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一方「俺が選んだのは」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :黒子毛 :2011/06/10(金) 22:10:20.36 ID:wmiekhHN0
四作目のSSです。前作で真面目路線を開拓したので、今回もそれで行きます

・若干鬱
・前半は結構死にます
・インさんは登場しない予定
・遅筆

それでも良いという方だけお付き合いください。
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/10(金) 22:12:17.80 ID:VCbU2Je5o
期待
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/10(金) 22:14:15.51 ID:NPFM9Ooc0
宣伝スレで見つけて飛んできました。期待してます。
4 :黒子毛 :2011/06/10(金) 22:18:09.38 ID:wmiekhHN0
うがあああああなんてこった

いきなりスレタイミスったァァァ
一方「俺が選ンだのは」でしたゴメンナサイ
5 :黒子毛 :2011/06/10(金) 22:18:39.93 ID:wmiekhHN0

禁書「うう……まさかベランダに引っかかっちゃうとは思わなかったんだよ」

禁書(『歩く教会』があるとはいえ、飛び降りるのは怖いからね…下りるのに苦労したんだよ)


禁書「早く逃げないと追手が来ちゃう。どこに隠れれば……」












ステイル「…やあ。見つけたよ、禁書目録」

6 :黒子毛 :2011/06/10(金) 22:19:09.88 ID:wmiekhHN0

美琴(『樹形図の設計者情報送受信センター』……『樹形図の設計者』の唯一の窓口)

美琴「ここから"『絶対能力進化計画』にエラーが発生した"っていう偽の情報を吐かせた」

美琴「…時間稼ぎくらいにはなるはずだけど、こんな小細工いつかはバレる」



美琴「その前に計画を破綻に追い込んでみせる!」
7 :黒子毛 :2011/06/10(金) 22:20:13.02 ID:wmiekhHN0

その日から、御坂美琴の研究所破壊活動は更にその頻度を増した。

研究者達が『樹形図の設計者』に再演算を求めている間に、全ての研究所を潰さなくてはならない。

壊滅状態になる研究所、その数一日に十。




アレイスター「……この期に及んで、第三位は未だ妨害工作を行っているようだな」


アレイスター「変化のないイレギュラーには存在価値が無い」

アレイスター「が、彼女は私の大事な財産だ。処分する訳にもいかない」


アレイスター「どうすべきだと思う、木原数多?」






アレイスター「……そうか。やはり君は芯から意地の悪い人間だな」

アレイスター「だが使える優秀な人材でもある。…その案、採用しよう」



そして新たに設置された研究所、一日に五十。
8 :黒子毛 :2011/06/10(金) 22:20:40.77 ID:wmiekhHN0

更に。

僅か三日目にして、『樹形図の設計者』は『絶対能力進化計画』の再演算結果を算出。

エラー報告以前の内容との変更点は皆無。


実験は、再開された。
9 :黒子毛 :2011/06/10(金) 22:21:08.23 ID:wmiekhHN0

美琴(―――え、)



美琴(…ウソ、そんな――――…ッ!?)

PDAに表示されるのは、破壊した数の数倍に増殖した研究所。


美琴「……はは」


美琴「やっぱりダメだ…」

美琴「この街の上層部が承知してるんだもの、研究所なんていくらでも増やせるんだ」


美琴「最後の一手が無駄だった…ってこと?」
10 :黒子毛 :2011/06/10(金) 22:22:34.01 ID:wmiekhHN0

美琴「――――――――――、」


美琴「…ううん、まだある」



美琴「私に出来ることが、まだ残ってる」
11 :黒子毛 :2011/06/10(金) 22:23:37.06 ID:wmiekhHN0





この世界に、幻想を[ピーーー]ヒーローは存在しない。





12 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:24:07.68 ID:wmiekhHN0





この世界に"幻想を殺すヒーロー"は存在しない。





13 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:25:10.04 ID:wmiekhHN0
saga忘れたァァァかっこわりぃ…
14 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:25:37.90 ID:wmiekhHN0

10032号「時間です。これより第10032次実験を開始します」

一方「…あァ」

10032号「あ、そういえば符丁の確認を忘れていました、とミサカは自分のドジっ娘属性を自覚します」

一方「面倒くせェな。一万何回もいちいち確認する必要あンのか」
15 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:26:14.38 ID:wmiekhHN0

10032号「決まりですから、とミサカは簡潔に答えます」

一方「はァ……」


一方「…ZXC741ASD852QWE963'」


10032号「確認が取れましたので、只今より実験を開始します、とミサカは開戦を宣言します」

一方「あァ。まァよろしく頼むわ……今回こそちったァ楽しませてくれよ?」

10032号「言われずとも」






美琴「――――待ちなさい」

16 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:27:03.32 ID:wmiekhHN0

一方「……チッ、またオマエか。何しに来たんだァ?」

一方「まさか実験を止めに来たー…とか言わねェよな?いい加減学習しろってンだ、オマエじゃ俺に勝てねェよ」


美琴「…そんなこと、分かってるわよ」


美琴「でも、だからこそ私はアンタを止められる」

一方「―――はァ?何意味不明な事言ってンだオマエ」

一方「自分のクローン2万体の存在に耐えられなくなってついにイカれちまいましたかァ?」

美琴「…そうね。普通に見たらイカれてるのかもしれないわね」
17 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:27:32.57 ID:wmiekhHN0

美琴(『樹形図の設計者』は私が185手目で殺されるっていう演算結果を出してる)

美琴(なら、もし私が185手以下……それこそ1手目で、私が)


美琴「私はアンタに殺されに来たんだもの」


一方「……」


一方「…はーン、そォいうことか」
18 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:28:17.39 ID:wmiekhHN0

美琴「私はこの子から離れないわ。殺されるまではアンタの手から絶対に守り続ける」

10032号「お姉様……いけません、これは実験で」

美琴「黙ってて。アンタはもう実験なんかに加担することないのよ」

美琴「そんなふざけたもの、今からぶち壊すんだから」


一方「……クカカッ、いやァ恐れ入ったぜオリジナル」

一方「そこまで言うたァ大したモンだ。模造品なンかの為によ」
19 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:33:55.99 ID:wmiekhHN0

10032号「そうですお姉様、ミサカはボタン一つで生産できる、単価16万円の模造品で…」


美琴「アンタ、まだそんな事言ってんの!?アンタっていう人間はこの世界にたった一人しかいないでしょうが!」


一方「フーン。流石ご立派だァ、正規品(オリジナル)の『お姉様』の言う事は違う」

一方「模造品とどこが違うからなのかねェ?オマエ…」



一方「や っ ぱ ク ロ ー ン よ り 身 が 詰 ま っ て ン の か ァ ?」ブチッ



美琴「…え。――は……――――?」
20 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:35:40.91 ID:wmiekhHN0

美琴「い、ぎ。ぁ―――」



美琴「あ゛ッぐ、う、あ゛ぁ゛あ゛―――――っ!!!!!????」


一方「あァ?なンだよ、あン時のクローンと同じじゃねェか…クカカッ」

10032号「お、お姉様の右足を………!?一方通行、これは実験の範囲を大幅に―――」

一方「知るか。ンなもン再演算させればいいだけの話だろォが」

10032号「しかし、もし支障が発生したら」

一方「……」



一方「……うるせェってンだよ」
21 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:37:20.99 ID:wmiekhHN0

一方「もォいいや、オマエ」



10032号「、え?」

一方「どォせ単価16万の大量生産品なンだろォ?なら―――…」

一方「実験外で一体くらい無駄に壊したって、バチは当たらねェよなァ?」ニタリ


美琴「や、やめ、なさ…い……!」ズズ

一方「あっはァ、そういやオマエ、コイツを死ぬまで守るンだったか?」

一方「けど困ったなァ。どォやらコイツもオマエを守りてェみたいだ」

10032号「くっ……」

美琴「おい妹……!何を勘違い…してる、わけ?」


美琴「わ…たし、は、こうなる為にここ、に…来たん……だから―――…!」

一方「……」




一方「―――よォし分かった。ならよォ」


一方「仲良く二人一緒に壊してやる」
22 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:39:39.97 ID:wmiekhHN0






一方「―――――あー、終わった終わった」






23 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:40:29.73 ID:wmiekhHN0

一方「たく、解体ショー中にギャーギャーうるせェンだよ姉妹揃って」

美琴「…ァ」

10032号「うぐ、ぅ……」


一方「どォだ分かったかよ、オリジナル」

一方「俺は実験じゃなくても結局ヒトゴロシなンだよ」

一方「俺はこれからもオマエのクローン共を殺し続けるぜェ?」

美琴「そ――――…んな……」

一方「…オマエまだ声帯残ってたンだなァ。丁度良い」



「断末魔、上げられるもンなァ」
24 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:41:59.27 ID:wmiekhHN0


店員「ありあとあっしたー…」





一方「……」

一方「これだけあればひと月は保つか…」


あれから3日。

一方通行は、左手にぶら下げたビニール袋から覗くスチール缶の山の重さを確かめるように揺らした。

学園都市第三位の死亡は大きく報道された。
死因は、現場にあった小麦粉のコンテナの爆発だとか。

夜寮を抜け出して能力の特訓をしていた努力家の第三位は、偶然破壊したコンテナの中身に、自身の電撃で着火してしまった。
凄まじい勢いの爆発に、彼女は肉片となって死んだ。

という筋書き。

実際はそれよりずっと凄惨な事件と死因であったことを、一方通行は知っている。

そして、


あれ以来、一方通行は一人として『妹達』を殺害していない。




??「―――――、…!」



一方「……あァ?」
25 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:42:42.95 ID:wmiekhHN0

??「や、やめて!ミサカには行くところがあるの、ってミサカはミサカは知らないお兄さんたちに怯えてみたり…」ビクビク

モブ1「まあいいじゃねえか。その毛布だけじゃ寒そうだからお兄さんたちが温めてあげようってんだぜ?ひひ」

モブ2「ひひひひひ」


スキルアウトらしき柄の悪い男たちに、一人の少女が絡まれていた。
26 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:43:55.75 ID:wmiekhHN0

一方「ロリコンの変質者が出るたァ、この街も末期だな……。治安維持ってヤツはどォなってンですかァ?」


知らぬふりを決め込むつもりで、その場から立ち去ろうとする一方通行だったが、

一方(……)


一方「"ミサカ"だと?」

自宅であるアパートに向けた足を、毛布の少女の方へと起動修正した。
27 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:45:04.67 ID:wmiekhHN0

一方「…おい、オマエ」


モブ1「ん?…な、何だお前」

モブ2「あぁ?邪魔するんじゃねえよ、消えろ!」


一方「悪ィがオマエらに用はねェンだよ。あンのはそこのクソガキだ」

??「…え?」ビクビク

一方「オイ、オマエ今"ミサカ"って言ったな?」

??「そ、そうだけど……アナタは誰?ってミサカはミサカは新たなお兄さん登場に危機感を覚えてみたり」


モブ1「テメエ無視してんじゃねえよ!殺されてえのか!?」


一方「……その毛布取っ払って顔見せてみろ」

??「え?え?ちょっと待って、往来で女性に服を脱げと言うのはいささか大胆と言うかきゃあああああああっ!!!??」バサッ

モブ1・2「きゃああああああっ!!!??」
28 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:45:57.38 ID:wmiekhHN0

打止「か、返してえ!」モギトリッ

一方「……」

一方「オイ、その体は何の冗談だ……」



打止「うう、ひどいよひどいよ!乙女なのに乙女なのにー!ってミサカはミサカは羞恥のあまり抗議してみたり……」

一方「クソガキ。オマエ『妹達』だな?」

打止「え?そうだけど……どうして知っているの?ってミサカはミサカはあなたの顔を見上げてみたり……って、あ―――!!」


打止「あなた一方通行!?やった、思いがけず目標達成ー!ってミサカはミサカは喜びの舞を披露してみる!」
29 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 22:51:02.27 ID:wmiekhHN0
とりあえずここまで。
初っ端から2つもミスしてしまいましたが、頑張ります

原作禁書、漫画超電磁砲、漫画禁書を参考に書いているので、3つを読んでからの方がネタが分かるかもしれません
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2011/06/10(金) 23:01:19.72 ID:QTQxSm9p0

初っ端からいうのもアレだけど妹達って単価18万じゃなかったっけ?
31 :黒子毛 [saga]:2011/06/10(金) 23:03:59.76 ID:wmiekhHN0
>>30
もう泣いていいですか……

ツイッターしながら書くんじゃなかった
自分の歳と値段を間違えてしまった…
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/10(金) 23:06:36.78 ID:VcNjd2KPo
16万才って、あんたウルトラ一族か。
33 :黒子毛 [sage]:2011/06/10(金) 23:09:29.33 ID:wmiekhHN0
>>32
あはははははははははは






…うわあああああああああん!
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/10(金) 23:25:55.35 ID:bmAwB6ez0
乙、結局一応実験は止まった訳か

とりあえず、SSを楽しみつつ>>1を2828眺めるスレなのは理解した
35 :黒子毛 [sage]:2011/06/10(金) 23:56:49.70 ID:wmiekhHN0
>>34
なんだろう
すねてヘソ曲げながら照れてるツンデレな俺がいます


実験は保留でこれから決めます
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/11(土) 01:26:19.01 ID:ROq4iMfmo
とっとと書け太郎
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 02:50:38.46 ID:YqhGbzRIO
ドジっ子の>>1に萌えるスレはここですか?
ともあれ期待する
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/11(土) 18:00:27.07 ID:TlWVqVpmo
他はどんなのかいてたの?
39 :黒子毛 [sage]:2011/06/11(土) 19:03:00.02 ID:ldjisAkK0
>>37
嬉し恥ずかしってのはこの事でしょうか

>>38
前作は
禁書「赤ちゃんはどこ…?」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1305/13056/1305685060.html

ふざけたSSは
スーパー黒柳「学園都市?」河内「なんやて」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1301/13014/1301475061.html

麦野「はまづらを監視したい」垣根「無いわ」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1297/12977/1297793523.html
40 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:11:57.36 ID:CjjpYoJA0
書き溜めが出来たので投下します
41 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:12:31.75 ID:CjjpYoJA0

一方「…、俺?」

打止「うん、あなたを探してたの!ってミサカはミサカは元気よくお返事をしてみたり!」

打止「そしたら変な人たちに絡まれちゃって……でも良かった、見つかって!」

一方「……」


一方通行は無言で能力を行使した。

言葉にエクスクラメーションマークの多い少女の声を、最低限の所までシャットダウンする。
42 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:13:01.18 ID:CjjpYoJA0

一方「なンで俺なンだとか、なンでそンなやかましいンだとか訊きてェことは色々あるが……」

一方「その前によォ」


一方「そもそも何でオマエはそンな恰好なンですかァ?」


打ち止め「うーん、それが良く分からないのってミサカはミサカは正直に白状してみたり」
43 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:13:50.21 ID:CjjpYoJA0

打止「ミサカは自分でも知らない間に培養器から出されていたんだけど、まだ製造途中の体だったから他の『妹達』よりチンマリしちゃってるの。だから、出来れば…」

一方「ストップストップストォップゥ!」


一方「知らない間に出されてたァ?クソガキ、俺をおちょくってンですかァ?」

打止「だ、だってそうなんだもん!ってミサカはミサカは必死に訴えてみる!」

打止「実験のために他のミサカと同じ体になるはずだったのに、何故かその途中で意識が切れたの」

打止「気が付いたらこの近くで眠ってて……もうミサカにも何が何だか分からないのってミサカはミサカは泣きべそをかいてみる…」
44 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:14:17.49 ID:CjjpYoJA0

一方「……俺の方が分かンねェよクソガキが」


一方(だがこのフザけた体はそォいうわけか)

一方(製造途中の検体を容器から出すたァどォいうことだ?芳川の野郎…)


一方「おい、お前の検体番号はいくつだ」

打止「ええと、20001号だけど?ってミサカはミサカは即答してみる。あ、コードは『打ち止め』だよ」
45 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:15:02.50 ID:CjjpYoJA0

一方「2万……1号だァ?」

打止「うん。ミサカは『妹達』の最終ロットとして製造されたの」


打止「話を戻してもいいかな?ってミサカはミサカは一応確認をとってみる」

一方「…好きにしろ」


打止「えーっと。それで肉体(ハード)も人格(ソフト)も不安定な状態なので、ミサカはもう一度培養器に入れてもらいたい訳なの、ってミサカはミサカは両手を合わせてお願いしてみるんだけど」

一方「はァ?何でそれを俺に頼むンだよ」

打止「あなたには実験の研究者さんとの繋がりもあると思うから、出来るならお願いしてもらいたいかな、ってミサカはミサカは考えてる」

一方「……」


一方「他ァ当たれ」


打止「えー、どうして!?ひどーい!ってミサカはミサカは憤慨してみる!」
46 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:16:19.90 ID:CjjpYoJA0

一方「めンどくせェンだよ。なンで俺が実験動物なンぞの世話係をしなきゃならねェ」

打止「ううー……」

打止「ふんだ、いいもん、いいもん。ミサカだけで何とかしてみせるもん、ってミサカはミサカは非道な白モヤシに意地を張ってみる」

一方「なァーンか言いやがりましたかァ?こンクソガキがァァァァァッ!!」
47 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:16:49.62 ID:CjjpYoJA0

一方「――――あァ?」

一方「そういやさっきの奴等はどこに行ったンだァ?」キョロキョロ

打止「今さらだね…」


打止「……多分、逃げたんだと思うけど。ってミサカはミサカは言い当ててみたり」

一方「逃げたァ?何から?」

打止「…えっと。多分…その人」ユビサシ


一方「あァ?」クルッ




警備員「君、詰所まで来てもらえるかな。その裸にした子と一緒に」

一方「」
48 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:17:18.90 ID:CjjpYoJA0

一方「冗談じゃねェぞ……この歳で性犯罪者なンて汚名はゴメンだ」

打止「逃げる?」

一方「当たり前だろォが」


打止「……」

一方「……」

警備員「……」




一方「―――っはァ!!」ベクトルジャーンプ

打止「はははははー、さらばだヘルメットの人ーってミサカはミサカは―――…きゃああああっ!?早い!早すぎぃぃぃぃ!!」トビツキ
49 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:18:14.44 ID:CjjpYoJA0

一方「……で。オマエはどこまでついてくる気なンだよ」


打止「おおおーっ、初めて見るメニューがいっぱい!ってミサカはミサカはメニューを広げてはしゃいでみたり!」

一方「言っとくが奢らねェからな?おい」

打止「ふむふむ、このブザーを押せばウエイトレスさんが飛んで来るのねってミサカはミサカはぽちっとな!」

一方「聞いてンですかァクソガキさァン!?」

打止「えっと、このハンバーグランチっていうのをくださーい!ってミサカはミサカはスマイル全開で初めての注文を飾ってみたり!」

一方「………」



打止「ねえねえあなたはどうするのってミサカはミサカは聞いてみたり」

一方「…ステーキセットでお願いしますゥ……」
50 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:18:51.18 ID:CjjpYoJA0

<オーダーハイリマース




一方「…あのなァ、オマエ一体どォいう神経してンだよ」


一方「俺がオマエ達に何やってンのか憶えてねェのか?」



打止「…ミサカは全てのミサカと脳波リンクで精神的に接続した状態だから…」

打止「もちろん覚えてるよ、ってミサカはミサカは即答してみる」


打止「"あれ"は痛いし苦しい」

一方「…なら、なンで」
51 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:19:28.99 ID:CjjpYoJA0

打止「でもそんなのは何の意味もない事ってミサカはミサカは考えてる」

一方「はァ?」

打止「ミサカ達は『ミサカネットワーク』という巨大な大脳を支える脳細胞のようなもの」

打止「単体が死亡したってネットワークそのものが消滅することはありえない」


打止「ミサカの最後の一人が、消えてなくなるまで」
52 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:20:01.90 ID:CjjpYoJA0

打止「…心配しないで。ミサカはアナタに感謝してる」

打止「アナタがいなければ、傾きかけてた『量産型能力者計画』が拾い上げられることも無かったはずだから」

打止「ミサカに命をくれたのは間違いなくアナタなんだから」


一方「…感謝だァ?どンだけお花畑な思考してやがンだオマエは…」




prrrr...


一方「―――あン?誰だ」ピッ

打止「お電話―?ってミサカはミサカは初めて見る携帯電話に興味を示してみたり」
53 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:20:40.52 ID:CjjpYoJA0

一方「…オマエか。……そうか、あァ」


一方「5分で行く」ピッ


打止「誰からだったの?ってミサカはミサカはアナタの浮気を疑ってみたり」

一方「何が浮気だマセガキが」ガタッ
54 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:21:09.69 ID:CjjpYoJA0

打止「え、どこへ行くの?ってミサカはミサカは尋ねてみたり…もしかしてトイレ?」

一方「帰ンだよ。会計は払っといてやる」

一方「じゃァな、クソガキ」


打止「え、そんな。待って―――…」




ガシャンッ


一方「…あ?」
55 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:21:39.75 ID:CjjpYoJA0

打止「…うう……あ…」ハァハァ


一方「…オイ」

打止「あ…はは。こうなる前に研究者さんと…コンタクトを取りたかったんだけど……」


一方「……ふン」




一方「悪ィがガキの開放する優しさなンてもンは持ち合わせてねェンだわァ」




一方「残念だったな」
56 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:22:11.68 ID:CjjpYoJA0

一方通行はカードで会計を済ませ店を出る。


そしてすれ違う、一人の男。





一方「………天井亜雄?」


57 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:24:33.06 ID:CjjpYoJA0
とりあえずここまでー。

今回の投下分は漫画版禁書を読みながらの方が分かるかもしれません。抜いた言い分とか
58 :黒子毛 :2011/06/12(日) 10:25:55.97 ID:CjjpYoJA0
…またミスりましたァ

>>55
× 一方「悪ィがガキの開放する優しさなンてもンは持ち合わせてねェンだわァ」

○ 一方「悪ィがガキの介抱する優しさなンてもンは持ち合わせてねェンだわァ」
59 :黒子毛 :2011/06/12(日) 11:05:57.14 ID:CjjpYoJA0
次の投下は明日の午前中になります
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 11:59:42.91 ID:2f4BOGGr0
ドッジ子な>>1がSS書くのを生温かく見守るスレはここですか?

すべて書き終わる頃には、年齢、性別、性癖とか色々暴露されていくのか 新感覚胸熱SSだな
61 :黒子毛 :2011/06/12(日) 20:54:49.16 ID:CjjpYoJA0
>>41
× シャットダウン
○ シャットアウト

OS終了してどうするんだ…

僕にノーミスの日は来るのでしょうか
62 :黒子毛 :2011/06/13(月) 08:16:02.84 ID:zcZvd3Iy0
おはようございます。投下します
63 :黒子毛 :2011/06/13(月) 08:46:18.78 ID:zcZvd3Iy0

一方「よォ、芳川。ひでェ有様だな」



芳川「そう思うのなら手伝ってくれる?結構大変なのよ、一人でこの広い研究所の片付けは」

一方「俺がやると思うのかァ?」

芳川「まあそうでしょうね……安心して。期待はしていなかったから」
64 :黒子毛 :2011/06/13(月) 08:51:59.38 ID:zcZvd3Iy0

芳川「ところで本題なのだけれど、一方通行」

芳川「君の実験にちょっとした動きがあったの」

一方「あァ?……今は『樹形図の設計者』が実験の再演算中なンじゃねェのかよ」

芳川「そうね。現時点で実験の存続は未定。これからどうなるかは分からないわ」

芳川「エラーの修正案を弾き出すのに3日かかった訳だから、きっと結果が出るのは来週になるでしょう」

一方「まァ軽く見てそンなとこだろうな」

芳川「…だけど、その結果を私達が見る前に」


芳川「『絶対能力進化計画』は終わりを迎えるかもしれないわ」

一方「……はァ?」
65 :黒子毛 :2011/06/13(月) 08:52:25.48 ID:zcZvd3Iy0

芳川「数日前……オリジナルの超電磁砲がここを襲撃するほんの少し前なのだけれど」

芳川「天井亜雄という研究者がここから脱走したの」

一方「―――!」


一方「…フーン、あの気弱な天井くンがねェ。大方非人道的な研究に嫌気がさしたってとこかァ?」

芳川「むしろその逆ね」

芳川「彼は学習装置を使って、クローンにとんでもないものを仕込んでいったの」


一方「とンでもねェもンだァ?なンだそりゃ」

芳川「………『ウィルスコード』」
66 :黒子毛 :2011/06/13(月) 08:55:26.97 ID:zcZvd3Iy0

芳川「民間人に対する無差別攻撃を『妹達』全てに命じるコード」

芳川「目的は恐らく『妹達』に反乱を起こさせて、見返りとして外部の敵対組織にでも雇ってもらおうってところでしょう」

芳川「ここはあまり良い労働条件とは言えないし、彼は実験の一時停止の責任を問われていたから」


一方「ほォ、ウィルスねェ」

一方「…あっはっはァ!!そいつァ確かに面白ェもン仕込ンでいきやがったなァ天井くゥゥン!」


一方「あァ?でも待てよ芳川」

一方「たった一人のクローンから他のクローンに感染させるなンなこと、出来ンのかァ?アイツらにも防衛機能くらいあるンじゃねェのかよ」


芳川「それが問題なのよ。…彼がウィルスコードを仕込んだ個体は特別なの」

芳川「検体番号20001号『打ち止め(ラストオーダー)』。体は子供の、私達が秘密裏に管理していた『妹達』の上位個体よ」
67 :黒子毛 :2011/06/13(月) 08:56:33.07 ID:zcZvd3Iy0

一方「上位、個体だと?アイツが特別?」

芳川「…アイツ?……ああ、そう。そういうこと」

芳川「どうやらあの子はまだ学園都市にいるようね。安心したわ」



芳川「―――一方通行」


一方「…なンだ」



芳川「あの子を保護を、お願いできないかしら」
68 :黒子毛 :2011/06/13(月) 09:04:14.38 ID:zcZvd3Iy0
とりあえずここまで。

展開が少し早い気もしますが、次の投下で打ち止め編は終了です
そげぶを喰らっていない一方さンは冷ため

夕方また来るかもしれません
69 :黒子毛 :2011/06/13(月) 17:48:46.70 ID:zcZvd3Iy0




天井(頼む頼む頼む!!ウィルス起動までは保ってくれ!)





70 :黒子毛 :2011/06/13(月) 17:49:14.72 ID:zcZvd3Iy0

打止「う…」ゼエゼエ

天井(この窮地さえ凌げば、外部の組織の手引きで逃げられるんだ!)

天井(クーデターの見返りに、破格の条件で引き抜きを約束してくれている研究所もある。頼む、あと少しだけ…)


天井「―――――っ、は!?」



天井「あ」


天井「――――ああ」







一方「人間追い詰められると、どンどン思考が単純化していくよなァ。天井くゥゥン?」
71 :黒子毛 :2011/06/13(月) 17:49:43.37 ID:zcZvd3Iy0

天井「……、ぃ、ひ!」


天井の喉からおかしな声が漏れた。


最終信号を渡す訳にはいかない。

そのためには、あの化け物を迎撃しなくてはならない。


天井(しかし、どうやって!?)


白衣の懐には拳銃が収まっているが、そんなものでどうにかできる相手ではない。




ならば、逃げるしかない。
72 :黒子毛 :2011/06/13(月) 17:50:18.72 ID:zcZvd3Iy0

天井「う、うわあああああああああっ!!!!」


車に乱暴な発進をさせて、天井亜雄は全速力で一方通行とは逆の方向に向かった。


しかし。



一方「逃げられるとでも思ってンのか、三下ァ」

第一位のベクトル操作能力が発動した。


ダン、と強く蹴った一方通行の足元から膨大な力が生み出される。

そして、既に数十メートル先に離れた天井の安っぽいスポーツカーが。



天井「――――、は!?」



ギャグ漫画のように跳ね上がった。
73 :黒子毛 :2011/06/13(月) 17:51:41.90 ID:zcZvd3Iy0

勢いそのまま後方へとひっくり返った金属の塊は、ぐしゃりという嫌な音を立てて潰れた。



天井「う、あ……」

一方「辛うじて生きてる、か。クカカッ、救急車でも呼びますかァ?」


いつの間に引っ張り出したのか。

天井の眼前に立つ一方通行の腕には、ぐったりとしたままの最終信号が抱えられていた。


一方「まァ、それはそれで困るよなァ。学園都市に消されるだけだ」


天井「うう、くそっ……どうしてお前のような人間が…ッ!何の…つもりだ!」



一方「簡単な事だ。俺がオマエお手製の実験動物を無事に20000体[ピーーー]までは、学園都市を潰されるワケにいかねェンだよ」

一方「つーことで、まァ」



一方「ここで死ンどけ」


天井の脳天を貫いたのは、彼の白衣に入っていた強化弾『衝槍弾頭(ショックランサー)』だった。
74 :黒子毛 [saga]:2011/06/13(月) 17:52:07.28 ID:zcZvd3Iy0

勢いそのまま後方へとひっくり返った金属の塊は、ぐしゃりという嫌な音を立てて潰れた。



天井「う、あ……」

一方「辛うじて生きてる、か。クカカッ、救急車でも呼びますかァ?」


いつの間に引っ張り出したのか。

天井の眼前に立つ一方通行の腕には、ぐったりとしたままの最終信号が抱えられていた。


一方「まァ、それはそれで困るよなァ。学園都市に消されるだけだ」


天井「うう、くそっ……どうしてお前のような人間が…ッ!何の…つもりだ!」



一方「簡単だ。俺がオマエお手製の実験動物を20000体殺すまでは、学園都市を潰されるワケにいかねェンだよ」

一方「つーことで、まァ」



一方「ここで死ンどけ」


天井の脳天を貫いたのは、彼の白衣に入っていた強化弾『衝槍弾頭(ショックランサー)』だった。
75 :黒子毛 [saga]:2011/06/13(月) 17:53:00.04 ID:zcZvd3Iy0

一方「…芳川か」



一方「ガキは保護したぞ。これからどォすりゃいい?研究所に連れてくのか」


芳川『その必要はないわ。万全を期すつもりでいたから、今私がそっちに向かってる』

芳川『調整用の機材を載せているし、ウィルスコードの解析も八割方終わっているわ』


一方「そォか。なら、いい―――――……、おい、ちょっと待て。」

芳川『どうしたの?…………一方通行?』


一方「―――――」



打止「…、サ……は。…。」
76 :黒子毛 [saga]:2011/06/13(月) 17:53:27.51 ID:zcZvd3Iy0







打止「み、サ―――…カ、ミサ。カはミサ、カはミサ!カはミサカはミサカはミサカミサカミサカミサカミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサmiju0058@Misagrミサqw0014codeLLGミサかミサカieuvbeydla9((jkeryup@[iiG:**uui%%ebvauqansicdaiasbna:―――――――ッ!!」










77 :黒子毛 [saga]:2011/06/13(月) 17:54:05.33 ID:zcZvd3Iy0

芳川『――――…ッ!!』

一方「おい芳川。こいつは一体どォなってる。これも何かの症状の一つなのかよ」

芳川『0時発動と言うのは…ダミー情報だったんだわ―――――』



『ウィルスコードよそれ。もう起動準備に入ってる!』


78 :黒子毛 [saga]:2011/06/13(月) 17:56:27.47 ID:zcZvd3Iy0

一方「な、ン……!?」




一方「―――…ハッ。間に合わなかった、か」

芳川『聞きなさい一方通行。こうなった以上次の手を打たなければならないわ』


芳川『ウィルスはミサカネットワーク上へ配信される前にコードを「上位命令文」に変換するための準備期間がある』

芳川『時間はおよそ10分間。…いえ、もう7分ほどというところね』



芳川『―――もう、分かっているわね』


一方「……あァ」
79 :黒子毛 [saga]:2011/06/13(月) 17:57:42.40 ID:zcZvd3Iy0

芳川『せめてあと30分時間があれば、まだ手があったかもしれないけれど』


芳川『こうなったからには……仕方ないわ、一方通行。あの子をお願いね…』

一方「……あァ」

芳川『最後に、救えなくてごめんなさいと伝えておいて。…それじゃ』

一方「……あァ」


通話は終了した。

無機質な機械音が響き、どこか淋しげな一方通行の鼓膜を揺らした。





……どうしてだろう。


どうして、こんな。


自分は、こんなに。

こんなに大きな喪失感を感じているのか。


絶望より、闇より深い喪失感を。




そう。

自分の最後の希望が、掌から零れ落ちてしまったような。







そして、笑った。


80 :黒子毛 [saga]:2011/06/13(月) 18:00:02.70 ID:zcZvd3Iy0


一方「ハッ、なァーに言ってンだかなァ。今さら」



天井『―――――どうして、お前のようなものが――――…』


一方「…まったくだ。俺みてェのが…」


一方「何を血迷ってンだかなァ。俺が選んだのは、クソッタレのクズの道だ」

一方「考えが甘すぎンだよ」



一方「誰かを救えば、何かが変わるかもしれねェなンて」



一瞬だけ脳裏に浮かんだのは、初めて自分に向けられた純粋な善意の目。





一方「まァ、悪くはなかったぜ。クソガキ」



『最強』はこの日、二人の人間を殺した。

救いの道は、閉じた。

81 :黒子毛 [saga]:2011/06/13(月) 18:04:35.77 ID:zcZvd3Iy0


一方「ハッ、なァーに言ってンだかなァ。今さら」



天井『―――――どうして、お前のようなものが――――…』


一方「…まったくだ。俺みてェのが…」

一方「何を血迷ってンだかなァ。俺が選んだのは、クソッタレのクズの道だ」

一方「考えが甘すぎンだよ」


一方「誰かを救えば、何かが変わるかもしれねェなンて」


一瞬だけ脳裏に浮かんだのは、初めて自分に向けられた純粋な善意の目。





一方「まァ、悪くはなかったぜ。クソガキ」


ウィルスコード発動の5分前、20001号の頭に突き付けられた武骨な拳銃。


『最強』はこの日、二人の人間を殺した。

救いの道は、閉じた。

82 :黒子毛 [saga]:2011/06/13(月) 18:08:10.75 ID:zcZvd3Iy0
またsaga忘れやってしまった……
最後のレスも連投ごめんなさい。

これにて打ち止め編は終了です。
次は、羞恥心?なにそれおいしいのなあの人が登場します
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/13(月) 18:48:03.85 ID:4nocjYya0
乙 次はあわきんかな?
84 :黒子毛 :2011/06/14(火) 18:51:21.26 ID:vYfssEHB0




一方「……実験終了、だァ?」


芳川「…ええ、そういうことになるわね」






85 :黒子毛 :2011/06/14(火) 18:51:49.14 ID:vYfssEHB0

芳川「"『絶対能力進化計画』にイレギュラー因子混入。再演算の結果、実験の継続は不可と判明"」

芳川「"現時点で計画全体を凍結する"…だそうよ」


芳川「これは『樹形図の設計者』の最終決定」


一方「チッ、やっぱりオリジナルと交戦したのはマズかったかァ」

芳川「『超電磁砲』の彼女がいない今、これがまた偽の情報という事は無いでしょうし…」


芳川「残念だけれど、一方通行。レベル6への道は閉ざされたと思ってちょうだい」




86 :黒子毛 :2011/06/14(火) 18:53:47.91 ID:vYfssEHB0

一方「―――…」


一方「…ふン、まァいい。結局俺の自業自得だしなァ」


一方「そもそもレベル6なンぞにならなくても、俺に敵う奴なンてどォせいやしねェ」

一方「実験始めたのもアレだ、こォじょォしンーってヤツかァ?」


一方「それに、お前以外の慌てふためいてる研究者共には悪ィがなァ」

一方「もォ、『絶対能力者』とやらに救いを求めるのはやめにしたンだ」

芳川「…、そう」


一方(…そォだ。何をしたって、どォせ何も変わりゃしねェンだからよォ)
87 :黒子毛 :2011/06/14(火) 18:54:39.79 ID:vYfssEHB0

芳川「残った『妹達』については今、廃棄処分か延命治療かで研究者たちが揉めているわ」

一方「ほォ…延命治療ねェ」

芳川「一応彼女たちは学園都市第三位…いえ、前第三位のクローンだしね」

芳川「実験が失敗に終わってしまって、ヤケになっている研究者たちには魅力的に見えるでしょう」

一方「生体実験、それから成長過程の観測ってとこかァ?」

芳川「まあそんなところね。特に後者は、『妹達』の殆どを世界各地に配置して行うらしいわ」

一方「そりゃそォだ。違う経験をすりゃァ個体ごとの差が出てくるだろ」

一方「みンな仲良く学園都市に永住ー、よりもずっと効率的だろうなァ」


芳川「…でも、なんだか彼女たちには申し訳ないような気がするわ…とことん私達の勝手で」


一方「ハッ、今さら何言ってやがる。アイツらはただの"実験動物"だろうが」


芳川「…そうね」
88 :黒子毛 :2011/06/14(火) 18:55:48.08 ID:vYfssEHB0


一方「……うめェ」ゴク



一方通行が訪れていたのは近所のコーヒーショップ。

豆の薫りが充満した店内で、彼は真っ黒な液体を啜っていた。


一方「この店は当たりだなァ」

言葉からは分かりづらいが、語尾に音符でも付けそうなくらいには上機嫌の一方通行。

久しぶりにお代わりを要求しようとカウンターへ向かう一方通行に、不意に誰かがぶつかった。



??「おっと、すまないな。………ええと。今のは君の能力か?」

一方「…まァな」


珈琲豆の大袋を胸に抱えた白衣の女が、少し不思議そうな顔をして彼に謝罪する。

反射が働いたのだ。

ぶつかると言うよりは跳ね返された女の目の下には、大きな隈があった。
若いのにずいぶン苦労なさってるンですねェ、などと年寄り臭い事を一方通行は考えていた。
89 :黒子毛 :2011/06/14(火) 18:56:21.66 ID:vYfssEHB0

??「あまり見たことのない能力だな。これは一体……ああすまない、私はこれでも研究者なんだ」

一方「ンなもン見りゃわかる」

??「ん?…あ、この白衣か」

完全に忘れていた、という顔で白衣をつまむ女。
あまり身なりには頓着しないタイプの人間なのだろうか。


??「……ああ」

一方「あァ?」

??「そうか、君は一方通行君だな?今の能力はおそらくベクトル操作だ」

一方「…ほォ」
90 :黒子毛 :2011/06/14(火) 18:57:23.71 ID:vYfssEHB0

??「ひどいな。ぶつかったのは確かに私からだが、能力を使うなんて」


一方「普段は反射に設定してあンだよ。…よく俺の力を見抜いたじゃねェか」

??「職業柄、色々な能力に接しているのでね。希少な能力というのは特定しやすい」


??「そうだ、君の名前を出してしまったわけだから、一応こちらも名乗っておこうか」



木山「私は木山春生。専攻はAIM拡散力場の研究者だ」
91 :黒子毛 :2011/06/14(火) 18:57:52.20 ID:vYfssEHB0

一方「そォか。…悪ィが、研究者と深く関わるつもりはねェンだよ」

レジで会計を済ませた女と、二杯目のカップを持った一方通行は店外に出た。



木山「学園都市第一位の能力者ともなれば、研究者には良い感情を持てないだろうね」

一方「ヘンな同情はいらねェぞ。憐みはゴメンだ」

木山「……」
92 :黒子毛 :2011/06/14(火) 18:58:20.10 ID:vYfssEHB0

木山「…しかし店の外は暑いな。もう9月だというのに」

一方「俺は熱も日光も反射してるから何も感じねェよ」

木山「む。羨ましい能力だなそれは…」


木山「…うう、暑い……」ヌギヌギ

一方「……あァ?お、おい」





木山「うう、少しマシになったかな…」ポヨン




一方「……ッ、はいィィィィ!!!??」

93 :黒子毛 :2011/06/14(火) 18:58:47.19 ID:vYfssEHB0

一方「こっ、公衆の面前でなァァにやっちゃってンですかァこの露出狂さンはァァァ!!!??」


木山「何って……いや、だって暑いだろう」


一方「……オマエ、一度自分の脳を研究した方が良いンじゃねェのか?」

木山「?」

一方「……」ダメダコリャ




??「―――ちょっと、君」トントン

一方「あァ?」





警備員「ちょっとその女の人と一緒に詰所まで来てもらえるかな」マタキミカ

一方「」マタコノナガレ
94 :黒子毛 :2011/06/14(火) 19:01:22.18 ID:vYfssEHB0
ここまでです。短いですが…

…べ、別にちょっと行き詰まったわけじゃないんだからねっ!
95 :黒子毛 :2011/06/14(火) 19:05:54.64 ID:vYfssEHB0
注:時系列はちょっと無視してます
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/14(火) 19:24:38.44 ID:O9AgZqLAO
何だろう…
すごい読みやすい
一方さんの能力に規制付かんでよかった…
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2011/06/14(火) 20:13:11.65 ID:eSH2J1My0

これからどうなるか全く予想がつかないぜ・・・
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 21:09:28.38 ID:0Ntiy/qLo
>??「―――ちょっと、君」トントン

きっとこの警備員は木原神拳の使い手
99 :黒子毛 [sage]:2011/06/14(火) 23:58:41.20 ID:vYfssEHB0
ぬおっ
うっかり最強のアンチスキルを作ってしまいました……

彼の声は係長ボイスで再生お願いします


一応言っておきますが伏線とかではありませんww
アンチスキルが猟犬部隊引き連れてロケットランチャーぶっ放すとかは無いです
100 :黒子毛 :2011/06/15(水) 17:09:56.61 ID:3O5tfcnG0
投下します
101 :黒子毛 :2011/06/15(水) 17:14:30.48 ID:3O5tfcnG0

一方「ひでェ目に遭った……やっぱ研究者なンてロクなもンじゃねェ」

木山「脱いだくらいで一体何だと言うのだろう…私はごく普通の善良な一般市民だぞ」

一方「公道でブラ晒す女を一般人とは呼ばねェ」

木山「では今度は下を」

一方「だから脱ぐんじゃねェ!!」
102 :黒子毛 :2011/06/15(水) 17:16:12.83 ID:3O5tfcnG0

木山「まあ…その、巻き込んでしまって済まなかったな」

一方「全くだァクソッタレ」

一方「…俺は帰るぞ。二度とそのツラ見せんな」グビ


一方「……。あァ畜生、コーヒー思いっきり冷めてやがる」

木山「私が買い直そうか?」


一方「結構ですゥ!オマエといるとロクな事にならねェって防衛本能が騒いでンだよォ…」

木山「そうか。ではここでお別れするとしようか…」
103 :黒子毛 :2011/06/15(水) 17:17:39.62 ID:3O5tfcnG0


木山「――――さて、私も研究に戻らなくては」


木山「そろそろあのファイルも広まっただろうし」

木山「サイトは停止されてしまったが……もう必要ないな」


木山「…長かった。とても」


木山「もうすぐだ。完成が楽しみだな……『幻想御手』」

104 :黒子毛 :2011/06/15(水) 17:18:27.41 ID:3O5tfcnG0



一方「……」


モブA「――――、…―――」

男「―――!、…!」



何気なく目を向けた路地で、気弱そうな男がカツアゲされていた。

相手はまたスキルアウトだ。


一方「毎日毎日ご苦労さンだことォ……」

一方「……クズが」


蔑む様な視線を向け、一方通行は、
105 :黒子毛 :2011/06/15(水) 17:19:11.49 ID:3O5tfcnG0

一方「―――あの制服は…」


襟首を掴まれている方の男の着ている服に気が付いた。
そして彼の胸に付いている校章。

少なくともこの街の平均レベルよりは上の能力者たちが通う、とある高校の制服だったと記憶している。


一方「……どォいうわけだ?」

そんな学校の生徒に一人で挑むほど、スキルアウトも脳なしではないはずだ。

そんなことをすればあっという間に撃退されてしまうのが関の山。




ならば目の前の光景は一体何なのだ。
106 :黒子毛 :2011/06/15(水) 17:19:59.54 ID:3O5tfcnG0


一方「!」


不意に、スキルアウトの方が動きを見せた。

空いている方の手から、炎を出したのだ。


『発火能力者』。


一方(いよいよどォいうこった。ありゃレベル0や1なンてもンじゃねェぞ?)

一方(少なくとも2……。ひょっとすると3か3.5くらいはあるかもしれねェ)


目の前で大火力を見せつけられた制服の男の顔色は更に悪くなった。


男「た、――――て…―――!」


助けて、と言ったのだろう。遠くからだが声は届いた。

腕を振りほどいた男は懐にあった財布をスキルアウトに投げつけ、一目散に人ごみの中へと消える。
107 :黒子毛 :2011/06/15(水) 17:20:25.73 ID:3O5tfcnG0

後に残ったスキルアウトの男は財布を拾い上げた。

彼はその中身をろくに確かめようともせず、適当に自分のバッグへと放り込む。


その時、バッグからおかしなものが覗いた。


今しがた制服の男から手に入れたもの以外に、10ほどの札入れがギッシリと入っていたのだ。


一方「……」

当然、数十メートル先のバッグの中身が見えるほど、日本人の平均視力は高くない。

だが学園都市の頂点に立つ一方通行には些細な問題だ。


光のベクトルを操作してその不審な光景を見た一方通行は、無言のまま地を蹴った。




膨大な演算式が構築される。





彼は地面から自身を"発射"し、更に風のベクトルを操って空を翔けた。

かなりメルヘンチックに見える姿だが、本人にその自覚は無い。
108 :黒子毛 :2011/06/15(水) 17:21:26.31 ID:3O5tfcnG0

一方「……こっちも」


一方「こっちでも…」

そしてあちこちを猛烈なスピードで飛び回る一方通行。



一方「……やっぱりか」


彼は空に浮いたまま、何かに納得したような声を出した。
109 :黒子毛 :2011/06/15(水) 17:22:05.19 ID:3O5tfcnG0

街のあちこちで、彼が目撃したものと同じような事件が同時に起こっていた。

スキルアウトが能力者を襲撃しているのだ。
金を集める者もいれば、ただ単純に暴力を振るうことを目的としている者もいる。

ざっと路地裏を覗いただけでこれだけの数を発見できたということは、


一方「……一体一日にどンだけ襲撃事件が起こってンだ?」


明らかに異常だった。

この変化は
『スキルアウトが全員同時期に揃って能力を急成長させた』
と見るほか無いが、そんなふざけたことがあるわけがない。
そもそもスキルアウトは『時間割り』自体まともに受けていないのだ。


一方「……調べてみるか…どォーせヒマだしなァ。クカカ」
110 :黒子毛 :2011/06/15(水) 17:30:04.08 ID:3O5tfcnG0

研究者「……『第二次製造計画』の『妹達』は必要性が無くなってしまった」

研究者「今はもう、クローン技術に関するデータを収集するためだけのモルモット同然」

研究者「何とかこの汚名を払拭しなければ、私が"処分"されてしまうかもしれない……」

研究者「『絶対能力者進化計画』が失敗に終わった今、『量産型能力者計画』までもこのまま終わらせるわけにはいかないのだ…!」



研究者「……ここは」






研究者「もしもし。私だ」


研究者「今すぐ『樹形図の設計者』の使用許可をとれ。至急だ」
111 :黒子毛 :2011/06/15(水) 17:34:16.91 ID:3O5tfcnG0
とりあえず今日はここまでです。
ネタ詰まりはどうにかなったので、一応投下二回分くらいの書き溜めはあります
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/15(水) 19:32:42.58 ID:sQEiWYmz0
楽しみにしてる
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/06/16(木) 00:13:54.33 ID:qk+VPnOR0
>・前半は結構死にます
いやいくらなんでも死にすぎだろ
114 :黒子毛 :2011/06/16(木) 17:20:13.21 ID:LCj+KjL50
投下します
115 :黒子毛 :2011/06/16(木) 17:24:23.03 ID:LCj+KjL50


芳川「あら」


芳川「君から訪ねてくるなんて珍しいわね。何かよほどの事でもあったのかしら」

一方「別に。そォいうワケじゃねェ」

意外そうな顔をしながら尋ねる芳川に、一方通行の返事は素っ気なかった。



一方「ただ、街でヘンなもンを見てなァ」

芳川「へんなモノ?」
116 :黒子毛 :2011/06/16(木) 17:24:52.06 ID:LCj+KjL50

一方「…スキルアウトが能力者を襲撃してンだ」

芳川「あら。知らなかった?元々スキルアウトというのはほぼその為の武装集団なのよ」


一方「ンなことは知ってる。だがそれだけじゃねェンだよ」


一方「"対象には高位能力者も含まれていて、実行犯は武器も使わずほぼ単独"…これが無能力者の武装集団なンて言えるのかァ?思いっきり行動指針から外れてンじゃねェか」

芳川「……まさか、そんなことが」

一方「あったンだよ。この目でスキルアウトが能力使ってンのを見た」

一方「力に差はあるみてェだが、間違いなくレベル2〜3…それ以上のヤツもいた」
117 :黒子毛 :2011/06/16(木) 17:25:25.57 ID:LCj+KjL50

一方「特に能力が強力なヤツはやりたい放題だ。弱い能力者どもには二人くらいのタッグを組んでるヤツもいたが…」


彼が見た発火能力者のスキルアウト。

あの男は相手に炎をちらつかせ、怯えさせ、自分の能力をわざと誇示するような行動をとっていた。



それはどこか、自分の力に浮かれているようにも見えた。


一方「アイツらは元々は無能力者ばかりの集団だ。誰かが手を加えなきゃァ、こンなことは有り得ねェ」

一方「何かの実験か、どっかの誰かさンの悪巧みか」

一方「オマエは裏の人間だ。何か知らねェのか」
118 :黒子毛 :2011/06/16(木) 17:26:09.86 ID:LCj+KjL50

芳川「残念だけれど、そんな症例は初めて聞いたわね」

芳川「……能力が上がったのはスキルアウトだけだったの?」

一方「いや、確認はしてねェ。そもそも一般人で能力を日常的に使う奴なンぞ滅多にいねェからな」

芳川「…そう。分かったわ、私の方でも一応調べてはみる」

一方「あァ」


一方「まァ今日は知らせに来てやっただけだァ。もし何かあったらすぐに教えろ」

芳川「ええ、もちろん。君も何か手がかりになりそうなものを見つけたら、その時は。」
119 :黒子毛 :2011/06/16(木) 17:26:35.93 ID:LCj+KjL50


芳川「…………ねえ一方通行」

一方「なンだ」

芳川「もしかして、何かあった方が楽しくなりそう…なんて考えてないわよね?」



一方「……クカカッ、どォだかな。なンせ今の俺は暇人だからなァ」

120 :黒子毛 :2011/06/16(木) 17:28:56.11 ID:LCj+KjL50




それから二週間。




一方「……あァ、うめェ。マジでうめェ」


すっかり某コーヒーショップの虜と化した一方通行は、今日も窓際の一番端の席を陣取っていた。彼の特等席だ。

この後ブラックをゆっくりと時間をかけて飲み切り、テイクアウトでまた同じものを注文して帰路につく。

一方通行はベクトル操作で熱を閉じ込め、保温することが出来る。
アパートに着いてもホカホカなコーヒーを、いつでも好きな時に飲めるという素晴らしきパラダイス。


…完璧だ。


一方通行はここ最近の自分の生活の充実ぶりに口元を緩めた。



10033号「いやいやいや、完全に能力のムダ遣いじゃねーかよとミサカは呆れ顔でダメ出しします」


一方「――ぶっ、ふゥッ!!?」
121 :黒子毛 :2011/06/16(木) 17:29:35.60 ID:LCj+KjL50

10033号「そもそも、コーヒーショップしか行く場所が無いって人間としてどうなんでしょう、とミサカは学園都市第一位のぼっちっぷりに哀れみの視線を向けます」


一方「……オマエ、なンでこンなところにいンだ」


10033号「実験は永久に凍結したのですから、ミサカがどこへ行こうと問題ないのでは?」

10033号「つーか先に噴き出したコーヒー拭けよ、とミサカは的確なアドバイスをします」

一方「弾くから問題ねェ」キュインッ

10033号「…だから能力のムダ遣いをするんじゃねーよと」

一方「なァーンか言いましたかァ?」

10033号「……。いえ、とミサカはこのあたりで自重しておくことにします」
122 :黒子毛 :2011/06/16(木) 17:30:55.99 ID:LCj+KjL50

10033号「実はですね、ミサカもこの店の味に惚れ込んだクチでして」ズズー

一方「ほーォ…なかなかいい趣味してンじゃねェか」ズズー


一方号「「―――――ふううぅ…」」



一方「このコクと深みがたまンねェンだよなァ……」ウン

10033号「ミサカは口の中に広がる香りも好きで……クセになります」ウン


一方「分かってンじゃねェかよ」ガシッ

10033号「あなたもなかなか、とミサカはとうとう見つけてしまったコーヒー談義の相手と固く握手を交わします」ガシッ
123 :黒子毛 :2011/06/16(木) 17:31:49.03 ID:LCj+KjL50

一方「……つかよォ、なンかオマエら知らねェ間に個性芽生えちゃってませンかァ?」

10033号「はい?」

一方「コーヒー好きのクローンなンて聞いたことねェっつの。それからその耳も」

10033号「耳?…ああ、これですか?」

10033号「気になります?」

一方「あァ?」

10033号「ミサカが音楽プレーヤーで何を聞いているのか気になるんですね?興味があるんですね?」ニヤニヤ

10033号「仕方がありませんね、特別に教えてあげましょうフフフフフとミサカは特別に出血大サービスすることを宣言します」フフフフフ


一方「なンか大分うぜェ個体に出会っちまったみてェだ」
124 :黒子毛 :2011/06/16(木) 17:32:22.19 ID:LCj+KjL50

10033号「実は」


10033号「最近ミサカはちょっとしたチート兵器をある筋から手に入れてですね」

一方「いきなり物騒な事言い出しやがるなコラ」


10033号「まあ一見何の変哲もない音楽ファイルなのですが、これがとんでもない力を秘めているのですよ、とミサカは隣の奥さんにこっそり旦那の浮気を告げ口する中年女性のように小声で秘密を話します」

一方「なァ、オマエはそォいうキャラなのか?そォなのか?」
125 :黒子毛 :2011/06/16(木) 17:32:58.53 ID:LCj+KjL50




10033号「これは"LeveL UppeR"というファイルです。どうやら正しい表記は『幻想御手(レベルアッパー)』らしいのですが」




126 :黒子毛 :2011/06/16(木) 17:36:42.97 ID:LCj+KjL50
ハイ今日はここまでー
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/16(木) 19:27:15.97 ID:TtUof4/10
妹達全員にも効果あるんじゃね?
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/06/17(金) 00:54:03.99 ID:A5RKZ1c+o
MNWに流しっぱなしにすればいいんじゃね?
129 :黒子毛 :2011/06/17(金) 08:43:28.34 ID:5mUWXXn60
>>127>>128
これから書きますが、諸事情で10033号は他の妹達に内緒にしています
MNWの成り立ちから言って記憶を共有しないのも可能だと解釈しているので

>>60
スミマセン、今レスに気づきました…
これはスペック書いた方が良いのかな


投下はまた夕方5時以降になります
130 :ああああああああああああああああああああ [sage]:2011/06/17(金) 09:08:45.51 ID:igcwPrjAO
あかん!
木山が反射使えるようになってまう!!
もう上条さん呼ぶしかねぇwwwwwwww
…そーいや幻想殺しであの化け物(←名前忘れた)触れたら消えるかな?
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/17(金) 14:53:04.51 ID:9Mt1c6HY0
核をつぶさなきゃ再生すると思う
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/17(金) 17:18:26.12 ID:RNYIK01P0
sien
133 :黒子毛 :2011/06/17(金) 17:24:45.07 ID:5mUWXXn60
投下します

AIMバーストもウニも登場しませんがあしからず。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/06/17(金) 17:24:56.76 ID:igcwPrjAO
>>131
右手当て続けて表面消しながら核を潰すとか出来ますかね?
135 :黒子毛 :2011/06/17(金) 17:27:30.66 ID:5mUWXXn60

一方「レベル…アッパーだァ?」


10033号「そうです。某サイトからダウンロードしたのですが、これがなかなかの優れものなのですよとミサカは自慢げに話します」


一方「ふーン……」

一方「名前からすると能力を上げる何かってとこかァ?眉唾もンじゃねェかよ」

10033号「むっ。信じてませんね?」

一方「当たり前だろォが。そンなもンで能力が簡単に上がるならなァ、とっくに――――…」



一方「……」




一方(…いや、まさか)


136 :黒子毛 :2011/06/17(金) 17:27:56.58 ID:5mUWXXn60

一方「オイ、確かお前の能力値はオリジナルの1%だったな」


10033号「ええ、そうですが。とミサカは答えます」

10033号「ただこのミサカは他の『妹達』より少し能力が弱く……その」

10033号「レベルは…1、です」

一方「……そォか」


10033号「ですが、この『幻想御手』を使ってから変化が起きたのです、とミサカは鼻息荒く説明を始めます」

一方「悪ィが鼻息は勘弁してくれ」
137 :黒子毛 :2011/06/17(金) 17:28:23.16 ID:5mUWXXn60

10033号「このことは他の『妹達』には内緒なのですが…」

10033号「つい最近までは全力を出しても小さな火花が散る程度だったのですが、『幻想御手』使用後は…その、ぐわー?と言いますか、ずごごーんと言いますか……」

一方「意味分かンねェっつゥの」


一方「面倒くせェ。今ここで見せてみろ」


10033号「はい?とミサカは目を点にして聞き返します」
138 :黒子毛 :2011/06/17(金) 17:29:01.84 ID:5mUWXXn60

一方「だからその強くなった能力ってのを使ってみろっつってンだ」

10033号「いえ、しかしここは店内ですし……人もいますし、危険では?とミサカは電撃の危険性を指摘します」アセアセ

一方「オマエの言ってることが本当で、もし万が一オマエの手から電撃とやらが出たとしても」


一方「……俺に打ち消せねェとでも思うのかァ?」ニタリ

10033号「うおーう、流石レベル5は言うことが違うぜ、とミサカはチート能力を誇る第一位に惚れそうになります」
139 :黒子毛 :2011/06/17(金) 17:29:36.64 ID:5mUWXXn60



10033号「ではいきますよ?とミサカは演算を開始しながら攻撃を予告します」ビリビリ

一方「いつでもどォぞ?どこからでも」ニタニタ

10033号「コイツ……」ビリビリ



140 :黒子毛 :2011/06/17(金) 17:30:26.09 ID:5mUWXXn60







10033号「―――――えいやっ!」ゴオッ

一方「!」








141 :黒子毛 :2011/06/17(金) 17:31:11.79 ID:5mUWXXn60


一方「……マジかよ、本当に電撃が出やがった。スゲェな」

10033号「台詞の割には何のモーションもなしにあっさり打ちしやがりましたが、とミサカはほぼ半泣きになりながら抗議します」




10033号が一方通行に向かって手をかざした瞬間、そこから突如雷撃の槍が現出した。


静電気や火花を生み出す程度の"レベル1"からは考えられない出力だ。

突如迸った凄まじい電撃に、店内にいた客たちがぎょっとする。


一方通行を襲った5万ボルトの電撃は直撃するかに思えたが、


…これがあっさりと消えてしまった。あれだけ自慢げに話した結果がここまでお粗末では、泣きたくもなる。

142 :黒子毛 :2011/06/17(金) 17:31:43.71 ID:5mUWXXn60

10033号「うう、ひどいです。ミサカのガラスのハートは粉々です…とミサカは悪人面の第一位に消されてしまった電撃ちゃんとの永久の別れに悲しみます」シクシク

一方「何が雷撃ちゃんだ。アホか」

一方「それに俺はオマエの電撃を打ち消したんじゃねェ。ベクトルを変えて空気中にバラけさせてやっただけだ」

10033号「大して変わりません!とミサカはヤケになってコーヒーを一気に飲み干します!」
143 :黒子毛 :2011/06/17(金) 17:32:32.63 ID:5mUWXXn60

一方「まァ、今のは大体レベル3くらいの威力……」


一方「どォやらオマエの言う『幻想御手』ってェのは本当みてェだな」

10033号「ええ。信じていただけましたか?」





一方(……手がかりが見つかったかもしれねェな)
144 :黒子毛 :2011/06/17(金) 17:33:03.00 ID:5mUWXXn60

一方「で?そりゃ一体何なンだよ。聴くだけでレベルアップなンて、どォ考えても普通じゃねェだろォが」

10033号「それはミサカにもよく分かりません。」

一方「オイオイ……オマエには警戒心っつゥもンがねェのかよ」

一方「そンな得体の知れねェもン、副作用とかがあってもおかしくねェだろ」

10033号「おや、心配してくれるのですか?あの一方通行が。とミサカは目を点にして聞いてみます」

一方「……何を愉快な勘違いしちゃってンですかァ?ふざけンな」

10033号「これは手厳しい、とミサカは少ししょぼくれたフリをしてみます」
145 :黒子毛 :2011/06/17(金) 17:34:01.59 ID:5mUWXXn60

一方「……」

10033号「どうしました?とミサカは突然黙ってしまった一方通行に聞いてみます」

一方「…別に。なンでもねェ」ズズー

10033号「ほう。そうですか」ズズー

10033号「……」チラッ

一方「……」ズズー

10033号「」ズズー

…チラッ



…チラッ


一方「……」





10033号「……」チラッ

一方「だァァッ、もォ分かった分かりましたァ!」
146 :黒子毛 :2011/06/17(金) 17:36:34.41 ID:5mUWXXn60
今日はとりあえずここまでにしておきます。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/17(金) 19:47:03.13 ID:xmLdDzIw0
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/06/18(土) 07:22:52.87 ID:rFCtIDLAO
10033号可愛いよ10033号
何だか形は違っても救いの道があるように思えてくる
149 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:02:59.36 ID:eut+nO3n0
遅くなりましたが投下します
150 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:03:25.53 ID:eut+nO3n0

一方「…オマエらの上位個体とやらにも言ったがよォ」

10033号「はい。とミサカは話の続きを促します」ズズ←二杯目


一方「オマエらはどォいう神経してやがンだ」

一方「何がしょぼくれたフリだ。高度なボケだ。何殺人鬼と普通に話してやがる。俺を恨むのが普通じゃねェのかよ?」


10033号「……前にもお伝えした通り」

10033号「ミサカたちはあなたに恨みや憎悪の感情を抱いてはいません。もともと実験で殺害されるために製造されたのですから、それがミサカ達の存在意義です」

10033号「ですが何も殺されるのが嬉しいというわけではありませんよ?一応ミサカも人間ですから」

10033号「ただ"役割"でした。それだけのことです」ズズー
151 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:03:51.94 ID:eut+nO3n0

10033号「…蛇足ではあると思いますが、言わせていただくと」

10033号「あなたもそれに近いのでは?とミサカは指摘します」

一方「はァ?」

10033号「数日前までは実験の被験者と専用の実験動物。けれど元から特に恨みがあったというわけではない」


10033号「だからこそあなたも今ここでミサカと普通に対話している」

10033号「最後の実験で10032号を処分して以来、結局一人の妹達も殺さずに」
152 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:04:17.68 ID:eut+nO3n0

10033号「もう一度言いますが、ミサカはあなたを恨んではいません」

10033号「むしろこのミサカは、また日を改めてあなたとねっとりどっぷりコーヒー談義をすることを望んでいますよ、とミサカはちょっとカッコ良く話を締めてみます」


一方「……」

一方「…やっぱオマエら、なンか変わったンじゃねェのか」



10033号「そうですか?そう言っていただけると嬉しいです、とミサカは心中を吐露します」
153 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:05:00.25 ID:eut+nO3n0

10033号「実験凍結の翌日にミサカ達の成長観測計画が決定され、今は『妹達』が世界中に散らばっています」

10033号「北はロシア、シベリア高原にまで飛ばされた個体もいれば、南の島でバカンスを楽しんでいるようなふざけた個体もいます」

10033号「…正直後者はぶっ飛ばしてやりたいですが、とミサカは嫉妬の感情を露わにします」
154 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:06:12.86 ID:eut+nO3n0


10033号「ですが…」


大切な記憶を思い起こすように、10033号はゆっくりと目を細めた。


カップに注がれた液体が、波紋を広げながら静かに揺らぐ。



10033号「北国の寒さに震えているところへ、現地の方から温かい声をかけていただいた個体がいます」


10033号「生まれて初めて人助けをして、生まれて初めて"ありがとう"という言葉を頂いた個体がいます」


10033号「自分の初めての趣味を見つけた個体がいます」


10033号「学習装置で得た知識ではなく、実際に人間と繋がりを持った個体がいます」


10033号「実験で殺害されること以外に存在意義を見つけた個体がいます」





10033号「そうしている間に気付いたのです」





10033号「実験が終わり、死ぬ必要が無くなった今」

10033号「『妹達』の全員が、もうたった一人でも欠けてはいけない存在なのだと」



10033号「ここにいるミサカは、この世に唯一のものなのだと」



一人のヒーローが欠けたこの世界で、クローンの少女は自力でその結論に辿り着いた。




155 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:07:03.96 ID:eut+nO3n0

10033号「一応ミサカのコーヒー趣味も、自分のオリジナリティ探しの一環なのですよ」

10033号「この先20年ほどしか生きることが出来ないこんな体ですが…」

一方「…はン。そォかい」


興味がないと言うように一方通行はブラックを飲み干した。


そして、



一方「……なァ、オマエは―――…」




実験の中で、問うことを何度も考えたあの言葉。


バカバカしいと無理矢理飲み込んだ言葉。


自分の全てを根底から覆すかもしれなかった言葉。







"生きたいか?"








156 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:07:45.59 ID:eut+nO3n0

一方「――――――」


たった今コーヒーを飲み込んだはずの喉がカラカラに乾く。

後悔することは分かっている。

この問いをした瞬間、自分が今の自分でいられなくなることは分かっている。


けれど、それでも。

これが最後のチャンスなのではないか。




10033号「……どうしました?一方通……」





10033号「…え?」
157 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:08:12.07 ID:eut+nO3n0

一方「…あァ?オイ、どうし…」


10033号「…あ……」ヨロ…




それは突然に。



10033号「―――――あ、れ?」フラッ


ガタッ!!




一方「!?」
158 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:08:38.46 ID:eut+nO3n0

店員「お、お客様!?」



店員「しっかりしてください!大丈夫ですかお客様!?」






10033号が倒れた。




ふらりと体の軸を崩した後椅子から崩れ落ち、手に持っていたプラスチックカップの中身が彼女の制服を濡らしていく。

159 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:09:07.41 ID:eut+nO3n0

店員「おい誰か救急車を!」

店員2「は、はい!」


一瞬思考が停止していた一方通行は、慌てふためく店員や他の客の中で一人考えた。


(…待て)


(コイツは"裏"で実験用に造られた、それも第三位と同じ遺伝子のクローンだ。正規の病院なンかに連れていったら――――…)


一方「やめろ」

店員2「え?」

160 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:09:34.60 ID:eut+nO3n0

一方「病院には俺が連れて行く。ツレだ」

店員2「は、はい?ですが救急車の方が」

一方「俺は第一位の一方通行だ。他に何か言いたい事があンのかァ?」

店員2「だっ、第一位……!?」



一方「オイ、行くぞ」

重力のベクトルを操作し、軽々と10033号を抱き上げた一方通行。

10033号「……」


返事は返ってこなかった。



一方「チッ……」



注目を集めながら店外に出た一方通行は、膨大な演算式を第一位の頭脳で展開する。

次の瞬間、彼はまるで羽のような竜巻を背中に4本生やしていた。
161 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:10:04.86 ID:eut+nO3n0


一方「―――――…」

空を舞いながら、一方通行は空いている方の手で携帯電話を操作する。



一方「芳川か。『妹達』の一人が倒れた」


162 :黒子毛 :2011/06/18(土) 20:10:31.23 ID:eut+nO3n0
とりあえずここまで。
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/18(土) 21:14:28.85 ID:9OTt2zbN0
何これ、おもろい!続きを期待してます。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/06/18(土) 23:22:34.62 ID:TWXdWIEKo
御坂殺したのはなかったことになってるのか?
165 :黒子毛 [sage]:2011/06/19(日) 00:21:57.26 ID:Zc4VxbWV0
>>164
一応そこも考えてはあるんですが、これからの流れで変わる可能性も…

今のところ美琴の死は伏線扱い
次の書き溜め次第なので断言は出来ませんが。


今の書き溜めが明日で尽きるので、投下速度が少し落ちるかもしれません
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/19(日) 01:49:56.48 ID:sq/8NVqR0
めっちゃ期待してる
167 :黒子毛 [sage]:2011/06/19(日) 09:30:32.57 ID:Zc4VxbWV0
>>163>>166
ありがとうございます、スゴイ励みになります

ただ今夜は来れないかもしれません…
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 13:04:31.98 ID:WsivLzOE0
少し聞きたいんだがこれは上条がいない世界なのか上条はいるけどかかわっていないだけか?
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/19(日) 17:31:23.13 ID:HAYLN2vH0
レベルアッパーで効果得られるならMNWで充分な気もするけど、どこらへんに違いがあるのか俺の頭じゃわからないから誰か俺と脳波ネットワークしてくれ
170 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:05:43.14 ID:Zc4VxbWV0
>>168
上条さんが存在しない設定です

ついでに言うと、上条さんと対になるフィアンマさんもいません。
でも右方だけ不在というのもおかしいので、神の右席の皆様にはまとめて退場していただきました。合掌
どこかで平和に過ごしていると思ってください

>>169
幻想御手は、能力の種類も使い方も『自分だけの現実』も演算の幅も全く違う"他人同士"のネットワークなので、足りないところを補助し合って強い能力が生み出されているという自己解釈をしています。

MNWは、微妙な差はあってもDNAも成長過程も同じ"クローン同士"のネットワークなので、大した結果は生めないのかと。
むしろ『超電磁砲の劣化クローン』である一人一人の能力はもっと低く、MNWの恩恵でレベル1〜4の能力を使えているのかもしれません
171 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:14:47.14 ID:Zc4VxbWV0
投下します

地元から殆ど出ない山梨星人なので、今までの投下分に方言などが入っていたかもしれません
もし見つけたら指摘してくださるとありがたいです
172 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:15:12.67 ID:Zc4VxbWV0

芳川「――――そういうことね。なるほど?」


芳川「『幻想御手』……とんだ裏技があったものね。これでスキルアウトが力を付けたわけか」

一方「あァ、そンなところだろォぜ」

一方「それと」

一方「アイツが倒れた理由は十中八九、『幻想御手』の副作用だろォな」


芳川「……"アイツ"?」



芳川(……人形人形って言ってたこの子が…)
173 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:15:40.08 ID:Zc4VxbWV0

一方「あァ?なンだよ」

芳川「…いえ、何でもないわ」


芳川「あの子のことは任せてちょうだい。知り合いに腕が良くて口の堅い医者がいるから」

一方「……『冥土帰し』か?」

芳川「ええ、だから大丈夫。あとは原因の『幻想御手』の仕組みが分かれば」


一方「あァ。とにかく、あの『妹達』が持ってた音楽ファイルを解析しろ。何か手がかりが出てくるはずだ」

芳川「了解よ」



一方「……じゃァ頼む、俺は戻るぞ」


研究所のシャッタードアを開けて、一方通行が言う。





一方「……チッ、ガラじゃねェよな」



174 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:16:05.57 ID:Zc4VxbWV0





芳川「……気付いてきたようね、あの子も」


芳川(自分の異変に)




芳川(一方通行は今まで、実験のために彼女たちを"実験動物"として殺戮してきた)

芳川(普通の人間の神経じゃ考えられないようなむごい方法で……)
175 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:16:32.37 ID:Zc4VxbWV0

芳川(―――一種の防衛本能だったのかもしれないわね)


芳川(彼の精神は麻痺してた。血液を逆流させたり、手足を千切ったり首を刎ねたり……そんなことをしても人間性を保てるくらいに)

芳川(どんどんエスカレートしていっても、彼は気づかない。だから更にエスカレートする)

芳川(そのまま無敵の人間兵器として完成していくなら、むしろその方が良かったのかもしれない)
176 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:16:59.13 ID:Zc4VxbWV0

芳川(でもあの子は日常に戻ってしまった)

芳川(普通の世界にいれば、嫌でも自分の異常性に気付くでしょう)

芳川(麻痺していた精神と残酷さも、だんだん元へ戻っていく)


芳川(木原数多のように芯から黒く染まってる人間とは違って、君は―――…)

芳川(ずっと求めてる)



芳川(救うことと、救われることを)


177 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:17:40.40 ID:Zc4VxbWV0


今までの一方通行ならば、クローンが一般の病院に担ぎ込まれたとしても気にも留めなかった筈だ。


たとえ検査中に彼女が『死んだ第三位と一致する遺伝子』であり、『非人道的な方法で造られたクローン』であると発覚したとしても、大した問題ではないのだから。

学園都市は容赦なくその記録と証拠、そして病院関係者を消し去り、それを完全に無かったことにするだろう。


だがそれが許容できなかった。


実験に関係のない"表"の人間が巻き込まれることが。


今の一方通行は変わりつつある。実験の反動とでも言うべきなのかもしれないが、彼は以前より確実に"救い"を渇望している。


178 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:18:07.03 ID:Zc4VxbWV0

芳川「――――――、はっ」


芳川「ダメね私は。こんなこと、実験を始めた時点で分かっていた事じゃない」

芳川「今まで傍観してきて、今さらこんなことを考えてる」


芳川(今からだって助けるつもりはないくせに)



芳川「優しくなくて、自分に甘い」


芳川「やっぱり、私に教師は無理ね」
179 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:19:26.47 ID:Zc4VxbWV0









――――――立ち上がらなければ。












180 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:19:54.32 ID:Zc4VxbWV0


美琴「う、ぐ―――――…」


守らなければ。


ポケットから取り出したのは、一枚のコイン。


181 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:21:25.34 ID:Zc4VxbWV0

『断末魔、上げられるもンなァ』



どこか意識の遠くで、恐ろしい"音"が聞こえる。

迫りくるのは人間ではない。生物ではない。

兵器。


ならば、そこから発せられるのは声ではない。


美琴「……く、そ…ォ」
182 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:22:25.61 ID:Zc4VxbWV0



美琴「―――――ォォォォオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」



発射した。



これが最期。


すっからかんになり、今後超電磁砲を二度と打てなくなるのではないか。

そのくらいありったけの力を込めて、"音"に向けて打った。

183 :黒子毛 :2011/06/19(日) 18:24:41.64 ID:Zc4VxbWV0
というわけで、話は過去に戻ります。伏線はしっかり使うことにしました

毎週土日バイトなので、来週の休みは更新できるか分かりません
184 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:30:52.51 ID:LqpoU62Y0
おはようございます。投下します
185 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:31:19.74 ID:LqpoU62Y0



―――ぱしん、と。




弾かれた。


第一位である怪物は、そんな一撃をも軽々と弾いた。




美琴「―――――――――――、え?」




もとより一方通行に"力の大小"の括りは無い。

どんなにその総量が大きかろうと、全ての"向き"を変えてしまうのがベクトル操作。



挑むか挑まないか。

諦めないか諦めるか。

全力を出せるか出せないか。


そんな矮小な次元ではない。


彼らに能力が発現した時点で、その勝敗は決しているのだから。
186 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:31:53.86 ID:LqpoU62Y0


美琴「……」


終わった。何もかも終わった。


自分では救えない。自分はこの状況を打開できるような力など持ち合わせていない。


もし。

もしここに、全ての能力を無に帰する右手があったなら。

彼女はそれにすがったのかもしれない。



けれど今この瞬間、そんなものは全てもうどうでも良くなった。

187 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:32:22.79 ID:LqpoU62Y0


彼女は努力で生きてきた人間だ。


努力で能力を1から2に上げ、2から3に上げ。

更なる努力でレベル5の座に上り詰めた。


けれどそこからも、更に努力を重ねた。

汎用性の高い『電撃使い』という能力で出来ることを全て試した。

ハッキング、雷撃の槍、砂鉄の剣、そして超電磁砲。

188 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:32:49.32 ID:LqpoU62Y0

力ばかりで、それは決して誉められるようなものではない。


けれど、その絶対的な地位に立つことで誰かの目標となれたら。
その力で誰かを守れたら。誰かの役に立てたら。

その為なら彼女は何でもすると決めていた。

どんな困難にも立ち向かうと決めていた。



それが、今意味を失くした。


努力云々ではどうにもならない問題に突き当たってしまった。




今まで彼女を支えていた芯たるものが、抜けてしまっていた。


189 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:33:19.47 ID:LqpoU62Y0

彼女はそれに依存しすぎてしまっていたのかもしれない。


努力が無意味と悟ったその時、彼女の中は空っぽだった。





美琴「……」


怪物の蹂躙をただ待つ。

もうどうでもいい。来るならさっさと来い。
190 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:33:48.68 ID:LqpoU62Y0


そんな彼女に、一方通行は右手を伸ばした。


血流操作を行うことの出来る手だ。

彼の指先が御坂美琴の傷口に触れた瞬間、彼女は無様に爆散するだろう。

一方通行自身もその結果を思い描いていた。

だがどうしてか。








ぱしん、と右手が弾かれた。

191 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:38:45.48 ID:LqpoU62Y0

一方「……はァ?」


何が起きたのか分からなかった。

間抜けな声を上げた第一位は一瞬で考えを巡らせる。


一方(こいつにこンな能力があるはずがねェ。電撃使いのチカラじゃ不可能だ)

一方(他の能力者の介入なンざ有り得ねェし…)


一方(今の感覚は、なンだ―――…?)


そして、




一方(…いや、なンでもいい。妙なあがきをされる前に、さっさと殺そう)




決定的な。

自分にとって何か決定的なものに触れてしまった気がした。









ぞわり、と。


自分の中で、何かが膨れ上がるのを感じた。


192 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:39:25.51 ID:LqpoU62Y0

美琴「……?」


美琴(何?今、どうして手を引いたの…?)



彼女は『絶対能力者進化実験』を何度も目の当たりにしている。

場に居合わせたこともあったし、破壊した研究所でも監視カメラを通して見た。

その全てが、少しの容赦もない虐殺だった。この少年は躊躇や容赦をするような人間ではない。


それが今のは何だ。


彼は、"自分の能力で自分の手を弾いた"ように見えた。
193 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:40:52.95 ID:LqpoU62Y0

困惑しているのは彼女だけではない。

怪物も同様だった。


一方(畜生、なンだってンだこりゃァ……)


何度やっても同じことが起きる。

自分の指が、触れることを拒むように戻ってきてしまう。


と、同時に。



―――思考が何かに浸食されていくのを感じていた。
194 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:45:36.00 ID:LqpoU62Y0


一方(なン、だ……?)



―――ぞわり、と。


頭の中でまた何かが蠢いた。

何かの異変が、確実に彼の意識を刈り取っていく。





一方(―――――ッ、ぐ、が……ァ!?)





正体不明の痛みはビキビキと額の血管を浮き上がらせ、そして。









一方「…、rh不qnf――――――――――――――――――ッ!!!???」






…右脳と左脳が割れた気がした。

195 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:48:43.78 ID:LqpoU62Y0

その隙間から、何か鋭く尖ったものものが一方通行の脳を浸食していく。

脳に割り込んだ何かが、確実に彼を異質の何かへと変えていく。



「ァ。が、…ぎ」




瞬間。




背中が弾け飛んだ。

自身を構成する柱が完全に倒壊した音を聞いた。

それは、彼の芯。彼の依存していたものだったのかもしれない。

196 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:49:27.80 ID:LqpoU62Y0


そして現れたのは、どす黒い翼。


197 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:50:05.23 ID:LqpoU62Y0

美琴「―――――、は……?」


噴射にも近い黒の翼。彼の意識すら飛ばし、自我すらも叩き潰すほどの爆発的な力の奔流は留まる事を知らなかった。

ほんの一本、他の翼より大きく広がったその一本が地のアスファルトを薙ぎ払い、周囲のコンテナ群を一度に消滅させた。
198 :黒子毛 :2011/06/20(月) 07:52:45.32 ID:LqpoU62Y0
ここまでです。

原作15巻と20巻を読んでいない方には、ちょっとわかりづらいかもしれません……
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 08:02:47.34 ID:NL7aUClT0
おはようございます。まさかまさかの黒翼一方さん!なんで、どうして!?
いろいろ疑問に思いつつ、次回の更新を待ってます。
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/06/20(月) 09:38:18.62 ID:6eFHO0VAO
美琴が生きていた…!?
てか時間軸どの辺?
201 :黒子毛 :2011/06/20(月) 09:45:00.99 ID:LqpoU62Y0
時間軸は>>23の後からです
過去の話です
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 13:27:52.84 ID:orb+tlt/0
生きているのか…
もしかしたら黒翼で夜空の流星になっているのかも…
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 18:31:46.17 ID:foyOV/1Y0
生きていたと思ったら死ぬのか
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 23:15:50.42 ID:Km/hEleV0
冷蔵庫か……
205 :黒子毛 :2011/06/22(水) 00:55:53.84 ID:4IulXSOp0
こんばんは

今夜は投下無しですが、ちょっと説明が足りないかなぁと思った箇所があるのでそこを補完しておきます。

お気付きの方が殆どだと思いますが、序盤で登場した「樹形図の設計者」はこの世界では健在です。
インデックスさんが「自動書記」を発動しないまま英国へ強制送還されたので

やっぱり我らがヒーローさんは一人抜けただけでも大変ですぜ
206 :黒子毛 :2011/06/22(水) 18:02:43.28 ID:4IulXSOp0
投下しまーす
207 :黒子毛 :2011/06/22(水) 18:03:55.98 ID:4IulXSOp0


そしてその本流は、何故か中心部に向かって丸まっている。

邂逅し衝突するその一点で、一対の翼同士が互いを潰しあうように絡み合い、毟り取っていた。



一方通行の内面が反映された結果だった。



彼の頭のどこかが、目の前の御坂美琴を[ピーーー]ことを絶対的に拒絶している。

だが彼本人の意識はそれを理解できず、苦悩した結果がこの翼同士の潰しあいだ。
208 :黒子毛 :2011/06/22(水) 18:05:00.36 ID:4IulXSOp0
ぬっほっほっほっほやっちまったぜい

sagaつけてもう一度
209 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:05:27.98 ID:4IulXSOp0


そしてその本流は、何故か中心部に向かって丸まっている。

邂逅し衝突するその一点で、一対の翼同士が互いを潰しあうように絡み合い、毟り取っていた。



一方通行の内面が反映された結果だった。



彼の頭のどこかが、目の前の御坂美琴を殺すことを絶対的に拒絶している。

だが彼本人の意識はそれを理解できず、苦悩した結果がこの翼同士の潰しあいだ。
210 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:05:53.24 ID:4IulXSOp0


一方通行の背から噴出した黒い翼は、学園都市よりも"とあるもう一つの能力開発機関"に関わりの深いもの。


211 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:06:21.83 ID:4IulXSOp0


聖者としての力。彼の力はその片鱗だ。



『妹達』の虐殺という大罪を犯した一方通行が、葛藤という不完全な形で、贖いの道へと一歩を踏み出したのだ。


彼の本質が変わりつつある。


完全な悪党に染まる寸前で踏みとどまった少年に変化が起きている。


自己の犯した罪を懺悔し、苦難の道を進む大罪人の精神。


それはとある魔術的意味を持つ。
212 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:06:49.69 ID:4IulXSOp0

『聖人』、と呼ばれる人間がいる。


世界にほんの一握りしか存在しない、身体的特徴が『神の子』と似通った者の事だ。

彼らはその特徴ゆえに体内に凄まじい量の『天使の力(テレズマ)』を内包し、核兵器に匹敵する戦力を発揮する。



超能力の回路を開発された一方通行が魔術を行使する事は不可能。


だが精神の変質に伴い、"偶発的に魔術的な要素を付加されてしまった"のだとしたら。

それは、生まれ出ずる際"偶発的に『神の子』と似通ってしまった"聖人と酷似する。


魔術師とは違い、聖人の能力に魔術回路は必要ない。必要なのは身体的特徴と魔術的記号、そして聖痕のみ。


言うなれば、生まれ持った『才能』だ。
213 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:07:30.49 ID:4IulXSOp0

同じように、一方通行に突如発現した新しい力は魔術ではない。だがそれに非常に近しいものだ。

本来ならばイギリス清教などの庇護下に置かれ、崇め奉られるような存在。

それが今の一方通行。











だが、今彼が起こしているのは他ならぬ『暴走』に違いなかった。

214 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:07:56.17 ID:4IulXSOp0


一方「ぁがっ、ぐっ、ごァァァァぁぁぁっ!!!??」



どしんどしんと、凄まじい地鳴りと衝撃波が辺り一帯を吹き飛ばす。



美琴「なっ、何…!?一体何なのよあれは!」

辛うじて磁力で線路にしがみ付いた美琴が枯れた喉で叫ぶ。


美琴(あんなバカみたいな質量と力、いくら第一位だからって有り得ないわよ!?)

美琴(それにアイツの能力はベクトル操作!ワケのわからない羽をブンブン振りまわすような力じゃなかったはず)


魔術に関わりのない美琴に、その力の正体が分かるはずもなかった。

一方通行本人にさえ、理解できていないのだから。



美琴「…え?」

美琴「でもアイツ…なんか……」





美琴「――――――苦しんで、る?」

215 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:08:50.68 ID:4IulXSOp0



 何かが足りない。

 足りねェンだ。


 コイツを殺すには何かが足りねェ。

 オリジナルを殺す。駄目だ。何で。駄目だ。

 何かが邪魔する。その度に頭が痛ェ。



 じゃァ何でクローンは良いンだよ。何でだ。



 何でだ。

 何だ何だ何だ何だ。




216 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:09:17.84 ID:4IulXSOp0

一方通行の思考回路はまさしく"滅茶苦茶"だった。

脳の中に入り込んだ何かが自分を蹂躙し、脳味噌の中身をかき混ぜている。そんな気がした。


脳のどこかで何か、新しい何かが構築されていく気がした。
217 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:09:43.65 ID:4IulXSOp0

そしてその過程で、見つけてしまった。

自分が怪物になってしまった所以を。怪物に成り得た所以を。
218 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:10:29.34 ID:4IulXSOp0


 ――――――……ああ。

 そォか。






研究員『――――…一方通行君だね?』



研究員『君の能力は大変素晴らしいものだ』



研究員『だがもっと伸びる可能性があると言ったら、どうするね?』
219 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:11:00.33 ID:4IulXSOp0

研究員『これが計画の全容を記した書類だ。『樹形図の設計者』で演算した結果だよ』


研究員『なに、君はあのクローン達をただ処分してくれさえすればいいんだ』


研究員『倫理的な問題を気にすることはない』






『あのクローンは、ただの"実験動物"なのだから――――…』








一方「…お、ォォォァァァァァァァァアアアアアア!!!!!!!!!!」


220 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:11:40.84 ID:4IulXSOp0


だからこそ固執した。


クローンを殺す"残虐さ"に。

人形なのだから、物なのだから、人間扱いはしない。ボロボロになるまで『処分』する。

そうすることで自分を守ってきた。


だが、"物"以外をこの手にかけようとした瞬間、そういったものがあっさりと崩れ去ってしまった。


自分の殻を失い、中身がどこへ流れ出ていいのか分からなくなってしまった。

221 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:13:50.74 ID:4IulXSOp0

行き場を失くし流れ出た中身は、彼の背中から現れる左翼。

それを叩き潰し、迎え撃っているのは右翼。

あるいはその逆か。


一方通行には理解できなかった。

彼の本質がそのどちらなのか。それが不明なのだから。
222 :黒子毛 [saga]:2011/06/22(水) 18:15:33.07 ID:4IulXSOp0
今日はここまで
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/22(水) 20:14:15.25 ID:WpVWL24SO
全盛期一方さんは結構メンタルは弱そうだからなあ…そげぶ無しだと実験止められる人がいないし、発狂黒翼化も頷けるな…。
>>1乙です。続き、楽しみにしてます。
224 :黒子毛 [sage]:2011/06/22(水) 20:33:02.87 ID:4IulXSOp0
書き忘れました

聖者や苦難の道うんぬんのところは、少しかまちーのあとがきから拝借しています
ので一応公式設定です
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/22(水) 20:41:25.98 ID:UgjoEnvy0
新約の一方通行は困難に直面したときでも落ち着いて判断している。
成長したということか。
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 15:22:29.65 ID:rYgExDau0
やっぱりヒーロー1人抜けただけで大変なことが起きるんだな
上条さんの必要性がよくわかるな
227 :黒子毛 [sage]:2011/06/26(日) 23:59:54.80 ID:8ja6RPvT0
とりあえず生存報告。

ここの所忙しく、なかなか来れません
今夜こそは投下しようと決意したんですが、ドラマ最終回にあっさり負けました。


先生、俺もお慕い申しておりましたあああああああ
228 :黒子毛 [sage]:2011/06/27(月) 00:00:39.36 ID:doylKeVc0
とりあえず生存報告。

ここの所忙しく、なかなか来れません
今夜こそは投下しようと決意したんですが、ドラマ最終回にあっさり負けました。


先生、俺もお慕い申しておりましたあああああああ
229 :黒子毛 [sage]:2011/06/27(月) 00:05:22.27 ID:doylKeVc0
まさかの連投…だと…?
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/27(月) 03:39:28.67 ID:KD+fa6dAo
最終回っつーと仁?
ラストの辺り微妙に寝ボケて見落としたorz
231 :黒子毛 :2011/06/29(水) 19:23:33.43 ID:ogRQhL6M0
少しですが投下します

バイトキツ過ぎだろ…
232 :黒子毛 :2011/06/29(水) 19:24:45.12 ID:ogRQhL6M0

目の前で展開されているあまりに常識外れの展開に、美琴は呆然としていた。


千切れた右足は立つことも逃げることを許さず、恐怖にすすり泣くことしか出来ない。

今はこちらに意識が向いていないようだが、これからあの化け物がどう動くかは分からない。

次の瞬間には自分は肉塊、いや細切れと化しているかもしれない。それほどの恐ろしさだった。
233 :黒子毛 :2011/06/29(水) 19:25:14.82 ID:ogRQhL6M0


――――いや待て、と美琴は後ろを振り返った。


自分の少し後方に倒れていたはずの妹はどうなったのか。

少しでも黒翼の余波から守れるよう妹の前に陣取ったが、そもそも生きているのか。





だが、そこに彼女はいなかった。




10032号「大丈夫です、お姉様」

234 :黒子毛 :2011/06/29(水) 19:26:00.57 ID:ogRQhL6M0

その瞬間、美琴は目を疑った。


一方通行と自分の間に、いつの間にか10032号が立ちはだかっていたのだ。



10032号「彼の本来の目標(ターゲット)はミサカです」

10032号「一方通行はお姉様も[ピーーー]と言いはしましたが、逃げてしまえば追っては来ないはずです」


10032号「…お姉様、お願いです。今すぐ逃げてください、とミサカはいわゆる一生のお願いというものをこの場面で行使します」
235 :saga忘れ [saga]:2011/06/29(水) 19:26:49.69 ID:ogRQhL6M0


その瞬間、美琴は目を疑った。


一方通行と自分の間に、いつの間にか10032号が立ちはだかっていたのだ。



10032号「彼の本来の目標(ターゲット)はミサカです」

10032号「一方通行はお姉様も殺すと言いはしましたが、逃げてしまえば追っては来ないはずです」


10032号「なのでお姉様、お願いです。今すぐ逃げてください、とミサカはいわゆる一生のお願いというやつをこの場面で行使します」
236 :黒子毛 [saga]:2011/06/29(水) 19:27:15.79 ID:ogRQhL6M0


美琴「―――そ、んなこと、出来るワケないでしょうがッ!!」


感情を込めすぎたせいで、とうに枯れた喉が更に裂けた。


10032号「お願いします。ミサカはお姉様を巻き込みたくはないのです」

美琴「私だってアンタに死んでほしくない!死なせてたまるもんですか!」

10032号「お分かりでないようですが、今はそんなことを言えるような状況ではないのです」

10032号「あの通り一方通行は今完全に錯乱しています。この場に居てはいずれにしろ二人とも殺されます」

10032号「ならばミサカを囮にして、関係のないお姉様は逃げるのが一番合理的です」

美琴「―――黙れ、このバカ妹…!」


言っていることは分かる。確かに10032号の言うとおりだ。

自分と同じ遺伝子のくせに、無慈悲な正論ばかり吐いてくる。
237 :黒子毛 [saga]:2011/06/29(水) 19:27:48.75 ID:ogRQhL6M0


だがここで退くわけにはいかない。


彼女にも絶対に譲れないものがある。

もうバカげた実験で妹達を死なせない。そのためにここに来た。

それまでに何度も歯を喰いしばってきた。

目の前で妹が何度も『処分』されるのを見てきた。

常人では見ただけで発狂するような凄惨な現場を。



―――だというのに、今この体に出来ることが見つからない。


238 :黒子毛 [saga]:2011/06/29(水) 19:28:14.36 ID:ogRQhL6M0


10032号「……お姉様」

10032号「お姉様はいつぞや、他の個体にお子様センス爆発な缶バッジをプレゼントして下さったことがありましたね」



10032号「あの個体――――9982号は、精神的な面で初めて顕著な成長をした個体でした」

10032号「それまでの個体には見られなかった自我が生まれたのです」

10032号「お姉様と接したことで何かしらの変化が起きたのでしょう、あの個体は『執着』という感情を獲得しました」


10032号「あのカエルの缶バッジを守りたい、という感情が」
239 :黒子毛 [saga]:2011/06/29(水) 19:28:41.97 ID:ogRQhL6M0

美琴「…っ―――!」


10032号「その為に9982号は最後まで命を賭して、お姉様からのプレゼントを守ったのです」

10032号「その後ミサカ達は9982号に"異端なクローン"という評価をしました。恐らく学習装置の不具合等で、少し精神に異常をきたしていたのだろうと」

10032号「当然このミサカもそう思っていました。…しかし―――――」



10032号「困りました。ミサカにも9982号と同じ症状が現れているのです、とミサカは正直に告白します」

240 :黒子毛 [saga]:2011/06/29(水) 19:29:22.42 ID:ogRQhL6M0

10032号「このミサカは全てのミサカと脳波ネットワークで繋がっています」

10032号「もちろん記憶も共有していて、9982号の記憶もここにあります」


10032号「以前、9982号はプレゼントを守りきることができませんでした」


10032号「だからこそ、ミサカはここで退くわけにはいかないのです」




10032号「―――ミサカが、お姉様を守ります」


241 :黒子毛 [saga]:2011/06/29(水) 19:32:34.50 ID:ogRQhL6M0
一生のお願い……小学生の頃はよく使いましたねえ
あの使った分を清算したら、人生が100回あっても足りないかもしれません




結局進んでねえじゃんかよーというツッコは勘弁してくださいぃ…
242 :黒子毛 [saga]:2011/06/29(水) 19:33:24.41 ID:ogRQhL6M0
ツッコって何じゃ…ツッコミでした
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/29(水) 20:31:03.03 ID:PUdI/D4no
乙!

この後どうなるのか気になるじぇ
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/29(水) 21:38:45.93 ID:vubojQaQ0
乙、上条さんがいかに大切かを改めて実感させられるぜ……

>>220
だからこそ固執した。
クローンを[ピーーー]"残虐さ"に。
人形なのだから、物なのだから、人間扱いはしない。ボロボロになるまで『処分』する。
そうすることで自分を守ってきた。

これになんかすっごく納得した。
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/30(木) 19:53:45.93 ID:ZBlRfLqb0
御坂は実は生きてました(笑)なんてやめてくれよ?
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/02(土) 03:21:56.05 ID:GUi2mCRho
>>245
+−1って事で俺はその展開希望。
だが展開要望でやりたい話を制限するなよ・・・
好きにやればいい。支援
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/02(土) 03:38:37.36 ID:QjZ0lNAho
一方さんが妹たちのために云々って展開にもっていきたいのなら美琴の生き死には重要だろ
上条さん不在の世界で他にどこで改心する要素があるんだよ
むしろ原作みたいに「本当は実験を止めてもらいたかった」って御都合全開な展開にしてほしくないわ
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/02(土) 06:25:50.99 ID:cD+0fk6AO
>>245、ココにいる全ての人達へ
御坂はいらない子でふぁいなるあんさー??
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/02(土) 10:56:35.15 ID:u1TKneNDo
周りに流されず作者の書きたい話を期待して待ってる
支援
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/02(土) 12:38:04.11 ID:OfkDLaCSo
>>247
原作批判はやめれ
てかまだ生存確定してる訳でも何でもないのに過剰すぎるぞ
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/02(土) 13:25:22.42 ID:vz6MssjDO
二次SSでまでキャラアンチみたいなことやってる奴キモいわ
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/07/02(土) 13:51:31.68 ID:XQyAdqUko
生きててもほぼ死んでるって絶望状態かもしらんべ
残酷さ上げるのに生死はさほど大事じゃない
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/02(土) 17:39:32.66 ID:OX9QtfPK0
俺的には落とすだけ落としまくって最後に救われるエンドはみたいな
254 :黒子毛 [saga]:2011/07/06(水) 18:50:38.44 ID:nf3rtJA20

元々、一方通行は悪人ではない。


能力故に孤独となり、疎まれ、人との関わりを断たれた彼の願いはただひとつ、


『誰かに認めてもらいたい』。


その為ならば何でもした。

暗に堕ちてしまった人間の、"もう一度明に戻りたい"という想いはどれほど強かっただろう。
255 :黒子毛 [saga]:2011/07/06(水) 18:52:09.57 ID:nf3rtJA20

だからクローンを20000体虐殺する『絶対能力者進化実験』も引き受けた。

"実験動物だから"などという安っぽいオブラートを無理矢理信じ込むこともできた。

いや、そうしなければならなかった。




―――だが先刻の自分の行動。


今までは警告の意味を込め、超電磁砲を跳ね返し、戦意を奪うのみに留まっていた。

が、その垣根を越えた瞬間。警告では退かないレベル5を本気で"殺そう"と決意した瞬間。善人に対して初めて本当の"殺し"を実行しようとした瞬間。


漠然とした疑問が彼を襲った。
256 :黒子毛 [saga]:2011/07/06(水) 18:52:36.34 ID:nf3rtJA20


『自分は何をしている?』



自分は誰かに認めて欲しいのではなかったか。


ならば何故、自分はこの女を殺そうとしているのか。


何故自分でとどめを―――…自身を暗のどん底に蹴落とそうとしているのか。




そこですべてが破綻してしまった。

257 :黒子毛 [saga]:2011/07/06(水) 18:53:04.04 ID:nf3rtJA20


変わる為に、身を守るために着た鎧を、自分で引き剥がしてしまった。


258 :黒子毛 [saga]:2011/07/06(水) 18:53:34.64 ID:nf3rtJA20

黒い翼を振りまわす。


その一振りがどれほどの惨状を作り出すかなど全く考えず、滅茶苦茶に噴射した黒翼同士をぶつけ合う。




一方「r、fhb――――――――――…、――――ッ!!」



凄まじい衝撃波によってひっくり返り、無残に破壊された数十のコンテナ群。

その中身である白い粉末が辺り一面にばら撒かれ、視界が一気に悪くなる。
259 :黒子毛 [saga]:2011/07/06(水) 18:54:02.03 ID:nf3rtJA20



10032号(――――これは……小麦粉?)



10032号が自身の唇に付着した粉を舐める。



10032号(……)


10032号「…チャンス、でしょうか」

美琴「―――え?」
260 :黒子毛 [saga]:2011/07/06(水) 18:54:29.23 ID:nf3rtJA20

10032号(しかし問題は、ミサカにそれを行うだけの能力があるかです、とミサカはお姉様とのスペックの違いを実感します)


10032号(もし不可能だった場合………、いえ。やるしかありません)


御坂美琴のクローン体、10032号の頭の中で、能力行使の為の演算式が構築される。



10032号「…大丈夫。いけます」


10032号は大きく息を吸って、そして
261 :黒子毛 [saga]:2011/07/06(水) 18:55:02.70 ID:nf3rtJA20


10032号「――はっ!!」



半径100メートル。

周囲に散らばる砂鉄その全てが、中心に立つ10032号の元へと集結した。


262 :黒子毛 [saga]:2011/07/06(水) 18:55:39.08 ID:nf3rtJA20

だが集まった膨大な砂鉄によって出来た黒い波は、彼女の後方にいるオリジナルに向かっていった。



美琴「…え?え?ちょ、ちょっと!?」



ほんの一瞬のうちに、御坂美琴は波に呑まれた。

だが後続の砂鉄は止まらず、次から次へと黒い物質が流れていく。
263 :黒子毛 [saga]:2011/07/06(水) 18:56:38.49 ID:nf3rtJA20




美琴「―――む、ぐっ、ぶはぁっ!!?」


残った微量な電力を使い、ようやく頭と右腕だけを出した美琴。



10032号「まだ力が残っていましたか……いっそ気絶させてしまおうと思ったのですが」

美琴「あ、アンタ!何のつもりよこれ!?」


10032号「お姉様には退避していただきます。しかし同意していただけないようなので、ミサカは実力行使に出ました」

美琴「実力、行使…?……まさか」


はっとした美琴は自分の置かれている状況を急いで確認する。

呑まれている間に、様子は少し変わっていた。





頭と右腕以外は全身、薄く包帯状になった砂鉄に拘束されている。


そして自分の後方。
先程の砂鉄の波が二手に分かれ、レールのような形になって1km以上は続いていた。
264 :黒子毛 [saga]:2011/07/06(水) 18:59:21.37 ID:nf3rtJA20


原理は単純だ。






学園都市に多く分布する大きな駅。そこには目的に応じて使い分けができるよう、多種多様な車両が用意されている。

その中にある一つに、その原理が使われていた。



そう。

それは丁度、リニアモーターカーのような。

265 :>>246>>249ありがとうございます。その方針で行きます [saga]:2011/07/06(水) 19:08:30.15 ID:nf3rtJA20
とりあえずここまでかなあ。

区切れ的にはもうちょい投下した方が良いような気がしますが、更新速度がヤバいのでこの辺に抑えておきます



暑すぎてバイトも書き溜めもなかなかやる気が起こらねえ

拾った学生証届けに行って熱中症になりました…
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 21:04:32.19 ID:cF0QpUFw0

ダメだなー一方さん甘すぎるよ
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/07(木) 00:06:10.11 ID:UBmXgp57o
乙!!
最近は暑いから無理しないで
次回も期待している
268 :黒子毛 :2011/08/01(月) 19:30:54.87 ID:3GIMrWrG0

美琴「ま、さか―――――…ッ!!!」


10032号の狙いに気付いた美琴が、拘束を解こうと必死にもがく。

しかし酷く負傷し衰弱した体からは、ろくな力も能力も出すことができなかった。



美琴「やめなさいこのバカ!!本当にアンタ死ぬ気―――――



10032号「……」スッ




10032号が無言で手をかざすと、地面に走る2本のレールに変化が起きた。

目視では分からないが、『電撃使い』である美琴にはそれが何なのか瞬時に理解できた。


砂鉄の磁界を操作し、N極とS極を作り出す。

それを細かく分け、高速で入れ替えることでリニアの原理が完成した。



美琴「!」
269 :黒子毛 :2011/08/01(月) 19:31:22.63 ID:3GIMrWrG0


瞬間。



視認が難しいほどの速度で、美琴は一方通行と反対方向へと飛ばされた。




レールは1km以上先まで伸びている。片足を失い、尚且つ能力もまともに使えない状態では戻ってくることは確実に不可能だ。




一方「――――!!…!!!」


相変わらず暴れ、破壊行動を続けていた一方通行がそれに気付いた。


ぎろりと剥いた眼を10032号に向ける。




10032号(どうにか成功したようです……あとはお姉様が安全圏まで移動する間、ミサカが一方通行を足止めできれば)

ざりっ、と踏みしめた砂利の音が妙に耳に響く。
270 :黒子毛 :2011/08/01(月) 19:31:54.62 ID:3GIMrWrG0


―――あれは何だ。


―――誰かを逃がした、あれは誰だ。

271 :黒子毛 :2011/08/01(月) 19:32:26.31 ID:3GIMrWrG0

暴走による錯乱という形で、自分以外の周囲の認識が出来なくなっていた一方通行。

その意識の中に二つの存在が現れた。



うち一つは認識したと同時に高速で後退していった。恐らくもう一つの方が逃がしたのだろう。


逃げた方の存在は凄まじい勢いで離れていく。


だが不思議とそこに焦燥感は感じなかった。

仮定の話、あれが自分の獲物で、自分から急いで逃げているとしても、その行為が全くの無駄な足掻きに思えた。


恐らく自分が追いかけようと思えば、あの獲物はひどく簡単に手に入れることができるだろう。そんな自信を生み出す何かが彼の背中にはあった。
272 :黒子毛 :2011/08/01(月) 19:33:15.77 ID:3GIMrWrG0

けれど、追いかける気はさらさら無かった。


あれは傷付けてはいけないものだ。それが何なのかは不明だが、とにかく自分が手を出してはいけないもの。

直感だった。
無茶苦茶な葛藤の中で、ただ一つ出た本質の答えがそれに思えた。


一方「――――」


なら、と一方通行は眼前に仁王立ちする一人の少女に意識を集中させた。
273 :黒子毛 :2011/08/01(月) 19:33:42.77 ID:3GIMrWrG0


10032号「――――――…一方通行!!」



10032号の右手から紫電が迸った。

火花を起こす程度の威力しかないそれは、未だ浮翌遊している小麦粉に着火して。




大規模な粉塵爆発という現象を起こした。




―――――――――――…

―――――――
―――――

274 :黒子毛 :2011/08/01(月) 19:34:10.69 ID:3GIMrWrG0

10032号「――――――、…かはっ……」



瓦礫が落下し、濃い煙が立ち込める中で10032号は膝をついていた。


10032号「一方…通行は……?」


彼女の目論見は成功した。

美琴を逃がし、小麦粉を利用して粉塵爆発を起こす。

着火したと同時に後退した10032号と違い一方通行は中心部で直撃を受けたが、しかし。
275 :黒子毛 :2011/08/01(月) 19:34:45.98 ID:3GIMrWrG0

一方「……」

彼は変わらずそこに立っていた。



10032号「……やはり、無理でしたか」


背中の翼を抜きにしても、元より反射を働かせている一方通行が相手。既に結果は見えていた。


彼女が狙っていたのは、逃がした美琴を追わせないよう注意を逸らすことだけ。


一方通行を倒す気などさらさらなかった。倒せるとも思ってはいなかった。

そしてこれから自分がどうなるのかも、彼女は正しく理解している。
276 :黒子毛 :2011/08/01(月) 19:35:52.53 ID:3GIMrWrG0
暇がなく、ひと月も空いてしまいました……

次いつ来れるかも分かりません、ごめんなさい
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 21:53:48.61 ID:agxI/h4Q0
それでも私は応援する
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/08/02(火) 00:36:10.04 ID:g6fyZKDU0
舞ってるよ
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/08/02(火) 00:52:03.56 ID:W0XHXCX4o
この先どうなるかすげー気になる
なるべく早く来てくれー待ってるぞー
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/17(水) 09:30:17.35 ID:gzT0xNB10
書けなくなったらHTML依頼するようにね
281 :黒子毛 [sage]:2011/08/17(水) 23:52:45.91 ID:dRB6AR/u0
>>280
Yes, sir.
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/09/08(木) 15:21:24.28 ID:Kr8GoHUz0
かれこれ1ヶ月近く放置してるししかも人のスレ乗っ取ってるし書かないなら依頼しときなよ
283 :黒子毛 [sage]:2011/09/12(月) 17:47:01.20 ID:GGJbTj4e0
暴走木山を一方通行が止めたところに、幻想御手を乗っ取った番外個体が来て徐々に番外通行の流れに…
ってところまで書いたんですが、そこでネタが切れてしまいました。
10033号も使いどころが難しくなってしまい、ここで打ち切りにしようと思います。

ちなみに10032号は殺される予定でした。
美琴の登場によって心情に異変が起こった一方通行が、少し親密になった木山の暴走を止める流れです。
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/12(月) 18:07:20.65 ID:40ipvEq5o
これはひどいwwww
まあ、キッチリ宣言するだけいいか…今まで乙
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/09/12(月) 21:33:54.08 ID:uEmkVl8Oo
打ち切りだと……
今まで乙
いつか完成させたのを投下してくれると信じてる
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