地する。
「――急がないと!!」
屋根の上から上を飛んでいく。
避難を開始した市民に見られたが、芳文はそれを無視して最短ルートを突き進む。
そしてまどかの元へ急ぐ道中、杏子とさやかが魔女と戦っているのを見つけた。
「あれは……まさか、さやかちゃん契約したのか!?」
芳文の視線の先。
「あの魔女は!?」
かつて、マミの頭を噛み砕こうとしたお菓子の魔女。
それにそっくりな魔女に杏子とさやかは苦戦していた。
杏子の槍が、さやかの両手に握られた二本のサーベルが、巨大な蛇のような体を斬り裂く。
――だが、魔女は斬り裂かれた矢先に口の中から新しい体を次々と吐き出す。
芳文は二人の元へと跳躍し、魔女の顔を思い切り蹴りつけた。
ズガアァァァァァァァンッ!!
鋭く尖った牙を吐きながら、魔女は吹っ飛ばされる。
「……先輩!?」
「……社!?」
いきなり乱入してきて魔女の巨体を軽々と蹴り飛ばした芳文に、さやかと杏子は驚愕する。
「杏子ちゃん、あいつの口の中を狙うんだ。君の奥の手を叩き込めばあいつは倒せる」
芳文がそう言い終わると同時に魔女が三人に迫る。
「さやかちゃん借りるよ!!」
芳文はさやかの両手から二本のサーベルをひったくり、二本同時に魔女へと投げつける。
ヒュンヒュンッ!!
グサグサッ!!
二本のサーベルが寸分違わず魔女の両目に突き刺さる。
179 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/04(水) 00:15:09.56 ID:T3EZ6zRYo
「今だ!!」
「喰らえ!!」
両目を潰された魔女の口内に、杏子が顕現させた巨大な槍が突き刺さり、体の先端までぐちぐちゃに引き裂く。
バアァァァァァァァァァンッ!!
魔女の体が木端微塵に粉砕され消滅し、さやかのサーベルとグリーフシードが地面に転がる。
「先輩、さっきの蹴り……」
さやかが芳文に尋ねようとしたその時、新たな魔女の叫び声が木霊する。
「くそっ!! まどかが一人で戦っているってのに!!」
杏子が毒づく。
「……後で全部話すよ。二人とも、ここは任せてもいいかな。俺はまどかちゃんの所に行かないといけない」
芳文はそう言って、グリーフシードとさやかのサーベルを回収する。
「悪いけど、この剣とグリーフシードはもらっていくよ。まどかちゃんを助けるのに必要だから」
芳文はさやかのサーベルを握りしめ、グリーフシードをポケットに突っ込む。
「ちょっと待った」
杏子が芳文を呼び止める。
「その剣、こっちにかざしな」
杏子の指示に従ってさやかのサーベルをかざす。
杏子がかざされたサーベルに手を当てて魔力を流し込む。
さやかのサーベルが杏子の魔力によって、刀身の先端がまるで船の錨のような形をした大型の剣へと変形する。
「持っていきな。マギカ・ブレードほどの威力はないかもしれないけど、魔法少女2人分の魔力で出来た剣だ」
そう言って、杏子は真剣な表情で芳文の顔を見つめて言う。
「きっとまどかはあんたを待ってる。早く行ってやりな。あたし達もすぐ追いかける」
「――ありがとう」
芳文は杏子に礼を言って背を向ける。
「先輩!!」
さやかに呼び止められ、背を向けたまま顔だけ振り返る。
「まどかを……絶対に守って」
「――ああ」
芳文はさやかに短くて力強い返事を返すと、再び跳躍して、まどかの元へと急ぐ。
まどかの元へと急ぐ芳文の眼前に、鳥の様な姿をした魔女が向かってくる。
「邪魔をするな!!」
空中で魔女に刀身を向ける。
ガチン。
剣の柄にあるトリガーを人差し指で押し込んだその瞬間。
バシュッ!!
刀身が音速の速さで射出され、魔女の体を貫通する。
芳文はワイヤーで繋がれた刀身をまるでムチのように操り、魔女の体に巻きつけると、トリガーから人差し指を放す。
ギュルギュルギュルッと音を立てながら、ワイヤーが巻き戻され、絡みついた刀身が魔女の体をズタズタに引き裂きながら、元の刀身へと戻る。
全身をズタズタにされて落下する魔女の体を一閃し、真っ二つにする。
芳文が着地すると同時にグリーフシードが落ちてくる。
芳文はそれをキャッチすると再び走り出した。
180 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/04(水) 00:16:18.33 ID:T3EZ6zRYo
☆
「はあ、はあ……」
ワルプルギスの夜を封印しつづけるまどかの顔には、疲労の色が深く現れていた。
「魔力を使いすぎると、こんなに辛いんだ……」
――体がだるい。
――目が霞む。
――ワルプルギスの夜の、不愉快な甲高い笑い声さえも聞こえにくくなっている。
まどかは今まで、いかに自分が恵まれた環境だったかを思い知る。
「……先輩」
いつも守ってくれた少年の優しく微笑む顔が脳裏に浮かぶ。
――そして、遂にまどかの魔力の限界が訪れた。
ワルプルギスの夜の破壊の波動が、魔力を使い切ったまどかの封印魔法を粉砕し、まどかを吹き飛ばす。
「きゃあぁぁぁぁぁっ!!」
地面に叩きつけられたまどかの変身が解け、まどかのソウルジェムが地面に転がる。
まどかは地面を這いながらソウルジェムを掴むと、再び立ち上がろうとする。
――ドクンッ。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
体の中から――いや、まるで魂の中から、襲い掛かってくるような悪寒と激痛に、まどかはたまらず地面に倒れ伏し、のた打ち回る。
(な、なに、これ……!?)
今まで味わった事のない激痛と不快感に、まどかは涙を流しながら苦しむ。
(これが、あの魔女の力なの!? 痛い痛い痛いっ!! 先輩、助けて!!)
手の中のソウルジェムがドス黒く濁り、不気味な明滅を繰り返しているのに、まどかは気付かない。
たった一人で戦い抜いて傷ついた少女は、ひとりぼっちで泣きながら助けを求め続ける。
(……わたし、ここで死んじゃうのかな)
ワルプルギスの夜が笑いながら近づいてくる。
(……最後にもう一度会いたかったな)
思わずそんな事を考えてしまい、まどかは気付いた。
(……そっか。わたし、先輩の事好きだったんだ)
ワルプルギスの夜が迫る。
(先輩……)
――まどかが死を覚悟した次の瞬間。
181 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/04(水) 00:17:21.85 ID:T3EZ6zRYo
ワルプルギスの夜がすさまじい爆発に飲み込まれる中、まどかはほむらに抱きかかえられていた。
「まどか!!」
「……ほむら、ちゃ……」
ほむらは物陰にまどかを下すと、まどかの手の中にあるソウルジェムの状態に顔をしかめる。
「どうして逃げなかったの!! 一人でこんな無茶をして!!」
ほむらはひとつだけストックしていたグリーフシードを盾から取り出して、まどかのソウルジェムの浄化を始める。
(……こんなに大きなソウルジェムだと、グリーフシード一個じゃ完全に浄化しきれないかもしれない)
ソウルジェムの穢れが吸い込まれるたびに、まどかの顔色が少しずつ良くなっていく。
グリーフシードが穢れを吸い込める限界寸前になったその時。
ドカアアアアアアアンッ!!
ほむら達の隠れていた場所ごと二人は吹き飛ばされ、ほむらとまどかは地面の上を転がる。
今までの疲労で満足に動けずに、無防備なまま地面に叩きつけられまどかは気を失いそうになる。
工事現場のタンクローリーが、ワルプルギスの夜の力で軽々と浮き上がり、そして。
起き上がったほむらの目の前で、まどかに向かって投げつけられた。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ほむらの絶叫が響く。
まどかの目前へタンクローリーが飛んできたその時。
いずこかから現れた影が、タンクローリーを回し蹴りで蹴り飛ばした。
ズガアアァァァァァァァァァァァァァンッ!!
グシグシャに破壊されたタンクローリーが、瓦礫の山に突き刺さる。
「……やっぱり、きて……くれた」
自分を庇ってくれた人物の後姿を見て、まどかは笑みを浮かべてそう呟いた。
つづく
182 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/04(水) 00:26:13.04 ID:T3EZ6zRYo
杏子「次回、第12話「わたしのヒーロー」に続く」
杏子「今回登場した武器の解説をするよ」
杏子「さやかの剣にあたしの魔力を合わせた合体剣!! その名も!!」
杏子「アンカースラッシャー!!」
杏子「このSSの中で2番目に強い剣だ」
杏子「さやかの剣よりも大型化してて、刀身の先が船のいかりのようになっているのが一つ目の特徴だ」
杏子「そしてもうひとつの特徴は柄のトリガーを押す事で刀身が弾丸のように射出される」
杏子「トリガーを戻すと、元に戻る。射出された刀身は魔力のワイヤーで繋がっていてムチのように振るうことが出来る」
杏子「簡単に説明すると、ドラクエの天空の剣に似た剣をスイッチひとつで、ガリアンソード……リリカルなのはのシグナムの剣みたいに変形できる武器だ」
杏子「ちなみにさやかの剣の名前ははさやかサーベルで、あたし単独で作った場合はあんこスラッシャーだと」
杏子「あんことさやかの剣だから、あんかースラッシャーだってさ。後日社をシメたのは言うまでもない」
杏子「じゃーな」
183 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/05/04(水) 14:47:39.31 ID:MuuEeQAro
>アンカースラッシャー
クソフイタwwwそっちかよwww
184 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/05(木) 20:35:29.80 ID:lIHne2F1o
杏子「更新開始するよ」
185 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/05(木) 20:35:59.38 ID:lIHne2F1o
――それは、いつか見た光景と同じだった。
たった一人で戦って、傷ついて、魔力を使い切った少女。
私の目の前で、彼女がまた……死んでしまう。
――時間停止が間に合わない。
今の私には、彼女を助ける為の力がない。
彼女が、巨大な重量物に押し潰されそうになった、その時だった。
――彼が。
――私の息子が、彼女の命を救いに現れた。
第12話 「……わたしのヒーロー」
186 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/05(木) 20:36:31.51 ID:lIHne2F1o
意識が朦朧としているまどかを抱き上げ、芳文はよろよろと立ちあがったほむらにまどかを託す。
「まどかちゃんの事、頼む」
そう言って、ここへの道中手に入れた、二個のグリーフシードも手渡す。
「……わかったわ」
ほむらはまどかを抱いて崩れた瓦礫の影に退避し、まどかを地面に横たえるとまどかのソウルジェムの浄化を再開する。
「……うぅ」
「まどか!? しっかりして!!」
まどかに呼びかけながら、ソウルジェムの浄化を続けていると、やがてまどかの意識がはっきりしてきた。
「ほむらちゃん……私……」
「いいから、今はじっとしていなさい」
「……先輩は?」
「……ワルプルギスの夜と戦っているわ」
ほむらの言葉と共に、轟音と共にまどか達が隠れている瓦礫が吹き飛ばされる。
ほむらは咄嗟にまどかの上に覆いかぶさり、まどかを庇う。
やがて、瓦礫の山がすべて吹き飛び、轟音が鳴り止むとほむらはまどかに声をかける。
「まどか、大丈夫!?」
「う、うん……!?」
ほむらに返事を返したその時。
まどかは芳文が超人的な身体能力を発揮して、ワルプルギスの夜の使い魔達を倒している光景を見て絶句した。
斬撃の合間に芳文の放つ蹴りが、肘打ちが、使い魔達を一撃で粉砕している。
人間の身体能力では有り得ない速さで動きながら、ありえない跳躍力でワルプルギスの夜に斬りかかり、魔力の波動で吹き飛ばされる。
空中で一回転して姿勢を整えて地面に着地すると、再び襲い掛かってくる使い魔達を撃破していく。
「せ、先輩……」
目の前で繰り広げられる、信じられない光景にまどかが絶句する。
複数の使い魔達の中から、人型の使い魔が猛スピードで、絶句しているまどか目掛けて飛来する。
「させるか!!」
まどかへの奇襲に気付いた芳文がまどかの元へ全速力で走り出す。
――ガチン。
剣のトリガーを押して、刀身を射出し使い魔を串刺しにすると、そのまま剣を振り回して自分の後を追ってくる使い魔達をまとめて斬り裂く。
使い魔達を殲滅してまどか達の元へ辿り着くと、芳文はまどかを庇うように立つ。
ワルプルギスの夜が使い魔を再び生み出す。
芳文はその場で剣を構え、使い魔を迎え撃とうととする。
「……先輩。……その、力は?」
まどかが震える声で芳文に疑問を投げかける。
「……ごめん。俺はまだ、ひとつだけ君に嘘をついてたんだ」
襲い掛かってくる使い魔達を斬り倒しながら、芳文はまどかに謝罪する。
「君にこの力を見せて、嫌われたくなかったんだ」
「……先輩」
芳文の謝罪に、まどかがどうしたらいいのかわからない顔で、困惑する。
芳文はそんなまどかの表情に、寂しげな笑みを浮かべながら、次々と襲い掛かる使い魔達を斬り裂き全滅させた。
187 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/05(木) 20:37:10.01 ID:lIHne2F1o
「……まどか。社芳文。良く聞きなさい」
そんな二人に対して、それまで沈黙を保っていたほむらが声をかける。
「――まどか、あなたの願いは社芳文の命を救う事だったたわね」
「……うん」
「――契約の対価として叶えられる願いは、契約者の魔力を使って行われる」
そう言って、芳文に視線を向けて、ほむらは言葉を紡ぐ。
「――あなたの傷ついた体はまどかの魔力で修復された。その時にあなたはまどかと繋がった」
まどかと芳文の顔を交互に見ながらほむらは続ける。
「――まどか、あなたはこの世界最強の魔法少女。あなたの力は祈りと願いを魔法として行使する物」
まどかの顔を見つめながら、ほむらは結論を言った。
「――あなたが望んだから、彼は巨大な戦闘能力を手に入れたのよ」
「……嘘。わたし、そんな事、望んでない……」
まどかは弱々しく否定する。
「これは私なりの仮説でしかない。けれど、この仮説が成り立てばすべて説明がつくわ」
「あなたは無意識に望んだの。自分と一緒に戦ってくれる、強いパートナーを」
「そんな……。それじゃ、わたし先輩の事……人じゃなくしちゃったの?」
涙をぽろっと零し、まどかは今にも泣き出しそうな顔で、弱々しく呟く。
「……まどかちゃん。泣かないで」
芳文は俯いて今にも泣き出しそうなまどかに、優しく声をかける。
「俺は嬉しいよ。――だって、この力は君が俺に望んで、与えてくれた物だってわかったから」
「……先輩」
まどかが恐る恐る顔を上げて芳文の顔を見ると、芳文は優しい顔でまどかに微笑んだ。
「……っ。でも、わたし」
「まどかちゃん。俺を君のパートナーとして、一緒に戦わせてくれないか」
そう言って、芳文はしゃがみ込むとまどかの頭を優しく撫でてやる。
「――今も、これからも」
「……ごめんなさい」
まどかは涙をぽろぽろと流して、芳文に謝る。
「違うよまどかちゃん。こういう時は、ありがとうって言ってほしいな」
そう言って、芳文はまどかに笑いかけながら言った。
「君の泣き顔は見たくない。俺の荒んだ心を救ってくれた君には、いつだって笑っていてほしいんだ。だから……」
「……ありが……とう」
芳文のその言葉に、涙を拭いながらまどかは芳文に精一杯笑ってみせる。
芳文はまどかに頷くと、立ち上がってほむらに向き直り頼む。
「巴さん達も直にやってくる。それまでまどかちゃんの事頼むよ」
「……わかったわ」
ほむらが頷く。芳文はワルプルギスの夜に向き直ると、新しく生み出された使い魔達に向かって走り出した。
「……わたし、これからどうしたらいいのかな」
使い魔達を次々と撃破していく芳文の姿を見ながら、まどかは小さく呟く。ほむらはそんなまどかに、出来るだけ優しく、言い聞かせるように語りかける。
「……彼が戦っている姿をしっかり見てあげなさい。彼は、あなたのヒーローになる為に戦っているのだから」
「……わたしのヒーロー」
「ええ。彼には後悔なんてないわ。あなたももう、気にするのはやめなさい」
「でも……」
「女の子なら、一度くらい自分だけのヒーローや白馬の王子様に憧れる物でしょ? 今回たまたま、それが実現しただけよ」
ほむらが真面目な顔でそう言い切ると、まどかはきょとんとした顔でほむらの顔を見ながら尋ねる。
「ほむらちゃんも……そうだったの?」
「……そうね。私にも、そういう時期があったわ」
そう答え、かつて自分を救ってくれたまどかと亡き夫の姿を思い浮かべる。
使い魔と戦う芳文の姿を見ながら、ほむらは心の中で芳文に言った。
(……絶対にまどかの元へ戻ってきなさい。あなた自身が望んだ、まどかだけのヒーローとして)
188 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/05(木) 20:37:37.79 ID:lIHne2F1o
☆
使い魔達を倒しても倒しても、ワルプルギスの夜は新しい使い魔を生みだしてくる。
近づいて攻撃しようとしても、使い魔達の包囲と魔女の放つ魔力の波動で近づけない。
傷ついたまどかの回復はまだ完了せず、ほむらはまどかを守る為に動けない。
そんな状況下の中、芳文は一人戦い続ける。
使い魔達を全滅させても、すぐにまた新しい使い魔達が生み出される。
「くっ!!」
――芳文が剣を構えたその時だった。
――複数の銃弾が使い魔達を撃ち抜き、殲滅した。
「社君おまたせ!!」
マミがマスケット銃を片手に芳文の元へと、着地する。
鳥型使い魔が芳文とマミの元へ飛来する。
二人がそれぞれの武器を構えたその時――。
赤い影と青い影が二人の前で交差し、鳥型使い魔が消滅する。
「待たせたな」
「これで全員揃ったね」
杏子とさやかの二人が、芳文とマミに振り向いて言った。
「美樹さん、あなた……」
魔法少女姿のさやかに驚いているマミに、さやかは晴れ晴れとした顔で答える。
「マミさん。あたし、願いが見つかったんです。みんなを……大切な仲間を守りたいって言う願いが」
「だってさ。まだまだ危なっかしいから、あたしが面倒みなきゃなんねーけど」
「それが相棒の勤めでしょ?」
「へいへい」
軽口を叩く二人に、マミはクスっと笑う。
「……これで全員揃ったわね」
四人の元へほむらが合流する。
「まどかちゃんは?」
芳文の問いに、ほむらは髪を掻き上げながら答える。
「あの子に頼まれたのよ。まだ動けない自分に変わって、あなた達に加勢してほしいと」
「……わかった。それじゃあの化け物をとっとと片づけようか」
そう言って、芳文は四人の顔を交互に見て言葉を続ける。
「俺に作戦がある。君達全員の協力があれば絶対に勝てる」
「……どんな作戦?」
ほむらの問いに、芳文はほむらの顔を見つめながら問う。
「暁美さんの時間停止は、何故か俺には通じない。君の魔法の影響を、杏子ちゃんに与えずに使う事は出来るかな?」
「……出来るわ」
時間停止と言う言葉に、驚くマミ達を視界にも入れず、ほむらはそう答える。
「よし。それなら大丈夫。作戦はこうだ。まず、暁美さんの時間停止で奴の動きを止める。次に杏子ちゃんの奥の手で奴の破損している歯車の部分に攻撃してもらう。その時に……」
芳文はそこで一旦区切って、作戦内容を続けて全員に話す。
「杏子ちゃんの槍の上に乗って、俺があの化け物の上に飛び乗る」
『なっ!?』
芳文の最後の言葉に四人は絶句する。
189 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/05(木) 20:38:12.06 ID:lIHne2F1o
「見ていて気付いたんだが、奴は台風の目そのものだ。奴の波動は自分の直近には発生しない。飛び乗って攻撃すれば……」
「待ちなさい!! あなた自分が何を言っているのか、わかっているの!?」
芳文の提案にほむらが抗議の声を上げる。
「わかっているさ。体の小さい奴が、図体のでかい奴にケンカで勝つにはこれしかない。――奴の上に飛び乗って、ボコる」
「な!? これはケンカじゃないのよ!!」
「そうだな。けどあの化け物は俺の大切な物を傷つけてくれた。この手でぶっ潰さないと腹の虫が収まらない」
「っ!! あの魔女にはジェム砕きがある!! 下手に近づいたら……!!」
「ジェム砕き?」
「強力な超音波攻撃よ。過去にそれでソウルジェムを砕かれた魔法少女を、私は知っている」
かつて、ソウルジェムを砕かれて倒れた二人の魔法少女の最後が、ほむらの脳裏に過る。
「確かに、魔法少女の力の源を砕かれたら、戦えなくなるな。けど、俺はソウルジェムを持っていないから大丈夫」
そう言い切った芳文の顔をじっと見つめて、ため息をひとつ付くとほむらは口を開いた。
「止めても無駄のようね。けれど、絶対に死なないでまどかの元へ帰ってくる事。あの子を悲しませる事をしたら許さない」
「わかった」
芳文はそう返事を返し、マミとさやかに向き直る。
「さやかちゃんは巴さんのサポート。巴さんはさやかちゃんと二人で、限界まで魔力を込めてティロ・フィナーレを撃ってほしい」
「とどめを刺すのは君達の手にかかっている。俺は君達の準備が出来るまでの間、杏子ちゃんの奥の手で破損した部分から、あいつにダメージを与え続ける」
「杏子ちゃんと暁美さんは、もし使い魔達が攻撃してきたら二人を守ってほしい。作戦は以上。いいかな?」
四人は顔を見合わせると、芳文に頷いた。
「よし。反撃開始だ!!」
190 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/05(木) 20:39:04.07 ID:lIHne2F1o
☆
全員で新たに生み出され、襲い掛かってきた使い魔達を殲滅し、芳文が叫ぶ。
「暁美さん、杏子ちゃん!!」
――カチリ。
ほむらが杏子の肩に手を載せて、時間停止を発動する。
停止した時間の中で、杏子は巨大な槍を顕現させる。
芳文は杏子の槍の上に飛び乗る。
「社、落ちるなよ」
「わかってる」
「……生きて帰ってこいよ」
「ああ。こんな所で死ぬ気はないから」
芳文の言葉に杏子は頷くと、全力でワルプルギスの夜目掛けて槍を撃ちこんだ。
ズガアァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
まどかの攻撃で砕けた歯車の破損や箇所に、寸分違わず撃ち込まれた槍が、歯車の中心近くまで突き刺さった。
――カチン。
ほむらの盾のギミックが停止し、時間停止が解除される。
歯車を破壊されたワルプルギスの夜の巨体が、大きく揺れる。
――バスッ!!
魔女に突き刺さる寸前の槍の上から、天高くと跳び上がった芳文の手の中から射出された剣先が、魔女の体に突き刺さる。
刀身を元に戻しながら、ワルプルギスの夜の上に飛び乗った芳文は、ひびの入った歯車を思い切り踏みつける。
ズガアアァァァァァァァァァンッ!!
歯車が陥没し粉砕される。
「おい化け物。今まで散々やってくれた礼をしてやる」
全力で剣を叩きつけて歯車を斬り裂く。
「本物の暴力の味を教えてやる!!」
ヒュッ!! ズバスバッ!!ヒュッ!! ズバズバスバスバッ!!
歯車を滅茶苦茶に斬り裂き、踏みつけ、破壊する。
今まで受けた事のないダメージをじわじわと与えられ、逆さまの魔女は苦しげに両腕を芳文目掛けて伸ばす。
ズガアアァァァァァァンッ!!
芳文目掛けて振り下ろされた拳が、自らの歯車を破壊する。
魔女の拳を躱した芳文が、蛇腹剣を魔女の腕に巻きつけて、思い切り引き絞る。
ズバァァァァァァァァァァァァンッ!!
魔女の右腕が輪切りにされて、歯車の上と地面に落下する。
魔女の左腕が、芳文を捕まえようと迫る。
芳文の空中で放った蹴りが、魔女の薬指と中指を粉砕する。
蛇腹剣を元に戻し、そのまま残りの指を斬り落とすと、掌を思い切り蹴り飛ばすし、大穴を開ける。
191 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/05(木) 20:40:08.81 ID:lIHne2F1o
キィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ……!!
不意にワルプルギスの夜から、強力な高周波が発生する。
――それは、今まで数多くの魔法少女達のソウルジェムを打ち砕いてきた、必殺の一撃。
芳文の服に裂け目が入り、頬が裂ける。
ズドンッ!!
全力の蹴りを歯車の中心に撃ちこみ、刀身を射出する。
魔女の中心付近まで、撃ち込んだ刀身を思い切り振り上げる。
ズガァァァァァァァァァァァァンッ!!
歯車の三分の一が両断されて、地面へ落下していく。
高周波が消える。
いつの間にか裂けた傷が塞がっている事に、芳文は気づく事もなく、逆さまの魔女を徹底的に蹂躙する。
遠く離れた場所でその光景を見ながら、契約の獣は信じられないと言った様子で、誰にともなく淡々と呟いた。
「――ありえない。あんな存在ありえない。僕はまどかの願いを叶えただけだ。彼を絶対に死なないようにしただけだ。なのに――」
「――何故、彼にあんな力があるんだ? これはまどかの力なのか。まどかの無意識の願いが、彼にこれだけの力を与えたとでも言うのか」
「一体、何なんだ。あの正体不明(アンノウン)は?」
その疑問に答える者はいない。
今まで数多くの魔法少女を葬り、破壊の限りを尽くしてきた魔女がどんどん崩壊していく。
「……マミさん!!」
杏子とほむらの援護を受けながら、マミの巨大マスケット銃に両手をかざし、魔力を注ぎ込んでいたさやかがマミに叫ぶ。
「ええ!! 美樹さん良く頑張ってくれたわね。社君、行くわよ!!」
魔法少女ではない芳文に、一方的に送るだけのテレパシーで合図を送る。
「ティロ・フィナーレ!!」
さやかとマミ、二人の魔法少女の魔力を限界まで込めた一撃を逆さまの魔女に放つ。
凶暴なまでの破壊力を秘めた一撃が、魔女の腹部と歯車の継ぎ目を貫いた。
「やったあ!!」
勝利を確信したさやかが叫んだその時だった。
腹部に大穴を開けられ、歯車の半分以上が欠損したワルプルギスの夜が、まばゆい光を放ちながら、これまでよりも強力な波動を放った。
ほむらが、杏子が、さやかが、マミが、咄嗟に張った魔力のシールドごと吹き飛ばされる。
手にした剣にヒビが入るのを見ながら、芳文はワルプルギスの夜の上から吹き飛ばされ、宙を舞う。
192 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/05(木) 20:40:54.96 ID:lIHne2F1o
ワルプルギスの夜の放った破壊の波動が、見滝原市の人々が住む住宅街へと届く寸前。
眩くピンク色に輝く巨大な魔力の壁が展開し、破壊の波動を打ち消した。
「先輩!!」
まどかの叫びが、芳文にははっきりと聞こえた。
空中を落下しながら、声の聞こえた先に目を向けると、魔法少女の姿へ変身したまどかが弓を構えて立っている。
「先輩!! お願いします!!」
まどかが三本の矢を放った。
二本の矢が、逆さまの魔女の上下に着弾して巨大な封印の光球を形成する。
そして最後の一本の矢が、芳文の持つボロボロになった剣へと着弾して吸い込まれる。
芳文の手に、使い慣れた最強の剣が顕現し、金色の光を放ちながら柄から魔力によるジェット噴射を発生させる。
「――うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
長大な魔力の刃を発生させたマギカ・ブレードを構えて、芳文がワルプルギスの夜へ向かって飛ぶ。
「先輩!!」
「社君!!」
「やっちまえ!!」
「――芳文!!」
四人が芳文に向かっ叫ぶ。
「お願い!! 勝ってください!!」
まどかが勝利を祈る。
マギカ・ブレードの輝きが更に増していく。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
芳文はワルプルギスの夜を一瞬で四分割し、とどめの唐竹割りを叩き込みながら頭上を飛び越えて、地面を削りながら着地する。
両足に力を込めて地面を削るのを止めながら、魔女へと向き直りマギカ・ブレードを構える。
封印魔法の内部で、バラバラに斬り裂かれながらもまだ、ワルプルギスの夜は外界へ向けての破壊の波動を放ちながら、徐々に消滅していく。
そして、封印魔法の内部でバラバラにされた魔女は自爆した。
――それは生きとし生けるもの、すべてに等しく死を与えようとする最後の断末魔だった。
細胞の欠片ひとつ残さず、自爆した魔女の残骸を飲み込み、封印魔法が消滅する。
――長かった夜が明ける。
芳文はマギカ・ブレードを両手でブンブンと頭上、右側面、正面、左側面へと移動させながら振り回す。
やがて噴射が消え、刀身の輝きが収まるのを確認して地面に剣を突き立てた。
――こうして、誰一人欠ける事無く、まどか達は最悪の事態を乗り越えたのだった。
「――終わった」
徐々に白み始める世界の中で、芳文かそう呟いたその時だった。
まどかが芳文に向かって走ってきた。
「先輩!!」
まどかが両手を広げて、目に涙を湛えながら芳文に抱きついてくる。
芳文はそんなまどかの小さな体を優しく抱きとめる。
「先輩、先輩!!」
まどかが涙を流しながら芳文を呼ぶ。
「よく頑張ったね」
「うぅぅぅぅ、先輩……」
たった一人で戦った魔女への恐怖と、無事に生還した芳文への想いとが入り混じった感情を処理しきれず、まどかは芳文に抱きついたまま泣き続けた。
ほむら達は少し離れた場所で、そんな二人を見守りながら優しい笑みを浮かべるのだった。
193 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/05(木) 20:41:48.59 ID:lIHne2F1o
☆
やがて、しばらくの間泣き続けていたまどかが目元の涙を拭って、優しい顔で抱きとめてくれていた芳文の顔を見上げて微笑む。
「――もう大丈夫?」
「――はい」
「遅くなってごめん」
「謝らないでください。きっと来てくれるって、わたし信じてましたから……」
「これからも、君が危ない時は必ず助けに行くから」
「……はい」
まどかは芳文の言葉に微笑みながら、そう答える。
「おーい、二人ともーっ!!」
芳文とまどかが顔を向けると、さやかが笑顔で手を振っていた。
杏子とマミも、晴れ晴れとした笑顔で二人に微笑んでいる。
「行こう」
「はい!!」
きれいな青空の下、輝く朝日に照らされながら芳文とまどかは仲間たちの元へと歩いていく。
ほむらはただひとり、笑顔でそれぞれの無事を喜び合う五人の姿を尻目に、静かにその場を立ち去った。
「……ワルプルギスの夜は倒した。けれど……」
嬉しそうに笑っている魔法少女姿のまどかと、そんなまどかを優しく見守る芳文の姿にほむらは複雑な胸中を一人呟いた。
「――せめて、今だけは」
つづく
194 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/05(木) 20:48:44.15 ID:lIHne2F1o
杏子「第一部完!!」
杏子「アニメ本編と違いまだまだ続くんだよ」
杏子「さてと、あんた達に質問だ」
杏子「社とまどかがいい雰囲気になってきたんだが、仲良くなったらまどかになんて呼ばれたい?」
杏子「SSの性質上、社芳文と言う名前がついてるけど、脳内ギャルゲー和ルートなんだ。この話は」
杏子「読者=プレイヤーキャラ=社みたいな感じで書いてるんで、まどかに呼ばれたい呼び方を決めてくれ」
杏子「芳(よし)くんと芳文さん。このふたつのどっちがいい?」
杏子「こういうSSの性質上、非常に読者が少ないので、5レス以内に希望が多い方にするよ」
杏子「レスがない、希望がなかった場合は芳文さんで固定して続きを書くそうだ」
杏子「じゃ、またな」
195 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/05(木) 20:50:06.60 ID:lIHne2F1o
杏子「訂正するよ」
誤 杏子「SSの性質上、社芳文と言う名前がついてるけど、脳内ギャルゲー和ルートなんだ。この話は」
性 杏子「SSの性質上、社芳文と言う名前がついてるけど、脳内ギャルゲーまどかルートなんだ。この話は」
196 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/05(木) 20:57:21.01 ID:QGwFd6yxo
お疲れ様でした。
呼び方は呼び捨てがいいかなぁ・・・・・・。「芳」だけでもいいでしょうかねぇ・・・・・・・。
197 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/05(木) 23:16:38.93 ID:/uLeHaASO
乙。一気に読ませて貰いましたがとっても面白かったです。
まどかの性格から考えて芳文さんかな〜?
198 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/06(金) 01:11:23.07 ID:V2mDCunOo
乙ダルヴァ
芳文さんじゃろう。1週目なら芳くんもありだが
199 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/05/06(金) 13:53:32.25 ID:do5ZMgU/o
乙
よっくんもありじゃね?
200 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/06(金) 16:28:13.31 ID:heKdNc3IO
芳文さんか芳くんかなあ
201 :
!ninja
[sage]:2011/05/06(金) 18:27:35.33 ID:qYGItNh1o
芳文さんだな
個人的なイメージだけどこれしかない
202 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/06(金) 18:43:53.55 ID:2BPm8Jkko
杏子「単発レスだよ」
杏子「とりあえずまどかの呼び方は゛芳文さん≠ノ決定」
杏子「貴重な意見をサンキュー。これだけじゃなんだから、本編で語る事のない裏設定を語ってあげるよ」
杏子「このSSのまどかは、実は弱いんだ」
杏子「この世界の中では最強の魔法少女だけど、アニメ本編の各ループの魔法少女まどかは勿論、他のシリアス系SSに出てくる魔法少女鹿目まどかと1体1で戦ったら、間違いなく負ける」
杏子「この話のまどかの魔力はアニメ第10話の4週目まどかとほぼ同等なんだ。だから、アニメ最終回のまどかには絶対に勝てない」
杏子「そして他のまどかに勝てない理由が3つある。そのひとつが、戦ってきた環境が恵まれすぎてて、戦闘の経験値が少ない事」
杏子「小人数や個人で戦ってきたまどか達に戦闘テクニックで負けてる上、実は身体能力も設定上普通の人間よりちょっと強い程度のほむらとほぼ同等」
杏子「そして絶対勝てない理由のもうひとつが、仲間の死等を乗り越えるイベントも経験してないので、メンタルが弱い事」
杏子「最後のひとつがこちらのまどかは攻撃よりも防御のほうが得意なので、1体1でやりあったら必ず後手に回ってしまう」
杏子「固有能力の絶対防御壁(マギカ・イージス)を展開している限り、最終回まどか以外の攻撃は完全に防げるが、弓が使えないのでいずれ魔力切れに追い込まれる」
杏子「絶対防御壁を解いたら、戦い慣れている各まどか達にテクニックとこちらより高い身体能力で、翻弄されて負ける」
杏子「ただし、まどかの力でパワーアップしている社をまどか自身の力としてカウントして使った場合は話は別だ。もし戦いになれば、各まどか達が瞬きしたその瞬間には一気に距離を詰められて、ソウルジェムごとその体を鉄拳で貫かれてるだろう」
杏子「社が素手ならなんとか逃げる事も出来るだろうが、もしマギカ・ブレードを持っていれば、各まどか達には絶対に勝ち目がない。例え分裂矢を放っても、全部切り払って一瞬で距離を詰めてくる」
杏子「シールドを張ってもそのまま叩き斬られるか、マギカ・ブレードの投擲で殺される。たとえ向こうのほむらが介入しても時間停止が社に効かない時点で詰む」
杏子「社は吸血殲鬼ヴェドゴニアとほぼ同等の身体能力を、まどかの無意識の願いで与えられているんだ。そんな奴に狙われたら勝てるわけがない」
杏子「つまり、この話のまどかは他のまどか達が手に入れられなかった物を持っている。社がいて、あたし達が全員生きている。これだけが強みなのさ」
杏子「12話で魔法少女になったさやかは、アニメ本編のさやかよりも強化された身体能力が遥かに高い代わりに、自己再生能力がなくなってる。身体能力だけはあたし以上だ。経験値が絶対的に足りないけどな」
杏子「じゃーな」
203 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/06(金) 19:22:59.71 ID:rrBt3tljo
・・・・・・・・・まどかさんは兎も角社さんに関してはなんだか色々やりすぎな感がありますね・・・・・・・・・。
204 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/06(金) 20:24:51.82 ID:2BPm8Jkko
杏子「書き込みエラーが出たからご飯食べてきた。追記」
杏子「社の能力設定について」
杏子「仮面ライダーとのクロスSSやワルプルギスを倒したSS、アニメ本編の描写を見て決めたそうだ」
杏子「わかりやすい例えとしてヴェドゴニアの名前を出したが、当然ヴェドゴニアのほうが強い。むこうは牙と爪もあるし、耐久力も向こうの方がはるかに上だ。まどかの無意識の願いでパワー、スピード、ジャンプ力、反射神経がヴェドゴニア並みになってるだけだから」
杏子「また各まどかとの仮想戦闘についても付け加えておくよ。社を使っても長距離狙撃で攻撃されたり、十分な距離を取られていたら、他のまどかに勝つのは難しいだろう」
杏子「マギカ・ブレードを作る時に狙撃される、弾幕を張られて社が近づけない、負ける要素は多い」
杏子「どんなに優れた身体能力を手に入れても、社は所詮人間でしかない。殴る、蹴る、剣術しか攻撃手段がないし、武器は魔法少女に作ってもらわないといけないしな」
杏子「その代わり、近距離、中距離で戦闘開始した場合に限り、こちらがはるかに有利になる」
杏子「まあじゃんけんみたいなもんだね。1対1では他のまどか達に絶対勝てないけど、社を使って近距離、中距離戦に持ち込めば勝てるようになるって事さ」
杏子「……正直な所、話の都合上、社があんまり弱くても困るんだと」
杏子「魔法少女以外がワルプルギスと戦うには、仮面ライダーやヴェドゴニア並みの身体能力がないと無理だと判断して、こういう設定にしたそうだ」
杏子「それにアニル雑誌で魔法少女はそんなに強くないと製作スタッフが公言してるし、まどか自身魔力がチートでも、身体能力自体はほかの魔法少女と変わらないように見えるしな」
杏子「ゲームに例えてぶっちゃけると、まどかは自分のステータスに割り振るパラメーターを無意識に社のパワーアップに割り振ってしまったわけだ」
杏子「まあ母親がチート能力持ちでまどかもチート魔力持ちだしな。最強の魔法少女が望んだのに、大した事のない戦闘力しか持ってないと、まどかの株が下がるだろ?」
杏子「とりあえず、ヴェドゴニアや女神まどかには絶対勝てない。これだけは間違いない」
杏子「この話はバトル物じゃないけど、弱すぎても強すぎても困る。こういう物の設定は難しいな」
205 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/06(金) 22:32:54.79 ID:rrBt3tljo
まどかさんの願いからしますと「強力な戦闘力」でなくとも、
身体性能の向上は無しで「強靭な生命力とすさまじい再生力」でも株はさがらないかと思えますが。
イメージは3×3EYESの无でしょうか。
それこそ、全身が消し炭とか灰になって吹き散らされても「まどかの愛」と「まどかへの愛」が
あれば何度でも立ち上がるとか・・・・・・・。
206 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/05/06(金) 22:50:22.24 ID:9nKwjiBAO
無限再生だとただのパクリじゃね?
再生描写があったからその内出てくるんだろうけど
つーかそんな血みどろの戦い方見せたらまどか泣くって
タイトル詐欺だ
207 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/06(金) 23:06:07.60 ID:2hG/l0VSO
社は雑魚退治に徹するだけでも良かった気がするけどな…。命懸けで魔法少女が必殺技を打つための時間稼ぎをする的な?
208 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/07(土) 12:14:28.35 ID:A3wD6ao4o
杏子「社が雑魚狩りオンリーで強いだけの人間なのは、漠然と頭の中にあるマミルートとかでの話だってさ」
杏子「まどかルートの話であるこの話の中でのみ、まどかが早めに魔法少女になり、それに伴い社が強くなる」
杏子「物語の都合で強くしてあるだけで、これはオリキャラ無双する為の設定ではないそうだ。決して無敵ではない。生暖かい目でラストまで見守ってほしい」
杏子「今はそんな風に見えないかもしれないけど、これはまどかの話だから」
杏子「出来るだけ早めに更新するそうだ。じゃあな」
209 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/05/07(土) 13:41:58.32 ID:raGpk65Mo
別に強さバランスは作者の好きにして良いんじゃないかな
まどかの正統派ヒーロー物ってあんま見ないし
しかしあのワルプルギスを一撃で倒すエネルギーを割り振ってりゃそりゃ強くなるわなwww
210 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2011/05/07(土) 14:31:45.12 ID:q/1vB2ueo
これってまどかルートが終了したら
マミさんやさやか、杏子、ほむらルートってのは触らずに終了する予定なの?
211 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/07(土) 16:26:42.80 ID:A3wD6ao4o
杏子「.>209 作者としてはそう言ってくれるとありがたいそうだ」
杏子「>210 この話が完結して、読者の需要があり、書く時間があり、全体の展開が思いついたなら、他のルートも有り得るそうだ」
杏子「その場合書きたいエンディングから話を作ってるので、書くのにも時間かかるらしい」
杏子「マミルートだったら、2話でマミを追いかけた後、一緒にまどかを救出し魔女戦突入とか、修学旅行で同じ班になって一緒に行動とか。そんな感じでイベントを考えて組み立てていくんだと」
杏子「ほむらルートは設定上、ほむらを社芳文では攻略出来ないので、もし書くならほむらが青樹円華になるまでの話や青樹円華になってからの話になるらしい」
杏子「カウンターでもあればいいんだけど、正直見てる読者少なそうだしな。これだけで終わる可能性は否定しない。まあオマケシナリオくらいはやるかもね」
杏子「ところでこのスレが終わったらどこかに転載とかされるのかな?」
杏子「ニュース速報VIPでこの作者が書いた、ほむら「まどかのアソコにちり紙がついているわ」はYahoo!で検索したら色んな所に転載されてたけど」
杏子「暇だったらそっちも見てやってくれ。馬鹿が馬鹿な物を書いたらああなった」
杏子「じゃ、またな」
212 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/07(土) 23:55:19.28 ID:KpM5c4HSO
頼む…。マミさんルートをいやさやかルートも捨てがたい、が裏話的なほむほむルートも見てみたい。
俺から言える事は一つだ。全部書いてくださいお願いします(__)。
213 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2011/05/08(日) 08:55:24.02 ID:jljDR/MVo
>>211
おう待ってるぜ
あとはスレの容量と相談だな
214 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2011/05/08(日) 09:08:12.40 ID:f3+/Hdyeo
容量が足りなくなったら次スレ立てればいいじゃない!
215 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/08(日) 17:48:13.34 ID:6gc7CKGOo
杏子「更新開始するよ」
216 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/08(日) 17:49:38.35 ID:6gc7CKGOo
――色とりどりの花々が咲き乱れる草原。
その中心に一人の少女が座って、嬉しそうに周囲の花を愛でている。
不意に澄み渡った青空が黒く濁り、雷鳴と共に巨大な魔物が大地を揺らしながら少女の目の前に現れた。
「ひ……」
闇に閉ざされた世界。突然現れた魔物に、少女は怯えてがたがたと震える。
逃げようとしても、恐怖で足がすくみその場を動けない。
魔物がおぞましい雄叫びを上げながら、ずしんずしんと音を立てながら近づいてくると、少女目掛けて鋭い爪を振り下ろそうとする。
少女はあまりの恐怖に思わず目を閉じる。
――ギャアァァァァァァァァァ……!!
魔物の断末魔が周囲に木霊する。少女が恐る恐る閉じていた目を開くと、目の前には一人の少年が長大な剣を振り下ろして魔物を一刀両断にしていた。
跡形もなく魔物が消滅し、暗い闇に閉ざされた世界に再び光が戻る。
少女に背を向けている少年が、少女に振り返ると少女に手を差し出す。
光に照らされた少年は優しい表情で、少女を見ている。
「――王子様」
少年の顔を潤んだ瞳で見つめながら、少女はその小さな手を少年の手に重ねようとして、そして……。
――少女は夢の世界から目覚めた。
「……夢?」
時刻は朝の六時。いつもより一時間も早く目覚めた少女が、半分寝ぼけた顔でベッドの上から半身を起して呟く。
ぼんやりとしながら、先ほどまで見ていた夢の内容を思い出す。
少女の顔が見る見るうちに赤く染まっていく。
「――う……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
少女は抱いていたウサギのぬいぐるみを力いっぱい抱きしめながら、ベッドの上をごろごろと転がる。
「なんて夢見てるのわたし!!」
あまりにも恥ずかしい夢を見た事に少女は悶絶する。
ベッドの上を転げまわりながら、夢の中で自分を助けてくれたひとつ年上の少年の顔を思い出して、ますます悶絶する。
「まどか。いったいどうしたんだい? 目覚めるなりそんな風に転げまわったりして」
枕元から声をかけられ、まどかは思わず返事をしてしまう。
「……変な夢を見たの」
「どんな?」
「……お花畑で魔物に襲われてね、颯爽と駆けつけてくれた王子様に助けられる夢」
「……」
「しかもその王子様が先輩だったの……」
「……思春期の少女らしい夢だね。……少々幼い夢のような気もするけど」
声をかけてきた相手を見ると、枕元に飾られているぬいぐるみに混ざっているキュゥべえが、まどかににっこりと微笑んで朝の挨拶をしてくる。
「おはよう、まどか。今日はいつもより早いね」
「〜〜っ!?」
自らの見た夢に困惑していたまどかは、混乱している頭で無意識に夢の内容を話してしまった事に気づき、沸騰しそうなほど真っ赤に染まる。
「まどか、熱でもあるのかい? 顔が茹蛸みたいに真っ赤だけど!?」
まどかにいきなり両手で掴まれて、前後にぶんぶんと揺すられるキュゥべえ。
「キュゥべえお願い!! 誰にも言わないで!!」
「……君が社芳文に恋愛感情を抱いてしまった事をかい?」
キュゥべえはまどかに激しく揺すられながら、いつもの無表情で確認する。
「〜〜っ!! 全部っ!!」
まどかは顔を真っ赤にしながら、両手で持っているキュゥべえに至近距離で叫ぶのだった。
第13話 「まどか、って呼んでほしいな」
217 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/08(日) 17:50:22.66 ID:6gc7CKGOo
「……はう」
「どうしたんですの、まどかさん」
中学校への登校途中、仁美が落ち込んだ様子のまどかに声をかける。
「……今朝、ちょっと変な夢見ちゃって」
「まあ。どんな夢ですの?」
「……内緒」
「まどかの事だから、大方メルヘンな夢でも見たんじゃないの?」
――ドキッ。
さやかに図星を付かれて、まどかは冷や汗をかきながら否定する。
「ち、ちがうよっ」
「本当にそうかなー?」
「もうっ!! やめてよーっ」
さやかにからかわれて、まどかは真っ赤になって否定する。
「あははは、ごめんごめん」
「うぅー」
「だからごめんって。そんな風にすぐ拗ねてると先輩に嫌われちゃうよ?」
「な!? なんでそこで先輩が出てくるの!?」
「さあ、どうしてかなぁ」
そう言って、両手を左右に小さく広げてさやかはとぼける。
「うぅー。さやかちゃんきらい」
そう言って半泣きで拗ねるまどか。
「あはは、ごめんごめん」
さやかはまどかに謝りながら抱きつく。
「しらないっ」
「だからごめんって。機嫌治してよ」
そんな二人の微笑ましいやりとりを、仁美はくすくすと笑いながら見守る。
「それにしても、先月起こった天災が大した事なくて良かったですわ」
「……ああ。先月の」
仁美がぽろっとこぼした言葉に、まどかに抱きつきながらさやかが答える。
「ええ。突然発生したり消えたりしたスーパーセルに、短時間に何度も発生した地震。あのおかしな天災がもしも長時間続いていたら、今こんな風に私達笑えてませんもの」
「……そうだね」
――ワルプルギスの夜の襲来による見滝原市の被害は、かつての時間軸のそれよりも遥かに軽微だった。
住宅地の被害は各町内の一部道路の損壊と、一部民家の塀の倒壊程度で済んだ。
特に被害が集中したのは開発区域で、開発中のビル等が倒壊し、建機が数十台損傷したくらいだった。
最初に観測されてから突然消滅し、再び観測され、そのまま消滅したスーパーセルに、気象台の職員達や専門家は皆、首を捻りテレビや全国紙のニュースでも話題になった。
今回の天災でこれだけの被害が出たのに対し、死人が一人も出なかったのは奇跡的であるとさえ言われていた。
「もし、さやかさんとまどかさんの身に何かあったらと思うと、今でもぞっとしますわ」
「仁美……。あたしも仁美と同じだよ。仁美とまどかが無事で良かった」
「わたしも……。仁美ちゃんとさやかちゃんが怪我とかしなくて、本当に良かったよ」
三人はそう言って、お互いの顔を見つめあう。
「私達、いつまでもお友達でいましょうね」
「そんなの当然だよ」
「うんっ」
そう言って三人は笑いあう。
初夏の日差しの下で笑いあう少女達は、仲良く歓談しながら学校へ歩いていく。
「おはよう」
三人が歩いていると、背後から芳文が挨拶してきた。
「おはようございます。社先輩」
「おはよ、先輩」
「あ……。おはようございます」
仁美とさやかが芳文の顔を見て返事をしているのに、まどかは今朝見た夢の事もあって芳文の顔をまともに見られない。
そんなまどかに気付いた芳文が、まどかに声をかける。
「まどかちゃん、どうかした?」
芳文に顔を覗き込まれ、まどかは顔が思わず赤くなるのに気づき、慌てて背を向けて言う。
「べ、べつに何でもないですから!! さやかちゃん、仁美ちゃん、わたし日直だから先行くね!!」
そう言ってまどかは駆け出す。
218 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/08(日) 17:51:15.72 ID:6gc7CKGOo
「――あ」
芳文は呆気に取られた顔でまどかの背中を見続ける。
「仁美、まどか今日日直だっけ?」
「たしか違ったような……。もしかしたら担当の日を勘違いしてるのかもしれませんね」
二人のそんな会話に、芳文が呟く。
「……俺、何か避けられるような事したかな?」
「先輩。あの子今朝からなんか変なんだよ。気にしない方が良いよ」
「……そうかな?」
「そうそう。帰るころにはいつもと同じだって」
「……だといいけど」
「もうっ。男でしょ。うじうじしない!!」
そう言ってさやかは芳文の背中を叩く。
「ありがとう」
芳文はさやかに礼を言う。
「どういたしましてって。なーんか調子狂うなぁ……」
そう言って、三人は学校へ向かって歩き出す。
――ワルプルギスの夜を倒した後、芳文は今までまどか以外の三人の前で取っていた態度や、まどかの無意識の願いによって与えられた力の事をすべて話していた。
三人は芳文のカミングアウトに驚きはしたものの、戦闘時の芳文のほうが本当の芳文である事を受け入れた。
それから一か月が経ち、芳文が以前の様な馬鹿な行動や言動をする事もなくなっていた。
「つーか、先輩もまどかも好きなら好きってお互いに言えばいいのに」
昇降口で芳文と別れ、上履きに履き替えながらぼやく。
「まどかさんも社先輩も、そういう事には疎そうですものね」
「まったく、見てて歯がゆいよ」
「そういうさやかさんはどうなんですの?」
「ちょっと、なんであたしの話になるのよ!?」
「お友達ですもの。気になりますわ」
「勘弁してよーっ」
クスクスと笑いながら言う仁美に、さやかは困った顔をしながら叫ぶのだった。
☆
「まどか。今朝の事だけどさ、先輩落ち込んでたよ」
昼休みになり、委員会の仕事で呼び出された仁美と別れて、二人で屋上にやってきたまどかとさやか。
弁当を食べながら、さやかがまどかに今朝の事を話す。
「あんたに何か避けられるような事したかなってさ」
「……別にそんな事ないよ」
「そう?」
「うん」
二人はそのまま無言で弁当を食べる。
「……余計なお世話かもしれないけどさ、告白しないの?」
「ええっ!?」
突然のさやかの言葉にまどかは驚いて、箸を落としてしまう。
「多分、ううん、絶対先輩はまどかの事好きだよ。まどかはどうなの? 先輩の事嫌い?」
「嫌いなわけないよっ!!」
嫌いと言う言葉に思わず過剰反応してしまうまどか。
「なんだ。やっぱ好きなんじゃん」
「あう……」
さやかの好きという言葉に真っ赤になって俯く。
「いつから好きなの?」
優しい顔で尋ねるさやかに、まどかは観念して答える。
「……先輩の事好きだって気付いたのは、ワルプルギスの夜と一人で戦ってて負けそうになった時。先輩が助けに来てくれた時、すごく嬉しかったの……」
「そっか」
「……うん。先輩はいつだって優しくて、頼りになって、助けてほしい時に駆けつけてくれる……わたしのヒーローなの」
「なるほどね。まどかの王子様って事か」
「わたしの王子様?」
「だってそうじゃん。強くて、頭も良くて、頼りになって、優しくてかっこいい。どう考えてもまどかの王子様だし」
「……そうなのかな」
今朝見た夢の事を思い出して呟く。
「お互い好き合ってるのバレバレなんだしさ。もういい加減くっついちゃったら?」
「でも……」
「でもじゃない。なんであんたはいつもそうやって、自分に自信を持てないかな」
「だってわたし、何の取り柄もないし……」
真剣な表情で、まどかの顔を見ながら両肩に手を置いてさやかは言う。
「そんな事ない。あんたは人を思いやれる優しいいい子だよ。まどかみたいに他人の事を思いやれる人間なんてそういないよ。それにあんたはかわいい。もっと自分に自信を持っていい」
219 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/08(日) 17:51:45.27 ID:6gc7CKGOo
「さやかちゃん……」
「本当の先輩を見せてもらって気付いたけど、あの人妙な所で卑屈で奥手だしさ。ここは思い切ってあんたから迫らなきゃ!!」
「でも、もし迷惑に思われたら……」
「あの人がそんな風に思う訳ない。それに今まで二人だけになった時にさ、ちょっとくらいいい雰囲気になった事くらいあるでしょ?」
さやかにそう言われて、今までの事やワルプルギスの夜との戦いの時に言われた、パートナーとして戦わせて欲しいと言う言葉を思い出す。
(……あの言葉、そういう風に受け取ってもいいのかな)
「……うん」
「じゃあ、勇気出しなよ。待ってるだけじゃなくて、こっちからも積極的に行かなきゃ!!」
「……もう、さやかちゃんたら」
そう言ってさやかに微笑む。
「ありがとう、さやかちゃん」
まどかに微笑み返し、さやかは自分の決意を話す。
「……あたしも、恭介が退院したら告白するからさ」
「だから、お互いがんばろ」
「……うんっ」
恋する少女達は初夏の日差しの中、お互いに励ましあい、笑いあうのだった。
――その日の夜のパトロールの帰り道。
「へぇ。まどかがねぇ」
「まあ二人とも好き合ってるのバレバレだしね。きっと上手く行くでしょ」
杏子とマミと一緒に帰りながら、さやかはまどかと芳文の話題を話す。
「二人共奥手だしね。誰かが背中を押してあげないとね」
「余計なお世話な気もするけどな」
「そうね。でも友達が幸せになれるというなら、それは素敵な事じゃないかしら」
「……そうだな。あれから魔女も使い魔も出てこないし。平和な時くらいそういうのもいいかもな」
「……ええ。いつ新しい敵が現れるかわからないもの。せめて今だけは、ね」
三人はそんな会話をしながら、夜の街を歩くのだった。
☆
220 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/08(日) 17:52:19.27 ID:6gc7CKGOo
翌日。
今朝もまた、芳文を意識してしまい、まともに顔を会せる事が出来なかったまどか。
放課後の掃除当番で、ゴミ袋を持って焼却炉へ向かいながら、自分への嫌悪感に苛まされる。
(駄目だな、わたし。どうしたらもっと強い人間になれるんだろ……)
とぼとぼと校舎裏を歩いていると、芳文の後ろ姿が見えた。
「あ……」
思わず物陰に隠れてしまう。
(……何してるんだろ、わたし)
よくよく考えたら隠れる必要なんてない事に気づき、物陰から出ようとしたその時だった。
「――好きです」
(……え?)
知らない少女の声がまどかの耳に届いた。
物陰からこっそり様子を覗いてみると、背を向けている芳文の前に知らない女子生徒が恥ずかしそうに頬を染めて立っていた。
「一年前、知らない人にナンパされてるのを助けてくれた時から、ずっと好きでした」
女子生徒は芳文の顔を見つめながら、自らの想いをぶつける。
それは、まどかがしようとしても出来なかった事だった。
「――ありがとう」
黙って告白を聞いていた芳文がそう返事をしたのを聞いた瞬間。
まどかはその場から逃げ出していた。
まどかは走った。
全力でその場から走って逃げた。
走って走って走り抜いて、まどかは転んでしまう。
「痛……」
立ち上がろうとして、足首に痛みを感じてそのまま座り込んでしまう。
「う、うぅぅ……」
涙がまどかの目に溜まる。
(全部、わたしの勘違いだったんだ)
涙がぽろぽろと零れ落ちる。
(そうだよね。先輩は優しいからあんな風に言ってくれただけなんだ)
涙が止まらない。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ……」
まどかは一人泣き続ける。
部活動をしていた生徒達が泣いているまどかに気付くが、誰も近寄ろうとはせず、遠巻きに見ているだけだった。
その後、ほむらがやってくるまでの間、まどかは泣き続けた。
ケガの手当てをしてもらい、肩を借りて家まで送ってもらう時に、ほむらからかけられた言葉は何一つ、まどかの心に届く事はなかった……。
☆
221 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/08(日) 17:53:12.91 ID:6gc7CKGOo
翌日も、その翌日も、まどかは芳文を避け続けた。
登校時に顔を合わせても、用事があると言って一人先に登校した。
夜のパトロールも、ワルプルギスの夜を倒してから一か月近くの間、使い魔一匹さえ現れない事から、家の用事があると言って参加しなかった。
そしてまどかが芳文を避け始めて三日目の朝。
「おはよう」
「……おはようございます」
芳文の顔を見ないように返事をする。
「……ごめんなさい。今日は小テストがあるので、予習したいから先に行きます」
そう言って、まどかは走り出す。
「待って!!」
芳文が呼び止めるが、まどかは振り返りもせず走り続ける。
(……わたし、嫌な子だな)
そんな事を考えながら走っていると、芳文が追いついてきてまどかの横に並ぶ。
「なんで避けるの? 俺嫌われるような事した?」
「!?」
隣を走る芳文に気づき、まどかは咄嗟に左手の中にソウルジェムを出現させて、額に近づける。
まどかの身体が一瞬淡いピンク色の光に包まれると、ソウルジェムを再び指輪に戻して中指に装着する。
魔力で身体機能を強化したまどかは一瞬で芳文を引き離して、学校へと到着すると、上履きに履き替えて自分のクラスに向かい、通学鞄をロッカーにしまう。
「まどかちゃん!!」
これからチャイムがなるまでどうしようか考えていると、追いついてきた芳文が声をかけてきた。
「っ!?」
反射的に背を向けてまどかは走り出す。
「待って!!」
プロのアスリート並み、いやそれ以上のスピードで校内を走るまどかを芳文は追いかける。
普通の中学生では有り得ない速さで逃げるまどかと、それを追いかける芳文。既に登校していた生徒達が驚いた顔で見るが、二人ともそんな事に気づきもせず追いかけっこを続ける。
「何で逃げるの!?」
「何で追いかけてくるんですか!?」
「君が逃げるからだよ!!」
「わたしの事なんてほっといてください!!」
「嫌だ!!」
「こないで!!」
「なんで!! 訳を教えてよ!!」
「やだ!!」
そんなやりとりをしながら、二人は追いかけっこを続ける。
生徒達の間をすり抜けながら走り続ける。
階段を飛び下りる。
階段を駆け上る。
教師に見つかって怒鳴られてもお構いなし。
まどかと芳文の追いかけっこは止まらない。
いつの間にか、二人とも半ば意地の張り合いになっていた。
校舎二階廊下を走り抜け、廊下の角を曲がった先にある階段から一階へ降りようとしたしたその時だった。
「きゃっ!?」
猛スピードで走り回っていたまどかが、曲がりきれずにバランスを崩して、背中から階段を落ちそうになる。
「まどかちゃん!!」
本気の全速力でまどかに追いつき、咄嗟に宙を舞うまどかを抱きしめて庇いながら、芳文は背中から一階に落ちた。
ダアァァァン……。
芳文の腕の中で、一階に落ちた衝撃を感じ取ったまどかは閉じていた目をを開くと、自分の下敷きになっている芳文の顔を覗き込む。
「……先輩?」
「……」
芳文からの返事はない。
まどかの背中に力なく両手をまわしたまま、目を閉じて廊下に寝ころんだままだ。
「……嘘。起きて。先輩、起きて」
芳文の腕の中で、ゆさゆさと胸元に手を当てて揺すりながら声をかける。
「……嫌だぁ。先輩、起きてよぉ」
頭を打ったのか、反応のない芳文に対してまどかは涙を溜めながら芳文に語りかける。
「……ひっく、先輩」
まどかが今にも泣き出しそうになったその時だった。
まどかの背中に回されていた芳文の手がまどかをぎゅっと抱き寄せる。
「……やっとつかまえた」
芳文が目を開いて、まどかを抱き寄せたまま半身を起こして言う。
222 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/08(日) 17:54:14.40 ID:6gc7CKGOo
「……あっ。は、放してください!!」
芳文が無事だったのにほっとしつつ、逃れようとするまどかに芳文は言い切った。
「嫌だ」
「放して!! 勘違いされちゃう!!」
「そんな風に見られるの嫌?」
「だって、先輩の彼女さんに勘違いされたら……」
「そんなのいないよ」
芳文のその言葉を、まどかは顔を振りながら否定する。
「嘘!! だってわたし見たもん。先輩が告白されてるとこ!!」
「見てたの?」
芳文の問いに、まどかは気まずそうにそっぽを向きながら弱々しく答える。
「……掃除当番で焼却炉に行く途中に」
「そっか。確かに付き合ってくれって言われたけどさ。断ったよ」
「……どうしてですか?」
「だって、俺には他に好きな女の子がいるんだ。だから」
「……そうですか。その子と上手くいくといいですね」
(……嫌な子だ、わたし)
まどかはそう答えて芳文から離れようとするが、芳文はまどかを離さない。
「……放してください。勘違いされますよ」
「嫌だよ。好きな子に誤解されたままなんて嫌だ」
「……え?」
「俺は君の事が好きなんだ。他の誰でもない、鹿目まどかという女の子の事が好きなんだ」
腕の中のまどかの顔を見つめながら、芳文は真剣な表情でまどかへの想いを遂に告白した。
「あ……」
まどかの瞳から、ポロポロと涙が溢れ出していく。
「ごめん。迷惑だったかな。けどもう君への想いを抑えきれなかったんだ」
そう言って芳文はまどかに自分の真剣な気持ちを伝える。
「君に避けられるようになって、自覚したんだ。君に救われたあの日からずっと好きだった。君に笑顔を向けてもらえるのが嬉しかった。君に目も合わせてもらえないのが苦しかった。それで気付いたんだ」
「俺はこんなにも、君の事を好きになっていたんだって」
「君が他の誰を好きでも構わない。俺に振り向いてくれなくたって構わない。だけど、せめて避けるのだけはやめてくれ」
「――俺は君の事が、この世界の誰よりも好きだから」
「う、うぅぅぅ……」
まどかが芳文の腕の中で嗚咽を漏らす。
「……最後に言わせてほしい。俺は最後まで君の味方であり続けるから。これだけは絶対だから。困らせてごめん」
そう言って芳文はまどかの背中に回していた両腕を放した。
――とんっ。
泣きながらまどかが芳文の胸に顔を埋める。
「……っく。わたしも……わたしも……」
まどかは涙を流しながら、芳文の顔を見上げて言った。
「わたしも、先輩の事が好き……」
「いつだって優しくて、危ない時にはいつだって助けてくれる。そんな先輩の事が大好き……」
「……ありがとう」
芳文は優しくまどかを抱きしめる。
「先輩、先輩っ」
まどかが芳文の腕の中で泣く。お互いの気持ちが通じ合った事への嬉し涙を。
「すごく嬉しい」
「わたしも……。でも……」
「うん?」
「わたしはまだまだ子供で、弱虫で……。勝手にやきもち焼いて、先輩を困らせて……」
自分を卑下するまどかの頭を優しく撫でながら、芳文は優しく言う。
「俺は君の全てが好きだよ。それに俺だってまだまだ子供さ。君を追い詰めて泣かせてしまった。だから……」
「二人で一緒に大人になろう。胸を張って誰にでも誇れる、そんな大人にさ」
「二人で一緒に……」
「ああ。俺の隣に君がいて、君の隣に俺がいる。これからきっと、辛い時や悲しい時もあるだろう。だけどそんな時もお互いがお互いを支えあって生きていく。俺は君と一緒にそんな風に生きていきたい」
「一人じゃない。ずっと一緒だ。駄目かな?」
「ううん。嬉しい。わたしもずっと先輩と一緒にいたい」
「ありがとう」
涙を拭いながら微笑むまどかを芳文は抱きしめる。
「苦しいよ……」
「ごめん。嫌だったかな。嬉しくてつい」
「ううん。でももうちょっと優しくギュってしてほしいな」
「わかった」
223 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/08(日) 17:55:29.38 ID:6gc7CKGOo
「えへへ……」
優しく抱きしめられ、まどかは幸せそうに笑う。
「好きだ」
「……わたしも大好き」
完全に二人の世界に入り込んでいる芳文とまどか。
そんな二人の良く知る人物が不意に声をかけ、二人の世界をぶち壊した。
「はい、社君、鹿目さん。もうすぐ予鈴がなりますからね」
『え?』
突然声をかけてきた人物に、疑問の声をハモらせて二人仲良く顔を向ける。
『早乙女先生……』
まどかの担任の早乙女先生が微笑ましそうに笑いながら、二人に声をかけてきたのだった。
良く見ると、先生の背後だけでなく、芳文とまどかの周囲には大勢の生徒達がいて事の成り行きを見守っていた。
まどか達が周囲を見回すと、生徒達の中にはさやかと仁美、マミもいた。
その場にいる全員がにやにやと笑いながら、まどか達を見ている。
まどか達は気付かなかったが、ほむらも口元に笑みを浮かべながら、他の生徒達に紛れて見守っていた。
芳文とまどかの顔が真っ赤に染まる。
いままでのやり取りをすべて、この場にいる全員に見られて聞かれていた事に気づき、二人は逃げ出したくなった。
「よかったね、まどか」
「おめでとうございます、まどかさん」
「社君、鹿目さんを大切にしてあげなさいね」
さやか、仁美、マミがまどか達を祝福してくれるが、まどか達にとっては素直に喜べなかった。
「おめでとう。お母さんにちゃんと報告しないとね、まどかちゃん」
教師ではなく、まどかの母の友人としてまどかを祝福する早乙女先生。
「さあみんな、自分のクラスに帰りなさい」
そう言って先生がパンパンと手を叩くと、野次馬たちの中に交じっていた芳文の友人の天瀬がパチパチパチと手を叩く。
釣られて他の生徒達が二人を祝福するように手を叩く。
パチパチパチパチパチパチ……。
『〜〜っ!!』
いたたまれなくなって、芳文がまどかをお姫様抱っこして、その場を全速力で逃げ出した。
芳文の腕の中で真っ赤になりながら、まどかはこつんと芳文の胸に頭を寄りかからせるのだった。
☆
「よかったね、まどか」
その日の夕方。
パトロール中にさやかとマミから、今朝の出来事を聞いた杏子が、優しい顔でまどかを祝福する。
「ありがとう、杏子ちゃん」
頬を染めながら礼を言うまどかに、ポッキーを差し出しながら言う。
「食うかい?」
「うん。ありがとう」
そんな二人のやり取りを見ながら、芳文はさやかとマミにからかわれる。
「それでお昼休みどうだったの?」
「せっかく二人っきりで、お昼食べられるようにセッティングしたんだから、進展はあったのかしら」
「……君達の仕業か」
昼休み。
まどかと芳文はそれぞれクラスメイト達に教室から追い出され、二人だけで屋上で昼食を取った。
かなりの人数の生徒達に事の顛末を見られた上、その場にいなかった生徒達にも見ていた生徒達によって話が広まっていた。
携帯で動画まで撮られてしまった為、見滝原中学で芳文とまどかの事を知らない者は今や誰もいなかった。
教師や用務員にまで知れ渡ってしまった為、芳文とまどかは校内一有名なカップルになってしまったのだった。
「それでどうなったの? 兄貴なんだから妹のあたしにくらい教えてよ」
さやかがにひひと笑いながら尋ねてくる。
「……今度、弁当作ってくれるって」
「おおーっ。やったね!! 彼女の手作り弁当ですって、マミさん」
「良かったわね。ちゃんと全部食べてあげないと駄目よ」
「……ああ」
今まで演技とはいえ、芳文に散々からかわれてきたさやかとマミが、ここぞとばかりに芳文をからかう。
「……もう勘弁して」
芳文がギブアップするまで、二人はかからい続けるのだった。
「さてと、今日はこれで解散しましょうか。社君、鹿目さんのボディガードよろしく」
パトロールを終え、マミがそう切り出す。
「そうそう。かわいい彼女を守るのは先輩の役目だもんねー」
さやかが笑いながらそう言うと、まどかと芳文が赤くなる。
「あんまりからかってやるなよ。さやか」
杏子がさやかを窘める。
「なーに? 今日は随分いい子だね杏子」
「ばっか、あんまりからかったら、社はともかくまどかがかわいそうだろうが」
「……俺の扱いっていったい」
落ち込む芳文にマミが言う。
「まあ今までが今までだしね」
「……ひどい」
224 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/08(日) 17:56:51.52 ID:6gc7CKGOo
芳文はそうぼやいた後、さやかと杏子に弄られてるまどかに声をかける。
「まどかちゃん、そろそろ行こうか」
「はい、先輩」
「……あんたら、恋人同士になったのに、まだ他人行儀な呼び方してんのな」
何気なく杏子の放った言葉に、芳文とまどかが固まる。
「あーあ、杏子。愛っていうのは徐々に育むもんだよ。いきなりそんな、ねえ」
「そうね」
さやかとマミの放った言葉に芳文とまどかは真っ赤になる。
「三人共、おやすみっ。行こう、まどかちゃん」
「は、はい。マミさん、杏子ちゃん、さやかちゃんおやすみなさい」
芳文とまどかは逃げるようにその場から立ち去るのだった。
二人で帰る帰り道。
どちらからともなく手を握り、夜道を歩く。
『あの』
二人とも話を切り出そうとして、同時に声を出してしまう。
「あ、ごめん」
「いえ、先輩からどうぞ」
「うん……」
それっきり、二人とも沈黙してしまう。
無言のまま、まどかの家の前まで来た所で、芳文が口を開いた。
「その、俺への呼び方なんだけどさ、先輩じゃなくて名前で呼んでほしいな。あと、敬語もなしで。俺と君はその……対等なパートナー、だから」
そう言って、芳文は横目でまどかの顔をちらっと見る。
「……うん。芳文さん」
まどかは真っ赤になりながら、そう答える。
「ありがとう、まどかちゃん」
「……その呼び方禁止」
「え?」
まどかの顔を見ると、まどかも赤くなって恥ずかしそうにモジモジしているが、ひとつ大きく深呼吸をして言った。
「まどか、って呼んでほしいな」
芳文はそんなまどかを愛おしく思いながら、まどかの名を呼ぶ。
「……まどか」
「……うん」
「好きだ」
「わたしも」
芳文の言葉にそう答え、まどかはとびきりの笑顔をして見せるのだった。
つづく
225 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/08(日) 17:59:37.05 ID:6gc7CKGOo
杏子「とりあえずここまで」
杏子「恋愛物は苦手なんだと。あまり突っ込まないでくれだってさ」
杏子「他ルートは今の所このまどかルートが済むまでは何とも言えないが、善処するそうだ」
226 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/08(日) 18:00:20.03 ID:2iMpdBdRo
お疲れ様でした。
若いっていいですねぇ・・・・・・・・・・。
227 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/08(日) 19:02:20.75 ID:xfJ7/maSO
乙。甘々だよ〜。
社の軽口が見れなくなるのは寂しいな…。
228 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/09(月) 01:45:10.22 ID:heN6vxCDO
その調子で、親子の関係は修復出来ないだろうか…
229 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/09(月) 03:45:19.20 ID:q7GBrjqao
他√は外伝でもいいからやって欲しいぜ
230 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/09(月) 22:07:14.47 ID:6wJkvOQSo
杏子「単発裏話」
杏子「マギカ・シグヴァンを放った後、刀身から輝きが消えると、マギカ・ブレードはただの重い剣になってしまうんだ」
杏子「あたしが9話で落とした時に地面が抉られなかった理由がそれ。もし通常の状態で落とすと、刀身から発生する破壊エネルギーで、刀身に触れた地面をどんどん消滅させながら地底深くどこまでも落ちていくんだ」
杏子「あまりにも重すぎて、まどかの力で強化された社しか持てないし振るえない。重さのイメージはベルセルクのドラコラン殺しだ」
杏子「ドラクエっぽく攻撃力を数値化すると、マギカ・ブレードの攻撃力は999で無属性の追撃効果が300。敵に刺さってれば1ターンごとに300ダメージ。相手に再生能力があればそれも破壊。相手のシールドも無効化する。正にチート武器だ」
杏子「マギカ・ジグヴァン時は通常時の約20倍の破壊力を一定時間の間だけ叩き出す代わりに、魔力が切れると攻撃力が250まで落ちて特殊能力が消える」
杏子「マミカルソードは攻撃力110。さやかサーベルが攻撃力90で2回攻撃可能。あんこスラッシャーが攻撃力120。蛇腹剣状態で複数攻撃可能。その場合攻撃力80」
杏子「アンカースラッシャーは攻撃力420。蛇腹剣が攻撃力360」
杏子「ついでに全員の攻撃力も。大体こんな感じ」
杏子「マミの攻撃力。マスケット射撃が100。マスケット殴打が70。回し蹴りが50。リボンカッターが80。マスケット一斉掃射が230。ティロ・フィナーレが380。さやかとの合体技が780」
杏子「さやかの攻撃力。剣が180。マミとの合体技が780」
杏子「あたしの攻撃力。槍が150。多節棍が130。クリムゾン・タービュラー(>133で使用)320。ティロ・グングニルヌス(巨大槍)が390。これらの技名はまどかとマミが嬉しそうに名づけてくれた……。恥ずかしくて叫べるかよ……。アニメで使った自爆は600」
杏子「ほむらの攻撃力。爆弾が120。拳銃が80。マシンガンが100。バズーカが160。手榴弾が110。近接用に隠し持ってるナイフが30。アニメのほむらより弱体化してるので武器はこれだけ」
杏子「まどかの攻撃力。オメガ・ジャッジメント(爆発する矢)が490。ブラスト・シューター(分裂矢)が矢1本に付き240」
杏子「社(1話〜2話)の攻撃力。パンチが20。キックが55。マミカルソードが130。マミカルソード投擲が140。3話以降はパンチが280。キックが360。各種剣を装備した場合、剣の攻撃力+280」
杏子「大体こんな感じ。なんか厨二病みたいな解説だな……」
杏子「あ、あと>45で社が母親の胸が小さかったと言っているが、実はほむら=実の母親の伏線の一部だったんだが、果たして気づいた読者は何人いるんだろうな?だってさ」
杏子「じゃあな」
231 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/09(月) 22:08:50.65 ID:6wJkvOQSo
杏子「訂正だよ」
誤 杏子「あまりにも重すぎて、まどかの力で強化された社しか持てないし振るえない。重さのイメージはベルセルクのドラコラン殺しだ」
正 杏子「あまりにも重すぎて、まどかの力で強化された社しか持てないし振るえない。重さのイメージはベルセルクのドラゴン殺しだ」
232 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/09(月) 22:36:42.69 ID:vLqKkkrpo
ふむふむ。
通常状態のマギカブレードをついうっかり落としたり、そのまま相手に投げつけると
愉快なことになりそうですね・・・・・・・。地面に落としたら、中南米あたりまで穴を
開けた挙句地球の真ん中で制止しそうな予感・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・実はスピンオフ作品では所謂”廚二な”技名が使用されているとか。
従って、マミ様は魔法少女のスタンダードをいっている恐れがあるようですね。
>>45
の社ママンの胸が小さいのがほむらさんが社ママンであることの伏線には・・・・・・・・
全くもって気付きませんでした………。
233 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/09(月) 23:33:22.73 ID:EMMtljSSO
社の蹴りはティロフィナーレよりちょっと弱いぐらいの威力ってことですね…マミさんェ…。
234 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/09(月) 23:35:09.11 ID:6wJkvOQSo
杏子「マギカ・ブレードとオメガ・ジャッジメント+ブラスト・シューターの補足だよ。今日はこれで最後」
杏子「マギカ・ブレードは攻撃用のまどかの魔力に反応すると爆発するんだ。オメガ・ジャッジメントやブラスト・シューターが当たると爆発して、破壊エネルギーを撒き散らす光球へと変化する」
杏子「その場合、マギカ・ブレードの攻撃力999がオメガ・ジャッジメント及びブラスト・シューターの攻撃力に上乗せされる」
杏子「マギカ・シグヴァン用の矢は魔力の性質が違うので当たっても爆発しない。ちなみにマギカ・ブレードの魔力を使い切っても再チャージは出来る。マギカ・シグヴァンを喰らった相手は確実に滅ぶんで、わざわざ再チャージする必要ないけど」
杏子「また、イマイチ地味なんで本編で使われなかったが、実はマギカ・ブレードはまどかが任意で爆発させる事が出来る」
杏子「社が敵に投げつけて、マギカ・ブレードの破壊エネルギーで相手を弱らせて、まどかが遠隔爆破で敵を消滅させる。みたいな」
杏子「あたしらが作った剣は基本的に変身を解くか、戦闘不能になって変身が解けない限り消滅しない。一定以上のダメージで壊れる場合はあるけどな」
杏子「ちなみにマギカ・ブレードの生成に最初は30秒かかっていたが、今では4秒くらいで作れるようになってる」
杏子「まどかの絶対防御壁(マギカ・イージス)について。広範囲に展開し続けたり、強力な攻撃を受け続けたりするほど消費魔力が大きくなる」
杏子「狭い範囲や大した事のない攻撃なら、ほとんど魔力を消費しない」
杏子「こちらのまどかの回避能力がアニメのまどかよりも遥かに低いので、社がマギカ・イージスを展開させなくてもいいように戦えば消費魔力も少なくて済む」
杏子「ちなみにこちらのまどかが、さやかの魔女の攻撃を避けようとした場合、ふたつ目の車輪で被弾する。マギカ・イージスを展開するか、社が一緒にいれば被弾しない」
杏子「以上。ほむらの胸に関しては、ほむら=貧乳の認識がないと多分気付かないよな……。というかほむらが母親なんて誰も思わないよな普通」
杏子「じゃ、次の更新までさよならだ」
235 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/05/10(火) 09:23:24.63 ID:BW2Fygszo
マミ「中二心がくすぐられてきたわ」
236 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/10(火) 23:42:54.16 ID:LLSsfFLDo
杏子「まどか達のバカップルぶりがひどすぎて、作者が第14話を書くのがつらいそうだ。だから今回は番外編。今回はゲストに暁美ほむらさん34才にお越しいただきました」パチパチパチパチ・・・・・・
ほむら(34)「……いちいち年齢表記するのやめて欲しいのだけど」
杏子「気にするなよ、おばさん」
ほむら(34)「私は ま だ 若 い 」アイアンクロー
杏子「あだだだだだ!! 割れる!! 割れる!!」
ほむら(34)「ごめんなさいは?」ギリギリギリギリ・・・・・・
杏子「ご、ごめんなさい」
ほむら(34)「……」パッ
杏子「畜生……。馬鹿力で締め付けやがって……」
ほむら(34)「……年長者への態度じゃないわね。もう少しお仕置きが必要かしら」
杏子「ごめんなさい」
ほむら(34)「……それで、私は何をすればいいのかしら」
杏子「おそらくもう劇中で語る事のないあんたの過去についてとか、あたしが質問すっから答えられる範囲で答えてくれりゃいいよ」
ほむら(34)「答えられる物しか答えないわよ」
杏子「それでいいよ。じゃあひとつめの質問。あんたってさ、まどかの事が好きなレズじゃなかったっけ」
ほむら(34)「……私はレズじゃない。レズなのは別の時間軸の暁美ほむらよ」
杏子「人を殺せそうな目で睨まないでくれ。あんたがレズだと思ってる人間が多いから、この質問がひとつめに出てきただけだし。あたし自身はそんな風に思ってないから」
ほむら(34)「……」
杏子「次の質問。あんたの夫だった男ってどんな奴?」
ほむら(34)「優しくて強くて頼りになる人だったわ」
杏子「へー。どんな顔してるんだい?」
ほむら(34)「……写真見る?」
杏子「持ってるのか?」
ほむら(34)「持ってたら悪いかしら」
杏子「そんなことないけどさ。どれどれ……。どんないい男なのかと思ってたけど、別に普通の顔だな」
ほむら(34)「私は人を顔で好きになったりしない」
杏子「そうかい。それにしても、こうやって顔だけ見てると社と親子に見えないな」
ほむら(34)「私が不貞を働いたとでも言いたいのかしら」
杏子「いちいち睨むなよ。別にそういう訳じゃないけどさ。正直似てない父子だなって」
ほむら(34)「芳文は私似だもの。あの人に似たのは戦闘センスと運動神経よ」
杏子「戦闘センスねえ。そんなに強かったのか?」
237 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/10(火) 23:43:42.87 ID:LLSsfFLDo
ほむら(34)「昔、あの人と集金したアパートの家賃を預金しに銀行に行ったに、拳銃を持った二人組の銀行強盗にね、私が人質にされた事があるのよ」
杏子「何その超展開」
ほむら(34)「その時に色々あって、強盗があの人を撃とうとしたの。その時に私、咄嗟に強盗に噛みついたのよ」
杏子「それでどうなったんだ?」
ほむら(34)「怒った強盗が突き飛ばした私を撃とうとしたその時、あの人があっという間に強盗に跳び蹴りを喰らわせて一撃でKOしたわ」
ほむら(34)「仲間の強盗が発砲したけど、それも紙一重で躱してパンチ一撃で倒したの」
杏子「銃弾を避けるって……。普通の人間だよな?」
ほむら(34)「信じられないでしょうけど、普通の人間よ。もし生きていて芳文と組み手とかしたら、今の芳文でも軽く捻っちゃうでしょうね」
杏子「何その生き物。地上最強の生物かよ」
ほむら(34)「人の夫を化け物扱いしないで。単純に強かっただけよ。武術か何かを習ってたらしいけど、詳しく聞いてないから良くわからないわ。あの時の私には良くわからない話だったし」
杏子「ふーん。でもさ、夫って言ってももう離婚されてんじゃん」
ほむら(34)「別に嫌いになって別れたわけじゃないわ。記憶を取り戻す前日の夜に、もう一人子供が欲しいなって話もしてたくらいだもの」
杏子「そうかい。そんなに好きなら一緒にいればよかったのに」
ほむら(34)「そうできたらそうしてたわ。出来なかったんだからしょうがないじゃない」
杏子「後悔してる?」
ほむら(34)「……」
杏子「……わりい。次の質問。今のまどかの事どう思ってる?」
ほむら(34)「今までのまどかはいつも泣いてばかりだったから、幸せそうに笑ってるのを見てると嬉しい」
杏子「……そっか」
ほむら(34)「……ただあの子と話してると、時々もし娘がいたら、こんな感じなのかしらって思う時があるのよ」
杏子「……本来同い年のはずの友達が、自分の子と同年代になってりゃ、そういう風に思ってもしょうがないよな」
杏子「社の事はどう思ってる?」
ほむら(34)「私の子だって確信を持った時に、随分大きくなったと思ったわ」
杏子「それだけ?」
ほむら(34)「母親としては正直な所、あの子には普通の人生を歩んでほしかったわ」
杏子「やっぱあいつの事かわいいのか? あんなに大きくなってても」
ほむら(34)「当たり前でしょう。自分のおなかを痛めて産んだ子がかわいくないわけないじゃないの。それに親にとって、いくつになっても子供は子供よ」
杏子「そっか。あんた、やっぱり母親なんだな」
ほむら(34)「……あの子にとっては最低の母親なんでしょうけどね」
杏子「自分が母親だって言わないのかい?」
ほむら(34)「今更無理ね。それに体を魔翌力で弄ってるから、母親だと言っても信じないわ」
杏子「元の年齢の体に戻ればいいじゃんか。つーか戻れるのか?」
ほむら(34)「無理よ。あなた、イチゴのショートケーキを元の材料に戻せと言われて戻せる? それにもう一度肉体を弄るには魔翌力が足りない」
杏子「……そっか」
杏子「……気を取り直して次の質問。自分の子と友達がくっついてしまったわけだが、どう思ってる?」
ほむら(34)「本人達が好き合ってるんならいいんじゃないかしら」
杏子「本当にそう思ってる?」
ほむら(34)「ええ。例えばまどかが私と同じ年齢で、15才のあの子と付き合うとかそういうのだったらどうかと思うけど。私の子の方がまどかよりひとつ年上だし問題ないわ」
杏子「そんな風に割り切れるもんかね。あたしには友達と自分の子がくっつくなんて想像出来ないな」
ほむら(34)「まあ極めて特殊なケースでしょうね。正直な所、見知らぬ男にまどかを取られるより何百万倍もいいわ」
杏子「ふーん。かつての友達が将来は息子の嫁か」
ほむら(34)「このまま、無事にハッピーエンドを迎えられれば、ね」
杏子「次の質問。なんで時間逆行しないの?」
ほむら(34)「したくても出来ないのよ。砂時計の砂を以前みたいに止めっぱなしに出来ないし、砂時計の砂を使い切る前に魔翌力がなくなってしまうから」
杏子「次の質問。武器が以前より弱い物しかないのは何故?」
ほむら(34)「前の世界でワルプルギスの夜相手に全部使ってしまったからよ。今は時間停止が長くても99秒くらいしか出来ないから、調達も出来ないの。今は前回の残りでやりくりしてるのよ」
杏子「次の質問。夫と子供と別れた後、何してたの?」
ほむら(34)「自衛隊に入ってたわ」
杏子「……それ、なんていうぼくらの=v
杏子「生活資金は?」
ほむら(34)「昔ヤクザの事務所からいただいた金塊や宝石と、義母の遺産と自衛隊の給料から」
杏子「どうやって中学に入学したんだ?」
ほむら(34)「円華の長女ほむらとして転入したのよ」
杏子「今住んでる所は?」
ほむら(34)「ワンルームマンションよ」
杏子「じゃあこれで最後。赤ちゃんってどうやって作るんだ?」
ほむら(34)「……あなた小卒だったかしら」
杏子「正確には小学校中退になるのかな」
ほむら(34)「……はあ。いいわ。あなたに大人としてちゃんと性教育してあげる。こっちにいらっしゃい」
杏子「よろしくお願いします。先生」
……
…
杏子「嘘だ嘘だ嘘だ!! そんなの信じないぞ!!」
杏子「絶対信じないからな!! うわーん!!」ダッ
ほむら(34)「ねんねの小娘には刺激が強すぎたかしら」ホムッ
おしまい
238 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/11(水) 00:06:40.73 ID:bgeFUsjJo
クソワロタwwwwww
34歳ならまだまだ問題ないぜ
239 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/11(水) 00:12:13.38 ID:VUcRkFdHo
お疲れ様でした。
ほむほむも大変ですねぇ・・・・・・・・。
赤ちゃんは・・・・・・鉄の子宮で作るんだよな確か。
きっ・・・・・キスしてもできましたよね・・・・・・・・。
240 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
:2011/05/13(金) 18:13:01.95 ID:Te4ODtFAO
ほむらさん34才がいつもの無表情であんこに真面目に陰茎とか勃起とか挿入とか口にして性教育する光景はなんだかシュールだな
241 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/05/14(土) 15:02:57.04 ID:A87F019To
杏子「業務連絡だよ」
杏子「今日明日中に1〜2話分更新予定だってさ」
杏子「以上」
242 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/15(日) 01:58:03.31 ID:/i2V100Qo
おk
243 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/15(日) 04:27:24.81 ID:mc5fh68ko
杏子「更新開始。とりあえず一話だけ」
244 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/15(日) 04:28:02.60 ID:mc5fh68ko
――7月上旬の土曜日の朝。
少女はクローゼットの中から、次々と洋服を取り出しては胸元に当て、また収納していた場所に戻すを繰り返しながら、ベッドの上で様子を窺っている魔法の使者に尋ねる。
「ねえ、キュゥべえ。どの服がいいかなあ?」
「別にどれでもいいんじゃないかな。まどかの持ってる私服は、僕にはみんな同じに見えるよ」
いつもの無表情で適当に返すキュゥべえ。
「えーっ。全然違うよぉっ」
まどかはキュゥべえの適当な返事に憤慨しながらも、どの服にしようかとクローゼットから服を出しては戻すの繰り返しをやめない。
「もう二時間も迷ってるじゃないか。いい加減に早く決めたらどうだい」
「だって、初めてのデートなんだよ。いつもよりかわいい格好で行きたいもん」
「なるほどね。僕には良くわからないけど、その感情が乙女心って奴だね。でもいい加減早く決めないと待ち合わせの時間に遅れるんじゃないのかい?」
そう言って、壁掛け時計に顔を向けたキュゥべえに釣られる様に、まどかも視線を向ける。
「ええっ!? もうこんな時間!? 早く決めて出かけなきゃ遅れちゃう!!」
まどかはわたわたと別の洋服を引っ張り出す。
「……はあ。もうそのピンク色のワンピースでいいじゃないか」
「……これ? 変じゃないかなぁ」
「変じゃないよ。まどかのイメージにぴったりだと思う」
「そ、そうかなぁ?」
「うん。それにまどかなら何を着てても、社芳文はかわいいと言うだろうし」
「〜〜っ!!」
キュゥべえの何気なく放ったその言葉に、まどかは赤くなって絶句し固まってしまう。
「ほらほら、急いで」
「う、うん」
キュゥべえに促され、まどかは急いでピンクのワンピースに袖を通すと、いつものリボンを着ける。
「それじゃ、行ってくるねキュゥべえ」
「ああ。いってらっしゃい。まどか」
まどかはキュゥべえにそう言って、ぱたぱたと音を立てながら出かけて行った。
「……やれやれ。いくら今が一番充実してるからって、僕に人間の色恋沙汰を話されても困るよ」
独り言を言いながら、キュゥべえは昨夜のまどかとの会話を思い出す。
『随分嬉しそうだね、まどか。何かいい事でもあったのかい?』
『あのね、芳文さんが明日デートしようって言ってくれたの!!』
『ふうん』
『わたし、男の人とデートなんて初めてだから嬉しくって。ねえキュゥべえ、やっぱりお弁当とか作って持っていった方が良いかなあ?』
嬉しそうに話すまどかの顔を思い浮かべ、キュゥべえは目を閉じて首を振りながら呟いた。
「……訳が分からないよ。なんでまどかはいちいち、僕に嬉しそうに話すんだろう?」
第14話 「ずっと、こんな日々か続いたらいいな……」
待ち合わせ場所にまどかが急いで辿り着くと、既に芳文が来ていてまどかを待っていた。
「おはよう、まどか」
「うん。おはよう、芳文さん。待たせちゃったかな?」
「いや、大丈夫」
「良かった」
そう言って笑うまどかに、芳文は視線を僅かにまどかからずらしながら、口を開く。
「……その服、良く似合ってる」
「……本当?」
「ああ。かわいいよ」
「……えへへ。嬉しいな」
頬を染めながら、嬉しそうにに微笑むまどかに、芳文も赤くなりながらすっと右手を差し出す。
「……行こうか」
「うんっ」
嬉しそうに微笑みながら、まどかは芳文の手を取るのだった。
245 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/15(日) 04:28:47.93 ID:mc5fh68ko
☆
「今見た映画、まどかは面白かった?」
「うん。面白かったよ。でも芳文さんはどうだったの? わたしの趣味に付き合わせちゃったけど……」
二人が見たのは恋愛ファンタジー物だった。
映画館を出て、まどかと芳文は二人仲良く、見滝原の街を歩きながら談笑する。
「面白かったよ。俺、普段マンガも小説もテレビも見ないから、新鮮だった。今の映画って凄いんだな」
趣味のない芳文は、まどかに見たい映画を決めてもらい、それに付き合ったのだが素直に映画の内容を褒める。
「あれ? 芳文さんの部屋、テレビは置いてあったよね?」
「ああ、あれか。一応親父が単身赴任する時に用意してくれたんだけどさ、朝と夜の天気予報見る時と地震があった時くらいしか付けないんだ」
「そうなんだ」
「ごめんな。つまらない奴で」
「ううん。わたし、芳文さんと一緒にいるだけで嬉しいもん」
「そっか。そう言ってもらえると嬉しい」
「うんっ」
そう言って嬉しそうに笑うまどか。
「まどかはさ、趣味とかいっぱいあるの?」
「そんなに沢山はないけど、いくつかあるよ」
「どんなの?」
「例えば、好きな歌手のCD聴いたりとか……」
「そっか。今度さ、まどかが好きな歌手のCD教えてほしいな。まどかが好きな物なら、俺もきっと好きになれるはずだから」
「……うんっ」
そんな何気ない会話が嬉しくてたまらない。
二人でいる時間が何より大切で、自分の隣にいるパートナーが愛しくてたまらない。
芳文は今まで辛いことの多かった一五年の人生の中で、最も幸せなこの時間がずっと続けばいいと思った。
「あ……」
不意にまどかが歩みを止める。
「どうかした?」
まどかの視線の先を見ると、ゲームセンターがあり、店先のプリクラマシーンのカーテンの中から、一組のカップルが出てきた。
「……芳文さん。あのね、お願いがあるんだけど……」
まどかが上目遣いに芳文の顔を見上げながら言う。
「俺に出来る事なら」
「あのね、一緒にプリクラ撮ってほしいな……。芳文さんと一緒の写真が欲しいの……」
「そんな事で良ければ喜んで付き合うよ」
まどかの可愛らしいおねだりを、優しく微笑みながら芳文は快諾する。
「ほんと?」
「ああ。でも俺には良くわからないから、操作とかまどかがやってくれよ」
「うんっ!! こっちだよっ」
嬉しそうにまどかが芳文の手を引っ張って、プリクラマシーンの前に連れて行く。
「一回三百円か」
金額を確認して、芳文がコインを投入する。
「あっ。わたしが言い出したんだし、わたしが払うよ」
「いいよ。俺が出したいから出したんだ。ほら、まどか。機械がなんか言ってる」
「あ、うん。ありがとう芳文さん」
お礼を言い画面とにらめっこするまどか。
「俺はどうすればいいのかな?」
「わたしの隣に来て、画面に自分の顔が写るようにして」
「これでいい?」
「うん。あと、出来れば笑顔で」
「えっ? いきなり言われても」
芳文はまどかの指示に素直に従う物の、いきなり笑えと言われて面食らってしまう。
「あっもうシャッター押されちゃうよ!! 早く笑って!!」
焦るまどかの様子に、芳文は思わず口元に笑みを浮かべてしまう。
『――3・2……』
機械の音声がシャッターを切る予告をする中、芳文はまどかを軽く抱き寄せる。
『1』
まどかは一瞬驚いた顔をするがすぐに幸せそうな笑顔になる。
『はい、チーズ』
カシャ。
246 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/15(日) 04:29:39.79 ID:mc5fh68ko
口元に笑みを浮かべた芳文と抱き寄せられて幸せそうに笑うまどかのツーショットがベストタイミングで撮られた。
そのまま、二人で画面を見つめながらプリクラが印刷されるのを待つ。
待つこと数分。
印刷完了を告げる機械の音声が流れると、パサッと音を立てプリクラが取り出し口に落ちてくる。
まどかがそれを取り出して、印刷内容を確認して嬉しそうに笑う。
機械に据え付けられたハサミでプリクラを半分に切ると、芳文に半分を手渡す。
「はい。芳文さんの分」
「……これがプリクラか。初めて撮ったよ」
「……わたしも、男の人と一緒に取ったのは初めてだよ」
「そっか」
「……うん。これ宝物にするね」
まどかはそう言うと、大切そうに両手で持ったプリクラをそっと、胸元に持っていく。
「ああ、初めて二人で撮った記念の品だものな。俺も宝物にするよ。もっとも、二番目の宝物だけど」
「……二人で初めて撮った物なのに、二番目なんだ」
芳文のその言葉に、まどかはしゅんとなってうつむく。
芳文はそんなまどかをそっと優しく抱きしめて、まどかに囁いた。
「だって、俺の一番大切な宝物は、まどか自身だから」
「……嬉しい」
まどかはそう答えて、しばらくそのまま芳文の鼓動の音を、芳文の腕の中で聞き続けるのだった。
「……あいつら、ここがどこだかわかってんのかね」
たまたまゲームセンターに遊びに来ていた杏子達は、プリクラマシーンの前で二人の世界に入っているまどか達を見つけて、思わずそれぞれの感想を口にしてしまう。
「仕方ないわよ。二人ともようやく想いが通じ合って、付き合い始めたばっかりだもの」
「……いいなあ、まどか。あたしもいつかは……」
「なんだよ、さやか。いつかって」
「な、なんでもないわよ!! ほら杏子!! 次はあれで勝負よ!!」
慌ててごまかすさやかに、杏子は不敵な笑みを浮かべて答える。
「いいぜ。返り討ちにしてやる」
「マミさん、マミさんも早く!!」
「はいはい」
ゲームセンターの奥へと駆けていくさやかと杏子の後を追いながら、マミは一度だけ振り返りまどか達に向けて口を開いた。
「それじゃ二人とも、ごゆっくり」
247 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/15(日) 04:30:30.28 ID:mc5fh68ko
☆
二人で一緒に映画を見て、二人で一緒にプリクラを取って、二人で一緒にファミレスで食事をして、二人で一緒にファンシーショップを覗いて、二人で一緒に赤く染まった公園を歩いた充実した初デートの帰り道。
二人は手を繋いでまどかの家へと歩いていく。
学校での事、友人の事、二人は今まで以上にお互いの事を話しながら夜の道を歩く。
時刻は午後八時三十分。
今日はマミ達の計らいで夜のパトロールは休みだ。
ワルプルギスの夜を倒してから、一度も使い魔一匹すら現れない今だからこそ、与えられた休息の時を二人は目一杯満喫する。
しかし、いつまでも楽しい時間は続かない。
やがて、二人は鹿目家の玄関前に辿り着いてしまう。
「それじゃ、俺はここで」
「……うん」
まだ別れたくない。
もっと一緒にいたい。
口には出さなくても二人の思いは同じだった。
別れのあいさつを済ませて、別れようとしてもまどかも芳文もお互いの繋いだ手を放す事が出来ない。
無言でお互いの顔を見つめあっていたその時だった。
芳文の知らない、まどかの良く知る人物が芳文とまどかの別れの時をぶち壊した。
「あれー? まどか今帰ってきたとこか?」
「あ」
「ママ!?」
手を繋いだまま、お互いに見つめあっていた芳文とまどかは慌てて繋いでいた手を放す。
そんな二人を見て、詢子はにやりと笑みを浮かべる。
「……へえ。まだまだ子供だと思ってたけど、まどかもいつの間にか彼氏を作るようになったのか」
母親の放った彼氏と言う言葉に、まどかは思わず赤くなる。
「で、まどか。こっちの彼氏は?」
詢子の問いに、芳文は姿勢を正して挨拶する。
「は、はじめまして、お義母さん!!」
「……は?」
「え……?」
芳文のその言葉に、詢子とまどかが固まる。
(しまったぁっ!! ついテンパってとんでもない事を口走ってしまったぁ!!)
頭の中で激しく動揺しながら、芳文は真面目な顔で詢子に自己紹介をする。
「俺……いや、僕、まどかさんとお付き合いさせていただいてます社芳文と言います。若輩者ですが、どうか末永くよろしくお願いいたします!!」
(馬鹿か俺は!! 末永くってなんだよ!!)
テンパっておかしな物言いになった事を後悔しながら、深々とお辞儀する。
「……あはははははっ!! そんなにかしこまらなくてもいいって!!」
ケラケラと笑いながら詢子は言う。
「あんた達、晩飯もう食ったかい?」
「ううん、まだ。ついさっき芳文さんに送ってもらって来た所だから」
「……ふーん。そんな風に呼んでるんだ」
「あ……」
母親のその言葉に真っ赤になるまどか。
「積もる話もあるし、みんなで晩飯食うか。社君って言ったね。あんたも家でメシ食っていきな」
「え……いや、それはご迷惑じゃ」
「子供が遠慮なんかすんなっての。それに大事な娘が初めての彼氏を連れてきたんだ。色々聞きたい事もあるしさ」
そう言って、詢子は玄関の扉を開く。
「さあ、二人ともいつまでそんなとこに突っ立てんだ? 早く家の中に入りな」
強引な詢子の言葉に、まどかと芳文はただ大人しく従うしかなかった……。
248 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/15(日) 04:31:29.98 ID:mc5fh68ko
☆
『……』
(き、気まずい……)
まどかの隣に座る芳文の前には、食卓を挟んで詢子と智久が座っている。
(――どうしてこうなった)
テーブルの上には、芳文が何年もの間食べていない、色とりどりの家庭料理が並んでいる。
タツヤはすでに部屋で寝かされており、今この場にいるのはまどかの両親とまどかと芳文の四人だけだ。
まどかは無言で食事を取り、詢子はビールを飲みながら食事をする。
智久はニコニコと笑顔で、ビールを詢子の空になったグラスに注いでいる。
芳文は箸と茶碗を手にしたまま、この状況をどうするか必死に頭の中を振る回転させる。
(どうする!? 巴さん達にやってたみたいに馬鹿のふりするか? 駄目だ、今後まどかと付き合っていく為にも、本当の自分を見せないと)
(だがどうしたものか。 まどかのお父さんの笑顔が怖い。やっぱり俺のせいで内心はらわた煮えくり返っているんだろうな)
(どうするどうするどうする!? どんな風に話を切り出すべきだろう)
「社君」
「は、はい!!」
不意に智久に声をかけられ、芳文は反射的に返事を返す。
「さっきから箸が進まないみたいだけど、口に合わなかったかな?」
「いえ、そんなことありません!!」
慌てて茶碗の中のご飯とおかずを口の中に詰め込むと、咀嚼して飲み込んでから食事の感想を言う。
「とてもおいしいです!! お義父さん!!」
「……お義父さん?」
(しまったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!)
智久の疑問系の言葉に芳文は冷や汗をだらだらと流す。
芳文の言葉に隣のまどかが思わずむせて、麦茶をごくごくと飲む。
「あ、いや、そのまどかのおとうさん、という意味で……」
「……まどか?」
智久の眼鏡が一瞬光ったように芳文には見えた。
「い、いえ、まどかちゃんのお父さん、です」
慌てて言い直すと、隣のまどかが拗ねた顔でぼそっと呟いた。
「……ちゃん付け禁止」
(ど、どうしろっていうんだ……。畜生……今ほど自分のコミュ障が憎いと思った事はないぞ……。まどかの両親でなければ演技で乗り切れるのに……っ!!)
芳文が激しく狼狽していると、詢子がグラスを手で弄びながら尋ねる。
「それで、あんた達いつから付き合ってるんだい?」
「き、今日で一週間になります」
「どっちから告ったんだい?」
「お、俺です、お義母さん」
蛇に睨まれた蛙のような心境で、芳文は詢子の問いに答える。
「まどかの担任の早乙女和子なんだけどさ、あたしの友達なんだわ。以前三年の担当クラスに問題児がいるって愚痴を聞いたんだけどさ、その問題児の社君ってあんたかい?」
「す、すみません」
「ふーん。別にそんな風に見えないね。和子から聞いてた社君ってのは、もっと明るい子だって言うけど」
詢子の値踏みするかのような視線に気づき、芳文の頭の中が冷やされていく。
「……今、ここにいるのが本当の俺です」
気が付けば、極めて冷静に返答していた。
「本当の自分?」
「はい。私生活で色々ありまして、他人と触れ合うのが怖いんです。だから今まで他人に対しては、馬鹿で明るい自分を演じて接していました」
「何の趣味もない、無口で無愛想なコミュニケーション障害の自分。自分自身をいらない人間だと思っていたくだらない人間。そんな自分を……この子が、まどかが救ってくれたんです」
そう言って、隣に座るまどかの顔を愛しげに見ると、詢子と智久に向き直る。
「……なんで、あたしや智久には素の自分を見せる気になったんだい?」
「まどかの……俺の大切な人の両親ですから」
「……なるほどね」
「はい」
「あんた、まどかが大切だって言ったね」
「はい」
「どれくらい大切なんだい?」
「世界中の何よりも。俺の命よりもです」
「随分大袈裟だね」
「大袈裟じゃありません。この子にはいつまでも俺の隣で笑っていてほしいから。俺もこの子の隣に立っていたいから。だから、どうか交際を許してください」
「いいよ。別に反対してないし」
「え!?」
「反対してたら、晩飯に招待なんてしないさ。ねえ、智久」
「そうだね。正直に言って、まどかが彼氏を連れてくるなんて、考えた事もなかったから驚いたけどね」
「あ、ありがとうございます!!」
「でも、二人ともまだ中学生なんだから、ちゃんと節度ある清い交際をするようにね」
「はい!! 勿論です!! 絶対に大切にします!!」
249 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/15(日) 04:32:01.41 ID:mc5fh68ko
「……なんだか、まるで嫁にやるみたいな流れになってるような」
詢子の呟きに、芳文とまどかの顔が真っ赤になる。
「それはその……将来的には……」
「〜〜っ!!」
芳文のその言葉に、まどかが真っ赤になる。
「なんだ。あんたもうそこまで考えてるのかい?」
「……俺には、この子だけですから」
「そっか。もしあたし達が交際を反対したらどうしてた?」
「お二人に認めてもらえるように頑張ります」
「あんたがどんなに頑張っても、それでも認めなかったら?」
「まどかをさらって逃げます。でもそんな事にならないように努力し続けます」
「……」
「まどかには幸せでいてほしいから。だから」
「……合格。まどかの事、よろしく頼むよ」
「はい!!」
「まどか、あんたいい男捕まえたじゃないか」
「も、もうママったら、からかわないでよ」
「良く見ると顔も美形だよね。将来いい男になりそうだ」
「〜〜っ」
詢子のその言葉に芳文は真っ赤になる。
「よし、まどかに素敵な彼氏が出来たお祝いだ!! 今日は飲むぞーっ!!」
「ほとほどにね」
「大丈夫!! 明日は日曜日だ!!」
夫に窘められても、そう言って笑い飛ばす詢子。
芳文とまどかはそんな食卓でお互いの顔を見て笑いあうのだった。
☆
「……それじゃ、そろそろ、帰り、ます」
芳文はふらふらと千鳥足で席を立つ。
「よ、芳文さん、大丈夫!?」
「へ、いき、平気……」
あれからビールを飲み干した詢子は、新しい酒を智久に出してもらい酔っぱらってしまった。
まどかが連れてきた、初めての彼氏である芳文の事を気に入った詢子は、普段よりも多く飲酒してしまったのだ。
普段なら絶対にしない、未成年への飲酒の勧めを芳文にしてしまった詢子。
まどかと智久が止めたが、酔っ払いに何を言っても無駄だった。
『あはははははは……。なかなかいい飲みっぷりじゃぁないか』
『そ、そうですか』
『で、まどかとどこまで行ったんだい? もうキスくらいしたのかい?』
『ま、まだです』
『あたしの娘に魅力がないってぇのかい?』
『ち、違います!! 俺にとっては世界一の美少女ですから!!』
『ほう。だったら、なんで手ぇださないんだ?』
『だってまどかの事、大切にしたいし……。それに、やっぱりそういう事の初めては、最高の思い出にしてあげたいし、俺だって……』
『あっははははははははははははっ!! 純情だねあんた!! まどかは本当にいい男捕まえたよ!! 流石あたしの娘だ!!』
芳文もまた、まどかの母親相手だったので断りきれず、一杯だけと言って詢子に絡まれながら、ちびちびとグラス一杯の酒を飲んでしまった。
結果、芳文はたった一杯の酒で酔っぱらってしまったのだった。
250 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/15(日) 04:32:31.61 ID:mc5fh68ko
「社君、無理しないで休んでいった方が良いんじゃないかい?」
「大、丈夫、です、から……。これい、じょうのごめい、わくは……ひっく……」
智久の申し出をやんわりと断り、ふらふらと出て行こうとする。
「まどか、おや、すみ……」
「う、うん、おやすみなさい」
まどかに別れの挨拶をして立ち去ろうとしてそして。
バターン。
「きゃああああああっ!? 芳文さんしっかりしてぇぇぇぇぇっ!!」
前のめりに倒れた芳文を慌てて抱きかかえて、膝の上に頭を載せてやるまどか。
「……うーん。……夢?」
「芳文さん、大丈夫?」
「……ああ、これは夢かぁ。まどかの膝枕ー。好きな子にしてもらう膝枕ー。嬉しいなぁー。ぐぅ……」
そのまま寝息を立ててしまう芳文。
「……まどか、社君を客室に運ぶよ。布団出してくるからちょっと待ってて」
智久はそう言って客室に向かう。
詢子はテーブルに突っ伏してよだれを垂らしながら寝ている。
「……まどかー」
芳文が寝言でまどかの名を呼ぶ。
「……ここにいるよ」
まどかはくすっと笑って寝ている芳文にそう答えるのだった。
☆
「……どこだ、ここ?」
翌日の朝、ぼーっとする頭のまま芳文が眠りから目覚める。
「頭がぼーっとする……。夢見てんのかな……」
ぼーっとしたまま、客室から出る。
「あ……」
パジャマ姿のまどかとタツヤと遭遇する。
「……髪を下したまどかもかわいいな」
芳文の言葉にまどかが真っ赤になる。
「今度、現実のまどかに一度頼んで、髪下ろしたところ見せてもらおうかな」
ぽりぽりと頭を掻きながら言う。
「……しかし、なんでパジャマ姿なんだろう。夢の中なんだから、もっとこう、他の衣装でもいいだろうに。ウェディングドレスとか」
「芳文さん?」
夢だと思い込んでいる芳文にまどかが声をかけるが、ぼーっとしている芳文には届かなかった。
「はっ!? まさか、俺変な趣味や性癖があるんだろうか!? 嫌だなあ……。まどかに知られて嫌われたら生きていけないぞ……」
両手で頭を抱きかかえてしゃがみ込むと、タツヤと目があった。
「……あれ? このちっこいのは?」
家の中で知らない人間に会って、きょとんとしているタツヤを芳文はひょいと抱きかかえる。
「……うーん。なんかまどかに似てるような。ああ、そういう事か」
タツヤを抱き上げたまま、芳文は言う。
「これは、まどかと結婚した世界の夢だな。つまりこの子はまどかと俺の子供な訳か」
「け、結婚!? 子供!?」
まどかが真っ赤になるが、芳文は気付かない。
「俺の想像力も大したもんだなあ。現実のまどかと将来結婚したら、いつかこんな風にかわいい子供が生まれるんだろうなー」
「〜〜っ!?」
「はっはっは、かわいいなぁー」
真っ赤になってるまどかを尻目に、芳文はタツヤに高い高いをしてやる。
タツヤは無邪気にキャッキャッと喜んでる。
251 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/15(日) 04:33:38.83 ID:mc5fh68ko
「……何してんのあんた達」
寝ぼけ眼の詢子が声をかけてくる。
芳文が顔を向けると、詢子の背後では智久が苦笑いしている。
「……ああ。この夢ではまどかの両親と同居してるのか」
タツヤを下してやると、詢子の足元に歩いていって抱きつく。
「夢?」
詢子が頭の上に?マークを浮かべる。そんな詢子を芳文はじっと見つめながら口を開いた。
「……まどかの母さんって、美人だよな」
「は!?」
突然芳文が放ったその言葉に詢子が驚く。
「まどかも将来こんな風に育つのかなー。でも見た目はともかく、性格は今のまんまがいいなー」
「……あたしに似たらまずいって言うのかい?」
ジト目で芳文を睨む。
「だってお母さんみたいになったら、俺に甘えてくれなくなりそうだし」
「……まどか、あんた甘えてんの?」
「ちょっ!?」
まどかが真っ赤になって慌てる。
「大好きな女の子に甘えられるのって、嬉しいんですよー。……あれ? 俺って実はロリコンなんだろうか。小柄で甘えてくれる女の子が好きって……」
「いやいや。違う違う。俺はまどかだから好きなんだ。もしまどかを好きなのがロリコンだと言うならロリコンでも構わない。あれ? でも俺はまどか一筋だから……まどコンが正しいのか?」
『……』
ぼーっとした頭で次々とおかしな事を言い出す芳文を、鹿目一家は無言で見つめる。
「うむ。俺はまどコンだ!!」
キリッと表情を引き締めて叫ぶ。
「それにしても、昨晩会ったばっかなのに、もうまどかの両親が夢に出てくるとはな……」
そう言って詢子と智久の顔を見回す。
「うーん。まどかのお母さんみたいな、強烈な個性の持ち主は記憶に残りやすいのかな」
「おい!!」
詢子が憤慨する。
「そんなお母さんの旦那さんだからかな。お父さんまで夢に出てくるなんて」
「さっきから黙って聞いてれば!! あんた、本当にコミュ障なのか!?」
「む。これはまさか、俺の中の心の闇か!!」
「はぁ!?」
「そうか……。まどかと交際出来るようになって、幸せにな気持ちになれるようになった俺に、囁くんだな。俺がちょっと苦手な相手に化けて!!」
「……」
「聞け!! 俺の中の闇!! 俺は確かにコミュ障だ!! けどな、心の中までコミュ障じゃない!!」
ビシッと指を突き付けて芳文は叫ぶ。
「確かに俺は他人に素の自分を見せるのが苦手だ。まどか以外の友人達に馬鹿な自分を演じて接していた事もある!! けどな!!」
「まどかに出会って、受け入れてもらえて、俺は変わったんだ!! いつかきっと誰とでも普通に接することが出来るようになってみせる!!」
「……」
「……ふ。どうやら俺の中の闇は沈黙したようだ。しかしおかしいな。いつもは夢を見てても、それが夢だと自覚すれば目が覚めるんだが」
252 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/15(日) 04:34:36.04 ID:mc5fh68ko
『……』
鹿目一家は呆然と芳文を見ているが、芳文は気持ちを切り替えてぼやく。
「おかしいな。頭の中がなんかふわふわするっていうか、なんか変な感じがするから、これは夢のはずなんだが……」
そう言ってポリポリと頭を掻く。
「はあ。しかし、こんな夢見るってどんだけ幸せに飢えてんだ俺は」
まどかの側に歩いていき、まどかの手を取ると、そのままどすんと床に腰を下ろしてまどかを膝の上に載せる。
「きゃっ!?」
「……しっかし今日のはやけにリアルな夢だなあ。それにしてもだ。まどかと出会ってから、ほぼ毎日夢の中にまどかが出てくるし。俺はもう駄目かもしれん。どんだけまどかの事が好きなんだ、俺」
芳文の膝の上で、まどかは芳文に振り返りながら尋ねる。
「……それ本当?」
「ああ。って言っても夢のまどかにしか言えんな。現実のまどかに言ったら引かれるかもしれん」
「そんな事ないよ。それだけわたしの事想ってくれてるんだもん。嬉しいよ」
「そっか。夢の中のまどかも優しいなあ。現実世界ではもっとがんばらないといけないな」
「頑張るって?」
「うん。とりあえず、まどかのお母さん達に、まどかの相手は俺しかいないって言ってもらえるようにがんばる」
「どうして?」
「そりゃ、将来みんなに祝福されながら、俺の隣でまどかにウェディングドレス着てもらいたいし」
「……」
「我ながらキモいな。まだ一五なのにな」
芳文のその言葉に、まどかは頬を染めながら答える。
「……ううん。嬉しい」
「そっか」
「うん」
「……」
「……」
それっきり、二人とも黙ってしまう。
そんな二人を詢子、智久、タツヤは無言で見つめ続ける。
「あのさ」
「何?」
「これって、夢だよな?」
三人の視線に耐えられなくなって、膝の上のまどかに尋ねる。
「……えっと、現実、だよ」
「でも、頭の中が変なんだ」
「多分、二日酔いじゃないかな」
「……あのちっちゃい子は? 昨日の夜いなかったよな」
「だってタツヤ三才だし。あの時間ならいつも寝てるし」
「……じゃあ、あの子誰の子?」
「あたしと智久の子でまどかの弟だよ」
「……随分年の離れたご兄弟ですね」
「そうだな」
まどかを膝の上から下ろすと、芳文はその場で土下座した。
「……申し訳ありませんでしたっ!!」
253 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/15(日) 04:35:58.64 ID:mc5fh68ko
☆
――結局、詢子が無理に酒を飲ませたせいだからという事で、その場は収まった。
芳文は二日酔いが収まるまで、鹿目家でそのまま休ませてもらう事になったのだった。
昼には体調も戻り、それから芳文はまどかと一緒にタツヤと遊んでやったり、まどかの勉強を見てやったりして日曜日の午後を過ごした。
朝、昼、夜の三食までごちそうになり、芳文が家に帰る時には、鹿目一家が見送ってくれた。
「お邪魔しました」
「いやいや。タツヤと遊んでくれたり、まどかの勉強も見てくれてありがとう」
「また遊びにおいで」
「はい。ありがとうございます」
「また明日、学校で」
「ああ。また明日」
家族と一緒に笑顔で手を振るまどかに軽く手を上げて微笑み返し芳文は帰っていった。
――その日の夜。
まどかはベッドの上で、芳文と一緒に撮ったプリクラを見ながら、嬉しそうに微笑む。
「ご機嫌だね。まどか」
枕元のぬいぐるみに紛れているキュゥべえに、そう声をかけられてまどかは笑顔で返す。
「うん。わたしね、今すごく幸せなの」
「そう」
「うん。ママもパパも芳文さんの事気に入ってくれたみたいだし、タツヤもお兄ちゃんが出来たって喜んでたし」
「だから、わたし今すごく幸せ」
「そう。よかったね、まどか」
「うん。ありがとうキュゥべえ」
「どうして、僕にお礼を言うんだい?」
キュゥべえは不思議そうに首を傾げて尋ねる。
「だって、キュゥべえが来てくれなかったら、今のわたしはないんだもん。魔法少女になって、さやかちゃんの力になれて、マミさんや杏子ちゃんとも仲良くなれて、街も守れて、芳文さんとも恋人同士になれた」
「全部、あなたのおかげだよ。だから、ありがとう」
「……」
まどかの感謝の言葉に、キュゥべえは何も答えない。
「ずっと、こんな日々か続いたらいいな……」
まどかはそう言って、部屋の電気を消したのだった。
つづく
254 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/15(日) 04:38:21.75 ID:mc5fh68ko
杏子「とりあえずここまでだ」
杏子「あと一話くらい日曜日中に仕上げたいそうだ」
杏子「無理ならすまんとの事だ」
杏子「ちなみにほむらさん(34)への質問も受け付けるぞ」
杏子「ただしあのおばさんは答えられることしか答えてくれないからな」
杏子「じゃーな」
255 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/15(日) 06:47:17.60 ID:0PkeaOqDO
乙です。
それにしても甘過ぎる。
コーヒーが甘く感じた
256 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/15(日) 09:29:02.91 ID:iLKnoeopo
お疲れ様でした。
いいですね。甘くて。単純計算して挙式は最速で3年後くらいですか。
一方で、原作が原作だけに不安になってきますね。
257 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/15(日) 12:24:38.26 ID:iJCRoidSO
甘いよ〜。社の面白いところが久々に見れて良かった。
258 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/17(火) 07:36:04.49 ID:t0JrkewIo
杏子「業務連絡だよ」
杏子「なるべく早めに第15話を書くので、待っててくれだって」
杏子「じゃあな」
259 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2011/05/17(火) 10:45:19.70 ID:KmAhvfqDo
把握
260 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/18(水) 01:27:49.34 ID:10WK/ecao
杏子「更新開始するよ」
261 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/18(水) 01:28:38.13 ID:10WK/ecao
第15話 「これはきっと、かけがえのない日々、だから」
「……どう、かな?」
学校の屋上で、まどかが隣に座る芳文におずおずと上目遣いに尋ねる。
「美味しいよ。こんなに美味しい弁当食べたの初めてだ」
弁当箱と箸を持ったまま、芳文はまどかに微笑みながら素直な気持ちをそのまま答えた。
「芳文さん、誉め過ぎだよ……」
まどかは恥ずかしそうにそう呟くが、とても嬉しそうな顔をする。
「まどかが作ってくれた弁当を食べられる日が来るなんて、初めて会った時には思いもしなかったよ」
まどかの手作り弁当を美味しそうに食べながら、芳文は感慨深げに呟く。
「……わたしも、こんな風に好きな人の為に、お弁当を作る日が来るなんて思いもしなかったよ」
まどかも頬を染めながら、そう呟く。
芳文は顔を赤くしながら、弁当を全部平らげると、弁当箱のふたを閉じてまどかの顔を見つめて言う。
「御馳走様。すごく美味しかったよ」
「えへへ……。お粗末さまでした」
空の弁当箱を受け取って、まどかは嬉しそうにそう答える。
「ありがとうな、まどか」
「どういたしまして。また明日も作ってくるね」
「ああ。弁当の事もだけどさ……その、俺の事、好きになってくれて……ありがとう」
真っ赤になりながら芳文はまどかの顔を見て素直な気持ちを伝える。
「……こっちこそ、だよ。わたしの事、好きになってくれて、いつも優しくしてくれて、ありがとう」
まどかもまた、頬を染めながら芳文の言葉に応える。
「……俺は幸せ者だよ。初めて好きになった女の子と両思いになれて」
「……わたしもすごく幸せ。それにね、わたしも芳文さんが初恋の人だよ」
「そうなのか?」
「うん。恋愛とかに憧れる事はあったけど……。男の人を好きになったのは芳文さんが初めてなんだ……」
「……やばい。すごく嬉しくて、今すぐまどかの事抱きしめたい」
「……うん。わたしもギュってしてほしいな」
まどかの甘えた言葉に、芳文は優しく抱き寄せて応える。
「えへへ……」
「まどか、暑くないか?」
「ううん。芳文さんにギュってしてもらってるんだもん。芳文さんは暑い?」
「全然。こうしてまどかの体温を感じてるの、すごく好きだから」
「えへへ……。初恋は実らないってよく言うけど、わたし実っちゃったからすごく幸せ」
「その意見には俺も同意するよ。初恋が実らないって言うのは嘘だな」
「うんっ」
「……もうすぐ夏休みだし、またどこか二人で遊びに行こうか」
「うんっ。いっぱい思い出作ろうね」
そう言って幸せそうに笑いあう二人。
昼休みの終了を告げる予鈴がなるまで、二人は一緒にいるのだった。
262 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/18(水) 01:29:43.91 ID:10WK/ecao
☆
一方その頃。
「……苦しいよ」
「おいキュゥべえ、大丈夫かよ?」
街を一人ぶらつく杏子の肩の上で、キュゥべえが気持ち悪そうにぼやく。
「……まどかにも困った物だよ。今朝の五時から、社芳文の為の弁当を作るのは別にいいんだ」
キュゥべえはげぷっと息を吐きながら、ぼやきを続ける。
「上手く出来るまで、僕に味見をさせるのはやめてほしいよ。食べ過ぎて今も気持ち悪いよ……」
「おいおい、あたしの肩の上で吐かないでくれよ。味見が嫌なら上手く断ればいいじゃないか」
「……出来たら最初から断ってるよ。あんな表情で味見を頼まれたら断りづらいよ」
「あー。なんとなく、まどかがどんな顔で頼んでくるか想像出来た」
「訳が分からないよ……。たかが弁当ひとつで、どうしてあそこまで必死になるんだろう」
「まあ好きな相手に、少しでも美味い物を食べさせたいっていう、乙女心じゃないの。あたしにはよくわからないけどさ」
肩の上のキュゥべえと会話をしながら、杏子は路地裏などを覗き込む。
「人間の考える事は良くわからないよ……。僕にデートに行く時の服を相談したり、社芳文との事を相談されても正直困る」
「そうかい。そんなに辛いなら、マミの所かさやかの所にでも来ればいいじゃないか」
「マミの所だと、君が僕の食事を取るじゃないか。先日も最後に残しておいた唐揚げを君に取られた」
「残すくらいならって思っただけさ。別に取り上げたわけじゃないぞ」
「それに君とマミの寝相は悪すぎる。何度君達に潰されて死にそうになった事か」
「……だったらさやかの所に行けばいいだろ」
キュゥべえの抗議にそっぽを向きながら答える。
「さやかの住んでるマンションは、ペット禁止だからと言われたよ。僕はペットなんかじゃないのに。この前、さやかの母親が猫か何か拾ってきたのかと言って、さやかの部屋に入ってきたせいで夕食がなしになった」
「……あんたも結構苦労してるんだな」
「魔法少女が五人もいる以上、この街を離れるわけにもいかないしね。結局まどかの所にいるしかないんだ」
そう言ってキュゥべえは目を伏せる。
「……あんた、少し変わったか?」
「僕は何も変わっていないよ」
杏子の疑問にいつもの無表情で答える。
「そうかい。さてと……もう少し魔女探ししておくか」
「君も昼間から精が出るね」
「昼間に探しておけば、夜遅くまで見回りしなくて済むしな。昼間自由に動けるあたしが、あいつらの分も見回りしとかないとな」
「杏子、君も変わったね。以前の君なら、絶対に他人の為に何かしようとはしなかったのに」
「……かもな」
「これはきっと、かけがえのない日々、だから」
杏子はそう答え路地裏を進んでいくのだった。
263 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/18(水) 01:30:27.34 ID:10WK/ecao
☆
新たな魔女も使い魔も現れなくなってから、まどか達は平和な時を満喫していた。
夏休みに入り、まどか達は昼間も良く全員で集まっては色んな事をした。
さやかと杏子が芳文を相手にして、河川敷で木の棒を使った戦闘訓練をしたり、女の子だけでマミの家に集まってパジャマパーティをしたりもした。
全員で日帰りで海に行ったり、プールにも行ったりした。
マミも杏子も、久しぶりの普通の女の子としての日々を、嬉しそうに過ごしていた。
さやかも日中は恭介の見舞いに行き、それから杏子達と過ごす日々を満喫していた。
まどかと芳文は二人で水族館やプラネタリウム、動物園といった定番のデートコースでデートをしたり、まどかの家で夏休みの宿題を一緒にしたりした。
ワルプルギスの夜を倒すまでは、誰もが考える事さえしなかった穏やかで優しい日々か過ぎていく。
一応、まどか達は夜のパトロールも欠かさずに行ってはいたが、相変わらず使い魔一匹さえ現れなかった。
芳文がまどかを家まで送っていくのも、既に日課になっていた。
まどかの両親も、まどかの帰りが多少遅くなっても、もう何も言わなかった。
芳文との交際でまどかが成績を落とす事もなく、むしろ芳文が勉強を見てやった事で、中間テストも期末テストも以前よりはるかに良い点数を叩き出し、成績も良くなっていた。
詢子も智久もまどか一筋の芳文の事を信頼し、気に入っていた事もあり、時間が合えば夕食に誘う事も多くなった。
タツヤもまた、芳文の事を「にーちゃ」と呼び、兄のように慕うようになっていた。
詢子と智久が昔の同級生の結婚式に出かけた日に、まどかと芳文が二人でタツヤの面倒を見る事になった日もあった。
まどかと芳文の手を小さな両手で握って、まどか達と笑いながら歩くタツヤを見て、さやか達がまるで夫婦みたいとからかったり。
誰もが皆、幸せで充実した夏休みを過ごしていた。
そして、見滝原市の夏の風物詩である花火大会の開催される日がやってきた。
☆
「芳文さん」
待ち合わせ場所に先に来ていた芳文に、浴衣姿のまどかが声をかける。
「まどか。その浴衣、良く似合ってるよ」
「ほんと?」
「ああ。すごくかわいい」
「えへへ。ありがとう」
どちらからともなく、手を握りまどかと芳文は花火大会の会場に向かう。
「みんなは?」
「河川敷の方にキュゥべえと一緒に来てるって」
「そうか。まどか達はテレパーシが使えて便利だな」
「うん。内緒話とかするのには便利だよ」
「そっか。俺もまどかとテレパシーが使えたらなあ……。いや、やっぱいいや」
「どうして?」
「やっぱり、大切な事とかは口に出して言葉で伝えたいし」
「……うん」
そんな事を話しながら、まどか達は歩く。
「まどかー!! せんぱーい!! こっちこっちー!!」
まどか達に気付いたさやかが、手を振りながら二人を呼ぶ。
まどかと芳文は顔を見合わせて微笑みながら、さやか達と合流して、夜空を照らす色とりどりの花火を観賞するのだった。
花火大会の帰り道、さやか達と別れた二人は夜の公園を手を繋ぎながら歩く。
「花火、きれいだったね」
「ああ」
「また来年も、みんなで一緒に見られたらいいな……」
「……ああ。そうだな」
芳文はまどかの言葉に優しい顔で応える。
「来年も、その次も、ずっと。まどかと一緒に。もちろん、みんなとも」
「……うんっ」
まどかは笑顔で芳文に頷く。
二人は幸せを噛み締めながら夜の公園を歩く。
264 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/18(水) 01:32:00.05 ID:10WK/ecao
月が雲に隠れて、月明かりが消える。
「きゃっ!?」
まどかが不意に体勢を崩すのを咄嗟に芳文は抱きとめる。
「おっと。大丈夫?」
「う、うん。ありがとう」
「暗いから、気を付けないと」
「うん。ごめんなさい」
芳文の腕の中でまどかは俯いて謝る。
「謝らなくてもいいよ。俺がまどかを支えるから。これからもずっと」
「……ずっと?」
芳文の言葉に、芳文の顔を見上げながら尋ねる。
「ああ。俺がまどかの事を好きで、まどかが俺の事を好きでいてくれる限り、ずっと」
「……それじゃ、一生、だね」
「……一生、か。そんな事言われたら、もう俺はまどかから離れられないな」
「わたしは芳文さんに、ずっと一緒にいてほしいな。これってわがままかな?」
「いや。俺も同じ気持ちだから。俺もまどかとずっと一緒にいたい」
「嬉しい……」
まどかが芳文の体に両腕を回して、優しく抱きしめる。
芳文もまた、まどかの小さな体を奴市区抱きしめる。
お互いの胸の鼓動を感じながら、二人はお互いの体温を感じ続ける。
雲が流れていき、月明かりが二人を照らす。
まどかが芳文の体に回していた両腕を放し、芳文から少し離れる。
そして芳文の顔を見上げて、そっと目を閉じる。
芳文はこの世界で、一番大切な少女の両肩に両手を載せ、膝を少し曲げてそして――。
――月明かりに照らし出される二人の影が、一つに重なったのだった。
☆
人通りも少ない夏休みの早朝の街。
「社君、そのカメラどうしたの?」
マミさんが芳文さんの持っている古いカメラについて尋ねる。
「ああ。俺って趣味がなかったしさ。何か趣味を見つけてみようかなって思って」
そう言って、マミさんにレンズを向ける芳文さん。
「ちょっと、私じゃなくて鹿目さんを撮ってあげたら?」
「もう撮ったよ。まどかがみんなも撮ってあげてって言ったから」
「そうなの?」
「はい。わたしはもういっぱい撮ってもらいましたから」
「だったら、みんなで撮るのはどうかしら?」
「それ、いいですね」
マミさんの提案にわたしは笑顔で答える。
「おーい、まどかー、マミさーん、せんぱーい!!」
手を振るさやかちゃんと、その後についてきてる杏子ちゃんが、こちらに向かって歩いてくる。
「おまたせー」
「待たせたね」
「杏子ちゃん、昨日はさやかちゃんの所に泊まったんだよね」
「ああ、そうだよ」
「いいなー。わたしもお泊りしたい」
「まどかはあたしん家じゃなくて、先輩の家に泊まりたいんじゃないの?」
「さ、さやかちゃんったらもうっ!!」
さやかちゃんにからかわれて、顔が真っ赤になるのが自分でわかる。
ちらっと視線を向けると、芳文さんも真っ赤になってる。
「おいおい、あんまからかってやるなよ。社はともかく」
「あはは、ごめんごめん」
杏子ちゃんに窘められて、さやかちゃんが笑顔で謝ってくれる。
うん。絶対本気で謝ってないよね。
芳文さんを見ると、杏子ちゃんの言葉に傷ついたのか、下を向いて落ち込んでいた。
「芳文さん、みんな揃ったから写真撮って」
落ち込んでいる芳文さんにお願いすると、気持ちが切り替わったのかこくんと頷いてカメラを向けてくれる。
「あっ。ちょっと待って」
見覚えのある後姿を見つけて、わたしは芳文さんにそう言い残して去っていく人影を追う。
「ほむらちゃん!!」
わたしが呼び止めると、彼女がくるりと振り返る。
「おはよう、しばらくぶりだね」
「……おはよう」
「わあ、かわいい猫ちゃん。ほむらちゃんが飼ってるの?」
返事をしてくれた彼女にの腕の中には黒い猫が抱かれていた。
「別に飼っているわけではないけれど」
「そうなの? かわいいー。名前、なんて言うの?」
「……エイミーよ」
「エイミー。いい名前だね。はじめまして、エイミー。わたし、まどかだよ」
そう言いながら、わたしはエイミーの前足を持って話しかける。
265 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/18(水) 01:33:31.13 ID:10WK/ecao
「あれ? この子なんだか元気がないね」
「ケガをしているのよ」
「あ……それじゃこれからお医者さんにされて行く所だったの?」
「そうよ」
「ちょっと見せて」
わたしはエイミーの後ろ足が、変な曲がり方をしているのに気付いて尋ねる。
「このケガ、どうしたの?」
「わからないわ。誰かにやられたのか、それとも事故に遭ったのか」
「かわいそう……。今、治してあげるからね」
わたしは癒しの魔法をエイミーにかけてあげた。
エイミーのケガがすぐに治って、エイミーが元気になる。
「鹿目まどか。あまり無駄に魔力を使うのはやめなさい」
「無駄なんかじゃないよ。だってこの子を治してあげられたもん」
「……あなたは優しすぎる」
ほむらちゃんはそう言って、背を向けると立ち去ろうとする。
「ほむらちやん、エイミーは?」
「別に飼ってるわけじゃないわ」
「飼ってないのに、名前を付けて病院に連れて行ってあげるの?」
「……」
「やっぱりねほむらちゃんは優しいんだね」
「わたしは優しくなんてない」
「ううん。優しいよ。この前もわたしの事、助けてくれたもん。あの時はありがとう」
「別に気にしなくていいわ」
ほむらちゃんはそう答えて歩き出す。
「待って」
わたしはエイミーを抱いたまま、ほむらちゃんの手を掴んで引き止める。
「……何?」
「あのね、これから芳文さんがみんなで集まった写真を撮ってくれるの」
「……」
「だから、ほむらちゃんも一緒に」
「馴れ合いは好きじゃない」
そう言って、わたしの手を振りほどこうとするほむらちやん。
「待って。わたしがほむらちゃんも一緒に写ってる写真が欲しいの。ほむらちゃんはわたしの恩人だから」
「……」
「一枚だけでいいから。手間は取らせないから。だから……」
「……一枚だけよ」
「ありがとう!!」
「……お礼なんていいわ。早く済ませて」
「うん!! こっちだよ!!」
わたしはほむらちゃんの手を引っ張って、みんなの所に駈け出した。
「へー。この猫かわいい」
さやかちゃんがエイミーを抱っこして肉球をぷにぷにしてる。
マミさんはその様子をニコニコと笑顔で見てる。
杏子ちゃんはポッキーを食べてて、ほむらちゃんは芳文さんの持ってるカメラをじっと見ていた。
「……随分古いカメラね」
「ああ、親父の形見のカメラだから」
「……そう」
ほむらちゃんと芳文さんのやりとりを見ながら、わたしは足元でみんなの様子を見ているキュゥべえを抱き上げる。
「なんだい? まどか」
「せっかくみんな集まったんだから、キュゥべえも一緒に、ね」
266 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/18(水) 01:35:09.58 ID:10WK/ecao
「こうして魔法少女が五人集まったんだから、どうせならふさわしい場所で撮ろう」
そう言って、芳文さんが電波塔の先を指差す。
「上が丸いから、全員座れそうだね」
わたしがそう言うと、芳文さんは笑って頷いた。
「ねえ、じゃあみんな変身して、あそこで撮ってもらおうよ」
わたしがそう言うと、マミさんとさやかちゃんは笑顔で頷いてくれた。
「まあいいけどさ」
「……」
杏子ちゃんとほむらちゃんはあんまり乗り気じゃないみたい。
「ほーら、杏子、転校生。早く!!」
さやかちゃんが二人の背中を押すと、二人はしぶしぶ魔法少女の姿に変身して、電波塔の上に飛び乗ってくれる。
「鹿目さん、美樹さん、行きましょ」
マミさんに頷いて、わたしはキュゥべえを。
さやかちゃんは、エイミーを抱いて電波塔へ向かって跳んだ。
「それじゃ、撮るよ。みんな、はい、チーズ」
電波塔の向かいにあるビルの屋上に、飛び乗った芳文さんが私達の集合写真を撮ってくれた。
数日後、現像されてきた写真を見てわたしは思わず笑顔になった。
電波塔の上にキュゥべえを抱いて座っているわたしの右隣にエイミーを抱きあげて笑うさやかちゃんが、わたしの左隣で笑うマミさんが、さやかちゃんの後ろで座ってこちらを流し見してる杏子ちゃん。
そして、マミさんの後ろでそっぽを向いて立ってるほむらちゃん。
わたし達魔法少女五人が全員揃って撮った最初で最後の一枚の写真。
みんなにも一枚ずつ配られ、この一枚がみんなとの共通の思い出として手元に残るんだって思ったらうれしくって。
これはきっと、かけがえのない日々、だから。
だから、わたしは笑った。
――この時のわたしは、ずっとこんな日々が続くと信じて疑わなかった。
何も知らずにただ、幸せな日々を過ごす。
本当に幸せだった。
この時は。
☆
「本当にやるつもりかい?」
暗闇の中、ビルの屋上に立つ大小二つの影。
「今更、あなたに止める権利なんてないわ。インキュベーター」
「あの街の魔法少女達は強いよ。あのワルプルギスの夜を退けてしまったんだからね」
「だから、よ」
白の魔法少女は酷薄な笑みを浮かべて、目の前の契約の獣に言う。
「私の望みを果たす為、連中のソウルジェムを手に入れてみせる」
つづく
267 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/18(水) 01:37:54.75 ID:10WK/ecao
杏子「つづく」
杏子「日常編はいつまでも続けられそうだが、話の都合上はしょらせてもらうそうだ」
杏子「集合写真はアニメ10話と11話のOPラストカットのアレだってさ」
杏子「じゃーな」
268 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/18(水) 12:05:46.23 ID:W2zNj5TSO
乙。おりこもかずみも見てない俺には最後のやつが誰かさっぱりだ。
269 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/05/18(水) 12:23:18.91 ID:SaVqiVWAO
乙
最後の奴は多分オリキャラじゃね?
270 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/18(水) 21:05:26.76 ID:1ofgbWN0o
お疲れ様でした。
271 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/05/19(木) 00:56:39.44 ID:Ci+v5gI7o
オリキャラは殺しても何しても構わないから
まどマギ側は誰も死なせないでくれ
272 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2011/05/20(金) 10:02:08.35 ID:7nd6FIrXo
おりこの魔法少女だったらはっきり言って詰むかもしれぬ
まあ白だけだったらなんとかなる、かな・・・?
273 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/20(金) 10:39:16.93 ID:ZUosx8+9o
杏子「第16話更新するよ」
杏子「カウント・ザ・グリーフシード!! 現在、まどか達が持ってるグリーフシードは!!」
まどか×4 マミ×4 杏子×4 さやか×3(杏子に2個もらった) ほむら×0
274 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/20(金) 10:39:43.23 ID:ZUosx8+9o
楽しかった夏休みも終わり、季節は秋へと移り変わる。
今朝もまた、まどかはさやかと仁美と合流して、一緒に登校する途中で芳文とも合流する。
さやかに芳文との事をからかわれ、仁美は赤くなるまどかと芳文を見ながら、くすくすと微笑ましそうに笑う。
そんないつもの登校風景。
「おはよう、鹿目さん、美樹さん、志筑さん、社君」
校門前でマミに出会うとマミは四人に朝の挨拶をする。まどか達もマミへそれぞれ朝の挨拶をする。
「おはようございます」
「おはよーございます、まみさん」
「おはようございます、巴先輩」
「おはよう、巴さん」
挨拶を返した四人に、にっこりと微笑むマミの背後に隠れるひとつの影。
「あれ? マミさんの後ろにいるのって……」
さやかがマミの横に回り込むと、そこにはさやかの良く知る人物が頬を染めながら、そっぽを向いて立っていた。
「杏子……? どうしてうちの制服着てるの?」
さやかの疑問の声に、杏子は赤くなったまま呟いた。
「……あんまり、じろじろ見んな」
第16話 「いつか、この幸せが壊れちゃうんじゃないかって」
275 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/20(金) 10:40:30.38 ID:ZUosx8+9o
「それにしても、杏子ちゃんが転入してくるとは驚いたな」
昼休みに屋上でまどかと合流し、いつもの場所に腰を下ろすと、芳文は開口一番に今朝の事を口にする。
「わたしもびっくりしたよ。しかもわたしとさやかちゃんと同じクラスだよ。春にほむらちゃんが転校してきたばっかりなのに、二人目の転校生の杏子ちゃんも同じクラスになるなんて、びっくり」
「巴さんも人が悪いよな。夏休みに杏子ちゃんの親戚が見つかって、後見人になってくれたのをずっと黙ってたんだから」
「もっと早く教えてくれても良かったのにね」
――杏子の父親の兄が、マミと一緒に隣街に出かけていた杏子を見つけたのは、まるで奇跡の様な物だった。
杏子の父が破門された後も、杏子の伯父は何かと弟一家の事を気にかけてはいのだが、伯父もあまり裕福ではなく弟一家を助けられなかった事を後悔していた。
そして弟一家の心中事件が起きた後、死体の見つからなかった杏子の事を、きっと生きているはずと長い間探していたのだ。
杏子自身も家族を失い、人間不信に陥っていた為に数少ない他の親戚に頼ろうとは考えもしなかった。
だが、どんな数奇な運命だろうか。
杏子は伯父にその存在を見つけられた。
杏子の叔父は、弟を助けられなかった事を杏子に詫びて、杏子を引き取りたいと申し出た。
だが杏子は伯父の申し出を断った。
今までの自分の生き方と、今の自分の生き方。杏子には首を縦に振る事が出来なかった。
しかし、今回の杏子と伯父の再会の一部始終に関わってしまったマミの強い説得に折れ、伯父には杏子の後見人として、今後の杏子の進学と生活費の援助をしてもらうという事で決着がついたのだった。
伯父の尽力により、戸籍や住民票も再取得した杏子はマミのルームメイトとして、一緒に寝起きを共にしながら今日から見滝原中学に通う事になったのだった。
「なんていうか、まるで小説か何かみたいな話だよな」
「そうだね。杏子ちゃん、まるで小公女みたい」
「それって確か、親父が死んでひとりぼっちになった女の子が、親父の親友に引き取られてハッピーエンドって話だっけ」
「そうだよ。でも、本当に良かった。やっぱりこのほうが杏子ちゃんの将来の為にもなるし」
「そうだな。戸籍とか復学とかは俺達にはどうしてあげる事も出来なかったし。クラスがまどか達と一緒なのも、きっと学校側が配慮してくれたんだろうな。それで杏子ちゃんの様子はどう?」
「杏子ちゃんってさばさばしてるから、女の子達に人気あるよ。それに体育の時間とか大活躍だったからね。今じゃクラスのみんなの人気者だよ」
「それは良かった。でもさ、今日くらいみんなと一緒に昼飯食べても良かったんじゃないのか?」
「それだと、芳文さんのお昼ご飯がないよ。それとも芳文さんわたし達のクラスでみんなと一緒にご飯食べてくれた?」
「……ごめん、無理。ただでさえまどかと付き合ってるの、クラスの男連中に妬まれてるのに」
「妬まれてるの?」
「そりゃ俺らの年で恋人がいる奴なんてそうそういないしな」
恋人という言葉に真っ赤になりながら、まどかは巾着袋から弁当箱を取り出す。
「……そうだね。はい、お弁当」
「ありがとう」
まどかの手作り弁当を食べながら、もう一度学校に通えるようになった杏子の事を含めて色んな事を話す二人。
「……そういや、そろそろ進路決めないといけない時期なんだよな」
「芳文さんはどこの高校に行くの?」
「字習館高校かな」
「えっ!? ……わたし、入れるかなぁ」
見滝原周辺でトップクラスの学校の名を出されて、まどかが狼狽える。
そんなまどかに笑いかけながら、頭を撫でてやると芳文はフォローを入れる。
「まだ一年半あるし大丈夫さ。それに俺もまだ受かったわけじゃないよ」
「芳文さん頭いいもん。きっと受かるよ」
「ありがとう。ちゃんと受かるようにがんばらないとな」
「マミさんはどこの学校に行くのかなぁ」
「さあ。本人に聞いてみたら?」
芳文の言葉にまどかは足元に視線を向けながら、口を開く。
「あのね……これはわたしの個人的なわがままなんだけど、高校もみんなと一緒だったら嬉しいなって思うの」
「ああ。それは楽しそうだ」
「……でもね、本当はわたし芳文さんと同い年だったらよかったなって思うの」
「どうして?」
「だって、わたしのほうがひとつ年下だから。一緒に学校に通える時間も、通えない時間もあるんだもん」
「……そっか。でも俺の方が年上であるメリットもあるよ」
「……何?」
「まどかと同い年じゃないから、一年早く結婚出来る年齢になれる」
「……えへへ」
芳文のその言葉に、まどかは頬を染め嬉しそうな表情で、芳文の肩に頭をもたれさせる。
「まどかは甘えん坊だな」
「芳文さんにだけだよ」
「……ああ」
穏やかな時間が流れる。
「……そういや、最近は屋上に誰も来ないな。この学校は生徒数結構多いはずなのに」
「言われてみればそうだね。なんでかな」
校内一有名なカップルである芳文とまどかの作り出す、二人だけの世界に耐えられなくて、他の生徒達が来なくなったのに、まどかも芳文も気づく事はなかったのだった。
276 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/20(金) 10:41:24.75 ID:ZUosx8+9o
☆
――その日の夜。
杏子の中学校デビューをみんなでお祝いして、まどかを家まで送り届けた芳文は、早く仕事から帰ってきた詢子と智久に夕食に誘われた。
五人での夕食の席で、詢子がビールの注がれたグラスを片手に芳文に切り出す。
「そういや、芳文君は進路どうするんだい?」
「字習館高校を受けようかと」
「へぇ。勝算はあるのかい?」
「一応は」
「そっか。字習館行くって事は、何か就きたい仕事でもあるのかい?」
「そこまではまだ。でも学歴が高い方が将来有利ですし。……それに将来、お金の事で苦労させたくないですし」
「あんたも結構色々考えてるんだね」
「それは、まあ」
「で? やっぱり子供は何人とか、もうそういうのも考えてたりするのかい?」
いたずらっぽくにやにやしながら、詢子は芳文に問いかける。
「ちょっ!? ママ!!」
詢子のその言葉にまどかは真っ赤になって非難の声を上げる。
「野球が出来るくらいですかね」
芳文がさらりと答える。
「……随分さらっと答えるね」
「お母さんにからかわれるのも慣れましたから」
「言うじゃないか」
そう言って詢子はけらけらと笑う。
釣られてタツヤもキャッキャッと笑う。
妻と息子の笑う姿を見て、智久もまた笑みを浮かべる。
「……わたし、そんなに沢山産めるかなぁ」
ぼそっとまどかが呟くと、隣に座る芳文の顔が真っ赤になる。
まどかの呟きをしっかりと聞き取って、詢子はまどかに笑いながら言う。
「なんだぁ? まどか、芳文君の子供産む気満々じゃんか」
『〜〜っ!!』
詢子のその言葉に、まどかも芳文も真っ赤になって俯いてしまうのだった。
――その後。
芳文が帰ってから、まどかは自分の部屋に戻り、キュゥべえにこっそり持ち込んだ晩御飯を食べさせてあげる。
「ねえ、キュゥべえ」
「なんだい、まどか」
まどかが持ってきた晩御飯を食べながら、キュゥべえはテレパシーで返事を返す。
「もう魔女も使い魔も出ないみたいだし、平和になったって思っていいのかな」
「……とりあえずはね。この街の魔女は全滅したと思ってもいい」
そう答えて、口の中の物を飲み込むと、キュゥべえはまどかに向き直って言う。
「ただ、それはこの街の事だけだ。この国は狭いからね。いつ他の街から新しい魔女や使い魔が流れてくるかわからない。油断はしないようにね」
「……やっぱり、そうなんだね」
「こればっかりは仕方ないよ。人間がいる限り、絶望や呪いはなくならない」
「……そう。……みんなが幸せになる事って出来ないのかな」
キュゥべえの言葉に、まどかは俯いてそう尋ねる。
「みんながみんな幸せになる事なんて出来ないさ。けど君達魔法少女は、希望を振り撒く存在なんだから、君達ががんばれば少しは幸せになれる人間も増えるかもね」
いつものポーカーフェイスでそう言うキュゥべえなまどかはにっこりと微笑んで答える。
「……そうだね。わたしがんばるよ。ありがとうね、キュゥべえ」
「……」
まどかにそう言われ、キュゥべえは無言で食事を再開する。
「……まどか」
まどかに背を向けて食事をしながら、キュゥべえはまどかに問いかける。
「君は今、いくつグリーフシードを持ってる?」
「まったく使ってないのが四個だよ。マミさんも四個持ってる」
「……社芳文のおかげかな。それだけのグリーフシードを手に入れられたのは」
「うん。あの人がいてくれなかったら、キュゥべえとも今、こうしてお話していられなかったと思う」
「……」
「だから、わたしね。あの人に出会えた事も魔法少女になれた事も嬉しいんだ」
「これって、わたしの運命なのかな?」
そう言って笑うまどかに背を向けたまま、キュゥべえは言う。
「……まどか。君のソウルジェムは他の子達よりも大きい。その分穢れが溜まりすぎると、浄化には多くのグリーフシードが必要になる」
「……うん」
ワルプルギスの夜との戦いで、ソウルジェムに限界近くまで穢れが溜まった時、完全に浄化するのにグリーフシードが三個も必要だったのを思い出してまどかは頷く。
「次にいつ魔女が現れるかわからない。日常生活では極力魔力を使わないように。もし魔女が現れても、今までどうり社芳文に前線で戦ってもらうようにね」
「……うん。ありがとうキュゥべえ」
「……」
まどかの礼に対し、キュゥべえは無言で食事を続けるのだった。
277 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/20(金) 10:42:07.69 ID:ZUosx8+9o
☆
今日もまた、昼休みにいつもの場所で、まどかが弁当を芳文に手渡す。
「はい、芳文さん」
「ありがとう」
「あ、お箸。ちょっと待ってね」
巾着袋の中を捌くるが、箸が一膳しか出てこない。
「あれ? お箸が足りない……。おかしいなぁ、ちゃんと二膳入れたはずなのに……」
「ああ、いいよ。箸はまどかが使って。幸い今日の弁当はおにぎりとおかずだし。俺が手づかみで食べるから」
芳文の提案をまどかはぴしゃりと却下する。
「駄目だよ。お行儀が悪いよ」
「おにぎりを手で持つんだから、おかずも手づかみでいいじゃないか」
「それでも駄目」
「それじゃ、どうすればいい?」
「……」
まどかは少し考える仕草をしてから箸を手に取ると、おかずを掴んでおずおずと芳文に差し出す。
「……あーん、して」
「え……」
右手の箸でつまんだ卵焼きをもし落としてもいいように、おかずの下に左手を添わせながらまどかは恥ずかしそうに芳文に言う。
芳文が驚いてまどかの顔を見ると、まどかは恥ずかしそうに頬を染めてじっと芳文を見ていた。
「あ、あーん」
芳文も真っ赤になりながら、口を開けてまどかに食べさせてもらう。
「……どう、かな?」
もぐもぐと咀嚼して飲み込み、まどかに答える。
「美味しいよ」
「良かった。次はどれがいいかな」
芳文のその言葉に嬉しそうに笑いながら、まどかは次に食べたい物のリクエストを尋ねる。
「じゃ、じゃあ、から揚げを」
「はい、あーん」
時々手にしたおにぎりを食べながら、まどかにおかずを食べさせてもらい、芳文の食事があっという間に終わってしまった。
「御馳走様。今日の弁当もすごく美味しかった」
「よかった。お粗末さまでした」
そう言って、芳文に微笑むとまどかは自分の食事に取り掛かる。
「それじゃ、わたしも手早く食べちゃうね」
そう言って、おかずを箸で掴んで自分の口に運ぶ。
「あっ……」
「どうかしたの?」
まどかが芳文に尋ねると、芳文は真っ赤な顔で呟く。
「いや……間接……キスだなって」
「あ……」
芳文に言われて、今更ながら自分がとても大胆な事をしたのに気付く。
まどかの顔が真っ赤になる。
「まあ、今更……なんだけど。やっぱり照れくさいな」
「……言わないで。恥ずかしいよ」
一方その頃。
「さやか、どうして僕にまどかの箸を盗ませるんだい?」
まどかの巾着袋から抜き取った箸箱を咥えたキュゥべえがテレパシーでさやかと会話する。
「人聞きが悪いなあキュゥべえは。親友と兄貴の恋の応援をする為、あんたに手伝ってもらっただけだよ」
「訳が分からないよ」
「いいからいいから。あ、その箸後でまどかの鞄に戻しといてね」
「何が何だかさっぱりだよ」
「あっ杏子の卵焼きもーらいっと」
「ああっ!! あたしの卵焼きをよくも!!」
「代わりにあたしのコロッケあげるから」
「そ、そうか? なら許してやる」
「うむ、許された!!」
「もう、さやかさんたら……」
「……僕の昼ごはんはないのかな」
まどかの箸箱をこっそりと戻して、さやか達の様子を見ながらキュゥべえは呟くのだった。
278 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/20(金) 10:43:05.08 ID:ZUosx8+9o
☆
学校からの帰り道。
芳文の隣を歩くまどかがはあ、とため息をつく。
「なにかあったのか?」
芳文が尋ねるとまどかは悲しそうに答える。
「午後に身体測定があったんだけど、身長が春から全然伸びてなくて……」
「あー。でも成長期だし、まだこれから伸びるさ」
「さやかちゃん達にも同じ事言われたよ。でも前計った時から全然伸びてないんだもん。もしこのまま背が低いままだったどうしよう……」
「俺は別に気にしないけど」
「わたしが気になるの。だって芳文さんの隣に並んだ時に釣り合わないもん」
「そんな事ない。それに」
急に突風が吹き、木枯らしが舞う。
芳文はさっとまどかを抱き寄せて庇う。
「あんまりまどかが大きくなると、こうやって庇えないだろ」
「……うん」
「焦らなくていいさ。ちょっとずつ大人になっていけばいいんだから」
「……うん」
芳文の言葉に生返事を返す。
「どうした? まだ元気出ない?」
「……時々ね」
「うん?」
「時々怖くなるの。いつか、この幸せが壊れちゃうんじゃないかって」
まどかは芳文の腕の中で、小さく不安の言葉を口にする。
「……」
「おかしいよね。いつだって振り返ればみんながいて、あなたが側にいてくれる。なのに、時々すごく不安になるの……」
「……」
「今が幸せだから。すごく幸せだから。だからこの幸せがなくなっちゃうのが怖いのかもしれない……」
「大丈夫。何もなくなったりしない。俺はずっとまどかの側にいるから」
芳文は優しくまどかを抱きしめてまどかの不安を掻き消してあげようとする。
「……うん。ずっと側にいてね」
「ああ。約束だ」
「うんっ」
芳文の腕の中で、まどかは芳文の顔を見上げて笑顔を見せるのだった。
279 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/20(金) 10:44:00.27 ID:ZUosx8+9o
☆
「あーあ。杏子もマミさんも用事で先帰っちゃうし。まどかは彼氏とデートだし。さやかちゃんは不満ですぞーっ」
「まあまあ、さやかさん。今日は私がいるじゃないですか」
「かわいい事言ってくれちゃって。よし今日から仁美があたしの嫁だあぁぁぁっ」
「そんないけませんわ!! 私達女の子同士ですのよ!!」
「ふっふっふっ。良いではないか良いではないかー」
さやかと仁美は二人で遊歩道を歩きながらじゃれあう。
ヒュゥゥゥゥゥ……。
不意に冷たい風が吹き、さやかと仁美は思わず両腕で自分の体を抱きしめる。
「寒っ!! まだ秋なのに何この風」
さやかがそう呟いたその時だった。
路面が突然パキパキバキと音を立てながら真っ白に凍りつき、さやかと仁美の足首までもが凍りつく。
「きゃあぁぁぁぁっ!?」
「何よこれ!?」
慌ててその場を離れようとするが、凍りついた両足は地面から離れない。
――ヒュッ。
突然の風切り音と共に、白い魔法少女がさやかと仁美の前に姿を現す。
流れるような銀色の長い髪をした、長身の少女。
さやか達よりも二つくらい年上に見える。
「――え?」
「誰!? まさかこれあんたが!?」
さやかが問い詰めようとしたその時だった。
白の魔法少女は仁美を羽交い絞めにして、ナイフを仁美の首筋に宛がうと口を開いた。
「あなたのソウルジェムをよこしなさい。言う事を聞かなければ、この娘を殺す」
「な!? 何言ってんのよ!!」
「……」
少女が無言でナイフを滑らせると、仁美の首筋からつっと血が流れる。
「やめて!! 渡すから仁美を傷つけないで!!」
さやかは指輪をソウルジェムに変化させて、少女に投げる。
「これでいいでしょ!! 仁美を放して!!」
さやかのソウルジェムをキャッチして、少女はソウルジェムを懐に仕舞うと、さやかに掌を翳す。
「――え?」
その次の瞬間、さやかは氷漬けになってしまった。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! さやかさん!! さやかさん!!」
目の前で起こった非日常に仁美が半狂乱になる。
少女が仁美の背中を突き飛ばす。
いつの間にか、両足の氷が溶けていて、仁美は地面の上に倒れてしまう。
「この娘を助けたければ、佐倉杏子と巴マミをここに連れてきなさい」
「……え?」
「他の誰にも言っては駄目よ。もしも佐倉杏子と巴マミ以外がここに来た場合」
少女はぞっとするような冷たい目で仁美を見下ろしながら、その手にしたナイフをメイスに変化させて、仁美の目前に振り下ろす。
ズガアァァァァァァァァンッ!!
仁美の足元の地面が粉々に砕ける。
「美樹さやかもその地面と同じになるわ。もちろん、あなたが逃げた場合もね」
感情の籠らない冷たい声で命令され、仁美はがたがたと震える。
「さあ、早く行きなさい。一時間だけ待ってあげるわ」
冷たい言葉を投げつけられ、仁美はその場から駆け出した。
「……うまく行きそうかい? クロエ」
いずこかからキュゥべえが現れて、背を向けて走り去る仁美を見ている少女に問いかける。
「絶対に失敗したりしない。私自身の為に」
「そうかい。まあがんばってくれ」
そう言って、キュゥべえはニタァと邪悪な笑みを浮かべるのだった。
つづく
280 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/20(金) 10:45:20.37 ID:ZUosx8+9o
杏子「とりあえずここまで」
杏子「おりこ組とかずみ組はもしかしたらもっと後で出るかもなだって」
杏子「じゃーな」
281 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/20(金) 12:47:38.33 ID:+wKVBYSz0
乙っちまどまど!
今後の流れに期待
282 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/20(金) 23:07:51.49 ID:6HT5q2yJo
お疲れ様でした。
うわーい。一気にアレな展開に・・・・・・・・・・。
283 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/21(土) 01:13:50.90 ID:Vv/Ok/mso
「はあ、はあっ……!!」
仁美は息を切らせながら、杏子とマミを探して走り回る。
(どうして!? なんでこんな!?)
巨大な氷の中に閉じ込められたさやかを救う為、仁美は走る。
「あれ? 仁美ちゃんどうしたの?」
不意に声をかけられて振り返ると、そこにはクレープを片手に持ったまどかと芳文が立っていた。
「そんなに汗だくになって……。何かあったの?」
親友であるまどかの問いに、仁美は思わず縋りつきそうになる。
(もしも佐倉杏子と巴マミ以外がここに来た場合)
(美樹さやかもその地面と同じになるわ。もちろん、あなたが逃げた場合もね)
銀髪の少女に言われた言葉が脳裏に過り、仁美は無理やり笑顔を作ってごまかす。
「……実は今日御稽古があったのを忘れていまして」
「そうなの?」
「ええ。ですからこれで失礼しますね」
そう言って、仁美は再び駆け出す。
まどかが何か言っていたが、仁美の耳には届かなかかった。
携帯の番号も住所も知らないマミと杏子を探し回って、走り回った仁美はふらふらと倒れそうになりながらも足を止めない。
(さやかさん、さやかさん!!)
粉々に砕かれるさやかを想像してしまい、仁美は今にも泣き出しそうになる。
「どこに、どこにいるんですか……!?」
見つからない二人を探し続けて、仁美は遂に倒れそうになる。
「……さやかさん」
四十分以上休みなく走り続けて、限界を迎えた仁美が倒れそうになるのを誰かが受け止めた。
「仁美じゃないか。どうしたんだい、こんな汗だくになって」
地面に倒れそうになった仁美を受け止めたのは、ずっと探していた杏子だった。
すぐ側にはマミもいる。
仁美は杏子とマミの顔を見て、思わず涙を流して叫んだ。
「さやかさんが!! さやかさんが大変なんです!!」
「っ!? さやかに何があった!?」
第17話 「何がどうなってるの」
284 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 01:14:27.99 ID:Vv/Ok/mso
「……来たわね」
人払いの結界を張った遊歩道で、氷漬けにしたさやかの前に立つクロエが呟く。
「……美樹さん!!」
「さやか!! てめえ、さやかに何をした!?」
仁美に連れられて走ってきたマミと杏子が、氷漬けにされたさやかを見てクロエに叫ぶ。
「落ち着きなさい。まだ死んでないわ」
「ざけんな!! てめえ、これは何の真似だ!!」
激昂して今にもクロエに襲い掛かりそうな杏子の前に立ち、杏子を片手で制止しながら、マミはクロエに鋭い視線を突き付けながら冷静に問いかける。
「あなたは一体何者なの? この街は私達のテリトリーよ。いったいこれはどういう事なのかしら」
「そうね」
クロエはそう言うと掌を地面に当てる。
バキバキバキ……。
地面から氷の刃が生えて二人に向かって突き進んでくる。
『!?』
咄嗟にマミと杏子がその場を離れる。
クロエはメイスを片手に顕現させ、もう片方の手を仁美に向ける。
「……え?」
一瞬で仁美もさやかと同じく氷漬けにされてしまった。
「仁美!!」
「志筑さん!!」
杏子とマミは瞬時に魔法少女の姿へと変身すると、それぞれ槍とマスケット銃を顕現させてクロエに向けて構える。
「今すぐ二人を解放しなさい」
マミがマスケットを向けたまま、クロエに冷たい声で言う。
「出来ない相談ね」
「――上等じゃん。言っても聞かないなら、殺すしかないよね!!」
さやかと仁美を傷つけられ激怒した杏子が、クロエに殺意を向ける。
「いいのかしら。あなた達が私に攻撃するよりも早く、私はこの子を砕けるのだけど」
そう言って、軽く地面を踏むと同時に先端が鋭く凍った氷の山が、氷漬けのさやかの隣に地面から勢いよく生える。
「てめえ!!」
ギリギリと歯ぎしりしながら、杏子は殺意の籠った視線で睨みつける。
「あなたの目的は一体なんなの!?」
「私は私の望みを果たす為、最強の魔法少女のソウルジェムが欲しいのよ」
「な!?」
「何言ってんだてめえは!!」
「とりあえず、あなた達のソウルジェムをいただくわ。素直に渡せばよし。渡さなければ大切なお仲間が粉々になるだけ」
淡々とそう言って、クロエはメイスをさやかの閉じ込められている氷に近づける。
「てめえ……!!」
槍を思い切り握りしめて歯噛みする杏子の前に、マミが一歩先に出て言う。
「……ソウルジェムを渡せばいいのね」
「マミ!?」
『今は従うしかないわ』
テレパシーで杏子にそう言って、マミは変身を解くと、自分のソウルジェムをクロエに放り投げる。
「これでいいのかしら」
「佐倉杏子。あなたのもよ」
クロエはマミのソウルジェムをキャッチして、懐にしまいこむと無表情で杏子に言う。
「くそっ!!」
杏子は地面に槍を叩きつけて変身を解くと、ソウルジェムをクロエに投げつける。
杏子のソウルジェムも手に入れたクロエは、マミと杏子に向けて薄く笑って掌を向ける。
パキィィィィィィィンッ。
悲鳴ひとつ上げる事さえ出来ず、杏子とマミはさやかと仁美と同じく氷漬けにされてしまった。
「――次はあなたの番よ。鹿目まどか」
285 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 01:14:58.85 ID:Vv/Ok/mso
☆
「仁美ちゃん、あんなに慌てていったいどうしたのかな」
「習い事って言ってなかった?」
「それにしても不自然だよ。あの子があんなに取り乱してるのなんて、今まで見た事なかったもん」
「そうなのか? だったら追いかければよかったかもな」
「うん。わたし、なんで追いかけなかったんだろ」
「あんまり気にしない方が良いよ。もし悩み事とかあるんなら相談くらいしてくるだろうし」
「……そうだよね」
辺りが暗くなってきた帰り道。
まどかと芳文は二人でまどかの家へと歩いていた。
『鹿目まどか』
不意に知らない少女の声がまどかの脳裏に聞こえてくる。
『そのまま、隣の男に気づかれないように私の話を聞きなさい』
「まどか? どうかしたのか?」
「ううん、何でもないよ」
『美樹さやかと志筑仁美。巴マミと佐倉杏子の命を私が預かっている』
「!?」
『今から言う場所に一人で来なさい。言う事を聞かなければこの四人を殺す』
『あなた誰なの!? さやかちゃん達に何をしたの!?』
『人質を取って魔法で氷漬けにしただけよ。あなたが来なければこの四人を砕く』
「……芳文さん、ごめんなさい。実は今日、家族で外食する約束だったの」
まどかは歩みを止めると芳文にそう切り出す。
「あれ? そうなの?」
「ごめんなさい。二人で一緒にいるのが楽しくて、すっかり忘れてて……」
「そっか」
「パパ達と外で待ち合わせしてるから、今日はここでお別れかな」
「じゃあ待ち合わせ場所まで送ろうか?」
「ううん。それは悪いからわたし一人でいくよ。ごめんね、また明日」
そう言ってまどかは背を向けて走り出す。
芳文はまどかの背を見つめながら、ぽつりと呟く。
「嘘が下手だな。俺はずっとまどかを見てるんだから、気付かないわけないだろ……」
まどかに気付かれないように、芳文はまどかの後を追った。
286 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 01:16:38.49 ID:Vv/Ok/mso
☆
「はあ、はあ……」
謎の声に導かれて、まどかは大急ぎで夜の遊歩道へとやってきた。
「さやかちゃん!! 仁美ちゃん!! マミさん!! 杏子ちゃん!! どこにいるの!!」
まどかが四人の名前を呼びながら遊歩道を進むと、巨大な氷の塊が四つ建っている。
「っ!?」
氷の中に閉じ込められたさやか達の姿を見つけて、まどかが絶句する。
「来たわね、鹿目まどか」
さやかの閉じ込められた氷の裏から、白の魔法少女がその姿を現す。
「……あなたが、私を呼んだの?」
「そうよ」
「さやかちゃん達にこんな事したのもあなたなの?」
「ええ」
まどかの問いに、クロエは淡々と答える。
「どうして!? どうしてみんなを殺したの!?」
目に涙を溜めながら、まどかが叫ぶ。
「まだ死んでないわ。仮死状態と言った所かしら」
「ほんとう……なの?」
「ええ。ただし、あなたが言う事を聞かなければ、今すぐこの子達を殺すわ」
「……何をすればいいの?」
「あなたのソウルジェムをよこしなさい」
「……え?」
「聞こえなかったかしら。あなたのソウルジェムが欲しいの」
「……どうして? どうしてわたしのソウルジェムが欲しいの?」
「私は強い魔力が欲しいのよ。あなたのソウルジェムは強力な魔力を秘めている。だからそれが欲しいの」
「そんな……。だって、魔法少女が他人のソウルジェムを使えるなんて話、聞いた事ないよ?」
「魔法少女は条理を覆すと、キュゥべえから聞いていないのかしら」
「そんな事……」
「私は可能性があるなら何だってやる。……私の妹を生き返らせるためにね」
そう言って、メイスを振り上げてさやかの氷を砕こうとする。
「やめて!! 渡すからやめて!!」
まどかはそう叫ぶと、自分のソウルジェムを掌の上に出現させる。
「こちらにそれを放り投げなさい」
まどかは黙って言われたとうりにする。
クロエはまどかの放り投げた大きなソウルジェムを手にすると、にやりと嬉しそうに笑みを浮かべる。
「あははははははははっ!! やった!! 遂に最強の魔法少女のソウルジェムを手に入れた!! これであの子を生き返らせる事が出来る!!」
狂ったように笑いながら、クロエはちらりと視線をまどかに向けると、メイスを伸ばしてまどか目掛けて思い切り振り下ろした。
「――あ」
自分の頭めがけて振り下ろされるメイスを、まどかは呆然と見ている事しか出来ない。
まどかの頭が砕かれそうになったその瞬間。
遅れてやってきた芳文がメイスを片手で掴み、メイスを握りつぶした。
「……芳文さん」
芳文は無表情で殺意を込めた視線をクロエに向ける。
メイスをへし折られたクロエはメイスを放り投げると、まどか達目掛けて吹雪の魔法を放つ。
凄まじい冷気と吹雪で視界を遮られ、芳文は咄嗟にまどかを庇ってまどかを抱きしめると横に飛ぶ。
吹雪から逃れて視線をクロエに向けると、既にその場にクロエはいなかった。
287 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 01:17:22.61 ID:Vv/Ok/mso
「まどか大丈夫か!? 一体何があった!?」
腕の中のまどかに芳文が問い詰めたその時だった。
不意にまどかの瞳から意思の光が消え、芳文に向かって倒れてくる。
「まどか!? おいまどか!! しっかりしろ!!」
まどかの両肩を掴んで揺するが、まどかは力なく揺すられるだけで全く何の反応も返さない。
「……まどか?」
まどかの頬に手を当てるとまどかは驚くほど冷たくなっていた。
慌ててまどかの脈を取ったり、呼吸の有無を確認して、芳文はへなへなとその場にへたり込む。
「なんだこれ……。なんで、まどかが死んでるんだよ……」
「まどか!!」
キュゥべえが動かないまどかを抱きかかえて、地面に座り込んでいる芳文の元へ走ってきた。
「……淫獣」
「!? まどかのソウルジェムは!?」
まどかの左手を確認してキュゥべえが芳文に尋ねる。
「……ああ。なくなってるな」
「まずい……。社芳文、すぐに取り戻しに行くんだ」
「――え?」
「早く追いかけるんだ!! まどかの身体は僕が見てるから早く!!」
「ソウルジェムがあればまどかは助かるのか?」
「そうさ!! はやく取り戻すんだ!!」
「あ、ああ!!」
芳文はまどかの身体を地面の上に横たえると、すぐに戻るとまどかに語りかけて全力で走り出した。
288 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 01:18:01.96 ID:Vv/Ok/mso
☆
「やった!! やったわ!!」
白の魔法少女は笑いながら夜の街をかける。
「すぐに帰って、氷の中から出してあげるからね!! また一緒にいられるようになるからね!!」
懐にあるさやか、マミ、杏子のソウルジェムと、手に持っているまどかのソウルジェム。
四つのソウルジェムを手に入れて、クロエは溢れ出る喜びを隠そうともせず笑いながら、民家の屋根を跳ぶ。
「――え?」
民家の屋根を飛ぼうとした瞬間、突然太ももに激しい痛みを感じて、クロエはそのまま地面に落下する。
「な、何なの?」
――パンッパンッ。
クロエのまどかのソウルジェムを持つ左手首と右肩が発砲音と共に撃ち抜かれる。
「――まどか達のソウルジェムは返してもらうわ」
クロエの両手足を撃ち抜いたのはほむらだった。
時間を止めて両足を撃ち抜いて移動手段を封じ、時間停止解除と共に両手を使えなくして無力化する。
ほむらは表情一つ変えずにクロエを倒したのだった。
抵抗出来なくなったクロエの手からまどかのソウルジェムを取り返し、次にクロエの腹に蹴りを入れて仰向けにすると、懐からさやか達のソウルジェムも取り返す。
「げほっげほっ……返して!!」
クロエが叫ぶのをほむらは冷酷な目で見ながら、時間停止の魔法を行使する。
――カチリ。
「これはあなたの物じゃない」
そう言って、ほむらはクロエの脳天に銃口を突き付ける。
「何者もまどかの幸せを壊そうとするのは許さない」
そう言うと何の躊躇もなく、クロエの脳天を撃ち抜いてほむらはその場を後にした。
――カチリ。
ほむらが立ち去ってすぐに、時間停止が解除される。
脳天を撃ち抜かれたクロエの体がぴくっと震えると、クロエは再び立ち上がる。
「――返せ」
「返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せっ!!」
シュウシュウと音を立てながら、銃弾がめり込んだままの傷口を魔力で修復しながら、血走った目でクロエは叫んだ。
289 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 01:20:29.82 ID:Vv/Ok/mso
☆
「くそっ!! どこに行きやがった!!」
芳文が電柱の上に飛び乗って、クロエの姿を探しているとほむらが芳文の元へと全速力でやってきた。
「まどかは!?」
「さっきの場所でキュゥべえが見てる!!」
ほむらの問いに電柱から飛び降りて答える。
「まどか!!」
走り出したほむらを芳文は呼び止める。
「まだソウルジェムが!!」
「もう全員分取り戻したわ!!」
走りながらほむらがそう答えると、芳文もほむらの後を追ってまどか達の元へと戻る。
「まどか!! どきなさいインキュベーター!!」
地面に横たわるまどかの左手に、ほむらは取り戻したソウルジェムを握らせる。
「――っ」
まどかの瞳に意思の光が戻り、まどかは呆然と起き上がるときょろきょろと周囲を見回す。
「あれ? わたし……」
「まどか!!」
きょとんとしているまどかを抱きしめて、芳文は心の底から安堵する。
「良かった!! 息を吹き返してくれて本当に良かった!!」
「え? 何? 何があったの?」
まどかがほむらの顔を見ると、ほむらはばつが悪そうに視線を逸らす。
「ねえ、キュゥべえ。いったい何があったの?」
傍らでじっと自分達の様子を見ているキュゥべえに尋ねると、キュゥべえはいつもの無表情のままだったが、どこか狼狽えたような口調で口ごもる。
「それは……」
「返せ……」
低い声が聞こえ、まどか達が振り返ると、後を追ってきたクロエがふらふらと歩いてくる。
ほむらは盾の中からマシンガンを取り出すと、クロエに向けて引き金を引こうとする。
その時だった。
クロエの腰のベルトに付いている、クロエのソウルジェムがベルトから外れて宙に浮かぶ。
クロエのソウルジェムはドス黒く濁っていて、ほむらはその様子を見て慌てて芳文に指示を出す。
「まどかの目をふさいで!! 早く!!」
鬼気迫る表情でほむらに指示され、芳文は慌ててまどかの目を掌で押さえる。
そして次の瞬間、クロエのソウルジェムが粉々に砕け散り、内部からグリーフシードが出現した。
グリーフシードから発生した衝撃波で、ほむらが、キュゥべえが、まどかを庇って抱きしめている芳文が吹き飛ばされる。
――ゥオアォァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!
全身が鋭く尖った氷に覆われた氷の巨人が顕現し、雪に覆われた結界が出来上がる。
小さな少女の姿をした氷の人形が、氷の魔女から生み出されて魔女の周りを駆け回る。
「魔女!? どこから湧いてきやがった!!」
魔女の姿を確認して、芳文が立ち上がる。
「くそ!! あいつに暴れられたらさやかちゃん達が!!」
魔女の背後には氷漬けにされたままの四人がいる。
「まどか!! マギカ・ブレードだ!!」
「う、うんっ!!」
まどかが変身して、マギカ・ブレードを作り出そうとしたその瞬間。
魔女が氷の矢をまどか目掛けて撃ち出した。
290 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 01:22:18.06 ID:Vv/Ok/mso
「まどか!!」
咄嗟にまどかの前にほむらがシールドを張りながら立ちふさがる。
ギギギキギギ……パキイィィィィィィィィンッ!!
最後の氷の矢を受け止めた瞬間、シールドが消滅して、ほむらの盾が粉々に砕け散り消滅する。
「うっ!! くぅ……!!」
ほむらはそのまま吹き飛ばされ、地面の上をごろごろと転がると立ち上がって再び盾を出そうとする。
しかし、盾は出現しない。ほむらの着ていた魔法少女の服が光の粒子になって消失する。
「魔力が……っ!!」
遂に、ほむらの魔力が尽きてしまった瞬間だった。
「芳文さん!!」
まどかがマギカ・ブレードを作り出して芳文に叫ぶ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
マギカ・ブレードを手にして、芳文は魔女の周囲を駆け回る氷人形を破壊し、魔女の手足を斬り落とし、全身の鋭く尖った氷を斬り裂く。
魔女の体をさやか達から離れた場所に思い切り蹴り飛ばす。
破片を撒き散らしながら、魔女は結界の隅へと吹っ飛ばされる。芳文はマギカ・ブレードを魔女へ投げつけて叫ぶ。
「まどか!! とどめだ!!」
「うんっ!!」
まどかが必殺の矢を放ち、マギカ・ブレードに着弾させた瞬間、魔女の巨体が巨大な破壊の光球に飲み込まれて跡形もなく消滅した。
291 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 01:25:10.20 ID:Vv/Ok/mso
シュゥゥゥゥゥゥゥゥン……。
結界が消え去り、氷漬けの四人と、地面に横たわるクロエの体がまどか達の前に残される。
「一体なんだったんだ。あの魔女は……」
芳文はそう言うと、クロエに近づいてクロエの襟首を掴んで問い詰める。
「答えろ。貴様の目的は何だ。あの魔女も貴様の差し金か?」
マギカ・ブレードを顔の前に近づけて問い詰めるが、クロエはピクリとも反応しない。
「……おい?」
クロエの襟首から手を離し、クロエの首を掴む。
「芳文さん!?」
芳文の力で首を掴んだら、殺してしまうのではないか。
芳文に人殺しなどして欲しくないまどかが芳文を咎めようとした次の瞬間、芳文が呆然とした様子で呟いた。
「こいつ、死んでる……」
「……え?」
芳文の手から力が抜け、クロエの体が糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。
「ど、どうして!? さっきまで生きてたのに!!」
まどかが激しく狼狽する。
「……」
力を失ったほむらは無言のまま、まどかと芳文を見つめる。
キュゥべえは無表情のまま、まどかの足元に寄り添っている。
「どうして!? 何がどうなってるの!? 誰か教えてよ!!」
まどかの問いに事情の良くわからない芳文は何も言えない。
ほむらもキュゥべえも口を閉ざしたままだった。
「僕が教えてあげるよ、鹿目まどか」
遊歩道の木陰から、まどかの前に白い生き物が駆け寄ってきて、そう言った。
「えっ!?」
まどかは木陰から出てきた生物と、自分の足元に寄り添う魔法の使者を交互に見て驚愕の声を上げる。
「キュゥべえが……もうひとり!?」
木陰から出てきたキュゥべえは口を開けて話しながら、にっこりと笑って笑顔でほむらに話しかけてきた。
「久しぶりだね。暁美ほむら。君と会うのは、二十一年ぶりになるのかな」
そう言って、笑っている目を開く。
その微笑みは寒気がするほど邪悪な笑みだった……。
つづく
292 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 01:26:36.61 ID:Vv/Ok/mso
杏子「……つづく」
杏子「次回、第18話 「こんなのってないよ」 」
293 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/21(土) 01:32:21.04 ID:xdQh5y8do
お疲れ様でした。
なんてことだ………。
294 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 01:44:51.95 ID:Vv/Ok/mso
杏子「
>>291
訂正」
誤 マギカ・ブレードを顔の前に近づけて問い詰めるが、クロエはピクリとも反応しない。
正 手刀を顔の前に近づけて問い詰めるが、クロエはピクリとも反応しない。
295 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/21(土) 10:14:23.88 ID:2kV2pRSD0
魔翌力が尽きたってことはほむほむは普通の人間に戻ったってことか・・・
あれ?ということは(ゲフンゲフン
そういえば現時点ではワルプル越えをしたにもかかわらずほむほむ以外の誰も
魔法少女の魔女化どころかソウルジェム=魔法少女の魂ってことすら知らないんだよな
あまりに基礎知識すぎてそのことすっかり忘れてたわ
296 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/21(土) 11:37:18.77 ID:Vv/Ok/mso
杏子「
>>289
訂正」
正
☆
「くそっ!! どこに行きやがった!!」
芳文が電柱の上に飛び乗って、クロエの姿を探しているとほむらが芳文の元へと走ってきた。
「まどかはどうしたの!?」
「暁美さん!? こっちの事情を知ってるのか!?」
「ええ!! まどかはどこ!?」
芳文の問いに、ほむらはそう答える。
「この先の遊歩道でキュゥべえが見てる!!」
ほむらの問いに、電柱から飛び降りて芳文が答える。
「まどか!!」
走り出したほむらを芳文は呼び止める。
「まだソウルジェムが!!」
「もう全員分取り戻したわ!!」
走りながらほむらがそう答えると、芳文もほむらの後を追ってまどか達の元へと戻る。
297 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 11:38:30.34 ID:Vv/Ok/mso
「インキュベーター……!!」
突然現れたもう一匹のキュゥべえに、ほむらは躊躇なくマシンガンを発砲する。
ズガガガガガガ……ッ!!
「やめてくれないか、暁美ほむら。君は何回僕の体を無駄にする気なんだい。もったいないじゃないか」
そう言って口元に笑みを浮かべるキュゥべえの目前で、淡いピンク色の光り輝く壁が展開されて、すべての銃弾が受け止められ消滅する。
「なっ!?」
マシンガンの弾丸をすべて撃ち尽くして、マシンガンを取り落しほむらが絶句する。
「この力が不思議かい? これは君と鹿目まどかが与えてくれた物だよ」
そう言って、にっこりと笑う。
その時、不意にさやか達を閉じ込めていた氷が徐々に溶けだして消滅し、さやか、仁美、マミ、杏子の四人が地面の上に倒れる。
「ふむ。クロエが死んだ事で、彼女の魔法が解けたのか」
何の興味もなさそうにキュゥべえは呟く。
「みんな!!」
まどかが倒れている四人に駆け寄る。
「仁美ちゃんしっかりして!!」
仁美を抱き起して声をかけると、仁美は小さく呻き声を上げる。
「仁美ちゃん!!」
まどかが癒しの魔法をかけてやると、仁美の顔色が良くなる。
まどかは仁美の様子に安心すると、仁美を地面の上に寝かせて次にさやかを抱きかかえる。
「……さやかちゃん?」
まどかが抱きかかえたさやかは、全身が冷たくなっていて呼吸もしていなかった。
「嘘。さやかちゃん、さやかちゃん!!」
「巴さん、杏子ちゃん、しっかり!!」
芳文がさやかと同じく、全身が冷たくなって呼吸をしていないマミと杏子に必死に呼びかける。
「嫌だぁ……。みんな起きてよぉ……」
まどかが涙をぽろぽろとこぼしながら、さやかの体を揺する。
「一体どうなってるんだ……? なんで巴さん達だけ死んでるんだ? それにあの女も……」
芳文もまた、あまりの状況に激しく混乱する。
「鹿目まどか、社芳文。君達は何を言ってるんだい」
新しく現れたキュゥべえは小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら、まどか達に言う。
「クロエはさっき君達二人が殺したじゃないか。それに、そこにあるのはただの抜け殻だよ」
「……え?」
「巴マミ、佐倉杏子、美樹さやかの本体は今、暁美ほむらが持っているじゃないか」
第18話 「こんなのってないよ」
298 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 11:39:55.76 ID:Vv/Ok/mso
「何、言ってるの……?」
まどかが呆然と、笑みを浮かべているキュゥべえに尋ねる。
「まどか!! 耳を貸しちゃ駄目だ!!」
今まで黙って静観していた、まどか達と共にいたキュゥべえが無表情のままテレパシーで叫ぶ。
「……やれやれ。とんだ出来そこないだね。君は」
もう一匹のキュゥべえが小馬鹿にした表情で、そう言って赤い両目を光らせた瞬間。
「……ぐあぁぁっ!!」
まどかに呼びかけたキュゥべえの左後ろ脚が弾け飛んだ。
「僕のコピーのくせに、まさか感情なんて精神疾患を患うなんてね。しかも家畜相手に。訳が分からないよ」
そう言って、足を吹き飛ばされて苦しんでいるキュゥべえに近づくと、後ろ足で思い切り顔を蹴り飛ばす。
「まあ、この世界の鹿目まどかと契約した事だけは褒めてあげるよ。おかげでまた、鹿目まどかのエネルギーを手に入れる事が出来る」
邪悪な笑みを浮かべながら、キュゥべえ……インキュベーターはまどか達に向き直ると口を開く。
「僕達、インキュベーターの役割はね、契約を結んだ少女達の体から魂を抜き取って、ソウルジェムに変える事なのさ」
『っ!?』
その言葉にまどかと芳文が絶句して固まる。
「普通の人間の体で魔女と戦うなんて自殺行為だからね。魔法少女にはより安全で魔力を効率的に運用が出来る姿として、ソウルジェムとしての姿が与えられるんだ」
「本体としてのソウルジェムが砕かれない限り、魔法少女は無敵だよ。どんなに血を抜かれても、心臓が破れても、魔力で修理すれば元通りだからね」
「何……言ってるの……。それじゃ、わたし達の体は……?」
まどかが顔面蒼白になりながら、インキュベーターに尋ねる。
「やめ……」
キュゥべえがインキュベーターを止めようと立ち上がろうとするが、そのまま崩れ落ちる。
「まどか!! 聞いては駄目!!」
ほむらがナイフをスカートのポケットから取り出して、インキュベーターに投げつけるがマシンガンの銃弾と同じように弾き返されてしまう。
「邪魔をしないでほしいな。鹿目まどかには真実を知る権利があるんだから」
ちらりとほむらに一瞥をくれて、インキュベーターはまどかに向き直り言葉を繋ぐ。
「魂を抜き取られた君達の体は、もはやソウルジェムからの魔力で動く外付けのハードウェアにすぎない。君達魔法少女がその体を操作できるのは、せいぜい100メートルが限界だからね」
「何……だと……」
芳文が呆然となりながら呟く。その話が事実なら、まどかの死も納得がいく。
299 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 11:42:42.05 ID:Vv/Ok/mso
「そんな……そんなのってないよ!! わたし、そんなの嫌だよ!!」
まどかが悲痛な叫びを上げる。
「何を言ってるんだい? 君達はたったひとつの奇跡の為に、自分で納得して契約を結んだんじゃないか。これは正当な取引だよ」
「そんな……」
感情の籠らない言葉で冷たくあしらわれて、まどかはボロボロと涙を流す。
「やれやれ。どこの世界でも変わらないな。君達人間は事実をありのまま伝えると決まって同じ反応をする」
「どうせ言われなければ、魂の存在になんて気付いてなかったんだから、体の中にあろうが外にあろうがどうでもいいじゃないか」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ……」
まどかが声を上げて泣き出す。
「やめてほしいな。煩わしいから一々泣かないでよ」
面倒くさそうな表情でインキュベーターがそう言った時だった。
「ふざけるな!!」
激怒した芳文が渾身の力を込めてインキュベーターを踏みつけた。
グシャァッ!!
シールドごと踏み抜かれて、インキュベーターはミンチになる。
「やめてくれないか。代わりはいくらでもあるけど、もったいないじゃないか」
新しいインキュベーターが、いずこからともなく現れて、芳文の踏み抜いたインキュベーターの死体が霧散していくのを見て言う。
「凄まじい攻撃だね。流石、鹿目まどかと繋がってるだけの事はある」
芳文の顔を見つめながら、インキュベーターは言葉を続ける。
「魔法少女でもなく、魔女や使い魔でもなく、ましてや人間ですらない。鹿目まどかの魔力で生命を維持して、人を超えた身体能力を持ち、魔力を込めた攻撃が出来る君は、さしずめ魔人といったところか」
「……何を言っている」
「気付いてなかったのかい? 君は一度死んだんだ。その時にそこの出来そこないが鹿目まどかの願いで、体の中からから消滅する寸前だった君の魂をまどかの魔力で繋ぎとめたんだ」
「君は鹿目まどかからの魔力供給で、無理矢理生かされているにすぎない。その力もその副産物だよ」
「何……だと……」
まどかとほむらもまた、芳文と共にその事実に呆然となる。
「鹿目まどかの魔力は絶大だからね。自分の抜け殻を操りながら、君の生命を維持し続けるのなんて簡単な事だろう。現に僕に言われるまで、君達は気付きもしなかったしね」
「君は鹿目まどかからの魔力供給がある限り、絶対に死ねない。例えどんな大ケガをしてもすぐに再生するだろう」
その言葉にまどかの顔から血の気が引いていく。
「君の様なケースは初めてだからね。実にいいデータが取れたよ。お手柄だね、鹿目まどか、暁美ほむら」
「わたし……わたし……」
地面に座り込んだまま、がたがたと震えているまどかを芳文は抱きしめる。
「まどかのせいじゃない!! まどかが気にする事なんてない!!」
「良かったじゃないか。鹿目まどか。真実を知った今の君の魔力が尽きない限り、君達は大人になる事もなく、これから先もずっと一緒にいられるよ。その気になれば、永遠の時を生きる事が出来るんだ」
「あ、あぁぁぁ……」
春から自分の体がろくに成長していなかった事実が、インキュベーターの言葉の信憑性を高める。
まどかは涙を流しながら、がたがたと震え続ける。
300 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 11:45:15.04 ID:Vv/Ok/mso
「インキュベーターぁぁぁぁぁっ!!」
怒りの感情を露わにして、ほむらが新しいナイフで斬りかかる。
「無駄だってわからないかな」
ほむらの体がインキュベーターの放った魔力の光で吹き飛ばされる。
「やれやれ。君は今も昔も変わらないな。母子揃ってどうしてそこまで鹿目まどかにこだわるのか。理解出来ないよ。人間なんていくらでもいるじゃないか。どうして特定の一個人にそこまで執着するんだい?」
「……母子?」
まどかを抱きしめながら、芳文が呟くとインキュベーターは芳文に視線を向けて、口を開く。
「何だ。気付いてなかったのかい。そこにいる暁美ほむらは君の実の母親だよ」
「――何……だと?」
「違う!!」
ほむらは倒れたまま否定の言葉を叫ぶ。
「まあ、気付かなくてもしょうがないか。彼女は魔力で子供の姿に若返ってるからね」
「違う!! 違う!!」
「どうしてそこで否定するんだい? 人間の言葉で言うなら、生き別れの母子の感動の再会じゃないか」
そう言って、インキュベーターの赤い両目が光る。
まどかと芳文、ほむらとキュゥべえの脳裏に、ほむら以外知らない筈の過去の光景がビジョンとなって映し出される。
「僕達インキュベーターは有史以前から、人類に関わってきた」
「多くの魔法少女によって、人類は進化し文明を築き上げてきた」
「これが、暁美ほむらがかつて存在していた世界だ」
まどか達の脳裏にワルプルギスの夜と戦うほむらの姿が、ワルプルギスの夜に敗北して傷ついたほむらの姿が映し出される。
「あれは……わたし……?」
傷ついたほむらの前に降り立ったひとりの魔法少女。鹿目まどか。
彼女はほむらの左手の甲から、ソウルジェムを取り外してほむらの胸に押し当てる。
「あれは……?」
知らない光景にまどかが疑問の声を上げる。
「鹿目まどかの力で、暁美ほむらは再び人間に戻った。だけど」
インキュベーターが淡々とかつて起こった出来事を話す。
ワルプルギスの夜の不意打ちで、ビジョンの中のまどかが傷ついていく。
そして、まどかの胸から放たれた光にほむらが飲み込まれて消滅する。
「この時、暁美ほむらは別の世界に記憶を失って飛ばされた。それがこの世界の二十一年前だ」
記憶を失ったほむらが、見知らぬ土地で優しく笑う人々と暮らす姿が映し出される。
「……父さん」
若かりし頃のほむらの隣に立つ青年の顔を見て、芳文が呆然と呟く。
「やめて!!」
ほむらが叫ぶが、インキュベーターはその声を無視して、新しいビジョンを芳文達に見せる。
「君の様な危険分子を放っておく訳がないだろう。君は気付いてなかっただろうけど、僕は君を追ってこの世界にやってきてから、ずっと監視していたんだ。それにね、君の息子は真実を知りたがっているよ」
301 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 11:46:23.91 ID:Vv/Ok/mso
成長して、芳文の父親の隣で、花嫁衣装に身を包み微笑むほむら。
大きくなったおなかを愛おしげに撫でるほむら。
そして、出産したばかりの芳文を抱いて、アパートの住人に祝福されているほむら。
「……」
幼い芳文と、愛する夫と共に幸せに暮らすほむら。
幼い芳文を抱いて街を歩いている時に、幼い芳文の指差す先にいたインキュベーターの姿を見て記憶を取り戻すほむら。
「この時に、僕の姿を見て君は記憶を取り戻したんだね。暁美ほむら」
その後、夫と子供の前から冷血な暁美ほむらを演じて去っていくほむらの姿が。魔力を使って、かつての少女時代の姿に戻るほむらのビジョンが芳文達の脳裏に映し出される。
「社芳文。君が僕や魔女の姿を見る事が出来た理由は只一つ。君が暁美ほむらの実子だからさ」
「さっきのビジョンのとうり、あの鹿目まどかは暁美ほむらを完全な人間に戻しきる前に、ワルプルギスの夜の攻撃を受けた」
「その結果、暁美ほむらはソウルジェムを失ったにもかかわらず、魔法を使える半魔法少女と言う、極めてイレギュラーな存在へと変化した」
「全身の身体能力を魔力で強化していた母親の胎内に宿った君は、母親の胎内で栄養と共に魔力も与えられて成長し産み落とされた」
「君は魔力で強化された遺伝子を受け継いだから、常人を遥かに超える身体能力を持っていたのさ」
「暁美ほむらの時間停止が効かない理由もそうだ。母親の胎内で母親の魔力を常に注ぎ込まれて生まれてきたからのだから」
「……」
芳文がほむらに視線を向けると、ほむらはばつが悪そうに視線を逸らす。
「暁美ほむらはかつての友人である、鹿目まどかを死の運命から救おうと、別の時間軸の僕と契約した」
「しかし、暁美ほむらがどんなにあがこうと、運命は変わらない」
「過程がどうあれ、鹿目まどかは必ず魔法少女になって死ぬ」
「現に暁美ほむら。君を人間に戻してこの世界の過去に送ったまどかも死んだ」
「!?」
ほむらが光の奔流に飲み込まれた後の世界が映し出される。
ボロボロになったまどかが矢を放って、ワルプルギスの夜とその使い魔を撃ち抜く。
ワルプルギスの夜の波動に吹き飛ばされたまどかに、使い魔達が群がりまどかの体を引き裂き、両足を喰いちぎる。
自分と同じ姿をした少女が、無残に蹂躙される姿を見せつけられ、まどかは口を手で押さえて吐き気を堪える。
動けなくなったまどかを、使い魔達が押さえつけて、次々とその小さな体に爪を突き立てる。
まどかは魔力を解き放ち、使い魔を消し飛ばすと、最後の力を振り絞って全力の最後の一撃をワルプルギスの夜に放った。
ワルプルギスの夜が崩壊していき、廃墟と化した見滝原で、真っ黒に染まったソウルジェムを地面に横たわったまどかが空に放り投げて、人差し指から魔力の矢を放って破壊しようとする。
まどかの放った小さな矢がソウルジェムに当たるその瞬間。
ソウルジェムが粉々に砕け散り、矢が消え去ると、グリーフシードが出現して、グリーフシードから巨大な黒い魔女が生み出された。
全身がボロボロに傷ついたまどかの体が、まるでゴミのように吹き飛ばされる。
生まれたばかりの魔女が、天高くその両手を上げてそして――。
「何あれ……。わたしはどうなったの……?」
衝撃的な光景を見せつけられて、まどかは呆然となりながら疑問を口にする。
「あの鹿目まどかは魔女になった。最強にして最悪の魔女にね」
「――え?」
「魔法少女はそのソウルジェムに穢れを溜めこむ事で、その命を燃やし尽くしてグリーフシードへと変化する」
「君達はエントロピーと言う言葉を知っているかい? 今、こうしている瞬間にも宇宙のエネルギーは消費されていく一方なんだ」
「僕達インキュベーターの役割はね、もっともエネルギーの発生効率の高い君達、第二次性徴期の少女達の希望が絶望に転ずる時に生み出される、感情エネルギーを回収する事なんだよ」
「……そんな」
まどかは今にも倒れてしまいそうな顔で呆然とする。
さっき倒した魔女も、元はあの魔法少女だった事実に、まどかは激しいショックを受けていた。
「鹿目まどか。君は誰よりもすさまじい魔力を持っている。僕はね、君が絶望して魔女になった時のエネルギーが欲しいんだよ」
インキュベーターはにっこりと笑って、まどかの心中などお構いなしに言う。
302 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 11:49:55.99 ID:Vv/Ok/mso
「これは素晴らしい事なんだよ。君達の絶望が宇宙を救うんだ」
「や……。いや……」
まどかは首を振りながら、インキュベーターに弱々しく言う。
「僕達は本当に運がいい。鹿目まどかから回収したエネルギーで別の宇宙にも行けるようになったし」
まどかから視線をほむらに向けて笑いながらインキュベーターは言う。
「その上、僕達の世界の鹿目まどかからだけでなく、この世界の鹿目まどかからもエネルギーを回収出来るのだからね。暁美ほむらと魔女になったまどかは実にいい仕事をしてくれたよ」
「……どういう意味よ。答えなさいインキュベーター!!」
ほむらが激昂して叫ぶ。
「この世界はあのまどかが望んで作り出したのか、それとも僕らの宇宙から派生した枝状分岐宇端末点なのかは、今となってはわからないけどね」
「暁美ほむら。かつて君が何度も時間を巻き戻して、僕らの宇宙の鹿目まどかに収束させた因果が、この世界のまどかに集まってしまったのさ」
「この宇宙は僕達インキュベーターが存在せず、人類は自分達の力だけで進化した世界なんだ。調べてみて本当に驚いたよ。当然、この世界のまどかには魔法少女になって死ぬ運命なんて本来存在しない」
「――違う宇宙? ……だから、こちらに別の私が存在しなかった?」
ほむらは呆然となりながら、インキュベーターからの情報を頭の中で整理する。
「そうだよ。君と鹿目まどかが、この世界の鹿目まどかを巻き込んだんだ」
「っ!?」
「君も運がなかったね。鹿目まどか。別の世界のまどかの因果を背負わされて」
「わ、わたし……」
まどかががたがたと震える。
「ふざけるな!! 運命だ? そんな物知った事か!!」
芳文が激怒して叫ぶ。
「ああ。君も被害者だったね。母親の」
インキュベーターのその言葉に、ほむらは唇を噛みしめる。
「君もまた、そこにいるまどかと同じでもう絶対に幸せになれない」
「……何?」
「世界と言うのはね、異物の存在を決して許さないんだ。奇跡を望めば世界は必ずどこかで歪みを修正しようとする」
「考えてごらん。君も、君の母親も一時的に幸せを手に入れても、結局すべて失っているだろう?」
「暁美ほむら。君は義母を失い、家族を失い、自らの幸せを失った」
「社芳文。君は母親に捨てられ、父を失い、新しい家族を失った」
「君達が戦ってきた魔女達が強かった理由もただ一つ。この世界が君達を受け入れないからだ。君達は世界に拒絶された忌子なんだよ」
「当然、この世界は僕も拒絶している。だから、僕は自分のコピーを作って、この世界に送り込んだんだ」
「いくら変わりがあっても、この体を壊されたらもったいないしね」
「……知った事か」
芳文はインキュベーターを睨みつける。
「まあ好きなだけあがくといいよ。どうせ君達に未来はない」
「……いやだ」
インキュベーターの言葉に、まどかは涙を流しながら拒絶の言葉を呟く。
「いやだ!! こんなのってないよ!!」
まどかはそう叫んで、芳文の腕の中から抜け出すと、背を向けて走り去る。
「まどか!!」
芳文はまどかの後を追う為に走り出す。
「……」
ほむらと目が合うが、芳文は目を逸らしてその場から走り去った。
303 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 11:53:30.19 ID:Vv/Ok/mso
「……インキュベーターぁぁぁぁぁっ!!」
ほむらが憎悪を込めた視線で、インキュベーターを睨みつける。
「良い表情をするじゃないか。君にソウルジェムがあれば、君の感情エネルギーも回収できたのに」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ナイフを握りしめてインキュベーターに襲い掛かるが、ほむらは簡単に吹き飛ばされてしまう。
「やれやれ。無駄だってわからないかな。まどかのエネルギーを手に入れた僕達に、もう今の君では何も出来ないよ」
そう言って馬鹿にした表情でインキュベーターは背を向ける。
「さてと、これからはどうやってあのまどかを絶望させるかな」
「クロエ。君は実にいい仕事をしてくれたよ。ありがとうクロエ」
クロエの死体にそう言い残して、インキュベーターは去っていった。
「う、ぅぅぅぅぅ……」
その場にうずくまって、ほむらは嗚咽を漏らす。
「暁美ほむら」
キュゥべぇがひょこひょこと、三本足で近くに歩いてくる。
「とりあえず、マミ達を蘇生させてくれないか。このままだとまどかが悲しむから」
「……何のつもり」
ほむらは涙を流しながら、キュゥべえを睨む。
「……僕は、まどかの泣き顔を見たくないんだ」
そう言って、キュゥべえはほむらに頭を下げて謝った。
「本当にすまなかった。僕はまどかと君の息子にとんでもない事をしてしまった」
「……」
ほむらはキュゥべえの心からの謝罪に何も答えなかった……。
304 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/21(土) 11:54:15.02 ID:Vv/Ok/mso
☆
「嘘だ……」
「嘘だ嘘だ嘘だ!! こんなの嘘だよ!!」
走りながら、息を切らせて、涙を流しながら、まどかは夜の街を走る。
「息だって切れるもん……。涙だって出るもん……。この体が抜け殻だなんて、そんなの絶対嘘だよ……」
いつの間にか、雨が降り出していた。
全身を雨に打たれながら、まどかはどこへともなく走り続ける。
――その時だった。
眩しい光がまどかの視界に入り、次の瞬間、鈍い音と衝撃と共にまどかの小さな体が宙を舞った。
「――あ」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
声に出せず、全身に痛みを感じながら、まどかは地面に激しく叩きつけられる。
まどかの付けている左側のリボンが解けて、まどかから離れた場所に落ちる。
後頭部を思い切り地面に叩きつけられ、まどかの頭から大量の血が流れ出す。
まどかは朦朧とする意識の中で、自分をはねた車から降りてきた若い男が、何かを叫んでいるのを見つめる。
倒れている体を起こそうとするが、ぴくりとも動けない。
(――ああ。これは夢なんだ)
先ほどまで後頭部と全身が物凄く痛かったはずなのに、もう痛みを何も感じない。
(変な夢見ちゃったな……。早く目が覚めないかな……)
朦朧とする意識で雨に打たれながら、まどかは運転手から視線を暗い空に向ける。
(明日、雨だったらどこで芳文さんとお弁当食べようかな。たまにはさやかちゃん達も誘って、どこかで一緒に食べるのもいいかな……)
そんな事を考えながら、まどかは地面の上で雨に打たれ続ける。
(おかしいな。なんだか体が冷たくなってきたよ……)
そんな事を考えながら、まどかは動かなかったはずの体を起こす。
「あ、あああ……」
「?」
声のした方へ振り向くと、まどかをはねた若い男がまるで怪物を見るような顔で、がたがたと震えていた。
「さっきまで死んでたはずなのに……!! ケガが治って……!!」
「――え?」
まどかが疑問を口にした瞬間、男は背を向けて叫んだ。
「寄るな化け物!! うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
男が車に乗り込んで、猛スピードで立ち去るのを見て、まどかは自分の周囲を見回す。
おびただしい量の血液が雨で流されていく。
自分の体を見ると、ズタボロになって血で真っ赤に染まった衣服と、既に跡形もなくケガが塞がっている事にまどかは気付いた。
『本体としてのソウルジェムが砕かれない限り、魔法少女は無敵だよ。どんなに血を抜かれても、心臓が破れても、魔力で修理すれば元通りだからね』
インキュベーターの言った言葉が脳裏に過る。
自分の左手を見ると、中指でソウルジェムが鈍い銀色の輝きを放っている。
「う、うぅぅぅ……」
まどかは地面の上に座り込んだまま、嗚咽を漏らす。
「まどか!!」
芳文がまどかの姿を見つけ駆け寄ってくる。
「まどか!! どうしたんだ!! 大丈夫か!!」
「……芳文、さん」
涙をぼろぼろとこぼしながら、まどかが芳文の名を呼ぶ。
「立てるか?」
芳文がまどかに手を差し出すと、まどかは芳文の手を取って立ち上がり、ふらっと芳文に向かって倒れる。
「……わたし、化け物だって」
まどかが芳文の腕の中で、弱々しく言う。
「あいつの言ったとうりだった……。車にはねられたのにね……もう、どこも痛くないの……」
そう言って、まどかは芳文の顔を見上げて、顔を悲しみに歪めて泣き出した。
「いやだあ……。こんなのいやだよぉ……」
「こんなのってないよ……。うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
まどかは芳文の腕の中で悲しい現実を突き付けられた事に涙する。
芳文にはただ、黙ってまどかを優しく抱きしめてあげる事しか出来なかった……。
つづく
305 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/21(土) 11:55:59.06 ID:Vv/Ok/mso
杏子「……つづく」
306 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/21(土) 12:13:34.14 ID:xdQh5y8do
お疲れ様でした。
・・・・・急転直下ですねぇ・・・・・・。どうしよう・・・・・”禁断の魔筆”か
聖杯かドラゴンボールを投入したいところですが……さて・・・・・・。
あれ?この世界には元々魔(法少)女システムはなかった・・・・・?
としますと、ほむほむ来訪でこのシステムが世界に追加されて、
マミさんとか杏子さんとかクロエさんたちも魔法少女な運命に
変わってしまった・・・・・という感じなんでしょうね。
307 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/05/22(日) 13:39:34.19 ID:ZAnpgpOAO
えらい事になってる…
見てる奴のソウルジェムを真っ黒にする気か…
308 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/22(日) 18:13:59.20 ID:6Z7KyD2qo
杏子「更新開始」
309 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/22(日) 18:17:17.01 ID:6Z7KyD2qo
――パサッ。
芳文の住む、ワンルームマンションの浴室。
所々破れて、血と雨で汚れた見滝原中学の夏服を無造作に脱ぎ捨てて、まどかは鏡に映る自分の体を見る。
腹部は自分自身の流した血で、真っ赤に染まっていて、血で染まった肉片がべっとりと付いていた。
まどかは事故に遭った時に、自分の腹部から出てきたたはずのソレを無造作に引き剥がす。
雨でくじゃぐしゃになって、自身の血で赤く染まったポケットティッシュを、脱ぎ捨てたスカートから取り出してソレを包むと、脱衣所に据え付けられていたごみ箱に捨てた。
シャワーのノズルの下に移動して、シャワーを出す。
冷たい水が勢いよく噴出され、まどかの頭から雨と汗とまどかの流した血を流していく。
赤く染まった水が排水溝に吸い込まれていくのを見ながら、まどかは涙を流した。
第19話 「ひとりじゃないから」
芳文から借りた半袖シャツのみを着て、まどかが俯いたままバスルームから出てきた。
「まどか。ちゃんと暖まった?」
思ったよりも早く出てきたまどかに、芳文は出来るだけ優しく尋ねる。
「……うん」
まどかは俯いたまま、その場に立ち尽くす。
「ほら、そんな所に立ってないでこっちに来て座って。今、暖かいコーヒーを入れるから」
「……」
芳文はそう言って、まどかの側に歩いていくとまどかの手を取る。
「ん? まどか。ちゃんと温まったのか?」
まどかの手はまるで、今まで冷水に浸かっていたかのように冷たかった。
「……ううん」
力なく芳文の言葉を否定する。
「ちゃんと温まらきゃ駄目じゃないか」
「……別にいいよ」
「何を言ってるんだ。もう秋だぞ。水風呂じゃ風邪をひくじゃないか」
「……風邪なんて……ひかないよ」
そう言って、まどかは芳文の顔を見上げる。
その瞳には大粒の涙が溜まっていた。
「――だって、わたし」
まどかの瞳から、涙がこぼれて床に落ち、爆ぜる。
「化け物だもん」
310 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/22(日) 18:17:44.14 ID:6Z7KyD2qo
「違う!!」
芳文は即座にまどかのその言葉を否定する。
「違わないよ!!」
「まどかは化け物なんかじゃない!!」
芳文のその言葉に、まどかは着ていたシャツを脱ぎ捨てる。
「まどか!?」
まどかの突然の行動に芳文は硬直する。
「わたし、車にはねられたんだよ!! それなのに、もうどこにも傷痕ひとつないんだよ!!」
芳文の目の前に晒された、先日十四歳になったばかりの少女の、瑞々しい白い裸体には傷一つ付いていなかった。
「……こんなの、絶対おかしいよ。人間の体じゃないよ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっ……」
そのまま顔を両手で覆って、まどかはしゃがみ込んで泣き出してしまう。
芳文は泣き叫ぶまどかの体を、力強く抱きしめて叫ぶ。
「まどかは化け物なんかじゃない!! 化け物がこんな風に泣いたりするもんか!! こんなに暖かいものか!!」
「ひっく……だって、だって、この体はもう、抜け殻だもん……。本当の私は、もうソウルジェムだもん……っ!!」
「だからなんだ!! まどかが俺の一番大切な人なのはそんな事じゃ変わらない!!」
「よし……ふみ……さん……」
「――俺、まどかに言ったよな。俺はまどかの事が好きだって。俺はまどかの事が大切だって」
まどかの両肩に手を置いて、涙を流すまどかの顔をしっかりと見つめながら、芳文はまどかに想いを伝える。
「――俺は、まどかの事を愛してる」
「俺はこれからも、ずっとまどかの側にいる。何があってもまどかの事を絶対に守る。だから、もう泣かないでくれ」
「わたしにそんな価値なんてないよ……。だって、わたしの願いのせいで芳文さんも」
「馬鹿な事を言うな!!」
芳文は初めて本気でまどかに対して怒鳴った。
「二度と自分に価値がないなんて、言うんじゃない。俺は全部納得してまどかの側にいると決めたんだ!! 例えまどかが俺から離れようとしても絶対に離さない!!」
芳文はそう叫んで、まどかの体を思い切り抱きしめる。
「……芳文……さん。……苦しい、よ」
「当たり前だ。まどかは……俺の世界で一番大切な女の子は、今も生きていて、俺の腕の中にいるんだから」
「ひっく……」
芳文の腕の中で、まどかはしゃくりあげる。
「泣きたいだけ泣けばいい。俺にはこんな事しかしてやれないから。だけど俺は絶対にまどかを一人にしない。これから先、まどかがつらい時も泣きたい時も、俺はずっと側にいて抱きしめてやる」
「俺は、まどかの泣き顔は見たくないから。まどかにはずっと笑っていてほしいから」
「……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
まどかは芳文の腕の中で堰を切ったように泣き続ける。
残酷な真実を突き付けられた悲しみと、芳文から受け取った想いと、芳文への想いが混じった涙を流して……。
「……まどか」
どれくらいの間、泣いただろうか。
まどかは芳文の腕の中で、芳文の鼓動の音を聞きながら、芳文に体を預けてすんすんと鼻を鳴らす。
「……芳文さん、暖かいね」
芳文の胸に耳を当てながら、まどかは言う。
「まどかも、暖かいよ」
「……本当に、ずっと一緒にいてくれる?」
「俺がまどかに嘘をつくわけがない」
「……ごめんなさい」
「まどか、違うぞ」
芳文の言葉に、まどかは芳文の顔を見上げて言う。
「――ありがとう、芳文さん」
そう言って、まどかは芳文に微笑んでみせるのだった……。
311 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/22(日) 18:18:28.58 ID:6Z7KyD2qo
☆
「……これから、どうしよう」
その日の夜十一時。
落ち着いたまどかは、蘇生したマミ達の無事をテレパシーで確認してから、芳文の服を借りて自宅まで送ってもらいながら、隣を歩く芳文に言う。
「マミさん達はまだ、ソウルジェムの秘密も魔法少女の最後も知らないみたい」
「そうなのか?」
「うん。ほむらちゃん……ううん、ほむらさんが上手くごまかしてくれたみたい」
ほむらが芳文の実母であり、前の世界のまどかの友人である事を知ったまどかは、ほむらをさん付けで呼び直す。
「……そうか」
ほむらの名を出されて、芳文の表情が一瞬強張るが、複雑な心境で芳文はまどかにそう返す。
「……これからの事は明日、みんなに相談してみるか?」
「あのね……その事なんだけど……」
まどかは立ち止まると、芳文の顔を見ながらずっと考えていたことを口にする。
「ほむらさんの過去を見せられて、思ったんだけど……」
「……わたしなら多分、マミさん達を普通の女の子に戻してあげられると思うの」
「……そんな事が出来るのか?」
「多分。ほむらさんも元の世界のわたしに人間に戻してもらったんだから、その因果が集まったわたしにも同じ事が出来ると思う」
「それでまどか自身は元に戻れるのか?」
「……多分無理。自分自身をどうにかするにはもっと強い魔力がないと」
「……そうか」
「ごめんなさい……」
「何が?」
「本当は、芳文さんもわたしから解放してあげないといけないのに」
「俺はまどかに束縛されてる覚えはないぞ。俺がまどかの側にいたいから、今もこうして隣にいるんだ」
「……うん。ありがとう」
そう言ってまどかは微笑んでみせる。
――やがて二人はまどかの家に到着した。
「それじゃまた明日」
「うん。おやすみなさい」
そう言って、まどかは家の中に入っていく。
「まどか」
芳文がまどかを呼び止める。
「何かあったら、すぐにテレパシーで呼んでくれ。すぐに駆けつける」
「ありがとう、芳文さん」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
芳文と別れて、まどかは家の中へと入っていく。
芳文はまどかが玄関のドアを締めるまでを見送ると、踵を返して帰ろうとする。
「――っ」
芳文の振り返った先には、ほむらが立っていた……。
312 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/22(日) 18:19:48.40 ID:6Z7KyD2qo
☆
「……あれから、巴さん達は無事だったのか?」
芳文は無表情で淡々と疑問をほむらに尋ねる。
「ええ。あのクロエと言う魔法少女は突然現れた魔女に殺されて、巴マミ達は魔法が解けた事で仮死状態から蘇生したという事にしてあるわ」
「志筑さんの事は?」
「巴マミが魔法で記憶を消したわ」
「そうか」
「……」
ほむらは無言で芳文の顔をじっと見つめる。
「……あんたは俺の事を知っていたのか?」
「……ええ。プールで右脇のアザを見た時には、まさかと思っていたけれど」
「俺から実の母親の名前を聞き出して、確信したって所か」
「……そうよ」
ほむらはそう答えると押し黙ってしまう。
「……なあ、あんたは結局何がしたかったんだ?」
どれくらいの間、お互いに無言だっただろうか。不意に芳文が沈黙を破った。
「……」
「別の世界のまどかの為に何度も時間を巻き戻していたと聞いたが、その先にいるまどかはあんたの友達だったまどかじゃないだろ?」
「たとえ同じ顔をしていても、それはもう別人じゃないのか? そしてその結果、今はこの世界のまどかを苦しめている」
「――それでも、私はまどかに生きてて欲しかったのよ」
ほむらは拳を握りしめながら、芳文にそう答える。
「……あんたにとって、まどかは本当に大切な相手だったんだな」
芳文はそう言って、冷たい視線でほむらに吐き捨てる。
「俺と親父を簡単に捨てるくらいに」
「……」
「……なあ。あんたは、俺にこの世界のまどかを守らせる為に、俺を産んだのか?」
「……」
「もしそうだったら言っておくぞ。俺は俺自身の意思であの子を好きになって、まどかを守ると誓ったんだ。決してあんたの思いどうりに動いてる訳じゃない」
「……そんな訳ないじゃない!!」
ほむらは感情を爆発させて叫ぶ。
「誰が自分の子供を好き好んで、わざわざ危険な事に首を突っ込ませたいものですか!!」
「記憶が戻って邪魔になったから、捨てた子供だろ?」
「違う!! 記憶が戻っても、あの人への想いもあなたへの愛情も消えた訳じゃない!!」
「だったら、なんで俺と親父を捨てた」
「あなた達を巻き込みたくなかったのよ!! この世界のまどかが私の助けたかったまどかじゃないって言うのもわかってた!! だけど!!」
「もう、あの子が悲しい結末を迎えるのを黙って見るのは嫌だったの……!!」
ほむらの瞳から、涙が流れ落ちる。
「何も出来ない私を救ってくれた、たった一人の私の友達だったのよ……!!」
「あの人に拾われて、恋をして、あの人の妻になれて、あなたが産まれてきてくれて、私は幸せだった。本当はずっとあの人の隣にいたかった!! あの人と一緒にあなたが大きくなるのを見守りたかった!!」
「……」
母親の本当の気持ちをぶつけられ、芳文は思わず目を逸らすと、背を向けてその場から歩き出す。
「……待って」
ほむらが立ち去ろうとする芳文の右腕を掴む。
「……離せよ」
芳文が無造作に振り払うと、ほむらはその場に倒れてしまう。
カツーン……。
倒れたはずみに、ほむらの上着のポケットから、銀色のロケットが芳文の足元に転がり落ちる。
「……」
芳文は無造作にそれを拾うと、それを開ける。
「……」
ロケットの中には、十九歳のほむらとその隣にほむらの夫が、そしてほむらの腕の中で赤ん坊の芳文が、それぞれ笑顔で写っている写真が収められていた。
「……っ」
芳文はロケットをほむらに無造作に投げつけると、その場から走り去った。
芳文の走り去った後には、涙を流し続けるほむら一人だけが取り残されていた……。
313 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/22(日) 18:20:58.01 ID:6Z7KyD2qo
☆
翌日の朝。
まどかと芳文はいつもよりも早く、中学校への通学路で落ち合う。
「まどか、巴さん達をどう説得して人間に戻す?」
「出来れば、みんなには魔法少女の真実は知ってほしくない……」
「……そうだな」
「マミさんと杏子ちゃんは、今まで長い間みんなの為に頑張ってくれてたから……。それにさやかちゃんだって……」
「やれやれ。君達は昨日の今日で、いつもの日常を過ごすつもりなのかな?」
遊歩道の木々の間からインキュベーターがその姿を現す。
「貴様!!」
まどかを庇うように立ちながら、芳文が殺意を込めた視線でインキュベーターを睨む。
「まどか。僕等の宇宙の為、絶望して魔女になってよ!!」
インキュベーターが人懐っこい笑顔を浮かべて言う。
「ふざけるな!!」
「やれやれ。君に憎まれてもしょうがないんだってば。まどか、もっともっと僕を恨んで、そのソウルジェムを黒く染め上げてよ」
「貴様!!」
芳文がインキュベーターを蹴り飛ばすと、インキュベーターの小さな体が空中で爆散して消滅する。
「無駄だってわからないかな」
新しいインキュベーターが現れて、背中の口を開く。
中から、グリーフシードが出現して、空中でドクンドクンと脈動を開始する。
「君達にはもう、今までどうりの日常を過ごす事なんて出来ないよ」
そう言って、ニタァとインキュベーターは邪悪な笑みを浮かべる。
「例えどこにいても、僕はまどかを諦めない。その絶大なエネルギーを回収するまではね」
グリーフシードが孵化する。
「まどか!!」
三本足で必死に走ってきたキュゥべえが、思い切り跳びはねて、空中で孵化寸前のグリーフシードを背中の口で食べる。
「キュゥべえ!?」
「まどか!! 憎しみや悲しみを溜めこんじゃ駄目だ!! ソウルジェムは負の感情を溜めこむ事でも濁ってしまう!!」
「余計な事を」
インキュベーターの両目が光った次の瞬間、キュゥべえの体が爆散して消滅する。
頭だけになって、まどかの前に転がるキュゥべえ。
「キュゥべえ!!」
まどかがキュゥべえの頭にしゃがみ込んで叫ぶ。
「ごめんよ、まどか……。僕は、君と君の大切な人に、ひどい事をしてしまった……」
「……本当にごめん。君と過ごした日々は楽しかったよ……」
「キュゥべえ!! いま治してあげるから!!」
まどかは魔法少女の姿に変身して、キュゥべえに掌を翳す。
「いいんだ。これは君達にした事の報いだから。それに僕はあいつに逆らえない……。あいつは今すぐにでも僕を消滅させられるから……」
キュゥべえは芳文に視線を向けて、芳文に言う。
「どうか、まどかを守ってほしい。僕に、心を与えてくれたこの子を魔女になんてさせないでほしい」
「……ああ」
「頼んだよ。いつか、強い魔力を持った魔法少女が……。まどかを人間に戻せる子が現れるかもしれない……」
「可能性はとても低いけれど……ゼロじゃないから……。だからまどか。強く生き」
――パアアアアアアンッ!!
キュゥべえの頭が爆散して完全に消滅する。
キュゥべえの耳飾りだけが残されて、カラカラと音を立ててまどかの目の前に残される。
314 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/22(日) 18:21:51.32 ID:6Z7KyD2qo
「キュゥべえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
キュゥべえの耳飾りを手にしてまどかが泣き叫ぶ。
魔法少女になってから、今までずっと一緒だったキュゥべえとの日常を思い出しながら、まどかは涙を流す。
「訳が分からないよ。君達を不幸にした張本人の為に泣くなんて」
インキュベーターが馬鹿にした口調でまどかを嘲笑う。
「……まどか、マギカ・ブレードだ」
芳文が静かに怒りを込めた口調でまどかに言う。
まどかはキュゥべえの耳飾りを胸に抱きしめて泣きながら、マギカ・ブレードを生成する。
「消え失せろ!!」
芳文はマギカ・ブレードを掴むと、怒りのままにインキュベーターに投げつける。
マギカ・ブレードが、インキュベーターの右後ろ脚と尻尾を消滅させる。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
今まで味わった事のない激痛に、たまらずインキュベーターが悲鳴を上げる。
「逃がすか!!」
右後ろ足と尻尾を失ったインキュベーターが、背を向けて逃げ出そうとするのを、芳文は渾身の蹴りで爆散させる。
新しいインキュベーターが即座に出現したその瞬間。
インキュベーターの右後ろ脚と尻尾が突然消滅した。
「まさか!! 鹿目まどかの作り出した剣は、因果を破壊するとでも言うのか!?」
新しいインキュベーターが、狼狽えた口調で後ずさる。
地面を抉りながら沈んでいくマギカ・ブレードを掴むと、芳文はインキュベーターを完全に消し去ろうとする。
「……でさあ」
「えー? マジで?」
登校途中の女生徒達の声が聞こえて、芳文の動きが一瞬止まる。
インキュベーターはすかさずその場から逃げ出した。
「待て!!」
「鹿目まどか!! 僕達は絶対に君を諦めない!!」
捨て台詞を残して、インキュベーターは消えた。
「……まどか」
まどかはキュゥべえの耳飾りを胸にただ、涙を流し続けるのだった……。
315 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/22(日) 18:22:37.63 ID:6Z7KyD2qo
☆
「まどか、今日どうして学校休んだの? みんな心配したんだよ」
放課後に人通りの少ない遊歩道に呼び出されたさやかが、無断欠席したまどかに尋ねる。
「……さやかちゃん。さやかちゃんはずっとわたしの親友だよ」
「なにさ、やぶからぼうに」
真剣な表情でそう言うまどかに笑いながら、さやかが返す。
「グリーフシード、持ってきてくれた?」
「ん? 一応、持ってきたけどさ」
「ちょっと貸してくれるかな」
「別にいいけど」
さやかはそう言って、グリーフシードをまどかに手渡す。
「……芳文さん」
まどかが芳文の名を呼ぶと、少し離れた場所にいた芳文がさやかを羽交い絞めにする。
「ちょっ!? 先輩!?」
まどかは戸惑うさやかの左手中指から、さやかのソウルジェムを抜き取ると、さやかの胸に押し当てる。
「これからは、普通の女の子に戻って幸せになってね」
そう言ったまどかの手から暖かい光が溢れ出し、ソウルジェムがさやかの胸の中に押し込められる。
「――まど、か」
泣きそうな顔で笑う親友の顔を、最後に脳裏に焼き付けながら、さやかは意識を失った。
芳文は意識を失ったさやかをベンチの上に座らせる。
すぐ近くのベンチには、同じようにまどかの手で人間に戻されて、意識のないマミと杏子が座らされていた。
「はあ……はあ……」
魔力の使い過ぎで、まどかが荒い息を吐く。
「まどか!! すぐにソウルジェムを浄化するんだ!!」
「う、うん……」
黒く濁ったソウルジェムを、さやかから受け取った三つのグリーフシードで完全に浄化する。
限界の近いグリーフシードを芳文はまどかから受け取ると、その手に力を込めて粉々に握り潰した。
「……芳文さん。それじゃ後でね」
「……ああ」
まどかと芳文は、さやか達に一瞥をくれるとそれぞれの自宅へと戻っていった。
316 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/22(日) 18:25:25.61 ID:6Z7KyD2qo
その日の深夜。
家族が寝静まったのを見計らって、まどかは家を出る。
出来るだけ、動きやすい服に着替えて、旅行用の鞄を手にまどかは歩みを進める。
その頭にはもう、リボンは付いていなかった。
途中、携帯電話で時間を確認しようとすると、さやかとマミからの着信が大量にあった。
まどかは携帯電話の電源を切ってポケットに入れると再び歩き出す。
歩き続ける事、十分弱。やがて良く見知った人物を見つけてまどかは駆け寄った。
「……いいのか」
「……うん」
芳文の問いに、静かに頷く。
「……行こう」
芳文はまどかの肩を抱き寄せて、まどかと二人で歩き出す。
「芳文!! まどか!!」
不意に声をかけられてまどかと芳文は振り返る。
ほむらが息を切らせながら、二人の側に駆け寄ってくる。
「あなた達、これからどうするつもりなの?」
「……もうこの街にはいられないから。俺達は旅に出る」
芳文が無表情で答える。
「もう、この街には魔女も使い魔もいないから。マミさん達も普通の女の子に戻ったから。だから」
まどかのその言葉に、ほむらは驚いた表情でこれからの事を尋ねる。
「二人だけで、よその街の魔女を狩りながら生きていくつもり?」
「それだけじゃない。生きていく為にグリーフシードは集めるけど、助けられる魔法少女がいれば助ける」
「そんな……。それじゃあなた達は……」
芳文のその言葉に、ほむらは呆然となる。
そんな生き方で、まどかと芳文に果たして安らぎはあるのだろうか?
思わず口に出そうとすると、まどかがほむらに微笑んで言った。
「……うん。言いたい事、わかるけど……。ひとりじゃないから」
「……まどか」
「可能性は低いかもしれないけど、いつかまどかを人間に戻せる力を持った魔法少女も探し出してみせる」
芳文は強い決意を母へと語る。
「……これを持っていきなさい」
ほむらは懐から、通帳と印鑑とカードを芳文に手渡す。
「……暗証番号は、あなたの誕生日よ」
通帳に自分の名前が書かれているのを見て、芳文はほむらに言った。
「……右手、上げてくれる?」
「……こう?」
ほむらは素直に従う。
――パァーン。
芳文の右手とほむらの右手が空中で音を立てて触れ合った。
「今までお疲れ様。後は俺が引き継ぐから」
「……芳文」
「さよなら。母さん」
芳文はほむらにそう言って、微笑んでみせる。
「――あ」
ほむらの瞳から涙が一筋、流れる。
「ほむらちゃ……ほむらさん。今まで、ありがとうございました」
まどかがぺこりとお辞儀をする。
「……まどか」
芳文とまどかは寄り添うように去っていく。
「芳文!! まどか!! いつか必ず二人で帰ってきなさい!!」
二人は振り返る事もなく、去っていく。
「待っているから……!! ずっと待っているから……!!」
ほむらは芳文とまどかの姿が見えなくなるまで、いつまでもその場で二人を見送るのだった……。
317 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/22(日) 18:27:47.92 ID:6Z7KyD2qo
☆
見滝原市から遠く離れた夜の街。
無人のビルの屋上で、芳文とまどかは夜の街明かりを見つめながら、夜風に吹かれていた。
まどかが時間を確認しようとして携帯電話の電源を入れると、詢子からの着信がかかってきた。
まどかは思わず、芳文の顔を見る。
「……出てもいいよ」
芳文が優しくそう言うと、まどかはおずおずと携帯に出る。
「……もしもし」
「まどか!! やっと繋がった!! あんた今どこにいるんだい!?」
「……ママ」
「さやかちゃん達も和子もみんな、今もあんたを探してるんだ!! 無事なら今すぐ帰ってこい!!」
「……ごめんね、ママ。わたし、もう帰れないよ……」
「まどか? なにかあったのか!? 芳文君も連絡が取れないって言うし」
「芳文さんなら、わたしと一緒にいるよ」
「そうか、あんたひとりじゃないんだな!?」
「うん……」
「何があったのか知らないけど、あんた達だけで帰ってこれないなら、あたしが迎えに行くから。今どこだ!?」
「……遠い街、だよ」
「まどか、それだけじゃわからないだろ」
「……うん。ねえママ。わたし、ママとパパの子供に生まれてきて幸せだったよ」
「……まどか?」
「もしまた生まれ変わる事があったら、その時もママとパパの子供になりたいな」
「おい、まどか!?」
「さようなら、ママ。ずっと元気でいてね。パパとタツヤにもよろしくね」
「おい!! まど」
――プツッ。ツーツー……。
まどかが通話を切り、携帯からの音が小さく響く。
「芳文さん。お願い。この携帯を壊して」
「別に壊さなくてもいいんじゃないか?」
「ううん。いつまでも持ってると、未練を捨てられないし、わたし達の居場所を見つけられるかもしれないから……」
「……本当にいいのか?」
「うん。お願い」
そう言って、芳文に携帯電話を手渡す。
買ってもらった時に家族で撮った写真や、さやか達と撮った写真のデータが入っている思い出の携帯電話。
芳文と二人で撮ったプリクラを貼った大切な携帯電話。
まどかは芳文に今までの生活との決別の為に、あえて携帯電話を破壊してもらおうとする。
――グシャッ。
芳文の手によって、握り潰された携帯電話が粉々になって、地面に落ちる。
(――これで、全部なくなっちゃった)
夢も、未来も、家族も、友人も、思い出さえも失った少女。
覚悟していたはずなのに、涙が溢れてくる。
「まどか」
芳文はまどかを抱きしめる。
嗚咽を漏らすまどかが落ち着くまで、芳文はただ黙って抱きしめ続ける。
318 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/22(日) 18:30:21.68 ID:6Z7KyD2qo
「――もう、大丈夫だよ」
やがて、腕の中のまどかが泣き止んで、そう言って笑うと芳文は優しく微笑んで頷く。
「行くか」
「うんっ」
二人は昼間の間に目星をつけておいた場所で、魔女の結界を発見して中へ突入する。
結界の中では、新しく魔法少女になったばかりの少女と、その友人が魔女に襲われていた。
「早く逃げて!!」
劣勢の魔法少女が友人に向かって叫ぶ。
「だって!! あなただけ置いていけないよ!!」
「いいから早く逃げて!!」
「彼女を助けたいかい?」
傍らに立つ契約の獣が、無力な少女に囁く。
「僕と契約して魔法少女になれば、彼女を助けられるよ」
――それは、無力な少女にとって悪魔の囁きだった。
「――その必要はない」
突然現れてそう言いながら、空中高く跳んで少女の目の前に着地した芳文が、手にした長大な剣で魔法の使者を名乗る悪魔を斬り裂いた。
マギカ・ブレードに秘められた、因果を破壊する力で存在そのものを消滅させられた悪魔は、二度と少女の前にその姿を現す事はない。
「もう、大丈夫だよっ」
白とピンクのフリルの服を着たまどかが少女に声をかける。
以前と違い、リボンを着けていない桃色の髪が、魔女の起こした風圧で流れる。
「あ、あなた達は……?」
突然現れた芳文とまどかに少女が驚く。
「行くぞ、まどか」
「うんっ」
――ひとりじゃないから。
まどかはマギカ・ブレードを構えて、魔女に向かって走る芳文を援護するべく、弓を顕現させて魔力の矢を引き絞る。
――だから、きっとがんばれる。
まどかは新たな人生への思いを胸に、魔力の矢を魔女に向けて解き放った。
つづく
319 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/22(日) 18:40:35.27 ID:6Z7KyD2qo
杏子「第2部完」
杏子「次回から最終章だ」
杏子「実はマギカ・ブレードはデモンベインのシャイニング・トラペソヘドロンも元ネタのひとつなんだ」
杏子「この剣は、今、そこにある、今、ここにある物の存在そのものを破壊する。例え遠隔操作している物でも、ソレを通して大元の存在を破壊する。たとえ相手が精神生命体だろうが超ロボット生命体手だろうが関係なく破壊する」
杏子「こいつの直撃を喰らったら、インキュベーターも完全にその存在を破壊される。まどかルート専用の必殺武器だ」
杏子「キュゥべえはアニメ版とウメス4コママンガを合わせたイメージ。インキュベーターはハノカゲ版のイメージで書いてるそうだ」
杏子「キュゥべえはインキュベーターのコピーで感情に目覚めたが、インキュベーターは感情なんてない。どうすれば相手が負の感情を抱くか計算してわざとやってるんだ」
杏子「これでハッピーエンドに行けるのかね……」
杏子「次回 第20話 「俺達は神様じゃない」 までお別れだ」
杏子「じゃあな」
320 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/22(日) 18:53:37.96 ID:jDG7y5RDo
お疲れ様でした。
二人とも大変ですなぁ……。中2と中3で・・・・・・。
む。インキュベーター氏はこれでもう登場しないのかな・・・・?
ちなみに、マギカ・ブレードで遠隔操作用の完全義体を斬ったら
どうなるんんだろう・・・・・・・・?
321 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/22(日) 19:07:00.37 ID:6Z7KyD2qo
杏子「補足」
杏子「この世界にはコピーインキュベーターが世界中に大量に存在している」
杏子「オリジナルは右後ろ足と尻尾を失ったインキュベーターだけだ」
杏子「感情を手に入れたのはまどかと一緒にいたキュゥべえだけだ」
杏子「マギカ・ブレードについて。魂や精神と言った物で繋がっている場合のみ、マギカ・ブレードの破壊エネルギーがそのパイプを通じて大元に流れ込む」
杏子「相手がいわゆるラジコンだったら、大元には影響しない」
杏子「魂や精神で繋がってる物のみ、影響を及ぼすのさ。この話のインキュベーターはひとつの魂がその時使っている複数の体の内のひとつと繋がっているから、大元の魂もダメージを喰らい、その影響でスペアも同じ個所が破損したという訳」
杏子「何度体を変えても、欠損部位は二度と元には戻らない。だから、あいつは逃げたのさ」
杏子「ちなみに魔人ブウみたいな超再生持ちの右手を破壊した場合、破壊された部位は初めからなかった事になる。つまり再生不可能。再生出来てももう右手としては二度と機能しない」
杏子「存在そのものを破壊するとんでも武器だから、まどかルート専用なのさ。おしまい」
322 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/22(日) 19:22:07.85 ID:OSjdL5HD0
乙
>杏子「キュゥべえはインキュベーターのコピーで感情に目覚めたが、インキュベーターは感情なんてない。どうすれば相手が負の感情を抱くか計算してわざとやってるんだ」
薄暗いバーで喪黒さんと酌み交わすインキュベーターを一瞬想像しちまった・・・・・・
323 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/22(日) 19:32:04.26 ID:jDG7y5RDo
ふむふむ。なるほど。
攻機2の”セボット”とかは単にセボットだけが壊れるだけで済みそうですね・・・・・。
うーん。”必滅の黄薔薇”みたいな機能(生命点を元値ごと減少させる)もあるのか
デンジャーですねぇ・・・・・・・。
324 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/23(月) 19:30:59.28 ID:IWZfUS7SO
乙。久しぶりにインキュベーター氏ねと思ったぜ…。
325 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/23(月) 21:54:11.42 ID:c/3k1aEgo
杏子「業務連絡。疲れたからちょっと不定期で更新休むって。もしかしたらいきなり更新するかもしれないけど」
杏子「本編はおそらく全24話くらいで終了するはずだってさ。もしもネタが思いついたり、容量が増えたら26話くらいまでいくかも」
杏子「こぼれ裏話。あたし達が6人で倒したワルプルギスの夜は、ほむらの世界のまどかが倒した奴のグリーフシードをインキュベーターが掠め取って、この世界に持ち込んで孵化させた物だ」
杏子「箱の魔女とか、鳥籠の魔女とかは本編で描写してないだけで、この世界でも倒している。だからグリーフシードを沢山持ってたんだ」
杏子「本編で使われなかったあんこスラッシャーは、箱の魔女と戦った時に社がふわふわ浮いてしまう結界の中で自由に動けなくて、あたしが移動装置兼武器として作ってやってその時に使ったんだ」
杏子「だから11話でアンカースラッシャーを使いこなせたのさ」
杏子「こっちの世界にも、ゆまはもちろん、おりこやかずみも存在する」
杏子「インキュベーターの介入のせいで、あっちの魔法少女の因果があたし達にも流れ込んでるんだ……あの野郎!!」
杏子「ほむらの旦那について。決してブサイクではないが特別ハンサムな訳でもない。若い頃の見た目のイメージはフタコイ・オルタナティブの主人公や仮面ライダーWのハーフボイルドみたいな兄ちゃんだ」
杏子「牙狼の親父やバキの親父みたいに、息子よりもはるかに強かったらしい。ほむらより七歳年上だ」
杏子「まどかみたいなお人好しで優しい性格だったので、記憶のないほむらは好きになったらしい。もしほむらに記憶があったら社は生まれていなかっただろう」
杏子「別にロリコンだったわけじゃないらしい。ほむらと結婚するまでにどんなドラマがあったんだろうな」
杏子「ほむらの旦那は天涯孤独だったので、社に父方の親戚はいない。社を引き取った社父は旦那の親友で、ほむらとも面識がある。と言うか、若い頃は旦那とほむらと同じアパートに住んでた」
杏子「また、社の継母は旦那の昔の恋人だったらしい」
杏子「社芳文は美人設定のほむら似だけあって実はイケメンなんだ。まどか達に出会う前の社は無口で無愛想で近寄りがたい雰囲気だったから、女子生徒達に避けられてたんだ」
杏子「逆にバカの振りをしてた時は、あまりに馬鹿すぎて避けられてたんだ。だから本人はイケメンの自覚がない。まあなんだかんだ言ってもまだ15歳だから、やっぱり顔立ちにまだガキっぽさが残ってるせいもあるんだけどな」
杏子「高校生くらいになれば、周りの女がキャーキャー騒ぐようになるだろう」
杏子「さやかは上条が好きだから、あいつの事をそれなりに整った顔と言ってたけどな。実際は上条の奴よりハンサムだぞ」
杏子「案外、ほむら似だからこっちのまどかも好きになったのかもな。もちろん性格とか今までの経緯とかそう言うのも含めて好きになったんだろうけど」
杏子「実はこのSSはエロパロ板でやろうとしてたらしい。本来の構想では
>>310
の後に社とまどかが結ばれるシーンが挿入される予定だったそうだ」
杏子「こんな長ったらしい前ふりをしてようやくって、どこのエロゲーなんだ……」
杏子「おまけ」
杏子「夏休みにマミの家でパジャマパーティーをした時に、マミとさやかがまどかを弄って遊んでた時の事だ」
杏子「幸せそうに社との事をのろけてくれたんで、悩みがなくていいなってあたしが言ってやったら、まどかが悩みくらいあるって言うんだ」
杏子「んで、悩みってなんだよってあたしが聞いたらさ、生理が来ないのって言うんだよ」
杏子「それ聞いてマミとさやかが社をぶちのめしに行くってキレてさ。大変だったよ。あいつらまどかの事可愛がってたからな」
杏子「そしたらまどかが慌てて、初潮がまだ来ないのって言い直して、その場はおさまったんだけどさ」
杏子「あたしが初潮ってなんだ?って尋ねたら、マミとさやかが驚いた顔でこっちを見るんだ」
杏子「そしたらまどかの奴は何故か嬉しそうに、これからも仲良くしようね、とか言って手ぇ握ってくるし。訳わかんねぇ……」
杏子「……まどか。今頃どこで何してるんだろうな。じゃあ、またな」
326 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/05/24(火) 02:18:07.91 ID:TKZv3JbCo
鬱展開はやらないって言ったじゃないか嘘つき
327 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/25(水) 18:46:38.17 ID:4bEHhDeRo
杏子「業務連絡」
杏子「今度の金土日で最低1話更新するよ」
杏子「それと今の展開について、作者からの弁明だ」
杏子「まどか☆マギカの一応シリアス系二次創作である以上、魔法少女システムの真実は避けられない。ラストが近いからこの展開なんだそうだ」
杏子「一応、スレ立てした時のプロットどうりに進んでいるから、この展開になるのも予定どうり。これでも描写をかなり抑え目にしたそうだ」
杏子「本気でバッドエンド直行の鬱展開やるなら、もっともっと悲惨な展開にしたそうだ。例えばほむらが死ぬとか」
杏子「別に読んでる人間に精神攻撃したいわけじゃないし、原作のほうで鬱耐性付いてるから大丈夫だろうと思ったとの事」
杏子「こんな展開でも、最後は絶対ハッピーエンドだ。タイトルの一部が明るい魔まマだからな」
杏子「繰り返す。最後は絶対にハッピーエンドだから」
杏子「作者の命をかけてもいい。絶対にハッピーエンドだ」
杏子「この話はまどかが最後の最後まで、人間の女の子として生きる為にがんばる話だからな」
328 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/28(土) 14:15:17.04 ID:dJ8NNHZCo
把握
しかしラストが読めないぜ・・・
329 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/29(日) 02:19:20.67 ID:DpWRjk/y0
マギカ・ブレードで倒された魔女も存在ごと消滅したんだよな
インキュベーター(notQB)が消滅したところでざまあとしか思わんが
魔女が元魔法少女だと考えると何だかやるせない
ある希望を叶えるために魔法少女になったのが絶望させられて魔女にされた上に
最期は存在を魂もろとも消滅させられたなんてあまりにも救いがなさ過ぎる
330 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/05/29(日) 13:39:14.62 ID:ubLexwOxo
>>329
普通に倒しても消滅するし同じじゃね?グリーフシードも出るし
マギカ剣の強みはあのシズルでさえ瞬殺出来るって所だよな・・・
331 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/05/29(日) 19:37:01.37 ID:NOKzFu4bo
杏子「更新開始。今回も鬱展開だ……」
杏子「だが明けない夜はない。今はただ、まどか達の行く末を見守ってほしい」
332 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/29(日) 19:37:32.20 ID:NOKzFu4bo
「はい、杏子ちゃん」
真夏のとある日の出来事。
河川敷の日陰でまどかが白い封筒を杏子に手渡す。
「まどか、なんだいコレ?」
封筒の裏表を確認しながら、杏子がまどかに尋ねる。
「この前みんなで一緒に撮った写真だよ」
「ああ、あの時のか」
封筒の中から写真を取り出して見ていると、杏子の肩越しにさやかが写真を覗き込んで言う。
「あーあ。せっかくみんな揃った集合写真なのにさ。転校生はともかく、杏子まで横向いてるし」
「……なんだよ。こう言うの慣れてないんだから、しょうがないじゃんか……」
どこかからかうようなさやかの口調に、杏子は少し照れくさそうな顔で返す。
「まあまあ二人とも。また全員揃って写真を撮る機会なんて、これからいくらでもあるわよ」
「そうだね。その時までにもう少し写真撮る腕を上げておくよ」
マミが杏子とさやかを宥め、芳文がマミの言葉に同意する。
「今でも芳文さん、写真撮るの上手だと思うよ」
「そうかな? でも何事も練習あるのみだし、もっと上手くなるように努力はしないとな」
「がんばってね、芳文さん」
「ああ」
まどかに優しく微笑みながらそう答えると、芳文はふと湧いて出た疑問を口に出す。
「ところでさぁ、淫獣って俺達以外には見えないんだよな。この写真には普通に写ってるけど」
「言われてみればそうね」
「この写真、他の人に見せたらキュゥべえ見えるのかな?」
「うーん。どうなんだろうね?」
マミとさやかとまどかが、首を捻りながらそれぞれの意見を言う。
「案外、心霊写真みたいに見えたりしてな。他の奴にはまどかが猫かなんかの幽霊を抱いてるように見えたりして」
杏子がそう言うと、まどかは少し嫌そうな顔で杏子に言う。
「やめてよ杏子ちゃん。そういう怖い事言うの」
「ん? まどかは幽霊とか駄目なのかい?」
「うん。だって、怖いよ……」
「魔女や使い魔は平気なのに?」
「平気じゃないよ。魔女も使い魔も怖いよ。でも、みんなが一緒だから頑張れるんだもん」
「かわいい事言うね、この子は!!」
まどかのその言葉に、感激したさやかがまどかに抱きつく。
「わっ。さやかちゃん苦しいよ」
「んーっ。やっぱまどかはあたしの嫁だーっ」
そう言ってまどかを抱きしめ続けるさやかに、芳文がぴしゃりと言う。
「それは駄目。まどかは俺の嫁になるの」
芳文のその言葉に、まどかの顔が一瞬で真っ赤に染まる。
333 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/29(日) 19:38:17.27 ID:NOKzFu4bo
「……うわー。先輩、堂々とそんな事言って恥ずかしくない?」
「そりゃ恥ずかしいけどさ、言うべき事は言わないと」
「あーはいはい、そうですか。まあ兄貴の嫁を寝取るのもなんだしね。はい、先輩」
さやかは呆れ半分、照れくささ半分といった感じでそう言うと、芳文の方へ向けて軽くまどかの背中を押す。
「あぅ……」
芳文の前に突き出されて、芳文の顔を見上げると、まどかは恥ずかしそうに俯いてしまう。
そんなまどかの様子を見て、芳文も今更ながら顔を赤くして視線を逸らす。
「あらあら、私達はお邪魔かしら。ねえ、佐倉さん」
「かもな。実際、魔女との戦いの時も、もうこいつらだけでいいんじゃないかなって思う時もあったしな」
マミと杏子が笑いながらそう言うと、真っ赤になって俯いていたまどかが口を開く。
「そんな事ないもん。芳文さんとは一緒にいたいけど、みんなとも一緒にいたいもん」
『……』
まどかのその言葉に、マミ達は優しい顔で微笑む。
「やれやれ。まどかは欲ばりだなあ」
「社が一緒なだけじゃ駄目ってか」
「でも、そう言ってくれると嬉しいわ」
「さやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん。これからもずっと仲良くしてほしいな」
「そんなの当たり前っしょ」
「ええ」
「……ああ」
三人は優しい笑顔でまどかに頷く。
中学二年の夏休みのとある一日。
大切な友達とのかけがえのない思い出として、まどかはこの時の事を一生忘れないと思ったのだった。
第20話 「俺達は神様じゃない」
334 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/29(日) 19:38:52.68 ID:NOKzFu4bo
「……夢」
この街での一時的な活動拠点にしている廃屋の一室で、まどかは窓から差し込む夕焼けに照らされながら目を覚まして呟いた。
「……おはよう、まどか」
まどかの隣で壁にもたれかかっている芳文が、まどかに目覚めの挨拶をする。
「……おはよう、芳文さん」
昨夜に魔女を狩ってグリーフシードを手に入れてから、明け方近くにここに戻ってきて、二人で寄り添うように壁にもたれかかりながら、一枚の毛布に包まって寝ていたのを思い出してまどかは芳文に尋ねる。
「わたし、寝言とか言ってた?」
「いや。俺もついさっき起きたばっかりだから。昨日の夜も魔女退治したから疲れてたのかな。全然気づかなかった」
まどかの問いに芳文はそう答えた。
「そう……」
「ああ」
――実際は二人だけでの放浪の旅を始めてから、芳文が全くの無防備で眠った事はなかった。
いつ、どこで、あの忌々しいインキュベーターが現れて、まどかに危害を加えようとするかわからない以上、芳文は常に神経を尖らせていた。
今では例え微かな物音や気配だけでも、それらを感じ取ればすぐに起き出して、戦闘態勢に移行できるようになっていた。
そんな生活を続けている内に、時折まどかが家族や友人達の事を夢に見て、寝言を言ったりうなされたりするのにも芳文は気付いていた。
――だが、それも仕方のない事だとも芳文は思っていた。
元々優しい家族と友達に囲まれて、平凡だけれども幸せな人生を歩んできた彼女が、突然魔法少女と言う過酷な運命を背負わされた挙句、すべてを奪われてこんな環境で生きていかなければいかなくなったのだから。
せめて、少しでもまどかの心の平穏を保つ為、芳文は出来うる限りまどかに対して、今まで以上に優しく接してきた。
グリーフシードの数が無限ではない以上、今ではまどかに負の感情を溜めこませず、尚且つ無駄な魔力を使わせないようにするのが、旅立ってからの芳文の役目になっていた。
「……あのね、さやかちゃん達の夢を見たの」
「……そうか」
「うん……。みんな元気かな……」
「……きっと元気さ」
「……そうだよね」
まどかと芳文はそんな会話をしてお互いに黙り込んでしまう。
(――見滝原を離れてから、もう二年近く経つのか)
時折窓を叩いて室内に吹き込む、冷たくなってきた風を頬で感じながら、芳文は心の中で呟く。
「そろそろ行こうか」
芳文がそう言うと、まどかが頷いて立ち上がる。
腰まで伸びた桃色の長い髪が、窓から差し込む夕焼けに照らされて輝く。
「……髪、伸びたな」
「……そうだね」
荷物の中から、手鏡と櫛を取り出して髪の毛を梳かしながら、まどかは言う。
「おかしいよね。体はあれから全然成長しないのに、髪の毛と爪だけは伸びるんだもん。やっぱり変だよね……」
まどかの体の成長は、魔法少女になった時から、完全に止まっていた。
まどかの体は第二次性徴期の初期段階である、胸が膨らんで、体が徐々に丸みを帯び始めるといった所から、まったく成長していなかった。
髪の毛と爪だけが今でも伸び続けているのは、人間の爪と髪の毛は自然に伸びてくる物と言う、まどかの認識と無意識が生んだ結果でしかない。
「……そう言う言い方はよせ」
「……ごめんなさい」
毛布を片づけながら芳文がそう言うと、まどかは髪を梳かす手を止めて謝った。
「……芳文さん」
鏡越しに背後の芳文を見ながら、まどかが口を開く。
「ん?」
鏡越しにまどかの瞳に映る芳文の体もまた、去年の冬から成長していなかった。
見滝原を出て、芳文の身長が188センチになった十六歳の冬頃から、芳文もまったく成長しなくなっていた。
これは自分自身が成長出来ないのに、芳文だけが大人になっていくのを、まどかが無意識に嫌った為だった。
まどかの魔力で魂を体に繋ぎとめて生命を維持しながら、インキュベーター曰く、魔人としての巨大な戦闘能力を手にしている芳文にとって、まどかの無意識の願いは絶対だった。
「……ううん。なんでもない」
「……どこかで食事を取ったら、魔女と魔法少女を探しに行こう」
芳文はまどかが何を言おうとしたのか気付いていたが、あえて気付かないふりをしてまどかにこれからの予定を告げた。
「うん」
芳文は着ていた皮ジャンを脱ぐと、寝ているうちに付いてしまった廃屋の埃をはたいて、再び袖を通す。
(――ごめんなさい)
まどかは鏡越しに芳文の背中を見ながら、芳文の成長を無意識とはいえ、止めてしまった事を心の中で詫びるのだった……。
335 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/29(日) 19:39:46.54 ID:NOKzFu4bo
☆
――ヒュウゥゥゥゥゥゥゥ……。
冷たい夜風が、鉄塔の上に立って、眼下の街並みを見ているまどかの長い髪を流す。
まどかはソウルジェムを掌の上に出すと、夜の街に向けてソウルジェムを翳す。
ソウルジェムにほんの微かな反応が出たのに気付くと、まどかは傍らに立って周囲を警戒している芳文に声をかける。
「芳文さん。向こうに反応があるよ」
「――行くか」
「うん」
見滝原での半年間の魔女狩りの経験と、芳文との二年間の旅で、まどかの魔女探索能力もかなり上がっていた。
今ではかなり離れた場所からでも、魔女や使い魔の大体の居場所が分かるようになっていた。
最強の魔法少女の力は、今だ健在だった。
まどかが魔法少女の姿へ変身し、芳文を誘導するべく先に動いた。
二人は目的地までの建物の屋根を、軽々と跳んでいく。
「あそこだよ」
魔女の結界を確認し、まどかは振り返りもせずに背後の芳文に告げる。
まどかはそのまま左手を前に出すと、そのまま魔女の結界へと突入する。芳文もまた、まどかの後へと続いて結界の中へと突入した。
まるでステンドグラスのような色彩の、ガラス張りの結界の中へ侵入すると、まどかと芳文は互いのポジションを変更する。
芳文が前線に立ち、まどかは後方から芳文のサポートをする。
まどかが魔法少女になってから、ずっと変わらないいつものポジションを維持しながら、二人は結界の中を突き進んでいく。
途中で、良くわからないガラスのオブジェのような形をした使い魔が、何匹か襲い掛かってくるが、すべて芳文の振るう神速の鉄拳と蹴りで粉砕消滅させられる。
芳文に襲い掛かる個体は勿論、まどかを狙って襲い掛かってくる使い魔も、芳文が一瞬でまどかの前に移動して粉砕する。
まどかの魔力をまったく使う事なく、二人は結界の奥深くへと辿り着いた。
「――ここか」
魔女のいる部屋の扉を見つけて、芳文の放った鉄拳が扉を粉々に粉砕する。
芳文達が魔女の部屋へと突入すると、中では小さな魔法少女が、幾学模様のステンドグラスのようなガラスの巨人と戦っていた。
「このおっ!!」
まるでバイキングのヘルメットのような帽子をかぶり、手甲と胸当てを着けて、膝まであるブーツとショートパンツを履いた少女。
少女は手にした二本の短剣を魔女へ投げつけると、パリイィィィィィンッと音を立てて、魔女の体が砕ける。
「やった!?」
少女の動きが一瞬止まったその時、砕けた魔女の破片が少女目掛けて物凄い勢いで飛んできた。
少女の顔が破片に貫かれそうになったその瞬間、まどかの展開させた魔法障壁――マギカ・イージス――がすべての破片を受け止めて、消滅させた。
「――え?」
少女が呆然としていると、芳文が少女の傍らに降り立って、少女の首根っこを掴んで持ち上げる。
「邪魔だ。下がっていろ」
そう言って、芳文は少女をまどかのほうへと放り投げた。
「あわわわわわっ!?」
いきなり後方へ放り投げられた少女を、まどかが優しく受け止める。
336 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/29(日) 19:40:12.66 ID:NOKzFu4bo
――ポスッ。
「もう、大丈夫だよ」
恐る恐る自分の顔を見上げる、自分よりも小さな少女に、まどかは優しく微笑む。
「え? だ、だれ? あっ!? あの人一人じゃ危ないよっ!!」
少女が慌てて自分の腕の中で騒ぐのを、まどかはくすっと笑って宥める。
「大丈夫。すぐに終わるから」
「えっ?」
少女とまどかがそんなやり取りをしている内に、芳文は魔女を追い詰めていた。
魔女の振るった拳を躱して、天高く跳躍すると、魔女の頭部にかかと落としを叩き込む。
魔女の頭が粉々に粉砕され、胸部まで芳文のかかとが引き裂く。
砕け散った破片が粉微塵になり消滅する。
頭を潰された魔女の両手が、かかとを自分の胸部にめり込ませたままの芳文を潰そうとする。
芳文は空いている方の足で、渾身の蹴りを魔女の胸部に叩き込み、そのままめり込ませたかかとを引き抜いて、魔女から距離を取る。
胸部を砕かれた魔女の全身にヒビが入り、全身が木端微塵に粉砕された。
破片がぼとぼとと地面に落ちていく。
芳文は魔女に背を向けて、まどか達の元へと戻ろうとする。
その時、破片の中から特に鋭く尖った赤い破片が、芳文の背中目掛けて飛んできた。
「危ない!!」
少女が叫ぶ。
芳文は振り返りもせず、飛んできた破片を最小限の動きで躱すと、神速の速さでその破片を掴み、粉々に握り潰した。
――シュウゥゥゥゥゥゥゥゥン……。
芳文が魔女の本体を破壊した事で、結界が消滅する。
グリーフシードが落ちてくる。芳文はそれをキャッチすると、まどか達の元へと歩いていく。
「芳文さん、お疲れ様」
「ああ」
まどかと短いやりとりを済ませると、芳文はまどかの腕の中の少女をじっと見つめて、口を開いた。
「どうだ?」
「ううん。この子も駄目みたい」
まどかは助けた少女から感じる魔力では、自分を人間に戻せないと判断して、芳文にそう答える。
「そうか。じゃあ、いつもどうりに」
「うん」
まどかが少女の胸元のブローチとして着けられている、少女の赤いソウルジェムを少女の体の中に戻して、元の人間に戻してやろうとしたその時だった。
まどかの腕の中から、少女が抜け出して、芳文とまどかをキラキラとした瞳で見つめながら口を開いた。
「助けてくれてありがとう!! お姉ちゃん!! お兄ちゃん!!}
337 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/29(日) 19:41:36.06 ID:NOKzFu4bo
☆
「それじゃ、お姉ちゃんはお兄ちゃんと一緒に旅してるの?」
「そうだよ」
「へえー。すごいなぁー」
「別にすごくなんてないよ」
あれから、一時間。
無人のビルの屋上で、幼い魔法少女とまどかの会話を聞きながら、芳文は無言で夜の街を見つめていた。
芳文とまどかが助けた少女は影野葉子(かげのようこ)と名乗った。
一週間前に魔法少女の契約をしたばかりだという葉子は、まだ十一歳になったばかりだと言う。
十一歳にしては容姿はおろか精神も幼いな、と芳文は思ったが口には出さなかった。
他に魔法少女がいるのか尋ねた所、この街には葉子しかいないらしいことが分かった。
他の魔法少女は魔女に殺されたか、魔女になってしまったのだろう。
芳文はそう結論付けて、夜の街並みを見つめる。
「お姉ちゃん達はさっきのわたしみたいに、危ない目に遭ってる魔法少女を助けて回ってるの?」
「……まあ、そうなるのかな」
すっかりまどか達を正義の味方だと思い込んでしまった葉子。
まどかは一応間違ってはいないので葉子に頷く。
「すごい!! やっぱり魔法少女って正義の味方なんだね!!」
尊敬の眼差しで自分を見てくる葉子に、まどかは思わず微笑ましさを感じて笑みを浮かべる。
(……マミさんも、こんな感じだったのかな)
かつて、魔法少女になる前の自分とマミとの関係を思い出して、まどかはそんな事を思う。
「あのお兄ちゃんは? 男の人だから魔法少年?」
「違う」
芳文は葉子をちらりと見ると、すぐに視線を逸らして葉子の言葉をぶっきらぼうに否定する。
「……」
「葉子ちゃん? どうしたの?」
突然黙ってしまった葉子にまどかが声をかけると、葉子は目に涙を溜めながら言う。
「わたし、なにかお兄ちゃんを怒らせるような事、言っちゃったのかな?」
「別に芳文さんは怒ってないから。あの人は人見知りなの。だから気にしなくていいよ」
「……ほんと?」
「本当だよ。ね、芳文さん」
「ああ。別におまえに腹を立てないといけない理由なんかない」
「もうっ。もう少し優しい言葉遣いしてあげなきゃ駄目だよっ」
「……すまん」
――どうせすぐに別れる相手に、一々気を使う必要なんかないだろう。
喉元まで出かかった言葉を飲み込んで、芳文はまどかの様子を見る。
自分よりも幼くて純粋な、後輩魔法少女に気に入られてしまったまどか。
久しぶりに自分以外との会話をするまどかは笑っていた。
(……そう言えば、ずいぶん久しぶりだな。まどかがこんなに笑顔を見せるのは)
今でも自分と二人だけの時にまどかが笑顔を見せてくれる事はあるが、こんなふうに他の相手に向けて心から笑っているのを見たのは、いったいどれくらい前だっただろうか。
「お姉ちゃん達はまだ、この街にいるの?」
「とりあえず、この街の魔女を全滅させるまではね」
「じゃあ、わたしもお姉ちゃん達を手伝うよ!!」
葉子は両手をポンと胸の前で合わせて、まどかに申し出る。
「え? でも……」
「わたしまだ契約したばっかりで全然弱いけど、魔女探しのお手伝いやこの街の案内くらいなら出来るよ!!」
「芳文さん……」
まどかが困った顔で芳文に意見を求める。
「……いいんじゃないか」
「えっ?」
「人手があるのに越した事はないしな。まどかが教えてやれば、そのチビも少しは強くなれるだろ」
――それはほんの気まぐれだった。
どうせすぐにこの街を去る事になるのだから、その時に人間に戻してやればいい。
いつかこの街を去るその時まで、まどかの話相手になってくれればいい。
「うんっ。わたしがんばるね!!」
そう言って、笑顔でガッツポーズをしてみせる葉子に、まどかは優しい顔で微笑む。
(この子との触れ合いで、少しでもまどかの孤独が癒せるなら)
芳文はそんな事を考えながら、葉子とまどかの様子に、笑みを浮かべるのだった。
338 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/29(日) 19:43:17.21 ID:NOKzFu4bo
☆
「あわわわわわっ!?」
「葉子ちゃん!!」
ファンシーな雰囲気の結界の中で、ぬいぐるみのような姿をした使い魔達に囲まれて、滅茶苦茶に二本の短剣を振るう葉子。
まどかが分裂矢を放って、使い魔達を全滅させる。
「大丈夫!?」
「う、うんっ!!」
――シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……。
二人がそんなやり取りをしている間に、全身縫い傷だらけで脳の飛び出している、巨大な熊のぬいぐるみの姿をした魔女の頭を、芳文が蹴り飛ばして粉砕消滅させた事で結界が消滅する。
落ちてきたグリーフシードを手にして、芳文がまどかと葉子の元へと戻ってくる。
「芳文さん、お疲れ様」
「ああ」
「お兄ちゃんすごいね!! 素手で魔女をやっつけちゃうなんて!!」
葉子には芳文が無敵のヒーローに見えるのだろう。キラキラした瞳で芳文を見ている。
「わたしのヒーローだからね」
まどかがそう言うと、葉子はまどかの事も賞賛する。
「お姉ちゃんもすごいよ!! わたし、あんなに強いなんて思わなかった!!」
「ふふっ。ありがとう」
まどかの魔力を極力使わせない為、いつの頃からか芳文はマギカ・ブレードを使わなくなった。
今ではマギカ・ブレードを使うのは、素手で倒すのが困難な相手や、魔法の使者を名乗るインキュベーター・コピーを消し去る時だけだった。
「今日はこれくらいにしておくか」
「そうだね。葉子ちゃん帰ろうか」
「うんっ」
魔女探しを切り上げて、三人は葉子の住むアパートまでの道のりを一緒に歩いていく。
「こんな時間までうろついてて、親は何も言わないのか?」
途中の道で芳文が幼い少女に尋ねる。
「平気だよ。ママは夜のお仕事だから」
「父親は?」
「ちっちゃい時に死んじゃった」
「……そうか」
それっきり芳文は黙り込む。
「お兄ちゃん達はどこに住んでいるの?」
「今は五丁目の外れにある廃屋だよ」
まどかがそう答えると、葉子が両手をポンと音を立てながら合わせて言う。
「じゃあ、今度ご飯作ってあげるね。わたし結構料理得意なんだよ」
「……おい。俺達は乞食じゃないぞ」
芳文が葉子に無愛想な顔で言う。
「えっ? そんなつもりで言ったんじゃないよ」
葉子が涙目になってそう言うと、芳文ははあとため息をひとつついて、葉子の頭に手を載せて言う。
「ガキが一々気を遣わなくてもいい。それと俺達が廃屋を寝ぐらにしてるのは、別に金がないからじゃないぞ」
見滝原を出る時に、芳文がほむらから受け取った通帳には、一千万円ほどの預金がされていた。
時折ほむらが送金しているらしく、必要最小限に使った金額も補充されていくので、芳文達が路銀に困る事もなかった。
その気になればホテル暮らしも出来るが、どう見ても中学生くらいの女の子と高校生男子くらいにしか見えない芳文達が、ホテル暮らしをするのはなかなか難しい問題だった。
まどかの両親と芳文の義父が、家出人として二人の捜索願いを出しているのを、去年の夏に泊まったホテルでたまたま付けたテレビ番組で知った二人は、慌ててそのホテルを出た事もある。
人目に付きやすいリボンを着けなくなった、成長していないまどかと多少は成長している芳文を見て、気付く人間はまずいないだろうが余計なトラブルは避けたい。
食事は適当な店で取るかコンビニ等で買ってきて、週末以外はその時の拠点で寝泊まりし、連休中や週末のみホテルや旅館に泊まる。
魔女狩りと魔法少女を人間に戻す為の探索と救済の旅をしながら、芳文とまどかはずっとこんな感じで生きてきたのだった。
「だって、わたし助けてもらった事のお礼とか他に出来ないし……」
「……卵焼きは甘い奴で頼む」
涙目で俯く葉子の頭を、くしゃくしゃと撫でてやりながら芳文はそう言う。
「うんっ」
芳文の言葉に葉子は笑顔になって頷く。
まどかはそんな二人の様子を見て、優しい顔で微笑む。
穏やかな時間の流れる中、葉子が疑問を次々とまどか達に尋ねてくる。
「お姉ちゃん達はお風呂とか、お洗濯とかはどうしてるの?」
「夕方に銭湯に行ってるよ。それに洗濯もコインランドリーがあるしね」
葉子の疑問にまどかはそう答える。
「そうなんだ」
ちなみにホテルや旅館以外での洗顔や歯磨きは、ミネラルウォーターを買ってきてしているんだ、とまどかは付け加える。
339 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/29(日) 19:44:27.19 ID:NOKzFu4bo
「……おまえは、何を願って魔法少女になったんだ?」
まどかと葉子の会話が途切れた所で、芳文がそう切り出した。
「ママが幸せになれますようにって」
葉子がそう答えると、芳文とまどかの動きが止まる。
「どういう意味だ?」
「あのね、ママはパパが死んじゃってから、ずっと一人でわたしを育ててくれたの。だから、幸せになってほしいんだ」
「それに、誰かが戦わないとみんな魔女に殺されちゃうもんね」
そう言って、葉子は笑う。
「……」
芳文は無言で葉子を見る。
この街に来てから、インキュベーター・コピーをまったく見かけない事から、この街にいたインキュベーター・コピーはすでにどこかに逃亡しているのだろう。
インキュベーターはコピー同士とオリジナルの間で、何らかのネットワークを持っている事に、旅を続けている内に芳文達は気付いた。
前の街でマギカ・ブレードで同類が消滅させられたのを知って、マギカ・ブレードを恐れて逃亡していても不思議ではない。
(――あの忌々しい獣がどんな叶え方をしたのか、気を付けないといけないかもしれないな)
葉子の言葉に一抹の不安を感じながら、芳文はそんな事を考えるのだった。
☆
数日後、芳文が銭湯の軒先で脱いだ着替えを入れた紙袋を片手に、まどかを待っているとまどかが中から出てきて声をかけてくる。
「芳文さん、お待たせ」
「ああ」
二人でそのまま並んで歩き出すと、ランドセルを背負った葉子が二人の姿を見つけて駆け寄ってくる。
「お姉ちゃーん、お兄ちゃーんっ」
「葉子ちゃん。今帰り?」
「うんっ」
そのまま三人で並んで歩く。
「お姉ちゃん、今日はどこを探すの?」
「今日は工場地帯の方かな」
そんな会話をしながら歩いていると、葉子が不意に立ち止まる。
「ママ……」
葉子の視線の先をまどかと芳文が見ると、三十代前半くらいの女性が同年代か少し若いくらいの男性と一緒に、丁度ホテルから出てくる所だった。
「……ママ、あの人と何してたのかな?」
まだまだ幼い葉子の疑問に、芳文とまどかは何も答える事が出来なかった。
340 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/29(日) 19:49:44.54 ID:NOKzFu4bo
☆
まどかと芳文がこの街にやってきて、そろそろ一ヶ月が過ぎようとしていた。
「えーいっ!!」
葉子の投げつけた短剣が、使い魔を見事に串刺しにして消滅させる。
「葉子ちゃんも大分強くなったね」
「えへへ……。お姉ちゃんの教え方が上手だからだよ」
まどかと葉子がそんなやりとりをしていると、いつものように一人で魔女を倒して、グリーフシードを手に入れた芳文が戻ってくる。
――シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……。
魔女の結界が消滅する。
「お疲れ様、芳文さん」
「ああ。まだ時間があるな。今日はもう少し見回るか?」
公園の時計を見ながら芳文がそう言うと、まどかと葉子が頷く。
芳文達は夜の街を、再び魔女を求めて歩き出した。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
あれから一時間くらい経った頃に、三人が海の見える丘にやってきた所、不意に女性の悲鳴が聞こえた。
「悲鳴!?」
「どこだろ!?」
「こっちだ!!」
悲鳴の聞こえた方へ芳文が駆け出すと、まどかと葉子も後に続く。
やがて公園の中央で、倒れている男性を抱き起して震えている女性と、それを取り囲む魔女の口づけを受けたホームレスの集団を見つけた。
「魔女の口づけか!!」
芳文が助けに入ろうとしたその瞬間だった。
「ママ!!」
葉子が魔法少女の姿へ変身して、ホームレス達を魔法で吹き飛ばした。
「ママ、大丈夫!?」
葉子が母親に駆け寄る。
「……葉子?」
葉子の母親が呆然となりながら、娘の名を呼ぶ。
「あれ? その人前にママと一緒にいた……」
葉子の母親が抱きかかえている男は以前、葉子の母親と一緒にホテルから出てきた男だった。
二人でデートをしていて、魔女の口づけを受けた男達に襲われたのだろう。
341 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/29(日) 19:50:20.55 ID:NOKzFu4bo
「ママ、その人誰?」
葉子が母親にそう尋ねた時だった。
葉子の足元に倒れていた男が、突然手にしたナイフで葉子の太ももを突き刺した。
「あぐっ!!」
あまりの痛みに、葉子がたまらず膝をつく。
「葉子ちゃん!!」
まどかが叫ぶ。
ドゴッ!!
まどかが叫んだ次の瞬間、芳文が一瞬で距離を詰めて、男の腹に加減した蹴りを叩き込んだ。
蹴りの衝撃で吹っ飛ばされて男は失神する。
「大丈夫か!?」
芳文が葉子に声をかけたその時だった。
葉子の母親の顔が見る見る内に青ざめていく。
「……ママ?」
葉子が母親を呼ぶと、葉子の母親が信じられないと言った口調で、呟いた。
「あなた、ケガが治って……っ!?」
シュウシュウと音を立てながら、葉子のケガが塞がっていく。
葉子があまりの痛みに、無意識にケガの治癒を望んでしまった為だった。
葉子自身の魔力で、骨まで届いていたはずの深い傷が再生していく。
「ひ……」
有りえない光景を目にして、葉子の母親が男を抱きしめたまま、首を振る。
「こ、来ないで……」
「……え?」
「来ないで!! 化け物!!」
意識のない男を力強く抱きしめたまま、葉子の母親は血を分けた実の娘を拒絶した。
「――え?」
母親からの拒絶に葉子の思考が止まる。
「ママ……?」
葉子は母親に手を差し出すが、母親は首を振って嫌々と拒絶する。
「う……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
母親に拒絶され、葉子の心が悲しみに染まる。
「どうして!? どうして!? どうして!? どうして!? どうして!?」
葉子の赤いソウルジェムが一瞬で真っ黒に染まっていく。
――わたし、がんばったんだよ。
――ママがいない夜だって、ひとりで我慢して寝たんだよ。
――ママと一緒に晩ご飯食べられなくても、我慢してたんだよ。
――それでも、ママはわたしの為にがんばってくれてたから。
――だから、キュゥべえにお願いしたのに。
――こんなのってないよ……!!
342 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/29(日) 19:51:23.78 ID:NOKzFu4bo
「葉子ちゃん!! 駄目えぇぇぇぇぇぇっ!!」
まどかの叫びももう、葉子には届かない。
大好きな母親に拒絶され、誰よりも純粋だった少女の心は絶望に染まりきってしまった。
葉子のソウルジェムが胸元から外れて浮かび上がる。
葉子の魂が燃え尽きて、魔女の卵が出現する。
魔女の卵が、少女の燃え尽きた魂の残した呪いを解放し、魔女を生み出す。
この場にいる全員が、誕生した魔女の放った衝撃波に吹き飛ばされる。
吹き飛ばされたまどかが立ち上がって目にした物は、真っ白な空間の中で、赤子を抱いた女性の像の姿をした魔女だった。
「葉子ちゃん!!」
まどかが魔女に叫ぶ。
魔女は何も答えず、ただ血の涙を流して立ち尽くす。
魔女の流した血の涙が、地面に流れて血の池を作り出す。
血の池から血の蛇が大量に湧き出して、まどか目掛けて飛んでくる。
「葉子ちゃん!! お願い!! 元に戻って!!」
「まどか!!」
魔女に向かって、悲痛な叫びを上げるまどかを芳文が突き飛ばす。
「ぐっ!!」
血の蛇が芳文の体に巻きついて噛みつく。
芳文が全身に力を入れて、血の蛇を吹き飛ばすが、霧散した血が再び蛇の姿に戻って芳文の体に巻きつき噛みつく。
「くっ!!」
「葉子ちゃん!! やめて!!」
『無駄だよ、鹿目まどか』
不意に忌々しい声が、まどかの脳裏に響く。
『既に影野葉子の魂は燃え尽きている。そこにいるのは影野葉子の残留思念の様な物だ』
『こんな所で君に死なれると困るんだよ。さっさとその廃棄物を消してくれないか』
「インキュベーターぁぁぁっ!!」
インキュベーターのテレパシーにまどかが憤りの声を上げる。
343 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/29(日) 19:53:33.32 ID:NOKzFu4bo
「ぐっ!!」
芳文が何度引きちぎっても、血の蛇は何度でも何度でも絡みついて、噛みついてくる。
「……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
まどかは弓を顕現させて、魔女に目掛けて矢を放った。
――ゴゥッ!!
まどかの矢が魔女に着弾し、巨大な破壊の光球へと変化すると、魔女を飲み込んで完全に消滅させた。
――シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……。
結界が消滅すると、グリーフシードがコツンと音を立てて、地面に落下する。
まどかはグリーフシードを拾い上げると、魔女の誕生時の衝撃波で、吹き飛ばされた葉子の体の側に歩いていき、抱き起す。
「……今、人間に戻してあげるからね。葉子ちゃんとお母さんの嫌な記憶も消してあげるから」
まどかはグリーフシードを葉子の胸に押し当てて、葉子の体内に戻そうとする。
「よせ!!」
芳文が慌ててまどかの手からグリーフシードを取り上げる。
「返して!! 葉子ちゃんを元に戻してあげないと!!」
まどかが芳文の手からグリーフシードを奪い取ろうとする。
「馬鹿な事を言うな!! グリーフシードなんか体内に押し込んだりしたら、何が起こるかわからないだろう!!」
「だって!! それは葉子ちゃんの!!」
「葉子は死んだ!!」
「っ!!」
芳文の叫びに、まどかが硬直する。
「あの子の魂は燃え尽きたんだ。これはもう、ただの魔女の卵だ……」
「うぅっ……あぁぁぁぁ……」
まどかの流した涙が葉子の顔に落ちて、葉子の頬を流れていく。
「俺達は神様じゃない」
芳文の言葉がまどかの胸に突き刺さる。
「どんなに望んだって、すべてを救うなんて無理なんだ」
「うあぁぁぁぁ……」
「俺の責任だ。もっと早く、まどかに葉子を人間に戻させるべきだった」
芳文はまどかを抱きしめて謝る。
「すまない、まどか……」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん……っ!!」
まどかの悲しい叫びが、夜の闇に木霊して消えるのだった……。
つづく
344 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/29(日) 20:08:59.97 ID:NOKzFu4bo
杏子「更新終了」
杏子「オリジナル魔法少女について」
杏子「クロエについて。本名クロエ・ムラセ。17歳。日本人の母とロシア人の父を持つハーフ。火事で大火傷を負った妹を助ける為契約。その後妹を交通事故で亡くし、遺体を固有能力の凍結で保存しまどかの魔力を使って生き返らせようとする」
杏子「容姿は無限のリヴァイアスのネーヤに似ている。長い銀髪が特徴。名前はおりこ☆マギカの作者のペンネームをもじって付けた」
杏子「影野葉子。11歳。日本人。ショートカットの少女。まどかの事を姉のように慕う。容姿はおとぎ銃士赤ずきんの赤ずきんに似ている。名前はまどか☆マギカコミカライズ版の作者のペンネームをもじってつけた」
杏子「次回も土日辺りに更新予定だ」
杏子「おりこ組はどうしようか迷っている。出しても確実にまどかと社の敵になる。また設定上、社の身体能力と近接戦闘能力は男女の性差に加え、出生時の設定もありどんな魔法少女よりも高いので、間違いなくおりこ組を負けさせる展開になる」
杏子「おりこ組のファンがいたら多分ムカつくだろう」
杏子「オリジナル魔法少女とおりこ組。どっちがいい?」
杏子「ラストまであと少しだ。じゃあな」
345 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/29(日) 20:13:47.54 ID:c9EH6+mOo
お疲れ様でした。
・・・・・・・・・・・・仔らを守る善き神々はどこへ行ったんだ………。
346 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/29(日) 20:35:16.07 ID:82LiNCiCo
乙
これはもうまどか達だけがハッピーになるエンドでは納得出来ない段階だな
オリキャラ含めたみんながハッピーになる、呆れるような大団円を期待したい
但し、インキュベーターは除く
347 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/30(月) 21:06:29.65 ID:3CkRC9bSO
超乙。
どっちでもいいが、すでにオリジナル出てきてるしオリジナルでよくね?
348 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/05/30(月) 23:52:16.32 ID:jpVZvrYgo
杏子「単発レスだよ」
次回予告
?「……あの二人を生かしておけば、必ず世界に災いを呼ぶわ」
インキュベーター「鹿目まどかが魔女になったその時、君はどうなるのか考えた事はあるかい?」
?「この悪魔!!」
まどか「もしわたしが魔女になりそうになったら……」
まどか「その時は、あなたの手で殺してね……」
第21話 「この世界に神なんていない」
杏子「予定どうりなら、鬱なだけの展開は次回で終わると思う」
杏子「おまけ。厨二的設定コーナー」
杏子「2年後の社の攻撃力。パンチが350。キックが430。アトランティス・ストライク(
>>336
で使った2段蹴り。命名は葉子。昔アニメのデモンベインを見てたらしい)740。マギカ・ブレード装備時は攻撃力1429。マギカ・シグヴァン時は攻撃力が約25倍になる」
杏子「2年後のまどかの攻撃力。オメガ・ジャッジメント(爆発する矢)が540。ブラスト・シューター(分裂矢)が矢1本に付き290。隠し技のまどか版ティロ・フィナーレが800(貫通特化の巨大矢)」
杏子「社芳文 レベル82 HP9999 MP100(パンチやキック1発につきMP1使用。まどかからの魔力供給ですぐにフル回復する) 固有アビリティ かばう 投げる 二刀流 両手持ち 斬鉄 カウンター 白刃取り オートリジェネ オートリフレッシュ」
杏子「鹿目まどか レベル68 HP450 MP9999 固有アビリティ 絶対防御壁(マギカ・イージス) 封印魔法(マギカ・ホールド) マギカ・ブレード生成 必殺剣(マギカ・シグヴァン) アレイズ(魔法少女人間化) ケアルガ 狙う 狙い撃ち オートリジェネ」
杏子「魔法少女の限界値が理論上 HP999 MP999 だ。いかに社とまどかが規格外かを物語っている数値だな。2年前のワルプル撃破時は社レベル38 まどかレベル27だ。二人のレベルに差があるのは、戦闘センスの差と前衛後衛の差から」
杏子「社は戦闘センスの塊でいわゆる天才だから、誰よりもレベルアップが早い。簡単にRPGっぽく説明すると、社のみ1ターンごとに経験値を手に入れてレベルアップする。まどかを含めあたし達魔法少女は戦闘終了時に経験値を手に入れてレベルアップする」
杏子「ソウルジェムのHPは魔法少女全員100だ。アニメであっさり壊されてるしな」
杏子「以上。マミあたりが喜びそうな設定だよな……」
349 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/05/31(火) 00:48:42.99 ID:TH/qTUJV0
お疲れ様です
予想だにしない展開でした
どのようにしてハッピーエンドに持っていくのかに期待してます
350 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/31(火) 02:15:45.68 ID:9t8/WF5DO
二人共、全て終わったあとが大変だな。
学歴とか
351 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/05/31(火) 09:28:21.69 ID:ZNhiw43No
おりこは出すとしてもチョイ役程度かね?
本編チート組を除けば魔女と魔法少女の強さトップコンビって使いづらいだろうしなぁ
352 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/01(水) 08:46:47.71 ID:/+UFvNv1o
杏子「単発レスだよ」
杏子「おりことキリカは出るなら1話限りの敵役だってさ」
杏子「おりこの能力が話を展開させるのに便利なんだって。同じ能力のオリジナル魔法少女でもいいけど」
杏子「社&まどかVS各魔法少女が戦った場合の相性について」
杏子「あたし、さやか、キリカみたいな武器を持って接近戦をするタイプが、近接戦闘しか出来ない社にとって一番戦いやすい相手だ」
杏子「社のパワー、耐久力、スピード、戦闘テクニックは魔法少女達のそれをはるかに上回っている上、元々ケンカ慣れしてて剣術も神童と呼ばれただけありトップレベルの為、元々普通の女の子だった魔法少女が相手なら近接戦闘では絶対に負けない」
杏子「相手がフェイトのセイバーみたいな達人だったら、マギカ・ブレードを持ってないとかなり苦しい戦いになるが、剣や薙刀等の各手持ち武器の達人魔法少女でなければ素手で簡単に勝てる」
杏子「魔法少女はアニメでさやかがやったみたいな、空中での足場展開みたいな小回りが利くのが利点だ。社はそれが出来ないから、トリッキーな動きで攪乱しながら攻撃されると相手によっては手こずる場合もある」
杏子「ちなみに魔法少女を殺すとまどかが泣くので、基本的に社は魔法少女相手には不殺だ。相手が外道だったら躊躇なく手足の1,2本へし折るけどな」
杏子「取っ組み合いのケンカすらした事のないまどかは近距離戦闘のスキルが全くない上、相手が魔法少女だと戦う事に戸惑うので相性最悪だ。1対1で近距離戦に持ち込まれた場合、マギカ・イージスを展開する前にボコられる可能性が高い」
杏子「まどかが近接戦闘をする場合、弓で殴り掛かるくらいしか攻撃手段がない。弓で殴り掛かった場合の攻撃力は10だ。この攻撃では使い魔すら倒せない。キックしたとしても攻撃力12だ。まどかは中距離戦からその真価を発揮するタイプなんだ」
杏子「マミ、ほむらのような実弾で中〜遠距離攻撃してくるタイプが相手の場合」
杏子「社は機関銃の一斉掃射でも、すべての弾丸を素手で受け止めながら相手に接近できる。銃やボウガンなどの中〜遠距離実弾兵器は通用しない。正にチート」
杏子「こういう攻撃を得意とする相手は近接戦闘が苦手な場合が多い。ベテランのマミは近接戦も強いけど。だから近接戦闘に持ち込んだ時点で社の勝ち。魔人状態の社なら、マミクラスの拘束魔法も力づくで破れる」
杏子「ちなみにティロ・フィナーレは躱すか、マギカ・ブレードで斬るしか防ぐ手段がない。素手で防ごうとすると社の手が吹っ飛ぶ」
杏子「劇中描写を見てもらうとわかるけど、社の回避率は異常だ。強力な爆弾や超音波みたい躱しようがない広範囲攻撃が出来る相手でないと、社にダメージを与えるのは難しい」
杏子「まどかを狙って社に庇わせてダメージを与えるのが有効だが、それをやると社が激怒して瞬殺される可能性が高い。ちなみに社はほむらと同じく敵を最初から全力で潰しに行くタイプなので、スロースターターの魔法少女だとまず勝ち目がないんだ」
杏子「まどかも距離が取れる相手なら、マギカ・イージスを展開しつつ、武器だけ狙い撃って無力化出来るので簡単に勝てる」
杏子「かずみや海香&カオル、まどかみたいな魔力攻撃系遠距離タイプが社にとってもっとも相性が悪い」
杏子「こいつらの攻撃は攻撃用魔力そのものなので、触れたらダメージを喰らう為に社は躱すしかない」
杏子「マミのマスケットみたいに単発なら躱しながら近づけるが、火炎放射やレーザーみたいに出しっぱなしで薙ぎ払われたり、弾幕を張られると素手ではお手上げ」
杏子「マギカ・ブレードを持ってれば、切り払いながら接近して加減した素手の一撃で昏倒させて勝てる」
杏子「まどかだったら絶対に負けない。マギカ・イージスですべての遠距離攻撃を無効化し、超火力で押し切れる」
杏子「マギカ・イージスを展開し続けるだけでも、相手が先に魔力切れを起こす」
杏子「この話のまどかと社は最強コンビだからな。こいつらに勝てる奴らなんてまずいねー」
杏子「話の展開の都合上、社は前衛特化チートでまどかは後衛特化チートだからね。正に最強カップルだ」
杏子「じゃーな」
353 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2011/06/01(水) 09:17:43.89 ID:AvE8Hkjco
Q,最強の盾と最強の矛がぶつかったらどちらが勝つの?
A,両方持てばお前が最強だ
ってやりとり思い出したwww
354 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/06/01(水) 14:51:46.82 ID:/+UFvNv1o
杏子「番外編だよ」
355 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/01(水) 14:52:36.73 ID:/+UFvNv1o
――カシャッ。
『んぅ……』
『……えっ? いつ帰ってきたの!? 寝顔なんて撮らないで!!』
『もうっ。どうせ撮るなら起きてる時に撮って』
『あれ? 今何時?』
『きゃあぁぁぁっ!! ごめんなさい!! 御夕飯の支度してない!!』
『えっ? お仕事で疲れてるのにあなたが作ってくれたの?』
『あうぅ……ごめんなさい。私、あなたのお嫁さんなのに……』
『ふえぇぇぇぇぇんっ!!』
『あ、起きたの芳くん。おなかがすいたのかな?』
『よしよし。今おっぱいあげるからね』
『いっぱい飲んで、早く大きくなってね。芳君は大きくなったらどんな男の子になるのかな』
『ママはパパみたいに、優しくて強い子に育って欲しいな。ね、芳くん』
第16.5話 「暁美ほむらの憂鬱 〜私はまだ若い〜」
――ジリリリリリ……。ガチャン。
「……夢、か」
「随分、懐かしい夢を見たわね。あの頃は私も若かった……」
「……」
「……これじゃ、私が年寄みたいじゃない。私はまだ若い!!」
「……エイミーに朝ごはん上げて、学校へ行きましょう」
――英語の時間。
「みなさん!! みなさんはコーヒーの銘柄くらいでごちゃごちゃ言う大人にならないように!!」
(……また破局したのね。この人確かまどかの母親と同じ年だったわね。なんて男運がないのかしら)
(よくよく考えたら、私は勝ち組だったのね。普通に専業主婦やってて、外食や旅行にもよく連れて行ってもらえたし)
(お金に困る事もなかったから、働く必要もなかったし。まあ、結婚してすぐに芳文が出来たっていうのもあるけど)
(もしあのままあの人と別れなかったら、今頃パートでレジ打ちでもしてたのかしら)
『いらっしゃいませー』
『1978円になりまーす。2078円お預かりしまーす』
『ありがとうございましたー』
(……うん。無理ね。今の自分でも無理なのに、当時の気弱な私が客商売なんて出来っこないわ)
(それにしても、今更中学生の授業を受けるなんて、苦痛以外の何物でもないわ)
(一応高卒の私にとって、幼稚すぎてまともに受ける気にもならないわ)
(早く昼休みにならないかしら。おなかがすいたわ)
356 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/01(水) 14:53:30.41 ID:/+UFvNv1o
――キーンコーンカーンコーン……。
「まどかー、今日も愛妻弁当持って、旦那さんのとこに行くの?」
「さ、さやかちゃん!! からかわないでよー!!」
「仲睦まじそうで羨ましいですわ」
「仁美ちゃんまで!!」
「ほらほら、先輩待ってるよ。早く行きなよ。昼休み終わっちゃうよ」
「う、うんっ。行ってくるねっ」
「あーあー、あんなに急いじゃって。そんなに先輩に早く会いたいのかねぇ」
「まあ好きな人と一緒にいたいって言う乙女心はわかりますわ」
(まどかと芳文が恋人同士、ね。本人達が幸せなのはいいけど、やっぱりちょっと複雑な気分だわ)
「……なあ、中沢。鹿目ってあんなかわいかったっけ」
「志筑とか美樹の影に隠れてて今一目立たなかったけど、よく見るとあの子かわいいよな」
(今更まどかの魅力に気付くなんて、なんて見る目のない子達なのかしら)
(あの子は今はまだ、蝶になる前の蛹みたいな物だから、これからどんどん綺麗になるのよ)
(まあ、あなた達が今更まどかを好きになっても、もう遅いのだけどね。まどかはもう、私の子の物なのだから)
「えーっ!? 遂に彼氏とシちゃったの!?」
「しーっ!! 声が大きいってば!!」
「ごめーんっ」
(身体強化してるせいで、聞きたくもないクラスメートの会話が勝手に耳に入ってくるわ)
(一体何を考えてるのかしら。今どきの子供は。中学生で性交渉なんて)
(もし妊娠したらどうするつもりなのかしら。愛だけで出産と育児が出来るほど世の中甘くないわよ)
(今になって思えば、結婚するまで私に手を出さなかったあの人は本当に私の事を大切にしてくれてたのね……)
(……いつか、まどかと芳文もする……のよね。やっぱり複雑な気分だわ)
「それでそれで? やっぱり痛かったの?」
(私の時はものすごく痛かったわね。しばらくまともに歩けなかったし。まあ幸せな痛みって奴だったけれど)
「思ったより痛くなかったし、言うほど気持ち良くなかったけど、なんていうか幸せって言うのかな。それは感じたよ」
(その意見には同意するわ。さてと、お弁当も食べたしお手洗いに行ってこようかしら)
(それにしても、なんでこの学校給食じゃないのかしら。一々お弁当作るの面倒なのよ。母親の立場になって考えなさいよね)
357 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/01(水) 14:54:45.39 ID:/+UFvNv1o
――キーンコーンカーンコーン……。
「あっほら見てまどか。先輩がいるよ」
「ホントだ。今日は同じ体育館での授業なんだね」
「あちらはバスケの試合してるみたいですね」
「あっ。ほらまどか、先輩がこっちに気付いたみたいだよ」
「う、うん」
「あーっ!! 見てよ。先輩まどかにいいとこ見せようと張り切っちゃって」
「お相手の方は確かバスケ部のエースだとか」
「そんなの関係ないって、あの人の運動神経は異常だから」
(美樹さやか、人の息子を化け物みたいに言わないで。大体、なんでこの子と芳文は兄妹みたいに仲が良いのかしら。私とこの子は仲良くないのに)
「すごい!! 芳文さん全員抜き去ってダンクシュート決めたよ!! かっこいい!!」
(まどか嬉しそうね。よくやったわ芳文。さすがあの人の息子だけの事はあるわ。もし運動神経まで私似だったらと思うとぞっとするわ)
「暁美さん、なんか嬉しそうだけど良い事でもあったの?」
「いいえ」
「……そう?」
(いけないいけない。つい顔に出してしまったわ)
「鹿目さんの彼氏ってかっこいいよねー」
「あの人、頭もいいらしいよ」
「えーマジで?」
「運動神経抜群で頭も良くて、かっこいいなんて反則だよねー。でもそんな人がなんで今までフリーだったんだろうね」
「あたし3年の先輩に何人か親しい人がいるからさ、社先輩の事聞いてみたんだけど、みんな評価が全然違うんだよ」
「なにそれ」
「今のクラスメートの先輩が言うにはとんでもない馬鹿。2年の時のクラスメートだった先輩が言うには無口で無愛想で近寄りがたい人だって」
「極端な評価だねぇ……。私、社先輩が鹿目さんに告白してる所見てたけど、普通にいい人そうだったよ」
(どっちも芳文よ。あの子の処世術は愛される馬鹿を演じるか、私みたいに他人と距離を置く事だもの)
「まあ先輩達の評価は置いておいて、鹿目さんと一緒の時の社先輩は普通にかっこいい彼氏だし。いいなあ、鹿目さん。私もあんな彼氏欲しいなあ」
「暁美さん、なんかいい事あったの?」
「いえ、ちょっと昔の事を思い出して」
(いけないいけない。また顔に出てたわ)
(でも芳文をかっこいいと言われて嬉しいのは、母親としては当然よね)
358 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/01(水) 14:55:30.86 ID:/+UFvNv1o
――キーンコーンカーンコーン……。
(どうして私が3年の教室がある階まで、プリントなんて運ばないといけないのかしら)
(給料もらって仕事してるんだら、自分の仕事くらい生徒に押し付けずに自分でやりなさいよね)
「うわー先輩綺麗」
(あれは美樹さやか。こんな所で何をしてるのかしら)
「まどか、こんな俺を見ないでくれ……」
(あの子は何を言っているのかしら。というか何なの、この女子生徒の数は。たしか芳文のクラスの女子達よね)
「……芳文さん、美人」
(は? まどか、あなた何言ってるの)
「もういいだろ、巴さん。もう勘弁してよ」
(巴マミ。あなた人の息子に何してるの?)
「何を言っているのかしら。そもそも社君が言い出したのよ。文化祭の出し物はコスプレ喫茶って。言いだしっぺなんだから率先しないとね」
「だっていきなり天瀬が俺に話を振るから」
「そうよね。お昼休みの鹿目さんとの甘い一時を思い出してにやけてて、いきなり文化祭実行委員の天瀬君に意見を聞かれたんですものね」
(どうしてそんなに説明口調なの、巴マミ)
「俺はそんな意味で言ったわけじゃないんだ」
「わざわざ私の方を見ながら、コスプレ喫茶を提案した事の釈明は?」
「それはその……」
「あまつさえ、どんな内容のコスプレか聞かれて、バニーガールなんて言い出すなんてどうかしてるわ」
「誤解だ!! 俺はうさぎと言ったんだ。バニーガールじゃなくて着ぐるみのうさぎと言う意味で!!」
「……確かに着ぐるみも一種のコスプレね。でもなんで着ぐるみなのかしら」
「……まどかが喜んでくれるかなって思って。まどかの部屋にぬいぐるみが沢山あったから」
「あなたが鹿目さん一筋なのはよく知っているわ。けれどおかげで男子全員の賛成意見多数で、クラスの出し物がコスプレ喫茶に決まってしまった事の落とし前はつけてね」
「そんなひどい」
「ひどいのはどっちかしら」
「マミさん、そんなに怒るほどの事があったんですか?」
「ええ鹿目さん。こんな風にね」
――マミの回想。
『社、おまえこそ真の漢だ!!』
『さすが社だ!! 大勢の目の前で下級生の女の子相手にあんな恥ずかしい告白しただけでなく、文化祭でクラスの女子達にコスプレさせようなんて!!』
『そこに痺れる憧れるぅぅっ!!』
『だからそんな意味で言ったわけじゃねえぇぇぇっ!! 俺はまどか意外の女に興味なんてない!! 大体、色々と規格外な巴さんならともかく、他の子達に恥ずかしいコスプレしろなんて残酷な事言えるかよ!!』
『社君!! それどういう意味かしら!?』
『今、あなたはクラスの女子全員を敵に回したわ!!』
『えぇぇぇぇぇっ!? 誤解だ!!』
『ねえ、天瀬君』
『なに、巴さん』
『ちょっと、このお馬鹿さんに制裁を加えてきていいかしら』
『どうぞ』
『さあ、行きましょうか社君』
『ひいいっ!? まどか助けて!!』
「あ、あははは……」
(……なるほどね、大体の事情はわかったわ)
359 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/01(水) 14:57:34.36 ID:/+UFvNv1o
「ひでえ……。魔法で制服を女物に変えられて、かつらまで……。あんまりだよ。こんなの絶対おかしいよ……」
「芳文さん、それわたしのセリフ……」
(芳文、いくら小声でもこんな大勢の前で魔法の事を口にしない。それとまどか。突っ込むところはそこじゃないでしょう)
「……うーん。なーんか誰かに似てるような。あっ!! 誰かヘアバンド持ってませんか?」
「あるわよ、はい」
「ありがとうございます。先輩じっとしてて」
「とほほ……。クラスの女子達だけでなく、さやかちゃんにまで弄られるのか……」
(美樹さやか、あなた何するつもり)
「完成。誰かに似てると思ったら……」
「ほむらちゃんに似てる!!」
「言われてみれば、暁美さんに似てるわね」
(そりゃ私の子だもの。というか、そっくりなんだけど)
「……そんなに似てるかな。俺別にあの子と親戚とかじゃないんだけど」
「まあ、世の中には似た人が三人はいるって言うしね、先輩」
「……そうかな。――よし」スッ
「芳文さん、何するの?」
「鹿目まどか」キリッ
「は、はい」
「あなたは鹿目まどかのままでいればいい」キリッ
「ぷっあははははははははははははははははっ!! 似てる似てる!!」
(美樹さやか、笑い過ぎよ。芳文……)ギリッ
「それには及ばないわ」ファサッ
『ぷっあはははははははははははははははははっ!!』
(巴マミ!! まどかまで!!)
「よ、芳文さん、もうやめて。ほむらちゃんに悪いよ」
(まどか!!)ジーン
「鹿目まどか。あなたは優しすぎる。覚えておきなさい。その優しさが大きな災いを呼ぶ事もあるという事を」シャフ度
「っ……。やめて……もう、やめて……」
(芳文ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!)ブチッ
「随分楽しそうね、社芳文」
「げっ!?」
「転校生!?」
「ほむらちゃん!?」
「暁美さん!?」
「いや、その、これは」
「弁解はいいわ。それよりそこに座りなさい」
「は、はい」
「何をしているの」
「えっ? だって座れって」
「正座に決まっているでしょう」
「は、はい!! すみません!!」
「社芳文。あなたはそんな恰好をして恥ずかしくないのかしら」
「……恥ずかしいです」
「女の子達の前で、あんな真似をして恥ずかしくないのかしら」
「……恥ずかしいです」
「あなた、親に申し訳ないと思わないのかしら。男の子が女の子の格好をしたりして」
「はい。すいません」
「本気で反省してるなら、まずそのかつらを取りなさい!!」ダンッ!!
「すみません!!」
「もう少し女の子のあしらい方くらい勉強しなさい!! 黙っていいように遊ばれて情けない!!」
「はい……」
「わかっているの!? あなたが馬鹿な事をすれば、あなたと付き合っているまどかも恥ずかしい思いをするのよ!!」
「面目次第もございません……」
「男の子は男の子らしく、シャキッとしなさい!!なんでもいちいち、でもでもだってで済まそうとするのはやめなさい!!」
「はい……」
「うわー。先輩が転校生に叱られてる光景って……」
「ほむらちゃん、まるでお母さんみたい……」
「そうね」
「大体、あなたは……」ガミガミクドクド・・・・・・
360 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/01(水) 14:59:30.90 ID:/+UFvNv1o
――小一時間後。
「わかったかしら」
「はい、もうしません。ごめんなさい」
「ん」
「何と言うか、非常にシュールな光景を見た気がする」
「さやかちゃんたら……気持ちはわかるけど」
「いつの間にかギャラリーが増えてるわ……」
「いつまでそうしているつもり? 早く立ちなさい」
「は、はい」プルプル・・・・・・
『あっ』
――ずる……。
「正座で足がしびれた社君が、転びそうになって咄嗟に暁美さんのスカートを掴んだ!?」
「ねえマミさん。なんでそんな説明口調なんですか?」
「気にしては駄目よ美樹さん。それにしても、暁美さんのって……」
「黒、ですね」
「ほむらちゃんって、あんな大人っぽいの履いてるんだ……」
「……」
「ご、ごめん。暁美さん」
「でも安心して。俺、どっちかって言うと巨乳派だから。もちろん一番はまどかのだけど」
「……あなたは、何を言ってるのかしら」アセアセ
「だから、その、俺が君をそう言う目で見る事はないから。俺の母親も悲しいくらい小さかったから、そういう対象で見れないっていうか……」
「……」プルプル・・・・・・
「でもここにいた他の男子生徒はそう思ってないっぽいよ。今夜のおかず手に入れて、みんな走って帰っちゃった」
「さやかちゃん、女の子がそういう事言っちゃいけません。お兄さんはそんな妹に育てた覚えはありません」
「ごめん、先輩」
「……」
「あの……暁美さん」
「……ふんっ!!」
――バキィッ!!
「ひでぶ!!」
「帰る。このプリントはあなたが視聴覚室に運んでおきなさい!!」スタスタ
(――あの馬鹿息子!!)
(そんな目で見れない? 当たり前よ!! 親子なんだから!! 本能的に近親相姦を避ける生き物よ人間って!!)
(小さくて悪かったわね!! その小さい物をあなた三歳半まで吸ってたのよ!!)
(下着が黒くて悪かったわね!! 見た目がこんなでも私の年でガキっぽい下着なんて履けるわけないでしょうが!!)
――その日の夜。
「はあ……今日も疲れたわ……」
「今日もまどかは幸せそうだったし、今日はもう寝ましょう」
「……このまま、あの子達が何も知らずに済めばいいのだけれど……」
「いつか、真実を知る日がくるのかしらね……」
「それにしても今日は特に疲れたわ。主に芳文のせいで。どっこいしょっと……」
「……今、私なんて言ったのかしら」プルプルプル・・・・・・
「……いやあぁぁぁぁぁぁぁっ!! わたしはまだ若い!! 私はまだ若いぃぃぃぃっ!!」
おしまい
361 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/01(水) 15:01:38.66 ID:/+UFvNv1o
杏子「鬱や厨二設定ばっかじゃなんだしな」
杏子「じゃあな」
362 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/02(木) 00:43:08.78 ID:TNW9O0GF0
乙カレー!
母は強し
なにせ時も越えるほどだし
363 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/06/03(金) 21:28:21.59 ID:YDLAGOEZo
杏子「予定より早いけど、21話の更新をもう少ししたらするよ」
杏子「震災の影響で暇なんだってさ」
杏子「鬱展開は今回でおしまい」
杏子「二人の魔法少女が敵として出てくるけど、あの二人だと思ってもいいし、オリジナルの魔法少女だと思ってもいい」
杏子「あいつらだとは一言も明言してないから、好きな風に受け取ってくれ」
364 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/03(金) 21:42:21.50 ID:YDLAGOEZo
第21話 「この世界に神なんていない」
「これでも喰らいなさいっ!!」
イギリス軍服をアレンジしたような魔法少女服を着た、少女の握る二丁のエンフィールド・リボルバーが、黒い戦士に向かって鈍い輝きを放つ弾丸を射出する。
バンバンバンッ!!
銃声が魔女の結界内に鳴り響く。
「……」
黒い戦士は無言のまま、目の前の魔法少女が撃った弾丸をすべて素手で受け止める。
「まさか!?」
少女の驚愕にも一切顔色一つ変える事なく、黒い戦士は受け止めた弾丸を無造作に地面に捨てる。
「っ!? このっ!!」
すべての弾丸を撃ちつくした少女が、リボルバーを軽く振るうと同時に、銃身がバレル付け根下部のヒンジから折れ曲がり、空になった薬莢が少女の魔力で勝手に排出される。
次の瞬間、少女の周辺に新しい弾丸が顕現して、吸い込まれるようにリボルバーに装填され、折れ曲がっていた銃身が元に戻る。
「……」
「ガハッ!!」
少女が新しい弾丸を装填し終えた次の瞬間、一瞬で距離を詰めてきた黒い戦士の放った拳が少女の鳩尾に突き刺さる。
少女の意識が途絶え、少女の変身が解けてその場に崩れ落ちる。
「……まどか」
黒い戦士――黒いレザージャケットと黒いズボンを着た芳文は、気絶した少女から視線を最愛のパートナーの方へと向ける。
芳文の視線の先で、人の手足が生えた亀のような姿をした魔女とまどかが対峙していた。
まどかが左手を前にかざし、横向きにした巨大な弓を目の前に顕現させる。
そのまま右手で矢を引き絞る動作をすると、巨大な魔力の矢が顕現して、巨大な弓によって引き絞られる。
眩いピンク色に光り輝く魔力の矢の先端が、まるでドリルのように超高速回転を始める。
「――ティロ・フィナーレ」
かつてまどかが憧れた、先輩魔法少女の必殺技と同じ技名を呟いて、右手の親指と人差し指を放す。
――バシュゥゥゥゥゥンッ!!
結界内の空気を轟音と共に引き裂きながら、凶暴な破壊力を秘めた一撃が、芳文の倒した魔法少女の銃弾さえまったく受け付けなかった、魔女の分厚い甲羅を容易く貫いた。
人一人が簡単に潜れるほどの巨大な穴を胴体に開けられた、魔女の巨体に亀裂が入りやがて大爆発を引き起こした。
ドカアァァァァァァァァァンッ!!
――シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……。
魔女が滅びた事で、結界が消滅しグリーフシードが落ちてくる。
まどかがグリーフシードを手にして振り返ると、芳文が気絶している少女を片手で担いでまどかの元へ連れてくる。
「まどか」
気絶している少女を地面の上に寝かせて、左手の中指から少女のソウルジェムを抜き取り、まどかに手渡す。
「うん」
まどかは芳文から受け取ったソウルジェムを、少女の胸に押し当てると魔法で少女の体内に戻す。
「こいつがグリーフシードを持っているかもしれない。探しておけ」
「うん」
芳文の言葉に頷いて、まどかはマギカ・ブレードを生成する。
芳文はマギカ・ブレードを手にすると、地面の上にへたり込んでこちらを見ている、元魔法少女の連れの少女二人とインキュベーター・コピーの元へと跳躍する。
365 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/03(金) 21:42:59.75 ID:YDLAGOEZo
「な、なんなのよあんた達!! 先輩に何したのよ!!」
目の前に着地した芳文に、気の強そうなショートカットの少女が立ち上がって、芳文に喰ってかかる。
「この街は先輩がずっと守ってたのに!! あんた達みたいな奴らがいるから先輩はずっと……っ!!」
「……」
少女には突然現れた芳文とまどかが、グリーフシード目当ての利己的な敵にしか見えないのだろう。
非常に固い甲羅を持つ魔女に、苦戦していた魔法少女の先輩に突然現れて襲い掛かってきた芳文。
そして、憧れの先輩があんなに手こずった魔女を、たったの一撃で撃破したまどか。
少女はろくに返事も会話もしようとしない、二人に怯えながらも気丈に食って掛かる。
ショートカットの少女の背後では、かつてのまどかのような、ショートツインテールの少女が怯えた表情で芳文を見ていた。
「ひっ……」
「……」
芳文は少女の言葉にまったく動じる事もなく、少女達の傍らに寄り添うインキュベーター・コピーに殺意を込めた視線を向ける。
「キュゥべえ!! 今すぐ私と契約して!! 願いは先輩達を守れる力が欲しい!!」
「――ふざけるな」
芳文はそう呟くと静かな怒りを込め、インキュベーター・コピーとの契約を結ぼうとした少女の頬を叩く。芳文にぶたれた少女がその場に崩れ落ちる。
「消えろ」
――ヒュッ!! ズガアァァァァァァァンッ!!
少女達に寄り添う白い悪魔を、芳文は神速の突きでこの世界から消滅させる。
「あ、あぁぁ……」
インキュベーター・コピーが悲鳴ひとつ上げる事さえ出来ずに、ぐちゃぐちゃにマギカ・ブレードで潰されてミンチになり、消滅させられる光景を見てショートツインテールの少女が失禁する。
「――魔法少女になろうなんて考えるな」
芳文は冷徹な声で少女達に言う。
「魔法少女はいずれ、魔女になる。釣り合わない奇跡を望む対価は破滅の未来だ」
そう言い残して、芳文は少女達に背を向けて立ち去る。
まどかが元魔法少女の持っていたグリーフシードを手に、芳文の側へと歩いてくる。
芳文がインキュベーター・コピーを消滅させた事を確認し、まどかはマギカ・ブレードを消滅させる。
「――何、言ってんのよ」
芳文にぶたれた頬を押さえながら、ショートカットの少女が芳文を睨みつけて叫ぶ。
「この悪魔!! 誰があんた達の言う事なんか信じるもんか!! 魔法少女が魔女になる? あんた達の方が魔女なんかより、よっぽどタチが悪いわよ!!」
尊敬する先輩に襲い掛かってきて、愛くるしい姿の魔法の使者を惨殺された事に対する怒りを込めて、少女が芳文達を罵る。
「この……化け物!!」
その言葉に、まどかの顔が悲しみに染まる。
背を向けて立ち去ろうとしていた芳文は振り返ると、つかつかと少女の元へ戻ってきてその胸倉を掴み、少女を宙づりにする。
「ぐっ……」
胸倉を掴む芳文の腕を両手で掴んで、少女が苦しそうに呻き声を上げる。
「――警告はした。もしお前が魔法少女になって、魔女になったその時は」
芳文は少女を無造作に放り投げて、吐き捨てる。
「俺のこの手で八つ裂きにして、この世から消してやる」
「ひっ……」
気丈な少女の顔が、遂に恐怖に染まる。
「……大丈夫か?」
少女に冷徹に吐き捨てた芳文が、まどかの側へ戻り心配そうにまどかに尋ねる。
「……うん」
まどかは力なく頷く。
「――今日はもう、帰ろう」
芳文はそう言って、まどかを優しく抱き寄せた。
「……うん」
まどかと芳文は寄り添いあうように、この街での活動拠点に向かって帰っていく。
「……あれが、世界に仇名す敵かぁ。ぱっと見、そんな強そうに見えないし、男の子の方は魔法少女ですらないし」
黒い魔法少女が、寄り添いあうまどかと芳文の姿を夜闇の中、街灯の上から確認して呟いた。
『あの二人を生かしておけば、必ず世界に災いを呼ぶわ』
親友の白い魔法少女の言葉を思い出して、黒い魔法少女はぽりぽりと後頭部を掻きながら呟く。
「うーん。とりあえず、これからどうするか相談してこよっと」
黒い魔法少女はそう独り言を呟くと、夜の闇の中へと消えて行った。
366 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/03(金) 21:44:05.11 ID:YDLAGOEZo
☆
――ザアァァァァァァ……。
芳文と共に泊まっているホテルのバスルームで、まどかはシャワーを浴びながら先ほどの事を思い出す。
『この……化け物!!』
左手の中指に着けている、自分自身の魂その物であるソウルジェムに視線を向け、まどかは涙を流す。
「う、うぅぅぅぅ……」
まどかの涙が、シャワーから流れ出すお湯と混じって、排水溝に流れていく。
涙が出なくなるまで、まどかはバスルームで一人泣き続けた。
「……まどか」
まどかがバスルームから出てくると、ベッドの上に腰掛けた芳文がまどかの名を呼ぶ。
「もう戻ってたの?」
「ああ」
芳文達が現在泊まっているホテルには露天風呂があり、芳文はまどかの気を紛らわせようとして、露天風呂に行く事を勧めたがまどかはやんわりと、芳文の提案を断り室内のシャワーで入浴を済ませたのだった。
まどかが室内のシャワーを使っている間に、手早く露天風呂で入浴を済ませて、芳文はまどかが出てくるのをずっと待っていた。
「おいで」
芳文が優しくそう言うと、まどかは芳文の腕の中にぽすっとその小さな体を預ける。
「まどか」
「……大丈夫だよ」
まどかは芳文の腕の中から、芳文の顔を見上げて小さく笑って見せる。
「あなたがいてくれるから。だから、大丈夫」
「……今日は、もう寝よう」
「うん」
芳文が優しい顔でそう言うと、まどかはこくんと頷くのだった。
――小さな魔法少女との悲しい別れから、三ヶ月後。
芳文とまどかはもう、他の魔法少女達と深く関わろうとするのをやめた。
インキュベーター・コピーを見つければ消滅させ、魔法少女は無理矢理にでも人間に戻し、魔女はすべて狩る。
今まではもう少し柔らかいやり方をしていたが、いまではもう問答無用だった。
初めから他の魔法少女を敵視する魔法少女相手ならともかく、今回のようにかつてのマミみたいに人の為に戦おうとする魔法少女が相手の場合、まどかが傷つく言葉を投げつけられる事も多かった。
きちんと話をすればわかりあえる相手もいる事を、今までの旅で知っていたが、下手に仲良くなって葉子との別れみたいな思いをしたり、真実に耐えられず絶望されて魔女になられるのが、今のまどか達は怖かった。
367 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/03(金) 21:45:45.32 ID:YDLAGOEZo
☆
「……ねえ、芳文さん」
ベッドの中で芳文の左腕を枕にして、芳文の鼓動の音を聞きながら、まどかが芳文に話しかける。
「……ん?」
「後悔……してない?」
「何を?」
「わたしと出会った事。わたしと出会わなければ、芳文さんが魔法少女に関わる事なんてなかったのに」
「……またその話か」
「だって……」
「俺はまどかと出会えた事に感謝こそすれ、後悔した事なんてない」
「……」
「これが俺の運命なんだ。まどかと出会って、まどかを好きになって、まどかを守る。他の誰でもない。俺自身が決めて選択した俺の運命だ」
「でも、それじゃ芳文さんの人生は……。それにわたしだって、最後は今まで倒してきた魔女みたいに」
「させない」
芳文はまどかの言葉を遮って、きっぱりと言い切る。
「まどかを魔女になんて、絶対にさせない。いつかきっと、普通の女の子としての優しくて暖かい生活に戻してやる」
「どうして……。どうして、そこまでしてくれるの?」
薄暗い部屋の中で、まどかが芳文の顔を見つめながら尋ねる。
「俺がまどかの事を好きだからだ」
「……」
「理由があったとはいえ、母さんに捨てられて、父さんも死んで、新しい家族も助けられなくて、自暴自棄になってただ生きてるだけだった俺の為に、まどかは泣いてくれた」
「本当は怖くて逃げ出したいのに、俺と母さん、巴さんの為に魔法少女の契約をしてくれた」
「あの時から、俺はまどかにぞっこんなんだ。いつだってまどかに笑っていて欲しいんだ」
「……芳文さん」
「だから俺はまどかを守る。もしこれから先、まどかにどんなひどい運命が待ち構えていようと、そんな物俺がこの手でぶち壊してやる」
「母さんとも約束したしな。母さんの後を引き継いでまどかを守るって。それに別の世界のまどかとは言え、あの人もまどかをずっと守ろうとして運命と戦ってきたんだ」
「あの人は最後までまどかを守ることを諦めなかった。その息子である俺が、まどかを守る事を諦めるなんて事は絶対にない」
芳文はまどかの顔を見つめながら、はっきりと自分自身の決意と想いを言葉にする。
「俺は、俺自身の為にも、この世界で一番愛する君を守り続ける」
「……ありがとう。芳文さん」
「……ああ」
「わたしね、あなたに出会えて良かった。あなたに出会えて、愛されて。わたしはきっと、この世界で一番幸せな女の子なんだって思う」
「わたし、今でも自分に自信が持てない駄目な子だけど。これだけは胸を張って言えるよ。わたし、あなたの事が大好き。わたしも芳文さんの事、世界で一番愛してる」
「ありがとう、まどか」
「うんっ」
まどかは芳文に微笑む。
芳文もまた、まどかに微笑む。
「さあ、もう寝よう」
「そうだね、おやすみなさい。芳文さん」
「ああ、おやすみ。まどか」
過酷な運命を背負わされた二人にとって、二人で一緒にお互いの温もりを感じながら眠りにつく。
それだけが、唯一の安らぎの時だった。
368 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/03(金) 21:47:49.70 ID:YDLAGOEZo
☆
「どうだ?」
「うん。さっきの魔女でこの街の魔女は全滅したみたい」
夜闇の中、明滅する街明かりを見つめながら、この街で一番高いビルの屋上でソウルジェムを左手に載せながら、まどかが芳文に告げる。
「そうか。ホテルで一眠りしたら次の街に行くか」
「うん」
まどかがソウルジェムを指輪に戻して、芳文に頷く。
「帰ろう」
芳文はまどかを抱き上げると、今いる高層ビルの上から別の低いビルの屋上へと跳ぶ。
「重くない?」
「まどかは軽いよ。それにもしまどかが重くても、好きな子の重みなら耐えられる」
「もうっ。芳文さんたら」
まどかが芳文の腕の中で笑う。
余りにも高い場所への移動は多少なりとも魔力を使うので、魔力節約の為にそういう時の移動は、魔人である芳文がまどかを抱きかかえて移動する。
魔法少女達の身体能力を、遥かに凌駕する身体能力を持つ芳文にとって、まどか一人を抱きかかえながら高層ビルからビルへ移動する事など、造作もない事だった。
「……芳文さん」
「……ああ」
次のビルの上に飛び降りる途中、芳文は殺気を。まどかは魔力を感じ取りお互いに警告する。
ビルの上に着地して、芳文はまどかを下す。
まどかは一瞬で魔法少女の姿へ変身し、芳文の背後に背中合わせで立つ。
――ヒュッ。
黒い影がまどか目掛けて飛びかかってくる。
あまりの速さにまどかがマギカ・イージスを展開させるのが間に合わない。
黒い影の放った三本のカギ爪がまどかの顔を引き裂こうとしたその瞬間。
芳文がカギ爪を神速の裏拳で粉々に粉砕した。
「嘘。私の攻撃を防いだ?」
カギ爪を粉砕された黒い魔法少女が、新しいカギ爪を魔力で再構成しながら呟く。
「――何の真似だ」
芳文がまどかを庇うように立ちながら、黒い魔法少女に真意を問う。
「思ったよりやるんだね。でも今度は本気で行くよ」
「なぜまどかを狙った!! 答えろ!!」
「なら私が答えてあげる」
闇の中から白い魔法少女が、芳文とまどかの前にその姿を現して言う。
「駄目だよ!! こんな奴ら私だけでやっつけるから!! 隠れてて!!」
「ありがとう。でもあなたが勝つのは当然でも、あなただけを前線に出すわけにはいかないわ」
白い魔法少女は、黒い魔法少女ににっこりと微笑みながら言う。
「それに、何も知らずに死ぬのを、彼等だって納得しないでしょう? 貴女ももう少し、人の気持ちと言う物を考えられるようにならないとね」
「むー。また君は私を子ども扱いする。どうせすぐあいつら死ぬんだから別にいいのに」
白い魔法少女は黒い魔法少女に微笑みながら、視線を芳文達に向けるとその表情を酷薄な笑みに変えて口を開く。
369 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/03(金) 21:48:31.22 ID:YDLAGOEZo
「鹿目まどか。貴女は近い未来、最強にして最悪の魔女になる」
「!?」
白い魔法少女の言葉に、まどかがびくっとその身を震わせる。
「――ふざけるな。そんな未来などない。貴様に何がわかる」
芳文が殺意を込めて白い魔法少女を睨む。
「社芳文。あなたがこの世界最大のイレギュラー。魔人ね」
「貴様、何を知っている。インキュベーターの手先か?」
「インキュベーター? ……ああ。キュゥべえの事かしら」
「あいつをその名を呼ばないで!! キュゥべえと言う名前は、私と一緒にいたあの子だけの物だよ!!」
まどかが白い魔法少女に叫ぶ。
「まあ、彼の呼び方に興味はないわ。私はこの子と一緒に私の能力で見た未来を変えたいだけ」
そう言って、傍らに立つ黒い魔法少女を優しい目で見る。
「そう言えば自己紹介がまだだったわね。私達は――」
「貴様等の名前になど興味はない。貴様等は今ここで魔法少女の力を失うんだ」
芳文がまどかを庇うように立ちながら、殺意を込めた視線で白と黒の魔法少女達を睨みつける。
「あら怖い。でも貴方達をこのまま放置する訳にはいかないの」
「彼女達の言うとうりだ。社芳文。鹿目まどか」
夜闇の中から、かつてマギカ・ブレードによって、右後ろ脚と尻尾を失ったオリジナルのインキュベーターが姿を現す。
「久しぶりだね、社芳文。鹿目まどか」
「貴様!!」
芳文がインキュベーターを睨む。
黒い魔法少女が、インキュベーターと白い魔法少女を庇うように、カギ爪を構えて芳文と対峙する。
「社芳文。鹿目まどかが魔女になったその時、君はどうなるのか考えた事はあるかい?」
「……何?」
「そこにいる鹿目まどかが魔女になったその時、彼女の魔力で生命を維持している君も生まれ変わる」
『!?』
「鹿目まどか。貴女が魔女になったその時、そこにいる彼はあなたを守る最強にして最凶の眷属になる」
白い魔法少女が、インキュベーターの言葉の続きを引き継いで言う。
『!?』
突然、まどかと芳文の脳裏にかつてインキュベーターに見せられた、魔女になったまどかの姿が映し出される。
――それは白い魔法少女の力だった。
天高くそびえ立つ巨大な魔女の傍らに寄り添う、巨大な黒い人型の生物。
黒い巨体に黒い翼を生やしたその姿は、正に悪魔そのものだった。
「救済の魔女クリームヒルト・グレートヒェン。それが未来の貴女よ。鹿目まどか」
「っ!?」
「そしてクリームヒルト・グレートヒェンの傍らに寄り添う悪魔。魔神ファウスト。それが未来の貴方よ。社芳文」
「……何……だと?」
「鹿目まどかが魔女になったその時、貴方は彼女自身の祈りによって、鹿目まどかから独立した存在へと進化して生まれ変わる」
「魔女でもなく使い魔でもない、まったく別の新しい存在。それが未来の貴方」
「私達は元々、自分自身の願いの為に魔法少女の契約を交わした。けれど、貴方達に世界を、いえ、この星を破壊される未来を知ってそれを止める為にここに来たのよ」
「そ、そんな……芳文さんまで……」
自分が魔女になれば、芳文まで巻き込む真実に、まどかがその場に崩れ落ちる。
「まどか!! 耳を貸すな!! 俺がまどかを守る!! 魔女になんてさせない!!」
芳文がまどかに叫ぶ。芳文のその言葉を聞いて、まどかは強い意志を持って立ち上がると、目の前の敵に疑問をぶつけた。
「あなた達は魔法少女の真実を知って、それなのにインキュベーターの味方をするの?」
まどかの疑問に白い魔法少女は酷薄な笑みを浮かべて言う。
「願いを叶える為ですもの。そのくらいのリスクは承知の上よ。それにこの子と二人なら絶望なんてするはずがないわ」
「そういう事。私達の世界を守る為に死んでよ。化け物」
「わ、わたし……」
化け物と言う言葉に、まどかが怯む。黒い魔法少女がまどか目掛けて走る。
370 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/03(金) 21:49:35.76 ID:YDLAGOEZo
「チッ!!」
芳文がまどかの前に立ち、黒い魔法少女を迎え撃つ。
「甘いっ!!」
両手に三本ずつのカギ爪を顕現させた黒い魔法少女が、芳文の目の前で空中に飛び、空中で魔力による足場を展開しながら、あちこちに飛び回って攪乱する。
「もらった!!」
あまりの速さに対処しきれないまどかの胸元目掛けて、カギ爪を突き立てようとしたその時だった。
――ズドンッ!!
「ゲボッ!?」
芳文の放った蹴りが、容赦なく黒い魔法少女の顔面に突き刺さり、その華奢な体を吹き飛ばした。
「……あ? ああ?」
ボタボタと鼻血を出しながら、呆然と起き上がると、目の前に芳文が立っていた。
「このっ!!」
地面にへたりこんだまま、カギ爪を横薙ぎに振るう。
――ズンッ!!
芳文が踏みつけた事で、芳文の足を狙った少女の右手が踏みつぶされて折れる。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
右腕をへし折られて絶叫する少女の首を、芳文は一瞬で掴んで持ち上げるとぎりぎりと締め付ける。
「がっ……は……」
無事な左手で芳文から逃れようと、カギ爪を突き立てようとする。
――ボキン。
芳文に簡単に掴まれて、左手も握り潰されて、折られる。
「が……」
黒い魔法少女が白目を剥いて、失禁しながら気を失う。
「そんな、まさか……あの子がこんな簡単に負けるなんて……」
絶対の信頼を寄せていたパートナーが、あっさりと敗北する姿を見せつけられ、白い魔法少女が呆然となる。
いつの間にか、インキュベーターはその姿を消していた。
――ブンッ。
芳文の投げつけてきた意識のないパートナーの姿を見ながら、次の瞬間には激しい痛みを感じながら白い魔法少女はその意識を失った。
371 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/03(金) 21:50:43.05 ID:YDLAGOEZo
☆
「……すまん。手加減しきれなかった」
「殺さなかったんだから気にしないで。もし死んでたら助けられないし」
まどかは芳文にそう言って、芳文に倒された黒い魔法少女を魔法で治療して、人間へ戻す。
「うう……」
人間に戻された黒い魔法少女が呻き声を上げる。
「こっちの子も」
まどかが白い魔法少女も人間に戻す。
「……芳文さん、終わったよ」
「……ああ」
芳文が頷いてまどかを抱きかかえて、その場を立ち去ろうとしたその時だった。
「この悪魔!!」
意識を取り戻した黒い元魔法少女が、芳文に憎悪を込めて叫んだ。
「――だったら?」
「ひっ……」
芳文に冷酷な目で射るような視線で睨まれて、先ほどの恐怖を思い出した少女はすくみ上る。
「俺は愛する者を守る為なら、何だってやる。貴様達がまた俺達に関わろうとするなら、今度は殺す」
「あ、あぁぁぁ……」
少女が涙を溜めながら、がたがたと震える。
「……神様」
いつの間にか目を覚ました白い元魔法少女が、目の前の脅威に対する術を失い、自らが信じる神に祈る。
「この世界に神なんていない」
芳文は二人にそう吐き捨てると、まどかを抱きかかえてその場を立ち去った。
「……芳文さん」
芳文の腕の中で、まどかが弱々しく口を開く。
「もしわたしが魔女になりそうになったら……」
まどかの大きな瞳は涙で潤んでいた。
「その時は、あなたの手で殺してね……」
芳文はまどかの願いに何も答える事無く、ビルからビルへと飛び移っていく。
『……神様』
先ほどの白い魔法少女の言葉が芳文の脳裏に過る。
(この世界に神なんていない)
(もし神なんて物が存在するなら、何故まどかにこんな運命を与える?)
(この子が一体何をした? どうしてここまで追い詰められないといけない?)
(まどかを守る為なら、神と戦う悪魔にだってなってやる)
(まどかに過酷な運命を与える神も、まどかを翻弄する運命も全部俺の敵だ)
(そんな物、俺のこの手でぶち壊してやる!!)
自分の腕の中の、世界で一番大切な物を守る為、少年は抗い続ける……。
いつか、少女を幸せな日常に戻せるその日まで……。
つづく
372 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/03(金) 21:54:39.89 ID:YDLAGOEZo
杏子「つづく」
杏子「魔神ファウストについて」
杏子「その性質は救済の魔女への永遠に変わらぬ愛」
杏子「愛する彼女の願いを阻む者、愛する彼女を傷つけようとする者は絶対に許さない」
杏子「その雄叫びは天空を引き裂き、その一撃は大地をも砕く」
杏子「ファウストとクリームヒルトが誕生したら、この地球は1日も持たないだろう」
杏子「社芳文は鹿目まどかの魔女化に伴い、魔女でも使い魔でも魔獣でもない、最強最悪の魔神へと生まれ変わる」
杏子「魔神ファウストは誕生した瞬間、魔法少女システムから切り離された全く新しい存在になる」
杏子「例え、別の宇宙のまどかが魔女を滅ぼす願いをしたとしても、クリームヒルトは消せてもファウストは消せない」
杏子「クリームヒルトがもし消えた場合、ファウストは愛する彼女を追い求めて、あらゆる次元の地球を破壊しながら、平行世界を渡り歩く全並行宇宙すべての脅威になる」
杏子「こいつを倒す手段は二つ。魔を断つ剣が現れるか、アニメ版orハノガゲ版まどかと同じ因果の力を持ったまどかが倒す事を願った場合のみだ」
杏子「ファウストの姿は悪魔のような翼の生えた、ぼくらの≠フジ・アースを生物っぽくして真っ黒にしたような感じ。五本指があって、マスクの所に鬼のような顔がある」
杏子「戦闘力は暴走したエヴァンゲリオン初号機を想像してくれ。こいつにはどんな魔法少女も魔女も勝てない。その存在意義はただ一つ。愛するクリームヒルトを守る事だけだ」
杏子「次回予告」
まどか「どうして、こんなところに……」
まどか「やめて!! お願いやめて!!」
まどか「お願い……。見ないで……」
まどか「芳文さん、お願い……。早く連れて行って……」
第22話 「もう、くじけない」
杏子「次回から運命への反撃開始だ」
杏子「じゃあな」ノシ
373 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/06/04(土) 00:40:02.81 ID:stRVVihx0
乙っちまどまど!
魔神凄すぎ…
QBも手に負えないのか
374 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/06/04(土) 02:45:18.48 ID:7E+pMdAGo
おつおつ
魔まマ原典の一つファウストを持ってきたかー
原作インタビューでもほむらの戦い続ける想いの根幹・まどかの最後の願いの根幹にはお互いが「最高の友達」として依存し合っている、ってのがあるらしいしね
二人だけの完結した世界の終わりはどうなるのか・・・か
375 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/04(土) 09:01:07.24 ID:HymRXaaSO
超乙。
やっと鬱展開終わりか。ここからどうやってハッピーエンドに持っていくのか。
376 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/06/04(土) 09:31:49.36 ID:aJmE4bb10
魔法少女の中でも実力者らしい白黒が瞬殺とあってはQBもそれこそ第二のワルプルでも連れてこなくちゃあかんだろうな
でも2年以上の実戦経験を積んだ今のこの二人ならワルプル相手でも楽勝しちゃいそうだが
それにしても黒は敵を見る目なさすぎ
377 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
:2011/06/04(土) 11:48:07.66 ID:ojeGuBSAO
社ってなんか、仮面ライダーファイズの草カロみたいだな
無駄に高スペックで、初めて優しくしてくれた女の子にベタ惚れで、好きな相手や仲良くしたい相手には良い顔をするくせに、嫌いな相手やどうでもいい相手には物凄く冷酷
草カロよりはいい奴だけど
378 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/06/05(日) 12:15:30.13 ID:PU3BTzzEo
杏子「第22話更新開始だよ」
379 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/06/05(日) 12:16:06.11 ID:PU3BTzzEo
杏子「第22話更新開始だよ」
380 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/05(日) 12:16:40.37 ID:PU3BTzzEo
「やめてえぇぇぇぇぇぇっ!!」
傷ついて地面に倒れている一人の魔法少女が、魔女と対峙する芳文の背中に向かって、悲痛な叫び声を上げる。
――バシュッ!!
全身を芳文の鉄拳で粉砕されて、ボロボロになった鎧武者の姿をした満身創痍の魔女が、手にした弓矢を芳文に放つ。
芳文は高速で飛んできた矢をあっさりと掴むと、魔女に目掛けて投げ返す。
ズンッ!!
魔女の顔面に矢が突き刺さり、貫通する。あまりの衝撃に魔女の巨体が仰け反る。
魔女の頭上に跳び上がった芳文が、魔女の頭部に必殺のかかと落としを決めて胸部まで引き裂く。
魔女の胸部にかかとを埋めたまま、もう片方の足で渾身の蹴りを魔女の胴体に叩き込み、蹴りの衝撃でかかとを引き抜きながら後方へと着地する。
――ピシピシピシ……ッ。
魔女の全身に夥しい数のヒビが入り、次の瞬間、魔女の全身が木端微塵に粉砕消滅した。
――シュウゥゥゥゥゥゥゥゥン……。
結界が消滅し、落ちてくるグリーフシードを芳文がキャッチする。
「あの……大丈夫?」
魔女の攻撃がもし飛んできた場合に、マギカ・イージスをいつでも張れるよう、少女の傍らで待機していたまどかが、倒れたままの少女におずおずと声をかける。
「この人殺し!!」
少女は涙を流しながら、まどかをキッと睨みつけて叫ぶ。
「っ!!」
少女の言葉に、まどかは思わず視線を逸らす。
「アレはもう、人でも魔法少女でもない。ただの魔女だ」
少女とまどかの元へ歩いてくる芳文が、冷徹に魔法少女にそう言い放った。
「ふざけないで!! あの子は私の大切な親友だったのに!! 助けようとしてたのに!! いきなり割って入ってきて!!」
少女が憎しみを込めた視線で芳文とまどかを睨みつける。
「ふざけてなどいない。魔法少女はソウルジェムを黒く染め上げた時、その魂が燃え尽きてグリーフシードに変わる。そうなったらもう、ただ呪いを撒き散らすだけの魔女の卵だ」
「うわあぁぁぁぁぁぁっ!!」
芳文の冷たい言葉に、少女は激昂してブロードソードをその手に顕現させて、芳文に斬りかかる。
――パキイィィンッ!!
芳文が振り下ろされたブロードソードの刀身を、神速の裏拳で無造作に横薙ぎに殴りつけて粉々に打ち砕く。
素手の芳文にあっさりと自慢の剣をへし折られて、驚愕の表情を浮かべる少女は、流れるように放たれた芳文の拳を鳩尾に喰らってそのまま昏倒した。
芳文は意識を失って、崩れ落ちる少女の襟首を無造作に掴むと、静かに地面の上へと横たえる。
「まどか」
「……うん」
まどかは芳文に頷いて、意識を失った少女をいつものように人間へと戻す。
「……行こう」
少女を人間に戻し終えたまどかに、芳文がそう声をかけると、まどかは意識を失って倒れている少女に向かって口を開いた。
「助けてあげられなくて、ごめんなさい……」
第22話 「もう、くじけない」
381 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/05(日) 12:17:08.76 ID:PU3BTzzEo
「……あまり気にするな」
「うん……」
泊まっているホテルの一室で、いつものように芳文は自分の左腕をまどかの枕にしながら、寄り添うようにして二人一緒にベッドで寝ていた。
まどかは先ほどの、魔女になってしまった友人を救おうとしていた、あの魔法少女の事をまだ引きずっていた。
「俺達は神様じゃないんだ。もう既に魔女になっていた魔法少女まで救う事なんて出来ない。せめて少しでも被害を増やさない内に、楽にしてやるのが俺達が彼女達にしてやれる唯一の救いなんだ」
「……うん。わかってるよ。わたしにはケガを治してあげたり、魔法少女を元の人間に戻してあげる事しか出来ないのもね……」
芳文の慰めの言葉に、まどかは呟くようにそう答えると、芳文の体にぎゅっとしがみついて弱弱しく言う。
「でも、どんなにわたし達ががんばっても、みんなに憎まれるだけなんだもん……」
「……まどか」
「わたし達、どうしたら幸せになれるのかな……。もう嫌だよ。こんなの……」
まどかの瞳に涙が溜まる。
「帰りたい……」
まどかの瞳から、涙が零れる。
「何も知らなかった、あの頃に帰りたいよぅ……」
まどかはそう言って、嗚咽を漏らす。まどかはもう、限界だった。
まどかと芳文が見滝原を出てから、既に二年半が過ぎようとしていた……。
「……」
芳文は黙って、嗚咽を漏らすまどかを優しく抱きしめてやる。
(……まどかだけじゃない。俺ももう……疲れた)
暗い天井に視線を向けて、芳文は自らの無力さに歯噛みをする。
(どうして俺は、まどかの側にいてやる事しか出来ないんだ……。いったいどうすれば、まどかはまた笑ってくれるようになるんだ……?)
(誰か、教えてくれ……。俺は……俺達は、いったいどうすれば、幸せになれる?)
まどかだけではなく、芳文もまた、疲弊していた。
どんなに慰めの言葉をかけても、今のまどかには届かないような気が今の芳文にはした。
今の芳文には、まどかが泣き疲れて眠りに着くまでの間、ただ黙って抱きしめていてやる事しか出来なかった……。
☆
「すぅ……すぅ……」
自分に抱きつきながら、泣き疲れて寝息を立てるまどかの顔を見つめながら、芳文はこれからの事を思案する。
このままでは、まどかに負の感情ばかりが溜まってしまう。
まどかのソウルジェムが濁る事は、まどかと芳文の人としての死を意味する。
更にそれだけではなく、この地球その物の終わりをも意味する。
――救済の魔女クリームヒルト・グレートヒェン。その祈りはすべての命を強制的に吸い上げ、自らの作り上げた天国へと導く。
――破壊の魔神ファウスト。そのすべては愛する彼女の為だけに。彼女の望みを邪魔する者を一切の慈悲すらなく地獄の底へと突き落とす。
人としての死を迎えたその時、まどかと芳文はこの星を滅ぼす最強にして最凶の存在へと生まれ変わる。
破滅の未来だけは、なんとしても阻止しなければならない。
故郷の見滝原に暮らす、大切な人達の為にも……。
「……まどか」
愛しい少女の寝顔を見つめながら、芳文は過酷な運命に立ち向かう事を新たに胸に誓う。
「……まどか。愛してる。俺が絶対に守るから。せめて、これ以上悲しい思いをさせないように頑張るから……」
まどかの目尻に溜まった涙を、優しく親指で拭ってやりながら、芳文が呟いたその時だった。
『やれやれ。君達はまだ絶望しないのかい?』
不意に忌々しい声が芳文の脳裏に響く。
「何の用だ」
窓の外にインキュベーターの気配を感じて、芳文は忌々しげに言う。
『まどかを起こしてもいいのかい? 今だけは、考えるだけで僕と会話が出来るようにするよ』
「――チッ」
まどかを起こさないように、芳文は小さく舌打ちをすると、インキュベーターの言うとうりにテレパシーで会話をする。
382 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/05(日) 12:17:56.02 ID:PU3BTzzEo
『正直な話、君達のしている事は迷惑なんだ。いい加減、無駄な希望を持つのはやめてくれないか』
『黙れ』
『まどかの魔力で人間に戻された魔法少女は、再契約をしようとしても魔法少女に戻せない。おまけに僕のコピー達もあの因果を絶つ剣で消滅させられて、僕のノルマがちっとも終わりが見えなくて困ってるんだ』
『貴様の都合など知った事か』
『今、こうしている間にも、僕等の宇宙はエネルギーの減少が続いているんだ。このままではいつか僕等の宇宙が終わりの時を迎えてしまう』
『だから僕等の宇宙を救う為には、鹿目まどかの絶大な感情エネルギーが欲しいんだよ』
『その結果、こちらはどうなる』
『奇跡を望んだのは鹿目まどか自身さ。いつか釣り合わない希望の対価として、絶望して魔女になるのは彼女自身の問題だ。その後のそちらの地球、いや、宇宙の問題はそちらで解決してくれ』
『ふざけるな。侵略者が』
『僕達はこの宇宙を侵略しているつもりなんてないよ。君達だって豚や牛を殺して食べるだろう?』
『俺達を家畜と一緒にするな』
『僕達にとってはこの宇宙の全生命は、君達にとっての家畜と一緒だよ。僕等の宇宙の為に有効利用したいだけなんだ』
『ふざけるなよ。この畜生風情が。何様のつもりだ』
『やれやれ。君も母親と同じだね。一見クールに装っていても、ちょっとした事ですぐに激情に駆られる』
『貴様と話す事などもうない。消えろ。次に会った時はこの世界から消し去ってやる』
『やれやれ。まともな対話は出来そうもないね。こちらは曲がりなりにも、君達を知的生命体として認めてここに来てるんだけどね』
『黙れ』
『やれやれ。まだ話は終わってないよ。君は鹿目まどかを人間に戻したいみたいだけど、もし鹿目まどかが人間に戻った場合、君は生命を維持出来なくなって死ぬという事に気付いているかい?』
『……だから?』
『おや? 随分冷静だね』
『そんな事は真実を知った時に薄々気づいている。例え俺自身の命がどうなろうと、まどかを貴様の思いどうりになんてさせない』
『君が鹿目まどかを魔女にするのを手伝ってくれるなら、僕等の宇宙の鹿目まどかから採取したエネルギーを使って、君の命を助けてあげるよ』
『ふざけるな』
『君は自分の命が惜しくないのかい?』
『貴様には永遠にわからない。本当に大切な人の為なら、人間は自分の命を懸けられるんだ』
『代わりの人間なんていくらでもいるのに。訳が分からないよ。たかだか一人の少女の生死に何故そこまで拘るんだい?』
インキュベーターはそう言うと、その気配を完全に消した。
「……例え何があっても、俺はまどかを守る」
今感じている、このかけがえのない温もりを守る決意を新たに、芳文は静かに目を閉じるのだった……。
383 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/05(日) 12:18:48.71 ID:PU3BTzzEo
☆
――翌朝。
まどかが髪を梳かしていると、先に起きて着替えを済ませていた芳文が、まどかに優しい顔で切り出した。
「まどか、今日は二人で街に遊びに行こう」
「――え?」
芳文の突然の提案に、まどかの髪を梳かす手が止まる。
「もうこの街の魔女も全滅させたし、たまには休息も必要だろう。この街は結構大きいし、遊ぶ所も沢山あるからデートにはうってつけだ」
「でも……」
まどかがためらっていると、芳文がまどかの目を見ながら言う。
「俺もちょっと疲れてるしな。まどかとデートしてリフレッシュしたいんだ。まどかは俺とデートするの嫌か?」
芳文のその言葉に、まどかは俯きながら小さく呟く。
「ううん……。芳文さんと、デートしたい……」
「よし。それじゃ早速出かけよう。まどかに新しい服も買ってあげたいしな」
芳文が勤めて明るくそう言うと、まどかは小さく笑って答えた。
「……うんっ」
☆
「芳文さん、どうかな?」
ブティックの更衣室から出てきたまどかが、芳文に試着したワンピースを見せる。
「ああ。良く似合っててかわいいよ」
「ホント?」
「俺がまどかに嘘をついた事があるか?」
「ううん。じゃあ、これにしようかな」
まどかが笑顔で芳文にそう言うと、芳文は優しい顔で頷く。
まどかが更衣室の中に戻って、元の服に着替えようとすると、芳文が店員を呼ぶ。
「せっかくだからその新しい服でデートしよう。――すいません。この服買います」
芳文に呼ばれてやってきた、二十代前半くらいの女性店員にそう言って、芳文はまどかの服に付いている値札を取ってもらい、レジに移動して代金を支払う。
「仲がよろしいんですね。妹さんですか?」
店員の妹と言う言葉に、最初に着ていた服を入れた紙袋を抱いた、まどかの表情が曇る。
「妹じゃなくて恋人ですよ。俺の一番大切な人です」
芳文がきっぱりとそう答えると、まどかの顔がぱあっと花が咲くような笑顔になる。
「あら、そうだったんですか。ごめんなさい」
店員は芳文とまどかにそう言って謝ると、白いリボンを二本、まどかに気付かれないように芳文にこっそりと手渡して言う。
「可愛らしい恋人さんを傷つけるような事を言ってごめんなさい。これはお詫びの意味も込めてのサービスです」
「……いいんですか?」
「あんなに長くてきれいな髪をしてるんですもの。きっと恋人さんに似合いますよ」
「……ありがたくいただきます」
芳文は店員に礼を言って、受け取った白いリボンをポケットの中にしまう。
(デートの最後にでも、まどかにプレゼントしよう)
そんな事を考えながら、芳文はまどかと一緒に店を出る。
384 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/05(日) 12:19:36.91 ID:PU3BTzzEo
「芳文さん、ありがとう」
まどかが嬉しそうな笑顔で、新しい服を買ってくれた事の礼を芳文に言う。
「どういたしまして。ホントは俺自身が稼いだ金で買ってやりたかったけど」
芳文が笑いながらそう言うと、まどかが芳文の手を取って言う。
「ううん。芳文さんがわたしの為に、新しいお洋服を買ってくれるって言ってくれたのが、嬉しかったから……」
「そっか。次はどこに行こうか」
まどかのその言葉に優しい微笑みを浮かべて、芳文は尋ねる。
「もうちょっと、一緒に歩きたいな」
「そんなんでいいのか?」
「うんっ。特にどこかのお店に入ったり、何か食べたりしなくてもいいの。こうして、芳文さんと一緒に歩ければ、それでいいの」
そう言って、まどかが芳文の左腕にしがみつく。
「じゃあ、少し散歩しようか」
「うんっ」
二人仲良く腕を組みながら、午後の街を仲良く歩く。
「あっ……」
一緒に歩いている途中、不意にまどかが足を止める。
「ん?」
まどかの視線の先を見ると、ガラス越しに白いウェディングドレスが飾られていた。
「……いつか、着せてあげるから」
芳文がまどかにそう言うと、まどかは頬を染めながら、嬉しそうに芳文に笑顔を見せる。
「……うんっ」
まどかに優しく微笑みながら、芳文は一人強い決意を胸に抱く。
(……まどかが花嫁衣裳を着るその時に、例え隣に立っているのが俺じゃなくてもな。いつかきっと、まどかを普通の女の子に戻してやるから)
芳文とまどかはそれから、オープンカフェでコーヒーとイチゴパフェを注文して休憩を取ったり、夢見る若者達の路上ライブを見たりして久々の休息の時を満喫した。
穏やかな春の風が、まどかの長い髪を優しく撫でていく。
昨晩の出来事を忘れたかのように、まどかは芳文に花のような笑顔を見せてくれる。
(まどかを連れ出して良かった)
芳文は笑顔のまどかに手を引かれながら、まどかに微笑み返しつつそんな事を思う。
見滝原を出てから、ずっと気を張り詰めて生きてきた二人に取って、今日と言う日は本当に久しぶりの、年齢相応の安らぎの一時だった。
「――まどか?」
――まどかを良く知る人物に出会うまでは。
☆
385 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/05(日) 12:20:21.50 ID:PU3BTzzEo
「――え?」
駅の前を通り過ぎようとしていた、まどかと芳文の動きが止まる。
まどかの名を呼んだその人物は、まどかの母。鹿目詢子だった。
「どうして、こんなところに……」
まどかが信じられないと言った顔で、小さく呟く。
「まどか。まどかだろ?」
詢子が人込みを掻き分けながら、手にしていたチラシの束を落として、まどか達の側に駆け寄ってくる。
「ママー」
「どうしたんだい?」
チラシの束を持った智久が五才になったタツヤを抱いて、詢子の後を追ってくる。
「……まどか?」
「あーっ!! ねーちゃ!!」
突然の予期せぬ再会に、硬直するまどか達の前へ、まどかの家族達がまどかの名を呼びながら駆け寄る。
「まどか!! あんた今までどこで何してたんだ!!」
詢子がまどかの両肩を掴んで、まどかを問い詰める。
「……まどかって誰ですか?」
まどかは咄嗟にそう答える。
「まどか!! ふざけるな!!」
詢子の怒声に顔色一つ変えずに、まどかは智久の持つチラシに視線を向ける。
そのチラシには、見滝原中学の制服を着たまどかの写真が載せられていた。
「人違いじゃないでしょうか。そのチラシの人とわたしじゃ年齢が違いますよ」
まどかはそう言うと、詢子の顔に視線を戻して言う。
探し人のチラシに載せられた写真の二年半前のまどかと、今のまどかは髪の長さこそ違う物の、その小柄な体格はまったく当時と同じままだった。
「痛いです。放してください」
「嫌だね」
――パアァァァァァンッ。
詢子はまどかのその言葉を拒否して、まどかの頬を引っ叩くとまどかを睨みつける。
「お前、いい加減にしろよ。突然いなくなって、やっと見つけたと思ったら今度は他人のふりか? ふざけるのも大概にしろよ……」
「あたしはあんたの母親なんだ!! 自分の腹を痛めて産んだ子供を見間違える訳ねえだろうが!!」
詢子の言葉のその言葉を聞いて、まどかの瞳に涙が溜まる。
見滝原を出てからまったく成長していない自分なら、良く似ているだけの他人のふりをすればごまかせると思ったのに、母には通用しなかった。
その事が嬉しくもあり、今の自分の境遇を思い出して、悲しくもなった。
このまま、家族と共に以前の暮らしに帰りたい。
まとがは強くそう思ったが、それは叶わぬ願いだった。
「ひっく……」
まどかがしゃくりあげる。
「君は芳文君だね」
智久が、記憶の中の姿よりも成長した芳文に話しかける。
「君は今まで、まどかとずっと一緒だったのかな」
「……」
芳文は智久に何も答えられない。
突然の予期せぬ再会に、どうしたものかと芳文が戸惑っていたその時だった。
――突然、全員が人気の少ない路地裏へと転送された。
386 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/05(日) 12:20:58.62 ID:PU3BTzzEo
「なんだ!?」
突然起こった超常現象に、詢子が戸惑いの声を上げる。
事態が良くわかっていないタツヤを抱いた智久も、驚いた顔で周囲を見回している。
「感動の再会ってところかな。鹿目まどか」
街灯の上に立つインキュベーターがその赤い瞳を輝かせながら、まどかに感情の籠らない声をかける。
「貴様!!」
芳文が殺意を込めてインキュベーターを睨みつける。
「まさかこんな所で鹿目まどかが家族と再会するなんてね。これもまた、運命と言う奴かな」
インキュベーターの背中の口が開き、不気味な胎動を繰り返すグリーフシードが吐き出される。
「せっかくの機会だ。有効に利用させてもらうとしよう。社芳文。君にはこの魔女の相手をしていてもらうよ」
そう言って、インキュベーターはニタァと邪悪な笑みを浮かべて言う。
グリーフシードが孵化して、人魚の下半身をしている騎士の魔女がその巨体を現し、結界が展開される。
――アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!
巨大なステージが出現し、魔女が雄叫びを上げながら、その上にそびえ立つ。
二本の剣を手にした魔女の周囲に、緑の髪をした赤い顔をした少女の使い魔が複数現れ、巨大な鉄輪を芳文達に目掛けて撃ち出してくる。
「チッ!!」
芳文が撃ち出された鉄輪を蹴りで粉砕し、ひとつを掴んで別の鉄輪に投げつけて破壊しする。
次々と撃ち出される鉄輪を破壊しながら、芳文はまどかとその家族を守る。
「な……なんだコレは……?」
信じられない光景を見せられ、詢子と智久が絶句する。
「パパ、こわいよぅ……」
タツヤが怯えて智久にしがみつく。
「くっ!!」
休みなく撃ち出される鉄輪を粉砕しながら、使い魔達も倒していく芳文。
まどかは家族の前で変身する訳にもいかず、魔女から庇おうとして、自分を抱き寄せている詢子の腕の中から、芳文の孤軍奮闘を黙って見ているしかなかった。
「っ!? しまった!!」
芳文が使い魔にミドルキックを喰らわせて、消滅させたその時だった。
魔女がまどかの家族に目掛けて、手にした剣を投げつけた。
芳文は咄嗟に投げつけられた剣を追う。
凄まじい速さで飛来する剣に芳文でも追いつけない。
巨大な剣が、寄り添いあうまどかの家族達に、突き刺さろうとしたその時だった。
「駄目えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
まどかが詢子の腕の中から飛び出して、一瞬で魔法少女の姿に変身すると、マギカ・イージスを展開させて、投げつけられた巨大な剣を受け止めて消滅させた。
「まどか……?」
詢子が呆然とした顔で我が子の名を呼ぶ。
「……っ」
まどかが振り返ると、母が、父が、弟が、信じられない物を見た事に絶句して固まっていた。
まどかは家族から視線を逸らして俯く。
「あんた……その姿は一体……?」
「それに、その力は……?」
母と父の困惑の言葉に、まどかは何も答えられない。
387 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/05(日) 12:22:04.52 ID:PU3BTzzEo
「僕が教えてあげるよ」
突然かけられた人懐っこい声に、詢子と智久が顔を向けると、インキュベーターがにっこりと笑って口を開いた。
「やめて!! お願いやめて!!」
わざわざ一般人であるまどかの家族にその姿を見せて、インキュベーターが何をしようとしているのかに、気付いたまどかが悲痛な叫びを上げる。
「やめろ!!」
芳文がインキュベーターを潰そうとするが、魔女の攻撃が芳文の邪魔をする。
「くっ!!」
芳文はまどか達を守る為に、魔女の鉄輪と使い魔達を粉砕する為に、その動きを封じ込められてしまう。
「はじめまして。僕の名はインキュベーター。君達の娘、鹿目まどかは僕のコピーと契約して魔法少女になったんだよ」
「魔法少女……だと……?」
詢子が呆然とした顔でまどかを見る。
「そうだよ。君達の娘はあそこで戦っている社芳文の命を救う願いをして、その対価として魔女と戦う契約をしたんだ」
「なっ……」
詢子と智久が絶句する。
「君達も先ほど見ただろう。まどかの魔法少女としての力を。そしてあそこで戦っている社芳文の力もまどかが与えた物だ」
「やめて……」
信じられないと言った顔で、自分を見てくる父と母から視線を逸らしながら、まどかは弱々しく呟く。
「……まどかの姿が、二年半前とほとんど変わってないのは?」
詢子が呆然となりながらも、インキュベーターに尋ねると、インキュベーターは笑顔で答えた。
「ああ。そこにあるまどかの体は、今やただの外付けハードウェアだからね」
「何……?」
詢子の言葉を無視して、インキュベーターは続ける。
「僕達インキュベーターはね、契約した少女達が安全に効率よく魔女と戦えるように、契約時に少女の魂を抜き取ってソウルジェムに変換してあげるんだ」
「……ソウルジェム?」
智久の疑問にインキュベーターは得意げな笑顔で説明する。
「まどかの胸元に桃色の宝石があるだろう。あれが今のまどかさ。まどかの魂その物であり、魔法少女の力の源。魔法少女の本体としての宝石ソウルジェム」
「魔法少女はね、本体からの魔力で元の体を操って、生きてるふりをしているのさ」
「あれを壊されない限り、まどかは無敵なんだ。どんなに体が傷ついても、例え心臓が破れても、魔力を使えばすぐに元どうりになる」
「何だよそれは……。それじゃまるで……」
詢子の震える言葉に、インキュベーターはにっこりと笑いながら答えた。
「君達が言う所の、ゾンビって言うのかな。あれに近いね。もしソウルジェムを100メートル以上体から引き離せば、たちまち体の機能が停止する欠陥ゾンビだけどね」
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
父と母の困惑と驚愕の視線を受けながら、まどかがその場にへたり込んで泣き叫ぶ。
「……ふざけるな!! 人の娘に何て事しやがるんだてめえ!!」
詢子が激怒してインキュベーターを睨みつける。
「これは仕方がない事なんだよ。これも僕等の宇宙の未来を救う為なんだ」
インキュベーターが得意げに、自分達の目的と魔法少女システムの説明をする。
まどかは涙を流しながら、インキュベーターと両親のやりとりをただ聞き続ける。
388 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/05(日) 12:22:40.20 ID:PU3BTzzEo
――シュウゥゥゥゥゥゥゥゥン……。
芳文が魔女を粉砕消滅させ、グリーフシードを片手にまどか達の元へと走ってくる。
「くたばれ!!」
芳文の鉄拳が、地面を粉々に粉砕しながらインキュベーターを粉砕する。
「やれやれ。もはやただの魔女では君を足止めするくらいにしかならないか」
右後ろ脚と尻尾のない新しいインキュベーターが、芳文達から遠く離れた場所に現れてテレパシーで語りかけてくる。
「まあ僕の目的は果たせた。もうじき鹿目まどかは絶望するだろう」
そう言ってインキュベーターはその姿を消した。
「……まどか」
顔を両手で覆って、泣き続けるまどかに芳文が声をかける。
「お願い……。見ないで……」
両親の顔を見ようともせず、まどかは嗚咽を漏らしながら懇願する。
「芳文さん、お願い……。早く連れて行って……」
まどかは弱々しく芳文に懇願する。
――もし、葉子のように家族に拒絶されたら。
――きっと、まどかは耐えられない。
芳文がまどかを抱き上げてその場を立ち去る為、動こうとするよりも早く詢子がまどかの両肩に手を置いた。
まどかが顔を上げて母の顔を見つめる。
その顔は、大好きな母親に拒絶されることを恐れる、まるで幼子のような泣き顔だった。
「まどか」
詢子はまどかを力強く、そして優しく抱きしめる。
「ずっと、自分達だけで抱え込んでいたんだな。気付いてやれなくてごめんな……」
詢子が涙を流してまどかに謝る。
「……ママ」
まどかが信じられないと言った顔で母を呼ぶ。
「今まで、良く頑張ったね」
智久が優しい顔で、まどかに近づいて言う。
「……あ」
「ねーちゃ、なかないで」
タツヤが小さな手で、まどかの涙を拭って言う。
「う……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ……!!」
母の腕の中で、まどかは幼い頃のように泣きじゃくる。
優しい家族に見守られながら、まどかはいつまでもいつまでも泣き続けた……。
389 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/05(日) 12:23:34.87 ID:PU3BTzzEo
☆
この街で泊まっている旅館の一室で、妻と二人の子供達が、ひとつの布団の上で眠る姿を見て、智久は優しい顔でふすまを締める。
「……まどかの様子はどうですか?」
隣の部屋で待っていた芳文が智久に尋ねる。
「泣き疲れたんだろうね。今はよく眠っているよ」
「そうですか」
智久は座布団の上に腰を下ろし、テーブルを挟んで芳文の顔を見ながら口を開く。
「君は今までずっと、まどかを守ってくれていたんだね」
「……はい」
「色々と大変だっただろう?」
「そうですね。でも、まどかと二人だったから。だから、絶望だけはしませんでした」
「そうか……。良ければ全部話してくれるかな」
「あたしにも、教えてくれるかい」
詢子がふすまを開けてそう言うと、智久の隣に座って芳文の顔を見つめる。
「……わかりました」
芳文は詢子と智久に真実のすべてを。そして見滝原を出てから今まで経験したことをすべて話した。
「……大変だったね」
詢子がすべてを話し終えた芳文にそう言う。
「……はい」
「これからも、まどかと二人で旅を続けるのかい?」
「はい。いつかきっと、まどかを普通の女の子に戻して、御二人の元へ返します。だから、俺を信じて待っていてください」
「……違うだろ」
そう言って詢子が芳文の側に歩いていき、芳文の両肩に両手を置いて、芳文の顔を見つめながら口を開く。
「まどかとあんたの二人で、一緒に帰ってくるんだ。あんただって、もうあたし達の家族みたいなもんなんだから」
「……っ」
詢子のその言葉に、芳文の目から涙が溢れ出て、頬を流れて床に落ち、爆ぜる。
「今までずっとまどかを守ってくれてありがとう。あんたはまどかの最高の恋人だよ。だから、絶対に二人で帰っておいで」
そう言って詢子は優しく芳文を抱きしめてやる。
「っ……うぅ……」
母と一緒に暮らしていた幼かったあの頃のように、芳文は詢子に母を感じながら、声を殺して幼子のように泣き続けた……。
390 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/05(日) 12:24:33.19 ID:PU3BTzzEo
☆
――三日後の朝。
泊まっている部屋の縁側で、まどかの長い髪を詢子が優しく梳いてやる。
「随分、髪も伸びたな」
「うん。変かな?」
「いや。長い髪も似合ってるさ。なんせあたしの自慢の娘だからな」
「もうっママったら」
そう言って母と娘は笑いあう。
あれから三日間、まどかと芳文はまどかの家族と一緒に過ごしていた。
久しぶりに両親に甘えたまどかの顔は、以前のように明るい笑顔に戻っていた。
芳文はそんな二人を微笑ましく思いながら、優しい顔で見ていた。
ふと、三日前にブティックでもらった白いリボンの事を思い出して、ポケットの中を探ってリボンを取り出す。
「お母さん、せっかくだからこれを着けてあげてください」
そう言って白いリボンを詢子に手渡す。
「どうしたんだい? これ」
「まどかにあげようと思ってたんですけど、なかなか渡す機会がなくて」
「そうかい。じゃあいっちょこのあたしが、まどかをかわいくコーディネイトしてやるかね」
「まどかは元々かわいいですよ」
「もうっ二人ともからかわないでよ」
まどかが詢子と芳文に笑いながら言う。
詢子はまどかの左右側頭部に小さな房を作って白いリボンを着けてやる。
「完成。良く似合ってるじゃないか。流石あたしの娘だ」
「うん。良く似合っててかわいいよ。まどか」
二人にそう言われて、まどかは頬を染めながら応える。
「ありがとう、二人とも」
旅館の前で詢子とタツヤを抱いた智久が、白いリボンを着けて詢子が一緒に選んで買ってあげた、新しい洋服を着たまどかと、芳文の二人を見送る。
「二人とも、体に気を付けるんだよ」
智久のその言葉に二人は頷く。
「僕達はいつまでも待っているからね」
「まってるー」
智久の足元で、タツヤが笑顔で二人に言う。
まどかと芳文は、笑顔でタツヤの頭を撫でて頷く。
「絶対に無理をするんじゃないよ。あんた達に何かあったら、あたし達が悲しむって事を忘れるな」
詢子が二人の肩を叩いて言う。
「絶対に二人で一緒に帰ってくるんだ。いいね」
「うんっ」
「はい」
まどかと芳文は力強く頷く。
「それじゃママ、パパ、タツヤ」
「お父さん、お母さん、タツヤ君」
『行ってきます!!』
まどかと芳文は二人で手を繋いで、まどかの家族に背を向けて歩いていく。
優しい家族に見送られながら、希望の未来を求めて、まどかは最愛の恋人共に歩いていく。
「芳文さん」
「ん?」
まどかが、隣を歩く芳文の顔を見上げながら言う。
「今までありがとう。ずっと一緒にいてくれて」
「……ああ」
「これからも、よろしくね」
「ああ。俺達はずっと一緒だ」
芳文が優しい顔でそう答えると、まどかは芳文の手を胸元に持ってきて抱くようにして言葉を紡ぐ。
「うんっ。絶対に二人で一緒にみんなの所に帰ろうね」
「ああ」
まどかは芳文に笑顔を見せてから、もう一度口を開いた。
「もう、くじけない」
つづく
391 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/05(日) 12:31:05.69 ID:PU3BTzzEo
杏子「つづく」
杏子「あと2〜3話で完結予定だ」
杏子「次回予告」
かずみ「どうしたらいいの……」
まどか「もう、大丈夫だよ」
かずみ「リーミティ・エステールニ!!」
まどか「ティロ・フィナーレ!!」
インキュベーター「毒は毒を持って制するしかないだろう?」
第23話 「わたし達は絶対に負けない」
杏子「じゃあな」ノシ
392 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/05(日) 12:41:36.99 ID:PU3BTzzEo
杏子「余談」
杏子「今のまどかの髪型は女神まどかと同じだ」
杏子「社が戦ったオクタヴィアはほむらがいた世界のさやかのなれの果てだ……」
杏子「以上。次の更新は出来るだけ早めにするよ」
393 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/05(日) 13:49:10.74 ID:PAj6ivkKo
乙でした
オクタヴィアが出てきたときさやかが何かされたかと思ってビビった
まあよく読むとちゃんと予防線は張られてるけど
しかしQBは絶対的な絶望を与えようとして、逆に帰れる場所という絶対的な希望を与えてしまった訳だな
そんなQBにこの言葉を贈ろう
ざまああああああああwwwwwwwww
394 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/05(日) 13:49:55.85 ID:PAj6ivkKo
乙でした
オクタヴィアが出てきたときさやかが何かされたかと思ってビビった
まあよく読むとちゃんと予防線は張られてるけど
しかしQBは絶対的な絶望を与えようとして、逆に帰れる場所という絶対的な希望を与えてしまった訳だな
そんなQBにこの言葉を贈ろう
ざまああああああああwwwwwwwww
395 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/05(日) 13:51:38.54 ID:PAj6ivkKo
あれ?エラー出たのに入ってる
連投スマンorz
396 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/05(日) 19:27:42.80 ID:PU3BTzzEo
杏子「ラストも近いので、ちょっとアンケート」
杏子「次回登場予定のかずみ☆マギカ組の扱いについて」
杏子「1話限りのゲスト扱いと、まどか達の仲間になるのどっちがいい?」
杏子「ゲストの場合は、その話の中でのみ共闘」
杏子「仲間にする場合は、最終決戦まで一緒に共闘」
杏子「好きな方を選んでくれ。水曜日の夜8時時点で要望の多い方にするよ」
杏子「仲間にしてもしなくても、最後までの物語の大筋は変わらないけどね」
杏子「かずみ組はかずみ、海香、カオル、ジュゥべえのみ登場。プレイアデス聖団の他のメンツはは出ないよ。人図絵が多すぎて収拾がつかなくなるからね」
397 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/05(日) 19:32:47.26 ID:PU3BTzzEo
杏子「訂正だよ」
>>390
誤 旅館の前で詢子とタツヤを抱いた智久が、白いリボンを着けて詢子が一緒に選んで買ってあげた、新しい洋服を着たまどかと、芳文の二人を見送る。
正 旅館の前で、詢子と智久とタツヤが、白いリボンを着けて、詢子が一緒に選んで買ってあげた新しい洋服を着た、まどかと芳文の二人を見送る。
誤 優しい家族に見送られながら、希望の未来を求めて、まどかは最愛の恋人共に歩いていく。
正 優しい家族に見送られながら、希望の未来を求めて、まどかは最愛の恋人と共に歩いていく。
>>396
訂正
誤 杏子「かずみ組はかずみ、海香、カオル、ジュゥべえのみ登場。プレイアデス聖団の他のメンツはは出ないよ。人図絵が多すぎて収拾がつかなくなるからね」
正 杏子「かずみ組はかずみ、海香、カオル、ジュゥべえのみ登場。プレイアデス聖団の他のメンツはは出ないよ。人図絵が多すぎて収拾がつかなくなるからね」
398 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/05(日) 19:34:24.72 ID:PU3BTzzEo
正 杏子「かずみ組はかずみ、海香、カオル、ジュゥべえのみ登場。プレイアデス聖団の他のメンツは出ないよ。人数が多すぎて収拾がつかなくなるからね」
399 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/05(日) 20:24:29.25 ID:BnjSbLSDO
かずみ達と共闘で、お願いします
400 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/05(日) 20:48:11.71 ID:Bc3JO3COo
共闘希望です
じュゥべえをどういう扱いにするのかが楽しみ
401 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/05(日) 20:51:13.42 ID:Bc3JO3COo
失礼、最後まで共闘希望です
402 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/05(日) 23:13:40.61 ID:mQCwUtob0
乙
せっかくなんだから共闘で
403 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/06/06(月) 01:11:17.96 ID:5eWJ4Ebk0
ここまで来たら共闘してみんながハッピーエンドを迎えられるのが良いと思う
404 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/06/06(月) 22:25:24.92 ID:Pfb/QD1Po
んー、一話だけが良いかな
やっぱり二人が始めた物語だから、二人に終わらせて欲しい
405 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/06(月) 23:04:53.13 ID:EV1Ax0hVo
ゲストでよくね?
流石にでしゃばり感が・・・
406 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/07(火) 00:26:54.05 ID:lpu9lGeYo
杏子「色んな意見があるね」
杏子「まあどっちでも話は進められるので、まだまだ意見要望は受け付けるってさ」
杏子「まどか達がメインの話だからね。かずみ達に喰われる展開にはならないよ」
407 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/07(火) 15:18:58.12 ID:LSKrcyEno
てす
408 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/07(火) 15:19:47.64 ID:LSKrcyEno
てす
409 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/07(火) 15:20:54.67 ID:LSKrcyEno
てす
410 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/07(火) 15:22:19.77 ID:LSKrcyEno
すまん、なんかバグった
ゲストでいーんじゃね、どっちでも大して変わらんだろうけど
411 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/08(水) 15:53:07.33 ID:xbejdm4ho
かずみおりこは一貫してメインシナリオに深く関わらなくて良くね?
412 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/09(木) 00:56:34.62 ID:16SfcTuOo
杏子「共闘希望4件」
杏子「ゲスト4件だね」
杏子「どうしたものか……」
杏子「元々、主役側の戦力がワルプル撃破後は、社とまどかの二人だけになってしまうのは、スレ立て時点で決まってたしね」
杏子「放浪編で二人と悲しい別れをする魔法少女、敵対する魔法少女、まどかと社を憎む魔法少女達が出てくるのも決まってた」
杏子「そういった魔法少女達との邂逅を経て、一時的にせよ味方になってくれる魔法少女がかずみ組なのさ」
杏子「出会う魔法少女全員が死んだり、憎んできたりするんじゃまどかがかわいそうだからね」
杏子「まあ、かずみの能力的にスピンオフの主役補正入れても、マミやあたしより少し強いくらいだから、ラスボスへの戦力にはならないんだ」
杏子「共闘した場合、ガンダムで例えるとエクシアが金ピカと戦ってる時のナドレ&キュリオスや、ダブルオーがリボーンズガンダムと戦ってる時のケルディム&アリオス扱いだから」
杏子「とりあえず、貴重な意見を元に間を取った話にしようかとの事。初期構想だと、絶体絶命のかずみ達にくじけない勇気を手に入れたまどか達が助太刀して、敵を撃破したらさようならって展開だったらしいから」
413 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/06/09(木) 01:55:46.76 ID:1TzmVOpMo
期待してます
414 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/09(木) 07:16:06.59 ID:NAm1iNGSO
どちらの例えも結構戦力になってる気がするが、誰も死なないなら初期案でいいよ。
415 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/06/12(日) 22:37:51.12 ID:W8DvnugS0
前回から1週間か
いよいよクライマックスだけに難産してるのかな?
416 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/12(日) 22:44:34.09 ID:sJ+NpgqDO
遅くともいいから、クオリティとかボリュームたっぷりでたのむ。
417 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/13(月) 00:40:59.57 ID:3h8B4TtAo
杏子「更新開始するよ」
418 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/13(月) 00:41:40.63 ID:3h8B4TtAo
――とある街の郊外。
灰色の空に浮かぶ巨大な逆さまの魔女が、三人の魔法少女達を嘲笑う。
――アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。
「リーミティ・エステールニ!!」
三角帽子を被った黒い魔法少女が、巨大な十字架の形をした杖を魔女に向けて、最大の魔力を込めた必殺の一撃を放つ。
ドオォォォォォォン……ッ!!
逆さまの魔女の顔面に直撃して、爆炎が巻き起こり魔女の全身が炎に包まれる。
「やった!?」
白と黄色の修道服のような衣装を着た魔法少女が叫ぶ。
「っ!? まだよ!! かずみ!! カオル!!」
胸元に茶色の大きなリボンの付いている、修道服に似た衣装を着て眼鏡をいる魔法少女が、二人の仲間の前に警告の言葉を叫んで立つ。
爆炎が魔女の放った魔力の波動で吹き飛ばされ、巨大な逆さまの魔女の姿が爆炎の中から現れる。
「くっ!!」
眼鏡の魔法少女が咄嗟にバリアを張って、魔女の放った波動を受け止める。
「く、うぅぅぅぅぅぅ……っ!!」
「海香!!」
かずみと呼ばれた黒い魔法少女が、眼鏡の魔法少女の名を叫ぶ。
――ゴッ……!!
海香のバリアごと三人は魔力の波動で吹き飛ばされる。
『きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
カオルと海香は、背後の瓦礫の山にその体を叩きつけられる。
かずみは咄嗟に手にした武器を地面に突き立てて、仲間達への激突を回避する。
「このままじゃやばいよ……」
カオルがよろよろと立ちあがりながら、海香にぼやく。
「わかってる!! けどあいつには……ワルプルギスの夜には弱点なんてない!!」
自身の固有魔法である、敵の弱点を調べる魔法――イクス・フィーレ―を使った海香は苛立ちを隠せずに叫ぶ。
「ジュゥべえ!! ワルプルギスの夜って三年前に他所の街の魔法少女達が倒したんだよね!? なのになんでこの街に現れるの!?」
カオルが自分達に魔法少女の力を与えた、魔法の使者に悲鳴のような疑問をぶつける。
「あれは恐らく、他所の宇宙から連れてきたワルプルギスだろう」
ジュゥべえと呼ばれた契約の獣が、瓦礫の影からその姿を現して説明する。
「おそらくオイラ達の抹殺と、かつて別のワルプルギスを倒した魔法少女を倒すために」
419 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/13(月) 00:42:26.82 ID:3h8B4TtAo
「そうだよ」
不意に現れた白い影が、三人と一匹の前にその姿を現す。
尻尾と右後ろ脚のない白い獣は、にっこりと微笑みながらかずみ達に告げる。
「鹿目まどかほどではないが、そこにいるかずみから得られるエネルギーも是非、回収しておきたいからね」
「てめえ……」
ジュゥべえがインキュベーターを睨みつける。
「やれやれ。君も僕のコピーのように、感情なんて精神疾患を患うなんてね。訳が分からないよ」
インキュベーターは目を閉じてフルフルと首を振る。
「僕等の宇宙を守る為なんだ。この宇宙を犠牲にするのはやむを得ないんだよ」
「ふざけるな!! てめえのせいでこっちの里美まで!!」
「この世界のプレイアデス聖団七人との、契約を結んだのは他ならぬ君自身だろうに」
「うるせえ!! せめてこの三人だけはオイラが守る!!」
ジュゥべえが憎しみを込めた視線で、インキュベーターを睨みつける。
「もう体のスペアもない君に何が出来ると言うんだい? せいぜいそこの三人と最後まであがくといいさ」
インキュベーターはそう言い放つと、その姿を消した。
――アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。
ワルプルギスの夜が三人と一匹に迫る。
圧倒的な力の差に、海香とカオルは言葉も出せずに竦み上がる。
「どうしたらいいの……」
かずみがへたり込んだまま、絶望の言葉を口にしたその時だった。
高速で飛来した眩いピンク色に輝く魔力の矢が一八本、ワルプルギスの夜の全身に突き刺さり小爆発を起こした。
「――え?」
「もう、大丈夫だよ」
呆然とするかずみの前に、桃色の長い髪に白いリボンを着けた、桃色の魔法少女がふわりと着地して、にっこりと微笑んだ。
第23話 「わたし達は絶対に負けない」
420 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/13(月) 00:43:04.02 ID:3h8B4TtAo
「――ワルプルギスの夜か」
黒い戦士が、桃色の魔法少女の隣に降り立って呟く。
「――街の方に行かれる前に片づけるぞ、まどか」
「うん。芳文さん、何本いる?」
「六本だな。とっとと片づけて食事に行こう」
「了解だよ」
まどかが弓を持ってない右手を横薙ぎに振るった瞬間、マギカ・ブレードが芳文の右手側に三本、左手側に三本生成される。
芳文はマギカ・ブレードの柄を、人差し指と中指の間に一本、中指と薬指の間に一本、薬指と小指の間に一本挟んで拳を固めると、左右の手に三本ずつマギカ・ブレードを装備した。
マギカ・ブレード六本の超重量で、芳文は足元の舗装されていないぬかるんだ地面に、徐々に陥没し沈んでいく。
ズン!!
芳文は一歩前に進んで、地面を抉る。
「行くよ、芳文さん」
「ああ」
まどかが手にした弓を消滅させて、ワルプルギスの夜に向けて大型の弓を横向きに顕現させる。
右手で矢を引き絞る動作をして、巨大な魔力の矢を顕現させ、巨大な弓で引き絞る。
眩いピンク色に光り輝く魔力の矢の先端が、まるでドリルのように超高速回転を始める。
「ティロ・フィナーレ!!」
まどかがそう叫んで右手の親指と人差し指を放した瞬間、巨大な矢が放たれた。
「――え?」
かずみの視線から忽然と消えた芳文は、超高速でワルプルギスの夜に向かって飛んでいく矢の上に、飛び乗っていた。
ワルプルギスの夜が自身の力で浮き上がらせたビルを、芳文の乗った矢に向けて投げつけてくる。
「――はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
左右三本ずつ装備したマギカ・ブレードを、芳文が神速の速さで振るいながら、巨大なビルを斬り裂いて光の粒子に変えながら、ワルプルギスの夜に突き進む。
――ズガアァァァァァァァァァァンッ!!
ワルプルギスの夜の強固な胴体に、まどかのティロ・フィナーレが大穴を開ける。
――ヒュン!! ヒュン!! ヒュン!! ヒュン!! ヒュン!!
まどかの矢がワルプルギスの夜に突き刺さる瞬間、天空高く跳躍した芳文が右手に一本だけマギカ・ブレードを残して、五本のマギカ・ブレードを間髪入れずに連続で投げつけた。
ズガアァァァン!! ズガアァァン!! ズガアァァン!! ズガアァァン!! ズガアァァン!!
芳文が神速の速さで投げつけたマギカ・ブレードが、ワルプルギスの夜の頭部、右腕、左腕、胸部、歯車の中心突きささり破壊エネルギーを魔女の内部へ送り込む。
「――アトランティス」
芳文が右足を上げながら、ワルプルギスの夜の歯車の端に落ちていく。
ズガアァァァァァァァァァァンッ!!
歯車に叩きつけられたかかと落としが、魔女の歯車に複数の亀裂を走らせる。
「……ストライク!!」
歯車に右足のひざ裏までめり込ませたまま、左足で歯車を思い切り蹴りつけて後方へ飛ぶ。
魔女の巨大な歯車は、約四分の一が欠損して落ちていく。
余りに多大なダメージを受けた魔女は、周囲に浮かばせていた物を次々と落下させていく。
魔女の歯車の残っている部分も、無事な所がほとんどないほどにヒビだらけになっていた。
421 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/13(月) 00:43:30.60 ID:3h8B4TtAo
「芳文さん!!」
まどかのテレパシーが届くと同時に、二本の矢がワルプルギスの夜に突き刺さり、巨大な封印魔法を展開する。
そして芳文の持つマギカ・ブレードの柄に、遅れて飛んできた矢が吸い込まれる。
マギカ・ブレードが金色の光を放ちながら、魔力による推進力と共に、ワルプルギスの夜を切り裂けるほどに長大な魔力の刃を発生させる。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
超高速で飛行する芳文が、金色に照らされながらマギカ・ブレードを構えつつ、ワルプルギスの夜へと迫る。
「マギカ・シグヴァン!!」
ズバアァァァァァァァンッ!! ズバアァァァァァァァンッ!!
芳文の目にも止まらぬ超神速の斬撃とまどかの叫ぶ声が重なり、ワルプルギスの夜が左斜め下から振り上げられた一撃と、右斜め下に振り下ろされた一撃によって一瞬で四分割される。
ズガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
四分割されたワルプルギスの夜が、歯車の中心から脳天までをとどめの唐竹割りで真っ二つにされる。
六分割されてバラバラになった魔女を閉じ込めた、ピンク色に輝く封印魔法を睨みつけながら、芳文が地面を削りつつ着地する。
「昇華!!」
まどかが叫ぶと共に、封印の光球が一際眩しく輝いて、内部のワルプルギスの夜の残骸とその呪いを完全に消滅させた。
芳文は未だに魔力による噴射を続けているマギカ・ブレードを、両手でブンブンと頭上、右側面、正面、左側面へと移動させながら振り回す。
マギカ・ブレードから噴射が消えて、刀身の輝きが収まるのを確認し、地面に剣を突き立てた。
分厚い雲に覆われた空に、朝の光が射して芳文と彼に駆け寄るまどかを照らす。
「……すごい」
かずみが呆然と、たった二人であのワルプルギスの夜を倒してしまった、まどかと芳文を見ながら呟く。
「かずみーっ!!」
「かずみ、大丈夫!?」
カオルとジュゥべえを肩に載せた海香がかずみの元へと駆け寄ってくる。
「わたしは平気だよ」
カオルの手を借りて立ち上がりながら、かずみは二人にそう答える。
「……あれが鹿目むまどかと社芳文か」
ジュゥべえがそう呟いたその時だった。
地面に突き立てたマギカ・ブレードを手にして、芳文がかずみ達の元へ近づくと、神速の速さでジュゥべえの首を掴んで宙づりにする。
「……がっ!?」
「……見た事のないタイプのインキュベーターだな。まどか、マギカ・ブレードの魔力チャージだ」
そう言って芳文が、マギカ・ブレードをジュゥべえに向けたその時だった。
「待ってお兄さん!! その子は悪い子じゃないの!!」
かずみが芳文の剣を持つ手にしがみついて叫ぶ。
422 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/13(月) 00:44:01.25 ID:3h8B4TtAo
「……こいつらは魔法少女を電池か何かくらいにしか思っていない」
「知ってる!! でもジュゥべえは感情に目覚めたの!!」
かずみのその言葉に、芳文はカオルと海香の顔を見る。
カオルと海香は真剣な表情で芳文に向かって口を開いた。
「かずみの言う通りだよ」
「今のジュゥべえは本当に私達の味方なんです」
「……芳文さん」
まどかに袖を引かれて、芳文はジュゥべえを掴む手を緩めて解放する。
「げほっげほっ……。いきなり何しやがる」
地面の上に猫のように着地したジュゥべえが芳文を睨みつける。
「ふん。随分感情豊かな振りをするのが上手いな」
「ふざけんな!! いきなり人を殺そうとしやがって!!」
「人じゃないだろうが、淫獣の分際で」
「誰が淫獣だ!!」
インキュベーターを嫌っている芳文と、ジュゥべえの口喧嘩をよそに、かずみ達はまどかと向き合う。
「助けてくれてありがとう。わたしはかずみ。こっちがカオルでこっちが海香だよ」
「かずみを助けてくれてありがとう」
「あなた、すごいのね。本当に助かったわ。ありがとう」
三人に礼を言われて、まどかはにっこりと微笑んで口を開く。
「どういたしまして。わたし、鹿目まどか」
「良い名前だね。まどかって呼んでもいい?」
かずみが笑顔でまどかに尋ねる。
「いいよ。かずみちゃん」
まどかが笑顔でそう答えると、かずみは嬉しそうに笑顔を見せる。
「今はその命を預けといてやる。だが貴様が妙な真似をしたらその時は殺す」
「ふん。てめえと関わる事なんてもうねえよ」
芳文とジュゥべえがそれぞれの相棒の元に戻ってくる。
「まどか、この子達はどうだ?」
「かずみちゃんはかなり強い力があるけど、それでもちょっと無理かな」
「……そうか」
「何の話?」
かずみが?マークを浮かべながら、まどかと芳文の会話の内容について尋ねる。
「それは……」
――グーキュルルルルル……。
不意におなかの鳴る音が響いた。
「……カオル。こんな時に」
海香がカオルをジト目で見る。
「私じゃないよ!!」
慌ててカオルが否定すると、芳文がばつが悪そうに名乗り出た。
「すまん。今のは俺だ」
――クー。
またおなかの鳴る音が響く。
今度はまどかが顔を赤らめながら、ばつが悪そうに切り出す。
「……実は私達昨日の夜から何も食べてなくて。ワルプルギスのせいでどこのお店も閉まってたから……」
かずみ達三人は顔を見合わせると、クスクスと笑いだす。
「それじゃ、助けてくれたお礼にわたしがごはん作ってあげるよ」
かずみはにこにこと笑いながら、まどかと芳文にそう提案するのだった。
423 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/13(月) 00:45:04.71 ID:3h8B4TtAo
☆
「おいしい!!」
「……うまい」
かずみ達の家に招待され、かずみの作った手料理を食べたまどか達は、あまりの美味しさに思わず喜びの声を上げる。
「こんな美味しい物食べたの久しぶりだよっ」
「二人の口に合ったんなら良かった。おかわりもあるからね」
かずみは嬉しそうにまどかにそう答えると、カオルにご飯のおかわりをよそってやる。
「食事が済んだら、お話いいですか?」
海香がテーブルの対面に座る芳文に言うと、芳文は小さく頷いて食事を続けた。
「御馳走様でした」
「御馳走様」
まどかと芳文が食事を終えると、かずみがてきぱきと食器を片づけて戻ってくる。
「それじゃ、お互いの事情を説明しましょうか」
海香がそう言うと、芳文が口を開く。
「……君達は魔法少女の真実を知っているのか?」
芳文の質問に、かずみ達はお互いの顔を見合わせてから、逆に質問する。
「魔女がどういう物なのか、まどかとお兄さんは知ってるの?」
「……うん」
かずみの疑問にまどかは頷いて肯定する。
「……そっか」
かずみは目を伏せると、ぽつりぽつりと自分達の境遇を話し始めた。
「わたしとカオルと海香はね、ジュゥべえと契約して魔法少女になったんだ」
「今はもういないんけど、他に後四人仲間がいたんだ……」
そこまで言って、かずみ達は俯いてしまう。
「みんなで協力して魔女退治をしてたんだけど、ある日インキュベーターが現れて……」
一人、また一人と仲間達がインキュベーターの策略で、魔女になったり魔女との戦闘で命を落とした事を、かずみ達は震える声で話す。
「……この世界の里美も魔女になってしまった。奴のせいで……」
部屋の片隅でジュゥべえが苦々しい顔で呟く。
「里美?」
芳文のその言葉にカオルが答える。
「ジュゥべえと仲が良かった子だよ」
「この世界とか言ってたな。そいつはオリジナルのインキュベーターなのか?」
「うん。元の世界にもわたし達がいて、一緒に魔女退治をしてたんだって」
かずみがそう答えると、ジュゥべえは自嘲気味に答える。
「そうさ。オイラはあっちの里美だけでなくこっちの里美も殺してしまったんだ。べえちゃん、べえちゃんってオイラに抱きついてくるあの子を……」
424 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/13(月) 00:45:52.06 ID:3h8B4TtAo
「……罪悪感が芽生えたとでも言うのか? インキュベーターが」
芳文がそう言うと、ジュゥべえは投げやりに返す。
「オイラを消したいなら消せばいいさ。けどその前にかずみ達を人間に戻してやってくれ。もうこの子達が魔女に殺されたり、魔女になって死ぬのを見るのは嫌だ……」
「……」
芳文が視線をかずみ達に向けると、かずみ達は驚いた顔でまどかと芳文を見つめていた。
「……俺達は魔法少女を人間に戻せる、強い魔力を持った魔法少女を探しているんだ」
芳文がそう言うと、まどかが話を続ける。
「わたしは魔法少女を元の人間に戻してあげられるの。だけど自分自身を元に戻すまでの力はないから……」
「わたしの力がどうってそういう事だったんだね」
「……うん」
かずみにまどかが頷くのを見て、芳文がかずみに言う。
「まどかに人間に戻してもらえば、君達がインキュベーターに狙われる事もなくなるだろう」
「……本当に人間に戻れるの?」
海香が尋ねると、まどかは力強く頷く。
「かずみ!! 海香!! 本当に人間に戻れるんなら戻してもらおうよ!!」
カオルが二人にそう言ったその時だった。
――ズガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
凄まじい轟音と共に、激しい地震が発生する。
家具が倒れ、窓ガラスが割れる。
芳文がまどかの上に覆いかぶさる。
かずみ達はあわててテーブルの下に隠れる。
「みんな早く外へ!!」
揺れが治まったのを見計らって、海香が叫ぶ。
この場にいる全員が、家の外に出る。
「……何、あれ」
まどか達を誘導して先に外に出たかずみが絶句する。
いつの間にか黒い雷雲が上空に立ち込めていて、全長五十メートル程の巨大な全身が真っ黒の人型魔女が、街の中央に仁王立ちしていた。
425 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/13(月) 00:46:27.28 ID:3h8B4TtAo
☆
「……何あれ」
かずみが呆然と呟いたその時だった。
『あれは合成魔女さ』
不意に、忌々しいインキュベーターの声が、全員の脳裏に響く。
『もはやワルプルギスの夜でさえ、君達の相手にならない以上、こちらもなりふり構っていられないのでね』
「貴様、一般市民まで巻き込むつもりか!!」
芳文が殺意を込めて叫ぶ。
『かつて鹿目まどかから採取したエネルギーを込めた合成魔女だ。そうだな、メフィストとでも名付けようか。君達に勝ち目はないよ』
「わたし達は絶対に負けない!!」
まどかが叫ぶ。
『そうかい。早く倒さないとこの街は壊滅だよ』
インキュベーターは愉快そうに、捨て台詞を残してテレパシーを打ち切った。
「行くぞ、まどか」
「うん」
変身したまどかは芳文に頷く。
「ちょっと待ってよ!!」
カオルが駆け出そうとする二人を呼び止める。
「あんな相手に勝てるわけがない!!」
海香が叫ぶ。
「カオルと海香の言う通りだよ。あの魔女からは物凄い力を感じる。ワルプルギスの夜なんて、目じゃないくらいに……」
かずみもまどかと芳文に弱々しく言う。
ワルプルギスの夜と戦ってから、まだそんなに時間も立っていないのに、もっと強い相手が現れた事でかずみ達の心は今にも挫けそうだった。
「勝てないかどうかは、やってみないとわからない」
芳文がかずみにそう言うと、まどかは三人ににっこりと微笑んで言う。
「絶対に勝ってみせるから」
「……どうして? どうして笑っていられるの?」
かずみはまどかに疑問をぶつける。
「もう、くじけないって約束したから。それに……」
まどかは芳文に視線を向けてから、かずみの目を見つめて口を開いた。
「一人じゃないから。だから、がんばれる」
――ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!
魔女の雄叫びが大気を震わせて街中に鳴り響く。
「行くぞ」
「うんっ!!」
芳文とまどかはかずみ達に背を向けると、合成魔女目掛けて走り出した。
かずみ達はまどか達の後姿を呆然と見送るだけだった……。
426 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/13(月) 00:47:40.45 ID:3h8B4TtAo
☆
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ママぁこわいよう!!」
逃げ遅れた母子が合成魔女に踏みつぶされそうになっている。
「ティロ・フィナーレ!!」
まどかの放った巨大矢が合成魔女の左胸を撃ち貫いて、姿勢を崩させる。
「早く逃げてください!!」
芳文が一瞬で母子を抱きかかえてその場から離脱して、合成魔女から離れた場所に母子を下す。
「は、はい!!」
母子が逃げたのを確認して、芳文はまどかの隣へと駆けつける。
「……やっぱり魔女相手だと、心臓を狙っても意味ないね」
まどかが弓を顕現させてぼやく。
「マギカ・シグヴァンを叩き込むにしても少しでかすぎるな。ある程度奴を削らないと」
「そうだね。魔力を限界まで注ぎ込めば行けるけど、それでわたし達が魔女と魔神になったら意味がないものね」
「ああ。まどか、六本だ」
「うん」
まどかがマギカ・ブレードを六本生成する。
芳文はマギカ・ブレードを左右三本ずつ装備すると、合成魔女目掛けて走り出した。
「いっけえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
まどかが十八本の分裂矢を放つ。合成魔女の全身に着弾するが、大したダメージにはなっていない。
「このおっ!!」
爆発する矢を続けて射るが、あまりに相手が巨大すぎて、表面を僅かに抉るだけだった。
「駄目だ……。芳文さんに削ってもらってから、マギカ・シグヴァンを撃つしかない……」
まどかは少しでも芳文のサポートをするべく矢を射続ける。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
巨人の振り下ろす拳と踏みつけを躱しながら、芳文はマギカ・ブレードの六刀流で斬りつける。
ただでさえすさまじい破壊力を持つ、マギカ・ブレードの六刀流は合成魔女の右足を簡単に斬り裂いて消滅させる。
右足の膝から下がなくなった魔女が、左手を振り下ろす。
芳文はその場で振り下ろされた左手を切断する。三本ずつ束ねられたマギカ・ブレードの相乗効果で、左手の肘まで消滅する。
――グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!
魔女が顔のない丸い頭を芳文に向けて振り下ろす。
芳文が振り下ろされた頭を切断しようとしたその時だった。
直観的に嫌な感じがして、咄嗟にその場を離脱しようとするが、マギカ・ブレードを六本も持っていたのが仇になった。
素手の時よりも機動力が落ちていて、逃げきれない。
ドガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
魔女の頭が大爆発を起こし、芳文は巻き込まれてしまった。
咄嗟にマギカブレードでガードしたが、かなりの深手を負って吹き飛ばされる。
マギカ・ブレードを持っていた指が爆発で千切れ飛び、マギカ・ブレードをすべて落としてしまう。
まどかからの魔力供給で、驚異的な再生が始まるが、魔女の振り下ろした右拳に芳文は叩き潰されてしまう。
427 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/13(月) 00:48:39.40 ID:3h8B4TtAo
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「芳文さん!!」
まどかが咄嗟にマギカ・イージスを展開させて、魔女が連撃を繰り出そうとする右拳を受け止めた。
すると魔女の体から、翼竜のような姿をした使い魔が十匹ほど生み出され、高速でまどかに迫る。
ガシンッ!! ガシンッ!! ガシンッ!!
魔女の拳がマギカ・イージスを破ろうと、何度も何度も振り下ろされる。
芳文が動けるようになるまで、まだ少し時間がかかる。マギカ・イージスを展開している限り、まどかは動く事が出来ない。
絶体絶命の大ピンチに陥ったまどかが、使い魔を睨みつけたその時だった。
「リーミティ・エステールニ!!」
「パラ・ディ・キャノーネ!!」
かずみの放った魔力の光線と、カオルがオーバーヘッドキックで放った、海香が作り出した魔力の光弾がまどかに迫る使い魔に直撃して消滅させた。
「かずみちゃん!! カオルちゃん!! 海香ちゃん!!」
まどかが目の前に降り立った三人の名前を叫ぶと、三人はまどかに振り返って微笑む。
「魔法少女はさ、助け合いだよね」
かずみがそう言って笑うと、まどかは嬉しそうな笑顔で頷いた。
「うんっ!!」
「また使い魔が来るよ!!」
カオルが叫ぶ。
「使い魔は私とカオルで相手をするわ。かずみはまどか達の援護をして。ジュゥべえ!!」
海香が叫ぶ。
「おう」
「まどかのソウルジェムを浄化してあげて!!」
「合点だ!!」
ジュゥべえが飛び跳ねて空中で回転すると、まどかの胸元のソウルジェムから穢れが吸い込まれていく。
「ありがとうジュゥべえ!!」
まどかはジュゥべえに礼を言うと、かずみに向かって頷く。
「まどか!!」
再生が終わった芳文が、まどかに叫ぶ。まどかはマギカ・イージスを解除する。
――グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!
合成魔女が芳文目掛けて拳を振り下ろす。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
芳文の鉄拳と魔女の拳が激突する。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
ズガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
魔女の右拳が粉々に粉砕されて、肩から千切れ飛ぶ。
「かずみちゃん!!」
「うん!!」
「リーミティ・エステールニ!!」
「ティロ・フィナーレ!!」
まどかの攻撃が魔女の下半身に大穴を開け、かずみの全力の薙ぎ払うように放たれた攻撃が下半身を吹き飛ばした。
428 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/13(月) 00:49:51.16 ID:3h8B4TtAo
「まどか今だ!!」
芳文がまどかに叫ぶ。
「うん!! マギカ・ブレード!!」
まどかの放った矢が三本に分裂し、二本が上半身だけになった魔女を封印する。
最後の一本の矢を芳文が掴んだ瞬間、マギカ・ブレードへと変化しそのまま金色の輝きと共に長大な刃と魔力による噴射を発生させる。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「マギカ・シグヴァン!!」
芳文の神速の斬撃とまどかの叫びがシンクロし、合成魔女を六分割する。
「昇華!!」
まどかのとどめの宣誓と共に、封印魔法が合成魔女を飲み込んだまま完全に消滅させた。
ヒュンヒュンヒュン……。
芳文が噴射が消えるまでマギカ・ブレードを振り回して、魔力の消えたマギカ・ブレードを地面に突き立てる。
黒い雷雲が霧散していき、鮮やかな夕焼けが世界を紅く染める。
芳文がまどか達の方へ視線を向けると、まどかとかずみが抱き合って勝利を喜び合っていた。
カオルと海香がまどかとかずみに駆け寄って、二人に抱きつく。
芳文は見滝原での仲間達との事を思い出しながら、四人に向けて優しい笑みを浮かべるのだった。
☆
――翌日の午後。
「本当に、わたし達だけ人間に戻してもらってよかったの?」
一晩泊めてもらったかずみ達の家の前で、かずみがまどかに尋ねる。
「うん。かずみちゃん達は帰れる所が残ってるから」
まどかはそう言って笑う。
「でも……」
「かずみちゃんがわたし達に付いてきてくれるって、言ってくれた事、すごく嬉しかったよ」
「まどか……」
「わたしはインキュベーターになんか負けないから。絶対に未来を諦めたりしないから」
まどかのその言葉にかずみは微笑んで、まどかの手を取る。
「いつか、人間に戻れたらまた会おうね」
「うんっ」
「さよならは言わないよ。またね、まどか」
「うんっ。またね、かずみちゃん」
まどかとかずみはお互いに再会を約束して、お互いの手を名残惜しそうに放した。
「お兄さんも元気でね」
「ああ。世話になった」
芳文は出来るだけ誠意を込めて、まどかの友人になってくれた少女に礼を言う。
「まどか、お兄さん元気でね」
「体に気を付けてくださいね。ありがとうございました」
カオルと海香も笑顔でまどか達を見送ってくれる。
「カオルちゃんと海香ちゃんも元気でね」
まどかはそう言って二人に別れを告げる。
「それじゃあ……。みんな、またね」
まどかは笑顔で三人に手を振りながら、芳文と共に歩いていく。
いつかまた、この街で出会った友人達との再会を夢見ながら……。
429 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/13(月) 00:51:02.61 ID:3h8B4TtAo
☆
「まさか、合成魔女までやられるなんて……」
笑顔でかずみ達と別れて去っていく、まどか達を遠い場所から監視しながら、インキュベーターは呟く。
「もうあの二人に手を出すのはやめた方が良いんじゃないか?」
ジュゥべえがインキュベーターの背後で語りかける。
「……かずみ達と一緒にいなくていいのかい?」
「もう別れは済ませた。あいつらはこれからは普通の人間として生きていくんだ」
「そうかい」
インキュベーターの目が光った瞬間、ジュゥべえの体が爆散する。
「……これで死ねる」
頭だけになったジュゥべえがそう言って笑う。
「訳が分からないよ。家畜に情を移すなんて」
「てめえには永遠にわかんねえだろうよ」
そう言ってジュゥべえはインキュベーターを嘲笑する。
「……ふん」
インキュベーターが背を向けるのとほぼ同時に、ジュゥべえがその生命活動を停止して物言わぬ骸になる。
「……まだこちらには最後の切り札がある」
インキュベーターは三本足でひょこひょこと歩きながら呟く。
「鹿目まどかが絶望しないのなら、魔力を使い切らせればいい」
そう言って、ニタァと邪悪な笑みを浮かべながら、ジュゥべえの骸に振り返って語りかける。
「残念だったね。君の大事なプレイアデス聖団の生き残りもすぐに死ぬんだ。魔女になった鹿目まどかの手にかかってね」
インキュベーターはジュゥべえの骸に背を向けて歩きながら、誰にともなく呟いた。
「毒は毒を持って制するしかないだろう?」
つづく
430 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/13(月) 01:01:09.28 ID:3h8B4TtAo
杏子「つづく」
杏子「最終決戦とエピローグであと2話だ。多分」
杏子「おまけ。厨二的設定コーナー」
杏子「3年後の社の攻撃力。パンチが420。キックが500。アトランティス・ストライクが800。マギカ・ブレード装備時は420+999。新技マギカ・ブレード六刀流はマギカ・ブレード999×3+420×2。 マギカ・シグヴァン時は攻撃力が約40倍になる」
杏子「3年後のまどかの攻撃力。オメガ・ジャッジメント(爆発する矢)が640。ブラスト・シューター(分裂矢)が矢1本に付き400。まどか版ティロ・フィナーレが900(貫通特化の巨大矢)」
杏子「社芳文 レベル99 HP9999 MP100(パンチやキック1発につきMP1使用。まどかからの魔力供給ですぐにフル回復する) 固有アビリティ かばう 投げる 二刀流 両手持ち 斬鉄 カウンター 白刃取り オートリジェネ オートリフレッシュ 六刀流」
杏子「鹿目まどか レベル90 HP480 MP9999 固有アビリティ 絶対防御壁(マギカ・イージス) 封印魔法(マギカ・ホールド) マギカ・ブレード生成 必殺剣(マギカ・シグヴァン) アレイズ(魔法少女人間化) ケアルガ 狙う 狙い撃ち オートリジェネ」
杏子「
>>348
の社のマギカ・ブレード装備時の攻撃力訂正。999+350だから、1349が正解」
杏子「じゃあな」
431 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/13(月) 01:04:32.04 ID:BeoEkQdV0
乙ですたー
べぇちゃん・・・
何はともあれ、残り二話が気になるご様子で!
432 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/13(月) 08:04:55.97 ID:d+AiqP7SO
超乙。メフィストがラスボスだと思ったがそんなことは無かったぜ。
433 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/13(月) 09:13:39.04 ID:c+e5DW3Yo
本編以上に胸糞悪いQBだな
こいつにも是非感情をくれてやってくれ
今までの全てが徒労に終わったことによる「絶望」という名の感情を
434 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/13(月) 13:52:00.78 ID:UB18sNYwo
「死は感情の落とし子である」だっけか
しかしこの二人が揃うとホント別ゲーだなwww
435 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)
[sage]:2011/06/13(月) 13:56:05.16 ID:benKuq1AO
ようやく追いついたぜ……。
なんか二人の旅路がベルセルクの喪失花の章みたいになってるな。
あと、どろろ。
……てか、まどかを元に戻せる魔法少女がいたとして、その子が残ってたらクリームヒルト以上の魔女発生の危機になるんじゃないか?
436 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
:2011/06/13(月) 17:20:38.31 ID:17OtjwtAO
まどかとその子で同時にお互いにアレイズするんじゃね?
437 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/14(火) 09:17:07.94 ID:3uAU3LhO0
頼む、「キュウべえ」とジュウべえにも救いをくれてやってくれ!(本人たちは満足かも知れんが)
とりあえず、芳文はジュウべえに、ごめんなさいしないといけないよね(´・ω・`)
438 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/14(火) 19:28:22.70 ID:BAVYQbVRo
>>61
439 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/17(金) 02:42:59.45 ID:67Sr79E+o
更新まだかなー
440 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/06/19(日) 04:12:41.12 ID:yFYrwpWDo
杏子「こんな時間に更新開始」
441 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/19(日) 04:13:19.99 ID:yFYrwpWDo
「――あれから、もう三年も経つのね」
棚の上に飾られた写真立てを手にして、私は誰にともなく呟く。
写真立ての中に収められた一枚の写真の中で、キュゥべえを膝の上に載せたまどかが笑っている。
まどかの両隣にはエイミーを抱いた美樹さやかと巴マミが笑っている。
美樹さやかの後ろには、流し目でまどか達の様子を見ている佐倉杏子が。
そして、横を向いて眼下の見滝原の街を見る私が、あの夏の青空の下にいた。
右手で写真立てを持ったまま、左手でポケットの中からロケットを取り出して、ロケットを開ける。
「……芳文」
ロケットに収められた写真の中で、生後七か月の芳文が若い頃の私に抱かれて笑っている。
芳文を抱いている私の隣には、私の夫だったあの人が優しい顔で微笑んでいる。
あの人が残したカメラで撮られた、二枚のこの写真を見つめながら私は呟く。
「――どうか、あの子達を見守っていて」
残酷な運命を、まどかと芳文に押し付ける神になんて、私は祈らない。
私はかつて私が愛し、今も愛している天国のあの人に祈る。
私達の息子と、息子の愛する彼女の無事を……。
第24話 「いつか絶対、二人でみんなの所に帰るんだから……」
442 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/19(日) 04:14:10.69 ID:yFYrwpWDo
――ピロリロリン。
普段まったく使わない携帯電話が、テーブルの上でメールの着信音を鳴らして私に知らせる。
私は携帯に届いたメールを見て、携帯をポケットに突っ込む。
「エイミー。少し留守にするわ。良い子にしているのよ」
私は丸まっているエイミーの頭を優しく撫でて、ストールを羽織って家を出る。
木枯らしが舞い散る歩道を歩きながら、冷たくなってきた風に思わず両手を合わせて擦る。
家を出てから十数分ほど歩いた所で、目的地である喫茶店に到着し、私は店内へと入る。
店内に入り、奥の方へ視線を向けると良く見知った三人組が、奥の席に陣取っていた。
「――待たせたかしら」
私がそう声をかけると、彼女達は私の顔を見て挨拶を返してくる。
「こんにちは、暁美さん」
高校三年生になった巴マミが、私にぺこりとお辞儀をしてそう言う。
「よ、久しぶり」
高校二年生になった佐倉杏子が、八重歯を覗かせながら気さくに片手を上げてそう言う。
「……こんにちは。暁美さん」
佐倉杏子と同じく、高校二年生になった美樹さやかが、巴マミと同じようにぺこりと頭を下げて言う。
「三人共、元気そうね」
私はそう言って、杏子の隣に座るとテーブル越しに、目の前の美樹さやかとその隣に座る巴マミの顔を見る。
「まあぼちぼち……ですかね」
そう言って、美樹さやかが愛想笑いを浮かべる。
「暁美さんは?」
巴マミの問いに、私はおしぼりとお冷を持ってきた店員に、ホットのアメリカンコーヒーを注文してから答える。
「変わらないわ。あの子達がいなくなってから、ずっと」
私のその言葉に三人は押し黙ってしまう。
三年前、芳文とまどかがこの見滝原を旅立ってからも、この子達は必死になって芳文とまどかを探し回った。
まどかを守るのを芳文が引き継いでくれたあの日から、私がもう中学校へ行く必要もなくなった。
他に頼れる人もいない上、魔力さえも失った私は魔法少女になる以前の、弱い体に戻ってしまっていたから。
芳文達を見送ってから、身体能力だけでなく視力も徐々に落ちていき、昔のように眼鏡をかけなければろくに見えなくなってしまった。
目に見えて身体能力の落ちた私の事を、教師やクラスメイト達は訝しみつつも心配してくれていたが好都合だった。
私は病気の療養という名目で、転校すると言う事にして中学校を去る事にした。
クラスメイト達に見送られながら、私が中学校を去っていくその時だった。
――この三人が私を追いかけてきたのは。
443 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/19(日) 04:15:17.37 ID:yFYrwpWDo
まどかと芳文が失踪した事で、一部の生徒達はまどかが芳文に妊娠させられたからだとか、事実無根の噂話が流れた事があった。
その時、佐倉杏子は激怒してその噂を流した生徒達を殴りつけた。
まどかをまるで妹のように可愛がっていた巴マミは、全校生徒にまどかと芳文の事を聞いて回っていた。
そして、美樹さやかはあれだけ嫌っていた私に頭を下げた。
『まどかは親友だから。先輩は兄貴みたいな物だから。……だから、二人の事をもし知っているなら……教えてください』
美樹さやかにとって、私に頭を下げるなんてどれだけ屈辱的な事だっただろう。
彼女がまどかと芳文の事を、本気で心配してくれているのだけは理解出来た。
芳文とまどかを、二人だけで送り出す事しか出来なかった私も、この時は心が弱り切っていた。
――だから、私は彼女達にすべて話してしまった。
魔法少女の真実を。
今まで私がして来た事も。
芳文が私の子である事も。
まどかが彼女達を人間に戻して、全部一人で魔法少女の運命を背負いこんでしまった事も。
あの子達がたった二人だけで、運命に抗う戦いの旅に出た事も、全部を……。
「暁美さん、今日呼んだのはこれについてなんですけど……」
美樹さやかが通学鞄の中から、一冊の雑誌を取り出してテーブルの上に載せてページをめくる。
「……これは?」
雑誌の記事に目を向けると、黒い巨人のような物の写真が掲載されていた。
「さやか。目が悪い人間にそんな見せ方すんなって」
杏子がそう言って、テーブルの上の雑誌を私の目の前に移動させる。
私は雑誌を手に取ると、記事の内容を読む。
「……あすなろ市郊外に深夜から早朝にかけて発生し、消滅したスーパーセル。そして夕刻に突如街中に出現した黒い巨人?」
私のその言葉に、巴マミが私の顔を見つめながら、その口を開く。
「これって、魔女ですよね」
「恐らくそうでしょうね。スーパーセルは多分別の世界のワルプルギスの夜。この巨人は新種の魔女かしら」
そう答えつつ記事を読み進めていくと、桃色に輝く剣を持った黒い戦士と、桃色に輝く矢を放つ少女の事が書かれていた。
「――これは、まさか」
「社先輩とまどか、ですよね」
美樹さやかが私の方を見ながら、同意を求めてくる。
記事の最後には、街を破壊した謎の黒い巨人を倒したと思われるこの二人は果たして神の使いか、はたまた世界に終焉をもたらす悪魔なのか、と書かれ記事が締めくくられていた。
「――間違いなく、芳文とまどかよ」
私がそう答えたその時だった。
――ズガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
凄まじい衝撃と振動が鳴り響き、店のガラスが粉々に吹き飛んで割れ、テーブルの上の空になったカップが落下して砕ける。
「何!? 地震!?」
美樹さやかが驚いて叫ぶ。
「とにかく揺れが治まっている内に外に出ましょう!!」
巴マミのその言葉に、全員で外に出たその時だった。
巨大な黒い魔女が私達の眼前にそびえ立っていた。
まるで天まで届くくらいに巨大なその姿は、私が忘れたくても決して忘れられない物だった。
「なんだアレ!?」
「マジかよ!? あれって怪獣!?」
「ママ怖いよぉ!!」
道行く人々全員が、巨大な魔女の姿を呆然と見ている。
「な、何なのあの巨大な魔女は……?」
「あいつの姿、他の人達にも見えてるの?」
「くそっ、あたし達には黙って見てる事しか出来ないのかよ!!」
巴マミ、美樹さやか、杏子が呆然となりながら、目の前の巨大な魔女に対して各々の意見を口にする。
私は呆然となりながら、ここからはるか遠い場所に聳え立つ彼女の姿を見ながら、力なく呟いた。
「――まどか」
444 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/19(日) 04:16:02.07 ID:yFYrwpWDo
☆
――それは突然の出来事だった。
新たに魔女を全滅させた街での事。
現在泊まっているホテルで一眠りして目を覚ましてから、次の街に行く為にわたしが身支度を整えていた時だった。
「芳文さん、昨日の晩から何を読んでるの?」
わたしが髪を梳かして、リボンを着け終わるのを芳文さんは待つ傍ら、ベッドに腰掛けて一冊の本を読んでいる。
「英会話の本だよ。ジュゥべえの奴が言ってただろ。海外にも魔法少女達やインキュベーターのコピーがいるって」
「そう言えばそんな事言ってたね。それじゃあわたしも英語を勉強しないといけないね」
「ああ。それにどうやって外国に行くかも考えないといけないしな。ある程度英語を身に着けるまでに、何か方法を考えておかないとな」
「やっぱり、ママ達に頼んでパスポートを取ってもらうしかないと思うよ」
「それだと滞在期間に限りがあるからなあ」
「じゃあ密入国するの?」
「それも視野に入れないといけないかもな」
「難しい問題だね……」
わたしと芳文さんが今後の事について話していたその時だった。
『鹿目まどか、社芳文。君達に挑戦状を叩きつけさせてもらうよ』
不意にインキュベーターがテレパシーで語りかけてきたのだ。
「挑戦状だと? 貴様自らが俺達の相手になるとでも言うのか」
芳文さんが、周囲の気配を探りながら、インキュベーターに殺意を込めて尋ねる。
『まさか。僕に君達と戦う力はないからね。君達と戦うのに相応しい相手を用意させてもらったよ』
「相応しい相手?」
わたしの疑問に、インキュベーターはどこか嬉しそうな話し方で答える。
『転送にかなりのエネルギーを使ってしまったからね、君達を転送してあげる余分なエネルギーはもうないんだ。だから君達は自力で僕の用意した相手の元に来てほしい』
「勝手な事を抜かすな、糞畜生が」
芳文さんがインキュベーターにそう吐き捨てる。
『僕の使う転送は相手がその場にじっとしててくれないと使えない上、かなりのエネルギーを使うからね。無駄遣いはしたくないんだ』
「その相手ってどこにいるの?」
わたしがそう尋ねると、インキュベーターは愉快そうに答えた。
『外を見てごらん』
私と芳文さんは、お互いの顔を見て頷きあってから、カーテンを開ける。
「なっ!?」
「あれってまさか!?」
部屋のガラス越しに、わたし達の強化された視力で見える遠い街は、わたし達の大切な場所……見滝原市。
その街の郊外に天空高く聳え立つ巨大な黒い魔女が、上の方からピンク色に輝く光の輪の内部から、徐々にこの世界にその姿を顕現させる。
「――クリームヒルト・グレートヒェン!?」
芳文さんの驚愕の声が室内に響く。
「そんな!? だってわたしはここにいるのに!!」
わたしの疑問にインキュベーターが小馬鹿にした口調で答える。
『あれは以前君達に見せてあげた、暁美ほむらを人間に戻してこの世界の過去に送り込んだ、鹿目まどかの成れの果てだよ』
「別世界のわたし!?」
『そうだよ。毒は毒を持って制するしかないだろう?』
「貴様!!」
芳文さんがその拳を握りしめながら怒鳴る。
445 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/19(日) 04:17:33.22 ID:yFYrwpWDo
『急いだ方が良いんじゃないかな。早くあの魔女の元へ向かって倒さないと、この星の全生命が魔女の根ですべて吸い取られてしまうよ』
「くそ!! まどか行くぞ!!」
「待って!! インキュベーター。あなたはどうして、わざわざ魔女の特性を教えてくれるの?」
『僕の目的は君の死ではない。絶望した時のエネルギーだ。もっともいくら待っても絶望してくれないから、魔力を使い切らせる事にしたんだけどね』
「っ!!」
『ああ、そうそう。君が死ぬと社芳文も生命を維持出来なくなって死ぬからね。上手く死なないように魔力を使い切ってね』
インキュベーターはわたしの疑問にそう答えた。
ジュゥべえ曰く、インキュベーターは感情がないから、今までの経験を元にこっちが負の感情を持つように、全部計算してやってるらしいけど……。
いくら感情がないからって、平気でこんな事までしてくるなんて……許せない……。
「いくら願ったって無駄だよ!! わたしは魔女になんてならない!! もし魔女になりそうになったら、ソウルジェムを砕くから!!」
『君は社芳文を巻き込んで自殺するつもりかい?』
「俺達はずっと一緒だと誓った。もしも万が一、大切な人達や思い出の場所を壊す存在になるくらいなら、その時は二人一緒に死ぬ」
『訳が分からないよ。そんな結末を迎えるのだったら、君達は何の為に今まで僕の邪魔をして来たんだい?』
「あなたには永遠にわからない!! それにわたし達は一人じゃないから、絶対に負けない!!」
「まどかの言うとうりだ。俺達は必ず未来を掴む。その未来に貴様は必要ない!! 行くぞまどか!!」
「うん!!」
わたし達はインキュベーターにわたし達の決意を叩きつけて、ホテルを飛び出す。
わたしは魔法少女の姿へ変身すると、芳文さんと共に見滝原に向かって走る。
道中、クリームヒルトの姿に驚いて硬直する人々や、事態を理解出来ずに携帯のカメラやデジカメを向けている野次馬達の頭上を、わたし達は飛び越えながら見滝原へと急ぐ。
全力で走って、跳んで、大体三十分ぐらい経った頃にわたし達は人間に戻ることが出来ぬまま、再び見滝原の大地に足を踏み入れた。
☆
446 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/19(日) 04:18:59.96 ID:yFYrwpWDo
魔女の周囲を取り囲む光輪が地面に触れた瞬間、クリームヒルトの先端がまるで棘のように鋭く尖った複数の根っこが、轟音を立てて地面に突き刺さる。
――ズガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
凄まじい轟音と共に激しく台地が揺れるのを、咄嗟に空中に跳び上がった芳文さんに抱きかかえられたまま、空中で見る。
「っ!? まどか上を見ろ!!」
大地へ着地しながら芳文さんに言われて、上空に視線を向けると、あまりにも巨大な結界が見えた。
「何あれ……」
「――この地球と同じくらいの結界? まさか、あれに吸い上げた命を溜めこんでるのか!?」
芳文さんがそう言ったその時だった。
わたしと芳文さんはクリームヒルトから、凄まじい破壊の力を感じ取った。
「まずい!! まどか、ありったけのマギカ・ブレードだ!!」
「はいっ!!」
芳文さんの周囲にマギカ・ブレードをまとめて四十八本生成する。
「――これ以上、誰も殺さなくていいように、今から楽にしてやるからな」
芳文さんはクリームヒルトに向かってそう言うと、マギカブレードを次々とクリームヒルトの上部に向かって投げつける。
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン……ッ!!
四十八本のマギカ・ブレードがすべて、わたしが瞬きする間にクリームヒルトに投げつけられて、突き刺さる。
クリームヒルトの根を突き破り、四十八本のマギカ・ブレードが根の付け根内部から、クリームヒルトの全身へ向けてじわじわと破壊エネルギーを送り込み始める。
「まどか六本だ!!」
「はいっ!!」
芳文さんが新たに作った六本のマギカ・ブレードを、左右三本ずつ装備してクリームヒルトに向かって走り出す。
「いいかまどか!! 俺がクリームヒルトを削りきるまで、封印し続けるんだ!!」
「芳文さん!! 気を付けて!!」
「ああ!! これ以上、あのまどかに人殺しはさせない!!」
芳文さんがわたしにそう叫んで、あっという間にクリームヒルトの元に辿り着く。
わたしはクリームヒルトの全身を超巨大な封印魔法で包み込む。
クリームヒルトの頭頂部から、根っこの先まで完全に閉じ込めた封印魔法の内部は、芳文さんとクリームヒルトが死闘を繰り広げる決戦フィールドと化していた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
芳文さんが天高く跳躍しながら、クリームヒルトの根を六刀流で斬り裂く。
六刀流で斬り裂かれた巨大な根が一本、完全に光の粒子になって消滅する。
芳文さんは、重力に惹かれて落下しながらも、斬撃の手を緩めず、次々と根を破壊していく。
447 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/19(日) 04:20:35.08 ID:yFYrwpWDo
――ブオンッ!!
巨大な根が地面から引き抜かれ、着地した芳文さん目掛けて突き下ろされる。
芳文さんは高速で落ちてくる根を躱して、斬りつけながら別の根を足場にして駆け上る。
次々と別の根を跳んでは斬り、落下しては斬りを繰り返していく。
今までの戦い以上に全力で攻撃していくけど、相手があまりにも大きすぎて、どうしても削るのに時間がかかる。
――キイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!
クリームヒルトが強力な超音波を発生させる。
芳文さんは咄嗟にマギカ・ブレードで防ぐけど、地面に叩きつけられてしまう。
わたしは芳文さんを守る為にシールドを張りたかったけど、周囲に被害が出るのを防ぐため、クリームヒルトの周囲に張った封印魔法を維持し続ける。
「くっ!!」
芳文さんは叩きつけられた地面の上を転がりながら、つい先ほどまでいた場所に撃ち込まれた根に斬りつける。
内部から四十八本のマギカ・ブレードで破壊されているはずなのに、クリームヒルトはまったく意に介さず、攻撃の手を緩めない。
芳文さんがようやく根の全体の十分の一を破壊したところで、クリームヒルトが真っ黒な破壊の波動を放った。
躱しようのない攻撃に、芳文さんが吹き飛ばされて吐血する。
「ぐあぁぁぁっ!!」
「うぅぅっ!!」
強力な攻撃を外部に漏らす事のない様に、封印魔法を展開し続けるわたしも今の攻撃でかなり消耗してしまった。
視線を胸元のソウルジェムに向けると、かなり濁っていた。
わたしはスカートのポケットの中に作ってある収納空間から、片手で二個グリーフシードを取り出して胸元に近づける。
穢れが二個のグリーフシードに吸い込まれたのを確認して、限界寸前のグリーフシードを保持する指先に魔力を込めて破壊する。
「残りのグリーフシードはあと四十六個……!!」
ボロボロになりながらも、再生と負傷を繰り返しながら、芳文さんが根を破壊し続ける。
すべての根を破壊しなければ、頭と胴体を引きずりおろせない。
それまではマギカ・シグヴァンも使えない。
「芳文さん……がんばって……!!」
クリームヒルトの放つ、ワルプルギスの夜のとは比べ物にならないくらい強力な破壊の波動を受け止めながら、わたしは芳文さんを応援する。
クリームヒルトから黒い矢が大量に足元の芳文さんに目掛けて撃ち出される。
芳文さんは、左手で保持したマギカ・ブレードで黒い矢を斬り払いながら、右手で保持したマギカ・ブレードで根を破壊する。
わたしのソウルジェムがどんどん濁っていく。
グリーフシードを使い切って、わたしのソウルジェムが真っ黒に染まるのが先か。
芳文さんがクリームヒルトの本体を引きずりおろして、わたし達の全力の一撃を叩き込むのが先か。
この戦いは絶対に負けられない……。
わたしのソウルジェムが徐々に濁っていく……。
「こんなところで負けるもんか……。いつか絶対、二人でみんなの所に帰るんだから……」
わたしは芳文さんの戦いを見守りながら、彼を信じて絶対に絶望になんか負けないというこの思いを口にした……。
つづく
448 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/19(日) 04:22:45.34 ID:yFYrwpWDo
杏子「全26話になりそうだよ」
杏子「次回で決着。26話が最終回だ」
杏子「最後は2話纏めてとうかするってさ」
杏子「じゃあな」ノシ
449 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/06/19(日) 08:10:00.90 ID:cpaisAxW0
乙でした
とうとうクリームちゃんまで連れてきたか
でも実はこれが一発大逆転のフラグのような気がする
450 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/19(日) 14:40:10.51 ID:jNfKsl8go
乙
しかしこのインキュベーダー私情に走りすぎだろ……
451 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/20(月) 01:23:00.63 ID:seJZB3Br0
乙なんだぜ!
このインキュベーターのしつこさと陰湿さは、
既に独立固個体になってしまっていると言われても信じるぞ俺
452 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/06/22(水) 02:11:48.92 ID:j3JHGsbDo
杏子「最終回までノンストップで行くよ」
453 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:12:15.41 ID:j3JHGsbDo
――ズガアァァァァァァァァァンッ!! ズガアァァァァァァァンッ ズガアァァァァァァァァンッ……!!
両足の代わりに大量に生やしている根を、三分の一ほどの数に消滅させられたクリームヒルトが、残った根を滅茶苦茶に振り回しながら、連続で大地にその切っ先を突き立てる。
芳文さんは凄まじい轟音と衝撃波を発生させながら、物凄い勢いで迫ってくるその攻撃を躱しつつ、手にした六本のマギカ・ブレードで次々と根を破壊していく。
クリームヒルトが放つ、芳文さんだけでは防ぎきれない黒い波動で、何度ダメージを受けてもあの人は決してあきらめる事無く、何度でも立ち上がっていく。
わたしもクリームヒルトを閉じ込めた封印魔法を展開し続けながら、グリーフシードでの回復を続けつつ、逆転のチャンスがやってくるのを諦めない。
――バラバラバラバラ……。
恐らく報道関係のヘリコプターだろうか。
先ほどからずっと、遠巻きにクリームヒルトの周囲を飛んでいる。
『危険ですからすぐに逃げてください!!』
わたしが一方的なテレパシーを、ヘリコプターに乗ってる人達に送るのとほぼ同時に、クリームヒルトがヘリコプターに目掛けて黒い矢を大量に撃ち出した。
わたしは封印魔法を全力で保持して、内部から外部に向けて飛び出そうとする黒い矢をすべて受け止める。
『お願いですから今すぐ逃げて!!』
もう一度テレパシーを送ると、やっとヘリコプターが飛び去っていく。
ヘリコプターが見えなくなってから、胸元のソウルジェムを確認するとかなり濁っていた。
わたしは最後のグリーフシードを、収納空間から取り出そうとする。
収納空間の中でわたしの手に掴まれて出てきたのは、最後の一個のグリートシードとキュゥべえの耳飾りだった。
「葉子ちゃん……キュゥべえ……わたしと一緒に戦って……」
わたしは葉子ちゃんのグリーフシードで、穢れを吸い取ってからグリーフシードを収納空間に戻すと、キュゥべえの耳飾りを封印魔法を保持している左手の手首に通す。
これでもう、グリーフシードのストックが全部、なくなってしまった……。
芳文さんの方へ視線を向けると、いつの間にかクリームヒルトの根は残り四本になっていた。
「芳文さん……頑張って……!!」
第25話 「あなたが側にいてくれて幸せだったよ」
454 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:12:50.99 ID:j3JHGsbDo
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
遂に、芳文さんの振るったマギカ・ブレードが、最後の根を消滅させた。
大地に根差す為の根をすべて失ったクリームヒルトが、腰から上だけになったその巨体を地面に叩きつけながら、大きな目でわたし達をギロリと見つめる。
真っ黒な巨体と対照的な真っ白な目。
「――っ!?」
一瞬、その瞳の中に膝を抱えて丸くなっている、人影のような物が見えた気がした。
――アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!
クリームヒルトの叫びと共に、一際強力な黒い波動が発生し、吹き飛ばされた芳文さんがわたしの封印魔法に激突する。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
黒い波動と封印魔法の両方で押し潰される形になっている芳文さんが、あまりのダメージに苦痛の声を上げる。
あまりにも長時間の戦闘に加え、大量の根を破壊し続けた事で込められた魔力を失いつつある、六本のマギカ・ブレードすべてに亀裂が入っていき、遂に粉々に砕け散ってしまう。
クリームヒルトの波動が止むと同時に、芳文さんが力なく地面の上に落ちていく……。
「芳文さん!!」
わたしの呼びかけにも、まったく答えてくれる事無く、倒れたままだ。
不意にクリームヒルトの両目が光り、わたしの目前で大爆発が起こった。
ドカアァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
爆風で倒れている芳文さんが、クリームヒルトの方へと吹き飛ばされる。
クリームヒルトの両目が何度も光り、その度に封印魔法が爆発の威力で破壊されそうになる。
――ジジジジジジジ……。
わたしのソウルジェムがどんどん黒く染まっていく……。
「――もう、ここまでなの?」
思わず弱音が出てしまう。
このままじゃ……。
わたしが今にも絶望してしまいそうになった、その時だった。
「まどか!!」
――わたしの良く知る声がわたしの耳に届いた。
「――え?」
わたしが声のした方へ振り返ると、三年前よりも、大人になったさやかちゃんがいて、わたしに向かって叫ぶ。
「まどかがんばれ!!」
さやかちゃんの隣に杏子ちゃんとマミさんが走ってきて、わたしに向かって叫ぶ。
「まどか!! こんな所で負けんな!! あんたはこんな所で負けるようなタマじゃないだろ!!」
三年前よりも、大人になった杏子ちゃんが叫ぶ。
「鹿目さん!! 貴女が最後の希望なの!! だから負けないで!!」
三年前よりも背が伸びたマミさんが叫ぶ。
455 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:13:20.38 ID:j3JHGsbDo
――キキィィィィィィィィィィィッ!!
ブレーキの鳴り響く音を立てながら、一台の車がさやかちゃん達の後ろに止まって、中からママとパパとタツヤが飛び出してくる。
「負けるなまどか!!」
「まどか!! 最後まであきらめるんじゃない!!」
「ねーちゃ、がんばれー!!」
「ママ……パパ……タツヤ……」
ママ達がわたしを応援してくれる。
絶望に負けそうになっていたわたしを……。
振り返れば、そこにはわたしの大切な人達がいた。
「まどか!! 全部あんた一人で抱え込んで!! 言いたい事は沢山あるんだから!!」
「そんなにあたし達は頼りになんねえのかよ!! 全部終わったらみっちり絞ってやるからな!!」
「鹿目さん!! 絶対に勝ちなさい!! お説教は後でたっぷりするからね!!」
「まどか!! 芳文君と二人で帰ってくるって約束しただろ!!」
「だから、こんな所で負けて良い筈がないだろう!!」
「ねーちゃ負けないで!!」
「さやかちゃん、杏子ちゃん、マミさん、ママ、パパ、タツヤ……」
みんなが、わたしを励ましてくれる。
わたしは……。
「……まどか!! まどかは一人じゃない!!」
芳文さんがダメージの抜けきらない体を、無理矢理立たせようとしながら叫ぶ。
「――芳文!!」
ほむらさんが転びそうになりながらも、懸命に走ってきて叫ぶ。
「立ちなさい!! 立って、あなたの大切な人を守って!! そして二人で帰ってきなさい!!」
「……母さん」
芳文さんが片膝を突きながら、立ち上がろうとする。
――みんなが。
みんながわたし達を励ます為だけに、こんな危険な場所に来てくれた。
わたしの瞳から、涙が溢れだす。
わたしの流した涙が頬から顎を伝って、胸元の黒く染まったソウルジェムの上に落ちて爆ぜる。
わたしの黒く染まったソウルジェムが、胸元から外れて目の前に浮かぶ。
――ピシピシピシ……。
ソウルジェムに亀裂が入り、無数のヒビが入っていく。
『やれやれ。ようやく君のエネルギーを回収できるよ』
インキュベーターの勝利宣言が聞こえる。
――だけど。
わたしのソウルジェムが遂に粉々に砕け散る。
456 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:13:47.72 ID:j3JHGsbDo
『何!?』
インキュベーターの驚愕の声が聞こえる。
『そんな馬鹿な!!』
『何故!! 何故グリーフシードが出てこないんだ!?』
わたしの目の前には……桃色に光り輝く光球があった。
わたしはそれを両手で抱え込むようにして、自らの胸元に押し込む。
『――まどか』
わたしの左手首に通したキュゥべえの耳飾りから、キュゥべえの声が聞こえてくる。
『君は今、本当の魔法少女になった』
『馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!』
インキュベーターが見苦しく取り乱す。
「わたしはひとりじゃない!! 愛する人が、大切な友達が、大好きな家族がいる!!」
わたしはインキュベーターに叫ぶ。
「だからもう、絶望なんてしない!!」
そう言って、左手首のキュゥべえの耳飾りを見せつける。
『まどかは大切な人達からの想いを受け、強く願った。人として彼らと共に生きる事を』
キュゥべえの耳飾りに宿っていたキュゥべえの意識が、わたしの魔力を使って覚醒し、この場にいる全員にテレパシーで説明してくれる。
『まどかの願いは他者の救済。魔法少女を元の人間に戻せるほど強大なその癒しと守護の力は、遂に自らの魂を捕らえていたソウルジェムという呪われた器を破壊した』
『その身に再び魂の灯を宿し、人の身でありながら奇跡を起こす真の魔法少女。それが今の彼女だ』
――アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァツ!!
クリームヒルトが黒い矢を、この場にいる全員に向けて射出する。
わたしはみんなを守る最強の盾をイメージする。
金色に輝くマギカ・イージスが一瞬で展開され、すべての矢を受け止めて消滅させる。
「――今、助けてあげる」
わたしは背中に空を飛ぶための翼をイメージする。
自分では見えないけれど、光り輝く翼が展開しているはず。
わたしは巨大な弓を目の前に顕現させて、クリームヒルトの左目に向けて金色に輝く魔力の矢を放つ。
「ティロ・フィナーレ!!」
――バシュウゥゥゥゥゥゥゥンッ!!
クリームヒルトの左目の隅に大穴を開けて、わたしはその穴に向けて飛ぶ。
そして、そのままクリームヒルトの左目の中へ、魔力のオーラを全身に纏いながら突入した。
457 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:14:56.64 ID:j3JHGsbDo
☆
――起きて。
……誰?
わたしを起こすのは誰なの?
悲しい夢を見ながら、丸くなっていたわたしが目を覚ますと、髪の長いわたしがわたしに抱きついて微笑みながら言う。
――もう、大丈夫だよ。
そう言って、彼女はわたしに優しく微笑む。
彼女に優しく抱きしめられて、少しくすぐったい。
わたしも彼女に微笑む。
――さあ、一緒に行こう。
うん。
彼女とわたしはお互いに抱き合って、彼女がわたしのおでこにキスをしてくれる。
――わたし達は。
わたしは。
もう、絶望なんてしない。
☆
「まどか!!」
魔女の左目の中に飛び込んだまどかの名を、立ち上がった芳文が呼ぶ。
――アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!
突然、魔女が苦しげな叫びを上げながら、自分の頭を両手で抱えてのた打ち回る。
――パアァァァァァァァァァァァンッ。
魔女の左目が内部から破裂し、大きく窪んだその穴の中から、私の良く知る姿の彼女が飛び出してくる。
違いは赤いリボンが白いリボンになっているくらいで、可愛らしいショートツインテールと、白とピンクのフリルの魔法少女服の、見慣れた姿。
「芳文さん、お待たせ!!」
まどかが芳文の隣へと降り立つ。
「まどか!! 大丈夫なのか!?」
「大丈夫だよ」
そう言って、彼女は芳文ににっこりと微笑む。
「ほむらちゃん、わたし達が全部終わらせるから。だから、みんなと一緒に見守っていて」
まどかはそう言って、私に向かって微笑んで見せる。
その笑顔は、この世界では見た事のない、以前の世界でかつて見た笑顔だった。
「……まどか、なの?」
「――うん」
私の問いかけに彼女は優しい顔で頷く。
「あ、あぁぁ……」
――この世界のまどかは。
私を救ってくれたまどかを助けてくれたんだ……。
☆
458 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:15:52.63 ID:j3JHGsbDo
――グオアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!
まどかの残留思念、いや、僅かに残されていたまどかの心を失った、ただの呪いの塊がまどかに向けて巨大な拳を振るう。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
芳文がまどかの前に立ち塞がり、呪いの塊の拳に神速の回し蹴りを放つ。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
真の魔法少女になったまどかから供給される、未来への希望を込められた魔力を込めた蹴りが、絶望の拳を粉々に打ち砕く。
拳ごと左腕を粉々に粉砕されながら、呪いの塊の巨体が天高く打ち上げられる。
「芳文さん!! 行くよ!!」
「ああ!! やるぞ!!」
まどかが金色に輝く弓を顕現させて、天空に向け金色に輝く矢を放つ。
「マギカ・ブレード!!」
天空高く放たれた矢が、マギカ・ブレードへと変化して舞い降りてくる。
通常の物よりも遥かに長く、分厚い金色に輝く刀身から、更に眩い金色の輝きがキイィィィィィィィィンと言う音と共に発生する。
――ドンッ!!
その両足で大地を踏み砕きながら、芳文が天高く跳び上がり、マギカ・ブレードを掴む。
芳文が両手で構えたマギカ・ブレードの柄から、爆発的な推進力が生み出されて、音速をも超える超高速で芳文が呪いの塊へと迫る。
呪いの塊が、漆黒の髑髏の形をした呪いその物を複数放つ。
芳文が自分に向かって飛んでくるそれを、すべて斬り払うのと同時にマギカ・ブレードから放たれた魔力の波動が、呪いの塊に直撃し封印の光球を形成する。
マギカ・ブレードの刀身から、凄まじい威力の込められた金色に輝く魔力の刃が、まるで天まで届きそうなほどに伸びる。
「マギカ・シグヴァン!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
まどかの叫びと芳文の神速の斬撃がシンクロし、呪いの塊が一瞬で六分割される。
「昇華!!」
まどかの宣誓の言葉と共に、封印の光球の中でバラバラにされた呪いの塊が完全に消滅する。
呪いの塊が消滅すると同時に封印の光球が一際強く輝いて、どんどん小さくなっていき完全に消滅する。
そして、地球と同じサイズの結界も消滅していく。
――ズガアァァァァァァァァンッ。
大地をその足で砕きながら着地した芳文が、元の刀身に戻った金色に輝くマギカ・ブレードを振り回して地面に突き立てる。
遂に、芳文とまどかは長かった戦いを終え、勝利を手に入れたのだった。
☆
459 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:16:47.03 ID:j3JHGsbDo
「……終わったな」
マギカ・ブレードを片手に、芳文さんがわたしの所に戻ってきて、優しい顔でそう言って微笑んでくれる。
「うん」
芳文さんに微笑み返して、みんなの方へ振り返ると、みんながわたし達に笑顔で駆け寄ってくるのが見えた。
わたしはみんなに笑顔で手を振って、そして……。
「――ぐひゃひゃひゃひゃ……っ」
突然、壊れた笑いと共に、わたし達の目の前に全身真っ黒の人影が、クリームヒルトの結界のあった上空から舞い降りてきた。
「これが、これが感情!! これが全人類の呪い!! あははははははははははははは!!」
黒い人影の胸部から、顔の三分の二ほどを露出させて笑うインキュベーター。
まるで煙や霧のようなドス黒いその体には、不気味な胎動を繰り返している、穢れで限界寸前の大量のグリーフシードがびっしりと埋め込まれていた。
インキュベーターの体は、大量のグリーフシードと同じように、黒い人影の胸部に飲み込まれていて、今もインキュベーターの残された顔までもをズブズブと飲み込もうとしていた。
「クリームヒルトが吸い上げた、世界中のすべての命の生み出したこの呪い、受け止めてよ!! その希望を絶望に変えて、僕等の宇宙の礎になってよ!!」
インキュベーターが壊れた玩具のようにケタケタと笑う。
「この超魔獣メフィストフェレスが、君達の希望を打ち砕いてあげる!!」
ケタケタと笑いながら、インキュベーターが完全に超魔獣の中に飲み込まれていく。
『まさか!? クリームヒルトの結界の中で、グリーフシードに込められた穢れを撒き散らして、呪いを凝縮させたのか!?』
キュゥべえの意思が、インキュベーターのした事の推測を教えてくれる。
「〜〜!!」
超魔獣がその全身から真っ黒な霧を空に向かって吹き出す。
真っ黒な霧が、あっという間に霧散して、広がっていく。
超魔獣の人間には聞き取れない呪詛の叫びが、世界に向けてその呪いを解き放つ。
大気が震える。
天空が裂ける。
大地がどんどん裂けていく。
空間が歪む。
わたし達の世界が、壊されていく……。
『まどか!! シールドを張るんだ!! 奴の瘴気に触れたら、それだけで全員の命が危ない!!』
キュゥべえの指示に従って、わたしはわたし達に向かってくる瘴気から、みんなを守る為のシールドを張ろうとする。
――ヒュンッ!!
「――っ!?」
超魔獣が一瞬でわたしの前に現れた。
あまりの速さに、わたしの反応が追いつかない。
――殺される。
超魔獣がわたしに向けて、瘴気に塗れたその呪いの手を伸ばそうとしたその時だった。
――ズドン!!
芳文さんが、超魔獣がわたしに触れるよりも早く、マギカ・ブレードで一刀両断にした。
超魔獣はマギカ・ブレードで真っ二つにされ、地面に倒れるとじわじわと消滅していく。
中に取り込んだインキュベーターとともに……。
460 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:18:10.47 ID:j3JHGsbDo
「大丈夫か? まどか」
「う、うん。ありがとう……」
「インキュベーターの最後だ……」
「あ、あ、あ……消える……僕等が、消えて、い、く……」
真っ二つにされた超魔獣の体内で、真っ二つになったインキュベーターが弱々しい声で嘆く。
『感情のない筈のインキュベーター。いずれ訪れる宇宙の破滅を救う為にエネルギーを集める者達』
『彼らは鹿目まどかの絶大なエネルギーを手に入れて、今迄出来なかった事が出来るようになった事で、自分達こそが支配者であると錯覚してしまったんだろうね』
キュゥべえが、憐れむような声で言う。
『自分達の宇宙だけで終わらせておけば良かった物を。支配者を気取ってこの宇宙までも食い物にしようとして、悉く君達に絶望を覆され続けた挙句、エネルギーを使い過ぎた事で、最後は意地になっていたんだろう』
『人間の絆の強さを理解出来なかった。それが自分達を滅びへと導いた。皮肉な物だね。感情を理解出来ないが故に、感情を持った人間の絆に敗北するなんて』
「……感情のない、インキュベーターがやっと手に入れた感情が、狂気と執着か。みじめな物だな……」
「――だが、例えどんな理由があったとしても、向こうの世界とこの世界の大勢の女の子達を、今まで食い物にしてきたこいつに同情なんてしない」
芳文さんが真っ二つにされた超魔獣の内部で、もうわたし達に聞き取れないほどに、弱々しい絶望の言葉を呟きながら消滅していくインキュベーターに冷徹に吐き捨てる。
「とどめなんて刺してやるものか。今まで絶望させてきた魔法少女達と同じように、徐々に絶望を味わいながら消え失せろ」
「ぁ……」
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……。
インキュベーターが、マギカ・ブレードによってその存在を破壊されつくして、超魔獣と共に完全に消滅する。
わたし達が完全にその存在が消滅するのを確認して、今度こそ全部終わったと思ったその時だった。
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
――世界が。
轟音を立てながら、崩壊していく。
「何!? どういう事だ!?」
クリームヒルトも、超魔獣もインキュベーターも倒したのに、世界の崩壊が治まらない。
「どうして!? なんで収まらないの!?」
『……さっきの魔獣は、すべての生命が残した呪いそのものだからだね』
「でも芳文さんがやっつけたのに!!」
「マギカ・ブレードで滅ぼしたのは、超魔獣を構成していた呪いだけだ。奴が現れた時に撒き散らされた呪いが、世界中に拡散してしまったんだろう。この世界に生きる命すべてを奪うまで、おそらくもう収まらない』
わたしの疑問にキュゥべえがそう答える。
「そんな!!」
『落ち着いて。まどか、君が世界を救うんだ』
「わたしが……?」
『魔法少女の力はね、背負い込んだ因果の量で決まるんだ』
『一国の女王でも救世主でもない、平凡な人生を与えられた別世界の鹿目まどかが、強力な魔法少女だったのは暁美ほむらが幾多の平行世界を渡り歩いて、鹿目まどかに因果の糸を螺旋状に束ねて集中させたからだ』
『そして君は、その因果をインキュベーターのこの世界への来訪と干渉によって背負わされた。だが、それだけでマギカ・ブレードの生成や、ソウルジェムの呪縛を打ち破るなんて真似が出来るはずがない』
『まどか。君はこの世界に選ばれたんだ。この歪められた世界の歪みを破壊して、元の世界に戻す為の救世主として』
「わたしが……救世主?」
『ああ。そうとしか考えられない。まどか、強く願うんだ。絶望に囚われた呪いの浄化を。そして大切な人達と共に幸せに生きられる世界を。それで君は、魔法少女の運命から解放されるだろう』
「本当に、わたしなんかの祈りでみんな救われるの?」
『君は本当の魔法少女だよ。魔法少女は夢と希望を振り撒く存在なんだ。だから大丈夫』
キュゥべえは優しい声でわたしにそう助言してくれる。
「……まどか。長かった旅もこれで終わりだ。どうせなら最高の世界を望むんだ」
キュゥべえのその言葉を聞いて、芳文さんは優しい顔でそう言って、私の背中を押してくれる。
みんなが、わたしの顔を見て優しい顔で頷く。
「……それじゃ、祈るね」
わたしがそう言うと、みんながもう一度頷いてくれる。
こうしている間にも、世界が撒き散らされた呪いで壊されていく。
「――お願い。絶望の世界に囚われたすべての命に安らぎを。そしてわたし達に、もう争いも悲しみもない、優しい日々を」
わたしは両手を組んで祈りを世界に捧げる。
わたしの体から、光が溢れ出す。
周囲に漂う呪いが浄化されていき、歪められた世界が変わろうとするのを感じる。
わたしは組んだ両手に力を込めて、強く強く祈る。
呪いが浄化され、世界が徐々に元の姿に戻ろうとしていく。
――その時だった。
461 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:20:39.09 ID:j3JHGsbDo
「きゃあぁぁぁぁぁっ!! 社君っ!? 暁美さんっ!?」
マミさんのあげた悲鳴に驚いて、わたしが閉じていた目を開けて振り向くと、芳文さんの足がつま先から消滅しかけていて、ほむらちゃんの体が薄くなっていた……。
☆
「な、なんなの!?」
どうして、二人が!?
祈りを中断して、わたしが混乱していると、キュゥべえが申し訳なさそうに言う。
『……多分、世界が社芳文と暁美ほむらを拒絶しているんだ』
「――え?」
――何……言ってるの?
『暁美ほむらは元々この世界の住人じゃない。世界が彼女を拒絶して弾き出そうとしているんだ』
――そんな。
『そして社芳文は、本来なら絶対に出会う事も、結ばれる事もない筈の両親から生を受けた。母親がこの世界から弾き出されれば、待っているのは消滅だ』
――嘘。
『死でも魔神化でもない。完全なる消滅。この宇宙にしか存在しない彼は、どの平行宇宙にも存在しない完全なイレギュラー。存在の痕跡どころか魂さえも消滅し、初めからいなかった事になる』
――嘘だ。
『誰の記憶にも残らない。例え相手が実の母親でも例外じゃない。生を受けてから今まで関わってきた人間すべてに忘れられて、無に還る』
「そんなの嫌だよ!!」
気が付くと、わたしはそう叫んでいた。
『だって、芳文さんはずっとわたしと一緒にいてくれたんだよ!! わたしを守ってくれてたんだよ!! それにマギカ・ブレードだって芳文さんしか使えないのに!! どうして芳文さんが消されちゃうの!?』
『もし、社芳文がいなかったら、代わりの誰かが世界に選ばれて、君の隣でマギカ・ブレードを振るっていただろう』
キュゥべえのその言葉にわたしは反論する。
「そんな事ない!! マギカ・ブレードは芳文さんの為だけに作ってきたんだから!!」
『……すまない。まどか。君の気持を考えてなかった』
キュゥべえがすまなそうにわたしに謝る。
「……わたし、もっと強く祈る。芳文さん達を消させたりしない。みんなで一緒に、優しくて暖かい日々に帰るんだから……」
わたしはもう一度祈る。
どうか、わたしとほむらちゃんから芳文さんを取り上げないでください。
芳文さんから、ほむらちゃんを取り上げないでください。
どうか……。
「まどか!! 先輩達が!!」
さやかちゃんの叫びに再びほたしは祈りを中断する。
芳文さん達を見ると、芳文さんは膝まで消滅しかけていて、ほむらちゃんもその存在が更に薄くなっていた。
「そんな!! どうして!? どうしてなの!?」
わたしは泣き叫ぶ。
こうしている間にも、世界がどんどん壊れていく……。
「……まどか。祈りを続けるんだ」
芳文さんが、泣き崩れるわたしにそう言う。
「……やだ」
「まどか」
「いやだよぅ……。芳文さんがいなくなるだけじゃなくて、消えちゃうなんていやだぁ……」
涙がどんどん溢れてくる。
流す涙が止まらない。
こんなのってないよ……。
462 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:21:08.48 ID:j3JHGsbDo
「芳文さんをこの手で消すくらいなら、わたしが消える方が良かったよぅ……」
「馬鹿な事を言うな!!」
芳文さんがわたしに怒鳴る。
「まどかは一人じゃない。俺がいなくても、お父さん、お母さん、タツヤ君。それにさやかちゃん、巴さん、杏子ちゃん、志筑さん。みんながいるだろう?」
「でもあなたがいない!! そんな世界嫌だよ!!」
「だったら、ここでこのまま全員で死ぬのか!?」
「っ!!」
「なあ、まどか。言ってたよな。こんな自分でも、誰かの役に立ちたいってさ。俺もまどかと同じなんだ」
芳文さんがわたしの肩に手を置いて、優しい顔でわたしに言う。
「俺はまどかに出会えて、まどかを好きになって、まどかの事を最後まで守る事が出来た。まどかの事を大切に思ってる人達の役に立つことが出来た。だから、満足して消えて行けるんだ」
「やだ……」
「まどか。俺からの最後の頼みだ。魔女も魔法少女も存在しない優しい世界で、まどかが大好きな家族や友達と一緒に、普通の女の子として幸せになってくれ」
「うぅぅ……」
「すみません。お父さん、お母さん。まどかと一緒に帰るという約束を守れなくて。せめてまどかだけでもお二人の元に返します」
芳文さんがママ達に頭を下げて謝る。
「芳文君……」
「アンタは、それでいいのか?」
「すみません」
「にーちゃ……」
「ごめんな、タツヤ君。もう二度と一緒に遊んでやれなくて」
芳文さんが、タツヤに優しい声で言う。
「ねーちゃと仲良く元気でな」
「さやかちゃん、巴さん、杏子ちゃん。今まで色々とありがとう。君達と出会えて、嬉しかったよ。まどかといつまでも仲良くね」
ママ達からさやかちゃん達に向き直り、お礼とお別れを言う。
「先輩……」
「社君……」
「社……」
「キュゥべえ」
芳文さんが私の左腕の耳飾りに宿る、キュゥべえの心に話しかける。
『なんだい?』
「母さんはどうなるんだ?」
『おそらく君に関する記憶を失って、別の世界に飛ばされるだろう』
「死ぬわけじゃないんだな?」
『少なくとも、暁美ほむらと言う存在は別の世界で生き続けるだろうね』
「そうか。淫獣なんて呼んでて悪かったな」
『別に気にしてないよ。今となっては、あながち間違ってはいなかったと思うからね』
「そうか。おまえ自身はどうなるんだ?」
『今君と話している僕は、真の魔法少女になったまどかの力を借りて話しているだけの、残留思念のような物だからね。良くて別の生き物に生まれ変わるか……悪くて消滅だろうね』
「そうか。残留思念の淫獣に言うのもなんだが、達者でな」
『ああ』
463 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:21:47.64 ID:j3JHGsbDo
「……母さん」
最後に、芳文さんはお母さんに向き直って、今の想いを口にした。
「色々あったけど、母さんの息子に生まれてきてよかったと思う」
「芳文……」
「もう二度と会えないから、正直な気持ちを言うよ」
「ありがとう、母さん。俺を産んでくれて。例え別の世界でひとりぼっちになっても、最後まで強く生きて欲しい。それが息子として母さんに望む、俺の最後のわがままだから」
「う……あぁぁぁぁ……」
「母さん。いつまでもお元気で」
芳文さんの言葉にほむらちゃんが泣き崩れる。
「まどか。もう世界が持たない」
芳文さんが強い意志を込めて、わたしに祈りを促す。
「……芳文さん」
「ん?」
「せめて、最後の瞬間まで、わたしの事を抱きしめていて欲しいの……」
「――ああ。わかった」
芳文さんが、わたしを背中からぎゅっと抱きしめてくれる。
芳文さんに抱きしめられながら、目を閉じて両手を組み、祈る。
「……あなたと出会って、まだ三年半しか経ってないんだよね」
「そうだな。口にすると短いな」
世界に祈りを捧げながら、わたし達は最後の会話をする。
「もう、ずっとずーっと。長い間、一緒にいた気がするよ」
「ああ。そうだな。俺もそう思うよ」
「辛い時も、悲しい時も、嬉しい時も。ずっとずっと。あなたが側にいてくれて幸せだったよ」
「俺もだよ」
「わたしね、あなたと出会うまでは将来の夢とかなかったんだけど、あなたと出会えて夢が出来たんだよ」
「……どんな夢?」
「あなたと一緒に大人になって、いつか二人共おじいちゃんとおばあちゃんになっても、いつかお別れするその日まで、ずっとずっと一緒にいるの。それがわたしの夢」
「……そうか。ありがとう。まどか」
芳文さんがわたしを抱きしめる力を強くして応えてくれる。
「……わたし、あなたの事忘れないから」
「絶対……ひっく……。絶対に、忘れない、から……」
――あなたを永遠に失っても。
――せめて、わたしの大切なあなたの記憶だけはなくしたりしないから。
「……ありがとう」
「まどか」
「愛してる」
わたしを抱きしめてくれる、暖かい温もりが消える。
わたしへの愛の言葉と共に……。
「うぅぅ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ」
世界が書き換えられていく。
魔女も魔法少女も存在しない世界へ。
わたしの一番大切な人がいない、残酷で優しい世界へと……。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ……!!」
星々の輝きの中で、わたしは泣き続けた……。
世界が変わっていく……。
つづく
464 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:22:24.80 ID:j3JHGsbDo
――世界が変わる。
――いや、世界が本来の姿に戻っていく。
無数の星々の光の中で、両手で顔を覆ってひとりぼっちで泣きじゃくる少女。
大切な人を失って、まるで幼子のように泣き続ける。
出来る事なら、あの子を慰めてあげたい。
――例えそれが、ただの傷の舐めあいだとしても。
……でも、それももう、出来ない。
彼女と私の距離がどんどん引き離されていく。
彼女の願った奇跡の対価は、愛した相手を自らの手で消滅させる事。
私の願った奇跡の対価は、助けたかった少女の涙とたった一人の血を分けた息子の消滅。
――どうして。
――どうして、世界は。
――運命は。
――こんなに、残酷なんだろう。
最終話 「私の大切な人」
465 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:23:01.43 ID:j3JHGsbDo
――夢を見た。
暖かくて、優しくて、そして、悲しい夢を……。
「おっきろー!!」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ママ起きたねー」
いつもの朝。
タツヤと一緒にママを起こして。
「最近どうよ?」
「今度は上手く行ってるみたい」
ママとお喋りしながら、朝の身だしなみをする。
「おっ。そっちのリボン着けるんだ」
「うん」
赤いリボンを着けて、パパが朝食を作って待ってる食卓へと向かう。
「行ってきまーす」
家族みんなで朝食を食べて、ママとハイタッチしてから、わたしは学校へと向かう。
「おはよーまどか」
「おはようございます」
「おはよう、さやかちゃん、仁美ちゃん」
途中の遊歩道で、二人の親友と待ち合わせて、他愛のないお喋りをしながら一緒に登校する。
「卵は半熟ですか、固焼きですか!? はい、中澤君!!」
「えっと、どっちでもいいかと」
HRでの先生のいつもの話を苦笑いしながら聞く。
「えーそれでは転校生を紹介します」
「そっちが先でしょーが」
後ろの席でさやかちゃんがツッコミを入れる。
「さあ、自己紹介いってみようか」
「えと……その……。暁美……ほむら、です。よろしく……お願い、します……」
先生が招き入れたその子は長い黒髪を二つのおさげにして、眼鏡をかけた女の子だった。
もじもじと俯きながら、恥ずかしそうに自己紹介する彼女。
「それじゃ、暁美さんはあそこの空いてる席に」
「は、はい」
緊張してるのか、ぎくしゃくとした動きで歩いてくる彼女。
「きゃっ!?」
何もない場所で、彼女は転んでしまう。
「だ、大丈夫!?」
先生が慌てて暁美さんに駆け寄る。
466 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:23:47.60 ID:j3JHGsbDo
「は、はい……」
恥ずかしそうに赤面しながら立ち上がる。
良く見ると、彼女の膝小僧が転んだ時に擦りむいたのか、血で滲んでいた。
「先生、暁美さん怪我をしちゃったみたいなので、保健室に連れていってあげた方が良いと思うんですが」
わたしは先生にそう申告する。
「そうね。鹿目さん。暁美さんを保健室に連れて行ってあげて」
「はい」
わたしはそう答えて席を立つと、暁美さんににっこりと微笑んで言う。
「歩ける?」
「は、はい」
「それじゃ一緒に保健室にいこ」
「すみません……」
「気にしないで。わたし、保健委員だから」
そう答えて微笑む。
わたし達は一緒に保健室に向かいながら、他愛のないおしゃべりをする。
「わたし、鹿目まどか。まどかって呼んで」
「えと、その……」
「わたしもほむらちゃんって呼んでいい?」
「は、はい」
そんな会話をしながら、保健室でほむらちゃんの怪我の治療をしてもらい、二人で一緒に教室に戻った。
☆
「暁美さんってさ、髪長いよねー。いいなー綺麗な長髪で。うらやましいぞー」
わたしとさやかちゃんと仁美ちゃんと一緒に、お弁当を食べているほむらちゃんにさやかちゃんが言う。
「えと、その……」
ほむらちゃんは、さやかちゃんのテンションに翻弄されて、モジモジしていた。
「んー。ちょっとごめん」
さやかちゃんがいきなりほむらちゃんの眼鏡を取る。
「うわ。美人だ」
「本当ですね」
さやかちゃんの言葉に仁美ちゃんが同意する。
「え、そ、そんな事ない、です」
「いやいや。嘘なんて言わないって。ねえまどか」
「うん。眼鏡かけててもかわいいけど、眼鏡がなくてもほむらちゃんはかわいいよ」
わたしがそう言うと、ほむらちゃんは真っ赤になって俯く。
……このほむらちゃんは、あの人のお母さんにそっくりだけど、別人なんだよね。
多分、本来この世界にいるはずの暁美ほむらちゃん。
「暁美さん眼鏡やめてコンタクトにしたら? 髪もほどいてさ。そしたらきっと、男子全員暁美さんの事ほっとかないよ?」
「そ、そんな事……。それに、目に物を入れるの、怖いし……」
「何このかわいい生き物。今日からほむらもあたしの嫁だー」
さやかちゃんがほむらちゃんに抱きつく。
「え? えぇぇー?」
顔を赤くして困惑しているほむらちゃんと、抱きついてるさやかちゃんを見ながら、わたしと仁美ちゃんはクスクスと笑うのだった。
467 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:24:27.28 ID:j3JHGsbDo
☆
――すべての授業が終わって、やっと迎えた放課後。
わたし達三人は、ほむらちゃんも加えて四人で、寄り道する事になった。
下駄箱で靴を履いてると、パタパタと音を立てて杏子ちゃんが走ってくる。
「おーい、さやかー」
「杏子、遅かったじゃん」
「いや、担任の話が長引いちまってさ。で、そっちが噂の転校生か」
杏子ちゃんがほむらちゃんをじろじろと見ながら言う。
「え、えと……」
「隣のクラスの佐倉杏子ちゃんだよ」
わたしがそう言うと、杏子ちゃんはほむらちゃんに笑いかけながら口を開く。
「よろしくね」
そう言って、飴玉をひとつほむらちゃんに手渡す杏子ちゃん。
「は、はい。よろしくお願いします」
「あーいいなー。杏子、あたしにもちょーだい」
「しょうがねえな。まどか、仁美」
杏子ちゃんがさやかちゃんに飴玉を渡してから、わたしと仁美ちゃんにも飴玉を差し出して言う。
「喰うかい?」
「ありがとうございます」
「ありがとう杏子ちゃん。でも、お菓子を学校に持ってくるのって校則違反だよ?」
わたしがそう言うと、杏子ちゃんは笑いながら言う。
「のど飴だからいーんだよ。それともまどかはいらないの?」
「……食べる」
そう答えて、わたし達全員、クスクスと笑いあう。
わたし達は五人で飴玉を舐めながら、学校を後にするのだった。
468 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:25:07.30 ID:j3JHGsbDo
☆
「あら? 鹿目さん」
街中をぶらつきながら、喫茶店にでも入ろうかとみんなで話していて、わたし達はマミさんに出会った。
「こんにちは、巴先輩。今日はおひとりですか?」
仁美ちゃんがそう尋ねると、マミさんは柔らかな微笑みを浮かべて答える。
「ええ。今日は母に頼まれて新しい紅茶を買いに来たの」
「お使い、ですか」
さやかちゃんがそう言うと、マミさんは笑って頷く。
「あら? そちらの子は?」
マミさんがほむらちゃんに気付いて、ほむらちゃんの事を尋ねてくる。
「わたし達のクラスに、今日転校してきた暁美ほむらちゃんです」
わたしがそう答えると、マミさんはほむらちゃんに優しい笑顔で自己紹介する。
「はじめまして。私は巴マミ。三年生よ」
「は、はじめまして。暁美ほむらです」
「マミさんはね、園芸部の部長さんなの」
わたしがそう言うと、マミさんが優しい笑顔で口を開く。
「鹿目さんも部員なのよ。もし良かったら暁美さんも一度見学しに来てね」
「は、はい」
「マミさん。あたし達これから喫茶店行くんですけど、マミさんも一緒に行きませんか?」
さやかちゃんの提案に、マミさんはにっこり笑って答える。
「お邪魔でなければ」
こうしてわたし達はマミさんも加えて、六人でどこの喫茶店に入ろうか相談しながら歩く。
結局、マミさんの行きつけの、紅茶とケーキの美味しい駅前の喫茶店に入る事になった。
469 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:25:49.19 ID:j3JHGsbDo
☆
「そう言えば、さやかの彼氏が今度コンサートやるんだっけ?」
喫茶店でレアチーズケーキをむしゃむしゃ食べながら、杏子ちゃんがさやかちゃんにそう言うと、さやかちゃんが真っ赤になって否定する。
「彼氏じゃなくて幼馴染だってば!!」
マミさんと仁美ちゃんは杏子ちゃん達のやりとりを見ながら、紅茶を優雅に飲んでいる。
「ほむらちゃんは、どんな男の人がタイプなの?」
わたしの隣に座って、ケーキを小さくフォークで切ってる彼女に話題を振ると、彼女は真っ赤になって俯く。
「わ、わかりません……。でも、優しい人が……いい、です」
そう言って真っ赤になるほむらちゃんの様子に、思わず頬が緩んでしまう。
「……鹿目さんは」
「ん?」
「どんな人が……いいんですか?」
「わたし?」
「……はい」
「わたしの好きなタイプはね。優しくて、強くて、頭が良くて、頼りになって、かっこよくて。わたしが悲しい時や寂しい時にいつも側にいてくれて、抱きしめてくれる。そんな人」
わたしがそう答えると、ほむらちゃんだけでなく、みんながきょとんとした顔でわたしの事を見る。
「あっはははははははっ。何それ。どこの白馬の王子様よ」
さやかちゃんがおなかを押さえながら笑う。
「前々から少女趣味だなとは思ってたけどさあ……」
杏子ちゃんが少し呆れたような顔でわたしを見ながら言う。
「随分具体的ですのね」
仁美ちゃんが驚いた顔でわたしを見て言う。
「まあ理想が高いのは別にいいんじゃないかしら」
マミさんがそう言って微笑む。
「あうぅ……」
なんだか居た堪れなくなって、わたしは俯いてしまう。
「か、鹿目さん、元気出してください」
ほむらちゃんだけがわたしを慰めてくれたのだった……。
470 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:26:19.13 ID:j3JHGsbDo
☆
「次どこにいこっか」
喫茶店を出て、さやかちゃんがみんなにそう言った、その時だった。
「きゃっ!?」
ほむらちゃんが段差につまずいて、たまたますれ違った高校生くらいの、三人の男の人達の内の一人にぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい!!」
ほむらちゃんが慌てて謝ると、男の人達はほむらちゃんの顔とわたし達の顔をじろじろと見てくる。
そしてぶつかった相手がいきなりほむらちゃんの眼鏡を取り上げた。
「あっ!? か、返してください!!」
「ひゅー♪ 眼鏡取るとかわいいじゃん。連れの子達もみんなかわいい子だし」
眼鏡を取り上げた男の人がそう言って、ようやく眼鏡をほむらちゃんに返す。
「ねえねえ、君達俺等といっしょに遊ばない?」
そう言って、ほむらちゃんの肩に馴れ馴れしく腕を回す。
「や、やめてください……」
「そんな嫌がらなくてもいいじゃん。ぶつかったお詫びだと思ってさ、お茶くらい付き合ってよ」
そう言って、にやにやと笑う。
「生憎、アンタ達と遊んでやる義理なんかなくてね」
杏子ちゃんが男の人達を睨みながら言う。
「気安くあたし達の友達の肩に腕を回さないで!!」
さやかちゃんがほむらちゃんの手を掴んで、自分の方へ引き寄せようとする。
「おっと。そんなつれないこと言わないでさぁ」
ほむらちゃんの肩に腕を回した男の人は、ほむらちゃんの右肩をがっしり掴んで離さない。
「痛いっ」
「あっ? 痛かった? ごめんねー」
そう言ってへらへらと笑う。
「あなた達、滝高の生徒ですよね? 中学生の女の子相手にこんな事して、恥ずかしくないんですか?」
マミさんがキッと睨んでそう言うと、三人組の中の一人がマミさんの前に歩いてきて、いきなり胸倉を掴んで低い声で怒鳴った。
「舐めた口聞いてんじゃねえ!! 犯すぞ!!」
そう言って、マミさんを突き飛ばす。
マミさんはそのまま、へなへなと崩れ落ちてしまう。
「おいおい、乱暴すんなよ。怖がってるだろ」
震えてるマミさんを見て、ほむらちゃんを捕まえてる人がへらへら笑いながら言う。
「け、警察を……」
仁美ちゃんが携帯電話を取り出して、助けを呼ぼうとすると、もう一人の男の人が仁美ちゃんの腕を掴んだ。
「おいおい。そこまでされるような事してないじゃん」
「いやっ!! 放してください!!」
「仁美を放せ!!」
さやかちゃんが、仁美ちゃんの腕を掴んでいる男の人に体当たりをする。
「がっ!? こいつ!!」
さやかちゃんの肩がぶつかって痛かったの、男の人が激怒して拳を振り上げ、さやかちゃんの顔を殴ろうとした。
「やめてえぇぇぇぇぇぇっ!!」
――ゴツッ。
咄嗟に飛び出したわたしの側頭部に、殴られた痛みが走る。
わたしはそのまま、地面の上に倒れてしまう。
「やめて!! わたしの大事な友達にひどいことしないで!!」
わたしは倒れたまま、泣きながら彼等に向かって叫ぶ。
――ピッピー!!
誰かが呼んでくれたのか、お巡りさんが笛を吹きながら、こちらに向かって走ってくるのが見えた。
男の人達はほむらちゃんを突き飛ばすと、そのまま走って逃げていく。
「まどか!!」
さやかちゃんの声を聞きながら、今にも泣き出しそうなほむらちゃんの顔を最後に見て、わたしは意識を失った……。
471 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:29:13.17 ID:j3JHGsbDo
☆
――あれから数日後。
わたしとほむらちゃんは二人で一緒に下校していた。
他愛のないお喋りをしながら、川の近くを通るとミーミーと言う小さな鳴き声が聞こえてくる。
「猫の鳴き声?」
きょろきょろと辺りを見ていると、ほむらちゃんが川の方を指差して叫ぶ。
「まどか、あそこにいるよ!!」
ほむらちゃんが指差す先を見ると、生まれてからまだ間もない白い子猫が、箱に入れられて川を流されていた。
箱は川の端っこに上手く引っかかって止まっている。
「ど、どうしよう……」
わたしはおろおろしているほむらちゃんを尻目に、フェンスを乗り越えて川の中へ入っていく。
川の中に入った事で、おなかまで水浸しになりながら、子猫の入れられている箱まで歩いていき、子猫を抱き上げる。
カラになった箱が流されていく。
わたしは子猫を懐に入れて、ほむらちゃんの元に戻った。
「ま、まどか、大丈夫?」
「うん。ちょっと濡れたけど、わたしもこの子も平気だよ」
「よかった……」
ほむらちゃんがそう言って、安堵の微笑みを浮かべた時だった。
「まどか」
名前を呼ばれて振り返ると、タツヤと手を繋いだパパが立っていた。
「また無茶をして。駄目じゃないか」
「……ごめんなさい」
わたしはパパに謝る。
数日前、不良からさやかちゃんを庇って殴られたわたしは、救急車に乗せられて病院に運び込まれた。
殴られた場所が場所だけに、精密検査とその日一日の入院を余儀なくされた。
結局、物凄く痛かったけど脳にも異常はないという事で、翌日には退院できたのだけど。
ママとパパにものすごく怒られた。
友達を助けようとするのはいいけど、自分の事をもっと大切にしろと叱られた。
本当にパパ達に大切にされてるんだって、痛いくらい実感したからわたしはパパ達に素直に謝ったばかりだったのに。
また、怒られちゃった。
「風邪を引くといけないからね。早く帰ってお風呂に入らないと。それに、その子猫にもミルクをあげないとね」
そう言って、パパは優しくわたしの頭を撫でてくれる。
「ごめんね。ほむらちゃん。今日はここでお別れ。また明日、学校でね」
「うん。また明日」
わたしがそう言って微笑むと、ほむらちやんも微笑んで手を小さく振ってくれた。
その日の夜、ママが帰ってきて、パパと話し合った結果、わたしが助けた子猫は家で飼う事になった。
「ミー、ミー」
小さな鳴き声をあげながらじゃれついてくる子猫に、かつてのあの子の面影を感じたわたしは、子猫にキュゥべえと言う名前を付けた。
これからよろしくね、キュゥべえ。
472 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:29:59.77 ID:j3JHGsbDo
☆
――穏やかで優しい日々が過ぎていく。
ほむらちゃんもみんなと打ち解け、普通にお喋りできるようになった。
眼鏡をやめてコンタクトに変え、おさげもやめた今のほむらちゃんはかつてわたしが知っていた彼女と同じ姿だった。
不良に殴られて運び込まれた病院を退院した翌日に、泣きながらわたしに謝ってくれたほむらちゃん。
ちょっとずるいかなと思いながら、わたしに悪いと思うならまどかと呼んでと言ったあの時から、ほむらちゃんはわたしに敬語を使わないで話してくれるようになった。
それでもまだ、みんなとは中々打ち解けられなかったけど、時が経つにつれてみんなとも普通にお喋りできるようになっていた。
ほむらちゃんも入部してくれた園芸部で、わたしとマミさんとほむらちゃんで小さな花壇を作って花の種を埋める。
さやかちゃんと杏子ちゃんも手伝ってくれたおかげで、立派な花壇が出来た。
放課後にみんなで一緒にカラオケに行ったり。
学校の庭園でみんなで手を繋いで記念写真を撮ったり。
そんな、かけがえのない日々が過ぎていく。
そんな日々の中、日曜日にみんなと一緒に遊園地に遊びに行った帰り道。
みんなと別れたわたしは一人で家へ向かって歩いていく。
家に帰る途中に通りかかった道は、初めてあの人とキスをした思い出の場所だった。
不意に、わたしは大好きだったあの人の優しい笑顔を思い出してしまう。
わたしはその場に立ち尽くして、手の甲で目を拭う。
気が付くと、わたしは家には帰らず、違う場所に向かって歩いていた……。
しばらく歩き続けて、やがてワンルームマンションに辿り着くと、目的の208号室に向かう。
――ガチャ。
208号室から知らない男の人が出てきて、カギをかけて私の隣を通り過ぎていく。
「――っ。うぅぅぅ……」
わたしはその場に立ち尽くしたまま、涙が出なくなるまで声を殺して泣き続けた……。
473 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:30:37.21 ID:j3JHGsbDo
☆
辺りがすっかり暗くなった帰り道。
人気のない夜の遊歩道を一人、わたしはとぼとぼと歩いて家に帰る。
涙が枯れるくらい泣いたと思ったのに、また涙が出てくる。
「――会いたい」
口が勝手に今の想いを喋る。
「会いたいよ、芳文さん……」
――会いたい。
――あなたに会いたい。
涙を拭いながら、歩いていたその時だった。
「何泣いてんの?」
わたしは遊歩道の暗がりに突然引き込まれてしまった。
「――え?」
わたしを暗がりに引き込んだのは、ほむらちゃんが転校してきたあの日、わたしを殴った男の人達だった。
「君のおかげで、俺達退学になっちゃったよ」
そう言って、わたしを殴った男の人がわたしを芝生の上に突き飛ばす。
「ひ……」
男の人達は嫌らしい笑みを浮かべながら、わたしに向けて手を伸ばす。
もう魔女はこの世界にいないのに。
まるで魔女の口づけを受けた人達のような顔で、わたしに触れようとしてくる。
「嫌だ……」
わたしは尻もちを付いたまま、後ずさる。
「助けて……」
男の人達がわたしに向かってどんどん近づいてくる。
こわいこわいこわい!!
「助けて!!」
――助けて芳文さん!!
もうこの世界のどこにもいない、大好きなあの人に助けを求めたその時だった。
男の人がわたしの腕を掴む。
もう魔法少女じゃないわたしには、この人達に抵抗する力なんてなくて。
目の前でにやにやと厭らしい笑い方をするこの男の人達がこわくてこわくて。
思わず目を閉じて現実逃避しようとしてしまう。
その時だった。
――ズドンッ!!
「グベッ!!」
鈍い音と悲鳴と共に、わたしの腕を掴んでいた男の人の腕が、離れていく。
恐る恐る目を開けると、一人の男の人がわたしに背中を見せて立っていた。
「貴様等、三人でこの子に何をしようとしていた」
わたしを襲おうとしていた三人組の残り二人に、静かな、それでいて激しい怒りを込めた声で問いかける。
「てめえ!!」
「ぶっ殺す!!」
二人がナイフを取り出して、襲い掛かってくる。
ズドンッ!!
バキイッ!!
一人は顔面を殴られて。
一人は顔面を蹴り飛ばされて。
二人とも顎を砕かれてへし折られた歯を撒き散らしながら、地面に叩きつけられてそのまま気を失う。
474 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:32:25.55 ID:j3JHGsbDo
「大丈夫?」
わたしを助けてくれた彼が、優しい顔でわたしに手を差し伸べてくれる。
彼の顔を見たその瞬間、わたしの瞳からぽろぽろと涙がこぼれ出す。
「う、うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」
わたしは両手で涙を何度も拭いながら、まるで小さな子供のように泣き続ける。
「もう大丈夫だから」
彼はそう言って、泣きじゃくるわたしの頭を優しく撫でてくれる。
「う……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ」
わたしは彼に抱きついて、彼の胸に顔を埋めながら泣き出す。
「大丈夫。またあいつらが襲ってきても、俺が守ってあげるから」
そう言って、彼は優しく私を抱きしめてくれる。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
「大丈夫。もう大丈夫だから」
彼の腕の中で、わたしは泣き続ける。
そのまま声が出なくなるまで泣き続けて、わたしがすんすんと鼻を鳴らしていると、彼は優しい声でわたしに言う。
「おかしいな。君とは初めて会ったはずなのに……」
――そっか。
芳文さん、覚えてないんだ。
「――なのに、なんでだろう?」
「泣いてる君を見てたら、こうしてあげないといけない気がしたんだ」
――うん。わたしが泣いてると、いつもこんな風にぎゅってしてくれたんだよ。
「俺、君と以前にどこかであった事があるのかな?」
……覚えてるの?
わたしとの事、ちょっとでも覚えててくれてるの?
「……わたし、まどか」
わたしは芳文さんの顔を見つめて、自分の名前を言う。
「鹿目まどか」
「……鹿目まどか」
芳文さんがわたしの名前を呼ぶ。
「なんだろう。とても大切な……大切な人の名前だった気がする」
わたしの事を少しでも覚えててくれるなら。
こうしてまた会えたのが本当の奇跡なのなら。
「助けてくれてありがとう。あなたの名前、教えてほしいな……」
「俺の名は――」
ほとんど覚えてなくても構わない。
だって、また会えたから……。
『――俺は君の事が、この世界の誰よりも好きだから』
――あの時は、あなたから告白してくれたよね。
――だから、今度は、わたしから。
――また、ふたりで始めよう。
475 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:33:28.25 ID:j3JHGsbDo
☆
「――よかったね」
私の隣で、ショートツインテールの彼女が、そう言って笑う。
「うん。ありがとう」
私は彼女に感謝を込めて応える。
「まどか」
私の隣で微笑む彼女は、今わたし達の目の前で息子と一緒にいるまどかが、魔女の中から助け出し、一度は融合したあのまどかだ。
この世界が元の姿に戻ろうとするその時の事だった。
星々の光の中で泣きじゃくるまどかの体が一瞬光ったかと思うと、桃色に輝く光が分離して私の前に飛んできて、私の良く知る魔法少女のまどかの姿になった。
『あきらめないで』
まどかが私に微笑みながら言った。
『魔法少女はさ、奇跡を起こすんだよ? あの子とわたし。そしてほむらちゃん。ここには三人も魔法少女がいるんだよ』
『でも、今の私は』
『一人で起こせない奇跡でも、三人いれば起こせるかもしれない。だから祈ってみようよ。本当の奇跡をさ』
まどかは私の言葉を遮ってそう言うと、私の手を手を取って、目を閉じて祈る。
もう魔法少女じゃない私だけど、まどかの言葉を信じて私もまどかと一緒に強く祈る。
奇跡を。
私の大切な物をこの手に取り戻して、あの子に笑顔を取り戻す為に。
私達は強く強く願いを込めて祈った。
――そして今。
――私達は、この世界にいる。
「ほむらちゃん。ううん。今は円華ちゃんだね」
まどかが私の顔を見つめながら口を開く。
「ごめんね。わたしそろそろ行かなきゃ」
「もう行ってしまうの?」
「うん。別の世界のわたしがすべての宇宙。すべての過去と現在と未来の魔女を滅ぼす願いをしたからね。ここにいるわたしもそっちに行かないと」
「この世界のまどかはどうなるの?」
「あの子は元々魔女も魔法少女もいない宇宙のわたしだしね。それに本当の魔法少女になったあの子は強く願ったんだよ。大切な人達と一緒に、普通の女の子として生きたいって」
そう言ってまどかは微笑みながら、芳文と見つめあうまどかを優しい顔で見る。
「だから、あの子はわたしや別の世界のわたしみたいに、魔女を滅ぼす願いをしたわたしに引き寄せられることはないよ。わたし達との融合も全宇宙からの消滅も思いっきり拒絶されちゃったからね」
まどかは私の疑問に、いたずらっぽく笑いながらそう答えた。
「あなたはどうなるの?」
「魔女を滅ぼす概念になって、いつでもどこにでもいる存在になるよ」
「……それじゃ、もう会えないの?」
「……うん。でも今のあなたにはこの宇宙のわたしと芳文君がいるから」
「まどか……」
「あなたがわたしの為にずっと頑張ってくれてた事、今のわたしには全部わかるよ。あなたはわたしの最高の友達だよ」
「あ……」
私の瞳から、涙が流れる。
「もう。ほむらちゃんは泣き虫なんだから」
そう言って、まどかが私の目元を優しく拭ってくれる。
「もうお母さんなんだから、もっとしっかりしないと駄目だよっ」
そう言ってまどかは笑う。
「うん。がんばる」
「がんばってね。それじゃ、もう行くね」
「まどか。本当にありがとう。あなたが友達になってくれて、私は幸せだったよ」
「私もだよ。ずっと元気でいてね」
「うんっ。さよなら、私の最高の友達」
「えへへ……。ばいばい。ほむらちゃん」
まどかが私の前から消えていく。
この宇宙から去っていく。
「まどか……。さようなら……」
わたしは生涯最高の親友にもう一度別れを告げた。
いつか、この記憶も薄れて消えてしまうかもしれない。
だけど、私は絶対に忘れない。
私を救ってくれた彼女の事を絶対に忘れない……。
476 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:35:56.15 ID:j3JHGsbDo
☆
「いってきまーすっ」
わたしは家族に元気にそう言って、家を出る。
「あーん。服を選ぶのに時間かけすぎちゃったー」
約束の時間まで、もうすぐだよ。
初夏の日差しを肌に感じながら、頭にかぶってる白い帽子を押さえながら走る。
「お、まどかそんなに急いでどこ行くの?」
待ち合わせ場所に向かう途中、さやかちゃんに声をかけられる。
さやかちゃんだけでなく、ほむらちゃん、仁美ちゃん、杏子ちゃん、マミさんもいた。
みんなでこれからどこかへ行くのかな?
「デートっ!! 急いでるから、みんなまた明日学校でねっ」
わたしはみんなにそう言って走る。
「まどかー転ばないようにねー」
「あらあら、まどかさんったらあんなに急いで」
「ははっ。それにしてもまどかの奴、最近生き生きしてるよな」
「恋する乙女は無敵なのよ、佐倉さん。それにしても、彼が転校してきてから一ヶ月もしない内に付き合い始めるなんてね……。こういうのを運命の出会いっていうのかしらね」
「まどかはすごいな……。いつも元気で勇気があって。彼氏にも自分から告白したって言うし。私もいつか、まどかみたいになりたいな……」
わたしは走る。
早く会いたい。
大好きなあの人に会いたい。
「芳文さーんっ」
待ち合わせ場所で待っててくれるあの人の名前を呼びながら。
わたしは彼の側に駆け寄っていく。
「きゃっ!?」
段差も何もないのに、わたしは勢いよく転びそうになってしまった。
「おっと」
――ポフッ。
芳文さんが転びそうになったわたしを優しく受け止めてくれる。
「やれやれ。まどかはそそっかしいな」
優しい笑顔で芳文さんがわたしに言う。
「うー。またやっちゃったぁ……。どうして、何もない所で転んじゃうんだろ……」
「もうちょっと気を付けないとな。まあ俺が支えるけどさ」
そう言って芳文さんは笑う。
わたしの大好きな笑顔で。
477 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:36:48.50 ID:j3JHGsbDo
「ずっと?」
「ああ。俺がまどかの事を好きで、まどかが俺の事好きでいてくれる限りずっと」
「それじゃ、一生だね」
「望むところだ」
わたし達はそう言って、笑いあってから、どちらからともなく手を握りあって歩き出す。
「そういえばね、GWに家族旅行に行った先で出来た友達と文通してるんだけどね。その子の友達が子猫拾ったんだって」
「へぇ。たしか、その友達かずみちゃんだったっけ?」
「うん。その子の友達が拾った子猫白と黒のぶち猫なんだけど、すごくかわいいんだって。名前はジュゥべえって言うらしいよ」
「へぇー。家の母さんといい何気にまどかの周りは猫好きが多いな」
「芳文さんの家の子はたしかエイミーだったよね」
「ああ。俺が大きくなって、あんまりかまってくれなくなったからさびしいとか言って、母さんがどこかから拾って来たんだ」
「あはははは、そうなんだ」
「事あるごとに女の子が欲しいって言うんだぜ。そんなに欲しけりゃ、まだ若いんだから作ればいいだろって言ってやったら、まどかみたいな子が欲しいんだってさ」
「そう言ってもらえるとうれしいな」
「うちの母さん、なんでか知らないけどまどかの事がお気に入りみたいでさ。まどかを連れて来いってうるさいんだよ」
「それじゃ、もまた今度遊びに行ってもいい?」
「まどかならいつでも歓迎するよ」
「えへへ……。じゃあ、約束ね」
「ああ」
478 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:37:52.00 ID:j3JHGsbDo
わたし達はそんな会話をしながら、手を繋いで歩いていく。
途中、小さな女の子を連れた綺麗な銀髪の女の人や、両親と手を繋いで嬉しそうに歩く小さな女の子、仲の良さそうな白い服の女の子と黒い服の女の子とすれ違う。
わたしは彼女達とすれ違いながら、口元に笑みを浮かべる。
「まどか。随分嬉しそうだけど、何かいい事でもあったの?」
隣を歩く芳文さんに、わたしは笑顔で答える。
「うん。大好きな家族がいて、大切な友達がいる。それが嬉しくて」
「そっか」
「でもね」
「一番大好きなあなたがわたしの側にいてくれる。それがすごく嬉しいの」
わたしのその言葉に、彼は一瞬きょとんとした表情をしてから、わたしに優しい笑顔を見せてくれた。
これから先、きっと色々な事があると思う。
悲しい事もあるはずだし、辛い時や泣きたい時だってきっとあるはず。
――だけど。
わたしの隣には、いつだってこの人がいてくれる。
これから、二人で一緒に大人になっていこうね。
わたし達はこれからもずっと一緒だよ。
わたしは彼の笑顔にとびっきりの笑顔を返した。
――わたしの大好きなこの人へ。
――芳文さん。大好き。
――わたしの。
――私の大切な人。
おしまい
479 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:42:38.72 ID:j3JHGsbDo
杏子「最後まで読んでくれてありがとな」
杏子「おまけ。厨二的設定コーナー」
杏子「最終決戦の社の攻撃力。パンチが420。キックが500。アトランティス・ストライクが800。ファイナル・マギカ・ブレード装備時は420+9999。マギカ・ブレード六刀流はマギカ・ブレード999×3+420×2。 マギカ・シグヴァン時は攻撃力が約100倍になる」
杏子「真・魔法少女まどかの攻撃力。オメガ・ジャッジメント(爆発する矢)が999。ブラスト・シューター(分裂矢)が矢1本に付き780。まどか版ティロ・フィナーレが1200(貫通特化の巨大矢)」
杏子「社芳文 レベル99 HP9999 MP100(パンチやキック1発につきMP1使用。まどかからの魔力供給ですぐにフル回復する) 固有アビリティ かばう 投げる 二刀流 両手持ち 斬鉄 カウンター 白刃取り オートリジェネ オートリフレッシュ 六刀流」
杏子「鹿目まどか レベル99 HP500 MP9999 固有アビリティ 絶対防御壁(マギカ・イージス) 封印魔法(マギカ・ホールド) マギカ・ブレード生成 必殺剣(マギカ・シグヴァン) アレイズ(魔法少女人間化) ケアルガ 狙う 狙い撃ち」
杏子「それじゃまたな」
杏子「あ、そうそう。誤字脱字が多いから、加筆修正して、オマケシナリオ付きでZIPをあげるってさ」
480 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 02:46:43.61 ID:j3JHGsbDo
杏子「おっと、真・魔法少女は人の体で希望の魔法を振るうから、MPは減らないんだ。体は人間だから、オートリジェネもない。それじゃ今度こそじゃーな」ノシ
481 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/22(水) 02:48:11.06 ID:omn3o3vk0
長い間乙でした
とにもかくにも、この世界のまどかはもちろん、キュウべぇやジュウべぇまで
幸せになってくれたのが何より嬉しいなって
482 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/22(水) 08:11:55.44 ID:lSSKBuDSO
超乙。最初から追って読ませてもらってたぜ。みんなが幸せになれてホント良かった。
出来たら後日談とか書いてください。お願いします。
483 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 21:17:56.55 ID:j3JHGsbDo
杏子「
>>475
に不備があったので、ここだけ訂正しておくよ。このレス含めて2レスだけ」
484 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/22(水) 21:18:24.76 ID:j3JHGsbDo
「――よかったね」
私の隣で、ショートツインテールの彼女が、そう言って笑う。
「うん。ありがとう」
私は彼女の言葉に感謝を込めて応える。
「まどか」
――私の隣で微笑む彼女は、今わたし達の目の前で息子と一緒にいるまどかが、魔女の中から助け出し、一度は融合したあのまどかだ。
あれはこの世界が元の姿に戻ろうとする、その時の事だった。
星々の光の中で泣きじゃくるまどかの体が一瞬光ったかと思うと、桃色に輝く光が分離して私の前に飛んできて、私の良く知る魔法少女のまどかの姿になった。
『あきらめないで』
まどかは私に微笑みながら、凛とした意思を込めて言った。
『魔法少女はさ、奇跡を起こすんだよ。 あの子とわたし。そしてほむらちゃん。ここには今、三人も魔法少女がいるんだよ』
『でも、今の私は』
『一人で起こせない奇跡でも、三人いれば起こせるかもしれない。だから祈ってみようよ。本当の奇跡をさ』
まどかは私の言葉を遮ってそう言うと、私の手を取って、目を閉じて祈る。
もう魔法少女じゃない私だけど、まどかの言葉を信じて私もまどかと一緒に強く祈った。
――奇跡を。
私の大切な物をこの手に取り戻して、泣きじゃくるあの子に笑顔を取り戻す為に。
私達は強く強く願いを込めて祈った。
――そして今。
――私達は、この世界にいる。
「ほむらちゃん。ううん。今は円華ちゃんだったね」
まどかが私の顔を見つめながら、私の名前を言い直す。
「ほむらでいいわ。ううん、あなたには、ほむらと呼んでほしい」
「……うん。ほむらちゃん」
まどかが私に微笑んで頷いてくれる。
――今の私はもう、暁美ほむらじゃない。
私は芳文をこの手に再び抱くために、暁美ほむらである事を放棄した。
青樹円華。
かつて、この世界で記憶を失った私に与えられた、仮初の名前。
今の私は仮初の名前を本当の名前に変え、かつて実の母のように慕っていたあの人の本当の娘として、この世界に立っている。
母の娘で、あの人の妻で、芳文の母親。
それが今の私。
この世界で大切な人達と共に生きて行く為に、私が望んだ奇跡の対価は、別の世界の暁美ほむらの消滅。
「ごめんね。わたしそろそろ行かなきゃ」
まどかがすまなそうに私に切り出す。
「もう行ってしまうの?」
「うん。別の世界のわたしがすべての宇宙、すべての過去と現在と未来の魔女を滅ぼす願いをしたからね。だからね今ここにいるわたしもそっちに行かないと」
「この世界のまどかはどうなるの?」
「あの子は元々魔女も魔法少女もいない宇宙のわたしだからね。大丈夫だよ。それに、本当の魔法少女になったあの子は強く願ったんだよ。大切な人達と一緒に、普通の女の子として生きたいって」
そう言ってまどかは微笑みながら、芳文と見つめあうまどかを優しい顔で見る。
「だから、あの子はわたしや別の世界のわたしみたいに、魔女を滅ぼす願いをしたわたしに引き寄せられることはないよ。わたし達との融合も全宇宙からの消滅も思いっきり拒絶されちゃったからね」
まどかは私の疑問に、いたずらっぽく笑いながらそう答えた。
「あなたはどうなるの?」
「魔女を滅ぼす概念になって、いつでもどこにでもいる存在になるよ」
「……それじゃ、もう会えないの?」
「……うん。でも今のあなたにはこの宇宙のわたしと芳文君がいるから」
「まどか……」
「あなたがわたしの為にずっと頑張ってくれてた事、今のわたしには全部わかるよ。あなたはわたしの最高の友達だよ」
「あ……」
私の瞳から、涙が流れる。
「もう。ほむらちゃんは泣き虫なんだから」
そう言って、まどかが私の目元を優しく拭ってくれる。
「もうお母さんなんだから、もっとしっかりしないと駄目だよっ」
そう言ってまどかは笑う。
「うん。がんばる」
「がんばってね。それじゃ、もう行くね」
「まどか。本当にありがとう。あなたが友達になってくれて、私は幸せだったよ」
「私もだよ。ずっと元気でいてね」
「うんっ。さよなら、私の最高の友達」
「えへへ……。ばいばい。ほむらちゃん」
まどかの姿が私の目の前から消えていく。
私の友達のまどかが、この宇宙から去っていく。
「まどか……。さようなら……」
わたしは生涯最高の親友にもう一度別れを告げた。
いつか、この記憶も薄れて消えてしまうかもしれない。
だけど、私は絶対に忘れない。
私を救ってくれた彼女の事を絶対に忘れない……。
485 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/22(水) 23:31:28.46 ID:DRzxl7ceo
超乙
オリ主物なのに、こんな名作が読めて楽しかったです
今までお疲れ様でした!
486 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/06/22(水) 23:39:54.31 ID:UoJ9Gtoyo
乙です
こんな名作を読ませていただきありがとうございました
最後の他の魔法少女の幸せな描写に泣けた
長い間お疲れ様でした!
487 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/23(木) 02:21:53.61 ID:BUnxEWY4o
乙☆マギカ!
現状オリ主作品最高峰だと思ってる
少年が神話になったラスト!?とか途中まで思ってたぜ
488 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/23(木) 07:19:13.18 ID:u+Afvde1o
原作ありきの作品だけど原作の終わり方よりこっちの方が好きだー!
1話の時からずっと張り付いて読んできた甲斐があった、今までお疲れさまでしたー!!
489 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/23(木) 12:50:30.63 ID:Fq9xI18/0
もう乙としか言いようがない。
文句のつけようもない「完全無欠のハッピーエンド」、GJでした!
芳文が消えるエンドじゃなくて本当に良かった。
メアリー臭が途中から気にならなくなるほど素晴らしかった。
やっぱ原作のキャラや人間関係を、ちゃんと大事にしてくれてたからかな?
随所に散見される原作リスペクトも、読んでて嬉しくなったよ。
以前は他ルートも希望してたけど、こうも完成度高いと、もう芳文の嫁はまどかしか考えられんww
そしてインキュベーターざまあwwwwwwww
できればスピンオフとして、「青樹円華」の物語も読みたい。
ほむほむが姿を消した時の葛藤とか、旦那の気持ちとか。(わかってたと思うんだよな、お互いに)
何はともあれ、本当に乙でした。ありがとうと言わせてくれ!!
490 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/24(金) 02:08:44.82 ID:r5EICOmko
他のヒロインルートって書く気ある?
491 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/06/24(金) 09:03:26.84 ID:UD4LKpVU0
ぜひ他ヒロインルートも書いてください。
492 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福岡県)
[sage]:2011/06/24(金) 20:53:08.11 ID:EDlWgVAx0
他ヒロインルートもお願いします
お願いします
493 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/24(金) 21:17:06.43 ID:ypI8LnpBo
でもゲームで最初にトゥルーエンドやっちゃったような感じがするな―
このシナリオをベースにサイドストーリーの方が良いような気がする
494 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2011/06/25(土) 13:20:25.61 ID:sfcoF5Dko
メインルートの完成度が高いと全ヒロインを攻略した後解禁になるのがギャルゲエロゲの定番≪鍵作品etc
つまり全ヒロイン攻略後に平行世界女神まどか救済ルートが有るんだよ!
495 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/25(土) 17:00:42.42 ID:MLMwTsISO
他ヒロインルートか後日談か番外編書いてください。お願いします。
496 :
490
[sage]:2011/06/27(月) 09:36:15.06 ID:pZ5eg8hPo
なんか変な流れになっちまったな、スマン
497 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/27(月) 19:42:15.77 ID:yD7n5V1co
杏子「よう。最近暑いけど皆元気にしてるかい? 作者の代理であるあたしからも、改めて皆に礼を言わせてもらうよ」
「みんな感想やリクエストをありがとな。
>>496
も気にすんな」
「さて、まどか以外のルートだが、作者が多忙になってきた上、1本のストーリーにするネタがまだないので、正直難しい」
「それにスレ立てした時点では、最終回が放映されてなかったから、他の子ルートも何とかなるかと思ってたらしいが……」
「あのラストを見たらシリアスなSSでまどかの願いひとつで全部解決、奇跡の対価なしでハッピーエンド。みんな幸せめでたしめでたしなんて話には出来ないんだってさ。ギャグ物なら別だけど」
「奇跡を望めば、その分しっぺ返しを喰らう。それが作者にとっての魔法少女まどか☆マギカの世界観だからな……」
「――だから、社芳文は最後に自身の存在の復活の対価として、まどかとの思い出を失ってしまった」
「もし他のルートを書いたとしても、まどかの願いで全部解決大逆転なんて、使いまわされた展開にはしたくないそうだ」
杏子「……そもそも他の魔法少女のルートに入った場合、まどかは魔法少女になれないし、なる必要がほぼなくなる。最後にまどかの願いで解決なんて終わりにしたくないから」
「ただ、あたしも含めてまどか以外の魔法少女にはアニメ本編の設定上、世界を変えたり魔法少女システムを覆したりする力はない」
「それにまどかが3話で魔法少女にならないと、魔人の力もマギカ・ブレードもマギカ・イージスもないから、インキュベーターも滅ぼせないし、ワルプルに街がかなりぶっ壊される」
「当然、魔法少女達は人間に戻れない」
「……はっきり言うと、まどか以外のルートはすべて虚淵エンドになる。その時のヒロインと社は幸せでも、まどかは人知れず消えてしまうから」
杏子「最終回を迎えた今だからばらすけど、社芳文の命を救う願いをして魔法少女になった、この世界の鹿目まどかの真の固有能力は魂の肉体への定着≠セ」
「魂が肉体の中から消滅してしまった完全な死やソウルジェムのグリーフシード化以外なら、死ぬ事によって肉体の中から失われていくor肉体から取り出された魂を肉体に定着させて復活させる事が出来る」
「ドラクエに例えた方が分かりやすいかな。簡単に言うと限りなくザオリクに近いベホマだ」
「だから、魔法少女の人間化なんて真似が出来たんだ。インキュベーターが魔法少女への再契約も出来ないような強力な、魂の肉体への定着≠フ力でね」
杏子「……ほむらを助けたまどかの人間化魔法は実は不完全な物だったんだ。強力な魔力で無理矢理人間に戻そうしていた所を攻撃された結果、ほむらは半魔法少女なんて中途半端な物になってしまった」
「そんな状態で別の宇宙の過去に飛ばされた結果、砂時計の機能も滅茶苦茶に狂ってしまった」
「その結果、本来1ヶ月限定のはずの時間停止能力が、時間遡行不可で最大99秒までという制限付きで、ほむらの魔力が枯渇するまでの間だけ使えるようになったんだ」
「ちなみにほむらのソウルジェムの穢れは、まどかがほむらの体内に魂を戻す際に吸収している」
498 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/27(月) 19:43:40.78 ID:yD7n5V1co
杏子「まどかの能力についての話に戻すよ」
「まどかはこの真の固有能力があったから、家族、友人、恋人との強い絆で得た希望のエントロピーが絶望のそれを上回り、自身の魂をソウルジェムの呪縛から解き放ち、再びその身に戻す事に成功したんだ」
「絶対防御壁(マギカ・イージス)は、ソウルジェム生成時のまどかの心理状態の影響もあるけど、本当の固有能力のおまけで付いてきた副産物でしかない」
「願いの内容が内容だけに、魔法少女としての力が守護特化に固定された。そして膨大な魔力のおかげで決して破られる事のない絶対防御壁になった。ただそれだけ」
「封印魔法はマギカ・イージスの応用だから、完全に後付け能力」
「守護特化だから、攻撃が苦手で武器の巨大化が上手く出来なかったまどかは、放浪の旅で経験を積んでようやく出来るようになった。それがまどか版ティロ・フィナーレ」
「実はまどかがマミとあたしに武器の巨大化のコツを教わったり、いつか巨大武器が生成出来るようになったら、ティロ・フィナーレの名を使ってもいいと言う許可をマミにもらう裏話がある」
「経験を積んで魔力の効率的な運用が出来るようになったから、まどかは苦手だったはずの攻撃の威力が徐々に上がっていったんだ」
杏子「それからマギカ・ブレードに秘められた因果を破壊する力は、世界その物が世界の歪みを破壊する救世主としてのまどかに与えた物だ」
「だから他の願いで契約した他世界のまどか達には、マギカ・ブレードは作れないし、作ったとしてもそれはさやかの剣みたいなただの魔力の剣だ」
「話が逸れたね。固有能力の話に戻すよ。固有能力その物が違うから、他世界のまどか達にはソウルジェムの呪縛を自ら打ち破るなんて真似は出来ない」
「そんな訳で社芳文の命を救う願いで契約していないと、その後まどかは契約しても契約しなくても、最後は原作まどかの願いに引き寄せられて、この世界から存在が消滅して円環の理になってしまうんだ」
「魔法少女の因果を背負わされてしまったこの世界のまどかは、限りなく女神まどかに近い力を持っている真・魔法少女にならないと、原作まどかの願いで消えてしまった各平行世界まどか達と同じ末路になる」
「真・魔法少女になっている場合に限り、女神まどかの願いによって各平行世界で起こる各まどかの強制融合消滅をキャンセルして、この世界の鹿目まどかとして存在し続けられるんだ」
「つまり、他のルートではまどかは必ず消える。みんなが読んでくれた結末だけが、全員が幸せになれる最高のエンディングになるように設定して書いてるからね」
「ガンダムで例えると、女神まどかはダブルオークアンタで真・魔法少女まどかはダブルオーライザー(GNソードV装備のGNドライブ型)だ」
杏子「話を戻すよ。例えばKanonで月宮あゆを攻略しないと、月宮あゆは人知れず消えちゃうだろ? あれと同じなんだ。まどかはメインヒロインにして主役だからこういう話と構成になったのさ」
「ぶっちゃけるとこのSSは
>>494
が言ってるようにギャルゲーを意識してるからね。この話の13話からはAirのAir編。CLANNADのAFTER STORYに相当する」
「もしゲームだったら、12話まででまどかルートは一旦終了。他のキャラ攻略後、13話以降解禁みたいな感じ」
「そもそものコンセプトがギャルゲー版魔法少女まどか☆マギカのシナリオを書いてみる!! だから」
「そう言う訳で、マミルート、さやかルート、あたしのルートは絶対に完全ハッピーエンドにはならない。本人達にとってはハッピーエンドだけどね」
「そもそもまだ他の子のシナリオすら思いついてないしね。まあほぼ全部の設定を今回のレスで全部暴露した事になるんだけどさ」
「ちなみに他の子のルートをやった場合、社芳文はほむらが母親である事に気付かない。話もワルプル戦で終了。これだけは確定」
「ワルプル戦後があるのはまどかだけ」
「作者がリアルで忙しいので、長編が書けても既に大体のシナリオが頭の中にある円華の話や短編オマケシナリオだけだね。それも今はかなり難しい」
「書ける時期が来れば書くかもしれないので、まあ期待せずに待っててほしい」
499 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/27(月) 20:10:38.08 ID:yD7n5V1co
杏子「社芳文の詳細設定を出してなかったから出すよ。4月5日生まれ。髪の色、目の色、血液型、すべてほむらと同じ。利き腕は両利き」
「好きな食べ物は甘い卵焼き。理由は幼い頃大好きだった母親が、幼かった自分に良く作って食べさせてくれた物だから。嫌いな食べ物はなし」
「ほむらと和解するまでは、生きていく為の栄養さえ取れればいいという考えで、食べ物に執着しなくなってしまい、好きな食べ物を聞かれてもないと答えていた」
「幼少期はママ大好きっ子だった。母親の胸が小さくて大きな胸に触れる機会がなかった為、どっちかと言うと巨乳派」
「描写はしていないけど、放浪編で各魔法少女達や魔女と対峙している時には、無意識の内に母親同様、シャフ度を取っている。何気ない癖とか母親そっくりだ」
「美人の母親似なのでオトメンと呼ばれるタイプの美形。女装するとほむらにそっくり。背が高いので14歳のほむらよりも少しだけ大人っぽく見える」
「本来の年齢のほむらと並べれば、女装してなくても一目で親子だとわかるくらい似てる」
「ずば抜けた戦闘センスを持ち、魔人になる前の状態でも並の人間を遥かに超える身体能力を持つ。1話の時点で亀田3兄弟レベルの強さの相手と3対1でケンカしたとしても無傷で勝てるほど強い」
「頭の回転が速く、授業を聞いてるだけでも高ランクの成績を取れるが、美術や音楽等はからっきし駄目」
「真剣に描いた絵が3才のまどかの弟と同レベル。歌もジャイアン並みの音痴。リコーダーとかも超ヘタクソ」
「ネーミングセンスも最悪で、マミカルソードとかの命名は演技ではなく本気で考案した名前。将来は自信満々で子供にいわゆるDQNネームを考えて付けようとし、妻と両親ズに却下される事になるの確定」
「コンセプトは常にセーラームーンと共に戦おうとするタキシード仮面。作者の脳内キャストはヘルシー太郎」
杏子「こぼれ裏話」
「スレタイの明るい魔まマは客寄せのために付けた物。本当のタイトルは魔法少女まどか☆マギカ 〜私の大切な人〜」
「初期案では〜永遠の少女〜だった。初期構想では放浪編で数百年放浪して、人類絶滅後に失敗した時はただの自殺になるという覚悟で、世界の改変を試みるという展開の予定だった」
「暗すぎるし、インキュベーターがそんなに長期間放っておいてくれるわけがないのでボツ」
「子供の姿のままのまどかの為に、二人だけで結婚式をしたり、捨て子を拾って二人の子供として数年間だけ育てるなんていうボツネタもあったり」
杏子「魔人ファウストが誕生した場合の設定」
「魔神ファウストはあまりにも巨大な為、何気ない動作ひとつでも簡単に音速を超える。こいつが歩いたり走ったり飛んだりすれば、その衝撃だけで建築物や車とかは全部吹き飛ばされて都市は壊滅状態になる」
「ぼくらののジ・アースが、劇場版エヴァンゲリヲンで全力疾走するエヴァみたいな動きをするのを想像してほしい。こんな化け物が本気で暴れたら人類の文明なんてひとたまりもない」
「超強力な自己再生に加え、人間時の天才的な戦闘センスを持っているので、中途半端な強さの相手ではファウストに戦い方を学習されてしまいすぐに倒されてしまう」
「その気になれば、無造作に振り下ろした片手の一撃だけで、クリームヒルトの全身を粉砕して殺せるほどの強さを最初から持ってる。アニメ最終回の超弩級魔女と戦っても徐々に進化していき、やがて超弩級魔女よりも遥かに強くなる」
「デモンベインのレムリア・インパクトやクトゥグァとイタクアの合体砲、ターンエーガンダムの月光蝶、超銀河グレンラガンのギガ・ドリルブレイクなどの完全消滅系の攻撃や、魔神本体を丸ごと破壊出来る広範囲攻撃でないと倒せない」
「宇宙空間でも生きていられるし、例え地球の爆発に巻き込まれたとしても生き残る。正に最凶」
「魔神化してしまった場合のバッドエンドでは、地球を崩壊させた後、クリームヒルトと共に次元の裂け目を漂い続けやがて、インキュベーターの母星に流れ着き、インキュベーター達に絶望と報いを与える」
杏子「合成魔女はワルプルギスの欠片と使い魔をベースに50体以上の魔女を合成した化け物。合成故に、知能が通常の魔女よりも遥かに低く効率的な戦い方が出来なかった為、まどかとかずみと社に倒される」
「簡単に例えるとプロボクサーの体を持った幼児かな」
杏子「超魔獣メフィストフェレスは本編唯一の男性型の敵だ。人間サイズではあるものの、全身に100個以上の魔法少女達から回収した孵化寸前の臨界グリーフシードが埋まっている」
「人類だけでなく、動植物に至るまですべての全生命の呪いを凝縮し、魔法少女達の穢れまでも凝縮した正に世界を滅ぼす呪いその物だ」
「インキュベーターは穢れで臨界寸前のグリーフシードを結界内で大量に使って、呪いを凝縮した最強の敵を作って真・魔法少女に対抗しようとしたが。運悪く自分で集めた呪いに飲み込まれてしまった」
「単純な戦闘能力だけなら、サイズこそ小さい物のアニメ最終回の超弩級魔女とほぼ同等。ただまどかに執着しすぎて社に注意を払っていなかった為に、マギカ・ブレードであっさりと真っ二つにされて消滅」
500 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/27(月) 20:27:14.05 ID:yD7n5V1co
杏子「真・魔法少女まどかの作ったファイナル・マギカ・ブレードは、今までのマギカ・ブレードと違い、永久に魔力切れを起こさない。マギカ・シグヴァンを撃っても魔力切れにならない」
「マギカ・ブレードはフルに活用した場合、最大2時間しか魔力が持たない。だからクリームヒルトに砕かれてしまった。魔力の再チャージは可能」
「倒せるものなら倒してみろ、俺の考えたキャラが最強!!みたいなチート能力持ちが敵だったとしても、さらなる理不尽を持って完全消滅させる絶対殲滅剣。それがマギカ・ブレード」
「社とまどかの力では倒せない相手はいくらでもいるけど、マギカ・ブレードだけは間違いなく最強クラスの武器だ。全パワーを解放して叩きつけるマギカ・シグヴァンを相手に当てられさえすればの話だけどね」
「ちなみにサーヴァントが持っている宝具クラスの武器でないと、斬りあいすら出来ない。マギカ・ブレードの刀身が触れたその瞬間にその武器の存在が破壊されるから」
「こんなとんでも武器があったから、まどか達は生き残ることが出来たんだよ。相手がなんとか勝てるレベルだったっていうのもあるけどね」
「当然だが、まどかが殺されるとマギカ・ブレードは消滅する。真に恐ろしいのはこれはただの使い捨て武器で、まどかが生きてればいくらでも生成可能である事だ」
「まあこれくらいの超絶チート武装でないと、インキュベーターなんて滅ぼせないしね」
「この剣の前ではワルプルギスの夜の堅さも豆腐レベルでしかないんだ。これが使えない他のルートではかなり大変な事になるだろう」
「あと、まどかが放浪編でマギカ・シグヴァン時に昇華と叫ぶのは、封印魔法内の敵に社が叩き込んだ斬撃後の破壊エネルギーを増幅する為。最初のワルプルに自爆されて封印魔法の維持に魔力を無駄に使った反省点からの改良」
「初代ワルプルに叩き込んだのは未完成マギカ・シグヴァン。2代目ワルプルとメフィストに叩き込んだのが完全版マギカ・シグヴァン。呪いの塊に叩き込んだのがファイナル・マギカ・シグヴァン」
501 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/27(月) 20:36:30.99 ID:yD7n5V1co
杏子「近い内に何らかのオマケシナリオや番外編等を投下するよ」
「あと、出来たらでいいんで答えてもいいと思ったら、教えてほしい」
質問1 社芳文というオリキャラをどう思ってるか? (好き? 嫌い?)
質問2 全26話中好きなエピソードをいくつでも(笑えた 泣けた 感動した ete)
質問3 全26話中嫌いなエピソードをいくつでも (暗い つまらない 退屈 ete)
質問4 記憶喪失とはいえ、男と結婚して子供を出産したほむらの母親設定はありかなしか
杏子「これらの意見を元に今後のネタが出来るかもしれないからね」
杏子「それじゃまたな」ノシ
502 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/27(月) 22:44:08.35 ID:D8rT8BG0o
裏設定乙でした。
マギカ・ブレードがチート杉w
1 好き
ssのオリキャラとしては近年稀にみる好漢、こいつにならまどっちを任せても良いと本気で思った
因みに芳文の俺的イメージはトラハ3(notリリなの)の高町恭也だった
2 13、14、22話
13、14話 こういうラブコメは大好物だw 芳文のおバカって全部が演技ってわけではないだろwww
22話 鹿目家の絆も素晴らしかったし、形勢逆転してQBざまあwww
3 特にないがあえて選ぶと20話
狙いはわかるが葉子ちゃんが魔女化したのが悲しかった。
後日談書くなら葉子ちゃんとの接点に期待
4 アリです
ところで改編後の世界ではほむほむ改め円華さんの旦那さんは健在なのだろうか
あと義母と義妹も
503 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/27(月) 23:15:32.51 ID:WSek//jH0
乙〜
ファウストを倒せるのって某光の神馬鹿ップル夫婦の必殺技「あ〜んたなんかだ〜いっ嫌い!消えっちまいなさーいっ!!」 か、神林版ラーゼフォンの世界再調律位しか無さそうな…
でも実態が某ジャム並みに不明なインキュベーターと戦うにはソレ位強くないと無理だろうしな
質問1 好き オリ主としてはチート設定こそあるけれど、破格の嫌味の無さだと思うし
質問2 14〜15話かな
原作より日常パートが多いとは言え、やっぱりほのぼのを求めてしまう
質問3 つまらないならこうして回答もしていない訳で、嫌いなエピソードは無し
質問4 あり
まどかの女性としての幸せがあるなら、ほむらにもそれはあって良いはずだから
504 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/28(火) 00:57:18.62 ID:glA3tBAdo
すげえ伏線の嵐だったんだな……
505 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/29(水) 01:51:09.38 ID:6dIqtSjMo
1、好き
中二要素は有っても、それが格好良さを引き立てる
我は剣王みたいな魅力がある
2、三話、十二話、十三話、最終話
どんな形でもクライマックスって良いよね!
3、無し
けど、強いて言うなら第二部の放浪編かな?鬱々とさせたりスピンオフキャラ出して薄まってたけど、やっぱりgdgd感が強かったかな?
文章量なんかのバランスも気になるけど、まあそれは書き慣れてきた成長とも言えるしね
4、有り
この手の要素に突っかかるのは百合厨か処女厨の二択だけど、前書きで恐らくプラウザバックしてるだろうし
506 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/30(木) 07:03:30.29 ID:ioy2oUEgo
杏子「アンケートありがとうな。まだまだ受け付け中だから答えてもいいやって思ったら教えてくれ」
杏子「今回はこの世界の年表を提示するよ」
507 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/30(木) 07:05:28.97 ID:ioy2oUEgo
魔法少女まどか☆マギカ 〜私の大切な人〜 年表
2011年
原作最終時間軸の少し前の時間軸。(4週目+aの因果量がまどかに集中)
ほむらにとって最後の時間軸において、ほむらがワルプルギスの夜に敗北。鹿目まどか『ほむらを魔法少女の運命から解放したい』という願いで契約。
まどかの魔法でほむらがソウルジェムを失い、インキュベーターの存在しない宇宙の二十一年前に飛ばされる。
残されたまどかはワルプルギスの夜を倒すものの、魔女化。
クリームヒルト・グレートヒェンによってこの世界の人類を含めた地球上の全生命体が絶滅。
1990年
別の宇宙の日本。見滝原の隣街(杏子のテリトリー)にて記憶を失ったほむら、将来の伴侶である報堂博(ほうどう ひろし)に拾われる。この時4月26日。
4月27日ほむら覚醒。この時に記憶のないほむらの名前が円華に決まる。
報堂の住むアパート『陽だまり荘』の管理人である青樹梅子を保護者として、円華が中学校へ5月中旬頃に2年生として入学。
半年後、青樹梅子の養女として円華、梅子と養子縁組する。
ほむらを追ってきたインキュベーター、ほむらへの監視とこの世界への介入開始。
かつての世界で集めた穢れたグリーフシードを世界中にばらまき、魔女と使い魔を大量生産し、この世界の少女達をどんどん魔法少女に仕立て上げていく。
円華14才になる。
1991年
見た目や身体能力が本編の暁美ほむらのままの為、男子生徒にモテるが性格はメガほむなので全員ふってしまう。結果、女子生徒達の妬みや反感を買いいじめにあう。
激怒した梅子や報堂達の手によって、いじめは早期収束。
円華にとって、報堂達の存在がどんどん大きな物になっていく。
円華15才になる。
1992年
円華、高校へ進学し16才になる。
陽だまり荘の家賃を集めて、報堂と一緒に銀行に持っていった際に、円華が銀行強盗の人質にされる。
報堂が銀行強盗をあっさりと叩きのめし、全員駆けつけた警察に逮捕される。円華にケガはなかった。
円華、強くて優しい報堂の事を兄としてではなく、ひとりの異性として意識し始める。
1993年
円華、高校2年生になる。17才になる。
10月下旬、梅子が交通事故に遭い死亡。
梅子の遺産は梅子の遺言状に則り、円華が相続。
義母を亡くして悲しみの淵に追い込まれた円華を報堂が支える内に、いつしか互いに愛が芽生え始める。
1994年
円華、高校3年生になる。18才になる。
報堂との正式な交際を始める。
円華、進路に悩んでいた頃に報堂からプロポーズされる。
1995年
3月5日 円華が高校卒業。
4月下旬に円華、報堂博と結婚。
青樹円華から報堂円華になる。
新婚旅行で熱海に行く。
7月下旬に円華が妊娠3ヶ月である事が発覚。
19才になる。
508 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/30(木) 07:06:33.56 ID:ioy2oUEgo
1996年
4月5日 円華、市内の産婦人科にて長男芳文を出産。
芳文出産時は円華19才。
後に誕生日を迎えて20才になる。
1997年
円華21才 芳文1才
後の芳文の義父である社が仕事の都合で陽だまり荘から退去し、市外へ転出。
1998年
円華22才 芳文2才
1999年
円華23才 芳文3才
10月に高校時代の友人達に3才6か月の芳文を連れて会いに行った帰り道で、人込みに紛れて去っていくインキュベーターの姿を見て、円華が暁美ほむらとしての記憶を取り戻す。
ほむら、半魔法少女としての力に覚醒。
夫と子供の前から姿を消す。
その後、自衛隊に入隊。
戦闘スキル等を磨く。
2000年
ほむら24才 芳文4才
報堂、芳文を連れて陽だまり荘から転出。
2001年
ほむら25才 芳文5才
報堂がかつての恋人と子連れ同士で再婚。
芳文に義母と義妹が出来る。
2002年
ほむら26才 芳文6才
報堂が病に倒れる。
陽だまり荘からほとんどの住人がいなくなり、そのまま空き家になる。
2003年
ほむら27才 芳文7才
11月報堂博が病で死去。
芳文は義母に引き取られ、一家3人で生活。
2004年
ほむら28才 芳文8才
社、芳文の義母と出会い交際開始。
2005年
ほむら29才 芳文9才
5月、社と義母が結婚。社と芳文が養子縁組。芳文の姓が社になる。
社一家、社の実家のある豊橋へ転出。
芳文、社の実家の剣道道場で社の実父に剣道を習い始める。
509 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/30(木) 07:08:07.29 ID:ioy2oUEgo
2006年
ほむら30才 芳文10才
芳文、天才的な剣の才能を発揮し、大人の有段者に勝ってしまう。
天才剣道少年として一躍名を馳せる。
2007年
ほむら31才 芳文11才
3月下旬、魔女の口づけを受けた社道場の元弟子が、社の実父と義母を殺害して、道場に火を放つ。
元弟子はその後、結界内で魔女に喰われて死亡。
その後、魔女は当時の魔法少女によって倒される。
義妹が火事で崩れた家の下敷きになり、芳文の目の前で火の海に飲み込まれ死亡、芳文の心に深い傷跡を残す。
2008年
ほむら32才 芳文12才
社と芳文、見滝原の隣の市に転出。二人暮らしを始める。
2009年
ほむら33才 芳文13才
5月、芳文が公園でふざけていて、小さな女の子にケガをさせた高校生グループを粛正する。
12月、社が海外勤務になる。社、芳文の希望もあり従妹の経営するワンルームマンションに芳文をひとり住まわせて海外へ。
社の従妹は血のつながりもなく、特に問題を起こすわけでもない芳文をたまに様子を見に来るだけで放置。
2010年
ほむら34才 芳文14才
1月、芳文が見滝原中学へ転入。
2011年
親子の再会時、ほむら34才(後に35才になる) 芳文15才
ほむら、魔力を使って14才の姿に若返りまどかのクラスに転入。
キュゥべえ(インキュベーター・コピー)がほむらに殺されそうになり、まどかに助けを求めてまどかとさやかの二人に接触。
まどかとさやかが巴マミに出会い、魔法少女の存在を知る。
その後、魔法少女体験コースと称するマミの魔女狩りの見学を開始。
2日後の早朝、まどかと芳文が運命の出会いを果たす。(1話)
まどか魔法少女になる。それに伴い、芳文が魔人化。
杏子が味方になり、さやかが契約。
全員でワルプルギスの夜撃破。
まどかと芳文が恋人同士になる。
10月上旬まで平和な一時を過ごすものの、魔法少女の真実を知りまどかがマミ達を人間に戻して、芳文と共に見滝原を旅立つ。
2012年
芳文16才 まどか15才 ほむら36才
まどかと芳文、日本各地を魔法少女と魔女を求めて放浪。
2013年
芳文17才 まどか16才 ほむら37才
10月、影野葉子との出会いと悲しい別れをまどかと芳文が経験する。
2014年
芳文18才(4月5日時点) まどか17才(10月3日時点) ほむら38才
1月、美国 織莉子と呉 キリカがまどかの命を奪う為に、襲い掛かってきたのを芳文が魔人の力を持って退ける。
5月GW、まどかとまどかの家族が再会。
10月下旬 かずみ、カオル、海香がワルプルギスの夜に敗北寸前の所をまどかと芳文が助け、半日後に合成魔女と戦う為に共闘。
11月中旬、クリームヒルトがインキュベーターによってこの世界に転送されてくる。かつての鹿目まどかVSこの世界のまどか&社芳文ペアによる最終決戦。
真・魔法少女になったまどかの祈りによって、歪められた世界が三十五年前の時点から改変される。
510 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2011/06/30(木) 07:11:30.11 ID:ioy2oUEgo
改変後の世界
1976年
青樹家の長女として円華(芳文の母親ほむらの転生体)誕生。
1995年
3月5日 円華高校卒業。
4月に円華、報堂博と結婚。
両親が生きていて、一人娘である為、報堂が青樹の家に婿入りする事になる。その為、円華の姓は青樹のまま。
7月下旬に円華が妊娠3ヶ月である事が発覚。
1996年
4月5日 円華19才。市内の産婦人科にて長男芳文を出産。
2011年
5月下旬 夫の仕事の都合で見滝原市に青樹一家が転出。
円華の前にかつての友人のまどかが姿を現す。
まどかと芳文の奇跡の再会と、円華と円環の理になるまどかの別れ。
そして、これから希望の未来が作られていく……。
511 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/06/30(木) 07:22:48.40 ID:ioy2oUEgo
杏子「今回は以上。次回は番外編及び後日談を投下するよ」
杏子「
>>502
最終回で社が母親に娘が欲しけりゃ作ればいいと言ってるから、円華旦那は生きてるよ」
杏子「ん? ほむら改め円華おばさんだ」
円華「〜♪」
杏子「何かいい事でもあったのかい? 嬉しそうじゃん、おばさん」
円華「私はまだ若い」アイアンクロー
杏子「あだだだだだだっ!! 割れるっ割れるっ!! ごめんなさい!! もう言いません!!」
円華「……ふん。口のきき方がなってない小娘が。でも芳文が好かれてるのがわかって、気分が良いから許してあげるわ」パッ
杏子「……畜生。……このババア」ボソボソ
円華「何か言ったかしら」
杏子「何も言ってません」
円華「そう」
杏子「それじゃ、またなー」ノシ
円華「暑い日が続くから、熱中症に気を付けるのよ」
杏子「あんたはみんなのかーちゃんか」
512 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/06/30(木) 10:01:15.87 ID:Bgm9gvny0
杏子は良いオチ要員だな。
513 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/01(金) 00:55:22.30 ID:9tFIfBLco
まあ実年齢はババ(イーツカーキミガー
514 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/02(土) 00:13:22.85 ID:rwY/5U3Go
杏子「アフター始まるよ」
515 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/02(土) 00:13:51.82 ID:rwY/5U3Go
――パアァァァァァンッ!!
芳文さんの放った一撃が、相手選手の脳天に炸裂する。
「面有り!! 一本!! それまで!!」
――ワアァァァァァァァァァッ……。
観客席と、試合を見守っていた見滝原中学剣道部の部員たちの間から、大きな歓声が上がる。
「やったぁ!! 芳文さんが勝ったぁ!!」
わたしの隣で、芳文さんの試合を一緒に見守っていた円華さんも、すごく嬉しそうな顔で芳文さんを見ている。
――この日、わたしの大切な人が、剣道の全国大会個人戦で日本一になりました。
魔法少女まどか☆マギカ 〜私の大切な人〜 AFTER
「それにしても、まどかの彼氏が剣道日本一かぁ……」
芳文さんが剣道全国大会で日本一になった翌日。
午前中にヒマだった友達だけ集まって、図書館で夏休みの宿題を終えた帰り道。
お昼ご飯の為に立ち寄ったマックで、わたしの前の席に座ったさやかちゃんがシェイクを飲みながら、わたしに話しかけてくる。
「それで日本一の彼氏を持った感想はどうよ? まどか」
「すっごく嬉しい。これで芳文さんがみんなに認められたんだもん」
「彼女としては鼻が高いってか」
わたしのさやかちゃんへの答えを聞いて、さやかちゃんの隣に座った杏子ちゃんがビッグマックを食べながらわたしに言う。
「うんっ」
わたしが笑顔で頷くと、ほむらちゃんがクスクスと笑いながらわたしに言う。
「まどかったら、何だか今までずっと、青樹先輩が誰にも認められる事がなかったみたいな言い方するんだね」
「えっ?」
「だってまどかが先輩とお付き合いを始めてから、まだ三ヶ月にも満たないはずなのに。まるでもっと以前からお付き合いしてるみたいなんだもん」
ほむらちゃんのその言葉に、さやかちゃんと杏子ちゃんもうんうんと頷きながら同意する。
「そうね。私もそう思ってたわ」
ほむらちゃんの隣に座ってるマミさんが、ほむらちゃんの言葉に同意する。
「なんかさー。まるで長年連れ添った恋人同士みたいなとこあるよな。あんた達って」
杏子ちゃんのその言葉に、わたしは首を傾げながら答える。
「……そうかな?」
「杏子の言うとうりだよ。仲がいいのは良いんだけどさ。なんて言うかまどかと青樹先輩って仲良すぎだし」
(青樹先輩、かぁ……)
さやかちゃんが芳文さんの事を呼ぶ時の名前に、わたしは何となく違和感を感じてしまう。
前の世界では、芳文さんの名字は社だったから。
今の平和なこの世界では、芳文さんの本当のお父さんも生きているし、お母さんの円華さんだって一緒に暮らしているんだから、名字が違うんだよね……。
516 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/02(土) 00:14:27.05 ID:rwY/5U3Go
「どうしたんだ? 急に黙り込んで」
杏子ちゃんが訝しげに私を見ながら言う。
「うーん。きっと、芳文さんがわたしの運命の相手だから、みんなには特に仲が良く見えるんだよ」
わたしがみんなに慌ててそう言って笑ってみせると、さやかちゃんがにやにやと笑いながらわたしに突っ込みを入れる。
「おーおー、のろけてくれちゃってこのーっ。熱い熱い」
そう言って、さやかちゃんは片手で自分の顔を仰ぐ仕草をする。
「まどかって、時々すごく大胆だよね」
ほむらちゃんがそう言うと、杏子ちゃんがいたずらっぽい顔でわたしに言う。
「案外、まどかの方から彼氏にキスとか、ねだってたりしてな」
「そ、そんなことしてないもん!!」
杏子ちゃんの言葉をわたしは慌てて否定する。
そりゃ、前の世界で旅をしてた時に、芳文さんに甘えた事は何度もあるけど……。
今の世界ではまだキスさえしてもらってないもん。
再会した時にハグはしてもらったけど。
……あれ?
世界が改変されて、わたしも十七才の魔法少女から、十三才の普通の女の子に戻ったんだから、前の世界の記憶はあっても一応キスは未体験になるのかな?
思わずわたしはそんな事を考えてしまう。
「おーいまどかー、もどってこーい」
「……はっ」
杏子ちゃんの言葉で我に返る。
「まどかー、何考えてたのかなー?」
さやかちゃんがにやにや笑いながらわたしをからかってくる。
「〜〜っ」
ほむらちゃん、なんでそこで赤くなるかな。
「あらあら」
マミさんはマミさんで、微笑ましそうにわたしを見て笑ってるし。
「えと、今日の午後から芳文さんが剣道の全国大会の開催地から帰ってくるの。それでこれからの事ちょっと考え込んでたんだよ」
わたしがそう言うと、みんな納得したのか声を揃えて言う。
『……ふーん』
……うん。みんな、全然納得してないよね。
これじゃまるで、わたしが芳文さんに色々してほしいと思ってるみたいじゃない。
……思ってるけど。
517 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/02(土) 00:15:19.04 ID:rwY/5U3Go
「あ、もうこんな時間。ごめんね、これから円華さんと一緒に、芳文さんの祝勝会の準備しないといけないから」
店の壁に掛けられた時計を見て、みんなにそう切り出す。
「円華さん?」
ほむらちゃんが?マークを浮かべながら首を傾げる。
「芳文さんのお母さんだよ。わたしの名前はひらがなでまどかだけど、あちらは円環の円と華道の華って漢字で円華って名前なの」
「へぇ。同じ名前なんて偶然あるんだなー」
杏子ちゃんがそう言って、コーラをずずっと音を立てて飲む。
「将来まどかが嫁入りしたら、先輩のお父さんとかおばあちゃんとか、まどかと円華さんを呼ぶ時にこんがらがりそうだね」
「まあ、その辺は追々呼び方の区別がついてくると思うよ」
さやかちゃんにそう答えると、さやかちゃんが驚いた顔でわたしに言う。
「冗談で言ったのに、まどかは本気で先輩のお嫁さんになる気なんだ」
「うん。だってわたしには芳文さんだけだもん」
「……あー、はいはい。結婚式にはちゃんと呼んでよね」
「勿論だよ」
「……やっぱりまどかって大胆だよね」
わたしとさやかちゃんの会話に、ほむらちゃんがそんな感想を言う。
「そうかなぁ」
「そうだよ」
わたし、そんな大胆かなあ?
――パリラリパッパッパーパッパッパーパリラリパッパッパッパッパー♪
セットしておいた携帯のアラームが、不意にポケットの中で鳴り響く。
「あ、もうそろそろ行かないと。それじゃ、みんなまたね」
「またね、まどか」
「またな」
「またね、鹿目さん」
「ばいばい、まどか」
わたしはみんなに別れを告げて、店を出るのだった。
518 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/02(土) 00:15:51.57 ID:rwY/5U3Go
☆
クーラーの良く効いた店の中から外に出ると、途端にむわっと熱気が立ち込めて襲い掛かってくる。
「暑い……」
今朝雨が降ったので、所々水たまりが出来ているけど、この暑さだとすぐ乾いちゃいそう。
わたしは店を出てから、芳文さんの家に歩いていく。
「こんなに暑いのに、剣道の防具着けて試合するなんて、剣道してる人達ってすごいなあ……」
芳文さんの試合の応援に行った時の事を思い出しながら、わたしは独り言を呟きつつ歩く。
「まどかちゃん」
不意に声をかけられて振り返ると、そこには円華さんが日傘を差して立っていた。
円華さん。芳文さんのお母さんで、別の世界のほむらちゃん。長い黒髪を一つのおさげにして、カチューシャを着けてるその姿はいかにもお母さんだった。
日傘を片手に立つ円華さんの片手には、買い物袋が2つ下げられている。
「こんにちは、円華さん。今からそちらに行こうとしてたんです」
「あら。それなら丁度良かったかしら」
そう言って、円華さんは優しい微笑みを向けてくれる。
「それじゃ一緒に帰りましょうか」
「はい。あ、わたしひとつ持ちます」
「気を使わなくてもいいのよ」
「いえいえ。これくらいしか出来ませんから」
「そう? それじゃひとつお願いしてもいいかしら」
「はい」
円華さんは、小さい方の袋を私に手渡して微笑む。わたしは勉強道具と宿題の入ってるナップサックを背負うと、袋を両手で持って円華さんと一緒に青樹家への道を歩き始める。
「芳文さんはもう帰ってきてます?」
「まだよ。連帯行動だから中々解放されないみたい」
「運動系の部活ってやっぱりそういう所があるんですね」
「そうね。前の学校でも試合の時とか、部活の友達と一緒だと帰りが遅くなったりしたから」
――今の芳文さんは、以前と違って友達も結構いるんだね。
円華さんの言葉を聞いて、わたしはふと前の世界の事を思い出してしまう。
考えてみれば、今の芳文さんの事でわたしが知らない事って、結構あるんだよね……。
「どうしたの?」
「いえ。芳文さんの事、まだまだ知らない事があるんだなって思って」
円華さんの問いにそう答えると、円華さんはわたしの顔を見つめながら優しい声でわたしに言う。
「……あなた達のおかげよ」
「――え?」
「あなたと、わたしの友達だったあの子のおかげで、私と芳文は今、こうしてこの世界で生きて行けるのだから」
「円華さん……」
「ありがとう。芳文の事を好きになってくれて」
「そんな……。わたしなんて、ずっとあの人に守られてばっかりで……」
「いいえ。あなたの存在があったからあの子は最後まで戦い抜く事が出来たのよ。あなたと芳文が二人で勝ち取ったの。この平和な世界はね。だから、わたしはあなた達には誰よりも幸せになってほしい」
「ありがとうございます。円華さん」
「私はお礼を言われるような事は何もしていないわ。それにしても、こうしていると何だか不思議な気分だわ」
519 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/02(土) 00:17:06.09 ID:rwY/5U3Go
「不思議……ですか?」
わたしがそう尋ねると、円華さんはとても優しい表情でわたしに言う。
「ええ。あなたといると時々娘がいたら、こんな感じなのかしらって思う時があるのよ。あなたは私の友達だったあの子と同じ顔をしてるのにね」
「……」
「気を悪くしたならごめんなさい。でもちゃんと頭ではわかってるのよ。私の友達だったあの子と、あなたは顔と性格こそ同じだけど別人だって」
「いいえ。そんな事別に気になんてしてませんから、気にしないでください」
「そう言ってもらえると助かるわ」
「それにわたしもほむらちゃん……。この世界のほむらちゃんと前の世界の円華さんがダブって見える時があるんです」
「……」
「この世界のほむらちゃんはおとなしくて引っ込み思案なのに。前の世界の円華さんはかっこよくて凛としてるのに。顔は同じでも、別人だってわかってるんですけど」
「……あなたの友達の暁美ほむらが本当の私なのよ」
不意に、円華さんがわたしにそんな事を言い出す。
「え?」
「初めて友達だったまどかに出会った時の私は、あなたの知っているほむらと同じだったの。自分に自信がなくて、いつもおどおどしてて……」
「……」
「そんな私が魔女に襲われるのは当然のなりゆきだったわ。それを助けてくれたのが、魔法少女になったばかりのまどかだったの」
「いつも元気で優しくて。そんなまどかは私の憧れだったの」
円華さんはどこか遠い目で、懐かしそうにわたしに昔話をしてくれる。
「でも、ワルプルギスの夜に負けてしまってね。私は彼女を助けたくて、彼女に守られる自分じゃなくて、彼女を守る自分になりたくて魔法少女になったの」
「……」
「何度も何度も時を遡って。何度も何度も失敗して。どんどん私の心は渇いていったの。それがあなたの知っている暁美ほむら。そして最後はまどかに助けられてこの世界にやってきて……」
「……」
「後はあなたも知っているとうり。あなたと、あなたが魔女の中から助け出してくれたまどかが、私と芳文を救ってくれたの」
「円華さん……」
「この世界の私は、私が青樹円華に生まれ変わった事で、ようやく生まれてくる事が出来たんでしょうね。多分、同じ人間が同じ世界に二人存在すると言う矛盾を無くす為に、生まれてこられなかったのだろうから」
そう言って、円華さんはわたしの目を見ながら、わたしに真摯な声で頼んでくる。
「この世界の私と、どうか仲良くしてあげてね。私はとても弱いから。ちゃんと導いてくれる友達がいないとすぐに潰れちゃうから」
「大丈夫です。わたし、ほむらちゃんの事、大好きですから」
「ありがとう」
「それに、わたし円華さんの事も大好きです。美人でかっこよくて。憧れてるんです」
「私、そんな風に言ってもらえるような人間じゃないわよ」
「そんな事ないです。前の世界でいつも気にかけてくれていた事、わたし忘れてませんから」
私のその言葉を聞いて、円華さんは目尻を指で拭いながらわたしに言う。
「いやだ。歳を取ると涙もろくなるのかしら」
「円華さんはまだまだ若いですよ」
「ありがとう。まどかちゃん」
わたし達はお互いにそう言って微笑みあう。
「それにしても、いつかまどかちゃんが芳文のお嫁さんになってくれるのかと思うと、嬉しい反面ちょっと複雑な気分がするわ」
「わたしも円華さんがお義母さんになるのって嬉しいんですけど、やっぱり複雑な気分がします」
わたし達はもう一度顔を見合わせて、二人して笑いながら再び歩き始めた。
「それにしても暑いですね」
「そうね。年々夏が暑くなっていく気がするわ」
そんな会話をしながら歩いていたその時だった。
――バシャッ。
猛スピードで走ってきた車が、水たまりの泥水をわたしに引っかけて走り去っていった……。
520 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/02(土) 00:18:04.03 ID:rwY/5U3Go
☆
「あーん。下着までびしょびしょ……」
円華さんと一緒に青樹家に帰ってきたわたしは、青樹家の脱衣所で着ていた服を脱いで下着姿になる。
円華さんに着替えを用意するからシャワーを浴びるように言われ、わたしはありがたくシャワーを浴びさせてもらう事にした。
わたしが雨水で濡れた下着が、透けて体にぴったりと張り付いてるのを脱ごうとしていた時だった。
――ガチャッ。
「あぁ、あっちぃ……」
いきなり扉を開けて、芳文さんが入ってきた。
「――えっ?」
「――え? まどか?」
わたしは透けた下着姿のままで。
芳文さんは手に持っていた着替えを足元に落として。
呆然とお互いを見つめあう。
「――っ!?」
芳文さんの目がわたしの胸元を見ている事に気づいて、わたしは慌てて両手で胸を隠す。
「ご、ごめんっ!!」
芳文さんが慌てて視線を逸らして、ドアを閉め去っていった……。
☆
シャワーを浴びて、円華さんから借りた服を着てリビングに向かうと、芳文さんが円華さんに正座させられていた。
「ほら。ちゃんとまどかちゃんに謝りなさい」
「その……まどか、ごめん。まさかまどかが入ってるなんて思わなくて」
円華さんに言われて、芳文さんがわたしに謝ってくれる。
「……芳文さんのえっち」
恥ずかしくて、わたしが上目遣いにそう言うと、芳文さんが慌てて弁解する。
「ち、違うんだ。余りの出来事にパニくっちゃって、それで」
「……でも随分長く、じっと見てたよね。わたしの……胸」
「うっ!?」
「えっち」
「ご、ごめん」
わたしの言葉に芳文さんがしゅんとなる。
「……責任、取ってね」
「え?」
「……」
わたしがじっと見つめていると、芳文さんは強く頷いてくれた。
「あ、ああ。勿論!!」
521 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/02(土) 00:19:11.65 ID:rwY/5U3Go
「はいはい。それじゃ今回の一件はこれでおしまい。まったく……。我が子ながらいやらしいんだから。いったい誰に似たのかしら」
円華さんがそう言って締めくくろうとすると、芳文さんが円華さんに食って掛かった。
「俺はいやらしくなんてない。それにだ。俺がどっちかと言うと大きな胸が好きなのは、母さんの胸が小さいからだ」
「……」
ガシッ。
メリメリメリメリ……。
円華さんが物凄い速さで芳文さんの顔を掴んで、アイアンクローを喰らわせるとギリギリと締め付ける。
「あなたが五才まで吸ってたから、大きくならなかったのよ」
芳文さん、五才まで乳離れ出来なかったんだ……。
「いだだだだだだだだっ!! 逆だろう!! 逆!! 普通子供が吸ってたらでっかくなるもんだろ!! 俺のせいにするなよ!!」
メリメリメリメリメリメリ……。
「いだだだだだただだだっ!! 割れる割れる!!」
「割れてしまいなさい」
円華さんがかつてほむらちゃんだった時のような、クールな無表情でアイアンクローの威力を上げる。
「本気で痛いって!! そんなに大きくしたいなら、親父に揉んでもらって大きくすればいいだろ!! あだだだだだだだだっ!!」
「そんな事で大きくなれば、今頃私はFカップよ」
さりげなく聞いてはいけない事を聞いてしまったような……。
メリメリメリメリメリメリメリメリメリ……。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!! ごめんなさい!!」
パッ。
円華さんがアイアンクローを外すと、芳文さんはへなへなと崩れ落ちる。
「おぉぅ……。ひ、ひでぇ……。なんで俺が虐待されなきゃならないんだ……」
「虐待じゃなくて、愛の鞭よ」
円華さんがクールな表情で、見下ろしながら言い放つ。
「どっちも一緒だろっ」
「愛の鞭が足りなかったかしら」
「ごめんなさい。もう口答えしません」
「ん」
「あ、あはははは……」
二人のそんなやりとりに、わたしはただ笑うしかなかった……。
522 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/02(土) 00:20:24.41 ID:rwY/5U3Go
☆
円華さんと一緒に料理を作って、テーブルに並べて、やがて芳文さんのお父さんも帰ってきてから、四人で芳文さんの優勝をお祝いする。
芳文さんのお父さんは芳文さんが日本一になったのが嬉しくて、普段飲まないお酒を飲んで酔っ払ってしまい、早々にダウンしてしまった。
円華さんはわたしのママみたいにお酒が強いのか、チビリチビリとお酒を飲んでる。
「これ、まどかが作った奴?」
「うん。パパに習ったの。どうかな?」
「美味しいよ」
「ホント?」
「俺がまどかに嘘をつくわけがない」
「えへへ。たくさん食べてね」
「ああ」
わたし達は二人で料理を食べながら、大会の事や、芳文さんの滞在先での出来事を話した。
「あ、そういえば帰ってくる時の事なんだけどさ」
そう言って、芳文さんが円華さんに話しかける。
「九州の強豪高校からスカウトされたんだ。ぜひ、うちに入学してくれって」
「――え?」
芳文さんのその言葉を聞いて、わたしの手から無意識の内に箸が落ちる。
落ちた箸が小さな音を立てて、床の上を転がった……。
☆
――夏休みが終わって、新学期初日。
全校集会で、芳文さんが剣道日本一になった事が発表された。
ステージの上で、校長先生に労われている芳文さんが、わたしにはすごく遠い存在に見えた。
――それから、三年生である芳文さんが正式に剣道部を引退して、高校進学に向けて忙しくなり始めた。
芳文さんが、九州にある剣道の強豪高校にスカウトされた事は、瞬く間に噂となって広まっていった。
芳文さんはわたしに進路をどうするのか、一言も話してくれなかった。
わたしも離ればなれになるのが怖くて、進路を尋ねる事が出来なかった。
スカウトを受けるから余裕があるのか、部活を引退後、芳文さんはわたしを良くデートに誘ってくれた。
デートに出かけた動物園で、両親と幸せそうに歩いている葉子ちゃんに出会った。
別の日には、前の世界で死んでしまった、かつての芳文さんのお義母さんと義妹さんにも出会った。
その時、芳文さんのお義母さんと結婚した、かつての芳文さんのお義父さんにも出会った。
社一家の皆さんは芳文さんが剣道日本一になった事を祝福してくれた。
わたし達が出会った、かつて不幸な結末を迎えた人達はみんな、今はとても幸せそうだった。
わたし達も幸せだった。
幸せなはずだった。
なのに、芳文さんと離ればなれになるかもしれないという事実が、わたしの胸を締め付ける。
離れたくないよ。
ずっと一緒にいて欲しいよ。
死んだり消滅したりする訳じゃないのに。
もっと上を目指す為に剣道の強い高校に行くんだから、応援してあげないといけないのに。
例え、離ればなれになっても、電話だって何だって連絡手段はあるし、休みの日には会いに行けるのに。
――なのに。
芳文さんに遠くに行って欲しくない気持ちが強くて。
芳文さんがわたしにやさしい笑顔を見せてくれる度に、胸が締め付けられるの。
いやだよう……。
行っちゃいやだ……。
523 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/02(土) 00:22:42.25 ID:rwY/5U3Go
芳文さんの真意を聞く事も出来ないまま、時間ばかりが流れていき、やがて十月になった。
「まどか、誕生日おめでとう」
さやかちゃん達と一緒に喫茶店でお祝いをしてくれた夕焼けの帰り道。
芳文さんが、小さな袋をわたしに差し出してくれる。
「つまらない物だけど、受け取ってくれると嬉しい」
「ありがとう。芳文さん」
わたしは芳文さんからのプレゼントを両手で受け取って尋ねる。
「開けてもいい?」
「ああ」
わたしは紙袋のリボンを解いて、中身を取り出す。
中から出てきたのは、私の名前がローマ字で掘られた、綺麗な銀細工の指輪だった。
「これって……」
「部活引退して暇だったからさ、俺が作ったんだ」
暇と言う言葉を聞いて、わたしは立ち尽くす。
やっぱり、九州の高校へ行っちゃうんだ……。
「いつか、本物を買ってプレゼントするからさ。それまでの間、それを着けててくれると嬉しいな」
芳文さんが照れくさそうに、わたしにそう言ってくれる。
ぽろっ。
わたしの瞳から涙がこぼれて地面の上に落ちる。
ぽろぽろと涙が次々と溢れてきて地面の上に落ちていく。
「まどか、泣くほど喜んでくれるのか?」
芳文さんがそう言って、ハンカチをわたしに差し出してくれる。
「――っ」
わたしは芳文さんの腕の中に飛び込んで、彼の胸に顔を埋めて泣き出してしまった。
「ひっく、うえぇぇぇぇぇんっ……」
「おいおい、ちょっと感激しすぎじゃないか?」
「やだぁ……」
「――え?」
「九州なんか行っちゃやだよぅ……。離ればなれはもういやだよぅ……。うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ」
彼の腕の中でわたしが本音を吐き出して泣いていると、芳文さんがわたしを抱きしめてくれる。
「ばかだな、まどかは」
「ひっく、わたし、ばかだもん。剣道の強い所に行った方が、芳文さんの為になるのわかってるもん。でもいやなんだもん……」
「……」
「芳文さんと離ればなれになるの、やだよぅ……。うえぇぇぇぇぇぇぇん……」
「行かないよ」
芳文さんが、泣いてる私の耳元で優しく囁いてくれる。
「ひっく、嘘……」
「俺がまどかに嘘をつくわけがない。それに、こんなかわいい彼女を残して、九州になんか行くもんか」
「でも、でもそしたら剣道どうするの!?」
「剣道なら見滝原の高校でも出来る。それに、強い奴が大勢いる所に行って団体戦に勝ってもつまらない」
芳文さんはそう言って、わたしの両肩に手を置いて、わたしの顔をみつめながら言った。
「どうせなら、そういう強い奴らを敵に回して勝つ方がかっこいいだろ?」
そう言って、わたしに微笑んでくれる。
524 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/02(土) 00:24:56.65 ID:rwY/5U3Go
「まどかの隣に俺がいて、俺の隣にまどかがいる。まどかが側にいてくれる限り、俺は絶対に負けない。だから、これからも俺の側にいて欲しい」
「本当? 本当に側にいてもいいの?」
「俺はまどかの事が誰よりも大切だから。だからずっと一緒にいたい」
「ひっく……。わたしも」
「わたしも芳文さんの側にいたい!! ずっと一緒にいたいよぅ!!」
わたしはそう叫んで、芳文さんの腕の中で泣き続ける。
今度は、悲しい涙じゃなくて、嬉し涙を流しながら……。
「……まどか」
すんすんと、鼻を鳴らしながらようやく泣き止んだ、わたしの目尻の涙を親指で優しく芳文さんが拭ってくれる。
わたしは彼の顔を見上げながら、そっと目を閉じる。
芳文さんはわたしの両肩に優しく手を置いて、わたしの唇に優しく自分の唇を触れさせてくれたのだった。
☆
「……えへへ」
芳文さんの左手を右手で握りながら、自分の左手を空に向けて翳して見る。
わたしの薬指には、芳文さんが作ってくれた銀細工の指輪が、夕焼けに照らされて紅く輝いていた。
「それが着けられなくなる前に、本物を買えるように頑張るから」
芳文さんがわたしにそう言ってくれる。
「……うん。でもね、いつか着けられなくなってもこれはずっとずっと、わたしの宝物だから」
わたしはそう言って、芳文さんにとびっきりの笑顔を見せる。
「わたしもがんばるから。これからもずっと、芳文さんと一緒にいたいから。だから、勉強も運動もがんばる」
「ありがとう。まどか」
「こちらこそ、ありがとう、だよ。わたしの事、好きになってくれて。大切にしてくれて」
わたしは夕焼けの遊歩道で、芳文さんに笑顔でわたしのこの想いを言葉にして伝えた。
「芳文さん、大好き。あなたに出会えてよかった」
おしまい
525 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/02(土) 00:35:37.62 ID:rwY/5U3Go
杏子「アフターおしまい。なんかこのままほのぼのラブコメ書いてる方が楽だってさ」
杏子「クリスマスにバレンタイン、卒業式。イベントいっぱい残ってるしな。タイトルは『ひだまり☆まどっち』とか」
杏子「さてと後はオマケシナリオとZIP用のオマケシナリオだな……!?」
杏子「おいおいっ!! 何してんだよ!! その銃どこから持ってきた!?」
円華「私は女性の年齢の事をバカする馬鹿の敵。あなたはどっち?」
杏子「やめろって!! >513!! 逃げろ!!」
円華「逃がさない」パーンパーンッ
杏子「どっから持ってきたんな物騒なモン!!」
円華「父のコレクションよ。私の改造したこのエアガン。直撃すれば人間くらい殺せるわ」
杏子「マジでやめろって!! あんたら死にたくなければ、このおばさんを年の事でからかうなよ!!」
円華「私はまだ若い」アイアンクロー
杏子「あだだだだだだだだ!! 割れる割れる!! ごめんなさい!!」
円華「……ちっ。ターゲットに逃げられてしまったわ」スタスタ
杏子「……じ、じゃーな」ノシ……ガクッ
526 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/02(土) 00:44:43.55 ID:hZtJjz2d0
乙ですたー
何かもー、まどっちと芳文が可愛らし過ぎて生きてるのが辛いわw
あと円華さんが前の世界の記憶を持ってたのはちょっと驚いた
あ、それと円華さん、俺はアイアンクロー喰らってもいいんでどうかまどっちのこと可愛がってやって下され
527 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/07/02(土) 01:06:33.75 ID:PStgk+/wo
乙・フィナーレ!
528 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/02(土) 15:45:06.49 ID:VkizoI1Po
乙っちまどまど!
ひだまり☆まどっちとか俺得すぎて期待
529 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/03(日) 14:18:28.51 ID:zQkUTBKSO
超乙。名前説明で円環出てきて笑った。
530 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/04(月) 00:01:51.91 ID:cpWSTojgo
杏子「番外編いくよ」
531 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/04(月) 00:02:25.39 ID:cpWSTojgo
「ただいま」
芳文が学校の掃除当番を終えて、家に帰ってくると玄関に見慣れた靴が1足、家族の物に混じって置かれていた。
「まどかが来てるのか」
掃除で遅くなるから先に帰るようにメールをしたのだが、おそらく帰り道で母に出会って捕まったのだろう。
円華はまどかの事をとても気に入っていて、まるで娘のように可愛がっていた。
まどかもまた、円華の事を慕っていた。
「まあ仲がいいのは良い事だけど」
芳文はそう呟いてリビングに向かう。
ドアを開けて中の様子を見ると、まどかと円華は二人でソファーに座ってテレビを見ていた。
「何を見てるんだ?」
芳文がそう言って中に入ろうとすると、テレビから子供の甲高い泣き声が響いた。
『えぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!!』
『今日から芳君も幼稚園。でもママとのお別れが嫌で泣いちゃった』
若い頃の父親の声で解説が入り、三才になったばかりの芳文が、保母さんに抱き上げられて手を振っている円華に手を伸ばしながら泣いていた。
『お昼ご飯を食べ終わった頃に迎えに来るからね。いい子にしてるのよ』
若かりし頃の、と言っても今の円華の外見もテレビの中の若かった頃と比べ、さほど変化はないのだが――。
円華が泣いている芳文に小さく手を振ると、芳文はますます大きな声で泣く。
『マーマー!! いっちゃやー!!』
「芳文さん、かわいい」
「この頃は本当に可愛かったのよ。いつもママ、ママって私の後に付いてきてね。それが今じゃ」
「おおい!! 二人して何見てるんだよ!!」
芳文が憤慨してまどかと円華に向かって叫ぶと、二人はようやく芳文が帰ってきていた事に気づいた。
「おかえり。芳文」
「芳文さん、お帰りなさい」
「ただいま。ってそうじゃねー!!」
魔法少女まどか☆マギカ 〜私の大切な人〜 番外編 「俺の母さんがこんなに可愛いわけがない」
「なんてもん引っ張り出してんだよ!!」
「懐かしいでしょう」
芳文の憤りにしれっとそう返す円華。
「いくら懐かしくても、本人の許可なく勝手に彼女に見せるなよ!!」
「許可? 何を言っているのかしら? 息子は母親の物でしょ。その成長記録を未来の義娘に見せて何が悪いのかしら」
「しれっとンな事を言うな!!」
532 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/04(月) 00:03:12.46 ID:cpWSTojgo
『マーマー!! えーん!!』
『やっとお迎えの時間になったよ。大好きなママに会えてよかったね、芳君』
円華に抱き上げられて、ぐすぐすと泣いてる芳文が画面に映し出される。
「かわいい……。抱っこしたい……」
まどかが画面の中の幼い芳文を見て、本音を口にする。
「やめろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! 俺の黒歴史を映すなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
芳文がテレビを消そうと、テレビに向かうが円華に腕を掴まれて阻まれる。
「離せよ!!」
「もうすぐ終わるから待ちなさい」
『幼稚園の帰り道。ママと一緒にお買い物。大好きなゴーゴーファイブの絵本を買ってもらって、さっきまで泣いてた芳君もご機嫌だね』
父の解説と共に、、円華の手を小さな手で握って、絵本を抱えてとことこと歩く、幼い芳文が画面に映される。
『あら、かわいい。ママと一緒にお買い物かな、お嬢ちゃん』
途中、知らないおばさんに声をかけられる。
『……ちがうもん。ぼく、おとこのこだもん』
女の子に間違えられて、涙目になってそう答える芳文。
『あ、ごめんね。おばちゃんが悪かったわ』
『……ひっく』
女の子に間違えられて傷ついたのか、芳文が泣き出す。
『あらあら。それくらいで泣いてちゃ駄目よ。こんな泣き虫さんじゃ、パパみたいに強くなれないわよ』
円華が芳文を抱き上げて、優しく諭す。
『ごめんね、ボク。あ、お詫びに飴ちゃんあげるから泣き止んで、ね』
そう言っておばさんは芳文に飴玉を握らせる。
『あ、すみません。お気を使わせちゃって……』
『いいえぇー。お気になさらずに。ごめんねぇ、ボク』
そう言って、おばさんは芳文の頭を撫でてやる。
『……ぐすん、ありがと』
『あらー。ちゃんとお礼言えるんだ。お利口さんだねぇー』
『……えへへ』
おばさんに褒められて、芳文が嬉しそうに笑う。
「円華さん……」
「なあに? まどかちゃん」
「天使が……天使がいるよ……」
「ええ。この頃の芳文は本当に可愛かったのよ」
「やめろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
芳文の絶叫を無視して、画面の中の記録はどんどん進んでいく。
最後は円華の手をちっちゃな手で握りながら、幼い芳文がすやすやと寝息を立て始めるシーンで締めくくられた。
533 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/04(月) 00:04:18.76 ID:cpWSTojgo
☆
「はあ……。小さい頃の芳文さんってすっごくかわいかったぁ……」
まどかがどこかうっとりとした表情で、芳文の幼少期のビデオの感想を言う。
「男の子って小さい頃はかわいいのよ。ママ、ママってくっついてきて。それが今じゃ……」
円華がまどかにそう答えてから、ブスっとしている芳文に視線を向けて言う。
「ご飯の催促や洗濯物の催促くらいしかしないし、買い物にもろくに付き合ってくれないし」
「この年で母親にべったりって気持ち悪いだろうが。あんたはマザコン息子が好みなのか?」
不満げな視線で言う母親に、芳文が不機嫌そうに応える。
「そう言う訳じゃないけれど。もう少し会話をしてくれたり、買い物に付き合ってくれてもいいんじゃないかしら」
「母さんの買い物は長いんだよ。食料品の買い出しならともかく、服とか買いに行くのに付き合わされる身になれよ」
「あなたの服を優先的に買ってるつもりなんだけど」
「服なんざその時の季節に合った物が着れりゃいい。よっぽど変な柄でなけりゃなんだっていいよ」
「……はあ。男でもお洒落に無頓着だとまどかちゃんに嫌われるわよ」
「母さん、今度新しい服を買いに行こう」
「……はあ。これだもの。あんなにママ、ママって言ってたのに。大きくなったらママと結婚するー、なんて言ってたのに」
円華がため息をつきながらぼやく。
「そんな記憶はない!!」
芳文がまどかの顔色を伺いながら、即座に否定する。
まどかはクスクスと口元に手を当てながら笑う。
「大きくなって、好きな女の子が出来たら、その子のおしりばっかり追いかけるんだもの。ママ寂しいわ」
「十五才の息子に向かってママとか言うなっ。つーかあんた、そんなキャラじゃねぇだろっ」
「……はあ。女の子ほしいなぁ……。男の子なんて、可愛いのは小さい時だけなんだもの」
「息子で悪かったな。そんなに娘が欲しけりゃまだ若いんだから作ればいいだろうが。十五才以上歳の離れた兄妹もどうかと思うが、生まれてきたら子守くらいはしてやらん事もないぞ」
芳文のその言葉に、円華は真剣な表情で答える。
「私はね、まどかちゃんみたいな娘が欲しいのよ。私の畑とダーリンの種でまどかちゃんが出来る訳がない。出来ても私のコピーか、芳文二号か、ダーリン似の子供よ」
「息子の前で種とか畑とか言うなっ!!」
「あ、あははは……。それにしてもダーリンって……」
まどかが円華の言葉に戸惑いながら、笑う。
「ん? そういや、まどかって母さんが父さんの事を呼ぶ時の呼び名を聞くの初めてだっけ?」
芳文の言葉にまどかは頷く。
「う、うん」
「笑っちゃうだろ。昔っから母さんは父さんの事をダーリンって呼んでるんだ。おかげで小さい頃、親父の名前がダーリンだって思ってたんだぜ、俺」
「あなたがデパートで目を離した隙に迷子になって、呼び出し放送をされた時は顔から火が出るかと思ったわ」
円華が芳文の顔をジト目で見ながら言う。
「え?」
まどかの疑問に、円華が答える。
「館内放送で青樹円華様、青樹ダーリン様、三才の芳文君がお待ちです。なんて放送されたのよ。あの時はすごく恥ずかしかったわ」
「それ俺のせいじゃないよな!! って言うか、なんで親父の呼び方がダーリンなんだよ。普通名前にさん付だったり、呼び捨てだったり、あなた、とかだろ旦那の呼び方って」
「結婚した時になんて呼べばいいか尋ねたら、照れくさそうに頬を指で掻きながら、ダーリンって呼んでくれって言われたのよ。私だって恥ずかしかったけど、本人がそう呼べっていうんだから仕方ないじゃない」
円華は息子の疑問にそう答える。
534 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/04(月) 00:05:17.35 ID:cpWSTojgo
「……あのさあ、それって親父は新婚当初で照れくさくて、冗談で言ったんじゃないのか?」
「……え?」
息子のその言葉に、きょとんとした表情で芳文を見る円華。
「ほら、親父ってシャイなとこあるじゃないか。母さんがどんな態度で聞いたのか知らないけど、わざわざ改めてそんな事聞かれたら、照れくささでジョークのひとつも言ってみたくなるんじゃないかな」
「……嘘よ。私が赤くなりながら初めてダーリンって呼んであげたら、彼、真っ赤になって黙っちゃったのよ」
「それ多分、冗談で言った事を本気に受け取られて、引っ込みがつかなくなっただけじゃないのか?」
「……」
「ちょっと父さんに確認してみようか」
芳文が携帯を取り出して、父親に電話をかける。
「もしもし、父さん。ちょっといいかな。聞きたい事があるんだけどさ……」
――かくかくかしかじか。
「あー。やっぱ照れ隠しの冗談だったのか。つーかなんでその時に訂正しなかったんだよ。ダーリンとか呼ぶのって母さんのキャラじゃないだろうに。十六年近く冗談で言った呼び方を続けさせてたって……」
「……」
無言で円華が座っていたソファーから、すくっと立ちあがり部屋を出て行こうとする。
「あれ? 母さんどこ行くんだ?」
「実家に帰る」
「おいおい!? なんでそうなるんだよ!!」
「私の純情を弄んだ罪は重い。そう伝えておいて」
「おぉぉぉぉぉぃっ!! 父さんフォローしてくれ!! 一家離散の危機だ!!」
芳文が慌てて円華の腕を掴んで、無理矢理耳元に携帯をくっつける。
「――そう。それで」
無表情でぶっきらぼうに円華が受け答えをする。
「……冗談? 本当に冗談なの?」
円華の無表情が、感情を持った物へと変わっていく。
「……うん。……うん。早く帰ってきてね。ダーリン」
――プツッ。ツーツー。
携帯の通話が切れた音が聞こえて、芳文が携帯を円華の耳元から放す。
「――芳文」
「何?」
「あなたの推測は大外れよ」
「……あ、ああ。そうみたいだな」
芳文は母の腕を掴んでいた手を離して、そう答えておいた。
(父さんも大変だな……)
冗談を本気で受け止められ、その結果きっと友人知人だけでなく、祖父と祖母にもいろいろ言われたんだろうな、と思いながら芳文は父のような愚行は犯すまいと固く誓ったのだった。
「あ、あははは……」
まどかはただ、愛想笑いをするしかなった……。
535 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/04(月) 00:27:17.91 ID:cpWSTojgo
☆
「それにしても父さんはなんで、こんな面倒臭い女と結婚したんだろう?」
アイスコーヒーを飲みながら、芳文がそう言うと、円華はテーブル越しに芳文の顔を一瞬で掴んで、ギリギリと締め付ける。
「あだだだだだっ!! ごめんなさい!!」
――パッ。
「いてててててて……。なんでいつもいつも怒ると、アイアンクローをしてくるんだよ」
「アイアンクローじゃなくて、シャイニングフィンガーよ」
「一緒だっ。それに、俺は最初のセリフの後、正直今の母さんと父さんを見てると、恋愛してるとこが想像出来ないって言おうとしたんだ」
「……ちょっと待ってなさい」
円華はそう言って、席を立つと部屋を出ていく。
芳文とまどかが、お互いの顔を見合わせてから待つ事十分弱。
一冊のアルバムを持って、円華が戻ってくる。
「これが私の若い頃よ」
テーブルの上に広げられたアルバムに収められた写真の数々に、芳文とまどかは視線を巡らせる。
そこには、ツインテールにして複数の友人に囲まれて照れくさそうにしている円華や、ポニーテールにして円華の母が経営するアパートの当時の住人達と写っている円華の写真があった。
中には若い頃の父親の隣で、頬を染めながら恥ずかしそうに写っている写真もあった。
「この頃の私は恥ずかしがり屋で大人しくてね。知らない人とまともに話す事も出来なかったの」
円華が懐かしそうにまどかと芳文に話す。
「ダーリンに護身術を習ったり、アパートのみんなや友達との触れ合いで、ちょっとずつ変わっていったのよ」
「……嘘だッ!!」
円華の言葉に、芳文がいきなり叫んだ。
「ひっ!?」
いきなりの芳文の叫びにまどかがびっくりする。
「俺の母さんがこんなに可愛い訳がない!!」
芳文はそう叫んで、イスの上から立ち上がる。
「母さんは無駄に偉そうで、無駄に自信にあふれてて、無駄にかっこつけで、尚且つ無駄に厨二病なんだ!!」
そう叫んで、力説する。
「芳文!! いきなり何を言い出すの!!」
円華が憤慨するのを無視して、芳文は続ける。
「見滝原に来る前だってそうだったろ!! 白昼堂々とひったくりをした犯人が母さんのいる方へ走ってきた時、母さんは容赦なくハイキックで犯人を蹴り飛ばして、髪の毛ファサってやりながら言っただろ!!」
「身の程をわきまえなさい。この人間のクズが。ってさ!! あの自信満々の微妙な角度で犯人に向けたクールなドヤ顔、俺は忘れない!!」
そう言って、テーブルの上にバンッと音を立てて両手を乗せて叫ぶ。
「こんな気弱そうで、可愛いだけが取り柄みたいな女の子が、母さんな訳がない!!」
「俺の母さんがこんなに可愛い訳がない!!」
536 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/04(月) 00:29:20.29 ID:cpWSTojgo
「……」
――ガシィッ!!
円華のアイアンクロー改め、シャイニングフィンガーが芳文の顔に炸裂する。
「……私のこの手が光って唸る」
メリメリメリメリメリメロリメリメリ……っ。
「バカ息子を粛正しろと輝き叫ぶっ!!」
メリメリメリメリメリメリメリメリメリメリリメリメリメリ……っ。
「あががががががががががががががかがががかがががっ!!」
芳文の悲鳴がリビングに木霊する。
「必殺!! シャイニングフィンガー!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
芳文の母の腕を掴んでいた両腕が、力なくだらんと垂れ下がる。
「そ……それでこそ、俺の、母さん……。正に……厨ニ……病……」
ガクン……。芳文が意識を失い、床へ崩れ落ちる。
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
息子を粛正した円華に修羅の姿を重ね見て、まどかはただ怯えるだけだった……。
――その後。
円華にこってりと絞られた芳文は罰として夕食抜きになったのだった。
円華の作った夕食をごちそうになり、まどかが帰る時の事だった。
芳文がまどか送って行く前に、トイレに行ってくると言って、席を外すと円華はまどかに優しい顔で言う。
「また遊びに来てね。今度は芳文のアルバムも見せてあげるから」
「はい。ぜひお願いしますね。今日は楽しかったです」
「そう言ってもらえるとうれしいわ」
「それに、円華さんのアルバムも見せてもらえましたし」
「……私のアルバムの中の思い出も、あなたがくれた物よ。ありがとう、まどかちゃん」
「どういたしまして……って、わたし、ちょっと生意気ですよね」
「ううん、事実だもの。またいつでも遊びに来てね」
「はいっ」
まどかと円華はそう言って、お互いに微笑むのだった。
おしまい
537 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/04(月) 00:37:13.16 ID:cpWSTojgo
杏子「番外編おしまい」
杏子「あのおばさんも色々とアレだな」
円華「私はまだ若い」シャイニングフィンガー
杏子「あだだだだだだっ!! ごめんなさい!!」メリメリメリメリ……
円華「……」パッ……
杏子「あいたたたた……。ひどい目に遭った」
円華「因果応報よ」
杏子「畜生……。所で、なんでシャイニングフィンガー?」
円華「ダーリンがガンダムを好きでね。話を合わせようと思って当時放送してたのを見てたのよ」
杏子「それでハマッたのかい?」
円華「ええ。でも彼はファースト至上主義だったわ……」
杏子「……そうか」
円華「……Gガンダム面白いのに」
杏子「はあ。さてと、気を取り直してそろそろお開きにしないとな。それじゃまたなー」ノシ
円華「私も帰るわ。それじゃ」
538 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/04(月) 00:39:41.74 ID:81TVuP5bo
乙でした
そうか円華さんは美人さんだもんな
539 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/04(月) 00:57:55.67 ID:EfzvZ7R80
乙ですたー
円華さん、良いご趣味をしていらっしゃる…Wガンダムも良いモノよ?
540 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/04(月) 01:26:11.72 ID:0bYDrqnFo
リーミティ・乙エールニ!
541 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/04(月) 18:50:36.75 ID:8yh5c8USO
超乙。あえてここでXを推してみる。
542 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/05(火) 22:53:03.20 ID:cgHBEASWo
杏子「突発的小話。ドラマCDみたいなノリで」
543 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/05(火) 22:53:50.21 ID:cgHBEASWo
――ピンポーン。
――ガチャッ。
「こんにちは、円華さん」
「いらっしゃい、まどかちゃん。さ、上がって」
「お邪魔します。芳文さん、いますか?」
「自分の部屋にいるわよ。あとでお茶とお菓子持っていくから」
「ありがとうございます」
――コンコン。
「芳文さん、わたし。入ってもいいかな?」
「いいよ」
――ガチャ。
「お邪魔します……。芳文さん、何してるの?」
「ガンプラ作ってるんだ」
「芳文さん、プラモデルなんて作るんだ……」
「……ガキっぽいかな?」
「ううん、そんな事ないよ」
(以前の芳文さんは無趣味だったもん。例えどんな事でも、芳文さんに趣味があるのって嬉しい)
544 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/05(火) 22:54:34.87 ID:cgHBEASWo
「これ、何て言うガンダムなの?」
「機動新世紀ガンダムXって言うシリーズの、主役MSガンダムエックスだよ」
「うわあ……。頭とか随分小っちゃいんだね。芳文さんこんな小さいの良く作れるね」
「これはHGAW1/144シリーズって言うんだ。説明書どうりに、ランナーから探し出して、切り離したパーツとパーツをはめ込むだけで作れるんだ。だから作るのは意外と簡単なんだよ」
「そうなの?」
「ああ。それにパーツが細かく色分けされててさ、色とか塗らずに組み立ててシールを貼るだけでも、アニメ設定に近いカラフルな完成品になるんだよ」
「へぇー。あれ? たしかガンダムって、機動戦士ガンダムって言うんじゃなかったっけ?」
「それは一番最初のガンダムだよ。ガンダムは話の中の世界観が繋がってる物から、まったく別の世界の話まで、複数のガンダムワールドがあるんだ」
「そうなんだ。芳文さんはこのガンダムXって言うのが好きなの?」
「うーん。まあ、そうなるのかな。母さんが昔、録画してたビデオが家にあってさ。それを見て好きになったんだ」
「円華さんが?」
「ああ。父さんが最初のガンダムが好きでさ、話を合わせようとして当時放映してた機動武闘伝Gガンダム、新機動戦記ガンダムW、機動新世紀ガンダムXの3作をVHSの標準で録画して見てたらしい」
「そうなんだ……」
「結局、父さんは初代とZとZZと逆襲のシャアまでしか見てなくてさ。母さんは父さんに話を合わせる事が出来なかったらしい」
「……なんだか、円華さんかわいそう」
「いや、それでも本人はGガンダムにハマッて好きになったんだから、まだ良かったんじゃないのかな。それに母さんが俺に良くやるシャイニングフィンガーって、Gガンダムに出てくる必殺技だし」
「あ、あははは……」
545 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/05(火) 22:55:47.73 ID:cgHBEASWo
「……そういや、ガンダムWは主人公を見てると、なんか昔の自分を思い出してモヤモヤするって言ってたな。こないだの写真の母さんと主人公のヒイロ・ユイのどこに共通点なんかあるんだか」
「芳文さん、ガンダムWってどんなお話なの?」
「簡単に説明すると、無口で無愛想なテロリストの少年がガンダムでテロリストする話」
「か、過激なお話だね……」
「5人の美形少年達がガンダムに乗って戦うんで、当時の女子中学生とか女子高生とかにも人気があったらしいよ」
「へぇー」
「ちなみにGガンダムは各国の代表選手がガンダムに乗って、戦って戦って戦い抜いて、最後に勝ち残ったガンダムの国が4年間、世界の覇権を握るって言う話」
「ガンダムって戦争物じゃないの?」
「戦争の代わりに、ガンダム同士を戦わせるって話なんだよ」
「なるほど。それで芳文さんが好きなガンダムXってどんなお話なの?」
「戦争で荒廃した地球で暮らす、15歳の少年がある日、不思議な力を持った女の子と出会うんだけど、その女の子を狙って悪人共が襲ってくるんだ」
「その女の子の事を好きになった少年は、運命に導かれて手に入れたガンダムXに乗って、その女の子を守る為に戦い続けるんだ」
「……」
「なんて言うかさ、なんかその主人公の事が他人事じゃないような、親近感が湧くような、なんて言うか、妙な感じがしてさ。それで主人公とヒロインがどうなるのか気になって、見続ける内に好きになったんだ」
「……そのお話、最後はどうなるの?」
「ハッピーエンドだよ。主人公は好きになった女の子と恋人同士になれて、最後までその子の事を守りきる事が出来たんだ」
「そうなんだ。わたしもそのガンダム見てみたいな……」
「それじゃ、今度まどかが来る時までに、ビデオを出しとくから一緒に見ようか」
「うんっ。約束だよっ」
おしまい
546 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/05(火) 23:02:59.31 ID:/iUDiEs30
乙ですたー
ガロ×ティファは真理!
サテライトキャノン=マギカシグヴァンと考えると確かに二組のカップルには近しいものがアレもコレも
もしかして女神まどかはセンチネルのALICEとかぶるかもとか思ったり
「がんばって・・・!」と「良い夢を・・・」って事で
547 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/05(火) 23:25:19.86 ID:cgHBEASWo
杏子「突発的小話おしまい」
杏子「続けて青樹円華解剖図鑑。あたしの主観も入れて解説するよ」
円華フェイス 暁美ほむらだった時と同じ顔だ!! 20代中盤くらいにしか見えないけど実年齢35才だぞ!!
円華ヘアー 暁美ほむらだった時と同じ黒髪の長髪だ!! ドラクエ5のビアンカみたいなおさげにしてる時が多いぞ!! カチューシャは常に着けてるぞ!!
円華アイ 暁美ほむらだった時と同じややキツメの二重瞼だ!! 目の色も変わってないぞ!! 視力は両目とも1・5だ!!
円華マウス 暁美ほむらだった時の38年+ループ期間+青樹円華の35年の人生に加え、友達だったまどかとの納得できるお別れのおかげで随分優しい口調になったぞ!! あれ? 実質73年+aの時を生きてる事になるのか!? 実はババア!?
円華バスト 暁美ほむらだった時と同じだ!! ちっちゃいぞ!! 色とか乳首の形とか、乳輪の大きさとかすごくきれいなのに圧倒的にボリュームが足りない!! お乳は沢山出たから赤ちゃんのご飯としては優秀だ!! なんて言うか残念おっぱいだ!!
円華ウェスト きゅっとくびれたウェストだ!! これで一児の母なんてウソだろ!?
円華ヒップ バストよりサイズが大きいのはないしょだよ!!
円華ハンド とっても器用だ!! 裁縫や服飾、編み物、爆弾作りもお手の物!! 梅子母さんに仕込まれた料理はまさにおふくろの味!! 青樹の血筋か握力がすごいぞ!! リンゴだって一瞬で握り潰すんだ!! 何気にお嫁さんスキル完備だぞ!!
円華レッグ 暁美ほむらだった時よりも速く走れて強力な蹴りが出せるぞ!!
円華○○○ 芳文が出てきた所だ!! 年齢や一児の母である事を考慮すると、とても信じられないくらいに綺麗だ!! こんな所まで美人だぞ!! 旦那曰く名器らしいぞ!! ○○○ってなんて本当は言うんだろう?
円華DNA 見た目と魂f暁美ほむらだった時と変わらない物の、運動神経や健康状態等は飛躍的に上がってるぞ!! 格闘能力だけなら、元の暁美ほむらより上だ!!当然DNAは青樹一族の物だ!! ちなみに暁美ほむらの祖母と円華の母ははとこ同士だ!!
杏子「こんな感じらしい」
円華「なにかしらこれは。ふざけてるの? 馬鹿なの? 死ぬの?」シャイニングフィンガー
杏子「あだだだだだだだだだだ!! あたしのせいじゃねぇー!!」メリメリメリメリ……
円華「……私の口の説明の言い訳は?」
杏子「」
円華「……私のこの手が光って唸る!! 口の悪い小娘をしつけろと輝き叫ぶ!! 必殺!! シャイニングフィンガー!!」メリメリメリメリメリッ!!
杏子「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
円華「反省しなさい」スタスタ
杏子「畜生……。理不尽だ……」ガクッ
548 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/05(火) 23:43:59.91 ID:UR4mnBljo
・・・・・普通の女性はバストよりヒップの方が大きいのが普通なんですよね・・・・・。
549 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/05(火) 23:59:41.13 ID:/iUDiEs30
>色とか乳首の形とか、乳輪の大きさとかすごくきれい
残念じゃないじゃん!
ぜんぜん残念じゃないじゃん!!
550 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(九州)
[sage]:2011/07/06(水) 06:01:03.69 ID:HYrd77zAO
未だにGXが打ち切りになったことには納得できない
当時子供だったからドモンやヒイロが何をしたいのか全くわからなかった分ガロードの行動理念は分かりやすくて好きだった
551 :
!ninja
[sage]:2011/07/06(水) 10:25:04.71 ID:epqgvR0No
コルノ・乙テ!
>>550
分かる!
つーかガロードはガンダム主人公勢の中でも一番『他人を否定する』時の理由がしっくりくるぜ
552 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/09(土) 11:22:54.57 ID:tuEgcoOFo
杏子「突発的小話」
553 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/09(土) 11:23:30.45 ID:tuEgcoOFo
「ただいま……あら。まどかちゃんいらっしゃい」
「お邪魔してます」
「お帰り、母さん。食品の買い物にしては遅かったじゃないか」
「ちょっとお母さんと一緒に、イオン見滝原店まで行ってきたのよ」
「ふーん。ばあちゃん元気だった?」
「ええ。芳文にってお母さん、新しい服を買ってくれたから後でお礼の電話しておきなさいよ」
「わかった」
「あなた達は何をしてたの?」
「芳文さんと一緒にガンダムXのビデオを見てたんです」
「母さんが録画してたビデオの1巻目を丁度、今見終わって巻き戻ししてるんだ」
「……懐かしいわね。ガンダムXかぁ……」
「円華さんも見てたんですよね?」
「ええ。丁度放送開始した日に芳文が生まれてね。それから芳文の面倒を見ながら見てたの」
「女でガンダム好きって珍しいよな」
「好きって言ってもG、W、Xしか見ていないけどね」
「ふーん」
「ふふ。それにしても懐かしいわ。最後の方で突然金曜午後5時の放送だったのが、土曜日の朝6時からの放送にされたりしたけど、赤ちゃんだった芳文におっぱいあげながら見てたから今でもよく覚えてるわ」
「なんでまた、そんな変な時間に変更されたんだ?」
「私も後で知ったのだけど、視聴率があんまり良くなかったのと、プラモデルがガンダムWに比べて売れなかったかららしいわ」
「なんだそれ。ガンダムXこそ至高なのに。ガンダムXとかダブルエックスとか格好いいのに」
「至高かどうかは知らないけど、脚本が全部同じ人の書いた物だから、設定や伏線の破綻とかそういうのがなくていいとは思うわね」
「俺さあ、もっとXは評価されてもいいと思うんだ」
「そうね。私もGガンダムの次に好きよ。ガロードとティファのカップルはかわいいもの」
「わかる。俺もなんでか知らないけど、ガロード見てるとがんばれって応援したくなるんだ」
「そうね」
554 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/09(土) 11:24:53.96 ID:tuEgcoOFo
「……わたしもまだ4話までしか見てないけど、ガロードを見てるとがんばれーって応援したくなります」
「まどかちゃんもそう思うの?」
「はい。ティファと一緒に幸せになってほしいなって」
「ふふっ。そうなんだ」
「まどかもXを気に入ってくれたようで、嬉しいな。さてと、ビデオも巻戻ったし2巻目を見るか」
「うんっ」
「二人とも、ビデオを見るのはいいけど宿題は終わったの?」
「あとでやるよ」
「あとでやります」
「そう。私は夕飯の支度をするから。まどかちゃん、食べていくでしょ?」
「え、でも……」
「遠慮なんてしなくていいのよ」
「そうそう。こないだは俺がまどかの家で、昼ごはんをごちそうになったし」
「……それじゃ、お言葉に甘えて」
「ん。それじゃ、腕によりをかけて作るからね」
「母さん、今日の晩飯何?」
「肉じゃがよ」
「お、肉じゃがかあ。母さんの肉じゃが美味いんだよな」
「当然よ。お母さんから受け継いだ、青樹の女に代々受け継がれてきた味だもの」
「正におふくろの味って奴か」
「そうなるわね」
「あの……円華さん……」
「なあに?」
「その……お料理、教えてもらっちゃ、ダメ……ですか?」
「……嬉しいわ。私ね、いつか自分の娘か芳文のお嫁さんになってくれる女の子に、私が母から教わった料理を教えてあげるのが夢だったの」
「それじゃ……」
「ええ。一緒に作りましょうか」
「はいっ」
「まどか」
「なあに? 芳文さん」
「まどかの肉じゃが期待してるよ。ビデオはまた次の機会に見ような」
「うんっ。期待しててねっ。円華さんから料理の技術、ばんばん盗んじゃうんだからっ」
「あらあら。これはしっかりと仕込んであげないといけないわね」
「よろしくお願いします、先生」
「ふふ。それじゃ、早速取りかかりましょうか」
「はーいっ」
おしまい
555 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/09(土) 11:26:54.11 ID:tuEgcoOFo
杏子「単発小話おしまい」
杏子「じゃあなー」ノシ
556 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/09(土) 11:38:57.15 ID:FscDhj3Mo
乙です
557 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/09(土) 17:49:33.09 ID:1c4kXrQm0
乙ですたー
ここのまどかはいつ見ても本当に幸せそうで和むな
ところで円華さん、旦那様とご一緒にユニコーンなどいかがですか??
558 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/10(日) 00:22:45.68 ID:RiSAz8eho
イービル乙!
559 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2011/07/10(日) 10:54:13.62 ID:pnDpQdrBo
追いついた
スレ名で敬遠してたら凄く良い話だった
乙でした
560 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/15(金) 02:31:37.99 ID:DZyEotj1o
杏子「超番外編」
561 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/15(金) 02:32:07.88 ID:DZyEotj1o
杏子 「ここはまど界。円環の理に導かれし者達が集う、天国的なとこ」
さやか「杏子、誰に言ってんの?」
杏子 「気にすんな」
まど神「さやかちゃん、杏子ちゃん、ただいま」
さや杏『おかえり、まどか』
まど神「ティヒヒ。今日は新しい仲間を連れてきたよ」
さや杏『仲間?』
まど神「うん、ほら」
ほむら「杏子、美樹さやか。久しぶりね」
魔法少女まどか☆マギカ 超番外編 「女神遊戯」
さやか「あんたもとうとうここに来たんだ」
杏子 「今までお疲れさん」
ほむら「ええ。本当に長かったわ……」
まど神「ところでマミさんは?」
杏子 「部屋でパソコンでもいじってんじゃねーの? 他の魔法少女と掲示板でいろいろやり取りしてるらしいし」
まど神「そうなんだ」
さやか「そういやマミさん、安価で必殺技を作るとか言ってたっけ」
まど神「」
杏子 「せっかく5人揃ったんだ。マミも呼んできて、マミのケーキでも食おうぜ」
さやか「いいねー」
まど神「ほむらちゃん、行こ」
ほむら「ええ」
562 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/15(金) 02:32:55.16 ID:DZyEotj1o
まど神「マミさーん」
マミ 「鹿目さん、お勤めご苦労様。あら? 暁美さんじゃない。いつ来たの?」
ほむら「つい先ほど」
マミ 「そう。長い間お疲れ様」
ほむら「ありがとう」
マミ 「立ち話もなんだし、みんなでお茶でも飲みながらお話ししましょうか」
さやか「さんせーい」
杏子 「なあなあ、ケーキはあるのかい?」
マミ 「ええ。作ったばかりのがあるわよ」
杏子 「やった、早く食おうぜ」
マミ 「はいはい」
まど神「ティヒヒ。杏子ちゃんたら食いしん坊なんだから」
ほむら「……ふふ。みんな変わらないわね」
――円環の理に導かれし者達と女神のお茶会開催。
ほむら「ここは現世とほとんど変わらないのね」
まどか「ウェヒヒヒ。ちょっとがんばってみんなが暮らしやすい世界にしてみたんだ」
さやか「魔法少女だった女の子しかいないけど、住めば都だよ」
杏子 「食い物もあるしな」
マミ 「一応インターネットもあるから、知らない魔法少女同士でも交流出来るのよ」
ほむら「そう」
まど神「あとね、今のわたしってすべての過去と未来、あらゆる世界を見る事が出来るの。その力を使ってよその世界の出来事を見たり、その世界で放映してるテレビ番組をこの世界で配信したりも出来るんだよ」
さやか「おかげで娯楽には事欠かないんだ」
ほむら「すごいのね、今のまどかは」
まど神「ティヒヒ。そんなに褒めないでよ。そうだ。せっかくだからほむらちゃんにも別の世界見せてあげるね。それっ」指パッチン
ほむら「突然目の前に巨大スクリーンが!!」
QB(CV若本)「ほむら、俺と契約しようぜ」
まど神「」
ほむら「何、この野太い声のインキュベーターは」
563 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/15(金) 02:33:40.33 ID:DZyEotj1o
若本世界ほむら「まどか、もう寝ましょう」
若本世界まどか「ほむらちゃん、おなかの赤ちゃんがびっくりするような事はしないでね」
若本世界ほむら「問題ないわ」ムフームフー
ほむら「」
まど神「」
若本世界さやか「杏子大好き」
若本世界杏子「さやかー」
若本世界マミ「QB、QB、ああんっそこ……」
さやか「なんであたしが杏子とカップルになってるの!?」
杏子 「あのゆまって言うのどっかで会ったような……」
マミ 「私がQBにエッチな事されてる……」
全員 『こんなの絶対おかしいよ!!』
ほむら「……まどか、この世界はなんなのかしら」
まど神「……無限の可能性の一つの世界だよ」
ほむら「あなたはこんな世界を見てて平気なの?」
まど神「……みんなが幸せみたいだから、これはこれでありなんじゃないかな」
ほむら「……そう」
まど神「かつてあった世界も有り得たかもしれない世界も無数に存在するからね。こういう世界もあるんだよ」
ほむら「こんな世界を私に見せて、どうしたいの?」
まど神「世界の数が多すぎて、これって言うのを探し出すのが難しいんだよ。とりあえず、さっきの世界のほむらちゃんの所に行ってくるね」シュン
まど神「ただいま」パ
ほむら「早かったわね」
まど神「うん……」
ほむら「どうしたの?」
まど神「あっちのほむらちゃん、わたしの言葉を最後までちゃんと聞いてくれなくて」
ほむら「……」
まど神「がんばってね、あっちのわたし」遠い目
564 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/15(金) 02:34:43.12 ID:DZyEotj1o
まど神「気を取り直して、次の世界行くね。えいっ」指パッチン
別世界ほむら「キュゥべぇをレイプしたらソウルジェムが浄化された」
まど神「」
ほむら「」
マミ 「」
さやか「」
杏子 「」
全員『こんなの絶対おかしいよ!!』
ほむら「ねえまどか。こんな世界しかないのかしら?」
まど神「こ、今度こそ。えいっ」指パッチン
――カシャッ。
円華『んぅ……』
円華『……えっ? いつ帰ってきたの!? 寝顔なんて撮らないで!!』
円華『もうっ。どうせ撮るなら起きてる時に撮って』
円華『あれ? 今何時?』
円華『きゃあぁぁぁっ!! ごめんなさい!! 御夕飯の支度してない!!』
円華『えっ? お仕事で疲れてるのにあなたが作ってくれたの?』
円華『あうぅ……ごめんなさい。私、あなたのお嫁さんなのに……』
芳文『ふえぇぇぇぇぇんっ!!』
円華『あ、起きたの芳くん。おなかがすいたのかな?』
円華『よしよし。今おっぱいあげるからね』
円華『いっぱい飲んで、早く大きくなってね。芳君は大きくなったらどんな男の子になるのかな』
円華『ママはパパみたいに、優しくて強い子に育って欲しいな。ね、芳くん』
さやか「誰、あれ……」
杏子 「ほむらに似てるような」
マミ 「というか、あれ暁美さんじゃないの?」
まど神「そうだよ。あれは別世界のほむらちゃんとその子供の芳文君」
ほむら「」
マミさや杏『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』
565 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/15(金) 02:35:41.33 ID:DZyEotj1o
まど神「ティヒヒヒ」
ほむら「まどか、私結婚はおろか、男の人と付き合った事すらないんだけど……」
まど神「だから、別の世界のほむらちゃんだってば。ここにいるほむらちゃんとは、違った道を歩んできたほむらちやんなの」
杏子 「つーか性格違いすぎだろ」
さやか「誰よあれ」
まど神「とりあえず、アニメ本編の過去世界と、このスレを
>>2
から見ればわかるよ」
――アニメ本編の過去世界と
>>2
までの世界を全員で確認後。
さやか「なんて言うか……」
杏子 「あたし達全員普通の人間に戻った世界なんだな」
マミ 「あんな世界もあるのね」
ほむら「私の息子とまどかが恋人同士って……。なんだかすごく複雑だわ」
まど神「こういう世界もあるんだよ」
マミ 「それにしても、暁美さんの旦那様ってどんな人なのかしら」
さやか「あ、あたしも気になる!!」
杏子 「記憶喪失とはいえ、ほむらが好きになった男ってどんな奴なんだろうな」
まど神「じゃあ、ちょっと見てみようか」指パッチン
――円華と旦那の馴れ初め視聴中。
さやか「決してブサイクじゃないけど……」
杏子 「特別いい男ってわけでもないな」
マミ 「でも、すごく優しいわ」
まど神「それにすごく頼りになるよね。銃を持ってる銀行強盗を簡単にやっつけて、ほむらちゃんを守ってくれたもん」
ほむら「……」
566 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/15(金) 02:36:44.14 ID:DZyEotj1o
さやか「あっ!?」
マミ 「何あれ!?」
杏子 「UFOだ!! 街の人間が大勢さらわれた!! 宇宙人が大勢出てきて、ほむらまでさらわれそうになってるぞ!!」
まど神「あっ!! ほむらちゃんの旦那さんだ!!」
報堂博「そこまでだ!! 蒸着!!」
全員 『変身ブレスで変身したー!?』ガビーン!!
報堂博「勇者特警サンバード見参!! ニトロ星人!! 貴様等の好きにはさせん!!」
全員 『超強いーっ!? 100体以上の怪人が1分も経たずに全滅ー!?』ガビーン!!
報堂博「む!! 破壊ロボか!! 来い!! サンジェーット!! トウッ!! 融合合身!! グレートサンバード!!」
全員 『巨大戦闘機と融合して巨大ロボになったーっ!?』ガビーン!!
報堂博「燃える正義をこの胸に!! 悪を滅ぼす太陽の炎!! 勇者特警グレートサンバードここに見参!!」
まど神「」
さやか「」
杏子 「」
マミ 「……素敵」
ほむら「……かっこいい」
報堂博「罪もない人々をさらって改造しようなど、そのような非道この俺が許さない!! サン・ブレード!! フレイムチャージ!! うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
――ドカーン!!
まど神「」
さやか「」
杏子 「」
マミ 「すごいわ!!」
ほむら「なんて強さなの……っ。あの強さの前では、魔女も魔獣も子供以下よ……」
円華 「……あれ? わたし、一体」
報堂博「貧血で倒れたんだよ。陽だまり荘に帰ってる途中だからね。そのまま俺の背中で休んでて」
円華 「迷惑をかけてごめんなさい……」
報堂博「迷惑なんかじゃないよ」
円華 「……ありがとう。博さん」
まど神「……この後、一年間もの間戦い続けて、ほむらちゃんの旦那さんは、宇宙からの侵略者を撃退したんだよ」
さやか「」
杏子 「」
マミ 「」
ほむら「」
567 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/15(金) 02:37:56.28 ID:DZyEotj1o
――2011年。見滝原市の青樹家にて。
まどか「芳文さんのお父さんって何のお仕事してるの?」
芳文 「警察官だよ。昔、作文を書く時に仕事内容を尋ねたら、宇宙警察地球署群馬支部勤務、機動部隊大隊長サンバードだなんてふざけた事を言いやがってさ、おかげでしばらくクラス内でいじめに遭った」
円華 「警察の仕事は守秘義務があるのよ。私も昔仕事の内容を尋ねたら、芳文と同じ事を言われたわ」
博 「……本当の事なんだけどな。ブレイブ星人にスカウトされて宇宙警察に入ったって何度教えても、妻も息子も信じてくれない。エイミー、お前は信じてくれるよな」
黒猫 「にゃーん」
博 「ニトロ星人は全員倒したから、もうサンジェットを呼ぶ機会もないし……。地球を狙う敵がもういないから家族に雄姿を見せる機会もない。はあ、このままじいさんになるのか、俺」
――再びまど界。
さやか「妻子に真実を話しても信じてもらえないって」
杏子 「ほむらの奴、どんだけにぶいんだよ。何度も巻き込まれるヒロインの立場にいて」
マミ 「何気に妻は魔法少女の事を、夫は勇者特警の事をお互いに内緒にしてるのね」
まど神「例え夫婦でも隠し事の一つや二つはあるんだよ」
ほむら「色々と突っ込みどころが満載ね……」
まど神「ちなみに改変前の世界でも、サンバードの活躍で地球は救われていたんだよ」
マミホムサヤアン『』
まど神「ところでほむらちゃんは、旦那さんの事どう思う?」
ほむら「いい人だと思うわ。もし魔法少女の事を知らない時に出会えば、好きになっても不思議じゃないくらいにはね」
まど神「ティヒヒ。そっかぁ」
マミ 「芳文君が強かったのって、暁美さんの子供だからってだけでなく、お父さんが本物の勇者だったからなのね」
さやか「母は魔法少女で父は勇者かあ」
杏子 「何気にスペックが高いのはこんな理由があったからなんだな」
まど神「さて、それじゃ少し未来を見てみようか」指パッチン
568 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/15(金) 02:39:25.13 ID:DZyEotj1o
――未来の見滝原市内にて。
芳文 「ただいま、まどか」
まどか「おかえりなさい。ご飯も出来てるし、お風呂も沸いてるよ。どっちを先にする?」
芳文 「まどかと一緒にご飯食べて、一緒にお風呂が良いな」
まどか「えへへ。芳文さんのえっち」
芳文 「いいじゃないか。夫婦なんだから」
まどか「うんっ」
――かぽーん。
芳文 「ふう。いい湯だなあ」
まどか「うん。ところで芳文さん」
芳文 「何?」
まどか「なんでおっぱい触るのかな?」
芳文 「そこにまどかのおっぱいがあるから」
まどか「もう。えっち♪」
まど神「」
マミホムサヤアン『うわあ……』真っ赤
芳文 「まどか」
まどか「優しく、シてね」
芳文 「ああ」
マミホムサヤアン『』真っ赤
まど神「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 見ちゃ駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」指パッチン
さやか「なんで消しちゃうかなー」
杏子 「いい所だったのにさ」
まど神「冗談じゃないよっ!! 何が悲しくて、自分の濡れ場を友達に見られないといけないのっ!!」
マミ 「鹿目さん、落ち着いて」
ほむら「大人になったまどかって美人なのね。しかも胸がすごくきれいで大きくて、仰向けに寝てもつぶれないなんて……。神は不公平だわ……」自分の胸に手を当ててションボリ
まど神「ほむらちゃんも変な事言わないで!!」
マミ 「鹿目さん落ち着いて。この後あの鹿目さん達はどうなるのか、私興味があるわ」
まど神「うぅー」指パッチン
569 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/15(金) 02:40:46.51 ID:DZyEotj1o
――さらに未来。
幼女 「ママー、パパー」
まどか「そんなに走ったら危ないよ」
幼女 「あうっ」ドテッ
幼女 「うわーん!!」
芳文 「ああほら、こっちにおいで」
幼女 「えーん」トテトテ……
芳文 「よしよし。まほは泣き虫だなぁ」
まほ 「ぐすんぐすん」
まどか「もうすぐお姉ちゃんになるんだから、もうちょっと強い子にならないとね」
まほ 「ぐす、うん……」
マミ 「かわいい!!」
さやか「3才くらいかな?」
杏子 「父親似だな。黒い髪とか目元とかそっくりだ」
さやか「あれ? でも芳文君はほむら似なんだから、まほちゃんもほむら似なんじゃないの?」
ほむら「……もう少し未来は見れる?」
まど神「オッケー」指パッチン
――さらに未来。
まほ 「えーん、やめてよーっ」
杏子 「どういう事だおい。まほが男のガキにいじめられてんじゃねーか」
さやか「可愛い子にはちょっかいをかけたくなるもんなんだよ」
主婦杏子「こら杏。女の子をいじめるような男は晩飯抜きにすんぞ」
杏子 「」
まど神「どうやら、杏子ちゃんの子供と幼馴染みたいだね」指パッチン
570 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/15(金) 02:41:40.83 ID:DZyEotj1o
――さらに未来。
杏 「おーい、まほ」
まほ 「なにか用?」
杏 「テスト週間だろ。一緒に勉強しねえ?」
まほ 「そうね。別にしてあげてもいいけれど」ファサ
杏 「……はあ。おまえ昔に比べて可愛げがなくなったよな」
まほ 「一人で勉強するのなら止めないわ」
杏 「嘘、嘘。ちょっとわかんねーとこがあるから教えてくれよ」
まほ 「しょうがないわね」
杏 「……はあ。見滝原に帰ってきて数年ぶりに再会したら、こんな風になってるなんて想像もしなかったぞ」小声でぼやく
まほ 「何をしているの。早く帰って勉強するわよ」
杏 「あ、ああ。待ってくれよ!!」
まど神「まほちゃんが!! あんなにかわいかったまほちゃんが!! ほむらちゃんみたいになっちゃった!!」
ほむら「」
さやか「一度杏子の家が引っ越しして、数年ぶりに再会したってとこかな?」
マミ 「今の会話の流れからするとそうでしょうね」
杏子 「あたしの息子とまどかの娘がねえ……。小さい頃と立場が逆転してるのがなんて言うか……」
まど神「もう少し未来を見てみよう」指パッチン
――さらに未来。
杏 「まほよくがんばったな!! 俺達の息子だ!! まほに似てかわいいぞ!!」
――さらに未来。
まほの息子「俺の娘は俺に似たのか……」
――さらに未来。
まほの孫娘「この子、わたしにそっくり」
――さらに未来。
まほの曾孫「俺に似たのか。不憫な娘だ」
571 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/15(金) 02:42:54.66 ID:DZyEotj1o
まど神「ほむらちゃんから始まって、芳文君、まほちゃん、まほちゃんの息子君、息子君の娘ちゃんって男女が交互に生まれてきて、しかも全員顔だけでなく性格までほむらちゃん似だね」
さやか「小さい時はおとなしくて人見知りで」
マミ 「大体思春期の頃に、今の暁美さんみたいにクールな性格になって」
杏子 「高校生くらいで大体落ち着くって所か。正にほむらの血族」
ほむら「」
まど神「わたしはどうなってるんだろ」指パッチン
――時巻き戻し。
まどか「よしよし。今おっぱいあげるからね」
まほ 「ママ、芳乃が漏らしたわ」
まどか「ごめん、おむつ替えてあげて」
まほ 「しょうがないなあ」
ほむら「まほを筆頭に20人も子供がいるわ……」
杏子 「まどかと芳文頑張りすぎだろ……」
さやか「しかも男の子も女の子もみんなほむら似だし」
マミ 「あ、でも鹿目さんがお乳あげてる赤ちゃんは鹿目さん似ね」
さやか「20人産んで19人ほむら似ってどんだけ強力なのさ、ほむら遺伝子」
ほむら「」
まど神「……こんなの絶対おかしいよ!!」
ほむら「……でも、みんな笑ってて幸せそう」
子供達に囲まれて笑っているまどかと芳文。
かわいい孫達に囲まれて笑っている、青樹夫妻と鹿目夫妻。
まど神「……これは無数にある未来の一つだし、幸せそうだからもう見なくてもいいよね」指パッチン
まど神「人は皆、素敵な未来を作れるんだから。きっともっともっと幸せな未来だってあるはずだよ」
まど神「みんなも素敵な未来を作れるようがんばってね!!」
おしまい
572 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/15(金) 02:46:31.34 ID:DZyEotj1o
杏子「超番外編おしまい」
杏子「一応言っとくとギャグだし本編ifだからな」
杏子「若本QBとQBレイプとまどかちゃんねるの作者に断りなくネタにしてしまった。一言断り入れとくべきだったかも」
杏子「じゃーなー」ノシ
573 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2011/07/15(金) 03:21:21.36 ID:+yf++id9o
乙でした〜
574 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/07/15(金) 08:59:31.40 ID:yhYWbffho
この乙様の事が気になるご様子で!
575 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/15(金) 12:25:53.03 ID:LMadK4FSO
超乙。俺が他に見てるまどかSSがどっちも出てきてビビった(笑)。
576 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/15(金) 13:23:53.87 ID:zTdYxPw10
乙ですたー
芳文とまどか、子供20人はギャグとしても、あれだけラブラブな夫婦なら3人は生まれてておかしくないなw
577 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/19(火) 00:00:39.83 ID:LmhA/rKao
杏子「小ネタ」
578 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/19(火) 00:03:09.92 ID:LmhA/rKao
「いくつの時だったかな……。ある日突然、母親が俺を虐待するようになったんだ」
――十年前。スーパー銭湯にとろ湯にて。
『どうしたの、芳君。ママのおっぱいじっと見たりして。もうおっぱい卒業したでしょ』
『ねえママ』
『なあに?』
『どうしてママやよそのおばさん達はブラジャー着けるの? パパも幼稚園の女の子達も着けてないのに』
『大人の女の人はね、おっぱいが大きいからブラジャーを着けるの』
『え?』首傾げ(シャフ度)
『芳君?』
『じゃあなんで、ママはブラジャー着けるの?』首傾げ(シャフ度)
『……』
『なんで?』首傾げ(シャフ度)
『……』シャイニングフィンガー
『痛い痛い痛いっ!! うわーん!!』ギリギリギリギリギリ……
『……はっ!? ご、ごめんね芳君!! 大丈夫!?』
『うわーん!! ママのばかー!! くそばばあー!!』
『私はまだ若い』シャイニングフィンガー
『うわーん!!』ギリギリギリギリギリ……
――現在。芳文の部屋にて。
「そして俺はまた、母親から虐待されそうになっているわけだが」
「……覚悟はいいかしら?」
「おかしいな。まどかと一緒にテスト勉強をしてたはずなのに。なんでこうなったんだろう?」
――5分前。
――コンコン。ガチャ。
「二人とも、勉強ははかどってる?」
「集中してたのに今、母さんに邪魔された」
「芳文さんったら……。今丁度一区切りついた所です」
「なら丁度良かったかしら。そろそろ休憩するのにどうかしらと思って」
「なんだ。お茶とおやつを持ってきてくれたのか」
「円華さん、これなんですか?」
「甘食って言うのよ。まどかちゃんは知らない?」
「えっと、パンですか?」
「スポンジケーキと菓子パンの中間のような存在と言えるかしら。昭和三十年代の代表的な菓子パンなのよ」
「へえー。初めて見ました」
「見滝原だと売ってる所もあまりないでしょうしね」
579 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/19(火) 00:05:49.98 ID:LmhA/rKao
「母さんは昔から、こういうお菓子類作るの得意なんだ。ケーキとかクッキーとか色んな和菓子とか。母さんが作れない物はないんじゃないかな」
「私は専業主婦だしね。これもお母さんに仕込まれたのよ」
「円華さんってすごいんですね。お料理も上手だし、お菓子も作れて、編み物や刺繍にお裁縫まで……。憧れちゃうなぁ……」
「まどかちゃんにその気があるなら、私に教えられる事なら何でも教えてあげるわ」
「本当ですか?」
「ええ」
「やったあ!! 教えて欲しい事いっぱいあるんです!!」
「ふふ。それじゃ今度また、教えてあげるわ」
「はいっ。お願いします」
「それじゃあ、私ちょっと夕飯の買い物に行ってくるから。二人とも留守番お願いね」
「ああ」
「いってらっしゃい」
――パタン。
「さてと、休憩がてら母の胸を食うとするか」
「……母の胸?」
「この微妙な膨らみが、母さんの胸にそっくりなんだ。かろうじて摘まめる程度の膨らみが」
「……」
「母さんには内緒だよ? 俺が甘食を母の胸と呼んでる事」
「……へえ。芳君はママの胸をそんな風に思ってたんだぁ」音もなくドア開け
「げっ!? なんでいるんだよ!? 買い物に行ったはずだろ!!」
「手を拭く為のウェットティッシュを持ってくるのを忘れてたのよ」
「そ、そうですか」
「覚悟はいいかしら」
「何の覚悟でしょうか。マイマザー」
「ママの悪口を陰でこそこそ言ってた事」パキポキパキ
「悪口じゃなくて事実」
「……ふうん」パキポキパキ
「……まどか」
「な、何?」ビクビク
「いくつの時だったかな……。ある日突然、母親が俺を虐待するようになったんだ」
「えっ、えぇっ?」
「そして俺はまた、母親から虐待されそうになっているわけだが」
「……覚悟はいいかしら?」
「おかしいな。まどかと一緒にテスト勉強をしてたはずなのに。なんでこうなったんだろう?」
「……私のこの手が光って唸る!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
――帰り道。
「いててててててて……。まだ顔が痛い……」
「自業自得だと思うよ……」
「母さんから色々習うつもりみたいだけどさ、まどかは母さんみたいにならないでくれよ」
「それは無理。だって円華さんみたいにお料理もお菓子作りも出来る、素敵なお嫁さんになりたいもん」
「……そっか」
「うんっ。だから待っててねっ」
おしまい
580 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/19(火) 00:10:52.32 ID:LmhA/rKao
――まど界にて。
杏子「……あのおばさん、胸の事気にしすぎだろ」
まど神「旦那さんがいて、赤ちゃん産んでも、ほむらちゃんはおっぱい小さいんだね」
さやか「例え生まれ変わっても、ちっぱいはちっぱいのままか」
マミさん「それが定めなのよ。暁美さんのね」
ほむら「」
――再びこの世界。
杏子「じゃーなー」ノシ
581 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/19(火) 00:11:56.06 ID:AX7+Z2sd0
乙ですたー
なんかこのまま、2人の結婚式まで見たくなってきたww
582 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/19(火) 00:18:56.67 ID:ml5b4k5Po
乙っちまどまど!
ほむほむがかわいそうだぜ…
583 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/07/19(火) 11:04:03.32 ID:dOx5jJLHo
君の乙はエントロピーを凌駕した
584 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/20(水) 00:20:07.41 ID:yiCZEzPPo
杏子「小ネタ。青樹家の人々」
585 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/20(水) 00:20:33.60 ID:yiCZEzPPo
「――なあ、母さん。俺思うんだけどさ」
「ん?」
「母さん、胸のサイズにコンプレックス持ちすぎだろ」
「……」パキポキパキ
「待った待った!! 話は最後まで聞けよ!!」
「……それで何が言いたいの?」
「母さんさ、父さんの事好き?」
「嫌いだったら、結婚してあなたを産んだりしないわ」
「うん。そりゃそうだよな」
「何が言いたいの?」
「だから、母さんはその胸にもっと、自信を持っていいんだって言いたいんだ」
「……」
「母さんはその小さな胸のおかげで、7才も年下の女子高生に手を出したロリコンで、しかも貧乳派の父さんと結婚出来たんだからさ」
「……」
「しかも父さんは、母さんの重すぎる愛を受け止められるだけの器を持ってるしな。普通の男なら逃げるぜ。雑誌の巨乳グラビアアイドルを見てるだけで、嫉妬するような女なんて」
「……」
「だから、もっと自分の胸を誇っていいと思うんだ」
「……言いたい事はそれだけかしら?」パキポキパキ
「……おい、芳文」
「あ、父さんお帰り」
「芳文。パーパはおまえを親をからかうような子に育てた覚えはありません」
「十五の息子にパーパとか言うな!! 気色悪い!!」
「……」ガシィッ!!
「うわっ!? いきなり抱きしめんなよ!! 暑苦しい!!」
「誰がロリコンで貧乳好きだ!! 容姿だけで円華を選んで結婚したわけじゃないぞ!!」ギリギリギリ……
「いだだだだだだだだだ!! 苦しい!! 離せよ!!」
「……円華。俺達、どこで子育て間違えたんだろうな?」ギリギリギリ……
「大丈夫よ。ダーリン。私達、まだやりなおせるわ」
「……ああ、そうだな」
「ええ」
586 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/20(水) 00:22:13.61 ID:yiCZEzPPo
「とりあえず、この馬鹿息子を躾けるか」
「そうね」
「この馬鹿息子が!! 一度死ねえっ!! ジーグブリーカー!!」ギリギリギリ……
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「私のこの手が光って唸る!! 馬鹿息子を躾けろと輝き叫ぶ!! 必殺シャイニングフィンガー!!」ガシィ!!
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「」
「よ、芳文さん、返事して」
「」
「まどかちゃん、放っておきなさい」
「少し経てば復活するからね」
「は、はい……」
――ピンポーン。ピンポンピンポンピンポン!!
「誰かしら? チャイムを連打したりして。非常識ね」スタスタスタ……
――二分後。
「全員手を上げろ!!」ジャキッ!!
「……ダーリン」
「誰だ貴様!! 妻から離れろ!!」
「うるせえ!! こちとらポリ公に追われてんだ!! てめえら全員人質だ!! 下手な真似しやがったら全員撃ち殺すぞ!!」ジャキッ!!
「ひっ!!」
「……まどかに銃を向けるな!!」復活即顔面パンチ!!
「ぐあぁぁっ!! このガキがぁ!!」倒れこみながらも銃口ジャキッ!!
「うちの子に何をするつもりなのかしら」銃身掴んでひん曲げ
「げえーっ!! 猟銃の銃身を素手で曲げやがった!? バケモンかこのアマ!!」
「こんな美しいバケモノがいるか!! 俺の妻を愚弄した罪は重い!! 死ねえっ!!」一瞬で猟銃ごと腕を蹴飛ばして、へし折りジーグブリーカー
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
587 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/20(水) 00:23:24.34 ID:yiCZEzPPo
――その後。
「そう言えばさ、この辺りでご近所トラブルで猟銃を持って暴れてたキチガイが、警察に追われてどっかの家に立てこもろうとしたんだよね」
「物騒な話ですわね」
「でもその犯人が選んだ家の住人達がとんでもなく武闘派だったせいで、犯人はあっさり返り討ちになって病院送りにされたらしいよ」
「まあ……」
「まあいつの世も、悪の栄えた試しはないって事で、久々にスカッとする事件だったと思うわ」
「あらあら、さやかさんったら」
「あ、あははは……」
(言えない。わたしも当事者だったなんて言えないよ……)
「いったい、どんな家族なんだろうねー」
(円華さん、旦那さんに護身術を仕込まれたって言ってたけど、いつかわたしも芳文さんや円華さんに仕込まれちゃうのかな……)
――そして未来。
「おーい、まどかー、まほちゃーん」
「さやかちゃん、久しぶり」
「……」
「ほら、こんにちはは?」
「……こんにちは」オドオド
「ん。こんにちは。まほちゃんは相変わらず人見知りだねぇ」ニッコリ
「誰かー!! ひったくりよー!! 捕まえてー!!」
「どけどけえぇぇぇぇぇっ!! ぶっ殺すぞ!!」
「うわ!! まどかこっちにくるよ!! まほちゃん連れて逃げないと!!」アセアセ
「どけどけえぇぇぇぇぇぇっ!!」
「うわぁ!! もう来た!!」
「……えいっ」足引っかけて、背負い投げして、鳩尾にかかと落とし
「ぐえーっ!!」泡ブクブク
「ま、まどか、あんた……」
「えへへ。いきなり秘密がばれちゃったね。実は芳文さんとお義母さん達に護身術習ってるんだ」
「護身術って……」
「みんなには内緒だよっ」ニッコリ
おしまい
588 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/20(水) 00:27:32.84 ID:yiCZEzPPo
杏子「小ネタおしまい」
杏子「円華おばさんの旦那の名前が、ヒロシってだけでジーグブリーカーかよ……安直すぎだろ」
杏子「つーか鋼鉄ジーグなんて古い物知ってる奴がどんだけいる事やら」
杏子「ちなみに円華旦那の名前の元ネタは博報堂だ」
杏子「じゃーなー」ノシ
589 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/20(水) 00:32:23.71 ID:S4D70YUQ0
乙ですたー
うーでがとびだすババンバン♪
590 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/20(水) 00:32:57.75 ID:Jr4uRofto
乙でした
まどかはみおの腕ドリルを身につけてもらいたい
591 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/07/20(水) 11:41:18.51 ID:P0TYeS9lo
乙おつ
592 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/21(木) 18:53:52.33 ID:JtJw7gCwo
杏子「暑くて死にそうだ……」
杏子「魔法少女まどか☆マギカ〜私の大切な人〜外伝 魔法少女ほむら☆マギカ〜私の居場所〜」
杏子「これって需要あるかい?」
杏子「本編10話で語られた内容ほぼそのまんまで、既に結末も皆知ってるとうりにしかならないんだけどさ」
杏子「内容は優しく包み込んでくれる家族もいなけりゃ、友達もいない病弱で臆病で泣き虫な女の子の暁美ほむらが、初めて出来た友達の為に魔法少女になる」
杏子「けれど運命は残酷で、たったひとりの友達を何度何度も取り上げられて、徐々に荒んでいくほむら」
杏子「最後は過去に飛ばされて、大切な友達の記憶さえなくしてしまう」
杏子「記憶を失った少女は過去の世界で優しい家族や友達が出来て、恋をして家庭を持ち幸せに暮らしていたのだが……って感じ」
杏子「まあぶっちゃけ本編10話と番外編から、色々想像してもらってた方が楽しい気がするんだけどさ」
杏子「これに需要はあるのかな? あとほむらと旦那のピーなシーンのとかも」
杏子「結果(芳文)が存在してる時点で、結果が出る過程(芳文作り)があったわけで……。放浪編のまどか達が果たしてそういう事をしてたのか、描かれてないようにその辺ぼかしてもいいらしいけど」
杏子「熱烈なほむらファンとか、レズ百合大好きな奴が見たら発狂するんじゃないだろうか。そういう読者はここにはいなさそうだけど」
杏子「それにしても暑い……」グデーン
593 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/21(木) 21:20:10.34 ID:gqO4D59S0
す ご く 見 た い !
594 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2011/07/21(木) 21:26:54.54 ID:+gVQy20io
需要はすごくあると思うよ
595 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/21(木) 21:54:51.64 ID:iBhltWO7o
是非ともお願いします
596 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)
[sage]:2011/07/22(金) 02:02:48.90 ID:QDMCh0nQo
放浪編のまど芳のチョメチョメも含めてすごく…見たいです…
597 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/07/23(土) 02:55:48.76 ID:hsVRxiTEo
書くと思ったのなら!その時すでに行動は終わってるんだ!
598 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/23(土) 22:18:49.52 ID:Hqr8WEpIo
杏子「円華の日々」
599 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/23(土) 22:20:08.35 ID:Hqr8WEpIo
――主婦の朝は早い。
―AM6:00―
――ピピピピピピッ。
「ん……」
寝ている夫を起こさないように起床。
顔を洗って着替え、夫と息子のお弁当と朝食を作り始める。
―AM6:10―
「おはよう、母さん」
「おはよう。いつも早いわね」
「そっちこそ。まあ俺のはもう習慣になってるし」
「そうね。起こさなくてもいいのは楽でいいわ」
息子が起き出してきて、日課の竹刀素振りをする為に外に出ていくのを見送りつつと、料理の手は休めない。
―AM6:50―
丁度朝食とお弁当が出来上がる頃になると、息子が戻ってくる。
「ああ、腹減った」
「ちょっとダーリン起こしてくるから待ってて」
「いつも思うんだけど、先に食ってちゃ駄目かな」
「駄目。我が家の食事は家族全員揃ってからよ」
「へいへい」
「返事ははい、よ」
「……はい。これでいいんだろ」
「最後のは余計よ」
息子とそんなやり取りをしつつ、夫を起こしに寝室へ。
600 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/23(土) 22:20:38.42 ID:Hqr8WEpIo
―AM7:00―
「起きて。もう朝よ」
いびきをかいてる夫を揺り起こす。
「うーん……。あと5分……」
「はいはい。早く起きて」
そう答えて、容赦なく布団を引っぺがす。
「おおうっ!! 寒い!!」
「もう冬だもの。そりゃ寒いわよ……きゃっ!?」
夫に手を掴まれて、布団の上に引き寄せられて抱きしめられる。
「ああ、暖かいなぁ……」
「ちょっ、こんな朝っぱらから……」
「だって寒いんだ」
「……もうっ」
「……あのさ、俺腹減ってるんだけど。父さんさっさと起きてきてくんないかな」
寝室の入口でジト目で見ている息子に気づき、慌てて夫と共に布団の上から飛び起きる。
「別に発情するのはいいんだけどさ、俺がいない時か寝てる時にしてくれよ」
『……』
息子の放ったその言葉に、夫と共にシャイニングフィンガーとジーグブリーカーで躾をする。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
―AM7:20―
一家三人揃って食卓に着き、朝食を取る。
「やはり味噌汁は赤みそに限るな」
「俺は別に白みそでもいいけど」
「何を言う。群馬人なら赤みそだろ。息子よ、お前はいつ関西人になった」
「みその種類くらいでガタガタ言うなよ。どっちだっていいじゃん」
「はいはい。食事中にケンカしないで」
私の夫は良く食べる。
私と息子はあまりたくさん食べる方じゃないから、私の作った料理の半分は夫の胃袋の中に納まる。
『ごちそうさま』
「はい、お粗末様」
601 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/23(土) 22:21:13.99 ID:Hqr8WEpIo
―AM7:50―
「さてと。そろそろ仕事に行くか」
「俺もそろそろ学校に行く」
「二人とも、お弁当」
「ありがとう円華」
「サンキュ」
「あ、二人とも。出かけるついでにゴミ出ししていってね」
『……了解』
夫と息子にごみ袋とお弁当を持たせて送り出す。
「いってらっしゃい」
『行ってきます』
―AM8:30―
食器を片づけて、洗濯と掃除を開始。
―AM11:40―
昨夜の残り物をメインに自分の昼食を作り、笑っていいともを見ながら昼食。
その後、NHKの昼ドラを観賞。
それからボールを使ったエクササイズをして、スタイルの維持に気を使いつつ、シャワーを浴びる。
入浴後、通販で買った豊胸器具をクローゼットの奥から取り出して使用。
音が大きいので、夫も息子もいない今しか使えない。
だがいまだに効果がない。
高かったのに……。
詐欺だ。
訴えてやろうかしら。
駄目だ。
恥をかくだけだ。
訴えるにしてももう少し、試してからにしよう。
そうしよう。
―PM2:00―
愛車のホンダFit(クリスタルブラック・パール)に乗って、隣街に住む母親を拾いイオン見滝原店へ買い物に行く。
―PM4:30―
買い物を済ませてイオンの中の寿がきやで休憩がてら、母親と一緒にクリームぜんざいを食べからて、母親を陽だまり荘へ送り自宅に帰る。
602 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/23(土) 22:21:47.51 ID:Hqr8WEpIo
―PM5:00―
夕飯の支度を始めていると、息子が彼女を連れて帰宅。
息子の彼女に、自分が使っている物とお揃いの新品のエプロンをプレゼントする。
自分のは黒猫の絵が胸元にワンポイントで入っていて、彼女の物は白猫の絵が胸元にワンポイントで入っている。
「ありがとうございます。大切にします」
「どういたしまして。さあ始めましょうか」
「はいっ」
色々教えてあげながら、二人で夕食を一緒に作る。
この子は中々筋が良い。それに素直だ。実に教え甲斐がある。そんなこんなで料理が完成。
―PM6:30―
夫が仕事から帰ってくる。
息子と息子の彼女と共に四人で夕食。
「いつの間にか、実に自然にまどかが俺の嫁扱いされてるような……」
「どうせいつか、あなたがお嫁にもらうんだから、別に問題ないでしょ?」
「いや、まあそうなんだけど。て言うか、俺がまどかの家に婿養子に行くとか、そういうのは考えないのか?」
「……芳君はパパとママを捨てて、鹿目家にお婿に行くつもりなの?」
「やめろ気色悪い。大体あんたそんな事言うキャラじゃねえだろ」
「……よくわかってるじゃない」
「何年一緒にいると思ってんだよ。母さんの腹の中から出てきて十五年だぞ」
「……言うわね」
「まどかを娘にしたいって魂胆見え見えなんだよ」
「あ、あははは……」
「ええ、そのとうりよ」キリッ
「おいおい。開き直ったよ、このおばさん」
「私はまだ若い」シャイニングフィンガー
「いだだだだだだだだだだだだだだっ!! 割れる割れる!!」ギリギリギリギリギリギリ……
「ふふ。円華さん達、仲がいいですね」
「まどかの家族も仲良いよな」
「うん。パパとママは仲すごく良いよ。もちろんタツヤもね」
「そうだな。たださ、正直に言うと初めて会った時、あんな簡単にまどかとの仲を認めてもらえたのが、今でも不思議なんだ」
「……」
「自分で言うのもなんだが、まどかのお父さんとお母さんはなんであんな簡単に、俺なんかの事認めてくれたんだろう? 所詮母さんの子なのにさ」
「……このガキ」ビキビキッ
「芳文さんの優しさや誠実さが伝わったんだよ、きっと。パパもママも芳文さんに任せておけば、絶対にわたしを幸せにしてくれそうな気がするって言ってたし」
「……買いかぶり過ぎじゃないかな」
「そんな事ないよ。それにママなんて芳文さんの事、わたしのお婿さんに欲しいって言ってるくらいだし」
「それは光栄だな」
「……」ガシッ
「なんだよ、母さん。いきなり人の肩掴んだりして」
「……駄目だから」ボソッ
「は?」
「芳君はまどかちゃんをお嫁にもらって、パパとママと一緒に暮らすの!!」
「おいおい、だからそう言うのはもういいって」
「……あなたは青樹家の長男なのだから。将来は青樹の名を継ぐのよ。その事を忘れないようにね」
「俺は別にそんなのどうでもいいし。余り無茶な事言うなっての。そんな事でもしまどかに逃げられたらどうすんだよ」
「わたしはいつか、鹿目から青樹の姓になるのって嬉しいよ、芳文さん」
「そう? まあこの話はまたその時にって事で」
「……婿養子なんて、絶対許さないから」ボソッ
「……やれやれ。円華の子離れはまだまだ先かな」( ̄ー ̄)
603 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/23(土) 22:23:36.37 ID:Hqr8WEpIo
―PM7:30―
息子に彼女を家まで送らせて、お風呂を沸かす。
夫が入ってる間、昼間イオンで買ってきた女性自身を読む。
息子が帰ってきて、夫に続いて入浴。
最後に自分が入る。
新しい下着を着けて、パジャマに着替えリビングへ。
―PM9:00―
テレビを見ている夫を横目に編み物をする。
もうすぐ夫のセーターが完成。
ちなみに息子のセーターはもう完成している。
これが完成したら夫のマフラーも編もう。
彼女も今頃、自分の部屋で息子のマフラーを編んでいる事だろう。
あの子の様子を想像して笑みを浮かべていたら、息子が奇異の目で見てきたので躾をする。
―PM11:00―
息子が歯磨きをして自室に戻っていく。
「おやすみ、父さん母さん」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
夫もあくびをして、寝室に戻ろうとする。
「俺もそろそろ寝るかな」
「じゃあ、私も」
夫婦揃って寝室へ向かう。
寝る前にブラを外そうと、夫の前でパジャマの前をわざと肌蹴てみせる。
新しい下着のお披露目よ。
「おやすみ、円華」
夫はそう言って、さっさと布団に入って寝ようとする。
「……」
――ボフッ!!
頭に来たので、枕を投げつけてやった。
「いきなり何するんだ!!」
「……せっかく新しい下着買ってきたのに」
「……え?」
「……ダーリンは私の事、もう飽きちゃったの?」
「……馬鹿だな。そんなわけ、あるか」
「……ホント?」
「ああ。おいで」
604 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/23(土) 22:25:29.04 ID:Hqr8WEpIo
―AM7:00―
「ふんふふーん♪」
「母さん、朝から機嫌がいいな。なんかいい事でもあったのか?」
「さあ。どうかしらね」
「なんか、肌もいつもより張りがあるような気が……」
「私はまだ若いもの♪」
「はあ」
そんなやり取りをしながら、朝食とお弁当が完成。
「あ、芳君。パパ起こしてきてくれる?」
「その呼び方やめれ。俺はもう十五だ。ガキじゃない」
「ママとパパにとっては、まだまだ子供よ」
「……本気で何があったのか気になる。なんでそんなハイテンションなんだ」
「んー。芳君にはまだちょっと早いかしら。せめてあと三年は」
「なんだそりゃ。まあいいや。父さん起こしてくる」
「お願いね」
―AM7:20―
一家三人で朝食。
朝の活力はしっかりした朝御飯から。
お味噌汁とご飯と焼き魚と納豆。
息子は男の子にしてはあまりたくさん食べる方じゃないけど、それでも残さず食べてくれる。
もしゃもしゃ……。
夫がゆっくりと味わって食べてる姿を見る。
「父さん、なんで朝からそんな真っ白に燃え尽きてるんだよ……」
「……パーパは元気だよ」
「……さいですか」
朝食を終えて、二人を職場と学校へと送り出す。
「行ってきます」
「……行ってくるよ、円華」
「行ってらっしゃい」
「……さてと、今日も一日張り切っていこうかしら」
主婦の一日が今日も始まる。
おしまい
605 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/23(土) 22:28:18.86 ID:Hqr8WEpIo
杏子「特報? あのほむらがこんな風になる経緯を書くってさ。んでえっちなシーンはいるかい?だって」
杏子「あたしはえっちなのはいけない事だと思うんだが・……」
杏子「じゃーな」ノシ
606 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/23(土) 22:40:50.97 ID:hrwfXWG/o
乙っちほむほむ!
イオン見滝原に寿がきやあるのか…
美味しいよね
あと、エロはあれば嬉しいかも
607 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2011/07/23(土) 22:43:29.03 ID:P3gLAxvro
乙
608 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/23(土) 23:16:29.56 ID:3rZuwnTy0
乙ですたー
円華さんはエナジードレインの達者であらせられたか
エロは真っ最中よりそこに至る過程をじっくり書いてくれたら、それはとっても嬉しいなって
609 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/07/24(日) 01:46:58.95 ID:t4jWgAWZo
乙プルギスの夜
610 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/30(土) 00:29:27.64 ID:JTp3k7fqo
杏子「小ネタ」
杏子「まどかは甘えん坊の巻」
611 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/30(土) 00:30:27.94 ID:JTp3k7fqo
「遂に手に入れたぞ!!HGAW 1/144ガンダムダブルエックス!!」
「長かった……。ようやく出来のいいダブルエックスのプラモが出たんだ……」
「さあ、早速作るぞ!! 当然合わせ目消ししてフル塗装だ!!」
――コンコン。
「芳文さん、いる?」
「んー? 入っていいよ」
「お邪魔します」
「いらっしゃい」
「あ、芳文さんガンダム作ってるの?」
「いや、これから作ろうかと思ってたんだけど」
「……お邪魔だったかな?」
「そんなことないよ」
「作るの見ててもいい?」
「別にいいけど、退屈じゃないか?」
「ううん。そんな事ないよ。ちょっと興味あるし」
「そう? それじゃ作らせてもらうかな」
――パーツチェックして説明書熟読中。
「……」
「……」ジー
パーツを切り出して、パーティングライン消し。合わせ目がほとんどないので、一個ずつ丁寧に。
「……」シャッシャッ……
「……」ジー
「……まどか」
「何?」
「どこかに遊びに行こうか」
「……え? ガンダム作らなくていいの? まだ頭しか紙やすりかけてないのに」
「せっかくまどかが来てくれたのに、まどかを放っておいてまでする事じゃないよ。夜にまたやればいい」
「いいの?」
「いいよ。どこに行きたい?」
「じゃあ、駅前!!」
「オッケー。それじゃ行こうか」
「うんっ!!」
(やれやれ。本当に嬉しそうな顔して。かわいいな、まどかは)
「〜♪」
(あんなにかまってオーラ出されたら、プラモなんて作ってられる訳ないしな。夜にまた続きを作ろう)
――その後、まどかが安売りのHGAW 1/144ガンダムXディバイダーを買ってきて、芳文と一緒に作ろうとするのはまた別のお話。
おしまい
612 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/07/30(土) 00:34:36.52 ID:JTp3k7fqo
杏子「おしまい」
杏子「今回の話の中に出たガンプラは、まだ出ていない商品なので注意」
杏子「こっちの世界では11月に発売されたんだ」
杏子「余談だがこっちの世界には、ガンプラビルダーズに出てきたゲーム機がおもちゃ屋にいくとあるんだ」
杏子「じゃーな」ノシ
613 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/30(土) 00:42:11.17 ID:h0b5yu+m0
乙ですたー
まどかが将来主婦モデラーとなるフラグが立ったような・・・?
614 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/30(土) 01:17:57.95 ID:X4KM4KxYo
乙ー
ガンダムって敷居が高いから敬遠してるけどガンプラは作りたいと未だに思ってたり
615 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/07/30(土) 10:18:23.30 ID:K7P7MNk3o
乙タヴィア・フォン・ゼッケンドルフ
そういや凄腕モデラーの有名声優が居たな
616 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)
[sage]:2011/07/30(土) 19:10:11.50 ID:4eblwX0c0
全部読んできてやっと追いついた
なんかはじめてこういうの読んで泣きそうになった。
>>1
ありがとう。
617 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/01(月) 22:43:30.72 ID:c8h8DFYho
杏子「突発小話」
杏子「ママといっしょ」
618 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/01(月) 22:44:31.09 ID:c8h8DFYho
――11月のある日。
―AM7:00―
「お弁当完成っと。それにしても、あの子がこんな時間まで寝てるなんて珍しいわね」
――コンコン。
「芳文、もう7時よ」
――シーン。
「入るわよ」
――ガチャ。
「芳文……!?」
「はぁ、はぁ……」
「ちょっと!? ひどい熱!!」
「……ふあぁぁぁぁぁ。どうしたんだ円華?」
「芳文が!! 芳文がひどい熱を出してて!! 昨日の晩は何ともなかったのに!!」
「何? 円華落ち着け。とりあえず医者に連れて行こう」
―AM10:00―
「それじゃ、俺は仕事に行ってくるから。芳文の事頼んだぞ」
「ええ。いってらっしゃい」
―AM11:00―
「インフルエンザにかかるなんて……。部活を引退して体がなまっちゃったのかしらね」
「……」
「ひどい寝汗ね……」
「……」
「……大丈夫だからね」
―PM4:30―
「円華さん!! 芳文さんの具合はどうなんですか!?」
「落ち着いて、まどかちゃん。薬と注射が効いてきたのか、熱も今朝より下がってきたから」
「よかった……」
「あ……氷嚢をそろそろ変えてあげないと」
「あの……わたしも一緒に様子を見に行ってもいいですか?」
「うつるといけないから、やめておいたほうがいいわ」
「でも……」
「……ちょっとだけよ」
「はい!!」
619 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/01(月) 22:45:21.16 ID:c8h8DFYho
―PM4:40―
「……ん」
「目が覚めたの?」
「……母さん」
「なあに?」
「……なんか、変な夢見た」
「どんな夢?」
「小さい頃の俺が、ひとりぼっちでずっと、母さんの帰りを待ってるんだ」
「……」
「周りの子供達がさ。母親と手を繋いで帰っていくのを小さい俺が、羨ましそうに見てるんだよ……」
「……」
「明るかった空が赤く染まって、真っ暗になっても、母さんは迎えに来てくれないんだ……」
「……」
「それでさ、気がついたらここじゃない、知らない小さな部屋で、俺が一人暮らししてるんだ」
「……」
「目を覚ましても、母さんも父さんもいなくてさ。学校から帰ってきても誰もいないんだ」
「……」
「一人で寝起きして、一人で出来合いの物を買ってきて、それを食べて寝るだけ」
「……」
「病気になって熱を出して寝込んでても、誰も来てくれないし、助けてもくれないんだ……」
「……」
「朦朧とする意識の中で、思うんだよ。ああ、このまま死んだら楽になるのかなって」
「……」
「……なんで、こんな夢を見たんだろう。俺、こんな経験した事ない筈なのに」
「……悪い夢ね」
「……うん」
「大丈夫だから。芳文の側にちゃんといるから。だから安心して」
「……うん」
「……熱もまた少し下がったみたいだし、もう少し寝てなさい。後でおかゆ作ってくるから」
「……う……ん」
「……眠ったようね」
「……母……さん」
「……大丈夫だからね。ずっと一緒だから。もう絶対に放さないから」
「……芳文さん……円華さん」
620 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/01(月) 22:47:06.35 ID:c8h8DFYho
―PM5:30―
「……芳文さん、前の世界の事覚えてるんでしょうか?」
「……まどかちゃんへの想いだけは忘れなかったみたいに、あの子にとって忘れられない他の記憶も、おぼろげに残ってるのかもしれないわね」
「……」
「……私、あの子に本当に辛い思いをさせてたのね」
「……あの」
「そんな顔しないで。あなたは何も悪くないのだから」
「……はい」
「大丈夫。もう、あの子を一人にしたりしないから」
「円華さん……」
「ほら、笑って。そんな顔してたらかわいい顔が台無しよ。せっかくみんなが幸せになれる世界になったんだから。笑顔で生きていかなきゃもったいないでしょ?」
「……はい!!」
「ふふ。やっぱりあなたは笑ってる顔が一番かわいいわ」
「そんな……からかわないでください」
「ふふっ。さあ、芳文のおかゆを作らないと」
「あ、わたしもお手伝いします!!」
「そう? それじゃついでだからおかゆの作り方も教えてあげるわ」
「はいっ。お願いします」
―翌朝―
「おはよう、母さん」
「おはよう。もう起きてきて大丈夫なの?」
「うん。まだちょっと、だるいけど」
「そう。今日も学校をお休みして寝てなさいね」
「うん」
「朝御飯食べられそう?」
「軽くなら」
「そう。それじゃ用意するから座って待ってて」
「母さん、あのさ……」
「何?」
「なんて言うかさ。家族っていいなって……思ってさ」
「……」
「病気の時とか、一人じゃないって……いいよな」
「……何言ってるの。当たり前じゃない」
「……そうだね」
「さあ、病人はおとなしく座ってなさい」
「……うん」
「……芳文」
「何?」
「……ママはずっと、芳文と一緒だからね」
おしまい
621 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/01(月) 22:53:17.27 ID:c8h8DFYho
杏子「おしまい」
―まど界―
まど神「芳文君はお母さんの事なんだかんだ言って、大好きなんだね」
さやか「あっちのほむらもなんだかんだで、自分の子供は可愛いんだね」
マミさん「親子っていいわね」
杏子「そうだな」
ほむら「……」
まど神「どうしたの? ほむらちゃん」
ほむら「いえ。私に母性なんて物があった事に驚いてるだけよ」
まど神「ふーん」
ほむら「何か言いたそうね、まどか」
まど神「べっつにー」
ほむら「・……」
ほむら(……幸せになりなさい。向こうの私と芳文)
622 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/08/01(月) 23:04:05.43 ID:xz9fycGIo
乙でした〜
やっぱりほむほむはこうでなくちゃ…
うん、かわいい
623 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/01(月) 23:55:05.24 ID:bvJgJo+20
乙ですたー
やっぱり芳文、おぼろげには覚えてるんだな・・・
そう言えば、かずみもちょっと特別な子みたいだからコッチのかずみも何か覚えてるかもしれないと思ったり
624 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/08/02(火) 09:21:19.19 ID:XNwLBQ3Xo
クリームヒルト・グレート乙
625 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/05(金) 12:44:37.35 ID:gNoNLgvSo
―まど界―
さやか「あたし思うんだけどさ」
杏子 「何だよ、いきなり」
さやか「あっちのほむらってさ、性格結構変わってない? 芳文君への態度とか。自分の事ママとか言うし」
まど神「それは当然だよ。いきなり改変世界が2011年から始まったわけじゃないもん」
さやか「まどか、どういう事?」
まど神「つまり、あっちのほむらちゃんが青樹家の長女として生まれてくる所から、世界が改変されてるって事」
マミさん「なるほど。つまりあっちの暁美さんは赤ちゃんに生まれ変わって、そこから今まで生きてきたのね」
まど神「マミさん正解です。あっちのほむらちゃんは本来の気弱で、泣き虫で、へたれで、ドシっ娘な性格のかわいい女の子として、優しい両親の愛情に包まれながら少女時代を過ごして、旦那様と出会って恋をして、結婚して赤ちゃんを産んで、主婦をしてきたの」
ほむら「……まどか。もしかして私の事嫌い?」
まど神「全然そんな事ないよ」
ほむら「……」
まど神「ほんとだってば。なんて言うかさ、萌えあがれーって感じでかわいいよ。本来のほむらちゃんは」
ほむら「///」
さやか「それが今じゃこんなんだもんねー」
ほむら「美樹さやか。一度決着を付けましょうか」
杏子 「おいおい、ただ手さえ暑いんだからくだらねー事でケンカすんなよ」
マミさん「佐倉さんの言う通りよ。みんな仲良く、ね」
さやか「はーい」
ほむら「……」
まど神「あっちのほむらちゃんは、生まれ変わって全然違う新しい人生を歩んできたんだから、性格だって少しは変わるよ」
杏子 「環境の違いって奴だね」
まど神「うん。あっちのほむらちゃんは青樹円華になってからの幼馴染とか友達とかも普通にいるしね。それに暁美ほむらだった時の記憶だって、見滝原に引っ越してくる前までは漠然としか覚えてなかったもん」
ほむら「……どういう事なの?」
まど神「あっちのほむらちゃんの友達だったわたしの事とか、おぼろげに覚えてて物心ついた頃から夢に見たりしてたんだよ。あっちのわたしと芳文君が再会した日の前日に、友達だったわたしが目の前に現れた事で、すべての記憶を取り戻したんだよ」
マミさん「そんな事があったのね」
まど神「ちなみにあっちのわたしは世界改変の張本人だから、前の世界での始まりの日を迎えたその時、すべての記憶を取り戻したんだよ。それまでは何も覚えてない普通の女の子として生きてきたんだ」
さやか「けっこうややこしいね」
まど神「うん。わたしが魔女システムを壊した改変世界と違って、いきなり2011年から始まったわけじゃないからね。まあその辺は近い内に魔法少女ほむら☆マギカで詳しく描かれる予定だよ」
杏子 「さりげなく宣伝するなよ……」
まど神「ウェヒヒヒヒ」
マミさん「さあ、そろそろお昼にしましょうか。こんな長い話を読んで感想をくれたみんな、ありがとう」
杏子 「作者のやる気がある限り、まだまだ続くからこれからもよろしくな」
さやか「しょうもないネタばっか出来るって言ってたしね。たとえばこんなのとか」
まどか「また胸が大きくなった……」
さやか「とか」
まど神「」
杏子 「こんな下品なのもあるぞ」
まどか「どうしよう……。生理が来ないよ……」
杏子 「とか」
まど神「」
さやか「こんなのもあるらしいよ」
芳文「安価でせまどかとエッチする!!」
博 「安価で嫁と子作りする」
さやか「とか」
まど神「」
ほむら「」
杏子 「呆れてものも言えないな。あとクリームヒルト×ファウストとか」
さやか「それ需要有るの?」
杏子 「さあ? 一応まどか×芳文だぞ」
まど神「」
ほむら「……もういいわ。今回はこれでおしまいにしましょう。それじゃ、また」
626 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/05(金) 18:11:14.88 ID:5IfuQ6ZD0
乙ですたー
クリヒル×ファウストってそれ芳文受けやん!クリヒルのデザイン的に!!
あー、でもまどかと芳文の始めての喧嘩とかは見てみたいかも
喧嘩しそうにないカップルの喧嘩であたふた振り回される周囲の人たちとか面白そう
627 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/06(土) 02:36:32.99 ID:KTpqzMXTo
乙ロッテ
628 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/06(土) 22:18:17.68 ID:Jyo+idZvo
杏子「愛という名の特急列車編」
629 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/06(土) 22:19:03.32 ID:Jyo+idZvo
『ねえ……』
『ん?』
『わたし達、随分長い事一緒にいるよね……』
『……ああ、そうだな』
『あのね……』
『何?』
『その……いいよ』
『……え?』
『ずっと我慢してくれてたんだよね。でも、もういいの』
『……本当にいいのか?』
『うん……。あなたに愛してほしいな……』
『……出来るだけ優しくするから』
『うん。優しくしてね……』
彼女の体をそっと横たえる。
――ズズーンっ!!
『綺麗だよ』
『恥ずかしい……よ』
『恥ずかしがる顔もかわいいよ』
『///』
『愛してる』
『……わたしも』
大きな掌が、彼女の頬を撫で胸元へと這っていく。
『あっ……』
そして、彼と彼女は愛の特急列車へと乗り込み、男と女の愛の終着駅へと一直線に突き進んでいく。
630 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/06(土) 22:20:38.93 ID:Jyo+idZvo
クリーム「グオォォォォォォォォォォォンッ!!」
ファウスト「ガオォォォォォォォォォォォンッ!!」
「やめてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「僕等の母星で交尾しないでえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
無数のインキュベーター達が悲鳴を上げながら、衝撃波で吹き飛ばされミンチになる。
最愛のパートナーとの初めての行為に没頭している彼らは、微生物サイズのインキュベーター達など気にも留めない。
余りにも巨大な体を持つ、破壊の魔神ファウストは、ほんのわずかな動作ひとつでも簡単に音速を超える。
そんな化け物が動きまくれば、当然凄まじい振動と衝撃波が巻き起こる。
インキュベーター達の建築物も、自然も、何もかもが激しい衝撃波と振動によって滅茶苦茶に粉砕されていく。
「悪夢だ……」
一匹のインキュベーターが呆然となりながら、目の前で繰り広げられる地獄絵図を見て呟く。
かつて、別の宇宙で絶望エネルギーを採取した残りカスのはずの、魔女クリームヒルト・グレートヒェンと魔神フゥスト。
彼らは自分達の地球を破壊した後、気の遠くなるような時を次元の狭間で過ごしてきた。
そして、たまたま別の宇宙にあるはずの、インキュベーターの母星に漂着した。
お互いに抱き合ったまま、次元の狭間を漂いながら眠っていた彼らは目を覚ましてすぐ、性行為を始めたのだった……。
631 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/06(土) 22:21:49.80 ID:Jyo+idZvo
ファゥストが腰を振る度に、インキュベーターの同胞達が衝撃波でミンチになっていき、文明が崩壊していく。
大地が割れる。
天空が裂ける。
『はあ、はあっ……。もう限界だ……』
『いいよ……っ。わたしの膣内にきてっ……!!』
ファゥストの動きが更に早くなる。
クームヒルトの大量の根がファウストの腰に絡みつく。
『あ゛ああぁぁーっ!!』
『イクぞ……。うっ……!!』
『お願い、一緒に……』
『ああ……!!』
『『ティロ・フィナーレ!!』』
魔神と魔女の咆哮と共に繰り出された、魔神の最後の一突きが、インキュベーターの母星の大地を粉砕し、次元を引き裂いた。
「訳が分からないよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
――こうして、インキュベーターは絶滅した。
『……最高だったよ』
『……嬉しい』
次元の狭間で、砕け散ったインキュベーター星の破片にまみれながら、彼らは抱き合う。
『あ……また、元気になってる……』
『う……す、すまん』
『ううん。いいの……』
クリームヒルトの根が、ファウストの屹立に絡みつく。
『……うっ』
『何度でも、しよ?』
『う、うおおーっ』
『きゃっ♪』
彼らはまた、愛の特急列車へと乗り込むのだった……。
632 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/06(土) 22:22:26.11 ID:Jyo+idZvo
「――っ!!」
――がばっ。
「……なんて恐ろしい予知夢なの!!」
「織莉子、大丈夫かい!?」
「え、ええ。大丈夫よ、キリカ」
「本当だね? 君にもしもの事があったら、私は生きていけないよ」
「ありがとう。本当に大丈夫だから」
(鹿目まどか……社芳文……っ!!)
「キリカ。私と一緒に人類の未来の為、戦ってくれるかしら?」
「水臭いじゃないか織莉子。そんなの当然さ!!」
「ありがとう。ではすぐに出発しましょう」
友情を確かめ合って出ていく魔法少女達の背中を見送りながら、インキュベーターは呟いた。
「訳が分からないよ」
おしまい
633 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/06(土) 22:24:59.96 ID:Jyo+idZvo
―まど界―
マミさん「」
さやか「」
ほむら「」
杏子 「暑さで、作者の頭がイカれたようだな……」
まど神「こんなの、ぜったいおかしいよ!!」
おしまい
634 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/07(日) 11:02:41.69 ID:rC+d+eV80
乙ですたー・・・
バカップルもここまで行くと宇宙規模の大迷惑なんやな・・・まあ2人が幸せなら・・・
635 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/08/07(日) 11:17:08.72 ID:BKC0467Uo
全ての乙を、この手で!
モルダー、貴方疲れてるのよ
636 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/08/08(月) 12:43:38.97 ID:DP4dsp9AO
クリーム『ファウストさんと繋がったまま、大陸を練り歩くなんて…』
クリーム『頭の中が沸騰しそうだよぉっ…!!』
クリームちゃんと駅弁ファックしながら、衝撃波と地震を発生させつつ大陸横断するファウストなんていう電波を受信した
あとクリームちゃん の根っこでしごかれる根っコキ…
腰を振るファウストの菊にねじ込まれるクリームちゃんの根っこ
637 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)
[sage]:2011/08/08(月) 12:54:42.07 ID:HUiokKFDo
わけがわからないよ
638 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/08/08(月) 14:47:46.84 ID:VXBU1gOAo
変態性癖すぎる……
639 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/09(火) 00:28:52.40 ID:MAutPA65o
杏子「雑談っつーか、あたしの独り言」
杏子「なんとなく思ったんだけどさ、このSSのメンバーでインフィニットストラトスのEDごっこが出来るな」
杏子「ISみたいに野郎キャラがいるしさ。あっちと違って、みんなに愛情レベルで好かれてる訳じゃないけど。まあ最後はまどかと芳文の二人だけになっちまうんだけどさ」
杏子「そういや以前誰かが、平行世界女神まどか救済ルートなんて言ってたっけ」
杏子「作者がない頭を捻って考えてみたが、明るい魔まマ版 まどか「もう大丈夫だよっ」まどか「あなたは……!」 にしかならないらしい」
杏子「魔人 社芳文と真・魔法少女 鹿目まどかが、仮面ライダーディケイドみたいに自分達を受け入れてくれる世界を求めて、元の世界を飛び出して、各平行世界を放浪……」
杏子「そして原作アニメorハノカゲ版の最終回のまどか契約直前に現れて……。だがこれやると単なるQBイジメとワルプルフルボッコにしかならねーと言う……」
杏子「周囲の被害を無視すれば、レベル99社芳文だけでワルプル倒せるしな。ワルプルに取りついて、まるでガン細胞やピラニア、エヴァ量産機のごとく、滅茶苦茶にワルプルの外皮を引き裂いて、中身を引きずり出して惨殺するという戦い方になるが」
杏子「あのお菓子の魔女だって、まどかからの魔力供給を受けてる社の鉄拳を喰らったら、一撃で中身の第2形態ごと爆散してしまうしな」
杏子「産んだ覚えもない別世界の息子に母さん呼ばわりされて面喰うほむらに、彼氏持ちの別世界の自分に戸惑うまどか。そして感情があるきれいなQB(耳飾り)とか。うん、このSS本編以上の原作への冒涜だな」
杏子「魔法少女を人間に戻せる上、こちらのまどかは無限MPだし。強引にハッピーエンドに持っていけるしな。これはやらないほうがいいな、絶対」
杏子「本編26話とアフターはテレビアニメをイメージしてるらしい。地の文がない番外編とかはドラマCDのノリ。ほむら☆マギカは映画をイメージするので、完成したら一から最後まで一気に投下するよ」
杏子「どうでもいいけどこのSSのエンディングテーマはこの曲
http://www.youtube.com/watch?v=9s4MfV_QKDg
をイメージしてるんだと。最後にハッピーエンドを迎えたまどかと芳文はこの曲を聴いてて書いたんだとさ」
杏子「脳内OPは1話から13話までコネクトの一番、14話からコネクトの二番らしい。痛すぎる……。一応あの詐欺OPの内容とEDを本編で再現出来て満足してるらしい」
杏子「今、ふと思ったんだが、実はこのSSってかなり歪んだまどほむって言うか、ほむまどって言うか……」
杏子「作者的に芳文は準主役なんだが、皆には主役に思われてるんだよな……。主役じゃないから、芳文視点が一度も出てないんだけどな……」
杏子「そういや、存在的にはまどかの方が芳文よりも年上なんだよな。芳文はほむらが過去に飛ばされて過去で出産した事で初めて現れた人間なんだから。……こういう場合でも姉さん女房と言うべきか?」
杏子「いや、でもこの世界のまどかにとっては、友達のほむらが産んだ子供じゃなくて、よその世界から来たほむらが産んだ年上の彼氏だしな……」
杏子「まあいいや。夏休み中にほむら☆マギカを片づけたいそうだ。じゃーな」
640 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/09(火) 02:07:13.20 ID:haBiv5TL0
乙ですたー
>こういう場合でも姉さん女房と言うべきか?
それはそれで良いんでないかな
まどかが甘えられるのは芳文だけど、芳文にとっても自分を全部預けて甘えられるのはまどかだろうし
今のところ芳文がまどかに甘える描写って無いと思うけど、そういう場面があったらまどかは芳文を
可愛らしいと感じるんじゃないかな
てか、この「お互いに」って部分は男女関係には重要だと思うしさ
641 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/08/09(火) 09:11:06.77 ID:r/L7vrTlo
?「通りすがりの女神の騎士だ。覚えておけ」
こうか?www
642 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/08/09(火) 12:27:11.19 ID:NPwE38EAO
何それ
かっこよすぎる…
643 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/12(金) 09:24:21.36 ID:i6Tnn7Y3o
杏子「小ネタ」
644 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/12(金) 09:25:17.32 ID:i6Tnn7Y3o
「こんにちは」
「おう、芳文君。いらっしゃい」
「お母さん、今日はお休みですか?」
「ああ。ちょっと有給が溜まっててね」
「そうなんですか」
「ん? 芳文君その顔どうしたんだ?」
「……昨晩、両親から虐待されまして」
「……何だって? ちょっと詳しく話してごらん。あたしが力になれるかもしれない」
―昨日の夕食時―
「やっぱり、女の子がいると華やかでいいなあ、円華」
「そうね」
「息子で悪かったな」
「あ、あははは……」
「円華、本気でもう一人子供作ろうか」
「もう、ダーリンたら。酔ってるでしょ。子供達の前でそういう事言わないで」
「ははは、すまんすまん」
「父さん、いいかげん子供扱いしないでくれよ」
「何を言う。人に聞かれたら、俺は胸を張って言えるぞ。芳文と円華は俺の大切な宝物だって。円華は俺が世界で一番愛してる妻で、芳文はいくつになっても俺のかわいい子供だって、な」
「……」
「うふふ。芳文さん、照れてる」
「……からかわないでくれよ、まどか」
「芳文さん、かわいい」
「……ふん」
「ごめんね、芳文さん。拗ねないで」
「……別に拗ねちゃいないさ」
「あらあら」
「はははははっ」
―その日の夜9時30分―
「父さん、母さん、おやすみ」
「なんだ、随分早く寝るんだな」
「まだ9時半なのに、珍しいわね」
「……まあ、たまには、さ」
「……たまには?」首傾げ(シャフ度)
「父さん、母さん、good night!!」親指を人差し指と中指の間に挟んで、ビシッと両親に突き付け
「……」
「……この馬鹿息子があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
645 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/12(金) 09:26:01.89 ID:i6Tnn7Y3o
―回想終わり―
「娘が欲しいって言うから、俺なりに気を使ったつもりなんですけど……」
「……」
「いったい、何が悪かったんでしょうか? お母さん」
「……あたしに言える事はただひとつだ。もし、まどかがあんたと同じ事をしたら、間近いなく引っ叩くだろう」
「そんな、乱暴な……」
「あんた、自分がそれやられる親の立場になってごらんよ。それで赤ちゃん出来たとして、あの時作った弟妹なのかって子供に思われるのってどうなのさ」
「あ」
「……」
「なんてこった……。その発想はなかった……」
「……」
「流石です、お母さん」
「……」
(……この子、実は本気で馬鹿なんじゃないだろうか)
「あ、芳文さんいらっしゃい」
「まどか、来たよ」
「早くわたしの部屋行こ。円華さんに習ったカップケーキ作ってあるんだ♪」
「そっか、それは楽しみだ。でもさ、今日はまどかに勉強を教えに来たんだぞ」
「わかってるもーん」
「……本当かなあ?」
「もう、芳文さんのいじわる」
「ははは……」
(でも勉強は出来るんだよな。……まあ、まどかがべた惚れしてるし、それにこの子に任せておけば、絶対にまどかを幸せにしてくれそうな気がするから、いいか)
「芳文君」
「はい?」
「……まどかの事、よろしく頼むよ」
「はい!!」
おしまい
646 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/12(金) 09:32:46.00 ID:i6Tnn7Y3o
―まど界―
さやか「あっちのまどか、芳文君の顔見てもその事スルーなんだね」
マミさん「もう芳文君が両親に躾されるのになれちゃたのね」
まど神「慣れって怖いね……」
ほむら「ところで、なぜ巴マミだけ、セリフの前にさん付で名前が書かれてるのかしら?」
あんこ「作者曰く、敬意とおちょくりを込めてマミさんと呼ぶのが正しいからだってさ」
マミさん「……」
まど神「いつの間にか、杏子ちゃんの名前も変化してるよ……」
あんこ「ああっ? いつの間に!?」
―こっちの世界―
杏子「今日も暑いけどみんな元気に過ごそうなー」ノシ
647 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/12(金) 11:08:54.64 ID:O9ZKf5pfo
乙アラビアータ!
まどかゲーム化か……
648 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/12(金) 21:27:56.52 ID:h3HCS5HE0
乙ですたー
最近まど神様のコスチュームが実は魔法少女にならずにまどかが成長したときのウェディングドレスだったんじゃないかと思えてきてならない件について
なんとなく物悲しい想像だったけど、まど神様の隣にタキシード着た芳文を立たせたら御目出度い想像に早変わり
うん、ありがとう芳文
649 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/08/13(土) 11:28:44.09 ID:yQ/zkKSdo
まど神「今日も暑いね。みんな元気?」
まど神「今日はね、みんなにちょっと聞きたい事があるんだ」
まど神「あっちのほむらちゃんがね、芳文君以外にも子供欲しがってるみたいなんだけど、どう思う?」
まど神「15才以上年の離れた兄弟はありかな?」
まど神「もし出来たとしたら、やっぱり女の子かな? それとも男の子?」
まど神「みんなはどう思う?」
650 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2011/08/13(土) 14:35:27.12 ID:Hwju3pOFo
女の子かな
651 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/08/13(土) 14:44:02.86 ID:3uXj679xo
お好きなよーに
652 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage]:2011/08/13(土) 19:24:29.03 ID:yQ/zkKSdo
―芳文18才のある日の朝―
芳文「なんか天啓(>648)が降りてきた気がする……」
芳文「夢の中に出てきた、金色の目のまどかに似た女神の格好、まどかにさせたら似合いそうだよな……」
芳文「よし、こんどまどかに夢の中の女神コスをしてもらおう。うめてんてー繋がりでねこねこソフトのおまけえちぃみたいなノリで!!」
次回、安価でまどか(女神コス)とエッチする(予定)
まど神「」
653 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/08/14(日) 15:46:10.21 ID:9EABoiGwo
ほう、期待
654 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/14(日) 22:24:20.39 ID:DuHwErR/0
>>649
やっぱり妹かなー
幼い妹にまどかを取られて(遊び相手的な意味で)拗ねる芳文とか
そんな芳文を見て「しょーがないなー♪」と膝枕してあげるまどかとか
膝枕じゃ満足できなくて「抱き枕の刑に処す!」っとまどかを押し倒して抱きしめる(だけの)芳文とか
そんな様子を見て「そんなの絶対(年齢的な意味で)早すぎるよ!!」と取り乱すまど神様とか
色々妄想が膨らむますな
655 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/08/14(日) 22:28:58.37 ID:GZ3u33Tbo
いっそ双子とか。
弟と妹、妹×2、弟×2とかできますし。
・・・・・・・・・ただ、その子供たちが成人するころの御両親の年齢が・・・・・・・。
656 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2011/08/15(月) 12:59:00.96 ID:+SRaSZVk0
老いてますます盛んとか
657 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/08/15(月) 14:22:26.87 ID:RdWXFYPAO
円華おばさんはまだ34歳だぜ
まだ若い
旦那が7つ年上だっけ
そういや早乙女先生も同じ年齢らしいな
先生の友達だからまどかのママも同じ年齢なのかな
円華おばさんが子供の頃に先生達と面識があったら面白そう
658 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/16(火) 00:35:14.28 ID:otcGcMOK0
>>656
>>657
なんて命知らずな・・・・・・
659 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/17(水) 21:34:03.55 ID:k2dC3/1zo
杏子「全26話+オマケシナリオの誤字脱字修正完全版UPしたよ」
杏子「DL版だけのオマケシナリオ入り」
http://loda.jp/madoka_magica/?id=2086
杏子「何日かしたら、携帯オンリーの読者の為にオマケシナリオをこちらに投下するよ」
杏子「誰もしないと思うけど、転載とか自由にしていいよ」
杏子「まあこんな長い物を保管する物好きはいないだろうけどね」
660 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/17(水) 21:44:37.99 ID:k2dC3/1zo
杏子「そういや芳文が明日あたり安価でなんかするってさ」
杏子「あっ!? 何してるんだよ!!」
円華「愚か者を粛正するのよ」
杏子「どこのコマンドーだよ!! 改造エアガンそんなに持って!!」
円華「死になさい。>656-657」
杏子「まずい!! 逃げろ!!」
円華「邪魔をしないで」
杏子「落ち着けよおばさん!!」
円華「私はまだ若い」シャイニングフィンガー
杏子「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!! 割れるっ!! 割れるっ!!」メリメリメリメリ……
円華「ちっ。どこに行ったのかしら>656-657は」
杏子「……」つ ジャーナ…… ←地面に書いたダイニングメッセージ
661 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/17(水) 22:52:29.55 ID:G0k6AKmH0
乙ですたー
早速落とさせてもらったのでこれからオマケシナリオ読ませてもらいます
662 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/08/17(水) 23:33:23.31 ID:k2dC3/1zo
杏子「DL版のオマケシナリオ内にて、まどかのセリフの最後に 」 が入ってないのを発見した」
杏子「もしも保管や保存する気のある場合は 以下のセリフノあとに」を入れてくれ
DL版
「知らないもん
そう言ってぷいっと顔を背ける。
修正下記のとうりに
「知らないもん」
そう言ってぷいっと顔を背ける。
杏子「ファイルの修正は出来ないらしい。手間をかけてごめん」
663 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/08/17(水) 23:33:58.70 ID:k2dC3/1zo
杏子「DL版のオマケシナリオ内にて、まどかのセリフの最後に 」 が入ってないのを発見した」
杏子「もしも保管や保存する気のある場合は 以下のセリフのあとに 」 を入れてくれ
DL版
「知らないもん
そう言ってぷいっと顔を背ける。
修正は下記のとうり
「知らないもん」
そう言ってぷいっと顔を背ける。
杏子「ファイルの修正は出来ないらしい。手間をかけてごめん」
664 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
:2011/08/17(水) 23:48:46.78 ID:k2dC3/1zo
杏子「DL版の修正内容のまとめ」
「誤字脱字の修正」
「まどかの一人称をわたしで統一」
「2話のサブタイトルをまどかの一人称統一に合わせて変更」
「日本語のおかしい所を修正。14話以降が特に顕著だ」
「読みやすいように全テキストを適度に改行」
「マギカ・シグヴァンの描写変更」
「小ネタにサブタイトル追加」
「DL版独自のこのスレ内での設定集まとめ」
「DL版限定オマケシナリオ 「必殺技を作ろう!!」追加」
杏子「携帯オンリーだと多分落とせないし見られないと思うので、何日かしたら「必殺技を作ろう!!」はこちらにも投下するよ」
「あと、物語の内容自体は変わってないからね」
「かなりの文章量なんで、もしかしたら見落としやおかしなところがまだあるかもしれない。もし気付いたら教えて欲しい」
「じゃあなー」ノシ
665 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/18(木) 10:50:14.90 ID:q1nQrO/uo
こう言うのも何だが、少し休んで次作品のプロット書くのも手だぞ
だらだらと引き延ばすよりキッチリ終わらせて次回作の為にネタを貯めておくのは悪手じゃない
666 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/18(木) 19:04:05.36 ID:h9klCw7do
杏子「実はもうすぐ終わりだったりするんだ」
杏子「裏話であるほむら☆マギカでとりあえず明るい魔まマは完結。芳文の弟妹アンケはほむら☆マギカのラストに反映予定」
杏子「ガンダムネタとファウスト×クリームネタ以外は、最初から本編終了後に予定されてたオマケシナリオなんだ」
杏子「次作品なんて言える物は今の所ないな。あえてやるなら平和になった世界でのゆるいまどか達の日常くらいしかないってさ」
杏子「ゆるい日常とか書く方が楽なんだってさ。シリアスは疲れるからだって」
杏子「このスレ内でほむら☆マギカが全部投稿できればそれでおしまい。容量が足りなきゃ、ほむら☆マギカだけ別スレでやっておしまい」
667 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/18(木) 20:42:09.83 ID:5i5kmRfSO
そんなこと言わずゆるい日常書いてくれ〜。
668 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/18(木) 22:27:38.18 ID:0xN3x7dJ0
ゆるい日常は確かに見たいな
でもそれで
>>1
をこのシリーズだけに縛り付けるのも何と言うか・・・心苦しいと言うか
それにしても読み直すと、芳文のまどかに関する記憶がほとんど消えている他にも
世界が改変されたからと言って全ての不幸が消えたわけじゃない事が
まどかが悪漢達に襲われる事でキチンと示されていたりと、よくまあここまで作りこみが
出来るもんだと感心することしきり
そしてピンチのまどかを救うために現れる芳文に、何度読んでも「キター!」と思ってしまう
何と言うか、ほら、アレだ
まどかにこんな素敵な彼氏を作ってあげてくれて、ありがとう
>>1
669 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/19(金) 22:39:27.57 ID:qRnEoQdv0
乙でした
やっと追いついた
気になるのは芳文は前世の記憶や魂はどうなっているのか?
@ときどき社芳文としての記憶がフラッシュバックのように青樹芳文の脳裏に浮かぶ状態がだらだら続く。
A魔人社芳文の魂は超強力!じわじわと社に精神を乗っ取られる青樹芳文。
B二重人格状態となり社と青樹の人格が交互に
C別人格状態の自分と恋人が浮気しているのではないかと悩む青樹、泥沼の三角状態に…
670 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/20(土) 00:42:27.00 ID:Ilo1w2uJo
杏子「ゆるい日常の方は需要があるなら、いくらでも書けるってさ。それこそ需要さえあるんなら、ひだまり☆まどっちと言うスレ立ててもいいくらい」
杏子「日常ネタほど楽な物はないんだと。それこそデート、痴話げんか、クリスマス、バレンタイン、正月、卒業、入学、ピクニック等々いっくらでもネタはあるしな」
杏子「原作版ひだまりスケッチとかみたいな女キャラしかいない物と違って、主役に彼氏がいるから恋愛がらみのネタが使えるしな」
杏子「ネタが尽きたり書くのに飽きたら、結婚、腹ボテ、出産のどれかで最終回にすればいいしな」
杏子「>669 作者からの答えは以下のとうりだよ」
杏子「魔人社芳文は一度、世界から拒絶された時に消滅した」
杏子「肉体が消滅し、魂がバラバラに分解されて徐々に消滅していく寸前に、この世界のまどかとほむらの友達だったまどかと、暁美ほむらの願いで世界が改変されて、暁美ほむらは青樹円華に転生した」
杏子「暁美ほむらがもう一度、我が子をその手で抱く事を望んで転生した事で、青樹円華の息子として魂さえも消滅しかけていた社芳文も転生したんだ」
杏子「バラバラになった芳文の魂はもう一度魂の形に戻って、転生した母親の体に宿った。いつかまた、生まれてくる時期が来るまでの間、ね」」
杏子「そして転生した母親が大人になって結婚し、妊娠した事で芳文は再び肉体を手に入れて、この世に生まれて来られたんだ」
杏子「社芳文はまどかへの愛を貫いて消滅したが、心の奥底ではまどかを泣かせたくない、本当はずっと一緒にいたい、まどかと添い遂げたいと言う強烈な願望があった」
杏子「だから、まどかへの想いだけは消えなかった。芳文の転生の対価はまどかとの思い出だ。一度消滅しかけた事でまどかとの思い出を失った。だから、社芳文だった時のまどかとの思い出は思い出せない」
杏子「インフルエンザにかかった時に青樹芳文が見た悪夢は、社芳文本人は吹っ切ったつもりでも、ひとりぼっちだった時期の事が強烈なトラウマになっていた」
杏子「だから悪夢と言う形で、ほんの微かに残ってた前世の記憶がフラッシュバックしただけ」
杏子「基本的に芳文本人は前の世界の事を何も覚えていない。極稀に何らかの拍子に前世のトラウマ等を悪夢やデジャヴとして見る事があるだけだ」
杏子「社芳文だった時の事を思い出す事はないし、本人はそれが実際にあった事だと認知出来ない。まどかと円華おばさんもわざわざ教えるつもりもないしね。教えても芳文が混乱するだけだから」
杏子「母親の転生により、芳文のDNAも暁美ほむらから受け継いだ物から、青樹円華から受け継いだ物に変化している。だけど芳文の魂はまったく同じ物だから精神や心がどうこうという事はない」
杏子「そしてほむらは円華に転生した事で、魔法少女の適性を失った。当然その子供である芳文も母親から受け継いだ魔力関連の力も失った」
杏子「今の芳文にはインキュベーターも魔女も見えない。父親譲りの人並み外れた戦闘センスと身体能力があるだけの、母親似の普通の男の子だよ」
杏子「性格や人格は青樹芳文のそれも芳文であって、社芳文の人格や性格も芳文だ。環境のせいでああいう性格になってただけだから、二重人格ではないしなる事もないよ」
杏子「一週目の魔法少女まどかとアニメ本編のまどかと一緒。環境次第で人は変わるのさ」
671 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/20(土) 00:44:33.97 ID:Ilo1w2uJo
魔法少女まどか☆マギカ 〜私の大切な人〜 番外編 「まだまだ子供」
「ただいま。……あら。まどかちゃんが来てるのね」
食料品をイオン見滝原店で買ってきた円華が帰宅すると、見慣れた靴が玄関に置かれていた。
買い物袋を持って、キッチンのほうへと向かい買ってきた物を冷蔵庫にしまう。
「昼間に作っておいたプリンも良く冷えてるし、あの子達に持っていってあげましょう」
手作りの特製プリンを冷蔵庫から取り出すと、紅茶を用意してトレイに載せ、息子の部屋へと向かう。
――ヴィーン、ヴィーン……。
「何の音かしら?」
円華が息子の部屋の前まで来た所、何かのモーター音が聞こえてきた。
「うわあ……。首の所が小刻みに動くんだね」
「なかなかリアルだろ」
――ヴィーン、ヴィーン……。
「まさか……あの子達……」
円華にとっては二人ともまだまだ子供とはいえ、当人達にとっては背伸びのしたいお年頃。
思春期真っ盛りの若い恋人同士がふたりっきりで、恋人の部屋に籠っていればする事はひとつ。
円華は過去の思い出を思わず思い出す。
――円華十八才のある日の事。
『ダーリン、それはなあに?』
『電池で動くおもちゃだよ』
『おもちゃ? それでどうやって遊ぶの?』
『こんな風に遊ぶんだよ』
――ヴィーン、ヴィーン……。
『きゃっ!! ひぃやぁぁぁぁぁぁぁんっ!!』
――その後。
『……そんなの、どこで買ってきたの?』
『通販だよ。顔を見られずに帰るから便利だよな』
――回想終わり。
「……早い!! あの子達にはまだ早すぎるわ!!」
672 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/20(土) 00:45:45.18 ID:Ilo1w2uJo
――バンッ!!
「あなた達にはまだ早いわ!! 今すぐやめなさい!!」
『え?』
――ヴィーン、ヴィーン……。
ドアを勢いよく開けて、中に踏み込んだ円華の目の前では、ブラキオサウルスのロボットのおもちゃが首を前後に振りながら、フローリングの上を四足歩行していた。
床の上に膝をついてこちらを見ている芳文と、芳文のベッドの上に座ってこちらを見ているまどか。
二人は何が何だかわからないと言った顔で円華を見ている。
「……二人で何をしてたの?」
予想と違う光景に、円華は何をしてたのか二人に尋ねる。
「昔、俺が遊んでたおもちゃをまどかの弟にあげようと思って、ばあちゃんに送ってもらったんだ」
床の上には、トランスフォーマーやベイブレード戦隊ロボといった、芳文が遊んでいたおもちゃが詰まったダンボール箱が置かれていた。
「そういえば、そのおもちゃ見覚えがあるような……」
目の前で床の上を歩いているおもちゃは、息子が小さかった頃に自分の母親にねだって買ってもらった、ゾイドという組立玩具シリーズの、ウルトラザウルスと言う名前のおもちゃである事を円華は思い出した。
「うん。当時の俺じゃ作れなくて、母さんが組み立ててくれた奴だよ」
「あ、ああ……そういえば、私が組み立てさせられたわね……」
予想外の光景にホッとしつつ、息子に間の抜けた返答をしてしまう円華。
「それで、母さん。何がまだ早いんだ?」
息子の疑問に円華は冷や汗をかきながら、ごまかす。
「な、なんでもないのよ。ママの勘違いだから」
「は?」
首を傾げながら、芳文がまどかの方を見ると、まどかも不思議そうな顔できょとんとしていた。
「あ、ああ、そうそう。昼間の内に作ったママの特製プリンを持ってきたのよ。まどかちゃんと一緒に食べなさい」
「わあ……。おいしそう。ありがとうございます」
まどかがトレイの上のプリンを見て、目をキラキラさせながら、お礼を言う。
673 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/20(土) 00:48:42.91 ID:Ilo1w2uJo
「丁度小腹が空いてたから、まどかと二人でいただくよ」
「ええ、またあとで食器を取りに来るから」
部屋の中央に置かれた小さなテーブルの上にプリンと紅茶を置いて、円華はそそくさと部屋を出て行った。
「それにしても、部屋に入ってきた時の母さんのあの剣幕は、いったい何だったんだろうな?」
「さあ? なんだったんだろうね」
芳文とまどかはお互いの顔を見合わせながら、そう言ってプリンに手を付けるのだった。
――その後、円華が食器を取りに行くと芳文と円華はベイブレードで遊んでいた。
『Goシュート!!』
――ガンガンガンッ!!
芳文のシュートしたドライガーとまどかのシュートしたドラグーンが激しくぶつかり合う。
「これ、結構面白いね、芳文さん」
「久しぶりにやったけど、懐かしいな。そういや、昔父さん相手にやって一度も勝てずに大泣きしたっけ」
「そうなの?」
「大人げないんだよ。家の親父。幼児相手に本気でシュートしやがったからな。けど今やれば勝てるかな」
「あ、あははは……」
「まどか、たっくん相手にやる時は手加減してやれよ」
「それは当然だよー」
(……私、何を心配していたのかしら。二人とも、まだまだ子供なのにね)
仲良く笑いあう二人を見て、円華は微笑ましく思うのだった。
――かつて、悲しい経験をして生きてきた芳文は無趣味だった。
だが今は違う。
まどかによって改変された世界で、両親の元で健やかに育った今の芳文は、どこにでもいる男の子だった。
幸せそうに笑いあう芳文とまどかを見て、円華はいつまでもこの平和で幸せな時が続けばいいと思うのだった……。
おしまい
674 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/20(土) 00:55:17.28 ID:Ilo1w2uJo
杏子「その後、まどかが芳文のおもちゃ箱に入っていた、トランスフォーマームービーのニューバンブルビーを弄ってて、トランスフォーマーに興味を持ってしまうんだ」
杏子「後日、芳文と一緒に夏休みに見に行ったダークサイドムーンの影響もあり、投げ売りになってたバンブルビー&メックテックホルダーを買ってしまうのはまた別のお話」
杏子「……中の人ネタかよ」
杏子「作者が言ってた。日常ネタは楽だ。次こそほむら☆マギカ書かないとなだって」
杏子「じゃーなー」ノシ
675 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/20(土) 01:19:18.04 ID:tQeN0ywS0
乙ですたー
芳文が普通の男の子って事は、まどかも普通の女の子って事で、それはとっても嬉しいなって!
ホント、小説版読んだ後だとこういう日常の当たり前の幸せを満喫してるお話はじんわり来るわ…
676 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/08/20(土) 16:42:17.83 ID:6B1sTQxAO
何気にこの話で一番得をしたのは円華おばさんの母ちゃんだよな
かわいがってた養女のほむほむが実の娘になって血の繋がりがある孫が出来たんだから
それに母ちゃん本人も生きてるみたいだし
677 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/08/20(土) 16:42:53.36 ID:6B1sTQxAO
何気にこの話で一番得をしたのは円華おばさんの母ちゃんだよな
かわいがってた養女のほむほむが実の娘になって血の繋がりがある孫が出来たんだから
それに母ちゃん本人も生きてるみたいだし
678 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/08/20(土) 20:06:12.73 ID:HhXb48ovo
乙でした。
こういう日常系のを読むと和みますね。
それとゾイドとか懐かしいw。ちなみに、8歳でウルトラザウルス1人で組み立ててすみません。
679 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/20(土) 22:53:06.79 ID:APVgajZk0
自衛隊時代のほむらの話とかも
PKOで派遣された国で現地の魔法少女と出会う話とか
帰国してみたら元旦那死んでいて泣き崩れる話とか
680 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/21(日) 01:05:35.93 ID:tXXTccLM0
青樹家ご両親と鹿目家ご両親のご対面とか、こんな感じになって面白いかも
円華さん「息子がいつもお世話になって…」
まどパパ「こちらこそ、まどかが良くしていただいて…」
ダーリン「お母さんは会社で大変ご活躍だとか」
まどママ「いえいえ、お父さんこそ立派なお仕事をされていると…」
まど・芳「(何だか・・・組み合わせに違和感を感じるのは何故だろう??)」
681 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/23(火) 17:07:44.64 ID:8K5NqS+10
>芳文が二重人格
つい時々、邪悪な魔神社芳文に精神を乗っ取られたり
骨だけになったまどかと合体したり
ソウルジェムがつらら状で二週間ごとに挿入し直さなければいけなかったりとか想
682 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/08/23(火) 20:49:52.92 ID:s6nmz7Id0
「まどか☆マギカ ハーレム」というアレな検索でここにきて追いつきましたww
一気に読み終えてテンションがあれなんで、とりあえずこれからも続き楽しみにしてます!
683 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/08/24(水) 13:50:09.02 ID:t9Y4Sw/mo
>>682
しかしハーレムとは程遠いという罠
684 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/08/24(水) 17:06:13.58 ID:DjmpX/fZo
>>683
かっこいい男オリ主のまどか☆マギカ二次創作が見れたので満足だぜ
685 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福岡県)
[sage]:2011/08/24(水) 17:35:26.38 ID:FSPmkkTD0
こういうSS他にないかな?
686 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/08/25(木) 00:54:36.78 ID:kn3oR9XAO
オリキャラは難しいからなかなか面白そうなのはのなさそうな気がする
Uー1みたいなスーパーキャラが大活躍する物ならいくらでもありそうだけど…
単独で魔女を倒せる強さに加え、幻想殺しレベルのチート能力持ち
まどかは勿論、マミさん達やほむほむまでちょっと優しくしてやったり、助けてやっただけでベタ惚れのハーレム
そんな作者の[
田島「チ○コ破裂するっ!」
]SS
687 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 22:22:49.99 ID:L/NwNglyo
杏子「携帯オンリーの読者向けにDL版限定オマケシナリオ解禁するよ」
688 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 22:23:52.29 ID:L/NwNglyo
魔法少女まどか☆マギカ 〜私の大切な人〜 番外編 「必殺技を作ろう!!」
夏休みのある日のこと。
「でえぇぇぇぇぇぇぇぃっ!!」
河川敷で、さやかが手にした木の棒で、芳文の頭頂部目掛けて打ち込む。
カンッ。
芳文が右手に持った木の棒が、簡単にさやかの攻撃を防ぐ。
「うっぐぅぅぅぅっ!!」
力任せに木の棒を両手で押し込むさやか。芳文は全力のさやかの押し込みを平然と片手で受け止めている。
「もらった!!」
長い木の棒を両手で構えた杏子が、さやかの攻撃を受け止めている芳文の腹部に目掛けて突きを繰り出す。
カーンッ。
左手に持った木の棒で、あっさりと杏子の突きを払いのけ、そのままさやかの腹部に攻撃する。
「はい。さやかちゃん死亡」
芳文はそう言って、寸止めで止めた木の棒を下す。
「あぁー、また負けちゃった」
悔しそうにさやかが木の棒を下すと、さやかの頭上を飛び越えて、太陽を背にしながら木の棒を振りかぶった杏子が、芳文に殴り掛かってきた。
「まだあたしが残ってるのを忘れんな!!」
太陽を背にして目くらましをした事で、杏子は得意げにそう言って、芳文の頭を殴ろうとする。
……スッ。
芳文は杏子の奇襲を最小限の動きで躱すと、自信満々の攻撃を躱されて、呆然となりながら着地した杏子の首筋に、寸止めで木の棒を突き付けた。
「はい。杏子ちゃん死亡っと」
「あーっ!! 畜生!! またやられちまった!!」
悔しそうに木の棒を地面に叩きつけながら、杏子が悔しそうに叫ぶ。
「相変わらずお見事ね」
芳文達の模擬戦を観戦していたマミが、芳文の戦いぶりに感嘆の声を上げる。
「……芳文さん、かっこいい」
芳文の強さにまどかがキラキラとした目で感想を言う。
「さやかちゃんはちょっと猪突猛進過ぎるな。あと、攻撃をすぐ右に躱す癖、治した方が良いよ」
芳文はそう言って、さやかの頭をくしくしゃと撫でてやる。
「杏子ちゃんは流石ベテランだね。我流とは言えよくそこまで槍術を身に付けた物だ。感心するよ」
「よしてくれ。あんたに褒められても嬉しくねぇ」
杏子は悔しそうな顔で、芳文に言う。
「杏子ちゃんは負けず嫌いだなあ」
芳文はそう言って苦笑する。
「次は巴さんとまどかちゃんの番だね」
芳文が二人に振り返ってそう言うと、弓のようにしなった木の棒を持ったまどかと、マスケットに見立てた木の棒二本を持ったマミが、芳文に頷いて歩いてくる。
「さあ、二人とも、今から俺が打ち込むから。上手く捌くんだよ」
そう言って芳文は、二人が敵に接近戦に持ち込まれた時の訓練を開始した。
689 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 22:25:29.07 ID:L/NwNglyo
☆
――ズルルルルッ。
マミの部屋に全員で集まって、ちょっと遅い昼食として良く冷えた素麺をすする。
「巴さんは流石だね」
素麺をちゅるんと飲み込んで、芳文が先ほどの戦闘訓練の内容を口にする。
「そうだよね。さっすがマミさん。先輩の攻撃をほとんど捌ききっちゃうんだもん」
さやかがマミを褒める。
「捌ききるだけで精一杯だったけどね。それに、社君手加減してくれてたでしょう。もし本気で打ち込まれてたら、きっと反応すら出来なかったでしょうね」
「いやいや。それでもすごいですよ、マミさんは。あたしにはあんな攻撃絶対躱せないし」
「何言ってんだ馬鹿。躱せるようにならなきゃ困るってーの」
杏子がさやかに毒を吐く。
「ははは。厳しいな、杏子ちゃんは」
そんな四人のやりとりを見ながら、まどかは俯いて溜息を吐く。
「はう……」
「ん? まどか、どうかしたのか?」
隣に座っているまどかの様子に気づいた芳文が、まどかに尋ねるとまどかは上目遣いに芳文を見ながら、呟くように答えた。
「……わたしだけ、一回も芳文さんの攻撃を躱せなかったから」
「……」
「こんなんじゃ、みんなの仲間として失格だよ……」
そう言って俯くまどかの頭にぽんと手を乗せて、芳文は優しく言う。
「まあ確かに、まどかは回避は苦手みたいだしな」
「あう……」
「でもさ、まどかの役目は前線に立つ事じゃないだろ」
「……え?」
「前線で戦うのは俺と杏子ちゃんとさやかちゃんの役目。そして巴さんはセンターで援護。そしてまどかの役目は後衛でみんなの援護。だろ?」
「……うん」
「俺達が援護攻撃してほしい時は弓で遠距離攻撃。俺達の誰かが危ない時は、マギカ・イージスで防御。それがまどかの役目だろ」
「……」
「誰にだって得手不得手はあるさ。俺には近接戦闘しか出来ないから、前線に立つ事しか出来ない。けどまどかはみんなの援護が攻守ともに出来る。違うか?」
「……ううん」
「だったら、それでいいじゃないか。まどかには俺が何者も手は出させない。絶対に俺が守る。だからまどかは安心して援護してくれ。な?」
芳文がそう言って笑ってみせると、まどかは笑顔で頷いて応えた。
「……うんっ」
「あー、熱い熱い」
「エアコン効いてるはずなのに熱過ぎっしょ」
「あらあら」
さやか達はまどか達のやりとりをみながら、そんな風に二人をからかうのだった。
690 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 22:27:19.13 ID:L/NwNglyo
☆
「ところで、社君。マギカ・イージスって何なの?」
食後の麦茶を飲みながら、マミの投げかけた疑問に、芳文は自信満々で答える。
「ああ、まどかの絶対防御壁の名前だよ」
「また勝手に名前を付けたの?」
「駄目かな?」
「私じゃなくて、鹿目さんに聞かないと」
「まどか、駄目かな?」
「別に駄目じゃないけど……。なんだかかっこいい名前だし」
「そっか。駄目じゃないならいいんだ。呼び方がただのシールドだと、なんか味気ない気がしてさ」
「マギカ・イージスねぇ……。先輩にしてはかっこいい名前付けたじゃん」
さやかがそう言うと、芳文は頭を掻きながら応える。
「ふと思いついたんだけど、割と好評で良かったよ」
「社君、封印魔法の方も名前考えてるの?」
「うーん。マギカ・ホールドとか」
「安直だね」
「安直ね」
「ひでえ!!」
マミとさやかの意見に芳文はへこむ。
「わ、わたしはかっこいいと思うよ」
まどかが慌ててフォローを入れる。
「……必殺技ねえ。ガキっぽくね?」
杏子がどうでも良さそうにそう言うと、マミがムッとした顔で杏子を見る。
芳文が隣を見ると、まどかも少しムッとした顔をしていた。
「いやいや。前にも言ったけど、チームで戦うんだから、技名とかあった方が作戦とか立てやすいし。……そうだ!! これから、みんなの技に名前を付けよう!!」
「えー。めんどくさい」
芳文の提案に杏子がそう言うが、マミとまどかは乗り気なのか、お互いの顔を見て頷いてる。
「……やっぱマミ二号かよ」
どことなく嬉しそうなまどかを見て、杏子が呆れたように呟く。
「……おい、さやか。あんたはこんなくだらねー事に付き合うつもりなのか?」
「……まあ、人付き合いは大事だし。観念しなよ」
「……はあ。しょうがねえな」
こうして、第一回必殺技考案集会がマミのマンションで開催される事になったのだった。
691 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 22:28:18.50 ID:L/NwNglyo
☆
「とりあえず、俺から提案させてもらうよ」
言いだしっぺの芳文が、みんなにそう言って自分のアイディアを提案する。
「と言っても、俺には魔法は使えないので、みんなに作ってもらった剣の名前を付ける事にするよ」
そう言って、まどか達の顔を見回してから、芳文は口を開く。
「まず、俺が現在作ってもらえる剣はマギカ・ブレード、マミカルソード、さやかちゃんの剣、杏子ちゃんの剣、そしてさやかちゃんと杏子ちゃん二人で作った剣の五本だ」
「とりあえず、さやかちゃんの剣はサーベルだから、命名さやかサーベル!!」
「おい!!」
あまりに適当なネーミングにさやかが憤慨する。
「次に、箱みたいな形の魔女とやりあった時に作ってもらった杏子ちゃんの剣は、命名あんこスラッシャー!!」
「あたしの名前は杏子だ!!」
杏子が憤慨する。
「そして、二人の作ってくれた剣は命名アンカースラッシャー!!」
「剣先が船の錨みたいな形だから、アンカーなのかしら?」
マミがそう尋ねると、芳文はきっぱりと否定する。
「違うよ。あんこちゃんとさやかちゃんの剣だから、あんかースラッシャー」
『……』
芳文以外の全員が絶句する。
「あ、アンカーとあんかーをかけたダジャレになってるな。実は俺、ユーモアのセンスあるのかも」
芳文がそう言って杏子とさやかの顔を見て尋ねる。
「どうかな?」
『ふ・ざ・け・る・な!!』
さやかと杏子の鉄拳が、芳文の左右の頬に突き刺さったのだった。
☆
「まったく、馬鹿の演技するのやめたんじゃなかったの!?」
さやかがぷんぷんと怒りながら、頬を摩っている芳文に言う。
「俺、演技じゃなく本気で提案したのに」
「もっと悪いわ!!」
「じゃあ、どうしたらよかったのか、教えて欲しいな」
「とりあえず、あたしの剣の名前が適当過ぎるよ。どうせなら、もっとかっこいい名前付けてよ」
「例えばどんな?」
「えっ!? うーん。蒼勇の刃(ブレイブ・エッジ)とか」
「ぶっ!?」
麦茶を飲んでいた杏子が、麦茶を吹き出してむせる。
「さやかちゃん、かっこいい!!」
まどかが感嘆の声を上げる。
「え? そ、そうかな?」
「うん!! ねえ、マミさん」
「そうね。なかなかいい名前ね」
「マミさんが認めてくれた!! もう何も怖くない!! 先輩、あたしの剣の名前は蒼勇の刃(ブレイブ・エッジ)だからね!!」
嬉しそうに宣言するさやかに、芳文は素直に頷くのだった。
「わかったよ。さやかちゃん」
(だ、駄目だ、こいつら……。早くなんとかしねぇと……)
だが、杏子には冷や汗をかきながら、成り行きを見守るしかなかった……。
692 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 22:29:47.20 ID:L/NwNglyo
☆
「鹿目さんの爆発する矢は神罰ノ矢(オメガ・ジャッジメント)。分裂する矢は爆裂ノ矢(ブラスト・シューター)ってどうかしら」
生き生きとした顔でマミがまどかに提案する。
「かっこいいです!! でも、わたしの攻撃にそんな素敵な名前付けて、名前負けしてないでしょうか?」
「そんなことないわ」
「ああ。いいんじゃないかな」
「えへへ。それじゃ、ありがたくその名前使わせてもらいますね」
「いいなー。まどか。あたしも必殺技欲しいな」
蚊帳の外のさやかを、杏子は慰めも込めてからかう。
「まあさやかには両手で持った剣で、相手を滅茶苦茶に斬るくらいしか技らしい技なんてないしなぁ」
「むぅ」
さやかがむくれる。
「じゃあ、スクワルタトーレと言うのはどうかしら?」
マミがいきなりさやかに提案する。
「マミさん、どういう意味ですか?」
「四分割する人、切り刻む人、切り裂き魔って言う意味よ。斬撃による乱舞が得意な美樹さんにぴったりだと思うんだけど」
「……マミさん、素敵な技名ありがとうございます!!」
さやかは感激してマミにお礼を言う。
「どういたしまして」
マミはにっこりと微笑む。
「……」
杏子は呆然と、そんなやり取りを見ているしか出来なかった。
☆
「俺も考えてみたんだけど」
マミばかりが賞賛されるのに対抗心を燃やして、芳文が口を開く。
「巴さんの大量にマスケットを出して戦う戦法、あれって名前とかある?」
「特にないわ」
「じゃあさ、魔弾の舞踏ってどうかな?」
「……魔弾の舞踏」
マミがそう呟いて、俯く。
『……』
まどかとさやかも無言でじっと芳文を見る。
「あ、あれ? また外しちゃったのかな、俺……」
「社君。素敵な名前をありがとう。魔弾の舞踏……。なんて心地いい響きなのかしら……」
マミは両目を閉じて、どこかうっとりとした表情で言う。
「素敵。マミさんのイメージにぴったりだよ。芳文さん!!」
「なんだ。先輩もいい名前考えられるんじゃん!!」
まどかとさやかも芳文のアイディアを称賛する。
「好評のようで何よりだよ」
照れくさそうに指で頬を掻く芳文。
杏子はそんなやりとりを見ながら、そーっと部屋を出て行こうとする。
(もうつきあってらんねー。ゲーセンにでも行こう)
「よし!! 今度は杏子ちゃんの技にみんなで名前を付けてあげよう!!」
気を良くした芳文がそう宣言すると共に、マミ達が一斉に杏子に振り向いた。
「げっ!?」
杏子の背中を冷たい汗が流れ落ちた。
693 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 22:31:13.45 ID:L/NwNglyo
☆
全員に見つめられて、脱出のタイミングを見失った杏子がしぶしぶと腰を落ち着ける。
「杏子ちゃんの槍の名前だけど、紅蓮の槍ってどうかな?」
芳文の提案に、全員が頷く。
「良い名前ね」
「杏子ちゃんのイメージにぴったりだよ!!」
「うんうん。杏子の性格を現した良い名前じゃん!!」
「……」
(……なんだ、このノリ)
杏子は大きな汗をかきながら、黙って聞いている事しか出来ない。
「それじゃ、今度は初めて共闘した時に手品師の魔女に杏子ちゃんが使った、魔力のオーラを纏って突撃する技の名前だな。まどか、何か案はある?」
「えっと、クリムゾン・タービュラーってどうかな?」
まどかがおずおずと提案すると、マミはいつの間にか用意した紅茶を一口飲んで、ソーサーにティーカップを置いてから口を開いた。
「流石ね、鹿目さん。良い名前だわ」
「えへへ……」
「じゃあ、杏子の必殺技その1の名前はクリムゾン・タービュラーに決定だね!!」
さやかがそう言うと、まどかがキラキラとした瞳でこちらを見ている事に杏子は気付いた。
以前、命を救われた借りもある上、魔法少女の後輩であるまどかに年下の少女へするような態度で接してしまう杏子に、まどかの好意を否定する事は出来なかった。
「あ、ああ……。ありがとね、まどか」
「えへへ。どういたしまして」
「さて、最後は杏子ちゃんの奥の手の名前だけど……」
芳文の言葉に、マミはにこりと笑って言い放った。
「それはもう決まっているのよ。ティロ・グングニルヌス」
「……は?」
杏子の間の抜けた言葉を無視して、まどかがマミに同意する。
「ですね」
「……え?」
「これで決まりだね!! 杏子の奥の手はティロ・グングニルヌス!!」
さやかの言葉に、杏子以外の全員が笑顔で頷いた。
(えぇぇぇぇぇぇっ!? マジかよ!?)
杏子は引きつった笑いを浮かべながら、満足げな笑みを浮かべる友人達を見る事しか出来なかった……。
694 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 22:32:25.62 ID:L/NwNglyo
☆
――三日後。
全員で海に行った日の事だった。
「みんな!! 奥から魔女の反応があるよ!!」
海岸沿いにある洞窟を見つけて、好奇心で中を探検していた時の事だった。
まどかが全員にそう叫ぶと同時に、魔女の結界が展開された。
「結界が!! みんな、行くわよ!!」
マミが変身してそう言ったその時だった。
しゅるるるるっ!!
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
水着姿のまどかが、どこからか伸びてきた白い触手につかまって、結界の奥へ引きずり込まれる。
「まどか!! くそっ!! 待ってろ!!」
芳文が駆け出そうとする。
「社!! 素手じゃ無理だ!!」
杏子が変身して、剣を作り出して芳文に手渡す。
「行くよ先輩!!」
変身したさやかが両手に剣を持って、先陣を切る。
「てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぃっ!!」
「はぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
杏子の槍が、さやかの剣が、芳文の振るう蛇腹剣状態のあんこスラッシャーが形の崩れたクラゲのような使い魔達を斬り裂いていく。
パンパンパンパンパンパンパンッ!!
マミの放った弾丸が、使い魔達を一撃で穿ち、霧散させていく。
「まどか!!」
芳文が魔女の部屋の扉をあんこスラッシャーで斬り裂いて、全員で突入する。
「よ、芳文さーん!!」
粘液塗れの触手に捕まったまどかが、悲痛な叫びを上げる。
部屋の奥では、イカとタコを合成したような姿の魔女が、まどかを捕らえた触手をゆらゆらと振りながら、鎮座していた。
「今助ける!!」
芳文がそう叫んで魔女に向かって駆け出そうとする。
695 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 22:33:34.11 ID:L/NwNglyo
しゅるるるるるるっ!! しゅるるるるるるっ!! しゅるるるるるるっ!! しゅるるるるるるっ!!
複数の触手が、芳文達の前に立ち塞がった。
「邪魔だ!!」
芳文はあんこスラッシャー蛇腹剣モードで触手に斬りつけるが、触手の弾性に刀身が弾かれてしまう。
「あんこスラッシャーが効かない!?」
「喰らいなさい!!」
マミが複数のマスケットによる一斉射撃を行うが、弾丸はすべて触手の三分の一ほどを貫いた所で止まってしまう。
「先輩!! あたしの魔力をその剣に!!」
仲間を救う力を求めて契約したさやかの固有能力は、仲間の魔力のブースト。
さやかの魔力が加わり、あんこスラッシャーがアンカースラッシャーへと変化する。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
アンカースラッシャーの一閃で、触手がバラバラに断ち切られる。
「アンカースラッシャーなら斬れるみたいだ!! このまま突っ込む!!」
芳文がそう言うと、マミが慌てて引き止める。
「待って!! 一人であの触手すべてを相手にする気なの!?」
「だが他に効く技は……」
ない、と芳文が言おうとした時だった。
「あるよ」
さやかが両手に剣を構えて、芳文の前に立つ。
「魔法も、必殺技もあるんだよ」
さやかはそう言って、相棒の魔法少女に視線を向ける。
「……仕方ねえな」
「あたしと杏子で触手の相手をするよ。先輩はその間にまどかを助けて」
「わかった」
芳文はさやかに頷く。
「マミさん、援護お願いします!!」
さやかがそう叫ぶと同時に、触手がものすごい勢いで飛んでくる。
「オッケー!!」
マミがそう叫ぶと同時に、先ほど撃ち込んだ弾丸から伸びた魔法の糸が、触手の中から飛び出してきて、他の触手も絡め取って一本に纏めてしまう。
「スクワルタトーレ!!」
さやかはそう叫んで、二本の剣による乱舞で触手を斬りつける。
一撃で傷つけられないなら何度でも斬りつけるのみ。
さやかの乱舞で徐々に切れ目が複数出来上がっていく。
「杏子!! クリムゾン・タービュラーお願い!!」
触手すべてに半分ほどの切れ目を入れてさやかが叫ぶ。
「終わりだよ!!」
紅蓮の魔力のオーラを纏いながら、槍を構えた杏子が触手に突撃し、すべての触手がさやかの入れた切れ目から切断される。
「まどか!!」
魔女の放つ毒霧を躱しながら、芳文がアンカースラッシャーの刀身を射出して、まどかを捕まえていた触手を切断した。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
切断された触手から解放されたまどかが、両足から地面に向かって落下する。
「まどか!」
右手に持ったアンカースラッシャーの刀身を元に戻しながら、芳文は思い切り跳躍して、落下してくるまどかの腰に左手を回す。
696 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 22:35:44.41 ID:L/NwNglyo
ずるっ。
「!?」
触手の粘液で、芳文の手がすべる。芳文は慌てて、左腕に力を込めて自分の胸と左腕でまどかをキャッチした。
むにゅ。
「!?」
まどかの割と大きくて形の良い発展途上の胸が、芳文の顔に押し付けられる。
シュタッ。
まどかを抱いたまま、まどかの胸の谷間に顔を埋めた芳文が着地して、まどかの腰に回していた左腕をおろす。
ずるずると胸を芳文の顔に押し付けたまま、まどかが着地する。
「……ぱ」
芳文が呟くように口を開く。
「ぱ?」
まどかが疑問を口にすると、芳文は鼻血をぶっと噴き出して、背後に倒れた。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? 芳文さんしっかりしてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「ぱ、ぱふぱふ……。まどかの……ぱふぱふ……」
芳文の顔は真っ赤に染まり、鼻血がどくどくと流れていたが、その顔はとても幸せそうだった。
「よ、芳文さんのエッチーっ!! 早く起きてよぉっ!!」
まどかが顔を真っ赤にして叫ぶと、芳文は鼻血を手の甲で拭いながら慌てて飛び起きた。
ブーッ!!
魔女が毒霧を吹きかけてくる。
「っ!!」
まどかが一瞬で変身して、マギカ・イージスで毒霧を防ぐ。
「ティロ・フィナーレ!!」
魔女の側面に回り込んだマミが必殺の一撃を放つ。
バシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!
魔女の横っ腹に大穴が空いた。
「やったあ!!」
さやかが歓喜の声を上げるが、魔女に開けられた大穴がぼこぼと音を立てて、塞がっていき、新しい触手が生えてくる。
「くっ!! まどか!! マギカ・シグヴァンだ!!」
「うん!!」
まどかがマギカ・イージスを解除すると同時に、芳文がまどかの前方に向かって駆け出す。
「芳文さん!! いくよ!!」
「ああ!! いつでもこい!!」
697 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 22:36:36.29 ID:L/NwNglyo
芳文が魔女の前で、アンカースラッシャーを構える。
「マギカ・ブレード!!」
まどかの放った三本の矢の二本が魔女の上下に着弾し、封印の光球を形成する。
そして、最後の一本の矢がアンカースラッシャーの柄に着弾し、アンカースラッシャーがマギカ・ブレードへと変化する。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
柄からのジェット噴射で飛行しながら、長大な魔力の刃を発生させたマギカ・ブレードで芳文は魔女に斬りつける。
「マギカ・シグヴァン!!」
まどかの叫びと共に、魔女が六分割されて、封印魔法の内部で完全消滅した。
ヒュンヒュンヒュンヒュン……。
芳文は噴射が止まるまで、マギカ・ブレードを振り回して、やがて魔力の消えたマギカ・ブレードを地面に突き立てた。
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン。
結界が消滅し、グリーフシードが落ちてくる。
「やれやれ。とんだバカンスになってしまったな」
グリーフシードを拾いながら、芳文は先ほどの戦闘を思い出す。
「……柔らかかったなぁ」
図らずも、大好きなまどかの胸で、ぱふぱふを味わった事まで思い出して、呟く。
『き、きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
突然、全員の悲鳴が洞窟の中に響いた。
「なんだ!?」
慌てて、まどか達の方へ顔を向けると、全員が芳文の方を向いて、顔を両手で覆って、真っ赤になっていた。
「え!?」
自分の方を向いてる事に気づいて、芳文が自分の体を見ると……。
「おわあぁぁぁぁぁぁっ!?」
慌てて、両手で股間を押さえると、持っていたグリーフシードの突起が、グサッと芳文の大切な所に突き刺さってしまった。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
芳文の悲痛な絶叫が洞窟の中に響いたのだった……。
☆
「……まどか、いい加減に機嫌治してよ」
「知らないっ。芳文さんのエッチ」
帰りのバスの中で、五人は後部座席に座っていた。
芳文は隣に座るまどかに必死に謝る。
「だって仕方なかったんだ。それにわざとじゃないんだ」
「知らないもん」
そう言ってぷいっと顔を背ける。
「だって一番好きな女の子と不可抗力とはいえ、あんなことがあったんだよ。反応するなっていう方が無理だよ」
「……」
「本当にごめん。もう絶対、まどかが嫌がる事はしないから」
「……反省してる?」
「勿論!! まどかに嫌われたら、俺もう生きていけないよ」
「……もう。大げさなんだから」
「大げさなんかじゃない!! 俺は本気で……」
「……うん。わかってる。男の子だもん。しょうがないよね」
「まどか……」
「でも、エッチなのはほどほどにしてね。わたし達、まだ中学生なんだから」
「あ、ああ。わかった!! 約束するよ!!」
「うん。それと、助けてくれてありがとう。芳文さん」
そう言って、まどかはにっこりと微笑む。
「……リア充爆発しろ」
さやかがジト目で、まどか達の痴話げんかを見ながら呟く。
「まあまあ。押さえて押さえて」
マミがさやかを宥める。
「まどかが羨ましいなら、さやかも好きな男にさっさと告りゃいーじゃん。妬むなんてみっともないぞ」
アイスを食べながら、杏子がさやかに言う。
「簡単に言わないでよ!!」
ワイワイガヤガヤ……。
まどか達を乗せたバスは夕焼けの中を走っていく。
698 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 22:38:03.91 ID:L/NwNglyo
「マミさん、杏子ちゃん」
バスの中で、まどかがマミと杏子に話しかける。
「ん?」
「なあに? 鹿目さん」
「今度、上手な攻撃の仕方を教えて欲しいの」
「それはいいけど」
「なんでまた急にそんな事言い出すんだ?」
「わたし、攻撃が苦手だし、必殺技も芳文さんがいてくれないと撃てないから……」
「別にそれでもいいじゃん」
杏子の言葉に、まどかは首を振って言う。
「ううん。このままじゃ駄目だよ。ひとりでもある程度戦えるようになっておかないと。いつか芳文さんやみんなに迷惑かけちゃうから……」
『……』
「だから、マミさんのティロ・フィナーレや、杏子ちゃんのティロ・グングニルヌスみたいな、一人で出来る必殺技を作りたいの」
「……何か技のアイディアはあるのかしら」
「はい。わたしの矢は貫通能力がないので、貫通能力がある矢を撃てるようになりたいです」
「だったら、巨大な弓矢を出せるようにならないとな」
杏子のその言葉に、まどかは目をぱちくりさせる。
「そうね。貫通特化の巨大矢なんていいかもね」
マミがそう言って微笑む。
「はい!! その技覚えたいです!!」
まどかがそう言うと、杏子が八重歯を見せて笑いながら言う。
「いいぜ。いつだったかに命を救われた礼だ。あたしが巨大武器を出すコツを教えてやるよ」
「杏子ちゃん、ありがとう」
まどかがお礼を言うと、杏子は照れくさそうに笑うのだった。
「鹿目さん、技の名前はどうするの?」
マミの問いに、まどかはマミにもじもじと上目遣いで尋ねる。
「ティロ・フィナーレじゃ駄目、ですか?」
「え?」
「その……。マミさんはわたしの憧れだから……。せめて技名だけでも同じ物を使えたら、ほんの少しでもマミさんみたいになれるかなって……」
まどかのその言葉にマミはとても優しい顔で答える。
「そうね。鹿目さんが完璧にその必殺技を使えるようになったら、その時に、ね」
そう言って、マミはウインクしてみせる。
「はい!! わたし、がんばります!!」
まどかもまた、笑顔で憧れの先輩魔法少女に宣言するのだった。
☆
――二年後。
「ティロ・フィナーレ」
まどかの放った巨大矢が、魔女の強固な体を簡単に貫通して、爆散させた。
「お姉ちゃんすごーいっ!!」
葉子が憧れの目でまどかを見る。
「すごいなぁ……。わたしもお姉ちゃんみたいに強くなりたいなぁ……」
キラキラした瞳で、自分を見てくる少女に優しい微笑みを向けて、まどかは口を開く。
「きっとなれるよ」
「だって、魔法少女はみんなに希望を振り撒く存在なんだから」
――それは、いつか憧れた魔法少女の幻想。
まどかは何も知らない少女の手を取って、最愛のパートナーの元へと歩いていく。
いつか、きっと。
幸せな未来を掴むために。
まどかは今日も戦い続ける。
おしまい
699 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 23:04:15.77 ID:L/NwNglyo
杏子「裏話。本当はこの話は本編制作時に作者の頭の中に出来てたんだ」
杏子「本編に組み込もうか迷ったけど、全体の話のテンポが崩れそうだから、番外編になったんだよ」
杏子「あんこスラッシャーの形状について。キングゴウザウラーのキングブレードみたいな、刀身の先端の幅が広い剣だ。トリガーを押すと刀身射出。トリガーを戻すと、刀身も元に戻る」
杏子「魔界村で例えると、あんこスラッシャーはクロスソード。アンカースラッシャーは光輪のクロスソードに相当する武器だ。威力は高いけど独特の軌道で扱いにくい武器ポジションの武器だ」
杏子「連撃性能はさやかサーベル>マミカルソード>あんこスラッシャー>アンカースラッシャー>マギカ・ブレード」
杏子「破壊力はマギカ・ブレード>アンカースラッシャー>あんこスラッシャー>マミカルソード>さやかサーベル」
杏子「扱いやすさ(刀身の長さや重さ)はマミカルソード>さやかサーベル>マギカ・ブレード>あんこスラッシャー>アンカースラッシャー」
杏子「ちなみにマギカ・ブレード六刀流は絶大な破壊力の代わりに、機動力の低下、斬撃スピードの低下と言うデメリットがある。もしも同格かそれ以上の剣術の達人とやりあう場合に六刀流を使うと、剣の取り回しや斬撃スピードの低下による弊害で不利になる」
杏子「だから六刀流は巨大な相手限定の技。まあ六刀流を受け止めようとしたら、どんな魔剣や神剣の類をもってしても一撃で剣ごと滅ぼされてしまうけど」
―まど界―
マミさん「あの世界の鹿目さん、可愛すぎるわ……」
さやか「まどか版ティロ・フィナーレ、ねぇ……」
あんこ「どこの世界でもマミはマミか……」
マミさん「それはどういう意味かしら」
あんこ「自分の胸に聞きなよ。あたしに必殺技を使わせようとした事、忘れたとは言わせないよ」
さやか「何々? 何の話?」
――あーだこーだわいわいがやがや。
ほむら「……まどかはどこの世界でもまどかなのね」
まど神「ほむらちゃん、それどういう意味?」
ほむら「あなた、初めて私を助けてくれた時に必殺技使ってたじゃないの。それに夜な夜な必殺技を考えてたりしてたし」
まど神「……何言ってるの、ほむらちゃん。魔法少女なんだから、必殺技は基本中の基本だよ」
マミさん「鹿目さん。やっぱりあなたは私が見込んだだけの事はあるわ」
まど神「ティヒヒヒ。そんな照れちゃいますよ」
ホムサヤアン『だ、駄目だ、こいつら……。早く何とかしないと……』
700 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 23:28:27.61 ID:L/NwNglyo
杏子「そういや、青樹家の事とか劇中で描かれてない事があったから、ここで解説しておくよ」
杏子「青樹一家が住んでいる見滝原の家は借家の一軒家だ」
杏子「円華おばさんの旦那の友達が立てた家なんだけど、その友達は子供がまだ小さくて、海外転勤で一家全員引っ越したんだ。何年かしたら帰ってくるけど、それまで空き家になるからそれで安く貸してもらう事になったんだってさ」
杏子「青樹一家の借りてる家は、まどかの家からまどかの足で歩いて12分くらいの所にある。一応鹿目家も青樹家も同じ町内だ。」
杏子「二階建ての普通の家で、芳文の部屋は2階の洋室。青樹夫妻の部屋は1階の和室。洋室が各階に2つ。和室が各階に2つ。キッチンとリビングは繋がっている一つの部屋。トイレは2階と1階に1つずつ。ポピュラーな一軒家だ」
杏子「円華おばさんの旦那は結構な高給取りなので、その気になれば家くらい建てられる。円華おばさんはいつかまどかを嫁にもらった時に、息子夫婦と二世帯で住める大きな家を建てたいと思って貯金してるらしい」
杏子「円華おばさんは一度も外で働いた事がない。旦那の収入が良いので外で働く必要がない上に、本人の性格的に他人と一緒に仕事するのは難しいからな」
杏子「円華おばさんは見た目だけは良いからな。上司にセクハラされたり、お局様に意地悪されたりするのは目に見えてる」
杏子「円華おばさんの父親はエロ小説家。母親はアパート経営者。隠す事でもないので、ここで公表しちゃうよ。父親はガンマニアでエアガンやモデルガンを沢山持ってる。善人なんだけど、顔が怖いので知らない人からはヤクザ扱いされるのが悩み」
杏子「母親は普通の気のいい太ったおばさん。若い頃は痩せてて美人だった。旦那を尻に敷いてる。初孫の芳文がかわいくてかわいくて仕方ない」
701 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/25(木) 23:28:56.35 ID:L/NwNglyo
杏子「そういや、青樹家の事とか劇中で描かれてない事があったから、ここで解説しておくよ」
杏子「青樹一家が住んでいる見滝原の家は借家の一軒家だ」
杏子「円華おばさんの旦那の友達が立てた家なんだけど、その友達は子供がまだ小さくて、海外転勤で一家全員引っ越したんだ。何年かしたら帰ってくるけど、それまで空き家になるからそれで安く貸してもらう事になったんだってさ」
杏子「青樹一家の借りてる家は、まどかの家からまどかの足で歩いて12分くらいの所にある。一応鹿目家も青樹家も同じ町内だ。」
杏子「二階建ての普通の家で、芳文の部屋は2階の洋室。青樹夫妻の部屋は1階の和室。洋室が各階に2つ。和室が各階に2つ。キッチンとリビングは繋がっている一つの部屋。トイレは2階と1階に1つずつ。ポピュラーな一軒家だ」
杏子「円華おばさんの旦那は結構な高給取りなので、その気になれば家くらい建てられる。円華おばさんはいつかまどかを嫁にもらった時に、息子夫婦と二世帯で住める大きな家を建てたいと思って貯金してるらしい」
杏子「円華おばさんは一度も外で働いた事がない。旦那の収入が良いので外で働く必要がない上に、本人の性格的に他人と一緒に仕事するのは難しいからな」
杏子「円華おばさんは見た目だけは良いからな。上司にセクハラされたり、お局様に意地悪されたりするのは目に見えてる」
杏子「円華おばさんの父親はエロ小説家。母親はアパート経営者。隠す事でもないので、ここで公表しちゃうよ。父親はガンマニアでエアガンやモデルガンを沢山持ってる。善人なんだけど、顔が怖いので知らない人からはヤクザ扱いされるのが悩み」
杏子「母親は普通の気のいい太ったおばさん。若い頃は痩せてて美人だった。旦那を尻に敷いてる。初孫の芳文がかわいくてかわいくて仕方ない」
702 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/26(金) 00:04:40.99 ID:Z9apsQrqo
〜とある母娘の会話〜
芳文「ただいま。母さん、ばあちゃんが来たぞ」
円華「おかえり。あら、お母さんどうしたの?」
梅子「新しい冷蔵庫を最近出来たジョーシンに買いに来たら、芳君に会ったのよ。それでついでに寄っていこうと思ってね」
円華「冷蔵庫壊れたの?」
梅子「あんたが中学生の時に買った奴だからね。最近調子が悪いから買い換えたのよ」
円華「そう。ところで芳文。その大きな箱はどうしたの?」
芳文「ああ、欲しいなって見てたらさ、ばあちゃんが買ってくれたんだ」
梅子「芳君がガンダムのコーナーで熱心に見てたからね」
芳文「ばあちゃん、ありがとう」
梅子「どういたしまして」
円華「何を買ってもらったの?」
芳文「METAL BUILD ダブルオーガンダム セブンソード」
円華「いくらしたの?」
芳文「11590円」
円華「お母さん、誕生日やクリスマスでもないのに、そんな高い物ほいほい買い与えたりして……」
梅子「別にいいじゃない。この前剣道日本一になったお祝いよ」
芳文「俺、部屋に行ってるから」
梅子「あらあら。早く弄りたくてしょうがないのかな。また後でね」
芳文「うん」
円華「もう……。芳文に甘いんだから。昔、私がファミコン買ってってねだった時は買ってくれなかったのに……」
梅子「何言ってるの。あんたみたいに大人しくて人付き合いの苦手だった子に、家にこもって一人で遊ぶような物買い与えたりしたら、今頃あんたニートよ」
円華「そんな事ないわよ」
梅子「そんな事あるさね。もしあの時買ってやったら、今頃嫁にも行けず、朝から晩までパソコンの前でゲームやインターネットをしてたんじゃないかと思ってる」
円華「私、そんな風に育てられてないし、そんな風にはならないわ」
梅子「当然よ。大事な一人娘をそんな風にならないように育てたんだから」
円華「……」
梅子「それで博さんとは上手くやってるのかい?」
円華「結婚して何年経ってると思うの。お母さん達と別居してても夫婦仲は円満よ」
梅子「それなら良いんだけどね」
円華「もう。お母さんは心配性なんだから」
梅子「いくつになっても子供は子供だからね。特にあんたは大人しくて気弱だったから心配なのよ」
円華「大丈夫。ちゃんとやってるから」
梅子「そう。それならいいけど」
円華「お母さん、今日家で晩御飯食べてくでしょ。パパは締切前でホテルで缶詰めだって言ってたし」
梅子「そうね。久しぶりに円華と一緒に料理でも作るとしようかね」
円華「ええ。あ、そうそう。もうすぐ、芳文の彼女が来るから紹介するわ」
梅子「ああ、この前言ってたあんたと同じ名前の……」
円華「きっとお母さんも気に入ると思うわ」
梅子「そうかい。それは楽しみだねぇ」
――ピンポーン。
円華「噂をすれば。お母さんちょっと待ってて。ここに連れてくるから」
梅子「はいはい。あの子があんなに生き生きとした顔をするって事はよほどいい子なんだろうね。会うのが楽しみだわ」
おしまい
703 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/26(金) 00:05:27.24 ID:Z9apsQrqo
〜とある母娘の会話〜
芳文「ただいま。母さん、ばあちゃんが来たぞ」
円華「おかえり。あら、お母さんどうしたの?」
梅子「新しい冷蔵庫を最近出来たジョーシンに買いに来たら、芳君に会ったのよ。それでついでに寄っていこうと思ってね」
円華「冷蔵庫壊れたの?」
梅子「あんたが中学生の時に買った奴だからね。最近調子が悪いから買い換えたのよ」
円華「そう。ところで芳文。その大きな箱はどうしたの?」
芳文「ああ、欲しいなって見てたらさ、ばあちゃんが買ってくれたんだ」
梅子「芳君がガンダムのコーナーで熱心に見てたからね」
芳文「ばあちゃん、ありがとう」
梅子「どういたしまして」
円華「何を買ってもらったの?」
芳文「METAL BUILD ダブルオーガンダム セブンソード」
円華「いくらしたの?」
芳文「11590円」
円華「お母さん、誕生日やクリスマスでもないのに、そんな高い物ほいほい買い与えたりして……」
梅子「別にいいじゃない。この前剣道日本一になったお祝いよ」
芳文「俺、部屋に行ってるから」
梅子「あらあら。早く弄りたくてしょうがないのかな。また後でね」
芳文「うん」
円華「もう……。芳文に甘いんだから。昔、私がファミコン買ってってねだった時は買ってくれなかったのに……」
梅子「何言ってるの。あんたみたいに大人しくて人付き合いの苦手だった子に、家にこもって一人で遊ぶような物買い与えたりしたら、今頃あんたニートよ」
円華「そんな事ないわよ」
梅子「そんな事あるさね。もしあの時買ってやったら、今頃嫁にも行けず、朝から晩までパソコンの前でゲームやインターネットをしてたんじゃないかと思ってる」
円華「私、そんな風に育てられてないし、そんな風にはならないわ」
梅子「当然よ。大事な一人娘をそんな風にならないように育てたんだから」
円華「……」
梅子「それで博さんとは上手くやってるのかい?」
円華「結婚して何年経ってると思うの。お母さん達と別居してても夫婦仲は円満よ」
梅子「それなら良いんだけどね」
円華「もう。お母さんは心配性なんだから」
梅子「いくつになっても子供は子供だからね。特にあんたは大人しくて気弱だったから心配なのよ」
円華「大丈夫。ちゃんとやってるから」
梅子「そう。それならいいけど」
円華「お母さん、今日家で晩御飯食べてくでしょ。パパは締切前でホテルで缶詰めだって言ってたし」
梅子「そうね。久しぶりに円華と一緒に料理でも作るとしようかね」
円華「ええ。あ、そうそう。もうすぐ、芳文の彼女が来るから紹介するわ」
梅子「ああ、この前言ってたあんたと同じ名前の……」
円華「きっとお母さんも気に入ると思うわ」
梅子「そうかい。それは楽しみだねぇ」
――ピンポーン。
円華「噂をすれば。お母さんちょっと待ってて。ここに連れてくるから」
梅子「はいはい。あの子があんなに生き生きとした顔をするって事はよほどいい子なんだろうね。会うのが楽しみだわ」
おしまい
704 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/26(金) 00:15:32.89 ID:Z9apsQrqo
杏子「今回はこれでおしまい」
杏子「円華おばさんの親父はパパと呼ばないと機嫌が悪くなるんだとさ」
杏子「読者の皆に色々妄想してもらえて、作者もうれしいそうだ。ありがとうよ」
円華「……」
杏子「ひ……。悪寒がする……」
円華「私のこの手が光って唸る!!」シャイニングフィンガー
杏子「あだだだだただだっ!! なんで!?」ギリギリギリギリ……
円華「さりげなく私の悪口を言ったから、躾よ。誰が見た目だけで、他人と仕事が出来ないですって?」
杏子「ぎゃあぁぁぁぁぁーっ!!」ガクッ
円華「皆、私の過去話はもう少し待ってて。それじゃ」
705 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/26(金) 00:16:22.64 ID:Z9apsQrqo
杏子「今回はこれでおしまい」
杏子「円華おばさんの親父はパパと呼ばないと機嫌が悪くなるんだとさ」
杏子「読者の皆に色々妄想してもらえて、作者もうれしいそうだ。ありがとうよ」
円華「……」
杏子「ひ……。悪寒がする……」
円華「私のこの手が光って唸る!!」シャイニングフィンガー
杏子「あだだだだただだっ!! なんで!?」ギリギリギリギリ……
円華「さりげなく私の悪口を言ったから、躾よ。誰が見た目だけで、他人と仕事が出来ないですって?」
杏子「ぎゃあぁぁぁぁぁーっ!!」ガクッ
円華「皆、私の過去話はもう少し待ってて。それじゃ」
706 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/26(金) 00:30:41.45 ID:KNOkwcGT0
乙ですたー
おお、まどっち青樹家のおばあちゃんと遂に遭遇か!
何となくまどっちは、円華さんが=ほむほむだからとか、将来お嫁さんになるからと言うだけでなく
代々受け継がれてる「ご家庭の味」みたいなのに憧れがあって円華さんに色々習ってる節がありそうな気がする
まどママは仕事の人で外に出てるし、まどパパの料理は男性特有の凝り性が垣間見えて、多分に趣味的な
側面が大きそうだし、自分の家庭を否定するわけではないだろうけど、どこかでごく普通のご家庭に憧れがあったんじゃないかな
707 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/26(金) 05:45:46.22 ID:q0B2J8mJ0
>性格的に他人と一緒に仕事するのは難しいから
自衛隊員時代どうしていたのか実に知りたい
708 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/08/26(金) 09:09:12.42 ID:/Jid9Zgso
乙の願い
709 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/26(金) 21:10:03.83 ID:Z9apsQrqo
杏子「あのさ、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
円華「何かしら?」
杏子「確か暁美ほむらだった時に、自衛隊に入ってたって言ってたよな」
円華「そう言えばそんな事もあったわね」
杏子「その時って、対人関係とかどうしてたんだ? 友達とかいたのか?」
円華「いないわ。同僚達とは男女関係なく、職務上必要な事しか話さなかったし、飲み会とかに誘われても全部断っていたから」
杏子「……あたしが言うのも何だが、社会人としてそれはどうかと思うぞ」
円華「あの時の私はダーリンと芳文と別れて、荒んでいたから。別に友達や新しい男が欲しくて自衛隊に入ったわけじゃないし。魔力の制限があったから、少しでも戦闘スキルを上げて置く為と、生活の為だけに自衛隊を選んで入っただけよ」
杏子「ふーん」
円華「何度か、上司や同僚に言い寄られた事もあったけど、全員相手にしなかったわ。私の愛してる人はダーリンだけ。私の守りたかった友達はまどかだけだもの」
杏子「一途だね」
円華「大人をからかわないで頂戴」
杏子「でもさ、そんな態度で良く自衛隊勤務なんて勤まったね」
円華「一応、仕事はちゃんとやり遂げてきたもの。同僚達に陰でクールビューティーだとか、変なあだ名を付けられてたみたいだけどね」
杏子「どんな仕事してたのか聞いていい?」
円華「色々よ」
杏子「その色々を聞きたいんだよ」
円華「陸上自衛隊に入って、入隊後の訓練を一通り受けてから、野戦特科に行って、観測って言う特技過程を取って、迫撃砲小隊に入ったわ。戦闘職種に就かないと意味がなかったから」
杏子「……何を言ってるのかさっぱりわからん」
円華「まあ普通はそうでしょうね。この辺の話は特に語るべき事でもないから、私の過去話でもさらっと流されるはずよ」
杏子「そうだな。魔法少女とあんま関係なさそうだし」
円華「そうね」
杏子「ところでまどか以外の友達っているのか?」
円華「ほむらだった時は高校で出会った女友達が二人いたわ。香村みずほって言う子と北恵理子って言う子がね」
杏子「今は?」
円華「恵理子が幼稚園の頃からの幼馴染で、みずほが小学校1年生からの友達よ」
杏子「二人とも親友って奴?」
円華「……そうね。二人とも大切な友人よ」
杏子「円華おばさんの性格で、まどか以外によく友達なんて出来たな」
円華「……」シャイニングフィンガー
杏子「あだだだだただ゛っ!! ごめんなさい!!」
円華「二人とも、押しが強くてね。大人しかった私の手を強引に取って引っ張ってくれたのよ」
杏子「ふーん。まどかにとっての仁美とさやかみたいなもんか」
円華「そうなるのかしらね。あの二人には昔、髪型を良く弄られたりとかもしたけど。今となっては良い思い出ね。まどかに過去に飛ばされなければ、彼女達に出会う事もなかったのだと思うと、人の縁って言うのは不思議な物ね」
杏子「今でも交流あるの?」
円華「たまに会うわよ。みずほのほうは今は結婚してて中沢って名字だけど」
杏子「もう一人の方は?」
円華「仕事で忙しくて、中々彼氏と結婚に漕ぎ着けないのよ。確かまどかの母親と同じ会社に勤めてたはず」
杏子「へえー。質問に答えてくれてありがとうな」
円華「それはいいけど、ちゃんと夏休みの宿題を終わらせなさいよ」
杏子「あんたはあたしのかーちゃんか。……嫌だなあ。もっと夏休みが長けりゃいいのに。それじゃみんな、またなー」ノシ
710 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/26(金) 23:10:48.96 ID:q0B2J8mJ0
>勇者特警サンバード
ものすごい今さらだけど、最初の20年前へのループ時、記憶を取り戻した後、全て夫に正直に打ち明けていたら解決できたんじゃ?
夫が病死したとしても宇宙警察に助けてもらえたかも…?
もっともその場合、芳文は二代目駐在員として教育されて…。
711 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/08/26(金) 23:53:52.23 ID:bdsWHqolo
乙でした
ほむほむに愛されまくった上に、胸を揉みしだいたダーリンがねたま……うらやましいぜ
712 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/27(土) 00:17:52.40 ID:HJA+Pt19o
―まど界―
ほむら「ねえまどか。もしあっちの私が博さんに全部打ち明けてたら、どうなってたのかしら?」
まど神「……わたし達の戦いって、なんだったんだろうねって結末になるよ」
ほむら「どういう事?」
まど神「博さんは強すぎて、存在自体が反則って事。サンバードのスペックだって滅茶苦茶高いんだよ。こんな感じ」
サンバード
太陽の炎と呼ばれる無敵の勇者。強化スーツ『サンテクター』を装着した報堂博。
身長205センチ 体重100キログラム パンチ力130トン キック力160トン 100メートルを1.5秒で走る 視力聴覚常人の1200倍 必殺技フレイムバードアタック 480トン (炎を纏った鳥の形をしたオーラを纏っての体当たり)
後に精神力をさまざまなエネルギーにすることが出来るマギ力(マギちから)システムをスーツに搭載し、肉体を持たない精神生命体であるニトロ四天王と皇帝デ・ジターロを倒せるようになる。
グレートサンバード
支援戦闘機サンジェットとサンバードが融合合真する事で誕生する巨大ロボ。
全長28メートル 重量67トン 5800万馬力 最高走行速度280キロ ジャンプ力300メートル 最高飛行速度マッハ5 宇宙空間では光速の48倍(ジェット形態)
武装 サン・ブレード サン・キャノン サン・ブレイザー サン・ビーム サン・スライサー
必殺技 サン・ブレード・フレイムチャージ
サポートマシンとして、フレイムファィター1、ドリルカイザー2、クレーンカイザー3、ドーザーカイザー4、マリンカイザー5が存在し、胸部、左右の腕部、左右の脚部に追加武装パーツとして装着が可能。
強力なロボットだが、精神生命体を倒す事が出来ないのが弱点。
マギカカイザー
サンバードの2号ロボ。精神生命体で、破壊ロボを倒してもすぐに新しいボディに憑依して復活する、強敵ニトロ四天王のひとりであるジンハ・ガ・ネーヤとの戦いでサンジェットが損傷した事で、宇宙警察が急遽完成させた新ロボ。
新しいメカ、マギカシップを核にフレイムファィター1が胸部アーマー、ドリルカイザー2が右腕、クレーンカイザー3が左腕、ドーザーカイザー4が右足、マリンカイザー5が左足に合体して完成する2号ロボ。
マギ力(マギぢから)システムを搭載しており、パイロット及びサポートのサブパイロットの精神力に応じて、無限の出力と攻撃力および守備力を発揮する。
急ごしらえの合体ロボの為、機体強度や基本スペックはグレートサンバードに劣る物の、精神力に応じてまるで魔法のような攻撃と防御が出来る。
身長26.5メートル 重量78トン 4500万馬力 最高走行速度250キロメートル ジャンプ力270メートル 最高飛行速度マッハ4 宇宙空間では高速の25倍。
武装 ドリルマグナム クレーンシールド パイルクレーン(パイルバンカー) ドーザーミサイル マリンミサイル ブレストフレアー マギカ・インパクト(マギ力による超エネルギー光弾を両手に込めての鉄拳)
必殺技マギカ・インパクト
マギカ・サンバード
マギカカイザーとグレートサンバードが合体した最強無敵の勇者。
全長32.8メートル 重量145トン 最低出力1億2000万馬力 最低走行速度マッハ2 最低ジャンプ力500メートル パイロットとサブパイロットのマギ力(マギぢから)により無限大にポテンシャルが上昇。
武装 フレア・サン・ブレード サン・キャノン サン・ブレイザー サン・ビーム サン・スライサー ドリルファントム クレーンシールド パイルクレーン(パイルバンカー) ドーザーミサイル マリンミサイル ブレストフレアー マギカインパクト マギカキャノン
必殺技 マギカキャノン・フルブラスト
ほむら「何この無茶苦茶な能力」
まど神「こんな強いヒーローがやってきたら、ワルプルギスの夜どころか、魔女になったわたしだって瞬殺されちゃうよ……」
ほむら「一応尋ねるけど、実際どうなるの?」
まど神「大人になったほむらちゃんと一緒に博さんが中学生のほむらちゃんも含めて、わたし達をあっさりと救ってくれるよ」
ほむら「インキュベーターは? 魔法少女はどうなるの?」
まど神「ブレイブ星人の科学力でみんな普通の女の子に戻してもらえて、インキュベーターは母星ごとマギカサンバードにふっとばされて絶滅」
ほむら「」
まど神「マギカサンバードに合体してるマシンにわたし達全員乗せてもらって、全員のマギ力(マギぢから)でマギカサンバードのマギカキャノンフルバーストで、QB達はおしまい。引き金は大人のほむらちゃんが引かせてもらったの」
ほむら「」
まど神「……わたし達の戦いって、いったいなんだったんだろうね」
ほむら「……私の苦労っていったい」
713 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/08/27(土) 10:13:54.25 ID:1yq/yjyko
乙ファンタズマ〜
714 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/27(土) 12:38:24.03 ID:NXTzZOfSO
乙。博さん強すぎ(笑)
715 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/27(土) 22:32:29.26 ID:AQupEhhf0
光速のン倍とかに突っ込んではいけない
これはきっとワープ航法とかブラックホール航法とかそういうものの深い意味があると思う。
超兵器の数々、みんな母星に返却したのだろうか?
どれか一個くらい息子にのこしてくれても
全ヒロインクリア、放浪編、改変世界編をクリアしたあと
もう一度放浪編をプレイすると
.生まれ故郷のアパートを訪れてみる
という選択肢が登場し、まどかを連れて廃屋となったアパート跡を訪れるとその地下には…
というおまけシナリオも見たかった
716 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/30(火) 00:53:19.88 ID:lWBDFP9mo
まど神「芳文君のお母さんになったほむらちゃんの過去話に、まったく関係ない裏設定のお話だよ」
717 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/30(火) 00:55:23.28 ID:lWBDFP9mo
「冬は日が落ちるのが早くて困るな」
「そうだね。まだ5時なのにもう真っ暗だよ」
芳文とまどかが二人で、遊歩道を歩いていた時の事だった。
「おっ。これはなかなか……。子供から大人へと変化する途中の少女特有の体付き……。僕のコレクションに是非加えたいモナー!!」
奇妙な怪物のマスクをかぶった小太りの男が、奇妙な形の片目だけの眼鏡を片手に、突然まどかと芳文の目の前に現れた。
「……なんだこいつ。怪物の覆面なんかしやがって。変質者か?」
「よ、芳文さん……」
怯えるまどかを自身の背後に庇いつつ、芳文は目の前の怪物男を睨みつける。
「オスのほうはいーらない。死んじゃいなー」
そう言って、おもちゃの光線銃のような物を芳文に向けた瞬間。
――ズドンっ!!
「ぐべらっ!?」
芳文の容赦のない強烈な蹴りが、怪物男の顔面に炸裂して怪物男は宙を舞い、無様に地面に転がっていた。
「やれやれ。うちの近所にこんな馬鹿が出没するなんてな。まどかを夜、一人で帰さないように気をつけないといけないな」
芳文がそうぼやいたその時だった。
「……素晴らしい身体能力だ」
不意に背後から声をかけられ、芳文とまどかが振り返るとそこには、オレンジ色の瞳孔のない目をした、頭部全体が灰色で、顔面部が白いまるでトサカのないウルトラマンのようなマスクをした男が立っていた。
「おいおい……。また変質者かよ……」
芳文が呆れた顔をしながら、男に向き直ると男は渋い中年の声で口を開いた。
「少年よ。私と契約して勇者にならないか」
718 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/30(火) 00:56:52.56 ID:lWBDFP9mo
「……はあ?」
「君なら、勇者の中の勇者、勇者王になれるかもしれない。是非私と契約して、この宇宙の平和を共に守ってはくれないだろうか」
そう言って、着ているコートのポケットから手を出して握手を求めてくる。
「……まどか。とんだ電波野郎みたいだ。関わらないで行こう」
「う、うん……」
芳文は戸惑っているまどかの手を取ると、男に背を向けて立ち去ろうとする。
「待ちたまえ。この宇宙には様々な種族がいる。中には当然好戦的な種族や他の種族の住む惑星を侵略しようとする者達もいる」
「そこでのびている君の倒したヤルオ星人も、宇宙中の生命体をコレクションのはく製にしようとする悪党だ。そのような悪をのさばらせてもいいのか」
「そういうのは間に合ってるんで。ヒーローごっこはよそでやってくれ」
芳文を引き止めようとする男に、そう言いかえしてまどかと共に帰ろうとしたその時だった。
「そこの変質者!! 罪のない子供達に何をしている!!」
「父さん!?」
「おじさん!?」
芳文の父、博が物凄い速さで駆け寄ってきて、男の腕を捻りあげた。
「こいつはパーパが始末する!! 芳文はまどかちゃんを連れて家に帰ってるんだ!!」
「わ、わかった。行こう、まどか」
「う、うん」
芳文とまどかは博の剣幕に驚きつつも頷くと、そそくさとその場を立ち去っていく。
芳文とまどかが立ち去ったのを確認して、博は男の腕を離す。
「痛いじゃないか、サンバード」
「やかましい。俺の息子に何をしていた」
捻りあげられていた腕を摩りながら、恨みがましく言う男に博は不機嫌そうに問い詰める。
「連続誘拐で指名手配していた犯人を追ってきたら、君の息子が犯人を叩きのめしているところに出くわしてね。私と契約しないか勧誘していたんだ」
「ふん!!」
バキィっ!!
博の拳が男の頬に突き刺さる。
「痛いじゃないか」
「親の同意なく未成年を勧誘するな!!」
「君だって、契約した時は未成年だっただろうに」
「やかましい!! 俺の息子は契約なんざさせん!!」
「やれやれ。立ち話もなんだ。犯人を連行がてら、私の宇宙船で話そう」
男がそう言って、携帯電話のような端末をどこからともなく取り出して操作すると、博達は伸びている小太りの怪物男と一緒に忽然とその場からまるで幻のように消え去った。
719 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/30(火) 00:58:23.21 ID:lWBDFP9mo
☆
「サンバード、何か飲むか?」
「いらん。そんな事より、金輪際俺の息子に近づくな」
近未来的な一室で、デスクを挟んでイスに座った博と男がそんな話をしていた。
「そうは言うが、我々ブレイブ星人は有望な若者をスカウトするのが仕事なのだが」
「んなモン知るか。ニトロ星人は滅ぼしてやったし、俺の教え子たちが宇宙中で活躍してるだろうが。俺の息子がお前と契約する理由はない」
「確かに宇宙始まって以来の最凶最悪の種族、ニトロ星人が滅んだ事で、宇宙はかなり平和になった。ニトロ星人を倒した君と言う存在を恐れて、他の好戦的な種族達も地球だけは狙わなくなった」
「だが、今回逮捕したヤルオ星人のように、かつての君の活躍を知らない宇宙犯罪者達が地球に潜り込もうとする事件が多発している」
「俺の教え子たちはどうした。何故地球へ簡単に宇宙犯罪者共の侵入を許しているんだ」
「彼らも忙しいのだよ。宇宙犯罪者は多い。君はかなりの勇者達を育成してくれたが、人数が絶対的に足りないのだ」
「……はあ。わかった。また何人か鍛えてやる。だから俺の息子に近づくな」
「勇者候補生を鍛えてくれるのは助かる。だが何故君の息子への接触を阻もうとする?」
「息子には普通の人生を送らせたいんだよ。悪いか」
「それが親心と言う物か。まあ君も苦労してきたから、そう言う気持ちになるのも仕方ないか」
「お前も親になればわかるだろうよ」
「私はまだ300歳だ。卵を産むつもりはない」
「……いつも思うんだが、おまえらブレイブ星人ってのは、男女がなくてつまらなそうだな」
「私に言わせれば、君たち人間の方が非効率的だ。君が奥さんと子づくりしてきた次の日は、いつも真っ白に燃え尽きているじゃないか」
「仕方ないだろう。前戯でたっぷり30分、抜かずに3回、フィニッシュは必ず膣内で、最低3R、後戯も最低30分。ここまでやらないと機嫌が悪くなるんだから」
「それをひとつでも怠ったら、どうなるのか聞いてもいいか」
「私の事をもう愛してないのって泣かれる。外に出すと、よそに好きな女が出来たのかって疑われて、泣かれる」
「地球人の夫婦とは面倒くさい物だな」
「よそはどうか知らんが、何も知らなかった嫁に色々仕込んだのが自分自身だけに、誰にも愚痴れん。まあ嫁の事は愛してるし、二人だけの時に甘えてくるのがかわいいからいいんだけどな」
「そうか」
「ああ」
720 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/30(火) 00:59:56.51 ID:lWBDFP9mo
「まあ君も波乱万丈の人生を歩んできたからな。その幸せを守りたい気持ちはわかる」
「ああ。誰にも壊させん」
「そうか。そう言えば君は確か、3才の頃に飛行機事故で両親を亡くしたのだったな」
「ああ」
「その後、ジャングルで子供を亡くしたメスゴリラに7才まで育てられて、たまたま地球に立ち寄った古今東西中央不敗マスターギャラクシーに拾われて、銀河統一戦技アニップレクスを叩き込まれて」
「ジジイに最新メディカルマシンがあるからって理由で、2倍の重力から始まって最終的に1000倍の重力で修業させられたな」
「純粋地球人なのに、そんな修業させられて良く生きてたな。よっ化け物。……これが地球人の褒め言葉だったか?」
「それ褒めてねえ。次言ったら本気で殴る」
「すまない。君に本気で殴られたら、いくらブレイブ星人が頑丈でも流石に死んでしまう」
「……ふん。その後、ジジイから免許皆伝もらったらジジイがぽっくり逝っちまって、お前と出会ったんだよな」
「ああ。懐かしいな」
「おまえら、地球の中にいつの間にか潜り込んでやがったもんな。就職先の署長がお前らの仲間の異星人だって知った時は驚いたぞ」
「そのおかげで君に地球の金で給料が払えるんじゃないか」
「まあそうだけどな」
「ふむ。少し喉が渇いたな。地球で手に入れたコーヒーを飲もう。サンバード、君も飲むだろう?」
「そうだな。流石に喉が渇いた。一杯もらったら帰る」
「そうか。じゃあ一服したら送っていこう」
「ああ。それより、もう俺の息子に近づくなよ」
「わかったよ。彼はきっと良い2代目サンバードになれると思ったんだが」
「息子も嫁も、俺が勇者だなんて知らないんだ。余計な事は知らせなくていい」
「教えてないのか?」
「何度話しても信じてくれないんだよ。サンジェットでも見せてやればいいんだろうが、戦う敵もいないのに呼び出したりしら始末書もんだしな」
「そうか」
「ごちそうさん。新米どもの教育についてだがお前さんの方で手を回しておけよ」
「わかった。さらばだサンバード」
「ああ。じゃあな、ジョージ」
721 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/30(火) 01:01:17.24 ID:lWBDFP9mo
――青樹家にて――
「ただいま」
「おかえりなさい」
「おかえり、父さん」
「芳文」
「何?」
「円華とおまえの事は、パーパが守ってやるからな」
「何だよ、いきなり」
「だから、お前はお前の大切な物を守れる男になれ。まどかちゃんのヒーローになれ」
「あ、ああ。言われなくとも!!」
「うむ。良い返事だ。流石、パーパの自慢の息子だ」
「うわっ!? もう小さなガキじゃないんだから、頭を撫でるのはやめてくれよ!!」
「あらあら」
「くすくす……。芳文さん照れてる。かわいい」
おしまい
722 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/30(火) 01:06:32.27 ID:lWBDFP9mo
ほむら「」
まど神「流石にこれはないね……」
ほむら「ま、まどか……。サンバード関連ってギャグよね」
まど神「……」
ほむら「どうして黙るの!?」
まど神「少なくともほむら☆マギカはほむらちゃんが主役だから。博さんは芳文君みたいに出ずっぱりって事はないよ」
ほむら「答えになってないよ!?」
まど神「あ、口調が元のほむらちゃんだ」
ほむら「」
まど神「高速のン倍って設定だけど、電磁戦隊メガレンジャーのロボットも高速のン倍って速度設定があるんだよ。まあ宇宙人のメかを地球人の価値観や知識で説明するのは土台無理なんだけどね。じゃ、みんなまたね」
723 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/30(火) 01:14:14.66 ID:31t/b1MA0
乙ですたー
って、博さんどこのアマゾンライダーかターザンか少年王者な出生の秘密やねんwww!
それにしても、ブレイブ星人はこの宇宙がまどかに改変された時、大騒ぎしなかったんだろうか??
それとも彼らも改変の渦中にあったから前の世界の事は知らないのか??
今回の雰囲気だと概念存在のような観測者の立場の人たちじゃ無さそうだし、後者のような気がするけど
724 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/08/30(火) 01:19:19.24 ID:6UoxB1e9o
乙です!
エローイ!なんで子供が芳文一人しかいないか不思議だぜ
ところで……
> 抜かずに3回、フィニッシュは必ず膣内で、最低3R
抜かずに3回と3Rってどう違うんですか
教えてエロイ人
725 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2011/08/30(火) 01:42:16.01 ID:S4yD2Oy5o
3回を3Rやるんじゃないか?
つまり膣内に9回出すってことだろ
726 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/30(火) 06:44:09.68 ID:W3Z+zBNw0
そんなにいつも中出しならさすがに芳文の弟妹だらけになると思うけど…パパさんが◯なしなのか、円華さんが妊娠しにくい体質なのか…。
しかし、思うんだがほむほむを過去に送った前周のまどかはやみくもに過去に送ったんじゃなくて
「ほむらちゃんを助けてくれる人のところに送って」
って願ったんじゃないだろうか?
せっかくその条件通りの時と場所にいけたのに、機会を無駄にするとは…。
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
727 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/08/30(火) 22:20:58.43 ID:6UoxB1e9o
>>725
なるほど……9回とか地球人じゃねえ
ところでギャグ回とは解ってるけど
「宇宙人」とか「契約してくれ」ってまどかにとってトラウマ掘り起こしそうだなあ
まどかにとって宇宙人って実際に存在する訳だし
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
728 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/30(火) 22:31:24.17 ID:xD09fporo
追いついた
パーパは引っ込んでろ・・・!
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
729 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/31(水) 00:36:38.70 ID:5cuY4mQho
――まど界――
ほむら「……」
まど神「ほむらちゃん、どうしたの? 何だが元気がないみたいだけど」
ほむら「……サンバード関連の真実を知ったせいよ」
まど神「別に気にしなくてもいいのに。それにほむらちゃんはどこの世界でもえっちなんだから」
ほむら「……え?」
まど神「例えば薄い本の世界。それにこの前見た若本QBの世界とQB相手に長生きしてるほむらちゃんが性欲を叩きつける世界。受けか攻めかの違いこそあるけど、ほむらちゃんはどこの世界でもえっちだし」
ほむら「な、何を言ってるの……?」
まど神「有り得たかもしれない世界や有った世界の中には、ほむらちゃんがたっくんと結ばれた世界もあってね。たっくん相手だと大抵受けなんだよ、ほむらちゃんは」
ほむら「」
まど神「博さん相手だと、はしたない女だって嫌われたらどうしようって言う気持ちと、恥ずかしいって気持ちが強くて、自分から博さんを誘えないんだよ」
ほむら「さ、誘うって何を?」
まど神「もうほむらちゃんたら。カマトトぶっちゃって。ホントはわかってるくせにー。芳文君と言う結果が存在してるでしょ」
ほむら「」
まど神「恥ずかしくて口で誘えないから、わざわざエッチな下着とか用意して、博さんをその気にさせようとするんだもん。ほむらちゃんかわいい」
ほむら「」
まど神「まあ流石に別世界の自分とはいえ、あんなに夜が激しいなんてびっくりしたよね」
ほむら「」
まど神「ティヒヒ。ほむらちゃんのえっち♪」
ほむら「まどかのばかあぁぁぁぁぁぁっ!! うわあぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
730 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/31(水) 00:37:45.77 ID:5cuY4mQho
――あっちの世界――
ジョージ「サンバード。ひとつ聞いてもいいか」
博 「なんだ?」
ジョージ「先日奥さん相手にしていると言っていた、前戯でたっぷり30分、抜かずに3回、フィニッシュは必ず膣内で、最低3R、後戯も最低30分の抜かずにの3回と3Rの意味が良くわからなかったのだが」
博 「……まず前戯で軽くイカせて準備OKの嫁の凹ジョイントに、俺の凸ジョイントを結合するだろ」
ジョージ「ああ」
博 「大抵、連結合体した時点で1回嫁が果てる」
ジョージ「ふむ」
博 「そしたら、イッてる最中の嫁を責める。イッたばっかで敏感になってるから、トロ顔でイキまくる。これで2回」
ジョージ「ふむ」
博 「嫁が涙目で絶頂を迎えたら、いったん動くのをやめて優しく頭を撫でてやったりしながら小休止して、それから再開。今度は俺も一緒に果てて1発嫁に注ぎ込む。これで1R終了だ」
ジョージ「ふむ」
博 「連結したまま、射精せずにイカせるから抜かずに3回だ」
ジョージ「なるほど。君が一度子種を出すまでの間に、先に奥さんを2回絶頂に導くという事か」
博 「そうだ。1R終えてしばらく繋がったまま抱き合ってる内に、俺の凸ジョイントが復活する。そしたら第2R開始だ。このRも俺が出すまで何度か嫁をイカせる」
ジョージ「ふむ」
博 「流石に第2Rが済むと俺も嫁も大事な所がすごい事になってるからな。一緒に風呂に行って洗いっこしながら第3Rだ」
ジョージ「ふむ」
博 「風呂場で事を終えたら、寝室に戻っていちゃいちゃしながら寝る。これで終わりだ」
ジョージ「なるほど地球人の生態がよくわかった。ありがとう」
博 「誰にも言うなよ。お前とは付き合い長いし、お前自身が雌雄同体で地球人とは性に対する価値観が違うから、あえてぼかしながら教えてやってるだけだからな」
ジョージ「ああ。わかった」
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
731 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/31(水) 00:39:31.16 ID:5cuY4mQho
――まど界――
まど神「ごめんねほむらちゃん。機嫌治してよ」
ほむら「まどかなんて、もう知らない」
まど神「ごめんね。今のわたしってすべての世界、すべての過去未来が見えちゃうんだ。わたしの最高の友達のほむらちゃん達が元気でやってるか気になって、つい別世界を見ちゃうんだよ」
ほむら「……」
まど神「ごめんね。気持ち悪いよね……。ほむらちゃんはこんなわたしの為に頑張ってくれてたのにね。わたし、最低だよね……」
ほむら「……そんな事ない!! まどかが私の事そんなに気にかけててくれてすごく嬉しい」
まど神「ほむらちゃん……。ほむらちゃんがわたしの友達で良かったよ……」
ほむら「マドカー!!」抱
まど神「ホムラチャン!!」抱
まど神(計画通り)ニヤリ
ほむら「……そう言えば、ブレイブ星人が芳文に契約を持ちかけてたけど、もし契約したらどうなるの?」
まど神「変身ブレスか変身ベルトか変身携帯を授けられて、宇宙警察に所属する事になるよ」
ほむら「デメリットは?」
まど神「特にないよ。強いて言うならもし宇宙犯罪者に負けたら……くらいだけど、変身スーツや巨大ロボを与えられるから、よっぽど強い敵に負けない限りまず命を落とす事はないし」
ほむら「そうなんだ……」
まど神「それに宇宙警察ってお給料いいんだよ。博さんは毎月手取りで100万円もらってるし、夏と冬のボーナスだって約5か月分もらってるし」
ほむら「命をかけてる割に安い気がするわ」
まど神「今は後進の勇者たちの育成とかデスクワークしかしてないしね。それにたしかニトロ星人を倒した時に2億くらいの特別ボーナスが出てるよ」
ほむら「」
まど神「別世界のほむらちゃんのパートナー達の中では、別格だよ博さんは。人付き合いの苦手なほむらちゃんに専業主婦させて働かせず、月に2,3回外食させてくれて、旅行だって年3回は連れてってくれるし」
ほむら「あっちの私は勝ち組なのね」
まど神「そうなるのかな。相手はあっちの世界最強の生き物だけど、あっちのほむらちゃんにとっては記憶喪失の自分を拾ってくれて、居場所を作ってくれた頼りになる警察官の旦那様でしかないし」
ほむら「別世界の私の旦那様とはいえ、人の夫を最強の生き物呼ばわりはないんじゃないかしら」
まど神「ごめんね。ほむらちゃん」
ほむら「まあ別にいいけどね」
まど神「ほむらちゃん。今後も一緒に別の世界のほむらちゃん達を見守っていこうね」
ほむら「うんっ」
おしまい
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
732 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/08/31(水) 00:45:50.11 ID:5cuY4mQho
マミさん「鹿目さん……あんなに素直で可愛かったのに……」
さやか「まどかのあんな黒い顔、初めて見たよ……」
あんこ「人って変わるもんなんだな……」
ほむら「まどかー!!」
まど神「ウェヒヒヒヒ♪」
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
733 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/31(水) 00:47:16.80 ID:DICSx64j0
乙ですたー
って言うか、何と言う勝ち組ほむほむな円華さん
でも描写を見る限り生活自体は派手過ぎずつましい感じの円満家族で、まどっちもそこに惹かれてるんだろうな
・・・しかしこのご家庭、貯金額が幾らになっている事やら・・・w
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
734 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/31(水) 01:23:37.57 ID:rlNSlHh1o
これなら余裕で新築建てられるだろww
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
735 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/31(水) 11:49:44.00 ID:QY6h+dA40
宇宙警察も相当なチート組織だが、まど神自身を指名手配対象にすることは無いんだろうか?
え〜と手配理由は
>今のわたしってすべての世界、すべての過去未来が見えちゃうんだ
覗き?
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
736 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/31(水) 12:13:27.14 ID:QY6h+dA40
新人女神様、覗きで逮捕
202345,08,14
新婚夫婦の寝室、浴室、トイレをのぞいたとして、宇宙警察、銀河系辺境支部、第234566発出所は、建造物侵入などの疑いで、神界グンマー県まど界一丁目1−1在住、鹿目まど神容疑者(50456)を現行犯逮捕した。
逮捕容疑は14日午前11時25分ごろ、銀河系辺境部大田舎群大字太陽系小字地球の現地駐在員宅の寝室、浴室、トイレに侵入し、のぞいたとしている。
同署によると、トイレを利用しようとした駐在員の妻が、個室のドアの下からのぞいているまど神容疑者を発見。「この人、のぞき」と叫び、近くにいた駐在員の夫が取り押さえたという。
調べによるとまど神容疑者は「ほむらちゃんの新婚生活を見学したかった、今は反省している」と意味不明な供述を繰り返しているという。
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
737 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/08/31(水) 13:31:07.80 ID:wAzs2noZo
乙ワルタトーレ!
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
738 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/09/02(金) 18:33:22.73 ID:ct3HiQDAO
この話、もし芳文が女の子だったらどうなってたんだろう?
もし女の子だったら、出生の経緯とかでかなりの因果がありそうだから、母親よりも強い魔法少女になれそうだ
かなり早い段階でマミさんと魔法少女コンビを組んだりとか
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
739 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/05(月) 00:03:24.09 ID:sheIMq2no
杏子「文化祭の巻」
740 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/05(月) 00:05:17.64 ID:sheIMq2no
――11月上旬のある日の夜。
「そういえば3日後にうちの学校で文化祭があるんです」
まどかが円華と青樹家の夕食を一緒に作りながら、見滝原中学文化祭の話題を口にした。
「そうなの? 芳文は一言も言ってなかったから初耳だわ」
「そうなんですか? うちの中学校って文化祭を生徒の保護者限定で公開してるんですよ」
「それは知らなかったわ。前の世界でも、ループしてた時でも、私あの学校に文化祭の日まで在籍していた事がなかったから」
「じゃあ、良かったら見に来てください。わたし、案内しますから」
まどかがそう言ってにっこり笑うと、円華も微笑みながら答える。
「そうね。それじゃお言葉に甘えちゃおうかしら。でも、まどかちゃんのお父さん達はいいの?」
「それが丁度弟の幼稚園の遠足と重なっちゃうんですよ。保護者同伴の遠足だから、パパはタツヤに付いててあげないといけないし、ママはお仕事休めないから……」
「そう。一度ご挨拶しておきたかったのだけど」
「家の両親も円華さんと同じ事言ってました。だからまた次の機会に」
「……そうね」
おたまでスープを掬って小皿に移し、味見をして円華はまどかに言う。
「ん。美味しく出来たわね」
「えへへ……。よかった」
「さあ、次は魚を焼きましょうか」
「はい」
「まどかちゃんのクラスは何をするの?」
「劇です。ロミオとジュリエット」
「定番ね」
「ロミオ役がさやかちゃんで、ジュリエット役がほむらちゃんなんですよ」
まどかがいたずらっぽく笑いながらそう言うと、円華は少し困った顔で笑いながら答える。
「この世界の私も大変ね。あの子の性格で大勢の前で演劇なんて」
「あはは……。でもほむらちゃんなりに一生懸命がんばってますよ」
「そう。あの子は友達に恵まれて幸せね」
そんな会話をしながら二人で料理を完成させると丁度、博が帰ってきた。
まどか達は4人で談笑しながら夕食を取ったのだった。
741 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/05(月) 00:17:01.22 ID:sheIMq2no
☆
「なかなか見ごたえのある劇だったな」
「そうね」
有給休暇を取った博と一緒に円華は見滝原中学を訪れていた。
まどかのクラスの出し物を鑑賞して、体育館から出て二人は歩きながら会話をする。
「それにしてもあのジュリエット役の女の子、初めて会った時の円華にそっくりだったな。驚いたぞ」
「……そう? あの子、私の遠い親戚なのよ」
「そうなのか?」
「ええ。あの子のおばあさんと私の母がはとこ同士なのよ。流石にもう親戚づきあいがないから、ほとんど他人も同然なんだけどね」
「そうだったのか」
「円華さーん、おじさーん」
二人がそんな会話をしていると、まどかが駆け寄ってきた。
「まどかちゃん、もうクラスの方は良いの?」
「はい。わたしは元々洋裁担当だったし、劇も無事終了しましたから」
「そっか。それじゃ悪いけどおじさんたちを案内してくれるかい?」
「はいっ」
「ところで芳文のクラスは何をしているのかしら?」
「同じクラスのマミさんに聞いたら喫茶店だって言ってました」
「芳文に聞いてないの?」
「なんでか知らないんですけど、聞いてもはぐらかされちゃって」
「親だけでなく、こんなかわいい彼女にまで何も言わないとは……これはお仕置きが必要だな。円華」
「そうね」
「あ、あはははは……」
どこまで本気なのかわからない青樹夫妻の言葉に、まどかは困った顔で笑う事しか出来なかった。
742 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/05(月) 00:19:20.64 ID:sheIMq2no
☆
「まどかちゃんは芳文と一緒に見て回らないのかい?」
「時間が出来たらメールするから、それまでぶらぶらしててって言われてます」
「自分のクラスに来いって誘われなかったのかい?」
「言われてみれば、わたし誘われてません……」
博はまどかの寂しげな顔を見て、まどかの頭の上に優しくぽんと手を乗せてまどかに微笑みながら口を開く。
「まどかちゃん、おじさん達を芳文のクラスに案内してくれるかい」
「……はいっ」
まどかは笑顔で快諾して、二人を芳文のクラスに連れて行く。
「いらっしゃいませ。どうぞ寄っていってください」
教室の入り口で、妙に野太い声の体格の良い女子生徒が青樹夫妻に声をかける。
博と円華はお互いの顔を見合わせてから、中へと入っていく。
「おかえりなさいませ。ご主人様。お嬢様」
『……』
教室の中に入った青樹夫妻とまどかを待っていたのは、メイド服を着てロングヘアのかつらを着けた芳文だった。
左胸には『芳華』と源氏名が書かれたハート型のバッジが付けられていた。
営業スマイルで、両手で胸元にハートの形を作ったまま、芳文が固まる。
「……芳文か?」
「あなた、その恰好……」
「芳文……さん?」
「なんでまどかと父さん達がここにいるんだよ!!」
芳文がパニくっていると、ウェイターの服を着て男装したマミがやってくる。
「芳華ちゃん。いつまでも立ってないでお客様をテーブルに連れて行って」
マミにそう促され、芳文は渋々と従う。
「……どうぞ。こちらのテーブルへ」
不機嫌そうな声で、無理矢理愛想笑いを浮かべながら、両親を席に誘導する芳文。
まどかは三人の後を追う前に、マミに小声で尋ねる。
「マミさん、この喫茶店って……」
「コスプレ喫茶よ。青樹君の提案で決まった、ね」
743 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/05(月) 00:19:58.83 ID:sheIMq2no
――マミの回想。
『それじゃ、このクラスの出し物だけどみんなやりたい物って何がある?』
ワイワイガヤガヤ……。
『うーん。意見が見事に分散しまくってるなあ。しかも他所と被りまくりそうな物ばっかだし。……青樹、お前さんなにか意見はないのか?』
『天瀬。なぜ俺に振るんだ』
『何となく』
『何となくって。まあいいけど。そうだなあ……』
キョロキョロ。
『!! 閃いたぞ、天瀬』
『何?』
『コスプレ喫茶』
『……ほう。どんな内容のコスプレだね』
『うさぎとか』
『何? バニーガールとな!?』
『流石青樹だ!!』
『学校の中で堂々と昼休みに下級生の彼女といちゃつくだけでなく、クラスの女子にエロいコスプレさせようなんて!!』
『お前こそ真の漢だ!!』
『そこに痺れる憧れるぅぅぅぅぅっ!!』
『そんな意味で言ったわけじゃねえぇぇぇぇぇえぇっ!! 俺の言ったうさぎってのは着ぐるみの事だ!!』
『だったら、なんで巴さんの方を見て言ったんだ?』
『いや、巴さんてふかふかしてそうだから』
『それでバニーガールか!! 流石だ青樹!!』
『だから違うって言ってるだろ!! 大体、色々と規格外な巴さんならバニーガールの格好も似合うだろうが、他の子達にそんな恰好しろなんて残酷な事言えるかよ!!』
『青樹君!! それどういう意味!!』
『今、あなたはクラスの女子全員を敵に回したわ!!』
『えええええっ!? 誤解だ!!』
『ねえ、天瀬君』
『何? 巴さん』
『ちょっと、このお馬鹿さんに制裁を加えてきていいかしら』
『どうぞ』
『さあ、行きましょうか。青樹君』
『ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! まどか、助けて!!』
744 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/05(月) 00:21:06.97 ID:sheIMq2no
――30分後。放課後の教室にて。
『ひでえ……。わざわざ演劇部から借りてきた女物の服を着させられてかつらまで……。あんまりだよ。こんなの絶対おかしいよ……』
『……』
『畜生……。みんなして俺の事キモいって思ってんだろ。いいよ。笑えよ。どうせ俺なんか……』
『……美人だ』
『……はい?』
『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! 青樹ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! なんでお前男に生まれてきたんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
『何言ってやがるてめえら!! やめろおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! 近づくなあぁぁあぁぁぁぁぁっ!! 妙な目で俺を見るなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
――マミの回想終わり。
「制裁として女装させたらあんまり美人で可愛かったんで、女子の一人が言ったのよ。どうせなら男女正反対のコスプレ喫茶にしようって。中学生なんだからあんまりいかがわしいコスプレは良くないからって」
「……それでこうなったんですか?」
「ええ。何故か男子がみんな乗り気になっちゃってね」
「芳華ちゃーん。お冷おかわりー」
「芳華ちゃーん。こっちはコーヒーおかわりねー」
「芳華ちゃーん。こっち向いてー。はい、チーズ」
「……ちょーっと待っててねー、ご主人様」
「うわあ……。芳文さんの笑顔、物凄く引きつってる……」
「青樹君にしてみたらものすごく屈辱的なんでしょうね。男性としての自分を全否定されたような物なんだもの」
「言われてみれば、ここにいる男子全員芳文さんを見てるような……」
「まあ実際、今の青樹君って美人だしね」
「あ、あははは……」
まどかは大きな汗をかきながら、出来る事なら暴れたくても暴れられず、大人しく仕事をするしかない彼氏を見守る事しか出来なかった……。
「……なあ、円華。俺達の息子人気者だな」
「……そうね。でも、すごく複雑な気分だわ……」
「円華に似て良かったな。もし俺に似てたら、悲惨な事になってただろう」
「今も十分悲惨だと思うわ。芳文が何も言わなかった理由ってこれだったのね。ちょっとかわいそうな事をしたわ」
「……そうだな。夕飯はあいつの好きな物作ってやってくれ」
「ええ」
青樹夫妻はかわいそうな息子をとても優しい目で見守りながら、コーヒーを味わって帰っていったのだった……。
745 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/05(月) 00:23:22.36 ID:sheIMq2no
☆
「……はあ」
ようやく解放された芳文は、まどかと一緒に廊下を歩きながらため息をついた。
「芳文さん、元気出して」
「……死にたい」
「嫌だよ。芳文さんそんな事言わないで。死んじゃ駄目」
「だってさあ……。親に見られるだけならともかく、好きな子にあんな恰好させられてるとこ見られたんだぜ……」
「わたしは気にしてないよ。それに、クラスの出し物だったんだからしょうがないよ」
「……」
まどかに慰められて、芳文が俯いていた顔を上げると、まどかは芳文の顔をじっと見つめて口を開く。
「それより、わたしは芳文さんが隠し事してた事の方がショックだったよ」
「……ごめん。あんな恰好させられてるの見られたくなくて。まどかの前では少しでも人に誇れる彼氏でいたかったから……」
「……もう隠し事しちゃ嫌だよ」
「……ああ。ごめん、まどか」
芳文が謝ると、まどかはにっこりと微笑んで芳文の手を取り、校庭の方へ向けて歩き出す。
「うん。あ、芳文さん、フォークダンスが始まるよ。行こっ」
「……そうだな。行こうか」
まどかの笑顔を見て、芳文もまた笑顔で返事を返し校庭へ二人で向かったのだった。
――数日後。朝の通学路でさやかと合流して歩いていた時の事だった。
「あ、そうだ。まどか、はいこれ」
「どうしたの、さやかちゃん。これ何?」
「いい物手に入れたからさ。まどかにプレゼント」
そう言って、さやかは封筒をまどかに手渡す。
「あ、芳文さんの写真だ」
中身は文化祭の時の写真だった。
「結構欲しがる人多いんだよ」
「え? 芳文さんの女装写真なのに?」
「まあ写真だけ見ると美人の女の子にしか見えないしね」
「あ、あははは……。本人の前で言っちゃ駄目だよ。気にしてるみたいだから」
まどかがそう言ったその時だった。
「……どうせ俺なんか」
「うわ!? 先輩!?」
「芳文さん!?」
横道から歩いてきた芳文に、すべて聞かれてしまっていたのだった。
「畜生!! コスプレ喫茶なんか大っ嫌いだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
透き通るような青空に芳文の悲しい叫びが木霊して消えていくのだった。
おしまい
746 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/05(月) 00:27:51.21 ID:sheIMq2no
杏子「もし女の子だったら、ただのほむら2号だな。じゃあなー」ノシ
747 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/05(月) 00:32:33.82 ID:HdYdE+FI0
乙ですたー
ああ…本編のあの時のネタが現実になってしまったのか…
芳文、オトメン顔で良かったなぁ
いかにもな野郎顔だったら、ある意味もっと悲惨だったろうからw
748 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/09/05(月) 03:01:37.12 ID:ZwvyApxao
乙でーす
久しぶりにマミさんたち登場で嬉しかったです
でも同じクラスのマミさんはともかく
さやかとかは芳文と面識無くなってんだなあと思うと切ないねえ
749 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/06(火) 10:06:06.99 ID:8VieyUISO
こういう感じの話大好きだ…。無限に投下してくれ。
750 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/08(木) 01:50:43.04 ID:eiVthZibo
――11月23日祝日の朝。
『ごちそうさま』
「はい。お粗末様」
一家3人での朝食を終えて、芳文が席を立つ。
「さてと。朝飯も食ったしこれから何しようかな……」
「せっかくの祝日なのに、まどかちゃんとデートしないの?」
母親の問いに芳文は後頭部を掻きながら答える。
「まどかとは毎日会ってるし、俺もまどかも中学生だぜ。そんな頻繁にデートしたくても金がないしな。それに今日はお母さんが仕事休みだから、一緒に買い物に行くんだってさ」
「そうなの?」
「ああ。買い物が早く終わればここに来るかもしれんが、今日は来ないものと思っといた方が良いだろうな」
「そう」
「ん。じゃ俺部屋に戻ってるから」
そう言って芳文は自分の部屋に戻っていった。
☆
「――遂に完成したぞ。まどかと遊びに行ったり勉強したりで、ここまで来るのに結構手間取ったな……」
以前購入したガンダムダブルエックスのプラモデルを遂に完成させて、芳文がどんなポーズで飾ろうかと考えていた時だった。
――コンコン。
不意にドアがノックされ、芳文は振り返りもせず返事を返す。
「なんか用?」
――ガチャ。
円華がドアを開けて芳文に要件を話す。
「芳文。ママ達イオン見滝原店にお買い物に行くけど、あなたも来ない?」
「この年で親と一緒に買い物はなあ……」
「何生意気言ってるの。食品の買い出しも兼ねてるから荷物持ちに来なさい。ついでにあなたの新しい服も買ってあげるから」
「服なんざ、適当でいいよ。母さん適当に選んで買ってきてくれ」
「……前に言ったわよね。男でもお洒落に無頓着だと、まどかちゃんに嫌われるわよ」
「さあ母さん。早く買い物に行こう。早くしないと日が暮れてしまう」
「……はあ。この変わり身の速さは誰に似たのかしら」
円華は呆れながらため息をつくのだった。
751 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/08(木) 01:51:11.67 ID:eiVthZibo
☆
「それじゃ行くか」
博が愛車のHondaインサイト(ミラノレッド)のハンドルを握りながら、助手席の妻と後部座席の息子に声をかける。
「ええ。お願い」
「やれやれ。この年で一家で買い物かよ」
「……芳文ももう、そんな口を利くようになったんだな。昔は俺や円華がほんのちょっと出かけるだけでも、置いていかれるのが嫌で泣きながら後を追いかけてきたのにな」
「いつの話だよ!!」
「懐かしいわね。そんな時期もあったのよね……」
「……ふん」
そんな会話をしながら、青樹一家を乗せたインサイトが見滝原市郊外に建設された複合巨大デパート、イオン見滝原店に到着した。
「とりあえず、ダーリンの服と芳文の服を見ましょうか」
立体駐車場から店内に移動しながら、円華が夫と息子にそう言った時だった。
「あ、円華さん」
「あら? まどかちゃんじゃない」
3階の売り場前エスカレーターを降りた所で、偶然まどかに出会い声をかけられた。
「まどか、そちらは?」
「パパ、こちらが円華さんだよ」
まどかの後ろには、タツヤを抱いた知久と詢子が立っていた。
「はじめまして。まどかの父の鹿目知久です」
「はじめまして。青樹円華と言います。いつも息子がお世話になって……」
「いえ、こちらこそ、いつもまどかが良くしていただいて……」
知久と円華はお互いに頭を下げあいながら、挨拶をする。
「お母さんは会社で大変ご活躍されているとか……」
「いえいえ。お父さんこそ、ご立派なお仕事をされているとか……」
すぐ側では、博と詢子がお互いに頭を下げあいながら、挨拶をしていた。
(……なんか、組み合わせに違和感を感じるのは何故だろう)
まどかと芳文は両親達の様子を見ながら、思わずそんな事を思ってしまうのだった……。
752 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/08(木) 01:52:14.37 ID:eiVthZibo
☆
「こんな所で立ち話もなんですし、どうでしょう。喫茶店にでも入りませんか。子供達も退屈そうですし」
博がそう切り出すと、詢子と知久はお互いの顔を見合わせてから、博と円華に微笑んで頷く。
「そうですね。それじゃ行きましょうか」
知久がそう答え、まどか達はそれぞれの両親に連れられて、イオン内の喫茶店に向かうのだった。
「失礼ですが、お父さんは警察でどのようなお仕事をされているのですか?」
喫茶店でテーブル越しに対面する形で、席に着いた詢子が目の前に座る博に尋ねる。
「今は新人の教育とデスクワークですね。あ、これは私の名刺です」
そう答えて、名刺を手渡す。
「……宇宙警察地球署 群馬支部 機動部隊大隊長サンバード?」
詢子が名刺に書かれている内容を見て絶句する。
「失礼。そちらは間違いです。本当はこちらです」
そう言って、博は地球人相手用の名刺を手渡す。
「あはははは……。失礼。お父さんはユーモアのセンスがおありのようで。流石、芳文君のお父さん。そう言う所そっくりですね」
「……円華」
「どうしたの?」
「俺は今、猛烈に感動している」
『え?』
博の言葉に鹿目夫妻は揃って、頭の上に?マークを浮かべる。
「初めて、芳文を俺に似ていると言ってくれる人に出会えた。物凄く嬉しい」
「え、えーと……。そうなんですか?」
知久が困惑しながら尋ねると、博はこくりと頷いて答える。
「ええ。ほら、せがれは妻に似ましてね。赤ん坊の頃から連れて歩いていると、友人知人はおろか、見知らぬ老夫婦にまで母親似でかわいいとしか言われなかったんですよ」
『……』
「誰一人、お父さんに似ているねって言ってくれた事がなかったんですよ……」
そう言って寂しそうな顔で遠い目をする博。
「……いやいや、確かに顔はお母さんに似ているなと思いますけど、お父さんにも似ていると思いますよ」
知久がそうフォローを入れると、博は嬉しそうな顔で知久に答えるのだった。
「そうですか!!」
両親達のやりとりを見ながら、通路一つ隔てた隣の席でまどかと芳文は、タツヤの面倒を見ながらそれぞれ紅茶を飲む。
「家のパパとママ、円華さん達と打ち解けたみたいでよかった」
「そうだな。まさかこんな所で鉢合わせするとは思わなかったけど、上手く行って良かった」
ゼリーのシロップでべたべたにしている、タツヤの口元を紙ナプキンで拭ってやりながら、芳文はまどかに答える。
芳文がちらりと両親達を見ると、和気藹々と歓談していた。
「さ、それじゃ洋服を見に行きましょうか」
喫茶店に入って四十分くらいしてから、席を立った円華が芳文にそう声をかける。
「ああ」
芳文がそう言って立ち上がると、詢子がまどかとタツヤに声をかける。
「ほら二人とも。あたしらも一緒に行くよ」
「え?」
「せっかくだから一緒に回る事にしたんだよ。芳文君とまどかとタツヤの服を買ったら昼飯食いに行って、それからあたし達と旦那達の服買って、食材買って帰る。これが今日のスケジュールな」
「うんっ。ほら、タツヤ行くよ」
「おー」
嬉しそうな顔で、まどかはタツヤを抱き上げて席を立つのだった。
753 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/08(木) 01:53:20.55 ID:eiVthZibo
☆
「……えと、どうですか?」
「良く似合っててかわいいわ」
「そ、そうですか?」
「円華さん、いいセンスしてるね」
「ありがとうございます、詢子さん」
「……女の買い物って長いなあ」
「芳文君も今の内に慣れておくといいよ」
「はあ」
「どこの家でも女の買い物は長いモンだしな、芳文」
「……まあまどかが嬉しそうだからいいんだけどさ」
「芳文さん、次はこれね」
「あ、ああ。わかったよ。まどか」
「芳文君。これはどうだい?」
「いいんじゃないですか? お母さん」
「芳文、これはどうかしら」
「どっちでもいいよ」
「……どうしてママにだけ、そんなにおざなりな対応なのかしら?」
「十五才の息子にママとか言うな。お母さんにマザコンだと思われたらどうしてくれるんだ」
「芳文君はマザコンなのかい?」
「違います。俺はまどコンです」
「まどコンってなんだい?」
「まどか一筋って事です。お母さん」
「そうかそうか。こんなに愛されてあたしの娘は幸せもんだね」
「も、もうママも芳文さんもやめてよ」
「あらあら」
穏やかな時間が過ぎていく。
一緒に店内を見て回り、お互いの子供達の服を選びあったりしてる内に、円華達はすっかり意気投合したのだった。
754 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/08(木) 01:54:10.48 ID:eiVthZibo
☆
「じんぐーべーるじんぐーべーる」
イオンの中のレストランでちょっと遅めの昼食を取り、店内を再び見て回っているとクリスマス商戦のグッズ売り場に差し掛かり、まどかと芳文の手を両手で握りながら、タツヤが歌を歌ながら歩く。
「そういや来月はもうクリスマスなんだよな」
そう言って、芳文はまどかの顔を見る。
「もうそんな時期なんだね」
「高校生だったら、バイトとかしてまどかと一緒に、夜景の見えるレストランにでも行くんだけどな」
「……わたし達、まだ中学生だもんね」
「そうだな。出来ればふたりで夜の街をデートとかしたい所だけど、夜にふらふら出歩くわけにもいかないしな。とりあえず、夜になるまでのデートにしようか」
「……うんっ」
「まあ俺達がもう少し大人になるまでの辛抱だな。それまでは夜は家族と過ごすしかないな」
「……そうだね」
「あー、はやく一人前の男になりたい。そしたら堂々と夜でもまどかとデート出来るのに」
「もう芳文さんたら。でも、嬉しいな……」
「ん。まあ焦ってもしょうがないか。ちょっとずつ、大人になろう。俺とまどか。二人で一緒に。誰にでも胸を張れる大人にさ」
「うんっ」
「やれやれ。両親が四人もすぐ側にいるのにこの子達は堂々とまあ……」
まどか達の先を歩いていた詢子が、にやにやと笑いながら振り返りまどか達に声をかける。
「げっ? こんだけ周りが騒がしいのに聞こえてたんですか?」
「ふふん。大人は何でも御見通しなのさ」
そう言って詢子が胸を張ると、円華達も芳文達に向き直り笑う。
芳文とまどかが顔を赤くすると、タツヤがにぱーっと笑ってはしゃぐ。
「あーっ、ねーちゃとにーちゃおかおまっかー」
クスクスと母親たちが笑い、ハハハと父親たちが笑う。
まどかと芳文が赤くなって俯いていると、知久が円華に切り出す。
「どうでしょう。親睦を深める意味も込めて、両家合同でクリスマスパーティーをしませんか?」
「お、いいね」
詢子が夫の意見に賛成すると、円華と博は顔を見合わせてから、鹿目夫妻ににっこりと微笑んで頷く。
「それは楽しそうですね。是非やりましょう!!」
「家はいつも3人だけなので、大勢でのパーティーなんて久しぶりです」
「決まりだね。よかったね、まどか。これで夜も芳文君と一緒にいられるよ」
詢子がそう言って笑うと、まどかは顔を赤くしたまま嬉しそうに芳文の顔を見る。
「……今年のクリスマスは楽しくなりそうだな」
「……うんっ」
おしまい
755 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/08(木) 01:55:10.95 ID:eiVthZibo
杏子「実はほむら☆マギカと連動してたり。じゃーな」ノシ
756 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/08(木) 02:29:41.76 ID:pVJY8JCV0
乙ですたー
って、以前にオレが書き込んだ妄想シチュが使われてるしww
こういうのって、ちょっと嬉しいもんですな
757 :
なすーん
[なすーん]:なすーん
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`ヽ `ヽ、-v‐'`ヾミ| |/三ミヽ `iーr=< ─フ
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なすーん
[なすーん]:なすーん
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なすーん
[なすーん]:なすーん
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762 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/09/08(木) 09:08:30.71 ID:7QeiQBWUo
>>755
乙です
ほむら☆マギカもそうだけど、クリスマスネタも楽しみにしてます
しかし高校生でも夜景の見えるレストランは早いと思うぜチクショーモゲロ
763 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/11(日) 21:01:01.15 ID:e7+1zB640
何度目になるのかな
一話から読み返してるんだけど、細かいところに気をつけて見てると、キュゥべぇがどんどん
まどか達を好きになっていくのが良く解る
猫に生まれ変わったキュゥべぇには、それこそ尻尾が二股になるまで長生きして
鹿目家の幸せな一員でいて欲しいな
764 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/12(月) 23:35:35.21 ID:ROoDUqEP0
まどか以外のルートがもし存在するのであれば、何故キュゥべぇに感情が芽生えたのかという謎も…
この場合はマミルート?
765 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/14(水) 19:46:56.62 ID:PhqRYtkk0
ちなみに若返りに魔法使わないでそのまんまの外見で教師とかで潜入していたら…
>魔法熟…もとい魔法女教師ホムホム
ttp://seiga.nicovideo.jp/seiga/im1423823
766 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/14(水) 19:52:44.93 ID:PhqRYtkk0
ちなみに若返りに魔法使わないでそのまんまの外見で教師とかで潜入していたら…
>魔法熟…もとい魔法女教師ホムホム
ttp://mjv-art.org/jvwall/get_image/140218-3025x2344-mahou
+shoujo+madoka+magica-akemi+homura-girl-long+hair.jpg
767 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/14(水) 19:54:25.75 ID:PhqRYtkk0
ちなみに若返りに魔法使わないでそのまんまの外見で教師とかで潜入していたら…
>魔法熟…もとい魔法女教師ホムホム
ttp://mjv-art.org/jvwall/get_image/140218
768 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/14(水) 22:09:08.51 ID:BYr5SclJo
目と鼻と口が離れすぎ…
769 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
:2011/09/15(木) 15:05:08.16 ID:GyzwJBpAO
これが…大人ほむほむ…
まるで成長していない…
チェストが…
770 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/16(金) 23:38:58.76 ID:2u4qg/wwo
ぼく、キュゥべえ。
かなめけのペットだよ。
よくおぼえてないけれど、ぼくはうまれてからすぐにママとひきはなされて、おおきなはこのなかにいれられたんだ。
ママとはなればなれになって、おなかもすいてて、だれかたすけてってぼくがないてたら、まどかよりすこしおおきいにんげんのおとこのこたちが、ぼくのいれられてるはこをおおきなみずたまりにうかべたんだ。
はこがゆらゆらとゆれるなかで、ひっしにたすけてってないてたら、まどかがぼくをたすけてくれたんだよ。
まどかにたすけられたぼくは、それからまどかのいえで、まどかといっしょにくらすようになったんだ。
番外編 ぼくはねこである
「マーマーおーきーてー」
あさ。たっくんがママのうえにのって、ゆさゆさするけどママはおきてくれないんだ。
そんなときはぼくのでばんだよ。
「ミーミー」
ぺろぺろ。
「うわひゃっ!? くすぐったいって!!」
ぼくがママのほっぺをなめると、ママはびっくりしてすぐおきるんだよ。
「ママおきたねーきゅーべー」
「ミー」
にこにこわらってるたっくんにへんじをすると、ママがぼくとたっくんをだっこしていうんだよ。
「こーのいたずら坊主達がーっ!!」
「うぇひひ、ママくすぐったいよぉ」
「ミー」
そのままママにだっこされて、たっくんといっしょにパパのところにつれてかれるんだよ。
「ママおきたよー」
「ミー」
「ありがとう、タツヤ、キュゥべえ」
ごはんをつくってるパパが、やさしいかおでたっくんとぼくにわらってくれたよ。
「きゅーべー、ママたちくるまであそぼー」
「みー」
たっくんとボールをころころしてあそんでると、ママといっしょにまどかがやってきたよ。
771 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/16(金) 23:39:43.69 ID:2u4qg/wwo
「ミー」
だいすきなまどかのそばにあるいていくと、まどかはやさしいかおでぼくをだっこしてくれていうんだよ。
「おはよう、キュゥべえ」
「ミー」
ぼくがまどかのほっぺをぺろっとなめると、まどかはめをほそめてわらってくれるんだよ。
『いただきまーす』
みんながあつまったらあさごはん。
さいしょはにがてだったドライフードもいまはぜんぶたべられるよ。
「それにしても、キュゥべえは頭いいよな」
ママがコーヒーをのみながら、ぼくのあたまをなでてくれたよ。
「そうだね。まるでこっちの言ってる事がわかってるみたいだよ。しつけも簡単だったしね」
えっへん。トイレだってちゃんとおしえられたところでできるもん。
「きゅーべーおりこうさんだもんねー」
たっくんがわらいながらぼくをほめてくれたよ。
「ミー」
たっくんもおりこうさんだよ。
ぼくがそういうと、まどかがわらいながらたっくんにいったよ。
「キュゥべえがたっくんもおりこうさんだよって」
「えへー」
まどかにあたまをなでられて、たっくんがうれしそうにわらうよ。
そんなふたりをみてママとパパもわらうよ。
みんななかよし。
ぼくはそんなみんながだいすきだよ。
「さてと、それじゃ仕事に行くかな」
「わたしもそろそろ学校に行かないと」
そういって、ママとまどかがでかけていくよ。
もうすこししたら、たっくんもようちえんにいっちゃうから、ぼくとパパだけになっちゃうんだ。
まどかたちがいなくてさびしいけど、ひなたぼっこしてたらすぐにかえってくるから、パパといっしょにぼくいいこでおるすばんするよ。
「きゅーべー、ただいまー」
「ミー」
パパといっしょにおひるごはんをたべてすこしすると、おむかえにいったパパといっしょにたっくんがかえってきたよ。
「きゅーべーあそぼー」
「みー」
たっくんといっしょにあそぶよ。ボールをころころしたり、いっしょにおにわをはしったり。
ぼくとたっくんはなかよしなんだよ。
たっくんといっぱいあそんで、たっくんといっしょにおやつをたべて、いっしょにおひるねしてると、まどかがかえってきたよ。
772 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/16(金) 23:40:11.10 ID:2u4qg/wwo
「ただいまー。パパ、芳文さんも一緒だよ」
「おかえり、まどか。芳文君いらっしゃい」
「お邪魔します」
「芳文さん、わたしの部屋に行こ」
「ああ」
「ミー」
「キュゥべえ、ただいま」
ぼくがまどかにおかえりっていうと、よしふみがぼくをみてまどかにはなしかけたよ。
「こいつも大きくなったな」
「育ち盛りだもん。ねぇーキュゥべえ」
「ミー」
ぺろぺろ。
しゃがみこんであたまをなでてくれるまどかのひざをなめたら、まどかがびっくりしたかおでぼくにいったよ。
「きゃっ!? もう、キュゥべえったらそんなとこ舐めちゃ駄目だよ」
「ミー」
まどかにおこられちゃった。こんどからひざはなめないようにしようっと。
「……バター猫?」
よしふみがまどかとぼくをみて、きゅうにそんなことをいいだしたよ。
「芳文さん、バター猫って?」
「な、なんでもない、忘れて」
よしふみがあわててまどかにそうこたえると、パパがにがわらいしながらよしふみにいったよ。
「芳文君、悪気はないんだろうけど、女の子にそういう事を言うのはちょっと」
「すみません、お父さん。以後気をつけます」
よしふみはときどきおばかだ。どうしてまどかはよしふみをすきなのかな。
「芳文さん、そろそろわたしの部屋に行こうよ」
「ん、そうだな。まどかの勉強見てやる約束だったもんな」
よしふみはそういって、まどかといっしょにまどかのへやにいっちゃった。
「……んー。きゅーべー」
あ、たっくんがおきたよ。
「ミー」
ぺろぺろ。
「うぇひひ、くすぐったいよー」
たっくんおきたなら、またあそぼうよ。
「ただいまー」
よるになって、ママがかえってきたよ。
きょうはよしふみもいっしょにみんなでごはん。
みんなでたべるごはんおいしいな。
「それじゃ、まどかまた明日」
「うん。今日はありがとう」
「ああ。おやすみ」
「おやすみなさい」
みんなでごはんをたべてすこししてからよしふみがかえっていったよ。
「さてと、キュゥべえお風呂入ろうか」
まどかがそういって、ぼくをだっこしておふろばにつれてってくれるよ。
ぼくおふろだいすき。
「〜♪ はい、ざっぱーん」
ぷるぷるぷる。
からだをぷるぷるしておゆをとばすよ。
「きれいになったね。それじゃわたしもお風呂入るからキュゥべえは先に戻っててね」
「ミー」
タオルでやさしくふいてもらってから、ぼくはおふろばをでていくよ。
まどかがでてくるまで、おふろばのそとでまつよ。
「ふー。さっぱりした。キュゥべえもう寝ようか」
「ミー」
まどかにだっこされて、まどかのへやにもどると、まどかはぼくをぼくのベッドにねかせてくれるんだ。
「キュゥべえおやすみ。また明日ね」
「ミー」
まどか、おやすみ。
またあした。
おしまい
773 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/16(金) 23:46:55.48 ID:sRqKcnOC0
乙ですたー
キュゥべぇ・・・そのまま幸せでいてくれな。
ところで芳文は何言ってるんだwwwwwwww
猫の舌はザラザラしてるからその用途には不向き…何でもありません。
774 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/17(土) 00:00:03.21 ID:p0/TbAvno
円華「あのインキュベーターもこうなってしまえばかわいいものね」
QB「ミー」ガブリ
円華「この……」怒
杏子「おいおい、子猫相手に大人げないぞ、おばさん」
円華「私はまだ若い」シャイニングフィンガー
杏子「あだだだだだだっ!! 割れるっ割れるっ!!」
円華「……ふん」
杏子「」
QB「ミー、ミー」ガタガタ
エイミー「ニャー」ペロペロ
QB「……ミー♪」スリスリ
円華「魔法少女まどか☆マギカ 〜私の大切な人〜 年表 においてミスがあったので訂正よ。
>>509
2007年 芳文の義母と義妹の死亡時期は6月上旬が正解なの」
円華「ワルプルギスの夜はアニメ本編よりも襲来時期が遅いの」
円華「おまけ。使われなかった裏設定。実は巴マミと芳文と天瀬君は同じ幼稚園だったの。前の世界と改変世界共通設定よ。本人達は小さかったから覚えてないけどね」
円華「巴マミは毎朝私に置いてかれて泣いてる芳文の頭を撫でてくれたり、人見知りのせいで他の子達と遊べない芳文と一緒に遊んでくれたりしてたの。4才の夏に風見野から引越ししたのだけど」
円華「それじゃ」
杏子「」つジャーナ
775 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/09/17(土) 00:36:53.43 ID:AdehDl0zo
乙でした
キュウべぇはペロリストっと……
意外な主人公で新鮮でした〜次の番外編も楽しみにしてます!
776 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/09/18(日) 02:18:32.10 ID:h+5u/f6Uo
乙べえ
777 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/18(日) 22:46:10.37 ID:Kv265Bn30
ちなみに本編で芳文父が病死したのはインキュベーターの陰謀だったりするんだろうか?
どっかのまどかスレで宇宙警察は正面からの武力衝突には強いけど、法の網を抜くような詐欺犯とかには対処できないとか言うネタを見たことがある。
宇宙警察に逆恨みを抱く(肉親が宇宙犯罪者とかで)魔法少女の才能がある子にさりげなく博の死を願うように誘導してとか
778 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/19(月) 00:17:59.88 ID:yHPBMqQ+o
まど神「博さんはほむらちゃんがお嫁さんになってあげないと死んじゃうの。博さんは最強で健康なのが取り柄だからね。ほむらちゃんが博さんの具合が悪いのに気付いて涙目で病院に行かせて早期治療する事で死亡フラグが消滅するんだよ」
まど神「ドラゴンボールで悟空が心臓病で死んじゃうのと同じ。たとえ最強でも病気には勝てないんだよ。ほむらちゃんが気付いてあげないと無理して仕事して、手遅れになっちゃうの」
まど神「博さんにとって、ほむらちゃんは何よりも大切な奥さんで特効薬なんだよ」
まど神「これは裏話だけど博さんはインキュベーターの存在に薄々気づいてて、調査してたんだけどね。尻尾を掴む前に病気が進行して死んじゃったの。もし生きてたらインキュベーターを排除してくれたかもしれないのにね」
まど神「余談だけど、強さはドラゴンボールで例えると博さんがスーパーサイヤ人3悟空で、最終決戦時の芳文君がアルティメット悟飯。サンバードがベジットって所かな」
まど神「改変世界だと芳文君は普通の子だから人造人間編初期の悟飯くらい。素質とか初期能力はほむらちゃんの血も交じってる芳文君の方が上だけど、博さんは魔女や魔獣なんかよりもっと強くてタチの悪い相手と戦ってきたから芳文君より強いんだよ」
まど神「ちなみにニトロ星人はインキュベーターが聖人君子に見えるような相手だよ。自分達の快楽と楽しみの為だけに他の生命体をおもちゃにするような連中だからね。宇宙が滅んだら、別の宇宙に行けばいいって考えるような侵略者だから」
まど神「そして、ラブコメ定番のネタ投下」
779 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/19(月) 00:19:38.68 ID:yHPBMqQ+o
「うあぁぁぁぁ……。ごめん……。まどかごめんよ……」
わたしの目の前で、床の上にへたり込んで泣きじゃくるわたし。
へたり込んで泣きじゃくるわたしの体の下に拡がる黄金色の水たまり。
「……泣かないで。芳文さん」
……泣きたいのはこっちだよ。
――どうして、こんな事になっちゃったんだろう……。
魔法少女まどか☆マギカ 裏番外編 「ラブコメ定番のお約束の巻」
「芳文さーん」
放課後の昇降口。
テスト勉強をする為に図書館に行くと言うほむらちゃん達と別れて、教室を出たわたしは下駄箱に向かう芳文さんを見つけて、声をかけながら思わず駆け寄ろうした。
――その時だった。
「きゃっ!?」
わたしは階段を踏み外してしまい、下に向かって宙を舞う。
「まどか!?」
わたしに気付いた芳文さんが、持っていた鞄を投げ捨ててわたしに向かって猛ダッシュで駆け寄ってくる。
わたしはなんとか落ちないように、手をばたばたさせながら階段の手すりに伸ばす。
手すりに指が触れ、なんとか手すりを掴んだけど結局わたしの握力じゃ自分の体を支えきれず、バランスを崩しながら落ちてしまう。
「まどかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
芳文さんが階段に片足をかけながらわたしを受け止めてくれたけど、変なバランスの崩し方に加えて勢いがあった事もあり、そのまま二人とも階段の下に落ちてしまう。
――ごっちーん。
芳文さんはわたしを抱きしめたまま、わたしを庇って背中から落ちてくれたけど、勢い余ってわたしの頭が芳文さんの頭に激突してしまった。
わたしのおでこと芳文さんのおでこがぶつかって、二人とも目を回してしまう。
「あいたたたた……。まどか、大丈夫か?」
「う、うん……大丈夫だよ……」
……あれ?
芳文さんの声が、わたしがこの世に生まれてから毎日聞きなれた物に聞こえたような。
それに、わたしの上に柔らかくてぷにぷにした物が乗っかってるような……。
痛む後頭部とおでこをさすりながら、目を開けるとそこには……。
「……なんで、俺が目の前にいるんだ?」
「……なんで、わたしが目の前にいるの!?」
芳文さんの口調で喋るわたしがいた……。
780 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/19(月) 00:20:34.44 ID:yHPBMqQ+o
☆
「まさか、まどかと俺の心と体が入れ替わるなんて……」
わたしの部屋で、足と腕を組んでイスに座ったわたしの姿をした芳文さんが難しい顔をして呟く。
今、わたしの家にはわたしと芳文さんとキュゥべえしかいない。
有給休暇でお休みのママとパパが、どこかに出かけていたのは好都合だった。
「ど、どうしよう……。芳文さん……」
わたしはマンガやアニメでよくある展開の当事者になってしまった事で、おろおろと部屋の中を行ったり来たりしながら芳文さんに問いかける。
「まどか、落ち着けって」
「で、でも……」
「焦ってもしょうがないよ。もしかしたら何らかの拍子に元に戻るかもしれないだろ」
「ううー」
「大丈夫だから。きっとなんとかなるから。だから落ち着いて」
そう言って、芳文さんはわたしをやさしく抱きしめてくれる。
わたしを抱きしめてくれる芳文さんはわたしの体なので、芳文さんの体のわたしの視界にはわたしの頭頂部が見える。
……わたしってほんと小さいんだなぁ。
「……俺、こんなでっかかったっけ」
あ、芳文さんも同じ事考えてるんだ。
「とりあえず、頭をぶつけたのが原因なんだからもう一度ぶつければ、元に戻るかな?」
芳文さんがそう結論を出すと、わたしも頷いて返す。
「やっぱり、それしかないよね……」
元には戻りたいけど、痛いのは嫌だなあ……。
「まどか。痛いかもしれないけど我慢できる?」
「……うん。仕方ないよね」
わたしが頷くと、芳文さんは意を決した顔でわたしの顔を見つめて言う。
「それじゃ、ぶつけるよ」
「……うん。……どうぞ」
芳文さんはベッドの上に座ったわたしの前に立つと、わたしの頭を両手で掴んで思い切りおでことおでこをぶつけた。
――ごっちーん。
「〜〜っ!!」
「はうぅぅぅぅぅっ!! 痛いよぉぉぉぉぉぉっ!!」
お互いに涙目で相手を見る。
結果は。
芳文さんがわたしで。
わたしが芳文さんのままだった……。
781 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/19(月) 00:21:55.38 ID:yHPBMqQ+o
☆
「……これからどうしよう。わたし、このまま芳文さんとして生きて行かないといけないのかな」
「俺はまどかとして生きて行かないといけないのかな……」
そう言って、二人して自分達の未来を想像する。
――明るい家族計画の果てに。
『それじゃ行ってくるよ。まどか』
『行ってらっしゃい、芳文さん』
『ママ、いってらっしゃーい』
『違うよ、パパ行ってらっしゃい、だよ』
『だって、ママは女の人なのに、どうしてパパなの?』
「……いやだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 男なのにまどかの体で出産体験した挙句、まどかのまま外に働きに出るなんていやだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 円華さんみたいなお嫁さんになりたいのに、芳文さんの体でパパみたいな主夫するなんていやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
思わず二人して頭を抱えて叫んでしまう。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁん、元に戻りたいよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「まどか、俺の顔で泣かないでくれ……。俺だって元に戻りたい……。将来まどかとの子供は欲しいが、俺は孕ませられる方じゃなくて孕ます方が良いんだ……」
「ミー?」
わたし達が嘆いていると、キュゥべえが不思議そうな顔で首を傾げながら、こちらを見ていた……。
☆
「……」
「……」
ひとしきり嘆いた後。
わたし達は無言のまま、ベッドの上に座っていた。
キュゥべえはいつの間にか、床の上で丸くなってすやすやと眠っている。
芳文さんの方を見ると、時々、両足をすり合わせるような仕草をしていた。
「……?」
普段の芳文さんならしない仕草が気になって、視線を顔の方へ向けると必死に何かを我慢しているような顔をしていた。
「芳文さん、どうかしたの?」
わたしが尋ねると、芳文さんは無理に作った愛想笑いを浮かべて答える。
「な、なんでもない」
「……嘘。視線が泳いでるよ」
わたしがそう言うと、芳文さんは視線をあさってのほうへ向けて黙り込んでしまう。
「……何隠してるの?」
わたしが尋ねると、芳文さんはばつが悪そうにもじもじしながら、視線をこちらに一瞬だけ向けてまたそっぽを向いてしまう。
その間も落ち着きなく、そわそわと両足をすり合わせている。
「芳文さん、隠し事はやめてほしいな」
わたしが芳文さんの手を取って、そうはっきりと言うと芳文さんは視線を足元に向けてから、観念したのか上目遣いでわたしの顔を見上げながら口を開いた。
「……トイレ」
「……え?」
「トイレに行きたい」
「え? え? え?」
わたしが混乱した頭で聞き返すと、芳文さんは顔を赤くしたまま口を開く。
「いくつの時だったかな。俺が小さい頃の話なんだけどさ」
そう言って芳文さんはわたしに昔話を始めた。
782 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/19(月) 00:22:49.61 ID:yHPBMqQ+o
――11年前。青樹家の風呂場にて。
『ねえ、ママ』
『なあに? 芳君』
『どうしてママにはおちんちんついてないの?』
『……だってママ、女の子だもの』
『女の子はどうしておちんちんついてないの?』
『……男の子と区別する為よ』
『じゃあ、女の子はどこからおしっこ出すの?』
『……』
『ママはどこからおしっこ出すの?』
『……芳君が大きくなって、恋人かお嫁さんが出来たら、その子におしっこする所見せてもらいなさい』
『なんで?』
『女の子はね、ママやパパか、ダーリンになった人にしかおしっこする所見せちゃ駄目なの』
『そうなの? じゃあパパとばあばとじいじはママのおしっこする所見たの?』
『……ええ』
『ふーん』
「と、こんなやりとりが昔あったんだ」
「……」
ま、円華さーん!! 芳文さんに何を教えているんですか!! そんなの冗談じゃないよっ!!
「ああ、まどかが今何を考えているのかはよくわかるよ。今になって考えりゃ、そんな、恋人におしっこする所見せてもらえだとか頼むとか、ありえないしな。つーかどんなプレイだよ、それ」
「っ!!」
わたしが赤くなって芳文さんを見ると、芳文さんも顔を赤くしながら言葉を紡ぐ。
「結婚してりゃともかく、俺達まだ中学生だしな。それに女の子っておしっこでもその……拭かないといけないんだろ? こんな形でまどかの大切な所を見て、拭くなんてかわいそうだし、したくない」
芳文さん……。
「だから、我慢してるんだけど……。よくよく考えたら、このまま我慢してると尿道炎になってしまう。なあ、まどか。俺、どうすればいいんだろう?」
そう言って、芳文さんはわたしの顔を見る。良く見ると涙目だった。
「俺の体だったら、もう少し我慢できるんだけど。まどかの……女の子の体だからかな。限界が近い……」
えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?
「ま、まどか。どうしよう。も、もう漏れそう。でもまどかの大切な所を見て触らないといけないし……。俺、いったいどうしたらいい?」
そう言って泣き笑いしている芳文さん。体が小刻みに揺れている。
「……仕方ないよ。トイレに行こ?」
「で、でも……」
「芳文さんがわたしの事大事にしてくれてるのわかったから。もう、我慢しなくていいんだよ」
「まどかぁー」
「わたしが一緒にトイレに行くから。拭くのはわたしがするから。だから芳文さんは下着を脱いで便座に座る時やおしっこする時とかは目を閉じててね。恥ずかしいから」
「わ、わかった。ごめん、まどか」
「気にしないで。生理現象だもん。しょうがないよ」
わたしがそう言って笑いかけると、芳文さんは泣き笑いの顔で立ち上がる。
「さ、トイレ行こ」
「う、うん」
わたしがそう言ってトイレに行くのを促すと、芳文さんはびくびくと体を震わせながら、わたしに続いて部屋を出る。
「もうすぐトイレだから、我慢してね」
「あ、ああ」
1階のトイレに向かって階段を下りていた時だった。
783 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/19(月) 00:24:00.39 ID:yHPBMqQ+o
「うわっ!?」
――だんっ。
芳文さんがいきなりあげた悲鳴に驚いて振り返ると、一段階段を飛ばして大股開きで硬直しているわたしの姿が。
「か、階段踏み外した……」
「だ、大丈夫?」
わたしがそう声をかけたその時だった。
「あっ!? あ、あぁぁぁ……」
――ぷしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。
聞きなれた音と共に、目の前のわたしの股間から黄金色のしぶきが階段に向かって放出される。
わたしの体の太ももを伝って流れ落ちた黄金色のしぶきと股間から噴き出したそれが水溜りになって階段に拡がって、一階の廊下にに流れ落ちていく……。
「い、今の衝撃で、も、漏らしちゃった……」
涙目で芳文さんが私に弱々しく言う。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ……。俺15才なのに、おしっこ漏らして……。しかもまどかの体で……。最低だ……最低だ……」
ぼろぼろと涙をこぼしながら、目の前のわたしが泣き出す。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。ごめん、まどか、ごめん……」
「な、泣かないで、芳文さん」
「うぅぅぅぅぅー。ごめん、ごめん、ごめん、まどかぁぁぁぁぁ……」
わたしは泣きながら謝罪する芳文さんを優しく宥める。
泣きたいのはこっちだよ……。
☆
とりあえず、てっとりばやく持ってきたタオルで下半身の水分を取って、芳文さんをリビングで待たせその間に廊下と階段のおしっこを掃除して、替えの下着を持ってリビングへ戻る。
「芳文さん、お待たせ。着替え持ってきたよ」
「うぅぅぅ……。ごべん、まどか……」
鼻声で謝罪する芳文さんに、出来るだけ優しい顔で言う。
「とりあえず、汚しちゃったニーソとか、脱ご?」
わたしがそう言うと、芳文さんは顔を左右に振って拒否する。
「駄目だよ。そしたらまどかの大切な所が見えちゃうから。これ以上まどかに恥ずかしい思いさせたくないし……」
「……ありがとう。芳文さん。でも、濡れたままだと気持ち悪いでしょ」
「……うん」
「緊急事態だもん。しょうがないよ。だから、着替えよ。ね?」
わたしがそう言うと、芳文さんは意を決したか顔でわたしの顔を見ながら言った。
「じゃあ、まどかが着替えさせてくれないかな?」
「え?」
「俺、目隠ししてスカート持ってるから。そしたらまどかの大切な所を見たり触ったりしなくて済むよね。だから、せめてもの妥協策って事で我慢して欲しいな」
「……ありがとう。芳文さん」
わたしは幅の広いリボンを持ってきて芳文さんを目隠しすると、スカートを両手で持って立ってもらう。
「もう少し足を広げて立って」
「こう?」
「うん。それじゃ脱がすね」
「う、うん」
わたしはそう言って、目の前の自分の下半身から、おしっこで濡れた下着をするすると脱がせる。
「とりあえず、お湯で湿らせたタオルで拭くね」
「う、うん」
わたしがそう言って、自分の下半身を拭こうとしたその時だった。
「すぐお茶淹れますから、リビングの方へどうぞ円華さん」
「すみません。お邪魔します」
「まどか達もいるみたいですし、せっかくだからあの子達も呼びましょう。おーい、まどかー芳文くーん!! 二人ともリビングに下りておいでー!! さっき近くで円華さんと行き会ってお茶に誘ったんだー!!」
――ガチャ。
『!?』
リビングに入ってきたママとパパ、そして円華さんがわたし達の姿を見て絶句して固まる。
目隠しされたわたしが自分でスカートをめくって、下半身すっぽんぽんで。その下半身に向かって芳文さんが濡れタオル片手に膝立ちで。
どこからどう見ても、わたしが芳文さんにえっちな事をされてる構図だった。
784 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/19(月) 00:24:55.08 ID:yHPBMqQ+o
「あ、あの、これは……」
わたしが説明しようとしたその時だった。
「この馬鹿息子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
円華さんが物凄い速さでわたしの顔を掴んで締め付ける。
「痛い痛い痛い痛い痛い!! 誤解です!!」
「何が誤解よ!! どこから見てもまどかちゃんにイタズラしてるようにしか見えない!!」
「母さんやめろ!! そっちはまどかだ!!」
目隠しを外した芳文さんが円華さんの腕を引き剥がそうとする。
「まどかちゃん止めないで!! この馬鹿息子!! 修正してあげる!!」
「だからその馬鹿息子は俺だって!! 話を聞け!!」
『ま、まどか!?』
ママとパパが芳文さんの口調で喋るわたしに驚いて硬直する。
「実は俺とまどかの心と体が入れ替わってしまったんだ!!」
『はあ!?』
円華さんの手から、力が抜けてようやくわたしは解放されたのだった……。
☆
「それで、頭と頭をぶつけてしまったせいで心と体が入れ替わったって? そう言いたいのかい?」
わたしと芳文さんは正座させられながら、ソファーに座るママに頷く。
「嘘をつくならもう少しマシな嘘をつきなさい」
ママの隣に座る円華さんがばっさりと切り捨てる。
やっぱり、信じられる訳ないよね……。
「母さん、昨日の晩も風呂上りに胸をでかくしようとマッサージしてたよな」
「!?」
芳文さんが不意に放った言葉に円華さんが硬直する。
「もういい加減諦めたらどうだ。父さんは貧乳好きなんだから、無理にでかくする必要もないだろ。あんな高い機械まで買ってもったいない」
「な、何言ってるの。まどかちゃん」
「だから、俺は芳文だって言ってんだろ。まどかがあんたの胸への過剰なまでのコンプレックスを知ってるわけないだろ。それにまどかがこんな口調で喋ったりするかよ」
そう言って、芳文さんはあぐらをかいてみせる。
「まどか、まどかも家族でないと知らない事をお父さんとお母さんに言うんだ。そうしないと信じてくれそうもない」
「う、うん。ママは背中にホクロが3つあるよね」
「!? マジでまどかか?」
「う、うん。そうだよ。昨日の夜はビール3本も飲んだよね」
「おいおい……。マジで入れ替わったってか」
「だからそう言ってるじゃないですか、お母さん」
芳文さんがそう答えると、ママ達は家族でないと知らない事をいくつか質問してきたのですべて答えると、やっと信じてくれたのだった。
「事情は分かった。それでさっきのあれはなんだい?」
「……それは」
「ちょっと話せな」
「話しなさい」
「はい」
なんとかごまかそうとすると、円華さんにクールな無表情で問い詰められ、芳文さんは素直に全部話してしまったのだった……。
785 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/19(月) 00:25:38.67 ID:yHPBMqQ+o
『……』
三人の視線が痛い。
呆れや憐憫といった様々な感情の入り混じった表情で芳文さんを見ている。
「そんな目で見るなあぁぁぁぁぁぁぁっ!! うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
耐えられなくなった芳文さんが、泣きながら飛び出すのをわたしはとっさに追いかける。
「待って!?」
――ずるっ。
さっき脱がせたおしっこで濡れているニーソックスがそのまま床に転がっていたのを思い出した。
わたしはそれを踏んで足を滑らせて。
芳文さんはわたしの異変に気づいて振り向いていて。
――ごっちーん。ちゅっ。
おもいっきりおでことおでこをぶつけあい、しかもそのままキスしながら二人とも倒れてしまう。
「……ん」
「……」
目を開くと、芳文さんとキスしたまま、覆いかぶさられているのに気付いて、慌てて芳文さんの胸を両手で押す。
「はあ……はあ……。あ、あれ? 元に戻ったの?」
見慣れた掌を閉じたり開いたりしていると、芳文さんがむくりと起き上がる。
「いててててて……。あれ? なんでまどかの家にいるんだ?」
芳文さんはそう言っておでこをさすりながら言う。
「芳文さん!! 良かった!! 元に戻ったよ!!」
「戻ったって何が?」
「……え?」
芳文さんの様子にわたしが硬直していると、円華さんがぽんと手を叩いて言った。
「どうやら、入れ替わっていた時の記憶がないようね。芳文、あなた今日何があったか覚えてるかしら」
「母さん? なんでまどかの家にいるんだ? それに俺、授業が終わって下駄箱に向かってたはずなんだけど……」
そう言って、芳文さんは後頭部をポリポリと掻く。
「まどか、何があったのか教えてくれる?」
芳文さんが私にそう言って今までの経緯を尋ねる。
「……」
わたしは入れ替わってからの事を思い出し、思わず赤面してしまう。
言えない。わたしの体でおもらしされたとか、そんな事言えないよ……。
「まどか?」
「足を踏み外して階段から落ちたわたしを助けてくれた時に、わたしの頭がぶつかって芳文さん気絶しちゃったんだよ」
「それでわたしがパパに連絡してパパと一緒に芳文さんをここまで運んできたの。あとママは今日有給休暇で、円華さんはママと外で会ってお茶に誘われたの」
わたしがそう答えると、芳文さんは首を傾げてからわたしに言った。
「そっか。ごめんな、まどかに心配かけて」
「ううん、気にしないで」
パパ達は、わたし達のそんなやりとりを黙って見ていてくれたのだった。
あとでパパ達に一応釘を刺しておかないと。
入れ替わりなんてなかった。
そんなマンガみたいな事あるはずないもん。
わたしが恥ずかしくて痛い思いしただけなんて事あるはずないもんっ。
これは12月のテスト週間に起きた不思議な出来事。
……正直、早く忘れたい。(泣
おしまい
786 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/19(月) 00:29:43.36 ID:yHPBMqQ+o
まど神「」
まど神「……誕生日の夜にこんなもの書いてる作者は死んだ方が良いよね。うん」
まど神「とりあえず、狙い撃つよ!!」バシュ!!
まど神「みんな。ばいばーい」
まど神「さてと。大人ほむらちゃんの絵もいいなあ……。ウェヒヒヒ……」
787 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/09/19(月) 05:41:34.25 ID:rgoleMPso
>>786
誕生日おめっすwwwwwwww
そうか最近のラブコメの定番は恋人の前でお漏らしなのかwwwwww
788 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/09/19(月) 13:57:50.89 ID:hU4CKqr7o
乙カフェ
789 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/20(火) 06:15:49.74 ID:u11UXxf+0
思うにそこまで胸に拘るのなら、本編で34→14への肉体改造魔法時に
「ちょ、ちょっと胸を大きくしても…」
って考えなかったんだろうか?
790 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/09/20(火) 17:52:13.24 ID:CGNAhMrAO
本編中だと女の幸せ捨ててるからそういう考えは出なかったんじゃない?
改変世界だとダーリン生きてるから綺麗になりたい、綺麗でいたいとか思ってそうだけど
791 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/09/25(日) 01:10:48.69 ID:dNqLGcEdo
魔法の力を持ってしてもほむほむのおっぱいを大きくする事は不可能だったのでは……
792 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/09/25(日) 01:13:22.27 ID:dNqLGcEdo
魔法の力を持ってしてもほむほむのおっぱいを大きくする事は不可能だったのでは……
793 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/09/25(日) 12:41:06.96 ID:tqkeptKAO
QB「因果の特異点となった君なら、どんな途方もない願いでも叶うだろう」
まどか「すべてのほむらちゃんのおっぱいを大きくしてあげて!!」
QB「まどか…それは無理だ。宇宙のルールを改変するとかならまだしも、そんな途方もない願いを叶えるなんて無理だ。無から新しい宇宙を作り上げるほどのエントロピーがなければ不可能だ」
まどか「えぇ〜。そんなのってないよ。どんだけ無理ゲーなの」
ほむら「」
794 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/25(日) 22:43:05.40 ID:gw8x6iyt0
ここでさりげなく◯女膜再生だけはこっそりとやっていたと…
795 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/29(木) 12:27:46.42 ID:fBvlzRCPo
アニメまどか「ごめんね、わたしみんなを迎えに行かないと」
アニメほむら「まどか!! 待って……行かないで!!」
アニメまどか「きっとまた会えるから。それまで、ほんの少しお別れだね。いつか、またもう一度会えるから」
アニメほむら「まどかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
超番外編 嗚呼ッ!! 駄女神様!!
アニメまどか「ごめんね。別世界のわたし達。わたしの願いに巻き込んで」
ハノカゲまどか「ううん。わたしの願いもあなたと同じだから気にしないで」
一肇まどか「わたしの願いも同じだよ。だから気にしないで」
ムラ黒江まどか「わたしはどうせ死んでたし……。だから気にしないで」
アニメハノカゲ一肇まどか『』
アニメまどか「ほ、他の世界のわたし達も来てくれたみたいだし、そろそろ融合しようか?」
ハノカゲまどか「そ、そうだね」
一肇まどか「う、うん。そうしよう」
アニメまどか「いくよみんな!!」
まどかーズ『うんっ!!』
アニメまどか「全員集合!! クライマックスだよ!!」
ハノカゲまどか「合体!!」
一肇まどか「合体!!」
ムラ黒江まどか「……合体!!」
VIP産腹黒まどか「ウェヒヒヒヒ!! 合体!!」
VIP産まどカス「ティヒヒヒヒ!! 合体!!」
VIP産変態まどか「ホムラチャーン!! 合体!!」
薄い本(エロ含む)のまどか達『合体!!』
合体完了変身ソング「ま・どか まどか まどか♪」ピカーン!!
まど神「女神まどか降臨!! 満を持して!!」
まど神「……今、変な性格のわたしが交じってたような」
まど神「……」
まど神「気のせいだよね」
まど神「さーて、早速お仕事張り切っちゃうよー!! ちゃっちゃっと片づけて、ほむらちゃんの様子を見に行かなきゃ!!」
まど神「ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!! 待っててねほむらちゃん!!」
さやか「」ヒキッ
☆
796 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/29(木) 12:28:41.57 ID:fBvlzRCPo
――まど界。
まど神「さてと今日のノルマおしまいっと。さーて今日はどの世界のほむらちゃんに会いに行こうかな……」
まど神「そういえば、別の宇宙の過去世界に生まれ変わったほむらちゃんの様子をしばらく見てないなぁ。よし。様子を見に行ってみようっと」
1996年9月下旬。風見野市内、日だまり荘にて。
円華 「さてと、芳君が寝てる内に洗濯物を干しちゃわないと」
まど神「ウェヒヒヒヒ。ほむらちゃんだー!! 新妻ほむらちゃん萌えー!! ん?」
芳文 「スースー」
まど神「赤ちゃんだ!! ほむらちゃんの赤ちゃんだよ!! ウェヒヒヒヒヒヒヒ!! かわいいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
芳文 「……」パチクリ
まど神「あ、起きちゃったのかなー? ウェヒヒヒヒ!! 君の未来の恋人ですよー。もっとも、ここにいるわたしがじゃなくて、この世界のわたしが、だけどねー」
芳文 「……」ジー
まど神「なーんてわたしの事見える訳ないよね。ちょっとさびしいなぁ……」
芳文 「あー」ニッコリ
まど神「!!」
芳文 「うー」
まど神「……もしかして、わたしの事見えてる!? いないいない、ばあー」
芳文 「きゃっきゃっ」
まど神「やっぱり見えてる!! はうぅぅぅぅぅぅぅんっ!! かわいいよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」ホッペスリスリ
芳文 「きゃっきゃっ」
まど神「んー!! やわらかーい!! あったかーい!! ほっぺすべすべー!! ……ってなんで触れるのぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
芳文 「うー?」キョトン
まど神「タツヤとか小さい子がわたしの存在に気づく事はあったけど……。改変前の世界でこっちのわたしとずっと一緒で色々あったからかな?」
芳文 「あー」
まど神「まあそんな事どうでもいいや!! 嬉しいなあ!! はうぅぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!! 芳君かわいいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」ホッペスリスリ
芳文 「きゃっきゃっ」ニコニコ
円華 「あ、芳君おっきしたのかな? 良い夢でも見たのかなぁ? ご機嫌さんだね」
まど神「あ、ほむらちゃんが戻ってきた。名残惜しいけど芳君から離れないとね」
芳文 「……ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
円華 「あらあら。おなかがすいちゃったのかな? 今おっぱいあげるからね」
芳文 「ふえぇぇぇぇぇぇぇん!!」
円華 「はい、芳君」オッパイポロリ
芳文 「……」チュゥチュゥ……
まど神「ほむらちゃんの授乳シーンだよ!! しかも生だよ!! 特等席だよ!! ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」
芳文 「……」チュゥチュゥ……
円華 「もうおなかいっぱいになったのかな?」芳文の背中ポンポン
芳文 「けぷっ」ムニャムニャ
まど神「眼福眼福。芳君も寝ちゃったし、今日はもうまど界に帰ろっと。またね、芳君。ほむらちゃん」
☆
797 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/29(木) 12:30:01.11 ID:fBvlzRCPo
1999年4月風見野市内。風見野幼稚園にて。
芳文 「えーん!! ママ行っちゃやー!!」
まど神「ママに置いてかれるのが嫌で泣いちゃう芳君かわいいよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
円華 「お昼ご飯の後にお迎えに来るからね」
芳文 「えーん!! やー!! ママぼくのこときらいになっちゃったの?」
円華 「そんな事ないわよ。芳君はママの大事な宝物だもの」
芳文 「ほんと?」
円華 「本当よ。ママは芳君にお友達たくさん作ってほしいの。だからいい子で幼稚園に行って欲しいな」
芳文 「ぐすっ……。うん」
まど神「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! かわいい!! かわいい!! かわいい!! 芳君どうしてそんなにかわいいのおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」ハアハア
まど神「ふう、ふう……。あやうく精神が逝きかけたよ。それにしても、芳君はタツヤと同じくらいなのに言葉遣いも達者だし頭もいいねえ。さすがほむらちゃんの愛息子!!」
まど神「それに滅茶苦茶かわいいし。他の子達と一緒だと特に目立つし。まるでお人形さんみたいですごく目を引くし。日だまり荘の人達が可愛がってくれるのも当然だよね」
芳文 「ママぁ……」グスグス
まど神「顔だけでなく性格までほむらちゃん似なのがわたしの好みド直球だよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! 人見知りで他の子と遊べない芳君萌えー!! 待っててね!! お姉ちゃんが今いくよぉぉぉっ!?」ピタッ
マミ 「よしよし。泣かないで」ナデナデ
芳文 「……ふぇ?」キョトン
マミ 「一緒にあそぼ?」ニッコリ
芳文 「……うんっ」ニパアー
まど神「あれマミさんだよね……。わたしの芳君を誘惑するなんて!! いくらマミさんでも許さないよ!! あーっ!? 近い近い!! くっつきすぎだよ!! 芳君の浮気者ー!!」
まど神「芳君が好きなのはこの世界のわたしでしょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! マミさんを選ぶなんて、絶対許さないよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」プンプン
天瀬 「……おねーちゃん、なにしてるの?」
まど神「!? しまった!! 小さい子にはたまにわたしが見える子がいるの忘れてた!!」
天瀬 「あれ? おねーちゃんいなくなっちゃった」
まど神「とりあえず姿を消したけど……。これからはマミさんを見張らないといけないね。芳君はわたしの物だよ。ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」黒い笑み
☆
2000年8月 風見野市内。風見野幼稚園にて。
芳文 「ぐすぐす……」
円華 「ほら、芳君。ちゃんとお別れ言わないと」
芳文 「ぐすん。マミちゃん、ばいばい……」
マミ 「うん。元気でね」
芳文 「えーん……」
マミ 「またどこかで会おうね」ナデナデ
芳文 「ぐす……うん」
まど神「よかった。マミさん引っ越しで見滝原に行くんだ」
まど神「……泣いてる芳君もかわいいなぁ」
まど神「……わたし、最低」
――近所の公園の遊具の中にて。
芳文「ぐすんぐすん……」
まど神「芳君」
芳文 「ぐす……カナメおねーちゃん」
まど神「どうしたの? なにかあったの?」
芳文 「仲良しのマミちゃんがお引っ越ししちゃったの」
まど神「そっか」
芳文 「ぐすん。ぼくと遊んでくれる子いなくなっちゃった……」
まど神「大丈夫だよ。お友達はまた作ればいいし、遠く離れてもマミちゃんは芳君のお友達だからね」
芳文 「うえぇぇぇぇぇぇん!! おねーちゃーん!!」
まど神「よしよし。大丈夫だからね。芳君にはおねーちゃんが付いてるからね」ナデナデ
芳文 「えーん」
まど神「よしよし」ナデナデ
芳文 「……すーすー」
まど神「泣きつかれちゃったのかな。……マミさんとはまた会えるからね」ナデナデ
円華 「芳くーん!! どこにいっちゃったのー!?」
まど神「ん、ほむらちゃんが探しに来たみたいだね。芳君、またね」
☆
798 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/29(木) 12:32:29.67 ID:fBvlzRCPo
2001年4月 日だまり荘にて。
梅子 「やっぱり思った通り似合うわー。すっごくかわいい」
芳文 「うぅぅぅー」
祖父 「円華にそっくりだとは思ってたが、かつら被せたら女の子にしか見えんな」
芳文 「ちがうもん。ぼく男の子だもん」
梅子 「ああ、ごめんね芳君。おばあちゃんが悪かったわ」
芳文 「うえーん」
梅子 「ああ、泣かないで。そうだ!! 芳君が欲しがってたおもちゃ買いに行こうか」
芳文 「ぐす……ほんと?」
梅子 「ほんとほんと。さ、行こうか」
芳文 「うんっ」
祖父 「現金な奴だなあ。泣いたカラスがもう笑った」
――まど界。
まど神「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! ほむらちゃんだ!! ちっちゃなほむらちゃんだよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」鼻血
まど神「かわいい!! かわいい!! かわいい!! かわいい!! 最高だよ!! 芳君最高だよ!! こんなにかわいいのにおちんちん付いてるんだよ!!」ゴロゴロ
まど神「こんなにかわいい子が女の子のはずがない!! 男の娘最高!! ああっ!! 抱きしめたい!! 芳君芳君芳君芳君芳君!! かわいいよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
さやか「」ヒキッ
さやか「まどか、あんたってショタコンなの? まさかたっくんもそういう目で見てたんじゃないでしょうね?」
まど神「何言ってるのさやかちゃん。実弟にそんな感情持つわけないじゃん。ほむらちゃんの子で、ほむらちゃんそっくりのかわいい男の子だからこそ、芳君は萌えるんだよ」ドヤッ
さやか「」ヒキッ
さやか(だ、駄目だコイツ……。変なまどかと合体したせいで、もうあたしの知ってるまどかじゃなくなってる……)
まど神「ウェヒヒヒヒヒヒヒヒッ!! こんなかわいい芳君が将来はイケメンに育ってわたしの彼氏かぁ。嬉しいなあ!! 嬉しいなあ!!」ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
☆
799 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/29(木) 12:33:56.82 ID:fBvlzRCPo
2005年9月 夕方の日だまり荘縁側にて。
芳文 「カナメねーちゃん」
まど神「なあに?」
芳文 「カナメねーちゃんって何者なの?」
まど神「何の事かな?」
芳文 「とぼけないでよ。お母さん達もおばあちゃん達もみんなカナメねーちゃんの事見えてないみたいだよ。いつも突然現れて突然いなくなるし。なんで僕にはねーちゃんが見えるの?」
まど神「……」スゥゥ……
芳文 「ねーちゃん!? 体が透けて……!?」
まど神「そっか。もうお別れなんだね」
芳文 「どういう事!?」
まど神「わたしね、人間じゃないんだ」
芳文 「……え?」
まど神「昔は人間だったんだけどね。今は……」
芳文 「ちょ、ちょっと待ってよ。それじゃねーちゃんどうなるの!?」
まど神「うん。芳君にはもうわたしが見えなくなっちゃうんだ。芳君は少し大人になっちゃったから」
芳文 「そんな……。それじゃ、もう会えないの!? そんなの嫌だよ!!」
まど神「ありがとう、芳君。芳君がわたしの事見えなくなっても、わたしはずっと芳君の事見守ってるからね」
芳文 「ねーちゃん行っちゃ嫌だ!!」
まど神「ごめんね。それと今までありがとう。こんな風になっちゃったわたしと普通に接してくれた芳君の事、大好きだよ」
芳文 「カナメねーちゃん!!」
まど神「わたしはね、芳君の未来の恋人なの。正確にはその子と同じ顔と性格をしたパラレルワールドの住人だから、わたし自身が芳君の恋人って訳じゃないんだけどね」
まど神「いつか、芳君の前にこの世界のわたしが現れるから。その子の事大切にしてあげてね」
芳文 「何を言ってるのか全然わからないよ……」
まど神「そうだよね。訳わかんないよね……。ごめんね。芳君」
芳文 「……カナメねーちゃん」
まど神「……まどか、だよ」
芳文 「……え?」
まど神「わたしの本当の名前」
芳文 「……まどかねーちゃん」
まどか「うん。ありがとう、芳君。ずっと元気でいてね」スゥゥ……
芳文 「まどかねーちやん!!」
まどか「ばいばい。芳君」
芳文 「僕、ねーちゃんの事忘れないよ!! 友達がいなくてひとりぼっちだった時に一緒に遊んでもらった事も!! 叱られて泣いてた時に抱きしめてもらった事も!! 絶対忘れない!!」
まどか「……ありがとう。芳君。大好きだよ」スゥゥ……
☆
2013年8月 見滝原市 駅前にて
まどか「芳文さーん。お待たせー」
芳文 「まどか。そんなに慌てなくても俺はどこにもいかないよ」
まどか「えへへ。はやく行こ」ギュッ
芳文 「ああ」
まどか「どうしたの? わたしの顔じっと見たりして」
芳文 「ん? 髪、伸びたなぁって思って」
まどか「変かな?」
芳文 「いや。長い髪も良く似合ってて可愛いよ」
まどか「えへへ……」
芳文 (今のまどかを見ていると、時々いなくなった彼女の事を思い出す)
芳文 (結局、彼女の正体はわからないままだけど。それでも彼女は確かに存在し、幼い俺を見守ってくれていた事を俺は忘れない)
芳文 「行こうか。まどか」
まどか「うんっ」
――ウェヒヒヒヒヒヒヒ♪
おしまい
800 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/09/29(木) 12:35:51.89 ID:fBvlzRCPo
杏子「元ネタ いけちゃんと僕」
杏子「じゃーな」
801 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/29(木) 17:37:55.55 ID:sXVJCo3R0
完結……?
とりあえず乙
802 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/09/29(木) 20:48:18.00 ID:v3DfI2n0o
乙です!
産まれた時から円華の「まどか大好き」の血を受け継ぎ
幼い時にはまど神によってすりこまれていたんだ
そりゃまどか大好きになるよね芳文はwwwwww
803 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/29(木) 21:53:19.46 ID:3IZYmUWn0
乙ですたー!
某所でみた考察で、まど神様は見返りを求めずに全ての魔法少女を救う慈悲の心を持つ反面、魔法少女達の
献身に自らが見返りを与える事も無い。
魔法少女がまど神様に与えられる栄光は、ただその隣にあって共に進む事だけという優しくもあるが苛烈な正に嘘淵世界の住人と言うのがあったけど…
そんな苛烈で強力な神様が変態な上に天然素ぼけ属性持ちなら、救済された魔法少女全員が心配してついて行かざるを得ないわなww
804 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/29(木) 23:15:52.23 ID:w08MK2Wn0
ちなみに二次創作等で「まど神」と称される存在は設定集によると「アルティメットまどか」だそうです。いやそんなこと今さら言われても
ttp://0taku.livedoor.biz/archives/3943826.html
洞窟で肉焼いてるまどかがツボ
この作品世界は勇者系の存在もあるのでそっちからも文明の流入も有ったかも知れないんでQBがいなくても原始人のままっつうことはないかも
805 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/10/07(金) 12:38:26.56 ID:pMQ8IdcAO
今気付いたんだが、ほむほむは前世と現世の両方共、同じ相手と結婚してるんだよな
つまり二回も博にバージン捧げて、孕まされてるんだよな…
まどかはどうなんだろうな?
改変後の反応見る限り、放浪してた時も処女だったぽいけど
806 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/10/08(土) 20:01:58.96 ID:zO9uZGpK0
少なくとも、ファーストキスは二度とも芳文に捧げてるな
二度目に自分から告白してOKもらった時とか、二度目のファーストキスの時とか嬉しさで泣きじゃくってそうだ
807 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/10/11(火) 00:38:04.49 ID:JPGf9o7Zo
一回目のファーストキスが祭りの夜で、二回目がお誕生日会の帰り道か
初めて手を繋いだ記念とか、初めてお弁当を作って食べてもらった記念とかも
全部二回あるんだな〜胸熱
808 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/10/11(火) 00:59:53.15 ID:8lZeG4pAO
安価スレの主人公が駄目な奴過ぎる…
あっちのまどかは不憫だ
こっちのまどかは幸せだな
809 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/10/11(火) 04:19:42.23 ID:L9FfbYoTo
>>808
そういうのやめろ。どっちのスレの住民も不快になるだけで誰も幸せになれん
第一方向性が違うだけでどっちもかっけけ主人公じゃないか
810 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/10/12(水) 00:49:00.72 ID:CjlJLMW0o
芳君はママが大好きで好奇心いっぱいな男の子。今日も大好きなママに色々教わるよ。
――1999年10月 見滝原市の中沢家にて。
円華 「みずほ、二人目の出産おめでとう」
みずほ「ありがと、円華」
芳文 「ママ、赤ちゃんかわいいねー」
円華 「そうね、かわいいわね」
みずほ「芳君、赤ちゃんもう少し大きくなったら一緒に遊んであげてね」
芳文 「うんっ」
赤子 「おぎゃあ、おぎゃあ……!!」
みずほ「あらら、おなかすいたのかな?」オッパイポロリ
赤子 「……」チュゥチュゥ……
円華 「そう言えば上の子はどうしたの?」
みずほ「今日は旦那が休みで実家の方へ遊びに連れてったわ」
円華 「そう」
みずほ「円華んとこは二人目作らないの?」
円華 「うーん。欲しいとは思ってるんだけどね。芳君がまだまだ赤ちゃんで手がかかるし……」
芳文 「ちがうもん。ぼくもう赤ちゃんじゃないもん」
みずほ「あははは。円華、違うってさ。それにしてもまだ3才なのに、この子は頭がいいねー」
円華 「そうなのよ。知らない人とかに女の子に間違われると泣いて怒るのよ。悪口言われたってわかるみたい」
みずほ「そうなんだ。うちの子はまだ2才だけどさ、まだまだ言葉も上手く出てこないし大丈夫なのかなって、時々不安になるのよ」
円華 「その辺は個人差だから気にしない方が良いんじゃない? うちの子は物心つく前から毎日、旦那や私の両親だけでなく、アパートの人達みんなが構ってくれてたから、他の子達よりも言葉が早く出るようになっただけだし」
みずほ「そうかしら」
円華 「そうよ。それにね、子供って親が思ってる以上に早く、どんどん成長していくんだから。何も心配なんていらないわ」
みずほ「あたしらの中で一番早く結婚して、子供産んだあんたが言うんだから、そうなんでしょうね」
円華 「ええ。経験者は語るのよ」
みずほ「あはははっ。言うわね」
円華 「ふふふっ」
――帰りのバスの中。
芳文 「赤ちゃんかわいかったねー」
円華 「そうね。かわいかったね」
芳文 「ねえママ」
円華 「なあに?」
芳文 「ぼくも赤ちゃんのとき、ママのおっぱい飲んでたの?」
円華 「そうよ」
芳文 「でもママ、おっぱいでないよ?」
円華 「芳君ももう大きく『次は風見野1丁目に止まりまーす』からね」
芳文 「ママのおっぱい、おばちゃんのおっぱいよりちっちゃいから出なくなったの?」
円華 「……」
芳文 「おばちゃんのおっきかったから、ミルクいっぱいはいってるんでしょ?」
円華 「……」
芳文 「ママのちっちゃいから、ミルクなくなっちゃったの?」
円華 「……」ワナワナ……
芳文 「ママ? お顔こわいよ……」
円華 「……ごめんね芳君。何でもないのよ」爪がくい込むほど拳握って笑顔
――その日の夜。親子3人で川の字になって就寝中。
芳文 「むにゃむにゃ……」オッパイ吸いながらオネム
円華 「……はあ。芳君はいつになったらおっぱいやめられるのかしらね」胸に吸い付いてる芳文の頭ナデナデ
博 「まだまだ小さいんだからしょうがないさ。今だけ今だけ」
芳文 「……マーマ」乳首から口を離して寝言
円華 「はいはい。ママは芳君と一緒にいるからね」ナデナデ
――まど界にて。
まど神「ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!! 芳君かわいいよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! それにしても女体って不思議!! どんなにちっちゃくっても赤ちゃん出来るとおっぱい出るんだもん!!」
まど神「色んな世界を見て知ったわたしでさえ、ほむらちゃんが痛みに耐えて芳君を産み、芳君に授乳してきた姿には、尊敬の念を抱かずにはいられないよっ!!」
まど神「感動した!! 痛みに耐え良く頑張ったよほむらちゃん!! わたしはいつだってほむらちゃんを見守っているよ!! ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
ほむら「……言いたい事はそれだけかしら?」
まど神「……ほむら、ちゃん?」
ほむら「ちょっと、向こうでお話ししましょうか。まどか」
まど神「ほ、ほむらちゃん。目が怖いよ……」
ほむら「さあ、行きましょうか」襟首掴み
まど神「ひいぃぃぃっ!! わたし神様なんだよ!? こんなの絶対おかしいよ!!」ズルズル……
さやか「まどか……。あんたは少し反省しなさい」
おしまい
811 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/10/12(水) 01:02:31.86 ID:CjlJLMW0o
まど神「ひどいよ……。ほむらちゃんにいっぱい怒られちゃったよ……。わたしはただ、芳君とあっちのほむらちゃんを見守ってただけなのに……」
まど神「
>>801
君 まだ終わらないよ。ほむらちゃんのお話がお披露目されてないからね」
まど神「
>>802
君 芳君はわたしの事が大好きなんだよ!!」ドヤ
まど神「
>>803
君 ひどいよ!! わたしは淑女だよ!!」プンプン
まど神「
>>804
君 長いから名前はこれで行くよ。ちなみに宇宙警察は宇宙に進出してるほとんどの宇宙人達が在籍してるんだよ。TFやエクスカイザーみたいな種族から、デカレンジャーに出た宇宙人達までいろんな人達がいるよ」
まど神「
>>805-807
君 ほむらちゃんのはほとんど塞がってるタイプだから、ものすごく痛『まどか?』ごめん、忘れて。あっちのわたしは好きな人に2回も初めてあげられて羨ましいよ。ああっわたしも芳君といちゃいちゃししたいっ!!」
まど神「最後に一言。みんな仲良くしようね!! それじゃばいばーい」ノシ
812 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/10/12(水) 02:08:50.30 ID:lMb0U/kc0
乙ですたー!
・・・まど神様、淑女の意味理解して使ってらっしゃいますね??
しかし芳文、周囲に人が多い環境でも人見知りで育ったのか
人が多くて皆が赤ん坊の頃から知っている分、さらにそれ以外の人との接触になると
「知らない人」という理解になってプレッシャーだったのかな
それにしても、みずほさんの苗字が中沢ってもしやして・・・・・・
813 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2011/10/12(水) 17:07:21.15 ID:N1fOtm0Do
>>808
あの安価スレのことか
安価スレは基本選択肢によってクズにでもイケメンにもなるからな…
仕方が無いんじゃないか
814 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/10/12(水) 21:24:31.71 ID:Nqlg8y1l0
おまわりさんこっちです
宇宙警察にまど神様がストーカー犯罪で補導されないか心配です
>【神様でも容赦なし】まど神様「…補導された」【宇宙警察パネエ】
815 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/10/12(水) 23:16:25.20 ID:8B0t1kTXo
>>811
乙でしたー
いつかは来るんだろうけど終わりの話をされると寂しいな
そういう意味でほむほむの過去話が見たいような見たくないような……
816 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/10/13(木) 02:09:14.88 ID:TUfIlL6no
まど神「単発レスだよ。ほむらちゃんの友達は想像どうり、みんなが知ってる彼のお母さんだよ。世間は狭いよね。ウェヒヒヒヒ」
まど神「それにしてもみんなひどいよ!! わたしはほむらちゃんとかわいい芳君を見守ってるだけなのに!!」プンプン!!
まど神「そりゃ小さい頃の芳君をほむほむしたりしたけど、変態なほむらちゃんと違って、これでもわたしは自重してるんだからね!!」プンプン!!
まど神「かわいい芳君のかわいい○○○○○が大きくなったら、あっちの世界のわたしをオンナにするんだって考えたりすると、こう、胸が熱くなって子○がきゅんきゅんしたりとかするけどさ!!」
まど神「わたしだってまどかなんだから、ほむほむだけじゃなくてほっぺにちゅーくらいしてもいいよね、とか思ったりもするけどさ!!」
まど神「青い果実を食べるのって背徳的かもって思う事もあったけどさ!!」回想中
妄想芳文『おねえちゃぁん……ぼく、何か変だよぅ……』
まど神『大丈夫だよ。お姉ちゃんに任せて。芳君は天井のシミを数えてればいいの』
妄想芳文『あっ……おねえちゃ……』
まど神「あああああああっ!! 芳くーんっ!! はあはあ、思わず前に描いた同人誌の内容を思い出しちゃったよ」鼻血ブー!!ゴロゴロゴロゴロ……
まど神「……でもでも!! わたしちゃんと自重したもん!! してるもん!! それにあの世界の宇宙警察って敵に回すと滅茶苦茶怖いし!!」
まど神「グレートサンバードやマギカカイザーの装甲やフレームに使われてる超絶合金MBSって、マギカ世界の通常兵器は勿論、魔女や魔獣の攻撃ごときじゃかすり傷一つ付けられないんだよ!!」
まど神「全宇宙で一番硬い超合金なんだから!!」
まど神「それに博さんなんて、マスターアジアや衝撃のアルベルトとかと同じ超人と呼ばれる人種で、スパロボで言う所の人間ユニットだから変身してない生身の時でさえ、魔法少女の力じゃ絶対勝てないし!!」
まど神「もし戦ったらこっちが何かしようとした瞬間に、気で作った指弾で脳天や心臓撃ち抜かれて終了だよ!! あの人その気になれば小指のデコピン一発で人殺せるんだから!!」
まど神「しかもあの人、生身で巨大ロボ叩き壊せるんだよ!? マスターアジアみたいにビルを蹴り飛ばすんだよ!? サンバードのスペックってあくまで数値でしかなくて実際はもっと高いんだから!!」
まど神「それにね、反抗的な超ロボット生命体の部下を生身で締め上げて、教育するなんてのもお手の物なんだよ!?」
まど神「宇宙一強い勇者で、地球で一番強い生き物なんだよ!? それに宇宙中の宇宙人天才科学者達が新装備開発や装備のアップデートをしてるから、宇宙警察って実は下手な侵略者より怖い組織なんだよ!?」
まど神「あっちの宇宙で悪さなんてしたら、各惑星の代表達で構成された宇宙裁判所が1分もかからずに判決出してくるし!! わたしデリートされたくないよ!!」
まど神「この前なんてね、平行宇宙の選定をして選ばれた可能性の未来だけが生き残るんだーとか言って、生命力で動くロボットで殺し合いをさせて負けた宇宙からエネルギーを奪ってた自称支配者がいたんだ」
まど神「でね、こっちの宇宙にもちょっかいかけてきたんだよ」
まど神「そしたら、どうなったと思う? 各惑星の首脳陣達と宇宙警察の勇者達の逆鱗に触れてね、速攻でデリート判決が出たんだよ」
まど神「宇宙警察に協力してる天才科学者達があっという間にそのロボットを解析して、自称支配者の宇宙の場所を割り出して、勇者達が乗り込んで行ってね……」
まど神「よその宇宙を食い物にしてた連中全員捕まえて、宇宙警察で押収して改造してあげた自分達の兵器に乗せてあげたんだよ。今まで自分達がしてきた事と同じ目に遭わせて罪を償わせる為にね」
まど神「自称支配者全員の生命力で動く訳だから、理論上滅茶苦茶強い筈のロボットVSマギカサンバードの一騎打ちはすごかったよ……」
まど神「信じる心や想いの力と言った正義の心を無限のパワーにするマギ力(ぢから)を振るう、マギカサンバードが圧倒的な強さで自称支配者達を断罪する姿は正に鬼神そのものだったもの……」ブルブル……
まど神「……その後、悪党がいなくなったその宇宙は正しい心を持った新しいリーダー達を迎えて、こっちの宇宙と和平交渉を結び、宇宙警察はますます勢力を増したんだよ」
まど神「各惑星の住人同士の紛争とか、自力で宇宙に進出してない種族には基本不干渉だけど、他の種族や宇宙に危害を加えようとすると、宇宙警察は黙ってないからね……」
まど神「一応インキュベーターの技術で今のわたしがあるんだから、もし下手売って敵認定されたら何をされるか……。今はまだ誰もわたしに気づいてないみたいだけど……」ガクガクブルブル……
まど神「だからわたしは絶対に悪さはしないよ!!」
まど神「最高の友達であるほむらちゃんを見守って、芳君をほむほむするだけ!! わたしは淑女だからね!!」ドヤッ
まど神「さてと、弁解も終わった事だし。芳君に会いに行こうっと。ウェヒヒヒヒヒ。スーパーほむほむタイム始まるよ!! 待っててね芳君!!」シュン!!
サヤマミアンホム『だ、駄目だコイツ……。早く何とかしないと……』
817 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/10/13(木) 21:32:36.76 ID:gi2MfaTQ0
乙ですたー!
・・・・・・成人向け同人誌を執筆する女神・・・・・・どっかの世界にソッチのスキル持ちのまどかがいたのか・・・・・・
それにしても宇宙警察スゲー!
規模からすると光の国や第二段階レンズマンの銀河パトロール隊とも連携組んでるんじゃないかとさえ思えるくらいだな。
ぜひともデルゴン貴族の殲滅やソラリスの海の謎解明に協力して欲しいもんだわ。
まど神様は・・・神様とは言え年齢的に補導&お説教で済むんじゃ??
818 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/10/13(木) 23:14:40.94 ID:YYXqPj8n0
>年齢的
色んな世界のまどかが統合されたような存在なので
年齢=平行世界のまどか数×14
なんでは?
ばb…おや?窓の外にピンク色の無数の矢が…
819 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/10/13(木) 23:45:05.49 ID:gi2MfaTQ0
>>818
無茶しやがって・・・・・・
そう言えばfigmaのまどっちを買ったが実に可愛らしい
芳文がコレ見たらどんな反応をするかとか考えると、これまた実に楽しかったりw
オレに技術があればfigma芳文作って一緒に並べてやれるのにとか考えてしまうわ
820 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/10/14(金) 22:35:50.99 ID:DOROvFHso
――まど界。
まど神「さやかちゃん。わたしちょっと友達の所に行ってくるね」
さやか「ああ、あすなろ市の?」
まど神「うん。ちょっと遅くなるかも」
さやか「ふーん。行ってらー」
まど神「行ってきまーす」
――ピンポーン。
まど神「うーみかちゃーん。わたしだよー」
海香 「いらっしゃい。そろそろ来る頃だと思ってたわ」
まど神「ウェヒヒヒ。お邪魔しまーす」
海香 「何か飲む?」
まど神「ううん。いいや。それより例の物、出来てる?」
海香 「勿論。はい、これ」
まど神「うわあ……。原稿用紙がジャンプ一冊分くらいあるよ」
海香 「それだけ私の創作意欲が湧く題材だったのよ」
まど神「ティヒヒヒヒ!! 海香ちゃんが原作書いてくれて、わたしとっても嬉しいなって」
海香 「お世辞は内容を見てから言ってね。作画担当さん」
まど神「うん。早速拝見させてもらうよ」
まど神「……」ペラペラペラ……
海香 「……」
まど神「……」ペラペラペラ……
海香 「……」
まど神「……すっごく面白いよ!! さすが海香ちゃん!! 最高だよ!! こんなアイディア思いつくなんて天才だよ!!」
海香 「そ、そうかしら?」
まど神「うんっ!! 円環の理を破壊しようとするダークサイドに堕ちた魔法少女が、別世界のわたしを拉致してその力を悪用しようとする……」
まど神「悪の魔法少女の手に落ちたマギカ・ブレードの力で滅ぼされそうになるわたしを救う為、芳文君に助けを求めるほむらちゃん達円環の魔法少女4人組!!」
まど神「力を求めた芳文君が手に入れるブレイブ星人の新型変身ベルトの設定も秀逸だよ!!」
まど神「スマートフォン型のデバイスに、偵察用兼変身スーツの制御用兼ナビゲーション機能付きのミクロマンサイズの小型ロボットをセットしてベルトに装填する事で変身するなんて!!」
まど神「しかもその小型ロボットにほむらちゃん達が受肉する事で、再び現世に降臨!! 手のひらサイズの小さな魔法少女の力を宿したニューヒーロー!! 仮面ライダーマギカ誕生!!」
まど神「デバイスの中に誰を入れるかで、ほむフォーム、マミフォーム、あんフォーム、さやフォームに変身!! かっこいいよ!!」
821 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/10/14(金) 22:36:35.82 ID:DOROvFHso
まど神「これだけでもイケてるのに、小さい頃の芳君がわたしと一緒に魔獣との戦いで大ピンチのほむらちゃんを助けに行く話とかまで、作っちゃうなんて!!」
海香 「マンガの神様が降臨したのかもね。イマジネーションが止まらなくて」
まど神「わたしが現世に干渉出来なくて直接助けられないから、ほむらちゃんの息子である芳君に憑依合身する事で芳君がちっちゃいほむらちゃん魔法少女モードになるなんて胸熱すぎだよ!!」
まど神「わたしが合体してる間、本物の女の子になっちゃう芳君なんて萌えすぎ!! 可愛いショタが可愛いロリに変身なんて反則だよ!!」
まど神「しかも産んだ覚えもない子供に、母性を目覚めさせちゃうほむらちゃんなんて最高!!」
海香 「気に入ってくれたようでなにより。原作者冥利に尽きるわ」
まど神「ウェヒヒヒヒ!! どっちも描きたいよぉぉぉっ!! でも時間がないし、どっちにしようか迷っちゃうなあ!!」
海香 「ええ、もうすぐだものね」
まど神「うん!! まど界ビッグサイトで開催されるわたし達主催のビッグプロジェクト……」
まど神&海香『第2回コミックまどケット!!』
まど神「絶対成功させようね!!」
海香 「ええ。でもその前に原稿を描かないとね」
まど神「そうだね!! 今回は芳君性転換本で行くのに決めたよ!!」
海香 「ベタとトーン貼りは手伝うわ。がんばりましょう」
まど神「ありがとう!! わたし達のマンガ道はまだ、始まったばかりだよ!!」
カオル「……はあ。また手伝わされるのか。徹夜は嫌だなあ……」
かずみ「ぼやかないぼやかない。友達だもん。手伝ってあげようよ」
超番外編 ばくマンっ!!
――そんなこんなで1ヶ月後。
まど神「それじゃ行ってくるねー」
さやか「行ってらー」
ほむら「……まどかはいったい何をしに行くの?」
さやか「よその友達となんかやってるみたい」
ほむら「よその? その子達と何をしてるの?」
さやか「さあ? まどかにはまどかの付き合いがあるんだし。神様になって知り合いも増えたみたいだからね。あたしは知らないよ」
ほむら「……」
さやか「あっ。まどかを追いかけて行っちゃった。ここんとこ、まどかがあんまりかまってくれなかったから寂しいのかな、ほむらの奴」
さやか「まあ、まどかがほむらを追い返したりする事はないだろうから、ほっといてもいいか。あたしはマミさんとこにでも遊びに行こうっと」
822 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/10/14(金) 22:37:59.84 ID:DOROvFHso
――まど界の外れにあるビッグサイトにて。
まど神「それではこれから第2回コミックまどケットを開催するよ!!」
魔法少女達『わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』パチパチパチパチ……
まど神「どんなジャンルでもオーケー!! わたしが配信してる全宇宙の番組ならなんでもオーケーだけど、一応内容チェックはさせてもらうよ」
魔法少女達『オール・ハイル・まど界!!』右手突き上げ
まど神「オール・ハイル・まど界!!」右手突き上げ
魔法少女達『オール・ハイル・まど界!!』右手突き上げ
まど神「まずはこのサークルからだね!!」
魔法少女A「どうぞ、まど神様」
まど神「ありがとう。どれどれ……」
ほむら(フタナリ)『QB(CV若本)をレイプしたらソウルジェムが浄化された』
QB(CV若本)『うおぉぉぉぉぉぉぉぃっ!! ほむら!! 何言ってんだぶるあぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
ほむら(フタナリ)『さあ、その汚いケツをこちらに向けなさい』
QB(CV若本)『やめろおぉぉぉぉぉぉぉっ!! アッー!!』
ほむら(フタナリ)『なかなかいい具合よ。貴男のケツマンコ』
QB(CV若本)『あひいぃぃぃぃぃっ!! こんなのでエントロピーを凌駕しちゃうぅぅぅぅぅぅっ!!』
まど神「」
魔法少女A「ど、どうでしょうか?」
まど神「あ、ああ、うん。すごいアイディアだね……。わたしにはとても思いつかないよ。あなた、すごいね……」
魔法少女A「ありがとうございます!! お褒めにあずかり光栄です。よろしければ一冊差し上げますので。どうぞ」
まど神「あ、ありがとう。そ、それじゃわたし行くね」
魔法少女A「はいっ。がんばってください!!」
まど神「誰得なのよ……コレ。きっと売れないと思うな……。さてと次のサークルはっと」
ほむら『いやあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 魔獣チンポふとすぎりゅうぅぅぅぅぅぅ!! 魔獣ザーメン溢れてきちゃうぅうぅぅぅぅぅ!!』
まど神「」
魔法少女B「C、やっぱやばすぎるって言ったでしょ。ほむら様はまど神様の遺志を受け継いで長い間戦ってこられたのよ。それをこんな……」
魔法少女C「大丈夫だって」
まど神「……これ、いくら?」
魔法少女B(友達がレイプされてる本買うんかい!!)ガビーンッ!!
823 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/10/14(金) 22:39:34.48 ID:DOROvFHso
まど神「あっ!! これは勇者特警サンバード本だね。あっちの宇宙で宇宙人の子供達向けに放映されてる宇宙テレビアニメを配信した甲斐があったよ」
博 『円華。痛くないか?』
円華『痛いけど……今、すごく幸せなの……』
まど神「ブフーッ!! あっちのほむらちゃんの初体験本だーっ!! これ買うよ!! いくら!? いくら!?」ハアハアハアハア
芳文『母さんがいけないんだ……。いつまでも若い姿のままだから……』
円華『やめなさい芳文!! 私達親子なのよ!!』
芳文『構うものか!! 母さんを俺だけの物にしてやる!!』
円華『だめえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』
まど神「」
まど神「絶対にありえないけど、薄い本ならではの展開だね!! アリだよ!! わたしの自慢の彼氏をみんなに見せたくて、あっちのわたしの物語をドラマとして放映してよかった!!」
円華『オンナも出来る母親で良かったわね』
芳文『か、母さん……』
円華『まどかちゃんを抱く前に、ママが練習させて、あ・げ・る』
まど神「うわああああい!! アリだよ!! ビッチほむらちゃん萌えー!!」鼻血ダラダラ
タツヤ(14才)『ほら、ほむ姉ピースピース』
ほむら『イエーイ!! まどか見てるー? まどかの弟に孕まされながら、私イッちゃうよおぉぉぉぉぉっ!!』
まど神「」
まど神「……なんか、ほむらちゃん大人気だね。わたしの代行者みたいなイメージがみんなに根付いてるせいかな? まあ実際最後まで戦い抜いたけど」
まど神「ところで芳君の本はないのかなぁ。わたしが描いたのだけじゃつまんないよ……」
芳文(7才)『お、おねえちゃあぁぁぁん……。ぼく、もうだめだよお……』
まど神『うふふふ。いいよ。おねえちゃんの膣にいっぱい出しちゃえ♪』
まど神「キター!!」
まど神「超レアだよ!! ショタバージョン芳君×わたし!!」鼻血ブー!!
まど神「これを描いたのはあなた?」ハアハア
魔法少女D「は、はい」
まど神「グッジョブ!! これからもその魔法淑女スピリットを失わないようにね!!」肩に手を乗せてサムズアップ
魔法淑女D「はい!!」
824 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/10/14(金) 22:41:42.67 ID:DOROvFHso
まど神「……さてと。新刊チェックも済んだし。それじゃみんな!!」天井を見上げながら、首トントン+鼻血フキフキ
まど神「わたし達の祭りが始まるよ!!」満面の笑顔で振り返り
ほむら「随分楽しそうね。まどか」
まど神「」
まど神「ほ、ほむらちゃん……。どうしてここに?」
ほむら「さあ? なんでかしらね」
まど神「あ、あのね。これは……」
ほむら「ねえまどか。どうして私がエッチな事されてる漫画ばかりなのかしら?」
まど神「」
ほむら「私だけならともかく、私の息子までこういう目で見られるのは、正直不快だわ」
まど神「よ、芳君はあっちのほむらちゃんが産んだ子で」
ほむら「関係ないわ」
まど神「」
ほむら「芳文は私の子。別の世界の私が産んだとか関係ない」
まど神「」
ほむら「貴女達、覚悟はいいかしら? お祈りは済ませた? 現世のパパとママへのお別れはOK?」
魔法少女達『』ガクガクブルブル
まど神「ほ、ほむらちゃん。落ち着いて。まどパンあげるから」
ほむら「……まどパンって何?」
まど神「わたしのパンツ」
ほむら「……」プルプルプルプル……
まど神「あ、あれ? もしかして物凄く怒ってる? おっかしいなあ……。大抵の世界のほむらちゃんはわたしの事が大好きな、同性愛者の変態さんだからこれで上手く収まるはずなのに」
ほむら「……」プルプルプルプル……
魔法少女A「ま、まど神様。この方はアニメ世界のほむら様です」
まど神「あーっ!! そういえばそうだったよ!! 別世界のほむらちゃん達の見過ぎですっかり忘れてたよ!!」
まど神「このほむらちゃんはとにかく一途で友情の為に頑張りすぎて、恋愛も結婚も出来ずに長い間戦い抜いて、キスもエッチも未経験のまま逝ってしまったほむらちゃんだったよ!!」
魔法少女達『えー!? 意外ーっ!! 美人でモテそうなのに、処女のまま長生きしてたなんてー!?』
ほむら「……」プルプルプルプル……ブチッ!!
ほむら「……」ホムホムウイング展開!! ホムホムアーチェリー顕現!!
ほむら「……さあ、貴様等の罪を数えろ!!」
825 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/10/14(金) 22:44:38.22 ID:DOROvFHso
まど神「それからの事は正直思い出したくありません。まど界ビッグサイトは廃墟と化し、すべての本は灰塵と化し、魔法少女達は全員ぼろ雑巾のようになって、ジェンガのように積み上げられてました」
まど神「わたしは慌てて別の世界に逃げて、暴れまわるほむらちゃんを見てました。ものすごく怖かったです。小学校の時、いじめっ子相手にキレて大暴れしたいじめられっ子を見た時の事を思い出しました」
まど神「その後、ほむらちゃんは一か月近く口を利いてくれませんでした。泣いて謝って縋りついても許してくれませんでした」
まど神「見かねたさやかちゃんが変な性格のわたしが合体したせいで、今のわたしになってしまったんだから、許してやってと口添えしてくれてようやく許してもらえました」
まど神「でも許す代わりにもう二度とコミックまどケットを開催しない事を約束させられてしまいました」
まど神「わたしの描いた漫画を紙面でみんなに見てもらえなかったのは残念だけど仕方ありません。ほむらちゃんとの友情の方が大切だから」
まど神「だから、今はピクシブで漫画を公開しています」
――まど神の座。
まど神「ウェヒヒヒヒ。またランキングが上がったよ!!」
まど神「さてと。そろそろほむニーの時間だね!!」
まど神「わたしの服の内側にある宇宙空間。ここにもらった薄い本全部しまってあるもんねー。誰にも手出しはさせないよ!!」
まど神「よーし!! 今日は博さんとほむらちゃんの初体験漫画にしようっと!! ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
おしまい
826 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/10/14(金) 22:47:11.32 ID:DOROvFHso
あんこ「だ、駄目だコイツ……」
さやか「もう駄目かもしれないね」
マミさん「まあ害はないから生暖かく見守りましょう」
全員「……はあ」
827 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/10/15(土) 00:23:11.63 ID:QdT5Qy8h0
乙ですたー!
いやマミさん。既に実害が出まくってますがな。
それにしても、vip生まれのまどか達が合体しただけでこの破壊力なんだから・・・・・・チラ
たこ○ぼまどか「合体?そんな事より、今日も早乙女先生の婚期を遅らせる仕事が始まるんだよ!」ウェヒヒヒヒヒ
・・・・・・アレが先生への仕返しに夢中で合体してなくてホント良かった。
828 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/10/15(土) 02:52:29.80 ID:ubbN3ej2o
腐ってやがる……遅すぎたんだ……!
829 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2011/10/15(土) 23:58:12.40 ID:Hh++RM+To
ェ・・・
830 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/10/19(水) 21:14:19.09 ID:cRS2auKAO
しかしあれだな
オリキャラって大抵叩かれるもんなのに、叩きレスがないのも珍しい
まどか達魔法少女五人よりも身体能力が高くて勉強も出来て、しかも母親似のハンサムなんてチートキャラでほむほむの子供なんてとんでも設定なのにな
831 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/10/19(水) 22:53:25.57 ID:Tr8ePvar0
オリキャラ特有の上から目線で批判、何もせんでもニコポでハーレム、変な髪、眼の色
とかないからかね?
まどか一筋だし、放浪編とか割りと苦労しているし…
難を言えば、ラストの世界改変によって、まどかはともかく芳文は前世の艱難辛苦の思い出、綺麗さっぱり忘れていることかね。
世界改変系エンドの作品はみんなそうだが。
832 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/10/26(水) 22:08:57.12 ID:Yvft2DkRo
杏子「作者からの言伝つーか独り言」
杏子「ほむら☆マギカが思いの外手こずってるんだと」
杏子「まとまった時間が取れないせいで中々進まないんだってさ。あと旦那の扱いが難しい。まず息子とは違ったキャラとして見せなきゃいけないから」
杏子「旦那が最強設定なのって、改変後の世界で二度とまどか達が辛い思いや戦いをしなくて済む為なんだって。けど本編ではその力を見せないようにしないといけないしね……」
杏子「ドラゴンボールで例えると、本編は悟空が死んでしまった世界。改変後は悟空が生きてる世界なんだ」
杏子「もしジャンプマンガだったら、新しい敵とか出てくるんだろうけど。改変後の世界ではそういうのがたとえ出てきても、円華おばさんの旦那がまどか達の知らない所で倒してしまうから、まどか達は普通に幸せに生きて行けるんだ」
杏子「けど円華おばさんは旦那の強さじゃなくて、その優しさに惹かれた訳だから、その辺のバランスが難しいらしい。一歩間違うと読者にNTR感を与えてしまうからね」
杏子「あとは作業の合間にマミルートとかも考えてるらしいけどね。まどか以外との恋愛は難しいらしい」
杏子「マミは社の初めての友達で、同い年で、クラスメイトで、同じ一人暮らしって設定だから、マミルートくらいなら割と何とかなりそうだけど」
杏子「ここだけの話、恋人になるだけならマミはまどかと同じくらいの難易度なんだよね。マミだけのパートナーとして一緒に戦ってれば異性として意識されるようになるから」
杏子「難しいのがさやかとあたし。さやかが好きなのは上条だし。兄妹みたいな関係になるのは簡単だけど。あたしは……こんなだし、ね」
杏子「正直、某スレみたいに安価形式でやったり、バクマンの七峰みたいにみんなの意見をもらって、みんなのネタを組み合わせるくらいしないと無理かも」
杏子「イベントや大筋の話は出来ても細部が煮詰め切れないんだって」
杏子「ギャルゲーのシナリオライターが複数でシナリオを書く理由がわかったような気がするって。ひとりで全部やるのは難しいって事が」
杏子「ま、予定されてる2本を終わらせてからだね。今後何かやるかどうかは」
杏子「その内ほむら☆マギカも何とかするので期待せずに待っててほしいってさ」
杏子「じゃーなー」ノシ
833 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2011/10/26(水) 23:06:31.38 ID:2rGruO0co
了解です
無理せず進めてください
個人的にはまどかENDで大満足なんで
他のルートは友達ENDでもおkなんですよね……
まどかと付き合ってる前提で他のメンバーをピックアップする話とかはどないでしょうか?
834 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/10/26(水) 23:10:28.42 ID:rGuWQOEl0
乙ですたー!
マミさんと芳文が同じ幼稚園だったってのが急に出てきたな〜と思ってたら、やっぱりルート進めてたとは。
ほむら☆マギカ共々ろくろ首になって待ってます。
さやかルートは、ネックになってる上条くんを逆にどう使うかかね?
応援する芳文と、逆に止めようとする杏子ちゃん。
で、さやかと杏子ちゃんのどっちの意見に同調するかでルート確定って感じかも。
上条に失恋後、さやかルートなら芳文がさやかの剣の練習相手、杏子ちゃんルートなら杏子ちゃんに
さやかの相手をしてもらって芳文が訓練メニューを組むとか(もちろん、杏子ちゃんと相談しながら)。
どっちのルートもワルプル前の山場は、さやかの魔女化阻止か、魔女化からの救出かね。
でも、誰のルートにせよ芳文にまどか以外とってのは確かに難しそう。
オレもまどかの相手は芳文以外考えられなくなってるし(百合ネタ以外では)、ユリイカのあおちゃんと千和さんの
インタの発言から、じゃあ芳文と付き合うまどかは?とか芳文の立ち位置、存在は??とか考えちゃう位になってるし。
何にせよ、忙しい中みたいだから無理の無いよう頑張って!
835 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/11/13(日) 14:42:57.24 ID:XiFJcGr+o
超番外編 超魔法淑女まどか☆マギカ
2000年6月 風見野市 日だまり荘近くの公園遊具内にて
芳文 「ぐすぐす……」
まど神「どうしたの芳君!! なにかあったの!?」
芳文 「ぐす……おねーちゃん……。あのね、昨日の夜にね、パパがママをいじめてたの」
まど神「博さんがほむらちゃ……円華ちゃんを!? どういう事!? おねえちゃんに詳しく教えてくれるかな」
芳文 「おしっこにいきたくなって、ぼくが起きたらね、ママもパパも隣にいないの。それでねママとパパを探しに他のお部屋を覗いたらね、ママが泣いてるのにね、パパがママをいじめてたの」
まど神「まさか……。愛妻家で子煩悩で、家族思いの博さんが家庭内暴力を振るうなんて……」
芳文 「ママがね、はだかんぼでお馬さんのかっこうして『もうだめえ、かんにんしてえっ!!』って泣いてるのにね」
まど神「!! なにそれ!? 詳細を詳しく!! (芳君はきっと悪い夢を見たんだよ)」ガシッ!!
芳文 「ふえ……。おねーちゃん、おめめが怖いよ……」
まど神「あ……ごめんね、芳君。それで、パパがどうしたの? (いけないいけない、建前と本音が逆だったよ……)」
芳文 「はだかんぼのパパがママのおしりを両手で掴んで『円華はいやらしいな。口でそんなこと言っててもここはもっともっとって涎をたれながしてるぞって』パンパンって叩いてたの」
まど神(叩く? ああ、芳君が見た角度では肝心な所が見えてなかったんだね)
芳文 「それでね、ママがね『らめえぇぇぇぇぇぇっ!! イっちゃうぅぅぅぅぅぅぅっ!!』って叫んでねんねしちゃったの」
まど神「ごくり……」
芳文 「ママが泣きながらねんねしちゃったのに、パパはうれしそうにわらってたの」
まど神「それからどうなったの?」
芳文 「パパがね、ぐったりしてるママのおまたとおっぱいを触りながら、『さあ、第2R開始しようか』って言うの。ママは『お願い、少し休ませて』って泣いてるの」
まど神「うわあ……」
芳文 「ぼくママの泣いてる顔見たくなかったから、ママをいじめちゃだめーってパパにライダーキックしたの」
まど神「え!? それでどうなったの?」
芳文 「パパはママをいじめてたわけじゃないよって言ってたけど、ママ泣いてたもん。パパなんかきらいって言ったら泣きながらどっかいっちゃった」
まど神(子煩悩な博さんには愛息のその言葉はきついだろうね……)
円華 「芳くーん、どこにいるのー!?」
博 「芳文ーっ!! パパが悪かったあぁぁぁぁぁぁっ!! 帰ってきておくれぇぇぇぇぇぇっ!!」
まど神「芳君、ママ達が迎えにきたみたいだよ」
芳文 「……なんでママはパパなんかといっしょにぼくを探してるのかな」
まど神(あちゃー。大好きなママをいじめてたって本気で怒ってるよ)
836 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/11/13(日) 14:43:25.30 ID:XiFJcGr+o
博 「……見つけた!!」
まど神「あっ。見つかっちゃったみたいだよ」
芳文 「なにしに来たの? ママをいじめるパパなんかきらい」
円華 「芳君、ママはパパにいじめられてなんていないわ」
芳文 「うそだよ。ぼくママがパパにいじめられてるの見たもん」
円華 「……芳君は悪い夢を見たのよ」
芳文 「……夢?」
円華 「そうよ。わるい夢。ママもパパもいつも芳君の隣で一緒に寝てるでしょ」
芳文 「……うん」
円華 「芳君ひとりでねんねさせて、他のお部屋でパパがママをいじめるなんて事、あるわけないでしょ」
芳文 「……ほんとうに夢だったのかなぁ?」
円華 「そうよ。芳君はまだちっちゃいから、悪い夢を本当の事だと思っちゃったのよ」
博 「そうそう!! ママの言うとうりだぞ!! ママとパパはラブラブで仲良しなんだ。だから芳文の夢みたいな事なんてあるもんか!!」
芳文 「……ほんと?」
円華と博『ホントホント。ママとパパは仲良しだからね』ニッコリ
芳文 「……うんっ」ニパァー
博 「よかったよかった。さあお昼ご飯食べに行こうか。お昼ご飯食べたらパパと遊ぼう」芳文抱っこ
芳文 「うんっ。パパ、きらいって言ってごめんなさい」
博 「ああ。パパはもう気にしてないよ」ナデナデ
芳文 「えへへへ。パパ大好き」
博 「パパも芳文の事大好きだぞー。もちろんママの事も大好きだー」
芳文 「えへー」
円華 「あらあら」
博 「さあ、行こうか」
芳文 「うんっ」
円華と博(……ごまかせてよかった!!)
まど神「どうやら上手く収まったみたいだね。よかったよかった。それにしても……」
まど神「やっぱり、ほむらちゃんは受けだよね!! ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
837 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/11/13(日) 14:44:11.15 ID:XiFJcGr+o
――2011年11月28日 ブレイブ星人の宇宙船にて
博 「」
ジョージ「サンバード。また奥さんと小作りしてきたのか」
博 「……ああ」
ジョージ「また一晩で3Rもしたのか?」
博 「……12Rだ」
ジョージ「」
博 「……お義母さんが不妊治療して円華を授かったって言ってたからな。どうも円華は妊娠しにくい体質らしい」
ジョージ「」
博 「最近、息子の彼女の家族と親しくなったんだが、小さい子がいてな。その子を見てますます新しい子供が欲しくなったらしいんだ」
ジョージ「……そうか」
博 「結婚してすぐに息子が出来たし、その内二人目が出来るだろうって楽観視してたんだが、なかなか出来なくてな。最近は諦めてたんだが……。どうも二人目が本気で欲しくなったらしいんだ」
ジョージ「奥さんはまだ35だったか? 地球人としてはまだまだ若いから仕方あるまい」
博 「……ああ。俺ももう一人くらい欲しいとは思うんだが……。嫁はたくさん回数をこなせばヒットすると考えたらしい」
ジョージ「嫁さんが淫乱だと大変だな」
博 「……この野郎。人の嫁を淫乱って言うな」
ジョージ「私を殴る元気すらないじゃないか。本当に大丈夫か?」
博 「……ああ」
ジョージ「宇宙最強の勇者がこんなになるとは。まさか無敵の勇者サンバードを殺せるのが奥さんだけとは衝撃の事実が発覚したな」
博 「……縁起でもない事言うな」
ジョージ「確かに。宇宙最強の勇者の死因が腹上死などシャレにならないな」
博 「……」
ジョージ「サンバート?」
博 「」
ジョージ「サンバード!! しっかりしろサンバード!! 救護班!! 救護班はまだか!! サンバード!! しっかりするんだ!!」
博 (……じいさん。久しぶりだな。俺にも家族が出来たんだ。今の俺には嫁さんと息子がいるんだぜ)
ジョージ「サンバード!! しっかりしろサンバード!!」
博 (息子の名前なんだけどな、芳文って言うんだぜ。ああ、あんたが地球で名乗ってた名前だよ。なんだよ、安直とか言うなよ。俺にとって、あんたは尊敬できる自慢の師匠で父親だったんだからな)
ジョージ「サンバードぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
838 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/11/13(日) 14:46:54.27 ID:XiFJcGr+o
まど神「その後、博さんは救護カプセルに入れられて復活しました」
まど神「ブレイブ星人の勧めで、慰安旅行と言う名目で三日間自宅を離れて、心身ともにリフレッシュする事にした博さんですが……」
円華 「いってらっしゃい」
博 「ああ、お土産楽しみにしててくれ。そろそろ迎えのバスが来るな」
部下♀「大隊長。お迎えに上がりました」
博 「ああ、ご苦労さん」
部下♀「奥様でいらっしゃいますか。いつも隊長にはお世話になっております」
円華 「いえ。こちらこそ主人が皆さんにお世話になって……」
部下♀「いえいえ。皆隊長には感謝しています。ご主人の部下になれた事は皆の誇りです」
博 「皆を待たせたら悪い。そろそろ行くぞ」
部下♀「了解です。隊長」
――送迎バスの中から
部下♀2「あ、あの人が隊長の奥さん?」
部下♀3「うわーすごい美人ー」
部下♀4「しかも若いー」
部下♂「いいなあ。隊長。そりゃあ他の女に色目使われても落ちない訳だ」
円華 「……ダーリンちょっと」地獄耳
博 「ん? どうした、円華。マジックなんか持ってきて」
円華 「……」キュポン
博 「お、おい円華!?」ジー
円華 「帰ってきた時に薄くなってたら、浮気したとみなすから」キュッキュッ
博 「……俺はお前にしかモテた事ないのに」<鈍感
――別府温泉 草津の湯にて
ジョージ「サンバード、なぜイチモツに名前が書かれてるんだ」
博 「気にするな。というかジロジロ見るんじゃない」
ジョージ「だったら隠せばいいだろう」
博 「温泉にタオルを入れるのはマナー違反だ」
ジョージ「そうか」
博 「ああ」
まど神「うわあ……。ほむらちゃんすごいよ!! まったく、どこの世界でもほむらちゃんの執着心はすごすぎだね!!」
まど神「好きになったら一直線!! 博さん、がんばって孕ませてあげてね!! ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」
まど神「さてと、次はどの世界のほむらちゃんを見守ろうかなあ!! ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
――円環の理。
超魔法少女鹿目まどか。
アルティメットまどか。
まど神。
彼女に導かれし魔法少女達は様々な呼称で彼女を呼ぶ。
――超魔法淑女。
最強の魔法少女にして、最凶の魔法淑女である彼女が、魔法少女達からそう呼ばれるようになるのは、そう遠い話ではなかった……。
おしまい
839 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/11/13(日) 14:52:10.77 ID:XiFJcGr+o
ほむら「」
あんこ「どんどん、まどかが壊れていくな」
さやか「あたしもうあきらめたよ」
マミさん「別世界の暁美さんも大変ね」
あんこ「そういや各ルートのネタはちょくちょく浮かぶらしいよ」
さやか「マギカ・シグヴァンに変わる奥義とかも考えてるらしいね。ティロ・フィナーレ(斬撃)とか」
マミさん「とりあえず今回は保守のためのネタって事らしいわ」
あんこ「じゃ、またなー」
840 :
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[sage]:2011/11/13(日) 15:32:29.37 ID:7DvAUi7B0
乙ですたー!
・・・そう言えば、コトの真っ最中を小さい息子さんに見られて
「 合 体 ! 連 結 ロ ボ 一 号 ! ! 」
「 二 号 ! !」
って誤魔化したご夫婦の話があったっけ
841 :
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(徳島県)
[sage]:2011/11/14(月) 23:24:40.26 ID:Rfnl+qV0o
乙でしたー
妹か弟誕生の仕込み回ですね分かります
842 :
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[sage]:2011/11/15(火) 00:13:26.06 ID:jadZYJH00
本編後のほのぼの話やまどか神変t…いやそのほらあれだ神様って色々あるんだなあ、の話もいいけどもたまにはシリアス系外伝も
あの放浪編の微欝、絶望への未来への二人旅な展開も懐かしい
あの駅前でビラ配り中の鹿目家の人々との再会シーンは数多のまどかSSの中でも屈指の名シーンだったかと
放浪編の外伝IF話とかももっと見たい
何でも願いを叶えてくれるという杯が賞品の魔法使い達のお祭りがあると聞いて兵庫県に行く話とか
学園祭限定で願いを叶える大樹があると聞いて埼玉県の某学園都市へ行く話とか
秋葉原歩いていたら芳文が突然現れた鏡に吸い込まれてどっか別の世界に召喚され
「で、あんた誰よ?」
「ピンクの髪、幼女体型、ちっぱい、超俺ごのみーーーーっ!!」
とのたまう話とかも見てみたい
843 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/11/16(水) 05:26:20.39 ID:b9eTGIrXo
杏子「作者の独り言を代弁するよ」
杏子「名シーンとか言われると嬉しいってさ。それにしても、ふーむ。シリアス系外伝ねぇ……。例えばまどか達がいなくなった後の見滝原魔法少女隊(笑)のその後とか?」
杏子「そもそも鬱話って需要あんのかね……。本編での鬱展開時に思いっきり読み手の反応がなかったしあんま需要なさそうだけどな」
杏子「関係ないけど、よそのSSで見滝原魔法少女隊とか真・魔法少女って単語が出てくると、皆考える事は同じだなと笑いが込み上げるそうだ」
杏子「話を戻すけど円華おばさんの過去話がけっこうな鬱話の予定なんだってさ。それと別に好き好んで鬱話見たい奴がどれだけいる事か……」
杏子「本編の鬱パートもかなり加減してあるんだよね。もう1話くらい鬱話を足せたけどそれやるとやりすぎで読み手に完全に引かれるからボツにしたけど」
杏子「魔女化した姉をまどか達に殺された少女が、魔法少女が絶望で魔女化する事を知りながらあえて契約してまどか達に復讐しようとする話なんだけどね」
杏子「読んでくれる人間がいなけりゃ意味がないから、完結前にハッピーエンド宣言したくらいだし。鬱話は原作だけで良くないかい?」
杏子「ぶっちゃけるよ。どんな話が需要があるのか、あんまり読み手の反応がないからわからん(笑)だってさ」
杏子「本編9話までの馬鹿モード芳文とそれ以降のクール芳文のどっちが好かれてるのか?」
杏子「そもそも馬鹿モード芳文とあたし達の掛け合い漫才が受けてたのかどうか?」
杏子「みんな仲良く魔女退治の見滝原魔法少女隊編。まどかといちゃいちゃラブコメ編。光を求めて絶望の世界をさすらう放浪編。そしてすべてが終わった戦いのない世界で幸せに暮らすその後。ひだまり☆まどっち編」
杏子「どれが一番受けたのか、需要があるのかわからんから、番外編は思いつくままにしか書けないらしい」
杏子「とりあえず、ほむ☆マギ執筆の息抜きに書いた手抜きSS紹介」
まどか「ほむらちゃんを助けに行ったら絶望された」
http://gekisokuvip.blog135.fc2.com/blog-entry-2110.html
杏子「そうそう。SSのネタになるかと思ってモバゲーを始めたんだと。で、気がついたら1万円以上課金していたそうだ。休み時間とかにポチポチ携帯操作しながらSSのネタ出し」
杏子「でも肝心のモバゲーはあんまりネタになりそうもない。作者ってホント、馬鹿。だよな」
杏子「その金でまめまどかでも落札すりゃ良かったのに」
杏子「ほむほむ愛でスレで使ったリボほむ1体だけじゃなくまどかもあれば色々出来たのにな」
杏子「ほむ☆マギも年内に完結するようにしないとな。じゃーな」
844 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
[sage]:2011/11/16(水) 08:04:05.28 ID:1cwQ0kWSO
馬鹿げた日常の掛け合いが見たいです!
845 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(宮城県)
[sage]:2011/11/16(水) 10:21:23.13 ID:ujsdqif10
ひだまどっちが一番好きです
846 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
[sage]:2011/11/17(木) 00:46:32.13 ID:ex5Ec7cw0
乙ですたー!
>杏子「本編9話までの馬鹿モード芳文とそれ以降のクール芳文のどっちが好かれてるのか?」
んー、俺的には馬鹿モードもシリアスモードも地続きで芳文なんで、どっちも好きかね。
9話までも真面目なときはちゃんと真面目なヤツだし、そういう描写があったから放浪編に入っても違和感を感じなかったし。
個人的には、改変後の平和世界でまどかが芳文に告白するところが見たかったというか、見たいかな。
改変後のまどかって、放浪編での苦労や、それを乗り越えたが故の自信もあって、小柄で可愛らしいけどイイ女って感じで
男子生徒からは結構な注目株なんじゃないかと思う。
でも本人の”ほんわか親切オーラ”や、さやか&仁美+杏子の鉄壁で攻略不可能だったまどかが好きになった相手って誰だ!?
みたいな感じで慌てて告白→玉砕したヤツもいたんじゃなかろーかとか、告白の周辺で起きた騒ぎみたいなのもありそうだし。
・・・・・・まど神様が色々と裏でやってそうでもあるけれどw
847 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(徳島県)
[sage]:2011/11/17(木) 19:44:33.98 ID:uf6uEFiPo
みんなでワイワイガヤガヤやってるのを見るのが好きだったので
馬鹿モード芳文との漫才は好きでした
今のニヤニヤ親子話も嫌いじゃないですが
改変世界でのまどかやマミさんたちとの話が見たいですね
あえて芳文抜きで、まどかと元魔法少女達だけで何かする話とか
逆に芳文だけでマミさんやさやかと何かする話とか
円華おば……円華さんとほむらちゃんとかの絡みも見てみたいです……!
848 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
[sage]:2011/11/18(金) 00:53:43.36 ID:0lMRPJWr0
名シーンと言うか、名台詞になるけど21話ラストの
(この子が一体何をした? どうしてここまで追い詰められないといけない?)
が好き。
本編アニメを見てたときの俺の気分がまさにコレだったから。
849 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2011/11/20(日) 19:30:22.97 ID:9yofrlxQo
杏子「単発レスだよ」
杏子「
>>844-855
ふーん。平和な日常話が好きなのかい」つメモメモ
杏子「
>>846
あんたはいつもレスくれるね。サンキュ。あんたがくれるレスはネタ出しの役に立つってさ。まどかの告白に関しては、まあ、アレだ。色々想像してもらった方が楽しいかもな」
杏子「あたしが知る限り、あの時のまどかはかなり積極的だったな。剣道部にわざわざ調理実習で作った物持ってったり、あの馬鹿が部活終るまで待ってたり……。あ、まどかがこっち見て拗ねてる。まあ、これくらいにしとくか」
杏子「
>>847
そういうネタはあるけど、先にほむ☆マギだって。芳文がまどかの友達ほむらを弄って、円華おばさんが『私をいじめるなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』って憤ったりするみたいな」
杏子「日常のドタバタ話とかのネタはあるけどこのスレ内で完結するかわからないし、わざわざ新スレ建てるのもな……。新スレ立てたらマミルートとかと並行連載になってしまう。それはややこしいし」
杏子「映画化という餌が与えられたから、魔まマの寿命は伸びたんだろうけど」
杏子「余談だけど初期構想だと芳文の母親ほむら(34)とは別にループしてきたほむらが存在しててね」
杏子「魔法少女の真実に絶望し魔女化寸前のまどかを殺して、楽にしてやろうとするループほむらVS魔人芳文の戦いに母親ほむらが割って入り、そこで親子関係暴露の予定だったんだ」
杏子「ふたりもほむらがいるとややこしいし、芳文の出生の秘密とか魔女が見える謎を早めに読者に明かす為に、本編の話になったんだよ」
杏子「円華おばさんとまどかの友達ほむらが同時に存在するのはその名残だったり」
杏子「
>>848
サンキュ。芳文は作者やあんたらの願望を叶える為のキャラでもあるからね。共感とかしてもらえるとうれしいってさ。マミルートとかやる時は安価とかやってもいいかもね」
杏子「選択肢を間違えると型月作品みたいに即死だけど。実はまどかルートに選択肢を付けてたら即死選択肢が大量にあったりするんだ」
杏子「例えば18話で芳文の腕の中から逃げ出したまどかをすぐに追わなかった場合、まどかを見失って探してる間に絶望に押し潰されたまどかが魔女化」
杏子「21話でキリカと戦った時に全力で戦う事を選んだ場合、まどかの目の前でキリカの頭を全力で蹴って爆散させてしまい、まどかにトラウマを植え付けた挙句、後に芳文の心が擦り切れて戦闘マシーンみたいになってしまい、最終的にまどかが絶望」
杏子「22話でまどかに家族の前から逃げる事を懇願された時、即座にまどかの家族の前から立ち去った場合も放浪の果てにまどかの為だけに悪になり、心が擦り切れきった芳文を見て、まどかが涙するラストになる」
杏子「もしやるなら、2択の選択肢で両方の展開を掲載してくパターンかな。作者の脳内で終わる安価と違い、最初から成功と失敗両方の展開を書いておくみたいな」
杏子「まあ、今の所机上の空論に過ぎないんだけどね」
杏子「あとは、隠しでゆまルートとか。……犯罪だな。もしゆまを出すならあたしのルートだろうね」
杏子「じゃーな」ノシ
850 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
[sage]:2011/11/20(日) 23:54:11.57 ID:l4u4yHkZ0
乙ですたー!
いやそんな、褒められると照れるぜ///
こっちだって、前にも書いたけどガイドブックやユリイカの特集と絡めてまどかと芳文についてネタを妄想させてもらってるんだから、それが役に立つなら嬉しいんだよ。
このお話もまどかと芳文も、色々刺激をくれるお陰で、アニメ本編とは別の形で心底楽しませてもらってるし。
今回の
>剣道部にわざわざ調理実習で作った物持ってったり、あの馬鹿が部活終るまで待ってたり……。
これもオレにとっては十分に美味しいネタをもらった気分だしね。
初めてまどかが、芳文が改変前と違って周囲と心底和気藹々とやってる場面を見たときの気分はどんなだったろうとか
考えるだけでもご飯三杯はいける!
まあ、その位好きなのさこの二人が。
そんなわけで、毎度ながらだけど体には気をつけて頑張ってくれな!
851 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
[sage]:2011/11/22(火) 07:21:10.44 ID:VPfh+BGDO
最初のころから居てずっとROMってたけど、俺は全部好きだよ。
ちり紙がやりたいことをやってくれればいいなって。
852 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
[sage]:2011/11/25(金) 15:25:35.45 ID:OTwKmcJq0
独自設定多すぎるから、ここでだけ突っ走ればいいさ
下手に他のキャラ攻略してもなぁ……オチは同じなんだろ?
アレだ、よっしーでほむら(34)をマジ攻略するんだ また本が薄くなるな
853 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
:2011/11/27(日) 13:40:36.25 ID:LguVu6pH0
本編全部読みました。原作よりまどか可愛いし終わり方も良いし感動しました。今更だけど
>>501
回答したいので勝手に答えます。
@ 好き
ほむらの息子と言われても違和感ない程のコミュ症具合だったし、何よりまどコン設定が良過ぎ
まどかが魔女になった後「クリームヒルトを傷つけるものは許さない」とか、もうどんなまどかも守ってやって欲しいと思った。
A 3話、13話
好きなシーンあり過ぎて困ったけど一番好きなのは3話。芳文の過去に怒るまどっち最高でした。
B 23話付近のかずみ達が出てくる所と、本編じゃないけどコミュ症じゃない円華と変態女神まどかが出てくる所
かずみマギカは個人的に好きじゃないだけ。円華は育った環境違うだけで、あそこまでキャラ変わるのはちょっと受付られない。
女神まどかは最近ずっと壊れてるよね。
本編の円華と女神まどかは嫌いじゃないです。むしろ生まれ変わる前の本編の円華なんてほむらそのもので大好きですし
Cあり
手を差し伸べてくれた人に恋するとかどっから見てもマジほむほむ。
最後にほむら☆マギカも見たいけど、それよりもまどか→芳文の告白シーンがマジで見たいです。
芳文にとってまどかは出会ったばかりの女の子なわけだけし、
ほむらの性格考えるといきなり告白しても戸惑ってしまって失敗に終わりそう。
どうやって短期間に芳文攻略したか、私の頭では想像できない。だからすごい気になる。
854 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/14(水) 00:38:42.47 ID:E2486E010
何となく考えたこと。
改変後世界での芳文の全学年女子からの評価って「残念なハンサムor残念なイケメン」じゃなかろうか。
顔はオトメン、文武両道でおまけにジェントルなんだけど、どこか抜けててちょっと残念。
だから人気がある反面、恋愛対象として強力にアタックする女子は実は少ないんじゃないかと。
実はその残念な部分こそ、まどか同様に「普通の家庭で幸せに育った」からこそ持ちえた芳文の魅力で、
その点に気がつける人でないと魅力的男性には見えないという罠だったりするっていう。
案外さやかあたりは
「マニアックな魅力のある先輩だよね〜」
みたいなことを口にしてるかもしれないと言ってみるテスト。
855 :
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[sage]:2011/12/15(木) 12:43:40.87 ID:4KTP815AO
母親は最強の勇者である旦那から腹上死寸前まで搾り取るがっかりおっぱいの美人妻で、父親は最強の勇者だけど魔法少女達曰くフツメンのおっさんか
色々と残念な一家だよな
856 :
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[sage]:2011/12/17(土) 05:53:32.77 ID:4DYGliJN0
父親は宇宙警察勤務だけど、一般人はもちろん家族ですらその事を知らないわけで…もしかして対外的にはニート?
ダミー会社かなにか作ってそこに勤務している設定かな?
857 :
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[sage]:2011/12/17(土) 22:01:32.67 ID:zHP1vZg+0
>720の台詞で「就職先の署長がお前らの仲間の異星人だって知った時は驚いたぞ」とあるから普通に地球の警察署勤務じゃないかな
858 :
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[sage]:2011/12/21(水) 07:04:46.16 ID:K0uwYBrY0
ということは…地球(日本)の警察に勤務しながら内緒で外国の治安組織(宇宙警察)にも所属しているわけで…
服務規程違反なんじゃ?
859 :
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[sage]:2011/12/22(木) 22:22:34.79 ID:9yugFXl80
案外、政府と宇宙警察の間では内々に話が出来てるのかもね
アメリカではMIB、イギリスではSHADOと宇宙警察は連携しているけど、日本はそういった組織が無い上に
位置的に国家間の力関係で微妙な立場にあって宇宙からの侵略行為には無防備で宇宙警察に全面的に任せっぱなし
になってるとかだと面白いかも
860 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/23(金) 05:54:08.79 ID:M5fuC1zl0
うーむ、前周世界で身元があんまはっきりしないほむらが自衛隊に入隊できたのも裏で…
861 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/28(水) 17:09:23.51 ID:9fa//DkFo
マミさんはかずみ達の中二技名の件で許されなくなっちゃったね
862 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/30(金) 00:02:09.87 ID:LRp4cihAO
この世界のまどかは間違いなく、公式と二次創作含めてすべてのまどか達の中で一番幸せな、勝ち組まどかだよな
まどカスや腹黒まどかが見たら絶対嫉妬するに違いないwww
863 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/30(金) 00:10:36.62 ID:DMrH/P9Fo
クリスマスネタはあったのでお正月ネタも期待したり(チラッ
864 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/03(火) 15:49:05.71 ID:mls9HG0ro
杏子 「あけおめ、ことよろ」
さやか「杏子、もっとちゃんと挨拶しなさいよ」
杏子 「別にいーじゃん」
マミさん「ほらほら、ケンカしないで。作者が交通事故に遭ったり、風邪引いて寝込んでたりで遅くなってしまったの。ごめんなさい」
さやか「とりあえず、お正月編投下だよ」
杏子 「Vガンダムの1話みたいに順序変えてクリスマス編とか投下予定だってさ。個別レスはあとからするってさ。じゃ投下開始」
865 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/03(火) 15:50:11.52 ID:mls9HG0ro
まどか『うわあ……きれい……』
芳文 (初日の出に照らされたまどかの笑顔が、とても輝いて見えるな)
まどか『芳文さん、すごくきれいな光景だね』
芳文 (そう言って笑うまどかの顔がすごく愛しい)
まどか『芳文さんと一緒に初日の出見られてうれしいな』
芳文 『俺もだよ。初日の出もきれいだけど……』
まどか『?』
芳文 『まどかのほうがもっときれいだよ』
まどか『嬉しい……』
芳文 『……まどか』
芳文はそっと目を閉じたまどかに、優しくキスをしようとして、そして……。
円華 「芳文、寝るならコタツじゃなくてお布団で寝なさい」
十五年間毎日聞いてきた声の主に叩き起こされた。
――2012年1月1日 風見野市 陽だまり荘敷地内にある青樹家の居間にて
芳文 「……んあ?」
円華 「ほら、コタツで寝たら風邪を引くわよ」
芳文 「……夢のまどかが鬼婆に化けた」
円華 「誰が鬼婆よ」シャイニングフィンガー
芳文 「あだだだだだだだっ!! 割れる割れるっ!!」
円華 「新年早々、親にケンカ売るなんてお年玉いらないのかしら。この子は」
芳文 「ごめんなさい。欲しいです」
円華 「まったくもう……」
芳文 「もう11時か……。年越しそば食ってテレビ見ててそのまま寝ちまったのか……。起こすならもっと早く起こしてくれればよかったのに」
円華 「私も色々忙しかったのよ。それに2時頃に布団で寝なさいって声かけたわよ」
芳文 「そうだっけ? まあどっちでもいいや」ゴロゴロ……
866 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/03(火) 15:51:13.75 ID:mls9HG0ro
円華 「新年早々だらけてるわね」
芳文 「正月くらいいいだろ。年末は餅つきとか大掃除とか色々あったんだし」
円華 「まあ確かに去年はいつもよりも色々あったわね」
芳文 「ああ」スッ
円華 「こら」ペシッ
芳文 「いてっ」
円華 「人が剥いたみかんを取ろうとしない。食べるなら自分で剥きなさい」
芳文 「剥くの面倒くさい」
円華 「あなた、将来まどかちゃんに同じ事したら嫌われるわよ」
芳文 「まどかにそんな事したりしない。それにまどかだったら喜んで剥いてくれそうだ」
円華 「まああの子なら有り得る話だけど……」
芳文 「だろ? 名前は同じでも誰かさんと違ってまどかは優しいんだ」
円華 「お年玉」
芳文 「ごめんなさい」
円華 「まったく……」
芳文 「そういや、父さん達は?」
円華 「ダーリンならお母さん達と一緒に、陽だまり会館の方で宴会してるわよ」
芳文 「またか。正月早々みんな暇だな」
円華 「みんな生まれも育ちも風見野の人達ばかりだしね」
芳文 「母さんが生まれる前からだっけ?」
円華 「そうよ。お母さんのおじいさんの頃から続く我が家の風習」
芳文 「金持ちの考える事はわからん」
円華 「そんなにお金持ちって訳じゃないわよ。お母さんはこの陽だまり荘一帯の土地と建物を相続したけど、他の財産はおじさんやおばさんに分け与えられたから」
陽だまり荘は学校のグラウンドほどの敷地内に、青樹家が暮らす一階建ての大きな一軒家、町内会の寄合に貸し出される事のある大きな一軒の平屋、そして十世帯が暮らすアパートがある。
更に今は経営していないが、戦後に公衆浴場として開放していた大浴場が一軒ある。
これらすべては大地主だった円華の曾祖父が近隣住民や就職のために上京してきた当時の青年たちの為に建てたものだった。
当時最高の腕を持った職人が建て、近年リフォームもしてあるので、最新のマンションやアパートに比べて遜色ない物でもある。
867 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/03(火) 15:52:34.53 ID:mls9HG0ro
芳文 「なんで家はこんなに人が集まるんだ?」
円華 「お母さんのおじいさん、あなたのひいひいおじいさんがとても社交的で近隣の人達とすごく仲が良かったのよ。何かあればご近所で助け合ったりとかしてたみたいだし」
芳文 「んでひいじいちゃんもばあちゃんも超社交的で、アパートの歴代住人達や風見野商店街の皆とも仲がいいんだっけ」
円華 「そうよ。だからみんなお母さんを慕って集まってくるの。だから血の繋がりはないけれど、みんな親戚みたいな物ね」
芳文 「……そんな超社交的なばあちゃんから生まれたのに、なんで母さんはこうなんだろうな」
円華 「……どういう意味?」
芳文 「みんなでわいわい集まるのが嫌でここに逃げてきたんだろ?」
円華 「確かに知らない人達と騒いだり放したりするのは苦手だけどね。あの人達は別。物心つく前からの知り合い相手にそんな感情持つわけないでしょう」
芳文 「そんなもんかね……。まあ俺も知らない相手と話したりするのは苦手だけどさ」
円華 「私に似なくていい所まで似てしまうのは嫌ね」ハア……
芳文 「俺、昔っから母さんに似てるって言われるけどさ。そんなに似てるか?」
円華 「男の子は母親に似るって良く言うし、そうなんじゃない?」
芳文 「そんなもんかね。……もし将来まどかとの間に息子が生まれたら、まどかそっくりの息子が生まれるんだろうか」
そう言って芳文は男の子なまどかを想像してみる。
芳文 「……アリだな。娘だったら」
母親そっくりの娘を想像してしまう芳文。
芳文 「……なんて不憫な娘なんだ!!」
円華 「いきなりなんなの?」
芳文 「男の子が母親に似るなら、女の子は父親に似るんだろ。つまり俺とまどかに娘が生まれたら、それは母さんに似る訳で……」
芳文 「将来貧乳確定じゃないか!! 俺は大事な娘を貧乳好きのロリコンにくれてやるなんて耐えられない!!」
円華 「……」シャイニングフィンガー
芳文 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
868 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/03(火) 15:55:19.05 ID:mls9HG0ro
円華 「まったく……。まどかちゃんはこんな馬鹿な子のどこがいいのかしら?」
芳文 「愛息子を馬鹿な子呼ばわりはないだろ、マイマザー」
円華 「口が減らないんだから……。さてと、そろそろ向こうの様子を見に行こうかしら。そろそろ来る頃だし」
芳文 「まだ誰か来るのか?」
円華 「ええ。メールでやりとりしてたら、実家に帰省予定だったけど、おじいさんが風邪引いて寝込んでるから取りやめになったんですって」
芳文 「それで宴会に誘ったのか?」
円華 「そうよ。する事がなくなったからか、二つ返事でこっちに来るって」
芳文 「ふーん」
円華 「それじゃ私は陽だまり会館の方へ行くから。あなたもお客様が来るのだからだらだらしてないで着替えくらいしときなさい」
芳文 「気が向いたらな」
円華 「……後悔しても知らないからね」
芳文 「?」
そう言って、円華は青樹家の居間を出て行った。
芳文 「はあ、やれやれ。正月早々虐待されてひどい目に遭った。それにしても新年早々まどかの夢を見るとか。どんだけまどか命なんだ、俺」
芳文 「……まどか、どうしてるかな。はあ、あと何年経ったらまどかと一緒に年越し出来るようになるんだろうな」ゴロゴロ……
芳文 「メールでもしてみようかな。でも声が聞きたくなるの間違いないしな……。新年早々帰省先で長電話に付き合わせるのもあれだし……」
芳文 「……はあ、まどかに会いたいなぁ」ウトウト……ゴロゴロ……
まどか「芳文さん」
芳文 「……おお、とうとう幻聴が聞こえ出したぞ。俺はもう駄目かもしれん。こりゃ、まどかがいない人生はもう考えられないな」
まどか「え? えと……」
芳文 「はあ、まどかに会いたいなあ……。まどかとずっと一緒にいたいなあ……」
まどか「えと……わたしも芳文さんに会いたかったよ。その……わたしもずっと一緒にいたいなって」
芳文 「うーむ。なんて都合のいい幻聴なんだ。まどかのかわいい声が鮮明に聞こえるぞ」
まどか「え、えと、現実、だよ?」
芳文 「え?」
芳文が起き上がって背後に振り向くと、晴れ着を着たまどかが立っていた。
頬を染めながら、芳文を見つめるまどかはとてもかわいらしかった。
まどか「あけましておめでとうございます。今年もよろしくね、芳文さん」
そう言って、まどかは芳文ににっこりと笑いかけるのだった。
869 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/03(火) 15:57:09.48 ID:mls9HG0ro
――大慌てで着替えて身だしなみを整えた芳文は、まどかと一緒に風見野神社へ初詣へ向かう道中、隣を歩くまどかに話しかける。
芳文 「おじいさんが風邪で帰省が取りやめになっちゃったんだって?」
まどか「うん。大分具合はよくなったけどね」
芳文 「そっか。……おじいさんには悪いけど、まどかと二人で初詣に行けるのが嬉しい」
まどか「もう、芳文さんたら」
芳文 「……その晴れ着、良く似合ってるよ」
まどか「本当?」
芳文 「俺がまどかに嘘をつくわけがない。良く似合ってて可愛いよ」
まどか「えへへ……。ありがとう。嬉しいな……」
芳文 「それ、お母さんに買ってもらったの?」
まどか「うん、ママからのクリスマスプレゼント」
芳文 「そっか。でも正月しか着れないのはちょっともったいなくない?」
まどか「一応あと何回かは着れるように少し大きいサイズなんだけどね。芳文さんに褒めてもらえたからもったいなくなんてないよ」
芳文 「……そっか」
まどか「うんっ」
芳文 「……去年は色々あったな」
まどか「そうだね。円華さん達も一緒のクリスマスパーティーに、芳文さんのおばあちゃんとおじいちゃん、陽だまり荘の人達や風見野商店街の人達、それにわたしの家族もみんなで集まった餅つき大会とか」
芳文 「まどかのお母さん達もすぐに皆と仲良くなったしな。そういやいつの間にか、まどかの家族は家の親戚扱いでまどかは俺の嫁扱いされてたな……」
まどか「わたしは嬉しかったよ」
芳文 「そう言ってもらえると嬉しい。出来るだけ早くまどかの事、迎えに行けるよう頑張るから」
まどか「うんっ」
870 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/03(火) 15:59:35.97 ID:mls9HG0ro
まどかは花のような笑顔を見せて、芳文の腕に自分の腕を絡ませる。
芳文はそんなまどかに微笑んで、一緒に歩きながら会話する。
芳文 「今頃、みんな宴会で盛り上がってるんだろうな」
まどか「ママなんかこっちにくるのすごく楽しみにしてたよ」
芳文 「そっか。今日は餅つきの時みたいに泊まってくの?」
まどか「多分。パパは遠慮すると思うけど多分ママや皆さんにお酒飲まされちゃうと思って、一応着替えとか車に乗せてきたよ」
芳文 「まどかは良く気が利くな。将来いい奥さんになりそうだ」
まどか「えへへ……」
芳文 「そういや、さやかちゃん達とは会う予定無いのか?」
まどか「とりあえず、三日に約束してるよ」
芳文 「そっか。それじゃ今日明日とまどか分をチャージしとかないとな」
まどか「もう、芳文さんたら……」
そんな会話をしながら、やがて二人は神社に到着した。
芳文 「人が大勢いるな。当然って言えば当然だけど。まどか、はぐれないように手を繋ごう」
まどか「うんっ」ギュッ
芳文 「しっかり握っててくれよ」
まどか「うんっ。芳文さんも絶対離さないでね」
芳文 「離すもんか」
まどか「絶対だよ」
芳文 「ああ、絶対に放さない」
まどか「うんっ」
芳文の自分の物よりも大きな暖かい手を小さな手で握りながら、まどかは思った。
まどか(……この暖かくて優しい手、もう絶対に放さない)
おしまい
871 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/03(火) 16:03:26.30 ID:mls9HG0ro
杏子「
>>851
作者が好きになってくれてありがとうってさ」
杏子「ちなみに元々はまどかに彼氏がいる幸せな日常やエロパロが書きたくて、色々考えてたら
>>1
でも言ってるあんたらをモデルにした男を放り込んだらおもしろそうだっと思ってこのスレが出来たんだってさ」
杏子「ただ、俺×まどかの薄い本みたいに、何の背景描写もなくいきなりまどかの彼氏です、ラブラブです、なんて言って社芳文が出てきてもさ、みんな萎えるよね」
杏子「それだと捏造彼氏物の薄い本と変わらないし、読み手に受け入れられる気がしないから、彼氏との間にドラマを作ってから色々やろうって言うのが事の始まりなんだってさ」
杏子「まあ、とりあえずは思いつく限りは色々続けるって言ってたよ。日常ネタならいくらでも出来るらしいしね」
杏子「
>>852
あんたも業が深い願いをするね……。エディプスはヤバイと思うよ……。人として」
杏子「他ルートはもしやった場合、まどかによる世界改変は当然ないし、まどかの行く末も……だからオチは違うよ。前にも言ったけど基本ウロブチエンド。多少変化するけど」
杏子「ちなみに芳文は本能的に円華おばさんの前世である暁美ほむらにも、改変世界のまどかの友達ほむらも異性として意識していない。大多数の人間が身内に欲情しないのと同じ」
杏子「もし仮にまどかの友達ほむらの裸とかを見たり胸とか触ったりとかしても、まったく性的な反応はしないだろうってさ」
杏子「
>>853
感想ありがとうだって。あたしからも礼を言わせてもらうよ」
杏子「まどかの告白だけど、まあ色々あったんだよ。それこそ読みきりの少女マンガみたいな感じでね」
杏子「色々想像してくれてる読者もいそうだから、とりあえず明言はしないけど青樹家と鹿目家は同じ町内だから、まどか達の通学路って同じなんだよね」
杏子「再会した日にまどかを家まで送っていってやった翌日の朝、朝の通学路で出会ったりしたし、マミと同じクラスだからマミとまどかを通じてあたし達と知り合ったり……」
杏子「マミは昔仲良しだった相手だって気付いてるし、あたしもさやかもなんとなくこいつは友達として信頼できるって気がしたからね」
杏子「まどかが街の案内を買って出た時に、あたしら全員で見滝原を案内してやったりとかしたんだよ」
杏子「それでとりあえず全員また友達になった。その後まどかは毎朝話しかけたり、差し入れ持ってったりとまあ、色々頑張ったんだよ」
杏子「うっかりタメ口で名前を呼びそうになって慌てて敬語で先輩と呼び直したりとか、色々苦労もあったみたいだよ」
杏子「まどかの友達ほむらも気弱な性格のせいで男は苦手なんだけど、あの馬鹿に対しては別世界の自分の子とはいえ、自分に連なる人間だからか知らぬ事とはいえ拒絶反応とか出ないみたいだしね」
杏子「なんとなく弟とかそういう身内に対するような感覚がするらしくって、からかわれてもあんまり気にしないみたいだし」
杏子「とりあえず、芳文とあたし達はそれなりに仲良いよ」
872 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/03(火) 16:20:33.13 ID:mls9HG0ro
杏子「
>>854
良く考察してるね。大体そんな感じ。あいつを恋愛対象として見てるのは前の世界で告白した子とまどかくらい。改変世界ではまどかが積極的に動いたから告白した子は告白さえしてないけど」
杏子「ちなみに前の世界ではとても紳士的な断り方をしたので、告白した子は失恋こそしたけど芳文との事はいい思い出として、まどかと芳文の事を心から祝福してくれてたんだ」
杏子「ちなみに見た目はまどかと同レベルくらいのかわいい子だよ。ここから先はあたしにはわからない事だからバトンタッチ」
まど神「
>>855
完璧な人間なんていないよ」
まど神「
>>856
>>857
で言ってるとうりだよ」
まど神「
>>858-860
GEAR戦士電童のGEARやガオガイガーのGGGみたいな地球の宇宙警察支援組織があるよ。日本の政治家を裏から支配する政財界のドンとかそう言う人達がいるの」
まど神「宇宙には惑星アースっていうわたし達の地球そっくりの惑星があって、身体構造も99パーセント同じ宇宙人がいてね、こっちの地球に移住したり結婚したりしてる人もいるんだよ」
まど神「ちなみに博さんを慕う宇宙人や部下は多いからね。もし地球に何かあれば、博さんの身内は全員惑星アースへ移住させてもらえるんだ。ほむらちゃんは記憶喪失だけど新しい戸籍とか作ってもらえたから何とかなったんだよ」
まど神「
>>861
マミさんはみんなの憧れのお姉さんだからね!!」
まど神「
>>862
わたしも芳君といちゃいちゃしたい!!」
まど神「
>>863
お待たせ、だよ」
まど神「次回、クリスマス回想編」
873 :
以下、あけまして
[sage]:2012/01/03(火) 23:32:33.34 ID:xDjG9ul1o
あけおめ乙です!交通事故って大丈夫ですか!?
夢だけど夢じゃなかったーオチは何度見てもニヤニヤしてしまいますね
ところで円華さんは晴れ着着ないんでしょうか
ほら和服って胸が小さいほうが似合うって(ry
874 :
以下、あけまして
[sage]:2012/01/04(水) 01:26:28.71 ID:f9kbNjF/0
明けまして乙ですたー!
って、交通事故って大丈夫か!?
怪我の程度にもよるけど骨折とかあったらこの季節は色々辛いし無理はしないよう気をつけてくれな。
それにしても鹿目家と青樹家の家同士の仲も益々強くなってるようで、何よりだ!
まどママも気軽に呑める相手が大勢出来て楽しそうだしw
クリスマス編も楽しみにさせてもらうよ!
875 :
以下、あけまして
[sage]:2012/01/05(木) 02:52:15.24 ID:bK7XZzCco
乙でしたー!
交通事故とは・・・お大事に。
芳文とまどかは末永く爆発しろ!
>>改変世界のまどかの友達ほむらも異性として意識していない
友達の彼氏とはいえ、異性からそんなこと言われたらショックだろうなww
カワイソス
876 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2012/01/06(金) 18:48:56.34 ID:gQMX6MXl0
もし他のキャラのルートもやるんなら
マミさんのやって欲しいな
5人の中でマミさんだけ男とくっつくss少ないし
877 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(山口県)
[sage]:2012/01/06(金) 22:59:07.36 ID:YF5L6/Dno
乙
ばっくはつ!ばっくはつ!
878 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/01/07(土) 19:49:38.78 ID:G5iJ3bAAO
マミさんとあんこは攻略しやすそうだ
家族を失ったと言う共通点あるし
さやかが一番攻略難易度高そうだ
879 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2012/01/07(土) 23:35:50.16 ID:jmiN/3Reo
いい事考えたぜ
いろんな世界の芳文をあと3人連れてくれば
同時にマミさんも杏子もさやかも同時攻略できるんじゃね?
ほむほむは別世界の博さんをだな、ちょ、シャイニングフィンガーはやめ
880 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/01/15(日) 19:47:21.54 ID:xAfEg2EAO
ここの読者って皆まどか派なんだろうか?
俺まどか派だから他の子ルートはあんまり見たくないな
まどかがかわいそう
881 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/01/17(火) 00:34:14.21 ID:kT6gG+Jpo
今の関係になったのはまどかが魔法少女なったからだから
他の子ルートだとまどかは魔法少女にならないんだし、そういうことは起きないんじゃね?
あと勿論芳まど派だよ
882 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2012/01/17(火) 01:09:17.58 ID:Bvhlaazfo
俺も
>>879
みたいな事書いたけど
芳文とまどかのカップルが一番好きだよ
ただちり紙さんがいいネタ思いついたのならそれはそれで是非見てみたい……
883 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/25(水) 23:42:34.49 ID:eMawxbHAo
杏子「クリスマス編前編だよ」
884 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/25(水) 23:43:05.12 ID:eMawxbHAo
――2011年12月22日 見滝原中学校の2年生教室にて
まどか「ようやく明日から冬休みだね。ほむらちゃんは冬休みにどこか行ったりするの?」
ほむら「うん。年越しはおばあちゃんの家でするくらいかな」
まどか「そうなんだ。わたしの家もおじいちゃんの家で年越しの予定なんだ」
さやか「まどか達は帰省するんだね」
ほむら「美樹さんはどこか行くんですか?」
さやか「あたしんちの親戚はみんな見滝原だから、帰省とかした事ないんだよねー。だからちょっと帰省とかに憧れるんだよねー」
ほむら「そうなんですか。私は正直言うと、帰省ラッシュに巻き込まれるのがちょっと嫌で……。おばあちゃん達に会えるのは嬉しいんですけど」
まどか「その気持ちわかるよ。うちは弟がまだ小さいから、帰省ラッシュに巻き込まれると退屈でぐずるんだよね」
杏子 「おーい、さやかー、まどかー、ほむらー」
さやか「杏子、おっそーい」
杏子 「悪い悪い。担任の話が長引いちまってさぁ」
まどか「それじゃ、杏子ちゃんも来たし行こうか、ほむらちゃん」
ほむら「うんっ」
ひだまり☆まどっち 〜仲良しグループのクリスマス〜
さやか「杏子。最初にクリスマスカードを調達しないといけないんだよね」
杏子 「ああ。手伝ってもらって悪いな」
まどか「気にしないで。友達だもん」
杏子 「助かるよ。実家で配る分を沢山用意しないといけないからさ」
ほむら「……実家?」首傾げ
杏子 「ああ、ほむらには言ってなかったっけ? あたしは父さんの兄貴、つまり伯父さんの家から学校に通ってるんだよ」
ほむら「そうなんですか?」
杏子 「ああ。あたしの実家は風見野で教会やってるんだけどさ、昔ちょっとばかり家計が苦しくなってね。口減らしって言うとあれだけどさ、伯父さんがあたしの面倒見てくれる事になったんだよ」
ほむら「え……そうだったんですか……」
杏子 「そんな顔すんなって。友達だろ? 友達に隠し事したくないから話してんだからさ」
ほむら「……はい」
杏子 「まあ、そんで色々あったけどさ、今は実家の方も落ち着いてるんだ。けど伯父さん子供がいないんだよ。伯父さん夫婦はあたしの事を娘みたいに可愛がってくれてるしさ。それで伯父さんちにいる訳」
ほむら「そうだったんですか」
杏子 「ああ。それでもクリスマスとか実家が忙しい時は手伝いに行くんだけどね。あんた達が書くの手伝ってくれるカードは実家の教会に来てくれた子供達に配るんだよ」
ほむら「それじゃ、心を込めて書かないといけませんね」
杏子 「ああ。よろしく頼むよ」
ほむら「はいっ」
885 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/25(水) 23:44:19.63 ID:eMawxbHAo
――そんなこんなでクリスマスカードを調達して店を出た4人は、仲良くおしゃべりをしながらクリスマス前の活気あふれる街並みを歩く。
さやか「クリスマスカード書くのは良いけどさ、どこで書く?」
杏子 「あたしんちって言いたい所だけど、これだけの人数が集まるにはあたしの部屋は狭すぎるしなぁ……。ファミレスとかどうだい?」
まどか「でもこれだけの量を書くの結構時間かかりそうだよ。ファミレスにそんなに長くいたらお店に迷惑じゃないかな?」
さやか「うーん。あたしんちって言いたい所だけど、今日は親がいるからなあ……」
まどか「おばさん達がいると駄目なの?」
さやか「いや、通知表見せたくないなって」
まどか「……」
さやか「まどかぁーっ!! なんでそこで目を逸らすかな!!」ベアハッグ
まどか「きゃあぁぁぁっ!! さやかちゃんやめてぇぇぇ!!」
さやか「自分は先輩のおかげで成績上がったからってぇぇぇ!!」
杏子 「やめろって」ゴスッ
さやか「いったあー!! 暴力反対!!」
杏子 「さやかがまどかに八つ当たりするからだろ。まどかんちは駄目かい?」
まどか「わたしは別にいいけど、タツヤがいるから構ってほしくて作業の邪魔しに来るかも……」
さやか「ああ、たっくんまだ小さいからねぇ」
ほむら「あの……私の家で良ければ」オズオズ
杏子 「……いいのかい?」
ほむら「はい。みんなお友達ですから」ニッコリ
さやか「決まりだね!! ほむらんちへレッツゴー!!」
まどか「さやかちゃんたら……。ほむらちゃん、本当にいいの?」
ほむら「うん。こんなに大勢のお友達呼んだ事ないから、嬉しいし」
さやか「んーっ!! 相変わらず可愛い事言うね、この子は!!」
ほむら「きゃっ!?」
さやか「まどかは先輩に取られちゃったし、これはもうほむらをあたしの嫁にするしかない!!」ダキッ
ほむら「……え? ええー!?」
杏子 「さやか、あんまりほむらをからかってやるなよ。ほむらが困ってるだろ」
さやか「はいはい、わかりましたよ」
杏子 「ったく……。ほら、そろそろ行こうぜ」
まどか「うん」
ほむら「はい。私に付いて来てください」
886 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/25(水) 23:45:27.70 ID:eMawxbHAo
――暁美家へ向かう途中、マックで昼食を取ってから商店街を歩く4人。
さやか「せっかくほむらの家に行くんだから、マミさんと仁美も来れれば良かったのになあ」
まどか「しょうがないよ。二人とも今日は用事があるって言うんだから」
杏子 「まあ二人とも明日は大丈夫だって言うし、今日はしょうがないさ」
ほむら「そうですね」
芳文 「あ、まどか。それにさやかちゃん、杏子ちゃん、暁美さんも。4人揃ってどこか行くの?」
まどか「あ、芳文さん」
ほむら「こんにちは」
杏子 「よっ」
さやか「先輩、こんな所で一人でどうしたの?」
芳文 「ああ、クリスマスの準備の買い出し。荷物持ちに母さんに引っ張り出されたんだ」
まどか「そうなんだ。円華さんは?」
芳文 「ちょっとそこの銀行に金を引き出しに行ってるよ」
まどか「そう。わたし達はこれからほむらちゃんの家で、杏子ちゃんの実家の教会で配るクリスマスカードを書くの」
芳文 「そっか。ほむホームでクリスマスカード作りか」
まどか「ほむホーム?」
芳文 「暁美ほむらちゃんこと、愛称ほむほむの家だからほむホーム」
さ杏 『ぷっ……。ほ、ほむホームって……』ククク……
ほむら「……」涙目
芳文 「そんなにウケた? 箸が転がっても面白い年頃だからかな? ……ほむホーム」パナホームのCMのマネ
さ杏 『ぷっ、あははははははははははははっ!!』
ほむら「……」ウルウル……
まどか「ほ、ほむらちゃん、泣かないで」
ほむら「平気だよ……」
まどか「もうっ!! 芳文さん、ほむらちゃんをいじめちゃ駄目だよ」
芳文 「ええっ!? ごめん、暁美さん。悪気はなかったんだ。気を悪くしたなら謝るよ」
ほむら「いえ、別に気にしてませんから……」
芳文 「本当にごめん。なんていうか、ある人物になんとなく似てるからつい、余計な言葉が出てしまうんだ。これからは気をつけるよ」
まどか「芳文さん、ほむらちゃんは繊細なんだから、もっと優しくしてあげてね」
芳文 「ああ。わかったよ。まどか」
そんなやりとりをしていると、一人の女性がやってきて声をかけてきた。
887 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/25(水) 23:46:08.35 ID:eMawxbHAo
円華 「お待たせ。あら、まどかちゃん」
まどか「こんにちは、円華さん」
円華 「こんにちは」
さやか「ねえ、まどか。この人が先輩のお母さんなの?」
まどか「そうだよ。みんなにも紹介するね。こちらは芳文さんのお母さんで円華さん」
円華 「……はじめまして。いつも芳文がお世話になってます」
さやか「え、えと、はじめまして。あたし美樹さやかです。こちらこそ先輩にはお世話になってます」
杏子 「佐倉杏子です。はじめまして」
ほむら「えと……はじめまして、暁美ほむらです」
さやか「先輩、先輩のお母さんってすごく若いね。それにすごい美人だし」肘でツンツン
芳文 「美人って言われても。俺にとっちゃ見飽きた顔だし。それに若いって言うけどさ、こんな見た目でも今年35だよこのおばさん」
円華 「私はまだまだ若い」シャイニングフィンガー
芳文 「あだだだだだだだだだだだだだっ!! 割れる割れるっ!! ごめんなさい!!」
さ杏ほ『』ポカーン
芳文 「いてててて……家の外でまで虐待するなよ……」
円華 「虐待じゃなくて躾。愛の鞭よ」
まどか「あ、あはははは……」
さやか「……うーん?」
杏子 「さやか? どうしたんだ?」
さやか「ほむら、ちょっと円華さんの隣に並んで」
ほむら「え? は、はい」
さやか「やっぱりそっくりだ!! ほむらと円華さんってそっくり!! 親子か姉妹で通用しそう!!」
円まど(……そっくりと言われても。似てて当然だし)
ほむら「えと、そんなに似てますか?」
さやか「そっくりだって。ねえまどか、杏子」
杏子 「確かに似てるな」
まどか「う、うん」
円華 「……私のお母さんとほむらちゃんのお婆さんがはとこ同士なのよ」
ほむら「えっ? そうなんですか?」
円華 「ええ。流石にもう親戚づきあいがないくらいだから、知らなくても当然なんでしょうけど」
ほむら「私、全然知りませんでした」
芳文 「俺も初耳だぞ」
円華 「昔、親戚のお葬式で小さいほむらちゃんと会った事があるからね。まどかちゃんに聞いてた名前で思い出したのよ。遠縁の親戚だって」
888 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/25(水) 23:47:20.87 ID:eMawxbHAo
芳文 「ふーん。ほむほむは俺の遠い親戚なのか」
円華 「……ほむほむ?」
芳文 「暁美さんの愛称。親戚なら名字呼びはおかしいだろ」
円華 (……別世界の母親をほむほむ呼ばわり。いや、芳文はあくまで私の子なのだから、この世界の私は関係ないのだけど。なんだか腑に落ちないわ)
ほむら「青樹先輩が私の親戚……。それで嫌な感じがしなかったんだ……」
円華 「嫌な感じ?」
ほむら「この間、学校の廊下で転びそうになったのを助けてもらったんです。私男の人苦手だから、触られたりするの嫌なんですけど、先輩に触れられても嫌じゃなかったから……」
さやか「ああ、そういやさりげなく先輩がほむらの胸触った時の」
芳文 「さやかちゃん誤解を招くような言い方はやめてくれよ。転びそうになったのを咄嗟に受け止めた時にたまたま掌が胸に当たっただけ!!」
さやか「それでもしっかり触れてたじゃん」
まどか「そんな事があったの?」
さやか「まどかがたまたまいなかった時にね」
芳文 「まどか!! 誤解だから!! 確かにほむほむの胸に触れたかもしれないけど、俺には胸に触れたなんて実感なかったから!!」
ほむら「ええっ!?」
芳文 「あ、いや、ほむほむの胸が小さくて胸に触った感触がしなかったとか、そういう意味じゃなくて」
ほむら「……」
芳文 「その、俺、実は巨乳派なんだ。ほら、うちの母さん胸小さいだろ。だから母性の象徴たる大きな胸に憧れがあるんだ。成長途中の慎ましい胸とかは俺の射程外だから、何も感じなかったって言うか……」
ほむら「……」
円華 「……」
杏子 「……それ言ったら、まどかだってそんなに胸大きくないじゃん」
芳文 「好きな子の胸は別だよ。それにまどかのお母さんは胸大きいからまどかも将来はきっと大きくなるはず」
まどか「芳文さん。ママの事そういう目で見られるのはちょっと嫌かも」
芳文 「誤解だよ!! 俺はまどコンだから!! 年上と貧乳は論外!! それにまどかは着痩せするんだし!!」
さ杏ほ円『』
まどか「……芳文さんのエッチ!!」
芳文 「うわあぁぁぁぁぁぁっ!! つまらない失言でまどかに嫌われてしまったあぁぁぁぁぁぁっ!! 死にたい!!」電柱に頭打ち付け
まどか「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!! 芳文さんやめて!! きらいになんてなってないから!!」
芳文 「本当? よかった……」
さ杏ほ円『』
芳文 「……ふ。俺とした事が思わず取り乱してしまった。話を戻すけどほむほむ、すまなかったね」
ほむら「……え?」
芳文 「どうか誤解しないで欲しいんだけど、俺にとってはまどかがすべてだからさ。決して君に魅力がないという訳じゃないんだ」
ほむら「は、はあ……」
芳文 「君には君の魅力がある。だから自分にもっと自信を持っていいと思うよ」
ほむら「えっ……?」
889 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/25(水) 23:49:18.19 ID:eMawxbHAo
芳文 「たとえ今が小さくても、君にはまだ無限の可能性があるんだ。うちの母さんは19で俺を産んで35になった今でも絶壁だけど、君はまだ14才だし」
ほむら「ええっ?」
芳文 「もし仮に大きくならなくても大丈夫!! 総人口の約半分は男だから!! うちの親父みたいに小さいのが好きな男もいるさ!! 貧乳はステータスだ!! 希少価値だ!!」
ほむら「……」涙目
芳文 「うちの母さんを見なよ!! こんなに小さくても俺を産んで母乳で育てたんだ!! だからサイズは関係ない!!」
ほむら「……」ウルウル……
芳文 「あ、あと男に揉まれると大きくなるって言うの、アレ迷信だから。ソースはうちの母親。だから自分を大事にして心から愛してくれる相手を選ぶんだよ。これ、お兄さんからの助言」
ほむら「……」ウルウル……
円華 「……この馬鹿息子ぉぉぉぉぉぉっ!!」シャイニングフィンガー
芳文 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
円華 「……ほむらちゃん。このお馬鹿にどんな制裁してほしい?」メリメリメリメリメリメリメリメリメリメリ……
ほむら「え? えと、もういいですから、私気にしてませんから、だから許してあげてください」
円華 「……」パッ
芳文 「あだだだだだだ……。畜生、ひどい目に遭った」
円華 「まだ反省が足りない様ね」
芳文 「ごめんなさい」
ほむら「あ、あの、大丈夫ですか?」
芳文 「ああ、大丈夫だよ。……ほむほむは優しいなあ。同じ顔してるのにうちの鬼婆とは大違いだ。同じ顔してるならほむほむが母親の方が良かったよ」
ほむら「えぇぇっ!? え、えと、その……」
円華 「誰が鬼婆よ」シャイニングフィンガー
芳文 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
まどか(な、なんだかなあ……)
さやか「……まどか、あんたあの人のどこがそんなにいいの?」
まどか「えっ?」
杏子 「あたしもさやかと同意見だ。あいつのどこがそんなにいいんだ?」
まどか「だって、芳文さんは優しいし、強いし、頭良いし、頼りになるし、かっこいいし……」
杏子 「……まあ確かに、概ねそのとうりなんだけどさ」
さやか「でもああやって馬鹿やってるせいで、全部台無しな気がするよ……」
まどか「そんな事ないもん」
さやか「あんな風に馬鹿やらなきゃもっとモテるだろうに。色々と残念な先輩だよね、杏子」
杏子 「だな」
まどか「……いいの!! 芳文さんはわたしにだけモテればいいの!!」
さ杏 『』
まどか「……あ」
さ杏 (まどかって結構、いや物凄く独占欲強いんだ……。知らなかった)
890 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/25(水) 23:52:13.57 ID:eMawxbHAo
芳文 「いてててて……。これ以上みんなの前で虐待されてる所見せるのもなんだし。そろそろ行こうぜ」
円華 「虐待じゃなくて躾よ」
芳文 「可愛い息子に苦痛を与えるのは躾じゃなくて虐待だと思うんだ」
円華 「口が減らないんだから……。いったい誰に似たのかしら」
芳文 「今俺の目の前にいる、胸と度量がいつまで経っても成長しない、無駄に若作りのおばさん」
円華 「……」シャイニングフィンガー
芳文 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
さ杏ほ『』
円華 「それじゃ私達はこれで。まどかちゃん、24日にね」
まどか「はい。24日楽しみにしてますね」
円華 「行くわよ、芳文」
芳文 「ああ。それじゃみんな、またね」
さやか「またね」
杏子 「またな」
ほむら「はい」
まどか「芳文さん24日、忘れないでね」
芳文 「忘れるもんか。またな、まどか」
まどか「うんっ。またね」
芳文達と別れた後、まどか達はほむらの家で外が真っ暗になるまで、仲良く談笑しながらクリスマスカードを書いたのだった。
――2011年12月23日 午後3時 カラオケルームにて
まどか達は全員で集まって歌を歌ったり、ピザをを食べたりしながら女の子だけのクリスマスパーティーを満喫していた。
マミ 「そろそろ時間だしプレゼント交換しましょうか」
さやか「さんせーい」
仁美 「そうですね。それじゃあプレゼント交換でお開きですね」
杏子 「だな」
まどか「それじゃ、最後に一曲クリスマスらしい歌をみんなで歌いながら、プレゼントを回そうよ」
ほむら「うんっ」
マミ 「それじゃ曲をかけるわね」ピッピッ
――クリスマスソングが流れる中、6人は楽しそうに笑顔で歌いながらプレゼントを回していく。
やがて歌を歌い終えて、曲が終わるのと同時にプレゼントを回すのをやめる。
891 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/25(水) 23:54:17.66 ID:eMawxbHAo
さやか「あたしのプレゼントはこれか。中身は赤い手袋だ」
杏子 「あたしが用意した奴だ。あたしのは……青い手袋だ」
さやか「あ、それあたしの」
杏子 「なんだか取り換えっこしただけみたいだな」
さやか「あははは。そうだね。でもあったかいよ。ありがと、杏子」
杏子 「こっちこそ、ありがとな、さやか」
仁美 「私のはブローチですわね」
マミ 「私は髪飾りだわ」
仁美 「私の用意した物は巴先輩の所に行ったんですのね」
マミ 「志筑さんの所に行った物は私の用意した物なのよ」
仁美 「そうなんですか? 可愛いブローチをありがとうございます」
マミ 「喜んでもらえてよかったわ。この髪飾り、大切に使わせていただくわね」
仁美 「はい。私も大切に致しますね」
ほむら「私のは……まどかのプレゼントだね。あ、赤いリボンだ」
まどか「わたしはほむらちゃんのプレゼントだね。中身は白いリボンだ」
ほむら「誰に届いても良い物にしたつもりだけど、まどかにもらってもらえて嬉しいな」
まどか「わたしもほむらちゃんと同じだよ。ほむらちゃんにもらってもらえて嬉しい」
ほむら「えへへ……。大切にするね」
まどか「わたしも大切にするからね。着けてみてもいい?」
ほむら「うんっ」
カラオケルームの据え付けの鏡を見ながら、まどかはほむらからもらった白いリボンをいつも着けてるリボンを外して着けてみる。
まどか「どうかな?」
ほむら「うんっ。すごく良く似合ってるよ」
まどか「えへへ。ありがとう。ほむらちゃんも着けてみて」
ほむら「う、うん。でも私、リボンなんて着けた事ないから……」
まどか「じゃあ、わたしが着けてあげるね。ちょっと貸して」
ほむら「う、うん」
まどかはほむらから受け取った赤いリボンを手に、ほむらの長い黒髪をツインテールにして赤いリボンで結わえる。
まどか「かんせーい。みんな見てみて。ほむらちゃんとわたし、お揃いだよー」
杏子 「おっ。ほむらツインテール似合ってるじゃん」
さやか「これは中々……。あたしの嫁はツインテールも似合うねぇ」
仁美 「まあ、さやかさんたら。良くお似合いですよ」
マミ 「ええ。似合ってるわよ、暁美さん」
ほむら「あ、ありがとう……」
まどか「よかったね、ほむらちゃん」
ほむら「うんっ。私、みんなとお友達になれてよかった。こんなに嬉しいクリスマスパーティーなんて初めて」
まどか「わたしも。ほむらちゃんに出会えて、みんなに出会えて本当に良かった。今年でみんなに会うのは今日が最後だけど、来年もみんなと仲良くしたいなって」
さやか「まどか。そんなの当然っしょ」
杏子 「まどか、あの馬鹿じゃあるまいし、あんま恥ずかしい事言うなよ。そんなの当然じゃん」
仁美 「さやかさんと杏子さんの言うとうりですわ」
マミ 「ふふっ。こんなに可愛い後輩たちに恵まれて、私は幸せよ」
まどか「えへへ……」
ほむら「あの……まどか」モジモジ
まどか「なあに、ほむらちゃん」
ほむら「その……来年も私と……仲良くしてください」
まどか「勿論だよっ。わたし達はみんな、ずっとずーっと、友達だよっ」
おしまい
892 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/01/26(木) 00:06:05.46 ID:aLl6b9/Io
杏子「後編の鹿目家青樹家合同クリスマス編へつづく」
まど神「わたし、参上!!」
まど神「作者は一応無事に生きてるので心配しないで。心配してくれてありがとう」
まど神「
>>873
ほむらちゃんは結婚前は晴れ着着てたんだけどね、博さんと結婚後に晴れ着着ると博さんが脱がせたがるから……」
まど神「
>>874
飲み友達が増えてママは嬉しそうだよ」
まど神「
>>875
母親に似てる子に欲情する芳君なんて嫌だよ!! わたしにならいいけど!!」
まど神「
>>876
>>878
実はマミさんルートはあるんだよね。わたしは認めないけど。芳君はわたしの物だよ。ウェヒヒヒヒ……」虚ろな目
まど神「
>>879-882
だから芳君はわたしの物だよ。一応マミさんと杏子ちゃんに関しては能力的に普通に攻略出来るけど。さやかちゃんはかなり難しいかも」
まど神「基本的に芳君のパートナーはわたしだから。一応他の子の攻略世界線もありうるけど。誰が一番需要有るんだろうね。わたしにもちょっとわからないよ」
まど神「それじゃみんな寒さに負けずがんばってね」
893 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/01/26(木) 00:27:55.92 ID:Lomw1iDy0
乙ですたー!
おお、久々に芳文のおバカが炸裂しておる・・・・・・!
しかしこの芳文のおバカな行動、改変前はいわゆる自身を守るための処世術だったけど、改変後も続いているのはやはり以前の世界での行動が身体に染み付いているんだろうか??
案外、天瀬との付き合いの影響が大きかったりとか・・・
またぞろ政治家や宗教団体が阿呆な事を騒ぎ出したってニュースを見て沈んでた所への投下だったんで、嬉しかったよ。
って、チラ裏スマソ。
後編も楽しみにしてるマス。
894 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/01/27(金) 03:01:32.56 ID:jC3TBYsWo
乙ー
思わず口から出てしまったセリフと24日の予定に(・∀・)ニヤニヤ
いやー若いってい(シャイニングフィンガー
895 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2012/01/27(金) 15:54:01.32 ID:dwZTxaHs0
マミ「今日も紅茶が美味しいわ」668からの分岐改変が起きない平行世界
もし改変が起きない平行世界のマミがシャルロッテに死ななかったら OR マミ死亡後にまどかがマミ、QBの蘇生願いを願ったら
魔法少女全員生存ワルプルギス撃破
誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって
896 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)
[sage]:2012/01/27(金) 17:29:25.60 ID:Cn1gQfHYo
マルチは[
ピーーー
]
897 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2012/01/28(土) 00:08:20.83 ID:jjq9XWXpo
乙です!
改変世界の芳文とほむらたちのからみ待ってました!
円華とほむらもとうとう会えましたね
しかし
> さやか「やっぱりそっくりだ!! ほむらと円華さんってそっくり!! 親子か姉妹で通用しそう!!」
親子はともかく姉妹って、どんだけ若作りなんすか円華さんじゅうごさい
898 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(広島県)
:2012/01/29(日) 16:48:58.62 ID:wNW4lnXo0
やっと追いついた!!
いやー、まどまぎにハマって色々SS読んでみたんだけど、
これが最高かも! オリ主とキャラの絡みも面白いし!
ぜひ、のんびりでもいいから続けていってほしいです!
素晴らしいSSをありがとうございます!
899 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/02/15(水) 20:05:46.16 ID:fQnYBm0E0
マミさんルートは意表をついてたっくん主演で、マミさん(30)×たっくん
900 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/02/17(金) 22:25:45.77 ID:0PU2FYLXo
杏子「作者の生存報告兼バレンタインネタだよ」
901 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/02/17(金) 22:27:52.76 ID:0PU2FYLXo
まどか達のバレンタインの巻
――2月10日の昼休み。見滝原中学の教室にて。
杏子 「そういやもうすぐバレンタインだな」
さやか「杏子は誰かにあげるの?」
杏子 「実家の親父と世話になってる伯父さんくらいかな。さやかは上条にやるんだろ?」
さやか「うん。まあ一応ね」
杏子 「ふーん」
まどか「ほむらちゃんは誰かにあげるの?」
ほむら「パパにあげようかなって」
まどか「そうなんだ。わたしもパパとタツヤにあげるつもりなんだよ」
さやか「先輩にはあげないの?」
まどか「勿論あげるよ」
さやか「ほう。やっぱり裸でリボンを体に巻いてハートチョコを胸に抱きながら『わたしも一緒に食べてね♪』ってするの?」
ほむら「///」真っ赤
まどか「そんな事しないよっ!! さやかちゃんのエッチ!!」
杏子 「ほう……。さやかは上条にそういう事してやりたいんだな」
さやか「なっ!? そんな訳ないでしょ!!」
杏子 「慌てる所が怪しいな。そういう発想があったからさっきの発言が出てきたんだろ?」
さやか「きょうこおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
杏子 「おっと。鬼さん、こちらー」
さやか「待てえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
まどか「……もう。杏子ちゃんもさやかちゃんもしょうがないなあ」
ほむら「まどかはやっぱり手作りにするの?」
まどか「うん。今度の日曜日に円華さんに作り方教えてもらうんだ」
ほむら「そうなんだ。私も手作りに挑戦してみようかな……」
杏子 「あたたたた……さやかギブギブ!!」
さやか「ほむら、だったらマミさんに教えてもらおうよ」コブラツイストを解きながら
ほむら「え? でも迷惑じゃ……」
さやか「だいじょーぶだいじょーぶ。ドーンと任せておきなさいって」
杏子 「それ、マミさんのセリフだろ。つーか本人の承諾も得ずに勝手に安請け合いするなよ」
さやか「大丈夫だって」
――その日の放課後。
マミ 「いいわよ。私で良ければ喜んで教えてあげるわ」
さやか「ね」
杏子 「……はあ」
902 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/02/17(金) 22:28:57.66 ID:0PU2FYLXo
――2月12日天瀬家にて
芳文 「……はあ、暇だな」
天瀬 「わざわざ人の家に遊びに来といてヒマ発言かよ!!」
芳文 「だってなあ。まどかとデートしようと思ったら用事があるって言うし、大事な客が来るから外に出かけろって母さんに家から追い出されるし。行く所がここしかなかったんだよ」
天瀬 「お前も大概失礼な奴だな。幼稚園の頃はいっつも俺やマミちゃんの後を付いて回ってたくせに」
芳文 「そんな昔の事は忘れた」
天瀬 「あの頃はな、初めて見た時お前の事大人しくて可愛い女の子だと思ってたのに……。実は野郎で今はこんなだもんな」
芳文 「……この野郎。俺の事そんな風に思ってやがったのか」
天瀬 「うるせー。可愛い女の子が毎日二人で仲良くしてるからお近づきになろうとしたら、片方は男だったなんてベタなオチ提供しやがって!!」
芳文 「そんなガキの頃から下心持ってたのかお前は!!」
天瀬 「黙れリア充!! 自分だけちゃっかりまどかちゃんみたいないい子をゲットしやがって!! 現実に絶望して二次元に逃げた男の悲しみがお前なんかにわかってたまるか!!」号泣
芳文 「……もういい。自分を傷つけるのはもうよせ」
天瀬 「……ああ。なんか悲しくなってきた」
芳文 「それにしても懐かしい名前が出てきたな。マミちゃんか。今頃どこで何してるんだろうな……」
天瀬 「……本気で言ってるのか?」
芳文 「何が?」
天瀬 「毎日学校で会ってるだろう。それに進学先だってお前と同じじゃないか」
芳文 「?」首傾げ
天瀬 「……巴さんだよ。巴さんが昔お前といつも一緒に遊んでたマミちゃんだ」
芳文 「……マジ?」
天瀬 「気付いてなかったのかよ!!」
芳文 「言われてみれば……」
――11年前。風見野幼稚園にて。母親と手を繋ぎながらお別れ。
マミ 「芳君、バイバイ」
芳文 「うん。バイバイ、マミちゃん」
マミ 「ママ、あのね、今日芳君と一緒にお砂でお城作ったの」
ママ 「そうなの? 上手に出来た?」
マミ 「うんっ」
芳文 「ねえ、ママ」
円華 「なあに?」
芳文 「マミちゃんのママはおっぱいすごく大きいのに、どうしてママはちっちゃいの?」
円華 「……」ギュウゥゥゥ……
芳文 「痛い痛い痛いっ!! うわーんっ!!」
円華 「……はっ!? ごめんね芳君!! ママ芳君のおてて強く握りすぎちゃった!!」
芳文 「うわーんっ!!」
903 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/02/17(金) 22:31:46.81 ID:0PU2FYLXo
――再び天瀬家にて。
芳文 「言われてみれば!! 今の巴さんの胸はあの時のおばさんの胸に匹敵するサイズだ!! なんで気付かなかったんだろう」
天瀬 「……」
芳文 「いくら小さい頃の事とは言え、すっかり忘れてたなんて……。俺はなんて薄情な奴なんだ……」自己嫌悪
天瀬 (それ以前の問題だと思うぞ……。胸のサイズで認識したなんて言ったら巴さん怒るだろうな……)
芳文 「マミちゃ……巴さんは俺の事覚えてるのかな?」
天瀬 「さあな。本人に聞いてみたらどうだ」
芳文 「……そうだな。今度それとなく聞いてみよう」
――一方その頃。青樹家にて。
まどか「円華さん、これでいいですか?」
円華 「ええ。あとは隠し味を入れて、と」
まどか「これですか?」
円華 「それは駄目よ!!」
まどか「ふぇっ!?」ビクッ
円華 「ごめんなさい。それは大人向けの隠し味だから」
まどか「そうなんですか?」
円華 「ええ」
まどか(ブランデーとかかな?)
円華 (どうやら上手くごまかせたようね。ガラナチョコやその他諸々を使って私独自の技法で作った隠し味。その名もほむほむΣ。ただこの子達にはまだまだ早いしね)
まどか「それにしても円華さんってすごいですね。まかさカカオ豆からチョコレートまで作っちゃうなんて!!」
円華 「市販のチョコを湯煎して形を変えるだけなんて、誰でも出来るからね。滑らかな舌触りを出せるようになるまで苦労したわ」
まどか「すごいなあ……。流石に本当の手作りチョコなんて、わたしの知り合いの中では誰も作れないですよ」
円華 「まどかちゃんに私が長年の苦心の末編み出したこの製法、全部伝授してあげるからね」
まどか「はいっ。よろしくお願いします。先生」
――2月14日。学校への登校時。
芳文 「まどか、さやかちゃんおはよう」
まどか「おはようね芳文さん」
さやか「おはよ、先輩」
芳文 「……」ソワソワ……
さやか(まどか、先輩の様子気付いてる)ボソボソ
まどか(うん)ボソボソ
まどか「芳文さん。学校終わったら芳文さんの家に行ってもいい?」
芳文 「ん? あ、ああ。勿論」
まどか「渡したい物があるから、その時に……ね♪」
芳文 「!! わかった!! 楽しみにしてるよ!!」
さやか「あーあ。ほんと、先輩はまどかとの事となるとこれだから。……っと。先輩、これ」
芳文 「何これ?」
さやか「義理チョコだよ。この前のテストの時勉強教えてもらったお礼」
芳文 「ありがとう。さやかちゃん」
まどか「よかったね。芳文さん」
芳文 「ああ。女の子から義理チョコもらったの初めてだから嬉しい」
さやか「そうなの?」
芳文 「うん。母さんや風見野の実家の知り合いとかからもらった事はあるけどね。女の子の友達からもらったのは初めてだよ」
さやか「そっかー。あたしが初めてなんだ」
まどか「……」ムッ
芳文 「俺は幸せ者だよ。妹みたいに思ってる子から義理チョコもらっただけでなく、好きな子からも貰えるんだから」
まどか「芳文さん……。うんっ!! 期待しててね!!」
さやか「はあ、やれやれ。このバカっプルどもは。朝っぱらからお熱い事で……」
904 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/02/17(金) 22:33:22.27 ID:0PU2FYLXo
――その日の夕方。
さやか「あのさ、恭介……」
上条 「ん? なんだいさやか」
さやか「これ、バレンタインのチョコ何だけど……」
上条 「わあ、ありがとう。さやか」
杏子 「父さん、コレ」
杏子父「私にくれるのかい? ありがとう、杏子」
ほむら「パパ、はい」
ほむ父「ありがとう。ほむら」
マミ 「パパ、どうぞ」
マミ父「ありがとうマミ。食べるのがもったいないなあ」
まどか「芳文さん、はい。バレンタインのチョコだよ」
芳文 「ありがとう、まどか。すごく嬉しいよ」
まどか「円華さんに作り方教えてもらったんだよ」
芳文 「って事は手作りか。やばい。嬉しすぎて気絶しそう」
まどか「もう、大げさだよー」
円華 「ダーリン、はい。バレンタインのチョコ」
博 「ありがとう。円華。しかしあれだな。いつも円華のくれるチョコは一際大きいな」
円華 「私の愛が詰まってるもの」
博 「そうか。ありがとう」
円華 「うふふ……」
博 (直径30センチ厚さ5センチって所か。これすぐ食わないとまずいよな。職場の女の子達からもらった義理チョコも円華見つかる前に処理しないとな……。見られたら嫉妬するしな)
そんなこんなで、それぞれのバレンタインは終わりを告げたのだった。
――翌日。
――宇宙警察太陽系支部にて。
博 「」
ジョージ 「サンバード。また奥さんと子作りしてきたのか」
博 「……ああ」
ジョージ「また一晩で12Rもしたのか?」
博 「……18Rだ」
ジョージ「」
博 「……」
ジョージ「……その内本当に死ぬぞ。何故そんなになるまでするんだ」
博 「13R目できつくなってきてな。後ろの方を責めたんだ」
ジョージ「後ろ?」
博 「ああ。嫁はそっちの方が感じるらしいんだ。だがそれが間違いだった。そっちに出したら赤ちゃん出来ないじゃない。本当は私との赤ちゃんいらないのねって泣かれた……」
ジョージ「」
博 「その後、なんとか宥めたんだが、無駄打ちした分取り戻すんだってそのまま18Rまでした訳だ……」
ジョージ「」
博 「嫁の事は愛してるけどな、ほぼ毎日12R以上するのはきつい……。肉体的に……」
ジョージ「」
博 「俺ももう年なんだろうな……」
ジョージ(……年とかそう言う問題じゃあるまい)
博 「……ああ、そろそろ新人共の訓練の時間だな」
ジョージ「サンバード。今日はもう休め。今丁度こちらにルナティックセイバーが来てるから、新人の訓練は彼に頼もう」
博 「ああ。社の奴が来てるのか。じゃあ安心だな。あとは社に任せよう……」
ジョージ「サンバード?」
博 「」
ジョージ「サンバード!! しっかりしろサンバード!! 救護班!! 救護班はまだか!! サンバード!! しっかりするんだ!!」
博 (じいさん、久しぶりだな。え? この前も会ったって? そんな細かい事どうでもいいじゃないか。せっかく会えたんだから)
ジョージ「サンバードぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
――巴家にて。
パパ 「マミ、もうあきらめたらどうだい? パパはも限界だよ……」
マミ 「駄目なの!! 鹿目さんにもらったバレンタインチョコ、カカオ豆から作った本当の手作りなのよ!!」
パパ 「個人でチョコを豆から作るのは難しいんだから、もうあきらめた方が」
マミ 「駄目!! お菓子作りで負けたらみんな私に頼ってくれなくなるもん!! そんなの嫌!!」
パパ 「マミ……」
マミ 「美樹さんも佐倉さんも暁美さんも鹿目さんが青樹のおばさまに教えてもらって作ったチョコの方を喜んでたもん!! 打倒青樹円華!! 私絶対負けないんだから!!」
パパ 「ママ、助けてくれ……」
ママ 「マミの気が済むまで付き合ってあげて。パパがんばって」
パパ 「もうチョコは食べたくない……」
おしまい
905 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/02/17(金) 22:54:58.29 ID:0PU2FYLXo
杏子「あのおばさんも本当に色々とアレだな」
円華「誰がアレですって?」シャイニングフィンガー
杏子「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」ガクリ
まど神「わたし参上!!」
まど神「
>>893
芳君のあれはね、ルナティックセイバーこと社のおじさんの影響なの」
まど神「あの人は芳君の剣の師匠なの。前世も現世も両方共ね。芳君は元々ほむらちゃん似だから大人しい子だったんだけど……」
まど神「芳君が大人しくて可愛いから、いじめてくるクソガ……子達がいてね。博さんが鍛えてあげればよかったんだけど、博さん我が子限定で師匠に向いてないから……」
まど神「それで当時独身だった社のおじさんが芳君を8才の夏休みに剣道やケンカの仕方を教えて鍛えたの。ただ社のおじさんって素でアレなんだよね……」
まど神「前世ではお馬鹿のお手本に、現世では人格形成のお手本になっちゃったんだよね……。その内詳細が描かれるかも」
まど神「ちなみにルナティックセイバーはサンバードの仲間の2号勇者だよ。蒼月の閃光と言う呼び名のある勇者特警隊NO2の勇者」
まど神「その剣技は最強の勇者であるサンバードをも凌ぐ。二刀流の使い手だよ」
まど神「スーパーカーから変形するロボに融合合身して、更に超AI搭載の消防車、救急車、ヘリコプターに変形するロボと4体合体してスーパールナティックセイバーになるんだ」
まど神「あともうひとり、ガイアバロンっていう3人目の勇者もいるんだよ。まあどうでも良い裏設定だけどね」
まど神「
>>894
わたしも大胆だよね。ティヒヒ」
まど神「
>>897
円華ちゃんは見た目が若いのが自慢だからね」
まど神「
>>898
ありがとう。好きになってくれてうれしいなって」
まど神「
>>899
それはちょっと……(汗) 多分こっちのマミさんは一回り以上離れた男の子には興味ないと思うよ」
まど神「それじゃまたねー」
906 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/02/18(土) 00:32:45.60 ID:djZqlmXDO
社さん…ルナティクセイバーか…
907 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2012/02/18(土) 21:05:14.89 ID:eVbfhuVFo
乙でした
くそ!バレンタインの脅威はさったと思ってたらこのザマだよ!
小さな芳くんの素朴なおっぱいの疑問に円華がぐぬぬってなるパターンが好きですwwwwww
908 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/02/19(日) 02:12:34.45 ID:jTjzvYjs0
乙ですたー!
なるほど、今の芳文にとっても「社さん」が大切な立ち位置にいることは変わりないのか。
それにしてもマミママ・・・パパに押し付けないで手伝ってあげろよwwww
あと、まどかルート改変後は、マミさんと天瀬が何となく良い感じのコンビだと嬉しいかも。
幼馴染同士だし、天瀬はマミさんが仲良くしてくれるのはそのせいだと思ってて、マミさんもまだ自分が天瀬と一緒だと
肩肘張らなくて疲れない事に気づいてない、とかね!
909 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/03/04(日) 15:27:22.90 ID:2vTfJZyY0
芳文描いてみた。
ttp://ux.getuploader.com/madoka_magica/download/332/%E3%82%88%E3%81%97%E3%81%B5%E3%81%BF%E3%80%82.JPG
パスワードは「yoshifumi」で。
久々に描いたキャラ絵な上に落書きレベルなんで、ちり紙さんから何か反応があり次第消します。
910 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/03/04(日) 18:47:42.91 ID:TAlvTNDN0
パスワード違くね?
見れないんだけど
911 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
:2012/03/04(日) 18:56:35.57 ID:nytc0ToAO
半角英数でyoshifumiと入れたら見れた
俺の中の芳文ビジュアルイメージに近いな!
絵上手だと思う
どっかで見た黒髪の幼児を抱いたほむらとまどかのツーショットイラストの幼児が成長したらこんな感じなんだろうな
あっちの幼児は男か女かわからんがほむらそっくりで可愛かった
912 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/03/05(月) 02:07:19.37 ID:2DlFHXyVo
――2011年12月24日 PM1:00 鹿目家リビングにて。
「タツヤ、お星さま付いた?」
「ついたー」
まどかが抱き上げていたタツヤを床に降ろして、優しい声で幼い弟に言う。
「クリスマスツリーの飾りつけ、上手に出来たね」
「うぇひひひ」
嬉しそうに笑う弟の頭を撫でてやるまどか。
そんな姉弟の微笑ましい光景を微笑ましく見守る鹿目夫妻。
「まどか、そろそろ家出なくていいのか?」
母親にそう声をかけられて、まどかは壁掛け時計の時間を見て慌てる。
「えっ!? もうこんな時間なの!?」
「前から芳文君と約束してるんだろ? 早く行きな」
「う、うん。それじゃ行ってくるね」
「暗くなる前に芳文君と一緒に帰ってくるんだよ」
「はーい。それじゃいってきまーす」
まどかは両親にそう言うと、コートを羽織りマフラーを巻いてから、ぱたぱたと音を立てながらリビングを出て行った。
「ねーちゃおでかけするの?」
「にーちゃとデートだってさ。夜のパーティーまでには帰ってくるよ」
そう言って、詢子はタツヤの頭を撫でてやる。
「ぱーてぃー。きゅーべーぱーてぃーだってー」
「ミー」
ホットカーペットの上で丸くなっているキュゥべえに嬉しそうに話しかけるタツヤ。
「久々の休みだし、パーティーまでママと遊ぶか?」
「うんっ」
パーティーの為の料理を用意している夫のジャマにならぬよう、詢子は幼い息子の相手をしてやるのだった。
ひだまり☆まどっち 〜まどかのクリスマス〜
見滝原駅前の噴水の前で、芳文が缶のホットココアを飲みながら待っていると、まどかがぱたぱたと駆け寄ってきた。
「芳文さん、お待たせーっ。ごめんなさい、待たせちゃったかな?」
「そんなに待ってないから大丈夫だよ。それにまだ約束の時間の5分前だし」
そう言って芳文は、噴水の側に建てられた街灯に据え付けられている時計に、視線をちらっと向ける。
「ほんとだ。遅れちゃったかと思ってたよ」
「慌てなくても俺はどこにもいかないよ。ちゃんとまどかが来るまで待ってるから」
「ありがとう。芳文さん」
「礼を言われるような事じゃないさ。それに待ってる時間ってのも結構楽しいんだから」
「そうなの?」
「ああ。今日はどんな格好で来るのかなって想像したり、これからどこに行こうか、とか考えてるから」
「そうなんだ……」
そう言って息を整えているまどかに芳文は飲みかけのココアを差し出す。
「走ってきて喉渇いたろ。まだ8分目くらい残ってるから良かったら飲む?」
「いいの? ありがとう芳文さん」
まどかはそう言ってココアを受け取ると缶に口を付ける。
まどかが口に含んだココアを飲み込んで、一息付いた所で芳文がまどかに話しかける。
「そのコート、かわいいね。良く似合ってるよ」
「あ、ありがとう……。この前、イオンに行った時に買ってもらった物なんだよ」
「ああ、あの時のか」
「うん。ところで芳文さんはいつもわたしより先に来て待っててくれるよね」
「女の子を待たせるような奴は男じゃないって仕込まれてるから」
「円華さんに?」
「違うよ。ほら、夏休みに会った社のおじさんって覚えてる?」
「うん」
913 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/03/05(月) 02:07:57.20 ID:2DlFHXyVo
「8才の夏休みだったかな。俺、社のおじさんに剣道とかケンカの仕方とか教わったんだ」
「そうなの?」
「ああ。そん時に男の生き様みたいな物も教わったんだ」
「そうなんだ……」
「ああ。例えば男が泣いていいのは女の子にフラれた時と財布を落とした時だけだとか」
「……え?」
「社5つの誓いって言うんだ。ひとつ、男が泣いていいのは女の子にフラれた時とサイフを落とした時だけ!! ひとつ、女の子との約束は死んでも守れ!! ひとつ、女の子に対しては常に紳士であれ!!」
「ひとつ、好きな子には常に全力で想いを伝える事!! ひとつ、絶対に好きな子を泣かせるな!! ってね」
「あ、あははは……。女の子に対する事ばっかりだね……」
まどかが大きな汗をかきながらそう答えると、芳文は苦笑いしながらまどかの言葉に返答する。
「父さんに聞いたんだけど、昔っからあの人は強くて優しいんだけど女にモテなかったらしいからな。こんな誓いを作ってしまうほどに」
芳文がそう答えたその時、芳文の頭の上にいきなり手が載せられて背後から声がかけられた。
「モテなくて悪かったな」
芳文がギギギ、と壊れたロボットのように背後に振り向くと、そこにはかつての世界での芳文の義父にして、博の親友の社がいた。
「げっ!? おじさんなんで!?」
「出張の帰り道だ。おまえの姿を見かけたから声をかけようとしたら……」
「べ、別に悪口言ってたわけじゃ……」
慌てて取り繕おうとする芳文に、社は真剣な表情でじっと芳文の目を見ながら口を開いた。
「芳文」
「は、はい」
「男なら、姑息な真似をするんじゃない。堂々と胸を張れ。俺はそう教えたはずだよな?」
「……はい」
しゅんとなって俯く芳文。
「わかればいいんだ」
そう言って、優しい顔で芳文の頭を一度くしゃっと撫でてやるとまどかの方に向き直る。
「君は確か、芳文の彼女の……」
「鹿目まどかです。こんにちは」
まどかが慌ててお辞儀をすると、社は優しく微笑んでまどかに声をかける。
「礼儀正しいお嬢さんだ。芳文にはもったいないな」
そう言って芳文をちらっと見て言葉を続ける。
「ふむ。将来は美人になりそうだし、磨けば光るダイヤの原石って所だな。女の子を見る目はあったようだな、芳文よ」
「〜〜っ!?」
社の言葉にまどかが真っ赤になって俯く。
「……おじさん、まどかを口説かないで欲しいんだけど」
「何を言う。かわいい子に出会ったら、まず誉めろ。そう教えただろう」
しれっと芳文にそう返す社。
「親子ほど年の離れた女の子にもかよ!!」
「男は基本、若い子が好きだからな。もう少しこの子の年齢が上なら俺と愛人契約しないか持ちかけるんだが」
「おい、おっさん!!」
「冗談だ」
「真顔で言うなっ!! あんたが言うと冗談に聞こえない!!」
「何をそんなにムキになっているんだ。カルシウムが足りないんじゃないか? 後で円華ちゃんに煮干しと牛乳を摂らせるように電話しておこう」
「母さんの料理はいつも栄養考えて作られてるからいらんっ!!」
「なんだ。まだママゴンなのか」
「ママゴン?」
まどかが効きなれない単語に小首を傾げる。
「芳文が小さい頃、陽だまり荘に住んでたからこいつが赤ん坊の頃から知ってるんだよ。いつもママ、ママって母親にべったりでね。母親がちょっと離れただけでもまるで怪獣みたいにぎゃんぎゃん泣きわめくんだ」
「だからママゴン、ですか?」
「そういう事」
「小さなガキの頃の話だろ!!」
「博の奴に相談された事もあるぞ。母親と一緒に風呂に入るのをそろそろやめさせたいんだが、この年齢ならまだ普通なのかって」
「それ以上言うんじゃねえ!!」
芳文が口を塞ごうとすると、社は最小限の動きで飛びかかってきた芳文を躱して頭を押さえつける。
「目上に対する口の利き方がなっていないな」
914 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/03/05(月) 02:10:38.33 ID:2DlFHXyVo
「あんたが余計な事言うからだろうが!!」
「やれやれ。つまらない事で激情するのは相変わらずだな。もう少しクールになれ」
「人を怒らせたあんたが言うか!!」
「さてと、仕返しも済んだしそろそろ勘弁してやるか」
そう言って社は芳文の頭から手を離す。
「さっきの俺の言葉根に持ってたのかよ!!」
「そんなわけあるか。一々ガキの戯言なんぞに腹立てる訳ないだろう」
しれっとそう返す社。
「ぐ、ぐぬぬぬ……」
良いようにあしらわれた悔しさに歯噛みする芳文。
(す、すごい。あの芳文さんがきりきり舞いさせられてる……)
前の世界で一度、この世界で一度しか会った事のない社と言う人物にまどかは驚愕する。
「おっと、まどかちゃんすまなかったね。これから芳文とデートなのにジャマしちゃって」
「い、いえ……そんな事は」
「……そう思うなら、さっさと帰りゃいいのに」
不機嫌そうに言う芳文の頭をくしゃっと撫でて社が言う。
「つまらない事ですねるな。愛弟子よ」
「別に拗ねてねえよ」
「そうだ。コンドーム買ってやろうか? クリスマスに女の子とデートするなら必需品だろう? 中学生の小遣いじゃ高いしな。おじさんからのクリスマスプレゼントだ」
「いらねえよ!! あんた俺の事なんだと思ってるんだよ!! 俺とまどかにはまだ早すぎんだろ!!」
「それもそうだな」
しれっとそう言う社に芳文が心底疲れたため息をひとつ付くと、まどかが芳文の袖を引いて尋ねる。
「芳文さん、コンドームって何?」
『……』
まどかのその言葉に芳文と社の二人が黙り込む。
「芳文」
「何?」
「ちょっと冗談が過ぎたようだ。すまなかった」
「うん。もういいよ。おじさん」
「え? え?」
まどかだけが訳が分からず芳文と社を交互に見ながら困惑するのだった……。
☆
「……さてと、そろそろ時間だから俺は行く」
「ああ。餅つきは来るんだろ?」
「ああ、嫁と娘も連れて行く予定だ。その時にまた稽古をつけてやる。どのくらい腕を上げたか見てやろう」
「俺も以前とは違う。驚くなよ」
「そいつは楽しみだ。じゃあまたな。まどかちゃん、芳文の事よろしく頼むよ」
「はい。勿論です」
まどかの返事に微笑んで、社は背を向けて人差し指と中指を立てた右手をぴっと振って去っていった。
「はあ、やれやれ。とんだジャマが入ってしまったな。ごめんな、まどか」
「ううん。芳文さんの事で知らなかった事がわかったから。気にしないで」
「そう言ってくれると助かるよ。それじゃ行こうか」
「うんっ」
まどかが芳文の腕に自分の腕を絡める。芳文は少し驚いた顔をしたが、すぐに優しい顔でまどかに微笑むと二人仲良く歩き出す。
「まどかってさ、結構積極的だよな」
「えっ? そうかなあ?」
915 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/03/05(月) 02:12:10.94 ID:2DlFHXyVo
クリスマスの喧騒に満ちた街並みの中を歩きながら、芳文はまどかに話しかける。
「ああ。初めて会った時の印象と全然違うって言うかさ」
「……」
芳文の初めて会ったと言う言葉に、まどかは前の世界での出会いを思い出して口をつぐむ。
「今だから言うけど、あの時初めて会ったまどかに結構電波っぽい事言っちゃったな、て思ってるんだ」
「……」
「初めて会った筈の泣いてる女の子相手にどこかで会った事がある気がする、とかさ。よくよく考えたら引かれそうなもんだよな」
「……」
「そんな事があった次の日に登校時にまどかにまた出会って、その時にさやかちゃんと志筑さんに出会って……」
「……」
「転入したクラスの同級生に巴さんと、ついでに幼馴染の天瀬がいて、巴さんはまどかの部活の部長で……」
「……」
「この辺の地理に疎い俺をまどかが案内してくれるって話が出て、放課後に杏子ちゃんも加えて案内してくれたよな」
「……」
「それから部活の帰りにまどかと一緒になったり、まどかが差し入れ持ってきてくれたり、色々あったよな」
「……うん」
「あの時さ、もしかして俺、この子に好かれてるのかなって思ってたんだ」
「……うん」
「覚えてる? まどかが俺に告白してくれた日の事」
「……忘れる訳ないよ」
「今でも鮮明に覚えてるよ。初めて会った時からずっと気になってた女の子に告白されて、すごく嬉しかったから」
「……」
「初めて出会った時には、今こうしてまどかと恋人同士になって二人で腕組んで歩くなんて想像も出来なかった」
「……」
「ありがとう。まどか。俺の事好きになってくれて」
「……芳文さん」
「今日は目一杯二人で楽しもうな」
「うんっ」
芳文の笑顔にまどかはとても幸せそうな笑顔で答える。
二人は暗くなるまでクリスマスの街を遊んで回ったのだった。
☆
「ただいまー」
「お邪魔します」
デートを終えたまどかと芳文が鹿目家に帰ってくると、玄関に円華と博の履物が置かれていた。
「二人ともおかえり」
丁度廊下にいた知久が、帰ってきたまどか達にそう声をかけると、詢子がリビングから二人を呼ぶ。
「ほら二人ともさっさとこっち来な。あんた達が帰ってくるの待ってたんだからな」
早くパーティーを初めて酒を飲みたい詢子が二人を急かす。
まどかと芳文はお互いの顔を見合わせて笑うとリビングに向かうのだった。
916 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/03/05(月) 02:12:42.22 ID:2DlFHXyVo
☆
「君ーが笑ってくれるならー僕は悪にでもなるー♪」
ttp://www.youtube.com/watch?v=Futv749kejQ&feature=related
円華が中島みゆきの空と君のあいだにを歌い終えると、詢子と知久がパチパチと手を叩く。
「円華さん、歌上手いね。思わず聞き惚れちゃったよ」
詢子が円華の歌を褒めると、円華は恥ずかしそうに答える。
「いえそんな……。詢子さんの歌には叶いませんよ」
母親同士の会話を聞きながら、知久が博にビールを注いでやる。
「すみません」
「いえいえ」
パーティーを開始して一時間後。博が同僚から借りてきたカラオケセットで、両親達は盛り上がっていた。
「はい、芳文さん」
知久の用意したオードブルをまどかが皿に盛り付けて芳文に手渡す。
「ありがとう、まどか」
「芳文さん、こっちのチキンは食べないの?」
「ああ、それはいいや」
「円華さんが用意してくれたチキンすごく美味しいのに」
(……そりゃ、今朝まで生きてたからな)
美味しそうにチキンを食べるまどかを見ながら、芳文は今朝の出来事を回想する。
『母さん、この鶏どうしたんだよ』
『知り合いに頼んで調達してきたのよ』
『こいつ、生きてるんだけど』
『そうね』
『まさか、これを調理するつもりか?』
『覚えておきなさい。命を頂くって、こういう事よ』
――コケエェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!
(思い出したら気分が悪くなってきた……)
気を紛らわそうと周囲を見ると、キュゥべえとエイミーが仲良くじゃれあってて、タツヤは博にもらったおみやげのグレートサンバードのおもちゃで遊んでいた。
ちなみにこれは宇宙人の子供向けに大量生産されたおもちゃである。パトカーのミニカーが当たり前のように出回ってるのと同じで、サンバードの装備は玩具化されて当たり前のように宇宙中に流通している。
本人と宇宙警察の監修が入った製品の試供品を博はタツヤにプレゼントしたのだった。
「二人とも、そんな所で食ってばっかいないでこっち来て何か歌えー」
酒に酔った詢子がマイク片手に二人を呼ぶ。
「俺、歌下手だから……」
芳文はそう言って歌うのを断ろうとするが、せっかくみんな盛り上がってるのを盛り下げるのもどうかと思い直して、マイクと曲目集を受け取る。
「最初に言っておきます。俺は歌が下手なので、それなりに聞ける歌を歌います!!」
そう宣言して、芳文はリモコンを操作する。
「……行くぜ。曲名はSATSUGAI!!」
ttp://www.youtube.com/watch?v=tGiK4SCya0M&feature=related
「俺は地獄のテロリスト 昨日母さん犯したぜ 明日は父さん掘ってやる」
『』
まどかと両親達全員が絶句する。
「俺にゃ父さん母さんいねえ それは俺が殺したから」
『』
「殺せ殺せ親など殺せ!!」
芳文の熱唱が続く。
「SATSUGAI SATSUGAIせよ!!」
やがて演奏が終わると、芳文はやりきった男の顔で満足げに聴衆の顔を見る。
「……」
博がゆらりと立ち上がって、芳文を力強く抱きしめる。
「……」
円華がゆらりと立ち上がって、芳文の顔を掴む。
『俺(私)達の子育てが疑われる様な歌を歌うんじゃないッ!!』
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ジーグブリーカーとシャイニングフィンガーで躾をされる芳文を見ながら、タツヤが笑顔で歌う。
「ころせころせーおやなどころせー」
「タツヤ!! そんな歌歌っちゃだめ!!」
まどかが慌ててタツヤの口を塞ぐ。
「……ぷ。あっはははははははは」
詢子が愉快そうに笑い、知久も少し困った顔で笑うのだった。
917 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/03/05(月) 02:14:22.74 ID:2DlFHXyVo
☆
タツヤと飼い猫2匹が眠ってしまい、両親達がすっかり出来上がった頃。まどかと芳文は二人でこっそりとリビングを抜け出して庭に出る。
「やれやれ。みんな飲みすぎだって。なあ、まどか」
「うん。でもママ達も円華さん達もすごく楽しそうだし」
「……そうだな。昼間も言ったけど、まどかとこんな風にクリスマスを過ごせるなんて思いもしなかったよ」
「……そうだね」
芳文の言葉にまどかは前の世界での事を思い出す。芳文と二人で旅をしていた時はクリスマスどころじゃなかった事を。
『……クリスマス、か』
『……みんな幸せそうだね』
『……いつか、みんなで笑いあいながらパーティーが出来るようにしてみせるから』
『……うん』
『この結界の魔女を倒したら、ケーキくらい買って食べようか』
『……うん』
『行こう、まどか』
「……まどか?」
芳文の声で我に返り、まどかは慌てて返事をする。
「あ……。ごめんなさい、ちょっと考え事してて。……わたしもこんな風に過ごせるなんて思いもしなかったよ」
「そうだな。あの時、部活帰りの公園でまどかにお嫁さんにしてくださいって告白されてなかったら今、こうしてなかったもんな」
「あう……。恥ずかしいからあの時の事は言わないで欲しいな……」
「ごめん。でもさ、あの時は本当に嬉しかったんだ。ずっと気になってた女の子に告白されたんだから」
「あうう……」
恥ずかしさのあまり、真っ赤になって俯いてしまうまどかに芳文は優しい顔で言葉を紡ぐ。
「実はさ、あの時俺もまどかに告白しようと思ってたんだ」
「……え?」
芳文の言葉にまどかが顔を上げる。
「結局、俺が口にするより早くまどかが勇気を振り絞ってくれたんだけどな」
芳文がそう言って笑うと、まどかは前の世界で芳文に告白された時の事を思い出す。
『俺は君の事が誰よりも好きだから』
まどかは胸元に持ってきていた左手をきゅっと握ると、芳文の顔を見つめながら口を開いた。
「……聞きたいな。芳文さんの告白」
そう言って、じっと芳文の顔を見つめる。
「……」
芳文はまどかに近づいて優しく抱きしめると、まどかの両肩に手を置いてまどかの目を見つめながら口を開いた。
「俺は君の事が誰よりも好きだ。初めて会った時からずっと。だからこれからも、ずっと俺の側にいて欲しい」
「……はい」
まどかは芳文の体に両手を回して抱きしめる。
芳文もまた、まどかの小さな体を優しく抱きしめて、お互いの体温と胸の鼓動を確かめ合う。
「……好きだ」
「……わたしも大好き」
お互いの気持ちを言葉にして、抱き合っていると二人はお互いの頬に冷たい感触を感じて視線を空に向ける。
「……あ」
「……ホワイトクリスマス、か」
そう言って芳文が微笑むと、まどかもまた幸せそうに微笑む。
「あ、そうだ」
芳文はまどかを抱きしめたまま、スボンのポケットに右手を突っ込むと何かを取り出す。
「芳文さん?」
「じっとしてて」
芳文はまどかの体に回していた左手をまどかの首元に持っていくと、右手に持っている物を半分左手に持ってまどかの喉元に当てて、そのまま首筋で持っていた物を固定する。
「メリークリスマス。まどか」
そう言って微笑む芳文からまどかが視線を自分の喉元に向けると、芳文の作った銀細工のペンダントが家から漏れる光に照らされて銀色に輝いていた。
「ありがとう。芳文さん」
「どういたしまして」
ペンダントを愛しげに右手で握って礼を言うまどかに芳文は微笑みながら応える。
「そろそろ家の中に戻ろうか。冷えてきたし風邪を引くといけない」
「そうだね。わたしも芳文さんにプレゼントがあるんだ」
「それは楽しみだ」
「うんっ。いこっ芳文さん」
「ああ」
まどかと芳文はお互いの手を握り合いながら、暖かい家の中へと戻っていく。
聖夜に降った雪は、いつまでもつまでも降り続けるのだった……。
おしまい
918 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/03/05(月) 02:17:52.03 ID:2DlFHXyVo
杏子「クリスマス後編おしまい」
杏子「芳文のイラスト上手いな。あの馬鹿にそっくりだ」
杏子「残すところは円華おばさんの過去話だけだな。もしかしたらホワイトデーとかあるかも」
杏子「それじゃまたなー」ノシ
919 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/03/05(月) 05:04:22.17 ID:8F65v//DO
くそ、リア充爆発し……なくていいや
920 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/03/05(月) 20:03:56.20 ID:i5ijfjjQo
砂糖でた
社おじさんェ…
921 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/03/05(月) 21:34:05.96 ID:iQPH3S1v0
乙ですたー!
・・・・・・って、反応こんなに早くいただけるとは!!
慌てて今しがた削除しましたぜ。
ちり紙さんも、
>>911
さんも、お褒めいただきありがとうございます。
次スレがあるなら、円華さんや芳文withマギカブレードなんても描いてみようかと思ってます。
それにしても、社さんが登場したり、まどっちが告白するまでがサラリと描かれたりと要素てんこ盛りだったけど、
一番は改変前の世界と今の違いの部分かな。
だだ甘なんだけど、ちょっとビターな、やっぱり苦労を乗り越えて今がある二人なんだってのが感じられて良かったよ。
円華さんの過去話もガンバッテ!
922 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2012/03/05(月) 23:56:48.38 ID:MXRud+Kio
乙です
まどかゴムのこと知らないってことは前世で逃避行中とかにしなかったんだなあ
前世芳文切ないぜ
円華さん過去編ってことは終わりが近いですね……寂しいけど期待して待ってます!
923 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/03/07(水) 19:15:45.83 ID:YfYcOZvAO
案外膣出しバンバン決めてたり…ってないか
風呂とトイレ以外いつも一緒みたいな気がするから、まどニーするのもままならなかったんだろうな
924 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/03/07(水) 23:28:33.74 ID:iX7Hy1xS0
いつも一緒だったのはインキュベーターを近付けないのと、まどっちのメンタルを保つためだったろうし、芳文も気が張ってて
その気になる事のほうが難しかったかもね。
案外、芳文が感情に任せて押し倒しちゃっても、まどっちは「わたし、頼られてる!」って受け入れてSGも濁るどころかピッカピカだったかもしれんけど。
でもそうなると改変後の関係は無かったかもしれないし、それ以前にインキュベーターに勝てる流れになってたかどうかも判らないし
我慢と苦労を重ねてやっぱり正解だったのかも。
925 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/03/08(木) 08:40:05.94 ID:tTQ/OKnAO
もしエッチしてもモーラみたいに処女膜自動再生して、「やっぱりわたし人間じゃないんだ」みたいな展開が…
抱かなくて正解だね
926 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/04/03(火) 00:34:30.58 ID:v9lGBVb40
芳文withマギカブレード描いてみた。
パスは「yoshifumi」で。
マギカブレードのイメージが違ってたら、ごめんなさい。
ttp://ux.getuploader.com/madoka_magica/download/347/%E3%82%88%E3%81%97%E3%81%B5%E3%81%BFwith%E3%83%9E%E3%82%AE%E3%82%AB%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%89.JPG
927 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2012/04/21(土) 23:20:09.15 ID:ywpbANJMo
続き……待ってます!全裸で
928 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/04/23(月) 00:12:26.38 ID:F9a79dQbo
――2月初旬。鹿目家の洗面所にて。
詢子 「最近どうよ?」
まどか「今の所は上手く行ってるみたいだよ」
――見滝原中学まどか達のクラスにて。
早乙女「カレーは甘口ですか!? 辛口ですか!?」
まどか(先生、また上手く行かなかったんだ……)
早乙女「はい、鹿目さん!! どっちですか!?」
まどか「ええっ!? わたし!?」
さやか「まどか、がんば」
まどか「え、えと、どっちも違うと思います」
早乙女「……え?」
まどか「その、やっぱり好きな人の為に作ってあげるなら、わたしの好きな方じゃなくて、彼が喜んでくれる方を作りたいなって」
早乙女「……」
さやか「なんてかわいい事言うんだろう、この子ってば。こんな子を将来嫁に出来る先輩は幸せ者だね!!」
まどか「さ、さやかちゃん、みんなの前でからかわないで……」
男子A(鹿目ってあんなかわいかったっけ)
男子B(うっうう……鹿目さん……)
男子C(鹿目さんの彼氏が羨ましい……)
ABC(おのれ!! 青樹芳文!! 爆発しろ!!)
――数時間後。芳文とマミのクラスにて。
早乙女「カレーは甘口ですか!? 辛口ですか!?」
芳文 (俺はどっちかって言うと甘口がいいな)
早乙女「はい!! 社君!! あなたはどっちですか!?」
芳文 「先生。そんなの、好きな相手が作ってくれた物なら、どっちでも最高のごちそうですよ」
早乙女「……」
芳文 「好きな子が自分の為に愛情込めて作ってくれるんですよ。例え三ッ星レストランの一流シェフが作った料理が相手でも、好きな子の作ってくれた物の方が一番ですよ」
早乙女「……」
芳文 「大体、好きな相手が作ってくれる物に文句を言うなんて、男として有り得ない。逆に自分の好みを一方的に押し付けるのも有り得ない」
早乙女「……」
芳文 「本当に好きな相手なら、相手の良い所も悪い所も全部ひっくるめて受け入れられるもんですよ。そんなくだらない事で喧嘩別れするって言うなら最初からその程度って事ですよ」
早乙女「……」涙目
マミ (うわあ……)
天瀬 (おいおい……)
芳文 「まあもっとも、まどかには悪い所なんてないけど。性格も容姿も全部ひっくるめてすべてが俺好みで俺の理想その物。そう考えると俺は実にいい彼女に恵まれたな」
早乙女「……」
マミ 「……」
天瀬 「……」
芳文 「一昨日なんて調理実習で作ったケーキを持ってきてくれて、上目遣いで『ど、どうかな?』なんて味の感想を尋ねてくるし!! 思わず萌え転がりそうになっちゃいましたよっと……」
芳文 「いかんいかん。おもわずみんなの前で惚気話をしてしまった。話戻しますけど先生、そんなくだらない男ならゴミのように捨ててやればいいんですよ。もっといい男は他にごろごろしてますから」
早乙女「……」
芳文 「ただ、先生の年齢考えたらいい加減ある程度の妥協はした方が良いかもしれませんね。先生はうちの母さんやまどかのお母さんと同い年ですし」
早乙女「……」プルプル・・・・・・
芳文 「って余計なお世話でしたね。すみません。いつか先生にも白馬の王子様が現れるといいですね。人類の約半分は男ですし。きっと先生にもいい出会いがありますよ!!」
早乙女「……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」ダッ
芳文 「ああっ!? 早乙女先生!! 授業まだ終わってませんよ!! 早乙女先生カムバーック!!」
芳文 「……いったいどうしたって言うんだろう。早乙女先生。アノ日辺りで情緒不安定なんだろうか」
芳文 「なあみんな。早乙女先生いったいどうしたんだろうな?」首傾げ
みんな「おまえ(あなた)のせい(でしょ)だろ!!」
芳文 「えっ?」首傾げ
みんな「そこで不思議そうに首を傾げるな!!」
――その日の夜。とあるバーにて。
早乙女「リア充なんてみんな別れてしまえばいいのよ!!」
詢子 「和子、飲み過ぎだって」
早乙女「マスターおかわり!!」
詢子 (いったい、何があったって言うんだ?)
おしまい
929 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/04/23(月) 00:16:49.25 ID:F9a79dQbo
杏子「保守の為の小ネタおしまい」
杏子「マギカ・ブレードの絵かっこいいな。イメージとしてはそんな感じだよ。マギカ・シグヴァンを撃つ時は柄尻の花が開いて魔力の炎が噴き出すんだ」
杏子「ちなみにこのSSのまどかの弓は変形ギミックがない。ハノカゲ版や初期イメージイラストの弓と同型だよ」
杏子「円華おばさんの話は容量が大きいので、新スレ立ててやるってさ」
杏子「このスレの残りはひだまりまどっちとかそう言うので埋めるって。それじゃまたなー」ノシ
930 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/04/23(月) 00:19:29.15 ID:ILkdrYLqo
乙
先生…
>早乙女「はい!! 社君!! あなたはどっちですか!?」
先生それ改変前の苗字です!
931 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/04/23(月) 01:12:14.40 ID:y9BzdR5f0
乙ですたー!
マギカブレード、イメージに近い形だったようでホっとした!
さて、次は円華さんか、真魔法少女まどかのどちらかに挑戦したいな。
それにしても、こんな夜中にカレーが食いたくなってしまったぜ・・・・・・!
932 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2012/04/23(月) 01:29:53.54 ID:ixorGhCdo
乙でした!
やったーまだしばらく楽しみが続くぞー!
芳文のキャラが改変前の初期っぽくて笑いましたwwwwww
933 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/04/24(火) 18:29:50.69 ID:2P7zfQEoo
乙
新スレに誘導してくれたら、それはとっても嬉しいなって
934 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/15(火) 00:58:44.00 ID:J7TeY+hho
魔法少女は変身すると背が伸びるの巻
――前の世界の夏休み。いつもの橋の下での戦闘訓練後の出来事。
芳文 「今日はこのくらいにしておこうか」
さやか「あーっ、疲れたー」変身解除
まどか「わたしもも疲れたよー」変身解除
芳文 「……」ジー
まどか「芳文さん? わたし達の顔に何かついてる?」
芳文 「いや、まどかと付き合うようになってから気付いたんだけどさ。まどかって変身すると背が伸びるんだなって」
まどか「えっ? 本当に?」
芳文 「ああ。さっきの訓練の時に気づいたんだ。変身すると背が伸びてる」
まどか「そうなんだ……。気付かなかったよ」
芳文 「さやかちゃんも背が伸びてるみたいだし。魔法少女は変身するとみんな背が伸びるのかな」
さやか「そんな事言われても。あたしも言われるまで気付かなかったし……」
芳文 「あと前から思ってたんだけど、変身する時にみんな裸になってるっぼいけど寒くない?」
まどさや『芳文さん(先輩)のエッチ(スケベ)!!』
芳文 「誤解だ!! それに体が光ってるから肝心な所は見えてないし!!」
まどさや『……』ジー
芳文 「……ごめん」
マミ 「みんなお疲れ様」スタスタ
杏子 「飲み物買ってきたぞー」
さやか「やった。もうのどカラカラだったんだ。まどか、先輩なんてほっといて行こ」
まどか「う、うん」
芳文 「まどかー」半泣き
まどか「……芳文さん。行こ」天使の微笑み
芳文 「……ああ!!」
――みんなで日陰に座って休憩。
さやか「マミさん、杏子。あたし達って変身すると背が伸びるって知ってた?」
マミ 「そうなの?」
杏子 「いや、知らねー」
さやか「さっき先輩が気付いたんだよ。大方まどかと付き合い始めていちゃいちゃくっついてる事が多くなったから、気付いたんだろうけどね」
まどか「さやかちゃーん、からかわないでよー」テレテレ
芳文 「……ん? 変身して背が伸びるって事は……」マミの胸元に視線
まどか「……芳文さん。いったいどこ見てるの」プクー
芳文 「げ!? 誤解だから!! 背が伸びるって事は体重も増えるのかなって思っただけだから!!」
マミ 「……社君。次は私の相手をしてもらおうかしら」立ち上がって変身
芳文 「巴さん、なんで銃持ってるのかな?」冷や汗ダラダラ
マミ 「本気でやった方が訓練になると思わない?」ニッコリ
芳文 (ヤバイ。目が笑ってない。本気で俺を殺りに来てる目だ!!)
マミ 「さあ、始めましょうか。いいダイエットになりそうね」ニッコリ
芳文 「巴さん!! 巴さんは太ってなんかないから!!」
マミ 「え?」
芳文 「抱きしめたら折れそうな細い腰だし!! そんな均整の取れた抜群のプロポーションしてるのに、太ってるなんて思う訳ないじゃないか!!」
マミ 「ちょ、やめてよ」アセアセ
芳文 「おまえみたいな中学生がいてたまるか!! みたいな豊満なバストとかも変身するともっと大きくなってるのかなってちょっとだけ思ったけど。決して君の事をバカにしてなんかない!!」
マミ 「……」ゴゴゴゴゴゴ……
まどか「芳文さん」ゴゴゴゴゴゴ……
芳文 「え? まどかまでなんで変身して弓持ってるんだ?」
まどか「わたしとマミさんの訓練に付き合ってほしいな」
芳文 「ちょ」
マミ 「射撃型魔法少女コンビの訓練ね、鹿目さん。いくわよ」ジャキッ
まどか「はい、マミさん」ジャキッ
芳文 「ちよっ待っ……」
――どかーんっ!!
ほむら「……我が子ながら馬鹿な子。いったい、誰に似たのかしら……」物陰から監視
ほむら「……やっぱり、社さんの影響かしらね」社の事を思い出してため息
――その日の夜。ほむらのマンションにて。
芳文 『おまえみたいな中学生がいてたまるか!! みたいな豊満なバストとかも変身するともっと大きくなってるのかなってちょっとだけ思ったけど。決して君の事をバカにしてなんかない!!』
ほむら「……やっぱり変身しても背が伸びるだけ、か」ペタペタションボリ
QB 「暁美ほむら。君は何故、変身した後わざわざ服を脱いで胸のサイズを測るなんて無駄な事をしているんだい?」
ほむら「!?」
QB 「ワルプルギスの夜の脅威も去った今、君には聞きたい事が。何故いきなり銃を向けるんだい?」
ほむら「死になさい」
QB 「僕はまだ死ぬわけにはいかないよ」スタコラサッサ
ほむら「……世の中は理不尽だわ。一児の母である私より15の小娘の方が胸があるなんて……。ソウルジェムがなくて良かった」
おしまい
935 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/15(火) 01:00:42.78 ID:J7TeY+hho
杏子「ほむ☆マギの書き溜めの入ってたUSBメモリが遊びに来てた甥っ子に折られたそうだ」
杏子「近い内にスレ建てて書き直すってさ」
936 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/15(火) 01:06:37.67 ID:9SF79REI0
乙ですたー!
って・・・・・・甥っ子ーーーーー!!!!!!11
オレも実家に甥っ子がいるけど、年齢的に恐いもの知らずだから気をつけよう・・・・・・
そう言えば、変身すると身長だけでなく髪の毛も若干伸びてるみたいね。
設定画で明確に指示されてるのは、まどかだけだったと思うけど。
937 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/05/15(火) 02:00:35.60 ID:5T7bROp1o
乙
もういい・・・!それ以上喋るな・・・!
甥っ子ェ・・・
938 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/17(木) 00:51:15.96 ID:LEfdhjHmo
まど神「突発的ネタシリーズ。博さんに全部打ち明けてたら編」
ネオニトロ星人「ぐわははは!! 地球人共は皆殺しだぁ!!」
マミ 「待ちなさい!!」
杏子 「あたし達がいる限り!!」
さやか「悪の栄える事はない!!」
まどか「サンバードに代わって……おしおきだよ!!」
指輪型の変身アイテムで変身!!
マミ 「サンシャイン☆マギカ!!」
杏子 「クリムゾン☆マギカ!!」
さやか「スプラッシュ☆マギカ!!」
まどか「スターライト☆マギカ!!」
全員 『勇者少女隊マギカ☆カルテット!! レディー・ゴー!! VSフィールド展開!!』
周囲に被害を及ぼさないように戦闘用異空間を作り出す少女達。
ネオニトロ星人「おのれこしゃくな!! 返り討ちにしてくれるわぁっ!!」目からビーム
さやか「わあぁぁぁぁっ!!」
杏子 「この野郎ーっ!!」
ネオニトロ星人「ぐわははは!! その程度かあ!!」目からビーム
マミ 「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」
まどか「マミさん!! 強い……このままじゃやられちゃうよ……」
ネオニトロ星人「ぐわははは!! 死ねえ!!」目からビーム
まどか(回避が間に合わない!!)
ドカーン!!
まどか「あ、あれ? 痛くない……」
?? 「諦めていけない。諦めたらそこで負けだ」まどかをお姫様抱っこしながら着地
まどか「サン・セイバー様!!」
ネオニトロ星人「おのれサン・セイバー!! またも我らの邪魔をするか!!」
サン・セイバー「貴様ら悪をすべて滅ぼすまで、私は何度でも貴様等の悪事を阻み彼女達を守る壁となる!! 勇者特警サン・セイバー!! 正義の炎で悪を斬る!!」
サン・セイバー「クリムゾン・マギカ!! スプラッシュ・マギカ!! 君達の力を私に!!」
杏さや「はい!! サンセイバー様!! 受け止めて!! あたし達のマギ力(ぢから)!!」
サン・セイバー「スプラッシュ・エッジ!! クリムゾン・ザンバー!! 受けよ秘剣!! 浄罪の旋律!!」二刀流による超神速の連撃
ネオニトロ星人「ぐはあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
サン・セイバー「今だ!! サンシャイン・マギカ!! スターライト☆マギカ!!」
マミまど『はい!!』
マミ 「ボンバルダメント!!」
まどか「シューティング・スター!!」
ネオニトロ星人「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」大爆発
939 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/17(木) 00:52:09.21 ID:LEfdhjHmo
まどか「やったあ!!」
サン・セイバー「おのれえぇぇっ!! 握り潰してくれるわ!!」巨大化
サン・セイバー「ぐうぅぅぅっ!!」
まマ杏さ『サンセイバー様!!』
サン・セイバー「ぐ……セイバー・ストラトス!!」
蒼いスーパーカーが異次元空間から飛び出してきて体当たり。
ネオニトロ星人「ぬうぅぅっ!?」
サン・セイバー「融合合身!! セイバーン!!」
スーパーカーが小型ロボになりサン・セイバーと融合。
サン・セイバー「カイザービークル!!」
スペースシップ後部に連結してるブースターが切り離されると同時に側面パネル展開。ドリルタンク、巨大クレーン車、潜水艦、巨大ブルドーザー、小型ジェット機が発進。
サン・セイバー「奇跡合体!!」
スペースシップがボディに変形、ドリルタンクが右腕、クレーンが左腕、潜水艦が右足、ブルドーザーが左足、セイバーンがボディ内部に収納、それを覆い隠すように小型ジェットが胸部に合体。
サン・セイバー「スタートアップ!! ギャラクシーカイザー!!」
合体を完了した戦闘巨神の胸部から照射された光に包まれ、まどか達がギャラクシーカイザーの胸部内の集合コクピットに収容される。
サン・セイバー「行くぞ!! 皆、私に力を!!」
みんな『はい!! サン・セイバー様!!』
全員 『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!』
巨大ネオニトロ星人と組み合う物の、全員の想いの力が無限の出力を発揮する。簡単にネオニトロ星人の両拳を握り潰し、膝蹴りでどてっばらに大穴を開けるギャラクシーカイザー。
ネオニトロ星人「ぐあぁぁぁぁぁっ!!」
サン・セイバー「今だ!! スターライト!!」
まどか「はい!! みんなの幸せを絶望に染めたりさせない!! 出でよ希望の光!! マギカ・ブレード!!」
ギャラクシーカイザーの胸部から放たれた光が暗雲を引き裂いて、光り輝く黄金の大剣を降臨させる。
まマ杏さ『ギャラクシー・シグヴァン!!』
サンライズパースからの構えから、超光速低空飛行と共に必殺の一閃。
サン・セイバー「はあぁぁぁぁぁっ!!」斬!!
ネオニトロ星人「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
大爆発を背にマギカ・ブレードを振りまわした後、地面に突き立てるギャラクシーカイザー。爆発が完全に納まった後、まどか達を下ろしていずこかへと飛び去っていく。
マミ 「みんな、お疲れ様」
さやか「今日も勝てて良かったー」
杏子 「被害もほとんど出なくて良かったな」
まどか「うんっ。それにしてもサン・セイバー様っていったい誰なんだろうね?」
マミ 「いつも私達がピンチの時に駆けつけてくれる正義のヒーロー。その正体は誰も知らないのよね」
さやか「さやかちゃんの感だと素顔はきっと美形だと思うな。マスクの空いてる口元とかから見ると整った鼻筋してるし」
杏子 「いつの間にそんな所観察したんだよ」
さやか「この前危ない所をお姫様抱っこで助けてもらった時だよ」テレテレ
杏子 「……何だよ。ちょっと前まで恭介恭介言ってたくせに」
さやか「なによー。いつまでもうじうじ終わった恋を引きずったりするの、あたしのガラじゃないし」
まどか「……もしかして、さやかちゃんサン・セイバー様の事好きになっちゃったの?」
さやか「え!? あ、いや、その……いつも危ない時に助けに来てくれるし、恭介の事で自暴自棄になってたあたしを叱って抱きしめてくれたし……」
杏子 (……恋する乙女の目してやがる)
マミ (く……またライバルがひとり増えてしまったわ)
まどか(そんなあ……。マミさんと杏子ちゃんだけじゃなくて、さやかちゃんまでなんて……)
940 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/17(木) 00:53:01.19 ID:LEfdhjHmo
芳文 「あれ? みんなしてそんな所で何してるの?」
まどか「あっ、報堂先輩」
マミ 「芳君こそこんな時間にどうしたの?」
芳文 「俺? 俺は本屋に行ってきた帰り」
さやか「先輩の事だからエッチな本でも買いに行ってきたんでしょ」
芳文 「すげえ!! さやかちゃんはエスパーだったのか!!」
杏子 「図星かよ!!」
マミ 「……芳君、あまりエッチなのはどうかと思うんだけどな」
芳文 「何を言うんだ、マミ。男がエッチじゃないと人類は滅んでしまうだろう」
マミ 「……はあ。小さい頃はあんなに素直で可愛かったのに。どうしてこんなになっちゃったのかしら」
芳文 「酷い言われようだ。そっちこそ小さい頃はあんなにべったんこだったのに!?」
マミ 「変な事言わないの」シャイニングフィンガー
芳文 「あだだだだだだ!! 割れる割れる!!」
マミ 「まったく、もう……」
芳文 「畜生……いつから俺の幼馴染は家の母さんと同じ技で俺をいじめるようになっちまったんだろう……」
まどか「あ、あの……大丈夫ですか?」
芳文 「ああ、大丈夫だよ。まどかちゃんは優しいなあ。さすがこんな乱暴な子達と付き合っていけるだけの事はあるよ」
さやか「誰が」さやパンチ
杏子 「乱暴」抉るような肘
マミ 「ですって?」円華直伝シャイニングフィンガー
芳文 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
まどか「あ、あははは……」引きつった愛想笑い
それから。
芳文 「それじゃみんなまた明日」
マミ 「寄り道しないで帰るのよ」
杏子 「マミさん、かーちゃんみたいだよ。またなー」
さやか「バイバイ」
まどか「さようなら」
芳文 「……ふう。みんな怪我もしてなさそうだし、問題なしと。こちらサン・セイバー。任務完了」コールモード
ジョージ「了解。ご苦労さん、サン・セイバー」
芳文 「ご苦労さんじゃねえよ。あんたがあの子達と契約したせいで、俺がどれだけ苦労してると思ってるんだ」
ジョージ「彼女達を助けるのが不服なのか? もしかして彼女達を嫌っているとか」
芳文 「違う。なんでわざわざ俺みたいな勇者二世でもない、マミ達と契約したんだと咎めてるんだ」
ジョージ「文句ならサンバードとルナティックセイバーに言ってくれ。彼らを見て彼女達は正義の味方に憧れたのだから」
芳文 「あんたがあの子達をそそのかしたんだろうが」
ジョージ「そんなに戦わせたくないなら、やめるように説得すればいい。こちらはお願いしてる立場だから彼女達に無理強いはしない」
芳文 「チッ。マギ力(ぢから)をもっとも効率よく、強力に引き出せるのが思春期の少女だなんて、ふざけやがって」
ジョージ「そんな事私に言われても困る」
芳文 「……もういい。家に着いたから切るぞ」
ジョージ「ああ。ゆっくり休んでくれ」
941 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/17(木) 00:54:45.49 ID:LEfdhjHmo
芳文 「ただいま」
円華 「おかえり、芳文」
まどか「あ、芳君おかえりー」
ほむら「やっと帰って来たわね。おかえり」
マミ 「芳文君、疲れたでしょ」
杏子 「毎日風見野から見滝原まで学校に通うなんてあんたも大変だよな」
さやか「芳文君、学校生活はどう?」
芳文 「まどか姉、ほむら母さん、マミ姉、杏子姉、さやか姉、こっちの世界に来てたの?」
まどか「ウェヒヒヒ。わたし達の世界では久々の連休なんだよ」
ほむら「それで博さんに誘われてこっちの世界に来たのよ」
マミ 「たまには魔女も使い魔もいない世界でゆっくりしたいじゃない」
杏子 「美味い物も食いたいしさ」
さやか「そうそう。それにみんなかわいい芳君の顔を見たかったんだよ」
芳文 「いい加減子ども扱いするのやめてくれよ」
まどか「そうは言っても、わたし達にとってはほむらちゃんの愛息子だし。自分の子や親戚の子みたいな感じがするんだよ」
ほむら「別世界の自分が産んだ子とは言え、あなたは私の血を引いてる可愛い息子だもの」
マミ 「うふふ。久しぶりに抱っこしてあげましょうか?」
杏子 「そしてそのまま喰っちまおうってか」
マミ 「佐倉さん!! 貴女私を何だと思っているの!!」
芳文 「……はあ」
芳文 (ここにいるまどか姉、ほむら母さん、マミ姉、杏子姉、さやか姉は別の世界のまどかちゃん、母さん、マミ、杏子ちゃん、さやかちゃんだ)
芳文 (何でも昔、インキュベーターとか言う悪徳異星人が魔女と呼ばれる化け物になる存在、魔法少女に言葉巧みに少女達を騙して仕立て上げてた世界があったらしい)
芳文 (俺を産んだ母さんもその被害者で、別の世界のまどか姉を救おうと何度もタイムリープしてたらしい)
芳文 (結局母さんは望みを果たせぬまま、まどか姉の魔法で記憶を失ってこの世界に飛ばされ、俺の父さんに拾われた)
芳文 (その後、記憶喪失の母さんと父さんの間に愛が芽生え、俺が生まれた訳だ)
芳文 (俺が3才の頃に記憶を取り戻した母さんは、俺と父さんを巻き込むまいと家を出て、一人でこの世界のまどかちゃんを救おうとしたらしい)
芳文 (俺は寝てたから良く知らないが、父さんが無理矢理引き留めて抱きしめてやったら、母さんは耐えられなくなって全部父さんに話してしまったらしい)
芳文 (この世界には魔法少女もインキュベーターも存在しないから、普通は笑い話なんだけど……)
芳文 (実は父さんはこの世界を守る宇宙最強の勇者サンバードで、母さんを信じた)
芳文 (結果、この世界に侵入していたインキュベーターは父さんと宇宙警察に駆逐され、父さんは母さんと一緒にインキュベーターがいた世界に飛んだ)
芳文 (そこで父さんと母さんはまだ死んでしまう前のまどか姉達とこの世界に飛ばされる前の母さんを救ったわけだ)
芳文 (俺が消えたりしないのは、過去に戻った時点で世界は分岐してしまう為、一度起こった出来事は決して覆らないからだそうだ)
芳文 (その後、宇宙警察の科学力で普通の人間にもどったほむら母さん達は、今度は想いの力(マギ力)で戦う勇者少女隊となって、世界中に散らばってる魔女や使い魔を駆逐して回ってるらしい)
芳文 (父さん直属の部下という事で、彼女達は俺が幼い頃からこっちのせかいにちょくちょく来ていた)
芳文 (死んだばあちゃんが残したここ、陽だまり荘は彼女達や宇宙警察関係者が集まったり止まったりするのに最適な場所だったから)
942 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/17(木) 00:56:43.75 ID:LEfdhjHmo
ほむら「芳文。どうかしたの?」
芳文 「なんでもないよ、母さん。最初は母さんが二人もいて混乱したなって思ってさ」
さやか「まあ確かにまったく同じ顔が二人もいればねえ」
芳文 「母さん今いくつだっけ。確か今年24だっけ?」
ほむら「そうよ」
芳文 「母さんはまだ結婚しないの? 俺を産んだ方の母さんは18で結婚したのに」
ほむら「……彼が忙しくてね」
まどか「しょうがないよ。鎧吾(がいあ)君も忙しいもん」
芳文 (鎧吾と言うのは勇者特警ガイアバロンこと春賀鎧吾だ。実は俺の父さんを倒す為に、別世界から赤ん坊の時にニトロ星人にさらわれてきた別世界の報堂博だ)
芳文 (つまりほむら母さんと同じで俺にとっては別世界の父さんだ。昔父さんと激突したらしいが同じ素質を持ってても経験の差で父さんが勝った)
芳文 (その後、超ロボット生命体のバロンとパートナーになり、巨大ロボガイアバロンの右腕になるガイアーに融合合身する勇者になった)
芳文 (ちなみにバロンは左腕になる。普段は新幹線のぞみ号とひかり号に変形している。合体時は南海ラピートの化け物が頭部からつま先までを構成する。合体したガイアバロンはパワー&重火力型だ)
芳文 「まどか姉達は? 良い人いないの?」
まどか「それが意外と出会いがないんだよ……」
さやか「宇宙警察所属の地球人ってすごく少ないしさ」
杏子 「あたしはあんま興味ねーし」
マミ 「どこかにいい人いないかしら……」
まさマ『はあ……』
芳文 (大変だな……)
まどか「……こうなったら芳君に貰ってもらおうかな?」
芳文 「おいおい……。姉ちゃん、からかわないでくれよ」
マミ 「そうよ。芳文君の言うとうりよ鹿目さん。それにそんな事したら、こっちの世界のわたし達がかわいそうでしょ」
芳文 「なんでさ!?」
さやか「だってこっちのマミさんは芳君の幼馴染で、まどか達は妹分みたいなもんでしょ?」
芳文 「まあ、そうだけどさ」
杏子 「あいつらサン・セイバー様とか言ってあんたにメロメロじゃん。誰選ぶんだい?」
芳文 「いやいやいや。あの子達が好きなのはサン・セイバーであって報堂芳文じゃないし。そもそも大人になったらどうなるか知ってる相手とくっつくとかありえないし」
まどか「ひどい。芳君はわたし達の恋心を弄ぶんだね!!」
芳文 「ちょ」
さやか「むう。これはちょいとばかり教育が必要だね。杏子」
杏子 「そうだな。その性根叩き直してやる」
マミ 「そうね。乙女心のわからない男は嫌われるぞ」
芳文 「母さん達見てないで助けてくれよ!!」
円華 「私達の息子ってモテモテね、私」
ほむら「そうね。やっぱりあの人の息子だからかしらね、私」
芳文 「どうしてこうなるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
つづかない
943 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/17(木) 00:58:37.75 ID:LEfdhjHmo
まど神「こんな世界もあるんだよ」
まと神「ある意味ハーレム?」
まど神「本編みたいに誰か一人と結ばれる世界もあるけどね……」
まど神「……どうしたら芳君を私だけのものに出来るかな」虚ろな目
944 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2012/05/17(木) 23:53:49.98 ID:afh6L0j8o
お久しぶり!乙です!
平行世界同一人物によるハーレムって新しくね……?
いや、以外にあるのかな
ロボット的に考えたら勇者シリーズなんだろうけど
サン・セイバー様がタキシード仮面で想像されるのは俺だけ……?
945 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/18(金) 00:21:06.39 ID:5BUhBBV30
乙ですたー!
こwwwれwwwはwwwwww
家族に姉、妹がいると女性に夢や理想を抱けなくなると言うけれど、これだけ人数がそろってれば、そりゃ夢も希望も無いですな。
絶望も無いのが救いと言えば救いだけど。
それにしてもまど神様、お願いですから自重してください。
>サン・セイバー様がタキシード仮面で想像されるのは俺だけ……?
オレは1日号と魔法の布団叩きをくれた赤い彗星の人を想像してた・・・・・・
946 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/05/19(土) 12:50:32.66 ID:DqMWtZ7AO
ハーレムエロゲーみたいに全員孕ませたりしたら凄い事になりそうだww
まどか大「ほらパパが帰ってきたよー」
まどか小「パパ帰ってきて嬉しいねー」
マミ大小「「あらあら、パパの方に行くの?」」
杏子大小「「よしよし今おっぱいあげるからなー」」
さやか大小「「おむつ買ってきてくれた?」」
…カオスだwwwwww
947 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/21(月) 08:10:56.13 ID:GCpuF68Do
「これからも……の巻」
まどか「みんなー!! おはよーっ!!」
さやか「おはよーまどか」
仁美 「おはようございます。まどかさん」
杏子 「おはよ。朝っぱらから元気だね」
マミ 「おはよう、鹿目さん」
芳文 「おはよう。まどか」
芳文 「みんな揃ったし、もうそろそろ用意しないとな」
まどか「うんっ」
携帯のワンセグ『3・2・1・ゼロ』
金環日食用のサングラスで幻想的な光景を見るまどか達。
さやか「わあ……」
仁美 「きれいですね……」
杏子 「ああ……」
マミ 「本当。素敵な光景ね……」
まどか「……きれいだね、芳文さん」
芳文 「……そうだな」
まどか「……ありがとう。芳文さん」
芳文 「……え?」
まどか「一緒に金環日食見てくれて」
芳文 「……どういたしまして」
まどか(あなたがいてくれなかったら、きっとこんな日はこなかったから……)
まどか(あなたに出会えたから。ずっと一緒にいてくれたから……。だからこうしてみんなと……あなたと一緒にいられる……)
まどか(だから……ありがとう……)
芳文 「そう言えばテレビで言ってたんだけどさ。今度の金環日食は29年後なんだってさ」
まどか「そうなんだ」
芳文 「29年後も一緒に金環日食を見ような、まどか」
まどか「……うんっ」
おしまい
948 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/21(月) 08:22:01.16 ID:GCpuF68Do
修正
「これからも……の巻」
まどか「みんなー!! おはよーっ!!」
さやか「おはよーまどか」
仁美 「おはようございます。まどかさん」
杏子 「おはよ。朝っぱらから元気だね」
マミ 「おはよう、鹿目さん」
ほむら「おはよう」
芳文 「おはよう。まどか」
芳文 「みんな揃ったし、もうそろそろ用意しないとな」
まどか「うんっ」
携帯のワンセグ『3・2・1・ゼロ』
金環日食用のサングラスで幻想的な光景を見るまどか達。
さやか「わあ……」
仁美 「きれいですね……」
杏子 「ああ……」
マミ 「本当。素敵な光景ね……」
ほむら「本当に……。素敵……」
まどか「……きれいだね、芳文さん」
芳文 「……そうだな」
まどか「……ありがとう。芳文さん」
芳文 「……え?」
まどか「一緒に金環日食見てくれて」
芳文 「……どういたしまして」
まどか(あなたがいてくれなかったら、きっとこんな日はこなかったから……)
まどか(あなたに出会えたから。ずっと一緒にいてくれたから……。だからこうしてみんなと……あなたと一緒にいられる……)
まどか(だから……ありがとう……)
芳文 「そう言えばテレビで言ってたんだけどさ。今度の金環日食は29年後なんだってさ」
まどか「そうなんだ」
芳文 「29年後も一緒に金環日食を見ような、まどか」
まどか「……うんっ」
おしまい
949 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/21(月) 08:26:55.61 ID:GCpuF68Do
まど神「寝起きの突発はミス多いね……」
まど神「どうでもいいけど1の地域は曇ってて見えなかったよ」
まど神「ところでさ。どんな手を使ったら芳君をモノに出来るかな……」
まど神「やっぱ既成事実を作るしか……」虚ろな目
950 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/21(月) 08:45:59.32 ID:KbjhMs4DO
リア充爆発しろ!
ひだまりまどっちと末永く爆発して、たくさんの子供と孫に看取られて逝け!
あとまど神さまはそろそろ自重しないと悪堕ちしそうで怖いです。
951 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2012/05/21(月) 21:04:02.09 ID:AtYzFcAZo
乙です、自分は寝過ごして見れませんでしたwwww
ところで29年後にも部分的な日食は見れるんですね
なんか300年後とかそういう話を聞いて無理やんって思ってたんですが
……この作品の何人かは見ようと思えば見れそうだ
952 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/21(月) 22:49:30.21 ID:F4iFpLs70
乙ですたー!
俺は朝も早よから仕事で見れなかったですよww
原作は勿論、大概のSSのまどっちはやっぱり概念さんになっちゃうし、契約しなくても今度は魔法少女達との辛い別れが待っているのが常だから
ココのお話世界のまどっちにはずっと静かで幸せな暮らしを過ごして欲しいもんです。
ところで・・・・・・まど神様、そんなに一人寝が寂しいなら、等身大の芳文抱き枕でも自作なされては・・・・・・
953 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/05/22(火) 00:39:06.16 ID:naPXGkp1o
乙
妬ましい…
954 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/28(月) 00:23:56.67 ID:0QI9tojko
やきもちまどかの巻
――3月上旬。青樹家玄関にて。
まどか「こんにちは、円華さん」
円華 「まどかちゃん。いらっしゃい」
まどか「もしかしておでかけですか?」
円華 「ちょっと実家の方に用事があってね。芳文なら居間でコタツに入ってるから」
まどか「わかりました」
円華 「すぐに帰ってくるつもりだけど、もし芳文にいたずらされそうになったら、コタツの上のリンゴと一緒に置いてある果物ナイフで刺してもいいからね」
まどか「あ、あはは……。芳文さんああ見えて紳士ですから大丈夫ですよ。ちょっとエッチだけど」
円華 「そのエッチな所が心配なのよ」
まどか「うちのママはちょっとくらいエッチな男の子の方が健全でいいって言ってました」
円華 「そういうものかしら。それじゃ行ってくるわ。ゆっくりしていってね」
まどか「はい。いってらっしゃい」
――青樹家の居間。
まどか「芳文さん、こんにちは」
芳文 「いらっしゃい。今日は授業早く終わったの?」
まどか「うん。芳文さん達3年生が卒業して結構経つしね」
芳文 「そっか。こっちは春休みが普段より長くて結構暇なんだ。今日は昼間に天瀬と遊びに行ってきたけど」
まどか「そうなんだ。コタツの上に載ってるロボット買いに行ってきたの?」
芳文 「ああ、これ? ジョーシンに寄ったらさ。決算かなんかで5000円のはずのスーパーロボット超合金が3260円になってたからさ」
まどか「これ、何て言うロボットなの?」
芳文 「創聖のアクエリオンって言うアニメの主役ロボで、ソーラーアクエリオンって言うんだ」
まどか「そうなんだ。芳文さんって結構ロボットとか好きだよね」
芳文 「正義の巨大ロボって男の子の憧れって言うか力の象徴みたいなもんだからね。そんなとこに立ってないでコタツ入りなよ。寒いだろ」
まどか「うん。お邪魔しまーす。はあ……あったかいよぉ……」モゾモゾ
芳文 「ワンピースの新刊出てたからついでに買ってきたんだけど読む?」
まどか「うん。あ、でも芳文さんまだ読んでないんじゃないの?」
芳文 「一応ジャンプのほうで毎週読んでるからさ。後でいいよ。まどかが読んでる間はアクエリオン弄ってるから」
まどか「いいの? それじゃ読ませてもらうね」
芳文 「ああ」
芳文 「ふんふふふーん♪」アクエリオンOPの鼻歌
まどか「……」ワンピース読書中
――さわっ。
まどか「ひゃっ?」
芳文 「ふんふふふーんふふ♪」
――さわさわっ。
まどか「よ、芳文さん」
芳文 「ん?」
まどか「あ、あのね。その……わたし達まだ中学生だし……」
芳文 「ん? まあ卒業はしたけど入学式まだだから俺も一応中学生だな」
まどか「その……あんまりエッチなのはどうかなって……」
955 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/28(月) 00:25:10.43 ID:0QI9tojko
芳文 「……」
まどか「……」
芳文 「……俺、そんなにエッチかな?」
まどか「う、うん……。ちょっとだけ」
芳文 「……ごめん。まどかに嫌われたくないからこれからは自重するよ」
まどか「ありがとう。でもわたしが芳文さんの事嫌いになる事なんてないから」
芳文 「ありがとう。これからも一緒にいるんだから何か気になる事があったら言って。出来るだけ直せるところは直すから」
まどか「……ありがとう。芳文さん」
芳文 「あ、リンゴ食べる? 食べるなら剥くけど」
まどか「あ、わたしが剥くよ」
芳文 「いいからいいから。長い人生まどかが風邪とか引いた時とかにリンゴ剥く機会もあるだろうし。練習がてら俺が剥くよ」
まどか「う、うん。それじゃお言葉に甘えて」
芳文 「本屋の紙袋を下に敷いてと。この上に剥いた皮を載せよう。手をウエットティッシュで拭いてと。さあ剥くぞ」シュルシュル……
まどか「芳文さん皮剥くの上手だね」
芳文 「そう? このままどこまで長く皮を剥けるか試してみるかな」
――さわっ。
まどか「ひゃんっ!?」
芳文 「うおっ!? いきなりなんだ!?」
まどか「よ、芳文さん。言った側からどうしてエッチな事するの!?」
芳文 「な、なんの事だよ!?」
まどか「とぼけないでよ。さっきもわたしの太ももコタツの中で触って、今度は足のつ、つ、付け根を……」真っ赤
芳文 「付け根……って!? 誤解だ!!」
まどか「だってここにはわたし達しかいな……」
――にゃあーん。
まどか「……へ?」
エイミー 「にゃあ」コタツの中からコンニチハ
まどか「エ、エイミー? もしかしてずっとコタツの中にいたの?」
エイミー 「にゃ」
芳文 「まどか」
まどか「あ……」
芳文 「もしかして、俺がまどかにいたずらしてたと思ってたのか?」
まどか「え、えと、その……あはは……」
芳文 「そうかそうか。俺はそんな風に思われてたんだな」
まどか「だ、だって……」
芳文 「なあ、まどか。おれはそんな姑息な真似はしない」ユラリ
まどか「よ、芳文さん……」
芳文 「まどかにエッチな事がしたくなったら、俺は正々堂々と押し倒す。こんな風にっ」ガバッ
まどか「きゃっ!?」ドサッ
芳文 「ふっふっふっ……」
まどか「……えっ? えっ?」
956 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/28(月) 00:26:33.61 ID:0QI9tojko
芳文 「さあまどか。俺の子供を産んでもらおうか」
まどか「ええっ!?」(///)
芳文 「……俺が一人前の男になってまどかを迎えに行ってからな」耳元で囁き
まどか「〜〜っ!!」(///)
芳文 「ふふん。本気で押し倒されたと思った?」ニヤリ
円華 「ええ」
芳文 「!?」ギョッ?
まどか「ま、円華さん!?」
芳文 「お、御早いおかえりで」
円華 「忘れ物を取りに戻ってきただけよ。それと芳文」
芳文 「は、はいっ」
円華 「あなた達には10年早いわ!!」シャイニングフィンガー
芳文 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
――それから。
芳文 「あだだだ……。畜生……。俺何も悪い事してないのに……」
まどか「ご、ごめんなさい。芳文さん」
芳文 「もういいよ。最初にエイミーがコタツの中にいるって言わなかった俺が悪いんだし」
まどか「本当にごめんなさい……」
芳文 「いいって。それよりいつまでもそんな申し訳なさそうな顔されてる方が辛いよ。俺はまどかの笑ってる顔の方が好きなんだからさ」
まどか「……芳文さん」
エイミー 「にゃあ」
芳文 「にゃあじゃねえよ。おまえのせいだぞ」
エイミー 「にゃあーん」
芳文 「怒ってる俺のひざの上で丸くなりやがった。元野良とはいえフリーダムすぎだぞエイミー」
エイミー 「にゃあん♪」
芳文 「まったく。気の向くままに家の中や外を出歩いて、腹が減ったら戻ってきて好きな時に寝る。おまえはサザエさんちのタマかっつーの」
まどか「……」スッ。ゴソゴソ……
芳文 「ん? どうしたんだ? わざわざ俺の隣に入り直したりして」
まどか「別に」
芳文 「……もしかしてエイミーにやきもち焼いたとか?」
まどか「そんなんじゃないもん。コタツに入ってない上半身が寒いからだもん」
芳文 「しょうがないなあ。母さんが戻ってきて見られたらまた何言われるかわからないし。戻ってくるまでの間、静かにこうしてようか」
まどか「……うん」
おしまい
957 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/05/28(月) 00:29:32.08 ID:0QI9tojko
杏子「たまにはこんな話も……ね」
杏子「じゃあなー」ノシ
958 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/28(月) 21:02:07.54 ID:qJIHw0zb0
乙ですたー!
コターツ警備はネコの大事なお仕事なのです。
冬場には、ストーブ警備も兼任するのです。
エイミー「報酬のカリカリとモフリを忘れないでね!」
959 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/06/17(日) 19:50:11.43 ID:AvelaUXfo
まど神「突発的ネタ。博さんに全部打ち明けてたら編 ママと芳君みんな一緒にいたらの巻」
――陽だまり荘にある大浴場にて。
大まど「んー。やっぱり大きなお風呂は気持ちいいね」5才の芳文抱っこして入浴
大さや「こっちの世界での楽しみはやっぱこれだよねー」
大マミ「そうね」
大杏子「ただの昔ながらの銭湯なのになんで、こんなにいい湯なんだろうな?」
ほむら「本当。いいお湯……」
円華 「陽だまり荘の大浴場は薪で沸かしてるから。薪で沸かしたお湯はまろやかになるのよ」
大まど「そうなんだ……。でも隊長に沸かしてもらうなんてちょっと悪い気もするなって」
円華 「まどか、そんな事気にしなくていいわ。ダーリンも好きでやってくれてるんだから」
大まど「う、うん」
大さや「……それにしても、いつ聞いても違和感あるなあ。あのほむらが子持ちでしかも旦那の事ダーリンなんて呼んでる姿には」
ほむら「私だってそう思うわ。いったいどこをどうしたらこの私がこんな風になるのかしら」
円華 「あなたとは歩んできた人生が違うんだから当然よ。それに私はあなたと違って実の両親に愛されなかったから、あなた自身とは違うもの」
ほむら「……そうね。色んな時間軸を渡り歩いたけど、パラレルワールドの自分と顔を突き合わせて、今こんな風にしてるなんて思いもしなかったわ」
円華 「それは私も同じよ」
芳文 「ぶーん♪」まどかのひざの上で船のおもちゃを湯船に浮かべてご満悦
芳文 「あっお船ー」芳文の手から離れた船がマミの胸に当たって跳ね返る
大マミ「はい、芳君」
芳文 「……」ジー
大マミ「どうしたの? 芳君」
芳文 「おねーちゃんのおっぱいぷかぷかしてる」
大さや「確かに。そこに気が付くとはちっちゃくても男の子だねえ!!」
大マミ「もう!! 美樹さん!!」
大さや「あははは。ごめんなさーい」ヘラヘラ
芳文 「ねえママ」
円華 「なあに?」
芳文 「どうしてマミおねえちゃんたちのおっぱいは大きいの? お友達のマミちゃんはぺったんこなのに」
大杏子「それってこっちの世界のマミの事だよな?」
円華 「そうよ。この世界のマミは芳君と同い年なの」
大さや「てゆーか芳君はマミちゃんのおっぱいなんていつ見たのかな?」
芳文 「今日幼稚園でプールに入ったの」
大まど「ああ、なるほど。5才なら男子も女子も一緒に着替えとかするよね」
芳文 「ママ、なんで?」
円華 「女の子はね、大人になると赤ちゃんが出来た時の為におっぱいが大きくなるの」
芳文 「えっ?」首傾げ
円華 「芳君?」
芳文 「じゃあ、ほむらママはまだ子供なの?」首傾げ
960 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/06/17(日) 19:50:38.29 ID:AvelaUXfo
ほむら「……」
大さや「ぶふっ!!」
大杏子「……子供って残酷だよな。ほむら、元気出しなよ」
大まど「ほ、ほむらちゃん、大丈夫だよ。わたし達まだ成長するはずだもん!!」
ほむら「……気にしてないわ」ワナワナ
大さや「成長ねえ……」円華の方を見る
大さや「絶望しかないじゃん」ボソッ
円華 「……」シャイニングフィンガー
大さや「あだだだだだだだっ!! ギブ!! ギブ!!」
円華 「美樹さやか。あなたはどこの世界でも愚かね。良く見なさい」ザバァ
円華 「今の私は24才。そして夫もいて子供もいるのよ」
大さや「……マミさんを100マミ力(りょく)とするなら、ほむらが10マミ力(りょく)。んで円華さんは11マミ力(りょく)って所かな」
円華 「……」
大さや「10の力が11になってもあんま意味無いような」
円華 「……」シャイニングフィンガー
ほむら「……」シャイニングフィンガー
大さや「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
大杏子「馬鹿な奴。いらんこと言うからだよ」
芳文 「ねえママ」
円華 「……なあに?」
芳文 「ママも子供なの?」
円華 「……」
芳文 「大人になるとおっぱいおっきくなるんでしょ? ママのちっちゃいからママも子供なの?」
円華 「……」ユラリ
大マミ「ま、円華さん落ち着いて!!」
大杏子「こんな小さなガキ相手に怒るなよ!!」
芳文 「ふえ……なんでママ怒ってるの?」ジワッ
大まど「よ、芳君もう上がろうか」アセアセ
大さや「まあ確かにまだ子供かもね。割と短気だし。見た目と実年齢が釣り合ってないし。14才の時から顔も胸も度量も成長しないって」
円華 「……」シャイニングフィンガー
ほむら「……」シャイニングフィンガー
大さや「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
――ボイラー室にて。
博 「女があれだけ集まるとかしましいなあ。いったい何を騒いでるんだか」
おしまい
961 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/06/17(日) 19:57:39.37 ID:AvelaUXfo
まど神「徳島県に人気?のママと芳君シリーズでした」
まど神「最近気付いたんだけど、わたしが芳君をモノにするにはあっちのわたしにとりついて合体すればいいんだよ!!」
まど神「そして芳君を誘惑して既成事実を作る!!」
まど神「なんてったってあのほむらちゃんの子供だもん!! きっと概念くらい孕ませられるに違いないよ!!」
まど神「ウェヒヒヒヒ!! 行くよわたしよ!! 念神合体!! GO!! まど神オーン!!」
ほむら「やめなさい」ガシッ
まど神「ほ、ほむらちゃん……」
ほむら「ちょっと向こうでお話ししましょうか」
まど神「ウェヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!?」ズルズル……
ほむら「それじゃまた」
962 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/17(日) 20:15:56.77 ID:J9qTvRZDO
もう邪神だろこのまど神さまwwwwww
963 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2012/06/18(月) 22:28:26.73 ID:AazgLgwZo
>>961
これじゃあ俺がおねショタ好きでおっぱい好きな変態に思われるじゃないか訴訟
ありがとうございました!
964 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/06/27(水) 22:15:08.79 ID:eOdqOv+Eo
――ある日の夜。青樹家にて。
円華 「……」シャイニングフィンガー
芳文 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
博 「なあ息子よ。何故いつもいつもいらん事を言うんだ?」
芳文 「あだだだだ……。俺は本当の事しか言ってないし」
円華 「まだ反省が足りない様ね」
芳文 「ごめんなさい」
博 「はあ……。俺の息子はなんでこんなに胸の大きさにこだわるんだ。いったい誰に似たんだか」
芳文 「大きな胸は母性の象徴。それに憧れるのはおかしくないだろ」
博 「……社の影響か。あいつも巨乳好きだしな」
芳文 「父さんはロリコンで貧乳好きだからいいかもしれないけどさ」
博 「誰がロリコンで貧乳好きだ!!」ジーグブリーカー
芳文 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
博 「こんなに若々しくて美しい母親のどこに不満があるんだ。それに円華の胸は綺麗だろうが」
芳文 「圧倒的にボリュームが足りないけどな」
円華 「……」シャイニングフィンガー
芳文 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
博 「いつまでもママおっぱいーって吸ってたのは誰だったかな」
芳文 「そんな昔の事は忘れた。俺は未来に生きてるんだ」
博 「……日に日に俺の息子が社に似てくる気がする」
円華 「そうね。良くも悪くも社さんの影響が大きすぎる気がするわ」
円華博『はあ……』
芳文 「夫婦揃ってため息つかれるとか。社のおじさんも大概アレだな」
円華博『あなた(おまえ)が言わないでっ(言うなっ)』
芳文 「えっ!?」首傾げ
円華博『はあ……。なんでこんな子になってしまったのか……』
芳文 「酷い言われようだ。仮にもたったひとりの愛息子にその言い草はないと思うぞ」
円華 「……良く言うわ」
博 「口の減らない奴だ」
芳文 「そういや思い出した。俺が大きな胸が好きな理由。それは小さい頃、母さんの胸が小さいせいで痛い思いをしたのが原因かもしれない」
博 「何の事だ?」
芳文 「いくつの時だったかな。父さんが仕事でいなくて。母さんが用事で二人揃って出かけてて、俺がばあちゃんに預けられてた時の話だ」
965 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/06/27(水) 22:16:21.62 ID:eOdqOv+Eo
――芳文3才のとある日曜日の夕方。
円華 『ただいまー』
芳文 『えーん、マーマー!!』トテトテトテトテッ
円華 『芳君ただいま』しゃがみこみ
芳文 『えーん!! マー!?』躓き
ごっちーん。おもいっきり母親の胸部中央で顔面強打。
円華 『うぐっ!?』
芳文 『う……うわーん!!』
梅子 『いったい何事だい。円華、なんで胸元押さえて蹲ってるんだい?』
円華 『いたたた……』涙目
芳文 『うわーん!!』
――回想終わり。
芳文 「しゃがみこんで待ってる母さんの胸に駆け寄った時、躓いて母さんの胸で顔面を強打した事があるんだ」
博 「……」
円華 「……」
芳文 「加減を知らない幼児って全力でぶつかってくだろ。母さんの胸がもっと大きければ。せめて、ブラした時普通に谷間が出来る程度に大きければ、俺はあの時泣かずに済んだのに」
博 「……芳文。でかければいいってものでもないぞ。手のひらにすっぽり収まるサイズというのもそれはそれで趣があるんだ」
芳文 「……」
円華 「……」
博 「それにあまりでかいと歳取って垂れた時見苦しいしな。それにな、小さな胸は感度が良いんだぞ」
芳文 「母親の性感帯なんか知りたくねえよ!!」
博 「おっとつい口が滑った。まあそれは置いておくとしてだ。普通は揉まれたり子供が出来たりすれば多少はでかくなるもんだ」
円華 「……」ワナワナ
博 「それなのにでかくならないと言うのはある意味希少だぞ。裏を返せば歳を取っても垂れる事のない美乳と言う事だからな」
円華 「……」プルプル
芳文 「……」
博 「だから円華の胸は人に誇れる素晴らしい物だと俺は思うんだ」
芳文 「あ、ああ。父さんがそう思うんならそれでいいと思うよ。それでも俺は大きい方が良いけどさ」汗
円華 「あなた達、ちょっと表に出なさい」プツッ
――2日後。自宅のソファーに力なくもたれかかる父子の姿があった。
博 「腹減った……」ゲッソリ
芳文 「父さん早く風見野から母さん連れ戻してきてくれよ……。インスタントはどうも美味くないし……」グデーン
博 「完全に拗ねてしまったからなあ……。どうしたものか……」
芳文 「そんなもん無理矢理抱きしめて、耳元で愛の言葉でも囁いてやればいいだけの話。女なんざそれでイチコロだろ。女なんてチョロイもんだ」
まどか「……ふーん。芳文さんってそんな風に思ってたんだ」
芳文 「げっ!? まどか!! どうしてここに!? と言うかカギは!?」
まどか「円華さんから預かった合鍵。……せっかくご飯作りに来たのに。なんか作る気なくなっちゃった」
芳文 「まどか誤解だから!! チョロイ云々ってのはあくまで母さんの事だから!!」
まどか「知らないもんっ!!」プイッタッタッタッ……
芳文 「まどか待って!! 話を聞いてくれ!!」ダダダダ……
博 「……だからおまえは一言多いんだ、息子よ。壁に耳あり障子に目ありってな。はあ……。円華を迎えに行くか」
円華 「ただいま」
博 「円華!! 帰ってきてくれたのか!!」
円華 「いつまでも実家にいてお母さんに心配かける訳にも行かないでしょ」
博 「そうか。その……すまなかった」
円華 「もういいわ。ところでまどかちゃんが先に来てたはずだけど、来てないの?」
博 「芳文の奴がいらん事を口走ってな。怒らせてしまったんだ」
円華 「はあ……しょうがない子ね」
博 「まあ二人ともこれから先ずっと一緒にいるならケンカする事もあるだろう。俺達は暖かく見守ってやるだけさ」
円華 「そうね」
芳文 「まどかお願いだから機嫌治してくれよ」ドゲザー
まどか「ふんだ。芳文さんなんて知らないっ」プィッ
おしまい
966 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/06/27(水) 22:22:46.43 ID:eOdqOv+Eo
まど神「以前、ですた君が言ってたあっちのわたしと芳君のケンカネタでした」
まど神「そろそろ新スレ作らなきゃね。ほむ☆マギとひだまりとマミさんルートの。全部まとめてひとつのスレのほうがいいのかな?」
まど神「いい加減ほむ☆マギ書かないと駄目だよね。書き貯め消されてショックだったとはいえ」
まど神「とりあえず次の更新は次スレ立ててからね」
967 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/27(水) 22:49:25.40 ID:xobLjU7L0
乙ですたー!
ぅおー!ケンカネタきたー!!
二人ともカワイイぞーーー!!!
男も女も、信頼して相手の手のひらの上で転がしてもらえる相手と一緒になるのが幸せだって爺ちゃんが言ってたけど
まどっちも芳文も、たまにはケンカもする事で、相手の上手な転がし方を覚えて言って欲しいもんだと思うのですよ。
968 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/06/29(金) 03:08:30.07 ID:c3dAZEeEo
乙
芳文ざまあww
尻に敷かれてしまえwwwwww
969 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2012/06/29(金) 04:53:38.04 ID:q/3yeN0Xo
乙です
まどかの尻にならしかれたいです……
970 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2012/07/25(水) 02:58:15.75 ID:lmlJrWWHo
>>515
の後日談は何度読んでも2828できるわ
971 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/08/16(木) 02:23:35.09 ID:7Q35Ue+mo
時にはケンカもするけれどの巻
――2012年6月。見滝原駅前にて。
中沢 「アニキ、お待たせ」
恭介 「おはようございます、青樹先輩」
芳文 「ああ、おはよう」
中沢 「アニキ、上条はともかく俺が来てよかったの?」
芳文 「ああ。構わない。入場券沢山あるから」
さやか「おーい、せんぱーい!!」
芳文 「女子組はさやかちゃんと杏子ちゃんが一番乗りか」
恭介 「さやか、おはよう」
さやか「おはよう、恭介。先輩もおはよう」
芳文 「おはよう、さやかちゃん、杏子ちゃん」
杏子 「おはよう。……そいつ誰?」
さやか「中沢じゃん。なんでここにいるの?」
芳文 「俺が誘ったんだよ」
さやか「先輩、中沢と知り合いなの?」
芳文 「家の母さんとこいつの母さんが幼馴染なんだよ。小さい頃に一緒に遊んだ事とかあってね。弟分みたいなもんなんだ」
さやか「ふーん。そうだったんだ」
芳文 「親父がもらってきた入場券沢山あるしさ、女の子ばっかの中に俺と上条二人だけってのもね……。暇そうだから誘ったんだよ」
さやか「そっか」
中沢 「……もしかして俺、お呼びでない?」ズーン
恭介 「そんな落ち込まなくても。さやかは別に悪気があって言ったわけじゃないから」
さやか「そうそう!! せっかくだから今日はみんなで盛り上がろうよ!!」
恭介 「ははは……」
芳文 「それは置いといて、天瀬の奴遅いな。巴さん達もまだ来ないし」
天瀬 「すまん!! 遅れた!!」
芳文 「おせーよ。また深夜アニメを見てたのか。録画して後から見ればいいだろ」
天瀬 「何言ってるんだ。本放送を見ながらネットで実況したり議論したりするのが楽しいんじゃないか。それに巴さん達だってまだ来てないし」
芳文 「馬鹿野郎。さやかちゃんと杏子ちゃんが来てるだろう。女の子より早く待ち合わせ場所に来るのが男の在り方だ」
天瀬 「黙れリア充!! んなもんおまえとまどかちゃんの間だけでやってろよ」
杏子 「あ、マミさん達が来た」
マミ 「ごめんなさい。待たせちゃったかしら?」
芳文 「おはよう。大丈夫だよ」
ほむら「おはようございます」
仁美 「おはようございます」
芳文 「おはよう」
まどか「……ふんだ」プイッ
芳文 「……ふん」プイッ
972 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/08/16(木) 02:25:32.59 ID:7Q35Ue+mo
さやか「……ん? 何この険悪な雰囲気」
芳文 「さてと、みんな揃った事だしそろそろ出発しようか。楽しみだなあ、見滝原ラグーナシアアイランド!!」
――新規オープンした温水プール施設に移動途中。
さやか「まどか、先輩とケンカでもしたの?」
まどか「……別に」
天瀬 「おい、まどかちゃんとケンカでもしたのか」
芳文 「別にしてねえよ。生理でイライラしてるだけだろ」
まどか「そんなんじゃないもん!! 芳文さんのばかぁっ!!」
芳文 「人を馬鹿呼ばわりする方が馬鹿だろ。それに言っちゃ悪いけど俺の方が成績良いから」
まどか「そういう事を言ってるんじゃないもんっ!!」
芳文 「ああ。知ってるよ。勝手に盗み聞きして腹立ててるだけだもんな」
まどか「うーっ」
芳文 「……ふん」
ほむら「ま、まどか落ち着いて」オロオロ
天瀬 「おいおい、なんでこんな事になってんだよ」
マミ 「いったい何があったの?」
芳文 「勝手に家に上がって俺と親父の会話を聞いて腹立ててるだけだよ」
まどか「ちゃんとチャイム鳴らしたし、声かけたもんっ!! 円華さんに合鍵預かったんだから勝手に上がったわけじゃないもんっ!!」
芳文 「あー、はいはい。それでいつまでも腹立てて。面倒臭い」
まどか「また面倒臭いって言った!!」
芳文 「実際そうだろ。いつまでうだうだ引きずるんだよ」
まどか「うーっ!!」
芳文 「猫か、おまえは」
杏子 「ちょっ、二人とも落ち着けって!!」
――前日の回想。
芳文 「まどかお願いだから機嫌治してくれよ」ドゲザー
まどか「ふんだ。芳文さんなんて知らないっ」プィッ
芳文 「いったいどうすればいいんだ……。つーか今日のまどか、すごく面倒臭い。まるでうちの母さんみたいだ……」ボソッ
まどか「わたし面倒臭くないもんっ!!」
芳文 「……地獄耳かよ。うちの母さんじゃあるまいし」
まどか「訂正して!! わたし面倒臭くないもん!!」
芳文 (……よくよく考えれば、なんで俺こんなに責められなきゃいけないんだ?)
芳文 「あのさあ、勝手に上がってきて盗み聞きしといて、なんでここまで責められないといけないの?」
まどか「ちゃんとチャイム鳴らしたもん。それに玄関で上がる前に声だってかけたもん」
芳文 「俺にも親父にも何も聞こえなかったけど」
まどか「私が嘘ついてるとでも良いたいの?」
芳文 「そう言う訳じゃないけどさ。一方的に俺ばっか責め立てられるのはどうなのかな」
まどか「……開き直るんだね」
芳文 「だからなんでそうなるんだよ。ああ、もう。なんで今日のまどかはこんな面倒臭いんだ」
まどか「わたし面倒臭くなんてないもんっ!! 芳文さんのばかぁっ!!」
芳文 「馬鹿はどっちだよ。わからず屋」
まどか「っ!! もう知らないっ!!」
――回想終わり。
芳文 「勝手に怒って勝手に拗ねてるだけだから、みんな気にしないで。それに前から約束してたんだから気にせず楽しもう」
まどか「そうだね!! こんな人放っておいてみんなで楽しもうね!!」
芳文 「……ふん」プィッ
まどか「……ふんだ」プイッ
普段のラブラブっぷりからは想像も出来ない二人のケンカに全員、顔を見合わせて困惑するだけだった……。
973 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/08/16(木) 02:28:00.27 ID:7Q35Ue+mo
――見滝原ラグーナシアアイランドのプール脇にて。
芳文 「……」ムスッ
天瀬 「なあ、いい加減まどかちゃんと仲直りしたらどうだ?」
芳文 「俺は悪くない」
中沢 「ここはアニキが折れた方がいいかと」
芳文 「……覚えておけ。釣った魚に餌はいらねえ」
恭介 「釣った魚って……」
さやか「お待たせー」
芳文 「おっ。さやかちゃんその水着良く似合ってるね」
さやか「ホント? へへ、ありがとう」
芳文 「うんうん。正にさやかわいい」
さやか「あはは、何それ」
中沢 「ちょっ、アニキ」手招き
芳文 「なんだ?」
中沢 「何自然に美樹くどいてんのさ?」
芳文 「何言ってんだおまえは。俺に取っちゃさやかちゃんは妹みたいなもんだ。妹を褒めて何が悪い」
恭介 「そうなんですか?」
芳文 「ああ。心配しなくてもこっちもむこうもお互い異性として見てねえよ」
中沢 「よかったな、上条」
恭介 「何がさ?」
中沢 「かーっ。これだからこいつは」
芳文 「そういや前に中学の剣道部の後輩にさやかちゃんを紹介してくれって頼まれた事があったな」
恭介 「えっ!?」
中沢 「それでアニキどうしたの?」
芳文 「直に告る勇気もない奴に可愛い妹分を任せられるか。好きなら自分で当たって砕けろって言ってやった」
中沢 「ふーん。美樹って結構モテるんだよな」
芳文 「みたいだな。意外とスタイルもいいし、顔だって悪くないし、それに性格も悪くないしな」
恭介 (……確かに言われてみれば)
さやか「男3人で固まって何ひそひそ話してんの!!」ドンッ!!
芳中恭『うわあっ!?』バッシャーン!!
さやか「あははははっ」
まどか「杏子ちゃんの浮き輪おっきいね」
杏子 「悪かったね、泳げなくて」
まどか「そんなつもりで言ったわけじゃないよー」
杏子 「あはは。冗談だって」
仁美 「あらあら……」クスクス
マミ 「暁美さんは泳ぎは得意なの?」
ほむら「得意って程じゃないですけど、ちょっとくらいなら一応泳げます」
まどか(こっちのほむらちゃんは泳げるんだ。円華さんはカナヅチなのに。やっぱり平行世界の同一人物でも多少は違いがあるんだね……)
974 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/08/16(木) 02:30:16.20 ID:7Q35Ue+mo
杏子 「おーい、お待たせー」
天瀬 「お、巴さん達が来たぞ」
芳文 「これで全員揃ったね。みんな準備運動はしたの?」
マミ 「まだよ」
芳文 「そっか。じゃあ準備運動したらみんなで何かしよう」
まどか「……わたし泳いでくる」
ほむら「えっ? まどか」
まどか「今は一緒にいたくないの」タッタッタッ……
マミ 「あらあら……」
芳文 「……」
――25メートルプールの中。
まどか(芳文さんのばかばかばかっ!!)
まどか(どうしてわかってくれないの!? あんなこと陰で言われてたら、わたしへの言葉もほんとは本心じゃなかったのかって思っちゃうよ!!)
まどか(……否定して欲しかっのに)
まどか(ほむらちゃん達、心配してるかな。そろそろ戻った方が良いかな……)
ズキンっ!!
まどか(足がっ!!)バシャバシャバシャ!!
まどか(駄目……。息が……)
――バシャーンッ!!
まどか(……芳、文、さん)
まどか「げほっげほっ……!!」
芳文 「まどか!! 大丈夫か!?」
まどか「げほっ!! う、うん……」
芳文 「ばかたれ!!」
まどか「!?」ビクッ
芳文 「準備運動もろくにせず一人で足の届かない所で泳ぐとか何を考えてるんだ!!」
まどか「だ、だって……」
芳文 「だってじゃない!!」
まどか「っ!?」ビクッ
芳文 「もしまどかの身に何かあったら、俺はどうしたらいいんだよ」ギュッ
まどか「よ、芳文さん……」
芳文 「この世界で一番大切な女の子を失ったら、俺の生きる意味がなくなってしまうじゃないか」
まどか「!!」
芳文 「頼むから心配かけないでくれ……」
まどか「……ごめんなさい。ひっく……ごめ……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
975 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/08/16(木) 02:34:13.87 ID:7Q35Ue+mo
芳文 「ごめんな。俺が馬鹿だったよ。まどかは何も悪くないのにな。ホント、こんな馬鹿な彼氏でごめんな」
まどか「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!! ごめんなさい!! つまんない意地張ってごめんなさい!! これからはもっと素直になるから!! だからわたしの事嫌いにならないで!!」
芳文 「嫌いになんか絶対なるもんか。前にも言ったろ。俺がまどかの事を好きで、まどかが俺の事を好きでいてくれる限り、俺達はずっと一緒だ」
まどか「芳文さ……うわあぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
芳文 「よしよし。俺達はずっと一緒だから。二人ともしわくちゃのじいさんばあさんになって天寿を全うするまで、ずっとな」
まどか「ぐすっ、うんっ。うんっ」
マミ 「雨降って地固まるってとこかしらね」
さやか「やれやれ。困った親友と兄貴だよ」
ほむら「二人が仲直りしてくれてよかったです」
仁美 「やっぱりまどかさん達はケンカしてるよりも、仲睦まじくされてる方が良いですね」
杏子 「そうだな。つまんない意地張ってケンカ別れなんて寂しいもんな」
天瀬 「一時はどうなる事かと思ったが良かった良かった。青樹はどうでもいいがまどかちゃんがかわいそうだもんな」
中沢 「違いないですね」
恭介 「酷い言われようだなあ。青樹先輩。でもよかった」
――見滝原ラグーナシアアイランドでみんなで沢山遊んだ帰り道。
ほむら「あっ結婚式やってます」
さやか「ほんとだ。花嫁さんキレー」
仁美
マミ 「本当。憧れちゃうなあ……」
杏子 「そんなもんかね。役所に手続き出すだけでいいだろうに、わざわざ式上げるなんてご苦労なこった」
さやか「もう杏子ったら夢がないんだから。花嫁さんって女の子の永遠の夢でしょ」
杏子 「夢じゃ腹は膨れないし」
さやか「もう。色気より食い気なんだから」
恭介 (さやかの花嫁姿か……。いつか誰かの隣にウェディングトレスをきたさやかが立つのか……)
中沢 「上条、どうかしたのか?」
恭介 「べっ別に何でもないよ」
天瀬 「畜生。リア充爆発しろ……」ブツブツ……
まどか「ねえ芳文さん。花嫁さん綺麗だね」
芳文 「ああ。それにすごく幸せそうだ」
まどか「……うん。そうだね」
芳文 「なあ、まどか」
まどか「なあに?」
芳文 「いつか、俺がまどかのお父さんとお母さんに一人前の男になったって認めてもらえたらさ……」
まどか「……うん」
芳文 「俺の隣でウェディングトレス着てくれるかな?」
976 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/08/16(木) 02:36:54.89 ID:7Q35Ue+mo
まどか「……うんっ」
おしまい
977 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/08/16(木) 02:40:54.98 ID:7Q35Ue+mo
まど神「引き続きケンカネタでした」
まど神「新スレのお知らせだよ」
魔法少女ほむら☆マギカ〜私の居場所〜 明るい魔まマほむらルート
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1345051203/
まど神「順次投下していくからね」
まど神「わたしが見守るもうひとりのわたしとみんなの日常はどうしよう。別に新スレのほうがいいかな。ほむらちゃんスレに書くと色々ぶち壊しな気がするし」
まど神「それじゃまたねって手を振って♪」ノシ
978 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/08/16(木) 03:01:00.05 ID:7Q35Ue+mo
まど神「
>>975
で仁美ちゃんのセリフが抜けてたので訂正しとくね」
仁美 「本当に綺麗ですわ……」
979 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/08/16(木) 22:24:39.98 ID:T+c1y/ve0
乙ですたー!
うんうん、ケンカした後はやっぱり仲直りしなくちゃいかんよね。
今回はちょっと時間がかかったようだけど、これから何度もこういう事を経験して、二人の関係を築いていけば良いのだよ。
それにしてもまどっち、芳文が卒業した後は学校でも有名なバカップルの片方として、案外注目の的になってるんじゃなかろうか??
意外に生意気な一年生あたりが「よーし、その青樹って卒業生から鹿目センパイを奪っちゃるぜ!」と突撃して玉砕していそうな気がww
あ、ほむらマギカお気に入りに入れたよ。
無理せず自分のペースで頑張って!
980 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/08/16(木) 22:30:02.44 ID:D8b8xSeIO
乙
ついに来たか・・・
981 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/08/19(日) 01:18:00.99 ID:HtRzRryqo
埋めネタ まどかと芳文のはじめてシリーズ
――まどか高校一年生のある日の出来事。
さやか「体育の授業がマラソンなんてついてないなあ」
ほむら「私走るの苦手だから辛いです」
まどか「愚痴ったってしょうがないよ。二人ともがんばろ? さ、早く着替えないと授業に遅れちゃう」
ほむら「……そうだね」
さやか「あーあ、かったるいなぁ……」
まどほむさや着替え中。
まどか「あっ、ほむらちゃんのブラかわいい。どこで買ったの?」
ほむら「この前、駅前に出来た新しいお店だよ」
まどか「ああ、あそこかぁ」
さやか「まーどか♪」
まどか「きゃあ!?」
さやか「おおっ!! まどかまた胸大きくなったんじゃないの!?」モミモミ
まどか「ちょっと、さやかちゃんやめてよー!!」
さやか「おおっ!? この吸いつくような触り心地といい形の良さといい、まさかあのまどかがこんなに育つなんて!! マミさんのにもけっして引けを取らない良い胸だあっ!!」
まどか「あーん!! やめてよー!!」
さやか「やっぱりアレか? 先輩に揉まれて大きくなったのかな?」
まどか「そんな事されてないもん!!」
さやか「あははは。ごめんごめん。先輩にそんな度胸ある訳ないもんね」
一方その頃。二年の教室にて。
芳文 「へっくしっ!!」
マミ 「青樹君、風邪でも引いたの?」
芳文 「いや、きっと誰かが俺の噂でもしてるんじゃないかな。ふっ。出来る男はつらいぜ」
マミ (何言ってるんだろ。この人)
そんなこんなで着替え終わって校庭に向かう途中のまどか達三人。
さやか「それにしてもまどかも変わったよねー」
ほむら「そうですね」
まどか「わたしが?」
さやか「背も伸びたし、髪だって長くなったし、胸だって大きくなったじゃん。それにいつの間にかツインテールにしなくなったし」
まどか「だってもう高校生だもん。あの髪型はちょっと子供っぽいかなって。それに髪を伸ばせば少しくらい大人っぽく見えるかなって」
今のまどかの容姿はかつて、別の平行世界ですべての魔女を滅ぼす概念となったまどかに酷似していた。
違いがあるとするなら目の色と、円華の手料理をちょくちょく振る舞われたり、自分でも円華直伝の栄養満点の手料理を作って家族や芳文に振る舞ったりして、普通に成長して今の容姿になった事くらいである。
白いリボンを左右側頭部に付けた少女は美しく成長し、今もまだ成長途中だった。
さやか「恋する乙女は違うねー。ほんとに先輩とはまだ何もないの?」
まどか「もう。わたし達まだ高校生だよ。さやかちゃんが考えてるような事はまだまだ早いよ」
さやか「まどかは身持ち固いなあ」
まどか「普通だよ」
ほむら「」真っ赤
まどか「ん……」
ほむら「まどか、どうかしたの?」
まどか「うん……。ちょっとブラがきつくって」
さやか「駄目だよ、まどか。せっかくきれいな形に育ったんだから、ちゃんと今のサイズに合うブラつけないと!!」
まどか「う、うん」
さやか「よーし、今日の放課後、まどかの新しいブラ買いに行こう!!」
まどか「ごめん、さやかちゃん。今日お金あんまり持ってないんだ」
さやか「なんだ、残念」
まどか「ごめんね」
982 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/08/19(日) 01:19:51.19 ID:HtRzRryqo
キーンコーンカーンコーン。
ほむら「あっ授業始まっちゃう!!」
さやか「やばっ!! 二人とも急ごう!!」
まどか「うんっ」
まどか(うー、走ると胸が苦しいよぅ……)
そんなこんなで放課後。
芳文 「ただいま」
円華 「おかえり。今日は早いのね」
芳文 「明日からテスト週間だから」
円華 「そう。実家からスイカが送られてきたから、まどかちゃんの所におすそ分けに持っていってくれる?」
芳文 「しょうがないな。じゃちょっくら行ってくる」
場面変わって鹿目家まどかの部屋。
まどか「ふう、今日は疲れちゃったな」
制服を脱ぎ捨てて、高校の入学祝に母親に買ってもらった鏡台の前に下着姿で立つまどか。
まどか「パパにお金貰って新しいブラ買いに行こうかな……」
そう呟いて、自分の胸を手で持ち上げてみる。すると突然自室のドアが勢いよく開かれた。
タツヤ「ねーちゃーん、にいちゃんがきたよー」
芳文 「ちょっノックもせずにいきなり開けたら……っ!?」
五歳の弟が無邪気な笑顔でびっくりして固まっている姉に話しかける。
まどか「」
芳文 「」
下着姿のまどかを見て、芳文が絶句して固まる。
――プチン。
まどかの着けているブラのフロントホックが、実にタイミングよく壊れて弾け飛んだ。
ぽよん。
芳文「!?」
16歳の少女の張りのある形の良い双乳が芳文の網膜に飛び込んで焼きつけられる。
ブーッ!!
芳文が勢いよく鼻血を吹き出して廊下に倒れた。
まどか「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
愛娘の絶叫に驚いた父親が駆けつけた現場は、鼻血の海で痙攣する娘の恋人と、姉に怒られて号泣する幼い息子と、いつの間にか凹凸のある体に育ったパンツだけで半泣きになってる娘と言う地獄絵図だった……。
以下、未来のまどかの独白。
まどか「彼がわたしの胸を初めて見た時の事です。わたしの胸を初めて見た彼の表情は今まで見た中で最高にとびっきりの笑顔でした……」
おしまい
983 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/08/19(日) 01:21:45.43 ID:HtRzRryqo
まど神「」
まど神「う、埋めネタでした」
984 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/08/19(日) 11:45:31.86 ID:k/X4iDp60
乙ですた!
芳文wwwwwwうん、爆発しろ。
でもなんつーか、二人が当たり前に暮らして、成長して、て様を物語とはいえこうして見るのは良い気分だなぁ・・・・・・。
あ、タっくんはお部屋に入るときはノックするってちゃんと憶えようね!
985 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)
[sage]:2012/08/19(日) 12:32:44.27 ID:9sQj1jyuo
乙乙!
986 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/08/19(日) 12:36:45.31 ID:MFHy43oCo
乙
987 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(徳島県)
[sage]:2012/08/21(火) 23:47:46.95 ID:FZcvBsz+o
乙です
このまま初めて話をシリーズ化させて初エッ(ry
988 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/08/22(水) 00:10:38.29 ID:tDdlgtt1o
埋めネタ
まど神「マミさんルートとかの草案だって」
魔法少女マミ☆マギカ〜私の生きる意味〜
まどかルート2話からの派生ルート
寂しそうに去っていくマミを追いかけて会話をする事で好感度が上がり、家まで送っていく事に。
色々話をしながら歩いてる時、魔女の口づけを受けた暴漢に襲われてるまどかを見つけて、無事に救出。
魔法少女になるのを諦めたまどかとマミのわだかまりが消え、今後は友達としてやっていく事に。
芳文、まどかの代わりにマミのパートナーとして一緒に戦っていくと無自覚に口説いてしまう。
元々の戦闘センスの高さから、どんどん強くなっていきマミが安心して背中を任せられる相棒に。
おりきりによるまどか暗殺テロが発生。
キリカVSマミ 芳文VSおりこ
最終決戦はマミ、芳文、杏子、ほむらの4人でワルプルに挑む。
魔法少女杏子☆マギカ〜あたしの信じた物〜
杏子ルート。唯一の芳文が勇者特警になってるルート。
かつて博に滅ぼされたはずのニトロ星人の生き残りとの戦いで、戦いに巻き込まれた芳文を庇って社が勝利こそするものの再起不能に。
ルナティックセイバーとサンバードの力を受け継ぐものの、かつて義妹を救えなかった芳文は自分の生きる価値と意味を見いだせず思いの強さを力に変えるマギ力(ぢから)システムを使いこなせない。
そんなある日、芳文は魔女の結界に囚われたまだ契約する前の杏子を助けようとする。
通常攻撃が通用しない強力な魔女に苦戦する芳文。緊急避難場所として小型ロボのサブコクピットに収容した杏子がマギ力を発現させて魔女を撃退。
杏子を協会に送り届けた時に佐倉父の説法に感動し、芳文はもう一度誰かの為にがんばろうと誓う。
その後、まだスレてしまう前の杏子との交流や正義の味方としての在り方等イベント発生。
ワタルと龍神丸、大地とグランゾートのような関係になるが徐々に関係も変化していく。
魔女発生の裏側で暗躍するインキュベーター。そして佐倉杏子(35)
芳文の母親になったほむらが過去に飛ばされた際、実は死んでおらず意識を失っていた杏子も過去に飛ばされていたのだった。
正義の味方に憧れるまだ純粋な杏子と悪を演じる事で絶望を振り払ってきた杏子の対比。
魔法少女さやか☆マギカ〜あたしが望んだ未来〜
シャル戦でマミを救うべく行動を起こす芳文。
マミを救うのには成功する物の、魔女はさやか達の方へと突っ込んでいく。
なんとかさやかを突き飛ばすが芳文は片腕を失ってしまう。
マミの治癒魔法では回復しきれず、失血死寸前に陥る芳文。
さやかは咄嗟に契約してしまい、芳文の腕を治してしまう。
最初の頃はコンビを組んで戦う事が出来るが、仁美の宣戦布告や魔法少女の真実など負のイベントが立て続けに起こりさやかが自暴自棄になる。
さやかの武器をさやかの治した腕で使う事で、さやかの魔力を込めた斬撃が放て魔女を単独でも倒せるようになるルート。
友達から八つ当たりの対象、そしてコンビ復活、俺に惚れさせてやるみたいな。様は上条からさやかを奪ってやるぜルート。
まど神「あくまで草案ね」
989 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2012/08/22(水) 19:53:12.53 ID:tDdlgtt1o
――ある日の夕方。
まどか「お風呂、お風呂っと」
知久 「まどか。湯沸かし器の調子が悪いから、今日はお風呂入れないよ」
まどか「えーっ!? そんなの困るよ」
詢子 「じゃあ、銭湯にでも行くか」
タツヤ「せんとう?」
詢子 「そう。銭湯。今日はおっきな風呂に入りに行くよ」
タツヤ「わーい」
こうして、鹿目一家は銭湯に行く事になった。見滝原の近代化に抗うかのように、今も現役のまま経営している小さな銭湯にやってきた鹿目一家は、そこで偶然青樹一家と出会った。
芳文 「あれ? まどかん家も銭湯に来たの?」
まどか「うん。家のお風呂が壊れちゃって。芳文さんの家は?」
芳文 「ああ。父さんがたまには広い湯船にゆっくり浸かりたいって言いだしてさ」
まどか「そうなんだ。風見野のお婆さんの家には大きなお風呂があったもんね。そりゃあたまには、大きなお風呂に入りたくなるよね」
両親達が挨拶や世間話しているのを尻目にまどかと芳文はそんな会話をする。
博 「芳文、そろそろ入るぞ」
芳文 「ああ。まどかまた後で」
まどか「うん。また後でね」
まどかと詢子、円華の3人は女風呂へと。芳文と博、知久とタツヤの4人は男湯へと入っていった。
――女湯の脱衣所。
まどか「お客さん、全然いないね」
詢子 「みんなスーパー銭湯とかに行くからな。こういう昔ながらの銭湯は近所のお年寄りとかがメイン層だから」
円華 「人が少ないから貸切みたいですね」
詢子 「そうですね。ゆっくり疲れが癒せそうです」
――同刻。男湯の脱衣所。
芳文 「客が全然いないな。これで経営成り立つのかね……」
博 「成り立つからやっているんだろう。人がいないならゆっくり湯船につかってられるからありがたい」
知久 「タツヤ、ほらバンザイして」
タツヤ「バンザーイ」
全員が裸になって風呂の方へ向かおうとした所で、タツヤが無邪気な笑顔で言った。
タツヤ「にーちゃ、おけけ生えてるー」
――同刻。女湯の脱衣所。
まどか「」
詢子 「タツヤったら、何を言ってるんだか……」
円華 「人がいないとはいえ、向こうの話し声がこんなはっきり聞こえるって事は、こっちの話も聞こえるのね。話す内容に気をつけないと……」
――同刻。男湯の脱衣所。
芳文 「……はははっ。たっくんもにーちゃやねーちゃと同じくらい大きくなれば生えてくるんだぞ」
タツヤ「ねーちゃ、おけけないよ?」
芳文 「……マヂで!?」
――同刻。女湯の脱衣所。
まどか「た、た、タツヤ〜っ!!」
990 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2012/08/22(水) 19:54:14.22 ID:tDdlgtt1o
――同刻。男湯の脱衣所。
芳文 「なんてこった……。恋人のとんでもない秘密を知ってしまった……」
芳文は両手で頭を抱えながら俯いて呟く。
芳文 「やべえ……。生えてないまどかもありだと思っちまった……。俺は母さん似だと思ってたがこんなとこだけ父さん似だったなんて……」
博 「どういう意味だ」
芳文 「……俺はやっぱり、顔も胸も頭の中身も成長しない、7歳も年下の女と結婚したロリコンの父さんの子だったんだな」
博 「……この糞ガキ」ワナワナ……
芳文 「いくつの時だっけ。たしか母さんの毛がなかった時期があったような覚えがある。まさかこんな嗜好を受け継いでたなんて……」
博 「」
知久 (……うわあ)
博 (こいつ、まさか2才の頃の事を覚えてるのか!?)
――同刻。女湯の脱衣所。
円華 「……」ワナワナ……
詢子 (て、剃毛プレイとか……。博さん人の好さそうな顔してよくやるなあ……)
――同刻。男湯の脱衣所。
芳文 「いや、そんな事はどうでもいい。問題はまどかだ。着痩せするから制服や私服だと気付かないけど、以前プールに行った時に出るべき所は出てたし……」
芳文 「一応、第二次性徴来てるよな……。あ、まだ胸が膨らみ始める初期段階なのかも。いや、もしかしたら噂に聞く天然物のパイパンってやつなんだろうか」
芳文 「……まどかだったら例えジャングルでもパイパンでも問題なく愛せるけど、もしもパイパンだったら将来まどかと結ばれる時になんて言ってやれば良いんだ」
芳文 「まるで小さな子のアソコみたいでかわいいよ。とでも言ってあげればいいのか? いや、そんな事言われる方に取っちゃフォローにすらなってないかもしれない……」
博 「」
知久 「」
――同刻。女湯の脱衣所。
円華 「」
詢子 「」
まどか「……」ワナワナ……
――同刻。男湯の脱衣所。
芳文 「お父さん。こういう時いったいどうしたらいいんでしょうか?」
知久 「えっ!?」
芳文 「家の親父はロリコンなのでこういう事を相談できるのはお父さんだけなんです!!」
博 「……」ワナワナ……
芳文 「お父さんは料理も上手くてなんでもそつなくこなすタイプだから、きっと昔は女にモテたと思うんです」
知久 「そ、それは……」
芳文 「正直な所、あの男前な性格のお母さんなら、お父さんをモノにする為に逆レイプくらいやりかねないかな、と思っていた時期がありました」
――同刻。女湯の脱衣所。
詢子 「あのガキ……」ワナワナ……
――同刻。男湯の脱衣所。
芳文 「でも今、ここで裸の付き合いをしてみてわかりました。そんな事はあるはずがないと!!」
知久 「え?」
芳文 「そんな凶悪な相棒をぶら下げてるお父さんがお母さんに逆レイプなんてされるはずがない!!」
知久 「」
――同刻。女湯の脱衣所。
円華 「」
詢子 「」
まどか「……えっ? 相棒?」
――同刻。男湯の脱衣所。
芳文 「お父さん!! 男として、人生の先輩として、コンプレックスを持ってる女の子にはどうしてあげればいいのか教えてください!!」
知久 「え、えーと……。相手のありのままを素直に受け入れて愛してるって所をアピールすればいいんじゃないかな」
芳文 「なるほど。じゃあ、もし将来まどかに生えてなかったら、こう言ってあげればいいんですね」
芳文 「大丈夫だよ。まどか。たかが剃毛プレイが出来ないだけじゃないか」
芳文 「こんな感じでどうでしょう?」ドヤァ
博 「」
知久 「」
――同刻。女湯の脱衣所。
円華 「」
詢子 「」
まどか「」
991 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2012/08/22(水) 19:55:58.38 ID:tDdlgtt1o
――同刻。男湯の脱衣所。
博 「……いい加減にしろ。馬鹿息子」神速の手刀
芳文 「ぅっ」ガクリ
――数分後。
博 「ふんっ」気付け
芳文 「ん……あれ? 俺いったい……」
博 「夏の暑さで風呂に入る前に倒れたんだ」
芳文 「……そうだっけ?」
博 「ああ」
芳文 「……そっか。アレ夢だっのか……。はあ、水風呂にでも入って気分転換するかな」
知久 (それで納得するのか君は!?)ガビーン!!
――それから。
芳文 「はあ、さっぱりした」
詢子 「そうかい」
芳文 「あれ? お母さんどうしたんですか? そんな怖い顔して」
詢子 「ちょっと、じっくり話し合おうか」ガシッ
芳文 「えっ!? ちょっ……。まどか!! 母さん!! 助けてくれよ!!」
円華 「丁度いい機会だからたっぷり叱ってもらいなさい」
まどか「知らないもん」プイッ
芳文 「ちょっ……耳引っ張らないで……ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
おしまい
992 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2012/08/22(水) 19:59:02.27 ID:tDdlgtt1o
まど神「」
まど神「え、えーと、わたしのその……成長はね……」
まど神「言えないよ!! そんな事!!」
まど神「次回は、まどか「きれいになりたい」の巻だよ」
まど神「容量足りるかな……」
993 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[sage saga]:2012/08/25(土) 18:48:00.75 ID:P6Dywbgho
まど神「容量が足りないのでこれでこのスレでの投稿は終了だよ」
まど神「需要があれば平和な日常は新スレ等で続くけどね」
まど神「それじゃばいばーい」
994 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/08/26(日) 11:50:59.14 ID:JBIzvOIGo
乙
995 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/08/28(火) 01:55:03.11 ID:Oa3XSMHY0
乙ですたー!
日常編での新スレを立てるなら、ここかほむらマギカのスレで誘導してくれると嬉しいなって。
996 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/09/08(土) 20:51:56.70 ID:oA2R8g1So
乙
997 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2012/09/30(日) 04:58:26.70 ID:IZzzX3/do
一ヶ月見てない
998 :
ちり紙
◆B/tbuP0Myc
[saga]:2012/09/30(日) 23:38:05.40 ID:9inz+fwCo
元・魔法少女まどか☆マギカ 〜ひだまり☆まどっち〜
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1349014656/
まど神「新スレだよ」
999 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2012/10/09(火) 18:13:38.34 ID:er+v6NFM0
うめ
1000 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2012/10/09(火) 18:14:19.36 ID:er+v6NFM0
うめる
1001 :
1001
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○○(・・・・・なんで俺はこんなところにいるんだろう) @ 2012/10/09(火) 15:51:59.10 ID:WSSF5AWv0
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眼鏡うp オセロで俺に勝てる奴いんの? @ 2012/10/09(火) 15:01:56.44 ID:IJhsOAHJo
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「安倍晋三とネット右翼 野放しにしたら日本が終わる」 @ 2012/10/09(火) 12:39:04.04
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苗木「安価で事件を解決するぞ!」モノクマ「うぷぷ、二週目だよ!」 @ 2012/10/09(火) 11:29:43.05 ID:LmS+BvBM0
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今から埼玉から香川にうどん食べに行く @ 2012/10/09(火) 11:01:15.32 ID:t3uXUx6Go
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【始まりは】ちっぱいと雑談するすれしろ【ベロチュー】 @ 2012/10/09(火) 10:03:31.61 ID:X7cUBYzDO
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キュベリアちゃんのがらくた置き場 @ 2012/10/09(火) 09:49:59.78 ID:uumt3FtOo
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ぽーとのい @ 2012/10/09(火) 07:22:28.07 ID:qILT8Ijbo
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