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「そっか、幸せだったのか。インデックス」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/10(火) 13:24:57.35 ID:ayEgDbkAO
注意事項


1 時系列弄ってます

2 再編成物


3 ちとくどいかも


4 ほんのり上琴のつもり 嫌な方は回れ右


5 メンタル続く限りは完結目指す


それでは立ったらいきます

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諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/10(火) 13:26:40.01 ID:ayEgDbkAO
7月25日 日暮れ時の学園都市を黒いフード付のコートを着た人物が、何かを探るように歩いていた。季節はずれの格好をしフードを目深にかぶり、怪しい雰囲気ただよわせてるにも関わらず、周囲に居る人々は奇異の目を向けることはなかった。

黒いコートを着た人物は歩みをふっと止める。まだ前に進もうとしていたのに別方向に体が向かおうとしていたからだ。
これは人払いの魔術、恐らくルーン式
そう判断すると、求める者がこの先にある可能性から黒いコートを着た黒衣の人は先に一歩を踏み出す。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/10(火) 13:27:39.89 ID:ayEgDbkAO
人払いの壁を越えると様子を探るまでもなく、遠くから銃声が聞こえてくる。然も単発ではなく連射音、さらに複数である。そちらに意識を向けると風を切り空気を乱し何かを払おうとしている動きが観測できた。

人払いの魔術からしてこの先にはおそらくステイル・マグヌスがいると判断していたが、この先で闘っている者は違う。
この覚えがある感覚は

聖人 神裂 火織

今までの経験からして、この先で戦闘を行っているのは彼女である。





4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/10(火) 13:28:45.62 ID:ayEgDbkAO
戦闘が行われている場所まで駆け足で急いでいたが、銃声が途絶え神裂火織の動きというか魔術の波動が止まったように感知した。
戦っている相手は銃器を使用していることから警備員〈アンチスキル〉と推測していたが、聖人である神裂火織が銃器程度に後れをとるとは思えない。さりとて彼女が人死にをだすとも思えなかったが黒衣の人物は焦燥をおぼえ走りを速めていた。


もうすぐ目的地というところなのに急に違和感を感じるようになる。この先にいる「者達」に会ってはいけないような恐怖にも似た感覚を

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/10(火) 13:29:24.59 ID:ayEgDbkAO
区画を抜けると怒声が響き渡った。


「うるっせぇんだよ、ド素人が!!」

「知ったような口を利くな!! 私達が今までどんな気持ちであの子の記憶をうばっていったと思ってるんですか!? 分かるんですか、あなた達なんかに一体何が!」


神裂火織の魂の叫びだった。
そして、彼女はあの子に対する彼女の愛情を諦めに似た鬱屈とした心情を吐き出し続けていた

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/10(火) 14:59:11.98 ID:ayEgDbkAO


しかし彼女の目の端に黒衣の人物の到着が映ると言葉が詰まる。

神裂火織の気迫に押され、黒衣の人物に彼女の周囲にいるウニ頭の少年やツインテールの少女、髪の長い少女、頭が花畑な少女そして同じ顔の4人の少女は気付く余裕はなかった。

これ以上の戦闘を回避しようとツインテールの少女が声かける。


「おっお気持ちはわかりましたが、それはありえないことですの」







7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/10(火) 15:52:21.85 ID:ayEgDbkAO



「「えっ!?」」


いまだ緊迫した状況が続いているにも係わらず、味方のウニ頭の少年と髪の長い少女の方から疑問符があがる。
声をかけた少女の肩が力が抜けたように落ちる。あきらかに緊張の糸が切れてしまっている。


「えぇと初春どういうこと?」

その様子を見た髪の長い少女はあわてて隣の少女に声をかける。


「佐天さんも上条さんも仕方ないですねえ」


初春と呼ばれた、頭が花畑の少女は呆れたようにつぶやき、説明しようと口を開きかけるが


「完全記憶能力ですが、世界に数人いることが確認されていますとミサカは報告します」








8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/10(火) 15:56:14.35 ID:ayEgDbkAO


「その方々が記憶の圧迫で死に至ったなどと言うことは確認されていませんとミサカは学習装置〈テスタメント〉で得た知識を披露します」


「前提として先ほどのお話しが正しいとして、完全記憶能力者が1年間の記憶を保存するのに15%の脳内の領域を必要とするならば、7年以内で脳内が埋め尽くされ死亡に至ることになるとミサカはドヤ顔で意見を述べてみます」


「さらに完全記憶能力者の方々は様々な年齢の方がいらっしゃいますと、ちょっと考えれば分かるじゃねぇかよという悪態を心の中に隠しつつミサカは補足説明します」


9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/10(火) 15:59:55.07 ID:ayEgDbkAO


代わりに同じ顔の4人の少女が、持っているサブマシンガンを地面に向け、戦意がないことを示しながら順番に説明していった。


黒衣の人物は黙って様子を窺っていた。
と、云うより驚愕のため口が利けなかったためである。

何故なら、其処にいる全員の顔を知っており、尚且つもう一人の求める者がいた事もあるが、同じ顔をした少女が4人いた事が本当の理由である。

なるほど先程感じた何かとはこういうことかと心が凍りつきそうになりながら思っていた。


10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/10(火) 16:07:06.69 ID:ayEgDbkAO


同じ顔をした4人の少女の話しを聞き、神裂火織は呆然とした表情をしながらも、愛用の武具である七天七刀を強く握ったままであった。


神裂「で、でもあの子の頭の中には10万3千冊の魔導書があるんですよ? それに周期がくると苦しみだすのは本当のことです!!」


鵜呑みに出来ないと反論を試みる神裂に再度、同じ顔の4人の少女が順番に説明を始める。


11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/10(火) 16:14:53.92 ID:ayEgDbkAO


「まず、人の記憶というのはひとつではありませんとミサカは語りかけます」


「言葉や知識を司る意味記憶」

「運動の慣れなどを司る手続記憶」

「思い出を司るエピソード記憶」

「という風に元々の記憶の容れ物が違うとミサカはご説明します」







「だから」


「たとえ魔導書といえ知識でしかない。じゃないと禁書目録は成り立たない」


「魔導書を10万3千冊覚えて意味記憶を増やしたって、エピソード記憶が圧迫されるなんて、脳医学上ありえないのよ」


4人と同じ声質ながら響きが違う声がした。


12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/10(火) 16:19:47.15 ID:ayEgDbkAO


ツンツンとしたウニ頭の少年とツインテールの少女、髪の長い少女、頭が花畑な少女そして同じ顔をした4人の少女が初めて黒衣の人物に気付く。

同じ顔の4人の少女は表情こそ動かさず、咄嗟に持っていた銃器を向けるがそこで何かを感じたのか、動きが固まってしまった。


神裂「あっ、あなたはしっ知っていたんですね!? 禁書目録の同行者。 もしかして1年もまえからですか!?」




13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/10(火) 16:40:20.73 ID:ayEgDbkAO


「……そう1年前のあの時からわかっていたの、黙っていてごめん」


「……あの子が苦しんでいるのは間違いなく、上層部が仕掛けた首輪の作用」


「あなた達に教えて、万が一知っていること知られちゃったりしたら」


「……どうなるか分からなかったから教えられなかった」


黒衣の人物は目深にかぶっていたフードをあげる。

そしてウニ頭の少年上条当麻に顔を向けながら


「そして、ここにはあの子を救える者がある」


「で、あの子インデックスはどこにいるのかしら?」







序章 「再会」

終わり

14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/10(火) 16:43:50.29 ID:ayEgDbkAO
今日はここまで
文章ヘタだなぁ
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/01/10(火) 16:54:24.48 ID:DvD51k1Co
乙 続きに期待
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 22:02:18.49 ID:YZDYtfjIO

黒衣の人物誰だろ…話し方は女性っぽいけど
あとなんで超電磁砲組がこの場にいるのかも気になるところだね
次回期待
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/01/11(水) 01:41:28.64 ID:91PYIxqAO
ちょいと投下します。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga sage]:2012/01/11(水) 01:44:35.58 ID:91PYIxqAO



7月19日 病院から退院したばかりの上条当麻は寮に帰るため、鉄橋のうえを歩いていた。

横に目を向けると思い出深い河原が見え、足を止めてしまう。

そこで今はいない、当時中学生になったばかりの御坂美琴と1年以上前にケンカをしたのだった。

中学1年生の女の子とケンカと言えば、微笑ましさを感じられるかもしれないがそんなものじゃなかった。

なんといっても御坂は、超電磁砲の異名を持ち、ここ学園都市230万人の頂点に立つlevel5の一人だったからだ。



19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga sage]:2012/01/11(水) 01:48:46.57 ID:91PYIxqAO



勝負、勝負と追っかけてくる御坂に辟易として勝負を受けたが、もう命懸けだった。

結果は涙目になった御坂に負けたふりをしたが、演技がヘタクソ過ぎて余計怒らせてしまい、一晩中の鬼ごっこになってしまった。

まぁ何だかんだとしょっちゅう街中で会ってしまい、あれやこれやとあるうちに段々と仲良くはなれたと思う。

最後はそれ以上のなんと言ったら良いんだろうか、御坂はなんといっても中学1年生だったし、まあ呼び名を考えるには難しいが親しい関係だった。

そんな御坂を不幸にしてしまった。

俺に出会いさえしなければ……
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 01:53:41.40 ID:91PYIxqAO



「上条さん、そんなところで何、物思いに耽ってるんですか?」

後ろを振りかえると、いつもの3人組みの少女。

その内声をかけてきたのが冊川中学の制服を着た髪の長い少女、佐天さんだ。

佐天さんと同じ冊川中学の制服に風紀委員の腕章をして、頭に盛大な花飾りをしている少女、初春さんはこちらを心配そうに見ている。

対象的に常盤台中学の制服に身を包み、初春さんと同じ風紀委員の腕章をして、腰に手を当て不機嫌そうにしているのが白井だ。

「全く、そんな調子ではお姉様が悲しみますの」

21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 01:56:33.32 ID:91PYIxqAO



「あのな、人をまるで今から川に飛び込みますっていう自殺志願者みたいに見るな! 言ううんじゃねぇ!」

「なっ!散々言わせてもらいましたが、単身学園都市第一位の一方通行に挑もうなどと自殺志願者ですの!!!!」

「そっそうですよ?実際、実験を停止させることは出来ましたけど、あくまでも停止ですから… まだこれからのことも考えなくちゃいけないんですから!」

白井は入院中と同じこと言うし、初春さんに至っては自分の責任だと思って、えらく心配性になっているし、俺を何だと思っているんだか。






22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 01:59:11.99 ID:91PYIxqAO



この3人組みとの付き合いも、御坂と出会ってから数週間後だから、1年以上にはなる。

白井と初春さんとのきっかけは、いつものごとく御坂と追いかけっこをしている最中に銀行強盗と遭遇した時だった。

白井は風紀委員の研修で銀行に寄り、初春さんも風紀委員を目指していたが偶々銀行に居合わせ、銀行強盗に巻き込まれていた。

追いかけっこの途中、突如白井のテレポートで歩道に現れた初春さんにビックリして立ち止まり、事情を聞いた御坂が助けをだしたのだった。



23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 02:02:31.95 ID:91PYIxqAO



結局、強盗犯を捕まえたのは白井自身だったが、危ないところを助けてもらった御坂に二人して懐いてしまった。

特に命の恩人となった御坂に白井はお姉様、お姉様と性別を越えた感情を抱いている様子であった。

御坂がいた常盤台中学を白井は目指した。

白井はそれを御坂がいなくなった後、果たしたのだった……

佐天さんについてはその後、初春さんの友達つながりで知り合い、あの御坂美琴の名前を高めた幻想御手事件で絆を深めた。


24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 02:06:13.46 ID:91PYIxqAO



佐天さんは当時、俺と同じ無能力者level0でやはり劣等感を抱いていた。

まだ小学6年生であり、慌てることもなかったのに幻想御手の誘惑に負け、意識不明に陥ったのだった。

幻想御手事件が解決され意識を取り戻した後、御坂にlevel5になるまでの努力を聞き、気を取り直しようだった。

御坂がいなくなった後、努力を続け佐天さんはlevel2まで今ではなった。

いつか、御坂に誉めてもらうために……


25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 02:09:47.94 ID:91PYIxqAO



初春さんはというと目指していた風紀委員になった。

幻想御手事件の際に解決の糸口を掴んだことが評価され、ただどうも情報処理の一点突破だったらしいのだが…

今回の妹達事件でも、情報を引き出してくれたのは初春さんだった。

そのために俺が先走って単身一方通行に挑み、勝ったとはいえ入院してしまったことに責任を感じてしまった節がある。


26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 02:14:28.92 ID:91PYIxqAO



ところで、アレ以来思い続けていたがある。



自分自身の不幸体質でそれまでも色々あったが、御坂と出会った去年の4月から7月の末まで事件続きだった。

大きい事件で言うと、虚空爆破事件、幻想御手事件、ポルダーガイスト事件








そして





ショッピングセンター事件または都市伝説事件








今回の妹達事件はその亡霊じゃないかと思ってしまったが。



その日 7月29日 御坂美琴は行方不明になった……








27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 02:17:57.74 ID:91PYIxqAO



俺が自分の不幸体質に御坂を巻き込んでしまったのではないかと。













今日3人組みが俺の様子を見に来た理由は分かっている。



御坂がロシアのショッピングセンターに向かう前、最後に俺と会った日だから……


28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 02:21:44.37 ID:91PYIxqAO
本日分終了です

少しは読みやすくなったかな?
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 04:05:06.62 ID:5277Vpal0
がんばれ
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 07:40:53.28 ID:U6x30iAE0
これは期待 乙   
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/01/11(水) 21:49:29.64 ID:91PYIxqAO



ピンポーン♪ ピンポーン♪
ドンドンドンドン


7月20日 上条当麻の朝は決して目覚めのいい朝とは言い難かった。

昨日は結局、中学1年生女子3人組みに別れるまでお小言を貰い続け、今日妹達事件の後の対応を相談する約束をさせられている。

ちなみにこんなに朝早くからインタフォンを鳴らされしたり扉を叩かれているのには理由がある。



32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 21:50:46.69 ID:91PYIxqAO



入院中授業を受けられなかった分を補うための補修の予定が午後からあり、昼頃には学校へ行かねばならなかった。

だったら午前中に相談しましょう、3人で朝から上条さんの寮に向かいますからとなった訳だ。

それにしてもインタフォンを何度も鳴らすし、扉を叩き続けている。

上条はそんなに心配なのかよとため息がでた。白井がテレポートで突撃してくることを考えたら恐ろしくなり、さっさと起きることにした。

ちょっと待ってろ、と言いつつ一応軽く水だけで顔を洗いタオルで拭きながら、玄関へ向かい扉を開いた。





33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 21:52:13.25 ID:91PYIxqAO



開いた先には案の定、3人娘が居るわけたが3人が3人共、顔を青ざめさせていた。

まさかシスターズに何か有ったのか、緊張に体が強張った。


白井「上条さん、外をご覧なさいまし!ベランダに死体がありますのー!」


上条「はぁー?」


いつも、御坂関連以外は冷静な白井の意味不明な言葉に只でさえ寝起きの頭がフリーズしてしまう。


初春「いや、その死体かどうかは分からないのですけど?」


34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 21:53:28.79 ID:91PYIxqAO



佐天「通りから、上条さんの部屋を見上げたらベランダに人が引っかかっているのが見えたんです!最初布団かなって思ったんですけど、手や足らしき物が見えましたから! とりあえずベランダを見てみましょう!?」

そんなバカな話はないだろと、3人娘の冗談だよなと思いつつ、上条はベランダに向かった。

でも、そんなことがあるならば隣りの部屋の住人 土御門が人形でも引っ掛けておいたイタズラかもしれん、人騒がせな奴と思いながらカーテンをあける。

と、大慌てで窓をあける羽目になった。



35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 21:55:09.23 ID:91PYIxqAO



間違いなく人、それもどうやら女の子がベランダの手すりに乗っかっていた。

既に部屋にあがり上条の後ろにつづいていた3人娘が上条の横をすり抜け、ベランダに出る。

3人で協同して引っ張りあげると上条の部屋の中まで連れ込み床に寝かした。

上条があっと言う暇もない、見事に早業な協同作業であった。


上条「……あー、その生きてるのかそれ!?」


件の見た目、金細工を施したティーカップのような白い服を着た13〜15才ぐらいの少女の具合を見ていた白井に聞く。


白井「無事のようですが具合が悪そうですの?」


36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 21:56:29.71 ID:91PYIxqAO



初春「すぐ病院に運んだ方がいいかもしれませんねえ? これってシスターが着ている修道服でしょうか? 純白のものって?」


そう言いながら初春は携帯を取り出し連絡を取りかけるが、少女が目を開け口を開く。


「おなかへった」


全員が硬直した。

追加事項として言っておくが少女は整った容姿をしており、髪は長く銀髪、肌は白くそして今開いた目は緑色の瞳をしていた。

あきらかに日本の方ではない。外国の方である。


37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 21:58:14.06 ID:91PYIxqAO



一応学園都市には外国人も居るには居るが、まるで黙って微笑んでいれば聖母か女神かという少女の容姿と服装のせいで、それが日本語であるとは認識出来なかった。

常盤台中学で数カ国語を習っている白井もどこの国の言葉かと訝しげに考え込んでいると。


「おなかへった」


再度少女は話しかける。


「おなかがへったんだよ! おなかいっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな?」


難民の子供が食料を欲しがるような訴えに、佐天はコンビニ袋からサンドイッチやヤキソバパンを差し出した。



38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 21:59:55.22 ID:91PYIxqAO



少女はパッと起き上がると、その容姿を裏切る勢いでかぶりつき

貪り始めた。

皆が呆然としているうちにコンビニ袋に残っている食料まで手を伸ばし、すべてを食い尽くさんとしている。

ハっと上条は思いついて


上条「……佐天さん、あれ、もしかして?」


佐天「あははははは……その通りです。上条さんの朝食にと買ってきたんですが。退院したばかりで、買い物もしてないんじゃないかと思って、昨日買い物袋を持ってなかったし。気を利かしたつもりだったんですけど。ちなみに昨日の夕食は?」



39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 22:01:24.24 ID:91PYIxqAO



昨日のうちに冷蔵庫の中身を確認していたが、さすがに5日も入院していれば全滅は免れられない。


上条「……非常食のカップラーメンでせう」


白佐初「「「……お気の毒さまです(の)」」」





上条「……ふっ不幸だぁぁ」





40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 22:02:51.23 ID:91PYIxqAO



謎の少女の食事が終わるとこちらから自己紹介をすませ、白井と初春による事情聴取が始まった。

二人とも風紀委員であるので、上条と佐天は二人にまかせ3人の話しを聞くつもりでいたが


「名前はね、インデックスっていうんだよ?」


上条「どう聞いても偽名じゃねーか!」


初春「『目次』さんですか……」


インデックス「出身はね、たぶんイギリスなんだよ?」


佐天「多分って」



41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 22:04:50.19 ID:91PYIxqAO



インデックス「見ての通り教会の者です。イギリス清教の必要悪の教会〈ネサリウス〉所属のシスターなんだよって?あっ必要悪の教会〈ネサリウス〉は言っちゃいけなかったんだよ」


初春「そうですか。言っちゃいけなかったんですか……」


白井「では、学園都市にはどのようなご用事で?」


インデックス「訳は聞いてないんだよ?一緒に旅していたエムが学園都市が目的地って言ってたんだよ」

42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 22:10:30.43 ID:91PYIxqAO


暇つぶしで勢いで書き始めたけどやっぱり大変。

こんなの見てくれている人いるんかなあ
此処まで


43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/11(水) 22:14:13.50 ID:NioNhlzKo
みてるんだよ!
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/11(水) 22:17:52.24 ID:91PYIxqAO


あっありがとうございます


なんか涙がでるわ
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 22:19:44.52 ID:UychKwPN0
終着まで追いかけるつもりである
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 23:33:34.14 ID:sx8OcsjSo
見てるぜ
そして応援している
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 23:59:51.18 ID:ZYG9ImGIO
エム…一体何者なんだ…

あっ、ちゃんと読んでますんで完結まで頑張ってくれると嬉しいな!
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/12(木) 20:21:24.71 ID:2fdCIl3AO



インデックスの言うエムという人物は話に聞くと、インデックスと同じぐらい年齢の少女、1年程前からインデックスと世界のあちこちを旅して廻り、その地で救いを求める人を助けてきた。

世話好きで正義感が強く、気が強すぎるのが玉に傷であるもののとても優しい人。

等々インデックスはエムについて、主の話しを語るがごとく嬉しそうに話す。


上条「じゃー、なんでお前、今一人なんだ? わがまま言って嫌われて置いてきぼりか!?」


イン「そんなことないもん!!!」





49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/12(木) 20:24:30.92 ID:2fdCIl3AO



上条の余計な一言にインデックスは涙を浮かべながら、端から見たら可愛らしく激昂し、上条は売った喧嘩は当然、受けて立ちますよという感じで口喧嘩が始まった。



白井と初春はあきれた様子で眺め、佐天は先程の話しのなかであの地でなになにを食べたなどの話しの辺りから、セレブなのか、セレブなのか?シスターになればセレブになって世界中で美味しいものが食べられのか?と呟き続けまだこちらに帰って着ていない。


50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/12(木) 20:29:02.85 ID:2fdCIl3AO



白井は思う。上条が思わずイヤミを言ってしまった理由を。

せっかく気を利かして貰って、朝食を用意してもらえたのに全部奪われてしまったこともあるのだろう。食い物の怨みは根が深いものがある。



ただインデックスの語るエムの人物像が誰かを思い浮かべさせ、彼女自身の薄い胸にもチクリとした痛みを与える。


51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/12(木) 20:31:56.73 ID:2fdCIl3AO



普段は明るく振る舞って、上条がそれを誰かに今まで語ったことはない。


彼女達も想像するしかない。あの方が行方不明になった後の彼の様子から。


インデックスにはエムという信頼と親愛を向ける相手がいる。





魂の半分を預ける相手がいる。














それがとても妬ましく思えてしまうのだ。




52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/12(木) 20:38:35.22 ID:2fdCIl3AO
もう一度後で投下します




もう少しヒーロー然とした上条さん書くつもりだったのに


コレってウツ条になるのかなぁ?

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/12(木) 21:59:28.02 ID:2fdCIl3AO



上条とインデックスの口喧嘩は白熱していた。罵り合いまでいくようであれば白井は止めるつもりではあった。

とはいえ、立派に事情聴取になっており、白井と初春は様子見しながら聞いていた。



ただ内容としてはえらく不穏で、疑問符がつく話しばかりである。この後、上条の部屋を出た時に思ったことは、風紀委員の職務を遂行して報告したとしても信じてはもらえない(ですの)だった。



イン曰わく
学園都市まで後少しというところで、魔術結社の襲撃をうけた。



初春(魔術結社!?襲撃?テロリストかなんかでしょうか?)








54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/12(木) 22:04:12.89 ID:2fdCIl3AO



イン曰わく
エムとはその時、ここは任せて先にいけと言われそこで別れた。



白井(まるで映画か日本の戦略物資〈アニメ〉の死亡フラグですの)



イン曰わく
学園都市にはエムから渡されたあいでぃーで入った



初春(不法侵入ではなさそうですけど、ほぼ偽名でよくIDが発行されましたねえ?)



イン曰わく
ところが別口の魔術士2人に待ち伏せされ追われた。逃げている途中、ビルからビルへ渡っていたら撃たれて落ちちゃった。



白井(ああ、それでベランダに?ってよくそれでケガひとつなかったんですの?ところで魔術士とは一体???)


55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/12(木) 22:10:38.55 ID:2fdCIl3AO



イン曰わく
魔術はあるもん。



初春(はああ?えっとその証拠がその修道服『歩く教会』ですか?法王級の防御能力ですか?わけがわかりません!?)



イン曰わく
超能力があるなら魔術だってあるんだよ?



白井(超能力については知っていらっしゃいますの。まあ大覇星祭とか世界中に公開されておりますし…level4のテレポーターって上条さん!!それは私めの個人情報ですのォォ!!)



イン曰わく
幻想殺し〈イマジンブレイカー〉?神の奇跡だって消せる?そんなの信じられないんだよ?



初春(普通に考えたら信じられないでしょうねえ?)



56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/12(木) 22:19:26.68 ID:2fdCIl3AO



イン曰わく
だったら『歩く教会』に触ってみるんだよ。



白井(……ああ、それで何かあったら両方の証明になるということですの?)



イン曰わく
ふふん、そんなものが本当にあるんなら、神の幸運や赤い糸の伝説なんかも消されちゃうんだよ!!



初春(あっ不味いです。あの右手は御坂さんとの絆ですからそんな事言うと、まっ何も起きないで……)







バキィィィーン





フワッ
ハラー−−………‥‥‥‥!!!!!?


57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/12(木) 22:30:42.76 ID:2fdCIl3AO



立ち上がったまま、口喧嘩を続けていた上条の目の前で、インデックスが着ていた衣服が糸が解けたように、それぞれパーツごとに落ちていく。


頭部の帽子のようなフードを残して。


インデックスの裸体が束の間見える。


次の瞬間、普段からは考えられない速さで初春が動き、インデックスを守るように立ちはだかり、インデックスが見えなくなる。


上条が弁解を口にしようとするも、佐天が風を起こし上条の顔にぶつけける。



上条は風をぶつけられ、目を開けておれずよろめきバランスを崩す。



58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/12(木) 22:52:24.03 ID:2fdCIl3AO



バランスを崩されたところへ、白井が腕を取り、脚を引っ掛ける。


上条は抵抗しようと体勢を戻そうとした瞬間、身体が浮き玄関に向けて投げ飛ばされた。


玄関の上がり框まで転げ出されると、脇を初春が駆け抜け、扉を開き外から押さえている。


ちょっと待てと言いかけながら起き上がると、白井と佐天の二人が腕を片方づつ捕らえ、上条を部屋の外に引きずり出す。


すぐさま二人は部屋の中にとって返し、扉が閉められ、







鍵が掛けられた。







上条は部屋の外で何が起こったのか反芻する。



3人のあまりにも見事な連携プレーに驚嘆しつつ、ここは上条さんの部屋なんですが追い出されて鍵まで閉められるとは何事でせうか、と思うが出てくる言葉は本日2回目のこれしかなかった。
























「不幸だぁ……」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/12(木) 23:19:04.01 ID:2fdCIl3AO
>>1です
早くも2回目の「不幸だ」マンネリと言わんでください……
3人娘がいて展開変えようとしたらこれしか思い浮かばなんだorz

出来るだけ原作のキャラを崩さんようにと思ってたんですが皆さんから見てどうでしょう?


レスくれた方ありがとうございます。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/01/12(木) 23:33:00.83 ID:OOxQIKs80
乙。楽しみにしてるぜ。

エム(M)はミコッちゃんかな。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 23:37:43.29 ID:Uy8DKz2zo
乙!
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 23:38:07.01 ID:hjv2AmjQo
ちょっと改行が多すぎて読みにくいかも
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/12(木) 23:43:40.33 ID:V8A0NoAto
連携プレーわろた
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/12(木) 23:48:27.86 ID:2fdCIl3AO
>>1です

ハハハ 皆さんわかっているとは思いますが一応序章当たりに来るまで名前を出すつもりはありませんよ♪


基本シリアス風味のつもりですけど>>1の性格かほんのりお笑い風味を入れてしまいます。全体の雰囲気が壊れてないかちょっと心配?
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 01:32:27.89 ID:MGVCppFD0
乙 でも、冊川中学× 柵側中学○ 、魔術士× 魔術師○ ですの 
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 01:33:56.33 ID:MGVCppFD0
(あっ!) 柵川中学○でした  失礼しましたの!  
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/13(金) 02:42:41.63 ID:G6v3b6tAO
>>65
あ、すいません。ご指摘ありがとうございます

多分、某グ〇ンかなんかの影響からそういうイメージでかいちゃったんだろうな
恥ずかしいorz
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/13(金) 23:21:34.85 ID:G6v3b6tAO



さて、上条は困っていた。自分の部屋から追い出されて上はTシャツ、下はトレーニングパンツとパジャマを着ているよりはマシだろうが、裸足のままポツンと立っているのである。自分の部屋の前で。

どう見ても変な人と認識されてもしかたない。それに朝早くから扉を叩かれたり、口喧嘩をして騒々しかったりして今の扉の開け閉めである。隣りの部屋の土御門あたりが様子見に顔を覗かしたりしたらどうなるか。

QED:痴話喧嘩で自分の部屋から追い出された男

切実に部屋の中に戻して欲しいと思う。しかしここで扉を叩いたりして訴えたりしたら推論の補強になってしまう。せめて夏休み初日ということで土御門には遅くまで熟睡していて欲しかった。

改めて上条は自分の不幸体質を怨んでいたが、また口ずさみそうになったいつものフレーズに思考が廻る。

そういえば御坂はこれを代償行為と言っていた。

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/13(金) 23:27:13.50 ID:G6v3b6tAO



『人の顔を見るなりその反応は何なのよ!!』

まだ、よく追いかけっこをしていた頃、バッタリ会った御坂の顔を見てつい言ってしまっていた。

『ったく、アンタそんな言葉、人に向かって言ったらその人に移るんだからぁ!!』

御坂は科学の申し子のような存在で、そんなオカルトめいた言い種は単に反省しろと言っていただけだったんだろうが……

『んで、アンタよくそれ言っているようだけどどういうことよ?』

また、ビリビリから追いかけっこが始まるかと警戒していたが、顔を会わせた途端に言われてしまい、ちょっとは反省してそんなことを聞いてきたんだろう。




70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/13(金) 23:29:58.61 ID:G6v3b6tAO



あまり人に話すようなことでもなかったが、御坂の真剣な表情を見ているうちにいつの間にか幼少の頃からの話をしていた。

『疫病神』学園都市に来るまで、丁度小学校にあがるまで上条はそう呼ばれていた。上条が不幸であるというだけで。

あまりにも不幸なことが続くものだから、両親やほんの一部の人を除けば、上条が不幸を呼んでくる、上条が側にいると周りまで不幸にする、子供から大人までそう信じて『疫病神』と呼んだ。


71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/13(金) 23:32:28.75 ID:G6v3b6tAO



子供らは側に来るなと石を投げてきた。それを停める大人はいなかった。ある時、貴様のせいだと云われ包丁で刺された。借金を抱えた男だったらしい。

その後、誰かの紹介があったのか、父親に学園都市にいってみるか?と聞かれた。

どうやら自分は周りに迷惑をかけているらしい。だったら学園都市にいって能力者になれば、人の役に立つことも出来るかもしれない。子供らしい夢も持って学園都市に行くことにした。

学園都市に来ても、相変わらず不幸であったが暴力を振るわれることはなくなり、多少マシにはなった。


72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/13(金) 23:35:31.09 ID:G6v3b6tAO



学年が進むに従い、能力を開花させる級友も増えてきたが、上条は身体検査を受けてもまったくの無能力者のままだった。

ある時、上条の右手は能力を消せることがわかった。級友達は気味悪がり、これまでの不幸ぶりと合わせてより疎遠となった。

それでも上条は人を救える人間になって、皆と仲良くなりたいと思っていた。勉強はまるでダメであったが。

73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/13(金) 23:38:58.05 ID:G6v3b6tAO



中学校にあがった頃、ある研究者から右手について調べたいという依頼があった。

木原と名乗った研究者は何人かの能力者を連れて来て上条に能力を向けさせた。覚えているだけで発火、発電、水流、風力、それとなんか根性とか言っていた奴。すべて右手の前に消えた。実験自体はほんの数日で終わった。研究者は何処かからの連絡が終わったあと

『あぁ、これで実験は終わりだ。まぁ異能力が消せるだけで何の役に立つもんじゃねぇな。神の奇跡さえ消せるがそれだけだ』


74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga sage]:2012/01/13(金) 23:42:41.86 ID:G6v3b6tAO



それからの上条の日常は校庭を歩けばサッカーボールが顔面に当たり、教室の掃除をすればバケツの水をかぶり、買い物に出れば財布を落とし、お金をおろそうとすればカードをのまれ、人を助けようとすれば迷惑がられたうえビリビリされたりと何の変哲もまったくなかった。

いつの間にか『不幸だ』が口癖になっていた。

『それって自虐行為よね♪』

『俺は、変態かー!!』

『違うわよ、専門じゃないからうまく言えないけど、それでストレスを軽減してるんじゃないの?』

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/13(金) 23:54:13.91 ID:G6v3b6tAO



『はー?』

『えぇと?たまに聞いたりするけど、リストカットとかする人、死ぬのが目的じゃなくて最初は注目されたいとか、気づいて欲しかったとかでやっちゃう人が次第にカットすることで逆に安心出来るようになっちゃうとか?』

『それは自傷行為だろーが!!』

『じゃー海に向かって叫んでみたり、悩みごとを人に聞いて貰って楽になったとか?』

『なんだ、それはー?』

『でも、話して少しスッキリしたんじゃないの?』

『うっ……』

『結構、あとで恥ずかしくなっちゃうだけどねぇ♪まぁ用法とは違うかもしれないけど、代償行為みたいなもんじゃないの?』

完全にからかわれていた、からかわれていましたよ。しかしなんとなく言わんとすることは分かった。ようするに満たされない自分を自分で貶めることによって、心の安定を得ようとしているってことだろう。



76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga sage]:2012/01/14(土) 00:00:38.77 ID:GzpbtvwAO



では人を救いたいという思いはどうだろうか?
救った相手の救われた顔を見て自分が満たされたいという思いは?
自分が満たされていないから相手にそれを求めているだけではないか!?
それで本当に救えていると言えるのか!?
自分の偽善を押し付けているだけではないか!?
所詮、自分の救いたいという気持ちは偽物ではないか!?


『今更だけど、ありがとうと言っとくわ!みんな見ぬ振りをしてたのに、アンタだけは助けてくれようとしたのにね!』
『あっ、あー』

77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga sage]:2012/01/14(土) 00:07:21.93 ID:GzpbtvwAO



『ところで、さっきの話しだと能力を消せるのって、その右手だけよねぇ? だったら右手をなんとかしたら勝てちゃうわけだぁ♪』

いやな汗が流れ、2〜3m先にいる御坂からどうやって逃げようか、考えていた覚えがある。

『そんなことしないわよ。そういえばその右手、なんか能力名とかあんの?』

『……いや、上条さんは身体検査を受けてもまったくの無反応のほんとの無能力者ですよ?能力名とか持てませんでせう』

『じゃぁさっ……』

『幻想殺し〈イマジンブレイカー〉とかどうよ?』


78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/14(土) 00:14:57.29 ID:GzpbtvwAO
>>1ですよ

最後のあれを書きたいだけの回想回だったのになんで?

本日分終わりです
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 00:31:26.42 ID:740fHmoco
乙!
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 01:19:04.08 ID:cIwEwk5g0
「せう」は「しょう」と読み替えてもおかしくないか、確認してから使うといい

面白いし先の展開がすごく気になる  続きもよろしく!
81 :名無しNIPPER [saga]:2012/01/14(土) 18:35:26.06 ID:GzpbtvwAO



上条はなんだそれはー?と思わないでもなかったが、御坂は人が努力して努力して一生懸命目指した夢〈超能力〉を簡単に壊してくれちゃって、しかもそれ天然素材でしょ?学園都市最高位のlevel5の一人、ミサカ先生に勝ったんだからもっと堂々としてなさいよ!!……それにさぁオカルトを信じる訳じゃないけどマンガとかに出てくる言霊って知ってる?そういう名前にしとけば…不幸を呼んでくる、側にいると周りまで不幸にする…なんて迷信なんかも消せちゃうんじゃない?なんて言いやがった。

そんなことを言ってたのに、言った本人の御坂がいなくなっちまうなんて……


82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/14(土) 18:49:05.94 ID:GzpbtvwAO


最初は面倒くさいガキンチョに絡まれたもんだと思っていたんだが。

その後、御坂は勝負を挑んで来ることはなくなり、二人は面倒ごとに巻き込まれては協力しあい、時には背中合わせに共闘して事件を解決したりしていた。

上条もビリビリ中学生と呼んでいたのを改めて、御坂と呼ぶようになっていた。御坂の方は相変わらずアンタ呼ばわりだったが。

それまでの上条は周りに協調しようとも、それで恨んだりはしなかったが疎外感を受ける日々を送っていたんだがな。

一緒にいて、御坂もlevel5故の孤独を見せることがあった。高見に上った人には、見上げてくれる人がいても、一緒に上ってくれる人は少ないということだろうか?

上条とあの3人娘といて楽しそうな御坂をみて上条は嬉しかった。





83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/14(土) 19:22:40.14 ID:GzpbtvwAO



自分たちには関係ないことだったが、学園都市と外の協力機関との間で齟齬が生じていた。協力機関の不満を解消するため、ロシアのショッピングセンターでlevel5のデモンストレーションを行うことになり御坂が選ばれた。

真っ当な主人公〈ヒーロー〉気質な御坂にはお似合いだと思ったし、自分と離れていれば問題に巻き込まれることはないと上条は思っていた。

それなのに、



84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/14(土) 19:25:54.16 ID:GzpbtvwAO



上条は思考の海に沈み、時間のたつことを忘れ、扉に寄りかかっていた。鍵が開けられる音がして、

ドン

初春は扉を開けようとしたところで途中、何かにぶつかり、慌て

初春(ふぅ……今、あたったのは間違いなく上条さんですね)

慌てなかった。少し間をおきゆっくり扉を開く。

咄嗟に扉から離れようとしたのが逆に災いして、扉に押し出され廊下の向かいまで跳ばされてしまった上条は急いで、何もなかったように扉の方に向き直っていた。


85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/14(土) 19:33:50.83 ID:GzpbtvwAO



初春「あっ、すいませんでした。どうぞ中へお戻りください♪」

飴玉を転がすような甘ったるい声をかけられる。

何故だろう。初春さんのイメージとして真面目で責任感が強い娘というのがあるが、こういう誤魔化そうとしたときに分かってますよ、ばりに見逃してくれる要領よさを見ると、優しさよりも黒さを感じるのは?

中へ通される前に


上条「あー、もー大丈夫なのか?」


初春「はい、あっ、でも何も言わないであげてくださいね♪」


上条「?……」


上条は部屋へ戻り、インデックスの前におそるおそる座る。インデックスの表情を窺うとまだ不機嫌そうである。

そりゃそうだろう真っ裸に剥かれてしまったのだ、皆の前で。佐天さんあたりにだいぶ慰められたのだろう。3人の中でもそういうのは佐天さんの得意分野だ。

インデックスはパーツごとに分かれて落ちていった筈なのに、修道服を着直している。ハテ、どう直したか?

その、時開けておいた窓から風が流れカーテンが揺らぎ、合間から日差しがちょうどインデックスを刺す。

ギラギラ光る何十本もの安全ピンが眼にいたい。

86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/14(土) 19:39:51.04 ID:GzpbtvwAO
>>1ですよ

ちょっと短いですけど投下

深夜もう一度行けるようなら行きます

次あたりで第1章終了予定
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 21:46:07.32 ID:pPvG5QFRo
乙っす
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 21:51:55.92 ID:740fHmoco
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/15(日) 14:34:55.01 ID:vCEzONXAO



上条「アイアンメイデンかー!!??」

インデックスに頭からかぶりつかれた。
鋭い痛みがはしり、これならあの食いっぷりもわかると遠のきそうな意識のなか考えていた。さよならお父さん、お母さん当麻は今から大食いシスターの捧げものとなり胃袋にきえます。


上条「はー、酷い目にあった。もう上条さんのライフは……」


初春「自業自得ですよ♪」


上条(もっと、はっきり言っておいて欲しかった……なにげに?やっぱり黒いんじゃ?白井と二人で風紀委員の白黒コンビか?)


白井「もういいですの。本題に戻りますけど、何故その?魔術師ですか?に狙われているのかお教え願いますか?」


先程からのギャグ展開に話しが進まなくなったことにじれて、白井が核心を聞く。佐天にもう一度慰められていたインデックスは身を震わせ、うなだれながら


イン「……私の持ってる、10万3千冊の魔導書。きっと、それが連中のねらいだと思う」


90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/15(日) 14:36:54.06 ID:vCEzONXAO



上白佐初(……10万3千冊の魔導書!?)


上条「まーたまた、良くわからない話しになってきたんですが?」


白井(おかしいですの?何処か拠点に?いえ、先程のお話しでは何処か拠点があって旅をしていたようではございませんでしたの?)


初春(何か記録媒体に?でもそれ程の分量となると一冊あたりがどれくらいかはわかりませんが、幾つかは必要になると思います。持ち物をさっき服が脱げた際あらためましたがそのような物は?)


91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/15(日) 14:40:06.54 ID:vCEzONXAO



佐天「えーと?インデックスぅーどこに持ってるっていうのかなぁー? はっ、まさかバカじゃ見えないって本?」


イン「バカじゃなくても見えないから安心するんだよ、さてん。勝手に見られると意味がないもの」


佐天「じゃあ一体どこにあるって言うんだよ?」


イン「私の頭の中」

92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/15(日) 14:43:38.64 ID:vCEzONXAO



初春はそれによって気付く。最高の容量を持った記録媒体を。

ただしデバイスの関係で記録媒体として活用することはほとんど不可能である。学園都市の高位能力者であればいくらかマシであろうが、記録媒体として利用できそうなのは並列演算によってネットワークを形成している、シスターズぐらいしか存在しないかもしれない。

が、世界にはそれを可能とする者がいる。神に与えられたギフトか、呪いか?


初春「完全記憶能力ですか?」


93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/15(日) 14:47:58.60 ID:vCEzONXAO



イン「そうだよ。エイボンの書、ソロモンの小さな鍵、ネームレス、食人祭祀書、死者の書。代表的なのはこういうのだけど。これらの危険な書の一字一句を記憶しているんだよ」


上条達には魔術自体がどういうものであるかが理解出来ない。幻想殺し〈イマジンブレイカー〉が『歩く教会』を破壊したようであるが、科学で説明出来ない、理解が及ばない「非科学」があると証明したに過ぎない。

今、インデックスは危険という言葉を使ったが、いったいどう危険であるかが、まず分からないのである。



94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/15(日) 14:54:21.84 ID:vCEzONXAO



白井「その?危険というのは魔導書でしたか、それを読むと魔術が使えるようになるという意味で、危険ということですの?」


イン「あっているようで、少し違うかも?魔導書の特に危険な本は世界の裏側を解き明かしたもの?言い換えれば世界を動かしている理論を示したもの」


白井(こちらに例えれば、研究者が演算式を構築しても能力開発を受けてなければ能力を使えない。能力者で実験してみるしかないというようなこでしょうか?)


イン「魔術の術式そのものを記した魔導書もあるけど、まず魔力を精製することができなければ魔術は使えないんだよ」


初春(いくら演算式が構築できても、自分だけの現実〈パーソナルリアリティ〉が無ければ能力が使えないというのと同じですかねぇ?)


イン「魔力を精製できて、術式通り行えば火や水を自由に出したり、操ったりすることが出来るんだよ」


白井「では、私どもも魔力を精製することが出来れば、魔術を使うことが出来ると?」


95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/15(日) 14:58:12.22 ID:vCEzONXAO



イン「それはやめたほうがいいんだよ!!能力者とは使う回路が違うから、能力者が魔力を精製して魔術を使おうとすると拒絶反応を起こして、無理すると死んじゃうんだよ!!」


白井はそこで不審に思う、なぜ?


イン「あっ、魔導書が危険だっていうのはね、さっき言ったように世界の裏側を示したものだから、宗教心が薄かったり、精神的防御が弱かったりしたら読むだけで精神を汚されてしまうんだよ。一般の人が1ページ読むだけで廃人コース確定なんだよ」


インデックスは何かを誤魔化すように言葉を重ねる。



96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/15(日) 15:29:55.25 ID:vCEzONXAO



インデックスはそんな物を10万3千冊も記憶しているということはそれを読んだということになる。


イン「それに、魔導書一冊でも、その理論を元に術式が組めれば強大な魔術を使うことが出来るんだよ」


インデックスは次第に憂いを込めた表情になりながらいう。


イン「あなたち〈科学サイド〉の核兵器?みたいに」


沈黙が場を支配する。

すっ、とインデックスは重さを感じさせない動きで立ち上がり、聖母のような微笑を浮かべ


イン「それが、私が狙われている理由。私の頭の中の10万3千冊の魔導書が欲しいから。だから、もう行くね。さてん、しらい、ういはるととうま?あなた達に迷惑かけたくないから……」


インデックスは身を玄関の方に向き直って静かに歩きだす。


上条「ちょっと待てよ、だったらなおさら放っとけねーだろ。今の話しなんざ、一切理解できねーけど、とにかく追われいるって分かってんのにお前を外になんか放り出せるかよ!!」




97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/15(日) 15:34:35.50 ID:vCEzONXAO
最初、インデックスはきょとんとして顔だけこちらへ向ける。


イン「私は彼女を地獄の底まで連れて行ってしまったから……」


悲しい笑みに変えながら、……とうまは彼女に似てるね?

インデックスを守るため、盾となり、その場に残った友人を忘れている訳がなかった。きっと無事であると信じて、既に学園都市までたどり着いていると信じて、彼女に会いたいのだろう。

扉が開き、そして閉まる音がした。


上条「ちょっと、お前らー?」


上条は動けないのではなかった。Tシャツの裾、トレパンのモモの部分を掴まれ、そして肩を押さえられていた。


白井「上条さん?わたくしめは風紀委員ですの。IDを持って学園都市に来られたら方がお困りであれば、お助けするのも職務ですの」


初春「そうですよ。上条さん」


白井「追われているのならば、わたくしめの能力のほうが役に立ちますの?」




98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/15(日) 15:40:19.11 ID:vCEzONXAO



初春「わたしは、風紀委員の支部へ行って、怪しい者がいないか、それとエムさん、フード付きの黒いコートでしたか夏にその格好なら目立つと思いますから、監視カメラで探してみます」


佐天「じゃあ、私は初春の付き添いと連絡係だね!」


上条「俺は?」


白佐初「「「そろそろ補修の時間です(の)♪」」」


上条は妹達事件に続いてインデックスの登場により、あの頃を思い起こす。御坂がいてくれて、事件が連続して起こり、つらくとも分かち合、い慌ただしくも楽しかった日々。そして喪失。

今度こそ、






第1章 『喪失と…』
終了

99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/15(日) 15:45:04.49 ID:vCEzONXAO
>>1ですよ
駆け足でここまでやってきました。

気づいてらっしゃると思いますが初スレで稚拙な文章、批判ばかりならずっとsageとくか退場しようかとも思いながらの無謀な試みにレスつけて励まして頂いてありがとうございます。

漸く1章が終わりチョットだけネタバレ


上条さんとインデックスが出会うベランダ、上条さんが引き上げる予定だったんですけど

ベランダで露出プレイになるのでやめました


インデックスの噛み付きシーン

原作どおりにすると真っ裸で噛み付くインデックス……
書けませんorz



ということであんなになってます。


次は1.5章原作でいう行間です

今日はこれで
感想とかあれば嬉しいです
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/15(日) 15:47:46.58 ID:Fbc/q9EBo
乙なんだよ
101 :sage :2012/01/15(日) 22:58:03.78 ID:/5Bjh2Xk0
乙!!
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 23:25:16.14 ID:03Ihf+T60
乙 普通女の子はまっぱのまま噛み付いたりなんて絶対に!しませんからね
インさんのためにも改変は良かったと思います 
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/16(月) 02:20:57.90 ID:3Dl3culX0

細かいけど補習ね
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/16(月) 21:18:23.47 ID:F8RN+E4AO
>>1です
第1.5章です
最初の説明が長いですけどあくまでもモブキャラです。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/16(月) 21:19:46.58 ID:F8RN+E4AO

学園都市近郊の山林


7人からなる魔術結社。人数的には予備軍が正しいかもしれない。しかし一人一人が結社のリーダーを務めるだけの実力を有し、自らの誇り故に魔術結社を名乗っていた。

彼らの魔術結社の祖はいにしえに遡り、十字教の成立より古い。西欧の一角に居住していた民族における自然崇拝的宗教の祭司集団が元である。

民族内で高い地位が与えられていた彼等も、ローマの法に追われ十字教の浸透により衰えた。集団の中にも十字教に乗り換える者が次第に増え、現代においては彼等を除いた大多数は十字教に取り込まれていた。

彼等は十字教に迎合しない、最後の原理主義者の集まりであった。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/16(月) 21:23:02.60 ID:F8RN+E4AO



彼等の活動の目的は彼等の文化、信仰を奪った十字教への復讐。

しかし彼等の個々の実力は高かったが規模の大きすぎる敵に対しあまりに矮小であった。そのため戦力を覆す切り札を必要としていた。切り札は敵である十字教の一派、イギリス清教が用意してくれた。
禁書目録、世界中の10万3千冊の魔導書を納めた魔導図書館を彼等は欲した。欲しいからと言って敵がくれるわけがない。奪い取るしかなかった。あらゆる手を使い禁書目録に関する情報が集められた。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/16(月) 21:26:59.61 ID:F8RN+E4AO



禁書目録には必ず同行者がついていることがわかった。天才錬金術師、聖人である少数派十字教の元女教皇、天才と呼ばれた炎の魔術師。それぞれが1年から2年の間を同行者として過ごしていた。

そんな名の知られた実力者を排除し、禁書目録を捕らえる計画を進めるなか、1年前に名も知れない10代前半の少女が同行者としてついた。

彼等は様子をみていたが、別の禁書目録を狙う魔術師や魔術結社はそれを聞き次々と襲いかかった。
ところが禁書目録の同行者にすべて撃退され、魔術結社の幾つかは壊滅状態に追い込まれる。

しかも、数千人の命を生贄に強大な魔術を実行しようとした狂気の魔術師をも倒し、復讐に燃える聖人と引き分けるなど、禁書目録の同行者たる偉名を高めていた。

彼等は聖人と同等の実戦能力と判断し、計画を実行に移す時を選んでいた。


108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/16(月) 21:32:09.23 ID:F8RN+E4AO



集めた情報に禁書目録は1年周期で記憶が消えるというものがあった。それが7月29日。

禁書目録の同行者さえ排除できれば、記憶がない禁書目録など容易に捕らえることができる。ちょうど学園都市に向かっているという情報がはいり、彼等は学園都市の直前で襲撃をかけた。

禁書目録の同行者は禁書目録を先に逃し迎え打った。彼等は禁書目録の同行者を追い詰め、あらかじめ儀式場に設定していた山林に追い込んでいた。

市街地での戦闘を避けるため、禁書目録の同行者もわざと誘いに乗りこちらの儀式場に入ったのだろう。

しかし、それは甘い考えだ。

彼等はそう思っていた。こちらは元々自然崇拝系の魔術を得手としている。

山林のような自然が多い場所は彼等の魔術を発揮しやすい。そして聖人にも通用するように術式を練りに練ってある。例えばこの儀式場には幾つかの仕掛けをしてある。

109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/16(月) 21:38:38.59 ID:F8RN+E4AO
彼等が持っているある物を核に儀式場に設定した山林に神格を与えた。

それにより自然環境から発生する生命力〈マナ〉を魔力に加工し山林にみたしていた。さらに彼等7人以外からの魔力を感知すれば、神格化された山林が異物として排除しようと神威を持って攻撃する術式を組んでいた。

そして禁書目録の同行者に第一撃が降ろされる。

ドォゴォォォォォンと腹の底に響く音。使われた魔力が規定量まで戻らなければ次を放つことができないが、その一撃は絶大な威力を誇る。
それでも一撃で決まるとは思っていなかった。

7人で牽制しつつ神威で弱めていき、最後に彼等自身でとどめを打つ。それが彼等が考えていた必勝プランであった。しかし神威のあと、禁書目録の同行者からの魔力反応が感じられない。

突如木々の間を抜け、余波で木々を焼きながら青白い雷光が走る。彼等の一人が撃たれ、呻き声とともに倒れ臥す。近くにいた一人が倒れた仲間の元に駆け寄り、他2人が雷光が走った先へ向かい、残りは援護に廻った。

110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/16(月) 21:46:51.50 ID:F8RN+E4AO



雷光を撃った本人、禁書目録の同行者と呼ばれ、インデックスからはエムと呼ばれた彼女は既にその場から移動していた。

彼女はこの山林に特別な術式が組まれているであろうことは予想はしていた。

強大な力を市街地で振るう訳にもいかず、彼等の誘いに乗ったが、決戦場につくまでに少しでも戦力を削るべく、かれらを分断し何人かを撃破しておくつもりであった。ところが姿を一旦隠しても、こちらに何か目印があるかのように追い立てて来る。

この山林に入ると、魔力が感知できた。彼等は彼女から見えない位置に散開しようとしている。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/16(月) 21:52:07.83 ID:F8RN+E4AO



目印があるとするならば強大な魔術が行使される可能性がある。

彼女はハッと思いつき、首にかけた十字架を外し投げ捨てる。瞬時、莫大な魔力が十字架に炸裂し、彼女にも魔力の余波が襲う。衝撃波を受け吹き飛ばされるが、体への被害は最低減にとどめられた。

直撃を受けていればかなりのダメージとなり、この後彼等に対峙することならず、逃げに徹するしかなかったかもしれない。

そう思いながら、飛ばされた先で立ち上がると人影が見える。訝しげにこちらを向かんとする人影に雷撃の槍を放つ。戦果を確認もせず、素早くその場を離れた。

112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/16(月) 21:59:31.94 ID:F8RN+E4AO



あの十字架は禁書目録の同行者へ志願し認められた後、炎の魔術師と聖人から、魔術師らしく見えるようにと贈られた霊装だった。『歩く教会』の縮小版で多少の防御力が付加されている。

あの悲しい二人の魔術師の気遣いであったが今回ばかりは仇となった。

けれど、魔力反応をもとにこちらの位置を割り出していたならば、もはやその手は通じない。

彼女は彼等から距離を置き、反撃への布石を打つ。

彼女が普段、触れている範囲より更に先に見えない手を伸ばしていく。集中して、その場にある全てを観測し、掌握していく。

彼等が設定した儀式場に対して、彼女の自らの領域を広げていく。

彼等の魔術を魔術で上書きするでもなく、侵蝕するでもなく彼等が知らない別の法則で。









(ったく、タイミングの悪い……)

(まさか?あの女狐にバレてたぁ!?)




第1.5章
終了
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/16(月) 22:09:20.74 ID:F8RN+E4AO
>>1です

>>111冒頭
目印があるとするならば、すぐさま強大な魔術が行使される可能性がある。

書き加えたつもりで抜けてました。スイマセン。


ええと、原作よりパワーアップしてます。一年もやってればこれくらいは?
どうでしょうか?


114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/16(月) 22:13:23.89 ID:w3shQS0DO
うむ
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/16(月) 22:50:59.81 ID:0WxoVm5+o
乙!

1年も修羅場くぐってりゃそりゃ強くなるわな・・・・・・元々センスもいいし
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/01/16(月) 22:52:40.56 ID:mRs/aTgqo
なんだミスリードじゃなかったのか
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/18(水) 22:22:32.66 ID:MCoZDzzAO
>>1です
第2章始めます
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/18(水) 22:25:50.17 ID:MCoZDzzAO



数日前、神裂火織はステイル=マグヌスと共に最大主教の前に呼び出され指令を受けた。

7月19日に学園都市に禁書目録が一人で現れる。回収し例年どおり7月29日までに処置を行うようにと。

何故?一人で?彼女は?疑問に思うことはあった。実をいえば二人共、ここ10日ほど連絡が無かったことを心配していたのだ。必要悪の教会への定期連絡の他、時間が取れれば個人的に彼女やステイルに連絡をくれていたのに?何かあったのだろうか?

彼女が禁書目録の同行者となった頃は、禁書目録を狙っての襲撃が絶えなかった。今、思えばあれは囮であったと気付く。禁書目録を狙う魔術師や魔術結社を叩くための。魔術師の間では全くの無名であったが、その戦力は聖人である神裂自身に匹敵した。今、彼女と戦えばどうであろうか?彼女はその頃より確実に強くなっている。


119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/18(水) 22:32:49.14 ID:MCoZDzzAO



今では襲撃されることは少なくなっているものの、逆に厄介事に首を突っ込んでいることが多くなっている。今回も厄介事に首を突っ込んで、その間、魔術師達が手を出しにくい学園都市に行かしたのかもしれない。




あの日も近いことであるし。もしかしたら一緒に7月29日を迎えるのが耐えられなかったのかもしれない。

神裂自身にとっても耐えられる自信があるわけではない。それがあの子にとって救いだとしても。あの時のあの子の声を思い出す。


『い…や…だよ  私…わすれないよ  かおり…もステイルも  ぜったいわすれないから…っっ!!』


『い…や…だよ  私…わすれないよ  かおり…もステイルも  ぜったいわすれないから…』


僅かな希望に縋りたくなる声、絶望と虚しさしか感じさせない声。

同じ声であっても、

違う。

120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/18(水) 22:35:49.23 ID:MCoZDzzAO



神裂火織とステイル=マグヌスは学園都市に現れたインデックスを発見した途端、逃走されてしまう。

ステイルの表情は強張り右手を上げかけた状態で彼は固まっている。神裂の方も似たり寄ったりであった。

硬直がとけるとすぐにインデックスを追いかける二人。あの子が路地裏で目覚めた時も逃げだされた。あの子は魔術を使うことができなくても、魔力反応を見ることができる。魔力を持った神裂やステイルがいきなり現れたら、自分を狙う魔術師と思い逃走するのは当たり前かもしれない。

それが分かるにしても、一年振りの再会が敵として見られるのは切なかった。

本当は追う必要はなかった。
必要悪の教会の本拠地ロンドンの聖ジョージ大聖堂にはインデックスが、世界中のどこにいても居場所を探知できる霊装が専用に準備されている。
彼女にも『歩く教会』の縮小版といえる霊装を贈り、他にも二つの役割があったが、二つが引き合う作用を利用し朧気ながら位置を感じ取れるようにしてある。
二人ならば、学園都市程度の広さであれば魔術を使用することによって当然、位置を割り出すことができる。

121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/18(水) 22:42:58.58 ID:MCoZDzzAO



それらはインデックスが『歩く教会』を着用しているから。
それが発する魔力反応を元に探知を可能としているのだ。

にもかかわらず、逃げ出される、追いかける、捕らえようとするをしてしまってはより、敵視されるだけなのにこうして追いかけてしまったのは?

気がついた時には、8階建てのビルの屋上で逃げるインデックスに魔力をのせた礫を放っていた。運悪くインデックスは隣りのビルへ渡ろうとしたときで、撃たれたインデックスは落ちていってしまった。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/18(水) 22:44:23.25 ID:MCoZDzzAO



神裂とステイルは、慌てて屋上の端までいき見ると、隣りのビルの7階のベランダに引っかかっていた。そこで二人は漸く冷静に返った。

どうやらこのビルは学生寮のようである。ベランダまでいき、もしインデックスに騒がれたりしたら、部屋の中の学生が治安機関に連絡を入れるかもしれない。

学園都市の上層部、虚数学区、五行機関とイギリス清教のトップとは、この件について話ができているとは学園都市に来る前に聞いていた。

123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/18(水) 22:49:51.53 ID:MCoZDzzAO



ただそれは黙認に近いもの。治安機関に学生が犯罪らしき物を連絡すれば、末端の治安機関は動いてしまう。
万が一騒ぎが大きくなってしまったら?

初手からそういう状況は避けるべきであった。

様子を窺うしかなかった。

124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/18(水) 22:51:36.01 ID:MCoZDzzAO



朝、日が昇る。暫くしてもこの学生寮がある一帯は動きがなかった。

考えてみれば今日は学生たちにとって夏休み初日。朝、時間におわれる事がない期間の始まりの日である。

神裂火織とステイル=マグヌスはベランダに引っかかっているインデックスを、遠くから真剣な表情で覗いている。

時折、どちらかが偲びなく助けにいこうとし、どちらかが肩を押さえては止めるを何度となく行っていた。


125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/18(水) 22:54:40.28 ID:MCoZDzzAO



何度目かの繰り返しの時、3人の少女が通りかかり、インデックスの方を見上げる。少女達は何か話しているようであったが、すぐにその寮に入っていった。

暫くすると少女達がベランダに出てきてインデックスを引き上げて、部屋の中に運び込んでくれた。

神裂はホッと一息ついた気分になったが、次の問題が頭に浮かぶ、インデックスが心配なあまり失念していたのだ。

見知らぬ少女がベランダにいたのだ、治安機関が呼ばれたり、病院に運ばれたりしないか?

126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/18(水) 22:59:12.01 ID:MCoZDzzAO



その場合、虚数学区、五行機関が動いてくれるか?事前の対応策を考えていたがそのような動きはなかった。しかし、それはそれで不安になり二人は顔を合わせる。

部屋の中の状況が気になり、まずは中の様子を探るため小さな儀式場をつくり、初歩的な探索魔術を『歩く教会』を起点に設定していく。ステイルはこの手の魔術が苦手のため、苛ただしげにタバコに火を点けながら神裂に任せている。神裂は目の片隅にステイルを見ながら思う。この歳でステイルがタバコを吸うことを。


本来は咎め立てすべきことだ。

しかしステイルがタバコを吸い始めたのは2年前、二人にとっては1回目の後。
インデックスとやり直しを始めた頃。
思い出の写真、インデックスが強張った表情になってしまった、三人で撮った写真を見せても済まなそうに謝った後。

1年の内に数が徐々に増え、特に2回目を迎える一月前からは急激に本数が増えた。
当のインデックスに止められるにもかかわらず、吸う理由に嘘を並べながら。

127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/18(水) 23:07:52.94 ID:MCoZDzzAO



魔術を起動させるが急に弾かれる。もう一度試してみるが同様だった。

それを見たステイルは部屋に乗り込もうと寮に向かい始める。神裂は慌てて止めるしかない。

考えられる可能性として学園都市の学生は能力者である。初歩的な術式の魔術では能力者がいる影響で阻害されたかもしれないと説得し落ち着かせる。もう一度しっかり儀式用の道具を揃え試してみることでステイルには納得して貰った。

説得と準備に時間がかかり、かなり遅くなった。そうして準備を済ませ起動させるが、魔力の余波か風が起こり、カーテンが揺れた様子が外から見えただけで何も見えない。

ステイルが震えている。拳を強く握りしめ、顔を俯かせ、タバコを噛み千切らんばかりにして。神裂は思いついて慣れない携帯で、この街に詳しい人間に聞いてみた。

「それはオレの部屋の隣りにゃー。部屋の中に探索阻害用の霊装置いてあるから多分、その影響ぜよ。まあ隣りで聞いている限り問題ないみたいやにゃー」


「…………ォォォ!!!!」


128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/18(水) 23:31:35.95 ID:MCoZDzzAO
今日はここまで


>>113の訂正について
関連性が思いつかず文章を直しているうちに抜けてました。
有名なアレをほのめかす程度で対聖人用に出す予定でした。
2.5章には出てくる予定ですが名前出してもいいでしょうか?
分かる人にはわかると思います。ちなみに北欧系の魔術師ではありませんので
ご意見お待ちしてます。
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 05:29:56.96 ID:hVlFecz0o
つっちぃぃぃぃぃぃぃ
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/19(木) 12:37:09.73 ID:BYEMTI6AO
最後は某スレへのオマージュでしたがまねと捉えられてもと思い。

想像で補完してみてください
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 15:54:27.29 ID:SjfNuO26o
期待してるんだよ!
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 23:51:08.10 ID:GkAgahBDO
うむ
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/20(金) 22:19:57.34 ID:xnoozDKAO



ヒュウゥゥンンッ

スパァン

ポト、ポト、ポト……

神裂は目の前の光景が、自分が何をしたのか、考えられなかった。

インデックスが跪いた状態から、力を振り絞るように起き上がり、更に逃げ出そうとする。

先ほどまでと違い、よろめきながら。

神裂は追いかけられない。どうしても。心への衝撃が大きすぎる。

足を止める為に七天七刀の一刀を振るった。『歩く教会』を着用しているインデックスに対して何の問題も無いはずだった。

せいぜい転ばすだけ、聖人の筋力を持ってしても。


134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/20(金) 22:22:48.55 ID:xnoozDKAO



七天七刀が伝えた感触は人肌、慌てて引いた。逆にそれが不味かったか。神裂は叩きつけるだけのつもりで一閃した。刀は引くことによって斬れる。

『歩く教会』が機能していないことへの驚愕。一体何がおこったというのか?

確かに魔力反応はあったのに。

へたり込みそうになるのを抑えつけ、連絡を取る。


「ステイル、インデックスを斬ってしまいました。」

135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/20(金) 22:25:27.22 ID:xnoozDKAO



初春飾利は風紀委員〈ジャッジメント〉第177支部の自分が普段から使っている、パソコンの前にいた。

本来、非番の筈なのに佐天と共に支部に来たものだから、先輩である固法に怪訝な顔をされる。

怪しい人物を見かけたので調べたいと思いまして。そういう初春に固法はいつものことかと溜め息をつく。

また3人で厄介事に首を突っ込んでいるのだろうと。彼女達の独断専行はいつものこと、それを教えたのも認めているのも固法自身である。
後で尻拭いするのも固法なので、彼女はフォローができるようにだけはと思案していた。


136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/20(金) 22:28:13.61 ID:xnoozDKAO



初春はインデックスから聞き知った二人の魔術師?ともう一人の少女の情報を打ち込み監視カメラにそれらが映ればわかるようにセッティングしていく。それと共に白井とインデックスの現在位置を確認できるようにしておいた。

一応の準備ができると次にインデックスのIDと発行された経緯を調べる。

事件性もまだ報告しないで、許可を取らずに調べることは本来は認められていない。それでも構わず初春自身が作成したプログラムを使い調べていく。

その結果、分かったことは

IDの登録名は
イン=デックス

一緒に登録を受けた者
メアリー=スー
入国記録無し


137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/20(金) 22:31:46.41 ID:xnoozDKAO



頭文字をとった呼び名の可能性はあるにしても、かなりの可能性でこれも偽名。

それと、訪問目的が断崖大学の情報データベースへの見学。

これもおかしい。許可を受け、IDが発行されたことにはなっているが、スムーズ過ぎる。ようするに本人確認がとれる資料の請求などがない。

恐らく、ハッキングされ、書き換えか、書き加えかが行われている。多分、IDも偽造だろう。

そういえばこの偽名。強くて、ハッキングもできて、IDの偽造も学園都市の審査がとおるぐらいの技術か伝手がある。

エムとよばれた少女は随分、諧謔に富んだ人かもしれない。
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/20(金) 22:35:41.67 ID:xnoozDKAO



初春は二人がいる周辺の監視カメラの画像に目を移すと、違和感を感じた。何かがおかしいと。

その監視カメラが映している位置がいつもと違うような?

昨晩のインデックスの逃走経路にある監視カメラの画像の記録を探しだし、確認する。

インデックスさえ映っていなかった。
当然のように魔術師など映っていない。
既視感〈デジャヴ〉。


(まさか、またなのですか、あの時と同じですか!?)


焦りながら白井とインデックスが映っていた画像をみる。


139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/20(金) 22:37:36.89 ID:xnoozDKAO



二人は映っていなかった。

さっきまでファミレスで食事をし、その後もクレープ屋に寄ったりしながら、恐らく支部に向かって歩いていたのに。

監視カメラに映らない死角に移動したかのように。違う、監視カメラが二人を映さないように、死角をわざと作るように動いている。


(今回も学園都市が何らかの関わりを持っているというんですか?)


「白井さん、大丈夫ですか!? ハイっ、襲撃の可能性があります!!」


140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/20(金) 22:42:50.89 ID:xnoozDKAO



ステイル=マグヌスは既にフィルターだけになったタバコをくわえたまま、走っていた。

何故、こうなった?

手順としては簡単なものだった。ステイルが陽動でインデックスと一緒にいた少女を引き離し、神裂がインデックスを確保する。インデックスの逃走スキルには苦労するかもしれないが、複雑なことになるはずがなかった。

それがインデックスを斬ってしまっただと!?

神裂からの連絡には抑揚がなかった。逆に神裂の心情が知れる。

『歩く教会』があるのにどういうことだ!?
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/20(金) 22:44:19.80 ID:xnoozDKAO

心神喪失に近いであろう神裂に任せて置けないと、ツインテールの少女がインデックスを追おうとするのを、影から邪魔をしていたステイルは自らインデックスを保護するため動いた。

難しい作戦でも無かったのに、急造だったのがいけなかったのか!?

ステイルと神裂には急いでインデックスを確保するつもりは、あの良く分からない男の言葉を聞いて、張り詰めた糸が切れたようになって失せていた。

インデックスが少女と一緒にファミレスで楽しそうに、変わらずいくつもの料理を平らげる様子をみて。





もう少し、『今』のあの子が幸せであればいいと。

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/20(金) 22:46:41.72 ID:xnoozDKAO



ところが、少し気になって、魔術で聞き耳をたてたら

『……風紀委員〈ジャッジメント〉の支部で初春がエムさんを探しておりますの。この後ご一緒に……』

先程も検討したことだった。

インデックスが治安機関に保護されたら、恐らく上層部を通じて引き渡してくれるだろう。

但し、それまでになにをされるかステイルと神裂は不安だった。

イギリス清教と学園都市は裏でルートを持っている。とはいえ元々、腹に一物を持つ者同士。

特にインデックスは魔術側の最高機密を脳の中に所有している。何もされず帰してくれるとは限らない。
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/20(金) 22:49:16.37 ID:xnoozDKAO



急遽、作戦を練るしかなかった。


逃走ルートを想定し、ステイルが仕掛けを作っておく。

準備が間に合わず、風紀委員の支部に着くようであれば、神裂が襲撃しステイルが作った仕掛けに追い込む。

準備が間に合えば、ステイルが陽動にでて二人を分断する。
ステイルが陽動をするのは学園都市には発火能力者という者がいる。ステイルは炎の魔術を行使するのでその能力と誤謬するかもしれない。
極力、魔術はこの街の人間に知られない方が良かった。

ステイルは早く、早くと仕掛けをした場所へと急ぐ。
予想どおりの逃走ルートを辿っている。
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/20(金) 22:51:23.34 ID:xnoozDKAO



人に迷惑をかけないように人気の無い道を行き、隠れられる場所を探しているのだろ。
前のインデックスと2年を過ごし、変わらないと、悲しいほどステイルは分かっている。

『歩く教会』の魔翌力反応が感じられるようになる。

もう、そこだ。

人声がする。

『………一体どこのどいつにやられたんだ、お前!』

立ち止まり、フィルターばかりとなったタバコを捨てる。

新しく取り出し口にくわえる。

火をつけて、一口吸う。

やるべき事をやらなければなら無い。

邪魔をするようであれば、排除しなければならない。







「うん?僕達魔術師だけど」
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/20(金) 22:55:10.19 ID:xnoozDKAO
>>1です
今日はここまでです
ありがとうございます
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/20(金) 23:25:45.01 ID:hW2gsgHr0
おーい、脳内補完にも限度があってだなー……
>>141とか>>143とか、推敲の段階で謝って消した言葉が結構あるんじゃない? 
折角面白いんだから、投下前に落ち着いて最終チェックしてくれ
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/20(金) 23:27:04.98 ID:hW2gsgHr0
謝って→誤って、だな  言ってるこっちが間違ってごめん
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/20(金) 23:31:55.30 ID:XivgET16o
乙!
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/22(日) 16:42:31.65 ID:0PUGyiAAO



上条当麻は昼から学校に補習を受けに行っていた。

インデックスのことは気になったが、3人娘にも促された上、小萌先生にも入院のことで心配をかけている。

白井がインデックスに付いていると言うし、昼間から襲われたりする事はさすがに無いだろうと、上条は通っている高校に向かった。

ひょっとしなくとも補習を受けに来ているのは自分一人だけだろうと思い、教室に入る。
教室の中には青い髪にピアスをした男子がいる。
然も人がいないことをいいことに推定180cmの身長で普段の席と違い、教卓の一番真ん前に座っている。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/22(日) 16:48:16.14 ID:0PUGyiAAO



インデックスのことが頭から離れない上条であったが、その悪友の姿を見て考えていたことが何処かへいってしまった。


「テメェ、わざとだろう?小萌先生に会いたさに!なにやってんだ!?」


「カミや〜ん?ずるいやろ?カミやんだけ小萌先生に夏休み入っても会えるんて?」


「俺は、入院中に受けれなかった記録術の授業の為に呼びだされてんの!無駄なのに、無駄です、無駄なんですよ、上条さんには!!」


「そんなこと関係ないんや!小萌先生はカミやんのことが可愛くてわざわざ補習の時間を作ったんやで!?ボクは妬ましいんやー!!!」


こいつはヤッパリというか、どうせ補習が行われると予想して策を練り、ねじ込んできたんだろうなと思いながら、上条は青髪ピアス、もといエセ関西弁野郎と端から見たら漫才のような話を続けていた。

「はいはーい。そこまでですよー。先生が来たんですから席に付くんですよー?」

151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/22(日) 16:52:01.45 ID:0PUGyiAAO



月詠小萌
身長135cm、見た目赤いランドセルが似合いそうな女子小学生、これで高校の先生である。

飛び級をした訳でなく、立派に大人の年齢。
年齢は聞くと大変なことになるらしい。

都市伝説にもなっているらしく、入学式に『本当に存在したんだ』と声があがるのが恒例行事と化している。

小萌先生はこの見た目に反してマルチな学識を誇っている。
授業の担当としては化学、研究専攻として発火能力者の開発、その他にもAIM拡散力場などなど多分野に渡っての学識も深い。

よって、わざわざ上条の記録術の補習を買って出ているのである。

152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/22(日) 16:55:55.67 ID:0PUGyiAAO



見た目以外は生徒思いで家出少女の保護をしたりと世話好きな理想の先生といえる。
青髪ピアスには別の意味でも理想のようであるが。
上条は高校入学後、初のホームルームでの彼の喜びの雄叫びを覚えている。

小萌先生の一言でとりあえず二人は席に座り、補習が始まる。

とは言っても上条にとって記録術の補習など無駄に思えてしまうので身が入らない。
いくら能力開発を受けても、この右手が打ち消してしまうから。

153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/22(日) 16:59:56.41 ID:0PUGyiAAO



上条を取り巻く環境は高校入学によって変わった。

中学時代の上条は周りから疎外感を受けていた。それでも積極的に級友達と関わりを持とうとしてはいた。

が、あの後の上条は困っている人を助けたりする人の良さはそのままであるものの、誰に対してもある程度の距離をとり、つかず離れずの姿勢を保つようになっていた。

それが、この青髪ピアスや寮の隣人でもある土御門と吹寄などに代表される級友達、そして小萌先生は上条の事情など何?という感じで接して来る。
おまけに高校に在学はしてはいるらしい謎の先輩にもちょっかいをかけられた。
騒がしくも、人が語りかけてくる日々が上条の喪失による痛手を癒やしつつあった。まだ自分の不幸が周りに影響を与えるのではと不安を感じてはいたが。

そして上条は妹達事件を迎える。事件は中断した状態。まだ本当の解決には、いつ実験が再開されるか分からないことや、シスターズの行く末など問題を抱えたまま程遠い。

その最中でのインデックスとの奇妙な出逢いである。話を聞いても分からないことだらけだが、インデックスも過酷な運命に晒されているらしい。

上条は補習の内容が耳に入らないなか考えていた。

154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/22(日) 17:06:17.98 ID:0PUGyiAAO



シスターズは御坂の妹達である。
インデックスは今日会ったばかりであるが守りたいと思わせる少女だった。

普段の生活には役に立たない、異能の力にしか意味をなさない右手しかない自分であろうと出来ることはある。
シスターズやインデックスを、3人娘や協力してくれる人はいるが自分一人であっても守ってあげなければならない。
そう能力があっても覚悟がなければ何もできやしない。
一方通行と対峙したときのように覚悟を決めなければならない

(そういえば御坂も戦わなければならない時、level0であろうがそんなのは関係ない、なんて言ってたなー)


「……上条ちゃん!先生の補習つまらないですか!?」


ビクッとして少し顔を上げると、小萌先生の悲しそうな顔があった。


155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/22(日) 17:16:54.98 ID:0PUGyiAAO



「真面目に補習を受けてないとコロンブスの卵ですよー!」


泣きそうな顔で小萌先生に叱られて、念動力だけで卵を立てるような朝までかかっても出来ないことをさせられては堪らないと、上条は真面目に補習を受ける、ふりをした。

コロンブスの卵をさせられる事も無く、ようやく補習も終わる。

上条は校門を出ると携帯を取り出し、まず誰に電話をするかを考えていた。

考えているうちに着信音が鳴り、慌てて電話にでると初春からの連絡だった。


初春「上条さん!大変です!白井さんとインデックスさんが襲われました!! 」


上条「なっ!!?」


156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/22(日) 17:19:58.93 ID:0PUGyiAAO



初春「襲撃の兆候があったので白井さんに連絡を取ったんですが、その後の状況が分からないんです!!」


上条「場所はどこだ!?初春さん!」


初春におおよその場所を聞き、上条は走る。
初春も直前に二人の姿を見失い、はっきりとした襲撃場所が分からないようだった。

向かう途中で再び初春からの連絡が入る。


初春「白井さんから連絡が入りました!どうやらインデックスさんと引き離されてしまったようです!今、まだインデックスさんの行方が分かりません。」


157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/22(日) 17:23:48.32 ID:0PUGyiAAO



上条「初春さん、一体どういう状況なんだ!?監視カメラでインデックスを見つけられないのか!?」


如何に話せば良いか、迷っているような間が空く。


初春「……あの実験の時と同じです。監視カメラが映さないよう操作されています!監視カメラのコントロールを奪おうかと思いましたが時間が有りません!」


上条は息を飲むしかなかった。
妹達事件の時、実験の模様を監視カメラが映さないよう操作されていた。
警備員や風紀委員を介入させないために。

二人ともまさかと思うが警備員や風紀委員の中にも協力者がいた可能性もあった。


158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/22(日) 17:27:00.88 ID:0PUGyiAAO



それは学園都市そのものが襲撃者の手助けをしていることを示している。
インデックスのことを治安機関に知らせても無視されるか、ヘタをすれば利用される。

結局、自分達がインデックスを助けるしかない。覚悟は最初から決めていたが、改めて心に刻む。


初春「それで今、気づいたんですが人が不自然にいない区域ができてます!こちらで言えば、精神操作で人を近寄らせないようにしているのに似てます!インデックスさんが人に迷惑をかけないように逃げてたりしたら!?」


上条「もしかして、罠か!?」


159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/22(日) 17:30:59.67 ID:0PUGyiAAO



初春「恐らく、そうです。襲撃場所から人気の無い区域をもとにシュミレートしてみます!インデックスさんのところへ上条さんを必ず誘導してみせますから、こちらの指示に、お願いします!!」


上条 「あー、わかった!頼む!ところで白井は大丈夫なのか!?」


初春「発火能力者のような炎に巻かれて、負傷したようです……」


上条「ケガをしたのか!?くそっ!!」


初春「たいした傷ではないみたいです!!佐天さんを白井さんのもとに向かわせてますから。ご心配なさらずにインデックスさんの方を!!」


160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/22(日) 18:05:39.22 ID:0PUGyiAAO



上条は初春の指示に導かれインデックスのもとに辿り着く。

路地裏に続く血の跡。反対の方向では掃除ロボットが血の跡を消そうと仕事をしていた。

上条は迷わず、路地裏に飛び込む。
奥の空き地になったような辺りに白い盛り上がりが見える。
血の跡はそれへと向かっている。
それは路地裏の奥で倒れ伏し、血を流すインデックス。

見たくもない姿に、上条は記憶を刺激される。まだ、あれから10日も経っていない。
御坂に良く似た少女が変わり果てた姿になっていた路地裏の光景を。あの時、沸き起こった怒りの感情を思い出す。

インデックスのもとに駆け寄り安否を確認しようとする上条。
喧嘩慣れしているとはいえ、上条は風紀委員でもなければ救急隊員でもない。

傷の具合、流れた血の量からインデックスの容態が解るわけではない。息はあるものの危険な状態であろうことがわかるぐらいだ。

161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/22(日) 18:09:11.10 ID:0PUGyiAAO



最善の手として、上条がよく世話になる病院の医者のもとに連れて行くしかなかった。
あのカエルに似た顔の医者は命さえあれば救ってみせると云う。そしてその実績がそれを証明している。

また、カエル顔の医者は学園都市がこれに関わっているかもしれない状況では、シスターズも世話になっている信頼を置ける人だった。

上条は連絡をいれ、白井に来れるかと問う。白井は何が何でも行きますのー!!と自責の声を返す。


162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/22(日) 18:11:08.64 ID:0PUGyiAAO



「くそ、くそっ!!」

「補習なんか無視して、一緒にいてやれば良かった!!」

「何だよこれは!?ふざけやがって!!」

「一体どこのどいつにやられたんだ、お前!!」


「うん?僕達魔術師だけど」


心配で、心配で上条が叫んでいた時、路地裏の入り口の方から声がする。

上条が振り向くとそこには2mはありそうな長身の男。

路地裏での上条と炎の魔術師との邂逅。

二人は睨み合い、互いに相手の次の言葉を待つ。

163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/22(日) 18:14:08.46 ID:0PUGyiAAO
>>1です
前回はどうもすいませんでした。


今日はここまでです。

164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/22(日) 18:30:02.83 ID:LFevEulX0
乙! 小萌先生でなくカエル医者ルートになる可能性もあり? この先の展開が楽しみだ
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/22(日) 23:28:10.56 ID:0PUGyiAAO
唯一難点があるんだよねぇ
重箱の隅をツツくようなもんだけど、どうしようorz
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/23(月) 02:04:58.47 ID:HbHKV4ETo
おつおつ!
再構成の中でも見た事無い新鮮な設定で毎度楽しみにさせて貰ってるぜ・・・
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/25(水) 23:35:36.23 ID:SG7J30FAO



夏の日差しも隠れる路地裏で、上条に見えるステイルの姿は長髪の赤毛で顔立ちは割と幼い印象。されどその纏う空気はひたすら異質。これが科学とは違う、世界の裏側の法則を扱う者が纏う空気。これが魔術師。

夏の日差しが僅かに届く路地裏の奥、行き止まりとなった小さな空き地で、ステイルにインデックスの側に見える上条は一般の学生。しかし怒気を立ち上らせている。本来ステイルが居る場所、いた場所で。

睨み合いの末、口を開いたのは。


ステイル「……嫌だな、そんな目で見られても困るんだけどね」

168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/25(水) 23:37:34.26 ID:SG7J30FAO



ステイルがくわえるタバコは苛立ちにより揺れている。


上条「なんで、何でなんだよ?10万3千冊の魔導書が欲しいってだけで!こんな小さな女の子を血まみれにして、こんな目に合わせる理由になるのかよ!!」


ステイル「そうか、そこまで聞いているのかい?まあ血まみれにしたのは、僕じゃなくて神裂なんだけどね。神裂も『歩く教会』が壊れているなんて?本来ならあれぐらいじゃ傷もつかないはずだったのさ……」

(神裂は致命傷になる程ではないと言ってたが、出血量が意外と多い?走り回ったせいか!)
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/25(水) 23:39:09.43 ID:SG7J30FAO



上条「そんなことを聞いてんじゃねえ!インデックスを見ろよ!寄ってたかって追い回して、お前等がやった現実はこれじゃねえか!!お前達魔術師にだって守るべき物はあるんだろ!?これは許されることかよ!?」


ステイル「だから!……君も聞いたと思うが、その子の頭の中にある10万3千冊の魔導書はどれをとっても危険な物なんだ。」

(ああ、あるさ!僕にとって守るべき物はインデックスさ!!インデックスだけさ!!)

「それを使える連中に連れ去られる前に………回収に来たんだ。大人しく渡してくれないかな?」

170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/25(水) 23:41:43.28 ID:SG7J30FAO



上条「か、回収だと!?」

(人を物扱いかよ!シスターズを人形として観てたアイツらと一緒じゃねえかよ!!)


上条はインデックスの容態をみるため屈み込んでいた体勢から、拳に、足に怒りを込めて立ち上がり。


上条「てーーーメエ、何様だー!!」


ステイルを見据え、怒声あげる。そしてジリッと一歩、足を進める。


ステイル「ステイル=マグヌスと名乗りたい所だけど」

(インデックスを守るため闘うというのか?いいだろう!こちらの事情など知らないくせに!!早くインデックスの手当てを!!叩き潰してやる!!!)

171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/25(水) 23:43:19.95 ID:SG7J30FAO



上条の双眸は怒りに燃え、もう一歩を進める。


ステイル「ここではFortis931と言っておこうかな」


上条はさらに一歩前へ踏み出す。右手に力を込めながら。そして


ステイル「魔法名さ?」

「聞き慣れないだろうけどね?」

「Fortis」

「日本語で強者という意味になるのかな?」

「古い因習だよ」

「魔術師が魔法名を名乗るってことは」

「相手に覚悟を示す意味があるんだ」


上条はステイルの話しを聞かず、弾かれたかのようにステイルに向かう。

172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/25(水) 23:45:48.75 ID:SG7J30FAO



ステイル「そう僕にとっては殺し名ということになるのかな?」


ただ、ステイルに拳を振り上げ向かい来る上条に


ステイル「炎よ〈Kenaz〉」

ステイルの手より、一直線に炎の剣が生み出される。

「巨人に苦痛の贈り物を〈Purisaz Naupiz Gebo〉」

ステイルは生み出したオレンジの軌跡を持つ炎剣を横薙りに振るう。


173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/26(木) 00:31:18.93 ID:6vgb766AO



ステイルには上条がどうにもかんに障る。

只でさえインデックスを保護したとしても『前』のあの子達と同様に『今』のインデックスを殺さなければならない。

真っ直ぐにインデックスを守ろうとする上条が妬ましいのか、羨ましいのか。

表面上は冷静さを装っても、自分の今に憤りを感じざるを得ない。

回収と言ったのは憤りから来る自嘲だったのか、上条に対する挑発だったのか?

守るべき者が一緒である筈の二人の闘いが始まる。


174 :sage saga :2012/01/26(木) 00:34:13.16 ID:6vgb766AO



学園都市の学生らしく、何か能力でも使って来るかと思えば、闇雲に殴りかかって来るだけ。
ステイルはそんなもので守れるものかと、嘲りを込めて、守るために身に付けた力を見せつける。

上条は業火が振るわれる前に後方へ跳び、避ける。
上条にはlevel5、二人との戦いの経験がある。危険を感知しうる命懸けの経験がある。
今回はそれが生かされた。

ステイルはあっさり避けられたことを意外に思いつつ、ならばと逆に間合いを詰め炎剣を縦に振るう。

当たらずともいい。インデックスの側に行くために。
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/26(木) 00:36:18.83 ID:6vgb766AO



上条は咄嗟に右方へと避ける。

ステイルはその開いた空間をとおり、インデックスの傍らに立つ。
自分の立ち位置を確かめるようにインデックスを眺め、そして上条に目を移す。

さっきは、嘲り格下に見てしまったが、意外と戦い慣れをしている。しかし歴戦の魔術師と戦うにはまだ甘い。

ステイルは口元に笑みを浮かべ、再度上条に炎剣を横に薙ぐ。避けうる空間を無くすように。インデックスを気遣い全力で放てなかった炎剣を今度は全力で。

周りが燃え盛る業火に包まれ、上条の姿が隠れる。

176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/26(木) 00:38:30.78 ID:6vgb766AO



炎剣の一撃は摂氏3000度を誇る。人間など焼ける前に溶けてしまう。


ステイル「やりすぎたか、な?」


出来れば学園都市の住人は殺さずに済ませれば良かったが、そんなことはステイルにとってインデックスの存在に較べれば関係なかった。


ステイル「守る力も無い癖に、ご苦労様、お疲れ様と言っておこうか。ま、この程度じゃ1000回やっても勝てないって事だよ」


「誰が、何回やっても勝てねえって?」


燃え盛る炎が一瞬にして吹き飛ばされる。

姿を見せた上条は猛然とステイルに右手を振り上げ襲いかかる。

177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/26(木) 00:41:09.41 ID:6vgb766AO



ステイルはもう一度、炎剣を呼び起こし上条に叩き付ける。

上条の右手とステイルの炎剣の激突、勝ったのはただの右手。ステイルの炎剣は右手に触れた途端にかき消される。

右手は再び振り上げられ、ステイルの顔を目掛けて放たれる。

身長差が幸いし、かわすことが出来たが、炎剣を一瞬の内に消され、ステイルは大きく後ろへ引き下がり距離をとってしまう。
それは有り得ないものを見てしまった動揺によるもの。


ステイル(なんだ?あれは!?魔術解除?無効化!?有り得るはずが無い!!)

魔術を解除する方法はある。術式を解析し紐解いてやればいい。

ただ、それには術者を上回る技術、知識、魔力が必要となり、当然のごとく時間もかかる。それ故に、手っ取り早く魔術を解除するには術式の起点となる儀式場などの破壊が優先される。今のはそんな物とは全く違う。無効化という表現も違う。第一、上条からは魔力を全く感じらとれない。
あれはまるで何事も無かったように打ち消した。
天才と呼ばれたステイルもそんな話しは聞いた事がない。

ステイルは化け物を見た時のような恐怖をおぼえるしかなかった。


178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/26(木) 00:43:10.53 ID:6vgb766AO



だが、引き下がる訳にはいかない。いまの攻防で再度、インデックスの傍らは上条が占めている。あの位置を一時的なことで有ろうと立つのは、今だけは僕であると、心に決める。

今の攻防に上条は勝った。

二度の炎剣の攻撃された時には不安があった。魔術に対して、この右手が通じるのかと。体はかわす方を選んでいた。

三度目の攻撃は二度の攻撃以上の業火が襲い、避けるような空間が残っていなかった。
覚悟を決め、右手を差し出した。
結果はステイルに奪われた位置を取り返し、インデックスの傍らに立っている。

上条「そうだよ、インデックスの『歩く教会』をぶち壊したのだって、この右手だったじゃねーか」

(けど、それでインデックスを危険に晒しちまった!謝って済む話しじゃねえけど。くそっ!インデックス、白井が来てくれたらすぐ病院に行けるから!それまで、必ず、守る)





179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/26(木) 00:46:49.51 ID:6vgb766AO


その呟きはステイルの耳にも入る。

疑問には思っていた。『歩く教会』の防御結界は絶対。聖ジョージのドラゴンでも現れない限り不可能。そのためにステイルはインデックスの確保に広範囲に仕掛け(術式)を施し、準備に時間がかかったのだ。しかしステイルは不可能であることが行われたことを理解ではなく、感情で受け止める。


ステイル(『歩く教会』を壊しただと!?この男が!?そうかい。君は立派なことを言っていたけど。インデックスが血を流した責任は君にも有るんじゃないか!!)

「ならば、君にも責任を取って貰おうか!!」



恐怖よりも怒りが沸き起こったステイルは詠唱にはいる。


180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/26(木) 00:49:03.85 ID:6vgb766AO
今日は終了
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/26(木) 08:54:56.54 ID:dqKX5xHIO
┌─────┐
│い ち お つ.│
└∩───∩┘
  ヽ(`・ω・´)ノ
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/26(木) 14:35:16.05 ID:qYQE0cpFo
乙!
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/28(土) 12:48:20.77 ID:ky3PWySAO



ステイルにとってここは自分の陣地。
路地裏の奥、周りを背の高い建物に囲まれた場所。
インデックスを確保するための絶好の場所。
『ルーンの刻印』を刻んである場所。
火炎により酸素を燃焼させ、インデックスを酸欠による気絶に追い込むための場所。

『歩く教会』を着用するインデックスに魔術は通用しない。魔術による火炎は通用しなくとも、副次効果として人が生きるために必要な酸素を奪ってしまえば?そのためにここに『ルーンの刻印』を張り巡らしておいた。
とはいえ当初の予定通りには使えない。
確実に目の前の上条を倒せるだろうが、インデックスの状態やステイル自身にも影響が及ぶ。
代わりに万が一に備え用意したステイル最大の切り札を呼び起こす。


184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 12:50:49.69 ID:ky3PWySAO



そして、ステイルの詠唱は終わる。

ステイル「『魔女狩りの王』〈イノケンティウス〉」

ステイルの胸元が膨らみ、はじけ、巨大な炎の塊が飛び出す。

轟、という音ともに炎の巨人が顕現する。これまでの鮮やかなオレンジ色の炎と違い、黒い影が宿っている。まるで黒い人影が炎を纏っているように。

その名は『魔女狩りの王』〈イノケンティウス〉。その意味は『必ず殺す』。ステイルがインデックスを守るため修練した最大の魔術。

ステイルは上条を指し示すように腕を前へ伸ばす。炎の巨神は周りの酸素を燃焼し、熱気により空気を乱れさせながら上条へ突進し始める。

上条は迎え撃つ。右手が通用するのならば恐れる物はないと。


上条「邪魔だっ」


185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 12:54:29.01 ID:ky3PWySAO



上条のが振り抜かれ、炎の巨神に衝突する。断末魔のような音がかき鳴らされ、周りに炎を散らしながら消滅していく。

その勢いのままステイルに迫ろうとした上条は踏み出した所で足を止める。

ステイルが笑っている。

上条の勘が警報を鳴らし、後ろへ跳び下がる。

散らされた筈の炎が寄り集まり、炎が膨らみ、炎の巨神が再現される。

再現ではない。体を捻りながら、両手に炎でできた剣のような十字架を持ったカタチへと変える。

あまりの熱気に上昇気流が生まれ始めていた。

まるで人の動きのように、その十字架を振り上げ上条に炎のうなり声とともに、叩き付けて来る。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 12:56:29.45 ID:ky3PWySAO
訂正



上条の右手が振り抜かれ、炎の巨神に衝突する。断末魔のような音がかき鳴らされ、周りに炎を散らしながら消滅していく。

その勢いのままステイルに迫ろうとした上条は踏み出した所で足を止める。

ステイルが笑っている。

上条の勘が警報を鳴らし、後ろへ跳び下がる。

散らされた筈の炎が寄り集まり、炎が膨らみ、炎の巨神が再現される。

再現ではない。体を捻りながら、両手に炎でできた剣のような十字架を持ったカタチへと変える。

あまりの熱気に上昇気流が生まれ始めていた。

まるで人の動きのように、その十字架を振り上げ上条に炎のうなり声とともに、叩き付けて来る。

187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 13:00:24.04 ID:ky3PWySAO



上条は右手で防ぐが、今度は打ち消す事が出来ない。右手に触れると炎が揺らぎ、炎の勢いは落ちるものの離れたらすぐに元に戻ってしまう。

動揺し、混乱するが何度も叩き付けて来る十字架を上条は右手で防ぎ続けるしかない。


ステイル(どうやら、魔術は打ち消しても術式の基点までは一緒に消せないようだね。しかしこれだけの『ルーンの刻印』を重ねないと維持もできないとは?本当にどういう理屈なんだい?インデックスの『歩く教会』の防御結界のような防ぐカタチとも違うし?とりあえず彼が手間取ってくれているうちに、決めさせて貰おうか!!)


上条の片目にステイルが再び炎剣を造り出す姿が見える。


上条(何故だ?さっきは消せたのに?不味い!アイツまでかかって来られたら!?インデックスの近くじゃ、巻き込んじまう!!)


上条はこの位置でステイルと炎の巨神と戦えばインデックスに害が及ぶ可能性を考え、インデックスから離れた位置へと炎の巨神の一撃をいなした後、素早く移動する。


188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 14:30:36.96 ID:ky3PWySAO



炎の巨神は上条の動きを追いかけ、そのまま抱き付くように迫って来る。

右手を構えながら上条は炎の巨神をかわすが、ステイルが駆け寄りざま炎剣を振るう。

上条は体を傾け、転がりながら避ける。さっと上条は立ち上がるが、今の攻防で上条は空き地の隅の方まで追いやられていた。

もう一度炎の巨神とステイルの連撃を受ければ、最初の一撃は右手で防げたとしても、次はかわせないかもしれない。
そのためのスペースが足りない。

炎の巨神が前にその後ろにステイルが立っている。一か八か先に攻勢にでて、活路を見いだすか、上条が考えていた時。


「か、上条さん、大丈夫ですか!?」


白井と佐天、二人の少女が路地裏より姿を見せる。


189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 14:44:56.97 ID:ky3PWySAO



炎の巨神は上条の動きを追いかけ、そのまま抱き付くように迫って来る。

右手を構えながら上条は炎の巨神をかわすが、ステイルが駆け寄りざま炎剣を振るう。

上条は体を傾け、転がりながら避ける。さっと上条は立ち上がるが、今の動きで上条は空き地の隅の方まで追いやられていた。

もう一度炎の巨神とステイルの連撃を受ければ、最初の一撃は右手で防げたとしても、次はかわせないかもしれない。そのためのスペースが足りない。

炎の巨神が前にその後ろにステイルが立っている。一か八か先に攻勢にでて、活路を見いだすか、上条が考えていた時。


「か、上条さん、大丈夫ですか!?」


白井と佐天、二人の少女が路地裏より姿を見せる。


190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 14:47:27.37 ID:ky3PWySAO



白井は悔やんでいた。自らの失態を。

上条の部屋から出た後、すぐにインデックスに追いつき、ファミレスでの食事を餌にインデックスにくっついている事に成功していた。
その後もクレープ屋などを廻りながら、風紀委員の支部に行けば友人の消息がわかるかもしれないと説得して支部に向かっていた。

その途中、路地裏で火炎が起こるのを見た白井は職業意識が働き、インデックスを待たして様子を窺いに路地裏に入り、インデックスから離れてしまった。

火元まで来ても誰もいない。訝しく思っていると初春春から警告の連絡がはいる。
ハッと出口を目指すが出口の方から背丈以上の火炎が上がる。

火炎のため向こう側が見えない。もしテレポート先にインデックスがいたらとすぐに跳べない。

インデックスから切迫した声があがる。インデックスが襲われたのだ。
白井は逃げるように呼びかけ、自身は火炎より高い空間へ跳び、出口側を確認したうえで路地裏から出ようとテレポートに入る。
最初のテレポートで火炎より高い何もない空間に出たとき、ちょうど可燃物か何かに引火したものか爆発が起きた。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 14:48:30.21 ID:ky3PWySAO



白井は二度目のテレポートをする前に爆風を受けてしまう。テレポートもままならず、バランスを崩し地面に叩き付けられてしまい、気を失っていた。

しばらくして気が付くと左腕に痛みが走る。堕ちた時、反射的に体を庇った結果、左腕を痛めてしまっていた。既に火炎は収まっていたので痛みを堪えながら起き上がり、路地裏から出ると誰もいない。慌てて初春に連絡を取るしかなかった。

その後は佐天と合流し、左腕の応急処置をしていると上条から連絡がはいる。
インデックスが血を流している、病院に早く連れて行きたい、来れるかと。
鎮痛剤を打っても、まだ痛みは引いて無かったが自責の念を感じていた白井に他の選択肢など有り得ない。
何が何でも行きますのーと考えるまでもなく答えていた。

そして佐天と一緒に告げられた場所迄来ると、そこは上条とステイルの闘いの場と化し、人のような炎が上がり、風が舞っていた。

192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/28(土) 14:52:07.88 ID:ky3PWySAO
見たら2連投してた投下ミス大杉orz
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/01/28(土) 20:33:44.42 ID:ky3PWySAO



上条「こっちはいいから!インデックスを頼む!」


ステイルは上条の援軍に二人の少女が現れたことに戸惑っていた。

ステイルは『魔女狩りの王』〈イノケンティウス〉に上条を任せ、自分で二人を排除するべきか判断に迷いが出る。
意識が上条からそれた隙をつかれ、上条が炎の巨神を払いのけステイルに迫る。
ステイルは咄嗟に避けるも、上条に態勢を入れ替えられ隅地より抜け出されてしまう。

ステイルは冷徹を装っていてもインデックスに似た年頃の少女にはどうしても甘くなる傾向にある。
今も一瞬の間というには判断に時間がかかり、上条に脱出の機会を与えてしまっていた。

その間に白井と佐天はインデックスの元にたどりついていた。

ステイルはこうなれば出口付近を押さえつつ上条と戦うしかないと炎の巨神とともに出口を押さえにかかる。

194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 20:34:55.44 ID:ky3PWySAO



白井はインデックスの傷を確認したうえで応急処置を施す。
佐天は白井とインデックスを守るように二人の前に立っていた。その時、


「ルーン」

「『神秘』『秘密』を指し示す24の文字にして、ゲルマン民族により2世紀から使われる魔術言語で、古代英語のルーツとされます」


白井「えっ?いったい何を?」


意識を失っているかと思われたインデックスから声が漏れたことに白井は驚く。
それだけではない。これまでに聞いたインデックスの声と同じであるが聞こえる印象が全く違う。
白井や佐天が聞いたインデックスの声は喜怒哀楽のある、心に届く声だった。まるで自動音声の事務的な話し方を今のインデックスはしている。


イン「『魔女狩りの王』〈イノケンティウス〉を攻撃しても効果はありません。周りに刻まれた『ルーンの刻印』を消さない限り、何度でも蘇ります」

195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 20:36:42.42 ID:ky3PWySAO



佐天「『魔女狩りの王』〈イノケンティウス〉ってあのおっきな炎の人みたいなやつのこと?」


イン「はい」

「それではルーン魔術の説明を始めます。それは簡単に言えば、夜の湖に映る月と同じ……いくら水面を切り裂いても意味はありません。水面に映る月を切りたければ、まずは夜空に浮かぶ本物の月に刃を向けなければ」


佐天「そんな詩的なことを言われてもわかんないよ?」


白井「では、あの炎の巨神さんは本体でないということですか。でも『ルーンの刻印』とは一体?」


佐天と白井はインデックスを後ろにして、インデックスが言った『ルーンの刻印』がどんなものか分からないまま探す。

196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 20:39:28.46 ID:ky3PWySAO



上条とステイルの戦況は膠着状態が続いている。

上条の右手は『魔女狩りの王』〈イノケンティウス〉を揺るがすが打ち消してしまうまでいかず、すぐにまた再生されてしまう。
ステイルもまた、炎の巨神が上条を押さえているうちに炎剣を振るおうとするがかわされてしまい決定打にならない。すでに上条に戦術が対応されてしまっている。


ステイル(魔力の消費量が増えて、負担が大きくなるけど、やむを得ないか!!)

ステイルは広範囲に人払いの術式やここ以外にも陣地を築くための準備に動き廻り体力を消耗している。
上条に揺さぶられる『魔女狩りの王』〈イノケンティウス〉を維持するための魔力の消耗も激しい。

それでもインデックスの状態を考えれば早く決着をつけたい。

無理は承知のうえ。


ステイル「灰は灰に〈Ash To Ash〉 塵は塵に〈Dust To Dust〉 吸血殺しの紅十字〈Squeamish Bloody Rood〉!!」


ステイルは炎剣を持つ右手の反対、左手にも青白い炎剣を生みだす。

そして炎の巨神とともに再度、左右の炎剣を振り、上条に攻撃をしかける。
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 20:41:52.49 ID:ky3PWySAO



佐天と白井は理解の範疇の外にあるインデックスから聞いた『ルーンの刻印』を見つけるため周囲を見渡すが皆目見当がつかない。


佐天(もう、『ルーンの刻印』って、なんなのさー?あれ?なんでこんなところに一杯、紙が貼り付けてあるの?)

「えっ?もしかしてあの紙こと!?」


白井は佐天に言われて、空き地を囲む建物の壁に貼られた何か記号が書かれた紙を見る。

しかも、周囲を見渡せば何枚も同じ紙が貼られている。


白井「あの紙がそうだとしても、全てを剥がしている余裕など有りませんの!!」


白井の能力であれば触るだけで移動させることができるが、なにせ数が多すぎる。
壁に貼られている紙を剥がそうとしていれば背後を襲われる可能性もある。

佐天は束の間考え込む。できるかどうか?でもやらなくてはインデックスの傷の状態もある、上条にしても有利に戦いを進めているとは言えない。やらなければならない。
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 20:50:16.61 ID:ky3PWySAO



佐天「白井さん、私がやります。インデックスをお願いします!!」

白井「大丈夫ですの?」

佐天「やってみせますよ」

(みんなを助けるために努力したんだ!この私が!!あの人のようになりたくて!私のレベル以上の無茶なことをしなくちゃいけないけど!やってみせる!!……御坂さんお願いします。上条さんとインデックスを助けるために力を貸して下さい!!)


佐天は上条と炎の巨神を見ながら演算を始める。

上条は目の端に映る佐天がこちらを見つめているのに気付く。

上条(?、佐天さん何かやるつもりか?無茶するんじゃねーぞ!?)

そう思ううちに炎の巨神が十字架を両手に持ち、押し付けて来る。
炎は揺らぎ、飛び散り始めるが、これまでと違い離れようとしない。

力任せに押さえ込んでくるため、上条はいなすことも出来ず、動きが止まる。
そこへステイルが両手に炎剣を持ち炎の巨神の後ろから迫って来る。

ところが、それまで舞っていた風が勢いを増して突風へと変わり、ステイルは風に突き飛ばされる。

199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 20:53:40.50 ID:ky3PWySAO



風は狭い空き地の中を上条と炎の巨神を中心に渦を巻くようになる。
風の渦に巻き込まれたものは飛ばされいく。
風の渦は次第に空き地全体に広がる。
白井はインデックスを守るため覆い被さり押さえつける。
佐天は自らの風に飛ばされないよう奥歯を噛みしめ耐える。
壁に貼られた紙は剥がされ、破れして、風の渦の中に流されていく。
上条の右手によって飛び散らされた炎も残り火が風の中を舞う。
紙が残り火に触れると容易く灰へと変わっていく。
次第に炎の巨神は小さくなり、体を再生できなくなっていくのが目に見えてわかる。

遂に、壁に貼られた全ての紙は燃やされるか、風によって引きちぎられる。

そして風の渦が納まる。

上条は右手を引き、一回り小さくなった人型の炎へ拳を叩き込む。

炎は一瞬、舞うように広がるが、空気に溶け込むように消えていった。


200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 20:58:47.19 ID:ky3PWySAO



ステイルは最初に突風が起こったときに壁へ打ちつけられ、この光景を見ていた。インデックスの側で汗を浮かべ、大きく息をしている長い髪の少女がいる。


ステイル(彼女がやったのか?これだけのことを?)


事実は若干違う。佐天の能力の強度はlevel2。
本来はこれだけの風を生み出すことはできない。
元々、『魔女狩りの王』〈イノケンティウス〉の炎によって空気が乱され気流が生じていた。
佐天はその動きを読み、自らの風で後押しをして勢いを強め、操作していただけとはいえる。

それでも自分で生み出す以上の風を制御下に入れていたのは奇跡に近かった。

能力の強度は弱くても、皆の力になるため制御を中心に修練し、努力した賜物といえる。

自分の能力以上のことをやってのけた佐天は深い息をするとへなへなとその場に座り込む。



201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/01/28(土) 21:01:41.45 ID:ky3PWySAO
ステイルはその様子を見た後、立ち上がる。魔力の消費が大きく、炎剣をだす余裕も無いが、拳を握る。

ステイルは上条に向き直ると上条はステイルを見ていた。


ステイル「まだだ、まだ、戦える!!」


ステイルの目にはまだ、闘志が宿っていた。

ステイルにはインデックスが覚えていない約束がある。

魔力が枯渇しかかっていようともステイルはインデックスのために戦える。

ジリっと一歩を踏み出すと、ステイルは炎剣を呼び出し、雄叫びをあげ、上条に襲いかかる。
上条は迎え撃つ。
ステイルの炎剣を右手で打ち消し、そのまま顔面に拳を叩き込む。

ステイルは大きくのけぞり、多々良を踏む。
そこへ上条の2発目が顔面を捉えると膝を崩す。

ステイルは地面に膝をつく前で踏みとどまるも、上体を起こしたところで三度、上条の拳が叩き込まれる。

眼前に上条の拳が見えた後、ステイルの意識は刈り取られ、前のめりに倒れた。

202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/01/28(土) 21:04:31.56 ID:ky3PWySAO
ようやくステイル戦終了。

今日はここまで
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/31(火) 15:49:30.78 ID:M/J8PtrIO
┌─────┐
│い ち お つ.│
└∩───∩┘
  ヽ(`・ω・´)ノ
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/31(火) 17:41:01.56 ID:VRnc4oMDo
続き気になるなるwktk
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/01(水) 17:50:54.72 ID:qifPN6KAO



とある病院、いつも上条が世話になる医者がいる病院の患者の家族の為の待機所。ここに上条は佐天と初春とともにいた。

あの後、白井にインデックスをこの病院に運んでもらい、上条と佐天は途中で初春と合流してここへ向かった。

病院に着いて聞いたところによると、インデックスはカエル顔のお医者さんがすぐに手術に入ってくれたらしい。白井も左腕の負傷の治療を行っているとのことだった。

上条は膝の上に両手を握り合わした腕を載せ、頭を垂れてベンチに座っている。

しばらくするとドアが開く音がして上条が顔をあげると、白井が入ってきた。白井の左腕は三角巾で吊されているがギブス迄はしていない。どうやら骨にひびがいくような負傷では無いようで上条はホッとする。


上条「白井、済まなかった」


パコーン


白井の無事な右手が上条の頭をはたいていた。


上条「いてっ、何すんだ?白井!!」


白井「か〜みじょうさ〜ん!まーた自分一人で全部背負い込もうとされていますの。今回の件は大見得を切りながらインデックスさんから切り離され、見失った私の責任ですの」


206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/01(水) 17:55:56.02 ID:qifPN6KAO



上条「けどよー!俺がインデックスの『歩く教会』を壊さなければ、インデックスが斬られるなんて事は!!それにお前の左腕だって!」


白井「それでも!暴力を持ってインデックスさんを捕らえようとしたあの方々に責任がありますの!私の事は焦って注意を怠った私のミスですの!!」


初春「白井さんの負傷もすでに日常茶飯事ですからねえ。固結先輩なんかまたかって顔してましたよ。おまけに今度は始末書、何枚になるんだろう?とも言ってましたね」


白井「う・い・は・る」


初春がそんなことを言う余裕があるのもカエル顔のお医者さんに絶大な信頼を寄せているからである。

それにもかかわらず上条が頭を垂れてうなだれていたのは、また自分の不幸に巻き込んだのではないかという疑惑が 頭を離れないからだった。
ステイルとの戦いの最中は怒りを発し、覆い隠されていたがこうして落ち着いてみると、どうしても頭をよぎってしまう。
もう一年もの付き合いになる彼女等にはそれがみえてくる。

207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/02/01(水) 18:00:00.42 ID:qifPN6KAO
訂正

固結 ×

固法 〇
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/01(水) 18:02:34.22 ID:qifPN6KAO

佐天「相変わらずだなあー、上条さんは」


そう呟いた佐天は御坂に上条をどう思っているか聞いたこと思いだす。


『お人好しのバカ。人の不幸も自分のせいだと背負いたがる大馬鹿野郎。おまけに鈍感野郎』


佐天が聞きたかったのは別の意味で、思春期に入った少女が聞いてみたくなる、よくある話しであったのだが。御坂によれば小さい頃のトラウマと人に疎まれていた所為で人からの好意に慣れてないため鈍くなったのではとのことだった。


『でも、お人好しで思いやりがあって、人が困っていたら放っておけないっていうのはアイツの本質だと思うのよね。だから、まあトラウマな部分を無くしてあげられたらって思ってるんだけど』

209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/01(水) 18:05:00.25 ID:qifPN6KAO



佐天が聞きたかった答えではなかったがなんとはなく佐天はわかった。上条と言う人のことと御坂の想いというものが。

ちなみに佐天は上条に同様の質問をしたことがある。


『戦友?同志?女の子にいう言葉じゃねえな。どう言ったらいいのかな?うーん、わかんねー?』


あっ、本当に鈍いや!と佐天は思ってしまった。
でも、後少しの時間があればどうだっただろう。高校生と中学生であれば壁もあったかもしれないが、当時は同じ中学生。
白井あたりはハンカチを噛み千切ったかもしれないが、そうなってもおかしくはないと佐天は思っていた。

それが御坂の行方不明で変わった。
上条は人と関わることを極力避けるようになる。そして御坂との思い出の場所に用もないのに佇んでいるのを見かけることが続いた。
彼女等は力が足りず上条を立ち直らせるまでに行かなかったが、高校入学後は回復の兆しが見えた。

そして今、インデックスやシスターズを助けてやれなければ上条はどうなってしまうか、振り出しに戻ってしまうどころか、本当の闇に落ちてしまうのではないか三人の少女は心配だった。


佐天(御坂さんが居てくれたら、全てが上手くいくきがするのになあ!)


210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/01(水) 18:16:10.63 ID:qifPN6KAO



やがて4人は看護師に呼ばれ集中治療室に向かった。
そこには既に手術衣から白衣に着替えたカエル顔の医者と静かに眠るインデックスがいる。

カエル顔の医者の顔を見るといつもの和む表情。
インデックスはというと安らかな顔をして寝息をたてている。

カエル顔の医者、いや冥土帰し〈ヘブンキャンセラー〉とよばれる、只でさえ外とは20年以上の科学技術を誇る学園都市にあっても隔絶した医療技術を持つ彼のことである。
心配する必要は無いと思っていてもインデックスを見ると安堵のため息を4人は吐いた。


冥土「まあ、出血量が多くてショック死一歩手前だったけどね。刃は骨や内臓には届いてなかったようだし、もちろん白井君の応急処置もよかったからね、命に別状は無いよ」


ショック死一歩手前?脳に充分な血液が回っていなかった可能性が?白井はあの時聞いたインデックスの声が違う人間が喋っているようだったことを思い出し。


白井「後遺症とかの心配は無いんのでしょうか?ショック死寸前だったということは脳に何か影響が残るとか、傷による運動機能障害が起こるとかはいかがですの?」


211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/01(水) 18:24:06.64 ID:qifPN6KAO



冥土「脳波、他のデータをみても意識障害や脳への損傷はないようだから影響は心配ないね。傷に関しては綺麗にくっつけてあるから、僕の腕を信じたまえ。機能障害がでることはないよ。僕は腕が切り落とされたとしても元通りに治せるからね」


白井「そうですか」

(ではあれは何だったのでしょう?)


冥土「とりあえず、麻酔が効いているから、明日の朝まで目覚めることはないけどね。それからもう一度チェックはしてみるよ」

「シスターさんか?ふむ……」

「ところで?君達はどうするのかね?」

誰がどう見てもインデックスの傷は誰かに斬られた跡である。

何も言わず、聞かずインデックスを看てくれたが、本来なら事件性有りとして治安機関に報告しなければならない事柄だ。

上条達にしても学園都市にこの件ではまた、信を置けないと思っている。
そのためインデックスを任せられるのはカエル顔のお医者さんだけである。
カエル顔のお医者さんは患者第一に考えてくれ、何かあったとして助けてくれる。それが学園都市からの介入があったとしても。

212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/01(水) 18:27:36.87 ID:qifPN6KAO



とはいえ、ここに一人でインデックスを預けるのも襲撃があった場合を考えると不安が残る。何らかの対策をとらねばならないと4人がそれぞれ考えていると。


冥土「上条君、退院直後に無理をしたようだね?心配だから検査しておこうか、今日は泊まっていきなさい」


上条「えっ、あー、はいお願いします!」


冥土「それと白井君、固法君から連絡があって職務中に負傷したため、今日は入院させると常盤台の寮監さんに伝えてあるそうだよ?僕からも一報を入れてあるからね」


白井「……わかりましたの」

(固法先輩、お世話をかけますの、寮監もおかしいと思いながらでしょうが……後が怖いですのー)


上条から見たらカエル顔のお医者さんはひとつの理想の姿かもしれない。
命ある限り助けてみせるという医者としての矜持。寄って立つは自分自身という独立不羈の信念。かなわないなあーと上条は思ってしまう。

213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/01(水) 18:31:29.37 ID:qifPN6KAO



だけどある人はいう。

患者のため、良かれと思い開発した物が負の遺産と化していると。
救うべきでない者まで救うため、世界に不穏の種を残していると。
カエル顔の医者もそれが分かっていないわけではない。葛藤があったとしても医者としての矜持、信念を揺るがさないだけである。

結局のところ、上条と白井が病院に残ることとなり、佐天と初春は一旦帰宅。
二人は明日また病院を尋ね、今後の打ち合わせをすることになった。

214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/01(水) 18:49:20.09 ID:qifPN6KAO



とある病院のとある一室


「あの少年がまた入院されるそうです、とミサカ10032号は盗み聞きした話しを報告します」


「あの少年というと上条さんのことですね、昨日退院されたばかりというのに、どうしたのでしょうか?とミサカ19090号は心配してみます」


「かの少年はまたトラブルに巻き込まれたようです、本人はケガなど無いようですが付添いのため、とミサカ10032号は補足説明します」


「そういえば不幸体質だとあの少年は語っていましたとミサカ10039号は思い出します」


「1年前にはミサカ達のお姉様〈オリジナル〉と一緒に様々な事件に遭遇しています、とミサカ13577号は答えます」


「そして、お姉様〈オリジナル〉のクローンであるミサカ達を助けるために命を懸けて救って下さいました、とミサカ10032号は述べます」


「はい、ミサカ達一人一人に命があると言っていただけました、とミサカ19090号は直接言って貰った10032号を羨ましく思いながら言ってみます」


「そうです、ミサカ達はもはや一人だって死んでやるものかというミサカ達の総意をミサカ13577号は代表して表明します」

215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/01(水) 18:53:16.26 ID:qifPN6KAO



「とはいえ、実験は一時停止で、いつ再開されるかもわかりません、ミサカ達が拒否したとしても上位個体を通じて命令されれば拒否できませんと、ミサカ10032号は悲観的なことを言わなければなりません」


「実験の再開状況はどうなのでしょう?とミサカ10039号は質問してみます」


「昨日までですが、『樹形図の設計者』〈ツリーダイアグラム〉による再演算はされていないようです、とミサカ13577号は報告します」


「実験反対派、元々統括理事会の穏健派の介入によりミサカ達も世界中の学園都市の協力機関に分散されて預けられようとしています、とミサカ19090号は希望を述べます」


「その通りです、それもこちらのカエル顔のお医者さんと繋がりを持つ方々の元でと、ミサカ13577号は知らされています」


「しかし、実験推進派も一万弱のミサカ達を一カ所に集めたままでは不安があるのと再び邪魔が入るのを警戒して容認した面が有ります、推進派が上位個体を握っている以上は、とミサカ10032号は楽観論を戒めなければなりません」


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/01(水) 18:58:29.27 ID:qifPN6KAO



「ミサカ達の存在意義は実験の成功のため死ぬことでしたとミサカ10039号は今更意味のない定義をします」


「今では、助けてくださるあの方々のためにも死んでやるものか、とミサカ13577号はミサカ達の総意を再度確認します」


「はい、ミサカ達は新たな生きる目標を見つけなければなりません、とミサカ19090号は答えます」


「それでもミサカ達の運命は誰かの手の上に有ります、とミサカ10039号は言うしか有りません」


「それでは、この先実験がどうなるか分かりませんが、当面のミサカ達の目標として、あの方々が抱えるトラブルの解決を助けるというのはどうでしょうか?とミサカ10032号は提案します」


「ミサカ達は軍用クローンとして製造されています、あらゆる戦術に対応できます、とミサカ10039号は必ず助けになるでしょうと賛意を表明します」


ミサカネットワークを通じて当面の目標について全ミサカから賛意が示される。

と、言っても世界中にミサカ達は移送されている最中。すぐに動けるのは同じとある病院にいる4人のミサカだけ、この4人に託すしかなかった。
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/01(水) 19:11:23.08 ID:qifPN6KAO



翌日、インデックスの検査は異常はなく、傷による発熱は2,3日続くかもしれないが問題ないということで、集中治療室から一般病室へと移ることになった。

検査やら移動のため上条達がインデックスに会えたのが一般病室(一応個室)に移ってからだった。

そこで上条達4人は唖然としている。

インデックスは朝、意識は回復したがその後、鎮痛剤の影響かまた寝ている。
それは別にいいのだがインデックスが寝ているベッドの反対側にかけてある物を4人してみている。


初春「学園都市の技術ってホントすごいですね?」


初春が呟いた後、調度カエル顔のお医者さんが入って来るところだった。


冥土「ああ、それかね?彼女はシスターさんなんだろ?着る物がないと困るだろうから用意したんだよ。僕としてはナース服が最上なんだけど、シスター服もなかなかだね?」


刀で斬られて、切れて血で汚れた『歩く教会』を着せる訳にもいかないので当然有り難かった。
そこまで頭がまわらなかったのも確かだったが、上条としてはインデックスの入院費はみるつもりだった。


上条(でっでも、こっこれって、いっ幾らかかるんだー?)

218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/01(水) 19:16:22.29 ID:qifPN6KAO



上条達4人の目の前には3着の『歩く教会』のレプリカ?が並んでいた。本物そっくりで如何にも手が込んでます、という造りをしている。
上条としては顔が暗くなり、頭の中は家計と相談中だった。


冥土「うん?ああ、お金の方なら心配いらないよ。ナース服の更新の予定があってね。今度は防刃、防弾、防火仕様にしようかとサンプルを頼んでおいたついでにね?」


上条(ハハハっ、助かった。でももう一つ気になるところがあるんですが?)


白井(ええ、何ですの、これは?)



初春(本当に半日で用意するなんてすごいと思いますけど、一体これは何でしょう?)


佐天「先生?聞いていいですか?何で安全ピンまで再現されてるんですか?」


冥土「うん?あれこういうデザインじゃなかったのかい?」


そこには確かに幻想殺し〈イマジンブレイカー〉に壊された後の『歩く教会』が3着、再現されていた。














第2章 『戦火』

終了
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/02/01(水) 19:24:11.43 ID:qifPN6KAO
今日はここまでです。


やっと第2章が終わった。


お医者さんルートいくのはシスターズを絡める時点で確定してたんですけど、『歩く教会』をどうしようかと?
切れちゃってますよね?間違いなく
で最後はこうなっちぁいました。
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/02(木) 00:18:57.53 ID:hqR+DlZDo
乙!
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/02(木) 23:16:17.05 ID:0/VC9jQC0
防刃、防弾、防火か  頼もしい修道服になって良かった
……で、そろそろ邂逅が近いのかな?
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/02/06(月) 11:39:57.50 ID:Lw92CciAO
とりあえず第2.5章から
第1.5章の続きです
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/06(月) 11:45:35.35 ID:Lw92CciAO



彼等は魔力反応を見失い、禁書目録の同行者の位置を把握できないでいた。

目印とした魔力反応を見いだせないのならば、神威による攻撃が行えない。

戦前の想定と異なった展開に彼等は戸惑っていた。
今更、想定と違うからと中止するわけにもいかず、術式を変更し目視による戦闘へと切り替える。

パナケア(ヤドリギ)の巻きついたオークの杖、彼等の聖域の神木から作り上げた儀式場の基点とすべき杖を持つ彼等の一人が術式の変更を行う。

アウトレンジから一方的に叩く予定が目視戦闘、接近戦へと戦術を変更しなければならない。
杖を持つ者を中心に他の者が禁書目録の同行者を猟犬として追い込む。
術式の変更と戦術の打ち合わせが済むと、杖を持つ者を守るため長い棒状の物を持つ者ともう一人がそばに残り、他の4人が禁書目録の同行者を猟犬として追うため散っていく。

目印が失われているため、禁書目録の同行者の正確な居場所などわからない。
相互に魔力反応を確かめ合い連携を取りながら慎重に禁書目録の同行者の居場所を探っていく。

4人が先行しつつ禁書目録の同行者の居場所を探索を続けていると突然、4人に向けて青白い雷光が放たれる。
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/06(月) 11:54:42.59 ID:Lw92CciAO



山林に満たされた魔力を利用し防御のための魔術障壁を強化していた4人にはこれといった被害はない。
これ幸いに雷光が放たれた場所へ向け、4人は放たれ続ける雷光を防ぎながら接近する。
4人は包囲陣形をとりながら禁書目録の同行者の動きを止めるため攻撃魔術を放ち始めた。

雷光と攻撃魔術が交錯するなか4人に追随して来た杖を持つ者が禁書目録の同行者を視界に納める。
杖を持つ者が杖を振り禁書目録の同行者に向け神威を発動する。

禁書目録の同行者、彼女は彼等が術式を変更する前から彼等の動向を掴んでいた。
見えない手を伸ばし、彼等が作り上げた儀式場の過半を自らの観測領域へとしている。
彼等が目印とした魔力を放つ十字架は既に彼女の元には無い。
彼等は彼女を見えない場所から居場所を掴むことができなくなったが、逆に彼女は自らの領域、観測範囲を広げたことにより彼等の位置を把握している。

敵に発見されず、敵の位置を知ることは戦闘を有利に行ううえで大きい。
ところが敢えて自らの位置を知らせるような雷撃の槍を放ったのは何故か?
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/06(月) 11:59:50.66 ID:Lw92CciAO



彼女はこの際、彼等の攻撃手段を確かめておきたかった。
彼等の手の内を知らずに打って出た場合、手痛い反撃を食らうかもしれない。
情報戦で完全に優位に立つため敢えて仕掛けたのだ。

杖を持つ者が目に映るとこちらに杖を向ける。
彼女は4人の攻撃を防ぎながら、今居た場所から離れると、彼女が居た場所に魔力が炸裂し、白い光を放つ。

今はない彼女が持っていた十字架に放たれた一撃と同様の魔術であるが、威力は劣る。

恐らく、仲間に魔力を分け与えている為、魔力の総量が落ちているのではないか?更に目視で狙いを付けないと魔術の発動が出来ず、狙った位置にしか一撃を加えられないと彼女は見当をつける。
ならば、猟犬のようにこちらの動きを妨げようとする、先行の4人を先に撃破すれば良い。
確かにあの一撃の威力は最初の一撃から比べれば落ちるものの通常の魔術攻撃より遥かに大きい。
しかし当たらなければ何でもない。
こちらを目視してから魔術を発動するまでのタイムラグを利用して避けることは容易である。
あの4人に邪魔されない限り。
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/06(月) 12:13:04.74 ID:Lw92CciAO



先行する4人の猟犬と杖を持つ者を引き離す為、彼女は木の間を抜け、走りながら高速で後退していく。

4人の猟犬は神威の炸裂で一瞬、彼女を見失うが高速で移動していく気配を感じ追跡にかかる。

先程は包囲が甘く彼女に避ける余裕を与えた。今度は包囲陣を狭め、より近づき動きを封じなければならない。

そういう思いなのか4人の猟犬達は彼女を捕捉しようと急ぎ、後続の杖を持つ者達と距離が開く。

彼女は十分に4人の猟犬達と後続の距離が開き、杖を持つ者が彼女を目視できない距離にあることを彼女の力で観測すると立ち止まり、目を瞑る。

儀式場から魔力を借りた彼等の魔術防御力は確かに硬い。通常の攻撃であればなかなか損害を与えられないだろう。
しかし、先程の雷撃の槍は実は触診の意味もある。
自ら放った雷撃により彼等の魔術防御力の強度、質など計測済みである。
後は如何に時間をかけず、猟犬達を打ち倒すか、だけ。

4人の猟犬達は立ち止まっている彼女を視界に捉える。
立ち止まっている彼女を迎え撃つつもりかと判断し、下手に動かれるのを避けるため、攻撃を控えながら急ぎ20mぐらいまで近づき、包囲陣を取ろうとする。

227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/06(月) 12:21:06.88 ID:Lw92CciAO



彼女は目を開け、彼女の絶対領域に進入してきた猟犬達に対して、絶対領域に力を解放する。

絶対領域、そこは彼女が掌握した領域の中でも彼女の力が及ぶ物、全てを彼女の意のままに扱える空間。

力の解放とともに約30m半径が青白い光の中に閉じ込められる。

そこへ進入していた4人の猟犬達は頭の中でバァンという音を聞く。身体は何かに弾かれたような衝撃を受け、地面に倒れる。

4人はともに身体を弛緩させ、何が起こったか理解出来ないまま意識を失うしかなかった。

雷撃の槍を防いだことで、4人は防御力を過信しすぎていた。
彼女の動きを拘束しようと不用意に近づきしすぎていた。

彼女は自ら放つ力だけでなく絶対領域下にある電子をも利用し、空間内を雷そのものに変換した。

彼等の防御魔術は向かって来る攻撃に対して障壁を展開するもの。
瞬間的に空間そのものを変換されては為すすべがなかった。

彼女の周りには焼け焦げた跡が残る。
一応、死なない程度の配慮はしてあるが強力な電撃を受けたことで生体電流が乱される。
それにより魔力を生成するための回線も阻害され、魔術師としては死んだと同然の状態とされている。
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/06(月) 12:42:55.02 ID:Lw92CciAO



後続の杖を持つ者を含む、残りの3人がようやく追いつき、その光景を見て戦慄を覚える。

狩りたてる猟犬がいなければ神威を振るおうとも、当てるのも難しい。仲間の数も瞬く間に半数以下となった。

杖を持つ者の護衛についていた長い棒状の物を持つ者が振り向き杖を持つ者に確認を取る。
杖を持つ者は頷きを返す。

長い棒状の物を持つ者はその手に持つ物から布を取り払う。出てきた物は異様な槍。

十字教の神の子がいた同時代に現れた彼等の英雄が愛用した神槍のレプリカ。
形状としては銛に近い。蛇腹状の穂先に、柄は槍であれば普通は木で造られる筈が海獣の骨で出来ている。
海獣など現代では見つけることも難しいため、非常に貴重な霊装であった。
しかし、彼等としてはこれを使うことは憚れることだった。

何故なら彼等の同胞が十字教に鞍替えしていった時、その英雄を十字教の神の子と同一視することに依って正当化していたからである。
原理主義者としての彼等にしてみれば、自分達の英雄を十字教に売り渡したようなもので許せない行為だった。

そのためこの神槍にも十字教の影響が及んでいる。十字教を敵視する彼等としては出来ることなら使いたくなかった。

その代わり、この神槍の使用者にはある特典が与えられる。
英雄が愛用した神槍、英雄は神の子と同一という偶像の重ね合わせにより神槍の使用者には神の子の振るう力の一部を使うことが出来る。
それは聖人が聖痕を開いて力を振るうのと同様。
神槍の使用者は聖人としての資質が得られる。
この場では意味がないが対聖人用としては槍として神の子を殺したロンギヌスの槍との近似性も利用出来る。

彼等としては非常用の切り札である。



229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/06(月) 14:00:51.06 ID:Lw92CciAO



神槍を持つ者の身体に荒れ狂う程の力が漲る。
神槍がそれを持つ者を疑似聖人に変えていく。
神槍が聖人としての力を与えてくれている。
絶大な力を。
人の身にあまる力を。

そう、本来の神槍を持つ者は人としてのポテンシャルの肉体でしかない。
神槍が力を与えてくれるとはいえ、その力は人の身ではほんの数分使うだけで身体をズタズタにする。それを儀式場の術式で補強して長時間でも使えるようにしてある。

そうしてまでも力の調整を誤れば爆発しそうなほどの力に苦悶の表情を浮かべ、耐えきれず咆哮をあげる。

疑似聖人と化した神槍を持つ者は狂ったかのように神槍を振り上げ、彼女がいる方へ向けて振り下ろす。魔力を使わずとも衝撃波が発生する。

異様な槍を持つ者の放つ魔力反応が変わったことを手を伸ばしていた感触から彼女は察知する。
彼女が感じる魔力の反応は聖人としてのもの。彼女はこれまでに聖人を敵として対峙したことがある。
その時の経験があれは聖人であると語っている。
まさか本当に聖人がいるというのかと彼女は考えたが、ならば何故最初から主戦力として出てこなかった?
そう考えるうちに疑似聖人が神槍から衝撃波を放つ。

230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/06(月) 14:57:52.63 ID:Lw92CciAO



木々はなぎ倒され木片へと変えられる。
地は削られ、空気を唸らせ彼女に向かう。
彼女は防御障壁で衝撃波に耐えるが、その場からの後退を余儀なくされる。
彼女は今の攻撃に魔術の匂いを感じなかった。
やはり聖人なのか?

聖人と対した時、圧倒的に不利なのは魔力の総量の違いと筋力、そして高速の機動力。
飛行機に例えれば、聖人が最新鋭ジェット戦闘機だとしたら一般の魔術師などレシプロ戦闘機でしかない。
彼女にしても下駄を履かしている状態で音速を超えない旧式のジェット戦闘機ぐらいでしかない。但し最新鋭のレーダーを載せた旧式のジェット戦闘機である。
敵の動きを目で追えなくとも位置情報など彼女は把握出来る。
ある程度の距離をたもつことができれば対応できる。もし、接近戦ともなれば聖人の筋力と機動力に押し切られ勝ち目は薄い。絶対領域を利用しても相討ちになる可能性が高い。
それが分かる彼女は牽制のため雷撃の槍を放ち、近づけまいとする。

疑似聖人は雷撃を神槍で防ぐ。青白い光が疑似聖人の周りで瞬くが効果がない。
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/06(月) 15:03:14.06 ID:Lw92CciAO



雷撃の槍では牽制にならないと見ると彼女は地より黒い、質量を持った靄を導きき上げる。
ジャリジャリと音たてて動く黒い靄を三つに分け、それぞれを槍状に穂先を構え、疑似聖人に襲いかからせる。

疑似聖人が神槍を振って槍の形状を崩すが、疑似聖人の周りに拡散した黒い靄は渦を巻くように動き、疑似聖人を取り囲む。
疑似聖人はまた神槍を振り回して黒い靄の渦を散らそうとする。が、黒い靄は散ることなく、形をうねらせながら蛇が鎌首をもたげるように鏃を作ると疑似聖人に襲いかかる。疑似聖人は神槍でそれを叩き潰すが一つを潰しても、次々と鏃を作り疑似聖人を狙う。
叩いても散らしても向かってくる黒い靄に業を煮やした疑似聖人は魔力を貯め、大きく神槍を振り切りながら魔力を開放する。
魔力に押され黒い靄が拡散する。
黒い靄が散らされ広がった隙に疑似聖人は神槍を腰だめに構え、一気に飛び出し高速で彼女に迫る。
神槍の射程圏に入った疑似聖人は神槍を彼女に向け、力任せに突いてくる。

彼女がギリギリのところで避けると勢いのまま、彼女の背後にあった木に神槍が突き刺さる。

神槍の穂先が破裂したように弾け、30の棘に分かたれて突き刺したものを破壊した。

232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/06(月) 15:08:16.20 ID:Lw92CciAO



神槍はすぐに元の形に戻り、疑似聖人は再び彼女に繰り出す。

彼女はかわしながら、先程の槍の破裂を見て、疑似聖人の謎を理解した。
インデックスに聞いていた。
彼女が貰った十字架の形状にまつわる話を。
それに関係する神話の話を。
神話の中の英雄の話を。
英雄が愛用した神槍の話を彼女は聞いていた。
とすると目の前の敵はかなり無理をしている。

彼女が考えている間にも疑似聖人は神槍を振るう。
叩き、払い、そして刺突。
槍の機能を十全に疑似聖人は用いて彼女を攻める。
長柄の武器が不利な筈の障害物が多い山林の中で、障害物を打ち壊し、薙払いながら神槍を操る。

彼女にしてみれば縦や横に神槍を振るわれるならまだいい。
聖人の力で振るうのなら確かに危険であるがモーションも大きく見切れる。空を切らせることができる。空を切らしても衝撃波が彼女を襲うが防御障壁で耐えられる。
しかしその中に混ぜられる刺突は受ければ即死確実。障壁で止めても、恐らく30の棘となって破裂し無防備な身体に届きダメージを受ける。
そしてこのまま接近戦を続ければ、いつか刺突を受けることになる。

233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/06(月) 15:11:53.59 ID:Lw92CciAO



彼女は神槍を捌きながら疑似聖人の表情を、その目を見る。
戦いに高揚し、力に呑み込まれた獣の顔。
彼女が聞いた英雄は半神にして戦神の色合いを濃く持つ。人として理性を保つことは至難の筈。
裏技を使っているだろうが人の身で聖人の力を制御しうるにも限界がある筈。

守勢に立たされながらも、彼女は勝利を掴むため思考を続ける。

このまま凌ぎ続ける事が出来れば目の前の敵は自滅してくれるかもしれない。
しかしこちらが捌き切れなくなる可能性の方が高い。
一旦距離をあけるしかない。
距離をあけた場合、アレが来る可能性がある。
神槍の名の意味。『雷の投擲』が。
それを凌ぐことができれば?
神槍を手放せば聖人としての資質を失う。
聖人としての資質を失えば、これまでの負荷から普通の魔術師以下に落ちる。
では如何に距離を置くか?
彼女は賭けにでる。

疑似聖人が神槍を横殴りに振るう。これまで避けていた彼女がそれを防御障壁で受け止める。いや、その力を利用して後ろへ飛ぶ。
尋常ではない聖人の力により数十メートルも後ろにとばされる。その間に有った木々にぶつかりながら。
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/06(月) 16:07:19.13 ID:Lw92CciAO



当然、自らを障壁で守ってあるとはいえ聖人の力による打撃、木々との衝突は彼女にダメージを与える。

頭を振りながら起き上がる彼女の目の先には、疑似聖人が神槍の石突きを爪先に乗せ、投擲にうつる姿が見える。

彼女は絶対領域に、アレを防ぐための力場を構築する。木々が、大地が彼女の力の影響から振動を始める。バチバチとした音が鳴り響く。

疑似聖人が神槍を爪先で蹴り上げながら彼女に向けて投げる。おかしな投げ方に見えるが彼等の英雄がこの投擲方法を使い軍勢を殲滅せしめた魔術である。

神槍は唸りをあげて飛び、彼女の頭上で炸裂する。
神槍は30の鏃に分かれ、雷となって降り注ぐ。
辺りは轟音に包まれ、雷が飛び交う。

彼等の英雄の必倒の一撃。
勝利を確信していた疑似聖人は神槍を投擲したことで聖人の力が抜けていくのを感じていた。
まだ儀式場との契約 が生きているため、なんとか立っていられるが限界が近い。
残りの仲間である杖を持つ者ともう一人が治療のため近づいて来る。

235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/06(月) 16:16:21.08 ID:Lw92CciAO



轟音は収まるものの、雷が時折飛び跳ねている中、数枚のコインが空中に浮かんでいる。

狙いは集まりかけている3人。

位置情報は掴んでいる。

そちらへ既にレールを伸ばしある。

最大威力では届かないし、死なせる積もりもない。
しかしこれだけ酷い目に遭わせてくれたのだから恨みを込めてもいいよね?と思いながら、かつて彼女の異名となった技を発射する。

空中に浮かんでいたコインが轟音を鳴らし、数本のオレンジ色の閃光となって彼等のもとに走る。

閃光が彼等のいる地面に激突した瞬間、連続して地面が捲り上がり吹っ飛ぶ。

全ての閃光が着弾した後はそこには土煙が立ち込めるだけで動く者はいない。
彼等は着弾の衝撃に何度も吹き飛ばされ意識を失い、半身を土の中に埋められている。オークの杖も直撃を受けたものか粉々となっていた。

儀式場の基点となった霊装が壊れたせいで儀式場が解除され、ただの山林に戻っていく。

彼女は30の鏃の雷の大半を形成した力場に沿い、逸らした。それでも至近弾があり、無傷で済んだとは言えない。
彼女は勝利を確信し集まった彼等の油断をついた。反撃の余裕を与えないため、負傷など構わず攻撃を選択して撃破に成功した。
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/06(月) 16:20:18.72 ID:Lw92CciAO



これだけ苦戦したのも彼女にとって久しぶりのことだった。

安堵と痛みと疲労と怒りを、彼女は感じていた。


「はーーー、上手く逸らすことが出来て良かったぁ、あー、もう体中のあちこちが痛くてしょうがないじゃない、見てなさいよ!あの女狐ぇぇ、インデックスは自由にさせて貰うわよ!」

「でも、インデックスを確保しようと送り込んでくるとしたら、あの二人なのかなぁ?うーん」


彼女は戦場を跡にして学園都市へ向かう。




















『…………データノニュウリョクカンリョウ、サイエンザンカイシカノウ…………』



第2.5章

終了
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/02/06(月) 16:23:33.55 ID:Lw92CciAO
今日はここまで


ちなみに彼女が持っていた十字架はケルト十字です。
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/06(月) 17:13:31.70 ID:E9pigHHRo
乙!
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/07(火) 11:47:46.50 ID:fL5imTOL0
☆さんもでるのかな? 乙です
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/09(木) 15:53:31.56 ID:MsVz3ZLAO



イン「……、ごめんね」

インデックスは一言だけ呟く。
入院してから漸くインデックスの意識がしっかりして、上条達が面会に訪れた後の最初の声は謝罪の言葉だった。

白井「私達の方から勝手に関わりましたの。謝られることなどありませんの」

佐天「そうだよ。インデックス」

初春「私達は私達がしたいことをしただけですから」

上条「謝るんなら、俺の方だろ?その『歩く教会』って言ったか?それを俺の右手で触っちまったからお前がケガするはめになったんだから。会ったばかりで信用しろっていうのは難しいかもしんねえけど。俺達だって色んな厄介事に首突っ込んだことあるんだ。お前の友達が迎えに来るまで守らしてくれよ」

イン「ダメだよ。これ以上迷惑かけられないんだよ」

上条「俺達じゃ力になれないか?お前を狙ってた魔術師も何とかしたんだし、俺の右手があれば魔術師なんざ敵じゃねえって」

241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/09(木) 15:56:15.98 ID:MsVz3ZLAO



イン「違うんだよ。私の頭の中にある10万3千冊の魔導書、全てを使えば世界の全てを例外なくねじ曲げる事ができる。それをできる人間を魔神と呼んでるの。魔術を極めすぎて、神様の領域にまで至った人のことだよ。一度退けられたからって魔術師が望むことをなすために高見を目指すなら、絶対に諦めるわけがないんだよ。魔術師はそういうものなんだよ」

上条達はその言葉に学園都市の理念でもある言葉を想わざるを得ない。

『人間に神様の計算はできない。ならばまずは人間を超えた体を手にしなければ神様の答えには辿り着けない』

その頂に立つ者、絶対能力者、神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの。

科学と魔術、立ち位置は違うが目指すものは似たようなもの。

それを思えば上条達は暗澹たる気持ちになる。

絶対能力進化(レベル6シフト)実験、その供犠となるシスターズ。
魔神へと至る鍵となるインデックス。

それを目指す者にとって諦める理由がないのは科学も魔術も同じ。


242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/09(木) 15:59:26.03 ID:MsVz3ZLAO



上条「ふざけてんじゃねえぞ!そいつらー!あの魔術師とかにも言ってやったが、それが女の子を傷つけていい理由になんのかよ!?それとインデックス、人を勝手に値踏みしてんじゃねーぞ!見捨てる積もりだったら最初から助けたりしてねーんだよ。どんなことがあっても守ってやるって覚悟を決めてんだよ、俺は」

上条の後ろで白井は呆れた表情で

白井「(相変わらず、天然さんですの。これでまた被害者が増えますの)」

初春「(上条さんのお友達の変態さん?が一級フラグ建築士とかいってましたが)」

佐天「(ホント上条さんってば、私達は免疫があるから大丈夫だけど、フラグの回収をしないで立てるばかりだから、都市伝説サイトで話題になりかけてますよ?)」

3人の少女がこそこそ話をしても二人には耳に入らないようで、上条とインデックスの会話は続く。

イン「本当にエムと同じこと言うんだよ?エムも同じこと言ってた。だからこそなんだよ。私を守るために傷ついて、無茶ばかりして、挙げ句は他の救いが必要な人まで助けて。私がエムを地獄に引き込んじゃったんだよ。同じことを繰り返す訳にはいかないんだよ」

243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/09(木) 16:04:29.00 ID:MsVz3ZLAO



上条はそういうことを無条件でできる少女を知っていた。

上条「じゃぁな?そのエムって子がお前に恨み言の一つでも言ってたか?」

イン「そんなこと言われたことないんだよ。いつも私のこと気遣ってばかりで……」

だから、インデックスの友達がどう思っているかが分かる。

上条「だろ?俺も一緒なんだよ!その子もお前の幸せそうな顔を見たかったんじゃねえか?お前に幸せになって欲しいんじゃないか?だから無茶だってできるんだよ。
きっとその子も、もう学園都市に着いて、お前を探してるって、もうすぐ迎えに来るさ!それまで大人しく俺達に守られてろよ!」

イン「…………」

返事はなく、インデックスは目に涙がうかび始める。まだ巻き込んでしまった後悔やエムを心配する気持ちがあるのだろう。

それでも優しい4人の眼差しが嬉しかった。

インデックスは布団を頭の上までかきあげる。そうしなければ大泣きしそうだった。泣き顔を見られそうだった。

244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/09(木) 16:08:21.66 ID:MsVz3ZLAO



布団の下でグスグスと泣き声がするなかカエル顔の医者が病室に入って来る。

冥土「まだ昨日の今日だからね。あまり興奮させちゃいけないよ」

初春「あっ、すいません」

冥土「安静にしてれば退院まで1週間というところかな?」

佐天「(早っ!)」

冥土「それと君達、彼女達が逢いたいそうだ。良かったら彼女達のところに行ってあげてくれるかな?」

白井と初春はまだ不明な点について尋ねたいことがあった。でも、カエル顔の医者のいうことももっともであった。
仕方なくまた次回にと思い上条達と一緒に病室を出て、彼女達のもとに向かう。

白井と初春が尋ねたかったこととは

インデックスが所属するという必要悪の教会とは?

何故、必要悪の教会が助けないでエムという少女が一緒にいるのか?

あの魔術師との戦いの中、違うインデックスに見えたのはなぜか?

245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/09(木) 16:30:37.25 ID:MsVz3ZLAO



上条達はカエル顔の医者の言葉に従って病院の奥に向かう。

そこにはインデックスのことで昨日の朝、話し合うことができなかったシスターズがいる。もう一つの救わなければならない存在。御坂美琴のDNAマップから造られたクローン。その生き残りの9969人のうちの4人が。

何の話が有るのかわからないままシスターズのいる部屋の前まで上条達は来る。
そういえば昨日はシスターズの今後について話し合う予定だったと上条達は思い出す。
話し合うと言っても具体的な対策があるわけではない。

入院中に上条が謎の先輩から聞いた話しとシスターズからの情報、上条達というか初春が調べた内容を照らし合わせて確認するだけ。

何とかしたいと思っても学生の身ではできることはたかがしれている。

学園都市の上層部が関わっている問題。いつでも命を懸けられる準備はできていても上条の右手は現実に対して無力。

実は上条達の他にも実験中止、シスターズの保護に動いてくれている人達もいる。それを上条の入院中に見舞いに来た上条の謎の先輩、雲川が教えていってくれた。

246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/09(木) 16:35:56.32 ID:MsVz3ZLAO



上条は部屋に入りながら、もしかしたら誰かが動いてくれて自分たちが知らない新しい情報でもあったのかと聞いてみることにした。

上条「よー、御坂妹何かあったのか?」

「何かあったのは上条さん達の方では?とミサカ10032号は質問を返します」

上条「えっ?」

「昨日、上条さんと白井さんが入院された、とミサカ19090号は聞きました」

「ミサカ達の事で、でしょうか?それとも別の事件によるものでしょうか、とミサカ10032号は再度質問します」

上条達は最初に意表をつかれたため話の主導権を握られてしまうが、なんとかシスターズに心配をかけないようにしらを切ろうとした。

しかし次第に追求が厳しくなり、結局大方の経緯を話さざるを得なかった。

経緯を話終わった後、シスターズの4名を代表して上条が御坂妹と呼ぶ10032号が

「では、ミサカ達は上条さん達に協力させて頂きます、とミサカ10032号はミサカネットワークを通じて賛同を得たミサカ達の総意を述べます」

247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/09(木) 16:40:58.68 ID:MsVz3ZLAO



上条「おいっ、ちょっと待て!それはマズいって!」

「何が?でしょうか?ミサカ達は軍用クローンとして造られています、十分力になれるでしょう、ミサカ達は実験が一時停止ということですることも有りません、助けられた恩を返させて頂きたいのです、生きる目標のないミサカ達に当面の目標とさせて貰いたいのです、とミサカ10032号はダメだと言われても勝手に協力させて貰いますからと暗に脅かしながら説得します」

シスターズの決意が固かったことと先程、上条が守らせてくれとインデックスに言った手前もあり上条達は拒否しずらい状況だった。

考えてみれば魔術師からのアクションが無ければ入院中のインデックスの護衛ぐらいしかやることがない。
護衛といってもいきなり同じ顔の少女が4人も護衛だと現れたうえ、クローンなどと言おうものならインデックスを混乱させるだけ。説明もややこしくなる。
ということでシスターズにはインデックスには会わないように言い含める。

何か次の事態が起これば協力して貰う。できれば何も起こらない方がいい。起こったとしても上条、白井、佐天と初春だけで解決できればいい。そういう思いを隠しながら、それまでは待機というところで納得してもらい落ち着く。


そして、次の事態、異変は24日の朝に起こる。

248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/02/09(木) 16:42:22.08 ID:MsVz3ZLAO
ここまで
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 22:17:48.19 ID:K87QqAgh0

やっぱりこの設定面白いな  娘さん達に囲まれてるけどまるでハレム臭がしない
ここの上条さんはお馬鹿だけど愛すべきみんなのお兄ちゃんって感じ
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 22:23:13.56 ID:uz1VQ/q+o
おつおつ
毎度の事だが読み終わってすぐにでも続きが読みたい気持ちになるわぁ
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 00:41:39.80 ID:XyOyIKEKo
乙!
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/10(金) 23:23:06.74 ID:1IZVB0zs0
乙 期待
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/11(土) 20:57:47.64 ID:4lV6hfuAO



24日の朝、上条は昨日と一昨日と変わらない朝だと思っていた。

インデックスは病室のベッドの上でだるそうにしている。

傷の影響があるので当たり前。カエル顔の医者も2.3日は熱がでるだろうと言っていた。

ところが朝の検診の後、カエル顔の医者に上条達は呼ばれる。

カエル顔の医者は訝しげな表情で

冥土「おかしいんだね?昨日の夜の段階で熱は下がっていたんだがね。今朝、計ると少し熱が上がっているんだよ」

白井「まだ日が浅いので容態の変化はあるのでは?」

冥土「確かにね。僕も最初はそれを疑ったんだけどね。傷の経過は良好。血液検査でも問題があるように見えない。疑うには早いかもしれない。単なる体調の変化が原因と見るのが正しいかもしれないけどね」

初春「風邪とかそういう類いかもしれないけど、違う可能性があるということですか?」

冥土「経過を観察してみなければわからないけどね。僕の医者としてのカンがおかしいと言っているんだよ」

254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/11(土) 21:00:44.39 ID:4lV6hfuAO



異変と呼ぶには些細な事。他の医者なら良くあることで片づけられていたかもしれない。

冥土帰し〈ヘブンキャンセラー〉とも呼ばれるカエル顔の医者だからこそ気付いた僅かな異変。

その日、上条達はできることもなく、不安な気持ちを抱えながら1日を過ごす。

255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/11(土) 21:03:52.00 ID:4lV6hfuAO



とある病院から少し離れたビルの屋上に二つの人影がある。

神裂「そろそろ始まるころですか……」

ステイル「ああ、例年だと影響がでるころだね……」

神裂「……あと5日ですか」

ステイル「どうする?踏み込むかい?」

神裂「やめておきましょう。一般人が多すぎますし、あそこは病院ですから。今の時点ではということですが」

ステイル「あの傷だからね。回復魔術も使わないで普通に治していたら当分はかかるだろうさ。それに影響がでて動けなくなるのは間違いないね」

神裂「……そうですね。7月29日の期限の時に忍び込んで処置を行う方針でよろしいかと。ただここは科学技術が異常に発達した街です。予想より早く治る可能性もありますし、あの子の身柄を移送されるかもしれません」

ステイルはむっとした表情をして、あの少年について調べたことを思い出す。
どういう組織に繋がっているのか不明ながら学園都市で起こった事件に様々な形で関与している。それもふたりにも詳細が掴めない秘密にされている事件に。
何らかの組織に繋がっているとしたら何処かへと移される可能性がでてくる。


256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/11(土) 21:08:32.29 ID:4lV6hfuAO



ステイル「その場合は途中で回収する必要があるね」

神裂「ステイル、回収という言葉はやめなさい。気持ちは分かりますが。……人払いをいつでも発動できるように。その時は私が正面に立ちます」

ステイル「大丈夫なのかい?」

神裂「はい、あの時は助けにも行けず……失態です」

あの時、ステイルが戦っている最中、神裂はインデックスを斬ってしまった衝撃から茫然自失となり援護にいけなかった。
神裂の助けがあれば結果は変わっていた筈である。

神裂「あの少年の右手には魔術は分が悪いようですから」

ステイル「聖人である神裂なら魔術に頼らずとも何とかなる、か。他にも能力者がいるようだけど?」

神裂「彼女クラスでも居ない限りは大丈夫でしょう」

ふたりの魔術師は万一に備えて動き出す。

257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/11(土) 21:22:58.87 ID:4lV6hfuAO



翌日になり疑惑は確信へと変わる。

投薬にも効果を表さず、血液検査にも異常といえる程の数値は出ない。

カエル顔の医者によれば僅かながら昨日よりインデックスの病状は悪化している。傷の所為ではない。インデックスの身体が意図的に悪化を招いているかのようでカエル顔の医者も原因が見いだせない。

白井、佐天、初春とシスターズの4名は上条が泊まっている部屋へ集まっていた。

初春「魔術について調べてみましたけど、呪術と呼ばれるようなものでしょうか?」

上条「呪術?」

佐天「呪い殺すとかいう、アレ?」

白井「そんな非科学的な!」

初春「有り得ないとは、いえませんよね?」

全員「…………」

学園都市の超能力とは違う方式を見たばかりである。呪いというものがないとは言い切れない。垣間見てもその全容は見えない。

上条「だったら俺が右手で触れば解決できるんじゃ」

白井「いえ、この前見た魔術のように発生原因が別にあるのでは効果は期待できませんの」

上条「だったら、その発生原因を叩くしかないってことか!?」

佐天「でも、どうやって?」

258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/11(土) 21:32:11.70 ID:4lV6hfuAO



白井「まだ、魔術が原因と決まったわけではありませんが、あの魔術師を探し出して原因を聞くのもひとつの手ではありますの」

上条達は姿を見せない魔術師にどう対処するか、これまでは魔術師の襲撃に対応することしか考えてなかった。
学園都市内にいるであろうが、恐らく上層部が協力しているならば見つけだすのは難しい。

「では、ミサカ達から提案をさせて貰います、とミサカ10032号は話に加わります」

「おびき寄せる、というのはどうでしょうか、とミサカ10039号は発言します」

上条「おびき寄せる?」

佐天「それこそ、どうやって?」

「その魔術師?の目的はインデックスさんです、此処へ直接の襲撃をしないところを見るとこの病院への手出しは差し控えてくれているようです、とミサカ13577号は状況を推測します」

「魔術師もインデックスさんを手に入れることが目的である以上、本当に呪い殺すというつもりはないでしょう、とミサカ10032号は補足します」

白井「では、病状が悪化した時点で取引を持ちかける、もしくは解明のため別の研究所などに移送する際を襲撃するつもりと?」


259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/11(土) 21:41:43.77 ID:4lV6hfuAO



「はい、そのうえでもし病院の外にインデックスさんが元気な姿を表したならば魔術師?はどう動くでしょうか、とミサカ19090号は上条さん達に伺ってみます」

魔術師の側も、そうなれば魔術が通じなかったと考えて慌てるだろう。この前の戦いで上条の右手を魔術師も知っている。そう考えても不思議ではない。
病院での襲撃を回避してくれていても一旦、外にでれば?

上条「どうって、そりゃ向こうから姿を見せてくれるだろうけど!?インデックスを病院の外に出すなんて無理だぞ!体調もあるし、何より危険に晒すことなんてできねー!」

「はい、その通りです、インデックスさん本人を病院の外に出す考えはありません、とミサカ10032号は説明します」

初春はインデックスの病室にある、ある物を思い出して

初春「変装ですか?確かにあの修道服は本物そのものにできてます。多少の体型の違いも隠してくれるでしょうけど?」

白井「かなり危険な役割になりますわねー?」

ミサカ10032号「それではその役割はこのミサカが」

佐天「ダメだよー、そんなのは私の出番でしょ」

初春「無理ですよ、佐天さん」

260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/11(土) 21:46:57.62 ID:4lV6hfuAO



ジトーと初春は佐天の胸を見る。

初春(羨ましくなんかないですよ!まだ成長期ですから!多少の体型は隠してくれるといっても胸の大きさぐらい分かりますからね。シスターズを危険に晒すのは論外。白井さんは左腕の負傷が完治したわけではありませんし、緒戦は私が気付くのが遅くなって皆さんを危険な目に会わしてしまいました。今度は私ががんばる番です)

初春「私がやります。必要なのはウィッグとカラーコンタクトですね。となると作戦は午後からになりますけど、やはり見づらくなる夕方がベストですかねぇ?」

上条「ちょっ、ちょっと初春さん、そんな危険なことをしないでもいいじゃねーか?俺が何とかすれば」

初春「他に状況の打開策はないとおもいますよ?上条さん一人で何とかできる状況じゃないんです。みんなで力を合わせないといけないんです。当然、私ひとりが囮として動いては怪しまれますからみんなも一緒に動くんですよ、危険なのはみんなも一緒です。それに防刃、防弾、防火仕様とのことですから。
あっ、シスターズは見えない所からの援護ですよ。
反論は許しませんからね」

261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/11(土) 21:52:30.18 ID:4lV6hfuAO



珍しく、初春の強い主張で話しの流れは決まる。上条もそれ以上は言い出せない。

誤解に誤解が重なり、再び魔術師と上条達は会いまみれることになる。

ただ、初春が魔術の仕業とみたのは、正しかった。

262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/02/11(土) 21:54:53.32 ID:4lV6hfuAO
ここまで


いよいよか
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 22:07:53.55 ID:DNhfOfjV0
相見える 

乙! なるほど、三着用意されたのにもしっかり意味が……
いよいよ次回で序章に繋がりそうだし、期待!
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/12(日) 16:35:10.11 ID:xDKuv/Qr0
乙 続きに期待
265 :どこに、いるのよ…… [saga]:2012/02/22(水) 10:48:52.53 ID:Hh+ZvtgAO



日が西に傾き、高層ビルの裏に隠れかけた頃、上条、白井、佐天はインデックスに扮装した初春を囲んで病院を出る。

目的地は上条の寮。
あてもなく街を歩き回っても不審すぎる。
おびき寄せるにしても襲撃のタイミングは相手次第。
ならば上条達が知り尽くした道筋で襲撃された方が地の利を得やすい。
少しでも勝利確率を高める努力をしなければならない。
魔術師の手の内を、学園都市の能力者とは別の法則を理解できている訳ではないから。

日は傾き、黄昏の時を示しながら、夏の日差しらしい西日を送り続けている。

上条達は魔術師に見られている意識が付き纏い緊張を隠せず表情は固い。言葉を交わす余裕がなく、黙って街路を歩いていた。

西日が4人の影を後ろに長く伸ばしている。周りの建物も黄昏色に染め上げられていく。何もなければ夏休みの思い出になるような風景の一編。ただ、一緒にいて欲しい誰かを欠いた物悲しい思い出の。

初春「(今日は7月25日ですか、あと4日で丸一年になってしまうんですね……)」

黙っていては、緊張に押し潰されそうだったのか、インデックスに変装している初春が静かに呟く。
266 :先にアイツに連絡をとるべき? [sage saga]:2012/02/22(水) 10:56:04.23 ID:Hh+ZvtgAO



上条「そうだなぁ、どっかで生きてるって、御坂が死んだりする筈が無いって思ってはいるんだがなぁ、もう一年か……」

白井「お姉様は死んだりしませんの……必ず、帰って来てくださりますの!」

佐天「きっと、ごめんごめんなんて言いながら……いや、私たちのピンチに颯爽と登場とかの方があるかなー?」

上条「御坂ならありそうだな、少年マンガとか好きだったから」

白井「都合良くヒーローが現れてくれるなら、苦労しませんの。風紀委員と警備員の地道な努力が日常を維持してますの。上条さん、いつも、いつも、言わせていただいてますが一人で突っ走らないで欲しいんですの!」

佐天「それが、白井さんの正義だもんね?でも白井さんもそれだけじゃ足りないってわかってるんだよねえ、じゃないと上条さんの厄介事に協力したり、あんなに始末書を書くことになったりしないもんね」

上条と白井が何か言いかけた、その時、初春の歩みが止まる。

初春「(……話しているうちに人気がなくなりましたよ?この前の状況と同じ、でしょうか?まだ、全く人が居なくなるような時間帯でもありません!?)」

267 :十字架を無くしたのは痛かったか…… [sage saga]:2012/02/22(水) 11:01:42.45 ID:Hh+ZvtgAO



その言葉に上条達は辺りを見渡す。上条達の周りからいつの間にか人の姿が消えていた。

気が付いてみれば、見慣れた風景が既に異質な空気を漂わせる世界へと様変わりしている。上条達の表情に再び緊張が走る。

そして、上条達の4人の影のもとにひとつの長い影が伸びてくる。伸びてきた影の先には人のシルエット。

逆光ゆえに、顔などは見えない。この前の魔術師とは違う。
あれは男であったが、この道の先にいるのは女性であることがシルエットからわかる。

インデックスから聞いていたもう一人の魔術師。

上条と白井が前に出て、佐天はインデックスに扮した初春の傍らに寄る。

ゆるやかに前方の魔術師が近づいてくる。影の世界から現世に身を移すかのように。上条達に魔術師の容姿が見えるようになる。

先日の魔術師は魔術師と呼ばれて、納得いく姿をしていた。
上条達から10mほどの所で歩みを止め立ち止まった女性の魔術師はTシャツに片脚だけ大胆に切ったジーンズ姿。
ロックバンドでもやっているかの服装。だけれども、ギターなどではなく、腰から拳銃のようにぶら下げた2m以上は有りそうな日本刀を身につけている。

268 :あてもなく、探し回っても仕方ないし、アイツに…… [sage saga]:2012/02/22(水) 11:09:22.19 ID:Hh+ZvtgAO



上条達に向ける眼差しは、殺意などを感じさせない優しげなもの。

けれども、その日本刀が周りに漂っている空気が上条達に危険という言葉を巡らさせている。

優しい眼差しを向けたまま。

「神裂火織、と申します。……できれば、もう一つの名は語りたくないのですが」

上条「もう一つ?」

神裂「魔法名、ですよ」

上条「殺し名ってヤツか」

神裂「ああ、ステイルから聞いたのですか。……素直に言って、魔法名を名乗る前に彼女を保護したいのですが」

眼差しを上条の後ろ側に向けながら神裂は答える。

優しい眼差しなどではない。強者が弱者を見る、労るような目。
一方通行が見せた憐れんだ目ではなく。
油断を含まない余裕を思わせる目。
上条はそう理解した。

上条「残念だったな!インデックスだったら、ここにはいないぜ!!」

上条の後ろで初春がフードとウィッグをとり、花飾りを付け直す。

神裂「して、やられましたか。さて、どういたしましょうか?困りました。……そう、ですね。あなた方を排除しておくのもいいかもしれません」

神裂は降ろしていた右手を刀の柄へ伸ばす。

上条「下がれ!白井」

269 :ああ、でもなんて言えば? [sage saga]:2012/02/22(水) 11:18:25.31 ID:Hh+ZvtgAO



上条は右手を前に突き出し、白井をさがらせる。異能を打ち消す右手を盾として3人の少女を守ろうとした。

柄に手をかけたと見えた瞬間、上条達を斬撃が襲う。あまりの早さの抜刀術。上条達に抜く手も見せない。

七閃。

上条には七つの太刀筋が見えた。空気を切り裂く白い線。アスファルトの路面に七本の砂煙の跡をたてながら逃げ場がないように迫る。

上条は目の前に迫る、一本の太刀筋に右手をあわせる。打ち消した後、神裂に一気に詰め寄るつもりだった。

太刀筋が上条の右手に触れ、切り裂いた。
上条の右手から血が流れ落ちる。

上条「なっ!?がぁぁ」

佐天「かっ、上条さん!?」

血塗れになった右手を左手で押さえ上条は膝をつく。

佐天と初春が上条に駆け寄る。

白井は既に跳んでいた。神裂の背後へ。

白井は神裂に触りテレポートで引き倒そうとするが、手を触れかけた瞬間、神裂の姿が消える。

白井「えっ?」

神裂は背後に気配を感じた瞬間に数歩、移動していた。

咄嗟に白井は再度テレポートで上条達の元に戻ると、もと居た場所を刀が鞘ごと空を切っていく。

270 :アイツは何も言わないでも協力してくれるだろうけど…… [sage saga]:2012/02/22(水) 11:30:04.72 ID:Hh+ZvtgAO



神裂はもう一度、上条を見据える。

神裂「ステイルからの報告は受けてます。少年の右手は何故か魔術を無効化すると。今のは七閃といいます」

ふわっと神裂のまえで赤い糸が揺れる。上条の右手を切り裂いたもの。鋼糸。
赤く見えるのは一本だけ。斬撃は七つ。
七本の鋼糸があるということ。

上条「くそっ、魔術じゃなかったってことかよ!?」

神裂「ええ、魔術ではなく古くから伝わる武術と言った方が宜しいでしょうか。……できれば、魔法名を名乗る前にこの件から手を引いていただけると有り難いのですが?」

神裂は優しげな眼差しを崩さず言う。

上条(しかも、手加減までされてるって言うのかよ!?ああ、あの勢いなら俺の右手なんか今頃くっついてなかっただろうからな!)

神裂は上条の表情を読みながら。

神裂「この、七天七刀も見せかけではありません。七閃をくぐり抜けたとしても、真説の唯閃が待っています。
いかがでしょうか?手を引いていただけるのであれば、あなた方を傷つける必要がなくなるのですが?」

白井「そううぅぅいうぅぅぅ訳にはっ、まいりませんのおォォォォ!!」

271 :ホント、どうしよう? [sage saga]:2012/02/22(水) 11:44:11.86 ID:Hh+ZvtgAO



白井は言い様、両手でスカートを捲り太腿に巻いてあるバンドから鉄針を指の間に挟み取り出す。
そして、両腕を交錯させ眼前に構える。

白井は今まで、この鉄針を犯罪者を壁や地面に縫い止めるために使ってきた。
直接、相手の身体を狙ったことなどない。
しかしこの相手には同じ方法は通じない。先程の動きからしても武術の達人。

白井は鉄針を直接、神裂の身体に送り込む。

白井の手から鉄針が消えると共に、神裂が身をかわす。
何もない空間に鉄針が現れ、力なく鉄針は地面にカランと音を立てて落ちる。

神裂「瞬間移動というものですか?タネが分かっていれば、問題ありません。私の身体能力ならば、かわせます」

尋常なる反射神経でないことぐらい白井も先程の動きからわかっている。
本当に人間離れしている。
けれども一人で無理なら、力を合わせればいい。

神裂が動いた先に、佐天が風を作り、神裂の顔を狙って打ち出す。
打撃を与えられるほどの力はない。せいぜい目眩まし程度。それでも注意を逸らすには十分の筈。

神裂が軽く腕で払う。
簡単に風は霧散するが、その僅かに注意向けた間があれば十分な隙となる。
もう一度、白井は数本の鉄針を神裂に向けて跳ばす。

が、それすらもかわされる。

272 :うん?これってまさか、ステイル? [sage saga]:2012/02/22(水) 11:52:41.37 ID:Hh+ZvtgAO



白井(ばっ、化け物ですの?今のタイミングで!?)

普通に投げるのであれば軌跡を見てかわすことも可能。しかし白井が行っているのはテレポートで直接、タイムラグもなく送り込んでいるのである。
何かの予兆を感じてテレポート前に動きだすことができたとしても、今のタイミングでかわされるとは白井は想いも及ばなかった。

神裂が再び七閃を振るう。

七つの斬撃が上条達を襲うが、初春が前に出る。

上条「初春さん!?」
佐天白井「初春!?」

何本かの斬撃が初春に当たり、初春は後ろにはじける。

佐天と上条が初春を受け止める。

初春「痛っ、さすがに学園都市の技術ですね。斬られてはいませんよ。打撃の吸収までは無理だったようですが」

上条「それでも、無茶するんじゃねー」
(結局、俺が一番役に立たねえのかよ……)

自分に腹を立てながら、上条は血の滴る右手を握りしめ、神裂へ駆け出す。

神裂は七閃を繰り出す体勢をとる。

そこへ、パッパッパッパッパンと銃撃音が鳴る。

上条は思わず立ち止まる。

神裂は銃撃の射線を見切り、かわしていく。

273 :えっ、違う。この感じは神裂さん! [sage saga]:2012/02/22(水) 11:57:52.15 ID:Hh+ZvtgAO



射線は神裂を追いかけ、他にも三ヶ所からの銃撃も始まり神裂に降り注ぐ。

それでも、神裂は尋常ではない身体能力で射線をかわし続ける。

遠距離では当たらないと見たか、射手が四方から姿を現す。

シスターズの4人が姿を見せ、連動しながら射撃を繰り返す。ミサカネットワークを利用し4人の8つの目で情報を共有しながら。

神裂(まだ、仲間がいたのですか、ゴム弾のようですが、4人の連携が絶妙です、少し厄介ですって、どっどういうことですかー?
ゴーグルで顔が隠れてますが、間違いありません彼女達は?一体!?)

神裂は混乱しながらも、射線にとらわれないように動き回る。その反応速度は凄まじく、常人では追いきれないほど。

シスターズも四身一体とした連携をとらねば、忽ち反撃を受けかねない。

一見、銃撃を送り込んでいるシスターズの方が有利に見えるが、神裂には一発たりとも有効打を与えていない。

シスターズとしては有効打を与えたいが、現状では神裂の反撃を抑えるための弾幕を張っている状況。そして、弾幕が途切れる時が来る。
シスターズがもっているのはサブマシンガン。景気よく弾幕を張っていれば弾倉の弾などすぐ無くなってしまう。

弾倉を入れ替える時、弾幕は途切れる。


274 :やっぱり神裂だー、不味いんじゃない、これ? [sage saga]:2012/02/22(水) 12:30:01.17 ID:Hh+ZvtgAO



それまで、守勢に回っていた神裂はその僅かな間に七天七刀を引き抜き、上方に構えると溜めていた魔力とともに、振り下ろす。

膨大な力が地面に叩きつけられ、小さな世界が破裂する。
世界が悲鳴をあげる。轟音と空間を揺るがす振動。

上条はこれまでと違う危険を感じ三人の少女を守ろうと身を盾にするため前に出る。

力の余波が叩きつけられた方向へ延びていく。
すなわち、開放された魔力の衝撃波がアスファルトに覆われた路面に地割れを起こしながら上条達へと向かう。

世界を揺るがす悲鳴が消えた後、神裂が見据える先には上条が血に染まった右手を前にして立っていた。

上条「……何でだよ?なんでこれだけの力を持っているのに?そんなに魔神っていうもんになりてえのかよ!?これだけの力があれば十分じゃねえかよ!?どうしてインデックスを傷つけてまで、まだ力を欲しがるのかよ!?」

上条には分からない。自分にこれだけの力があれば守りたいモノ全てを守れるのに何故、目の前の魔術師や一方通行が更なる力を少女達を傷つけてまで求めるのか?
そこまでして求める価値があるモノなのか?
魔神や絶対能力者というものが?

275 :でも、何?この感じ…… [sage saga]:2012/02/22(水) 12:34:54.86 ID:Hh+ZvtgAO



上条の叫びに神裂は苦渋の表情を浮かべる。そして

神裂「……違いますよ。私達だってあの子を助けたいのです。誤解があったようなので申しますが、私の所属する組織の名前は、あの子と同じ、イギリス清教の必要悪の教会です」

上条達は呆気にとられる。意味が分からない。じゃあ何故、インデックスを傷つけてまで捕らえようとするのか?現在、インデックスに生じている症状は一体?

神裂「あの子と私達は同僚にして、大切な親友だったんです」

親友だった?過去形?

上条「……どういうことだよ?」

神裂「完全記憶能力については?」

上条「ああ、10万3千冊の正体、だろ?」

上条と神裂が会話を交わす間に神裂の一撃の余波でとばされていたシスターズの4人も上条達の側に寄り集まる。

神裂「そうです。それでいて、あの子の人としてのスペックは常人とほぼ変わりません。あの子の脳の85%以上は、禁書目録の10万3千冊に埋め尽くされてしまっているんです。あの子は残る15%でかろうじて動いている状態なんです」

白井初春(えっ?)

276 :何だろう?この嫌な感じ。誰と戦っているの!? [sage saga]:2012/02/22(水) 12:39:52.52 ID:Hh+ZvtgAO



上条「だから、どうしたっていうんだ?同じ必要悪の教会か?その同僚で親友だったのが、なんで追っかけまわさなくちゃならなくなるんだよ?確か、エムって子が一緒についていたんじゃねえかよ?」

神裂「いえ、彼女は必要悪の教会の所属ではありません。私達が耐えきれなくなった時に禁書目録の同行者として買ってでてくれたのです」

上条「耐えきれなく、なった?」

神裂「……はい。あの子は覚えていないんです、私達のことを」

上条「覚えてない?なんで?インデックスには完全記憶能力があるんだろ?なんで覚えてないってことになるんだよ?おかしいだろ」

神裂はその言葉に痛みを感じる。救いと信じていても、別れの言葉を思い出せば耐えられなくなる。

神裂「正確にはあの子の記憶を私達が消しました。そうしなければ、あの子が死んでしまうから。あの子に何か変化があったのではないですか?……あなた方がこういう行動を取ったのはそういうことでは?」

上条「しっ、死んじまうって?アレはお前らの呪いとかじゃなくて病気とかそういうことなのか?」

277 :もうすぐ、そこを…… [sage saga]:2012/02/22(水) 12:44:58.41 ID:Hh+ZvtgAO



白井(病気なら、あのお医者さんが気づかない筈がありませんの。先程の85%だの15%だの科学的にはおかしい話しと関係があるのでしょうか?)

神裂「病気と言えるのですかね?言ったと思いますが、あの子は常人の15%しか脳を使えません。並みの人間と同じように生活していくだけで、それを記憶するだけで、すぐに脳がパンクしてしまうんですよ。あの子には完全記憶能力があります。忘れることができないんですよ。しかも目に映る全てのモノを記憶していってしまう。残り15%では1年分を記憶した時点で脳を圧迫して死に至ります。その期限が7月29日。それまでに記憶を消す処置を行わなければならないんです」


上条達にはショックだった。特に白井と初春にとって、インデックスの身体を気遣い、疑問について聞くのをためらっていたことが状況を複雑にしている。

278 :何で、皆がいるわけぇー……さっきのはそういうことか…… [sage saga]:2012/02/22(水) 12:59:27.16 ID:Hh+ZvtgAO


上条「だったら、余計に、なんでインデックスにちゃんと話さなかったんだよ?追っかけまわして、わざわざ敵みたい見せる必要なんかねえじゃねえか!?いくら記憶を失ったからって友達だったんだろ?もう一度やり直せば良かったじゃねえか!?」

神裂「うるっせぇんだよ、ド素人が!!」

上条の言葉が神裂の記憶にある二度の別れの光景を思い出させてしまう。
一度目はやり直せると思っていた。
思い出の品を見せても申しわけなさそうにするインデックス。
二度目を間近にしての不安。
そして二度目の状況が悪かったのか逃げ出すインデックス。

神裂の心にしまっておいた感情が横溢する。

279 :……、……。 [sage saga]:2012/02/22(水) 13:01:16.35 ID:Hh+ZvtgAO



神裂「知ったような口を利くな!! 私達が今までどんな気持ちであの子の記憶をうばっていったと思ってるんですか!? 分かるんですか、あなた達なんかに一体何が!私達だって頑張ったよ、頑張ったんですよ!春を過ごし夏を過ごし秋を過ごし冬を過ごし!思い出を作って忘れないようにたった一つの約束をして日記やアルバムを胸に抱かせて!それでもダメだったんですよ!!一から思い出を作り直しても、何度繰り返しても、私達は……もう耐えられなかったんです。またあの子の悲しい顔を見るのが」

そこで、神裂の言葉が止まる。神裂の左手は七天七刀の鞘をグッと握り、右手は柄に向かって動きだそうとする。

白井(不味いですの。これ以上戦う理由は無いはずですの)

白井「おっ、お気持ちはわかりましたが、それはありえないことですの」

上条佐天「「えっ!?」」

白井(ちょっ!?上条さんに佐天さん!わかってらっしゃらなかったんですの〜?)

上条と佐天は頭に疑問符が浮かんでいるのだが、肝心の白井が力なく肩を落としている。
今にも顔に手を当てて嘆きだすか、逆に怒り出しそうなのを佐天は見て

佐天「えぇと初春どういうこと?」

280 :そういえば、噂があったっけ、量産軍用クローン…… [sage saga]:2012/02/22(水) 13:04:48.69 ID:Hh+ZvtgAO



初春「佐天さんも上条さんも仕方ないですねえ」

初春は呆れたようにつぶやき、説明しようと口を開きかけるが

「完全記憶能力ですが、世界に数人いることが確認されていますとミサカは報告します」

「その方々が記憶の圧迫で死に至ったなどと言うことは確認されていませんとミサカは学習装置〈テスタメント〉で得た知識を披露します」

「前提として先ほどのお話しが正しいとして、完全記憶能力者が1年間の記憶を保存するのに15%の脳内の領域を必要とするならば7年以内で脳内が埋め尽くされ死亡に至ることになるとミサカはドヤ顔で意見を述べてみます」

「さらに完全記憶能力者の方々は様々な年齢の方がいらっしゃいますとちょっと考えれば分かるじゃねぇかよという悪態を心の中に隠しつつミサカは補足説明します」

代わりにシスターズの4人が持っているサブマシンガンを地面に向け、戦意がないことを示しながら順番に説明していった。

281 :……とりあえず、あの子ことが先決よね… [sage saga]:2012/02/22(水) 13:07:48.69 ID:Hh+ZvtgAO



上条(えっ、あっ、そういうことなのか?じゃあインデックスの今の状態って一体どういうこと何だよ!?)

シスターズの説明を聞いた神裂は呆然とした表情に変わる。それでも七天七刀は強く握られたままである。

神裂「で、でもあの子の頭の中には10万3千冊の魔導書があるんですよ? それに周期がくると苦しみだすのは本当のことです!!」

再度、シスターズの4人が順番に説明を始める。

「まず、人の記憶というのはひとつではありませんとミサカは語りかけます」

「言葉や知識を司る意味記憶」

「運動の慣れなどを司る手続記憶」

「思い出を司るエピソード記憶」

「という風に元々の記憶の容れ物が違うとミサカはご説明します」

一拍の間を置き、意味を理解してくれたか神裂の顔を確認して、シスターズが続きを話しかけようとしたとき

「だから」

後ろの方から声が聞こえる。

「どれだけ魔導書を覚えて意味記憶を増やしたってエピソード記憶が圧迫されるなんて、脳医学上ありえないのよ」

上条、白井、佐天、初春にシスターズは新たな登場人物に驚き、慌てて振り返る。
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/22(水) 13:09:49.07 ID:Hh+ZvtgAO



そこにはフードを目深にかぶった黒いコートを着た人物。
インデックスが話していたエムという友人の服装と同じ。
目深にかぶったフードと日が暮れかけている所為で顔はよく見えない。
しかし、今聞こえた声は聞き覚えがあった。
何故か上条の手がふるえる。
心臓を鷲掴みにされる。
何かを期待してしまう。

シスターズの4人は咄嗟に持っていた銃器を向けていた。そこまでで何かを感じたのか動きが止まっている。


神裂「あっ、あなたはしっ知っていたんですね!? 禁書目録の同行者。 もっもしかして1年もまえからですか!?」


「…うん、黙っていてごめん …あの子が苦しんでいるのは間違いない上層部が仕掛けた首輪の作用」

「あなた達に教えて、万が一知っていること知られちゃったりしたら、…どうなるか分からなかったから教えられなかった…」

283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/02/22(水) 13:14:46.90 ID:Hh+ZvtgAO



黒衣の人物は目深にかぶっていたフードをあげる。
そして上条に顔を向ける。

「そして、ここにはあの子を救える者がある」

「で、あの子インデックスはどこにいるのかしら?」

シスターズと同じ顔がそこにはあった。
本来は逆に言わねばならないのだろう。とはいえ上条の記憶にある彼女は1年前の、より幼さを残した容姿しかない。

幻想がそこにあって、右手で触れると消えてしまいそうで、上条はそれが幻想でないことを確かめたかった。

上条「みっ、美琴?」

284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/02/22(水) 13:15:59.07 ID:Hh+ZvtgAO
ここまで
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/22(水) 16:35:14.47 ID:u5v8hHSDO
おお、最初のシーンが

286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/22(水) 19:53:07.78 ID:s2XryEjg0
乙 さあここからどうなる! 楽しみだなー
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/02/22(水) 20:52:20.39 ID:XYXLpWvQo
おおおお。
こう繋がるのか
続きが楽しみだ
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/22(水) 21:09:46.93 ID:RDuNw6zio
おつにゃんだよ!
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/23(木) 12:04:20.49 ID:HyDDdvdGo
ついに来たか・・・!
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/02/23(木) 19:12:49.68 ID:jEz3+NLAO
ほのかに、なんて書いたが思いっ切り上琴になるかもしれん

いちゃいちゃまではいかんと思うが
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/23(木) 21:06:15.23 ID:qXYkGP+60
望むところだ!
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/24(金) 01:54:00.17 ID:z8Gt2xGwo
期待してる
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/24(金) 03:00:24.78 ID:bp3JUikAO
ちょっと短いですが
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/24(金) 03:03:42.80 ID:bp3JUikAO



美琴(なっ、何いっちゃってんのよ、ゴラァァー、ひっ、人のこと名前呼びしたこと無いでしょうが、アンタ!
そっ、それをいきなり、不意打ちすんな!
美琴なんて親にぐらいしか呼ばれたことないんだから!何考えてんのよ!?
前はビリビリ中学生だの呼んでたじゃない!
あっ!思い出した、アンタ、人のことからかってミコっちゃんなんて呼んだことあるでしょ、まったくって、何で顔が熱いの!?
えっ、まさか顔、赤くなってんの!?
まっ、不味いって!!冷静になれ、冷静に、はー、はー、あーそういえばあの時、帰って来たら名前で呼んであげるわよ、なんて言ったんだっけ!?
えーと、そういうこと?いやいや無いから、そんなはず無いって、でも呼んで欲しいからわたしの事も名前呼びしたの?
えーと名前で呼んであげたほうが良いのかなあ?)

美琴「ひっ久しぶり、とっ当麻」

295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/24(金) 03:09:53.79 ID:bp3JUikAO



上条「ニセモンだー!!美琴が当麻なんて呼ぶはずがないんだ!いつも美琴はアンタ呼ばわりしてたんだから、くそっ、なにもんだ、テメェって、何でドキドキしてんだ俺、あれ?そういえばあの時、帰って来たら名前で呼ぶとかいってたっけ?いや、でも普通、上条さんとか上条先輩とかじゃねえ?うん?えーと何でバチバチ聞こえてるんでせうか?」

美琴「アンタはー!!」

美琴の前髪から電撃の槍がとんで

上条「ギャーー!!」

条件反射で上条が右手で受け止める。
一年間の空白がなかったように

上条「これって、やっぱり美琴か!?」

美琴「だからっ!なんでアンタは人のこと名前で呼んでんのよ!!」

上条「いや、その、シスターズもいることだから」

美琴「シスターズ?ああ、そのことも聞かなくちゃいけないけど、……話しを戻すわよ、インデックスは、どこ!?どうせいつものことで巻き込まれちゃったんでしょ!?」

296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/24(金) 03:14:57.52 ID:bp3JUikAO



上条「インデックスならカエル顔のお医者さんの病院に……」

美琴「へっ、?」

上条「すまん!」

神裂「そのことは私の責任でもあります、と。えー、その?お二人は名前で呼び合う仲なのでしょうか?」

上条美琴「いや、そうじゃないから!!」

神裂「……息もお合いのようで」

美琴「ちょっ、とりあえずどういう状況なのよ!?」

上条「あー、なんだ、俺がインデックスの歩く教会に右手で触って」

神裂「私が気付かずに七天七刀で斬ってしまいまして……」

美琴「アンタ達何やってんのよォォォ!それで大丈夫なのインデックスは!?」


297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/24(金) 03:23:14.90 ID:bp3JUikAO



最初の緊迫した雰囲気は最早何処へ行ったのやら、御坂美琴の登場で驚愕し、固まってしまった白井、佐天、初春だったが今は脱力してしまっている。あの頃と同じすぎて。

佐天「あのー、御坂さんが帰って来てくれて嬉しいんだけど、普通こんなときって感動的なシーンになるもんじゃないの?」

初春「えーと、そうですよねえ、ははっ、上条さんがやっちゃいましたから、まあ、あの頃が時間を超えて戻ってきたって感じですかねえ?白井さんも」

白井「キーーーッ私もお姉様にお話ししたいですの、触れ合いたいですの、触りたいですの。
ハッ、エムさんとお姉様が同一人物ということはインデックスさんは一年間もお姉様を独占していたということですの??おのれ〜」

シスターズはというと

『お姉様〈オリジナル〉が生きていらっしゃった』×9970

と、ネットワーク内で絶賛、大合唱中でフリーズ状態に陥っている。

298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/02/24(金) 03:26:17.90 ID:bp3JUikAO
ここまで
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/24(金) 08:52:22.75 ID:s7klSxJQ0
乙!上条さんと美琴の掛け合いがすばらしい。
続き期待
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 10:12:04.49 ID:hHmwS3S2o
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/24(金) 12:06:52.49 ID:8k2Ycztp0
いいなぁ、シスターズの喜びっぷり
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 21:44:05.74 ID:U+Oev/4zo
しまらないなwwww
まあその方がこの二人らしいっちゃらしいけど
おつおつ!
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 22:43:06.86 ID:XznG2hhTo
おつにゃんだよ!
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/26(日) 13:42:39.64 ID:BcyM3ZtAO



一応の経緯を聞き終えた美琴は

美琴「インデックスがピンポイントで、アン、えーと、当麻のもとに現れるなんて、はあー……アっ、いや当麻の体質も相当なもんね?」

上条「どうせ、上条さんは不幸体質なんです……」

美琴「あー、言わない、言わない、そういうことは」

右手をひらひらさせながら美琴は言うと。

美琴「現れるべきところへ現れたっていうことなんだろうなあ、天の配剤ってヤツ?」

神裂「そのことですが、首輪の作用、救える者とはどういうことですか?」

美琴「さっき」

じっとこちらを見ているシスターズの方をちらっと見ながら

美琴「あの子達が言ったようにインデックスの症状は完全記憶能力の所為じゃない。
魔術の術式、その印しが刻まれている所為。
1年周期でインデックスの脳に圧迫を与え死に至らしめる、記憶を抹消する魔術をかけないと解除されない、そんな術式。
インデックスを上層部が自由にさせるはずがない、諸刃の刃だもん。
神裂さんもその辺はわかってるでしょう?」

神裂「その、とおりですが、術式の解除なら私達でも可能では?」

305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/26(日) 13:55:51.79 ID:BcyM3ZtAO



暗に教えて欲しかったと言葉ではなく口調で神裂は言っているが

美琴(最初、信用していいか分かんなかったからというのは内緒にしとかないとね!まあ、教えたら教えたで、罪悪感がひどいことになってただろうし、二人が知らないうちに問題なくなりましたー、にしようとしたんだけどなあ)
「調べた範囲で言うと、解除しようとすると手をかけた途端に防衛機能が働いて、それどころじゃなくなる可能性があるのよね」

神裂「防衛機能ですか?」

美琴「たまに、インデックスが危険に陥ると別人格みたいなインデックスが現れるでしょ」

白井「あっ!」

美琴「黒子も見たの?あっ、そうかインデックスが斬られたって時に、あれが防衛機能の役割を持つインデックスの別人格」

神裂「それぐらいなら、問題ないのでは?」

仮にも神裂は聖人。魔術も使えないインデックスが相手、逃走スキルや歩く教会は確かに厄介であるがそこまでの問題とは神裂は思えなかった。

美琴「10万3千冊の魔導書の知識を利用した魔術を使われても?」

神裂「えっ、そんなことにはなりようが?バカな、インデックスには魔力が魔術の使用に足るほど無いのですよ!?」

美琴「誰がそれを言ったのかな?
教会の上が言ってることを鵜呑みにするから、こんなことになってんじゃないの?」

306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/26(日) 14:26:12.58 ID:BcyM3ZtAO



神裂「しかし!」

美琴「今インデックスを苦しめている術式を仮に首輪とするけど、それにはインデックスから精製された魔力が使われているはずよ」

神裂「そんな!」

美琴「こういう言い方は嫌いだけど、今のインデックスを表層人格としたらもう一つの人格はセキュリティーシステムね、魔力の精製、首輪の管理、自己保存まで管理してる。
首輪を破壊しようとしたら出てくるわよ、10万3千冊の魔導書を使って、そんなのをなんて言ったかしら?」

神裂「……『魔神』、……そんな、どうして?上は何を考えているというのですか」

美琴「想像は出来るけどね」
(私の想像が正しければインデックスを完全に解放するまでには至らない。それでも今の状態から抜け出すことは出来る!インデックス自身が未来を掴めるようになる!)

神裂「結局、上に騙されていたというこですね、はぁぁ、あっ…………どうやってあなたは調べたというのですか!!!?」
(あなたの能力が探査に秀でているのはこれまでも見てきました。でも、これだけの魔術の解析を行うなら魔術を使用しなければ!インデックスのためにそこまでの危険を犯したというのですか!!)

美琴「それは内緒ということで」

神裂(やっぱり、なんということを!!)
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/26(日) 14:33:53.67 ID:BcyM3ZtAO



美琴「とっ、とにかく普通の解除では時間がかかるから、防衛機能に邪魔されて無理だと思ったほうがいいわ。
そうすると、首輪をはずすには、とっ当麻の幻想殺し〈イマジンブレイカー〉を使うしかないと思うの、あれなら術式そのものを一発で破壊できる」

上条「……だったら!なんで!すぐ帰って来なかったんだよ!?白井や佐天さん、初春さんや他のみんなも不安で心配で、信じていても諦めかけて、悲しい思いをさせやがって……」

その後は言葉にならなかった。こみ上げてくるものが多すぎた。俺なんかに関わっちまったばっかりにという思いも含まれる。それが表に出て最後に憂いの表情をつくる。

美琴「ごめん……えっと、とっ当麻もそうだったの?」

上条「当たり前だろ!!」

美琴「本当にごめん……ところで自分の不幸が私を巻き込んでるとか思ってないでしょうね?」

上条「えっ、なんで?精神感応系能力者じゃないだろう、オマエ!?」

美琴「そんなのアンタのって、違う当麻の顔見てりゃわかんのよ、ったく!ロシアのショッピングセンターでインデックスと知り合い、妙なことに首突っ込んだのは私が選んだこと!それで帰って来なかったのは謝るけど、何もかも自分のせいだと思ってるんなら怒るわよ!!
すぐ連れて来られなかったのも理由があって、さっきステイルとやり合ったって聞いたけど、魔術を使ってない状態でステイルのルーンに右手で触ったとしてルーンを消せたと思う?」

上条「えっ?えーと魔術を使ってないんだったら、紙に書いた、ただの記号でしかないから、……無理かー?」

308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/26(日) 14:38:03.18 ID:BcyM3ZtAO



美琴「それと同じことよ、魔術の発動してないインデックスに刻まれた印しに触っても意味がないの、中途半端な今みたいな状態でもダメ、一部を破壊しただけになっちゃう、自己修復機能まであるかもしれない、何より防衛機能がはたらく、魔神とやり合ってみる?」

神裂「では、完全に発動してからではないと、その少年の右手でも完全な解除はできないと?」

美琴「そういうこと。
決戦は7月29日、1年前にインデックスを学園都市に連れて来たとしても、科学サイドと魔術サイドでややこしいことになったんじゃない?
私がインデックスに付いていること自体、隠さなきゃいけなかったんだし。
首輪について調べる時間も欲しかった、怪しまれずに。
……それと、みんなに連絡を取ろうにも、学園都市を離脱した身になるから、分かるかな?」

学園都市の闇を覗いたことがある人間なら納得するしかない。
御坂美琴の生死について学園都市は行方不明としか公表していない。
7人しかいないlevel5の一人を捜索しないわけがなく、上条達はそれとなくマークされていただろう。
連絡を取れば、恐らく追跡部隊が組織され、学園都市からも狙われることになる。

309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/26(日) 14:47:23.12 ID:BcyM3ZtAO



美琴は白井、佐天、初春を見る。3人はインデックスの置かれた状況を聞き、再び緊張の度合いを高めていた。

美琴「黒子、佐天さん、初春さんも心配かけてごめんなさい、インデックスのこと守ってくれて、ありがとう」

ブワッ

白井「おっおねえざま゛〜、黒子は、黒子はおがえりをおま゛ちしておりま゛じだの゛〜」

佐天「お帰りなさい、御坂さん!私、わたしっlevel2になったんですよっ、がんばったんですぅぅっぅっぅっ」

初春「みざゃかさん、ずみ゛ま゛ぜん、ずぅみ゛ぃま゛ぁぜん」

美琴の言葉に抑えていたものが、堰を切ったように急に溢れだして、我慢のしようもなく、泣き始める。

美琴は白井の頭をポンポンと叩きながら、シスターズを見て

美琴「シスターズだっけ、どういう事情かは後でゆっくり聞くから、どうせ、ろくでもない話しなんだろうけど、今はインデックスに会わさせて、無事な姿をみたいから」

御坂妹「はい、わかりました、ミサカ達はお姉様〈オリジナル〉にミサカ達を受け入れて頂きたいと願ってます、とミサカ10032号は希望を述べながら了承します」


310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/26(日) 14:51:24.93 ID:BcyM3ZtAO



ようやく、フリーズ状態から回復した御坂妹が答える。
ミサカネットワークの混乱はまだ続いている。

御坂妹(さすがに9970人分の声が一斉にすると大変です、?、えーと何故9970人分なのでしょうか?意識ブロックされてるはずでは、とミサカ10032号は疑問に思います)

美琴はもう一度、上条に向かい

美琴「とっ当麻」

上条「手伝ってくれなんて言葉はいらないぞ、最初から助けるつもりだったんだ。
そうでなくても美琴の友達なんだろ、幸せになって欲しいんだろ、当たり前のことを聞く必要なんかないじゃねえか、インデックスは地獄なんて言ってたけどよ、二人で一緒に引き上げてやろうぜ、救ってやろうじゃないか!美琴と二人なら出来るに決まってる、あの頃と同じことをするだけじゃねえか!」

美琴「当麻、ありがとう」

上条「あぁ、その、いや、えぇと……上条さんじゃ、ダメ?」

美琴「はぁぁ、何が?」

311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/26(日) 14:57:45.83 ID:BcyM3ZtAO



上条「美琴に名前を呼ばれると落ち着かねえんだよー!
なんか、美琴もつっかえてるみたいだし、今みたいにしおらしく言われるとドキドキしちまうし」
(ドキドキって俺何言ってんです?
シスターズで見慣れてるはずだけど、実際に美琴が今の姿になって、名前で呼ばれると……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ
前はこんなこと無かったのに、どうしちゃったんでせうか!?)

美琴「ドキドキって、にゃにをいっ言ってんのよォォォ、言われなれてないだけでしょーーー
ああ、もうインデックスのところへ行くわよ!」
(私だって一緒なんだから、おっお互い様よねっ、ねっ?
どうしちゃったんだろ!?前はこんなこと無かったのに?)

その様子を佐天と初春は眺め、泣きながらもついニヤニヤとしてしまう。

白井は涙を拭くために出したハンカチを口にくわえて、引き裂かんばかりにしている。

神裂は明かされた内容にショックを受けたままで、何かを忘れていたが、上条と美琴の様子を見ていると

神裂(この二人の関係は何なんでしょうか?なんか、スッゴく私達がお邪魔な気にされるんですが?)

話しが終わり、一行はインデックスのいる病院へと向かう。

312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/26(日) 15:06:53.76 ID:BcyM3ZtAO




その頃、ちょっと離れた場所

「ええい、何をやってる神裂は!!何に手間取っているんだ?」

イライラとタバコをくわえ、人払いの魔術が通じない警備ロボットを蹴散らしながら、置いてきぼりの炎の魔術師は呟く。



その頃、とある病院の廊下で

「あー、あんた何してんの、動ける体じゃないでしょ?」

イン「だめなんだよ、行かなくちゃ!私のために無茶してるに決まってるんだもん」

「無理、無理そんなんで動いたって行き着く前に倒れちまうよ」

片手の無い女性がインデックスを右手で引っ張って病室に戻そうとしていた。



その頃、不規則なカタチをしたビルの一室

「これは天の配剤。騙されて、救えなかった我が罪、甘んじて責めを受けん。されど今度は何を犠牲にしても救ってみせよう」

窓から、とある病院の方向を凝視しつつ、男はかつての生徒へと語りかけていた。


313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/26(日) 15:10:03.93 ID:BcyM3ZtAO
ここまで


独自解釈満載の回です
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/26(日) 18:20:14.50 ID:o7971AOJ0
乙!早く続きをかくんだ。
名前欄が美琴の行間になってたのですね。
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/26(日) 22:07:41.39 ID:RZdn1EOKo
おつにゃんだよ!
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 01:14:40.20 ID:O8K+ww6qo
乙!
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/29(水) 17:59:35.10 ID:TQOou34AO



とある病院に戻った上条達を最初に出迎えたのはカエル顔のお医者さんだった。

冥土「ああ、戻って来たんだね。大変だったんだよ?インデックス君が君達を追いかけようとして」

上条「なっ、それでインデックスは!?まさか」

冥土「その前に入院されてる患者さんの一人が見かけて、引き止めてくれてね、大事に至らず良かったけど、病人に心配をかけさせちゃいけないよ?」

上条「はぁぁぁ」

カエル顔のお医者さんは同じ顔の少女が5人に増え、一人だけが違う服を着ていることに気づく。

冥土「……君はもしかして御坂君かな?」

美琴「はい、お久しぶりです、先生。それでインデックスは病室に?」

冥土「うん……そうか、待ち人来たれり、と言ったところかな?早く会いに行ってあげなさい」

カエル顔のお医者さんは状況を察したのか上条達をインデックスのもとに促す。

美琴「すいません、先生」

上条達がインデックスの病室へと向かうのを見送ったカエル顔のお医者さんは手に持っていたカルテを見る。

318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 18:02:06.26 ID:TQOou34AO



そこにはインデックスの検査データが記されている。普通では調べないような呼吸の回数、仕方や体内の電気信号の流れなどが書き留められていた。

冥土「不規則に見えながら、ある特性が見ゆけられるか?……こういうのを初めて見たのは60年前に遡る、のかな?
科学や医学では解明できない、オカルトの分野だね」

それがわかってから幾つかの対処方法は思いついていた。しかしそれは一時しのぎに過ぎず、根本治療とはならない。

冥土「上条君達は原因を見つけたのかな?」

カエル顔の医者はカルテから目を離し、灯りが見える廊下の先に眼差しを向け

冥土「僕の出番はこれで終わりだと良いんだがね……」

誰もいない廊下で独言をする。


319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 18:09:36.38 ID:TQOou34AO



シスターズは途中で上条達と別れ自分たちの病室へ向かった。
美琴とインデックスの再会に気を遣ってくれたのであろうと上条は思う。

インデックスとの話しが済み次第、上条達も彼女等の部屋へ行く予定である。
そこではシスターズと絶対能力進化実験について美琴に説明しなければならない。

美琴の帰還の喜びも吹っ飛ぶような内容を話すことになる。美琴の心情を思えば気が重たくなる上条だった。

そうするうちに上条、美琴、白井、佐天、初春に神裂はインデックスの病室の前まで来ていた。

神裂「あっ、!つい一緒に来てしまいましたが私も入って宜しいのでしょうか?」

美琴「どのみち、二人への誤解もいつかは解かなきゃいけないんだから、いいんじゃなぁ…………えっと、ステイルはどうしているの?」

神裂「……、……!」

血の気が引いて、俯き加減になる神裂。

神裂「……連絡を取るのを忘れてました」

美琴「ステイル……」

320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 18:11:19.65 ID:TQOou34AO



神裂「怒っているでしょうね?」

美琴「魔術も使わないで幻視できるような炎を纏って、毒舌を吐くか?」

神裂「イノケンティウスを現出させて、辺り一面を炎の海に変えるか?」

美琴神裂「「どちらかでしょうね!!」」

ため息をひとつついて神裂は

神裂「仕方ありません、今日のところはインデックスに会わずに、ステイルを迎えにいって事情を説明しておきます。
……できればインデックスに私達のことを、誤解を解いておいて頂ければ」

美琴「わかってるわよ」

神裂「ここまで来ておいて、残念ですが。私の責任です」

佐天「私達も協力しますんで気をおとさないで下さい」

神裂「すいません。先ほどまで敵対していたのに、お気遣いいただいて、それでは」

神裂は無念そうに病室の前から去っていく。

321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 18:13:11.42 ID:TQOou34AO



その姿が見えなくなると

初春「その?意外とドジっこなんですか?私達より随分年上に見えるんですが、御坂さん?」

美琴「随分年上って、確かに私達より年上だけど、まだ18才よ、神裂さんは!普段はしっかりした人なんだけどなあ」

上条「……うそっ、18才?見えねー」

美琴「……本人、割と気にしてんだから、言っちゃダメよ、目の前で」

実は美琴は出会った頃に本人を目の前にして同じことを言ってしまったことがある。時と場合により言葉は危険な刃物となることを知った美琴である。

美琴「まっ、気を取り直してご対面といきますか」

誤魔化すように美琴は病室のスライドドアに手をかけて

美琴「インデックス」

ドアを開けながら、声をかけた。

322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 18:43:30.40 ID:TQOou34AO



ドアを開けた先には二人の女性がいた。

一人はベッドの脇の椅子に座っている。もう一人は女性と言うか女の子。ベッドで上半身だけ起こしているインデックスである。
頬をプクッと膨らませて唸っていたが

イン「エム?本当に?エムなんだよ」

美琴の声を聞き、顔を見ると満面の笑みへと変わる。

イン「無事だったんだ、良かったよ、心配だったんだよ、怪我はない?エムはいつも無茶するんだから!あれ?とうまたちも一緒?あっ、エムを見つけてくれたんだ。ありがとうなんだよ」

美琴「落ち着きなさいよ、インデックス。怪我しているのはアンタの方なんだから、ほら興奮すると体にさわるわよ」

「ああ、騒ぐんじゃねえ、さっさと横になれって言ってるでしょうが!!」

美琴「そうよ、インデックス。横になって休まないと、当麻達もほら無事に戻ったんだから」

「うん?ああ、あんたらがこの子が追っかけようとした連中かあ?何があったか聞かないけど病人に心配かけさすんじゃねぇよ、絹旗に頼んで探して貰ってたけどムダになっちまったか」

上条「えーと、もしかしてあなたがインデックスを引き止めてくれたっていう方でせうか?」

どうもこの女性、気が立っている様子で上条は恐る恐る聞いてみた。


323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 18:47:19.93 ID:TQOou34AO



「こっちだって入院患者なのにフラフラと病室から出てきて、どっか行こうとしているから止めるしかないじゃないの!」

白井「ご迷惑おかけしてすいませんでしたの」

病室にいた、もう一人の栗色の髪を長くのばした女性。
右目を覆う包帯がなければ元々は端正な顔立ちを窺わせる。
それに加えて、その女性は入院患者用の衣服を着ているがその左腕の部分、あるべき膨らみがない。左腕が存在していない。
おまけに口が悪い。妙に迫力がある。

できればお近づきになりたくない種類の人物。
上条達の表情は引きつり気味である。

その中で初春だけは表情が強張っている。
初春は何故、この女性がここにいるのか、いや、この病院にいるのかを考えていた。初春はこの女性を知っている。
面識がある訳ではない。
絶対能力進化実験の計画書の中で見たことがある顔。
それ以前にも名前だけは知っていた。
学園都市の最高峰にいながら、その顔は浮かび上がることのない名前。
暗闇の中を覗いて見かけた名前。


324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 19:00:27.95 ID:TQOou34AO



「手間かけさせやがって!高く付くわよ、この貸しはって……」

その女性は美琴の顔に目が止まると

「テメェ、まさか……第三位か?」

1年前、美琴は学園都市において有名人であった。

この女性が美琴を知っていてもおかしくないが、美琴の帰還について今、表沙汰になれば大ニュースになるのは間違いない。
そうなれば美琴の一挙手一投足が注目され行動の自由が奪われる。

インデックスを救うどころではなくなる。
それどころかインデックスのことまでが表舞台に出されかねない。

美琴は警戒を強め

美琴「ええ、『御坂美琴』本人だとしたら、どうするつもり?」

上条「おい、いいのか?バラしちまって」

325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 19:14:08.40 ID:TQOou34AO



「ハッ、生きてやがったか、超電磁砲!面白くなってきたじゃない」

様子を見ていた初春が口を開く。

初春「それで、どうされるおつもりですか。麦野、沈利さん……ですよね?」

佐天「えっ?知ってんの初春、この人のこと?」

麦野と呼ばれた女性は感心した様子で

麦野「へぇー、私のこと知ってんだ。大したもんね、そうそう掴める情報じゃないわよ」

美琴「どういうこと?」

初春「学園都市、第四位の原子崩し〈メルトダウナー〉。御坂さんと同じlevel5のお一人です。御坂さんのように表へでることがなく、恐らく」

麦野「それ以上は言わない方がいいわよ♪」

麦野は獰猛な獣が浮かべそうな笑みを見せ

麦野「どうこうするつもりは無いわよ。面白くなってきたって言っただけじゃない。それに私も入院中の身だからね、黙っていて欲しいなら黙っておいてあげるわよ、ふふふ」

初春「ところで、その第四位はどうされたんです?そのお身体は」

麦野「胸くそ悪いこと聞くわねぇ、アンタ……ちょっとばかしドジ踏んじまっただけよ」

初春「そうですか」

初春の平淡な言葉に麦野は初春の目を見る。コイツ、何処まで知っているかと?

麦野「アンタ、何者?」

初春「ただの風紀委員ですよ」

麦野「ふーん、ただのね。まあ、いいか。そろそろ私も自分の病室に戻らないといけないし」

麦野はそう言いながら、椅子から立ち上がる。

イン「ありがとうなんだよ」

背を向けた麦野にインデックスが声をかける。麦野はそれに手を振るだけで答え病室から出て行った。

326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/02/29(水) 20:00:53.06 ID:TQOou34AO



上条「こんなところでlevel5が鉢合わせか」

美琴「そうね、黙っててくれると言ってたけど、本当かしら?」

上条「?、level5同士って、仲悪いのか?さっきの雰囲気といい」

美琴「知らないわよ、そんなこと!level5になって約半年、その後は1年間もお留守にしてたのに分かるわけ無いじゃない!!」

上条「でも、同じ常盤台にもう一人、level5がいるじゃないか、そいつとはどうだったんだよ?」

美琴「食蜂のこと?いけ好かないヤツとは思ってたけど、喧嘩売ってくる訳じゃないし」

イン「む〜〜〜」

上条「ほう!上条さんにはあれだけ勝負しろって言ってきといて、そんなこと言うんですか!」

美琴「それとこれとは話が別でしょ!」

イン「う〜〜〜」

美琴「あれは、当麻がまともに相手しようとしなかったからでしょうが!!」

イン「とうま???」

上条「中学生になったばかりのガキンチョに喧嘩ふっかけられても相手にしませんのことよ、上条さんは」

美琴「ほう、だったら、神裂さんやさっきのおばさんだったら相手するって言うんか、こらー!」

327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 20:02:37.33 ID:TQOou34AO



上条「落ち着け!美琴!バチバチ言ってんぞ、ここ病院、病室だから!おばさんって麦野さんのことかー?」

イン「みこと???」

美琴「そういえば、当麻の好きなタイプって、寮の管理人のお姉さん、だっけ?あの二人って」

上条「えっ、あれは尋ねられた時につい言っちまっただけで、一人っ子が姉に憧れるようなものだって!なんでいまだにスルーしてくれない!?」

美琴「どストライクってところ?おまけに包帯巻いて、保護欲アップてか?」

上条「聞いてねぇ!!包帯巻いて保護欲アップって青髪ピアスが言ってた包帯少女?いやいや、あれはどう見ても20才越えてるし、保護欲どころか大型の肉食動物を思わせますよ、美琴さん?」

イン「みこと、とうま???」

美琴「じゃあ、今は違うとでも言うの?私がいない間、黒子達を侍らしていたみたいだけど?」

上条「だぁーーー、それは、美琴がいなくなって、おかしくなった俺を心配して、側にいてくれてただけだって!!勘違いすんなー!!」

美琴「わっ私がいなくなって、おっおかしくなったって、いっ一体どっどういうことよ?」

328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 20:05:51.78 ID:TQOou34AO



白井「(おや?気付いてらっしゃいましたの)」

佐天「(まあ、私達も御坂さんがいない寂しさを上条さんの世話をすることで、埋め合わせてたんですけどね)」

初春「(麦野さんて、まだ17、18才ぐらいじゃ?
上条さん、あの自販機の前で1時間以上もボーッとしたり、河原でずっと石投げてたり、ファミレスでわざわざ宿題をしてたり、高いホットドックを買おうか迷ってたり、ゲコ太をみかけると長い間眺めてたり、セブンスミストで不審者扱いされたりしてましたからね」

上条「そこ!聞こえてるから、聞こえてますよ、美琴にも聞こえてるじゃねぇかよ!!」

美琴は顔を赤く染めあたふたしてしまい、何か言いたいのに言えなくて口を開いては閉じている。
上条はそんなところまで見られていたのか、とブツブツ呟いている。

その時

イン「もう、いい加減にするんだよ!みこと、とうまって二人は知り合いだったのかな?というより友達以上の関係だったのかな?」

329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 20:12:37.20 ID:TQOou34AO



あっ、不味い!余計な心配をかけさせちゃうと美琴は思い、上条にアイコンタクトを送る。

美琴−−余計なこと言わないでよ!1年間もインデックスのためにみんなから離れていたなんて知っちゃうとインデックスが責任を感じちゃうから!!−−

上条−−おう、任せろ、上条さんの演技力を信じなさい!−−

上条「美琴とは以前からの知り合いで、学園都市出身ってぐらいは聞いてるだろ?その頃、付き合いがあったんだよ」

美琴(バカァァァ、今の会話からただの知り合いって無理があるでしょうぅぅぅぅ!!!!)

イン「へぇ、でも今の会話からすると、ただの知り合いにはみえないんだよ」

美琴「まっ、まあ、いいじゃない。それより傷の具合はどうなの?」
(話しを逸らして、誤魔化すしか)

イン「痛くはないんだよ、頭はボーッとしてるけど……誤魔化すつもりなのかな?みことの大事な人じゃないの」


330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 20:14:09.95 ID:TQOou34AO



美琴「だっ、大事な人ってそんなわけ無いでしょう!」

イン「それと、もう、みことと名前で呼んでもいいのかな、もう呼んじゃってるけど、とうまも呼んでるから」

美琴「良いわよ、今更、偽名使っても仕方ないし、第四位にもバレちゃってるんだから」

イン「そうなんだね、エムと呼んでって言われたから呼んでたけど、隠さなきゃいけないことだったんだ」

美琴「うっ!」

イン「とうまのことだよね?アイツとかあのバカとか鈍感野郎とも言ってた人は」

美琴「そっ、そんなこと言ったかなあ?」

イン「お人好しで、一人でいろんなことを背負い込んで、自分のことを省みないヤツとか。
完全記憶能力を甘く見ちゃいけないんだよ。
聞いたときそれはみことも同じだよと思ったんだから。
とうまがみことに似ていると思ったけど、そのまま当てはまっちゃうんだよ…………大事な人なんだよね?そんな人をおいて、今までのすべてを投げて。
名前を隠すってことは名前を捨てるのと一緒、今までの自分を捨てるのと同じ、そういうことだよね?
そこまでして私のために自分を犠牲にしてくれなくても、…………ぐすっ」


331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 20:15:40.48 ID:TQOou34AO



話している途中でインデックスの目には涙が溜まりはじめ、言葉が止まる前には頬を伝って流れ落ちていた。

インデックスにあるのは罪悪感。インデックスと一緒にいるために友達やそれまでに築き上げたものを美琴に置いてこさせてしまったという。

上条「インデックス、いいか?俺達にとっても美琴は大事な、その友達だ。いなくなって寂しかった、悲しかったのも事実だよ。でもな、さっき再会した時、美琴は言ったんだ。自分で選んだことだって。だったら、認めてやるしかないだろ?友達が選んだことなんだから。言っておいて欲しかったていうのはあるけどよ。それでも、また、こうして会えたんだ。それに、お前わざわざ俺のところへ転がり込んできたじゃねぇか!俺達の絆はどんなに離れていても深く、強く結ばれている!そう思えるんだ!!」

白井「そうですわ、私とお姉様には太い、太い絆がありますの、ふふふっ、よくも1年もの間、お姉様を独せ」

ボコッ

黙って白井の頭に拳をいれた美琴は痛がる白井を後ろへ引いていった。それを見送りながら佐天は


332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 20:16:22.64 ID:TQOou34AO



佐天「はいはい、白井さんは退場、退場。でもねインデックス、御坂さんはやりたいことをやっちゅう人だから」

初春「思い込んだら一直線ですからね」

佐天「困っている人を放っておけないお人好しで」

初春「友達のためなら無茶なことでもやっちゅうような」

佐天「インデックスが見てきた御坂さんは」

初春「私達が見てきた御坂さんと同じで」

佐天「私達はそんな御坂さんが大好きだから」

初春「御坂さんが選んだことなら認めるしかないじゃないですか」

佐天「絆っていうのはどっかで繋がっているから」

初春「消えることはないんですよ。そして、信じて待っていたら、こうして御坂さんに会えたんですから」

佐天「御坂さんもそう信じていたから」

初春「インデックスさんと一緒にいられたんです」

美琴「あなた達、ちょっと恥ずかしいから」

美琴の注意がそれて、その隙に前へ出た白井は

白井「インデックスさん、お姉様にとってあなたも大事なお友達ですの。悲しい涙を流させたくないから、涙の意味を変えるために一緒にいましたの。自分を犠牲になんて、思っていませんの」

333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 20:22:59.64 ID:TQOou34AO
訂正


佐天「はいはい、白井さんは退場、退場。でもねインデックス、御坂さんはやりたいことをやっちゃう人だから」

初春「思い込んだら一直線ですからね」

佐天「困っている人を放っておけないお人好しで」

初春「友達のためなら無茶なことでもやっちゃうような」

佐天「インデックスが見てきた御坂さんは」

初春「私達が見てきた御坂さんと同じで」

佐天「私達はそんな御坂さんが大好きだから」

初春「御坂さんが選んだことなら認めるしかないじゃないですか」

佐天「絆っていうのはどっかで繋がっているから」


初春「消えることはないんですよ。そして、信じて待っていたら、こうして御坂さんに会えたんですから」

佐天「御坂さんもそう信じていたから」

初春「インデックスさんと一緒にいられたんです」

美琴「あなた達、ちょっと恥ずかしいから」

美琴の注意がそれて、その隙に前へ出た白井は

白井「インデックスさん、お姉様にとってあなたも大事なお友達ですの。悲しい涙を流させたくないから、涙の意味を変えるために一緒にいましたの。自分を犠牲になんて、思っていませんの」


334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 20:35:05.22 ID:TQOou34AO



上条「だから、なっインデックス、笑ってくれよ。美琴に微笑んであげてくれよ。幸せそうに笑っていてくれよ。俺達の大事な友達のために」

イン「ぐすっ……じゃあ、とうまにとってもみことは大事な人なんだ?」

上条「えっ?友達と言ったんですが、急に何を?」

イン「……許さないんだよ、正直に言わないと」

上条「いや、べっ別に嘘はついてないって、話しが変わってるんですが、なんで上条さんが責められているんでせうか!」

イン「アレだけのことを言っておいてヘタレなんだよ、それでなければみことが言ってたみたいに鈍感野郎なんだよ!」

上条「ヘタレに鈍感野郎って、ひどい言われようなんですが一体どうして、こうなった?」

初春「(ああ、アレは聴きようによったら、愛の告白ですよね)」

佐天「(分かってて、今誤魔化してたらヘタレで自覚症状なしだったら鈍感野郎ってこと?初春はどちらだと思う?)」

初春「(鈍感野郎にジャンボパフェを賭けましょうか。でもあのまま続けてたら上条さんもさすがに自覚したのでは?ハッまさか白井さん?)」

335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/02/29(水) 20:38:34.45 ID:TQOou34AO



佐天「(阻止するための必死のツッコミだというの?)」

初春「(御坂さんが目の前にいますからねえ)」

佐天「(一気に進展してたかもしれないと?そうなってたら面白かったのに!)」

初春「(ダメですよ、佐天さん、面白がってちゃ……この後、あの話しをしなくちゃいけないんですよね……)」

佐天「(せっかく、せっかく御坂さんが帰って来てくれて、こんなに楽しいのに)」

初春「(絶望しかないような)」

佐天「(話をしなくちゃならないんだね)」

二人の前では、上条がインデックスに責められ、白井は上条に食ってかかり、美琴は赤くなりながら止めに入っている。

なんで責められているか未だにわからない上条はついに

上条「不幸ぅだぁぁぁ!」

叫んでしまった。

美琴「久しぶりに聞くと、戻って来たって感じがするわねえ。……つーか、相変わらず何言ってるのよ!」

336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/02/29(水) 20:40:05.18 ID:TQOou34AO
ここまで
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 22:22:40.40 ID:QiLDL3Euo
おつにゃんだよ!
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/29(水) 23:20:51.16 ID:nGYfcx6M0
乙!
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 01:02:20.83 ID:6tp33VIZo
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga !red_res]:2012/03/01(木) 18:40:19.17 ID:TwigQq9AO
テスト
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/03/01(木) 22:09:01.50 ID:TwigQq9AO
ほとんど3巻の焼き直しになります

赤はグロ注意と言うことで

短いですが
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/01(木) 22:09:36.36 ID:TwigQq9AO



一般教科の学期末試験が終わったその日の午後、上条当麻はいつもの自販機がある場所で空を見上げていた。

空には広告が映る飛行船が漂っているのが見えた。ちょうど天気予報の時間か明日の天気を流している。

明日も晴れか、上条がそう呟いたとき

「ヤシのみサイダーが出てきません、どういうことでしょうか?」

上条はまた被害者が増えたのか、そう思いながら自販機の方へ顔を巡らせ、声をかけた。

「残念だったな。その自販機、お金を飲むんだよ。いつまでたっても」

顔を向けた先には夢に見た顔があって言葉が止まってしまった。

「むー、そうなのですか、いつまでたっても?何を言い掛けたのでしょうか?」

「直さないって、言おうとしたんだけど……御坂、か?」

そこには、成長した御坂美琴がいた。ただ、違和感があって上条は恐る恐る尋ねた。

「はい、ミサカですが?」

「常盤台の制服着てるし、いつ帰って来たんだよ?」

「言われている意味が分からないのですが?」

「ちょっ、ちょっと待て、ひょっとして俺のこともわかってない?まさか記憶喪失?」

343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/01(木) 22:12:16.95 ID:TwigQq9AO



改めて見れば、以前の元気で感情豊かな表情がない。無表情という言葉がそのまま当てはまる。
おまけに頭に装着している軍用ゴーグルが名門女子校を象徴する憧れの制服を台無しにしている。

「お前、御坂美琴だよな?」

何かが違う、そう思いながら上条はもう一度尋ねた。

「ああ、お姉様と見間違えたのですか、ということはアナタはお姉様のお知り合いだったのですね」

お姉様?白井なんかは御坂のことをそう呼んでいたが、目の前の少女が言っているのは姉妹関係のことか?いや御坂は妹がいるなんて話したことがない、何より同じ常盤台にいる白井からそんな話しを聞いたことがない。上条が不審に思っていると

「電気系統の故障であれば、こうすれば」

「あー、前にも見た光景が!!!?」

御坂美琴という器に別の物が入っている印象だったが、やることは一緒だった。

自販機に電気ショックを与え中身を取り出そうとする。結果も同じ。十数本の缶が立て続けに出てきて警報が鳴る。

「これはいけません。逃走を開始します」

御坂に似た少女はそう言って、ヤシのみサイダーだけを取ると走り始めた。

上条は追いかけようとしたが、缶を踏んづけて転んでしまい少女を見失ってしまった。

これが、上条と妹達〈シスターズ〉との出会い。

残酷な話しの始まり。

344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/01(木) 22:18:22.61 ID:TwigQq9AO



上条は探していた。自販機のところで会った少女を。

どこに居るかも分からずに。当てもなく。

いや、当てはあった。初春に頼めば監視カメラで探してくれるはずである。

なんと言っても御坂に関わる事だから、二つ返事でやってくれるだろ。

連絡を取ろうかと携帯電話を取り出す。

でも頼めなかった。私事でそのように監視カメラを使うことは職務違反になるし、何より上条には漠然とした不安があった。

いるはずが無い御坂の妹。思い当たる節は1年前、御坂が行方不明になる前頃からの噂。level5の量産軍用モデルとしてクローンが研究されている。対象は超電磁砲。

国際条約で禁止されているクローン。あえて、その禁を犯した成果が、上条がみた少女であるのなら、それを初春達に知らせることは危険である。

これまでの数々の事件で垣間見た闇の手が直接、彼女等に迫るかもしれない。

上条は携帯電話をポケットに納めると、さてどこを探そうかと周囲を見渡した。

何とはなしの行動だった。

ふと、一つの路地裏の入口が何故か気になった。

身体は既にその何の変哲もない、何処にでもある路地裏へ向かっていた。
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/01(木) 22:19:33.71 ID:TwigQq9AO



路地裏に入ると暗い。夏の日が届いていない、薄暗い世界が路地裏に出来上がっている。

誰かいませんか、と上条は声をかけながら路地裏を進む。

奥へ行き着くまでに何かを踏んだ感触があった。

足をどけて拾って見ると金属で出来た円筒形の小さな筒。

普通の生活を送っていればお目にかかることがない、銃弾の薬莢だった。

まだ、暖かかった。切迫感にかられ上条は路地裏の奥を目指す。

路地裏の奥、そこには人が倒れていた。

346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga !red_res]:2012/03/01(木) 22:21:25.73 ID:TwigQq9AO



普段の上条であれば助けようと駆け寄るところである。

この時は駆け寄れなかった。

素人目にも助けられない、既に命がないことが見て取れた。

それは身体を伸ばした状態でうつ伏せになり、顔を横向け、顔の左側を見せて倒れている。

目を見開いているがそれには光がない。

倒れた身体を中心に赤黒いシミが地面に広がっている。

暗い中では赤は黒っぽく見えるらしい。

肌にも、着用している制服にもその赤黒いものが付いて汚していた。

特に見える範囲の肌は、血管が破れて溢れ出したのか、酷い有り様になっていた。服の下も同じ状況なのだろう。

肩口以外、制服に傷がないのに汚れているのはそういうことなのか、どうやればそんなことが出来る?

上条は叫び出したいのに言葉がでない。

今年、白井がこの時期、着用している制服。
去年、行方不明になるまえに御坂が着ていた制服。
自販機のところで会った少女。倒れている惨殺体。同じ常盤台の制服。

顔は見たくないのに見えてしまう。目が離せない。

御坂美琴の少し成長した顔。

いろんな事件に巻き込まれても、上条は死体に出くわしたことはない。

初めて見た死体はあって欲しくない『御坂美琴』の惨殺体だった。

上条はいつの間にか近づき両膝を地面につけて嗚咽を漏らしていた。

347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/01(木) 22:25:18.53 ID:TwigQq9AO



上条の脳裏に御坂との思い出がポートレートのように映し出されていく。

ポートレートはひび割れては次々と消えていく。

これは御坂じゃない。違う。御坂は必ず帰ってくる。こんな姿になるはずがない。

そう心の中で叫んでいても、目の前にある姿が目に焼き付いてしまい、ロシアのショッピングセンターでこんな姿で終わったかもしれないと心を痛めつける声が聞こえてくる。

目の前の姿は御坂美琴の写し身。

誰が、一体何のために?人が行える所行ではない。能力者がやったことなのか?

次第に悲しみの他に、怒りがこみ上げてくる。

ただの怒りではない。目の前の姿は御坂美琴との思い出への冒涜。まだ言葉にならない御坂美琴への思いを打ち壊そうとするもの。それは復讐といえばいいのか、許されないことをした者を自分の世界が破滅しようともこの手で潰してみせる決意。

許さない。

そして、気が付けば周りに人の気配がする。思いに沈んでいる間に現れたのだろうか?

少し、視界を動かすだけで靴と素足が見える。

えっ?靴は目の前にあった惨殺体が履いているものと同じもの。

上条は立ち上がり周りを見る。

そこには十数人の『御坂美琴』がいた。自販機のところで会った少女と同じ印象で。

348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/03/01(木) 22:26:02.71 ID:TwigQq9AO
ここまで
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 00:48:07.81 ID:sjOXe3Ls0
これはキツイな  上条さんの心中 察して余り有る
でも続きが楽しみだ  
 
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/02(金) 19:34:33.43 ID:l9x/nK320
続き続き
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/02(金) 23:32:53.27 ID:GIow/VbAO
今日も短いです
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/03/02(金) 23:34:54.33 ID:GIow/VbAO



上条が何が起こっているのか分からず立ち尽くしている間に、彼女等は作業を始めていた。

上条の前にあった惨殺体が映画で見たことがある死体袋のような寝袋に入れられていく。

地面や周囲の壁に残る痕跡を何かの薬液をかけて消していく。

手際良く、滞りなく彼女等は処理していく。

まるで何度も同じ処理をこなして慣れているかのように淡々と作業を行う。

そして最後に重くなった寝袋をひとりが担ぐ。

それまで、僅か数分の間であったが上条は一言も声を発せ無かった。

連続した心への打撃に上条の神経は麻痺していたのかもしれない。心が壊れかけていたのかもしれない。

立ち尽くす上条を置いて去ろうとする彼女等にようやく上条は声を発する。

「何だよこれは」

「何やってんだよこれは」

力のない声が漏れる。

彼女等が一斉に振り返り。

「何を、と言われましても実験の後始末ですが、とミサカは答えます」

彼女等の一人が答える。

353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/02(金) 23:36:00.28 ID:GIow/VbAO



「実験って、その子は何をやってたんだ?」

「ですから、実験ですよ、このミサカは実験での役割を果たし終えたので回収に来たのです、とミサカは改めて答えます」

「回収って、物みたいに、お前らの仲間じゃないのかよ?同じ御坂のクローンじゃないのか?」

「はい、このミサカも」

「そのミサカも」

「あのミサカも」

「ここにいるミサカも」

「全てのミサカ達は」

「お姉様〈オリジナル〉のDNAマップから作られた量産軍用モデルのクローン、通称、妹達〈シスターズ〉です」

354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/02(金) 23:45:38.92 ID:GIow/VbAO



クローンであることは予想していたので驚く程ではなかった。それでも上条の心を苛む。

御坂の姿をしながら御坂でないことが。

クローンであれば、御坂と全くの同一体のはずなのに全く別のモノがその体に宿っていることが。

それに上条は人と話している感じがしなかった。
情報をインプットされた何かが受け答えしているようで違和感がある。

でも、あの自販機を前にしての行為は?一般的とは言い難いけれど人としてのものが感じられた。

「妹達〈シスターズ〉?じゃあ、あの自販機でお金を飲まれてたのは?」

寝袋を担いだミサカが自分を指差しながら

「それは、このミサカです、ミサカ達は電気を操る能力を応用して互いの脳波をリンクさせています。記憶は共有されていますがその場にいた個体をと言われれば検体番号10032号、このミサカになります、そういえばあの場にいたお姉様〈オリジナル〉のお知り合いでしたか、とミサカは今更ながら気づきます」

今はそれを感じとることが出来なかった。

それと今の内容は一体?脳波リンク?幻想御手の時の?

あの時、あの人は何を言っていた?

限りなき絶望

そういうことなのかよ!

355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/02(金) 23:49:09.48 ID:GIow/VbAO



「もう一度だけ、聞くぞ。実験っていうのは何をやってるんだ。何故、お前達、妹達〈シスターズ〉の一人がこんな死に方をしなければならないんだ」

言葉に力を込めて上条は目の前にいる10032号と名乗ったミサカの目をみながら尋ねる。

上条は人としての反応が返って来て欲しかった。

「それには、ZXC741ASD852QWE963これに答えて頂かねばなりません、とミサカは返答します」

予想外の返答に、上条は

「ZXC?すまん!もう一回頼む!」

もう一回聞いても答えられないに決まっているが

「ZXC741ASD852QWE963です。プロテクトがかかっており、これに答えて貰わないと質問に答えられません、とミサカは補足説明します」

上条は急いで携帯電話を出していた。
圏外を示していたが構わない。
答えられないなら手掛かりになるものを残しておきたかったのだ。
言われたコードを打ち込んでいく。

「えーと、ZXC741ASD852?」

「QWE963です、答えられないようですね、ふぅ、時間が超過していますので、これでお別れです、もう関わらない方がいいですよ、とミサカは忠告して去ります」

356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/02(金) 23:50:15.47 ID:GIow/VbAO



「待て!!最後に聞かしてくれ。御坂の妹だったら御坂妹か、お前達はこの実験をどう思ってるんだ?」

聞かねばならなかった。

「どう?と言われましてもミサカ達は実験動物ですので」

ギリッという音にならない軋み音が上条の胸の中でする。

「殺されるのが役割だというのか?」

「……ミサカ達はlevel5『御坂美琴』のクローンであることに嬉しく感じていると言えるでしょう、その代わりができるのならば、とミサカはこれ以上言えません」

そう10032号が言いながら妹達〈シスターズ〉はその場から立ち去っていった。

357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/02(金) 23:53:08.33 ID:GIow/VbAO

妹達〈シスターズ〉が現れるまで上条の中では妹達〈シスターズ〉を殺戮した者への怒りが渦巻いていた。

殺戮者への許せない思いは変わらない。

どんなことがあっても償いをさせるつもりだった。

妹達〈シスターズ〉を見て彼女等も助ける考えにはなっていた。

単なる『御坂美琴』の姿をした中身の違うコピーを助けるのか、一人の『人』として助けるのかの違いがある。

御坂妹の最後の言葉には感情が感じられた。



『御坂美琴』への憧れなのか思慕なのか?
子どもが親に感じるものなのか?
妹が姉を思うことなのか?
上条にはそれを判別できる訳ではない。

でも、一人の『人』として妹達〈シスターズ〉も生きている。

多分、知識だけがインプットされ、人としての感性や感情が育ってないだけ。

そう、思わせてくれた言葉だった。

優先すべきは妹達〈シスターズ〉を救うこと。

殺される役割が運命だというのならばそんな運命など蹴飛ばしてしまえばいい。

御坂が言いそうなことだった。

御坂だったら、どうしたか思いを馳せる。

358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/02(金) 23:55:32.93 ID:GIow/VbAO

関係無かった。
御坂だったら人の形をしてるだけだからといって放っておくようなことはしない。

必ず助けようとする。

色々、言いながらでもそうするんだろうな!




あのままでいたら、心が壊されていた。

復讐にかられて闇に堕ちていた。

御坂がどうするか、考えただけで上条の心は救われた。

また、助けられちまったのかな?

御坂に代わって、そんな運命から妹達〈シスターズ〉を助け出す。

そこまでようやくのこと考えがまとまった上条だったが、行動に移すには情報が少な過ぎた。

手掛かりは携帯電話に打ち込んだコード。

ジッとそれを見詰め、どう使うか考えていると、さっきまで圏外だった筈なのに電話が鳴る。

吃驚して携帯電話を落としそうになり、慌てて携帯電話を持ち直し画面を見ると

着信 初春飾利

だった。
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/03/02(金) 23:57:30.69 ID:GIow/VbAO
ここまで
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 00:07:40.11 ID:Pn+nSnOro
おつにゃんだよ!
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 00:14:23.45 ID:CCYJMRE20
乙 次回も勿論楽しみにしてる
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/03/03(土) 20:32:25.25 ID:/N97UtCAO



初春さん?なんで今

コードを解読するのに一番頼りになるのは情報処理に高い能力を発揮する初春である。彼女に任せれば実験の詳細も判明していくだろう。それでも先程のあの姿が目に浮かぶ。

迷いながら上条は通話ボタンを押し携帯電話を耳にあてる。

『上条さん、何がありました?』

いきなり、核心をつかれる様な聞き方をされた。それにいつもの飴玉を転がすような声でなく、固い口調で。

「何がって、一体初春さんこそどうしたんだ?」

『それがですね、最近、監視カメラがよそを見ていることが多いんですよ。それでちょっと調査をしてたんですが、上条さんを監視カメラで見かけた後、映像が切り替わったような気がしたもので、上条さん何か見てませんか?』

やはり、話せない。
そんなことでも真面目に仕事をしている初春をこんな血に塗れた事件に巻き込んじゃいけない。コードは自分で何とかしようと上条は考えて

「いや、何も『幽霊でも見ましたか』

言い終わる前に言われて、上条は答えられない。

『もう一つチェックしていることが有るんですよ。御坂さんを見かけた、頭に変なゴーグルをしてたとか、御坂さんが路地裏でサバゲーをしてたとかネットに噂がまわる時があるんです。でもすぐ削除されちゃうんですけど』

「…………」

363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/03/03(土) 20:47:50.19 ID:/N97UtCAO



『御坂さんの亡霊に会ったんですか』

「やめろ!!」

思わず、強い語調で言い放っていた。

それでも初春さんは言葉を続ける。

『御坂さんのクローンに会ったんですね』

「なっ、!!」

『有りましたよね、去年からそういう噂も。教えて下さい』

初春さんの誘導が上手かったと言うしかない。路地裏であったことを教えるしかなかった。

路地裏に入ると御坂のクローンが倒れていたこと。
既に事切れていたこと。
そして十数人の妹達〈シスターズ〉と名乗る御坂のクローンが現れたこと。
何かの実験が行われていること。
その実験の手掛かりになるコードのこと。

どういう姿になって倒れていたかまでは言えなかったけれど。言えば初春さんも闇に呑まれる気がした。

上条自身も御坂を思い出してギリギリ踏みとどまっていられるだけ。初春に説明しているだけで上条はどうしようもない怒りがこみ上げてくる。

言える訳がない。

『では、そのコードを送っていただけますか。私の方で調べてみます』

「ああ、すぐ送る。頼む。でも、無理はするなよ?」

364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/03/03(土) 20:48:52.88 ID:/N97UtCAO



『……上条さんこそ、一人で動かないで下さいよ!絶対ですよ!』

そうして暫くの時間、初春さんからの連絡を待っていた。

暫くと言っても意外と短かったかもしれない。その後の展開から考えれば。

上条は連絡を待っている間、あの路地裏の近くにはいたくなかった。
寮に戻る気にもならなかった。
出来れば人がいない場所へ行きたかった。
そういう場所を無意識に探して上条は歩いていた。

携帯電話にメールの着信音が鳴る。

初春さんからのメール。

上条は急いでメールの内容を確認した。

365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/03/03(土) 21:30:12.83 ID:/N97UtCAO



メールの本文には

〈絶対に一人で動かないで下さい!絶対にですよ!〉

と書かれあった。さっきの電話で初春さんが最後に言っていたことと同じ。また、電話で言えば良いことなのに、と上条は二つある添付ファイルの一つを開く。

『415872−C』

『絶対能力進化実験 量産異能者「妹達」の運用における超能力者「一方通行」の絶対能力への進化法』

なんだ、これlevel6?一方通行〈アクセラレータ〉?これが実験の計画書なのか?

上条はファイルを読み進む。

『「樹形図の設計者」を用いて予測演算した結果、まだ見ぬ絶対能力へ到達できる者は一名のみということが判明。他の超能力者は成長の方向性が異なる者か、逆に投薬量を増やす事で身体バランスが崩れてしまう者しかいなかった』

『唯一、絶対能力に辿り着ける者は一方通行と呼ぶ』

『一方通行は事実上、学園都市最強の超能力者だ。「樹形図の設計者」によると通常の時間割り〈カリキュラム〉を250年組み込むことで絶対能力に辿り着くと算出された』

『我々は「250年法」を保留とし、他の方法を探してみた。……特定の戦場を用意し、シナリオ通りに戦闘を進める事で「実戦における成長」の方向性をこちらで操る、というものだ』

上条の携帯電話を持つ手が震える。

366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/03(土) 21:35:37.18 ID:/N97UtCAO



『「樹形図の設計者」を用いて演算した結果、128種類の戦場を用意し、超電磁砲を128回殺害する事で一方通行は絶対能力へ進化する事が判明した』

御坂を殺害する?なんで、こんなことを考えられるんだ、こいつら!まっ、まさか

『だが、当然ながら同じ超能力である超電磁砲は128人も用意できない。そこで、我々は同時期に進められた超電磁砲の量産計画「妹達」に着目した』

『当然ながら、超電磁砲と量産型の妹達では性能が異なる。量産型の実力は、大目に見積もってもlevel3程度のものである』

『これを用いて「樹形図の設計者」に再演算させた結果、2万通りの戦場を用意し、2万人の妹達を用意することで上記と同じ結果が得られる事が判明した』

『超電磁砲を1回使用する短縮案も策定したが、超電磁砲の行方不明により不可能と判断。2万人の妹達の使用を基本計画とする』

『385671−A』

こいつらに御坂が何かされた訳じゃなかったか!
上条は懸念が消えて僅かながら安心するが、2万人?それを殺害する?それに恐ろしいモノを感じる。
人間が考える事じゃないと思う。

絶対能力、確かに学園都市の理念に対する足掛かりかもしれない。けれど、それが2万人の命を生け贄にする程の価値があるとも思えない。

絶対に間違っている。

367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/03(土) 21:42:28.57 ID:/N97UtCAO



上条はもう一つのファイルを開く。一つのファイルになっていたが、中身は二つ入っているようだった。

初春さんが慌てて二つをまとめてファイル化してしまったのかと思った。

何が書いてあるか読み進めていく。

妹達〈シスターズ〉の製造法であった。

読み進めるうちに上条が感じた印象に合点がいった。

『言語、運動、論理など基本的な脳内情報は0〜6歳時に形成される。だが異常成長を遂げる妹達に与えられた時間は僅か144時間弱。通常の教育法で学ばせる事は難しい。よって我々は洗脳装置〈テスタメント〉を用いてこれら基本情報を強制入力する事にした』

やはり、あの時感じたことは正しかった。

美術品をこれは美しいと教えられても、子猫を可愛いと教えられても、それは知識として植え付けられただけで、見て触った経験として育った感性ではない。

人間の心は知識だけあれば育つような簡単なものじゃない。

妹達〈シスターズ〉は生まれてから知識を植え付けられて肉体年齢相応に見えるだけで情緒が育ってない。

これから、色んなことを経験していけば人として歩んでいける。その未来を作ってやらないといけない。

上条は御坂のためにもそう誓う。

368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/03(土) 21:49:36.21 ID:/N97UtCAO



その続きは、2万通りの殺害方法や戦闘形式が綴られていた。

胸が悪くなるような内容に途中で止め、残りの一つのファイルに目を通す。

『415872−A』

何か違和感があったが内容が気になり、そのまま目を通していく。

余計に胸が悪くなる内容だった。上条は吐き気を我慢しなくてはならなかった。前が計画書なら、これは実験記録だった。

どのように戦闘が行われ、どんな結果に終わったか。結果は全て妹達〈シスターズ〉の死亡で終了。殺され方、どんな死体になったかが違うだけ。

こんなものを初春さんも見たかと思うと直接、電話して来なかったのも納得した。

途中でこれも見るのを止めようかと思ったが、ひょっとしたらと思い今日の日付まで進める。

先程の路地裏での実験、時間と場所は書かれてあったが結果はまだ記載されていない。使用検体は10031号。

「えっ?」

その次を見る。

『開始時刻20時30分 実験場は絶対座標 X−228561、Y−568714 〇×操車場 使用検体は10032号、その用途は「反射を適用できない戦闘における対処法」』

御坂妹、10032号あの子はなんと言っていた。

『ミサカ達はlevel5『御坂美琴』のクローンであることに嬉しく感じていると言えるでしょう、その代わりができるのならば、とミサカはこれ以上言えません』

御坂の代わりが務められるから、なのか?

御坂がそんなことを言われて喜ぶとも思っているのかよ!

上条は走り出していた。

偶然か上条は実験場のすぐ近くまで来ていた。

時刻は20時05分。

時間は充分にある。

369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/03(土) 21:50:55.71 ID:/N97UtCAO
ここまで
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 22:35:41.65 ID:TABhNA56o
おつにゃんだよ!
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 23:40:46.52 ID:S4Ex+QW1o
乙!
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/08(木) 20:03:07.56 ID:1MXaziQ/0
まだかな〜
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 02:02:31.26 ID:YJR+3vnSo
舞ってる
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/17(土) 00:23:55.64 ID:SuCKnDz50
待ってるーーーーー
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/03/17(土) 23:10:55.07 ID:UDtjEk1AO



「すいません、嘘ついちゃいまして」

彼女は謝っていた。

最後に友人達に会いたかったけれど時間がない。

証拠を集めて実験を阻止しようとした試みも無駄だった。無為に過ごした間に47人の命が散っていってしまった。

あの時、覚悟を決めていれば二つの命が消えるだけで済んだはず。

あの日、9982号が死んだ時、あの人と再会した時に覚悟を決めていれば。

あの日、監視カメラの画像が気になって自分で現場を確認しようと、一人で様子を見にいった時だった。

それはあの人がコンテナで『御坂美琴』を押し潰した光景だった。

何でそんな光景を見せられなければいけなかったのか。

6年前の事件以来、会うことがなかったあの人との最悪なカタチでの再会。

そして、再会したあの人は一方通行〈アクセラレータ〉となっていた。

376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/17(土) 23:19:31.36 ID:UDtjEk1AO



上条が妹達〈シスターズ〉に遭遇したことを知った時、彼女は悟った。もう時間がないことを、47人の命を見過ごしてしまったことを。

彼女は一人でこのどうしようもない実験を止めるつもりでいる。

彼女の力は学園都市230万人の中でも唯一の能力。

それも、科学的には解析できないと言われた力。

未知の力であれば最低でも、一度は一方通行に通じる。

一度の機会があれば充分だった。彼女の力は瞬時に人を死に至らしめる。それ故に封印した力。

その力を使うためには一方通行にこの手で触れなければならない。

触れる、ということは

一方通行にも能力を使う機会を与える。

実験で見たように生体電流や血流を操作されれば同じ結果が待っている。

結果として二つの命が散ることになる。
それでも1万人近い命が助かるならば、あの人にこれ以上の罪を重ねることを止められるならば。

377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/17(土) 23:26:05.54 ID:UDtjEk1AO



「上条さん、本当にすいません。一人で動いたりしたら絶対だめですよ、なんていいながら私の方が」

「ありがとうございます。教えてくれたパスコードで、今まで接触できなかった実験予定まで踏み込むことができました」

「あとは私がやります。もう一度御坂さんに会いたかったです」

彼女は実験場に到着する。

時刻は20時27分。

間に合ったはずだった。

ところが既に実験場は荒れ狂っていた。
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/17(土) 23:36:21.80 ID:UDtjEk1AO



上条は操車場に入り、すぐに二人を見つけていた。

一人は数時間前に会ったばかりの妹達〈シスターズ〉のひとり、10032号。実験予定によれば彼女に間違いない。

もう一人は白い少年、夜目にもはっきりとわかる白い髪と肌、こちらを怪訝そうに見ている目は僅かな光を反射して赤く光っている。

これが一方通行〈アクセラレータ〉、学園都市最強の存在?

腕が4本、角や羽、尻尾があったりはしない。1万人以上を殺戮した存在をイメージした時、何となくそんな怪物が頭に浮かんでいた。

髪や肌、瞳の色合いが普通の人と違うにしても、あくまで人間の姿をしている。

それが、余計に得体の知れない不気味さを感じる。

何故、人が1万人以上の殺戮が出来るのか?上条は人としての定義に当てはまらない人の姿をした別のモノを見ているような気になる。

その少年は怪訝そうに見ていた目を一旦閉じて、何か残念がるように溜め息をつき

「その目つきは知らないで迷い込ンだって事じゃなさそうだな」

「俺になンか用事かァ?もうすぐ人形で遊ばねェといけねェ時間だからよォ手短に頼むぜ」

379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/17(土) 23:46:12.02 ID:UDtjEk1AO



上条「ふっざけてんじゃねー!これからテメェが何をするか俺は知ってんだよ!学園都市、最強だあぁぁぁ!?それだけのチカラが有ってこれ以上何が欲しいって言うんだ!何でこんなろくでもない実験に協力出来るんだあぁぁぁ!?」

白い少年は面倒臭そうに

「実験のコトがダダ漏れじゃねェか、何やってンだァ、こりゃ?」

「まァ、イイか同じ事をまた言うことになるけどよ」

表情を変え、少し愉快そうになりながら

「最強?学園都市第一位?」

「オマエらなんかに突っかかられる程度のもんでしかねェンだよ」

「勘違いしたバカが俺を倒したら、最強だとかほざいて挑戦しに来る程度でしかねェって事だよなァ」

「俺が目指してンのはその先なンだよ」

「そのためには」

「俺は絶対的なチカラを手にする」

「最強だとか学園都市で一位だとか」

「そんなつまンねェもンじゃねェ」

「俺に挑もうと思う事すら許さねェ程の絶対的なチカラ」

『無敵』〈level6〉が欲しーンだよ」

上条「そのために、妹達〈シスターズ〉の、2万人の命を犠牲にしてもテメェはそんなものが欲しいって言うのかァァァ!!」

「お行儀のイイことを言うじゃねェかァァ!!この街の裏側じゃァ命ってのはよォ軽く扱われてンだァ!そいつらだって自分のコトを実験動物だって言ってンだぜ。あァ、たしか一体当たり18万円だったかァ?ボタンひとつで幾らでも生産出来るってなァ」

「人形なンだよ、人形。話しかけたってインプットされた答えしか返さねェ。だったら実験用に生み出されたコイツらを役割通りに役にたててドコが悪いンだァ?」


380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/17(土) 23:59:44.65 ID:UDtjEk1AO



上条「テメェェェェェ!!」

上条は拳を握り締め、今にも一方通行に向かおうとする。

10032号「いけません!何をやっているんですか、とミサカは問いかけます」

10032号が制止の声をかける。

10032号「一方通行が言うようにミサカはボタンひとつでいくらでも自動生産できるんです、とミサカは説明します」

表情は崩れない。しかし口調は次第に早口になっていく。

10032号「お話したようにミサカはネットワークにより記憶を共有し、ひとつの大きな意志を形成しています、とミサカは説明します」

10032号「ですから個体事の存在は問題では有りません、とミサ」

上条「バッカヤロー!!!そんなこと美琴に言ってみろ!怒りまくって学園都市が停まるぐらいの雷を落とすぞ!」

10032号「しかし、実験を止めようと一方通行にあなたが挑めばあなたは」

上条「美琴がいれば、絶対に止めようとする。それこそ命にかえても、なっ!美琴がいないからって見過ごすことなんて俺には出来ねーんだよ!!」

上条「それにな、個体事の存在は問題ないって言うけどよ!自販機でお金をのまれた時、お前困った顔してただろ?」

381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/18(日) 00:39:28.21 ID:I818exdAO



10032号「えっ?そんな顔をしてましたか?とミサカは」

上条「ほんのちょっとした表情の動きでしかなかったさ。たまーにしか見せない美琴の表情と似てたからわかったんだよ。記憶が共有されるからってその時感じた感情まで共有されるのか?そうした感情まで含めた経験をしたのはお前だけのものじゃないのか?妹達〈シスターズ〉がそれぞれに経験した思いや感情はそれぞれの妹達〈シスターズ〉のものじゃないのか?」


10032号「それは」

上条「同じじゃねぇんだよ、一人一人がそれぞれの経験をして生きてるんだ!お前は世界でたった一人しかいねぇんだ!妹達〈シスターズ〉もそれぞれがたった一人しかいない存在なんだ!」

上条「美琴が帰って来た時、悲しい思いをさせたくねぇんだ」

上条の声は10032号に届く。10032号を通じて妹達〈シスターズ〉へも。

その時

「ぎィやははははははははは」

哄笑が響く

「面白ェわ。どっかの青春ドラマですかァ?黙って聞いてりゃ楽しませてくれるぜ」

「でもよォ、この街にはそんなモノ、実際には有りはしねェ。冷たい現実しかねェンだよ。コイツらを助けようとするンなら、俺を止めるしかねェぞ。俺を止めねェ限り実験は続くンだからなァ。オマエにできンのかよ?俺を止めることがァァァ!?」


382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/18(日) 00:47:49.89 ID:I818exdAO



「今の話し聞いてりゃ、オマエも超電磁砲の知り合いなんだよなァ」

「外いって行方不明になったァ?今頃どっかで野垂れ死ンでンじゃねェかァ?」

「超電磁砲がいりゃ2万人もいらなかったそうじゃねェか?そうしたら今頃もう絶対能力者になれてたかもしンねェなァ?」

明らかに挑発だった。今更、挑発する必要もないのに一方通行は愉快そうに声を投げつける。

上条「黙りやがれ!この三下があぁぁぁぁ!!!」

「実験前の余興に遊ンでやっから、俺を止められると思うンならかかってきな」

上条「お、ーーーーーォおおっ!」

全身の力をため、一気に爆発させる。上条は一方通行めがけ跳ぶ。

対して一方通行は不協和音が鳴り始めたのを逆に楽しむかのように迎え撃つ。

3人がいる操車場は一方通行により荒れ狂い始める。


383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/03/18(日) 00:58:03.01 ID:I818exdAO
ここまで


頭が回んない状態で書いてて買いちゃ消し買いちゃあ消しを繰り返してたもんで遅れてしまいました

申し訳御座いません

384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/18(日) 01:11:02.97 ID:oTtz9Jma0
乙  まさかの展開が来るのか? 期待
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/18(日) 01:55:42.33 ID:M3CRaxhvo
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/03/19(月) 16:52:41.29 ID:UdsD+Fa90
乙!
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/03/20(火) 22:16:42.12 ID:g4i2h0qAO



勢い良く一方通行へ駆け出した上条であったが、一方通行の迎撃を受け劣勢にたたされる。

一方通行の能力、ベクトル操作により、大量の砂利が弾丸となり、鋼鉄のレールが踊りながら上条に襲いかかる。

何本ものレールをギリギリ避けても、大量の砂利が上条に打撃を与えダメージが積み重なっていく。

いいように嬲られるだけで反撃の糸口も掴めない。

上条の勝算は異能の力であればなんであれ打ち消してしまう右手、御坂美琴が名付けてくれた幻想殺し〈イマジンブレイカー〉である。

資料で見た一方通行の能力はベクトル操作、運動量、熱量、電気量などを問わず、あらゆる種類の『向き』〈ベクトル〉を皮膚上の体表面に触れただけで自在に操る事ができる。

あらゆる攻撃、それが核爆発であっても一方通行の体表面で反射され、傷一つつけることができない。

そんなとんでもない能力であっても異能の力である限り、反射の壁を超えて上条の右手は一方通行に届く。

ただ、それも右手が届けばの話し。現状は一方通行の能力に振り回され近付くことさえできない。

荒れ狂う一方通行の力により上条は次第に消耗していく。数え切れない飛礫を受け傷つき、体力も奪われている。

それでも上条の心は折れない。

妹達〈シスターズ〉を救うため、死ぬ運命から引き上げるため、人として歩んでいける道を作ってあげるため。

そして上条の大事なモノを汚した一方通行を許せないために。

388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/20(火) 22:34:47.16 ID:g4i2h0qAO



一方通行は攻め手を緩めない。もがく上条を弄び、能力を使用した攻撃手段のオンパレードを見せていく。

周りにあったコンテナが一方通行の攻撃の流れ弾によりひしゃげ、裂ける。中に入っていた小麦粉が空中に飛散していく。上条の周りを白い粉が漂い空間を埋め尽くした。

一方通行はその状況を利用し粉塵爆発をおこす。

粉塵爆発の中から咄嗟に逃れた上条であったが爆発の影響は体にダメージを残していく。

既に与えられたダメージは深刻な域まで達しつつある。

膝は震え、立っているのもやっとの様子。

それを一方通行は一息いれて眺めていた。

「大層なことを言ってたが、オマエまさか無能力者か?」

「チカラが無ければなァ、この街じゃ無価値、ゴミ同然に扱われンだ」

「チカラがねェってのは哀れなもンだよなァ、止めたくても俺を止められねェンだからよォ」

「あァ、でも逆かァ?ヘタに強い能力なンぞ持ってたりすりゃ反射で一瞬のうちに終わっちまってたかもしンねェからなァ」

「ま、オマエはオマエで頑張ったと思うぜ、この一方通行を前にしてまだ呼吸してンだ」

「だからまァー」

「イイ加減、楽になれ」

そう言いながら、一方通行は両手を横に広げていく。

「好きな方の手に触れろ」

「それだけで血の流れを」

「生体電気の流れを」

「逆流させて死ねるからよ」

ドンっという音とともに一方通行が上条に迫る。

「どっちがいい?」

「苦手か」

「毒手か」

「それとも両方か」

砲弾と化して上条に接近した一方通行は両手で上条を挟み込もうとする。

そして、局面が動く。

攻守が入れ替わる時が巡ってくる。

389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/20(火) 22:47:56.43 ID:g4i2h0qAO



グシャッ!!

上条の右手に人の肌の柔らかい感触とその下の硬い骨の感触を伝える。

上条は一歩を踏み出し右手を振るだけで良かった。残っていた力を込めて。

今まで近付くこともできなかった一方通行がわざわざ眼前に来てくれたのだ。千載一遇のチャンスを逃すはずがない。

上条の拳を顔面に喰らった一方通行は飛び出した勢いのまま向かって来た方へ倒れる。

一方通行は何が起こったのか分からず、混乱した様子で起き上がる。手で顔を拭うと鼻血が出ているのに気付き愕然としていた。

その一方通行へ上条がジリっと近寄る。暗い目をしながら。

「あ、は?い、痛い?はは、何だよそりゃァァァ」

「面白ェ、ははは、ちくしょう」

「イイぜ、最っ高にイイねェ」

一方通行は上条の方を見ずに叫んでいる。

「愉快に素敵にキマっちまったぞ、オマエはァァァァァァ」

そう言いながら上条へ振り向き再び右手を振り飛びかかる。

それを上条は暗い目で見ながら右手で弾くと一方通行の顔を殴る。

「ごぶぁ!?」

上条の拳を受けた一方通行は顔を仰け反らし後ろへよろける。

攻守が入れ替わり、上条が一方通行を攻め立てる。

390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/20(火) 22:53:13.98 ID:g4i2h0qAO



一方通行が言葉通りの必殺の両手を振り回しても上条の右手で弾かれるか簡単に避けられる。

その後には上条の右手で殴られる。

鋼鉄のレールを再び起き上げようとすると、その前に踏み込まれて殴られている。

軽く動きを制止するための拳。振り抜いて一撃で決めようとする殴り方ではない。

冷静に暗い目でみながら一方通行を追い込んでいく。

「何なンだよその右手は!」

一方通行は距離を置こうと足元の地面を爆発させる。砂利が散弾となって上条を襲うが上条は身を沈めてかわす。

沈めた身体を膝のバネを使って一気に伸ばすと同時に右手を一方通行の顎へ振り上げる。

上条は考える前に動いている。思考は停止した状態。暗い目で見た状況を自動的に判断し身体に命令が下されている。

グゴキッ!!

「ごぱっ!!」

顎を打ち抜かれ、身体が伸び上がる。その後、膝の力が抜け崩れ落ちかける。

上条「……殺す」

崩れ落ちる前に大きく振りかぶった上条の右手が一方通行へ放たれる。

殺す意志が込められた右手が一方通行の顔面に突き刺さる。

391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/20(火) 23:06:57.38 ID:g4i2h0qAO



10032号は制止する暇もなく始まった闘いに茫然と見ているしかなかった。

既に実験の開始時刻を廻っていた。

一方通行と正面きって戦って無事で済む訳がないのは10031回も実験を重ねてきた妹達〈シスターズ〉だから良く分かっている。

一方通行の攻撃が激しく少年を助けようとも出来ない状況が続いた。

少年も攻撃を避けるため、目まぐるしく移動していく。

そのため動きが止まり、追いついた時には一方通行がトドメを刺そうとしていた。少年を助けようにも間に合いそうにもなかった。

ところが直後から形勢が逆転する。一方通行が追い込まれていき少年から逆にトドメと見える一撃が放たれる。

あの一方通行が敗れる?

あの少年の前に一方通行が倒れ伏す。

あの少年が叫ぶ。

何も希望などあるはずがなかったのにあの少年の言葉に扉が開かれた気がした。

今まで、暗い部屋の中で役割を果たすための順番を待っているだけの存在だったのに。

外に出る時は役割が終わる時、消える時だったのに光に溢れた外があるとあの少年は言っている。


392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/20(火) 23:27:46.65 ID:g4i2h0qAO



力を振り絞った右手が一方通行の顔面を捉えた時、上条は我に返る。いや、思考が戻って来る。

上条(殺す?何を考えてんだよ!いくらコイツが妹達〈シスターズ〉を死なせて来たからって同じことをすべきじゃねえだろうが!)

消耗し傷ついた代わりに感覚が研ぎ澄まされ闘いに身体が最適化していた。
今にも倒れそうな身体を突き動かしていたのは妹達〈シスターズ〉のためというよりは暗い情念。

忘れてはいけない。第一に考えるべきは妹達〈シスターズ〉を過酷な運命から解き放つこと。

一方通行と同じような殺戮者になることじゃない。

暗い情念に絡みとられ、闇に呑まれかけていた。

仇を討って相手を殺してもそれを御坂が聞いて喜ぶか?

顔に風が当たるのを感じながら上条は暗い目から光を取り戻していく。

倒れ伏す一方通行に声をかける。10032号にも聞こえるように。

上条「妹達〈シスターズ〉だって精一杯生きてんだよ。全力を振り絞って、みんな必死に!人形なんかじゃねえんだよ!」


393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/20(火) 23:36:39.56 ID:g4i2h0qAO



上条「どんなカタチであれ生まれてきたんなら、喜びや悲しみを感じながら人として生きてていいに決まってんだ!!」

上条「もう終わりしてくれよ。お前が実験に協力しなければ妹達〈シスターズ〉は生きていけるんだ」

風が流れるなか一方通行から奇妙な声があがる。

「く、」

「くか、」

そよいでいた風が変わった。

「くかき、」

上条の顔色が変わる。

「甘っちょろいこと言ってンじゃねェか」

「くかきけこ」

「止めてみろって言ったがよォ」

「くかきけこかかきくけ」

「今更、言葉だけで止まるわけねェンだよ。止めたきゃ、ちゃンと止めてみやがれェ」

「くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけけこきくかくけけこかくけきかこけききくかかかーーーーーーッ!!」

一方通行は倒れたまま見えない月を掴むように、頭上へ手を伸ばす。

「殺せ」

394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/03/20(火) 23:39:38.44 ID:g4i2h0qAO



轟!!

突然、風速120mの風が吹く。

渦を巻き、砂利が舞い上がり全てを吹き飛ばす。

身構える余裕もなく上条も吹き飛ばされ、操車場の中にあった風力発電機の支柱へと打ち付けられる。

10032号もまた、フェンスまで吹き飛ばされ頭を打ち気を失う。

暴風の渦の真ん中で一方通行は起き上がる。踵を基点に柱を起こすようにゆっくりと直立する。

風は吹き荒れ、重量のあるコンテナまで宙を舞っている。

一方通行が腕を動かす。

宙を舞っていたコンテナが一方通行の操る風に動かされ、ある方向へ飛んでいく。支柱に打ち付けられ血を流し倒れている上条へ巨大な砲弾となって襲う。

気が遠くなりかけている上条は避けられない。

人を殺せる重量を持つコンテナが押し潰す。

395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/03/20(火) 23:40:33.46 ID:g4i2h0qAO
ここまで

396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 23:48:10.67 ID:ZFs8yaOuo
おつにゃんだよ!

397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 00:08:53.40 ID:zdTXhr4lo
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 23:12:04.56 ID:cKRzZjj00
続きが楽しみ
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/28(水) 17:40:30.80 ID:rG+cX4nX0
まだかなー
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/03/28(水) 21:19:19.35 ID:nqcBeZ9AO
土曜日には
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/28(水) 23:33:30.79 ID:7FLKZUzQo
待ってる
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/04/01(日) 00:56:18.43 ID:fQALKt4AO



一方通行からはコンテナが上条を押し潰したかに見えた。

しかし有り得るべき地面への衝突音と振動がない。

よく見るとコンテナは上条の手前で空中に静止している。そして唐突に光の粒子を散らしてコンテナは消失していく。最初から存在しなかったかのように、ひとつの塵も残さずに。

コンテナが消えた後、倒れた上条の前には花飾りをした少女が立っていた。

一方通行にとって5日前に再会した少女だった。
少女が何かをしたことは間違いない。

それが何をしたのか一方通行は確かめるためにもう一度、宙を舞っているコンテナを少女に振り向ける。

少女は両手を前に構えコンテナを待ち受ける。

普通ならば華奢な少女の手で支えられるものではない。

ところが紙風船でも受け止めるように少女の手で音のひとつもせずに空中に静止する。そして最初と同じように消失する。

「原子分解?いや、そんなチカラの働きじゃねェなァ」

「それがオマエの能力か?」

「たしか、存在の力がどうのこうの言ってたか」

「研究者の連中も理解できねェ、分けわかンねェってお手上げ状態だったよなァ」

「そうでしたね……加群先生だけが人や動植物・物質など、この世にあるあらゆる存在が持っている力。体や精神のみならず、他に対する影響力をも支えている力。それを操作して保存、改変、消去させられる能力だと言ってましたけど、科学的に証明はできませんでした」

「あの頃、俺が見たのは手で触ってるモノの保温だったよなァ、あれは保存ってわけか。じゃあ今のはなンだァ、消去してンのかァ」

「はい、その物質の存在を無かったことにしています」


403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/01(日) 01:06:31.06 ID:fQALKt4AO



「なるほどねェ、熱量やら運動量、電気量なンぞ一切関係ねェってわけかよ。見ただけじゃ『反射』出来るか分かんねェな。後ろにいるソイツの右手みてェによォ」

一方通行は言う。両手を横に広げて大気をかき混ぜながら。

「もう、止めにしませんか?あなたでも初見では『反射』することは不可能だと思いますけど」
(まさか上条さんが先に来てるなんて思いもしませんでした。……あれ?ひょっとしてやっちゃいましたあ!?もしかして一緒に送っちゃったんですかあ!?あわわわわ…………
一方通行、お願いです、これで終わりにして下さい)

少女は手を前に構え、額に汗を浮かべている。
実は上条を助けたことで勝算は限りなく落ちていた。上条を助けるには仕方無かったことであるが。
少女の能力の効果範囲は自分の手で触れたモノ及びそれと一緒に存在するモノである。
不意打ちに賭けていたが姿を見せて手の内を晒してしまっては警戒されてしまう。
それに先程の上条を吹き飛ばした暴風を使われては近づくことさえ難しい。
少女が調べた資料、実験データの中には大気のベクトルの操作をした事例は無かった。上条との闘いの中で掴んだ能力の活用法だろう。
そして今も一方通行の頭上では風が渦巻いている。

少女はそれを見やる。すると

「えっ!」

光を放ち始めていた。小さな星が揺らいでいるように見えた光が次第に膨らみ灼熱の塊へと化す。

「風を集めて、空気を圧縮?高電離気体ですか!?」

「ご名答だァ、さァて、オマエのチカラでコイツが消せるかァァァァ」

一方通行は終わりにする積もりが無い。そう見るしか無かった。

もはや一か八か一方通行に特攻するしかない。
高電離気体を振り下ろす前に。

少女は一方通行と目を合わせる。

一方通行は狂気を孕んだ顔をしていた。

そして終局の時が来る。

404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/01(日) 01:10:23.60 ID:fQALKt4AO



10032号は気を失っていた自分に気付いて慌てて立ち上がる。

風は吹いたまま。

一方通行の斜め後ろの姿が見えた。
一方通行が向きあっている正面の方向を追うと花飾りをした少女がいた。
その後ろにはあの少年がうつ伏せに倒れている姿が見える。
少年を守るかのように少女は手を前にして立っていた。

少女と一方通行は何かを話しているようであるが風のせいで10032号には聞こえない。

一方通行と1万回を越える実験を行ってきた妹達〈シスターズ〉であってもこのように大気を操作する能力の使用は初めみる。

今もまだ風が吹いているということは一方通行がベクトル操作を継続していることを示す。そして風は一定の方向へ集まっているようであった。

10032号は風の流れを追い視線を上にあげると空気が凝縮され、上空に高電離気体が生じ始めている。

1万度の高熱の塊。

そんなものが地上に降ろされたら、あの少年も、少年を守ろうとしている少女も一溜まりもない。

助けなければならない。妹達〈シスターズ〉を救おうとしてくれているあの少年を。

405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/01(日) 01:31:45.42 ID:fQALKt4AO



10032号「あの少年はお姉様と余程親しい関係だったのでしょうか、とミサカは想像します」

10032号「でしたら、資料で見る超電磁砲ではなくあの少年の話すお姉様をお聞きしてみたいです、とミサカは希望します」

10032号「そのためにはあの少年を助けて、ミサカも生きていなければなりません、とミサカは決意します」

10032号「そして、いつかお姉様にお会いして、作り物の体に、借り物の心、お姉様〈オリジナル〉の偽物が本当に生きていていいのか、とミサカはお聞きしたいです」

答えはでている。
電気系能力の最高位であるお姉様〈オリジナル〉であればあの高電離気体を解消することもできたであろう。しかし、能力のレベルが数段下である妹達〈シスターズ〉の能力では不可能なことである。
一方通行は学園都市中の風を計算し集め高電離気体を作っている。複雑な計算を、それこそ『樹形図の設計者』でもなければできそうにもないことを行っている。
計算通りに風を操作できなければ霧散してしまう程に複雑な計算を行っている筈だ。
そこに不確定要素が入り込めばどうなるか?

10032号は少年の傍にある風車に目をやる。先程の暴風を受けて支柱もその上にあるプロペラも捻れている。

正常に動いている同じモノは学園都市中にある。その数は10万を超すとも言われている。風を受けるのではなく風を送るように動かせれば。

全ての風車を動かすことはできなくとも計算に僅かな誤差を生み出せればいい。

連絡を取らなくても全てのミサカは既に行動に移していた。

一方通行の計算に狂いが生じる。

406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/01(日) 01:38:24.03 ID:fQALKt4AO



上条は支柱に打ちつけられた後、衝撃で朦朧としている。今にも意識が闇に落ちそうな状態だった。

周りの状況も見えない、聞こえない。

『何してんのよ、アンタ!』

怒った御坂の顔が浮かぶ。

『助けるんでしょ、私の妹達を』

上条(そうだよ、寝てる場合じゃねえ)

上条は重い体を無理やり起き上げる。
一方通行の攻勢を凌いでいた時のダメージもある。支柱に打ちつけられて血も流れている。
身体を動かすだけで激痛が走り声を上げそうになる。

それでも立ち上がる。

痛みをこらえ前を向く。

虚ろに映る、目の前には少女の背があった。

頭の上に花飾りが見える。

上条「……初春さん?」

上条を庇うように初春が前に立ち、一方通行と対峙していた。


407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/01(日) 02:09:04.30 ID:fQALKt4AO



少女は特攻の時を待っていた。

複雑な計算を行っている一方通行が大きくなった高電離気体を維持するため演算能力を限界まで行使する時を。演算能力を限界まで行使していれば反射しか迎撃手段はとれない。

一か八かの決死のチャンスを待つ。

普段は無理に能力を封印している弊害で神経が圧迫されている。そのため運動機能は人並み以下だ。
しかし能力を開放した今であれば訓練を受けている分、人並み以上には動ける。
真っ直ぐに素早く一方通行の元へたどり着ければいい。
それで終わる。

そう思っていたら

「な……?俺の計算式に狂いはねェ、何が起こってンだ!」
一方通行から不審の声があがる。

高電離気体がぐにゃりと歪み、拡大を続けていた高電離気体の輪郭が朧になる。
拡散していく。

一方通行が不審な顔で見上げている。
手を顔に当て焦った顔へと変わると斜め後ろを振り返る。

そこには妹達〈シスターズ〉の一人、10032号がいる。

10032号「その方々を死なせる訳にはいきません、もちろんミサカもその方々のためにも死ねません、とミサカは一方通行に宣言します」

「クックククッはァッはッははははッ、風車を動かして俺の計算を乱してンのかァァァ、最っ高に面白いじゃねェかァァァ、
……それじゃあよォォォ、終わりにしようかァァァァ!」

10032号に襲いかかるかと思ったがこちらへ振り返る。

そして、少女の後ろで気配がする。

倒れていた上条が起き上がり少女に呼びかける。


408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/01(日) 02:16:44.68 ID:fQALKt4AO



初春「えっ?かっ上条さんダメです、動いたりしたら」

焦った声をだす初春に、上条は構わず前に出る。

一方通行は既に地を蹴り二人に向かって迫っている。
手の届く距離に到達する。
初春に向かって手が伸ばされた。

何やってるんだよコイツ、初春さんまで傷つけるつもりかよ、と上条は思った。

そう思うと同時に右手は振り上げられている。
そのまま倒れ込むように体を預け、右手に全てを込める。

10032号からは終局がスローモーションのように見えていた。
弾丸のように飛ぶ一方通行も、その一方通行に手を伸ばそうする少女も、そして三人が絡み合い、僅かの差で少年の右手が一方通行の顔面に突き刺さる様を見ていた。

一方通行は顔面に拳を受け、弾かれるのではなく地面へと押し倒される。

「終わらねェじゃねェか」

上条と初春にはそんな声が聞こえた気がした。

一方通行の体は地面に打ち倒され、あまりの衝撃に身体がバウンドする。

そして意識が途切れ、一方通行は動かなくなる。

上条も右手を打ち抜いた姿勢で固まっていたが膝から崩れ意識を手放した。


409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/01(日) 02:26:59.15 ID:fQALKt4AO



上条「その美琴、大丈夫か?」

一通りの話しを終え、上条は心配そうに尋ねる。

事の顛末は上条と今では御坂妹と呼ばれている10032号が話した。

美琴は最初にどうせろくでもない話しでしょ、覚悟はできてるわよ、と言った後は口を挟まず二人の説明を聞いていた。

説明が進むうちに美琴の目は険しさを増す。怒りだすのは上条達も想定していた。
ただ、その怒りが周りをいて凍らせるものになるとは思っていなかった。
特に絶対能力進化実験の内容を説明中は部屋の温度が絶対零度まで下がったかと、ここ妹達〈シスターズ〉の部屋にいる皆が思ったほどである。

美琴「私の責任……よね」

上条「美琴!」

10032号「お姉様!」

美琴「DNAマップ、筋ジストロフィーの治療研究にってことで提供したのに、それが」

10032号をはじめとした妹達〈シスターズ〉に美琴は目をやる。

美琴「騙されていたんだろうなあ、最初から」

美琴「10031人か……死なせてしまったのね、私のせいで」


410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/04/01(日) 02:35:07.08 ID:fQALKt4AO
ここまで

考察に出てくるような能力は避けて、通用しそうな力を借りてきてしまいました。

411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/04/01(日) 02:53:48.05 ID:3RMn0kh40
乙 まさかの展開 楽しみました  初春と一方さんの過去の経緯についてまたどこかで触れてもらえることを期待!
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 03:35:52.55 ID:lW+2M3Cto
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 08:10:01.19 ID:YOGpYq/DO
乙。
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 22:08:45.31 ID:XRoha7Kwo
おつにゃんだよ!
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/04/03(火) 21:48:29.86 ID:vYilSeEAO



10031人の命の重さ

それはクローンであろうとも変わりない。そのために上条は右手を振るった。

幼かった頃の美琴、学園都市の闇を知らなかった頃の美琴、責任を求められるのか?

それでも妹達〈シスターズ〉が生まれてくる端緒を作ってしまったのは自分だと美琴は考えてしまう。

それは10031人の命が実験によって失われた結果も自分にあるという考えに繋がる。

更に、実験が行われていた期間、美琴はインデックスを守る為に学園都市を離れていた。
学園都市にいたら少しでも多くの妹達〈シスターズ〉を救うことができたのではないか?学園都市を離れる前からヒントはあったのだから。
だからといってインデックスと妹達〈シスターズ〉、二つのうちどちらかを選べと言われても選べないし、もう時間も戻らない。時間を巻き戻すことなど出来はしない。
失われた命と残された命に責任を取っていくしかない、と美琴は思った。

妹達〈シスターズ〉に向かって美琴は

美琴「バカな私を許せないだろうけど、資格なんてないかもしれないけど、あなた達が生きていけるように道を開いてみせるから」

416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/03(火) 21:52:09.31 ID:vYilSeEAO



10032号「お姉様、ミサカ達はお姉様がいなければ生まれてきませんでした、とミサカはまず前提を述べます」

10032号「お姉様とお呼びしてますが、生まれた過程からすればお母様とお呼びすべきか、とミサカは愚考します」

美琴「お母様って、流石にこの年でそう呼ばれるのは」

10032号「実際にお呼びしたりはしませんよ、ですが子が親を慕うのは当たり前のことではないでしょうか、とミサカは真意を伝えます」

10032号「ですから、そう言って頂けるだけでミサカ達は十分嬉しいのです、とミサカは気持ちを伝えます」

美琴「あっあんた達、ごめんね、もう一人も死なせたりしないから!絶対に!」

10032号「ミサカ達も一人も死んでやるものか、とミサカはミサカ達は考えています」

美琴「うん、……ところで実験の方はどうなってるの?当麻のおかげでその後は中止になっているの?」

上条達の方へ視線を廻しながら聞く。

上条達は美琴と妹達〈シスターズ〉の会話をホッとしながら聞いていたが美琴の質問に微妙な表情になる。

上条「中止ってわけにはならなかったんだ。一時停止ってところらしい……」

417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/03(火) 21:56:07.27 ID:vYilSeEAO



白井「こちらのお医者様のように協力していただいている方々がいらっしゃいますの。そちらからの情報によりますと第一位の敗北で実験に狂いが生じたとして上層部の実験反対派が介入しまして、修正されるまで実験は停止ということですの」

10032号「反対派としては実験の完全中止まで追い込みたかったようですが推進派も上条さんとの戦闘でも成長が見られた、実験の方向性に間違いはなかったと抵抗、完全停止には至りませんでした、なお推進派の研究者は『樹形図の設計者』に実験の再演算を申請しましたが修正に必要なデータが不足していると回答があり、推進派も修正条件の洗い出し中というのが現在の状況です、とミサカは補足します」

美琴「修正に必要なデータ?修正条件?」

上条「それさえ何だか分かんねえって状況だってよ。その間に反対派は色々と妹達〈シスターズ〉を世界中に分散したりして、なし崩しに実験を再開するのを不可能にしようとしてんだ」

418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/03(火) 22:03:15.65 ID:vYilSeEAO



美琴「そっか、黒子もこの子達のために」

白井は首を横に振りながら

白井「わたくしは何も出来ていませんの。それが恨めしいですの。事件を知ったのも上条さんの入院後でしたから」

美琴「えっ?」

美琴の疑問符に答えるように佐天が

佐天「ヒドいんですよ、初春も!白井さんと私が事件を知ったのは初春が学校を休んだんで連絡取ったら病院にいるっていうから、慌てて駆け付けたんです。そしたら上条さんが大ケガして入院してるんですから!そこに妹さんが現れてもうパニックだったんですよ!それで問い詰めてようやく事件を知ったんです!!」

思い出して憤慨しながら話す。

初春「えーと、その節はすいません」

佐天が話している間、上条を睨んでいる白井を見て

上条「だからといって入院してた5日間、見舞いのたびに説教していくのはどうかと思うぞ、白井」

美琴「5日間入院してたの、当麻?」

白井「無茶ばっかりするからですの、上条さん!5日どころか普通の人なら、夏休みを棒に振るぐらいの怪我でしたの!お医者様の腕もありましたでしょうが脅威の回復力ですの」

美琴は上条をジーッと見つめる。

上条は美琴に怒られる気がして身を引きかけていた。

そして

美琴「当麻、本当にごめん……私がやらないといけないことだったのに、インデックスのことにしても迷惑ばっかりかけちゃって」

419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/04/03(火) 22:08:09.71 ID:vYilSeEAO



美琴の目には涙が滲み始めている。

美琴に悲しい思いをさせたくなかった、それで頑張ったんだ。上条は自分の所為で美琴に泣いて欲しくなかった。

上条「あー、なんだ俺は自分のために戦ったんだ。だから俺のことは気にすんなよ」

美琴「ったく、アンタは、何が自分のためよ、相変わらずバカなんだから!」

上条「バカはひどくねー?それより妹達〈シスターズ〉とインデックスのこれからを考えようぜ」

美琴「まあ、でも確かに考えなきゃいけないわね、インデックスのことは考えがあるけど」
(この子達を守るために推進派ってヤツらを叩き潰すつもりっていうのは今は言わない方が良いわね)

美琴「うーん、そういや絶対能力進化実験の資料ってあるの?実験の想定そのものを崩せないか、考えておきたいし」

上条「それだったら、初春さんに送ってもらったファイルが携帯に残ってるから、……携帯あるんなら転送するぞ?」

上条としては見せたくない、嗚咽をあげるような内容が含まれている。実験結果については省いて送ろうかと上条は思ったが。

美琴「うん、話しでは実験結果も含まれているんだっけ?そのままの内容で、転送してくれる?」

携帯を取り出して操作していた上条は動揺する。
上条は美琴の目を見つめる。

美琴「自分が犯した罪から目をそらしたくない、だからお願い」

420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/03(火) 22:27:12.12 ID:vYilSeEAO



ファイルの転送が終わると美琴は出来たら一人で見たいからと病院の屋上へと出て行った。部屋を出る前に視線を投げて皆に大丈夫だからと言って。

それから暫くの時が過ぎる。

美琴はファイルを読み終わった後、フェンスに背を預けて夜空を見上げていた。

そこへ

「御坂さん」

屋上への入口から声がかかる。

美琴「来てくれたのね、初春さん」

入口から姿を表した初春が美琴へと歩いて来る。

初春「みんな様子を見てくると言ったら一緒に来たがってましたけど、大勢じゃまだ不味いかもしれないし、補足の説明が必要でしたら私が一番でしょうからと言ってなんとか」

側まで来た初春に美琴は

美琴「ごめん、世話かけちゃって」

初春「出て行かれる前に目を合わされたので話があるんだろうなあ、と思いましたし、私から話さなきゃいけないことも有りましたから」

初春も美琴に合わせてフェンスに背を預けて美琴の横に並ぶ。

夜空を見上げたまま美琴は

美琴「初春さん、力を使ったの?」

初春「えーと、いきなり、それですか?」

美琴「おかしいとは思ったのよね、あの時謝りだすし、黒子に相談もなかったみたいだし、当麻を引き止めているのに一人で現場に現れているし、現れたタイミングが二人の意識がしっかりしてない間、話しを聞いていてもその間が空白じゃない。となれば、無茶したんでしょ、初春さんも?」

421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/03(火) 22:28:01.26 ID:vYilSeEAO



美琴「それと今見たファイル、最初の二つは当麻との連絡以前に引き出してあった資料でしょ?情報管理のセキュリティーレベルが違うもの」

初春「実験結果のデータは第一位の能力の詳細がわかるうえに実験の予定まで書かれているんですから、対立グループからの邪魔を防ぐのにより高度なセキュリティーがしかれてたんです」

初春「私が実験について知ったのは9982番目の実験、そこに居合わせてしまったんです」

初春「なんとかしようと資料を集めて、でもこんな実験、上層部が絡んでない訳が無いんですよね」

初春「無駄な時間を過ごして50人近い命を見殺しにしてしまったんです」

美琴「初春さん!」

初春「それであの人と決着をつけるしかないって、あそこに向かったんですけど、上条さんてば本当に何なんでしょうね」

美琴(あの人???)
「多分、当麻の特質って、そこにあるんじゃないのかなあ、救いが必要な人の元に現れる、そういう人が当麻の前に現れる、そして本当に救ってしまうんだから」

美琴「聞いてもいいかな…………あの人って第一位のことでしょ?もしかして知り合いだったの」

あの人という呼び方、親しいわけでもないけど全く知らないわけでもない、そんな印象があり美琴は初春に尋ねてしまう。

422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/03(火) 22:28:40.89 ID:vYilSeEAO



初春「私、学園都市に来て、すぐ能力が発現したんです。level1で保温ができるだけって、大した能力じゃないと思ってたのに珍しい能力だからってある研究所に預けられたんです。そこで出会ったのがあの人でした」

「そこで行われてたのは希少能力限界実験でした。私みたいな分かりにくい能力で限界値を引き出せば何が起こるのかを調べることが目的だったようです」

美琴「初春さんの能力は熱量を操作しているようで全く違ってるものね」

初めて初春の能力を見せてもらった時を思い出す。
手で触っているモノの保温が出来る、ということだったのでカップに入った飲み物を保温してもらった。
それを見て違和感を感じた。
カップの温度を操作して飲み物を保温しているのなら話しはわかる。
ところがカップと飲み物の二つして温度変化が起こらない。
試しに氷が入った冷たい飲み物でもやってもらった、氷も溶けないし温度変化も起こらない。
美琴は訳が分からなくて問い詰めてしまった。
そして『存在の力』で保存していると聞き出す。
魔術を知った今ならば理解も出来るが、当時は余計に訳が分からなくなり、保存が出来るなら消すことも出来るのか、と聞いてしまった。そのとき初春は青ざめた顔をしていた。
そこまで問い詰めてしまっていた。
初春からは誰にも言わないで欲しいと言われ、美琴も誰にも話さなかった。
そして初春はその力を第一位に向かって使おうとしたのだろう、と美琴は想像した。

423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/03(火) 22:30:00.03 ID:vYilSeEAO



初春「あの人も限界値を引き出すためにあの研究所に引き取られてました。それで一時期ですけど一緒に暮らしたことがあるんですよ」

初春「それだけなんです」

それだけじゃなさそうだと思ったが目を伏せて話す初春に美琴もそれ以上聞くのは止めた。

初春は伏せていた目を開け、夜空に眼差しを戻すと。

初春「一方通行が実験をあくまでも継続するなら、今度こそ私が止めます。それで実験は終わりです」


424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/04/03(火) 22:33:37.96 ID:vYilSeEAO
>>411
3.5で触れる予定

ここまで
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/04(水) 01:31:10.37 ID:ucOzSUSRo
乙続きも楽しみにしてる
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/04(水) 01:36:05.71 ID:pBdJiwPAO



美琴「ダメよ、そんなの!」

初春「それしかないんです!あの実験は絶対能力にいたる者が一方通行しかいないことから始まってます。実験を終わらせるには一方通行という存在を消すしか!」

美琴「ダメ!そんなことさせられない」

美琴「覚えてる、いつだったか当麻が言った夢を、『何ひとつ失う事なくみんなで笑って帰る』って、私は帰って来るまで1年もかかっちゃった!その私の所為で初春さんを失うなんて認めるわけないでしょ、こんな私だけど当麻の夢を守ってあげたいの」

真剣な顔で初春に訴える。

初春「……わかりました。でも、実験再開となって他に方法が無ければやりますよ?」

ここで美琴の表情がクルッと変わる。怖い笑顔に。

美琴「初春さんも強情なんだから、要するに実験を再開させなきゃいいんだからいくらでも方法はあるわよ」


427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/04(水) 01:37:51.30 ID:rBwuzy5n0
乙でした 
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/04(水) 01:38:49.97 ID:pBdJiwPAO



初春「えっ、でもそんなに打てる手はないんじゃ?」

美琴「話しとく気はなかったけど、とりあえず実験に関わった研究施設をぶっ壊して回るつもり、みんなには内緒よ」

初春「ぶっ、みっ御坂さーん、それ破壊活動じゃないですかぁぁぁ?」

物騒なことを言い始めた美琴に初春は慌てるが

美琴「警告よ警告♪推進派っていうのが怯えてくれたらいいし、それで再開を諦めてくれたら上々よ。今の私は学園都市に存在しない人間だから、当麻やみんなに出来ないこともやれちゃうもんね♪」

初春「なんか悪い顔になってますよ、御坂さん」

美琴「ふふん、インデックスとの旅で色々、経験しちゃったからね、それに人のDNAマップをくだらない実験に使うヤツらを放って置く気はないわ」

そう言うと表情を戻し

美琴「悲劇って学園都市だけじゃない世界中のあちこちに転がってる」

美琴は夜につつまれた学園都市を見渡す。

美琴「それをくい止めるために力を磨き振るってきた」

美琴「ここに悲劇があるなら私は力を使う、『何ひとつ失う事なくみんなで笑って帰る』ために」






第3章 『帰還』
終了
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/04/04(水) 01:41:07.57 ID:pBdJiwPAO
すいません
最後2レス分投下が抜かってました
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/04(水) 01:44:55.82 ID:rBwuzy5n0
二度楽しめたからいいよ 続きも待ってる
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/04(水) 18:51:28.26 ID:5jYBvwVDO
乙。
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/04/04(水) 23:43:41.23 ID:pBdJiwPAO
3.5章です

433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/04/04(水) 23:50:42.02 ID:pBdJiwPAO



夢を見ていた。

夢と言うより昔の事を思い出し回想している。

人に感情を向けるのを辞める前の最後の記憶だった。

ある研究所に引き取られる。それまでの彼は研究所をたらい回しにされていた。それは地獄巡りと言っても差し支えがなかった。またかっ、と思ったが最初は他の地獄よりマシな環境だった。

そこでは希少な能力の限界値を調べる、という事をやっていた。
希少能力と言っても瞬間移動のような花形ではなく、地味で目立たない、役に立つかどうかも分からない、それでも学園都市に一人しかいないような能力を取り扱っていた。

今思えば他よりマシと思えたのは一人しかいない能力だったもので、消耗品として扱えなかっただけだ。結局は他の地獄と変わりなかった。

そこであの少女と出会うことになる。


434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/04(水) 23:56:12.83 ID:pBdJiwPAO



その少女は学園都市に来て間もなく、いきなり研究所に預けられたことでオドオドしていた。

10代にもいかず能力が発現している者は意外と少ない。ようするにあの研究所で少女に歳の近い者は彼しかいなかった。

それでか不安の表情を浮かべている少女は研究以外の時間は彼の側にいたがった。

それを見た研究者から普段は面倒をみてやってくれと言われた。なんで俺が、と彼は思ったが慕ってくる自分より年少の少女を邪険にも出来ず、世話をするようになった。

彼は否定するだろうが、少女からお兄ちゃんと呼ばれるとしかめっ面をしていた彼の顔は綻んでいた。

実験は最初、通常のカリキュラムの短期養成型と言って良かった。投薬類は独自のものがあったかもしれないが他の地獄から見たら穏やかなもんだ、と思っていた。

それが次第に様相が変わってくる。恐怖心や不安感を与えてくる。強迫観念を植え付けようとする。研究者は極限状態を作ろうとしていた。
それは足の踏み場も無い断崖絶壁で空を飛べなければ死ねぞ、と言われて背中を押されているようなものだった。

435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/05(木) 00:00:12.73 ID:kiKEXkbAO



彼には既に『反射』という能力があった。
自分を守る盾があることで、そうした恐怖を覚えたりするような影響は少なかった。

しかし、被験者の中には精神をおかしくする者が出始めた。
暴れまわり制圧される者もいた。

いざとなれば少女を守らなければ、と子供心に彼は思っていた。

そして、ある日


436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/05(木) 00:03:05.16 ID:kiKEXkbAO



『いやぁーーーーッ、お兄ちゃぁぁぁんんん』


437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/05(木) 00:05:00.07 ID:kiKEXkbAO



少女の叫び声が響いた。
厚い壁に阻まれて聞こえないはずの声が彼に聞こえた。

そして研究所の建物が揺れる。


438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga !美鳥_res]:2012/04/05(木) 00:11:54.65 ID:kiKEXkbAO



実験の前に注射を打たれた。
深い頭痛がして、頭がぼやける。認識がずれている気がした。

それでも実験は始まる。
誰もいない部屋に入れられる。部屋の中には机が一つ、その上に箱が置かれている。スピーカーからの指示でその箱に触っているように言われる。

金属製の箱、別に変わったところもない。
何をさせたいのか分からなかった。
加群先生がいなくなった後、この研究所はおかしくなった。
非人道的なことが行われ始めた。おかしいことに気付き始めていたが子供では何も出来ない。
今は次の指示をぼやける頭を抱えて待つだけだった。

そしてスピーカーから指示が出される。

『消せ』

ぼやける頭はその言葉に反応して力が発動する。

箱が消えるだけでは済まなかった。
箱が載せられていた机、机が置かれていた床、それに連なる壁、その先まで。

周りの空間が消失していた。

近くにいた人まで消してしまったかもしれない。

それを行った少女は恐怖して叫び声をあげる。

そして世界が歪む。

存在を消失した空間を世界が修正するため、その証拠を消すために建物は崩壊を始める。


439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/05(木) 00:25:35.90 ID:kiKEXkbAO



少女の声を聞いた彼は極度の緊張状態になる。少女の元へ行こうと、その時いた部屋から出ようとした。

建物が揺れる中、彼を引き止めようと近くにいた研究者の一人が彼に触れる。それだけでその研究者は骨を折った。

それを見た、他の研究者や大人が彼を取り囲んだ。
邪魔をする大人達を彼は押しのけた。全員が床に踞り、呻きをあげる。

彼は少女の元へ急ごうとしたが少女がいると思われる方から建物が崩れ始めていた。

崩れる先から人が逃れてくる。何人かが彼にぶつかり弾かれる。先に進もうとも、なかなか進めない。
崩壊は彼をも飲み込んでいく。
そして建物が崩れ終わる。

彼は瓦礫の中、立っていた。彼の周りだけポカンと空間を開けて。

それを生き延びた人々、彼が人を傷つける様子を見た者が指を差す。

建物の崩壊に集まった警備員や風紀委員が彼を取り囲む。

状況はエスカレートしていく。

警備員や風紀委員は彼を捕らえようと様々な能力や兵器で攻撃する。倒れるのは警備員や風紀委員の方だった。
応援が呼ばれ、空には数機の無人攻撃ヘリが、地上にはパワードスーツと戦車が展開する。


440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/05(木) 00:30:45.40 ID:kiKEXkbAO



彼は虚ろな目でそれを眺めていた。
彼が助けたいと思った少女は崩壊の中心にいた。
瓦礫の下に埋もれている。
助けたいと思った行動の結果が今、彼が眺めている光景だった。

彼は理解した、これ以上何かをすれば、世界を滅ぼすまでいくと。

彼はその場であっさりと降参する。少女がいないのならばもう何も意味はなかった。

彼は喜劇の内幕を次の研究施設で知らされる。
彼の限界値を引き出すには、他の被験者と同じ方法を採用しても無理だと判断されていた。
その代わりとして偶々、彼と親しくなった少女を利用する。
より親しい関係を築かせたうえで少女をわざと危機的状況に陥らせて、彼の限界値を引き出す起爆剤とする。
そういう計画があったと。

アレがその計画だったのかは分からない。ただ、その計画が正しかったのはlevel5と記された書面が証明していた。

それからの彼は誰にも感情を向けなくなった。
向けた結果が瓦礫の中で見た光景である。
その先も容易に想像が出来た。

滅びを回避し、他人を守るために人としての感情を閉じ込め氷のような人間となる道を選んだ。

そして彼は一方通行となる。


441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/05(木) 00:36:18.78 ID:kiKEXkbAO



一方通行となった彼に関わろうとするのは倫理感のない研究者と最強の肩書きを欲しがる馬鹿な連中だけだった。
そんな日々は彼の心を磨耗していく。一般の人間が持つ普通の感覚さえ持ちえなくなる。

それでも彼の深層意識には少女と触れ合った記憶が残っている。

あの時、既に絶対の力があればアレは防げたのではないか?

敵対するのが馬鹿馬鹿しい程の絶対的な存在になれば、いつかまたあんな時を持てるのではないか?

深層意識にそんな思いは隠れたまま、絶対能力進化実験を迎える。

その中であの少女と再会する。

道を違えていたことを知る。

その5日後には少女は命を懸けて一方通行に立ち向かって来た。


「ちくしょうが」

言葉を吐き出して一方通行は目覚める。最悪の寝起きだった。

寝ている間、一方通行は音が聞こえないよう反射をしている。その音の反射を起きた時点で切っていた。すると

玄関のドアがドンドンと音を鳴らしている。

誰かが来るはずもないのにドアが叩かれていた。

一方通行は面倒臭く、再度音の反射をして寝ようかと考えたが

「おーい、開けてくれぇぇぇ、一方通行ァァァ!」

聞き覚えがある声がする。

決して友人とかではない、そういう存在は一方通行にありえない。

一方通行の主な活動時間、居場所、簡単にいうと夜の路地裏でよく遭遇する相手だ。

名前のない武装無能力集団(スキルアウト)の一人、チンピラな格好をした少年だった。


442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/04/05(木) 00:51:08.46 ID:kiKEXkbAO
ここまで

世界が歪むってのは元ネタを参考に

魔術を知った美琴はその辺を理解している設定にしてます

一方さんを消したりしたらどうなるか分かんない

というのが3章最後で初春を止めてる理由のひとつになってます
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/05(木) 01:04:17.51 ID:DtfjbauM0
乙  なるほど、そういう風に話をつなげたか 面白い
続きがどんどん楽しみになる
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/05(木) 01:21:33.77 ID:OpLvJlWno
乙!
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/06(金) 08:57:03.50 ID:E34vfbcDO
乙。
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/04/06(金) 22:30:09.49 ID:yYU5t0vAO



無視しても良かったが一方通行は呼びかけに応えることにした。

実験は中断でやることもない、まあ暇つぶしになればいいと思ってのことだった。

ただし、暇つぶしにもならない用件であれば、ぶっ殺すつもりでドアを開けた。

「なァンの用ですかァァァ!はーまづゥらくゥゥゥン!クソみてェな用事だったら、愉快なオブジェにして捨てちまうぞォォォ!」

意外と楽しそうな声が出ていることに一方通行自身は気づいていない。

その一方通行の目の前には茶髪にジャージの上着を纏った武装無能力集団(スキルアウト)の浜面仕上と毛布お化けがいた。

毛布お化けは被っていた毛布を少し下ろして可愛らしい顔を覗かせ、

「わーい、ようやく扉を開けてくれたよ、こんにちはってミサカはミサカはあいさつをしてみる」

「はァァァァァァァァァッ!?」

一方通行が殺して来た妹達〈シスターズ〉と同じ顔、ただし妹達〈シスターズ〉と年齢設定が違う10才前後のモノ。それと浜面との組み合わせに、一方通行は声をあげる。

447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/04/06(金) 22:37:19.28 ID:yYU5t0vAO



数時間前

浜面はぜぇぜぇ言いながら道端に座り込んでいた。

名をあげたい腕自慢の能力者かスキルアウトのどちらか分からないが3人に追いかけられた。それをようやく振り切ったところだった。

スキルアウト同士でも1対2でギリギリ、1対3はヤバい、それが能力者だとしたらどんな目に遭わされるわかったもんじゃない。挑戦者が現れたら受けて立つなんて考えは浜面にはない。逃げるが勝ちである。

「どうしてこうなった?たしかにlevel5の化け物と戦ったよ、でもあれ自滅じゃん!勝ったなんて言えるもんじゃねえって」

ところが浜面がlevel5に勝ったという噂が尾鰭がついて出回っている。それが今回浜面を取り巻く状況を作っている。

事の起こりは5月の初め頃に遡る。浜面が所属する武装無能力集団(スキルアウト)の仲間と能力者達の間で口論があった。

仲間の方が人数が多く能力者が引いたが、コケにされたと思った能力者は無能力者狩りを始めた。
それに武装無能力集団(スキルアウト)も対抗していく。

火が野原を焼くように抗争は拡大する。小競り合いがない日はなかった。

そのうちスキルアウトでもない無能力者が狙われ、被害者がでる。面白半分にいたぶる。単純に憂さを晴らす捌け口には抵抗するスキルアウトより普通に暮らす無能力者が選ばれた。

そのことに浜面が所属する武装無能力集団(スキルアウト)のリーダーは頭を悩ませていた。

448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/04/06(金) 22:52:13.78 ID:yYU5t0vAO



それが7月13日に無能力者狩りをしている能力者が連絡を取り合っているサイトを見つける。

それにはある小学校への襲撃が計画されていた。ただ、その学校に無能力者が多いというだけで。

たまたま知っている学校だった。リーダーに懐いているリーダーが舶来と呼んでいた女の子が通っていたからだ。

襲撃の決行は翌日。それでは対策を考える時間も少ない。連絡が取れる仲間を集めるだけ集め、能力者達の集合場所へ奇襲をかけるぐらいのことしか思い浮かばなかった。

能力者達は調子に乗りすぎていた。大々的にこんな計画を実行したら何を招くかを考えていない。
小学校の襲撃などが知られれば学園都市に子供を預けて置くことや新たに子供を送ることを親が躊躇う可能性が出てくることを。

浜面達も抗争が長引き視野狭窄に陥っていた。せいぜい大規模な衝突にして警備員や風紀委員が介入してくれれば少なくとも子供達が傷付くことはないぐらいに思っていた。

当日、相手の人数も分からないまま浜面達は悲壮な決意で向かう。

その能力者達の集合場所となっていた人気のない地区にある廃ビルは凄惨な狩場となっていた。

449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/04/06(金) 22:58:26.23 ID:yYU5t0vAO



浜面達がそのビルに突入した時、ぶっとい光線が走り壁を撃ち抜き、人を焼く光景を目のあたりにする。悲鳴と呻き声があがる。哄笑がなり響く。
圧倒的な力で能力者達は蹂躙されていた。

それを行っていたのはアイテムという名の学園都市の闇に棲む、暗部組織の4人の少女。level5の第4位原子崩し〈メルトダウナー〉麦野沈利をリーダーとするチーム。

浜面達は何が起こっているのか分からず立ち尽くす。リーダーだけが状況を理解していた。状況を収めるために上層部が粛清に出てきたのだと。

リーダーは鉾先がこちらに向かうことを予想し仲間に撤退を指示する。撤退の時間を作るためにリーダーはその場に残る。浜面も友人の半蔵とともにリーダーだけにして置けず残った。

果たして鉾先は浜面達に向かう。麦野沈利の圧倒的な力に対してリーダーは抗う。無能力者であってもこれだけのことが出来ると見せつける。浜面は他のアイテムの3人と抗戦するが逃げ回って時間を稼ぐしかない。

麦野沈利は無能力者に手子摺らせられることに苛立つ。

その状況の中、間が悪いことに、下校中の小学生が通りかかる。その中に舶来がいた。


それに気を取られたリーダーを光線が焼く。背中を焼かれ血に染まる。

トドメを刺そうと麦野沈利は近づいていくとリーダーへ舶来が縋り付く。

構わず麦野は一緒に始末しようとした。
そうしたらどういう訳か麦野の仲間である金髪の少女が必死に止めている。

後で知ったが舶来=フレメア、金髪の少女=フレンダは姉妹だった。

浜面達はその隙にリーダーを抱えて逃げ出そうとした。

450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/04/06(金) 23:10:19.32 ID:yYU5t0vAO



しかし、ゴツい体格をしたリーダーを抱えて逃げ切れるもんじゃない。

それで浜面は自分が囮になり、リーダーを半蔵に任せて逃した。

囮になる為に散々、麦野を挑発した。
老け顔だとか、おばさんとか、ケバいとか大根脚だとか麦野に向かって言った。挑発は成功して麦野は浜面の方を恐ろしい形相で追いかけてくる。

しかしあれはないだろう、と浜面は思う。
後ろから抑揚のない声で

『ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね』

聞いた瞬間、全身の毛が逆立った。

今でも思い出すとゾクッとして後ろを振り返ってしまう。

浜面は逃げに逃げ、麦野を工場の中に誘い込んだ。浜面が持っていた武器はお手製爆弾とフレンダがヘマをして落としていったテープ状の切断用爆薬。それを工場内で使って麦野を引っ掻き回した後、逃げ切るつもりだった。

その後のことを簡単に記すと携帯電話に偽装したお手製爆弾を階段にいる麦野に投げつけた。苦し紛れに携帯電話を投げつけてきたと思った麦野は顔を背けるだけ。顔の近くで破裂して麦野は目を負傷する。ただでさえ怒り狂っていた麦野は原子崩しを放とうするが暴走して左腕が吹っ飛ぶ。その時には階段に引いておいた切断用の爆薬に浜面は着火していた。階段と一緒に麦野は落下して気絶。


451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/04/06(金) 23:40:50.02 ID:yYU5t0vAO



仲間に楯突かれ、無能力者にコケにされて冷静さを失った結果だった。

おまけにこれも後で聞いた話しだがフレンダごとリーダーを撃とうとしてもう一人の仲間、滝壺に能力で邪魔をされたらしい。その所為でAIM拡散力場が乱されていて暴走の条件が整っていた。

そんな状態で暴れまわった麦野の失策で浜面が勝ったと言えないと思っている。

浜面はなんか哀れに思い麦野を病院まで運んでやった。
麦野は今もその病院に入院している。
実はリーダーも同じ病院に入っている。
腹立たしいことにフレメアとの繋がりでフレンダともリーダーは仲良くなっている。
リーダーの見舞いに行くとフレンダに引っ張られて麦野の病室まで連れて行かれた。
そしたら、また恐ろしい形相で睨まれた。
命を狙われたのに病院まで背負って運んだ浜面としては怨みに思わないで欲しいと思うが怖くてそんなこと言えない。

助かったのは本来の依頼は小学校への襲撃を防ぐこと。スキルアウトへの粛清はあきらかにやり過ぎだった。
パーサーカー化した麦野が勝手に進めてしまったのだという。
そして、これ以上は私情ということで手出しは禁止されたとのことだった。

452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/04/06(金) 23:46:47.41 ID:yYU5t0vAO



事の顛末としたらそういうことなのに「楽勝だ、level5」と言ったとか伝説化されて噂が流されている。

おかげでさっきみたいに追い掛け廻される日々が浜面に続いていた。

「一方通行もこんな境遇かぁ?、俺とは違うよな、アイツは『最強』なんだから」

時折、夜の路地裏で会う『最強』を思い浮かべていた。
『最強』を狙うヤツは多い。手出しして来た連中に『最強』は容赦しないが手を出して来ない者まで暴力を振るうことはない。
基本的に他人に対して無関心なヤツと浜面は見ている。
さわらぬ神に祟りなしということでリーダーも仲間に言い聞かしていた。

とはいえ会う機会が多ければ言葉ぐらい交わす。

「一方通行か」

今度会ったらこういう境遇をどう思っているか、尋ねてみようと浜面は思った。

そして、そろそろ移動しようと立ち上がると

「一方通行を知っているのってミサカはミサカは聞いてみる」

幼い少女の声がする。浜面が声のした方を見ると毛布お化けがいた。

「知っているならあの人のところへ連れて行って欲しいなってミサカはミサカはお願いしてみる」


453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/04/06(金) 23:59:40.98 ID:yYU5t0vAO



「『最終信号』の確保に失敗したの?」

「仕方ねえだろ、やり過ぎるとバレちまう」

「そうね……反乱をまだ悟られるわけにはいかないか、あなたの能力は目立つものね」

「……自覚はある」

「でも『最終信号』って必要なの?」

「アレはプランに深く関わっているはずだ」

「どうしてそれが分かるの?」

「絶対能力進化実験、アレ自体おかしいだろ、第一位の当て馬に第三位?どうせだったら第二位を使えば良いじゃねえか」

「その方が良かったの?」

「良いわけねえ。だがな、そのまた劣化版の妹達〈シスターズ〉を使うっていうのはどう考えたっておかしいんだ。劣化版じゃlevel2がいいところだぜ。『超電磁砲』とは全然別物だ、戦闘で経験値をあげるってのなら『超電磁砲』を再現したロボットでも用意した方がもっと経験値稼げるんじゃねえ?」

「1体あたりの単価ならクローン。でも2万体も用意してその設備も、それに時間の短縮を考えたら、あなたの言うとおりだわ。でも、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の演算結果よ?」

「アレイスターならどうにでもなるんじゃねえ。ミサカネットワークとその司令塔『最終信号』には何かが隠されている。あの実験の本当の目的はそっちだろな、プランに関わる何かが。メインになる為にはそれを知っとく必要がある」

「これからどうするの?」

「『最終信号』を見つけだす、ついでに施設の襲撃も続ける」

「どうして?」

「『最終信号』のデータも必要だし、やっぱり、メインになるには第一位を殺しとかねえとな。施設の中には能力の分析結果も有る。第一位対策にそれを頂く。反対派が画策している今なら誤魔化せるってわけだ」

「慎重ね、でも『アイテム』ぐらい出て来るんじゃない?」

「心配ねえ、第四位の麦野沈利、無能力者に沈められて入院中らしいぜ」

「あら」

「全部掴めたら、アレイスターとの交渉権だ」







第3.5章

終了
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/04/07(土) 00:05:17.95 ID:az5VmzBAO
ここまで

455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/07(土) 00:10:23.96 ID:XYtwZruKo
思った以上に事情が複雑に絡み合ってやがった・・・
続きが気になって仕方ない
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 00:35:00.30 ID:DqgltWBB0
どうなってんだこれ。まるで展開が読めないじゃないか! wktk 
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 01:08:58.26 ID:6f5CIB1Oo
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 05:08:46.00 ID:OkRICWANo
乙。禁書が消滅で上琴エンドか上手いことやるね
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 21:43:25.62 ID:j9yIk0Oso
おっつーん
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/04/09(月) 12:27:36.38 ID:Xpoa2ErAO
さて、4章です
と言っても3.5から繋がっているような?話しです
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/04/09(月) 12:37:12.61 ID:Xpoa2ErAO



『アイテム』の主要構成員である絹旗最愛はリーダーの麦野に頼まれて人捜しをしていた。

男子高校生一人、女子中学生3人うち一人は白いシスターの格好をしている、という4人組みを捜せ、ついでに危ない目にあっていたら助けるように、要約するとそういう内容である。

絹旗「白いシスター?勇者様御一行ですか、ハーレムパーティーですか!?それだけで捜せというのは無理があります。麦野も何を考えてるんですか!」

と言いながらも絹旗はきっちり仕事をしていた。
広い学園都市で情報もなく人捜しするにはたしかに無理があるがヒントはあった。

危険な目に遭っている可能性、何らかの事件に巻き込まれている可能性、麦野の言葉にはそれが感じられた。

暗部組織のリーダーが言うことである。
路上での喧嘩騒ぎ程度ではないだろうと事故、事件の情報を漁り、それらしい人物を捜した。

表立った情報の中には見あたらなかったが不自然に人の流れが途切れている区域を発見する。闇に棲む人間特有の感覚が囁き絹旗はそこへ向かっているところだった。

絹旗「今日はなんで、こう変な頼まれ事をするのでしょう?麦野といい、浜面といい」


462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/09(月) 12:51:47.19 ID:Xpoa2ErAO



昼には浜面から電話があった。

『すまん、10歳ぐらいの女の子が着る服と下着を買って』

絹旗は浜面が言い終わる前に携帯をバタンと畳みしまおうとする。

再度、携帯が鳴り

『おい、電話を切る』

『キモイんです、超キモイです、超ロリコンですか、浜面は!!』

『違っ!俺も逆らえねぇんだ!頼むよぉ、用意できねぇと俺が前衛芸術の作品にされちまうんだよぉ!』

『何ですか!それは!?』

泣いて頼む浜面に仕方なく買ってきてやり、待ち合わせをして渡した。

その時に理由を聞いても

『あぁ、多分だけど、かなりヤバい話しじゃねえかな。だから話せねえ』

と言って慌てて去って行った。
女児用の下着が入った紙袋を持って、真剣な顔で話す浜面に絹旗は吹き出して、その隙にである。

考えてみると10日程前に一戦を交えたばかりの相手である。
こんなことを頼む相手ではないと思う。
誤解と行き過ぎが重なった戦闘とはいえ一戦後、どうもおかしな関係ができつつある。

まず、フレンダが浜面がいるスキルアウトのリーダーと妙な空気を醸し出している。
フレメアとの関係で接点があるとはいえあんなゴツいののどこがいいのだろうかと絹旗は思う。



463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/09(月) 13:03:46.24 ID:Xpoa2ErAO



そして麦野。

浜面が顔を出すと怒り狂ってギャーギャー言っているがどこか丸くなった。

以前ならケガをものともせず人並み外れた腕力で殴り倒すか蹴り飛ばしてたと思う。

さすがにあの敗戦で反省したのかもしれない。
でも、

「まさかと思いますが、自分に勝った男を好きになってしまったとか、それではB級どころかC級映画じゃないですか」

もう一人の滝壺については何となく浜面のことを気に入っている風情が見えるがポーッとしていて良くわからない。

絹旗自身は偽造IDを作って貰ったり、昼のようなことで頼み事をされたりで、ギブアンドテイクな関係がいつの間にかできている。本人はドライな関係だと思っている。

そう言えば浜面を取り巻く状況もおかしいと絹旗は思う。

無能力者がlevel5に勝つなど一大事である。そのようなことは学園都市の根幹を揺るがすことで噂を放って置くことなどありえない。

ところが噂の蔓延を野放しにしたままになっている。

「裏に何らかの意図があるんですかね?」

昼に会った浜面の様子も気になり、調べてみますか、と絹旗が呟くと目的の区域に既に入っていた。

そこにはシスターの格好をした少女ではなく黒い背の高い神父がいた。

残骸と化した警備ロボットが散らばった中で。

464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/09(月) 13:11:34.81 ID:Xpoa2ErAO



その神父は2m程の身長、赤髪、わりと顔は幼い印象を受ける。そして暗部の人間が持つ特有の空気と同じモノを纏っている。

「術を解くのが早すぎたか、ヤレヤレ」

神父は絹旗を見て、良く分からない事を呟いている。

絹旗「これは、貴方の仕業ですか!」

周囲の惨状を絹旗は問い詰める。

「うん、燃やしたのは僕だけど?」

絹旗「では、この金ですか?まさか物質変換?これを行ったのは」

警備ロボットが何台も破壊された惨状、その多くは燃やされ、高熱に晒されて爆発した跡が見られる。高位の発火能力者であれば可能なことである。

しかし、破壊された警備ロボットはそれだけでない。
金色に変色し、溶けている警備ロボットが数台ある。そのそばには飛び散ったのか地面に金色の跡を残している。

学園都市に加工品を原材料に分解できる能力者がいることは知っている。しかし物質を全く別な物に変換できる能力など絹旗は聞いたこともなかった。

「それは、alchemistの仕業さ」

絹旗「alchemist?能力名か何かですか」

「うん?こちらの言葉では錬金術師と言ったのかな、まあ、君には関係のない話しだね、ここで見た事は忘れた方がいい」


465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/09(月) 13:19:42.17 ID:Xpoa2ErAO



絹旗「そういう訳にはいかないんです」

麦野に頼まれた事がある。

4人の安否を確かめるまで絹旗は引く気はなかった。

危険な相手だと絹旗の勘が告げている。
ここへ来る前から能力は発動させていた。

空気中の窒素を集め凝縮して体表面に展開している。level4の『窒素装甲』。絹旗が絶大な信頼を寄せている盾にして武器となる能力だ。

それでも危ういかもと背中に隠してある護身用の拳銃へと手を伸ばしグリップを握る。

そこへ

「ステイル!申し訳ありませんでした!!」

声が聞こえ、一人の女性が神父のもとへ駆け寄る。

ステイルと呼ばれた神父はその女性に

ステイル「神裂!!どういうことだ!!これは!!気が付いたら誰もいないじゃないか!!インデックスはどうなった!!!!」

絹旗をあしらっていた神父が急に喚き出していた。

神裂「落ち着いて下さい、そうしたらすぐにでも会えます」

ステイル「本当か!?」

神裂「はい、ところであの少女は?と、これは一体?」

神裂は絹旗と同じく惨状に目をやる。


466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/09(月) 13:23:46.94 ID:Xpoa2ErAO



ステイル「紛れ込んだ、ただの通行人かな?
これは………前任者が現れた」

神裂「前任者?」

ステイル「僕らの前だよ」

神裂「まさか、あの者がここに?」

ステイル「ただし偽物、ダミーだけどね」

神裂「それで、どうしたのです?」

ステイル「瞬間錬金。傷つけた物を金に変えるという霊装で攻撃されて見ての通りさ」

金色に溶けた警備ロボットに目をやる。

ステイル「だけど、ダミーごときに負ける僕じゃない、燃やし尽くしてやったよ。
問題はどうしてここにいる?学園都市に」

神裂「この3年、行方はようとして知れず、3年間学園都市に潜伏していたのでしょうか?」

ステイル「隠れるには最適だったのかな?僕ら(魔術師)が手を出しにくい場所であるのは間違いないからね。
それとも諦めきれず、科学を頼ったか?バカらしい!
まさか、あの能力者達はその手先だったのか!?」

神裂「それは有りません。私も彼女が現れてわかったのですがあの少年たちは彼女の友人でした」

ステイル「えっ?」

神裂「…………実はあの子の解決法が見つかりました」

ステイル「どういうことだ、神裂!!」

ステイルの顔は驚愕に歪んでいる。

467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/09(月) 13:29:20.30 ID:Xpoa2ErAO



神裂は美琴から受けた説明を掻い摘んで話す。

ステイル「……信用していいのか?」

神裂「この1年間の彼女を見てきて信用できませんか?」

ステイル「……………」

神裂「あの者も、もしかしたら学んだのかもしれません。ここで。同じ結論に至っている可能性があります」

ステイル「僕たちが回収に来たと思い邪魔を?インデックスがここにいることを知っているというのかい?」

神裂「姿を隠していればやり過ごすこともできたのですから。
ですが首輪のことまで理解しているか、防御機能のことも」

ステイル「インデックスを奪われたりすれば、ヘタをしたら魔神を相手にすることになるか、さすがにそれは勘弁してもらいたいね」


神裂「……あの子のことは彼女らに任せましょう。私達はあの者の対処をすべきです。
それともうひとつ懸念があります。
もし、あの者が目立つ行動をすれば」

ステイル「ローマが感付いて動くか」

神裂「ここが戦火に見舞われることになりかねません」

二人に沈黙がおちる。ここでようやく

絹旗「すみませんが、どういうことです。学園都市が戦火に見舞われるとは?」
絹旗が口を挟む。


468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/09(月) 13:33:36.64 ID:Xpoa2ErAO



絹旗がいないかのように話しを続ける二人に絹旗は焦れていた。

本来なら無理にでも話しを聞かせて貰うところであるが絹旗は踏みとどまっていた。

神父一人でも強敵と見ていたのに新たに現れた女性を見て、この女性には適わないと本能が告げていた。

それで攻撃性が前に出そうになるのを耐えていたのである。

そして口を挟む機会を待っていたら学園都市が戦火に見舞われるなどという話しになる。

絹旗としては問わざるを得ない。

ステイル「まだ居たのかい?もう、お子様は寝る時間じゃないかな?」

絹旗「おっお子様って何を言ってるんですかァァァ、そンな時間じゃねェだろがァァァ!」

神裂「ただの学生ではないようですが、関わるべき話しではありません」

絹旗は攻撃性が前に出て二人に向かっていこうとする。

ステイル「どのみち、ここは早く離れた方がいいと思うけどね」

神父がそう言って手を振ると絹旗の目の前に炎が立つ。


469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/09(月) 13:43:04.00 ID:Xpoa2ErAO



絹旗は炎を後ろに避ける。拳銃のグリップに手をかけて抜く。

一連の動作は素早く行われていたが、その僅かな時間に二人の姿は消えていた。

絹旗はなおも姿が見えない二人を追いかけようとするが携帯電話が鳴る。

着信音のメロディーは麦野を告げていた。

こんな時にと思いながら電話にでると

『絹旗?面白い話しがあって連絡とるの遅れたのよ。捜して貰ってた連中、戻ってきたからもういいよ』

そう言って電話を切られる。

絹旗は携帯電話を構えた左手を震わせ、心なしか顔を伏せている。

そして、顔を上げると

「一体、何だったんですかーーーーー!!!!!」

と空に向かって吠えた。

叫び終わり、ふと周りを見ると今まで点いてなかった建物に明かりが灯っている。

声が聞こえたのか外を覗こうとする人影が見える。

絹旗の周りは破壊された警備ロボットが散らばっている。
神父が放った炎は小さくなったとはいえ、まだ燃えている。
絹旗の右手には拳銃。

絹旗の額に一筋の汗が流れる。

絹旗は拳銃をしまうと脱兎のごとく走り出した。

一刻も早くこの場を立ち去るしかなかった。


470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/04/09(月) 13:44:46.84 ID:Xpoa2ErAO
ここまで
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/09(月) 17:33:42.30 ID:Xpoa2ErAO



『ちょっ、ダメー、インデックス』

『そんな齧っちゃ、あーッ』

『もー、あっ、また舐めたりして』

『ちょっと、酸っぱいんだよ、みこと』

『……濡らしちゃったじゃない』


472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/09(月) 19:46:15.19 ID:27ecQrBk0
寝落ち?
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/09(月) 20:40:11.42 ID:Xpoa2ErAO



扉一つ隔てて上条は立っていた。

病室から聞こえる声に上条は扉を開けようとした格好のまま硬直している。

上条(まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか、そんなまさかッ!)

上条「そっ、そんなことあるわけねえって。うん、きっとインデックスが果物でも丸かじりして果汁で濡れたとか、そんなオチだよな」

そこまで読めているならよせばいいのに上条は気を取り直して扉を開ける。

上条「インデックス、具合はどうだ?」

そこで、上条は再び硬直することになる。


474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/04/09(月) 21:00:37.68 ID:Xpoa2ErAO



上条の予想は当たっていた。

ベッドの側の棚に齧られた跡が残る柑橘系の果物が乗っている。

インデックスと美琴は上条が扉を開けたのを見て、ビックリした顔で固まっている。

インデックスはハッとすると急いで布団をかきあげて隠そうとする。
そして顔が真っ赤に変わる。

上条はギギギと音がしそうな感じで視線を美琴に移す。

美琴は脱がしたパジャマを持っていた。膝の上には着替えと思われるパジャマが置かれている。

美琴は怒る一歩寸前で目が怖い。

上条「えぇぇぇぇぇと、これは濡れたパジャマの着替えをしてたと、そういうことでせうか!?」

美琴「と・う・ま」
イン「むゥゥゥゥゥ」

美琴「な・に・やって・ん・の」

上条「ごっ、誤解だ、わざとじゃないんだ、わざとじゃ!」

美琴「早く出て行きなさいよぉーーー!」

パジャマを投げつけられて上条はほうほうの体で病室から転がり出た。


平和な日常に見える7月26日の朝の出来事である。


475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/04/09(月) 21:05:47.70 ID:Xpoa2ErAO
即興で小ネタを入れようとしたら、続きを試行錯誤しちゃいまして遅れました。
すいません
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 23:50:24.20 ID:7nauLISoo
おつにゃんだよ!
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 00:08:10.07 ID:Yq1DhB6L0
小ネタ乙 こういう幕間好きです
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/14(土) 00:48:45.55 ID:6izBzYEVo
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 23:57:32.11 ID:lrDunB1Lo
そろそろかな
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/28(土) 11:39:04.63 ID:j8CreUW0o
むむむ
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/13(日) 15:51:10.71 ID:YlnIiKht0
まだかなー
482 :tesu [sage]:2012/05/27(日) 22:02:24.29 ID:1jeNqsWU0
aaaa
bbbb
bbbb


aaaa
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [sage]:2012/05/27(日) 22:03:14.58 ID:1jeNqsWU0
tesutesu
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [sagesaga]:2012/05/27(日) 22:03:50.65 ID:1jeNqsWU0
tesuto
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagesaga]:2012/05/27(日) 22:05:38.72 ID:1jeNqsWU0
ラスト
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/28(月) 01:00:45.78 ID:N1EAE6hu0
誤爆?  >>1が戻ったかと思ったのに
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/05/29(火) 23:39:37.10 ID:XcMag/0AO
I'll Be Back!
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/30(水) 00:22:39.30 ID:x9qKl3Xx0
おお、おかえりー
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/30(水) 00:24:53.98 ID:Zb/jyaK0o
待ってたんだよ!
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/05/30(水) 20:57:15.00 ID:46SnrXbAO



研究施設の一室

その男はデータが映し出されていくモニターを何かに取り憑かれたような目で見ていた。

頬はげっそりとこけ、ブツブツと同じ事をその男は呟いている。

親しい友人であっても声をかけにくい雰囲気が漂っている。それ以前にそのような親しい友人がいれば病院に連れて行かれ、研究室の机の前に座ってはいないだろう。

同僚の研究者たちからは無視されている。
実のところ皆、実験の先行きに不安を抱え人のことを気にかける余裕などない。
立ち回りがうまく、見切りの早い者は第一位が無能力者に敗れるというアクシデントがあって数日後には転職を決めている。

今、乗っている船が泥船なら早く降りたいのが本音で精神を患いかけている男を構ってやるほどの人の良さはこの実験に関わった研究者には最初から無い。

その精神を患っていそうな男の名を天井亜雄という。

それなりに優秀な研究者として評価されていた。
元々は量産型能力者計画を主導していた研究者である。量産型能力者計画が頓挫した後に今の絶対能力進化実験に身を移していた。

天井にしてみれば、あの日まで絶対能力進化実験は順調に進展しており、量産型能力者計画で負った負債を返し、それ以上の利益と名誉を手に入れるところまできていたのだ。

それがあの日を境に坂道を転げ落ちるように状況が悪化していった。

491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/05/30(水) 21:28:56.23 ID:46SnrXbAO



学園都市第一位の超能力者が無能力者に敗れるというアクシデント。

実験への疑惑が提議され樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)に再演算が依頼された。

その結果は重大なエラーが生じ現状での実験計画が新たな要素を加え軌道修正されなければ絶対能力者への進化は不可能とでる。

では実験を軌道修正する要素とはなにか?

再演算を依頼しても実験計画を修正するうえでのデータが不足しているとの回答しか返ってこない。

実験に関わる計画者はあらゆるデータを調べ直す事になった。

そして実験反対派が介入を始まり妹達〈シスターズ〉の世界各地への分散配置へと続く。

徐々に実験チームから去る研究者が出てくる。実験に参加している企業、研究機関も実験の失敗を視野に入れ、損失を減らすため距離を置く気配がある。
実験に進展が見られなければ正式な撤退へと繋がるだろう。

天井をはじめとした実験に執着した研究者達は軌道修正するためのデータを洗い直していたが、答えは得られないでいた。

そして、24日に実験の研究施設が襲われる事件がおこる。

その時、襲撃された施設は一ヶ所だけであったが、よりによって妹達〈シスターズ〉の制御装置を収容していた施設だった。

妹達〈シスターズ〉を手元から離しても、この制御装置『最終信号』さえ確保しておければ妹達〈シスターズ〉を支配、統制できる筈だった。

492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/05/30(水) 21:44:10.01 ID:46SnrXbAO



その目論見がこの襲撃により失われる。

襲撃の最中、研究者の一人が『最終信号』を襲撃者に奪取されないために逃したのだが、その後『最終信号』は行方不明となっている。

『最終信号』を逃した研究者、芳川桔梗が『最終信号』に何らかの指示をした可能性はあるものの、襲撃により芳川も重傷を負い、面会謝絶が続いて確かめるすべがない。

恐らくであるが、研究者達の間では妹達〈シスターズ〉にインプットされている逃走プログラムに沿い逃走を続けているとみられていた。


そのため逃走プログラムを解析して捜索すれば発見できるのではという見方もあった。
しかし『上』へ要請しても実験の見通しが立たない状況では便宜を図ってもらえず、さりとて表立って治安機関に捜索を依頼できる話しでもない。

そして翌日以降も襲撃が続き、捜索どころではなかった。
24日には1施設だけだったが25日には3施設、昨日の26日には6ヶ所もの施設が襲撃を受けている。昨日までで合計10ヶ所、その内7ヶ所で人的被害もでている。

襲撃に対する備えや破壊された施設の後始末に人手を取られたうえ、襲撃を恐れて欠勤する者、実験に見切りをつけて去っていく者が相次ぎ捜索にまわす人手自体が無いのが現状である。

493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/05/30(水) 21:55:11.60 ID:46SnrXbAO



これが2週間足らずにあった天井を取り巻く状況である。

栄光への階段が見えていたのに、それがボロボロと崩れ落ちる様を天井は慌てふためきながら見ているしかなかった。

そして今、気狂いした目でデータの洗い直しを続けている。

「しゅ修正するための条件さえ見つければ、全て元通りに、実験さえ完遂すれば……」

ブツブツと同じ言葉を繰り返し呟いていることにも気づかずに天井は作業に没頭していた。

時刻は夜へと差し掛かり、連日の襲撃が行われた時間帯となっている。天井の周りには人気も無くなっていた。

襲撃を恐れ、遅くまで居残ろうとする者は当然少ない。

研究室の中は天井が一人居残るばかりだった。

そこへ

「ドクター天井」

天井を呼ぶ声がした。

誰からも声を掛けられることが無かった天井がビクッとして呼びかけに振り返ると欧米系の人物、実験チームの中枢にいる研究者が天井を見ていた。

研究者は天井に語りかける。実験の修正データが判明したと、悪魔が誘う声で破滅の入口に立っている天井に説明を始めた。

494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/05/30(水) 22:22:17.23 ID:46SnrXbAO



その研究者は天井に説明を終え、自室へと戻っていた。

「ドクター天井も研究者としては優秀なんですがネェ」

「まあこの実験もこれで終わりでス」

「責任はドクター天井に取って貰いましょうカ」

スケープゴートに天井を選んだ研究者はデスクに置かれてある報告に目を落とす。

どうやら今日も襲撃が行われているようだった。既に4ヶ所が破壊され、5ヶ所目からも退避するとの連絡が入ってきている。

襲撃当初、実験反対派からの実力行使と思われた。

実験反対派と言っても様々なグループがある。統括理事会の穏健派、利権に加われない企業や研究者等々。その中で襲撃を行いそうのは同じ『絶対能力進化』開発の対立グループだった。

最初からの襲撃者は証拠を残さず、死傷者がでても怯みがない。プロの手口とみて良かった。それ故に対立グループが雇った者と判断されていた。逆の立場なら自分たちでもこの機会に潰しにかかるという考えが根底にある。

しかし、昨日の3件と今日の2件、現在進行中の1件は違う。

人的被害を出ることを避けようとしている。姿を見せないものの電気系統を潰し、わざと力を見せつけて破壊を行っている。

それは警告といえる。私をこれ以上怒らせるなと言っているようであった。

「彼女が戻って来ているのは間違いないようですネ」

「しかし、両者が連携していないのであれバ」

5ヶ所目の位置を思い浮かべる。そしてもう一方の2ヶ所目からの距離も。

これから何が起こるか想像してみるのも面白そうであった。

495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/05/30(水) 22:24:01.15 ID:46SnrXbAO
ここまで
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/30(水) 22:57:12.79 ID:bqbEgN1b0

確かに  この先に待ち受けてる事件が>>1の手でどんな風に料理されるか、それ想像すると楽しいわ
続きも待ってる!
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/31(木) 19:04:16.89 ID:sRQ8gntNo
おつにゃんだよ!
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/02(土) 13:51:13.42 ID:h6XkxxtAO



研究施設に侵入した美琴は施設のコントロールルームにいた。そこで美琴は実験に関するデータを調べている。

施設へ侵入する前に監視カメラ等警備システムは潰すと研究者や職員は無駄な抵抗をせず急いで退避を始めていた。

今のところ施設内に美琴以外の人間は残っていない。

美琴はチカラを使って施設内の動きを隈無く監視していた。

そうしたチカラの使い方が出来るというのも一年間の旅の成果と言っていい。

一年前でもAIM拡散力場、彼女の場合であれば常に電磁波が出ている、危険な兆候があればその反射波で察知することができた。

ただし、それは障害物に遮られなかった場合のみ。
今のように建物内に入っていれば壁等の障害物に電磁波が反射され、その先までを見通すことはできない。

それではインデックスを守るには、魔術師と相対するには万全とは言えなかった。

そしてもう一つ、魔術師と闘うには真っ正面からの力勝負だけでは済まない。空間を自分の意のままに出来る領域として支配下に置くことが重要だった。

空間を支配下に置くことでステイルのように強大な魔術をも使用可能となる。


499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/02(土) 13:57:36.94 ID:h6XkxxtAO


元々、美琴は学園都市最高峰の電撃使い。その真骨頂は電磁波、磁場等といった電気に関するチカラを自由自在に使えることにある。


美琴は只でさえ応用力の高いチカラに精密性を持たせ感覚を研ぎ澄ます努力をした。

その努力は魔力反応の検知が可能になるまで昇華している。

自らの手を伸ばすように電磁波を発し世界を観測していく。
世界はフィルターにかけられ必要な情報だけが美琴に伝えられる。フィルターの調整によって観測できる範囲は変わってくる。その範囲を便宜上、観測領域と美琴は呼んでいた。

その観測領域の内、戦闘時には美琴を中心に半径30mほどの範囲について情報量を数段階上げている。
美琴は得られた情報を元に美琴のチカラが及ぶ電子を帯びたモノ全てを掌握する。そうして美琴はその空間を支配下に置く。美琴が絶対の存在となる絶対領域である。

美琴は観測領域を目による視界とは別にレイヤーで作られた電脳世界のようなイメージで見ている。

絶対領域は情報量がプラスされた世界の設計図として映し出される。

能力者のチカラは自分だけが認識している世界『自分だけの現実〈パーソナルリアリティ〉』を現実の世界に具現化されることによって行われる。

500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/02(土) 14:18:34.34 ID:h6XkxxtAO


現実の世界と『自分だけの現実〈パーソナルリアリティ〉』には当然のごとく壁がある。

それを乗り越えられるだけの『自分だけの現実〈パーソナルリアリティ〉』を身に付けなければ能力の発動はない。


それが美琴の場合、特に絶対領域でチカラを使おうとすると、映し出される世界の設計図と『自分だけの現実〈パーソナルリアリティ〉』が重なり合う。同時に世界と自分が同一化する感覚となる。
自分の身体のように、手足を動かすように世界を動かすことができる。

半径30mほどの範囲。その中でさえ全ての情報を組み込んでいる訳ではない。

範囲を広げることもできるし、情報量を増やすことも出来る。だが、観測領域で一度フィルターにかけず情報を全てフィードバックした結果、膨大な情報の渦に飲み込まれてしまい肉体の喪失感が襲ってきた。

本当に肉体が消える訳ではない。意識が肉体から離れ世界へ押し流された感覚。

それと共に世界の中心、全知全能の存在となった気分がした。神の力が振るえる確信があった。そのことに喜びがあったことも否めない。

しかしそれも一瞬のこと。意識が希薄化して主体性を失いそうになり必死になって意識を自分の身体に戻した。

手に余るチカラ

美琴はまだまだ自分では扱いきれないと判断して今のラインを保っている。

ただ、いずれ踏み込まなければいけない時がくる。意外とすぐに、美琴はそんな予感がしていた。

501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/02(土) 14:31:18.74 ID:h6XkxxtAO


昨日26日に美琴は初の研究施設の襲撃をおこなった。

今朝になり襲撃計画を知っている初春が新たな情報を美琴にもたらした。

昨日、美琴が破壊した施設は3ヶ所。その影響を初春が調査してみれば他にも3ヶ所が攻撃を受けていた。

何事かと思い初春が情報を探ってみれば24日から研究施設は襲撃され続けていた。

そう美琴とは別にインベーダーが存在する。

そして『最終信号』というキーワード。
24日に襲撃を受けた研究施設に保管されていた何か?

襲撃の目的が『最終信号』ではないかという報告。

初春によればトップシークレットに指定されていたものの襲撃の混乱で表に上がってしまったのではないかということだった。

名前しかわからない『最終信号』に関わるデータを美琴は探していたがこの研究施設でも見つけられなかった。今日の3ヶ所は『最終信号』については空振りだった。

相手も通報できる立場ではないが、美琴がやっていることは犯罪行為には違いない。
長らくいるべきではないのは確かなのでさっさと機器に電撃を浴びせ破壊していく。

美琴(『最終信号』ねえ?プログラムかそれとも……もう少し情報がないと判断しようがないか)

一応、妹達〈シスターズ〉に確認はしたもののその件についてはプロテクトがかかっていて一切話せないとのことだった。

502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/02(土) 14:38:20.08 ID:h6XkxxtAO


美琴は実験の計画書を読んだ後、実験の目的とは別のきな臭さを感じていた。

『最終信号』というキーワードがその不安感を増してしまう。

不安のもとは一年前のあの事件。木山春生、幻想御手、虚数学区そして幻想猛獣。1万人の被害者をだした幻想御手事件だ。

木山が事件の主犯として拘束された後、美琴との別れ際に何を言ったか。

『複数の脳を繋ぐ電磁的ネットワーク、学習装置〈テスタメント〉を使って整頓された脳構造』

それは妹達〈シスターズ〉のこと

木山は妹達〈シスターズ〉のことを知っていた。その理論を応用してネットワークを構築。樹形図の設計者の代わりにしようとした。

ネットワークを構築するにあたって使われたのが幻想御手。

それは幻想御手の使用者を人の交換機能を利用して木山の脳波に調整するものだった。

そして事件の終盤、幻想御手により構築されたネットワークを触媒として幻想猛獣〈AIMビースト〉が生み出される。

ネットワークで繋がれた1万人のAIM拡散力場の集合体。

原理としてはAIM拡散力場の集合体である虚数学区と同じ。


503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/02(土) 14:52:42.94 ID:h6XkxxtAO


問題は何をきっかけとして幻想猛獣〈AIMビースト〉が誕生したのか判然としないこと。

ネットワークの核となった木山の感情が起爆剤となったのか?結論はでていない。

幻想猛獣〈AIMビースト〉を見た研究者は再現してみたくならないか?

AIM拡散力場を専攻している者なら理論を構築してみたくならないか?

幻想御手事件は丁度、量産能力者計画が絶対能力進化実験へと切り替わるはざまに起こっている。タイミングが良すぎやしないだろうか?

全ては推測に過ぎないし考えすぎであって欲しかった。


美琴はこの一年の間顔を合わした事がないロンドンにいる女狐とやりあい、裏を読まざるを得ない事件に関わってきた。

どうしても裏の裏まで読んでしまうクセがついてしまって、イヤな予感が消えないのだ。

美琴(取り越し苦労であったらいいけど)

破壊の限りを尽くした後、美琴は通路を歩いていく。

この研究施設は内部に広い空間が設けられている。研究施設というより工場に近い作りをしていた。

美琴「『最終信号』のこと別口に聞いてみた方が手っ取り早かったりして」

初春の話しではもう一方の襲撃者が何か知っている可能性があった。


504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/02(土) 14:55:11.31 ID:h6XkxxtAO


美琴は通路から扉を開く。

そこには資材が積み上げられた集積場のような広い空間があった。

研究施設の出入口はいくつかあるが美琴が選んだ出口はこの空間を渡った先にある。

美琴は通路からその空間へ一歩を踏み出す。

バォォォッ!!

轟音が鳴り響く

積み上げられた資材を巻き込みながら美琴に烈風が叩きこまれた。

505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/06/02(土) 14:55:41.07 ID:h6XkxxtAO
ここまで
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/02(土) 21:09:32.53 ID:kXw8G9c+o
おつにゃんだよ!
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/03(日) 22:34:31.29 ID:Sy8k3KqAO


美琴「いっきなり仕掛けてくるなんて、失礼なヤツ、出てきなさいよ!」

烈風に巻き込まれた資材がそこら辺に転がる中、美琴は無傷のまま立っていた。

入る前から待ち構えている者を感知していた。防御障壁も展開しており不意打ちにも対応可能、慌てる必要も無かった。

「オイオイ、テメェ手口から言って発電能力者〈エレクトロマスター〉だろうが、どうやって防いだって言うんだ?」

美琴の呼びかけに応じて一人の少年が姿を見せる。背は180cmはあろうか。顔は美男子と言えるが目つきや口元からガラの悪さが見て取れる。それに加えブレザータイプの制服を着崩しており、一見ホスト風に見えた。美琴とは感性が合わないタイプだ。

美琴の方は上条達と再会した時と同じ黒いコートを纏い、フードを目深に被っているため顔は見えてないはずだ。

美琴は問いかけを無視して

美琴「アンタ、別口のインベーダー?それとも研究施設に雇われた迎撃要員?」

「はあ?何言ってんだテメェ、俺が第一位がやってる実験の手助けなんかするわけねえじゃねえか!」

どうやら別口のようだったが、どうも第一位に敵愾心があるらしい。

美琴「ふーん、それで私に何の用かしら、随分なご挨拶だったけど?」

「あー?邪魔くせえんだよ!ヘタに先を越されたりしたら、俺が必要としてるモンが手に入らなくなって困るからな」

508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/03(日) 22:40:13.71 ID:Sy8k3KqAO


その少年はどうも苛立っている様子だった。

美琴「あー、なるほど先越される前に潰して置こうってわけね、戦り合うのは構わないけど、その前に聞かせて。『最終信号』って知ってる?」

少年は口元を歪ませて

「バッカじゃねえ!教えて欲しけりゃ俺に勝ってみることだな、学園都市第二位の『未元物質〈ダークマター〉』垣根帝督に」

よほど自信があるのだろうか、この場で正体を明かすというのは。それとも学園都市第二位といった地位を使った威嚇か?

美琴「それじゃあ、そうさせて貰うわ!」

萎縮も見せず美琴が答え戦闘態勢に入ると、気にくわないのか垣根の顔に怒気がはらむ。

そして垣根の背中から六枚の白い翼が生まれる。

その光景に美琴は呆気にとられる。

美琴「はっ羽ぇぇぇ!?」

垣根はその翼を美琴に向かって羽ばたかせる。

先ほどの烈風の正体だった。


509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/03(日) 22:48:13.08 ID:Sy8k3KqAO


凄まじい烈風が美琴を襲うが最初に防がれた攻撃だ。

役割は目眩まし程度の囮。

本命は垣根自身が距離を縮めて振るう白い翼。

翼の一枚が長く伸びながら美琴に襲いかかる。

バッシィィィン!!

美琴に当たる直前で火花のような雷光を散らし翼が弾かれる。

障壁で弾き返せたものの半ばまで切り裂かれかけた。雷光が散ったのはその証し。

追撃を避けるため、美琴は磁力線を引き、導かれるままその場から空中に飛び移動する。

垣根「器用なマネするじゃねえか!!」

垣根は空中にある美琴へ翼を叩きつける。

美琴は資材を磁力で引き寄せ盾にするが翼はそれを切り裂く。

それで防げるとは美琴も思ってはいなかった。垣根の目を逸らすため、美琴の行動を見失わせるため。

翼が切り裂いた先には美琴の姿はない。

垣根がハッと思った時には、地上へと滑り込むように美琴は降り立っていた。

そしてフードに隠れた美琴の額のあたりから雷撃の槍が迸る。

白い翼が垣根を包み込む。

青白い雷光が弾け、白い繭状になった垣根の周りに粉塵が舞い、引き剥がされた白い羽根が何枚か漂っていた。

510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/03(日) 22:53:53.65 ID:Sy8k3KqAO


6枚の翼が繭の状態を解除して左右に開く。

すると光が瞬いた。
強烈な光が美琴に降りかかる。

障壁で受け止める美琴。

大部分は阻止したものの一部がすり抜け美琴に痛みを与える。

紫外線に焼かれてヒリヒリする程度であるが、再び瞬く二発目を避けるべく美琴は走りだす。

二発目は美琴が居なくなった空間を焼く。

美琴「どういう能力だって言うのよお!?」

再び光が放たれる前に雷撃の槍を放つ。

それを今度は左の翼で垣根は打ち払う。

垣根「これが『未元物質〈ダークマター〉』だ。『超電磁砲〈レールガン〉』」

右側の翼から光が撃たれる。

それを交わしながら、

美琴「へえ、よく分かったわね!」

電撃を撃つ。

お互いが撃ち合いながら会話が続く。

垣根「発電能力者〈エレクトロマスター〉如きに傷一つ付けられたことがねえ、それをテメェは僅かでも羽根を引き剥がしやがった!」

翼が光を放つ。

垣根「出力が段違いだってことだろう?」

美琴は障壁で受け止めながら光を逸らす。

光は電磁波の一種、美琴の領分でもある。

美琴自身、光の波長を学園都市に潜入する際にも電子迷彩として利用している。

511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/03(日) 23:00:23.85 ID:Sy8k3KqAO


殺人光線化しているがその性質さえ解析できれば能力で逸らすことも可能。

垣根「それだそれ、電磁障壁か?同系統でも尖ってる第四位が『原子崩し〈メルトダウナー〉』の応用で盾を作ることが出来るって聞いたことがあるっけどよ」

反撃の雷撃を打ち払う。

垣根「オマケに俺の回折を利用した光を逸らしやがった」

翼が光を放つ。

美琴は逸らす必要もなく障壁だけで受け止める。美琴に攻撃が全く通らなくなっていた。

垣根「ちっ、そんなことが出来るのは同じlevel5、発電能力者〈エレクトロマスター〉の最高峰と言われた『超電磁砲〈レールガン〉』しかいねえ」

殺人光線が美琴に無効化されるため、必然的に戦闘は停滞していく。

美琴「アナタの攻撃はもう通用しないわよ、ケガしないうちに『最終信号』のこと、教えてくれたほうが良いんじゃない?」

垣根「ふざけんな!テメェの攻撃だってなあ、通用してねえんだよ」

美琴はコレまでの触診の結果を反映させた電撃を放つ。

あの白い翼がどんな能力で創られたかは分からない。

しかし、アレは美琴の障壁と同じく複合的要素が持たされている。


512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/03(日) 23:17:31.63 ID:Sy8k3KqAO


美琴の場合であれば物理的な攻撃から始まって一般的な炎、雷、風、水系等の攻撃魔術までを防ぐために組み合わせた障壁。

あの翼も同様に想定された攻撃手段に対応した要素を複合的に組み合わせたモノ。

最大出力にして組み合わせを崩せる電子を含んだ電撃。

ズババッバッバッババン!!

これまでと同様に打ち払おうとした翼が砕け、羽根が飛び散る。

垣根は咄嗟にわざと翼を無数の羽根に変換する。羽根をばら撒き、電撃を拡散することで電撃が身体に伝わるのを防ぐ。
美琴「どう!?」

垣根が砕け散った翼を振る。風の唸る音がすると元の形に戻っていた。

垣根「……ああ、済まねえ、嘗めてたわ第三位」

美琴「それじゃあ!」

垣根「テメェこそ『未元物質〈ダークマター〉』を嘗めてんじゃねえ!」

美琴は溜め息をつきそうになる。美琴の方は手の内をまだまだ晒していない。垣根の能力を見切ったつもりもないが優位に運べるだろうとは思った。

明日のことを思えば時間が惜しかった。

美琴「『未元物質〈ダークマター〉』ってその翼のこと?なんか似合わないわよ、メルヘンチックで」

垣根「心配するな。自覚はある」

二人は再度の撃ち合いに備え、ジリジリと間合いをとる。


513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/06/03(日) 23:21:39.35 ID:Sy8k3KqAO
ここまで








能力を独自解釈、設定すると矛盾してそうで怖いです。
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 23:49:14.56 ID:qJW8AYy+0
乙  垣根と戦闘なんて普通ならとても見てられないシーンだけど、ここの美琴は実戦積んでるからな
落ち着いて観戦できそうだ  
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 23:50:52.06 ID:s1hLgiyTo
おつにゃんだよ!

516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/09(土) 19:55:08.65 ID:JBws2JBAO


垣根帝督、学園都市第二位の超能力者にして暗部組織『スクール』のリーダー。

学園都市の闇の部分で起きた事件を処理してきた。

なので当然のごとく戦闘経験も豊富である。

その圧倒的な能力でさほど苦戦もせず、敵となったモノを打ち倒してきた。

つまり身を削るような、命を懸けた闘いの経験がない。

敵が垣根の命を狙っていたとしても、垣根の能力は高スペック過ぎた。垣根自身が命の危険を感じるような危機的状況は今まで無かったと言っていい。

ただ、悲しみに打ちひしがれたことはある。

それが反乱、学園都市の掌握そしてその先へと垣根を向かわせる動機となった。

その最初の一歩が学園都市第一位、『一方通行〈アクセラレーター〉』の打倒。

ところがそこへ行く前に一つの障害が現れる。

目の前の少女。

level5、『超電磁砲〈レールガン〉』の異名持つ、学園都市が垣根より一つ下の位に認定した少女。

障害といっても道に転がる石のようなもの、蹴飛ばしてどかしてしまえばいいと思っていたが、蹴飛ばせるほど小さくはなかったようだ。

考えてみればlevel5同士の対決など学園都市の歴史上、

無い。

517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/09(土) 19:59:31.87 ID:JBws2JBAO


垣根(『超電磁砲〈レールガン〉』の持ち味は自由自在に電磁波を操り、多角的に敵を攻められることにあるって話しだ。要するに応用力が高くて用途性に富んでるってことだ)

それはどこか第一位『一方通行〈アクセラレーター〉』に通じる。

垣根(第一位を殺る前のスパーリングと思っときゃ良いか)

level5同士の命の殺り合い。

垣根は自分が負ける可能性など微塵にも思ってない。

それを練習するぐらいのつもりだった。

垣根「知ってるか。この世界は全て素粒子によって作られている」

美琴は怪訝な顔で、

美琴「いまさら何言ってんのよ、そんなこと知ってて当然でしょ!」

垣根「まあ、聞け」

垣根は苛立ちが消え冷静になっているようだった。

垣根「そいつは幾つかの種類に分けられている。その組み合わせでこの世界は構成されてる訳だな」

垣根が不適な顔を覗かせる。

垣根「だが、俺の生み出す『未元物質〈ダークマター〉』はこの世界に存在しない物質だ。『まだ見つかっていない』だの『理論上は存在するはず』だのってチャチな話しじゃない。本当に存在しないんだよ」

美琴「存在しない物質を生み出すチカラ?」

518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/09(土) 20:05:49.14 ID:JBws2JBAO


垣根「ああ、そうだ。この世に存在しない物質、異物。たった一つ混じっただけで、世界をガラリと変えちまうんだよ」

対峙が終わり、激突の時間が再び巡る。

垣根「こんな風にな!」

白い翼が光を放ち、羽ばたく。

美琴「そんなもの!」

美琴が障壁で受け止める。光は障壁で遮られるも次の烈風が障壁を打つ。

質量を持った光のごとく圧力がかかる。

美琴「なっ!?」

烈風の圧力に負け、美琴は後ろへ飛ばされザーッと床の上を滑る。

垣根「『未元物質〈ダークマター〉』を解析したつもりか?」

二人の距離は今ので20mは開いていたか、垣根は美琴に向けて一歩を踏み出す。

垣根「俺の『未元物質〈ダークマター〉』に常識は通用しねえ」

白い翼を広げる。

垣根「超能力、『自分だけの現実〈パーソナルリアリティ〉』を観測してこの世界に超常現象を引き起こす能力、と言ってもな。この世界の法則を土台に僅かな可能性を引き出してるだけだ」

垣根は歩みを止めず、美琴は待ち構えている。距離が半分ほどに縮まる。

垣根「『未元物質〈ダークマター〉』、異物が混ざった世界。ここはテメェの知る場所じゃねえ、俺がデザインした世界だ!!」

6枚の翼が美琴に襲いかかる。


519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/09(土) 20:11:06.92 ID:JBws2JBAO



白い翼が障壁ごと美琴に打撃を加える。

垣根「表面上の性質を解析したところで『未元物質〈ダークマター〉』の根底に迫ることなんてできないんだよ、普通の世界の法則しか知らないテメェじゃあなあ!!」

美琴は吹き飛ばされ、資材の山に突っ込む。

資材が崩れ、美琴の姿を隠した山の中から電撃が放たれる。

白い翼が弾け散る。

しかし、垣根まで届かない。

垣根「テメェに出来るのはここまでだ」

翼が元通りに再生し、右側の翼が照明の灯る天井近くまで振り上げられる。

資材の山から姿を見せた美琴に振り下ろされる。

障壁で身を守っている筈。それでも衝撃が美琴の身体を走り抜ける。

美琴「がっ」

そして左側の翼が横薙に叩きつけられた。

垣根「テメェは俺の攻撃を解析して、危険と判断したモノを止められるよう障壁に手を加えた」

美琴は翼の打撃に宙を舞うが、回転して受け身を取り、すぐに立ち上がる。

垣根「おんなじことは俺にだって出来んだよ」

垣根は余裕の表情で

垣根「光を全て遮ってしまえば何も見えず、空気の流入を遮断しちまえば酸欠に陥りかねない。テメェの障壁にはフィルターがかけられている」


520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/09(土) 20:14:44.95 ID:JBws2JBAO


垣根「光と烈風でテメェが障壁にかけているフィルターの隙間を解析した。後は『未元物質〈ダークマター〉』を変換して隙間を抜ける攻撃を加えれば良い」

白い翼と障壁がぶつかる時の衝撃、そこで起こった衝撃波が障壁の隙間を抜けて美琴に襲いかかっていると言うことか。

『未元物質〈ダークマター〉』によって特殊な加工が為されなければ有り得ない現象だった。

垣根が美琴に白い翼で攻撃を加えていく。

美琴は左右に動き翼を躱していく。磁力線を引き宙を舞う。

垣根は追いすがり翼を振るう。

美琴は電撃で翼を迎撃し、垣根自身をも狙うも垣根の防御を崩せない。リアクティブ・アーマーのように爆散する事で威力を拡散し、垣根自身へ被害が及ぶのを防いでいる。

美琴の攻撃を完全に無効化しているわけではない。『未元物質〈ダークマター〉』の構成を攻撃と防御のバランスを取るうえで防御方式をそう設定してあるのだろう。

対して美琴のほうが明らかに分が悪かった。

攻撃は垣根に届かず、防御は躱すしかない。

迎撃しても、翼は再生しながら向かって来る。障壁で受けたら衝撃波が美琴を襲う。

521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/09(土) 20:21:22.95 ID:JBws2JBAO


電撃により白い羽根が飛び散り、白い翼が躱され、叩く。

雷光が弾け、白い羽根が舞う。

二人は空間を十二分に使い、攻防を繰り返す。

その場に第三者がいれば目まぐるしくも、同じ攻防が繰り返されてるかに見えるかもしれない。

内実は違う。

一つの攻防ごとに二人の頭脳は攻防を解析し、方程式の組み直しを凄まじい速度で行っている。

相手の攻撃、防御に対応して構成を組み替えていく。

対応を誤ればダメージを受け、相手にダメージを与えようとするならば対応を予測し、それを超える演算をしなければならない。

天秤は垣根に傾いたままバランスがとれている。

『未元物質〈ダークマター〉』という普通の世界の法則から逸脱した、この世に存在しない物質が垣根にアドバンテージを与えている。

美琴の攻撃は垣根に届かず、美琴にばかりダメージが蓄積されているように見える。

いずれ決壊する。

ダメージの蓄積で美琴が地に伏すときが来る。

垣根はその時を待つ積もりは無かった。

そうなる前に終局までを読み切り、詰みの一手を自らの手で打つ自信があった。

白い翼の一撃が美琴を打ちのめす。

耐えきれず美琴は地に片膝をつき、肩で息をしている。

522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/09(土) 20:29:18.86 ID:JBws2JBAO


垣根「強い相手と闘うのがレベルアップの近道っていうのは本当みたいだな」

「ここまで能力を酷使した事無かったぜ」

「level5同士の攻防ってのは結局、演算能力の差で決まる。その中で俺の『未元物質〈ダークマター〉』は有利に働く。なんと言っても相手が理解できねえんだから!」

垣根は跪く美琴を見据えて続けて言う。

垣根「第一位とヤる前に勉強になった。礼の代わりに知りたがっていた『最終信号』について教えといてやる」

美琴も垣根を見据える。肩で息しているように見えても目の光は失われていない。

垣根「『最終信号』ってのはなあ『打ち止め〈ラストオーダー〉』とも呼ぶ。テメェのクローンの最終ロットだ」

「検体番号は20001号。可笑しいだろ?実験の回数は20000回。何のためにシナリオ上必要ない20001体目製作したのか?表向きは安全装置のようなものだってことだ」

「二万もの能力者を用意して反乱でも起こされたら実験以前の問題だ」

「クローン共のネットワークに『最終信号〈ラストオーダー〉』から電気信号を送る。それでクローン共をコントロールしようってことらしい」

「『最終信号〈ラストオーダー〉』さえ確保出来てりゃクローン共を一旦手放したとしても強制的に従わせることができる」

523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/09(土) 20:38:57.01 ID:JBws2JBAO


垣根「言わばクローン共の司令塔で生きているキーボードってところか」

「ネットワークに接続するために一定以上の自我は与えられていたが普段は培養器の中で眠らして保管されていた。そこを俺が強奪しようとしたんだが、研究者が逃がしやがった」

「役割を考えたら自由に動けることなんかさせられねえ。培養器の外で長生きできるほどの調整はしてなかっただろうが、誰か仏心を出して調整し直しやがったかな?
今んところ行方不明といった現状か」

美琴の目は光を失っていない。それでも悲痛な様子が見て取れる。

美琴「それで何でアンタは『打ち止め〈ラストオーダー〉』を強奪しようとしたの?アンタには関係ないことでしょ!!」

垣根は笑いを漏らしそうになりながら

垣根「人助けじゃないのは確かだな。こういう話には必ず裏がありやがる。俺の目的のためには知っておく必要があった」

「が、其処までテメェに教える義理はねえ。テメェの底は読み切った。ここでテメェは終わりだ」

「悔やむんなら自分がクローン共にしでかしたことを死んで詫びるんだな!」

白い翼が広げられる。

垣根「最後はテメェの領分でトドメを差してやる!」

翼が光を放とうとする。

美琴の能力で干渉されないだけの計算結果を加えた光が。


524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/09(土) 20:39:46.04 ID:JBws2JBAO



そして世界は闇に落ちる。
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/06/09(土) 20:40:18.42 ID:JBws2JBAO
此処まで
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/09(土) 22:55:13.89 ID:ByHKGMBxo
おつにゃんだよ!
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/10(日) 21:54:49.98 ID:uDVrnCHr0
乙 美琴のターンを期待
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/10(日) 22:43:42.99 ID:TQt8V5yAO


垣根はトドメを差さんとした瞬間に闇に包まれ動きを止めていた。

光源が無ければ『未元物質〈ダークマター〉』と言えど回折して殺人光線に変えることは出来ない。

美琴「気付いてないとでも思ってたの?」

そこへ闇の中から美琴の声が聞こえる。

美琴「自分で『回折を利用した光』なんて言ってたじゃない。光源が無かったらお手上げなのかな?第二位は」

窓一つない空間。この暗闇は美琴が作った世界。

照明から非常灯まで光源となるモノ全てを遮断していた。この空間だけでなく研究施設、そのものを支配下に置いている。

垣根は声がする闇の向こうへ翼を振るが手応えがない。

美琴「『打ち止め〈ラストオーダー〉』のこと教えてくれたお礼に忠告しておいてあげるわ」

美琴からはダメージの影響が感じられない、余裕のある声で話している。

垣根(どういうことだ!?)

美琴「よっぽど自慢なんだろうけど、自信過剰ね。ベラベラと説明して相手に情報を与えるなんて、足下を掬って下さいって言ってるのに等しいわ」

垣根「うるせえ!」

もう一度声がする方へ、これまでの戦闘経験で培ったカンが其処に居ると告げている場所へ翼を向ける。が、空振るのみ。

529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/10(日) 22:49:04.29 ID:TQt8V5yAO



美琴「調子に乗せたら『打ち止め〈ラストオーダー〉』のこと喋ってくれるんじゃないか、と予想できるくらいには見てたら分かるわ」

「ギタギタにしてやってもプライドが高くてなかなか喋ってくれなさそうだし、そんな性格で助かったと言うべきかな」

暗闇のなか原始的恐怖心からか焦燥感が募る。そんな心理状態をありえねえ、と垣根は否定するが耳なりがするような不快感もしてくる。

垣根から美琴の居場所が掴めない。声がする方に居ると思ってもそこには影も形もない。

美琴「それと『未元物質〈ダークマター〉』に常識は通用しねえ?普通の物理法則を当てはめたって理解できないかもしんない。でもね、この世に存在させようとする以上、この世界の法則の影響を受ける。異物であるだけだと世界に影響を与えることはできない。その整合性をとるためにアナタはこの世界の法則に当てはめて存在させている。違う?結局アナタもこの世界の法則から乖離している訳じゃないのよ」

いっそのこと翼を伸ばせるだけ伸ばして振り回そうかと垣根は考えたが相手には垣根が見えている。隙をつくるだけであるし、美琴の声音からして本当のダメージは皆無に等しいと判断するしかなかった。

530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/10(日) 23:00:45.36 ID:TQt8V5yAO


読み切ったつもりで美琴の術中に嵌まったと考えるしかない。

垣根は如何にして美琴が居場所を曖昧にしているか、暴かなければ打開できない状況に陥っていた。

ふと、垣根の手が金属製の資材に触れるとビシッと静電気のような反応が返る。

垣根(まさか!?)

そんなことが自分に通じる筈がないという疑問が垣根に湧く。

焦燥感や不快感を電磁波の影響として考えると納得がいく。
垣根(無害と判定される電磁波を浸透させ徐々に影響を与えていたというのかよ)

美琴「『未元物質〈ダークマター〉』は素粒子。形あるモノとして原子、分子といった手順を踏んでるんでしょ。その中に含まれるモノ、電子」

「世界は広いわよ。アナタ以上に常識が通じない相手なんか山ほど居たんだから」

美琴の一年の旅を思えば、その主な敵手は魔術師。科学的な法則とは別な法則を扱う連中。

美琴の障壁は魔術師の通常の物理法則に近い攻撃魔術ぐらいなら跳ね返していたが、聖人級や特殊な魔術を扱う相手に抜かれたことは何度かある。

それらの殆どは対処不能と言って良かった。対処するにはインデックスの『歩く教会』のように神の御力を借りるような防御方式しか無かった。

しかし『未元物質〈ダークマター〉』を名乗る第二位の攻撃は物理法則をねじ曲げても物理法則に準拠した攻撃である。

対処不能というものではない。

531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/10(日) 23:05:36.08 ID:TQt8V5yAO


具体的には二重障壁にしてしまえば良かった。

垣根が解析できるのは翼が当たる外側の障壁。その内側、体表面近くに衝撃波を和らげる磁場を形成してクッションとした。

後はダメージを受けたフリをしながら異物が混入された空間を掌握していった。

美琴「世界を改変したいならもっと精進することね」

初春が見たら、また悪い顔になってますよ、と言われそうな顔を美琴はしていた。

垣根「くそっ!テメェここ一帯に電磁波を広めやがったな!それで俺の感覚も狂わしてんのか!?」

それには答えず、



美琴「マイクロウェーブって知ってる?」



欲しい情報は手に入れた。あの様子ではそれ以上のことは垣根も調査中なのだろうと美琴は判断した。

考えるのはこの場をどう去るかだけ。

垣根「はあ?今更何を電磁波のこと…………オイ?」

電磁波とではなく、マイクロウェーブと言われて思いつくモノが一つあった。

場にそぐわないモノである。キッチンか家電売り場の方が似合う代物である。

美琴「アンタなら大丈夫そうだから♪」

532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/10(日) 23:07:51.28 ID:TQt8V5yAO


マイクロ波を使った攻撃など古くから研究されてきた方式ではある。

しかし只でさえ、知らず知らずの内に電磁波を身に浸透されていたのである。

『未元物質〈ダークマター〉』の分子振動に合った周波数を解析されていたらと思い、垣根は急いで『未元物質〈ダークマター〉』を組み換える。

攻撃のことなど考えず、ひたすら予想される現象に耐える為に。

逃げ出すという手もあるがプライドが許さない。

周囲が加熱されて行くのがわかる。

垣根「テメェも無事じゃ済まねえんじゃねえのか!!」

6枚の白い翼で自身を繭状に包み込んだ垣根が叫ぶ。

美琴「私に影響があると思って?」

垣根「くそったれ!!!!」

最大出力10億ボルトの電子レンジやIHとはどういうものだろうか?

マイクロ波加熱によって空間内にある全てのモノが加熱されていく。

加熱されたモノが高熱を発し暗闇だった空間を橙色に染める。

輻射熱により水蒸気が発生し、

爆発が起きた。

建物を揺るがし壁に大穴を開ける。


533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/06/10(日) 23:11:31.72 ID:TQt8V5yAO
此処まで




科学的考察に合わん部分があったらごめんなさい
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/10(日) 23:52:34.29 ID:uRQ21ltjo
おつにゃんだよ!

535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/06/11(月) 00:42:48.76 ID:rWM71YzAO

書いとこうと思って忘れてました

>>529>>530は残酷歌劇からの影響があります
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/11(月) 03:21:35.78 ID:dEGlvTwqo
そりゃあ魔術世界での戦いを掻い潜ってきた方が修羅度は高かろうなぁ・・・
ポテンシャルで言えば垣根の能力の方が上かもしれないけど相手が悪かったというところかww
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/13(水) 01:51:31.55 ID:x3plCJnYo
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/14(木) 23:50:34.95 ID:44k9N/DAO


垣根の『未元物質〈ダークマター〉』はマイクロ波の加熱にも、爆発にも耐えきった。

粉塵が舞うなか、繭状の防御形態から6枚の翼が展開する。

ドウッと烈風が周囲の粉塵を散らす。燃え上がっていた火が烈風の勢いに消える。

他の反応はない。

垣根は苛立ち紛れに翼を振るい暴れる。

垣根「ッッッ!!ふ、ざけんなよ『超電磁砲〈レールガン〉』!」

地団駄でも踏みそうな雰囲気で垣根は喚く。

垣根「ああ!ムカついた、テメェも抹殺対象だ!許さねえ、許さねえぞ、コラ」

喚く先、彼を嵌めた相手はすでに姿を消していた。

『未元物質〈ダークマター〉』への加熱はさほどでは無かった。牽制の意味合いが強い。爆発は規模こそ大きかったが、この場から立ち去るための煙幕のようなもの。

垣根は真っ向勝負にいきり立っていたのに余裕でスカされた気分である。

今の爆発で警備員などが緊急出動してくるのは間違いない。垣根もまだ事が表に出ても良い段階ではない。

そんなことは分かっていても怒りの感情が抑えきれず、その場から離れられない。

『未元物質〈ダークマター〉』と『超電磁砲〈レールガン〉』。能力の価値が高いのは明らかに『未元物質〈ダークマター〉』だと万人が認めるだろう。


539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/15(金) 00:00:38.51 ID:yBYJAr2AO


事実、垣根自身は無傷のままである。多少なりともダメージがあるのは『超電磁砲〈レールガン〉』の方だ。

しかし

土俵際まで押し込みながらうっちゃられる。勝利目前にみえても最初から相手の作戦に嵌まっていただけのこと。

ゲームを支配していると錯覚させられ、カウンターの一発に沈む。相手の筋書き通りに進んだだけのこと。

学園都市の闇に棲む垣根にとって敗北は惨めなだけのモノである。

『超電磁砲〈レールガン〉』の手の上で踊っていた事実。

それはより一層の惨めさを感じる要素となる。

垣根(『超電磁砲〈レールガン〉』は一年前は表の人間だった。行方不明になった一年の間に何があった?あの駆け引きや悪賢さは暗部の人間みてえじゃねえか。表の人間が姿を消すってのは暗部に落ちてたって可能性もあるがそんな話し欠片も聞いちゃいねえ)

『世界は広いわよ。アナタ以上に常識が通じない相手なんか山ほど居たんだから』

垣根(行方不明になったのは確か『外』に出てたときか、学園都市の敵でも叩き潰してたのか?)

『外』では学園都市とは別の方式で能力開発が行われている。そんな眉唾な話しを垣根は聞いたことがあった。

垣根(案外、本当だったのか、あの話は?そういう相手とやりあって経験値を上げてたってことか?)

徐々に怒りが醒めてくる。

540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/15(金) 00:04:13.05 ID:yBYJAr2AO


戦闘経験といえば表の人間にしては学園都市に居た頃も幾つかの実績を残していたことを思い返す。

その幾つかの実績の中に引っかかるものがあった。

ワードが繋がり閃く。

『超電磁砲〈レールガン〉』が関わった特に有名な事件。

垣根が携わるような事件では無かったため詳細は知らないが、あらましぐらいは聞いていた。

ネットワークとその結末ぐらいの話は。

垣根「『幻想御手事件』。調べてみる価値はあるか」

遠くからサイレンの音が聞こえる。

落ち着きを取り戻した垣根は6枚の白い翼を使い夜空へと舞い上がる。

『最終信号〈ラストオーダー〉』の奪取。『一方通行〈アクセラレーター〉』の打倒。それが垣根の反乱への第一歩だった。

それに一つの項目を付け加える。

『超電磁砲〈レールガン〉』と再戦し、殺すことを。

でなければ渇きを癒やせない。この屈辱感を晴らすことができない。

しかし、それは果たされない。『一方通行〈アクセラレーター〉』の打倒も『超電磁砲〈レールガン〉』との再戦も。

運命の神の悪戯か、世界の意志か、それとも裏から人を操る者の所為か。

垣根には『最終信号〈ラストオーダー〉』を巡る別の敵手との戦いが待っていた。


541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/15(金) 00:08:24.91 ID:yBYJAr2AO


美琴は爆発の直前には研究施設から脱出し、磁力線を使ってビルの間を跳び既に現場から遠く離れていた。

今は用心のため電子迷彩を纏い星空の下を移動中である。

『最終信号』、打ち止め〈ラストオーダー〉について懸念が当たりそうだった。木山春生がネットワークの核であったように打ち止め〈ラストオーダー〉もまたミサカネットワークの核。

幻想猛獣が偶発的なことであったことに対し、作為的にプログラムの入力を行えば再現も可能となる。

いや、違う。再現が目的ではない。順序が逆であった。ミサカネットワークを模したモノが幻想御手によるネットワーク。その結果がAIM拡散力場の集合体である幻想猛獣。虚数学区と同一的存在。

推論の行き着く先は、

美琴(まさか虚数学区をコントロールしようっていうの!)

パソコンが虚数学区でOSがミサカネットワーク。そして『打ち止め〈ラストオーダ〉はキーボードの役割を果たす。

パソコンを起動させ使うための重要なアイテム。

その上で何のために虚数学区をコントロールしようとするのか、漠然とした不安が頭をよぎる。

取り敢えず、『打ち止め〈ラストオーダー〉』の保護に目標を切り替えなければならない。


542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/15(金) 00:18:36.03 ID:yBYJAr2AO


『打ち止め〈ラストオーダー〉』を保護できれば妹達に強制的に命令することはできなくなる。妹達が自身意思で実験の継続を拒否する事ができる。

研究施設の破壊を続けるよりは実験を中止させられる可能性が高い。それに虚数学区をコントロールするための道具として使われることも防げる。

『打ち止め〈ラストオーダー〉』の行方を捜さなければならないが、一番頼りになりそうなのは、

美琴「初春さんか……」

彼女に頼るのは良くないとは分かっている。それでも今回の場合、『打ち止め〈ラストオーダー〉』を捜すというのは砂浜で指輪を探すに等しい。情報処理に長けた初春ならばと期待してしまう。

美琴「初春さんにこれ以上関わらせるのはなあ。彼女も事情を抱えてるし、意外と熱血で突っ走っちゃうところあるから……」

行方だけ捜して貰い『打ち止め〈ラストオーダー〉』の情報が入れば美琴に必ず連絡を入れ初春だけで動かないよう釘を刺しておく、そうするしかないかと美琴は考えをまとめる。

と、ここでもう一つの問題に頭を切り替える。

学園都市へ戻った最初の目的、インデックスの指輪の解除。

作戦開始は29日0時。

あと24時間を切っている。

そちらの対策はほぼ出来ている。では問題とは?

543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/15(金) 00:23:02.26 ID:yBYJAr2AO


美琴の身なりは身体へのダメージこそ少ないが黒いコートなどは殺人光線や衝撃波を受けたりして傷があちこちに出来ている。

黒いコートだから目立つほどではない。

だからと言ってインデックスの完全記憶能力を侮ってはいけない。

まず、気づく。戦闘行為があったことに。

美琴としてはこの間際になって体調の良くないインデックスに万が一見られていらぬ心配をかけさせたく無かった。

このままの状態で世話になっているとある病院に戻るのはさすがにまずいと思った。

あれこれと考えた末に聞いておいた住所を目指す。









上条当麻の寮へと。
彼は昨日から自分の寮へと戻っている。

544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/06/15(金) 00:24:33.66 ID:yBYJAr2AO
此処まで





次は土曜日に
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/15(金) 02:20:28.90 ID:QWr+YmB6o
おつにゃんだよ!
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/16(土) 00:44:56.98 ID:kEefQRGa0
乙  垣根も気になるがインデックスの方もそろそろ詰めだし 美琴はまったく大変だ 
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/06/16(土) 11:33:29.74 ID:kSb7GROAO


理由は幾つかつけられるかもしれない。

白井あたりは歓喜して泊めてくれるだろう。美琴と再会した折りにも招いていたが、のこのこと常盤台中の寮に姿を見せるわけにはいかない。(ちなみに美琴が使っていた部屋を白井が使用している。部屋の中には生死が不明なうちは常盤台に籍を残すという方針が決定しており、美琴の私物が保管されていた)
他にもやはりあの寮監の存在がある。level4ぐらいなら瞬く間に捻る一般人。神裂クラスの戦闘力があるんじゃないかと思う。見つかってしまった時を考えると恐ろしい。

なら、佐天や初春の部屋でも良いはずだがインデックスの首輪の解除について懸念材料を事前に上条へ話しておく必要がある、という理由があった。

午前様と言われる時間に男性の部屋を訪ねるのはどうか、とは考えが及んでいない。

一人でインデックスを守っていたときと違い、上条当麻が近くにいてくれるという心理状態を美琴自身分かっていない。
本当のところはインデックスのことも理由付けに過ぎない。漠然とした不安が上条のもとへ向かわせたのであろう。

美琴はこんな時間に男性の部屋を訪ねる非常識さを上条の部屋のインタフォンを鳴らすまであと1mmというところで気が付き指先が止まる。

548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/16(土) 11:38:21.70 ID:kSb7GROAO


美琴(どっ、どどどどどどどどどどどどっどうしよう!!!!えっえーと、えーと、ひっ非常識よね、でもこんな時間に起きてるとも限らないし、せっかく来たんだから、なっ鳴らすだけ鳴らして寝ているようだったら、どこかで一晩過ごせば良いんだから!!)

意を決して1mmの距離を縮めインタフォンを鳴らす。

インタフォンを鳴らして寝ていたのを起こしてしまうという想定が抜けているし、どこか論点がズレてる。
道徳的にどうかというよりは上条の顔を見たいという気持ちが勝っているように見える。

インタフォンが鳴ると

「ちょっと待ってくれ、今開けるから」

それに応じる声がドアの向こうから聞こえてくる。

美琴(お、起きてんのっ!?、あわわわわわっ、どーしよっ!!!!)

自分でインタフォンを鳴らして置きながら美琴は慌てる。

乙女心は複雑である。

そうするうちにドアが開き、

上条「みっ、美琴じゃねーか、なっ何だどうしたんだこんな時間に!?」

美琴「どうしたって、アンタ、いや当麻なんでこんな時間に起きてんのよーーーー!」

理不尽な言い様に上条はドアの外をキョロキョロ見て、

上条「いや、ちょっと待て、とっ取り敢えず、中に入って話ししませんか美琴さん?」

549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/16(土) 11:45:02.76 ID:kSb7GROAO


美琴は上条に促され部屋に入るとドアを閉め鍵をかけた。

そして

美琴「おっ、お邪魔しまーす」

ピキーン

先に部屋の中へ向かう上条の背に緊張が走る。

万が一、隣の部屋の土御門あたりが顔を出したりしたら厄介だと思い、何も考えず部屋にいれてしまった。女の子を初めてこんな真夜中に一人で部屋にあげてしまった。

白井、佐天、初春あたりが3人揃って突撃してくることはある。それは事件に巻き込まれたり、厄介事に首を突っ込んだときで説教を食らうばかりで級友(ズバリ言うと青髪ピアスの変態)が言うようなご褒美タイムではない。断じてそんな風には……思わない。

そこへ美琴が一人でのしかも真夜中の訪問である。

いざ美琴が部屋の中に入り鍵が閉まる音、美琴の挨拶を聞くと真夜中に部屋の中で二人っきりという状況に今更ながら気づきガチガチに緊張する上条であった。

上条「どっ、どうぞ、こちらにお座り下さい、美琴さん。おっ、お茶でも用意いたしましょうか、か、か、か」

苦笑しながら

美琴(こんなんで何か起こる訳ないじゃないって何考えてんのよっ!!)

と、心の中で毒づきながら、

美琴「つーか、何でさっきも聞いたけど当麻、こんな時間に起きてんのよ?」


550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/16(土) 11:48:54.35 ID:kSb7GROAO


上条「いや、そんなことそれこそこんな時間に訪ねてきた美琴さんが聞くんですか!?」

美琴の変わらぬ言い様に緊張がほぐれ調子を取り戻し始めた上条は、

上条「俺が起きてんのは、明日0時だろ。いざという時に眠くならないように睡眠時間をズラして備えてんだよ!」

時差ボケを直す方法に睡眠時間を調整するやり方があるので間違いとも言えない。

でも今回の場合、日中に仮眠を取ってもいいわけである。

上条が言うと子供が夜更かしするための言い訳をしているみたいでどうにもバカバカしい理由に聞こえてくる。

つい美琴は、

美琴「アンタ、馬鹿?」

上条「ばっ、馬鹿はないだろ、眠たくて役に立たなかったらそれこそ問題じゃねえか!」

美琴「そりゃあそうでしょうけど考えてることが小学生レベルなのよ!」

上条「ひでぇ、そこまで言うか?というかそろそろ美琴の理由も言いやがれ!」

口ではかなわないと以前の経験が語り、上条は話しを切り替える。

美琴「ぐっ、えーと……明日のことで当麻に話しがあったの」

上条は察しよく

上条「インデックスのことか?」


551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/16(土) 11:54:25.13 ID:kSb7GROAO


美琴「そう。神裂さんの前では当麻の右手で解除できるといっちゃったけど」

美琴「当麻、ステイルの『魔女狩りの王』をなかなか消せなかったんでしょ?」

上条「うん?でもありゃあルーンを書いた紙を張り巡らしてあったから復活してきたんじゃねえのか?」

沈痛な表情で、

美琴「それも有るけど、魔術の規模によったら当麻の右手でも一瞬では消せないかもしれない」

上条「インデックスの首輪を解除するのに若干の時間がかかるかもしれないってことか?」

その時、何が起こるかは再会したときに聞いていた。

美琴「ごめん、当麻。防衛機能にも絶対に大ダメージを受けてるはず、何とか私が抑えてみせる。必ず当麻を守ってみせるから」

上条は肯きながら、

上条「その間にもう一度、幻想殺し〈イマジンブレイカー〉で機能を停止させる、か。心配すんな。美琴に頼まれたときから覚悟は決めてんだ。最初から上条さんの不幸体質からいってそう簡単に上手くいくなんて思っていませんのことよ!」

上条は美琴を安心させるためにおどけてみせる。

上条「でもよ」

口調を変え、問い詰めるような目で美琴を見る。

美琴「えっ、なに?」

552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/16(土) 12:03:39.12 ID:kSb7GROAO


何を言われるか分からず不安になり美琴は体を逸らす。

上条「それって、こんな時間に来なくても夜が明けてからの話しでも良かったんじゃねーか?」

美琴「うっ!」

言われて見れば確かにそうである。

上条「それに、そのコート。昨日に比べてボロっちくなってるような?」

美琴(当麻のくせに。す、鋭いじゃない!!)

美琴「あー、もう、しょうがないわね。妹達のことで私にできる解決策がないかって探ってたのよッ。そのときにまあ色々あってちょっと直ぐには帰りにくいのっ!」

本当のことに近いが余計なことを言わず知ってる者からしたら嘘つきといわれそうな事を言う。心配させない為であったが。

上条「だっ大丈夫だったのか!!?」

美琴「大丈夫じゃ無かったらここにいないでしょうが!」

上条「はあーーー、あんまり心配かけんなよ」

美琴がからかうように、

美琴「へぇ、心配してくれるんだ」

上条はブスッとした面持ちで

上条「心配するに決まってんだろ。って言うか、どの口が言いますかっ、この口ですかっ!?」

と言いながら上条は美琴の口元を引っ張ろうと両手を伸ばす。

美琴「ぎゃー!、ごめん、ごめん、ごめんってばっ!!」

摘まれる直前で美琴は上条の両手首を掴んで押し戻すが上条は止めない。

美琴「乙女の柔肌摘もうとすんな!こらーッ!!」


553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/16(土) 12:16:29.98 ID:kSb7GROAO


上条「美琴がちゃんと反省するまで止めねー、止めないもんね」

力比べの様相を呈し、座った状態からいつの間にか二人は立ち上がっていた。久々の勝負に愉しげな表情が漂っている。

美琴「こっ、このー」

単純な力比べならやはり男女差が出て断然上条の方が有利。美琴のほっぺまであと数センチまで上条の指は迫っていた。

美琴「くっ、当麻。そんなに私の頬を摘みたいわけッ!?」

笑い声をあげそうな感じで、

上条「おう!!摘ませて貰うぜ、そのかわいいほっぺたを力一杯引っ張ってやる!」

美琴は力に押し切られかけ苦しい表情なるが逆転の手が浮かぶ。

美琴「ふっ、ふふん。でもこの勝負は私の勝ちよっ!!」

上条は怪訝な表情になるが、力を緩めようとはしない。美琴は手首を掴んでいる。力が入りにくいはず、優位は動かないと思っていた。

美琴「分かってるのっ!?私が掴んでいるのは当麻の手首。幻想殺し〈イマジンブレイカー〉は使えないわっ!電流を流せばどうなるかしら!」

上条の顔が青ざめる。

パッと上条は身を引く。

美琴も手を離し身構えると

上条は床に叩きつけるかのように膝を折り顔を伏せる。

the土下座の体勢である。

上条「すいませんでした!調子に乗っておりました!」

美琴「バッ、バカァーッ、本来謝るのは私のほうなんだから、そ、そこまでしないでよっ!!」


554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/16(土) 12:20:33.54 ID:kSb7GROAO


それで、ようやくひと騒ぎが終わり、二人は座り直す。

じゃれあったせいで二人とも全力疾走後のような息をしている。

誰かがそこだけ見たら怪しむような様子だった。

実際に隣の部屋で聞き耳を立てられていたが。

二人の息が整うと上条が美琴の顔を伺い、

上条「あー、その俺もちょっと聞きたいことがあったんだ」
美琴「ん?なに」

上条「インデックスのことが終わった後、美琴はどうすんだ?またインデックスと一緒に行っちまうのか?」

上条は真剣な顔で美琴を見つめていた。

美琴「一緒にまた旅に出ると言ったら当麻はどうする?」

上条は寂しげな顔に変え、

上条「美琴が決めたことなら仕方ねえけど」

呟く。

美琴「行かないわよっ、学園都市に居るつもり。インデックスと一緒にね」

美琴も上条の表情を伺いながら話しを続ける。

美琴「科学と魔術は基本的には関わり合いを避けてるらしいの。昔になんかあったらしいけどそれ以来、友好的な関係とは言えない」

555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/16(土) 12:23:13.13 ID:kSb7GROAO


美琴「ということで、ここで魔術師が問題を起こすと科学と魔術で戦争をすることになりかねないから、インデックスを保護しておくには最適なのよ」

上条「なんか、その綱渡りな話しだな」

美琴「だからと言ってイギリス清教のもとに帰すと、また首輪をつけられかねないし」

上条「そっか、でも美琴は常盤台に復学したとしてインデックスはどうすんだ?あー、そういや第12学区に神学系の学校が多いからそっちに」

美琴「それはダメ。神学系といっても学園都市の学校よ。インデックスに能力開発を受けさせるわけにはいかないじゃない」

上条「能力者になると魔術を使うわけにはいかなくなるってやつか?」

美琴「そういうことね。それに魔術の側からスパイが入り込んでそうじゃない」

上条「うん?」

美琴「お互いに関与しないって言っても何をしてるか気になるでしょ?戦争をする可能性もゼロじゃないんだし。スパイぐらいいるんじゃない?例えば当麻の隣りの部屋にもいたりして」

そう言うと美琴は隣りの部屋へ目線を向けている。

(ギクッ!!)


556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/16(土) 12:32:18.04 ID:kSb7GROAO


上条「隣りの部屋って土御門かっ?ないないアイツは金髪にグラサン、おまけにシスコンだぞ。そんなのが魔術師?ありえねー!!」

美琴「人は見かけによらないんだけどね?インデックスのことはおいおい考えてれば良いわ、明日さえ上手くいけば時間はいくらでもあるんだし」

美琴の観測によれば隣りの部屋の住人は壁から離れてベッドに潜り込んだようだった。

上条「見かけって言えば美琴のその格好もか?」

美琴「ああ、これ?魔術師らしく見えるようにってところね。他にも魔力反応がでる十字架を持ってたんだけど学園都市に戻る前の戦いで無くしちゃったのよね」

上条「魔術師らしく見せるためか……それってやっぱり超能力者がインデックスを守ってるのがバレたらまずかったからか?」

美琴「そういうこと」

美琴(十字架、インデックスの『歩く教会』と引き合い、インデックスの居場所を教えてくれる霊装。同じ役割のモノがロンドンに有るって言うけど、それもウソ。『歩く教会』じゃなくインデックス自身に結び付いてるインデックスを縛る枷の一つ。たぶん最終兵器である『魔神』を遠隔操作するための霊装。まだこれは言わないほうが良いかなあ)

少しの間、美琴が物思いに耽っていると、

上条「ところで今日はこれからどうすんだ、病院に戻るんだろ?」

静寂が場を支配する。

557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/16(土) 12:42:31.37 ID:kSb7GROAO


美琴「……………………………。」

上条「な、なんでせうか!その沈黙はっ、まっまさか!!」

美琴「……泊まってっちゃ……ダメかな?」

爆弾が落ちた。

上条「いけません、いけないです、いけないのことよ!男女が二人で一夜を過ごすなんて!中学生に手を出したエラい人になっちまう!って美琴はいま学校に通ってないんだからどうなるんだ!?いやいや籍は残されてるって話だから!はっ、籍を入れちまえば問題にはならないのかっ!?」

真夜中に部屋の中で二人っきりの状況を途中から意識せずにいられたのが爆弾発言で一気に決壊する。

混乱して上条自身何を口走っているのかわかってない。

それを聞く美琴も、

美琴「せ、籍を入れるって。けっ、結婚!?ムリムリムリムリ無理じゃないっていうか、嫌じゃないけど私まだ14才だから、あと2年はダメだから。ってイタリア辺りだと14才で結婚できたっけ!?国籍を取ればって、にゃ、にゃにを言わせてんのよー」

そしてバチバチっと美琴から電気が漏れ出ている。

美琴の周りに雷光が走っているのを見た上条は我に返る。

上条「漏れてる、漏れてるから美琴!!」

美琴「漏れてるって、願望が漏れてるって言いたいのかゴラァー」

上条「ち、違う!電気、電気があ!!家電品が全滅しちまう!!」


558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/16(土) 12:48:09.84 ID:kSb7GROAO


家電品の危機が消えて夜が明けていた。

近い、顔が近い、上条当麻の顔が近い。

目を覚ました美琴の目の前に上条の顔があった。

学園都市第三位に位置する美琴の頭脳もサッパリ働かない。美琴は身動きもとれず固まってしまっている。

美琴(ど、どういう状況なのこれは!!!!????)

家電品の危機が回避されたあと、

『乙女を真夜中に放り出すつもり!?』

この台詞が決め手となり、美琴は上条の部屋に泊まらせて貰うことになった。

お泊まりが決まったあとにはもう一悶着が残されていた。

上条が一緒の部屋で寝るなど以ての外、上条がバスルームで寝ると言い張った。

美琴は部屋の主を追い出してベッドを占領することなどできない、自分がバスルームで寝ると主張した。

結論としては朝にシャワーを浴びたい、上条がバスルームにいたままだと困る、またトイレを除けば唯一鍵がかかる場所であると指摘すると上条はグッと詰まり美琴の主張通りとなった。

つまり、美琴が目を覚ますとしたらバスタブの中になるはずだった。


559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/16(土) 12:58:31.80 ID:kSb7GROAO


それが、上条が寝ているベッドの脇、それも寝顔が覗ける位置にもたれかかって美琴は寝ていた。

幸いなのはまだ上条が目覚める気配がないこと。

美琴は頭が働くようになっても上条のベッドへもたれかかったまま彼の顔を眺めていたが漸く、

美琴(な、な、何やってんのよっ、私。まさか夢遊病の気でもあるの?)

美琴は顔を赤らめて立ち上がる。

考えてみれば、上条と二人っきりという状況は再会後もなく、遡れば去年ロシアに旅立つ前日以来だった。

あの日も暫く留守にする挨拶程度だったものが意地の張り合いに発展。何故か『戻って来たら名前で呼んであげるわよっ!』という約束をすることになった。

約束を果たすのに一年もかかり、心配をさせてしまった。アレはからかうにしても失敗だった。

名前で呼び始めて最初はつっかえたりしていたが今では自然に呼べている。興奮していたりするとアンタ呼ばわりしてしまうけれど。

上条も名前で呼んでくれる。妹達が居る前で区別するのに名前で呼んでいたのが妹達が居なくても名前で呼ぶようになっている。

助けるつもりだったがガキンチョ扱いされ上条との最初の出会いは最悪だった。美琴のほうから一方的に勝負を挑み、邪険にされ、幼少期の話しを聞き、一緒に事件に巻き込まれ、首を突っ込み濃い三ヵ月を過ごした。

そして一年の空白。
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/16(土) 13:08:03.24 ID:kSb7GROAO


夜にあの頃と変わらぬやり取りがあった。

佐天に上条のことを聞かれた時にはすでに芽吹いていた。

空白の時間が熟成する期間になっている。

夜のやり取りの中でとんでもないことを言ってしまった。

美琴は上条の寝顔を改めて見ると、

美琴「えーと……その、やっぱり………………好きなのかな……当麻のこと」

好きという言葉を口にするとはっきり自覚してしまう。

自分は上条のことが好きなんだと。

ただ、まだ上条に気持ちを伝えられない。

インデックスを呪縛から解放して、妹達の生きる道筋を整えるまでは。

特に妹達の件は美琴の責任である。責任を取るまではその資格がないと美琴は感じてしまう。

ため息をつくと、予定通りシャワーを浴びようかとバスルームに向かう。

上条が寝ている間でないと自覚してしまった今、上条が起きている時に入るというのは気恥ずかしくて堪らなかった。

バスルームの入口に立つと携帯電話が鳴る。

『外』で手に入れた品で美琴なりの改造がされており、学園都市製にも劣ることはない。

この電話の番号を知る者は僅かだ。全員の名前を帰還後登録してある。

着信は未登録者。番号通知もおかしい。何かに割り込まれた感じがする。

電話にでると相手が挨拶する声が聞こえる。

美琴「アンタ、誰なの!?」


561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/06/16(土) 13:10:36.36 ID:kSb7GROAO
此処まで





49日も終わり、漸くちょっとした笑いを入れれるようになりました。
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/06/16(土) 13:30:27.68 ID:VxbGAIU50
気になる
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/16(土) 15:56:55.27 ID:keeaGQpyo
おつにゃんだよ!
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/16(土) 23:24:10.55 ID:KERRn4zo0
おつです
続き待ってます
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/19(火) 17:18:58.70 ID:w5JthVBAO


「おはよう、御坂美琴君」

『アンタ、誰なの!?』

「私か、この街の統括理事長をしているものだ」

『……本物?』

「疑うのは仕方ないが信用して貰うしかないな」

『とりあえず本物だとしたらアンタが黒幕ってわけ』

「話が見えんが」

『絶対能力進化実験よっ、分かってるんでしょ!』

「ふむ。その件で君に連絡を取ったのは間違いないが黒幕と呼ばれるのは心外だな」

「学園都市でどれほどの研究や実験が行われているか知らないと思うが」

「統括理事長といえど全てを把握している訳でもないし、学園都市を支配している訳でもない」

『自分には責任が無いって言いたいわけっ!じゃあ虚数学区の制御とかにも興味はないのね』

「一応この街の責任者であることを考えれば責任が無いとは言わない」

「それと虚数学区の制御か、興味深い課題ではあるな。研究は進められていることは知っている。これといった成果は上がってはいないみたいだが、それがどうした」

美琴『ふざけないでよッ!』

「あまり騒ぐと愛しの君が目覚めると思うが」

美琴『なっ!い、愛しの君って』

「まあ、用件を伝えよう」


566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/19(火) 17:39:48.10 ID:w5JthVBAO


「絶対能力進化実験は完全に破棄させる」

『………本当に?』

「信じがたいだろうがあのような実験は私の本意とするものではない」

『どうだか』

「問題は実験の継続を訴える者が少なからずいることだ」

「破棄を命じても影で継続を図る者がでる」

『それで』

「彼等に諦めて貰うために君に協力して貰いたい」

『私に何をさせようって言うのかしら』

「実験の前提条件が過去のものであることを証明する」

『ッ!はあっ、!?』

「『樹形図の設計者〈ツリーダイアグラム〉』の予測演算とはいえ未来予知は完璧ではない。未来は時の流れと共に移り変わる」

「強者と戦ったが故にシミュレート通りの実験など意味をなさなくなった」

「戦力差を経験値で補う、最初の数千回は妹達〈シスターズ〉の経験値を上げるのが目的と言って良いだろう」

「実験の体裁がとれるようになったのは8千回を超えたぐらいからか」

「それが現在では経験を積み直そうにも実験の開始直後に終わってしまっては経験を積むことなどできない。彼にしてみても蟻を踏み潰すようなもので成長を促進する要素が無い。時間をかければ実験を継続できんこともなかろうが結局はカリキュラムを受けて進化するのと大差ない期間が必要だ」

『当麻との戦いで飛躍的に成長しすぎた。過程〈スケジュール〉を大幅に更新してしまった』

567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/19(火) 17:44:32.99 ID:w5JthVBAO


『現状の妹達の経験値では実験の対象にならない。そういうことね』

「よって」

「より『強き者』とでしか進化できない」

「彼の相手になる『強き者』などどれ程いるか。実験として行うなど無意味だ」

『それが修正条件ってわけね』

『無能力者である当麻を誰も強者だと思わない。それじゃあ修正条件なんて他の人は思いつかないわけだ』

『だいたい考えてることも分かったわ』

「ほう、話しが早くて助かる」

『でもそれに私が協力すると思って!『強き者』が必要なら昨日の誰かさんでも充分じゃないの!?』

「彼ではもう少し成長して貰ってからでないとまだまだ役不足だ。今のところ幻想殺し〈イマジンブレイカー〉を除けば君しかいない」

「協力して貰う代わりに妹達〈シスターズ〉の保護は約束しよう。本来なら国際協約に違反しているので処分しておくべきだが生まれてしまったモノをそういう風に扱うわけにはいかないだろう。充分に配慮させて貰う」

『脅かしってこと』

「そうは言ってない。それと禁書目録についても学園都市に居られるよう手配しておこう。イギリス清教とはパイプがあるので心配することはない」


568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/19(火) 17:52:09.27 ID:w5JthVBAO


「すぐに返事をしないでも構わない。よく考えておいて欲しい」

そこで通信を切った。

赤い液体の入った巨大なビーカーが置かれていた。

中には緑色の手術衣を着た男とも女とも大人とも子供とも見当がつかない人間が逆さに浮かんでいる。

その様子は聖人にも囚人にも見える。

プランの達成に全てを捧げていた。

プランの基盤となるのは虚数学区・五行機関。

観測できる程に形成され始めたのが20年程前になる。

幻想殺し〈イマジンブレイカー〉を招き、御するための第一段階を踏むことができたのが10年前。

今は第二段階まできている。

此処までくるのに50年以上を費やしている。

その過程ではイレギュラーも生まれてきた。その一つはベクトル制御装置として活用することでプランに組み入れ、プランの第一候補となっている。

虚数学区・五行機関を掌握するためのアイテム。『超電磁砲〈レールガン〉』はその素体だった。禁書目録との旅を経てイレギュラー化している。送り込まれた2つの布石の一つ。

学園都市を盤上に見立て駒を動かし、プランを進行させている。

それだけでなく世界を相手に多面指しを行っていた。


569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/19(火) 17:56:27.39 ID:w5JthVBAO


多面指しの相手の中で正面に座りこちらを注視しているのがイギリス清教の最大主教ローラ=スチュワート。

今回、盤上に布石を送り込んできた相手でもある。状勢が大きく動き出すだけの布石を。

これを如何に処理するかはプランの進行に影響を与える。

排除する考えはない。活用できればプランの進行を速め短縮することができる。

『禁書目録』の到来と『超電磁砲〈レールガン〉』の帰還は波紋を呼びおこす。

『幻想殺し〈イマジンブレイカー〉』と『一方通行〈アクセラレーター〉』の成長を促進する素材となる。

が、それはもう一方の指し手を突き動かす端緒ともなる。

布石に呼応するかのように学園都市に何者かが侵入してきていた。その目的は学園都市に対するものではない。

どちらかと言えば内輪もめに近い。

しかし、その結果はもう一方の指し手が本格的に目を向けることになる。混沌としたローマという指し手が学園都市に向けて。

世界20億人の信徒を集める十字教最大勢力ローマ正教。

その影響力は世界を歪める程に大きい。

世界中に十字教文化は行き渡っている。腹立たしいくらいに。

現在、世界は十字教の概念でデザインされている。


570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/19(火) 18:04:48.62 ID:w5JthVBAO


しかし、その影響力に陰りが見える。

地動説が唱えられた頃から揺らぎ始めていた。自然科学が影響力を持ち始め、世界の真実が解き明かされることによって。

信じる世界によって世界は成り立つ。

十字教によってデザインされた世界は歪み始めている。

押し止めようと学園都市へ刃を向けてくることは想像に難くない

プランの短縮と計りにかける。

優先すべきはプランの短縮。

(ならば、成長が間に合わなければ自ら打って出る可能性も、考えねばならないのかもしれんな)

そうなれば、ローラ=スチュワートの思う壺であろうがそれも一興である。

(ふ。ふふ)

そして、『超電磁砲〈レールガン〉』に成長を促進するためのバイプレーヤーとしての役割を期待することにした。主演を喰うのであれば、入れ替えて修正すれば良い。何よりもプランの達成に繋がれば誰が主演でも良いのだ。

様々な情報が流れる中にイレギュラーの情報が映し出される。

その一つは最近イレギュラー化した者。持たざる者、影響力はまだ小さい。だが、状勢が大きく動き出そうとしている時である。芽は小さいうちに摘むべきか、抹殺対象に指定する。






そしてもう一人、原石でもあるまいに純粋なる根源の力を宿す者。

6年間注視し続けてきた。プランに組み込むにも排除するにも躊躇いがある。

プランに組み込んだ場合、望む世界では無く彼女が望む世界に改変される可能性が高い。排除しようとしたとき万が一、覚醒されれば不測の事態もあり得る。

そのために『超電磁砲〈レールガン〉』を遠ざけ、プランへ関わりを持たないように配慮したが、ここへ来てプランと関わりを持ち始めている。

何らかの対応が必要となっていた。


571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/06/19(火) 22:32:46.95 ID:w5JthVBAO


上条当麻は眠りから覚醒しようとしていた。

目覚めの前に様々なモノが無意識に頭をよぎっている段階。

その内容はというと、

夜、美琴から漏れ出す電気を右手で美琴の手を握り漸く止めることに成功し家電品の危機は去った。

その後は手を握ったまま泊める、泊めないの口論。

結局、

『乙女を真夜中に放り出すつもり!?』

と言われてしまえば泊めるしかなかった。

しかし、一緒の部屋に寝ることだけは断固拒否した。

意識してしまった後では手を握っているだけで太鼓を連打しているようにドキドキしているのだ。

一緒の部屋に寝るなど精神衛生上良くない。

けれども上条の部屋はワンルーム。寝る場所を分けるにはバスルームへ行くしかない。

最初、上条がバスルームで寝ようとしたが美琴がそれに反対。美琴がバスルームで寝ると言い張る。

再び口論となる。

美琴に鍵が内側からかかる場所だからと言われてしまえばグッと詰まり、

(鍵なんかなくても上条さんは紳士ですからそんな心配はいりません)

と言いたかったがそれじゃあ一緒の部屋でも良いじゃん、という心の声が聞こえてくる。

(美琴を襲ったりとか手を出したりなんか絶対に、絶対に……ない?)

という思考が瞬時に頭の中を駆け巡り、わかりましたと言うほかなかった。

572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/06/19(火) 22:36:37.81 ID:w5JthVBAO


そうして、ベッドとバスルームに別れて眠りについた。

寝ている間でも、ふっと目が覚めるときがある。

夢だったんだろうけど。

物音がしたと思ったんだ。

目を開けると美琴がいた。

水でも飲みに起き出して来たんだろう。

そのままバスルームに戻ろうとしている。

声をかけた。

「美琴このまま何処にも行かないで、ずっと側にいてくれ」

夢の中じゃないと言えないセリフだ。

美琴はベッドの傍らまで来てくれ、ベッドへもたれかかった。

そのまま、また眠りに落ちる。

(……………………。)

(うわァーーーーーーー!!!!????)

一気に目が覚める。窓から日が射して、もう朝だとわかる。

上条(ギャーーー、夢の中とはいえ何言ってんでせうか?『美琴このまま何処にも行かないで、ずっと側にいてくれ』ギャー。恥ずかしい、こっぱずかしい!ん?今実際に叫んでねえよな)

静かにまわりを見渡すとバスルームの前に美琴が見えた。

電話をしているようで携帯電話を耳にあてている。険しい表情をしていた。

何かあったんだろうかと不審に思うが美琴から言葉を発すること無く、すぐに電話を終える。

美琴は携帯電話をしまうとバスルームに入っていった。


573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/06/19(火) 22:43:46.94 ID:w5JthVBAO


上条(……起きたらシャワーを浴びたいって言ってたか………それじゃ、今バスルームの中は)

シャワーが流れる音がする。

上条(……考えたらダメだ、考えたら)

そう思いながらも悶々とした妄想が膨らんでくる。

上条(こ、こういう時はど、どうすればいいんだ?そ、そうだ誰か素数を数えればいいとか言ってたか。って素数てなんだっけ?ああ、そうだ確か2、3、5、7、11……次は13に17だろ19えーと23……そういや、なんで美琴、バスルームの外に出てたんだ?シャワー浴びるんならそのまま中にいればいいじゃねえか?電話も……わざわざ出てくる必要ねえんだし)

夢だと思っていた事を思い出す。

上条「ゆ、夢じゃなかった!?」

上条の顔が赤くなる。

上条「き、聞かれた!?あんな恥ずかしいのっ、まるでプロポーズのセリフじゃねえかよ!ゆ、夢だよなっ夢!夢じゃなかったらどうすんだ?美琴に返事を聞けば良いのか?聞けねー!聞けねーよそんなこと!もしOK貰ったらどうする?」

574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/06/19(火) 22:47:24.89 ID:w5JthVBAO



上条「ナイナイないに決まってるけど、俺の不幸に付き合わせるわけにはいかないだろ?就職すれば即会社が倒産とか、家を買ったら欠陥住宅とかそんな人生に付き合わせられねー!美琴ならそんなんでも笑い飛ばしてくれるだろうけど」

その後もベッドに座ったまま顔を枕に突っ伏してブツブツ呟いているとガチャっとバスルームの扉が開く音がする。


575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/06/19(火) 22:54:01.79 ID:w5JthVBAO


美琴(シャンプーとボディソープを借りちゃったけど……うー、やっぱ恥ずかしい!!普段、当麻が使ってるんだから香りが、当麻に包まれてるようで、なんかこんなところ当麻に見られたくない……)
「……って!!?何で、アンタ起きてんのよッ!」

美琴がバスルームから出て目に映ったのはベッドの上の上条。変な姿勢で美琴を見ていた。

上条「い、いや、美琴ッ!朝だから、さすがに日も高くなってるから、おっ起きますよッ!」

姿勢を正しながら時計を見ると10時を指しかけていた。夏休みとはいえ朝というには遅い時間である。

上条の目に美琴はシャワーを浴びて髪は艶やかに肌はしっとりとしているように見える。

オマケを言えば肌は上気して赤らんでいる。実を言えばシャワーを浴び終わったところを見られて恥ずかしくて赤くなっているだけだったが。

美琴「い、いつから起きてたのよっ!」

よけいに赤みをましながら美琴が叫ぶと、

上条「あ、あ、あ、あっ、その電話が終わった頃に起きてましたっ」

理不尽に激昂しかけながら、いやすでに激昂して、

美琴「そんなに前からッ!!」

上条「な、な、何で、怒ってんだ美琴ッ!!」


576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/06/19(火) 22:59:16.39 ID:w5JthVBAO


美琴は続けて何か叫ぼうとして、不安がよぎる。

美琴(まさか、電話の内容を聞かれてた?)

美琴「そ、その電話の内容は聞こえてたかな?」

怒っている表情も今の戸惑っている表情も可愛いいと思いながら上条は、

上条「もう、電話を切るかどうかってところでなんも聞いてねえって」

美琴「ああ、そう天気予報を聞いてて、独り言を言ってたから聞かれてたら恥ずかしいかなって思って」

何か言い訳にしか聞こえなかったが、上条にはもっと重要なことがあり深く追及しなかった。それがのちに後悔することになる。

上条(聞くべきか聞かざるべきか?……直にあのセリフのことを聞いちまったら、あっ後には引けなくなるう。グワッ、どっどうすればいいんだ?……そ、そうだ!)

上条「な、なあ美琴。なんでわざわざ風呂場から出て電話してたんだ?」

ギクッ

美琴に動揺が走る。
上条(やっぱ、やっちまったのかーーーッ!)

美琴(い、言えない!いつの間にかベッドにもたれかかって寝てたなんてッ!!!)

咄嗟に、

美琴「お水を飲みたくなって、ほらバスルームの中ってエアコンとか無いでしょ!それで起きたついでに電話してたのよっ!」


577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/06/19(火) 23:15:59.24 ID:w5JthVBAO


上条「本当かっ!」
(いや、夢の中でも水分を取りに出てきたときだった。起きる間際だったりしたら!?この美琴の動揺っぷりからすると?)

美琴「何よ!それがどうしたって言うの!?」

上条(もう正直に聞くしかないのか!?まてまてまてまてっ!)
「そ、その時、へっ変な寝言を言ってなかったか、おっ俺?」

美琴「へっ?変な寝言?」

記憶に引っ掛かるものがあったがぼやけてて分からない。ならば隠し通すことが最優先である。これ以上動揺したところを見せれば勘ぐられると思い、

美琴「知らないわよ。なんか言った覚えでもあるのっ?」

できる限り心を落ち着けて答えた。

上条「そ、そうか家電品が全滅しかけたから夢見が悪かったんだろうなー」
(聞いたかもしんねーけど、知らないフリしてくれるなら……それはそれで寂しいって、また何考えてんだよっ!)

美琴「当麻。悪かったわねッ!」

ニッコリ怖い顔で言われる。家電品のことは余分だった。父に対する母を思いおこさせるものがあった。

上条「そんなつもりじゃありませんのことよ。上条さんは!」

躱す目的でおどけながら言うと、

美琴「良いわよ。でも、もう時間も時間だし、当麻も準備してインデックスのところへ向かいましょ」

あっさり許してくれたと安堵して時計に目を向けると先程見たときより30分ほど進んでいた。

慌てて上条も出掛ける準備を済ませ2人でインデックスのもとへ向かう。

578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/06/19(火) 23:19:03.22 ID:w5JthVBAO
此処まで

お勧めスレで大勢のなかでも名前があがるとやっぱり嬉しいです。ありがとうございます。
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 23:40:46.45 ID:pkkSqOoeo
おつにゃんだよ!

580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/06/19(火) 23:50:35.52 ID:LDvKOZo00
誰も聞いてないからそういうの。
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 00:38:21.52 ID:sWLzQOI80
シリアスパートもラブコメもあるおトク回だったな  次は何が起こるか楽しみにしてる!
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 00:38:42.57 ID:fOtCZRGF0
>>578
いつも楽しみに読んでるよ〜
頑張れ
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 19:08:23.22 ID:zlzh+u2AO


絹旗は麦野の病室を訪れていた。

麦野は半身をベッドに預けて起き上がっている。絹旗は椅子に座り麦野に向かい合っていた。

絹旗「麦野はもう体は大丈夫なんですか?」

麦野「体の方はねぇ左腕がないからバランスをとるのに苦労してるわ。義手を用意してもらってるから義眼を含めてそれから慣らし運転ね」

麦野「それでなんの用事、ただの見舞いじゃないんでしょ絹旗?」

ここ数日、絹旗はあることを個人的に調査していた。その調査もこれ以上踏み込もうとすればチームに迷惑をかけるかもしれなかった。勝手なことは出来ないと思いリーダーの麦野に相談にきたのである。

一応麦野にも関係ある話しではあった。

絹旗「はい。麦野は知ってますか?麦野が浜面に負けたことがかなりの噂になって超流布されていることを?」

麦野の形相が変わる。

麦野「あーんだってッ!!」

絹旗は怒髪天を突くを見る思いだった。こうなるとわかっていたから今まで絹旗はこの噂を麦野の耳に入れてなかった。それはフレンダや滝壺も一緒だろう。

麦野「はーまづらァァァ!いい気になりやがって、そんなに死にたいかァァァッ!」

室内に雄叫びが轟く。

絹旗「麦野、落ち着いて下さい。超浜面じゃありません。噂を流したのは」

ここまでは予想通りの反応である。

麦野「じゃあ誰だって言うのよッ!」

絹旗「統括理事会です、麦野」

麦野「はッ?」


584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 19:13:25.81 ID:zlzh+u2AO


麦野「なんで統括理事会がlevel5が無能力者に負けたなんて噂を流すのよ?なんの利益があるって言うのさ、どちらかと言うとマイナスばかり目に付く話しじゃない?」

麦野が言うのも、もっともである。

学園都市の人口230万人。そのうち約8割180万人が学生。その評価基準は学力と能力である。そのため学力と能力によるヒエラルキーができている。それが学園都市の秩序となる。

また能力は学園都市の存在意義ともなる。そのために能力の高レベルの者に高額の奨学金が与えられ、研究への協力依頼に報酬も支払われる。低レベルの者などまさにモルモット扱いにされる。それに研究者も高レベルの能力者の開発により評価される。

それがその最高峰であるlevel5が、軍隊とも対等に戦えるとされるlevel5が無能力者に負けるなど学園都市の秩序、存在意義を破壊するにも等しい。

普通ならば学園都市の上層部である統括理事会が流布させるような話しではない。

絹旗「それがですね。調査した結果、麦野が傷を負ったその日、麦野の数時間後なんですが」

麦野「もったいつけないでさっさと話しなさい」

絹旗「そんなつもりじゃないんですが、第一位がやはり無能力者に敗れてるらしいんです」



585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 19:20:02.49 ID:zlzh+u2AO


麦野「はァアアアッ!?第一位が無能力者にって、まさか第一位の野郎が負けたってのを誤魔化すために私が浜面に負けたことをわざと流してるってことかァアアアッ!」

絹旗「有り体に言えばそういうことになりますね」

麦野「ふざけやがって!上層部のヤツらそんなに第一位が大事かよッ!」

アノナマッチロイモヤシガアカイメノウサギサンガソンナノガイイノカヨ

等々麦野は悪態をついてたがキリが良いところで、

絹旗「その他にも超隠し通さないといけないことがあるらしいのです」

麦野「ハァッ、ハァッ、ハアッ、ハアッ、ふう、なるほどね、それを調べる許可が欲しいってこと?」

落ち着けば流石にlevel5、頭の回転は早かい。

絹旗「超ヤバ目のところまで踏み込むことになりそうなので『アイテム』に迷惑がかかるかもしれないんです」

それを聞いても麦野はニヤリと笑い、

麦野「いいわよん♪ヤっちゃいなさい、面倒なのが出てきたら私に連絡すればいいから、私がソイツを焼いて上げる」

この辺は以前と変わったところだと絹旗は思う。以前は仲間という意識はあっても自分本位で所詮、道具扱いしていた。

仲間を大事にする意識が芽生えているのかと絹旗が考えていると、

麦野「ところで、そんなに浜面のことが気にかかってるのかな絹旗は?」


586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 19:26:15.64 ID:zlzh+u2AO


ガタッという音がして絹旗は椅子から

こけた。

絹旗「なッなッ何を超唐突に言うんですかッ!そんなこと超ありませんッ!」

麦野「わざわざそんなこと調べるなんて、浜面が大変な状況になってるんじゃないの?あちこちから狙われてるとか」

麦野がニヤニヤしながら絹旗に言うと、

絹旗「いえ、まあ、そうですけど」

絹旗は何を言ってんですかという表情をしていたが、麦野の顔は真剣な表情に戻り、

麦野「気をつけないとこれから浜面は本格的に抹殺対象よ。ちょっとしたいざこざで死んじゃえば、あれはヤッパリまぐれだったで処理できるから」

第一位の敗北を覆い隠すためとはいえ学園都市にとって不利益な話しであるのは間違いない。第一位の話しが噴出する心配がなくなれば用無しになる。

あっさり死んで貰えれば大抵の人は噂は噂でしかなかった思うか、やはりまぐれか奇跡だろうと思う事になる。

「第一位の場合はそんなまぐれも許されないってことか?それとも相手の無能力者も消すことができない人物なのかな?」

絹旗「そのことですが、第一位の相手は判明してます」

麦野「へぇ……誰?」

絹旗「行方不明中の第三位の関係者のようです。麦野は知らないですか?去年、第三位が喧嘩で勝てない相手がいたって話しを?」


587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 19:36:19.11 ID:zlzh+u2AO


麦野「『幻想殺し〈イマジンブレイカー〉』ね、痴話喧嘩の類いって聞いてたけど小娘の分際でナッマイキよね」

絹旗「その相手と同じのようですけど」
(それって楔を打ってるんですか!?その小娘と変わらない歳なんですがって、そんな必要は超どこにもありません!!)
「『幻想殺し〈イマジンブレイカー〉』ですか?」

麦野「あら、絹旗は知らなかったの?都市伝説『能力が効かない能力』の正体よ」

絹旗「あれって、第一位のことじゃなかったんですか?」

麦野「裏の人間でそう思ってるのもいるけど、違うわよ。第三位は表の人間のクセに事件に絡むことが多かったでしょ、正義の味方みたいにね。その協力者として『幻想殺し〈イマジンブレイカー〉』の名前が挙がってたの。それこそ都市伝説通りの話しが残ってるわ」

絹旗「そんなんで無能力者なんですか?」

麦野「話しによれば身体検査で計測できないそうだから、無能力者というか無能力者扱いね」

絹旗「その、詳しいんですね?」

麦野「第三位のことを調べてるうちに周囲の人間のことも情報を仕入れといただけよ」

絹旗(第三位のことがそんなに気になってたんですか麦野?周りの人間まで調べるぐらいに)


588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 19:39:09.29 ID:zlzh+u2AO


麦野「第一位が負けちゃった♪ところを見ると『幻想殺し〈イマジンブレイカー〉』本物ってことか」

第一位が負けたと言うのをいやに嬉しげに言うと、

麦野「じゃあ、ちょっと行ってみましょうか」

絹旗「えッ?」

麦野はベッドから出て立ち上がると何処かへ行こうとする。

絹旗「ど、どこへ行こうと言うのです?」

麦野「第三位『超電磁砲〈レールガン〉』に会いによ。『超電磁砲〈レールガン〉』に聞いてみれば色々手間が省けるじゃない」

絹旗「って!『超電磁砲〈レールガン〉』は行方不明じゃないですか!?」

麦野「そういやあ、律儀に誰にも言ってなかったわね。帰って来てんのよ、『超電磁砲〈レールガン〉』。ついでに言えばこの病院に泊まり込んでんの」

絹旗「えッ?……えーーーーーッ!」

麦野(そういや、あの時一人だけ男が交じってたわね?ひょっとしてあれが『幻想殺し〈イマジンブレイカー〉』?『超電磁砲〈レールガン〉』行方不明後も色々、事件に絡んでる割りには知る人ぞ知るレベルの人間に止まっているのよねぇ。それこそ話が広がらないように。……割を食ったみたいね浜面)

麦野は後ろからくっついてくる絹旗を連れインデックスの病室へと歩いていく。


589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 19:43:20.53 ID:zlzh+u2AO


とある病院、インデックスの病室。

重要な1日の始まり。白井、佐天、初春の3人はすでに集まっていた。

インデックスの容態は神裂から受けた傷自体は治っているものの首輪の影響という発熱、頭痛は続いていた。

気丈に振る舞っているが相当に辛いはず、というのがカエル顔の医者の見立てだった。

緩和するため特別に調合した薬を飲んでいたがどこまで効果があったか定かではない。

しかし、その心配も今日の夜まで。実際には明日の日付になるにしても明日の朝にはインデックスの本当の笑顔が見られる。そう3人は思っていた。

なんと言っても解決策は見つかっている。上条がいて、それに加えて彼女たちが慕う美琴がいてくれる。上手くいかない筈がないという確信があった。他に何もなければ。

自然に空気は緩んでいる。

佐天「それでインデックスぅ、御坂さんは病院に戻って来てないの?」

イン「そうなんだよ!昨日の夕方から出かけて戻って来てないんだよ。心配かも!」

元気な振りをして、それ程美琴を心配している風ではなくインデックスが言うと、

白井「そ、そうですわね、心配ですの……」

唯一、暗い雰囲気が漂っているのは白井。


590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 19:46:21.95 ID:zlzh+u2AO


愛しのお姉さまに会えると喜び勇んで来てみれば美琴は昨日から帰って来ていないらしい。

白井の頭を不吉な予感がよぎる。

佐天「そうですよねー。心配ですよねー。それに上条さんまでまだ来てないんですよねー。上条さんは『お疲れ』で朝寝坊かもしれませんけど。ん?ひょっとしたら御坂さんもかな?」

佐天はすでにおふざけモードに入っていた。

イン「みことの幸せは私の幸せでもあるかも。でも、まだ二人には早すぎるんだよ!姦淫するなかれなんだよ!!」

美琴の幸せを祈りながらも十字教の教えをインデックスは真面目な顔をして言う。

地獄の底から聞こえるかのように、

白井「ふッふッふッふッ、ふアァーーーッ!ありえませんの、ありえませんの、そのようなこと、お姉さまに限って、お姉さま、お姉さま……上条さん、お姉さまに何か仕出かしてたりしてましたら……………殺すッ!!」

その様子を初春は営業スマイルのような笑みを貼り付けて見ていた。

内心はドキドキしながら。

初春(はーーー、非常事態です。佐天さんがノリノリです。白井さんが狂ってます。困りました)

591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 19:57:21.47 ID:zlzh+u2AO


みんなの想像は『美琴が帰って来ていない』、『ではどこかに泊まったのか?』、『ホテル等で正体がバレると不味いのでそれは無いはず』、『でも3人のところへはきていない』、『……まさか上条さんのところ!』、『ではいよいよ』キャーッ!といった連想から成り立っている。

今日この日のことである。

何かあれば誰かのところに連絡があるはず。ということで本当の意味では心配はしてない。

さすがにこう連続して事件がおこるとは思ってないからである。

実は初春に連絡はあったけれどみんなには言えないでいた。
朝、起きて携帯電話を見ると美琴からのメールが届いていた。

メールが送られてきた時間は初春が熟睡している最中。夜遅くにである。真夜中の電話を憚りメールで依頼を伝えようとしたのだろう。

依頼の内容は『打ち止め〈ラストオーダー〉』について。

無言で読み進めていくうち険しい表情になる。そして最後の一文を読んで、

ぬふえぇぇぇ〜〜〜ッ!?

と奇声をあげてしまった。

『帰りが遅くなりそうなので当麻の寮に泊まるから心配しないで』

襲撃計画を知っている初春。夜が明けて初春が病院へ行き美琴が戻ってないことを知ると心配することになるだろうから、と気遣った一文だったに違いない。

しかし、それは中学一年生少女にとって

初春(刺激が強すぎます、御坂さん)

その辺は配慮がかけていたかもしれない。


592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 20:05:17.99 ID:zlzh+u2AO


初春(私がみんなと合流したとき、うっかり話してたらどうなってたんですかね?)

その時は上条の寮に突撃をかましていただろう。特に白井が。

そして非常に不味いシーンを目の当たりにしたかもしれない。

それが容易に想像できたので初春は沈黙を保っていたのである。

ところが美琴の不在は佐天の発想に火をつけてしまった。

今の状況は佐天が特に悪ノリして囃したて白井がウググッと反応するのを楽しみ、インデックスは神の教えがナンタラカンタラと言っている。

想像して楽しんでいるだけとも言えるが、ここで初春が補足でもすれば状況は大きく変わってしまう。

初春の予想では想像が確信に変わり佐天は狂喜乱舞し、白井は泣き叫んで窓の外にダイブするかもしれない。インデックスは……神に祈りでも捧げるのだろうか。

初春(こんなところへ二人一緒に現れでもしたら、私が言わなくても同じことに、むしろもっと大変なことになるんじゃ?…………そうだ!)

まだまだ騒いでいる皆に向かって

初春「すいません。ちょっとお花を摘みに行ってきますね」

そう声をかけておいて初春は二人に電話で忠告をしておこうと病室から出るため扉へと向かった。

と、初春が扉に触る前に扉が開く。

初春(遅かったですかッ!)

初春は二人がもう着いてしまったかと思ったが違った。


593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 20:09:37.77 ID:zlzh+u2AO


扉が開き初春の前に立っていたのは一人の男性だった。

男性の前にいた初春はなんで医師が訪れたのか疑問に思った。カエル顔のお医者さんがインデックスを専属で診ており、今まで他の医師が顔を出すことはなかったからだ。

危険信号が奏でられる。

男性は中に入ろうとしてくる。

咄嗟に初春は前を塞ぎ、妨げようとした。

「『ーーー』。」

男性が何事かを告げるとガクッと初春は崩れ落ちていく。

薄れゆく意識のなかで初春は自分の勘違いに気づくがすぐに闇の中へ落ちてしまった。

白井佐天「「初春ッ!」」

突然のことに白井と佐天は男性を警戒するより先に友人の安否に意識が向いてしまった。

反撃を優先すべきだった。

男性から初春に告げられた言葉が2人にも紡がれる。

眠れ、と。

白井と佐天は初春と同じく力が抜け落ち床に為す術なく倒れるしかなかった。

インデックスはベッドから体がきしむような痛みを感じながら降り立ち、白井と佐天を助け起こそうとするが、男性が声をかける。

「『止まれ』」

その言葉に合わせインデックスは動けなくなる。

「久しいな、禁書目録〈インデックス〉。相も変わらず全てを忘れてくれているようで、私としては変わらぬ君の姿がとても嬉しい」

インデックスは頭痛のするなか術式を解き明かそうとした。

言霊系でもなければ精神操作でも無い。それでも魔術の匂いがする。

イン「まさか……金色の」

594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 20:15:50.38 ID:zlzh+u2AO


麦野と絹旗がその病室の前まで来ると一人の男が二人に背を向け立ち去ろうとするところだった。

何かを抱えているのが見えた麦野は、

麦野「とまりやがれッ、そこの男!」

鋭く、残された右腕を男に向けて麦野は男を制止する。

男は足を止め、顔だけをこちらに向けると、

「轟然、病院で騒ぐものではない」

麦野は牽制するように右腕を向けたまま男を睨み付け、

麦野「何を言ってやがる!お姫様だっこたアァ、どこの王子様だアァ!てめえからは私らと似た匂いがしてんだよッ!似合わねえからその子をさっさと降ろしやがれ!」

男は睨み返す視線をそのままに体を向け直すと、

「憮然、その資格が無いことぐらい貴様に言われんでも分かっている。分かっているが故に不快」

絹旗は急に吠え始めた麦野に唖然とするが、麦野が男を敵と見做すなら絹旗にとっても敵である。それに確かに男からは闇を感じる。

麦野の能力はこの場面では使用し難い。

『原子崩し〈メルトダウナー〉』で病院内をぶち抜くわけにもいかないうえに恐らく麦野が守ろうとしているものを男は抱えている。

ならばと『アイテム』のオフェンス役絹旗が前へでようとする。生身の人間であれば一撃で粉砕する窒素装甲を纏って。
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 20:18:19.95 ID:zlzh+u2AO


絹旗が一歩を踏み出す前に男からスイッチを入れるような声が発せられる。

「『倒れ、伏せ』」

ゴッ…ガァッ!!

それだけで何の前兆も無く麦野と絹旗は床に激しく叩き付けられた。

麦野「が…ッ、はッ」

麦野の肺から息が漏れる。

予感もなく予測も無しでは受け身も取れない。

絹旗は自身の能力、窒素装甲で叩き付けられた衝撃は吸収されている。

ダメージは無い筈だった。

しかし、絹旗の体は思うように動かない。重力に押し潰されるように圧力がかかり床から起き上がることが出来ない。

窒素装甲で守られている絹旗はともかく、麦野にトドメを刺そうとすれば刺せる状態。

絹旗は焦るが、

「歴然、能力者と言えどこの程度の者。トドメを刺すまでもない。先を急ぐのでこれで失礼する」

まるで自分が能力者では無いかのように言い、男は麦野と絹旗に背を向ける。

絹旗は顔をあげることも出来ず、遠ざかっていく足音を聞いているしかなかった。


596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/06/23(土) 20:20:53.77 ID:zlzh+u2AO


その数分後、病院に到着した上条と美琴は惨状を目の当たりにする。

インデックスの病室の近くに数日前に出会った第四位が見知らぬ少女と倒れている。

まさかと思い病室を覗けば白井、佐天と初春までもが室内に倒れていた。

そして、守るべき少女、インデックスの姿がなかった。








第4章 『交錯』

終了
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/06/23(土) 20:21:24.31 ID:zlzh+u2AO
此処まで
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/23(土) 20:23:05.98 ID:nYhOJKqmo


錬金さんチート過ぎwww
各事件の繋がり具合が楽しすぎる
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 20:25:05.58 ID:4bDamgEQ0
チートキャラキター!
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 21:34:26.45 ID:xiy6oLfKo
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 22:23:52.59 ID:e0GkGh7h0
麦のんとアウレオルスさんが…
珍しい邂逅に胸熱だわ
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/24(日) 01:35:36.22 ID:mYr7HN+00

乙、イザードさんは事態をややこしくするだけの人だなw

603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 09:18:53.58 ID:cS+JmpPDO
(´・ω・`)
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 02:25:06.16 ID:2SXbyX4Fo
待ってる
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/07/17(火) 15:25:12.24 ID:qLXqVK2AO
第4.5章
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 15:32:07.96 ID:qLXqVK2AO


そこは異質な空間が展開されていた。

紛う事なき異空間。

ほんの一歩ずれただけで明るい世界がある。夏休みのイベントやどこに遊びに行こうか楽しい会話が為されている。

そこにはそのような会話も届かない。人は無意識にその空間を避け、足を踏み入れようとはしない。

ぽっかり空いたエアポケット。

誰もが避けたがる、障りたくもない空間。

しかし、そうはいかない人々が居た。職務を遂行しなければならない人々が。

遠巻きにどうするか悩んでいた者のうち勇気ある者が遂に足を踏み入れる。

「お水をお持ちしました。ご注文はお決まりでしょうか?」

「あ、俺サービスランチね、ドリンクバーセットで」

「ミサカはミサカはハンバーグランチにしてみる!ってドリンクはオレンジジュースがいいなってミサカはミサカは要求してみる!」

「騒ぐンじゃねェ、くそガキ。ドリンクバーになってンだから注文しとけば浜面が取りに行ってくれンだよォ、俺はステーキランチをレアでドリンクバーを。浜面、俺はコーヒーな」

「へいへい、わかりやしたっ!」

ファミレスのアルバイト店員は引きつりながらプロ意識で注文の確認を済ますと安堵してカウンターに戻る。

607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 15:36:46.79 ID:qLXqVK2AO


学園都市のファミリーレストラン。客層はやはり学生の街らしく学生の友達同士やカップルが多い。

要注意の客としてはスキルアウトの一団や能力者の不良グループ等。

ボックス席を占める3人はそのどれにも当てはまりそうで当てはまらない。

一見すると友達二人にどちらかの妹がくっ付いて来てる様にも見えるが違うようだ。

一人は髪も肌も真っ白い中性的な少年。ため息が漏れる容姿をしているがそれを裏切る凶悪な目つきと口調。

その隣には10才前後の青いワンピースを着てアホ毛がピコンと立っている少女。天真爛漫ではしゃいでは隣りの少年に注意され、ショボンとしてはまたはしゃいでいる。

その二人の前に座っている少年が一番常識人ぽかったがどう見てもチンピラ、スキルアウトに見える。鍛えている体格をしている。しかし鍛えているのは路上。スポーツで鍛え上げたのではない不健康そうなイメージがあるスキルアウトの特徴と一致する。

一人一人ならそう不審も湧かないかもしれないが3人揃うとどうしても違和感が沸き起こる。

近寄りたくない雰囲気の出来上がりである。

608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 15:41:01.52 ID:qLXqVK2AO


浜面は3人分の飲み物をドリンクバーに取りに来ていた。

浜面(なんでこんな事になってんの、俺?世間じゃ世紀末帝王HAMADURAなんて言われちゃってんのに、スキルアウトの幹部なのに、……第一位のパシり……仲間に合わす顔がねぇ)

浜面の不運は腕自慢の挑戦者から逃げ延び、打ち止め〈ラストオーダー〉と名乗る少女と出会ったことから始まった。

第一位のもとに行きたがる少女に付き纏われ根負けして連れて行ったまではいい。

日も昇ったあと、毛布しか身に着けてない少女と一緒に居るところを誰かに見られはしないかとヒヤヒヤものだったが。第一位に預けてこれで終わりと思っていたら首根っこを押さえられた。

比喩ではなく文字通りに、第一位に、学園都市最強に。
血の気が引き、冷や汗が流れた。

一方通行『どこ、行こうとしてンだァ、はァァァまづらァァァッ!』

と言われ、部屋の中へと引きずり込まれて今に至る。

容れたばかり三つの飲み物を見て浜面はハタと気付いてしまった。

自分用のアイスコーヒー、打ち止め〈ラストオーダー〉のオレンジジュースそしてひとつだけ容れ物が違う第一位のホットコーヒー。周りを見てもトレーらしき物はない、どうやって持って帰ればいいのかと。
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 15:45:42.98 ID:qLXqVK2AO


結局、打ち止め〈ラストオーダー〉と第一位を優先して持ち帰り、自分の飲み物のために二往復することにしたのに何故か第一位に遅いと怒られてしまった。

浜面は昼食をとりながら部屋に引きずり込まれた後の事を思い返していた。

最初に自己紹介というか打ち止め〈ラストオーダー〉と名乗る少女の素性があかされる。

あの第三位『超電磁砲〈レールガン〉』のクローン。妹達〈シスターズ〉の20001番目の個体。

この時点で浜面はそうっと腰を浮かして逃げる体勢にはいったが、最強にギロッと睨まれて諦めるしかなかった。

で、第一位学園都市最強の一方通行〈アクセラレーター〉に会いたかった理由。

預けられていた研究所が襲撃を受け、捕らえられる前に脱出し一方通行に保護して貰いたかった、と

一方通行『はァァァッ!なンで1万人もお前らを殺してきた俺がお前を保護するなンてこと考えつくンだよ』

打ち止め『逃がしてくれた芳川が言ってたのってミサカはミサカは説明してみる。一方通行に保護して貰えばどんな敵が来ても安心だよってミサカはミサカは』

浜面『ちょっと待てって!1万人も殺してきたってどういうことよっ!?』

610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 15:48:40.59 ID:qLXqVK2AO


あまりのことに思わず口をついて質問してしまったが、聞くんじゃなかったと後悔することになる。

一方通行から、何の目的があってかは説明されなかったが実験があった事、妹達〈シスターズ〉20000人を殺して達成される実験が実行されていたことを教えられる。

浜面は空恐ろしいものを感じた。何の目的か知らないが20000人を殺す実験?そんな事を考えられる連中に、そんな事ができる一方通行に。

殺し、殺されてきた間柄の二人が向かい合って話している。

ダメだ、この子は一方通行と一緒にいちゃあいけない。守って貰う人が必要なら他にも警備員〈アンチスキル〉や風紀委員〈ジャッジメント〉を頼る手もある。何度かこっぴどくやられたあの警備員〈アンチスキル〉なら喜んで手を貸してくれるんじゃないかと、そんな事を浜面が考えているうちにも一方通行と打ち止めの話しは続いていた。

打ち止め『でも、あなたは止めて欲しかったんじゃないのってミサカはミサカは推測してみる』

一方通行『何だよそりゃァ?どこをどうすりゃあそンな変換ができンだよォ?』

打ち止め『今になって理解できることもあるのってミサカはミサカは分析してみたり』

611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 15:52:16.62 ID:qLXqVK2AO


打ち止め『あなたは実験の前にミサカ達に何度か話しかけてる、ひどい言葉で汚い言葉でミサカ達を罵倒して、怖がらせるように、脅えさせるようにミサカ達にもう戦うのは嫌だって言わせたいように、ってミサカはミサカは述べてみる』

打ち止め『変わったのは9982番目の実験のあと、あなたは何故か誰かを待ちわびてるかのように実験場に早くきていた、それ以前は良くて10分前だったのに30分も早くってミサカはミサカは記録を照合してみる』

打ち止め『あの人と戦っている最中、何度も止めてみろって言ってたってミサカはミサカは思い返してみる』

打ち止め『殺せ、と誰を誰に向かって言ってたのかなってミサカはミサカは尋ねてみる』

打ち止めが一旦言葉を止めると、

一方通行『自殺願望なんざねェよ』

虚しいモノを、還らないモノを吐き出すように言った。

打ち止め『止めて欲しかったんだねって、気付いてあげられなくてゴメンってミサカはミサカは謝ってみる』

浜面が一方通行の顔を見ると苦り切った顔をしていた。

図星だったのか、それとも打ち止めに言われるまで自分自身でも気付いてなかったのか?

今、気付いたのならば還ってこないモノが多すぎる。

612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 15:54:41.23 ID:qLXqVK2AO


浜面は信じられない思いだった。

学園都市第一位最強の一方通行が負けたということに、しかも浜面と同じ無能力者に、一体誰が倒したというのかと思った。

それも浜面が第四位の麦野と戦ったのと同じ日という偶然にも浜面は驚愕していた。

打ち止め『ミサカ達は教えてもらった、ミサカはミサカの価値を教えてもらったって断言してみる。ミサカが死ぬことで涙を流す人がいるんだって事を教えてもらったから、ってミサカはミサカは無い胸を張って宣言する。だからもうミサカは死なない、これ以上は一人だって死んでやる事はできない、ってミサカはミサカは考えてる』

浜面『そうだな、泣いてくれる誰かが居てくれるじゃそう簡単に死ねねぇよな。俺も上手く言えねぇけど、俺なんかスキルアウトで、ようするに無能力者で学園都市から見たら無価値のうえ、虫けら扱いだ。それでも生きてる。足掻いて、もがいて泥を啜りながらでも。学園都市から決められた価値なんかクソ食らえだって思ってな、自分達の価値は自分で決める。同じ思いを抱えている仲間がいて、そいつらが俺になんかあったら泣いてくれる。命を懸けて助けてくれる仲間が居てくれる。死ねねぇよな』


613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 16:02:56.12 ID:qLXqVK2AO



それが浜面が打ち止めの宣言に共感して口につい出てしまった言葉だった。

浜面達は無能力者狩り達の集合場所に向かった時、悲壮な決意を固めていた。

力の無い子供達を命に代えて守る。

力が無くとも皆が力を合わせ弱き者を守る。

それが、リーダーが仲間に言っていたスキルアウトの誇りだ、と。

無能力者狩り達の集合場所は実際にはもっと凶悪な麦野がいた。リーダーは麦野から仲間を守るため死ぬ覚悟で立ち向かった。

そしてフレメアがリーダーを庇ったのを見たとき、浜面は一つの答えを出した。

リーダーを逃すため浜面が麦野と戦り合ったが勝利条件は生き残ること。level5に勝とう等とは思ってもいなかった。その結果は『幸運』が微笑んでくれたのかもしれない。守るべきモノを守れたとしても悲しみを背負わせてはいけない、そう思い浜面が努力した結果だった。

浜面はエラくクサいことを言ってしまったと頭を掻いていたら。

打ち止めはキョトンと浜面を見て、

打ち止め『うーん、あなたはあの人に似てるのかなってミサカはミサカは悩んでみる』

一方通行の方は横を向いて浜面に顔を見せないようにしていた。

浜面は笑い出したくなるのを我慢してんだろうと思い腹も立ったが我慢してくれるだけマシかと思い直した。

614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 16:07:50.96 ID:qLXqVK2AO


そうして最初の打ち止めの要請、打ち止めを保護するかどうかの問題に立ち返るわけだが、それを問う前に、

きゅるるる〜〜〜

と打ち止めから可愛らしいお腹の音が鳴った。

一方通行はまた苦り切った顔をしながら財布を取り出すと浜面に

一方通行『これで、食い物とコイツの下……服装一式を買って来い』

思わず浜面は

浜面『なんで俺がっ!?』

と言うと一方通行は愉快そうに

一方通行『イイね、イイねェ、はァァァまづらァァァ、イイ根性してンじゃねェか、俺に買って来いってか?』

それを聞いて女児ものの服や下着を選ぶ一方通行を想像するとかなりシュールだった。だからと言って浜面に置き換えてもまともに見えるわけじゃない。誰にも見せたく無い姿である。

一方通行『早くしねェと、はァまづらァァァ愉快なオブジェになりてェのかッ!』

一方通行に叩き出されたものの、さすがに店で変な目で見られるのは耐え難かった。悩んだ末に服装一式は絹旗に頼むことにした。

絹旗はすぐに用意してくれたがやはり絹旗から浜面は変態扱いされてしまった。

615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 16:11:16.20 ID:qLXqVK2AO


その後、一方通行は勝手にしろと、打ち止めが部屋に留まるのを容認している。

浜面は2人っきりにさせるのが心配で居着いているのだが一方通行からはパシり扱いされている。

今日はおかしな共同生活4日目だった。

3日間を振り返って見ると浜面の心配は杞憂だったかもしれない。

一方通行は打ち止めのことを邪険に扱っているようで、しっかり見ている。

無視しているようで要所要所で面倒をみている。

浜面が一方通行に思っていた感想、基本的に他人に無関心というのは間違っていたかもしれないと思い始めていた。

夜の路地裏を主な居場所としていたのはひょっとしたら一方通行が狙われた時、無関係な者が巻き添えにならないため、夜に襲撃を受け隣室の者に迷惑をかけないため、だったのかもしれない。

一人きりで孤独でいることを選択していたのかもしれない。

誰にも迷惑をかけないように生きて行くために。

だったら何故、20000人を殺す実験に協力したのか分からない。

もしかしたら何かが変わると思ったのか?

3日間を過ごして来て思ったのはコイツ本当は寂しかったんじゃねぇ?ということだった。


616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 16:12:53.41 ID:qLXqVK2AO


一人でいることを選んだ一方通行。選んだからといって人の心はそう単純じゃない。

打ち止めと浜面に対する態度を見ていたら見えてくるモノもある。

側に誰かが居ることに慣れない雰囲気。

怒っているようで実は距離感が掴めない自分に苛立っているだけ。

一方通行の行動、言葉を裏返してみれば心の奥底では誰かとの繋がりを求めている。

浜面は自分の昼食を終え、悪戦苦闘しながら食事を続ける打ち止めの世話をしている一方通行を眺めて、

浜面(学園都市第一位の頭脳?アホだろ)

一方通行が精神感応〈テレパス〉でも使えたら殺されそうな事を考えていた。

level5のそのまた第一位という地位。無能力者でスキルアウトという底辺中の底辺。海賊ラジオが以前に放送した表現からしたら無能力者はピラミッドの下に広がる砂粒。level5はそのピラミッドの頂点どころではなく、その上を飛ぶ鳥でもない、お空に輝くお星様である。

それ程に立場が違ったとしても実験動物、人間扱いされてないのは一緒である。

浜面にはリーダーをはじめとした仲間がいてくれた。

617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 16:18:17.72 ID:qLXqVK2AO


一方通行には誰が居たというのか?

恐れと妬み、興味があるのは一方通行の能力だけという環境で。

ただ、手を伸ばしたら居たかもしれない。好意を向けてくれた人が居たかもしれない。好意を向けたら応えてくれた人が居たかもしれない。

世界は残酷であるけれども、ほんの少しのことで変わることもある。

浜面にしても超能力者になる夢があった。結果は残酷なものだったが変わりに手を伸ばせば仲間がいた。

求めれば良かった。手を伸ばせば良かった。声をかけるだけでも良かった。誰かに。

浜面(ホント、バカだよ)

打ち止めの食事も終わりかけていた。オレンジジュースがもう残っていないのに気がついた浜面はおかわりを容れてこようと打ち止めの前にあるグラスを手に取り席を立った。

一方通行は相変わらずのしかめっ面をしながら打ち止めにおかわりを取ってくる、と声をかける浜面を見送っていた。

一方通行(はァ、いつまでこンな家族ごっこみてェなことしてなきゃなンねェンだ?)

そう思いながらも何かが変わったことに一方通行も気がついていた。

きっかけはあの少女との再会。間違えたことに気がつきはしたが何を間違えたのか分かってなかった。

そしてあの無能力者との戦いでの負け。

618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 16:21:29.25 ID:qLXqVK2AO


あの日、打ち止めが言うようにあの少女が現れるのを待っていたのか。

また話しがしたかっただけなのか、断罪して貰いたかったのか、現れたのはあの無能力者だった。

ヒーローのように現れて妹達〈シスターズ〉を助けようとする無能力者を見て、お前じゃないとイラついた。

挑発し叩き潰してやろうと思った。

そしてあの少女が現れ、終わらそうと思った。ただ終わらそうと思った。

結果は無能力者の拳に打ち抜かれ、一方通行は敗れた。

打ち止めに会うまで何が変わったのか分かってなかったが25日の会話で答えは出ていた。

自分が何を望んでいたのか?絶対の力、無敵ではなく何を求めていたのか、取り戻したかっただけだ、あの頃を。

人の輪の中に居た頃の自分を、あの少女から向けられた笑みを取り戻したかった。それを取り戻せないと再会したときに気づいてしまっていたのだ。

実験への興味も今はない。元より無能力者に敗れたあとはなかったが何を求めていたか気付いた今では実験に協力するつもりはない。

あの熱い拳で凍らせて閉じ込めていたモノが溶け出し、今の状況を生ぬるく感じて一方通行は居心地が悪い。

619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 16:24:52.35 ID:qLXqVK2AO


長い間、自分で作り上げた自分の変化に違和感がある。気色悪いと言ったほうが近い。

それに自分が変わったとしても変わらないモノがある。一方通行を取り巻く状況、学園都市第一位最強という立場。

一方通行の近くにいるということは一方通行を取り巻く状況に巻き込むことになる。

一方通行(いつまでくそガキを預かってなきゃいけねェンだ?さっさと引き取りに来やがれ、いっそのこと俺がその襲撃した奴を潰した方が早ェかもな、そしたらアイツ等のところに帰る必要なンざねェし、浜面にでも預けりゃ、いや定期的に調整が必要だったなコイツら、だったら浜面じゃ難しいかァ?)

そこで何故、浜面のことを信頼した風になるのか一方通行は疑問に思う。

浜面とはそれこそ夜の路地裏でたまに出会うだけの関係だったはずだ。

最初の出会いは一方通行に彼を知らないスキルアウトが絡んできた時だった。そいつ等を潰そうとしたときに止めに入ったのが浜面だった。浜面は足をガタガタさせ、顔は青ざめていた。それでもスキルアウトが逃れるまで一方通行の前に立っていた。浜面のビビり具合に興がそがれ、浜面の名前だけ聞いて見逃してやった。

620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 16:29:40.59 ID:qLXqVK2AO


その後もばったり浜面と出会い、言葉をかけたりしていたが親しいと言える間柄ではないはずだった。

当然、親しい間柄でも無いので浜面は一方通行を何かに利用しようとしたことはない。

だったら何故、あの日、25日に浜面を招き入れたのか?打ち止めとの会話を聞かせたのか?聞いて貰いたかったのか?誰かに断罪して貰いたかったのか?

何故、今も一緒にいるのか?

一方通行は利害関係なく一緒に居られる関係を何と呼ぶか知らない。

一方通行が打ち止めの口まわりについた汚れを拭いてやっていると実験チームから連絡用に持たされた携帯電話が鳴る。

少なくとも25日以前から鳴らなかった電話である。

訝しく思いながら電話にでると

『ア、一方通行か?』

一方通行「……」

『ど、どうしたんだ、こっ答えてくれっ』

一方通行「この電話にでるのが他にいるのかよォ、誰だァお前?」

『あ、ああ済まない、天井だ。わかるだろ天井亜雄だ』

一方通行「その天井君が何の用事で連絡してきたンですかァ?」

天井『いや、一度こちらに出向いて欲しいんだ』

一方通行「はァ?何で今更、そっちに行かなきゃいけねェンだよ?もう実験に興味なンざねェぞ」

621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 16:40:13.81 ID:qLXqVK2AO


天井『そ、そうじゃない、そうじゃないんだ。一方通行は知らないと思うが、ここ数日実験の関連施設が破壊されてるんだ』


天井『それで君の方にも何らかの動きがあるかも知れないと思ってだな、君のことだから心配は要らないだろうと思うが状況説明ぐらいはしておこうということになったんだ』

一方通行「……今すぐ向かえばイイのか?」

天井『ああ、分かってくれて有り難い。今日というわけではないよ、明日あたりには状況がはっきりするだろうから明後日に来てくれればいい」

一方通行「明日には相手が何者か分かるってことか?」

天井『そうだ、明日には調査結果からおおよそのことが判明する予定なんだ』

一方通行「分かった。明後日だな」

一方通行は相手がわかり次第、自ら潰しに行くつもりになっていた。

それは少しの贖罪ともう一度あの少女に悲しい顔をさせないためだった。

と、気がつくと打ち止めが手足をバタバタさせていた。

打ち止めがいることを悟られないために声を出させないよう、一方通行は口元を拭いていた手で口を押さえていたのだ。
一方通行が手を離すと

打ち止め「あなたは急に何をするのってミサカはミサカは精一杯の抗議してみる」

と言って一方通行をポカポカ叩き始めた。

622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 16:45:09.44 ID:qLXqVK2AO


浜面がドリンクバーで一方通行にもコーヒーの追加を持っていこうかと考えていると絹旗からの電話が鳴る。

こんな時にと電話にでると

絹旗『浜面ですかっ?すぐ車を調達して病院まできて下さいっ!』

凄い勢いで言われた。

浜面「ちょっ!ちょっと待て!お前ら下部組織があるだろうがっ、なんで俺が!?」

絹旗『四の五の言わず、浜面は超用意して下さい!そうですね用意する車は人数が乗れるタイプがいいです』

浜面「いや、だから俺にだって用事が!?」

浜面がそういうと少し間が空き

『浜面はそんなにリターンマッチがご希望なのかにゃ』

浜面「ひッ!麦野?」

麦野『次こそ愉快な死体にしてあげてもいいのよ!?』

浜面はため息を一つこぼし、泣きそうな声で了承の返事を携帯電話にする。

取りあえず追加のオレンジジュースとコーヒーを一方通行と打ち止めに届けようとテーブルまで戻った。

そうしたら打ち止めが一方通行をポカポカ可愛らしく叩いていた。

打ち止め「この人ひどいんだよってミサカはミサカは訴えてみる。って浜面に訴えても浜面じゃ役に立たないかってミサカはミサカは残念がってみたり」

浜面は何気に酷いことを言われて肩を落とすが違和感を覚えた。

623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/17(火) 16:52:46.52 ID:qLXqVK2AO


浜面(一方通行が叩かれている?)

兄と幼い妹がじゃれあっている光景に映るかもしれない。

打ち止めも本気で叩いたりしているわけではないが、反射が効いていれば遊びとはいえただじゃ済まないはずだ。

一方通行は打ち止めに対して反射を切っている。一方通行は打ち止めを受け入れている。

出来るじゃねえか、と浜面は思いながら一方通行へ

浜面「すまねえが、ちょいと用事が出来た、先に出るけど打ち止めもいい子にしてろよ」

一方通行は問いかけるように浜面に視線を送る。

浜面「一方通行が心配するようなことじゃねえって。まっ、俺の個人的な事情ってやつだ」

一方通行「何かあったら連絡してこいよ」

浜面「お前の手を借りなきゃなんねえようなことがそうそうあるかよ、心配してくれてありがとな」
一方通行はそっぽを向き

一方通行「…チッ、心配なんざしてねェ」

そんな一方通行に笑ってしまいそうな浜面は二人に別れを告げ車を調達して麦野達の元へと向かう。

とんでもない事が待っているとも知らずに。








第4.5章 終了
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/07/17(火) 16:54:01.46 ID:qLXqVK2AO
此処まで

こんなんでも待っててくれたかたすいませんでした
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 19:43:33.76 ID:I7RNmSemo
乙です
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 20:39:04.30 ID:31wszVRa0
乙 ヅラさんもこっから参戦か 人が多い分進行たいへんだろうけど頑張って  次も待ってる!
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/17(火) 20:58:09.07 ID:38H/pZ14o
ヤバイすこぶる面白い
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 21:31:28.96 ID:3qeOXns0o
互いを認め合ってるパターンの一方浜面コンビ大好きなんですよ、乙
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/07/20(金) 16:19:41.11 ID:gkEaHs/AO
第5章 『魔神』
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/20(金) 16:22:02.98 ID:gkEaHs/AO


美琴「初春さん!しっかりして初春さんっ!?」

上条「何がおこったんだっ?インデックスはどこだ!?」

上条と美琴の2人は廊下に倒れている麦野と絹旗を見て、インデックスの病室に駆け込むと白井、佐天、初春までが倒れ伏しているのを発見する。

まず、入り口に倒れていた初春を美琴が抱え起こし呼びかけるが何も反応がない。

呼気もある、脈を確かめても異常があるようには見受けられない。

悪いと思ったが美琴は佐天と白井の方も心配で抱えている初春の頭を上条に代わりに支えてもらい白井と佐天の方へと向かおうとした。

すると

初春「う、ううん、あれ?上条さん?」

上条が右手で初春の頭に触ると初春は急に目を覚す。

上条「お、おい大丈夫なのか?どっかケガは!?」

美琴「えっ!?どういうこと?」

初春「えっ、ええと、はっ!男の人は?白い服を着た男の人が現れてっ!?」

美琴「初春さん、何があったの?」

初春「扉が開いたら男の人が立っていて、白い服を着ていたのでお医者さんかと勘違いしたんですけど、その人が何か言ったんです……たしか眠れって、その後の記憶が」

美琴は超能力か魔術か分からないがその影響と、見当づけると

631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/20(金) 16:33:25.96 ID:gkEaHs/AO


美琴「当麻っ!みんなの頭を触ってきて魔術か超能力かわからないけど精神に及ぼす力だわっ!」

上条「分かったっ!頭を触ってきたらいいんだな!」

美琴「お願いっ!」

上条は佐天と白井の頭に右手で触ると2人とも気がつく。

白井と佐天に美琴が問いかけても初春が倒れたあと、同じ状態に陥って詳しいことがわからない。

上条は佐天と白井が眠りから覚める兆候をみると廊下に倒れている2人に向かっていた。

上条がまず小さい女の子から右手で触ろうとすると

絹旗「うぐぐぐ、誰ですっ、くっ、こんな時に!」

上条「うん!?こっちは眠ってるんじゃなかったのか?ちょっと待ってろ」

上条が右手で絹旗に触ると何かを壊した手応えがした。

そしてもう一人、麦野にも触れると、麦野は立ち上がろうとする。

ただ、片手では起き上がるには難しいようで上条が手助けしてようやく立ち上がることが出来た。

絹旗「その、麦野。大丈夫ですか?」

恐る恐る絹旗が尋ねるが、麦野から返事はない。

上条も助け起こした後は後ずさりするように麦野から離れている。そのままそばにいたら喰い殺されそうだった。

麦野はおどろおどろしい空気を纏っている。立ち上る暗黒の気が見えるようであった。

絹旗は麦野がいつ爆発するかと思っていると

麦野「あぁぁあぁぁの野郎ぉッ!なにもんだぁッ!なめやがってッ!許さねぇぇぇ、ぜってぇぇぇ許さねぇぇぇッ!」

632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/20(金) 16:40:22.81 ID:gkEaHs/AO


麦野が幽鬼を身につけたまま吼え続けていると、美琴が病室から姿を出す。

美琴「麦野さん、インデックスはッ!インデックスがどうなったか知らないっ!?」

ぐるりと美琴の方をみると

麦野「あぁああん!?連れさらわれたわよッ!止めようとしたんだけど、ねッ!」

麦野「何が倒れ伏せだぁぁぁ!?あの野郎ォ」

美琴「第五位の幻覚とかじゃなかったのよねっ!?」

麦野「第五位だぁ!?幻覚ぅッ?そんなものあたしに効くかってえぇのっ!」

麦野は自分のこめかみに右手をいれ話を続ける。

麦野「私の能力は根っこではアンタとおんなじさっ、暗部で活動している私が精神操作系能力の対策してないわけないじゃない」

美琴も第五位心理掌握と元々同じ常盤台中学の生徒だ。

イタズラで仕掛けてくる第五位の精神操作を電磁バリアでブロックしてたりした。

麦野も美琴と同じ系統であるというなら同様にブロックすることも可能であろう。

美琴も本当に第五位の仕業と考えてはいない。
超能力者で言葉だけで人を眠らせる、人を倒れ伏せさせられる、level5の麦野をも含んで出来るとしたら第五位ぐらいしか思いつかない。但し、第五位は女性であるし証言ではインデックスを連れ去った者は男。

それに第五位にインデックスを連れ去る理由はない。

633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/20(金) 16:47:58.17 ID:gkEaHs/AO


あくまでも可能性を排除するための確認にすぎない。

美琴「幻覚、精神操作系の能力者じゃないとなると……」

ならば、インデックスを連れ去った男は魔術師。

美琴「麦野さん、その男どんな姿をしていたの?白い服を着ていたっていうのは黒子達に聞けたけど」

麦野「あん?上等そうなスーツだったわよ。それに変な髪の色をしてた」

絹旗「緑色です、超日本人ではありませんね」

麦野「それと身長は結構あったんじゃないかな?」

絹旗「2m近くはありました。そういえば首筋に針か何かを刺してたような…」

麦野「絹旗、あんたね」

美琴「針か……」

どのような魔術を使ったかはインデックスがいない現状では美琴も皆目見当がつかない。

上条「美琴、誰か思い当たるヤツはいないのか?」

美琴はこの一年間様々な魔術を見てきた。魔術は科学では理解不能なことを起こせるが実は種も仕掛けもあることを知っている。

美琴「インデックスも言ってたけど魔術も学問よ。理論だった何らかの手順を踏まない限り術式は作動しないわ。言葉だけで相手を意のままに操る魔術、針がどんな意味を持つか、私じゃダメね」

634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/20(金) 16:52:15.72 ID:gkEaHs/AO


美琴「男の特徴も思い当たる相手はいないわ、これまで出会ったことのある魔術師じゃない」

麦野「魔術師ぃッ!?」

絹旗「何ですか、それ?」

美琴「知らない方が麦野さんたちのためよ……初春さん、監視カメラからインデックスの行方を追えない?」

その頃には白井と佐天と共に病室から出てきていた初春に美琴は尋ねる。

初春「今ある端末でもここから向かった先を順に追えれば、ただ」

美琴「監視カメラに映ってなければ、無理ね。兎に角やってみて、姿が映ってればラッキーよ……私は専門家に当たってみるから」

上条「専門家って?」

美琴「あの2人のこと、忘れてんの?」

上条「あッ!」

魔術師の2人に。

そういえば、連絡はしてくるもののインデックスに会いに来なかった2人。妹達のことに気を取られ美琴は深く考えてなかった。

神裂からステイルがまだ会いづらいと言っている、そう言われればそういうものかと美琴も納得していた。

本当は何か美琴が知らない事情があったのかもしれない。

インデックスを連れ去った男に関する何かが。

携帯電話を開きアドレス帳から神裂火織の番号を選ぶ。

635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/20(金) 16:57:44.29 ID:gkEaHs/AO


呼び出し音が鳴り

神裂『は、はい?…神裂です…』

まだ、携帯電話を扱い慣れてない雰囲気がする神裂が電話にでる。

美琴「神裂さん、心して聞いて……インデックスが攫われたの」

神裂『なッ!……まさか』

美琴「思い当たるヤツいる?攫ったのは白いスーツ姿に緑色の髪の毛、身長は2mぐらいの男、なんかそういう情報入ってない?」

神裂『……あります。やられました、こちらは陽動に嵌まっていたわけですか……』

美琴「どういうことよ?」

神裂『…25日に件の魔術師の襲撃を受けました。ステイルと2人で処理しようとしたのですが、私達をこちらに誘導する時間稼ぎだったのでは』

美琴「うん?神裂さん今どこにいるの?」

神裂『第10学区という場所にある廃ビルです。ようやく拠点を掴んだと思って踏み込んだのですが、仕掛けられた罠ばかりで彼の者の姿はありません』

美琴「そこに至るルートが用意されてたってことね。手の込んだことを、随分頭が回るヤツみたいね」

神裂『はい、何と言ってもインデックスの先生をしていたほどの者ですから』

美琴「えッ!?」

神裂『彼の者の名はアウレオルス=イザード』

636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/20(金) 17:02:20.66 ID:gkEaHs/AO


アウレオルス=イザードは膝の上にインデックスの頭部を乗せ車の後部座席に座っていた。

車は学園都市における彼の拠点、三沢塾へと向かっている。

今のところ彼の『思い通り』にことは進んでいた。

邪魔な2人、イギリス清教『必要悪の教会』所属の神裂火織とステイル=マグヌスは彼が用意した偽の拠点に踏み込んで、四苦八苦していると予想していた。そこから脱して三沢塾に辿り着いた頃には事は終わっている。インデックスを救うまで邪魔されることはない。

アウレオルス=イザードが三沢塾を拠点としたのは事の成り行きだった。いや主の導きだった。

インデックスを救う手立てを捜し求めて考え抜いた末が吸血鬼。永遠の命を持つ吸血鬼になればインデックスの完全記憶能力であろうと脳を圧迫して死に至ることはない、そう考えてであった。

インデックスの血を吸ってもらい吸血鬼へと変身させるにはまず吸血鬼を捕らえ、こちらの言うことに従わせなければならない。

問題は吸血鬼は伝説に等しくその姿を見た者がいない。どこにいるかも知られていない。

吸血鬼とは本当にいるかも怪しい存在だった。

それを逆説的に証明する者がここ学園都市にいた。

それが『吸血鬼殺し』。

637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/20(金) 17:09:27.16 ID:gkEaHs/AO


『吸血鬼殺し』とは吸血鬼をその血の香りで招き寄せ、血を吸わせることで吸血鬼を消滅させる者。

吸血鬼がいなければ意味を持たない力。

その者『吸血鬼殺し』がここ学園都市の三沢塾にいるという情報を得てアウレオルス=イザードは三沢塾を急襲した。

『吸血鬼殺し』を連れ出し、吸血鬼を招き寄せてインデックスの血を吸わせればインデックスを救える、あと少しだとアウレオルス=イザードは考えていた。

三沢塾を制圧して見つけた『吸血鬼殺し』は可憐な少女だった。インデックスと同じく救われない宿業を背負った少女だった。インデックスと出会ったときと同じくアウレオルス=イザードは見ただけでそれを悟る。

哀れにも思い無理に言うことを聞かすのでは無く、協力を願った。

『吸血鬼殺し』の少女の願いは吸血鬼を殺さなくとも済むようになること。善悪関係なく吸血鬼を招き寄せ死なせてしまう力を封じることだった。少女はそのことに悲しみを背負っていた。

アウレオルス=イザードはインデックスの『歩く教会』ならばその願いは叶うと説明した。吸血鬼殺しの力を抑制できるだけの結界内なら可能であると。

そう『吸血鬼殺し』の少女に語り、インデックスのことも並べて話し協力を願った。

638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/20(金) 17:19:31.72 ID:gkEaHs/AO


『吸血鬼殺し』の少女はインデックスの宿業を聞くと首を傾げ、

『それは、おかしい』

と言った。

アウレオルス=イザードは自分の考えを否定された気分でムッとしてもう一度説明しかけた。

が、その前に少女の方から不可解な点について説明を始めていた。科学的に見て完全記憶能力で人が死ぬことはないと理論詰めて。

アウレオルス=イザードは一概に信じられず調べ始めた。三沢塾は学園都市に構える進学塾である。その辺りの資料も豊富にあり、資料を捜すには少女も手伝ってくれた。その中で知った真実は少女の言うとおりであった。

笑うしかなかった。

騙されていた自分に。

そして嘘であるならインデックスが苦しむのは何らかの魔術の影響と考えるしかない。

インデックスの元へ行き魔術の苦しみから解放する。考えを改めてインデックスの行方を追おうとしたときにインデックスが学園都市に潜入したことを知る。

そしてアウレオルス=イザードは準備を固めこの日を向かえた。

慈しみを込めた目でインデックスを見下ろす。

インデックスを苦しめる魔術を解析して、インデックスを解放する時がきた。

車が止まり三沢塾の前に到着する。

インデックスを抱きかかえて車を降りて三沢塾へと入ろうとすると怪しげな気配がする。

四方から殺気が放たれていた。

そして





「我等、ローマ正教十三騎士団が精鋭」

「背信者アウレオルス=イザードよ、討たせて貰う」

639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/07/20(金) 17:20:12.44 ID:gkEaHs/AO
此処まで
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/07/20(金) 17:24:02.36 ID:gkEaHs/AO
『吸血鬼殺し』じゃなくて『吸血殺し』でした。
すいません
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 21:36:31.15 ID:nYR/DVR3o
乙!
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 23:52:09.40 ID:QexxzeoJ0
間違えやすいよなその名前
おつおつ
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 23:45:05.03 ID:9qr/ANE3o
アウレオルスまで絡んで来るとはなぁ
事態が益々複雑に・・・
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 23:14:08.94 ID:bVwlWnW50
原作で交差しなかったキャラの共演が読めるっていいなぁ
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/25(水) 20:29:50.19 ID:rRQ6ArsAO


神裂『かつて、お話ししたことがあると思います。あの子のために父親になろうとした者、母親に友人に恋人に、そして先生に』

美琴「じゃあ、アウレオルス=イザードって言う人は?」

神裂『はい、私達と同じ歴代のパートナーの一人です』

美琴「そんな人がどうして、って決まってるか……諦められなかったのね」

神裂『恐らく、そうでしょう。彼から見れば私達はあの子の記憶を消そうとする敵』

美琴「伝えておいてくれても良かったのに」

神裂『すいません。私共の手落ちです。ですが十字架を無くされたあなたにお任せする話しではありませんでした』

美琴「学園都市内で超能力者が魔術師を討つわけにはいかない、か……」

神裂『はい、彼は我々を敵として認識しているのでしょうから、話し合いにもならず、戦闘となるでしょう。その場合、勝つのはあなたです。彼は決して実戦向きの魔術師とは言えませんから』

美琴「?、どういうこと神裂さん」

美琴には神裂の言葉に違和感があった。実戦向きでないと言われても現に美琴と同じlevel5の麦野があしらわれている。釈然としないものがあった。

神裂『アウレオルス=イザードは錬金術師です』

646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/25(水) 20:36:57.59 ID:rRQ6ArsAO


それで答えになる、と言いたげな神裂の返事。

美琴もインデックスからの聞きかじりではあるが言っている意味は分かる。

魔術世界において、錬金術師という職業は存在しない。

魔術師となるには占星術、錬金術、召喚術といった分野を一通り学ぶ必要がある。

魔術における基礎学問の一つ。

科学の側からも源流の一つと言える。錬金術の実験の実証から科学的考察は始まった。

それ故に錬金術は発展が望めなくなった。魔術と科学が袂を分かち、公然と敵対関係にはなくとも反目している現状では錬金術は魔術側に留まる限り、更なる『知』の集積ができない。過去の実績に縋るしかない学問となっている。

錬金術師を名乗る者とはそれに縋るしか能がない者とも言える。

美琴「でもインデックスのパートナーが務まる力は持っていたんでしょ?」

神裂『ええ、アウレオルス=イザードはかのパラケルススの末裔でもあります、それ相応の力は持ってますよ。ですが、あなたは錬金術と聞いて何を思い浮かべますか?』

考えるような間が空き、

美琴「鉛を金に変えたり、不死の薬の調合とか?」

647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/25(水) 20:58:25.21 ID:rRQ6ArsAO


美琴は16世紀に盛んに行われた詐欺行為、王侯貴族を相手にペテンを仕掛けた詐欺師といったフレーズが浮かぶと共に、

美琴(うちの父親もアイデア一つでお金を生み出すようなことしてるらしいし錬金術師と言えるかもね)

美琴はそんなことも考えていたが良く言われる当たり障りの無いことを口にしていた。

神裂『それも錬金術師のイメージですが錬金術師の本質は何かを創ることより、創ることから導き出され、実証される『知』にあります』

神裂『科学の側で言う『公式』や『定理』と言ったらよいでしょうか』

神裂『錬金術師の目的はその『公式』、『定理』を調べる事、さらには』

神裂『世界の全てを、頭の中でシミュレートする事』

美琴はまるで超能力の発現の理論を言われている気がして、まさかと思いつつも、

美琴『そうしたシミュレートの結果を現実世界に具現化できるってこと?』

神裂『それが錬金術師の究極の目的でしょう』

美琴はそれでは片手落ちではないかという思いが頭をかすめる。

魔術世界で認識されている世界。自分が見ている範囲での世界。

風が吹けば桶屋が儲かる的に一つの現象を元に次に起きる現象を予測できる人は存在する。空を見て、風を読み、空気を体感して明日の天気を正確に予測する者。

様々な情報をもとに直感的に導きだされた答え。

科学側の教育を受けた美琴にしてみれば魔術世界の認識だけでは何かが足らないと思う。

例えば人は見たい現実だけを見てしまうが現実は違うと言うような。

神の教えだからと星々が地球を中心に回っていると信じても、現実は地球も太陽を中心に回っている星にすぎない。

間違えた認識を現実世界に投影したら世界は歪んでしまわないか?

648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/25(水) 21:06:00.29 ID:rRQ6ArsAO


取り敢えず思考を辞め、

美琴「それでアウレオルス=イザードはそれができるってこと?」

神裂『人の身にて全知全能となるに等しいでしょうね』

神裂『できるのであれば手に負えない相手と言えます。ですが不可能なんですよ。世界の全て、砂浜の一つ一つから夜空の星を語り尽くそうとしたら、どれほどの年月が必要でしょうか?100年?200年でも足りないでしょう』

神裂『その呪文自体は完成しています。ですが人の寿命では呪文を唱え終わることができません』

一方通行が通常のカリキュラムを受けても絶対能力者になるには250年、同様のことかと美琴は思った。

神裂『ですからアウレオルス=イザードの『知』より創られたモノは脅威です。ただ、それを使いこなすだけの力が彼の者にはありません』

戦闘に於ける経験値の差と言うべきか体育会系と文系の違いと言うべきか、美琴は神裂の言葉に頷く。

ならば、麦野や白井達があっさり昏倒させられたのは何故か?

美琴「だったら、針のような物を自分の首に刺して相手を思い通りに動かすことができる魔術ってあるの?」

神裂『……それこそ、先ほどの世界をシミュレートする……黄金練成〈アルス=マグナ〉を思い浮かべてしまいますが、不可能な魔術ですので違うでしょう』

649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/25(水) 21:12:55.17 ID:rRQ6ArsAO


神裂『針を首に刺す、と言われれば東洋医学の分野ですがそれを応用した魔術と言いますと……思い当たる術式はありませんね』

神裂『アウレオルス=イザードが何かを元に創り上げた霊装、首に刺すと声に何等かの作用を及ぼすような?』

美琴「そっか、神裂さんでも詳しいことまでは分からないか……とりあえずインデックスの行方を追ってみるわ」

神裂『そのことですが……我々にお任せ願えないでしょうか?』

美琴「どうして?」

神裂『あなたは今、あの十字架を無くされています』

美琴「そうだけど、またそれ?」

神裂『アウレオルス=イザードは元々はイギリス清教の所属ではありません』

神裂『3年前インデックスのパートナーとなるまで彼の者はローマ正教の隠密記録官〈カンセラリウス〉をしていました』

神裂『隠密記録官〈カンセラリウス〉とは教会に所属しながら魔導書を書き記す、特例中の特例といった者です』

神裂『そのような者がローマ正教を離れるとなると背信に当たります。イギリス清教の庇護が与えられていたうちは良いのですが、イギリス清教からも離反したとなると、ローマ正教から討手が差し向けられている筈です。そうした名がある者を科学側の超能力者が討ったとなると』

650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/25(水) 21:19:55.24 ID:rRQ6ArsAO


美琴「厄介なことになるか……」

美琴「でもっ!」

美琴「そんなことを言ってる場合じゃないでしょっ!」

美琴「アウレオルス=イザードって人がインデックスの首輪を正確に把握してくれてればいいわっ!けど違ったりしたら」

美琴「その人もインデックスを救いたいのよね!?戦闘になるとも限らないじゃない!」

美琴「今は一刻を争うときよ、お互い行方がわかれば連絡を取り合いましょ。速く辿り着いた方が対処する。戦うにしても説得するにしても」

時間が無いというのも事実、神裂も渋々ながら返事をする。

電話をポケットに戻すと美琴は皆の方を振り返った。

初春は手持ちのパソコンから監視カメラの映像を探してくれている。

白井と佐天は初春の両側から初春を挟み込むようにしてパソコンを覗き込んでいた。

上条はというと、

麦野に絡まれていた。

麦野「ふーん、さっきのあれからするとアンタが『幻想殺し〈イマジンブレイカー〉』?」

上条「『幻想殺し〈イマジンブレイカー〉』って俺の右手はたしかにそうだけどよ?」

腰が引けている。

先ほどから較べれば落ち着いているように見えても大型の肉食獣が側にいる気分である、上条は。

651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/25(水) 21:25:06.19 ID:rRQ6ArsAO


麦野は上条に体を寄せながら、

麦野「さっきはありがとうと……ところで何でも消せるってホント?」

機嫌を損ねたら食らいつかれそうな危機感を感じ

上条「い、いやそのー何でもって言っても異能力だけでさ、まあ神様の奇跡でも消せるんじゃってことだけど」

しどろもどろになりながら上条が答えると、

麦野はニヤリと笑い

麦野「じゃあ、第一位を倒したって言うのも本当なのかにゃ?」

可愛らしい言い方に聞こえても、顔は笑っているようで笑ってない。目も挑むような目つきをしている。

上条「えっ?ななななんでそれを知ってるでせうか?」

麦野「へぇ、本当だったのか……どうして第一位と戦り合うことになったんだい?」

麦野が益々上条に近寄り、もうくっ付くかどうかの距離になっている。

上条「そっ、それはその、あー、えーと」

上条は両手を胸の前にかざして麦野の接近を遮ろうとしていたが、別の脅威が起こっているのを察知する。

目の隅に青白い光が走っているのが見える。

美琴「アンタらはっ!こんな時になにやってんのよっ!!!」

青白い光が走り、咄嗟に差し出した右手に吸い込まれるように消えていく。

652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/25(水) 21:29:26.90 ID:rRQ6ArsAO


上条「だから、病院で電撃はマズいって美琴!」

美琴「わかってるわよっ!だからスタンガン以下の威力じゃない!」

上条「そういう問題じゃないだろ、美琴!」

二人がいつものパターンを始めるが、佐天、初春は冷静なものである。映像探しを続けている。

白井もまあいつものことである。低く唸るように呪詛を唱えている。

一人蚊帳の外にあった絹旗は

絹旗「えーと、あれが『幻想殺し〈イマジンブレイカー〉』ですか、本当に電撃が打ち消されましたよ?」

上条が電撃を無効化した様子を見て呟いていた。

そこへ騒ぎの張本人である麦野が近づき、

麦野「絹旗、見たかい?」

絹旗「ええ、見てましたよ、あの右手で能力を打ち消せるんですね」

麦野「第一位を倒したってのもホントらしいし、何か知ってるわね」

絹旗「それで、これからどうするんですか?」

麦野「あのスカした白いスーツ野郎をこのままじゃ済ませねえってのも本当だし……」

麦野「絹旗」

絹旗「はい?」

麦野「浜面を呼びなさい、車を調達させて」

絹旗「えっ?なんで超浜面をです?」

麦野「足が必要でしょう、仕事じゃないから下部組織は使えないわ」

絹旗「あっ、そうですが、いいのですか?」

653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/25(水) 21:35:55.51 ID:rRQ6ArsAO


麦野「それに、側に置いておいた方が安心でしょ」

絹旗「それは……そうかもしれませんね、でもあの二人風紀委員ですよ」

車の調達と言ってもようするに車泥棒である。浜面にしても免許を取れる歳ではない。

チラッと白井と初春の腕章に目をやり、絹旗が言うと、

麦野「大丈夫よ、言わなきゃ分かんないんだから、それにいざとなれば治安活動の緊急処置ってことにすれば問題にならないわよ」

と言ってもその場で電話をするのはマズいと思ったか離れた場所へ二人は移動していく。

上条と美琴の騒ぎも落ち着き、初春の背後からパソコンを覗こうとすると、

初春「ダメです。どんなに探しても映像が残されていません」

全員が押し黙るしかなかった。

上条「あの魔術師の二人からの連絡を待つしかないのか?」

美琴「すぐ動ける状態じゃないわ、動けたとしてもこれから探すんじゃ……」

白井「時間がありませんの、お姉様の言うとおりですと解除に失敗したら……」

初春「どんな災害が学園都市に降りかかるかわかりませんね」

佐天「インデックスを助けるのも無理に……初春、なんとかなんないの?」

初春「当たるだけのことは当たれるだけ、僅かな異変を、街に流れている情報をもとにインデックスさんの居場所を突き止めてみるしか……」

654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/25(水) 21:43:54.33 ID:rRQ6ArsAO


初春はネットに流れる僅かな情報をもとにインデックスを見つけようと様々な掲示板を開いてはそれらしい情報を追っていく。

監視カメラに映像が残されて居なくても誰かが見ていればネットに情報が流れてないか僅かな希望を託して。

実は美琴にはインデックスの行方を探すアテがあった。

それは皆の前でできることではない。美琴は顔を洗って気持ちを切り替えて来ると言い残して皆のそばを離れた。

そのインデックスの行方を探る方法の一つはロンドンの最大主教に連絡を取ること。ロンドンにインデックスの居場所を確認できる霊装がある。それは『歩く教会』に繋がり魔力反応から探り当てているとされていた。

しかし美琴はそうではなくインデックス自体に繋がっていると見ていた。

何故か?

禁書目録を遠隔操作するために。いざという時、最終兵器『魔神』として利用するために。

が、美琴は最大主教に連絡を取る気にはなれない。インデックスを解放しようとしているのに、その敵である最大主教が協力してくれるとも思えない。取引を持ちかけるにも材料がない。

ならば、取引できる材料がある方へ連絡を取るしかない。

携帯電話を取り出し、残されていた跡を追いかける。この状況を予測していたなら跡を辿り、繋がる筈だ。

655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/25(水) 22:29:27.26 ID:rRQ6ArsAO


そして繋がる。この街の支配者に

美琴「アンタの話しに乗ってあげるわよ、教えなさい。インデックスの居場所を」

『提案に乗ってもらうのはいいが、仮にも統括理事会理事長にその物言いはないと思うが、なんだね』

美琴「インデックスの居場所を教えなさいって言ってんのよ、知ってるんでしょ!!」

『何故そう考えるのか教えて欲しいものだ』

美琴「朝の電話でわざわざインデックスのことを持ち出したのはこの状況を想定していたんでしょ!」

美琴「取引に応じざるを得ない状況が来るって分かってたから、朝は大人しく引いたんでしょうがっ!」

監視カメラの映像も初春が言うように残されてないのは誰かに削除された可能性を示す。

『ふむ、確かにそう予測していたが自力で見つけられる可能性もあった、確実と言うわけではない』

『それと相手は魔術師だ。学園都市を預かる立場からすると魔術世界との衝突は避けたいとは思わんかね』

美琴「ぬけぬけと人事のようにっ!」

『まあ良い、提案に乗ってもらえるなら教えてあげよう。三沢塾だ』

美琴「三沢塾?なんでそんなところに」

『外部から支部を出して学園都市内でそれなりの地位を築くために『吸血殺し』という稀少能力者を囲った。それを狙って件の魔術師が三沢塾を制圧。そのまま拠点とした、ということだ』

『では、2日後に機会を設ける』

656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/07/25(水) 22:33:12.36 ID:rRQ6ArsAO


美琴「2日後ね、魔術師との戦闘で役に立たなくなるかもしれないわね」

『そうならない事を祈っている』

美琴「だーれに祈るのかしら、科学の街の長が」

『それはそうだな、それと三沢塾には風紀委員の二人は必ず連れて行きたまえ』

美琴「はあっ、なんで!?」

『まだ、三沢塾には『吸血殺し』が監禁されたままになっている』

『その解放を名目にしておきたい。魔術師との戦闘があっても偶発的なこと、少しでも衝突の可能性を和らげる必要がある。なら風紀委員が一緒にいる方が良い』

美琴「……わかったわ」

連れて行っても外で待機させて戦闘になっても巻き込まなければ良い。白井を大人しくさせておくのが大変だろうが、いざとなれば電撃で眠らしておけば良いと結論付けて電話を切る。

再度、神裂に連絡を取りインデックスの居場所が確認できたことを知らせる。

そうして皆のもとに戻ると神裂らから連絡があり、インデックスが三沢塾に連れて行かれていることがわかったと美琴は報告した。

初春はそれを聞き開いていた各掲示板を閉じていった。

閉じた後、三沢塾での異変を知らせるレスがついたものの、即座に削除されたことを初春は知らない。

657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/07/25(水) 22:33:38.09 ID:rRQ6ArsAO
此処まで
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 22:50:12.85 ID:AmIB83yR0
今回も楽しませってもらった  乙!
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 00:18:56.78 ID:tD6gUYyMo
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 20:47:56.88 ID:/fWlAhpi0
おつうううう!
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 14:39:22.74 ID:oDojI2sAO


浜面(はぁー……level5の連中って愉快なオブジェとか死体とかなんでそんなフレーズが好きなん?level5に進化するときにインプットでもされてんのか?)

ボヤきながら浜面は病院に向かい車を運転していた。

連絡を受けてからすぐに指示に合う車を運良く見つける。

路上駐車してあったファミリー向け3列シーターの車。

8人乗りタイプ。バスでも持ってこいと云うのでなければ文句は無いはず。

とはいえ早く到着しないと何を言われるか不安でもあった。

そうこうしているうちに病院の入り口が見え、浜面はハンドルを切る。

病院の敷地内に車を進めると玄関付近に人影が見えた。数えて見ると人影は7人。

男が一人いるのを除けば女性ばかり。その内見覚えがあるのは2人。麦野沈利と絹旗最愛。

浜面(男一人に女6人?どこのハーレムだよっ、まさかピクニックにでも連れて行けっとかの用事じゃねえだろうなあ?……)
「ぶほッ!?」

車が近づき一人一人がハッキリ目に映るとそのうちの一人が制服を着ているのが分かる。

有名な名門女子中学の制服。ピンクに近い赤毛、ツインテール、思わず腕を確認すると風紀委員の腕章。

噂に聞く常盤台の風紀委員に特徴が合致している。

662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 14:44:01.79 ID:oDojI2sAO


捕まえた相手の心も体も切り刻んで再起不能に追い込む最悪の腹黒。

仲間内でも要注意の風紀委員としてマークされている。

幸い浜面は遭遇したことはなかったが出会いたく無い風紀委員No.1だ。

車が人影に近づくとともに浜面の顔は下がっていきハンドルで顔を隠そうとする。

このまま通り過ぎてしまいたい衝動に駆られるがその時には麦野に車ごと焼かれてしまう。

諦めに似た気持ちで車を7人の前に停める。

すると麦野が運転席側まで回り込んできて

麦野「思ったより早かったわね、浜面」

浜面「(どういうつもりだよ、麦野。あれ風紀委員じゃねえか。俺、突き出されるわけ?トラップに引っ掛けたの、罠なの?)」

殆ど涙目になりながら浜面が言うと

麦野「そんなわけ無いわよ、緊急事態のご協力よ、協力。いざとなったら証言して上げるから心配しないの」

浜面「……ホントだな、あとで知らねっとか無しだからな」

麦野「いい加減ぐだぐだ言わない。全員を乗せたら、……三沢塾って知ってる?」

浜面「一応な、17学区だったか」

麦野「よく知ってたわね、スキ……浜面が興味持つようなところじゃないでしょ?」

663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 14:54:10.91 ID:oDojI2sAO


進学塾に興味があるようなスキルアウトなんか滅多にいない。もしいたら天然記念物レベルである。

話題になるとなれば盗みに入る相談をするか目印にする程度。

麦野の言うとおりであるが

浜面「ヘンテコリンな建物で有名だからな……そこに連れてけば良いのか?」

麦野「そういうことね」

浜面「仕事……なのか?ぞろぞろと風紀委員まで交えて、進学塾に何の用事だよ」

麦野「仕事じゃないけど、救出作戦よ……ほら皆も時間が無いんだから乗りなっ!」

麦野はそれ以上は聞かないでいた方が身のためよ、と目配せをすると残りの6人に声をかけ、自身も運転席後方のドアをスライドさせ浜面の後ろの席に座る。

その向かいのドアから緊張の面持ちで女性陣が乗り込んでくる。

助手席にはただ一人の男子が入ってきた。

上条「済まねー、よろしく頼む」

礼を言う上条に

浜面「いいよ、いいよ俺なんかどうせ不幸の星の下に生まれてきたんだから……」

思わぬネガティブな返事をされ

上条「あー、なんだ、俺のクラスメート曰わく心因的な問題らしい、気にしすぎってとこ?」

同類合い哀れむ感じで上条が励ますつもりで言うと

美琴「それを当麻が言うわけ?いつもいつも不幸だ、不幸だ言ってるアンタが」

最後に乗り込んで来た少女が言った。

664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 15:00:39.10 ID:oDojI2sAO


最後に乗り込んで来た少女、御坂美琴は上条の後ろの席に座る。

2列目の席にlevel5の2人が座ったことになり2人に挟まれて絹旗が3人目として座っていた。

浜面が美琴の声に振り向くと黒いコートのフードを下ろしているところだった。

浜面の目に美琴の顔が映る。

浜面にとってほんの一時間も経たずに別れた顔が4年過ぎて現れたようなもの。

一年前にはメディアを通して見かけたこともある。

打ち止めと一方通行から聞いていたクローンという言葉が浮かんだ。しかし打ち止めと一方通行に聞いていた印象と違う。

浜面は車を発進させながら、

浜面「えーと、この方は?」

と浜面はおずおずと麦野に確認を求めた。

麦野「あん?第三位よ、第三位。超電磁砲〈レールガン〉の御坂美琴。有名人だったから、気になったのかにゃん」

美琴「麦野さん、ちょっと不味いわよっ!」

浜面「えっ?えぇーーーッ!行方不明じゃなかったのかよお!」

麦野「顔を見せてるのに何をいまさら、浜面だったら黙っててくれるわよ」

美琴「そうは言っても」

浜面の頭は混乱していた。

浜面は知っている。

実験があったことを、この御坂美琴のクローンを殺して来た実験を。

665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 15:04:52.69 ID:oDojI2sAO


浜面は車を運転しながらも考えに耽っていた。

御坂美琴が実験について知っているのか知っていないのか。

帰ってきたばかりなら知らない可能性がある。では実験について話すべきか話さざるべきか。

世の中には知らない方が幸せなこともある。

打ち止めのことを考えれば教えるべきとも思う。

打ち止めを守ってくれる人が増えるならいい。

価値の無い無能力者のクローンを作るはずはないが自分に置き換えて見れば、やはり生理的に気持ち悪い。

打ち明けるべきと思っても反応が読めず逡巡せざるをえない。

後ろでは絹旗を挟んで麦野と美琴が話しをしている。絹旗は何というか困った顔をしている姿がバックミラーに映っている。

美琴「だいたいなんで麦野さんたちまで付いて来る必要があんのよ」

麦野「ああ?まだそんなこと言ってるわけぇ、あの男と片を付けねぇと気が済まないって言ってるでしょうが」

美琴「だから、超能力者があの男と戦うなんて不味いんだって」

麦野「関係ないわね、私のプライドの問題よ」

美琴「ああ、もう」

level5の自負もかつて上条に勝負を迫った美琴自身分かっている。

666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 15:09:32.72 ID:oDojI2sAO


病院から出る前にも同じ会話がされ揉めていた。

最後は強硬に同行を迫る麦野に折れてしまった。

跡をつけられ、現場で暴れられたら状況のコントロールが効かなくなる。

それを懸念して認めてしまったのだが勝手に知らない人物に美琴の正体を明かすような真似をされて不満が噴出、話しを蒸し返しての会話。

麦野「足まで確保してあげたんだから文句言われる筋合いは無いわよ」

美琴「それは全員で移動できるっていうのは感謝してるわよ」

美琴「でも関係ない一般人を巻き込んでどうすんのよ」

麦野「一般人ねぇ、それを言ったら後ろのお嬢ちゃん達はどうなのよ」

美琴「あの子たちはインデックスの友達。それに三沢塾の内部まで乗り込むわけじゃないから、入り口付近で待機していて貰うつもりなの」

麦野「なら浜面も車で待機してりゃ問題ないじゃない」

麦野「まあ、浜面も只者じゃないんだけどね」

美琴「何よ、それ?実は身元不詳の第六位なんてオチじゃ無いでしょうね」

麦野「それこそまさかよ……」

麦野は何かインパクトのある言い方を考えていた。

一拍の間を空け紡いで出た言葉は

667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 15:14:00.67 ID:oDojI2sAO


麦野「でも、面白いわね、level5に勝った無能力者が二人並んで座っているのも」

選択されたのはインパクトより面白さを優先した台詞。

浜面「あんなん、お前の自爆じゃねえか、いい加減勘弁してくれよお……」
(って、おいおいlevel5に勝った二人って。ま、まさかコイツが?)

一方通行に勝ったという、妹達〈シスターズ〉を救ったヒーローだというのか、と浜面は助手席に座る上条を見る。

すると上条も浜面を見ていた。ポカーンとした顔で。

車内は車の走行音しか聞こえて来ない。

絹旗は除く5人は麦野と浜面が何を言ったのか上手く頭の回線が繋がらなかった。

絹旗「はぁーーー………」

静寂を破る絹旗のため息がすると

「「「「「えっ、えぇーーーッ!」」」」」

どよめきが起こり、打って変わって喧騒に車内が包まれる。

佐天「このチンピラみたいな人があぁぁぁ?しっ、信じられないッ?」

白井「というか、どこからどこまで見てもチンピラですのーッ!」

初春「まさかッ!巷で噂の世紀末帝王というのはこの人のことですかっ!」

上条「そんな凄い人だったのかーッ!チンピラのモブキャラにしか見えないのにっ!」

668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 15:34:17.45 ID:oDojI2sAO


浜面「何気にひでえ事言ってんじゃねえッ!俺だって物語の主役なんか無理だって分かってんだよっ。ただ自分の人生じゃ主役はってんだ。はあー、もう泣きてえ」

無能力者がlevel5を倒すという偉業を成し遂げた男。上条もその一人であるが彼には幻想殺し〈イマジンブレイカー〉があった。

浜面という上条の横にいる男は徒手空拳で成し遂げたに違いない。

物語の主役になって当然とも思えるのに自分の人生だけで主役になれれば良いと言う。


上条「すまん、すまねえー、すみませんそんなつもり言ったんじゃないんですぅ」

咄嗟に出た言葉を詫びながら心の奥に眠る願望が刺激される。

美琴の方は麦野を見て

美琴「まさかアンタの体、そんなにしたのはっ?」

言うと麦野は美琴ではなく浜面に、隣の絹旗を意識して

麦野「そうよ。浜面にやられちゃったわけ。私の責任でもあるけど乙女の体を傷物にしたんだから浜面に責任取って貰わなきゃ♪」

絹旗「乙女って……それこそ自業自得です。何を言ってるんです、麦野!」

麦野「あら最愛ちゃん、どうしたのかな♪」

浜面「ホント勘弁してくれえ、もう何がなんだかわかんねえよ……ほら、お前ら目的の三沢塾が見えてきたぞ」

言わなければならないこと、聞かなければならないこと、肝心なことが話し出せないまま浜面はフロントガラスの向こうに見える建物に目をやる。

スッと車内の空気が変わる。

これからの戦いに備えて。

669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 15:37:12.97 ID:oDojI2sAO


窓の外に不規則なカタチをしたビルが見える。

浜面がヘンテコリンと言ったのも頷ける建物。

学園都市に意匠をてらった建物はある。

奇抜なデザインをしたビルなど様々だ。

三沢塾自体は一見するとそんなに奇抜には見えない。

ビルそのものはただの四角いビル。12階建てのビルが4棟。十字路を挟んでそれぞれの角に建っているだけ。ところが見上げてみればビルとビルの間を歩道橋のように渡り廊下が繋いでいる。

公共の道路を私物化するように、その十字路を制して建っていた。

建物の意匠より、法律的に良いのかと疑問が浮かぶ。そういう意味で変なビル。

浜面はその変なビルの4棟あるうち、一番近くの1棟の手前に車を横付けする。

浜面「さあて、着いたぜ、これからどうすんだ?」

美琴はすでにドアをスライドさせ開けようとしている。上条もまたドアを開き降り立つ構え。

美琴「もうしょうがないから麦野さんと絹旗さんはついて来ても良いわよ……はあー、ホントに」

麦野「当たり前じゃない」

美琴「言っとくけど、話し合い優先よ、話し合いが。忘れないでねっ!」

美琴が車から降り立ち、麦野と絹旗を促しながら言うと


670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 15:40:35.13 ID:oDojI2sAO


麦野「ハイハイ、相手の出方次第で対処するわよ」

絹旗が美琴に続いて車外に出て麦野もそれに続きながら、そう言っても無理やり戦闘に持っていきそうな雰囲気で言う。

美琴も実のところ話し合いで解決できるとは思っていない。とは言っても魔術を知らない麦野に暴走されても困る。

美琴「(こんな時に面倒な人を抱えたまま対処しないといけないなんて)佐天さんと初春さんはここで待機よ、黒子もねっ」

白井も車外に出ようとしてたが美琴に制止される。

白井「お姉様、黒子はっ!」

美琴「お願い、ここで待機と言っても何が起こるか分からないし、黒子はここを守っていて、浜面さんだっけ、アナタもお願い」

浜面「はは、それで良いんなら待ってるよ……」
(……と言っても、風紀委員と一緒にいるってのは落ち着かねー、それも最悪の風紀委員って噂のとじゃ、はぁ)


白井「お姉様にお願いされたら仕方ないですの……ですが、何かあれば必ずご連絡を、黒子は跳んでいきますの」

美琴「うん、お願いね……あっ、それと神裂さんとステイルが来たら」

白井「はい、お任せ下さい。お姉様にご連絡をとり指示を仰ぎますの」

671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 15:41:51.14 ID:oDojI2sAO


そこへ絹旗が

絹旗「そのひょっとしてですが、神裂さんというのは髪を超ポニーテールにして刀を持っていて、ステイルは赤髪の超不良神父じゃありませんか?」

美琴「えっ、なんで知ってるの?」

絹旗「やはりそうですか……麦野に頼まれて25日にあなた方を探していた際に遭遇した二人組がそのような名で呼んでいたものですから。そうですかあの超不愉快な二人組がそういうことですか」

どちらかと言えば冷静な風に見えていた絹旗に怪しい雰囲気が纏いつきつつあった。

美琴「あの、絹旗さん?あくまでも二人は味方だから、そのいきなり喧嘩をふっかけたりは」

絹旗「分かってます。これでもプロですから。ですが、あの不愉快さは超忘れられません」

美琴「ああ、あとでよく二人には言っとくからアナタにまで暴走されたりしたら収拾つかなくなるから勘弁して」
(あの二人、この子に何をしたのよ?)

気持ちを切り替え4棟とも見える位置まで来ると美琴はまず手近の三沢塾の建物に意識を向ける。

探査用の電磁波を浸透させていく。

壁を超えたところですぐに魔力を感じ取れた。建物の内部に魔力が充満していた。

672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 15:44:51.48 ID:oDojI2sAO


美琴はしばらく探索を続け、他の棟にも向けてみたがアウレオルス=イザードらしき魔力反応を見いだせなかった。

考えられることは建物に満たされている魔力はアウレオルス=イザードの魔力そのもの、赤く塗られた紙を見て最初に塗った箇所を当てるのは難しい。自らの魔力の中に自身を紛れ込ませている。

あわよく居所を見つけてアウレオルス=イザードに遠距離攻撃をしかけることができれば良かった。

麦野には話し合い優先と言っていたが言葉だけで相手を思い通りできるとなるとまともに相対するのは不利。

話し合うにしても状況を整えることが必要となる。いささか乱暴なやり方にはなるが。

ただし探って見たところ居場所を掴めず遠距離攻撃で昏倒さようとしても現状では無理。

だがアウレオルス=イザードの居所を探れなかったとはいえ収穫がなかったわけではない。

上条「で、どうする美琴」

ジッと建物を前にして佇んでいるだけに見えた上条が美琴に声をかける。

美琴「今建物の内部を探ってみたんだけど魔術師の砦になってるわね、ここ」

上条「魔術師の砦?」

673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 15:46:23.77 ID:oDojI2sAO


美琴「そっ、色々とギミックやトラップを仕掛けてくれてるんでしょ。発動してみないと矢が出るか火が出るか分かんないわねえ」

絹旗「そこまで能力で探ることができるのですか?凄いですね」

絹旗は尊敬の眼差しで美琴を改めて見る。

美琴「特定の人を探し当てるまでいかないし、ある程度人の動きが読めるにすぎないわよ。人が多ければそれだけ複雑になるから」

絹旗「それでも流石は第三位と言ったところですね」
(滝壷さんの能力と合わせればかなり便利ですね、麦野の能力も同系統と言いながら応用力が……これが第三位と第四位との差ですか)

その絹旗の隣で麦野は不機嫌そうにしている。

麦野「絹旗、あとでおしおきして欲しい?」

ビクッと震えて絹旗は

絹旗「な、なんでですか!?」

麦野「私より役に立ちそうって思ってるでしょう、うん?」

図星を突かれて絹旗は青ざめ

絹旗「そ、そんなことは」

怯える絹旗を楽しそうに眺めたあと麦野は

麦野「けど、1年前にはこんなこと出来なかったんじゃない?」

美琴に向き直り麦野が尋ねる。

美琴「まあね、1年間の成果と言ったところかしら」


674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 15:49:37.82 ID:oDojI2sAO


美琴は麦野に答えると玄関口を見据え

美琴「じゃ、行きましょうか」

そのまま歩き出した。

上条「いいのか?罠が張られているって自分で言ってたのに正面から入っていくのか?」

一番近くの建物の正面玄関へと歩いていく美琴に上条は慌ててる。

美琴「大丈夫じゃない?建物の中は魔力が満ちてるからどこから侵入しようたって一緒よ、魔力で丸分かり」

美琴「だけど魔力ってそれぞれ魔術師で色があるのよ、能力者で言えばAIM拡散力場が人によって違うのと一緒かな」

美琴「だからアウレオルス=イザードっていう色で染まってる中に違う色があれば誰だって気付くでしょ?」

上条「魔術師が中に入れば別の色がつく。それが警報になるか」

上条は言ってみたものの、まだ要領を得ていない顔をしている。
美琴「そういうこと。魔術師の敵は魔術師。魔術師を対象に警戒網を張ってるんであって生徒は中で授業を受けてる。魔力を持ってない生徒、つまり能力者は警報の対象になってない」

美琴「文明の利器、監視カメラを利用してたとしても私が潰せば済むことよね」

美琴「そういうことで堂々といきましょ、堂々と」

675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/02(木) 15:51:55.23 ID:oDojI2sAO


上条は誰も彼もが警報に引っ掛かるようだと警報にならない、潜伏先として利用するにも平常通りである方が疑いを持たれにくい、美琴の考えが正しいと思い美琴のあとをついて行く。

ただ、頭の中にこびり付いて離れないものがあったが何なのか思いつかない。

美琴も失念していた。

何を?

上条の右手の事を

神が起こす奇跡さえ打ち消す幻想殺し〈イマジンブレイカー〉の事を

美琴を先頭に麦野、絹旗が続き、最後尾を上条が行く。

正面玄関をくぐり、4人が三沢塾に入る。

4人の足音がそれまでしていた。

美琴も楽観していたわけではない。周りを警戒し、4人の位置関係を電磁レーダーで把握していた。

それが足音が3人分となり、電磁レーダーで捉えていた気配も一人消える。

足音については麦野、絹旗も注意していた。

3人が後ろを振り向く。

そこには上条の姿がなかった。

茫然と美琴は立ち尽くす。

美琴「あッ!」

麦野と絹旗は急に姿を消した上条に理解が追い付かなかったが、美琴がこぼした呟きに振り返る。

美琴「やられたって言うか……私、バカだわ」

676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/08/02(木) 15:52:26.17 ID:oDojI2sAO
此処まで
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/08/02(木) 15:56:51.80 ID:oDojI2sAO
次はまた来週中には来たいと思ってます
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 18:00:02.80 ID:3pPrYC1ao
乙です!
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 00:32:01.17 ID:fRFKhXQj0
乙  上条さんに見せ場は来るか? 期待
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/08(水) 10:19:53.05 ID:fz5xeZUlo
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/08/08(水) 18:11:34.21 ID:T+OjtHRAO


上条は前を行く3人が振り向くのを見て驚いた。

どうしたんだ?と聞いても伝わっている様子がない。

上条を見ているようで目の焦点があってなかった。

そして

美琴「あッ!」

麦野と絹旗が美琴のこぼした呟きに振り返る。

美琴「やられたって言うか……私、バカだわ」

上条「美琴?」

美琴「ごめん、聞こえてる当麻?」

上条「聞こえてっけど、どうしたんだ?」

上条は何がどうなっているのか要領を得ない。

美琴「さっき話したように魔術師が侵入すれば別の色がついて見つかるわけ、当麻の右手だと魔力を削ってることになるみたい」

上条「はっ?」

美琴「色が付くんじゃなくて色が付いてない空白部分ができてるの」

上条「じゃあ、俺はその……魔術師に見つかっちまったのか?」

上条はこれの所為かと右手をジッと見る。

美琴「対象になったものを世界から切り離してる」

そう言われても何が起こっているのか実感が湧かない上条は

上条「意味が良く分かんねーよ、美琴」

美琴「世界に拒絶されてる、の方が正しいかな」

上条「それ……やな言い方だな」

世界に嫌われているようで嫌な気分になる。

美琴「警報がなった対象を結果内に取り込んで、日常、私達がいる世界に干渉できなくしているの」

上条「……。」

美琴「今私から当麻の姿も見えないし、声も聞こえない」

682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/08(水) 18:19:04.00 ID:T+OjtHRAO


上条「マジかよ」

だったら外に出たらその状態から脱することができるのではと上条は出口に足を向ける、が。

バゴォン

上条「ぬわッ!ぐおぉおおおぉぉ」

見えない壁に弾き返される。全身に衝撃を受けて上条はのたうち回る。

美琴「ちなみに世界から拒絶されてるから建物に触ろうとしてもはじかれるかもしれないわね」

上条の目の前には通って来たばかりの自動ドアがある。

上条「出来りゃ、もう少し早く言って欲しかった」

上条はのたうち回っている姿を見られなかったことだけは幸いだったと思う。そして自分でドアを開けることができなくても誰かが開けてくれた隙に通り抜けられないかと思っていると

美琴「結界と言うより殺界?多分、外に逃がさないよう檻の役目もしてるわね」

美琴「結界を解くには結界を布いた魔術師が解除するか」

美琴「術式の基点になってる儀式場を壊すしかないけど。わざわざ壊して下さいとばかりに中に作らないでしょうねえ」

上条は美琴の言葉にがっくりしてしまうが、この状況で先ずこれからどう行動するかである。

美琴にはこちらの声が聞こえない、見えない状態なのに上条の目は美琴の目に何故か合っている。

美琴も上条がここに居ると確信しているように見詰めている。

683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/08(水) 18:25:15.12 ID:T+OjtHRAO


美琴「参ったわ。基点になるものは外にあるだろうから、その破壊を優先するにしてもすぐ見つかるか分からない」

上条「じゃあ、ずっとこのままかよ……」

美琴「時間も惜しい……単独で当麻が迂闊に動けばトラップに嵌まるわね、間違いなく」

自分の不幸体質からすれば罠に引っかからない方がおかしい。

上条の姿がみえず声が聞こえないのでは美琴達と一緒に行動することも難しい。

一緒に行動していれば上条がかかった罠に美琴達を巻き込むことにもなりかねない。

上条自身は魔術師に存在を知られている。

それなら

美琴「自分が魔術師を引き付けるからインデックスを探せって言いそうね、当麻は。ホントは安全を確保して欲しいんだけど」

上条「良く分かってるじゃねえか、美琴」

美琴「くれぐれも無茶しないでよ、言っても無駄かな」

美琴はニコッと笑う。

上条「言葉で相手を思い通りに動かすってのなら右手で自分の頭を押さえてりゃ何とかなるさ、心配すんなよ」

上条も笑みを返す。

美琴「私がインデックスを見つけるか」

上条「俺が魔術師をやっつけるのが早いか」

美琴「競争ね」

上条「競争だな」

684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/08(水) 18:37:17.46 ID:T+OjtHRAO


一方の待機組では

佐天「浜面さん、ホントのホントに麦野さんに勝ったんですかー?」

浜面「さっきも言ったけどさ、麦野の自爆だから。AIM拡散力場が乱れてんのにカッカして能力使おうとしたらボンッてなっただけなんだよ。これホントだから」

初春「それはそれで浜面さんがそこまで追いつめてたということでは?」

浜面「それはねえって。俺、無能力者だぜ、逃げ回るしか生き残る道ねえじゃん」

白井「ところで何故に麦野さんと戦う事に?無能力者であるあなたが、その戦かった二人の今のご関係も疑問に思うのですが?」

浜面「風紀委員に話せる話じゃねえな。それに片はついてっから蒸し返す必要もねえ。今は誤解も解けて和解してるから、あんな風になった罪滅ぼし?そんな感じでアイツ等の用事に付き合ってやってんの」

風紀委員に詳細まで話せる内容では無いため話題を変えようと浜面は

浜面「俺なんかより上条と言ったか、そっちがすげえじゃん、学園都市最強に勝ったんだろ?それこそ何の為に戦ったんだ?」

白井「それはその、人それぞれ事情がありますの!」

妹達〈シスターズ〉のことは大っぴらに口外できる話ではなかったから白井も問い詰める方向に戻せない。

その横で初春はこの前に見かけた世紀末帝王HAMADURAスレを皆に見せようとパソコンをネットに繋ぎ検索していた。

685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/08(水) 18:42:07.71 ID:T+OjtHRAO


初春(ありました、これです、これです。レスを確認してから皆さんに)

初春(へぇ、浜面さんてあのスキルアウトの幹部をしてるんですね、あそこのリーダーは人望もあってスキルアウトを纏めてると聞いてましたけど、そう言えば無能力者狩りの事件が頻発してスキルアウトが対抗しているとか?麦野さんと戦闘になったのはその関係でしょうか?)

初春はスレを確認していくうちに一つのレスに目を留める。

初春「えッ?」

佐天「うーいはる、どうしたの?」

初春「いえ、そのー、浜面さんの情報を確認してたんですけどね、……今、浜面さん大変なんですか?」

浜面「はあー……大変も何も噂に乗せられたバカが襲ってくる日々ですよ、ここ3日ぐらいは何もねえけど」

白井「でしたら風紀委員の保護下に入ればそういう心配をせずに済みますの」

浜面「それは流石にな(スキルアウトの俺が風紀委員を頼れる訳ねえって)」

初春は話しを変えながら今見たレスを気にしていた。

初春(浜面さんと一方通行が友人かもって一体?
それに話して無いのに上条さんが戦った相手を学園都市最強と。あの人のことです……)

聞いて良い話しなのか迷う。妹達〈シスターズ〉のことを別にしても気になる。

初春(……お兄ちゃん)

意を決して

初春「あのー」

隣りの白井から着信音が鳴る。

686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/08(水) 18:48:53.68 ID:T+OjtHRAO


着信音に気がそがれ、聞こうとした勇気が萎えてしまい、

初春「……白井さん電話ですよ」

多少不機嫌ぽく白井に声をかける。

白井「あら」

白井が携帯電話を取り出すと別れたばかりの美琴からの電話だった。

そしてしばらく電話をしていると

白井「はい、承知しました、お姉様」

佐天「御坂さんからですか?」

白井「そうですの、早速出番ですの、お姉様のため黒子はやりますのっ!」

美琴から依頼の内容はと云うと。

以前の三沢塾の映像があれば、現在の三沢塾と較べ変化している箇所を探して欲しいと。

理由を尋ねると上条が結界に取り込まれた、事態を打開するため恐らく外に配置してある術式の基点を壊さないといけない。

白井は初春に画像を探して貰い、美琴に期待に応えようと動きだす。

魔術の基点となるもの。ステイルが使うルーンの刻印のような記号。

ではないはず。

外から侵入する魔術師に気付かれる、魔術師から見て分かり易いモノとは違う。

何か当たり前に有るもの、目に入っても気にしないモノ。

場所は三沢塾は十字路を中心に建っている。十字路の真ん中にあるか、4棟それぞれに配置されているのか。

アウレオルス=イザードが三沢塾を占拠する以前であろう画像を探しだし、現状と較べていく。

687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/08(水) 18:53:35.61 ID:T+OjtHRAO


ブオォンと異音をたて80cmほどの天弓から矢が放たれる。

唸りを上げ光を帯びて矢は目標へと向かう。

「『止まれ』」

声と共に矢は光と勢いを失い、空中に止まったかと思うと床に落ちる。

ローマ正教十三騎士団の一人、コードネーム『パーシヴァル』は我が目を疑う。

レプリカとはいえ天弓から放たれた矢が通用しない。あらゆる敵を打ち倒してきた霊装が力なく落ちる様が信じられない。

思えばそれ程難しいミッションではなかった筈。天才と謳われる錬金術師、元穏秘記録官といっても実戦力としては恐れることはない。ローマ正教の実戦部隊として組織され数多くの魔術師、背信者を討伐してきた彼等からしてみれば問題ない。それも経験豊富な精鋭を12名も投入しているのである。錬金術師一人を相手にするには大袈裟すぎると皆思っていた。

それが既に彼とバディを組んでいた『ガウェイン』が打ち倒されている。

他のメンバーもどうなったか知れない。

最初、この三沢塾というビルの前で名乗りをあげ錬金術師に襲いかかった。

錬金術師アウレオルス=イザードはビルの中へ身を避け、彼等も追いかけてビルの内部に進入した。

そこで錬金術師は姿を消す。

688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/08(水) 19:00:11.59 ID:T+OjtHRAO


どのような術式を使ったか分からない。

ビル自体も要塞化されていたが施術鎧により多少の不利は無視できる。

任務に支障ない。任務は成し遂げなければならない。

彼等は二人一組に別れ、錬金術師の探索に回った。

そして『パーシヴァル』と『ガウェイン』が北棟の4階まで進んだとき。

先頭を進んでいた『ガウェイン』が角を曲がろうとしたとき。

『ガウェイン』が吹き飛び、壁に跳ね返され鞠のように弾み床に転がった。

施術鎧を着用していても今のは只ですまない。

『ガウェイン』は身動き一つ取らず、間接を曲がらない方向に曲げ床に倒れている。

『パーシヴァル』は咄嗟に飛び出して天弓から矢を放ったが今の始末である。

どのような術式か検討する余裕はなかった。そのようなことをしていれば『ガウェイン』と同じ目に遭う。

考えている暇はない。

『パーシヴァル』は経験に裏打ちされた行動を取る。

数本の矢を手に取ると天弓につがえ連続して放つ。

最初の矢と同じ結果に終わろうとも構わない。

剣を抜き放ち錬金術師に迫る。

錬金術師が術を行使して矢を打ち落とす間に切り捨てる。

自信があった。彼の経験からすれば。

「『光矢は我を避け、施術鎧の防御力を超える打撃を5つ』」

矢が錬金術師を避けていく。

そして5つの打撃。

689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/08(水) 19:04:26.98 ID:T+OjtHRAO


アウレオルス=イザードは騎士のなれの果てを見下ろしていた。

アウレオルス「憮然『思い通りにはなかなか行かないものだ』」

床に転がる一体は騎士の鎧と呼ぶよりは金属塊と呼ぶほうが近い。

胸部は大きくへこみ、手足の部分はひしゃげ、元の原型を留めていない。

アウレオルスは既に侵入した十三騎士団の半数を仕留めていた。

やろうと思えば最初に襲撃された時点で全員を打ち倒してしまえたかも知れない。

だが、インデックスに害が及ぶのを恐れ、インデックスを抱えたまま三沢塾の北棟最上階、もとは校長室に身を移した。

早くインデックスを苦しめる魔術の解除したかったが、車中での初診でインデックスの喉に見つけた魔法陣を解析するには時間が掛かりそうだった。

その解析中にローマ正教の討手に踏み込んで来られたら堪らない。

そこでこうして迎撃に出ている。

彼自ら手を下さなくても迎撃手段は構えてあったが、もう一人の宿業を背負った少女の願いからやむを得ない場合の最後の手段としておきたかった。

残り半数と思ったところで別の侵入者の反応を感知する。

普通の魔術師の反応とは違う。

690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/08(水) 19:07:40.79 ID:T+OjtHRAO


絵の中に空白があるようなイメージ。それが動いている。

『歩く教会』を着たインデックスならこういうイメージになるのかもしれないとも思う。

恐らく十三騎士団とは別の討手。必要悪の教会のあの二人とも違う未知の侵入者。

何でも『思い通り』に出来る、それだけの力を身に付けた自負はある。が、自分が認識できないモノまで力を及ぼせるか疑念がある。

そのために慎重にインデックスに掛かっている魔術を解析したいのである。

あの少女からの非難を覚悟のうえでアレを使わざるを得ないかも知れない。

アウレオルス「悄然、世はままならぬ物」

研究者として未知なるモノは知識を蓄えられる喜ぶべき存在。

しかしそれは時間が差し迫ってなければだ。

インデックスを攫い、三沢塾に戻るまで順調に進んでいた。

それが今はこんな状態。

嘆く積もりはない。自ら選んだ道である。もう一度インデックスの笑顔を取り戻す為に。

それでも憤りは止められない。

見下ろす騎士はその腹いせを受けたようなもの。

グチャグチャになったそれを見るとこんな事が出来る自分は狂い始めているかと思う。

そして後、何人かは同じ目に遭うだろうとも。

アウレオルスは疑念を差し挟なむよう首に針を刺し直す。

691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/08/08(水) 19:08:11.25 ID:T+OjtHRAO
此処まで
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/08(水) 19:37:37.23 ID:YBC+jQDDO
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/08(水) 19:41:07.64 ID:5esOf8Z8o
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/08(水) 20:05:58.17 ID:mC3nj2mC0
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/08(水) 20:10:11.64 ID:N0JtEWir0
乙  錬金術師も救われたらいいな
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/08(水) 20:51:48.83 ID:5Uyvlrlyo
むしろアウレオルスは相当大きな戦力にもなるだろうから僕としても生かしてほしいな〜。
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/08(水) 23:10:54.32 ID:mc/hY2Wk0
アウレオルスさん…
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/08/09(木) 18:48:01.17 ID:8lphtkSAO
アウレオルス人気に嫉妬
どうしてくれよう
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/09(木) 21:09:19.86 ID:zdwFugxIo
アウレオルスが暴れたのって上条さんがインなんとかさんを治したからだろ?じゃ、まだ治していない今なら希望があると思うんだが
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/10(金) 17:00:32.65 ID:UoyDVrWAO


上条は世界に拒絶されるということを心に染みて、いや体に染みて実感していた。

階段を登っていたのだが、その一踏み一踏みが大変なことになっている。

美琴の話しで壁や扉に触れないというのは理解した。試しにやってみようとしたら体を変な方向に持っていかれた。

じゃあ床はどうなの?ということだ。

ただ立っている分は大丈夫だ。それが一歩、歩くだけで床から反発、衝撃の跳ね返りがある。

言ってみれば力一杯堅い床を蹴りつけながら歩いているようなもの。体にダメージ、疲労が蓄積されていく。

それがまた階段では難度が格段に上がる。一歩登るたびに反発でバランスを崩しかける。かと言って手摺りに手をかけることもできない。やろうものなら、階段を転げ落ちること確実だ。

なんとか階段を上がり終わり、フロアにでると一休みしたくなる。

フロアには授業がちょうど終わったのか次の教室へと移動中であろう生徒が行き交いしている。

肩で息をしている上条など不思議な目で見られそうなものが誰も目を向ける者はいない。

そのうち見えない上条に生徒がぶつかりそうになり上条が弾かれる。

上条「うおっ!とっと!!」

よろめき、何とか体勢を立て直す。

701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/10(金) 17:05:55.33 ID:UoyDVrWAO


上方向への階段に上条が目をやると上階へ登る者、降りてくる者が溢れている。

これでは階段を使えない。あの人の間を抜けて移動するのは不可能。危険だ。

上条がフロアの端、もう建物の端に目を向けると通路が建物の外へと伸びている。外から見たあの空中の渡り廊下。

魔術師と戦いとなったとき、美琴に援護して貰えるなら同じ棟にいる方がいい。

しかし援護を貰える状態に上条はいない。

上条「だったら、別の棟に渡って手広く探した方がいいかもな」

誰にも聞こえず呟くと上条は渡り廊下に向かう。

上条達が入った南棟から西棟へと。

渡り廊下の長さは道路一つ分。当然である、十字路を跨ぐように渡り廊下は繋がっているのだから。

普段なら苦労もしない、疲れる訳もない距離。それが階段を登ってきた疲労と床からの反発で遠く感じる。

一歩一歩を重く、鬱陶しく感じ、どうせならさっさと魔術師現れねーかなと思う。

苦労しながら渡り廊下を渡り終えると上条の願いは叶えられた。

上条に声がかけられる。

アウレオルス「唖然、なんとどのような敵かと思えばただの少年……」

白いスーツ姿の男は呆れた顔をして

アウレオルス「敢然、あえて聞こう。貴様は私の敵か」

702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/10(金) 17:09:31.24 ID:UoyDVrWAO


白井「まだわかりませんのーッ!」

佐天「白井さん、そんなに急かしても、初春も頑張ってるんですから」

初春はパソコンとにらめっこ中。三沢塾の画像を見つけることはできたものの現在との不一致箇所を探すのは一苦労である。

画像を重ねてチェックしても浮かび上がって来ない。

今は画像を拡大して一部分づつをチェックしている。

そこへ

浜面「なあ?」

白井「なんでしょう?今忙しいのですが」

浜面「その、なんだ見つかり難いところが良いんだろ?」

白井「そうですが」

少しイライラして白井が答える。

浜面「だったらよ、屋上じゃねえのか?」

佐天「屋上ですか?」

浜面「魔術ってのが何かわかんねえけど人目につきにくくて、ビルの立像からは割り出せねえんだろ。可能性があるんなら」

白井「初春!上空からの画像はありますの?」

初春「あります!でも現状を確かめられません」

白井「行くしかないようですの」

浜面「おい、待機してろって言われたろ」

後部座席を振り返り浜面が注意するが3人の少女は決意を固めた表情をしている。

白井「私のテレポートで行ければ良いのですが」

初春「座標を把握できませんよ、三沢塾から上がらないと周囲の建物も三沢塾より低いようですから」

佐天「行くしかないね」

初春「佐天さんは留守番ですよ」

佐天「えー、なんでーッ?」

初春「魔術師のお二人が来られたら困りますから、誰か残ってないと、佐天さんはお二人の顔を知ってますから適任です」

佐天「そんなーッ!」

白井「私のテレポートで二人までは余裕ですけどいざというときの対応を考えたら初春と私だけの方が安心ですの」

浜面「ああ、本当に行くのか?」

初春「浜面さんもここでお願いします」

そう言うと白井と初春は車から降りて三沢塾へ向けて駆け出す。

703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/10(金) 17:16:06.51 ID:UoyDVrWAO


上条はそっと不自然な動きに見えないよう右手をあげ頭を押さえる。

上条「敵?違う、あんただってインデックスを救いたいんだろ、俺達だって助けたいんだ!」

アウレオルス「自然、『口ではなんとでも言える。』記憶を消すことを助けると言えるものか『インデックスを救えるのは私のみ。』『我が望みは私がインデックスを救うこと』」

アウレオルス「当然、『我が望みを邪魔する者は……敵』」

上条を敵と呼びながらもアウレオルスは攻撃に移る気配がない。

上条はまだ話しが出来ると思い口を開きかける。

しかし、

アウレオルス「『眠れ』」

アウレオルスの声が響く。

上条は眠ることなくこめかみを右手で押さえ立っている。

上条「テメェの言葉なんか俺には効かねー、もう話し合えないのかッ!」

何故効かないのかアウレオルスは驚く。

アウレオルス(この少年の周り、我が魔力が削られている。まさか無効化か!?)

アウレオルス「『ここまで来た、後には引けぬ。』試させて貰おう」

アウレオルスの言葉から身を守るには頭から右手を離せない。上条は頭を押さえたままアウレオルスに近づく。一歩が重くいつものダッシュが効かない。

そこへ

アウレオルス「『窒息せよ』」

上条「ぬごッ!?」

上条の首が絞まる。

704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/10(金) 17:20:19.75 ID:UoyDVrWAO


上条(なんだ!?これは)

ギリギリと首が締め付けられ、こめかみを押さえておれず両手を首にまわす。

首の締め付けは止まらない。上条は苦痛を漏らしそうになるが声にならない音が漏れるだけ。

外から絞められてるのではなく、気道が狭まっている。

それに気づいた上条は口の中に右手を入れ喉の奥を指で触る。

バキィンという音とともに苦しみから解放される。

アウレオルス「瞭然、完全に無効化される訳ではないか、ならば」

上条(言葉一つで人を思い通りに出来るってここまで出来ることなのか!)

精神感応のように脳に働きかけるチカラ、そう思っていたが違うようだ。

違いはもっと大きかった。根本的な違いがあった。

アウレオルス「『感電死』」

上条「なにッ!?」

上条の周りでバチッと音がなる。

上条は反射的に右手を突き出していた。美琴の電撃に対処するように。

雷光が煌めき右手に集中する。避雷針に集まるように。

そして雷光は消えていく。

アウレオルス「判然、私の黄金練成〈アルスマグナ〉を打ち消すはその右手」

上条「黄金練成〈アルスマグナ〉!?」

アウレオルス「それにしてもなんだ、その右手は。時間があれば調べ尽くしたいほどだ」

705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/10(金) 17:26:41.41 ID:UoyDVrWAO


白井と初春はエレベーターで南棟の最上階に到着する。

急ぎ最上階から屋上に通じる階段を探し出し駆け上る。

屋上への出入り口には鍵がかけられていたが白井がドアごと適当なところへ転移。

屋上にでると風が吹いていた。

初春はパソコンを開き、三沢塾を写した航空写真を限界まで拡大する。そして現状と見比べる。

分からない。

屋上にある構造物は初春達が出てきた出入り口の塔屋ぐらい。

最初は展望所にしようとしたのか床は30cm角ぐらいのタイルが貼られている。

他には特異なものは見受けられず殺風景な景色が広がっていた。

白井「違いましたか……」

白井が落胆の声を漏らす。

だけれども初春の頭の中でここに間違いないと叫ぶ声がする。

初春は床に手を突き『存在』を感じ取る。封印を解いて以来、感覚が鋭敏になっていた。感覚を研ぎ澄ませば本来あるべきでない異常の『存在』を感じとれる。

パソコンを閉じ、初春は歩きだす。

白井「初春?」

怪訝な表情で白井が初春を呼ぶが初春は歩みを止めない。

仕方なく白井はあとを追う。追いついて初春の顔を覗くと表情が無い。

白井(初春どうしたのですの?)

二人が丁度屋上の中央まで来ると

初春「白井さん、これです」

無表情なまま初春は床を見つめていた。

訝しく思いながらも白井が初春の目線を追い下を見る。

白井「ええと初春、鳥のレリーフを彫り込んだタイルが貼られているだけですの?」

初春は屈み込むと見ていたタイルに触り、そのまま持ち上げ、

初春「ですから、これですよ」

そう言うとタイルを床に叩きつけて割る。

白井「何故分かりますの、初春?」

初春はそこでニコリと笑うと、

初春「禁則事項です」

「さあ次は西棟に行きましょうか、あちらだと虎ですかねぇ」

白井としてはまだ問い詰めたい、これで結界が破れたかも疑問である。しかし表情が戻った初春を見ると信じられると思う。

白井は初春の手を取ると西棟の屋上に座標を定め、跳ぶ。

706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/10(金) 17:29:36.71 ID:UoyDVrWAO


美琴達は南棟の10階まで探索を進めていた。

この階にはある部屋に一人だけしかいない。10階に辿り着いた際に確認していた。

その部屋の入り口、開き扉を美琴は勢い良く開ける。インデックスを期待してだったが違った。

そこには巫女さんがいた。

緋袴の正統巫女装束。腰まである長い黒髪。喜怒哀楽に乏しい表情、突然扉が開いたのに驚きもしていない。

清廉、神聖な雰囲気が良く似合う上条と同年齢と思わしき少女。

その巫女装束の少女は落ち着き払ってお茶を飲んでいた。

美琴は予想してなかった巫女さんの姿に動揺しつつ、

美琴「え、ええとアナタは一体?」

初めて気づいたように巫女さんは美琴を向くと、

「私?私。魔法使い」

美琴「はっ?巫女さんで魔法使い???」

魔法使いと名乗る巫女さんは首を振りつつ

「巫女さんではない」

そうは言ってもその巫女装束は何?と美琴が思っていると、

「これは三沢塾の人に着せられただけ」

「他に着る服もないので今も着てる」

美琴は電話の相手に言われた三沢塾に囚われた者の名を思い出す。

美琴「あなた『吸血殺し〈ディープブラッド〉』?」

707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/10(金) 17:33:41.47 ID:UoyDVrWAO


「その名前は嫌い」

「死を呼び寄せるだけの名前」

「私の名前は姫神秋沙」

姫神はすっとお茶を一口飲む。

美琴「あなた、姫神さん囚われてたのじゃなかったの?」

姫神の様子から監禁されている雰囲気を感じられず、美琴が問うと

姫神「それはアウレオルスが来るまで」

「今は安心できる場所としてここにいる」

「アウレオルスの結界の中にいれば吸血鬼を呼び寄せることがないから」

途切れ途切れに姫神が説明していく。

美琴「そう、それでここに……姫神さん、アウレオルスはどこにいるの?白いシスターを連れてなかった?」

姫神「白いシスター?禁書目録のこと?」

美琴「知ってるのっ?」

再び姫神が首を横に振る。

姫神「残念。どこに運んだか教えて貰ってない」

「ローマ正教からの討手が侵入したので万一のことがあるから教えられないと」

美琴「な、何ですってッ、ローマ正教!?」

驚いていると、

姫神「ところであなた達は何者?」

棒状の物を持ち上げ姫神が聞いてくる。

美琴「ええと、それは?」

姫神「魔法使いのステッキ」

美琴はそう言えば最初に問うた時、彼女は魔法使いと名乗っていたと思い出す。

708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/10(金) 17:37:47.49 ID:UoyDVrWAO


美琴「って警棒型のスタンガンでしょ!はぁ……」

美琴「私達はインデックスの友達。アウレオルスがインデックスを救おうとしているのは分かってる」

美琴「でもそのやり方を間違えてたら大変なことになるから追いかけてるの」

姫神「アウレオルスは『黄金練成〈アルスマグナ〉』なら出来ると言ってたけど?」

美琴「ア、『黄金練成〈アルスマグナ〉』?どうやって修得したって言うのよっ?」

姫神「あの時の光景は思い出したくない」

「だからアウレオルスは万一の場合」

「アレを使わないといけなくなるかも知れない」

「見ないで済むようにここに居ろと言われた」

美琴「アレってまだ何かあるの?」

姫神「『グレゴリオの聖歌隊』」

美琴は聞いたことがあった。ローマ正教の切り札を。三三三三人の修道士を聖堂に集め、その聖呪を集める大魔術。

美琴「……そんなの、どうやって……まさか三沢塾の生徒を使おうっていうの」

それならば思い出したくない光景というのも分かる。次々と破裂していく生徒。血塗れなって崩れ落ちる生徒。

黄金練成もそうして修得したのか?その生徒達を修得した黄金練成で元に戻したのか?

姫神「使われないで済めば嬉しい」

「でも結界の一つが破れたら自動的に発動する」


709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/08/10(金) 17:41:10.68 ID:UoyDVrWAO
此処まで

三沢塾の画像見ると10階当たりにしか渡り廊下ないんですが4階当たりにもあるということお願いします
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/10(金) 21:41:38.28 ID:G4ajBZ7h0
乙  上条さんの身が心配
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/11(土) 08:27:15.80 ID:rclCEk8p0
初見。今日の投下分を少しだけ読んでみたけど面白そう。ちょっと最初から読んでくる。とりあえず乙。
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/08/13(月) 23:05:01.67 ID:zztJ7t6AO


『吸血殺し』姫神秋沙のいた部屋を出ると美琴は麦野と絹旗に尋ねられる。

『黄金練成』と『グレゴリオの聖歌隊』について。

神裂とインデックスに聞いた範囲、受け売りにすぎないが説明を行う。

『グレゴリオの聖歌隊』については美琴の予想も付け加える。自動で発動するなら『核』が必要になると。

麦野「病院でのあれはその黄金練成?の所為か……頭の中でシミュレートして具現化する。超能力の仕組みに近いけど私らが一つの能力しか持てないことを考えたら便利ねぇ……あんたが戦った木山春生の多才能力みたいなもんか」

麦野は何か思案顔である。

美琴「あれとは違うんじゃないかな、実際に見た訳じゃないから分かんないけど」

一つ注意を行う。

美琴「便利そうと言っても能力者が魔術を使おうとしたら拒絶反応起こして下手したら死んじゃうわよ」

麦野と絹旗は頷き、

絹旗「そうなるとその結界ですか?解除しない方がよろしいのでは」

絹旗は別の懸念を口にする。

美琴「そうね当麻のことは心配だけど……」

黄金練成を使うような敵がいるのに上条を結界内に取り残したくはない。

とはいえ三沢塾には2000人からの生徒がいる。その命を危険に曝すことはできない。

美琴は白井に結界の基点を見つけても破壊しないよう連絡しようとした。

その時、今まで捉えられなかった魔力反応を美琴は感知する。世界がガラリと変わる印象。

美琴「魔力反応ッ!結界が解かれたの!?」

麦野絹旗「えッ!」
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/13(月) 23:13:03.73 ID:zztJ7t6AO


程なくして美琴に白井から連絡が入る、屋上にあった結界の基点とおぼしきものを破壊したと。

責めることは出来ない、美琴が頼んでいたことだから、気持ちを切り替え魔力反応を精査する。

美琴が捉えた魔力反応は6つ。

ローマ正教の討手が4。装備品の関係からか同様の反応が見られたので間違いないだろう。

残り2つのうち一つは動きが見られない。固定されているであろう『グレゴリオの聖歌隊』の『核』の可能性有り。

そして最後の一つ。そのすぐ側では電磁波の反応が途切れる。

それが逆に存在証明となる反応。その指し示す者は

美琴「当麻ッ!当麻が戦ってる」

すぐに助けに行きたい。美琴は考えるより先に身体は動き出していた。

麦野「優先順位を間違えるな」

そこへ厳しい叱責の声がとぶ。

麦野「その『グレゴリオの聖歌隊』というのを止められるのは超電磁砲、アンタだけよ。私らじゃどこに行けば良いのかもわかんないんだから」

美琴「でも」

絹旗「その『グレゴリオの聖歌隊』が発動している状態というのは上条さんにも超危険ではないですか」

麦野「アンタがやることはまず、『グレゴリオの聖歌隊』というのを止めること」

714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/13(月) 23:19:42.50 ID:zztJ7t6AO


アウレオルス「『焼き尽くせ』」

巨大な炎が渦を巻き上条を呑み尽くそうとする。

上条は炎に右手を突き立てる。

炎は四散してそんなもの初めからなかったように消える。

これまでアウレオルスが絞殺と言えばロープが巻き付こうとし、圧殺と言えば錆びた廃車が降り、打撃と言えばボーリングの玉大の鉄球が襲いかかった。

それらを上条は悉く右手で凌いできた。

アウレオルスは思い描いた現象を起こしているのだろう。頭の中でシミュレートした現象を具現化する。言葉はその発動キー。上条はそう睨んでいた。

それなら対処のしようもある。今の状態を例えると数十人の能力者を並べ順番に上条に能力を発動しているようなもの。それも何を発動するつもりか先に述べてから。

現象が起こるのは言葉にしてから。ならば僅かばかりのタイムラグもある。

ボクシングでいえばテレフォンパンチに等しい。

言葉を理解し、幻想殺し〈イマジンブレイカー〉があれば凌げる。上条はその面では自信を深めていた。

問題は戦う環境。上条は前に見た有刺鉄線爆破マッチと言ったキワモノのプロレスのビデオを思い出す。

そのうえ、リング上にも地雷を埋められた一方的なハンデを負って上条は戦っているようなものである。

715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/13(月) 23:23:45.56 ID:zztJ7t6AO


アウレオルスは面白くもあり、面白くない。

アウレオルスの正直な感想である。

不可思議な右手。見ていると学究の徒としての欲求が高まる。反対に手間をかけさせられ苛立ちを感じる。侵入者は目の前の少年だけではない。ローマ正教の討手もまだ数名残っている。

それに一つだけアウレオルスにも分からないことがあった。

誰が『歩く教会』を壊したのか?

インデックスの病室に押し入り、『歩く教会』に着替えるよう命じると破れたシスター服を取り出した。

法王級の防御力を誇る『歩く教会』が破れ魔力反応がない。

アウレオルスにとって驚愕する出来事であった。

側にあったシスター服に取り替えインデックスを連れ出したアウレオルスだが疑念は尽きない。

そしてアウレオルスの前に対峙する少年。その少年の魔力を掻き消す右手。黄金練成さえ打ち消す右手。まさかあれがと思う。

不安になりかねなくその都度針を打ち直している。

今もまた

針が神経を刺激して興奮作用を引き起こす。脳内麻薬が分泌され不安が取り除かれる。

アウレオルスは次の一手を考え始めていた。直接人体に影響を及ぼしても炎を起こそうとも右手で触るだけで打ち消されてしまう。

ではあの右手にどのような対処をすれば良いか、右手で触れられない攻撃を加えれば良い。

さあ、幾つか考えた対処方法のうち、どの手段を取るかとアウレオルスが考えていると。

世界が解かれる。

アウレオルス「むっ、これは」

アウレオルスが呟きを漏らす。

716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/13(月) 23:31:33.84 ID:zztJ7t6AO


上条にも床から伝わる反発を感じ無くなり、ハッとした顔になる。

試しに足を動かしても衝撃の跳ね返りがない。

上条(誰か結界を解いてくれたのか?)

上条は反撃しようにも満足に身体を動かせないハンデが無くなったことを知る。

上条(これでコイツに一発いれることができる!)

上条はアウレオルスを見る目に力を込め、ギュッと右拳を握りしめる。

アウレオルス「ほう、四聖獣の結界が解かれたか、貴様それで有利になったとでも」

アウレオルスは結界が破られたにも係わらず余裕の表情。

上条は不審に思いながらも有利とまで言えなくても改善されたと思っている。

戦場の様相は変わった、非現実の世界から日常の現実世界へと。

その証拠に視線を感じる。教室から出て来た生徒達の視線。

それまでアウレオルス一人からしか感じなかった視線。

上条は不味いとも思う。二つに別けられた世界が一つとなり戦場と化す、一般の生徒を戦闘に巻き込むかねない。

上条は声を出そうとした。ここから離れろと近づくなと言おうとした。

一人二人だけではない。ワラワラと生徒が姿を見せる。数十人単位の視線が上条に集まる。

異様な光景に上条は言葉が出ない。

アウレオルス「瞭然、結界を一つ破られ、罠から抜けだされたらお終いか、二重トラップは基本!」

717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/13(月) 23:33:32.33 ID:zztJ7t6AO


生徒の一人が唱え始める。

『熾天の翼は輝く光、『『輝く光は罪を暴く純白『『純白は浄化の『証、証は行動の結果

一人が唱え、二人目が重なる。そしてまた一人。

『『『結果は未来『未来は時間『『時間は一律『『一律は全て『『『『全てを創るのは過去『『過去は原因『『『『原因は一つ

重なり合い唱和が続く。

『『一つは罪『罪は人『『『人は罰を恐れ『『『『恐れるは罪悪『『罪悪とは己の中に『『『『己の中に忌み嫌うべきものがあるならば

ここにいる生徒達だけではない。

『『『『『『熾天の翼により

恐らく三沢塾にいる生徒全てが唱和に加わり

『『『『『『『己の罪を暴き

言葉の渦を巻き起こす。

『『『『『『『『『内から弾け飛ぶべしーッ!』』』』』』』』』

唱和が鳴り響き、生徒の額から青白い光球が生まれ上条に向けて宙を飛ぶ。

さほど早くは無い。人の歩みより速い程度。

上条は近付く最初の光球を右手で払う。

パキンと軽い音を立て消える。

そしてまた次が

払う。

払う。払う。

必死に払う。払い続ける。

払わずとも壁に当たる光球、床に落ちる光球がある、それらは強い酸の匂いを点て壁や床を溶かす。

718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/13(月) 23:38:22.21 ID:zztJ7t6AO


宙には捌き切れない数の光球が群を成して浮ぶ。

上条は光球を払い弾くパキィンと鳴る音と違う音を聞く。

ばじっ

光球の群れの向こう側、光球を放ち終えた生徒が倒れていく。

皮膚が張り裂け血が霧状に周囲を染める。

隣の生徒の頬、服に赤い斑点をつける。その生徒も皮膚が弾け斑点をつけた生徒に血を散らす。

その他にも血を吐き膝から崩れる生徒。血にまみれ、前のめりに倒れる生徒。

そうなっても唱え歌い続けている。

能力者が魔術を使うと拒絶反応をおこす。無理をすれば死ぬ可能性もある。誰が言ったか。インデックスが言っていたことを上条は覚えていた。

その実証が光球の向こうで起こっている。

上条「テメェッ!!何をしやがったッ!!!!」

光球を払いアウレオルスに向かって上条は叫ぶ。

アウレオルス「当然、侵入者の迎撃。『グレゴリオの聖歌隊』のレプリカ。これだけの数、捌き切れるか」

上条は倒れていく生徒達を助けたいと切実に思う。

今だ上条の前に立つアウレオルスを倒すことができれば生徒は唱え歌い続けるのを止めるだろう。

しかし現状では無理。

光球の処理に手をとられていてはアウレオルスに向かうどころか再び黄金練成を使われたら対応不能。

719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/13(月) 23:43:32.14 ID:zztJ7t6AO


上条は後ろ髪を引かれながらも一時退避を選ぶしかない。

上条は自分がこの場から姿を消せば魔術の使用が止む、と一縷の望みにかけて人気の少ない方へ突破を計る。

生徒の間を縫いその場を離れることには成功するが、生徒が上条を目にすると唱え歌い始める、生徒達がいない区画を選びながら上条は走り抜ける。

どこをどう走り抜けたかその場の判断で走ったので上条は自分がどこに居るのかさえわからない。

上条が後ろを振り返ると群れを成して光球が追いすがってくる。

上条「ホーミング機能つきかよ、くそっ!不幸だ」

世の無常を嘆き、前を向き直ると、

アウレオルス「どこへ行くつもりか少年」

上条が後ろを振り返る前、誰も居なかった空間に忽然とアウレオルスが現れる。

上条「空間転移?なんでもアリかよッ!」

走る先にはアウレオルス。背後には引き離しているとはいえ光球が迫る。

アウレオルス「四方八方より攻められては右手一本では対処しきれまい。それにこういう方法もある」

アウレオルスは右手を上条に真っ直ぐ向ける。

アウレオルス「『銃をこの手に。弾丸は魔弾。用途は射出。数は一つで十二分』

アウレオルスの上条に向けられた右手には一振りの剣が握られていた。

720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/13(月) 23:48:11.79 ID:zztJ7t6AO


アウレオルスの嗜好なのか意匠を凝った美術品のような剣。鍔元には発射口らしきものが見える。剣に仕込まれた暗器銃。

銃口は上条を向いている。

映画で見るアクションスターのように発射のタイミング、弾丸の向かう先を読んで回避するなど所詮、多少喧嘩慣れした程度の学生である上条には出来ない。

美琴の電撃を防げるのは予兆があって右手を避雷針の代わりに出来るからだ。

それに『思い通り』にできるなら回避できたとしても上条に当たるように弾丸は飛ぶ。

背後からは光球の群れ。

アウレオルスが『発射』を言う前に暗器銃に触ることができれば消せるかも知れないと

上条「うおぉおおおぉぉぉ!」

上条は雄叫びをあげアウレオルスに突っ込む。

アウレオルスは冷静。必中、回避不能の距離で上条に『発射』を口にするだけで良かった。

それを口にする前に

ゴアァッ!

アウレオルスの目の前を光線が横切る。

アウレオルスは慌て後ろに下がり剣も引き構え直す。

上条も剣を掴めず足を止める。

光が走り抜けた反対方向からコツゥン、コツゥンと足音。

上条とアウレオルスが同時に足音へ顔を向ける。

「み・い・つ・け・た」

721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/13(月) 23:56:15.91 ID:zztJ7t6AO


麦野達が美琴と別れる前の会話。

麦野「さて絹旗、私らは魔術師とやらをぶちのめしに行こうかね」

美琴から視線を外し絹旗に言うと

絹旗「そうしましょうか」

絹旗も同意する。出番が来たとばかりに腕を回す。

麦野は美琴に視線を戻すと

麦野「アンタの彼氏は私らが助けてあげるわ」

美琴「なっ、なっ、なっ、ななな何言ってんのよッ!かっ、彼氏とかまだそんなんじゃないんだからッ!」

麦野「まだね、ふーん、まだかクスッくっくっくははははは」

麦野「はあ麦野笑っちゃ悪いですよって」クスクス

麦野と絹旗は笑いながら足早に立ち去る。

美琴もまた顔を赤らめながらも気を引き締め、上条を一刻も危地から救うため『グレゴリオの聖歌隊』の『核』へと向かう。

722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/14(火) 00:02:52.60 ID:SqtDD5sAO


底冷えのする、それでいて愉しげな女性の声。

「麦野、精密射撃は得意じゃないのに、もし上条さんに当たったりしたらどうするんですか」

麦野「絹旗、心配しないでも出力は落としてるわよ」

光が走り抜けた先には壁を穿つ穴。穴の周囲は黒く焼け焦げている。

絹旗「出力を落としたと言いながらあれですか?」

アウレオルス「飄然、病院での能力者か、また何をしに来た」

麦野「アンタをぶっ潰しにね……幻想殺し、こっちへおいで」

麦野が上条に呼びかける。

アウレオルス「当然、行かせると思うか『 」

アウレオルスが何か言いかける前に

麦野「ネタは知れてんだよ」

麦野は右手を構えると光線を連続して放射する。

アウレオルスは攻撃から防御へ言葉を切り替え、

アウレオルス「『光は我を避け』ぬッ!?」

麦野の能力、『原子崩し〈メルトダウナー〉』。粒子、波のどちらの状態でもない電子を、曖昧なままに固定し強制的に操る能力。
操った電子を目標に向かい放出し、あらゆる物を貫き通す火力。粒機波形高速砲

魔術と科学の認識のズレ。マクロの視点からの認識とミクロの視点。

魔術の概念下の光に対する認識では『原子崩し〈メルトダウナー〉』を制御しきれない。

723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/14(火) 00:12:38.35 ID:SqtDD5sAO



麦野の放つ『原子崩し〈メルトダウナー〉』をアウレオルスは僅かに逸らせられるだけ。光線はアウレオルスを掠めていく。


麦野「アナログ野郎がァ、テメェの想像を超えるモノは『思い通り』にできねーだろ!オラ、オラ、オラ、オラッ!」

自分の掛け声に合わせ麦野は『原子崩し〈メルトダウナー〉』を放つ。弾幕とまでは行かない。防御から攻撃へとアウレオルスが切り替える間さえ与えなければいい。

その隙に上条は麦野達の元へ向かう。

アウレオルスは反射的に上条へと銃口を向けてしまう。

その間隙をついてアウレオルスの右手を『原子崩し〈メルトダウナー〉』が撃ち抜き、

アウレオルスの右手、肘から先が消し飛ぶ。

724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/08/14(火) 00:13:35.33 ID:SqtDD5sAO
此処まで
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/14(火) 00:43:44.11 ID:G1XZVqLf0
なんと 麦のんが参戦するとこうなってしまうのか、おもしろい  乙
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/14(火) 00:56:08.56 ID:QxTqyOZMo
曲がりなりにも超能力者、しかも暗部のエリートか
戦い慣れしておる
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/14(火) 09:27:24.39 ID:g+8q1hUZo
乙!
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/14(火) 22:37:19.60 ID:FDHXqWlC0
むぎのんんん!かっこいい…
乙です
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/08/15(水) 20:41:08.15 ID:V70QXWBAO


麦野「絹旗ッ!」

絹旗「お任せをッ!」

絹旗が右手を失ったアウレオルスに向け駆け出す。

途中で上条とすれ違う。

アウレオルス「ぐっう、『鋼の扉』」

絹旗を阻止するためにアウレオルスが想像(創造)したのは鋼で出来た城塞の扉、閂がかかり小柄な少女が突破できるとは思えない。

絹旗の目の前に鋼の扉が立つ。

絹旗は右手を振りかぶり鋼の扉を粉砕せんとする。

常識外の力がかかり閂は折れ、扉は跳ね開く。

少女の能力を見誤った結果。

アウレオルスは『窒素装甲』を知らざるが故に防御の選択を間違えた。

絹旗「能力者を舐めるなーッ!」

絹旗は叫ぶ。

アウレオルスはもう絹旗の手が届く距離。

絹旗は拳を振り抜く。

アウレオルス「『ーーーー』。」

絹旗の拳は空を切っていた。

絹旗は周囲を見回すもアウレオルスの姿はない。

アウレオルスが言ったのが行き先ならこの場には居ない。

それより見回した時、絹旗は不味い物を見た。

ピンポン玉ぐらいの大きさか、青白い球体がすぐ側まで来ている。

絹旗は急ぎ麦野、上条の居るところまで引き返す。

絹旗「何ですか、アレはーッ!?」

方向転換して追って来る光球。アウレオルスが残した鋼の扉を溶かしつつ迫って来る。

730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/15(水) 20:47:37.86 ID:V70QXWBAO


美琴は『グレゴリオの聖歌隊』の『核』まで行き着いていた。

美琴「ここね。……また、めんどくさいところに」

気持ちは焦る。

美琴が見ている先はコンクリートで出来た壁。どこにでもあるような廊下の壁である。

魔力反応は壁の中からしていた。

生徒一人一人は微弱な魔力。しかし2000人からの魔力を集めて『核』は反応を示している。

この三沢塾という世界から拒絶された者からすれば触ることもできずにいたはずの壁。結界が壊されないことを前提にすれば絶好の隠し場所になる。

壁の中に埋め込まれていては『核』の形態など分からない。けれど美琴がやる事は一つ。

壁から離れ距離を取る。

壁の中から感じる魔力反応を見据え、美琴はコインを取り出すと指先で宙にはじく。

コインが宙でくるくるっと回り重力に引かれ美琴の指先に落ちてくる。

コインはレールに乗り音速の3倍まで加速する。

ズドォンッ!

響き渡る音を立て衝撃波を巻き起こし光となって走る。

衝突音が轟き、粉塵が辺りを立ち込める。

魔力反応がしていた壁に大穴が開いていた。

『グレゴリオの聖歌隊』の『核』は破壊され魔力反応は最早ない。

美琴「当麻は大丈夫かな」

愁いを帯びた顔で美琴は呟く。

731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/15(水) 20:55:41.46 ID:V70QXWBAO


上条「『グレゴリオの聖歌隊』ってあの魔術師は言ってやがったが。どこまでも追っかけてくんだよ」

しつこく追いかけてくる青白く光る球体

麦野「へぇ、これがね」

麦野はそう言うと『原子崩し〈メルトダウナー〉』を放つ。

『原子崩し〈メルトダウナー〉』の光条は光球を幾つか破裂させる。

麦野「なんとかなるみたいね、でも全部撃ち落とすとなると骨ね、これは」

三人の視線の先にはまだ数百の光球が浮かんでいる。

残骸となった鋼の扉を越えて迫る。

麦野は『原子崩し』を放ちながら上条に声をかける。

麦野「撃ち漏らしたら、その右手でなんとかしてよね、できるんでしょ?」

上条「お、おう」

撃ち漏らした光球に対処するため上条が身構えると、遠くで音がする。

大砲を撃つような音と衝突音。僅かながら振動も響いてくる。

そうすると光球が力無く墜ちていく。制御を失ったか動力源を無くしたか。次々と地に落ちる。

麦野「ふうっ、『超電磁砲』がやったみたいね」

上条「美琴が?」

麦野「彼氏の事を心配して必死な顔してたから」

麦野の顔はニヤッとしていた。

上条「か、彼氏って!?」

麦野「アンタの彼女じゃないのかい『超電磁砲』は?」

上条「な、な、な、ななな何を仰るっ!ち、ちち違います、違うんです、まだそんな関係じゃありません!」

732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/15(水) 21:03:33.34 ID:V70QXWBAO


絹旗「うーん、反応が似てます」

麦野「似た者同士か」

上条「って、こんな時に何言ってんですか、あんたらー?」

絹旗「とりあえず、その話しは置いておきましょう。あの男は今北棟に居ると思われます」


麦野「絹旗、なんで?」

絹旗は北棟の方向に顔を向け

絹旗「『北棟ゲストルームへ』とあの男が言った途端、姿が消えて空振りさせられましたので」

麦野「瞬間移動……なるほどね」

上条「しかし、さすがはlevel5か?助かった、麦野さん」

上条は麦野に感嘆と礼を言う。

麦野は照れるでもなく、

麦野「レベル云々より、能力の特異性と戦闘経験ね」

麦野「『思い通り』にできると言ったって理解できてないものまでシミュレート出来ないでしょ。『自分だけの現実』をそう簡単に読み切られてたまるもんか」

それはやはりlevel5の自負。

麦野「それと、何にしたって先手必勝、考える暇を与えず防戦一方に追い込んじまえば反撃を受けることも少なくて済むわ」

実戦、場数を踏んでいる自信。

麦野「もし反撃しようと切り替えてきても、切り替えるまでの僅かな間を突けばあの通り。最後は逃がしちまったけどね」

アウレオルスの右手を吹っ飛ばして気が済んだのか淡々と言う。

麦野「超電磁砲も呼んで、一旦集合しましょうか」

733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/15(水) 21:06:19.22 ID:V70QXWBAO


北棟10階ゲストルームにアウレオルスは姿を現す。

右手を消失して顔は苦痛に歪む。

アウレオルスは痛みに耐えながら、

アウレオルス「『右手よ、元の通りに』」

黄金練成で右手を元に戻す。

消失していた右手が何事もなかったように肘から先に現れ、アウレオルスは何回か指を開いたり閉じたりを繰り返し状態を確認する。

消失したときの痛みは残っていた。

アウレオルスは最後にもう一度右手を握り締める。

アウレオルス「何故だ」

アウレオルス「何故だ」

アウレオルス「何故上手くいかぬ」

アウレオルス「何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故『黄金練成がありながら何故上手くいかぬ』」

針の事も忘れ、痛みが不満をさらけ出す。

アウレオルス「『私はインデックスを救いたいだけなのだ』何故、邪魔をする『インデックスを救えるは私のみ』何故、私を妨げる『何故、思いのままにならぬ』『私の望みは叶えられないと言うのか』『私ではインデックスを救えないのか』」

不満は疑心へと変わり

アウレオルス「ふっ、はははははははははははははははははははははははははははは、『無駄だ、何しようとも無駄だと言うのか』」

世界を呪う。

『思い通り』ならぬ世界を

734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/15(水) 21:09:54.28 ID:V70QXWBAO


アウレオルスが慟哭を漏らしていると、ガチャッと扉が開く音がする。

「アウレオルス」

呼びかける声がして

アウレオルス「姫神か、何をしにきた。私を笑いに来たのか」

光の無い目をしていた。

アウレオルス「『思い通り』にできる力を身に付けながら『思い通り』にできない私を」

自嘲を吐く。

姫神「違う。心配だから」

姫神はアウレオルスを見詰めている。それが辛い。

アウレオルス「『吸血殺し』、吸血鬼にしか役に立たない者に心配されるか」

辛さ故に再び自嘲を。

姫神「そう、私はアウレオルスの役には立たない、必要ないはず」

姫神「なのにあなたは禁書目録のついでと私も助けようとしてくれる」

姫神「私はアウレオルスにそれだけで感謝してる」

姫神「私がアウレオルスのことを心配してはいけない?」

静かな言葉がアウレオルスに落ち着きを取り戻させる。

アウレオルス「愕然、………………済まぬ」

アウレオルス「『思い通り』にできること、望みを叶えること、はき違えていたか」

アウレオルス「望みを叶えるための黄金練成、不可能を可能と思わば成り立たぬ。不可能と思わば不可」

735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/15(水) 21:13:02.71 ID:V70QXWBAO


アウレオルスの目に光が戻っていた。

そのアウレオルスに

姫神「……あの人達も禁書目録を助けようとしている。協力できないの?」

アウレオルス「悄然、信用できぬ。偽られた過去がある。能力者といえどイギリス清教は学園都市と繋がりを持つ、イギリス清教からの依頼で動いている可能性がある……『頼むは私のみ』」

姫神「アウレオルス……」

僅かばかり話した相手、嘘偽りを言う者には見えなかった、と姫神が言ってもアウレオルスの決意を変えられない。そう思うと姫神もそれ以上は言えない。

アウレオルスは窓の側に寄る。

明るい夏の日差しは既に落ちている。黄昏の時間が近代的なフォルムを持つ学園都市を支配していた。

時間が差し迫って来ていた。

アウレオルスが踵を返し、向かおうとした時、

空が瞬く。

黄昏色に染まる空を赤い光の帯が色を添える。

赤い光は四方より飛んで来る。数十条、数百条の赤い光の矢となって一点に集束する。

集束した赤い光。強大な力のせいで空気が破裂し空に浮かぶ雲を円状に散らす。

発動の瞬間だった。

集束した赤い光が雷のごとく落ちる。

南棟へと

アウレオルス「真説、『グレゴリオの聖歌隊』」

736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/08/15(水) 21:13:39.12 ID:V70QXWBAO
短いですが此処まで
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/15(水) 22:33:43.66 ID:qejksyp00
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/15(水) 22:57:29.39 ID:eez2n0e00
乙  アウさん……
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/15(水) 23:40:51.36 ID:RVKKuXoPo
乙!
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/15(水) 23:49:24.38 ID:HwnpGIHh0
原作で何かもうすっかり忘れ去られた存在になってるけど
アウレオルス切ないんだよな…
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/08/17(金) 18:49:24.47 ID:ItwxoEJAO


ようやく神裂とステイルも三沢塾に到着し、美琴達と北棟4階で合流することが出来ていた。

美琴にこれまでの三沢塾での話しを聞くと2人は目を剥くことになる。

神裂「本当に黄金練成を、アウレオルス=イザードが?」

神裂が驚愕を示し、

美琴「みたいね」

ステイル「バカな、詠唱だけで200年以上かかると言われてるんだぞ」

ステイルは疑念を示す。

美琴「さあ……」

科学側にいる美琴にはある程度の推測がたつ。

一基のコンピューターで膨大な時間がかかる処理も他のコンピューターとリンクして並列処理すれば効率化される。

一年前、木山春生が『樹形図の設計者』の代わりにしようとしたネットワークも同じ思想だ。

ネットワーク、並列処理による効率化。

『グレゴリオの聖歌隊』のレプリカによる生徒2000人の詠唱。

魔術式ネットワークシステムによる並列処理。

三沢塾の中に広がる惨状はその結果。

美琴「本当に魔術師って言うのは」

美琴が口を噤む。

神裂はその後に続く言葉がわかり

神裂「自らの望みのために手段を選びません……」

美琴の言葉を繋げる。

神裂も横たわる生徒達を痛ましげに見ている。

幸いなことに生徒達は操られて詠唱を行い微弱な魔力を精製していただけで魔術を発動したのは『核』。見た目は酷くとも命にかかわるほどの決定的なダメージを受けた生徒は居ない。

それが神裂と生徒達の応急処置を行っている白井、初春の見立てだった。

ただ一人、上条達が集合した時、既に事切れていたローマ正教十三騎士団の騎士と思われる者を除いて。

白井と初春が応急処置をして回っているが2000人を相手にしては対処しきれない。

命に別状ないとはいえ早くアウレオルスと決着をつけ病院へ搬送すべきところである。

神裂に美琴も応急処置を手伝いながらこれからの対応を思案していた。

742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/17(金) 18:56:01.26 ID:ItwxoEJAO


そこへ麦野から声がかかる。

麦野「ところで超電磁砲、なんでアンタ能力者がその魔術?を使ったらこうなるって知ってるのさ?」

あてつけでも何でも無く疑問を口にしただけだったが、

美琴「いっ!」

狼狽える。

美琴がチラッと見ると上条はキョトンとと美琴を見ている。

美琴「えーと、インデックスに聞いてたから」

麦野「説明を受けただけにしては具体的だったじゃない。その目で見た、あっ……アンタッ!」

麦野は見たことが有るのではないかと言いかけた。ただ美琴が学園都市の『外』に一年間も戻らずに居たならば魔術を使った可能性がある能力者は一人しかいない。

美琴はまだ話の行き先が見えていない上条の視線が気になる。

困り顔をしながら美琴は話しの流れを切ろうとするも、

神裂「あの子の首輪を解析するときに使ったのですね、魔術を」

上条「えっ、ええ?」

美琴「神裂さんッ!」

神裂「あなたの能力で探査できるのは魔力反応。魔術の質や術式の解析までできませんでしたよね。魔術を使わない限りは」

上条「美琴、お前……それじゃ……こんな事に……なったことが有るのか?」

目の前で皮膚が破裂する生徒。

横たえられ治療を受ける生徒は10031番目の被験者の最後を思い起こさせる。

743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/17(金) 18:59:35.86 ID:ItwxoEJAO


美琴「仕方なかったのよ、誰かに頼むことなんか出来なかったんだから。それにほら今は私、こんなに元気じゃない。終わった話しよ、ねっ」

あまりの話しに白井と初春の手も止まっている。

白井は思い出していた。インデックスと出会った日の会話を、何故能力者が魔術を使えば拒絶反応が出るという確かめてみなければ分からないことを知っていたのか疑問に思ったことを思い出していた。

白井「お姉様……」

上条「美琴、終わった話しだからって……今更言っても……無茶すんじゃねー」

美琴「そう言われると思ったから黙ってたんだけどなあ……」

沈痛な雰囲気が漂う中、

ステイル「それでその解析の結果からあの子の枷をアウレオルスのヤツは外せるのか?」

空気が読めないヤツと言われても仕方ないステイルが一番気になるのはやはりインデックスの事。

美琴としては話しが変わり有り難かったが。

美琴「正直なところ、わからない」

美琴は考え込みながら

美琴「インデックスの首輪は複雑かつ堅固な構成をしてるわ」

神裂「錬金術の極み黄金練成なら」

ステイル「だが、そこの」

ステイルは麦野を見て

ステイル「能力者の異能には対応しきれてなかったのじゃないかい?」

744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/17(金) 19:02:11.03 ID:ItwxoEJAO


美琴「それは科学と魔術の違い。『思い通り』と言っても法則が違えば」

ステイル「答えが違う。シミュレート通りとはいかないか」

美琴「インデックスの首輪は魔術」

ステイル「可能ということになるのかな」

美琴「でも、不安もあるの。首に刺す針の効果ってわかる、神裂さん」

神裂「黄金練成に関係ありませんね、それこそ東洋医学の針治療による精神安定作用でしょうか?」

美琴「そうよね、不安な気持ちを抱えたまま黄金練成を使えばどうなるの?」

美琴「首輪を見て難しいと思ってしまったら。無理だと思ってしまったら。当麻が言うように言葉することが黄金練成の発動キーだとしたら、もし不安を口にしたりしたら?」

ステイル「望みを叶えるでなく、思った事を具現化する黄金練成か。針による精神安定作用まで利用しなければならない程、アウレオルスの精神は不安定になってるとも言えるね」

神裂「危険ですね、やはり止めるしか」

そこで強大な力の塊を遥か上空に感じる。

魔力の余りにも強い力。

神裂、ステイル、美琴は窓から外を見上げる。上条達もそれにつられて窓に寄り見上げると

巨大な赤い光の柱が南棟に立っていた。
既に上空より落ち来たりていた。

南棟が砕ける。

ガラスが一斉に割れ落ちる。
上条達は呆然とした面持ちで眺めるしかない。

初春は床にへたり込み嗚咽を漏らす。

彼女が見る二度目の崩壊の様子に。幼い頃に刻まれた記憶のリプレイ。

崩れ行く南棟、西棟、東棟にどれほどの生徒が残っていたか。

上条「こ、これは」

神裂「恐らく、ローマ正教『グレゴリオの聖歌隊』」

美琴「これが原典……」

745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/17(金) 19:07:30.82 ID:ItwxoEJAO


浜面と佐天は長い待機時間を強いられていた。

佐天は神裂とステイルの到着を美琴に連絡して二人に合流場所を告げる仕事を果たしていたが佐天がしたことはそれだけ。

皆に加わって手伝いをしたい気持ちはあっても足手まといになる危惧もある。

佐天(どんなに努力しても埋められないのかなー?)

佐天「浜面さん、何かすること、できることないですかねー?」

浜面「みんなが安心して戻って来れる場所を守るってのも重要なことだぞ、それに」

佐天「それに?」

浜面「ここが安全な場所って思ってる、お嬢ちゃん?」

佐天「お、お嬢ちゃんって、えっ?ここ危険なんですかーッ?」

浜面「……気づいてなかったか、お嬢ちゃん周り見て見ろよ」

佐天「お嬢ちゃんじゃないです。佐天、佐天涙子って名前がありますから……周りって別に……」

浜面「誰も居ないだろ、車も通りがかりやがらねえ」

佐天「これってまさか、ステイルさんのと一緒?」

浜面「ステイルって、さっきの赤髪か?これがどういう状態かわかんねえけど、ここも異常地帯の真っ只中ってこった」

佐天「浜面さんいつから気づいてたんです?」

浜面「…………………10分前」

佐天「ぶっ!浜面さん、さすがはlevel5を倒した人って思ったのに」

746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/17(金) 19:09:48.04 ID:ItwxoEJAO


浜面「だから倒してねえって、お嬢ちゃん」

佐天「ですから佐天です、もう浜面さんたら」

浜面「ハイハイ、佐天ちゃんね」

佐天「ちゃんはやめて下さい、ちゃんは。もう私、子供じゃないんですから」

絹旗から比べたら大人っぽく見えるが子供じゃないと言ってるうちは子供だよなと浜面は思いながら、

浜面「注文が多いねえ……おっ?」

周囲を警戒してみたら変なモノを見つけた。

佐天「?どうしたんですか?」

浜面「なんだありゃ銀色の人型ロボット?」

人型ロボットなど研究目的もしくは趣味で作るのならともかく実用性に乏しいのは学園都市の人間は誰でも知っている。

佐天「えっ?なんですかそれ」

浜面「そらあそこ、違うな、動きが人間だよな、西洋の鎧か?こんなところでコスプレってこたあないよな、何やってんだ?」

バックミラーで見つけたのだろう浜面は後ろを指差す。

佐天は指さされた方向を目で追うと確かに浜面が言うような銀色の鎧姿が見える。

浜面「頭を低くして見つからないようにって、おい!」

浜面が声をかけた時には遅く、佐天は席を倒すとドアを開け車外に飛び出していた。

浜面「くそっ!」

747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/17(金) 19:14:03.15 ID:ItwxoEJAO


佐天はとても嫌な予感がして駆け出していた。

あの鎧姿が何かしようとするなら止めるぐらいはできると思って。

鎧姿の正体はローマ正教十三騎士団の『ランスロット』。今回のアウレオルス=イザード討伐作戦のリーダーでもある。

容易く片付くと思われたこの遠征。意外なことに人員はほぼ全滅。まともに動けるのは彼一人となっていた。

それでも任務を果たさなければならない『ランスロット』は最終手段に打って出るしかなくなっている。

遠征の際には必ず準備されている、これまでは使わずに済んでいたローマ正教の切り札、『グレゴリオの聖歌隊』。

作戦開始時にはバチカンの大聖堂に3333人の修道士が集められている。

『ランスロット』の要請により聖呪の詠唱が始まる。

後は『ランスロット』が赤い大剣で目標を定め発動させるだけとなる。

壊滅的打撃を受けた十三騎士団の精鋭達。十三騎士団は以後機能停止に陥るのは間違いない。

その代わりあの魔術師の塔ごとアウレオルス=イザードを葬る。

決意ではなく狂気。

ローマ正教の威信をかけて『グレゴリオの聖歌隊』を発動する。

「ヨハネ黙示録第八章第七節より抜粋」

合図を下す。

「第一の御使、その手に持つ滅びの管楽器の音をここに再現せよ!」

高らかに滅びの音が奏でられる。

748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/17(金) 19:16:01.24 ID:ItwxoEJAO


佐天の目に鎧姿が大剣を天に、三沢塾の南棟に向けて掲げる姿が映る。

淡く赤色に大剣は光っている。

そして鎧姿が声をあげるとともに大剣を振り下ろす。

プアァァァーーーンッ!

とラッパを鳴らすような音が天に響く。

佐天が背後、南棟を振り返る。

空に赤い光条が集束していき、最後の赤い光条が光の塊に吸い込まれていくと空を漂っていた雲を押しのける。

佐天からは空に大きな穴が開いたように見える。

瞬間

赤い光の塊が極太の赤い光の槍となって南棟を打ち砕く。

佐天「あ、あ、ああああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁーーーーーーッ!」

佐天は駆け出す、もう一度鎧姿に向けて。

自分に何ができるか考えもしない。

ただ駆け出す。

そして鎧姿の前に立つと拳を握り腕を振る。

「なんだ貴様は、あそこに知り合いでも居たか?」

『ランスロット』は少女の細腕を軽く避ける。

佐天は怒りにまかせ腕を振り回す。

「ふん、一般人の犠牲は遺憾ではあるが背信者の塔を残してはローマ正教の沽券に関わる」

『ランスロット』の目には三棟までが崩れ落ち北棟が残されている姿が見える。

749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/17(金) 19:19:28.80 ID:ItwxoEJAO


物理攻撃を吸収、分散させる効力を持つ騎士の法具、施術鎧を着用している『ランスロット』にとって佐天の細腕で殴られようが痛くも痒くもない。
ただ煩いだけでしかない。

北棟に向け『グレゴリオの聖歌隊』を再発動するため『ランスロット』は佐天を払いのける。

騎士の腕力である。中学一年生の少女でしかない佐天は5mほども軽々と吹き飛ばされ、硬いアスファルトの路上に倒れる。

アスファルトがヤスリとなり牙となり佐天を傷つけている。

傷つきながらも佐天は『ランスロット』に立ち向かおうと起き上がる。

その時、崩壊したビルの立ち込める煙の中から一台の車が抜け出す。

浜面「この野郎ォ!」

車から浜面が叫ぶ声が聞こえ、『ランスロット』に車をぶつける。

『ランスロット』は跳ね飛ばされず車のフロントにへばりついる。

フロントガラスに銀色の鎧姿。

浜面はハンドルを切り、アクセルを一踏み。

改めてブレーキを思いっ切り踏む。

車は歩道を越え建物の壁に衝突する。

突然のことに一連のシーンを見送っていた佐天は慌てて車に駆け寄る。

佐天「は、浜面さん大丈夫なんですかっ!」

あの勢いで壁に衝突すればドライバーもただでは済まないと思い安否を尋ねたが、

浜面「だぁーッ!死ぬかと思った」

750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/17(金) 19:22:18.18 ID:ItwxoEJAO


運転席から浜面が降り立つ。

浜面「まだ退いてろよ、こいつまだ元気みてえだから」

佐天がえっ、と思って見るとちょうど運転席の前、壁と車に『ランスロット』が挟まれている。

状況からして普通なら生きているとも思えないのに『ランスロット』は体を揺さぶって脱出を図ろうとしていた。

佐天「うわー」

ただどうも足も宙に浮き、腕も挟まれていては這い出るには難しそうである。

そしてフロントは人の形に潰れていた。

佐天「よ、よく浜面さん無事でしたねー」

『ランスロット』がクッションになったかも知れないがかなりの衝撃ではあったはず。

浜面「腕だよ腕、車の運転はカードじゃねえ、技術だ」

スタントマン顔負けのギリギリのブレーキ。一歩間違えれば浜面も重傷を負っていた。

浜面は銀色の騎士をしげしげと眺めると

浜面「なんて素材で出来てんだこの鎧。車にぶつけられ壁に挟み込まれても無傷じゃねえか」

科学技術ではなく魔術の一品。施術鎧の衝撃を吸収する効力が徒となり跳ね飛ばされず車にへばりつてしまった。結果的に『ランスロット』は身動きが取れない。

その姿は哀れである。

が、浜面は許さない。

佐天の姿を見ると擦り傷だらけに服にも血がにじんでいる。

751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/17(金) 19:25:04.56 ID:ItwxoEJAO


浜面「悪かったな、お嬢ちゃんなんて呼んで、ちゃん付けもやめるわ、佐天」

浜面「さーて、テメェ、随分頑丈なもん着けてるようだが、こうすりゃ」

浜面が兜の面覆いを上に開けると『ランスロット』の素顔が見える。
ラテン系と思われる壮年の男。

「き、貴様どうするつもりだ」

『ランスロット』は動けない。

学園都市の駆動鎧と違い施術鎧は防御専門で人の力を倍にしてくれたりはしない。

騎士といえど人一人でファミリーカーを押し返すことなどできない。

浜面「青春の熱い滾りをサンドバックにぶつけようと思ってな」

ドガッ!

『ランスロット』の顔面に浜面の左の拳が刺さる。

「ぐはっ」

『ランスロット』の呻きが漏れる。

浜面「済まねえな、位置的に左しか使えそうもねえんだ、一発で眠らすようなことできねえや。辛かったら自分で意識を手離してくれ」

全く済まなさそうでもなく、

ドガッ!、ドガッ!、ドガッ!

浜面は左で殴る、殴る、殴る。

浜面「それでも、あそこで死んだ人間に較べたら軽いもんだろ」

浜面は見ていた。崩れゆくビルから人が落ちていく姿を。

左手でしか殴れないのがもどかしい。

752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/17(金) 19:26:58.79 ID:ItwxoEJAO


佐天は一方的に殴りつける様子を見ていられないが止める気にもならず三沢塾があった方を見る。

殴りながら浜面が佐天に、

浜面「あいつら無事なのか?」

ドガッ!

佐天「北棟に集合と言ってましたから多分………」

集合した後のことは知らない。

ドガッ!、ドガッ!ドガッ!

佐天「連絡取ってみます……」

佐天は携帯電話を取り出そうとして

佐天「……って、えーーーーーーーーッ?」

驚きのあまり地面に落とす。

浜面「どうした、佐天…………なっ、なーーーーーッ!?」

佐天の驚いた声に浜面が振り返ると信じられない光景が入ってくる。

現実とは思えない光景。

崩壊したビルが巻き戻るように修復していく。

吹き上げていた煙が潮が引くように消えていく。

車についていた粉塵も引き寄せられていく。

瓦礫が集まりビルを象っていく。元の姿へと。

ビルの崩壊をビデオに撮り、それを逆回しに見ているようだった。

そして最後には赤い光までも巻き戻り何処かへ飛んでいく。

それを薄目で見ていたローマ正教十三騎士団歴戦の勇士『ランスロット』の意識も遂に深い闇の中に沈む。

753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/17(金) 19:33:00.55 ID:ItwxoEJAO


ステイル「これは、僕らの方が不安になるな」

麦野「とんでもないモノ見ちゃったわね」

絹旗「……はい、C級映画を見ているようでした」

上条達が見たものは浜面、佐天が見た光景と同じ崩壊したビルが巻き戻ってゆく姿。今では時間を切り取ってその時がなかったように三棟のビルは建っている。

ビルの崩壊に呆然とし巻き戻る様に唖然とする上条達。

ステイル「魔術師から見ても埒外の力、これが黄金練成か」

上条「これならインデックスの首輪、外せるんじゃないか?」

美琴「そうね、それだけのインパクトはあったわ」

圧倒的な光景。

神裂「しかし、確証はありません」

見えない不安。

美琴「アウレオルスと会って話しをしてみるしか無いわね、話す機会をくれるか問題だけど」

神裂「はい、今の魔力の発生場所はこのビルの上からです。10階でしょうか」

上条達は天井に遮られて見えない10階を凝視する。

その10階では

アウレオルス「当然、『グレゴリオの聖歌隊』は既知の魔術。聖呪は修道士共の元に還った」

アウレオルスは既知の魔術とはいえ『グレゴリオの聖歌隊』を反故にしたこで自信を持ち直していた。

後の問題は時間。

聖人神裂、炎の魔術師ステイル二人の魔術師の侵入も確認済み。

それに学園都市の能力者まで相手どっていては刻限を過ぎてしまう。インデックスを死に至らしめてしまう。それは本末転倒。

それにアウレオルスはせめてこの一年の記憶を残しておいてあげたかった。

手に入れた自信を胸にアウレオルスはインデックスの居る最上階へ向かうことに決める。

解析に回せる時間は少ない。侵入者が最上階に至るまでに全てを済まさなければならない。

アウレオルスは最上階に向かう前に

アウレオルス「憮然、『歩く教会』は機能を失っていた。が、禁書目録の知識があれば替わりの物を用意できよう。『姫神、全てが終わるまでここで待て』」

アウレオルスは望みを叶えるためインデックスが待つ最上階へとのぼる。

754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/08/17(金) 19:33:26.08 ID:ItwxoEJAO
此処まで
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/17(金) 19:42:24.47 ID:id1HJOqDO
乙。
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/17(金) 21:56:21.90 ID:+WDJYFsc0
乙!  続きも楽しみに待ってる
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/17(金) 23:47:28.18 ID:Zg0OF1ih0
更新頻度高くて嬉しい
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 00:21:27.86 ID:uRXmVj/q0
乙。
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/08/19(日) 14:04:37.44 ID:qT7WNzFAO


我が名誉は世界のために
Honos628

アウレオルス=イザードの魔法名。

自らに課した『名』、自らに架した『意味』。

魔術師にとって魔法名とは自らの決意、信条に他ならない。

自らの『知』は世界の全てを例外なく救えると信じて名付けた魔法名。

錬金術師として究極の目的、黄金練成もその道程の一つ。不可能と言われたが研究を続けた成果がこの手にある。

三沢塾の北棟最上階、以前はワンフロアを丸ごと校長室として使用されていた空間。

市場に出せばかなりの値が付く絵画や彫刻などの美術品で飾り付けてある。敷物や置かれてある家具も一見して高級品。

来訪者に驚嘆を与えるための豪奢な広々とした空間。

ただ審美眼に優れた者が見れば統一感が取れていない、一言で表せば成金趣味と言われだろう。

アウレオルスにしても趣味に合わず三沢塾の制圧後もここを使っていなかった。

その空間の中央、応接用に使われていたソファの上にインデックスが寝かされている。

『眠れ』と命じていた。安らかに眠っていてくれるなら苦しみもなかった。

命じなくても起き上がれないのは明らかだった。

760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/19(日) 14:08:24.95 ID:qT7WNzFAO


インデックスはぐったりと手足を投げ出し、吐息も荒い。室内の温度調節は利いている、換気もされている。なのに汗が粟粒のように浮き濡れそぼっている。

顔も苦しげに眉を寄せ、うっすらと赤く染まっていた。

いつ以来だろうかとアウレオルスは考えていた。

インデックスの人を幸せな気持ちにさせる笑顔を見ていないのは。

少なくとも3年にはなる。

インデックスと出会ったのはアウレオルスがローマ正教の穏秘記録官をしていた頃。

穏秘記録官としてアウレオルスは魔術の脅威にさらされている罪のない人々を救うため魔術の対処法を記した魔導書を書いてた。多くの人を救えるはずだったがそれは失望へと変わる。ローマ正教は対処法を秘匿し影響力を拡大するための道具にしようとした。アウレオルスは魔法名に従い救える者を救うためイギリス清教へ渡りをつける。内密の会合を行い、その場に居たのがインデックス。救われぬ者。

以降、一冊であろうと狂い死にさせかねない魔導書を10万3000冊も収めながら童女の微笑みをみせる少女と接触を重ねる。

アウレオルスの目的は変わっていった。世界の全てを救うことなど彼に微笑む一人の少女を救えずに救えるものかと。

アウレオルスは少女が微笑み続けられるように魔導書を書き続けた。

それが人を助ける糧となり助けられた人に少女が微笑み、アウレオルスとともに笑い合える事が彼女にとっても救いであると信じて。

しかし3年前、刻限を迎える、終わりを迎える。

残酷な現実、騙された現実。

目を覚ましたインデックスは彼を忘れていた。アウレオルスが何を語ろうとも戸惑い申し訳なさげに悲しい表情を見せるだけだった。

ここはもう一度彼女の微笑みを取り返すために旅し、最後に辿り着いた先。アウレオルスはインデックスを見下ろす。

761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/19(日) 14:11:07.08 ID:qT7WNzFAO


あの頃の微笑みは取り戻せずとも笑い合える明日を迎えることができる。

車中での観察、現在の解析でインデックスの枷を大まかに把握していた。

インデックスの喉に描かれている魔法陣。科学流に言えばあれはプログラムソフトを書き込んだCD。それがインデックスを苦しめる魔術を起動している。

複雑かつ堅固な三重の結界をもち、魔法陣であるがもはや一つの霊装である。

穏秘記録官として魔術の対処法を書き記してきたアウレオルスにはそれを紐解くのに訳は無い。

『グレゴリオの聖歌隊』を反故にしたようにインデックスの喉に描かれた魔法陣を反故にすれば良い。

解析を続ける時間は無かった。聖人神裂の魔力が下の階、10階にまで上がってきている。

あの者らが最上階に至る前に済まさなければならない。

インデックスを救う時がようやく来た。

アウレオルスに自信が漲る、不安がよぎる。

突如の不安にアウレオルスは首を振る。そして針を首に刺そうと取り出すが手が震え床に落とす。

アウレオルス「何を不安に思うことがある。救える筈なのだ、私の手で。私が、私がインデックスを救う。私以外の誰が救えると言うのか」

不安に襲われ病的に呟きアウレオルスは針を拾い首に刺す。

インデックスの側に立ち直すと解析した結果を頭の中でシミュレートしていく。

時間は無い。

言葉に表す。

アウレオルス「『三重の結界に有るものインデックスを解き放て』」

762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/19(日) 14:13:32.38 ID:qT7WNzFAO


インデックスを中心に空気が破裂する。風が起こり絵画や彫刻を揺らす。

が、それまですぐに収まり静寂な空間へと帰る。

インデックスの顔の赤みがとれ、息は正常、ぐったりとしていた手足にも力が戻っているように見える。

束の間の安堵。

インデックスの目が開く。

アウレオルスに微笑みかけていた目ではなく、虚空を見る目。

しかも美しい宝玉のようだった碧眼が赤く光っている。眼球が赤く変わったのではない。眼球に血の色をした魔法陣が浮かび輝いているからだ。

ゆっくりとフワッとどこにも力が入らず身体が浮くようにインデックスは一挙動で立ち上がる。

アウレオルスは本能的に後退りしていた。危険という声だけが頭に鳴り続ける。背筋が震える。脅威より恐怖、原始的な震え。

インデックスの目は虚空を見ながらアウレオルスを捉えている。

インデックスから声が漏れる。

「警告、第三章第二節。Index-Librorum-Prohibitorum 禁書目録〈インデックス〉の『首輪』、第一から第三まで全結界の消滅を確認。再生準備……自己再生開始」

絶望への託宣のように

「『書庫』内の10万3000冊により、適性人物による魔術の術式を逆算……完了。『完全なる知性主義〈グノーシズム〉』黄金練成」

「これより排除を開始します」

インデックスの目の輝きが増す。

763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/19(日) 14:16:42.27 ID:qT7WNzFAO


吹き飛ばされる。

インデックスから先程とは段違いの轟!!という莫大な風が起こり衝撃波となって走り抜ける。

アウレオルスは持ちこたえられず、遠くへ押しやられてしまう。

アウレオルスの過誤は『首輪』を魔法陣と認識したこと。『首輪』はインデックスの枷の中枢機能『自動書記〈ヨハネのペン〉』に結びつき再生機能を預けている。三重の結界を持つ魔法陣を破壊したとしても再生機能がある限り復元する。

そして魔法陣が破壊されたことにより『自動書記〈ヨハネのペン〉』は10万3000冊の魔導書を外敵から守るため覚醒した。

インデックスの背後で莫大な魔力を持つ赤い光が蠢く。不安定に揺れるそれは次第に形を整え真紅の翼となる。炎の赤、血色の赤をした凶鳥の翼。

巨大にして強大な魔力を前にしてアウレオルスは自らを笑い、呪い、憤る。

アウレオルス「ふっ、ふははははっははははっははッ!何だ、これは何だと言うのだ」

考えてみればおかしなことだった。

10万3000冊の魔導書を収めた魔導図書館。あらゆる魔術に対応可能な生きるデータバンク。イギリス清教の切り札。

本当に切り札足り得るか?敵対者を圧倒しうるか?

例えば聖人が敵に回れば、魔術世界で科学側の核兵器並みの扱いを受ける聖人が

例えば世界20億の信徒がいるローマ正教と全面対決となれば、それにもう一つの旧教側であるロシア成教が加われば

例えばここ科学側の本山、学園都市との関係が破綻し戦争となれば

万が一にもその全てが敵に回れば

そして魔法世界における究極の存在、『魔神』が活動を開始すれば

対抗可能な戦力として『魔神』を欲しても不思議ではない。

アウレオルスの前に10万3000冊の魔導書の知識を持って莫大な魔力を横溢しながら立ちはだかるインデックス。

これだけの化け物を魔導図書館としてだけ置いておくはずがない。

764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/19(日) 14:20:24.31 ID:qT7WNzFAO


『魔神』を保有していると知られればその瞬間に魔術世界全てを敵に回す。魔導図書館とは隠すための便宜上のもの。

尚且つ厳重に管理下に置かなければならない。

『首輪』はそのための霊装。一年おきに記憶を消さないと命を繋げないという嘘もパートナーを常に側に置いておくため。パートナーは悲しい嘘の宿業に騙されインデックスを守る。救いと、教会の慈悲と信じてインデックスの記憶を消し管理し易い状態を維持することに協力する。

全ては教会の意向、最大主教の考えか。

アウレオルス(それにしてもインデックス一代しか役に立たぬものを、インデックスが天に召された後はどうする積もりだったのだ。また完全記憶能力を持つ子を探しだして同じことを繰り返すつもりか?)

アウレオルス(それともインデックスを素体にホムンクルスでも作るつもりか?)

アウレオルス(させるものか、インデックスを道具のように扱うなど赦せぬ)

相手が『魔神』であろうと、こちらも人知を超えた黄金練成の使い手。

インデックスの額の当たりでバチッと火花がはじける。

第二撃が来る。

アウレオルス「『破られる事なき防壁』」

アウレオルスがシミュレートしたのはオスマンの侵攻を食い止めたマルタ、聖ミケーレ砦の胸壁。

衝撃波を受け止め防壁は振動するも崩れることはない。

「ヨシュアの角笛」

ジェリコの防壁を崩した角笛が高らかに鳴る。

アウレオルスが構築した防壁が共鳴を受け砂に返る。

インデックスの攻撃が防壁に向かう隙をアウレオルスは待っていた。

もう一度、インデックスの再生機能まで含めて『首輪』を砕くシミュレートを行う。

アウレオルス「『インデックスを縛る『首輪』よ砕け散れ』」

765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/08/19(日) 14:23:35.96 ID:qT7WNzFAO


重なるようにインデックスの口から言葉が綴られる。

「Index-Librorum-Prohibitorumの『首輪』は砕けず」

混乱。

黄金練成が発動した手応え無し。

アウレオルス「まさか『強制詠唱〈スペルインターセプト〉』か、バカな黄金練成にっ!?」

『強制詠唱〈スペルインターセプト〉』、魔術を行使する敵の頭脳にノタリコンなる暗号を用いて介入し魔術に誤作動を起こさせる魔術。
魔力を必要とせず魔力のないインデックスが魔術師と戦わなければならないときに使用していた魔術。

黄金練成は未知の魔術、10万3000冊の魔導書にも記されていない。ただ一人アウレオルスが完成させた魔術である。

逆算して黄金練成と見極められたとしても黄金練成に介入出来るとは思えない。

だいたい黄金練成は『思い通り』になる魔術、思考を読まれない限り……

アウレオルス(狙いを読まれていたか)

アウレオルスの目的は『首輪』の破壊。

『自動書記〈ヨハネのペン〉』の目的はインデックス、10万3000冊の魔導書、『首輪』の保護。

アウレオルス(『首輪』の防御に的を絞っておれば対応可能だと言うことか)

アウレオルスの解答。

やはり実戦経験が不足していた。

アウレオルスは学級の徒であった。

局面が動くことに対処するより解答を求めてしまった。

「第八章第二五節、適性人物に有効な術式に改良、適性人物の排除を続行します」

アウレオルスの視界が赤い光に埋め尽くされる。

インデックスの背後から生える真紅の翼がまた不定形となり広がる。

複数の真紅の翼に分かれ、伸びる。

その動きだけでアウレオルスに圧力がかかる。

そして真紅の翼は振り回された。

三沢塾北棟は最上階部分を失う。

766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/08/19(日) 14:24:59.26 ID:qT7WNzFAO
此処まで
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/19(日) 18:00:01.35 ID:LwyicEaQo
乙です
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 23:47:53.70 ID:3EQlgAwz0
乙!
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 02:03:03.51 ID:FJF0LVKSO
なんらかの形で報われて欲しいよな 乙
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/09/04(火) 20:59:48.71 ID:LZ+coLGAO


上条は最上階まで駆け上がると異常なまでの圧迫感を受ける。

階段の上がり口に隣接したエレベーターホールの真正面、校長室と書かれたプレートが飾られた重々しい木製ドアの向こうから魔力を見る目を持たなくても感じ取れる程の異常。

後ろに続く美琴に神裂もドアの向こうから膨れ上がる魔力を見る。

美琴「当麻ッ!」

美琴から鋭い声があがる。

上条「美琴、みんな下がってろッ!」

上条は見えない脅威に向け右手を突き出す。

その瞬間、赤い光の奔流が襲う。赤い凄まじい光芒が轟音をたて空間を巻き込み薙払う。

上条の目からは木製ドアが吹っ飛び、壁が消し飛び、赤い光に飲み込まれる様子が見えた。

無事なのは上条の背後の空間のみ。薙払われた跡は瓦礫の山と化す。

それだけではない、最上階に上がって束の間に見た景色との最大の違いは上条達を覆う空間が夜天の下になっていること。

上条達が見た赤い光の奔流は最上階の天井、ビル全体から見たら屋上までをも吹き飛ばしていた。

三沢塾の北棟は高さを一階分失い、上条達は屋上となってしまっている場所に立っている。

真っ裸になった空間にヒューっと風が流れる。

風が舞い、空間の中心で乱れる。そこでは膨大な魔力を放つ真紅の翼が風を煽っていた。

白と赤。白いシスター服の少女。その背中から真紅の翼が生え蠢いている。

予想はしていた。

まず10階に上がった上条達一行は『吸血殺し』姫神と出会う。彼女からアウレオルスの居場所を聞き出したその直後にアウレオルスのモノではない膨大な魔力を観測する。

姫神の保護に白井と初春を残し上条、美琴、神裂、ステイル、絹旗、麦野の6名は最上階を目指した。

胸の内では嘘であって欲しい、間違いであって欲しいと念じながらも覚悟はしていた。

『魔神』との対決を

771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/09/04(火) 21:05:27.05 ID:LZ+coLGAO


美琴「インデックス……」

最上階を展望台に変えた凄まじい破壊を行ったインデックス。上条と残された階段から上って来た5人の方を見ず夜天に目を向けている。

ステイルは瓦礫と化した12階の跡を眺め、

ステイル「アウレオルスの魔力を感じられないぞ」

神裂「あの魔力です。まともに受ければチリも残さず消え去るでしょう」

ステイル「そんな相手を止めないといけないとわね……」

皮肉、なのだろうかステイルは煙草を口に銜え火をつける。顔は歪んでいる。


上条「止めるじゃなく救うんだろ」

常人であれば足が竦むところを

上条「ずっと待ってたんだろ?インデックスの記憶を奪わなくても済む、インデックスの敵に回らなくても済む、そんな誰もが笑って誰もが望む最っ高な幸福な結末ってヤツを」

勇気を振り絞り、なお皆に分け与えるかに語る。

ステイル「そんなことは言われなくても!現実的にアレを止めない限りッ!あの子を救えないんだッ!」

苦々しくステイルが答え、

美琴「当麻の夢ね。ステイル、待ち焦がれてたんでしょ、こんな展開を。絵本みたいに映画みたいに命を賭けてたった一人の女の子を守る。『インデックスのために生きて死ぬ』、アナタの誓いね。そんな魔術師になりたかったんでしょ。思ったより大事になっちゃったけどアレを止めてインデックスを救い出す!」

美琴が応える。

アレ、それが何を指し示すか、言葉にすればその存在が大きくなる。その名前に初めから負けてしまう。

インデックスが目標を定めるようにこちらを向く。その視線、赤い魔法陣を宿した目が上条達を見る。

「警告、第十一章第二節。新たな敵兵を確認。『首輪』の再生率3%。……現行術式による迎撃を続行します」

真紅の翼が意志により動く。明らかに攻撃意図を持ってバラバラに蠢いていた翼が足並みを揃えて多方向から上条達に襲いかかる。

772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/09/04(火) 21:11:56.92 ID:LZ+coLGAO


夜天の空に突き上げられた一振りの剣、高らかに掲げられた真紅の血の色をした一翼。神々しく禍々しく見える。

正面に立つは上条。

左右に広がる真紅の翼達。翼と呼ぶよりは猛禽類の血に塗れた鉤爪。

左右から男女の声。

ステイル「Fortis931」

以前にも聞いた殺し名と称した魔法名。同時にカードを取り出し詠唱を始める。

神裂「Salvere000」

名乗らせないで下さいと言っていた魔法名。神裂は七天七刀に手をかけ身構える。

真っ向正面より真紅の翼が振り落ちる。

神の奇跡さえ消し去る右手で上条は振り落ちる一翼に打ち合わせる。膨大な魔力は一瞬では消えない。拮抗した間を空け真紅の一翼の半分までが消失する。

左右では襲いかかる真紅の爪をステイルの前に現れた炎の巨神が受け止める。神裂が抜く手も見せず七天七刀を振るう。

神裂「唯閃ッ!」

真紅の翼が断ち切られ魔力の余波で風が舞う。

ステイルの炎の巨神イノケンティウスて真紅の翼は互いを押しつぶさんと、焼き尽くさんとするが両者とも力の限界が来て消失する。

残りの翼を蒼白の電撃、白い光線が迎撃し遮る。

美琴は全力全開の電撃を浴びせ続け前衛立つ上条、神裂、ステイルを援護する。

麦野もまた『原子崩し』を立て続けに発射して真紅の翼を狙う。

その合間に

麦野「絹旗、アンタは下の3人を連れてこのビルから脱出させなさい!」

絹旗「麦野ッ!」

麦野「この状況アンタの『窒素装甲』じゃ荷が重い。それより最上階をぶっ飛ばすような相手だ。2階下が安全なわけない」

電撃を放ちながら美琴も

美琴「絹旗さん私からもお願い、あの子たちを」

絹旗「わかりました。必ず後でお会いしましょう」

絹旗は階段口から下へ姿を消す。

773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/09/04(火) 21:17:28.65 ID:LZ+coLGAO


美琴「麦野さんもわざわざ付き合わなくてもいいのに」

麦野の方を見もせず美琴が声をかける。

麦野「いまさら放っておけるか!それに……」

美琴「それに?」

麦野「今は言わない。事が終わった後で言ってあげるわ」

後衛に立つ二人の会話が終わったときにはインデックスからの第一波も終わっていた。

上条の右手で消され神裂に断ち切られイノケンティウスと相討ちとなったはずの真紅の翼はインデックスの背後で何事も無かったように数を戻しざわめく。

上条「くそっ、確かに消えたのに」

神裂「ええ、手応えはありました」

ステイル「とはいえ、僕の方はこんなものだ」

ステイルの手にするイノケンティウスを顕現化したカードは焼け焦げ、風に吹かれて塵に変わる。幻想殺し〈イマジンブレイカー〉でもルーンの刻印までは消えなかった。そのルーンの刻印が魔力の逆流、フィードバックを受け灰に変わっている。真紅の翼が持つ魔力の凄まじさを見せ付けていた。

ステイルは代わりのカードを取り出しイノケンティウスを復活させる。

ステイル「同じことだろ」

上条「元を絶たなきゃダメってことか」

元を断つといえど救うべきインデックスに手をかけることは出来ない。

「自動再生の進捗率5%」

美琴(……遅い?)

「敵兵は聖人を含む魔術師2名。科学側の超能力者2名。10万3000冊の魔導書でも該当なき力を扱う者1名。現行の術式を継続。牽制しつつ有効な術式を構築」

「警告、第二九章第三三節。『ペクスヂャルヴァの深紅石』―――完全発動まで7秒」

真紅の血の翼が再び宙を舞う。

上条へと向かう翼に右手を合わせようと上条が構えると、激痛が襲う。

上条の足の指から足首、脛、膝へと、何か強烈な激痛が這い上がって来た。

上条を特定した攻撃魔術。

上条は咄嗟に右手を太腿に打ちつける。激痛はそれで霧散するも血を思わせる真紅の翼は目の前。

美琴「当麻ッ!」

赤を打ち破る蒼白の雷。

最大出力の雷で美琴が迫る翼を押さえる。

のた打つ翼から上条は離れ難を逃れる。
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/09/04(火) 21:26:43.49 ID:LZ+coLGAO


インデックスの猛攻が始まる。

10万3000冊の魔導書から繰り出されるインデックスの魔術。赤い光がビームのように上条を狙う。空気が凝縮して嵐の塊が襲う。

その間にも真紅の翼は左右から猛威を振るう。

上条達は即席のチームでありながら連携を保ち、最適な守備隊形をとる。

5人の抗戦の柱は上条の右手、『幻想殺し〈イマジンブレイカー〉』。

正面から向かいくる魔術を上条が打ち消す。左右から来る真紅の翼を神裂、ステイルが迎え撃つ。

美琴と麦野はインデックスに牽制の電撃、光線を放つ。真紅の翼の何枚かが防備に回る。

電撃、光線を受けても真紅の翼を潰せない。それでも攻撃に回る翼を減らせる。

インデックスの猛攻の前には上条達も防戦一方。魔術世界で核兵器並みの扱いを受ける聖人がいて、軍隊と対等以上に戦えると言われるlevel5が2人いても専守に務めるしかない。

5人は陣形を整えインデックスの攻勢を凌ぐ。

だが、矢継ぎ早に繰り出される魔術は早く決着を着けたい焦りにも見える。無表情なインデックスの顔、瞳に浮かぶ赤い魔法陣、窺うことは出来ない。

魔術世界の常識からしたら危険度は聖人の筈。それがインデックスの魔術攻撃の鉾先は上条へと向いている。


10万3000冊の魔導書にも上条の右手。それを余程の脅威と捉えているのか、それとも?

何か問題があるようにも美琴には見えていた。

上条「キリがねえ、俺がインデックスの傍まで行ければこの右手で止められるかもしんねーのに、近づくことさえできねー」

インデックスに直接攻撃を加えられない以上、上条の右手で持って『首輪』を完全に破壊。自動防御システムを止めるしかない。

それは5人が今、共有している認識。それが上条達の唯一の勝算。しかし、近寄ることさえ今は適わない。

無尽蔵とも思える魔力からの一撃は必殺そのもの。守備に専念しなければならない時間が続く。

775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/09/04(火) 21:30:07.39 ID:LZ+coLGAO


真紅の翼を唯閃で斬りながら神裂が答える。

神裂「『天使の力〈テレズマ〉』、いえ『世界の力』でしょうか」

神裂の方へ目を向ける余裕も無く

上条「なんだそれ?」

上条は神裂の方へ目を向ける余裕も無く、何か訳の分からない黒い渦状のモノに右手を突き刺す。

神裂「『世界の力』とは人の魔力をこの星に置き換えたもの。『地脈』や『龍脈』と言った概念はご存知ですか?」

次いで後ろから美琴が

美琴「ガイア説って聞いたことあるでしょ」

右手を中心に黒い切片が散っていく。

上条「くっ、……あー、地球そのものが一つの生命体って奴だよな」

黒い渦は消滅する。

美琴「そっ、人間の血管と同じように力を巡らせる『脈』がこの星に張り巡らされてる」

美琴は冷静にインデックスに当たらぬよう電撃を放つ。

神裂「その力をあの子は借り受けて莫大な魔力を行使しています。でないとあれだけの魔力、人の身に宿るものではありません」

真紅の翼が電撃を遮る。他の翼が轟っ!と音を立て迫る。

上条「それじゃ、その『世界の力』って奴を遮断できれば」

神裂が七天七刀を振るう。麦野が『原子崩し』を放つ。ステイルの持つカードが何枚か燃え尽きる。

美琴「無理」

ステイルが懐からカードを追加しながら

ステイル「どうやって?その地に普通に満ちている力を。君の右手で破壊できたとしてすぐに寄り集まってくる力を」

火勢が落ちていたイノケンティウスが勢いを戻す。

神裂「結局、あなたをあの子に触れられるところへ行って貰うしかありません」

電撃をインデックスの周囲へ散らす。麦野もそれに合わせて『原子崩し』。真紅の翼がインデックスを包む。それでも何枚かの翼が寄せ付けぬよう展開している。

上条は飛び込むタイミングが取れない。

美琴「あとは『世界の力』を行使するにもインデックスの魔力が起爆剤になるから、インデックスの魔力が尽きるのを待つか」

翼が開き表情のない顔が見える。

776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/09/04(火) 21:34:35.98 ID:LZ+coLGAO


インデックスの猛威は続く。

「警告、第三五章第十八節。『硫黄の雨は大地を焼く』―――完全発動まで五秒」

空から、50近いオレンジ色に灼熱する矢が降り注ぐ。

制圧攻撃。

上条達が整えた防御陣形を崩すための攻撃。

回避と迎撃に陣形が乱れる。

真紅の翼を迎撃し矢を回避、オレンジ色の矢を迎撃しつつ翼を回避する。

神裂が七天七刀を振るい、ステイルが何十枚のカードを手にしイノケンティウスを維持する。上条は右手で真紅の翼を払いオレンジ色の火矢を打ち消す。美琴も麦野も回避しながら能力を振るう。

回避され迎撃を逃れたオレンジ色の火矢は地に落ち、瓦礫の山を更に凄惨な戦場跡へと変えて行く。

陣形は乱れたまま。インデックスは互いを援護できる陣形を整える時間を与えない。

「第一七章第三三節。豊穣神の剣を再現、即時実行します」

インデックスの周りに白い輝きを放つ三本の剣が浮かぶ。

ステイル「豊穣神の剣?まさかフレイの剣かッ!」

不敗の剣。

北欧神話に登場する『自動的に宙を舞い、確実に敵の息の根を止めてくれる武具』。北欧神話の中で一度たりとも敗れることの無かった剣。残念ながら弱点と呼べるモノがない。

それが牙を剥く。

宙を閃光のように飛び前衛の2人、後衛の1人に襲いかかる。

神裂が七天七刀で迎え撃つ。ステイルが限界を無視して手に炎剣を拵える。美琴は砂鉄を集め黒金の剣を手に取る。

見えない相手、自由に舞う剣を相手取り剣戟を交わす。

間隙を真紅の翼が突く。

『フレイの剣』を躱せば真紅の翼が迫り、それを避ければ再度、剣に差し込まれる。背後から襲いかかられる。

ステイルはイノケンティウスを盾に真紅の翼を押さえ込み『フレイの剣』と炎剣で打ち合う。

カードが一枚二枚と燃え落ちていく。『フレイの剣』と炎剣を打ち合わせても燃え尽きてはくれない。寧ろ炎剣に魔力を込め直さなければ炎剣が押し切られそうになる。

イノケンティウスと炎剣の維持に魔力を消耗するステイルの肩の息が荒い。

777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/09/04(火) 21:38:13.56 ID:LZ+coLGAO


美琴もまた電磁レーダーで縦横無尽に動く『フレイの剣』を察知しつつ電撃で払いのけ、砂鉄の剣を鞭状に扱いながら打ち合う。

しかし真紅の翼は躱わすしかない。『フレイの剣』を相手しながらでは最大出力の電撃を放てず、かといって電磁障壁では莫大な魔力を持つ翼を防ぎ止め切れない。

次第に追い込まれる。

上条には過半の真紅の翼が向う。風が唸る。複数の翼により不協和音が鳴る。

右手一本では複数の翼を消滅させられない。一つの翼であろうと莫大な魔力を内包する翼は瞬時には消滅してくれない。
上条は体を横にずらす。

瞬時に消滅しないことを逆手に取り、右手で翼を受け流す。受け流して方向を変える。そこへ別の翼がぶつかる。翼の届かない安全地帯ができる。ギリギリのところで一撃必死の真紅の翼を捌いていく。

上条の戦闘スキルは僅かな間に格段に上がっていた。それでもまだ誰かの援護に回れる程の余裕はなく、身を守るのに精一杯の状況。

上条がギリギリに捌けているのは麦野のおかげでもある。

麦野は『原子崩し』でインデックスを牽制し、真紅の翼を打ち払おうとするも麦野だけでは全員に向かう翼を抑え込めれない。

麦野自身も真紅の翼に狙われている。当然として手数が少なくなる。

選択。

上条に向かう翼を優先して狙うことになる。

唯一若干の余裕のあるのは七天七刀を扱い慣れた神裂だけ。と言えども不敗の剣を相手にしていては他を援護できる程ではない。

一瞬だけ状況に目をやると意を決して神裂はフレイの剣と打ち合うと聖人の腕力を利して遠くへ押しやる。

そして真紅の翼を避けると次の一手を待たず脚に力を込める。瓦礫が転がる床を蹴る。

電光石火。

常人では目にも留まらぬ速さで一気にインデックスとの間を詰めんとす。

778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage saga]:2012/09/04(火) 21:42:45.54 ID:LZ+coLGAO


聖人としてのアドバンテージ。腕力、脚力といった身体能力。それに幸運。

魔神と化してもインデックスの身体能力は人の枠内。

一時的にでもインデックスを拘束できれば、上条が連動してくれたら勝機を得られる。

ステイルも魔力の消耗が激しい。ルーンの刻印にまでフィードバックする打撃を受けている。イノケンティウスを維持するための魔力の消耗は通常の倍以上にもなるはず。おまけに炎剣まで使用せねばならないとなると限界は近い。

同じ事は神裂にも言える。唯閃でもって真紅の翼を切り倒していたが本来、唯閃は一撃必倒のもの。聖人の力を限界まで引き出す、一撃で相手を倒す事を前提とした魔術。莫大な魔力を扱える聖人でも人の身、長時間の使用には耐えられない。このまま戦闘を続けていれば決壊する時が来る。

ステイルにしても神裂にしても他の誰かにしても一人でも欠ければ防御は破綻して全滅は必至。

その時がくる前に、自ら勝機を作るしかない。

神裂は進行を遮ろうとする翼をギリギリのところで躱わす。ビシビシと衝撃が伝わり体が震え、一歩を踏み出すのが僅かに遅れる。

床を蹴りその一歩を踏み出す。

跳んだ瞬間、インデックスの額から火花が散る。

ゾワッ!

インデックスを中心に円状。衝撃波が周囲を圧していく。浮き上がり風に流されていた埃が円を描き綺麗に吹き飛ばされる。

床上数センチを跳んでいた神裂の全身を衝撃波が突き抜ける。体を支えることも出来ず神裂もまた吹き飛ばされ、元居た場所まで追いやられる。

漸くそこで床に足をつけることができ踏ん張れたものの、衝撃波が突き抜けていったダメージから片膝をつく。

神裂「近寄ることも叶わないのですかっ!」

神裂はインデックスに目を向け呟き、周りにも目を向け『フレイの剣』に注意を払う。

すぐに襲いかかられてもおかしくなかった。

ところが『フレイの剣』は動きを止めていた。

779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/04(火) 21:47:10.51 ID:LZ+coLGAO


様子がおかしい、そう思った時には3本の『フレイの剣』がすーっと宙を飛び引いていく。

インデックスの周りに寄り集まる。インデックスを守るように囲み切っ先を上条達に向け漂う。

インデックスの顔に表情はない。真紅の翼の攻撃も止んでいる。何事かと上条達がインデックスを見ていると

ガクッ

無表情のままインデックスの上体が傾く。

インデックスはよろりと上体を持ち直すが足下もおぼつかないように見える。力が入っているように見えず、熱病を患い重い体を引き摺るような動き。

インデックスの口が開く。

「警告、第5章第13節……魔力精製が不能……『首輪』の……自動再生……12%で停止。……現行の術式を中断……しなければ自動再生……に回す魔力を……確保できません。優先順位の……再計算を行います」

赤い魔法陣が浮かぶ瞳だけが上条達を見ている。

























とある病院

「そろそろ薬が効き始めている頃だね」
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/09/04(火) 21:47:40.35 ID:LZ+coLGAO
此処まで
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 22:10:44.96 ID:MRi0J+KDo
待ってたんだよ!
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/09/04(火) 22:37:59.56 ID:LZ+coLGAO
ミス
>>774
10万3000冊の魔導書にも上条の右手についての記述はない。それを余程の脅威と捉えているのか、それとも?
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 22:46:46.96 ID:RGH5obpeo
ヘタ錬さんが蒸発しちゃった・・・かわいそす
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/05(水) 00:45:21.52 ID:zYlJGfUs0
アウレオルスさんはダメだったか、乙
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 00:56:11.44 ID:oYdTT7w50
カエル医師…だと…
ペンデックスつえぇなやっぱり…アウレさん合掌
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/08(土) 20:53:08.08 ID:NUiEaSKAO


窓の外は暗闇が広がっている。

電気もつけないPCのモニターの明かりだけが灯っている室内でカエル顔の医師は電話で話している。

相手は古い友人であり、かつての彼の患者。

『ふむ、その薬は他にも適用できるのかな』

「無理だね」

「生命力を還元したものが魔力。それを得るには自律神経の支配下にある体内器官を自分の意思で自由に動かすことだったかな?君に教えて貰ったことだったね」

「今回は彼女、インデックス君を患者としてつぶさに診ることができた。それこそ呼吸法から内蔵の動き、バイタル値の全てをね。得られた数値を元に体内器官を抑制する薬を調合できただけだよ?」

「君の生命維持処置でも同じだったじゃないか?別の誰かに同じ効果が得られるかはわからない、体内器官が機能不全に陥いる場合も想定できる。危険だね」

『そうか……ところで貴方は別の対処方法も編み出していたのでは?』

「……ふぅ、生命活動のラインをギリギリまで抑制する。例えば意図的に仮死状態におく、もしくは冷凍睡眠〈コールドスリープ〉。それで魔力の精製はできなくなるんじゃないかな。それと……君と同等の処置も考えたよ」

『なるほど』

「その場合、やり過ごしただけで目覚めた時に再度、発症する可能性もあるね」

「そうならなくても毎年、同じ処置をしなければならない。根治治療の方法があれば試してみるべきだよ」

「僕は自分の患者に全力を尽くすだけさ」

「と言っても僕は今回、その手助けをしているだけだね」

『貴方は変わらない』

「……君はこれからどうするのかな、アレイスター?」

『私の望みも願いも変わらないよ』

それを最後に電話は切られる。

カエル顔の医師は夜に変わった空に目を移し、彼等が無事に帰って来ることを願う。

787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/08(土) 21:00:55.60 ID:NUiEaSKAO


美琴は思い出す。カエル顔のお医者さんの話を、症状を抑える薬だと言っていた言葉を。

単なる鎮痛剤だと思っていたがあの医師が非科学〈オカルト〉についても理解していたとしたら、このような事態を想定していたら、あの薬が只の鎮痛剤である訳がない。

『首輪』を維持する程度の魔力を残し、他の魔術を行使できないように抑制する。あの医師ならやってのけても不思議ではない。

事態が変転しなければもっと楽にインデックスの『首輪』の解除が出来たのではないかと思う。

それで美琴が感じていた違和感も理解できる。

上条達の排除に魔力を傾け『首輪』の自動再生が遅々として進まない。魔力を充分に精製できないもどかしさがより激しい攻勢に繋がる。

神裂の突撃により三つ同時に魔術を使用せねばならなくなり、魔力が枯渇してしまったのだろう。

再びぐらりと揺れるインデックス。

「再計算……終了。現状の……魔力精製量……では敵性人物……全員……の撃破は……不可能。最優先……事項『書庫』の……保全……のうえで最も……危険……度の高い……因子を選出。……結果『上条……当麻』。『上条当麻』だけは……排除しな……ければ『書庫』の……安全を確保……できないと……結論」

途切れ途切れに言葉が流れる。

今度はギギギと軋む音が聞こえそうな機械的な動きでインデックスは体を持ち直し上条へと向き合う。

『書庫』の保護。10万3000冊の魔導書。それを守るための防御システム、『自動書記』。最大の脅威は魔術を打ち消してしまう上条の右手、『幻想殺し〈イマジンブレイカー〉』。上条の右手によって魔術で構成された防壁は破壊され『書庫』は丸裸にされてしまう。

実際には上条を撃破できたとしても『書庫』の安全を確保できるとは限らない。

しかし未知の脅威は『自動書記』の計算をも狂わす。いや『自動書記』に課せられた使命を忠実に最後まで果たそうとしているだけである。

788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/08(土) 21:08:49.41 ID:NUiEaSKAO


インデックスの周囲を漂っていた『フレイの剣』が空気に溶け込むように姿を消す。

インデックスの背後から生えていた真紅の翼がインデックスの前を覆う。そのままグニャりと歪み姿を変え、インデックスの瞳に浮かぶ魔法陣を写し込む。

インデックスの前に直径2m強の二つの魔法陣が現れる。

「『上条当麻』に……最も有効な……魔術を構築……これより……特定……魔術……『聖ジョージの聖域』による……『上条当麻』の……破壊を……開始します」

その時には上条は駆け出していた。

二つの魔法陣の接点に亀裂が生じる。異空間が口を開けたように真っ黒な深淵が覗く。その中から何人も近づけぬよう黒い雷が幾条も走り空間を割り刻みつける。

上条は何故か理解していた。深淵たる亀裂、それはインデックスを縛り付けている魔術『枷』、そのものであると。

深淵の中に蠢くものがある。それが何か表す言葉を上条は持たない。ただこの世にあらざるモノ、アレを右手で打ち消してしまえばインデックスを救える、と上条の本能が告げる。

ベギリッと亀裂が開く。内から溢れるモノが出口に殺到し押し破るように、

予兆、これまでにない何か、ゾクッとしたモノが上条の背筋を走る。反射的に右手を前に、

ゴウッ!!

何かが上条の右手に突き刺す。打ち消し切れないチカラが食い込んで来る。

亀裂から迸る光の奔流。

直径1mにもならんとする光の束。

亀裂から始まり上条の右手に突き立つ光の柱。

インデックス最後の攻勢。『魔術』の全てをさらけ出し前面に押し出してまで行う攻勢。

これまでインデックスから放たれた魔術、上条の右手でも瞬時には消去しきれなかったチカラが光の柱を構成する粒子一つ一つに宿る。

あまりにも長く感じられた時間。実数にしてみれば数十秒といった時間。

最後の攻防の時。

789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/08(土) 21:20:02.73 ID:NUiEaSKAO


神裂「『竜王の殺息〈ドラゴン・ブレス〉』!」

ダメージが抜けない神裂が片膝をついたまま叫ぶ。

神裂「伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義です!その右手があるとはいえ、人の身でまともに取り合おうと考えないでください!」

上条「そんなことを言ったってよおっ!」

逃れられない。

右手の前で光の柱はせき止められ花火のように四方八方へと散る。

重圧も凄い。上条は前へと足を動かそうとしているが却って押し戻されている。
逃れようとするとまともに受けてしまう。それだけの圧力が右手にかかる。

ギシギシと右手が嫌な音を立てる。骨が折れるような皮膚が剥ぎ取られそうな右手が砕けるのではないかという感覚がある。

光の奔流は上条の右手を蝕み、焼き、砕き、侵し、刺し、噛み千切ろうとする。右手の処理能力が追いつかない。

血が飛ぶ。光の重圧に毛細血管が破け皮膚からも血が滲み、右手を赤く染めていく。

グギリと右手の手首が音を鳴らす。上条は右手の手首を空いている左手で掴み耐える。

ビキッ、と右手の小指が不自然な方向へと曲がる。

次は砕かれる。あの光の奔流に飲み込まれる自分の姿が上条の脳裏に浮かぶ。

その前に炎の壁が立つ。

『 魔女狩りの王〈イノケンティウス〉』

上条とインデックスの間に割り込み、光の柱を遮る。イノケンティウスは今まで焼き尽くしてきた敵と同様の絶叫をあげ、激しく乱れ揺れる。

光と炎が互いを喰い潰し合う。

ステイルは苦悶の表情。自らの生命力全てを魔力に還元してイノケンティウスに送り込む。

インデックスの傍らに立つために、インデックスを守るために追い求め、磨き上げてきたチカラ。インデックスに立てた誓い。インデックスを救うこの時に命を燃やす。

ステイル「行けっ、能力者!」

イノケンティウスを顕現化するカードは残り少ない。次々と燃え落ちていく。

ステイル自身の魔力もいつまで持つかわからない。滝のような汗が流れ落ちる。

ステイルは今にも意識が飛びそうになる。

790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/08(土) 21:30:40.38 ID:NUiEaSKAO


ステイル「インデックスをっ!何かを成し遂げたいなら、ぐっ……一秒でも時間を……無駄にするなっ!」

苦悶の中から叫ぶステイル。

上条はその声に応え光の奔流の軸線を逸れインデックスを目指す。

インデックスの目が上条を追い掛ける。目と連動して魔法陣も動く。

光の柱が上条を逃すまいとするがイノケンティウスもまた移動し遮り盾となり続ける。結果として回り込むように上条はインデックスに接近する。

あと4メートル。

上条の脚力なら一歩で跳躍できる距離。イノケンティウスの影に入り最後のタイミングをはかる。

ステイルもぐらりと揺れる。時間は無い。

冷たい声がする。

「警告、第二二章第一節。炎の……魔術の術式……を逆算。曲解し……た十字教の教……義をルーンにより……記述したものと判……明。対十字……教用の術式を組み込み中」

イノケンティウスへの対抗術式を組み込まれイノケンティウスが一瞬にして消し去られることになればフリダシに戻る。そうなれば『幻想殺し〈イマジンブレイカー〉』以前に上条の肉体としての右手が保たない。

上条はイノケンティウスの影から出る。全身に力を漲らせ跳躍に備える。

上条には何とかしてくれる確信があった。

「……第一式、第二式、第三式。命名……『神よ、何故私を見捨てたのですか〈エリ・エリ・レマ・サパクタニ〉』完全発

最後までインデックスの言葉が終える前に、コインが宙を舞う。

閃光が駆け抜ける。

着弾。

インデックスの足下に美琴の通り名となった超電磁砲が炸裂する。

床を貫き、爆風が起こる。

インデックスは煽りを受け仰向けに倒れていく。

光の柱は狙いを外し放射されたまま空へと向きを変え天を焦がす。その威力は大気圏を超え衛星軌道まで届く。

丁度、『樹形図の設計者』を載せた衛星が学園都市を監視していた。偶然か必然であったのかその衛星を光の柱が引き裂く。

超電磁砲の衝撃は床に穴を開けただけでは済まなかった。

穴から周囲へとギザギザとしたひび割れが床に生じていく。
インデックスが床に倒れ込んだ途端、それを切っ掛けに床が崩れ始める。

791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/08(土) 21:36:35.15 ID:NUiEaSKAO


激しい戦闘跡。学園都市の技術を元に建てられたビルと言えど戦闘行為は想定してない。

それもlevel5や聖人、魔神が行う戦闘など考慮していればどんな物が出来上がるか、軍事要塞か核兵器の実験場の完成である。

三沢塾は普通の進学塾として設計されたビルに過ぎない。戦闘の余波を受けガタガタとなっていた12階の床は限界を越えてしまった。

ボロッと床が抜け仰向けに倒れたインデックスは階下へと落下する。

美琴「当麻ッ!」

12階の床が陥没していき穴を広げていく。階下の11階も広い空間をもっていたのか支える物も無く、最終的には美琴達の近くまで陥没は進んだ。

上条の足下も崩れる。

美琴の声を受けると同時。階下へと姿を消すインデックスを追いかけ上条は崩れさる足場からダイブを行っていた。

一瞬一瞬がスローモーションに見える。

光の柱が12階の床、11階の天井を引き裂いている。引き裂かれた破片は白く輝く羽へと変わる。物質が変換され魔力を帯びた羽。ふわりと光を放つ羽は美しく見える。

その美しさは亀裂から放射される光と同質。光る羽一つ一つが殺人級の力を秘めているだろう。

構うものか、と上条は思う。

二つの魔法陣は物理的な働きもするのか翼のような役割を果たし、インデックスに浮力を持たせる。インデックスはゆっくりと階下へと降下していく。

出会った頃、聖母の笑みをこぼしていた少女の無表情な顔が見える。

出会ったときから助けると誓った少女。美琴が1年間守り抜いてきた少女。偽りの枷に囚われていた少女。

思いがよぎる。

ステイルに語ったことは上条の願望と同じ。

とびっきりのハッピーエンドが待つ『物語の主人公』になりたかった。

幼い頃に疫病神と呼ばれ、不幸を振りまくと言われ上条は追われた。愛し、愛してくれる両親が悲しい顔をするのを見た。

人の役に立つ人間になってやる。そう誓いを立てて学園都市へやってきた。

幻想。

この右手は神様の奇跡さえ打ち消せると言われても役にも立たない物と断じられた。

792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/08(土) 21:47:07.60 ID:NUiEaSKAO


無能力者のレッテル。役立たず。報われない日々。

元来の困っている人を放っておけない人の良さの影から垣間見える上条の心の歪み。

根っこに暗い願望があった。

何かを成し遂げたい、という欲求。それは幼少期の幻想から来る人に認められたい表れ。自分を証明したかった。

『物語の主人公』はその比喩。

同じ無能力者の浜面の言葉。

『物語の主役なんか無理だって分かってんだよ。ただ自分の人生じゃ主役はってんだ』

この物語はインデックスを巡るお話し。

よって立つは自分自身の矜持。カエル顔のお医者さんに何故憧れたかわかる。

過去に囚われたままの自分。

美琴がいてくれる。気の置けない友人達が今はいる。

『物語の主人公』になんか成らなくていい。

それぞれの人生で主人公を演じ生きていく。

囚われていた過去(幻想)との決別。

「まずは、その幻想をぶち殺す!!」

上条は右手を振り下ろす。

囚える幻想を打ち砕く。

落下するインデックスの眼前に浮かぶ二つの魔法陣、その接点に生じる亀裂、中で蠢く深淵へと。

あっさりと、ここに至るまでの激闘が嘘のように、簡単に右手は引き裂いた。

「警……告、最……終章……第……零…。……『首……輪』……致命的な破壊……再……生不可……消……滅」

二つの魔法陣が細かく割れる。亀裂が消える。インデックスの瞳にあった赤い魔法陣も光を失い消え失せる。

インデックスは瞳を閉じて、

浮力を失い急速に落下を始める。

上条は左手をインデックスの首に回し引き寄せる。

上条はインデックスを庇い体を入れ替えた。

入れ替え、上条が下になった途端、ドンッと11階の床に衝突。

上条は二人分の衝撃を受ける。

上条「がっ!はっ!」

衝撃に肺から息が抜け、思わずインデックスから手を離す。

上条は衝突の勢いのままゴロゴロ転がっていく。

うつ伏せになった状態で漸く止まる、と上条は腕と足に力を入れ立ち上がろうとする。

ビキリッ、と痛みが走り上条は呻く。

793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/08(土) 21:52:39.79 ID:NUiEaSKAO


上条は床に落ちた衝撃で少なくとも強度の打撲を受ける。

悪ければ骨にひび、下手をすれば折れているかもしれない。

上条は痛みを堪え上体を起こしインデックスを捜す。

インデックスは床の上に寝ていた。

遠目であるが異常は見られない。

上条は終わった、と思った。

が、まだ終わりではなかった。

仄かな光がインデックスを真上から照らす。

光の柱が破壊した物が分解し、変換して魔力を帯びた光る羽が宙を舞っている。

ひらり、ふらり揺れながら雪のように漂い舞い降りる。

舞い落ちる先にはインデックス。

陥没した穴の縁から美琴と神裂が覗く姿が見える。

光る羽が舞い落ちる様を見た二人は電撃と魔術でもって吹き散らそうとする。

蒼白の電撃が迸る。

七閃が風を巻き起こる。

大半の光る羽は吹き散っていく。

階上からは狙えない位置に何枚かの光る羽が漂い残る。狙おうと思えば狙える。その時には電撃が打撃がインデックスにも当たりかねない。

光る羽はインデックスの元へと向かう。

美琴と神裂からは今以上の救える術がない。

上条は力を振り絞り立ち上がる。

インデックスの元へ、と頭から神経を通し体へ命令を伝える。

瞬間、ビギリリリッと鋭い痛みが走り上条は倒れ込む。

ここまで来て救えないで終わってたまるか、と諦めず激痛に耐え上条は体を起こす。

起き上がる上条の目に一人の男の姿。

背中しか見えない。

その男は血に汚れ、破けほつれているボロボロになった白いスーツを纏っていた。緑色した髪にも血がこびり付き、乱れている。爆発でも近くで受けた装い。

生気も無く生きている人間の感じがしない。寧ろ妄執にとらわれた幽鬼。

その妄執、望みはただ一つだった。

自らの手では成し遂げられなかった敗残者。

しかし誓いは残る。

強大な力を身に付けても、最早他に術がないようにインデックスをその男は自らの体で覆い隠した。

その前に上条には聞こえていた。

「『私はインデックスを救う。何を犠牲にしても救ってみせる。私が立てた誓い』」

男の背中へと光る羽が舞い落ちる。

カッと光が弾ける。

男の体もガクンと跳ね、男はそのまま崩れ落ちた。

794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/09/08(土) 21:53:43.60 ID:NUiEaSKAO
此処まで
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/08(土) 22:04:32.30 ID:/4tcBJOL0

アウレさん・・・
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 23:26:54.62 ID:DDOk4iXI0
アウレさんがかっこいい…
それなりに鮮烈なキャラだと思うのにこういうSS少ないよな
>>1
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 23:40:42.58 ID:KnMwWAN60
乙  このまま逝かせたくないな
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 00:09:05.61 ID:bOQ8Y+qio
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/09/09(日) 01:36:09.34 ID:pb462dcAO
>>797
上条の法則
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/09/09(日) 13:18:00.85 ID:9lLB8UkSo
アウレさんは決して悪い人ではないと思うんだ
周りに自分の正義が認められなかっただけなんだよな
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 15:38:38.62 ID:4+WCnnR4o
ヘタ錬さん生きてたのか
カッコいいじゃねぇかちくしょお・・・
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/09(日) 17:54:56.83 ID:HOSPRzwro
まだ死んでないよね
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/11(火) 19:00:47.73 ID:bNPySINAO


美琴「精神崩壊?」

冥土「そうだね、肉体が受けたダメージもかなりのものだよ。でも幸いにも脳への損傷は無かった」

美琴「外傷が原因ではないってことですね」

冥土「極度の精神への圧迫による脳機能の停止かな?」

美琴「精神への圧迫……」

集中治療室の中へ美琴は目を移す。

冥土「御坂君の話の通りだと彼は『思い通り』の現象を起こせるのかな?それがどういうことかは分からないけど学生が能力を暴走したあと昏睡状態に陥るのに似ているね」

そこにはアウレオルス=イザードが横たわっていた。

美琴「……木山先生の生徒みたいに?」

冥土「うん、原因は別にしても症状は同じだね」

美琴「それじゃ」

冥土「早合点はダメだよ?あれは体晶が原因だった。彼の場合は彼の力そのものが原因になっている」

冥土「『思い通り』ね……人間というのは100%大丈夫と思っていても一抹の不安は抱えるものだよ」

人生の先達からの言葉。

冥土「人は自分が発した言葉に少なからず縛られる」

不安を口にしてしまっていたのだろう。

冥土「不安があればそれに囚われたりする」

冥土「普通の人間でも酷ければ鬱病にもなったりするね。『思い通り』になる、そんな力があるなら精神に何十倍もの負荷になったはずだよ?」

上条に聞いた話ではインデックスを救う、アウレオルス自身の手で救いたい願望があったようだ。

不安と願望がせめぎ合い、相反する思考に精神は囚われる。精神への負担はいかほどのものだったのか?

そして『魔神』と化したインデックスと対峙し敗れ、遂に心が折れたのかもしれない。

それでも強い想いだけは残り、最後にインデックスを救った。自分の身体を盾にして。

敵対したとはいえインデックスを救おうとした者同士。

美琴「治るんでしょうか?」

回復の見込みがあるのか気になる。

冥土「僕を誰だと思っているんだい?」

『黄金練成』、能力者の超能力に有り様は近似している。

能力者の『自分だけの現実』が崩れ暴走事故が起こった事例もある。中には長く昏睡状態が続いた症例も。

それらを参考にすれば昏睡状態からの回復方法も見いだせるとのことだった。

804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/11(火) 19:06:14.62 ID:bNPySINAO


美琴「と言うことらしいわよ」

いつも上条が入院する羽目になった時に使用しているらしい病室。

アウレオルスの容態の説明を受けた美琴の話を聞きにこの病室に関係者が集まっていた。

関係者の内、麦野沈利は無理が祟り自分の病室に押し込められており、絹旗はその見張り番をさせられここには居ない。

浜面は車を返してくると言って去り、その後は顔を見せていない。

話しを聞きに集まっているのは白井を始めとした中学一年組に神裂、それに病室の主、上条。

上条は体中をぐるぐるに包帯で巻かれベッドに寝ている。階上から床に叩きつけられてやはり重度の打撲。何ヶ所か骨にもひびが入っている。ポッキリとまではいかず内蔵への損傷もなかったのがもっかの幸いと言ったところか。

ところで普段は個室らしいが今回は一時的にもう一つベッドが用意されていた。

そのベッドの上で、

ステイル「……最後のいいところをカッコ良く持って行って自分はお寝んねか、僕らは後始末をつけるのにこれから苦労するのに」

集まるまでもなくこの病室に強制入院させられたステイルが不機嫌そうに言う。

ステイルはあの時、過労で貧血を起こし最後には気を失っていた。命の火を燃やし尽くした結果だった。

ステイルが気がついたら点滴に繋がれて上条の隣のベッドに寝かされている次第。

病室ということで煙草も吸わしてもらえず、ステイルは苛立っている。

上条「そういう言い方はないだろ?アイツもインデックスを救いたかったんだ。話し合えなかったけどさ、もう少し状況が違えれば協力できたかもしんねーんだから」

ステイル「お人好しめ」

上条「お前なー」

美琴「当麻、違うのよ。ステイルはアウレオルスのことも含めて後始末をつけてやるって言ってんのよ」

805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/11(火) 19:09:55.57 ID:bNPySINAO


上条「それって」

神裂「『黄金練成』、過去成し遂げた者はおりません。アウレオルスが初の成功者。その修得法も注目の的、争いの元になるでしょう」

神裂「ローマ以外からも狙われることになります。それをステイルは後腐れないよう処理しようと考えているのです。インデックスとの対峙で亡くなったことにして、顔を変えてしまえば問題ないでしょうか」

アウレオルスの顔は酷く傷もつれになっていた。あれではどのみち整形手術が必要になる。

上条はじーっとステイルの顔を見る。

穴が開くほど見られてステイルは

ステイル「なんだその目は?」

と問うと

上条「……お前。実は良い人?インデックスへの道も開いてくれたし」

上条とステイルの最初の出会いは最悪の類だった。

美琴や神裂からステイルの背景について説明を受けても、拭いきれない悪印象が残っていたのだが

ステイル「何だその台詞は。僕はこれでも一応イギリス清教の神父なんだけどね」

アウレオルスとステイルはインデックスに忘れられた者同士。諦められなかった者と諦めてしまった者との違いがある。諦めてしまった者が諦められなかった者に対して思うことは複雑。

これまでのステイルの態度と台詞を考え合わせると上条にある言葉が思い浮かぶ。

上条「…………ツンデレ?」

と言われてステイルはキョトンとした顔をしている。本来の年相応の顔が垣間見れる。

ステイル「何だそれは?どこの言語だ?ツンドラなら知っているが、どう聞いても意味が違うだろ? ……おい?何で頭を撫でようとする?待て、動くな、やめろ、君の方が重傷の癖に動こうとするな、だから頭を撫でようとするんじゃない…………燃やすぞ」

バタバタと二人が暴れているのを皆は苦笑を浮かべて見ていたが、不意にノックも無しに病室のドアが開く。

806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/11(火) 19:25:09.91 ID:bNPySINAO


「上条ちゃん、また入院って何事ですかーッ!」

幼女が突入して来た。

上条「げっ!小萌先生」

ピンク色した髪。髪形もどこか小学生風の肩までの長さ。身長も中学一年生組の誰よりも低い。見た目小学生の高学年にも達してないように見えるが立派に上条の担任の先生である。

それに続いて

「「かーみやーん」」

金髪グラサンにアロハシャツ、青い髪をして耳にピアスの二人の男子高校生が突入して来る。

佐天「あっ、小萌先生お久しぶりです。土御門さんに……変態さんも」

青ピ「酷っ!変態ちゃうよ、博愛主義なんやー」

佐天「えーーー?」

幻想御手事件の後処理に関係して上条より先に顔見知りになっていた佐天も挨拶をする。土御門に青髪ピアスも上条の友人ということで知り合いである。

美琴(えっ、せっ先生って小学生にしか見えないわよっ?)

ドアが開いた瞬間、警戒して美琴はドア側の壁にへばりついている。神裂もドアを挟んで反対側に同じようにしているがやはりビックリしていた。

小萌先生はガミガミと叱ってはいるが上条のことを思いやっているのが分かる。

友人らは合いの手を入れて上条を弄っている。

本当に先生らしく上条に幼女にしか見えない小萌先生は涙目になりながらガミガミと叱っている。

当麻は良い先生と友人に恵まれた、と美琴は思う。

美琴は安心すると神裂に目配せをしてそーっと病室を抜け出した。

向かう先はインデックスの病室。

インデックスもまた極限まで魔力を使った所為で体力を消耗。昨日から眠り続けている。

アウレオルスのような心配はない。

時がくれば目覚める。

もう起きているかもしれないと様子を窺いに行くだけ。

美琴は廊下を歩きながら昨日のことを思い出す。

美琴達がインデックスに対峙した時、アウレオルスの気配が無くなっていたがあの翼を避けるために10階へと空間転移を行っていたらしい。但し、空間転移と翼の直撃がほぼ同時。

そして白井達の前にボロボロの姿を見せる。

白井の話しではアウレオルスは転移が完了した途端、気を失うように倒れ込む。一言だけ姫神にここを離れるように告げて。

807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/11(火) 19:40:33.49 ID:bNPySINAO


白井と初春がアウレオルスを介抱するが生徒達に医療キットの全てを使い果たし、有効な応急処置の施しようが無かった。

白井と初春が手をこまねいているうちに絹旗が最上階から降りてくる。

上階からの激しい振動も伝わって来る。

10階にいる者で三沢塾からの脱出が話し合われる。

白井のテレポートでは自分を除いて運べるのは二人まで。その場には白井を除いて四人。二往復する必要があった。

アウレオルスと初春が残ることになる。

低下した意識の下、アウレオルスは拒否を示す。

テレポーター同士はテレポート出来ない。アウレオルスの場合は『黄金練成』、魔術ではあるが正常に働くか不安もあった。

アウレオルスを残すなら誰か介抱出来る者が残る必要があった。姫神が残ると主張したが初春は風紀委員の職務を盾に譲らない。そうした結果であった。

絹旗、姫神とともに三沢塾から脱出し白井が三沢塾を見上げると最上階での戦闘の影響は北棟全体に及んでいたらしい。

激しく揺れ、歪みをもたらすほど、白井によれば倒壊するのではと思ったらしい。

美琴も後で思えばおかしいと思う。あれだけの激闘、力が振るわれ最上階の床が陥没するだけで済んだのか。白井が言うように倒壊してもおかしく無かった。

白井は座標を固定できずテレポートでの再突入を行えない。

その後は初春からの話しになる。

倒壊しなかった理由もそこにあった。それについては美琴と初春だけの秘密となっている。

初春はアウレオルスの介抱を続けていた。しかしアウレオルスの意識レベルの低下が激しい。命が持つかどうか瀬戸際。

頭上からの激しい振動が続く。ビルも保つか分からない状況。

初春は力を使う。

『存在の力』保存。

建物の維持、アウレオルスの状態の維持に『存在の力』を使う。

808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/11(火) 19:49:12.06 ID:bNPySINAO


建物についてはどこまで効果があったか不明。取りあえず倒壊は免れた。

アウレオルスの状態維持は治って欲しい願いが今まで試さずにいた領域、改変の領域にまで踏み入れたかもしれないと初春は語っていた。

アウレオルスの容態が安定し意識レベルが戻り始めていた。

その途中、初春に維持していた存在が崩れる感覚が起こる。最上階の床が陥没した時だった。

アウレオルスは意識レベルは戻らないまま夢遊病者のように立ち上がり「インデックスの元へ」と呟き姿を消す。

美琴「はぁ……みんなには初春さんの力について言えないから、……ただアウレオルスの容態が回復してインデックスの居る場所へ向かったことになってるけど」

説明していた時、白井は訝しげにしていた。アウレオルスの容態を診た者としてやはりおかしいと感じているのだろう。

美琴「初春さん……また彼女に重荷を背負わせるようなことを、それに……力が上がってる?」

初春のことが心配だった。

初春にも何か悲しい過去、第一位が関わっている、風紀委員を目指すキッカケとなった過去がある、美琴はそれに気付いていた。

出来るだけ重荷など背負わせたくはないのに面倒をかけてしまう。上条にも初春にも。

上条にはまた入院させるような怪我を負わせることになってしまった。守ると誓っておきながら。

美琴は暗澹たる気分になり落ち込んでしまう。

そして明日が問題だった。

生き残れるかどうか。

昨日のインデックスと一人で対峙するよりは楽かもしれない。

妹達の未来を切り開くために明日を迎える。

上条達に話せば止められるに違いない。電話の相手の話しを信用しているわけでもない。

解決を求めればいずれぶつかり合う可能性はあった。それが早まっただけと美琴は納得している。

美琴はドアを開ける。

新しい未来を迎えられる者が寝ているはずだった。

809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/11(火) 19:56:17.06 ID:bNPySINAO


イン「みこと、おはようなんだよ」

美琴「起きてたの?もう大丈夫なの?」

予想と違いインデックスは目覚めていた。元気そうな笑顔を振りまいている。

イン「大丈夫なんだよっていうか、昨日魔術師がやってきてからの記憶が無いんだけど、みことの方こそ大丈夫だったのかな?」

インデックスにしてみれば魔術師が来たことまでは覚えていても、目が覚めれば丸一日たっている状況。何が起こっていたのか心配である。

美琴「心配しないでも解決したわよ。……当麻が怪我しちゃったけど、すぐ退院できるらしいから」

上条が退院、逆算すると入院するほどの怪我を負ったことになる。そのことにインデックスの顔は曇る。

イン「うー、そんなことになってたのに記憶も無しに寝てただけだったなんて」

美琴「相変わらず当麻もここに入院してるから、あとで見舞いにでも行ってらっしゃい。具合の方はどう?」

イン「そう言えば昨日まであった頭痛とか消えてるんだよ!あのお医者さん凄いね、科学も馬鹿に出来るもんじゃないって分かったんだよ!」

美琴「あのねインデックス、私にしたって科学の子みたいなもんだから今更見直さないでよ。それとあのお医者さんが本当に凄いっていうの確かね」

カエル顔の医師の薬。あれが無ければ永遠と『魔神』との対峙を続けなければならなかった。カエル顔の医師には感謝の言葉しかない。

イン「お礼を言わなきゃいけないね。次に会ったら必ず言うんだよ」

イン「それと、みことにも」

美琴「うん?」

イン「一年前と同じなんだよ。あの時も記憶を無くして」

「7月29日にみことに出逢えたんだよ」

「一年前の今日に」

810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/11(火) 20:06:04.41 ID:bNPySINAO


一年前

ロシアの『ショッピングセンター』での出会い。

美琴がインデックスと出逢ったのは本当は7月29日では無かった。

美琴は常盤台を通した学園都市の依頼、能力実演旅行として『ショッピングセンター』へとやって来ていた。

学園都市と『外』の技術格差は二、三十年がある。『外』には学園都市の協力機関もあり、学園都市は技術を提供している。しかしその差は埋まっていない。当然、協力機関には不満が溜まる。学園都市は優位性を保つために重要な技術を提供する積もりが無いのではないかと。その代表例が超能力者。

科学技術の粋としての超能力者はシンボリックタワーである。人間として素朴な憧れ、超常な力。

不満がこれ以上高まる前に協力機関を宥めるようと『ショッピングセンター』での超能力者のデモンストレーションが計画された。

そして選ばれた超能力者が第三位『超電磁砲』御坂美琴。

選ばれた理由は「美琴の能力が1番スタンダードで分かりやすい上に、他のレベル5は性格が破綻しているから」というものだった。

そうしたことなら止むなしと依頼を受け入れ『ショッピングセンター』でギッチリ詰められたスケジュールを美琴はこなしていた。

そうした何日かを過ごしたのち、美琴は『とても価値のあるオレンジ』の都市伝説を聞く。

最初、美琴はバカにしていたがギッチリ組まれたスケジュールにストレスを感じ美琴は夜の街へと抜け出す。目的は言わずもがな、ご当地ゲコ太グッズを漁ること。

そして夜の街を徘徊しているときに見かけたのが『土産物屋・ニホンダルマ』。

都市伝説括りで興味が惹かれ覗きに入って、店番をしていた白いシスター、インデックスと出逢う。

別れ際の忠告、「オレンジには気をつけるといいかも」。

ホテルに戻ったら置かれていたオレンジ。「ベニオオアシグンタイアリ」、肉食性軍隊蟻の女王が巣くう生物兵器に等しい果実。

美琴はオレンジを処理すると忠告をくれたインデックスを探す。

美琴は学園都市と魔術を巡る陰謀に巻き込まれる。

陰謀は学園都市と『ショッピングセンター』に同じ都市伝説を流布、都市伝説に関係する事件を起こす。そうして科学の総本山である学園都市を壊滅に追い込む。そして『ショッピングセンター』が科学サイドの総本山に成り代わろうとする『ショッピングセンター』のトップが計画したもの。

811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/11(火) 20:09:44.84 ID:bNPySINAO


陰謀計画を機能させたのは『ショッピングセンター』が開発した『コードEIC』。

本来は噂を作為的に流布、制御し選択した商品へ自由にプレミアやレッテルを付加することで、売上を完全に制御することを目的のプログラム。

その陰謀にロシア成教の魔術師が人の欲望を操作可能な『コードEIC』を宗教に利用するため『ショッピングセンター』のトップに協力していた。

イギリス清教は『ショッピングセンター』での不穏な兆候を察知していた。人々が噂に乗せられ一定の傾向のある行動をする。ロシア成教の魔術師が暗躍している。『コードEIC』の名は知られなかったが、人を煽動する大魔術の可能性、危険視せざるを得ない。

あらゆる魔術を解き明かせる魔導書図書館、インデックス派遣の理由となっていた。

美琴とインデックス、その保護者である神裂、ステイルは陰謀の阻止に尽力することになる。

慌ただしい3日間。

煽動された暴徒で『ショッピングセンター』が大混乱となる。

ロシア成教の魔術師の切り札、巨大な歯車を連結させて作り出したような大蛇との激戦。

美琴とインデックスはその中で確かな友誼を結ぶ。

7月29日0時、車輪の大蛇を打ち倒した後、美琴は『ショッピングセンター』のトップが行った最後の悪足掻きを懸命に阻止していた。

知らなかった。教えて貰っていなかった。インデックスが体調を崩していたのは気付いていたのに、隠されていた。

神裂もステイルも翳りのある目をずっとしていた。

『ショッピングセンター』での事件が終わりを告げたとき、二人によってインデックスの記憶は消されていた。

消去の儀式を執り行ったのは路地裏。インデックスが最後まで美琴の手助けをすると粘り、ギリギリまで待ってそんな所で行うしかなかった。

路地裏で目覚めたインデックスは二人を敵と認識してしまう。

姿が見えない3人を探していた美琴は呆然と立ち尽くす、神裂とステイルを見つける。

事情を聞き出し、インデックスを取り巻く状況を始めて知る。酷い嘘を知る。

その後、美琴は荒廃した『ショッピングセンター』の中、インデックスを見つける。

今のインデックスからしたら最初の出逢い。

7月29日は学園都市へと帰る予定の日だった。

記憶を失い、魔術師から追われている思い、怯るインデックスを美琴は見捨てることなどできなかった。

812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/11(火) 20:18:48.49 ID:bNPySINAO


イン「いきなり、みことは友達になりましょ、って言ったんだよ」

美琴「えっ、そうだっけ?」
(見つけたもんのどう接したらいいか、切羽詰まっちゃってたのよね……)

イン「どんなに危険か話したって付いてく、の一点張りでみことは頑固だったんだよ」

地獄の底に一緒に行くようなものとも美琴は言わた。

美琴「あー、でもそのおかげでインデックスも美味しい物、沢山食べれたじゃない」

少しでもインデックスが苦難の道でも楽しめるように

イン「うっ、……でもみことの年齢でカジノでギャンブルなんていけないんだよ」

美琴「あちゃー、バレてたの。……気付いてた割りには旅の途中じゃ言わなかったよね、インデックス?やっぱりお腹いっぱい食べたかったのかな、大食いは大罪の一つじゃなかったっけ?」
(人の苦労も知らないで……嬉しそうな顔を見れただけで十分よ)

イン「……みことのいじわる」

美琴「ごめん、ごめん、いじめてるつもりじゃなかったけどさ」
(失敗、失敗)


美琴は不安だった。美琴がインデックスと一緒にいて少しでも過酷な運命を和らげられたのか。

イン「もう、みことはー、……楽しかったね」

美琴「えっ?」

イン「みことが一緒にいてくれて、記憶を無くした私にずっとついて来てくれて嬉しかったんだよ」

インデックスには自分より相手の心を優先するところがある。

聖職者らしく、

イン「辛いこともいっぱいあったけどみことが守ってくれて」

相手の心を救おうとする。

美琴「まあ、インデックスが危険な事に首突っ込んで行くもんだから大変だったわね」

イン「……みこと?危険な事に首を突っ込んで行ったのはみことの方なんだよっ!そのたびに私の方が心配したんだもん!それに最近はみことが私について来るんじゃなくてみことのほうが私を引っ張り回してるんだよ!」

本気で怒らしてしまったらしい、美琴はもう一度ごめん、ごめん、と言いそうになるが

イン「って、そうじゃなくて、みこととみことに会えたこの日に感謝したいんだよ」

心の底からの言葉に聞こえる。

美琴「インデックス……」

イン「ありがとね、みこと」

美琴「さっき楽しかったって言ってたけど本当に?」

イン「本当なんだよ、楽しかったし、嬉しかったし、幸せだったんだよ、みこと」

インデックスは本当に幸せそうな笑顔を見せる。

813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/11(火) 20:20:48.21 ID:bNPySINAO





美琴「そっか、幸せだったのか。インデックス」







第5章 『魔神』 終了
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/11(火) 20:25:10.26 ID:bNPySINAO
此処まで





第5章は主役、上条 MVP、カエル顔の医師のつもりだったんですがねー?
自分で書いときながらアウレオルスさんにすっかり持ってかれた感じがします。
アウレオルスさんが活躍するSSをあまり見かけなかったのでペンデックス戦を改変するに当たって登場させようと構想したんですが如何だったでしょう?


あと当初の構想では次で終わりの予定です。
ひょっとレスが足らなくなると次スレに跨がることに。
次スレを立てた場合、ちょっと残りが勿体ないかなと思うので何章か足すつもりでおります。
そんな予定で宜しくお願いします。
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/11(火) 20:31:27.19 ID:kjMDIEdB0
乙です
続きを楽しみにしてます
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/11(火) 20:33:02.27 ID:TFRUYOF2o


今回も面白いな!続きにも期待!

アウレオルスさんが活躍すると嬉しいなぁ!!
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 21:36:21.96 ID:9CzXUXBk0
乙  アウさんもだけどカエル医師もいいとこ持ってったな
次章は内容だけでなく長くなって次スレにまたがることにも期待   
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/11(火) 23:39:56.52 ID:+0xiSRER0
おぉ、ついにスレタイ回収!
乙!
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 23:47:42.31 ID:ze6vP7D20
スレタイ回収まで来たか
最初見かけた時は上条さんの台詞だと思ったよ
まさか美琴だったとは…!乙です
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 23:59:27.02 ID:byfmz/BKo
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/12(水) 00:47:33.05 ID:3rc7Yc/oo
タイトル回収しつつも思わせぶりな先の展開へのにおひが気になる・・・ッ!
楽しみにしてます
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/09/14(金) 21:50:42.83 ID:5tOwSYuAO
第5.5章
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/14(金) 21:54:57.44 ID:5tOwSYuAO


垣根「そうかよ、そういうことか、成る程ね」

過去の事件の資料。表に出ている部分以外、隠されていた内容が記されたデータ。

それに加えて、関連する資料に目を通していく。

垣根「これがアレイスターが進めているプランの基礎部分ってことか」

学園都市の闇、風紀委員や警備員とは違う裏側で治安を担う暗部組織『スクール』の隠れ家の一つ、個室サロンの一室で垣根帝督は一人呟いていた。

過去の事件とは幻想御手事件。ミサカネットワークを参考に木山春生が構築したネットワークとそれが生み出したモノ。

アレイスターの目的は同じことを起こす事ではない筈。

AIM拡散力場、その集合体である虚数学区の掌握。

垣根は美琴が辿り着いた場所に到着する。

そして垣根には闇に棲み得られた様々な情報があった。同じところへ辿り着いたならその先については垣根に一日の長がある。

関連する資料、霧ヶ丘女学院に在籍するとされている生徒の記録。

霧ヶ丘女学院とは特異な能力の開発に定評がある名門校。その評価の陰では虚数学区の研究がなされている。

その生徒の名は風斬氷華。

霧ヶ丘女学院の成績上位に位置しながら誰も見た事がない生徒。

虚数学区の深淵に迫る鍵。

その実態は虚数学区に人格が与えられた偶像。

それはAIM拡散力場の集合体である虚数学区に一粒の異物を混ぜ合わせ結晶化させた存在。

観察することは出来ても現状のところ制御は不能されている。

ミサカネットワークは1万人の脳で結ばれた巨大な意識の集合体。

妹達〈シスターズ〉もまた能力者、虚数学区を形成する一部。

『最終信号』はその司令塔。そこからプログラムを送ればミサカネットワークという巨大な意志を通じて風斬氷華をコントロールしうるのではないか。

垣根はそう睨む。

アレイスターのプランはその先にあるモノ。

しかし風斬氷華とミサカネットワークはその土台になる。替えの効かない役割を果たす。

824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/14(金) 21:58:04.75 ID:5tOwSYuAO


垣根「やっぱ『最終信号』を手に入れるのが最優先になるか」

風斬氷華については垣根も現在のところ手が出せない。風斬氷華へのアプローチのしようがないのだ。

『最終信号』を手に入れればアプローチの可能性も出てくる。

すべき事の第一目標はやはり『最終信号』の確保。

そこまで考えをまとめたところで垣根は部屋の中を見渡す。

『スクール』には垣根の他、ドレスの少女、念道力の少年、狙撃手の3名がいる。

その3名には垣根が計画している反乱に協力の約束を取っている。

だからと言って信頼している訳でもない。

『スクール』のメンバーは人間関係の重視より各々の利己的な傾向が強い。

いつでも裏切られる可能性はある。

しかし逆に垣根が利を示し続けるうちは従う。

今日はその3名はこの隠れ家に顔を出していない。

垣根「『最終信号』を確保するとして、問題はその後だな。できれば風斬氷華を制御可能までやっときてえ。そうすりゃアレイスターも無視できねえだろ」

その場合、霧ヶ丘でのより詳細な研究内容が必要となる。また、『最終信号』に如何にプログラミングするか。

『スクール』の構成員にそのようなプログラムを作成できる者がいない。

垣根「いっそのこと心理定規の能力でなんとかなんねえかな?」

ここに居ないドレスの少女の名を口にする。

ただ、その方法をとれば『最終信号』は心理定規のコントロール下に入ることになる。

反乱を企てる同志と言っても前述のごとくであり、肝心要のところを握られるのは危険でもある。

垣根「可能かどうかもわかんねえしな」

垣根が口ずさんだとき、ドアをノックする音が聞こえる。

『スクール』の構成員であることを知らせる拍子。

そのうえで電子キーが鳴り、ロックが解除される。

825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/14(金) 22:03:43.62 ID:5tOwSYuAO


姿を見せたのは垣根が先程まで考えていた心理定規。

定規「あなた、反乱計画にいそしむのも良いけど電話ぐらいでてね」

垣根「あん?」

定規「いつもの連絡係、垣根に連絡が取れないと言って私のところへ来たわよ、仕事の連絡が。上手く言っておいたけど、疑惑を持たれるのは不味いんじゃない?」

垣根「済まなかったな……それで仕事の内容は?」

定規「殺し」

垣根「どこのどいつを?」

定規「抹殺対象は浜面仕上」

『スクール』へ仕事が廻ってくる程の対象である。それ相応の地位か力を持っているのは当然。そういうリストを垣根は頭の中に記憶してある。

学園都市の上層部に関わる者、どこかの研究者、犯罪に手を染めた大能力者と垣根は頭の中で検索していく。

垣根「…………………………………………………………………………………誰だ、それ?」

結果は聞いた事も無く、思い当たる事も無い名前だった。

定規「あなたが言ってたじゃない、第四位 麦野沈利を沈めた無能力者がいるって。その本人よ」

垣根「あー、あの……うっかりしてたぜ。無能力者のスターにご退場願おうって寸法かよ、可哀想にな」

垣根は相変わらず学園都市の上層部は自分達の利益しか考えていない、不利益なものは排除する体質は変わらない、と思う。

定規「まぐれかもしれないけど第四位を沈めた実績を持つ対象。だから『スクール』に依頼してきたみたいね」

定規「……実はあなたにも都合が良いかもしれないわ」

垣根「俺に都合が良い?」

定規「未確認情報になるけど、あなたが探してる『最終信号』。彼が保護してる話があるの」

826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/14(金) 22:10:39.65 ID:5tOwSYuAO


浜面は昨日、実際には今日に日が変わってから真夜中に帰宅していた。

帰宅というのは実はおかしい。良くて居候、実態は一方通行の居住する部屋に押しかけて居座っているのだから。

浜面が部屋の前に立ったとき、流石に一方通行も打ち止めも寝ているだろうと思っていた。

浜面が合い鍵でドアを開けると明かりが点いている。

心配かけちまったかな、と浜面が部屋の中を見ると打ち止めはソファの上で寝息をたてている。

一方通行はと云うと浜面は目を剥くことになる。

三沢塾でとんでもない光景を目のあたりにしてしまった浜面の安全弁は狂っていたのかもしれない。

浜面「オイ、一方通行。お前何してんだ?そんなキャラじゃねえだろ」

普段では一方通行に絶対に言わないような言い方をした。

その声に一方通行はようやく浜面の帰宅に気づいたらしい。

一方通行はゆっくり浜面へと顔を向ける。浜面と目が合うとそのまま固まってしまった。

一方通行を知っている者なら絶対に信じないし、話しても笑われるだろう光景が広がっている。

一方通行の足下。ファミレスへと出掛ける前には無かった物が置かれていた。

一方通行の後ろでは大画面のテレビ。まあ、なんだろボーリングのピンみたいな物というかその物が映っている。

一方通行の手にはコントロールバー。

浜面「その何だ、打ち止めに買ってあげたのか?」

一方通行「………………。」

答えられないらしい。

一方通行の足下には現在作動中のゲーム機の他、あと二つ別のメーカーのゲーム機が並んでいる。

その隣には10センチ程の高さで積まれたゲームソフトが3列。

無能力者、浜面の頭脳は演算を始める。

一方通行は浜面が居なくなったあと打ち止めと間が取れず、ゲームでも買ってくれば勝手にやってるだろうと大量に買い込んできた。

知識はあっても経験のない打ち止めはゲームに悪戦苦闘。

一方通行は明日には打ち止めが楽しめるようにアドバイスするため一通りゲームを試行中。学園都市第一位の頭脳なら一通りやってしまえばアドバイスぐらい可能だろう。

ところが案外夢中になって一方通行は浜面の帰宅にも気づかない。

浜面に声をかけられる。

それが現在の状況と浜面は演算結果を出した。

827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/14(金) 22:18:10.22 ID:5tOwSYuAO


その演算結果は当たっていたらしい。

7月30日、日が昇り打ち止めが起きると昨日の続きとばかりゲームを始めた。

一方通行は時折、打ち止めにアドバイスをしている。相も変わらず口だけは悪い。

その様子を浜面が見ていると不意に一方通行がギッと睨んでくる。

一方通行「何、ニヤニヤしてンだァ、浜面。イイか、昨日のことは忘れろ。じゃねェと」

浜面「愉快なオブジェか?……忘れろって言うなら忘れてやるよ。誰も信じねえだろうしな」

一方通行「だから、そのニヤニヤ笑うのをヤメロって言ってンだろうがァ」

打ち止め「?だめだよ一方通行、浜面を脅かしちゃ、ってミサカはミサカは浜面を助けてみたり」

浜面「おー、ありがとよ」

打ち止め「お礼の代わりにあとで何があったか教えてね、ってミサカはミサカは浜面に頼んでみる」

一方通行「くそガキ黙ってろ。ほら次、選択間違えっとバッドエンド直行だぞ」

打ち止め「うわっ、どれを選んだらいいのかな、ってミサカはミサカは生きてきた中で一番悩んでみたり」

浜面(選択……か)

浜面も悩む。言うべきか言わざるべきか。昨日の出来事を。

『超電磁砲』の帰還。一方通行を打ち倒した無能力者との出会い。

それを話すにもあの説明のつかない内容、人に話せば荒唐無稽と言われる話しもしなければならない。

とても信じて貰えるような話しなど浜面はできないと思う。

浜面(もう暫く様子見するしかねえかな)

引き合わせて間を取り持つ、なんて器用な真似は出来ない。

が、偶々であろうと知り合った以上、一方通行のためにも、打ち止めのためにも何とかしてあげたいと思う。

言わずにいた選択が明日の運命を決める。

828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/14(金) 22:25:53.37 ID:5tOwSYuAO


一方通行「浜面、明日実験チームの連中に会ってくる」

昼食後、長時間のゲームはダメということで打ち止めには昼寝をさせている。

冷蔵庫に大量に保管されている缶コーヒー。一方通行と浜面は一本ずつ取り出して飲んでいた。

浜面「また、なんで?」

一方通行「コイツらは定期的に調整を受ける必要があンだよ。そろそろこのガキも必要な時期がくる。その前にケリをつけときてェ」

浜面「ケリって例の侵入者の事か?」

一方通行「あァ……侵入者の正体、今日中には分かるって話だ。明日、聞き出したらその足で……潰してくる」

浜面「そうか……その後、打ち止めのことどうすんだ?」

一方通行「調整のことがあっから妹達〈シスターズ〉が放り込まれてる施設に預けるしかねェな。聞いた話しじゃァ、実験反対のお目出てェ連中の手が入ってるらしィ。無碍にするこたァねェだろ」

浜面「それでいいのか、お前は?」

一方通行「俺を取り巻く状況ってヤツはそう簡単に変わンねェ。近くにいれば傷つくだけだ」

一方通行「そんな訳で明日、戻ってくるまで打ち止めのこと、守ってやっててくれ」

浜面「分かったよ、……街にでも出てるか」

一方通行「どう言うことだ?」

浜面「まあ『最強』にはわかんねえだろうな。
ここを襲撃されちまえば俺一人では守り切れねえ。
表沙汰にしたくなかったら一般人の多い場所なんか逆に襲撃しにくいだろう。
それに街中でも風紀委員が巡回してそうな場所を選んどきゃ、風紀委員や警備員の助けを利用できるしな」

「風紀委員にも知り合いが出来たし」

一方通行「弱者の知恵っヤツか……スキルアウトが風紀委員と知り合いかァ?ありえねェだろ、笑っちまうぞ」

829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/14(金) 22:27:26.29 ID:5tOwSYuAO


笑えると言われた浜面は

浜面「嘘じゃねえって、初春に白井と言ったか」

昨日知り合った二人の名前を出す。そして窓に寄り外の景色を見る。第7学区の風景。

一方通行(初春だとッ!)

一方通行はその一人の名前に反応する。

一方通行を見てなかった浜面はその反応に気づかない。

浜面「白井はテレポーターだからいざとなりゃ逃亡にうってつけだな」

二人の担当地域は一方通行の部屋がある第7学区。風紀委員の巡回路はスキルアウトである浜面は承知している。

『超電磁砲』の友人でもある二人。万が一の襲撃があっては困るが、まず間違い無く手助けはしてくれると浜面は思う。

一方通行(飾利……)

830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/14(金) 22:31:05.17 ID:5tOwSYuAO


美琴は麦野沈利の病室へとやって来ていた。

麦野はインデックスとの戦闘後、崩れ落ちるように座り込み動けなくなっていた。

ビルが崩壊しようかというほどの魔力の余波。病み上がりの身である麦野にはかなり堪えたようだ。

見事に入院延長の診断が下されている。

美琴は無理を押して手助けをしてくれた麦野に礼を言うため、それに聞きたいことも有り一人麦野沈利の元を訪ねていた。

美琴「?……絹旗さんは」

麦野「絹旗だったら浜面を捜しに行ったわ、他の仲間と一緒にね」

美琴「そう、昨日はありがとう……」

麦野「まあね、それで本当に聞きに来たわけ?」

麦野はイヤそうな顔をしているが

美琴「まあ、気になるじゃない、礼は言うけど麦野さんにあそこまで付き合う必要は無かったんだから」

何故助けてくれたのか気になる。

麦野「教えてあげるって言った以上、仕方ないか……第三位と第四位……この差はどこにあると思う」

美琴「へっ?」

麦野「根っこの部分では同系統。発電能力と電子操作。応用力と特化」

麦野「単純に強さだけを比較するとしたらね」

麦野「私の能力開発を担当した研究者は本来ならアンタぐらいは全力全開の『原子崩し』で瞬殺できるらしいよ」

麦野「実際にそれをやると反動で私の体も粉々に吹き飛ぶって話だけどさ」

麦野「キレてやりかけたのがこのザマ」

麦野は無い左腕を振る素振りをする。

麦野「アンタより上位に立てなかった研究者の泣き言なんだけどね」

麦野「まっ、そんなこと言われてれば当の本人も拘っちまうのさ」

麦野「level5同士ってのはただでさえ難しいもんがあるのにたった一つ席順が上、この差は何だろうってね」

麦野「だから調べたわよ、アンタのこと」

麦野「戦り合う機会がありゃ勝ってやるってね」

美琴は苦笑まじり、ため息のような乾いた笑い声を漏らし。

美琴「はははっはっはぁー……じゃあ、昨日のアレはもしかして私と張り合うつもりだったの?」

麦野「それもある。ただね……見たかったのよ」

831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/14(金) 22:34:03.28 ID:5tOwSYuAO


麦野「行方不明になってからアンタは『外』にいたわけでしょ」

その間、何があったか麦野は窺い知ることはできない。恐らく、あの子、インデックスと呼ばれる少女を守ってきたのだと想像するしかない。

麦野「昨日見たアンタは1年前に較べて格段の違いがあった。アンタがどこの高見に辿り着いているのか見てみたかったのよ」

美琴「それじゃ、その麦野さんから見た私はどう?」

麦野「さあね、『原子崩し』だけじゃ、もうどうしようもない。私としたら能力の応用力を身に付けるしかないわね……」

一つ上の道しるべ。腹が立つが認めるしかない。

麦野「で、私からこっぱずかしい告白を聞いたんだからアンタも話しなさい」

美琴「えっ? 魔術については話せないわよ」

麦野「それはいいわ、聞いたって多分わかんないから……アンタがlevel5についてどう思ってるのか、まず最初の質問よ」

美琴「いくつかあるんだ、質問……ハァ……答えられるだけよ……level5ねえ?……」

美琴「私はlevel1からlevel5にまでになった学園都市の教育の成果、象徴のような扱いを受けたけど」

美琴「私自身はただ目の前に壁があれば乗り越えなきゃ気が済まない性分で」

美琴「努力を重ねていつの間にか辿り着いてたのがlevel5」

美琴「level5は努力の証みたいなもんで、あまり他のlevel5の人を気にしたこと無かったのよね」

麦野「でも、それなりにプライドはあったんじゃない? 聞いた話しじゃ『幻想殺し』に負けて随分噛みついてたらしいけど?」

美琴「まっ、負けて無いわよ!決着はついてないもん!」

負けた、という言葉は美琴をやはり刺激するらしい。

麦野「へぇー」

とぼけた声を出しているが麦野の顔は可笑しくて堪らない表情。

美琴「あによ?…………つーか、アレはそれこそ、それまでの努力を否定された気分になって……そのムキになってただけなの!」

832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/14(金) 22:39:35.18 ID:5tOwSYuAO


麦野「ふーん、それで付きまとっちゃったと」

美琴「ス、ストーカーみたいに言わないでよっ」

麦野「か、自分の素が出せる相手に振り向いて欲しかったのかい?」

美琴「うっ……確かにね、level5になって周りが変わってしまったわ、私自身は変わっていないつもりだったのに」

美琴「学園都市の教育の成果、象徴。そんなレッテルがついて、みんなからは見上げられるだけの存在、希望の証。そんな風にね」

美琴「私は友人として仲間として一緒にいたかっただけなのに、そんな期待にも応えなくちゃならなくなってた」

麦野「そんな中で対等な立場でいられたのが『幻想殺し』だったわけね」

美琴「……そうね。でも対等とはちょっと違うかな?……鏡?」

麦野「鏡?」

美琴「そう……自分を映し出す、真実を映し出す、内面を明らかにする、向かうべき先を映し出してくれる鏡」

美琴「当麻の心の熱さは私を引っ張り出してくれる鏡」

麦野(惚気に聞こえてくるわね)

麦野「それで、その『幻想殺し』が第一位と戦ったのはアンタが関係してんの?」

本当は一番に聞きたかった事。

美琴「…………聞くと戻れなくなるわよ」

闇の入り口に立つ者。

美琴は麦野が見慣れた表情を浮かべている。

麦野「元々、戻れるところになんかにいないわよ」

麦野の負傷ということもあり、昨日の事は別として『アイテム』はここ2週間ぼどは平穏な日々を送っている。ただそれも束の間の休息。

いずれ、また闇に埋もれ仕事は再開される。今更、表に帰る場所もない。

美琴「誰にでも話せる話しじゃない。話した相手にも迷惑がかかる。第一……敵に廻りかねない人には話せない」

美琴は麦野を見ている。確かめるように。

麦野「そうね……じゃあこう言いましょうか、浜面が私に勝ったってのが噂になって蔓延している」

833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/14(金) 22:43:28.88 ID:5tOwSYuAO


麦野「学園都市の上層部が放置する訳がない噂ね。でも放置しているのよ。第一位が敗れたってのを隠すために」

美琴「……、……。」

麦野「浜面は今後、命を狙われるわ、学園都市の上層部が学園都市の秩序を維持するために」

麦野「絹旗が出掛けたのは浜面を護衛するためよ」

麦野「私らは浜面を気に入っている。私をこんな目に遭わせたのにね、何故かなって思うけどさ」

本当に何故なのか、時折見せる熱さのせいか。

麦野「だから教えて欲しいの知っておきたいの。どんな組織が関わって誰が動くのか、どうすれば浜面を守っていけるのか」

沈黙のあと、美琴は口を開く。

美琴「絶対能力進化実験……」

美琴は実験のあらましについて説明していく。第一位のこと、妹達〈シスターズ〉のことを明日のことを除いて。

説明が終わり

麦野「そんなことがねぇ……絶対能力か、またややこしい事に」

美琴「ここまで話したんだから、……もしもの時……当麻達に何かあれば協力してくれる、麦野さん?」

麦野「?……利害は一致してんだ任しときなさい」

美琴「ありがとう麦野さん」

美琴は再び礼を言う。すっきりとした顔で、どこか安心した顔で。








第5.5章 終了
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/09/14(金) 22:45:36.02 ID:5tOwSYuAO
此処まで
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 23:40:43.17 ID:OcEQ/8kW0
乙  無論、次回も大期待して待機
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 23:50:06.50 ID:Kwdjac6Co
837 : ◆evJdM4Cpzc [sage]:2012/09/16(日) 18:59:15.77 ID:cr7tOsPAO
第6章
838 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/16(日) 19:05:06.37 ID:cr7tOsPAO


7月最後の日、目の前には天井亜雄が座っている。

卑屈なイメージ。

一方通行の前に立つ研究者は実験動物としか見ていない目をして尊大な態度を取る者、もしくはこの天井のような姿を見せるかどちらかだった。

中には芳川みたいな変わった者もいるにはいるが希少である。その芳川は打ち止めを逃がしたあと負傷し入院している。ここに姿をみせていない。

一方通行は天井に単刀直入に聞く。

一方通行「どこのどいつが破壊活動を行ってンだァ、天井ィ」

天井「ちょっ、ちょっと待ってくれ、一方通行。は、話しの手順が」

一方通行「そンなもン、イイから教えろ」

天井「ど、どうしたんだなんでそんなに?」

一方通行「さっさとしねェか、天井ィィィッ!」

ギロッと一方通行は睨む。

止むなく、天井は考えていた話しの手順を飛ばして、

天井「その、気を落ち着かせて聞いて欲しいんだが、侵入者の正体は……超能力者第三位『超電磁砲』御坂美琴だ」

一方通行「……はァ?……オイオイ、どういうこった、『超電磁砲』と言やァ、アイツ等のオリジナルだよなァ、たしかどっかで野垂れ死ンでンじゃなかったのか?」

示された侵入者の意外な正体に一方通行の頭脳も上手く回線が繋がらない。

839 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/16(日) 19:12:14.95 ID:cr7tOsPAO


7月最後の日、浜面は朝に一方通行と別れた後、打ち止めを連れて予定通り第7学区の街中に出ていた。

外食したりと3人ではたまに部屋の外へ出ていたりするが、浜面と打ち止めだけでの外出は今回が初めてであった。

3人の時でも打ち止めはじかに見るもの、聞くものが初めてではしゃいでいた。

それでも一方通行に遠慮がちだったのだろうか。

今のはしゃぎっぷりは凄い。

「これは何?あれは何してるの、これおいしそうってミサカはミサカは浜面を引っ張り回してみる」

こんな感じで文字通り浜面を繋いだ手で引っ張り回している。

意外ではあるが浜面も慣れたものである。浜面の所属するスキルアウトのリーダーを訪ねてくる舶来、フレメアの相手を時折しているので子供の相手をするのに苦になることがない。

ただ困った問題が一つ。

視線が痛い。

周囲からの視線ではない。周りは妹に振り回されているお兄ちゃん、ぐらいの雰囲気で見てくれている。

視線に気づいたのは第7学区の繁華街、大型洋服店であるセブンスミストなどが並ぶ街並みに差し掛かった頃。

すわ、打ち止めがいた研究施設を襲った輩か、と浜面は緊張した。

急いで浜面は打ち止めを連れ、人波に入る。

そうするとやはり後ろからつけてくる気配。

浜面はそうっとガラス張りの店の前に立ち止まり、ガラスに映る浜面達の後方を確認する。

そこにはジーッと睨む絹旗とぽやーっとした滝壺がいた。

840 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/16(日) 19:18:58.82 ID:cr7tOsPAO


7月最後の日、御坂美琴は黒いコートを羽織り、歩いている。

まだ夏の盛り、そのような格好では奇異な目で見られても仕方ないはずが、誰もそのような目では見ていない。

寧ろ、美琴など見えていないかのように通り過ぎていく。

光学操作。

学園都市の能力者のうち47名、光学操作により完全に姿を消せる者がいる。

美琴は能力の応用、電磁迷彩で同様なことを可能としていた。

気付く人もおらず、街中を歩く。

落ち着いて街中を見るのも1年振り。変わらぬ風景もあれば変わってしまった景色もある。

1年という時間は長いようであり、季節が過ぎるのは早い。

新しい建物、1年前には見かけ無かった店舗がちらほら見かける。そして記憶にあった店もあれば無くなった店も。

時間の流れの速さ。


懐かしさを感じると共に寂しさも感じる。

時間まではまだ余裕がある。今ある光景を焼き付けながら向かう。

向かう先は第2学区。指定された場所。

第2学区、兵器試験場。市街戦を想定した兵器を実際に試験するために用意された場所である。

市街地を模して造られた広大な広さを持つ。

しかし、現在では大規模試験が執り行われた後で瓦礫の山と化しているらしい。

予算の関係もあり、元の試験場の姿に戻すのは当分先。

人が立ち入る心配も無く、試験場を囲む騒音対策設備は生きており安心して戦闘が行える。

美琴にもこれから相対する敵にも有利、不利の差が生じ難い場所でもある。

そこは決着をつけるべき場所。愚かで、残酷で非情な物語に。

841 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/16(日) 19:27:41.30 ID:cr7tOsPAO


7月最後の日、初春は第7学区を巡回中だった。

普段は後方支援業務が多い初春ではあるが、やはり風紀委員。こうして担当区域を巡回することもある。

よく白井黒子とワンセットと見られもするが、実際には片方が非番ということも割とある。

今日は白井の方が非番で、事件に猪突猛進する相方の後方支援の必要もないこともあり初春は街へ巡回に出ていた。

風紀委員と言われると白井のような荒事がメインの活動と思い浮かべる人が多いが実際の業務は多岐にわたる。

風紀委員本来の職務は所属する学校内での治安維持。暴走した生徒の制圧、校内での暴力、犯罪行為の防止が主な役割となる。

それが校外へ出ると犯罪行為を発見しても、警備員への連絡しか本当のところは認められない。

その枠を越えて治安活動を行うもんだから、白井などは始末書を書かされる羽目になるのだ。

とはいえ風紀委員も校外でできる活動はある。迷子や道案内、落とし物探し、事件に関わるようなものでは避難誘導などが認められている。

初春が行っている巡回もそうした困っている人を見つけて手助けするため。

風紀委員の巡回は犯罪の抑止にも繋がるので奨励はされているがボランティア的な要素が強い。

初春はそうしたボランティアに勤しむのも気分転換なるかも、との思いとある予感から今日は巡回に出ていた。

美琴からの依頼、初春は昨日のうちに打ち止めの行方について調べていた。

しかしその結果について美琴に言えないままでいる。

初春は打ち止めらしき少女が浜面と一方通行の二人と一緒にいる目撃情報を掲示板などのサイトで見つけていた。

もしかしたら巡回の途中で出会えるのではないか、と初春は心の片隅で思っていた。

842 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/16(日) 19:32:54.81 ID:cr7tOsPAO


7月最後の日、上条はベッドの上で横になって悪友達の差し入れである漫画本を読んでいた。

隣にあった臨時のベッドは昨日のうちに撤去されている。

その上にいたステイルは点滴で体調が回復すると神裂と共にさっさと学園都市を去っている。

ステイル曰わく後始末の工作は少しでも早い方が良いらしい。

上条はインデックスに会っていかないのか、尋ねたが、返ってきた言葉は

「会わないよ、あの子は僕たちが知っているあの子じゃない。会ったところで話すこともない」

「それより、これからの教会の対応を見極める方が重要なんだ、あの子を教会がどうするのか気になる」

ステイルの言い分によれば『首輪』を打ち砕いたと言っても、インデックスの頭の中にある10万3000冊の魔導書が消えた訳でない。

更にインデックスが魔力を自由に使えるようになっていたら、10万3000冊の魔導書を使いこなす『魔神』を制限無しに世に解き放ったようなもの。

教会の動向を注視せざるを得ない。

「言いたくは無いけど、君の右手。君が傍にいることで抑止できるなら今の状態を認めさせることはできるかもしれない」
そう言ってステイルと神裂は去って行った。

漫画本を見ながらも内容が頭に入って来ない。

一昨日のインデックスの『魔神』としての姿を思い出したら血の気が失せる。

あんなものがまた学園都市で暴れることがあれば被害甚大である。

ステイルが言っていた事を美琴がどう考えているか聞きたくもある。

しかし今日、美琴は姿を見せていない。

いまいち漫画本を読み進める気にもなれず、漫画本を閉じるとドアの外からパタパタと足音が聞こえドアの前で止まる。

843 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/16(日) 19:37:21.20 ID:cr7tOsPAO


7月最後の日、インデックスは上条の病室の前で止まるとノックもせずにドアを開けた。

上条「うわっ、インデックスか。びっくりさせんなよ、……はー、上条さんの病室はノック無用の札でもあるんですかね?」

そんなことを言われてもインデックスは

イン「そんなこと言ってこの前、わたしの病室にノックも無しに入ろうとしたのはとうま、なんだよ」

上条はあの時のことを思い出してうっ、と詰まるが29日以前の記憶があるインデックスを見るとホッとした気持ちになる。

上条「あの時は悪かった、って何度も謝ったじゃねーか。……それで何の用だインデックス?」

イン「あっ、みことを見てないか聞きにきたんだよ」

上条「美琴?あー、俺も今日は一度も会ってないぞ?」

イン「そうなんだ……わたしも今日は会ってないんだよ、心配かも……」

上条「それで探してたのか」

(インデックスのことは一応の片は付いても妹達〈シスターズ〉のことがあるからな……それについてインデックスに言うわけにもいかないし)

上条「まー、美琴だって久しぶりの学園都市だからな、ちょっと街中でもぶらついてんじゃねー」

イン「だったら、とうまかわたしに一言あってもいいかも」

イン「昨日から様子がおかしかったんだよ」

844 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/16(日) 19:42:10.56 ID:cr7tOsPAO


7月最後の日、垣根と心理定規は連絡を取り合っていた。

定規「見つけたわよ。対象と『最終信号』、一緒にいるわ」

垣根『えらく早いな』

定規「噂の元を辿っていたらあちらの方から姿を見せてくれただけよ」

垣根『へえー、それでどこよ』

定規「第7学区セブンスミストがある通りと言ったらわかる?」

垣根『……面倒くせえ場所だな……わざとか?』

定規「罠じゃないでしょうけど……さすがと言うべきじゃない?」

垣根『抹殺というか暗殺だかんな……『最終信号』だけならともかく、仕事もこなすとなると目立つ行為はなー』

垣根『お前と他の二人で追い込めるか?』

定規「威圧して人の流れから外れさせるのね」

垣根『ああ、それで逃げ出したところをバッサリと殺っちまえば』

定規「ちょっと待って」

垣根『どうした?』

定規「対象の浜面、別の誰かに尾行されてるわ」

垣根『尾行?まさかダブルブッキングじゃねえだろうな』

定規「尾行にしては距離が近いわね、女の二人組み?……あら、『アイテム』の構成員だったかしら」

垣根『『アイテム』?敵討ちかなんかかよ……』

定規「そんな感じでもなさそうよ」

垣根『まあいい、様子を見ながら策をねるか、他の二人にも連絡しておいてくれ』

それで電話が切れる。

心理定規は他の二人に連絡をとりながら考えていた。

定規(信頼されても困るのよね)

845 : ◆evJdM4Cpzc [sage]:2012/09/16(日) 19:45:16.10 ID:cr7tOsPAO
此処まで

計算してたら次スレに跨がるのはほぼ確実かなってことで酉つけてみましたけど上手くいってるかな?
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/16(日) 23:03:22.06 ID:Cs3WVsiH0
乙です!
次回も楽しみにしてるよー
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 00:07:20.02 ID:Xei7rdbto
益々状況が複雑化してるな・・・先が読めなくて楽しみ
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 00:42:03.47 ID:sIezMJ89o
乙!
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 00:54:47.66 ID:wSijVYXF0
乙  わくわく期待
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 22:07:53.13 ID:dHNyOH9S0
乙です
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/24(月) 17:16:45.89 ID:BYFfX7mAO


浜面は後ろから鋭い視線を送ってくる二人に辟易としていた。

実際に睨んでいるのは絹旗一人であるのだが。

流石に2メートル以上5メートル以内をキープして無言で後をつけられ睨み続けられるのはうんざりする。

浜面は後ろを振り返り、

浜面「そのなんだ、絹旗に滝壺、なんでずっと後ろをつけてくんだ?」

問うが、

絹旗「超浜面だったんですね」

回答になっていない。

浜面「はあっ?」

絹旗「はっ!、この前お子様向きの服装一式を買わせたのはその子のためっ!」

事実であるが問いかけの内容からかけ離れ、

滝壺「そんな父子家庭なはまづらを応援するよ」

変な場所へと着地する。

浜面「ふ、父子家庭って俺の子供に見えんのかよっ!こんな大きな子供居るわけないだろうが!」

その時キョトンと様子を見ていた打ち止めが、

打ち止め「ミサカは1歳未満だから可能性はあるんだよ、ってミサカはミサカは話を混ぜっ返してみる」

浜面「打ち止めァーっ!」

思わぬ後ろからの弾に叫ぶ浜面。

絹旗「ま、ままさか本当に親子なんですか、超親子なんですかっ」

目が虚ろになっている絹旗。

浜面「だから違えって!話を聞けっ!」

852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/24(月) 17:18:00.81 ID:BYFfX7mAO


浜面が叫んでも絹旗には届かないのか、よろよろと絹旗は打ち止めに近づき肩を両手を掴み、

絹旗「母親の名前を超仰って下さい!」

あさっての方向に問い質す。

打ち止めはどっかいってる目で見られて、

打ち止め「は、はは浜面、このお姉ちゃん何か怖いよ、ってミサカはミサカは助けを求めてみたり」

浜面「自業自得だ、打ち止め」

浜面は助けを求められても頭を抱えている。

両手で肩を揺さぶり、

絹旗「さあ、早くッ!」

打ち止め「あわわわわわ」

さすがに頭を抱えている浜面も見かねてと言うよりは、またとんでもないことを言われるのを恐れて

浜面「あー、その子はな……」

(ってバラすのは不味いよな?どうすっかなー)

口を挟もうとするがなんと言うべきか悩む。

絹旗「うん?…………この子……ええと、誰かに」

浜面(あああ、そりゃ気づくよな、仕方ねえか)

絹旗「第三位に……」

そこまで来ると浜面も仕方なく、

浜面「おおっぴらにする話しじゃねえが、第三位の」

滝壺「はまづらと第三位のお子さん?」

浜面「なんでだーーーッ!?」

言い掛けるが、滝壺の台詞に浜面は天を仰ぐ。

853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/24(月) 17:19:21.97 ID:BYFfX7mAO


ファミレスのボックス席で疲れた表情を見せる浜面。

その横でウキウキしているのは打ち止め。打ち止めの注文の品は初のチョコレートパフェ、楽しみにしているのだろう。

二人の対面には絹旗と滝壺が座っている。

尋問の時を待つ。

路上であれ以上やり取りするにも誰が聞いているか分からない、と近くのファミレスへと入った。

浜面は尋問は注文した品が揃ってからと言うこと勘弁して貰っている。

浜面もどこまで話して良いか考える余裕が欲しかった。

ランチには随分早い時間だったので打ち止め以外の注文はドリンクバー。

誰がドリンクバーへと取りに行ったかは可哀想で内緒。

唯一店員が運んでくる品、チョコレートパフェが届けられる。

注文の品が揃い、尋問の口火を切ったのは

滝壺「それではまづらと第三位の馴れ初めは?」

浜面「まだ引きづってんのォォォ!『超電磁砲』とは一昨日初めて会ったばっかだし、絹旗も知ってるだろうがァー!だいたい妹と見られることはあっても、いきなり子供なんて発想に飛ぶか?」

絹旗「えっ、ええそうですが……超浜面のことですから、そのひょっとしてその……」

854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/24(月) 17:22:01.85 ID:BYFfX7mAO


まあ絹旗もなんで狼狽えてあんな行動をとってしまったか自分で自分が分かってない。

浜面は声を低める。

浜面「この子、『打ち止め〈ラストオーダー〉』って言うんだけどな、『超電磁砲』のクローンだ」

絹旗「やはり……」

浜面「やはりって知ってたんかよ、さっきまでの俺って一体なに?」

絹旗「いえ、その第三位のクローンがいると言うのは昨日、麦野からの連絡で知らされたんですが……」

絹旗は気持ちを改めて聞く。

絹旗「それでなんでその第三位のクローンと浜面が一緒にいるんですか?」

浜面「言え

打ち止め「ミサカは一方通行に保護して貰ってるんだよ、ってミサカはミサカは前置きがすんだら、浜面はミサカを心配して一緒に暮らしてくれてるんだよ、ってミサカはミサカは事情を話してみる。本当は浜面にも感謝してるの、ってミサカはミサカは思ってたり」

浜面「ねー、って言おうとしてたのに打ち止め。まーたお前は……はあー」

絹旗「……一方通行?……えっ、えっ、えーーーっ?」

浜面は再び頭を抱え込むことになる。

855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/24(月) 17:25:45.62 ID:BYFfX7mAO


24日の出来事から昨日まで、浜面があらましを説明した後。

絹旗「襲撃者ですか……」

絹旗が呟くと、

浜面「打ち止めはどこの誰だかわかんねえけど狙われてるってことだ」

絹旗「その襲撃者を一方通行が潰しに行ってる間、浜面が預かっていると」

絹旗は面倒なことになった、という風情。

浜面「そういうこと」

絹旗「はー……渦中の超ど真ん中じゃないですか」

漏らすように言う絹旗。

浜面「?」

絹旗「超浜面ですから分かってないと思いますが」

疑問符が浮かぶ浜面に説明しようとする。

浜面「えーと、なにが?」

キョトンとする浜面の隣で打ち止めは一生懸命にチョコパフェを食べている。

滝壺「はまづらがむぎのに勝利した話し」

浜面「はっ?」

話しの繋がりが浜面は分からない。

絹旗「level5が無能力者に敗れた事実、その片方を超隠すために麦野と浜面の話しをバラまいているんです!」

絹旗はグイッと、

浜面「へっ?」

絹旗「ですから第一位が負けた話に興味を持った人間が、その子たちのことまで芋づる式に調べ上げたりしたら超不味いでしょうが!!」

もう一度グイッと顔を突き出す。

浜面「あっ!そういうことか!」

856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/24(月) 17:31:49.73 ID:BYFfX7mAO


浜面「なーるほどな、そんであんな噂が!とばっちりを受けてたんだな、はあ、いい迷惑だぜ」

滝壺「とばっちりどころじゃないよ、はまづら」

絹旗「そうです!」

打ち止め「わー、浜面ってそんなに凄い人だったんだー、一週間も一緒にいて気づかなかったよ、ってミサカはミサカは驚愕してみる」

絹旗「そうなんです、そんな超凄い浜面を超放っておくわけがないじゃないですか!」

滝壺「そう、上層部にとってはまづらはそろそろ邪魔」

浜面「じゃ、じゃ、邪魔って!?」

絹旗「だってですね、level5の価値の超失墜ですよ」

浜面「だってあれまぐれじゃねえかよ!」

絹旗「全員がそうは思ってくれません、軍隊と戦えるとか言いながら無能力者に負けてしまう程度と思われたら」

滝壺「だから、まぐれはまぐれにしないといけないんだよ、はまづら」

絹旗「だから、浜面には超死んで貰わないといけないんです!」

絹旗が叫ぶように言ったあと沈黙が落ちる。

静寂を破り、ボソッと浜面は

浜面「……お前ら……俺を殺しにきたの?」

絹旗「ち、違いまーーーすッ!!!!!!」

絹旗は絶叫する。
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/24(月) 17:34:21.17 ID:BYFfX7mAO


あれから2週間ほどになる。これだけ噂が蔓延していれば第一位のことも話しに昇る事も無い。

損得を考えたとき、そろそろ浜面には死んで貰った方が学園都市の利益にかなう、とのことだった。

浜面「それじゃあよ、二人で俺を……護衛にきたのか?」

絹旗「ぶっちゃけ、そうです」

浜面「……なんで?」

絹旗「なんでと言われても……」

滝壺「はまづらが心配だからだよ」

浜面「俺にそんな価値があるか?level4二人に守って貰うような?」

滝壺「だめ、はまづら」

浜面にしたって命は惜しい。学園都市の利益より自分の命が大切だ。そんな事で死んでやるものかと思う。

だからと言って能力者、それもlevel4二人が浜面を守る義理はない。浜面が知る能力者は無能力者を虫けらのように見る連中ばかりだった。

『アイテム』とは仲良さげに見えてもやはり越えられない壁があると思っていた。それに『アイテム』は学園都市側に立つ暗部の治安組織。今の話しだと浜面を殺しに来ることはあっても守るなど逆の位置に立つことになる。

それを見透かすように、

滝壺「大丈夫、はまづら。友達を守るのは当たり前だから」

浜面「友達ね……」

能力者からそう言われると不思議な気分だった。

二人が言うとおりであれば有り難い申し出でもある。

正体不明の襲撃者に打ち止めが狙われている。実験の関係者も打ち止めを追っている可能性があった。

打ち止めを守るつもりでいたが、逆に浜面を狙ってくる輩もいる事実。腕自慢の挑戦者なら逃げ出すだけだが、抹殺を目的としたプロが襲いかかってくる可能性。

それに打ち止めを巻き込みかねない。

浜面「頼みがある」

浜面は絹旗と滝壺に頭を下げる。

浜面「いざ、本当に襲われた時は打ち止めのことを優先してやってくれねえか?」

858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/24(月) 17:39:56.57 ID:BYFfX7mAO


エージェント、制御役、いつもの連絡係。正確な名称はない。

昨日、そのエージェントから心理定規へ連絡が入る。反乱計画を「見逃す」かわりに指示に従え、と言う。

微妙な言い回し。脅かしとも取れる。

普通なら反乱を中止すればお咎め無し、と受け取れる。

しかし、反乱を中止せよとも言わない。

垣根には反乱を覚られたことは言わずにおくようにとも言われる。

スパイにでもなれ、と云うことか。

違う。

状況を操りたいだけらしい、上としては。

それには垣根が反乱を今まで通り進めている方が都合が良い、とのこと。

判然としない上層部の考え。

指示の一つは浜面抹殺。

浜面の側には『最終信号』がいるという情報も付け加えられる。

心理定規は保身を図る保険として指示に従うことにした。

指示に逆らい、垣根に反乱が気づかれてると言ったとしても彼が諦めるとも思えない。

垣根が計画している反乱。革命、レボリューション、体制の一新ではなくクーデター。垣根自らが学園都市の実権を握るための計画。垣根が何かを成そうとする全てだから諦めるわけがない。

『スクール』の構成員は垣根の計画に加わった。

『スクール』のような暗部に堕ちる者。

それぞれが何らかの事情を抱えている。自分から暗部に入る者などごくわずか、戦闘狂ぐらいのもの。飼い主がいなければ暴れられないのは本当の戦闘狂とは言えないかもしれないが。

暗部にいる者は過去に犯罪を犯した者、知ってはいけない秘密を知ってしまった者、表に出せない実験の被験者、単純に多額の借金を抱えた者、人質などの枷をはめられた者など様々。

そして鎖を首に巻かれ学園都市の軛のもと働かされている。

垣根の計画に『スクール』の構成員もその軛から解き放たれるならとの意識が働いたのは間違いない。

心理定規もその一人。

しかしそれも命あっての物種。反乱の成功と保身を天秤にかけている。

そして今日になって抹殺対象、浜面の居場所を知らせる連絡が入る。

859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [saga]:2012/09/24(月) 17:41:49.81 ID:BYFfX7mAO


定規「見えてる?」

垣根『ああ……』

定規「護衛のつもりかしら?」

垣根『だな……』

定規「どうするの?」

垣根『他の二人は?』

定規「もう、着いてるわ」

垣根『……やっぱ、追い込みをかけるか』

定規「『アイテム』の二人がいて上手くいくかしら?」

垣根『いくさ。『アイテム』は俺達と同じだぜ、守るより攻める方が得意だろ』

定規「……盾になって守るよりかはこちらを潰しにかかると言うわけ?」

垣根『その方が手慣れてるだろ、アイツ等も』

戦闘となれば人が溢れる場所よりはそれに向いた相応しい場所へと向かう。

それは『スクール』にとっても好都合。

定規「そうね……でもそれなりに手順を組まないと」

垣根『今から伝える。まず店から出たところで三方から囲め』

定規「あら、あなたは?」

垣根『俺が最初から出ちまったら、警戒され過ぎる。上手く思ったとおりに動いてくれなきゃ困るからな』

定規「わかったわ」

垣根の指示に従い包囲網が敷かれていく。

860 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/24(月) 17:47:51.88 ID:BYFfX7mAO



天井の研究室

天井「だ、第三位の死亡は確認されてない。君の思い違いじゃないのか、それは?」

一方通行「あァ、そうだったか。しかしよォ、オリジナルの仕業って証拠はあンのかァ?」

まだ、襲撃者の正体が『超電磁砲』であることが一方通行は腑に落ちない。

天井「だ、だから、最初に証拠から見せていこうと考えていたんだ。折角、手順を整えておいたのに君は」

そう言いながら天井は破壊された施設の写真及び分析結果を手渡す。

破壊の主因は強力な電磁波を浴びせられたか高圧電流を流し込まれたか、さらに監視カメラを含む警備システムがハッキングを受け、用をなさなかったことなどが記述されている。

一方通行「けどよォ、これぐれェならlevel4でも可能じゃねェのか?」

天井「最後の写真を見てくれ、27日に襲われた施設だ」

一方通行がその写真、研究施設の全景が映った写真に目を向けると、

一方通行「こりゃすげェなァ、2階?3階付近まで吹っ飛ンじまってンじゃねェか?」

天井「確かに凄まじいものだ。どうすればそうなるかの調査結果、電磁波を使った加熱現象から水蒸気爆発が起こったことが判明した」

天井「さすがにその規模でその現象が起こせるとなるとlevel5しかいない」

一方通行「……間違いねェのか?」

天井「わ、我々も調査結果には目を疑った。第三位が生きているうえに学園都市に帰還している可能性にね」

天井「信じらんない思いだったよ。ところが昨日の夜、こんな物が届いた」

天井が差し出したのは一通の用紙。一方通行を指定した第2学区の兵器試験場で待つ、と記されたどこにでもあるA4サイズのコピー紙。

861 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/24(月) 17:50:00.34 ID:BYFfX7mAO


一方通行「なンでだ?」

ただ一方通行は呟いただけだったが、それを聞いた天井は

天井「じ、実は君には話してなかったが妹達〈シスターズ〉には20001番目の個体がいる」

一方通行「…………」

天井「実験に必要な個体は20000体。何故、20001番目の個体が必要になったかと言うと妹達〈シスターズ〉の反乱を防ぐためだ」

天井「し、妹達〈シスターズ〉には感情を持たせていない。だ、だが万が一感情を持ち反乱を起こすようなことになれば実験どころか学園都市が危うくなる。せいぜいlevel3と言っても20000人の能力者、安全装置が必要だった。それが20001番目の個体『最終信号』」

天井「ら、『最終信号』は妹達〈シスターズ〉の司令塔として調整されている。『最終信号』からミサカネットワークに命令を出せば妹達〈シスターズ〉が反乱を起こしても停止できる」

一方通行「長い説明だなァ、それがどうした?」

天井「さっ最初に襲われた施設に『最終信号』がいた。連れさらわれてはないようだが行方不明中だよ、ふう……」

天井「わ、我々の推論では最初の施設の襲撃は『最終信号』を手に入れて、妹達〈シスターズ〉に死を命じるか、はっ反乱を起こさせるのが目的ではないかと考えている」

862 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/24(月) 17:52:33.33 ID:BYFfX7mAO


天井「理由としては復讐。実験を台無しにしようとしてるのかもしれない」

一方通行「オリジナルには実験なンか関係ねェだろがァ」

天井「これは君の方がわかるんじゃないか?自分のクローンが存在して、それが数段落ちる力しか持ってなければ」

一方通行「劣化版の存在自体が許せねェで、ぶっ壊した上にそれに携わった連中を潰すわなァ、……level5にしちゃァ随分まともって聞いてたンだが、結局ご同類ってわけかァ」

A4の用紙を差して天井は

天井「これをどうするかは君に任せる」

天井「わ、我々ではlevel5に対抗する戦力はない、手を借りるアテも今は無い。これに応じるかは君が決めてくれ」

一方通行「行ってやるさ、お前らのためじゃねェけどな」

一方通行は用紙を丸めてポイッと捨てると立ち上がり部屋から出て行く。

これから向かう先は決まっていた。

863 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/24(月) 17:54:47.33 ID:BYFfX7mAO


「上手くのってくれたようですネ」

一方通行が出て行ってから暫く、天井のもとを一人の研究者が訪れた。

天井「本当にこれで上手くいくのか?第三位と戦わせることで絶対能力進化実験は完成されるのか?」

「さあ、分かりませン」

天井「ど、どういうことだ!」

「この前も説明したとおり、妹達〈シスターズ〉は実験の対象とはなり得ませン。ですから当初の計画にあった第三位の使用を考慮してみたのでス。演算結果としては上々でしタ。さらに第一位は進化することになるでしょウ」

天井「だからlevel6には」

「第三位がどこまでやれるかでス。期待して待ちましょウ」

「残念ながら私は見届けることができないのですがネ」

「興味のある研究依頼がありまして、そちらに移ることを決めたのでス。実験の引き継ぎは貴方を指名してますのでよろしくお願いしまス」

「その連絡とお別れをDr.天井にしようと訪れたのでス。Dr.天井、実験の成功を祈ってまス」

天井は二の句が継げなかった。

そして研究者は天井に何も言わせず出て行く。

天井も顔を歪めて出て行くのを見守るだけ。

天井(……そんなことだろうと思っていた。『量産能力者(レディオノイズ)計画』のときも祭り上げられたうえ、梯子をはずされたようなものだ)

天井(残されたのは膨大な負債……その経験が何も生かされていないと思うなよ。実験は完遂させてみせる)

天井(これさえ有れば)

天井にも分かっていた。実験が停止された理由、妹達〈シスターズ〉の経験と実力の不足。『量産能力者(レディオノイズ)計画』の失敗と同じ理屈。

天井は足掻き、能力強度をランクアップさせる研究を続けてきた。

level5に昇るにはどれも不可とされた。

しかし求めていたサンプルを遂に手に入れた。

時間はかかるかもしれないが理論を再構築して改良を施すだけである。

864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/09/24(月) 17:56:05.47 ID:BYFfX7mAO
此処まで

せっかく酉つけたのに忘れてた、はー
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/24(月) 19:00:24.52 ID:VSZdABCK0
乙です!
次回も楽しみにしてます
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 22:21:56.42 ID:GGa8/RLl0
乙ー  天井の発言が気にかかる
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/25(火) 01:02:06.72 ID:s6e4UHga0
美琴ハードスケジュールで大丈夫か
868 : ◆evJdM4Cpzc [sage saga]:2012/09/27(木) 21:42:15.15 ID:n4L+M+6AO



第2学区 兵器試験場



『学舎の園』、1年前に4ヶ月弱通った常盤台中学が構える、壁で囲まれた学園都市の中でも更に城塞のように柵で囲い、部外者の進入を阻む区画。

美琴はその懐かしい風景を眺め、通り抜けると隣接する第2学区、そのまた奥にある兵器試験場にまで来た。

そして今、美琴は廃墟の上に立っている。

ただ壊されるために創られた偽り(ダミー)の街の跡。

兵器のスペックが都市に振るわれた状況での威力を確認する為の実地試験。その場所。

どんな兵器を実験したのか本物と同様に建てられたビルが縦に断ち切られ、両側に開き倒れている。

地面にまでその跡を残す。真っ直ぐに地面を抉る、断層のような地割れがビルに向け開き、反対側へと抜けている。

他にも『超電磁砲』の連射を受けたかのようなズタズタに引き裂かれた建物。

外壁が無くなり鉄骨の柱を残すだけの建物など元のカタチを留めた建築物は一つもない。

日差しだけが暑い。

荒涼とした風景が残る破壊の街。

二人の超能力者と呼ばれる怪物により、ここは戦場と化し、再び破壊され尽くすことになる。

半分に断ち切られビルもズタズタに引き裂かれた建物も跡形もなく姿を消すことになるだろう。

869 : ◆evJdM4Cpzc [sage saga]:2012/09/27(木) 21:46:57.27 ID:n4L+M+6AO


美琴「指定の時間まであと30分か……」

指定時間は12:00

対する敵は学園都市第一位、最強と呼ばれる『一方通行』。

美琴は同じlevel5の第三位。超能力者として席次が二つ上な存在というには言葉が軽すぎる。

空に輝く星。同じように見えても等級もあればより遠くから光を降り注ぐ星もある。

一年前なら一生をかければ届くかもしれない星と、幾つもの世代を経なければたどり着けない星ぐらいの差があった。

絶対能力進化実験の計画が記されたファイル、『樹形図の設計者』の演算結果では185手で美琴は手詰まりとなり、一方通行に殺される。

それを戦場を変え、条件を変え128回繰り返せば一方通行〈アクセラレーター〉はlevel6絶対能力に至る。

逆に言えば128回繰り返しても美琴は一方通行〈アクセラレーター〉に追い付くことはない。

その演算結果を覆さなければ、美琴は上条やインデックス、友人の元へ帰れない。

必ず帰る、その強い意志から別れを告げずにここへ来た。

実験結果のファイルから一方通行のおおよその能力は掴んでいる。

ベクトル操作、一方通行の体表面に触れたあらゆるベクトルを変換可能。
870 : ◆evJdM4Cpzc [sage saga]:2012/09/27(木) 21:49:57.24 ID:n4L+M+6AO


一方通行のベクトル操作は熱や電気、運動量など一方通行に害を及ぼす力を自動的にベクトルの反転、つまり反射に設定されている。

一方通行が何をしなくても反射は一方通行に放たれた力の向きを反転し、攻撃を行った者へと帰す。

一方通行は立っているだけでも相手は自滅してしまう。

それでは反射の壁を超えられる力があるのか?

データでは科学側が持つ最強の兵器、核兵器の爆発であっても反射の壁を超えることは不可能。

現状では反射の壁を超えられた物は上条の『幻想殺し』、異能の力を打ち消す、あのたった一本の右手だけである。

美琴に異能の力を打ち消すような能力は無い。一方通行の反射の壁を超える方法を美琴は昨日から思案し続けていた。

一方通行の認識に無い魔術ならばとは思いついたが攻撃魔術など使えないし、使ったとしても美琴自身が自滅することになる。

されど、それは一つの糸口。

ふっ、と戦場予定地内に人の気配。伸ばしていた観測の網に引っかかった。

反応がする方向に目を向ける。

871 : ◆evJdM4Cpzc [sage saga]:2012/09/27(木) 21:52:54.32 ID:n4L+M+6AO


夏の日差しを受けて立ちのぼる陽炎、その彼方に揺れる人影。

近づいてくる。
白い髪、白い肌、赤い瞳が確認できるところまで。

「オマエがオリジナルか?」

美琴が対処を考えていた人物、一方通行が声をかる。

872 : ◆evJdM4Cpzc [sage saga]:2012/09/27(木) 22:07:04.46 ID:n4L+M+6AO


指定時刻より早い時間。まだ20分ほどは時間を余すだろうか。

一方通行は指定された場所に黒い人影を見る。

見慣れたと言って良いのか1万回も実験を繰り返した妹達〈シスターズ〉と同じ顔。が、眼差しが違う、強い意志を秘めた瞳。

そして常盤台の制服ではなく、夏もこれからという炎天下に黒いコート。

一方通行はさほど暑さを苦にすることはない。

紫外線や地表からの輻射熱を反射でシャットアウトしているからだ。と言っても空気中の熱、全てを反射するわけにもいかない。

そこまですると体表面に感じられる外気温は絶対零度と等しくなってしまう。

同じことは重力にも言える。やろうと思えば出来るであろうがその場合、地球の重力圏を離脱してしまうことになる。

学園都市最強の超能力者と呼ばれても素体は人間。人間が生きていられる環境でなければ生きてはいられない。

一方通行の反射はそれらを無害か有害のフィルターを通し、特に問題ない限り演算を自動設定で処理している。

そんなわけで一方通行も暑いという感覚は分かる。

おそらく裏技を使っていると睨む。第三位は当然、妹達〈シスターズ〉と同じ発電能力者。

体内電流で体温調節をしているか、外気を電気分解して冷房効果を得ているのか。

873 : ◆evJdM4Cpzc [sage saga]:2012/09/27(木) 22:07:47.25 ID:n4L+M+6AO


指定時刻より早い時間。まだ20分ほどは時間を余すだろうか。

一方通行は指定された場所に黒い人影を見る。

見慣れたと言って良いのか1万回も実験を繰り返した妹達〈シスターズ〉と同じ顔。が、眼差しが違う、強い意志を秘めた瞳。

そして常盤台の制服ではなく、夏もこれからという炎天下に黒いコート。

一方通行はさほど暑さを苦にすることはない。

紫外線や地表からの輻射熱を反射でシャットアウトしているからだ。と言っても空気中の熱、全てを反射するわけにもいかない。

そこまですると体表面に感じられる外気温は絶対零度と等しくなってしまう。

同じことは重力にも言える。やろうと思えば出来るであろうがその場合、地球の重力圏を離脱してしまうことになる。

学園都市最強の超能力者と呼ばれても素体は人間。人間が生きていられる環境でなければ生きてはいられない。

一方通行の反射はそれらを無害か有害のフィルターを通し、特に問題ない限り演算を自動設定で処理している。

そんなわけで一方通行も暑いという感覚は分かる。

おそらく裏技を使っていると睨む。第三位は当然、妹達〈シスターズ〉と同じ発電能力者。

体内電流で体温調節をしているか、外気を電気分解して冷房効果を得ているのか。

874 : ◆evJdM4Cpzc [sage saga]:2012/09/27(木) 22:15:31.86 ID:n4L+M+6AO


一方通行は第三位、妹達〈シスターズ〉のオリジナルの実力をそこから測り始める。

一方通行は最初に声をかけた後、無言で睨んで来る美琴に、

一方通行「その格好、暑くねェのか?」

何気ない質問。

美琴「……そう言えば戻ってからそれ聞かれるの初めてね……教えると思う?」

一方通行「手の内は明かさねェってか。まァ、イイぜ。予想はつく」

そう、些細な情報であろうと相手を切り崩す糸口となる。

常時、外気を電気分解して涼を保っているとなると能力の精密性、演算処理能力の高度性を測る材料となる。

あの能力が効かない無能力者と違い、超能力者。負けるとは甚だ思っていない一方通行ではある。

しかし驕りは足元を掬われることになる。

それこそ無能力者との闘いで学んだこと。

一方通行は美琴を殺すつもりは無い。

しかし、手加減するつもりも無い。

一方通行は第三位の友人だと言う、あの無能力者とあの少女が救おうとした妹達〈シスターズ〉を当の張本人が殺そうとしているのが許せない。

この学園都市では騙される方が悪い。闇の部分は誰もがうっすらと自覚している。

警戒もなくDNAマップを渡し、妹達〈シスターズ〉の製造、死すべき者として実験への供与の切欠を作り出した張本人は『超電磁砲』。

疑いもなく妹達〈シスターズ〉を殺して来た一方通行は加害者。

しかしあの無能力者と少女の思いと妹達〈シスターズ〉に対して、目の前にいる第三位は加害者にして裏切り者。

殺さないまでも叩き潰さなければならない。

守る資格は無くとも、守らなければならない。

自分が散々に無惨に残酷に冷酷に扱ってきた妹達〈シスターズ〉、打ち止めを守るために。

875 : ◆evJdM4Cpzc [sage saga]:2012/09/27(木) 22:19:53.32 ID:n4L+M+6AO


美琴「……まだ、時間はあるけど始める?」

距離10メートルの対峙。

一方通行「実験のときみてェに、お行儀良く時間通り始めねェといけねェってンならともかく、呼んだのはオマエだ」

「好きにしろ」

美琴「ああ、そういうことになってたわね……」

一方通行はその物言いに違和感を感じるが、

美琴「それじゃ……一方通行ァーーー!!!」

已むなく受け入れた対決。一方通行を目の当たりにした時、湧き上がるのは激情。1万人の妹達を殺してきた一方通行への言い尽くせぬ思い。

始まる。

美琴の前髪、額のあたりから青白い雷光が弾ける。電撃の槍。

最初の一手。

迸る電撃の槍は真っ直ぐに一方通行を襲う。手加減無しの本気の一撃。同じ発電能力者が見ても怯え震える程の威力。

空間を切り裂き一方通行へと直撃する。

瞬時に跳ね返る。

来た道を戻る。戻る先には美琴。

美琴に当たるかに見えたところで青白い雷光は霧散した。

美琴「反射ってこういうことか……」

データで見た反射の実地での確認。

美琴「……なら」

再度、電撃の槍。

一方通行「何度やっても同じことだぜッ!」

一方通行はその場から動かない。

直撃。

876 : ◆evJdM4Cpzc [sage saga]:2012/09/27(木) 22:22:17.50 ID:n4L+M+6AO


やはり反射の壁を超えることはない。電撃の槍は跳ね返される。

しかし美琴の方へは戻らない。

ズレて、明後日の方向へと飛んでいき、残骸となった建築物に当たる。

ズドォーンっと音をたてると建築物の残骸はただの残骸へと変わり、煙りをあたりに漂わせる。

美琴「やっぱり、基本は180度、来た方向へとベクトルを反転してるだけね」

一方通行「なンだ、試しただけかよ、あァ進入角を調整したのか?そンなことしたって、別にオマエの方向へと変えれるンだがなァ」

一方通行の目に映る美琴の背後から何かが浮き上がっている。

一方通行「第一、反射の壁を超えれねェ限りィィィ、オマエが何したって無駄だァァァ!!」

浮き上がっている物は瓦礫、正確には鉄筋が入った大小様々なコンクリート片。

美琴の背後だけではなく二人を円周上に囲む。

それが美琴の磁力に引かれ一斉に襲い掛かる、一方通行へと。

一方通行「はっ!念動力者の真似事かァァァ!!!」

磁力でもってコンクリート片を自在に動かす。見た目だけは確かに念動力者にも見える。

四方八方よりの多方向同時攻撃。

ゴウゥゥンッ!

877 : ◆evJdM4Cpzc [sage saga]:2012/09/27(木) 22:28:20.78 ID:n4L+M+6AO


一方通行をコンクリート片が覆い隠す。

ギシィィィィッ!

せめぎ合う。

コンクリート片が唸る。

反射によるベクトルの反転に対し美琴は磁力による操作で反転を上回る力をかける。

さらにその力を反射。

コンクリート片に力が増幅し加速する。

コンクリート片は双方の力に圧縮。熱を帯びる。磨り潰されるように細かい粉を散らす。

力のバランスが崩れる前にコンクリート片は耐えきれずひび割れをおこし、砕け散る。

一方通行「加わり続ける力を反射してンだッ、力比べに分があるわけねェだろがァァァ!」

一方通行は足を踏む。

その細い体からは信じられない力が伝わり

ダンッ!

と音が響く。振動が美琴まで地を伝わり届く。

同時に瓦礫が宙に浮く。

一方通行「今度はァ、こちらから行くぜェェェッ!」

どこからか持って来たベクトルを利用して瓦礫を飛ばす。

数十発の瓦礫の砲弾。

美琴に当たる手前、不可思議に瓦礫の砲弾が逸れていく。

電磁障壁、正面より受けず磁場の流れにより方向をズラす。

ガキィン

と金属の音。

一方通行が建物の構造体だった名残の鉄骨を切り取る。

10センチほどの幅のある3メートルの鉄骨。一方通行は手に取ると軽く投げる。

軽く投げたなどとは目を疑う加速。

鉄骨は鉄槍となって美琴を狙う。

その前に美琴の周囲に黒い靄。質量のある黒い靄は飛んでくる鉄骨を絡め捕る。

速度を失いバラバラに引きちぎられる。

黒い靄、砂鉄の霧はそのまま一方通行へと襲い掛かる。

『樹形図の設計者』の演算通りなのか、それとも違う展開がおこなわれようとしているのか化け物同士の闘いは始まったばかり。

878 : ◆evJdM4Cpzc [sage saga]:2012/09/27(木) 22:29:44.80 ID:n4L+M+6AO



とある病院



上条「美琴の様子がおかしかった?」

イン「そうなんだよ……思い詰めてるって言うのかな?何だか覚悟を決めたって目をしてたんだよ」

イン「一人でどこかへ行ってしまいそうな感じだったんだよ……」

苦難という荷を降ろし、また別の荷を背負って何処かへと。

上条「美琴はどこにも行かない、ここに残るって言ってたんだぞ」

イン「でも……」

上条も否定的な言い方をしながら不安が募るのを感じていた。

不安を払拭して欲しい。すぐにでも美琴に顔を見せて欲しい。何バカなこと考えてんのよ、と笑って言って欲しい。

美琴が姿を見せない理由。考えられるのは妹達のこと。28日に聞いた話では美琴は解決策を模索していた。

美琴が解決策を見出したとして、事情を知る上条達にも相談しないのは相談できる解決策ではない、と考えるしかない。

上条とインデックス。

二人とも言葉が詰まる。

嫌な予感が駆け巡る。

上条はベッドから出て起き上がろうとする。

イン「とうま、まだ動いたりしたら」

上条「大丈夫だ。じっとしてられるか」

探す当てはない。それでも焦燥感からベッドの上で寝ていることなどできない。

879 : ◆evJdM4Cpzc [sage saga]:2012/09/27(木) 22:31:50.74 ID:n4L+M+6AO


上条はベッドから床に足をおろす。

そこへドアをノックする音。

返事を待たずドアが開く。

入って来たのは美琴の似姿。

上条は一瞬、美琴かと思ったが頭にかかる軍事用ゴーグル、常盤台の制服、そして相変わらずの無表情ぶりから妹達〈シスターズ〉の一人と判断する。

ただ、無表情ではあるがどこか焦りが見える。

インデックスは妹達〈シスターズ〉と会うのは初めて。インデックスは喜びの表情を浮かべかけるが、美琴とは違うと感覚で理解する。

浮かびかけた表情は茫然とした表情となる。

「上条さん大変です、とミサカ19090号は緊急報告をこれから行います」

上条「どうした、何があった、美琴に何かあったのかっ!」

19090号「はい、しかし詳しい状況は分かりません、とミサカは言わざるを得ません。10032号が第2学区を散策中、強力な電磁波を感知した、とミサカは連絡があったことを告げます。それもミサカ達が放射している電磁波を倍増して受けている感覚だと、10032号は連絡してきています、とミサカは伝達します。ミサカ達と同じ電磁波でミサカ達より遥かに強力となるとお姉様〈オリジナル〉しか考えられません、とミサカはミサカ達の考えを述べます」

880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2012/09/27(木) 22:33:13.69 ID:n4L+M+6AO
此処まで

二重投稿すんません
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 22:39:01.28 ID:XAt2tJU60
乙  
良かった 上条さん達が早々に気付いてくれて   続き楽しみに待ってるよ!
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 22:57:26.62 ID:VqeumX9ro
乙にゃんだよ!
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 22:59:06.96 ID:e/oB07yM0
おつです
上条さん早く行ってあげて…!
884 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/30(日) 19:03:55.37 ID:r+r1J+3AO


上条「どうなってるか、わからないってのは!?」

19090号「電磁波と同時にお姉様〈オリジナル〉の力により電波障害が発生、10032号も作動不良を起こすほどの影響を受けるため近づくことも適わない、とミサカは力の足らなさを忸怩するしか有りません」


妹達〈シスターズ〉の能力は美琴に比べて1%にも満たない。だからと言って普通に側にいるだけで、そんな影響を受けているところを上条は見たことが無い。

考えられるのは美琴が10億ボルトに及ぶ発電能力をフルに使用している状況。

上条「今もそれは続いているんだな?」

19090号「はい、とミサカは即答します」

そして、そんな状況は戦闘中であるとしか考えられない。

ましてや美琴は学園都市に7人しかいないlevel5。他に魔術師がいるならともかく美琴が全力で闘う相手となるて数は限られてくる。

美琴は学園都市に1年振りに帰ってきたばかり。美琴が全開で闘う相手としたら、考えられるのは、

上条「ま、まさか一方通行と?」

19090号「ミサカ達の推測でも一方通行と戦闘中ではないか、とミサカは同意します」

その時、

イン「みことは?あくせられーたって言うのは誰?なんでその人とみことが戦ってたりするの?
それにあなたもみことと同じ顔をしてるのはなぜ?分からないんだよ」

885 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/30(日) 19:10:20.06 ID:r+r1J+3AO


上条「詳しい話をしてる時間がない」

インデックスの問いに今は答えられない。

上条「第2学区の美琴がいるところへ行かなきゃなんねー、インデックスすまねーが後でいいか?」

一刻を争う、が

イン「ダメッ!みことがいるんなら私も行くんだよ!」

強い意志がこもった言葉、止めても無駄と思わせる、強い眼差し。

上条の怪我はまだ完治しておらず追いかけられれば振り切ることは出来そうもない。認めるしかない。

インデックスが行動を共にするとなると、美琴の元へ向かいながら話をせねばならないだろう。妹達〈シスターズ〉を目の当たりにして隠し通すには無理がある。

それらの問題の他にも大きな問題があった。

時間。

美琴が現在いるという第2学区。地図だけで見れば上条がいる第7学区の南に隣接する学区。

第7学区から直ぐに行けそうにも見える。

しかし第2学区との境界線の第7学区の側一帯には、あの部外者の進入を阻む『学舎の園』が存在する。

通り抜け不能。

関係者以外は内部の者に招待されなければ入れない、柵に囲まれた城塞のような区画。

内部の者と言えば常盤台中学に通う白井黒子がいるが、今から申請してもらっても間に合うはずもない。

その他のルートとなると別の学区を跨いでいく通常ルートしかなく時間がかかる。

今すぐ美琴の元へ駆けつけるにしてもどれほどの時間を使うことになるのか、間に合うのか?

上条は焦りと不安で秒針が回ることさえ、もどかしい。

886 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/30(日) 19:16:13.57 ID:r+r1J+3AO



第7学区 ファミレス前


浜面の心配は打ち止めにもしもの事があったら一方通行がどうなってしまうのか?

ありふれた日常、喜び、笑い、悲しみ、人と触れ合う日常から外れていた一方通行にとって打ち止めはそこへ足を踏み入れるきっかけになっている。

打ち止めに何かあれば失うことになる。また固い殻に籠もり、心を凍らして人とはかけ離れた怪物に戻ってしまう。

滝壺は無能力者の自分を友達だと言ってくれた。だから守ると。一方通行のことを友達だと言う気にはまだなれない。立場が違い過ぎる。しかし元の一方通行にも戻って欲しくはない。

だから、滝壺と絹旗に打ち止めを優先してくれと言った。

絹旗は呆れた顔をして何か言おうとしたが滝壺が止めた。

滝壺はいいよ、と言ってくれたが重ねて

「はまづらも自分を大切にして。じゃないと一方通行も怒ると思うよ?」

はて、アイツが怒るだろうかと浜面は思ったが28日のファミレスでの、一方通行が心配してくれた風情を思い出す。

一方通行も言葉にするほどの自覚は無さそうである。ホントのところどう思っているのか分からない。

浜面も立場の違いから自分を卑下しているだけかもと思うと、浜面は誰かに言うつもりはないにしても心の中で思うことは自由だろうと思い、決めた。

一方通行は友達であると。

887 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/30(日) 19:29:23.67 ID:r+r1J+3AO


話しが長引き終わった頃には昼前。

ファミレスから場所を変えて別の店で今さらということで少し早い昼食を取ることになり、ファミレスにはかなり長居をすることになってしまった。

浜面達が昼食を済ましてファミレスを出たときには12:00を軽く過ぎている。

絹旗を先頭に店を出る。その後ろに浜面と打ち止めが並び、最後尾に滝壺。護衛の役割を果たそうとしているのだろう、が

すぐに、

刺すような視線。

殺気と威圧。

絹旗「(張られてましたか。浜面、さっそく狙ってきたようですね。どちらを狙っているか分かりませんが、大人気ですよ、おそらく三方向から見られてますね)」

足を止めた絹旗が小声で話す。

浜面「マジかよっ!だったら、店にずっと籠もってたら良かったんじゃねえか?」

絹旗「(声が超大きいですバカ面、ずっと籠もりっぱなしなんてできないでしょうが!それに痺れを切らして店に踏み込まれたら対応が限られます)」

浜面「(それじゃ、どうすんだよ?)」

絹旗「(うーん、どうしましょうかね?)」

店内では気配さえ感じさせていなかったのに外に出た途端にこれである。

何処かわざとらしさがある。

逆の立場なら絹旗達ならばこの状況をどうするか、プレッシャーを与えつつ逃げ出すように仕向ける。

逃げる者の心理は隠れられる場所を探すか、人の目を恐れ避けようとする。

それは追う者にも都合が良い。標的が自分から人気の無い、邪魔が少ない、誰かに見られることの無い場所を選んでくれるのだ。

888 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/30(日) 19:32:25.08 ID:r+r1J+3AO


浜面の後ろにいる滝壺が周囲の状況を確認する。

滝壺「(正面に一人、多分、あの女の子。左側と右側に一人ずつ、右側のほうが距離があるかな)」

浜面はあの女の子と言われて正面を探すと14歳ぐらいの少女。小柄で華奢な体つきにも拘わらず、まるでホステスみたいな背中の開いた丈の短いドレスを着込んでいる。

ホントに『敵』かと思う。

浜面はそのドレスの少女と目が合う。

一見すると可愛らしい少女は微笑みを浮かべる。

親愛の情からの微笑みに見えない。獲物を見つけた者が浮かべる笑み。

標的は浜面。

間違いなく『敵』。

浜面「(狙いは俺みてえだな……絹旗、俺が囮になっからその隙に打ち止めを)」

絹旗「(できるわけないでしょ!超心配しないで任せてればいいんです、浜面はっ)」

浜面「(超心配って。んなこと言われたら心配するなって言われても普通心配するぞっ)」

絹旗「(細かいです、細かいことを言うと超モテませんよ、浜面)」

浜面「(大きなお世話だっ!)」

絹旗「(そんな浜面は超放っておいて、滝壺さんフレンダに連絡をお願いします)」

滝壺「(わかった)」

浜面「(放っておいてって狙われてんの俺なのにっ!……えっ、フレンダ?……アイツも協力してんの?)」

絹旗「(そうですよ。こんな事もあろうかと、フレンダにはトラップの準備をしてもらっていましたから、同行していなかったんですが麦野以外『アイテム』総出です)」

889 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/30(日) 19:49:05.22 ID:r+r1J+3AO


絹旗「(今は戦闘面での要、麦野がいませんから準備周到に。誘い込んでフレンダのトラップで一網打尽です)」

浜面「(一網打尽ね?わざわざ対決することねえじゃん、逃げ回ってりゃ)」

打ち止めを狙う者を潰せば一方通行が戻ってくる。時間さえ稼いで一方通行が戻るのを待てばいい。

で、なくても今日1日をやり過ごせば一方通行が側にいる状況で狙ってくる輩はそうそう居ない。

無理に対決の道を選ぶ必要はない、というのが浜面の考えである。

絹旗「(攻撃は最大の防御って言葉があるんです、浜面は知らないでしょうけど)」

浜面「(それぐらいは知ってるわっ!無理に闘う必要性はねえだろってことだよっ、俺が言いたいのはっ!)」

絹旗「(一日中付き纏われるのは面倒ですからね、サッと駆除しときましょう)」

浜面「(それが本音かあ……)」

考えれば『アイテム』も学園都市に仇なす者の駆除係。逃げ回ったりするより叩き潰す方がお得意なのだろう。

浜面「(はー、仕方ねえ。お前らに任せるけど、どこに向かうんだ?)」

絹旗「(フレンダがトラップを準備している場所は工事がストップしているビルの工事現場です)」

浜面「(……あっ、あそか?あそこなら確かに一般人が立ち寄るような場所じゃねえな)」

絹旗「(お誂え向きに右側、『敵』との距離が開いているほうから、そこの路地を抜けて行けます)」

890 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/30(日) 19:51:56.85 ID:r+r1J+3AO



建設途中のビル


フレンダ「来るかどうかも分からない相手をただ待ってるだけってのも結局、退屈な訳よ。まあ何も起きない方が良かったんだけどねぇ」

フレンダ、『アイテム』の正規構成員の一人、他の3人が能力を主体に『仕事』をするなか、能力に頼らず爆弾やトラップを得手として『仕事』を行っている。

滝壺の連絡で懸念は現実化。

フレンダが担当しているのは主砲、麦野の不在を補い、浜面を狙う『敵』を撃墜するためのトラップ作り。

いつ『敵』を呼び込んでも大丈夫なように準備は済んでいる。

後はフレンダの姿を見られて怪しまれないために 姿を隠しておくだけだった。

隠れ場所もすでに決めてある。

隣のビルの屋上。

トラップを仕掛けた場所は建設途中のビル。

何かトラブルでもあったのか工事はストップしているが設備はそのまま。工事現場の周囲は騒音、粉塵対策用の壁で囲まれ外からは見えない。

ただそれは地上からの話しだけで、鉄骨が組まれた骨組みだけの状態のビルは隣の屋上から丸見えである。

トラップを発動させるタイミングを計るには抜群のロケーション。

フレンダ「さーて、隠れるとしますか」

フレンダが隣のビルへ足を踏み出した、その背後から、

「同じとこに誘い込もうってのはよっぽど仕事のスタイルが似てんだなあ」

「テメェら『アイテム』と俺ら『スクール』は」

891 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/30(日) 19:56:51.21 ID:r+r1J+3AO


気配もなく背後を取られた。

つい今の今まで人の気配などなかった。

それに、

フレンダ「ス、『スクール』!?」

暗部組織の一つ。『アイテム』と同様に少人数で活動しているチーム。

少人数であるのはそれなりの理由がある。一人で戦局を覆せるだけの大戦力を抱えていること。

『アイテム』ならlevel5の第四位、『原子崩し』の麦野沈利。

『スクール』は、

フレンダの背を冷たい汗が流れる。

フレンダ(無能力者の浜面なんかになんでよりによって『スクール』が出張るって訳よ!level5第二位がいる『スクール』がっ)

『アイテム』の予想では無能力者の浜面を始末するために使われるチームとしてはせいぜい猟犬部隊ぐらいまで、それ以上の大戦力を投入するとは思ってもみなかった。

フレンダは背後の『敵』に気づかれぬようポケットに手をしのばせ、入っていた物を手に取る。

スッと取り出すと手の中に隠し、後ろに両手を回しながら背後を振り向く。

そこにはブレザータイプの学生服を着崩したホスト風な男。

フレンダは願わくばこの男が第二位でないことを祈る。

しかし、目の前の男から妹を守るため麦野の前に立ちはだかった時以上のプレッシャーがでている。

聞きたくはないが、

フレンダ「もしかして第二位さん?」

垣根「ああ、そうだ。第二位『未元物質〈ダークマター〉』の垣根帝督だ」

892 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/09/30(日) 20:01:13.56 ID:r+r1J+3AO


垣根「普段ならテメェみたいなザコは見逃してやっても良いんだがな。仲間に連絡されても面倒だ」

フレンダは背後に回していた手で背中に隠してあった手榴弾を引き抜く。

そのまま垣根に向かって投擲。フレンダは爆風を避けるため身を伏せる。

手榴弾は垣根の前で破裂。

爆音が轟く。

フレンダが顔をあげると白い翼に包まれた垣根が見える。

被害を与えたようには見えない。

level5の第二位、至近距離からの手榴弾の爆発を歯牙にもかけない。

やはりlevel5は人の範疇に数えられない化け物。

少しでも抵抗、時間を稼ごうとするなら、トラップを仕掛けた鉄骨の骨組みしかまだないビルの中へ引き込むしかない。

フレンダは立ち上がり、その中へ駆け込もうとする。

しかし、もう遅かった。

繭のように垣根を包み込んでいた白い翼が開く。

垣根「死んどけ」

ゴア!!

と垣根を中心に正体不明の爆発が巻き起こる。

フレンダの背を猛烈な爆風が襲う。

『フレンダ?』

フレンダの手に握られた携帯電話から滝壺の声がする。

フレンダは手を背中に回したとき、携帯電話を開き見えないままリダイアルを押していた。

情報が上手く伝わったか確認できない。

ようやく電話に出たところだったかもしれない。

それでも、電話が繋がったことで少なくともここが危険であることを知らせられた。

凄まじい衝撃がフレンダの意識を刈り取る。

893 : ◆evJdM4Cpzc [sage]:2012/09/30(日) 20:01:54.88 ID:r+r1J+3AO
此処まで
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 20:45:56.89 ID:U8HD0tGDO
乙。
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 21:19:23.25 ID:GUOrbvZp0
乙  浜面いそげ
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 23:17:52.63 ID:vGeBV7IY0
ていとくん容赦ない雰囲気だな
フレンダがやばい
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 07:45:38.13 ID:HNjTxfcDO
いそげー
フレ/ンダどころか フ/レ/ン/ダ にされちまうぞぉぉ
898 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/04(木) 17:20:43.15 ID:SolowZGAO



第7学区


初春は巡回中、泣いている小学低学年ぐらいの女の子を見つける。初春がその女の子に話しを聞くとポシェットをどこかで無くしたと言う。

初春は女の子と二人で女の子が歩いてきた道をたどり、あちこち探し回ってようやくポシェットを見つけることができた。

初春は女の子が「風紀委員のお姉ちゃん、ありがとう」と言って嬉しそうに笑顔で立ち去るのを見送る。

風紀委員になって良かったと思う瞬間。

初春が風紀委員になろうと思ったきっかけは、やはり6年前の出来事。

あの人を巻き込んでしまった施設の出来事。

非人道的な実験の数々。

幼い頃、初春はその目で見てしまった。力がなく何も出来なかった自分がいた。

そうした悲劇を出来うる限り減らしたい。

誰かヒーローが手をさしのべてくれるのを待つのではなく、自分でも小さな力にしかならなくても悲劇の数を減らす力になりたい。

そうした願いが風紀委員になろうとした理由。

そして、また風紀委員であることで強い精神を養いたかった。

初春の持つ力、『存在の力』。

使い道を誤れば危険な力となりうる。

一つ間違えれば6年前に起きた崩壊が再来する。

力の使用法を学ぼうにも説明不能と評される第七位と同じく科学的検証が行えない。

899 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/04(木) 17:28:06.50 ID:SolowZGAO


幼い初春は6年前の研究施設が崩壊していく様がトラウマとなっていた。

それが封印の役割を果たしていたが日々成長するにつれて囁く。

力を使えと誘惑する声がする。

それに負けない、過去の過ちを繰り返さないだけの強い精神力が必要だった。

今となってはその努力も虚しい。

上条と一方通行が戦ったあの日、初春は最初で最後のつもりだった。

それがあの結果で終わり、抑えつけられていた力は解かれたままだ。6年前の悪夢を利用して再び押さえ込むことは出来なくなっている。

人間の記憶は薄らぐ、時間が経つにつれ心も癒やされる。同様の光景を目撃してフラッシュバックすることはあっても封印として利用するには弱くなっている。

それはあの日あっさり使えたことで実証済みである。

むしろ、今は力が進化しつつあった。使ったことがなかった改変の演算が頭の中で渦巻く。元々、情報処理能力が高かった初春の頭脳は周囲の存在の情報を集め、方程式を作ろうとする。

強い精神力と共に『存在の力』について学ぶ必要があった。

それについて三沢塾での事件のあと、初春は美琴に示唆を受ける。

初春は今回の件が落ち着けばインデックスに相談することを提案された。

900 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/04(木) 17:30:45.42 ID:SolowZGAO


魔術側の基本として生命力を魔力に精製して使用する。

元となる生命力は魂と不可分の関係にあるが、魔術側でも魂の定義について多くの学説が乱立している状況で正解と呼べるものは無い。

しかし、その学説の中には『存在の力』を窺わせるものがある。力の根源は存在そのものにあるという考えに則した学説。

実証された学説ではないにしろ、10万3000冊の魔導書を持つインデックスが初春の話しを聞けば導きを得られるのではないか、と美琴は初春に話した。

そして美琴からの忠告。

それは初春が力を使い『存在』するモノを消滅させた場合、世界を構成するパーツが消えることになる。

世界は連環している。一つ一つが連なり時間軸に跨がり関係している。

例ば、現在生きている人が20年前に死んでいた時間軸があるとする。その人に10年前に子供ができていれば別の時間軸ではその子供は存在しない。10年前にその人が何かを発明していたとしても別の時間軸では発明は存在しないか誰か別の人の事績となる。

所謂、タイムパラドックスである。

初春の力は、

強制的に現在を起点に過去に遡り、その存在を消滅させてしまう。

901 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/04(木) 17:32:07.20 ID:SolowZGAO


一つの世界に別の時間軸の世界が重なるようなもの。

当然、世界は歪む。

無形の物、記憶などであれば忘れることで無くなるだけで済むかもしれない。しかし有形の物 、形として在るものはどうなるか。

世界が修正を始める、それが存在しなかったものとして。

歪みを正そうと、その存在の大きさによれば天変地異を引き起こす可能性すらある。

何故、6年前施設が崩壊したか初春は理解した。
何となくそうではないかと初春も心の奥では思っていた。

あの研究施設の一つの空間が消失しただけで本来、施設全体が崩壊するなど有り得ない。

何故、その空間が無いのか存在しないのかそんな不自然な空間、歪みを世界が施設そのものを崩壊させることで隠した。

原因は初春。

世界は修正を施し、歪みを正した。そしてあの人の未来を決定づけてしまった。

美琴の言によれば、魔術なら本来この世界に存在しない物なら消去しても大丈夫かもしれないが微妙な匙加減、判断が必要となる。

やはり消去は使わず、封印しておく方が良い、というのが美琴の意見だった。

902 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/04(木) 17:33:54.45 ID:SolowZGAO


女の子の姿が見えなくなり、初春は巡回路に戻る前に時計をみるとお昼の時間を軽く回っていた。

さて、どうするか悩むところである。一人でファミレスというのも少し気が引ける。

が、女の子の笑顔を貰って今は気分が良い。

初春はあることを思い出す。夏休み割引キャンペーン中のジャンボパフェ。

場所はセブンスミスト近くのファミレス。

今いる場所から時間もかからない。

ここは思い切ってセブンスミスト近くのファミレスでジャンボパフェでもいってみようか、と決めると初春は歩き出す。

903 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/04(木) 17:41:48.79 ID:SolowZGAO



第7学区


滝壺「フレンダ?」

ゴア!!

ズガシャ!!!!!!

ツー、ツー、ツー、ツー

フレンダからかかってきた電話。呼び掛けた途端に轟音。破壊音と共に電話が切れる。

何が起こったか一目瞭然だった。

待ち伏せ場所、フレンダが待機していた建設途中のビルに『敵』が現れたとしか考えられない。

フレンダはそれを知らせようとした。

浜面「どうしたんだ、滝壺?」

人はまばらでも、まだ人目はある。襲ってくる気配はない。浜面達4人はワザと逃げ回ってるかに見えるよう早足で歩いていた。

ぽやーん、としていた滝壺の電話が鳴り、滝壺が電話に出るとフレンダの名を呼ぶなり厳しい顔つきになる。

心配した浜面が声をかけたのだが、

滝壺「浜面は心配しないで……絹旗」

滝壺は答えると絹旗を呼ぶ。

足を止め振り返る絹旗も滝壺の顔を見ると頷きを返す。

先頭を行く絹旗は止めていた足を動かし歩み始める。そして角に差し掛かり曲がろうとした。

浜面「待てっ、絹旗!そっちはビルがある方向じゃねえだろ!?」

絹旗「こっちで良いんです」

絹旗は振り替えろうともせずに先を急ごうとする。

浜面「フレンダになんかあったんじゃねえのか?放っとくのかよ?」

904 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/04(木) 17:47:21.28 ID:SolowZGAO


浜面は打ち止めの小さな手を握り足を止めたまま。

動こうとしない浜面に、

絹旗「フレンダは待ち伏せ場所が危険であること知らせてくれたんです。そこへ狙われている浜面を超連れて行くわけにいかないじゃないですか」

滝壺「……わかって、はまづら」

浜面「ダメだっ!そんなのはダメだっ!」

絹旗が振り返る。

絹旗「浜面っ!我が儘を言わないで下さい!」

浜面「我が儘じゃねえっ!」

浜面「これが今回のお前らの『仕事』だって言うなら俺も何も言わねえ。
だがな、あくまでもお前らの善意でやってくれてんだろ。お前らが守ってくれるってのは嬉しいさ。大能力者が俺なんかを友達だなんて言ってくれるしよ。
その友達の善意に胡座をかいて、俺を助けようとする誰かが犠牲になって、そのうえで俺が助かったってなあ、俺は何も嬉しくねえんだよ」

浜面「ダメなんだ、友達って言ってくれるヤツを見捨てることなんてできねえ。それも俺の所為だってんなら尚更だっ!!」

滝壺「はまづら、打ち止めのことはどうするの?連れていけば確実に巻き込むことになるよ」

絹旗「そ、そうです。打ち止めのことも考えてあげないと……フレンダも暗部の人間です。私達はこういうことが起こり得ると、覚悟は出来てるんです……」

浜面「それでも……」

見捨てることができない。

ただ、言われるように繋いだ手、そのままに打ち止めまで死地に引き入れることになってしまう。

繋いだ手を離して絹旗と滝壺に託し、一人で向かうか?
それはどうも二人が許してくれそうに無い。どちらか一人にと言っても納得して貰う自信も無い。

どうするか悩んでいると。

「浜面さんに絹旗さんじゃないですか、どうしたんですかこんな所で? お困りならお手伝いしますけど」

905 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/04(木) 17:51:21.15 ID:SolowZGAO


垣根からの着信音。

立ち止まる『アイテム』と抹殺対象。

何かあったのは間違いないと確信して心理定規は電話に出る。

垣根『あー、そっちの様子はどうだ?』

定規「足を止めて何だか相談中。電話をしてくるあたり実はそっちで何かあったんじゃないの?」

垣根『まあな……『アイテム』の女が一人、こっちで張ってやがった。もちろん潰したんだが、その前に連絡を取られちまったみてえでな。どうなったかと思ったんだが』

定規「ドジね」

垣根『仕方ねえだろ。あの女だって暗部の闇に棲んでたヤツなんだからよお』

定規「それが分かってて甘く見たんでしょ。おかげで手を変えないといけないじゃないの」

自らの能力への過信、脇が甘いところができる。

この辺なのかと心理定規は思う。連絡係からのおかしな指示の理由は。

学園都市第二位 垣根帝督が苦戦する敵などそうそういない。

常識的に考えて垣根より席次が上の第一位 一方通行か、あとは能力者ではないが科学を魔法のように扱う木原一族ぐらい。

暗部の『仕事』、特に『スクール』に回ってくる『仕事』は一筋縄ではいかないものが多い。にも関わらず垣根は容易く跳ね退けてしまう。

乗り越えるべき障害のなさは成長の妨げ。

垣根の反乱など歯牙にもかけず、逆に成長の機会を作る好機と見ているのか?

浜面抹殺もその一環なのかもしれない。

そうであれば連絡係の指示も理解できる。

ただ遠くから見える浜面仕上にそれだけの価値があるのか疑問だった。

906 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/04(木) 17:54:24.13 ID:SolowZGAO


垣根『さあ、どうすっかな』

定規「このまま戻られて人混みに紛れ込まれたら厄介なことになるわね。まだ人目はあるけど仕掛けてみ……」

心理定規の言葉が途切れ、

垣根『どうした?』

定規「……一人、通りすがり?の女の子が浜面に話しかけてるんだけど……」

垣根『はあ?』

定規「……ええと、今その女の子に『最終信号』を預けて、走っていくわ。……あなたのいる方向よね、あれ」

あきれ気味の声。

護衛対象の浜面が護衛役を助けにいこうと言うのか。

垣根『……甘え、甘えな。ヒーロー気取りかよ、生存確率がないヤツを置き捨てるなんて当たり前のことだろ』

定規「あら、でも素敵じゃない。浜面と『アイテム』の関係がどうなってるか知らないけど、暗部で暗いものを見過ぎたのかしら。浜面がカッコ良く見えるわ』

垣根『ふざけんな……とりあえず方針を変える必要は無さそうだが『最終信号』の行方が気になる……心理定規、お前はその『最終信号』を預かった女の子?のあとをつけろ』

907 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/04(木) 17:58:34.48 ID:SolowZGAO


初春「ちょ、ちょっと待って下さい、浜面さん、絹旗さーん!?」

初春は走り去ろうとする浜面達に声をかけるが、

浜面「すまねえっ!ワリいけど、打ち止めのことを頼む、出来たら人混みの中にでも隠れててくれっ!」

事情を説明せずにこれはあんまりだと思う。初春もひょっとしたら会えるかもと思って巡回に出ていた訳だが、会ったら会ったでいきなり打ち止めを預かってくれ、と言われ走りだされては混乱するだけである。

訳も分からず引き止めてみても今の返答。

絹旗にもう一人の女性も慌てて浜面について行く。

初春も追いかけたかったがあの言い様では打ち止めを連れていけない理由があるのだろう。

初春は浜面達を見送り、打ち止めの保護を引き受けるしかなかった。

元々、打ち止めを探していたのだし。

初春「えーと、打ち止めちゃん?」

打ち止め「うん、ってミサカはミサカは返事をしてみる。でも、足手纏いになったらいけない、ってミサカはミサカは我慢してみるけど、ミサカは浜面のことが心配、ってミサカはミサカは気もそぞろだったり」

初春「そうですね、打ち止めちゃんの安全を確保できないと浜面さんも心配でしょうから、何処かへ」

908 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/04(木) 18:00:37.64 ID:SolowZGAO


その時、打ち止めのしおれていたアホ毛がピョコンと立ち、

打ち止め「そういえば、お花畑のお姉ちゃんはヒーローさんとあの人の戦いの場にいたお姉ちゃんだよね、ってミサカはミサカは質問してみる」

初春「えっ、なんでそれをって……ミサカネットワークに決まってますか」

打ち止め「やっぱり、そうだったんだ、ってミサカはミサカは運命の悪戯に驚いてみる。ミサカはヒーローさんとお姉ちゃんに会えたら感謝の気持ちを直接伝えたかったの、ってミサカはミサカはミサカ達を救ってくれてありがとうって言ってみる」

打ち止め「それと、お姉ちゃんには聞いてみたかったことがあるの、ってミサカはミサカはもう一つ質問をお願いしてみる」

打ち止め「お姉ちゃんとあの人、一方通行はお知り合いだったの、あの日、あの人はお姉ちゃんを待ってたのかな、ってミサカはミサカは疑問を口にしてみる」

初春はすぐには答えず、打ち止めに手をさしのべる。打ち止めがその手を繋ぐ。

初春「話せば長くなっちゃいます、移動しながらでいいですか?」

二人は歩き出す。

そうして、初春は前を向いたまま、

初春「あの人が一方通行になったのは、私の所為なんです」

話し始める。
909 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/04(木) 18:02:00.30 ID:SolowZGAO



第2学区 兵器試験場


一方通行へと襲いかかる黒い靄、砂鉄の霧は毒蛇が鎌首をもたげる形に変化する。

ズワッッッ!!

黒い大蛇が一方通行を飲み込み、高速で渦を巻き始める。

一方通行を中心に黒い竜巻へ。

ジャァァァ、ガガッ、ジャァァァ

高速で動く砂鉄がヤスリとなって揉み削りあげる、常人ならば一片も残さずこの世界から消え失せたろう。

さりながら一方通行は常人に非ず。学園都市最強の化け物。

砂鉄を動かす磁力のベクトルを掴まえると美琴から制御を奪う。

内へと働いていた力が外へと向かう。

黒い竜巻が広がる。

ブワッと砂鉄が遠心力がかかり吹き散り、一方通行が姿を表す。

無傷。

傷一つ負っていない。

一方通行「スゲェ、スゲェさすがはlevel5ってところか、アイツらとは段違い、たいしたもンだァ」

一方通行「だがな、オマエじゃ俺に届かねェよ、おンなじlevel5だから何とかなる、とか思ってンじゃねェだろうな?
学園都市にゃ最高位のレベルが5までしかねェから、仕方なく俺はここに甘ンじてるだけなンだっつの」

余裕。同じ超能力者の攻撃であろうと反射の壁を超えさせないだけの自信。

美琴「言ってなさい」

美琴もそれが当然であるかのように受け入れている。美琴に焦る素振りは無い。

一方通行「さァて、次は何を見せてくれるンだァ三下」

美琴に向けて足を踏み出す。

910 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/04(木) 18:02:27.04 ID:SolowZGAO
此処まで
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 21:09:18.14 ID:sFkIFB2O0
乙  初春と打ち止めか  ここからどう展開していくか楽しみだな
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 21:12:37.47 ID:1ROqWmGU0
乙です
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 10:08:15.51 ID:W7M6/PBio
914 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/09(火) 19:49:28.18 ID:SR2UAJ1AO


一方通行の踏み込む足が、背後に爆発を起こさせた。瓦礫が砕け飛び散る。

足にかかる運動量のベクトルを操作。火薬の炸裂で飛ぶ砲弾のように一方通行が美琴に向け、駆ける。

瓦礫や鉄骨を飛ばしても美琴の能力で防がれたのは見たとおり。

一方通行は接近戦を選択。防御障壁を張ってあっても一方通行の反射の前には無意味。

あらゆる力は一方通行の体表面上の反射膜で反射される。

手を伸ばせば防御障壁は意味をなさず、突き抜ける。

触ってしまえば血流であろうが体内電流であろうが弄ることができる。

接近戦と言うと能力が効かない無能力者を思い出すが、あんな規格外な右手が幾つもあるはずがない。

一方通行は目の前に迫る美琴に右手を振り下ろす。

一方通行の前から美琴の姿が消える。回避と同時に電撃。

死角からの攻撃。一方通行の視界外からなら通じると思ったのなら意味を為さない。

もしくは一時的な足止めを狙ったものか。

一方通行は意に介さず美琴の姿を目で追う。

あさっての方向へと反射される電撃。

美琴は瞬時にしては身体能力を超えた距離まで遠く離れていた。

一方通行は方向を変え、地を蹴る。

あと少し、間際のところで美琴の姿が再び消える。

一方通行に愉快そうなひねくれた笑顔が浮かぶ。

915 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/09(火) 19:56:46.23 ID:SR2UAJ1AO


回避されることは織り込み済み。予測していた一方通行には如何に美琴が回避したかが見えた。

回避のための予備動作が無く予兆を読み取れない。回避のスピードと錯覚から美琴が目の前から消えたように見えるだけだ。

美琴は周囲にある構造物の残骸、鉄骨や鉄筋に磁力を伸ばし自らの体を引き寄せるといった人間の身体能力以上のスピードで回避を行っていた。

そして再び一方通行に電撃を放つ。

進入角は調整していたが電撃は美琴へと返る。

美琴の位置が確認出来ていれば反射の向きを調整可能。

一方通行は美琴が電撃を解消する間に脚力のベクトルを操作して三度、突っ込む。

再び接近。

美琴は磁力線に引かれ回避。

一方通行は地を踏む。凄まじい音が鳴り、方向転換して追いかける。

美琴は途中で別の磁力線を手繰り寄せ方向を変える。

一方通行はまた轟音をとどろかせ地を蹴り、追随していく。

一方通行「タネが分かりゃァどーってこたねェなァ、どっちへ逃げて行こうとすっかぐらい分かンだよォォォ。あァァァ、磁力線で引っ張って貰うにしたってなァ、オマエを引き寄せられるぐれェのもンが必要だろうがァ。ここじゃ限られちまうわなァ!」

磁力線を引いても逆に引き寄せてしまうモノでは美琴を移動できない。

916 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/09(火) 20:01:13.09 ID:SR2UAJ1AO


美琴を引き寄せられるモノとなるとまだ残骸とはいえ形を残す構造物のみ。

周囲に目を配ればそれほど多くは残っていない。予測をたてれば追随することも可能。

美琴が逃げ、一方通行が追い縋る。

一方通行「ギャッハハハハハハハッ!」

狂気に彩られた哄笑が響く。

超能力者同士の鬼ごっこ。一方通行は同様なことを妹達〈シスターズ〉と何度も繰り返してきた。鬼が一方的に狩るだけのゲーム。相手が超能力者に変わっても変わることのない一方通行の絶対優位。

美琴が電撃を放っているが目眩ましにもなっていない。

無駄なことを、一方通行にはそうとしか見えない。

かえって正解に美琴へ反射され、打ち消す為の余計な一手間が必要になっている。

一方通行の予測も正確さを増し、方向転換にかかるタイムラグが減り差は縮まる一方。

おそらく次の一手で詰む。

回避するにも右手方向にしか磁力線で引き寄せて貰えるモノがない。死の鬼ごっこもこれで終わり、一方通行はそう読んでいた。

その前に美琴が電撃を放とうとする。

一連の攻防の中、見せてきた行動。改めて対応する必要もないはずだった。

チリッとした感覚が一方通行の首筋にはしる。

痛みの記憶が一方通行の脳に蘇る。

トドメを刺そうとした瞬間に奮われた右手。

917 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/09(火) 20:03:35.93 ID:SR2UAJ1AO


美琴を引き寄せられるモノとなるとまだ残骸とはいえ形を残す構造物のみ。

周囲に目を配ればそれほど多くは残っていない。予測をたてれば追随することも可能。

美琴が逃げ、一方通行が追い縋る。

一方通行「ギャッハハハハハハハッ!」

狂気に彩られた哄笑が響く。

超能力者同士の鬼ごっこ。一方通行は同様なことを妹達〈シスターズ〉と何度も繰り返してきた。鬼が一方的に狩るだけのゲーム。相手が超能力者に変わっても変わることのない一方通行の絶対優位。

美琴が電撃を放っているが目眩ましにもなっていない。

無駄なことを、一方通行にはそうとしか見えない。

かえって正解に美琴へ反射され、打ち消す為の余計な一手間が必要になっている。

一方通行の予測も正確さを増し、方向転換にかかるタイムラグが減り差は縮まる一方。

おそらく次の一手で詰む。

回避するにも右手方向にしか磁力線で引き寄せて貰えるモノがない。死の鬼ごっこもこれで終わり、一方通行はそう読んでいた。

その前に美琴が電撃を放とうとする。

一連の攻防の中、見せてきた行動。改めて対応する必要もないはずだった。

チリッとした感覚が一方通行の首筋にはしる。

痛みの記憶が一方通行の脳に蘇る。

トドメを刺そうとした瞬間に奮われた右手。

918 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/09(火) 20:09:23.84 ID:SR2UAJ1AO


撒き散らすように美琴の電撃が放たれる。

一方通行はバチバチッと鳴り、青白く瞬く空間から咄嗟に逃れる。

運動量、熱量、電気量など一切を問わず、核兵器の攻撃を受けても無傷であるはずの一方通行が回避を選択していた。

美琴「アハッ、アンタはどんな力でも反射してみせるんじゃないの?それとも危機察知能力も優れてたのかしら?」

7メートルほど電撃が放たれた空間から離れた一方通行。それだけ離れても漂うオゾン臭。

イヤミもしくは挑発に聞こえる美琴の声に、

一方通行「ハッ、味なまねすンじゃねェか。酸素を電気分解でオゾンに変換、酸欠にしようってか。電撃の無駄撃ちもこの為の布石かよ、あァァァ?」

美琴「布石は布石でもちょっと違うわよ」

答える美琴の周囲に瓦礫が浮き上がっている。

一方通行「オイオイ、さっきと同じことしたって無駄だぜェ、学習しませンでしたかァ?」

磁力に引かれた瓦礫が一方通行に向かって投げつけられる。

同じようで違う。先程は多方向から圧殺しようとした。コンクリート片を磁力の制御下においていた。

今は美琴から一方通行に向けてほぼ正面からの一方向。瓦礫も一つを除き制御下に納めず投げっぱなし。

そんなものは当然、一方通行の反射に阻まれ美琴へと叩き返される。

硬い壁にボールをぶつけて跳ね返されるのではない。

ただの硬い壁なら耐久力以上の力を与えれば打ち破ることも可能。しかし一方通行の壁はベクトル操作という能力で向きを強制的に変えられてしまう。

どんなにスピードを上げようが質量のあるものを、例え連続してぶつけようが一方通行の反射の壁を超えることは無い。

反対に強い力であればある程、一方通行に力を向けた者への凶器となる。

ほとんどの瓦礫が反射により美琴へと向かい、

919 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/09(火) 20:11:05.29 ID:SR2UAJ1AO



「がはッ!」

瓦礫が当たる。

920 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/09(火) 20:13:18.53 ID:SR2UAJ1AO



痛撃。

後ろへと打ち倒れる。

痛みが全身を襲う。

921 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/09(火) 20:15:01.08 ID:SR2UAJ1AO



「ゴホッ」

胸の当たりに受けた衝撃に起き上がろうとすると呼気が抜けた。

膝をつき体を起こす。

922 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/09(火) 20:21:27.30 ID:SR2UAJ1AO



跪いたまま、

一方通行「何をしやがったァァァッ!!!」

倒れたのは一方通行。

胸に瓦礫を受けたのは一方通行。

あの右手以来の痛みを感じたのは一方通行。

何を間違えたのか、反射の向きは調整して超電磁砲へと向けていたはず、一方通行は理解が追いつかない。

反射された瓦礫の全てを電磁障壁で逸らし、無傷のまま立つ美琴は

美琴「バッカじゃないの?なんの策もなく同じことすると思ってんの?」

美琴「危機察知能力はさっきので見たから、これも気づかれるかなー、って思ってたけどさ」

美琴「アンタも自分の能力を過信しすぎよ……アンタの反射も絶対ってわけじゃないって自分で分かんない?」

一方通行は膝まずいた状態から立ち上がる。

美琴「反射の向きをアンタは私に自動設定し直してるわよね、電撃で何度も試したからわかるわよ」

一方通行「演算が狂ってたとでも言いてェのか、そんな訳が……」

美琴「狂ってないわよ、どちらかと言うと反射の性質上の問題ね」

美琴「アンタの反射膜に触れたモノ全て私のいる方向へ反射している訳だから……じゃあ反射膜に触れたと同時に私が私のいる方向へ引き戻したらどうなるか、分かる?」

923 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/09(火) 20:28:13.58 ID:SR2UAJ1AO


ナゾナゾのような話し。

普段の反射の自動設定は力の向きを180度、来た方向へ返すだけになっている。

敵の位置を確認している場合は敵の方向へと、今回は美琴へと。

一方通行は反射膜に触れた力が逆に離れていく力などとは考えたことがなかった。

反射、力の方向を変える性質上、引き離れる力は引き戻してしまう。

その場合、自分から力を受けに行っているに等しい。

但し、それには微細な角度の調整が必要になる。反射する方向と違えば引き戻されることなく、一方通行にダメージを与えきれない。

本来、一方通行の思考、演算式を読み取れなければ不可能。

それを美琴は反射の向きを自分に向けることで限定。

多数の瓦礫の中に一つだけ制御下においた瓦礫を混ぜた。

反射膜に触れた瞬間に美琴が自分の方向へと引き寄せる、というのも容易いことではない。

美琴が成したことは反射作用を磁力で反射膜に押さえつける、コンクリート片で試したこと、反射膜に触れた状態を維持し引き寄せる、それまでに時間がかかれば瓦礫自体がかかる力に耐えきれない。

コンクリート片での攻撃も無駄撃ちに思えた電撃も全ては伏線。

美琴は一方通行に打撃を与えた二人目になった。

しかし、これで終わりではない。

何を成さねばならないのか?

絶対能力進化実験を終わらせ、妹達を解放するには。

924 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/09(火) 20:32:05.76 ID:SR2UAJ1AO


美琴が一方通行に勝利したとしてもlevel5同士。油断や偶然といった修正可能の誤差の範囲として処理されてしまう。

絶対能力へと進化できるのは一方通行のみ。

一方通行の存在を消してしまえば確かに終わる。

殺してしまいたい激情は美琴にもある。しかし、それは美琴にはできない。それ以上に大切な誓いがある。

『何ひとつ失う事なくみんなで笑って帰る』

不殺を貫く美琴。

例え1万人の妹達を殺戮した一方通行とはいえ殺してしまえば何かを失う。笑って帰ることなどできない。

それに美琴に殺せる程、甘い相手ではない、学園都市第一位『一方通行〈アクセラレーター〉』は。

笑っている。

一方通行「クックククカハッカカカッカカカカハッ、あァそうかい勉強になるぜ。全力で戦うなンてこたァあの無能力者以外いなかったもンなァ。アレも能力をぶつけ合うとはチーッと違ったかァ。ハッ全力でやり合えるヤツがいるなンざ、思ってもみなかったぜェ」

誰も並び立つ者などいない、そう思っていたのに全力で戦える相手がいる。

自らのウィークポイントをさらけ出されながら歓喜に打ち震えている一方通行。

美琴は妹達を救うためこの者を成長させなければならない。

925 : ◆evJdM4Cpzc [sage]:2012/10/09(火) 20:33:41.42 ID:SR2UAJ1AO
此処まで

またやっちまった!
ゴメンナサイ
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 22:27:01.90 ID:V9o4NORZ0
ドンマイドンマイ
それより続きをはよ
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 22:28:40.93 ID:gdRTnAhy0
ドンマイw
みんなが無事で幸せになれるといいな
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 23:26:16.62 ID:AAXfxvoV0
乙 美琴センセー、どうか無事に乗り切ってくれ!
929 : ◆evJdM4Cpzc [sage]:2012/10/12(金) 00:47:36.18 ID:a3dfU3tAO
新約5巻面白かったよォ

明日21時には投下予定
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/12(金) 19:05:19.23 ID:vU3jdV4N0
まってる
931 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:00:16.55 ID:a3dfU3tAO


一方通行「しっかしよォ、今ので決めちまわなかったのは、オマエの失敗じゃねェのかァ?」

そう反射の向きをランダムに設定し直されたら、一方通行の思考、演算式を読み取れない限り一度きりの手で終わる。

手の込んだ奇手であり、奇襲であり、最大のチャンスだった。一方通行を破るだけならば。

更に解説してあげるなど愚の骨頂。

それが分かりながらもここで終わらすことは出来ない。超えて貰わなくては困る。

『樹形図の設計者』がはじき出した185手、128回の繰り返しの中であるはずの一手。

一方通行を苦戦させる一手を示したにすぎない。

統括理事会理事長を名乗る電話の相手の思惑、それが何かは分からない。美琴との対戦でlevel6に届くとでも思っているのか、『魔神』の一辺を見た美琴にはまだ届くとも思えない。

目指す乗り越えるlevel6の壁には遠い。

ただ実験の中止、それには確実に繋がる。今でも役不足であると『樹形図の設計者』には判断されているのだ。

妹達を対象として利用した実験を完全に中止させるには一方通行をより一層成長させる。それにより、妹達にどんな手を施そうとも、レベルを上げる対象として妹達は役不足であると周知させる。

それにはlevel6に届かなくとも、目に見えて分かるほどの成長を見させなければならない。

今ではまだ足りない。

932 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:06:27.38 ID:a3dfU3tAO


一方通行は腑に落ちない。違和感と言って良いのか。

反射の自動設定、その隙を突き、決めようとすれば決められた。ダメージは有るにしても戦闘続行が不可能とまでではない。

それに、実験データで知り得た第三位『超電磁砲』とは比べものにならない、それだけの力を目の前の妹達〈シスターズ〉と同じ顔をした少女は見せている。

一方通行「あァ、『樹形図の設計者』の予測演算じゃ、185手で終わるンじゃなかったのかァ、到底終わりそうにも見えねェンだが、実験データが間違ってたのか?」

不審に思っていても笑みが浮かぶ。

笑いの質が違う。格下と見た嘲りとは違う。笑みを浮かべていることに自分で気づいていないのかもしれない。そんな自然な歓喜の笑みで一方通行は問う。

美琴「ああ、あれね1年前のデータをそのまま当てはめないでよね、アンタだって1万回も実験を繰り返してくれちゃって前と同じだと思ってんのっ!」

一方通行「そりゃそうか」

1万人の命を散らしておいて1年前と同じなら、妹達〈シスターズ〉に申し訳ない、以前なら思いもしなかったことを思う。

level5とはいえ瞬殺できるぐらいには考えていた。不審の根元はそこ。

美琴の話は続く。

美琴「私を元にした実験プラン。185手で私は死ぬ、それを128回繰り返せばアンタはlevel6? フザケんじゃないわよ!」

つい、実験に対する怒りが出てしまう。

美琴「妹達と実験を繰り返してアンタは何回目? 折り返しを過ぎたから65回ぐらいのつもり? 」

美琴と妹達、基準となる力の出発点が違う。

美琴「違うわよね、ようやく妹達もアンタに対応できるようになったところ、そこからひとっ飛びしたからってせいぜい30から40回目ぐらい?」

20000回を128回で割り振った数字が同等と考えてはいけない。

933 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:11:06.38 ID:a3dfU3tAO


一方通行「それが、どーした?」

美琴「そのアンタに100回以上の経験値を持った私が現れたら?」

風が舞う。

一方通行「面白ェな、面白ェじゃねェか」

美琴「私自身が変わらない限り、戦場を変えようと一緒のことよ、計画当初は大きな差があった。それは事実。アンタが進化するに従い私も進化する。戦闘経験を元にね」

二人をグルッと囲み風の渦が生まれる。

それ以上は言われなくても分かる。戦闘経験で進化するのは一方通行だけでない。

グラフにすれば、一方通行は進化を示す右肩上がりの成長曲線。美琴もまた追随して成長曲線を描く、一方通行以上に。

でなければ差は開くばかりで一方通行の進化を促す材料にならない。

30回目の一方通行と100回目の美琴がぶつかればどうなるかなど分かりはしない。

一方通行「オマエはこの1年で俺と100回を超える戦闘と同等の経験をして来たって言いてェのか?」

正確に美琴が100回の実験を経たレベルにあるかも分かりはしない。

風の渦が激しく舞い豪風へと変わる。

大気を掌握。

あからさまな一方通行に対して、美琴は電磁波を静かに浸透させていく、世界に。世界を掌握していく。

level5対level5。その戦いの真髄は如何に世界を認識し掌握、制御下におくか。

どれほど自らの能力で世界に影響を及ぼし支配できるか。

相手の掌握する世界から如何に制御を奪い穫れるかの奪い合い。

美琴と一方通行の戦いは序盤戦が終わり、

level5、その真髄に迫る戦いに変わる。

934 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:17:06.50 ID:a3dfU3tAO



第7学区 建設途中のビル


絹旗「無謀、無謀、超無謀です、浜面ァーッ!」

絹旗の声に構わず、浜面は路地の角を勢い良く曲がる。

場所を知っている、だけと思えぬ通い慣れた道を走るように。

すぐそこにあった建設現場の片側だけ開いているゲートを浜面は突っ切る。

無謀なことは分かっている。

浜面(『敵』が何者かもわかんねえんだ。考えたって始まらねえ)

工事現場の敷地内を見渡す。

以前に見た景色と変わらない風景。

本当ならとっくの昔に完成していた筈のビル。鉄骨の骨組みだけが組み上がり、巨大なジャングルジムのような状態。

春先に施工主のトラブルから工事がストップしたまま放置されていた。

噂によれば元々の施工主が資金繰りに困り途中で転売、仕様の変更などで交渉が長引いているらしい。

施工業者もここまで長引くとは思わず、建設資材、重機が置かれたままになっていた。

見渡した範囲ではシートが被さった資材、クレーン、ちょっとした家ぐらいの大きさがあるプレハブの現場事務所、放送用のスピーカーなどなどが変わらず鎮座している。

『敵』も『アイテム』もここに誘い込もう、引き込もうとした。実は浜面が所属しているスキルアウトも同じ。

無能力者狩りを行う能力者との抗争。激化する一方の抗争の中で能力者に対向するには武装し人数を揃える必要があった。

935 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:22:46.10 ID:a3dfU3tAO


無能力者狩りを行う能力者はlevel3以上が多数を占める。

それと意外と、と言うべきか能力持ちの不良は不良としての矜持があるのか無能力者狩りに加わることは少ない。どちらかと言えば普通に学校に行っているエリート然とした連中の方が多い。

浜面はそれで何の不満があるのかと思うが選民意識や能力の向上の行き止まり、そんなモノを無能力者にぶつけてくる。

武装を施していても1対1はよほどの実力者でもない限り、それこそ無謀。

徒党を組まれたら目も当てられない。

尚且つ、表で暴れたらスキルアウトというだけでスキルアウトが警備員にしょっぴかれ、無能力者狩りにはお咎め無し。エリート然とした無能力者狩りが悪党だと思わない。

そこでスキルアウトが考えたのが無能力者狩りを行う能力者に接触したら仲間に連絡を取り、予め決めた人目に付きにくい場所へ引き込む。

その場所には最初から何人かたむろしておき、戦力差を人数で埋める。

話が長くなったが、この工事現場もその目的に決められていた場所の一つ。だから絹旗達に言われた際、すぐに思い出すことができた。

先導されずに先頭を切って辿り着いた。

勿論、無能力者狩りは『アイテム』に叩き潰され、今ではここにたむろしているスキルアウトはいない。

ただ工事が再開されるまで、まだ利用価値があるかと浜面達もそのままにしておいた。

浜面が見渡す光景の中、違う箇所は倒れている少女とそこから離れて立っているブレザータイプの制服を着崩しているホスト風の男。

その男に注意を払いながら浜面達は倒れている少女、フレンダに駆け寄る。

浜面「フレンダ!フレンダ!生きてるか!」

浜面の背後で絹旗達もフレンダに呼びかける。

垣根「あー、まだ生きてるぜ、そいつ」

936 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:25:53.22 ID:a3dfU3tAO


垣根「まー、大したもんだ。さすがは『アイテム』の一員と言ったところか、闇に潜んでいる人間は違うわな」

気軽に、追い詰めた獲物に、

垣根「トドメ、討っといても良かったんだが、テメェらが三文芝居してっから、生かしておいてやった」

フレンダの傍らに屈み込む浜面に言い放つ。

垣根「だがよ、生きてるには生きてっけど、二度と自分の足じゃ立ち上がれねーだろうけどな、良くて脊髄を損傷している」

その言葉に浜面はビクッと震え、フレンダに視線を落とす。

絹旗(それぐらいなら)

垣根「もう、暗部の『仕事』なんかできねーし、生きてても仕方ねぇんじゃね?」

浜面「お前がやったのかッ!」

憤り。

垣根「他に誰がいるってんだ、無能力者?」

絹旗は浜面とフレンダを守るため垣根との狭間に立つ。

垣根「まあバカだな、せっかくそいつが知らせてんのにわざわざ死にに来るなんてよ?」

浜面「ああ、バカかもしんねー、どこのどいつか知んねえが、テメェも闇に潜んでる人間か!テメェらにしてみりゃ、仲間も取り替えの効く道具の一つなんだろ。そんなヤツらから見たらバカなんだろな、でもな」

浜面「バカだから見捨てらんねーんだよ。俺なんかのために命張ってくれるヤツを、友達をな!」

振り向き視線を垣根に合わせ叫ぶ。

垣根「熱いな、バカと言って悪かった。だからか俺が出張るハメになったのは、無能力者にlevel5が倒されたってな、放っときゃいいんだ。そんなんで粋がってりゃ、どっかで勝手にすっ転ぶ」

937 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:32:11.54 ID:a3dfU3tAO


垣根「放っとけなかったんだろな、その熱さが」

垣根「熱さってヤツは人を惹きつける、暗闇に灯る明かりのようにな。それが怖いんだろ、上は」

助けられそうもない仲間を救いに来るようなヤツはバカだ。なのに敵対した筈の『アイテム』さえこのバカに協力しようとしている。

人を引き付ける力を持つ者は流れを変える因子に成り得る。

計画通りの未来を変え得る因子。

プラン、メインルートの他にも無数のサブルートが用意されている。メインルートが実行不可になりおおせてもすぐにサブルートがメインルートに置き換わる。

ルートが潰れるときはバグが起きたとき。

イレギュラーな因子がバグを引き起こす。そのためプランの完成を急ぐならイレギュラーとなる因子は小さいうちに駆除するのが一番となる。

垣根「……どー育つか見てみたい気もするが」

プランのメインと成り、使われるのではなく主導する立場に成る。

世界を変える存在となる、垣根の野心。

垣根が望む世界。

その手段としてプランを乗っ取る。

プランの完成を遅らす、不確定要素をもたらす因子は垣根にしても邪魔。

垣根「俺の都合から言っても邪魔だな」

空気が変わる。

垣根と浜面達の間に張られていた緊迫した空気が殺戮を誘うものに変わる。

空気が変わったことを悟った絹旗が駆ける。

絹旗「あァァァァァァァーッ!!!!」

938 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:36:08.87 ID:a3dfU3tAO


突如、暴風が薙ぐ。

爆発のような風が絹旗を吹き飛ばす。

ドッガシャッ!シャッ!!ガシャッ!

絹旗の小さな体は資材の山に突っ込む。

浜面「絹旗ッ!!!!」

垣根「大人しくテメェが死んでくれたら他に手ぇ出すつもりはねえ、『アイテム』を潰せとまでは言われてねえからな」

垣根「大人しく、と言ってもツレエだろうが、上からは死に方までリクエストされててな」

垣根「何だと思う?」

垣根の背後に白い翼が広がる。

まるで天使をイメージする純白の翼。

天使と言っても愛や平和を象った天使ではない。

神罰を告げる死の天使。

939 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:37:48.58 ID:a3dfU3tAO



垣根「撲殺だ」


940 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:40:14.56 ID:a3dfU3tAO


垣根「殴り合いの末、簡単に死んだことにしたいんだろな」

浜面「ホスト風天使のコスプレ野郎に殴り殺されろってか! ゴメンだなッ!!」

浜面が答えるとともに背後から鉄骨が回転しながら。

浜面「うをっ?」

浜面の頭上を飛びすぎ垣根へ向かう。

重量を感じさせる風切り音が唸る。

その重量、投げられた力、威力を容易く垣根の白い翼が軽く叩き落とす。

鉄骨は地面に打ち付けられ跳ねる。

グワッララッランンン!

垣根「ほう、今ので生きてんのか。肉体強化か?」

垣根の目線の先では絹旗が鉄骨を放り投げたあとの姿勢で立っていた。

絹旗「浜面!私が押さえます。フレンダを連れて滝壺さんと一緒にっ!」

垣根「テメェじゃ無理だ」

浜面がフレンダの首に左手を回し、右手で腰のあたりを押さえ抱え上げようとする。

向かう先、ゲートの方を見ると頭にヘッドギアを装着した少年が立ちふさがっていた。

ヘッドギアは普通に見かけるタイプではない。土星の輪の形で頭を一周している。360度にプラグが挿してあり、無数のケーブルがヘッドギアから伸びて腰のあたり、何かの機械に繋がっている。

明らかに普通の装いではない。通行人がふらりと覗いている偶然とは考えられない。

恐らくは浜面達を当初から追跡していた三人いた『敵』の一人。

941 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:43:53.13 ID:a3dfU3tAO


垣根「そこ、逃げられねえように押さえとけ」

「ッス」

ゲートに居るヘッドギアの少年が応える。

浜面は屈み込みひざを突いたまま左手でフレンダを支えたまま動けない。

絹旗「くッ!」

絹旗は浜面達の前に出ようと駆け出す。

すると

ゴン!!

という衝撃に絹旗の視界がブレる。

狙撃。角度からして隣のビルの屋上から上から下へ打ち据えるような射撃。

絹旗の身体が揺れ動く。

それほど距離があるわけでも無いのに射撃の音がしない。

2発、3発と弾が当たる。

窒素装甲を撃ち抜けてはないが衝撃はある。絹旗の軽い身体を後ろに持っていくだけの力はあった。動きを止められる。

窒素装甲に阻まれた弾がポトッと土の地面に落ちる。半分ひしゃげたパチンコの玉。

能力名まで分からないが狙撃を可能にする能力。

撲殺がリクエストと言っても絹旗が浜面に近づけば遠慮してくれるというのは希望的観測だ。流れ弾が浜面に当たるなど躊躇してはくれない。どのみち『敵』は浜面を殺すのが目的で来ているのだ。

垣根「おっ、肉体強化じゃなかったか……元は大気制御系の能力っぽいな。自分の周囲に能力で作った防御フィールドを自動展開させてるのか」

垣根「はん、分かった。『暗闇の五月計画』の残骸か。難儀だよな。一方通行の演算パターンを参考に、各能力者の『自分だけの現実』を最適化しようとかって内容だっけか」

浜面「なっ!」

硬く丸みを帯びた物を腰に回していた右の手のひらに押し付けられる。

浜面「一方通行の」

慌てて、浜面は言い添える。

942 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:47:01.99 ID:a3dfU3tAO


垣根「それだけしてテメェが身に付けられたのが自動防御能力だけ。惨めだな」

流石に何度もヒットされるのは鬱陶しい、窒素装甲を撃ち抜け無いにしても衝撃で動きを止められる。

絹旗「別に」

狙撃を躱しながら、

絹旗「『プロデュース』の被験者に比べれば超幸せですよ。彼ら、『自分だけの現実』は脳のどこに宿るのかを調べるために、クリスマスケーキみたいに脳みそを切り分けられたそうですし」

泰然と垣根に答えた。

垣根「そうかい」

絹旗「ところで、それを知っているあなたは誰ですか?」

何となく予感はする。

垣根「その女には名乗ったんだったな。良いか」

麦野が居ないとはいえ、『アイテム』を圧倒するだけの『敵』。予想通りなら麦野がいても圧倒される。

垣根「『スクール』の垣根帝督だ」

絹旗「……やはり、第二位でしたか」

予感が当たったからと喜ぶこともできない。

危地が窮地に変わっただけ。

浜面「第二位ってlevel5の?」

垣根「そうだ。『未元物質〈ダークマター〉』を前にして生き残る術なんかねえぞ。楽に死んどけ、それとも無駄な抵抗して、苦しみながら死ぬか?」

943 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:50:56.65 ID:a3dfU3tAO


飛んで来る鉄骨を軽く叩き落とした翼。

身を守る絹旗のような防御能力もない浜面では一撃で、垣根が言うように痛みを感じる暇もなく楽に死ねるだろう。

浜面(この半月でlevel5の上位4人をコンプリートかよ……アレを使うにしてもこの状態じゃ、使えたとして絹旗達がいると。クソッどうする?)

フレンダを抱えたまま、あの翼から逃れられるか自問する。

渡された手のひらに感じる物で情勢を変える時間を作らなければならない。

狙撃が邪魔をして絹旗は前に出れない。

垣根「て、ことで終いにしようか、その女放しとかねえと今度こそ死んじまうぞ?」

フレンダを放す猶予をくれるのか、翼がゆっくりと腕のように振りかぶっていく。

一撃必死。

フレンダを抱えたまま後ずさる。

ピンが抜かれ浜面はレバーを握る。

その浜面の横を通り過ぎる人影。

浜面の背後に控えていた滝壺がここに来て浜面の前面に出る。

浜面「って、滝壺?」

訝しく問う、浜面に、

滝壺「大丈夫。私は大能力者だから。無能力者のはまづらを、きっと守ってみせる」

滝壺の手にはシャープペンの替え芯のようなケースが握られていた。

944 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 21:56:16.12 ID:a3dfU3tAO


浜面「無茶すんなーッ!」

滝壺を引き留める声を上げ、右手のレバーを緩め垣根に向け放り投げる。

手榴弾。

放り投げた手をそのまま伸ばし滝壺を引き倒す。

浜面は滝壺も抱え込み地に伏せる。

非殺傷用のスタングレネード。

閃光と音響。

そして爆煙。視界を奪う。

爆煙の中、

浜面「立てるかフレンダ!」

フレンダ「無理、無理、無理、第二位が脊髄損傷って言ってたのはホント!一瞬死んでた!」

浜面は途中でフレンダが手榴弾を渡してきたので、実はそんなに酷い傷を負ってなかったと思っていたのだが、

浜面「げっ、ホントだったのかよ、そのワリには元気そうじゃねえか、って一瞬死んでたってどーいうことよっ!?」

フレンダ「私の能力はlevel4の肉体再生。真っ二つにされるとか頭を潰されて息の根を止められない限り、なんとかなるって訳よ……あれ? 死んでなかったのかな?」

浜面はフレンダがドジッ娘でミスをしながらも暗部で生き抜き、また麦野にお仕置きされてもピンピンしている、と前に話しを聞いて不思議に思っていたが、ようやくその理由が分かった。

が、

浜面「死んでなかったんじゃん!!!!」

945 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/12(金) 22:01:32.97 ID:a3dfU3tAO


フレンダ「それはどうでもいいって訳よ。スタングレネードの効果なんかすぐきれるから早く行動しないとっ!」

浜面「わかってる」

浜面はフレンダを抱え上げると

浜面「滝壺、絹旗ッ! こっちだ!!」

二人に声をかけ、ヘッドギアがいるゲートではなく、現場事務所へと走る。

滝壺、絹旗がそれに続く。

その背後、爆煙が晴れ切らぬ煙りの中から、

垣根「クソがッ!ムカついた。あー、ムカついたぜ。優しくしてりゃ、つけあがりやがって、ナメてやがるな。楽に死なせてやろうかと思ったが、許さねえぞ。絶望を味わせて」

垣根「愉快な死体にしてやる」

姿が見えぬだけに余計、背筋が凍るようなセリフが聞こえる。

しかし、浜面が思ったのは

浜面(ホントにそのフレーズ好きだな、level5。4人会ったうち聞いてないの第三位だけだぞ??それに……ひねりがない)

であった。

さすがに恐ろしいセリフでも3人目となると慣れてくる。

946 : ◆evJdM4Cpzc [sage]:2012/10/12(金) 22:03:08.66 ID:a3dfU3tAO
此処まで

生存フラグでちょい変更
947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/12(金) 22:06:30.13 ID:jzlNIP0H0
乙!
次回も楽しみにしてます
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/12(金) 22:23:23.51 ID:vU3jdV4N0
乙  美琴サイドと浜面サイド、どっちも気になるし面白い
949 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/13(土) 20:53:36.77 ID:MYJRF/zwo
おつおつ
どちらも緊迫していて続き気になる!
950 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 14:09:31.75 ID:4410W4WAO


浜面「絹旗ッ!ここ破ってくれ!」

浜面が指し示すのは現場事務所の1階、備品置き場の扉。

絹旗「こんなところに逃げても」

浜面「いいから、早く」

絹旗「もうッ!超浜面ッ!」

引き戸になっている扉を力一杯叩く。

ドガッ!


小柄な少女が殴ったにしては音が響き、あっさりと引き戸はへし折れ入り口が開く。

浜面「フレンダを頼む!」

絹旗にフレンダを渡すと浜面は中に入っていく。

絹旗「ちょっ、だから浜面!どーするつもりなんですかーッ!?」

フレンダを担いだ絹旗も中に入ると浜面は中でごそごそしていた。

浜面「よしっ!」

絹旗「何がよしっ、ですか超浜面はっ!……えっ?」

浜面が手にしていた物は

銃器であることは間違いないが、かなりいびつな印象。銃身が太く砲身と呼びたくなる。バカでかいドラムのような弾倉。

有り体に言えばリボルバー方式で連射可能にしたグレネードランチャーを作ってみたと言うところ。

しかし、それは違う。絹旗はそれがなんであるか知っていた。面白兵器どころではない。

対隔壁用ショットガン。

絹旗「なんでそんな物が……」

まだ何かごそごそしている浜面が、

浜面「回ってくんだよ、偶にヤバいもんが」

それは今年、警備員に配備され始めた装備品。

強力過ぎる火力、使いどころが難しく実際に使用されたケースは昨年、これの試作品があの幻想御手事件に使われただけと聞いている。

ショットガンの銃弾、散弾の一発一発が戦車の装甲すら撃ち抜く。至近距離からならば数発で核シェルターの扉でさえも大穴を開けられる。

犯罪者が籠城した場合、隔壁などを短時間でぶち抜き制圧するために開発された特殊な大型銃器で、スキルアウトの手にあって良い物ではない。

951 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 14:20:03.71 ID:4410W4WAO


浜面「試したいんだろな」

実験場ではなく実戦で、どれだけ活用出来るかを。試験ではカタログスペックを確認するだけ、有用な活用法は実戦から編み出される。

そのような物が裏のルートを通して抗争が起こり易い、何かあっても死んでくれても良いスキルアウトに回ってくる。アレもその一つだった。

浜面達スキルアウトでもこんな大威力な物は持て余す。

オマケにこの大きさ。取り回しが悪く駆動鎧でも無ければ自在に扱えない。持ち運ぶにも不便で無能力者狩りとの決戦の日にも諦めるしかなかった。

使い切れないのが本音でお蔵入りになっていたが、押し出しは抜群に効く。そこでここに無能力者狩りを誘い込んだ際には脅かしに使えるかと隠し置かれていた。

ここに来て役に立つとは思わなかったが。

絹旗「でも第二位にそれが通じるとでも?」

『未元物質〈ダークマター〉』と言っていたが、あの白い翼を見てもどんな能力なのか皆目見当がつかない。

単純な火力重視の兵器でlevel5を倒せるかと言うと疑問も残る。何と言っても軍隊と戦える連中なのだ。

level5の麦野と対決したことがある浜面にはそれが身にしみて、分かりすぎるほど分かっていた。

更に、麦野より上の第二位。

火力でいえば対隔壁用ショットガンより麦野の『原子崩し<メルトダウナー>』の方が凄まじい。

その麦野より上にいる第二位に対隔壁用ショットガンで対抗できると考えるには楽天的ではないか。

952 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 14:22:20.76 ID:4410W4WAO



浜面「さあな、コイツを使う目的は別だ。上から撃って来る奴とゲートのヘッドギア。そいつらを排除すんのに使う。上手く、その二人を排除できたら」
953 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 14:24:12.13 ID:4410W4WAO



浜面「絹旗、フレンダ」
954 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 14:25:32.21 ID:4410W4WAO



浜面「お前らは逃げてくれ」
955 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 14:27:17.47 ID:4410W4WAO



浜面「第二位とはサシで勝負をつける」
956 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 14:49:56.73 ID:4410W4WAO


絹旗「何を言ってんですか浜面ッ!」

フレンダ「そ、そうよ無能力者の浜面が超能力者の第二位にサシでって自殺行為な訳よ」

絹旗「麦野に勝ったからって超いい気になってるんじゃないです!」

浜面「違う」

浜面は何か放送用の、それにしては大きい機材に電源を入れていた。

浜面「これは賭なんだ。ここから逃げ出すチャンスぐらいはお前らが作ってくれるかも知んねえ。その時はお前らだってタダじゃ済まねえはずだ。そのあと、あの第二位に襲われたらお終いだ。ここで賭でもいいからケリをつけるしかねえんだ」

浜面「その賭を成立させるには能力者は邪魔なんだよ」

絹旗「何ですかッ!それはッ!?どういう意味ですかッ???」

浜面「それはだな……おい?その、たっ滝壺は?」

一緒に現場事務所まで来ていたはずの滝壺の姿が見えない。作業に没頭して気が付いてなかった。

絹旗フレンダ「えっ?」

絹旗は振り返る。後ろにいると思っていた。一緒に備品置き場に入ったと思っていた。

絹旗「た、た滝壺さんっ!?」

今気づいたところで遅い。

準備は終わった。遠隔操作のスイッチを握り締め、

浜面「クソッ!」

自分の為に誰かを犠牲にしたくない。

浜面は外へと向かう。

957 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 14:56:16.32 ID:4410W4WAO


滝壺は垣根と対峙していた。学園都市 第二位の超能力者と単独で。

フレンダから渡され浜面が放り投げた学園都市暗部特製のスタングレネードは閃光、音響そして爆煙で相手の行動力を奪う物。

爆煙は煙幕であり、通常のケムリとは違う。閃光で目に支障をきたすことができなくても、視界を奪うため長く滞留するように工夫されている代物だった。

浜面とフレンダを抱えた絹旗が現場事務所に入り、滝壺も入ろうとするその前に垣根がいる背後を確認した。

そこでは煙幕が押しのけられていた。

表現がおかしい。普通なら吹き散らすなどと言うべきだ。それが白い翼が煙りの粒子を捉え、散らさず集め背後へ押しのけ空間を開いていく。

そして開かれた空間には垣根の精々無駄な抵抗をしてみろ、という残忍な笑みが見える。

わざわざ袋小路に入るような現場事務所を浜面が隠れ場所に選ぶ理由、浜面には何か考えがある。そう思った滝壺は時間を稼ぐため、浜面を守るため単独での対峙を選択した。

シャープペンの替え芯のようなケースから『体晶』を口にする。

ズンッ!と体に負荷がかかる。

脳の中で視界では得られない映像が映し出される。能力者が纏うAIM拡散力場がクリアに見える。

958 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 15:01:01.53 ID:4410W4WAO


滝壺に直接的な攻撃能力はない。

滝壺の『アイテム』での役割は能力者の探知、探索役。

滝壺の能力名は『能力追跡<AIMストーカー>』。AIM拡散力場を視ることができ、一度記録したAIM拡散力場を太陽系外であろうと追跡、補足出来る。

『アイテム』の仕事上、その能力の利便性は大。攻撃の主体はlevel5の麦野にあっても『アイテム』の要は滝壺であると言われる所以。

問題は今行ったように意図的に拒絶反応を起こさせ能力を暴走状態にする為の薬品、『体晶』を服用する必要がある。

暗部の中でも『体晶』は危険とされ忌避されている。

基本的には劇薬に分類され余りにも身体への負担が大きい。服用しても能力が強化される実例は僅か。滝壺はその僅かな実例の一人だった。

そうした危険を分かりながら滝壺は『体晶』を使用する。自分の居場所が『アイテム』にしかないからという理由で。

仲間を守りたいから、浜面を守りたいから。

いずれ体晶に蝕られ長くは無いのは感じている。

垣根のAIM拡散力場を捉える。

一度はやったこと。キレて仲間ごと『原子崩し<メルトダウナー>』で撃とうとする麦野を引き止めるために使用した。

他者のAIM拡散力場に干渉して能力の制御を奪う。

麦野には最終的に振り切られてしまったが要領を得るキッカケになった。

それをこの学園都市 第二位 垣根帝督に試す。

959 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 15:07:10.79 ID:4410W4WAO


他者のAIM拡散力場に干渉能力を奪う。言うは易し、行うは難し。

level3以下なら簡単に能力を乗っ取れそうな感触はある。

しかし相手はlevel5、そのまた第二位。

『自分だけの現実』の確立度が違う。

能力を乗っ取るにはAIM拡散力場に干渉、そこから能力者が持つ『自分だけの現実』に手を伸ばし滝壺の思うがままに動かせるようにしなければならない。

コンピューターにネットワークからハッキングを仕掛け、ハッカーが思うがままにするのと同じ。

ハッキングを受けるコンピューターの難易度が高ければ高いほど難しくなるのも同じ。

最高位近くにある垣根の頭脳、『自分だけの現実』。

垣根「面白いことするな、AIM拡散力場から干渉して俺の『未元物質<ダークマター>』を乗っ取ろうとしてんのか?」

余裕。

初の体験で有ろうに、その自信。強固な『自分だけの現実』に精神力。

揺り動かせても手を差し入れるまでいかない。

幸いなのはAIM拡散力場に干渉された状態で能力を使用する愚を分かっているのか、直接攻撃に出てこないこと。

傍目にはただ睨み合っているだけに見える。

乗っ取るまでは無理、ならばAIM拡散力場を乱れさせるだけ乱れさせる。

浜面が逆襲に出たとき、少しでも有利になるように、麦野と対決したときと同様に麦野が暴走してしまったように。

睨み合い、見えない攻防が暫く続く。

そして滝壺の体晶に蝕まれた身体に限界が来る。

身体から力が抜ける。力が入らない。高熱を発したように頭が朦朧とし始める。

960 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 15:12:27.22 ID:4410W4WAO


浜面「滝壺ッ!」

現場事務所から浜面が飛び出す。

その声に役割を果たし安心したのか、くたーっと滝壺は崩れ落ちていく。

浜面「くそ、くそっ、くそッ!ふざけやがって!!」

浜面「この、くそったれがァーーーッ!!!!」

垣根に向け、対隔壁用ショットガンの引き金を引く。

ゴゥンッ!!

浜面は反動によろける。

威力に比例して反動も強い。

マニュアルでは射撃姿勢を整えてない射撃は厳禁。でなければ反動で目標物を外したうえに大怪我を負いかけないとされている。

駆動鎧でも無ければやはり自在に使いこなせない。

今ので肩が抜けてもおかしくなかった。

対する垣根は、

垣根「チーッ!」

余裕の表情を崩す。

一瞬見えただけで浜面が持っている銃器が何であるかわかった。

近距離なら核シェルターの扉であっても撃ち抜く 特殊な銃弾。

そんな物でも

物理法則さえねじ曲げる『未元物質<ダークマター>』、通常なら防げる。

ただ今はAIM拡散力場を乱されたばかり、思うように正常に働いてくれるか分からない。

余裕を持ちすぎた。対隔壁用ショットガンなど持ち出されると思ってもみてなかった油断だ。

翼は動いてくれたが演算通りではない。

ゴッ!

強度が足らず羽根が飛び散る。

垣根は連射されては厄介、狙いをつけにくい鉄骨で出来たジャングルジムに入り込む。

浜面に続いて現場事務所から出てきた絹旗、その絹旗に抱えられたフレンダが、

フレンダ「チャーンスッて訳よ!!」

スイッチを押す。

仕掛けられたトラップが発動する。

961 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 15:16:12.17 ID:4410W4WAO



ドッドッドゴッドコッドゴォドコォォォォオン!!!

垣根がいるビルの予定地から連続して爆発が上がる。


ズバン!バン!バン!バッバッババババババババッン!!!!!

鉄骨で組まれた骨組みのあちこちが爆発する。

ドカッ!ドコッ!ガシャンッ!ドコッ!ドガッ!ゴンッ!ガキィンッ!

爆発で支えを失い、断ち切られた鉄骨が崩れ落ちる。

962 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 15:19:00.43 ID:4410W4WAO


自らに過剰な自信を持ちすぎるが故の隙。

劣勢に立たされたことが無い故の油断。

垣根「なにーーーッ!?がッ!!!」

爆煙と鉄骨の群れに垣根の姿は消える。

963 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 15:24:57.89 ID:4410W4WAO


『スクール』の狙撃手はその様子を隣の屋上から見ていた。

「アレでやられる、垣根じゃないと思うが」

手には狩猟用スリングショットが握られている。

彼の能力は投射された物を加速させ目標に命中させる力。『超電磁砲』に近似した能力。

破壊力は遥かに劣るが、射撃精度についてだけは自分が上だと彼は思っていた。

スコープで覗いたら映る十字にターゲットを捉える。そのまま引き金を引けば当たるというものではない。

普通の狙撃手が必中を狙えば風の影響、弾道特性、果ては重力、自転の影響までを加味する必要がある。

しかし、彼にはその必要がない。ターゲットを視認、その時点で磁力線がターゲットに結ばれる。あとは弾となるモノを発射すれば良かった。

弾は磁力線に乗り加速されターゲットに命中、ターゲットは血に塗れる。彼にとって最高の瞬間。

残念ながら『超電磁砲』のような投射能力が彼には無く、最初の投射だけは銃器などに頼らなくてはならない。

しかし、磁力線に乗せれば良いだけなので得物を選ばない。

今回のような市街地での場合に多用しているスリングショットでも磁力で加速されるため、狙撃銃以上の威力を発揮する。

狙撃手は獲物が狩り場から逃れ出ないよう足留めをかけておこう、ついでに自分の楽しみのため女を狩って、のた打ち回らせるのも面白いかと思った。

彼が居るビルよりに獲物はいた。獲物を狙うには角度が悪い。

狙撃手は上体をビルの外へ身を乗り出し構える。
何度命中させても倒れなかった小柄な少女が金髪の少女を抱えている。

その金髪の少女の頭に狙いを定める。

ドンッ!!!!

964 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 15:35:47.69 ID:4410W4WAO


浜面「当たったかっ!?」

隣の屋上に人影を見た浜面は咄嗟に引き金を引いていた。

絹旗「当たったみたい、ですね」

フレンダを抱えた絹旗が答える。

何と言うか、奇跡的な射撃能力。反動がキツい対隔壁用ショットガンを素人同然の浜面が初撃必中とは、絹旗も開いた口が塞がらない。

浜面「そうか……。」

咄嗟のこと、銃器でとはいえ人を殺した手応えは気持ち良いモノではない。たとえ殺し殺される現場であったとしてもだ。

浜面(俺も人殺しになっちまったか……)

こんな感慨も絹旗達は超えてしまったところにいるのだろう。

フレンダに続いて滝壺まで倒れてしまっている。

浜面(どうせ、俺もスキルアウトのゴロツキ、今は絹旗達を守るために何度でも引き金を引く!)

もう一人、ゲートに立ち塞がるヘッドギアを着けた少年に銃を向ける。

既にヘッドギアの少年は銃口を避け、移動していた。

浜面は銃口を回すがヘッドギアの少年が地面に手を向けると土煙が巻き起こり、姿を隠す。

浜面は一発二発と撃つが手応えはない。

浜面「闇雲に狙っても無理かッ!」

弾倉は6発入り、4発使用し残りは2発。予備の弾は無く、無駄撃ちはできない。

一人取り残してしまったがゲートに立ち塞がる者はこれでいない。

浜面(そういや、追って来てたのは3人じゃなかったか? 第二位はここに始めっからいたようだし、もう一人は? 考えたって仕方ねえか!)

浜面「絹旗、二人を連れて行けれるかっ?」

絹旗「さすがに二人は……」

重さより体勢がとれない。絹旗はこの場に三人居る少女のうち誰よりも小柄。力が入らない身体の二人を支えるのは難しい。

965 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 15:42:19.24 ID:4410W4WAO


滝壺「私は……大丈夫……」

か細く、滝壺が声を出す。

起き上がろうとしているが起き上がれない。体中の力が抜けているのが一目でわかってしまう。

浜面「何が大丈夫だよっ!そんなんで!!」

滝壺「はまづら、……何か考えが……ある……きぬはたはフレ……ンダと先に行って……」

浜面「ダメだっ!」

浜面は一旦銃を置き、滝壺を抱え上げようとする。この場は逃げる、それしかないと思った。

ドガシャ!

重い物が跳ね飛ばされた音がした。

同じ音が続いて響く。

音は崩れた鉄骨の重なった山から。

垣根「酷え目にあった。逆に頭、冷めちまったわ。余裕持ちすぎるといけねえな、やっぱり」

底冷えのする、どこが頭が冷めたのか怒りが籠もった声。

浜面「……行け、絹旗。フレンダを連れて」

考えた末、止むを得ない。能力で身体を再生中のフレンダに能力を止めさす訳にもいかない。

絹旗フレンダ「そんなっ!」

滝壺「行って、……きぬはた。……はまづらが戦えない……ごめん、はまづら……本当は私も……行かないと……」

絹旗「滝壺さん!」

滝壺「行って」

覚悟を決めている滝壺の言葉に絹旗は応えるしかなかった。

浜面「ここから出たって気をぬくな、もう一人いるはずだ」

頷きを返しフレンダを抱えゲートから絹旗は抜け出す。

それを見送った浜面は滝壺に、

浜面「すまねえ、これからツラい目に合わす。恨むんなら恨んでくれて構わねえ、責任は取る」

滝壺「いいよ……はまづらだったら」

浜面「……すまねえ」

小さく、ちくしょうと浜面は吐く。

966 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/15(月) 15:46:14.65 ID:4410W4WAO


被さっていた鉄骨を全て払い退け垣根が姿を現す。

垣根「たかが無能力者一人始末するのにこれだけ苦労するとはな」

浜面は超能力者を見据える。

浜面「ああ、テメェが情けないだけだろ」

垣根「ふん、その対隔壁用ショットガンで何とかなるとでも思ってんのか?」

浜面「逃げたクセに何言ってんだ?」

垣根「ムカつく、挑発のつもりか?そこで寝てる女にAIM拡散力場を乱された直後だったからな、慌てた、そりゃ慌てた。だがそれだけだ」

浜面「余裕ぶってる場合か?それで俺ごときに苦労してんだろ?」

賭だ。万一効かなかったときのことは考えない。

垣根「はん、残り何発残っている?2発か?3発か?そんなんで俺の『未元物質<ダークマター>』は抜けねえぞ」

思った通りに能力が使用出来なくても数発では抜かれることはない。

浜面「だろうな、俺の本命はこれじゃねえ。こっちだ」

浜面は対隔壁用ショットガンを持つ手とは反対の手を突き出す。手には遠隔操作用スイッチ。

垣根「なんだそりゃ?」

また爆破でもするつもりか?嘲りたくなる。

浜面「良く、ここを戦場に選んでくれたぜ」

浜面がスイッチを押す。

フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!チリィイィィン!フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!

キャパシティダウンが動き始める。

967 : ◆evJdM4Cpzc :2012/10/15(月) 15:49:09.23 ID:4410W4WAO
此処まで
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/15(月) 20:00:57.66 ID:Oill0nmI0
浜面めっちゃ主人公してるな
そろそろ次スレか
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/15(月) 20:28:59.64 ID:zeqG8VxIo
乙!
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/15(月) 21:00:23.79 ID:USjzCjEW0
まんまとひっかかって「フレンダーーーー!!」って叫びかけたw  乙! 
971 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 15:26:28.33 ID:SlO88tMAO


音が場を支配する。

フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!チリィイィィン!フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!

垣根「うっ……くっ、なんだ……ぐっ、この音のせいか……ぐっ、がぁ」

フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!チリィイィィン!フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!

防音壁に囲まれた敷地内に異音が鳴る。

垣根は耳を塞ごうとするが音は聞こえ続け頭痛がする。

異音がしているのか、頭痛による耳鳴りがしているのか分からなくなる。

フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!チリィイィィン!フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!

音は楽器が奏でる音ではなく人工的なノイズに近い、けたたましくは無い、音量が高い訳でもない。

耳障りで不快。

言ってみればそれだけなのに頭を締め付ける痛みをともなう。

顔を歪める垣根の前に立つ浜面にも同じように異音が聞こえているはず、なのに平然としている。

垣根(どういうことだっ、これはっ!?)

顔に出たのか、

浜面「不思議か、超能力者?」

垣根「クソッ、何しやがったッ!」

浜面「キャパシティダウンって聞いたことないのか?」

垣根「キャパシティダウン……だと?」

972 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 15:33:28.49 ID:SlO88tMAO


キャパシティダウン。

1年前、第10学区のスキルアウト、ビッグスパイダーが悪用した対能力者用の音響兵器。

対能力者用の兵器、能力を阻害する装置としてはAIMジャマーの方が有名。

AIMジャマーの場合、AIM拡散力場を乱反射させ、自分で自分の能力に干渉させるように仕向ける。照準を狂わせ、暴走を誘発、下手をしたら自身を巻き込む危険から能力の使用を躊躇わせる装置だ。

また装置には膨大な電力や演算機器が必要、警備員が現場で使用することが出来ず装備として採用されていない。小型化の研究はされているが現状では重要施設などに設置しての使用しかできていない。

それに較べ、キャパシティダウンは大型のオーディオ機器ぐらいの大きさで済み、ワゴン車などに積み込んでの運搬、使用が可能。

にも関わらず、キャパシティダウンも警備員に採用されていない。

音響兵器である問題。

詳細は不明であるが特殊な音波で能力者の『自分だけの現実』が発生する脳の部分を刺激する。

刺激は頭痛をともない演算能力を阻害、結果的に能力の発動を阻む。

開発を受けてない一般人、『自分だけの現実』が脆弱すぎて刺激にならない無能力者にはただのうるさい音としか聞こえない。

それだけを聞けば対能力者用として非常に有用と思えるが、音が遮断される屋内や逆に音が広がり対象以外にも影響を与えてしまう屋外、など事件現場で使用するには利点より難点が多くなる。

それにキャパシティダウンの名を知らしめたのがスキルアウトの悪用では印象が悪く、警備員での採用を控える理由の一つになっていた。

973 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 15:38:26.56 ID:SlO88tMAO


垣根(キャパシティダウン、確かテレスティーナ=木原=ライフラインが開発した品……木原印かよ……性格がワリいわけだ……クソッたれ)

また、キャパシティダウンを開発したテレスティーナ=木原=ライフラインもキャパシティダウンの実戦データ取得のためスキルアウトに提供するなど、犯罪者として今も獄に繋がれている。

その後、あとを引き継ぎ開発を推し進めようとする研究者も現れる気配はなく、キャパシティダウンはビッグスパイダーが起こした能力者襲撃事件、ポルダーガイスト事件の一過性的な物として姿を消していた。

無いモノに対策は施せない。

そのため垣根もキャパシティダウンへの対応策を持ち合わせていない。

音響が垣根の頭脳を苛む。

演算が阻害され『未元物質<ダークマター>』の制御が離れかける。

完全に離れる前に、

垣根(音を出しているのはアレか?)

フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!チリィイィィン!フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!チリィイィィン!

マストの上に設置された敷地内放送用のスピーカーから音が流されている。

垣根は端が剥離、粉末状になりかけている翼を長く伸ばし、スピーカーが設置されているマストへ放つ。

翼が揺らぐ。形を整え切れない。

炎のように揺らぐ翼はなんとかマストを打ち倒す。

マストの上に設置されたスピーカーは音を立てて地面に落ち、壊れる。

974 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 15:44:38.82 ID:SlO88tMAO


チリィイィィン!フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!チリィイィィン!フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!

ところが、スピーカーが壊れても音が途切れない。

垣根「???」

浜面「そいつはダミーだ。それを壊しても止まらねえよ、冷静に考えればわかるんだがな」

浜面が言い放つ。

垣根「ぐぅ……この野郎……ぶっぶち…殺」

キャパシティダウンの本体は現場事務所のなか、浜面達が一旦隠れた備品置き場に設置されている。

入り口を破ったのも実は音を良く通すため、ただ音が流れる場所を見極められたら直ぐに見つかってしまう。

キャパシティダウンが効力を発揮するまでに壊されては堪らない。

工夫を凝らしダミーとしてスピーカーからも流れるように接続してあった。

全ては無能力者狩り対策のため。

浜面達は1年前にキャパシティダウンを手に入れていた。

テレスティーナ=木原=ライフラインからビッグスパイダーと同様に直接提供されたのではない。

第10学区から各学区へ勢力を広めようとしたビッグスパイダーは第7学区の凶悪なスキルアウトにキャパシティダウンを提供していた。

まだ勢力が小さかった浜面達のスキルアウトはそのあまりにも無法だったスキルアウトと抗争。

そのスキルアウトは浜面達に手を焼き、能力者に手を出す暇もなく、キャパシティダウンを保有していることが表にでることはなかった。

結果、浜面達のスキルアウトが勝利。キャパシティダウンを手に入れることになった。

ビッグスパイダーの件でキャパシティダウンが問題になり治安当局が押収に乗り出すことになるが、知られずに保有されていたキャパシティダウンのため浜面達のスキルアウトまで追及の手は伸びず、浜面達はこの一年隠し持っていた。

そうして無能力者狩りが起こり、対隔壁用ショットガンと同じく、切り札としてここに設置しておいたのだ。

975 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 15:48:08.75 ID:SlO88tMAO


浜面「どうした?ご自慢のその『未元物質<ダークマター>』だったか、形も保てなくなってんじゃねえか?」

良く保っていると思う。第二位の精神力、恐るべしというところか、キャパシティダウンの影響を受けた能力者は全く能力を使えなくなる、と浜面は聞いていた。

フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!チリィイィィン!

異音に苛まれ、演算ができなくなる。演算ができなければ能力は発動しない。

白い翼が消え失せないのは演算能力、制御を繋ぎ止めている証拠。

フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!

白い翼が動かさなくても炎のように揺らめく。揺らぐその度に白い粉のようなモノが朧気に舞い散る。

垣根「クソ……クソッ!……クソッ…ぐぅうぅぅうぅ……」

浜面(まだ、だ。あと少し、粘りやがって)

崩れきって、消え失せてくれなくては困る。

対隔壁用ショットガンの残弾は二発。それで撃ち抜いてトドメを刺さなければならない。

揺れ動いて燃え盛る炎のようになっていても形を残した状態のあの翼を抜けるか分からない。

チリィイィィン!フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!

キャパシティダウンが苛むなか、必死に垣根は演算能力、制御を繋ぎ止める。

攻撃に回す余裕などない。

垣根もなんとか『未元物質<ダークマター>』を繋ぎ止めていなければ、対隔壁用ショットガンで抜かれるのはわかっている。

垣根の苦しみを表すかに白い炎のごとく翼は揺らぐ、繋ぎ止めては離れる、寄せては返す。

浜面も強気を装ってはいるが実は余裕がある訳じゃない。

心の中では焦っている。

キャパシティダウンは垣根を苛んでいるが、それは滝壺も同じく苛んでいる。

見れない。

滝壺に目を向けれない。

見れば心が折れる。

滝壺も必死で耐えてくれているのが漏れ聞こえる声で分かってしまう。

976 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 15:56:01.56 ID:SlO88tMAO


垣根「ぐぅうぅぅぬぅぅぅ……」

垣根が唸る。

フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!

浜面はさっさと楽になれと言いたい。

滝壺「うっ、……くっ……あっ、あ……あぁ……」

途切れ途切れに滝壺の苦しそうな声がか細く聞こえる。

チリィイィィン!フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!

早く終わらしたい、さっさと終わらしてくれと言いたい。

どこか、表情に出たのか、

垣根「……はっ、……テメェ……も……酷い……やつだな……仲間を……助けに……来ながら……仲間を犠……牲にするん……だからな」

浜面は引き金を引いてしまいそうになる。強気を装っていた顔が歪む。

浜面(ああ、俺は酷いヤツさ、助けてくれる女の子をこんな目に遭わしてんだからな)

垣根は言葉を連ねる。

垣根「わかってん……のか?……俺より……その女の方が……先に潰れるぞ」

浜面「?」

垣根「その女……俺と対峙した……とき…『体晶』を使って……そんなもん……体が……長く保つはずがねえ!……俺が……何かした訳じゃねえんだよっ、くっ……限界が来ただけだ……まっ、二度と使わない……でいりゃあ、チッたあ……長生きも……できたのになあ」

垣根は言葉を振り絞る。

「最後にこれじゃ保たねえ、……その女を殺すのは……テメェだ!」

浜面は垣根が何を言っているのか分からなかった。理解できなかった。何バカなことを言っているんだ、と思った。

滝壺「……私は……大丈夫……」

後ろから聞こえる生を諦めた、儚い声。

浜面は逆にその声で垣根が言ったことは本当だと、理解してしまった。

ああっあぁァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

ギリギリに保っていた精神が悲鳴をあげる。

977 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 16:00:05.23 ID:SlO88tMAO



引き金を引く。
978 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 16:03:28.17 ID:SlO88tMAO


理解すると同時に撃っていた。

対隔壁用ショットガンが火を吹く。

二度。

太い火線の先、翼の体をすでに成していない『未元物質<ダークマター>』は連続した二発の銃撃に吹き飛び、白い粉末状のモノを辺りに撒き散らした。

垣根の体もくの字に吹っ飛ばされる。

対隔壁用ショットガンの銃撃を受けて身体が粉々に成らないところをみると体に直撃はしてなかった。

しかし、あの吹っ飛び具合からして衝撃は通っている。只では済まない、当分は動けないはず。

心は叫んでいたが、頭は醒めた目で観察していた。

叫び終わると感情が湧かない。精神への負荷で心が壊れないように停止していた。

フィイィィイィイィイィィイィィイィィイィィイン!チリィイィ

うるさい音がする、と思ったらようやく浜面は我に返る。

浜面「と、と、止めねえと」

対隔壁用ショットガンを放り投げ、震える手でポケットにしのべてあったスイッチを取り出す。

キャパシティダウンを止める。

異音が消えた。

敷地内には翼が粉末状になった名残か白い靄になって立ち込めていた。

浜面「何の能力だったんだか、さっぱりわかんねえ……そ、それより!」

振り返り、

浜面「た、滝壺?」

呼びかける。

979 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 16:08:12.96 ID:SlO88tMAO


返事はない。

浜面は滝壺に駆け寄り抱き起こす。

浜面「滝壺、滝壺、滝壺っ! しっかりしろ!」

滝壺は意識を失っていた。

かすかな息はあるが、どんなに呼んでも目を覚まさない。

『……私は……大丈夫』

あの儚い声が最後の力を振り絞った声だったのだ。

浜面「こんなこと有るかよっ、あってたまるか!待ってろ、今病院に

「ッ!」

声にならない声が聞こえた。

第二位が倒れている方向から。

浜面は見る。

「ッ!ッッッッッッッ!ッッッッッッッッッッッッッッ!ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」

第二位からあがる声にならない雄叫び。

ブワッと白い巨大な炎が立ち上がる。

揺らめく炎の先は白い靄。

空中に漂っていた同じ白い靄と一緒になり視界を埋めるほど充満していく。

超能力でも何でもなく人間が元から持つ本能が危険を告げる。

浜面は滝壺をキツく抱き締める。

これから来るモノから滝壺を守るために。

そして、

ゴッ!!!!

爆ぜる。

空間が爆発したような衝撃。

白い別世界が空間を蹂躙する。

980 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 16:18:35.83 ID:SlO88tMAO


無理やり制御しようとした時、それは起こった。

『未元物質<ダークマター>』が溢れる。

別の世界から垣根を窓口にこの世界へ溢れる、そんな感覚。

開きっぱなしの壊れた蛇口のように止められない。

制御の効かない恐ろしさに叫ぶ。

そして、爆ぜる。

引き金を引いたのは垣根。繋ぎ止めようとした。

『未元物質<ダークマター>』を捉え引き戻そうとした。

その瞬間、『未元物質<ダークマター>』が空間を蹂躙した。

静寂が戻ったときには『未元物質<ダークマター>』はかき消えていた。

倒れたまま、

垣根「今のは……何だったんだ?」

不思議な感覚に疑問を呟く。

暴走したのは分かる。

分からないのは『未元物質<ダークマター>』。自分の能力については当然、理解しているつもり、この世にない物質を生み出す能力。

それが暴走した末に感じたのはこの世ではない、別の世界から垣根帝督という窓口を通して持って来ているのではないか?
そんな疑問が浮かぶ。

体を動かそうとするとヒドく痛む。粉状になった『未元物質<ダークマター>』がクッションになってくれたとは言え、戦車の装甲さえ抜く銃弾。身体へのダメージは残る。

痛みに耐え起き上がると変わり果てた工事現場が見える。

現場事務所はぺしゃんこに潰れ、残っていた鉄骨の骨組みはそれこそ前衛芸術のオブジェのようになっている。

面白いことに敷地を囲う防護壁は無傷のまま、どこにでもある工事現場用の防護壁のクセに崩れ破れさることなく、敷地を囲っている。

その防護壁の側に無能力者が倒れていた。

981 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 16:24:27.07 ID:SlO88tMAO


『アイテム』の女を庇うように抱き締め転がっている。

キャパシティダウンに苛まれる中、垣根は無能力者の動揺を誘うしかないところまで追い詰められていた。

あと数秒、無能力者が撃つのが遅ければ対隔壁用ショットガンの銃撃をこの身に受けていた。もしくはもう一発の銃弾が残されていれば抜かれていた。

そこまでこの無能力者が学園都市 第二位の超能力者を追い詰めていた。

『アイテム』の参戦、元々スキルアウトの根城だったなどの様々な要因があったにしても、

垣根「浜面仕上と言ったか、とんだイレギュラーだぜ。無能力者がこれまで戦ったなかで最強の敵、とわな」

『未元物質<ダークマター>』の暴走に巻き込まれて身を守る術のない無能力者が生きてはいないと思う。

しかし、垣根を死地のギリギリまで追い詰めた男。

垣根は念のためトドメを刺そうとした。

「ダ、ダメッス、垣根さん。また暴走したら」

どこからか『スクール』の正規構成員、念動力使いのヘッドギアを装着した少年が飛び出してきて、慌てて声をかけて来る。

垣根「なんだ、オマエ生きてたのか?……まさか、隠れてたんじゃねえだろーな?」

ヘッドギアの少年は首を振りながら、

「ち、違うッス!自分もキャパシティダウンの影響で動けなくなってたんッスよ」

暴走の影響を受けたのか、ヘッドギアの少年はボロボロの格好になっている。

「それよりまた暴走でもしたら今度こそ垣根さんもタダじゃ済まないッス」

暴走がよほど恐怖だったのだろう。

垣根も銃撃の衝撃から身体のあちこちが痛い。暴走の影響か頭もクラクラするし、ダルさを感じる。

垣根「ああ、そうだが……」

「生きてればトドメを刺しとけば良いんでしょ、やっときまスから。
垣根さんは早くAIM拡散力場のチェックを受けに行って下さいよ。
それと『最終信号』も手に入れないといけないんッスよ」

垣根「『最終信号』。そうだったな、……トドメは任した、って生きてねえだろがな……万が一だ、きっちり始末着けとけ」

982 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 16:33:09.28 ID:SlO88tMAO


ヨロヨロと工事現場の敷地内から出て行く垣根を見送り、ヘッドギアの少年は浜面へと近づいていく。

滝壺を抱き締めピクリとも動かず倒れている浜面。

生きているはずもないが確認はしなければならない。

「大したもんッスね、垣根さんをアソコまで追い込んで狙撃手まで、あの人は性格が腐ってたからまあ、良いッスけど」

「あとは『最終信号』を手に入れれば垣根さんの反乱も一歩前進ッス」

浜面がピクッと動く。

「あれで、生きてんッスか!」

ヘッドギアの少年が驚きの声をあげる。それはそうだ自分は念動力を使って身を守れたのにボロボロの格好になっている。驚いてしまうのも仕方ない。

そして生きているならば、やることがある。

「じゃあ、仕方ないッスね」

ヘッドギアの少年は浜面に手を向ける。

死んではいないが、瀕死の筈。警戒しなければならなかった対隔壁用ショットガンも投げ捨てられている。

「丸腰の死にかけにトドメを刺すなら狙撃手が喜んで引き受けるところだったんッスけどね」

撲殺がリクエストなら念動力で頭を捻り潰すかと、

驚いた目で浜面を見るヘッドギアの少年。

パンッ!パンッ!パンッ!

軽い爆竹でも鳴らしているかの音が三つ続く。

「……丸腰じゃねえよ」

ヘッドギアの少年が見た浜面は滝壺を抱き締めたまま、地面を転がり体を入れ替えていた。

そして、突き出すように差し出された浜面の手にはレディース用の護身銃が握られ煙りが糸を引いている。

浜面「打ち止めを守んなきゃいけねえのに丸腰で出掛けるバカがいるか?」

前日のうちに友人に頼んで手に入れていたレディース用の護身銃。殺傷力は低いがサイズは小さく隠し持つには調度良い。

983 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 16:39:03.43 ID:SlO88tMAO


浜面も暴走のなか、よく生きていたと思うぐらい、かなりボロボロ。

浜面「死にかけでも無さそうだ……死にそうな気分だがな……何で死んでねえのかな?」

ヘッドギアの少年に尋ねたわけでもなく、自分でも不思議そうに呟く。

ヘッドギアの少年は答えられない。

答えようにも胸から腹にかけて血が流れている。ヘッドギアの少年に答える余裕など有るわけがない。

殺傷力が低いと言っても至近距離。急所にでも当たれば、

ガクッと崩れる。

ヘッドギアの少年は膝をつき、三発の銃弾が命中した部分を手で押さえようとするが、途中で力尽き前のめりに倒れた。

その様子を見終わった浜面は立ち上がり、もう一度身を屈めると滝壺を抱きかかえる。

浜面「くっそ……打ち止めまで狙ってたのかよ…………まさか、追ってきてたもう一人は打ち止めの方についたのか?」

打ち止めが危ない。

滝壺のこともなんとかしなければならないが、打ち止めも助けにいかないといけない。

浜面は携帯電話を取り出して、打ち止めを預けた風紀委員の少女と連絡を試みるが連絡先を交換していないのを思い出す。

気を取り直して、こんな時の最大戦力、学園都市最強一方通行に連絡をいれても不通。留守電も残せない。

こんな時に、と毒づきながら滝壺を抱えて敷地をでる。

滝壺を病院に預け、打ち止めの行方をすぐ追わなければならない。

垣根もあの状態、能力を使えば暴走しかねない。調整する時間が必要なはず。

それぐらいの時間はあると信じるしかない。

無ければ、

助けに行けるまで、あの風紀委員の少女に期待するしかなかった。

984 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/18(木) 16:41:44.80 ID:SlO88tMAO
此処まで

ここで切る方が繋がりがよいと思うので、次回投下は次スレで行います。

スレタイ予定

「そっか、幸せだったのか。インデックス」初春「両手に花?」

1週間後ぐらいには立てます
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/18(木) 19:27:12.52 ID:6vAtCd0z0
乙です
緊迫した戦いだった
美琴と一方サイドも気になるぜ

次スレは初春さん活躍の予感…?
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/18(木) 21:23:15.80 ID:9P3OyVnBo
乙!
987 : ◆evJdM4Cpzc :2012/10/19(金) 10:59:41.92 ID:aIR2uAzAO
ちょっと質問

次スレ立てたとき前スレのあらすじ入れた方が良いですかね?
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/10/19(金) 17:26:41.36 ID:bwk6MyLPo
あったほうがいいと思うよ
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/19(金) 21:18:23.78 ID:K32Y2UsGo
簡単にだけどあると嬉しい
面倒ならなくてもいいです
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/19(金) 21:53:38.66 ID:HOj6JMg60
浜面健闘 乙!  そしてこの後の初春さんと打ち止めの見せ場も楽しみだ
前スレのあらすじはこのSSの場合ネタバレさせずに書くのがたいへんなんじゃないかと…
991 : ◆evJdM4Cpzc [sage]:2012/10/19(金) 22:06:49.84 ID:aIR2uAzAO
>>990
そうなんですよ、途中まで書いてたらこれネタバレだよなって思ってしまって。
だからと言って全く書かなかったらワケワカランになりそうだから、どうすべきかと思って質問してみたんです。
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/19(金) 23:14:14.01 ID:HOj6JMg60
難しいですね
ネタバレ回避するならこれまでの経緯を書くのではなく、このスレラストの局面、同時進行している各戦いについてだけ簡単に書くとかどうでしょう
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/19(金) 23:22:33.43 ID:HOj6JMg60
余計にワケワカランになるかなw
でもご新規さんが前スレ読みに行った時、最初のあの仕掛けを楽しめないのはちょっと、と思うので
994 : ◆evJdM4Cpzc [saga]:2012/10/22(月) 18:35:42.58 ID:1oOZIRSAO
次スレ

http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/1350898375/l20
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/10/22(月) 22:21:45.84 ID:/0pr8zud0
次スレ乙!
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/10/23(火) 00:10:10.37 ID:wGn0BmPbo
見れないんだが…
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/23(火) 00:27:22.58 ID:3UU5d4fxo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1350898375/
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/23(火) 00:33:32.56 ID:siG9Pa8wo
うめ
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/10/23(火) 07:40:06.03 ID:wGn0BmPbo
>>997
あざす
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/23(火) 09:25:10.46 ID:/qmKYHrao
それじゃあ、次スレで!
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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    '.o  r┐   *   ヽ、 ヽ、_     ,..-=ニ_
    =@   ノ       ノヽ、,  !..□ /     ヽ
     ヽ        .ィ'.  ,!    ハ/    、   `!、    七夕に…
      `ー-、_    く´ =@    /     ヽ  
         ,!     `!  l              ヽ、__ノ    このスレッドは1000を超えました。もう書き込みできません。
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男「さぁ、寝るか」 @ 2012/10/23(火) 08:44:08.68 ID:gW1d5vxD0
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【心機一転】安価・魔境見滝原★7【新章スタート】 @ 2012/10/23(火) 08:11:01.79 ID:uowh+q0Vo
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勉強に行き詰まったから雑談したい @ 2012/10/23(火) 07:49:12.28 ID:SsNcIksLo
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少女「ご命令を…ご主人様」 @ 2012/10/23(火) 05:15:55.41 ID:PAchCzwJ0
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まどか「ずっと一緒だよ」 @ 2012/10/23(火) 03:53:04.08 ID:2KRBKszSO
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ダメンヘラが死なないように見守ってくれ @ 2012/10/23(火) 03:41:07.79 ID:anp2Bp8AO
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てきーら! @ 2012/10/23(火) 02:18:43.61 ID:NSZ3SGO9o
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とある二人の超能力者 @ 2012/10/23(火) 02:12:11.99 ID:u1zrU7lP0
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