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神裂「鋼盾―――鋼の盾ですか、よい真名です」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 17:02:47.94 ID:6y6jF+0c0
初SSです。週末しか書けないので遅筆ですが、よろしければお付き合い下さい。
鋼盾くんを加えての、禁書目録一巻再構成風味になるかと思います。鋼盾×神崎じゃないのでご安心下さい。

本音をいうと、スレタイの科白を言わせてみたかっただけなんです。
真名じゃないよね、苗字だよねという突っ込みは正解です。

雑談推奨。指摘歓迎。感想を頂ければ泣いて喜びます。

さて鋼盾掬彦くん。知らない人もいらっしゃるかと思います。
超電磁砲登場キャラでなんと読み方も不明。とりあえず(こうじゅん きくひこ)と読んでます。
日村日村とネタにされる彼ですが、無能力者らしい無能力者という、禁書原作ではあまり描かれてない貴重な
キャラクターです。わざわざフルネームを出したということは、今後大化けする可能性があると私は睨んでいます。
具体的にはSS3あたり、もしくは超電磁砲2期とかで。

本編でも情報が少ないため、いろいろオリジナルな設定だらけです。
具体的には上条さんとクラスが同じだったりします。許してください。
ふざけることもあるかもしれません。許してください。

いまのところ恋愛要素は考えていません。
無理です。鋼盾だからじゃなくて>>1の技量的に。
故に佐天さんとくっつけたりしないので、その点はご安心下さい。

>>1は禁書原作と超電磁砲漫画版は既読ですが、アニメはちょっとだけです。
春上さんとか言われてもちょっと困るぜ。初春×上条? みたいな人間です。

調べたらアニメだと鋼盾くん幻想御手使っちゃうんですね。
それだとつじつまが合わなくなるので漫画版に準じてます。

あとアニメで佐天さんと再会してるみたいでよかったです。
それでは、最後に推敲して参ります。
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/30(土) 17:09:17.49 ID:to2P0ThIo
こうたてきくひこ、じゃなかったっけ
ソースは覚えてないけど
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/30(土) 17:19:54.92 ID:myWUE6EF0
…禁書原作にあの日村っぽいのは出ないしそもそもレールガン2期あるかも分からないし、ただ適当に名前付けてやろうぜって漢字で名前出しただけなんじゃ…
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 17:24:30.88 ID:6y6jF+0c0
>>2 早速サンクス
  「こうたて」だと所謂「重箱読み」だし「こうじゅん」の方が自然かな
   と思ったんだけどかまちーだもんな。わかんねえや。
   ソース見つけたら教えて。

>>3 俺は鋼盾を信じるぜ!


では、投下します。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 17:25:50.38 ID:6y6jF+0c0
 無能力者(レベル0)、という枠組みがある。
 学園都市――この能力開発の街に厳然と存在する序列・能力強度の最下層であり、
 実に学園都市の学生の六割を占める、「能力が発現しない(非常に弱い)」術者を示す言葉である。

 座学、投薬、電極、暗示、あらゆる手段を用いて行われる“脳の開発”
 この街の外の人間であれば、正気じゃないと目を背けるような“時間割り”
 それだけのことをして、それでも何一つオマエには成せないと、そう、この街が言うのだ。


 神ならぬ身でありながら、それでも天上の意思に辿り着くことを目指すのが能力者なら
 そのいと高き階梯の、一段目にすら足が届かないわたしたちはいったいどうすればよいのか。


 無能力者はこの街で、どう生きてゆけばいいのだろうか。


―――――――
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 17:27:49.45 ID:6y6jF+0c0
―――――――

 彼は“鋼盾”という自分の苗字が嫌いだった。
 初対面の人に名乗って一度で伝わったためしがないし、読み間違えられた経験は数え切れない。
 何よりやたらと大仰だと思う。苗字なんて言いやすくて読みやすくて書きやすいのが一番だと思っていた。

 例えば山田とか、鈴木とか、あとは日村とか、そういう苗字だったらよかったのに、と。
 彼は子どもの頃からずっとそう思っていたし、きっとこれからもそう思い続けるのだろう。

 (いや、本当は苗字が嫌いなんじゃない)

 彼は胸中で呟く。
 確かに間違えられたりからかわれたりと、あまりいい思い出のない苗字だけれどそんなのは些細なことだ。

 (そう、本当は、僕が嫌いなのは)

 そう、なんのことはない。
 彼は「鋼の盾」などという無骨で強そうな苗字にそぐわない、自分自身が嫌いなのだ。

―――――――
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 17:29:05.55 ID:6y6jF+0c0

 彼の父親はまさに「鋼の盾」という言葉を体現したような人物だ。
 上背こそないものの、がっしりとした身体で、寡黙だが皆から頼られる強い人。
 母親もそう。穏やかだが芯のしっかりした、しなやかな強さをもった人。

 その二人の子どもなのに、自分だけが、こんなにも弱い。
 人見知りで、運動が苦手で、太り気味で、友達が少なくて、やることなすこと上手くいかない。
 そんな弱い自分を変えたくて、勇気を出して学園都市の中学校を受験した。
 両親は心配したが、息子の決意を応援してくれた。がんばれ、そういって彼を送り出してくれた。

 そうして、彼は学園都市にやってきた。
 異常に科学の発達した不思議の街でひとりきり。そんな事態も、この街では珍しくも無い話だ。
 親元を離れての寮生活に不安になりながら、それでも少年はがむしゃらに時間割に取り組んだ。
 「記録術」「暗記術」という名の、脳開発。座学、投薬、電極、暗示、エトセトラエトセトラ。
 ホームシックにかかり枕を濡らしたことも、無理を重ね体調を崩したこともある。
 それでも、山のようなカリキュラムをこなし、最初の一年があっという間に過ぎた。

 そして、はじめての身体検査を迎えた。
 計測機械が弾き出した結果は、彼が「無能力者」という判定だった。

 甲子園を目指す野球部は、全国に山のようにある。
 毎日白球を追いかけ、練習を重ね、理論を学び、経験を積み、身体を創る。
 ただ、その半分の学校は、大会初戦で一勝も上げることなく敗退するのだ。
 そんな、予定調和のありふれた悲劇。そして彼は負けた側の人間だった。


 「無能力者から努力してレベルを上げた例はたくさんある」
 「誰も最初から能力が発現するわけではない」
 教師はそういって鋼盾を励ましたが、その言葉が彼に響くことはなかった。

 結局、何も変われなかった。
 この一年に、彼の決意に意味などなかったのだ。

 それを突き付けられて、鋼盾は自分を信じられなくなってしまった。

 「自分だけの現実/パーソナルリアリティ」を作り上げ、突き詰め、磨き上げること。
 それこそが能力を引き出す鍵であり、また支える支柱でもであるのだというならば。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・
 己を信じることの出来ない自分には、絶対に能力が目覚めることはない。
 
 そんな確信がストンと腑に落ちた。
 皮肉な話、それこそが彼が作り上げた強固な「自分だけの現実」だったのだ。


―――――――
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 17:30:11.27 ID:6y6jF+0c0

 無能力者の烙印を押された学生たちの対応は様々だ。

 レベルアップを目指し懸命に努力を重ねる者。
 能力開発に見切りをつけ、勉学、部活、遊びに恋にと、他に価値を求める者。
 劣等感から能力者を否定し、路地裏のスキルアウトへ堕ちてゆく者。
 諦念を胸に、学園都市を去る者。
 ダラダラと惰性で日々を過ごす者。

 いずれの道も、葛藤や劣等感あるいは自己嫌悪が付きまとう選択となるだろう。
 才能の湧出があるかもしれない、素晴らしい出会いがあるかもしれない、生きがいが見つかるかも知れない。
 もちろん、ないかも知れない。

 そしてそれはレベル0に限ったことではない。
 レベル0から5まで、この街の全ての子ども達に当てはまるものだ
 
 ただ、あまりにも厳然と示される<強度>という指標。
 012345、無低異強大超。単純にして明確な序列という名の差別。
 薬を血液に打ち込んで、脳に電気を打ち込んで、それでも何も出来ない無様な己。

 本当に、わかりやすい。
 夢の、否定。

 鋼盾はそれからの中学校生活を、まるで抜け殻のように過ごした。
 もともと人見知りがつよく、容姿も冴えない彼を級友たちは居ないものとして扱った。
 ドロップアウトなぞ珍しい話ではない。残酷なまでに序列に囚われたこの街では。

 諦めと未練、劣等感、不摂生に鈍った身体と自己不信に凝り固まった「自分だけの現実」
 彼が中学校の三年間で得たもののは、これですべてだった。
 

―――――――
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 17:34:36.73 ID:REqyqRwDO
ヤバい、超期待だわ
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/04/30(土) 17:39:37.87 ID:6y6jF+0c0

 しかし、高校に入ってからは、彼を取り巻く環境が一変する。
 落ち零れてしまった鋼盾が入れたのは、それこそレベルの低い高校でしかなかったが、それ故に教師も学生も無能力

者に理解があった。変わった学校に事欠かない学園都市において、外の高校の見本例として作られたのではないかと疑

ってしまうようなスタンダードな学校。自由な校風といえば聞こえはいいが、放任主義に近いいい加減な環境。生徒を

良い高校に入れようと必死だった中学校とは、何から何まで違っていた。空気の味すら違って感じる。

 穿った見方をすれば、学園都市からは見放されたようなものなのかもしれない。
 資質を持つ者と持たざる者を分別し、持たない者は持たないままに過ごせばよいと、そういわれた気がした。
 だけど、それすらも救いなのかもしれないと鋼盾は思う。

 飛べない鳥もいる。
 たとえ空を自由に飛べなくとも、恨みがましく空を睨んで己の羽を痛めつけて一生を終える必要などないのだと、多

分に強がりと自己欺瞞を含みつつも、なんとなく、そう思えるようになった。

 なにより、担任に恵まれた。
 月詠小萌という、身長135cmでどうみても小学生にしか見えないという冗談みたいな外見
(入学式の日に新入生の男子に迷子と勘違いされ、高い高いされてしまったのを見たのがファーストコンタクトだった。信じられない)
のトンデモ翌幼女先生で、いったい何の冗談なのかと新入生一同開いた口が塞がらなかったのだが、その実たいへんに生徒思いの優しい先生だ。
鋼盾が無能力者である自分を卑下するようなことを言ってしまい、えぐえぐと泣きながら延々と説教を始

められてしまい大変弱ってしまったこともあった。クラス中から突き刺さる無言の圧力はちょっと忘れられない。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 17:44:00.09 ID:6y6jF+0c0
 そんな小萌先生の魅力(魔力?)のせいか、なんだかんだでこのクラスは学年一番の結束を誇っている。なかなか集団に馴染めない性質の鋼盾も、あっという間に輪の中に絡め取られてしまった。もっとも、変な方向にも結束が深く、クラス単位で暴走しがちな学校一の問題児クラスとしても名高いのはご愛嬌といったところだ。


―――――――
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 17:46:47.20 ID:6y6jF+0c0
 そんな怒涛の高校生活も新学期から早三ヶ月、夏休みを目前に控えた7月半ば。
 狭いワンルームの学生寮で登校の準備を整え家を出ると、ちょうど同じタイミングで隣の家のドアが開いた。
 始業20分前には学校に着くように家を出る鋼盾とは、なかなか出発のタイミングが合わない隣人だが、今日はめずらしく余裕をもっての登校のようだ。

「よう、鋼盾」
「おはよう、上条くん」

 上条当麻。鋼盾の寮の隣人にしてクラスメイトである。
 ツンツンに逆立てた髪が特徴的な少年だ。身長は鋼盾と同じくらいだが、太目の彼とは違い引き締まった身体をしている。
これは部活に精を出してるわけではなく、路地裏でスキルアウトと喧嘩したり追いかけっこをしているうちにいつのまにかついてしまったものという、ちょっとアレなエピソードの持ち主だ。
 一体どういう頻度でトラブルに巻き込まれればそんな事態になるのかとつっこみたい所だが、鋼盾自身、入学間もない頃に路地裏で不良能力者に絡まれていたところを助けられたことがあるのだから仕方ない。
 クラスメイトと知らずに鋼盾を助けてくれた、底抜けにお人よしな少年なのだ。

「上条でいいってのに。上条さんはクラスメイトに君付けを要求するほど偉くはないのですよ」

 にへら、っと笑う上条。ことあるごとに繰り返されるやり取りだが、鋼盾はどうしても君付けで呼んでしまう。
 上条もそれほど気にしているわけでもないようで、話題はすぐさま別方向へシフトする。

「しかし朝一緒になるとは久しぶりだな。3ヶ月で何回かくらいだよな?」

「僕はいつも同じ時間だよ。めずらしく上条君が早いんだけど、何かあったの?」

「いや、それが、何もなかったんだ」

「……珍しいな」

奇妙な遣り取りだが、当人同士では話が通じている。それというのもこの上条当麻という少年、おそろしく不幸体質な

のだ。それこそ朝起きて家を出るまでに、何らかのトラブルに襲われることなど日常茶飯事といってもよいほどに。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 17:51:04.17 ID:6y6jF+0c0
 例えば、電池を換えたばかりの目覚まし時計が止まっているとか
 例えば、家の鍵がついたキーホルダーを蹴飛ばし、それが冷蔵庫の下のスペースに綺麗に吸い込まれてしまうとか
 例えば、頑丈な皮製のベルトが何の前触れも無く切れたりするとか
 例えば、寝癖の酷い時に限って謎の停電でドライヤーが使えなっかたりとか
 例えば、手持ちがないのにキャッシュカードを踏み抜いてしまったとか
 例えば、冷蔵庫の中身が、トイレの水が、替えのシャツが、炊飯器のタイマーが、靴紐が、黒猫が、勧誘が、警報機が

 ほんとうに、枚挙に暇がない。
 鋼盾が登校準備中に、壁越しの「不幸だーーー」という絶叫を聞いた回数など、とっくに数えるのをやめてしまったほどだ。
 最近では悲鳴の声量、長さ、ニュアンスで大体不幸指数を計れるようになってしまった。
 しかし、今日は珍しくノントラブルだったそうだ。

 そのせいか上条の足取りは軽い。
 いいことがあったのではなく、悪いことがなかっただけでこんなに上機嫌になれる男を鋼盾は他に知らない。

「ふふふ、このペースだと始業開始20分前には着席だ! 吹寄の驚く顔が目に浮かぶようだぜ!」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 17:58:40.48 ID:6y6jF+0c0


読みにくいので文と文の間を空けてみます。
いろいろ不慣れで済まない。

15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 17:59:47.62 ID:6y6jF+0c0
確かに順調だ。そろそろ学校までの道のりも半分といったところ。

順調すぎてなんか不安になってきた鋼盾は、ためしに上条に聞いてみる。

「財布」

「オッケー!」

「携帯」

「充電も完璧だ」

「宿題」

「……内容はともかく、やってきた」

 どうやら問題ないようだ。というか登校程度で僕たちはなにをやっているのか、と鋼盾は思う。

 とはいえ、上条を知る友人――例えば上条宅のもう一人の隣人、土御門元春であっても自分と同じようなことをやるだろうと確信する。

 それほどまでに上条当麻という男は、神様に嫌われ……いや、逆に愛されてるとしか思えないようなマネを平気でやってのけるのだが、

 まあ、たまにはこんな日もあるだろう。

「はははは、爽やかな朝ですよ!喜びに胸を開け!!大空仰げ!!!」

 テンションの高い友人。

 それを見ていると自然と鋼盾の頬も緩む。

「そうだね」

 本当に、いい朝だ。学校が楽しくて、友人も居て、もうすぐ夏休み。

 記録術(かいはつ)の成績が悪いから、補習は免れないだろうけど、それすらも許せてしまいそうだと2人して笑う。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 18:03:07.68 ID:6y6jF+0c0
 喜びに胸を開け、大空仰げ、か。

 ちなみに科学の最先端、学園都市でも未だにラジオ体操は健在である。

 歌のように見上げれば空は青く、雲は白く、鳥は今日も元気に囀り健康的にフンを――


 びちゃ

 
 空を見上げていた鋼盾は自分の真横でそんな音を聞いた。湿った音だった。

 真横、というのはそのままの意味で真横。鋼盾の耳の、真横だ。
 
 つまりは鋼盾の隣を歩いていた、上条当麻の頭の辺りから発した音である。


 いや、まさか。

 そんな。

 いくらなんでも。

 お約束を守る男、上条当麻とはいえ。

 

 ギギギ、と音を立てるような動作で鋼盾は横を向く。


 そこには髪の毛とワイシャツに鳥の糞をぶちまけられた、面白すぎる友人の姿があった。


 「不幸だああああああああああああああああああ!!!!!!
  ちくしょおおおおおお!!!!!、鋼盾テメエ、笑ってんじゃねええええええ!!!!!!!」

 
 
―――――――
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 18:20:03.13 ID:6y6jF+0c0
ひとまず、こんな感じに書いてみました。

文が詰まりすぎて読みにくかったり、途中改行が乱れたり、と拙い部分が多々ありましたが、
次回に生かしますのでご容赦下さい。

さて、鋼盾くんですが、原作だとほぼカツアゲされてるだけで、ほとんど心理描写もないので
ほぼ私の印象で書いてます。ただ、似たような立ち位置の介旅くん(カエル爆弾の眼鏡の人)が

「いじめられっ子」「根暗」「逆恨み」「理系っぽい」「卑怯者」

的な描かれ方をしているので、そういった要素を意図的に抜いたキャラクターにしてみました。
気に入っていただけるといいのですが。

禁書目録では個人的に無能力者組が好きで、いつか駒場のリーダーの物語を書こう、
その身を歪な科学で鎧った、誰よりも優しく強い、スキルアウトの英雄の話を書こう、とか妄想していたら
なんか新約で書きたかったこと粗方書かれてしまって満足しちゃいました。フレメアとか!プロット崩壊だぜ!

浜面も好きなんですがすっかりヒーローだし、上条さんは言わずもがな。
半蔵は忍術のあたりがよくわからないし、佐天さんのは多すぎて被るし、吹寄は俺の嫁だし。
青ピとか雲川先輩とか布束さんとかは無能力者っぽい気もするけどまだレベル明言されてないし。

というわけでの鋼盾です。
がんばりますので、どうかよろしくお願い致します。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 18:22:02.38 ID:TUyv+PP7o
なかなか面白くなりそうな気がす
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/30(土) 18:33:11.42 ID:ZBKfBAJAO
まだ読んでないけどスレタイで支援ゆゆうでした
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2011/04/30(土) 18:38:12.83 ID:PgKWh2VEo
> 吹寄は俺の嫁だし。
おいwww
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/30(土) 18:49:44.80 ID:jtoAJW+C0
確かに、地の文が読みにくかったから
間を入れたのはいいと思う
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/04/30(土) 18:57:16.30 ID:xsOdpsMAO
禁書を好きなのが伝わってくる
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/30(土) 19:30:40.34 ID:QGH5GoMAO
どうすんだよ、また巡回先が増えちまったじゃないか
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/30(土) 20:41:55.31 ID:jbPW8jhE0
読みやすいし内容もいい
初SSとは思えない出来だな……
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/04/30(土) 21:30:34.80 ID:KfcnytTU0
面白くなりそうじゃないか。作者頑張れ。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 22:06:40.56 ID:Z4dd4vgDO
ごめん悪気は無いんだけどネタだと思ってスレタイで鼻水吹いた

超期待超支援
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/01(日) 01:22:07.93 ID:Kk9SpUt90
ちゃんと調べるまで黄泉川と同僚のメガネのドジ子だと思った
あのデブか・・・・・大丈夫か?浜面より頼りになさそうだぞ。オイ
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/01(日) 01:52:09.22 ID:gxScXTOAO
日村クンか
頑張っていだだきたいものだ
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 05:49:27.78 ID:HrwOb5hDO
鋼盾君といい介旅君といいマイナーキャラブームなのかしら

超期待
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 08:42:51.84 ID:tJaYLVODO
勇者学の鋼野盾
と思ったのに
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/05/01(日) 09:42:27.39 ID:RIiL7B5AO
>>30
勇者学おもしろかったよな
32 :1 [sage]:2011/05/01(日) 11:28:22.28 ID:nah+TYh20
>>9>>18-31
みなさんレスほんとうにありがとうございます。
嬉しくてニヤニヤしながら10回くらい読み返してました。

>>20 バレたかww 嫁云々は冗談ですが好きなキャラです、彼女も出ます。

>>21 ですね。最初からやっとけばよかった。次から気をつけます。
   こうすればよくなるというのがありましたらぜひ。

>>26 ご安心ください。ネタのつもりです。他にも
   「浜面――破魔の字を冠するのですね、よい真名です」
   「婚后光子――金剛密vajrayānaを体現した、よい真名です」
   「一一一 ――三位一体を名前で表現するとは見事、よい真名です」
   「白井黒子――陰陽、太陰大極☯ですか、よい真名です」
   「10032号――万は永代の象徴、三十二は十六弁八重表菊紋の花弁の数、ですか。よい真名です」

   という、「ねーちんの深読み&トンチ真名判断」という小ネタを考えてました。
   ぶっちゃけ神浄討魔のイタカッコよさには敵いません。ねーちん、あの台詞なんだったのさ。

>>27 鉄装綴里さんだな。あの人も無駄にカッコいい名前だな。
   この話の鋼盾くんは、強力な超能力に目覚めてステイルを撃破したり、
   ダイエットに成功してイケ面になったり、髪型を変えたりする予定は皆無です。
   鋼盾は主人公ですが、あくまでヒーローは上条さんですね。

>>29 この板の介旅君の話がきっかけだったりします。
   マイナーキャラっていいよね。

>>30-31 ギロチンのまさゆき、が好きでした

夜にまた投下したいと思います。しばらく日常編ですが。
ご指摘やご要望などありましたら聞かせて下さい。
33 :1 :2011/05/01(日) 11:32:15.56 ID:nah+TYh20
もうひとつ!大事な話!

彼の名前>>1「こうじゅん きくひこ」と読んでますが
>>2で御指摘あったように詳細不明です。↑の読み方でいいかご意見下さい
では
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/05/01(日) 11:56:55.14 ID:RIiL7B5AO
>>32
初SSにレスきたときの嬉しさは異常だよなw
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 13:02:35.05 ID:hHJC16uLP
こうじゅんだとどこぞのCMの薬だかなんだかが連想されるな
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/01(日) 15:52:56.11 ID:XOvb+4v70
とりあえず
「」の誰かの台詞の前には
そのキャラの名前を入れた方が分かりやすいと思う

  「ふざけるな」を
上条「ふざけるな」にするみたいに

今は鋼盾と上条の二人で喋ってるシーンのみだけど
これから先、三人で喋ってるシーンの時とかに
誰が喋ってるか分かりにくいのを防ぐ為には必要かも

それと、ひとつ質問
鋼盾は上条の隣人と書いてたけど
代わりに土御門は出てこないって事?
それとも、土御門の反対側の隣人?
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/01(日) 16:04:04.90 ID:xDfPLMseo
台本形式じゃないんだからいらないだろ
作者の力量次第で分かりにくさはどうにでもなる
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) :2011/05/01(日) 18:16:51.61 ID:F0myGQxAO
>>33
こうじゅんでいいよ。

神裂「11801号――いいヤオイ、ですか。よい真名です」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/01(日) 19:26:21.66 ID:2EIDbY5J0
こうじゅんで台本形式でいいと思うよ

神裂「垣根帝督――帝凍庫、ですか。よい真名です」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 19:37:16.75 ID:hHJC16uLP
主人公視点の地の文が入ってるから名前は必要無いだろう
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/01(日) 20:31:47.42 ID:nah+TYh20
台本形式は確かにわかりやすいが、地の文で表現できると上手く見える
でも台本形式で面白いSSなんていくらでもあるから好きなようにやればいいと
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 20:40:31.15 ID:JItio57po
地の文でいいだろ
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/05/01(日) 20:53:52.54 ID:nah+TYh2o
1です。
皆さんコメントどうも!

ちょっとテスト
>>41とIDが同じみたいなんだが、こんなことってあるのかな。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/01(日) 20:56:12.27 ID:nah+TYh20
専ブラだと末尾が変わるのか
もう一回!
45 :1 [saga]:2011/05/01(日) 21:22:03.39 ID:nah+TYh2o
>>34 ホントに嬉しいw 俺ついこないだまで
    「全レスとかw作者はしゃぎすぎだろ愛い奴めww無理すんなよ(キリッ」
    とかクールにレスしてたのに、気付いたら似たようなことしてます。ニヤニヤしながら。


>>35 皇潤。確かにw


>>36 土御門は出ます。一応>>15にこっそり書いてるんだけど、心配させてたらゴメン。

    科白の前にキャラ名を入れるのは、読者としては空気感が壊れる感じで苦手なのですが(台本形式は別です)
    書き手にまわったからには考えなきゃいけないところですな。地の文や口調、順番で工夫してるつもりなんだけど
    なんか地の文が助長になったりしてしまいいろいろ難しい。

    とりあえず次の更新の、鋼盾・土御門・青ピの会話はキャラ名なしで書いてみます。
    もしわかりにくいようでしたら台本形式も視野に入れて参ります。ご指摘下さい。

>>37-42 アドバイス感謝
      とりあえずこうじゅん読みで、キャラ名なしでやってみます。
      >>1の実力が伴わなず、判り難かったりしたら対処しますので教えてくださいね。
      あとやっぱり>>42とIDが同じみたい。書いた覚えのないコメントしててびびったぜ。

>>38-39 www。このスレ>>32の「ねーちんの深読み&トンチ真名判断」にした方が需要あるんじゃね?

んでは。
参ります。
46 :1 [saga]:2011/05/01(日) 21:23:57.12 ID:nah+TYh2o
―――――――
 
 

 結局、上条は洗髪と着替えのために家まで半泣きでダッシュするはめになった。

 遅刻は確定だろう。今朝のやりとりはすべて前フリとなってしまったらしい。

 上条当麻、やはり神に愛されているとしか思えない。


 そんなファンタジスタは放っておいて、鋼盾はきっちり始業20分前に教室にたどり着いた。

 遅刻ギリギリに駆け込んでくる人間の多いこのクラス、まだまだ教室はガラガラだ。

 先ほど上条との話にも出た吹寄制理を筆頭に、比較的まじめな面々が各々好きなように過ごしている。

 そんな中、上条と並んで遅刻ギリギリ組の筆頭である意外な顔があった。それも2つも。


 「おーす、いつもながら早いにゃー」

 「おはー、コウやん。今日も髪型決まっとるやん」


 金髪サングラスの土御門元春と、似非関西弁学級委員の青髪ピアスが話しかけてきた。

 口調もファッションも性癖もなにもかも、このクラスきっての個性派だ。
47 :1 [saga]:2011/05/01(日) 21:26:27.42 ID:nah+TYh2o

 上条とこの両名の3人で、デルタフォースなる渾名を拝命したのが一月ほど前。

 命名された原因はとある一件、このクラスの破天荒ぶりを全校に知らしめした大事件なのだが、ここでは多くを語るまい。


 黄泉川が吼え、小萌が奔走し、素甘が溜息を吐き、災誤の伝説を一年生に知らしめたあの一件。

 そして上条当麻のその一級フラグ建築士っぷりを、クラスメイトたちが思い知った事件でもある。



 あの日、雲川芹亜と何があったのか、上条当麻は黙して語らない。


 雲川は緩く微笑み「あれはなかなかに刺激的な体験だったけど」と、興味深いコメントを残している。


 旗男め。
48 :1 [saga]:2011/05/01(日) 21:29:27.33 ID:nah+TYh2o
 それはさておき。


 「おはよう、ふたりとも今日は早いね」

 「にゃー、舞夏が部屋を掃除するってんで追い出されたんだにゃー」

 「ボクは珍しく早起きやったんよ。んでな聞いて聞いて!
  ちょっと登校時間をずらしてみたらトアール女学院の登校と時間帯が被ることを発見したんよ!
  今まで見逃してたなんて、ホンマに惜しいことしたわ」


 惰眠なんて貪ってる暇なんかなかったんやー、早起きは三文の徳やでーとくねくねしながら踊る青髪。

 これがいつものテンションとさして変わらないのだから恐ろしい、と鋼盾は思う。

 席に鞄を置きつつ、話を続ける。


 「さっきからこの馬鹿ずっとこんなですたい」

 「これからボクはこの時間に登校することにするわ!
  つかコウやん知っとったやろ!独り占めなんてずるいでー」

 「ふふふ、コウやんはムッツリさんだもんにゃー」

 「通るルートが違うだろうが!」

 「ほう、するとお目当ては西校やね。ブレザー派か」

 「いやいや、三女とみたにゃー。女子中学生とは流石コウやん」

 「うわあああ!!!」


 傍目から見たらヤンキー2人とパシリ君にみえるであろうこの組み合わせも、もう馴染んだものだ。

 最初はそのコワモテな風体にビクビクしていた鋼盾も、上条が間に立ってくれたおかげで今ではすっかりこのザマだ。

 
 「まったく、上条君といい、めずらしく早く来たかと思えば……」

 「およ? カミやん来てるん? 便所?」

 「……いや、それが…ね、あーちょっとかわいそうで言えない」

 「お、これは爆笑必至のネタの予感だにゃー」

 「独り占めはなしやでコウやん。女子中学生は皆の共有財産や」

 「そのネタひっぱらないでくれ! 周りの目が怖い! 吹寄さんとか!!」

 「さっさと吐くにゃー」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/01(日) 21:29:50.63 ID:Kk9SpUt90
コウって・・・昔のジャンプの打ち切り漫画の主人公みたいだし
上条・・・塵になりやがれ(byドルキ)
50 :1 [saga]:2011/05/01(日) 21:32:40.09 ID:nah+TYh2o
 
 吐かなければ、どうなるのか。

 デルタフォースの3人が下ネタに走っても笑って許されるが、鋼盾のようなタイプが同じノリで動いたら

 女性陣からどんな目でみられるかわかったものではない。

 自覚は、ある。

 悲しいけれど。


 (ゴメン、上条くん)


 鋼盾は心中で上条に手を合わせると、その手でもって生贄(上条)を炎の中へと放り込んだ。
 
 

 そして始業の鐘が鳴る。

 朝のHRで小萌先生が、連絡のないままに空席の上条のことを皆に尋ね、

 青髪ピアスが見てきたようにとっくりと顛末語りあげて教室を笑いの渦に叩き込んだ所で、

 ワックスを付けてない上条サラサラverが息を切らせて駆け込んできたものだから、もう、なんというかとんでもないことになった。


 笑いの坩堝、外の廊下まで響き渡るであろう大爆発。

 その中心に立つ男の科白と言えば。


「不幸だああああああああああああああああああ!!!!!!
 裏切ったなあああああああああ!!!!!!鋼盾てめええええええええええええええええ!!!!!!!」


 サラサラ上条ファンタジスタがツボに嵌ってしまった小萌先生に、この混乱を御しきれるわけもなく

 阿鼻叫喚のHRは、青筋を浮かべた災誤先生が、無言で教室のドアを開けるまで続いた。

 ちなみに、元凶は誰かと聞かれ全員が上条を指差したため、鳥の糞に続いてゴリラの鉄拳を落とされる羽目となる。



 上条当麻、本日三度目の絶叫が響いた。



―――――――
51 :1 [saga]:2011/05/01(日) 21:38:49.01 ID:nah+TYh2o



 さて、なんだかんだで昼休み。

 教室で適当に机をつき合わせて、今日は4人で昼食を摂る。

 話題はやはり、今朝の一件だ。


「うう、チクショウ。今日は絶対にいい日だと思っていたのに
 あああ、上条さんはもうだめかもしれません」

「まーまーカミやん、カミやんのおかげでみんなが笑顔になったぜよ」

「そうやでーカミやん、それってなんだか、素敵やん? なーコウやん」

「えーと、うん。才能だね」

「うるせええええ! 俺は芸人じゃねーんだよ。
 つか笑わせてるんじゃなくて笑われてんじゃねーか!! ピエロですらねえよ!!」


 ムシャムシャと不機嫌にパンを噛りながら、上条が喚く。

 ちなみに髪はクラスメイトから借りたワックスで固められていた。

 心なしかいつもより多めにツンツンしている、ハリネズミの威嚇のようにトゲトゲしい。


「いやいや、カミやんには笑いの神様がついてるて」

「うん、上条くんの周りでカメラをまわしてれば、特になにもしなくても一端覧祭で映像部門賞くらいいけるかもしれない」

「…! ぶひゃひゃ!そいつはいいにゃー。ウチの映研の自主制作映画なんかよりよっぽどすごいのが撮れそうぜよ!」

「……てめえら」


 ピクピクと上条の額に青筋が浮かぶ。

 これはちょっとヤバイかもしれないと他三人はアイコンタクト。


「いやーすまんかったカミやん、はいウチの店のサンドイッチおすそ分け」

「ほれ、舞夏手製の卵焼きを恵んでやるにゃー」

「デザートのこんにゃくゼリーもあるよ」


 持ち前の不幸体質でコッペパンしか買えなかった上条に、続々と届く救援物資。

 腹が立つのは腹が減るから。この真理の前には上条も逆らえず、みるみる機嫌が治ってゆく。
 
 心なしか髪の毛のツンツンも収まっているようだ。わかりやすい。
52 :1 [saga]:2011/05/01(日) 21:41:28.54 ID:nah+TYh2o


「――まったく、3馬鹿+1、貴様たちは無駄話しないと食事もとれないの?」


 不機嫌そうに呟いたのは吹寄制理。曲者ぞろいのこのクラスの司令塔である。
 
 本来その任を負うべき学級委員、青髪ピアスが曲者筆頭なのだから始末に負えない。


「お、吹寄。もう飯食ったの?」

「貴様らと違って私はダラダラ食べる趣味はないのよ。もう終わったわ」

「にゃー。吹寄はバランス栄養豆乳クッキーを食べてたんだにゃー。
 全く味気ない。やっぱり昼は舞夏特製弁当に限るぜよ」

「つっちーは自慢したいだけやないか」

「ゆっくり食べた方が身体にいいと思うけど」

「愚問ね鋼盾。私はちゃんと30回噛んでるわよ!」

「流石は吹寄、食事にも全力投球とは……おそろしい子…!」


 女の子と話すのは緊張してしまう鋼盾にとって、サバサバ遠慮の無い吹寄はありがたい相手だ。

 他の3人もなんだかんだと面倒見のよい吹寄には一目も二目も置いている感じがある。

 もっとも普段の行いもあって、それが吹寄に届いているかというと、多分絶対間違いなく届いてないと思われるのだけど。
53 :1 [saga]:2011/05/01(日) 21:46:34.04 ID:nah+TYh2o



「ところで、一端覧祭の話をしてたかしら?」

「にゃー。主演男優上条当麻でお送りする自主制作映画『アンラッキーマン』で映像部門大賞を狙おうぜ、って話だぜい」

「なんだよそのタイトル! つか、絶対やんねえからな! 絶対だぞ!!」

「えー、つれへんなー主演男優様。どうします鋼盾監督?」

「監督僕?! ええっと、隠し撮り風?」

「「 鬼 才 あ ら わ る ! ! 」」

「ふざけんな!!それ完全に盗撮じゃねえか! てめえら上条さんのプライバシーをどうするつもりだ!!!」


 某B級映画大好き娘の食指が超動きそうなタイトルだ。

 今から、主人公の素材だけでハリウッドに喧嘩を売りにゆく。


 予算はない。

 設備もない。

 技術もない。

 時間もない。


 だが――――勝算は、ある。

 こちらには笑いの神がついているのだ。


 ―――さあ、伝説の幕開けだ

      この秋、君たちは奇跡を目の当たりにする―――!

54 :1 [saga]:2011/05/01(日) 21:58:29.48 ID:nah+TYh2o



「まあ、そんな下らない映画の話は置いといて。私、実行委員をやろうと思っているのよね」

「一端覧祭のか? そらまた随分先の話だな。つかその前に大覇星祭だろ」


 吹寄はそちらの実行委員でもあったはずだ。気の早い話のように思えるが、と首を傾げる男4人。


「だからこそ、よ。大覇星祭が終わったらすぐに一端覧祭なんだから、今から視野にいれとかないとね
 それに一端覧祭のほうがなんだかんだで人手がいるのよ。特に男手は、いくらあっても足りないわ」

「「「「………………………………」」」」


 雲行きが、怪しい。

 逃げようと男たちが椅子から腰を浮かしかけんとしたその刹那、

 吹寄制理が動いた。


 右足を一歩前に

 右腕を右前方に

 左手を左斜め前に


「「「「……………………ツッ!!」」」」


 たった、それだけ。

 けして速くも激しくもないそれだけの動きで、吹寄は男4人の逃亡を完全に制した。

 動くことさえ、許さない。



 理を以って、場を制する。

 一切の無駄なく行われたそれは、もはや結界の域。

 常人の業せはない。
55 :1 [saga]:2011/05/01(日) 22:07:31.99 ID:nah+TYh2o
失礼。↑の一文はミスですね。業ではない、が正しいです
以下本文。





 最高峰の陰陽博士、土御門元春が戦慄と嫉妬を露にする手妻。

 埒外の幻想殺し、上条当麻の右手を以ってしてもそれを破ること能わず。 


「協力しなさい」


 使命感に燃える澄んだ瞳

 いつのまにやら晒されたおでこ

 ふるん、と揺れる豊満なバスト




 彼女は御祭女帝FUKIYOSE

 すべての実行委員に名を連ねる女

 その迫力に圧倒される男4人



 既にここは貴様らの知る空間ではない、そして、ここから先は一方通行だ。

 逃亡は、許されない。
56 :1 [saga]:2011/05/01(日) 22:33:27.81 ID:nah+TYh2o



さて、今宵はここまでです。
ところどころふざけすぎたような気もしますが、いかがだったでしょうか。

土御門、青髪、吹寄の三名が登場しました。
いずれもなかなかに特徴的な面々ですが、再現できているかどうか。

特徴的な語尾や口調は、単にキャラ付けというだけではなく、
誰の科白なのかが読者にわかりやすいという狙いがあったんだなあ、と実際書いてみてはじめてわかる。
一方通行なんて一発だもんな。

とはいえ、にゃー、だぜい、ですたい、コレどう使い分ければよいのか。

吹寄はヒロインではないですが、けっこうキーパーソンです。あと、俺の嫁な。
あと、ウチの青ピはとりあえずレベル1か2くらいにするつもりです。第6位とか期待しないでください。
土御門は原作のままですね。寮も上条の隣のままです。鋼盾はとなりのとなり。上条さん角部屋じゃないよね?

過去エピソードでちょっと出してみた雲川先輩。
大好きです。上条×雲川で誰か書けよ。頼むよ。

さて、>>1は平日に仕事終わりにちょこちょこ書き溜めて、休日に仕上げて投下するというパターンで参ります。
とはいえ平日も来てますので何かあれば是非。基本かまってちゃんです。

最初なので雰囲気を掴んでいただきたく多めに投下しましたが、今後は減るかもです。ご容赦下さい。
それでは、今後ともよろしくお願い致します。





57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/01(日) 22:58:06.27 ID:XOvb+4v70
乙 俺以外の雲川好きにあったのは初めてだ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/01(日) 23:11:59.76 ID:JRKbiU0f0
>>1とIDかぶったから俺得予告しまくろうと思ったら
もうID変わってた
とりあえず乙
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/01(日) 23:56:29.10 ID:jgy2tuBGo
おもしれー。
丁寧に作られてるから全然ふざけすぎとは思わないよー。
これからも楽しみ。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/02(月) 00:07:55.16 ID:oYmzUQdAO

吹寄wwwwww
何者だよwwww
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/02(月) 00:45:08.82 ID:pKVlflM80
>>上条×雲川で誰か書けよ
言い出しっぺの法則というものがあってだな・・・
それはそうとめちゃ面白いわ。続きにも期待。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/02(月) 17:42:55.89 ID:4V7TS+RY0
これならアンダーラインの許可も下りるな
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/02(月) 19:44:11.98 ID:8YIQOiVk0
乙!

ID被り初めて見た
IDってランダムなの?だとしたらけっこうスゴイ確率なんかなー

雲川事件は番外編でやるとして
アンラッキーマンも番外編でやるとして
本編も期待してます。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/03(火) 07:22:51.73 ID:YUyS3ywg0
>>理を以って、場を制する。
制理さんカッケー!生理wwwwとか馬鹿にしててごめんww
御祭女王FUKIYOSEは世紀末帝王HAMADURAネタか
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/03(火) 12:27:07.72 ID:j7IeaFRJo
やべえまさかの鋼盾かよ
しかもうめえ…乙!
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 16:27:52.98 ID:Yy4yz7nL0
吹寄の天地魔闘かよww
67 :1 [sage saga]:2011/05/04(水) 21:59:50.68 ID:aikKTk2O0
どうも>>1です。現在宮城県の実家に帰省中です。
震災から二ヶ月、ようやく帰ってこれました。
ずっと閊えていたものがとれた気分、いろいろ頑張ろうと思いました。
ここでもがんばりますのでどうぞよしなに。

コメント、ニヤニヤしながら読み返しています。ありがとうございます。

上条×雲川は個人的に一押しで、上条×布束と共に俺得双璧です。次点がペンデックス。
映画のタイトルは『ハードラックヒーロー』にしようと思ってたらもう既に使われてたという。

次回更新は金曜の夜くらいに。
吹寄回となります。そして、ようやく前フリが終わり物語が動き始めます。
あとスミマセン、吹寄の一人称は「あたし」ですね。間違えました。

また、大して重要ではないのですが、青ピの能力で悩んでいます。
……なんかいい感じに使えねえ能力ありませんかね? よければ御知恵を貸してください

んでは、よいGWを!
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/04(水) 22:57:09.56 ID:vHiD/y7h0
>>67
量子変速……は冗談として、透視能力とかは?ギリッギリまで目を近づけないと透けないとか。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/04(水) 23:19:52.62 ID:PFXbnQBAO
>>1が上条×布束を書くと聞いて

>>67
手の温度が人より高くてパン作りの際に生地の発酵が進みやすくなる能力かな
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/05(木) 05:59:41.61 ID:Flryn+8T0
>>67
予知能力(ファービジョン)とか念動力(テレキネシス)とか、シンプルなやつ
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 06:00:57.63 ID:Flryn+8T0
すまんageちゃった
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 12:06:29.85 ID:KFInbjwf0
確か禁書wikiで青ピは予知能力使いとか考察されていたな。
それにしても鋼盾に負ける予定のステイルゥ・・・・・天才設定はどこにいった・・・・・・
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/05(木) 13:58:55.09 ID:QNoC+XpR0
「阿部敦、ですか―――良い真名です」
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/05/05(木) 16:23:12.31 ID:PY/EdsAA0
髪を青くする能力…とか?
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 20:49:51.81 ID:sivyFVtO0
おばんです。>>1です。
みなさんご協力ありがとうございます。まだまだヒヨコな>>1ですので本当に助かります。

>>68 透視能力……魅力的だけど青ピがそんなんもってたら磨き上げてレベル5になっちまうぜww

>>69 太陽の手ww パン屋さんだもんな。別の物語が始まっちまう。 

>>70 意外と書かれない王道系能力ですね。本家海原に再び出番はあるのか。

>>72 禁書ウィキ、参考になりました。ノーヒントだと思っていたら意外なところにヒントが。
   しかしほぼ実戦クラスで通用する予知能力とかなるとレベル2より上っぽいよな。
   身体強化系が濃厚だろうか…。とりあえず青髪=誘波ネタ考えた奴天才。

>>73 伊藤さんチィーーーース!

>>74 肉体変化や偏光能力、もしくは投与された薬の副作用など、なかなか夢が広がるな。

大感謝です。迷うけど身体強化とかそのあたりが無難かな?
だれか身体強化にクールなルビ振ってくれ! オリジナルな能力名でも可!

さて、金曜夜に更新するといっておりましたが、出来なくなりました。
なので今晩に更新します。10〜11時くらいになると思われます。

んでは、後ほど!
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 21:01:28.19 ID:XKJ6RjKto
待期

能力名はシンプルなようで違う読み方だからな……肉体強化(インナーブースト)とか
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/05(木) 21:04:04.99 ID:PY/EdsAA0
全身鋼鉄(アストロン)なんてどうだろう。
まんまパクリだが。
78 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/05(木) 21:33:28.42 ID:sivyFVtOo
インナーブーストにアストロン、かっこいいなw 
ひとくちに身体強化といってもいろいろあるので難しい。
FFでいうならプロテスなのかヘイストなのかシェルなのかバーサクなのか。
チョッパーでいうなら脚力強化(ウォークポイント)、飛力強化(ジャンピングポイント)、腕力強化(アームポイント)とか。
そのへんも考えないと駄目なのか、一括りにしてしまってよいのか、うむむ

それはそうとトリップとやらをつけてみた。謎の感動。
まあ、>>1の役得ということでひとつ。
79 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/05(木) 22:41:44.27 ID:sivyFVtOo
―――――――
 
 それは、紛うことなく危機であった。
 
 ここで選択を誤れば、夏休みから一端覧祭終了まで酷使されること疑いない。

 いや、下手をすれば、それこそ三学年の一端覧祭まで使い潰されるコースが確定だ。


 なんとしても勝たなければならない。

 ……しかし、勝てるのか? 彼女に? 俺たちが?


 戦慄を押し殺すことのできぬ男四人に対し、吹寄制理――否、女帝FUKIYOSEは揺らがない。

 音無き流れこそ、その水量は多いという――そんな言葉を思わせる静けさで、彼女は口を開いた。

 それが、始まりだった。
80 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/05(木) 22:43:27.30 ID:sivyFVtOo

「……上条当麻?」

「えーと…上条さんはホラ! 不幸スキルで周りに迷惑かけちゃいそうですし」

「不幸だなんだとそんな理由で皆の笑顔を諦めるの?
 ちょっと長いプロローグくらいで諦めてんじゃないわよ上条当麻!
 貴様が不幸だというのなら、ソレを引きつけて皆を助けなさい! そうすれば皆が貴様を助ける!
 そう、総てを支える縁の下の力持ちよ。貴様はこれから“礎を担いし者”を名乗りなさい!」


「おおおおおお! 我、“礎を担いし者”!」


 ―――上条当麻、陥落。

81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/05(木) 22:44:17.36 ID:hSYnE5M70
青ピは糸目だから目を使った能力とかどうだろう
能力を使う時だけ目を開けるのはかっこいいし

もし、青ピが自分自身は戦いに参加せずに
戦いを横で解説するキャラだとすれば
『能力解析(スカウター)』とかでいいんじゃね?
82 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/05(木) 22:44:54.79 ID:sivyFVtOo

「土御門?」

「お、俺には! 繚乱で舞夏の活躍の一部始終を見守る使命があるんだぜよ!」

「繚乱家政は大人気だから一部始終なんて無理よ。家族招待枠も望み薄ね。
でも、貴様の働き次第では……そうね、実行委員の伝手で特別優待券くらいは手配するわよ。
 なんなら当日の繚乱担当になれるように協力してあげてもいいわ!
 やるべきことが見えてきたかしら? 思い出しなさい貴様の真名を! “我が身の全ては妹の為に”!」


「思い出したぞ!“我が身の全ては妹の為に”!」


 ―――土御門元春、轟沈。
83 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/05(木) 22:48:10.13 ID:sivyFVtOo

「青髪?」

「ボ、ボクには一端覧祭に燃える女子のみなさんに萌える責務があるんや! 準備に奔走するなんてまっぴらや!!」

「片腹痛いわ自称愛の伝道師(笑)。――貴様はその程度の男なの?
祭りで一番盛り上がるのは準備期間よ。本番なんてオマケでしかないわ。不器用な女の子が一生懸命作業する
 その真剣な横顔を一番近くで眺めてみたいとは思わないの? 彼女がそのしなやかな指に金槌を打ち付け涙したのならば、
 貴様がそこに絆創膏を貼ってあげなさい。――そう、貴様の魂の名は“その涙の理由を変える者”!」

 「Yes,mam! 我が名は“その涙の理由を変える者”!」


 ―――青髪ピアス、覚悟完了。
84 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/05(木) 22:50:17.35 ID:sivyFVtOo

 次々と膝を屈するデルタフォース。

 此処に君臨するは御祭女帝FUKIYOSE、普段のどこか隙のある吹寄制理ではない。

 祭りの成功のためならば、よろこんで清濁を併せ呑む器量の大きさを持っているのだ!

 彼女が笛を吹けば、誰であろうとそこに寄り集まらずには居られない。


「さあ鋼盾! 貴様はどうなのかしら? 
 ―――あたしに、もうひとつの名前を名乗らせないで欲しいわね」

 ゆらりと笑う御祭女帝FUKIYOSE。


「―――僕、は 」

85 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/05(木) 22:51:52.89 ID:sivyFVtOo

 キーンコーンカーンコーン
 遮るように響くチャイムの音。

 昼休み終了を告げる予鈴。
 つまりは、時間切れだ。


「ふむ、予鈴ね。まあ冗談はともかく、考えておきなさい。
  ―――特に鋼盾、貴様にはそういうのも悪くない経験だと思うわよ」

 余計なお世話かもしれないけどね
 吹寄はそう呟くと、颯爽と席に戻って行った。
 
86 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/05(木) 22:53:41.19 ID:sivyFVtOo

「…………」


“――特に鋼盾、貴様にはそういうのも悪くない経験だと思うわよ”

 彼女の言葉が耳に残る。なんとなく、言わんとしていることはわかる気がする。


 吹寄制理もまた、鋼盾と同様に無能力者に分類される学生だ。

 彼女は鋼盾と違い、その評価に腐らず、能力開発にも人一倍まじめに取り組んででいる。

 ただ、それと同時に能力以外の方法でも、積極的に自分の居場所を作ろうとしているように鋼盾には見受けられた。

 大覇星祭実行委員と一端覧祭実行委員のみならず、普段のちょっとしたイベントやクラスメイトとの親交にも、彼女は誰より一生懸命だ。

 頼られると張り切ってしまう姐御肌や面倒見の良さ、リーダー気質など、彼女のキャラクターよるところも大きいのだろうが、
 
 穿った見方をすれば、それはある種の代替行為といってしまってよいだろう。


 一向に成果のでない能力開発、報われぬ努力、支払われることのない対価。

 そこからでは得ることの出来ないものを、他から引き出そうとする行為。


(……デルタフォースの3人や、僕みたいなのに関わってくれるのも、そんなところがあるのからなのかも)


 そんな吹寄を否定するつもりは全くない。

 むしろ、本当に頭が下がる、と鋼盾は思う。
87 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/05(木) 22:55:50.77 ID:sivyFVtOo

 彼女は、吹寄制理は強い。

 身体能力でも能力強度でもなく、その在り方が正しく強い。

 対して、自分はどうだろうか。


 ずいぶん、明るく、前向きにはなったとは思う。

 学校は楽しいし、一緒に登校したり、馬鹿話に興じることの出来る友人もできた。

 体重だってちょっとは減ったし、小萌先生を泣かせない程度には授業だってがんばっている。

 充実した、楽しい日々。

 こんなに楽しいなんて、思ったことは初めてなのだ。


(……だけど)


 それでも、それでも。

 ふとした折に、心が傾ぐ。

 この街にはいたるところに無数の陥穽が仕掛けられている。

 それは年に一度の<身体検査>だったり、能力者たちの何気ない一言だったり、奨学金の額だったりと様々だ。

 声なき声が、“欠落者”“落伍者”“無能力者”と鋼盾を詰り虐げ追い詰める。

 真っ暗な穴に叩き落されたような気分にさせられるのだ。
 

 吹寄、上条、土御門。

 彼らにはこの声が聞こえないのか?

 こんなに大きな声なのに。

88 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/05(木) 23:01:16.40 ID:sivyFVtOo

(結局)

 そう、つまるところ。

(僕だけが、まだ、囚われている)

 鋼盾掬彦は、弱いのだ。


 吹寄制理と違って、鋼盾掬彦は弱い。

 上条当麻と違って、鋼盾掬彦は弱い。

 土御門元春と違って、鋼盾掬彦は弱い。


 身体が、心が、意志が、覚悟が、なにもかもが

 弱い



 だから

 弱いから

 <幻想御手>なんて下らない都市伝説が

 ずっと頭にこびりついて離れないのだ

89 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/05(木) 23:03:04.65 ID:sivyFVtOo



「……まあ、それはそれとして」


 鋼盾は頭を振って、浮かんだ妄念を振り払う。

 ネガティブな思考に陥ったのは、半ば現実逃避だったかもしれない。

 観念して視線をそちらに向ける。

 そこには。


「“礎を担いし者”!」

「“我が身の全ては妹の為に”!」

「“その涙の理由を変える者”!」


 己の真名を声高らかに謳い上げる、澄んだ瞳の男たちが居た。

 本鈴まで、あと少し。


 ……どうしろってんだ、コレ。





―――――――
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 23:12:18.62 ID:vGYMEk/Zo
デルタフォースェ…
91 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/05(木) 23:17:50.32 ID:sivyFVtOo
てなわけで、吹寄回でした。

大覇星祭、クラス鍋会、一端覧祭と、イベント事に情熱を傾けるバイタリティ溢れる彼女ですが、
もしかしたらそんな理由があるのかもしれませんね、みたいな話。

そして出ました<幻想御手>
これがなきゃ鋼盾くんでやる意味が無い。
正直>>1としては3馬鹿プラス1と吹寄と小萌先生とモブどもで、面白おかしく高校生活を
エンジョイしてくれててもよいくらいですが、そうもイカンですよね。

物語が、動き始めます。


>>81 レスサンクス!
    スカウターとはw 上条さんから竜王の咢がでてきて測定不能!みたいな感じかw
    確か夏休み明けに小萌先生が言ってたアレですね。
    糸目系のキャラがその瞳を見開く時、物語は始まる!
    開いた眼はオッド・アイだったりしねえだろうな!それはゆるさねえぞ!

青ピの能力は引き続き大募集です。
よろしくお願い致します。

次は、うまくすれば週末に。
んでは。
お付き合いいただいてありがとうございました。
92 :81 [sage]:2011/05/05(木) 23:30:15.59 ID:hSYnE5M70

それと、投下中に書き込んでしまってゴメン

続きが来てない状態で放置してたから
まさか、割り込む形になってしまうとは思わなかった
93 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/05(木) 23:42:44.71 ID:sivyFVtOo
>>92 いえいえ。割り込みだなんて思わないで下さい。
むしろ投下中にコメント頂けた方がテンション上がるくらいです。
励みになります、ホントに。

>>90 どうしてこうなった

ちょっとネタに走りすぎた感はありますが、魔法名はかっこいいですよね。
ところで魔法名絡みで本編とはまったく関係ないネタをいくつか思いつきました。
ここに落としていいものですかね?総合の方にすべき?もしくは完結後スレ立てした方が?

わからないことだらけですが、可能な限りみなさんに受け入れてもらえるよう努力するつもりです。
よろしければ今後もお付き合い下さい。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/05(木) 23:47:55.55 ID:zdCEIUaAO
おばんで某スレ思い出してごめん
おつ、相変わらず我らが吹寄さんは素敵だ……!
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/06(金) 00:08:49.73 ID:WIfeujLh0
>>93
乙ー!
総合でいいと思うよ。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/06(金) 09:12:48.17 ID:W5qBd+C30
乙です

そうか、上条さんの話術は吹寄さんから学んだのか。
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 11:50:56.32 ID:BjjPALFjo
乙。

魔法名変えちまえ土御門ww
98 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/08(日) 02:39:26.29 ID:2gIpqD8Vo
寝る前にちょっとだけ更新。
おばんですは宮城でも使います。
OH!バンデスとか誰か知らないかな?

それでは。
99 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/08(日) 02:40:51.89 ID:2gIpqD8Vo


都市伝説、という言葉がある。

Urban Legend の直訳で、現代に発祥し、典拠が不明な噂や伝説のことである。


例えば、「某ハンバーガーショップではミミズをすり潰してハンバーグにしている」というのがある。

"THE WORM EATERS"――小学生時代の鋼盾の軽いトラウマなのだが、そういえば学園都市では耳にしたことが無い。

それも当たり前で、この街では、学生(モルモット)の口に入る食品は、幾重にも厳重に管理されている。

学園都市に店を出す業者は、無数の審査や検査――読心能力者の監視等すら含まれる――が義務付けられ、そこに不透明なモノが入り込む余地はない。

そもそもクローニング技術で作られた牛肉や豚肉が店に並んでいるのだから、外から見ればそちらの方がおぞましいものがありそうだ。


また、80年代に一世を風靡した<口裂け女>などは「能力者の悪戯」の一言で、簡単に説明できてしまう。

変身能力(メタモルフォーゼ)で口の周りをちょっと弄ってみれば、それで<口裂け女>のできあがりだ。

幻覚を見せる能力や暗示をかける能力で、任意の対象に「目の前にいる人物の口が裂けている」と思わせることも可能だし、

偏光能力(トリックアート)で歪めてみせることも、投影戯画(プロジェクション)で<口裂け女>の像を結んでみることも出来るだろう。


ここは学園都市。

なまじっかな妄想など及びもつかない、どうしようもなくホンモノのトンデモ都市なのだ。


100 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/08(日) 02:42:27.00 ID:2gIpqD8Vo


ならば、科学万能のこの街では、都市伝説などという益体のない物は存在しないのか?

答えはNOだ、と鋼盾はPCのモニタを眺め、溜息を吐いた。

そこに表示されているのは、学園都市でまことしやかに囁かれる、無数の都市伝説を収拾したサイトである。


曰く、学園都市の闇を駆ける武装私兵集団、“猟犬部隊”が存在する。

曰く、いきなり路上で服を脱ぎ始める“脱ぎ女”を目撃した。

曰く、軍事目的で秘密裏に超能力者の“クローン兵士”が量産されている。

曰く、ボタンひとつで能力者を生み出す“才人工房(クローンドリー)”が第2学区のどこかにある。

曰く、第7学区のとある高校では、まるで小学生のような“不老不死の女性教師”が教鞭を執っている。


(えーと、最後のコレについてはとりあえず全力で目を逸らしておくことにして……)


もう学園七不思議どころじゃないみたいですよ小萌先生

本人が聞いたら泣き出してしまいそうな事実を発掘してしまったが、あえてスルーする。。

101 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/08(日) 02:51:38.15 ID:2gIpqD8Vo


――なんといってもここは「学生の街」なのだ。

都市伝説なんて怪しげで楽しげなモノが大好きな年代が集っているこの状況で、それが生まれないわけが無い。


日々、無数のネットロアが作られては消えてゆく。

外より格段に、それこそ数十年分は進んでいるという高スペックなパソコンでも、やってることは同じようなものだ。

異なる点といえば、ネタ元であるこの都市が特殊過ぎるが故に、この街ならではの要素がふんだんに詰め込まれているところである。

興味の中心である能力開発についてや、謎に包まれた学園都市の深部についてのネタがことのほか多い。

先の「ミミズバーガー」であれば、「ミミズの体液に脳波を活発にする成分が含まれているらしく、秘密裏に食べ物に混ぜられているらしい…」といった感じに形を変えることになるだろう。



噂は噂

街談巷説

道聴塗説

話半分


それが、都市伝説というものだ。



“窓のないビル”

“虚数機関・五行学区”

“絶対能力者”

“謎の音響兵器”

“原石”

“魔法使い”

……いずれ劣らぬ怪しげな項目を読み流しつつ、鋼盾は目的の名前を求めてスクロールを続ける。


そして

102 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/08(日) 02:52:22.41 ID:2gIpqD8Vo


「………あった」


“幻想御手”――無能力者に垂らされた蜘蛛の糸。

 鋼盾が望んでいた単語がそこにはあった。


 都市伝説だ。
 
 典拠のない噂話、無責任な伝言ゲーム、友達の友達の友達の話。

 バカらしい。


 それでも。

 自分の右手が左クリックを行うのを、鋼盾は止めることができなかった。





―――――――

103 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/08(日) 03:00:22.91 ID:2gIpqD8Vo
以上で終了です。

都市伝説についての回ですが、なにがアレかって今回挙げた学園都市の都市伝説ほとんどが今後登場するって事実がアレですよね。
原作で出てきてないのは才人工房くらいでしょうか。あれも滝壺の「学園個人」にくらべれば劣化版みたいなものだという。

夜になんとかもう一度これたらと思っています。

じゃあの。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 06:52:34.11 ID:eUyqHAYe0
あれ?何かステイルくんが鋼守に負けるシーンがイメージできる。
それにしてもどんどんかませぽくなっているな・・・・・一応天才設定なのに・・・・
あと乙
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 10:49:39.22 ID:0+smZeBho

地味なパワー・火力系はパワーインフレに耐えられないの法則があるよね
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 11:40:10.28 ID:MrzXiN8AO

ミミズバーガーの話は俺のトラウマ
夜まで舞ってる
107 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/08(日) 19:21:25.05 ID:0CuzqXrDo
ステイルさんをなめちゃいけないぜ。
聖人神裂とコンビを組めて、新しいルーンを創り出し、ローラに重用され、アレイスターと対面し、ペンデックスと単身渡り合ってるんだぞ。
まだ14歳にしてこの戦歴。フラグもそれなりに立ててるし、やれば出来る子なんですって。

>>1は「上条さん以外の人が禁書目録と出遭ったら」というタイプの一巻再構成ものが結構好きなのですが
その手のタイプの話だと、主人公をかっこよく書くためにどうしてもステイル相手に無双したり、完全記憶能力がらみで騙されてた
ステイルと神裂を「ググれカス」「情弱め」といわんばかりに扱き下ろしたりになりがちなあたりがちょっと不満でした。

このSSではその辺りをうまい事書けたらなあと考えています。
今ちょうどステイル辺りの書いてるとこなのですが、普通とちょっと異なる展開になってます。

んでは、21〜22時頃に参ります。
108 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/08(日) 21:51:38.72 ID:0CuzqXrDo



 人ごみ特有の喧騒、スピーカーから流れるBGM、クーラーの効いた空間。

 夏休みを目前に控えた7月18日の放課後、上条と鋼盾はチェーンの洋服店「セブンスミスト」に居た。

 男2人で買い物、というわけではない。そもそも此処にいるのは2人の間で目をキラキラさせている少女のためだ。


「おにーちゃんたち! はやくいこっ!」


 セブンスミストを探して道に迷っていた少女に上条が声をかけ、なんだかんだと買い物に付き添うことになった。

 上条当麻には困っている人を引き付ける力があるのかも――なんて思ってしまうほど、彼はこうしたトラブルに巻き込まれやすい。

 むしろ自分から巻き込まれにいっているフシすらあるが、鋼盾自身、そんな上条に助けられたこともあるのだから仕方がない。

 まったくお人よしめ、とは彼も思うのだが、嬉しそうな少女の笑顔をみるとどうでもよくなってしまった。

 
「おーう、女の子の服はそこのフロアだな」

「走っちゃダメだよ、お店だからね」

「うんっ!」


 元気よく返事をし、一応まあ早歩きと言えなくもない程度のペースで店に飛び込んでゆく少女。

「オシャレなひとはここにくるってテレビでいってたの!」と道中はしゃぎまくりだったのだから無理もない。

 小さくても女の子なのだろう――オシャレに疎い男2人は顔を見合わせて、笑う。


「ったく、しょーがねえな。おいてきぼりだ」

「まあ、よろこんでもらえてよかったよ」


 早速涼しげなワンピースを身体に合わせ、姿見の前でくるくる踊っている少女を姿が見える。

 なんとも微笑ましい光景に、見守る店員や他の客たちの目も優しげだ。
 

「まあなー。とはいえ男はちょっと場違いな場所だと上条さんは思うわけなんだがなー。
 ……どうする? 俺は一応あの子についとくけど、お前どっかみたいとことかあるか?」

「いやー、特には。……あ、でもちょっと今のうちトイレに行っとくよ」

「おーう、ごゆっくりー」


109 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/08(日) 22:33:05.88 ID:0CuzqXrDo


 上条と一旦別れ、トイレを目指す鋼盾。

 一人になって気が抜けたのか、大きなアクビがでた。

 このところずっとこんな感じだ。


 そういえば、今日は上条もまたエラく眠そうだった、というか実際に寝ていた。

 今朝は随分早い時間から動き始めていたみたいだけど、と鋼盾は朝の6時前に隣室の物音によって起こされてしまったことを思い出す。

 そのくせ寝坊で遅刻し、そのあとの授業でもずっと爆睡していた。

 まさかとは思うが今朝のバタバタは起床じゃなくて帰宅の物音だったのだろうか。

 なんだか、そんな気がしてきた。



 しかし、鋼盾の寝不足の要因はソレではない。

 まったく関係ないわけではないが、瑣末な要素といってよい。


 単純に、鋼盾の夜更かしをしただけだ。

 ここ数日、目当てのもの――幻想御手を探して随分と遅い時間までネットに耽ってしまい、ちょっとばかり寝不足気味だった。

 その甲斐あってたくさんの情報は集まったのだが、如何せん核心には至っていない。


(なにをやっているんだ……僕は)


 幻想御手について具体的にわかったことはあまり多くない。

 その形状も形式も理論も製作者も詳細な効果もなにもかも、よくわかっていない。

 「料理のレシピ」だとか「論文」だとか「プログラム」だとか、幻想御手の「かたち」ひとつとっても様々だ。

 使用者を名乗る人間は少なからずいたが、誰も彼もばらばらの事を言っており、正誤の判断は難しい。


 だが、数日の調査で鋼盾は、どうしてか幻想御手の存在を確信していた。

 勘、といってしまえばそれまでだが、ただの都市伝説にしては広がり方がおかしい。


 能力の暴発事故の頻発、警備員の先生の愚痴、無能力者のブログやチャットのログ、スキルアウトの勢力図。

 一見関係のなさそうな項目にも、幻想御手の影が透けて見えたりもするように思えるのだ。

 都市伝説<幻想御手>を盛り上げよう、というだけの意図ではこんなことは出来ないだろう。

 手間や経費が割に合わないし、効率が悪いし、規模も大きすぎる。



 確信する。

 幻想御手は存在する。

 一定数の人間が使用している。

 

 結局今夜もまたネットの海を彷徨う破目になりそうだ、と溜息が出そうになる。

 こんなバカな行為はやめた方がいい、そうは思うのに結局止められずにいる自分が情けなかった。



―――――
110 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/08(日) 22:36:20.28 ID:0CuzqXrDo



用を足して鋼盾が2人と分かれた店に戻ってくると、そこに見知らぬ顔があった。

上条と少女に加え、中学生くらいの女の子の3人で楽しげに話している。


肩まで届く程度のシャンパンゴールドの髪をヘアピンで飾った、結構な美少女である。

服を手にはしゃぐ女の子に目線を合わせ、優しげに笑っている横顔が印象的だ。

身に着けているのは学園都市でも屈指の名門校、常盤台中学校の制服である。

ホンモノのお嬢様だ、なかなかこんな大衆向けのチェ―ン店で見かける人種ではない。


少し迷ったが、まあ合流しようと近づいてゆくと、会話の内容が漏れ聞こえてきた。

どうやら互いに顔見知りらしい。


「それはさておき……昨日の決着をいまここで……」


 女の子に対しての優しげなものから一転、ここで逢ったが百年目、とでも言いたげなまなざしが上条へと向けられている。

 なんだか物騒な物言いの常盤台生に、呆れたように上条が溜息を吐いた。


「オマエの頭のなかにはそれしかないのか……
 だいたい、こんな子どもの前で始めるつもりかよ」


 痛いところを突かれたらしく「ぐっ」と呻く常盤台の少女。

 何を始めるつもりなのかは判らないが、あまりよろしくない真似ではありそうである。


「まあ、文句があるならすぐに視界から消えてやるから」


 入り口のところで待ってるからな、と付き添いの少女に言い、こちらに歩いてくる上条。

 こちらを見ている鋼盾に気付いたようで、よお、とばかりに手を挙げてきた。

 合流し、2人連れ立って入り口の方へと歩き出す。


「さっきの子、知り合い?」

「んああ……知り合いっちゃ知り合いだけど、なんなんだろうなーあのビリビリ中学生」

「ビリビリ中学生って……。常盤台のお嬢様だろあの制服」


 ビリビリ―――察するに、彼女は電撃使い(エレクトロマスター)なのだろうか?

 常盤台のお嬢様相手に随分と親しげな、―――というかえらく無遠慮な呼び方である。ビリビリて。


 ちょっと振り返ってみると、常盤台の彼女の友人だろうか、セーラー服の2人組を加えた女の子4人で談笑しているようだ。

 常盤台の子がこちら――正確には上条の様子を伺っている様子が見て取れた。

111 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/08(日) 22:38:33.20 ID:0CuzqXrDo


「任せちゃっていいのかな? 
 あの子、なんかこっち見てるけど」

「 まあ、俺たちよりは適任だろうなー。あんなでも女の子だ。
 ……あそこのベンチにでも座っとこうぜ」


 入り口付近のベンチを指差す上条。

 否はない。ここからなら少女が買い物を終えて帰ってきても直ぐにわかるだろう。

 自販機で各々飲み物を購入し、ベンチで一服。

 ……さて、頃合だ。


「んで、どうして上条くんは常盤台中学の女子生徒と親しげなのかなー」

「いや、親しげなんかじゃねえって! ……なんかここんとこ絡まれてるんだよなー、はあ」


 不幸だー、と得意の口癖を呟く上条。常盤台の美少女とご縁があってこんな科白を口にするなど彼くらいだろう。

 ここが教室だったら土御門ネプチューンマンと青髪ビッグ・ザ・ブドーによるクロスボンバーが炸裂しているところだ。

 だが、運のよいことに今日は鋼盾ひとり、温和な彼はせいぜい一言ぼそりと呟く程度で済ませてくれる。


「……旗男め」

「だからなんなんだよその旗男って! お前らことあるごとにソレ言うよな!
 なんなんだイジメかイジメですかイジメだよなちくしょうめ!!
 ううう、不幸だああああああ!! イジメ、かっこ悪い!!かっこ悪いぞ!!」


 何を言うか旗男め、いじめられているのはむしろこちらの方だ、と鋼盾は思う。
 
 息をするようにフラグを立ててゆく一級フラグ建築士の仕事ぶりを間近で目撃してしまったのだ。

 クラスの男子全員が自分の味方になってくれるだろう、上手くすればあとの半分もこちらに付いてくれそうだ。


 原告 鋼盾掬彦

 被告 上条当麻

 裁判長 吹寄制理

 検察 青髪ピアス

 弁護人 土御門元春

 傍聴人・その他スタッフ 1年7組のみなさん


 さあ、明日は弾劾裁判だ。

 被告以外は全員グルの粛清パーリィである。


112 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/08(日) 22:40:00.72 ID:0CuzqXrDo



「まあ、そんな旗男の旗迷惑な旗話は置いておいて、夏休みの話なんだけど」

「まだ言うか! 終いにゃ泣くぞ! ……ああ、つっても補習が終わるまでは――」


 目前に控えた夏休みの計画に話が及んだ時、緊急事態を告げる店内放送が館内に響き渡った。

 うだー、とだらけていた上条の表情が引き締まり、放送を一言たりとも聞き逃すまいと集中しはじめた。

 まったくこのお人よしめ、と鋼盾は手の中の缶コーヒーを一気に飲み干した。


 店内に爆発物。テロ。係員の指示に従い屋外への退避。風紀委員。

 放送が並べる物騒な単語に店内のざわめきが大きくなる。


 また、走り回るはめになりそうだ。


 賭けてもいい、上条当麻は粛々と指示に従い避難するだけじゃ終わらない。

 逃げ遅れた人を探して、このビルを駆けずり回るくらいは確実だ。

 勢い余って犯人くらい捕まえてしまうかもしれない。

 
「まったく、上条くんらしい。傍迷惑な話だよ」


 やれやれとひとりごちる鋼盾の表情には、口振りに反して清々しいものが浮かんでいる。



 結局のところ。

、上条当麻とつるんでいる時点で、彼もお人よしと呼ばれる類の人種なのだった。




――――――――
113 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/08(日) 22:47:00.77 ID:0CuzqXrDo
ここまで。

このあたりはイマイチ動きも会話も盛り上がりも少なくて困っちゃいます。

一応美琴が出てきましたが、本格的な出番は次回以降ですね。

次回は虚空爆破顛末と美琴と鋼盾の邂逅あたりになるかと。

んでは。
114 : [saga]:2011/05/08(日) 23:36:42.20 ID:0CuzqXrDo
忘れてた、質問。

美琴が上条さん以外の男性と会話してるシーンてある?
冥土返しと一方通行、海原、あと妹達絡みの時の清掃員のおっちゃんとか以外で。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 23:38:30.15 ID:0+smZeBho
乙さんです
ついに鋼盾の活躍が始まるのか
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 23:39:03.48 ID:0+smZeBho
乙さんです
ついに鋼盾の活躍が始まるのか
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 23:44:20.12 ID:0+smZeBho
連投すまんね
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/09(月) 00:36:22.67 ID:mmzdrRkb0
>>114
思い出せる限りだとあとは脇役だけと思う
禁書の方では、戦闘機奪った時の操縦士くらいか
超電磁砲の漫画も入れたら
アイス屋のおっさん 介旅初矢
アニメも入れたら黒妻 蛇谷 とかかな

まぁ、もっと脇役を含めたら
幻想御手の時のスキルアウトとか、色々いるだろうけど
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/09(月) 04:31:17.39 ID:oLt0jGOSO
日村ぁー!
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/09(月) 11:34:54.75 ID:35Y4+GPAO
実に面白そうなスレ発見。
俺も>>1氏と同様、鋼盾は大化けすると踏んでる。
大化け鋼盾×佐天は俺得過ぎるので、本作品のテーマにないというのは残念だが、後にこのカップリングの二次SSの礎?にもなるような作品になること期待。
勿論そうなればいいなあという願望なので、好き勝手書いちゃってください。純粋に楽しみにしてます!
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 14:41:18.89 ID:hXXm1gmS0
乙。
>>107同意。かっこいいステイルに期待。
そういや佐天さんとニアミスだな。

122 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/10(火) 21:11:39.15 ID:hy0dPiPpo
>>118 情報提供感謝です。
    あれだよね? 美琴は初対面の年上の真っ当そうな男性には敬語くらいちゃんと遣える子ですよね?
    タメ口叩いて布束ローリング上下関係ソバット食らったりもしたけど、基本出来た子ですよね?

>>120 同士乙。恋愛系は>>1としてもいつかは書いてみたいです。以前上条×固法を書いてたらその翌週くらいにアニメに潰されたがな!
    鋼盾くんの場合、ちゃんと自分に自信がもてないうちは、とてもじゃないけど恋愛なんて始められません。
    このSSで書きたいのは彼の葛藤や成長ですので、あるいは最終回のあとにはそんな未来があるやもしれません。

>>121 同意感謝。なんかエヴァ逆行モノのサキエルみたいにスパッとやられちゃうのは悲しいよね。
    ところで神裂とステイルが一緒に動いたのってもしや一巻だけかな?てっきりコンビかと思ってたけど実はそうでもない?
123 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/05/10(火) 21:14:28.09 ID:hy0dPiPpo
スマン更新もないのにageてもうた。
許してください。

酉がなんかリンドバーグっぽいことに今気付く
リンドバーグと言われても曲名とかひとつもでてこねえや
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 09:29:55.29 ID:YOrCEcuc0
乙です
上条さんも美琴も一方浜面も禁書主人公格は揃ってタメ口のイメージしかないな
まあそんな些細なことはおいといて、とりあえず上条×固法について詳しく話を聞こうじゃないか
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/11(水) 14:13:46.40 ID:OEtfzCu1o
ちなみに、虚数学区・五行機関、な
だれも指摘してないっぽいので
126 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/12(木) 19:36:20.12 ID:Z2RTv8hBo
おばんです。
今週も金曜土曜と用事が出来たので本日投下します。
明日、仕事が終わったら俺ツーリングに行くんだ……!

飯食ったら投下します。
20時過ぎくらいに。
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/12(木) 19:59:41.86 ID:L1e8tyuAO
アニレーはパラレルだし2クール目は無かった事にした俺に隙は無かった
128 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/12(木) 20:15:08.56 ID:Z2RTv8hBo
>>124 
上条さんと固法せんぱいが中学時代のクラスメイトだったり風紀委員になったきっかけが上条さんだったり。
美琴や黒子が縁で再会するのですが、自分の事をまるで覚えていないかのように振舞う上条さんに戸惑うこのりん。
中略。記憶喪失発覚。己が喪ったものの大きさ、その片鱗を突きつけられ上条は初めて涙を流し、固法さんの胸の中で
えんだああああああああ、かと思ったら魔術師が攻めてきてあら大変、みたいな話でした。ああ安易。黒妻さんの登場で吹っ飛ぶ。

>>125
これははずかしい! 虚数というのが第一とか第二とかに対応するわけですね。
ご指摘感謝。なんか普通に間違ってました。
     
>>127
俺は隙だらけだ。鋼の心がほしい。


んじゃ、以下投下。
129 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/12(木) 20:16:37.03 ID:Z2RTv8hBo
――――――――



 結局。

 予想通り走り回る羽目になった。


 と、言っても避難誘導は居合わせた風紀委員(頭にやたらと花飾りをつけた女子中学生だった)や店舗のスタッフが行っているので、

 鋼盾や上条に出来るのはパニックになって泣き出してしまった子を宥めたり、転んで足を挫いてしまった人に手を貸すくらいのものであったが。


「……ふう、粗方、避難は済んだみてえだな」


 額の汗を拭いながら上条が言う。

 こんな時でも、転んだ女子高生に肩を貸して何気なくフラグを立ててしまう友人を横目に、鋼盾も一息入れた。


 セブンスミストの正面玄関前。

 野次馬たちで賑わうそこで、2人は事態の推移を見守っていた。


「うん、一応上からエスカレーターで降りながら見てきたよ。
 とりあえず見える範囲にはスタッフしかいなかった」

「放送じゃテロ、って言ってたよな。
 ……爆弾なんてそんな簡単に用意できるもんじゃねえよな?」

「いや、多分だけど、能力絡みの事件だよ。
 ……“連続虚空爆破事件”ってヤツじゃないかな」

「ぐらびとん?」


 聞いた事がなかったらしく、上条は平仮名で聞き返してくる。

 鋼盾もそう詳しいわけではないが、丁度昨晩目にしたばかりのトピックだ。


「重力子(グラビトン)、だね。アルミを基点に重力子の速度を加速させて、それを周囲に撒き散らして爆弾に変えてるらしい。
 ここ一週間で何件か起きてるみたいで、けっこう怪我人も出てる。アルミの空き缶ひとつで爆弾になっちゃうみたいだよ」

「マジかよ……とんでもねえな」


 つい先ほどまで缶ジュースで一服入れていた二人である。

 無造作に空き缶を放り込んできたゴミ箱に爆弾が入っていたかもしれないと思うと、今更ながらに怖気が走る。

130 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/12(木) 20:18:38.02 ID:Z2RTv8hBo


「量子変速(シンクロトロン)……量子の速度を操る能力者の仕業って噂だね。
 犯人は捕まってないって聞いてたけど、まさか巻き込まれるなんて思ってもみなかったよ」
 
「……ってもこんな大規模な真似が出来る使い手なんて幾らもいねえだろ。
 量子変速なんてマイナーな能力、容疑者だって限られる筈だ。警備員は何やってんだよ……」

「うん……普通に考えたらそうなんだけどね」
 

 学園都市にある能力の種類は、それこそ把握しきれないほど存在する。

 発火能力(パイロキネシス)や念動力(サイコキネシス)といった“発現しやすい”能力は、能力者人口も多く認知度も高いが

 逆に使い手自体の少ない、言ってしまえばマイナーな能力も少なくない。


 例えば空間移動(テレポート)のように、希少性の高い、強力な能力であれば“レア”であるという付加価値足りうるが、

 使い手が少なく、それでいて発展性や利潤性、応用性に乏しいという、“日の目をみない”能力というのも少なからず存在する。

 そういったものは専門にしている研究者も少なく、能力開発のノウハウの蓄積も少ないため、総じて平均レベルも低くなりやすい。


 量子変速というのは、まさにそうした類の能力であった筈だ。

 上条の言うとおり、簡単に特定できてしまいそうなものなのだが。


(幻想御手……)


 いまだ犯人が捕まらないということは、該当する容疑者が<書庫>に存在しないということで。

 それはもしかしたら、幻想御手によって急激に力を上げた人間の手によるものなのかもしれない。


 そんな、半ばこじつけのような妄想であるが――そう考えると平仄の合いそうな事件が連続虚空爆破事件の他にも幾つかある。

 それらはここ十日間ばかりの間に集中して起こっており、風紀委員も警備員も手を拱いているようだ。

 鋼盾はソレを幻想御手が実在する証左のひとつであるとみているのだが――そんなこと、口に出せる筈もない。


「幸い、量子変速を用いる場合、その前兆を結構早くから観測できるみたいだから。
 今回は避難も迅速にできたし、無事に済みそうだね」

「ああ。しかし、こんな子どももいるような場所でそんなマネするなんて、許―――」


 上条の科白が途切れる。

 突然言葉を切った彼に、戸惑うような視線を向ける鋼盾。


「――上条くん?」

「なあ、鋼盾………あの子、ちゃんと避難したか?」

131 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/12(木) 20:20:06.22 ID:Z2RTv8hBo


 あの子。
 
 上条と2人でこの店に案内してあげたあの女の子、すっかり忘れていたが――そういえば、見ていない。


「ビリビリに預けっぱなしだったが――さっき見かけたアイツは、一人で避難誘導してた。
 てっきり先に逃がしてくれたもんだと思い込んでたけど」

 
 鋼盾も率先して避難指示を出す彼女を目撃していたが、たしかに単独で動いていた。

 あわてて周りを見回すも、少女の姿はどこにもない。

 この人混みに紛れている可能性、一人で先に帰ってしまった可能性もないとは言えないが――


「道も不案内だし、こういう状況であんな小さな子が一人で動き回るとは思いにくいね」

「ああ、心配しすぎかもしれないけど――まだ、中にいるかもしれない」


 上条の目がセブンスミストに向けられる。

 彼が何を考えているか、鋼盾には手に取るようにわかる。
 

「鋼盾! 俺は戻ってみる! お前は外を「外にいるなら安全だよ、わざわざ探す意味はない」


 被せるように、上条の言葉を否定する。

 否定するのは言葉だけだ。
 
 行動は、否定しない。


「中には2人で行こう。手分けした方が早いよ。
 でも危ないから一通り回ったら逃げるからね」

「……わかった。頼む鋼盾」


 正面玄関にはスタッフが張り付いているので、裏の方に回る。

 幸いこちらには人がいないようで、あっさりとセブンスミストに侵入できた。


「俺はこっちからまわってみる。
 ビリビリやあの風紀委員の子が中にいると思うから、そいつらにも聞いてみる」

「――絶対に、ごみ箱とかには近づかないで。
 相手は爆弾だよ。……きみの右手が効くかは正直判断がつかない
 外に居る可能性の方が高い!! 一通り探したら見切りをつけてくれ!!」

「わかってる!!!」


 一目散に走り出す上条。

 その背を見送りながら、鋼盾は思う。

 わかっていると口では言っているものの、彼は走るのをやめないだろう。

 上条当麻は、そういう男だ。

 今更ながらに爆弾の恐怖に竦む脚に喝を入れ、鋼盾もまた店内へと走り出した。



――――――
132 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/12(木) 20:23:46.52 ID:Z2RTv8hBo



 結論からいうと、上条の右手がなんとかしてしまった。


 上条と別れて数分後に巻き起こった爆発は強烈で、別のフロアに居た鋼盾も思わず尻餅を突いてしまった程だった。

 最悪の事態が頭を過りつつ、おっかなびっくり現場へと駆け込んでみると、粉塵に咽ながら避難してくる複数の人影があった。

 例の女の子に常盤台の少女、花飾りの風紀委員、――そして、上条だ。

 こちらに気付いて、上条がその右手をフラフラと振って見せた。

 安堵に腰が抜けそうになったが、なんとか持ち堪える。


 彼らが居た場所――爆心と思しき場所を眺める。

 圧倒的な火力でなぎ払われたフロアに、不自然に無傷な箇所があった。

 こんな真似が出来るのは上条だけだ。


 結局、彼の右手は量子変速の爆発にも有効だったらしい。

 とはいえ、先刻の会話を鑑みるに、上条にも確信はなかった筈なのだ。


 もし右手が通用しなかったら

 もしこの場に来たのが鋼盾の方だったら


 死者が出てもおかしくなかった規模の爆発だった。

 最悪の想像に身震いする。

 冷や汗が背を伝うのがわかった。


133 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/12(木) 20:25:25.31 ID:Z2RTv8hBo


「いやー、なんとかみんな無事でしたな」


 そんな鋼盾の内心など露知らず、暢気に笑う上条。

 らしいといえばらしいが……全く、人の気も知らないで。


「トキワダイのおねーちゃんがたすけてくれたの!」


 女の子が興奮気味に鋼盾に話しかけてくる。

 泣かれるよりはいいのだろうが……この子も大物っぽい、将来有望だ。
 

「はあ、間一髪でした……」


 へたへたとしゃがみ込む風紀委員の少女。

 これが普通のリアクションだと、鋼盾も安心してその場にへたり込んだ。


 本当に、よかった。



「あれ? ビリビリの奴どこいった?」

 
 上条が呟く。

 数秒前まで確かにそこに居た常盤台の少女の姿がいつのまにか消えている。


「?」

「?」

「?」

「?」
 

 四人で顔を見合わせてみるも、クエスチョンマークが四つ浮かぶばかりだった。

 こんな状況で、一体彼女はどこにいってしまったのだろうか?



――――――――
134 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/12(木) 20:29:29.01 ID:Z2RTv8hBo


 ほどなくして、警備員と風紀委員の応援が到着した。

 テレビドラマで見るような“KEEP OUT”の黄色いテープを貼ったり、念痕読手(サイコメトリ)を用いて情報を集めたりと忙しい。


 鋼盾と上条も目撃者ということで簡単な事情聴取に付き合わされる羽目となった。

 勝手に現場に舞い戻ったためにお咎めを受けたのだが、事情が事情ということもあって軽いお説教で済んだ。

 先ほどの花飾りの風紀委員の子にも「一般のひとなんだから無茶はだめですよ!」とかわいらしく叱られてしまったが。


 なんでも爆弾犯も捕まったらしい。

 いつのまにか現場から消えていた例の“ビリビリ”の子が確保したらしいというのだから驚きだ。

 女の子を家まで送るのは風紀委員の子が請け負ってくれたので、鋼盾と上条はとりあえず帰路へとつくことにした。


「あーーー、疲れた。鋼盾、どっか寄ってく?」

「まっすぐ家に帰るよ、さすがに疲れたし」

「あー、んじゃ上条さんはちょっと買い物して帰りますかね。この時間なら特売にもギリギ――、げ」


 ……待ち伏せかよ、と呟く上条。

 見れば視線の先には、件の“ビリビリ中学生”が腕を組んで壁に寄りかかるようにして、こちらを睨んでいた。

 正確には上条だけを、だ。


「お帰りかしら?」

「……言っとくけど、今からオマエの相手する気力はねーぞ……」


 心底疲れた顔で溜息をつく上条。

 うんざり、うだー、やってらんねえ、と顔に書いてある。

 少女は「そうじゃないわよ」と呟くと、苛立ちを孕んだ声で言葉を重ねた。


「いいのかしら? なんかみんなあの場を救ったのは私だと勘違いしてるみたいだけど……
 ―――今名乗り出たらヒーローよ?」
135 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/12(木) 20:36:02.89 ID:Z2RTv8hBo


 そう。
 
 現場にいた少女も風紀委員の子も、どうしてか彼女の功績だと思い込んでいたのだ。

 上条が特になにも言わなかったので鋼盾も黙っていたが、上条こそがヒーローとして賞賛されて然るべきである。


 ただ、彼の場合は―――


「? 何言ってんだ?
 みんな無事だったんだからそれで何の問題もねーじゃんか。
 ―――誰が助けたかなんてどうでもいいことだろ」


 ――なんてキザな科白を本心から口にしやがるのだけど。


 先ほどまで口調に軽い揶揄を含んでいた常盤台の少女も、半ば呆然とした表情でその科白を聞いている。

 鋼盾にはこの少女の気持ちが嫌になるほど理解できた。

 あんなことを真顔で言える馬鹿は珍しい。


「じゃーな鋼盾!
 上条さんは特売に向かってダッシュするから!!」


 宣言通り走り去ってゆく上条。

 ……多分、また何かトラブルがあってタイムセールに間に合わないんだろうなーと思いながら、鋼盾はその背を見送った。

 常盤台の少女も、遠ざかる上条の後姿を眺めている――こちらに背を向けているため、表情は読めないが、


「……スカしてんじゃないわよ、ばか」


 ぽつり、とちいさく呟いた。

 すこし、さみしそうな声。

 置いていかれた恨み言のようでもある。


「ほんとにね」


 心底同意だ、そう鋼盾も笑った。



 そうして、ヒーローが見えなくなるまで、ふたりは見送りをやめなかった。

 

―――――――
136 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/12(木) 20:37:41.83 ID:Z2RTv8hBo
ここまで。

さて、虚空爆破事件顛末記でした。
三行で終わらせて美琴とのトークに入る予定だったのですがなぜこんなことに。

量子変速をディスってるようですが、>>1は文系ですので重力子kskとか言われてもよくわかりません、適当です。
理系の人に言わせればものすごい素敵な能力かもしれない量子変速。詳しいひと教えて。

虚空爆破を幻想殺しで消すシーン。瓦礫の中で上条さんが手を翳した範囲だけ綺麗に残る演出はとてもかっこいいのですが、
異能がきっかけとはいえ爆風自体は普通の物理じゃね? とか爆発前に触れたなら全部消える筈じゃね? とか書いててちょっと思いました。
レールガンのコインの勢いだけを消すくだりといい、ホント幻想殺しはよくわからんよね。

次回は鋼盾先生の恋愛相談室。
ゲストはもちろん美琴ちゃんです。

んでは。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/12(木) 22:52:06.33 ID:/zi3GzCY0
乙、今回も面白かった。
138 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/12(木) 23:07:05.96 ID:Z2RTv8hBo
うぎゃー。読み返してたらミス発見!
サイコキネシスじゃなくてテレキネシスじゃい。

あと美琴がまだ名乗ってないから、地の文で美琴と女の子がどちらも少女と記述されてる部分があってわかりづらい。
でもなんか幼女と書くのは抵抗があるぜ……童女ってのも変だしな。要修行、要精進。
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/12(木) 23:36:45.99 ID:Ik0TQgph0
■■「鋼盾のせいで私出番や価値化がほぼなくなった・・・・・鋼盾くんのばか・・・・」

■■さんがいったいに何をしたんだよ。答えろ>>1!!
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/13(金) 05:44:35.14 ID:4JAwsZwwo
おつおつ
丁寧でいいな。あとなんか美琴がかわいい

>>139
■■が何かをしたわけじゃない――なにも出来なかったのが悪いんだ
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/13(金) 19:33:53.81 ID:JaaValPAO
乙華麗
>>139 ■■って姫神?よくわからん。
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/13(金) 20:05:47.82 ID:vLlqUYx/0
>>141
乙 それであってるけど、書くのは野暮だな
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/13(金) 21:41:04.51 ID:dRC67blD0
乙。
幻想殺しについては深く考えたら負けだな、あんなドラマツルギーの産物
>>139-142
しかし■■はまだこの時点じゃ登場してねえよな?出番や価値がなくなったってのはどういうこと?
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/13(金) 23:38:46.46 ID:vLlqUYx/0
ぶっちゃけ>>139が勝手に言ってるだけ
145 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/14(土) 19:15:21.27 ID:xapBvYvAo
ツーリングから帰ってきたらレスが■■ばかりだと……!?


どうも>>1です。
まずはコメントありがとうございます。
みなさんのコメント食って生きていけそうな気がします。
おなかいっぱいごはんをたべさせてくれるとうれしいな!

>>139
鋼盾くんの登場で姫神さんに限らず誰かの出番が潰れたりすることはないと思います。
まあ、彼の視点になりますので原作とは増減が少なからずあるとは思いますが。
鋼盾くんのばか・・・・って台詞かわいいなオイ。

>>143
ドラマツルギーの産物とは言い得て妙。
別名かまちーの匙加減な。それに魅せられちゃったんだからしょうがない。

飯食って推敲してから投下に来ます。
よろしければお付き合い下さい。

146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 19:35:29.83 ID:3GXdWQhfo
待つてた
147 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/14(土) 19:57:56.34 ID:xapBvYvAo
>>146待たせた
以下本文










「……あの馬鹿の、お知り合いなんですか?」


 セブンスミスト裏口。

 ふたりで、走り去る上条を馬鹿みたいに見送って。

 その背が見えなくなった頃、ビリビリと呼ばれていた少女が、ちょっと躊躇いながらも鋼盾に話しかけてきた。


 上条相手の砕けた言葉遣いから、距離感を滲ませる敬語に切り替わっている。

 ただそれだけのことで驚くほど雰囲気が変わった。

 上条に食って掛かっていた時の幼い刺々しさは鳴りを潜め、大人びた礼儀正しい少女がそこに居た。


「……あ、ああ。上条君とはクラスメイトだよ」


 年下の女の子相手についどもってしまう、そんな自分を情けなく感じつつも答える。

 上条のように周囲にフランクに接することは、鋼盾がもっとも苦手とするところなのだ。

 ただ、少女の自分を見る視線に嫌悪感や見下すような、負の感情が一切含まれていないため、なんとか会話を繋ぐことが出来た。


「そうですか。同級生なんですね。……高校一年生でいいんでしたっけ?」

「うん、高一だね。
 えっと、君は上条君の、その……友達、なのかな?」


 “ビリビリ”“あの馬鹿”という遣り取りに込められた、ある種の気安さと先刻のドタバタ。

 ベンチで上条に尋ねてみた際は、ほとんど聞きだすことができなかったが、それでも上条と少女の距離の近さは感じられた。

 正直、男子高校生と女子中学生(それも常盤台のお嬢様だ)の間に、なにがどうなれば接点が生まれるのかがさっぱり想像できないのだが。


「え…あ、友達ですか? えっと、その、なんて言えばいいのか」


 落ち着いた受け答えから一転、ごにょごにょと口ごもる少女。

 心なしか、頬が赤らんでいるように見える。

 あれ、なにか変なことを聞いてしまっただろうかと不安に思った瞬間、天啓のように閃くものがあった。

 不幸体質な友人、上条当麻という人間は無自覚にあちこちにフラグを立てまくる旗迷惑な朴念仁でもある。


 先ほどもそれをネタに上条をからかったのを思い出す。

 ひょっとするとひょっとして、ひょっとするのかもしれない。

 あの旗男なら、あるいは。

148 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/14(土) 20:01:05.78 ID:xapBvYvAo


「あ、その、もしかして彼j「違いますっ!!!」

 それこそ紫電の速さ雷鳴の激しさで、少女は被せるように否定した。

 頬どころか顔中を真っ赤にして、しかもまるで漏電しているかのように前髪からバチバチと火花を散らしている。

 いまにも爆発してしまいそうな危うさに、鋼盾は思わず尻餅をつきながら、慌てて火消しに走る。


「うわッ! ……ご、ごめんっ!!」

「ああああああっ、こちらこそ、ごめんなさいっ!!」


 我に返った少女は、驚かせてしまったことに気付いてその能力を抑え込んだらしい。

 わたわたと慌てながら、鋼盾にものすごい勢いで頭を下げてきた。

 それを受けて、鋼盾もおっかなびっくり埃を払いながら立ち上がる。

 取り繕うように笑おうとするも、引き攣ってしまってうまくいかない。

 それでもなんとか呼吸を整えて、改めて少女と相対した。


「…その、こっちこそ変なこといってゴメン」

「とんでもないです! えと、私とあの馬鹿は、喧嘩友達というかなんというか、倒すべき敵みたいな……その」

「う、うん。なんとなくわかったよ」


 本当はさっぱりわからなかったが、ここ藪を突いて蛇を出すことはないとの判断である。

 照れ隠し? なんて口にしようものなら雷の蛇に焼かれてしまうこと請け合いだ。

 そういえば最初に見かけたときに決着がどうとか……そんな遣り取りをしていたことを思い出す。

 というか、倒すべき敵って。一体アイツは女子中学生相手に何をしているんだと鋼盾は頭を抱える。旗男め。

149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 20:04:16.00 ID:0rQOMd3A0
>>143
>>145に書いてあるように鋼盾くんが■■さんの出番を奪う可能性がある。
てか三沢塾編自体がなかったことにされる可能性がある。
事実一方さんがインデックスを助ける話では、■■さん自体をなかったことにしたし・・・・・
150 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/14(土) 20:11:29.19 ID:xapBvYvAo


 君子ならぬ凡骨の身なれど、危うきに近寄らぬ程度の知恵はある。


 落雷への対処法は、大きくふたつ。

 ひとつは、可能な限り姿勢を低くすること。

 ひとつは、雷の落ちそうな所から離れること。


 つまり、どういうことかというと、落ちてきてしまったらどうにもならないのだ。


 よし。

 この子にはどこか遠いところで、具体的には避雷針の傍で幸せになってもらおう。

 わけのわからない結論をわけのわからぬままに棚へ上げてしまおうとした鋼盾は、ふと気づく。


(……ん? 避雷針?)


 避雷針、雷を受け流すモノ。

 能力を打ち消す、彼の右手。


 それなら彼女の言う「倒すべき敵」という物騒な言葉の意味がわかってくるような、そんな気もする。

 かつて鋼盾が路地裏で、能力を悪用する発火能力者に襲われた際、その火炎を掻き消した彼の右手。

 そして、先ほどの爆発から彼女たちを助けたのであろう、上条当麻の右手に宿る異能の力。


「えっと、上条君の右手絡み、なのかな」

「!!!」


 反応は、劇的だった。

 少女の目が大きく見開かれ、食い入るようにこちらを見据える。

 細竿で規格外の大魚を釣り当ててしまったようなイメージ。


 やばい、折られる。


「アイツの右手のこと、知ってるんですか?!!」


 雷鳴の如し。

 そのあまりの迫力に仰け反りつそうになる。

 正直怖い。



151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 20:12:36.10 ID:5+K0MC/A0
や、出番が潰れたりはしないって>>1が言ってるんだからそれでいいでしょうに。
そう言ってるんだから、三沢塾編自体もちゃんとやるんでないのん?
152 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/14(土) 20:19:16.33 ID:xapBvYvAo


「そ、その、僕も、あまり詳しいことは知らないというか」

「教えてくださいっ!」


 教えてもいいものなのか、一瞬迷った。

 ただ、上条自身、特に秘密にしているでもない風だったし、先ほどの遣り取りを見るに“知っている”らしいし。
 
 なにより目の前の少女の食いつきっぷりがコワい――というか痛々しさを覚えるほどに、求められているのが判った。


 ごめん、上条君と鋼盾は心中で呟いた。

 この期に及んでは望まれるまま歌うしかない。

 と、いっても先に述べたように、彼に語れることはそれほど多くはない。


「“幻想殺し”っていって、異能の力ならなんでも打ち消せるって聞いてる。
 なんでも打ち消せちゃうから身体検査も打ち消しちゃって、無能力者扱いで不幸だーーー、って嘆いてるけど」

「“幻想殺し”……」


 能力名を聞いたのは初めてだったのだろう。

 彼女はそれを脳裏に刻み付けるように固い声で呟いた。

 あるいは魂に、はたまた心の閻魔帳に?

 とりあえず、彼女の深いところにその言葉が響いたことを鋼盾は知る。


「あと、そう。能力開発じゃなくて生まれつきだっていってたかな」

「生まれつき……!」


 少女の眉間に皺が寄った。気持ちは、判らなくもない。

 鋼盾とて挫折してしまったとはいえ、かつて死に物狂いで能力を得ようと努力を重ねたことがある人間だ。

 個人差はあるだろうが、能力者にとっての能力とは“誇り"そのものであるとされる。


 あるいはアイデンティティと言い換えてもいいかも知れない。

 <自分だけの現実>とすら言われるものだ、まさにその通りである。


 それを、生まれ持った才能で、理不尽に打ち消されてしまったら。

 ……きっと、悔しいなんてものではないだろう。
 

「アイツの右手、書庫にも載ってないんです。
 私の能力が、積み上げてきたものが、全部否定されたように思えちゃって
 勝負を挑む度に簡単にあしらわれちゃうし、今日なんか……」


 ずーんと落ち込む少女。
 
 鋼盾は爆発の瞬間を直接見てはいない、爆発現場に残された痕跡を見ただけだ。

 だが、それだけであれが上条のやったことだと判った――彼女は、彼女たちは上条に守られたのだ。

 その事実にプライドを傷つけられてしまった上、そこに先ほどの遣り取りだ。

 実に上条らしいと鋼盾は思ったが、あれはダメ押しだった。


 敗北感、劣等感、焦燥感、無力感。

 そういうものが渦を巻いているに違いない―――鋼盾にも、覚えのある感情である。

 ―――しかし。

153 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/14(土) 20:22:26.19 ID:xapBvYvAo


「あの、さ」

「?」


 沈んでしまった少女に鋼盾は話しかける。

 慰めの言葉など思いつかないが、それでもひとつ、教えてあげられそうなことがあった。


「上条くんを倒したいなら、うまくいえないけど能力じゃ無理だと思う。
 なんというか、勝負にならない。もちろんきみが弱いとかそんな話じゃないよ?
 勝負自体が成立してないんだ」


 彼と同じ場所に立とうと思うなら、能力に依ってはいけないのだと鋼盾は思う。

 多分、この子は上条君と同じ土俵には立てていないのだ。

 無能力者の鋼盾が、能力者の彼女と同じ土俵に立てていないように。


「たとえきみが能力を駆使して彼を倒しても、彼は悔しがらないんじゃないかな。
 “ああ、不幸だ”くらいは言いそうだけど」


 ああ、本当に言いそうだ。

 これまでの数々の“不幸”を思い出してしまい、ちょっと笑っしまう鋼盾。


 その言葉に少女の目が見開かれ、それから同意するように伏せられた。

 上条を知る彼女にも、そんな結果がイメージできたのだろう。


 戦いのレベルではなく、そもそもステージからして異なるのだ。

 そう、自分がたとえ何かでこの少女に勝ったとしても、彼女が能力者だというだけで自分にとってはもう負けている。
 

「上条くんは、きっと」


 鋼盾は、上条について最近になってわかってきたことがある。

 きっと彼にとっては、他の人間が無能力者でも超能力者でも関係ないのだ。

 だって、能力なんてその右手で等しく消してしまえるのだから。

 上条のフランクさは彼の気質もあるだろうが、これも大きな要素だろう。


 それは鋼盾にとっては救いだったが、目の前の少女にとっては残酷な事実に他ならないのだろうか?

 ―――多分だけど、そうとも限らない。

154 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/14(土) 20:27:23.80 ID:xapBvYvAo


「あー、うまく言えないけど、上条くんの立ってる場所はそこじゃないんだ。
 なんというか、この街の枠組みの外にいるというか……」


 そこまで口にして、ふと、我に返る。

 鋼盾の発言は混じり気なしの本音であったが、なんだかずいぶんと変な方向に行ってしまった。

 少なくとも級友を評する言葉ではないし、初対面の女の子にするような話もはない。


「……ごめん、なんかわけわからないこと言ってるよね」 


 部外者の自分にそんなことを言われても、この子も対処に困るだろう、

 そう思って彼女を見ると、しかし思いのほか真剣な顔がそこにあった。


「……いえ、わかる気がします。そう、アイツは他の人とは全然違う。
 それは私より強いからとか、特別な力を持ってるからとかだけじゃなくて……、んと、私もうまくいえないですけど、
 そういうこと、ですよね」

「え、うん、あ、もちろん僕がそう思っただけだから、違うかもしれないけど)


 ……意外にも、言いたかったことが伝わったようだ。

 そう、多分この少女は、その右手でもって彼女の価値を無自覚に否定した人物、他の誰とも違う上条当麻という男に対して、

 「自分を見て欲しい」「知って欲しい」「認めて欲しい」と訴えていたのであるまいか。


 鋼盾の目には、この子が単純に敵意だけで絡んでいるようには、どうしても見えなかったのだ。


 (なぜかそれが「勝負」という形になってるから、なんかややこしくなってるし、上条くんも戸惑っちゃてるんだろうけど)


 つい先ほど、上条の彼女なのか、と鋼盾に尋ねられて、真っ赤になった少女の表情を思い出せす。

 もう間違いない。


 (この子は無自覚なんだろうけど、それってつまり、やっぱり…………)

 
 鋼盾の目には、少女の頭上に掲げられた印の旗が見えた。

 めまぐるしい感情の嵐に晒されて、それでも折れることなく翻る一本の旗(フラグ)。


 つまりは、やっぱり、そういうことだった。





――――――――――
155 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/14(土) 20:36:03.33 ID:xapBvYvAo
ここまで。

原作一巻では「学園都市の異質さ」「超能力者の凄まじさ」「その超能力者をあしらう主人公の異常性」を説明するために出したんじゃないか、
ってくらいの扱いのかませ&背景説明ポジだったフシのある美琴さん。科白もアレだし、当初は能力至上主義の高飛車キャラだと思ってましたが。
超電磁砲の漫画でのフォローは見事でしたね。冬川さんすげえ。

上条さん以外だとや犯罪者、スキルアウト系といった喧嘩腰な遣り取りばかりで、あまりまともに男性と会話するシーンがない美琴さん。
基本的にちゃんとした娘さんである彼女は敬語だって使えるのです。
……使えるよね? 自分でも書いててちょっと違和感ありましたが。

こんな美琴さんでよかったかな?
このふたりの会話は>>1が書きたかった部分ですので、うまく表現できてればいいなあ。

んでは。
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2011/05/14(土) 20:41:32.34 ID:kIOxDqI8o
なんとなく西尾維新風な文章でいいよいいよー。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 23:06:37.83 ID:xdPBsFhAO
つまりは、やっぱり、そういうことか
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 23:06:38.34 ID:3GXdWQhfo

上条を僻むクラスメイトの気持ちが良く理解できた
あの旗男め…
159 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/14(土) 23:38:08.88 ID:xapBvYvAo
>>149 >>151
え、あ、んと、あれ? この話って二巻以降も続くの……?
……やっべぇ、まともなプロットはとりあえず一巻終了まででそのあとは妄想過ぎて封印級なんですが……!
あれを衆目に晒すだと……? ああ、でも一番書きたいシーンはあそこだし……姫神も書きたいけど……うっわ、超やべえ。
こうなったらスピンアウトのモツ鍋ストーリーでお茶を濁すしかねえ!!とある路地裏の内臓潰ビブルチ!!

とまあ、本音は置いといて、ぶっちゃけ一巻以降の展開は未定です。
再構成物って一巻で纏めちゃわないと正直ヤメ時を見失うような気もしてます。
蛇足を晒せば、皆さんにも失礼ですし。

>>1のSSが終わっても、ここの鋼盾君のお話は続いてゆくんだぜ……! 姫神も笑顔さ! どこで? フッ、それは君たちの心の中さ!
……ってわけにはいかんかなあ。怒られるかなあ。俺だったら怒るよなあ。

>>156 
西尾維新風味とか!恐れ多いです。西尾作品あまり詳しくないですが。
この>>1は傷物語だけをシリーズ物と知らずに読んで、そんでアニメの化物語を見てしまったというヤツです。
いや、ガハラさんすげえかわいいけど! けど! ヒロイン羽川じゃなかったの!? え、マジ? 蕩れ? アイラビュー?
ちなみにクラスメイトに英語で告白した人には、他に国見比呂投手がいますね。

>>157-158
つまりは、やっぱり、そういうことです

とりあえず一巻をきっちり全力で書き切るところまではお約束します。その後はその後で。
こんな>>1ですが、よろしければお付き合い下さい。
明日、これたら来ます。んでは。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/14(土) 23:43:25.02 ID:lBDsQvPAO
>>1が西尾の罠に嵌まってて吹いた。

傷を読んだってことは日村吸血鬼化で三沢塾編ですね、分かります。
161 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/14(土) 23:59:08.28 ID:xapBvYvAo
>>160

そうつなげてくるとはw

総合に小ネタ放り込んできた。
よろしければ。
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/15(日) 00:37:20.41 ID:VlWIzx810
日村が吸血鬼化したら姫神に殺されるじゃねーか、やべぇ
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 01:36:25.11 ID:NhRnFB8to
たたりじゃー
■■様のたたりじゃー

とある路地裏の内臓潰し…モツブレイカー、か。
…ねえな
164 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/15(日) 21:34:28.00 ID:Ku/ebeiRo
おばんです。 >>1です。

酔った勢いで書いた“背中刺す刃と献身的な仔羊”、無責任に総合にぶん投げちまいました。
あるいは、あったのかもしれないそんな話――すべて、すべて愛しき過去のこと。
向こうは人多くてびびったぜ! あの土御門さんがうちの土御門さんかはどうかは内緒です。

インデックスが落とされた先が一部屋でもずれてたら、始まるのは別の物語。
物語はいまだ7月18日、運命の朝はもう少し先ですね。

さて、短いですが、もう暫くしたら投下します。
美琴回の続き、どうぞよしなに。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 21:39:52.91 ID:1FcGeLMzo
またまた待つてた
166 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/15(日) 21:54:24.60 ID:Ku/ebeiRo
>>165
またまた待たせた。
以下本文。






――――――――




 その後はしばらく、他愛のない会話が続いた。


 鋼盾は話上手な方ではないが、なんせ共通の話題はあの上条当麻についてだ。

 ネタには事欠かないし、なにより彼女の興味にピンポイント、クリティカルヒットだ。

 それこそ「聞かずに死ねるか!」という勢いで、瞳をキラキラさせながら食い入るように聞いてくれた。

 彼女に自覚はないのだろうが、それはもう恋する乙女のまなざしとしか思えなかった。


 学校でのあれこれ、クラスメイトのこと、お互いの上条との出会い、彼の不幸体質について……。

 会話は大いに盛り上がったが、そろそろいい時間ということで、解散することとなった。


「引き止めてしまってすみませんでした。今日はこれで失礼しますね
 ……あ、えっと」


 そういえば、随分と話し込んでしまったのに、未だお互いに名乗っていない。

 鋼盾と上条では違うのだ。彼のように、ビリビリ、なんて呼ぶわけにもいかない。


「……鋼盾。鋼の盾と書いて、そう読むんだ。わかりにくくてゴメン」


 自己紹介。己の名前があまり好きではない鋼盾は、ちょっと口ごもりつつも名乗った。

 必要の無い謝罪の言葉を、ごまかすように添えてしまう。


167 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/15(日) 21:55:54.27 ID:Ku/ebeiRo


 少女は確かめるように「こうじゅん」と呟く。

 問答無用の美少女に呼ばれると、すこしばかり気恥ずかしくて鋼盾は目をそらしてしまう。

 なんともくすぐったい感覚。

 女の子に名前を呼ばれる、ただそれだけでこのザマだ。


「鋼盾さん、ですね。私は御坂美琴といいます。
 話を聞いてもらってありがとうございました……お話できて、よかったです。」

「うん。……上条くんと、勝負云々は置いといて、一回話してみるといいと思う。
 普段はあんなだけど、大丈夫。ちゃんと向き合えばちゃんと返してくれる人だから」


 なんというか、傍から眺めている鋼盾にいわせれば。

 この子がしおらしく、こう上目遣いで、ちょんと服の裾を握ったりして、

「私の話を聞いて下さい」とでも言えば、もうなにからなにまで万事解決するんじゃないかと思ったりもするのだが。


「もう! だからそんなんじゃないですって!
 ……アイツと次に会った時、私を無視しなかったら考えてみます。
 それじゃ、これで失礼します」


 照れて、頬を膨らまして、それでも最後には弾けるような笑顔でそう言って、踵を返して駆け出すお嬢様。

 あっという間にその姿が見えなくなる。

 上条を見送ったように、彼女をぼんやりと見送った鋼盾はちいさくひとりごちた。

 
「御坂、美琴、か」


 なんというか、びっくりするほど鮮やかな女の子だった。

 いろいろみっともないところをみせてしまったような気もするけれど、それでも少し心が浮き立つ。

 初対面の女の子相手に一応にそれなりに会話をこなした事は、鋼盾にとっては大快挙であった。

168 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/15(日) 21:57:54.38 ID:Ku/ebeiRo

 
(常盤台中学校のお嬢様と会話したなんて、青ピ君あたりに話したらきっとエライことに……って!)


 今、自分はなんと口にした?

 先ほど、彼女はなんと名乗った?

 御坂? 美琴? 御坂美琴!?


「……………………………………あ」


 えーと、うん。

 やっぱり、間違いないよね。

 
「常盤台の、御坂、美琴……」


 それは、鋼盾のような無能力者ですら知っている、学園都市で一番有名な名前ではないだろうか?


 学園都市230万人の頂点。

 七人しか居ない超能力者の第三位。

 名門常盤台中学校のエース。

 最強の電撃姫。

 まさに雷名。

 
「超電磁砲(レールガン)……」


 あの少女が超電磁砲……!?

 上条に子どものように突っかかって、あしらわれたことに凹んで、いつか倒すと息を巻いて。

 それでも彼のこととなるとどうしようもなく頬を染め、キラキラの笑顔で笑う、あの少女が、能力者の頂点たるレベル5?

というか、―――上条当麻、第三位の超能力者を完封、だと?


「……とんでもないな、幻想殺し」


 虚空爆破の一件なんてそれこそ吹き飛んでしまった。

 相手は名高い超電磁砲、軍隊とタメ張るような能力だった筈だ。

 いや、それよりなにより、とんでもないのは。

169 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/15(日) 21:59:57.79 ID:Ku/ebeiRo


「………あの、旗男め」


 なんということでしょう。

 学園都市で一番強くて有名な女の子に、鮮やかにフラグを立ててみせた匠の手腕。

 人呼んで、“一級フラグ建築士”。

 スタジオの所さんも拍手喝采に違いない。



 知ってはいたつもりだった。

 知ってはいたつもりだったのだけど。

 あらためて思い知らされた。


 彼の友人は、どうやら予想以上にとんでもない男のようだった。





――――――――

170 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/15(日) 22:03:37.04 ID:Ku/ebeiRo
ここまで。

いかがだったでしょうか鋼盾と美琴の上条談義。

原作じゃ、上条のことを相談できるような知り合いが皆無な彼女。
共通の知り合いなんて恋敵のインデックスや10032号、アレな黒子とアレな海原エツァリ、問題外の一方通行に、
からかうばかりの美鈴さん、相談相手にできたら苦労しないぜ舅姑な上条夫妻、ふたりの馴れ初めスキルアウトさん。
……ほんっとに、誰もいねえな。強いて可能性がありそうなのが冥土帰しくらい……無理かな?

つうわけで、ひとりぐるぐるびりびりしているばかりなこの時期の美琴にとって、
鋼盾のような「上条の話ができる人」との会話はすごく貴重で、新鮮な一時なんじゃないかなという妄想。

その結果が前回と今回の一幕でした。

この邂逅が、後の上琴関係に影響を及ぼすかもしれません。
ああ、鋼琴フラグは立ちませんのでご安心下さい。

それでは、また次週。
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2011/05/15(日) 22:07:58.31 ID:nfe2b1qRo
> ああ、鋼琴フラグは立ちませんのでご安心下さい。
なんだ…違うのか…
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 22:15:11.19 ID:1FcGeLMzo

旗男に対しての苦労度という点で鋼盾は女の子と仲良くなれると思うんだ
たとえば吹寄とか(チラッ
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/15(日) 22:20:39.67 ID:VlWIzx810

敬語を話す美琴はなかなかいいな
あと、鋼盾は誰かとフラグは立つんだろうか
174 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/15(日) 22:54:15.80 ID:Ku/ebeiRo
むむ。
みんななんだかんだで恋愛方面をご所望なのだろうか。
ううう、>>1はその方面にイマイチ自信がもてないのです。

鋼盾君もまだまだ自分を信じてあげられていないまま、これじゃ恋愛なんてできません。
イケメンだったら女の子からの積極的なアプローチで流されたりするのかもですが、鋼盾君ですので。

まあ、鋼盾君と>>1の成長にご期待下さい。
先のことは未定ですので。


ああ、あと久しぶりに
――――吹寄は、俺の嫁な (キリッ
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 22:56:48.77 ID:3cbNrpFJP

しかし神裂さんマダー?
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 23:06:50.33 ID:MOSwiepAO
総合からきました。
超期待。
乙!
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/15(日) 23:19:56.26 ID:bcgpHO3Uo
無理して恋愛にする必要ねーだろww
とあるモブの舞台裏つうかそういう雰囲気がいいんだぜ。
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 23:39:21.10 ID:ZtoK4zRjo
このスレタイで鋼盾×神裂じゃなかったら俺は泣いてもいいんだよな?
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 23:40:37.52 ID:3cbNrpFJP
お前ら>>1くらい読めよ
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 00:21:52.05 ID:pBiuEsGlo
乙カレー

ところでここの美琴にえらくときめいたんだけど
日む…鋼盾くんじゃなくて上条さんについてはどうよ?>>1って上琴とかイケる口?

土イン旋風巻き起こしといて恋愛書けないなんて、そうは問屋が下さんですたいww
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/16(月) 17:31:35.92 ID:lH0+FWiX0
>>180
俺も上琴好きだけど特定のカプの話を持ち込むのはちょっと
182 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/16(月) 18:18:33.66 ID:TWRFj3Nyo
 仕事おわり!いえい!
 みなさんコメントありがとうです。昼休みにニヤニヤ見てました。
 忙しい時期ですが、活力になります。
 感想要望は好きに書いてくださいね。


>>175 >>178
 スレタイはまだまだ遠いなーー
 今更ながらやっぱりこのスレタイ微妙かなあ。鋼盾×神裂を期待された方、申し訳ない。
 もっと取っ付きやすそうなのにすればよかっただろうか……でも書きたかったんだよこの台詞。
 以下即興。

   鋼盾「その」禁書「幻想を」上条「ぶち壊す!」

   インデックス「きくひこー、おなかすいたー!」鋼盾「はいはい」

   日村「学園都市?」

 ぐぬぬ、むずかしい……!
 まあ、流石に2スレ目には、いかない、とは、思うのだけど……。


 >>180 
 書き手としては恋愛とか碌に書けないヘタレであり、読み手としてはマイナーカプに血道を上げる>>1ですが、
 率直に言って王道系も大好きです。それはもう前提条件ですらあります。なんでも美味しく頂きます。

 上琴も大好きで、原作やSS読みながらニヤニヤしてます。
 ただ、美琴→上条は書けても。上条×美琴となると正直書くのが難しい。
 恋愛の成就は美琴のキャラクターから、なにやら重要なものをごっそり持っていってしまう気がするのです。

 間違ってもカップリングの否定とかじゃないですぜ。

 くっついた後の「ただただ幸せなだけの女の子」を美琴らしく描くのは、>>1にとってすごく難しいぜ!
 片思いで映えるキャラ、空回りの似合うキャラ、なんて言うと語弊がありそうですが、
 他のカップリングでは感じないそのもどかしさが上琴の魅力だと俺は思うのです。

 単に>>1が美琴というキャラを表層的にしか掴めていないのかも。愛はあるつもりなのだけど、修行が足りないのか……。
 逆に上条→美琴ならなんか書けそうな気がする!ふしぎ!

 まあ、一巻再構成ですので察してください。
 というわけで美琴→上条な感じで参りますので悪しからず。

 んじゃ、書き溜めます。
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/16(月) 18:45:44.87 ID:lH0+FWiX0
>>1が上条→美琴を書くと聞いて
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/16(月) 19:38:39.29 ID:3p0+nqfM0
>>183
もう一回>>182を読み直すべき
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 09:19:25.03 ID:x3U74llFo
スレタイか。
よし。それは俺らに任せて>>1は本文執筆に集中してくれ。

 1スレ目 神裂「鋼盾――鋼の盾ですか、よい真名です」

 2スレ目 姫神「私。魔法使い」 鋼盾・上条・禁書「………」

 3スレ目 鋼盾「歯を食い縛れ最強(さいじゃく)。僕の最弱(さいきょう)は、ちょっとばかり響くよ」

                       (中略)

 23スレ目 鋼盾「……ドラゴンライダー、ですか?」 丈澤道彦「ああ、君のための機体だ!」


うん。
さしあたってはこれでOKだな。

超期待してる。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 13:18:54.34 ID:ygynZOizo
4スレ目
土御門「カミやん、コウやん。オレってば実は天邪鬼(ウソつき)なんだぜい」 上条・鋼盾「……」チーン

5スレ目
鋼盾「どんな理由を並べても!それがこの子が殺されていい理由には、ならないんだよ!!!」

6スレ目
鋼盾「風斬ィィいいいいいいいいいいいいいいいいい いいいいいいッ!!」

みたいなww
もうエライことになってきてしまったww
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/17(火) 15:51:37.54 ID:CP/dmgz20
>>185
23スレ目にフイタ 新訳まで行くのかよwww
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/17(火) 17:26:15.10 ID:vf0r8j/M0
>>186
五スレ目何で一方さんの立ち位置なんだよwwww
そして便乗

七スレ目
オルソラ「まぁ、日村さんとおっしゃるのでございますか」鋼盾「僕の話を聞けぇッ!!」

八スレ目
鋼盾「『残骸』……?」

九スレ目
オリアナ「ぼうや、暇ならお姉さんといいコトしない?」鋼盾「な、ななななッ!?」

十スレ目
リドヴィア「これで終わりですので!」鋼盾「まだ分からないのかい?今日の主役は、僕たちじゃないんだよ」
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 18:17:19.35 ID:RsYGnbAAO
何この流れww
15スレ目はもちろん、

鋼盾「楽勝だよ。超能力者」

だな!
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 19:56:39.25 ID:484Mqp2eo
くそう>>189め、その台詞は俺が書きたかったのにww
順番守れよーwwwwww

十一スレ目
鋼盾「今頃ふたりともヴェネチアかあ」 佐天「いいなあ、ヴェネチア」

十二スレ目
美琴「こ、鋼盾さん、どうしよう、アイツに罰ゲームしなきゃ///」 鋼盾「どうどう」

十三スレ目
鋼盾「前方の、弁当……?」 黒子「…一体どんなお弁当ですの?」

相方が超電磁砲組なのは俺の趣味だぜ!!!
正直スマンかった!
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/17(火) 20:33:34.38 ID:CP/dmgz20
じゃあ、14スレ目は

鋼盾「…どうしてアビニョンにお笑い芸人が?」テッラ「……」
で決まりかな

この調子で16~23のスレタイも考えた方がいいかもな
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/17(火) 21:30:19.14 ID:4G8f3l6Do
このスレどんだけ長編になるんだよwww
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 22:47:45.23 ID:wMU5QVw+o
やべええ、なんか楽しくなってきたww じゃあ俺16スレ目な!

五和「話なら聞いてあげますよ。さんざん(中略)さんざんグチャグチャのグチャにブチのめした後に!」鋼盾・建宮「ひぃ」

なげえなww または

アックア「天草式十字凄教、そして鋼盾掬彦。その名は我が胸に刻むに値するものとする!!」
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/17(火) 23:57:00.42 ID:FFjVfYJIO
組織と個人を同列に認められるとか綱盾どんだけ出世してるんだwww
じゃあ俺も便乗して17スレ目

キャーリサ騎士団長アックア「「「戻ったか!!!」」」「「「鋼 盾 掬 彦
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 00:01:12.63 ID:35qX/pdIO
うわ途中で送信しちゃったし

キャーリサ騎士団長アックア「「「戻ったかッ!」」」「「「鋼 盾 掬 彦 !!」」」
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/18(水) 06:43:23.28 ID:CcdQTuob0
お前ら、わかってると思うが番外のSS、そしてスピンアウトのとある路地裏の内臓潰し(モツブレイカー)
これも忘れるんじゃないぞ!

内臓潰し1スレ目
矢文「あの男こそが学園都市230万人の底辺、対能力者戦のプロ、路地裏の雄、内臓殺しの横須賀さ! 」

内臓はたいせつにね!ビルブチ!
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/18(水) 17:18:05.65 ID:ySeJNFBJ0
内臓潰し2スレ目
横須賀「その内臓をぶっ潰す!!」

18スレ目
鋼盾「さぁ、群雄割拠たる国民総選挙の始まりだ!!」


鋼盾さんがどんどんスゲェことになってくwwww
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/18(水) 17:27:31.19 ID:Zzo4OU7G0
>>196
ビブルチだから気をつけブギュルワ
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/18(水) 18:51:33.34 ID:Fwxc2N1AO
英国王室入りしてんじゃねえかww

カーテナ振り回す鋼盾さんを幻視した。
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/18(水) 19:29:22.53 ID:URkrhqdj0
>>199
むやみにageない方がいい
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 21:21:34.97 ID:nycn6EHeo
19スレ目
鋼盾「……どうして、ここまでひどい怪物になっちゃったのかな」上条「お前……!」

ちょっと路線を変えてみた
202 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/18(水) 21:28:11.27 ID:orIujKC4o
>>185-201

おwまwえwらwとwきwたwらw

……愛してる、マジで。



この嬉しさをうまく言葉に出来ないので、週半ばだけど更新を以ってお礼としたいのです。
22時までにまた来ます。

では、しばし。


203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 22:12:47.99 ID:q8W9rWFfo
待つてる
204 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/18(水) 22:15:49.84 ID:orIujKC4o
すまん、ちと遅れた。
またまた待たせた>>203






――――――――


 鋼盾は、今の生活を愛している。

 その言葉にはひとつだって嘘はない。

 中学の頃のように、抜け殻めいた日々は既に遠く、

 とるに足らない平凡な、しかし色鮮やかな毎日を送っている。

 
 学校は楽しくて

 友人もいいやつばかり

 担任にも恵まれている

 
 神など知らねど、世はすべてこともなく

 この数ヶ月で得たものは、本当にかけがえのないものばかりだ。



 だけど。

 身の内で時折、醜い怪物が暴れるのを止めることが出来ずにいる。

 その怪物に名前を付けろと言われれば、迷うことなく鋼盾は“嫉妬”と名づけるだろう。

 まあ、よくある名前のバケモノだ。
 

205 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/18(水) 22:17:01.90 ID:orIujKC4o


 例えば上条当麻。

 初めて会った時、鋼盾は彼を上位能力者だと思った。

 だから、彼が無能力者だと知ったときは、随分驚いたものだった。

 見知らぬ自分を助けてくれたヒーローのような彼が、レベル0を余儀なくされている理不尽に憤ったりもした。

 
 だけど、正直なところ、鋼盾は上条当麻に嫉妬している。


 彼は、幻想殺しを持つが故に、根っこのところでは能力開発の苦悩を知らない。

 無能力者なのは幻想殺しのせいだとわかっているし、その幻想殺しは非常に強力な力だ。

 自分のように、わけもわからないまま何も成せないような無能力者とは違う。


 勿論、上条当麻はいい奴だ。

 上条には上条の苦悩があることは知っているし、彼が時折コンプレックスに沈んでいることも知っている。

 だけど、それでも、身勝手な嫉妬を止めることができない。



206 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/18(水) 22:18:47.97 ID:orIujKC4o



 例えば御坂美琴。

 七人しか居ない超能力者の第三位。名門常盤台中学校のエース。最強の電撃姫。

 超電磁砲。

 今日、ひょんなことから知り合いになった彼女は、そんな凄まじい肩書きの持ち主だった。


 率直に言って、鋼盾は御坂美琴に嫉妬している。


 数多くの逸話を持つ彼女の有名なエピソードとして、レベル1からレベル5に登り詰めたというものがある

 弛まぬ努力で能力を引き上げた彼女は、この街の学生たちにとっては模範であり希望であり象徴である。

 ―――だが、ひどく穿った言い方をすれば、初めからレベル1だったのだ。

 無能力者の鋼盾とは違い、努力するための取っ掛かりが初めからあったのである。

 梯子の一段目に、最初から脚が届いていたのだ。


 言うまでもなく、彼女は立派だ。

 能力者であることを鼻にかけるわけでもなく、初対面の冴えない鋼盾にも、きちんと敬意を持って接してくれた。

 それに彼女もまた、上条当麻へのコンプレックスに悩んでいることも知った。
 
 自覚のない恋心に戸惑い、それでも先へ進もうとあがき続ける、素敵な女の子だった。

 だけど、それでも、身勝手な嫉妬を止めることができない。


207 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/18(水) 22:20:55.16 ID:orIujKC4o



 鋼盾菊彦は嫉妬している。


 レベル1の身体強化(インナーブースト)である青髪ピアスに。

 無能力者であることに絶望せず、努力し続けることの出来る吹寄制理に。

 能力なんぞ何処吹く風よ、と言わんばかりに飄々とした土御門元春に。


 知っている。

 彼らは本当にいい人たちだ。

 言うまでもない。

 誇るべき友人たちだ。

 そんなことはもう大前提ですらある。



 だけど、それでも、醜い嫉妬を、抑えきれずにいる。

 ――――それは、なんという、無様さだろう。

208 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/18(水) 22:25:27.09 ID:orIujKC4o


 
 鋼盾菊彦は、純然たる無能力者だ。

 大抵の無能力者は、無能力と区分されながらも、一応は極めて弱い程度の能力の発露はある。

 例えば土御門元春は、レベル0の肉体再生(オートリバース)であり、多少ながら回復力に優れる能力者である。

 傷口にうっすらと膜を張る程度のチンケな能力だにゃー、と彼は笑うが、鋼盾にはそれすらもない。


 座学、投薬、電極、暗示、エトセトラエトセトラ。

 人智の限りを尽くした脳開発を経て、本当の意味でなにも生まれなかった本物の無能力者。

 書類上の能力すら持たぬと言う事実は稀有な例ではあるらしいが、それが救いになるわけでもない。


 なんのことはない。

 彼が、鋼盾掬彦が、この街の最底辺だ。


 一応は上条当麻もそのカテゴリに含まれるが、彼の場合は例外だ。

 異能のチカラを全て打ち消すという能力の性質ゆえ、そこに甘んじているだけに過ぎない。

 幻想殺しという規格外が、この街の作った尺度に収まらなかっただけの話なのだ。

 
 鋼盾だけが、なにも持っていない。

 この街が用意した強度判定を、定規に例えるならば、

 土御門や吹寄は5oだったり6oだったりの1cm未満、青髪は1cmを超え、御坂美琴は5cm以上。

 上条当麻は定規ですら破壊してしまうホンモノの規格外品。


 そう。

 鋼盾だけがきっちりぴったり、0oだ。

 計るまでもない、単位すら必要の無い純然たるゼロ。


209 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/18(水) 22:30:27.88 ID:orIujKC4o


 なんにもないのだ。

 いっそ笑ってしまいたくなるほどに、なんにもない。


 梯子にかける手がない。

 梯子にかける足がない。

 目がない、口もない、背骨がない、翼がない、牙がない、水かきがない、尻尾がない。

 この街に望まれるもの、なにひとつとて持ち合わせがない。


 そのくせ、己を蔑む声を聞く耳だけは、無駄に性能がいいのだから救われない。


 「無能」

 「欠陥品」

 「落伍者」

 「役立たず」

 「レベル0」



 (ああ、ほんとうにどうにもならない)



 どうすればいいのだろう。

 この街で、自分ほど価値のない人間はいない。

 ほんとうに、そうなのだ。
 

 パソコンのディスプレイは味気ない掲示板を映し出している。

 ひどくチープで機能も乏しい、カラーも最悪、製作者のセンスも使用者のセンスも疑ってしまいそうなサイトだ。

 でも、こんなネットの僻地に来るような人間は、そんなものを求めてはいない。

 求めているのは――――。


210 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/18(水) 22:31:24.38 ID:orIujKC4o



 “幻想御手をお譲りします。秘密厳守。即日可。価格は応相談”


211 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/18(水) 22:33:09.85 ID:orIujKC4o
 

 なんて、怪しい。

 絶対に、胡散臭い。

 こんな詐欺に引っかかるような馬鹿なんて、救いようがない。


 なのに、どうして。


 そんなものが希望の光に見えてしまうのだろう。

 そんなものに縋らなくては呼吸も出来そうにない自分はなんなのだろう。

 まったくもって救いようがない、このバカはなんなのだろう。


 だけど、それでも。


 日付は7月18日から19日へ。

 時刻は既に深夜1時。

 高校一年生の一学期の最後の日、夏休みを目前に控えたその夜に。


 鋼盾掬彦は、己の意志で、確かに道を踏み外した。

 震える指が、それでも奇妙なほど軽快にキーボードを叩く音を、彼は他人事のように聞いていた。




――――――――

212 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/18(水) 22:35:08.73 ID:orIujKC4o

 ここまで。

 ちょっと暗い内容ですね。彼を描く上では避けられないところです。

 欠片ほどの能力すら持たない、本当の意味での無能力者。
 一応オリジナル設定ですね。まあ演出というか伏線というか、そういうアレです。

 青ピの能力は原作の大覇星祭の辺りをヒントに、レベル1の身体強化(インナーブースト)に決定してみました。パチパチパチ
 
 「脚力、腕力を中心に、身体全域を強化する能力」「正確には亜種」「使用者のテンションによって効果が大きく増減する」
 「テンション次第ではレベル2くらいの出力も」「機械相手の身体検査じゃテンション上がらへんもんね」
 「おだやかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚め、スーパー青ピレベル3になる(嘘)」

 ……みたいな俺得裏設定があったりするのですが、活かす機会があるかどうか。
 >>72 >>76のお2人をはじめ、ご協力頂いた皆さんありがとうございました。

 スレタイにはつっこまねえぞ!キリがねえもんw
 ほんとうにありがとう。
 よければ20、21、22も考えてくれると嬉しいな!

 んでは週末に。

213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/18(水) 22:51:56.32 ID:URkrhqdj0


今、禁書は友達に貸してて手元に無いから
20、21、22のスレタイはお前らに任せたぞ
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 22:57:24.91 ID:q8W9rWFfo

このSS見てると鋼盾の苦悩が痛いほど伝わってくるような
感じる必要がなくても感じちゃうもんだよね、嫉妬
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 22:59:15.69 ID:q8W9rWFfo
佐天さんが(嫉妬を)感じちゃってると思うと興奮してきちゃいました><
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/18(水) 23:35:48.15 ID:wumlBM5a0
20は
鋼盾「……ヒーローなんか必要ない」
で頼む
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/18(水) 23:36:34.21 ID:URkrhqdj0
>>215
言われてみれば
アニメの超電磁砲でも
佐天さんが(野球の)バット握ってると思うと興奮するな
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/19(木) 00:09:49.73 ID:j2QZKFODo
>>215 >>217 おまえらww

シリアスな本編の余韻がぶち壊しだよww

明日が一巻のプロローグか・・・・・・ようやくだな。
時系列の管理がたいへんそうだががんばれ。
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/19(木) 00:59:13.17 ID:f6BBLmhlo
とりあえず適当に考えてみた

20スレ目
鋼盾「お前を…倒す!!」フィアンマ「メインデッシュの前に前菜か。せいぜい俺様を楽しませろ」

21スレ目
ミーシャ「kdjad次lfjd殺esg」鋼盾「うおおおおおおお!?」

22スレ目
鋼盾「僕も、みんなとずっと一緒にいたかった」神裂「――ッ!!」

なんとなくラストはここのスレタイ的に神裂さんを持っていきたかった
そういや鋼盾くんにとって神裂さんも嫉妬する対象だよな
才能の塊みたいな女だし
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/19(木) 01:04:33.60 ID:qZmbmuDAO
神は神裂に大いなる天分とスタイルを与えたが、時間だけはくれなかった
つまり更けg……
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/19(木) 01:06:48.16 ID:6xt05OTOo

まさかの能力名採用に俺歓喜
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/19(木) 01:09:54.64 ID:j2QZKFODo
神裂さんの肉体はあれが最盛期
つまりサイヤ人と同じで成長が早く老化が遅いんじゃないかと唐突に思った

そして23スレではドラゴンライダーだったな
15スレといい、浜面は完全に持って行かれた形になったワケだ。不憫
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/19(木) 20:18:12.29 ID:4qkpESev0

完全な無能力者が伏線か
魔術覚えたりするのかな
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/19(木) 22:41:28.53 ID:DjMtqUEz0
完全な無能力者ってせめて魔術使えて欲しいよな
使えても宗教うんたらかんたらだけど
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/20(金) 08:05:40.77 ID:hTgNN/6oo
まとめてみた
通して読むと胸が熱くなった


1スレ目  神裂「鋼盾――鋼の盾ですか、よい真名です」

2スレ目  姫神「私。魔法使い」 鋼盾・上条・禁書「………」

3スレ目  鋼盾「歯を食い縛れ最強(さいじゃく)。僕の最弱(さいきょう)は、ちょっとばかり響くよ」

4スレ目  土御門「カミやん、コウやん。オレってば実は天邪鬼(ウソつき)なんだぜい」 上条・鋼盾「……」チーン

5スレ目  鋼盾「どんな理由を並べても!それがこの子が殺されていい理由には、ならないんだよ!!!」

6スレ目  鋼盾「風斬ィィいいいいいいいいいいいいいいいいい いいいいいいッ!!」

7スレ目  オルソラ「まぁ、日村さんとおっしゃるのでございますか」鋼盾「僕の話を聞けぇッ!!」

8スレ目  鋼盾「『残骸』……?」
 
9スレ目  オリアナ「ぼうや、暇ならお姉さんといいコトしない?」鋼盾「な、ななななッ!?」

10スレ目  リドヴィア「これで終わりですので!」鋼盾「まだ分からないのかい?今日の主役は、僕たちじゃないんだよ」

11スレ目  鋼盾「今頃ふたりともヴェネチアかあ」 佐天「いいなあ、ヴェネチア」

12スレ目  美琴「こ、鋼盾さん、どうしよう、アイツに罰ゲームしなきゃ///」 鋼盾「どうどう」

13スレ目  鋼盾「前方の、弁当……?」 黒子「…一体どんなお弁当ですの?」

14スレ目  鋼盾「…どうしてアビニョンにお笑い芸人が?」テッラ「……」

15スレ目  鋼盾「楽勝だよ。超能力者」

16スレ目  五和「話なら聞いてあげますよ。さんざん(中略)さんざんグチャグチャのグチャにブチのめした後に!」鋼盾・建宮「ひぃ」

   アックア「天草式十字凄教、そして鋼盾掬彦。その名は我が胸に刻むに値するものとする!!」
 
17スレ目  キャーリサ騎士団長アックア「「「戻ったかッ!」」」「「「鋼 盾 掬 彦 !!」」」

18スレ目  鋼盾「さぁ、群雄割拠たる国民総選挙の始まりだ!!」

19スレ目  鋼盾「……どうして、ここまでひどい怪物になっちゃったのかな」上条「お前……!」

20スレ目  鋼盾「……ヒーローなんか必要ない」

    鋼盾「お前を…倒す!!」フィアンマ「メインデッシュの前に前菜か。せいぜい俺様を楽しませろ」

21スレ目  ミーシャ「kdjad次lfjd殺esg」鋼盾「うおおおおおおお!?」

22スレ目  鋼盾「僕も、みんなとずっと一緒にいたかった」神裂「――ッ!!」

23スレ目  鋼盾「……ドラゴンライダー、ですか?」 丈澤道彦「ああ、君のための機体だ!」



内臓潰し1スレ目
矢文「あの男こそが学園都市230万人の底辺、対能力者戦のプロ、路地裏の雄、内臓殺しの横須賀さ! 」

内臓潰し2スレ目
横須賀「その内臓をぶっ潰す!!」
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/20(金) 10:17:22.10 ID:uqTVMnl20
まとめ乙 こうやって見てみると
18と19の間に何があったのかが気になるな
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 11:15:04.82 ID:hDlTvhWRo
こうなると各スレのあらすじもほしいよなww
だれかかいてくれないかなー(チラッ
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 14:31:45.82 ID:O4KmqZWi0
スレタイ祭りに乗り遅れたからこっちで!
と思ったがタイトルが思いつかない罠。適当!

 ■────────────────────────────────■
 ■とある再構成の鋼盾掬彦(1)
 ■ (1スレ目  神裂「鋼盾――鋼の盾ですか、よい真名です」 )
 ■    【著/◆FzAyW.Rdbg  イラスト/灰村キヨタカ  定価 599円】
 └────────────────────────────────■
 無能力者の鋼盾掬彦、幻想殺しの上条当麻。禁書目録のインデックス。奇妙な縁が交差する。
 鋼盾と上条の住む学生寮に、純白のシスターがいきなり空から降ってきた。
「「ありえない……」」
 2人はつぶやくが、そのシスター姿の少女はこう言った。自分は魔術(オカルト)の世界から逃げてきた――と。
 ここは“超能力”が“一般科学”として認知された、アンチ・オカルトの学園都市。
 鋼盾と上条は『インデックス』と名乗る謎の少女の言動をいぶかしむが、3人の前に本当に“魔術師”が現れて――!
 学園アクションストーリー登場!

次巻予告風
内容がないようなのは仕様なwwww
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 15:28:49.45 ID:RYx289vIO
なんだただの電撃文庫新刊の予告か
とりあえず出たら3冊は買おう
230 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/20(金) 22:28:22.10 ID:svQAtox9o
どうも>>1です。
まとめ乙!予告乙!すげー!

さて、こんなスレに顔を出している貴方なら「【とある科学の超電磁砲】バナナマン日村似の鋼盾掬彦」というスレを知っているでしょうか
>>1は不勉強で今日初めて過去ログを読みました。予想通り日村ネタでいっぱいでしたが、その中に

“こいつ痩せればスクランの烏丸くんじゃね?”

みたいなレスがあり、「んじゃ烏丸くん太らせたら鋼盾くんじゃんよ!」と思ってしまった>>1 アホめ

結果コレ
http://iup.2ch-library.com/i/i0314691-1305896985.jpg

うわあ……
スクランファンにブン殴られるかもしれねえ……


場面は4スレ目のクライマックス!
背中刺す刃、土御門元春の攻撃に為す術もなく叩き伏せられた上条当麻を救うべく、
鋼の盾、鋼盾掬彦はその無謀とも思える戦いに挑む!


「上条くんのお父さんは、僕が救ってみせる!!!」

「……10秒。耐える事ができたら、誉めてやる」


↑は>>1の妄想です
本編がここまで進むことを保証するものではございません
悪しからず


本編更新は明日の夜の予定です。
よろしければお付き合いください。

それでは、また明日。
231 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/20(金) 22:50:20.29 ID:svQAtox9o
>>228
あえて禁書風のタイトルにするなら

「とある端役の禁書再編〈リミックス〉」かな。語感的に
remixよりreconstructionかもだけど、indexと韻を踏んでみる

ほんとにありがとうです
励みになります!
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/20(金) 23:18:53.98 ID:uqTVMnl20
>>230
明日、楽しみにしてる

もし 御使墜しまで話が進んだとしたら
鋼盾が入れ替わりを回避出来たのは
上条と腕相撲をしてる最中だったから

みたいな設定まで考えちまった
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 01:57:07.79 ID:c2/RrfJvo
土ww御ww門ww拳ww児ww
違和感仕事しろwwww
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 03:54:53.96 ID:+MsFYpEIO
>>230
綱盾かっけえw
まあここらへんの烏丸君はキャラ崩壊しまくってるけどな
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 08:55:58.01 ID:wGdX62DAO
画像見れん!
ガッデム!

今晩待ってる
236 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/21(土) 18:46:27.91 ID:UYVNxkuBo
 Q.御使堕しが発動中のエピソードですので、鋼盾君は他の誰かの姿になっている筈です
   なぜ本来の姿に見えてるのですか

 A,ヒント:心眼

 Q.何故このクソ暑い中に学ランなのでしょうか

 A.戦う少年の正装だから

 Q.4コマめ、しゃくれ過ぎじゃね?

 A.…………。


 やべえええ。
 一夜明けたら突っ込みどころ満載過ぎるぜ。
 
 御使堕しは漫画で省かれてたからイマイチ視覚的なイメージができてないのです←アニメ見ろよ。
 学ランとかもうすっかり忘れてました。しゃくれちゃったのは>>1の力不足ですね。
 つーか御使堕し編云々は後付もいいところ。サングラスと言ったら土御門だよね!播拳龍襲!!みたいなアレです。

 でもなんかすげえ楽しかった。
 もうやらんとは思うが、遊ばせていただきました。
 許せ。

 んじゃ飯食って推敲してくる。
 20時前後に投下しますので。

237 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/21(土) 20:04:07.30 ID:UYVNxkuBo
――――――――



 7月19日。

 夏休み目前の、一学期最後の登校日。


 鋼盾の通う高校でも、例に漏れず終業式が行われている。

 普通すぎるくらいに普通の学校であるこの高校は、終業式もやっぱり普通だった。


 普通に長い校長の訓話。

 普通にめんどくさい生徒指導の訓話。

 普通にうんざりとした生徒たちの表情。


 まったくもって普通に終業式をやり過ごせば、まったくもって普通の教室で今学期最後のHRが開かれる。

 そして、これだけは普通ではないミニマム先生である月詠小萌から、普通の通知表を普通に手渡された。


 評価の数字に一喜一憂する1年7組の面々。

 小さなコメント覧には小萌先生による今学期の総評もある。

 教師らしくしっかりとした文体で、しかし可愛らしく丸い字体でびっちりと記入されているそれ。

 本当に自分たちは担任に恵まれている、気恥ずかしくなるほどの優しい言葉を胸に、鋼盾はそう感じた。


 鋼盾の成績は、能力開発に関わる科目を除けばなかなか悪くない。

 中学の頃とは違い、それなりに真面目に授業に取り組んだ成果であるといえる。

 暗澹たる開発科目については最初からわかっていたこととはいえ、目を逸らさざるを得なかったが。


238 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/21(土) 20:10:13.18 ID:UYVNxkuBo


 まあ、とりあえず自席で潰れている上条よりは数段マシな成績だろう。

 もっとも彼の場合、成績云々は勿論のこと、持ち前の不幸&お人よし&巻き込まれ体質ゆえの遅刻欠席欄がやばそうだ。

 チラと覗いたその数字に鋼盾は戦慄した。わかっていた事とは言え、一学期でその数字はちょっとありえない。

 恐らくは夏休みに大量に補習をねじ込まれるに違いない。

 まあ、開発の単位が危ない鋼盾もいくつか補習が確定している身ではあるのだけれど。


「あーーーなんだよコレ。
 ……不幸だ」


 来年には割とマジで後輩になってるかもしれない、今のところはクラスメイトの上条当麻がしおしおと呟く。

 とはいえまったくもって自業自得の産物だろうに―――クラス全員、そう突っ込みたいのを抑える。


 それについては適任者がいる。

 彼女に任せておけばいい。

 さあ、来るぞ。


「ふざけたこと言ってんじゃないわよ上条当麻!
 貴様、あれだけ遅刻早退無断欠席を繰り返しておいて! まともな評価が貰えるとでも思っているの!?
 ちょっとは弁えなさいこの表六玉!! いいかげんに恥を知りなさい恥を!」

 
 吹寄制理が吼える。

 人生に手を抜く輩が誰より嫌い、貴様みたいなヤツのことよ上条当麻! と公言する彼女の情け容赦ない突っ込みに上条は更に沈み込む。

 彼のそのあまりに情けないザマに、吹寄のイライラは更なる加速を見せた!


「シャキッとしなさい上条当麻!! 一学期最後の日に情けない真似晒してんじゃないわよこの馬鹿!!!」


 胸倉を締め上げるように上条を引っ張り上げる吹寄。

 そのあまりの威容、凛とした強さ、何よりカミジョー属性を無効化するその魂。

 遠巻きに成り行きを見守っていた男子生徒たちから、吹寄制理への賞賛の声が零れる。

239 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/21(土) 20:12:35.82 ID:UYVNxkuBo


「す、すげえ! マジですげえよ!! ……流石吹寄だ! 俺たちが言いたいことを迷わず平然と言ってのける! そこに痺れる憧れるゥ!」

「いつものパターンなら『か、上条君、大丈夫だよ! そんなの気にすることないよ』とか思わずフォローにいっちゃうパターンなのに!」

「そんであの旗男が『不幸だー』とか言いいながら、結局なんだかんだで一番美味しいポジションを独り占めしちゃう筈なのに!!」

「にゃー、相変わらず凄まじいぜよ吹寄! アイツには“対カミジョー属性完全ガードの女”の称号が相応しいですたい!!」

「我々人類の希望やね。吹寄こそが悪しき上条帝国を打ち破る為、神が遣わした戦乙女(ラ・ピュセル)かもしれへん!!」

「さあ、戦いの時が来たのだ! もう何も怖くない!! 天命は我等に有り!!!」

「青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・帝台・文王・三台・玉女……!」

「黄昏よりも昏きもの、血の流れより紅きもの……!」

「謳え、勝利の歌を! 聴け、我らの咆哮を!」

「オン・アニチヤ・マリシエイ・ソワカ」

「覚悟はいいか?――俺はできてる」

「爆弾なら、この胸の内にある」

「臨兵闘者皆陳列在前」

「革命の時は今!」

「常住戦陣!」

「悪即斬!」

「いざ!」

「応!」



「さあ、往くぞ同胞―――我らが吹寄様(プリエステス)から得た教えは!!」

「「「「「「「「「「「「 “ 救 わ れ ぬ 者 に 救 い の 手 を ”!!! 」」」」」」」」」」」


240 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/21(土) 20:37:30.99 ID:UYVNxkuBo



 鬨の声と固く握った拳を天へと穿つ益荒男共。

 士気は鰻上り、皆一様に意気軒昂、既にボルテージはMAXだ。

 嗚呼、思えばこの一学期はまさに上条当麻による上条帝国の建国期であった。

 クラスの女子相手に次々とフラグを立ててゆく一級フラグ建築士の仕事ぶりに、男たちがどれほどの涙を流したことか。

 皆が、この時を待っていた!

 一斉蜂起の時が来た!!

 さあ諸君!!!

 戦争だ!!



 
(……救われぬ“我ら”に救いの手を、だよなあ、どう見ても)


 乗り損ねた鋼盾は、包囲網の外からぼんやりとそれを眺めていた。

 このままじゃどうなるかわかったものではない。

 そのぐらいテンションがアレなことになってる。


 ……まあ、それでも今はHRの最中だ。

 
「こらーーーー!! 野郎ども!!! 静かにするのです!
 まだHRはおわっていないのですよーーーーー!!」


 小萌先生の可愛らしい一喝が響いた。

 効果はステータス異常回復、バーサクは解かれクラスに平和が戻った。


 アンチカミジョー属性連合軍、略称<抗上軍>

 無類の結束を誇るかと思われた組織が、結成後一分で解散の運びである。


 ――しかし、忘れるな上条当麻。

 此処に種は蒔かれた、いや、ずっと前から蒔かれていたのだ。 


 種が芽吹き花をつけ実を成し種を遺すように

 我等は滅びぬ、何度でも蘇る


 草木の理

 雑草の魂


 それらが貴様に絡みつく

 それらが貴様を食い破る

 
 綺麗な花が、咲くだろう

 ――――貴様の墓前に、よく映える綺麗な花が



 男たちの戦いは終わらない。

 まったく、益体もないことだ。
241 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/21(土) 20:39:33.70 ID:UYVNxkuBo



 ……まったく、いつだってこのクラスはこんな感じだ。

 きっと、二学期もこの調子だろうと、鋼盾はちいさく笑った。

 とても楽しいに違いない。大覇星祭に一端覧祭、その他イベントも盛り沢山だ。


 でも。


 そこに自分がいることは赦されないのかもしれない。

 自分のような、道を踏み外しそうとしている人間には。


 携帯を開きながら鋼盾は、そんなことを思う。

 “新着メール 1件”
 
 自宅のパソコンを経由して、昨晩アドレス帳に加えたばかりのアドレスからメールが届いていた。


 タイトルは、「取引詳細」。
 
 本文は待ち合わせ場所と時刻だけの、簡素なメール。

 料金は、昨夜既に提示されていた。


242 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/21(土) 20:44:09.43 ID:UYVNxkuBo


 10万円。

 それが高いのか安いのか、鋼盾には判断はつかない。

 微々たる奨学金を遣り繰りする彼にとっては大金だったが、それでも搾り出せない額ではない。


 この額が適正だとしたら、鋼盾がこれまで重ねた努力も払った対価も、10万円以下の価値しかないのだろうか。

 無能力者たちが流した汗も涙も、積もった苦悩も塗りこめた感情も、木っ端のようなものなのだろうか。


 そうだとしたら―――それは、どういうことなのだろう。

 ぼくらは、どうすればよかったのだろう。


「………………ぁ」 

 
 渦巻く感情は言葉にはならない。

 口中で解けて千切れて、結局なにひとつとしてまとまることはなかった。


 結局、覚悟ひとつ固められぬまま、鋼盾掬彦は罪を犯す。
 
 
 ああ、帰りに忘れずにATMへ寄らなくては。

 「夏休みをよりよく過ごす十三の心得」とやらについて語る小萌先生の声を聞きながら、鋼盾はぼうと雲を眺めた。





――――――――
243 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/21(土) 20:46:07.36 ID:UYVNxkuBo
 ここまで。

 途中更新が途切れてスミマセン。
 書き込む段になってアイデアが湧くのはどうしてなのか。

 またもや、こんなノリです。
 吹寄さんが出てくると、筆が明後日の方向に走ります。

 ああ、忘れないうちに。
 吹寄は、俺の嫁な(キリッ

 どうなんでしょうね通知表。
 よくわからないので普通の学校のと同じように書いちゃいました。
 まあ、小萌先生のメッセージが書かれていればいいなあとか。

 後半は、前回に引き続きウダウダ。
 自縄自縛の五里霧中。

 ではまた。
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/21(土) 20:52:21.34 ID:cTM9O5XV0
乙!
書き込む段になってアイデアが浮かぶのはよくあることだ。
結局何の意味も為さない書き溜めに失望すること多数。
ただでさえ投下速度遅いのに……
↑ここまで自分語り

しかしいよいよ進展開か、胸熱。
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 23:16:02.84 ID:G1oibdBYo

日常から不穏な空気への持って行き方がうまいな
あと関係ないけど連続待つてた記録がここで終了しちゃったよヤダー
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 04:18:11.91 ID:HgJOqa3IO
というかまだ一巻の内容にもはいっていないんだよなw
スレタイまでまだまだかかりそうだ
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 06:19:48.28 ID:f+Vp37T3o
この日の夜にvs美琴か

一巻は意外と長いんだよな
インデックスが寝込んでたり上条さんが寝込んでたりでスキップされてるから忘れがちだけど

248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 09:57:42.92 ID:Y/J/1IsAO
雷落ちるのかな
249 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/05/22(日) 20:34:32.58 ID:N5ECGCuko
>>1です。
今日は更新ないんだぜ。コメントありがとうです。

もうちょっとだけ日常描写が続きます。起伏に欠けるし鬱鬱だし、見てくれる皆さんが飽きてなければよいのですが。
うまいこと日付を飛ばすテクが欲しいけど、掘り下げたい部分もたくさんあって困りものです。

でも
ナレ「一ヵ月後、そこには元気にご飯を食べるインデックスさんの姿が!!」
鋼盾「もう二度と幻想御手には手を出したりしないよ……」
とかやったらお前ら怒るよな?

>>245
いつもサンクス!待つてくれてる人がいるのはそれだけで嬉しいです。投下のモチべが上がります。
でも折よく予告があったらで結構ですので、無理せんといてな。
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 21:23:57.51 ID:bIy48+2Ho
禁書「インデックスは、とうまのことが、大好きだったんだよ?」

このままではあまりにもターゲットがかわいそうなので、ここでネタばらし

(中略)

当時上条当麻をを受け持った担当医
ヘブン・キャンセラーさん当時55歳

冥土「あの時、僕は彼女を落ち着かせるのが最初にすべき事だと思ったんだね?」

(中略)

上条「もう二度とインデックスをからかったりしないよ」
251 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/24(火) 19:03:25.17 ID:8fZZxdKWo
どうも>>1です。
明後日から急遽出張が入ってしまったため、本日どこかで更新します。
……週末更新の約束が全然守れてねえな。すまんです。

>>250
ナイス! まるみえネタなんて最近の子は知らないかなーなんて思ってましたがw

んでは、のちほど。
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 19:06:15.50 ID:fxKBvubc0
待ってる
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 20:31:13.82 ID:YZhCoiQ0o
こんどこそ待つてる
254 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 00:38:10.45 ID:wXEzKC7lo
待たせまくりですまんです。日付けかわっちまった。
ルーターの調子が悪いのか、なんかうまく繋がらないかった上寝落ちてました。
ほんとごめんよ、では投下。
255 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 00:40:36.13 ID:wXEzKC7lo



 最後のHRはつつがなく終わり、いよいよ下校の段となった。

 早々と家に帰るものもあれば、名残を惜しむように友人たちと雑談に興じるものもある。

 中には黒板に定番の“わーい、夏休みだ!”なんて落書きをして遊んでいる連中もいて、笑い声も響いている。

 明日の取引の事もあり遊ぶ気にもなれず、早々に帰宅の途に着こうとした鋼盾だったが、しかしそんな彼を呼び止める声があった。


「コーウーやーーん!!
 かむひぃあああああ!!!!」


 訂正、呼び止めるアホな大声があった。

 見れば青髪ピアスがブンブンと手を振っており、隣では上条が耳を塞いで笑っていた。

 教室に残る連中の目もそちらに向いたものの、声の主が青髪だとわかると皆すぐに興味を失ったようだ。

 彼が一学期で積み上げた数々のアレに比べれば、あの程度は本当になんでもない。

 おまえの奇行にはもう慣れた、とでもいわんばかりだ。

 おまえら、かも知れないなあと鋼盾は思ったが、深くは考えないようにして彼らの元へ向かった。


「どうしたのさ大声だして。なんか発見でもしたの? 証人がいるとか?」

「どうしたもこうしたもヘウレーカもないでコウやん!!
 夏休みを迎えるにあたりボクらはやらんといけんことがあるやろ?!」


 なんだそりゃ、心当たりなどない。

 隣の上条を見やれば、苦笑い気味にフォローしてくれた。


「あー、悪い鋼盾。今夏休みに俺たち4人でどっか遊びにいかないかって話をしてたんだよ。
 そしたらこのアホのテンションが振り切れちまったんだ」

「せっかくやし今から遊びにいかへん?
 ボク今日は夕方からバイトやねんけど、ファミレスかそこらで昼飯がてら夏休みの計画を立てようやないの」

「そんなワケなんですよ。もしかしてなんか用事あったか?」

「ちょっとATMでお金下ろしたいくらいかな。そういうことなら付き合うよ」


 ついさっきまで“遊ぶ気分じゃない”なんて思っていたのに現金なものだ、と鋼盾は思う。

 友人たちへの嫉妬も能力の渇望も自己嫌悪も、こうして彼らと一緒にいれば忘れてしまうことが出来る。

 胃が痛くなるような感情に潰されそうになるのは、決まって独りになってからだ。

 
256 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 00:47:23.35 ID:wXEzKC7lo

 
「さっすがコウやん!つっちーとはエラい違いやで!」

「そういえば土御門君は? いないみたいだけど」


 抗上軍で気炎を上げていた金髪グラサン、土御門元春は何時の間にやら姿を消している。

 飄々としているようで意外と人付き合いのいい彼が、このような場所にいないのはなかなか珍しい。

 上条はああ、と呟くと溜息混じりに名前をひとつ放ってきた。


「舞夏」

「ああ、例の妹さんね」


 それで通じた。

 繚乱家政女学校に通っているという義妹への、土御門元春の偏愛っぷりはもはや周知の事実だ。

 妹絡みになると暴走しがちなシスコン軍曹は、どうやら愛しの妹さんの下へ馳せ参じたということなのだろう。


「繚乱のメイドさんだったっけ。……なんでも夏休みも碌に取れないとか」

「そ。メイドに休息は必要ないんだぞー、とか言ってやがったっけな。
 ……すげえ話だよな。この街で名門なんて冠の付くところはやっぱどっかぶっ飛んでるよなー」

「だね。すると今日は久々に兄妹水入らずってワケだ」

「建前としてはハウスキーピングの実地研修とかそんな感じみたいだけどな。
 昼飯作って待ってるらしいから俺たちとファミレスなんてわけにはいかねーんだろうよ」

「そんな裏切り者の話はどうでもいいんや!!
 ……義妹! メイド! 女子中学生! 手料理! なんやソレ!! あやかりたいっつーねん!!」


 咆哮を上げる青髪ピアスと適当にやりすごしつつ、連れ立って教室を出ようとすると、クラスメイトの女子が三人に声を掛けてきた。

 黒板前ではしゃいでいた生徒のひとりで、どうやら黒板の落書きに一筆入れていけということらしい。

 見れば黒板には色とりどりのチョークで皆のメッセージやイラストが書き込まれており、雑然無秩序かつ華やかな有様だ。

 思わず三人も 「「「おーーーー」」」 と驚きの声を上げた。


「なんかすげーな」

「おおお、青春っぽいやないの!!テンション上がってきたでえ!!」

「ほんと、すごいね」


 ふふーん、と胸をはる女子は3人にチョークを手渡し、「空いてる所になんか書いて!」と笑った。

 結局残っている連中は軒並み参加していたようで、各々が好き勝手に好きなことを書いたようだ。

 “彼女を作る!!”“3キロやせる!!”“大覇星祭を成功させる”“ゲーム三昧”“新人戦レギュラー!”などと各々の夏の抱負やらなにやら。

 しかし微笑ましいコメントが溢れる中、一ヶ所だけやたらと負の想念が渦巻く場所があった。


「オイなんだよこの“上条許すまじ”って! 太字だし! しかも“←同意”“←旗男爆発しろ”とかなんとか!
 これイジメじゃねーか! なにこの連携!!」

「いやー上やん、これは愛やで」カキカキ

「そうだね」カキカキ

「おまえらもレスしてんじゃねえよ!」

257 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 00:49:41.52 ID:wXEzKC7lo


 新たに“←独占禁止法違反”“←旗に雷落ちろ”とのコメントが添えられる。

 後者が鋼盾のもので、件の電撃姫に肖らせてもらった。

 上条もソレに気付いたようで、なんともいえない顔をしている。
 

「ま、冗談は置いといて、ボクも一筆いかせてもらうでー」

「なんて書こうかな」

「と、言いつつ消さねえのなおまえら……
 はあ、不幸だ」


 そういいつつ上条も手を動かす。
 
 書かれた文字は “せめて平穏な夏休みを”。
 
 実に、彼らしい一文だ。


 青髪もまた、迷うことなくチョークをふるう。

 曰く “大人の階段のーぼるー ボクはそう シンデレラさー”

 ……どうしようもなく、彼らしい一文だ。


 さて、と鋼盾は迷う。

 まさか“幻想御手でレベルアップ!”なんて書くわけにもゆくまい。

 ……まあ、あまり深く考えても仕方がないだろう。


258 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 00:50:32.52 ID:wXEzKC7lo


 “皆でそろって、二学期を迎えられますように”


259 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 00:52:52.90 ID:wXEzKC7lo


 ……ちょっと、固過ぎただろうか。

 それでも正直な願いを、控えめに小さく書き記した。


「ほーーう、さすがコウやん。よくそんな恥ずかしいこと書けるもんやなー」


 シンデレラに言われたくねえよ、と振り返る。

 すると、青髪・上条のみならず、数名のクラスメイトがニヤニヤとこちらを見ていた。


「ふふ、鋼盾くんがこんなこと書くなんてねー」

「意外」

「そうかあ? 鋼盾らしいだろ」

「そうかも」

「いやー、青春だね」


 うわ、やっちまったと鋼盾は思わず赤くなる。

 これは恥ずかしい。

 微笑ましいものを見るような目でこちらをニヤニヤ眺める目・目・目。

 すると、さっきの仕返しだとばかりに上条が笑いながらチョークを走らせた。


 “ ←by鋼盾 ”

 
「うわあ!? 上条君! 匿名だろこういうのは!」


 慌てて黒板消を取ろうとする鋼盾だったが、既に青髪によってキープされていた。

 他の連中もわらわらと “←鋼盾マジイケメン” “←鋼盾△” “←本日のMVP” などと矢印を伸ばした。

 うああと頭を抱える鋼盾、これは本気で恥ずかしい。

260 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 00:54:33.36 ID:wXEzKC7lo


「さーて鋼盾、感想は?」


 笑みを深くする上条とクラスメイトたち。


「……やっちまった、って感じかな。ホント、勘弁してよ。
 ―――でも、消すには惜しいね、コレ」


 まだ顔が火照っているのがわかる。

 もうちょい無難なこと書いときゃよかったと思う反面、くすぐったいような嬉しさがなんともいえない。

 今から黒板を消さなきゃいけないのに、そうはしたくないとも思ってしまう。


 クラスメイトたちは、そんな鋼盾の言葉に一様に首を傾げた。


「え? 消すのコレ?」

「いや、これは消されへんやろ」

「残しとこうよ二学期まで」

「だよなー」

「うん」

「ね」


 あー、こいつら本気でわかってないや、と鋼盾は溜息を吐く。

 一人くらいは気付いてもよさそうなものだろうに。


 ぼそり、と鋼盾は残酷な台詞を投げ込む。


「補習」

「「「「「「「「 あ 」」」」」」」」」


 もう明日には補習が始まるのだ。

 黒板は綺麗にしておかなくてはいけないだろう。

 あまりの正論に、すっかり盛り下がる一同。

 そんな面々を見渡し、鋼盾は言う。

 
「……記念写真でも撮ろうか。
 みんなでさ」


261 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 00:55:53.32 ID:wXEzKC7lo



「うおー鋼盾天才!」「誰のカメラが性能いいかな?」「俺の2000万画素でスマイルシャッターでRAW撮影OK!!」「よくわからんがGJッ!」
「わたし小萌先生連れてくる!」「先生泣いちゃうかもね」「俺まだ学校に居るヤツ集めてくるよ」「俺も!」「メール回せ!」「連絡網!」
「集まるまで黒板もっとデコるわよ!」「よーし!俺も一筆“←鋼盾になら抱かれてもいい(はぁと)”なんちゃって」「 そ げ ぶ !!」


 火がついたように動き出すクラスメイトたち。

 まったくもって、学年一の団結力は伊達ではない。

 自分の一言でなんかエライことになってしまい、鋼盾は戸惑いを隠せない。

 おろおろしていると、がしりと肩を抱かれた。


「いやー、ウチのクラスはお祭り好きばっかりやなー!
 ……たいしたもんやでコウやん。コウやんのそういうとこ、ボクほんま尊敬するわ。
 ホンマは学級委員のボクが気付かなきゃいけんことなんやけどな」

「え、あ」

「あ、つっちーも呼んだろ」

「……あー、いいのかな?
 妹さんとの約束があるんだし」

「いやー。
 これで呼ばれんかったら後で怨まれるて」

「……そうだね」

「せやで」


262 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 00:58:49.71 ID:wXEzKC7lo


 結局、30分を待たずして全員が揃ったのだから、まったくもって驚きの団結力であるといえよう。

 土御門もおっとり刀で駆けつけ「にゃー! 怨むぜコウやん!! だが超GJだぜい!」と親指を立ててくれた。

 その指でもって黒板に “舞夏ラブ” “メイド王国建国” なんて躊躇いなく書きやがるあたり、ホンモノ過ぎる。

 黒板はもはやカオスどころではないほどに書き込まれ、傾ければ文字が零れてしまいそうなほどだ。

 
 全員で机やら椅子やら教卓やらを、教室の後ろへと押しやり、並ぶスペースを作る。

 黒板を隠さず、それでいて全員の顔が写るように並ぶ作業は困難を極めたが、気合でカバーだ。

 栄えある中央の位置は担任の小萌先生と立役者の鋼盾に譲られた。


 写真部の顧問である災誤先生(意外なことに!)が撮影役を引き受けてくれたため、カメラも万全だ。

 黒板全てを写すために、体育倉庫から脚立まで引っ張り出してくれたのだから頭が下がる。

 
「災誤先生! おーけーですかー?」


 小萌先生のはしゃいだ声が響く。

 生徒たちが自主的に動いたことが嬉しくて仕方がないといった風情だ。

 
 天井に頭をぶつけそうになりながらも脚立の上で親指を立てて応える災誤先生。

 なかなかユーモラスな姿だが、カメラの構え方も堂に入っている。

 カメラは手に持ったデジタル一眼レフの他に、首から学園都市では殆ど見掛けないフィルムカメラも下げられていた。

 ひどく年季の入った機械仕掛けの古風なカメラは、災誤先生思い出の1台だったりするのだろうか。


 さあ、準備は完璧だ。


「それではみなさん! レンズをしっかり見るのですよー!
 ……では! さーーん! にーーい! いーーーち!」

263 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 00:59:23.53 ID:wXEzKC7lo


 ぱしゃ。


264 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 01:01:31.31 ID:wXEzKC7lo

 ―――こうして。

 1年7組の突発的な記念写真撮影は、皆の手で滞りなく行われた。


 手ブレをおこさないシャッタースピード、十分な被写界深度、正しくカメラを保持する撮影姿勢。

 適切な露出と整理された構図、そしてなにより被写体の溢れんばかりの笑顔。

 良い写真に必要なものが全て揃った珠玉の一枚。

 後に小萌からのプレゼントとして、皆に一枚ずつ配布されることになるその写真。

 
 高校生活で撮影されるであろうたくさんの写真、その中の一葉に過ぎないのかもしれないけれど、

 それは鋼盾掬彦にとって、ひどく思い出深い一枚となることとなる。


 友人と恩師、笑顔の皆と笑顔の己。

 ありふれていて、それでいてかけがえのないもの。

 そのときは気付けずにいたが、彼の望んだすべてがそこには確かにあった。


 平穏な日常。

 ずっと続くかと思われた愛しき日々は、しかし唐突に失われることとなる。

265 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 01:02:45.42 ID:wXEzKC7lo


 夏休みが、幕を開ける。

 鋼盾にとって忘れられない夏が始まる。
266 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 01:06:12.78 ID:wXEzKC7lo


 写真の中、鋼盾と肩を組み楽しそうに笑う少年

 不幸体質でフラグ体質でトラブル体質

 偽善使いの幻想殺し

 英雄<ヒーロー>


 上条当麻


 彼の身に巻き起こるライトノベルのような冒険活劇

 とびきりのヒロインが巻き起こすボーイ・ミーツ・ガール

 科学万能のこの都市に、世界の裏を染め抜いた荒唐無稽なオカルトが忍び寄る

 科学と魔術が交差し、絶望と希望が交じり合い、運命が捻じ曲がり、遊戯盤は差し替えられる



 “ 皆でそろって、二学期を迎えられますように ”



 黒板に書かれた祈りの言葉は、もう消されてしまった。

 文字はチョークの粉と化し、風に吹かれて、淡く儚く消えてしまった。

267 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 01:20:50.78 ID:wXEzKC7lo


 物語が、幕を開ける


 鋼盾掬彦

 鋼の盾、という大仰な名を持つ少年


 彼の物語が、幕を開ける




 
268 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 01:26:36.10 ID:wXEzKC7lo


 脇役になり損ねた主人公

 自己嫌悪に苦しみ、周囲を嫉み、それでも日々を精一杯生きる普通の少年が

 おっかなびっくり、科学と魔術の交差する鉄火場へと歩き始める。


 そして

 彼はその果てに、ひとつの選択を迫られることとなる
269 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/25(水) 01:31:57.39 ID:wXEzKC7lo

――――――――


 ここまで。


 と、いうわけで“とある端役の禁書再編<リミックス>”、ようやく原作一巻に追いつきました。

 といってもいままでも本編でしたが。さすがにアレをちょっと長いプロローグでしたとは言えねえぜ。


 次回更新は7月20日、運命の朝からのスタートです。

 鋼盾くんは、今のところたいした影響を及ぼしてはおりません。

 基本的に原作と同じ条件でのスタートですが、これからはちらほら変わってくる部分もあるかと思います。


 出張+週末に用事があるので投下は難しいかもです。

 週末月末大安のコンボでヤバイ。推敲も不十番ですので、少し間が開くかもしれません。

 あと、キリのよいところなので登場人物一覧でもつくろうかね。


 んでは


今回の反省点

 ・災誤先生を写真部顧問にしてしまった
 ・青ピ回にするはずが、ならなかった
 ・嫁出し損ねた
 ・寝落ち
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/25(水) 01:39:53.53 ID:n+wcJzpAO
乙!
ほのぼのSSじゃないんだった……
しかし鋼盾くん、フラグ立てすぎだぜい……(色んな意味で)
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/25(水) 02:29:28.37 ID:5t1o07rAO
乙!
ここから加速か。

青春時代いいな
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 03:03:13.85 ID:DD4Bdmnko
なんだこのとてもいい話……
泣きそうになったじゃねえかチクショウ

コウやんマジイケメン
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 04:00:30.94 ID:1wynCXDw0

黄泉川がうらやましそうに見ているのを幻視した
そして写真部顧問の最後先生、意外だけど悪くないなww

>>ライトノベルのような冒険活劇wwww
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/25(水) 09:18:28.27 ID:punZQMNVo

そういえばまだ始まってなかったな
wktkしてきた
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/25(水) 09:54:24.01 ID:YdyI5TRt0
乙!
鋼盾がどう変わるのか、というか変われるのか楽しみ
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga sage]:2011/05/25(水) 10:15:12.21 ID:9h2UzYOo0
乙! とある端役の禁書再編ってうまいな
集合写真のくだりで中学時代を思い出して泣けてきた
鋼楯はいじめられっこなイメージだったけど、なかよしでいいと思った

>>226見ると上条さんと協力体制なのかな?
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga sage]:2011/05/25(水) 10:35:24.99 ID:9h2UzYOo0
>>266の間違いです。すまん。しかも盾だし!
鋼盾が幻想御手使ったことを知ったら上条さんは説教するのかね
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/25(水) 18:46:59.47 ID:NFQi8O9b0
>>277
上条さんは上条さんで事件に巻き込まれたり事件に首突っ込んだり
フラグ立てたりで爆発しろってことだろ
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 20:28:19.69 ID:qNIMR3ido
もうコウやんがヒロインでいいや
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) :2011/05/26(木) 01:43:02.79 ID:YQU6DYpKo
コウやん(^ω^)ペロペロ
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2011/05/26(木) 01:43:57.80 ID:YQU6DYpKo
駄レスでageてしまった…
すんません…
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 23:22:20.95 ID:GR0oBVwqo
おすすめSSスレから来ました!
すげー描写が好み。美琴との会話の辺りが大好きです
このあとの展開も楽しみ!

あと土インの人だったんだな!
あの雰囲気も大好きでした!
このスレ終わったらでいいんで続き待ってます。

乙!
283 : ◆FzAyW.Rdbg :2011/05/28(土) 00:51:45.65 ID:9wEaIp+yo
>>1です
レスサンクス!

鋼盾ヒロイン計画か

 ・マッシュルー……前髪ぱっつんのショートボブ
 ・強いコンプレックスを抱えながら健気に日々を過ごしている
 ・黒板に “皆でそろって、二学期を迎えられますように” とか書いちゃって赤面
 ・禁書には美少女しかでないと決まっている
 ・上条さんに路地裏で助けられている
 ・クラスメイトであり、いっしょに昼飯を摂る間柄
 ・なぜか、家が隣

やべえ、なんかやべえ
なんか本気でやべえぞこの話題は危険だぜ

あと土×インデックス気に入っていただけたようでなにより
そんな貴方は今回の登場人物紹介を凝視すると良いもことあるかも

今回の更新は人物紹介のみ
一度どうしても書いてみたかったでござる

んでは、参ります。
284 : ◆FzAyW.Rdbg :2011/05/28(土) 00:54:05.60 ID:9wEaIp+yo

■とある端役の禁書再編 登場人物紹介 (読み飛ばし可)

鋼盾掬彦 ―――― 無能力者

 とある高校の1年7組に所属する男子生徒。
 ぼっちゃり体型とビシッと決まったマッシュルームカットがチャームポイント。

 脇役になり損ねた主人公。
 名前の読みは本当に正しいのか。そろそろインさんが出てくるので訂正がきかなくなる予感。

 学園都市には中学校から編入。弱い自分を変えたいと意欲的に能力開発に取り組むも、まったく成果がでず、己自身に絶望する。
 以後、抜け殻のように中学校生活をやり過ごすも、進学した高校でよい友人に恵まれ、平穏な日々を送っている。
 使用者のレベルを引き上げる効果を持つという幻想御手の噂を聞き、入手を試みるが……。

 主人公であり、彼視点で物語は進むものの、けしてヒーローではないというキャラクター。
 自己撞着の自家中毒、自意識過剰な自画自蔑、自暴自棄と自問自答、自縄自縛で自己否定。

 高校一年生の夏休み、彼は道を踏み外した挙句、科学と魔術が交差する物語へと巻き込まれてゆく。


上条当麻 ―――― 幻想殺し

 とある高校の1年7組に所属する男子生徒。学生寮では鋼盾の隣に住んでいる。デルタフォースが一角。
 ツンツンに固めた髪型と不幸体質、路地裏ライフで鍛え上げられたしなやかボディが特徴。旗男。

 主人公ではないが、相変わらずのヒーロー。
 まずはそのふざけた幻想をぶち[ピーーー]。

 基本的には原作のまま、非日常を転がる破目になる。
 学園都市の人間でありながら、しかしこの街を支配する序列に収まらぬ例外中の例外。


土御門元春 ―――― 調停者

 とある高校の1年7組に所属する男子生徒。デルタフォースが一角。
 金髪とサングラスとにゃーだぜいですたいの人。腕が異様に長いと言う初期設定は劉備玄徳からなのか。

 表向きは普通の男子高校生でメイドと義妹愛のオーソリティ、その正体は裏方に徹する多重スパイ。
 ヒーローにはなれそうにもないが、だからこそ見える地平もあるのかも。

 語られぬ過去、複雑すぎる立ち位置。飄々と周囲を翻弄しつつ、その実誰よりも世界に翻弄されているのかもしれない人。
 余談ですが<背中刺す刃と献身的な仔羊>の初恋設定はこちらでも一応残してます。だれか陰陽目録書かねえかな。


青髪ピアス ―――― クラスメイト

 とある高校の1年7組に所属する男子生徒。学級委員。デルタフォースが一角。
 青い髪と派手なピアスな身長180pの残念イケメン、誰も本名を言わないのは世界の約束。

 能力は身体強化(インナーブースト)で、レベルは1。
 テンション次第でレベルの壁を凌駕する可能性を持つ。

 本人曰く、あらゆる萌属性を受け容れる包容力の持ち主で、愛の伝道師。
 精力的に活動を続けるものの、もう夏だと言うのに未だ春がこない。


吹寄制理 ―――― クラスメイト

 とある高校の1年7組に所属する女子生徒。
 身長が高くスタイルにも恵まれた掛値なしの美人であるも、不思議と色っぽさを感じさせぬルックス。

 大覇星祭、一端覧祭の運営委員を精力的に務め、クラスでも中心的な人物。
 努力家で面倒見のよい姐御肌な性格。愛読書は通販生活のカタログ。

 無能力者はこの街でどう生きてゆけばよいのか、突きつけられたその残酷な問いに、
 誰よりも確かに答えを出し、それを体現し続ける強い女の子。俺の嫁。


その他生徒 ―――― クラスメイト

 とある高校の1年7組に所属する生徒たち。
 学園モノの主人公のクラスには、個性豊かでノリのよいモブが溢れてると決まっている。
 特に上条を追い詰める時のチームワークのよさは異常。

 とある高校はかなりランクの低い学校であり、学生の殆どはレベル0〜1程度。
 誰しも少なからず挫折や劣等感を抱えているも、それでも日々を楽しく過ごしている。

 みんな担任の小萌先生が大好き過ぎてヤバイ。超ヤバイ。
285 : ◆FzAyW.Rdbg :2011/05/28(土) 00:55:44.10 ID:9wEaIp+yo


月詠小萌 ―――― 先生

 とある高校の1年7組の担任。担当科目は化学。
 超能力の専攻分野は発火能力者(パイロキネシス)であり、超能力全般への知識も深い。

 身長135cm、子供服を颯爽と着こなすミニマム教師。
 入学当時の上条に、迷子に間違えられて高い高いをされた壮絶な過去を持つ。

 教育熱心で生徒、同僚からの信望も厚い。
 都市伝説に語られるほどの異常な若々しさであるも、御年[ピーーー]才


雲川芹亜 ―――― 先輩

 とある高校に通う女子生徒。所属不明。
 頭脳明晰、黒く艶やかなストレートヘアと「けど」という語尾が特徴。

 1年に聞けば「先輩」2年に聞けば「先輩」3年に聞けば「後輩」と答えるが、誰も彼女のクラスを知らない。
 ……断じて、ダブっているわけではない、と思う。

 先日の一件以来、上条とは奇妙な距離の近さを保っているが、果たして……?


御坂美琴 ―――― 超能力者

 常盤台中学校の二学年に属する女子生徒。
 シャンパンゴールドの髪と短パン装備の娘さん。
 ↑このシャンパンゴールドって表記って二次SSだけだよな、茶髪とは書きたくないのか。

 学園都市の第三位、名門常盤台中学校のエース、超電磁砲。
 報われて欲しいのに報われて欲しくない系のヒロイン。片思いと空回りの似合う女の子。

 自分が自分らしく居られる場所を見つけてはみたものの前途多難。
 本作においては頼れる相談相手をゲットした模様。


白井黒子 ―――― 風紀委員

 常盤台中学校の一学年に属する女子生徒。
 ツインテールをリボンで飾った、慎ましい胸の娘さん。

 レベル4の空間移動(テレポーター)
 「ジャッジメントですの!」という台詞は、実は原作では一度も使われていないというトリビア。

 幻想御手事件を鋭意調査中。


初春飾利 ―――― 風紀委員

 柵川中学校の一学年に属する女子生徒。
 季節によって装いを変える、その花飾りが特徴的な娘さん。

 レベル1の定温保存(サーマルハンド)。
 虚空爆破事件で御坂美琴や男子高校生たちに助けられ、もっとがんばらねば!と決意を新たに。

 幻想御手事件を鋭意調査中。


佐天涙子

 柵川中学校の一学年に属する女子生徒。
 艶やかなロングヘアーとそれを引き立てるヘアピンが特徴的な娘さん。

 初春とは親友と言える間柄で、彼女を通し白井、御坂とも親交を結ぶ。
 充実した日々を送るものの、その笑顔の裏には無能力者故のコンプレックスを色濃く湛えている。

 都市伝説である幻想御手の存在を知り、偶然にも入手に成功する。


286 : ◆FzAyW.Rdbg :2011/05/28(土) 00:56:42.84 ID:9wEaIp+yo

Index-Librorum-Prohibitorum ―――― 禁書目録

 イギリス清教は“必要悪の協会”に所属する修道女。
 絶対防御礼装『歩く教会』を身に纏う、銀髪碧眼の美少女。

 完全記憶能力を持ち、その類稀な体質故に10万3000冊の魔導書をその身に宿している。
 彼女自身は魔術を使えないものの、その知識をつけ狙う魔術師に追い回されている。

 偉業にして異形、威容にして異様、万能薬たる禁書目録はその実あらゆる毒の詰め合わせ。
 その在り方を受け容れた尊き聖女であるも、その決意も覚悟も何もかもを忘れてしまった女の子。
 “献身的な仔羊は強者の知恵を守る"と嘯くも、その言葉から余人が想像するのは“犠牲の羊”以外に有り得ない。

 現在学園都市にて、己を追う謎の魔術結社から逃亡中。



 ――――――――
287 : ◆FzAyW.Rdbg :2011/05/28(土) 01:03:27.61 ID:9wEaIp+yo
ここまで
完全に趣味の産物ですな
すげー書いてて楽しかったけど、正直二次創作でこんなん書かれてもと思われそう

土日私用のため書き溜めできるか危ういです
がんばりますが更新は次週かも

んでは、なるたけ早くきますので今しばらお待ちを
さらば。
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 01:14:09.27 ID:7IknKHO9o

待つてた
既存の設定の中に新たな設定を組み込むと妄想が広がってヤバイよね
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 02:45:01.47 ID:NUhzDnon0

>>1>>283で鋼盾がヒロインなんて言うから
想像してみたら予想以上にかわいかったので画像置いとく

画像編集が雑なのは許してくれ 右が上条 左が鋼盾
http://ps8.bbquest.jp/m/h/1085/img/0001871855.jpg?a=70684267093
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/28(土) 05:24:36.98 ID:Y66ExPWR0
>>289
すげえな!普通に感心した!そして保存した!
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/28(土) 08:18:21.98 ID:fcYVjWFAO
>>289
叩こうと思ったら激上手でワロタ

……なんだコウやんは女の子だったのか
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 08:23:38.54 ID:9wEaIp+yo
基本鋼盾ちゃん口調がおだやかだから
女の子だと思って読み返してみるとほぼ違和感がない
名前のアイデア、放り投げていきますね

鋼盾掬唯(すくい)

鋼盾掬子(きくこ)

鋼盾小菊(こぎく)

鋼盾雛菊(ひなぎく)

293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 08:26:37.77 ID:9wEaIp+yo
>>あと289、画像サンクス!
かわいすぎて身動きがとれないぜ!

今から出かけてきます。
ううう、雨だぜ。でもみんなのおかげで元気がでました。

行ってきます!
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 21:20:12.96 ID:AZ1hkLKAO
画像見れん!ガッデム!
すくいちゃんは禁書っぽいな
295 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/29(日) 14:12:37.11 ID:BKxrCQB/o
どうも、>>1です。
なんとか書けたので投下します。

それでは。
296 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/29(日) 14:20:01.58 ID:BKxrCQB/o
 


 7月20日。

 記念すべき夏休み第1日目の朝、律儀にも普段どおりの時間に目を覚ました鋼盾は、大きく欠伸をした。

 寝不足だ。帰宅が遅かったことに加え、辺り一帯が突然の落雷による停電になってしまったのが致命的だった。

 熱帯夜の茹だるような暑さの中、クーラーの恩恵に預かることなく夜を過ごす事となり、夜中に何度か寝苦しくて目が覚めてしまったのだ。


「ふこーだー、ってね」
 

 隣人の口癖など呟いてみる。

 結局昨日は随分と遊び呆けてしまった。

 集合写真撮影の後も皆のテンションが冷め遣らぬまま加速する一方で。

 クラスの7割でカラオケに乗り込み6時間近く歌いまくった挙句、Bneeysで延々と駄弁る運びとなった。

 確かにあの一体感、あの空気を一秒でも長く味わっていたいという気分は理解できたが、それでも少々騒ぎすぎた。


 ちなみに上条はファミレスで話を中座しトイレに向かい、そのまま姿を消した。

 なにやらトラブルに巻き込まれた挙句、スキルアウト風の男10人ほどに追いかけられて店を飛び出したらしい。

 いつものことだとクラス一同笑い飛ばしてそれっきり放置、冷たいようだが本当によくある話なのだから仕方ない。

 じゃんけんに負けた鋼盾が代金を立て替える破目になり、その旨をメールで上条に伝えておいたところ、明け方にやっと返信が来た。


 タイトルは「Re:」

 本文は「すまんぶじだ ねむい あしたかえす」


 まあ、きっといつもどうり不幸だったんだろうなあ、と思わせる文面だった。


297 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/29(日) 14:22:08.58 ID:BKxrCQB/o


 結局、当初の計画であった夏休みの予定は決まらなかった。

 土御門がいないこともあったし、他のメンバーもいる中でわざわざ決めることでもない。

 なにより上条の補習日程が未だに確定していないのだ。

 あちらを立てればこちらが立たず、パズルのように上条の補習計画を積み上げているであろう小萌先生の苦労が偲ばれる。


 まあ、行き先なんて最初から二の次ではある。

 海でも山でも、みんなでいけば、どこだって楽しい筈だ。

 昨日の余韻が心地よく、期待に心が浮き立つのがわかる。


 ―――しかしその前に、やらなくてはならないことがあった。


298 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/29(日) 14:23:35.60 ID:BKxrCQB/o



 机の上には一通の封筒、中には一万円札が10枚はいっている。

 昨日のバカ騒ぎの合間を縫って、コンビニのATMで下ろしてきたものだ。

 取引は本日15時、第7学区の外れの再開発地域の廃ビルにて。

 少し余裕を見て、14時に出れば間に合うだろう。


 浮ついていた心が、途端に冷めてゆく感覚。

 寝不足の原因は、夜更かしと熱帯夜だけではない。

 取引を前に不安と緊張で昂ぶる心を御しきることができなかったのだ。


 溜息をひとつ。

 まだ朝も早い、取引までの時間をどうにかしてやり過ごさなければならない。


 まあ、さしあたっては朝飯と昼飯をどうにかしよう。

 あまりおなかも空いていないので纏めてしまってもよいかもしれない。

 冷蔵庫と冷凍庫を開けてみる。昨夜からの停電のため機能を停止していたが、幸い買出し前だったので足の早いものは入っていない。

 唯一対処が必要そうなのが、冷凍室に入れておいた豚コマと鶏モモくらいのものだ。

 いい感じに解凍状態になっており、現状では問題ないものの停電が続くようならオクサレ様になってしまうだろう。


 焼いて食べるにはちと多いので、どうしたものかと戸棚を漁ると幸いシチューのルウと玉葱とじゃがいもがあった。

 朝からシチュー作りなど面倒過ぎる気もするが、今日に限っては丁度良い暇つぶしである。

 貧乏学生ゆえに自炊スキルのそこそこ高い鋼盾は、テキパキと調理を開始しようとしてあることを思いついた。


「おっと、先に布団」


 寝苦しかった夜と変わらず、外は憎たらしい程の快晴だ。

 停電で洗濯機は回せないものの、布団ぐらいは干させてもらわないと割りに合わない。

 ベランダの網戸を開け、ベッドからもろもろを引っぺがしてベランダに出る。


299 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/29(日) 14:31:25.95 ID:BKxrCQB/o


 なんの変哲もない、いつものベランダだ。

 夏の空、太陽が眩しい。

 目の前のビルの壁などなんのその。

 布団もしっかり陽光を吸ってくれるに違いない。


 (上条くん、起きてるかな?)


 布団を干しながら、不幸な隣人のことを思う。

 昨晩もどうやら走り回っていたらしい上条だ、恐らくはまだ眠っていることだろう。

 しかし今日は小萌先生の補習だった筈で、流石に寝過ごせばいろいろとよろしくない。


 ベランダ隣室との仕切りは緊急時に突き破れるよう薄っぺらいベニヤ一枚、どうせ網戸だろうし、声をかけるのは簡単だ。


 もし、このとき鋼盾が、ベニヤの横からひょいと顔を出し、上条家のベランダを覗いていたとしたら。

 ことによると、あんな悲劇は起こらず、運命はまた違う局面へと進んでいたのかもしれない。


 だが、そうはならなかった。

 まだまだ時間には余裕があるし、もう少し寝かしておいてあげてもバチはあたるまい。

 そう、鋼盾は判断すると部屋へと戻っていった。


 それからのんびり一時間ほど掛けて、鋼盾謹製ホワイトシチューが完成した。

 具は豚鶏ミックスとじゃがいも玉葱のみ、人参もブロッコリーもないためやたらと白いが、なかなか美味しそうにできた。

 満足のゆく出来に目を細め、役目を終えた火を落としたその瞬間、


『 ひゃああああああああああああああああっっっ!!!!? 』


 隣室から絹を裂くような女性の悲鳴が漏れ聞こえてきた。

 切羽詰った、それこそ身も世もない絶叫。

300 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/29(日) 14:32:39.38 ID:BKxrCQB/o


(――――――っ!)


 上条の『不幸だああああああ!』なら日常茶飯事ではあるが、男子寮から女性の悲鳴など響くはずがない。

 朝っぱらから大音量でAV観賞でもあるまい、明らかな異常事態に慌てて鋼盾は上条宅へ走る。

 呼び鈴を鳴らしても扉をノックしても返事はなく、しかし扉越しには未だ悲鳴が響いている。

 思わずドアノブを回すと、一切の抵抗がなくそれは回った――無用心にも鍵を閉めていなかったらしい。


301 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/29(日) 14:34:34.39 ID:BKxrCQB/o



「上条くんっ!! どうし………………え?」

 
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/29(日) 15:02:45.82 ID:Xmc6iWvBo
鋼盾め
あやかりやがって…
303 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/29(日) 15:16:46.73 ID:BKxrCQB/o
 

 勢いよくドアを開けた鋼盾が見たものは。

 ―――完全無欠、輝かんばかりの素肌を晒したとんでもない美少女だった。


 少女は、一糸纏わぬ(正確には頭にフードのようなものがついているが)裸体を、なんとか隠そうと屈み、必死になって身を縮こませている。

 極上の銀糸のような長い銀髪を床に散らして、羞恥に顔を赤らめ、殆ど泣き出しそうな表情で顔を伏せていた。

 足元には無理矢理に剥ぎ取られたような、柔らかそうな白いドレス――どこか修道服を思わせる――が散らばっている。


 あまりに衝撃的な光景に言葉を喪う鋼盾。

 ようやく我に返り、少女を凝視していた視線を半ば無理矢理引き剥がすように逸らす。


 逸らした先には、当然ながら彼が、居た。

 この家の主で、鋼盾の隣人で友人、ツンツン頭の頼れるアイツ。

 彼女に右手を伸ばしたまま真っ赤な顔で固まっている上条当麻の姿だった。


 ぎぎぎ、と出来の悪い機巧人形のような動きでこちらに顔を向ける上条。

 目が、合った。


「………………」

「………………」


 言葉は、出ない。


「………………」

「………………」


 未成年者略取

 婦女暴行

 穢された仔羊(シスター) 〜修道服を脱がさないで〜

 若さゆえの暴走

 夏の魔物


 ああ

“皆でそろって、二学期を迎えられますように”

 黒板にそんな言葉を書いたのは、つい昨日のことだったのに


 こんなかたちで別れが訪れるなんて、思ってもみなかった

 こんなかたちで友人を喪うなんて、思ってもみなかった

 祈りは、届かない。人はきっと、誰もが救われるわけではない。

 神など知らぬ科学の街の住人は、祈るべき、或いは罵るべき神の名を知らない。

 だが、たとえ神など知らぬ身であっても、己の足で上へ向かおうとするのが学園都市の人間だ。


 やるべきことが、ある

 なすべきことを、知っている

 1と0のみで構成されたその魔法、誰もが知ってる力ある言葉
304 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/29(日) 15:23:48.64 ID:BKxrCQB/o


 ヒャクトオバン、ひゃくとおばん、110番、正式名称は「警察通報用電話」

 警察機構のないこの街でも、訪れる外部の人にわかりやすいよう、110番でもアンチスキルに繋がるようになっている。

 正式な番号もあったはずだが、しかしこんな状況では情けないことにイチイチゼロしか頭に浮かばない


 鋼盾は無言で後ずさると、左手をドアにかけ、右手でポケットから携帯電話を取り出すし震える指で1、1とボタンを押す。

 あとは0を押せば、警備員に通報が成立する。


 ――しかし、本当に押してしまってよいのだろうか?

 上条当麻を、信じるべきではないのか?


 鋼盾は視線を戻し、硬直したままの友人を見遣る。

 誰よりも優しくまっすぐな鋼盾掬彦のヒーローを、他ならぬ自分が信じずに一体誰が信じるというのだろう。


 掌の携帯電話をパタン、と閉じる。

 手の震えはいつの間にか消えていた。


ああ、己の浅慮で上条に余計な傷をつけてしまうところであった。

 鋼盾は立ち篭める沈黙を破り、必要な言葉を紡いだ。

 上条を信じる自分が述べる言葉は、他にはありえない。

 
 きっと、大丈夫だ。

 初犯だし。


「上条くん…………自首、してほしい、 お願いだから」

「誤解だあああああああああああああああああっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「ひにゃぁああああああああああああああああっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


305 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/29(日) 15:28:48.04 ID:BKxrCQB/o


 こうして三人は出会った。

 科学と魔術が交差する舞台の幕開けを告げる号砲は、空を裂く少年と少女の絶叫と悲鳴。


 この科学の街で誰より無力な鋼盾掬彦

 幻想殺しという規格外の右手を奮う上条当麻

 10万3000冊の魔導図書館であるインデックス


 各々の運命を捻じ曲げるきっかけとなったこの邂逅は、この先の道のりを暗示するかのように、のっけからいろいろと破綻していた。

306 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/29(日) 15:30:18.65 ID:BKxrCQB/o


 この世界は一体、どんな仕組みで何を原料にして動いているのか。

 空転を続けるばかりだった歯車を無理矢理かみ合わせ、油も注さぬままに物語は動き出す。


 果たして悲劇か、それとも喜劇か。

 どちらにしても、どちらでもなくとも、どうしようもなくここがターニングポイントだった。


307 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/29(日) 15:38:16.30 ID:BKxrCQB/o




ここまで。

こんなわけでインデックスが落ちてきたのは上条さんちでした。
鋼盾さんとこに落ちてもらって歩く協会装備状態でも面白そうですが、そうなるといろいろ難しい。
それに、脱がさないなんて――そんなこと、出来るはずがないですよね。うん。

途中矢鱈と混んでて、連投とか怖いのでゆっくり投下でした。
リアルタイムで見てた方すいません。

んでは。
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/29(日) 16:19:08.81 ID:aQxjogh9o
コウやん、そこは0押しとけよwwwwww
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/29(日) 18:55:19.63 ID:vulB28qIO
このシチュエーションで来たらそりゃ通報したくもなるわなww
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/29(日) 19:02:43.17 ID:nPPyH58AO
汚された仔羊 〜修道服を脱がさないで〜………ふぅ

311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/29(日) 20:38:50.93 ID:q2NcWwxpo
乙!インさんは原作通りか、客観的にみると通報もンだな

こうじゅん は アビリティ : ラッキースケベ (おこぼれ) に めざめた!
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/05/29(日) 21:21:29.53 ID:sq170icz0
乙、ヒャクトウバンとカタカナだと人名のようだ
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/29(日) 23:55:17.52 ID:qmu3FnHs0

ここからどう変化するのか楽しみ
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/05/30(月) 02:12:56.07 ID:9Pi5WT7oo
そういえば鋼盾って無能力者だから魔術使えるんじゃね
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/30(月) 08:26:01.91 ID:J5FRm+iIO
一度でも能力開発を受けちゃったら脳の構造自体が変わっちゃうからたとえ無能力者であっても魔術は使えない…んじゃなかったっけ
土御門も無能力者なのに魔術の行使は負荷が掛かるんだし
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/30(月) 08:35:58.45 ID:BP6qMMs+0
宗教防壁云々でどうにかしないと廃人になっちゃうとかね
土御門はレベル低くて反発ちいさめな上、一応回復能力だから魔術つかえてるんだっけ?
317 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/05/30(月) 20:22:47.31 ID:XXxGUgv2o
おばんです、>>1です。
スレ立てから早一月、のんびりでもうしわけないですがようやく一巻入りですね。

実は6月、仕事とプライベートで週末が妙に忙しく、投下のタイミングが不定期になりそうです。
回数分量自体は同じくらいを維持したいと思ってますが、平日投下もありそうですのでご容赦下さい。

ちょいと小ネタがうるさすぎるかなーとか、地の文がくどすぎるかなーとかいろいろ迷ってます。
女の子もっと出した方がいいのかな? よければご意見など聞かせてください。

レスありがとうです。ニヤニヤ読み返しております。
ラッキースケベ (おこぼれ) ですみません、あのシーンは傍から見たら絶対ヤバイですよね。

次回更新をどうかお楽しみに。

318 : ◆FzAyW.Rdbg [saga sage]:2011/05/30(月) 20:25:44.95 ID:XXxGUgv2o

あああ忘れてた。
諸般の事情つーか物語的な要請により、時間軸に若干の変更ありです。

原作で鋼盾とスキルアウトの取引や黒子vs偏光は21日ですが、これを20日に変更しています。
20日の超電磁砲勢の流れに矛盾が生まれそうですが(黒子が2人いないと無理&佐天さんが幻想御手DLしてないetc)
禁書目録ベースの本筋には影響しないので流してもらえると嬉しいです。

一応いろいろ言い訳を考えてみたけど、あっちを立てるとこっちが立たず。あの辺の時間軸はちょっといじると途端に破綻するのな。
上条御坂の絡みが多い上、夏休み入り、落雷、インデックス布団、木山先生登場、佐天幻想御手入手、ステイル戦と重要イベントが多い。
じゃあ招聘が一日遅れて木山先生に会うのを21日にすれば……停電ないから木山先生が脱がないので没。断固として没。
20日に病院にいかないと美琴は上条と会わないし……まあこれは立ち読みの帰りにでも見かけたことにするとして……佐天さんは、ええと、ああ! もう!

……いいじゃん、黒子が2人いたっていいじゃん! むしろ夢が広がるじゃん! 黒井白子じゃん!

再構成の看板を上げた以上、なるたけその辺で矛盾しないように気をつけていたのですが。
まあ、時間軸に拘りすぎて物語を犠牲にするのは本末転倒もいいところだし、開き直ることに。
その他にも細かい嘘をわりとたくさん吐いてます。
許せ。

319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/30(月) 20:55:41.42 ID:GEBdzhEeo
大丈夫、読んでる側は気付かない

気長に期待してます!
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/30(月) 20:57:52.87 ID:BjSiyyUwo
待つてる
女の子は見たいけど、このSSでは鋼盾の成長を見守る(?)ようなのがメインなのだし
>>1が出したいと思ったら出すのがいいんじゃないかな
あと再構成なんだし時間軸ぐらい無視してみてもいいんじゃないかYO
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/30(月) 23:44:07.44 ID:mHBZ8KdAO
某再構成スレでも主人公がこのシーンを見て通報しようとしてたなwww



ラッキースケベコウやん爆発しろ
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 05:52:16.84 ID:PJA7Maabo
黒井白子か
妹達の調整用に用意された試作クローンで本作のヒロインでもある(嘘)

時間軸はしゃーないよな
一回美琴の動きをまとめてみたら、確実に過労死するレベルだったくらい超電磁砲は詰まってる
美琴タフ過ぎ


323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 08:16:00.63 ID:TfbCDN1AO
ヒロインはコウやんだろw

個人的には超電磁組とかみたいけど無理すんなな
324 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/03(金) 08:21:30.51 ID:4e0/gGCQo
おはよう。

なんか早起きしたので書き溜めてみた。
いつもみたく夜にタラタラ書くより進みがいいかもしれない。

学生の時は絶対できる気がしなかった朝学習。
今日はたまたまだけど意外といいかも。
朝に投下するのはどうなんだろう、流されそうな気も、かえって目に留まりそうにも思えるな。

思った以上に忙しいぜ6月。
あとレスありがとう。時間軸は多少融通きかせてみようと思う。

本日どこかで投下します。
どうぞよしなに。
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 16:15:32.83 ID:A4xR5YMV0
待ってる
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 18:01:49.13 ID:LJYl+aQAO
舞ってる
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 18:08:45.07 ID:yRdwptvXo
待つてる
328 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/03(金) 19:49:15.04 ID:4e0/gGCQo
待たせた!
舞わせた!
待たせた!

投下します。
329 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/03(金) 19:51:49.69 ID:4e0/gGCQo
――――――――



「…………なるほど」


 場所は上条宅の廊下。

 ワンルームの学生寮の玄関と居間を繋ぐ、申し訳程度のそのスペースで鋼盾は上条から事情を聞いていた。

 ちなみに鋼盾は壁によりかかるように立ち、上条当麻は床に正座をしている。

 控えめに言って説教、もしくは尋問といっていいスタンスであるが、双方自然にこのような体勢になった。


 当初の混乱は、諸々を棚上げする形でとりあえず収束しつつある。


 といっても、暴れる少女ををなだめて毛布をおっ被せ、ひとまずそそくさと避難しただけだ。

 裸の少女が上条に掴みかかり噛み付こうとする行為には、いろいろと冗談抜きにヤバいものがあった。


 というか、率直に言うといろいろ見えてしまった。


 純情少年たちには刺激が強すぎたらしく、男2人、廊下の薄暗さに多少なりとも救われている。

 眼福といえば間違いなく眼福だったが、どえらい罪悪感で塗り潰されそうになる。


 噂の少女はベッドの上で、壊れてしまった衣服の修繕に勤しんでいる。

 上条宅には碌な裁縫道具もなかったが、とりあえず安全ピンの徳用ボックスが見つかったのは僥倖だった。

 こちらに背を向け、チクチクと針仕事―――まあ、針仕事にはちがいない――に勤しむ半泣きの少女には、奇妙な迫力がある。

 しばらく放置しておく他はない。


「うん、話してくれてありがとう。
 …………ちょっと整理させてもらっていいかな?」


 とりあえず、要領を得ないながらも事情を一通りは聞き出したものの、なんというかとんでもない話だった。

 鋼盾は軽く目を伏せると、とりあえず情報を纏め上げてみる。



330 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/03(金) 19:59:21.54 ID:4e0/gGCQo


「あの子の名前はインデックス」 「見ての通りのシスターさんで」 「謎の魔術結社に追われている」 

「逃避行の果て学園都市に侵入」 「ビルからビルへ八艘跳びで」 「その最中、追手の攻撃で撃墜」 

「とあるベランダに落ち延びた」 「その家の住人の名は上条当麻」 「ベランダに引っ掛かった少女」 

「少女はインデックスと名乗る」 「曰く10万3000冊の魔導図書館」 「それが己の業だと少女は謳い」

「オカルトを肯定するその少女」 「少年はそれを否定し認めない」 「主張は食い違い平行線のまま」

「その右手で我に触れよと少女」 「すべての幻想を殺すその右手」 「我が魔法の服を殺してみよと」

「躊躇いつつも少年は応と答え」 「その右手にて少女の服に触る」 「まずはその幻想をぶちころす」

「かくして魔法の服は力を喪い」 「少女は一糸纏わぬ裸体を晒す」 「とっぴん ぱらり の ぷう」



 ……あー。

 なんじゃそりゃ、もう突っ込みどころしかねえよ。

 頭を抱えそうになる鋼盾に、上条から能天気な台詞が掛けられる。

331 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/03(金) 20:03:16.50 ID:4e0/gGCQo


「……ああ、そうだ! まったくそのとおりだぜ鋼盾! 完璧だ!
 いやー、理解力の高い友人を持って上条さんは幸せですのことよ。
 まったくこんなわけのわかんねえ事態に巻き込まれるなんて………っておい!!
 てめえポケットからおもむろに携帯とりだすなオイ! 待って! しまって! 待ってくれ! 後生だ鋼盾!!
 わかってるわかってるよお前が正しいよ認めるよでもホントなんだよ信じてくれ鋼盾んんんんんんんん!!!!」


 半分冗談、半分本気の通報の真似に悲鳴を上げる上条。

 今の遣り取りで不可抗力だと納得する陪審員などいる筈もない。

 なんだその唐突なボーイ・ミーツ・ガールは。

 シータ以外の空から落ちてくる系のヒロインなんかいるものか。

 びっくりするほどファンタジー、どうしようもなくメルヘンに過ぎる。


「……まあ、とりあえず上条君の無罪を信じる信じないの話は置いといて」

「いや信じてくれよ!……ああもう、わかった、それでいいからもう進めてくれ頼む!」


 先ほどの話の中で。

 上条の発言を与太話と言い切れない要素がひとつ、ある。


「あの子の服、その『右手』で壊れたんだよね」

「……ああ、触れた瞬間服から布になったって感じだったな」


 床に投げ出されたその布――服を少女に手渡した時のことを思い出す。

 たおやかで柔らかなその生地はうっすらと光を放つような美しさであったが、しかし不思議なことに縫い糸が全て失われていた。

 天衣無縫、天人の服は針糸に依らず作られると聞くが、まさかそういうことでもあるまい。

 考えられるのは、上条の右手が効果を発揮したということ……しかし、



332 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/03(金) 20:06:09.01 ID:4e0/gGCQo


「でも服だよね? そんなコトできるの?」

「……うーん、前ビリビリが砂鉄を操って剣にして切りかかってきたことがあったけど、それは壊せた。
 つーか、異能の電磁力を打ち消して、もとの砂鉄に戻せたって感じだけど」


 ビリビリ、といえば御坂美琴だ。

 砂鉄の剣というと、つまりは鉄の剣ということだろうか。

 つか、物騒にもほどがある。


「………なにしてんだよ君たちは」
 
「あっちが勝手に突っかかってくるんだっつの……まあ、能力の影響を打ち消したんだな」


 相変わらずトンデモな能力だ。

 異能の力そのものだけでなく、それによって形作られたものでも委細構わず粉砕してしまうのだろうか。
 

「とすると、無茶な話だけど念動力とかで服の形を保ってた、みたいな話なら一応ありえなくもないのかな?」
 
「まあ、そうなのかもな。
 つってもどう見ても学園都市の人間には見えないよなアイツ…………魔術云々を信じるわけじゃねーけどさ」

333 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/03(金) 21:20:21.21 ID:4e0/gGCQo


 魔術。

 上条同様、鋼盾としても正直肯定しようのない要素だ。

 この街における能力開発は、常軌を逸した投薬や電気刺激、暗示等によって脳を作り変える科学技術である。

 黴臭いオカルトも、薄っぺらいファンタジーも、神話も宗教話もお呼びではないのだ。

 マジカルよりもケミカル、ロジカル、メディカル且つプラクティカルなのだ


 「少女が学園都市の人間には見えない」というのは鋼盾も同意だ。

 上手くいえないが、なんというか匂いが違う。


「んん、魔術云々は隠語とか符丁の類かもしれない。
 あと可能性があるとしたら……ちょっと無理のある想像かもだけど、能力者の悪戯とかね。
 精神操作の大能力クラスなら、記憶の上書きくらいやってのけるらしいし」

「あー、考えもしなかったな。
 でも俺なんかに悪戯しかけてもしょうがねえだろ」

「いやー、それはありえなくもないような気が」


 方々で他人に介入する上条当麻だ。

 恩も讐もとんでもない数を無自覚に抱え込んでいることだろう。

 しかし、たとえそうだとしても、


「……まず精神操作系の高位能力者が一人、彼女の服を維持する念動力系?のやっぱり高位能力者が一人、
 更に彼女をベランダに送る瞬間移動系とか空飛ぶ類の空力使いとかその手の能力者がまたもや一人。もっと必要かもしれない。
 常盤台中学の御坂ファンクラブの皆さんが攻撃してきたとでも考えない限り、ちょっと無理なメンツだね」

「なんだよ御坂ファンクラブって、怖ええよ。
 …………つーか精神操作とかなら俺が触った時に解けるはずだよな」

「あ、そっか」

「うーん、やっぱりそういうんじゃないと思うんだよな。
 もちろん信じられねーけど、嘘吐いてるようには見えないのですよ」

「……魔術、魔術、魔術ねえ」

334 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/03(金) 21:27:11.75 ID:4e0/gGCQo


 結局はそこに戻ってくることとなった。

 なかなか扱いかねるテーマだが、もしも彼女が本気で信じているのなら笑い飛ばすわけにもいかないだろう。

 先の妄想――記憶操作だってありえない話ではないかもしれない、と鋼盾は思う。

 幻想御手絡みで、能力を悪用したと思しき悪意ある悪戯は少なからず増加傾向にあるのだし。

 確かに上条くんの右手で触れた以上、ありえないかもと否定するが、能力絡みだけとも限らない。


「魔術、オカルト、カルト……あんまり詳しくないけど、すごいとこだとホントにすごいらしいしね」


 彼女が「外」の人間なら、それこそ本当にカルト宗教の関係者かもしれない。

 そんなことを考えてしまうくらい、彼女はどこか浮世離れしていた。


 環境が人を変えるというのはどうしようもない事実で、この街はその体現ですらあると言ってよい。


 人は周囲に染まるものだ。

 この都市に住む人間も、またこの都市に染まっている。

 中学まで「外」で過ごしていた鋼盾と、小学校から学園都市にいる上条の間にも、時折驚くほど認識にズレがある。


 みんな知っていることだが、この街は、どこかおかしい。

 びっくりするほどファンタジー、ウンザリするほどメルヘンで、笑ってしまうことにリアルであるらしい。


 外の人間から見れば、はっきりいって自分たちが異質な存在に写るだろうことは疑いがない。

 科学万能、否定するわけではないが、ある種この街の理念は宗教(カルト)じみていると鋼盾は思う。

 
 電極から流し込まれる経典

 静脈に打ち込まれる言祝

 経口薬の形をした聖餐

 能力という名の秘蹟

 自分だけの現実


 なにより「神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの(SYSTEM)」という言葉


 世界の真理という『神様の領域』は、人の身には辿り着けない

 ならば「人間を超える」ことでそこへ到達しようと、それこそがこの街の掲げた教義


 それは、天国を目指す行為で

 或いは、解脱へ至らんとする行為で

 階梯を上ろうとする行為で


 階段を上れない僕は、差し伸べられた幻想の御手、蜘蛛の糸に手を伸ばし――

335 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/03(金) 21:28:58.22 ID:4e0/gGCQo


「…………鋼盾?」

「ん、ごめん、なんでもない」


 ――――ああ、また益体もないことを考えている

 慌てて頭を振って、ぐるぐると頭を覆う妄念を振り払う鋼盾。

 最近ちょっと思考の揺れ幅が大きすぎる。

 こんなんじゃ、いけない。
 

「えーと、魔術師、魔法使い、魔女―――あの子なら、魔法少女かな?
 というか魔法少女を裸にするなんて、どう考えても悪役だよね上条くんは」


 結局は適当な台詞を吐いてみる。

 上条はぺたと右手を顔に当てると、溜息混じりに呟いた。


「視聴者の味方ではあるかもしれないけどな……はあ、参ったぜ」


 どうしたって結局こっちのせいだ。
 
 女の子が泣いたのなら、いつだって悪いのは男である。

 魔法少女の服が脱げるように、それは世界の約束だ。


 そうこうしている内に、少女が服の修繕と着替えを終えたらしい。

 視界の端で毛布が翻ったのを見て、鋼盾は壁から背を離し、上条は立ち上がった。

 リビングにはトゲトゲの茨姫が待ち構えていることだろう。

 服と一緒に機嫌も直っているといいのだけれど。



 まあ、とりあえず、謝っちゃおう。

 そんな男の雑な対応が、女の子の怒りに油を注ぎかねないことを、年若い彼らはまだ知らなかった。



――――――――




336 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/03(金) 21:35:16.56 ID:4e0/gGCQo
ここまで
途中ちょいと急用で離れてました。
リアルで見ていた人いたらごめんよ。

あれ、せっかくインさん出てきたのに台詞ないや。
カルト少女疑惑や記憶操作の被害者疑惑を掛けられてるし。
次回はしゃべりそうです。

ではまた。
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 22:03:59.66 ID:A4xR5YMV0
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 22:52:44.14 ID:yRdwptvXo

そういえば俺の嫁しゃべってねぇwwww
339 :今日のエレベーターのご様子:だが断る :2011/06/04(土) 08:36:52.39 ID:NIi8GgwU0
>>というか、率直に言うといろいろ見えてしまった

>>というか、率直に言うといろいろ見えてしまった

>>というか、率直に言うといろいろ見えてしまった

340 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 21:27:08.93 ID:UhEW76ybo
平日に投下すると言ったな、アレは嘘だ。
―――ごめん、嘘じゃないけど明日からまた出張だよ!! なんなんだよ!! 急すぎるよ!!

パソコンなさそうなので今日投下します。
携帯で投下できる人ってすげーよな、こないだはじめて携帯でアクセスしてみたら読みにくいし書きにくいで難儀したぜ。

22時くらいに投下開始します。
よしなに。

341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 21:46:51.70 ID:tquaYeiA0
Matteru
342 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 22:02:18.04 ID:UhEW76ybo
Mataseta.
Ika honbun.


――――――――




「ごめんですむなら! 警察は! いらないんだよ!」


 まともに鋼盾が少女の声を聞いたのは、コレが初めて。

 ここまで、悲鳴→泣き声交じりの呻き声→沈黙→怒声の流れであり、残念なことに穏やかな会話がゼロである。

 少女らしく澄んだ声で、意外なことに流暢な日本語であった。

 いや、英語でしゃべられても困ってしまうのだけど。


 結局、もうひと悶着あった。

 そろってごめんなさいと頭を下げた上条と鋼盾に対して、少女は真っ赤な顔でぷんぷんと怒気を露にした。

 無理もない、なんたって裸を晒したのだ。

 それはそれは、これはこれはお怒りである。


 修道服は地獄の針仕事の甲斐あって、一応は服の体を成している。

 しかしながら、数十本の安全ピンが随所にギラギラと安く光っているため、いろいろと台無しではあった。

 よせばいいのに上条がいらんコメントを入れてしまい、また少女に噛みつかれる破目になったが、これは自業自得だろう。

 針のムシロは流石にかわいそうだ。


343 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 22:05:38.41 ID:UhEW76ybo


 上条の悲鳴を聞き流しつつ、鋼盾は改めて少女を見る。

 パンク風味の修道服によるマイナスを加えてもなお、少女はとんでもなく可憐だった。

 暴れたためにフードが外れ、銀糸のような細く長く艶やかな髪がさらさらと踊っている。


 自分たちの周りにいる美少女といえば、クラスの吹寄制理や先輩の雲川芹亜、先ほど話題に上がった御坂美琴などが思い出される。

 ああ、美少女と呼んでよいのか悪いのか、何重にも判断の難しい月詠小萌先生も含めてよいだろう。


 いずれ劣らぬ美人さんである。

 しかし、インデックスの美しさはその誰とも違う種類のものだった。


 異国人というだけでは説明の付かない、なんというか妖精じみた美しさで、日本語をしゃべっていることに違和感すら覚える。

 まるでファンタジーの世界から飛び出してきたかのような異質さ。

 単純な感嘆よりも、侵しがたい畏怖めいた感覚の方が強い。


 ……とは言え、そのあまりに激しい暴れっぷりでいろいろと残念なことになっているのだけれど。


344 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 22:08:08.04 ID:UhEW76ybo



 放っておけばいつまでもじゃれ合い続けそうな二人をなんとかなだめすかし、とりあえずテーブルを囲ませることに成功する鋼盾。

 とはいえ、学生寮の一室を支配しているのはドタバタの喧騒から一転、気まずい沈黙であった。


「………………」

「………………」

「………………」


 重い。

 羞恥と疑問で頭が一杯のインデックスと、理不尽への反発と照れ隠しでしっちゃかめっちゃかな上条。

 とりあえず一番傷が浅そうなのが己であるのだから仕方がない。

 意を決し、鋼盾は言葉をかける。


「えーと……まずは、自己紹介から、はじめさせてもらっていいかな?」

「………………いいんじゃないでせうか」

「………………」 コクリ


 なんとも難儀な二人である。

 ……絶対に自分は合コンの幹事とかは出来そうにない、と感じながら、鋼盾はこの奇妙な会合を進め始めた。


 ああ、

 もう、どうにでもなれ。




――――――――

345 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 22:11:19.78 ID:UhEW76ybo




「―――じゃあ、私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」


 綱渡りのような座談会は、鋼盾の粉骨砕身の働きと双方の妥協と自制とその他もろもろでどうにかなった。

 魔術がどうした魔導書がなんたら、教会が清教で正教で成教で星教がどうのこうの、追っ手がどうたらこうたらと、

 相変わらず常識の通用しない在り様ではあったが、とにかくまっとうに話は進んだ。


 そこで上条がようやく補習に行かねばならぬことを思い出し、大慌てになったのがきっかけだっただろうか。

 家を出ようと準備を始める上条が、インデックスに「これからどうするのか」と聞いたところ、彼女は平然と「出てく」と笑って言った。

 
 相当怪しいながらも、追っ手がいると彼女は言っているのだ。

 そんな子をはたして放っておいてよいのか、いやよくないと二人は思った。

 鋼盾と上条が口々にインデックスに言葉を掛けたが、それを彼女は笑って「いらない」といってのけた。


 なおも食い下がる二人に、インデックスが放ったのが冒頭の一文だ。


 わたしの歩む道は、地獄にほかならないから

 道連れなんて、わたしはけして望んでいないから

 あなたたちは、こんなところにきては、だめ


 まるで、そんなことを、言っているかのようで


346 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 22:14:50.76 ID:UhEW76ybo



 鋼盾はインデックスの言葉、そして表情にぞっとした。

 地獄という言葉の重みなど、無神論者のこの街の子どもはが知るはずもないが、それでも感じるものがあった。


 幼い口調に反して紡がれた透徹な言葉は、例えるなら揺るがぬ青い炎のよう。

 薄甘い共感や、半端な覚悟で触れることなど許さない硬さがあった


 言葉は出ない。

 それは隣の上条も同様のようで、痛みを堪えるように口を噤んでいた。


「だいじょぶなんだよ。私もひとりじゃないもの。
 教会を探して匿ってもらえれば、それでオーケーなんだよ!」


 花咲くような、それでいて諦めの混じった笑顔。

 目を離すことのできない可憐さと、目を背けたくなるような疲労の入り混じった表情。

 優しくて、強がりで、強情で、まっすぐで、臆病で、歪で、うそつきな少女。

 そんな顔をしたひとに、一体どんな言葉をかけられるだろうか。

 
 それはまるで死の旅に出る殉教者、己を擲つ聖女のようで。

 ひどく、遠い。


 すくと立ち上がり、残念な修道服と美しい銀髪を翻して、インデックスは出口へと歩き出す。

 慌てて立ち上がった鋼盾と上条を、しかし制するように少女は笑う。
 

「ばいばい」

347 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 22:18:33.25 ID:UhEW76ybo


 紡がれた幼い別離の言葉は短く、しかし決定的だった。

 線を引かれた、こっちにくるなと。


「――おい! ……なんか困ったことがあったら、また来ていいからな」


 上条が振り絞るかのように言葉を掛ける。

 内容のない、放り投げるかのように乱暴で、しかし真摯な言葉。

 無力感に囚われながら、それでもこんな台詞の言えるのが上条当麻という男である。


「ふふ、ありがとうなんだよ」


 ひどく透明な微笑み。


「あなたがたの往く道に主のご加護と幸多からんことを」


 祈りの言葉は朗々と

 組まれた指の美しさは例えようもなく

 焦燥と疑心と無力感と諦念と寂寥と未練と憧憬、様々な感情に囚われて身動きがとれずにいた上条と鋼盾を慰めるように


 それは、神に捧げる為のものではない。

 袖が触れた程度の他人、それも異教の人間のために祈れる彼女は、きっと優しい女の子だ。

 形の良い唇から零れるその美しい歌に聞き惚れてしまいそうになる。



 修道女。

 神に仕えることを生業とする人間。


 自称魔術師で、怪しげな服を身に纏い、他人の家のベランダに引っ掛かっていた少女。

 いろいろと疑わしい点は否めないものの、その一点はどうしようもなく本当のことだと知れた。



348 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 22:19:28.52 ID:UhEW76ybo



 ……と、彼女の口から次の言葉が零れるまでは、そう、思っていたのだけれど。

349 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 22:20:43.85 ID:UhEW76ybo


「―――もっとも、そっちの君の場合、祈らせてもらってもあまり意味がないかも。
 その右手、きっと神様のご加護だって打ち消しちゃうんだよ」

「はあああああああああああ?!! ちょっと待て!!
 なんだそりゃ!? どういうことだテメエ!!!」

「君の右手、――信じられないけど“すべての異能を打ち消す”という話がホントなら、
 それこそ右手が空気に触れてるだけで“神のご加護”も“祝福”も“運命の赤い糸”も、
 人が人でいるだけで約束された膨大な肯定、その一切合財がなくなっちゃうかも」

「あー、納得」

「納得してんじゃねえよ鋼盾!!! ふざけんな!!!!
 大体ッ、幸運だの不幸だのそんなのは確立と統け痛ッァアアア!!!!!!」


 興奮しすぎてインデックスに掴みかからんばかりににじり寄ろうとした上条は、

 哀れテーブルの脚に思いっきり足の小指をぶつけてしまった。

 悶絶するかのように蹲る上条を見下ろしながら、鋼盾は溜息を吐く。

 神様の愛は上条には届かないらしい――修道女さまの御墨付である。

 まったく、救われない。


 ふと横を見れば、同じように上条を眺めていたインデックスが、丁度こちらに目線をよこしたところだった。

 なんとなく、二人して笑う。


「君のお友達、なかなか大変かも」

「……それは否定できないけど、いいヤツなんだよ? ほんとにさ」

「ふふふ、そうやって一緒にいてくれる友達がいるのは素敵なことなんだよ。
 ―――神に与えられるのではなく、己の手、己の意思で結ぶものこそが友誼、ということなのかも!」

「へえ……それは、聖書の一節だったりするのかな?」

「ううん、私が考えたんだよ!」

「そっか、素敵な言葉だね」

「えへへ」

「ふふ」


350 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 22:21:47.19 ID:UhEW76ybo


 和やかな雰囲気が場を満たしていた。

 信じるものは異なれど、人と人はこうして笑いあい、認め合うことができる。

 
 僕らは仲間 僕らは地球の子供たち

 明るい明日を作るのは僕らの仕事

 さあ始めよう

 選ぶのは君だ

 それは僕らのいのちを救うこと

 本当さ よりすばらしい世界を作るのさ

 君と僕で

351 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 22:22:44.10 ID:UhEW76ybo



「おいィィィィィィィィ!!!?
 てめえら、なにイイ話風にしてやがんだあああああああ!!!
 ウィ・アー・ザ・ワールドってかやかましいわ!!!
 
 不幸だああああああああああああああああああ!!!!!!」

352 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 22:23:26.47 ID:UhEW76ybo


 そう、未だ世界から消えることのない不幸

 貧困、飢餓、戦争、暴力、理不尽、不条理


 これ以上知らない振りはできない

 誰かがどこかで変化を起こさなければ

 僕らはすべて神のもと、大きな家族の一員 本当さ

 愛はすべての人に必要なのだから


 そう、僕らは仲間 僕らは地球の子供たち

353 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 22:24:27.29 ID:UhEW76ybo



「「 ――We are the world, we are the children ♪」」

「ハモんなああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

354 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/05(日) 22:36:00.65 ID:UhEW76ybo





――――――――


ここまで。
どうしてこうなった。

インデックスの口調って結構むずかしいな。
まだ名前呼びがないから余計に。

ああ、そうそう、上条さんに「せう」を一回でもいいので使わせるという個人的な目標クリア!
あとは三段活用だな! 使いどころが難しいぜ!

次回までちょっと間が空くかもですが、気長に待ってくれると嬉しいです。
ご意見、ご要望などありましたら是非。

んでは。
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 23:56:57.34 ID:kKHNcTJBo
なんか地の文がヘンだなあと首をかしげていたら
We are the Worldだったのかよwwwwww

あなたのネタの盛り込み方、好きだなあ。
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/06(月) 00:42:05.14 ID:jWm+rnas0
鋼盾なんだかんだでノリがいいよね
なんていうかこの作品の和む感じが大好きです
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 00:49:43.89 ID:6JMMwrbAo
インさんがかわいいSSは良作と決まっているんだぜ
インデックスたんマジ聖女
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 01:32:41.80 ID:nh76kb7o0
待ってるぜい
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/12(日) 14:33:29.57 ID:2nZQ+vxk0
初めて読んだがすばらしいな
アニメ見返したらモブに鋼盾を探してしまいそうなほど違和感がない

インデックスめんこい
360 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/12(日) 21:44:35.75 ID:yftsIJ7Ho
レスどうもです。救われます!
We are the Worldとかなに考えてるんだ俺!インさん可愛く見えたならなにより!待たせた!
愚痴りたくないがぶっちゃけリアルが忙しいぜ!

平日投下とか言っといてなんだけど、無理でした。
この辺難しくてなかなく進まないのです。この山越えたら書き溜めもあるし、楽になるのだけど。

自分に発破をかける意味も込めて投下予告。
なんとか30分以内に投下します!まだ本日分六割も書けてないけど!週一でやんないとダメになりそうだし!

んじゃ、書いてきます!

361 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/12(日) 22:18:14.05 ID:yftsIJ7Ho

 

 補習のため学校へ向かう上条。

 庇護を求め協会を探すインデックス。

 主である上条が出かけるなら、当然鋼盾も部屋を辞すこととなる。


 結局、なにひとつ纏まらぬまま。

 唐突なこの会合は、始まりと同じく唐突に終わることとなった。


 二人がぎゃーぎゃー言いながらエレベータで降りてゆくのを見送った鋼盾は、なんとなく家に戻る気になれず、

 学生寮の廊下からぼんやりと、何をするでもなく眼下に広がる町並みを見下ろしていた。


 この街を真正面から見据えることを、鋼盾はずっと忘れていた。

 いや、正確には、ずっと目を逸らしていたのだろう。


 インデックス。

 先程別れた少女の目には、この街はどう写っただろうか。

 この街の住人ではない彼女にとってのこの街は、果たして。

362 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/12(日) 22:20:10.41 ID:yftsIJ7Ho


 学園都市。

 科学万能、能力者の街。

 無能力者の己。


 あの日からずっと、目を背けてきたこの街。

 こうしてピントを合わせてしまえば、気に入らないものが多すぎる。

 ピンボケ、ぼんやりと薄目横目で見遣るくらいが、鋼盾にとっての精一杯だったのだ。


 この街に、自分は求められてはいない。

 くるくる回る風車を見ながら、その風車より役立たずな己は、一体、なんなのだろう。


 本当に、なんなのだろう。

 ――なんで、こんなところにいるのだろう。

 自分は、この先、どうなるのだろう。


 この街で、果たして、僕は。

 なにかを成すことができるのだろうか。


 幻想御手の取引まであと数時間。

 たった数時間なのに、まるで遠い未来の話のように現実味がない。


 首尾よく幻想御手を入手して、能力を得たとして。

 指先に火を灯し、掌に渦を生み、拳に雷を纏わせ、血液に異能を孕ませ、瞳で異界を見据えたとして、それがどうしたというのだろう。

 大破壊を生むビームを放てたとして、絶対無敵のバリヤーを張れたとして、それで何を為すというのだろう。


 ああ。

 ぼくは、なにを、したいんだっけ。

 ―――もう、それすらもわからないでいる。




 
363 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/12(日) 22:21:11.11 ID:yftsIJ7Ho

 
 つい先程この街をカルトのようだと皮肉ったことを思いだす。

 教祖がいるなら、ソイツはきっとどうしようもなく無能だ。

 なぜもっと、自分をうまいこと騙しきってくれないのだろうか。


 献身的な仔羊は、強者の知恵を守るそうだ。

 ならば無能な仔羊は、どうすればよいというのだろう。

 羊肉として、咀嚼されればよいのだろうか? 誰に? この街に? 顔も知らぬ無能な教祖サマに?


「……ふざけるな」


 ポツリ、と呪詛めいた恨み言が漏れる。

 お前がそのつもりなら、哀れな仔羊を貪り喰らえばいい。

 そして知れ、弱い羊にも角はあるのだ。


 羊の角。

 それは敵を貫くものではない。

 鋭くはない、固くもない、先の丸まった、飾のようなものかもしれないが。

 それでも、それでも。


 せめてその口内にどうにかして傷をつけてやる。

 雑菌に集られて口内炎になってしまえ。

 願わくば咀嚼さえ困難になるほどに不細工に化膿しろ。

 飢えろ、渇け、じくじくと痛みに悶えろ。

 どうしようもないこの痛みの万分の一でも思い知れ。

 
364 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/12(日) 22:22:35.75 ID:yftsIJ7Ho

 
「…………なにを考えてるんだ、僕は」


 湧き上がる怨嗟、鬱屈した感情は笑ってしまうほどに陳腐で支離滅裂。

 第一、自分が羊だとしてもどうせ角など生えてはいないだろう。

 きっと毛並みも悪いし、贅肉だらけで味も悪かろう。


 己を知れ

 この街で一番出来の悪い羊

 それがお前だ鋼盾掬彦

 それが僕だ鋼盾掬彦


 劣等感に追い回され、幻想御手に縋りついて、結局誰よりこの街に囚われた無様で不細工なのがお前だ、僕だ。

 どの面下げて毒を吐いた? お前は能力者になって、この街に美味しく食べてほしいのだろう?

 そこから引っ張り上げてほしいのだろう? 取り繕うなよ無能力者。

 
 没入する思考は絶望を孕みつつ沈下を続け、その瞳はさながら自殺志願者のようですらあった。

 もしこの場を目撃した人がいれば、彼が飛び降りを計ろうとしているようにすら見えたかもしれない。

 それほどまでに、鋼盾掬彦は滅入っていて、弱っていた。

 
「…………どうして、僕は、こんな」


 錆を含んだような声が零れる。

 口にするつもりはなかったのに、意外なほどはっきりと口から零れ落ちてしまった。

 愚痴ですらない、愚者の詠嘆。

 誰にも届かぬ、その嘆き。


 だが

365 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/12(日) 22:23:34.57 ID:yftsIJ7Ho


「どうしたのかな?
 ……顔色が、よくないんだよ?」


 玲が響く。

 淀みを払うように。


「…………インデックス?」


 つい先程別れたはずの修道服の少女が、鋼盾の背後に立っていた。

 迷える仔羊を導くようなタイミングで、艶やかな銀髪を揺らしていた。

 






――――――――

366 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/12(日) 22:42:53.31 ID:yftsIJ7Ho

報告忘れてた、ここまで。

短っ!暗っ!話進んでねえ!!
うぎゃー。

アレイスターめ口内炎になれ! と呪いをかける鋼盾くんの話でした。
なんか躁鬱激しいな主人公、前回更新では歌ってたくせに。

んでは、また
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 23:29:55.56 ID:B7Tl1yIio
待つてた
相変わらず心理描写の丁寧さが良いね
アレイスターが口内炎になったらあの液体はしみるのだろうかww
あと鋼盾、着々とフラグ立てんな爆発しろ
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/06/13(月) 08:55:53.92 ID:0W7k/nYe0

ビーカーの液体がモンダミンにしか見えない

カルトだよな実際
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/13(月) 20:18:16.25 ID:3WQKeGZo0

鬱々描写もいいね
ファーストコンタクトは上ヤンに譲ったが、ここからかな?
370 : ◆v2TDmACLlM [sage]:2011/06/14(火) 14:26:23.00 ID:hYm8OoUX0
やっぱり心理描写がうまいなぁ。
無能力者のコンプレックスと苦悩がぐいぐいくる。

こっからインさんがどう絡んでくるのかなー乙乙でした。
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 14:32:22.70 ID:hYm8OoUX0
ひゃぁぁぁpcって名欄そのままなのかようう申し訳ない
372 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/06/16(木) 20:01:27.96 ID:GHg2yENSo
>>367-371
レス感謝です。いつも救われてます。
鬱々鋼盾はそろそろ店じまいなので、今のうちにと思ったらやりすぎちゃったかなあという感じです。
難儀な主人公で申し訳ありませんです。ちなみに>>1はリステリン派です。

>>370-371
その酉、すんげえ見覚えが……応援してます!ってのは野暮ですかね。
……俺もう野暮でいいや!大好きです。


なかなか時間がとれないくせに、次のシーンがなかなか進まないこと山の如し
息抜き代わりに書いてみたかなり先のシーンがガリガリ進んでしまうこと風の如し
筆が乗りまくりで当初登場予定がなかったあの人があんな場面で大活躍で火の如し
みんなー、かなり先だけど雲川先輩がでるぞーー!!わーーーい!!!俺得じゃー!!

なんとか数日中に投下できるようがんばります。
んじゃ、また


追伸。

こないだ携帯で初めてこのスレ読んでみたのだけれど、すげえ読みにくくてなんか申し訳なかった。
パソコンで見やすいように、というつもりで書いていたのでどうしたものかと迷う。
なんか意見があれば書いてってな。
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/17(金) 22:17:13.45 ID:ivbAzZV90
めっさ面白い。期待して待ってる。
374 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/18(土) 21:13:47.07 ID:dyn2/iWAo
おばんです。
今晩中に投下するとです。
己を追い込む予告age!
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/18(土) 21:54:39.93 ID:UYtJrLha0
<●><●> カッ!
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/06/18(土) 22:04:58.40 ID:bXLCGzFyo
運が良い待つてた
377 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/18(土) 22:39:17.85 ID:dyn2/iWAo
>>375 つ目薬
     >>1の愛用はサンテドウプラスEアルファ

>>376 待たせた


んじゃ、投下します。






――――――――
378 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/18(土) 22:41:23.92 ID:dyn2/iWAo



 エレベータの開く音にも気付かぬほど思考に没入していたらしい。

 鋼盾は慌てて表情を取り繕う、先の口汚い罵りの言葉が、彼女に届いていないといいのだが。


「……ああ、ごめんごめん、なんでもないよ、ちょっと考え事をしていただけだから。
 どうしたの?」


 鋼盾と上条の制止をやんわりと、しかし頑なに拒んだ先程の一幕を思い出す。

 もう会えないような気がしていたが、しかし彼女はここにいる。確かに、ここに。


「忘れ物をしちゃったんだよ。
 わたしのフード、見なかったかな?」

「あー、最初に見た時はしてた、けど……」


 最初に見た時、すなわち彼女の服が脱げ落ちた時のことだ。

 白い裸体を思い出し、少し顔が赤くなるのを感じつつ、鋼盾は言葉を重ねる。

 ばれていないとよいのだが。


「出て行くときには付けてなかったから、多分上条くんの部屋だね。
 補習にいっちゃったから鍵閉まってて入れないけど」

「ううう、しまったんだよ。
 あのフードは“歩く教会”の一部なんだよ。術式中枢じゃないし、単体じゃぜんぜん機能しないけど、
 それでも魔力探知に引っ掛かる可能性はゼロじゃないかも!」

 
379 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/18(土) 22:44:01.00 ID:dyn2/iWAo
 
 魔術師、術式、魔力探知――またもや怪しげな言葉だ。

 彼女の言を完全に信じるとしたら、上条の部屋に魔術師とやらが踏み込んでくる可能性があるということになるのだろうか。

 どんな反応をしたものかわからないが、インデックスの表情は真剣そのものであり、茶化すことなどできそうにない。

 少なくとも彼女はそう信じており、本気で上条や鋼盾を心配しているようだった。


「うーん、上条君が帰ってくるのは夕方になると思うよ」


 化学の補習に参加しない鋼盾は詳しいタイムスケジュールは知らないが、結構長くなりそうな気がする。

 上条のことだから帰り道で余計なトラブルに巻き込まれる可能性もなかなか否定できない。

 出立の際に戸締りを行っていたので、ベランダの鍵も閉まっているだろうし、ベランダ越しに不法侵入というわけにもゆくまい。

 その旨をインデックスに伝えると、少女は弱りきった顔で頭を抱えた。


「うう、どうしよう。
 魔術師たちが来たら、君たちじゃどうしようもないかも!
 ……魔術師だもん、無関係な人を巻き込まない保証なんてないんだよ……」

「―――じゃあ、こうしよう。
 上条くんが帰ってきたら、あのフードに触ってもらう。それで探知は利かなくなるよね?
 もしそれまでに魔術師が攻めてきたとしたら、上条くんはウチで預かるよ。
 流石に無関係な隣室にまでは攻め込んでこないだろう? 大丈夫、心配ないよ」


 ここは下手に否定するよりも、彼女の言葉を受け容れた上で対処法を示した方がよさそうだ。

 インデックスの抱える不安は本物らしい、ならばどうにかして和らげてあげたい。


「で、でも! それでも危ないんだよ! 魔術師が諦める保証はないし!
 それまでに家を特定されたらさっきの彼がマークされる可能性は否定できないかも!」
 
「上条君は機転も利くし口も回る、なにより右手だってある。
 それに、この街には警備員――治安維持の部隊だってあるんだよ?
 能力者相手に立ち回ってる彼らなら、きみの言う魔術師に対抗できないかな?」

「無理なんだよ! あんちすきるっていうのはよくわからないけど、
 10万3000冊の簒奪任務に就くような魔術師はまともな手合いじゃないんだよ!
 とてもじゃないけど、魔術を知らないこの街の人間に止められるわけがないかも!」


 鋼盾の言を即座に否定するインデックス。

 むむむ、どうしたものかと頭を抱える鋼盾。

 張り詰めた沈黙、それを破ったのは、意外な音だった。


380 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/18(土) 22:45:05.04 ID:dyn2/iWAo

 

 ぐうう

381 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/18(土) 22:48:26.62 ID:dyn2/iWAo


 夏虫ならぬ、腹の虫。

 誰の腹かは、言わぬが花か。


「……ご飯、うちで食べていくといいよ。
 つくりすぎちゃって余ってるんだ。手伝ってくれないかな」

「そ、そんなわけにはいかないんだよ!
 いつ魔術師が襲ってくるかもしれないのに! そんな! ……だめ、かも」


 羞恥に顔を赤らめるインデックス。

 ただ、ごはんという言葉に若干揺らいでいるのは間違いないようだ。

 ならば、もう一押し。


「その服、歩く教会、だったかな? 
 上条くんが壊しちゃったから、敵の魔術師はきみを探知できないんだよね?」

「う、うん。わたしには、魔力がないから。
 その心配はないんだよ」

「じゃあ、壁を一枚はさんで僕の部屋なら、たとえ魔術師が来てもきみを見つけられないよね。
 逆にこっちにとっては、隣の部屋に誰かが踏み込んだらすぐわかることになる」

「……うん」


 インデックスの懸念はひとつ。

 すなわち、鋼盾や上条を巻き込むことを恐れているのだ。

 ならば、そんな心配はいらないと教えてあげればいい。


「敵が上条くんを待ち伏せするようなら、それも防げるよね?
 携帯を使えば上条くんが部屋に行かないようにすることが出来る」

「? けいたい?」

「携帯電話、だよ。『危険だから家に入るな』と言えば、上条くんが襲われずに済むだろう?
 それにきみも闇雲に教会に行くより、一旦ここで敵をやりすごして、それから教会の場所を調べて連絡を取った方からいった方がいい。
 さあ、そうと決まれば家に入って。魔術師さんがここに来る前に」

「……………………いいの?」

382 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/18(土) 22:52:39.47 ID:dyn2/iWAo


 おずおずと、信じられないものを見るような目で鋼盾を見るインデックス。

 自分に手が差し伸べられるなんて思ってもいない、怯えた猫のようなその瞳がただただかなしい。


 そんな目で見られたら、誰だって、やることはひとつだろう。

 ああ、一度でダメなら、二度、いや、何度でも言葉を重ねよう。


「もちろんいいに決まってる。
 おなかが空いてるからネガティブになるんだよ、ほら、ごはんにしよう?
 僕もおなかが空いてきたよ。いっしょに食べてくれると嬉しいんだけどな」


 パァァァ、とインデックスの表情が笑顔に変わる。

 これまでの諦めの混じった、隠し切れぬ疲労を孕んだ笑顔ではなく、齢相応の弾けるような笑顔だった。

 ―――ちょっとばかり見蕩れてしまったことは、内緒だ。




――――――――


383 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/18(土) 22:57:42.66 ID:dyn2/iWAo



 学生寮だから当たり前だが、鋼盾の部屋は基本的に上条の家と同じような作りになっている。

 習慣で電気を付けようとしたが反応はなく、まだ停電は回復してはいないようだった。


「さっきの部屋と同じ感じなんだね」

「まあ、学生寮だからね、バラバラじゃ不公平だし」

 
 といいつつ、上条の部屋はなぜかエアコンが壊れやすかったり換気扇がやたらと五月蝿かったり、

 ベランダに鳩が迷い込みやすかったりするのだが、それは置いておこう。

 というか、部屋が問題じゃなくて家主のせいのようなきもするのだけど。


「なんだかいいにおいがするんだよ!」

「ホワイトシチューだよ。……ああ、クリームシチューだっけ?
 もしかして、イギリスとかが本場なのかな?」


 だとしたら少しばかり気恥ずかしい。

 余り物で拵えた適当シチューなんぞ、本場の人に出してよいものだろうか。


「むむむ、クリームシチューもクリームシチューもこの国独自の呼び方かも!
 日本はアレンジに優れた国なんだよ。異文化を柔軟に受け入れ、独自にアレンジして己のものにする。
 魔術も信仰も、この国は他の国ではありえないほどに自然に形を変えてゆくくせに、それでいて繊細で完成度が高いんだよ!
 ―――なにがいいたいかというと、そんなことどうでもいいからはやく食べてみたいかも!」
 

 少女の口からは、相変わらずポンポンと魔術なる不穏なワードが零れ落ちる。

 あくまで自然に零れるそれにも、なんだか随分慣れてしまったと鋼盾は苦笑する。

 まあ、味はなかなかだという自負もあるし、シチューもカレーも日本の家庭料理だと言い張ってみよう。


384 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/18(土) 23:01:55.96 ID:dyn2/iWAo


 冷めてしまったシチュー鍋を火にかける。

 うろちょろとキッチンを歩き回るインデックスを、かき混ぜ係に任命してみた。

 かき混ぜた数だけ美味しくなるのだと言ってみると、驚くほど真剣なまなざしでお玉を振るっており微笑ましい。

 それを横目で眺めながら鋼盾はトーストを作る。

 停電のためトースターは機能しないので、フライパンで食パンを焼くことにした。

 初めての経験だが、まあ、なんとかなるだろう。
 

 
 狭いキッチンに二人並んで、お昼ご飯をつくる。

 なんとも平和で、しかし非日常的な光景に鋼盾の頬も自然と緩んでいた。

 ほどなくしてホカホカのシチューとカリカリのトーストが出来上がる。

 トーストが少しばかり焦げてしまったが、まあ、ご愛嬌だろう。

 
 さあ、ごはんにしよう。

 お腹が膨らめば、きっと今よりマシになるから。

 食材への感謝といっしょにそんな祈りを込めて、鋼盾は手を合わせた。

 インデックスもそれに倣うように、小さな掌を合わせる。

 郷に入りては、なんとやらだ。


 せーの

385 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/18(土) 23:02:26.80 ID:dyn2/iWAo



「「いただきます」」

386 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/18(土) 23:03:31.01 ID:dyn2/iWAo





――――――――



ここまで。


正しい餌付け方の巻、でした。

インさんってけっこうむずかしいよね。なるたけかわいく書いてあげたいぜ。


ところでラーメン屋で過去のジャンプ流し読みしてたら、ブリーチで織姫さんがなんか新技披露してたんですよ。

技名覚えてないけど、盾を「しゅん」と読んでて。あれ、鋼盾って「こうしゅん」って読みもありうるのかなとか思ったり。

今更詮無きこととはいえ、名前の読みすらわかってないキャラを選んでしまったこの>>1はどうすればよいのか。

……きくひこ、でいいよな? そろそろ引っ込みつかないんだけどさ。


まあ、愚痴はここまで。

とりあえず現状路線で参ります。


んでは、また。
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/18(土) 23:10:02.68 ID:e0+RwsnXo
乙乙
シチューぐるぐるなインさんかわいいな

クリームシチューもクリームシチューもこの国独自の呼び方かも

ホワイトさん…
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/06/18(土) 23:11:31.23 ID:bXLCGzFyo

平和を満喫するインデックスかわいい
でも鋼盾はステイルに爆破されろ
初めての共同作業ってか?爆発しろ

余談だけど「こうじゅん」で一応変換出来ました
前に入力したのを記憶しただけかもしれないが
でも制作者でも読みを意識したか怪しいくらいだから好きにしたら良いと思うんだよ!
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/18(土) 23:18:01.45 ID:oAvgCCPVP

前から思ってたけど鋼循さん口がよく回りすぎだろ語彙力ありすぎだろ普通に頭良いだろ
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/18(土) 23:34:53.25 ID:Q29IYcPco
>>389
科学の街では文系(笑)なんだろ察してやれYO
391 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/18(土) 23:55:16.56 ID:dyn2/iWAo
ひぎゃーーー!!
ホワイトさん、ホワイトさーーーん!
すまねえホワイトさん!あとすげえ間抜けな台詞を言わせてしまったインさんにもゴメン。

ううう、やっちまったし。
これまでもけっこう細かいミス重ねてるけど、これはひどい。気付けよ!

鋼盾の代わりに>>1が爆発すればいいと思います。
爆発してホワイトになればよいと思います。

うう、山崎まさよしの「お家へ帰ろう」みたいな感じにしたかったのにい。

掲示板形式だと誤字の訂正とかが出来ないのがツライな。
……でも、訂正が利くタイプの投稿板とかだと>>1は絶対こねくり回して先に進まなくなる予感。
スマンですがここでがんばりますけん、よろしければお付き合い下さい。


うちの鋼盾くんが意外と頭よさげなのは、実はちょっとしたワケがあるんだぜ。
ひとつは上条さんとの差別化というかポジション的な問題で、もうひとつは内緒。
伏線と呼べるほどのモノじゃないし、活かせるかどうかわからないけど、いろいろ仕込んではいるのです。

ただ、>>390の言うように、能力強度の絶対的な序列の前には霞んでしまう資質も少なくないのが学園都市。
無能力者勢大好きな>>1は、そのあたりの歪さを書いてみたいなあなんて思っております。

長々とすみませんです。
ご指摘大感謝、精進しますので見捨てないでくれると嬉しいです。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/18(土) 23:58:04.11 ID:9Ad8ICTU0
ふざけんな、インデックスに着実にフラグたててんじゃねーよ。
恋愛要素はないんじゃないのか?



いいぞまっとやれやって下さいお願いします
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 00:19:14.83 ID:PbVnAGnco
シチュー食べたい
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/19(日) 21:13:38.61 ID:hQ9XEVO40
相変わらずの高クオリティだなぁ。
ところで俺は鋼盾はこうたてって読んでたんだけど確かに鋼盾ってこうじゅんともこうしゅんとも
読めるんだよな・・・ま、>>1のすきな読み方で良いんでないの。
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 22:10:27.06 ID:LfWnqwjao
「はがたて」と読んでた
いや無理があるのは分かってるんだけど語呂がいいからww
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 23:00:39.32 ID:E0F9DbytP
きくひこはまあ間違いないから安心していいと思う
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 23:01:40.94 ID:E0F9DbytP
きくひこはまず間違いないから安心していいと思う
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/06/20(月) 03:39:44.65 ID:N5YUVXBAO
日村 鋼盾掬彦
ヒムラ ハタスヒコ

新説!
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 05:01:06.32 ID:IBQUmva40


すげえ面白いけど、でも正直鋼盾が上条さんの横で驚いているだけのキャラにならないか心配
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/22(水) 18:17:15.07 ID:cOgRMKa0o
スレタイに行く頃には涼しくなってそうだな
401 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/22(水) 21:27:04.95 ID:B6BmChjGo
みなさんレスありがとうさんです。1レス付く度に踊ってます。
とりあえず公式からなんか情報が出ない限りは、このスレでは「こうじゅん きくひこ」で参ります。

気付けば400かあ、あーまだステイルもでてきてねえのかよ。
実はエンディングや神裂戦、ステイルの活躍、超電磁お茶会などなど主要なシーンはとっくに書き終わってるんだけど、
そこに至るまでが膨らみまくってしまってなかなか進まないのです。もっとスラスラ進むはずだったのに。
風雲雲川城とか土御門暗躍とかシチューとかアレとかソレとかプロットには影すらなかったのに……。

本日投下できたらします。
よろしければお付き合い下さい。

んでは、書いてきます。
402 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/22(水) 22:44:11.89 ID:B6BmChjGo

――――――――



「……きくひこは、魔術を否定しないんだね」


 昼食を平らげたインデックスは、ゆるゆるに緩んでいた顔を引き締めると、ポツリとそんな言葉を口にした。

 彼女は意外なほど健啖で、シチューもトーストも美味しそうにおかわりしてくれた。

 台所の流しには、役目を終えた空っぽのシチュー鍋と食器とが、水を張ったたらいに浸けられている。


 ちなみに、きくひこと名前呼びになっているあたり、餌付け作戦は大成功といえよう。

 ちょっと緊張した面持ちで、ささやくように「……きくひこ」とインデックスが口にしたのがつい10分ほど前のこと。

 鋼盾がそれを受け容れると、インデックスはその後心底嬉しそうに「きくひこきくひこ」と繰り返している。

 人の名前を呼ぶ、そんな些細なことがうれしくてたまらないらしい。


 昼食を摂りながら、いろいろな話をした。

 鋼盾と上条のこと、シチューの作り方のこと、学園都市のこと、教会のこと、そして、魔術のこと。


 会話に興じ、まず驚かされたのが彼女の知識の深さだ。

 その幼い容姿と口調からは想像も出来ないほど知識が豊富で、且つ異常に飲み込みが早い。

 シチューの作り方から錬金術の発生と歴史についての講義が始まってしまい面食らったが、まるで頭に百科事典でも入っているかのような博識っぷりだった。

 「生命のエリクシール」についてや「四大元素」の概要、「パラケルスス」の業績、果ては東洋の「抱朴子」「錬丹術」にまで話が広がってゆく。

 かと思えば鋼盾にとっては一般常識とすら思えるような知識を知らなかったりして、ひどくアンバランスな印象を受けさせる。

403 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/22(水) 22:55:59.56 ID:B6BmChjGo

――――――――



「……きくひこは、魔術を否定しないんだね」


 昼食を平らげたインデックスは、ゆるゆるに緩んでいた顔を引き締めると、ポツリとそんな言葉を口にした。

 彼女は意外なほど健啖で、シチューもトーストも美味しそうにおかわりしてくれた。

 台所の流しには、役目を終えた空っぽのシチュー鍋と食器とが、水を張ったたらいに浸けられている。


 ちなみに、きくひこと名前呼びになっているあたり、餌付け作戦は大成功といえよう。

 ちょっと緊張した面持ちで、ささやくように「……きくひこ」とインデックスが口にしたのがつい10分ほど前のこと。

 鋼盾がそれを受け容れると、インデックスはその後心底嬉しそうに何度も「きくひこきくひこ」と繰り返している。

 というか無自覚だろうが「きくひこ」「なに?」「ふふ、呼んでみただけ」を地でやられると相当クるものがある。

 なにこの子、かわいいんですけど。


 人の名前を呼ぶ、そんな些細なことがうれしくてたまらないらしい。

 ただ、それはことによると今までそうしたことのできる人がいなかったということで。

 踏み込むのは憚られ、結局繰り返される名前呼びに律儀に応じ続けることしかできなかった。


 昼食を摂りながら、いろいろな話をした。

 鋼盾と上条のこと、シチューの作り方のこと、学園都市のこと、教会のこと、そして、魔術のこと。


 会話に興じ、まず驚かされたのが彼女の知識の深さだ。

 その幼い容姿と口調からは想像も出来ないほど知識が豊富で、且つ異常に飲み込みが早い。

 シチューの作り方から錬金術の発生と歴史についての講義が始まってしまい面食らったが、まるで頭に百科事典でも入っているかのような博識っぷりだった。

 「生命のエリクシール」についてや「四大元素」の概要、「パラケルスス」の業績、果ては東洋の「抱朴子」「錬丹術」にまで話が広がってゆく。

 かと思えば鋼盾にとっては一般常識とすら思えるような知識を知らなかったりして、ひどくアンバランスな印象を感じさせた。

404 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/22(水) 22:57:12.96 ID:B6BmChjGo


(でもなあ……)


 やはり彼女はこの街の人間には見えない。

 上条もそう感じていたようだったことを思い出す、そう、うまく言えないが、違うのだ。

 学園都市の人間特有の雰囲気がないし、なによりインデックスの常識(この都市においての)の欠如は演技とは思えなかった。


 ならば彼女は、本人の言うとおりの存在なのだろうか?

 10万3000冊の魔導書の管理人にして、謎の魔術結社に追われる薄倖の魔法少女だというのか?


(うーん)


 手元の情報だけでは結論が出ない。

 こういう場合に、結局はどっちつかずになってしまうのが押しの弱い鋼盾の常であった。

 ただ、上条に嫌われ役を押し付けるような形になるのは本意ではない。

 上条の反応が基本的には正しいと鋼盾も思う。


「上条くんは子どもの頃から学園都市にいるからなあ。
 やっぱりこの街に住む人間は、他とはちょっと違うし、そのことに少なからず自負もあるから。
 ―――――超能力(とくべつ)を否定する魔術(もうひとつのとくべつ)を、簡単には肯定できないんだよ」

「うん、さっきも彼、そんなことを言ってたんだよ。……きくひこは、ちがうの?」

「上条くんの気持ちもわかるけどね、僕はこの街に来てまだ三年だから。……それに、無能力者だからね」

「無能力者?」

「この街で能力開発を受けても、みんながみんな能力に目覚めるわけじゃないんだ。
 だいたい半分ぐらいの人間が、すごく弱い力しか使えないんだ。僕はぜんぜん使えないけど」

「……そうなんだ。魔術とは違うんだよ。魔術は才能に依るものじゃない。……ううん、才能がない人が才能のある者に抗う為に
 培われた技術と知識の体系こそが魔術なんだよ。もちろん適正や求められる技量なんかがあるから一概には言えないけど、
 本来きちんと理解して準備してテキスト通りに進めれば、誰にでも可能なものなの。それこそ、きくひこがシチューをつくるようなものかも」


 手順書(レシピ)通りに作れば、誰にでもシチューは作れる。

 材料の質や調理器具の善し悪し、料理の腕、熟練度によって出来上がりに差は生まれるだろうが、それでもシチューは作れる。

 味付けに失敗するかもしれないし、指を切ったりやけどをしたりするかもしれないけれど、それでも。

 魔術とはそういうものだとインデックスは言う。


405 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/22(水) 23:00:16.06 ID:B6BmChjGo


 鋼盾が先程からずっと感じていたこと。

 魔術とやらを真っ向から否定することの出来ないその理由。


 インデックスの語る魔術の話には、奇妙に筋が通っている。

 荒唐無稽なファンタジーの設定を語るのではなく、ただ鋼盾の知らない国の話をするかのように自然体な語り口。

 そして、彼女の語る魔術とやらは、何かによく似ている―――そう。


(学園都市の超能力と、インデックスの語る魔術が、似ている?)
 
 
 学園都市の能力開発は育脳によるもので、つまり「頭の中身」の問題だ。

 そして、その根底にあるのは「自分だけの現実」、平たく言えば「思い込み」とでもいうべきものが能力を生む。

 鋼盾が結局能力に目覚めていないことから判るように、投薬や電極による刺激はあくまでも補助的な要素といってよい。


 ネットで都市伝説を追いかけた時にみつけた「原石」という、能力開発に依らない天然の能力者の話を思い出す。

 眉唾物と誰もが笑うその話を、しかし鋼盾掬彦は否定できない。


(上条くんの“幻想殺し”……)


 そう、友人である上条当麻が持つその右手を知るが故に。

 彼は学園都市に住む前から、その異常な右手を持っていたという。

 もちろんその特性を把握したのは、能力者たちと関わるようになってからなのだろうが、しかし“もともと持っていた”のだ。

 上条はそのことを深く考えてはいないようだが、鋼盾はずっと疑問に思っていた。

 嫉妬混じりのその疑問を突き詰めることはついぞなかったが、ずっと抱えていたのだ。


 天然の能力者は、存在する。

 生まれつきなのか、幼少の頃に目覚めたのかはわからないが、確かに存在するのだ。

 ならば「信仰」――人類が連綿と作り上げ、鍛え続けた理論体系によって、脳が擬似的な開発状態に置かれる可能性は否定できない。

 語弊を恐れず言えば、信仰とは洗脳に他ならない、そう鋼盾は思う。


 経典はテキスト。聖歌は麻薬。教義という名の時間割。

 求道の路を歩んだ先達は数え切れず、目指すべき標は厳然と示されている。


 教えに忠実であれ、祈りの果てに天へと至れ。

 ただ只管に禅を組め、無心に念仏を唱えよ、悟れ、解脱に至れ。

 己が魂を鍛え上げ位階を超えよ、人の枠を超えよ、神の国はすぐそこにある。

 アインソフオウル、アインソフ、アイン。

406 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/22(水) 23:01:39.20 ID:B6BmChjGo



 それはまさしく、『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの (SYSTEM) 』

407 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/22(水) 23:02:55.37 ID:B6BmChjGo


 そもそも学園都市を作った人間は、なぜ「超能力」などというものを目指そうと思ったのか、否、思えたのか。

 天文学的な費用がかかったであろうこの異常な都市、そんなものを創り上げるに足る確信は、どこから生まれたのか。

 ―――彼、あるいは彼女は知っていたのではないだろうか。


 人間が、人間を超えられることを。

人間が、人間をやめられることを。

 魔術―――あるいは、それに類するものを。
 
408 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/22(水) 23:04:50.52 ID:B6BmChjGo
 

 インデックスにこのまとまらない疑問をぶつけてみると、彼女は目をぱちくりさせて黙り込んだ。

 顎に手を当て、テーブルをじっと見つめながら、思いのほか真剣な表情で思考に没頭し始める。

 ほどなくして結論を出したようで、甘やかさの薄れた静かな声が言葉を紡ぐ。 


「―――わたしはこの街のことをよく知らないから、きくひこの言うことが正しいかは判断できないんだよ。
 でも、それでも……きっとある程度は正しいかも。十字教徒としては簡単には認められないけど」

「能力と魔術は呼び名こそ違うけど、同じようなものってことかな」

「根源は、きっと。
 ただ、魔術と能力はやっぱり違うものなんだよ。魔術は“才能のない人間”のための術式だから。
 科学による能力の発生は自然な発露ではないとしても、結果としてきみたち能力者は、もう普通の人間じゃないかも」


 脳開発を受けたこの街の学生は、なるほど普通の人間とは言えないだろう。

 ……能力が発現しない自分の脳もそうだというのは、少しばかり納得のいかない話ではあるけれど。


「そっか、じゃあ例えば……僕には魔術は使えないってことなのかな?」

「うん、回路自体が別のものになってるから。
 そもそも無神論者のきみたちじゃ、魔術の毒を中和できないんだよ」

 
 信仰という名の防御壁があって初めて、人は人ならぬ業を扱えるのだという。

 そんな人たちから見れば、なるほどこの街の住民は異端だろう。才能のある人間――“原石”とやらも、また。


「“原せ――“才能”がある人間っていうのは、上条くんみたいな人をいうんだろうね。天然の能力者、か。
 そして学園都市の学生たちは、まだ確立していない能力開発によって作られた“人工の才能”を植えられた人間だね」

「多分、その理解でいいかも。もしきくひこのいうことが正しいなら、能力っていうのは既存の魔術とはちがうアプローチから考案された魔術なんだね。
 才能のない人間のために術式をパターン化して使えるようにするんじゃなくて、才能そのものを作り出そうという試みが能力開発なのかも。
 だから、能力者には魔術が使えないし、才能自体が植えられなかった“無能力者”という人たちが出てきちゃうのかも」


 個人の資質に依存するから一人一能力という制限がある反面、能力使用には魔術に求められるような面倒な下準備が全く必要ない。

 魔術における詠唱や魔法陣などの構成は、まともにやると年単位、短縮しても数日がかりという事もザラであるという。

 そのため魔術師同士の戦いは下準備がメインであり、そこでいかに戦力を整え、如何に相手の魔術への対抗策を練るかが課題となるそうだ。


 才能のない者のための技術体系である魔術とは違って、人工的ではあるが才能を持つ者が振るう力が能力である

 考えてみれば、上位能力者はその類稀な才能ひとつで、軍隊を相手取ることすら可能であるというのだから恐ろしい。

 神に与えられるのでも天使の力を借りるのでもなく、ただ人の力のみで天上を目指すこと。

 “SYSTEM”

409 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/22(水) 23:05:39.93 ID:B6BmChjGo


 だが、そうだとして。

 能力開発を受けてなお、その身に才能が宿らぬ者は、どうすればいい?

 僕は、一体どうすればいいのか。


「…………」

「……きくひこ?」

「……ん、ごめんごめん。
 自分で始めといてなんだけど、ちょっとこんがらがってきちゃったよ。うん、この話は今度ゆっくりしよう。
 ああ、そういえばさっきのシチューにある隠し味が入ってるんだけど、わかる?」

「……むう。わたしは料理ができないからさっぱりなんだよ!
 シチューはとっても美味しかったから、すごく気になるんだよ!」

「実はちょっとだけ味噌が入ってるんだよね、あとバター」

「! ……ジャパニーズ伝統調味料、恐るべしかも!
 そうだきくひこ、味噌と言えば、日本の伝説に味噌を欲しがる妖怪の話があるんだよ!」


 適当に話を逸らしてみると、またまたインデックスの博覧強記のお披露目と相成った。

 鋼盾は興味深くそれを聞きながら、先程の学園都市の能力開発についての話を思い返す。



 妄想だ。

 インデックスの電波話に付き合っただけ。

 だけど、この妄想がもし的を射ているとしたら。

 鋼盾が無能力者の烙印を押されているのは、学園都市という未成熟な宗教のせいなのではないか?


 それとも、結局は才能が芽生えなかった己が悪いのだろうか。

 指を咥えて才能溢れる連中を見上げることしか許されないのであろうか。

 敗北者、落伍者、出来損ない、失敗作――――無能力者。



 幾度となく鋼盾の心を引き裂いたその言葉が、また新しい傷を付けた。

 いつもより、すこしだけ深く。




――――――――

410 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/22(水) 23:06:41.08 ID:B6BmChjGo


 気付けば既に、時計は十四時十分前を指していた。

 随分と長い間、話し込んでしまったものだ。


 インデックスに合鍵を渡し、パソコンを立ち上げメーラーを起動する。

 上条と鋼盾の携帯に宛ててメールを作成し、送信ボタンの上にカーソルを置く。

 ふと思い立ってスクリーンセイバー機能も停止した。左クリックひとつでメールが飛ぶように整えておく。


 インデックスには「もし隣室に魔術師が乗り込んできた気配があったら、このボタンを押すこと」といい含めておいた。

 はじめて触れるらしいパソコンに戦々恐々としていたインデックスではあったが、練習として鋼盾宛にのみメールを送らせると、

 なんとかおっかなびっくり送信の手順は覚えてくれたようだった。もの覚え自体はいい子なのだ。


 鋼盾は机の引き出しを開けると、そこから一枚の封筒を取り出す。

 幻想御手の対価である十万円の入った封筒だ。

 一万円札が十枚、それなりの厚みはあるものの、やはり薄くて軽い。

 無能力者の価値などそんなものだと示すかのように。


 家を出ようとするとインデックスがひょこひょこと玄関先まで付いて来てくれた。

 表情は笑顔ではあったが、そこには隠し切れない不安、心細さが浮かんでいるように見えた。

 ……一瞬、家を出るべきではないと思ってしまったものの、気付かぬフリをして靴を履く。


「ごめんね。どうしても外せない用事があるんだ。
 なにか緊急のことがあったらさっきのメールを送ってくれていいからね?
 ……来客があっても無視、鍵は絶対開けないこと。大丈夫?」

「大丈夫なんだよ! 心配しすぎかも!
 ……いってらっしゃい、きくひこ」


 いってらっしゃい。

 ひとり暮らしを始めてからは聞くことのなかった言葉に、思わず頬が緩み――すぐに強張った。

 自分はこれから罪を犯しにゆくのだ。そんな言葉をかけてもらえる資格など、ない。

 とは言え。


「いってきます」


 自分のつまらない感傷で、インデックスの笑顔を奪うような真似をできはしない。

 ―――多分に言い訳じみたことを考えながら、なつかしい言葉を口にした。


 心臓が小さく、ステップを乱した。



―――――――― 

411 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/22(水) 23:07:31.85 ID:B6BmChjGo



 鋼盾掬彦は知らない。

 上条当麻が登校中に、持ち前の不幸スキルを遺憾なく発揮し、携帯電話を破壊してしまったことを。

 インデックスが上条や鋼盾の安全を確かめるため、耐え切れず学生寮周辺を探知すべく外へと出てしまうことを。

 まだ見ぬ魔術師たちの探知の網が、“歩く教会”の残滓を捉え、この学生寮に網を張ることを。

 幻想御手の取引相手であるスキルアウト達が、鋼盾を無事に帰すつもりがないことを。



 この日、夜の帳が落ちると同時に、苛烈で凄惨な非日常の幕が上がることを。

 いつだって端役であるはずの彼に、スポットライトが当てられることを。


 鋼盾掬彦は、知る由もなかった。




――――――――

 
412 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/22(水) 23:20:09.83 ID:B6BmChjGo
ここまで。
うああ、なんか不安定だったせいでミス連発!しにたい。

まず>>402ミスです。10分経ったのに反映されてなかったので油断したぜ。
待ってる間にちょいと訂正しましたので>>403が正しいです。ちょいとだけ砂糖マシ、>>1はこのくらいが精一杯。

そして>>403>>404のあいだにコレが入ります。うう、申し訳ない。

――――――――


 魔術。

 あるいは呪術、妖術、邪術、託宣、奇跡、仙術の類と言い換えることもできるだろう。

 およそ人の枠を越えた超常・超自然的な現象を起こすための、知識と技術の体系、神の御業か悪魔の仕業か。

 それはたしかにあるのだと、目の前の少女は言う。

 己こそがその体現であると。


「うーん、正直に言うと、よくわからないんだけどね」


 鋼盾としては肯定も否定もできない、というのが正直なところだ。

 いまだその片鱗すら見ていない魔術とやらを、全肯定することはもちろんできないが、

 少なくともインデックスが本気で魔術を信じているであろうことは、どうしようもなく確信してしまった。

 ならば頭ごなしに否定してしまうことは躊躇われる。服の一件もあるし。


 鋼盾も食事を摂りながら、いろいろと考えてはみたのだ。

 精神操作系をはじめとする能力者の仕業、という可能性は、上条が右手で彼女に触れている以上、まずありえないといっていい。


 ならば彼女は学園都市の人間で、魔術云々は彼女独自の“自分だけの現実”の制御法だったりするのかもしれない、とかはどうだろう。

 強烈な自己暗示を施し、それに則って己を律すること。平たくいうと“設定”というヤツだ。

 己を“魔術師”、能力を“魔術”と定義することで演算(イメージ)の補助や構築、方向付けをコントロールできる可能性は否定できない。

 アニメのヒーローに憧れた小学生が、妄想そのままに空を飛んだ例だってこの街にはあるのだから。


――――――――
413 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/22(水) 23:30:13.09 ID:B6BmChjGo
てなわけでいろいろミスりましたが、投下ここまで。
俺、完結したらミスを直した版をどっかに投稿しようと思うんだ。
どっかオススメの場所あったら教えてください。

オリジナル解釈っぽいのが多々あったような気もしますが、鋼盾君の妄想ですので気にせず行きましょう。
つか原作で上条さんが当初魔術を思いっ切り否定してますが、能力開発を受けずに幻想殺しを持ってるお前はどうなんだという話ですよね。

あと、うるかすって方言だったのね。
知りませんでした。

今回はホントに失礼いたしました。
んでは、また。
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/23(木) 01:57:05.64 ID:d3Sj7uwJo
乙。待つてた
インさんが外に出たのは仕方無いよね。優しいんだもの
鋼盾もピンチだけどインさんを一人にするなよ…

あとお茶会ってどういうことだおい
四人組とキャッキャウフフしたりフラグ建てちゃったりするのかよ爆発しろ
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/23(木) 02:23:06.62 ID:6oAk/uv20
むしろ風雲雲川城が気になる


インさんがシリアスからほのぼのまでかわいい
でもきくひこきくひこだとちょい語呂悪いな、とうまとうまの語呂の良さは異常
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りしまう :2011/06/23(木) 22:18:57.04 ID:S2n1Wu1b0


「きくひこ」「なに?」「ふふ、呼んでみただけ」だと?
爆発しろ
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/06/23(木) 22:35:25.84 ID:iupcjo6Eo
二日連続更新かと飛んできてみれば、しまうー、だと? ……しまうーならしょうがないな

>>1
次回いよいよか?
418 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/25(土) 00:23:09.27 ID:OspuTiZgo
どうも>>1です。
コメントありがとうです。

なんか思いのほか筆が乗ったので投下。
ちょいと短いですが、まあ導入部ということで。

んでは、推敲して投下します。
419 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/25(土) 00:36:34.42 ID:OspuTiZgo
――――――――



 蜘蛛の糸。

 幻想御手のことを、鋼盾はそう評したことがある。

 底辺で燻る無能力者たちにとって、それはまさに救いの糸である、そう思えたのだ。

 天上から伸ばされた、蜘蛛の糸だと。


 あるいはそれは皮肉にも、ひどく的を射た比喩だったのかもしれない。

 希代の小説家が書いたあの児童文学のオチなんて、誰でも知っている。

 カンダタ、蜘蛛の糸に手を伸ばした男がどうなったかなんて、わかりきっていることなのに。


420 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/25(土) 00:40:17.23 ID:OspuTiZgo


“カンダタはあっと云う間もなく風を切って、独楽のようにくるくるまわりながら、見る見る中に暗の底へ、まっさかさまに落ちてしまいました。

 後にはただ極楽の蜘蛛の糸が、きらきらと細く光りながら、月も星もない空の中途に、短く垂れているばかりでございます”


“御釈迦様は極楽の蓮池のふちに立って、この一部始終をじっと見ていらっしゃいましたが、

 やがてカンダタが血の池の底へ石のように沈んでしまいますと、悲しそうな御顔をなさりながら、またぶらぶら御歩きになり始めました。

 自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、カンダタの無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、

 御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう”

421 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/25(土) 00:43:34.47 ID:OspuTiZgo


 カンダタは、蜘蛛の糸など掴むべきではなかったのか。

押し寄せる亡者の群れを、拒むべきではなかったのか。

 転落を是とし、絶望を受け容れることが正しい選択だったのか。

 それとも大挙してよじ登ってきた亡者を皆、掬い上げてくれたというのか。

 己一人救われたいという願いは、そんなにも醜いものなのか。

 
 ならばなぜ、糸は垂らされたのか。

 釈迦は悲しそうな顔をするだけで、なにひとつ語らない。


 ああ、貴方は糸など垂らすべきではなかった。

 なんということをしてくれたのか。

 
 極楽の蓮池の蓮は、頓着の欠片も見せずに揺蕩うばかり。

 血の池に咽ぶ亡者の悲嘆も知らずに、鉄錆から一番遠い香りを振り撒いている。

422 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/25(土) 00:45:26.25 ID:OspuTiZgo


 おまえは、残酷だ。

 いっそ笑ってしまうほどに、残酷だ。


 そんな慈悲など、垂れるべきではなかったのに。

 なぜ。

423 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/25(土) 00:46:30.28 ID:OspuTiZgo



“悪いがついさっき値上げしてね、こいつがほしけりゃもう10万持ってきな”


“金ねーんならさっさと帰れデブ”


“オウ、ソイツ立たせろ。
 お前らのレベルがどれくらい上がったか、そいつで試してみろ”


424 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/25(土) 01:03:48.68 ID:OspuTiZgo



 願いは叶わない。

 いつだって、そうだったように。

 
 ああ

 なぜ、どうして

 あなたは、あなたたちは

 そんなにも、そんなにも、遠いのか

 
 鋼盾にはあの話は、最初から助ける気がなかったようにしか思えなかった。

 釈迦の気まぐれ、言うなれば釣り遊びだ。食いもしないくせに。



 いつだって祈りは届かないし、期待は裏切られる。


 蜘蛛の糸に縋る亡者は、結局誰一人として救われなかったのだ。


 



――――――――

 
425 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/25(土) 01:06:40.61 ID:OspuTiZgo
ここまで!
ようやく進んだか、よかった。

んでは、また
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 01:17:58.76 ID:6DjT73VBo
乙。待つてた
急に地獄に落とされた。そんな展開だな
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/25(土) 12:37:26.73 ID:I629GBCZo
自業自得だな
レベルアッパーとかドーピングと同じじゃねーか
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/25(土) 15:07:36.48 ID:4Xn7abdB0
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 20:12:18.64 ID:GsxGdpTxo
>>427 学園都市でドーピングとかいわれてもww

乙。次回は佐天さんくるかな
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/06/26(日) 17:12:04.17 ID:k7erf9fAO
こうして考えると木山先生もヒドいことするわ
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県) [sage]:2011/06/27(月) 20:09:17.41 ID:EAL6rjn4o
関係ないけどいただきますって神道だった気がする、詳しく知らないけど
命をいただきますと感謝するのと、神から食べ物をもらってるのを感謝じゃ少し矛盾しちゃわないかな
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2011/06/27(月) 20:27:55.50 ID:NcrWp7yMo
いただきますは「頂」、つまり山岳信仰って説もあるよ。
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/27(月) 23:43:54.74 ID:byONLr98o
浄土真宗がはじめたと聞いてる
諸説あるみたいだけど
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/28(火) 12:11:31.31 ID:VWFn/28n0
まあ、ここでのいただきますは宗教的なアレじゃねえだろう

蜘蛛の糸はうまいなー あとインデックスかわいい
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) :2011/06/28(火) 20:14:22.32 ID:TU88hS6+0
日村wwと思ってたらここの公準くんイケメンすぎんぜ。
上条さんみたいな右手も、浜面ほどの運動能力や機転もない主人公がどうするのか楽しみ
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage]:2011/06/28(火) 20:15:45.54 ID:TU88hS6+0
ごめん
437 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/06/28(火) 23:54:40.88 ID:nhguh+Tlo
>>426‐430
コレをやらんと鋼盾君でやる意味ないもんね
自業自得は間違いないけど木山先生残酷だよなー
そんなところも好きだぜ

>>431‐434
アカデミック! いろいろ説があるもんだ 声に出して読みたい日本語
キリスト教では与えてくれた神への感謝、ウチの国では食材への感謝と命を繋ぐことの自覚めいた祈り
矛盾はもっともだけど郷に入りては。つーか腐れヤキソバパンを思いっきりいただきますしてなかったかインさん

>>435
チリって初めて見た
鋼盾がどうなるかはお楽しみに


ちょっと詰まってますが元気です
レスに力をもらってますぜ
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/29(水) 00:54:15.78 ID:DGOW2cOIo
気長に待つてる
無理に急がなくてもいいのよ
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 00:54:49.76 ID:DGOW2cOIo
すまん上げてしまった
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 11:50:43.93 ID:TM+UDELk0
>>439
IDがGOW2(ギアーズ・オブ・ウォー2)だと…?
441 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/30(木) 22:42:06.93 ID:tSLUVZ5To
>>438 サンクス! なんとかコンスタントに投下できるよう頑張ります!

うおおっと。やべえ、停電中なのになんでパソコン使えてるんだよ。
あー、アレだ。学園都市製の素敵バッテリーの駆動時間がアレでアレだったとかなんとか。
無理かな?

素直に停電が回復したことにしましょう。
インデックスとごはんを食べてる辺りで唐突に電気がついて、停電が復旧したことに気付いたイベントがあったことにしてください。

まったく、つまらんミスでした。


なんとか今日中に投下出来ますように。
己を追い込む予告age!
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/30(木) 23:17:50.74 ID:vEk9OlYu0
待ってる
443 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/30(木) 23:40:03.17 ID:tSLUVZ5To
>>442 待たせた! 応援感謝!

投下します! ちょいと長くなりそうだぜ!
444 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/30(木) 23:42:07.83 ID:tSLUVZ5To

――――――――



 午後3時、第七学区の外れ、再開発地域。
 
 取引現場にやってきた鋼盾を待っていたのは、如何にもスキルアウト然とした3人組だった。

 ニヤニヤとこちらを値踏みするように眺める下卑た視線に慄きつつ、鋼盾はポケットから封筒を取り出すとそれを渡す。

 スキルアウトの一人はひったくるように封筒を奪うと、バカにしきった目で「これじゃ足りねえな」と口にした。

 
 その後は、ひどいものだった。

 騙されたことを確信した鋼盾が、奪われた金を取り返そうと追い縋るも、瞬く間に地面に叩き伏せられてしまった。

 顔を殴られ、腹に膝を入れられ、頭を抑えられ、足を払われる。

 浴びせかけられる暴力と暴言に意識が遠くなる。痛い、痛い、痛い、痛い。


 嘘、騙、詐、偽、欺、罠。

 こうなる可能性はあると思っていた。

 思っていたのに目を逸らして、結局このザマ。

 口から漏れるのは情けない呻き声ばかりで、情けなくて情けなくて。

 だけどこんな時ですら打算めいたことを考えてしまう自分がみっともなくて。

 上条くんが助けに来てくれるんじゃないかなんて、そんなことを考えてしまう己を殺してしまいたい。


 ああ、結局は自業自得。

 ズルをしようたした己への罰。

 だれも、助けになんか、来ない。


 こんな、罪に塗れた自分には、救いなんて訪れない。



 
 だが、信じられないことに。

 差し伸べられる、手があった。

445 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/30(木) 23:44:05.65 ID:tSLUVZ5To


「もっ、もうやめなさいよ!
 す、すぐに警備員が来るんだから!」
 

 霞む目に映ったのは女の子。

 中学生くらいと思われる、黒髪の少女が震える声を張り上げていた。

 その表情は蒼白で、視線はあらぬ方向を向いている。特徴的な髪飾りが不思議と目に付いた。

 
 理不尽な暴力を見逃せず、圧倒的に不利な状況にも関わらず危険へと飛び込んでくるその姿。

 かつて路地裏で発火能力者に追い詰められた鋼盾を救ってくれた、彼のように。

 鋼盾が憧れたヒーロー、上条当麻のように。


 だが、悲しいかな。

 少女の右手には幻想殺しのような異能はなかった。

 御坂美琴のような電撃も、青髪ピアスのような身体強化もなかった。

 
 彼女は年齢相応の普通の女の子でしかない。

 そして相手は、暴力を是とするスキルアウトだった。


「――今、なんつった?」


 金髪のリーダー格の男が、彼女のすぐ横の壁に蹴りを叩き込む。

 ガアン!という轟音と蹴撃の風圧ひとつで、少女の心はへし折れてしまったようだった。

 恐怖と後悔、半泣きで怯える少女に、金髪の男は残酷な言葉を重ねてゆく。


「ガキが生意気いってんじゃねえよ。
 なんのチカラもない非力なヤツにゴチャゴチャ文句を言う権利はねーんだよ」


 力の無い、能の無い者。

 ―――無能力者たるオマエラは、そこで奪われ続けていろ。

 スキルアウトたちの声なき哄笑が、鋼盾の心を打ちのめしてゆく。

 ともすれば先程のリンチめいた暴力よりも、強く。

446 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/30(木) 23:44:52.04 ID:tSLUVZ5To
 
 叢雲のように立ち込める絶望。

 ―――だが、それを払うかのように力ある言葉が紡がれる。


「借り物の力を自分の実力と勘違いしているあなた方に、彼女を笑う資格はありませんわ」


 一陣の風のようなその声。

 花を散らすのではなく、月に掛かる雲を吹き飛ばすソレ。

 啖呵というにはあまりにも美しく、なにより気高い。
 


 名門常盤台中学校の制服

 艶やかに揺れるツインテール

 凛とした眼差しに芯のある口調

 右手に巻かれた三又槍の腕章



「風紀委員ですの―――暴行傷害の現行犯で拘束します」




――――――――
447 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/30(木) 23:46:49.99 ID:tSLUVZ5To



 颯爽と現れた風紀委員の少女は、高位の空間移動能力者(テレポーター)のようであった。

 鋼盾が手を出すことすらできなかったスキルアウト二名をあっという間に叩き伏せ、残るひとりを睨み据える。

 だが、リーダー格の金髪は余裕の表情を崩さず、風紀委員の少女の攻撃を容易く回避して見せた。


 それは明らかに能力によるもの――ただのスキルアウトが持たぬ筈の、能力によるもの。

 二人から離れた位置にいる鋼盾には、見当違いの方向へ能力を走らせる少女が予期せぬ状況に追い詰められているのが判る。

 必中の矢が悉く的を外し、回避したはずの攻撃が己の身を削るその異常。


 カメレオン、爬虫類めいた風貌の男が駆使するその能力。

 おそらくは相手の精神に干渉するタイプの幻術系、あるいは虚像を結ぶ類の偏光系能力。

 目視によって対象を捉えるタイプの能力とは極めて相性の悪いタイプの能力者だ。

 動揺も大きいだろう、緻密且つ繊細な演算が求められる空間移動能力者では、不利に過ぎる。


 ……いや、違う。

 男のソレは直接的な攻撃能力ではないのだから、空間移動の少女が距離をとれば攻撃は届かない。

 攻撃範囲外に転移を行えばいくらでも仕切りなおしが可能であるはずのこの状況で、しかし彼女がそれを行わないのは。


 考えるまでもない。

 鋼盾と黒髪の少女、自分たちに累が及ぶことを避けるため、彼女は敢えて己の身を晒しているのだ。


 足手纏い。

 自分たちがいなければ、彼女は勝てる。

 勝てないまでも、逃げることは可能になる。


「白井さん……!」


 黒髪の少女が痛みを堪えるように言葉を紡ぐ。

 どうやら風紀委員の少女とは知り合いであるらしい。

 苦境に陥る友人を前に、何もすることのできない己の無力を嘆くかのような悲嘆。

 
448 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/30(木) 23:48:13.42 ID:tSLUVZ5To


 幾度の交差を経て、風紀委員の少女は既に満身創痍。

 相手の能力を見極めようと目を皿のようにして金髪を睨み据えるも、隠し切れぬ疲労が彼女を苛んでいるのは明らかだ。

 そんな少女に、金髪の男は下卑た笑みを浮かべながら襲い掛かる。


 蹴撃。

 回避は成らず、少女は廃ビルへと吹き飛ばされた。


「カカカッ。今のはイイ感触だったぜェ。アバラが何本かイッたかな?」


 嬲るように、獲物を追い詰めるかのように笑う金髪。

 手加減抜きの乱暴な一撃に身を捩りつつも、風紀委員の少女は戦意を喪わない。

 だが、索敵と現状把握に慌しく動くその瞳が、一瞬だけ鋼盾を捉えた。


 にげろ。

 隣の少女といっしょに、逃げろ。


 アイコンタクトというには一方的な遣り取り。

 風紀委員の少女はビルの中へとその身を躍らせる。

 それは逃亡ではなく、鋼盾と少女が逃げる時間を稼ぐためのモノ。


 男は「鬼ごっこかぁ? ハッ、面白れぇ、精精逃げて見せろよ!」と、

 喜悦の笑みを浮かべながら風紀委員の少女を追い、廃ビルのなかへと入ってゆく。

 鋼盾と黒髪の少女、二人を視界の外に置いて、だ。


 逃げるなら、今。

 ―――風紀委員の少女を助けに向かうなんて選択肢は、浮かび上がりすらしなかった。



――――――――

449 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/06/30(木) 23:57:24.53 ID:tSLUVZ5To



「……きみ、今の内に逃げよう」


 金髪は風紀委員の少女を追ってビルの中に。

 先程叩き伏せられた二人は、未だ意識を取り戻してはいない。

 チャンスは今しかない、鋼盾は傍らの少女に言葉をかける。


 自分たちが逃げれば、風紀委員の少女も退避が可能になる。

 離脱は空間移動能力者の独壇場であり、金髪の男にはそれを追うことは適わない。

 援軍を呼ぶことも可能な筈である。斃れた2名を引き摺って逃げることなど不可能なのだから、全員を捕り逃すこともない。

 多分に言い訳じみた理屈だという自覚はあるが、この場においては恐らくそれが最適手だった。


「そんな!白井さんがまだ!」


 黒髪の少女はそれを拒む。

 見ず知らずの鋼盾のために巻き込まれてくれるような優しい子が、友人を見捨てられるわけがない。

 その強さに羨望を感じつつも、しかし彼女にはなにもできないのだ。

 だって


「……きみも無能力者なんだろう?
 あんなのに巻き込まれたらタダじゃ済まない。手助けしようにも、ぼくらはむしろ足手纏いだ。
 こんな時に、無能力者に出来ることなんて何も無いんだ」

「……でも!」


 ああ、そんな傷ついたような顔をしないでくれ

 僕らは無能力者だ。

 彼らとは、違う

 君も、そんなことは知っているだろう?
450 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/01(金) 00:02:18.99 ID:ZDhq8h4Co
 

「!……警備員を、呼びにいってきます!」


 ああ、それはいい

 それは正しいことだ

 ぼくらにできるのは、そのくらいのことだ

 
 駆けて行く背を見送る。

 きみは、ひどく正しい、けど。

 やっぱりそれだって、逃亡だろう?


「……ぼくらは、無能力者だ。
 いつだって、なんにもできないんだよ」


 そう、この街で一番弱いのが僕らだ。

 無能力者だ。


 風紀委員や警備員に保護されるウサギ

 スキルアウトに狩られるキツネ

 実験台にもなれないマウス

 芸のひとつもない駄犬

 翼をもがれた鳥

 蛹のままの蝶

 孵らない卵

 
 いつだって、そうだった。

 無能力者とは、そうしたものだった


451 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/01(金) 00:04:19.60 ID:ZDhq8h4Co


 能力という名の花を咲かせるでもなく

 能力という名の実を付けるでもなく

 能力という名の枝を伸ばすでもなく


 何も成さず、日陰にただただ広がるカビのような存在だ
 
 そんなものが

 
 なぜ、美しい花を咲かせる夢を見てしまったのか

 なぜ、たわわに実を付ける夢を見てしまったのか

 なぜ、伸びやかな枝を成す夢を見てしまったのか


 なぜ

 どうして

 ぼくらは

 ぼくは

 こんなにも



―――――――
452 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/01(金) 00:06:42.35 ID:ZDhq8h4Co



 鋼盾掬彦は逃げ出した。

 あろうことか、何より忌った無能力者という肩書きを免罪符にして。


 弱い己を肯定できずに学園都市へと逃げて

 その学園都市で報われぬ努力を重ねることから逃げて

 抱えた罪悪感を忘れさせてくれる友人たちとの居心地のよい日々に逃げて

 あまつさえ彼らに嫉妬する己に耐えられず幻想御手という反則へと逃げて


 そして―――今もまた、逃げ出した。

 
 ただ、必死に逃げて逃げて逃げた。


 己の無力に目を逸らして。

 己の責任を他者に押し付けて

 己の罪科に気付かぬ振りをして。

 己の無様に向き合わずに済むように。



 鋼盾掬彦は逃げ出した。

 逃げられる、筈もないのに。



―――――――

453 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/01(金) 00:24:53.40 ID:ZDhq8h4Co
ここまで

鋼盾君のモノローグがエコーズのZOOみたいですね。
僕たちはこの街じゃ 蛇に睨まれたアマガエル―――愛をください。

久々に漫画版を引っ張り出してみました。
いやー、鋼盾くんの端役っぷりやられっぷりったら素晴らしいね。
よくまあ鋼盾SS書こうと思ったモンだよ俺。

とは言え、佐天さんに逃げようと言ってるシーンとか見ると、意外と理性的な対応なんですよ彼。
無能力者の苦悩、原作では佐天さんがクローズアップされてるけど、鋼盾くんもきっと多くを抱えていたんじゃないかなーと。
アケミ、むーちゃん、マコチン、あとは野球部さんに先輩さんに説教眼鏡くんといい、無能力者にスポットをあてた冬川さん大好き。

原作をなぞるシーンはなんともシンドかったですが、いかがだったでしょうか。
あと、ここから先は独自展開がドンドン増えてゆきますので悪しからず。

よろしければお付き合い下さい。

んではまた。
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:52:09.06 ID:2MsNtW3mo

やっぱりこういう事すっとこうなるんだな
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/01(金) 13:08:52.34 ID:AadPtJSwP

普通にボッコボコにされたな
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/01(金) 15:22:36.51 ID:efG5HIdIO
風紀委員は盾マークでは
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/01(金) 15:26:23.49 ID:tpGwjXpAO
愛をください
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/01(金) 17:43:27.14 ID:FeIklmFWo
Wow wow
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 18:43:27.17 ID:Gs3s4eKD0
愛をください ZOO

乙、原作ママか
まあ、ここで鋼盾が秘められた能力に目覚めてサテンさん救い出しても困るしな
460 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/01(金) 22:41:09.78 ID:ZDhq8h4Co
stop,stop,stop,steyin´

↑が「ステイル×インデックスは止めましょう」に見えてしまう>>1はどうしようもないね
>>457-459ナイスでした

>>456 
ああああ直すの忘れてたorz
自分でも書いてるときにあれ、矛だっけ盾だっけ?と思って確認したらやっぱ盾で
「あれ、風紀委員のシンボルが盾っつうことは鋼盾の名前とうまく絡めれば気の利いた台詞になるんじゃね」とか思いついて
初春のシーンを嬉々として弄くってたら直すの忘れてこのザマだよ! 教えてくれて感謝です

黒子は好きなキャラですので書けて嬉しい
実はこの先もちょいと出番があるので乞う御期待

なんか筆が乗ってるのでうまくすれば今日、無理でも明日には投下出来そうです
それでは、書いてきます
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/01(金) 22:47:50.03 ID:xztCtEH30
乙。面白かった次回も期待して待ってる。
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/01(金) 22:51:44.00 ID:a5vLE+dQo
期待して待つてる
463 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/01(金) 23:54:06.15 ID:ZDhq8h4Co
>>461-462 サンクス!

投下します
二日連続更新じゃい! いえい!
464 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/01(金) 23:56:38.51 ID:ZDhq8h4Co



 無様な逃亡、失意と自己嫌悪に満ちた帰路。

 結局、地の底から抜け出すことは叶わない。

 蜘蛛の糸に触れることすらできなかった己。


 どこをどう歩いてきたのか、なにひとつ覚えていない。

 それでも家まで辿り着くのだから、習慣というものは凄まじい、と鋼盾は思う。
 

 気付けばあたりは随分と暗くなってしまっていた。

 何時なのだろうと疑問が頭を掠めたが、携帯を取り出すことすら億劫だった


 疲れきった身体を引き摺るように自室を目指す鋼盾は、しかしエントランスに入った瞬間、その場で立ち尽くす破目になった。

 床が、水浸しなのだ。スプリンクラーが作動したのだろうか、室内なのに豪雨の後のような有様だ。

 スプリンクラーが動く、それはつまり?


「……火事?」


 慌てて扉から外に出て、建物を見上げる。

 見える限りでは煙も火の手も出ていないようで、火事の兆候は皆無だった。


(……鎮火された後? それともスプリンクラーの誤作動とか、なのかな?)


 とにかく火は燃えていないようで、鋼盾はほっと息を吐く。

 自宅が全焼なんて事態ではなさそうだ。

 この状況でそんなことになったら、泣きっ面に蜂どころの話ではない。

 あたりに人が居れば話を聞くことができたのだが、生憎だれも居ないようだった。

465 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/01(金) 23:57:37.11 ID:ZDhq8h4Co


「……とりあえず、中に入ってみよう」


 なにをどうしたところで鋼盾の帰る場所はこの学生寮だ。

 エレベーターはきちんと作動しており、もともと一階にあったため扉はすぐに開いた。

 乗り込み、自室のある7階のボタンを押したところで鋼盾は足元のソレに気付く。


(血の、痕?)


 誰かが鼻血でも垂らしたのであろうか、生渇きの赤黒い血痕があった。

 エレベータと血痕というアンバランスさに首を傾げつつも、次の瞬間に不幸な隣人の顔が脳裏に浮かんだ。

 補習の帰り、スプリンクラーの誤作動に巻き込まれ濡鼠、滑って壁に頭から突っ込んで鼻血ブーで「不幸だあああ!」と叫ぶ上条。

 我ながら酷い想像だが、その程度なら余裕でやってのけるのがあの男だ。やっぱりカメラが必要だろう。


 想像の中の友人の七転八倒っぷりに久しぶりの笑みが零れたところで、エレベータが7階へ到着した。

 鋼盾宅にはインデックスがいる筈だ、腫れ上がった顔を一体どう説明したものか。

 スキルアウトに絡まれたことにすれば、なんとかなるだろうか。

 まあ、でたとこ勝負で行ってみよう、と鋼盾はひとりごちる。

 結局携帯にメールは来なかった、ならば、魔術師云々は杞憂だったのだろう。

466 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/01(金) 23:58:07.97 ID:ZDhq8h4Co


 そうして、エレベータの扉が開いた瞬間

 鋼盾の表情が凍った。
467 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/01(金) 23:58:42.71 ID:ZDhq8h4Co

 

 先ず、感じたのは異臭だった。

 溶剤を溶かしたような独特の匂い、いままでここでこんな匂いを嗅いだ事はない。

 違和感を覚えつつエレベータを降りると、そこは今朝とは全く違うことになってしまっていた。

 
 金属の手摺が飴細工のようにひしゃげ、壁も床も熱で融かされ建材が剥きだしになっている。

 足元は一階同様に水浸しになっており、靴から浸みてきたソレで足指が冷たい。

 
 すべてが、ぐちゃぐちゃだった。
 

 酔っ払った発火能力者が能力を暴走させたって、こんなことにはならない。

 夏休み初日ということもあり、殆どすべての学生は帰省や夜遊びに出払っている筈だが、それでもこれは大惨事だ。

 ここが火元だ、間違いない。

 鋼盾と上条の部屋があり、そしてインデックスが身を隠していたここが、火元。

 

 血の気が引く。

 インデックスを狙う魔術師の襲撃。

 結局、完全には信じていなかったそれが、起こったのだとしたら?

 エレベータに残された血痕は、一体誰のものだというのか?


「……嘘、だろ?」


 応えはない。

 上条も、インデックスもいない。

 携帯にメールは来なかった、来なかったのに。

 送らなかった? 送れなかった? どうして?

468 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/01(金) 23:59:31.33 ID:ZDhq8h4Co


「! 上条くん!! インデックス!!」


 跳ね上がるように自室へと駆け込む鋼盾。

 鍵は掛かっておらず、扉は素直に開いた。

 濡れたままの靴で室内に踏み込むも、そこは蛻の空。

 ノートパソコンのモニタが室内を煌々と照らしている。

 メールは未送信のままで、鋼盾が設定したままポインタひとつ動いていない。


「っ!」

 
 ポケットから携帯を取り出す。

 着信もメールもないことを確認しつつ、アドレス帳から上条の電話番号を引っ張り出し、発信を行う。


『お掛けになった番号は、電源が入っていないか、電波の届かない所に……』


 圏外か、電源が入っていないとの旨の無機質なアナウンスが流れるのみで、上条は一向に電話に出ない。

 あるいは、出れない?


「くそっ!」


 踵を返す。

 一縷の望みを掛けて、上条宅へと走る。

 隣室はすぐそこだ、頼む、どうか、そこにいてくれ――!

 体当たりをするかのように自室のドアを開き、鋼盾は廊下へと躍り出る。

 すると、思いがけぬものが、目に飛び込んできた。


「……え?」

469 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 00:00:57.55 ID:koz38vGzo


 廊下に誰かが倒れている。

 黒いコートのような服を纏った、身の丈2メートル超えの大柄な男性。

 慌てていたとはいえ、先程気付かなかったことが信じられないほど、大きな男だ。


 目の覚めるような赤い髪の怪しげな風体、力なく伸ばされた指に光る銀色の指輪、漂う香水の香り。

 明らかに、真っ当な雰囲気ではない。


 この学園都市の風景に溶け込まぬ、異質な服装、異境の匂い。

 それは、いつか誰かに感じたものではなかっただろうか?


 そう、この学生寮に迷い込んできた銀髪の修道女に感じたソレ。

 いっしょにお昼ご飯を食べた食いしん坊の少女に感じたソレ。


 インデックス。

 彼女と同じ、異質な空気を纏う者。

 彼女と同属の存在。

 それは。


「…………魔術師?」


 インデックスと上条の姿は無く、廊下は無残に荒れ果て、そこに打ち捨てられているこの人物は。

 まさか。


「………………」


 確証は、ない。

 だがしかし、もしかして、ことによると、あるいは。


「……えーと、あーー……、え?」


 頭がうまく回らない。

 今日一日、いろんなことがありすぎて、なんかもうわけがわからない。

 どうしろっていうんだよ、と鋼盾は煤けた天上を眺めた。

470 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 00:13:42.13 ID:koz38vGzo


 すこしばかり迷った末、どうしても放っておく気にはなれなかった鋼盾は、ぐったりと廊下に斃れ伏す赤髪の大男を、とりあえず引き起こしてみた。

 声をかけてみるも返事はなく、意識を取り戻す気配すら窺えない。


「…………はあ、もうわかんないや」


 考えるのは止めにする。

 なんにせよ、怪我人をこんなところに放り投げておくわけにもいかないだろう。

 面倒事を抱え込んでいる自覚はあるが、仕方がない。


 鋼盾はその怪しげな男を抱えるように腕を回すと、気合を入れて持ち上げた。

 男の長い足を半ば引き摺るような形になったが、それが精一杯だった。

 今しがた出てきたばかりの自室へと、見ず知らずの男を運び入れる。


 2メートル越え、その上意識を喪っている男を運ぶのは重労働かと思われたが、意外となんとかなった。

 思いのほか、男は軽かった。

 赤い髪の案山子を想像して、鋼盾は小さく笑った。



―――――――

471 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 00:22:58.72 ID:koz38vGzo
ここまで

ぶん殴られて打ち捨てステられてイル
原作ではどうなったのか。神裂や土御門が回収したのか、冷たい床にずっと転がってたのか
ウチではなぜか鋼盾君が拾ってしまいました。捨て犬じゃないよステイルだよ

つうわけで、ステイル戦は終わっていました
鋼盾くん間に合わず。人払いの結界に阻まれていたのかもしれませんな

傷を負ったインデックス
非日常に叩き込まれた上条当麻
魔術師と邂逅する鋼盾掬彦

遠のく日常、這い寄る混沌、血の匂い
はてさて、どうなることやら


んでは、また
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/02(土) 00:26:16.89 ID:3jbH0zuyo
乙。迅速な仕事に待つてる暇も無かった
捨テイルと接触した…だと…
裏話的なものも混ぜるのか。いいね
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/02(土) 00:53:18.01 ID:pc37ujnb0
原作通りだったり裏側だったり、でも脇役の域を出ていない鋼盾を私は応援してる
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/02(土) 21:11:12.21 ID:o+hLB6ZAO

ここでステイルとな
超期待
475 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 21:41:38.90 ID:koz38vGzo
レス感謝です
なんかここ数日やたらと筆が進みます
テンション上がって仕方がないのです。文章とか上滑ってなければよいのですが……
どうでしょうかね、楽しい反面不安です

本日も投下できればいいなと思っております
己を追い込む予告age!
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/02(土) 21:49:06.73 ID:OGCBDWbr0
うおおおお!続き待ってるぞ!!
477 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 23:28:18.45 ID:koz38vGzo


――――――――



 消毒液とガーゼとテープと湿布、とりあえず必要そうな物を近所の薬局で購入し、足早に学生寮へと戻る鋼盾。

 彼を迎えたのは警告灯を回す消防車と、それを遠巻きに見据える20人ほどの野次馬であった。


 薬局への道すがらサイレンの音を聞いたため、おそらくとは思っていたものの、やはりそういうことで。

 学生寮の周りは結構な騒ぎとなっており、このままでは自室に戻れそうにない。

 怪我人を部屋に転がしている身としては、できるだけ早く戻っておきたいのだけど、と鋼盾は溜息を吐いた。


 結局上条とインデックスは居なかった。

 隣室は鍵が掛かったままで、携帯にも再び掛けてみたが返信はない。

 
 補習はとっくに終わっているはずなので上条は家に戻ってきた筈、状況的にインデックスと再会している筈とは思うのだが確証はない。

 普段の行いを思えば、スキルアウトと路地裏マラソン大会に勤しんでいる可能性もゼロではない。

 だが、あの異常にタイミングのいい彼のことだ。恐らくは。


 そして、上条の家の前で倒れたいた人物。

 どう見ても堅気ではない、異様な風体の大男。

 結局部屋のベッドに転がしておいたが、彼は一体なんなのか。

 水を吸ったコートを脱がせた際に、その胸元に光った曰くありげな十字架を思い出す。


 珍しくもない十字教徒、この街ではそう多くないが、世界で一番ポピュラーな宗教。

 ただ、昼にインデックスが語った、魔術師の総本山としての機能とやらが頭から離れない。


 魔術師。

 インデックスを狙う、襲撃犯。

 彼がそうなのだとしたら、一体どういうことになるのだろうか。

478 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 23:31:31.78 ID:koz38vGzo


 一度は放棄した疑問に足をとられそうになる鋼盾だったが、その思索は人垣の中、思わぬ顔を見つけたことにより中断される。

 野次馬から少し離れた所に佇むは、同じ寮住まいのクラスメイト。


 土御門元春。


 夜だというのにサングラスをかけたの常のままのスタイル――ファッション云々より視界が心配である。

 丁度電話を終えた所のようで、耳元から話した携帯電話のモニタを眺めているようだった。

 鋼盾が近づいて声をかけようとした瞬間、ボソリと土御門が呟いた。
 

「……まったく、どいつもこいつも自分勝手に動きやがって」


 それが、土御門元春の声だとすぐには気付けなかった。

 口調が違う、というだけではなく、背筋が冷えるような冷たさを孕んでいたからだ。

 数瞬迷い、それでもおずおずと声をかける。


「土御門、くん?」

「! おお、コウやんだにゃー。びっくりさせないでほしいぜよ!」

「ご、ごめん」


 振り返った土御門はいつもどおりの軽い口調だ。

 心臓が止まるかと思ったにゃー、とおどけるように笑っている。

 表情も常のからかうような笑顔で、先ほど感じた違和感も霧散している。

 ―――勘違い、だったのだろうか。


 
479 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 23:34:51.08 ID:koz38vGzo

 
「ん、どうしたコウやん。怪我してるみたいだにゃー」


 目敏く鋼盾の顔の腫れに気付く土御門。

 いろいろあってすっかり忘れていたが、昼の怪我はほったらかしたままだ。

 思い出した瞬間、ビリリと痛みが走る。


「あ、これは、ちょっとトラブルにまきこまれちゃって……」


 本当の事など言えるわけもない。

 誤魔化すように口ごもる鋼盾。


「むう。ま、大したことはなさそうでなによりだぜい。
 明日には腫れもひいてそうな感じですたい」


 能力の関係からか、そちら方面になかなか詳しい土御門先生の診察が入った。

 一応冷やしておくといいぜよ、つか、その袋に入ってるの手当てのアレみたいだにゃー?
 
 本当に目敏いことだ。助言にありがとうと感謝を述べて、鋼盾は学生寮を見上げる。


「……火事、かあ。弱ったな。
 早いとこ家に帰りたいんだけどな」

「いや、どうやらもう終わるみたいだにゃー」


 土御門は先ほどから左手のみで何か折り紙のようなモノを弄んでいる。

 丁度鋼盾からは死角になる位置で行われていたが、出来上がったようだ。

 それは――どうやら「猿」を模したモノであるように見える。

 
 鋼盾としては、土御門の言わんとしているところがさっぱり解らない。

 戸惑いつつも、問い返してみる。


「終わるって……あの消防車来たばっかりだよ? 現場検証とかもあるだろうしそんな簡単に――


480 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 23:35:24.29 ID:koz38vGzo



“蒙昧ナ聴衆ノ目ヲ塞ギ耳ヲ塞ギ口ヲ塞ガン / ヒマじんどもめ、みざるいわざるきかざるでさっさときえろ”

481 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 23:36:21.13 ID:koz38vGzo



 ―――簡単に終わるわ、け……いや、すぐに終わるよね。こんなの」


 そう、原因不明の火事、その程度のことで消防車が来ることの方がおかしい、現場検証なんて何を大袈裟な――と、
 
 その思考自体がおかしいことに鋼盾は気付くことができない。


「……って、土御門くん! 鼻血!!」


 見れば、土御門の鼻からは、赤い筋が垂れている。

 夜の闇の薄暗さでよく解らないが、心なしか顔色も悪いように思えた。


「おっとと、しまったにゃー。
 ……いやあ、これじゃあコウやんのことをムッツリなんて言えないですたい」


 ポケットからハンカチを取り出し鼻に押し当てる土御門。

 意外なことにしっかりアイロンのあてられたそれは、噂の妹さんの仕事だろう。

 折り悪く鋼盾は会ったことはないが、繚乱家政に通うメイドさん見習いの女の子だった筈だ。

 ――なぜか上条はエンカウント率が高いらしく、そんなところにも一級フラグ建築士のアレっぷりを感じずにはいられない。

 まあ、そんなことはさておいて。

 
「大丈夫? なんか辛そうだよ?」

「ふう、心配ないんだにゃー。
 最近のコウやんはアレだな、なんかカミやんのお人よしが感染ってるような気がするぜよ。
 いかんにゃー、アレは常人がマネしちゃダメなレベルですたい」

「……そんなこと、ないよ」


 言いつつ、上条や、他の皆に影響されている感は否めないという自覚はある。

 部屋に寝かせた男を思い出す。

 中学までの鋼盾なら、面倒ごとを恐れて無視していただろう。

 ただ、上条当麻のアレとは違う。自分はあんなに、ばかみたいにホンモノではない。

 ――どうしようもない、紛い物だ。

482 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 23:37:42.49 ID:koz38vGzo


「まったく、土御門さんは心配だぜい。大丈夫かコウやん? 
 カミやんみたく、不用意に見ず知らずの他人を家に上げたりしてないかにゃー?」


 どきり。
 
 からかうような土御門の言葉には、どうしようもない違和感があった。

 やはり、先ほど感じた悪寒は、気のせいではなかったのかもしれない。


 土御門元春は笑っている。

 口は笑っている、頬は笑っている、眉は笑っている―――しかし、目も笑っているだろうか。

 サングラスは街の光や消防車の回転灯を反射するばかりで、その奥を透かすことを許さない。

 本人は「女の子にモテたいから」と嘯いているが、実はコレが狙いなんじゃないかと思わせるほど、なにも透かさないソレ。

 どこまでも開けっ広げなようで、しかし底は見せない、土御門という男にはそういうところがある。


「大丈夫だよ。子どもじゃないんだ。
 ……というか上条君、またなんかに巻き込まれてるの?」


 とりあえず話題を逸らそうとしてみる。

 土御門は全てを理解しているような顔で、しかし鋼盾の意図に乗ってくれた。


「ふふふふ。聞いて驚けコウやん!
 カミやんは悪の組織に追われる謎の美少女を助けるため奔走中ですたい!」

483 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 23:38:38.51 ID:koz38vGzo


 否、更に踏み込んできた、胡散臭い笑顔のままに。

 悪の魔術師に追われる銀髪の、修道女。

 インデックス。

 土御門の台詞は、間違いなく彼女のことを指している。

 驚愕に歪みそうになる顔面をなんとか抑え込み、フラットな表情で続きを促す。

 もしかしたらただの冗談かもしれない。


「ほう……詳しく聞きたいね」

 
 土御門は彼女のことを、知っているのだろうか。

 自分の知らないところで、なにが起こっているのか。

 ボヤ騒ぎ、エレベータの血痕、廊下の惨状、謎の男、行方の知れぬ上条とインデックス。

 千千に乱れる鋼盾の内心を知ってか知らずか、道化のように口上を紡ぐ土御門。


「壮絶な過去と秘密を持つヒロインの手をとって、少年は走り出す。
 穢れを知らぬかのように真っ白なその少女の手は、小さく華奢で震えていて、しかしあたたかだった。
 ―――この人の手を離さない。僕の魂ごと離してしまう気がするから」

「…………」


 それはそれは、あやかりたいね。

 というか、なんなのその予告編風な語り口。

 いつもの口調忘れてんぞ、鍍金はがれてるぞ、にゃーだぜいですたいはどうした。

 そんな、いつもの軽口を叩けばそれで終わる筈なのに、言葉が出ない。


「どうしたにゃーコウやん? ノリが悪いぞ?
 例の一端覧祭映画企画その2だぜよ。ふふふ、監督の座はこの世界の土御門が貰ったにゃー」

「……それはそれは。で、タイトルは?」

「うーん、『とある魔術の……、いや、まだ未定ですたい。
 ……『 You were there 』とかでもいいかにゃー」


 ……冗談なのかそうでないのか、土御門の口ぶりからでは判断がつかない。

 つか今魔術とか口走りやがったぞこの男。

 クラスメイトであり、友人であるはずの土御門の口から漏れたその言葉は、本日嫌になるほど繰り返した因縁のワード。

484 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 23:39:36.49 ID:koz38vGzo


 魔術。

 魔術師。

 インデックス。

 行方知れずの、修道女。


 やはり、土御門元春は知っている。

 彼女のことを。そして、恐らくは、上条が今どこにいるのかも。


 なんで、どうして、どこに。

 疑問は尽きないが、訪ねることはできなかった。

 直感的にだが、それを訪ねてはいけないと感じたのだ。

 触れてはならない、そんな声を聞いた気がする。


 なにより、既に土御門は鋼盾に告げている。

 “カミやんは悪の組織に追われる謎の美少女を助けるため奔走中”

 “壮絶な過去と秘密を持つヒロインの手をとって、少年は走り出す”


 わからないことばかりが起こる今日この日。

 しかし友人の言うことだ、信じない理由が無い。

 二人は、きっと無事だ。

485 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 23:41:19.43 ID:koz38vGzo


 上条当麻とインデックス。

 正義の味方と、迷える仔羊。

 ……ヒーローと、ヒロイン。


 重たい闇を抱えるヒロインのもとに、主人公が訪れぬ道理はない。

 結局、彼はその手をとったのだろう。

 ……地獄の底まで、付いてゆくのだろうか。

 鋼盾は結局その問いに答えられぬままだったが、上条ならば、あるいは


「……ヒロインかあ。
 僕には一生縁のない言葉の気がするよ」

 
 思い出すのは今日の一件。

 結局、何をどう言い訳したところで、自分は女の子を見捨てて逃げ出した。

 こともあろうに、無能力者であることを免罪符にして、だ。

 そんな情けないヒーローなど、認められるものか。


 能力者になればきっと変われると、自身を誤魔化していた。

 ……だけど、能力を手に入れたとして、自分は逃げ出さずにいられただろうか?


 答えは出ない。

 否、今なお答えを出せない時点で、もうだめだ。


 上条なら、たとえ幻想殺しを持っていなくてもあの局面で逃げ出したりはしなかっただろう。

 彼が立ち向かうのは、その右手ゆえではなく、彼自身の精神性とでも呼ぶべきものに因るものだからだ。

 常の嫉妬ではなく、敗北感が鋼盾の胸を締め付ける。


 ああ、僕は、きっと、どうしたって
 
486 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 23:42:11.71 ID:koz38vGzo



「ヒーローには、なれそうもない」

487 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 23:43:54.64 ID:koz38vGzo

 
 きっと、そうなのだろう。

 ずっと前から知っていたような気もするが、改めて突き付けられたその事実に、今更、胸が痛んだ。


「……あー、俺もだにゃー。
 ―――どうしたってアイツのようには動けそうにない、な」
 

 土御門の表情――相変わらずサングラスで見えないが――にも、ある種の諦念のようなものが浮かんでいる。

 彼がなぜそのような表情を浮かべているのかは鋼盾の知るところではないが、口の中に広がっている味は、きっと自分と同じだろうと思う。


 自分たちは、どうしたってヒーローになんかなれそうにない。

 どうやら今日も奔走しているらしい無自覚なヒーローのことを思い、二人は呻くように笑った。

 僕は、俺は、端役だと。



 自己分析の結果なんて、いつだって碌なモンじゃない。

 結局のところ、大概の人間は自虐的なものなのだ――この街では、特に。

 
 


―――――――

488 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 23:46:01.16 ID:koz38vGzo


みんな大好き、土御門くんの登場です。
一巻でも暗躍していたフシのある彼、あるいはこんなこともあったのかも。

なんかオリジナル詠唱しちゃいました。ヤツの詠唱は中二心が疼くぜ……!
散猿。効果は広範囲への軽めの暗示みたいなアレで、同時に上層部から手を回させ消防車を下がらせた、みたいな妄想です。

土御門もまた、ヒーローにはなりえないキャラクターですね。
「背中刺す刃」を名乗った時、彼はいろいろなものを切り捨てたのかもしれません。
彼にとっての上条さんはどんな散財なんでしょうね。
隣人で、クラスメイトで、友人で、ヒーローで、手駒、切り札のひとつで、守るべき者で、嫉妬の対象で、憧憬の対象で……いろいろ複雑そうです。

土御門の映画絡みの台詞がわかったあなた、>>1とお友達になりましょう。


んでは、またな!

489 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/02(土) 23:47:49.67 ID:koz38vGzo
↑スレ、どんな散財ってなんだよ!
どんな存在でした、ごめん!
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/03(日) 02:32:43.75 ID:0sjNPr8A0
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/03(日) 09:07:11.16 ID:mOP1rotto
乙。待つてた
鋼盾に土御門が日常以外で接触してしまったけども土御門だったら学園都市と
必要悪の協会にバレない(問いつめられない)程度には上条に協力しそうなイメージだよね
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/03(日) 10:26:15.66 ID:tgL0o9Vh0

土御門ってインさんの脳容量問題とかも気づきそうだけどどうだったんだろ
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/03(日) 12:43:57.19 ID:8qBZQKKko

You were there は名曲
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/03(日) 22:23:16.67 ID:aW3WICEV0

ICOはいい加減リメイクすべきだと思うんだ。ワンダもリメイクされたことだし。
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/03(日) 23:57:47.09 ID:8hJOAt7ho
レスありがとうです!
救われます。

>>493-494
うおおおお、同士がいた!
いいよねICO

今晩も投下です。4連チャンは新記録
それでは、参ります!
496 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/03(日) 23:59:36.63 ID:8hJOAt7ho

―――――――



 そんな話をしているうちに、消防車も野次馬もいなくなってしまった。

 もういい時間だというのに、土御門にはこれから用事があるそうで、寮の前でそのまま別れることとなった。

 なんでも「バカ共がバカみたいな真似をやらかしたのでバカみたいにその後始末」だそうだ。

 口振りからして上条や青ピのことではなさそうだ。土御門の交友関係は、イマイチ鋼盾には計り知れないところがある。


 鼻血は止まったようだったが、大丈夫だったのだろうか。

 先ほどの、夜目にも調子の悪そうだった顔色と、自嘲に濡れた乾いた笑みと思い出し、不安に思う。

 とは言え、既に土御門は夜の闇に溶けるように消えてしまったのだから詮無きことだ。


 ヒーローには、なれないと言った彼。

 裏方の仕事をしにいったのだろうか。 


 すっかり遅くなってしまったが、自室には怪我人を放り込んだままだ。

 上条ともいまだ連絡が取れない。赤髪の男が襲撃者であるならば、逆に上条とインデックスの安全は保証されているとみれるかもしれない。

 いや、襲撃者はひとりとは限らない、楽観的過ぎるだろうか。


 みたところ気絶しているだけのようだったので放っておいたが、目を覚まさないようであれば病院等に相談することも視野に入れねばなるまい。

 そんなことを考えながら、エレベーターで自室にまで戻る。

497 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/04(月) 00:00:47.78 ID:AC+51kiAo


 そうして、ドアを開けると。

 黒ずくめの男性が、部屋の中央に立ち、油断なくこちらを見据えていた。

 引き摺って部屋まで運び入れた時から大きい人だとは思っていたが、立ち上がると余計に大きく見えた。


 目を覚ましているとは考えてもいなかった鋼盾は、すっかり慌ててしまった。

 相手はどうみても外国人――そもそも日本語は通じるのだろうか。

 そんな鋼盾を訝しげに見つめる男の口から、固い声が響いた。


「……君は? ここは、どこなんだ…?」


 強い警戒の色を滲ませた視線に一瞬たじろぐ鋼盾だが、こちらにやましいところはない。

 それに……どうやら、日本語で大丈夫なようだ。

 とりあえず話が通じそうなことに安心し、多少ではあるが落ち着きを取り戻す。


「えと、僕は、この部屋の住人です。あなたが部屋の前の廊下で倒れていたので、とりあえずここに運びました」


 なるべく聞き取りやすいようにゆっくりと話す。


「……そうか。いや、すまなかった。うん、起き抜けで混乱していたようだ」


 表情と言葉から、多少刺々しさが抜ける。

 少なからず警戒はされているようだが、それも当然のことだろうと鋼盾は思う。

 異国で、いつのまにか見知らぬ人間の部屋にいた――警戒心を抱くのは当たり前の反応だと言っていい。


「僕はステイル・マグヌス、旅行者だ――どうやら助けてもらったみたいだね」

「鋼盾、といいます」


 互いに名を名乗る。旅行者ということだが、ステイルの日本語は流暢だった。

 そして外の惨状を思い出す。彼がそれに関わっている可能性は高い。

 それは被害者として? それとも――?


「――気絶してたみたいですけど、なにかあったんですか?」

「……いや、ちょっとトラブルに巻き込まれてね。
 ここまで逃げてきたんだけど、ここで追いつかれてしまったんだ」


 頬の傷が痛むのだろうか、憎憎しげに表情を歪めるステイル。


「……それは、災難でしたね。―――相手は発火系の能力者、とか?
 財布とかは盗られてないですか?」


 過去に発火能力者に追い回された経験のある鋼盾は、思わず同情してしまう。

 あの時己は上条に助けられたが、彼にはそのような幸運は訪れなかったらしい。

 それとも――それは、嘘か?

498 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/04(月) 00:01:32.50 ID:AC+51kiAo


「……いや、大丈夫だ。
 財布も携帯も無事だよ――なにも、盗られていない」


 彼はもう既に確認を終えていたらしく、はっきりそう口にした。

 しかし、なにも盗られてないと言いながら、彼の表情はなにか大切なものを失ったかのように沈みこんでいる。

 やがて小さく溜息を吐くと、鋼盾を見据え、口を開く。


「迷惑をかけてしまったね。
 ……碌に御礼も出来ないが、そろそろ失礼するよ。本当に世話になった」


 そういって鋼盾の横を擦り抜けようとするステイルだったが、途端に足元がふらついて転びそうになる。


「危ない!」


 慌てて支える鋼盾。

 先ほどまで気絶していたのだ。顔色もあまりよくない。

 どうやら見知らぬ相手に弱みを見せまいと、無理に気を張っていたようだ。


「……もう少し、休んでいってください。
 一応、消毒薬とか、手当ての用意もありますから」

「…………すまない」


 青年は数瞬迷ったようだったが、結局素直にフローリングの床に腰を下ろした。



――――――――


499 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/04(月) 00:04:06.31 ID:AC+51kiAo



 手当てといっても、小さく切れた唇の端に消毒液と絆創膏を付け、左頬に湿布を貼っただけで終わってしまった。

 とりあえずステイルが落ち着くまでは休んでもらおうと思い、薬局でついでに購入したウーロン茶のペットボトルをコップに注ぎ、テーブルの上に並べる。

 世間話でも、なんて雰囲気ではないかと危惧していた鋼盾であったが、思いのほか話は弾んだ。

 ステイルも気を遣ってくれたのだろう、と鋼盾は思う。

 少ない時間ではあるが、彼がそうしたことに聡い人であることはわかってきた。


 ステイル=マグヌス。

 英国の神学校に通う学生とのことで、学園都市には研修に来たとのことだ。

 臨時発行のゲストIDもきちんと持っており、身元のはっきりしている人物であることは間違いなさそうだ。

 
 ……魔術師とやらが、公式のIDなど持っていることはないとは思う。

 ここは学園都市。身元のはっきりしない人間に来訪の許可など出る訳がない。

 機密情報満載のこの街は、病的な程に情報の漏洩に厳しいのだ。


 彼が一般人だとすれば、廊下の惨状とは無関係であるとみて構うまい。

 少なくとも、加害者ではないはずだ。


 能力開発を受けていない人間には、アレほどの破壊は不可能だ。

 爆発物の持込を許すほどこの街の警備は甘くはない。

 この街で材料を工面して爆弾を作る、というのも現実的ではないだろう。


 シロ、なのだろうか。

 それともIDは偽造で、あるいは警備員に暗示やら魅了やらの魔術をかけて

 この街に忍び込んでインデックスを追う凄腕のエージェントだったりするのだろうか?


(……………何を……)


 ああ、毒されている。

 ……いや、これは現実逃避だ。

 降って湧いた非日常にかまけて、己の罪から、弱さから目を背けているだけだ。



 そもそも、彼が魔術師だとして、それがどうした?

 逃げるばかりの無力なお前に、いったい何ができるというのか?

 どうせまた、逃げ出すのだろう?


 今日のように

 いつかのように

 いつものように



500 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/04(月) 00:06:40.51 ID:AC+51kiAo


 気付けばまたネガティブに沈み込みそうになる己に気付き、頭を振る鋼盾。

 その様子を見て、ステイルは疑問を口にする。


「すこし上の空だね。……聞きそびれていたが、君も怪我をしているようだし。なにか、面倒事でもあったかい? 
 ……まあ、面倒事そのものである僕が聞いていいことじゃないかもしれないが」

「……いえ、そんな、ことは、特に」

 
 ある。

 あるが、他人に話せるようなことじゃない。

 慌てて誤魔化そうとした鋼盾を軽く視線で制すると、ステイルは軽い口調で言葉を重ねる。


「これでも一応神父の端くれでね……悩みを抱えている人には鼻が利く。
 うん? ああ、大丈夫。そうは見えないという自覚はあるよ。
 僕はどちらかというと裏方の人間だからね。教会で説教をするような人たちとは毛色が違う」

「……はあ」


 毛色が違う、というのはジョークなのだろうか。

 明らかに染めたと思しき赤い髪、刺青とピアスで飾った顔、十指に光る銀色の指輪。

 そんな神父が居るわけないが、鋼盾は生粋の日本人、しかも学園都市の住人である彼は例に漏れず宗教に疎い。

 そういうこともあるのかと納得してしまう。


「まあ、よければ話してみるといい。口外はしないと約束しよう。
 懺悔なんて大袈裟なものじゃない。君は十字教徒ではないし、僕もいまはただの旅行者だ」


 お礼返しにもならないが、もう会うこともない相手だし、愚痴るにはちょうどいいだろう? と皮肉っぽくステイルは笑う。


「………………」


 迷う。鋼盾がやったことはルール違反で、卑怯な行為だ。

 後悔、無力感、罪の意識、遣る瀬無さ、なさけなさ。

 負の感情でぐちゃぐちゃになっている心は、今にも砕けてしまいそうだった。


 そんな鋼盾を見据える瞳。
 
 縋りついても構わない、そう言って笑う目の前の男。

 魔術師かもしれない、彼。


 どうみても怪しい、限りなく胡散臭い。

 だけど、なぜか信じてみたくなってしまった。


「……この街には、幻想御手という噂話があります」


 果たして。

 学生寮の一室で、科学の街の住人が、不良神父に己の罪を告白する。



―――――
501 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/04(月) 00:17:39.54 ID:AC+51kiAo
と、いうわけでどうやら上条さんを差し置いて説教一番乗りはステイルさんだったようです。
鋼盾vsステイルの熱いバトル展開を期待された方、もしいらっしゃいましたら申し訳ない。

ステイル。好きなキャラです、彼主役の公式SS読めてませんが。
魔術師としての面がクローズアップされていますが、まあ神父さんでもあるのですな。
鋼盾は追い詰められており、ステイルもまたひどく揺らいでいるこのタイミングが招いた一幕ということで。

月曜から木曜まで出張です。
パソコンに触れなさそうなので更新は滞りますが、週末にでも。

次回はステイル回。
一番描きたかったシーンのひとつですので、気合入れてまいります。
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 01:35:38.78 ID:h5WQlLVV0
そうだね、乙と言わせてもらおうか

きくひこは随分お人好しだな、上条さんの影響か
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/04(月) 01:57:27.43 ID:UDYU4tEfo
乙。待つてた
ステイルいいよね。一途さとか。上条のいい相棒になれると思うんだが
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/04(月) 14:40:42.63 ID:hdvLry0O0

これで14歳なんだから苦労してるよなぁ
いつかは御坂さんみたいにきくひこに恋愛相談とかするのだろうか
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/04(月) 17:06:59.65 ID:gpwZapPAO

鋼盾君ステイルを年上と思ってるに1000ペソ
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/05(火) 23:33:27.13 ID:fFXiwt2D0

そりゃあ、赤髪+身長2m越えの人を
14歳と判断するのは不可能だろうな
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/06(水) 19:43:09.84 ID:hjh7DqNc0

ヤバい、超期待
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/08(金) 00:38:23.44 ID:X27AX6jZ0
ttp://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201106251931560002.jpg

少年みたいな顔しているだろ。ウソみたいだろ。三年前なんだぜ。これで

マジで三年の間何があった。ステイルとねーちんふけすぎだろwwwwwwwwwwww
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/07/08(金) 00:46:12.98 ID:CFHLDKMyo
>>508
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/08(金) 06:37:44.05 ID:SsvI8VVvo
レスありがとうごぜいます
パワー貰っとります、ほんとに

ステイルはなー
アニメであそこまで大人顔なのはやはり喫煙描写のせいなんかね
まあスモーカー設定を削られるよりはいいけどさ

漫画版の回想編はよかったよね
アニメでやってくれればよかったのになあとか>>508見て思いました

今晩あたり来ようと思います
それでは、しばし
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 13:15:02.92 ID:Lma1jvf60
>>510 夜までマテイル
   再構成といっても原作をなぞるんじゃなくて補強してく感じがいいな
   ステイルがきっと活躍するに10000ペソ

))508 ってコレ3年前じゃなくね?というかまず公式絵じゃねえよな
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/07/08(金) 14:51:36.39 ID:7+J+CZQAO
そもそもスティルてインデックスとの関係や年齢は完全後付け・・・いやなんでもない
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/08(金) 17:25:45.59 ID:U959EglTo
楽しみに待つてる
514 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/08(金) 23:57:03.41 ID:SsvI8VVvo

―――――




「……これで、おわりです」
 

 幻想御手に関わる一件の顛末を話し終えた鋼盾は、ステイルの言葉を待つ。
 
 きつく目を閉ざし、相槌を打つだけだったステイルは、ようやくその目を開くと


「――Fortis931」


 赤毛の神父、ステイル・マグヌスはポツリとそんな言葉を口にした。

 よく聞き取れなかったが、英単語、だろうか。


「フォルティ…?」


 いきなり呟かれた聞き覚えの無い単語に、鋼盾は戸惑う。


「Fortis931、だよ。うん、僕の出身地に伝わる慣習のようなものでね。
 己の信念や、こうありたいという願いを、自分のもうひとつの名前にするのさ」


 数字はまあ、重複を避けるための便宜的なものだから意味はないけどね、とステイルは口にする。

 聞いたことのない慣習だが、ステイルの表情は真摯で、適当なことを言っているようには見えなかった。



515 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/08(金) 23:57:49.81 ID:SsvI8VVvo


「Fortisはラテン語で“強者”を表す言葉だ。
 ……僕は、ある人を護る為に誰よりも強くなりたいと願い、その名を己に冠した。
 まあ、情けなくも殴られて伸びてた男が何を言っているんだと思われちゃいそうだけどね」


 自嘲気味に笑うステイル。

 愚痴めいてはいるが、その表情に弱さはない。


「だけど僕は諦めてはいないよ、強くなるためにはなんだってしてきたし、これからもそうする。
 対価も代償も支払うし踏み倒す、必要なありとあらゆるものをかき集めるつもりだ。

 ――だから、君の言う反則とやらを非難するつもりなんかない。
 反則でも裏技でも禁忌でも、使えるものはなんだって使えばいい。
 そんなものより優先すべきことがあるのだから」


 鋼盾の行いを全肯定するステイル。

 目的のために手段を選ぶな、と強い言葉を口にする。


「……だけど、僕は強くなりたくてとか、目的があってそれを欲したわけじゃない。
 ただ、弱い自分が嫌で、そんな自分をどうにかしたくて縋り付いただけで」


 自分は、ステイルとは違う。

 誰かのためになんて思えない。


「鋼の盾なんて苗字のくせに、僕はこんなにも薄っぺらくてダメなんだ。
 そんな風に、肯定してもらえるような人間じゃない」


 結局、愚痴になってしまう。自分は誰かに責めてもらいたいのだろうか、それすらも良くわからない。

 そんな自分が情けなくて、鋼盾は俯いてしまう。


516 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/08(金) 23:59:20.63 ID:SsvI8VVvo


「コウジュン……鋼の盾、か。それが君にとっての“目指すべき名前”なんだろうね」


 俯いた鋼盾にステイルがかけたのは、そんな言葉だった。


「うん。僕ら風にいうならChalybs(カリュブス) いや、盾に主眼を置いてScutum(スクトゥム)といったところかな。

 なんならAigis(アイギス)でもいいね、ジャパニーズの君にも馴染みのある言葉だろう?」

 
 例えばイージス艦とかさ――そんなことを言って彼は微笑む。

 己の信念、願いを篭めた、もうひとつの名前――鋼盾にとってのソレが、彼の姓なのだとステイルは言った。


「善い名だね、盾、護るために構えられるもの、だ」


 鋼の盾、鋼盾という苗字を褒めるステイル。


「君は自分が弱いというけど、僕にはそうは思えないよ。
 見ず知らずの他人のために走り回ってくれるような人間が、弱いわけがない。
 だけど君が自分自身を認められないというのなら、結局は自分を認められるように努力するしかないんじゃないかな」


 教え、諭すような言葉。

 羊飼いが紡ぐは導きの旋律。

 迷える羊を導く、力ある歌。


「鋼の盾。今の君にとってその名が重いというのなら、その名に相応しい男になればいいだけの話だ。
 君にとって納得のゆく方法で、時間をかけてでもね。

 それは簡単なことではないかもしれないが、やるべきことが解かっているというのは確かな救いだ」


 この場において、ステイル・マグヌスは紛うことなき善き神父であった。


「盾はいつだって重いものさ。
 なんたって、大切なものを護るために作られるのだから」


 いや僕は盾とか持ったことはないんだけどね、まあ、重いくらいのほうが御利益がありそうだろう?

 そんな台詞を真面目くさった顔でステイルは語る。


「僕も盾になりたいよ。大切な人を護る盾、その名に相応しい男に。
 ―――君の目指す場所は僕の目指す場所でもある。僕らはまだまだ未熟かもしれないが、きっと辿り着けるさ」


 鋼の盾であれ。

 強者であれ。

 その名に相応しい者であれ。

 弱い己を超えてゆけ。

 それが、標。


目指すべき標があれば人は前に進める。

 歩き出せる。


517 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/09(土) 00:00:15.10 ID:mvqrCBgTo


「……うん、僕のような未熟者にはこのくらいのことしか言ってあげられないかな。
 やはり僕には裏方が似合っているようだ」

「そんなこと、絶対ないよ」


 鋼盾の胸に小さく燃える炎は、ステイルが灯したものだ。

 そんなことが出来る人間が、神父に向いてないなんてありえない。

 

 

 僕は、いったいどうしたかったのだろう。

 無力な自分が嫌で、逃げ続けるばかりだったこれまでの道のりを思う。

 ステイルが強者たらんと望むように、自分は一体どうありたいのだろうか。

 能力者になりたかったのか? いや、それは手段に過ぎなかった筈だ。

 鋼盾掬彦は、どうありたいのだろうか。

 何のために、この街に来たんだっけ?


 脳裏に浮かぶのは愛すべき人たち。

 
 いつだってまっすぐな上条当麻の拳。

 歩みを止めぬ吹寄制理の足取り。

 ぶれることのない青髪ピアスの自由さ。

 揺らぎもしない土御門元春の意思。

 穏やかな陽だまりのような月詠小萌の笑顔。

 雷のように激しく鮮やかな御坂美琴の克己心。

 
 無骨で無口で不器用で、しかし誰より優しい父。

 優しくて穏やかで控えめで、しかし誰より強い母。


 欲しかったのは、なりたかったのは、幻想御手なんかじゃ届かないものだった。

 必要なのは能力じゃない、そんな簡単なことに、今の今まで気付きもしなかった。

518 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/09(土) 00:01:34.47 ID:mvqrCBgTo


「鋼の、盾」
519 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/09(土) 00:02:58.07 ID:mvqrCBgTo


 大嫌いな苗字、そんなのは嘘で、大嫌いなのはその誇るべき苗字にそぐわない己だった。

 大好きなひとから継いだ大好きな苗字だ。


「―――ああ、そうだった。
 ぼくは、胸をはってそう名乗れるように、なりたいんだ」

「なれるさ、君ならね」


 鋼のように強くしなやかで、盾のように傷つくことを厭わず護る者。

 そうありたいと鋼盾は言い、そうあれかしとステイルは頷いた。


 いつの日か

 自分を、認められるように

 好きになれるように


 立場は違えど、在り方は違えど、掲げた名前は違えど

 それこそが、彼らの目指すものだった

520 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/09(土) 00:14:43.05 ID:mvqrCBgTo


 鋼盾の目の奥、こころとでも呼ぶべき場所に宿ったもの


 ステイルはそれを熾火のようだと思う

 埋れ火、灰に包まれ静かに熱を蓄えるそれ


 炎と呼ぶにはあまりに儚い、しかし消えることなく明明と熱と光を保ち続ける意志の火種

 ささやかな吐息ひとつで、それはあらゆる蒙昧を払う命の火を生み出すこととなるだろう


 さあ松明に火を灯せ、闇夜を照らす導きの光を放て

 それは先の見えぬ遠き道行きを照らし、凍える旅人に温もりを与える明明灯火

世界を構築する五大元素のひとつ、偉大なる始まりの炎より連なるもの


 覚悟、勇気、決意

 言葉にすればどうしたって陳腐になってしまう、炎のように熱い意思


 ステイル=マグヌス――希代の炎術師たる彼は、それを忌憚なく尊いと感じた

521 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/09(土) 00:16:18.68 ID:mvqrCBgTo


「……そろそろ行くよ。連れが心配しているだろうからね。
 世話になった。なんのお礼も出来ないが、鋼盾、君が自分を認められるように祈らせてもらうよ」


 煙草も恋しくなってきたしね、そう言ってベッドから立ち上がるステイル。

 足にもしっかり力が戻ってきているようで、ふらつくようなことはない。

 鋼盾は立ち上がったステイルの長身を見上げながら、伝えるべき言葉を口にした。


「ありがとう、ステイル。
 ……僕も、がんばってみるよ」


 破顔。

 ステイルは驚くほど素直な笑みを浮かべると、玄関へと歩き出した。

 彼のいるべき場所へと戻るのだろう。話に出た「護るべき人」とやらのところへ行くのかもしれない。

 その迷いのない足取りは、鋼盾に言わせれば間違いなく「強者」のそれであった。


522 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/09(土) 00:17:03.41 ID:mvqrCBgTo



 8月20日、夜半。

 鋼盾宅への奇妙な客人は、そうして去っていった。

 赤い髪、煙草と香水の匂いを振り撒く怪しげな――しかし、優しい神父。

 魔術師かもしれない、彼。



 なんとなく、また会えるような気がした。



―――――


523 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/09(土) 00:37:50.42 ID:mvqrCBgTo
ここまで

日付が変わらなけりゃ今日だ!と言わんばかりの駆け込み投下ですんません
仕事がエライ長引いたのです

というわけでステイル回でした
>>1は再構成物でステイルがかませ扱いを受けるのがちょいと不憫でしょうがなく、
なんとかできんかなあと思ってこんな感じになりました
結局上条さんにぶっ飛ばされてるけどな!

俺得展開で>>1は楽しいのですが、みなさんどうでしょうか
ステイルはそんな事言わない! などとお怒りではないでしょうか


少々不安です、女々しいですがご意見お待ちしています
それでは、よい週末を
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/09(土) 01:09:01.35 ID:u6CJT8V/0

たしかにステイルは他の再構成SSでは不遇だから
こういうのはすごくいいと思う

というか、このSS最初の頃から読んでるけど
どんどん面白くなってるな これからも応援してます
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:19:42.30 ID:+yL9o/ITo
膨大な数の禁書再構成SSを読んできたが、
この段階のステイルがここまで重要な役割を果たしてて
かつカッコいいのは初めて見たように思う。

>>1得展開は俺得でもあるので、これからも自分が楽しい展開を
どんどんやってくれ!
応援してる。
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 10:11:41.20 ID:1F8PU9Xd0
>>1

つーか>>1の文章力高杉だろ。素人レベルじゃねえぞコレ。次も期待して待ってます。
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/09(土) 15:15:51.75 ID:oEyLi+U20

>>1がステイル好きだからなのか、原作での噛ませっぽいシーンがないからなのか
ステイルさんがまるで神父みたいだ……
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/09(土) 23:27:28.12 ID:PMHpgreAO


ステイルが格好いい
脇役への愛に溢れてるな!
529 : ◆FzAyW.Rdbg [saga sage]:2011/07/09(土) 23:59:10.23 ID:mvqrCBgTo
うああ、何前回の後書き、女々しいにも程があンだろ。不安ですとかなんだよ馬鹿。
みっともない>>1ですいません。本編もちょいと推敲が足りませんでしたね申し訳ない

レスありがとうございます。ほんっっとうに、力になります!

>>524-528
感謝です。ぶっちゃけ身に余りますがすげー嬉しい、抱いて!
マイナー路線を直走るこんなSSですが、みなさんのおかげで楽しくやらせてもらっております

再構成だと上条さん役のキャラを際立たせるためにステイルをかませにしちゃうのはしょうがないよね
バトル展開に乏しいうちのSSゆえの展開、鋼盾にとっても転機となる出来事で、ずっと描きたかったシーンです

俺得を皆得にできるよう頑張ります!
次回は我らがディープアダルト、小萌センセー回です!

そんじゃ、書いてきますね
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/10(日) 16:06:25.60 ID:OqE/oYXIo
先が気になるいつでも待つてる
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 16:07:06.69 ID:OqE/oYXIo
あの本当にごめんなさい
上げてしまった
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 18:39:45.27 ID:O5v1SQ+W0
鋼鉄くんが天草に入る話だと思っていた頃が俺にもありました・・・・

個人的には、法の書編までやって欲しいところだ。
533 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/10(日) 19:49:44.48 ID:Oh55kFKeo
>>532
おお、確かにスレタイだけ見るとそんな風にも見える! ちょっと目から鱗!
天草式もいいですよね。あとオルソラさんもいいよね。ルチアとかたまらんよね

長編再構成の何が難しいってヤメ時を見極めることなんじゃないかと思います
一巻以降でも書きたいシーンはたくさんあるけど、どうしたものか
とりあえず先の事は一巻を完走してから考えますけん、どうかよろしく

>>530-531
いつもサンクス!
ageてしまったと読者さまに謝られてしまったら、どうすればいい?

投 下 す れ ば い い !


というわけで、短いですが投下します!
それでは


534 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/10(日) 20:02:02.88 ID:Oh55kFKeo

―――――





 


 明けて21日、時刻は既に15時を回っている。

 結局上条からの返信はないままに、能力開発の補習終了を告げる鐘が響いた。

 当然ながら補習王の上条には出席が義務付けられているはずだが、教室に彼の姿はなかった。


 心配は尽きないが、現状鋼盾にできることはなにもない。

 どうか、無事でいてくれ―――そう、祈ることしかできない。

 なにに祈ればいいのかも知らぬままに。


 解散となったところで鋼盾は担任であり、補習の担当でもあった月詠小萌を捕まえた。

 どうしても、彼女に話しておかなくてはならないことがあったからだ。

 鋼盾の真摯な表情に何かを感じたのか、小萌は化学準備室に彼を招いた。



――――――――

535 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/10(日) 20:04:49.03 ID:Oh55kFKeo



「…………そう、ですか
 幻想御手、噂は少しだけ聞いていましたが……」


 化学準備室は化学室に隣接する狭い部屋で、半ば物置と化している。

 意外と整理整頓が苦手な小萌が管理するこの部屋は、実験機材や書籍、書類の類で散らかっていた。

 鋼盾は適当な椅子に腰掛け、デスク付きの椅子に座る小萌と向かい合っている。


 結局、全てを話し、頭を下げることしかできなかった。

 あの後、ステイルに諭されてから一晩考えて得た結論は、それだけ。

 自分が道を誤れば、先生は、月詠小萌は涙し、己自身を責めるであろうこと。

 そんな、当たり前のことを忘れ――否、解かっていてそれでも目を逸らしていた。


「……よく、わかったのです。
 話してくれてありがとうございます、鋼盾ちゃん」


 常であれば砂糖菓子を転がすような小萌の甘い声も、今日は塩が混ぜ込まれたかのようにちぐはぐだ。

 その塩を混ぜたのは己自身だと知ればこそ、じくじくと罪悪感で胸が痛い。


 自分は、このひとを裏切ったのだ。

 月詠小萌を、裏切ったのだ。


「すみません、でした。
 僕のしたことは、先生を、みんなを裏切る卑怯な行いでした」
 

 再度、頭を下げる。

 許されないことだという自覚はあったが、他に出来ることなどあるわけがなかった。

 
536 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/10(日) 20:21:15.72 ID:Oh55kFKeo



「頭を上げてください、鋼盾ちゃん」


 月詠小萌は、固い表情を浮かべたままで言葉を紡ぐ。


「まずは、先生は怒らなくてはいけないのです。
 幻想御手の真偽はひとまず置くとして、脳開発というのはそんな単純なものではありません。
 みなさんはロボットではないのですから、インストールすればレベルが上がるなんてことはありえないのです。
 ―――よしんば実際に効果があったとして、そんな劇的な作用をおこすものには副作用の危険だってあるのですよ!」


 副作用。

 それは、考えていなかった。

 そんなことも思いつかないほど、視野が狭くなっていたのだと知る。


「なにより風紀委員さんの到着が遅れていたら、大変な事態になっていたかもしれないのです。
 下手をすれば、そんな怪我じゃ済まなかったかもしれないのですよ!」


 もっともだ。

 風紀委員の彼女が駆けつけてくれなかったら、自分はどうなっていたかわからない。

 


「鋼盾ちゃん。 貴方のやったことは、とてもいけないことです。―――わかってますか?」
 
「……はい、本当に、すみませんでした」

「なら、いいのですよ。
 ……鋼盾ちゃんに大きな怪我がなくて、本当によかったのです」


 そうして気付く。

 小萌の説教はすべて「軽率な行動で危険に身を晒した」ことに向けられていた。

 反則を責めるのではなく、あくまでも鋼盾の身を案じるが故の言葉だった。


 ああ、もう、本当に、この人は優し過ぎる――――鋼盾は甘やかな痛みを胸に抱く。


「そうだ鋼盾ちゃん、覚えてますか?
 入学間もない頃、鋼盾ちゃんが“どうせ自分は無能力者だから”って言ってたこと」

「はい、先生に泣かれちゃいましたから。―――皆にも随分睨まれましたし」

「わわっ! あの時はちょっと感情が昂ぶっちゃっただけで、泣くまではいってないのです!
 ちょっとだけ涙がにじんじゃっただけなのです!」


 えぐえぐと小萌に泣かれてしまったあの一件は、鋼盾にとって大切な思い出のひとつだ。

 なんの能力を持たぬ自分のような出来損ないのために、涙を流してくれた人がいること。


 その事実、ただそれだけで自分は間違いなく救われていた。

 鋼盾が一学期を笑顔で過ごせたのは、紛うことなく小萌の存在があっての事だった。


537 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/10(日) 20:36:15.47 ID:Oh55kFKeo


「……あれから、先生はずっと考えてたことがあるんです。
 いえ、もしかしたらずうっと前から考えていたのかもしれません。……聞いてもらっていいですか?」

「はい、もちろん」


 小萌は小さく息を吐くと、鋼盾をまっすぐ見据えて、話し始めた。


「まず前提として、鋼盾ちゃんに能力が生じないのは、貴方のせいではないのですよ。
 この学園都市はまだまだ過渡期で、能力開発についてもわからないことだらけなのですが……でも、そんな風に考えるのは甘えでしかないのですよ。
 その結果、子ども達に負担を押し付けているのが現状なのです」


 学園都市は能力開発の街。

 この街の抱える歪さは、学園都市を作り上げた大人たちの責任であると月詠小萌は断じた。

 自分たち、大人の責任であると。


「無能力者という括り――いえ、そもそも能力強度というカテゴリ自体が酷く歪なのです。
 本来この街が目指すのは、そんなランキングじゃないはずなのに、教師も研究者もそのことを忘れがちなのですよ」


 それは、学生だって同じだ。

 程度の差はあれ、この街に住む者は、誰しも序列に囚われている。

 ―――上条のようなタイプは極めて稀な例なのだ。


「結果、この街はひどく歪な形になってしまいました。
 奨学金に差をつけて、その結果6割もの子ども達に“無能力者”なんて肩書きを押し付ける現状。
 ――そんなのは間違っているのです」


 月詠小萌は、社会心理学・環境心理学・行動心理学・交通心理学の専門家でもあると聞いている。

 ならばその言葉はきっと正しいのだろう、だが、正しいからなんだというのか。


 彼女の言葉は正論ではあるが、しかし正論に過ぎない、鋼盾ですらそう思う。


 競争は必要、褒章は必須。

 持てる者には然るべきものが与えられるべきで、その点において学園都市は正しい。


 今はきっと、この未成熟な都市が完成に至るまでの過渡期。


 矛盾も歪みも当然。

 無能力者に感けていては足取りが鈍るだけだ。



 神ならぬ身にて天上に至らんとするなら、相応の犠牲は許容されて然るべきであろう。




 
538 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/10(日) 20:38:25.95 ID:Oh55kFKeo

 だけど、それでも、だからこそ。

 小萌の言葉は鋼盾の心に深く沁みる。

 この街に、こんな大人がいてくれることに、感謝せずにはいられない。


「先生は、能力開発を受けていません。
 だから、生徒のみなさんの抱えている悩みを、本当の意味では理解してあげられてはいないのかもしれないですけど」

「そんなこと、ないです! 先生は!」

「ふふ、ありがとうなのです鋼盾ちゃん。
 大丈夫なのですよ―――先生は、先生ですから。そんな程度じゃ諦めません」


 笑顔を崩さない月詠小萌。

 幼げですらある容姿と裏腹に、彼女は強い。

 途方もなく。


「先生は、先生の目指す先生にならなくてはいけないのです。
 この街には苦しんでいる生徒さんがたくさんいるのはどうしようもなく本当のことなのですから。
 ならば、それを助けるのは先生の仕事なのです!」


 彼女はこんなにも、強い。

 その強さに鋼盾は憧れる。


 能力の有無など関係ない、男女の差異も、齢の差すらもどうでもいい。

 その信念、その在り方、その覚悟。

 小萌の示したそれこそが、きっと鋼盾の目指した場所に他ならない。


 強くなりたい

 先生のように、強く、正しくありたい


 その眩しさに耐え切れず顔を背けた鋼盾の手を、小萌はぎゅっと握り締める。

 小さな手、子どものように熱い体温を湛えたその指先の力強さに、鋼盾は小さく震えた。 



「大丈夫です。 鋼盾ちゃんは、しっかりと自分の行いに向かい合うことのできる男の子ですよ。
 ―――先生の自慢の生徒さんなのです!」

「……ありがとうございます、先生」


 ああ、本当に自分は、恵まれている。

 両手を包む暖かな温もりに、鋼盾はちょっとばかり泣きそうになった。




――――――――

539 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/10(日) 20:58:23.33 ID:Oh55kFKeo



終了宣言忘れてた!

ちょいと短いですが、今日はここまで。
けじめそのいち、小萌先生でした。口調が難しいぜ!

気付けば500を超えてそろそろ540ですか。
うおおおい! 終わらねえ! 当初の目論見じゃもうスレタイ回収してる筈なのに! 遠いぜ!
なんか膨らみっぱなしで困ります。

書くまで知りませんでしたが一巻って意外と長いのな

原作だとインデックスが臥せったり上条さんが気絶したりでポンポン飛んでますが、実は一週間くらいあります
再構成だから原作の進み方と違くてもいんじゃね、と思わないでもないのですが、
結構時間軸とか、ペンさんのビーム違う日に撃ったら人工衛星オチねえよなあとか考えちゃってダメですね

難儀な>>1ですみません
んでは、来週もお互いがんばりましょう
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 22:02:06.21 ID:JpV+vNrE0
乙!毎度同じような感想で申し訳ないけど面白かった。

次回も待ってる。
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/10(日) 23:56:40.39 ID:6gs0GN740

周囲が真っ直ぐなキャラばかりだから鋼盾の心情が映えてるなぁ

続く限り張り付きますよっと
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 18:30:26.51 ID:20+3Jrve0
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 20:56:58.97 ID:EpXG0Pe6o
乙ー

今見つけて速攻追いついた!面白いなwwwwwwwwww
でもどうしても鋼盾が小萌先生と居るとロリコンにしか見えない……
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 23:32:53.57 ID:6rspf/Xz0
乙!
やっぱり小萌先生は最高やわぁ
俺の先生になってほしい
545 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/12(火) 21:29:27.55 ID:vWxLi4Pto

――――――――



「ああ、先生、もうひとつだけいいですか」

「はいー? なんですかー?」


 幻想御手についての告白を終えた鋼盾は、この部屋に来たもう一つの目的を思い出す。

 聞かなければならないことがあるのだ。


「えーと、上条くんのことなんですが、昨日から連絡が取れないんです。
 彼、昨日ちょっとトラブルに巻き込まれていたんですけど、先生の方に連絡は入ってますか?」


 思えば上条の欠席について、小萌からはまったくコメントがなかった。

 無断欠席を許すような小萌ではない、ということは。


「……ええ、ちゃんと連絡を受けているのですよー。
 ところで鋼盾ちゃん? 上条ちゃんの抱えるトラブルとやらは、なんなのですか?」


 ちゃんと連絡が来ている、ならば無事ということだ。

 鋼盾は安堵に腰が抜けそうになる―――あの馬鹿、こちらにも連絡くらいよこせばよいものを。

 気の利かぬツンツン頭に文句をつけつつ、鋼盾は己の頬が緩んでいることを自覚する。


 上条は、どうやら無事だ。

 きっと、インデックスも無事だろう。


 さて、小萌にトラブルとはなんぞやと聞かれてしまったが、なんと答えたものだろうか。

 
(空から降ってきた謎の美少女を抱えて、彼女を追う謎の組織とやらと一戦やらかしてます)


 ……却下。
 
 んなこといえるわけがない。

 なんだソイツ、パズーか、パズーなのか。




546 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/12(火) 21:32:00.56 ID:vWxLi4Pto


「えーと、あー……また、女の子がらみです。
 なんかトラブルに巻き込まれた女の子を助けるために走り回ってるみたいで」


 適当に濁す。

 嘘は言ってないし、いつもの事といえばいつものことだ。

 いやー、なんて彼らしい行動だろう。


「……そう、なのですか。
 ところで鋼盾ちゃん? 今日はこの後、なにか予定はあるのですか?」

「えっと、ちょっと訪ねたい人がいまして……。
 そんなに時間はかからないとは思うんですけど」

「なら、夜は空いてますね?」

「? はい。上条くんを探そうかな、なんて思ってましたけど」


 ふむ、と頷いた小萌はとっ散らかったデスクの上からメモ用紙を引っ張り出すと、スラスラと万年筆を走らせる。

 相変わらずの丸っこい字で書かれたソレは、どうやら住所と電話番号のようだった。

 電話番号は二種類、携帯電話と固定電話がそれぞれ記されている。

 はい、といって渡されたソレを鋼盾は神妙に受け取った。


「えーと、先生、これは?」

「今回の件の、ペナルティということにしておきましょうか。
 先生の家の住所と、一応電話番号なのです。そうですね、今晩七時ごろに来て貰えますか?
 ちょっと手伝って欲しいことがあるのです」

「……はあ、わかりました」


 ペナルティ、と言われてしまえば鋼盾としては否はない。

 自分がやらかした事はそれなりの事であるという自覚はある。

 とはいえ自宅に招いて手伝いをさせる、というのは、なんというか公私混同めいた感じがする。

 普段の小萌らしからぬ真似に、鋼盾は戸惑う。


「夕食は食べてこなくてもいいですからねー、ご馳走しちゃいます」


 ……いよいよ、わからない。

 青髪あたりなら「御褒美やでーー!!!」と喚きそうな展開だ。

 いつもどうりのニコニコ笑顔を浮かべている小萌だが、なにかを企んでいるようにも見える。


 とは言え。


「先生がそういうなら、七時にお邪魔します」

「はい、お待ちしているのです」


 他ならぬ小萌の言うことである。

 信用しないわけにはいかなかった。





―――――

547 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/12(火) 21:33:31.20 ID:vWxLi4Pto

―――――



 夜に月詠宅に行く約束を交わし、鋼盾は化学準備室を辞す。

 訪ねたい人がいる、と小萌に言ったとおり、鋼盾には行かねばならぬ場所があった。

 正確には「訪ねたい人に会うため」の準備段階なのだけど。


 今回の一件について、謝罪と感謝をしなければならない人がいる。

 一人は、スキルアウトたちに嬲られた鋼盾を助けに来てくれた無能力者の少女。

 もう一人は、風紀委員の空間移動能力者の少女だ。


 無能力者の少女については、セーラー服を着ていたことと頭に髪飾りをつけていたことぐらいしか思い出せないが、

 風紀委員の少女の方は、いろいろ情報がある。


 白井さん、と呼ばれていたこと。

 常盤台中学の生徒であること。

 自身を転移できる程の高位の空間移動能力者であること。


 個人を特定するのには十分と思える情報量ではあったが、如何せん伝がない。

 風紀委員の生徒の情報は極秘事項と言うわけでもないが、彼らを逆恨みする者もいるため一般公開はされていない。

 常盤台中学については言わずもがなである。病的なまでのセキュリティが構築された学舎の園の中にあるのだ。


 風紀委員の知り合いはいないし、学舎の園に入り込むことなど出来るはずもない。

 
(……御坂さんなら知ってるかな)


 最近知り合った常盤台中学所属の電撃姫を思いだす。

 彼女なら知っているかもしれないが、しかし連絡先がわからない。

 上条に聞けばあるいは解かるかもしれないが、彼とも連絡がつかないままだ。

 ならば、やはりこれしかあるまい。


548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/12(火) 21:34:45.52 ID:0qmlJS2/o
>>545
ムスカの発音するなw
549 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/12(火) 21:38:11.10 ID:vWxLi4Pto


(警備員)


 アンチスキル、学園都市内の治安維持を勤める彼らはその業務上、風紀委員とも縁が深い。

 相談すれば、あるいは調べてもらえる可能性があるかもしれない。

 そして、この学校に所属する警備員といえば、


(……黄泉川先生)


 ナイスバディを色気のないジャージで包んでなお色っぽい、この学校の名物体育教師。

 6月の雲川事件での大活躍っぷりは、未だに目に焼きついている。


 腕利きの警備員として名を轟かす彼女なら、きっと。

 風紀委員にも顔が利く筈だし、相談に乗ってもらえるかもしれない。


 夏休み中なので来ていない可能性も高いが、まあ、行くだけ行ってみよう。

 鋼盾は職員室へとその足を向けた。
 




――――――――

550 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/12(火) 21:51:39.02 ID:vWxLi4Pto
ここまで
うん、繋ぎ回過ぎるぜ!

レスありがとうございます
小萌先生は素敵な先生ですよね!惚れる!

しかもこの日の小萌先生は一味違う!
昨晩自宅に教え子(コブ付き)を連れ込んで(踏み込まれて)一夜を共にし(治療的な意味で)
新たなる扉を開き、未知の世界の片鱗に触れた(魔術的な意味で)という、真・小萌先生なのですよー!
そして今夜もまた教え子(鋼盾くん)を招きいれようとしていますぜこの女教師。もっとやれ

あ、さっき総合に小ネタ投げてきました
20分で書いて録に推敲もしなかったら案の定誤字って死にたい
「真理掌握」「とある化学の超電磁砲」とかダメすぎる!でも楽しかったのでよし

んでは
また

551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 23:19:52.23 ID:kxVjt0RP0
乙です。
小萌先生はほんま素晴らしい先生や〜。
これでクライマックスに鋼盾が居合わせるお膳立てが出来たわけか。
そろそろスレタイ回収かなぁ。

しかし、真理掌握か。なんかアカシックレコードとかにアクセスできそうな能力だな。
絶対レベル6だろそいつ。
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/12(火) 23:45:20.29 ID:FKHlESTC0

鋼盾が小萌先生の自宅に呼ばれただと……
青年が(殺伐とした意味で)アダルトな世界に踏み込んでいくわけですねわかります

誤字に神浄討魔っぽいものを感じたww
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 09:14:07.39 ID:ZmnBQ6MR0
真理掌握(アンサートーカー)

樹形図の設計者なんか目じゃないぜ!!!
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/14(木) 19:48:50.07 ID:FoE26dtr0
           ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「君はいつから、私が『真理掌握を使っていない』と錯覚していた?」

うん、用法はこんな感じだろうな
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/14(木) 21:11:55.21 ID:Dm2QfFBAO
どうみてもファイヤーエムブレム
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/14(木) 22:52:35.62 ID:e/FYrGWoo
あんま掘り下げてやんなよw
557 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/15(金) 22:19:10.41 ID:n03KNfC5o
ふはは、真理掌握なんてネタに決まってるじゃんよw
“アカシックレコード”、“神浄討魔”、“答えを出す者”、“私が天に立つの人”、“掌握の真理(アスタルテ戦)”
まったく、お前らには困ったもんだぜ…………はい、すみません、ただの誤字です
>>556の優しさが胸に沁みるぜ

>>551 まだ、21日なんだぜ……遠い、スレタイが遠い……!


なんとか本日中に投下できますように
己を追い込む予告age! そぉい!!
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/15(金) 22:26:55.20 ID:eJRtHD7bo
よろしいならば全裸待機だ
559 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/15(金) 23:40:39.01 ID:n03KNfC5o
ふむ、その覚悟には応えねばならぬな
いいだろう、ならば全裸投下だ

そぉい!!






――――――――

560 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/15(金) 23:41:12.39 ID:n03KNfC5o

――――――――



「失礼します。
 ……一年七組、鋼盾掬彦、入ります」


 学校の職員室というのは、独特な雰囲気のある場所だと鋼盾はいつも思う。

 コーヒーと紙束の匂い、電話の音、雑然としているようで奇妙な調和がある、そんな空間。

 もっとも、学生にとってはあまり居心地の良い場所ではないのだけれど。


 運の良いことに、黄泉川愛穂は出勤していた。

 書類仕事に勤しんでいるようで、資料を片手にペンを執っている。

 デスクは几帳面に整頓されており、わりと散らかし魔なウチの担任とは大違いだ。

 近寄ってくる鋼盾に気付き、黄泉川は顔を上げた。


「お、月詠センセのとこの子じゃん?
 鋼盾だったか? 月詠センセならまだ戻ってないじゃんよ」

「いえ、えーと、黄泉川先生にお願いがあってきたんです」

「……私に? するっていうと補習絡みか?
 でもお前は補習じゃなかったはずじゃん? つーか保健で赤とったのは上条くらいのモンじゃんよ」

「えーと、警備員としての先生に、お願いがありまして」


 警備員、という言葉が出た途端、黄泉川の表情が真剣味を帯びる。

 普段のおちゃらけた雰囲気は霧散していた。この街の治安を維持する者としての顔だ。


「ふむ、ああ、すまん。そこの椅子に座るじゃんよ。
 ―――それじゃあ、まあ、話してみるじゃん?」

「はい、実は……」

561 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/15(金) 23:42:00.15 ID:n03KNfC5o


 とりあえず幻想御手については言及を避け、昨日風紀委員の少女に助けられた旨を告げる。

 現場から逃げてしまったため、彼女の安否を確かめたいこと。

 なにもできずに逃げ出した事を謝り、助けてくれたことにお礼を言いたいと思っていることを話す。


「風紀委員の白井――常盤台中学の白井黒子だな。有名人じゃんよ」


 有名人――まあ、常盤台の風紀委員なら有名にもなることだろうと鋼盾は思う。

 黄泉川は軽く目を伏せると、件の少女について語り出した。


「高位の空間移動能力を活かした圧倒的な機動力、射線すらない回避不能の投擲、
 触れさえすれば相手は地面とキスするハメになるというんだから近接戦闘能力も相当じゃん。
、風紀委員トップレベルの腕っこきにして、命令違反の常習犯ってな問題児との話だが……
 とはいえ私は、ああいうまっすぐなヤツはキライじゃないじゃん」


 黄泉川は机の一番下の引き出しを開けると、A4サイズの無骨なファイルを取り出す。

 パラパラとページを捲ると、目当ての項目を見つけたらしく、メモパッドにスラスラとなにやら書き付け始めた。

 支部名と住所、電話番号と思しき数字が書き込まれてゆく。

 黄泉川はメモ用紙を切り取ると、悪戯っぽい目をして鋼盾を見た。


「ところで鋼盾、わざわざお礼を言いに行きたいなんて随分と殊勝なことじゃん?
 ふふーん。白井はあれでなかなかの美少女だしな。
 もしや、惚れたか?……だとしたらこれを渡すわけにはいかないじゃんよ!」

「んなわけないでしょう。相手は中学生ですよ……。
 お礼をいいたいだけですって」


 たしかに凛とした美少女ではあったが、そんな暢気な状況ではなかった。

 それを受けて黄泉川は、なんだつまらんといわんばかりの表情で、メモを差し出してよこす。


「今日はもう遅いし、夏休みは馬鹿どもがはしゃぐ季節じゃん。
 風紀委員も忙しい、ちゃんと連絡を入れてから行った方がいいじゃんよ」

「わかりました。アポを取ってから行きます。
 ありがとうございました」


 ありがたく、メモを受け取る。

 どうやら糸は繋がった、その成果に鋼盾は安堵の溜息を吐く。


562 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/15(金) 23:57:54.43 ID:n03KNfC5o


「ああ、そうそう」

「?」

「白井と言えばな、昨日廃ビルを一棟倒壊させたらしいぞ
 ……鋼盾、おまえが関わったと言うのはその事件のことか……?」


 黄泉川の瞳が一層剣呑な色を帯び、常の「じゃん」口調も鳴りを潜めている。

 というか、なんだと? 

 ビルを、倒壊?


「……いえ、能力者に絡まれたところを助けてもらっただけですから。
 僕は途中で逃げちゃったので最後までは見てませんが……流石にビルは崩れないと思うんです、けど」


 しかし、ビルへとスキルアウトを誘導した昨日の一件を思い出す。

 風紀委員の彼女が逃げ込んだのは、確かに廃ビルだった。

 あのビルを、崩したというのだろうか……?

 空間移動能力者の彼女が?

 まさか。


「本当なんですか? その白井さんの能力じゃ、そんなことはできないと思いますけど……」

「うーん、嘘はいってないみたいじゃん。
 いや、その可能性がありそうだとういう報告があってな……別件かもしれない、が」

 
 最近は妙な事件が多いじゃんよ……と黄泉川は溜息混じりに呟く。

 幻想御手絡みの事件のことだろうか、鋼盾がネットで調べた限りでも、奇妙な事件が続いているのは事実のようだった。


「呼び止めて悪かったじゃん。けじめを付けに行く、そういう姿勢は悪くないと思うぞ鋼盾。
 もし面倒ごとがあったら、あたしに言うといい。月詠センセに言いにくいことがあれば、いつでも話は聞くじゃんよ?」

「……はい、またお願いする事もあるかもしれません。
 その時は、よろしくお願いします」

「ああ、任せるじゃん。
 せっかくの夏休み、面倒ごとはさっさと片付けて、しっかり楽しむじゃんよ」

「はい、必ず。
 ――ありがとうございました、先生」


 そう、今は夏休み

 楽しい楽しい、夏休みだ

 
 とっとといろいろ片付けて、夏休みを満喫しなければならない

 黄泉川の言うとおり、しっかりけじめをつけて、前に進もう。


 鋼盾は、小さく決意を重ねた。

 



――――――――


563 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/15(金) 23:58:23.91 ID:n03KNfC5o


――――――――




 黄泉川から白井黒子の情報を得た鋼盾は、そのまま自宅へと帰宅した。

 小萌との約束までは若干の猶予があるため、風紀委員177支部へと連絡を入れることにした。

 対応してくれたのは固法と名乗る落ち着いた声の女の子で、白井の直属の上司のような立ち位置にいるとのことだ。


 訪問のアポは思いのほか簡単にとることができた。

 明日の14時、風紀委員第177支部にて面会が可能であるとの事だ。。

 当然ながら、なにか事件が起こればそちらを優先せざるを得ないという話ではあったが。


 なんにせよ、糸は繋がった。

 風紀委員の少女と無能力者の少女は知り合いのようだったし、明日詰め所を訪ねればそちらの話もできるだろう。


 とりあえず今晩は小萌のところに行かねばならない。

 メモを取り出し、書いてある内容を携帯電話のアドレス帳に写してゆく。

 
 携帯電話にメモリが増えてゆくのは、なんというか嬉しいことだった。

 いつかの春の日、上条と連絡先を交換した時のことを思い出す。

 アドレス交換に不慣れで、若干テンパった記憶すら微笑ましい。


 あのときから鋼盾の世界は広がり始めた、色づき始めた。

 土御門や青髪、クラスメイトたちの連絡先が増えていったアドレス帳をスクロールする。

 無機質な携帯端末に、なにやら暖かな血が通ってゆくような錯覚を覚えてしまう。


 繋がり。

 これもまた、能力に依らずに鋼盾が得たものだ。

 何より大切な、それ。


 縁

 えん、えにし、よすが


 そのワードに件の少女、インデックスのことを思い出す。

 己の事情に他人を深く関わらせることを忌避していたあの少女。

 そのくせ、きくひこきくひこと嬉しそうに名前を繰り返していた彼女。

 奇妙な縁で出会ったその少女、土御門の言によれば上条と行動を共にしている筈だ。

564 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/15(金) 23:59:04.86 ID:n03KNfC5o


 可憐で、それでいて隠し切れぬ疲労を孕んだその笑顔

 祈りを捧げるために組まれた指先の美しさ

 おっかなびっくりマウスに触れた表情

 ぐうぅ、と間抜けた腹の虫の悲鳴

 きくひこ、と呼ぶ声

 
「……参ったな」


 忘れられない。

 補習の最中も度々思い返してしまった――自分では、止める事ができない感情。

 どうやら自分は思った以上に、あの得体の知れない少女を気にしているらしい。

 この感情が恋だとは思わないが、上手い言葉が見つからぬままだ。


「地獄の底までいっしょに、か」


 あの悲壮な笑顔に、かんたんに頷くことなどできるはずもない。

 薄甘い同情や、半端な覚悟で近づいてはいけない。


 だけど

 それでも


 地獄の底なんて、あの子には似合わない。

 ぐるぐるとシチュー鍋をかき回す、美味しくなれと微笑む、そんな姿こそがあの子に相応しい。


 そう思う。

 強く、強く。

 
 今は誰もいないキッチンをぼんやりと見つめながら、

 鋼盾掬彦はひとり、そんなことを考えていた。



――――――――
565 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/16(土) 00:00:20.46 ID:7TR4UgKUo





ここまで

じゃんじゃんじゃん
じゃんじゃん続きすぎると困るじゃんよ
黄泉川先生難しいじゃん

んじゃ
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 00:12:23.11 ID:tnoLJDuLo
乙!黄泉川センセーかっこいいじゃん
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 03:54:03.35 ID:4fM3N5NDO
一巻でステイル・土御門・子萌・黄泉川とスポットを当てる、脇役への愛を感じた
続きをのんびり期待
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/07/16(土) 12:14:32.38 ID:i/5nnc0AO
乙。インデックスはスティル、ヘタ錬、上条に続き鋼盾君まで虜にしちまうのか。罪な女だ
569 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/16(土) 23:54:42.92 ID:7TR4UgKUo
レスありがとうさんです
こんなマイナー僻地に来てくれる冒険者な皆さん素敵
できるだけ楽しんでいただけるよう頑張りますです

次回投下分を執筆中なのですが、なぜかギャグパートになってしまった……!
>>1は現在昨年仕込んだ梅酒を楽しんでいます。すべては酒のせいです
これからかます悪ふざけも酒のせいです。

さて、本編とは関係ないのですが、ちょっと迷っている件があります
厚かましいお願いですが、みなさんに意見を仰ぎたいのです
下の3つからもっとも琴線に触れたものを選んでください


@駒場×布束 路地裏の再会

A浜面×姫神 英雄たる資格

B横須賀×10031号 夢見る機械


よろしくお願いします
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 23:58:17.01 ID:XrSM6K6ao
2!2!2!
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 00:10:07.35 ID:/4PExNQAO
これは1
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 00:18:34.68 ID:/RiqAaW3P
全部

がいいけど2で
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 01:34:14.17 ID:2AhhiSWuo
2でお願いします
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/17(日) 05:30:18.39 ID:avt37xDx0
1を希望
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 08:25:29.52 ID:phmQWfy40
3が見たい。
どんな話になるのか想像もつかねえ
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/17(日) 12:04:06.88 ID:7Y23QpZ0o
たまには。■■さんにも。出番をあげて。
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/07/17(日) 13:28:48.97 ID:v/1xnvsMo
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 14:04:07.65 ID:/t7Hf8H80
これは3しかない
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/17(日) 14:32:52.29 ID:LBvLib280
■■ー!!
出番をあげてーってことで 2
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/17(日) 15:23:38.63 ID:kghKsO620
みんな、落ち着け!
全ての数を均等にするんだ!

ということで1
581 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/17(日) 16:11:24.04 ID:j2QVR5pso

酔っぱらいのテンション怖い、自家製梅酒うまい、
なにやってんの昨夜の俺

みんなありがとう、
こんなに来るとは思わなんだ
すげー嬉しいです、マジでありがとうです

先のことはどうなるか、書けるかどうかもワカランのですが、
多少妄想の暴走先を制限しとかねえとなんかもう捌ききれねえ予感がフツフツ
スキルアウト路地裏連盟でスンマセン

現在1が3票、2が5票、3が3票ですね
浜姫が一歩リード……滝壺ェ


あ、サンプル用意しときますね
582 :@ [saga]:2011/07/17(日) 16:37:28.91 ID:j2QVR5pso


 再会は、第七学区の路地裏。

 マネーカードと混乱を路地裏に振りまいた女、その状況をよしとしせず、単身調査に赴いた男。


「利徳、くん?」

 幼少の頃から生物学的精神医学の分野で頭角を現し、“学習装置”の開発にも深く携わった才媛、布束砥信。


「……布、束?」
 
 歪な科学でその身を鎧う “棄てられた者たちの王”、能力者の横暴を許さぬ路地裏の英雄、駒場利徳。


 かつて、ほんの少しの間だけ、クラスメイトだったふたり。

 運命の悪戯か、それとも。

 交わらぬハズの道が交差したとき――物語は始まる。


「NO、貴方はこの街の本当の闇を知らない……路地裏の不良に何ができるというの?」

「……その闇とやらが、俺達の敵だ。無能力者を追い詰める連中を、捨て置くわけには、いかない」


 絶対能力進化実験、嗤う科学者

 今日、俺たちはこの街の闇の最奥に挑む


 
 「誰が為にこそ、鐘はなる―――無能力者(オレたち)の咆哮を聞け、第一位」
583 :A [saga]:2011/07/17(日) 16:38:14.23 ID:j2QVR5pso











「――――楽勝だ、錬金術師」








584 :B [saga]:2011/07/17(日) 16:42:42.71 ID:j2QVR5pso



「お? こないだの根性の入ったねーちゃんじゃねーか!」

 ――――― 七人の超能力者の第七位、世界最大の原石、削板軍覇


「……っ!!! 超電磁砲(レールガン)だと!」

 ――――― 無能力者(レベル0)にしてスキルアウト、横須賀


「……なんで僕はこんなとこにいるんだろう……はぁ」

 ――――― レベル2の念動力者にして稀代のツッコミ、原谷矢文


「……ああ、お姉さまと勘違いされているのですね、このミサカは妹です、
 と、ミサカは白ラン日章旗とマッチョのスキンヘッドとモブという謎の凸凹トリオに
 どういったリアクションをしたものか頭を悩ませつつ回答します」

 ――――― 超電磁砲のクローン“欠陥電気”(レディオノイズ)、ミサカ一〇〇三一号



 学園都市の闇

 絶対能力進化実験


 いつの間にやら仲良くなったズッコケ三人組と、

 己の意思すら持たなかった機械のような少女が出会ったとき、物語は始まる!!


 
 “随分根性のないマネをするじゃねえか、第一位…………本気で潰すぞ”

 “はッ! 面白ェ、せいぜい踊って見せろ格下共がァ!!!!”

 “僕の能力でプロペラを回した! でも長くはもたない! 横須賀ァ!急げ!”

 “なぜ貴方は、貴方たちは……こんな欠陥品のために”

 “惚れちまったんだから仕方ねぇだろ――ミサカ、俺たちはお前に死んで欲しくねえんだよ”



 それは、奇跡の一撃


 「「「  三 位 一 体 ! 超 超 す ご い パ ー ン チ ! ! ! 」」」

 「おいちょっとふざけンなてめビルブチィl!!!!!」

585 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/17(日) 16:47:02.67 ID:j2QVR5pso


※文章はすべて妄想中のものです
 内容は予告無く変わる事があります
 あしからず


ちょっと本編で矛盾を見つけてしまったので、今晩は投下できないと思います。
2、3日中には来ますので、投票はそこまでということで

んでは
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 17:29:07.34 ID:uVCQz0ego
2のサンプルみじけーwwwwww
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 17:48:41.60 ID:LGBbw8p7P
やっぱ3だな
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 18:56:35.94 ID:/RiqAaW3P
削板が出るんなら喜んで3に変えます
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) [sage]:2011/07/17(日) 21:24:06.52 ID:SON1wQLCo
2で
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/17(日) 21:32:36.61 ID:/4PExNQAO
Aの説得力が異常
一文のくせに
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/17(日) 21:54:40.74 ID:LBvLib280
クソッ!3の展開はどう考えても燃えるっ……!
だが2だ
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 21:58:08.49 ID:alykiyB/0
浜面さん超能力者、魔術師に続きとうとう錬金術師までwwwwwwww

2で
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/18(月) 00:35:16.87 ID:X+zMcsduo
浜面「楽勝だ、幻想殺し」

浜面「楽勝だ、神の右席」

浜面「楽勝だ、北欧玉座」

浜面「楽勝だ、統括理事長」
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/18(月) 01:05:12.18 ID:TAjhQraso
当然2
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/18(月) 01:34:26.26 ID:LEAwVIMC0
浜面大人気だなww
そして3の展開がシリアスなんだかギャグなんだかわからねえ。
しかし、ここは1で。
ていうかなんで他に1がないんだよ駒場の旦那すげえかっけえじゃねえかよ。
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/18(月) 07:30:28.18 ID:Xbr6N4XAO
>>1だよな
布束さんだぜ?
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/18(月) 11:05:15.75 ID:8YTrHo0K0
俄然、1に決まっておる
駒場の旦那の渋さはマジ異常
1をメインに2と3を絡ませればいいんじゃないかな!
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/18(月) 12:16:28.52 ID:Tg4xWO2jo
いいぜ>>1がひとつしか選んじゃいけないってんならまずはそげぶ
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/18(月) 16:28:25.11 ID:qeaD3wFAO
浜面を二巻に絡ませるなら必然的に一巻の話消化しなきゃいけなくないか……?
まさか一巻からやるのか?

2で
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/18(月) 16:52:22.35 ID:MRYZsji3o

みんなありがとーさんです。気づけば600レス。
今までのペースとかもろもろ考えるとこのスレで終わらんことは確実ぽいです。
スレタイは言えればいいなー、なんて思ってますがどうなのか、まあのんびり書きますよって
みなさんも好きにコメントしてください

本編おろそかにすんなよと怒られる前に夜、8時位までに投下にこれそうです
今日も今日とて予告age!!


現在@が6、Aが8、Bが5でしょうか。 浜姫がややリード
586、590、593は投票ではないと判断しました。投票だったらそう言ってな!票にいれます!

@は駒場さんと布束さん。自己犠牲と献身、意思と覚悟。不器用であたたかなやりとりと、シリアスバトルが見どころの筈
Aのサンプルはアレで十分だよな!■■が出てない? 愛と想像力が足りないぜ! 
B三位一体はふざけすぎましたがシリアスです、面倒見のよい横須賀、ソギーの過去、原谷のツッコミなど

こんなアホ企画?で申し訳ない。夜の投下までで〆ます。
んじゃ、用事片付けてきます、また8時あたりに
601 : ◆FzAyW.Rdbg [saga sage]:2011/07/18(月) 16:54:23.98 ID:MRYZsji3o
スンマセン、上は>>1です! 忘れてたぜ!
んじゃまた!
602 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/18(月) 16:59:53.59 ID:MRYZsji3o
そして質問!

質問スレでも聞いたんだが、小萌先生のビールと煙草、誰か銘柄わかんないかな?
煙草は小萌先生に似合いそうな煙草でもOKです!

ご存知の方、どうかよろしく
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/18(月) 17:01:29.79 ID:vrZctpwpo
ちょっとまって布束さんとソギーが好きな俺はどっちにしたらいいの!
あああでもせっかくだから1でお願いします!
604 : ◆FzAyW.Rdbg :2011/07/18(月) 17:04:13.74 ID:MRYZsji3o
あれ、上がってねーや!そぉい!
>>603サンクス! あれじゃね、選ばれなかった方をかわりに書いてくれ!!
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/07/18(月) 18:02:02.31 ID:CUUcfomAO
たった一文なのにワクワクさせられる2で
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/18(月) 18:38:29.19 ID:vrZctpwpo
ビールと煙草調べてみたけどわかんないなー。
一番搾りとプレミアムモルツを混ぜたようなデザインに見える。
煙草は茶色のフィルターでおっさんくさいものならラークかハイライトあたりかなあ。
俺が書いたらエタるからダメなの!
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/18(月) 18:51:05.58 ID:g4qUJRxD0
ビールは、NIPPORI 一生搾りという銘柄らしい。一生搾りってなんだよww
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/18(月) 19:10:34.82 ID:EZKIE9NIO
漫画版だとAから始まるビールやね
Asahiか?
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/18(月) 19:52:49.14 ID:hUqqC+1h0
一番>>1に合ってそうなのは3かなーと思いつつ、浜姫な2も見たい

で も や っ ぱ り 駒 場 の リ ー ダ ー が か っ こ い い 
布 束 先 輩 が 浜 面 に ソ バ ッ ト か ま し て 姐 さ ん 
と か 呼 ば れ そ う な 1 以 外 は 選 べ な い で す 。
610 : ◆FzAyW.Rdbg :2011/07/18(月) 20:30:59.40 ID:MRYZsji3o
遅れました、すまんぜよ!
さあ投下いくぜい!!

611 : ◆FzAyW.Rdbg :2011/07/18(月) 20:38:09.02 ID:MRYZsji3o





――――――――


 型遅れな安携帯の無料ナビ機能ひとつとっても、この街の技術が注ぎ込まれた一級品だ。

 目的地の住所が判っていれば辿り着くことはたやすい。ゴール付近でほっぽり出す旧式カーナビとはモノが違うのである。

 午後7時まであと5分、約束の時間まで幾何かの余裕を残して、鋼盾は月詠邸へと辿り着いた。


「……わお」


 小萌の家はなんとも凄まじいところだった。

 古式蒼然、という美辞麗句を笑い飛ばすような超ボロ木造二階建て。

 東京大空襲を乗り越えてそうな、昭和の文豪が赤貧時代を過ごしてそうな、未亡人の管理人さんと五号室の浪人生がラブコメってそうなアパートメント。

 通路に置かれたやたらと未来的なフォルムの洗濯機が異様なほどにアンバランスである。

 ヴェルサイユ宮殿にコタツが置いてあるのと同程度の違和感だろう。


 月詠小萌。

 身の丈135cmのディープアダルトたる我らが担任教諭にして、学園都市の七不思議にも数えられるトンデモレディ。
 
 その私生活は謎のヴェールに包まれていたのだが、思わぬところでその一端に触れてしまったようだ。

 とりあえず、見た目十二歳がひとりで住んでいて良い場所ではないような気がする。

 児童相談所にマークされてそうだ、この街にはそんな機関はないけれど。


 ボロボロに錆び切った階段を慎重に上り、メモ翌用紙に書かれた部屋を目指す。

 廊下の先、一番奥まったところにあるドアの脇には、見覚えのあるまるっこい文字で“つくよみこもえ”とのプレートがかけられている。

 ……何故に、平仮名なのだろうか。いや、問答無用で似合ってはいるけれど。


 えらく頑丈そうなドアの前で、ほんの少しだけ待つ。

 きっかり7時を迎えたのを見計らって、鋼盾はインターホンを鳴らす。

 トタトタと足音が聞こえ、ほどなく扉が開いた。


「はーい、お待たせしました。
 時間通りですね鋼盾ちゃん、とってもマルです」

「……こんばんは、先生」


 鋼盾を出迎えてくれたのは当然であるが月詠小萌であった。

 やっぱりこのボロアパートには似合わない、見た目12才にして御齢 [禁則事項です] 才 の我が担任。

 笑顔が眩しいったらない。

612 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/18(月) 20:42:39.29 ID:MRYZsji3o


「ささ、入ってください
 ……お待ちかねなのですよー」

「? はい、失礼します」


 玄関を抜けると短い廊下、トイレへの扉と申し訳程度のキッチンがあるだけで、案の定風呂場はないようだ。

 そこかしこから漂う昭和の匂いはなんなのだろう、廊下を照らす裸電球……時代遅れの黄熱灯である。

 振舞ってくれると言っていた夕食だろうか、コンロに置かれた鍋や棚の炊飯器からは美味しそうに湯気が立って、いい匂いがしている。


「さ、どうぞどうぞー」


 小萌は鋼盾の背後に回り込むと、ズズイと降順の腰のあたりを押し出す。

 押されるがままに廊下を抜けると、そこは六疊程度の和室だった。

 日に焼けた畳、破れをいい加減に補修した襖、窓には障子、小萌先生には開けられないんじゃないかと思しき天袋、和式の鏡台。

 吊り下げ式の照明からはスイッチの紐が降りており、背の低い小萌先生でも操作できるよう紐が継がれている。

 極めつけはなんといってもコレだろう、あの星一徹が引っくり返したと聞く卓袱台である……初めて見た。


 そして、二人の人物。

 ひとりは、部屋の片隅に敷かれた布団に伏せる少女。

 もうひとりは、その傍らで座り込んでいる少年。


613 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/18(月) 20:48:11.45 ID:MRYZsji3o


「鋼盾っ!?」


 上条当麻とインデックス

 インデックスは眠っているようで反応がないが、上条は驚いた顔で腰を浮かしていた。


 昨日からずっと探していた二人の姿が、ここにあった

 思わず振り返ると、いたずらっぽく笑う小萌がウインクを投げてきた。


「さて鋼盾ちゃん、お約束のペナルティです。ちょーっと我が家の居候ズの面倒を見ていただきたいのです!
 先生は今日このあと、居酒屋はっちゃんにて夜の職員会議にでなければいけないのですよ」


 ……参った、もう笑うしかない。

 どうやら、最初から最後までこの人の掌の上だったようだ。


「ありがとうございます、先生」

「ふふ、ペナルティですから、“ありがとう”はおかしいのですよー。
 帰りは22時くらいになりますので、それまでよろしくおねがいします」


 小脇に抱えたお風呂セットに関してはノーコメント。

 似合い過ぎなひよこちゃんにもノーコメントだ。

 口吟んでいる昭和の名曲、『神田川』にもノーコメントを貫こう。


614 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/18(月) 20:50:19.62 ID:MRYZsji3o


 ごはん、作っておいたので食べてくださいねー言いおいて、小萌はトタタと部屋を出ていった。

 振り返ると上条と目が合う、なにがなんだかという顔をしているが、まあ、無事でなによりだ。


「ひさしぶり、といっても一日ちょっとぶりだけどね。
 んじゃ、詳しい話を聞かせてもらおうかな」

「あ、ああ……つっても一体どこから話したもんかな
 正直わけのわかんねえことだらけでさ」


 いろいろあったのだろう、鋼盾とは違い、上条は渦中ど真ん中に居たはずだ。

 中心に近いところにいる人間ほど己を客観視出来なくなる――渦に揉まれているのだから、それも当然だろう。

 鋼盾が幻想御手の件で視野狭窄に陥っていたように、上条もまた混乱の最中にあるようだ。


「ん、まずインデックスだけど、大丈夫なのかな? ……顔が赤いけど、風邪?」

「あー、一時は酷かったけど今は大分落ち着いてるな。
 副作用でしばらく風邪ににた症状がでるけど、2、3日で治るって聞いた」


 副作用――それは薬の? それとも――いや、今はいい。


「そっか、よかった。……多分、僕から話した方がわかりやすいだろうね。
 昨日上条くんが補習に言った後、インデックスが戻ってきたんだよ。フードを忘れたって言って。
 お腹がすいてたみたいだし、正直ほっとけなくてさ。家でご飯たべさせたんだ」

「おう、それは聞いた。
 “きくひこのシチューはおいしかったんだよ!”とかいってやがったな」


 ったくコイツはよー、と上条は眠っているインデックスを見て、小さく微笑む。

 頭の上に載せていたタオルの位置を整える手は、ひどく優しかった。

 共に死線を越えたせいか、幾分距離が縮まっているようで、鋼盾としても微笑ましい気分になる。
 
615 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/18(月) 20:54:08.04 ID:MRYZsji3o
 

「うん。あの子は追っ手とやらが上条くんの部屋に来ることを心配してた。
 ほっとけなくてさ、ウチなら安心だろって言いくるめて、あの子を部屋に留めておいたんだよね」

「ああ」

「外せない用事があって留守番してもらってたんだけど、帰ってきてみれば廊下は焼け焦げでインデックスは不在。
 ごめん、家を離れるべきじゃ、なかったね。
 上条くんに携帯をかけても一向に繋がらなくて、小萌先生に相談したらここに来るように言われて、今に至るって感じだね」


 携帯の件にようやく思い当たったようで、上条は頭を掻きながらポケットから携帯電話を取り出した。

 床に置かれたそれは見事にまっぷたつになっており、ディスプレイが完全に亡くなっている。


「……悪い、携帯はあの日の朝に壊しちまったんですよ。
 すまん、心配かけちまったな」

「あー、うん……しょうがない、上条くんならしょうがない」

「……すまん」


 上条当麻、タイミングがよくも悪くもクリティカル過ぎる。

 ……携帯、何代目だっけ? 家治? 家斉? 家慶?――そんな残酷な問いなど出来る訳がない。

 相も変わらずの神がかったファンタジスタだと鋼盾はため息を吐いた。

 そしてこの男、おそらくだが昨晩インデックスの言う“まともじゃない魔術師”相手に大金星を上げているはずだ。


「……俺の方は、補習が終わって寮に戻ってきたら、インデックスが廊下で血まみれで倒れてた。
 アイツのいう追っ手の仕業だ。正直信じてなかったけど、本当に魔法――いや、魔術を使ってやがったよ。
 俺たちの知る能力とは違う、インデックスのいう“魔術師”ってヤツが現れた」

「信じるよ……その人は、赤い髪でバーコードの刺青をしてたかい?」


 鋼盾の発言に目を見開く上条。

 脳裏に蘇る昨晩の記憶、炎の巨人の威容、右拳に残る感触。

 なぜ、鋼盾がそれを? 


「! 鋼盾!? お前、どうして!?」

「ん、ごめん。後で話すよ……続けて」


 小さく息を吐く。

 やはり彼、ステイル=マグヌスはインデックスを狙う魔術師だったようだ。

 小さく刺に刺されたような痛みを感じたが、大部分は納得だった。

 裏切りですらない――もとより、無関係のわけがなかったのだ。

616 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/18(月) 20:58:10.08 ID:MRYZsji3o


「あ、ああ。炎のバケモンみたいなのを操るとんでもねえヤツだったが、なんとか倒せた。廊下の水びたしは俺の仕業だ。
 でも、インデックスの傷がひどくて――アイツ、IDも持ってねえから救急車も呼べないし、正直途方に暮れちまってた。
 そしたら……インデックスが“回復魔術を使え”って言うんだよ」

 能力者に魔術は使えない、インデックスの言葉が脳裏に蘇る。

 ああ、なるほど。


「そっか、だから小萌先生のところに来たんだね。
 この街で能力開発を受けていない大人、しかもこんな厄介事を受け入れてくれる人なんて他にいない」


 まったく、小萌先生にはかなわない。

 何くわぬ顔で補習なんてやっておきながら、その前日に魔術に手を染めていたなんて。

 頭が下がる、どころの話ではない。

 鋼盾のみならず、ここでインデックスを、上条を救ってくれていたのだ。

 本当の本当に、僕らは担任に恵まれている。


「おいィィ! なんだよさっきから理解がはえーよ鋼盾! 受け入れすぎだろ! 助かるけど!
 なんなんだお前! アレか! 学園都市に秘密裏に紛れ込んだ魔術師だったりすんのか!?
 手からビーム出すのか! 出すんだな出すに決まってる三段活用!!! おのれ魔術師!!」


 なにやら友人のテンションがおかしい、ホントにそれ三段活用なのか?―――まあ、たしかに受け容れすぎかもしれない。

 こちらとしては昨日からいろいろ、そう、インデックスの件とかステイルの件とかいろいろあって、多少下地が出来てはいたのだ。

 自分でも思いの外冷静だったが、傍目からなら余計にそう見えるのかもしれない。


 しかし、僕が魔術師か。

 ああ、それはなかなか愉快な想像だ。

 むくむくと悪戯心が湧き上がってくるくらいには、ね。


617 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/18(月) 21:00:49.50 ID:MRYZsji3o





 
「ふっ、バレてしまったなら仕方ない。
 そのとおりだよ上条くん……いや、“幻想殺し”上条当麻!

 そうだね、とりあえず名乗っておこうか……僕の名は“Scutum800”――!」




618 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/18(月) 21:03:51.88 ID:MRYZsji3o


 とりあえずキメ顔で宣ってみる。

 数字は重複を避けるためのもので意味はないよ、そうステイルは言っていたっけ。

 ああ嘘八百。


「うええぇえぇぇぇえ!? マジ!? マジなのか鋼盾!!? 普通の高校生というのは世を忍ぶ仮の姿なのか!?
 実は科学・魔術の狭間で飛び回る二重スパイと見せかけた多重スパイで、無能力者なのは既に魔術をマスターしてるからなのか!?
 日本人だからアレか! 平安は安倍晴明の流れを汲むドーマンセーマン陰陽師だったりするのか!? 急々如律令!?
 そういやこの前すけすけみるみるで死にそうな顔してたし……能力開発で魔力が暴走しそうになってたのか!? やめろ鋼盾! 死ぬぞ!!」 


 ……えーと。

 なぜか唐突に脳裏に土御門元春の顔が浮かんだが無視する。

 そりゃないぜよ、とか言ってるけど無視する。

 4巻まで待てという謎の声も無視する。

 これを信じちゃうんだから、なかなか彼も追い詰められているようだ……反省。

619 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/18(月) 21:06:56.44 ID:MRYZsji3o


「ゴメン、冗談です……まさか信じるとは思わなかった。
 ……落ち着いて。いろいろあって過敏になってるのはわかるけど、慌てすぎ」

「……嘘、だと?」


 はい、嘘です。


「能力と魔術が相容れないっていうのは、インデックスとごはん食べてるときにいろいろ話しただけだよ。
 そしてすけすけみるみるは3時間もやらされたら誰だって死にたくなるよ……上条くんだって目が虚ろだっただろうに」

「……勘弁してくれよ鋼盾。……信じていいんだな、いいんだよな!?
 正直いろいろありすぎて上条さん結構ギリギリなんだよ……結局ここんとこずっとまともに寝てねえし」


 一昨日は明け方までなにやら立て込んでたらしいし、昨日はインデックスの看病にあたっていたとのことだ。

 戦闘もこなしたようだし、なにより非日常に放り込まれたストレスは相当だろう。

 かくいう鋼盾も体の芯に蟠るような疲労があることを自覚する。

 こっちもこっちでいろいろあったのだ。

 そう、例えば昨夜―――
 

「うん、ほんとゴメン。
 ついでにもうひとつあらかじめゴメン。
 あーー、多分もういっこ衝撃の事実だと思うんだけど、さ

 僕、そのインデックスと上条くんを襲った魔術師さんと」


 身構える上条。

 いやー、ごめん、その幻想殺しじゃ、悪いけど現実は殺せないよね。


620 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/18(月) 21:09:08.49 ID:MRYZsji3o



「 お 友 達 に な り ま し た 」

「鋼盾んんんんんんんん!!!????
 なにやってんだてめええええええええええ!!!!!!!!!」

621 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/18(月) 21:10:50.20 ID:MRYZsji3o






――――――――――


ここまで
とりあえず個人的な上条さん課題その2、三段活用クリア!

正直魔法名ネタはやり過ぎでしょうか。実はプロットも出来てない初期の段階では、鋼盾くん魔術師になるなんて案もあったり
いやー、駄作の臭いがプンプンしますね!!ラテン語辞書を片手に登場人物にオリジナル魔法名とか考えてた俺アイタタタ

やっぱこの3人揃うと嬉しいな、インデックス寝てるけどな
脇役みんなを掘り下げたいというのも>>1の本音ですが、このスレにおいてメインはどうしたってこの3人です
前者は物語を深めてくれるかもしれないけど、物語を走らせるのはやっぱり後者どもですね

あと原作でもアニメでもこのあたりの時期のインデックスが一番可愛いすね……思春期ちゃん?とかもうヤバイよね
あれを上回るのはペンデックスくらいのモノですよね


あと忘れてた土御門さんごめんなさい

622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/18(月) 21:51:00.06 ID:/Dj1rlW70
一乙です。
まあ、そりゃビックリするよね上条さん・・・wwww
アンケートの方はかっこいい駒場さんが見たいので1でお願いします。
623 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/18(月) 22:10:05.42 ID:MRYZsji3o
うおおおごめん落ちてた
あした会社いきたくねー

>>606−608  ビールと煙草の件サンクス!

NIPPORI 一生搾りw いちなま」か「いっしょう」かでだいぶ違うな、漫画版では頭文字A……アレイスタービール?
煙草はラークかハイライト!いいな! 質問スレでは缶ピースとかセブンスターなんて意見も。でもこれはフィルター白いかな?

ビールと煙草を嗜むロリ先生はお嫌いですか? >>1は大好きです。


さて、集計の結果ですが、@が9、Aが9、Bが5でした。>>622の滑り込み投票で同率一位だぜ!
みんなご協力感謝!付き合ってくれてありがとう、そもそも読んでくれてありがとう!

@どちらも好きなキャラですので嬉しい、こんな組み合わせもアリかと思いました
Aは流石の浜面姫神!やはり主人公&ヒロイン枠は強いな、姫神と滝壺って微妙に似てるよね
Bはマイナー過ぎたかなあ、でもコイツラも楽しそうだなぁ。10031号にも幸せになって欲しかったのさ

勘の良い方は気づいているかもですが、上記は第二部の妄想です。書けるかわからんのですけどね
お前そんなん現行完結させてからにしろよと思われるかと思いますが、最近油断するとこっちに妄想が行ってしまうのです。
ならばいっそみなさんを巻き込んでちょいと書いてみようかなあなんてのが今回の顛末。

自己満足で申し訳ない、でも、楽しかったです!いつか還元できるといいな
怒涛のマイナーカップリングで判るとおり、>>1はこんなヤツですが―――――――ついてこれるか”

マイナー路線を往く“とある端役の禁書再編”
このSSがこの先どうなるかはわかりませんが、精一杯頑張りますのでどうかよしなに。

それでは、また。
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/18(月) 23:04:19.67 ID:Tg4xWO2jo
>>621
魔法名はとある同盟SSでも同じ様なのあったなー
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/19(火) 04:31:08.17 ID:M2e660tAO
乙!
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/19(火) 11:51:25.15 ID:SOLwdXRIo

全部やってもいいのよ?
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/19(火) 14:17:55.26 ID:X4BH+f390
乙です。上条さんもギリギリなテンションだなぁ。
鋼盾くん魔術師案か。まあ確かに○○が魔術師だったら、とかってネタはやりたくなりますよね。

3はマイナーというけれど、横須賀さんはあの後もソギーに挑み続け、ついにすごパ10発までなら耐えられるようになったまさに根性の人なのよ。凄いのよ。
……考えてみれば、横須賀さんなら上条さんに勝てるのではなかろうか。
無能力者だから幻想殺し意味ないし、そげぶパンチが凄いパンチより威力あるとは思えんし。
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/19(火) 14:22:03.14 ID:9QbzZQhko
すごパ10発も耐えられるのかよすげぇなww
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/19(火) 15:10:45.27 ID:Y4Rw5kmDP
肉体強化レベル5と言われても驚かんな
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/19(火) 15:14:55.47 ID:M2e660tAO
ヤツが、第六位だと……!
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/19(火) 17:12:34.35 ID:bgpN2gTRo
すごパ×10とかなにそれこわい

いやマジでこわい
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/19(火) 17:40:43.44 ID:IhKXqOHt0
アレですか、戦車を一発でお釈迦にするバズーカを片手でですね
633 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/19(火) 20:39:03.51 ID:cnQbnRx1o
どうも>>1です。雨うぜーです。レス感謝です。

>>624
情報提供感謝、しらべてきました。あちら様のは『fibber800』で文字通りの「嘘八百」
すばらしいセンスですな。脱帽です。あやかりてぇ

鋼盾のは『Scutum800』ステイルに教わった「盾」のラテン語+嘘八百から「800」だけを持ってきた、と
よーーーし、死んで詫びろ。または改名しろ。新人が大御所とカブるとは何事か

というわけで

こ…………5     ひ…………1
お…………0     む…………6
じゅん……6(月)   ら…………0(love)

「そうだね、とりあえず名乗っておこうか……僕の名は“Scutum506”――!」

 うんまあよし! 言い訳がましいですが、ドラえもんのアレからの着想でした。失礼! 



>>627−632
ふ、ようやく世間が横須賀を知ったか……
俺が一番先に知ってたわ、二年前から知ってたわ、いや三年前だったかもだわー

うん、横須賀くん、意外と面白いキャラだと思うのですよ……じゃなきゃ主役はやれねえぜ!
凄みたっぷりの外見、もー、とか言っちゃうおちゃめ、モツ鍋という仇名、意外と潔いとこもあるし、無限の可能性を秘めた断末魔でオチ担当もこなせる
なにより>>627が指摘してくれたとおり、偽典での急成長っぷり――あるいはアレを能力の発露と見ることも出来るかも
ボケのソギー、ツッコミのヤブミー、いじられのモッツン……このトリオはなかなかアリだと>>1は思ってます

あ、そうそう、
おこがましいけど横須賀さんの名前を考えてあるのでみなさんに意見を聞きたい

1、横須賀 保 …… よこすか たモツ

2、横須賀 無蔵 …… よこすか むさし(ないぞう)

3、横須賀・ビブルチ・プルギュワ …… よこすか びるぶち ぷるぎゅわ

どれも自信作です、3は日系三世設定がもれなく付いてきます
あ、新しく考えてくれても勿論オーケーですので

よろしく!
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 20:50:37.69 ID:Yws/Wo57o
横須賀 彫紋……よこすか ほるもん
横須賀 象斧……よこすか ぞうふ
横須賀 祓絖……よこすか はらわた


…新しく考えたけどいまいちやね。
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/07/19(火) 21:10:52.88 ID:8R3/U5VMo
あえての3でwww
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/19(火) 21:32:12.64 ID:2qV1luPP0
あえて名前を決めずやって見るのもありじゃないかと……
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/19(火) 22:31:53.48 ID:p9YZY952P
読み仮名はともかく名前は流石に勝手に決めない方が良いような気がする
多少変な言い回しになっても横須賀は横須賀で通せば誰も突っ込まないさ
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/19(火) 22:34:00.77 ID:M2e660tAO
1
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/19(火) 22:47:58.99 ID:M9w+kecPo
作内で使いやしないだろ3番なんてどうすんだよ殴られて吹っ飛ぶたびにミドルネーム名乗るような人になっちゃうぞしかもお前カタカナだとビブルチなのにひらがなだとびるぶちなんだぞww
俺的には彼の本名は 横浜 横須賀 だね!
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/19(火) 22:52:44.02 ID:8qklFPfno
>>639
アンタ、あの娘のなんなのさ
南野陽子 横浜 横須賀ー
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 23:10:53.05 ID:Yws/Wo57o
武琉浦愛 横須賀(ぶるうらいと よこすか) 
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/19(火) 23:12:34.22 ID:YkVtNyvv0
女体化しようが半オリキャラ化しようがキョンは結局キョンと呼ぶのが望ましいとかなんとか
横須賀もしかりじゃね?
643 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/19(火) 23:29:55.75 ID:cnQbnRx1o
>1です。
ちょいと懺悔、お目汚し失礼。

横須賀名前ネタのあたりはちょいふざけすぎましたね……反省
結局は>>637>>642の書き込みが真理でしょう

皆さんのレスが嬉しすぎて最近ちょっと小ネタに走ってしまっていました

このスレで>>1のやるべきはなにより鋼盾くんの物語を紡ぐこと
忘れてはいないつもりでしたが、寄り道の楽しさに浮かれてました
これでは本末転倒です、ご不快な思いをされた方がいらっしゃったら申し訳ない

レスに応えてくださった皆様、ありがとうございました
もちろんみなさんはこれからもガンガン好きなようにコメントお願いします!!
>>639の横浜横須賀なんて最高です! >>634>>641もたまんねーぜオイ

みんな懐深いんだもん、甘えちゃったぜ
みっともない>>1ですみません


さて、この場を借りて皆様へ、今後の展開についてひとつ注意喚起を

>>1にて「いまのところ恋愛要素は考えていません」という一文がありますが
ちょいとばかりあさっての方向に筆が走り、どうやらそうもいかなくなってしまいました

といっても片恋程度で、とてもカップリングと言えるようなものではありません
×じゃなくて、→ですね。 少しばかり鋼盾くんの淡い恋心めいた描写が出てまいります

ウチの鋼盾くんは、少なからずオリキャラ的な要素を含みます。
>>1としてはオリキャラを誰かとくっつけるような真似は避けたいというのが本音です
まあ、誰に強要するわけでもないモノで、所謂「俺ルール」というやつですね
今後もそのスタンスは変わらないと思いますが、でも、どうしようもなく書きたくなってしまいました。

おそらく次の次の投下が件のシーンとなります
薄味でしょうが、ヘタレな>>1の精一杯です
本編への影響は極力排し、読み飛ばしても問題ないよう努めますのでご安心を

よろしければ、是非
よろしくなければ、それもまたよし

それでは、次回もよろしくお願い致します。
長文失礼致しました
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/19(火) 23:54:20.70 ID:RhzHgnM80
なるほど 鋼盾→ステイルか…
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 00:00:32.51 ID:8o9b7zCAO
ふむ 鋼盾→上条か
俺得
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 00:44:26.88 ID:dYqvAq/0o
鋼盾×スキルアウトだろjk
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 09:03:41.27 ID:9GvJlJFG0
偏光さんかww
あの人けっこう濃いのに名無しでEDではトリックって書かれてたんだよね
んでなぜかいじめられモブが鋼盾掬彦なんて立派な名前なんだよな

間違いない
浜面並の再登場フラグだ
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2011/07/20(水) 11:22:13.95 ID:WFk3VVx00
―――ほほう
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/20(水) 11:29:08.37 ID:Z4Ry+UN10
上条→鋼盾→ステイルとか俺得すぎる
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/07/20(水) 12:07:47.78 ID:x3nDmbhAO
鋼盾→ねーちん しか見えないんだよ。
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 12:30:38.07 ID:9GvJlJFG0
黒子→美琴→上条→吹寄→鋼盾→ねーちん→ステイル→インデックス

悪ィな、オマエらの想いは一方通行だァ
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 12:54:22.83 ID:3BhyRlLto
インデックス→黒子

これでおk
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 18:14:24.27 ID:8o9b7zCAO
思い人が黒子というのはあり
あの場面じゃ惚れる
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 19:31:58.46 ID:cUZo/IFEo
>>652
バターになるんですね、わかります。
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 23:17:39.89 ID:Qc3HgySJ0
鋼盾が変なボケを振ったせいで、天使堕としで土御門が正体を明かした時に「いやいやなんだ鋼盾に続いてお前もかよ土御門いくら上条さんでも2度は騙されませんよ」とか言ってなかなか信じない上条さん、とかってのを思いついた。
が、考えてみれば順当にいけばこの後上条さんは記憶を失っちゃうのか。
鋼盾くんを通して、記憶を失う前の上条さんの魅力が凄い表現されてるから、できれば失わないでほしいなぁ。
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 23:55:12.03 ID:BHaItbjKP
記憶破壊されても鋼盾くんには即バレの予感
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 09:30:42.54 ID:F0oFg/gjo
上条さんの記憶が破壊されない場合の問題ってあるかな
最初は正直、記憶喪失設定意味ねーな、作者2巻でると思ってなかったんだろーなと思ってたけど
記憶喪失だからこそ、唯一の理由であるインデックスへの想いが深くなったり、
もういないかつての己の存在あってこそ、2代目はあんなに強くあれたのかなーとか

初代上条さんって二代目とちょい違うよなー
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/21(木) 14:17:18.43 ID:FQpVc+kAO
むしろ鋼盾の記憶喪失が怖い

アイツ盾になりそう
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/21(木) 16:26:20.34 ID:aRICJC2q0
ネタバレやめなさい
660 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/07/22(金) 07:59:56.16 ID:Q5u04iVZo
あ、>>1です
レス感謝、できたら土日中に一本投下したいのですが、遅れるかも

>>644−654
ふふふ、鋼盾→ステイルが貼られるであろうことは読んでたぜ……!
自分ならそう書き込むだろうな……と思ってたらドンピシャ!染まってきたなー

つーか、ねーちん→ステイル、ステイル×神裂は意外と悪くないと思うんだ。あのふたりのニコイチ感は異常
インデックスは娘ポジでいいじゃない。でもアレあのふたり、一巻以降絡んでない?

>>655−659
もうラストは書いちゃったので、お楽しみに。
一応ネタバレを避けるべく、多くは語らずにおきたいところ。
と言っても、あまり展開の妙で魅せる芸風じゃないんで関係ないかなー
じゃあ>>1の芸風ってなんなんだろう……スキマ産業?

上条さん初代と2代目は基本的に同一人物だけど、2代目の方が箍が外れているイメージ
「インデックスを捨て身で守ったかつての己=上条当麻」という認識が根底にあるからなのか、
えらく自己犠牲的なところがあるし、非日常への忌避意識も弱い感じ。口調とかも微妙に違うし
右手に幻想殺しと名前を付けたのは、厨二な上条さんなのか……それとも?

まあ、ぶっちゃけまだキャラが固まってなかっただけな気もするけどなー


あと
あんま甘いのは期待しないでくださいね
661 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/07/22(金) 08:05:32.10 ID:Q5u04iVZo
下げれてなかった
死にたい
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/22(金) 11:44:30.61 ID:Xy6p/gYDO
待ってる! eはドンマイwww
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/22(金) 14:57:39.50 ID:LoQMNiGoo
待つてる
ステイルと神裂はパートナーというより仕事仲間と言ったほうがしっくりくるかな
主に見た目年齢のせい…ゲフンゲフン
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/22(金) 20:05:57.51 ID:ZZzwEKQAO
>>1の芸風…なんだろ
マイナーカップリングの伝道師?
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/22(金) 22:28:08.19 ID:GHpqpn0f0
>>640
クソ、鋼盾→ステイル 予想されてたか
まぁ、このスレは長い事読ませてもらってるから
確かに染まってきたかも
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/22(金) 22:29:17.70 ID:GHpqpn0f0
安価、>>640じゃなくて>>660だった 
あと、待ってる
667 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/22(金) 22:39:35.05 ID:Q5u04iVZo
なんかノリノリで書けた
というより、ノリノリ過ぎてやたらと長くなったので2分割で前半を投下します
こないだ言った鋼盾→○○回は次次回になりますね、よろしくです

>>640
いつもありがとうです
染まってきたなー、は>>1がここの掲示板のノリに染まってきたなーという意味なんだぜ!
でもいつかはみなさんを染められるようになりたいものです! お前らを鋼盾ファンにしてやろうかああああ

んでは、推敲して投下します。
668 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/22(金) 22:52:05.88 ID:Q5u04iVZo




――――――――――



「あー、違うよ、煮魚はこっちの皿だって」

「えー、別にこっちでもいいだろ鋼盾? 皿で味が変わるわけでもないんだし」

「……結構こういうとこいい加減だよね上条くんは。見た目は大事だよ……せっかくいろいろお皿があるのに」

「むう。……しかし充実してるな食器棚。……先生一人暮らしなのに。
 ……これはまさか、男の影!?……いや、それはねえな、昨日の惨状じゃ」

「……お茶碗6つに揃いの塗り箸、どでかいホットプレートに土鍋、すき焼き鍋、カセットコンロ……かき氷器まで……。
 どっちかっていうと僕らみたいな来客のための備えって感じだね。先生らし……ああ!取り皿はそっち! 野菜炒めが映えるよ」

「……鋼盾おまえ、なんかオカンっぽいぞ」


 狭いキッチンに男が二人。

 小萌が用意してくれた夕食は、炊飯器にたっぷりのごはん、じゃがいもとワカメの味噌汁、鰯の煮付けに野菜炒め。

 シンプルながら実にバランスのとれた、なつかしい日本の晩ごはん的な内容だった。

 自炊に慣れている鋼盾と上条はテキパキと準備を進めていたが、盛りつけの段になって少し意見が分かれた。

 皿のサイズしか見ていない上条に、鋼盾からダメ出しが入ったのだ。
 

「こだわるなー鋼盾、俺らみたいな男子高校生だったら見た目なんて二の次だろうに」

「僕だって一人だったら別にこだわんないけど。
 インデックスやきみと一緒の食卓だからね……せっかくの先生の気遣いだし」

「……そういうとこえらいよな、お前。まあ、先生にゃ感謝しなきゃなー」


 インデックスを治してくれたこと

 ふたりに宿を提供してくれたこと

 鋼盾をここに連れてきてくれたこと

 料理を用意してくれたこと

 ここで席を外し、話し合う時間を作ってくれたこと

 月詠小萌のそんな心配りには、感謝の言葉もない


「よし、準備完了、……運ぼうか」

「あいよー」


 例の卓袱台に皿を並べてゆく。

 三人分の料理でいっぱいいっぱいの狭い食卓。

 丸い卓袱台に人は三角――鋼盾、上条、そしてインデックスの三人だ。

669 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/22(金) 22:53:30.94 ID:Q5u04iVZo




 先の上条の絶叫で、彼女は目を醒ました。

 寝惚け眼から一転、鋼盾の姿を認めると、少女は泣きながら謝り続けた。

 勝手に外に出てごめんなさい、心配させてごめんなさい、迷惑かけてごめんなさい。

 謝り続ける彼女を上条と二人で宥めすかして、なんとか落ち着かせるまで30分近くかかってしまった。


 ようやく夕食。

 時刻は20時を回っており、すこしばかり遅くなってしまったが、ようやくだ。

 インデックスは未だ赤い目をしているものの、だいぶ落ち着いてくれたようだった。


「おまたせ」

「インデックスー、ごはんどんくらい盛るよ?
 ……昼くらいは食えそうか?」


 野菜炒めの大皿を運ぶ鋼盾と、しゃもじ片手にごはんをよそう上条。

 インデックスは、少し辛そうに笑う。


「ん、ごめんね。 
 ちょっと今は、あまり食べられないかも」


 昨日の健啖っぷりを思うと、よほど体調がよくないのだろう

 上条は軽めにご飯を茶碗半分ほどよそってみせた。


「あー、まだ体調戻ってねえんだったな、無理すんなよ」

「治ったらインデックスの好きなものを食べよう?
 ……なんか、食べたいものあるかな?」


670 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/22(金) 22:54:29.91 ID:Q5u04iVZo


 好きな食べ物、と聞かれて目をぱちくりさせるインデックス。

 そんなこと、考えたこともないとでも言いたげな表情に、鋼盾はインデックスの歩んできた道の一端を知った気がした。

 インデックスはほんのしばらく迷っていたようだったが、直ぐにふわりと笑顔になる。

 彼女の好きな食べ物、それは。


「きくひこの、シチューがたべたい、かも」

「……そっか、じゃあ、はやく元気にならないとね。
 次は人参とか、もっといろいろ入れようか」

「ああ、上条さんも御相伴に預かりたいもんだ。
 ……今日はもう寝ちまってもいいんだぞ、インデックス」

「……や。ふたりともっと、一緒にお話したいんだよ」


 インデックスは卓袱台にしがみつく様に身体を寄せ、両手を合わせる――それは鋼盾の教えた、いただきますの姿勢。

 ふと上条を見ると、インデックスに倣って既に手を合わせている。ウインクするな気持ち悪い。

 どうやら号令は鋼盾の仕事らしかった。

 オカンっぽい、かあ、……いいけどさ、別に。


671 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/22(金) 22:55:40.38 ID:Q5u04iVZo

「んじゃ、せーの」

「「「いただきます!」」」


 3人揃って唱和する。

 いつの間にやらチームワークがよくなったものだと、初対面のドタバタを思い出す。

 あの時否定した魔術に絡め取られ、鋼盾はここにいる。

 魔術、魔法結社、十字教の裏の顔、英国清教、羅馬正教、露国成教、そして、10万3000冊の魔導書――禁書目録。

 正直設定用語集が欲しいところだ。



 インデックス

 あからさまな偽名と違和感を覚えたのも今は昔。

 すっかり舌に馴染んでしまったその呼称、しかしそれはIndex-Librorum-Prohibitorumなる不吉な名前の一端だ。

 禁書目録。表の意味としては、16世紀から20世紀の半ばまで十字教組織によって作成された「とある書物」のリストのこと。

 冒涜的・非道徳的な内容の書物、信徒の信仰を揺るがす可能性を孕んだ書物、それら“禁書”をまとめた物だと辞書にはあった。

 たいした話じゃない、歴史を紐解けば検閲も発禁もよくあることで―――十字教に限ったことではない。


 だが、それは世界の表側においての話。

 魔導書なる物が存在するらしいこの世界の裏側において――禁書目録の名は、何を意味する?


672 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/22(金) 22:58:20.24 ID:Q5u04iVZo


「……きくひこ、どうしたの?」


 思考に没頭していた鋼盾を、心配そうに見つめるインデックス。

 また、やってしまった。慌てて取り繕う。


「ん、なんでもないよ。
 インデックス、この魚、なんだかわかる?」

「むむ、わかんないんだよ」

「すまん鋼盾、俺もわからん」

「おい日本人……大衆魚様だぞ貧乏学生……まったく、これはね」


 食後には、きちんとこれまでのこと、これからのことを話し合わなければならない。

 きっと、鋼盾も上条も、ことによるとインデックスも、いろいろ覚悟を決めなくちゃならなくなる。


 小萌の料理に下鼓を打ちつつ、鋼盾は小さく震えた。

 自分たちの座る畳の下に奈落が広がっているようなイメージが脳裏を走り抜ける。

 
 予感がある。

 きっと、この平穏はジェンガのように危ういバランスの産物だ、と。


 だけど、それに気づかぬフリをして鋼盾は笑った。

 せめて今は談笑を、歓談を、穏やかな食卓を。

 再会を祝う喜びの一時を。



 3人の食卓は笑顔で満たされていた。

 ――誰もが胸中に不安を抱えながらも、たしかに。





――――――――――

673 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/22(金) 23:08:35.71 ID:Q5u04iVZo




ここまで
あからさまな伏線って恥ずかしい

土用の丑の日はスーパーの試食コーナーで済ませてしまった>>1でした
鰻なんかよりみんなのコメントの方が100倍元気をくれるぜ!といいつつ素麺など啜ってます。

ああ、ちょっとお願いが
だれかインデックスの喉に刻まれた首輪の画像とかってもってない?
そのシーンに手をつけてるんだけど、見つけられずに困ってます、ヘルプミー!
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/22(金) 23:21:09.75 ID:LoQMNiGoo

画像はごめん持ってないや

鋼盾はこれから先の展開にどう関わっていくのか…
この二人とここまで親密でいるってことはもう一巻の表舞台とは
無関係では済まされないとは思うんだけど、
鋼盾君の(主な?)舞台は超電磁砲なわけだし
一巻が終わっても鋼盾の成長の物語は終わりじゃないのか

長文・予想厨でサーセンwwwwwwwwww
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/22(金) 23:48:24.73 ID:8zUtyg4ao
iPhoneだからアップに手間取った…
見れるかなこれ?
http://img.iscot.in/d/4146b0bf8b2a9372/275/1.png
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/22(金) 23:51:26.96 ID:8zUtyg4ao
上手く行ったみたいです
動画だとルーンの周りに黒いもやもやが漂ってる感じです
連投失礼
677 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/22(金) 23:59:37.85 ID:Q5u04iVZo
>>675
おおおサンクス!
なんて言えばいいんだこの記号……数字の4と2を組み合わせたような?
十字架に何かを付け足したような?ううん、難しい!

とにかくありがとうございます!


>>674
長文も展開予想も大歓迎です!
今後もよろしくお願いします



下鼓→舌鼓 _| ̄|○
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/23(土) 10:56:56.86 ID:f39X35tdo
>>677
その記号にはちゃんと名前があって言うなれば「ディエモンフラントの約束」っつーんだけど神話が元になってるよ
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/23(土) 14:39:54.27 ID:oDnUi/IDO
煮角を食卓に出したり、味噌汁にジャガイモを入れる人とは結婚できないよね。
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/23(土) 15:06:51.06 ID:kaike4fTo
煮角……角煮の事か?

ジャガイモもサツマイモもサトイモも味噌汁に入れますサーセン
いや一緒には入れないけど
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/23(土) 15:46:21.68 ID:im1qF/SAO
味噌は強いもん!
何入れたって死なないんだよ!
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/23(土) 17:27:30.58 ID:fVTT0xgHo
は?じゃがいもといんげん豆の味噌汁最高だろうが
683 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/23(土) 18:01:27.51 ID:iyPbCvX2o
>>678
 「ディエモンフラントの約束」……おお、なんとも曰くありげな
 いろいろ検索してみたがみつけられなかった……面倒でなければ詳細求む!
 インデックスに薀蓄を語らせてあげたいぜ!!

 横スクロールアクションゲームの「デーモンフロント」は関係ないよね
 あと「ディエゴブラントーの約束」にも見えた、関係ねえな

>>679−682
 (やべええ、味噌汁の話題なんて荒れるに決まってんじゃねえか仙臺味噌一択どうにか話題をそらさないと!)
 なーなーおまえらちょっとききたいんだけど、きのことたけのこどっち……嘘です。すいませんです

 今日の>>1の味噌汁はベーコンとミョウガ!
 邪道と嗤いたくば嗤え!無粋にこそ粋を見出すのが俺のジャスティス!


 ちょっと落書きしてみた
 おまえら、これをどう思う?

 http://2sen.dip.jp/cgi-bin/upgun/up1/source/up60657.jpg
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/23(土) 18:07:21.76 ID:ApGIwNQv0
>>683
前から思っていたけど、鋼鉄くんってどっかの芸能人に似ているよね。
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/23(土) 18:59:30.75 ID:5S1/9Ja8o
>>683
すごく・・・老け顔です・・・
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/23(土) 19:05:05.81 ID:aiwpYEHro
>>683
その組み合わせに気づくとは…やはりマイナーカップリングの伝道師か…

687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/24(日) 00:34:21.92 ID:G14D0NzI0
>>683
かわいそうなくらい浮いてるなwww
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 00:52:59.12 ID:ocwUa1vAO
本音透けてんぞ仙台人ww

赤だしが至高
689 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/24(日) 10:41:10.18 ID:F3nLS9Iu0
>>684
ああ、若き日のビートルズを彷彿とさせるな

>>685 >>687
老け顔なのも浮いてるのも>>1の画力の乏しさ故です!
あれだよね、禁書には小太りさん成分が足りない!

投下します
じゃがいもの味噌汁うめえええ
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 10:43:15.90 ID:4BKOwCg3o
待つてたよう
691 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/24(日) 10:44:20.37 ID:F3nLS9Iu0

――――――――――




「記憶喪失……か」


 夕食のあと、洗い物を買ってでた上条は、インデックスに「今朝のアレ鋼盾にも言ってみな、アイツ結構恥ずかしい台詞言うから」と言い残していった。

 本日最大の“お前が言うな”である。恥ずかし臭い台詞を言わせたら右に出るものがいない上条にだけは言われたくない。

 マジ、お前が言うな、いや、ほんとに。

 
 もじもじと口篭っていたインデックスの頭を軽く撫で、先を促す。

 途端に堰を切る言葉の奔流、少女の裡に溜め込まれていた暗く重い濁流。

 告白は、確かになかなかハードではあった。

 
 十字教の闇

 第零聖堂区

 必要悪の教会

 ネセサリウス

 毒壺たる魔道書

 原典と写本

 完全記憶能力

 宗教防壁

 教会の備品

 禁書目録

 魔人

 覚醒


 
 荒唐無稽なファンタジーとは最早言うまい、世界の裏側は気恥ずかしくなるほどリアルにファンタジーだった。

 ……いやまあ、向こうの住人も学園都市の人間には言われたくないだろう。

 ショッカー、ゴルゴムを笑うなかれ。


 インデックスの語る素敵設定の数々を、鋼盾は黙って飲み込む。

 すべて、信じようとそう決めていた。

 もう何ひとつ疑わない、何でも来いである。

 余裕だ。<恐怖の大王>だろうが<神々の黄昏>だろうが〈黙示の日〉だろうが、なんだって飲み干してやろうと思う。


692 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/24(日) 10:47:33.94 ID:F3nLS9Iu0
 しかし、ただひとつ、どうしても飲み下せない事実があった。

 インデックスが、なんでもないことのように、言った言葉。


「わたしには、一年以上前の、記憶がないから」


 記憶がない、らしい。

 それは紛れもなく驚愕の事実だったが、しかし正直なところ納得のゆく事実でもあった。


 知識は溢れているのに、どこか実の欠けたようなアンバランスな会話

 気を許してからの鋼盾や上条への尋常とは思えぬほど懐きぶり


 インデックスという少女

 彼女に感じる名状しがたい危うさ、ズレ、純粋さ、その理由は。


 全生活史健忘(Generalized Amnesia)


 あまりにも大きな忘れ物

 自己の紛失

 見知らぬ街

 寄る辺なき孤独

 己を追う魔術師の襲撃

 重く圧し掛かる魔道書


 身体は“歩く教会”が守ってくれたのだろう、傷ひとつなかった。

 だが、心は?
 
693 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/24(日) 10:48:22.84 ID:F3nLS9Iu0
 

「どうしたのきくひこ……? なんか怒ってる?」

「怒ってないよ」


 嘘だった、鋼盾掬彦は怒っている。

 相手はインデックスではないけれど。


「むむ、やっぱり怒ってるかも………思春期ちゃん?」

「―――インデックス」


 ああ、やっぱり上条のように上手い台詞は言えないけど。

 せめてまっすぐ彼女の目を見て、鋼盾は告げた。


「つらかったね……大丈夫、もうだいじょうぶだよ。
 歩く教会は上条くんが壊しちゃったけど、代わりに僕らが君を守る。
 きみはもう、なにひとつなくさなくていい」」

「………………………………ぅ……ふぇ」


 氷が溶けるように、インデックスの目から涙が落ちる。

 涙は女の武器というが、彼女のそれは女の涙じゃなかった。無論男のそれでもない。

 己の性別を知る前の幼子の、呆れるほどに無防備極まりない、涙。


 インデックスは、鋼盾がそこにいることを確かめるように、手を伸ばしてくる。

 触れれば静電気が走るとでも言わんばかりに、おっかなびっくり躊躇いながら、ようやく鋼盾の肩に触れ、


 次の瞬間。

 鋼盾の胸にインデックスが身体ごと飛び込んできた。
 
 鳩尾に入って軽く悶絶しそうになったのは、秘密だ。




――――――――

694 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/24(日) 10:49:37.88 ID:F3nLS9Iu0



「……おつかれさん。
 ホント泣いたなぁ、ったくコイツ今日は泣きっぱなしだ」

「なんたって一年分だからね、まだまだ、足りないくらいだよ」


 泣き疲れて眠ってしまったインデックスを布団へと運ぶと、丁度のタイミングで上条が麦茶を持ってきた。

 思えば洗い物の音は随分前から止んでいた。インデックスが心のままに涙できるよう、気を遣ってくれたのだろう。


「そうだな……一年だ。
 異国でひとりぼっちで、わけもわからず逃げ続ける一年間…………想像もしたくねぇよ」

「…………うん」



 記憶喪失の恐怖

 襲撃者の恐怖

 魔道書の恐怖

 己が宿命への恐怖

 未来への恐怖

 孤独であることの恐怖


「こわかった」「こわかった」「こわかった」

 嗚咽交じりに何度も繰り返された「こわかった」に鋼盾はインデックスの頭を撫で、大丈夫と囁くことしかできなかった。

 上条なら、小萌ならもっとうまくやっただろうなとも思う。

 まったく、情けない。



 上条の用意してくれた麦茶を一口。

 ふう、と息を吐き、ようやく己が緊張していたことを知った。

 鋼盾が一息ついて落ち着いたのを見計らい、上条が口を開く。


「……てなわけで、てなわけなんだが」

「てなわけ、ねえ」


 てなわけ、のひとことで語るには状況がアレ過ぎる気もした。

 どんなわけだよ。


695 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/24(日) 10:51:58.57 ID:F3nLS9Iu0


「まあ、とりあえず情報をまとめよう、あー、ごはんの前のあの話の続きから行こうか。
 ステイル……君たちを襲った魔術師と、僕についての話から」

「―――友達に、なったって言ってたな……どういうことだよ鋼盾」


 上条にしてみればステイル=マグヌスは己を殺そうとし、インデックスを足蹴にした憎き魔術師。

 その男を親友が“友達”と呼ぶのだから心中穏やかではない。


「上条くんたちがこっちに逃げてくるのと入れ違いに僕は帰宅したみたいだけど、
 廊下に彼が倒れてるのを見つけてね、家に運んで介抱したんだよ。魔術師かも知れないっては思ったんだけどね。
 その時に、彼といろいろ話をした。――紳士的だったよ? ホントに」


 自己嫌悪と自己否定で雁字搦めになっていた鋼盾を、掬い出してくれたステイル=マグヌス。

 あの赤髪で強面で、しかし優しい燈台守に、鋼盾は深く感謝している。

 上条の語る冷酷無慈悲な魔術師とやらと、未だにイメージが全く重ならないのだ。

 魔術師の顔と神父の顔――どちらが本物なのだろうか。

 あるいは、どちらも?


「ってもなー、鋼盾おまえ、ちょっとお人よしがすぎるんじゃねーか?
 ……上条さんは心配ですのことよー?」


 ……うわあ、この野郎。

 さっきの訂正。本日最大の“お前が言うな”またも更新である。

 正真正銘の本物が何を言ってやがるのか。

 まあ、それは置いといて。


「……彼はインデックスを狙う魔術師――本人がそういったんだね?」

「……ああ、インデックスの持つ魔道書の危険性についてベラベラ抜かしたあと、
 “コレ”は僕らが保護すべきだよ、とか抜かしてやがったけな」

「保護、ね」


 上条の口振りだと、インデックスを我が物にしようとする思い上がった選民気取りといった風だ。

 非魔法使いと書いてマグルとか読んでそうな嫌な野郎だったぜと、上条はイライラを隠すように頭をかいた。

 保護。それはいかにもといった台詞ではあるが……もし、言葉通りの意味だったとしたら?


696 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/24(日) 10:52:55.81 ID:F3nLS9Iu0


 鋼盾にはひとつ、とても大きな疑問があった

 それはインデックスとステイルの共通点………魔術の徒、敬虔な十字教徒、そしてもうひとつ


「そのステイルなんだけど、さ。
 生粋のイギリス人でロンドンの神学校に通う学生って言ってたよ
 見せてもらったゲストIDにもそう書いてあった。」

「イギリス……、ちょっとまて、インデックスの所属は……」

「そう、イギリス清教は『必要悪の教会』だったね。
 そして、断言はできないけどステイルも英国清教の人間だ」


 二人は同じ宗教の信奉者だ。

 同じ聖書を見て、同じ神に祈りを捧げる、イギリス清教の敬虔たる信者である。


「ちょっと待てよ鋼盾!
 ……アイツが嘘吐いてたり、そのIDが偽物って可能性もあるだろ!?」

「うん、もっともだね。
 でも、まず僕のような赤の他人に嘘を吐くメリットはない。
 IDが偽物っていうのも……この街のセキュリティを考えるとね」


 本物は別にあり、鋼盾に見せたものはダミーという可能性も0ではない。

 しかしやはり鋼盾に対して彼が嘘を吐く理由がどこにもないのだ。


「それは……そうだけど
 つうか同じイギリスってだけじゃねーか! 対立する組織があったっておかしくないよな?」

「そう、きみのいうとおり、イギリス清教が一枚岩ではない可能性があるんだ。
 そんなところにインデックスを預けるには、ちょっとばかり不安だね。
 ――――あの子をイギリス清教の教会に送り届けて、それでめでたしってわけにはいかないかも」

「……インデックスを狙う魔術師にまんまと渡しちまう可能性があるってことか。
 くそ、確かにそれは否定できねえな」


 そう、それじゃあダメなんだ。

 いや、そもそも前提からして違う。

 インデックスを、彼女が所属する『必要悪の教会』に引き渡すことが正しいのかすら怪しい。

 なぜなら。


「そもそも、インデックスの身内の組織が迎えに来ないのがおかしいんだ。
 1年も音沙汰なし。歩く教会を作った連中なら、当然サーチもできるだろうに」

「インデックスの価値は絶大……なのに、迎えが来ない。
 あの赤髪とその仲間達がインデックスに近づく連中を始末してるとか……そういうことじゃないのか?」

「インデックスの所属はイギリス清教の直轄機関なんだよ? よくわからないけど、優秀な魔術師がいないなんて有り得ないと思う。
 ステイルが上条くんのいう“敵対組織”の人間だとして、それ相手に本家本元が遅れをとるとはちょっと思えない。
 やっぱり、おかしいよ。……僕らが、いや、インデックスが知らないなにかがあるんだ」

「なるほど……うーん、わかんねえな」


 そう、インデックスが禁書目録であるならば、当然『必要悪の教会』とやらが回収任務に赴いている筈。

 とっくに回収されてなくてはおかしいのだ。ステイルたちがどれだけ優秀だとしても、一年間も均衡は保てまい。

 しかし現状インデックスは逃げ続けている。

 どう考えても異常だ。

697 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/24(日) 10:56:59.04 ID:F3nLS9Iu0


「それに……僕はさ、上条くん。
 ――インデックスが禁書目録なんて役目を背負ってるのは、あの子がそれをよしとしてるからだと思ってた。
 自己犠牲っていうのかな、信仰の形のひとつとして、そういう生き方を選んだんだと思ってた。
 だから、それを否定することはできないと思ってた。」


 信仰、それは学園都市の子どもにはあまりにも遠い遠い言葉

 触れること、手を伸ばすことすら憚られた

 だが


「―――だけど、あの子は記憶喪失だった。
 気付いたら異国にひとりほっぽリ出されて、わけもわからず追われてきたんだ。望んで地獄にいたわけじゃ、なかった。
 あるいは10万3000冊を背負ったのはかつての彼女の意思だったのかもしれないけど――でもそんなことは、今のあの子には全然関係のない話だよ」


“Dedicatus545”――献身的な子羊は強者の知識を守る

 それは、少女が朗々と名乗った魔法名。

 ステイルと話した今ならわかる、その短い言葉にどれほどの覚悟が篭められていたのかを。


 それは魂の名前、それは刻印、それは神聖な命名火。

 献身の仔羊、供犠たる自負、誉れ高き人身御供―――それは吾身を擲って神に仕える聖女たらんとする宣誓。


 だが―――その誓いを立てたのは、今のあの子じゃない。

 上条と鋼盾、そして当のインデックスすら知らぬ、記憶を喪う前のインデックスだ。

 今ここにいる少女とは、関係ない。


 記憶を喪った少女は、それでもその誓いに沿わねばならないのか

 記憶を喪った少女は、それでもその信仰を揺るすことはないのか

 記憶を喪った少女は、それでも禁書目録であらねばならないのか

698 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/24(日) 10:58:46.49 ID:F3nLS9Iu0



「……鋼盾、お前」

「あの子は囚われている。イギリスに、教会に、魔道書に。
 それが覚悟あってのことなら他人が口を挟んでいいことじゃない。
 ―――でも、違う。違うんだよ、違うだろう!!」


 気に入らない。

 鋼盾掬彦はその理不尽を許せない。

 認められない。

 腹が立つ。


「上条くん――僕らにとって、この子はなんだ?
 魔術師? 10万3000冊の魔導図書館? イギリス清教の最終兵器?」

「……そうじゃねえ ああ、そうじゃねえよ、わかってる。
 コイツは食いしん坊で、泣き虫で、意地っ張りで、ちょっと記憶力のいいだけの

 ―――ただの、普通の女の子だ」


 上条当麻は知っている、鋼盾掬彦は知っている。

 インデックスの笑顔を、怒り顔を、泣き顔を、くるくる変わるその表情を知っている。

 男2人、馬鹿みたいに見惚れてしまったのだ。

699 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/24(日) 11:04:21.05 ID:F3nLS9Iu0


「ぼくらの、勝利条件、
なんだと思うよ、上条くん」


適当に丸めて放り投げただけの、大雑把な問い。

 だが大丈夫

 問えば応える、打てば響く

 上条当麻はそういうヤツだ

 なぜなら、彼は


「決まってる、インデックスを笑顔にすることだ。
 これから先も、ずっと笑顔でいられるようにすることだろ」


 上条当麻は間違えない、ヒーローはいつだって歩むべき道を間違えない。

 期待通り、期待以上の答えを聞いて、鋼盾は笑みを浮かべた。


700 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/24(日) 11:08:58.11 ID:F3nLS9Iu0


 わからない事だらけの現状。

 自分たちは無力な高校生に過ぎず、敵は一国の闇そのもの。

 それでも、上条と鋼盾は戦うと決めた。


 報酬は少女の笑顔。

 それで十分だと、少年たちは笑った。

 それが向こう見ずな強がりでも、かまわなかった。








 結局、彼らは気付かなかった。


 布団の中、可愛らしいパジャマを纏うインデックスがいつの間にか、背中を向けている事に

 眠りに落ちたはずの少女の顔が、見たこともないほど真っ赤に染まっている事に

 その目尻から、熱い熱い涙が流れている事に。


 
――――――――

701 : ◆FzAyW.Rdbg :2011/07/24(日) 11:15:06.19 ID:F3nLS9Iu0

ここまで。700レス感謝
なかなか恥ずかしい、でも書きたかったシーンです。てなわけで、男2人なんかカッコつけてます。
ちょっとインさんおとなし泣き虫過ぎたかな……明日からは元気ですのでご安心を。

献身的な仔羊は強者の知識を守る
その誓いは果たしてインデックスのものなのか、それはもう名前すら忘れられてしまった少女の誓いではないのか。

信仰も覚悟も強さも目的意識も、記憶喪失の少女からは零れ落ちなかった。
だが、それは―――或いは『首輪』によって植えられたものだったのでは……と、これは考えすぎでしょうか
記憶すべて喪った彼女にとって、縋るものはそれこそ信仰しかなかったのかも

まあ、そんな感じで。


以前に総合に投下した「背中刺す刃と献身的な仔羊」どなたか覚えてるでしょうか
実はこのインデックス云々のシーン、↑で書きたかったものなのです。もう諦めたけどな!

幼き日の土御門が出会った銀色の髪の女の子。
後に「禁書目録」の銘を与えられる事となる彼女の名は[禁則事項です]

安全措置として定期的に記憶を奪われ続ける、その道に人としての幸せはない。
最大主教のその言葉に微笑みながら、“Dedicatus545”と揺るがぬ誓いを立てた彼女に、土御門元春は聖女を見た
異国の神など紙切れのようなモノ、折り紙を玩びながら嘯いていた黒髪の少年は、この日、イギリス清教の門を叩く。

土御門元春の初恋の少女は、もうどこにもいない。
上条当麻の隣で笑っているインデックスをぼんやりと見つめ、金髪の青年は小さく笑う

あの日の彼女の誓いだけが、今も世界を守り続けている。
彼の行く道を、照らし出してくれている。

なんちゃって
誰か書いてくれ陰陽目録
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 11:54:57.90 ID:V1+kC8VIO
乙〜
なんという熱い男…このスレでは鋼盾さんとお呼びしなくてはいけないような気がする
というかこの会話をインデックスに聞かれてたとか恥ずかしすぎてこの二人自殺しちゃうんじゃないだろうかw
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 11:57:33.86 ID:4BKOwCg3o

記憶喪失って重いよな
土御門話も書いてもいいのよ?
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 12:00:37.03 ID:sLLGDfB20
乙です。
うん、鋼盾くん。
上条さんがザ・ベストであることは疑う余地ないが、アンタも大概あれだぜ。
しかしインデックスは魔性の女だよなぁ。
ステイルにねーちんにヘタ錬に、そして上条さんと鋼盾くんと、出会った人物をことごとく堕としてるもんなぁ。

陰陽目録は、総合の時にも色々突っ込まれてたけど、やっぱり土御門のキャラ造詣が難しいんですよね。
一人の少女の涙と世界の安定を天秤にかけたら、後者を選ぶのが多重スパイつっちーの在り方だろうし。
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 16:40:36.15 ID:c+c7I5JUo
>>683
ディエモryは適当に行っただけだからでるわけねーよごめん
706 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/24(日) 19:21:18.37 ID:F3nLS9Iuo

>>705
 釣 ら れ た だ と ……!?
 ……いいもん、緊迫した場面でネタにしてやるんだから!!

鋼盾 「インデックス! 魔術をマスターした僕の必殺技を喰らえ!!」

禁書 「──警告、第五章第二一節。
    侵入者駆除に対して、最も有効な魔術の組み合わせに成功しました。
    これより、特定魔術『ディエモンフラントの約束』を発動。侵入者を破壊します」

神裂 「……そんな!あれは……『ディエモンフラントの約束』!?」

上条 「知っているのか雷電!」

 嘘ですチクショウ。
 うああ、やられたぜ!

>>702-704
 まったく恥ずかしい奴らです。
 鋼盾くん、ついこないだまで幻想御手で鬱鬱してたのにな

 どうですかねこんな主人公
 よろしければ今後もお付き合いください
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/24(日) 20:31:05.80 ID:aoMGgqxZ0
>>704陰陽目録

インデックスを助けるために、世界のバランスを崩しかねない危険なことをする
→そのツケがインデックス本人に回り、結局は助けられない
→そんなことを繰り返さないために、スパイとして感情を[ピーーー]道に走る

みたいなヒューマンストーリーがあってもいいじゃないか
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 21:02:46.98 ID:ocwUa1vAO
乙。

いいコンビだな
知力と体力はよし
足りないのは時の運 、てなことになりませんように

陰陽目録シリアスはキツいだろうな、ほのぼのならどうかね
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/24(日) 21:50:22.05 ID:6EWd+mHCo
>>706
インデックスの喉のアレは木星のシンボルマークじゃないかと思う
なんで使われてるのかとかはさっぱりだけど
というか自分もディエモ(ryに釣られて半端な知識で余計な事言わない方がいいかと黙ってたww
710 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/24(日) 22:27:58.23 ID:F3nLS9Iuo
>>709 俺はひとりじゃなかったw おお、ほんとだ!木星のマークなのか!
     どっかで見たことあると思ったらセーラームーンの木星お姉さんの額だよ!
     当時小学校低学年とかだったかなあ

     木星の環を首輪とかけた、ってのは無理やりかなー
     太陽系最大の大きさを持つ木星を禁書目録に準えたとか いろいろ妄想できるな―
     誰か解釈を思いついたら教えてください、本編で使いたいです。

        
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/24(日) 22:47:55.95 ID:EvHgdz1Vo
木星の衛星が天動説を覆す要因になってるんで木星自体が禁書みたいなもんって考え方とか。
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/24(日) 23:40:43.53 ID:bSdtuNGMo
ああああぁぁぁそっかー木星かぁぁ
星座のシンボルとかルーン文字にばっかり気を取られてセーラー戦士を忘れてたー
ディエモなんとかとか紛らわせやがってくそぅw
うわーめっちゃスッキリした…画像うpしてからずっと気になってたのよなーどっかで見たなーって
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 00:08:48.89 ID:oZrKTF8Ko
ユーピテルの落雷、鷲、ゼウスの頭文字「Z」……いろいろ曰くのある言葉だな
木星の象徴、木星のマーク、木星を示す字、木星字、木字、もくじ……目次!?、インデックス!!!

な  ぞ  は  す  べ  て  と  け  た !!!!!!
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/25(月) 12:03:25.65 ID:9dRQthJto
つまりシュークリーム大好きって事なんだよ!
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 15:02:37.64 ID:o335PfFAO
しゅーくりーむさんだぁ
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/25(月) 15:07:11.11 ID:cYFLwlVHo
まこっちゃんの変身シーンでは毎回お世話になりました
というか年齢層高いなー
717 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/25(月) 19:41:22.65 ID:orYje2rAo
釣られたのは俺だけではなかったようだなーww
こんな所で釣り糸を垂らすなんて、お客さん、あんた本物だね……

あと、歳の話はしないでおこうぜー
ここではみんな対等ということで、お若い方もそうでないかたもよろしければ読んでってください
あ、>>1のセンスが古いとかネタが古いとか、ありましたら是非

陰陽目録は個人的にすげえ見たいんだよなー潜在的な需要は高いと思うし絶対面白いと思うンだよ
ローラアウレステイル神裂上条さんあたり絡めると妄想が光る雲を突き抜けファーラウェイ

上条さんと舞夏がいろいろあって死亡後の“土御門インデックス復讐の魔人ルート”で、能力者も人間もやめた土御門EXモードと自動書記支配したコワレインデックスとか
ほのぼのなら上禁&春夏前提の、おとなりさん同士でのベランダトーク(相方が留守がち同盟)、“その壁を超えるのはあなた?ルート”とかおまえら書けよ>>1は鋼盾書くから

次の更新はアレです
鋼盾くんの秘めた想い的なものを書きたいと思います
誰得?俺得です

んでは、書いてきますね

718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 21:43:53.67 ID:FB/zXp6x0
ちくしょうお前らが何言ってんのかわかんねーよ俺を置いてくなよ
とりあえず鋼盾君がセーラージュピターに変身するってことでFA?
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 21:56:47.40 ID:rb9YXT+No
キモいわwwwwww
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/25(月) 22:32:04.78 ID:AsZGEEQTo
>>718
それがアレか…
その想いは…秘めたままにして欲しいな
721 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/26(火) 07:17:49.41 ID:MxbrgrkWo
木星さん役は電撃つながりで美琴に……はい無理ですねそうですね理由なんて言えませんね
昨晩更新するつもりがうっかり寝落ちてました…お酒のみながら書くからだよ

なんかすげー長くなったので導入部のみ今投下
続きは今晩か、もしくは明日くらいに

それでは





722 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/26(火) 07:20:28.65 ID:MxbrgrkWo



「ただいまーなのですよやろうどもー!」


 22時ジャスト、家主たる月詠小萌が帰ってきた。

 濡れた髪を夜気に晒して、ノーメイクの肌を珠のように輝かせて。

 やたらめったらハイテンションで。


「おかえりなさい先生――酔ってますね?」

「職員会議でしたのでー」


 ふふふーと笑いながら、小萌はテキパキとお風呂セットを片付ける。

 鋼盾と上条が麦茶を飲んでいるのを見ると、ニコニコ笑いながら麦茶のポットとビールの350ml缶を取り出してきた。


 小萌は鋼盾と上条のグラスに麦茶を継ぎ足すと、缶ビールのプルタブを跳ね上げた。

 NIPPORI一生絞りの文字が眩しい――幼女にビール、なかなかに犯罪的だ。


723 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/26(火) 07:25:30.29 ID:MxbrgrkWo


「シスターちゃんがおやすみですので小さな声で……かんぱーい」

「「……かんぱーい」」


 酔っぱらいに乾杯の理由を訪ねてはならない。

 即座に鋼盾上条はアイコンタクトをとると、麦茶を飲み干した。

 それを受けて小萌もぐびぐびと喉をならす。缶の角度が65°を超えた辺りで、ようやく一休みのようだ。


「ふいぃーーーーーー!!」


 ふいぃーーて、かわいいなこのひとはもう。

 横を見ると上条も同じような事を考えているようで、笑みをうかべていた。

 ビールでようやく人心地ついたようで、微笑みながら小萌は喋り出した。

 酒を飲んでも教師である、鋼盾に課題の終了を言い渡す。


「今日はご苦労様でした鋼盾ちゃん。ペナルティはこれにてクリアーです。
 まあ、とはいえ鋼盾ちゃんがまた手伝いたいというのなら、喜んでお願いするのですよー」

「はい、先生がよければ、明日も来ていいですか?」

「ふふ、もちろんなのですよー」


 上条は、昨日同様インデックスと共に泊まってゆくことになっている。

 完全に襲撃者に割れている学生寮に戻ることはできない、鋼盾も泊まらせてもらえと上条はいうのだが、小萌宅に4人というのは物理的にキツいだろう。

 いやまあ、倫理的には既にアレな気はするのだが。

 つうか一体どう寝てやがるのか「川」の字、いや「小」の字なのか、どうなんだ。

724 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/26(火) 07:26:27.00 ID:MxbrgrkWo


 この小萌宅が、襲撃者にバレている可能性もなくはない。

 その点を考えれば、今すぐ小萌宅を辞し、上条か鋼盾の部屋で籠城というのが一番妥当かもしれない。

 だが、インデックスや上条の精神的な負担を鑑みれば、大人である小萌がそばにいてくれる現状は非常にありがたいと鋼盾は思う。

 彼女の体調が万全に戻るまでは、厚かましいけど小萌に甘えてしまおうと話し合った。

 そのあとのことはそのあとで考えよう、と、結論を棚上げしてしまった感はあるものの現状まだまだ材料が少なすぎた。


 徹底できてない、鋼盾はそう思う。

 中途半端という意味だ。


 例えば、今日の帰り道、魔術師が鋼盾の誘拐を試みたら―――それだけで、自分たちは詰む。

 安全面から鑑みて、せめて3人で固まっているべきだとは思う。

 鋼盾の家に引きこもるか、小萌の家に厄介になるか、どちらにしろ離れるべきではない。

 だが、現実に直面すると楽な方に流されてしまっている己がいる。

 
 インデックスの笑顔を守ると言いながら、言い訳だらけ。

 なんて、無様。


 なにより問題なのがこの判断にあたって、ステイルへの根拠のない信頼があるのを否定できないこと。

 彼と敵対していることを、頭で分かっていても納得できていないのだ。

 この騒動における「敵」をきちんとイメージできていない。

 
 魔術師との戦闘において、まったく役に立たない無力な己。

 能力もなければ腕力もない、今更それを嘆くことはしないが、ならばせめて頭を使わなければならない。

 情報を集め、疑問を突き詰め、仮説を立て、状況を把握し、策を練り――――あわよくば一発逆転の目を探す。

 そのためにも甘えは消さねばならないのに、情けなくもこのザマだった。


725 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/26(火) 07:28:00.36 ID:MxbrgrkWo


「ん?どうしたのです鋼盾ちゃん? ちょっと難しい顔をしてるのですよ?」

「……なんでもないです。別に先生とビールの組み合わせが犯罪っぽいだなんて思ってませんよ」

「むーーーー! 鋼盾ちゃん! 先生は立派な大人なんですからね! まったく、3人とも先生をナメ過ぎなのです!」


 ……このひとが優しすぎるのがいけない、この家は居心地が良すぎるのだ。

 ぷんぷん怒りながらビールを飲み干す月詠小萌に、百の感謝と恨み言。


「……そろそろ行くよ。
 ああ、上条くん着替えとかどうする? 取ってこようか?」

「あー、すなんな頼む鋼盾。
 タンスから適当に2日分くらい持ってきてくれ。
 ん、コレ、鍵な」

「ん……じゃあ先生、今日は一旦失礼します。
 今日はほんとうに、ありがとうございました」

「どういたしましてー。
 じゃあ鋼盾ちゃん、そこまで送らせてもらうのですよー」


 鋼盾といっしょに立ち上がる小萌。

 予想外の対応に驚く鋼盾。


「いいですよわざわざそんなの」

「いいからいいから、見送らせて欲しいのです!
 ……実は今のでビールをきらしちゃったのですよ、もう一本だけすぐそこの自販機で!」

「……あー、コンビニじゃ売ってくれないんですね」

「もう!」


726 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/26(火) 07:30:23.99 ID:MxbrgrkWo


 上条に別れを告げ、インデックスの寝顔をちょっと眺めて。

 鋼盾は小萌と連れ立って外へ出る。


 時代がかったアパートの照明は頼りなく、階段は小さく軋んで音を立てた。

 昼ほどではないが、蟠るような暑さは健在だった。


「えーと、先生のいう自販機ってどこにあるんでしたっけ?」


 住人の大半が学生を占めるこの街において、酒・煙草類の自販機というのはなかなか見かけない。

 需要の低さ、なにより犯罪防止の観点から見れば、まあ当然のことだろう。

 銭湯とかアミューズメントパークとか、その手の施設に見られる程度で、路上で見ることは皆無といってよいのだが、どこにあるのか。

 鋼盾の少し先を歩いていた小萌は、背を向けたまま鋼盾に言葉を返す。


「……ごめんなさい鋼盾ちゃん、先生嘘つきました。
 実はビール、まだまだいっぱいあるのですよ。……具体的には押入れに5ダースほど」

「……えーと?」


 目をぱちくりさせる鋼盾。

 わざわざそんな嘘をついてまで、どうして?

 鋼盾の疑問に答えるでもなく、小萌は小さく微笑んだ。


「さて、と鋼盾ちゃん
 ―――ちょーっと付き合っていただけますか?」


 くるりとステップを踏むように、振り返る小萌。

 下校途中の女子小学生のような彼女は、しかし鋼盾らの担任教師。


 ……どうやら“ペナルティ”には続きがあったようだ。

 小萌と目が合うと、彼女は悪戯っぽい顔で、こんなセリフを口にした。

727 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/26(火) 07:43:13.60 ID:MxbrgrkWo




「デートのお誘い、なのですよー」


728 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/26(火) 07:44:41.76 ID:MxbrgrkWo



 思考回路はショート寸前

 だって純情どうしよう



 アニメにでてくる美少女戦士さながら、完全無欠で問答無用なウインクを添えて
 
 まるで月の光のように、月詠小萌は笑った






――――――――――

729 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/26(火) 08:02:29.93 ID:MxbrgrkWo
moonlightならぬmoonwrite、月詠小萌先生でした
若いお客さんには通じない小ネタかもしれませんね

セーラームーン……ネタにしといてなんだけど、ストーリーが欠片も思い出せない
なんか悪の秘密結社があって、怪人がいて……アレ?、仮面ライダーとかと同じじゃね?

スラムダンク、忍空、幽白、パプワくん、どっきりドクター、少年アシベ、翔べ!イサミ、アリスSOS、ムーミン、ダイの大冒険
ジーンダイバー、ナノセイバー、ドラゴンボール、きんぎょ注意報、とんでブーリン、るろうに剣心、つよししっかりしなさい
金田一少年、中華一番、魔法陣グルグル、ラッキーマン、こどちゃ、GS美神……いかん、朝っぱらから涙出てきた


んじゃまた!
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/26(火) 08:29:58.35 ID:MIlPNHAUo
おい!朝から哀愁誘いやがって!!!
仕事する気が無くなったじゃねーか!!

ワタル、グランゾート、スレイヤーズ、レイアース、赤チャ、ナディア…(´;ω;`)
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/26(火) 08:52:52.14 ID:E4Xb83/AO

絵面が凄く犯罪的なのは黙っておこう

ジーンダイバーがあるのに恐竜惑星がないのは何事かと
あとアリスSOSとかさ
……あれは今思い出しても対象が大きなお友達としか思えないな
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 09:09:52.18 ID:2zptcQRqo
俺ともろ被りじゃねーか>>1wwwwwwなんだこのシンクロ率wwwwww

>>731
俺が見始めた頃には恐竜惑星終わってジーンダイバーやってた
加速で「空気が重くなる」事を弱点にしてたのは衝撃的だったな
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 09:22:09.31 ID:Yhs2z5k9o

なんだお前ロリコンだったのか
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/26(火) 10:20:09.35 ID:RbXA/uBqo
24って見えるから24時間禁書目録を管理するって意味だと思ってる。
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 11:10:55.25 ID:gR+9l+3AO

同世代と見た!
ぼのぼの クマのプーたろう 鬼太郎

24って?
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/26(火) 11:51:20.40 ID:MIlPNHAUo
>>735
だいぶ遅レスだけど禁書の首輪の文字(>>675)が24に見えるってこと
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 12:07:06.61 ID:gR+9l+3AO
>>736
Thanks納得した

この流れは小萌センセーヒロインでいいんよね?
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 21:31:16.20 ID:sUoEcadIO
哀愁に駆られてヒトカラ懐歌アニソン限定やってきた
喉が痛いです…
739 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/26(火) 21:31:28.19 ID:MxbrgrkWo
うおおお、やべえ「齢の話はしないでおこうぜ」とか言っておいて舌の根も乾かぬ内に
同世代ホイホイを設置してしまったようだ……自重自重。でも懐かしアニメの話は楽しいよな
アリスSOSは入ってるぜ!恐竜惑星は見てた!ヒロインが所謂“萌え”の紀元という噂は本当なんかな?

木星のあたりの話は魔術的にも面白いな捏造は難しいけどやれたらやる
24時間ってコンビニかw あなたとコンビニ ヨハネンマート!

今日は投下無理っぽいけど近いうちに!
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/27(水) 02:30:42.38 ID:0btXCnBho
>>739
仕事もねぇ
学校もねぇ
寒くもねぇ
下着もねぇ

ネクタイ締めて
舞ってます
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 17:23:54.38 ID:QZEh0FCAO
おら 学園都市さ いくだ
742 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 17:59:07.05 ID:GLMsUb2Ko
今晩投下します
己を追い込む予告age!
743 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:14:59.83 ID:GLMsUb2Ko

――――――――――



 デートといってもなんのことはない。

 導かれるまま向かった先は、小萌宅にほど近い小さな公園。


 教師と生徒、ひどく唐突な二者面談。

 内容は成績でも進路でもなさそうだけれど。


「……あー、夜の職員会議はどうでしたか、先生」

「いいお湯加減でした……ふふ、隣どうぞー?……とと」

「……結構ガチで酔ってますね」


 ベンチにふたり、並んで腰掛ける。

 夏の夜、冴えない男子高校生と、見た目小学生の高校教師。

 傍目には一体どう映るのだろうかという疑問は、考えないでおくことにする。 

 
「……シスターちゃんと、上条ちゃんはどうでしたか」

「インデックスは体調が悪いみたいですが、ちゃんと快方には向かってますね。
 上条くんもしんどそうではありますけど……あいつの場合、心配しても無駄ですから。
 先生のおかげです。あの二人のこと、本当にありがとうございました」

「いえ、当たり前のことをしただけですよー」


 本当になんでもないことのように彼女は言う。
 
 まったくもって僕らは担任に恵まれている。


 ―――それなのに、自分のこの様はなんなのだろう。

 親身になってくれるこの優しい先生に、なにひとつ応えることの出来ぬ己はなんなのだろう。


744 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:16:09.87 ID:GLMsUb2Ko


「ところで、鋼盾ちゃん。
 ……先生になにか言わなくちゃいけないこと、あるんじゃないですか?」


 伝えることのできない事実


「……えーと、“晩ご飯、ごちそうさまでした”?」

「鋼盾ちゃん」


 誤魔化す事しかできぬ現実


「……“とっても美味しかったです”?」

「鋼盾ちゃーん」


 あまりに情けない己の行実


「……“先生、いいお嫁さんになれますよ”?」

「 鋼 盾 ち ゃ ん 」


 結局小萌に押し付ける不実 


「“先生がなにをおっしゃりたいのか、よくわかりません”
 ……本当にすみません。先生」

「…………ふん、いーですよーだ。
 正直、先生もよくわかりませんから」


745 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:17:39.10 ID:GLMsUb2Ko


 拗ねたように目を伏せて、小萌は一旦引いてくれた。

 ちょっと失礼しますね、と言い、手元のポーチからなにやら取り出す彼女。


 それは煙草のパッケージ。


 かの女スパイが吸ってそうな細くて長い奴じゃない、いかにも働くオジサンの吸っていそうな感じの無骨なデザイン。

 部屋に鎮座していた大きな灰皿から、薄々予想はしていたものの、どうやらこの見た目幼女先生……


「吸うんですね、煙草」

「んん、先生は大人のオンナですのでー。
 嗜む程度には、ね」


 安っぽい百円ライターが生んだ火が静かに煙草の先端を焦がすと、夜空へと糸のようにゆるゆると煙が棚引く。

 鋼盾はなんとはなしに煙の行方を追う――煙草なんて、学園都市でまじめに学生をしている身ではほとんど縁がないもののひとつだ。

 喫煙年齢に達している者の絶対数が少ない上、病的なまでの徹底分煙と高機能の空気清浄機によって副流煙にさらされる機会すらない。

 
 煙は踊る。

 縺れて捩れて緩み解け空へと融ける―ー人の願いにも似たその儚さに、鋼盾はしばし見蕩れた。


 饒舌な煙

 心地よい沈黙

 ……ほどなくして煙が途切れ、対を為すように沈黙も途切れた。


746 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:20:06.37 ID:GLMsUb2Ko


「ふふ、鋼盾ちゃん? 
 煙草を吸う女性は、お嫌いですかー?」


 からかうような声。

 意外な台詞に虚を突かれ、鋼盾は思わずそちらを見やる。

 フィルターまで吸いきった煙草を弄びながら、小首を傾げた月詠小萌が悪戯っぽく笑っていた。


 艶然

 月詠小萌から一番遠いところにありそうな、そんな言葉が頭に浮かぶ


 濡れて光る洗い髪が、薄く赤らんだ頬が、軽く伏せられた瞳が、煙草を挟んだ指先が、紫煙を燻らしていた唇が。

 ほんの十秒前までプール帰りの小学生女子だったくせに、今そこにいるのはたおやかな大人の女性。


 ――ずるい。

 ああ、これは、ずるい。

 得体の知れぬ感情を誤魔化すように、鋼盾は軽口を叩く。


「どうでしょうかね ……補導されちゃますよ、先生」

「ふふ、ちょーっと反論できないですね。
 家や学校以外で吸うなんて、普段はこんなこと、しないのですよ?」


 可愛らしい携帯灰皿に煙草を押しつけ、蓋を閉める。

 そんな所作すら艷めいて見えるのは、はたして夜の魔法か、それとも?

 見た目小学生の担任教師にドギマギする鋼盾に、小萌のからかうような声が襲う。


747 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:22:22.74 ID:GLMsUb2Ko


「……吸ってみますか? 鋼盾ちゃん?」


 うっすらと媚を孕んだような、悪戯な響き。

 それは、普段の月詠小萌――小萌先生であれば、絶対に口にしない類の言葉だ。

 いつもだったら“ニコチンやタールは子どもの成長に悪影響を及ぼすのですっ!! 未成年の喫煙はダメなのですよー!!”なのに。

 ……ああ、そうか、いつも通りじゃないのは当たり前だ――このひともまた、非日常に足を踏み入れてしまっているのだ。


 魔術、人あらざる業。

 インデックスを癒したのは、他ならぬ彼女なのだから。


 あからさまな致命傷を、得体の知れない奇跡で打ち払うその異常

 生半可な宗教体験では太刀打ちできない、鮮烈かつ意味不明な黄金体験
 

 流血沙汰に刀傷、正体不明の英国美少女。

 魔術なんて訳の分からないものに巻き込まれ、えげつない聖杯の秘跡の片棒を担がされ、半ば共犯者にされられた。

 そして、あきらかに異常な状況に巻き込まれているのに、事情を話そうとしない馬鹿な教え子がふたり、だ。

 頭が痛いだろう、もしかしてヤケ酒の類だったのかもしれない。

 
(………怪しげな都市伝説を信じて、騙されて、傷こさえてくるようなバカもいるし)


 胸が、痛い。

 罪悪感に心が傾いでゆく。

 でも。

 それでも。

748 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:24:26.70 ID:GLMsUb2Ko


「……だめですよ、先生。
 先生は、先生なんですから」

「そうでしたー。
 ふふふ、先生は、先生でしたねー。
 そして鋼盾ちゃんは、わたしの大切な生徒さんなのですよー。
 かわいいかわいい教え子ちゃんなのですねー」

「はいはいはいはい」

「はいは一回!なのですよー!」

「はーい」

「よくできましたー」


 ままごとめいた遣り取り。

 鋼盾の頭をわしゃわしゃと小萌が撫でる。

 共に座っているから常の身長差は薄れ、ひどく距離が近い。

 でも、遠い。


 教師と生徒

 大人と子ども

 おろおろと見守る貴女と、心配をかけるばかりの無力な己

 年齢差なんて考えたくもない


 蟠る距離

 もう彼女の背が伸びることはなさそうだけど、いつか鋼盾が大人になれば、この距離が縮まったりするのだろうか。

 頭を撫でられながらそんなことを考えている己を笑いつつ、鋼盾は言葉を探す。

749 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:25:49.81 ID:GLMsUb2Ko


「今は、ガキですから無理ですけど――――でも、そうですね」


 せめて、未来で

 今ではないいつか、ここではないどこかで


 一緒にお酒を選んで

 互いのグラスを満たしあって

 慎ましく杯の淵を合わせて

 同じライターから火を分け合って

 二人の間で煙を混ぜるような


 不安をごまかすためのお酒ではなく

 溜息を隠すための煙草ではなく


 ただただ幸せなお酒と煙草を

 一緒に


 そんな、夢を見てもいいだろうか。

 例え叶わずとも、思い描いてもよいだろうか。


750 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:27:46.23 ID:GLMsUb2Ko


「……僕が二十歳になったら、一番最初に先生のところに行きます。
 そのときはお酒と煙草、教えてくれますか?」

「うーん、どうしましょうかねー
 お酒はともかく……煙草なんて、吸わない方がいいのですよー?」


 すげない返事、大人の対応。

 まったく、ずるい。

 ずるい。


「……今、吸ってみますかっていったじゃないですか」

「少年の日の冒険と、大人の逃避じゃ違うのですよー」


 そういって、またも煙草に火を点ける小萌。

 逃避といいつつ、しかし彼女は逃げることなどしない。

 辛抱強く、我慢強く、いつだって真っ直ぐに問題に取り組むのが彼女だ。

 誰よりそれを知る鋼盾は、煙が消えるまで小萌の横顔を見つめる。

 そうして煙草がその役目を終えた時、伏せられていた小萌の目が開き、まっすぐに鋼盾を見据えた。


 震える唇。

 零れる言の葉。



「………先生じゃ、頼りになりませんか?」


751 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:30:52.96 ID:GLMsUb2Ko

 ああ。

 言わせてしまった。

 こんな台詞を言わせてしまった。


 鋼盾も、上条も、インデックスもだ。

 小萌に甘えてばかり、頼ってばかり、逃げてばかりでなにひとつ返していない。

 彼女の信頼に、厚意に、献身に、ただのひとつも応えていない。


「まさか――先生ほど頼りになる人なんて、僕は他に知りません。
 先生以上のひとなんて、いない」


 それは、告白。

 鋼盾掬彦は、月詠小萌以上の人間など知らない。

 うちの担任は世界一だと、ぶっちゃけ本気で信じている。


 あの日、己の無力を嘆く鋼盾のために泣いてくれたひと

 幻想御手に縋ろうとして裏切られた鋼盾に、手を差し伸べてくれたひと

 今、非日常に巻き込まれた自分たちのために、惜しげもなく居場所を整えてくれたひと


 能力の有無、強弱ではない――そんなもの、どうでもいい。

 鋼の盾たらんと願った鋼盾掬彦が目指したもの。

 鋼のようにしなやかで、盾のようにように傷つくことを厭わぬ者。


 そんな人間を、彼は知っていた。

 ほかの誰でもない、月詠小萌、だ。


 
 それは尊敬、それは憧憬、それは畏怖

 そして――それは、恋慕


752 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:32:52.38 ID:GLMsUb2Ko


 想いは募る、音も立てずに。

 胸を焦がす狂熱を突如自覚し、しかし鋼盾はそれを必死で抑え込む。

 それは、けして悟られてはいけない願望。

 己の分を知れ学園都市最下位。


「――だけど、だからこそ巻き込めない。
 二人を家に置いてもらっておいて、さんざん巻き込んどいて言えるセリフじゃないですけど。
 先生だから、先生だけは、絶対に、これ以上は巻き込めないです」


 毛ほどの価値すらない、男の意地。バカの覚悟。無能力者の遠吠え。

 吠えろ、喚け、格好付けろ、幼い幻想と笑わば笑え―――でも、この人だけは、先生だけは、貴女だけは巻き込めない。

 実力の伴わない矜恃など、無様以外の何者でもないと知りつつ、しかし譲れぬ願いがここにある。


「……はぁ、しょーがないですね」


 呆れたような小萌の溜息。

 しかし、そこには隠しきれぬ微笑みが混じっていた。


「やっぱり男の子ですねー、鋼盾ちゃん。もちろん、上条ちゃんも。
 二人して同じようなセリフを言っちゃうあたり、まったく困ったものです」


 困ったものです、そんなセリフをこんなに優しく紡げる人間など他に居るまい。

 葛藤も焦燥も心配も何もかも、全てを呑み込んで小萌は言葉を紡ぐ。


「―――わかりました。
 上条ちゃんだけでも、鋼盾ちゃんだけでもダメですけど、ふたりでだったら大丈夫なのです。
 シスターちゃんを、助けてあげてください」


 インデックス。

 銀髪碧眼の修道女、降って湧いた非日常の象徴、この学園都市に溶け込まぬ異邦人。

 彼女を助けてあげなさい、そう月詠小萌は口にした。

753 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:36:38.10 ID:GLMsUb2Ko


「先生は、教壇に立ってそれなりになりますし、未熟ながら心理学を勉強中の身でもあります。
 いろいろな問題を抱えた子たちを見てきたつもりなのですが――あんな目をした子は初めてでした」


 インデックスのあの目。

 色濃い絶望と疲労、信仰の光と自負が同居するあの瞳。

 殉教者の眼、旅往く聖女の視座、深淵を映す魔法の鏡。


「あの子が背負っているものを、先生は知りません。
 結局、聞きだすことは叶いませんでした――先生じゃ、踏み込めないのです。
 でも、上条ちゃんとじゃれ合っているとき、鋼盾ちゃんのお話をしている時のシスターちゃんの目は、違いました」


 そう、その荘厳で酷薄な仮面の向こうには。

 歳相応の少女の顔があると自分たちは知っている。


「あんな優しい子が救われないなんて、許せません、認めません。
 掬い上げて見せてください、鋼盾ちゃん。シスターちゃんを助けてあげてください。
 あなたの隣には上条ちゃんがいます、そして勿論、先生もついていますよ」


 ああ、それは百万の援軍だ。

 そうだ、今自分が考えなければいけないことはひとつだけ。

 インデックスの笑顔を守る、ただ、それだけ。

 それだけでいい。


754 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:38:17.06 ID:GLMsUb2Ko


「……先生」

「はい」

「あしたからも、よろしくおねがいします」

「……はい、こちらこそ。よろしくおねがいしますね。
 ああ、もうこんな時間ですね……帰り道、気を付けてくださいね、鋼盾ちゃん」


 おもむろにベンチから立ち上がり、トタトタと歩いてゆく小萌。

 ベンチに一番近い街灯の照らす範囲から抜けると、彼女は唐突に振り返った。

 少女のような、重さを感じさせぬステップ。


 夜闇と逆光で小萌の顔は見えない。

 見えないが、何故か彼女が微笑んでいると知れた。


755 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:39:20.77 ID:GLMsUb2Ko




「ふふ、20才の誕生日、ですか、―――ずいぶん先ですけど、忘れないでくださいね。
 それまで、煙草とお酒はお預けですからねー」


756 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:40:30.06 ID:GLMsUb2Ko


 それだけ言うと、返事も待たずに歩き去ってゆく小さなシルエット。

 小萌の言葉に惚けていた鋼盾は、慌ててその背に言葉を投げる。


「……っ、絶対、忘れません!
 忘れませんから!!」


 猿猴捉月。

 無様な猿と嗤いたくば嗤えばいい、だが、月に手を伸ばして溺れるのはいつだって人間だ。

 月に憧れたことのない人間などいない――誰だって幼い頃に月を求めて手を伸ばし、届かぬことを嘆いた筈だ。

 
 神の位階、天上の意思? 

 そんなもの、おまえらが勝手に目指していればいい

 夜空の月をこそ掴まんと、鋼盾掬彦は手を伸ばす
 
 届くことなどなくても、必死に


757 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:43:01.73 ID:GLMsUb2Ko



 この日、鋼盾掬彦は己の恋心を自覚した。

 笑ってしまうほどに拙くて、真摯で、どうしようもなく無理めな初恋。


 硬いベンチに力なくへたり込む鋼盾は、ぼんやりと天を見上げる。

 夜空には中途半端な大きさの月――たぶんだけど立待か、それとも居待かそのあたり。

 満月じゃないあたりがなんとも自分らしい、そんなことを思って鋼盾は笑う。



 月が綺麗だった。

 ただただ、綺麗だった。






――――――――――
758 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 20:48:34.06 ID:GLMsUb2Ko



公園の硬いベンチにねころびて月に吸われし十五の心

と、啄木のパクリはともかく、鋼盾→小萌回ですね……いいのかなあこんなんで――じっと手をみる
それは恋と呼べるかも怪しい憧憬、マイナー路線ここに極まり。

なんだか煙草礼讃な感じですが、ダメだぞお前ら、吸うなよと>>1はハイライト・メンソールをふかしつつ警告します
禁煙7ヶ月目にして挫折! こんなエピソード書くんじゃなかったよちくしょおおおお!! ケムリうめえええええ!!

 喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。
 疫学的な推計によると、喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなります。
 (詳細については、厚生労働省のホーム・ページ www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/main.html をご参照ください。)

正直誰得ですいません。俺得です
よろしければ今後もお付き合いください

んでは、また

759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 20:55:52.96 ID:Zh3DGcM/0
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 20:56:15.23 ID:Saz241tIO
乙乙
禁煙挫折とかw
俺なんか30回以上禁煙してる禁煙マスターだぜ!
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/27(水) 22:02:44.84 ID:0btXCnBho
禁煙三日目
っていうか買いに行くのめんどくさい
程々程度に抑えれるならタバコも酒も悪くないかと…

ワンカップで吐いた俺はかなりに下戸
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 22:28:34.78 ID:QZEh0FCAO

煙草になって小萌センセーに吸われたい
空気清浄機になって小萌センセーの吐いた煙を吸い込みたい
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/27(水) 22:40:46.81 ID:aj+6flDAO

煙草吸うと口の中に残る臭いがダメだ
煙自体は平気なんだけど
肺の中の酸素が少なくなってくらくらする感覚は好きだし
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/27(水) 23:18:41.37 ID:4eHh0Jbmo
小萌先生の大人(アダルト)な部分の表現が良かった
本来なら絶対生徒の前じゃ喫煙しなさそうだけど
なんというか見た目も口調も子供だけど仕草で大人な感じが出せてて上手い
765 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/27(水) 23:26:30.16 ID:GLMsUb2Ko
やだ、このスレ煙草くさい……!
このスレに空気清浄機が設置されました

     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
    r───────── ┐  |
     | |王三王三王三王三|:. |  | 
.    /| |王三王三王三王三| |  | 
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  / /| |王三王三王三王三| |  o==
  / /| |王三王三王三王三| |  o==
  / /|_________ 」/|
  / /|≡≡≡|// / |≡≡≡|/            
  / / ̄ ̄ ̄/ / / / ̄ ̄ ̄ゴーゴー
  / /  / / / /  / / /
  / // / / /  / / // ゴーゴー


このひと箱を吸い終えたら>>1はまた禁煙するんだ
あ、とあるスレで小萌先生の年齢について聞いてみたら秀逸なレスがあったので紹介

――――――――――

496 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 本日のレス 投稿日:2011/07/27(水) 06:37:02.12 GLMsUb2Ko
結局幾つなんだろうなあのひと

498 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 本日のレス 投稿日:2011/07/27(水) 08:07:11.25 Saz241tIO
>>496
20代〜30代前半、もしくは50歳以上
場合によっては30代後半〜40代の可能性もある

――――――――――

>>1の中では大体三十路ちょいくらいのイメージです。異論は認める。
歳の差20歳くらいどうってことないよね
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 23:37:39.69 ID:1U9erWe/P
速攻でそのスレ特定した
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:48:32.04 ID:kO1E7Z+l0
そもそもそのレス、リアルタイムで見てた
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 07:08:52.78 ID:8t2SbLUAO
「……吸ってみますか? 鋼盾ちゃん?」



エロい妄想をしたのは俺だけじゃないよな?
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 08:17:06.50 ID:B4jSuJ//o
>>765
>>1

どうみてもエアコンの室外機なんだが…
あと年齢については実は4ケタと予想。新約で伏線が回収されるに違いない。
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 08:28:20.16 ID:wd7g69k3o
室外機ww
このスレはどうやら屋外だったようです
これで心置きなくタバコが吸えるぜ
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 08:52:31.62 ID:wmml46+1o
このスレに空気清浄機が設置されました

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  / / ̄ ̄ ̄/ / / / ̄ ̄ ̄ゴーゴー
  / /  / / / /  / / /
  / // / / /  / / // ゴーゴー
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/28(木) 09:38:12.68 ID:Nogl/KZEo
    ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)
    (/(///// ̄\\. .r───────── ┐  | .// ̄\\\\\)\)
          (///// ̄\ \| |王三王三王三王三|:. |  | |/ / ̄\\\\\)
          (////// ̄\ | |王三王三王三王三| |  | / ̄\\\\\\)
          (/(/(/(/ ̄ | |王三王三王三王三| |  |   ̄\)\)\)\)
                (/(// /| |王三王三王三王三| |  o==ヘ \)\)
                  (/V. | |王三王三王三王三| |  o== Vヘ)
                        |_________ 」/|
                     |≡≡≡|// / |≡≡≡|/
                   / / ̄ ̄ ̄/ / / / ̄ ̄ ̄ゴーゴー
                   / /  / / / /  / / /
                    / // / / /  / / // ゴーゴー

未元物質がお部屋のイヤな匂いを強力分解!
垣根電器より好評発売中!!
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/28(木) 10:44:02.60 ID:Oizr5NQAO
>>768
吹寄のアレとは違ったエロさを感じるな……。
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 11:20:26.11 ID:8t2SbLUAO
空気帝浄機誕生の瞬間に立ち会ったことを嬉しく思う
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 13:53:04.52 ID:/ilLqJo5o

あとお前やっぱりロリコンだろ

>>772
悪臭は発生しねぇ、だかそんなのもあったな
776 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/28(木) 20:37:09.11 ID:jWmcJSSmo

空気帝浄機……消臭(未)元……だと?
ほんの悪戯心がこんな事態に……!チクショウww

どうみても室外機ですほんとうに(ry
もしこのスレがヤニ臭くなったら彼が来てくれるわけですね
へー……トントン…スッ…シュボッ…ジジ……………フゥ


        / ̄ ̄\.               >>768 >>773
      /      \.........:::::::::::.... .......
      |::::::: :      | .... .........::::::::::...r‐ ' _ノ.   このSSは全年齢対象です。えっちなのはいけないとおもいます
     . |:::::::::::::     | .... .........::::::::_ ) (_
       |:::::::::::::      |.. ..... ......:::(⊂ニニ⊃)
     .  |:::::::::::::::     }  ..... ......: ::::`二⊃ノ.  >>775
     .  ヽ____    }  ..... ......: :::: ((  ̄
        r'ニニヽ._\. ノ.. ..... ......: ::::::  ;;.     おいおい……小萌先生という禁書最年長ヒロインに愛を注ぐこの>>1
      r':ニニ:_`ー三`:く._           [l、.
    /: : : : : : :`,ニ、: :_:_;>      /,ィつ     まさかロリコンのわけがないだろう……常識的に考えて…
 .   /: : : : : : : : / : : : ヽ\     ,∠∠Z'_つ
   | : :.:.:.:.:.: . :/: : : : : : l : ヽ.   / .r─-'-っ     
 .   |:.:.:.:.:.:.:.:.:.,' ''" ̄: : :l: : : :l   /  ):::厂 ´     あとおまえら空気帝浄機で遊ぶのはこのスレだけにしておいてください
    |:.:.:.:.::.:.:.:l -─-: : /:_:_:_:_l / ̄`Y´        
 .   |:.:.::.:.::.::l.__: : : :/::: : : : :l/⌒ヽ: :         こんなん世に放ったら責任とれねーよ
    |::.:::.::.::l: : : : : : /:::: : : : : |: : : : ゙/



この展開、予想だにしなかったという人もいるかと思います。 >>1がその筆頭ですどうしてこうなった
まっとうに行けばインデックスに懸想するのがスジかと思いますが、そうなるとちょい収集つかなくなるんよね
うちの場合、上条ステイルアウさんに加え、土御門くんもいるから特に

とはいえこのSSがここから鋼盾×小萌になるかというとそんなこともなかったぜ!!
まあ、おまけ程度ですね。喩えるならあんパンにのってる桜の塩漬けくらい? 
あくまで→です、悪ィな鋼盾、オマエの想いは一方通行だァ!!!

明日の夜あたりに投下に参ります
次回もちょっとだけ桜色ですが、どうぞよしなに
777 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/07/28(木) 20:38:52.21 ID:jWmcJSSmo
そ し て な ぜ a g e た 俺
死 に た い
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 20:51:26.14 ID:xIqUoUxr0
どんまい
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 21:53:34.09 ID:8t2SbLUAO
どんまい つ煙草
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/07/28(木) 22:45:41.87 ID:ED2AnrVTo
どんまい つライター
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2011/07/28(木) 22:50:17.96 ID:/wNCJXvio
どんまい
つ   ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)
    (/(///// ̄\\. .r───────── ┐  | .// ̄\\\\\)\)
          (///// ̄\ \| |王三王三王三王三|:. |  | |/ / ̄\\\\\)
          (////// ̄\ | |王三王三王三王三| |  | / ̄\\\\\\)
          (/(/(/(/ ̄ | |王三王三王三王三| |  |   ̄\)\)\)\)
                (/(// /| |王三王三王三王三| |  o==ヘ \)\)
                  (/V. | |王三王三王三王三| |  o== Vヘ)
                        |_________ 」/|
                     |≡≡≡|// / |≡≡≡|/
                   / / ̄ ̄ ̄/ / / / ̄ ̄ ̄ゴーゴー
                   / /  / / / /  / / /
                    / // / / /  / / // ゴーゴー
782 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/07/28(木) 23:16:37.22 ID:jWmcJSSmo
                         ,――――――――――――――
                         | ありがとう、>>778−781
                         | 煙が心と目に沁みるぜ……!
                     _、_ ::: `y―――――――――――――
                  _ ( ,_ノ` ) :::
                 / 丶   ヽ:::
                / ヽ    / /:::
               / /へ ヘ/ /:::
               / \ ヾミ━・~~ 
              (__/| \___ノ/:::
                 /    /:::
                 / y   ):::
                / /  /:::
               /  /::::
              /  /:::::
             (  く::::::::
              |\  ヽ:::::
                |  .|\ \ :::::
          \    .|  .i::: \ ⌒i::
          \   | /::::   ヽ 〈::
              \ | i::::::   (__ノ:
              __ノ  ):::::
            (_,,/\



ちょっと今日はAA遊びが過ぎましたね!
明日からは封印して平常運転で参ります!そして禁煙するぜ!
………………あと12本吸ったらな!

おやすみ!
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/28(木) 23:33:39.94 ID:X9rr45iTo
残ったまま箱ごとグシャッと潰せる気概がないとやめられないよー。
3年経ってもう酒の席でもなんとも思わないぐらいだけどそれでも吸ったらうまいだろうなと思うもん。
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 12:23:19.29 ID:fb1R2I/UP
医者にいって禁断症状押さえる薬処方してもらわないとまず無理
785 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/07/29(金) 18:23:59.02 ID:o/2YurAIo

>>783
…………い、いやぁまだ吸えるものを捨てるなんて
そんなMOTTAINAIマネはできないぜお百姓さんに申し訳がないぜ
けして>>1の意志が弱いわけではないぜ

>>784
ニコレット的なヤツ?
まあ、もとよりニコチン依存が軽めな男ですので自力で頑張ってみます。



半くらいから投下しますよ!
今回もちょいと鋼盾→小萌風味だけど勘弁な!
786 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/07/29(金) 18:30:38.55 ID:o/2YurAIo



――――――――――




 午前八時、常よりも遅めにセットした携帯電話のアラームで、鋼盾は目を覚ました。

 色気のない電子音は優しくない、世界はもっと優しい素材で作られているべきだと鋼盾は思う。


 昨夜は結局、連日の寝不足と精神的な疲労のせいだろうか、なんとかシャワーを浴びて、そのままベッドに倒れ込むように眠りに就いてしまった。

 夢すらみない、深い深い眠り。

 そのくせ眠気はさっぱりとれず、体の芯にべっとりとだるさがへばりついている。


「…………あー」


 意を決して動き出せば、簡単に剥がれる程度の倦怠感と知りつつ、しかし動く気になれない。

 そのまま二度寝に突入しようとした鋼盾を、しかし携帯電話の着信メロディが呼び止めた。


787 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/07/29(金) 18:31:46.28 ID:o/2YurAIo



 爪弾かれるギターの調べ

 無機質なアラームとは違う、囁くような甘やかな響き


788 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/07/29(金) 18:34:14.48 ID:o/2YurAIo



 がばり、と反射的に跳ね起きる。

 眠気もだるさも途端に吹き飛び……鋼盾は慌てて枕元の携帯を掴む。

 ディスプレイに表示されているのは、「小萌先生(自宅)」の文字。


 脳裏に浮かぶ昨夜の記憶

 濡れ髪、煙草の煙、夜の匂い、空には月

 溢れた言葉



 夏の夜の夢



 途端にこころが熱を帯びる。

 鋼盾は頭を振ってその妄念を払い、通話ボタンを押す。


「……はい、鋼盾です」
 

 声が掠れたのは、寝起きのためだけではなかった。

 鋼盾は電話相手の言葉を待つ。

 
789 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/07/29(金) 18:35:09.01 ID:o/2YurAIo





『お、起きてたか鋼盾! おはようさん、上条さんですよー』





790 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/07/29(金) 18:35:57.22 ID:o/2YurAIo



 この野郎、と思わず零れそうになった言葉をすんでの所で飲み込む。

 電話口から響いた爽やかな朝の挨拶は、彼の親友、上条当麻のものだった。


 ……考えてみれば、まあそうだろう。

 小萌本人からであれば、わざわざ番号を打つ必要のない携帯の方からかけてくる方が自然である。

 というか、上条くん携帯は……そういえば、壊しちゃったんだっけ。そうだね、いつものことだねこの野郎。

 はあ、と鋼盾は重たい溜息を吐く。


『……鋼盾? おーい、起きてるかー』

「ごめんごめん、欠伸欠伸。……どうにも、眠くて」


 実際はこの電話によって眠気など彼方へ飛んでいってしまったのだが。

 まあ、そんなこと言えない。


『あー、俺も眠いぜ。
 でも小萌先生んちだから早起きでさ、あ、先生ラジオ体操似合いそうだな!』」

「たしかにね……先生は、学校?」

『ああ、職員会議らしい。鋼盾、今日こっちくるんだろ?』

「うん、そのつもり。上条君の着替えもあるしね、準備したらすぐ出るよ」

『そっか頼む、ああ、ちょっと待ってな……インデックス!! ほら!』


 “ふぇ!?む、無理なんだよ!”“大丈夫だっつの!”“ううう”“がんばれ!”

 電話の裏でバタバタと騒ぐ声が遠く聞こえる。

 ほどなくして。

791 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/29(金) 18:40:12.70 ID:o/2YurAIo


『…………き、きくひこっ?、わたひっ、Index-Librorum-Prohibitorum――』

「……あー、落ち着いて、インデックス。――おはよう」


 電話は別に最新科学ってわけじゃないと思うんだけどなぁ。

 科学に疎い少女の慌てようはトンデモなかった、やっぱり心配だよこの子。


『……ん、きくひこ、おはようなんだよ!
 ――って違うんだよ! わたしはおこってるんだよ! きくひこ!?
 どうしてわたしに何も言わずに帰っちゃうのかな! ひどいんだよ!」


 ……どうやら、朝起きたとき鋼盾が居なかったのが不満だったらしい。

 まったく、わがままなお姫様だ。


『ずっといっしょにいるっていったもん……言ったんだよ。
 きくひこ、うそつきなんだよ』

「ごめんね、インデックス。今からそっちに向かうから」


 言ったっけ? なんていったら爆発しそうな恨み節。

 なんたって相手は完全記憶能力を持つ女の子だ。

 そういえば、泣きじゃくるインデックスにいろいろ恥ずかしい台詞を言った気もする。

 あーーー、この子それ全部覚えてるんだよなー

 まじか。


『―――いつ、くるの?』

「すぐにいくよ。……上条くんに替わってくれるかな?」

『うん。とうまに、かわるね』


とうまー、と電話越しに遠い声が聞こえる。

なんとか機嫌は治ってくれたようだ。

小萌宅までダッシュで行こう、その苦行に鋼盾はため息を吐いた。



792 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/29(金) 18:41:39.09 ID:o/2YurAIo


 一拍の間があって、上条のからかうような声。


『―――よう色男。
 まったく、朝から「きくひこはどこ?」って大変だったんだぜ?』

「はいはいはい、まだ心細いだけだろ。逆なら『とうまはどこ?』だよ。
 ……インデックスの体調は、どう?」

『あー、熱は引いたし、食欲も戻り始めてる。
 一応今日は休ませておいて、明日には動き回れそうだと思う』

「よかったよ……あー、朝たべてないや。
 途中でコンビニとか寄ってくからそっちには9時くらいになるかな」


 思えば停電騒動で食材という食材を使い切ってしまったままだ。

 帰りには食材も買って……ああ、月詠邸での食事も小萌に頼りきりというわけにもゆくまい。

 風紀委員の詰所にゆくのが14時、そのあと買い物をして夕食くらいは作らせてもらおう。

 本日の行動予定を立てる鋼盾の思考は、しかし上条の声で現実に引き戻された。


『あー、いや、一応鋼盾の分のメシも残してあるぞー。
 小萌先生が鋼盾ちゃん用にって作っといてくれたヤツ」

「…………それは、ありがたい、な」


 ああもう、あの人は。

 きっと当たり前のように用意してくれたに違いないのだ。

 ずるい。


『つーわけだからさ鋼盾、ウチのお姫様がぐずる前にとっとと……
 ぅわおいヤメロやめてインデックスさん勘弁してくださいたい痛い痛い痛ァァアアァア!!!!!!』

「………………おーい」


 電話越しに響く上条の絶叫とインデックスの怒声。

 どうやら鋼盾のことなどすっかり忘れてしまっているらしい。

 仕方がないので通話を打ち切り、身繕いへと移ろうと携帯を畳む。

 携帯を、ベッドに。

 置く。




793 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/29(金) 18:42:58.77 ID:o/2YurAIo


 次の瞬間、

 寝起きの醜態を思い出して鋼盾は床へと蹲った。


「うああ…………あががががが」


 通話中は冷静を装っていたものの、もう限界だった。

 なんだよ電話がなった時のあのリアクションは。

 つーかなんだ着信音なにあの破壊力。



 "Moon River"



 携帯に購入時より入っていた音楽データ。

 鋼盾は見たことのない、アメリカの古い恋愛映画で流れる挿入歌。

 小萌の番号を登録する際、なぜか思いついてその曲が流れるように設定してしまったソレ。

 月詠小萌の“月”の字をみての、なんとはなしの思いつきだった、はず。


 なんだろう。

 なんだこれ。

 なんなのさ。


 冷静になってみると、これ、やばいくらいに恥ずかしい。

 なにやってんだ僕は。

794 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/29(金) 18:44:24.50 ID:o/2YurAIo


 そもそも他の誰にも専用の着信音など設定していない。

 つか、携帯に打ち込んでた時は、まだぜんぜん無自覚だった筈なのに、なんで。


「いぎぎぎぎぎぎぎ、うぐぐぐぐぐぐぐ」


 好きな人の電話番号を手に入れて、無自覚に浮かれて。

 その人の番号に特別な着信音なんて登録しちゃって。

 あまつさえ、その着信音が鳴り響いて心臓がバクバクだと……!?


「……………………うああ」


 乙女か! お前は乙女か!

 しかもちょっと古いタイプの乙女か!



 鋼盾掬彦は胸中で、力の限り己に突っ込んだ。

 無声慟哭、もう何もかもうっちゃって虹の端を探しに行きたかった。




795 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/29(金) 18:45:19.71 ID:o/2YurAIo



 7月22日、朝。

 快晴、絶好の洗濯日和で、降水はなし。


 朝っぱらから己という人間についての懊悩を繰り広げ掘り下げてしまった思春期ちゃん、鋼盾掬彦。

 どうしてか、結局携帯の設定は変えられないままだった。


 夏休みの三日目が始まる。






――――――――――

796 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/29(金) 18:54:36.77 ID:o/2YurAIo











着メロが「ムーンライト伝説」じゃなくてほんとうによかったの巻

ハチクロファンのみなさんすいません
ティファニーじゃなくて、小萌宅で朝食を! 

禁書世界にコチラの世界の音楽や映画を出すのはちょっと興醒めかなあとも思いつつ
古典?だからなんとかギリギリセーフ! と思って使ってみました
どうでしょうかね

ようやく23日です
この日もいろいろありそうですよ

797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/29(金) 19:49:29.78 ID:aRKtoRFc0


好きな子の着信音だけ個別にしちゃうことってあるよね
べ、別に俺は違うからな!メール受信音だけだからな!
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 19:56:24.85 ID:0TetWBKIO
iPhoneの俺涙目…着うた設定出来ないし


ま、相手がいないから関係ないが(ノД`)
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 21:19:56.57 ID:Wea9qndAO
ライトの点滅だけしか変えてない俺はセーフ!だよな?

乙女じゃないよね?
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/29(金) 23:29:11.87 ID:uCz0brEN0
そうか俺は乙女だったのか……
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/29(金) 23:38:35.91 ID:eZ7zhpEFo
かわいいなおいww
鋼盾ってのがググルIMEで出るのに驚きだぜ。下は出ないけど!
802 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/07/29(金) 23:59:23.16 ID:o/2YurAIo
ウチのスレが乙女の巣窟だった件について
おっさんの巣窟→たばこのみの巣窟→乙女の巣窟という最近の流れを鑑みるに
つまり「おっさんとたばこと乙女」は矛盾しないということらしい

あ、投下後コメントで23日と書きましたが、本文の通り22日ですね。失礼しました


"Moon River"

実在の曲です
いい曲ですよねオードリー・ヘプバーン

個人的に禁書SSで登場人物が、実在のゲームしてたり、カラオケで最近の歌を熱唱してたり、
実在のブランドやなにやらについて語りまくってたりすると、否定はしないけどちょっとだけ「なんだかなー」と感じてしまいます
だからちょっと迷ったのですが、でもここはムーンリバーにしたかったのです

明日も投下に来ます!
よろしければ!


…………ああ、それとお前ら 木山先生好きだよな?
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/07/30(土) 00:12:19.95 ID:LTICR+61o
木山先生大好き!!
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/30(土) 00:18:36.24 ID:M9DJ+YhAO
おっさんと煙草と乙女……小萌先生?

木山先生大好き!!
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/30(土) 00:20:53.10 ID:S8RhOnxMo
俺が!俺達が!小萌先生だー!

大好きだから熱くありませんか?
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/07/30(土) 00:34:58.92 ID:0LXQ4Hk1o
likeじゃなくてLOVEに決まっているだろう!!
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/30(土) 08:41:40.39 ID:PXv8ciKno
アニメ版の木山先生見ちゃうとなー。
いま観直しても泣いちゃうし、あんなぐさぐさ刺さる台詞吐かれるとたまんないね。
808 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/30(土) 14:59:04.81 ID:v4t+qRF4o

は、>>1としたことが愚問だったな……!
いくぜ野郎ども! 地獄の果てまで!!

“木山先生の登場が確定しました”

このスレも800を超えまして、いよいよこのスレのうちに神裂さんが例の台詞をいう事が不可能っぽくなりました
それもこれも>>1の無計画且つ無軌道なアレがソレでナニなせいです。……500位で終わると思ってたら膨らむ膨らむ。

つうわけでどうせなら盛大に寄り道をしてまいります
プロットに登場予定のなかった木山先生放り込んだらものっそいハマリすぎて怖い
もう少し先ですが、お楽しみに


んじゃ、投下します
ちょっとだけ待っててな



809 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/30(土) 15:18:04.54 ID:v4t+qRF4o

――――――――――



 鋼盾、上条、インデックス


 3人が初めて会ったのは一昨日、8月20日のこと

 このトリオで同じ時間を過ごしたのは、まだせいぜいが数時間と言ったところだ。


 なのになんでこんなに落ち着くのだろう

 鋼盾は不思議でしかたなかった




■■

 
「きくひこ!」

「おはようインデックス、寝てなくて大丈夫? ああ上条くん、着替えと鍵」

「うん! もうだいぶいいんだよ!」

「おーすまんぜ鋼盾。……まだちょっと熱っぽいけど、だいぶよくなってるな
 ………噛み付かれた上条さんの方がよっぽど重体ですよ」

「だってとうまが!」

「うるせえ暴力シスター! 」

「はいはい、仲のいいことで」


■■


「はいきくひこトースト! わたしが焼いたんだよ!! あ、ジャムつけるといいかも!!」

「ふふふ、鋼盾…! インデックスがパンを焼くだけのことに上条さんがどれだけ苦労したのか教えてやろうか……!
 はいよ、コーヒー。インスタントだけどな」

「ふたりともありがと
 んじゃ、いただきます。……おいしそうだね」

「こもえが作ってくれたんだよ!」

「あー、なんか先生昨日の夜帰ってきてからすげえ機嫌がいいんだよなー。
 なーんも聞いてこねえし……昨日、何か話したのか鋼盾?」

「……………………さあ」


810 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/30(土) 15:26:07.95 ID:v4t+qRF4o
■■


「あ、とうまー、もう時間かも!」

「えーー、まだいいじゃんかよ。もうちょっとのんびりしようぜー」

「だめなんだよ! こもえに頼まれてるんだから! ほーしゅーうう!!」

「しかたねえなー」

「…! 教科書だと……! いつの間にすり替わったおのれ魔術師! 上条くんをどこへやった!!」

「いいぜ鋼盾……! てめえがそんなネタをふってくるっつうなら、まずはその幻想(おやくそく)を……!」

「ふぇぇぇぇええぇ? きくひこ? とうま?」


■■


「うああー、進まねえ! つかなんだよこの量!!」

「……開始30分で何を言ってるんだ。
 まあ、補習にいけないペナルティを加味すりゃ妥当な量だよ。
 小萌先生に感謝しなきゃ……というかツケが回ってきただけで、完全に自業自得だね」

「うるせええ! 鋼盾の裏切り者! なんだかんだで記憶術以外補習回避しやがって!」

「普通はそうなの……集中集中。インデックスを見習いなよ」

「……………ふぅ、読み終わったんだよ。
 日本史を通して世界をみるというのも、なかなか新鮮かも!」

「げ……既に教科書3冊を読破だと……!
 つーか完全に暗記してるとか……やばい、インデックスにテストで負ける気がしてきた」

「きくひこー、次は?」

「ん……じゃあ国語 ――自国の言語の構造や成り立ちの理解、文章力や読解力や表現力の向上、文学史……
 そんな感じのことを勉強する科目だよ。小説や詩もあるから面白いんじゃないかな」


811 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/30(土) 15:27:15.03 ID:v4t+qRF4o
■■


「鋼盾ー、昼飯どうする?」

「だーから集中!……そうめんでも買ってきて茹でるよ。
 小萌先生に負担をかけ続けちゃうのもなんだし、夕飯も僕らで作っとこうか。
 あー、カレーとかでいいかな?」
 
「カレー! 楽しみなんだよ!」

「ああ、いいな。……買い物どうするよ?」

「今から行ってくるさ
 ……インデックス、上条くんがサボらないように見張っててね」

「任せるんだよ!
 サボったら噛み付いちゃうかも!」

「……お手柔らかに頼むぜ」


■■


「ああ、鋼盾。なんか予定あるとか言ってたよな?
 あれって何時くらいだよ」

「1時半にここ出れば大丈夫だね、夕方にはもどるよ」

「お、んじゃ俺コレ食ったら近くの銭湯に行ってくる。
 さすがに一昨日昨日と入ってねえからな……いい加減タオルで拭くだけじゃキツイ」

「お風呂! ジャパニーズセントー!!
 わたしも行きたいかも! とうまだけなんてずるいんだよ!」

「あー? ダメだっつの病人なんだから」

「ずるいずるいずるい!! うう、きくひこー!!」

「治りかけが大事なんだよインデックス………完全に熱が引くまで我慢だね。
 明日、いや、明後日まではダメかな。小萌先生に拭いてもらうといいよ」

「うう、早くお風呂入りたいんだよ……
 今までは“歩く教会”の加護で体が汚れることがなかったけど……このままじゃ辛いかも」

「へー、すげえな魔術ってヤツは! 風呂も洗濯もいらないとは……金かからなくていいなー」

「…………とうまが壊しちゃったんだけどね」

「……あーあ」

「うぇっ? ああやべえ墓穴った!?
 ゴメンごめんインデックスさんどうかその牙を収めてくださいませぎやああぁああぁ!!!!」


812 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/30(土) 15:36:02.56 ID:v4t+qRF4o



 おはよう、いただきます、ごちそうさま、宿題しなさい、いってきます、いってらっしゃい

 そんな挨拶を笑顔で交わして、小さな卓袱台を三人で囲んで


 随分と馴染んでしまった、と鋼盾は今朝からの一連の出来事を思い返しつつそう思う。

 まだ出会ってそう時間が経っていないのに、上条とインデックスと自分、この3人という組み合わせがひどく自然なのだ。

 まるでずっと前から一緒にいたみたいに、無理なく齟齬なくつつがなく、非常に安定している。


(まあ、いろいろあったし……ね)


 途方もない秘密を共有し、それを乗り越えるという共通の目標を得た。

 あまりに濃密なその事実を前にすれば、薄っぺらい時間などものの数ではあるまい。

 上条とインデックスに至っては、共に死線を乗り越えてすらいるのだし――恋だの愛だのでも生まれそうな状況である。


 鋼盾の頭に過ったのは、世界の土御門監督の放った渾身の予告編

 とびっきりのボーイ・ミーツ・ガール


(……ヒーローとヒロイン、か)


 あの夜、土御門との会話の中で、彼ら二人をそう称したことを思い出す。

 超常の能力(チカラ)を秘めた右手を握り拳に、少女を護るため悪の魔術師に単身立ち向かい、見事勝利を収めた上条当麻

 過酷な運命に翻弄され、禁書目録という重き荷を背負いながら、それでも健気に祈りを捧げ続けるインデックス


 まるで英雄譚の登場人物のような彼ら

 その役はさしずめ勇者と姫君――いや、聖女か巫女か

 ―――――ならば、己は? 勇者に同道せんとする己はなんだ?


813 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/30(土) 15:46:36.92 ID:v4t+qRF4o


 その手に剣と盾、その身に鎧を装備した歴戦の戦士?―――――否、腕力に乏しい己にそんな役は務まらない

 ならば古の魔法でもって周囲を佐ける魔法使い?―――――否、能力(まほう)を持たぬ己にそんな役は務まらない

 身の軽さと手先の技術で戦場を駆ける盗賊?―――――否、鈍重極まりない己にそんな役は務まらない


 類い稀なる叡智と理力を誇る賢者? 人脈と財力でサポートする商人? 鍛え抜かれた屈強な体で拳を振るう武闘家?

 否、否、否、いずれも否。―――この街で一番弱い鋼盾掬彦にそんな役は務まらない


 宿命もなく、才能もなく、努力をかさねたわけでもなく。

 ドラマになりそうな悲劇的な過去もなければルックスだって今ひとつ。

 けしてメインキャラの器ではない。


 なんの力もない村人A

 己の立ち位置はそんなところだろうと鋼盾は思う。

 卑下なく無理なく自虐なく、心の底からそう思う。



 だが、それでも勇者と共にハッピーエンドを目指すと約束したのだ。

 弱く小さな己だが、それは諦めの理由にはならない。


 村人にだって、魂はある

 意地がある

 護りたいひとがいる

814 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/30(土) 15:55:24.00 ID:v4t+qRF4o


 戦士や武道家のように鍛えられてはいなくても、それでも握り拳がここにある

 魔法使いや賢者のように智に長けてはおらねど、それでも頭を使うことは出来る

 盗賊のように軽やかではなくとも足は動く、商人のように金持ちではないが僅かな貯金を切り崩せる


 華麗にクールにチートで余裕綽々なんて、鋼盾にはできないし、趣味にも合わない

 鋼盾が好きなのは、みっともなく泥を啜っても、がむしゃらに前を目指すドブネズミのようなヒーローだ



 現状を嘆くのはやめてしまった

 やれることはきっとある


 彼らと共に歩もうとするなら、自分も強くなればよいだけの話

 あの夜に交わした、ステイル=マグヌスの言葉を思い出す


815 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/30(土) 15:59:30.69 ID:v4t+qRF4o



 “鋼の盾。今の君にとってその名が重いというのなら、その名に相応しい男になればいいだけの話だ。
  それは簡単なことではないかもしれないが、やるべきことが解かっているというのは確かな救いだ”



  “盾はいつだって重いものさ。
  なんたって、大切なものを護るために作られるのだから”



 “僕も盾になりたいよ。大切な人を護る盾、その名に相応しい男に。
  ―――君の目指す場所は僕の目指す場所でもある。僕らはまだまだ未熟かもしれないが、きっと辿り着けるさ”


816 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/30(土) 16:00:41.75 ID:v4t+qRF4o


(ああ、そのとおりだよステイル)


 今となっては敵対する立場にある、赤い髪のやさしい神父の言葉。

 しかし鋼盾の胸に彼が灯した意志の火種は、あの日から消えることなく明明と熱を保っている。


 為すべきを為す

 理想の己を目指す

 そのためには


 まずは、己の不始末に決着を付けなくてはならない。

 けじめをつけねば前には進めない。

 罪に向き合い、認め、受け入れて、そして――



「……謝らなくちゃ、いけないよね」



 眼前には風紀委員第177支部。

 学園都市の治安を守る正義の味方、その前線基地に鋼盾掬彦はたどり着いた。





――――――――――

817 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/30(土) 16:03:49.06 ID:v4t+qRF4o




 ここまで。

 台本形式によるダイジェストをやってみました
 だってガチで書いたら長すぎたんだよ! 朝食のシーンで今回の更新終わりそうだったわ!
 どうでしょう台本……描写不足とか解りにくいとかリズム悪いとかあれば教えれ。

 “歩く教会”が装備者を清潔に保つというのは独自設定ですかね
 新陳代謝とか考えるといろいろ無理がありそうだけど勘弁な

 でも、そうとでも考えないと逃亡生活を送っていたインデックスさんの体臭その他がエライことに!
 上条「この子にはどこか遠いところで幸せになってもらおう、具体的にはこの臭いの届かないところで」みたいなことになるかも
 科学と魔術が交差しねえよ!! 空気帝浄機さんの出番だよ!!

 入浴も洗濯もできない状況、つーかまったくの空手で1年に渡る逃亡生活ってのは絶対に無理がある設定だよなー
 食事や寝床はどうしてたのかとかいろいろ疑問は尽きないけど……これはかまちーのミスだよね多分

 まあ、“歩く教会”スゲーってことでどうにか
 それを壊した上条さんまじスゲーってことでどうにか


 次回、風紀委員第177支部
 幻想御手けじめ回その2! あの二人の出番ですの!



818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/30(土) 18:11:07.05 ID:mMglaE0AO
乙!
三人の関係いいな、マジ和むわー。
鋼盾さんが関わってることでこれからどう変化して行くのか早くみたいぜ。
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/31(日) 00:27:00.73 ID:QUUL7soA0
乙!
無粋だけど>>809は8月でいいんだっけ?
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/31(日) 07:29:09.22 ID:UFSsUzvAO
乙!
姫神がいっぱい出てきて嬉しいです!
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/31(日) 08:08:05.31 ID:FmLYsUhBo
楽しい時間はあっという間な雰囲気があってダイジェストよかったよー。
>>1はまじあふれ出す煮汁って感じ。
822 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/31(日) 11:48:49.77 ID:3eGXN/jh0
レス感謝!マジで救われています
最初のレスが付くまではいつもドキドキしてます、どんな内容を投下してもやっちまった感が拭えない
……もう気づけばスレ立てから3ヶ月目だというのに>>1は初心です、初心なので全レス()などやってみたり

>>818 >>821
ダイジェストな台本形式、受け入れていただけたようで何よりです。この3人がウチのメインさんなのでよろしく!

>>819
7月ですねすいません。夏休み終わるっつーの! もしくは出会って一年近いじゃねーか! ご指摘感謝です 粋だねえ!!

>>820 ……誤爆?と思ったらホントだw 小萌宅ですから姫神さんもあの空間に加わること。あるといいな。


今日も夕方から夜くらいにかけて参りますよー
己を鼓舞する投下age!!
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/31(日) 18:50:03.41 ID:Q7+yIGQBo
脱いだ
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2011/07/31(日) 18:54:50.92 ID:sosLgjRfo
俺も脱ぐか
825 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/31(日) 19:29:49.85 ID:3eGXN/jho
仕方ねえな、俺も脱ぐか


なぜか突然「i」が打てなくなるという事態に
仕方がないので外付けキーボード買ってきました。980円也。

机の上にノーパソ+ディスプレイ+キーボードという状況でせまいったらないぜ
はっ! ……まさかこれがSS書きを襲うというパソコントラブル? 怖い!


んじゃ、投下

鋼盾in177!!





――――――――――
826 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/31(日) 19:31:18.74 ID:3eGXN/jho



 風紀委員第一七七支部。

 鋼盾が住む第七学区にある風紀委員の詰所のひとつだ。

 きっかり14時、鋼盾はその扉の前に立っていた。


 緊張しつつインターホンを押した鋼盾に対応してくれたのは、虚空爆破事件の折に知り合った花飾りの少女。

 パーテーションで区切られた小さな応接スペースに通され、いい香りのする紅茶を煎れてもらった。

 程なくして、件の少女が鋼盾の前に現れる。


 名門常盤台中学の制服

 腕には風紀委員である事を示す盾をモチーフとした腕章

 つややかな髪をツインテールにまとめる華やかなリボン


 黄泉川曰く“風紀委員トップレベルの腕っこきにして、命令違反の常習犯” 

 有能且つ問題児な風紀委員として轟く、そんな毀誉褒貶著しい彼女の名は、


827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/07/31(日) 19:31:51.75 ID:7CYJZDIdo
支援
828 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/31(日) 19:35:04.61 ID:3eGXN/jho


「風紀委員の白井黒子です。
 一昨日はどうもですの。……ご連絡を頂いた、鋼盾さんでよろしいですのね?」


 確かに一昨日、鋼盾たちのもとへ駆けつけてくれた空間移動能力者の少女だった。

 鋼盾の対面に腰掛ける白井は落ち着き払っており、所作のひとつひとつに余裕と華がある。

 お嬢様というやつだろうか、御坂美琴といい、やはり名門に通うような子はモノが違う。


 対する鋼盾は風紀委員の詰所という雰囲気と、目の前の少女の醸し出すオーラに緊張を隠せない。

 それでもなんとか時間を貰った礼と、来訪の目的――謝罪と感謝――を目の前の少女に告げ、頭を下げた。

 幻想御手に縋った卑怯な振る舞い、スキルアウトにはめられた無用心、逃げ出すことしかできなかった臆病さ。

 情けない、己。

 そんな過去との決別を目指すなら、避けることのできぬこと。


 それはけじめであり、禊であり、宣誓であった。

 相対する白井は、じっと鋼盾の姿を眺め、程なくして口を開いた。

829 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/31(日) 19:36:52.08 ID:3eGXN/jho


「……頭を上げてくださいまし。貴方の行動はけして間違ってはおりませんの。
 もちろん幻想御手に手を出そうとしたのは問題ですけど、あの場をわたくしに任せて避難されたのは賢明な判断ですの」


 むしろ相手を侮り、応援を呼ばなかったわたくしの落ち度ですの、と彼女は悔やむように口にした。

 風紀委員は本来学外での活動権限をもたないのに、ひとりで突っ走ってしまったという。

 友人と、そして鋼盾を救うために、だ。

 黄泉川の言うとおり問題児ではあるのかもしれないが、それは気高い自負と覚悟ゆえ。


「本当に、お気になさらずともかまいませんの。
 傷もそう大したことありませんし。……むしろ、いい教訓になったくらいですの」

「……わかりました。
 でも、あらためてお礼を言わせてください。
 ……本当に、ありがとうございました」

「いえ、わたくしは風紀委員としての役割を果たしただけですので。
 ……でも、ほんとうにご無事でなによりですの」


 すこし照れくさそうに、しかし誇らしげに笑う少女。

 その笑顔に鋼盾の顔も綻んだ。


 強くて、優しい子だと思う。

 聞けば大能力者ということだったが、彼女の強さはその点だけではない。

 己の職務、掲げた正義に誇りをもち、それを貫こうとする凛としたあり方が強く尊いのだ。


 それは、先日知り合った超能力者、御坂美琴を髣髴とさせる気高さだった。

 もしかしたら少しばかり、上条くんにも似ているかもしれない。

 
830 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/31(日) 19:41:21.75 ID:3eGXN/jho



 それから暫くは、事務的な手続きが行われた。

 鋼盾がスキルアウトたちに毟りとられた10万円は、現在警備員が預かっているとのことらしい。

 手続きを行えば、直ぐに戻ってまいりますわよ、と白井は微笑む。


 高い授業料だったと諦めていた10万円。

 正直戻ってくるとは思っておらず、また自分が背負うべき当然のペナルティだと感じていたソレ。


 返還を拒んだ鋼盾に、白井は「きちんとお返ししないと私たちの職務が完遂できませんの」と優しく書類を押し付けてくれた。

 警備員の詰め所に持ってゆけば、即時返金して貰えるとのことだ。

 ……正直なところ、ありがたいと思ってしまう自分が少しばかり情けなかった。


 必要な手続きがおわり一息ついたところで、姿勢を正した白井が真剣な面持ちで話しかけてきた。


「ところで、ちょっと協力して頂きたい事がございますの。
 事情聴取というヤツですわね、正式なものではないので固くならなくても結構ですの」


 ご協力のほどお願いできますの? と尋ねる白井。

 鋼盾としては恩返しと言えなくもないし、まったくもって否はない。

 といっても、たいしてチカラになれるとも思えないのだけど。


「貴方がどのようなルートで幻想御手に辿り着いたのか、聞かせていただきたいのですの。
 幻想御手を知った経緯から、順を追って説明していただけますの?」

「……わかりました。ええと、噂を聞いたのが、確か一週間前くらいで……」


 鋼盾は話し始める。

 幻想御手にまつわる一連の彼の行状を。


 それは、この一週間の鋼盾掬彦の悪あがきのような作業の総括であった。


831 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/31(日) 19:42:30.83 ID:3eGXN/jho



 きっかけは街に溢れる幻想御手の噂を耳にしたこと。

 最初は信じてなかったが、どうしても気になって調べ始めたこと。

 都市伝説を扱うサイトや掲示板に情報を求めたが、はかばかしい成果を得ることが出来なかったこと。


 ――ただ、幻想御手の噂が広まったのと時を同じくして、いろいろ妙な事がおきているように思えたこと。

 
 先日まで続いた連続虚空爆破事件に、扉の鍵を“腐食”させ破壊するタイプの連続窃盗事件、頻発した偽札事件。

 まだ犯人の捕まらない壁新聞事件、集団幻覚事件、飛行船が予定された進路を外れた暴走事件、三学区に跨る騒音騒動。


 素人目にも書庫に照らせば警備員は簡単に容疑者を特定できる筈なのに、それができていないという事実があること。

 書庫のデータは即時更新が徹底されているとのことで、そんな事態は基本的に起こらないとの思われること。

 ガチガチに固められた書庫のセキュリティは病的なレベルで、改竄は至難であると推測できること。

 幻想御手で能力を得た人間のデータが書庫に反映されていないのではないか、と考えたこと。


 このところ能力の暴発事故も増えているような印象を持ったこと。

 期末の身体検査を拒否した学生が例年より若干多かったらしいという話を聞いたこと。

 中学生を中心に一部で流行したチェーンメールの内容が、興味深いものであったこと。

 友人がそれらしいトラブルに巻き込まれ不幸だあああと嘆いていたこと。


 路地裏の勢力図にいくつも書き換えがあったという噂を目にしたこと。

 スキルアウトの牙は能力者に向けられる筈なのに、なぜ無能力者同士で争うのかと言う疑問を強く抱いたこと。

 
 第7学区の中学校の外壁に、消えない落書きが幾つも書かれていたという小さな事件があったこと。

 そこに、とあるスキルアウトのシンボルマークが書かれており、それが能力を用いて落書きされていたという矛盾を見つけたこと。


 純粋な無能力者集団から、能力を獲得した人間が離反したという旨のコメントがあったこと。

 裏切りを嘆くその言葉は、能力を手に入れたことについてではなく、幻想御手なんかに頼ったことに怒っていたこと。

 レベルアッパーに関わる書き込みが、日に日にリアリティの伴うものに変わってきたように思えること。


 他にもいろいろ、おかしいことがあった。

 ひとつひとつは大したことじゃないけど、これだけ集まると説得力がある。

 
832 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/31(日) 19:47:26.55 ID:3eGXN/jho


 幻想御手。

 その存在を確信するにつれ、もう自制が利かなくなったこと。

 己が無能力者であることに、強く劣等感を感じていたこと。

 天から下りてきた、蜘蛛の糸に見えたこと。

 手を伸ばせば、ここから抜け出せると思ってしまったこと。



 それは、無能力者への希望の光

 伸ばされたその白い手に、縋り付かずには居られなかった

 それが悪魔の手でも、構わなかった

 
 溺れる者は、藁にだって手を伸ばす

 自分は、自分たちは、もうずっとこの街の最下層で溺れ続けていたのだ



 とりあえず、能力を使用しているスキルアウトに的を絞り情報を収集してみたこと。

 彼らの溜まり場になっているSNSを探り当て、接触をもったこと。


 そして。

 ―――そして。


833 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/31(日) 20:02:03.85 ID:3eGXN/jho


「……そこから先は、まあ、あのザマだよ。
 もっと金を搾り取れると足元を見られて、挙句能力を試す実験台にされて。
 ―――考えれば判る事だったのに、馬鹿な真似をしたと思う」


 本当に、愚かだった。

 ステイルに道を示され、小萌に理を説かれ、ようやく己は立ち止まることができた。

 もし、彼らがいなければ、きっと自分は懲りずに同じ過ちを繰り返していたことだろう。


 救いの手は、ネットごしではなく、天から上から雲の向うからではなく


 それは、赤い髪に刺青の優しく強い神父の、指輪で飾られた大きな手の形をしていた

 それは、小さな体に誰より大きな慈愛を宿した恩師の、子どものような手の形をしていた


 確かに鋼盾へと伸ばされたそれは、けして幻想などではなかった

 幻想御手など、必要なかったのだ


834 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/31(日) 20:02:50.10 ID:3eGXN/jho

「……驚きましたわね。そんな街の噂から、しかもおひとりで、わたくしたちと同じ結論に至るなんて」


 こちらには風紀委員の権限もありましたのに、と花飾りの少女にジト目を送る白井。
 
 白井さんだって暴力に訴えただけじゃないですかー! と反論する花飾りの少女の言葉をさらりと流し、黒子は言う。


「まったく、情けない。後手に回りすぎですの。
 わたくしたちの対応の遅れが被害者を増やした責任は否めませんの」


 そんな自責の念に駆られているらしい黒子。

 見れば書類整理に追われていた筈の花飾りの少女も同じような表情をしていた。

 慌てて鋼盾は否定する。


「全然たいしたことじゃないよ。暇にあかせてネットで遊んでただけだ。
 結局自力で入手もできなかった上、いろんな人に迷惑をかけて――情けない話だよ」
 
 
 口にすると余計に情けなくてずーーんと落ち込んでしまう鋼盾。

 その姿に困ったように笑う二人。


「いえ、こちらこそ失礼しましたの。今のはタダの愚痴――口にすべきではありませんでしたの。
 ――初春、少し休憩にしましょう。貴女もこちらへ。わたくしが紅茶のおかわりをご用意いたしますの」


 やったー、お嬢様の紅茶です! とはしゃぎながら書類仕事を放り出す花飾りの少女。

 初春、という名前――苗字だろうか――であるらしい彼女は、スタスタと歩いてきて鋼盾の斜め前、白井の隣の席に座った。

 お互い連続虚空爆破事件で面識はあるものの、名前までは知らない間柄なので、改めて自己紹介となった。


「私は風紀委員の初春飾利といいます。こないだは避難誘導を手伝って頂いちゃってありがとうございました」

「あ……鋼盾掬彦です。こちらこそ、何度もご迷惑かけちゃってすいませんでした」


 いえいえー、と笑う初春。

 あんな本格的な避難誘導は初めてだったので、とっても助かりましたとニコニコしている。

 と、思ったらいきなり表情を真剣なものに変え、しっかりと鋼盾の顔を見据える初春。

 ちょっとお聞きしたいんですけど、と枕を添えて、意外な言葉を口にした。


835 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/31(日) 20:04:14.41 ID:3eGXN/jho




「突然ですけど……鋼盾さん、
 ――――風紀委員に興味はありませんか?」



836 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/07/31(日) 20:08:26.40 ID:3eGXN/jho




――――――――


ここまで

ちょっと投下に時間がかかっちゃってゴメン、全裸な皆さんお風邪など召されませんように
書き込む段になってアイデアが湧くんだもんよ!!


黒子は素敵ですよね、ギャグもこなせるけどシリアスの映えるキャラだと思います
そして初春……なんか勧誘してますよ!

どうなりますかね
次回もお楽しみに!



あ、だれかアニメのインデックスのIDの画像なんて持ってませんかね
ネギ持ってるヤツ……あれ見たいんですが何処で見れるでしょうか
お心当たりのあるかたは是非!
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/31(日) 20:22:42.53 ID:3XzAtSsMo
乙ー!この鋼楯君は「強い」な、もう日村とは呼べんな

ネギね・・・あれか、風邪ひいたときに熱を下げるために差し込んでやるってやつだな・・・
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/31(日) 20:39:07.30 ID:FmLYsUhBo
ほらよっ ttp://nullpo.vip2ch.com/ga4337.jpg
手を出してなかったら灯火も得られなかったわけで面白いやねー。
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/31(日) 21:24:01.70 ID:CrrtbxdAO
まさかのジャッジメント鋼盾さんとなるのか?
名前的にピッタリだし、身体や能力に長けてる訳じゃないけど頭の回転は間違いなく並以上っぽいし、初春とかみたいに裏方に回れば……主人公としては地味だなw
840 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/07/31(日) 21:30:13.54 ID:3eGXN/jho
>>838
おおサンクス! 今IDが絡むシーンをちょい書いてるのです
安全ピンがあるってことは、やはりこれが作られたのは上条さん後なんですよね

隠し撮りというわけでもなく、きちんと前を向いて笑顔
ネギはネタとしても、この写真を撮った人はインデックスとある程度の信頼関係があるように見えます。
そんで、上条さんではありえない……ならば、誰が撮ったのか?

ふふ、そこで>>1は土御門撮影説を推すワケですよ! ……いやわかってるよ妄想乙って!
あ、そうそう。このSSでの捏造っぷりが鋼盾に次ぐ土御門さん、この後もう一回出てきます!

あとどうなんだろコレ、ゲストIDってわけじゃないのかな?
正式に学園都市の住人にしてしまうのはイギリスとの間で問題が生じそうだけど
……インデックスを学校に、なんて妄想をしてしまう>>1がいたり

んじゃ
またすぐ来るぜよ!
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/31(日) 21:55:04.12 ID:Q7+yIGQBo
>>840

そんで舞ってる
……今出先なんだ
捕まりたく無いからゆっくり急いでね♡
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/31(日) 21:55:57.60 ID:UFSsUzvAO
脱いだ
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/31(日) 21:57:26.37 ID:Q7+yIGQBo
飛び出た
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/07/31(日) 23:18:55.52 ID:hjvj+zIAO
なんか佐天さんに近づいてきたな。
GJ!
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/07/31(日) 23:19:29.00 ID:hjvj+zIAO
なんか佐天さんに近づいてきたな。
GJ!
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/07/31(日) 23:20:31.85 ID:hjvj+zIAO
なんか佐天さんに近づいてきたな。GJだぜい
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/07/31(日) 23:21:04.45 ID:hjvj+zIAO
なんか佐天さんに近づいてきたな。GJだぜい
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/07/31(日) 23:24:14.66 ID:8tTaBakFo
うるさい黙れ
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/31(日) 23:41:54.62 ID:UFSsUzvAO
まあおちけつ

おまえらも脱げよ
850 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/07/31(日) 23:58:39.68 ID:3eGXN/jho
しゃーねえ、せっかく着たけど、俺も脱ぐか


眠れぬ夜、一日二回更新したっていいじゃない!!
あと>>843、それしまえ

なんか重そうなのでゆっくり行きます
明日にでもまとめて読んでくれると嬉しいな!


投下ァ!!
851 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 00:03:41.92 ID:nmTg5VXmo


――――――――――






 風紀委員に興味はありませんか。

 突然の言葉に目をぱちくりさせる鋼盾に、初春は真摯な顔を崩し、先ほどまでの柔和な笑顔に戻った。


「ごめんなさい、なんかすごくいきなりでしたね」


 びっくりさせちゃいましたかね、と微笑む初春。
 
 それはまさにその通りで、鋼盾はコクコクと首を縦に振る。


「そうですよね、すみません。
いやー、いろいろお話聞いてたら、なんかちょっと思いついちゃって。
 風紀委員の夏季公募も近いですし、閃いちゃったんです」
 
 
 夏季公募。

 風紀委員はボランティアに近い組織で、学生の自発性がその根幹にあるという。

 無論、厳しい研修と選別を乗り越える必要があるためその門戸は狭い、少数精鋭と言えば聞こえはいいが、その実、慢性的に人手不足で火の車。

 質を維持しながら人を増やすという難題に、関係者は頭を悩ませていると聞いたことがあった。


「……びっくりだよ。えーと、ほら僕みたいな無能力者に風紀委員なんて……」

「誤解されがちですが……風紀委員の募集要項には能力条件はありません。
 白井さんみたいな“戦える人”っていうイメージが強いですけど、必ずしも能力が必要ってわけじゃないんですよ」


 もちろんあったほうが有利なのは否めませんけど、でも。

 初春は掌を鋼盾に見せてから、両手で紅茶のカップを包み込み、己の能力を説明する。


「私の能力はレベル1の定温保存(サーマルハンド)。紅茶や、例えばタイヤキなんを暖かいまま保つことぐらいしか出来ません。
 こんなの戦闘にも情報収集にもまったく使えないチカラです。でも、皆に支えられて風紀委員をやっています」


 何も、私たちは超能力戦隊ってわけじゃありません。

 風紀委員に必要なのは「治安を守りたい」という意思ひとつです、と初春は朗らかなまま口にする。


 鋼盾としては、はっきりいってなぜこんな話になっているのかがわからないというのが正直なところ。

 自分にはそんな立派な意思などない、と口にしようとしたところで、それを制するように初春は口を開いた。

852 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 00:05:24.92 ID:nmTg5VXmo


「連続虚空爆破事件の時の、女の子のこと、覚えてますか」

「……うん、もちろん」


 当然、覚えている。

 上条と一緒にセブンスミストへ案内してあげた女の子。

 爆発に巻き込まれてもなんのかんのと笑顔だったあの子である。


「あの事件のあと、私が家まで送っていったんですけど、帰り道で嬉しそうに“やさしいおにいちゃんたち”について話してくれました。
 
 道に迷って困っていたら、おにいちゃんたちが声をかけてくれて、セブンスミストまで連れて行ってくれたって。

 子ども達の笑顔のために動ける人――それは、私の目指す風紀委員の姿そのものですよ?」

 
 にっこりと微笑む初春。

 予想外に褒められてしまい、ドギマギする鋼盾。

 それは、半ば以上が上条の手柄だと口にしようとするが、続く言葉に反論は遮られる。


「それに、さっき話してくれた幻想御手に辿り着いた手腕もお見事でした。

 情報収集、取捨選択、仕分分析―――なにより、それらに踊らされずきっちり真ん中に杭を打ち込める統合見解能力。

 そういう力は、私のようなサポートタイプの人間に求められるスキルです。――正直、嫉妬しちゃいました」


853 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 00:16:05.30 ID:nmTg5VXmo


 鋼盾はあずかり知らぬことだが、凄腕のハッカーである初春は、電脳世界のかなり深いところからも情報を引き出すことができる。

 それは彼女を優秀な風紀委員足らしめている要素ではあるが、得た情報を活かしきれているとは限らないと初春は思う。

 電子の海は広大至極、泳ぎが上手くても深く潜れても、ただそれだけでは獲物は掴めない。


 初春からみればずっと浅瀬を漂う程度の鋼盾は、しかしこの件において彼女より多くの情報を掴んでいた。

 高性能の探知機、たっぷりの酸素ボンベ、暗い海底を照らすライト……そんな装備で鎧った己を尻目に、素潜りで真珠を掴み取っていった鋼盾。

 運がよかっただけかもしれない、だが、それでも―――初春飾利は戦慄と嫉妬、そしてある種の憧憬を隠せない。

 電脳戦では己の足元にも及ばぬであろう彼は、しかし守護神(ゴールキーパー)と謳われた彼女とはまた違う視座を持っている。


 初春が持ち得ぬ、鋼盾のその眼差し。
 
 真珠を見つけるように、物事の本質を捉えること。

 それは得難い才能、言うなれば統合見解者(スクリプター)たる素質――その片鱗を初春飾利は鋼盾に見出したのだ。


 そして、それだけではない。


 見ず知らずの子どものために動くことのできる優しさ

 避難誘導の際の的確な位置取り、他者の動きを把握するその視野の広さ

 幻想御手事件の全体像を掴み取り、ピンポイントで目的を捉えた眼力

 己の非を認め、年下の白井に頭を下げることを厭わぬその姿勢


 どれも、初春がそうありたいと願うものばかりだった

 大した能力を持たぬレベル1の己は、そうしたところから風紀委員たろうと日々努力を重ねている。


 強力な能力者が一足飛びに多くを得てゆくこの学園都市。

 能力弱者に優しくないこの街において、初春が目指したのは、能力に依らぬ強さと賢さ。


 初春は鋼盾という人物に、どこか己と似た種類のものを感じていた。

 幻想御手に縋ったという鋼盾は、しかし既にそこから抜け出し前を見据えている。

 初春とて、けして最初から今のように思えたわけではない。

 相応に傷を負ってきた、風紀委員になる前も、なった後も


 だが、今となっては

 その傷をこそ、愛おしく想う


854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/08/01(月) 00:18:02.87 ID:cQWYQHBWo
重いな…
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/01(月) 00:21:26.62 ID:JWXg2g7+o
重い?
いい話だろ
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/01(月) 00:26:58.02 ID:bUPWzbGLo
サーバーがってことじゃね?wwww
857 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 00:27:43.23 ID:nmTg5VXmo

「鋼盾さんって、鋼の盾って書くんですね。この腕章にあるとおり、私たちは盾なんです
 ただの学生に過ぎない私たちを風紀委員足らしめるのは、盾たらんとするその自負ゆえだと私は思います。
 なんとなくですけど―――鋼盾さん、向いてるんじゃないかと思ったんです」
 

 なーんか語っちゃいましたねー、恥ずかしいなあと照れたように笑う初春。

 ごまかすように笑いながら、しかし強い強い芯を感じさせる瞳をまっすぐ鋼盾に向けている。


 “この街を守る盾であれ”

 そんな初春の言葉は鋼盾を確かに揺らした。

 それはあの日あの夜、ステイルや小萌に感じたものに似ていたような気もする。


 ステイルとの会話の中で鋼盾が見つけたその指標。

 小萌に見出した目指すべきあり方、その理想。


 鋼の盾、その名に相応しい人間になりたい、それこそが鋼盾掬彦の夢 

 初春の発言は意図せず、しかし鋼盾に深く食い込んでくる言葉であった
 
858 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 00:28:40.42 ID:nmTg5VXmo
 

「……初春にしてはなかなかいいアイディアかもしれませんですの」


 いつのまにやら紅茶の準備が終わっていたらしく、黒子がトレイを手にすぐ傍まで戻ってきていた。

 手際よく茶器を並べ、優雅な所作で紅茶を淹れてゆく。

 逃避気味に、黒子のその指先に半ば見とれていた鋼盾は、はっと我に返る。


「え……あ、そんな、こと」

「まあ、風紀委員になるには九枚の契約書にサインし、十三種の適正試験と四ヶ月に及ぶ研修をクリアしなければなりませんし。
 鋼盾さんにも今の生活があるでしょうから、無理は言えませんが……なかなか得るものは少なくないと思いますの。
 ―――もし興味がおありでしたら、わたくしにも推薦状くらいはご用意できますの」

「あ、わたしも書きます推薦状!」


 ビシッ!と手をあげる初春に、黒子はからかうように言う。


「初春の紹介状なんかじゃ逆に不安にさせてしまいますの」

「白井さんの紹介じゃ独断専行を疑われちゃいますよー! 試験官さんの心証が悪くなります! ここは私が!」

「初春、貴女……!」


 ピクピクと青筋を立てる黒子と、それを尻目に紅茶に舌鼓を打つ初春。

 からかわれているようにも見えないが、鋼盾にしてみれば晴天の霹靂以外のなにものでもない。

 とにかくなんとか話に割り込もうと声をかけようとした瞬間、


859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/01(月) 00:30:28.57 ID:JWXg2g7+o
美琴
860 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 00:33:07.36 ID:nmTg5VXmo


「やっほー、黒子いるー?」


 電子錠を能力で開錠し、室内に女の子が朗らかに乗り込んできた。

 その声にひどく聞き覚えがあるような気がして、反射的に顔をそちらに向ける。


「お姉様……来客中ですの!
 というか能力で鍵を開ける癖、いいかげんどうにかして頂きたいのですの……」

「あ、御坂さん! こんにちはー」


 叱責と愚痴、シンプルな歓迎、投げかけられた言葉は対極。

 されどそこに込められた気安さは、少女達の仲の良さを感じさせるものだった。

 来訪者は己の失態を悟ったらしく、申し訳なさそうに首を竦めて、


「ご、ごめん。……来客中なんて思………鋼盾さん?」

「……御坂、さん?」


861 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 00:33:58.16 ID:nmTg5VXmo


 果たして。

 数日前に出会った少女、超能力者の第三位、超電磁砲の異名を持つ常盤台中学のエース。

 鋼盾の親友たる旗男・上条当麻を想う、恋する乙女。


 御坂美琴が、そこに居た。




862 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 00:39:36.10 ID:nmTg5VXmo

――――――――

>>859 御見事!安易だったかな?
長々お付き合いいただいてどうもです。クソ重い、こりゃみんな連投するわけだww
途中コーヒー入れに行ったり、他所のSS見たりしてたよ実際

さて、このSSだと影の薄い美琴さんですが、再登場! あれですね、前にちらっと話した超電磁お茶会です
……佐天さんは原作通り幻想御手に夢中で連絡が取れないようです。ああ佐天さん

そしてなんか風紀委員にスカウトされてしまった鋼盾くん、買いかぶりだよなー
研修期間四ヶ月じゃ最新刊に追いついてしまいますので風紀委員は難しいでしょうか
上条さんの相棒は制約のキツイ風紀委員じゃ務まらないしね

……ただ、そんな未来もあるのかも、なんて
我ながら無責任な願いを込めて、放り投げてみました
いろいろ狙いもあったりします……一応伏線ということで


んじゃ
月曜日もお互い頑張りましょう!!
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/01(月) 00:41:33.64 ID:JWXg2g7+o
乙乙
毎日更新楽しみだ
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2011/08/01(月) 00:42:49.81 ID:jlJ27zRio
若いっていいよなあwwwwwwww
おっさんになっちゃったからか、そう思ったわwwwwww
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/01(月) 00:55:51.92 ID:KCWePjWto
黒子ー!!!!俺だー!!!!
幸せになってくれー!!!!
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) :2011/08/01(月) 07:56:47.44 ID:j/FzRXjAO
初春ー!!!!俺だー!!!!
幸せにしてくれー!!!!
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/08/01(月) 09:17:18.64 ID:beqNshAAO
涙子ー!!!!俺だー!!!!
嫁にしてくれー!!!!
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/01(月) 10:18:59.17 ID:nzhCwLjIO
磯野ー!!!!俺だー!!!!
野球しようぜー!!!!
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/01(月) 16:20:35.12 ID:GPgJgYXAO
>>868
中島乙
870 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 18:07:55.94 ID:nmTg5VXmo
みんなー!!!!俺だー!!!!
読んでってくれー!!!!


飯作って風呂入って飯食ったら投下するでござる
ニンニン
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 19:41:47.38 ID:AK+TpPVWo
>>870
ヤッホーイ!キタキタキタァ!

でも今時の忍者はニンニンなんて言わないってばよ。
872 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 20:06:11.80 ID:nmTg5VXmo
二次創作に学べ、アニメを参考にしろ、そして原作を敬え
さて、投下だってばよ!!
873 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 20:07:19.72 ID:nmTg5VXmo


――――――――――



「どういうことか、説明していただきたいですの。
 ――お姉様と鋼盾さんは、お知り合いなんですの?」


 先ほどまでの朗らかな雰囲気と一転、なにやら剣呑なモノを忍ばせつつ、黒子が疑問を口にする。

 常盤台中学、と言う共通点を白井と美琴に見出してはいた鋼盾ではあったが、なにやらただならぬ関係らしい。

 初春は初春で興味津々と言った表情でこちらを眺めている。

 まあ、他人事ならそんなリアクションになるだろう。


 実際、常盤台のエースさんとお知り合いという事実は、正直自分でも信じられない話ではある。

 目の前の少女たちが気になるのも仕方のないことだと言えるだろうが―――正直、白井さんが怖すぎる、と鋼盾は息を呑む。

 なんか座標を量ってる気配がする――例の鉄矢が飛んできそうで怖い、超怖い。


 というか、なんだ「お姉様」って。マジか。

 女子校というのはそこまでアレなんだろうか、なんというか花園というか。


874 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 20:08:37.61 ID:nmTg5VXmo


「んー? 何よ黒子、わたしと鋼盾さんが知り合いだと問題でもあんの?
 というか、鋼盾さん。こんなとこで何をされてるんですか?」


 きょとん、と心底不思議そうに首を傾げる美琴。

 相変わらずの美少女っぷりだ。ちくしょう旗男め。


 だが、その言い方はよくない、すごくよくない。

 まずは白井さんの誤解? を解かなくてはならない。

 なんかやばいぞあの子、そこはかとなくやばい、たぶんほんとに!


「あー、ええと、白井さん?」

「……はいですの」


 お姉様と随分と親しげですわねこの野郎、申し開きなら聞きますわよチャキチャキ答えなさいな。

 そんな黒々とした負のオーラを纏う黒子に、鋼盾は果敢に挑む。

 やましいところはない! やましいところなどないのだ!


「えーと、御坂さんとは共通の友人がいるんだ。
 その縁でこないだ話をする機会があって、今日は偶然に再会でお互いびっくり!
 そうだよね美坂さん!」

「ふえ?
 ……っ、だから私とアイツは友達なんかじゃ!」

「あああ、そういうのいいから! ホントいいから!!
 ……そういうわけで白井さん、僕は無罪です!」


 無罪ってなんだよ、と心中で呻きつつ、しかしこの点ははっきりしておかないとヤバイと本能が告げている。

 つい数分前までの凛とした風紀委員のお嬢様のイメージを、こっそり抱いた胸のトキメキを返して欲しい。


875 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 20:10:47.86 ID:nmTg5VXmo


「……なるほど、共通の“ご友人”ですの……。
 鋼盾さんのご友人と申されますと……いえ……その方は常盤台の生徒ですの?」

 
 違いますわよね? と言外に含みつつ黒子は言う。

 それはその通りで、鋼盾のような普通の男子高校生には常盤台の知り合いなど、基本ありえない。

 年齢が違う、性別が違う、何より何よりレベルが違う。

 御坂美琴と白井黒子、眼前のふたりは例外中の例外である。


 逃げ道を封じられる悪寒を感じつつ、しかし不用意に嘘を吐くわけにもいかない。

 結局、正直に口を割る鋼盾。


「……いや、うちの高校の生徒です」


 あああ、いよいよ追い詰められた。

 助け舟を期待して初春と美琴にアイコンタクトを送ろうとするも、一瞬でそれは無意味だと知れた。


 片や、嫌になるほどキラキラとした笑顔で今か今かと続きを待ち望む初春飾利。

 片や、「でも私とアイツは……」と赤い顔のまま小声でブツブツと呟くだけの御坂美琴。

 
 援軍は、来ない。

 少なくともこの部屋には存在しなかった。

 ホワイトボードには“ 巡回後、直帰 固法 ”とのメッセージが書かれており、まだ見ぬ固法さんの登場はない。

 その他のみなさんはシフト外だ、いつもお疲れ様です夏休みを満喫してくださいチクショウ。


 恨みがましく固定電話を見つめてみるも、こんな時ほどベルは鳴らないものだ。

 夏の昼下がり、学園都市――少なくともこの近隣は平穏至極。

 平和じゃないのは鋼盾くらいらしい……不幸だ。


876 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 20:12:57.09 ID:nmTg5VXmo


 そうして、ついに白井黒子が核心へと切り込んでくる。

 否、切り込むという表現では誤解を招くだろう。


 それは剣でなく刀でなく、小柄ですらなく、ただただ鋭く打ち抜くモノ

 面では無駄が多く、線でもまだ余分、突き詰めて研ぎ澄ましたそれは、点


 射線すらない、点撃

 必中の撃針


 それは空間移動の大能力者たる、白井黒子の真骨頂。

 言葉の針はけして誤ることなく、急所を鮮やかに貫いた。


「……鋼盾さん?
 差し支えなければそのご学友のお名前を伺ってもよろしいですの?」


877 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 20:14:40.44 ID:nmTg5VXmo


 孤立無援 vs 一騎当千。

 勝敗など、最初からわかりきっていた。


 鋼盾が呻くように呟くは親友の名前、彼のヒーローの名前。


 紛うことなき、それは敗北の宣言。

 未だ鋼壁に至らぬ己が盾を、鋼盾掬彦はただ、嘆いた。



878 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/01(月) 20:19:48.28 ID:nmTg5VXmo




――――――――



黒子は結局こんな役回りだよ!
美琴が出るとどうしてもこうなっちゃうよね、まあそれも魅力かな

カップリング要素を全く含まない上条黒子コンビとかすごい俺得
あの二人って美琴の件がなければ絶対相性いいんじゃねと思うのは俺だけじゃないはず!

上黒上吹、電磁番外通行、浜絹浜フレあたりは個人的にカップルよりコンビが映えると謎の主張、逝くぜ相棒!
ラブもデレもなくなんとなくなかよしっで「―――背中は任せる」みたいなかんじもいいじゃんねと同士求ム
そんな乾いた風を絡ませる感じのノンシュガー男女コンビ物をいつか書きたい、いや誰か書いてくれ

あ、ここ数回の投稿、地の分での記述で「白井」と「黒子」が混ざってスマン
鋼盾と距離感のある時点で「黒子」と書くのはなんとなくヘンな気がして「白井」って書いてたら、
いつの間にかソレすっかり忘れて「黒子」にしてた。美琴は美琴で初春は初春、黒子は黒子でいいかね。

水木金と出張でパソ使えないので、ある程度キリのいいとこまで行きたいですね
あとそろそろ次スレについても考えねばね

んじゃ
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/08/01(月) 21:00:14.07 ID:Cr2wZJ6AO
相変わらずの黒子で安心したw
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/01(月) 22:04:46.02 ID:Y5sZY9uIO
なんやかんやで黒子は上条のこと認めてるからな
上条に突っかかるのも美琴にフラグ立てたんなら他の女にふらふらせずにきっちり責任とって下さいまし!って感情もあるんだと思う
もちろん敬愛するお姉様にあんの類人猿めがぁ〜って複雑な気持ちもあるだろうが
何が言いたいかって黒子可愛い、幸せになってほしいマジで
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/01(月) 22:59:23.01 ID:S7UrgLCko
吹寄さんマダー?
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 04:31:55.24 ID:/j8cQofAO

ラスト2レスの無駄な格好良さw
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 11:51:50.50 ID:NlD/kI6Uo

忍者なんて今時珍しいものでもないじゃん?
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 16:00:24.05 ID:RurFWV+m0
>>882 ホントだカッケーwwwwラスト1行なんて神裂戦で使ってもイイレベルww

連日更新乙
正直2スレ目突入するほど続くとは思わなんだ 次も待ってる

・・・・佐天さんは?


885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/02(火) 16:02:59.57 ID:RurFWV+m0
すみません上げました

忍者>>871、すまんが介錯頼む
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/02(火) 20:18:42.14 ID:eYMwv7FGo
>>885
生きよ!そなたは美しい・・・
887 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:21:40.93 ID:DzGDM9X2o


>>881
 吹寄さんはラストあたりで結構いいポジで出てまいります
 意外とキーパーソンなんよねあの子、あと俺の嫁な


>>885
 神は言った。ここで死ぬべきではないと
 佐天さんは出てきませんが、今回は彼女が中心ですよん


投下します
よいしょ


888 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:23:36.40 ID:DzGDM9X2o


――――――――――



 そうして、黒子の閻魔帳に「上条当麻」なる怨敵の名が刻み込まれることになった。

 マジでごめん、と鋼盾は心中の上条に両手を合わせる。仕方なかったんだよ! 何この子、マジで怖いよこの子! 危ういよ!

 昏いオーラを湛える黒子は怖い、超怖い、すごく怖い。


 とりあえずなにやらやっちまった感はあるものの、当面の危機は回避できたらしい。

 それから暫くは、紅茶片手の穏やかな談笑となった。


 鋼盾は、自分が幻想御手に手を出そうとしたことを率直に美琴へ告げた。

 そうしなければ鋼盾がここにいる説明が出来なかったし、己の不実を隠す気にもなれなかった。

 適当に誤魔化すことも出来たかもしれない、鋼盾がソレを望めば黒子も初春も、きっと協力してくれただろう。

 ただ、職務とはいえ彼女たちの間に秘密を作らせることは、なんというか憚られた。

 それに、自分のやらかしたことには責任をもたなければならない。

 それが標に向かう第一歩だろうと素直に思う。


「……そう、だったんですか。幻想御手を」


 美琴はポツリと呟くと、そのまま目を伏せて黙り込んだ。

 超能力者である自分が何を言っても説得力に欠ける、と思ったのだろう。

 言葉を飲み込み、なにかに耐えるように黙り込んでしまった。


 それはきっと、超能力者たる彼女の孤独。

 持てる者と持たざるものの間にあるその壁は、あるいは彼女がこれまで少なからず感じてきたものかもしれない。

 孤高と言えば聞こえはよいが、それはきっと孤独と言い換えるに足るモノであるといえるだろう。

 そんな顔をさせてしまったことに、心の底から罪悪感を覚える。

 それは、きみが背負うべきものじゃない――ぼくが支払うべき負債だ。


 だから鋼盾は爆弾を落とす。

 美琴との付き合いは短いが、それでも彼女を元気にする方法は既に心得ていた。

 ……はっきり言って、一発である。

889 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:24:59.52 ID:DzGDM9X2o


「そういえば御坂さん、あれから上条君には会えた?」

「え、あ、はい。一昨日の夕方、偶然」


 一昨日、7月20日。

 あの、ぼくらにとっての運命の日のことだ。

 おそらくは、上条の補習の帰りあたりだろうか。

 黒子が漆黒のオーラを纏い始めるが、鋼盾はあえてそれを無視する。

 初春が「あの時の!そういうことだったんですね!」と膝を叩いた。


「そっか……ちゃんと話はできた?」

「はい。アイツちょっと用事があったみたいで、少しだけでしたけど、
 ―――でも、ちゃんと話せたと思います」

「そっか。あー、ビリビリはしなかった?」

「もう! してませんってば!! 
 えっと、まあ……普段の行いを思えば、偉そうなことはいえませんけど」

「ごめんごめん。でも、よかったね」

「……はい」


 むくれて頬を赤くして、それでも上条当麻の話となれば美琴はこのとおりに可愛らしくなる。

 先ほどまでのいたたまれないような雰囲気は、あっという間に払拭されていた。

 話も出来たようだし、どうやら勇気を出してくれたようだ。

 頭を撫でてあげたいような気分だが、勿論そんな真似ができるわけがない。

 ビビリと笑うな、こちとら常識人だ。

 旗男とは違うんです。

890 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:26:45.29 ID:DzGDM9X2o


「……おお、なんかふたりともすごく通じ合ってますね」


 初春が感じ入ったように呟く。

 御坂美琴は初春からみれば「年上」で「超能力者」で「お嬢様」。

 そんな彼女がこんなにも無防備というか、素直な一面を晒していることに初春は驚きを隠せない。


 話から察するに美琴の想い人は他にいるらしいが、目の前の鋼盾相手にもどこか甘えるような、そんな気安い空気を纏っている。

 意外といえばひどく意外ではあったが、拗ねて照れて怒って笑う、そんな素直な美琴はかわいらしかった。


 齢相応の女の子のような御坂美琴。

 妹の恋路を見守るかのような鋼盾掬彦。


 能力の位階、年齢、……申し訳ないけどルックス的には美女と野獣……はちょっと違うから……ドワーフ?

 斧を手に戦う野蛮なタイプじゃなくて、森の奥で剣とか盾とか作ってそうな感じの。


 傍目にはちょっとばかり不釣合いな二人だったが、その関係には不思議な安定感があった。

 なんだかとってもい雰囲気だと初春は思う。


891 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:30:07.50 ID:DzGDM9X2o


「…………まあ、そうですわね」


 お姉様ラヴな黒子にしてみれば、初春ほど素直に認めることはできないが、彼女は基本的に聡明で公平な人物である。

 件の「あのバカ」――上条当麻というらしい――については色々と忸怩たるものがあるが、目の前の鋼盾にそれをぶつけるのは筋違いだと認める。


 御坂美琴、彼女は輪の中心には立てても、輪の中に入ることはできないひと。

 超電磁砲たる美琴には、対等に喧嘩のできる相手や、相談をできる相手がいないことも知っている。彼女がそれに悩んでいることも、勿論。

 黒子としてはそれを自分に向けて欲しかったのだが、立場や年齢を鑑みればそれが難しいであろうことも理解できた。

 後輩や目下に甘えることをよしとする彼女ではない。


 鋼盾掬彦、そして忌々しい“あの馬鹿”上条当麻。

 美琴自身が自らつくり上げた“ご友人”たちを否定することなど、御坂美琴の理解者であらんとする黒子にできよう筈もない。

 
 敬愛する人の世界が広がること、それを寂しいと感じてしまうのは己のワガママ。

 ここは広い心で行かねばなりませんの! と黒子は己を律する。


 ……とはいえ、けして納得できるわけではないのだけど


892 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:31:54.24 ID:DzGDM9X2o


「って、あーもう! そんなんじゃないったら!」


 口ではそう言いつつ、美琴自身もそれを認めざるを得ないところがあった。

 19日は囮捜査を邪魔されたことも手伝って、結局上条とはいつもどおりの遣り取りに終始してしまい、大いに凹んだりもしたのだけれど、

 一昨日は美琴が少し譲るだけで、不思議なほどスムーズに上条当麻と話をすることができた。


 電撃も怒号もない、多少ちぐはぐだったが、それでもおだやかな一時。


 上条との談笑。そんなことは初めての経験で、勝負に勝ったわけでも認められたわけでもなかったが、不思議と達成感と充実感に心が満たされたのを覚えている。

 落雷の一件についてキチンと謝り、更にはビリビリ中学生ではなく“御坂”と呼ぶという約束すらも取り付けることができたのだ。


 そんなしおらしい美琴の態度に上条が「オマエなんか変なものでも食ったのか?」なんて業腹な台詞を口にしたりもしたけれど、それさえも許せた。

 「じゃあな、御坂」と、そんななんでもない別れの挨拶ひとつで、自分はこんなにも浮かれている。

 
 そしてそれはきっと、隣の席に座る人物のおかげだった。

 人見知りの気はないと自負する美琴だが、それでも己が狭い世界にいるという自覚はある。

 上条、そして鋼盾に出会ったことで、己の世界は随分と広がったように思う。


 ここしばらくで一番の上機嫌。

 美琴は浮き立つ心を抑えることができない。


893 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:33:17.75 ID:DzGDM9X2o


 女子中学生とのお茶会、青ピの怒りを買うこと疑いないこんなシチュエーション。

 自分のような人間がいてもよい場所とは思えないが、それでも楽しい雰囲気に鋼盾の心も弾んだ。

 美琴の登場で結局有耶無耶になっているが、風紀委員を勧められたこともびっくりだった。


(風紀委員、か)


 腕に腕章を巻き、さっそうと現場に駆けつける……そんな己の姿を想像しようとして、失敗する。

 初春や黒子はああ言ってくれたが、イマイチ納得がいかないのが正直なところであった。

 ただ、多分に過大評価であろうと、褒められたことは純粋に嬉しい。

 
 だが、鋼盾にはもうひとつやらなくてはならないことが残っている。

 いつまでもお茶と雑談に興じているわけにもいかない。


 ふと会話が途切れ、各々が紅茶に手を伸ばしたその空隙に、鋼盾は言葉を挟み込む。


「白井さん、初春さん……僕が今日ここに来た理由は、もうひとつあるんだ。
 さっき話にも出た、佐天さんの事で、お願いがある」


894 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:34:27.72 ID:DzGDM9X2o


 佐天涙子

 柵川中学校に通う中学一年生の無能力者

 初春飾利の親友にして、黒子と美琴とも親交のある、その少女

 スキルアウトに嬲られていた鋼盾を救うべく足を踏み出した、優しく強い女の子


「白井さんに説明したとおり、僕は彼女に助けられた。
 でも、碌にお礼も言えてない上、彼女を否定するようなことを言ってしまったんだ」

「ですが鋼盾さん、あなたの判断はけして間違ってはおりません。
 あの場にいたのがわたくしでも、同じセリフを口にしましたの」

「……ちがうんだよ。ぼくはね、冷静な言葉に隠して彼女に自分を重ねて、八つ当たりをしたんだよ。情けないことにね。
 それを謝りたい、そしてお礼を言いたいんだ。……直接が無理なら、電話でも手紙でもいい―――どうか、お願いできないかな」


 頭を下げる鋼盾への対応に惑う黒子と初春は、普段の連携の賜物たるアイコンタクトを開始する

 ……別にかまいませんわよね? と訪ねる黒子、それに応える初春は、少しばかり困った顔をしている。
 

「わたくしは問題ないと思いますの。もちろん佐天さんに確認を取らなくてはいけませんけど。
 でも……何か問題でもありますの? 初春?」

「……ええと、問題というか……佐天さんとはここ2日、連絡が取れてないんです。
 何度かメールを入れてはいるんですけど……」

「―――あの日以来、連絡が絶えているんですの?」

「……はい」


 俯く初春

 鋼盾の脳裏には、空っぽの表情で目を伏せた佐天涙子の姿が浮かんだ

 あの状態で、連絡もつかない……それは


895 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:35:28.33 ID:DzGDM9X2o


「……心配だね」

「ええ、佐天さんにも相当怖い思いをさせてしまいましたし、フォローが足りなかったかもしれませんの」


 忙しさにかまけて怠っておりましたの、とため息を吐く黒子。

 だが、鋼盾の懸念はそこではなかった。


「ん、それに……考え過ぎだといいんだけど……、
 白井さんが駆けつけてくれた取引現場、あそこは再開発地域で人気が少ない場所だろ?ちょっと奥まった場所だしさ。
 まあ、距離自体は離れてないから、気まぐれな散歩ってこともありえると思うけど……」
 
「―――佐天さんが、幻想御手に手を出そうとしている、そう仰りたいんですの?」


 僅かに反発を孕みながら、しかし冷静に分析を行う黒子。

 初春と美琴の目も真剣な色を帯びた。

 
「わからない、単なる偶然だったかもね。
 ――でも、僕が『無能力者に出来ることなんて、なにもない』っ言った時の佐天さんの顔が忘れられない。
 ひどく、傷ついてた…………つくづく、悪いことを言ったと思う」


896 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:36:26.27 ID:DzGDM9X2o


 ああ、これは狡い言い方だったな、と鋼盾は3人の様子を窺う。

 それぞれレベル1、レベル4、レベル5―――彼女らはいずれも能力者、頭に打ち消しの“無”はつかない。


 4人は仲の良いグループだと、先程の会話で聞いていた。

 鋼盾+デルタの4人組のようなものだろうか――いや、華やかさじゃ及ぶべくもないが。


 0、1、4、5

 無能力者、低能力者、大能力者、超能力者

 風紀委員が2人、一般学生が2人

 名門常盤台中学の生徒が2人、普通の中学校の生徒が2人

 率直に言って、えらくアンバランスな組み合わせであった


 学園都市に7人しかいない超能力者にして、名門常盤台中学に通う“超電磁砲”御坂美琴

 希少能力たる空間移動の大能力者、常盤台生で更に腕利きの風紀委員でもある白井黒子

 能力こそ特筆すべきものではないものの、風紀委員として活躍する初春飾利

 一般中学に通い、無能力者の烙印を押された佐天涙子

897 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:37:53.74 ID:DzGDM9X2o


 そこに厳然と存在する格差。

 能力強度、預金残高、社会的地位の格差。

 穿った見方かもしれないが、もし佐天の立ち位置に鋼盾が立っていれば……劣等感を感じないとは思えない。

 美琴や黒子にそんな意図はないだろうが、それは関係ない、鋼盾や佐天の側の問題なのだ。


 身の内で膨らむ嫉妬という名の怪物、鋼盾だってそれを完全に退治したわけではなかった。

 けして御しきれぬ感情の濁流、それゆえに鋼盾はそれを怪物と呼んだのから。

 無能力者の苦悩は、能力者にはきっと計り知れない。


 分かっている―――なにも、傷ついているには無能力者だけじゃない。


 なまじ能力の発露がある分、低能力者の方が余計に苦しみ、もどかしさに悶えることもあるかもしれない

 能力開発も大能力者以上はノウハウも碌にない未知の領域、レベル5の壁を見上げつつそこに日々に挑むのは辛いだろう

 学園都市に7人しかいない超能力者のプレッシャーなんて、鋼盾には想像すらつかない


 競争原理の支配するこの街じゃ、だれもが少なからず囚われ、傷を抱えている。

 もしかしたら、それこそこの街の頂点である第一位でさえ。


898 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:39:27.68 ID:DzGDM9X2o


 分かっては、いるのだ。

 だけどそれでも、無能力者の抱える苦悩というのは深い。

 幻想御手を探して電子の海をさまよったあの日々、鋼盾はそれらの声をたくさん耳にした。


 それは怨嗟

 それは諦念 

 それは哀切

 それは疑問

 それは嫉妬

 それは羨望

 それは逃避

 それは切望

 それは絶望

 それは慟哭


 同調した、同情した、同意した

 同時に唾棄した、同属嫌悪というヤツかもしれない

 己はこいつらとは違うと言いつつ、己を鑑みればやっぱり同類で、同じ穴の狢


 蜘蛛の糸に集る亡者の群のひとりに過ぎぬ己を知ってしまって

 鋼盾掬彦は結局、道を盛大に踏み外そうとした。



899 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:42:42.24 ID:DzGDM9X2o


 佐天涙子はどうだろう


 己の無力を突き付けられて、空の深きを押し付けられて

 それでも彼女は笑顔でいられるだろうか

 凛と正しく在ることができるだろうか

 幻想の白き白き御手を、払えるだろうか


 初春飾利を

 白井黒子を

 御坂美琴を

 この都市を


 佐天涙子は、恨まなかったのだろうか


 無能力者の己を

 許してあげることが、できたのだろうか


900 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:44:05.76 ID:DzGDM9X2o


「……ぼくが言っていいセリフじゃないかもしれないけど、佐天さんのこと、よく見ててあげて欲しい。
 あの日、無能力者であることを芯まで突きつけられた僕は、……友人と先生に救われた。
 それがなかったら、自棄になってたかもしれない」

「……はい、勿論です、佐天さんは私の友達ですから」

「及ばずながら、わたくしも…………お姉さま?」

「…………」


 黒子の知る美琴であれば、間、髪を入れず「任せて!!」と力強い返事を口にしてくれる筈。

 しかし美琴は黙りこくって、ひとりティーカップを見つめたまま。


 数秒ほどテーブルを沈黙が支配した後、美琴は顔を上げて鋼盾を見据え、その口を開いた。


901 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:45:18.09 ID:DzGDM9X2o


「……鋼盾さん、ひとつお聞きしたいことがあります」


 風紀委員絡みの会話になってから、意図的に会話から外れていたらしい美琴が声を発した。


「……私は超能力者です、そんな私が、佐天さんに何を言ってあげられますか」


 声は静かに。

 感情の波一つ感じさせぬその静寂が、逆に裡に宿る激流を示しているように見える

 白井黒子が悲痛な表情を浮かべ、初春飾利が視線をさ迷わせる。


 それは、持てる者の苦悩

 ならば、持たざる者がそれに答えよう


 上条当麻なら、月詠小萌なら、ステイル=マグヌスならどういうだろうか、鋼盾は一瞬思案しすぐにそれを打ち消した

 この問いには、鋼盾が自分自身の言葉で答えなければいけない。


 超能力者の彼女の問いに

 無能力者の自分が応える

 
 鋼盾は小さく息を吐き、迷える少女に言葉を紡いだ




――――――――――
902 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 20:51:53.93 ID:DzGDM9X2o

――――――――――

ここまで
超電磁お茶会(RTT)でした

次回は土日あたりかな
超能力者の問いに、無能力者は何を思うのか

……美琴→鋼盾を敬語にしたのは失敗だったかなー
でもタメ語もへんというジレンマ

布束先輩は偉大です

んじゃ


――――――――――

903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2011/08/02(火) 20:57:01.17 ID:4rIvnw9ro
敬語でいいと思うけどな。そっちのほうがなんか自然。

超電磁砲偏に入るといいお兄ちゃん、禁書偏になると孔明的立場っていう鋼盾くんマジイケメン
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/02(火) 20:57:15.44 ID:eYMwv7FGo
乙でした

敬語じゃにゃいと逆に変だから良いと思うが?
この後記憶破壊が待ってるんだよな・・・美琴のこれからに期待だ
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 21:21:27.43 ID:+bEbP9UT0
>斧を手に戦う野蛮なタイプじゃなくて、森の奥で剣とか盾とか作ってそうな感じの
ああ、なんか凄い似合う。
きっと勇者カミジョウに便利な道具とか作って渡してるんだろうな。
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/02(火) 21:25:12.80 ID:eYMwv7FGo
ドワーフは森じゃなくて洞窟に住んでるんだよ!かざりは物知りだけど魔術にはうといかも!
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 21:38:54.53 ID:/j8cQofAO


変わり者、あるいははぐれ者のドワーフって設定も、コウやんには似合ってるんだにゃー
908 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/02(火) 23:30:25.39 ID:DzGDM9X2o
>>1です。コメント感謝です

>>903-904
そうだよね美琴さん敬語使える子ですよね相手がそげぶとかもやしとかアレなだけですよね

>>905-907
おおサンクス!以前の勇者ネタ、覚えててくれたのかな?滑ったかなぁと反省してました
ドワーフは地下、そういやFFでもそうだったよラリホー!指輪物語を流し読みで片付けたツケがこんなところで!
こういうツッコミはありがたいです。はぐれドワーフとか素敵


さて、こんなスレのくせにもう900超えました、どれもこれも皆様のおかげです
このスレが初の>>1は、もちろん次スレ立てるのも初なので、おまえらスタイリッシュな次スレ立ての心得とか教えれ
よろしくお願いします。

@スレタイ
 つうかまだスレタイ回収してねーよねーちん。>>225だとスレタイ詐欺すぎるし

 神裂「鋼盾―――鋼の盾ですか、よい真名です」part2

 既読のみなさんには↑みたいのが分かりやすいかなと思いつつ
 新しいスレタイの方がご新規さんに見てもらえるチャンスが増えるんじゃねとか考えてしまった
 変えてもいいのだろうか、どちらにせよ鋼盾の名前は入りますので

Aどのくらいで移動するべきか
 このスレの容量ギリギリまで使うべき?それとも内容的にきりのいいとこまでで止めとくべき?

B2スレ目の>>1には何を書けばいいのか
 ここの>>1は長すぎたね。ここのURLとかあらすじとか登場人物とか載せたものでしょうか
 あとこのSS注意事項とかある? 日村注意とか書いといた方がいいのでせうか?

Cその他注意事項など
 あれば是非!!


長々とスマン、よろしくお願いします
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/03(水) 04:10:04.04 ID:fNsH/jHs0

ペンデックス「現状、最も難易度の高い敵兵『鋼盾掬彦』の破壊を最優先します」
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/08/03(水) 04:56:38.67 ID:YPoJnwWO0
@鋼盾「僕の名は“Scutum800”――!」
既存台詞からだけど分かり易いよ!
相変わらずタイトル詐欺になってる気がするけどww

Aテキスト量で変わってくるから裁量次第
1、2レスで移動とかは流石に面倒かもしれない
書き手にしか文量は分からないのだ……

Bあらすじとか前スレURLとかきくひこの扱いについての諸注意とかかな
いきなり本文書き出すところもあるけど>>1の芸風だと丁寧に書くくらいでいいかもしれない
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/03(水) 07:00:18.23 ID:W9HR3oZAO
鋼盾「心に、じゃないですか」
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/08/03(水) 08:41:56.34 ID:Yv2Zye+ao
>>908
アックア「@タイトルはpart2とかで良いと思のであるな、続編だとわかり易いしスレタイの回収がまだであるからな」

ヴェント「A次回の投下開始で残りが投下レス+10以下くらいなら次スレ立てて誘導してみたらいいんじゃないの?」

テッラ「B前スレのアドレスはあると親切ですねー、次スレから読み始める方々もいるでしょうからねー」

フィアンマ「Cスレが完結したらHTML化依頼を忘れないようにする事くらいだな、俺様がリンク先を貼っといてやるか」


■ HTML化依頼スレッド Part2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310647825/
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/08/03(水) 16:22:24.28 ID:OHi58qzAO
>>909
やめてあげて死んじゃうww
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/03(水) 19:02:55.00 ID:/4wPV0Xvo
鋼盾「神裂―――神を裂くですか、良い名前ですね」

スレタイを鋼盾verでやってみた
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/08/03(水) 19:15:24.70 ID:J01jsBn6o
>>908


@スレタイは詐欺だと言われようと皆で出したヤツを使って欲しいかな…
そんとき>>1で注意出しとけばいい気がする

A次まで行って足りるなら使えばいいし
足りなきゃ新しいところで


C最高の作品を
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/03(水) 19:31:46.58 ID:FANxSTUZo
>>912
いつから神の右方はこんなに良い奴らになったんだ?この通りだな。

まああえて言えばpartXでなくその一とか第一巻とかひとつめとかの方がなんか雰囲気出るかな?
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/03(水) 23:24:18.67 ID:XP+vGnhR0
前にスレタイ祭りがあったから、スレタイの話となると皆ネタに走るなやっぱwww
タイトル詐欺上等になってるのが如何にもこのスレらしい。

真面目に考えると、一巻の内容のうちは普通にpart2とかでいいと思うな。
これまでのペースを考えるに、一巻の内容が全部完結するまでまだ結構かかりそうだし。
前のアンケートがマジなら、2巻以降では鋼盾くんから主役交代の可能性もあるみたいだし、その時はまた新スレ立てればいいんでないかな。
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/04(木) 10:51:57.07 ID:RjMQfaQqo
つまりここの読者は>>1に23巻まで書かせるつもりですねわかります
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/04(木) 13:07:49.22 ID:OeXlpbuPo
原作が終わるまでにそこまで行けるのか?このペースだとあと五年はかかりそうなんだが
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/08/04(木) 23:41:17.52 ID:/FlRlPbAO
一方禁書みたいになんかいいかんじのオリジナルな路線に進めて締めないと終わらない戦いになるぞ……。
原作結構長いし。
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 09:47:43.89 ID:hPR9/n3AO
終わらない歌を歌おう
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/08/05(金) 10:00:35.18 ID:rnnCr8WRo
超電磁組に新しい風を吹かせる掬彦かっけえな。

1 自分のいいと思うタイトルが一番だと思うけど個人的にはさらなる詐欺の重ね塗りを望むぜ。
姫神「鋼盾くん。私が。ますます薄く。」とか。

2 きりのいいとこで移動すべき。ぎりぎり狙って爆発するスレをいくつも見たので。

3 鋼盾掬彦にスポットを当てたアナザーストーリーだってことの説明は欲しい。
それと前スレアドレスは必須かと。

4 もょもと
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/08/05(金) 10:12:19.50 ID:1KqT1X69o
>>921
クソっタレの世界のため
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/08/05(金) 10:34:37.81 ID:lIcE/qGqo
>>922
ゆうて いみや おうきむ
こうほ りいゆ うじとり
やまあ きらぺ ぺぺぺぺ
ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ
ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺぺぺ
925 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/05(金) 21:20:37.60 ID:MNQfqmgNo
どうも>>1です。
携帯のアンテナも立たない山奥から、やっとこさ下界に降りてまいりました。
夕方、帰りの車の中でようやく電波が通じた途端に、着信も未読メールもうっちゃってこのスレを覗いてました。
ニヨニヨする俺を見て、運転をしてくれた方が「……恋人さんですか?」なんてからかってくる始末。
テンパリつつよくわからん見栄を張って肯定気味の反応をしてしまいました……なにやってんだか。

どうやらこのスレとおまえらが>>1の恋人のようです
愛してるぜ

さて、アドバイスとスレタイネタに感謝を。
おかげさまでスムーズに次スレに移行できそうですよ。

でもスレタイが悩ましいですね、真名云々が未回収ですので尚更。やっぱそのままがよさそうでしょうか。
だけど現スレタイで鋼盾×神裂を期待したという人が数名いらっしゃったので、変えた方がいいのかなとも。
とはいえコレというのが思いつかないのですねー……姫神を入れると肩透かしを食らう姫神ファンの皆様に怒られますって!!
もうちょい考えてみますね。助言サンクス!

再構成の〆方、〆時は>>1にとっても悩みの種です。
1巻終了で終わらせるのが一番無難かつ綺麗なんですよね実際。やまない雨はなく、終わらない歌もない。
とはいえ妄想は止まらないぜ……でもそうなると終わりを見失い蛇足になりかねんジレンマ。
あと2巻がしんどい! ヘタ練は再構成屋にとって正直鬼門ですたい! あのもょもと野郎! 好きだけどさ!

……まあ、まずはかっちり一巻終わらせますので。
そのためには更新からですね!

明日の夜に更新できるよう頑張ります。
よろしければお付き合いください。

926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/05(金) 22:22:47.90 ID:2m4gM6i/0
>>925
ヘタ錬なぁ

味方にすると強すぎるし、敵にしてもヘタレ自滅一択だし
面倒くさいよな
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/06(土) 00:16:33.33 ID:i6zzwS5P0
ヘタ錬はねぇ。
ある意味右席連中以上にチートというか、そもそも戦いが成立しないような奴だし。
禁書キャラ内でも、最もイカサマくさいキャラの一人だよな。
アンケートで浜面がやりあってたけど、どうやれば浜面で勝負になるのだろうか。
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/06(土) 06:25:11.54 ID:3MAdJb3Co
>>926
黄金錬金封印がベターだろうな。普段は瞬間錬金までとか(十分凶悪だが)
とあるSSでは幽々白書の美しき魔闘家鈴木ポジでオーダーメイド霊装作成家になってたな


黄金錬金解放状態だとクロス物になるが姫神と一緒にヘルシングに入隊するってのがあった
つまりもっとチートなキャラを出すという方法。またはタキシード仮面の如くピンチの時だけ出てくるとかか?


最後には能力を失った状態。原作のように全て奪うか能力だけ奪うか記憶だけ奪うか・・・
このルートは話は面白くなると思うが扱いが面倒になりそうな予感・・・



好きなキャラなんで活躍してほしいんだよな、姫神共々。二巻の二人はあまりに不遇で困る。「救われぬ者に救いの手を」
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/08/06(土) 10:40:27.95 ID:hVvI0Bv9o
難しいから。二巻はパス。ふふ…。
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/06(土) 12:29:09.59 ID:Lmxs5+Qfo
>>929
愕然。なぜ二巻は救われぬのか・・・なぜだ神よ!
931 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/06(土) 13:20:57.10 ID:reOwnCyXo
おまえらあの二人大好きだな、……俺の方が大好きだけどな!
そもそも2巻のコンセプト自体が「失敗した上条当麻とヒロインになりきれないヒロイン」だったっけ?
ほのぼのやギャグ以外で真っ向から二巻に挑んだ作品ってあるかな? 教えろください

例の浜面姫神はいろいろ考えてはいるんですが、現状原作に忠実な鋼盾編とはうって変わっての捏造祭りですね
そもそも長編向きじゃねえし、複数視点の主人公不在になりそうだし、アウレのキャラが違うし、カタルシスに乏しそうな感じで正直ボツりたい
……まあ、とりあえず棚上げです! まったく新しいものを書きたい気もするしな!

夜に投下すると言ったが……あれは嘘だ!
飯食ってから14時くらいに投下するぜ!

932 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/06(土) 14:18:02.10 ID:reOwnCyXo



――――――――――



「そうだね、じゃあ、ぼくについての話から始めていいかい?
 ……ああ、あんまり楽しい話にはならないよ。あらかじめ謝っておこうかな……多分に愚痴も混ざるから」
 

 幾許かの沈思の後、鋼盾は言葉を紡いだ。

 警告と謝罪を前置きにして、無能力者は己の過去を話し始める。


「ぼくが、学園都市に来たのは中学校入学の時でね。
 弱い自分を変えたくて、この街に来て、本当に必死に能力開発に打ち込んだ。
 今まであんなに真剣に何かに取り組んだことなんてなかった――周りの誰より努力したつもりだよ。
 そして一年目の身体検査で出た結果が“無能力者”だった」


 それは零の烙印

 鋼盾掬彦が、佐天涙子が、この街の6割の少年少女が押し付けられた無慈悲な称号

 失敗作、粗悪品、失格、ハズレ、選外、ハネモノ、問題外、出来損ない―――無能力者


 そんな烙印を押される痛みと屈辱をきみは知らない。

 ことによると黒子も初春も、それを知らない。


933 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/06(土) 14:19:05.73 ID:reOwnCyXo


「無能力者っていっても、本当に能力のない人はいない筈だよね。
 発現しても微力すぎるだけで、書類上だけの能力者(ペーパーサイキッカー)だとしても、能力はあるんだ。
 だけど、ぼくには、それすらもない――本当に、無能力なんだ。御坂さんが学園都市第三位なら、ぼくは学園都市最下位だよ」


 空欄ばかりの検査結果に落ちた涙

 歪まざるを得なかった、無理矢理に取り繕ってツギハギだらけのこの心

 美琴の問いに真剣に答えようと思うなら、そこから曝さなくてはなるまい


「随分と絶望したし、なにもかもがイヤになった。……正直中2中3の頃のことは思い出したくもないよ。
 努力することをやめて日々をやり過ごす―――そんな時、“超電磁砲”の噂を聞いた」


 抜け殻のようなあの灰色の2年間

 上条に、小萌に、クラスメイトたちに鮮やかな色を分けてもらった今となっては、あまりに遠く、否定したい過去

 だが、そんな日々も今の鋼盾を作り上げたものであることは間違いない

 
 幻想御手に手をだした原因、鋼盾掬彦が未だ捨てることの出来ぬ闇

 いつの日か克服してみせると誓った、汚れた感情


「曰く“レベル1から研鑽を積んでレベル5に至った努力の人、その類い稀なる研鑽。
 学園都市の希望の星、第三位、御坂美琴、名門常盤台中学校へ進学”……そんな感じだったかな」


 それは超能力者、御坂美琴への恨み言。

 無能力者の、恨み言。

 
「正直、ふざけるなと思った。努力すれば報われるなんて、なんて無責任な物言いだと思った。
 努力すれば超能力者になれるなら、今頃この街は超能力者だらけだよ……何が努力の人だ。
 そういう種類の天才だっただけじゃないかと、顔も見たこともないきみを羨み、そして恨んだ」


 成果が出るなら誰だって努力できる

 報酬が支払われるならいくらでも頑張れる

 ぼくらにはそれがなにひとつ支払われていないのに

 この街はそれでも努力をぼくらに押し付けてくる


 天に至るその長い梯子を登る辛さをぼくらは知らない

 その高みから得られる景色の素晴らしさをぼくらは知らない


934 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/06(土) 14:25:22.49 ID:reOwnCyXo


「……御坂さんとあの日出会って、いろいろ話をして、少しだけどきみのことを知った。惑い悩める普通の女の子だと知って、随分驚いたよ。
 無能力者への偏見に臍を噛んでいたぼくは、そのくせ超能力者であるきみに見当違いの偏見を押し付けていた。反省した。同じ人間だと知って、嬉しかった。
 ―――それでも、今だってきみへの嫉妬をすべて殺せたわけじゃない……想像だけど、佐天さんもそうかもしれないね」


 その言葉に三人の少女は小さく身を震わせた。

 きみたちの友情を否定する気は一切ない、そこは間違わないでくれと枕を置いて、鋼盾は話を続ける。


「きっと彼女は笑っていたんだろう。その笑顔は嘘じゃない、きっと本物だ、疑わないで欲しい。
 だけど君たちと別れて、狭い学生寮でひとりの夜を過ごすとき、彼女が笑顔でいられたかはわからない。
 少なくともぼくはキツかったよ……自分が世界で一番かわいそうだって、そう思わないとやってられない夜もあった。
 意外かもだけど……そういう妄想は、逆にけっこう慰めになるんだよ実際―――この世界は間違ってる、ぼくは悪くないってね」


 それは寄る辺なき夜

 永遠に続くかと思われたあの闇


 幾度となくそんな夜をひとり鋼盾は超えてきた。

 込み上げる感情を抑えきれず涙したこともあるし、レベル5になってこの街に君臨する妄想に耽ったこともある。

 自傷だ自慰だと笑ってくれて構わない、あの長い長い長い夜をやり過ごすにはそれしかなかったのだ。



935 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/06(土) 14:28:37.68 ID:reOwnCyXo


「御坂さん」

「……はい」

「今は、佐天さんにきみの言葉は届かないかもしれない」

「…………はい」

「でも、それはきみが悪いんじゃない……そこを間違えないで」

「………………」


 沈黙。

 黙り込んでてしまった美琴、息を潜め事態の推移を見守る黒子と初春。

 鋼盾の言葉は美琴のみならず、残りの2名の心にも少なからず食い込んでくる言葉であった。

 今の今まで自分たちは“無能力者”である佐天涙子について、そこまで考えたことがあっただろうか。


 踏み込まれる不快感と反発、否定できぬ納得、ある種の感銘、自責と後悔、開かれた扉 穿たれた風穴

 胸の裡を駆け巡る名状不能の感情螺旋に翻弄される心とは裏腹に、表情は固定され、口は動かない


 語り手たる鋼盾掬彦に、任せるしかない

 少女たちはただ、言葉を待つ


936 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/06(土) 14:30:35.52 ID:reOwnCyXo


「“超電磁砲”御坂美琴……この街の学生なら、誰でも一度は君に憧れる、誰もが君に嫉妬する、無責任にいろいろ押し付けてる。
 憧憬と嫉妬の対象である第三位“超電磁砲”は、この街のメディア戦略によって作られた偶像なんだろうね。
 御坂美琴という、歳相応の女の子を置き去りにして……星のように輝いている」


 天に輝く七つ星

 神様に一番近い子どもたち

 その双肩にかかる重圧は如何程のものか


「重いだろうし、辛いだろうと思うよ。
 ……ぼくらには想像することさえできない」


 星の苦悩は石には測れない

 石の苦悩を星には測れぬように

 なれど石は星を見上げることをやめない

 星からは石など見えぬと知っていても


937 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/06(土) 14:32:06.09 ID:reOwnCyXo

「でも、それでも身勝手な願いを口にできるなら
 御坂さん、ぼくはきみに胸を張っていて欲しい、俯いていて欲しくない、誇りに感じていて欲しい。
 おためごかしも慰めの言葉もいらない、真っ直ぐ立っていてくれればそれでいい」
 

 星に見惚れた夜があった

 その輝きに救われたことがあった

 己も輝きたいと願ったことがあった

 
 それは、嘘じゃない

 全部、本当のことだ


「……あるいは、佐天さんがきみを拒むかもしれない。
 でもそれは御坂美琴を拒むんじゃない……第三位“超電磁砲”を拒むんだ。
 そのふたつは不可分だと解ってはいるけど、ぼくらから見たら超能力者の看板はそれほどのモノだよ」


 みっともないけど、それは否定できぬ本音

 だが、そこで終わると勝手に見限ってもらっては困るのだ


938 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/06(土) 14:37:48.31 ID:reOwnCyXo



「だけど、そこで振り返るな、立ち止まるな。
 ……慢心するなよ超能力者、いつまでも見下ろしいてられると思わないでくれ。

 ぼくらは、けして諦めた訳じゃない、ちょっと凹んだり悩んだりいじけちゃったりしちゃうけど
 それでも無能力者みんなが諦めちゃった訳じゃない。

 哀れまれる筋合いなんかない――――いつかきっとその背を追い抜いてみせる。
 たとえ能力者になれなくたって、君たちより多くを掴んでみせる」


939 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/06(土) 14:44:05.13 ID:reOwnCyXo


 この街にいつまでも囚われてなんていられない

 劣等感に圧し潰されてなんていられない


 いつの日か、月詠小萌の立っている場所へ、上条当麻の立っている場所へ辿り着く


 想い人のいるその場所へ

 ヒーローが立つその場所へ


 目指すべき己になる、鋼の盾になる

 ―――それこそが今の、鋼盾掬彦の誓いだ


 さあ、御坂美琴、きみはどうする? 

 そこで燻って終わるのか?


 違うよね

940 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/06(土) 14:45:19.59 ID:reOwnCyXo
 

「だから――――どうか孤独だなんて思わないでくれ。
 きみには、白井さんや初春さんがいる……能力強度なんてどこ吹く風の上条くんもね。
 佐天さんも……あんな強いひとだから、きっと乗り越えてくれるよ。
 ……そうだろ、ふたりとも」


 きみは、ひとりじゃないんだから


「もちろんですの! お姉さまの誰よりそばに、このわたくしがおりますの! 侍りますの !いまそがりますの!
 ……佐天さんも大丈夫ですわよ、あれでなかなかに強かなお人ですのよ?」


 御坂美琴の露払いを自任する白井黒子の声が凛と響き、


「そうですよ御坂さん! だいじょぶです!!」
 

 笑顔の初春飾利の柔らかな激励がふわりと美琴を包み込む。

 そして、彼女はもうひとつ、悪戯っぽく付け加えた


「……それに、鋼盾さんも付いてますもんね、ね! 鋼盾さん?」

「えっと、うん……はい。
 ってうああ……なに言ってんだぼくああもうこれそろそろガチで恥ずかしくなってきたからまあそんな感じで聞き流して……
 って待って御坂さんちょっと涙ぐまないで上目遣いやめて上条くん相手にとっといてそれすごい破壊力だから! ときめくから!! オススメ!!
 オイ初春さん親指立てんな白井さんちょっとそのアステカ目やめてマジ怖いすいません調子のりましたゴメンなさい!!」
 

941 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/06(土) 14:57:21.90 ID:reOwnCyXo

 慌てる鋼盾

 微笑む初春

 アレな黒子


 そんな面々のドタバタに、御坂美琴は思わず笑った。

 真っ赤な顔で、目にうっすらと涙を浮かべて、それでも弾けるような笑顔だった。

 思わず他の三人が見蕩れてしまうほど、それはもう、とんでもなく可憐で。



 夜空の星すら霞む大輪の花火のように、御坂美琴は咲った



 この日彼女は、その“自分だけの現実”をより一層強固なものとした。

 超能力者たる称号を、他者の羨望も憧憬も嫉妬も悪意も勘違いも誤解もなにもかも背負い、猶も輝くと誓った。

 
 決意の涙は、暖かかった


942 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/06(土) 15:07:32.51 ID:reOwnCyXo


――――――――――



 柔らかな日差しの下、やたらとおしゃれなオープンカフェに、中学生の女の子が4人

 能力も立場の違いも関係なく、ただただ楽しそうにお茶とおしゃべりを楽しんでいる


 弾けるような笑顔のショートカットの女の子が、紅茶に舌鼓を打つ

 艷やかなツインテールの女の子が、優雅な所作でサーバーを持ち上げる

 鮮やかな花々で頭を飾った少女が、誘惑に抗えずクッキーへと手を伸ばして

 そんな彼女をからかうように、黒髪ロングの少女が朗らかに笑い声を上げる


 少女たちの放課後ティータイム、そんな情景を鋼盾掬彦は幻視する

 きっと、すぐに現実のものとなるだろう……未来予知(ファービジョン)など持たぬ無能力者は、それでも確信した




――――――――――

943 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/06(土) 15:13:18.06 ID:reOwnCyXo






ここまで
超電磁お茶会編・終了

鋼盾くんが超電磁ガールズの相談役ポジをゲットした模様です。やったね!
はじめて絶望したのは13才の時って言ったか?もう一度ここで絶望……いや、爆発しろ

この一件で美琴の今後がどう変わるでしょうか、まったく考えてませんです
覚悟ってのは伝染するもんなのかな、と原作をみてそんな感想を抱いたのでこんな流れに……上条菌の感染力やべえぜ

んで、気づいたんだけど佐天さんが出せなくね? 昏倒するし入院するし
……あの子、時間合わないんだもん! どっかで出してあげたいぜ!

次回投下して、新スレへ移行しようと思います
付いてきてくれると嬉しいな!

んじゃ

944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/08/06(土) 15:24:28.94 ID:rI7xamgNo
コウやん…






も☆げ☆ろ☆
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/06(土) 16:03:18.71 ID:Lmxs5+Qfo
コウやん・・・









夏休み明けは八時間耐久学級裁判や・・・!!
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/06(土) 16:22:42.42 ID:Lmxs5+Qfo
病院のベットで目を覚ました時がよろしいかと・・・
947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/06(土) 16:40:00.60 ID:0uOk9+3AO
つ乱雑解放編
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/06(土) 17:00:02.44 ID:TX/71MsL0
>>947
それを原作再構成に合わせると
矛盾が発生するんじゃなかったっけ?

アニレー見てないから詳しくは知らんけど
949 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/06(土) 18:26:31.47 ID:0uOk9+3AO
時系列など蹴飛ばしてしまおうぜ!

忘れてた乙
950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) :2011/08/06(土) 21:10:54.38 ID:OZXX8b4l0
コウやん…






ダメだ俺にはもげろなんて言えないコウやんGJ!!!!
コウやんの成長がうかがえるエピでしたあと美琴かわいいよ美琴
もう上条さんじゃなくて鋼盾に転んじゃえよ美琴

鋼盾君は非戦闘員ながら人脈特化タイプの主人公でいいと思います原
作の上条勢力を上回る鋼盾勢力を作ればいいと思います
ヘタ錬木山先生アクセラミーシャも仲間にしちゃえばいいと思います

乙でした
次スレにももちろん付いていきます!
951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/08/06(土) 21:30:42.26 ID:AwoaiNqG0
ぴろりん!
みこと は パーソナルリアリティーが あがった!
しゅつりょくが 2おくボルト あがった!
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage]:2011/08/06(土) 21:49:46.73 ID:OZXX8b4l0
みりょくが 2 あがった!
すなおさが 1 あがった!
ふうかくが 1 あがった!
はなさくほほえみ を おぼえた!

くろこ との ゆうじょうち が 3 あがった!
ういはる との ゆうじょうち が 3 あがった!

きくひこ が たよれるおにいさん から きになるあのひと に なった!

さっきは あげて ごめん!
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/06(土) 21:56:33.46 ID:TvvM1pOLo
>>952
最後言いたかっただけだろwwwwwwwwwwwwww
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/08/06(土) 22:18:13.96 ID:3AKQUpB9o
>>952
不覚にもお前に萌えた
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/08/06(土) 22:51:29.54 ID:hVvI0Bv9o
そげぶされてないのにこれか…
まーあれだ好きな子がいるやつは他の子に対して大胆かつ素直になれるもんだ、な!
美琴の弾けるような笑顔つうとOVAのOPが最高だったなー。他のキャラも素晴らしいし。
956 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/07(日) 00:35:15.28 ID:3hA2G0hWo
>>952
なんかもうチリさんに全部持ってかれたよチクショウいいぞもっとやれw

鋼盾勢力はともかく、鋼盾くんには上条さんにできないことをやってもらいたいところ
あと美琴とフラグは立たないぜ! 立たないったら立たないぜ! いいとこ兄と妹だぜ!

>>955
OVAいいよな、OPしかみてないけどな
実は鋼盾くん、上条さんにそげぶされてもう一段階変身します
>>1>>955の内緒な!!

本来はギャグ回で済ますつもりだったRTT
なぜだか超能力者と無能力者の重ったるい話になってしまいました

幻想猛獣までやると決めちゃったが故の超電磁勢の掘り下げでしたがどうでしょう
23日は未だ書き溜めゼロですが、がんばって書いてまいります

んでは!
957 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/08/07(日) 00:39:42.45 ID:3hA2G0hWo
毎度毎度なぜあげたし俺 
>>952のような素敵なフォローとかできないっす

……しゃあねえこうなったら投下予告にするしかねえ
本日中に投下します!!

勘弁!
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 01:14:44.48 ID:0NEIgsjAO
脱いだ
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 01:24:36.12 ID:bdxxKVnlo
鋼盾くんは今すぐにでも立派な教師になれそうだww
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 19:20:38.05 ID:rs1dVtBSo
ネクタイは残してかまいませんね?
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/08/07(日) 19:29:58.72 ID:R+6mEZHAO
追い付いた
アニレーで鋼盾に目をつけていたがSSがあるとはなww
面白いです!
頑張って下さい!
962 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/08/07(日) 22:47:47.92 ID:3hA2G0hWo
んじゃ、俺も脱ぐかな
ああ、もちろんネクタイは忘れませんよ
投下は正装で行いますとも

>>961
追いついてくれてサンクス!
このSSも結構な字数になってきましたが、お時間どのくらいかかりました?
今後も是非!


途中ちょっと間が空くかもですが、とりあえず投下開始!
推敲しながらゆっくり投下でまいりますヨロシク


そぉい!!


963 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/08/07(日) 22:54:37.50 ID:3hA2G0hWo

――――――――――




「ああ、いけませんの、もうこんな時間ですのね」

 
 黒子が壁の時計を見遣り、言う。

 時刻は15時50分、美琴との会話やそのあとのゴタゴタですっかり時間を忘れてしまっていた。

 夏の日永ゆえ外が明るいことも原因のひとつだろう、まだまだ太陽は高い位置にある。


 とは言え彼女らは風紀委員の業務中。

 休憩開始から既に一時間半近く経過してしまっている。


「ああ、ごめん、ずいぶん長居しちゃったね。
 白井さん、初春さん、今日は忙しい中ありがとう」

「……長くなっちゃったのは私のせいよね、ごめんね初春さん、黒子も」

「いえ、わたしは自分の業務を既に終えておりますの。
 ―――もっとも、初春の方はそうでもないようですけど」

「ええー!! 手伝ってくださいよ白井さん!
 というかまだいいじゃないですか鋼盾さんも御坂さんも! もっとおしゃべりしましょうよー!」


 初春の不満げな声、頬を膨らまして黒子へと詰め寄っている。

 対する黒子は涼しい顔だ。


「だめですの。お姉様は今日こそ早くお帰りになってもらわねば、黒子まで寮監に叱られてしまいますの」


 寮監という言葉を聞いた途端、美琴が慌てて帰宅の準備を始める。

 よっぽど厳しいひとなのだろうか、どうやらお開きは確定らしい――初春の恨みがましい目は、見なかったことにする。

 鋼盾としてもちょっと残念ではあったが、色々語ってしまった気恥ずかしさがあったし、今日のところはこれで失礼しよう。

 荷物はカバンひとつ、鋼盾も立ち上がり、別れの挨拶をと口を開く。

 だがそれは、黒子の発言に遮られた。



964 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/08/07(日) 22:57:55.76 ID:3hA2G0hWo


「―――鋼盾さん、先ほどの書類、今日のうちに提出してしまいましょう。
 夏休み中ですと会計関連を16時で閉めてしまうところが多いですけど、わたくしが一緒なら警備員の詰所まで1分かかりませんの」


 黒子が言う書類とは、鋼盾がスキルアウトに奪われた10万円の返金に関する書類のことだろう。

 確かに返して貰えるなら早い方がありがたい。


「ああ、んじゃ、お言葉に甘えようかな……1分で行けるってことは近所なの?」

「近所というほどでは……ま、道なりに行けば1.5kmってところですの」

「え、それ間に合わな……あ、空間移動!」

「御名答ですの」


 その言葉と同時に黒子は鋼盾の肩に軽く触れる。

 瞬間、景色が切り替わった――否、切り替わったのは視覚だけではない。

 蛍光灯が陽の光に、エアコンの風が自然風に、壁を隔てていた街の喧騒がダイレクトに。

 五感全てが唐突に切り替わるその異常。

 これが


「……てれ、ぽーと」


 鋼盾は目をぱちくりとさせる。

 タイムラグはゼロ、本当にいつの間にか外にいたのだ。

 空間移動の経験など勿論皆無である彼は、その奇跡のような体験に小さく震えた。


965 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/08/07(日) 23:00:14.23 ID:3hA2G0hWo


「ええ、空間移動ですの。
 跳躍出来る距離は最大81.5m、質量制限は130.7kg程―――これが、わたくしの能力ですの」


 誇らしげに微笑む黒子は、すいと鋼盾の背後を指さした。

 そちらを振り向くと先程までいた一七七支部があり、窓から美琴と初春が手を振っている。

 そこでようやく鋼盾は、自分が道一本挟んだビルの屋上に立っていることに気づいた。

 
「はあー、……すごいな、ビックリだよ」


 美琴と初春に手を振り返しつつ、鋼盾は感嘆のため息を吐く。

 本当に、すごい。


「あら、本番はこれからですのよ?」

「? えーと……」

「話はお後に、さあまずは警備員の詰所まで参りますの。
 時速200キロの世界をご覧にいれますの!! サービスサービス!!」


 ガシッと肩を掴まれる。

 拘束という言葉が頭に浮かんだ。

 黒子は笑顔だった


「ちょ待



 鋼盾の言葉はここで唐突に途切れる。

 次の瞬間、80メートル先の道路の真上で少年の情けない悲鳴が響き渡った。




――――――――――


966 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/08/07(日) 23:08:38.33 ID:3hA2G0hWo


 気づけば、公園のベンチに座って10万円の入った封筒を握り締めていた。

 どうやらいつの間にか手続きを終えていたようだ、うっすらと人の善さそうな警備員さんの顔が脳裏に浮かんだが、正直記憶に自信がない。


「驚かせて申し訳ありませんの、少しばかり悪戯心が擡げてしまいましたの。
 ……今日は鋼盾さんに驚かされっぱなしでしたので……やつあたり、ですの」


 これで許してくださいな、と自販機で購入した缶コーヒーを鋼盾に手渡しながら、黒子は悪戯っぽく笑う。

 先ほどの鋼盾の情けない狼狽をみて、どうやら溜飲を下げてくれたようだ。

 缶コーヒーのプルタブを開けながら、鋼盾は小さく笑った。

 そんな顔をされたら、怒るに怒れない。


「……いや、貴重な体験だったよ。
 正直、ビルの上からの錐揉み落下は勘弁して欲しかったけど」

「あら、わたくしなりの大サービスでしたのに」

「小サービスくらいに留めておいてくれるなら、またお願いしたいね。
 ああ、そう言えばあの二人にちゃんと挨拶出来なかったな」

「そういえば、不意打ちで飛ばしてしまいましたの。
 困りましたわね……お姉様に怒られそうですの」


 初春はどうとでもなりますけど、と舌を出す黒子。

 黒子と初春の関係は、傍から見てるととても面白い。

 単純に上下強弱ではなく、アンバランスなようでバランスが取れている。

 根底に互いの信頼があるからだろう、相棒というヤツだろうか。

967 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/08/07(日) 23:18:55.38 ID:3hA2G0hWo


「ま、後でメールでも送っておくよ。
 女の子にメールするなんて初めてだから、変な文章になっちゃうかもだけど」


 初春の提案で、鋼盾は3人と電話番号とメールアドレスの交換を済ませている。

 アドレス帳に女子中学生の名前がみっつ……バレたら弾劾裁判モノだ、気を付けよう。


「ふむ、じゃあ添削してあげますの。わたくしにも送ってくださいな。
 ……ああそういえばそのお金、無事に戻ってきてなによりですの」

「……うん」


 幻想御手の取引の為に引き出した10万円

 鋼盾にしてみれば大金だが、それでもやっぱり薄っぺらい

 こんなものでぼくは、何を掴めると思っていたのか


 今となっては随分遠くなってしまったあの日の自分

 ステイルに小萌、上条、インデックス……彼らとのこの数日で、己は確かに変わった

 よい変化だと思う、やっと前を向くことが出来たのだから


 だが、そんな鋼盾のもとに届いたこの封筒

 過去の自分に足首を掴まれたような気分だった


968 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/08/07(日) 23:23:08.97 ID:3hA2G0hWo


「……まだ、納得がいきませんの?」
 
「いや、そうじゃないさ……次こそ、有効に使おうと思ってね。
 ……さしあたっては一七七支部のみなさんに差し入れでも持っていこうかな」

「あら、それはいいことを聞きましたの。
 ……まあ、差し入れはともかく、また遊びにきてくださいな。
 初春の言ってたアレ、わたくしも結構本気ですのよ」


 “風紀委員に興味はありませんか”

 “鋼盾さんって、鋼の盾って書くんですね。この腕章にあるとおり、私たちは盾なんです”

 “向いてるんじゃないかって、そう思ったんです”


 初春飾利の言葉。

 あの唐突な勧誘に、鋼盾のこころは随分揺れた、戸惑ったが、嬉しかった。

 能力が無くても出来ることがあると、道を示してくれた初春には、心底感謝している。

 だが。


969 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/08/07(日) 23:28:08.27 ID:3hA2G0hWo


「……すごく光栄だし、誇らしく思うよ。そんなこと言ってもらえたこと、今までなかったから。
 ぼくは、盾になりたい。鋼の盾なんて大仰な苗字に、見合うくらいの人間になりたいって、ずっと思ってた。
 初春さんのあの言葉は、正直胸に響いたよ」

「でしたら」


 わたくしたちと共に、この街の治安を守りましょう。

 盾たらんとする貴方は、きっと良い風紀委員になれますの


 白井黒子のその言葉を噛み締めつつ、しかし鋼盾は否定の言葉を紡ぐ。


「ん、でもね、ぼくはこの街全てを守りたいなんて、どうしても思えないんだ。
 この身に代えても守りたい人なんて、今は3人しか思いつかない」

「……3人、ですの」

「うん、たったの3人……器が小さいだろ?」


 情けない話だが、それが鋼盾掬彦の真実。

 11次元を駆ける脚も、機械仕掛けの無数の眼と耳も持たぬ鋼盾には、今はそれが精一杯。

 いや、正直ひとりだって手に余る……だが、それでも守ると決めてしまった。

970 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/08/07(日) 23:30:25.92 ID:3hA2G0hWo


「……ま、誰も彼も守ってやるぜ! なんて節操のない殿方よりはわたくしの好みですの。
 それに、そんなことを言ったら、お姉様ひとりに執心している私の方がよほど器の小さい人間ですの。
 ああ、ちなみにその3人の中に、お姉様は入っていないですわよね?」

「はは、僕なんかより上条くんに気を付けたほうがいい。
 あいつは、目に映るすべての人を守ろうとするヒーローだ。僕も御坂さんも彼に救われたクチだよ。
 あれほどの人たらしは、なかなかお目に掛かれない」


 人たらし……ああ、この言葉は彼にピッタリだ。

 自分もたらしこまれてしまったのだ、あのバカみたいな本物に。

 思わず笑みを浮かべる鋼盾に、黒子は不満げな表情を浮かべる。


「……いよいよ好きになれそうにありませんの」

「うーん、ぼくは白井さんと上条くん、意外と相性がいいんじゃないかなとコッソリ思ってるんだけどな。
 まあ、御坂さんの頑張り次第じゃ近いうちに彼と遭遇することもあるかもね。
 ……その時は、どうかお手柔らかに、ね」

「鋼盾さんがそうおっしゃるなら、出会い頭の不意打ちドロップキックは勘弁してあげますの」

「……そりゃ、ありがたい」


 感謝しろよ上条くん、どうやらドロップキックは回避したぞ

 まあ、この子にきみの名前を教えちゃったのは僕なんだけどね

971 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/08/07(日) 23:33:55.92 ID:3hA2G0hWo


 脳裏に浮かぶ不幸な友人に語りかけつつ、缶コーヒーの最後の一口を飲み干す。

 手に残った空き缶をを捨てるべく鋼盾が視線をさまよわせると、黒子が腕をのばしてきた。

 その手が缶に触れた瞬間、鋼盾の手の中から空き缶は消え、10メートル程離れたゴミ箱から小さく音が聞こえた。


「……とんでもなく便利だね、その力」

「ええ、自分で言うのもなんですが、なかなかに大した能力だと思いますの。
 学園都市には58名の空間移動能力者の中でも、五指に入る性能ですのよ」


 黄泉川愛穂が絶賛した、風紀委員一番の腕っこき。

 その評価を支える、白井黒子の空間移動。


 言葉だけ聞けば自慢話だが、黒子の表情は暗い。

 どうやら、ようやく本題のようだ。

 
972 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/07(日) 23:43:42.96 ID:3hA2G0hWo

 
「でも、いくら能力があっても、大切な人の笑顔が守れぬようなら無意味。……鋼盾さん、おっしゃいましたわよね。
 “いつかきっとその背を追い抜いてみせる。たとえ能力者になれなくたって、君たちより多くを掴んでみせる”
 その言葉の通り、貴方は無能力者のまま、わたくしの最も欲しかったモノを、あっさり掴んでいきやがりましたの」

「…………」

「……嫉妬、ですの。あの暖かな涙も、花咲くような微笑みも、すべて貴方が引き出したもの。
 お姉様、御坂美琴の一番傍に居ながら、わたくしは今日まで何をしていたのでしょうか。
 佐天さんについても同様ですの……彼女の抱える苦悩に気づきもせず、表面だけしか見ていませんでしたの」

「あんなの、傍観者の勝手な物言いだよ。今日まで彼女たちを支えてきたのは間違いなく君の手柄だ。
 ぼくはこぼれ球をたまたまゴールに決めただけだよ……ごっちゃんゴールにも程がある」


 あんなのはタイミングが良かっただけの話だ

 限界まで溜まっていた水が、鋼盾の前で溢れただけだろう


「そうだとしても、称えられるべきはやはりゴールを決めた人間ですの。
 本日のMVPは鋼盾さん、貴方ですのよ……わたくしではなく」

「………鳶に油揚って感じかな。気に入らないかい、僕のこと」

「まさか、感謝してもしきれないくらいですの。
 愚痴はここまで。いまから鋼盾さんには、わたくしの宣誓を聞き届けて頂きますの」
 

 ツインテールをなびかせて、黒子はしっかりと鋼盾を見据える。

 針のように鋭い視線が鋼盾を穿つ、それは宣誓というより宣戦に近いものだった。

973 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/08(月) 00:16:32.83 ID:f2R1d1+3o


「鋼盾さん、わたくしはいつか貴方を超えてみせますの。
 いえ、貴方だけではなく、上条さんとやらも誰も彼も超えて、幸せを掴んで見せますの。
 お姉様、御坂美琴を誰より幸せにしてみせますの」


 それこそが、白井黒子の幸せだと、彼女は淡々と言葉を紡ぐ

 なまじっかな咆哮より余程強く、魂に刻みつけるかのような誓いの歌


「しかしこの身は未だ未熟、幼く視野が狭い愚かな小娘に過ぎませんの。
 ですから鋼盾さん、どうかこれからもお姉様を支えてあげていただきたいのです」


 超えてみせると宣ったその口で、しかし黒子が述べるは己と共に美琴を支えてくれとの依頼

 相反するようでいてそこに一切の矛盾はない、彼女の行動は全て御坂美琴の為、その一点のみに集約する

 深々と頭を下げる黒子、その覚悟は間違いなく尊く、やはりどこか危うかった


974 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/08(月) 01:19:49.29 ID:f2R1d1+3o


 しかしその姿を鋼盾は、忌憚なく美しいと感じてしまう。

 実らぬであろう恋に身を焦がす、この少女の力になりたいと思ってしまった。

 重ねてしまった、自分自身を。


「……参ったな、尊敬するよ白井さん。
 きみは強い、ぼくなんかよりずっと強いよ」

「そんなことはありませんの……取り繕ってばかりのわたくしは、お姉様から見れば守るべき後輩に過ぎませんの。
 せめてあと一年早く生まれていればなんて、そんなことばかり考えてしまいますの」


 ああもう、こんなところまで同じだ。

 どうしてくれようこの乙女。


「同い年だったらお姉様は、わたくしにも弱みを曝け出してくれたかもしれないと、愚にもつかない夢想に耽ってばかり。
 年上というだけで貴方がたに嫉妬していますの……こんなんじゃいつまで経っても、お姉様の隣に立てませんの」


 そんなこと言ったらぼくはあと20年早く生まれたかったよ、と鋼盾は口には出さずに同意する。

 あの人と同じ時間をもっともっと過ごしたかった。教師と生徒じゃなくて、もっと違う形で。


 だけど、それはただの妄想

 黒子の言うとおり、それではいけないのだ


「じゃあ、もっと強くなろう。ぼくもきみも、どうやらそれぞれ厄介な相手に惚れちゃったようだからね」

「……鋼盾さんの、想い人ですの?」


 予想外の言葉だったのだろう、鋼盾の言葉にきょとんと首をかしげる黒子


「内緒だよ、いやもうぼくの恋路はきみのそれより厄介でね」

「それは聴き捨てなりませんわね、わたくしも難儀っぷりには自信がありますのよ」


 ほう、見た目は子どもその実オトナな担任教師に懸想したこのぼくに勝てるとでも?

 レズビアン志望風情が笑わせる、こちとら二重三重に厄介なんだぞ


「いーや、ぼくの方がシンドいね、美少女ペアなら世間が許すさ!」

「鋼盾さんはレズビアンに対しての風当たりの強さに無知過ぎますの!!」

「ああもう、どっちか男になっちゃえばいいじゃん!!学園都市の技術で!!」

「……天啓ッ!!?」

「おい」





――――――――――

975 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/08(月) 01:25:25.43 ID:f2R1d1+3o





「……仕切り直そう、えーと、なんだっけ」

「……なんでしたっけ……ああそうですの、これからもお姉さまをよろしくお願い致します。
 わたくしも、がんばりますので」

「うん、ぼくでよければ。
 白井さん、これからもよろしくね」

「ええ、こちらこそよろしくお願いしますの」


 なんか一週回ってあっさりしすぎてしまった感はあるものの、とりあえず握手を交わす。

 とりあえずの結論としては、まあこんなところか。


「ぼくらは弱い、だけど、弱くたって守りたいものがある」

「――ええ、だから強くならねばなりませんの。
 愚痴ってる暇なんてありませんでしたの」


 それは、笑ってしまうほど、当たり前のこと


「んじゃ、頑張ろうかお互い」

「ええ、そうですの」


 鋼盾と白井は顔を見合わせて笑う

 どうやら難儀な業を負ってしまったのは、自分だけではないようだ


 そのことが、どうしようもなくうれしかった

 
976 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/08(月) 01:42:35.58 ID:f2R1d1+3o

――――――――――



「ああ、鋼盾さん、最後にひとつ」


 別れの段になって、思い出したように黒子が口を開く。

 ひとつ、忠告がございますの、と悪戯に笑う。


「風紀委員の件、わたくしは納得致しましたの。
 もちろんいつでも大歓迎ですが、今後無理にお誘いするつもりはございませんの」

「? うん、ありがとう……えーと、わたくし“は“?」


 実に含みのある言い方である。

 わたくし以外の誰かさんは、諦めていないという感じの。

 ……というか、該当者はひとりしかいない。


「ええ、初春は違います。あれでなかなか諦めの悪い女ですの――狙った獲物は逃さない。
 その一点だけはわたくしも、初春には敵いませんの……相当、気に入られてますのよ、鋼盾さん?」

「……そいつは、おっかないな」

「風紀委員一七七支部、いつでも遊びに来てくださいな。
 差し入れ、持ってきていただけるんでしょう?」

「……郵送じゃ、ダメかな」

「ふふ、もちろんダメですの」


 御坂美琴、白井黒子、初春飾利

 超電磁砲と風紀委員一七七支部の女傑二名


 どうやら長い付き合いになりそうだ、と鋼盾掬彦は溜息を吐く
 

 妹を三人抱えた、兄のような顔で

 幸せそうに



――――――――――


977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/08(月) 01:46:20.83 ID:u+lahYN3o
このSS面白い
是非2期終盤くらいまでお願いします
978 : ◆FzAyW.Rdbg [saga]:2011/08/08(月) 01:51:58.71 ID:f2R1d1+3o

ここまで

途中ガチで寝落ちてました、今もヤバイっす
マジすいませんでした

本来は小萌宅でカレー食う話になる予定でしたが、なぜか黒子を書きたくなってしまいました。
途中までシリアスだったのに、まさか恋バナ始めるとは思いもよらなんだ

黒子が可愛く書けてるとよいのですが
ですの口調は続くとアホっぽいので長ゼリフの多い>>1は要修行ですね

さて、次回からは次スレです!
まだ準備出来てませんが、数日中になんとか

よろしければお付き合いください
では、おやすみ
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/08(月) 01:57:59.67 ID:/wjKbL/P0
乙!

黒子の心情、よく描けていたと思う。
こうかはばつぐんだ!

こんなに各個人の心情を掘り下げて物語を進められる>>1を尊敬するぜ!

またもや無粋だけど
あと、>>898は同属じゃなく同族じゃないか?

ゆっくり休んでくれ、おやすみ!
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/08/08(月) 02:05:00.05 ID:WyL0l7ZAO
あ、やっぱ寝落ちだったのかw
鋼盾さん内面イケメンだよな、ホント。
ここまでイケメン過ぎると容姿性別関係無く惚れられるレベル。
鋼盾さんみたいな人とお友達から始めたい。
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/08(月) 02:24:24.07 ID:o+DrmEuDO
えーなんなのこのキノコ頭
抱かれたい
982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/08(月) 04:32:39.15 ID:C0qeUtMIO

女子組はちゃんと乙女
男子組はちゃんとヒーロー
しかもそれぞれ弱さと強さがしっかり描かれてる
たまらんねぇ古い丁寧な描写の漫画を読んでる気分がする
983 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/08/08(月) 08:42:36.63 ID:f2R1d1+3o
昨晩はダラダラ投下と寝落ち失礼しました
レスサンクス!同族は素で間違って覚えてました!古いマンガの熱は>>1も大好きなので嬉しい

後半はほぼ即興なのでいろいろおかしいですが、夢現なのも相俟って普段かけないものが書けた気がします
一度黒子が「お兄様」とか言い出してビビリました、いやあ、書かなくてよかったあぶねえあぶねえ。
あと佐天さんのこと忘れすぎですよね驚くよな佐天さん超電磁組に復帰したらあのいじめられっ子がこんなんなってるなんて

鋼盾くんはあんまりイケメンつうか超然とした感じにならんよう、気をつけてはいるんですが難しい
あんま情けないキャラだと魅力が出せないし、かといってやりすぎると無能力者モノを騙ったただのチート
>>1はオリキャラ無双とか滅びねえかなと思っている口なのですが、油断するとこのSSは簡単にそっちに転ぶよな
メアリスーチェックじゃ測れない痛々しさもあるでしょう、>>1がやりすぎだと思われた場合は、遠慮なく布束先輩の口調で突っ込んでくださいお願いします

さて、新スレの準備にかかります、できれば今晩無理でも明日には
さんざん迷ったけどスレタイ変えます、だってそっちのが楽しそうなんだもん。絶対一発で判るのでご安心下さい

誘導しますのでちょいと残しといてくださいとか書きつつ、こんなこと書いといてこの後誰一人書き込まなかったら
自意識過剰乙でみじめすぎるのでなんも気にせずむしろ書いてください埋めちゃいましょう、どうせ鋼盾とスレタイにあるので一発ですし


埋めネタでも用意しときゃよかったぜ
めざせ>>1000!!

984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/08/08(月) 08:55:32.53 ID:X2aTdppGo
あっはははは、鋼盾爆発しろ!!
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/08(月) 09:00:08.06 ID:Akvd6XHIO
なんなのこのSSコウやんといい黒子といいカッコよすぎるキャラ大杉だろ…
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/08/08(月) 09:27:44.95 ID:OzvVZoJAO
鋼盾になら抱かれてもいいです
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/08(月) 09:37:13.88 ID:UtXOZ4Yqo
>>1000なら鋼盾と>>986が結婚
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/08(月) 10:18:55.89 ID:C0qeUtMIO
そんな>>1のために1000は残しといてやろうぜ!
>>999まで埋め
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/08/08(月) 11:25:36.99 ID:c0WjFpHTo
ksk
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/08(月) 11:35:29.00 ID:cRH/fU5IO
ksk
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/08(月) 12:08:08.81 ID:Ip75e0qAO
>>1000なら鋼盾風紀委員
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/08(月) 12:09:56.75 ID:kIlyBZNoo
ksk
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/08(月) 12:10:22.29 ID:kIlyBZNoo
ksksk!
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/08(月) 12:11:07.22 ID:kIlyBZNoo
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/08(月) 17:52:03.40 ID:phqpLfZGo
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/08(月) 17:53:56.56 ID:yYolaWR60
新スレ見つけた
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/08(月) 17:55:43.59 ID:5lmUNLdA0
実は最初から見てる。次スレでも頑張れ
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/08(月) 17:56:20.52 ID:5lmUNLdA0
すまん、上げちゃった
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/08(月) 17:57:01.95 ID:HUiokKFDo
さあ来い>>1ぃぃぃ
1000 : ◆FzAyW.Rdbg [sage]:2011/08/08(月) 17:58:14.96 ID:f2R1d1+3o
定時上がり! いつもこうならいいのにチクショウ
さて、2スレ目立てて来ましたよ


 アレイスター「鋼盾掬彦、か……まったく、たいしたイレギュラーだよ」
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312793068/l50


こんなスレタイと相成りました
変わらず鋼盾くんの物語を紡いで参ります

このスレはもう店仕舞
>>1にとっては初めてのスレ、感無量です

続けてこれたのはみなさまのおかげ
続けてゆけるのもみなさまのおかげ

初心を忘れず次スレでも頑張ってまいります
よろしければリンクを辿り、共に物語を紡いで参りましょう


んじゃ、>>1000取り合戦っ、はーじーまーるーよーーー!!!
1001 :1001 :Over 1000 Thread
                  ヽ人人人人人人人人人人人人人人人ノ
         / ̄(S)~\  <                      >
       / / ∧ ∧\ \<  嫌なら見るな! 嫌なら見るな!  >
       \ \( ゚Д,゚ ) / /<                      >
         \⌒  ⌒ /  ノ Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Yヽ
          )_人_ ノ  
          /    /
      ∧_∧ ■□ (    ))
     (   ; )■□  ̄ ̄ヽ
   γ⌒   ⌒ヽ  ̄ ̄ノ  ノ       SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|        http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
【新規】五大陸世界【歓迎】 @ 2011/08/08(月) 17:47:20.00 ID:eejSFrpIo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1312793239/

アレイスター「鋼盾掬彦、か……まったく、たいしたイレギュラーだよ」 @ 2011/08/08(月) 17:44:28.90 ID:f2R1d1+30
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312793068/

RPGツクール一族 変態供養 @ 2011/08/08(月) 17:27:25.80 ID:Cjl3bsTzo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1312792045/

池沼の巣窟 @ 2011/08/08(月) 16:32:20.41 ID:6ngK7NwL0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1312788740/

美琴(20)「行き遅れる……」 @ 2011/08/08(月) 16:29:15.40 ID:DRAOsc9g0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312788555/

安価絵スレ 総合避難所 @ 2011/08/08(月) 15:57:45.26 ID:FO+sScXVo
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「糞個人スレ」きゅうさん、死に書ける @ 2011/08/08(月) 15:31:14.56 ID:fMwdbGZ90
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2年ぶりになす板来たけど @ 2011/08/08(月) 15:29:25.95
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4vip/1312784965/


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