このスレッドはSS速報VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

御坂妹「アクメツ……?」 二殺目 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :とある複製の妹達支援 :2011/11/05(土) 22:10:47.20 ID:BrHDwZp80
『アクメツ』×『とある魔術の禁書目録』(超電磁砲含む) クロスSS 2スレ目です。


前スレ 御坂妹「アクメツ……?」

ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294928035/


あらすじ


アクメツin学園都市!!

日本を震撼させた『アクメツ事件』から、既に10年。
生き残り、一般人として生活を営んでいた『残留組』の『生』達の前に『試験個体』を名乗る少女が現れる。
彼女は、生達と同じ『クローン』であり、2万人の妹達が『実験』によって殺戮されるのだと語った。

その場所は科学によって支配された『学園都市』。

妹達を救って欲しいとの願いに満場一致で応えることを決めた生達。
生達は学園都市で生活をしていた『安達生』の協力により、学園都市への潜入を開始する。
学園都市の中に新設されたクローンプラントを拠点にし、戦力増強の為にかつての兄弟達も蘇生され、体制は盤石かのように思われた。

しかし、彼等の前には多くの事件が、出会いが、戦いが待ち構えていた……

沈没JAPANの救世主は、新たな戦いの中――超人として、どう生き、どう死ぬのか。

悪が笑えば、ヤツが来る!
お前が殺らずに誰が[ピーーー]!?
だって、殺りたいんだからしかたねーじゃん!?

科学と魔術が交差する世界に、最高最悪・神出鬼没のヒーローが舞い降りる時、物語は流転する!?


注意事項


@>>1は遅筆なので、かなりのスロー進行。
A>>1は乙されるのも嬉しいが、ツッコまれて悦ぶタイプ。
Bそのつもりはないが、意外と濃厚な上条×美琴になっているらしい。
C時々AAを使用します。
D投下中のレスは特に気にしません。投下間隔が長かったりもするので。
E禁書サイドへの直接的な『悪滅』は発生しません。(基本的には)
F何人かオリジナルの生が登場しますが、苗字だけ特撮関連から貰っただけで、元のキャラは生のままです。
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714136403/

少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

2 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/05(土) 22:16:17.43 ID:BrHDwZp8o

            ブンブン
  ∧   )ヽミ ミ    _人_人_人_人_人_人_人_人
  ヾ.i^Μ^.,〃 /`-, < エキサイティング “アクメツ”  >
 `ν、゚皿゚ν/ヽ/   `Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y"
  (;;;;;;;;;;;つ')===ノ二ヽ,.。・∴.. 
  人;;;;;Y      と と ,,)  ,.。・∴,,_∧.   
  じ(;;;;;;;〉      (__(__,、_,)    (;;::。∀゚)

アクメツリスト 当然ながら、名前は全員『生(ショウ)』

安達…高校1年 上条当麻のクラスメイト。風紀委員(一七七)所属。
迫間…元主役 遊撃戦闘要員、魔術サイドと頻繁に関わる傾向アリ。
新倉…元準主役 スキルアウトに潜伏中。幻想御手を使用し能力者になった。
海原…板前 学生相手のクレープ屋に鞍替え。常連に暗部組織アリ。
風見…教師 とある中学校に潜伏中。警備員も兼任。

椿…医者 カエル顔の医者のいる病院に潜伏中。20代。
東…クローンプラント管理人。首都圏にあるプラントで蘇生された『妹達』の世話をしている。
如月…剣術家 基本的に戦闘要員なので暇な時はゲームセンターで格ゲーに興じる。持ちキャラは○クメ○

その他のアクメツ

早坂、高杉、藤崎、佐倉、木野、鎌田、大村、氷山、沢北、北斗、向井、加藤、多田……etc

   ,.へへ
  /;;ヘ;;ヾ;;ヽ、
   ,.へゞ;;ヽ、;;/(,   )ヽ 
  く;ハ;;;;;:;;;;;;;;;;ヾ.i^Μ^.,〃
    /;;;;;,.ヘ;;;ν、゚皿゚ν 
  /;;ノ;;ノ  と;;;;;;;;Y;;;;つ 
 (;;ノ;;ノ    ノ;;;;;ハ;;;;`i  
        (;;;;;ノ ヾ;;;;;)
    // // //
  // // /

アクメツアイテム

○アクメツマスク……トレードマークの漆黒の仮面。記憶移送の必需品。神経接続なので、除装にはプラントへ戻る必要がある。
○アクメツスクランダー……硬質化し、飛翔滑走翼になるマントを含む、アクメツ用装具。夜を裂き、流星の様に空を駆る。
○アクメツギター(ベース)……演奏から戦闘まで可能な複装火器。アクメツバンドを組むと威力アップ。
○カウンタック……親友・桂木から譲り受けてから、すっかり気に入った車。何度か派手に大破してるが、その度に修理している。
○人工衛星……記憶情報を送信する際に経由している衛星。個人所有(神宮路の遺産)のモノと、勝手に拝借している某国の衛星がある。
○電磁刀←new……妹達の協力を得て製作した対能力者用の日本刀。丈夫なので峰打ちでも強い。ある程度、抜刀速度を加速できる。

○アーメツくん……アクメツご愛用のマスコットキャラ。
            アイキャッチから番組進行、ツッコミまでこなすマルチな奴。主成分は焼きビーフン……もとい、血税の味がするワイン。

            /ヽ    ____ハ_____   /ヽ
              |::::::::Y´, -‐- 、\  /, -‐- 、`Y::::::::::|
           ,ゝ::::::{_⊥._ o ヽ } { /  o __」_}:::::::::く
         <:::::::::/:::::::::::`ヽノ/::;:ヽゝ, - ´::::::::::\:::::::::>
           >=─--ヽ:::::::::i::/ ヽ::i:::::::::::/--─=<
ア ッ チ ョ ン  { 、____}:::::::::|:ト冖1:!:::::::::{____,. }  ブ リ ケ ! !
           ` ー- _ヽ:ノ::::::::::|:|   |:|::::::::::ヽ;:ノ_ -‐ ´
                 ` 7一''^ゝノ^''ート¨´
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/05(土) 22:23:46.90 ID:jsyqZj3DO
元気そうで何よりだ
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/05(土) 22:30:31.95 ID:EqqX9ZHSO
アクメツしないアクメツに価値はあるのか
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/06(日) 00:29:16.35 ID:VvmZdP0To
おっつおつ。
前スレの終盤残り少ないから感想レス自重してたけど新スレなんでようやくかけるじゃん。
6 :とある複製の妹達支援 [sage]:2011/11/14(月) 23:38:48.00 ID:ya8DNTH0o
水曜日の夜23時〜0時頃に投下しに来ます



Fate/ZEROを見てるとアクメツさんは四次アサシンと五次バーサーカーの利点を兼ね備えて完璧に……うん、ゴメン。見えないよな。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(宮城県) [sage]:2011/11/14(月) 23:47:09.19 ID:++SKn8Eso
まってる
8 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:03:33.68 ID:UHXJcgQHo

悪を滅ぼす為に参上〜♪

悪を斬れ、闇を斬れ〜♪
時を駆けて〜♪ アクメツ〜♪
風になれ、星になれ〜超人よ〜♪

ttp://www.nicovideo.jp/watch/nm10119462

……あれ、割と違和感ないな……?


と、言う訳で(?)投下始めますよ〜
9 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:09:25.00 ID:UHXJcgQHo

〜水穂機構病院〜


時を同じくして……御坂美琴と白井黒子はカエル顔の医師から、
脳波ネットワークと『幻想御手』の中核となる脳波が木山春生のモノであると聞かされていた。

黒子「……お姉様」

美琴「――どうしたの?」

愕然と焦燥の綯い交ぜになった黒子の表情に猛烈な嫌な予感を覚える。

黒子「……木山春生の所へと向かった二人と連絡が取れませんの……」

美琴「」

思考の空白は一瞬。

だが、次の瞬間には脳は行動の信号を発信する。

美琴「行くわよ、黒子!」

黒子「は、はいですの!」

情報を集める為に二人は風紀委員の支部へと戻っていく。

冥土帰し「(『彼等』の事だから、心配はないとは思うけど……僕も準備に戻るとしようかな?)」

病院の廊下に一人残されたカエル顔の医師も、自分の成すべき事を成す為に動き出した。
10 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:11:06.88 ID:UHXJcgQHo

学園都市・第七学区


第七学区から、第一〇学区へと向かう高速道路を一台の青いスポーツカーが猛スピードで走る。

その車内――助手席に座らされた初春飾利は、運転席の木山春生を睨みつけていた。
手首には風紀委員が使用する拘束用の手錠が嵌められ、逃げることは出来そうにない。

木山「そんなに睨まないでくれるかな。見た目こそ派手だったが、彼には深手を与えていない。
    それこそ、もう目を覚まして……仲間の風紀委員や警備員へと連絡を入れている頃だと思うよ」

初春「仮にそうだとしても、大切な仲間を傷つけられて……黙ってなんかいられません」

木山「私としても、手荒な真似はしたくなかった……と、後から言っても無意味かな。
    あの場で彼から逃れるには、あれぐらいしないと無理だったからね。
    ただの研究者に過ぎない私に彼を身一つで制する力などないのだから」

初春「ただの研究者が、どうして『幻想御手』をバラ撒くような事をしたんですか?
    そもそも、『幻想御手』って何なんですか?
    眠っている人達はどうなるんです?
    それに……あの時、貴女が使ったのは……!」

一気にまくし立てるように疑問をぶつける初春に木山は苦笑で返した。

木山「矢継ぎ早だな…………誰も、こっちの質問には答えてくれないのに……」

初春「え……?」

木山「先程、あの少年が言っていた通り……アレはAIM拡散力場を媒介とし、ネットワークを構築。
    それらを繋げ、処理を複数の脳に割り振ることで高度な演算を可能にする。
    それが『幻想御手』の正体だ」

初春「それを……貴女はどうするつもりなんですか?」

木山「あるシミュレーションを行う為に『樹形図の設計者』の使用申請をしたんだが、どういう訳か却下されてね。
    何らかの大規模な『実験』にでも使用しているのか、或いは私に研究をされては困るのか……。
    私には時間がなかった……だから、代わりになる演算器が必要だった」
11 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:12:29.86 ID:UHXJcgQHo

初春「それで能力者を使おうと?」

木山「ああ、一万人ほど集まったから大丈夫だろう」

一万、という膨大な数に初春は背筋が寒くなるような戦慄と胸を焼くような怒りを同時に感じた。

それほどの数の人間が、恐らく――意識不明の状態に陥っている。

木山「シミュレーションが終われば、みんな解放するさ……嘘だと思うかい?」

初春「…………」

木山「……君に預けておくのも面白いかも知れないな」スッ

差し出されたのは『幻想御手』が入っているらしい音楽プレーヤーと、小さなデータチップ。

木山「『幻想御手』をアンインストールする治療用のプログラムだ。
    後遺症はない……誰も犠牲にはならないし、全ては元通りだ」

初春「信用できません。臨床研究が十分でないものを安全だと言われても、なんの保証にもならないじゃないですか」

木山「ハハ、手厳しいな……」

初春「それに一人暮らしの人や、たまたまお風呂に入ってた人なんかはどうするんですか。
    発見が遅れたら、一大事じゃないですか」

瞬間――車体が大きく蛇行しながら、急ブレーキをかけた。

初春「〜〜〜?」クワンクワン

目を回しながらも初春が隣を見ると。


             /.:.:く.:`ヽ.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:\
             /.:.:/.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.}.:`ヽ
           /.:.:/.:.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.:ヽ.:.::::::レ'´  ̄ ̄  ̄ \
             /.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::.ヽ.:.::::::::::::.:.ヽ}.:.:/
          {.:.:.:.::::::::::::::::::::::::.:.:.:::::::::::::.:.:.\.:.:::::::::::::レ'
            ハ.:.:.:.:.:.i.:.:|.:.:::::::::ヽ.:.::::::::::::::.::::::.ヽ.:.:.:::::.:{   見 連 学 ま
            / |.:.{.:.:.:{.:.:|.:.:.:.:.:.:.:.:';.:.:.|.:.:.: ト、 :::: |.:.:::::.:.:ト、  回 絡 園 ず
           !.:.:!.、_ハ_ト、.:.:ト、.:.:.}. `|ーヽ:.メ、 .: |.::::::::l::レ'〉  ら  し 都 い
          ,': :ハ.い リ __V l.:.:ハ.:.:L __ヽ|__ヽ}.:/.:/;ハ/  せ て 市 な
           ///.:..ぃヽ ヒ_ソノl/ l:/ ヽ _ヒッソノi/.://ノ}   な 全 統  :
         /  l/l/ゝ:ゞ''''¨´   ′   。  l/'´.:.:ノ   け 学 括  :
              /.:.:',          。 u, イ.:.:.:.〈   れ 生 理
               i.:.:.:.:ゝ、   ,、       / 〃.:.:.:.:ヽ  ば 寮 事
              ヽ.:.:.:.:.:.:> ⌒ __ ,. イ __ノ.i.:.i:ヽヽ|     を 会
           ,r /`Y^ V^L, -‐‐- 、」 `7⌒ヽ {.:.ヽ:.:.:ヽ      に
            ,.イ {  { 〈.:::/ / /´ `ユ/::::::::∧ヽ.:.:.:.:.:フ⌒ヽ
          { ヽ \ し'``し' ,' /  __ `ヽ:/ レ'´| ,ハ   \__ _/
        __ヽノ\ノ     し' しし'´: : :`ヽ`ヽ   K  }
     //     ̄ ̄  ̄ /\    `ヽ: : : \} \ | \
    / /         /   \     ヽ: : : :\ \ /


初春「って、想定してなかったんですか!?」
12 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:15:35.54 ID:UHXJcgQHo

〜AIM解析研究所〜


安達「…………熱っ…………」

電流が走ったかのような、ピリピリとした肌の痛みで安達生は目を覚ました。

安達「ば……馬鹿な……」

驚愕がそのまま形になったように口から出た。

――何故、自分は生きているのだろうか?

正直、確実に死んだと思った。
炎に全身を包まれた時は、「あ、殺られたな」等と覚悟する始末である。

この手の思考は死に慣れてしまっている自分達の悪癖なのかも知れないと、ふと思った。

安達「服もほとんど焦げてない……」

素肌の部分は火傷を負っていたが、それも死に至るようなダメージではない。

――どうやら、手加減をされたらしい。

安達「元の持ち主より、上手く使ってるんじゃないか……?」

それでも気を失ったのは炎によって周囲の酸素を瞬間的に奪われ、酸欠になったからだろう。

安達「(初春は……連れて行かれた、か)」

研究資料がそのままになっている点を鑑みると、木山は『目的』とやらを果たしに行ったのかも知れない。

安達「(パソコンは……迂闊に触らない方がいいか)」

いかにも手掛かりがありそうだが、何らかの処置が施してある可能性が極めて高い。

携帯電話を取り出すと、仲間と黒子宛にそれぞれメールを打ち、送信する。

仲間達には現状と警備員(アンチスキル)にいる風見生への要請を。
黒子へは初春が攫われた事と、自分が怪我をした事を。

安達「――この際、俺はここで戦線離脱した事にさせてもらうとしますか」

うかうかしていると、この施設には警備員が殺到するだろう。
そうなるとかなり動きは制限される。

その前に木山春生の後を追いたかった。

安達「(確か、ここの近くの駐車場にアレがあった筈じゃん……!)」

懐にある仮面の感触を確かめた後、生は部屋を飛び出した。
13 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:18:10.98 ID:UHXJcgQHo

〜とある病院〜


新倉生の病室の前の廊下で上条当麻は佐天涙子と話をした。
上条が修道女……インデックスと一緒にいる事については、特に佐天から深い追求は無かった。
多少は疑問を感じたようだが、それどころじゃないのが正直な所か。

――ちなみに気を遣ってくれたのか、件のインデックスは病室の中だ。

上条「……新倉と一緒に『幻想御手』を……それで佐天さんは大丈夫なのか?」

『幻想御手』を使用したという事実を聞いても、特に上条は驚かなかった。
責めるつもりは毛頭ないし、あるのは佐天への心配だけである。

佐天「はい……今、検査が終わって……少なくとも、意識不明になる兆候みたいなのは出てないって……」

上条「それは良かった……って、思ってないみたいだな?」

佐天「だって……新倉さんは私に付き合って『幻想御手』を使ったんですよ……?
    なのに、私は元気で新倉が目を覚まさないなんて……!」

上条「気持ちは分からないではないけど……アイツ……新倉は新倉自身の考えがあって『幻想御手』を使ったんだよ」

安達生の言う通りであるなら、最初から新倉生は調査の為に『幻想御手』を使用する事を考えていたらしい。
そうなると、佐天と出会わなくても……或いは彼女と一緒に使わなくても結果は同じだった。

上条「だから、気に病むな……とまでは言わないけど、そんなに自分を責めても新倉は喜ばないと思うぞ」

佐天「分かっては……いるんです。覚悟、してた筈なのに……」

根拠もなく、自分は大丈夫等と考えていた訳ではない。
『幻想御手』を使用する、そのリスクに関しては新倉生が丁寧に教えてくれた。

佐天「こんなの……私だけ……」

それこそ、自分が意識不明になるぐらいの方が良かった。
それが駄目なら、新倉と一緒に意識不明になりたかった。

上条「…………今、御坂と新倉の兄弟……安達が動いてくれてる」

佐天「御坂さん……が?」

上条「あぁ、風紀委員と一緒に。だから、きっと新倉も他の人達もすぐに目を覚ますと思う」

佐天「――でも」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/16(水) 23:20:14.40 ID:n7aP212Ho
wktk
15 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:20:22.60 ID:UHXJcgQHo

上条「――確かに『でも』なんだよな」

佐天「え……?」

上条「……黙って待ってる必要なんかないんじゃないか?
    幸い、佐天さんはこうして自由に動ける」

佐天「……!」

上条「何が出来るとか出来ないとか、無能力者だとか、そんなの関係ない。
    助けたいって……そう感じたなら、誰だって……誰かの為に立ち上がってもいいハズなんだ。
    その気持ちは正しいものだって……新倉も言ってたんだろ?」

少女に語りかけながら、少年は自身の気持ちを強く固めていく。

佐天「――――はい!」

上条「……インデックス、そこにいるか?」

禁書目録「……なーに?」ガラガラッ

……どうやら、ちゃっかり話は聞いていたらしい。

上条「悪い、行ってきてもいいか?」

禁書目録「とうま――私は最初から行ってきてもいい、って言ってたと思うんだよ?」

上条「あー、だよな。……一人でも大丈夫か?」

禁書目録「それも最初から言ってるかも」ムスッ

上条「そっか、そうだった……すぐに片付けて御坂や生と一緒に帰ってくるから、インデックスは新倉についててやってくれ」

禁書目録「分かったんだよ! ……みことと一緒に無事に帰ってきてね?」

上条「あぁ……って、生は?」

禁書目録「んー……しょうは不死身らしいから、あんまり心配しなくてもいいかなーって」

上条「何だよ、それ?」

禁書目録「殺しても死にそうにないって意味かも。
       ……とりあえずは一人で無茶しそうな、みことを任せたんだよ?」クスクス
16 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:24:21.03 ID:UHXJcgQHo

上条「まぁ、いいか」コホン

咳払いを一つして、インデックスに向き直った。

上条「……約束するよ、インデックス。――御坂は必ず……俺が連れて帰ってくるから」

禁書目録「うん」コクン

上条「じゃ、行ってくる。……佐天さん」

その呼び掛けに佐天は小さく……だが、しっかりと頷いた。

佐天「上条さん、私も連れて行ってください……御坂さんの所に!」

上条「よし!」

今にも走り出しそうな上条の背中にインデックスは慌てて声をかけた。

禁書目録「……とうま!」

上条「ん、どうした?」

禁書目録「帰ってきたら……私の話、聞いてくれる?」

上条「話?」

禁書目録「私の事。ちゃんと……みことやしょうにも話さないといけない事があるの」

インデックスの真剣な眼差しに上条も真摯に応える。

上条「――判った。帰ってきたら、聞かせてくれ」

禁書目録「うん!」ノシ

駆けていく少年と少女を修道女は柔らかな笑顔で見送った。

???「いやはや、イイ女じゃん?」

二人の姿が見えなくなった後、少しからかうような賞賛の言葉が投げ掛けられる。

禁書目録「えへへ、そうかな? ……それにしても、ビックリしたんだよ……しょう?」

新倉の寝ている病室から、まったく同じ顔をした人間が顔を出した。

生?「だから、それは悪かったって……そろそろ、許してくれてもいいじゃん?」

それは、インデックスを守る為に刃を受け、焔に焼かれ、その命を落とした――迫間生、その人であった。
17 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:25:40.31 ID:UHXJcgQHo

学園都市・第七学区


〜風紀委員活動第一七七支部〜


支部に誰もいない状態は不味い、と待機してくれていた固法美偉と美琴と黒子は合流し、警備員と連絡を取り合っていた。

固法「――警備員から連絡、AIM解析研究所に到着したそうよ」

黒子「初春と安達さんは!?」

固法「木山春生を含めて、風紀委員二名の消息は不明……」

美琴「……私も出るわ。ジっとしてるのは性に合わないし」

固法「一般人を巻き込みたくはないけど……状況が状況だし、超能力者(レベル5)のあなたが手伝ってくれたら……」

美琴「はい」

黒子「お姉様、それならわたくしも……!」

美琴「――そんな怪我で動こうっての?」

黒子「お姉様……気付かれて……?」

美琴「バレてないとでも思ったの? ったく……」

黒子「で、ですが……」

食い下がる黒子の額を軽く小突く。

美琴「アンタは私の後輩でしょ? ……こんな時ぐらい、『お姉様』に頼んなさい」

そう言って微笑んだ美琴の表情は、深い慈愛と確固たる自信に満ちていた。

黒子「(お、お姉様……! 素敵……素敵すぎますのっ……!!!)」///
18 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:30:48.26 ID:UHXJcgQHo

〜AIM解析研究所〜


『生』のクローンの一人であり、柵川中学に教師として潜伏中の風見生は、
警備員の一員としてAIM解析研究所を訪れていた。

風見「――研究員達は何と言ってる?」

警備員A「自分達は何も知らされていなかったと主張しています。
      木山の行き先や目的も分からないと」

風見「……事実だろうな」

読心系の能力者にかかれば、嘘を吐いた所で即座にバレる。
そう考えると、研究員達は知らずに利用されていたのではなく、最初から木山一人の犯行なのだろう。

警備員A「現在は学園都市の監視システムで木山を捜索中です」

ピピッ

警備員B『木山春生の研究室に到着しました。捜査を開始してもよろしいでしょうか?』

無線から別班の隊員の声が届く。

風見「許可する。ただし、パソコンには下手に触らずに専門部署へ回しておけ」

警備員B『了解です』

風見「(さて……安達の奴の話を考えると……黄泉川先生の班だけじゃ戦力不足か……)」

人数的な問題だけでなく、装備も対能力者用のものではないのが痛い。

風見「よし、B班は引き続き研究所内の捜査。A班は別働隊と連携して木山の足取りを追跡する」

警備員A「了解しました!」

19 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:33:45.35 ID:UHXJcgQHo

〜とある病院〜


禁書目録「もしかしたら、しょうの偽者なのかも、とか色んな事を考えたし……心配もすっごくしたんだよ?」

迫間「……悪かった」

そう、上条と佐天が廊下で話をしている間、インデックスは新倉生の病室で迫間生との再会を果たしていたのだ。

通常であれば、安達、新倉に続いて新たに同じ顔の人間が現れたようなものなので、その混乱は尋常ならざるものとなる。
だが、この『邂逅』が『再会』として、スムーズに機能したのはインデックスの有する『完全記憶能力』の恩恵であった。

お陰様で目の前の生が『自分を庇って斬られた生』だと認識したインデックスによって、
再会の抱擁よりも先に抗議のグルグルパンチを喰らう羽目になったのだが、それは自業自得の範疇だろう。

迫間「しっかし、よく俺と他の奴の見分けがついたなぁ……?」

禁書「言ったでしょ、わたしには完全記憶能力があるんだよ? 
    例え、瓜二つの双子だって完全に同じ顔の人間なんていないんだから。
    それに……今、わたしの前にいる『しょう』には見分けるコツがあるし」

迫間「コツ?」

禁書目録「……ピアスだよ」

迫間「ピアス? 今は付けてない……ってか、穴自体が無いんだが」

蘇生されたばかりなので、言わば新品――ピアス穴を空けていない状態だった。

禁書目録「うん。それはそれでビックリなんだけど……ピアス付けてる所、触る癖があるの気付いてる?」

迫間「……え、嘘……マジで?」バッ

ハッとしながら、自分の耳に触れる。

禁書目録「癖って、自分でも知らない内に出来てたりもするからね」

迫間「驚いた……今度からは気をつけるじゃん」

禁書目録「気を付けられると、また見分けるのが大変なんだよ?
       もう少し見慣れれば、癖なしでも大丈夫だとは思うけど」

迫間「いや、インデックスの前では別に気を付けないよ。どうせ、ある程度はバレてる訳だし」

禁書目録「……前にも言ってた……死んでも死なないって話?」

迫間「まぁ、そんなとこじゃん。一応、秘密にしておいてくれると助かる」

禁書目録「それはいいけど……とうまやみことにも隠すの?」

迫間「とりあえず、今は困るかな。時期が来れば話す機会もあるだろうから、インデックスは気にしないでいい」

言外に自分自身の心配をするように、と迫間は告げていた。

禁書目録「……そっか。……ところで、しょうは本当は何人兄弟なのかな?」

迫間「――内緒じゃん」ニヤリ

悪戯を隠す子供のような笑顔を湛えたまま、迫間は口元に人差し指を立てた。
20 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:36:18.28 ID:UHXJcgQHo

学園都市・第一〇学区


第一七七支部を出た御坂美琴は、タクシーを拾って警備員の展開場所へと向かっていた。

美琴「メール!? ……アイツから?」

黒子『安達さんからのメールには、木山の拘束に失敗……反撃を受けて怪我をされたと。
    そして、やはり初春は木山に連れていかれたそうですの』

美琴「拘束に失敗って……どうして?」

生は、ただの研究者程度に遅れを取るような腕前ではない筈だ。

固法『その件だけど……木山が能力を使用したらしいの』

美琴「それって……木山が開発を受けていたって事ですか?」

黒子『いえ、書庫(バンク)にはそのような記録はありませんの」

固法『……でも、彼が言うには『幻想御手』の副次効果かも知れないって』

数千を超えるリンクされた能力者の脳。
それらを掌握しているのなら、通常の人間には不可能な事も可能になる。

美琴「木山春生は、ネットワークに取り込まれた能力者の能力を自由に扱える……?」

黒子『それが正しければ……今の木山は実現不可能とされた幻の存在……』

『多重能力者(デュアルスキル)』

美琴「運転手さん! もっと急いで!」

運転手「は、はい!」

女子中学生の乗客の鬼気迫る様子にタクシーの運転手は慌ててアクセルを踏む。

下手をすれば、木山を追っている警備員は――全滅するかもしれない。
21 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:45:40.16 ID:UHXJcgQHo

〜とある病院〜


『幻想御手』の影響で多くの学生が入院しているこの病院だが、
それとは関係の薄い人間も入院生活を余儀なくされていたりもする。

例えば、海原生もその一人。

『虚空爆破事件』で、人違い(むしろ『生』違い)で屋台を吹き飛ばされるわ、自分も死ぬわで散々な目にあった為、
クローンプラントで蘇生された後も、ちょっとした休暇感覚で絶賛入院中である。

さて、そんな元板前の現クレープ屋の主人を訪ねて、少女が四人。

――学園都市の暗部組織『アイテム』の四人であった。

麦野「――さて、噂の男の病室はどーこーかーにゃーん?」

嬉々として受付へと走っていく麦野。

絹旗「……何で、標的を追い詰めるみたいなテンションなんですか……」

フレンダ「……今更だけど、心配になってきた訳よ……」

海原生は個室から四人部屋に移ったらしく、フレンダと絹旗が見舞いに来た時とは部屋が違っていた。
病室を移る話自体は聞いていたのだが、病室の番号までは知らなかった。

滝壺「大丈夫だよ、むぎのは二人を助けてくれた人に早く会いたいだけ……たぶん」

絹旗「そこは言い切って欲しかった……!」

フレンダ「結局、会ってどうする気なのかが不安な訳よ……」

そんな事を言っていると、看護師から海原の病室を訊いた麦野が戻ってきた。

麦野「何してんのー? さっさと来なさい」

滝壺「……ほら、行こう?」

フレンダ「結局、私達には祈ることしかっ……」

死刑宣告を待つ囚人の様な心境でフレンダと絹旗は麦野を追う。
22 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:49:06.22 ID:UHXJcgQHo

ざわ……ざわ……


廊下を進みながら、絹旗が周りの喧騒に疑問を呈した。

絹旗「ところで、何だか病院内が騒がしくないですか?」

フレンダ「確かに看護師さんやら、医者やらが忙しなく……何だろう?」

滝壺「(この感じ……?)」

麦野「どうも、入院してる患者の容態が悪化してるみたいね……それも何人も」

絹旗「集団食中毒でもあったんですかね?」

滝壺「……違うと思う」

フレンダ「へ?」

滝壺「……何でもない」

麦野「ふぅん……? お、この先らしいわよ」

絹旗「遂に到着してしま……って、何ですか! この行列は!?」

廊下の先にある病室。
恐らく目的の病室であろう、その部屋から入院患者が30人程、行列を作っていた。

滝壺「みんな、クレープ持ってる……」

言われてみると、病室から出てきた患者たちは一様にして手にクレープを持っている。
その中に両手に2つずつのクレープを持った修道女の姿が見えた気がしたが、きっと幻だろう。

絹旗「……ず、頭痛がしてきました」

フレンダ「いつだったか、日曜の朝にこんな場面を見たことある訳よ……」

麦野「……とりあえず、病室に入るわよ」スタスタ

絹旗「流石に動じませんね、麦野」

フレンダ「女は度胸、男は愛嬌って訳よ」

滝壺「……逆だよ?」
23 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:51:22.11 ID:UHXJcgQHo

〜一般病棟 107号室〜


海原「はいはーい、並んで並んでー」

絹旗&フレンダ「」ガクッ

案の定、病室の中では海原生が入院患者達にクレープを振舞っていた。
ご丁寧にベットに備え付けられたテーブルを連結させ、その上にホットプレートを数台並べて、数をこなしている。

絹旗「店長さン!? 何やってるンですかァ!?」

海原「お、絹旗ちゃんにフレンダちゃん。また見舞いに来てくれたのか? あ、クレープ食べてく?」

フレンダ「平然とクレープを薦めてきた……!?」

絹旗「いいんですか? 病院でこんな事して……」

海原「許可は取ってるじゃん」

と言っても、担当医は椿生なので完全に身内に便宜を図ってもらっている状態だが。

海原「それにお婆ちゃん(同室の)が言ってたじゃん……食事制限が厳しくて、クレープみたいな甘い物を食べる機会がないって……」

絹旗「入院してるんだから当然じゃないですか……」

海原「だからって、病院食ばかりじゃ気が滅入るだろ? 幸い、糖分と塩分にさえ注意すればクレープでも問題ないし」

フレンダ「鯖でクレープ作ってくれるくらいだもんね」

絹旗「……いいんですかね」

海原「病は飯から。食べるという字は人が良くなると書く」キリッ

フレンダ「結局、それが言いたかっただけな訳……?」

麦野「クックックッ…………自分と愉快な奴を見つけたじゃないの?」ニヤニヤ

絹旗「変な人ですが、腕は確かですし……それに親切ですよ?」

暗部の人間である絹旗から『親切』等という評価が飛び出したのが少し意外で、麦野は目を丸くした。
24 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/16(水) 23:54:45.29 ID:UHXJcgQHo

麦野「ま、その親切でアンタ達は助かったんだから……私も礼を言っておこうか」

海原「……自分の店の常連さんと、その友達を庇っただけじゃん。わざわざ感謝される程でもないって」

麦野「あら、殊勝じゃない?」

海原「いやいや……ところで、お嬢さんは絹旗ちゃんの……友達……って、感じじゃーないよな」

麦野「仕事の同僚ってところよ。私は麦野沈利……一応、ヨロシクって言っておくわ」

まさか、暗部の人間であるのが即バレしているとは夢にも思わない麦野は、
適当に絹旗達との関係を誤魔化しながら、自己紹介をする。

麦野「ほら、滝壺も……ん?」

後ろに居る筈の滝壺にも挨拶をさせようと彼女の姿を探すが、見当たらない。

滝壺「むぎの、こっち」パクパク

麦野「……何してんの」

滝壺「クレープ……貰ったから……イチゴの…………美味しいよ?」モグモグ

知らない間に行列に並び、ちゃっかりクレープを確保していたらしい。

海原「入院患者の人には、ほとんど配り終えたから……何か要望があれば聞くじゃん?」

麦野「――じゃあ、鮭で」

やれるものならやってみろ、という挑戦的な笑み。

絹旗&フレンダ「(ある意味、予想通りの無茶振りがきたーーー!?)」

だが、彼女達は知らない。
元板前の海原生にとって……鮭はアウェーどころか、完全なホーム食材である事を……!!!
25 :とある複製の妹達支援 [saga]:2011/11/16(水) 23:58:19.92 ID:UHXJcgQHo

〜とある病院前〜


一方、上条当麻と佐天涙子は困っていた。

意気揚々と病院を出たのはいいが、御坂美琴の今の居場所なんて皆目見当も付かない。

上条「とりあえず、タクシーを拾って……佐天さん、御坂が入り浸ってる風紀委員の支部の場所は分かるよな?」

佐天「えっと……私も入り浸ってるんで……それは大丈夫です!」エヘヘ

上条「よし……」

早速、タクシーの姿を探すが、病院の前だと言うのにタクシーは一台も止まっていない。

上条「普通、何台か待ってるもんじゃないのか……?」

何処かで事故でもあって、交通の流れに乱れでも出ているのか、道路を走る車自体が皆無だ。

佐天「こうなったら、次に通りがかった車をヒッチハイクして……!」ノ

上条「そんな簡単に止まってくれるといいけどな……」

自分がヒッチハイクでもしようものなら、黒塗りのベンツが止まって、中から強面のお兄さん達が降りてきそうで怖い。

佐天「あ、来ましたよ!? ほら、上条さんも手を挙げて!」ノ

上条「いや、佐天さんだけの方が止まってくれそうな気が……」ノ

そんな不安を他所に、その車は二人の前で停車した。

上条「(カ、カウンタック!?)」

往年の名車が、学園都市を走っている事にも驚いたが、その運転手の顔を見て、上条は更に驚いた。

佐天「か、仮面……?」

上条「アク・・・・・・メツ・・・・・・?」


.、         /:::::::://
`、ミ-::、_     /::::::://l、\
 `、ミ  ̄``ー/::::::://、.|ミ `ヽ、  ∧
  `、ミ、 ``ヽ./::::::://`ヽ`ヽミ、 \/:l`、
`¬" ̄`ヽヽ/:::::://.   `ヽ.`ヽ、、`ヽ、ヽi、/i                ,.:''   
-  =:、 ヽ./:::::://ヽヽ、 、 、ヽ、、ヽ  ヽ!ヽリl| ,ィ            _,..:::':/
   ヽ、` ./:::::://、ヽヽヽヽヽ、ヽ、、゙i l l | i| |!/ /          ,r:':::::::;/
 ̄``ヽ、ミ/:::::::/::`ヽ、ヽヽ```ヽヽヽ', l l l l j./."|         ,/::::::/
ー-:、-:、/::::::::/::::::::::::::`ヽ、__  ヾ`` l ! | //,イ,./      ,/:::::;/  
ミミミミ/::::/:::::l:::::::r;;:-、_:::`、      "////-ッ    ,/::::::;/   
`ヽ、ミ/::::/::::::::::|:::::::゙l,,,,,,,,_`l:::ヽ   !    ////  ,/::::::;/     
`、::::`>〈::::::::::::`-::、 ヽ,,te:、ヽ::!、,,!,.、 |   ;,,,,7/l/::::::;/   
:::〉''/::::::l`ー-、:::::::: ̄ ̄jヾ一=''":l、::!;;;;;;;;;;彡ノ::::::::::;/    
/::/::::::::::l::::::::::::\::::::/::/'^、,ヽ:::::::::::|`-:、 ./ヽ ̄j::;/     
::/:::::::::::l:::::::i⌒ヽ::∨/ ./|`l"^v:、!_:::::::l':::∠;:、/      
';:-、:::::::|::/|  )::::|:l   |"|,,.!__/ / 7:、ュ::)::::/        
  `ヽ:|" |   .|::|::|_ヽ/--、_ ~`ヾ//~|::|:|       
.   `|  l _|:::|::| `"ニミ-`/ /::|  |,!-/              
    .|   `、!:::::::|::!._ /´,!. ̄ ./::/|./            
    |    ヽ::::ヽ::::``-'、_/`r:!"| /             
   .|     ヽ::::`ヽ、:::::::::~`''|'::7|| 


アクメツ「乗ってくかい? ボーイ&ガール」

素敵(?)な仮面の男が、どこまでも不敵に笑っていた。
26 :とある複製の妹達支援 [saga]:2011/11/17(木) 00:00:58.29 ID:DelczfBEo



                  __、、___l!    |_,,__
         \\      \                / /  〃〃   // /
                    `―――       l‐―'
             \\       /  /!   |         /
                      /  /  |_ _ _ !
                      \/    ___/__
                        _、_   //
    ・.                     /\  / /
                    、                ,
                                     〃
             \      ,_、ヽ、、ヾ_____l!_l!___, ,〃 , 〃 , ,    /       ゚
      ・  .      \ ,,、=‐,,ィ''゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙ヾ、`ヾ/
          \     《,,ィ''、  o゚ .:               /ヾ 》  .:・
           ,,;::,,  ,,__"_ __                       ヾ、   ,,,, ,, .   _  __,,,,,,,
  __   _    《::..ノ_≪   ̄ ̄- ̄__≧ = ==‐-  __          ≫、l!",,》   .::;;;;;;.:.:.:;;;;;;;;;;
,;;::.:.:::..,,;;;;;:.:.:.:.:.  ,`'´  ̄ ̄  ‐- _ ̄ ゙゙̄ ==____ ̄'''l.}「}_____  -‐  ̄ ̄  ` 、 . :.;;;;; .:.:;;;;;;::.:.:.;;
;;;:.:.:.::;;;;;;;;:.:.:.::  ,、'          ̄: ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ー' ̄: ̄ ̄:           ゙、_="".: .: .: :.:
:.:.:.:.:. : . . .. ‐≡!          ,' ,'  , ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄、 ̄ :、  、          l! ̄  : . : . : : :
        .! ,- - -――--- ! .,'  くヽ 、         _ノ゙>  :、  ヽ. - --―――、 |!
キタ━━━━ l (_____  i! /   `ー,゙゙=-_,ィ、_-=゙゙。_´    丶 .l、  ____) =- ━━━━ !!!
        ≡ ____  ̄i!./    <i ̄'´ЭnunuC` ̄`‐i>     丶.|! ̄ ____ l!
        |┃、i - - 、_ ̄i!/         . ̄V ̄          丶|! ̄´( ̄ '⊂ ┃i!≡
        !┸――――‐'/ . :: ""       書   ""        |!-――――`┸i!
        i!_______ii'____________________i!_______≡
    ゙  ,, 〈゙゙|li ,, ||  ;:l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄, ̄ ̄ ̄ ̄, ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l::l lli!  l|!  |!
        ≡≡   il| ;.,、;;:: : .  .. :;;;;;;;:: : .      . : ::;;;;;;;;;;;;;;:: : :.  .:;;|!   l|!   ≡ ,・
..: .:: .:: .:: : : ::::―`───'- ̄:: ̄:: ゙゙゙゙゙゙̄‐  ..:..:..  ゙゙゙゙゙゙゙ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`─────'- :: .: :.―― ‐
      /      //    〃      __i__     ヽヽ               \\
                            /|!   、、
         , '                 /  '゙
                        ;_,_,_,_,_|! ̄\_
     /              〃  〃   _    _\  \
 / /                    ̄ ̄ ̄/    \  ̄    \\
                          / /|!     \
                        /  /  |!      \


See You Next Stage!!!
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/17(木) 00:22:31.23 ID:9+pv7JSeo
乙乙
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(宮城県) [sage]:2011/11/17(木) 00:26:35.63 ID:F7fAy1gdo
乙なんだよ
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 00:59:01.86 ID:Mjz1uHPg0
祝 迫間・現場復帰! インさんと再会果たせて良かったね
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 01:13:25.51 ID:nULooO/bo
おつつ

読んでてホント先が楽しみでたまらんww
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/17(木) 01:46:55.60 ID:RT22RENL0
何この謎の疾走感ww
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 02:15:15.29 ID:YfdIkcU80
安定のアクメツ一人芝居乙です
戦いは数だよ兄貴、重ちーのハーヴェストに勝てるヤツってのは考えられねーぜ!
既に登場人物の何割か占有してるしね!!
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(九州・沖縄) [sage]:2011/11/17(木) 03:16:14.39 ID:iJwrKykAO
乙です
そういや、医療系ミサカはまだでてないのでチャンピオン繋がりでこの番号を思いついた。
ブラック・ジャック=>
黒男=>
クロオ=>
960
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]:2011/11/17(木) 04:01:21.38 ID:QB7G5PKi0

続きが楽しみだ
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 08:09:25.38 ID:hoTMubuDO
ほんと楽しい
クロスものとしてバランス感覚がすごいと思う
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西・北陸) [sage]:2011/11/19(土) 23:32:15.06 ID:1ZxU2EMAO

今日知って一気読みした、無茶苦茶面白いよ>>1スゲー。アクメツも面白そうだし明日買いにいく予定だぜ
小ネタもドツボだwwライダーネタ多いなwwww
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 08:40:05.08 ID:b2ESo2JDO


続きが気になる
38 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage saga]:2011/11/22(火) 17:42:59.73 ID:kgIerImHo
乙!

前回の読んでてちょっと思ったんだけど……
これって結局妹達が2倍死んでるとも言えるんじゃないかな
肉体的な死と精神的(って言えばいいのか?)な死でさ

変な感想ですまんがアクメツの原作とか読んでて気になったんだ
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/22(火) 20:00:10.61 ID:eH7K8SF8o
脳移植してる訳じゃないから
死んだ人間の記憶と容姿を持った別の人間が新しく生まれただけだね
意識までは引き継がれないからね
40 :とある複製の妹達支援 [sage]:2011/11/22(火) 22:43:48.06 ID:WvOa83pmo

なにやら新規さんが増えてるようで、喜ばしい限りです。
……紹介スレとかで名前が上がると嬉しいやら恥ずかしいやらで複雑な気分になります。///

レス返しをば。

>>32 アクメツの楽しさって、犯行(?)時の破天荒さとか以外にも色々な場所に潜伏しているシュールさとか、祭りの準備的な高翌揚感があると思うの。その結果、やたら人数増えるwwww

>>33 よし、採用。クロウにすると借金属性も付加できそうだ。

>>36 ライダーネタ多いのは、>>1が好きなのもあるんですが、生達……案外オタクなんです。主にヒーローとか特撮方面に関して。

>>38 確かにこの先、生き返った妹達が死に羽目になると……結果的に死ぬ回数は二倍……かな?

>>39 この辺は疑問に感じる人も多いかも知れません。

やってることは脳移植というか……同型のパソコンを別途に用意してのHD丸コピとでも言えばいいのか……

アクメツの場合だと、
致命傷を受けた後、死の直前までの記憶を電子的な情報へ変換して、素体へとダウンロードしているので
当人の感覚だと、死んだと思ったらプラントのカプセルの中で目が覚めた状態なので、それこそポルナレフ状態なんですよね。
だから、厳密な意味で死を経験した生は居ない訳です。(死の瞬間には既に意識なんてないので)

そして、このSSでの妹達ですがアクメツの関与がない場合、
普通に一方通行に殺害されて、その記憶(経験・知識)は残りの妹達にMNWを利用して継承されるものの、
人間の個を定義する要素のうち「アイデンティティ」は失われたままなので、その『個』としての死は避けられない、と。

>>39の指摘通り、記憶と容姿を引き継いだ新しい人間が生まれた、という状況ですが
生やミサカ達は元々がクローンなので、その辺に関しては割と気にしていません。

むしろ、そんな彼等・彼女達をどう捉えるかは周囲の人間の問題になるんですよね。

人間の心の所在は、人と人の関係性の間にあると(個人的に)思っているので、
当人が気にしてなくて、その周囲の人間がアリ、だと思えばアリかなと。

アクメツ本編で、桂木を生き延びさせる為に必死に生以外のクローン再生を模索していましたが、
遠藤由香はそうやって生き延びても、それは桂木慧一じゃない、と言っていたり。

機会があれば、その辺の描写もしたいとは思うんですが……
カットしようとしてた二巻の展開思いついちゃったんで……
肝心の三巻にいつになれば辿り着けるんだろう?
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 23:53:38.31 ID:kgIerImHo
>>1
ちょっと言葉足らずだったので>>38について補足
記憶の移植元をA、移植先をBとした場合、

Aが死亡
  ↓
Bに記憶移植(このタイミングでBとしての人生はなくなるのでB死亡)
  ↓
Aの記憶とBの体を持った個体(この時点でAともBとも言えないのでこれをCとする)が生まれる

……と、いった感じに考えている
なのでCが生まれた時点でAとBの二人が死亡してるってことになるんじゃないかって考えなんだ
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(宮城県) [sage]:2011/11/23(水) 00:08:42.85 ID:Cuy1p7gCo
>>41
用意されるクローンのBは意思も自我もない素体だから、Bの死亡ってことはないんじゃない?
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/23(水) 00:49:54.41 ID:rREdaKq+o
>>42
う〜ん……そうなのかな?
まぁそこら辺は個人の死に対する定義や線引きにもよるかと
自分は、意思とか自我が眠ってる状態(普通の胎児で言うところの出産前)の素体に記憶移植を施してから目覚めさせるってプロセスだと思ってたよ

意思も自我もない素体ってことは脳死状態みたいな感じなのかね?
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/23(水) 02:28:02.37 ID:+Fm5WSGbo
そのへんの倫理観無視して神宮路が作ったシステムだから、Bも死んでるでいいんじゃないの?
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/23(水) 09:29:55.08 ID:FcjyHLHpo
生まれたての赤ん坊に別の人生を無理矢理植え付けるようなものだからね
Aは肉体も精神も死にBは精神のみが死ぬ
その代わりにAの精神とBの肉体を持ったCが生まれるって感じに近いかな
Bは記憶を植え付けられなければBとしての人生を歩むはずだった訳だからね
この辺は淡白に考える人とで意見が分かれそうだけど
腹を痛めて生まれた子供とクローンとで一つの生命として
その価値に何か違いがあるとは自分には思えない
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(栃木県) [sage]:2011/11/23(水) 16:15:15.36 ID:9MwsiY0qo
クローンに記憶移植ジャンルでは
外部刺激皆無のまま生成されるんで完全ブランクに近い、
単体では生命維持もできない、のもある
アクメツのシステムはそっちに近いんじゃないかな

47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/23(水) 18:56:53.55 ID:DACik3GF0
記憶と言うか、ウィンドウズ上のファイルの上書きコピーみたいなもんかと思ってる
新たに持ってきたモノから重複分は消され、新規分になかった分はそのまま残る
最初期の孤児院に預ける用途の生'sや学園都市のミサカシリーズに上書きしたら
人格に相当するファイルが一部でも上書きされれば殺人と言えなくもないけど
代替用として作られたクローンボディは該当のフォルダとファイルがない、みたいな

ブランク状態はホワイトスネイクに記憶DISC抜かれた状態が一番イメージに近いかな
アレは承りの様子を見ると全抜きじゃないっぽかったけど
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/26(土) 03:05:36.30 ID:fxUofz/8o
ここのインさんとフルチューニングさんはほんのり胸が暖かくなれるから好きだ
ゆっくりとでいいんで頑張って欲しいんだぜ
49 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/28(月) 21:54:50.08 ID:msKV7wewo
……本編はいまいち筆が進んでいませんが……突発的に試験個体を書きたくなりました。
そんな訳で久しぶりに挿話を投下したいと思います。短時間かつ勢いで書いたから少し雑かも知れないけど。
50 :とある複製の妹達支援 [saga]:2011/11/28(月) 21:57:23.14 ID:msKV7wewo


                 . : :  ̄ ̄ミ: .、
                  / : : : : : : : : : : : \
              , ': : : : : : / : : : } : : : : `、
                / : i: : i i /: : / ; {、 : :、: : .
                〈}: |: : |_|:{ : / /: :} \ヘ! : i
              i: |: |:イ| | ∨:/: /:厂 〉i: : !
              |: | 从|笊V|ハ/V笊V从: :|
              |八{{{ ヒヅ:::u:::::ヒヅ '}}}: :|
              |: i`∧::::::::::::、:::::::::::::∧': : |
              |: |: i:iヘ、  、 , u. 'i: | : i:|
              |/|: i:i : i> __. イi: :i: | : i:|
              { 从vイ  `丈´ `〈j厶バ!
               /}   i\_/ ゚}ヘ._/  {\
     ┌───'─┴─┴┸‐┴‐┸─┴一ー──‐┐
     ⊥                              ⊥、
    {厶 〉               と          〈/ ハ
    仁ヽ)                  あ           `Y.ノ
    {‐、.〉               る            |/
     ヽ|               試  休             |
     |               験  日             |
     |               個  の             |
     |              体                  |
     |                            |
     └────‐r‐┬─────┬─r────┘
                 〉、」         /  ,ノ
             {  `≧=‐----‐ ´≦´ }
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]:2011/11/28(月) 22:00:49.36 ID:L5bkWY750
試験個体ktkr!!
52 :とある複製の妹達支援 [saga]:2011/11/28(月) 22:02:47.92 ID:msKV7wewo

挿話 『とある休日の試験個体@ 〜おでかけ編〜』


7月某日


東享ドームシティ・後楽園ホール


試験個体「……まさか、あそこで一條のカウンターが決まるとは思いませんでした! 
       と、ミサカは試合の興奮を身振りを交えて語ってみます」シュッシュッ

ひらひら。

東「いや〜、確かにイイ試合だったな」ウンウン

楽しそうにパンチを繰り出す試験個体(フルチューニング)に応じたのは『東生』。
生達のクローンプラントの管理人であり、妹達からは『博士』と呼ばれている生だ。

試験個体「これは、ボクシングの習得を妹達と協議する必要がありそうです……と、ミサカはMNW2に新スレを立てます」ピピッ

東「おいおい」

試験個体「博士も……というか、生さん達もボクシングは出来るんですよね?」

東「ん? あぁ……習得してた奴がいるから統合後……つまり、ver.3以降の奴なら全員それなりに」

試験個体「今度、機会があれば教えてもらってもいいですか、とミサカは博士に師事を希望します」

東「俺が教えてもいいが……どうせなら、戦闘専門の奴に頼んでくれ」

試験個体「戦闘専門の方は皆さん、学園都市に行ってるじゃないですか。と、ミサカは博士の回答に不満を漏らします」

東「…………機会があればな」ヤレヤレ

試験個体「約束ですよ? それにしても……あのタイミング、角度、スピード……まさに芸術でした……」シュッシュッ

ひらひら。

通行人A「(……おい、見ろよ)」チラッ

通行人B「(おお、レベル高いな)」チラッ

東「……………………」ギロッ

通行人A&B「ひっ!?」
53 :AAのクオリティ高すぎてサイズ足んないってどういうこと…… [saga sage]:2011/11/28(月) 22:08:16.65 ID:msKV7wewo
試験個体「博士、どうかしましたか?」シュッシュッ

見よう見まねでシャドーボクシングを繰り返す試験個体。

東「あー……試験個体……興奮するのはいいんだが、今の自分の服装を少しは鑑みてくれないか?」


                                  -‐…‐-  .._
                                . : :´: : : : : : : : : : : : : `丶、
                              / : /: : : : : : : : : : : : ノ: : : : \
                          , ' : : : : : : : : / : /: : : ノ^ : : : : : : : `、
                            / )X/: : : : : :/ : /: : : /: : : : : : : : : : : : ',
                          . :)X' : i:、: : :/ : /: : : / i : : : : : : : : : : : : ;
                            {/: :{:/i:|:l:\{: :/: : : /:|:i|^V: : i: : : : : : :i: i
                         .′:〃从ト、|:iV: : ‐;‐x:|:リ  〈: :l: : : : : : :|: l
                       _..ノ{: :/i:l:{{ |ト外N: : :/:厶从\ ': !: l : : : : |: |
                       ´   ∨:从| Vツ |/l/不ト外  }从| : : { : :、j
                   、   /{/ i{`" }      辷.ソ  /T }: : : '. : : '.
                      `¨´ .′ 八            "″ └' 人: : : : :、 }\   .ノ´
                          {  .′  、ヽ        /7´: : : \ : : ∨  `¨´
                        丶{__,   \____ .   ´{: :{ : { : : : : {丶: }
                            \      }ハ}     人: :、: :、: :八: 乂   ,
                             `¨´ .ノ.ノ      } ハ: :}: /  }/  `¨´
                                ,. ‘´” ,     ノ′ }八{  ′
                            /      ‘.        :i `
                             .′       ‘,   .   ,;l
                           .{       , ;    :} ,小!
                              /|     i/{ハ  .:厶〈/}_}
                         .′ l       |_/{_|¨´′ / l
                            ;   l     h|_l ./  /  l
                             i    !    ├' ./  /   l
                             |   i     l     /   l
                            }     !    l   /    l
                          八    !     !  /    l
                        ′    i    ! /    l
                          .     丶 !   hl     l
                       /       !    l l    h
                          /   .       h    ll     l
                        /   .       l   h  U
                       /     ;         l    U  l 、
                       /      .;       l    l  l  \
                      /      .:,       l     !  !     丶、
                     ′ .     .:,        l   i i       丶、
                    /    .      ..:,        l    i i            丶
                   ′   ;        . ..:,        l    !!        .,     丶.
              /       ,     . . . ..:.,       l  、i        . .,         `   ..,,_____,,..  -‐…‐-  ..,,_
            ′     ;.   . . . . . ...:..,   h  ',      . . .;    .  .  .  . . . . :. . . .  .  .   }
            /        :,.      . . . . ..:...,  l   i   . . . ..:,     .:,:.. . . .       .  . . . :. . . .  . ノ
           /         .:,:. .       . . . ..:..., l  ,{ ! . . . . ..:,.      .,. . . .:,:.. . . .       .  . . . :.{
          /         . ..:,:.. . .         . .| ハ | . . . ..:.:,. . .     .,. . . . . .:,:.. . . .             、
         /             . . ...:,:.. . . .          .!{. (ノ. . ..:.::,:. . . .       .,. . . .  . . . :,:.. . . .        '.
        /  .         . . . ..:.:,:.. . . . .         ヽ) 、ヽ):.::,:. . . .  .      .,:. . . . . . . . . .:,:.. . . .     .
       /   ,       . . . . ..:.::,:.. . . .         `'^ー′. . .  .  .    . ..:,::.:..:... . . . . .     . :,:.. . . .    }
54 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/28(月) 22:12:02.24 ID:msKV7wewo

試験個体「……な、何か変ですか? と、ミサカは不安気に自身の服装について訊ねます」

東「いや、変とかじゃなくて……服は非常に似合ってるし、買った側としては着てくれるのも嬉しいんだが……周囲の目が、な」

視線を上から下へと向ける。

ひらひら。

試験個体「ほほう…………あ、もっと具体的に言ってくれないと、ミサカには理解できません」ニヤニヤ

東「もしかして……お前、分かっててやってないか?」

要するに周囲の男共の視線がシャドーボクシングをする度に見えそうで見えない感じの部位に集中しているのが不愉快なのだが。

試験個体「さて、何のことやら……」クスクス

東「……この悪女」

試験個体「なっ!? 博士、流石にそれは言い過ぎです! 
       せめて、小悪魔と評してくださいと、ミサカは断固として抗議します!」

東「小悪魔とか言っておけば、男をおちょくっても許されると思ったら大間違いだ!
  大体、お父さんはお前をそんなふしだらな娘に育てた覚えはありませんよ!」

過去の苦い女性経験(複数人分)が想起されるのか、東の叫びには哀れな男の悲しみが宿っていた。

試験個体「くっ……実際に育てられてる身分だから、ミサカには言い返せません……!」グヌヌ

東「お父さんは、可愛い試験個体に飢えた野獣共の視線が注がれるのに耐えられん。だから、NOチラリズム!」

それこそ、『悪滅』に走りかねない『熱』を帯びたまま、東は吼える。

試験個体「博士が親バカみたいな台詞を! しかも、ミサカが娘ポジションで固定されてる!?」ガーン

東「フフフ……貴様等にウチの娘はやらんと言う台詞の準備も万端だぞ……?」ニヤリ

どんな事態を想定した準備なのだろう? と試験個体は首をかしげた。
55 :とある複製の妹達支援 [sage saga]:2011/11/28(月) 22:17:11.75 ID:msKV7wewo

試験個体「せっかく、年の離れた妹ポジションやクローンとしての後輩ポジション等、
       色々と模索していたのに。と、ミサカはため息混じりに愚痴ります」ブツブツ

東「十代の時ならともかく……三十間近のオッサン相手に変な立ち位置を構築しようとするんじゃありません」

試験個体「他の生さん達と大して変わらないじゃないですか。と、ミサカは博士の鈍った体を華麗にスルーします」

東「貶してるんだか、褒めてるんだか……他の連中と違って、研究職なんだから体が鈍るのは当然だろ」

試験個体「ふふっ……それなら、博士を強引に連れ出した甲斐がありましたね」

東「いや、まぁ……でも、いきなり出掛けようって誘われたのには驚いたよ」ヤレヤレ

試験個体「だって、博士……毎日、私達のケアや研究でプラントにカンヅメ状態じゃないですか。ミサカも流石に心配になります」

東「食事は皆と同じだし、風呂にも入ってるぞ?」

試験個体「また、そうやって……息抜きの話です」

東「……いやいや、楽しくやってるぞ? 俺だって――」

試験個体「それでも、です。一杯、お世話になって……色々と迷惑かけてるんですから……大人しく、ミサカに気を遣われてください」ビシッ

東「(…………いかん、本格的に父親の気分になってきた……ちょっと泣きそうじゃん……)」

試験個体「それにしても、試合の度にチケットを送ってくれる友人がいるなんて……顔が広いんですね」

東「ん? あぁ、一條の事か……送ってくるって言っても、相手は新倉だし……」

今日、二人が見に来た試合は……『新倉生』の学生時代の友人である『一條俊』のプロボクシングの試合だった。

高校の時点で既にアマチュアボクサーとして無敗を誇っていた一條は、デビューの段階でB級ライセンスを取得し、その後もトントン拍子で勝ち上がった。
新倉と滝丸組の『殺し合い』を目撃した所為か、かなりの胆力を身に付けて、破竹の勢いだったらしいと聞く。

試験個体「……新倉さんのアパートに届いてると聞きましたが」

東「あぁ」

あの頃から、既に10年以上の歳月が過ぎているが……今でも新倉生が生活していたアパートはそのままになっている。

と、いうのも新倉生の死が公の前で死亡したことになっている迫間などと違って、
滝丸組によって闇から闇に葬られた部類に入るからであり、戸籍関係もそのままにしてある。

――その事を知ってか知らずか、新倉生の部屋には色々と友人からの品が届く。

これは、ある種の墓参りの『供え物』のような物なのだと生は解釈している。

東「…………何処かで生きているって、信じてくれてるのかも知れないな」

奇しくも、試験個体の来訪によって……新倉生の生存……『復活』が実現した訳だが。
56 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/28(月) 22:24:33.71 ID:msKV7wewo

試験個体「そうですよ、きっと……あ、そういえば」

東「どうした?」

試験個体「観客席にいた女性をジッと見てましたけど……もしかして、お知り合いですか?」

東「そっちも懐かしい顔だったからなぁ……水野(みずの)も同級生だったんだよ」シミジミ

新倉生の記憶を持ち合わせている以上、ある種の懐かしさを覚えるのは仕方が無いことだった。

東「つーか、試合後のインタビューで一條の奴が普通に嫁だと言っていたのが驚きじゃん」

当時――10年前は交際まで進展してなかった筈だが、それを考えるとかなり凄い。
ある種の敬意と羨ましさを込めて、いつの間に結婚したんだかと東は嘆息する。

試験個体「知らなかったんですか。と、ミサカは少し呆れてみます」

東「新倉の部屋に手紙とか届いてるのは知っていたが、そう頻繁に取りにいける訳でもないからな……」

以前は警察……というか、主に公安が押収して調べていたようなので、仕方なく放置していたのが実情である。
そもそも、新倉宛なので取りに行っても中身の確認は控えていただろう。

ここ最近……監視の眼が解かれてからは、出来る限り回収するようにはしていたが。

東「けど、一條も水野も元気そうで良かったよ。……今度は新倉本人に行くように勧めてやるさ」

試験個体「直接、会いには行かれないんでしょうか」

東「――俺達から昔の知人に行くことは……ないだろうな」

……少なくとも、直接『悪滅』に参加していたメンバーにそのつもりはないだろう。
無論、何処かで偶然に出会ったしまったら、それはもう仕方がないが。

試験個体「……寂しくはないんですか?」

東「兄弟もいるし……今は『妹達』がいるんだ。寂しいなんて思ってる暇自体がない」

その答えに試験個体は、はにかんだような笑顔を東に向けた。

試験個体「――なら、私達が寂しい思いなんてさせませんから。と、ミサカは決意表明します」

東「…………」ブワッ

抵抗も虚しく、東の涙腺は決壊した。

試験個体「は、博士!? 何で泣いてるんですか!? と、ミサカは慌ててハンカチを……!」アタフタ

東「決めた! 絶対に嫁には出さん!」ギュウ

試験個体「ちょ、博士苦しいですよぅ……と、ミサカは……」

慌てる試験個体を抱きしめながら、東は男親的な若干、斜め上方向のの決意を固めるのであった。


〜To Be Continued〜
57 :とある複製の妹達支援 [saga]:2011/11/28(月) 22:38:41.21 ID:msKV7wewo
うーん……かなり急いで書いたから、誤字とかありそうな気がする。
本当に突発的に書きたくなったから、そこはスマン、軽く流してくれると助かる。

また書きたくなったらA 〜おしょくじ編〜 みたいにして投下します。

あとアクメツ本編を読んでいる人は気付いたかもしれませんが、アマチュアボクサーだった『一條』君の名前は捏造です。
元々、苗字しか出ていないキャラだった……筈? だから適当にそれっぽい名前をくっつけました。

……その結果、オウジャノタテの中の人みたいな氏名になったけど……仕方ないね!

とりあえず、久しぶりに試験個体を書けて満足です。

このSSでの試験個体のイメージとしては……反抗期を迎えないまま、素直に旅掛パパに甘えれる、ちょっと『おしゃま』な美琴でしょうか。
そもそもが実験用の『妹達』じゃないので、その辺は他の個体よりも情緒豊かな感じにしようかと。

ではでは本編がある程度、書き進んだらまた来ます〜 ノシ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(宮城県) [sage]:2011/11/28(月) 22:39:05.82 ID:66tpsXOTo
久しぶりにMNW2ネタも見たいな、なんて
59 :とある複製の妹達支援 [sage]:2011/11/28(月) 22:44:37.93 ID:msKV7wewo
実は書きたいだが、ネタが。

……あー、お題というか話しの種的な物があればレスの隅にでも。

面白そうなスレタイトルでもいいし、妹達のこんな話がいい、とか。

すぐには無理だけど、イケそうなのがあればそのうち書くよ。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/28(月) 22:57:57.96 ID:3KvntSono
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]:2011/11/29(火) 00:19:17.89 ID:d3zLQBpA0
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/29(火) 01:38:42.72 ID:6ix7F5gb0
はああああああかああああああああああせええええええええええええええええええ
娘さんを僕にくださりやがれええええええええええええええええええ!!!!
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/29(火) 15:09:29.56 ID:GYte15MGo
アクメツのクローンプラントって戦うための力としては凄く有効だよね
記憶は引き継ぐし記憶の統合はできるし、肉体年齢なんかも最高の状態の体が使えるしさ

でも、どうがんばって人は救えないんだよな
同じ記憶持ってる”別人”は造れるけど”本人”は造れる訳ないんだから

上のほうで色々議論されてるけど
まったく同じ肉体にまったく同じ記憶をコピーしてるから「個の定義」では死んでいないから死んでないって錯覚させられちゃうんだよな
記憶のコピー元の人間も、記憶のコピー先の人間も「まったく別の人間」だっていうのにクローンってだけでそこらの認識が軽くなっちゃうから困る

同じ遺伝子を持った「まったく別の人間」に記憶「だけ」をコピーしているのがこのプラントの本質なわけだし
しかも「まったく別の人間」の意思や歩むはずだった未来についてはまったく配慮無しというしまつ……
美琴の罪の意識がやばいくらいに膨れ上がりそうで怖いな

>>1>>41>>45の「一人生まれる過程で二人死んでいる」考えについてどう思ってるんだろうか?
64 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/11/29(火) 18:54:59.74 ID:Qcev9Sc8o

まず、最初に断っておきたいのですが……
>>1は、この手の話(クローンに限らず)を他人とするのが、かなり好きです。
その手の討論形式の講義とか、バリバリ発言するタイプです。けどシャイ(笑)です。(サボり魔でも)

だから、質問と言うか>>41>>45みたいな話を振ってくれるのは個人的にかなり嬉しいんです。

ただ、SSを投下するここでそれをするべきか?という考えがあるので控えているのが正直な所です。
だって、遅筆で本編投下が遅いのにそんなんばっか話してたら、荒れてるようにしか見えないじゃないww

加えて、確実に長文乙とか細かいことはいいんだよ状態になりそうで。
……いや、聞かれたら答えたいし、書くけども。


>>63の指摘通り、このプラントは人を救うという点において、特に優れている設備ではない、と思います。むしろ方向としてはマイナスでしょう。
実験で死亡する『妹達』を蘇生させる、という生達の作戦は救済よりも打開であり、打開よりも回避の作戦なんです。

多くの人は禁書の原作を読んでると思うので、そんなにヒドい状況にはならない事を知っていますが……

頭を真っさらにして考えてみてください。

一巻時点で妹達の置かれている状況はかなり絶望的です。

問題は『妹達』を完全に解放するにはかなり特殊な方法でも使わない限り、学園都市の思惑からは逃れられない点。

何らかの目的を持って妹達を量産したと推察していても、何のアクションも起こさなければ『実験』によってどんどん『妹達』は殺害されます。
当人たちにそれを疑問に思うだけの感情は育っていません。
相手は表向きは学園都市最強の能力者。裏では学園都市の思惑そのものです。

例え、後に責められる手段であろうとも『妹達』の犠牲を犠牲のままにしない方法はクローンプラントの使用しかありませんでした。
死が確定している、その理不尽に対して……どれだけのものを取り返せるのか? そこが焦点になる訳です。

パーフェクトONEによって、実験材料にされる前に解放された生達は、原作で上条当麻によって救われた妹達と同じです。
その過去には救われなかった同胞達もいる、という所までも。

これも生達と『妹達』に共通したことですが……そもそも彼等には『歩むべき未来』を奪われた状態で産まれています。
生は神宮路が完全な肉体を手に入れる為の実験動物扱いですし、
『妹達』も『実験』での殺害を切り抜けたとしても後の展開を考えれば例の存在の為の『装置(機構)』に過ぎません。

しかし、それらの目的がなければ、彼等は産まれてくることすらありませんでした。
それこそ、打ち止めが一方通行に語るように、です。

つまり、『奪われずに生まれない』か『生まれて奪われる』の二極化になってしまうんです。
これはクローンプラントで使用される『素体』も同様ではないでしょうか。

以前は生達の死体を養分として成長し、完全に人工的に製造される彼等は単純なクローンともまた違った存在でしょう。
それを別の……一つの命と捉えるか……微妙な問題だと思います。
>>1の個人的な意見ですが『確かに命ではあるが、それは独立した物ではない』と考えます。

つまり、蘇生や記憶のダウンロード等を前提にしているからこそ、その存在が発生する。
アクメツや妹達の死から連続性を持っている生命……かなり特殊なケースです。

これがスパイラルの歩みたいに普通の人生をある程度、経験した人間をオリジナルの予備パーツ扱いとかは、私も普通にナシだと思いますけども。
(スーパードクターKなんかのクローン臓器移植も再生医療なんかを突き詰めれば辿り着く問題なので、色々と考えさせられます)

実際問題、指摘された「一人生まれる過程で二人死んでいる」というのは『製造された『妹達』への洗脳装置の使用』と同じ話なんですよね。
そう考えると、アクメツが手を出さなくても『洗脳装置で二万人』が死んで、更に『実験で一万ちょい』が死ぬことになります。

……この時点で既に何か破綻しているでしょう?

だったら、せめて僅かに芽生えた『個性』や『記憶』ぐらいは繋げてあげたい、それがこのSSだったりする……かなぁ?

長文失礼しました〜
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/29(火) 23:37:13.75 ID:GYte15MGo
なるほど……原作を知ってるからこその見落としってことですね
確かに普通に考えればその先には絶望しか見えないわけですし……
『上条当麻』なら本当に一人の犠牲もない方法をとろうとするんでしょうが、みんながみんな彼みたいに考え動くことができるわけないですしね
そこのとこの生達のとった選択は納得の一言です

『学習装置』による死亡説はまた難しい問題ですね……
『他人の人生を押し付けられた』わけじゃないですが、『自分の人生を決め付けられてる』わけですから

まぁ、自分が危惧してるのは、記憶を引き継いだ妹達が命の大切さ、尊さをちゃんと理解できるのかって点と、この妹達の問題にはどうしても関わってくる『他人』がいるって点ですね
前者はただでさえ最初が『実験動物』で次が一回死亡から記憶コピーして復活ですから色々と問題ありそうですし
後者は一生その人物と接触せず潜在を隠し通せば問題ないでしょうが、もし知られてしまったら全てを『自分の罪』として背負ってしまうような人ですし、最悪罪の意識に押しつぶされてしまいそうなのが……
全部当人達だけで完結するなら、当人達さえ気にしてなければ記憶のコピーやら何やらも些細な問題としてとスルーされてそうなんですけどね

>>1の『確かに命ではあるが、それは独立した物ではない』という考え、とても興味深いですね
この物語を>>1が書き終えたら色々じっくりと語り合えたらいいなと思ってます
続編楽しみにしてます、乙です!
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/30(水) 00:04:46.99 ID:ls7YHwLwo
>>45だけどうだうだ言ってスマンかった
スレの趣旨とは違うし余計だったかもしれないね
でも>>1の考えが聞けてよかった
確かに無かったものとして消費されてしまうのは悲しすぎるもんね
死んだ姉妹とこれから殺される妹のために
記憶を引き継いで新たに妹として輪廻した、と考えると胸熱
しかし倫理の話とかつい盛り上がってしまうよね
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/30(水) 02:27:20.46 ID:dgV18fhro
倫理の話はアクメツだと生のキャラクターのおかげで気にならないんだよなww
本人たちに悲壮さとかがないっつーか「ヒーローみたいでかっけえじゃん?」みたいな
んでこっちだと妹たちに対して心苦しさみたいなの(一回死なせることに対して)感じてる描写があってちゃんと妹たちもその辺察してるから命の大切さわからんってことはないだろ
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/30(水) 04:10:31.46 ID:s9JKUICg0
ここでこまけぇこた以下略とかチョウ・ブンオツ(1923〜1980)とか書いちゃうと思う壺な気がしないでもない・・・

記憶と意識の連続性こそが人間なんだ! って主張しだすと極論的には
寝て起きる都度、環境によっては下手すりゃ数分おきに生まれては死にを繰り返してるようなもんだしねぇ、電気信号とタンパク質的には


心が其処にある仕組みよりも、其処にある心が何を為すかが大事なんだ! って某ロボメイドさんが言ってた!!
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/30(水) 13:20:33.71 ID:+yC/1bY/o
>>41です、なんだかちゃちゃ入れてしまいすいませんでした
>>1の考えが聞けてとても嬉しいです

>>実験で死亡する『妹達』を蘇生させる、という生達の作戦は救済よりも打開であり、打開よりも回避の作戦なんです。

自分がモヤモヤしてたのはまさにこの点でした
これを『救済手段』としてとらえてばかりなもので疑問に思っての発言でしたが
そもそも>>1はこれを一言も『救済手段』とは言ってないんですよね、誤解した上にあれこれいってしまい申し訳ない

>>この手の話(クローンに限らず)を他人とするのが、かなり好きです。
いつか思い切り話し合ってみたいですね

長文お疲れ様でした、これからも応援しています
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(栃木県) [sage]:2011/12/05(月) 00:38:42.72 ID:OShaJXN9o
いまさらながら>>1
人格移植談義も興味深いな。禁書世界観では魂とか残留思念とか転生とか
あるみたいだけど原作でもぼかした感じだしな

アクメツは雑誌でしか読んでなかったんで今更全巻購入。後半は全部初版か…
侵略的恋愛主義もやっと新品でゲット。うむ。布束さんしばらく出番がなくて寂しいぜ
71 :とある複製の妹達支援 [sage]:2011/12/21(水) 21:55:17.45 ID:nc3K1SDNo
24日の夜に投下予定です
72 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 22:20:18.53 ID:UQPO0Uoz0
wktk
73 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 22:54:33.74 ID:LGET8/Qc0
待ってる
74 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 22:56:33.37 ID:zCOLodmTo
待ってるんだよ!
75 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 23:43:53.43 ID:XQd/tbio0
24日夜暇なのかよ・・・
76 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 18:26:36.55 ID:rutVObKAO
>>75
言ってやるなよ…
どうせ同じ穴の狢じゃねぇか…
77 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 21:37:21.17 ID:p+/nsXOao
>>75-76
ワロタwwwww


わろた……
78 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 22:13:13.57 ID:417LfSBro
俺は笑わないぜ!
心身清めて全裸待機する!
79 :お前ら割とひどいなww [saga sage]:2011/12/24(土) 02:44:44.89 ID:hw9C40WQo

学園都市・第一○学区


木山春生の運転するスポーツカーは、前方の道路を警備員の部隊に封鎖され、立ち往生していた。

黄泉川『木山春生だな? 
     幻想御手頒布、並びに風紀委員への傷害と誘拐の被疑者として勾留する。
     直ちに降車せよ』

イヤホンマイクから発信された音声が、警備員の車両に積まれた拡声器によって増幅されている。

木山「警備員か……上から命令があった時ばかり、動きの早い奴らだな……」

警備員用の特殊車両が二台。警備ロボが八機。武装した警備員が十数人。

たかが研究者の確保に随分と大盤振る舞いだな、と木山は苦笑する。

初春「どうするんです? 年貢の納め時みたいですよ。
    安達さんにどんな手を使ったかは知りませんけど、あれだけの数の警備員を相手に同じ事が出来ますか?」

木山「――あぁ。何か特殊な薬品なり、爆発物でも使ったと思っているのか」

初春「……違うんですか?」

その問いには応えずに木山はゆっくりとした口調で語る。

木山「幻想御手は人間の脳を使った演算機器を作る為のプログラムだが……使用者に『ある副産物』を齎すモノでもあるんだよ」

面白いモノを見せてやろう、と呟いた木山は初春を車内に残し、警備員の要求通りに降車した。
80 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 02:45:54.61 ID:hw9C40WQo

黄泉川『両手を頭の後ろで組んで、その場でうつ伏せになれ』

言われた通りに木山は頭の後ろで腕を組む。

鉄装「――拳銃を携帯している模様。人質にされている風紀委員の少女は無事です」

黄泉川の隣に控えていた眼鏡の女性警備員――鉄装綴里(てっそうつづり)が、双眼鏡で車内の初春の様子を確認する。

黄泉川「よし、確保じゃん!」

その号令に合わせて、警備ロボと警備員がゆっくりと前進する。

木山「(――さてと)」

キィィィィィィィン!!!

赤く染まった眼球――その視界に一人の警備員を捉え……更にその警備員が持っている銃に照準を合わせる。

クンッ。

警備員A「へ……アレ……何で?」カチッ

木山に向けられていた銃口が、仲間の警備員へ矛先を変え、己の意志とは関係なく引き金が動いた。

ババババババババッ!!!

警備員B「ぐっ!?」

警備員C「うわっ!」

警備員D「貴様、一体何を!」

背後からの銃撃に警備員達は混乱し、味方同士で銃口を向け合う。

警備員A「ち、違う! 俺の意志じゃない! 銃が勝手に……!」

慌てて弁明するが、既に遅かった。

――警備員達の意識が……木山から完全に外れた。

木山「」スッ

突き出された木山の掌に風が渦巻き、収束していく。

黄泉川「馬鹿なっ!? 能力者だと!?」

そして、解き放たれた暴風が――圧倒的な破壊を呼ぶ。
81 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 02:47:23.12 ID:hw9C40WQo

タクシーを降りた美琴が現場に着いた時は、既に戦闘は終わっていた。

美琴「警備員が全滅……この短時間で……?」

特殊車両は無残に横転し、警備ロボは潰され、視認出来る範囲の警備員は、全て倒されている。

暴虐の嵐が吹き荒れたような戦場から少し離れた場所に青のスポーツカーが見えた。

美琴「初春さんっ! しっかりして!」

車に駆け寄って声をかけるが、返答はない。

木山「――心配はいらない。戦闘の余波を受けて気絶しているだけだ」

黒煙に中に人影が映る。

美琴「…………」

木山「御坂美琴……学園都市に七人しかいない超能力者か……私のネットワークに超能力者は含まれていないが――」


          // : / :/ /:' : : : : : :\ : : : :ヽ : :\
         / . : : :/ : ′! | : : { : :ヽ : ヽ: :ヽ: :V : : \
           } . : : /. : :i :||:l: : :i :{: :i ト ; ;V: } :| : : : :ヽ
         ′ : :;小 : {: : !:l l : : li |: N:i ヽ:l: :! : | :ヽ : : .ハ      .  ―‐ .
        / . :/ イ { : ハ : i:| | { : |:{ヽ斗小; i′ ! : ::. : : : : '.    /      \
        ノ/// :i: :!: : : :!: :N:|: i: :爪 ,}ィiフ:ハ} : : }i: : :l : : : : }   /         ヽ
     彡イ:/:/ : { . :、 : :i|i斗-{:ハ:.iト:{ ^=´ /: : イ}: : :}: : : . .′ .′  統.  君   '.
       |イ/ : :人 : :ヽ 斗:モヮ{ 从 ヽ   .′/ }i: : :′ : :/   !    べ.  に    i
__     .ノ : //: `ヽ 从` ¨´  }      ; :/ 小:/: : : :/   |   る   一    |
>‐、`ー‐彡: :彡: ´ : :> {:ト ≧ー  ヽ   _. i: :! /: :/ : : : 人    |    私   万    |
   ` =  フ. : : :/ . : ノノ:} 个:.   ‐≦ '´ {: {' /: : :/. イ    {   を   の    |
        / . : ,イ: : : : イノ :ノ:/:≧:.... __ ィヽ:ヽ: . 彡≦  `i    .        脳   .′
      // : //: / //:/: :/: /ム :≦二}: :}/      ヽ. -`      を   /
.      {:i{: :/:イ / /: : :/ーァ' /: ; イ/}_ソ: ノ    --/  止        /
.     人 : { {!///: :/ , .イ: :/: :/ />': イ /  /  /   め    ト -- ´
  廴__{ノ:/): ) }:}':i{: :// : //: //.イ/彡'// /  .′  ′    ら    |
   ` ー彡:/ ノ:人l :{ {/ ≧=彡'≦, イ7 // {  ト .   |    れ     |
  /´:-- ',.イ/ィ≦三三三彡'´>'ノ´ノ7__ノ  V   ̄{.     る    |
.  {:/   {:i//::/:ノ  >,'..≦:/ / 7 \   ヽ\ l      か.    l
  廴  /:::/ ̄ /ィ≦::::/  /   /   /    ミ、 .     な    .′
     /:::/  /イ:::::::::::::{   ′ .′ /     ∧  ヽ   ?  /
   /:::/   /イ::::::::::::::: ∧  {   i  .′       ∧  ` ー― イ
  /::::::/   / /::::::::::::::::::::/::∧ .  .|  i′       ∧       l
 {::::::::{   / /::::::::::::::::::::/::/::/〉人  }  {         ∧   彡' ハ
82 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 02:49:42.20 ID:hw9C40WQo

〜高速道路上〜


布束『書庫(バンク)に照会して、木山春生の情報を新しく入手。そちらにも伝えるわ』

ハンズフリーを使って、アクメツ……安達生は運転をしながら布束に連絡を取った。
この際なので、隣に乗っている上条や後ろの佐天にも聴こえるようにスピーカーをオンにする。

ちなみに車に乗ったばかりの時、佐天は謎の仮面の男に対して明らかに警戒していたが、
上条が昨日の夕方に助けられた事(詳細は伏せたが)を告げると、警戒を解いたのか、或いは状況に慣れてしまったのか、
「何で仮面なんて着けてるんです?」と遠慮のない質問をしてくる始末だった。

……若さって、怖い。

上条「(こんな仮面を着けてる奴でも、情報をくれる協力者なんているんだな……)」

アクメツとは二度目の邂逅となる上条も余裕があるのか、この謎の男に味方がいる事自体に驚いていた。

布束『木山春生は、第一三学区の小学校に教師として赴任していたそうだけど、翌年には辞職している』

アクメツ「辞職? 理由は分かるか?」

布束『because その教え子が、能力開発の実験中に原因不明の意識不明になった事が理由らしいわ』

上条「……意識不明……」

佐天「今の幻想御手を使った人達みたいな状態なんでしょうか……?」

布束『書庫から得られた情報は限られてる。however 状況を踏まえて類推することは可能よ』

――布束が語った仮説はとても残酷で、とても苦しいものだった。

佐天「……ひどい……!」

上条「それが、あの人の動機って事か……!?」

アクメツ「…………成程」

ただ一人……いや、電話の向こうにいる布束と生だけは『そういうこともあるだろう』と、納得していた。
佐天や上条のように学園都市に対しての信用なんて、そもそも持っていないのだから。

上条「アクメツ、もっと急いでくれ! ……絶対に止めなきゃダメだ……少なくとも、こんなやり方だけは!」

アクメツ「……アイアイサー」

舌を噛むなよ?と注意してから、一気にアクセルを踏み込んだ。

――出会った時から変わらない、友人のその『在り方』に心の中で賛辞を送りながら。
83 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 02:52:01.51 ID:hw9C40WQo

ドンッ!

幾度目かの爆発に道路全体が揺らぐ。

美琴「――驚いた」

巻き上がる噴煙の中から脱出した美琴は、木山との間合いを図りながらも、驚嘆を示す。

美琴「本当に能力を使えるのね……しかも、『多重能力(デュアルスキル)』を!」

木山「……その呼称は適切ではないな。私の能力は理論上不可能とされるアレとは、方式が違う」

生徒の間違いを正す、教師のような語り口。

木山「少し、講義をしようか……まず、一人の人間が『自分だけ現実』を複数観測する事は有り得ないとされている」

例えば、複数の能力者の自我意識を何らかの方法で統合する事でも出来れば、複数の『自分だけの現実』を有する事も可能だろう。
しかし、人間の『個』はそう簡単に混ぜ合わせたり出来る代物ではない。

木山「仮に観測に成功したところで、並の人間の脳では複数の能力の発現に耐えられない」

それが可能な人間がいるとすれば、それは既に人の域ではない……超人だ。

木山「私の能力も、『幻想御手』のネットワークを一つの巨大な脳として扱うことで、
    個人の脳では負荷が大きすぎて不可能だった複数能力の使用を実現しているに過ぎないからね」クンッ

その手の動きに合わせて、道路の亀裂に沿うように衝撃波が奔る。

木山「――言わば、『多才能力(マルチスキル)』だ」

美琴「ご丁寧にどうも。でも、呼び方が変わった所で……こっちのやる事に違いはないのよねっ!」バチンッ

斜め前方へと走り、衝撃波を躱しながら、木山に向けて雷撃を放つ。

微動だにしない木山の周囲にドーム状の力場が形成された。

バシュッ!

美琴「逸らされた!?」

その現象に気力絶縁(インシュレーション)という嫌な単語が脳裏を過ぎるが、流石にあんな変種まで取り込んでいるとは思えない。

美琴「(でも、あんな妙な噂を信じて、決闘を挑んでくるような娘だったし……)」

あの黒子の同類が『幻想御手』に食い付いてしまった可能性を払拭できないのが複雑だった。
84 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 02:53:30.56 ID:hw9C40WQo

木山「どうした。複数の能力を同時に使う事は出来ないとでも踏んでいたのかね」

言葉と共に木山の足元から、美琴の立っている場所までの道路が円形に『崩落』する。

美琴「いっ!?」

唐突に足場の無くなった感覚に背筋が凍るが、
電磁力を使って、無事な柱に吸い付くようにして落下を防いだ。

対する木山は、風力を操り、ゆっくりと瓦礫の散乱する地上に降り立った。

美琴「(何て奴……自身を巻き込むのも構わずに能力を使ってくる……!)」


ゴポ……ゴポ……


木山の周囲に水泡が浮かび上がる。

美琴「(今度は水流操作……何でもアリにも限度があるわよ!?)」ダッ

弾丸と化した水泡が飛来し、一瞬前に美琴の立っていた場所を抉っていく。

美琴「(能力の正体が不明の相手と戦うだけでも厄介なのに……状況に応じて能力を自在に使い分けてくるのは反則だわ!)」

大半が低いレベルの能力者と言っても、ネットワークの中には強能力や大能力も含まれる。
一つ二つの能力を看破して、対策を講じた所で焼け石に水だ。

美琴「もう一発!」バチンッ

回避運動を取りながらも、雷撃を飛ばすが、先程のようにドーム状の力場に阻まれてしまう。

美琴「(……やっぱり、電流が誘導されてる?)」

先刻の木山の台詞を踏まえると、複数の能力を組み合わせて、避雷針のような効果を生んでいるのか。
85 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 02:58:17.71 ID:hw9C40WQo

木山「ふむ、拍子抜けだな。……超能力者と言っても、この程度なのか?」

あからさまな挑発だったが、それでも効果は十二分にあった。

美琴「……まさか!」カッチーン

学園都市の頂点に君臨する超能力者の第三位。
それは努力と研鑽の結果であって、その地位に固執する気も、ずっと甘んじるつもりもない。

美琴「電撃を攻略したくらいで――」ボコ…

だが誇りと自負は、この胸の中に確かにある。

しかし、何よりも――あの少年以外の相手にそうそう負けてなどいられない。

美琴「――勝ったと思うなっ!!!」ビュンッ

磁力による瓦礫の投擲。
美琴は、電撃から単純な質量攻撃への切り替えを迷わなかった。

それは潤沢な『能力の効かない相手』との戦闘経験故か。

木山「確かに電撃を封じたとしても……単体の能力で君を攻略するのは困難だが――」

ゆっくりと、腕を横に伸ばす。

――現れるのは、炎。

その能力の正体が、前に自分と黒子が捕まえた銀行強盗犯――丘原燎多(おかはらりょうた)の『火炎放射(ファイアスロアー)』であると、美琴は即座に見破った。

しかし、それでも驚愕せずにはいられなかった。

腕の延長線上にバラ撒かれた炎が、激しく燃え上がり、凝縮され、徐々に形を変えていく。

一五個の球体へと。

木山「同系統の能力で、その欠点を補うことによって……超能力(レベル5)級に化ける能力もあるのだよ?」

美琴の放った瓦礫が、無残にも炎の弾丸に打ち砕かれる。

美琴「……その、能力は……」

描くのは星の軌道。

示すのは孤高なる灼熱。

美琴がその能力を目撃したのは、ほんの僅かな時間。
だが、昨日……戦いの中で見た、それを忘れてなどいない。

加えて、その力は自分が戦っている理由の一端であるのだから。

木山「――『孤高赤星(アンタレス)』と言うらしい……一番最後にネットワークに取り込んだ能力でね」

幻想御手に囚われ、多くの学生達と同じように眠ったままの新倉生の能力。

大能力(レベル4)に匹敵する力が、その眠りを覚まさんとする御坂美琴へと向けられた。

86 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 03:00:07.99 ID:hw9C40WQo

木山「――さて」ブンッ

【一星】【球体射出】【弾】

それは『孤高赤星』に与える命令の中でも、最も単純で簡潔な用法である。

しかし、能力の本来の持ち主である新倉生にも不可能なことを容易く可能にしていた。

一万人の脳を掌握し、膨大な演算能力を得ている彼女にとって、
十五の【星】を同時かつ、自在に操ることなど――造作も無い。

ダダダダダダダダッ!!!

さながら、炎の雨だった。

美琴「にゃわああああああああああ!?」

その性質は水流操作による水弾と酷似しているが、圧倒的に物量が違う。
自分のお株を奪うような馬鹿火力の砲撃の前に回避に専念するしかなかった。

木山「残弾数零……再充填開始……終了」

ダダダダダダダダッ!!!

しかも、弾が尽きても『火炎放射』によって、直後には全弾が補充されてしまう。
さながら、シューティングゲームの無限弾数プレイのような大盤振る舞いである。

美琴「(攻撃する暇すらないじゃないっ!?)」

彼の能力の発現が『幻想御手』の恩恵であるのなら、この事態は容易に想像する事が出来た筈なのに。

美琴「(…………まさか、この局面で足を引っ張られるとは思わなかったわよ!!)」

眼前の木山を何とかして、新倉を叩き起こした上で……文句の一つでも言ってやらなければ、と心に誓う。

ヒュン!ヒュン!ヒュン!

美琴「ええい、鬱陶しい!!!」ダンッ

震脚と同時に大地に電撃が走り、周囲の瓦礫が壁となって飛来する【星】を防いだ。
更なる攻撃に備えて、美琴は全身に力を漲らせるが――

木山「…………」ハー

――唐突に攻撃が止んだ。
87 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 03:02:30.57 ID:hw9C40WQo

木山「……もう止めにしないか?」

美琴「はぁ?」

木山「私はある事柄について調べたいだけなんだ。
    それが終われば全員を解放するし、その手段もあの花飾りの風紀委員に預けてある。
    誰も犠牲には――」

美琴「ふざけんじゃないわよっ!!」

木山が全てを口にする前に美琴が激昂する。

美琴「誰も犠牲にしない? アンタにどんな目的があったとしても、もう多くの人が巻き込まれて、その心に傷を負ってる!
    こんな手段に頼らないと成立しない研究なんて、ロクなもんじゃないわよ!」

木山「ロクなもんじゃない、か……それがどうした?」

美琴「っ!?」

木山「目的が手段を正当化させることはない、確かにそうだろう」

しかし、目的の為に有効であるならば、手段を選ぶべきではない。

木山「だが、それでも私にはやらなければならない事がある」

美琴「どうして……そこまで……」

木山「――学園都市で君達が日常的に受けている『能力開発』。アレが安全で人道的なものだと君は思っているのか?」

美琴「……どういう意味よ?」

木山「君達が立っている場所は、決して安全な場所ではない……薄氷のように不安定で、その下には冷たい闇が広がっている」

そして、それに気付いた時には既に手遅れ。
幻想が消えた後、現実として待っているのは暗くて深い、海の底だと。

木山「学園都市は『能力』に関する重大な何かを我々から隠している。
    学園都市の『教師』達は、それを知らずに一八〇万人にも及ぶ学生達の脳を日々『開発』しているんだ。
    それがどんなに危険な事か……分かるだろう?」

怒りと悲しみの入り混じった瞳が、美琴を見つめていた。
88 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 03:04:14.82 ID:hw9C40WQo

美琴「……なかなか面白そうな話じゃない」スッ

指先を地面に向ける。

美琴「アンタを捕まえた後でゆっくりと――」ズズズ

磁力によって引き寄せられた砂鉄が渦巻いていく。

美琴「――調べさせてもらうわっ!!!」

砂鉄の嵐が無数の帯となって木山へ襲いかかった。

しかし。

木山の周囲を規則的に回っていた【星】の火球の4つが動き、四角形を描くように配置される。

【四星】【四方配置】【壁】

ガガガガガガッ!!

木山の正面に出現した炎の壁に砂鉄の帯は食い止められてしまう。

ネットワークを利用すれば、能力者自身も気付いていない能力の使い方も出来る。

【星】を『点』として繋げることで、その間に炎の『線』や『面』を作り出せる。
それは、星の軌跡を繋げる事で、古来より人間が星座を思い描いた事に似ているだろうか。

能力に目覚めたばかりの新倉生が無意識の内に観測していた、当人も知らない力の一面。

同系統能力者の経験をフィードバックした、より効率的な能力運用。
『幻想御手(レベルアッパー)』の所以となっている効果だった。
89 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 03:05:37.71 ID:hw9C40WQo

木山「調べるか……それもいいだろう」

――君が関わっているものも少なくはないしな。

呟かれた言葉は果たして、少女に届いたのか。

木山「だが、それもここから無事に帰れたらの話だ」

念動力によって、地面に転がっていたゴミ箱が浮き上がった。
その中に溜め込んだ、大量の『アルミ缶』と一緒に。

美琴「(ジュースの空き缶…………『量子変速(シンクロトロン)』!!)」

かつての『』

木山「私と違い、盾となる能力を持っていない君に……防ぎきれるかな?」

美琴「舐めんなっ! 爆発する前にまとめて吹き飛ばせば済むでしょうが!!!」パチッ

ドドドドドドドドドドッ!!

滞空している空き缶を雷撃の槍が撃ち抜き、爆発が連鎖していく。

木山「(凄いな……)」

単体戦力として軍隊に匹敵するとされる超能力者(レベル5)としての圧倒的な力。

木山「(だが……倒せない『無敵』という訳ではない)」ヒュン

手元に浮かんだ空き缶の一つが空間移動によって跳躍する。

美琴「ふぅ……どんなもんよ……!」ハアハア

空中に浮かんだ空き缶を一通り破壊して、油断している美琴の背後へと。

ヒュン!

美琴「もう、お終い? ……なら……っ!?」バッ

振り返った美琴の視界を閃光が包む。


ドゴン!!!


そして、全ての音を飲み込むような爆風が、戦場を支配した。

木山「――意外に大した事はなかったな。超能力者」
90 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 03:08:33.81 ID:hw9C40WQo

木山「……恨んでくれて構わない」

爆発で隆起した土砂に埋もれ、倒れ伏している美琴へと謝罪を述べた。
決して、形だけではない……心からの言葉だったが、こうなってしまっては何の意味もない。

手荒な事はしたくなかったが、統括理事会が動く前に片を付けなければならなかった。

木山「邪魔をする者は誰であろうと叩いて潰す……」

それは、覚悟と決意の宿った言葉だった。
言葉として吐き出すことで、自分の心を目的の為に研ぎ澄ませていく。

だが。

美琴「つーかまーえたーー?」ギュウ

木山「くっ!?」

突然、倒したはずの美琴に背後から組み付かれた。

木山「バカなっ! 直撃した筈……!」

美琴「残念だけど、こっちは無傷」

見れば、彼女の倒れていた場所に鋼鉄や砂鉄によって即席の盾が組み上げられている。

木山「(死角からの奇襲だぞ!? 一体、どうやって……)」

美琴「AIM拡散力場の専門家に説明するのもアレなんだけど」

御坂美琴の体からは、常に微弱な電磁波が出ている。
周囲に妙な動きがあれば、反射波で感知が可能な為……そもそも奇襲は成立しない。

美琴「零距離からの電撃……アイツには効かなかったけど……流石にあんな能力までは持ってないでしょう?」

それは彼女にしか分からない確信。

木山「くっ!」ヴン

咄嗟に美琴と同じように磁力によって、周囲の鉄筋を操作するが――

美琴「――遅い!」ビリッ

同じ土俵において美琴が負ける理由など皆無だった。


ズガシャアアアアアァァァ!!!


まさに雷が落ちたかと錯覚する程の轟音が響き、雷光が二人を包んだ。

木山「がっ……」グラッ

美琴「一応、手加減はしておいたけど、これでもう戦闘不能なはず……」

『センセー』

美琴「……え?」

『木山センセー』

美琴「……頭の中に直接……声が……?」

御坂美琴は垣間見る。

――木山春生の絶望を。
91 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 03:11:12.53 ID:hw9C40WQo

『私が、教師に?』

元々、教員免許を持っていたからと言って、教師を目指していた訳ではない。
取得単位で取れたから……要はついでだった。

だから、実験の被験者である『置き去り(チャイルドエラー)』の子供達の担任を任されても、困惑するばかりだった。
例え、実験が統括理事会の肝入りとは言っても……きっと、私に教師は向いていないだろうから。

『今日から君達の担任になった、木山春生だ……よろしく』

子供は……嫌いだ。

騒がしいし、デリカシーがないし、失礼だし、悪戯するし、論理的じゃないし、馴れ馴れしいし。

すぐに……懐くし。

でも。

『私達は学園都市に育ててもらってるから』

子供は嫌いだけど。

『この街の役に立てるようになりたいなーって』

あの子達の真っ直ぐな『夢』は。

何だか、悪くないと思えたんだ。

依然、いい迷惑ではあったが。


――季節が巡った。


驚かされて、振り回されて、怒って、笑って……時が経って、少しだけ私は教師らしくなった。

『センセーの事、信じてるもん。怖くないよ』

彼女達の信頼に応えて、実験を成功させる事が研究者として……そして、教師としての役目だと思った。

そして、実験は成功した。

『木山君、よくやってくれた』

最悪の形で。

『彼等には気の毒だが……科学の発展に犠牲はつきものだ』

誰かの描いた流血のシナリオに沿った、事故という名の決着。

最初から……学園都市にとって、あの子達は使い捨てのモルモットでしかなかった。

私のやっていた事は。

科学という名の悪魔への生贄として捧げられる、哀れな子羊の手入れをする……愚かな羊飼いでしかなくて。

もしも、研究者としての冷徹さを持ったままでいられたなら、あんな事になる前に気が付けたのに。
もしも、教師として、あの子達を本当に想っていたのなら、あんな実験に子供達を差し出すような真似はしなかったのに。

――やっぱり、私のやっていた事は……『教師ゴッコ』でしか、なかった。
92 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 03:14:51.31 ID:hw9C40WQo

御坂美琴は知る。

木山春生という女性の抱える、途方も無い罪悪感と、子供達への想いの片鱗を。

しかし、同様の現象が――思わぬ場所で……思わぬ者達にも起こっていた。

警備員の特殊車両に乗り、同僚のいる現場へ向かっていた『風見生』。
数人の『妹達』と共に『アクメツ』として、現場を目指していた『如月生』。
仮面で顔を隠し、カウンタックを駆って、上条当麻と佐天涙子を同行させていた『安達生』。

――今、この近郊にいる全ての『生』が、御坂美琴と同じ記憶を目撃していた。

風見「(……俺にも……いや……『俺達』にも見えた……!?)」

不思議と、それが木山春生の記憶であり、仲間達が同じ現象を共有していると理解できた。
それだけではなく……木山春生と御坂美琴の戦闘が、どのように展開し、どんな状況にあるのかさえ、正確に。

如月「(何故だ……?)」

木山春生から発せられている、一万を超える人間のAIM拡散力場。
それによって、戦場になっている高速道路の周辺は変容しつつあった。

肉体よりも、その能力に重きを置く特殊な『場』へと。

互いの能力が干渉しやすくなった事が、もう一つの異常事態を引き起こした。

風見「(基本的に同一の脳波……ネットワーク……この近くにいる『生』の間に擬似ネットワークが構築された……?)」

そして、木山のネットワークに囚われた人間の中で一人だけ、彼女に共鳴した人間がいた。

安達「(……新倉……お前、まさか……)」

それは、美琴が電気的な繋がりで木山の記憶を垣間見たように。

ネットワークの中で彼女の『理由』を知ってしまったから。

――木山春生の記憶に共鳴した新倉生を介して、他の生達にも記憶が発信されていたのだ。
93 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 03:16:59.08 ID:hw9C40WQo

安達「(ダブったのか……? あの時の自分自身と……桂木への想いが)」

だが、違う。

如月「(お前が伝えたいのは、そんな事じゃねぇよなぁ……?)」

――この人を俺達と同じにしちゃいけない。

風見「(言われなくても、判ってる…………!)」

確かに似ている。
その怒りも、絶望も。

……しかし、決定的に違うのだ。

如月「(――それでも木山は、必死に生徒達を救おうとしている……!)」

そんな彼女だから。

だからこそ、こんな手段を選ばせる訳にはいかない。

――彼女は生徒達の元へ帰らなければいけない。

風見「(このまま進めば、もう戻れなくなる……)」

故に。

だから。

敢えて、悪の道を進んででも……誰かを救けたいと思える人がいる。

そんな人を優しい場所へ返す為なら。

――俺達は更なる悪の一字を持って、その決意を踏み躙ろう。

各々が、共通の決意を固めた時……何処からか、『絶望』が産声を上げた。
94 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 03:19:42.83 ID:hw9C40WQo

初春「……う……ん……?」

美琴の放った渾身の零距離攻撃の轟音は、高速道路上の車内で気絶していた初春飾利にも届いていた。

初春「私……気絶して……そうだ、木山先生は…………!」

ちょっとした『裏技』を使って手錠を外し、車外に出る。

初春「道路が無くなってる……? 一体、何が……」

足を踏み外さないよう慎重な足取りで、円形に欠落した箇所から道路の下を覗く。

そこに居たのは、呻きながら地に手と膝をつく木山春生と――

初春「……御坂さん!?」



木山「観られた……のか……!?」

美琴「どうして……あんな……」

木山「くっ……フフフフ……」ユラリ

ボロボロの体を強引に立たせ、木山は笑う。
どうしようもなく、愚かだった己の過ちを。

木山「『AIM拡散力場制御実験』……あの実験は表向きはそうされていた。
    だが、本当の実験名は『暴走能力の法則解析用誘爆実験』だ」

美琴「誘爆……って……」

木山「能力者のAIM拡散力場を刺戟して、暴走の条件を探るもの……どの程度で『壊れる』のかも念頭においた、ね」

事故とされた、その結果すら最初から仕組まれていた。

美琴「人体実験……」

その単語のおぞましさに心の温度が下がったのを感じた。
95 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2011/12/24(土) 03:24:40.82 ID:hw9C40WQo

木山「あの子達は……一度も目覚めないまま……ずっと……ずっと眠り続けているんだ……」


――私達は、あの子達を使い捨てのモルモットにしたんだ!!!


赤く染まった瞳から、雫が溢れていた。

美琴「でも、そんな事があったんなら、警備員に通報すれば……!」

木山「――23回」

美琴「えっ?」

木山「あの子達の恢復手段を探す為……そして、事故の原因を究明するシミュレーションを行なう為に
    『樹形図の設計者』の使用を申請して、却下された回数だ!」

全てが敵である、と知ってしまったからこそ。
彼女は自分一人で、子供達を救う手段を手に入れなければならなかった。

木山「統括理事会がグルなんだぞ? 警備員が動くはずもない。
    彼等にしても、どんな理想や信念があった所で……結局は、学園都市の使い走り……駒に過ぎないしな」

美琴「だからって……こんな方法で……!」

木山「君に何が分かるっ!!!」ズキン

絶え間なく襲ってくる頭痛を堪えながら叫ぶ。

美琴「っ」

木山「あの子達を救う為なら……こんな悲劇を繰り返さない為なら……私は何だってする……」


ズキン……ズキン…!


木山「この街の全てを敵に回しても、止まる訳にはいかないんだっ!!!」

かつて、その言葉に似た信念を持って、悪の道を選択した少年達は日本という国家機構を破壊してのけた。

そして――彼女の怒りは……途方も無い怪物を産む。
96 :とある複製の妹達支援 [saga ]:2011/12/24(土) 03:26:05.70 ID:hw9C40WQo

ズグンッ!


木山「ぎッ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」

――怒りと痛みが頂点に達した時、『それ』は目覚めた。

木山「がっ……ぐっ……ネットワークの暴走……? 違う……これは……虚数学区……の」ガクッ

美琴「ちょっと!」

急に苦しみだして倒れた木山に駆け寄ろうとするが、
彼女の首筋から、何かが出てくるのを見て、足が止まる。

美琴「…………何?」

光と水の間のような粘性を伴いながら、それは少しずつ形を変えていく。

やがて、中空に浮かび上がり、形を成したそれは――まるで胎児の様な姿をしていた。

初春「何……あれ……」


    /   ノ }{  V. ; : : : : : : : :.:.:´. . . . . . . . .`::. . : .ヽ  ハ.  / /
   { /  ノハ  ∨. . : : : : : .:.: . . . . . . . . . . . . .:.:. : : :.  ハ /_/
   V  イ  /\ \: : : : .:.:.:.:. . . . . . . : . . . . . ..:.:.: : : ハ   〉 7
    ∨ } /: : : :\_、: : :.:.:.:.:. . . . . : : : . . . . :.:.:.:.:} : : }/ ィ
     {ノ/ ' : : : : : : : ―ヘ、:.:.:.:.:.:. . . : : : : : . . .:.:.:.:.:ノ / /|
     V  { : : : : : : : : \ 丶. __: : : : : : : : : ; : :<. イ  ′
      ∨八: : : : :xく⌒: :`: . .  /: ,'  ̄  ̄    >: : ,'  /
      ljト、: : : : : :,.:=ミxヘ: : : : : : :ー ― =≦: x : :=ミ: /
     《   : : : :;.:::::::::::::ハ: !: : : : : : : : : : : : : : / :´:::::::::∨
     八  ヽハ{::::(O)::::::} }: : : : : : : : : : : : : : l {::::(O)::;′
       \  ヽヾ:::::::::::ノ:ノ: : : : : : : : : : : : ノ: :、:>、::彡'
         }\ ヽ: :ー: : : :__: : : : : : : : : :´ : /  ノ
          〈  ヽ )  : : : : : `丶. ___ . く   .イ
        /   / ̄\,へ、: : : : : : : : : : . へイ八
         〈    / : :、 : : : : :ヽ/\/\/: : .イ ハ
        ヽ  { : :\≧=- : : :_:_:_:_:_: : -=≦ 〉  ノ


真紅に染まった胎児の双眸が、美琴を捉えた。

美琴「……っ!?」

胎児?『ぎ……ぎっ……キィアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!』

聴いた者を全て狂わせるような産声を響かせて幻想の獣は、此処に誕生した。
97 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 07:28:57.44 ID:6yCKSWOHo
山場じゃないか
木山先生のエピソードは何度見ても目頭が熱くなりやがる
98 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 10:16:59.80 ID:Qz6Vr6iAO

素晴らしい物を読んだ
99 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 10:29:07.39 ID:G0LP81Ixo
乙なんだよ!
100 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/24(土) 17:18:10.08 ID:dh7laIA6o
乙!
幻想御手で強化されて『孤高赤星』が凄く強力になってるなw・・・・・・いずれアクメツがこの力を得るんですね
101 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 18:06:09.36 ID:WyBJipAao
おつおつ、木山てんてー…(´;ω;)

アンタレス、伸び代ありまくりやね
念能力やスタンド的な、出力チートよりも使い勝手チートな能力の方が好きだし楽しみじゃん!
102 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 19:16:17.61 ID:UUaug0ZRo
おつ
103 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 23:01:26.53 ID:t0HRGbZco
毎回の更新で燃えるし泣けるしたまりませんわ

>そんな人を優しい場所へ返す為なら。
>――俺達は更なる悪の一字を持って、その決意を踏み躙ろう。

ここで決壊したぜチクショウ
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/01/06(金) 09:19:19.13 ID:kiyS2s170
追いついた。楽しみに待ってるぜ
105 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/01/08(日) 23:18:51.57 ID:uHLxBWT5o

美琴「胎児……肉体変化(メタモルフォーゼ)……? けど、こんな能力、聞いたこと……」

胎児?『キィアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!』

膨大な力の奔流が、狂乱となり、破壊を撒き散らす。

美琴「くっ!」

胎児を中心に放たれる衝撃波を即席の盾で防ぐ。

正体は不明だが、分かりきっている事がある――アレは危険だ。

美琴「このっ!」バチッ

牽制の為に放った雷撃が胎児の背中に当たると、容易くその体表が弾け飛んだ。

美琴「いいっ!? あっさり!?」

だが、胎児の爆ぜた部分から二本の腕が羽根のように生え、その体躯が一回り巨大化する。

美琴「何よ、あれ……大きくなってる……?」

観察している暇もなく、胎児の周囲の大気の水分が凝結し、氷へと姿を変える。

美琴「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」ダッ

連続して飛来する氷の塊から逃れていると前方の柱の影から声。

初春「御坂さん!」

106 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/01/08(日) 23:20:20.08 ID:uHLxBWT5o

目が覚めたのか、とか。
どうして降りて来てしまったのか、とか。

色々と言いたい事はあったが、このまま逃げていると初春を巻き込んでしまうと判断した美琴は、即座に回避から迎撃へと切り替える。

バチンッ!

電撃によって砕かれた氷と水蒸気、噴煙と瓦礫が吹き荒れる。

初春「きゃああああ!?」

慌てて初春は柱の物陰に身を隠すが、それでも悲鳴までは我慢出来なかった。

美琴「初春さん、無事!?」

初春「は、はい! 何とか……」

美琴「初春さんは、そこから動かないで!」

物陰から姿を見せようとする初春を制止する。

初春「で、でも……!」

美琴「何だか分からないけど、相手になるってんなら……って、アレ?」

掌に電撃を帯びて、胎児に向き直るが、胎児は追撃してはこない。

美琴「追ってこない……? 闇雲に暴れてるだけなの……?」

何かを求めるように伸ばされた胎児の腕が、虚しく空を切る。

初春「……苦しんでるみたい……」

胎児?『キィ……アアア……アアア……』
107 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/01/08(日) 23:28:31.99 ID:uHLxBWT5o

〜とある病院〜


ざわ……ざわ……

           /: : : : : : : : : : : : : : :..ヽ: : : : : : : : : :\
          /: : : : : : : : : : : : : : : : : : :.l: : : : : : : : : : : :ヽ
       /: : /: ∧: : : : : : \: : : : : : |: : : : : : : : : :l: : : |
        /: : /: / ヘ、: : : : : : :\: : : : |: : : : : : : : : :|: : : |
.      }: : l: /_  \:.丶: : : : : ヽ: : |: : : : : : : : : :|: : : |
        |: : :l:.l  \   \ \:.:.:.:.:.:.ヽ:|: : : : :l: : : |: l: : : :|
        |: : :l:.| '^圷ミ     `>=::.十: : : :リ: : ::|/: : : 人
        }: : :l:.l 弋zリ    ´^「た卞 |: : : :./: : : |: : : /: : :\
       Y八ハ  ´     弋沙'´ |: : :./: : : : |:.:.: :}: : : l: :\
         /:.:l   〈           l: : /: : : : : |:.:.: :|: : : 八:..: :\
         }:圦            |: /: : : : : 八:.:. |: : /: : ヽ:..: ::ハ
         |: : :ヽ   _          |/: : : : : ∧:.:\l: /: : :..: :}: : ::|
         |: : :.:.:.\  `    .イ /: : : : : /: :.:\:.:.:.≧ト、: ノ: : : :|
         |: : :.:.:.:._:.>ー <_:.\_/: : : : : :/>―ァ`─<` V: : : :.|
         〉:.:.:/       }:: }: : : : :./:./ /       V:.:.:.人
         r‐〈   __   〉::::|: : : : //::::/    /   V:.:.:.:.:.\ _,-..、
       _/ヘ \_ノ〉:.:.r、j  /:::::::|: : : /:::::::::/   彡     }:.:.:.:.: ヽー‐'`):}
      / />- -´∧:.:.`ー' V::::::|: : :.{::::::::/            |:.:./:ハ:.|  彡'
      /       / |:.:.:.:}^} V:人: : :ヽ:/              V::/ }:|
.     /       /  .|:.:.://   .V:::\: :/       /__ <   V く:〈
    /       /  ノ//      V::::::/       /    `ー V  `)}
.   /       /  ./  j        V:/       /         }  ノ


麦野「……五月蝿いわね……って、滝壺と絹旗は何処よ? 店長……海原も居ないし」

フレンダ「何だか病院全体が騒がしくなってきて、店長さんは様子を見に〜
      その後を滝壺がフラフラと追いかけて〜、しばらくして戻ってこない滝壺を絹旗が探しに行ったよ〜」グデーン

麦野「何時の間に」

フレンダ「結局、麦野が『サーモンクレープ・クリームソース仕立て』の虜になっている間の話な訳よ」

麦野「なん……だと……?」

まさか、自分はクレープ如きで仲間達が病室から出ていったのにすら気付けない程、夢中になっていたと言うのか?

フレンダ「まぁ、恥じる必要はないと思う訳よ」

自分だって鯖のクレープに陥落しかけたのだから、という意味合いでフレンダは麦野を慰める。

暗部らしからぬ醜態を晒してしまった(と本人は思う)麦野は、そんなフレンダの言葉も耳に入らず、しばし呆然とするのであった。
108 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/01/08(日) 23:32:32.53 ID:uHLxBWT5o

〜新倉生の病室〜


フレンダの言う通り、病院は騒然としていた。

『幻想御手』の使用で意識不明で運び込まれた患者達が一斉に苦しみ出したのだ。
そして……他の患者達に起こっている事は、当然ながら新倉生の身にも起きていた。

禁書目録「しょう!? どうしたの!?」

新倉「ぐっ……が…………ああ…」

ガララッ!

???「――どうした!?」

異常を察知したのか、医者らしき白衣姿の青年が病室に飛び込んで来た。

禁書目録「しょうが大変なんだよ! ……って、えええええええええええええええええええ!?」

その医師の顔を見て、インデックスが彼女には珍しい驚愕の絶叫を上げた。
何しろ、ベットの上で苦しんでいる新倉生と同じ顔をしていたのだから。

禁書目録「……ご、五人目……?」

上条当麻のクラスメイトの安達生。
目の前で苦しんでいる新倉生。
先程、病室で再会した迫間生。
何故か病室でクレープを配っていた海原生。

かなり慣れたのか、それぞれ同じ顔だが別人なのが見分けられるようになったインデックスは、
新たに現れた『生』が初対面の五人目だと判断した。
よくよく見ると、今まで出会った『生』よりも一回り年齢が上であるようだ。
109 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/01/08(日) 23:33:55.56 ID:uHLxBWT5o

椿「驚くのは分かるが、今は新倉の容態を教えてくれ」

禁書目録「えっと、急に苦しみだして……意識は戻ってないのに……!」

椿「……他の『幻想御手』の患者と同じか……すまないが、鎮静剤を持ってくるまで新倉を頼む!」

禁書目録「わ、分かったんだよ!」

勢いで任されてしまったが、どうすればいいんだろう? 
とりあえず、ベットから落ちないように押さえればいいのだろうか。

――と、インデックスが本気で頭を抱えていると、椿と入れ替わるように病室に新たな訪問者がやって来た。

半蔵から新倉が入院したらしい、という情報を得て、心配して様子を見に来た浜面仕上である。

浜面「うわ……生の奴、本当に入院して……え、何で病院にシスターさんが……ってか、何だぁ!?」

最初に入院の事実に驚き、何故か病室にシスターさんがいるのに驚き、
ベットの上で苦しんでいる新倉の姿に驚いた浜面は、驚愕のトリプルコンボに襲われた。

浜面「ど、どうしたんだ!?」

禁書目録「誰だか知らないけど、しょうを押さえるの手伝って!」

色々な疑問を込みの質問だったが、返ってきたのはシスターさんからの救援要請だった。

浜面「え、えっと……!?」

禁書目録「早くしてよ、この鼻ピアス!!!」クワッ

浜面「鼻ピ……!? ええい、手伝えばいいんだろ!?」

二人がかりで、新倉の体をベットに押さえつける。
110 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/01/08(日) 23:37:01.60 ID:uHLxBWT5o

大騒ぎしながらも、協力して対処に当たる初対面の二人。

???「――大丈夫?」

そんな騒ぎを聞きつけて、新たに訪問者が一名。

――偶然にも病室の前を通りかかったジャージ姿の少女が、ドアの所から中の様子を覗き込んでいた。

浜面「どちら様!? 見ての通り大忙しなんですが!」

盛大に暴れる新倉を押さえ込むのに必死で来訪者の顔を見る余裕するない。

滝壺「通りすがりの見舞い客。……覚えておけ?」

浜面「野次馬かよ!? ってか、ツッコミ入れてる余裕すらないっての!」

滝壺「(店長さんと同じ顔……?)」チラリ

喘ぎ苦しんでいる表情であっても、他人とは言えない程に似た顔をしているのは分かった。


――裏の人間が表の人間に借りを作りっぱなし、って訳にはいかないでしょーが。


滝壺「……質問してもいい?」

禁書目録「手短にお願いするんだよ!」

滝壺「――シスターさんにとって……この人は大事な人?」

その問いにインデックスが逡巡したのは一瞬。

禁書目録「――私、助けてもらったんだよ。きっと、この人が頑張る理由なんて無かったのに」

確かに迫間生はインデックスを友人だと言ってくれた。
しかし、新倉生……彼個人にはインデックスに対して肩入れする理由は無かった筈だ。

禁書目録「だから、私……この人にも……ちゃんと、お礼が言いたい」

111 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/01/08(日) 23:41:00.92 ID:uHLxBWT5o

滝壺「……そっちの鼻ピアス君は?」

また鼻ピアス呼ばわりされて、軽くショックを受ける浜面だったが、何故か自然と答えていた。

浜面「――色々な事を諦めかけてた俺達に変わるチャンスをくれた……大事な仲間でダチだ!」

滝壺「大丈夫」

禁書目録&浜面「え?」

滝壺「病院にいる人、全員は無理でも。
    この人くらいなら、私が助けてあげられると思うから」ナデナデ

インデックスの頭を軽く撫で、優しい言葉をかける。

禁書目録「ホント!?」

滝壺「……そのまま押さえておいて」

浜面「わ、分かった(あ、可愛い)」

滝壺「(勝手に『体晶』使ったら……むぎの、きっと怒る。
    でも、借りを作ったままはダメって言ったのも、むぎのだから)」

仲間のフレンダと絹旗を助けてくれた店長さんの親族?らしい、この少年を助ければ、結果的に借りを返す事に繋がる。

懐から取り出した薬剤ケースから、白い粉末を手の甲へ乗せ、それを舐める。

ドクン……

滝壺「(まずは、この人のAIM拡散力場を補足……)」ギギギ

眼前の少年だけに限らず、この病院内で容態が急変している患者のAIM拡散力場が
『何か』に引き摺られているような感覚を滝壺は捉えていた。

彼等は『何か』に囚われ、その『何か』が暴走し、その負荷を強いられ彼等は苦しんでいる。

滝壺「(この人の力を使っている『何か』から、能力の主導権を奪還する……!)」カッ
112 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/01/08(日) 23:44:28.86 ID:uHLxBWT5o

〜高速道路上〜


黄泉川「実弾の使用を許可! 撃てぇ!!!」

ガガガガガガッ!!!

鉄装「……何だか、大きくなってる……?」

銃撃によって胎児の体が削り取られていくが、即座に修復され、巨大化していく。

胎児?『キィアアアアアアアア』ブンッ

鞭のように振り回された触手が数人の警備員をまとめて吹き飛ばす。

黄泉川「がっ……!?」

鉄装「隊長っ!? い、いや……来ないで……」ババババババッ!!

カチッ! カチッ!

向かってくる触手にがむしゃらに銃撃するが、すぐに弾は尽きてしまう。

鉄装「こんな……こんなの……嘘……そうよ、立体映像……みんな、幻……」

爆ぜた触手の先端から赤く染まった眼球が現れ、恐怖に揺れる自分の表情を捉え――

ガガガガガガッ!!!

鉄装「って……あ、あれ……生きてる……?」

???「敵を目前に現実逃避してる場合か! この駄眼鏡!」ズビシッ

鉄装「はうわっ!? って……か、風見先生……?」ズキズキ

風見「――作戦行動中は、『副隊長』だって前にも言わなかったか?」ヤレヤレ

鉄装「そ、そうでした……」

警備員A「A班、斉射止め! 続いてB班、斉射開始!」

後ろを見ると、木山の研究所に向かった別班が胎児に向けて、一定の感覚で銃撃を行なっている。

風見「――動けるなら、黄泉川隊長以下、負傷者を連れて一度後退しろ。『奴』はこちらで抑える」

鉄装「え……あ、ハイ!」

警備員B「副隊長、近くに数名の民間人がいるようですが……」

風見「……放っておけ」

警備員B「は? ……で、ですが……」

風見「当人達が『ヤル気』なんだ。大人が何を言った所で意味はないじゃん。
    だが、怪我をさせるつもりもない。可能な限り、こちらで『奴』を引き付けて、隙を作る。――いいな?」

警備員達「「「了解!」」」
113 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/01/08(日) 23:49:23.38 ID:uHLxBWT5o

警備員の増援が来たようだが、それでも戦況は圧倒的に不利だった。

木山「クッ……ハハッ……アハハハハハ……!」

どうしようもなく、可笑しかった。

木山「すごいな……あんな化物が産まれるとは……学会で発表すれば表彰モノだ」

無論、本気でそんな事が出来るとは思っていない。
しかし、そんな事でも言わなければ潰れてしまいそうだった。

……いや、既に潰れていたのだろう。

木山「最早、ネットワークは私の手を離れ、あの子達を取り戻す事も恢復させる事も叶わなくなった、か――」

持っていた拳銃を取り出し、こめかみに当てる。

木山「――お終い、だな」チャキ

諦めの言葉と共に引き金を引こうとして――

???「はい、ストップ」ガシッ

木山「なっ!?」

――その拳銃を奪い取られた。

木山「き、君は……もう、追い付いて来たのか? ……手加減をし過ぎたかな」

安達生は自嘲気味な木山の言葉には応じず、慣れた手つきで拳銃から弾丸を抜いていく。

安達「(……予定が狂ったじゃん)」

上条と佐天を車に残して、コッソリと状況を確認しに来た安達であったが、
いきなり木山が自殺を図った為に仮面(模造)を外し、慌てて出てきた次第である。

だが、そんな些事は置いておいて……彼女に言っておきたい事があった。
114 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/01/08(日) 23:51:46.02 ID:uHLxBWT5o

安達「――貴女が、こんな責任の取り方をして……何の意味がある」

木山「……意味なんて」

安達「無いだろうな。確かに貴女は罪を犯した……それは贖うべきだろう。
    しかし……これじゃ、諦観と逃避だ。贖罪じゃない」

木山「厳しいな……」

安達「第一、貴女が諦めたら……子供達は誰が救う? 
    都合良くヒーローでも現れてくれるのを期待してるのか?」

そんなモノが居ないと思っているから、自分一人でやろうとしたんじゃないのか?

木山「だが、ネットワークが私の制御下から離れた今、あの子達を救う手段は……!」

安達「――考えろよ、最期まで。科学者なんだろう?」

木山「っ」

安達「まだ生きてるんだぞ? 貴女も子供達も。
    反省は必要だ、だが多くの人間を巻き込んだ以上、後悔なんて絶対にするな。
    子供達を救う事を完遂してみせろ。償いが必要なのは――その後じゃん」

責任を取る、という言葉は結果を出せなかった人間に課せられる言葉だ。
彼女がそれを背負うのは……子供達が死んだ時でなければならない。

木山「ハハハ……本当に君は……厳しいな」

安達「まぁ……アレを何とかするのが先決か」

木山「言っておくが、アレは君一人で何とか出来るような相手じゃないぞ」

安達「流石に分かってますよ。……だが幸いな事に……火消し役は多いみたいなんで」クイッ

木山「…………あ」

駆け寄ってくる二人の少女――御坂美琴と初春飾利を指差しながら、生は不敵に笑っていた。
115 :とある複製の妹達支援 [saga]:2012/01/08(日) 23:55:48.04 ID:uHLxBWT5o

美琴「――AIM拡散力場の?」

木山「恐らく、集合体だろう……仮に『幻想猛獣(AIMバースト)』とでも呼んでおこうか。
    『幻想御手』のネットワークによって束ねられた思念の塊だ」

都市伝説にあった『虚数学区』の正体はAIM拡散力場の集合体だったのだろう、と木山は付け加えた。

安達「虚数学区とやらの規模縮小版って訳か。……巨大化しているのは?」

木山「一万人のAIM拡散力場を触媒にして、学園都市全体のAIM拡散力場を取り込もうとしているんだろう。
    そんなモノに自我があるとは思えないが、ネットワークの核であった私の感情に影響されて、暴走しているのかもな」

初春「何だか……可哀想……」

苦しんでいるように見えるのは、そこに束ねられた思念……一万人の子供達の嘆きの姿。

安達「(思念……胎児を形作っているのは『能力』そのもの……?)」

美琴「……どうすれば止められるの?」

木山「……私が預けた物をまだ持っているか……?」

初春「え、あ……はい!」

木山「『幻想猛獣』はネットワークが産んだ怪物だ……ネットワークを破壊すれば止められるかもしれない」

初春「――『幻想御手』の治療プログラム!」

木山「試す価値はあるだろう」

美琴「なら、アイツは私が何とかするから……その間に初春さんは警備員の所に。
    で、怪我してるのに無理して追いかけてきたアンタはどうするの?」ジトッ

安達「流石にアレを相手に格闘戦は無理。悪いけど、今日の体育は見学してるじゃん」

――少なくとも、『俺』は。

それに自分に出来ることは、『アイツ』にも出来るので自分が直接やる必要もないだろう。

美琴「随分とハードな体育の授業ね……じゃあ、この人が馬鹿な真似しないように見張ってて」

初春「お願いしますね!」

安達「あぁ、そっちも無茶しないで」

木山「本当に……根拠もなく、人を信用する人間が多くて困る……」

そんな人達が、喰いものにされる世の中にだけは、なって欲しくない。

安達「そうですね…………さて」ゴソゴソ

木山「……何を?」

安達「そんな人間の追加注文」ニヤリ

木山「???」

予備の携帯電話を使って、車内に残してきた同伴者に連絡する。
クラスメイトとしてではなく、仮面の男――アクメツとして。

アクメツ「――よぉ、お前の『右手』の出番みたいだぜ?」
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/01/09(月) 02:19:30.43 ID:GJOu5n+co
寝落ちかな?
乙でした
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 10:01:18.13 ID:Zx/9DIij0
乙  ほんとに火消し役多いな
次回、上条さんがみこっちゃんをどうフォローするのか、新展開が楽しみだ
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 10:01:43.12 ID:hfUrkxHPo
乙なんだよ!
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/01/09(月) 23:26:05.57 ID:fnrfdoRAO
更新待ってた!
乙です
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 21:56:26.84 ID:5pw5NAKDO
ぬお、いつの間に!
乙じゃん
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 00:40:44.49 ID:TED4BkeQo
おつおつ
今回だけで、かなり各方面に色々とバレてる気がしないでもない…w
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/24(火) 23:37:27.96 ID:Y22CbWdM0
そういえば、この話が始まってからもう1年以上たってるんだな・・・。
これからも頑張ってください!
123 :大学五年目が決まって、もう何も恐くない [sage]:2012/02/11(土) 22:51:18.36 ID:2lqKMIJso
一ヶ月開いちゃったけども、レポート時期抜けたので明日の夜に投下に来ます
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/02/11(土) 23:19:41.51 ID:ivo58rg6o
舞ってる
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 00:16:38.44 ID:s6WyQXx80
楽しみにしてる
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 00:34:41.83 ID:sgHaJjR9o
ばっちこーい
127 :とある複製の妹達支援 [saga ]:2012/02/12(日) 22:31:22.20 ID:dtY9H4qlo

警備員達の攻撃によって、幻想猛獣は高速道路に釘付けにされ、
ある程度の拮抗状態が維持されていたが、それも限界が近づいていた。

風見「――銃撃止め! 反撃が来るぞ、散開しろっ!」

拮抗の崩壊――銃弾が尽きる前に風見は隊員達に指示を飛ばし、距離を取らせる。

幻想猛獣『キィアアアアアアアア!!!!』

直後、幻想猛獣の放った光線が道路を抉り、噴煙が立ち昇る。

しかし、警備員の銃撃が再開されないと、彼等の存在に気付いていないかのように幻想猛獣は徘徊を始めた。

その背後から、漆黒の刃が弧を描いて、幻想猛獣を袈裟斬りにする。


――御坂美琴が本格的に幻想猛獣と交戦を開始したのだ。


風見「(あれが、超能力者(レベル5)か……)」

あの幻想猛獣と真っ向から対峙して、五角以上に渡り合い、引き付けてくれている。

風見「(如月の奴は……間に合ったか……? なら、後は施設に向かわせないようにすれば……)」

――このエリアにアレがある以上、奴を好き勝手に暴れさせるのは得策ではない。

風見「それにしても……やはり、反撃はしても積極的に攻撃はしてこない、か」

鉄装「副隊長!」

風見「鉄装……負傷した隊員の避難は」

鉄装「完了しました! あちらの方に……って、あの子!?」

隊員達を寝かせている方向へ視線を向けた鉄装が素っ頓狂な声を上げた。

木山春生に人質にされていた風紀委員の少女が、道路上で有事の際に使用される非常用の階段を駆け上がってくる。

風見「(初春飾利……?)」
128 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/02/12(日) 22:32:24.11 ID:dtY9H4qlo

初春「(早く……御坂さんが引き付けてくれている間に……!)」

全力で階段を駆け上がる初春。
彼女が進む階段の少し先の場所に幻想猛獣の光線が着弾した。

初春「きゃっ!?」

小さな体が宙を舞い、階段の壁に叩き付けられる。

初春「くっ……痛っ……」ズキッ

胸ポケットの中の治療プログラムの無事を確認すると額から流れる血を拭って、再び歩き出す。

初春「急がないと……手遅れになる前に……」

――私だって、風紀委員なんだから。

風紀委員としての誇りが、多くの学生達を……木山春生を救けたい気持ちが初春に前に進む力をくれる。

崩れかけた階段を慎重に歩く。

しかし、足元への注意が……そのまま周囲への不注意へと変わっていた。

『初春さんっ!!!』

誰かの悲鳴にも似た、叫び。

初春「あっ……」

向かってくる光。

ただ。

呆然と。

動けなくて。

このまま。

――呑み込まる。

その時、初春の頬を優しい風が撫でた。
129 :貴様が銀河美少年か(笑) [saga sage]:2012/02/12(日) 22:40:31.33 ID:dtY9H4qlo

恐怖で閉じられた瞼を開いた時、そこに居たのは。

???「初春、大丈夫?」

自分と同じ柵川中学の制服に身を包み、艶やかな黒髪を揺らしながら。

柔らかくも凛とした佇まい。

いつだって、自分に分け与えてくれていた優しくて暖かな『力』をその全身に漲らせて。

ここ最近の心の翳りだって、文字通り『どこ吹く風』。

                          _____
                 ,,            .  ´: : : : : : >. 、
               {{        /: :┌'^Z: : ´ : : : : \
              ヾ: ., _______/: : : 匕ひ┘ /: : : /: :`、
                 >:‐:‐: : : : /: / : : /: : : /: /: :∧
                /: : :_:_: ー=≦: :イ : : ∠≧x≦、:/:/:/ : .
            '⌒>'´: : :_: : : : |/{ l∧/  (r'ハ }/: 〃: : :i
             /,,≦:_:_:_: : : : 人_      ∠:xく /: : : : !
              (/ ̄ ̄\ 三三ヘ,ハ   、   , {癶': : /:/i:|
            __/     ,,-ヘ.三三{   .   丶.   /: :/:/i:从
       ` ̄ ̄ ̄`⌒7     \三 \_厶.___ . イ}/|/ノ′
                 l      、{\ 三`三〔: l:i: :|
                 |/     〉 〉、三三}从i: :|
                〈  ,_ __'、 { 丶 三三lハ|     
                  {/三三三〉 〉   \三}┐
                ∧ 三三三{ {   \}`)⌒i
                / } 三三三.〉 >──;く  ∧
             /   `マ´ ̄ ̄V , '  /}  <__]_
              .′  ∧     〈  /  |   \ }
           ,     /  ',    ∨   |x个'⌒「
         /      _厶    ',___  」   '.
         (⌒ヽ、    └‐ヘ.    、 ` ̄ ̄   、
           \__ >‐‐、__ /人     `ー─‐ 、  }
           ∠  二三三≧'⌒\          \ノ
_   -‐    ̄   二三三 二三≧  ̄ ̄「 ̄`ー〜'^
          二三三三  二三三三三ヽ  |
    二三三三三   二三三三三三三V
二三三三三    二三三三三三三三三|
三三三    二三三三三三三三三三三|

???「――私の親友に……」

――戦場に心地よい風が吹いた。

初春「……さてん……さん?」

佐天「手を出すな! この化物ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

何処までも真っ直ぐな少女の宣言と共に。
130 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/02/12(日) 22:42:39.95 ID:dtY9H4qlo

佐天「第一、初春に触っていいのは私! セクハラしてもいいのも私! スカート捲っていいのも私!」クワッ

目を見開いて、大声で宣言をする。
その宣言自体の方向性が間違っていたが。

初春「よ、よくないですよっ!?」ガーン

佐天「胎児オバケの分際で、私の初春に指一本だろうが触手一本だろうが、触れさせやしないんだから!」m9

初春「しょ、触手!?」ビクッ

気分としては、このまま親友に牙を剥いた事への報復として攻撃の一つでもしたいところだった。

それをしなかったのは、警備員達の戦闘を見ていた時に同伴者が『幻想猛獣』の攻撃が周囲への無差別攻撃を除き、
基本的に反撃のみである事をちゃんと佐天にも教えていたからだった。

……だが、それ以前に。

佐天「(カッコつけたのはいいけど……今のどうやったんだろ……?)」

格好がついたかは別にして……
佐天は反撃したくても出来なかったのだ。

風を操り、瓦礫を盾代わりにして、幻想猛獣の放った光線から守った……のは理解している。
でも、それがどのような能力なのか、どんな演算を行ったのかすら自分の事なのに把握していない。

『幻想御手』を使った直後は、手の平の中で渦巻く風を見て自分は『風力使い』だったのか、と短絡的に考えたのだが。
あの後、何度か試してみると能力?を使える時と使えない時があった。

特定の条件でもあるのか、佐天は自分の能力について、ほとんど知らない。
結局、今の今まで自由に能力を駆使する事なんて出来なかったし、逆に他の使用者みたいに意識不明にもなっていない。

佐天「(まさかとは、思うけど……)」

――火事場の馬鹿力。

そんな不吉な単語が脳裏を過ぎる。

佐天「……まぁ、いっか。これっきりだとしても」

肝心な時に大事な親友を守れたのだ。
これ以降、力を全く使えなくても……悔いはないだろう。
……多分。
……きっと。

初春「佐天さん?」

佐天「ふえっ!? 惜しくない、惜しくないから!?」ドキッ

初春「???」

佐天「あぁ、ゴメンゴメン。こっちの話!」アセアセ

初春「助けてくれてありがとうございます……けど、今のは」

佐天「えっと、長くなりそうだから話は後! 初春にだって、やることがあるんでしょ?」

初春が大切に握り締めている『幻想御手』のアンイストールプログラムを指差して、佐天は普段と変わらない笑顔を見せる。

佐天「ほら、私がエスコートしてあげるから」スッ

初春「は、はい!」ギュッ

彼女――佐天涙子が、その力の理由と懐に仕舞われている『お守り』の中身の意味を知るのは……また、別の話。
131 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/02/12(日) 22:47:56.95 ID:dtY9H4qlo

その一方。

幻想猛獣と絶賛戦闘中の御坂美琴。

彼女は佐天涙子の登場と、その能力らしきものの発露に困惑していた。

美琴「(ど、どうして佐天さんが……!?)」

彼女が『幻想御手』を使用していた事など知る由もない美琴からしてみれば、
この状況での彼女の参戦理由を察するのは困難でしかない。

シュルッ!

美琴「やばっ!?」

その困惑の隙を突くように幻想猛獣の伸ばした触手が美琴の左足首を捉えた。

電撃で焼き切る前に美琴の体はトラップに引っかかった獲物の様に逆さ吊りにされる。

身動きの出来ない美琴を狙って、鋭利な触手が迫る。

美琴「このっ!」バチンッ

容易に触手の迎撃には成功する。

しかし、その直後にはボコボコ、という水音と共に触手が再生されてしまう。

美琴「(ミスった! すぐに復元するんじゃ意味がないじゃない! ……え?)」

焦りながらも、美琴の視界は『それ』を捉えていた。

――戦闘で舞い上がった砂埃の中から、何かが飛んで来るのを。
132 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/02/12(日) 22:49:45.37 ID:dtY9H4qlo

ガンッ!

野球ボールより少し大きいぐらいの瓦礫の破片が、勢いそのまま幻想猛獣にぶつかる。

美琴「……誰か、いるの?」

幻想猛獣『キィアア……?」ギョロ

眼球だけが蠢いて、敵対者への反撃を行なう。

砂埃の中に立つ人影に幾束もの光線が襲いかかる。

バキンッ!!

直後――何処かで聴き慣れた、ガラスが砕けるような音。

美琴「(え、今の音って……?)」

幻想猛獣『キィアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!』

攻撃が通らなかった事に業を煮やしたのか、幻想猛獣は戦法を変えた。

美琴「ちょっ!?」

直前にされた攻撃を模倣するかのように砂埃の中の人影に向かって、美琴を投擲したのだ。

美琴「っ!」

咄嗟に美琴は衝突に備えて身を固めるが、予想に反して、体に衝撃はない。

美琴「……って、あれ?」キョロキョロ

何やら、妙な体勢のまま中に浮いているような感覚。

これは……受け止められていると言うよりも……抱き止められている?

美琴「う、嘘!?」バッ

腕に触れている硬い感触が誰かの胸板であると気付いた美琴は慌てて上を見上げる。

???「……ナイスキャッチ?」

一瞬、鼻が触れ合うかと思った。

相手の呼気すら感じ取れそうな近距離に見覚えのある……だけど、予想外の少年の顔。

上条当麻が、そこにいた。
133 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/02/12(日) 22:51:05.38 ID:dtY9H4qlo

美琴「な――た――で――こ――こ――っ!?」

上条「……また、そのリアクションですか」ニヤニヤ

いつぞやのセブンスミストでのやりとりを思い出したのか、上条は愉快そうに笑う。

美琴「な、何でアンタがここにいるのよっ!?」ムカッ

上条「あー、それは……」

呑気に質問に答えようとする上条だったのだが、

美琴「って、前、前、前ぇぇぇぇぇ!!」アタフタ

無数の氷塊が飛来してくるのを自身のAIM拡散力場……電磁波の反射で察知した美琴が悲鳴を上げる。

上条「……よっと」スッ

美琴の叫びに動じるでもなく、上条は優しく美琴を下ろすと、庇うように前に立った。

上条「」ブンッ

そして、直撃コースの氷塊のみに的を絞って、右手で殴りつける。

バキンッ!!!

美琴「…………」

上条「それで、理由だけど」

幻想猛獣に背を向けて、何事もなかったかのように会話を再開しようとする上条。
134 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/02/12(日) 22:53:25.40 ID:dtY9H4qlo

美琴「って、後ろ、後ろ、後ろぉぉぉぉぉ!!」

上条「――五月蝿い」ブンッ


  /    「´
 {     `ー──────- 、
  ``ヽ.               ヽ___
   { ヽ_,.-‐----- 、._     / ,.----ミ 、
    ` ´          ̄`V /   /::| ,.イ
                /、⊥_  |::::レ':::::| _,. -‐ァ
               / /_>::`::::/::::::::|'´:::::::/
              ヽ<:::::::-=='::v::::::!/::/ `ー―‐z__
              、-≧=:::>:::::::::::::::::::: ̄ ̄///
                  フ ̄ ̄::7:::::::::::::::::::::::::::::::::\<
              ,〃::::::/:::://:|::ハ::::::::::::::::::::::::::::::::`Z
              _'ニイ:_:/:/|::|::!:::vヘ:::::::::::::::::::、_ア´
                ̄レ代ミ!:| |:::ト、:::::::::::::::ト、:ト、
                   く ∧ ` j! |代ヾラ:ト、:::::|' ヽ!`ー-、
                     /`ーヽ ` ヽ「´ ヽレ!::ト! |  /  \     _
                |   /.ハー-   ,.イ ヽ! / /      ̄`< \
                |  \ |`ーァ'´⌒ヽ / /      /    ヽ ヽ
                |    Y´    /V  /       /      }  }
                ∧  ! | /  /     {     /       / /
                | |   / /  ト、     ゝ          /  /
                   | |  |. |  ヽ. ー┐  /  /⌒ヽ    /  / \
                ∧ | |. |      ̄    ハ   \__/___/   \
                     | i r' ノ          / |         ヽ     '.
               ,.イ  | | |\          「 ̄\         |     i
                / |    | |  `ー- 、_     !   ヽ     |     |
           /   |    | ト、                `ー┐ |     |
           ヽ   |    ヽ | ヽ                /  |      !
            |  !      i |ヽ ヽ\             /  |    ,'
            |       | |:::::\ \ ー-  _        /   |     i
            |           |::ヽ:::::>.、     ``ヽ _,. -‐'     !.    |
            /ヽ      | |:::::::::::::::::::::>、       |\    /    !
              /::::::>.-、._  ! !,. ----、::::::::::::\   |::::∧  /     '.
          /:::::::::::::::::::::::`>..、!     \:::::::::::::\/:::::::∧ i        '.
            /:::::::::::::::::::::::::::::::/       \:::::::::::::::::::::::::::∧ |       `ー┐

放たれた光線をそれこそ蝿を追い払うかのように右手で霧散させる。
話の途中なんだから邪魔するな、という意思の込められた上条の視線に幻想猛獣がたじろいだようにすら見えた。

美琴「……ホント、何でもアリよね。アンタの右手も」

『幻想猛獣』も大概だが、出鱈目の程度で言えば、眼前の少年の『幻想殺し』も負けていない。

上条「まぁ、こんな事ぐらいにしか役に立たないんだけどな――」

自嘲気味に頬を掻きながら、上条は自分が来た理由を簡単に説明した。
簡単……と言っても、要は心配で駆け付けただけの話なのだが。

二人が話をしている間、何故か幻想猛獣は動きを止めていた。
無視して動き出す訳でも二人を攻撃する訳でもなく……まるで、上条当麻を観察するように。
135 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/02/12(日) 22:55:13.14 ID:dtY9H4qlo

                  /}
              ∧ /:::: |/}/}
               l\/:::∨::::::::::::::::::::::/___,
           {\|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::<
       __|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::t一
        \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
       _ヽ:::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\::::: \
        \:::::: /:::::::::::/:::::::::::::::::::::::::|:::::::::ヽ:::〈`
        /::∠イ::::::::::/:l:::::/}:/|::l:::::::ハ::::l:::ト}:::::\
       `7:::::: /イ::::/:N::/-‐‐ト|::::/イV∨::V「 ̄
.        厶:イ:{ j:::/:::{ |/rーtッ l::/ ーtッ/::::∧〉
         ノ个xV从j    ̄   ! ̄/\〈
      ___ イ/ {代 .::::::..   ' ノ:::/_
    く     / ∧ \   -‐ァ ,イ〈    ヽ
   /   \´ ̄ /   〉  丶  ̄ イ  ∧ ̄ lハ
.  {     丶 厶イ^7∧_  厂}∧^ヽ ∧   l l
   l       \  l/ / Vニニニニ7  \ \_〉 ′|
   |   丶   V l\  V: : : :/  /  |  /  ′
   | 、   \ } l  \ V : / /   l/  /
   }  丶    ∨ノ   \V://      l   / }


上条「えっと……御坂さん、怒ってない?」オズオズ

説明を終えた後の上条当麻は何故か低姿勢だった。

美琴「何で」

上条「インデックスを置いて……とか。御坂と安達の奴に任せるって話だったのに……とか」

美琴「その辺は半ば私達が強引にアンタに押し付けた訳だし。
    ……そもそも、アンタのそういう性格を知っていながら放置した私のミスよね」ヤレヤレ

上条「アハハ……」

美琴「笑い事じゃねーっての。しかも、佐天さんまで連れてきて」ギロッ

タイミングを見れば、上条と佐天が一緒に現場にやって来たのは分かる。
……むしろ、上条が来た事自体は、ある意味ではとても『彼らしい』ので、予想の範疇と言えなくもないが、
美琴としては、何故か上条と佐天の同伴の方が気になった。

上条「スミマセン」orz

美琴「でもまぁ、来ちゃったのは仕方ないから……後は速攻でケリをつけて、インデックスの所に帰れば済む話でしょ?」

上条「――そうだな」
136 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/02/12(日) 22:56:55.98 ID:dtY9H4qlo

互いに背中を預けるように、少年と少女は立っていた。

背中合わせでありながら、二人は並び立っていた。

何故なら、二人には同じ風景が見えている。
何故なら、二人には同じ未来が見えている。
何故なら、二人には同じ願いがある。

――だからこそ、二人は誰よりも戦友だった。


         〈 {
 冫         { {                            w.:.:.:.:..:彳:::.:.:../_
 《       //                         __ヾ:::::::::::::::::::::::::::::::::::/
 {{      〈 〈√》                      _\:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::彡
 ヘ       |/ 〈〈                      \:::::::::::::::::::::::::::::::/|::::/:::≦
  弋        ヾ\                     ≧::::::::::::::::l⌒lル'/_`ト、ノ::::ミ   t::::::、
〈  〉〉        ヾ\                    彡::::::::::::::::{   タ` l}川  r:::::-、 | .|
  `y          〉/        -─-─-       彳::::::::::::::リ`   `   {   r,::-、'y  .l、
  ヾ\         〉/     / : : : : : : : : : : : ::丶     ハ川l,リ`\ \ , '   r-`、t‐-、 .l
    `\        .//    / : : : : : : : : : : : : : : : : :.:、    /二二ニ=-‐――、  ‐'`ヽ 〈 ` |
     { {   ヾWy ./    / : : : : : : : : : : : : :::ヾ : : : :: :. / ̄    /´   /  〉     `   |
     \\ミ   ./彡  √⌒てハ: : : : : : .:.:|ヽk.lミ: : : :.:\i---┬─一''   ./ /^\   |   |
.         \   /.必  || | : : .:.:|`トリk.ハ |,リ!__ァミ: : :.\::\ ‖        |     丶  .|   |
      /≦     ニ=″{::|: : ::k=rヵ、 lノ .,,z r=ゥゥミ : : ::\::ン|        |       | |、|   |
.     / 》     _    kル、リ゙弋リ    弋ゾ /⌒: : ::ヽ`ー       く      | | \ |
     /  ≠. \   ≦.       !ハ ¨       ー  __ノ:::: : : : :}       //  ト、   .//     .|
      {  //||~".\ \       | l丶″ ′  ″/::: : : : : :リレ       /   .| \ //',     }
      X / ヾ.    \{      /ハ: :> ´`   .イ: :_、|,リル'         ./   /.    '   \___/
    //   〉〉        /,′ヽk.l: : /. \  | \ ヾ        /   /
.    / ∧   | |ヾ          /⌒`\、ヽ  \丿 |  }ヽ、      /  X
 ∧/ /  ' , /∧ }}     /     | | 廴/个丶  |/ /ー─y./  / }
/∧/    ∨/  ∨   r、´       .//. ヾ.  | /   |      }.      |
/      /∧   \/ \       .//   ヾ. |./ .i .}    /      ト
       〈〈 \    ヽ   .\_メ、./  i   ∨   《》|\__,..' \      / ',
       }}   \    /  〉,′¥   i         i /   \  \    、 ',
      /     ゝ / \_|/  丶    i   /   i〈|     \  \ /:::::、 }
      ヾ                {\ \  /   ./ }ー‐--   __\  \::::::::::、
      //               ×  i ー   i イ/⌒: :ヽ:\: : \  \::::::::、
       //                  斗  \i     i |::::::::::::::::::::::ヽ乂:::::\  \‐-、
     \\∧                {ヾ   i      i/l:::::::::::::::::::// \:::::\  __  `l
       \  ,              、   ̄ ̄ ̄  /、:::::::::::::::ー、     \:::::::`ー‐-'_/..
          / /             /:::::.::.:... ̄ ̄ ̄ ̄...:.:.:.:::::::::::::::::::::::|     \::::::::::::::::::::::、
       //             /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/         ヽ::::::::::::::::::ヽ
     //.               |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/         、:::::::::::::::::::、
     } }              <:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/           、::::::::::::::::::',
       》              /\____..:.:.::::::::X ̄\___/             l::::::::::::::::::}
    〆^ヽ            /     / \ノ  \    丶                  l::::::::::::::::::l
                   /     /       /:::::::\    、               {::::::::::::::::::l


全てを貫く雷と、全ての異能を殺し尽くす右手。

さながら、それは最強の矛と盾。

――互いに同じ敵を見据えた以上、矛盾とは成らず。
137 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/02/12(日) 23:00:07.08 ID:dtY9H4qlo

幻想猛獣『キィアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!』

二人が戦闘態勢になったのを理解したのか幻想猛獣は奇声を上げながら、静観から攻撃へと移る。

バキンッ!

無数の光弾が放たれるが、『矛』へ到達する前に『盾』によって霧散する。


: : /⌒/: : : : : : : : : : : : : : ://: : /l: : / l: : : : :イ: : : : : : : : : : : : : : :: : : : : : : : : : : : : : : :
:r'   /: :イ: : : : : : : : : : :://: /  l: ::l  l: : : : :l l: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ::
:l  .//l:/l: : : : : : : : : /=7‐-、   l: /  l: : :イ::l l: : : : : : : : ::: : : ト,: : : : : : : : : : : : :: :: :: ::
:; イ' lf l: : : l: : : : /  /'"  `ヾヽl、  l: ::/ l:l l: : : : : : イ: :/l: :l l: : : : : : : : : : : : : : : : :
:ヘ ヽノヽイ: :ト,ll:: : :/   < ̄ ̄T¨ァ,、lヾミl: / l:l l:: : : : : :l l:/ l:/_l: ll: : : : : : : : : :: :: :: :: ::
/∧\\{l: :l ll l: :/    ヽ、 ゞ='' ¨ヽ:l/ミ彡/ l: : : : : lニl:l≠ll´_l::l l: : : : : : : :: :: :: :: :: ::
、/∧   l::l ! l/     `ー、__,.-'l!   l!  l:ll: : : 匕_ラ´l!゙アl j: : : : : : : : : : : : : :: ::
 \/`ヽ__l/  {                !      .ll l: : / 、 __ / l:l/: : : : : :: :: :: :: :: :: :: ::
.   \ノ {                        i l: :l      / : : : : : : : : : : : : : : : : :
     \_ヽ                         l  l:/       /: : : : : : : : : : : : : :: :: :: ::
       ,.∠ヽ                  l.  l!     /: : : : : :/ l!ヽ: : : : : : : : ::
      // ̄l|                   l      /l: :イ: : :/    ∧:: :: :: :: :: ::
.     //: : : リ    ノ、ー、_        - __/     /  l: / l: :/ヽ   ∧::: :: :: :: ::
    //::: :::/ \    \_ 二ニニ=、___,.     /   l// l::/  l ̄ ̄ヽヽ、__:: :: ::
    //: : : ::{    \     ̄`ー===r"   <      //: /L,.-¬、≦=====`=-
    //: : : :/ \   \    ー---    _ <   \/ ̄ ̄ ̄       `ー- 、_
.   //: : : /   \   \        <   ヽ /       \        ヽ


上条「掛かって来いよ、化物――御坂には、指一本触らせねぇぞ」

一足先に参戦した佐天に倣って、そんな宣言にも思える台詞を幻想猛獣へと放つ上条。
だが、その台詞に動揺を受けるのは猛獣ではなく、『守る宣言』をされた方の少女である。

美琴「っ………………な、なら頑張って盾になって貰おうじゃない」///

緩みそうになる表情を引き締めながら、再び臨戦態勢を整えていく。

上条「おう、上条さんに任せとけ。
    ……いくぞ、ビリビリ中学生!」

美琴「……ふんっ、私には――」

頭上より、数本の触手が迫る。

少女は笑っていた。

――何故だろう、負ける気がしない。

美琴「御坂美琴って名前があんのよ――!!」

叫びと共に紫電が走り、迫る触手の全てを撃ち抜いた。
138 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/02/12(日) 23:04:56.75 ID:dtY9H4qlo

木山「幻想猛獣の動きが……変わった……?」

安達「あぁ、明らかに単調になってるじゃん」

二人と幻想猛獣の戦闘を観察していた木山の呟きに隣の生も賛同する。

今までは自身に対する攻撃への反撃以外は良くも悪くも不規則……出鱈目に暴れている側面が強かった。

木山「どうも、あの少年に対して妙に攻撃が集中しているような……」

単純な火力で言えば、脅威なのは御坂美琴であって、上条当麻ではない。

安達「まさか、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』に反応している……?」

木山「その、『幻想殺し』……というのは少年の能力かな?」

その問い掛けに対して、簡単に上条の右手について説明する。

木山「――あらゆる異能の力を打ち消す右手……か。それは凄いな」

それなら超能力者である御坂美琴と共に戦えているのも多少は納得が出来る。

安達「あの化物は能力の塊なんだろ? 上条の右手は言わば天敵――触れただけで致命傷になりかねない」

実際、上条に対しての攻撃は光線や能力のみで触手での接触は避けているように見える。


――事実、その推察は的を射ていた。


怒涛のように放たれる攻撃。
しかし、標的は『矛』の少女ではない。

狙いは『盾』の少年。

自らを殺す、その存在の出現に『彼』は恐怖していた。
複数の人間の能力と脳によって創り出された幻想の獣は、『幻想殺し』に明確な恐怖を感じていたのだ。

触れたくない。

恐ろしい。怖い。死にたくない。嫌だ。止めて。来るな。

――例え、触れられても核さえ無事なら、耐えられる。

そうだ、生き残れる。

ならば、再生の効く『腕』を犠牲にして、物理的に奴を破壊すればいい。

危険(リスク)と勝利を天秤にかけるような思考。
139 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/02/12(日) 23:06:34.14 ID:dtY9H4qlo

――ああ、それなのに。

此処に来て、『正体不明』の幻獣は、死に恐怖する矮小な獲物へと成り下がった。

先程までに比べて、明らかに単純化する触手の軌道。

美琴「――見え見えなのよ!!」

何本触手を伸ばそうが容易く迎撃される。

触手は雷撃の矛によって。
光弾は幻殺の盾によって。

木山「(凄いな……)」

恐らく、あの超能力者(レベル5)の少女は先程よりも強い。
人間である木山に対しての手加減も当然ながらあっただろう。

しかし、それを鑑みても如実な変化だった。

木山「(彼が理由か……)」

途中より参戦した少年の存在が、彼女の力を、戦闘センスを、総合的に引き上げている。

一方は、学園都市の底辺である無能力者。
一方は、学園都市の頂点である超能力者。

まるで違う二人。

そんな二人に、互いを補い合い、さらに高め合うような戦闘が可能なのか?

確かに、二人に共闘の経験はない。
だが、二人は幾度にも渡る『追いかけっこ』や先日の『決闘』によって、互いの戦力の多くを把握している。

そして何よりも、重なりあう強い意志が二人を歴戦のパートナーへと昇華させる。
140 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/02/12(日) 23:09:15.66 ID:dtY9H4qlo

『幻想殺し』への恐怖と二人の連携の前に――幻想猛獣は確実に追い詰められていた。

その結果、無差別の破壊を振りまく化物とは思えないような行動へと『彼』を走らせる。

――逃亡である。

美琴「なっ!?」

上条「アイツ、原子力実験炉の方に……?」

美琴「」ビシッ

上条の何気ない言葉に美琴は全身が石になったような錯覚に陥った。

美琴「…………え、今……アンタ、何て?」ギギギッ

首だけを上条の方へと向けて、再確認する。
自分の聴き間違いなら、それで問題ない。

上条「……原子力実験炉?」

美琴「……マジ?」

上条「不幸にもな」

美琴「なら、急いで止めないと!」

上条「――ちょっと待った」ガシッ

追撃に入ろうとする美琴の腕を上条が掴んで押し留める。

美琴「……な、何?」

上条「御坂は少し休んでてくれ。ずっと戦ってたんだろ?」

美琴「そ、それはそうだけど……」

上条「このまま戦っていても消耗するのはこっちだし、
    初春さんがネットワークの破壊に成功してもそれで終わるとは限らない」

確実に仕留める為にも最大戦力である美琴の消耗は避けたい、というのが上条の意見だった。

美琴「だからって、アンタ一人じゃ戦いようが……」

上条「……」スッ

黙って、というよりも何かに苦笑しながら、上条は幻想猛獣の行き先を指差す。
促されるまま、上条の指先へと視線を向ける。

美琴「――へ?」

それを視界に収めた時、美琴の口から間抜けな声が漏れた。
141 :とある複製の妹達支援 [saga ]:2012/02/12(日) 23:11:08.32 ID:dtY9H4qlo

『幻想猛獣』の目指す先。

原子力実験炉の施設の外壁。

そこに全身を漆黒に彩った、超人が立っていた。

アクメツ「461号、965号は施設内の人員検索……残っている人間を発見したら、風見か安達に連絡して警備員を回してもらえ。
      『お姉様』にも第三者にも見つかるなよ?」

『幻想猛獣』のいる方向とは反対側……原子力実験炉の施設内に入り込んでいる『妹達』に指示を飛ばす。

461号「了解です。こちらの姿を目撃されないようにミサカは留意します」

965号「如月さんも御武運を。と、ミサカはエールを送ります」

アクメツ「……ありがとさん。ほら、行った行った」

461号&965号「「はい、とミサカは作戦行動を開始します」」

アクメツ「……化物退治、かぁ……」

暴力団の祝言の席に刀一本で殴り込んだ時よりかは、楽しめそうではある。

アクメツ「我は空、我は鋼、我は刃……」チャキ

ゆっくりと電磁刀を鞘から抜刀し、その切っ先を『幻想猛獣』へと向ける。

アクメツ「我は一振りの剣にて、全ての「罪」を刈り取り「悪」を滅する!!」

絶望と能力によって造り上げられた『怪物』に対し、高らかに謳い上げた。

アクメツ「我が名はアクメツ――――推して参るっ!!」
142 :とある複製の妹達支援 [saga]:2012/02/12(日) 23:20:35.28 ID:dtY9H4qlo
キャー、アクメツサーン!
な所で今日は終了。

今度はそんなに期間は開かないと思われ。

次回は幻想猛獣変貌&アクメツさんの剣技披露の予定(虚○陣じゃないです)

さて、鴨川を堪能してくるか……

143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage saga]:2012/02/12(日) 23:28:52.55 ID:iRzms+kF0
いやっほう!!

待ってましたっ! 大統領!! 乙です!!!
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 23:29:34.10 ID:IRwK82RIo
乙なんだよ!
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 23:40:02.95 ID:C/hQ5esg0

盛り上がってる盛り上がってる  上条さんはもちろん、佐天さんにも見せ場が来たのが良かったですねー
アクメツさん振るう電磁刀にもおおいに期待してます!
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/13(月) 04:41:56.67 ID:IqVy0thDO
きたきた
楽しみに待ってたぜ!
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/13(月) 12:34:37.03 ID:zTlo5ATAO
いつのまにやら来てた嬉しすぎるぜーーーー!待ってましたーーーー!!
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/02/13(月) 14:20:03.55 ID:Y0ErEE/DO
( ◇)ズェア!!
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/07(水) 22:56:59.40 ID:wL4YjP4mo
そろそろかな
150 :とある複製の妹達支援 [saga ]:2012/03/14(水) 00:00:28.84 ID:Thh9OyD5o

風見「(何してんだか、如月の奴……)」

呆れながらも、内心では羨ましいのは言うまでもない。
お調子者で、お気楽で、目立ちたがりなのは全員一緒なのだから。

こればっかりは、20代の体だろうが、バージョンが3以降だろうが、関係ない。

鉄装「…………かぁこいい…………///」

格闘ゲームマニア(本人は内緒にしているが)の鉄装は何かが心の琴線に触れたらしい。
後ろで顔を輝かせている彼女を黙殺して、風見はスコープに標的を捉える。

風見「(〈ライン〉を使用するにしても、まだ時間は必要……か)」


〜数分前〜


佐天「…………」

初春「…………」

風見「なぁ、俺は副担任とはいえ教師として、教え子の無茶を咎めるべきか?
    それとも、警備員の人間として子供の無茶を叱るべきか?」

佐天「ど、どっちにしろ……怒られるんですね……」

少なくとも、自分の演じている立場の人間としては、そうするべきだろう。
しかし、個人的な事情を加味すると……怒れそうにない。

風見「状況が状況だし……勘弁しといてやるじゃん。
    ただし、ここまでするからには何か手があるんだろうな?」

初春「は、はい!」

初春を慌てながらも、風見や周囲の警備員達に『幻想御手』のアンイストールプログラムについて説明した。

風見「それは元の『幻想御手』と同じ……音楽データなんだな?」

初春「はい。被害者達の入院している病院にデータを送る事も考えたんですが……」

鉄装「あんな奴が暴れている状況じゃ、そんな悠長なこと言ってられません……よね?」

それに加えて、『幻想御手』を使用して意識不明状態になっている学生が、病院以外の場所にいる可能性もある。
151 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/03/14(水) 00:03:17.65 ID:Thh9OyD5o

風見「――分かった。初春、指揮車の機器を貸すから、各種関係機関へのデータ転送を頼めるか」

連れ立って指揮車に向かう途中で、風見に佐天が心配そうに声をかけた。

佐天「先生、いいの? こういうのって責任問題になるんじゃ……」

風見「緊急措置だ、仕方ないだろう。それと、このアドレスのパソコンにも転送してくれ」

初春「……ここにですか?」

風見「学園都市のTV局に勤めてる友人のパソコンだ」

初春「風見先生、意外と顔が広いんですね」

依頼して、曲を流してもらうのが狙いだと即座に理解した初春は、そんな感想を返す。

風見「意外とは余計じゃん」

各方面へ連絡を取りつつ、風見はその『TV局の友人』にも電話をかけた。

同胞である――高杉生に。

高杉『よぉ、風見の。何やら派手な事になってるみたいだな?』

流石はテレビマン、耳が早い。

風見「それに関して、頼みがあるんだが……例の〈ライン〉の試作品……使えないか?」

高杉『電波ジャック用のアレを……? 何に使うんだ』

風見「幻想御手のアンイストールプログラム……音楽データを学園都市中に流したい」

高杉『……成程。そのデータは?』

風見「お前のパソコンに送った。
    どうせ、後から警備員(アンチスキル)からの正式な要請が届くんだ。
    多少のフライングは許されるだろう?」

当然ながら、後半は周囲に聴こえないように小声で話す。

高杉『それなら、露見のリスクは減るな……オーケー、やってみるじゃん』

風見「頼んだ」


そして、大まかな各種機関への連絡を終えた風見は鉄装を伴って、戦域へと戻ってきた。


風見「(――ネットワークの破壊が完了するまで……持たせろよ、如月の)」
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 00:13:04.64 ID:VvvbGVkl0
おお、キター 
153 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/03/14(水) 00:15:37.61 ID:Thh9OyD5o

アクメツ「さーて、殺るとしますかぁ……」

失った命。

試験個体との邂逅が無ければ死んだままであっただろう、自分達。

蘇ってから、約半年。

かつての研鑽と経験は褪せても、損なわれてもいない。

……しかし、新倉生のように異能を得た訳ではない。


己として、剣士として、アクメツとして、一人の男として、如月生は……変わらず、ここにいる。


幻想猛獣『キィアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!』ビュン

立ち塞がった障害物を排除しようと、幻想猛獣が触手を伸ばす。


――そんな自分が……この怪物相手に何処まで『やれる』のかを確かめたかった。


アクメツ「悪いが、実験台になってもらうじゃん」ザッ

きっとそれは、この先の戦いの為。

アクメツ「――――『斬釘截鉄(ざんていせってつ)』ザシュッ

迫る触手を体を沈めて躱し、左に回りこみながら触手を断つ。

手応えは、有る。

電磁刀の強度と切れ味は、眼前の怪物相手でも十二分に通用する。

アクメツ「(これなら、戦える……!)」
154 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/03/14(水) 00:21:12.45 ID:Thh9OyD5o

幻想猛獣『キィアアアアアア!?』ビュンビュン

左右からアクメツの逃げ場を殺すように襲いかかる無数の触手。

アクメツ「――――『八重垣』」

縦横無尽に襲い来る触手を微妙な時間差の隙間。
その空白に滑りこむような最小限の動きで回避しながら、アクメツは少しずつ前進する。

アクメツ「どうした! よく狙わないと当たらないぞ!?」

幻想猛獣『キィアアアアアア!!!!』

言葉を理解しているのかは不明だったが、その挑発の意図は伝わったのか、幻想猛獣は再び奇声を上げる。

アクメツへの返答として、幻想猛獣が選んだのは氷塊による広範囲への攻撃だった。

アクメツ「(そうそう、それを待ってたじゃん!)」ニヤリ

仮面の下で笑みを浮かべながら、背部のスクランダーを展開する。

ドガッ! ドガッ! ドガッ! 

アクメツ「フハハ! 当たらん! 当たらんよ!」

スクランダーによる高機動を得て、アクメツは降り注ぐ氷塊を素早く躱していく。

……一定の軌道を辿りながら。

アクメツ「――道は出来たぞ、上条当麻!」

上条「おおぉぉぉ!!!!」

その呼び掛けに応えるように少年は咆哮した。

突如、幻想猛獣の死角から上条当麻が『飛翔』して現れる。

上条「届けぇぇぇぇ!!!」ダンッ

直線上に地面に突き刺さった氷塊を足場にして、空中の幻想猛獣に迫ったのだ。

アクメツ「――――『大詰』」タンッ

上条に合わせるようにアクメツも刀を構え、反対側から幻想猛獣に向けて跳躍する。
155 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/03/14(水) 00:25:02.05 ID:Thh9OyD5o

幻想猛獣『来ruamenna!!!!』

ブシュウウウウウウウウウッッ!!!

上条「なっ!?」

アクメツ「っ!?」

『幻想殺し』が触れるか触れないか、という距離になった瞬間、幻想猛獣の体から大量の蒸気が吹き出した。

上条「くっ!」ドサッ

スクランダー装備しているアクメツとは違い、空中で体勢を崩した上条が、そのまま地面に落ちる。
なんとか受け身は取れたので大きなダメージは無いが、絶好のチャンスを失ってしまった。

アクメツ「能力の霧……? いや、単純な水蒸気か……?」


ギチ……ギチ……


上条「(何の音だ……?)」

蒸気に紛れて、幻想猛獣の姿を確認する事が出来ない。


ミシ……ミシ……


だが、そのシルエットは辛うじて見える。

上条「……縮んでる?」


――風が吹いて、幻想猛獣の姿が顕になる。


アクメツ「…………な?」

その姿を見た時、一番最初に反応したのはアクメツ……如月生だった。

しかし、驚愕した訳ではなく……仮面の下の表情には納得と苦笑が浮かぶ。

上条「何だ……?」

アクメツ「ククク……ったく……そう来るか……」

それを胎児、と呼ぶのは既に不可能だった。

成長と表現するよりは進化。
適応と表現するよりは対応。
模倣と表現するよりは選択。

自己という存在を中心に考えた時、最大の害悪とは何か?

……単純な一個の生命としての答えは『自分を殺そうとする存在』に他ならない。

だからこそ、自身に対する全ての害悪を滅殺する為に『幻想猛獣』は、最も『殺人』に適した姿になった。

敵対する『人』の姿を模し、ネットワークの中で最も『経験』豊かな『殺人者』の姿を借りて。

上条「アクメツが……二人?」

本当は二人どころか、数十人はいるのだが。
……少なくとも今のこの状況を見れば、そうなるだろう。

『幻想猛獣』のその姿は……紛れも無く『悪滅』のそれとなっていた。
156 :ちと解説 [saga sage]:2012/03/14(水) 00:36:47.34 ID:Thh9OyD5o

『幻想猛獣・変貌体』

能力の集合体である『幻想猛獣』が、天敵とも言える『幻想殺し』と接触した事で、根源的な消滅への『恐怖』を学習し、変貌した個体。
敵対者が『人間』の形を取っていた為に自身の有する『幻想御手』のネットワーク上で、最も人間に対して有効な戦闘形態を選択する。
その結果、最も多くの人間を殺傷した事がある人間……『アクメツ』である『新倉生』の『肉体』を模倣する事で、『幻想殺し』への対応とした。

基本的な見た目や形状は、仮面を装着した新倉生なのだが、元々の『天使の輪』等はそのまま。四足歩行の為にほぼ獣に近い。

まさに、

            /ヽ    ____ハ_____   /ヽ
              |::::::::Y´, -‐- 、\  /, -‐- 、`Y::::::::::|
           ,ゝ::::::{_⊥._ o ヽ } { /  o __」_}:::::::::く
         <:::::::::/:::::::::::`ヽノ/::;:ヽゝ, - ´::::::::::\:::::::::>
           >=─--ヽ:::::::::i::/ ヽ::i:::::::::::/--─=<
ア ッ チ ョ ン  { 、____}:::::::::|:ト冖1:!:::::::::{____,. }  ブ リ ケ ! !
           ` ー- _ヽ:ノ::::::::::|:|   |:|::::::::::ヽ;:ノ_ -‐ ´
                 ` 7一''^ゝノ^''ート¨´


『アクメツが使用している剣術』

隆慶一郎原作、田畑由秋脚本、余湖裕輝作画による日本の時代劇漫画作品

『柳生非情剣 SAMON』

作者つながりでもあるこの作品の流れを汲んで、柳生新陰流をチョイス。比較的ポピュラーでもあるし。
『尻一つで13万石だとおおおお!?』という伝説の迷言を生んだ純愛(?)漫画です。衆道だけどね!

作中では柳生左門友矩の剣は『死人の剣』として描かれているので、実にアクメツ的。
157 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/03/14(水) 00:46:16.35 ID:Thh9OyD5o

アクメツ「……実力を高く買われた……って、考えるべきかねぇ?」

その意味する所……『幻想猛獣』の意図らしきものを理解したからこそ、如月は苦笑したのだ。

本能によって引き起こされた反射的な行動が、知恵による工夫と同一の結果を産むことがある。

アクメツ「(わざわざ、仮面まで再現してくれて、助かったやら、照れくさいやら……)」

胎児の時にあった天使の輪のような物がそのままなのが嫌な感じだが、
それでもダイレクトに新倉生の姿になられなかったのは、好都合ではあった。

確かに『幻想猛獣』の選択は理屈の上では至極、正しい。

だが、他でもない『悪滅』に対して、『殺人』の土俵で勝負しようという、判断は――

幻想猛獣『zet殺sorbsjha』キイイイイン

アクメツ「避けろ、上条当麻!」

上条「っ!」

バキンッ!

威力はそのままに放たれた光線を右手で振り払うが、
直後に幻想猛獣がその小さく変貌した体躯を踊らせて、上条へと襲いかかる。

上条「うわっ!?」

ガキンッ!

しかし、鋭利な魔手は上条に届く前にアクメツの刀に阻まれた。

アクメツ「おいおい、見た目が変わった途端に積極的じゃねーの!」ギリギリ

幻想猛獣『邪mahdinaue』


――ここに来て、幻想猛獣は明らかに上条当麻の排除を優先し始めた。


肉体の変貌も対上条当麻用だと考えたほうがいいのだろう。
158 :短いけれど、今日はここで切ります。少し書き貯めて来週辺りに [saga sage]:2012/03/14(水) 00:51:02.00 ID:Thh9OyD5o

アクメツ「だが、こっちとしては好都合……!」

元々、アクメツの習得している武術の全てが対人用だ。
相手が人間体になってくれた方が、むしろ『噛み合う』のだから。

アクメツ「上条当麻、コイツはお前の右手が怖くて仕方がないらしい……チャンスがあったら、どんどん攻めろ!」

背後で上条当麻が頷いた気配を感じ、アクメツは幻想猛獣の胴を蹴り飛ばして一度、距離を取る。

アクメツ「見た目を真似た程度で、勝てると思われるのは少し癪じゃん!」ザンッ

再度、急接近してからの大振りの袈裟斬りは簡単に回避される。

上条「(避けられた!?)」

それを隙と見たのか、飛び掛ってくる『幻想猛獣』の腕を左半身になって、紙一重で躱す。


――袈裟斬りは誘い水。


アクメツ「それは……悪し」

宣告と共に一閃。

アクメツ「――――『逆風』」

硬質化し、より鋭利になった醜悪な両腕を右腕の外側から切り落とした。

アクメツ「……上条当麻!」

上条「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」ダンッ

呼び掛けに応じるように、『幻想猛獣』の背後から上条が跳躍する。

バキン!!!

上条の握られた右手が接触した瞬間、『幻想猛獣』の頭部が風船が破裂するように弾け飛んだ。

上条「やったか!?」
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 01:10:07.44 ID:VvvbGVkl0

触手相手の剣技ってすごいシュール  人間体になってくれて良かった 
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/14(水) 01:15:44.55 ID:bic6jArbo
乙!
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 02:05:54.70 ID:mAVhiyALo
おつ
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 12:49:32.46 ID:ME/w5VoXo
待ってた
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/15(木) 01:24:39.62 ID:6nrgW8yAO

待ってました
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/16(金) 22:47:56.99 ID:5GVV+2XO0
昨日、初めてアクメツを読んだけどおもしろいな。リアルタイムで読んでいた人がうらやましい。

新約四巻の木原一族は無理でも、てんいとくんは出れないかな・・・・。
麦野みたいにチョイ役でもいいから・・・・。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/24(土) 00:49:16.60 ID:WBbl9W9h0
「それは悪し」

剣の舞でござるか
文吾さん渋いよな
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/29(木) 21:53:02.95 ID:Kf8JmKuS0
>>上条「やったか!?」
上条さんそれ何言っちゃダメだろ…・・・
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/14(土) 01:24:27.31 ID:6izBzYEVo
そろそろかな
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 23:12:05.55 ID:TtCI/nh/o
やっと追いついたぜ!!
それにしてもアクメツとか俺得すぎるwwwwwwww
169 :とある複製の妹達支援 [sage]:2012/04/18(水) 16:13:01.62 ID:yh0HnsWzo
遅くなりました。
今日の23時以降に投下予定です
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/18(水) 17:42:00.34 ID:wknAogKWo
待ってたんだよ!
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/04/18(水) 22:04:18.03 ID:obpQ0X/Io
舞ってた
172 :とある複製の妹達支援 [saga]:2012/04/18(水) 23:18:05.75 ID:yh0HnsWzo

しかし、切り落とされた両腕も弾け飛んだ頭部も数瞬で復活する。

上条「っ、不死身にも限度があるだろっ!?」

美琴「――手伝い欲しかったら、いつでもいいわよー!?」

少し離れた場所で休憩中の美琴が心配そうに声をかける。

上条「大丈夫ですのことよ!? まだ休んどけって!」

アクメツ「(敵対してみて初めて分かるが、死なないってのは本当に厄介だな……)」

自分達も不死身ではあるのだが、本来の意味で考えれば『幻想猛獣』の方が、正しく不死身の怪物だ。

幻想猛獣『maencyiwn覚etask!』

再び接近してくる幻想猛獣。
その攻撃をギリギリで躱して、反撃しようと身構える。

ガッ!

アクメツ「(ワンツー!?)」

それまでの野生的な襲撃とは対照的な技術に裏打ちされた攻撃に反応が遅れる。

アクメツ「ぐっ!?」

仮面の端が削れ、破片が舞う。

上条「アクメツ!?」

アクメツ「大丈夫じゃん! クソっ……また動きが……」

上条「今のって、ボクシングか……!?」

突然の変化に上条とアクメツは困惑の声を上げる。

???「急ぐんだ!」

上条「えっ?」

その声の主は安達生に肩を借りた木山春生だった。

木山「幻想猛獣はネットワークから、戦闘の技術を学習している! このままでは奴は、どんどん進化するぞ!」

アクメツ「なっ!?」

それが意味する事は何か。

幻想御手のネットワーク上には、百数十人分の戦闘技術を内包した新倉生も囚われている。
このままでは、その姿だけではなく――アクメツとしての全戦力を幻想猛獣は掌握しかねない、という事だ。
173 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/18(水) 23:20:50.61 ID:yh0HnsWzo

幻想猛獣『邪mawourimaiかeirm?』グリンッ

木山「っ!」

声に反応したのか、幻想猛獣の首が回り、その視線が木山を捉えた。

上条「マズイっ!」

美琴「先生、逃げて!」

上条とアクメツ、そして美琴の位置からでは間に合わない。

安達「チッ……下がって!」

木山を庇うように生は前に進み出る。

幻想猛獣『odgmren殺tヴぇ』

安達「――――『猿廻』」

その技の名が示す通りに。

――幻想猛獣の体が、あらぬ方向へと吹き飛んだ。

本来は立ち合いの中で使われる捌きの技である『猿廻』だったが、
システマや柔術の習得によって『相手を崩す』事に慣れている生が使えば、それだけで攻撃へと昇華される。

安達「(悪いが、如月の奴に出来ることは俺にだって……)」

『――補足した』

唐突に聞き覚えのない少女の声が頭の中に響いた。

安達「え……?」

声と共に訪れた、その感覚は。

幻想猛獣の体に触れた瞬間、何者かに逆に捉えられていた。

まるで安達生という存在の中にある小さな力の波紋が、誰かに掬い上げられたような。

安達「(なん……だ……?)」

――もう少しで、何かが。
174 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/18(水) 23:22:12.88 ID:yh0HnsWzo

それは、一瞬の思考の空白。
その一瞬の間に幻想猛獣は起き上がり、木山に向かって走りだす。

安達「しまった!」

木山「くっ!」

眼前に迫り来る魔手に木山は身を固める。

ガキンッ!!!

衝突音が響くが次に来るであろう、痛みは来ない。

???『――大丈夫』

自身の内側から、優しく語りかけるような声。

木山「え……?」

それは幻想猛獣の暴走によって彼女の手から離れた力だった。

そのはずだった。

木山「……どうして……」

因果は巡る。

善行であろうと、悪行であろうと。

全ての事象は互いに繋がり、交差し、時に思わぬ結果へと辿り着く。

それは皮肉だろうか。
或いは運命だろうか。

木山春生の絶望の原因である、暴走能力の法則解析用誘爆実験。

その成果である『体晶』を使用した滝壺理后によって、
新倉生は一時的に『幻想猛獣』によって暴走するネットワークから逃れた。

木山「……私を守ってくれた……のか……?」

自分の意思とは無関係に発動した『孤高赤星』の守護防壁。

炎の盾によって、幻想猛獣の爪が木山に届くことはない。

それが意味するモノは。
他ならない、新倉生の意志。

安達「新倉の野郎……」

……そして、決着の時が来る。

〜〜〜〜♪

美琴「……この曲……!」

上条「間に合った……のか?」

五感全てに訴えかけるような、その音色。


――――学園都市を解放を宿した旋律が包み込んだ。
175 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/18(水) 23:23:56.90 ID:yh0HnsWzo

〜とある病院〜


滝壺「(今、この人を介して……誰かが私を見た……?)」

本来なら、自分にしか知覚できない領域で、誰かに覗き返されたような感覚。

滝壺「(……でも、もう感じられない……気のせい? それとも……)」

だが、その考えを滝壺は詮無き事だと切って捨てる。
今は眼前の少年の無事を――両脇で心配そうにしている二人に伝えてあげる方が優先だった。

滝壺「……もう、この人は大丈夫だよ」

禁書目録「ほんとう!?」

滝壺「うん。能力の主導権は本人に返還できたし……それに」

浜面「それに?」

滝壺「……この曲が流れて始めてから、意識不明の患者さん達の能力が『何か』に引っ張られる感覚が無くなったから」

だから、他の人も大丈夫だと滝壺が告げると、インデックスと浜面が安堵の表情を浮かべた。

浜面「そっか……良かった」

やれやれ、と額の汗を拭う。

浜面「……ありがとな。ダチを助けてくれて…………貸しが出来た」

浜面のそんな言葉に滝壺は困ったように微笑んだ。

滝壺「私がその人を助けたのは、それこそ『貸し』を返す為だから。……だから、貸しにされると意味がない」

浜面「返す為……? よく分からないけど……なら、俺個人が勝手に貸しだと思っておくことにする」

滝壺「そう。なら……気が向いた時に……返してね?」

浜面「お、おう」

禁書目録「私もなんだよ!」

滝壺「……シスターさんも?」

禁書目録「うん! 貴女が困った時、きっと力になる……私のもう一つの名前に誓って」

滝壺「……どうしよう。貸しを返したと思ったら、逆に過払いになってしまった」

浜面「ははは。それぐらいアンタのしてくれた事が俺達にとって、デカいってだけの話だろ?」

滝壺「……お友達、大切にね」

浜面「おう」

禁書目録「うん!」

滝壺の去り際の言葉に二人は間髪を入れずに応じた。
それが至極、当然であるが故に。
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/18(水) 23:24:21.11 ID:qoQ+CH9Go
キタ――(゚∀゚)――!!
177 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/18(水) 23:33:37.81 ID:yh0HnsWzo

安達「動きは止まったが……胡散霧消って訳にはいかないか……?」

木山「ネットワークの破壊に成功したとはいえ、奴は一万人の思念と能力の集合体だ。
    恐らく……その存在を安定させている『核』のような物を破壊しなければ、止められない」

アクメツ「……なら!」ダンッ

上条「その核を引き摺り出してやる!」ダンッ

動きの鈍った幻想猛獣を前後から上条とアクメツが強襲する。

アクメツ「――――『花車』っ!!!」

『霞』の構えから放たれるアクメツの三連撃が、幻想猛獣の右腕を切り飛ばし、首を撥ね、肩の肉を抉る。

上条「うおおおおおおおおおおおっ!!」ブンッ

欠けた体が再生する前に上条当麻の右手――『幻想殺し』が幻想猛獣の上半身を生木を裂くように引き千切った。

幻想猛獣『!!!!????』

声にならない絶叫と共に抉り取られた体表の奥の部分が露出する。

上条「――これかっ!!」

その生々しい体組織とは裏腹に何処か人工的な三角柱の結晶体。

上条は攻撃の勢いそのままに核へと右手を伸ばす。

美琴「ダメッ!!!」バチンッ

上条「いっ!?」ビュン

美琴の制止する声が聞こえたかと思った直後、上条の体が後方へと吹き飛んだ。

アクメツ「くっ!」

その動きに合わせるようにアクメツも後方へと距離を取る。

178 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/18(水) 23:34:37.43 ID:yh0HnsWzo

直後、幻想猛獣の欠けた部分から、肉塊が溢れ出す。

安達「うわっ!? キモっ!?」

木山「……どうやら、あの姿を維持していられなくなったようだな」

ネットワークの崩壊と急激な損傷。

その二つが、幻想猛獣に再度の異変を呼び込んだ。

人間の形状を維持できず、かといって胎児の状態にも戻れない幻想猛獣は巨大な肉塊へとなりつつある。

上条「み、御坂……助かったけど……もう少し、加減を……」ズキズキ

緊急回避として美琴が選んだのは上条のベルトのバックルの部分への電磁力操作。
その為、上条は腰だけジェットコースター気分を体験する羽目になった。

美琴「いや、能力の効果範囲を局部に絞らないとアンタの場合……右手に無効化されるし」

上条「こ、腰がスッポ抜けるかと思いましたよ……?」

美琴「……あの肉の海にダイブしたかったんなら、今からでも行ってくれば?」

上条「誰が行くかっ!? あ……けど、核の場所が分からなくなっちまったから……この際……」

美琴「――大丈夫よ、ちゃんと見てたから」

確かに吹き出すように溢れてくる肉塊で『核』は再度、埋もれてしまった。
しかし……それで場所を見失うような美琴ではない。

美琴「それなりに休憩させてもらったし、『全開』でやれそう。……後は任せときなさい」バチンッ

上条「……よし、任せた」

美琴「ちょーっと、派手にやるから」バチンッバチンッ

言外に巻き込まれないように注意しろ、と伝えてくる美琴の意を汲んで、上条は安達と木山の元へ向かう。
そして、幻想猛獣の攻撃と美琴の『全開』の余波に備えて、右手を構えた。

安達「……え、この距離で更に『幻想殺し』が必要なレベル?」

上条「少なくとも、俺はアイツの『本気』は知ってるけど……『全開』は見たことは無い」

上条にしてみれば、これでも平気か心配なぐらいだった。

安達「(ってか、如月の奴もちゃっかり空中に退避を……ってか、何だよ、あのポーズ)」

空に視線を向けると、スクランダーでホバリングしながら腕を組んでいるアクメツの姿。
既に仮面のヒーローというよりも、往年の格闘ゲームのラスボスか、宇宙怪獣に立ち向かう巨大ロボットの風情である。
179 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/18(水) 23:37:40.91 ID:yh0HnsWzo

美琴「さて、と」

バチィッ!!!

放たれた雷撃は幻想猛獣の展開した力場によって逸らされてしまう。

美琴「この期に及んで……面倒な真似してくれるじゃない」

木山「あれは私が使用したのと同じ……誘電力場か」

安達「無駄だな」

木山「確かにこのままでは彼女は……」

上条「そうじゃない」

木山「何?」

美琴「――コレなら、どうよ!」ゴバッ

帯電した掌から放たれた雷の奔流が、幻想猛獣の体躯を丸ごと飲み込んだ。

木山「これは……!」

安達「強引にねじ込んだ電気抵抗の熱だけで、体表を剥がしてるのか」

副次効果である筈の熱量だけで、その肉を焼き払い、消し炭へと変えていく。

上条「――核が見えた!」

幻想猛獣『zet殺sorbsjha』

反撃の為に伸ばされる触手も飛来する氷塊も、吹き荒れる漆黒の砂塵に切り刻まれる。

美琴「……悪いけど、『自分だけの現実』を他人に任せるような人達に負ける訳にはいかないのよね」

力が欲しいと願うなら、それは決して手放してはならないモノ。
能力者にとっての絶対にして、唯一の拠り所であり、存在証明。

過激な放電音を交えながら、少女の指先に膨大な雷の力が集約される。
集約されていく力の余波だけで、美琴の周囲の空間自体が帯電しているかのように錯覚してしまう。

上条「……すげぇ」

才能の有無は関係ない。必死に努力の果てに結実が約束されている訳でもない。

しかし、少なくとも……前進を止めた者に進歩という名の祝福は訪れない。

だから。

こんな悔しさと苦しみの中で微睡むような、悲しい幻想は終わりにしよう。

美琴「――――こんなとこで苦しんでないで、とっとと帰んなさい」

放たれたコインが光を纏い、光へと変わり、天を撃ち抜いた。
180 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/18(水) 23:42:12.89 ID:yh0HnsWzo

上条「…………これが、超能力者(レベル5)か」

それは、少年にとっても初めてに近い実感だった。
御坂美琴が人間以外に見せた、全力の桁外れさにやっと彼女が学園都市のトップの一角であると認識したのだ。

美琴「…………ふにゃ」ベチャ

上条「み、御坂!?」

木山「ど、どうしたんだ?」

美琴「大丈夫、ただの電池切れ……文字通りの意味の」

そういえば、過去の追い掛けっこでも朝方にはこんな感じだったな、と上条は納得した。

安達「(あの怪物を一片残さず消し飛ばす渾身の一撃だからな……流石に精根尽き果てた訳か)」

上条「電池切れ……コンセントで充電とか出来ないのか?」

安達「(いや、どこの雷帝だよ)」

美琴「……そんな漫画みたいな回復方法、試したことすらないわよ」

全員「「「「(試したけど、ダメだったのか)」」」」



アクメツ「――さて、と」キュアアアアアア

アクメツはおもむろにスクランダーを展開した。

上条「……アクメツ?」

アクメツ「悪いが、俺はここらで退散させてもらうじゃん」バシュッ

漆黒の外套が硬質の翼へと形を変える。

美琴「ちょ、ちょっと!?」

アクメツ「機会があったら、また会おう!」フハハハハ

181 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/18(水) 23:45:33.97 ID:yh0HnsWzo

上条「……結局、何なんだろうな、アイツは」

飛び去っていくアクメツの黒い影を視線で追いながら、上条がポツリと言った。

美琴「こっちが訊きたいわよ……つーか、知らないで共闘してたわけ?」

少なくとも積極的に仲良くしたい相手ではないように思うのだが。

上条「いやー、学生寮でも助けてもらったし、ここに来るのに車で送ってくれたし……悪い奴じゃないかなーって」

美琴「まぁ、私は風紀委員じゃないから……実害がないなら、不審者の一人ぐらいは気にしないけど」ジロッ

安達「え、俺?」

美琴「だって……風紀委員でしょ、アンタ」ビシッ

まだ疲労困憊なのか、安達の腕章を指さす美琴の動きは緩慢だった。

安達「ふむ……」

言われてみれば、その通りだ。
治安維持の観点から謎の仮面の男を追うべきか否か……?

と、なる訳はない。

安達「…………うーん、正直に言ってもいい?」

美琴「?」

安達「面倒くさい」

上条「おい」

木山「……流石に捕縛対象者の私を民間人に任せて、アレは追跡するのは問題じゃないか?」

何故か、捕まる側の木山がそんな意見を述べる。

美琴「私はこの通りだし、この馬鹿一人ぐらいからなら逃げられるかもよ」

上条「おい」

木山「いや、逃げるつもりはない。すぐに警備員も来るだろうし、ネットワークを失った私に逃れる術はないしね」

一時的に力を貸してくれた『孤高赤星』の能力も既にネットワークが完全に破壊された為か、木山の手元を離れている。

安達「…………」

木山「だが、子供達の快復を諦めるつもりはない。
    もう一度、最初からやり直す……理論の組み立てはどこでも出来るからね」

例え、刑務者の中だろうと、世界の果てであろうとも。

木山「私の頭脳は常にここにあるのだから」

ただし、と木山は付け加えた。

木山「今後も手段を選ぶつもりはないぞ。……気に入らなければ、また邪魔をしに来たまえ」

美琴「アンタねぇ……」

上条「(……大丈夫そうだな)」

手段を選ばない、と口にしてはいるが、もう彼女は今回のような多くの人々を巻き込むような手段は取らないだろう。
倫理観による自制などではなく、他でもない教え子達を救った後に彼等と同じ時を過ごす為に。
182 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/18(水) 23:47:18.71 ID:yh0HnsWzo

カチャン。

美琴「……しっかし、脳波のネットワークを構築するなんて、突拍子も無いアイデアをよく実行に移そうと思ったわね?」

木山が手錠をかけられ、警備員の車両に乗り込む寸前、美琴は名残り惜しさに近い感情から、そんな質問を投げかけた。

木山「複数の脳を繋ぐ電磁的ネットワーク、『学習装置』を使って整理された脳構造――――これらは全て、君から得たものだ」

美琴「は?」

上条「へ?」

上条と美琴は、その言葉の意味を測れずに首を傾げた。

しかし。

ただ一人。

生だけが。

安達「………………!!!」

まさか、とかつて脳裏を過ぎった可能性の実現に戦慄した。

美琴「私、そんな論文なんて書いた覚えないわよ?」

木山「そうじゃない」

彼女の言葉は警告か、餞別か。

木山「君のその圧倒的な力を抗えない……君も私と同じ――――」
183 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/18(水) 23:51:08.83 ID:yh0HnsWzo

『限りなく絶望に近い運命を背負っているという事だ』


警備員に急かされ、車両に乗り込んだ木山を見送りながら、生は思考に没頭していた。

安達「(…………あの人は……何処まで知っている?)」

少なくとも、現在進行形で『実験』に関与している研究者の中に『木山春生』の名前は無い。

と、なれば。

安達「(子供達の件を調べている過程で、知る機会があった……って、ところか)」

彼女が『実験』に関する情報を持っている事自体は、大した問題じゃない。

問題なのは。

安達「(別口を探っていた人間ですら、その『程度』は知り得てしまうって、今の状況の方じゃん)」

もしも……これが、『実験』に深く関係しているにも関わらず、
その立ち位置は完全な『部外者』である――とある少女が『本気』で調べようと思ったならば。

安達「(確実に露見する……)」

そう遠くない時期に『実験』は次の段階……学園都市内に隠蔽された施設内での実験から、屋外へ戦場を移す事になる。

安達「(そうなれば、何らかの形で情報は漏れる……どんなに隠しても、それは形を変えて蔓延する)」

その時、問題の中核にいながらも、完全に蚊帳の外にいる少女はどう動くだろう。
何も察知せずに自分の知らない場所で起きている嵐を看過してくれるだろうか。

安達「(…………無理、だろうな)」

ほぼ確実に発生するであろう突発的な事態に自分達は何処まで対応できるのか?

だが、結局は――やるしかないのだ。
184 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/18(水) 23:58:05.26 ID:yh0HnsWzo

〜警備員護送車両内〜


警備員側も負傷者が多く疲弊している事もあってか、車内にいる木山への監視は警備員が一人だけだった。

木山「…………喋りすぎた、だろうか」

知らぬが仏。という言葉もある。
何も知らずに生きられたら、とも思う。

だが、きっと彼女はそれを肯定しないだろう。

だから、だろうか。

自分に真摯に向かってきてくれた少女に……あんな、余計な事を告げてしまったのは。

???「確かに喋りすぎだったな、木山春生」

木山「っ!?」

気が付けば、自分を護送車に乗せた警備員が、冷たく見下ろしていた。

風見「まったく……もしかしたら、とは思ってたが……学園都市の情報管理はどうなってるんだ?」

木山「何を……」

風見「『妹達(シスターズ)』」

木山「!」ビクンッ

その小さな体の震えを風見は見逃さなかった。

風見「へぇ、その程度は知ってる訳か……いや、そこまでか?」

木山「……驚いたな。まさか子供を守る立場の警備員の中にあんな『計画』に関与している人間がいたとは」

風見「ん? ……あぁ、そう考えるよな、普通は。うーん、どう説明したもんか……」

木山「何を言っている……?」

風見「まぁ、アンタになら話しても問題ない……か」ゴソゴソ

簡単な方法を思いついた風見は、特に迷うでもなく『それ』を実行する。

ヘルメットを外し、素顔を晒したのだ。

木山「君は風紀委員の……!? しかし、君は先刻……いや、違う……? 違うが……同じ顔……?」

自分自身の呟きに木山は弾かれたように風見の顔を見上げた。
185 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/18(水) 23:59:45.70 ID:yh0HnsWzo

木山「まさか……君も……君達も……そう、なのか?」

風見「……学園都市製じゃないがな」

クローン人間である事を肯定しながらも、その出自については最初に断っておく。

木山「今日は、色々と驚かされる事が多かったが……最後の最後に強烈な代物が残っていた訳か」

風見「世の中、不思議なことが一杯だな」ニヤニヤ

木山「君がそれを言うのか? ……何故、学園都市に来たのか訊いても?」

風見「アンタの言葉を借りれば……絶望の運命とやらに囚われている二万人を『生かす』道を勝手に作りに来た」

木山「……そうか。となると、私が彼女に余計な事を言った為に君達の迷惑になってしまったのかな?」

風見「どうだろうな。部外者のアンタが知り得た以上、御坂美琴が事実を知るのは時間の問題だろうし」

木山「君達は……彼女の味方だと思っていいのだろうか?」

風見「基本的に『妹達』の味方ではあるが……御坂美琴個人に関しては、微妙な位置だなぁ」

例えば、御坂美琴と直接に話した事のある生であれば、彼女の味方をする事に迷いはないだろう。
風見にしたって、仮初の教え子とはいえ大事な生徒の友人である美琴の味方をしたい。

風見「御坂美琴が『妹達』に対して、どういうスタンスを選ぶか不明な現状じゃ、無責任に『味方になる』とは言えないじゃん」

最初は美琴に何も知らせずに『妹達』の問題を終結させるつもりだったが、
こうなってくると彼女自身の『実験』への介入は将来的に確実だろう。

木山「……誠実な回答に感謝する。それだけ聞ければ十分だ」

風見「こっちからも確認していいか?」

木山「あぁ、構わないよ」

風見「『絶対能力進化実験』に関しては知っているか?」

木山「一度は計画が凍結された『妹達』が、その実験に再利用される……という事までは知っている。詳細までは流石に……」

風見「まぁ、そのぐらいが限界か……逆にそれ以上の情報を知っていたら、消されてたかもな」

木山「実は私もそう思って、調べるのを止めたんだ。……『妹達』に関しての情報は『幻想御手』の作成に拝借したが」

風見「その『幻想御手』だが……その気になれば、また作れるか?」

木山「研究所のデータがあれば、一日で……ゼロからだと面倒だが……時間があれば可能だよ」

少なくとも子供達を救う手段として、再度『幻想御手』に頼るつもりない、と木山は断言した。

木山「元々、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)に代わる演算装置として必要としただけだから、あれに固執はしない」

風見「……ふーん」
186 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/19(木) 00:01:56.47 ID:W8+2pLyVo

木山「嘘じゃないよ?」

風見「うんにゃ、疑っている訳じゃ…………あ、そうだ。話は変わるけど、拘置所って……好き?」

木山「いや、入るのは初めてだから好きか、と訊かれても……その質問の意図は何だい?」

風見「よし、訊き方を変えよう。拘置所に入りたい?」

木山「……入りたくない、と言ったところで解放される訳じゃないだろうに」

風見「ふむ……よし、決ーめた」

木山「?」

怪訝な顔する木山をそのままに風見は携帯電話を取り出して、何処かへと連絡を入れる。

風見「…………もしもし? あぁ、こっちは何とかなった。如月は安達の代わりにカウンタックに乗ってプラントに。
    伏せていた『妹達』も撤退済み……そっちは? ……新倉も? そうか、一安心だな」

木山「(伏せていた『妹達』?)」

風見「それで椿から、『冥土帰し』の先生に頼んで欲しい話があって……そう…………木山春生の保釈金なんだけど」

木山「………は? いや、ちょっと待て! 君は何を頼んでいるんだ!?」

風見「いざとなったら、ギブ・アンド・テイクで俺達のクローン技術の一部を提供して……いや、再生医療にも活かせるだろ?
    え? 患者は善悪に関わらず救ける病的な医者だから微妙に心配? 医者なんだから、それはそれでよくね?」

自分に関しての話なのに自分を置き去りにして進められる話に木山は困惑する一方だった。

風見「……提供しなくても何とかなる? 件の子供達が……患者になればいい? 何だよ、それ。
    はい? 木山先生が子供達に必要か? ……必要に決まってるだろ、この人以外に誰が助けんだよ、子供達」

木山「っ……!」

風見「患者の為に必要なら、何でも用意する主義……? あぁ、それで患者になればいいって? じゃ、その方向で頼んでいいか?」

木山「……君は……何を……?」

ようやく通話を終えた風見は、木山の疑問に世間話のような気軽さで応じた。

風見「研究するにしたって、拘置所じゃ色々と面倒だろ……アンタを手伝ってくれそうな人に保釈金を頼んだ」

木山「で、でも!」

風見「確かにアンタは罪を犯したが……それで子供達が目を覚ますのが遅れるとしたらって、考えるとな」

木山「……警備員の言葉とは思えないな」

風見「そうかな?」

木山「少なくとも数分前に捕らえた犯罪者を警備員自ら保釈させようなんて……異常としか言えない」

風見「……まぁ、この仕事も潜伏の為の偽装だから、普通とは違うんだろうが……ただ、一つだけ警備員として正しい事をしてる」

木山「…………?」

風見「アンタも言ったろ――警備員(アンチスキル)の役目は子供を守る事。先達からの貴重な教えじゃん?」

それは普段の自身の口癖ではなく、思い浮かべた同僚の口癖にどこか似せていた。

木山「………………ふふっ」

風見「おいおい、笑うことはないだろうに」

照れくさそうに頭を掻きながら、風見は木山の頬を伝うものには気付かない振りをした。
187 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/19(木) 00:04:03.97 ID:W8+2pLyVo

美琴「(絶望……私が背負ってる……? 何よ、それ)」

上条「……ところで、生?」

安達「ん?」

上条「新倉もそうだけど、病院で昏睡状態だった学生達って、もう……大丈夫なのか?」

安達「個々人の容態確認はまだだが、多くの患者が目を覚まし出してるそうじゃん。
    ……まぁ、新倉は大丈夫じゃないか? どんな裏ワザを使ったのかは知らないが、遠隔で木山先生に助力してたし」

上条「そうか、それなら一安心……か」


オネーサマー!!!


美琴「……!?」ギクッ

上条「あれ、何か聴こえなかったか?」

安達「先輩想いの風紀委員の愛の叫び、かな」

美琴「……不味い、本格的に動けそうにない……どうしよう」

上条「御坂、どうかしたのか?」

美琴「いや、その……黒子が」

上条「あぁ、白井?」

美琴「その……あの娘に私のこんな状態を見せると……何を言われるか、というか……何をされるか、というか……」

このまま無防備を晒していれば「お姉様の怪我の確認を!」等と言われ、体中を触診されかねない。

上条「……だったら逃げれば……って、動けないのか」

188 :とある複製の妹達支援 [saga]:2012/04/19(木) 00:05:42.24 ID:W8+2pLyVo

美琴「うぅ……」

安達「とりあえず、白井は押さえておくから……上条と御坂は先に病院に行っててくれ。インデックスも待ってるんだろ?」ヤレヤレ

上条「そうだな、急いで戻ってやらないと。心配してるだろうな……御坂!」

美琴「何よ?」

上条「どっちがいい?」

美琴「どっちって……何が……っ!?」

突然の質問に疑問符を浮かべる美琴だったが、上条のジェスチャーを見て、その意図を理解した。

上条「『おんぶ』と『だっこ』」

美琴「な、何を言ってんのよ、アンタは!?」///

上条「いや、御坂は動けないんだろ? 病院に向かうなら、俺が運んだ方が速いって。それに……このままだと白井の奴、来ちまうぞ?」

美琴「で、でも……」

オネーサマー!!!

美琴「やばっ!?」ビクッ

上条「……まぁ、どうしても嫌だってんなら、俺は別に構わないけど」

美琴「…………ぶ」

上条「ん?」

美琴「……おんぶ……で、お願いします」

上条「りょーかい」ソソクサ

言質を取るや否や、さっさと上条は美琴を背負った。

美琴「ひゃあ!?」///

上条「それじゃあ、生」

安達「おう。俺も後で合流するじゃん」

美琴「…………あぅぅ」///
189 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/19(木) 00:08:44.27 ID:W8+2pLyVo

安達「(一緒に『だっこ』を提示したのは比較的、恥ずかしくない『おんぶ』の方を自主的に選ばせる為の布石か……何気に黒いじゃん、上条)」

去っていく二人を見ながら、そんな分析をしていた生の所へ猛スピードで白井黒子がやって来た。

黒子「安達さん! お姉様は何処に!?」ブンブン

安達「一足先に病院に行って、『幻想御手』の使用者の容態を見てくるって……ってか、一応は俺も負傷してるんで揺すらないで……!」ガクガク

黒子「あら、これは失礼を……ところで、支部に入ってきた映像にお姉様以外の民間人が映っていたのですが……今、どちらに?」キョロキョロ

安達「えーと、仮面の男は空を飛んで消えちまったし、佐天さんは初春先輩と一緒だと思うじゃん」

黒子「……そちらは別に構いませんの」

安達「(え、構わないの?)」

一方は明らかな不審者(不法侵入)だし、一方は黒子にとっても親しい友人の筈だが。

黒子「もう一人……ツンツン頭の……高校生の殿方がいらっしゃったと思うのですが」

安達「あぁ、上条か? 白井だって、俺が風紀委員になった日に会ってるだろ」

黒子「えぇ、存じてますの」

安達「色々と巻き込まれたり、首を突っ込む奴だから……わざわざ気にする程でも……」

黒子が事件に民間人が介入した事を気にしているのかと思った生は、そんな風に上条を庇ったのだが。

黒子「……この際、その上条さんが事件に関わった事は問題にしませんの」

安達「え、それなら何故……?」

黒子「最近、お姉様は今まで幾度も勝負を挑んでいた殿方と友好的な関係を築かれたとか」

安達「……あー」

黒子「先程まで、この場にいた筈のお姉様の姿と件の殿方と思わしき上条さんの姿が共に無い……安達さん、これをどう思われます?」

安達「…………さぁ?」

生は冷や汗をかきながら、あらぬ方向へと視線を逸らした。

黒子「やっぱり、お姉様と一緒に逃避行か、あの類人猿があああああああああああああ!!!!」クワッ

安達「おっと」ガシッ

空間移動で二人を追おうとする黒子を生は咄嗟にむんずと捕まえる。

黒子「ひゃい!? あ、安達さん?」

安達「――淑女が野暮な事するもんじゃない」

黒子「…………あの……今、何かなさいました?」

安達「何かって……白井の首根っこを捕まえただけじゃん」

黒子「いえ、それは見れば…………」

安達「どうかしたのか?」

黒子「(一瞬……能力が妨害されたような気がしたのですが……気のせい、でしょうか)」

安達「とりあえず、事件の事後処理だって残ってるじゃん。
    ……まさか、怪我人の同僚だけに仕事を任せるつもりじゃないだろうな?」

黒子「うぐっ……わ、分かりましたの」

安達「よろしい」
190 :とある複製の妹達支援 [saga]:2012/04/19(木) 00:12:34.94 ID:W8+2pLyVo

結局、最後までおんぶにも抵抗していた美琴だったが、
あのまま現場に残って黒子に動けない体を任せるというのは、もっと遠慮したかった。

美琴「――重いとか言ったら、このまま電撃かますからっ!」///

そんな訳で、上条を威嚇しながらも一応は大人しく、その背中に体を預けている次第である。

上条「うーん」

美琴「な、なによ!」

上条「いやさ、女子中学生の平均的な重さなんて上条さんは知る由もないんですが……御坂、少し軽すぎないか?」

からかうような声音ではなかったので……その言葉が純粋な疑問と心配から出たのは美琴にも分かった。

美琴「……そんなことはない、と……思う……けど」

上条「ちゃんと食べてる?」

まるで一人暮らしの子供を心配する母親のような訊き方である。

美琴「……少なくとも食事に関しては、アンタよりも健全かつ安定してると思うわ」

上条「ソレモソウデスネ」グスッ

美琴「何で泣きそうになってるのよ……」

そこで――ふと、会話が止まった。

上条「(…………ヤバい)」

微妙な会話の空白に上条は隠していた焦りを額に冷や汗として滲ませる。

上条「(考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな)」

確かに美琴が軽すぎるんではないか、と思ったのは事実だ。
しかしそれは、逃げの思考に他ならない。

『それ』から意識を逸らせる為に比較的安全な場所に思考を着地させただけ。

幻想猛獣との戦いで美琴を抱き止めた時にも思ったのだが。

――こんなにも軽いのに……どうして、こんなに『ふくふく』してるんだろう?

上条「(あぁ…………もうダメだ、意識しないようにすると、逆に泥沼だ)」トホホ

正直に言うべきであろう、御坂さんの体の柔らかさに上条さんの理性は限界です、と。
191 :とある複製の妹達支援 [saga]:2012/04/19(木) 00:15:04.89 ID:W8+2pLyVo

別に格好をつけて『おんぶ』を提案したわけではない。
疲労した美琴を案じての純粋な善意であって、そこには一片の下心もない。

しかし、だ。

上条「(……実際の『最中』に雑念を払える程、上条さんは枯れてませんっ!)」

実に迂闊。

というよりも、侮っていたと言うべきか。

年下。喧嘩友達。戦友。中学生。

どんなに言葉を並べ立てて、補強してみせたところで、御坂美琴は紛れも無く女性であり、相応の武器を備えている事実を。

上条「(女の子、なんだよな……)」

忘れていたわけでも、考えないようにしていたわけでもない。

言わば……保留していた事象。

上条「(……情けない)」

『御坂美琴』の『女の子』の部分に動揺している事も情けないが、上条としてはもっと許せないことがある。

上条「(今、御坂は力を使い果たして能力が使えないんだぞ?)」

「重いなんて言ったら、電撃よ?」等と言ってはいるが、現実的には不可能だろう。

上条「(しかも、俺の右手が体に触れてるから、余力があっても能力が使えないのは変わらないし)」

そう考えて、右手に触れている太腿の感触を意識しそうになって、ブンブンと首を横に振って、煩悩を断ち切る。

上条「(憎まれ口を叩いたって、こうやって体を預けてくれてるって事は、俺を信用してくれてるんだろうが!?)」

それをなんだ?

自分のこの体たらくは?

触れた体の柔らかさにドキドキし、
首に回された腕の力が少し強くなってドキドキし、
時々、鼻孔をくすぐる美琴の匂いにドキドキし、

今だって、必死に煩悩と戦っている。
192 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/04/19(木) 00:16:52.30 ID:W8+2pLyVo

上条「(情けない……本当に情けない)」ズーン

一人で百面相をしている上条の背中で、美琴の表情に不安の色が混ざった。

美琴「(……もしかして、やっぱり……重かったり……?)」

しかし、上条の歩み自体はスムーズで苦しさは見受けられない。

美琴「(平気そう、かな…………それにしても……意外と背中……広いんだ)」

こんな風に誰かの背中に負ぶさったのは、どれぐらい昔だったろうか。
今も世界中を飛び回る父の背中の記憶は、少しずつ消えていっている。

美琴「(……思えば、コイツの背中ばっかり見てた気がする)」

それは美琴が追いかけて、上条が逃げるという、これまでの二人の関係性故の感覚だった。

美琴「………………捕まえた」ギュウ

また少しだけ、首に回された腕に力がこもる。

上条「あの、御坂さん……何をなさっているのでしょうか」

美琴「…………充電、かな」

上条「……………………そっか」

美琴「……うん」

上条「……………………」

美琴「……………………」

上条「………………御坂?」

御坂「……………………すぅ」

上条「(…………人の背中で寝てやがるし)」


――――お疲れ様。


ほんの少しだけ、上条は歩く速度を落とした。
193 :とある複製の妹達支援 [saga]:2012/04/19(木) 00:27:08.44 ID:W8+2pLyVo
こんな所で幻想猛獣編は終了です。

次回予告はそのうちに
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/19(木) 00:40:08.39 ID:5N/yC/sB0
乙!
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 00:41:44.18 ID:22Hs6r2Ho
おっつおっつ
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/04/19(木) 00:42:45.81 ID:EBb9sLPho
乙なんだよ
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 00:49:28.81 ID:NP6Ji5/no
おつにゃんだよ!
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/04/19(木) 00:56:45.15 ID:aAjixRYAO

待ちわびたぜ
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 01:09:52.17 ID:MlFNsHws0
乙ー
これで木山せんせいも引き込めた……のかな  
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/19(木) 01:49:38.55 ID:K/dTQc8x0
乙!
次回も楽しみにしてる
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/19(木) 10:12:01.93 ID:SPDaVJ5K0

アクメツとのクロス部分も自然ですごいが、とあるも本来ならいないキャラがかっこよく絡んでいていいな
次回も楽しみに待ってるぜ
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 14:48:34.85 ID:mb6OCqJDO
だがもげれ
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 23:35:40.29 ID:j5L67zvIo
そろそろ充電が必要だね
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/05/15(火) 21:41:45.04 ID:936Pgm2vo
そろそろ来て頂きたいな
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/29(火) 13:02:44.77 ID:0NEP8NWbo
久しぶりに前スレから読み直し
いやーここのインさんはヒロインしてて好きだわー
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/12(火) 00:56:39.33 ID:UQ1k/QMno
そろそろ生存報告だけでもほしいかも
207 :とある複製の妹達支援 [sage]:2012/06/13(水) 16:25:16.01 ID:tAHX6BDco

テストやらレポートが重なって、書き進める時間が中々取れません。
チマチマとは進めてますが、投下するには足りない感じなので、もう少しかかりそうです。

とりあえず、行間パートを投下しときます。
208 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/06/13(水) 16:29:10.32 ID:tAHX6BDco

挿話 『The other queen's tedium』


〜とある喫茶店〜


???『――以上で報告を終わります、隊長殿!』

???「ハーイ☆ お疲れさまぁ。『仕事に戻っていい』わよ〜?」

少女の言葉をトリガーにして、電話の向こう側で男の様子が変わった。

???『……………………了解シマシタ……』ピッ

???「『木山春生』に『幻想御手』……また持ち前の正義力で事件に首を突っ込んでるのねぇ、あの『常盤台のエース』様は」

???「――お電話は終わりましたカ?」

後ろの席からの突然の声に動じるでもなく、少女は声の主に背中を向けたまま応じた。

???「そういえば先刻から、ずっと私を待っていたみたいですけど……どちら様かしら?」

少女の後ろの席にいたのは外国人らしき研究者風の男。

研究者「私はこういう者でス」スッ

男は席を立つと、少女に小さな紙を差し出した。

???「――名刺なら必要ないわ」

研究者「……何故でしょウ?」

???「記憶力には自信があるケドぉ、わざわざ偽名を記憶するのは面倒なのよねぇ」

研究者「お見通しでしたカ」

???「あら、私を誰だと思ってるのかしら?」

研究者「学園都市の七人しかいない、超能力者の一人。
     精神系能力の中でも最強を誇る、第五位『心理掌握』の食蜂操祈嬢とお見受けしますガ?」

食蜂「……判っていながら、その態度を崩さないのは評価に値するかしらぁ」

研究者「恐れ入りまス。評価していただいたついでに質問しても宜しいでしょうカ?」

食蜂「質問するだけなら自由だケド……ちなみにスリーサイズは秘密よ?」

研究者「いえ、それは割りとどうでもいいでス」

食蜂「なっ!?」
209 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/06/13(水) 16:34:25.70 ID:tAHX6BDco

研究者「先程の電話の相手はボーイフレンドではなさそうでしたガ……」

食蜂「あれは私が自由に出来る『駒』の一人……ちなみに警備員(アンチスキル)よぉ?」

研究者「……支配下にある情報源、という事でしょうカ」

食蜂「えぇ、そういうコトになるかしら」

研究者「貴女は、遠隔地にいる人間相手でも精神操作が可能なのですカ?」

食蜂「それに関してはノーコメントにしておくケドぉ……少なくとも、今の電話の相手には事前に『仕込み』がしてあるだけよ」

研究者「……なるほど、後催眠暗示という奴ですカ」

食蜂「頭の回転が早い男は嫌いじゃないわ。まぁ、直接イジった方が楽だから、普段は使わないんだけどねぇ?」

研究者「ふむ……怖い方ですネ」

食蜂「あら、その怖い相手に依頼があるんでしょうに。そんな他人事でいいの?」

研究者「おや、既に『読まれて』いましたカ」

食蜂「いいえ? これはただの洞察力。わざわざ『読む』必要は無いわ」

研究者「しかし、コチラとしても相手が貴女ならば、盗聴や情報秘匿に留意する手間が省けて楽ですネ」

読心を警戒するどころか、逆に読心を促すかのような研究者の物言いに食蜂の表情に愉悦が混じる。

食蜂「――あら、私を試してる訳じゃないのね」ピッ

軽く『表層』の部分を探って、研究者の意図を確かめる。

食蜂「それなら、遠慮なく………………」ピッ

クルクルと手元のリモコンをガンスピンのように回転させて、研究者へと向けた。

研究者「………………」

まるで報告書か何かのような記憶だった。
こちらが『読み易い』ように整理整頓された『それ』を難なく読み取っていく。

食蜂「(三沢塾の塾長からの依頼……? 
    確か、彼処は程度の低い産業スパイから、カルト宗教に鞍替えして、『上』からの処分が間近だったハズ……)」

研究者「(先日、トップが代わりましてネ。今回の依頼は新しい塾長からの依頼となりまス。報酬はキャッシュで3億)」

食蜂の思考を逆に読んだかのようなタイミングでの思考会話。

食蜂「私の改竄力に期待するのは当然と言えば当然だけどぉ……3億は少し……」

研究者「安いですカ?」

食蜂「……別に自分の資金力に不満も不足もないのよねぇ……むしろ、『この程度』の依頼内容に3億も出す人間には興味があるかナ☆」

研究者「(確かに報酬としては破格ですカ……しかし、残念ながら、私も依頼人の狙いまでは知りませン)」

食蜂「……一つだけ、直接訊いてもいいかしらぁ?」

研究者「なんなりと、『女王』」

食蜂「貴方から見て……その新しい塾長とやらのイメージは?」

研究者「――――――」

食蜂「……そう、楽しいアルバイトになりそう♪」

研究者の脳裏に浮かんだイメージを『読んだ』食蜂は満足気に微笑んだ。



その男のイメージは――全てを飲み込みそうな『漆黒』。
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/13(水) 19:51:34.44 ID:y+STlf3Oo
待ってたんだよ!
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/15(金) 05:52:50.68 ID:IjhmJz2d0
きた!アクメツきた!これでかつる!
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 09:08:29.36 ID:lzvmhu+DO
いつも楽しみにしてまする。
許可があればエブリとかでまとめたいくらいだぜ
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/21(木) 00:15:46.13 ID:08evRBEc0
test
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/21(木) 17:58:02.46 ID:mwvwGq5DO
>>1乙!

たまたま見かけて一気に読んで追い付いた!
アクメツ×とあるとか俺得すぎるwww

後、アクメツのハクメン台詞言ったせいで声がカッキーになってしまったwwww
(◇)ズェア!
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 20:34:24.32 ID:K8lsIKgY0
そろそろかなって期待
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/07/09(月) 14:11:57.19 ID:5/CdXvIs0
三連休辺りに来るかな?
217 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/07/09(月) 18:41:59.67 ID:BLhy8ym6o
待たれている感じなので、連休中の投下を目標に書き進めます。
と、言う訳で、運命の鎖を解き放て!な次回予告。


全てが解決した訳ではなかったが、幻想御手事件は終結。
上条当麻は御坂美琴と共にインデックスの元へと帰り、意識不明者達も意識を快復した。

だが魔術師たちとの戦いは、まだ終わっていない。
幻想猛獣との戦闘によって、疲弊した御坂美琴を欠いた危機的状況。

上条「もし、奴らに時間がないとしたら……今、御坂が戦えない『この状況』を放っておくと思うか?」

生「――だが、来ると分かっていれば、対処のしようもあるじゃん」

少年達は魔術師達の真意を探り、事態を打破する為に窮地を逆手に取った迎撃戦を展開する。

神裂「『神浄討魔』に『悪断将』……良い真名です」

戦場に立つ者の善と悪は三者三様。

人の為に善を行いながらも、それを自らの戦いに出来る者。
自らを悪とする事で、強いられた非業に耐える者。
悪を選びながら、その事に迷わずにはいられない者。

――そして、悪を滅する者。



辿り着いた真実の果てに少女を囚える幻想を殺す戦いが、始まる。

生「――――友達は見捨てない。何回、死のうがそれだけは絶対に譲れないじゃん」



次回、『偽善vs偽悪vs悪滅』

218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/07/09(月) 19:50:17.77 ID:Nz2e039E0
よっしゃ待ってるぜ!
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/09(月) 21:07:42.77 ID:rLVzYJJN0
予告きた!  おお、次も面白そう
楽しみにしてるね
220 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/07/15(日) 18:15:14.37 ID:bHoNt91Go


〜とある病院〜


佐天「それじゃ、新倉さん……また、お見舞いに来ますからっ!」

その気遣い自体は好意的に受け止めたが、
諸般の事情で佐天涙子には、この病室を訪れて欲しくない新倉生は、露骨に顔を歪めて見せた。

新倉「どーせ、すぐに退院するんだから……そんな気合を入れなくてもいいじゃん」

佐天「けど、今日の退院は無理なんですよね?」

新倉「あー……いや、それはなぁ……」

正直な話、問題を体調のみに絞れば、退院自体は可能だった。
手続きの問題も、この病院にいる椿生や協力関係にある医師に頼めば容易だろう。

――しかし、である。

新倉「色々と事情があるんだよ、事情が」

佐天「事情……?」

新倉「空より高く、海よりも深い事情が――!」

佐天「おぉ!?」

新倉「――ある、かも……?」

佐天「な、何で疑問形なんですか……?」

新倉「まぁ、今日は無理でも、今後の展開次第では明日にも退院は出来るだろうから」

だから、見舞いはいらない、という意味合いの言葉に今度は佐天が複雑そうな顔をした。

佐天「なんだか、私の事……避けてません?」

新倉「……そうなら、佐天限定の面会謝絶の札でもドアにかけてるじゃん」

佐天「うわっ、ひどっ!?」

まだ知り合ってから間もないが、生が良くも悪くも正直な性格の人間なのは判っている佐天は、少し安心したように微笑んだ。

新倉「ほら、あんまりモタモタしてると、外が暗くなるぞ」

佐天「むー……仕方ないなぁ……退院したら、連絡してくださいね! 色々とお礼だってしたいんですから!」m9

新倉「へいへい」
221 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/07/15(日) 18:17:13.43 ID:bHoNt91Go

新倉「ったく……別に礼なんか要らないってのに」

???「いやはや、お安くないな、新倉の」

新倉「椿か……他の入院患者はもういいのか?」

佐天と入れ替わるように病室を訪れた椿生の発言を新倉は軽く流しながら、話を逸らした。

椿「あぁ。『幻想御手』の使用で昏睡状態だった患者は全員、目を覚ました。
  無論、細かい検査は必要だろうが……」

新倉「それは良かったじゃん」

椿「……それにしても、千客万来だったみたいだな」

新倉「んー……そうかもな」

佐天の『置き土産』の雑誌類と、かつて『見舞い品』だった残骸達へと視線を向ける。

新倉が目を覚ました時、既に病室にいた浜面仕上とインデックスは別にしても、
佐天が来るまでの間に第七学区のスキルアウトの面々が続々と見舞いに訪れていた。

新倉「ある意味、お約束のエロ本を持ってきた連中は、いずれシメるとして……」

危うく、インデックスの魔導図書館にR指定の棚を作る事態になる所だった。
……いや、10万3000冊もあるんだから、その手の知識を内包する禁書の類もあるだろうか。

新倉「ふ〜ん。やっぱり中学生の女の子ともなると、占いの一つや二つ……」ペラペラ

こちらの嗜好を的確に狙い撃ちしてきた悪友達の『お宝』を隔離し、それとは対照的な雑誌類を眺める。

新倉「『明日から出来る、キャスティング法』……あれっ? ……この模様、何処かで見たような……?」

適当に選び出した雑誌を眺めると、そこには学生向けの占いの特集が組まれていた。

椿「ところで、フルーツバスケットがバスケットオンリーになっているが……?」

新倉「ん? あぁ、それは『心配してお腹が減ったんだよ!』と仰せのシスターが、慰謝料がわりに納めていったじゃん……腹に」

雑誌を閉じた新倉は、いかにも困った、という様子で肩を竦めてみせた。

椿「あれって、一人で食える類のものなのか……?」

新倉「……菓子類も平らげてったぞ」

椿「そ、そうか……」

何やら怖くなってきたので、二人はこの話題を終わらせる事にした。
222 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/07/15(日) 18:20:46.01 ID:bHoNt91Go

椿「――ところで、他の連中から退院を先送りにすると聞いたが……何かあるのか?」

新倉「迫間の奴とも簡単に話し合ったんだが……これを見てくれ」

言いながら新倉が取り出したのは、迫間が上条の家でインデックスにやらせたトランプだった。

椿「ん?」

疑問符を浮かべる椿を他所に新倉は素早くトランプを並べていく。

場に出されたカードは、

『ハートのQ』と『スペードのJ』と『黒のジョーカー』の三枚と、
『スペードのQ』と『クラブのJ』の二枚。

そして、手元に2〜10のカードを大量に残した。

新倉「これが今の状況なのは分かるか?」

椿「……あぁ、なるほど」

ハートのクイーンが『御坂美琴』
黒のジョーカーが『上条当麻』

スペードのクイーンがインデックスを追っている魔術師の一方……『神裂火織』
そして、クラブのジャックが『ステイル・マグヌス』だとすれば?

椿「俺達と妹達が残りの山だとすると……それが新倉か」

スペードのジャックが生達の中で唯一、能力を獲得した新倉生。
他の生を通常の数字札の範囲で考えれば、頭一つ抜け出た戦力となる。

新倉「そして、現状では更に……」ペシン

『御坂美琴』を示す、ハートのクイーンを引っ繰り返す。

椿「確かに『幻想猛獣』との戦闘で消耗しているようだったが……これがどうしたんだ?」

新倉「この状況で、更にこっちの戦力が減ったら……どうなるだろうなぁ?」

そして、自分を示しているスペードのジャックをも裏返しにしてしまう。

椿「――絶好のチャンスって奴にしか見えんな」

新倉「追う側と追われる側のアドバンテージは、圧倒的に追う側にある。向こうからの戦闘は、ほぼ確実に奇襲になるしな」

しかし、襲撃のタイミングが判っていれば……迎撃は容易だ。

椿「……なるほど」ニヤリ

新倉が退院は遅らせようとする理由を理解した椿は、悪人さながらの笑みを浮かべた。

新倉「……面白くなってきた、だろ?」ニヤリ

それはベットの上の新倉も同様で、病室の中で同じ顔をした二人の男が凶悪に笑い合っていた。


――微笑んでいるジョーカーが、彼らの戦いの結末を語ることは、ない。
223 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/07/15(日) 18:24:05.08 ID:bHoNt91Go

上条「……おーい、御坂さーん」ユサユサ

美琴「…………んぅ? あれ、ここ……病院?」

上条「やっと起きたか。やっぱり疲れてたんだな」

『やっと』という表現から察するに自分がかなりの時間、眠っていたのは間違いないようだ。
その睡眠の大半を上条当麻の背中で過ごしてしまった訳だが、そこに関しては深く考えないようにした。

軽く体を動かして、調子を確かめてみる。

美琴「(んー、結構……休めた感じ、かな……?)」

能力が使えるかどうかは別にしても、体力はかなり回復しているようだ。

美琴「うわ、すっかり夕方じゃない。もっと早くに起こしてくれても良かったのに」

上条「流石にあんなに気持ちよさそうに寝てる奴を叩き起せる程、上条さんは鬼じゃありません」

美琴「……まさか、今朝みたいに人の寝顔を観察してた訳じゃないわよね?」

上条「……してませんのことよ」

美琴「その妙な間が気になるけど……まぁ、大目に見てあげるわよ。ところで、インデックスは?」

上条「先刻、御坂に何か飲み物を買ってくるって……そういえば、少し遅いな」

一瞬、二人の脳裏に嫌な状況が思い浮かぶが、直後にそれは否定された。
224 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/07/15(日) 18:25:31.11 ID:bHoNt91Go

禁書目録「とうまー、みことー、手伝って欲しいんだよー」フラフラ

廊下の向こうから、大量の缶ジュースを抱えた修道女の姿が。

美琴「……いくらなんでも、買い過ぎじゃない? アンタ、いくら渡したのよ」

上条「いや、渡したのは五百円玉を一枚だけで……何故、あんな事に」

科学分野の尖兵?とも言える自動販売機に対し、ある種の抵抗感を持っていたインデックスであったが、
持ち前の学習能力の高さで、何とか自販機での買い物には成功した。

しかし、何故か当たりルーレットが連続で明滅し、大量のジュースを獲得する結果となった。

美琴「私もたまに当たるけど、こんなに連続して……ってのは、初めて見るわね」

上条「(……御坂の場合、当たり云々の前に自販機は蹴り飛ばすモノとして扱ってるような?)」

とは言っても、御坂美琴が蹴り飛ばしている自販機は過去に彼女の紙幣を飲み込んだ仇敵なので、報復と回収を兼ねているわけだが。

美琴「とりあえず、『ヤシの実サイダー』を……あとは適当に三、四本……と」ヒョイヒョイ

上条「おい、極自然な動作で上条さん用に『ガラナ青汁』を確保するのは勘弁してくれ」

禁書目録「わたしは『抹茶ミルク』に挑戦するんだよ。……そうだ、生達にも配ってくる!」トテトテ

思い立ったが吉日とばかりにインデックスは廊下を駆けていく。

美琴「『達』?」

上条「新倉の奴は目を覚ましたし、安達も意識不明者達の現状確認作業があるって、少し前に病院に来てたからな。
    それでも余るだろうから、残りは病院に来てる人なり、入院患者なりに配ればいいんじゃないか?」

美琴「あれ、持ち帰らないんだ?」

上条「……運んでいる途中で、ほぼ確実に不幸な結果になりそうだから遠慮したいです」

美琴「妙に現実味があるというか……それって、経験に裏打ちされた予想?」

上条「ま、そんなとこだな」トホホ

自分自身で不幸な『展開』が予想できてしまうのが、悲しかった。
225 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/07/15(日) 18:28:31.68 ID:bHoNt91Go

しばらくして、インデックスが戻ってくると、その隣には上条当麻とは別ベクトルでツンツン頭の少年の姿があった。

安達「失敬な、このステキヘアーをつかまえて」

安達生は一応、憤慨して見せた。

禁書目録「知ってる、怒髪天って言うんだよ!」

美琴「ぷっ……」プルプル

必死に笑いを堪える美琴の隣で、上条は苦笑している。

上条「えっと……もう風紀委員の仕事はいいのか、生」

安達「俺の割り当て――入院していた『幻想御手』を使用した患者の安否確認は今、終わったじゃん。
    幸いにも全員が意識を回復……とりあえずはこれで大丈夫だろ」

上条「新倉は?」

安達「ピンピンしてたよ。もう退院させても良いぐらいだが……とりあえずは様子見、だな」

上条「病み上がりだもんな……無理はさせられないか」

安達「あ、いや……」

美琴「ん? ……何かあるの?」

言い淀んだ生に疑惑の視線を向ける。

安達「まぁ、気にしないでくれ。ほら、全員揃ったんだから、とりあえず帰ろうぜ」

その視線から逃れるように生はインデックスの背中を押していく。

禁書目録「……怪しいんだよ」

安達「(そういうインデックスだって、帰ってきたら話があるって上条と約束したんだろ?)」ゴニョゴニョ

禁書目録「(そ、それはそうだけど……)」

安達「なら、善は急げじゃん」

禁書目録「……もう」

困惑と不安を綯い交ぜにして、インデックスは消えてしまいそうな笑顔を見せた。
226 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/07/15(日) 18:30:53.99 ID:bHoNt91Go

〜月詠小萌のアパート〜


なんとか小萌先生のアパートに帰還した四人はインデックスを中心に卓袱台を囲んでいた。

ちなみに部屋の中に小萌先生の姿はない。
仕事が長引いているのか、或いは気を遣ってくれているのかは不明だったが、どちらにしろ好都合であることには変わりなかった。

禁書目録「元々、十字教は一つだったんだよ」

だけど、とインデックスは続けた。

禁書目録「旧教、新教、ローマ正教、ロシア成教、イギリス清教、ネストリウス派にグノーシス派。
       どうして、こんなに別れちゃったんだと思う?」

上条「……そりゃあ……」

美琴「宗教に政治を混ぜたから、でしょ?」

分裂と対立と争乱を繰り返し、味方はやがて敵となり、同じ信仰の元で、道を違えてしまった。

安達「――宗教と政治の融合は、軍隊と政治の癒着と同じように危険だからな」

自然と口から出たのは、かつての親友から得た知識。

禁書目録「……みことはともかく、しょうからそういう台詞が出るのは驚きかも」

安達「失敬な。まぁ、受け売りなんだけどな」

禁書目録「……交流を失った私達は『個性』を手に入れたの」

ローマ正教は『世界の管理と運営』を。
ロシア成教は『非現実の検閲と削除』を。

そして、インデックスは語る。

今までは、深く語らなかった自分の事。

魔術師を討つ為に魔術を識り、対抗策を練る。

――対魔術師戦に特化したイギリス清教・必要悪の教会(ネセサリウス)。

敵の攻撃を防ぐ為に敵を知る。

しかし、敵を理解すれば心が汚れ、敵に触れれば体が汚れる。

その矛盾を乗り越えて……魔導書の持つ、歪みや淀みを一手に引き受ける。

それこそが『魔導図書館』――インデックスという少女の使命であり本質なのだと。
227 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/07/15(日) 18:38:12.24 ID:bHoNt91Go

禁書目録「でも、実感はあんまりないんだよ? ……私、自分に関する『思い出』がないから」

上条「――は?」

禁書目録「ちょうど『一年』ぐらい前に気が付いた時はもう日本でね? 最初に路地裏で目が覚めた時……自分が誰かも分からなかったの」

美琴「それって、記憶喪失……?」

禁書目録「変だよね? 魔術や魔導書に関する事は何一つ忘れてないのに。
       ……自分が『何か』は解っても、自分が『誰』かは判らなかった」

自らを証明する寄る辺を無くし、それらを得体の知れない『知識』のみに求めるしかない。
その状況は、どれほどの恐怖だろうか。

上条「えっと……そういう事って……あり得るのか?」

美琴「うーん……元々、『思い出』なんかを記憶している『エピソード記憶』と、『知識』を記憶する『意味記憶』は別の領域だから……」

安達「脳に障害を負って、どちらか一方に影響が出るケースは考えられるし……記憶喪失自体が心因性の可能性もあるじゃん」

しかし、どちらにしろ記憶喪失は、インデックスが極限状況に追い込まれたからこその結果である事に違いはない。

上条「くそったれが……」

そんな状態で、ずっと逃げ続けていたのか、誰にも頼らずに。

ずっと、一人で。

許せなかった。
こんな少女をそこまで追い込み、傷付ける連中が。

禁書目録「そんな時、私を狙う……あの二人の魔術師が現れて……私を狙っている以上、魔術結社の人間に違いないから、必死に逃げたの」

インデックスは二人組の魔術師に追われながら、過ごしてきた一年間をぽつりぽつりと話し始めた。
ここ最近になって、急に追撃が激しくなり、それまえと同様の逃亡は出来ず、進退窮まって学園都市へ逃げ込んだのだと。

禁書目録「……そして、皆と出会ったんだよ」
228 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/07/15(日) 18:41:55.78 ID:bHoNt91Go

美琴「(インデックス、か……)」

きっと、記憶を失った彼女自身にも、分からない。
インデックスという名を受け入れた理由。
その願いの所在。

だが、話を聞いていた三人は自然と理解していた。
それは信仰や献身かも知れないし、特定の誰かへの想いだったのかも知れない。

しかし、そのいずれかであろうと、確信めいて判る事がある。

彼女が魔導書による被害者を一人でも減らす為に自分一人が重荷を背負う道を選んだ、という事。

美琴「…………気に入らない」

ぽつり、と不機嫌さを滲ませながら美琴が呟く。

上条「……あぁ」

インデックスの気持ちを逆手に取る魔術師も。
彼女自身を『汚れ』であるかのように扱う教会も。

――そんな不条理の中でも、他人を案じてばかりいる……インデックスも。

安達「……とりあえず、インデックスの事情は分かったじゃん」

むしろ、大事なのはここからだ。
最も重要で肝心な事をインデックスから訊かなければならない。

この場に同席の出来なかった、迫間生という同胞の為にも。

安達「それで……インデックスはどうしたい?」

禁書目録「…………ねぇ、しょう」

安達「うん?」

禁書目録「私……言ってもいいのかな? それは……許されるのかな?」

少なくとも、迫間生はそれを望み、既に許した。
そして、それは全ての生の総意と変わらない。

だから、安達は彼の代わりにインデックスの言葉に応じた。

安達「――信じてみろよ」

姿の見えない神でもなく、自らが属する組織でもない。

ただ眼前の二人の人間を……上条当麻と御坂美琴を信じてみろ、と。

禁書目録「うん」コクン

意を決したようにインデックスは、ほんの小さく頷いた。
229 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/07/15(日) 18:45:58.06 ID:bHoNt91Go

信仰とは、望んでいる事柄を確信し、見えない事実を確認する事だ。

禁書目録「……とうま、みこと」

インデックスは望んでいた。

禁書目録「私……私ね……?」

確信などない、それでも願いの為に確かめなくてはならない。

禁書目録「一緒に居たい……とうま……みこと……しょう……皆と……一緒に居たい……!」

ずっと、堪えていた言葉と一緒に……ぽろぽろと涙が溢れた。

禁書目録「だから……だから……た……」

『助けて』の一言が、どうしても言えなかった。

それを言ってしまったら、もう本当に後戻りが出来なくなる。

この気持ちを我慢する事も一人で逃げ続ける事も……もう、耐えられない。

美琴「――もういい」スクッ

禁書目録「……え?」

不意に立ち上がった美琴の姿を見上げる。
涙に濡れるインデックスの瞳に映る、その少女もまた泣いていた。

上条「御坂……」

禁書目録「みこと……?」

美琴「もういいって、言ってんのよっ!」ギュ

禁書目録「……み、みこと……苦しいかも……?」

抱き締められたインデックスが困惑の声を上げる。

美琴「――絶対に守るから」

禁書目録「っ!」

美琴「魔術師とか魔導図書館とか……イギリス清教とか、そんなの全部、関係ない。私もインデックスと一緒に居たい」

上条「…………そうだな、関係ない。インデックスが俺達と一緒に居たい、そんな風に想ってくれるなら」

美琴「それを邪魔する連中は」
上条「それが叶わないなんて、ふざけた幻想は」

美琴「一人残らず」
上条「一つ残らず」

美琴「ブチ抜いてやる」
上条「ぶち壊してやる」

禁書目録「…………うん、ありがとう」グスッ

安達「(……だから言っただろ? 信じてみろって)」

この時、始まったのだった。
本当の意味でインデックスを救う為の戦いが。
230 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/07/15(日) 18:52:04.53 ID:bHoNt91Go

〜五分後〜


上条「(…………なんだか、仲の良い姉妹みたいだな)」

安達「上条、ちょっと」

上条「ん? ……分かった」

泣き止まないインデックスを優しく抱く美琴の姿を微笑ましく見守っていた上条だったが、安達に促されると、静かに部屋の外へと出た。

上条「生……どうかしたのか? 二人に気を遣って出て来た訳じゃないんだろ」

安達「……気にならないか?」

その質問の意図を測りかねた上条は、今までのインデックスとの話を思い返してみた。

――確かに気になる点がある。

上条「もうすぐ、『一年』ってのは気になるかな。
    それに合わせて追跡が激しくなったらしいのも……ヤバい感じがする」

何かしらの組織の人間であるのだから、上層部からの命令で本腰を入れて来た。……その程度ならいいのだ。
だが、『一年』という期間自体に何かしらの理由があったのなら。
それは一歩間違えれば、自分達の動きにも影響を与えかねない急所である気がした。

安達「それもあるんだけどなぁ……もう一つ、気になる事があるじゃん」

上条「ん?」

安達「……例の魔術師二人は、何処の誰だ?」

生の今更な言葉に上条は呆れながら応じる。

上条「インデックスを狙ってる、魔術結社の人間じゃないのかよ。
    アイツ等だってインデックスを『回収』するって……」


231 :とある複製の妹達支援 [saga sage]:2012/07/15(日) 18:54:05.51 ID:bHoNt91Go

――口に出してみて、致命的な事に気付いた。

上条「……『回収』?」

安達「そう、アイツ等は『奪取』とも『捕獲』とも言わなかった」

前にも感じた小さな違和感。

インデックスをモノ扱いしている事への怒りで、その言葉の意味を深く考えてはいなかった。
だが、インデックスから話を訊いた今では、それが看過していい類の情報か怪しくなっている。

上条「……もしも……言葉の通りの意味だったら……」

安達「単純に魔術師を退ければ……インデックスは助かるのか、怪しくなってきたじゃん」

魔術師を退けて、彼女をイギリス清教の教会へと送り届ける。
それが今の上条達がインデックスに対して出来る最大限の事だった。

上条「でも……そうだとしたら……そんなの、インデックスが救われなさすぎるだろっ!?」

最悪の事態をイメージした上条は思わず大声を上げていた。

安達「聴こえるぞ、二人に」

上条「うぐっ」

生の指摘に慌てながら、口を押さえる。

上条「……悪者を倒せば、それで解決……そんな話だったら、楽だったんだけどな」

考えなければならなかった。

ハッピーエンドを手にする為の。

『たったひとつの冴えたやりかた』を。

安達「だが、この考えが正しいとなると……時間的に追い詰められているのは連中も同じ、って事になる……か?」

何らかの限界時間(リミット)が設定されているのだとすれば、それこそが『一年』の区切りであるように思える。

上条「もし、奴らに時間がないとしたら……今、御坂が戦えない『この状況』を放っておくと思うか?」

安達「思わないな――だが、来ると分かっていれば、対処のしようもあるじゃん」

元々が同一人物であるからなのか、安達生の考えも自然と新倉生と同じ場所へと帰着する。

上条「対処って……どうするんだ?」

安達「決まってるじゃん」


――待ち伏せだ。
232 :とある複製の妹達支援 [saga]:2012/07/15(日) 19:03:12.23 ID:bHoNt91Go
今回は一巻最終パートの四分の一で投下終了です。

……うーん、投下してみると、量が少ない気がする。
レポートと試験さえなければなぁ……トホホ。

レポートやりながら板チェックしてるので、何かあればレス返しします〜
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 21:33:43.97 ID:IFsHapvm0
乙 いよいよか 生達の活躍に期待だな
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 21:38:30.91 ID:nDaFtGnB0
これって現在進行形でどんどん「伏せられた妹達」が雪だるま式にふえてるってことなの?
食費がたいへんそうだなww
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 21:49:54.78 ID:vjA7JBXdo
おつにゃんだよ!

236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 01:37:58.88 ID:czStPwvP0
おおお…きてたぁ!
乙です
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 14:24:44.18 ID:l13bBkS6o
いよいよ本番の内の一つが開始か
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 02:02:50.72 ID:ZYhjYhCJ0
ひゅー!
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/10(金) 01:41:24.70 ID:kvcQL9dco
うずうず
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 17:45:35.96 ID:3EQlgAwz0
まだかなまだかな
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/09/04(火) 01:13:05.93 ID:qfXVaesXo
舞ってる
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/09/08(土) 21:35:06.87 ID:RFhDrSG60
三連休あるからその辺りかな〜
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/20(木) 14:36:44.71 ID:M+w4O2UP0
まだかなー
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 00:24:17.12 ID:X2fc37t20
ひょっとしてもう過ぎてるんじゃ…   
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/28(金) 19:09:07.15 ID:Tc9TNUnA0
まだなのか…
233.52 KB   
VIP Service SS速報VIP 専用ブラウザ 検索 Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)