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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/01(水) 22:58:48.20 ID:X1jTuQ8lo
通学時間の自宅最寄駅で


妹「お兄ちゃん」

兄「何だよ」

妹「またあの先輩だ。ほらいつも駅のベンチに座り込んで電車が来ても乗らないでスマホで何かやってる女の人」

兄「おまえさ、そうやって人のことばっか噂する癖やめたら?」

妹「だっておかしくない? 駅で電車に乗らないでベンチに座ったままとか。それも毎朝だよ」

兄(あれ、あいつ)

兄「ああ、あいつ同じクラスの女ってやつだよ」

妹「お兄ちゃんあの人知ってるの?」

兄「だから同級生だけど、話したことは無いかな。つうかあいつ、あまり友だちいないみたいだし」

妹「電車に乗らないでスマホ弄ってるけど遅刻しないのかな」

兄「ああ。いつもぎりぎりだけど遅刻はしてねえよ」

妹「ふーん」

兄「・・・・・・」

妹「お兄ちゃん」

兄「何だよ」

妹「話したことないっていうわりにはあの人のことよく観察してるんだ」

兄「・・・・・・」

妹「もしかしてあの人に気があるの?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1328104723(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/01(水) 22:59:59.91 ID:X1jTuQ8lo
オリジナルSS(妹スレではありません)で、非エロ

更新速度は遅いです

それでもよければご覧いただければ嬉しいです
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/01(水) 23:00:30.97 ID:X1jTuQ8lo
兄「・・・・・・」

妹「な、何よ」

兄「おまえさ」

妹「うん」

兄「その見境のない俺への嫉妬、いい加減何とかしないとやばいんじゃねえの」

妹「な・・・・・・! お兄ちゃんへの嫉妬とか自意識感情なんじゃないの? だいたいあたしはお兄ちゃんのことに関心なんてないし」

兄「それならとりあえず、おまえがしっかりと握っている俺の手を離してもらおうか」

妹「な、何言ってるのよ。あたしが手を離すとお兄ちゃんがすぐにすねるから仕方なく」

兄「はい?」

妹「・・・・・・」

兄「ああ面倒くせえな。じゃあもうそれでいいよ」

妹「・・・・・・」

兄「どうした?」

妹「・・・・・・お兄ちゃんの意地悪」グス

兄「ああ、もう泣くなって。悪かったよ」

妹「・・・・・・」

兄「(ああ、もう全くこいつは)本当に悪かったよ。俺おまえがそばにいてくれないと何にもできねえのにな」

妹「・・・・・・本当?」チラ

兄「ああ本当だ。おまえがいつも一緒にいてくれて俺本当に助かってるんだぜ」

妹「・・・・・・うん。それなら許してあげる」ニコ

兄「・・・・・・ほら、電車来たぞ」

妹「うん! さっさと乗るよお兄ちゃん」

兄「こら。そんなに手を引っ張るなよ、痛てえじゃんか」

妹「早くしないと乗り遅れるってば」

兄「わかったから手を引っ張るなって。痛てえよ」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/01(水) 23:01:49.94 ID:X1jTuQ8lo
次の停車駅


兄(あ・・・・・・幼馴染だ)

妹「お姉ちゃんだ。今日も兄友さんと一緒だね」

兄「・・・・・・まあ、あいつら同じ駅だし家も隣だしな」

妹「そんだけの理由かなあ? 毎朝いつも一緒じゃんお姉ちゃんと兄友さん」

兄「(・・・・・・おまえに言われなくたってわかってるよ)ああ、そうだな」

妹「まあ、でもお似合いだよね。お姉ちゃん綺麗だし兄友さんもイケメンだし」

兄「・・・・・・うん」

妹「お姉ちゃん、うちの隣から引っ越して正解だったね。お隣さんがお兄ちゃんからイケメンの兄友さんにグレードアップしたことだし」

兄「・・・・・・」

妹「あ、お姉ちゃーん!」

幼「おはよう妹ちゃん」

兄友「ようお二人さん」

妹「おはようございます」

兄「・・・・・・おはよ」ボソ

幼「兄どうしたの? 朝から元気ないじゃん」

兄友「おまえ俺の貸したあれにはまって寝不足なんじゃねえだろうな」

兄「・・・・・・バカよせ。妹が聞いてるんだぞ」ヒソ

幼「何々? 何の話」

兄「何でもねえよ。男同士の話だ」

幼「何か感じ悪い」

妹「ほんと。男って嫌だよね、お姉ちゃん」

幼「うんうん。本当に信じられるのはあんただけよ。妹ちゃん愛してる」ギュ

妹「わ! お兄ちゃんの前ではやめてください・・・・・・じゃなくて。混んだ電車の中ではやめて」

幼「妹ちゃんってほんとブラコン」

妹「・・・・・・違います」

兄友「え? おまえと妹ちゃんってもしかしてそういういけない関係なの?」

兄「・・・・・・[ピーーー]」ボカスカ

幼「片手でしっかりと妹ちゃんの手を握ったまま反論されてもなあ」

兄友「説得力ゼロだよな。って、痛いって。もう言ねえからグーで殴るのはよせ」イテテ

兄「俺じゃなくてこいつが手を握りたがるからだな」

妹「・・・・・・な!? 何であたしがお兄ちゃんなんかの手を握りたがるのよ、バカ。手を握ってあげないとお兄ちゃんが寂しがるからあたしは仕方なく」

幼「はいはい。ごちそうさま」

兄友「よくもまあ毎朝飽きずに痴話喧嘩できるな、おまえら」

妹「確かに喧嘩だけど、痴話だけよけいです!」

幼「あははは」

兄「・・・・・・」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/01(水) 23:02:46.83 ID:X1jTuQ8lo
校舎入口


幼「じゃあ、妹ちゃんまたね」

妹「はい・・・・・・何で学年によって校舎分けてるんでしょうね」

幼「さあ。一学年のクラス数が多いからじゃない? うちの学校って」

妹「校舎が一緒なら教室の入り口まであたしも一緒に行けるのに」

幼「家で毎日お兄ちゃんといちゃいちゃしてるのに校内でも一緒にいたいの?」クス

妹「・・・・・・だから違いますって」

兄友「妹ちゃん顔真っ赤だよ。かあいいなあ」

幼「確かに可愛いけどあんたは黙れ」

兄友「何でだよ」

兄「もう行こうぜ。遅刻しちゃうよ」

妹「あ、お兄ちゃんこれ」

兄「お、おう」

幼「今日も妹ちゃんの手作りのお弁当?」クス

兄友「いいなあ、おまえ」チラ

幼「・・・・・・な、何よ」

兄友「何でもねえよ」

兄「・・・・・・」

妹「じゃあ、あたしもう自分の校舎に行くね」

兄「ああ」

幼・兄友「またねー」

兄「俺たちももう行こうぜ」

幼「そうね」

兄友「いい時間になっちゃったな」

兄「うん(あれ?)」

兄(女が駆け込んできた。俺たちより一本遅い電車に乗ったんだろうな)

兄(相変わらず周りのクラスメートと話しねえなあ、あいつ)

兄(朝のあいさつする相手もいねえのかな)

幼「ほら、兄。何ぼんやりしてるの。さっさと行くよ」

兄「あ、ああ」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/01(水) 23:03:41.91 ID:X1jTuQ8lo
授業中


兄(何か一度気が付くと結構気になるもんだな)

兄(女のやつ、机の下で何かスマホ弄ってるし)

兄(あいつ、いつも一人で何やってんだろ)

兄(結構可愛いのにな)

兄(しかし、あそこまで堂々と授業をボイコットできるのもある意味すげえな)

兄(先生からはわからないかもしれないけど、後ろの席からはさぼってるの丸見えなんだが)

兄(それにずっと俯いてるからそのうち先生にも気が付かれるんじゃねえかな、あれ)

兄(何かネットでも見てるのかな。どうでもいいけど)

ピンポンパンポン

兄(あ、授業終っちゃった)

兄友「さあ、飯だ飯」

兄「ああ」

兄友「おまえ今日も中庭?」

兄「べ、別に決めたわけじゃねえけど」

兄友「だっておまえいつも中庭か屋上で妹ちゃんと二人で昼飯食ってるじゃん」

兄「・・・・・・別にいつもってわけじゃねえよ」

兄友「真面目な話さあ、おまえと妹ちゃんってどうなってるの?」

兄「死ね」ボカ

兄友「よせ、痛いって。だっておまえらいつもべったりと二人きりじゃん」

兄「んなことねえよ。あいつが俺がいないと寂しがるから」

兄友「・・・・・・この間、同じこと妹ちゃんにも聞いたんだけどよ」

兄「・・・・・・何って言ってた? あいつ」

兄友『あたしが一緒にいてあげないとお兄ちゃんがすぐ拗ねるから』

兄「・・・・・・死ね」ボカスカ

兄友「俺が言ったんじゃねえって。妹ちゃんがそう言ったんだって」イテテ

兄「・・・・・・」

兄友「まあいじゃんか。あんな可愛い子がおまえのことを一途に慕ってるんだしよ」

兄「可愛いって・・・・・・実の妹だっての」

兄友「はいはい」

兄(幼といい雰囲気のおまえが言うな。むかつく)

兄友「じゃ、俺は学食行くわ。妹ちゃんによろしくな」

兄「・・・・・・おう」

幼「学食行かない?」

兄友「おう。混む前に席を確保しようぜ」

兄(・・・・・・また二人で一緒にお食事かよ)

幼「兄は? 一緒に学食でお弁当食べない?」

兄友「野暮なこと言うなよ」

幼「あ、そうか。ごめん・・・・・・妹ちゃんによろしくね」

兄「・・・・・・ああ」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/01(水) 23:05:31.62 ID:X1jTuQ8lo
中庭

妹「遅いよ」

兄「そんなに遅れてねえだろ」

妹「中庭のベンチって競争率高いんだよ? あたしが早く来て場所取りしたからここでお昼食べられるんだからね」

兄「・・・・・・わかったよ、ありがとな」

妹「べ、別にいいけど」プイ

兄「とにかく弁当食おうぜ」

妹「うん」

兄「いただきます」ガサガサ

妹「・・・・・・」ジー

兄「・・・・・何?」

妹「・・・・・・何でもない」

兄「おまえ食わねえの?」

妹「・・・・・・食べるよ」

兄「(あ)今日も美味しそうだな。おまえ料理上手だもんな」

妹「・・・・・ほんと?」

兄「ああ。本当」

妹「・・・・・・そっか」ニコ

兄(こいつ普段はうざいけど、こういうところは可愛いな)

兄(あれ? 女だ。何やってんだ?)

兄(相変わらずぼっち飯か。でも飯食ってるようでもないな)

兄(スマホ弄って何かやってるような)

兄(・・・・・・スマホのインナーカメラで自分撮りしてるのか?)

兄(何やってるんだよ、あいつは)

妹「お兄ちゃん、どうかした?」

兄「いや、何でもない(何か気になるやつだな女って)」

妹「・・・・・・あ」

兄「うん?」

妹「・・・・・・お兄ちゃん、またあの人のこと気にしてたでしょ」

兄「んなことねえよ」

妹「へえ。これだけ中庭に人が一杯いるのに、あの人って言っただけで誰のことかわかっちゃうんだ」

兄「・・・・・・何言ってるんだよ、おまえは」

妹「お兄ちゃん、あの先輩のこと気になってるんでしょ。正直に言ってみ?」

兄「な? ばか違うって(むしろ俺が好きなのは幼・・・・・・)」

妹「さっきから視線があの女の先輩に釘付けじゃん」

兄「それよかこのハンバーグもさ、いつもより美味しくね?」ドキドキ

妹「・・・・・・」

兄「おまえの料理ってだんだん成長してるのな」

妹「・・・・・・まあ、冷凍食品だってたまには違うメーカーのやつに変えてるしね」

兄「・・・・・・」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/01(水) 23:06:23.89 ID:X1jTuQ8lo
本日はおしまい

他スレと平行して書いてるんで、向こうが終わるまでは更新速度遅いです

ではまた。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/02(木) 22:42:12.82 ID:8lpwf8Ujo
放課後



兄友「おまえこれからどうすんの」

兄「どうって・・・・・・家に帰るだけだけど」

兄友「じゃ、一緒に帰るか」

兄「おまえいつもは幼馴染と一緒に帰ってるじゃん」

兄友「ああ、そうなんだけさ」

兄「(否定しないし照れる様子さえねえ)今日は一緒に帰らねえの」

兄友「あいつ、今日は生徒会なんだって」

兄「何だよ、幼馴染が一緒に帰れないから俺を誘ってんのかよ」

兄友「うん、そうなんだけどさ」

兄「・・・・・・」

兄友「あいつと二人で帰れるならおまえを誘うわけないじゃん」

兄「・・・・・・おまえら付き合ってるの?」ドキドキ

兄友「いや、まだ」

兄「まだってどういう意味だよ」

兄友「そのとおりの意味だよ。で、どうする? たまにはゲーセンとか行かねえ?」

兄「今日はやめておくわ・・・・・・妹が校門の前で待ってるし」

兄友「・・・・・なあ」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/02(木) 22:42:43.86 ID:8lpwf8Ujo
兄「うん?」

兄友「前から聞きたかったんだけどさ」

兄「おう」

兄友「おまえと妹ちゃんってどうなってんの?」

兄「どうなってるって何だよ」

兄友「だからさあ」

兄「・・・・・・」

兄友「普通兄妹で手を繋いで登校したりとか、いつも兄妹二人きりで昼飯食ったりしないじゃんか?」

兄「そうか?」

兄友「そうだよ。何、おまえ妹ちゃんとできt」

兄「・・・・・・」ボカスカ

兄友「痛てえって。よせ」

兄「おまえ言うに事欠いて何てことを想像してるんだよ」

兄友「・・・・・・だってよ」

兄「何だよ」

兄友「・・・・・・まあ、いいや。」

兄「・・・・・・あいつも一緒でいいか」

兄友「ああ?」

兄「だから。妹も一緒でよければゲーセン付き合ってやるって言ってんの!」

兄友「・・・・・・シスコン」

兄「うるせえよ」

兄友「じゃ、行こうぜ。校門のところに妹ちゃんいるんだろ」

兄「ああ」

兄友「妹ちゃんとゲーセンかあ。俺、妹ちゃんとチュープリ撮ってもいいか」

兄「・・・・・・」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/02(木) 22:44:44.86 ID:8lpwf8Ujo
校門前


妹「遅いよお兄ちゃん。昼休みもあたしを待たせたのに」

兄「・・・・・・待ち合わせした時間までまだ10分以上あるんだけど」

妹「あたしは30分も待ってるもん」

兄「・・・・・・」

兄友「まあまあ、喧嘩するなよ二人とも。それよか三人で遊びに行こうぜ」

妹「兄友さんいたんですか? ごめんなさい気がつかなくて」

兄友「さっきからずっと兄の隣にいたけどね。まあ気にしないでいいよ」

妹「はい。でも兄友さんお姉ちゃんを待ってなくていいんですか」

兄友「あいつは今日生徒会」

妹「そうですか。寂しいですね兄友さん」

兄友「まあしょうがないよ。それに妹ちゃんがいてくれれば全然OK」

兄イラッ

妹「・・・・・・じゃあ今日は兄友さんも一緒に帰るんですか?」ボソ

兄友「え?」

兄(妹よ。頼むから余計なことを言うなよ)

妹「そうかあ。今日は3人で帰るのかあ」

兄友「え、ええと」

妹「お兄ちゃんどうする? 二人でスーパーで買い物とかしなきゃいけないんだけど」

兄「ま、まあ、そんなののは3人でゲーセンで遊んだ後に二人で行けばいいだろ」

妹「でも今日はお兄ちゃんがあたしの服を見たたてくれることになってたし、まあそれはいいんだけど」

兄「へ?」

妹「さすがにあたしの下着を選ぶのに兄友さんを付き合わせちゃったらお姉ちゃんに悪いし」

兄「・・・・・・」

兄友「・・・・・・」

兄「兄友さあ・・・・・・」

兄友「あ、ああ。わかった。今日はお前らの買い物をを邪魔しちゃ悪いし先に帰るわ」

兄「すまん」

兄友「気にするなって。それよかうまくやr・・・・・・痛いって」

兄「てめえふざけんな」ボソ

兄友「わかったからそんなに気軽に俺の頭を叩くなよ・・・・・・じゃあ妹ちゃんまた明日な」

妹「はい。兄友さんさよなら」ニコ

兄「・・・・・・」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/02(木) 23:08:11.36 ID:8lpwf8Ujo
自宅近くのスーパーマーケット内


妹「お兄ちゃん、今日何食べたい?」

兄「・・・・・・何でも」

妹「何でもいいは禁止だって言ったでしょ」

兄「じゃあ肉じゃが」

妹「・・・・・・また?」

兄「・・・・・・」

妹「一昨日も肉じゃがだったじゃん。いい加減に他の料理とか言えないの?」

兄「だったらおまえに任せるよ」

妹「だから何でもいいはだめだって」

兄「・・・・・・おまえさ」

妹「何よ」

兄「毎日毎日俺と放課後買い物とかして過ごしてるけどさ」

妹「・・・・・・うん」

兄「友だちと遊びたいとか部活に出たいとか思わねえの」

妹「・・・・・・」

兄「弁当とか食事とか俺の面倒だけ見てるけど」

妹「・・・・・・」

兄「確かにうちは両親が仕事で夜遅くならないと帰ってこねえしさ」

妹「・・・・・・うん」

兄「俺っておまえに頼りきってる部分があるのは自分でもわかってるけどさ」

妹「・・・・・・」

兄「俺だっておまえに普通の女子高生の生活をさせてやりたいって思うわけだよ」

妹「・・・・・・」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/02(木) 23:08:42.05 ID:8lpwf8Ujo
兄「妹?」

妹「・・・・・・お兄ちゃんって、あたしのことうざいと思う?」

兄「な、何言ってるんだよ。そうじゃねえよ」

妹「お兄ちゃんが迷惑ならもうお兄ちゃんにはまとわりつかないよ」

兄「そんなこと一言も言ってねえだろ。俺はおまえが面倒見てくれて助かってるし嬉しいし」

妹「・・・・・・でも、内心ではベタネタくっついてくるあたしのことうざい妹とか思ってるんでしょ」ジワ

兄「だからそうじゃねえって。おまえだってお年頃だし友だちとか彼氏とかと遊びたいんじゃねえかって」

妹「・・・・・・彼氏なんていないもん」

兄「あのさ」

妹「別に彼氏なんて欲しくないし・・・・・・」

兄「いや」

妹「お兄ちゃんと一緒にいられればそれでいいのに」

兄「え?」

妹「お兄ちゃん・・・・・・何でそんなに意地悪なこと言うの」

兄「・・・・・・ええと」

妹「・・・・・・」

兄「おまえビーフシチューとか作れる?」

妹「・・・・・・」

兄「何かきょうはそういう気分なんだけど」

妹「作れる」

兄「じゃあ頼むわ」ニギ

妹「あ・・・・・うん」ギュー

兄(手を握ったら機嫌が直ったみたいだ。こいつは本当に・・・・・・本気でブラコンなのかな)

兄(とりあえず妹の機嫌は直ったみたいだけど。これじゃ本当に近親相姦目前みたいな状況じゃねえか)

兄(兄友にからかわれるのも無理はねえな)

兄(それにこれじゃ幼馴染だって俺たちのこと誤解するだろうしな)

妹「お兄ちゃん、この牛肉日本産なのに安いよ」

兄「うん」

妹「・・・・・・二人分だからこのパックだとちょっと少ないかな」

兄(あれ? 女だ。買い物してるのか)

兄(あいつ普段から生活感感じねえし、スーパーで買い物とか違和感あるな)

兄(やっぱそれなりに可愛いな、女って)

兄(あれで変人じゃなきゃもっと男からもてるだろうに)

兄(あ、目が合った)

妹「・・・・・・お兄ちゃん、あたしの話し聞いてる?」

兄「あ、悪い」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/02(木) 23:09:25.50 ID:8lpwf8Ujo
今日はおしまい

おやすみなさい
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/02/02(木) 23:35:02.39 ID:6qwGJFrAO
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/03(金) 23:26:59.88 ID:IzUbOblao
兄(あれ)

兄(今、女のやつ・・・・・・何か落とした)

兄(・・・・・財布?)

兄「あのさ」

妹「どうしたの?」

兄「ちょっと買いたい物あるから」

妹「うん?」

兄「探してる間おまえ買い物してろよ」

妹「わかった。あたし冷凍食品のコーナーにいるから」

兄「・・・・・・ビーフシチュー作るのに何で冷食を」

妹「冷凍食品はお弁当用だよ。じゃあ、あまり待たせないでね」

兄「ああ」

兄(やっぱり財布か。すぐに声をかけて)

兄(っていねえじゃん。どこにいるんだあいつは)

兄(確か魚とか生鮮食品売ってる方に歩いて行ったよな)

兄(・・・・・・ここにもいねえ)

兄(早く返さないと。つうか妹を待たせるとまた怒り出すしな。せっかく妹の機嫌が直ったのに)
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/03(金) 23:27:30.98 ID:IzUbOblao
レジ「三千二百円のお買い上げになります」」

?「はい」ガサゴソ

レジ「?」

?「あ、すいません。ちょっと」ガサゴソ

?「財布がない・・・・・・」

レジ「お客さま?」

?「すいません、ちょっと待ってください」


兄(あ、女のやつレジのとこにいた。財布なしでどうやって支払いするつもりなんだ)

女「ごめんなさい。財布が見つからなくて」

レジ「はい?」

女「おかしいな。財布どこにしまったんだろう」アセ

兄「おい」

女「・・・・・・」アセアセガサゴソ

兄「(無視かよ)おい、女!」

女「・・・・・・え?」

兄「ほら、落ちてたぞ。これおまえの財布だろ」

女「あ・・・・・・」

兄「さっき屈んで何か見てた時に落としたみたいだぞ」

女「あ、あんたは」

兄「あんたはじゃねえだろ。同級生の名前くらい覚えておけよ。ほら、財布」

女「・・・・・・ありがと」

レジ「お客さま?」

女「あ、すいません。これで」

レジ「五千円お預かりします」

レジ「ありがとうございました」

女「あ、あの」

兄「じゃあな」

女「・・・・・・兄君、ありがとう」

兄「おう(何だよ、俺の名前知ってるんじゃねえか)」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/03(金) 23:33:28.25 ID:IzUbOblao
兄(やべえ。結構時間食っちゃたな。妹怒ってるだろうな)

兄(・・・・・・冷凍食品売り場にはいない)

兄(まさか、勝手に帰っちゃったんじゃねえだろうな)

兄(あ、いた)

兄(何か雑誌見てるぞ)

兄(機嫌悪いかな? ちょっとだけ話しかける前に観察してあいつの機嫌を見極めるか)

兄(何か漫画雑誌読んでる・・・・・・)

兄(すげえ夢中になって立ち読みしてるな・・・・・・こういうところってあいつ可愛いよな)

兄(いったいあんなに夢中になって何を立ち読みしてるんだろ)

兄(・・・・・・よく見えねえな)

兄(あ、表紙が見えた)

兄(・・・・・・)

兄(・・・・・・ヤング・レディース。巻頭特集「鬼畜な兄貴:お兄ちゃんもう許して」)

兄(・・・・・・)

兄(いったい何の話を夢中になって読んでるんだあのバカ妹は)

兄(つうかこのことは知らなかったことにした方がいいな)

兄(そうっとこの場から離脱しよう)

兄(・・・・・・)

妹「お兄ちゃん?」

兄「お、おう」

妹「・・・・・・遅いよ」

兄「ああ、悪い。」

妹「何を探してたの」

兄「あ、いや。うん」

妹「はい?」

兄「・・・・・・いやちょっと欲しかったものがあったんだけど見つからないからいいや」

妹「欲しかった物って? あたしが探してあげる」

兄(やべ。何にも欲しい物なんか思い浮かばねえ)

妹「何を探してたの」

兄「(話をそらそう)・・・・・・それよかさ、おまえは何を夢中になって読んでたんだよ(って何言ってんだよ俺!)」

妹「漫画の雑誌」

兄「・・・・・・」

妹「これ。これに連載されてる漫画がすごく面白いの」

兄「・・・・・・」

妹「クラスでも流行っているんだよ」

兄「な、何ていう漫画(よせよ俺。そこに触れるな)

妹「これこれ。『鬼畜な兄貴:お兄ちゃんもう許して』っていうやつね」

兄「・・・・・・(何でこんなものをわざわざページを開いて俺に見せる?)あ、ああ」

妹「禁断の恋に陥る兄妹の心理過程を丁寧に描写してるんだよ。ほらちょっと見てみ」

兄「・・・・・・(おいおい)」ペラ
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/03(金) 23:34:35.46 ID:IzUbOblao
漫画の兄「妹! もう我慢できないよ」

漫画の妹「お兄ちゃんだめ。あたしたち血が繋がった兄妹なんだよ」

漫画の兄「おまえが嫌なら何もしないよ。俺のこと嫌いか」

漫画の妹「・・・・・・そんな聞き方卑怯だよ」

漫画の兄「俺はおまえのことが好きだ」

漫画の妹「・・・・・・お兄ちゃん」

漫画の兄「おまえはもう一生俺以外の男と寝るな!」

漫画の妹「・・・・・・いや、やめてお兄ちゃん!」


兄「・・・・・・」

妹「面白いでしょ」

兄「これは何の嫌がらせだよ」

妹「嫌がらせって」

兄「・・・・・・おまえ絶対わざとやってるだろ」

妹「何言ってるの? お兄ちゃん、あたしはクラスで評判になっている漫画を」

兄「もういい。帰るぞ」

妹「うん」

兄「・・・・・・」

妹「もう買い物は清算してあるから、この袋持ってね」

兄「・・・・・・ああ(またいつもの妹の嫌がらせに打撃を受けてしまった。だいたい近親相姦物の漫画が掲載されてる雑誌なんて普通にスーパーに置くなよ)」

妹「ほら、もう帰るよ」

兄「わかってるよ(絶対明日このスーパーに苦情言ってやる)」




スーパーマーケットの出口


?「兄君?」

兄「・・・・・・え? あ、女さん」

妹「・・・・・・」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/03(金) 23:35:17.49 ID:IzUbOblao
今日はこれだけ

更新速度遅くてすいません
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/02/04(土) 20:13:46.08 ID:iAgROq4Uo



よければ、平行して書いてる他のスレも教えてくれ
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/04(土) 20:28:43.23 ID:Sm2qxcamo
>>21

妹の手を握るまで
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1323265435/

妹の手を握るまで(その2)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1327754599/

もうそろそろ終わりますけど、終わるまでは妹スレ中心に書いていきます
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/04(土) 20:33:48.89 ID:849Q4HaAo
>>22
ちょ!? 妹スレの人だったのか!
両方楽しみにしてます!
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/04(土) 23:19:03.14 ID:Sm2qxcamo
女「兄君、さっきはありがと。あたし慌てちゃってちゃんとお礼言えなくて」

兄「え? さっきありがとうって言ってくれたじゃん(やっぱり女って可愛いよな。何でぼっちなんだろう。これで変ったこととかしなきゃ学校でリア充確定だろうに)」

女「とにかくちゃんとお礼言いたくて。ありがとう、さっきはパニックだったから本当に助かったよ」ニコ

兄「・・・・・・よかったね(笑うと更に可愛いな)」

女「兄君ってこれまでお話したことなかったね」

兄「そうだな(つうかおまえ誰とも話ししたくないオーラ出してたじゃんか)」

女「これからは教室で話しかけてもいいかな」

兄「ああ、当たり前じゃんかクラスメートなんだし(何々? フラグなのか? フラグ立ったのか?)」

女「よかった。これからはよろしくね」ニコ

兄「あ、ああ(可愛い)」

妹「・・・・・・お兄ちゃん?」

兄「うん?」

妹「スーパーの袋が重くて手が痛い」

女「あ、妹さん? あたし兄君と同じクラスの女です。よろしくね」

妹「・・・・・・」

女「あ、あの?」

兄「ごめんな女。気にしないでな(・・・・・・またはじまったか)」

妹「・・・・・・」

女「・・・・・・買い物の邪魔しちゃってごめんね。あたしもう行くね」

兄「ああ、また明日教室でな」

女「うん。さよなら」

兄「またな」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/04(土) 23:20:24.54 ID:Sm2qxcamo
帰り道


妹「・・・・・・」

兄「・・・・・・」

妹「・・・・・・」グス

兄「・・・・・・(ああ! もう面倒くせえな)ほらそっちの袋もよこせ。持ってやるから」

妹「自分で持つからいい・・・・・・」

兄「いいから寄こせって。手が痛いんじゃなかったのかよ」

妹「いい・・・・・・。お兄ちゃんにうざいって思われるくらいなら手が千切れてもいいから自分で持つ」

兄「(そんなに重くねえだろうがおまえの持ってる袋は)いいから寄こせよ。おまえ華奢で力ねえんだから」

妹「やだ」

兄「だっておまえが手が痛いって言ったんだろうが」

妹「よかったねお兄ちゃん」

兄「はあ?」

妹「前から気になっていた女の子と仲良くなれたんでしょ」

兄「おまえ何か誤解してるぞ」

妹「誤解なんかしてないいよ! お兄ちゃんがあたしを放っておいて女さんに鼻の下を伸ばしてたんじゃない」

兄「・・・・・・おまえさ」

妹「な、何よ」

兄「前も言ったけどさ、その見境のない嫉妬何とかしろよ」

妹「だってお兄ちゃんが」

兄「女は単なる同級生。たまたまあいつ落とした財布を拾って届けてやっただけだろうが」

妹「・・・・・・だって女さん、お兄ちゃんに話しかけてもいいかなって」

兄「・・・・・・だから何だよ? 俺に話しかける女はみんな俺に気があるって言いたいのか?」

妹「だって」

兄「(全くこいつは)ほれ片手出せ」ギュ

妹「あ」

兄「それともおまえの荷物もってやろうか? 両手塞がるからおまえの手を握ってやれないけど」

妹「な、何言って」カア

兄「どっちにする?」

妹「・・・・・・荷物は自分で持つ」

兄「あ、そ」ギュ

妹「・・・・・・」ギュー
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/04(土) 23:38:18.58 ID:Sm2qxcamo
翌朝 最寄り駅


妹「今日は女さんいないね」

兄「そうか」

妹「・・・・・・残念そうだね。お兄ちゃん」

兄(こいつが気軽にこういう風に話すときは実はあんまり気にしてないんだよな・・・・・・本当に気にしてるは泣くか黙っちゃうかだしな)

妹「ほら電車来ちゃったよ。お兄ちゃん早く」グイ

兄「だからいつも言ってるけど手を引っ張るなよ」

兄(昨日あれだけ妹にはサービスしてやったから機嫌がいいのは当然だけど)


回想

妹『肉じゃが美味しい?』

兄『すごく美味しいよ、ほらおまえも』アーン

妹『な、何やってるのよ!?』

兄『おまえに食べさせようとしているんだけど』

妹『お兄ちゃんの変態!』アーンパク

兄『結局食ってるじゃねえか』

妹『うるさい!』

回想終了
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/04(土) 23:38:49.14 ID:Sm2qxcamo
兄(それにしてもいつも駅のベンチでスマホ弄ってる女はなぜ今日はいないんだろうな)

兄(まあ、どうでもいい話だけど)

妹「・・・・・・お兄ちゃん」

兄「おう」

妹「今あの女って人のこと考えてたでしょ」

兄「(おまえはテレパスか!)ちげーよ」

妹「嘘だね」

兄「だから誤解だって(何で俺妹相手にこんな気を遣わなきゃいけねえんだよ)」


幼「おはよ妹ちゃん」

兄友「よう兄」

妹「あ、お姉ちゃん」

兄「おはよ(また幼馴染と兄友は一緒に通学か)」

幼「何か元気ないじゃん」

兄「そうなんだよ」

幼「あんたじゃないよ。妹ちゃんの方!」

兄友プッ

兄(てめえ)

兄友「痛いからよせ。おまえ最近強暴だぞ」

兄(てめえが幼馴染を奪ったからだろうが)

幼「妹ちゃん何か悩み事でもある?」

妹「・・・・・・」

幼「そうか」

兄(え? それでわかっちゃうの? 通じちゃうの)

幼「あんたら前の車両に移動しなさい」

兄友「え? 何でだよ」

幼「・・・・・・」

兄友「お、おう。何だか前の車両に移りたい気分になってきたぜ」

兄「? 何で?」

幼「・・・・・・」

兄友「ほら行くぞ兄。さっさと移動しようぜ」

兄「おい、ちょっと待てって引っ張るなよ兄友」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/04(土) 23:40:35.62 ID:Sm2qxcamo
本日はここまで

>>23
こちらはあっちが終了するまではなかなか展開しない退屈なシーンが続くと思いますがよかったら見てやってください

ではまた
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/05(日) 22:59:03.53 ID:AKymYdgWo
隣の車両


兄友「で? 今度はいったい何をやらかしたんだよおまえは」

兄「何って・・・・・・何もしてねえよ」

兄友「嘘付け。何もなくて俺たちが隣の車両に追い出されるようなことになるわけねえだろ」

兄「本当だって」

兄友「おまえ、まさか妹ちゃんを無理やり」

兄「・・・・・・」ボカスカ

兄友「だから無言で殴るのはやめろ。じゃあ、何で妹ちゃんがあんなに悩んで、幼馴染もあんなに真剣に受け止めたんだよ」

兄「だから知らねえって(あ・・・・・・。もしかして)」

兄友「うん? 今おまえ何か思い当たることがあったろ」

兄「うーん」

兄友「白状すれば楽になるぞ」

兄「まあ、勘違いかもしれないけどさ」

兄友「もったいぶらずにさっさと話せ」

兄「昨日妹とスーパーで買い物してた時に、同じクラスの女と会ってさ」

兄友「女って、あああの可愛い子ね」

兄「まあ確かに可愛いんだけどさ。ちょっと暗くね? あいつ」

兄友「まあいつもぼっち飯だよな。」

兄「そんでスーパーであいつが財布落としたんで拾ってやったんだけどよ」

兄友「うん」

兄「そしたらあいつ」


回想

?「兄君?」

兄「・・・・・・え? あ、女さん」

妹「・・・・・・」

女「兄君、さっきはありがと。あたし慌てちゃってちゃんとお礼言えなくて」

兄「え? さっきありがとうって言ってくれたじゃん(やっぱり女って可愛いよな。何でぼっちなんだろう。これで変ったこととかしなきゃ学校でリア充確定だろうに)」

女「とにかくちゃんとお礼言いたくて。ありがとう、さっきはパニックだったから本当に助かったよ」ニコ

兄「・・・・・・よかったね(笑うと更に可愛いな)」

女「兄君ってこれまでお話したことなかったね」

兄「そうだな(つうかおまえ誰とも話ししたくないオーラ出してたじゃんか)」

女「これからは教室で話しかけてもいいかな」

兄「ああ、当たり前じゃんかクラスメートなんだし(何々? フラグなのか? フラグ立ったのか?)」

女「よかった。これからはよろしくね」ニコ

回想終了
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/05(日) 22:59:34.75 ID:AKymYdgWo
兄友「ほう。女がおまえのともっと仲良くなりたいと言ったわけだ」

兄「そうじゃねえよ。普通に学校で話しかけてもいいかって聞かれただけだろうが」

兄友「そんなこと一々確認するやつなんていねえよ。わざわざそんなことを言うのには訳があるんだよ」

兄「訳って何だよ」

兄友「おまえに意識させたいんだろ? 自分のことを」

兄「考えすぎだろ? それって」

兄友「ああ、いいよなあ。持てる男はよ。妹ちゃんからはヤンデレ気味なほど愛されているのに今度はクラスの謎の美少女から好意を寄せられるなんてよ」

兄「(本当に女って俺に好意があるのかな)おまえにだけは言われたくねえよ」

兄友「え? 何でだよ」

兄「(俺の幼馴染といい雰囲気のくせしやがって)うるせえな。何でもねえよ」

兄友「おまえ何勝手に切れてんだよ。訳わかんねえよ」

兄「おい駅に着いたぞ。早く降りようぜ」

兄友「誤魔化しやがった、こいつ」

幼「兄、ちょっとこっちに来なさい」

兄「・・・・・・何だよ」

幼「兄友は妹ちゃんを教室まで送って行って。あたしはこいつに少し話しがあるから」

兄友「話ってもう始業時間まであまり時間ねえぞ」

幼「すぐ済むよ。あんたはとにかく妹ちゃんを連れて行って」

兄友「お、おう。妹ちゃん、教室まで送ってくよ。行こう」

妹「はい」

兄(妹のやつ。俺の方をちらりとも見やしねえ)

幼「・・・・・・兄、ちょっとこっち来て」

兄「どこ行くんだよ」

幼「いいから着いて来て」ギュ

兄「(え? 幼馴染が俺の手を握った? いったい何だよ」ドキドキ

幼「うるさい!」

兄友「・・・・・・」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/05(日) 23:01:44.06 ID:AKymYdgWo
中庭


幼「ここでいいわ」

兄「・・・・・・あと15分くらいでホームルーム始っちゃうんだけど」

幼「・・・・・・あんたさ、何考えてるのよ」

兄「いきなり何だよ。わけわかんねえよ」

幼「妹ちゃんの気持ちとか、あんた真剣に考えたことあるの」

兄「おまえ、何言ってるの?」

幼「あたしは引っ越すまではあんたたちの隣の家でずっとあんたと妹ちゃんを見てきたんだよ」

兄「・・・・・・うん」

幼「だから、妹ちゃんのあんたへの気持ちはあたしが一番良くわかってる」

兄「・・・・・・」

幼「あれだけ一途にあんたのことを慕っている妹ちゃんの気持ちを何で弄んだりできるの?」

兄「ちょっと待て」

幼「・・・・・・何よ」

兄「俺が妹の気持ちを弄ぶってどういうことだよ」

幼「だってそうでしょ。妹ちゃんから聞いたけど、昨日だって女さんと妹ちゃんの前で見せつけるようにイチャイチャしてたんでしょ」

兄「ち、違うよ。おまえそれ何か誤解してるぞ」

幼「・・・・・・あまつさえ、」

幼「妹ちゃんが嫉妬したり怒ってる時、あんたはすぐに妹ちゃんの手を握ったり肩を抱いたりあーんしたりとか、そういう姑息な肉体的な接触で妹ちゃんを惑わせてるって話じゃないの」

兄「あのさあ・・・・・・女の財布を拾ってやった俺に、女がお礼を言っただけなんだぜ」

幼「・・・・・・だけど」

兄「だけどじゃねえよ。おまえ、妹のことを心配してるふりをして俺に言いたいことを言ってるだけじゃねえか」

幼「・・・・・・」

兄「本当は俺のことが気に入らないだけなんだろ? だったら俺に話しかけるな」

幼「ち、違う」

兄「兄友と二人で仲良くしてればいいじゃねえか。何で俺のことなんかそんなに構うんだよ」

幼「・・・・・・」

兄「気に入らなけりゃもう俺には話しかけないでくれ」

幼「・・・・・・何で」

兄「何でじゃねえよ。おまえは大好きな兄友のことだけ気にしてりゃいいだろ。もう俺と妹のことは放っておいてくれよ(俺何でこんなにエキサイトしてるんだろ)」

兄(兄友とべったりな幼馴染への嫉妬か)

幼「・・・・・・」

兄「(情けねえな俺)じゃ、もう行くから」

幼「あ・・・・・・」

兄「おまえも早く行かないと遅刻するぞ」

幼「・・・・・・」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/05(日) 23:15:19.29 ID:AKymYdgWo
教室内


?「兄君」

兄「え」

女「おはよう。昨日はありがとね」ニコ

兄「あ、女さんおはよう(微笑むと可愛いな)」

女「兄君、大丈夫?」

兄「大丈夫って何が」

女「何か一日の始まりから消耗してるって感じ」

兄「ああ。ちょっと登校中にいろいろ会ってね」

女「幼馴染さんと喧嘩でもした?」

兄「(え? 何でこいつそんなこと知ってるんだよ)いや、そんなじゃねえけど」

女「何であたしなんかがそんなこと知ってるんだよって、今考えたでしょ」ニコ

兄「いや。でも何でそう思ったの?」

女「あたし、ぼっちだからさ」

兄「え?」

女「やることないし、自然とみんなのこと観察するようになっちゃってね」

兄「ぼっちって・・・・・・。女って自分から一人を選んでる感じだけどな。その気になれば友だちできるだろうに(こんなに可愛いんだしな)」

女「あたしのことはいいの。それよか幼馴染ちゃんって兄君のこと好きなんだね」

兄「(!!!!!!)な、何言って」

女「友達がいないっていいこともあってさ、人間関係がフラットに見えるって言うか」

兄「はあ?」

女「要は中立的な立場で観察するとわかることもあるってこと」

兄「・・・・・・ここだけの話だけどさ(俺話すようになったばっかの女に何語ってるんだろ))

女「うん」

兄「幼馴染には好きな相手がいるの」

女「・・・・・・兄友君、それ違うから」

兄「え?」

女「兄友君は幼馴染さんのこと好きだと思うけど、幼馴染さんの好きな人は兄君だよ」

兄「・・・・・・」

女「兄君?」

兄「・・・・・・おまえ何者なの?」

女「ぼっちの生徒」

兄「とにかくあの二人は相思相愛なの! 余計な波風立てるな」

女「そんなことするわけないじゃん。あたしは観察してるだけだもん」

兄「・・・・・・何でそんなに人のことに興味あるの? 自分は人と関らないようにしてるくせに」

女「関らないようにはしてないよ。相手されないだけで」

兄「嘘付け。おまえくらい可愛ければその気になれば友だちだって取り巻きだって彼氏だってできるだろう」

女「それはそうかもね」フフ

兄「(何か怖いなこいつ)先生来たぞ」

女「そうだね」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/05(日) 23:15:49.61 ID:AKymYdgWo
今日はここまで

また投下します

おやすみなさい
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/05(日) 23:54:30.42 ID:BqPeb4ueo
こっちもまた複雑な人間関係になりそうで……
乙!
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/06(月) 11:04:56.29 ID:YRveSkyDO
乙、今気づいた
両方楽しみにしてる!
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/06(月) 23:48:47.79 ID:m6rj4fZwo
授業中


兄(何だったんだろういったい)

兄(幼馴染は何で俺のことあんなに怒ったんだろうな。妹の気持ちを弄ぶって言ってたけど、さっきのはほとんど言いがかりだよな)

兄(確かに妹って感じやすいというか、俺の行動を深読みしすぎて勝手に傷付いたりするところはあるけどさ)

兄(今回の件は完全に濡れ衣だろうが。妹だって俺が少し優しくすれば忘れてくれるくらいのことだったのに、幼馴染が俺と妹の間に入って事を大げさにしているとしか思えねえ)

兄(つうか妹より幼馴染の方が女のこと気にしてるとしか思えないんだけど)

兄(・・・・・・兄友とのことがなきゃ幼馴染は俺に気があるんじゃないかと誤解するようなレベルの干渉だよな、あれって)

兄(そう考えるとさっきの俺の態度は間違っていない。だいたい幼馴染の方が俺の気持ちを弄んでんじゃねえか)

兄(それにしても・・・・・・)

兄(女ってわかんねえよな。ぼっちだからコミュ障だと思ってたらあんなにはっきりと自分の考えを話せるしさ)

兄(そもそも俺に対してあれだけ行動できるんなら、ぼっちになる理由なんてないよな。あいつ、やっぱり自分から同級生との関りを避けているとしか思えねえじゃんか)

兄(じゃあ、何で急に俺に近づいてきたんだろ。たかがスーパーで財布を拾ってやったくらいでさ)

兄(・・・・・・それにしても最近、妹とも幼馴染とも会話がかみ合わないことが多いけど)

兄(さっきの女との会話は見事にかみ合っていたな。だからどうということはないけど)

兄(何かあいつとは相性がいいのかもしれん)

兄(そういやあいつ、幼馴染は兄友じゃなくて俺のことが好きだって言ってたな)

兄(・・・・・・)

兄(まあ、その辺はあまり真面目に受け取ると自分が傷付くだけだからあまり考えないようにしよう)

兄(それにしても女って可愛いよな。普通ぼっちのやつに可愛い子なんていないし、ましてはきはきと喋れる頭のいいぼっちがいるなんて考えたことなかったけど)

兄(あいつ、成績も結構いいしな。そういうところもあって、クラスで孤立はしてるけどいじめられたりしないんだろうか)

兄(可愛くて頭も良くてはきはきしているぼっちか)

兄(何かピンとこねえ。つうか)

兄(俺、何で女のことばっか考えてるんだろ)チラ

兄(・・・・・・また机の下に隠してスマホ弄ってる)

兄(ネットでも見てるのかな)

兄(・・・・・・)
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/06(月) 23:50:55.87 ID:m6rj4fZwo
昼休み


兄友「おい」

兄「うん? どうした」

兄友「」何かよくわかんねえんだけど」

兄「何だよ?」

兄友「さっきの休み時間に、おまえあての伝言を預かってよ」

兄「伝言って誰から?」

兄友「幼馴染」

兄「・・・・・・何だって?」

兄友「俺が言ってるんじゃねえからな。あくまで伝言だぞ伝言」

兄「わかったよ。で?」

兄友「そのまま伝えるとだな・・・・・・『今日はあたしと妹ちゃんと二人で食事するから兄は邪魔しないで』ってよ」

兄(妹も幼馴染もガキの嫌がらせかよ。むかつく)

兄友「そういうわけだ。あ。俺は伝えただけだからな」

兄「わかってるよ。じゃあ、二人で学食でも行くか?」

兄友「悪い。俺昼休み、佐々木に呼び出し食らってるんだよな」

兄「先生に? おまえ何かやらかしたの?」

兄友「違うって。ちょっといろいろあってな」

兄「・・・・・・ちょっとなのかいろいろあるのかどっちだよ」

兄友「細かいところに突っ込むなよ。じゃあな」

兄「ああ。またな」

兄(妹のやつ。嫌がらせにもほどがあるだろ。今日弁当がないならないって朝に言えよ)

兄(俺が何をしたって言うんだよ)

兄(・・・・・・まあ、仕方ない。弁当がない以上学食か購買にでも行くしかないな)

兄(あれ、女がこっち見てる)
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/06(月) 23:54:41.30 ID:m6rj4fZwo
女「兄君」

兄「お、おう(こいつと話すと周りの目が結構気になるな。絶対俺たちの方を気にしてるよな、みんな)」

女「今日は妹さんと一緒にお昼食べないの」

兄「う、うん。あいつ今日はお弁当作らなかったみたいで」

女「じゃあ兄君、学食行くの?」

兄「学食か購買か空いている方にしようかと」

女「よかったら一緒にお昼食べない?」

兄(え?)

女「本当によかったらだけど・・・・・・今日お弁当作りすぎて来ちゃったから。よかったら食べてくれない?」

兄「(何? このギャルゲのテンプレ設定みたいな状況)いいの?」

女「残すのももったいないしね」ニコ

兄「(やっぱ笑うと可愛いな)えーと」

女「迷惑?」

兄「んなことねえけど」

女「じゃあ、中庭に行こう」

兄「・・・・・・うん」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/06(月) 23:55:11.99 ID:m6rj4fZwo
中庭


女「出遅れちゃったけどそこのベンチが空いてるね」

兄「うん」

女「じゃあ、食べようか」

兄(何だ? 何かやたら豪華なお弁当が出てきたな)

女「よかったらどうぞ。これ、お箸ね」

兄「あのさ」

女「うん?」

兄「何かお花見の弁当みたいな重箱入りの弁当だけど、いつもこんなもの学校に持ってきてるの?」

女「今日はたまたま。作りすぎちゃったって言ったじゃん」

兄「これ全部自分で作ったの?」

女「うん」

兄「すげえ」

女「・・・・・・別にそんなことないよ」

兄「(あ、赤くなった)じゃあ、せっかくだから頂こうかな」

女「余っても捨てるだけだし、いっぱい食べてね」

兄(さっきまでの妹と幼馴染は考え過ぎ思い込み過ぎだったけど、さすがにこの状況をあいつらに見られたら・・・・・・)

女「・・・・・・どうしたの?」

兄「あのさ、おまえさ」

女「うん? 食べないの?」

兄「食べるけど・・・・・・。それよかおまえ何で急に俺に近づいたの? 今まで俺たちって話もしたことなかったじゃん? たかがスーパーで財布拾ったくらいで、何でお昼一緒にとか言い出した?」

女「・・・・・・何でって。迷惑だった?」

兄「迷惑じゃねえよ。むしろ友だちが増えて嬉しいけどさ」

女「じゃあ、いいじゃん。兄君、好き嫌いある?」

兄「特にないな(質問に答えねえなあ、こいつ)」

女「じゃ、煮物をどうぞ。京野菜を使ってるのよ」

兄「・・・・・・」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/06(月) 23:56:13.90 ID:m6rj4fZwo
今日も短かくてすいません
平行しているスレが終了したら投下量も増えると思います

ではおやすみなさい
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/07(火) 00:13:04.98 ID:Qo/k7eDoo
まだまだ何が起こるかわからなくて楽しみ
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/07(火) 02:25:34.96 ID:pFCK6B4uo
オラワクワクしてきたぞ!
乙!
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/07(火) 23:48:30.13 ID:JWhLMdQYo
放課後


兄(今日という今日は本気で怒ったからな。妹にも幼馴染にも)

兄(俺には何も後ろめたいことはない。それなのに何だよ、あいつら)

兄(昼は俺には直接何も言わずに仲間はずれにするし、だいたい今日俺、金持ってきてなかったんだよな)

兄(偶然女が作り過ぎたっていう弁当を分けてくれたからよかったけど、下手したら昼飯抜きになるとかじゃねえか)

兄(ふざけんな、俺はおまえらの奴隷じゃないって言うの)

兄(よし決めた。今日は昼に妹と会えなかったから放課後の約束もしてねえし)

兄(勝手に帰っちまおう。あと帰ったらカップヌードルで夕飯も済ませちゃおう。妹の飯なんか誰が食ってやるもんか)

兄(よし、妹に会う前に帰ろ)

幼「兄、ちょっといい?」

兄「(うるせえ)」ムシ

幼「・・・・・・え?」

兄友「おい、幼馴染がおまえを呼んでるって」

兄「俺、今日はもう帰るから」

幼「兄、ちょっと話が」

兄「・・・・・・」

兄友「おい、ちょっと待てよ」

幼「・・・・・・」

?「あ、兄君さよなら」

兄「え? ああ、女。またな。つうかお昼ありがとな」

女「別にいいよ。また食べてくれる?」

兄「おお。作りすぎちゃった時はいつでも声かけてよ」

女「うん、そうする。じゃあね」

兄「おう、またな」

幼「・・・・・・」

兄友「幼馴染? どうかした?」

幼「・・・・・・ちょっと待ってよ、兄」

兄友「・・・・・・」

兄「(おまえとも妹とも話すことなんかあるか)じゃあな。兄友」

兄友「おい待てって・・・・・・」

兄「また明日な」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/07(火) 23:50:06.80 ID:JWhLMdQYo
帰宅後


兄(今日も両親は帰って来ない)

兄(いつもなら妹と一緒に帰りに買い物して、帰宅後妹が夕飯作るんだが)

兄(・・・・・・俺は今日は本気で怒っている)

兄(まず女の件については、文句を言われるようなやましいことは少しもない)

兄(それに仮に何かやましい気持ちがあったとしてもだ)

兄(少なくとも兄友といい雰囲気の幼馴染にそれを咎められる筋合いはない。あいつ、妹のことを心配するふりしやがって)

兄(おまえは兄友と仲良くしてりゃいいじゃんか。何で俺と妹の仲に口を挟む)

兄(人の気持ちも知らないで)

兄(あと妹も妹だよ。どんな相談を幼馴染にしたんだか知らねえけど)

兄(あいつ朝、俺の分の弁当も用意してたじゃねえか)

兄(それを何だよ。大方幼馴染の口車に乗せられたんだろうけど)

兄(まあ、いつも一緒に帰ってるのに今日は妹を学校に置いて帰ったし、少しは反省するだろうけど)

兄(今日は妹の夕飯なんか意地でも食いたくないから、カップラーメンでも食ってすぐ寝てしまおう)

兄(・・・・・・)ガサゴソ

兄(・・・・・・こういうときに限ってカップラーメンとか冷凍食品とかインスタント食品とかが何もない)

兄(今からコンビニ・・・・・・面倒だし妹と出合ったら嫌だしな)

兄(ピザでも取るか・・・・・・いやいくらなんでもそれは無駄遣い過ぎるな)

兄(もう寝ちゃおうか。幸い昼間に女の弁当をたくさんご馳走になったからそんなに腹減ってねえし)

兄(妹と顔を会わせるのも面倒だしそうしよう)
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/07(火) 23:52:47.04 ID:JWhLMdQYo
深夜


兄(・・・・・・うん?)

兄(今何か物音がしたな)

兄(せっかく空きっ腹を誤魔化して眠れたのに)

兄(いったい何の音だろ。妹がトイレにでも行ったのか)

?「・・・・・・いちゃん」ボソ

兄「! 妹!? おまえ俺の部屋に座りこんで何してるんだよ」

妹「・・・・・・めん」シクシク

兄「ああ? 聞こえねえよ。何でおまえが俺の部屋に夜中に座りこんでんのかって聞いてるんだよ」

妹「お兄ちゃん・・・・・・今日はごめんなさい」ヒック

兄「・・・・・・おまえ泣いてるの?(いったい何だ)」

妹「ごめんなさい、お兄ちゃん。今日お腹空いたでしょ。あたしが悪かったの」

兄「・・・・・・」

妹「今日夜は何も食べてないんでしょ?」

兄「食ってねえけど」

妹「・・・・・・ごめん」ヒックヒック

兄「・・・・・・とにかく泣き止めよ」

妹「・・・・・・うん」ヒック

兄「で? 何で今日俺と昼飯食わなかったの?」

妹「お兄ちゃんが」

兄「ああ?」

妹「お兄ちゃんがいい気になって浮気とかしてそうだから懲らしめるって」

兄「・・・・・・おまえさ」

妹「朝の電車でお姉ちゃんにそう言われたの。少し思い知らせてやった方がいいよって」

兄「(やっぱり幼馴染の差し金か)それで?」

妹「お昼もお兄ちゃんを誘わないで食べようって。寂しく学食で一人で食事させれば少しは懲りるよってお姉ちゃんが」

兄「・・・・・・それで?」

妹「・・・・・・それでって。あたしお昼にお兄ちゃんと会えなくてすぐ後悔して」

兄「・・・・・・」

妹「それでお姉ちゃんに謝って、やっぱりお兄ちゃんにお弁当を渡すだけでもしてきますって言って」

兄「・・・・・・」

妹「そしたらお兄ちゃん中庭で」

兄「(あ)中庭で俺が女と昼飯食ってたとこ見たということか」

妹「・・・・・・あ、あの。うん」オドオド

兄「それで早速幼馴染に言いつけたってわけか」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/07(火) 23:54:23.94 ID:JWhLMdQYo
妹「それはそうなんだけど」

兄「うん?」

妹「それはお兄ちゃんがあたしとかお姉ちゃん以外の人と二人きりでいたのはショックだったけど」

兄「それで?」

妹「でも・・・・・・あたしが悪かったんだし。お兄ちゃんのせいじゃないと思ったから、そうお姉ちゃんに言ったの」

兄「そしたら?」

妹「お姉ちゃんは、あたしがお兄ちゃんを甘やかし過ぎだって」

兄「・・・・・・何だよそれ」ムカ

妹「そんなことないよってお姉ちゃんに言ったの。あたしがヤキモチ焼き過ぎっていうか、お兄ちゃんに依存し過ぎてるからだって」

兄「・・・・・・(自分のこと良くわかってんじゃねえかこいつ)そうか」

妹「お兄ちゃんごめんなさい。もうしないからあたしと仲直りして」グス

兄ハァ

兄「俺さ、昼飯はおまえが用意してると思ってたから金とか全然持ってなくてさ」

妹「・・・・・・うん」

兄「学食にも購買にも行けねえし、そんでそん時に女が見かねて声をかけてくれたんだけどさ」

妹「・・・・・・」

兄「昼飯も食えない俺が、女のその誘いに乗ったことで責められなきゃいけねえわけ?」

妹「だからあたしはそんなこと思ってないよ。お昼だってあたしだけ食べたらお兄ちゃんに悪いと思って全部捨てちゃったし」

兄「え?」

妹「・・・・・・ごめんねお兄ちゃん」

兄「おまえ、夕飯は食ったの?」

妹「お兄ちゃんも食べてないんでしょ」

兄「何もなかったから食ってねえ」

妹「そうだと思ったからあたしも食べてない」

兄(こいつは本当にしょうがねえやつだな)

兄(でも二人きりの兄妹だしな。客観的に見て幼馴染に炊きつけられた感じだし)
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/07(火) 23:55:43.66 ID:JWhLMdQYo
兄「あのさあ」

妹「・・・・・・うん」

兄「もういいよ。今日のことは忘れたから」

妹「・・・・・・ほんと?」

兄「ああ。本当。おまえ朝飯か食ってないんだったらこんな時間だけど何か食った方がよくねえか」

妹「お兄ちゃんは?」

兄「もう遅いからいい。俺は昼は食ったし」

妹「じゃあ、あたしもいい」

兄「・・・・・・」

妹「・・・・・・」

兄「・・・・・・久しぶりに一緒に寝るか?」

妹「・・・・・・いいの?」

兄「うん。仲直りしたことだしな。俺の横に来るか」

妹「うん」グス

兄「もう泣くなって。電気消すぞ」

妹「はい」

兄「明日は弁当頼むぞ」

妹「わかった。買い物はしてあるから大丈夫だよ」

兄「おまえ、ベッドから落ちるからもっとこっちに来な」

妹「ありがと・・・・・・」ギュ

兄「・・・・・・お休み」

妹「お休みなさい」ギュ
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/07(火) 23:56:11.91 ID:JWhLMdQYo
今日も短いけどここまで

駄文にお付き合い感謝です

お休みなさい
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/08(水) 11:49:17.42 ID:JmcPW3EVo
相関感情がなかなか見えてこないぐぬぬ
乙!
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 12:32:06.68 ID:EYZI3jVSO
妹スレから

幼馴染が妹を惑わせるなと言った時は幼馴染はアホな子なのかと思ったけど
一緒に寝ようかと妹に言っちゃうのを見ると幼馴染は間違ったこと言ってないな

つか心理描写のある兄の行動原理が一番謎っつーのがなんとも
天然ジゴロなのかね
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 17:39:05.14 ID:DS7LTBqDO
妹スレから
兄とは羨ましい生き物なんだな
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/02/12(日) 17:45:13.56 ID:7DOxGzZ8o
今回泣きを見るのは誰になるだろね
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/12(日) 22:31:04.47 ID:xmvICZa1o
翌土曜日


妹「お兄ちゃん」

兄(・・・・・・うん? 何かいつもの朝より妹の声が間近で聞こえる)

妹「もう10時過ぎてるよ。いくら休みだってそろそろ起きてよ」

兄「(な、何だ?)うーん」

妹「・・・・・・お兄ちゃん」チュ

兄「(!!!)お、おまえ何してるんだよ」

妹「あ、起きた」

兄「・・・・・・おまえ、何で俺の隣に寝てるの?(どおりでこいつの声が近くで聞こえたわけだ))

妹「お兄ちゃんが昨日一緒に寝ようって言ってくれたから」

兄「(あ、そうだった。昨日こいつと仲直りしたんだった)そうか」

妹「お兄ちゃんを起こしたくないから起きてからずっと静かにしてたんだけど、さすがにもう起きないと」

兄「でも今日は学校休みじゃん」

妹「お母さんたちがいないからいろいろ買い物とかもあるし」

兄「そうか」

妹「ずっとこのままお兄ちゃんの隣で寝ていたいけど、あたしはお買い物に行ってくるね」

兄「そうか。そうだよな」

妹「お兄ちゃんは眠いなら、今日土曜日だしもう少しこのまま寝てていいよ」

兄「・・・・・・」

妹「お昼ごはんでできたらまた起こしてあげるから」

兄(ちょっと昨日はこいつに辛く当たっちゃったな。俺こいつがいないと生活すら危ういほどこいつに頼りきっているのに)

兄(だいたい幼馴染の差し金でこうなったんだよな。妹は昔から幼馴染と仲がいいからな)

兄「(よし)俺も起きるよ。一緒に買い物に行くか。荷物運びくらいはするからさ」

妹「いいよ、別に。お兄ちゃんは寝てて」

兄「・・・・・・俺と一緒に買い物に行きたくない?」

妹「・・・・・・そんなことあるはずないじゃん」ギュ

兄「うん」ギュ

妹「・・・・・・お兄ちゃんの体温かい」

兄「よし。これで本当に仲直りだな。着替えて出かけるか。昨日夕飯食わなかったからさすがに腹減ったな。どっかで朝飯食おうぜ」

妹「うん・・・・・・お兄ちゃん」グス

兄「・・・・・・だからもう泣くなって」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/12(日) 22:34:16.19 ID:xmvICZa1o
ショッピングモール


兄「もう11時過ぎか。どっちかって言うと朝飯というより昼飯の時間になっちゃったな」

妹「そうだね。お腹空いた」

兄「おまえは昨日の昼から何も食ってないしな」

妹「そう言えばそうだった」

兄「買い物する前に昼飯食うか。俺も腹へったし」

妹「うん」

兄「どこにする? おまえが行きたいとこでいいよ」

妹「・・・・・・どこでもいい。おにいちゃん決めて」

兄「・・・・・・なあ」

妹「うん」

兄「もう怒ってねえから。仲直りしたんだからいつもみたいにあれが食いたいとか言えよ」

妹「・・・・・・」

兄「な?」

妹「・・・・・・うん」ニコ

兄「じゃあどうする?」

妹「あのね、前にお姉ちゃんに教わったんだけど、このモールの中に美味しいパスタ屋さんが出来たんだって」

兄「(ようやくいつも妹に戻ってくれたか。にしても幼馴染のお勧めの店かよ)いいよ。そこに行こうか」

妹「でも、いつも混んでるから並ぶって言ってたけど、いい?」

兄「おまえが空腹を我慢できるなら別にいいよ」

妹「じゃあ、行こ。7階にあるんだって」

兄「うん」


パスタ屋の前


妹「思っていたより並んでないね。これならあまり待たないんじゃない?」

兄「よかったよ。もう腹減って倒れそう」

妹「大袈裟だよお兄ちゃん」

兄「だって本当に腹減って(・・・・・・ってあれ? 店の中に幼馴染と兄友がいるじゃん)」

妹「お兄ちゃん、どしたの?」

兄「・・・・・・いや(あいつらやっぱりもう付き合ってるのか。休日に二人で食事してるんだもんな)」

妹「あ、順番が来たよ」

兄「ああ(窓際の方に案内されてるな。あいつらと顔合わせたくないのに)」

妹「あ、お姉ちゃんだ」

兄(あーあ)

妹「兄友さんと二人なの?」

兄「・・・・・・みたいだな」

妹「声かけない方がいいかな」

兄「そうだな。邪魔しちゃ悪いしな(よかった)」ホッ
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/12(日) 22:36:53.65 ID:xmvICZa1o
兄「なあ」

妹「何食べるか決まった?」

兄「メニューがよくわかんないんだけど」

妹「え?」

兄「写真がついてないからどんなパスタなのか全然わからん」

妹「・・・・・・何食べたいの?」

兄「ミートソース」

妹「またそれ?」

兄「いいじゃん、好きなんだから」

妹「それならメニューの上のほうにあるでしょ」

兄「ないぞ」

妹「あるよ。上から四つ目に」

兄「・・・・・・これミートソースじゃねえだろ」

妹「ボロネーズって言うのはミートソースのことなの!」




?「いい加減にしてよ! さっきからネチネチと。そんなんじゃないって言ってるじゃない!」




兄(え?)

妹「・・・・・・お姉ちゃん」




幼「いったいさっきから何言ってるのよ! あたしは兄のこと何か全然気にしてないのに、あんたの方が兄のことばっかり気にしてるんじゃないの」

兄友「そうじゃねえよ。ただ俺は。おまえがあいつのことを」

幼「兄には妹ちゃんがいるの! あの二人は昔から両親がほとんど家にいなくてずっと二人きりで寄り添って暮らしてきたんだよ。あたしがそれを応援してるのがそんなに気に食わないの?」

兄友「だからそうじゃないって。おまえが妹ちゃんを気にするのはいいよ。でもよ、それとは別におまえ兄のこと気になってるだろ」

幼「・・・・・・」ニラミ

兄友「昨日だってそうじゃねえか。兄とクラスの女が一緒にいただけで逆上してだろ」

幼「だからそれは妹ちゃんが可愛そうで」

兄友「それだけには見えなかったけどな、俺には」

幼「・・・・・・もういい。あたし帰る」

兄友「おい」

幼「じゃあ。これであたしの分払っておいて」

兄友「おい、ちょっと待てって!」

兄友「・・・・・・」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/12(日) 22:40:46.06 ID:xmvICZa1o
兄「(店から出て行った幼馴染を兄友が追いかけて行ってしまった)あれって」

妹「・・・・・・うん」

兄「何か痴話げんかみたいだな(俺が原因? まさかな)」

妹「お兄ちゃん」

兄「うん(妹のやつ何で顔赤くしてるんだ?)」

妹「お姉ちゃんの言ってたことあまり真面目に受け取らないでね」

兄「え」

妹「・・・・・・だから、あたしとお兄ちゃんのこと」

兄(あ)





幼「兄には妹ちゃんがいるの! あの二人は昔から両親がほとんど家にいなくてずっと二人きりで寄り添って暮らしてきたんだよ。あたしがそれを応援してるのがそんなに気に食わないの?」





妹「あたしさ」

兄「・・・・・・うん」

妹「あたしはお兄ちゃんのこと大好きだけど、別にお兄ちゃんをあたしに縛りつけようとか思ってないから」

兄「おまえ、何言ってんの?」

妹「だから・・・・・・あたしはお兄ちゃん子でブラコンだけど、お兄ちゃんの恋愛まで邪魔はしないから」

兄「・・・・・・」

妹「それは嫉妬しちゃうこともあるけど、基本はお兄ちゃんのこと応援してるんだからね」

兄「・・・・・・ああ」

妹「うん」

兄「わかったよ。ありがとな」

妹「大切なお兄ちゃんだからね。恋愛のアドバイスくらいならしてあげるからね」

兄「調子に乗るな」

妹「へへへ」

兄「それにしてもあいつらって付き合ってるのかなあ」

妹「さあ? お姉ちゃんは何も言ってなかったけど。でもお姉ちゃんと兄友さんいつも一緒だったしね」

兄「そうだな(それにしても兄友も見当違いの嫉妬をするもんだ)」

兄(幼馴染が俺のことを気にするわけないじゃんか)

兄(俺だって昔から俺なりに頑張って幼馴染にアプローチしてきたけど、あいつは全く俺なんか相手にしなかった)

兄(それが引越しして同級生の兄友の家の近くになってからはどうだよ。俺なんか全く相手にしないで兄友と毎日ベタベタしてるしな)
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/12(日) 22:43:40.80 ID:xmvICZa1o
妹「やっぱりお姉ちゃん、兄友さんよりお兄ちゃんのことが気になってるのかなあ」

兄「へ?」

妹「前から気がついてはいたんだけどね」

兄「お、おまえ何言ってるんだよ」

妹「鈍いお兄ちゃんは気がついていなかったでしょうけど、お姉ちゃんってお兄ちゃんのこと時々じっと見つめてるしね」

兄「そんなわけあるか。だいたいそれなら何でおまえは今までそのことを黙ってたんだよ」

妹「敵に塩を送るわけないじゃん」

兄「・・・・・・おまえなあ。俺の恋愛を邪魔しないって言ったばっかだろ」

妹「邪魔はしないよ。聞かれればアドバイスもしてあげる。でも頼まれてもいないのに恋の橋渡しなんてする必要ないでしょ」

兄「・・・・・・まあ、おまえの勘違いだろうけどな」

妹「どうかなあ。あたしにも確信はないけどね。でも、わけわかんない女さんなんて人にお兄ちゃんを取られちゃうくらいなら、いっそお姉さんに取られた方が」

兄「よくも知りもしないくせに女の悪口言うな」

妹「え」

兄「あ・・・・・・いや」

妹「冗談だよ。ごめん、お兄ちゃん」

兄「いや、もういいよ(何で俺いま女の悪口聞いてエキサイトしちゃったんだろ)」

?「ご注文はお決まりですか」

妹「はい。ジェノベーゼをひとつと」

兄「ミートソースをください」

妹「ジョノベーゼとボロネーズを一つずつお願いします」

?「かしこまりました」

妹「ねえ」

兄「何だよ」

妹「本当に女さんのことは何とも思ってないの?」

兄「・・・・・・」
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/12(日) 22:47:28.64 ID:xmvICZa1o
本日はここまでです。平行して投下していたスレが終了していたので、しばらくはこのスレに専念しようと思います

妹スレから来てくれた人への注意:あのスレみたいに視点を次々に切り替えるとかそういうギミックな技法はこちらでは予定しておりません。また、サスペンスな内容もないです

それでも良ければしばらくお付き合いいただけると嬉しいです

ではおやすみなさい
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/02/12(日) 23:02:20.80 ID:7DOxGzZ8o
おつおやすみ

妹手握がサスペンス……だと……
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/02/13(月) 07:29:51.36 ID:QUJ2kvMLo

こんだけブラコンだとパラレルに思えてきた
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/13(月) 07:58:04.76 ID:J/Nkk15IO
乙乙。今度は妹女幼馴染の三択ですかい。
なんでこう毎回主人公がモテるかねえ。
いや別に爆発しろとか氏ねとか思ってないよ
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/02/13(月) 19:05:47.87 ID:FtD0C/DAO
こっちも応援
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/13(月) 23:28:33.95 ID:rLBp9stCo
月曜日 登校中


兄「あのさ」

妹「うん」

兄「俺少し早足で歩いていつもより一本早い電車に乗りたいんだけど」

妹「何で?」

兄「あいつらと顔あわせたくないから」

妹「・・・・・・お兄ちゃん?」

兄「ああ」

妹「お姉ちゃんのこと許してあげて。お姉ちゃんはただあたしのことを可哀想だと思ってお兄ちゃんに注意してくれたんだから」

兄「・・・・・・濡れ衣なのにな。あいつのせいで昼飯も食い損なうところだったし」

妹「お姉ちゃんは昔からあたしを応援してくれてたから」

兄「うん?」

妹「・・・・・・多分、お姉ちゃんは自分の気持ちを抑えてあたしを応援しててくれたから」

兄「何言ってるのかわかんねえよ」

妹「お姉ちゃんもきっと辛いんだと思うよ。あたし、一度お姉ちゃんとよく話そっと」

兄「(何が言いたいんだこいつ)・・・・・・とにかく俺は先に行くぞ」

妹「うん。あたしはお姉ちゃんと一緒に行くから」

兄「(こいつのことだから俺と一緒に来るかと思ったのに)そうか」

妹「うん。昨日のお姉ちゃんと兄友さんの様子も気になるし」

兄「おまえ、面白がってあいつらの仲に首突っ込むんじゃねえぞ」

妹「そんなことしないよ。あたしはお姉ちゃんのことが心配なだけ」

兄「(ま、いいか)じゃ、先に行くぞ」

妹「うん。お昼は屋上に来て」

兄「わかった。じゃあな」

妹「うん」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/13(月) 23:31:42.21 ID:rLBp9stCo
自宅最寄駅


兄(よし。一本早い電車に間に合ったぞ。ちょうど3分前だ)

兄(・・・・・・あれ? 今日も女がベンチに座ってる)

兄(・・・・・・)

兄(・・・・・・よし)

兄「よ、よう」

女「あ・・・・・・」サッ

兄「(今何か隠したな。スマホの画面?)おはよう」

女「兄君・・・・・・おはよう。兄君ってもう一本遅い電車じゃなかった?」ニコ

兄「(やっぱ可愛いな、女って)ちょっとわけがあってさ」

女「まだ幼馴染さんと仲直りしてないの?」

兄「・・・・・・何でおまえがそれを」

女「そういや妹さんもいないね」

兄「あいつは幼馴染たちと一緒に登校するってさ」

女「そうなんだ。あ、電車来たね」

兄「うん」

女「これに乗るの?」

兄「ああ」
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/13(月) 23:32:13.13 ID:rLBp9stCo
女「じゃ、一緒に行っていい?」

兄「・・・・・・おまえいつもベンチで座って、この3、4本後の電車でぎりぎりの時間に教室に駆け込んでくるじゃん」

女「・・・・・・あたしのこと、見ててくれたんだ」

兄「まあ、毎朝のことだからね」

女「見てたのはあたしの方だけじゃなかったのね」

兄「(え?)おまえ、朝いつもスマホで何かやってるけど、それはいいの?」

女「うん。別にリアルタイムである必要はないし、それに朝はレスを確認してるだけだしね」

兄「はい?」

女「何でもないよ。一緒に行ってもいい?」

兄「・・・・・・別にいいけど」

女「よかった。あ、電車来たよ」

兄「うん(こいつ俺に気があるのか)」

女「少し早い電車だと結構空いてるね」

兄「本当だ。これからはこの電車で学校に行こうかな」

女「妹さんとか幼馴染さんはどうするの?」

兄「別にどうもこうもねえよ。約束してるわけじゃねえし」

女「じゃあさ。兄君が一人のときは一緒に学校に着いて行ってもいい?」

兄「・・・・・・おまえさ」

女「うん」

兄「前にも聞いたかもしれないけど、そこまで積極的に友だち作れるのに何でクラスのやつらとは話しねえの」

女「何でって言われても。別に話すことないし」

兄「俺とは話すことあるのかよ」

女「わかんないけど、一緒にいたいとは思うから」

兄「(・・・・・・コミュ障どころの騒ぎじゃねえな。人一倍コミュニケーション取るの上手じゃねえか)わかんねえなあ」

女「ねえ」

兄「うん」

女「携帯の番号とメアド交換しない?」

兄「・・・・・・別にいいけど(何なんだ)」
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/13(月) 23:37:28.15 ID:rLBp9stCo
昼休み


兄(女と肩を並べて登校すると外野が噂するな)

兄(まあ、いつもぼっちの女が突然男と一緒に登校すれば噂されても仕方ないけど)

兄(そういや昨日女のお弁当を食った時も周りの視線が痛いほどだったしな)

兄(まあ、今日はいつものとおり妹と二人で昼飯だし、気を遣う必要はない)

兄(・・・・・・本当にそうかな。改めて考えると俺って妹にすげえ気を遣ってる気がする)

兄(今日は屋上だったっけ。妹を待たせるとまたうるせえから早く行ってよう)

兄友「ちょっと待て」

兄「何だよ」

兄友「落ち着いて聞けよ。暴力は振るうんじゃないぞ」

兄「何言ってんのおまえ」

兄友「今日の昼は幼馴染と二人で食ってやってくれ」

兄「はい?」

兄友「あいつがおまえに何か話しがあるんだって。だから頼むからそうしてくれ」

兄「よくわかんねえけど・・・・・・俺、妹を待たしてるんだけど」

兄友「そこに抜かりはねえよ。妹ちゃんにはさっきの休み時間に了解をもらっているからよ。さあ」

兄「さあ、っておまえ(あ、幼馴染だ)」

兄友「あいつもあそこで待ってるから。今日はあいつ、おまえに弁当作ってきてるからさ」

兄(おいおい・・・・・・)

兄(おまえはそれでいいのかよ。あの時)


回想

兄友「だからそうじゃないって。おまえが妹ちゃんを気にするのはいいよ。でもよ、それとは別におまえ兄のこと気になってるだろ」

幼「・・・・・・」ニラミ

兄友「昨日だってそうじゃねえか。兄とクラスの女が一緒にいただけで逆上してだろ」

幼「だからそれは妹ちゃんが可愛そうで」

兄友「それだけには見えなかったけどな、俺には」

幼「・・・・・・もういい。あたし帰る」

兄友「おい」

回想終了
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/13(月) 23:37:59.34 ID:rLBp9stCo
兄友「じゃ、幼馴染のところに行ってやってくれ。あいつも待ってるから」

兄「おい、ちょっと待てよ。おまえはそれでいいのかよ」

兄友「・・・・・・いいのかってどういう意味だよ」

兄「だっておまえら付き合ってるんだろ。何で俺と幼馴染を二人きりにしようとする」

兄友「・・・・・・付き合ってなんかねえよ」

兄「(またそれかよ。でも、おかしいな。前は『まだ付き合ってない』って言ってたのに『まだ』が無くなっちゃってるし)だから何でだよ」

兄友「あいつはおまえと仲直りしたいんだろ? 頼むからそれくらい聞いてやってくれよ」

兄「何か釈然としねえけど、おまえがそこまで言うなら」

兄友「おう。恩に着るよ」

兄「何でそこまで必死なんだよ」

兄友「別に必死じゃねえし。じゃ、俺は妹ちゃんのお弁当を頂いてくるからな」

兄「おい、ちょっと待て」

兄友「じゃあな」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/13(月) 23:43:37.63 ID:rLBp9stCo
幼「兄君」

兄「お、おう」

幼「・・・・・・お弁当作ってきたんだけど、一緒に食べてくれるかな」

兄「・・・・・・うん」

幼「じゃ、中庭でいい?」

兄「あ、ああ」

幼「・・・・・・」

兄「・・・・・・」


中庭のベンチ


幼「昨日はごめんなさい」

兄「・・・・・・もう気にしてねえよ」

幼「本当にごめん。別にあんたの私生活にあれこれ言う気はなかったんだけど」

兄・・・・・・ああ」

幼「だけど、妹ちゃんが寂しそうだったから・・・・・・ううん、違うね。正直に言うと」

兄「何だよ」

幼「あんたが女さんと仲良くしているのを見て少しむかついて、それで妹ちゃんにかこつけてあんたに文句を言ったのかも」

兄「あのなあ」

幼「・・・・・・うん」

兄「おまえ兄友と付き合ってるんじゃねえの」

幼「付き合ってないよ」

兄「昨日、ふたりで一緒にパスタ屋にいたじゃんか(あ、つい口に出しちゃった)」

幼「・・・・・・もしかして聞いてたの?」

兄「いや・・・・・・悪い、今の忘れて」
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/13(月) 23:44:45.56 ID:rLBp9stCo
幼「・・・・・・ねえ」

兄「うん」

幼「遠慮しすぎることって別に美徳でも何でもないんだね」

兄「はあ?」

幼「あんたの今の気持ちはわからないけど、中学生のころはあんた、あたしのこと好きだったでしょ」

兄「お、おまえ何言って」

幼「あたしもバカじゃないからあんたの好意には気づいてたの」

兄「おい」

幼「あんたはあの頃優しかったし、あたしが頼んだことは何でもしてくれた」

兄「・・・・・・」

幼「あたしも本当はあんたのこと好きだったから、その気持ちに応えたかったんだけど」

兄「・・・・・・」

幼「でも、ご両親がいつもいない家で、あんたに頼りきって暮らしていた妹ちゃんのことを考えると、あたしはあの時あんたの気持ちに安易に応えるわけにはいかなかったの」

兄「・・・・・・」

幼「でもあの頃から今までずっと、あたしはあんたのことを好きだった・・・・・・」

兄・・・・・・マジかよ」

幼「うん、マジ。今朝ね、電車の中で妹ちゃんにもう自分に素直になってって言われた。それで、今でも妹ちゃんはあんたのこと好きだと思うけど、もう遠慮するのは止めようって思った」

兄「(何が何だかわかんねえけど、俺の長年の想いが報われたってことだよな)

兄(・・・・・・だけど)

兄「・・・・・・兄友は?」

幼「え?」

兄「兄友はどうなるの? あいつ、一応俺の親友だし」

幼「兄友には悪いことしちゃったと思う。あんたを忘れようと彼とベタベタしたし。でも、兄友とは付き合ってはいないよ、本当に」

兄「・・・・・・」

幼「あたしはあんたのことが好き。小さい頃からずっと」

兄「・・・・・・」

幼「もう、自分に正直になるって決めたの。あたしはあんたが好きなの。あたしと付き合って」

兄「・・・・・・兄友はさ。さっき必死な顔で俺に言ったんだよな。おまえと一緒に昼休みを過ごしてくれって」

幼「・・・・・・」

兄「おまえ、あいつに何て頼んだの?」

幼「・・・・・・」

兄「今は返事できねえ」

幼「・・・・・・」

兄「少し考えさせてくれるかな」

幼「・・・・・・うん」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/13(月) 23:45:42.45 ID:rLBp9stCo
今日はここまでです

また明日投下予定です

おやすみなさい
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/13(月) 23:53:27.38 ID:xs86sU9SO


やっぱ兄の行動が一番ワケわかんねぇ
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/02/14(火) 00:15:43.65 ID:MYX3/SAHo
おつ
はてさて あるいはあれか
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/14(火) 01:20:56.40 ID:e4qRU4Oeo

前作といい今作といい、主人公が煮え切らない感じ
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/02/14(火) 07:33:27.70 ID:hW3DtJigo


兄は前作よりも共感出来る気がするけどな
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/14(火) 08:29:36.24 ID:i59SPh4DO
もやもやする作風にハマってるので
完結まで頑張って欲しい
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/15(水) 20:03:38.26 ID:H0+wUiyqo
昼休みの教室


兄(結局幼馴染と話してただけで昼飯食えなかったな。あいつとの話が終わったあとに、じゃあ、昼飯にしようかなんてとても言える雰囲気じゃなかったし)

兄(まだ昼休み終わるまで20分もあるのか。幼馴染と話が終わってすぐ教室に引き上げたからな)

兄(兄友はまだ教室に戻ってない・・・・・・あいつ屋上で妹の弁当食ってるのかな)

兄(今から屋上に行って妹の弁当を食うわけにいかねえかな)

兄(まあ二人分しか用意してねえだろうし、兄友に食われてたら俺の分なんて残ってねえか)

兄(・・・・・・)

兄(しかしどうしたもんか。幼馴染のことは今でも好きだけど)

兄(兄友の気持ちを考えると)

兄(あいつ、今日の話をわかってて俺に幼馴染と会えって言ってたのかな)

兄(とにかく兄友と話しなきゃな)

兄(・・・・・・)

兄(それにしても腹減った)

女「兄君」

兄「(女か)よう」

女「ひょっとして落ち込んでる?」

兄「別にそんなことねえけど」

女「でも酷い顔してるよ」

兄「酷い顔っておまえ・・・・・・(そうかもしれねえな)」

女「悪い。でもそんな感じする」

兄「腹減ってるだけだよ。今日昼飯食い損ねたし」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/15(水) 20:04:09.62 ID:H0+wUiyqo
女「そうか。まあ、いきなり幼馴染さんにあんなこと言われたら食欲もなくなるよね」

兄「・・・・・・おまえ、何言ってるの」

女「何って、単なる推測だけどさ。今日二人きりで中庭にいたみたいだし、妹さんと兄友君は屋上で二人きりで何だかお葬式みたいに黙りこくって食事してたしね」

兄「おまえ、ひょっとして俺たちのこと探ってるのか」

女「あたしがっていうか、兄友君声大きいしさ。昼休みのあんたと兄友君の会話ってクラスの半分くらいは気にしてちらちら見てたよ」

兄「(マジかよ)おまえもそんなとこまでよく観察してるな。よっぽど暇なんだな」

女「本当はあたし、普段は観察するというより皆に見られる人なんだけどね」

兄「ああ?  おまえちょっと自意識過剰なんじゃねえの。ぼっちなんて本人が気にしてるほど周りは気にしてねえよ。だからぼっちなんだろうが」

女「そういう意味じゃないよ。学校ではあたしが空気なのは自覚してるし、見られるっていうのは別な場所の話」

兄「(意味わかんねえ)・・・・・・おまえ、本当に変ってんのな。しつこいようだけどさ、こんだけ人と話そうと思えば話せるならクラスで友だちなんかいくらでも作れるだろうが」

女「別に不便感じてないもん」

兄「・・・・・・よくわかんねえけど」

女「兄君、結局幼馴染さんの手作りのお弁当食べなかったの?」

兄「・・・・・・」

女「お腹空いてるでしょ」

兄「まあ」

女「まだ15分くらいあるし、よかったらこれどうぞ」

兄「何? サンドイッチ?」

女「コンビニのね。手作りのお弁当には敵わないけどお腹ぐらい塞がるんじゃない?」

兄「いいの?」

女「うん。余ったやつだし捨てるよりいいし。食べて」ニコ

兄「(微笑むと本当に可愛いな。どっかのアイドルみたい。だからどうってことはないんだけど)じゃ、遠慮なく」

女「うん」
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/15(水) 20:04:41.40 ID:H0+wUiyqo
放課後


兄(よし。兄友を捕まえてあいつが幼馴染のことをどう思ってるのか問いただそう)

兄(って、兄友いねえな。さては逃げたか)

兄(授業は終わったばっかだし、まだ遠くには言っていないはずだ。追いかけるか)

兄(・・・・・・)

兄(だけど・・・・・・兄友が幼馴染のことをどう思ってるかなんて、今更聞くまでもないじゃないか)

兄(俺、兄友に何を話したいんだろう)

兄(幼馴染のことは正直これまで片思いしてきたし、幼馴染が俺のことを好きだったと聞いて舞い上がって喜びたい気持ちもあるけど)

兄(でも・・・・・・)


回想

兄友「だからそうじゃないって。おまえが妹ちゃんを気にするのはいいよ。でもよ、それとは別におまえ兄のこと気になってるだろ」

幼「・・・・・・」ニラミ

兄友「昨日だってそうじゃねえか。兄とクラスの女が一緒にいただけで逆上してだろ」

幼「だからそれは妹ちゃんが可愛そうで」

兄友「それだけには見えなかったけどな、俺には」

幼「・・・・・・もういい。あたし帰る」

兄友「おい」

回想終了


兄(それにさっきだってあいつ、俺と幼馴染のことなんて邪魔しようと思えばできたはずなのに)


回想

兄友「じゃ、幼馴染のところに行ってやってくれ。あいつも待ってるから」

兄「おい、ちょっと待てよ。おまえはそれでいいのかよ」

兄友「・・・・・・いいのかってどういう意味だよ」

兄「だっておまえら付き合ってるんだろ。何で俺と幼馴染を二人きりにしようとする」

兄友「・・・・・・付き合ってなんかねえよ」

兄「(またそれかよ。でも、おかしいな。前は『まだ付き合ってない』って言ってたのに『まだ』が無くなっちゃってるし)だから何でだよ」

兄友「あいつはおまえと仲直りしたいんだよ。頼むからそれくらい聞いてやってくれよ」

兄「何か釈然としねえけど、おまえがそこまで言うなら」

兄友「おう。恩に着るよ」

兄「何でそこまで必死なんだよ」

兄友「別に必死じゃねえし。じゃ、俺は妹ちゃんのお弁当を頂いてくるからな」

兄「おい、ちょっと待て」

回想終了


兄(まさかあいつ、幼馴染を諦めようとしてるんじゃないだろうな)

兄(・・・・・・兄友の性格なら十分ありえるな。あいつ馬鹿っぽいように見えて結構気を遣うやつだしな)

兄(そんなことを知っててまで幼馴染の想いに応えられるわけねえだろう。本当に兄友はバカだよ)

兄(とりあえず校内をうろついて兄友を探すか)
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/15(水) 20:05:11.83 ID:H0+wUiyqo
放課後の校内


兄(もう帰っちまったのかな。2年の校舎の中にはいないみたいだ)

兄(部活棟探すか? いや兄友は俺と一緒で帰宅部だしな)

兄(このまま校内をうろうろしてても見つかるわけないよな)

兄(そうだ。電話すりゃいいんじゃん)

兄(よし、携帯で・・・・・・あれ)

兄(幼馴染だ。やべ、今は顔合わしたくないな。階段の方に避難するか)

兄(誰かと話してるみたいだな。そういやここ生徒会室のあたりか)


?「・・・・・・迷惑だったら謝るよ。でも幼馴染さんのこと前から気になってたんだ。今まで君に振られるのが怖くて言えなかったけど」

幼「・・・・・・え?」

?「幼馴染さん、好きだ。僕と付きあってください」

幼「・・・・・・」

?「駄目・・・・・・かな」

幼「・・・・・・先輩」

?「・・・・・・うん」

幼「ごめんなさい。あたし好きな人がいるんです」

?「・・・・・・」

幼「先輩のこと、生徒会長としては本当に尊敬してます。でも、あたし片思いだけど好きな人がいて・・・・・・彼のこと諦められません。だからごめんなさい」

生徒会長「・・・・・・そうか。わかったよ、君を困らせて悪かった」

幼「先輩に勘違いさせたとしたら本当にごめんなさい」

生徒会長「いや。僕が勝手に思い込んだだけだから。君の好きな人って」

幼「・・・・・・あ」

生徒会長「何となくわかる気がするよ」

幼「え?」

兄(え?)

生徒会長「彼なら祝福するしかないね。僕なんかじゃ全然敵わない。彼は成績もいいしスポーツも万能だし何よりイケメンだしね」

兄(え・・・・・・はい?)

幼「え・・・・・・え?」

生徒会長「君を困らせて本当に悪かったよ。もう二度とそういうことは言わないからこれまでどおり生徒会の役員でいてくれるか」

幼「はい」

生徒会長「ありがとう。まあ、ライバルが兄友君なら負けてもしかたないか」

幼「え?」

兄(やっぱそう思われてるんだろうな・・・・・)

生徒会長「じゃあ、僕は今日は生徒会活動サボるから。振られた日くらいサボっても許されるだろう」

幼「あ、はい」

生徒会長「じゃあ、あとはよろしくね」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/15(水) 20:05:49.97 ID:H0+wUiyqo
兄(先輩は帰ってしまい、幼馴染は生徒会室に入ってしまった)

兄(・・・・・・俺、今日幼馴染に告白されたんだよな?)

兄(でも、先輩が兄友の名前を出した時、幼馴染は否定しなかった)

兄(・・・・・・)

兄(もう何が何だかわからないぞ。やっぱ兄友を探し出して問い詰めるのが手っ取り早いな)

兄(・・・・・・)

兄(・・・・・・もう今日はやめようかな)

兄(これ以上俺の紙メンタルが持ちそうにないし)

兄(情けないけど妹に会いたい・・・・・・いつもはうざい妹だけど、今日はあいつに甘えて慰めてもらいたい)

兄(妹なら何も聞かずに俺を癒してくれるだろうし)

兄(無条件で俺の味方をしてくれて無条件で俺を慰めてくれる女なんて妹くらいだし)

兄(・・・・・・)

兄(・・・・・・妹にはいつも俺依存を何とかしろって言ってるくせに、俺が妹に依存してどうするんだよ)

兄(今日はもう帰ろう)

兄(・・・・・・)

女「兄君」

兄「あ」

女「もう帰るの? 最寄り駅一緒だしよかったら」

兄「(こいつも神出鬼没だな)・・・・・・ああ。駅まで一緒に帰ろうか」

女「あんたからそう言ってくれると嬉しい」

兄「・・・・・・うん」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/15(水) 20:06:39.49 ID:H0+wUiyqo
とりあえず昨日投下できなかった分です

風呂飯後出来るようならあと数レスは投下したいと思います
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/15(水) 21:57:06.50 ID:H0+wUiyqo
学校の最寄り駅


女「今日は何か肌寒いね」

兄「・・・・・・うん」

女「もうすっかり秋だね」

兄「・・・・・・まあね」

女「10月の空って一年で一番澄んでいて綺麗に感じない?」

兄「そんなの気にしたことないからわかんねえよ」

女「・・・・・・関心が人間関係に行ってる人は周りの環境に関心を示さないって聞いたことある」

兄「はあ?」

女「何でもない・・・・・・ついこの間まで夏休みだったのに、いつの間にか空が高いね」

兄「(何なんだ)そうかな」

女「秋って休みが少ないから嫌いだな。早く冬休みになんないかなあ」

兄「それは少し気が早すぎるだろ」

女「まあ、そうなんだけど」

兄「それに秋から冬ってイベントがいっぱいあるじゃん」

女「・・・・・・そう?」

兄「11月には学園祭もあるし、12月にはクリスマスもあるしね」

女「そんなのリア充の人専用のイベントでしょ」

兄「そんなことねえよ。少なくとも学校行事はリア充専用じゃねえだろ」

女「ぼっちには辛いイベントなんだよ」

兄「・・・・・・だからおまえは好き好んでぼっちやってるんだろ。おまえ、友だちとか作ろうと思えばいくらでも作れるだろうが」

女「好きでやってるかどうかは別問題だよ。ぼっちに辛いイベントであることには間違いないし」

兄「辛いなら友だち作ればいいじゃん」

女「学園祭を一緒に廻ったりとか後夜祭のフォークダンスを一緒に踊ってくれる相手なんてそんなに簡単にできないでしょ」

兄「何かおまえならそれくらい簡単にできそうだけどな(実際可愛いしな)」

女「・・・・・・じゃあ、兄君学園祭一緒に過ごしてくれる?」

兄「・・・・・・え?」

女「何でもないよ。ごめん」

兄「・・・・・・」

女「電車来たよ」

兄「うん」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/15(水) 21:58:17.99 ID:H0+wUiyqo
女「この時間の電車って空いてるよね」

兄「まあ、仕事帰りの人で混む前だし部活の連中はこんなに早く帰らないしね」

女「そういや1年生の時から兄君って部活してなかったよね」

兄「よく知ってるな。1年のときはクラス違ったのに」

女「うん。あたしは1年生の時から幼馴染さんと同じクラスだったから」

兄「幼馴染と同じクラスだったからって、俺のこと知ってる理由にはならねえだろ。俺、1年の時は3組だぞ」

女「幼馴染さんとか兄友さんとか見てれば兄君の動向なんかリアルタイムで入ってきたし」

兄「・・・・・・」

女「あの頃は3人で一緒に帰ってたでしょ」

兄「おまえは俺へのストーカーなのかよ」

女「そんなことはないと思うけど」

兄「(思うけどって何だよ)まあ、兄友と知り合ったのは幼馴染の紹介だったけどな。俺、1年のときはあいつらとクラス違ってたし」

女「あの頃から変ってないよね。まあ、今は妹さんが入学して兄君たち3人の中に加わったくらいで」

兄「まあね」

女「ちょっとだけうらやましいな」

兄「はあ?」

女「何か正しい青春みたいじゃん、兄君たち」

兄「おまえ、何言ってるの?」

女「男2人と女2人でいつも一緒に行動してるんでしょ。見かけ上は仲良く見える4人の間には、その実どろどろした愛情が渦巻いて」

兄「・・・・・・女性週刊誌とか読み過ぎなんじゃねえの?」

女「ああいうのは一度も読んだことないけど」

兄「だいたい、そのうちの一人は実の妹だってえの。そんなどろどろ成り立つかよ」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/15(水) 21:58:54.51 ID:H0+wUiyqo
女「そうかな」

兄「そうかなって、何で」

女「さっき兄君、妹さんに会いたいとか妹さんに慰めてもらいたいって感じの表情してたよ」

兄「んなことねえよ」

女「そう?」

兄「そう!」

女「そか、じゃあよかった」

兄「え」

女「さっき駅のホームで妹さんがきょろきょろしてたんだけど」

兄「・・・・・・え」

女「兄君、気がついてなかったでしょ」

兄「あ、ああ」

女「あんたに教えた方がよかったかなって思ってたんだけど、兄君が妹さんのことは兄妹って割り切ってるなら教えなくてもよかったのかって思ってほっとした」

兄「(妹のやつ、昼飯一緒に食えなくて放課後の約束できなかったから、俺を駅で待ってたのかな)あのさ」

女「うん」

兄「おまえが想像してるようなどろどろとした関係は妹とはねえんだけどさ」

女「そうみたいね」

兄「でも、俺の家って両親が別に住まい持っててほとんど妹と二人暮しみたいなもんなんだよな」

女「うん?」

兄「だからさ。妹とは買い物とか一緒にしなきゃいけないことがあるんでさ」

女「・・・・・・うん」

兄「今度からがそういう時は一言教えてもらえると助かる」

女「そか・・・・・ごめんね」

兄「いや・・・・・・(何で関係のないこいつに家庭事情話してるんだよ、俺は)」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/15(水) 21:59:34.52 ID:H0+wUiyqo
短いですけど今日はここまで

また明日投下します

おやすみなさい
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 23:03:19.32 ID:MXFclhdSO
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 23:33:01.84 ID:QH8VXBvDO

まだまだ展開はこれからな感じ
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/15(水) 23:39:55.02 ID:8GNYjpr8o
乙乙
微妙な伏線がたっぷり・・・
女は一体なにものなんだ?
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/15(水) 23:52:41.76 ID:lJvJmwf8o
女神なんだろ
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 07:42:00.79 ID:rMmX9GaSO
隠れアイドルとか
ベタだけど
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 09:08:13.55 ID:5GDonTMIO
いや文字通り「女神」なんだろ2ch的な意味で
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 10:06:03.37 ID:WNgsljNPo
夜な夜な艶かしい肢体を
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/16(木) 22:54:10.04 ID:stVjAS9Vo
スレタイの意図が早々にばれちゃいましたね。その辺は今回とか次回で明らかになる予定だったのですがまあ仕方ない

そうです。女神とはいわゆる女神行為をする女の子のことですね。このSSでいうと女のことですね

では再開します。最近年度末が近づいてきて業務多忙なため毎回の投下レス数は少なめですけどご了承ください。そのかわりなるべく毎日投下するようにはします
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/16(木) 22:59:37.82 ID:stVjAS9Vo
その日、俺は女と二人で肩を並べて学校を後にした。俺が女の子と二人きりで登校とか下校をするのは、妹を別にすれば初めてのことだった。幼馴染の突然の告白に動揺し兄友の気持ちも気にはなっていたけど、どういうわけかこの時の俺はその悩みを忘れ、女のことをもっと知りた
いという欲求が沸き起こってきていた。さっきまであれほど悩んでいた幼馴染の告白のことすらこの瞬間は頭に浮かばないくらいに。

 この気持ちは恋ではない。俺はそのことには自信があった。いろいろ複雑なことになってはいるけど俺が本当に好きなのは幼い頃からずっと好きだったのは幼馴染で、そのことは間違いはなかった。そして長年の片想いが今日初めて報われそうになっていたことも間違いのない事実だった。ただ兄友の気持ちを考えるとその場で素直に幼馴染の気持ちを受け入れることは出来なかっただけだった。それなのになぜ俺は兄友の捜索をあっさりと諦めて女と肩を並べているのだろう。俺は不思議と今では長年の恋の成就とか兄友を傷つけた心配が脳裏を去り、今隣にいる女の子のことが気になってしかたがなかった。

 確かに女は可愛らしい。背は幼馴染と同じくらいだけどロングヘアの幼馴染と違って髪の毛は肩にかかるかかからないかくらいで全体に華奢な印象がする。学校の中では普通に可愛い部類に入っていると思う。そして性格は・・・・・・。こうして二人で話をするようになるまでは謎めいては
いるけど陰気で無口な女だと思っていた。でも、一度話をするとその社交性や明るい受け答えに驚いた。これが学校で友だちもいない、いつも一人きりで過ごしている女と同一人物かと驚くほどに。でも、よく考えれば女はそれほど饒舌と言うわけではなかった。俺に対して全然臆すること
なくはきはきと話はしているけど、実はそれほどペラペラ世間話をするわけではない。それなのに俺が幼馴染の初告白を忘れるほど女に関心を持つのは、短い一言一言に意味があるように思えたからだった。逆に言うとあまり意味のない世間話のような話題はほとんど女の口からは出
てこなかった。こういう女の子は自分の世界が確立されているのだろうと俺は思った。そして女にとって学校がその場所でないことは確かだった。どこが学校でない場所や時間に自分を表現できる場所を彼女は持っているのだろう。

 俺が、自分は女に関心があり女のことをよく知りたいと思っていることにはっきりと気が付いたのは、この日からだった。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/16(木) 23:01:51.06 ID:stVjAS9Vo
 その日、女は俺と並んで駅の方に向かいながら俺に聞かれたことには普通に答えてくれた。俺は女が普段何を考えていて、何を楽しみに暮らしているのかと言うことが知りたかったのだけど、とりあえず当たり障りのないことから質問してみようと思った。それは知り合ったばかりで互いに関心を持っている男女が探り合うように質問しあうようなことだったけど、女は俺については既に知り過ぎるくらいのインサイダー情報を持っているようだった。何でこいつが幼馴染の気持ちとかを自信を持って語れるのかはまだよくわからなかったけど。

「あのさあ、おまえって兄弟いるの」
 俺は無難な上にも無難な質問をぶつけてみた。

「一人っ子だよ」
 女はあっさりと答えた。そして俺の方を見て、にっていう感じの笑いを浮かべて俺の質問を待つまでもなく自分についての情報を自ら開示してくれた。

「あと、お父さんは普通の会社員で、お母さんも普通の会社員。つまり共働きね。だからあたしはいつもは学校でも家でもぼっちなんだよ」
 女は平然とそう言って笑った。そして、俺の目を見て続けた。

「あたしのことなんか本当に知りたいの?」
 俺はそれ以上自分から質問をする気を失って女の言葉をただ聞いていた。

「兄君が知りたいなら別に隠すことなんかないしね」
 俺の返事なんかもとから期待していなかったように彼女は話を続けた。何で俺が一言だけ女のプライベートに踏み込んだ質問をしただけで、こんなにこいつは食いついて嬉々として語りだすのだろう。俺は疑問に感じたけど、謎めいたこいつのことが知りたいという気持ちが先に立っていたため俺は女の話を遮らずに聞いていた。

「これでも中学の頃は親友もいたし、信じないかもしれないけど告られて付き合った彼氏もいたんだよ」
 女は言った。

「でも、この高校に入った時にクラスに同じ中学出身の子がいなくてさ。何となくぼうっとしてたら周りはもうグループが出来ちゃってて、気づいたらぼっちになっちゃってた」
 それも変な話だなと俺は思った。こいつくらい外見が良くてコミュ力もあれば友だちが出来ない方が不思議だった。むしろ近づいてくるクラスメートを拒否してたんじゃねえのか。

「あはは」
 女は笑った。

「自分から周りを拒否してるんじゃないのかとか思ってるんでしょ」
 女は言った。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/16(木) 23:04:02.41 ID:stVjAS9Vo
「まあ、正直に言うとそう思うな。だって、俺とだって初対面に近いのにこんなに普通に話せてるじゃん」
 以前にも女に話したことがあるけど、それは俺の正直な感想だった。

「まあ、そうね。あたしあまり学校とかに関心なくてさ。男君と全く同じことを1年の時の担任にも言われたことあるんだけど」

「でもあたし、去年から自宅でネットの掲示板にはまっててさ」

 こいつは何を言ってるんだろう。

「2ちゃんねるって知ってる?」
 女が聞いた。もちろん知らないわけはなかった、そんなに頻繁に覗いているわけではなかったけど。

「うん。たまに見るよ」
 とりあえず俺は答えた。

「それでね。学校で交流がなくてもあたしはそこで十分に人とコミュニケできてるからさ」

「はあ? そんなの実生活の上で人と交流するのとは別じゃん」
 これに対して女は少し黙っていたけど、少しして女は今までの気楽な態度をやめ、かなり真面目な表情で俺を見てこう言った。

「男君・・・・・・女神行為って知ってる?」
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/16(木) 23:09:00.21 ID:stVjAS9Vo
自宅


兄「ただいま」

妹「おかえり」

兄「・・・・・・おまえ、玄関で突っ立って何やってんの?」

妹「お兄ちゃんを待ってた」

兄「はい?」

妹「・・・・・・今日お姉ちゃんとお昼に話したんでしょ」

兄「・・・・・・うん」

妹「お姉ちゃん何だって?」

兄「(はあ。今日の幼馴染の告白って妹の差し金って部分も大きいんだよな)どうせ知ってるんだろ」

妹「・・・・・・察してはいるけどちゃんとは知らないし」

兄「おまえさ」

妹「うん」

兄「朝の電車で幼馴染を炊きつけるようなことをあいつに言ったろ」

妹「・・・・・・」

兄「自分に正直になれとかさ」

妹「・・・・・・うん」

兄「いったいどういうつもり?」

妹「・・・・・・どうって」

兄「俺おまえに言ったよな? 面白がってあいつらの仲に首突っ込むんじゃねえぞって」

妹「興味本位でしたわけじゃないよ」

兄「じゃあ何でだよ」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/16(木) 23:09:31.21 ID:stVjAS9Vo

妹「・・・・・・お姉ちゃんが昔からお兄ちゃんのことが好きなことをあたしは知っていたから」

兄「何だって?(こいつ、俺の気持ちを知ってのかよ)」

妹「でも、お姉ちゃんはあたしの気持ちを気にして自分の感情をずっと隠していた」

兄「・・・・・・」

妹「お姉ちゃんが兄友さんと一緒にいるようになってあたしは嬉しかった。お姉ちゃんにもお兄ちゃん以外に好きな人が出来たんだって」

兄「・・・・・・」

妹「でも、この間お姉ちゃんがお兄ちゃんと女さんのことで動揺して」

兄「ああ」

妹「それでお兄ちゃんのことを懲らしめようって。妹ちゃんがいるのに何考えてるのって、お姉ちゃんが言ったのを聞いて」

兄「昼飯抜き事件のことか」

妹「そう。でもその時、お姉ちゃんはあたしのことを考えているより、お兄ちゃんが女さんのものになるのを嫌がってるんだなって気が付いちゃって」

兄「・・・・・・そうだとしても何で今更おまえが幼馴染のことを炊きつける必要があるんだよ」

妹「それはもう言ったよ。よく知らない女さんにお兄ちゃんを盗られるくらいならお姉ちゃんに盗られた方がいいって」

兄「盗られるっておまえ」

妹「・・・・・・だってお兄ちゃん、あたしのことは妹としか見てないでしょ」

兄「(何だよいったい)当たり前だろ。大切な妹だって思ってるよ。他の誰よりも大事な妹だって」

妹「・・・・・・うん。お兄ちゃんがあたしのことを大切にしてくれてるのがよくわかる」

兄「・・・・・・それならいいけど」

妹「だからさ、あたしもいい妹になろうって思ったの。お兄ちゃんの彼女になりたいなんて変な夢見るのはもうやめようって」

兄「(そこまで言うか。実の兄に対して)・・・・・・おまえ」

妹「お兄ちゃんが昔からお姉ちゃんのことが好きなこと、あたしも知っていたし」

兄「・・・・・・」

妹「だから、あたしはお姉ちゃんのこと応援しようと思ったの。本当は辛いけど」

兄「・・・・・・」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/16(木) 23:10:31.21 ID:stVjAS9Vo
今日はここまでです。駄文にお付き合いいただきありがとうございました

できればまた明日投下します

ではおやすみなさい
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/02/16(木) 23:43:21.24 ID:rMy+7qeOo
女神ってそっちか
おつおつ
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/16(木) 23:50:52.00 ID:ZqkN5flro
乙乙です

こりゃまたツラい展開になりそうだな。いろいろと。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/16(木) 23:55:41.11 ID:kFivqHKHo
相変わらず切る場所が鬼畜・・・
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 00:14:05.85 ID:LQtTCofSO
女神行為って何ぞ
明日以降に期待
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 00:21:52.97 ID:K3MFMO8ho
>>103
ggrks
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/02/17(金) 00:24:26.96 ID:Ylfcw0nFo
>>101
なんか前のより暗い話になりそう
前のもそんなにすっきりしない感じだったし
ううむ……
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 13:28:30.97 ID:mArgFbwIO
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/17(金) 23:54:30.23 ID:OMRSvOz1o
兄の部屋


兄(何か最近いろいろあり過ぎだよな。これまで俺は幼馴染への気持を隠して、寂しがり屋の妹を宥めて平穏に日常を過ごしてたのにな)

兄(俺と妹と幼馴染と兄友でそれなりに仲良くやってたのに。俺たち4人って、こんなちょっとした出来事があっただけでお互いに気まずくなるような付き合いだったんだろうか)

兄(・・・・・・俺だけが幼馴染への気持を隠して我慢してればずっと平和だったと思ってたのに、結局妹も幼馴染も兄友もみんな何かを我慢してたってことか)

兄(・・・・・・)

兄(それにしても今回のきっかけはちょっとしたこと過ぎるだろ。俺が女の財布を拾って女と知り合いになったっつうだけなのに)

兄(いくらなんでも過剰反応だよな。妹も幼馴染も)

兄(兄友に電話しなきゃ・・・・・・幼馴染への返事も保留しちゃってる・・・・・・妹もさっき言うだけ言ったら自分の部屋に閉じこもっちゃったし)

兄(・・・・・・)

兄(いろいろ考えなきゃいけないことはあるけど、何か女のさっきの言葉が気になる)

兄(あれはいったいどういう意味だったんだろう)



「男君・・・・・・女神行為って知ってる?」



兄(・・・・・・あの後、すぐに別れちゃったから詳しく聞けなかったけど)

兄(女神行為? 女神って女の神様のことだよな)

兄(あいつが神様?)

兄(何かすごく悪い予感がする)

兄(2ちゃんねるって言ってたよな、ちょっとだけ、本当に少しだけ探してみるか)

兄(妹は部屋に篭ちゃってリビングにはいないし)カチ

兄(・・・・・・)

兄(ってどこを探せばいいんだよ。スレッドっていうの多すぎだろ。これじゃ何が何だかわかんねえな)

兄(やっぱ兄友が前に言ってった専用のブラウザとかっていうのをインストールしない無理なのかな)

兄(とりあえずグーグルで女神で検索してみよう)

兄(・・・・・・さっぱりわからない)


『女神 - 女神(めがみ)とは、女性の姿を持つ神のこと。 多神教においては、往々にして神にも性別が存在し、そのうち女性の神を女神と称する。 美しい若い女性や、ふくよかな体格の母を思わせる姿のものが多い』


兄(女が若く美しいつうのはそうかもしれないけど・・・・・・今日はやめておくかな。明日女に女神行為ってどういうものなのか聞いてみよう)

兄(・・・・・・なんでこんなに女のこと気になるんだろ? 俺。そんなことよりあいつらとの関係を何とかするべきなんじゃねえのかな)

兄(明日の電車どうしようかな)
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/17(金) 23:55:54.54 ID:OMRSvOz1o
通学中の電車の中


兄(・・・・・・)

妹(・・・・・・)

兄「・・・・・・なあ」

妹「・・・・・・うん」

兄「おまえ、昨日は何で夜自分の部屋に閉じこもってたの? いつもなら下のリビングで俺と一緒に過ごすのに」

妹「何でもないよ」

兄「何でもないって・・・・・・おまえ」

妹「だから本当に何でもないって。課題がいっぱい出てたからそれに集中してただけ」

兄「そうか」

妹「そうだよ」

兄「・・・・・・」

妹「・・・・・・ねえ」

兄「ああ」

妹「もうすぐ隣の駅に着くけど」

兄「ああ」

妹「今朝も、お姉ちゃんたちと顔会わせないでどっかに逃げちゃうの?」

兄「逃げるって何だよ、逃げるって」

妹「だって」

兄「別に逃げてなんかねえし。つうか今朝は兄友に少し話があるからここにいるよ」

妹「・・・・・・話、か」

兄「何だよ」

妹「何でもない」

兄(・・・・・・とりあえず兄友と話さないと、何も決められねえしな)
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/18(土) 00:00:28.88 ID:uidKA8kwo
隣の駅


妹「あれ?」

兄「どうした」

妹「うん。お姉ちゃんひとりみたい」

兄「え」

妹「ホームには兄友さんいないね。今日は一緒じゃないのかな」

兄「・・・・・・」

幼「おはよ」

妹「おはよお姉ちゃん」

幼「・・・・・・おはよう兄」

兄「・・・・・・うん」

妹「うんって何よ? ちゃんと挨拶しなよ」

兄「・・・・・・」

幼「いいの、いいの。それよか妹ちゃん今日も可愛いねえ」ムギュ

妹「だから。人前で抱き締めるのはやめて、お姉ちゃん」

幼「何々? 人前じゃなければいいの?」

妹「そういうことを言ってるんじゃありません・・・・・・とりあえず離して」ジタバタ

幼「冗談だって」

妹「もう。ブレザーの下でブラウスが乱れちゃったじゃない」

幼「あはは。ごめん」

兄「あのさ」

幼「・・・・・・うん」

兄「・・・・・・今日は兄友は一緒じゃねえの?」

妹「・・・・・・お兄ちゃん?」

幼「うん」

兄「あいつ、寝坊でもしたの?」

幼「・・・・・・さあ」

兄「さあって何だよいつもみたいに兄友の家まで迎えに行ったんだろ?」

妹「・・・・・・お兄ちゃん?」
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/18(土) 00:00:59.71 ID:uidKA8kwo
幼「・・・・・・行ってない」ボソ

兄「え」

幼「兄友の家には行ってないよ」

兄「・・・・・・何で」

幼「あたし、妹ちゃんにはもう遠慮しないことにしたの。ごめん妹ちゃん」

妹「あたしは別にいいけど」

幼「それでね、兄友にももうこれ以上迷惑はかけられないし」

兄「・・・・・・おまえ、今日は迎えに行かないって兄友に連絡とかした?」

幼「してない」

兄「あいつ、ずっとおまえのこと家で待ってるかもしれないじゃんか!」

幼「・・・・・・」

兄「メールとか電話とかなかったのか? 兄友から今朝」

幼パカ「・・・・・・ないみたい」

兄「黙って置いてけぼりとか普通するか? これまでいつも二人で登校してたのに。ずっと家でおまえを待ってるかも知れないだろ。可哀想だろうが兄友が」

幼「兄友に酷いことしてるのかもしれないけど・・・・・・あたしもう決めたの」

兄「・・・・・・決めたって何をだよ」

幼「昨日あんたに話たことを。あたしもう迷わないし後悔もしないから」

妹「お姉ちゃん・・・・・・」

幼「あんたの返事はせかさないしずっと待ってる。でも、あたしはもうこれまでみたいな4人仲良しの関係じゃ嫌だから」

兄「・・・・・・」
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/18(土) 00:05:33.49 ID:uidKA8kwo
教室


兄(兄友来てねえ)

兄(まさか自宅でずっと幼馴染のことを待ってるんじゃねえだろうな)

兄(・・・・・・いや。いくらあいつが馬鹿でも、いつものように迎えが来なきゃ幼馴染にメールか電話くらいするだろ)

兄(具合でも悪いのかな)

兄(・・・・・・ああ、もう。こんなに意が痛くなるなら、幼馴染と兄友のいちゃいいちゃを見て傷付いてた方がよっぽど楽だったぜ)

兄(幼馴染はいつも変らないない様子で友だちと話してるし)

女「おはよう」

兄「あ、女か。おはよ」

女「今日は兄友君来てないの?」

兄「・・・・・・」

女「あ・・・・・・何かごめん」

兄「(こいつ何でこんなに直ぐに状況を把握しちゃうんだよ)いや。あいつ、今日は来ないかもな」

女「そうか」

兄「それよかさ(クラスのみんなの視線が痛い。そんなに普段ぼっちのやつと親しげに話しているのが珍しいのかよ)」

女「うん」

兄「昨日おまえが言ってたさ、その・・・・・・女神行為つうの? それよくわかんなかったよ」

女「なあに? 早速見ようとしたの?」クス

兄「つうか気になるじゃん」

女「気になるって、そんなに見たいの?・・・・・・ああ、そういう意味で見たいんじゃないのか」

兄(?)

女「板によってはすぐにスレが落ちちゃうとこもあるしね」

兄「はあ?」

女「女神板ならそんなに早くは落ちないけど、画像は見れないよ。即削除してるし」

兄「意味がわからん。さっきからおまえの話しについていけないんだけど」
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/18(土) 00:06:07.56 ID:uidKA8kwo
女「・・・・・・あんたさ」

兄「何だよ」

女「そんなにあたしに興味があるの?」

兄「(え)い、いや」

女「・・・・・・」

兄「・・・・・・よくわかんねえ」

女「そか・・・・・・兄君ならいいか」

兄「え?」

女「じゃあさ、今夜始める時に携帯にメールしてあげる」

兄「はい? 始めるって何だよ」

女「見ればわかるよ。URL張ってあげるから。最初はソフトなやつの方がいいかな。あたしも恥ずかしいし」

兄「あのさ」

女「うん」

兄「何だかおまえの言ってることがよく理解できねえんだけど」

女「今晩スレを見ればわかるよ。それよか、あっちの方をフォローした方がいいんじゃない?」

兄「あっちって(あ、兄友だ。ようやく登校したのか)」

女「・・・・・・酷い顔してるね。相当悩んでるみたい」

兄「・・・・・・」
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/18(土) 00:07:28.29 ID:uidKA8kwo
今日の投下は以上です

明日少ないけど投下予定です

ではおやすみなさい
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/02/18(土) 00:09:29.98 ID:5+Fy6HHTo
乙です
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/02/18(土) 00:18:53.89 ID:C+wsq9p/o

辛い話ェ……
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/18(土) 01:10:41.17 ID:sOkJ2boIO
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/18(土) 06:30:49.77 ID:NGPccgpSO
女神行為ってまさか…
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/18(土) 22:34:14.06 ID:uidKA8kwo
兄「よう、今日は遅いじゃんか」

兄友「・・・・・・ああ」

兄「(ひでえ顔してるなこいつ)寝不足か? 夜更かしでもしたのかよ」

兄友「まあ、ちょっとな」

兄「今日は学校サボって寝てた方がよかったんじゃねえの」

兄友「おまえじゃあるまいし、そんなに簡単に学校をサボれるかよ」

兄「さすが学年で1、2を争う秀才は言うことが違うな」

兄友「・・・・・・そんなんじゃねえよ」

兄「だいたいおまえスペック高すぎだろ? 部活もやってないくせに体育まで成績いいんだもんな、おまえ」

兄友「そんなことねえって」

兄「いいよなあ。学校で肩身狭い思いしたことねえだろ? おまえ」

兄友「・・・・・・おまえにだけは言われたかねえよ」ボソ

兄「え?」

兄友「何でもねえよ」

兄「・・・・・・おまえ、本当に大丈夫か」

兄友「大丈夫だよ。それより昨日幼馴染と仲直りはできたのか?」

兄「・・・・・・一応(あいつが何言ったかなんてとてもこいつには言えねえな)」

兄友「一応ってどういう意味だよ」

兄「仲直りしたよ。一応」

兄友「・・・・・・」

兄「あのさ」

兄友「何だよ」

兄「・・・・・・」

兄友「さっきから何言いたいの? おまえ」

兄「何でもない」

兄友「おまえさ」

兄「うん」

兄友「前から思ってたんだけど、無駄に考え過ぎるとこ、おまえの悪い癖だぞ」

兄「別に考え過ぎてなんかねえよ」

兄友「あとさ、大事なことを決めようって時にはあんまり余計なこと考えんなよ」

兄「意味わかんねえよ」

兄友「人のことばっか気にしてんじゃねえよってことだよ」

兄「・・・・・・」

兄友「そんで傷付く奴だっているんだぞ」

兄「俺さ、おまえの体調の話してたのにどうしてこういう話になるんだよ」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/18(土) 22:37:01.46 ID:uidKA8kwo
昼休み



兄友「おまえ今日は妹ちゃんとお昼一緒?」

兄「あ(そういや昨日も今朝もお昼の話を妹と出来なかったな)」

兄友「あっ、て何だよ」

兄「妹からは今日は何も言われてねえな」

兄友「じゃあ、学食行くか」

兄「やめとく(幼馴染とこいつと3人で昼飯食う気になれるか)」

兄友「何でだよ。妹ちゃんと約束ねえならいいじゃんか」

兄「・・・・・・つうかおまえ、昼飯食うより教室で寝てたら? 何か顔真っ青だぞ」

兄友「平気だって。病気じゃあるまいし単なる寝不足だっつうの」

兄「・・・・・・でもおまえ、いつも幼馴染と二人で飯食って」

兄友「おまえと妹ちゃんと一緒だよ。今日は約束してねえよ」

兄「でもよ」

兄友「いいから早く行こうぜ」

兄「(確かに幼馴染はもう教室にいねえな)じゃあ学食行くか」

兄友「おう。おまえのせいで出遅れてたじゃねえか」

兄「まあ、定食は無くなっても麺類とかはあるだろ」

兄友「ラーメンとかそばとかじゃ腹減るんだよなあ」

兄「(食欲のかけらも無いような表情してよく言うよ)まあ、とにかく早く行こう」

兄友「おお」


学食


兄「・・・・・・まさか麺類すら売り切れているとはな」

兄友「おまえが飯食いに行くくらいでうだうだ言ってるからだろうが」

兄「まあ、とりあえず辛うじて丼物は残ってたんだからいいじゃん」

兄友「悩んで眠れなかった翌日の昼飯にかつ丼は厳しいっつうの」

兄「・・・・・・」

兄友「あ、やべ」

兄「・・・・・・やっぱりな」

兄友「つい、口に出ちまった」

兄「・・・・・・あほ」

兄友「・・・・・・」ハハ

兄「・・・・・・・」ハハハ

兄友「ま、いいか。俺とおまえの仲で隠しごとしてもしょうがねえか」

兄(やっと吐いたか)
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/18(土) 22:39:44.81 ID:uidKA8kwo
兄「(・・・・・・もうストレートに聞いちまえ)おまえさ、幼馴染のこと好きだろ?」

兄友「・・・・・・おまえは?」

兄「・・・・・・おまえから言えよ」

兄友「何でだよ。最初に聞いて来た方が先に言えよ」

兄「・・・・・・」

兄友「・・・・・・まあ好きかな」

兄「・・・・・・」

兄友「おまえはよ」

兄「うん・・・・・・好き、かな?」

兄友「おまえ、幼馴染が好きならよ。何で昨日とかあいつの好意に応えねえの?」

兄「おまえこそ、幼馴染が好きなら何で俺と幼馴染を二人きりにしようとしたんだよ」

兄友「・・・・・・」

兄「・・・・・・何とか言えよ」

兄友「・・・・・・俺さ」

兄「・・・・・・うん」

兄友「泣き言言うわけじゃねえけど。最初は幼馴染の方が積極的だったんだよな」

兄「そうなのか」

兄友「ああ・・・・・・あいつ、去年俺んちの隣に引っ越してきたじゃん?」

兄「ああ」

兄友「最初の挨拶の時からあいつ、学校もクラスも同じだとわかると、毎朝一緒に登校しようってさ」

兄「・・・・・・」

兄友「そんでおまえと妹ちゃんとも知り合って一緒に登校するようになったじゃん?」

兄「そうだな」

兄友「でもさ、幼馴染ってその頃は、妹ちゃんは別にしておまえより俺の方をいつも気にしててくれてさ」

兄「・・・・・・うん」

兄友「いつの間にか俺のほうもマジで惚れちゃったわけさ」

兄「そうか」

兄友「何かこんな話するの恥ずかしいけどよ」

兄「・・・・・・」


回想

兄「・・・・・・兄友は?」

幼「え?」

兄「兄友はどうなるの? あいつ、一応俺の親友だし」

幼「兄友には悪いことしちゃったと思う。あんたを忘れようと彼とベタベタしたし。でも、兄友とは付き合ってはいないよ、本当に」

兄「・・・・・・」

回想終了


兄友「まあだけど、幼馴染が俺を好きだなんて俺の勘違いみたいだし」

兄「・・・・・・おい」

兄友「おまえは俺のことは気にしなくていいぞ」

兄「・・・・・・」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/18(土) 22:41:53.22 ID:uidKA8kwo
自宅 兄の部屋


兄(兄友のやつ、本気で幼馴染みが好きなのか)

兄(それなのに、つうかそれだからと言うべきなのかもしれないけど)

兄(兄友は幼馴染みの恋を応援してるみたいだ)

兄(俺への友情とかじゃなくて、幼馴染への愛情からだろうけど)

兄(・・・・・・)

兄(だからと言って簡単に幼馴染の俺への気持に応えられるかよ)

兄(兄友は親友だぞ・・・・・・あいつがここまで配慮してくれてるのに俺だけ自分の想いを遂げるわけにはいかねえだろ)

兄(・・・・・・)

兄(妹に慰めてもらいてえ。割と切実に)

兄(あいつ、昼飯は作ってくれねえわ、帰りも一緒に帰ってくれねえわ、いくらなんでも今までと態度変えすぎだろ)

兄(今日だって自分の部屋に閉じこもってるしよ)

兄(・・・・・・)ブルルル

兄(あ、メールだ)

兄(女から? あ)


回想

女「・・・・・・あんたさ」

兄「何だよ」

女「そんなにあたしに興味があるの?」

兄「(え)い、いや」

女「・・・・・・」

兄「・・・・・・よくわかんねえ」

女「そか・・・・・・兄君ならいいか」

兄「え?」

女「じゃあさ、今夜始める時に携帯にメールしてあげる」

兄「はい? 始めるって何だよ」

女「見ればわかるよ。URL張ってあげるから。最初はソフトなやつの方がいいかな。あたしも恥ずかしいし」

兄「あのさ」

女「うん」

兄「何だかおまえの言ってることがよく理解できねえんだけど」

回想終了


兄(そうだった。女が女神行為っていうのを見せてくれるって言ってたんだ)


from :女
sub  :やっほー
本文『さっき始めたばっかだけどもう200レス超えちゃった。今日は流れが早いみたい。兄君が本当にあたしに興味があるなら下のURL開いてみて。今日は人多過ぎだから早めに画像消しちゃうし。じゃあ、もし気に入ってくれたらレスしてね。そんでさ、もしレスしてくれるならレスの中に、制服GJって書いてね。それで兄君だってわかるから。じゃあね』
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/18(土) 22:43:17.04 ID:uidKA8kwo
今日はここまで

また明日更新できると思います。駄文にお付き合いいただきありがとうございました

おやすみなさい
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/18(土) 23:57:36.62 ID:NGPccgpSO
嗚呼なんて言うのかなぁ、この胸のモヤモヤは……
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/18(土) 23:58:37.01 ID:KO8JlC9+o
>>123
うん。でもそれがこのスレの正しい読み方
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/19(日) 00:12:08.66 ID:988RzioDo
もやもや楽しみですね

制服GJ
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/02/19(日) 00:28:25.28 ID:S8qmufKt0
乙!
もやもやしながら寝るのか
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/02/19(日) 07:06:52.15 ID:ugaM8vOAO
まさか妹まで…
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/19(日) 11:45:44.94 ID:YIGwleAEo
>>123
それが答えさ
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/19(日) 20:06:27.70 ID:Oi15+0QTo
兄(リビングに戻ってパソ立ち上げるのも面倒だし、このまま携帯で開いちゃうか)

兄(・・・・・・2ちゃんねるだな確かに)

兄(何々? 『暇だからjk2が制服姿をうpする』)

兄(どれ)


『とりあえず顔から。目にはモザイク入れました』


兄(画像があるな)

兄(・・・・・・これ本当にあいつだ。目だけモザイクかかってるけど)

兄(こんなことやってたのかよ)


『制服のブラウスとスカート。鏡の前で撮ってます』


兄(鏡に映った自分を撮ってるのか・・・・・・っていうかスマホまで映っちゃってるけど、あれあいつのスマホだな)

兄(つうか画像でも見ても可愛いな。これだけ可愛いせいか、ついてるコメントも好意的だ)


『女神きたーーーー!!』
『ここが本日の女神スレか』
『かわいい〜。もっとうpして』
『ふつくしい』
『ありがとうありがとう』
『光の速さで保存した』
『セクロスを前提に結婚してください』
『これは良スレ』
『つか全身うpとか制服から特定されね?』


兄(あいつが女神って・・・・・・こういうのを女神行為っていうのか)

兄(しかしこんなことしてあいつに何の得があるんだろうな? 自分をほめてほしいからかな)
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/19(日) 20:07:29.80 ID:Oi15+0QTo
『>>○ 特定は大丈夫だと思います。よくある制服なので。心配してくれてありがと』


『>>○ ならいいけど無理すんなよ。校章とかエンブレムとかはぼかしといた方がいいぞ』
『つうかお前らこれって転載だぞ。前にも見たことあるし』
『何だ釣りか。解散』


『>>○ 今撮ってるんだけど。前にも何度かうpしてるんでその時見たのかな? とりあえずID付きで手と腕』


兄(次の画像は・・・・・・あいつの腕細いなあ。手とか色白でむっちゃ綺麗じゃん)


『おお。確かにIDが』
『俺は信じてたぞ』
『つうかexif見りゃ今撮影してるってわかるじゃんか。お前ら情弱かよ』
>>1のスペック教えて』


『首都圏住みの高校2年です』


『彼氏いる? 年上はだめ?』
『処女?』
『可愛いよね。これだけ可愛いとやっぱイケメンしか眼中にない?』


『>>○ 彼氏はいません。年上でも大丈夫ですよ〜』
『>>○ 処女です』
『顔よりか優しくて頭がいい人がいいです』


兄(何か普通にコミュニケできてるよな、あいつ。不特定多数の人相手なのに)

兄(ここまで社交的に話せるのに何で学校じゃああなんだろ)

兄(しかし人気あるなあ)

兄(・・・・・・)

兄(・・・・・・処女か)
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/19(日) 20:10:15.24 ID:Oi15+0QTo
兄(しかし流れが早いな。更新するたびに10くらいレスついてるし)


『30代のリーマンだけど対象外?』
『アドレス交換しない?』
『出合厨は氏ねよ』
>>1も全レスしなくていいからもっとうpして』


『次は足です。太くてごめん』


兄(どれ)

兄(・・・・・・え? スカートたくし上げて太腿を露出させてるじゃん)

兄(女神行為ってここまで露出してするものなの?)

兄(でも・・・・・・白くてすべすべしてそうだな。結構際どいところまで写ってるけど、恥ずかしくないのかな)



『むちゃ綺麗な足だな』
『全然太くないっつうかむしろ細いじゃん』
『なでなでしたい』
『パンツも見せて』
『何という神スレ』
『もっと、もっとだ』
『もっと顔みたい』


『パンツはダメです。つ横顔』


兄(そうだよな。さすがに下着姿までは見せないよな。何かほっとした)

兄(ほっとしたけど・・・・・・少し残念な気もするな)

兄(何言ってるんだ俺は。しかしすごいレス数だな。少し飛ばし読みしよう)

兄(・・・・・・追いついた。300レス越えてるじゃんか)

兄(画像なんか10枚も貼られてないのに何でこんなに盛り上がるんだ)

兄(しかもちゃんと肌が見えてるのってさっきの足くらいで、あとは制服姿とか耳とか手とかのアップの画像なのに)

兄(中には構ってちゃん死ねとか馴れ合い厨きめえよとかって感じのアンチレスもついてたけど、大半は好意的なレスだったな)

兄(何か女を中心に雑談してるみたいだ)

兄(しかしこういうの毎日のようにやってるのかな。あいつ毎朝駅でレスを確認してるとかって言ってたけど)


『みんな構ってくれてありがとう。ちょっと用事が出来たのでうpはおしまいです。みんなまたね〜』


兄(お?)


『楽しませてもらったよ。気をつけて行ってらっしゃい』
>>1乙 良スレだった』
『うpありがと。またな』
『今日は冷えるから上着着とけよ おつかれ〜』
『またうpしてね』
『コテ酉付けてよ』
『転載されるから画像ちゃんと削除しとけよ』
『帰ってくるまで保守しとこうか』

兄(これで終わりか)
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/19(日) 20:11:46.91 ID:Oi15+0QTo
兄(あ、いかん。レスしろってあいつに言われてたっけ)


『制服GJ』


兄(これでよし。しかし終わりだって言ってるのにまだレスが付き続けてるな)


『みんなありがと。保守はいいです。今日は帰宅が遅くなるのでこのスレは落としてください』

『>>○ 制服をほめてくれてありがと。どうだった?』


兄(え? 俺にだけレスしてくれた)


『何で>>○にだけレスしてるんだよ』
『>>○死ね』
『>>○ 何なんだよおまえ』
『>>○の人気に嫉妬』


兄(・・・・・・もういいや)

兄(まあ太腿露出にはびっくりしたけど、あのくらいなら)

兄(これがあいつの交友関係ってやつか。何かわかるようなわかねえような)

兄(普通に見てて楽しかったけど、これが現実の人間関係の代わりになるとも思えないけどな)

兄(何で俺、女のことばっかり考えてるんだ? 今はむしろ幼馴染と兄友のこと少し真剣に考えなきゃな)

兄(あと、家ではいつもベタベタ俺にくっ付いていた妹も最近自分の部屋にこもってるし何か少し心配だ)

兄(・・・・・・)

兄(・・・・・・明日からまじめに考えよう。今日は疲れたし)

兄(・・・・・・)

兄(ちょっとだけ女の太腿の画像を見てみるか)

兄(もう落ちちゃったかな・・・・・・まだ残ってる)

兄(すげえ。まだ保守してる奴がいる)

兄(画像はどの辺にあったっけ、ってあった)

兄(・・・・・・404 NOT FOUNDってえ?)
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/19(日) 20:12:36.37 ID:Oi15+0QTo
ちょっと休憩

風呂飯後、数レス投下予定です
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/19(日) 21:43:12.78 ID:Oi15+0QTo
翌朝


兄(あまり眠れなかった・・・・・・)

兄(何で30分おきにあのスレ確認なんかしてたんだろ)

兄(結局女は戻ってこなかったし)

兄(それでも3時過ぎにスレが落ちるまでは気になって眠れなかった)

兄(あんな画像見ただけでどんだけ女のこと気にするようになったんだよ)

兄(他にもっと気にしなきゃいけないことがあるのに)

兄(起きるか)


リビング


妹「おはよう」

兄「おはよ」

妹「早くご飯食べちゃって・・・・・・て、どしたの?」

兄「どしたって何が?」

妹「昨日眠れなかったの?」

兄「わかるか」

妹「うん・・・・・・」

兄「そか(今朝は普通に接してくれるなこいつ)」

妹「あまり悩まないで自分に素直になればいいと思うけど」

兄「え? おまえ何の話してるの」

妹「何って。お姉ちゃんのことで悩んでるんでしょ」

兄「いや、そんなんじゃなくて」

妹「隠したって無駄だよ。前にも話したけど、お兄ちゃんがお姉ちゃんのこと好きだったことあたし前から知ってたんだから」

兄「・・・・・・」

妹「そのお姉ちゃんから告白されてお兄ちゃんが悩まないわけないじゃん。お兄ちゃん、兄友さんの親友なのに」

兄「・・・・・・」

妹「お姉ちゃん、バカだよね。お兄ちゃんと結ばれるチャンスなんか今までいくらでもあったのに」

兄「・・・・・・」

妹「あたしなんかに、お兄ちゃんの実の妹なんかに遠慮してさ」

兄「もういいよ」

妹「お兄ちゃんが兄友さんのために身を引いても、お姉ちゃんはもう兄友さんとは付き合わないよ」

兄「何でそんなことおまえにわかるんだよ」

妹「お姉ちゃん言ってたもん。仮にお兄ちゃんがお姉ちゃんの告白を受け入れてくれなかったとしても、もう兄友さんとは一緒に過ごさないって」

兄「兄友かわいそう過ぎるだろ、それ」

妹「その気もないのに親しく接せする方がかえって残酷だと思うよ」

兄「・・・・・・」
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/19(日) 21:46:18.30 ID:Oi15+0QTo
自宅の最寄り駅


兄「今日も弁当作ってねえの?」

妹「うん。最近夜忙しいから準備できなくて」

兄「まあ、おまえにばっか負担かけてきたわけだからしょうがねえよ」

妹「ごめんね」

兄「別に学食とか購買のパンでも問題ねえし」

妹「お兄ちゃん偏食だからな。本当はあたしのお弁当で栄養管理したいんだけど」

兄「別に肉ばっか食ってるわけじゃないぞ」

妹「口では何とでも言えるしね。いっそお姉ちゃんに頼んじゃうか」

兄「頼むって何を?」

妹「しばらくお兄ちゃんのお弁当作ってくれないって」

兄「ば、ばか。よせ、絶対にそんなこと幼馴染に言うんじゃねえぞ(今の幼馴染なら本当に作りかねない)」

妹「冗談だって。そんな図々しいこと本当に頼むわけないじゃん」

兄「・・・・・・それならいいけど」

妹「あ」

兄「どうした? (あ。女がいる)」

妹「・・・・・・今日もいるね」

兄「うん、いるな」

妹「・・・・・・電車来たよ。早く乗ろうよ」


隣の駅

妹「お姉ちゃんおはよう」

幼「妹ちゃんおはよ。今日も可愛いね」

妹「ありがとお姉ちゃん」

幼「兄もおはよう・・・・・・って、どうしたのその顔?」

兄「おはよ。別にどうもしてねえよ(やっぱり幼馴染、今日も兄友とは別行動か・・・・・・)」

妹「酷い顔でしょ」

幼「うん。寝不足?」

兄「ちょっとな」

妹「お姉ちゃんお姉ちゃん」ヒソヒソ

幼「どしたの? 妹ちゃん」ヒソ

妹「今お兄ちゃんは悩んでるの。わかるでしょ?」ヒソヒソ

幼「あ・・・・・・」

妹「もう。当事者のお姉ちゃんが気が付いてあげなくてどうするの」ヒソ

幼「ごめん。そうか、そうだよね」ヒソヒソ

妹「もう寝不足には突っ込まないであげて」ヒソ

幼「うん、わかった」ヒソヒソ

兄(何がヒソヒソだよ。全部聞こえてるっつうの)

兄(それに、本当はそのことで悩んだんじゃねえんだけどな)

兄(頭の中に女の太腿の画像がこびりついて)

兄(・・・・・・今夜もやるのかな。女神行為)
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/19(日) 21:48:05.49 ID:Oi15+0QTo
教室 始業前


兄(女はまたぎりぎりに来る気かな)

兄(ちょっとでも授業始まる前にあいつと話せねえかな)

兄(あ、来た。いつもよりは一本早い電車に乗ったんだ)ドキ

女「兄君、おはよう」

兄「おはよう」

女「・・・・・・寝不足?」

兄「ああ、ちょっと」

女「悩みでもあるんですか?」ニコ

兄「何でもねえよ(おまえの太腿が気になって眠れなかったなんて言えるか)・・・・・・あのさ」

女「・・・・・・うん」フフ

兄「見たよ、昨日のスレ」

女「レスしてくれたから知ってるよ」

兄「うん」

女「どうだった?」

兄「どうって言われても」

女「軽蔑した? それとも嫌悪を感じた?」ニコ

兄「そんなことねえよ!」ガタ

幼(・・・・・・)ジー

兄「(いけね。思わず大声出しちゃった。幼馴染とか他のやつらとかまで変な顔でこっちを見てるな)別に嫌な感じなんてしてねえよ。可愛い写真ばっかだったし」

女「本当?」

兄「ああ」

女「・・・・・・嬉しい」

兄「おまえ、すごく人気あったじゃん。結婚してくださいなんて言われてたし」

女「そんなの真面目に言ってるわけないじゃん。盛り上げてくれてるだけだよ」

兄「そうなの? メアド教えろとかっていうのも?」

女「ああ。あれは少しマジかもね。どうしても出合厨って沸いてくるし」

兄「うん?」

女「まあ、スルーすればいいのよ、ああいうのは」

兄「よくわかんねえけど、おまえ昨日は楽しそうだったよ。おまえのレス見ててそう思った」

女「昨日はスレ荒れなかったからね。あんなもんじゃないこともあるのよ」

兄「そうなんだ(あんまり変なやついなかったもんな、昨日は)」
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/19(日) 21:49:27.23 ID:Oi15+0QTo
女「あたしの写真、気に入った?」

兄「え? 何だよそれ」

女「可愛かったんでしょ」

兄「う、うん」

女「あんたにそう言ってもらえると嬉しいな」

兄「おまえさ」

女「なあに」

兄「ああいうの毎日やってるの?」

女「毎日じゃないよ。普段は他の板とかでROMってることも多いし」

兄「(何だ?)まあ、昨日くらいの露出なら問題ないんだろうけど」

女「うん?」

兄「学校の奴らとかにばれたらまずいんじゃないの」

女「ばれないよ。顔とかは隠してるし」

兄「隠してるうちに入らねえと思うけどな、あの程度じゃ」

女「平気だって。それよか、まだ見る気ある?」

兄「・・・・・・今夜もスレ立てるの?」

女「そういうわけじゃなくて。あたしが前に言ったこと覚えてる?」

兄「うん?」

女「恥ずかしいから最初はソフトなやつって言ったでしょ」

兄「あ」


回想

女「見ればわかるよ。URL張ってあげるから。最初はソフトなやつの方がいいかな。あたしも恥ずかしいし」

回想終了


女「でね。今夜は久しぶりに女神板でやろうと思って」

兄「何それ」

女「見ればわかるよ。その気があるならまたメールしてあげるけど」

兄「・・・・・・うん」

女「じゃあ、夜8時頃から始めるから」

兄「わかった」

女「あ、兄友君が来た。最近一緒に登校しないんだね」

兄「・・・・・・わかってて言ってる?」

女「ごめん。でも兄友君、あんた以上に寝不足な感じ」

兄「・・・・・・そうだな」

女「兄友君、せっかくイケメンなのにね」

兄「・・・・・・うん」

女「先生着ちゃった。また後でね」

兄「おう」
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/19(日) 21:49:58.11 ID:Oi15+0QTo
本日はおしまい

またお会いしましょう
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/19(日) 21:51:15.45 ID:MGRbZ7L3o
乙です〜
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 23:18:33.10 ID:A2lTiGqSO
ソフトなやつか…
もっとエグいのもあるんだろうな…

で、非エロ……なんだよな?この話
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/02/20(月) 07:24:47.39 ID:W1QIjU4To

>>140
この作者の非エロはそういう描写をキングクリムゾンするってだけ
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/20(月) 10:08:00.91 ID:h3BkvimIO
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/20(月) 22:56:34.02 ID:365/3mmGo
これから投下しますけど、念のために注意書き

>>141のとおりで結構際どいシーンもあることはありますが、ベッドシーンを詳細に描写することはないです
つまりそういう意味で実用的なスレではないというのが、非エロの意味です
それでもよければ頑張りますのでお付き合いください

では再開します
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/20(月) 22:59:25.74 ID:365/3mmGo
午前中の授業終了後


女「・・・・・・兄君」

兄「・・・・・・」

女「兄君、起きてよ」

兄「あ」

女「あ、じゃないわよ。授業終わったよ」

兄「俺、寝ちゃってたのか」

女「机に突っ伏して盛大にね。あの先生だから見て見ぬ振りしてくれたけど、他の先生だったら怒られてるよ」

兄「うん。何かいつのまにか寝ちゃったみたいだ」

女「寝不足で疲れてるんでしょ。何で寝不足なのかは知らないけど」

兄「・・・・・・何でもないよ」

女「今日は妹さんと一緒にお昼?」

兄「いや今日は約束してないよ」

女「じゃあよかったら一緒にお昼食べない?」

兄「いや、ちょっと兄友と話がしたいんでさ」

女「兄友君、授業終わったらすぐ教室を出てっちゃったよ。気分悪そうだった」

兄「え(あいつ、もしかして俺のこと避けてるのか? 昨日はちゃんと話せたのに)」


中庭


女「あんたも、幼馴染さんとか兄友君のことでも考えて眠れなくなったんでしょ」

兄「違うよ」

女「じゃあ妹さんのことでも考えてた?」

兄「だから違うって」

女「じゃあ何で寝不足なの? 場合によっては力になってあげられるかもよ」

兄「力になるっておまえが?」

女「ぼっちのあたしが言っても信じてくれないかもしれないけど、あたしって問題解決能力が高いぼっちなんだよ」

兄「何だよそれ」

女「ほんとだよ」ニコ

兄「(可愛い・・・・・・正直に言っちまうか。それでこいつがどんな反応するかも知りたい気がするし)・・・・・・ええとだな」

女「うんうん」

兄「おまえの立てたスレを30分おきくらいに見に行ってたら寝そびれた」

女「え? ・・・・・・え?」

兄「いや何か落ちないようにスレ保守している人がいっぱいいたから、おまえがスレに戻ってくるんじゃないかと思ってさ」

女「・・・・・・飽きれた。今日は戻れないってレスしたのに」クス

兄「まあ、あとさ。正直な話、おまえの画像が気になって眠れなかったっていうのもある」

女「・・・・・・え」

兄(やべ。引かれたか)
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/20(月) 23:02:32.35 ID:365/3mmGo
兄「あ、あの。変なこと話して悪い」

女「・・・・・・」

兄「気持悪かったよな。今の忘れて」

女「・・・・・・うれしい」

兄「え? (何だ?)」

女「あたしさ、ああいうことしてるって知り合いに話したの初めてだったんだ」

兄「うん(そりゃそうだろうな)」

女「どうせ知られたら変な目で見られるだろうし、噂にもなるだろうし」

兄「・・・・・・まあ、普通はあれを知ったらドン引きするだろうけどな」

女「あたし、多分友だちとか作ろうと思えばできると思うんだけど、隠し事をしながら友だちと付き合うの嫌だったから」

兄「それでいつも一人でいたの?」

女「うん。でもさ、自分でも何でかわからないけどあんたとは友だちになりたくてね」

兄「(そういや財布拾った後にこいつの方から話しかけてきたんだったっけ)そうなんだ」

女「そうなの。でも隠し事するの嫌だったから、怖かったけど女神のことあんたに教えたの」

兄「そうか」

女「嫌われるだろうなって覚悟してたけど、気にしないでくれて、っていうか気に入ってくれて本当にうれしい」

兄「(俺が好きなのは幼馴染だけど、何かここまで好意を示されるとうれしいな。こいつ可愛いし)まあ俺だって健康な男子だし。あの太腿の写真をもう一度見ようとしたくらいだぜ」

女「・・・・・・え」

兄(やべ。ちょっと言い過ぎたか)

女「昼間から太腿とか言わないでよ・・・・・・保存した?」

兄「してない」

女「え? 何でよ。すぐ削除しちゃうから普通みんなすぐにダウンロードするんだよ」

兄「いやそれ知らなくてさ。もう一回見ようとしたら見れなかった」

女「ちょっと待って」

兄(スマホ取り出して何かしてるな)

女「・・・・・・送信したよ」

兄「何が?」ブルルル

女「メール」

兄「俺の携帯か。おまえから?」パカ

女「プレゼントよ」

兄「・・・・・・あ(昨日のむき出しの太腿の画像だ)」

女「よかったらどうぞ。好きに使っていいよ」

兄「つ、使うっておまえ何言って」ドキドキ

女「だってよくレスもらうよ? おかずにさせてもらいますとか使わせてもらいますとかって」

兄(・・・・・・恥ずかしくて死にたい)
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/20(月) 23:06:05.82 ID:365/3mmGo
女「とにかく勇気が出たよ。女神のこと話しても嫌われない友だちが一人できたことに」ニコ

兄「うん、別にあんなことくらいで嫌いにはならねえよ。それにエッチなのってこの足の画像くらいだしさ。あれくらいなら十分許容範囲だぜ」

女「・・・・・・」

兄「どうかした?」

女「はぁ」

兄「うん? ため息なんてついてどうしたんだよ」

女「よろこぶのはまだ早いか」

兄「(何だ? こいつ急に暗い顔になっちゃったぞ)だから何で急に落ち込んでるんだよ」

女「まあ、しょうがないか。明日あんたに会うまではドキドキして待ってるしかないしね」

兄「どういうこと?」

女「今日も女神行為するから」

兄「うん、それはさっき聞いた」

女「昨日と違う板でするの」

兄「女神板ってとこでしょ」

女「うん。それでさ、あそこは基本的に18歳未満は出入り禁止なの」

兄「・・・・・・そうなの? じゃあ制服とかアップしたらまずいじゃん」

女「そうなの。だからあたしは女神板ではいつも19歳の女子大生って自分のこと言っての」

兄「そうなんだ(いったい何が言いたいんだこいつ)」

女「今夜はあんたはレスしなくていいから、黙ってROMしてて」

兄「コメントしないで見てろってことだな。わかった」

女「URLはあとでメールするけど、あたしのコテトリだけ覚えておいて」

兄「コテトリって何?」

女「今メールで送るから」

兄「うん?」ブルルル

兄「来たよ」パカ
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/20(月) 23:07:14.58 ID:365/3mmGo
『モモ◆ihoZdFEQao』


兄「何これ?」

女「今日のスレで名前欄にこれが入ってるのがあたしだから。モモって言うのがあたしの固定ハンドル、まあペンネームとでも思って」

兄「ああ、そういうことか」

女「で黒いダイアモンドマーク以下の文字があるでしょ? それが付いてたら本当のあたしだっていうこと」

兄「よくわかんないな」

女「それはあたししか知らない文字列を変換している言わば暗号みたいなものだから、その秘密にしている文字列を入力しないとこういう表示にならないの」

兄「パスワードみたいなものか」

女「まあ、そうね」

兄「それはわかったけどさ、何でさっきちょっと落ち込んでたの?」

女「今夜になればわかるけど・・・・・・18禁の意味はわかるでしょ」

兄「(あ)もしかして・・・・・・」

女「うん。まだ兄君に嫌われる可能性は十分に残ってるってことだね」

兄(だったら俺に女神板なんて教えなきゃいいのに)

女「あんたが何考えてるかわかるよ。黙ってればわからないのにって考えたでしょ」

兄「まあ、今確かにそういうことも思い浮んだよ」

女「・・・・・・さっき言ったように友だちと隠し事しながら付き合うの何かいやだし」

兄「うん」

女「あと、あたし兄君のこと結構気になってるかも」

兄「え(気になるってどういう意味なんだろ)」ドキ

女「とにかく今夜見て明日感想を聞かせて・・・・・・それが嫌悪しか感じなかったっていう感想だったとしても正直に話してね?」

兄「・・・・・・わかった(何でこんなことしてるんだろ、俺。今それどころじゃねえのに)」
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/20(月) 23:09:13.88 ID:365/3mmGo
自宅


兄(そろそろだな。何か緊張してきたな)

兄(今日も妹は部屋に閉じこもってるし、携帯よりリビングのパソで見ることにしよう。妹が階下に下りてくる音がしたらスレ閉じればいいし)

兄(・・・・・・あいついったい何を考えてるんだろう)


回想

女「あと、あたし兄君のこと結構気になってるかも」

回想終了


兄(もしかしてあいつ、俺のことが・・・・・・)

兄(いや、気になるって言ってるだけで俺のこと好きだってはっきり言ったわけじゃない)

兄(でも、もし少しでもその可能性があるなら早めに断らないと。俺が好きなのは幼馴染だしな・・・・・・まあ兄友のことを考えると、幼馴染とは結局結ばれないのかもしれないけど)

兄(それならいっそ女と付き合うっていうのもあるかも。あいつとは一緒にいて楽だし話も合うし)

兄(・・・・・・何を考えているんだ。別に女に告られたわけでのねえのに)ブルルル

兄(あ・・・・・・メールが来た)パカ


from :女
sub  :無題
本文『じゃあ、そろそろ始めるね。今のところ他の子がうpしてる様子もないから、見てても混乱しないと思うよ。念のために繰り返しておくけど、女神板はうpも閲覧も18禁なんであたしは19歳の女子大生って名乗ってるけど間違わないでね。』

『モモ◆ihoZdFEQaoのがあたしのレスだから。あと結構荒れるかもしれないけど動揺して書き込んだりしちゃだめよ? 兄君は今日はROMに徹して』

『ああ、そうそう。これは余計なお世話かもしれないし、あんまり自惚れているように思われても困るんだけどさ。今日うpする画像はすぐに削除しちゃうから、もし何度も見たいなら見たらすぐに保存しといた方がいいと思うよ』

『じゃあ、下のURLのスレ開いて待っててね。8時ちょうどに始めるから』

『やばい。何かドキドキしてきた(笑) 女神行為にドキドキなんかしなくなってるけど、あんたに嫌われうかもしれないって思うとちょっとね。でも隠し事は嫌いなので最後まで見て感想をください。あ、感想ってレスじゃないからね』

『じゃあね』
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/20(月) 23:14:49.89 ID:365/3mmGo

兄(・・・・・・18禁の板か。下着とか見せちゃうのかな)

兄(何か胸がモヤモヤする。別に俺の彼女でも何でもないから嫉妬する権利なんてねえんだけど)

兄(嫉妬? 何考えてるんだ俺は。俺が女に嫉妬してどうするんだよ)

兄(俺があいつに嫉妬なんかする理由はないじゃんか)

兄(女の18禁の画像・・・・・・)

兄(でも。俺が女の肢体が見られることに期待しているのは、誤魔化しようのない事実だな)

兄(あと女の肢体を見るのが俺だけじゃないことに対する嫉妬心も確かに俺の心の中にある)

兄(・・・・・・俺、平凡な高校2年の童貞の男子高校生なのに、何で急にこんなどろどろしたことに巻き込まれてるんだろ)

兄(・・・・・・女のメールをパソコンに転送しておこう)カチカチ

兄(そんでパソのメールを開いてURLをクリック)カチ

兄(・・・・・・何かドキドキ感が半端ねえ)

兄(このスレか)


【貧乳女神も】華奢でスレンダーな女神がうpしてくれるスレ【大歓迎】


兄(何かタイトルすげえな)

兄(つうか半年以上前に立ってるスレなんだ。昨日のスレと違って>>1に細かい注意事項が書いてあるな)

兄(18歳未満は本当にだめなんだ、あと顔出し非推奨とかメアド晒し、出会い目的禁止か。何かエッチな板だと思ってたけど結構、常識的なことが書いてあるんだな)

兄(・・・・・・え)

『性器のうpは固くお断りしています』

兄(・・・・・・なんかすげえ嫌な予感がする)

兄(とりあえず更新してみよ)カチ

兄(最新レスは・・・・・・)

兄(あ、これって)


モモ◆ihoZdFEQao『こんばんわぁ〜。誰かいますか』


兄(女だ。始ったのか)

兄(・・・・・・更新してみよう)カチ

兄(レスついてる)


『いるぞ〜』
『モモか。久しぶりだね』
『モモちゃん元気だった?』
『ちゃんと大学入ってる?』


兄(何かみんな女のこと知ってるのか・・・・・・)

兄(それにしても大学生って)


モモ◆ihoZdFEQao『人いた。最近恋に落ちたせいか痩せてますます貧乳になりました(悲)』


兄(恋? まさか)

兄(画像のURLだ・・・・・・)

兄(・・・・・・何か怖い)

兄(けど、あいつが隠し事をしたくないって言うなら俺もちゃんと受け止めてやらなきゃ)

兄(それにすぐ削除しちゃうって言ってたし・・・・・・よし、画像を開くぞ)カチ
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/20(月) 23:16:00.15 ID:365/3mmGo
本日はここまでです

今回も序盤で150レスくらい消費してるんでそれなりに長くなりそうです

ではまた投下します

おやすみなさい
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/20(月) 23:16:59.07 ID:MpDFmy5ko
ひらけよぉぉぉおおつ!
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/20(月) 23:47:26.03 ID:COQupD33o
うむ。
この話の切り方、もはやお家芸とでも言っていいかも。
ともあれ乙だった
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/02/21(火) 01:18:33.67 ID:z1ohdIvLo
乙乙!
いいところで切りおって…
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/21(火) 22:34:00.26 ID:s5u3VGMBo
 URLをクリックすると別窓が立ち上がった。まだ画像は表示されていないけど、俺はその別窓を最大化してゆっくりと画像が表示されていくのを固唾を呑んで見守っていた。画像は上の部分から徐々に鮮明になり表示される部分が広くなっていった。最初に見えたのは女の顔だった。

 目の部分には昨日はモザイクがかけられぼかされていたけど、今日の画像は上から細い線を重ねて目の部分が見えないようになっていた。それでも女を知っている人間ならそれが誰だかすぐ判別できるくらい、その画像は申し訳程度にしか顔は隠されていなかった。

 やがて女の白い肌がゆっくりと浮き上がってきた。それはあいつの上半身の裸身の写真だった。左手で胸の部分を隠しているため乳首は見えないようになっていたけど、小さな手で押さえているせいで乳房は全体が隠されているわけではなかった。右手が写っていないのはおそらくスマホを持って腕を伸ばして自分を撮影したからだろう。画像の下の部分には女が履いているスカートが少し写っていたけど、それ以外は女は何も身につけていなかった。いや、正確に言うと鎖骨のあたりに何か付箋のような物が貼り付けられていて、それには英数字が書きなぐってあった。昨日のスレでもあったけどIDを書いて本人証明をしているのだろう。

 普段見ている印象よりあいつの体は細く華奢だった。制服姿でいるときより裸身になると肩や腕の細さが際立って見える。それでも俺は女の上半身裸の画像を素直に美しいと思った。

 最初に予想していたようなわいせつな印象は全くと言っていいほどしなかった。自分でも驚いたことに女の裸体を見ても性的な意味で興奮することはなかった。むしろ何か美しい絵画でも見ているような印象すら受けていた。・・・・・・なぜこういう行為をする子が女神と呼ばれているのか、あいつの裸身を眺めていると何となくその意味がわかったような気がした。そして、昨日は携帯の小さな画面だったけど、今日パソコンの大きなディスプレイで画像を見ると肌の質感が手に触れているかのようにまざまざと感じられるようだった。スマホのカメラのせいか画質はあまりよくなく、パソコンのディスプレイにく映し出された画像は解像度の荒さは隠しようもなかった。それでも画像の荒さは写し出された女の美しさを損なうことはなかったのだ。

 しばらく画像に見とれていた俺は我に帰り画像を右クリックして画像を保存した。すぐに削除するってあいつに注意されていたし。それから一度画像を閉じてスレを更新した。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/21(火) 22:36:27.75 ID:s5u3VGMBo
『美乳じゃん』
『美乳なんだろうけど手で隠すくらいならうpするなボケ』
『乳首も見せないとか何なの』
『モモちゃんの乳首みたいです』
『美乳というより微乳かもしれん。こんなんに需要ねえよ』
『>>○ スレタイも読めんのか。モモ、ナイス微乳。手をどけようよ』
『肌綺麗だな。こないだまで女子高生やってだけのことはある』
『乳首見せる気ないなら着衣スレいけよ』



兄(え? 何でこんなレスばっかなんだ。これだけ綺麗な画像貼ってるのに)

兄(ここ18禁だっていうけどレス見てると高校生以下のレベルじゃねえか)

兄(何か腹立ってきた。反論のレスしてやろうかな)

兄(・・・・・・でも、あいつに今日はレスするなって言われてたんだっけ)

兄(とりあえず更新してみよう)カチ



『ふざけんな。削除早すぎるだろ』
『即デリ死ねよ』
『のろまったorz』
『次の画像うpしてくれ』



兄(・・・・・・もう削除しちゃったのか。どれ)カチ

兄(DELIETEDって出て画像なくなってるな。スレのほうを更新しよ)カチ



モモ◆ihoZdFEQao『画像は15分で削除します。ごめん』

モモ◆ihoZdFEQao『あと乳首はダメです。需要ないかなあ』



『ねえよ帰れ』
『需要あるよ。乳首なくてもいいから次行ってみよう』
『モモの身体綺麗だからもっと見たいれす』
『次M字開脚してみて』



兄(好意的なレスもあるんだけど、とにかく画像を貼らせようって感じだな)

兄(でも正直俺ももっと見てみたい)カチ



モモ◆ihoZdFEQao『リクに応えてみました。乳首はダメだけどM字です。15分で消します』

兄(お、次の画像だ。消される前に)カチ
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/21(火) 22:42:13.75 ID:s5u3VGMBo
 次の画像は鏡に写した自分を撮影したものだった。女がスカートを脱いで床に座りこんで足をMの形に開いている画像で、開いた足の中心部にはブルーで無地のパンツがくっきりと写っていた。普通なら下着がはっきり見えているということでその部分に目が行くのかもしれないけど、俺の目はあいつの細く白い脚に釘付けになった。昨日見た太腿の画像より拡大され細部まではっきりと見えていたけれども、その脚にしみやあざは一つも見当たらず全体的に滑らかでほのかに内側から光を発しているようにすら思えた。特に昨日は見えなかった内腿の白さが際立っている。下半身を写しているせいで、画像の上部はお腹と形のよいへそが半ば見切れるように写っていた。

 2枚目の画像を見てもやっぱり美しさを感じたたけど、画像を見ているうちに性的な興奮のようなものがようやく俺にも湧き上がってきた。ただ、それは女の下着とか肌を見ていることからくる即物的な興奮ではなく、自分の親しい人間がこういう姿を不特定多数の目の前で肌を露わにしているという少し倒錯的な感情から来る興奮だった。俺は少し戸惑った。女の行為に嫌悪感は感じなかったけど、倒錯した興奮を感じた自分に対する嫌悪感は微妙に感じていた。それでも俺は麻薬に中毒して自分ではやめられない人のように、自分でこのスレを閉じることはできなかった。

 俺は2枚目の画像を保存すると、再びスレに戻り更新した。今度は概ね好意的なレスが数レス付いていた。昨日のスレのような流れの早さはなく、1枚画像を貼るたびに数人がレスするという感じだった。こういうスレを過疎スレと呼ぶのかもしれない。何度か更新してレスを確認していると再び女のレスがあった。



モモ◆ihoZdFEQao『ほめてくれてありがとうございます。じゃ最後は全身うpです。乳首なしですいません。15分で消します』



 俺は3枚目の画像を開いた。ゆっくりと表示されていくその画像は、姿見に正面から映した全身の画像だった。体にはブルーのパンツ以外何も見に纏っておらず胸だけは左手で隠している。右手には姿見を狙って撮っているスマホのカメラが握られているのがわかった。

 ・・・・・・結局その日はこれを最後に写真が貼られることはなかった。これでおしまいという女のレスに数レスだけ、ありがとうとかまた来てねとかというレスが付き、それに続いて即デリ死ねよとかのろまったとかというレスが数レス。その後は何度更新しても新規の書き込みはなかった。画像も宣言どおり20分くらいで全て消去されていた。夜中の3時ごろまでお祭りのように賑わっていた昨日のスレとは全く感じが違っていて、何か淡々と事が運んで淡々と事が終わったようだった。今日のスレでは始ってから終わりまで1時間もかかっていなかった。

 俺は更新を諦めてスレを閉じた。そして保存した画像をパソコンのメールで自分の携帯に写してから、その画像をパソコンのハードディスクから削除した。リビングのパソコンは家族共用なので万一発見されると非常に気まずい。というか両親に発見されるくらいなら気まずいだけですむけれども、妹が発見すると写真の人物が女であることに気づいてしまう可能性があった。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/21(火) 22:46:28.29 ID:s5u3VGMBo
 画像を全部削除してパソコンの電源を落として自分の部屋に戻った俺は改めて自分がこの女神行為に対して抱いた印象を考え始めた。明日朝一番で女に感想を求められることは間違いない。それまでに自分なりの感想を整理しておく必要を俺は感じたのだ。

 ・・・・・・少なくとも嫌悪感はなかった。それは断言できる。スレを開いた時に女神板のスレに感じた猥雑な印象は、実際に女の画像を見ると俺の心からすっかり消し飛んでいた。そして女の体を美しいと感じたことも間違いなかった。ただ、問題は2枚目以降の画像を見た時に感じた複雑な感情だった。俺はその感情を自分の心の中で整理しきれていなかった。それは自分がよく知っている女が他の男に肌を露出していることから来る嫉妬だったのだろうか。でもその感情を抱いたとたんに俺は得体の知れない深い興奮を覚えたのだった。それは単純な性的興奮ではなかった。何か自分の女が複数の男の視線に晒されていることへの興奮だったのか。

 え? 俺は一瞬自分の頭を疑った。俺の女ってなんだよ。

 女は俺と付き合っているわけではない。俺は不特定多数の掲示板の住人と同じく今日初めて女のああいう画像を見たのだ。いや、モモというコテハン(と言うらしい)がレスした人たちに知られていたということは、当然俺より先に女の裸身を見ていたやつらがいるということだった。それに対して俺が感じたのがスリリングな興奮なのかそれとも単純な嫉妬なのか。俺は混乱した。

 もうこれ以上考えても何も結論は出せそうになかった。俺は諦めて寝ることにした。今日も幼馴染の告白にどう応えるか考えなかったな・・・・・・そんな感想が眠りにつく前に俺の脳裏に浮かんだけれども、それはすぐ次に鮮明に脳裏に浮かんだ女の美しい肢体のイメージにかき消されてしまった。俺は女の真っ白だった美しい肢体を思い浮かべながらいつのまにか寝入ってしまったようだった。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/21(火) 22:47:40.97 ID:s5u3VGMBo
最近毎日の投下量が減っていてすいませんが、当分は週末以外はこのペースになると思います

ではまた投下します

おやすみなさい
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/21(火) 23:05:50.78 ID:XcTXZ4fLo
是非とも参考画像が欲しいでありますな
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/21(火) 23:26:37.78 ID:klYDaVrIO
おつ
ちょっと読みづらかったかな
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/21(火) 23:56:10.93 ID:9qFodWrSO
新たな世界の扉を開いてしまいそう
俺が
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/22(水) 01:00:07.65 ID:2HNxdtkDO
展開してきたね
続きが楽しみ

>>161
女神板にいってらー

163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/22(水) 08:25:32.11 ID:8IEmnguGo
奇麗、と言う感情をもっと前に出しても良いと思う
恋愛感情とか嫉妬心とかとは別に、美しいものへの憧憬というか

とにかく乙でした
楽しみにしています
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/22(水) 22:58:21.37 ID:FzxfdJjQo
翌日 自宅の最寄り駅


兄(今日は妹は俺を起こすとさっさと一人で出かけてしまった。おかげでいつもより遅い電車になっちまったな)

兄(・・・・・・)

兄(妹のやつ、最近夜も自分の部屋にいるし、昼も一緒に食べようとしないし俺のこと避けてるのかな)

兄(・・・・・・ついこの間まで近親相姦直前くらいなほど俺にベタベタくっついてたくせに)

兄(あいつ、幼馴染のこと応援してるって言ってたから、幼馴染への返事を引き伸ばしている俺のことを怒ってるんだろうか)

兄(・・・・・・まあ、いいや)

兄(そんなことより昨日のことのほうが悩ましい)

兄(・・・・・・携帯)チラ

兄(保存した画像ちょっとだけ見てみようかな)パカ

兄(・・・・・・1枚目の画像)

兄(携帯の画面だと画像が小さいけど、それでもあいつの体が綺麗なことはよくわかるな。胸隠している方がかえって美しく見える)

兄(2枚目はM字に脚開いてっていうリクエストに応えたやつだ)

兄(・・・・・・あいつの脚とかきれいだけど・・・・・・いったい何人くらいの男がこの脚を眺めて、画像を保存したんだろうな)

兄(レスしないでROMしてるやつも相当いるはずだし。でも15分くらいで画像は消されているから思ってるより少ないのかもな。過疎ってたスレだったし)

兄(そんでこの3枚目が一番好みだな。パンツしか履いてない全身の画像だけど)

兄(女神か・・・・・・やけに華奢な女神だけど、あいつの全身を見ていると胸が締め付けられるような変な感じがする)

兄(昨日考えてもこの感覚ってよくわかんなかった)

兄(単に同級生の女の子のエッチな写真をゲットして興奮してるとかだったら、まだわかりやすいんだけど)

兄(そうじゃないと思うな。だってこれをネタにオナニーしようとか全然思い浮ばなかったもんな)

兄(むしろこの女の美しい裸身が不特定多数の目に晒されてるって考えた時、正直に言うと勃起するほどの興奮を覚えたんだ)

兄(・・・・・・)

兄(・・・・・・朝の通学時間に俺何考えてるんだろ。誰かに覗き込まれる前に画像閉じておこう)カチ
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/22(水) 22:59:33.99 ID:FzxfdJjQo
兄(もうこの電車だと隣の駅で幼馴染も乗ってこない。今はその方がかえって気が楽だ)

兄(あ・・・・・・ベンチに女がいた)

兄(・・・・・・どうしよう。声かけてもいいんだろうか)

兄(目が合った)

女「おはよう」

兄「お、おう」

女「・・・・・・」

兄「え、ええと」

女「・・・・・・一緒に登校してもいい?」

兄「あ、うん」

女「よかった」

兄「(何かいつもと違って大人しい。昨日のことで緊張してるのかな)あのさ」

女「・・・・・・うん」

兄「昨日のあれ」

女「・・・・・・」

兄「(話づれえ)見たよ」

女「そう」

兄(こいつのこの制服を脱がすと昨日の画像のとおりの裸になるんだよな)ドキドキ

女「・・・・・・どうしたの」

兄「いや」ジー

女「・・・・・・あ」

兄「(両手でブラウスの胸元を隠した)ごめん、そうじゃなくて」

女「・・・・・・うん」

兄「綺麗だった」ボソ

女「え?」

兄「だから、昨日のおまえすげえ綺麗だったよ」

女「・・・・・・うん、ありがと」
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/22(水) 23:01:50.88 ID:FzxfdJjQo
兄「(俺、すげえ恥ずかしいこと言ってるよな)昨日の感想だけどさ」

女「・・・・・・うん」

兄「(珍しく緊張してる表情だ。まあ俺もこいつのことは言えないほど緊張してるけど)何て言うかさ」

女「うん」

兄「ああいうスレ見たの初めてだったけど、少なくともおまえの画像を見て嫌悪感とか軽蔑とか全然感じなかった」

女「・・・・・・本当?」

兄「うん、本当」

女「・・・・・・よかった」

兄「芸術って言うと大袈裟だけどさ。あれだけ綺麗な写真ならどこかで発表したくなるっていうのも何となく理解できたよ」

女「そんなに大袈裟なことじゃないけど」

兄「そうかもしれないけど・・・・・・でも画像見ててそういう感想が頭に浮かんだのは本当だぜ」

女「あ〜。よかったああ」ニコ

兄「突然、何て声出してるんだよ」

女「昨日撮影している最中も、フォトショで画像加工している時も、レスしている時も本当は怖くてどきどきしてたんだからね」

兄「いったい何で?」

女「最近兄君とやっと親しくなれて、一昨日の女神スレ見られても引かれなくてうれしかったけど、さすがに昨日のを見られたらもう普通に話をしてもらえないんじゃないかって思うと怖くて」

兄「・・・・・・そうか」

女「だからいっそこんなこと隠してればよかったとか考えちゃってね」

兄「うん」

女「でもよかった。兄君ありがと」ギュ

兄「・・・・・・そこで手を握らなくても」ドキ

女「どきどきした?」

兄「ちょっとだけ」

女フフ

兄「電車来たな。おまえどうするの?」

女「一緒に乗っていく。別に見ておきたいレスとか今日はないし・・・・・・いい?」

兄「・・・・・・うん」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/22(水) 23:06:07.18 ID:FzxfdJjQo
隣の駅


兄(今日はいつもより遅い電車だから幼馴染とは会わないはずだけど)

兄(だから別に心配することはないんだけど)

兄(・・・・・・)

兄(こいつ、いつまで俺の手を握ってるつもりなんだろ。結構周りにはうちの生徒がいるんだけど)

兄(隣の駅に着いたけど、幼馴染はやっぱりいつもの電車に乗ったみたいだな)

兄(・・・・・・あ、あれって)

兄(兄友じゃんか。最近幼馴染と一緒に登校してなかったけど、こんなに遅い電車に乗ってたのか。どおりで遅刻ぎりぎりに教室に来るわけだ)

兄「兄友、おはよ(こいつ今日も寝不足みたいだな。酷い顔してる)」

兄友「おう兄・・・・・・・って、え?」

兄「えって何だよ」

兄友「・・・・・・おまえさ」

兄「(あ、女と手を繋いでいるの忘れてた)あ、いや」

兄友「・・・・・・おまえ、そういうことだったの?」

女「兄友君おはよう」

兄友「・・・・・・」

兄(え? 女が俺以外のやつに挨拶した? とりあえず女の手を離さないと)

女「・・・・・・」ギュ

兄(手を振り解けない。つうかもっと強く握られて・・・・・・)

兄友「・・・・・・・俺がバカだったのかな」

兄「おまえ、何言ってるんだよ」

兄友「俺、おまえのためならあいつのこと忘れようと思って、時間ずらしたりあいつに話しかけないようにしてたんだけどよ」

兄「・・・・・・」

兄友「おまえ、最低だな」

兄「何か勘違いしてるぞおまえ」

兄友「幼馴染の気持を知りながら返事もしないであいつを悩ませておいてよ。自分は他の女と浮気かよ」

兄「違うって。話しを聞けよ(とりあえず手を離さないと)」

女「・・・・・・」ギュ

兄(女が手を話してくれない、つうか俺の手を今までより強く握っている・・・・・・自分だって誤解されてるのに。何かこの手を振り払っちゃいけない気がする)

兄友「女さんが好きなら何ですぐに幼馴染のことを振ってやらねえんだよ。おまえ、自分が好かれてるっていう気持を楽しみたいから幼馴染への返事を引き延ばしてるだろ」

兄「・・・・・・てめえ怒るぞ」

兄友「怒るって何だよ。誤解だとでも言いてえのかよ。登校中の電車の中でしっかりと女さんの手を握りやがって」

兄「握ってると言うか、握られて(・・・・・・あ)」

女「・・・・・・」ブルブル

兄(女、震えてる。こいつを俺のごたごたに巻き込んじゃだめだ)

兄(この話が続くと兄友のやつの怒りは女のほうに向くかもしれない・・・・・・もう誤解されても仕方ない。せめて女を傷つけないようにしないと)

兄友「じゃあな。おまえとはもう話さねえから。あと幼馴染にも全部今朝のこと話すからな。もうおまえなんかに遠慮したり気を遣ったりするのはやめだ」

兄(もう何を言っても無駄だな)

兄友「・・・・・・言い訳すらなしかよ。まあいいや。じゃあな」

兄(隣の車両に行っちゃったか)
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/22(水) 23:09:51.48 ID:FzxfdJjQo
兄「何か悪かったな」

女「・・・・・・ううん」

兄「俺たちのごたごたにおまえを巻き込んじゃった」

女「・・・・・・そうじゃない」

兄「え?」

女「そうじゃないの。あたしの方こそごめん」

兄「何でおまえが謝るんだよ。そりゃ、手を繋いでたとこ見られたのは痛かったけど」

女「兄君、幼馴染さんのこと考えなきゃいけない時に、あたしの女神のことなんかで時間取らせちゃったから」

兄「・・・・・・」

女「だからごめん」

兄「・・・・・・別におまえに強制されて見たわけじゃねえよ。むしろ幼馴染のことに真剣に向き合うのを先送りにしてたのは俺だし」

女「でも」

兄「でもじゃねえよ。おまえに悪いことしたのは俺の方だよ」

女「・・・・・・」

兄「たださ」

女「うん」

兄「何で今、俺の手を離さなかったの? 兄友に誤解されるに決まってるのに(つうかそもそも何で手を握ってきたんだ?)」

女「・・・・・・あのさ」

兄「うん」

女「あたし、その」オドオド

兄「(いつも冷静なこいつらしくないな。何おどおどしてるんだろ)うん」

女「あんたのこと・・・・・・好きかもしれない」

兄「!」

女「あたしみたいなぼっちが身の程知らずかもしれないけど」

兄「おい・・・・・・」

女「あんたのこと、本当は前から気にはなっていたんだけど」

兄「・・・・・・うん」

女「本気で好きになっちゃったみたい」


 その時、俺の手を離さそうとせず真っ赤な顔で俺に愛の告白をしている女の姿を狼狽しながら眺めている俺の目には、その必死な制服の女の上に、昨日見た画像のパンツしか身に纏わない裸身の女の姿が重なって見えた。俺もこいつのことが好きなんだろうか。もしかしたら昨夜女神板のスレでこいつの裸の姿を見ながら感じていたあの奇妙な感覚は、俺の女への好意の予兆だったのだろうか。そしてそのもやもやとした感じとは別に、いつも冷静に振舞っていた女が今俺に必死になって告白している言葉や、強く握り締めらている手の感触が、ここは本気で考えてやらなければいけない場面であることを俺に強く告げているようだった。

 俺は女の手を強く握り返した。次の言葉を出す前に一瞬、幼馴染が俺に告白した時の表情と、それになぜか妹の顔が思い浮んだけど、それはすぐに昨日見た女の美しい裸身のイメージに置き換わってしまった。

「あのさ」
俺は言葉を振り絞った。女は俺の手を握りながら黙って潤んだ瞳で俺を見上げた。

「俺もさ、おまえのこと好きになっちゃったかも」
 女はしばらく黙っていた。

 次の瞬間、周囲の乗客やうちの生徒たちの目を気にすることなく、女が俺に抱きついてきた。
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/22(水) 23:11:30.58 ID:FzxfdJjQo
短いですけど今日はここまで

また明日投下予定です。こんなニッチでマイナーなSSにお付き合いいただきありがとうございました

おやすみなさい
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/02/22(水) 23:16:48.88 ID:yUbmzpm2o


このままストレートに進むとは全く思えないが
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/22(水) 23:23:30.62 ID:F9IZT2qVo
乙んっす

波乱の予感
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/22(水) 23:36:50.95 ID:c/w6lErzo
乙乙

ものすごく胸が苦しい・・・・
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/22(水) 23:48:38.08 ID:XSjRMrrDo

まぁ、幼馴染を前にしたらまたあたふたするんだろうけど
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/02/23(木) 01:04:28.97 ID:AyQcOTjAO
今度は何を企んでんだ


175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/23(木) 01:36:30.59 ID:NhdJEmjMo
乙です

唯一の理解者として純愛路線ってのが好きだけど
作者さん思い通りやって下さい

男女孤立
女神を独占したくなって悩む
その他ヤンデレ化

コレだと泥沼だな
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/23(木) 06:52:34.57 ID:/K17Qc/SO
男の性癖がだいたいわかった気がする
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/23(木) 10:38:35.89 ID:8s+Uu/N9o


女の気持ちは少し分かるが男の気持ちがさっぱりわからん幼馴染や妹はどうした
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/23(木) 23:12:51.57 ID:5Aaw7GcGo
授業中


兄(・・・・・・)

兄(教室までずっと女と手を繋いで来たけど、周りのやつらの視線が半端なかったな)

兄(絶対にもう噂になってることは間違いない。俺と女が付き合い出したことが幼馴染に知られるのは時間の問題だ)

兄(・・・・・・どうしてこうなったんだろ。これじゃ順序が逆だ。幼馴染の告白をちゃんと断ってから女と付き合い出すべきだったのに)

兄(・・・・・・それにしても幼馴染を傷つけることには変わりないか。五十歩百歩ってやつだ)

兄(とにかく次昼休みには幼馴染を呼び出して話をしないと。せめて噂を聞いた幼馴染が傷付くより先に)

兄(・・・・・・どちらにしたって幼馴染が傷付くことには変わりないか)

兄(それでもやっぱり言わなきゃ。幼馴染のためだなんて言い訳はできないとしても、女のためにそうしなきゃな)

兄(しかし、女は俺のことが気になっているとは言ってたけど、まさかいきなり告るくらい俺のこと好きになってたなんて)

兄(・・・・・・俺の初めて彼女はぼっちの女神か)

兄(昔の俺なら考えられなかったけど、今は不思議と嫌な感じはしない、っていうかむしろ何かすごく落ち着いた気分だ)

兄(あいつの教えてくれたスレ見てたときのもやもや感が一気に晴れた感じだ)

兄(・・・・・・ちょっとだけ。教科書の陰なら先生にばれないだろ)パカ

兄(やっぱり綺麗だな、あいつ)

兄(この画像の裸身は今では俺の物なんだ)ジー

兄(何か不思議な感じがする)

兄(そういや女のレスで・・・・・・)


モモ◆ihoZdFEQao『人いた。最近恋に落ちたせいか痩せてますます貧乳になりました(悲)』


兄(あれって俺のことだったんだな)

兄(そういや、あいつ俺と付き合ってからも女神を続けるのかな)

兄(今まで考えなかったけど、自分の彼女の女神行為を見たらどんな感じがするんだろ)

兄(嫉妬心? それとも優越感か?)

兄(AKBの誰かひとりを彼女にしているやつがいるとしたら同じような感想を持つのかな)

兄(・・・・・・女)チラ

女「・・・・・・」ニコ

兄(俺に気がついて笑ってくれた・・・・・・やっぱ、あいつ可愛いな)

兄(女のためにも幼馴染とのことには決着をつけないと)

兄(とにかく昼休みになったら・・・・・・)
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/23(木) 23:14:04.28 ID:5Aaw7GcGo
昼休みの屋上


兄「悪いな呼び出しちゃって」

幼「兄になら別にいいよ・・・・・・もしかして返事してくれるのかな」

兄「うん。時間かかっちゃってごめん」

幼「あんたが優柔不断なことなんて知ってるよ。何年あんたの側にいたと思ってるのよ」

兄「そうか・・・・・・そうだよな」

幼「・・・・・・」

兄「俺、やっぱりおまえとは付き合えない」

幼「・・・・・・そう」

兄「悪い」

幼「わかった。でも一つだけ教えて」

兄「うん」

幼「もしかして、あたしと付き合えない理由って兄友のことがあるから?」

兄「それもあるけど」

幼「それもって?」

兄「最初は兄友のことばかり気になってたんだけど」

幼「・・・・・・うん」

兄「でも、正直に言うと今は兄友のことが理由っていうより、他に好きな子がいるから」

幼「え」

兄「だからおまえとは付き合えない。本当にごめん」

幼「・・・・・・女さんだよね?」

兄「・・・・・・うん」

幼「もう一つだけ聞いていい?」

兄「ああ」

幼「女さんを好きになる前って・・・・・・あんた、あたしのこと好きでいてくれた?」

兄(え? 何でそんなことを)
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/23(木) 23:16:51.61 ID:5Aaw7GcGo
兄「・・・・・・何でそんなこと」

幼「お願いだから答えて・・・・・・もうこれであんたを困らせたりしないから」

兄(こいつ冷静に話しているようだけど手が震えてる・・・・・・胸が痛い)

兄「(ここで嘘はついちゃいけない)昔からずっとおまえのことだけが好きだったよ。女のことを好きになる前は」

幼「・・・・・・そうか、そうだよね」

兄「・・・・・・」

幼「あーあ。うまく行かないよね。あんたがあたしを想っていてくれた頃はあたしは妹ちゃんに遠慮してて」

兄「・・・・・・うん」

幼「それであんたのことを忘れようとして兄友に近づいたら、今度はあんたが兄友に遠慮しちゃって」

兄「・・・・・・」

幼「そんなことやってるうちに、あんたは新しい恋を見つけちゃったってわけね」

兄「・・・・・・めぐりあわせが悪かったのかな、俺たちって」

幼「うん」

兄「・・・・・・」

幼「・・・・・・ねえ?」

兄「うん」

幼「これからも友だちっていうか、幼馴染でいてくれる?」

兄「あたりまえだろ」

幼「よかった。あたし、これ以上あんたを困らす気はないけど」

兄「うん」

幼「心の中でさ、彼女ができた好きな人のことを想い続けるのはあたしの自由だよね?」

兄「・・・・・・どういうこと?」

幼「あんたのこと諦めないって言ってるの」

兄「幼馴染・・・・・・あのさあ」

幼「あんたと女さんの関係を邪魔したりはしないいよ。でもあんたのことを好きでいることはあたしの自由でしょ」

兄「・・・・・・だけど」

幼「それに」

兄「何だよ」

幼「女さんとのことを邪魔する気は全然ないけど・・・・・・女さんとあんたじゃ合わないと思うし」

兄「おまえ何言って・・・・・・おれじゃあ女にはつり合わないってこと?」

幼「そうは言ってないけど」

兄「じゃあどういう意味?」

幼「言ったとおりだよ。あんたと女さんは合わない。だから長続きしない」

兄「何言ってるのか全然わからないんだけど」

幼「わからなくてもいいけど。とにかくあたしはあんたが女さんと付き合ったとしても、あんたのこと好きでいるから」

兄「・・・・・・兄友のことは?」

幼「嫌いじゃないよ。でももう自分にも他人にも嘘つくのやめたの。妹ちゃんのおかげでいろいろ目が覚めた」
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/23(木) 23:19:53.45 ID:5Aaw7GcGo
兄「・・・・・・」

幼「じゃあ、あたしもう行くね」

兄「ああ」

幼「あ、しつこいようだけどもう一つだけ質問。これが最後だから」

兄「いいよ」

幼「ひょっとしてもう女さんと付き合ってる?」

兄{(ここで嘘は言えねえ)うん、今朝女に告られてOKした」

幼「・・・・・・」

兄(やっぱ返事貰うより先に既成事実を作られてるのってショックだよな)

幼「ねえ?」

兄(ここは素直に謝ろう・・・・・・許してもらえなくても)

幼「あんたさ、妹ちゃんにはどう話すつもり?」

兄「へ? (何だ?)」

幼「へ? じゃないでしょ。あたしのことを考えて兄から身を引いた妹ちゃんが、女さんとのことを知ったらどんなに傷付くと思ってるの」

兄「そう言われても・・・・・・確かにすごく仲のいい兄妹だし、あいつは俺の大事な妹だけど」

幼「うん。だったら・・・・・・」

兄「いやちょっと待て。だけどどんなに仲良くても、どんなにお互いが大事でもあいつはあくまでも実の妹だぞ」

幼「最近、妹ちゃんあんたのこと避けてない?」

兄「あ(そう言われてみれば女神スレ見てたからあまり気にしなかったけど、最近あいつ家では自分の部屋に閉じこもってるし、弁当は作ってくれないし、今日なんか一緒に登校もしなかった)」

幼「妹ちゃんは妹ちゃんなりにあんたのことを考えて、でも自分の気持に嘘つけなくて悩んでるんだと思うよ」

兄「・・・・・・・」

幼「まあその原因はもともとあたしにあるんだけど」

兄「・・・・・・・うん」

幼「でも、あたしじゃなくて女さんにあんたを奪われたって知ったら、妹ちゃんどうなっちゃうんだろ」

兄「脅かすなよ」

幼「脅しじゃないよ。あたしだって心配なのよ」

兄(妹がそんなに思い詰めてるって本当だろうか)

幼「いずれ妹ちゃんには知られるだろうし、その時はあたしも頑張って妹ちゃんの面倒見るけど」

兄「すまん」

幼「いいよ。あたしのせいだし。でも、あんたも覚悟しといた方がいいかもよ」

兄「・・・・・・」

幼「じゃあ、そろそろお昼食べないと休み時間終っちゃうから。またね」

兄「ああ」

兄(・・・・・・)
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/23(木) 23:21:21.98 ID:5Aaw7GcGo
今日はここまでです

なかなか進展せずもやもやした話に付き合っていただいてありがとうございます

明日また再開します

おやすみなさい
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/23(木) 23:29:04.83 ID:quXFwqguo
(鬱エンドが見たいけど、結構鬱エンド嫌いな人って多いから言わないほうがいいかな)
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 00:21:42.67 ID:cyNaBfalo
おつかれおやすみ!
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/24(金) 01:53:42.61 ID:QfOpZ6Yio
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/24(金) 03:14:04.22 ID:dym36BdMo
みんな必死に悩んで悩んで苦しんだ上で
その上での鬱エンドだったら、恋愛物として受け入れられる
たとえ読み手には重たい物語になったとしても、甘い恋ばかりじゃないと
世の中バラ色ばかりじゃないという
そういう恋もあると納得出来る

だから、どういう道筋を辿ろうと、作者さんは思い通りに続けてほしい
最後まで付き合います

心より、乙
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/24(金) 22:55:45.91 ID:7ooBfqRSo
教室


女「兄君」

兄「(こいつ、いつもは教室では昼飯食わないのに。俺のこと待ってたのか)うん」

女「思ったより早く戻って来たね」

兄「え?」

女「幼馴染さんと会ってたんでしょ」

兄「何だ、知ってたのか。相変わらず察しがいいな」

女「まあね」

兄「・・・・・・」

女「・・・・・・」

兄「・・・・・・気になる?」

女「・・・・・・意地悪」

兄「(やべ可愛い)あのさ」

女「・・・・・・うん」

兄「ちゃんと断ってきたよ」

女「そうか・・・・・・よかった」

兄「(あからさまに嬉しそうだけど、女ってこんなに感情を表すタイプだっけ)うん」

女「・・・・・・ありがと」

兄「まあ、おまえと付き合ってるわけだし、いつまでもぐずぐずと返事を延ばしてはいられねえしな」

女「うん」

兄「何か急に緊張が緩んできた(今日も昼飯食いっぱぐれかよ)」

女「・・・・・・はい、これ」ガサガサ

兄「うん?」

女「サンドイッチ。コンビニので悪いけど」

兄「・・・・・・おまえ、いつも弁当のほかにサンドイッチとか食い物持ち歩いてるの?」

女「そんなわけないじゃん」

兄「何なんだよ」

女「いらない?」

兄「いるけどさ」

女「はい・・・・・まだ昼休み20分くらいあるし」クス

兄「じゃあ、貰う」

女「・・・・・・うん。飲み物コーヒーでよかった?」

兄「うん・・・・・・つうかいつもそんな物まで装備してんのかよ」

女「まさか。さっき自販機で買っておいたの」

兄「まあ、その・・・・・・ありがとな」

女「うん。一応あんたの彼女だし、これくらいはね」

兄「そうだな」
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/24(金) 22:57:04.58 ID:7ooBfqRSo
女「・・・・・・」

兄「・・・・・・」パク

女「・・・・・・美味しい?」

兄「うん」

女「そうか・・・・・・」

兄「・・・・・・」パクパク

女「ねえ」

兄「うん」

女「今日一緒に帰れる?」

兄「うん? 最初からそのつもりだけど」

女「よかった」

兄「・・・・・・」パクパク

女「ねえ」

兄「うん。今度は何?」

女「明日さ」

兄「おお」

女「もし迷惑じゃなかったら、あんたのお弁当作ってきていい?」

兄「(何だか突然デレ始めたな)うん。楽しみだよ」

女「そうか。じゃあ、そうする」ニコ

兄「うん(やばい。今こいつに萌えちゃった)」
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/24(金) 23:02:07.80 ID:7ooBfqRSo
放課後


兄(授業終ったし、女誘ってさっさと帰ろうかな)

兄(しかし、そこはかとなく女の好意には気づいていたものの、付き合い出したらあいつがここまでデレるとは夢にも思わなかったな)

兄(どっちかかつうと感情の起伏に乏しいというか、冷静なタイプだと思ってたのに)

兄(まあ、でも普段冷静な女があそこまでデレてるのも新鮮だし)

兄(こういうのをギャップ萌えって言うんだろうか)

兄(それに、考えてみれば普段のあいつの振る舞いからは、まさかあいつが女神だなんて誰も思わねえよな)

兄(・・・・・・いろんな顔を持つ女か)

兄(俺はもうあいつの彼氏なんだし、何であいつが女神行為なんて始めたのか聞いてもいいんだよな)

兄(・・・・・・何か女神の件は考え出すと自分の中で収集がつかなくなる気がするから、もう少し考えないでおこう。付き合ってればそのうちそういう話題になるだろうし、その時まではこっちから触れるのはやめておくか)

兄(つうか俺たち同級生なのに、付き合い出したきっかけが女神行為とか2ちゃんねるとかとても人には言えねえ)

兄(まあいいや。この先長いんだからいろいろとゆっくり考えればいいか)

兄(そろそろ帰ろうかな・・・・・・って、あれ)

兄(女がクラスメートの女の子と話してる? 珍しいものを見るものだ)

兄(女が俺以外のやつと話し込んでいるところを見るの初めてだ)

兄(何話してるんだろ。少し盗み聞きしちゃおうか)

兄(結構声がでかいからよく聞こえるな)
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/24(金) 23:05:24.08 ID:7ooBfqRSo
同級生女1「・・・・・・本当にこれ借りてもいいの?」

女「うん、あたしはもう読み終わったから。よかったらどうぞ」

同級生女1「わあ、女さんありがと。言ってみるもんだなあ。まさか女さんから本を貸してもらえると思わなかったよ」

女「そうだよね。あたし性格悪そうに見えるし」ニコ

同級生女2「ええー、そんなことないって。ただ、女さんって人に話しかけられるのって嫌いみたいだったから、今まで遠慮してただけだよ」

女「別に話しするの嫌いじゃないよ。2さんもこの作家のラノベ、好きなの?」

同級生女2「うん。大好き」

女「じゃあ、1さんが読んだ後に読んだら?」

同級生女2「ほんと? 今月お小遣い残り少ないから貸してくれると助かるよ」

女「別にいいよ」

同級生女1「ねえ? もし暇だったらうちらとお茶して帰らない? お礼に奢るよ」

同級生女2「そうしようよ。あたし前から女さんと話したかったし」

女「呼び捨てでいいよ。誘ってくれてありがと」

同級生女1「じゃあ、行こうよ」

女「でも、ごめんね。あたしこれから約束があるんだ」

同級生女2「・・・・・・女さん、違った。女ってやっぱり兄君と付き合ってるの?」

女「うん。今日からだけど」

同級生女1「え? 何々、女って兄君と今日から付き合い出したばかりなの?」

女「うん、そうだよ」

同級生女2「女って別に人間嫌いな人じゃなかったんだねえ」

女「何よ、それ」クス

同級生女1「何だ、それがわかっていればもっと早く仲良くなれたのに」

女「あたし、ぼっちだったからさ」

同級生女2「何言ってるのよ。女くらい可愛くて成績もよければぼっちなんかになりようがないでしょ」

同級生女1「そうだよー。絶対人を寄せ付けないタイプだと思ってたのに」

女「だからそんなんじゃないって」クス

同級生女2「それよかさ。兄君って幼馴染と兄友君と三角関係じゃなかったの?」


兄(あいつら余計なことを)


同級生女1「そう、それで噂なんだけど」ヒソヒソ


兄(声を低くしやがった。何言ってるのかわからん)


女「別に・・・・・・うん・・・・・・そうじゃないけど・・・・・・うん、そうだね。また約束がない日に誘ってくれる?」


兄(途切れ途切れに女の声が聞こえるけど、内容まではわからないな)

兄(そろそろ女を誘いに行くか)
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/24(金) 23:07:52.58 ID:7ooBfqRSo
兄「そろそろ帰らねえ?」

女「うん」

同級生女1「兄君、女さんと付き合ってるんだって?」

兄「ああ、まあ」

同級生女2「ああ、まあって何だよ。照れてるの?」

同級生女1「照れてる照れてる」

兄「おまえらうるせえよ」

女「・・・・・・」ニコ

兄「(こいつも否定しないで笑ってるし)もう行こうぜ」

女「うん」

同級生女1「あたしたちさ、女と仲良くなったから。今度放課後女と遊びに行くからね」

兄「何で俺に言ってるんだよ」

同級生女2「兄君って独占欲強そうだし、女のこと束縛しそうじゃん」

兄「そんなことねえよ。何言ってるんだよ」

女「あたしもそんなことないと思うなあ。どちらかと言うとあたしの方が兄君に嫉妬してそのうち嫌われそうで怖い」

兄「え」

同級生女1「そんなわけないでしょ。どう考えても女の方がスペック高いじゃん」

同級生女2「そうそう。女ってぼっちで寂しかったところを兄君に付け込まれたんじゃない? 今の明るくて可愛い女なら男なんて選びたい放題だよ」

同級生女1「考え直したら?」

兄「・・・・・・おまえらなあ」

同級生女1「冗談だって・・・・・・冗談。何マジになってるのよ」

女「冗談だって。兄君」フフ

兄「・・・・・・おまえも嬉しそうに何笑ってるんだよ」

同級生女2「じゃあ、冗談はこの辺にして邪魔者は消えようか」

同級生女1「うんうん。じゃあ女、本ありがとね。次は付き合ってよね」

女「うん、ごめんね。今度また誘ってね」

同級生女2「嫌だって言ったって誘っちゃうよ。じゃあね」

女「またね」

兄(・・・・・・何でいきなりこいつららと仲良くなってるんだよ? こいつ)
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/24(金) 23:10:29.57 ID:7ooBfqRSo
本日はここまでです。投下量少なくてすいません

多分、土日はもう少し多目に投下できると思います

あと感想レスいつもどうもです。ニッチで需要の少ないマイナーなスレになることは間違いないと思いますのであらかじめご了承いただけると気が楽です

それではお休みなさい。またお会いしましょう
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/24(金) 23:15:22.25 ID:lKkJwRlPo
乙です。

微妙に嫌な予感がしています。
このまま兄と女が幸せなカップルでいいです。
同級生女は是非ただのモブキャラでいてください
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/24(金) 23:27:24.17 ID:2OBSS3mEo
俺得スレの予感
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) [sage]:2012/02/25(土) 00:57:43.42 ID:1rK3kEo9o
女がメンヘラな可能性が出て来たな
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 14:28:10.25 ID:X3EyjSyIO
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 21:26:20.26 ID:uQWMWi4DO
ヤンデレくる?期待
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/25(土) 23:49:18.17 ID:a0xdWOYro
帰り道


兄「なあ」

女「うん」

兄「何でいきなりあいつらと仲良くなったの?」

女「仲良くなったっていうかさ」

兄「うん」

女「・・・・・・あたし、兄君の彼女だって人に胸を張って言っていいんだよね?」

兄「そらそうでしょ。付き合い出したんだし」

女「うん、よかった」

兄「うん?」

女「それでね。兄君の彼女になったんだから、もうぼっちとか暗い女だとか周りの人に思われるのも嫌だし」

兄「はあ?」

女「だからさ、普通に目立たないくらいの女になろうかと思って」

兄「・・・・・・いったい何で? おまえそういうの気にならない人でしょ? 今までだって好き好んでぼっちやってたんだろ」

女「あたしはそれでもいいけど」

兄「うん」

女「でもそれじゃ兄君に申し訳ないし」

兄「意味わかんねえんだけど」

女「やっぱさ、あんたが幼馴染さんと付き合えば周りはそれなりに納得すると思うのね」

兄「え? 何言ってるんだおまえ」

女「幼馴染さん綺麗だし人気もあるし」

兄「あいつはそうかもしれないけど、俺なんかが誰と付き合っても周りは気にしねえだろ」

女「あんたも無駄に自己評価低いんだね」

兄「意味わかんねえよ」

女「まあ、いいけど。要はあんたが選んだのがあたしみたいなぼっちじゃ、周りが不審に思うでしょってこと」

兄「・・・・・・・それこそ意味わからん(それに女だって可愛らしさじゃ幼馴染といい勝負じゃんか)」

女「あたし、あんたにはあたしが彼女だってことで、負い目とか劣等感とか感じて欲しくないの」

兄「んなこと感じねえよ」

女「兄君が好きになったのは普通の女の子なのかってクラスの人たちに思って欲しいから」

兄「(訳わかんねえ)で、おまえは同級生女達とこれからつるんで行動するの?」

女「ほどほどにそうしようと思う。別に友だちとかなくてもいいんだけど、あたしがぼっちだと兄君が周りにバカにされそうだし、そんなのいやだから」

兄「・・・・・・考えすぎなんじゃねえの? それにおまえ、女神行為のことを隠して誰かと友だち付き合いするの嫌なんだろ?」

女「まあ、そうだけどさ。背に腹は代えられないよ。あたし、本当にあんたに惚れちゃったみたい」

兄「え・・・・・・」

女「・・・・・・やだ。恥かしいこと言っちゃった」

兄「(何かいとおしい・・・・・・)」ギュ

女「初めて兄君の方から手をつないでくれた」ギュ

兄「おまえの家まで送ってくよ」

女「うん、ありがと」

兄「いいよ別に(恋人同士らしい会話になってきたな。何かわくわくする)」
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/25(土) 23:51:41.63 ID:a0xdWOYro
自宅


兄「ただいま」

兄「・・・・・・」

兄(両親がいないのはいつものことだけど、今日は妹もまだ帰ってないのか)

兄(女を家まで送ったんで、妹の方が先に帰ってるのかと思ったんだけどな)

兄(あれ? 何かポストに入ってるな・・・・・・どれ)


『ご不在でしたので××集配センターでお預かりしています。下記までご連絡ください。お預かりしているお品物:××製ノートパソコン』


兄(ノーパソ? いったい誰が買ったんだろう。親父かな)

兄(・・・・・・いや親父はモバイルノート持ってるし)

兄(まさか母さんから俺へのプレゼント?)

兄(そんなわけねえか。頼んでもいないのに・・・・・・てか誰宛なのか見ればいいのか。どれ)


『妹様』


兄(妹がパソコン? 俺だってリビングのパソコンを使ってるのに何でこいつだけノーパソ買ってるんだよ)

兄(つうか妹のお小遣いで買えるもんじゃねえだろ。絶対親に買ってもらったな)

兄(親父め、妹だけえこひいきしやがって)

兄(でも、リビングのパソコンだってたまに見るくらいの妹が何でノーパソなんて親にねだったんだろ)

兄(考えてみりゃ不思議だ)

兄(最近、あいつと話してねえからあいつが何考えてるかなんてわからねえけど)

兄(こんな俺たちって初めてかもしれないな)


回想

幼「最近、妹ちゃんあんたのこと避けてない?」

兄「あ(そう言われてみれば女神スレ見てたからあまり気にしなかったけど、最近あいつ家では自分の部屋に閉じこもってるし、弁当は作ってくれないし、今日なんか一緒に登校もしなかった)」

幼「妹ちゃんは妹ちゃんなりにあんたのことを考えて、でも自分の気持に嘘つけなくて悩んでるんだと思うよ」

兄「・・・・・・・」

回想終了


兄(俺には彼女ができたって、妹に報告しなきゃいけないんだけど)

兄(幼馴染の話しを聞いた後じゃ、とても怖くて言い出せないし)

兄(パソコンなんかどうでもいいや。とにかく妹との仲を正常化させよう)

兄(仲が良くてもいいけど、つうか仲が良くなきゃ俺も寂しいけど、仲良しでも倫理を逸脱していない正常な兄妹関係に落ち着かせないと)

兄(とにかく一度妹とゆっくり話さないとな)
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/25(土) 23:53:55.10 ID:a0xdWOYro
自室 夜


兄(妹、帰って来ないな)

兄(買い物でスーパーに寄っているにしても遅すぎる)

兄(携帯にかけてみるか)

兄(・・・・・・)ピポパ

妹『お兄ちゃん?』

兄「おまえ、もう8時過ぎてるぞ。今どこで何してるんだよ」

妹『もうすぐ家につくから』

兄「遅くなるならメールくらいくれよ」

妹『ごめんごめん。ちょっと買い物とかで遅くなっちゃって』

兄「そんならいいけど。帰ってから飯の支度? 俺腹減ったんだけど(昼飯サンドイッチ一個だったしな)」

妹『ああ、ごめん。もう遅いし、悪いけどカップラーメンとか食べてくれる?』

兄「・・・・・・」

妹『じゃあ、電車来たから』ガチャ

兄(何なんだよ)

兄(まあ、いいや。カップ麺好きだしな)


キッチン


兄(よし、お湯を入れて)

兄(3分待とう)

兄(・・・・・・)

兄(・・・・・・そういえば)

兄(明日、女と一緒に登校する約束とかすればよかったな。せっかく家まで送っていったのに普通にさよならして別れてしまった)

兄(これからは女と一緒に登下校しよう。それが自然だよな。最寄り駅も一緒なんだし)

兄(彼女ができたら、一般的にはどういうことをすればいいんだろう)

兄(何をすればいいとかじゃないな。何をしたいかだ)

兄(順当に考えればまず休日デートだな)

兄(そlれで食事して、夕暮れの公園で初めてのキスとか)

兄(そこまで行けばあとは女の体を・・・・・・)

兄(あれ? 何か違和感が)

兄(・・・・・・ああ)

兄(女の体って、俺見たことあるんだった)

兄(付き合う前から女神スレの画像であいつの裸は既に見てるんだもんな)

兄(何かなあ・・・・・・キスするより前に彼女の裸身を見たことあるって。違和感ありまくりだ)

兄(・・・・・・そういあいつ、今日は女神行為するのかな)

兄(何か普通になりたての恋人っぽい話ししかしなかったけど、あいつ俺と付き合っても女神行為は続ける気かな)

兄(俺はどうなんだ? 自分の彼女の裸が不特定多数の男に見られるって)

兄(・・・・・・とりあえず飯食ったらスレ確認してみるか)
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/25(土) 23:58:56.81 ID:a0xdWOYro
リビング


兄(妹は帰ってきたけど、風呂から上がったら自分の部屋にこもってしまった)

兄(それに帰宅した時にあいつが抱えていた重そうな箱、あれノーパソじゃねえのか)

兄(不在連絡票なんか見なくても留守中にパソが届くって知ってたんだな。そんで直接受け取りに言ったから帰宅が遅かったのか)

兄(何で突然ノーパソ必要なんだろ。妹のやつ、俺が何聞いてもちゃんと答えてくれねえし)

兄(ま、いいか。今はそれより女神板だ。妹がリビングにいないから落ち着いてスレを見れるな)

兄(こないだブクマしといた女神板のスレから確認しよう)カチ



【貧乳女神も】華奢でスレンダーな女神がうpしてくれるスレ【大歓迎】



兄(・・・・・・昨日最後に見たレスから全然新しいレスないな)

兄(あいつ、今日はおとなしくしてるのかな)

兄(つまらん・・・・・・)

兄(つまらんって何だよ。そんなに俺って女の女神画像を期待してたのか)

兄(・・・・・・つうかもう俺はあいつの彼氏なんだから画像とかじゃなくてじかに見たり触ったりとかを考えればいいじゃんか)

兄(・・・・・・)

兄(何かぴんと来ねえな)

兄(あいつはリアルで俺の彼女なのに、何でネット上の女の画像ばっか期待してるんだろうな、俺って)

兄(まあ、今夜はあいつの女神行為はないらしい)

兄(いや、まてよ。女神板じゃないとこでやってるかもしれない)

兄(最初に見たのだって別な板だったし・・・・・・あのスレ確かVIPだったな)

兄(念のため)カチ

兄(うわ。これじゃ探すの大変だ、どんだけスレ立ってるんだよ・・・・・jk2とかで検索してみるか)カチャカチャ、カチ

兄(・・・・・・ない)

兄(ないな。やっぱり今日は女神行為してないんだ)

兄(つうか普通に女に電話して確認すればいいんだよな。俺は女の彼氏なんだし)

兄(・・・・・・俺ってチキンだ)

兄(あ、そうだ。あいつのコテトリとかっていうやつで検索してみようか・・・・・・・とりあえず女神板で)

兄(よし)カチャカチャ

『モモ◆ihoZdFEQao』

兄(検索・・・・・・っと)カチ



『【貧乳女神も】華奢でスレンダーな女神がうpしてくれるスレ【大歓迎】』
『【緊縛】縛られた女神様が無防備な裸身を晒してくれるスレ【被虐】』



兄(え?)

兄(女のコテトリで緊縛とかっていうスレがヒットしたんですけど・・・・・・)
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/26(日) 00:05:16.87 ID:FYswq1HJo
兄(・・・・・・)

兄(貧乳女神スレ以外もヒットしたけど・・・・・・)

兄(緊縛って・・・・・・)

兄(・・・・・・怖いけどスレ開いてみよう)カチ

兄(1年くらい前に立ったスレだ)

兄(何か女神のレスがいやらしいというか、さばさばし過ぎっていうか)


『自分で後手縛りは無理でした。縛られてるみたいな格好だけしてみました』
『自分に手錠をかけてみました。手首にあざがついちゃったよ(笑)』
『彼氏にラブホで虐められちゃった。後手に縛られてバックポーズにされた写真です。自撮でなく彼氏撮影です』
『目隠ししされてみました。見えないからピントもちゃんと合わせられなくてごめんね』


兄(・・・・・・何かすげえスレ開いちゃった)

兄(今のところモモは出てこないな)

兄(スクロールして)カチカチ

兄(・・・・・・)カチカチ

兄(・・・・・・あ)


モモ◆ihoZdFEQao『誰かいますかぁ?』


兄(女のレスだ!)

兄(2月くらい前のだけど)

兄(・・・・・・スクロール)カチ


『いるよ』
『モモちゃんキター!』
『今日は大学休みなの?』
『おお、ようやくモモと遭遇できた』


モモ◆ihoZdFEQao『人いた。じゃあ写真貼ります。15分でデリっちゃうけど』


兄(緊縛とかってまさか・・・・・・画像あった)カチ


404 NOT FOUND


兄(・・・・・・)


『モモちゃんGJ!』
『いい。ただ一言いい』
『のろまった。誰か詳細plz』
『>>○ モモが後手に縛られているような感じで床にぺたって座り込んでいる画像。ブラウスが半ば脱がされている感じが色っぽい』
『ビーチクは見えてるの』
『>>○ 見えてない。ブラとスカートは着用してる。でも何か高校生が無理やり後手に縛られブラウスを脱がされてこれから犯されるってイメージの画像』
『頼む! 保存したやつ誰かうpしてくれ「』
『必死すぎ。んなことできるわけねえだろ。遅れたやつはあきらめろ』
『モモの緊縛画像を永久保存した俺は勝ち組だけどな』


兄(いったいどんな画像貼ったんだろう)

兄(女の・・・・・・俺の彼女が縛られて犯されようとしている写真)

兄(それを俺以外のやつが持っていて俺が見れないとかって)

兄(・・・・・・2月前か。いくら画像をクリックしても無駄だろうな)

兄(何かもやもや感は半端ねえ)

兄(・・・・・・もう寝よう)
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/26(日) 00:06:47.22 ID:FYswq1HJo
今日は以上です

投下レス数少なくてすいません

明日はもう少し投下できればと思っています

おやすみなさい
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/02/26(日) 00:14:38.71 ID:krl+0WWyo
妹は自縛系か
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/26(日) 01:27:47.68 ID:Gi50dqfPo
乙です
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/02/26(日) 08:28:52.31 ID:7yCZpPW0o
なんか女かわいいよな
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/26(日) 22:51:19.59 ID:FYswq1HJo
翌朝 最寄り駅


兄(今日も妹は勝手に出かけて行ったけど、こうなったらかえって好都合だな)

兄(女は・・・・・・あ、いた)

女「おはよ」ニコ

兄「お、おう。おはよう」

女「最近寒くなってきたね」

兄「(自然に俺に横に並んだ。何か新鮮だ。彼女ができるってこううことなんだ)そうだね」

女「早起きしてちゃんとお弁当作ってきたよ」

兄「ありがと。でも寒いから屋上とか中庭は厳しいかなあ」

女「教室の中じゃだめ?」

兄「いいけど・・・・・・目立つぞ」

女「兄君がいいならあたしは別に目立っても構わないけど」

兄「・・・・・・ほんと前とは変ったな、おまえ」

女「うん、そうかも。何か中学の頃の自分に戻れそうな気がしてさ。ちょっとわくわくしてる」

兄「おまえ、もともと可愛いしコミュ力も高いから、自分でその気になればあっという間にリア充になれるんじゃね」

女「そうかな」

兄「そうだよ。多分男からも注目されるようになると思うよ」

女「そんなのはいいよ、面倒くさい。あたしは兄君がいればそれでいい」

兄「何でだよ? もてないよりもてた方が気分いいでしょ? 今までだっておまえのことチラ見してる男って結構いたじゃん」

女「たまに視線を感じてたんだけど、あれってそういうことだったんだ」

兄「そ。そのおまえが明るくフレンドリーになったら超人気者になると思うな」

女「兄君は?」

兄「え?」

女「兄君はどっちがいい? あたしがっていうか自分の彼女がぼっちなのとリア充なのと」

兄「うーん。おまえが男に人気がある方が優越感感じられるし、かといってそれが行き過ぎると嫉妬するかもしれないし」

女「・・・・・・正直なんだね」クス

兄「格好つけたってしょうがないしね」

女「兄君ってそういうところ格好いいよね。それに女の子に慣れてる感じがする」

兄「そうかな。妹とか幼馴染といつも一緒にいたからかもね」

女「そういうことか」

兄「それよかさ、いつまで俺のこと兄君って呼ぶの?」

女「え」

兄「もう呼び捨てでいいよ。俺も女って呼び捨てにしてるしさ」

女「じゃあそうする」

兄「うん」

女「電車来たよ」

兄「うん」

女「ほら人が降りれて来るから、兄もこっちに寄って」

兄「悪い(こいつ自然に俺のこと呼び捨てたな。俺のこと女の子に慣れてるって言ってたけど、こいつこそ男と一緒にいても全然恥らうとか緊張するとかないのな)」

女「よし乗ろう」
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/26(日) 22:55:07.63 ID:FYswq1HJo
電車の中


兄「そういやさ。昨日は女神やらなかったの?」

女「うん。お弁当の下ごしらえとかあったし、朝早く起きなきゃいけなかったからさ。あんなことやってたら早起きできないし」

兄「早起きって何かあったの?」

女「・・・・・・お弁当作るのって結構時間かかるのよ」

兄「あ、そうか。ごめん」

女「あたしは好きでやってるからいいんだけどね。多分、妹さんも今まで兄より最低でも1時間は早起きしてたんじゃないかな」

兄「そういやそうだ。今まではあいつお弁当だけじゃなくて朝飯も作ってしな」

女「そういうこと。好きな男にお弁当作るのって結構大変なんだよ」

兄「ありがとな」

女「お昼休み期待してて」フフ

兄「あ、そうだ」

女「なあに」

兄「女神と言えばさ、昨日おまえのレス見つけたよ。これまでと違うスレで」

女「うん? どこだろう。女神板?」

兄「そうそう。確か、縛られた女神様がどうこうとかってスレ」

女「ああ緊縛スレか」

兄「(朝から女子高生が緊縛とか言うか)ああいう特殊なシチュエーションの女神行為もしてたんだ」

女「うん。別に他のスレと変らないよ。他より露出度多くしてるわけじゃないし」

兄「・・・・・・ああいうの好みなの?」

女「ああいうのって?」

兄「つまり、その・・・・・・縛られて犯される? みたいなの(俺のほうこそ朝から何言ってるんだ)」

女「そんなわけないじゃん。つうかあたし処女だし」

兄「あ、ああ」

女「でもさ、あのスレ用に後ろ手にして撮影してるとちょっとドキドキしたかな」

兄「それはその気があるんじゃ・・・・・・」

女「兄ってそういう趣味あるの?」

兄「ね、ねえよ! ・・・・・・と思うけど。俺も童貞だしよくわからねえ」

女「そうか。あれ評判はいいみたいなんだけど、撮影が面倒だからあまりやらないの」

兄「面倒って?」

女「ああいうのって雰囲気が大事だからさ。怯えている表情とかも作らなきゃいけないし」

兄「・・・・・・そんなことまでしてたのかよ。何か女優みたいだな」

女「あとテクニカルな問題だけど、両手を背中に回しちゃったら自分で撮影できないじゃない?」

兄「そらそうだ・・・・・・ってまさか」

女「違うって。誰かに撮ってもらったりはしないよ。あれはスマホじゃなくてデジカメのタイマーで撮影したの」

兄「そうか」

女「あれ見て興奮した?」

兄「だから画像なんて削除されてるから見てねえよ」

女「ああそうだった。ちょい待って」

兄(まさか)
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/26(日) 22:59:02.07 ID:FYswq1HJo
女カチカチ

兄(何かスマホ弄ってる・・・・・・)

女「・・・・・・はい、送信」カチ

兄「・・・・・・え」ブルルル

女「メール開いてみ」

兄「あ、ああ」カチ

兄「・・・・・・添付画像」カチ

兄(・・・・・・女が床に座り込んでいる画像だ。制服姿で服はブレザーまで全部着ている。でも両手を背中の方に回しているので後ろ手に縛られているように見える。そして少し高い位置に置いたカメラの方を怯えたような表情で見ている女)

兄(2枚目・・・・・・。1枚目とポーズは全く一緒だけどブレザーを着ていないし、ブラウスの前ボタンが全部外されこいつの肌が露出している。スカートもめくっているな。視線は相変わらずカメラを見上げている。線が入って目を隠しているけど充分怯えている感じがする)

兄(そして3枚目。ポーズは一緒だけどブラウスを脱いで上半身はブラだけ。スカートは完全に捲くられてパンツが見えてる・・・・・怯えたような表情とか確かにレスにあったとおり拉致されて無理やり犯される寸前の女子高生って感じだ)

兄(・・・・・・やべ。朝の通学時間から興奮して)

兄(カバンでさりげなくズボンの前を隠そう)

兄(・・・・・・露出度でいえばそんなに高くないよな、これ。それでもすごく興奮するのは何でだろう)

兄(それに興奮はするけど、猥褻な印象は無くてむしろ綺麗だ。こいつそんな写真撮るの上手じゃないのに何かアイドルとか女優の写真集見てるみたい)

女「ご感想は?」クス

兄「感想って・・・・・・朝から何て画像見せるんだよ」

女「いいじゃない。あたしと兄の仲なんだし」

兄ドキ

女「でもさっきも言ったけど、こういう写真って結構時間と手間がかかるからさ。jkが制服うpするみたいなスレのほうが気が楽なんだよね」

兄「最初に見せてくれたみたいなやつか」

女「そうそう。あそこは雑談板だしすぐにスレも落ちちゃうしね。何よりあの程度の画像で感激してくれるから楽でいいよ」

兄「まあ女神板って要求水準高そうだよな。乳首出さないくらいで結構叩かれてたし」

女「本当だよ。平均年齢は女神板のほうが高いと思うのに、レス内容は幼稚だしね」

兄「・・・・・・あのさ」

女「何?」

兄「おまえさ、女神行為はこの先も続けるの?」

女「・・・・・・この先って?」

兄「あ、いや。何っていうかさ」

女「・・・・・・つまりあんたの彼女になってからも女神をやるのかって質問なのかな」

兄「まあ、端的に言っちゃえばそういうことだけど・・・・・・」

女「兄はあたしが女神なの嫌?」

兄「別に嫌じゃねえけど(嘘じゃねえよな。むしろ不思議な興奮を覚えたくらいだし)」

女「そうか。じゃあ続ける。でも兄があたしが女神行為するのを嫌になったら、その時は真剣にどうするか考える」

兄「そうか(俺が嫌になったら止めるんじゃねえんだ)」
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/26(日) 23:06:04.45 ID:FYswq1HJo

兄「あのさ」

女「うん」

兄「女神行為とかってさ。やっぱり綺麗な自分を見てほしいとか他人に認めて欲しいとかほめて欲しいとか、そういのも動機のひとつなんでしょ?」

女「・・・・・・よくわかってるね」

兄「まあね。それでさ、おまえはこれまで学校でぼっちだったということもあって、人に認めてもらえる場が2ちゃんねるとかだったと思うんだよ」

女「そうかもね」

兄「でももうおまえは学校でぼっちを止める宣言したじゃんか? 多分これからは学校で男女問わずすげえもてると思うんだ」

女「そんなことないと思うけど」

兄「賭けてもいいけどそうなるよ。そしたらリアルで認知されるわけだけど、それでも女神行為で評価されたいものなのかな」

女「うーん。正直自分じゃわかんないや」

兄「そうか」

女「女神板でさ、女神雑談所ってスレがあってね」

兄「そんなものまであるのかよ」

女「うん。それで他の女神と話したことあるんだけど、ぼっちなんて一人もいなくてさ。みんなリア充の女子大生とかOLとか主婦とかなのね」

兄「そうなんだ(主婦って・・・・・・そんな人まで女神やってるのか)」

女「みんなじゃないけど、コテトリつけてる人多いしその人たちの画像見たこともあるけど、みんな綺麗な人たちなんだよね。絶対リアルじゃリア充だなって思ったもん」

兄「そうか」

女「だから一概にリアルが充実していない女の代替行為とは決め付けられないかも」

兄「・・・・・・深いな」

女「深いんだよ」クス

兄「まあ、いいや。そろそろ駅に着くな」

女「うん。学校まで手を繋いで行ってもいい?」

兄「そうしようか」ギュ

女「何か嬉しいな」

兄(まあ深く考えることもないか。せっかく俺にも可愛い彼女ができたんだし)

兄(それに、妹に女のことを話すという胃の痛いミッションがまだクリアできてないしな)

兄(・・・・・・)
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/26(日) 23:07:06.21 ID:FYswq1HJo
今日はもう少し投下できると思ったのですけど、こんだけですいません

また明日投下予定です

それではまたお会いしましょう
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/26(日) 23:19:05.00 ID:vSABr+uSO


今んとこ順調な交際だな…
さて、このあとどうなることやら
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 04:00:49.88 ID:S1a2yoCbo
おつおつ
例に漏れず>>1の書く主人公はダメダメさんだな
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/27(月) 05:50:07.54 ID:shrewQgMo
乙でした

幼馴染と妹の心の葛藤が見せ場になる展開なんだね
多少重くても悲しくても
恋愛物なんだからじっくり書き切ってほしいな
影も陽もあるラブストーリーはSSじゃ、あんまり見られないから
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 14:34:06.04 ID:rfD0/4AIO
女は一人っ子ってのがキーポイントだよな。

一人っ子の淋しがり方は屈折してるんだよな。
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/27(月) 22:47:23.75 ID:dGyqjxOGo
教室の前


女「・・・・・・だからさ、それで今日のお弁当は肉だらけで茶色くなっちゃったってわけ」

兄「まあそれでも俺は全然構わないけどな。あんまり俺なんかのために手をかけることはないよ」

女「そうは言っても好きな人のために作るんだもん。手をかけて見栄え良くしたいじゃん」

兄「そういうもんかね」

女「そういうも・・・・・・あ」

兄「うん? って・・・・・・妹」

妹「・・・・・・お兄ちゃん」

兄「2年の校舎で何してるんだよ」

妹「あ、今日はお弁当作れたからお兄ちゃんに渡そうと」

兄「おまえ・・・・・・今の俺たちの話聞いてた?」

妹「・・・・・・ごめん。聞こえちゃった」

兄「そうか。妹には話すつもりだったんだけど、俺こいつと付き合ってるんだ(家でじっくりと話すつもりだったけどしょうがない)」

女「・・・・・・こんにちは」

妹「・・・・・・あの」

兄「うん(真っ青になっちゃった。やっぱショックだったのか)」

妹「お姉ちゃん・・・・・・は?」

女「・・・・・・」

兄「・・・・・・話ししたから知ってるよ」

妹「そうか・・・・・・。授業始っちゃうからあたしもう行くね。お兄ちゃんにはお弁当もあるみたいだし」

兄「え?」

妹「じゃ、じゃあ」

兄「(泣いてる?)ちょっと待て」

妹「女さん、失礼します」

女「・・・・・・さよなら」

兄(行っちゃった)

兄(妹がショックを受けるだろうってことは幼馴染から注意されてたから、あいつの反応はまあ予想の範囲内だけど)

兄(・・・・・・この後どういうふうにケアすればいいんだ。これまでみたいに手を握ってやるとかあーんしてやるとかって訳にはいかないよな)

兄(毎日夜は家で二人きりなわけだし。こういう時は普段家に居ない両親を恨むぜ)

兄(・・・・・・)ハァ

女「・・・・・・」

兄「(女が不安そうに俺のほうを見上げてるな。今ケアしなきゃいけない相手を間違えたらだめだ)なあ」

女「・・・・・・うん」

兄「妹のことは気にするなよ。あいつ、びっくりしてろくに挨拶もしなかったけどさ」

女「無理ないよ。妹さん、お兄ちゃんっ子みたいだし」

兄「(ブラコンとか言わないのな。本当に気を遣えるやつだよな女って)まあ普段から二人きりで暮らしてたしそういうこともあるかもな」

女「・・・・・・あたしが心配してるのは兄の方だよ」
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/27(月) 22:51:18.51 ID:dGyqjxOGo
兄「俺の方?」

女「うん。冷たいようだけど、妹さんの悩みの原因があたしだとしたら、あたしが妹さんに出来ることは何もないし」

兄「それはまあそうだな」

女「あたしはそれより自分の彼氏の方が心配」

兄「俺には別に何にも問題ないと思うけど」

女「今日家に帰って妹さんと何を話すか悩んでない?」

兄「・・・・・・それは」

女「・・・・・・何も悩んでないとしたら、お兄ちゃんとして失格っていうか人間失格だよ」

兄「正直悩んでるけど」

女「ごめんね」

兄「何でおまえが謝る」

女「あたしが兄に告らなければ妹ちゃんもまだ自分を納得させられたでしょうに」

兄「どういうこと?」

女「あたしと付き合う前は、あんたは幼馴染さんへの愛を取るか兄友君への友情を取るかどっちかだったんじゃない?」

兄「・・・・・・それで悩んでた時期もあったよ、確かに」

女「それがあたしみたいなぼっちの女と付き合ったばっかりに」

兄「何言ってるんだ」

女「幼馴染さんをふって傷付け、兄友君はそれを喜ぶどころかあたしと付き合って幼馴染さんを傷つけたあんたと絶交した」

兄「・・・・・・」

女「そしてついに長年寄り添って暮らしてきた妹さんまで傷ついた」

女「全部あたしがあんたに告ったからだよね」

兄「・・・・・・おまえ何でそこまでわかっちゃうの?」

女「ぼっちだから観察力が鋭くなったのかな・・・・・・ううん」

兄「・・・・・・」

女「もうこんな誤魔化すような言い方はやめる。好きな人のことだから一生懸命観察してたの」

兄「女・・・・・・」
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/27(月) 22:51:49.80 ID:dGyqjxOGo
女「兄に辛い思いをさせたくて告ったんじゃない。それだけは本当だよ」ブルブル

兄(女の手が震えてる・・・・・・・)

女「あんたが好きだから・・・・・・もしあたしと付き合うことであんたが辛いなら別れても」

兄「(これ以上言わせるか)あほ」グイ

女「あ・・・・・・」

兄「誰かを好きだって気持はどうしようもないだろ。俺がおまえと別れても何も解決しねえよ」

女「・・・・・・だけど」

兄「だけどじゃねえよ。付き合い出したばっかで俺のことふる気かよ」

女「・・・・・・いいの?」

兄「いいもなにもあるか。おまえにふられたら今よりもっと俺が悩んで傷付くことになるってどうして気づかねえんだよ」

女「・・・・・・」ギュ

兄「授業始まっちゃうな」

女「うん」

兄「・・・・・・教室の前でここまで密着して寄り添ってると」

女「周リの人たちがドン引きしてるね」ニコ

兄「教室入るか」

女「・・・・・・うん」

兄「涙拭けよ」

女「うるさい! わかってるよ」フキフキ

兄「腹減ったな・・・・・・早く弁当食わせろ」

女「お昼休みになったらね」ニコ
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/27(月) 22:54:17.32 ID:dGyqjxOGo
教室 始業前


同級生女1「ああ噂の二人が来た」

兄「噂って何だよ」

同級生女2「おはよう女」

女「おはよ」

同級生女1「何だよはないでしょ。朝から教室前で堂々といちゃいちゃしいてたくせに」

兄「・・・・・・う(何も言い訳できねえ)」

女「ごめんね」

同級生女2「うちらに謝ることはないよ。あたしらもう女と友だちだと思ってるし」

兄(へえ)

女「うん。ありがと」

同級生女1「そこで礼なんか言うなよ・・・・・・でもさ、クラスのみんなが好奇心で噂してるくらいならそのうち静まるだろうし、無視してもいいと思うけど」

兄「・・・・・・それ以外に何があるんだよ」

同級生女2「これ兄君もそこで開き直るな。普通は校内の人目につくところじゃ、みんな気持を抑えてベタベタしないようにするんだよ」

女「うん、やっぱそうだよね」

同級生女1「まあそれでさ。さっきのあんたたちのこと、兄友君が凄い目で睨んでたよ」

同級生女2「こら声でかいよ。兄友君に聞こえちゃうじゃん」

同級生女1「いけね」

兄(兄友・・・・・・こっちの方なんか見ようともしないで真っ直ぐ前を見てる)

兄(さっきのを見られたら兄友は相当怒ってるだろうな)


回想

兄友「おまえ、最低だな」

兄友「幼馴染の気持を知りながら返事もしないであいつを悩ませておいてよ。自分は他の女と浮気かよ」

兄友「女さんが好きなら何ですぐに幼馴染のことを振ってやらねえんだよ。おまえ、自分が好かれてるっていう気持を楽しみたいから幼馴染への返事を引き延ばしてるだけだろ」

兄友「怒るって何だよ。誤解だとでも言いてえのかよ。登校中の電車の中でしっかりと女さんの手を握りやがって」

兄友「じゃあな。おまえとはもう話さねえから。あと幼馴染にも全部今朝のこと話すからな。もうおまえなんかに遠慮したり気を遣ったりするのはやめだ」

兄友「・・・・・・言い訳すらなしかよ。まあいいや。じゃあな」

回想終了
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/27(月) 22:58:31.72 ID:dGyqjxOGo
兄(まあ無理もないな)

兄(妹のことだけでも胃が痛いのに)

同級生女1「まああとさ」

女「うん」

兄「まだあるの?」

同級生女2「あれ」

兄「あれって・・・・・・(幼馴染だ)」

兄(でも何か普段どおりに友だちと喋ってるじゃん)

兄(まあ、あいつには女と付き合ってると言ってあるし、そんなにショックじゃなっかったんだろうか)

同級生女1「幼馴染、相当気にしてるね」

同級生女2「あたしは女の味方だけどさすがに幼馴染がかわいそうだよね」

兄「・・・・・・普段どおりのあいつじゃん」

同級生女1「・・・・・・あんたってバカ?」

兄「ひでえ」

同級生女2「普段どおり過ぎるでしょ。不自然だよあんなの。絶対自分の気持を必死で抑えて普段どおり振る舞おうとしてるんだよ」

兄「(確かに不自然だ。こっちの方を少しも見ようとしないし)おまえらってそんなに鋭かったっけ」

同級生女1「・・・・・・ひどいなあ。あたしたちは女のことを心配して言ってるのに」

女「・・・・・・本当にありがと」

同級生女2「友だちじゃん。気にしないでよ」

兄「・・・・・・ありがとな」

同級生女1「別に兄君のために言ってるわけじゃないけどね。それにお礼を言うよりこの先どうするか考えた方がいいんじゃないの」

兄「どうって・・・・・・普段どおりにするしかないだろ。なあ?」

女「そうだね。別に悪いことをしてるわけじゃないし」

同級生女2「女は何にも悪くないと思うよ」ジト

同級生女1「そうそう。女はね」ジト

兄(俺、自分の気持に素直になっただけなのに・・・・・・。やっぱり俺が悪いのか)

兄(胃が痛え)

女「・・・・・・大丈夫?」

兄「ああ(普段どおりにするしかない。変に気を遣って動くとかえって傷を広げるぞ)

同級生女2「担任来ちゃった。じゃ、またね」

女「うん」
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/27(月) 23:00:35.39 ID:dGyqjxOGo
今日も短いですがここまで

平日は当面このペースでの投下になると思いますのでご了承ください

では駄文にお付き合いただきありがとうございました

おやすみなさい
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/27(月) 23:20:42.81 ID:jxy8hUA1o
乙乙です

俺の胃も痛くなってきた・・・・
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 23:38:47.40 ID:SCjcHXASO
兄の鈍さはクラスの反感を買うほどなのか
まあ女が虐められそうにないのはいいかな
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/28(火) 23:15:09.70 ID:7LqGf5kYo
放課後


兄(・・・・・・)

兄(疲れた、今日一日はいろいろと)

兄(まさかこんな展開になるとはな)

兄(しかしいったい何だろう。今日一日で女の立ち位置がぼっちから、クラスの人気者に豹変してしてしまった)

兄(女って、もともと可愛いしコミュ力も人一倍あったのに、好き好んでぼっちやってたようなもんなんだけど)

兄(一度こいつが普通にクラスメートに返事し出してからの女の人気者ぶりはどうだ)

兄(クラスのやつらは、朝、俺とこいつが寄り添って手を繋いでいたのを目撃してはずなのに)

兄(何だ? この俺の空気っぷりは)

兄(女が普通にクラスで人気のある女の子になるのはいいこどだけど)

兄(・・・・・・)

兄(休み時間になった途端に女の周りにクラスのやつらが押しかけて・・・・・・)
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/28(火) 23:17:23.27 ID:7LqGf5kYo
回想


同級生モブ1(女)「女さん、本当は普通にいい人だったんだね」

女「え?」

同級生モブ2(女)「あのさ、よかったらあたしたちの友だちと一緒にカラオケ行かない? 女さんって絶対歌上手でしょ」

女「・・・・・・そんなことないよ」

同級生モブ(イケメン)「そんな謙遜するなよ。女って絶対歌上手っしょ。つうか結構遊んでるんじゃね? 今度俺たちとも付き合ってよ」

女「いえ・・・・・・あたしは夜にカラオケとかは行かないし」

同級生モブ3(女)「こいつなんか気にしなくていいって。女の子もいっぱい来るし、こいつが女さんを口説こうとしたらあたしたちが助けてあげるから」

同級生モブ(イケメン)「おまえ、人聞きの悪いこと言うなよ。だいたい女さんは、兄と付き合ってるんだろ」

女「え?」

同級生モブ1(女)「え・・・・・・って。あれだけ堂々とイチャイチャしてて隠しているつもりなの?」クス

女「別に隠してはいないんだけど」

同級生モブ(イケメン)「だけどもったいないよな。女さんみたいに綺麗な子が兄みたいなやつと付き合うなんてさ」

同級生モブ2(女)「ほら気をつけて女さん」

女「あの、さんとか付けなくても呼び捨てでいいから」

同級生モブ2(女)「うん、ありがと。でもこいつには気をつけた方がいいよ。女に手が早いから」

同級生モブ(イケメン)「おまえ、何言ってるんだよ」

同級生モブ3(女)「だいたいイケメンぶってるけど、あんた幼馴染さんにも手を出そうとして振られてるじゃん」

同級生モブ1(女)「まあ、気にしないで。こいつ、幼馴染に手を出そうとしてさ、彼女に『あたし好きな人がいるから』って断られたってだけだから」

同級生モブ2(女)「まあ、幼馴染の好きな人なんて兄友君に決まってるのに、こいつばかだからさ」

同級生モブ(イケメン)「おまえらなあ。今は幼馴染の話じゃねえだろ」

同級生モブ1(女)「イケメンのことは気にしなくていいけどさ。女って兄君と付き合ってるの?」

女「うん」

同級生たち「きゃー! やっぱね」

同級生モブ(イケメン)チッ
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/28(火) 23:20:31.69 ID:7LqGf5kYo
兄(まあ、普通の高校生の女の子になろうって女が決めたんだから、こういう光景は望ましいことなんだけど)

兄(あの後・・・・・・驚いたことに幼馴染までが女に話しかけたんだよな・・・・・・あいつ、いったい何考えてるんだろ)



回想


幼馴染「・・・・・・女さん?」

女「あ・・・・・・はい」

幼馴染「突然話かけてごめんね。その・・・・・・今度の学園祭なんだけど」

女「ああ、うん」

幼馴染「クラスの展示に手が足りなくて、本当によかったらだけどクラス展示の係になってくれないかな」

女「あ、ええと」

幼馴染「ああ、突然でごめんね。あたしは生徒会役員なんで実行委員をやらされてて、クラスの方の手が足りなくて」

女「・・・・・・」

幼馴染「もう、兄。あんたも何か言ってよ。女さんにクラス展示を手伝ってもらってもいいよね?」

兄「(え? 突然俺に話しを振りやがった)そんなの女しだいだろ。俺は別に」

幼馴染「・・・・・・だって。女さんどうかな」

女「うん。あたしこれまでほとんどそういうことってみんなにやってもらってたし、それくらいしないとクラスのみんなに悪いよね」

兄「・・・・・・いいのか(こいつ無理してるんじゃねえのかな)」

幼馴染「やった。じゃあ、クラスの学園祭係の名簿に入れておくね」

同級生モブ(イケメン)「手が足りないなら俺も手伝ってやろうか」

幼馴染「・・・・・・手は足りてます」

同級生モブ(イケメン)「何でだよ」


回想終了
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/28(火) 23:21:32.04 ID:7LqGf5kYo
兄(というわけで、いきなりぼっちを卒業してクラスの人気者になった女だけど。それはある程度予想してたし驚かない)

兄(でも、いきなり俺と女がクラス公認の仲になったのは正直予想外だった)

兄(そしてそれよか、幼馴染があそこまで気軽に女に声をかけるとは)

兄(幼馴染のやつ、何考えてるんだよ)


回想

幼「・・・・・・ねえ?」

兄「うん」

幼「これからも友だちっていうか、幼馴染でいてくれる?」

兄「あたりまえだろ」

幼「よかった。あたし、これ以上あんたを困らす気はないけど」

兄「うん」

幼「心の中でさ、彼女ができた好きな人のことを想い続けるのはあたしの自由だよね?」

兄「・・・・・・どういうこと?」

幼「あんたのこと諦めないって言ってるの」

兄「幼馴染・・・・・・あのさあ」

幼「あんたと女さんの関係を邪魔したりはしないいよ。でもあんたのことを好きでいることはあたしの自由でしょ」

兄「・・・・・・だけど」

幼「それに」

兄「何だよ」

幼「女さんとのことを邪魔する気は全然ないけど・・・・・・女さんとあんたじゃ合わないと思うし」

兄「おまえ何言って・・・・・・おれじゃあ女にはつり合わないってこと?」

幼「そうは言ってないけど」

兄「じゃあどういう意味?」

幼「言ったとおりだよ。あんたと女さんは合わない。だから長続きしない」

兄「何言ってるのか全然わからないんだけど」

幼「わからなくてもいいけど。とにかくあたしはあんたが女さんと付き合ったとしても、あんたのこと好きでいるから」



回想終了
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/28(火) 23:23:33.75 ID:7LqGf5kYo
兄(他のやつらはともかく、幼馴染が何で女に近づいてるのかさっぱりわからねえけど)

兄(まあいいや。クラス展示の打ち合わせに行った女が戻ってきたらそろそろ帰ろう)

兄(とにかく家に帰ったら妹を何とかフォローしないと)

兄(しかし女がいきなりクラスの出し物係に任命されて連れて行かれたせいで、今日の放課後どうするか全く話しできなかったじゃんか)

兄(・・・・・・)

兄(もう少し待つか・・・・・・)

兄(今日家に帰ったら妹を何とかしないとな)

兄(正直気が重いけど、今日中にフォローしとかないとな)

兄(・・・・・・女、遅いな。今日は女と約束できてないし、もう帰って妹と話してみるかな)

兄(・・・・・・どうしようか)

兄(あ、女)

女「ごめんね、遅くなって・・・・・・。兄、もう帰っちゃったかと心配しちゃったよ」

兄「ああ、いや。クラス展示の打ち合わせはどうだった?」

女「何か、カフェやるんだって。他のクラスと企画が被りまくりらしいよ」

兄「へえー。カフェやるんだ。他のクラスと競合激しそうだよな」

女「兄の役目も決まったから」

兄「はい?」

女「兄の役割はウェイターでいい? ってみんなから聞かれたから」

兄「うん」

女「結構強制的に役割を割り振ってるのに、あんたの役割だけはあたしに確認してくれて」

兄「はあ、そうか」

女「みんな、あたしに「気を遣ってくれてるみたい」

兄「で、おまえがいいよって言って俺はウェイターになったわけね」

女うん。だって厨房だと兄友君と一緒になっちゃうし、あんたも気が重いかなって思って」

兄「まあ、それでいいよ。どうせ何かやらされるんだろうし」

女「そうだね」

兄「そろそろ帰る?」

女「うん」
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/28(火) 23:28:24.77 ID:7LqGf5kYo
帰宅中


女「何か今日は急展開すぎて疲れた」

兄「そらそうだろうね。今まで下手したら一日誰とも口聞かなかったおまえが今ではクラスの人気者だもんな」

女「・・・・・・あなたにふさわしい彼女になろうとしているだけだよ」

兄「でも無理するなよ。おまえが今までみたいなぼっちのままでも、俺はおまえが好きなんだからさ」

女「ありがとう」ギュ

兄「・・・・・・いや」

女「・・・・・・正直、今日はあたしちょっと無理したかも」

兄「だろうな。おまえ今日一日放っておいてもらえなかったもんな」

女「・・・・・・兄はさ」

兄「おう」

女「あたしのこと、好き?」

兄「(いきなり何言って・・・・・・)お、おう。好きに決まってるだろ」

女「じゃあ、明日お弁当作れなくてもいい?」

兄「何だ、そんなことか。今日はおまえも予想以上に疲れただろうし、弁当なんて無理しなくてもいいよ」

女「わかった。じゃあさ」

兄「おう」

女「今夜、久しぶりに女神になってもいい?」

兄「(え?)いいって言われても」

女「ちょっと今日はやりすぎちゃった。あんたの彼女にふさわしい振る舞いをしようって考えすぎたかな・・・・・・すごく疲れちゃって。気分転換に女神行為しようかなって」

兄「・・・・・・まあ、おまえが今日無理してるのは俺も感じたけど。いいよ、今日はVIPとかでやるの?」

女「ううん。久し振りに女神板の緊縛スレでうpしようかなって」

兄「あそこで?(緊縛スレって、あの縛られて犯されるみたいな画像のやつか)」

女「・・・・・・今日、あたしの家って両親いないんだ」

兄「お、おう(何なんだ)」

女「よかったら・・・・・・今夜あたしの家で夕食食べていかない?」

兄「(そういうことか。妹へのフォローもしなきゃいけないけど、彼女のお誘いだし優先しないとな)おまえがいいなら、お邪魔してもいいけど」

女「よかった。じゃあ、夕食作るね」

兄「楽しみだよ(あれ。でも女神は?)」

女「・・・・・・夕食後、緊縛スレ用の撮影するから手伝って」

兄「おい」

女「自分を縛るのって難しいし、縛られるポーズを撮ると、自分では撮影できなかったんだけど」

兄「・・・・・・」

女「兄が撮影してくれるならポーズ撮れるし」

兄「・・・・・・それってさ(俺が女を縛って撮影するのか)」

女「兄の考えているとおりだよ。してくれる?」

兄「・・・・・・(それって俺の眼前であの画像みたいな姿に・・・・・・つうか半裸になるってことだよな)」

女「・・・・・・?」」

兄「お、おまえがいいなら」ゴク
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/28(火) 23:29:16.57 ID:7LqGf5kYo
今日の投下はここまで

明日また投下予定です

おやすみなさい
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 00:07:51.24 ID:T85ao43So
乙です
先が気になるなぁ
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 01:12:20.64 ID:GywGjjODo

女がカワユス
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 16:20:39.56 ID:FVn9JrBIO
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/29(水) 22:41:04.22 ID:MLqI6h7Wo
女の家 ダイニングルーム


女「どうだった?」

兄「うん、さっきも言ったけど美味しかったよ。かなり意表をつかれたけど」

女「意表って?」

兄「いやさ。ここまで純和風の夕食が出てくると思わなかったから」

女「この献立ってそんなに珍しいかな」

兄「女子高生が作ったんじゃなきゃ珍しくないけどさ」

女「あたしんちはいつもこんな感じだけどね」

兄「そらおまえのお母さんが作るのならわけるけど」

女「料理はだいたいお母さんに教わったから。あと2ちゃんねる」

兄「はい?」

女「だから料理板」

兄「そんなのもあるんだ・・・・・・つうかそんなところにも常駐してたんだ」

女「うん、結構役に立つよ」

兄「まあ、とにかく美味しかったよ。さわらの西京漬けも赤味噌の味噌汁も、ごはんも何かすげえ美味しかったし」

女「そう、よかった」ニコ

兄「こういうの全部を美味しく作るのって、すげえ大変だと思うけど・・・・・・おまえってぼっちだったから目立たなかっただけで、本当はすげえスペック高かったんだな」

女「そんなことないと思う」

兄「だってさ。成績も結構いいし、見た目も可愛いし、その気になればば愛想よくもできるだろ」

女「・・・・・・か、可愛いって」

兄「(赤くなっちゃった)その上、料理も上手とか普通ありえねえだろ」

女「そう言われれば嬉しいけど・・・・・・でも兄の勘違いだよ。あたしはそんなに完璧な人間じゃないよ」

兄「謙遜すんな」

女「謙遜じゃなくて・・・・・・だいたい、あたしなんて女神なんかやってる時点で人生詰んでるしね」

兄「(自分でもわかってはいるんだ)まあ、それに関してはそうかもしれないけど」

女「・・・・・・本当はあたしがああいうことするのいや?」

兄「今のところはそんなにいやだって感じはしないけど」

女「今のところはって?」

兄「そのうちおおまえのこと独り占めしたくなって、他のやつらにおまえの体を見られることに嫉妬し出すかもしれないとか、考えたことはあるよ」

女「そうか・・・・・・そうだよね」

兄「でも、今は別にいやじゃない」

女「そうか・・・・・・よかった」
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/29(水) 22:43:22.96 ID:MLqI6h7Wo
女の部屋


女「どうぞ。入って」

兄「お邪魔します・・・・・・ここが女の部屋か(何かやけにこざっぱりした部屋だな。ピンクのカーテンとかふわふわのぬいぐるみとかは全然ないのな)」

女「とりあえず座って」

兄「「うん(まあ、こいつらしいと言えばこいつらしいよな)」

女「今、コーヒーいれて来る」

兄「ああ、もういいよ。夕食の時のほうじ茶が美味しくて飲みすぎちゃったし」

女「いいの?」

兄「うん(八畳間くらいの部屋だけど・・・・・・何かやたらと本が多いな。あとデスクにあるパソコンのディスプレイでかいな。何インチなんだろ)」

女「じゃあ、ちょっと待ってて」

兄「うん?(全体的にお洒落だけど方向が何かずれてるというか。少なくとも一般的な女子高生の部屋というより、むしろデザイナーの仕事場みたい)」

女「今用意するからね」

兄「用意って・・・・・・女神の?(クローゼットのドアを開いたな。あまりじろじろ中を見ると失礼かもな)」

女「そうだよ・・・・・・あ、あった」

兄「何、それ」

女「縄だよ」

兄「(そ、そうだよな。緊縛スレ用の写真撮るんだもんな)う、うん」

女「あとアイマスクとタオル」

兄「・・・・・・嫌な予感がする」

女「今日は緊縛スレにうpするって言ったじゃない」

兄「アイマスクは何となくわかるけど、タオルって?」

女「拉致されたあたしが大声で助けを呼んだら困るでしょ? だからあたしの口をこのタオルで塞ぐの」

兄「困るでしょって、誰が困るんだよ」

女「誰って・・・・・・ここにはあたしと兄しかいないし」

兄「え? 俺が困るtってこと?」

女「高校2年の処女のあたしをさらって監禁して、これから乱暴しようとしているとしたら、あたしが大声で叫んだら兄だって困るでしょ」

兄「はぁ? 俺ってそういう役割なの?」

女「別に動画を撮るわけじゃないけど、シチュエーションはそういう感じなの」

兄「・・・・・・たかが女神行為にそこまで凝る必要あんのか」

女「普段は一人だとできないじゃない? せっかく彼氏が協力してくれるんだから少し本格的にやってみようかなって」

兄「・・・・・・本当にやるの?」

女「・・・・・・あんんたが嫌なら無理にとは言わないよ。あたし、兄に嫌われたくないいし」

兄「べ、別にいやだなんて言ってねえだろ(何言ってるんだよ俺。気が進まないって何で言えねんだろ)」

女「・・・・・・本当?」

兄「・・・・・・ああ」
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/29(水) 22:45:22.35 ID:MLqI6h7Wo
女「よかった。はい、これ」

兄「え? これって・・・・・・発売されたばっかのソニーのミラーレス一眼カメラじゃん」

女「やっぱり兄ってカメラとか写真詳しいんだ」

兄「・・・・・・俺、カメラのことおまえに話したっけ?」

女「聞いてないよ」

兄「じゃあ、何で俺がカメラに詳しいとかわかるの?」

女「あんたのことずっと見つめていたから」

兄「(前にもそう言ってたっけ)それにしても俺、別に写真部とかじゃねえしよくわかったな」

女「幼馴染さんとか兄友君とかがあんたの話しているのずっと聞いていたからね。特に兄友君って声大きいし」

兄「ああ、それで」

女「何で写真撮るの得意なの?」

兄「まあ、親の影響でさ。俺の両親ってもともと社会人のカメラサークルで知り合って結婚したくらいだから、ガキの頃から親父には写真の撮り方とか教わってたからな」

女「そうなんだ。じゃあ、これからはあたしのことも被写体にしてくれる?」

兄「そりゃもちろん、いいけど。それよかこのミラーレス、おまえの?」

女「うん。前にお父さんに買ってもらったんだけど」

兄「レンズ付きで10万円以上するこれを、まさか女神行為用に?」

女「うん、そうだけど。でもこれって両手使わないと撮れなくて、あまり自分撮り用じゃなかったな。結局一度も使ってない」

兄「・・・・・・謝れ。今すぐこのカメラに謝りなさい」

女「?」

兄「・・・・・・まあ、いいや。じゃあ、今日は俺がカメラマンだな」

女「うん。自撮りじゃない女神行為って初めてだから何かドキドキする」

兄「まあ、少なくともおまえよりは綺麗に撮れると思うよ(これ扱うの初めてだけど、普通の一眼よりは簡単だろう)」

女「よかった・・・・・・可愛く撮ってね」

兄「ああ。ちょっとそのカメラ貸して」

女「・・・・・・はい」

兄(電源入れて・・・・・・よし、これならすぐにでも使えそうだな)

兄(背景はぼかした方がいいな。身バレしなようにと、あとその方が女が目立つ写真になるだろうし。絞りは少し開放にしておこう)

兄(あと、蛍光灯しか光源ないし青っぽくならないようにホワイトバランスも弄っていこう。つうかこのカメラ設定わかりやすいな)

女「使えそう?」

兄「ああ、問題ないよ。ちょっと試し撮りしていい?」

女「うん」

兄(どれ)カシャ
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/29(水) 22:47:03.57 ID:MLqI6h7Wo
『メモリーカードが入っていないので実行できません』


兄「・・・・・・」

女「どうだった? 綺麗に撮れそう?」

兄「あのさ」

女「うん?」

兄「買ってもらってからこれ1回でも使った?」

女「だから、自撮りできないんじゃ女神行為には使えないから」

兄「つまり一度も使ってないんだな」

女「うん」

兄「・・・・・・これSDカードが入ってねえんだけど」

女「どういう意味?」

兄「SDカードを買ってきてカメラに入れないとこのカメラは使えないってこと」

女「そうだったんだ。あたしのスマホのカメラはそんな物なくても撮れたから」

兄「そりゃ本体のメモリーに保存してるからだろ。普通こういうカメラには本体側にはメモリーないんだよ」

女「じゃあ、今日はスマホじゃなきゃ撮影できないの?」

兄「おまえが前にタイマーで自撮りしてたコンデジがあれば出来るけど」

女「コンデジって何?」

兄「普通のデジカメのことだよ。それならあるだろ?」

女「これ買ってもらった時に捨てちゃった」

兄「・・・・・・じゃあ、スマホで撮るしかないか。正直おまえの上げた画像って画質は最悪なんだけどな」

女「ええー。今日は兄が一緒にいてくれるし綺麗に撮ってもらえると思ってたのに」

兄「おまえ、スペック高いし、ネットのこととかはよく知ってるのにカメラの基本的な知識とかはないのな」

女「うん。そういうのはこれからあんたに教えてもらう」

兄「・・・・・・・」

女「・・・・・・兄?」

兄「・・・・・・俺のカメラで撮るか?」

女「え?」

兄「一眼とか持ち歩くほど写真好きじゃないんだけどさ」

女「うん」

兄「親父が妹の写真とか撮って送れって言われてるから、いつも持ち歩いているカメラならあるんだけど」

女「そんなカメラで女神行為なんて撮ってもらっていいの?」

兄「俺は別にいいけど。むしろおまえはいいの?」

女「何で?」

兄「自分の体だしな。他人のカメラでデータ保存されるのが気持悪いなら、無理には勧めないぜ」

女「・・・・・・お願いしていい?」

兄「俺のことそんなに信用してるのか」

女「うん。あんたのこと本当に好きだし。むしろ兄のカメラであたしを撮ってもらえるなんて夢みたい」

兄「大袈裟だよ・・・・・・じゃあ」
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/29(水) 22:52:51.88 ID:MLqI6h7Wo
 俺は自分のカバンの中から、カメラを取り出した。それは親父やお袋の影響でカメラ好きになっていた俺に喜んだ両親が、以前俺にプレゼントしてくれたカメラだった。それは高級コンパクトデジタルカメラに分類されるカメラで、女の所有しているミラーレスほど自由度はないけど、気軽に高画質な写真を撮るには最適なカメラだった。価格もそれなりに高価なこのカメラをくれた親父は俺にこう言ったのだった。普段妹に会えないから、おまえがこのカメラで妹のスナップを撮って送ってくれって。だからこのカメラのSDカードには妹のスナップ写真がいっぱい詰まっていた。SDカードのメモリーがなくなると、その画像をリビングのパソコンに転送して親父に送付して、ハードディスクに保存する。妹が食事の支度をしている時の俺の日課はこれだったのだ。

 そのカメラに女の女神行為を記録することになった俺は複雑な気持を抱き抱えていた。このメモリーカードには俺と妹の記憶が残されている。たまには幼馴染とか兄友の写真も撮影したけど、このカードに保存されているのは、ほとんどは親父に送るために撮影した妹の画像だった。でも、今の俺は女が俺に示してくれた期待と信頼にわくわくしていたから、そのことについてはあまり深く考えようとはしなかった。


女「カメラは準備できたの?」

兄「ああ。使い慣れた自分のカメラだからな。いつでもいいよ(露出優先オートで撮影しよう。絞りとホワイトバランスはもう決めたし)」

兄(ホワイトバランス・・・・・・女の肌を綺麗に取れるかどうかはその辺できまりそうだしな)

女「じゃあ、撮影しようか。今日は撮り溜めておいて一気にうpしよう」

兄「おう」

女「じゃあ、これお願い」

兄「え?」

女「自分じゃ縛れないし。あたしの腕を縛って。あまりきつくしないでね」

兄「わ、わかった(女がベッドに座って後ろに手を廻している。この手を縛ればいいんだな)グイギュ

女「・・・・・・あ、あん」

兄「ごめん。い、痛かったか?」

女「・・・・・・そうじゃないよ。あたしの方こそ変な声出してごめん」

兄「うん(しかしこいつ料理中も制服を着替えなかったのはこのためだったのか)」

女「じゃあとりあえずこのポーズで撮影して」

兄「お、おう。じゃあ撮るぞ。顎を上げて目線をカメラの方に」バシャ

女「・・・・・・」

兄(目が潤んでいて顔が赤らんでいる。やばい、こいつ何でこんなに色っぽいんだろ)バシャバシャ

女「じゃあ、一度縄を解いてくれる?」

兄「ああ」

女「・・・・・・何か恥かしいな」


 女はそう言って、でも逡巡する様子はなくブレザーを脱ぎ、続いてブラウスの前ボタンを外し始めた。俺はそれを見ていいのか目を逸らさなければいけないのか判断に迷いながらも、結局カメラの背面のディスプレイを意味なく見つめながら、女から目を逸らして女が声をかけてくれるのを待った。

「ブラウス脱いだから」
 女が言った。

「またさっきみたいにあたしの腕を後ろで手に縛って」
 俺は言われるままに、女のむき出しの細い腕を掴んだ。その瞬間、女の体がぴくりと震えた。俺は女の腕を背中の方に捻じ曲げながらも、女の腕の細さや柔らかさを極限まで意識しながら、再び女を縛り上げた。この一連の作業の間、俺の心の中から撮影の手順とか狙ったショットとかへの考えが薄れ、何かさっきの女が解説してくれた今日のシチュエーションが何か本当になったように感じていた。つまり俺は本当に女を襲っているかのような錯覚に囚われていたのだ。俺は狼狽しながらも自分の下半身の興奮をどうやって女から隠そうかと考えていた。俺の脳裏にはさっきの女の言葉が無限にリフレインしていた。
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/02/29(水) 22:54:51.44 ID:MLqI6h7Wo
回想


女「拉致されたあたしが大声で助けを呼んだら困るでしょ? だからあたしの口をこのタオルで塞ぐの」

兄「困るでしょって、誰が困るんだよ」

女「誰って・・・・・・ここにはあたしと兄しかいないし」

兄「え? 俺が困るtってこと?」

女「高校2年の処女のあたしをさらって監禁して、これから乱暴しようとしているとしたら、あたしが大声で叫んだら兄だって困るでしょ」


回想終了


 その後の出来事は夢のようだった。俺は初めてディスプレイ越しではなく直に女の肢体を見る機会を得たのだったけれど、撮影中に見た女の姿はやっはりコンデジの背面ディスプレイを介してだった。

 女はブラウスの次にスカートをはずし、最後にはブラとパンツだけの姿で後ろ手に縛られたまま、自分のベッドに横たわっていた。むしろ、俺の意識の中では、女は無理やり自分のベッドに横たわらされていたという方が正しいのかもしれなかった。俺は女子高生を狙った強姦魔だ。そしてこの可愛い女を好きなように弄ぶ前に、怯えているる彼女の肢体を無理やり撮影しているのだ。俺にはもう女の用意したシナリオと現実とが区別できなくなっていたのかもしれない。下着姿で緊縛されている女の撮影が終った。こんな状況でも親父に仕込まれた撮影の知識は自動的に俺を動かしていたようで、光源の変化や女の姿勢の変化に応じて、俺は半ば無意識にカメラの設定を変え、女が綺麗に写るようにしていた。この時点で撮影枚数は既に100枚近くなっていた。

 俺は手のひらで額に浮かんだ汗を払って、女の次の指示を待った。おそらくもうこれで撮影をお終いだろう。女の女神行為でこいつが下着を脱いだことはないのだから、もうこれ以上は脱ぎようがなかったし。俺はようやく我に帰った。そう言えばこいつの口をタオルで塞いでいる写真を撮り忘れたな。俺がまだ先ほどの興奮に囚われながらぼんやりと考えていると、女の次の指示が聞こえた。

「カメラを置いて・・・・・・」
 その声はこれまでのような監督が自信を持ってスタッフに指示しているような声ではなく、弱々しいけどはっきりとした声だった。俺は一瞬で強姦魔ではなくなり、女の指示にしたがってカメラをデスクに置いた。そして女の次の指示わかりやすいものだった。

「ブラとパンツを脱がして・・・・・・。あたし、縛られててあんたに抵抗できないのよ」
 潤んだ瞳。切な気に身動きしようとして、縛られた肢体を揺すっている女。

「女神とかもうどうでもいいから・・・・・・あたし変な気持になっちゃった。お願い兄、来て」
 女は泣きそうな声で、そして切なそうな声で言った。

 俺はもう迷わなかった。ベッドに近づき女の体を見下ろす。そして俺は両手で女のブラをたくし上げ、女の乳房を露わにした。そして・・・・・・・。
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/29(水) 22:55:57.08 ID:MLqI6h7Wo
今日以上です
明日できるよう投下します

おやすみなさい
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/02/29(水) 23:01:32.58 ID:4v3AKkZxo
うわぁあああああああああああ!!11

乙、乙だけれども!
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 23:14:30.69 ID:2K98NkFlo
乙!
しかし、切り方が悪魔や!
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 23:19:10.51 ID:H2GmSjIIO
キター、必殺生殺しの術!

ところでさ、兄のデジカメからカード抜いて女のミラーレスに差し替えて使うんじゃだめなの?
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/29(水) 23:25:53.54 ID:MLqI6h7Wo
だめだと思いますよ。ソニーのNEX(つう設定です)は、カード入れると初期化しないと使えないみたい。つまり妹のパソに未転送の画像を諦めないと、使用できないのです

つうか伏線に突っ込むの止めましょうよ
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 02:54:50.03 ID:tv61SecSO
読んでると
チンコが痛く
なったから
非エロに非ず
女神記念日
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/03/01(木) 13:02:50.07 ID:V38qnI3zo
おとなしく3人とも嫁にしてしまえばいいのにねえ
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/01(木) 23:15:09.93 ID:0IHDsQ9Io
兄「・・・・・・なあ」

女「うん」

兄「おまえ本当に初めてだったんだ」

女「何よ? 疑ってたの」

兄「そういうわけじゃねえけどさ。何っていうかおまえ普段から大人びてるし、前に男がいたって言ってたし」

女「やっぱ疑ってたんじゃない」クス

兄「悪い。でも少しだけど血が出たし、おまえすごく痛がってたし」

女「うん。最初に奥まで入れられた時は本当に死ぬかと思った。麻酔なしで手術されたみたいだったよ」

兄「麻酔されたら気持ちの良さも感じられないんじゃね?」

女「・・・・・・それくらい痛かったって話しだよ。ばか」

兄「悪い」

女「でも、嬉しかった。こんなに早くあんたと結ばれるなんて思ってもいなかったから」

兄「それは俺もそう思ったよ(それにしても初体験が後ろ手に縛られている女の子とだなんて、普通じゃないにも程があるよな)」

女「どうしたの?」

兄「いや・・・・・・何て言うか」

女「はっきり言ってよ」

兄「最初なんだしちゃんと抱き締め合いたかったなって、ちょっと思っただけだよ」

女「どういうこと? ・・・・・・ああ、そうか。あたしもあの最中に、兄に抱きつこうとしたけど腕が動かなかったもん」

兄「俺、初めてで慌ててたから。ごめん。ちゃんと腕を解いてからすればよかったね」

女「普通の人とは違った初体験だったかもしれないけど、あたしはそれでも嬉しいよ。体だけじゃなくて心も繋がった感じがしたし」

兄「あ、それは俺もそう思った」

女「じゃあ、いいじゃない・・・・・・ねえ」

兄「うん」

女「キスして」

兄「ああ(そういや今日はいきなり本番しちゃったんだもんな。いくら童貞とはいえ我ながら余裕が無さ過ぎだった)チュ

女「・・・・・・ありがと」

兄「礼なんて言うなよ」ギュ

女「うん」

兄「あ、悪い。もう縄ほどこうな」

女「ちょっと待って」

兄「「うん?」

女「せっかくだし」

兄「何が?」

女「あんたと結ばれた記念というか」

兄「う、うん」

女「あんたのカメラで、このままのあたしを撮影してくれる?」

兄「え?」
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/01(木) 23:17:21.15 ID:0IHDsQ9Io
兄「おまえ、何言ってるんだよ。それじゃ本当にヌード写真になっちゃうじゃんか」

女「いいじゃない。二人の記念として、あんたに撮影して欲しいの。だめ?」

兄「駄目っていうか、まさかその写真も女神板に掲載するつもりじゃねえだろうな」

女「まさか。あたしは女神行為は下着姿までって決めてるもん。それに二人の大事な記念写真を他の人になんて見せるわけないじゃん」

兄「でもさ、よくアイドルのそういう写真の流出ってほとんど元彼が流してるんだろ? おまえそういうことは心配にならないの?」

女「あんたのことは無条件で信じてるし」

兄「そうは言ってもさ」

女「あと、これを言うと引かれちゃうかもしれないけど」

兄「何?」

女「そういう流出ってほとんどが振られた元彼の腹いせみたいなものでしょ? あたしは一生あんたのことを振ることはないから」

兄「・・・・・・嬉しいけどさ」

女「勘違いしないでね。あたしたちだって普通に別れることはあると思うよ」

兄「何も結ばれた日にそんな話ししなくても」

女「でもさ、その時は兄があたしを見放した時なの」

兄「おまえ何言ってるの」

女「あたしからは絶対にあんたを振らないって言ったでしょ? だからあたしたちが別れる時はあたしがあんたから振られた時」

兄「何で一方的は未来予想図描いてるんだよ。だいたお何で俺がおまえを振らなきゃいけねえんだよ」

女「先のことは何にもわからないからさ。学校じゃ普通の女の子になろうとは思うけど、女神だって時点でそもそもあんたにふさわしくないかもしれないし」

兄「・・・・・・そんなことは俺だって承知の上でおまえと付き合ってるんだぜ」

女「うん、そうだったね・・・・・・まあ、先のことはわからないしね。ひょっとして兄から振られなかったら10年後はあたしたち結婚してこどももいる平凡な夫婦になってるかもしれないしね」ニコ

兄「何かいいなあ、そういいうの(今一瞬エプロン姿のこいつに朝家から送られるイメージが浮かんじゃった)おまえって専業主婦になりたいタイプ? それとも結婚してもばりばり働きたい?」

女「あんたの好きな方でいいや」

兄「(鬼が笑うような気の早い話しだけど、こいつとずっと一緒に過ごせたら幸せだろうな)おまえなら結婚して子どもができても女神とかやってそうだな」

女「どうかなあ? おばさんになったら需要ないんじゃないかな」

兄「おまえなら行けそうな気もするけどな」

女「・・・・・・ありがと」

兄「そんなにマジで顔を赤くしなくても」
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/01(木) 23:19:00.49 ID:0IHDsQ9Io
女「じゃあ、撮影しよ。今度は兄がポーズを指示してよ」

兄「(やっぱりやるのか)無理無理。恥かしくてそんなこと出来ないって」

女「カメラマンになりたいんでしょ? それくらいできないと」

兄「カメラマンになりたいなんて言ってねえじゃん(恥かしいから妹にだって話したことないのに)」

女「いいから。グラビア撮影の練習だと思えばいいよ・・・・・・あ、でもこのまま後ろ手に縛られたポーズでね」

兄「・・・・・・そういう趣味ないなら、なんで縛られることにこだわるの?」

女「あんたと結ばれた時の格好だから」

兄「(よくわかんねえ)じゃあ、本当に撮るぞ? いいんだな」

女「うん。やっとその気になってくれた」

兄「じゃ、ちょっと体を起こして」

女「無理だよ・・・・・・手を使えないんだし」

兄「あ、悪い。じゃあ、俺が」

女「・・・・・・何かエッチな触り方」クス

兄「ちゃんと撮るなら真面目にやろうぜ」

女「ごめん。起き上がれたけどどういう姿勢になればいい?」

兄「それはファインダー覗きながら指示するから」

女「何だ、兄もやる気満々じゃん」

兄「どうせ撮る以上は真面目にやって綺麗な写真にした方がいいだろ」

女「うん」

兄「こうなるってわかってたら、コンデジじゃなく家からもっといいカメラ持ってきたのに」

女「そこは腕でカバーしなさいよ」

兄「言いたいこと言いやがって。じゃあ、そのまま座り込んでて」

女「うん」
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/01(木) 23:22:28.45 ID:0IHDsQ9Io
 俺はコンデジの背面ディスプレイに女の肢体が入るようにした。親父が買ってくれたカメラは、一眼レフのようにはいかないけれどマニュアルで撮影できるし、何よりも開放絞り値がF1.8と明るいズームレンズを備えていたので、それなりの表現力はあるはずだった。

 ソフトフォーカスで綺麗に見せるのはやめようと俺は思った。二人の結ばれた日の記念写真だというのなら、ある意味スナップ写真みたいなものだから、女の肢体をリアルに写し取ったほうがいいだろう。別にアイドルのグラビアを撮るわけではないのだ。俺はファインダーがないことに少し不便を感じながらもディスプレイを眺めながら、カメラを設定した。

「じゃあベッドの上にペタンって座り込んでいる感じで、視線だけカメラに向けて。緊縛スレ用じゃないんだから怯えた演技とかするなよ」
 俺は女に指示した。ポーズの指示自体はいつも妹のスナップ写真を撮る時に妹に注文していたから、別に違和感はなかった。妹はいつも撮影時間が長いことに文句を言っていたけど、女が文句を言うことに気を遣う必要はなかった。

「どういう表情をすればいいの?」
 女は首をかしげて素直に俺に聞いた。女のその様子は自然でそれはすごく可愛らしかった。俺はその瞬間を逃さずシャッターを押した。連写に設定してあるせいでシャッター音が6回鳴り響いた。

「それでいいよ。今度は横を向いて顔だけ正面を見てくれる」
 女は俺の指示に従った。

「こういう感じ?」
 女が、にっこりと笑いながら指示通りのポーズを取った瞬間を俺は再び写し取った。

「次は後ろ向いて。背中と縛った腕とかを撮るから」
 女が指示されたポーズになると、当然のことながら女の表情が見えなくなりカメラのディスプレーには、ただ華奢で綺麗な裸身を緊縛された少女の姿が浮かび上がった。女の表情が隠されると恋人同士の記念撮影という感じは全くせず、女が緊縛スレ用に設定したストーリーが俺の頭を再び占拠していった。

「何かさ・・・・・・ちょっと、その」

「・・・・・・・うん」
 女も同じことを考えていたようで、少し湿った声で俺に答えた。

「記念撮影とかだけじゃなくてもいいかな」
 女のかすれた声が俺の耳に届いた。

「ちょっとエッチな雰囲気の写真でも・・・・・・あんたがその気になって撮ってくれるなら」

「じゃ、俯いて」
 俺はもうためらわないで女に指示した。とにかくカメラの向こうにいる女は美しい。今はそれを撮影することだけを考えよう。俺は再び浮かんできた嫌な汗を手で額から払った。考えてみれば間抜なことに被写体の女だけじゃなくて撮影している俺も全裸でカメラを構えているのだった。俺は縛られて俯いている女の裸身をカメラに収めた。

「仰向けに横たわって・・・・・・・目線はカメラを見上げるように」
「横向きになって足を広げて」
「うつ伏せになって、顔は必死な表情でカメラの方に向けることはできるか?」

 ・・・・・・それはもう緊縛ヌード撮影と何ら変わりがなくなってしまっていた。被写体は未成年の女子高校生だったけど。ただ、俺は全裸で女にカメラを向けながらも女の被虐的なポーズに勃起することもなく、夢中でシャッターを押し続けていた。その時俺の感じていた興奮は性的興奮以外の興奮の方が大きかったことは断言できる。

 でも、撮られている女の感想は俺とは少し違ったようだ。

「ねえ・・・・・・もう30分以上撮影してるよ。そろそろ縄をほどいて」
 俺は女の言葉に正気にかえった。後ろ手に縛られたままいったい何時間も女はその痛みに耐えていたのだろうか。

「ごめん」
 俺はカメラを置き、女の腕を開放した。その途端、女が全裸のまま俺に抱きついた。

「あたしまた何か変な気分になってきちゃった・・・・・・ね? もう一度」
 その時、俺は俺に密着している華奢な裸身にようやく性的な興奮を覚えて、再度女をベッドに押し倒した。

 ・・・・・・今度は女にきつく抱き締められながら。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/01(木) 23:24:24.29 ID:0IHDsQ9Io
短いですが今日はこれでおしまいです。

明日また投下予定です。

週末には第1部が終了する見込みです。

それではお付き合いありがとうございました。おやすみなさい
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/02(金) 00:57:16.46 ID:9UBzpVZOo

突然の状況で近藤さんとかちゃんと用意してあったんかしら?
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/02(金) 01:50:03.07 ID:AQJC2ga6o
乙です

ウィルス流出が心配だ
二人に見られなきゃいいが
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/03/02(金) 07:36:02.39 ID:NUsPFfxOo


いろんな意味でドキドキの展開だな
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/02(金) 11:29:16.00 ID:B0JfYrz2o


フラグ建てまくりだな
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 23:36:25.01 ID:HJ60gsuco
リアルでこんな感じになりそうなスレがお気に入りにあるのでこのスレが何か生々しく感じる
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/02(金) 23:37:24.97 ID:UsFI8avQo
>>245
非エロだと
あれほど書いても
ちんこ勃つ
読者の欲を
如何とぞせん

つうことで再開しますが、女神なんかがテーマな時点でエロはあるに決まってます。しつこいようですが、非エロとは実用的なエロシーンがないということですので、ご了承ください

では再開します
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/02(金) 23:40:00.72 ID:UsFI8avQo
・・・・・・結局その夜、女の家を出た時は夜の11時を過ぎていた。2回目が終った後、ぐったりとしながらも幸せそうに俺に寄り添ってもたれかかっている女を残して帰るのは気が進まなかったけど、よく考えれば俺は妹に今日遅くなることを伝えていなかった。女の家に誘われたことに有頂天になっていた俺は、妹に夕食はいらないと言うことすら忘れていたのだ。

「ごめんな」
 俺は玄関先まで送ってくれた女に言った。

「さすがにこんな時間に妹を家で一人にはさせておけないし」

 女は玄関先まで来ても俺の腕に抱きつくようにしたいたけど、それでもこの時はあっさりと答えてくれた。

「わかってるよ、あんたの家の事情は。今日は妹さんだって混乱してるだろうしね」

「あ、ああ」

 妹はさっき真っ青な顔をして小さな声で失礼しますと女に謝って逃げるように去って行ったのだった。俺は女と結ばれて幸福感に溢れていたけど、妹のことを考えると再び以前感じた胃の痛みが甦って来るようだった。

「ごめんね。こんな日にあんたを誘ちゃって」
 女が小さく謝ったけど、別にこいつのせいではなかった。本当に妹のことが心配なら俺が女の誘いを断ればいいだけの話しだったのだ。でも俺は女に誘われた時、自分の妹をフォローするよりも女との関係を深める方を選んだのだから、全ては自分の責任だった。とにかく帰宅して妹に自分の気持を正直にぶつける以外に、俺にできることはなさそうだった。

「じゃあ」
 俺は女に言った。・・・・・・じゃあじゃねえだろ。愛してるとか好きだよとか、何か言わなければいけないことがあるんだろうけれども、俺の口から出たのは愛想のない言葉だった。それでも女は嬉しそうだった。

「うん。またね」
 女は最後にぎゅっと俺の手を握ると、名残惜しそうに胸の前で小さく手を振り、家の中に消えていった。
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/02(金) 23:44:48.32 ID:UsFI8avQo
自宅


兄「ただいま(寝ちゃったかな)」ガチャ

兄「妹? いねえの?(・・・・・・リビングにもダイニングにも妹はいないな。寝るには早いし、自分の部屋にいるのかな)」チラ

兄(・・・・・・やべ、やっぱりか。ダイニングのテーブルの上にラップに包んだ晩飯が置いてある)

兄(夕食いらないとか連絡してねえからな。それにしても不思議だ)

兄(最近あいつ、忙しいとかで俺の夕食用意しなかったくせに)

兄(何で俺と女のことでショックを受けた夜に夕飯なんか作ったんだろ)

兄(・・・・・・)

兄(まあ、深い意味はなくて、たまたま自分の分を作ったから、ついでに俺にも用意したんだろうな)

兄(・・・・・・お腹いっぱいだけど)

兄(・・・・・・ええい、しかたない)

兄(据え膳を食わないのは何とかって言うし・・・・・・って全然意味が違うけど)

兄(妹がわざわざ手間暇かけて作ってくれた夕飯だもんな。捨てるわけにはいかねえよ)

兄(・・・・・・つうか女が用意してくれた晩飯と献立全く一緒じゃんか)

兄(・・・・・・こっちもうまい。何か体に馴染んだ我が家の味がする)モグモグ

妹「・・・・・・お兄ちゃん?」

兄「あ、おう。ただいま」

妹「遅かったね。おかえり」

兄「悪かったな。遅くなるって連絡し忘れて」

妹「別にいいけど・・・・・・お兄ちゃん夕御飯冷たくなっちゃってるでしょ? 暖めてあげようか」

兄「(普通に冷静に振る舞ってるな、こいつ)いや、平気。うまいよ」

妹「・・・・・・そう」

兄「・・・・・・ああ」

妹「食べ終わったら食器はキッチンのシンクに運んどいて。明日洗うから」

兄「洗って食器乾燥機に入れておくよ」

妹「いいよ。お兄ちゃんが洗うと雑だから」

兄「そうか」
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/02(金) 23:47:34.50 ID:UsFI8avQo
妹「じゃあ、あたし部屋に戻るね」

兄「あのさあ」

妹「・・・・・・何?」

兄「今朝はごめんな」

妹「何の話してるの?」

兄「おまえには事前に話そうと思ってたんだけどさ。俺、女のことが好きだ」

妹「・・・・・・そうか」

兄「まあ今朝の話を聞いたのならもうバレてるだろうけど、俺と女は付き合ってるんだ」

妹「・・・・・・」

兄「ごめんな」

妹「お兄ちゃん・・・・・・どうしてあたしに謝るの?」

兄「え」

妹「謝る相手が違うんじゃないの?」

兄「・・・・・・幼馴染にはきちっと話しをしたよ。あいつの気持に応えられないってことも」

妹「お姉ちゃんかわいそう」ボソ

兄「幼馴染のことはいいんだよ。おまえに言われることじゃねえし。俺とあいつの問題だろ」イラ

妹「お兄ちゃんって、平気でそういう冷たいこと言うんだ」

兄「(こいつさっきから腹立つな。俺が心配してるのはおまえなのに)おまえさあ」

妹「・・・・・・何よ」

兄(えい、言っちまえ。俺が何のために女と一緒にいたい気持を振り切って帰って来たと思ってるんだよ)

兄「おまえはどう思ってるんだよ。幼馴染のことはちょっと置いといてよ」

妹「な、何言ってるの」

兄「俺はおまえが心配で帰って来たんだよ。幼馴染が可哀想とかは別にして、おまえは俺と女が付き合うことをどう思ってるんだよ」

妹「・・・・・・」

兄「・・・・・・」

妹「・・・・・・い」

兄「い?」

妹「嫌に決まってるじゃん! お兄ちゃんのこと一番よく知ってるのはあたしなのに。お兄ちゃんと一番長く一緒に過ごしてきたのはあたしなのに」

兄「おい(泣き出しちゃった)」

妹「何で女さんなのよ!? これがお姉ちゃんなら、あたしも諦められるって思ってたのに」

兄「ちょっと待て」

妹「あたしだってお兄ちゃんの彼女になれるなんて本気で思っていたわけじゃないよ。でも、一番好きな一番どきどきして一番一緒にいたいって思う男の子は、昔から今までずっとお兄ちゃんだったんだもん。しょうがないじゃない」
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/02(金) 23:52:38.19 ID:UsFI8avQo
兄(泣きながら開き直って切れてやがる、こいつ)

兄(でもやっと口に出したな、こいつ。今までだって態度ではバレバレだったけど)

兄「・・・・・・ありがとな」ナデナデ

妹「・・・・・・え?」

兄「おまえの気持は嬉しいよ。でもごめんな。俺、女が本気で好きなんだ」

妹「・・・・・・」

兄「何って言っていいかわからねえけどさ。俺、おまえのことも大好きだぞ」

妹「適当なこと言わないでよ」

兄「嘘じゃねえよ」

妹「それって・・・・・・女の子として?」

兄「家族として妹としてだけど、大切さで言ったら女と変んないくらいに、俺はおまえのことが大切だ」

妹「・・・・・・そう」

兄「俺、女と出会う前は幼馴染のこと、好きだったんだけどさ」

妹「知ってたよ」

兄「(・・・・・・まじか)そうか」

兄「それでも、おまえのことは『気になる度』じゃ、いつも幼馴染と並んでさ、俺の頭の中で一番だったんだぞ」

妹「・・・・・・うん」

兄「だからさ、俺に初めての彼女ができたことを祝福してくれよ。そんで俺に恋愛のアドバイスとかしてくれよ。おまえもてるんだろ? 幼馴染とか兄友が言ってたけど」

妹「そんなこと・・・・・・」

兄「家族はさ・・・・・・兄妹はさ、付き合えなくても一生の付き合いなんだから」ナデナデ

妹「・・・・・・何かお兄ちゃんにうまく言いくるめられたような気がする」

兄「そんなことしてねえって」ドキ

妹「でも、まあいいか。お兄ちゃんの恋愛に反対はしないけど、家族として妹として女さんがちゃんとした人かどうかは確かめさせてもらうよ」

兄「確かめるって、おい」

妹「恋愛のアドバイスしてくれって言ったよね?」

兄「・・・・・・ああ」

妹「アドバイスしてあげる・・・・・・お兄ちゃんのお相手をよく調べた上で」

兄「・・・・・・わかった(何か怖いな・・・・・・これってよかったのかまずかったのか)」

妹「じゃあ、あたし部屋に戻るね。お茶碗とかちゃんと運んでおいてね」

兄「・・・・・・わかった」
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/02(金) 23:53:19.81 ID:UsFI8avQo
毎度短いけどこれで今日はおしまいです

土日は休みなので多少は頑張りたいと思います

ではおやすみなさい
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/03/02(金) 23:59:53.96 ID:fGhQjZfBo
今日もまた
晴れぬもやもや
かかえつつ
続き来るのを
ただ待つのみかな


264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/03(土) 00:17:55.94 ID:w2HbAwvRo
>>263
期待とは
添えぬ時点で
プレッシャー
ただただ胃痛を
持て余す夜

本文書くより大変だからそろそろ57577はやめてスレに専念しますね
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 00:36:32.36 ID:hJt45JdSO


>>257
エロだ非エロだと言ってるのはただただジョークなので
もしR-18描写を期待してるんだと変にプレッシャーを与えていたのならスマヌ
すぐに反応する我が息子に代わって謝罪する
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/03/03(土) 00:52:28.49 ID:9i66JP7fo


前の兄といいこの男といい
読者の視点からはやっぱイラつくわぁ
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 02:50:30.64 ID:22iATOlLo

別にイラつかないのはおかしいのか

パソコンを買ったことと献立が同じだったこと
妹よまさか
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/03(土) 03:06:17.54 ID:i7jzhX96o
乙〜

だけど妹か幼馴染か兄友か、三人のうち誰かが隠れオタで
やたらPCと2ちゃんに詳しかったりして

「SDカードやHDDの消去データ復旧なんて楽勝w」とか
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/03/03(土) 08:28:05.23 ID:rGqGEhe/o


妹ぺろ
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/03(土) 22:19:49.32 ID:w2HbAwvRo
兄「ごちそうさま」

兄(・・・・・・もう何も食えない。明日は朝飯もパスだな、こりゃ)

兄(食器は運んどかなきゃ)

兄(寝る前にカメラのデータ整理しておこう。あと、明日から持ち歩くカメラ探さないと。このコンデジは当分お役目ごめんにして・・・・・・かといってでかい一眼レフ持ち歩くわけにもいかねえしな)

兄(親父、どのカメラ残していったのかな・・・・・・たしかこの辺りに親父の保湿庫が)

兄(あった・・・・・・って、でかいカメラばっかじゃんか。いくら上位機種でもこんなのも持ち歩けるか)ゴソゴソ

兄(・・・・・・女を撮る専用のカメラか。性能が良くてコンパクトなやつじゃないとな)


回想


女「何で写真撮るの得意なの?」

兄「まあ、親の影響でさ。俺の両親ってもともと社会人のカメラサークルで知り合って結婚したくらいだから、ガキの頃から親父には写真の撮り方とか教わってたからな」

女「そうなんだ。じゃあ、これからはあたしのことも被写体にしてくれる?」

兄「そりゃもちろん、いいけど」


回想終了


兄(あいつがモデルになってくれるのか・・・・・・何か久し振りに写真撮りたくなってきた)

兄(それにしても親父のやつカメラと交換レンズいったいいくつ持ってるんだよ)

兄(あ、これいいじゃん)

兄(・・・・・・何か変だと思ったらフィルム使うカメラか。これじゃ駄目だな)

兄(あれ、これは)

兄(・・・・・・デジカメだな・・・・・・一応)

兄(ファインダーもあるけど、これ一眼じゃないな)

兄(デジタルでこんなのあるんだ)

兄(これちょっと大きいけど一眼レフほどじゃないし、これ使ってみるか)

兄(よし)

兄(電源を入れて・・・・・・このカメラ設定はボディのダイアルで合わせるんだ)

兄(ピントもレンズのピントリングで合わせるのか・・・・・・つうかこれ聞いたことあるな)

兄(前に親父が言ってた、珍しいレンジファインダーのデジカメだ。ピント合わせがちょっと特殊なやつ)

兄(何かクラッシクな形で格好いいし、もうこれにするか)

兄(じゃあ、次は今日撮影したデータを)

兄(妹はいないよな? よしリビングのパソコンにデータを移そう)
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/03(土) 22:21:37.52 ID:w2HbAwvRo
兄(今日使ったカメラからデータをパソコンに転送しよう)

兄(まず妹のスナップをハードディスクの『妹フォルダー』に転送して)

兄(妹フォルダーっていい加減名前変えないとな)

兄(結構枚数あるから時間かかるな・・・・・・こうして見ると妹のスナップ写真って我ながら可愛く撮れてるなあ。まあ素材がいいんだろうけど)

兄(妹のやつ、こんなに可愛いのにどうして兄貴なんかに夢中なんだろ)

兄(・・・・・・よし終わった。カードの妹の画像は削除しよ)カチ

兄(そしていよいよ・・・・・・)

兄(さて、女の画像はどうしたもんか)

兄(このパソコンにデータを移すのは危険すぎる・・・・・・ヌード写真だし)

兄(まあ親はいないし、妹の自分の部屋にノートパソコン置いたみたいだし、これ使ってるの俺だけだけど。万一ということがあるからな)

兄(そうだ・・・・・・確かUSBメモリーがあった。ああ、これだ)

兄(とりあえずこっちに女の画像を移しておこう。それで明日女にこれを渡せばいいんだ)

兄(・・・・・・よし、コピーして)

兄(・・・・・・)

兄(全然終らない・・・・・・つうかいったい何枚撮ったんだ)

兄(200枚近くあるな)

兄(・・・・・・)

兄(・・・・・・いつまで待っても終らねえ)

兄(俺も部屋にパソコン欲しいな・・・・・・親父に頼んでみようか)

兄(・・・・・・・画像もそうだけど、部屋ならエロゲーもできるし)

兄(それって絶対親父に疑われるな)

兄(やめておくか・・・・・・転送終ったな。よし、USBメモリーを外して、コンデジのカードを初期化して)

兄(そんでこのレンジ゙ファインダーにカードを挿して終わりっと)

兄(今日は疲れたから風呂入って寝よ)

兄(その前に忘れないようにUSBメモリーとこのカメラをカバンに入れておこう
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/03(土) 22:24:51.18 ID:w2HbAwvRo
兄の部屋


兄(ようやくやるべきことはやったから、ゆっくりと今日の思い出に浸れるな)

兄(もっと早くそうしたかったけど、さすがにきちんと整理しておかないとやばい画像ばっかだし)

兄(あいつは俺を信頼して画像を任せてくれたんだし、疲れててもこれだけはやっておかないと)

兄(まあ、今度からはこのカメラのSDカードに保存しておけばいいか。カメラなんて妹は絶対触らないし)

兄(それにしても今日は急展開だったな・・・・・・)

兄(付き合い出したばかりなのに、もうこんな関係になったとか・・・・・・昨日までは想像すらしてなかったのに)

兄(あいつ、可愛かったな)

兄(エッチした時のあいつも可愛かったし撮影してるときの表情も色っぽかったけど)

兄(一番萌えたのはあの言葉だ)


回想


女「うん、そうだったね・・・・・・まあ、先のことはわからないしね。ひょっとして兄から振られなかったら10年後はあたしたち結婚してこどももいる平凡な夫婦になってるかもしれないしね」ニコ

兄「何かいいなあ、そういいうの(今一瞬エプロン姿のこいつに朝家から送られるイメージが浮かんじゃった)おまえって専業主婦になりたいタイプ? それとも結婚してもばりばり働きたい?」

女「あんたの好きな方でいいや」

兄「(鬼が笑うような気の早い話しだけど、こいつとずっと一緒に過ごせたら幸せだろうな)おまえなら結婚して子どもができても女神とかやってそうだな」

女「どうかなあ? おばさんになったら需要ないんじゃないかな」

兄「おまえなら行けそうな気もするけどな」

女「・・・・・・ありがと」

兄「そんなにマジで顔を赤くしなくても」


回想終了


兄(女と結婚かあ。本当にそうなったらどんだけ幸せなんだろうな)

兄(女が女神行為やってること、妹とか幼馴染が知ったら女のこと嫌悪するだろうけど)

兄(俺にとっては女はいたって普通の女の子だし。あいつが女神行為をしてるってわかっていても、あの時俺には女と新婚生活を送っている幸せなイメージが浮かんだくらいに)

兄(そうだよ・・・・・・女神とか気にならないくらい俺はあいつに惚れてるんだ)

兄(逆にあいつがよく俺なんかを好きになったよな。あいつこれからはぼっち卒業して普通の女子高生になるって言ってたから、きっとこの先あいつに告白する男が増えるんだろうなあ)

兄(・・・・・・そう考えると暗くなってきた。もう寝よう)

兄(明日は女に週末にデートしようって誘おう)

兄(・・・・・・)
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/03(土) 22:29:36.85 ID:w2HbAwvRo



兄(何かやたら早く目が覚めた・・・・・・妹に起こされる前に起きるのって久し振りだ)

兄(昨日夕飯を2回も食ったせいでお腹は全然空いてないし、もう家を出て駅で女のこと待ってよう)

兄(よし支度して行くぞ)


リビング


兄「おはよ」

妹「・・・・・・あ、お、おはよ」ビク

兄「おまえ何やってるの? (何で朝から妹がリビングのパソコンの前に座ってるんだよ)」

妹「別に・・・・・・・テレビの天気予報見逃したからネットで今日の天気を調べてただけだよ」

兄「(なら何で慌てて画面隠すんだよ)まあ、いいけど」

妹「すぐに朝ごはん支度するから」プチ

兄「おい・・・・・・いきなりパソコンの電源落とすなよ。ちゃんと終了しろ」

妹「あ、うん。悪い」

兄「何か隠してる? おまえ(何なんだろ? こいつもこのパソコン使うことがあるんだ。女の画像データをこれに保存してなくて本当によかった)」

妹「何言ってるのよ。別に何にも隠してないよ」

兄「まあ、それならいいけど(女の画像はこのパソコンにはないから別に見られて困るものはないしな)」

兄「俺腹減ってないから朝飯はいいや。もう出かけるからな」

妹「うん、わかった」

兄「(カメラとUSBメモリーはカバンに入ってるな)じゃあ行ってきます」

妹「行ってらっしゃい」

妹「・・・・・・」

妹カチ
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/03(土) 22:31:56.87 ID:w2HbAwvRo
【貧乳女神も】華奢でスレンダーな女神がうpしてくれるスレ【大歓迎】


妹(・・・・・・)カチ


モモ◆ihoZdFEQao『こんばんわぁ〜。誰かいますか』

『いるぞ〜』
『モモか。久しぶりだね』
『モモちゃん元気だった?』
『ちゃんと大学入ってる?』

モモ◆ihoZdFEQao『人いた。最近恋に落ちたせいか痩せてますます貧乳になりました(悲)』

『美乳じゃん』
『美乳なんだろうけど手で隠すくらいならうpするなボケ』
『乳首も見せないとか何なの』
『モモちゃんの乳首みたいです』
『美乳というより微乳かもしれん。こんなんに需要ねえよ』
『>>○ スレタイも読めんのか。モモ、ナイス微乳。手をどけようよ』
『肌綺麗だな。こないだまで女子高生やってだけのことはある』
『乳首見せる気ないなら着衣スレいけよ』
『ふざけんな。削除早すぎるだろ』
『即デリ死ねよ』
『のろまったorz』
『次の画像うpしてくれ』


妹(・・・・・・)カチカチ



モモ◆ihoZdFEQao『画像は15分で削除します。ごめん』
モモ◆ihoZdFEQao『あと乳首はダメです。需要ないかなあ』

『ねえよ帰れ』
『需要あるよ。乳首なくてもいいから次行ってみよう』
『モモの身体綺麗だからもっと見たいれす』
『次M字開脚してみて』

モモ◆ihoZdFEQao『リクに応えてみました。乳首はダメだけどM字です。15分で消します』
モモ◆ihoZdFEQao『ほめてくれてありがとうございます。じゃ最後は全身うpです。乳首なしですいません。15分で消します』



妹カチ

妹(・・・・・・お兄ちゃん)





女神第一部 おしまい
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/03(土) 22:36:37.36 ID:w2HbAwvRo
今日は以上です

明日から第二部です

第二部からは例によって視点が変ります

それではまた明日お会いしましょう
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/03/03(土) 23:02:23.52 ID:uDB/jbeY0
乙です
妹にばれてる・・・だと!?
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 23:11:10.88 ID:5hUyfFQVo
乙!


しかし初歩的すぎるだろ兄…
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/04(日) 07:28:58.85 ID:lj1e+QfSO
他視点で見ることで兄の鈍感っぷりがどんだけかわかるな
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/04(日) 23:26:29.09 ID:Uiv4gkQ8o
 わたしは元々は引っ込み思案で社交的でない性格の女の子だった。小学生の頃も普通に話せる友だちはいたけど、親友と呼べるような子はできたためしがなかった。それは一人っ子だったせいもあるし、親が転勤を繰り返していて友だちとは出会いと別れを繰り返していたせいもある
のかもしれない。それでも、よく考えてみれば家の都合で一期一会の出会いを繰り返していたあたしは、むしろ友だちを作るのは得意だった。少し話しをすればいつも転校先の同級生たちはすぐにあたしを受け入れてくれた。それは転校を繰り返していたあたしが必要に迫られて習得した
テクニックだったけど、もちろんそれは特殊な能力というわけではなく、単純に自分の話したいことを2割くらいしか喋らないようにして、残り8割の時間は相手が話すことを聞いてあげるということだけだった。

 人というのは例外なく自分のことや自分の知っていること、考えていることを話したがる。そして、話した内容から自分を評価して認めてもらいたがるものなのだということを、度重なる出会いと別れの間にあたしは学んだのだ。誰も別にあたしのこと、あたしの考えていることなんかに深い
興味はない。でも、自分の話しを聞いてくれて評価してくれるあたしには興味があるみたいで、その一点だけであたしは新しい環境に放り込まれても、友だちが出来ないということはなかったのだ。そしてもちろん、人とそういう接し方をしている限り、普通の友だちは出来ても心を許しあえる親友はあたしには望むべくもなかった。

 最初はそうやって出来た友だちと毎日を過ごすことは、あたしにとって別に苦ではなかった。ただ、あたしもそういう人たちと同じで、自分の中にも人に認めてもらいたいという欲求があることが、だんだんわかってきたのは中学3年の頃だった。あたしみたいな根無し草のようにいろいろな
場所を放浪している人間にも、人に話したいことや人から認めてもらいたいことがあるんだ。あたしは自分のその感情に気がついた時、すごく新鮮な驚きを覚えたものだった。ただ、友だちの話しをきいてあげ、必要に応じてほめたりなぐさめたりとまるでコンサルタントのようなことをしながら学校で過ごしていたあたしには、自分語りをする余地は学校にはもうなかった。更に考えれば、あたしには自分が人に語って認めてもらえるようなことは何もないことにも気がついた。あたしには、なくとも学校では人に語れるような自我がない。学校でのあたしの存在意義は、文字どおり
友人の自己主張を受け止めてあげることにしかなかったのだ。

 そういう自分に嫌気が差したあたしは、高校に入学しても同級生の話をよく聞いてあげる良い人を演ずることを止めた。そうすると絵に描いたような結末があたしを迎えてくれた。友だちのいないぼっち・・・・・・。

 それでも高校に入ったばかりのあたしにはその孤独や同級生の奇異の視線は、あまり気にならなくなっていたのだった。そう。その頃のあたしは、自分を構ってくれ誉めてくれる場所を、校外に見出したのだ。それは2ちゃんねるの女神板だった。
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/04(日) 23:32:13.47 ID:Uiv4gkQ8o
 それは中学を卒業して高校の入学式を控えていた頃だったと思う。高校の授業には情報化関連のカリキュラムがあることをガイダンスで聞いたあたしは、お父さんに自分の部屋にパソコンが欲しいとお願いしたのだった。頼んだ相手がお母さんだったらこんなに簡単には買ってくれなかっただろうけど、お父さんは一人娘のあたしの頼むことにはいつも二つ返事で了承してくれるのだった。お父さんは多忙な仕事の合間を縫ってパソコンをセットアップし、そして頼んでもいないのに無線LANまで設定し、インターネットに繋ぐことまでしてくれたのだ。高校入学まで暇を持て余していたあたしは、すぐパソコンの前でネット上の話題をあさることに夢中になってしまった。もちろん、あたしには卒業後まで遊びに声をかけてくれるような友だちはいなかったし。

 最初はいわゆるまとめサイトからだった。そこには世の中のニュースや流行の出来事に対するリアルタイムな感想が、掲示板のような形でまとめられていた。それは物凄い情報量だった。あの頃、あたしはいくつものまとめサイトを巡回して最新の出来事を知り、それに対するネット上
の感想を読むことにわくわくしていたのだ。テレビのニュースと新聞だけしか情報が入ってこなかったあたしにとって、それは凄く新鮮で衝撃的だことだった。あたしは自分の世界が広がっていくように感じていた。あたしは高校入学前の単なる女の子でなくて、まるでいっぱしの評論家になったような気がしていたのだ。

 まとめサイトの記事に中毒になってしばらくした頃、あたしは何となくその情報がリアルタイムの速報ではないのではないかということに気がついた。いくつかの異なるサイトに同じ内容の掲示板があったり、複数のサイトに名前欄が同じ掲示板があったりしていることにあたしは気づいた。それまで細かいところまで読んだことはなかったけれど、注意して見てみるとそれらは全て別のオリジナルの掲示板から転載されていることにようやく気がついたのだ。そうして注意して見てみると、あるまとめサイトに『元スレ』という表示がありリンクが貼ってあった。あたしはそのリンクをクリックしてみた。

 ところがそのリンク先には元記事は存在しなかった。でもそのページに表示してあるサイト名はあたしにも聞いたことのある名前だった。2ちゃんねる。それがあたしの2ちゃんねるとの出会いだった。
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/04(日) 23:32:41.56 ID:Uiv4gkQ8o
 最初は、必要に迫られて覚えた結果、今では趣味になりつつある料理板を恐る恐るROMしているだけだった。こういうスレの雰囲気はまとめサイトで見慣れていたのだけれど、リアルタイムだと思うとなかなか自分で書き込みする勇気はなかった。それに料理板自体が平均年齢が高そうな気がして、高校入学前のあたしなんかがコメントしては場違いなような気がしていた。こうして料理板の自炊スレにROMとして入り浸っていると、時々意味不明な単語が目に付くことに気がついた。それは主に荒れている時とかスレの内容にふさわしくないレスがあった時に使われていたようだった。『そういうのはVIPでやれ』、『ここは雑談板じゃねえぞ。馴れ合いはvipに行けよ』

 ・・・・・・ここではあまり肯定的に使われていないVIPという単語があたしには気になった。いったいどういうところなのだろう。気になったあたしは探しみてみたけど、2ちゃんねるは巨大でVIPとやらがどこにあるのかさっぱりわからなかった。

 ある日、いつもROMっていた自炊スレにわけのわからないレスがついたことがあった。今にして思えばサーバーがダウンしたVIPからVIPPERが他板に遠征に来ていたのだろうけど、そのレスには『VIPから来ますた』とだけ書かれていた。そして数分して『この板は今日からVIPの植民地になりました』という当時のあたしには意味不明のレスがついていた。そしてその次のレスにはVIPのスレのURLが貼ってあったのだ。

『みんな急げ!!! 今VIPで中学生が下着姿をうpしてるぞ!』
 荒れ気味で意味のある内容のレスがつかない自炊スレに飽きていたあたしは、何の気なしにそのURLを踏んだ。それがあたしと女神行為との初めての出会いだった。
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/04(日) 23:33:52.55 ID:Uiv4gkQ8o
投下量少なくてすいません。地の文のパートにに入るとどうしても速度が落ちるもので

明日また投下予定です。お付き合いありがとうございました。

おやすみなさい
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/03/04(日) 23:46:48.33 ID:Tt3+24bMo


凄い量書くなぁ
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/05(月) 01:36:05.93 ID:yP3ZdEd/o
乙!

そりゃあこの文量なら仕方ないだろうな
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/05(月) 10:40:34.34 ID:hBTi489IO
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/05(月) 20:20:08.84 ID:iFpv8hE/o
作者です。職場からこんばんは
本日は残業決定につき投下できません
すいません
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/03/05(月) 20:27:09.94 ID:yjdsbyz7o
どまい
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/05(月) 20:45:59.79 ID:z3RAZkLso
完結してくれるまでずっと待ってる
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/06(火) 22:42:26.75 ID:PxMQ6QMLo
 そのリンクを踏んだあたしが最初に遭遇したVIPのスレは、今にして思うと大人しい内容のスレだった。スレタイは『女子高生vipperが靴をうpしてくれるスレ』というものだった。

 ・・・・・・何だこれ。当時のあたしは最初このスレタイからはスレの内容が全く想像がつかなかったけど、>>1のレスを読み、それに続く数レスを読んでいるうちに、ここで期待されていることがだいたいわかってきた。ここは女子高生が靴を履いた自分の足の画像が貼られるのをひたすら待っているスレなのだった。そしてあたしが当時よく見ていた料理板のスレと違って、スレが立ってまだ30分ほどしかたっていないのに既にたくさんのレスがついていた。レスの内容はたいしたことはなく、大部分が>>1死ねとか、また乞食かよとかそんなものだったけど。あたしは律儀に>>1
から全部のレスを読んでいったけど、さっき自炊スレで見た書き込みで言っていた中学生の下着姿なんてどこにも見当たらなかった。というか画像自体が全く貼られていない状態で100くらいのレスまで来た時、あたしは初めて自撮りの画像を貼っているレスに遭遇した。

『こんな画像でいいんですかね』それだけ記されたレスには画像へのURLが貼ってあった。あたしはそれをクリックした。

 ・・・・・・浮かび上がってきた画像は、起立したまま自分の足元を撮影したであろう写真だった。絨毯の上に茶色いローファーを履いた足が写っている。その足は紺のハイソックスを履いていて、ハイソから短い制服のスカートに至る間には、白い剥き出しの足が不鮮明ながらも妙に艶かしく見えていた。
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/06(火) 22:45:26.49 ID:PxMQ6QMLo
 女子高生の靴が見たいって何だろうと思ってスレを追っていたあたしは、ようやくこのスレを立てた>>1やスレを見ている人たちが何を期待しているのか理解できたのだった。フェチ的な意味で靴を見たいという気持もあるのだろうけど、ここは靴やソックスの合間にほのかに覗く裸の肌を期待し、そういう画像が貼られるのを待っているスレだったのだ。その画像を貼った女性には、その後10レス以上の賛美や期待しているというレスがついた。その画像の主はその後2、3枚顔なしで制服姿の自分の写真を貼った後、構ってくれてありがとうと言い残してスレから消えていった。もちろんその後には、彼女を褒め称えるレスがついていた。あたしは不思議な感想を抱きながら続くスレを追うことを再開した。

 画像を期待している人は、何となく自分に身近に思える女性がその姿を見せてくれることを期待しているのだろう。だから肌の露出度とかそういうことはどうでもいいのかもしれない。露出度で言えば、よく中学校の男子たちが愛読して話題にしている漫画雑誌のグラビアの女の子たちの
画像の方がより過激なはずだった。それでもこのスレに集っているROMも含めた多数の人たちは、いわゆる素人の若い女の子がそういう姿を見せてくれることに、グラビアアイドルの水着姿よりも価値を見出しているのだろう。彼らにとっては匿名掲示板と呼ばれるこの掲示板の片隅で、匿名性が一瞬だけ失われ、若い女の子がリアルの姿のほんの一部を見せてくれるそのことの方が貴重なのだとあたしは気づいた。

 それにしても、スレは高校生らしき女の人の靴とかスカート姿の画像があっただけで、その後は雑談のようなレスが続いていた。高校入学前で時間を持て余していたあたしは、それでも辛抱強くレスを読み進めていたが、ついにそのレスに遭遇した。


『高校生じゃないとだめですか』
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/06(火) 22:51:14.11 ID:PxMQ6QMLo
 そのレスに反応しすぐに数レスがついた。


『BBAじゃねえだろうな』
『全然おk』
『とりあえずうp』
『何歳なの?』


『もうすぐ中2になります。じゃあ画像貼りますね』
 その子はそれらのレスを受け、待っていたとばかりに自分の画像をうPしたのだった。


 ・・・・・・その画像は、靴の画像などというものではなかった。それは少女が白いスポーツブラとパンツしか身につけていない画像だった。ただ素足には黒いローファーを履いていて、一応スレタイの要求を満たしてはいたようだ。姿見に写して自撮りしたその画像には口から上は見切れていたため顔はよくわからないけど、下着だけの裸身の幼さは隠しようもなく、本当に中学生かと思わせるような幼い肢体ではあった。案の定、その後に続くレスはお祭り状態で収集がつかない感じになっていた。



『とりあえずID付きで』
『本当に中学生なのかよ』
『何か写せない? 学生証とか教科書とか』


 いまやあたしもその興奮に巻き込まれ、中学生の子がどう反応するのか夢中で画面をスクロールしていた。


『じゃあIDと英語の教科書です』
 その女の子は冷静にレスした。そのレスに貼ってあったURLをあたしは不思議な興奮を感じながらクリックしいた。

 その画像には、彼女のIDを書きなぐった黄色い付箋が貼られている中学1年の英語の教科書を抱えた女の子が写っていた。あいかわらず下着姿で姿見の前に立っている写真。教科書を抱える腕と胸をアップにして撮影していたせいで辛うじてIDは判別できた。

 ・・・・・・それは厳密に言うと女神行為とは違っていたかもしれないけど、自分の身体を不特定多数の人の目に晒す行為とあたしの初めての出会いだったのだ。
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/06(火) 22:55:46.66 ID:PxMQ6QMLo
 高校に入学する頃になると、もう自分を抑圧して友だちの話しに付き合ういい人になどという気持はなくなってしまっていた。たまたま1年のクラスの中に同じ中学校出身の女の子がいなかったせいもあって、気づいたときにはあたしは典型的なぼっちになってしまっていた。それでもそのことにあたしはあまり悩まなかった。高校に入学する頃にはあたしはもう2ちゃんねるにどっぷりと入り浸っているようになっていて、高校入学を機に買い換えてもらったスマートフォンで時間があればいろいろなスレを覗くようになっていたし、名無しのままではあったけどレスもするようになっていたので、リアルでぼっちなことなど、あたしにはそれほどは気にならなかったのだ。もともと転校を繰り返していて、家の外での寂しさには耐性が出来ていたということもあった。

 そんなわけで高校生になったあたしは、それほどの孤独や不便もを感じることもなく一人ぼっちの学校生活を送っていた。ただ、外でぼっちな分帰宅してからは両親にべったりとくっついて甘えてはいた。特にお父さんとは仲が良くて、食後にリビングでお父さんと雑談しながら夜を過ごすことは昔からの習慣だった。あたしは自分でも自覚するほどファザコン気味でもあったのだ。

 こうして入学当時のあたしは、昼間は授業時間以外はスマフォで2ちゃんねる、家では帰宅したお父さんにべったり寄り添って雑談をして過ごすようになった。そして自分の部屋に戻ってからはパソコンで2ちゃんねるの閲覧やレス。人が聞いたら哀れみを受けそうな生活だけれども、あたしにとってはそれなりに安定していた生活が続いていたのだ。しかし、その安定した生活も長くは続かなかった。お父さんが1年間だけ海外出張を職場から命じられたのだ。
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/06(火) 22:56:57.90 ID:PxMQ6QMLo
今日はここまで

またできれば明日投下します

この調子だとまた長くなりそうです

それではおやすみなさい
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/07(水) 08:06:54.59 ID:cdVFaUgNo
ううむ、伏線かもしれんと思うものが大杉www
乙!
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/07(水) 14:39:08.71 ID:2do5H9cto
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/07(水) 22:49:07.59 ID:jpSfOKX6o
 もともとお母さんも多忙に働いていていた我が家は、お父さんの単身赴任によっていきなり家庭の体をなさなくなってしまった。もう家にはお父さんはいなかったし、あたしが帰宅の遅いお母さんと会って話ができるのも、朝起きて登校前の慌しいひと時だけになった。

 当然、学校では話をする友人がいなかったあたしは、ひどい時には朝お母さんに行って来ますとあいさつしてから、翌朝お母さんにおはようって言う時まで、誰とも話をしない状態が続いていた。それでも、学校から帰宅するとあたしは自分の部屋のパソコンに電源をいれ、2ちゃんねるに入り浸った。その場所だけが、自分では認めようとしなかった寂しさや日常の退屈を紛らわせてくれたから。そこでだけはあたしは他の人とコミュニケーションを取ることができたのだった。パソコンでディスプレイの向こう側にいる匿名の名無しの人たちと。

 お父さんが家から消えた頃から、あたしは自分の姿をスレにうPするようになった。最初は、前に見たような誰かが立てた『女VIPPERが制服姿を』云々というスレだった。以前に見た中学生の子の画像が気になっていたあたしだけど、このくらいならあたにしだってできるんじゃないかとふと思ったことがきっかけだった。ある日、定期的に立つ『制服姿を見せてくれるスレ』を見つけたあたしは、自分でもやってみようと思い立ったのだ。

 その時は帰宅したばかりで、まだ制服から着替えていなかった。

 ・・・・・・試しに撮影してみよう。あたしはそう考えた。うPするかどうかはとりあえず考えなくてもいいだろう。あたしは、スマホを握った手を前に突き出して、自分の姿を正面から自撮りししてみた。スマホのディスプレイで確認すると、それはピンボケだし構図は無茶苦茶だし見られたものではなかった。あの中学生の子とかが適当に撮ってるみたいな画像も、実は結構苦労して撮っていることにあたしは気づいた。

 再度の挑戦。今度は少し考えて、姿見の前に立って姿見に写った画像を正面から撮影してみた。撮影後に確認すると、それは前よりも大分ましなように思えた。あたしはパソコンの前に戻ってスレを更新してみた。そのスレには女神は誰も光臨していないようで、レス数も減っていて今にも落ちそうな状態だった。試しに自分をうPしてみるにはいいのかもしれない。閲覧者が少なければそれだけ叩かれる可能性も減るだろうし。あたしは、前に女子高生(と称していた)女性が自撮り画像をうPしていた時のレスが忘れられなかった。それは正直女子高生という感じがしない女性の画像で、正直に言えば汚い身体という印象を閲覧した人たちに与えるものだった。その時のレスの反応は、賞賛の嵐だった中学生の時の反応と真逆で、『ばばあ死ね』『ふざけんなどこがJKだよ』『グロ注意』とか思いつける限りの罵倒がそのレスに浴びせられていたのだ。あたしもこの画像をうPすればそうなるかもしれない。あたしは躊躇したけど、やはりせっかく撮影した自分の姿を見せたいという誘惑には勝てなかった。

 あたしはスマホから媚びたレスをした。
『jk1の♀です。需要があるなら制服姿をうPしま〜す』
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/07(水) 22:58:00.04 ID:jpSfOKX6o
 過疎っていて落ちる寸前のスレだったはずだけど、すぐに反応があり、あれよあれよと言う間に数レスがついた。

『待ってたよ』
『需要なんてあるに決まってんだろ』
『はようp!』
『これは期待』

 そういうスレの反応に勇気付けられたあたしは、前にこういうスレのレスで覚えたとおりの方法でに自分の画像をうPした。

『貧相な体で恥かしいです(絵文字)ぬるい目で見てやってね』
 あたしはそのレスに画像のURLを貼った。次に更新した瞬間、あたしへの、あるいはあたしの体への賞賛レスが数えきれないほどあたしの目に入った。

 それはあたしの貼った画像への、と言うかあたしの体への賞賛のレスだった。


『ふつくしい』
『華奢できれいな体だね。thx』
『この体を抱ける男がうらやましい』
『処女? だよね』
『お付き合いしてください』
『もっと見せてよ。ブラとか邪魔』


また、あたし個人への興味を持った人たちから、あたしの素性を質問するレスもあり、あたしに雑談的な質問をしているレスも複数あった。


『彼氏いるの? マジで』
『6大学の大学生だけど年上はダメ?』
『メル友からどうですか?]』
『マジ綺麗だなあ。詳細スペックお願い』


 正直言うとあたしはそれらの反応に有頂天になっていた。学校でも家でも話しかけられないあたしを賞賛し質問するレスの数々。ようやくあたしは人の話しを聞かされる側ではなく、人にあれこれ質問され詮索される側に来たのだ。そして、ぼっちのあたしに興味を持つ人たちが、ここにはこんなにいっぱいいるのだ。これがあたしが女神行為にのめり込んだ最初のきっかけだった。
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/07(水) 23:01:39.09 ID:jpSfOKX6o
 そこから先は早かった。いつの間にかあたしは自分でスレを立てるようになり、際どい下着姿の自分をスレにいる人たちに見せるようになった。最初の頃にはわずかに感じていた心理的な抵抗も。その頃には払拭されていた。

 ただ、際どさに比例して賞賛のレスが増えるわけではないということに、あたしはやがて気づいた。ただ女性の裸身を見たいというならもっと手軽な方法があるはずだった。それなのにわざわざ雑談板にそういうことを期待しているということには理由があるのだろう。自分へのレスを見ているうちにあたしには少しこういうスレを鑑賞する人たちの心理を考えるようになった。

 おそらく彼らはアイドルの画像や漫画雑誌のグラビアや、もっと言えばAV女優の裸身を見るだけでは満足しないのだろう。彼らが求めているのは普通の女の子が、ここでだけは限定的にあられもない姿を晒しているというギャップに萌えているのだと、あたしは気がついた。




 昼にはぼっちの女子高生。夜には自分の身体をスレで晒すjk1。そういう生活を続けられたのは、普段両親が不在だからだった。そして、やがてVIPのスレでの賞賛レスでは満足できなくなったあたしが、次に見つけた板が『女神板』だった。




 女神板は、女神行為に特化した板であり、そこにあるスレはほとんどが女性が自分の裸身や下着姿を晒すためのスレだった。ここは18禁の板ということもあり、結構ショッキングな画像に遭遇することもあるはずだけど、基本は貼られた画像は一瞬で削除されるため、たまたまそこに居合わせた人たちだけが女神の裸身を鑑賞することができるのだ。あたしが最初に女神板をROM始めた頃は、女神板のスレに貼られた画像は、即座に削除されていたため、ひとつも見ることができなかった。それでもレスの応酬から女神板に興味を持ったあたしは、この板のスレをかたっぱしから追い始めた。そんなことをしているうちに、初めてリアルタイムで女神が光臨(とこのスレの人たちは女神が画像を貼ることをそう呼んでいた)するとことに遭遇したのだ。
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/07(水) 23:04:29.01 ID:jpSfOKX6o
 女子大生だというその人は、 『【貧乳女神も】華奢でスレンダーな女神がうpしてくれるスレ【大歓迎】』 というスレに淡々とレス、し自分の裸体を晒していった。それは下着姿とか制服とかというレベルではなく完全に一糸纏わぬヌード写真だった。そればかりか最後にM字に開脚した白い下半身の中心には、このスレでは禁止されているはずの性器そのものが鮮明に写しだされていた。でも、そのローカルルール違反に突っ込むレスは一つもなく、付いたレスにはその大学生への賞賛と少し経って画像が削除された後の『即デリ死ね』という悔しまぐれのレスが続いたのだった。

 さすがに性器のうPに遭遇したあたしは驚いたけれども、その後に続いたその女子大生とスレの住民とのやりとりにはもっと驚いた。VIPでの楽しみは基本は名無し同士のやりとりだったけど、このスレの住民はこの女子大生をユリカという名前で呼びかけたいた。そうしてよくその女性のレスを見ると、その人はユリカという固定ハンドルを名乗っていたのだ。学校でも家でも寂しい想いをしていたあたしには、それはすごく楽しそうなやりとりに思えた。匿名ではなくユリカというコテハンに向かってレスする人たち。それはアイドルのファンそのものでもあり、アイドル以上に女神とそのファンの人との距離が近かったのだ。知り合いというより友人同士のようなそのやりとりに、その当時のあたしは渇望に近い憧れを感じた。

 やがて「ユリカ」は彼氏にに呼び出されたかっら今日はおしまい、じゃあ言ってきますとあっさりとこのスレからレスして消えて行った。
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/07(水) 23:05:05.04 ID:jpSfOKX6o
短いですけど今日は以上です


おやすみなさい
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/07(水) 23:07:59.57 ID:Idi+ETTFo
女神板がどういう所かは分かった
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/08(木) 07:17:11.43 ID:hH7c5abWo
女神なんて基本病んでいる人か良くて構ってちゃんしかおらんからね
群がる住人も気持ち悪い奴等ばかりだし
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/08(木) 11:38:20.42 ID:hpyB3tcSO
ここからどうして兄に興味を持つようになったのか
期待
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/08(木) 22:58:54.24 ID:W3LbWl8+o
 それからあたしが女神板のスレで女神として画像を貼るようになるまで、そんなに時間はかからなかった。性器を晒した女子大生には驚かされたけど、よく女神板のスレを見てみるとVIPとさほど変らない程度の画像もアップされているらしいことにあたしは気がついた。もちろん画像そのものを見ることができたのは数えるほどだったけど、光臨後のレスを読むとその女神がどの程度まで体を晒していたのかはだいたい察しがついた。

 この程度なら大丈夫だろう。あたしはある夜ついに女神板のスレで女神行為をすることに決めた。どういう姿でどういうポーズを撮るとか考えるより先に、あたしは自分もトリップを付けてみようと思い立った。あたしの脳裏には、スレの住民と知り合いみたいに親しげにレスを重ねあっていたユリカさんのことが浮かんでいた。その時感じたうらやましいという感情を持て余しながら検索してみると、トリップの付け方自体は非常に簡単だった。あたしは、『【貧乳女神も】華奢でスレンダーな女神がうpしてくれるスレ【大歓迎】』を開いた。とりあえず最初はここにしよう。他のスレもいろいろあったのだけれど、巨乳とか豊満とかが謳われているスレが多く、あれだけVIPでほめられても、なお、自分の体に自信が持てないあたしにはちょうどいいスレに思えたのだ。あたしは、名前欄に入力を始めた。コテハンだけは『モモ』にしようと何となく決めていた。別に深い意味はなかったのだけれど。



『モモ#女神onnna』
 そして本文。18禁の板だということは知っていたので、高校を卒業したばかりの大学生という設定にしようとあたしは考えていた。

『18歳のJD1ですけど需要あります?』
そう書き込むと名前欄にはあたしの初めてのコテトリが表示されていた。

モモ◆ihoZdFEQao『18歳のJD1ですけど需要あります?』
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/08(木) 23:01:18.40 ID:W3LbWl8+o
 ところががっかりしたことに、その後何度更新してもレスがつかなかった。こんなことは初めてだった。意気込んで、覚悟を決めて女神板に乗り込んできたあたしは肩透かしを食らったように感じた。VIPみたいに勢いのある板ではないことは承知していたけど、これでは料理板の自炊スレと変らない。あたしはがっかりしたけど、レスがつくまでの間に数枚の写真を撮影しておこうと考え付いた。女子大生なのだから高校の制服はまずい。あまりお洒落ではなくて日常的な生活臭のする服装をしようと、あたしは考えた。その方が最終的に下着姿や素肌を晒した時のインパクトが大きいだろう。半分部屋着のようなラフな格好に着替えたあたしは、姿見の前に立ってスマホを使って撮影を始めた。服を着て立っている画像(この時はまだ、後に多用することになるフォトショの使い方さえ知らなかったので、顔は初めから構図の外に外していた)、同じポーズで上半身はブラのみの画像。そして最後にブラとパンツだけの画像。

 考えてみればスカートを捲くったりブラウスのボタンを少し外して肌をチラ見せするところまではしたことはあるけど、下着だけでの全身をうPするのは初めてだった。女神板なんだからこれくらいはしないと相手にされないかもしれないと、あたしは考えたのだ。
あたしは撮影を終えると、そのままスマホに保存した画像をいつも使っていたロダにアップした。

 ここまで30分というところだろうか。撮影とロダへのアップロードを終えたあたしは、再び『【貧乳女神も】華奢でスレンダーな女神がうpしてくれるスレ【大歓迎】を更新すると、驚いたことに10以上のレスがついていた。


『需要あるよ』
『18歳?若いなあ。期待してるぞ』
『モモちゃんか。可愛い名前だな』
『・・・・・・まだかよー』
『モモどこ行っちゃったんだ』
『いくらなんでも焦らしすぎだろ』
『釣りだろ。最初からうPする気ねえんじゃねえの』
『おーいモモ。どこ行った?』
『逃げたのか』
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/08(木) 23:05:05.42 ID:W3LbWl8+o
 あたしのことをモモと呼びかているレスを見た時、あたしは密かに興奮した。名無しではなく、ついに固有の名前で呼びかけられたのだ。しかもこれだけの人たちがあたしの登場を待っている。ROMは少なくともレスする人の数十倍はいるだろうから、そう考えると100人以上の人があたしにうPに期待しているのだ。それでもレス数はVIPの女神スレに比べれば少ないもいいところだったけど、VIPと異なりコテハンが叩かれないというだけでも、あたしには有難かった。あたしはここでついに名前を得たのだった。

 それにしてもこれ以上引っ張ることはないだろう。もったいぶるほどの体ではないし、これ以上待たせてスレが荒れるのも本意ではなかった。あたしはあらかじめうPしていたロダのURLをレス欄に書き込んだ。


モモ◆ihoZdFEQao『うPに手間取っちゃってごめんなさい』
 あたしは画像を貼ると、すぐにスレを更新してみた。驚いたことにVIPと変らない勢いでレスがついていた。


『おお〜いいね』
『体細くて真っ白だなあ。本当に大学生?』
『モモ華奢で可愛いな』
『モモって大学でもてるでしょ?』
『部屋着?なのになんつうかお洒落だよね』
『次はその服を脱いでみよう』


 期待していたとおりのレスだった。あたしは次に上半身が下着のみになった画像をうPした。
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/08(木) 23:08:48.27 ID:W3LbWl8+o
モモ◆ihoZdFEQao『貧相な胸で恥かしいです。叩かないでくださいね』
 スレを更新した瞬間、前のうP以上の数のレスが表示された。



『バカにするわけねえだろ。貧乳は正義だ。もみもみしたい』
『しゃぶりつきたいです』
『モモちゃんを押し倒して無理やりそのブラを脱がせてぇえええええ』
『綺麗な肌だなあ。モモって彼氏いるの?』
『モモのこと抱きたい。割とマジで』
『彼氏がうらやましいな』
『もちろんまだまだうPしてくれるんだよね?』
『処女なのか? 処女なんだな!?』
『そんなわけねえだろ・・・・・・ねえだろ』



 付いたレスを読んでいると、今まで感じたことがなかった奇妙な興奮が体の中から湧き上がってきた。それはこれまでうPしてきたVIPのスレで、ちやほやされた時には感じたことのない感覚だった。それは体の中心がムズムズと熱くなる感じで、あたしは我慢できずに思わず両足を擦り付けるように動かして、その感覚を誤魔化そうとしていたようだった。



モモ◆ihoZdFEQao『彼氏はいません。ちなみに処女です。じゃあ、最後の画像です。本当に貧相で恥かしいけど』
 あたしはさっき撮影した最後の画像のURLをレス欄にコピペした。それは今のあたしが晒せる精一杯の姿だった。ブラとパンツだけの画像。



『・・・・・・何ていうかさ』
『すばらしい。すばらしいけど・・・・・・』
『何かちょっと痛々しいっていうか。モモって本当に大学生?』
『おまいら何本気になってるんだよ。ふつくしいものはふつくしいでいいだろ』
『そうだそうだ。モモGJ!』
『モモって何かロリ可愛いよな。中学生といっても十分通用するレベル』
『俺、今日までロリ属性ないって思ってたんだけどさ・・・・・・モモの体を見ているとなんつうか』
『モモちゃん彼氏いないのかあ。つうか・・・・・・処女か』
『この肢体がまだ未経験で男に蹂躙されていないと思うと・・・・・・ゴク』
『モモちゃん次の画像はよ』
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/08(木) 23:12:12.63 ID:W3LbWl8+o
モモ◆ihoZdFEQao『構ってくれてありがとう。明日早いので今日はもう寝ます。もうちょっとしたら画像は削除します。みんな、愛してるよ〜』
 最初だし撮り溜めていた画像ももうなくなったことだし、あたしは女神板デビューを早々に終らせることにした。期待していた以上の手ごたえと奇妙な興奮を覚えながら。

 更新すると、再びレスが追いつけないほど付いていた。



『俺も愛してるぞ。モモ、またな』
『またね〜』
『お休みモモ。いい夢見ろよ』
『モモちゃんGJ!またうPしてね』
『待ってるからな。絶対また来いよ』
『何だもう終わりかよ』
『間に合った。これだから貧乳スレはあなどれん』
『画像に間に合ってよかった。モモまたね』
『下着までかよ』
『下着姿でもいいからまたうPしてね』



 半ば叩かれることを覚悟して始めた女神板での初うPだけど、あたしは十分スレの反応に満足だった。ただ、大学生であることを疑うようなレスもついていて、あたしは少しうろたえた。そしてそれよりもあたしのことを気にしてくれているいるレスがあったことが、あたしのその狼狽を打ち消してくれた。目に見えず、ディスプレイの向こう側にいる男の人たちの賞賛のレスに、あたしの体は正直に反応してしまっていたようだった。その晩、あたしはベッドに入ってからも、スマホの画面でこのスレを更新していた。驚いたことに、画像を削除してしまってもなお、更新するたびに数レスづつあたしのことを、モモのことを賞賛するレスが付いていたのだ。

 こんなことをしていたせいで、あたしは翌朝、完全に寝不足の状態で遅刻寸前に母親に起こされたのだ。
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/08(木) 23:13:05.66 ID:W3LbWl8+o
短いけど本日の投下はここまでです

明日は飲み会につき休載予定です

また週末に再開します

おやすみなさい
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/09(金) 01:01:53.32 ID:G7CqKx9i0
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/09(金) 18:21:12.48 ID:pL/uMmnYo
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/10(土) 23:05:52.60 ID:W3+rXRWto
これがあたしの女神板デビューだった。その時から高校2年生の現在に至るまで、あたしは女神行為を続けてきた。自分の肌を人目に晒すことへのドキドキした性的快感に近いあの感情は、女神行為を繰り返しているうちにいつの間にか消えてしまっていた。女神行為に慣れてくるとあたしはこの作業にに習熟し、熟練の職人のように一連の工程をこなすようになっていた。撮影、フォトショップで画像加工(主に顔がわからなくする処理だった)、リサイズ、アップロード。そして、スレに常駐する住人に媚びたレスをして画像を貼り付ける。女神行為に際して性的な面で感覚を揺るがされることはなくなっていたけれども、画像を見た人たちに賞賛され親しく話しかけられることに対する快感は少しも減ることはなかった。もちろん、それすらなくなっていたら何のために肌を晒しているのかという話になる。他人に認められたいという欲求、そしてあたしを認めてくれる人たちと親しくなりたい欲求は、女神となって画像を投下するとその瞬間は満たされる。でも、パソコンの前を一歩でも離れ、スレとは関係のないリアルなあたしに戻ると、当然ながら学校でも家庭でも一人ぼっちなあたしがそこにいるだけだった。やがてあたしは、他人に自分を認めて貰いたいという欲求から、家の外にいる時でも常にスマホで2ちゃんねるを覗くようになった。つまり典型的な構ってちゃんになったのだったけど、それでも女神雑談所のスレにあたしのコテトリで書き込めば、うpがなくてもたいていの場合、モモを知っている人がレスしてくれあたしの相手をしてくれた。
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/10(土) 23:09:33.66 ID:W3+rXRWto
 朝は、家で2ちゃんねるなんて見ていたらお母さんに不審がられることは明らかだった。それで、あたしは早目に家を出て最寄の駅のホームで電車をやり過ごしながら、ベンチに座りこんで自分のスマホを使い前の晩の女神行為に後に付いたレスをチェックしたり、常駐しているいろいろなスレにレスしたりするようになった。そんなことに夢中になっていると時間はすぐに過ぎてしまい、あたしは遅刻寸前で学校に間に合うぎりぎりの電車に乗って登校するようになった。入学以来ただでさえクラスの中で浮いていたあたしは、遅刻ぎりぎりに教室に駆け込むようになると、今まで以上にクラスメイトに距離置かれるようになった。

 こうして、典型的なぼっちの高校生活を送っていたあたしにも初めてリアルで気になる男の子ができた。そんな感情を抱くのは中学の頃少し付き合った彼氏以来始めてのことだった。


 それは2年生に進学した4月のある日のことだった。あたしはいつものようにベンチに座ってスレを眺めていた。昨日遅く女神行為をした緊縛スレのその後の反応を見ようかと思ったのだ。モモに語りかけるレスがそれなりにあれば、うpは出来ないけどコテトリを付けて雑談してもいいかなとあたしはその時考えた。ところが、昨晩は結構際どい画像を貼ったにも関らずスレはあまり盛り上がっていないようだった。光臨中はそれなりにレスが付いていたのだけど、画像をデリった瞬間から全くあたしへの賞賛レスが付かなくなってしまっていたのだ。
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/10(土) 23:12:36.68 ID:W3+rXRWto
 ・・・・・・今朝はつまらないな。あたしはぼんやりと考えた。今朝は誰もあたしを構ってくれない。女神以外で常駐している自炊スレはもともと過疎っていることもあり、三日前から新しいレスはついていない。VIPの方もスレ一覧をざっと見たけど、興味を惹かれるようなスレは見当たらなかった。まあ、こういう時もある。あたしはスマホをしまってぼんやりと朝の通勤通学客で混みあうホームを眺めていた。その時、電車がホームに滑り込んできて、乗客たちが一斉に電車のドアの方に群がっていった。混んではいたけど、あたしが普段飛び乗っているぎりぎりの時間の電車よりは空いていた。今日はもうこの電車に乗って学校に行ってしまおう。あたしはそう思ってベンチから立ち上がった。その時、同じ学校の制服を着た男女が三人が、あたしと同じドアの前に並んで乗車する順番を待っていることに気がついた。

 それが兄との出会いだった。
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/10(土) 23:15:58.75 ID:W3+rXRWto
 兄君と二人の女の子のうちの一人、幼馴染さんのことは同じクラスだったので顔を見たことはあった。幼馴染さんは綺麗な子でよく男の子に見つめられたり告白されたりしていた。もう一人の顔を知らない女の子は1年生を表す色の徽章を付けていたけど、混んだ電車の中で彼らの話を聞くともなく聞いていると、その1年生の女の子は先輩のはずの兄君と幼馴染さんに全く遠慮したり気後れしたりする様子がなく、気軽そうにタメ口で兄君と幼馴染さんに対して楽しそうに何かを話かけていた。兄君と幼馴染さんもその子のタメ口を気にする様子もなく笑顔で返事をしているようだった。この子も凄く可愛らしかった。あたしが入り浸っているVIPとかで彼女が女神として光臨したら、以前見かけた女子中学生のようにお祭り状態になったに違いない。幼さを残したその子はそれくらい可愛らしかった。

 それにしても彼らはどういう関係なのだろう。これまでリアルな人間関係に興味がなかったはずのあたしは、その時珍しくその3人に関心を覚えた。たまたま今日がそうだっただけなのかもしれないけど、男一人と女二人という組み合わせにも何か意味深な感じがする。電車が駅を離れ速度をあげると、電車の中の人混みに押されたあたしはドアの近くから電車の中ほどまで押し出された。何とか吊り輪に掴まり体勢を整えた時、あたしは期せずしてこの三人組の至近距離に来ていることに気がついた。あたしのように吊り輪を確保できなかった彼らは電車の振動に耐えながら、賑かに話を続けていた。その時、突然電車が急停止した。
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/10(土) 23:17:52.76 ID:W3+rXRWto
 電車の揺れに体勢を崩して倒れ掛かった1年生の女の子は、とっさに兄君の体に抱きついて転倒を回避したようだった。兄君も慣れた様子でその女の子の体を抱き取るように抱えて支えた。一方、幼馴染さんも転倒しかかって隣の中年の男性にもたれかかり辛うじて転倒を回避した後、礼儀正しくその男性に謝罪していた。

 やがて電車が静かに運行を再開しても、1年生の女の子は兄君の腕に抱きついた手を離そうとはしなかった。むしろ、自分の体を兄君に押し付けるようにしながら上目遣いに兄君に話しかけた。兄君もさりげなくその子の体に手を廻して彼女を支えていた。彼らとの距離が近かったせいで、今ではあたしにも兄君たちの会話が耳に入ってきた。
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/10(土) 23:21:33.09 ID:W3+rXRWto
「ごめん」
 1年生の女の子が兄君のことを、上目遣いに甘えるように見上げながら謝った。

「転んじゃうかと思ったよ」

「今日はいつもより混んでるな。幼馴染も大丈夫だったか」
 兄君が幼馴染さんの方を向いて言った。

「あたしは平気」
 幼馴染さんはそう答えた。その時一瞬、彼女の視線は兄君に抱き付いている女の子に向けられた。そして彼女はすぐに1年生の女の子から目を外して言った。「妹ちゃんも大丈夫だった?」

「へーきだよ」
 その子は微笑んで答えた。「お兄ちゃんが支えてくれたし」

 それがさも大切な物であるかのようにしっかりと兄君の腕を抱えながらその子は言った。それではこの1年生の女の子は兄君の妹なのか。

「支えたっつうかおまえが勝手にしがみついてきたんだろうが」
 兄君は妹さんをからかうように、そして優しく甘やかすような声で言った。

「だってお兄ちゃんに捕まらなきゃ転んじゃうじゃん。あたしが転んでもお兄ちゃんはいいの?」
 妹さんは兄君に抱きついたまま甘えたような、拗ねたような口調で相変わらず上目遣いで答えた。

「そんなこと言ってねえだろ」
 兄君は少しうろたえたように言った。

「・・・・・・相変わらず朝からラブラブだねえ」
 そんな兄妹を慈しむように見ながら幼馴染さんが話に割り込んだ。

「そういう痴話げんかはあたしのいないところで二人きりでやってよ」

「お姉ちゃん、何言ってるの・・・・・・あたしはこんなやつのことなんて何とも」
 妹さんが真っ赤になって反論した。

「はいはい。ごめんね、からかって」
 幼馴染さんは微笑んだけど、あたしにはそれは心からの微笑のようには見えなかった。

 どういうわけか、幼馴染さんと妹さんが微妙そうなやりとりを始めた途端に、兄君は黙ってしまい二人の女の子から視線まで逸らしてしまった。

 やがて電車が学校の最寄り駅に着くと、彼らは話を中断して電車を降りていった。あたしも人混みをかき分けて電車から降りながらも、この奇妙な三人組のことを考えていた。特に、どういうわけか二人の可愛い女の子に気軽に話しかけれているのに、何か微妙に困ったような表情を浮かべていた兄君のことが気になっていたようだった。その時にはまだ、あたしにもそれがどういう心の動きなのかわからなかったのだけれども。
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/10(土) 23:22:21.24 ID:W3+rXRWto
本日は以上です

また明日投下予定です

おやすみなさい
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 00:53:07.21 ID:uUP4G8ymo
乙です
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 02:02:36.81 ID:gkpxHLVSO
今まで全然気付かなかったけど兄ってシスコンっぽいな

今まで全然気付かなかったけど
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/11(日) 15:09:10.74 ID:i8xX8xVso
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/03/11(日) 23:29:10.62 ID:HtiSRdAzo
今日はお休みかな?
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/11(日) 23:43:43.45 ID:YvjX1BvJo
 今まで周囲の人間関係には全く興味がなかったあたしだったけど、その三人のことはなぜか気になった。単なる仲良しの男女ではないのだろう。仲は良いかもしれないけど、この三人の間にはもっと微妙で重たい空気が流れている感じがした。妹さんの兄君への愛。一見、幼馴染さんはそれを微笑んで見守っているようだけど、時折見せる妹さんへの視線や兄君に向けられた熱を帯びた視線。そして、兄君も妹を大切にしていることは間違いないのだろうけど、時々彼が幼馴染さんをチラッと見る視線は何か意味ありげだった。

 それにしても何でこんなにこの人たちが気になるのだろう。

 確かにあたしとは違ってこの人たちはリア充だ。毎朝、楽しそうに話しながら登校する男女三人組。でもそれだけで、あたしがこんなにこの三人の人間関係に興味を持つわけがなかった。それに学校にはカップルも含めてリアルな高校生活を楽しんでいる人たちは多くいたけど、あたしはこれまでそういう人たちに関心を抱いたことはなかったのだ。

 あたしには自分のいる場所があった。ネット上の居場所だけど、それは世界のどこかのディスプレイの前に座っている人たちと繋がっている。だから、あたしは学校のリア充の人たちをうらやむことはなかったし、関心や興味を抱くこともなかったのだ。でも今朝は違った。あたしは疑いようがなくこの三人のことが気になっていた。あたしは、彼らの後を離れずに学校までついて行った。普段なら昨晩投下した女神スレのレスが気になり、数十分おきに確認するのだけれど、今朝はスマホを取り出すことすらしなかった。2年生の校舎棟の前で、妹さんは二人と別れて1年生の校舎の方に行ってしまった。兄君と幼馴染さんは教室の方にゆっくりと向かったけど、もう妹さんが一緒にいる時のように賑やかに話をしたりはしなかった。教室に入ると(当然ながら二人はあたしと同じクラスなのであたしと同じ教室だった)、幼馴染さんはおはようってあいさつしながら友だちの方に行ってしまった。
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/11(日) 23:47:13.62 ID:YvjX1BvJo
 それからしばらくあたしは兄君たちを観察していた。それがどういう動機によるものなのかはわからなかったけど、気になってしまったものは仕方がない。兄君の席はあたしと近い場所だったので、兄君の動静はよくわかった。兄君と仲の良い男の友だちは兄友君。クラス、いや学年全体でも女の子に人気のあるイケメンで、しかも成績も良かった。そして、夏ごろまでは登校中に見かける時はいつも兄君と妹さんと幼馴染さんと三人だったけれども、夏休みが終って最初の登校日に自宅の最寄り駅で久し振りに見かけたのは兄君と妹さん二人きりの姿だった。

 この頃になるとあたしはこの三人の事情が、彼らの会話の断片を通じて何となく理解できていた。兄君と妹さんは幼馴染さんの近所に住んでいて、三人は小さい頃からの知り合いらしいかった。それを知ったときあたしの心の中には、意味不明で自分でもよくわからない羨望じみた感想が脳裏に浮かんだ。多くの人に自分を認めてもらいたいという欲求は、この三人には薄いのだろうなとあたしは考えた。小さい頃から自分のことを知り尽くしている人との関係を周囲に保ちながら生きてきたこの人たちには、誰か他人に自分を知ってもらい構ってもらいたいというある意味嫌らしい欲求はないのだろう。それはネット上で構ってちゃんであるあたしとは、真逆の境遇だった。あたしはそう考えた時、心底この三人のことをうらやんだ。きっと、そういうぎらぎらと自分を主張しないでも生きていけるこういう人たちの雰囲気に、あたしは惹かれたのだろう。ようやくあたしは自分が兄君たちに興味を持ち憧れた理由を理解したのかもしれなかった。
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/11(日) 23:49:05.30 ID:YvjX1BvJo
 夏休みの最初の登校日に兄君と妹さんが二人だけで駅に姿を現したのを見たあたしは、スマホをしまって二人の後を追い、いつもより早い電車に乗った。つり革に掴まった兄君の腕にしがみついて電車の揺れをやり過ごしていた妹さんは、兄君を見上げて何かをささやいていた。いつも一緒にいた幼馴染さんがいないせいか、いつもより兄君と妹さんが親密な関係に見えて関係のないあたしまで少しどきっとした。何で幼馴染さんは今日はいないんだろうな。あたしはぼんやりと考えた。病気とかなんだろうか。でも、あたしのその疑問は次の駅で早々に解決した。

「おはよ妹ちゃん」
 幼馴染さんは隣の駅から電車に乗ってきた。ただ、彼女は一人ではなく男の子と一緒だった。

「おはようお姉ちゃん。兄友さんもおはようございます」
 妹ちゃんが相変わらず兄君の腕を抱えたままであいさつした。

「よう兄友」
 兄君が兄友君に声をかけた。なぜかわからないけど、兄君は幼馴染さんには声をかけなかった。

「おす兄、妹ちゃんもおはよう」
 兄友君は幼馴染さんと寄り添うようにして、兄君たちの近くに寄って来た。そう言えばこれまでのこの二人の関係からは不自然なことに、幼馴染さんも兄君にあいさつしていなかった。そればかりか兄君の方を見ようともしていないようだった。
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/11(日) 23:56:00.91 ID:YvjX1BvJo
「お姉ちゃん、あたらしいおうちどう?」
 妹さんが幼馴染さんに話しかけた。

「うん。前の家よりだいぶ広いよ。妹ちゃんも今度遊びにおいでよ」
 幼馴染さんが妹さんに答えた。一方、兄君は兄友君とサッカーのワールドカップの予選の話をし始めている。これまであたしが見てきた三人組は、四人組というか二人+二人のような感じになってしまっていた。

 どうやら幼馴染さんは引っ越したらしかった。それも最寄り駅が兄友君と同じ地域に。それで、今日からは三人組が四人組になったのだろう。久し振りの新しい展開に興奮したあたしは、もう女神板のスレのことはすっかり忘れてこの四人のことを観察し始めた。幸いなことに彼らの話し声を聞き取れるくらいの近距離の場所をあたしは電車内で確保していたのだ。




 妹さんと兄友君のことはすごくわかりやすかった。会話が男女別々になった後でも、妹さんは時々兄君に話を振ったりして、兄君にも会話に加わってほしい様子を隠さなかった。同様に兄友君も兄君との話の合間に幼馴染さんを見つめたり、幼馴染さんと妹さんの会話に加わろうとしたりしていた。兄友君はきっと幼馴染さんのことが好きなのだろう。それは初めて見たあたしでもすぐ理解できるくらいわかりやすい行動だった。普通片想いの感情というのは隠したいものだろうと思うけど、イケメンの兄友君は幼馴染さんへの好意を全く隠そうとはしていないようだった。きっと女性関係で辛い思いをしたり恥をかいたりしたことがないのだろうとあたしは思った。

 この二人とは対照的に、兄君と幼馴染さんの態度はぎこちなく不器用だった。兄君は兄友君にしか話しかけないし、幼馴染さんも妹さんの方しか見ようとしない。兄君は妹さんから話を振られると妹さんの方だけを見て短く返事をする。幼馴染さんは兄友君の質問に笑顔で答えていたけど、やはり兄友君の隣に立ってつり革にぶらさがっている兄君のことを見ようともしなかった。

 妹さんは兄君のことを実の兄であることにこだわらず、異性として好意を持っているようだった。兄友君は、イケメンで成績の良い自分にふさわしい相手としてクラスでも人気の高い美少女、幼馴染さんに目をつけたようだった。では、兄君と幼馴染さんは誰が好きなのだろう?

 幼馴染さんの不器用な振る舞いは、幼馴染さんが実は兄君のことが気になっているのではないかいうことを疑わせるに十分なものだった。兄友君の気持を知ってか知らないのか、兄友君と二人きりで寄り添って電車に乗ってきたことは少しひっかかるけれども。兄君は幼馴染さんのことが好きなのだろうか。時々そっと幼馴染さんを見つめる兄君の視線から判断するに、それは間違っていないと思う。それではなぜ好きあっているはずの二人が、お互いを無視しあっているのだろう。妹さんと兄友君への遠慮なのだろうか。

 この辺であたしには四人の関係が再び整理できなくなってきていた。まあ、いい。時間をかけて観察すれば彼らのことを理解できる日も来るだろう。それにしてもあたしはいったい何をしているのだろう。ふとあたしは考えた。ぼっちなりにネットの世界にはまっているならまだ筋も通っているのだけれど、あたしはいったい何でクラスメートの秘め事をこそこそ探るようなことをしているのだろうか。あたしにはこの時にはまだ自分の本当の心の動きが理解できていなかったのだ。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/11(日) 23:57:10.94 ID:YvjX1BvJo
短くてすいません。今日は以上です

おやすみなさい
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/12(月) 00:09:01.55 ID:WkVBnqtVo
おつ

329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 09:34:59.32 ID:SvwZip5IO
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/12(月) 10:53:22.98 ID:cB36vZUYo
みんくちゃんねる好きの俺にはたまらない
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/12(月) 21:39:32.02 ID:NWR20T8Mo
 その放課後、お母さんからメールで買い物を頼まれたあたしは、帰宅途中でスーパーで買い物をしていた。あたしはお母さんのメールに書いてあった干物や豚肉や野菜のたぐいを吟味し、合格になった品物をカートのかごに入れていった。ネットにどっぷり浸かりきっていたあたしだけど
、料理とか買い物は苦手ではなかった。そういう意味ではあたしは生活力のあるぼっちと言えただろう。こういうことにはすべからくコツがある。それを押さえてしまえば別に難しいことは何もなかった。品物の選び方。かごの中への品物の置き方。買物をする順序。慣れてしまえば半ば無意識にでもできることだった。女神行為に必要な一連の工程と一緒で、わかってしまえばどうということはない。あたしは手早く買いたい物を一通り揃えると混んでいるレジに並んだ。

 しばらく待たされて、ようやくあたしの順番が来ると、これもネットに没頭していない時の無聊を慰めるための自己防衛なのだと思うけど、退屈を紛らわせるためのいつものゲームを頭の中で始めた。今日はおそらく5千円くらいに違いない。あたしはかごの中の買物を一通り眺めると、一瞬で金額を決めてレジの結果を待った。
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/12(月) 21:41:51.82 ID:NWR20T8Mo
「三千二百円のお買い上げになります」
 レジの店員が言った。今日はあたしの負けだった。自分で決めていた勝利条件は正しい清算金額のプラスマイナス500円以内だったから、2千円近く予想を外してしまった今日は、あたしの大敗北と言ってもよかった。

「はい」
 あたしはその結果に少し落胆しながらバッグの中から財布を取り出そうとした。

 あれ? 財布が見当たらない。あたしは手さぐりをやめて自分のバッグの中を覗き込んだ。財布は本当に見当らない。

「お客さま?」
 不審に思ったのか、店員があたしに声をかけた。耳には聞こえてこないけど、あたしの背後で長蛇の列を作っている人たちに無言のプレッシャーにあたしは慌てた。

「ごめなさい。財布が見つからなくて」
 あたしは必死でカバンの中を探った。その時、レジの向こうからあたしに話しかけている聞き覚えのある声が聞こえた。

「おい、女」

「・・・・・・え?」
 それはここ最近あたしが気になっていた兄君だった。

「ほら、落ちてたぞ。これおまえの財布だろ」
 兄君がレジの側に立って見覚えのある財布をあたしの方に差し出していたのだ。

「あ・・・・・・」
 まさか彼とこんな時間のスーパーで会うとは思ってもいなかったあたしは、狼狽して一瞬何て答えていいのかわからなかった。そんなあたしに構わず兄君は話を続けた。

「さっき屈んで何か見てた時に落としたみたいだぞ」

「あ、あんたは」
 この時ようやくあたしは言葉を発することができた。こんなセリフが言葉だと言えるのならだけど。

「あんたはじゃねえだろ。同級生の名前くらい覚えておけよ。ほら、財布」
 兄君はあたしに財布を受け取るよう促した。あたしは手の震えを押さえながら慌ててその財布を受け取った。そしてやっとの思いで兄君にお礼を言うことができたのだった。
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/12(月) 21:43:45.24 ID:NWR20T8Mo
「・・・・・・ありがと」





「お客さま?」
 ここまで結構な時間を待たされていた店員が催促するようにあたしに向かって言った。気がつくと、あたしの後ろに並んでいる人たちの忍耐も限界のようだった。あたしは慌てて受け取ったばかりの財布の中から紙幣を一枚取り出した。

「あ、すいません。これで」

「五千円お預かりします・・・・・・ありがとうございました」
 店員がようやく清算をしたあたしに機械的に声をかけた。

「あ、あの」
 清算をすませたあたしは、きちんとお礼を言おうと兄君の方を振り返ったけど、兄君は既に身を翻そうとしていた。

「じゃあな」
 それだけ言って背を向けた兄君に対して、あたしはかろうじて兄君の名前を呼び再びお礼を言うことができた。

「・・・・・・兄君、ありがとう」
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/12(月) 21:47:55.93 ID:NWR20T8Mo
 どうしたのだろう。さっきから胸の動機が収まらない。顔も熱を帯びている感じがする。外から見ればきっと真っ赤な顔をしているのだろう。あたしはいつもように順序だてて買物を袋に入れることすらせず、何も考えず無秩序に買った品物を袋に詰め込みながら考えた。あたしが最近女神板以上に気になっていたのは、兄君たちの人間関係のはずだった。それは構ってちゃんのあたしから見てうらやましい人間関係に思えたからだった。次にあたしが気がついたのは、そんな理想的な関係に思えた彼らも実は複雑な想いを抱えているらしいということだった。だから、あたしは兄君たちを密かに見つめ観察していたのだけれど、今日実際に兄君に初めて話しかけられた今、あたしは顔を赤くし胸をどきどきさせている。これではまるであたしが兄君に恋しているみたいではないか。





 ・・・・・・恋?



 あたしは自分が思い浮かべたその単語に驚いた。恋って兄君への恋なのか。あたしは彼らの人間関係に興味を持っていたつもりがその実、単純に男の子に恋をしているだけだったのだろうか。あたしはその考えに狼狽した。これが恋心だとするとあたしにとっては中学2年以来のことになる。

 ・・・・・・仮にこれが恋だとしたらどうすればいいのだろう。ぼっちのあたしにはさりげなく自然に兄君に近づき親しくなる手段なんて持ち合わせていない。あたしは逡巡した。自分の心さえよくわかっていないのだけれど、何となくこのチャンスを逃してはいけない気がしていた。あたしは適当に詰め込んだために大きく無様に膨らんでいる買物袋を手に取って、兄君の姿を探し始めた。

 スーパーの出口のところで、あたしは兄君の姿を見つけた。兄君は手にスーパーの袋を提げて出口から出ようとしていたところだった。そして、兄君の隣には相変わらず兄君にべったりとくっ付いている妹さんの姿があった。あたしが今までに得た知識では、兄君のいるところに妹さんが一緒にいることは何の不思議もないのだけれど、どういうわけかあたしは兄君に寄り添う妹さんの姿に複雑な感情を抱いた。それは当然のことなのだろうけど、兄君に話しかけられ高揚していたあたしには、それが理不尽な罰のように感じられたのだ。それでも兄君に話しかけるにはこの瞬間しかチャンスはなかった。あたしは初めて女神板の貧乳スレに自分の裸身を晒した時よりも緊張しながら、でも努めてさりげなく聞こえるように兄君に話しかけた。
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/12(月) 21:54:16.20 ID:NWR20T8Mo
 あたしは兄君の後姿を眺め、そして少しだけためらってから勇気を振り絞って、平静な声に聞こえるよう精一杯努力して兄君に話しかけた。

「兄君」

「・・・・・・え? あ、女さん」
 兄君はあたしの方を振り返って言った。同時に妹さんがあたしの方をじっとりという単語がぴったり来るような視線で見つめてきた。

「兄君、さっきはありがと。あたし慌てちゃってちゃんとお礼言えなくて」
 あたしはとりあえず当たり障りのない言葉を口にした。それに対して兄君は少し戸惑ったようだった。

「え? さっきありがとうって言ってくれたじゃん」

「とにかくちゃんとお礼言いたくて。ありがとう、さっきはパニックだったから本当に助かったよ」
 あたしは微笑んで兄君に答えた。その微笑みはぎこちなくなかっただろうか。あたしは再び胸の動悸が高まるのを感じた。もう間違いない。兄君のことが恋愛的な意味で好きかどうかはまだわからないけど、少なくともあたしは兄君のことを意識しているんだ。

「・・・・・・よかったね」
 本当は変に思ったかもしれないけど、兄君はとりあえずあたしに話を合わせてくれた。あたしは勇気を出して言おうと考えていたことを口から出した。

「兄君ってこれまでお話したことなかったね」
 あたしは言った。

「そうだな」
 不審に思うこともなく兄君は普通に答えてくれた。
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/12(月) 21:54:51.98 ID:NWR20T8Mo
 あたしは胸の動悸のせいで今にも倒れそうなくらい緊張しながら兄君に言った。

「これからは教室で話しかけてもいいかな」

 それに対して兄君はあっさりと答えてくれた。

「ああ、当たり前じゃんか。クラスメートなんだし」

「よかった。これからはよろしくね」
 あたしは微笑んで兄君に言った。ようやく動悸が去り心の中を充実感が満ちて行くの感じた。その時視界の端でこちらを黙って見守っていた妹さんの表情がひどく歪んでいることに気がつき、あたしはどきっとした。




 ・・・・・・その夜、あたしは予定していた女神行為を中止した。それどころかパソコンの前に座ることすらせずスマホも机の上に放置して、着替えすらせずにベッドに横たわりながら兄君のことを考えていた。別に格好いい人というわけではない。容姿だけで言うならイケメンの兄友君のほうがずっと格好よかった。性格とか人間性に惹かれたのでもないだろう。そんなことを理解できるほど深く付き合ったわけではないのだし。恋は盲目と言うけど、その時のあたしはまさにそういう状態だったのかもしれない。

 あえて言えば、兄君の雰囲気に惹かれたのかしれないと、あたしは枕を抱えながら考えた。美少女で人気の高い幼馴染さんや可愛らしくお兄さんのことが大好きな妹さんに囲まれている兄君。でも、そんな恵まれた状況に置かれている兄君の態度や行動は、普通では考えられないほど淡々として自然なものだった。そういうある意味女に慣れている雰囲気にあたしは恋をしたのかもしれない。

 そう考えた時、あたしはふいに淡々としてもなく自然でもない兄君を目撃したことを思い出した。幼馴染さんのことを不自然に無視していた兄君のことを。あたしはうまく説明できない焦りのような感情を覚えた。幼馴染さん・・・・・・。彼女はあたしの恋の障害となるのかもしれない。あたしは自分の感情に素直になることに決めた。明日からはあたしなりに兄君にアプローチしよう。リアルの人間関係を拒否していたあたしがここまで決断できることにあたし自身が驚いたけど、その決心は鈍ることはなかった。あたしは目を閉じてそのまま眠についてしまおうと考えた。
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/12(月) 21:56:49.80 ID:NWR20T8Mo
今日は以上です。何だかどんどん長くなっていく気がする

明日は飲み会なので投下できるか微妙です。こんなニッチなスレを読んでいただきあろがとうございます

それではおやすみなさい
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/12(月) 23:25:18.97 ID:wuZL+VTmo
乙!
どこからどこへどう向かうのか……
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/13(火) 04:58:53.06 ID:qZdc5c/SO
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/13(火) 12:00:57.34 ID:BK4GExD0o
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/14(水) 04:05:28.98 ID:xl+HNmI0o
この心情種明かし方式、病みつきになるがもどかしいな
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 06:44:51.66 ID:k0ICoNkQo
この作者なら
冒頭から地の文だけでも行けるんじゃないのかと思う
章毎に一人称視点を変えて、キャラ達の想いの意外性やスレ違い食い違いにハラハラさせられそうだ
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 10:59:40.47 ID:LUKyqzHW0
乙。
いつも楽しみにしてる。
ところで書き方が妹もののSS、妹の手を握るまで、だったかな?
それに似ている気がするんだけど同じ作者?
違ってたらごめん。
どっちも良い作品だったから。
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 12:34:02.65 ID:tzYCi+UIO
思わず最初から読み直してしまうよな
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 13:08:02.74 ID:yXem0TWSO
>>343

もう一度最初から読んでみるといいかもよ
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/14(水) 22:23:47.97 ID:DYqHHDgwo
 翌朝、あまり眠れなかったあたしは、それでもいつもより早く家を出た。兄君にアプローチしようと決心したあたしだけど、よく考えてみると財布を拾ってもらった翌日にいきなり告白する訳にもいかない。話をするようになってすぐ告ってうまくいくような子もいるのかもしれないけど、もちろんぼっちのあたしにはそんな自信があるはずもなかった。女神として光臨中は、あたしが望みさえすればレスしてくれる人たちなら誰とでも付き合えるような気になることがある。少数派のアンチレスを除けば、スレはそれほどあたしに好意的な雰囲気なことが多かった。それでもあたしは誤解はしていなかった。その場所ではあたしは確かに人に認められたいという欲求を満たされていたし、ある意味スレのアイドルであることは間違いないけれども、それは一期一会の関係で、あたしはその瞬間だけスレの女神(アイドル)なのだった。仮にあたしが一番熱烈な求愛じみたレスをしてくれた人に、翌日にリアルで会っていきなり告白したら、間違いなく相手は狼狽してドン引きするだろう。あたしは、どんなにスレであたしの身体を見た人たちからちやほやされていても、あたしは自分がリアルでは単なるぼっちの女であることを忘れてはいなかったのだ。
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/14(水) 22:28:58.91 ID:DYqHHDgwo
 なので、兄君に対して積極的になろうと決めた翌日の朝、あたしは普段よりむしろ慎重に行動することにした。いつもの駅のいつものベンチで座って彼らを待つとか、今までのように電車の中で彼らの近くに陣取って会話を盗み聞きするとかはもう考えられなかった。昨日の朝まではあたしは彼らのグループにとってはきっと空気のような存在だったから、あたしが混んでいる電車の中で彼らに近い位置を確保することとかは容易だったけれど、昨日の夕方、あたしは兄君に話しかけたところを妹さんに見られている。更に言えば昨日あたしが勇気を振り絞って兄君に話しかけたことで、兄君も今まで関心のなかったあたしのことを少しは関心を持つようになっただろう。そんなあたしが今までのように彼らの近くで彼らを観察することなんてできるわけがなかった。それであたしは、いつものベンチではなく駅のホームの柱の影に半ば身を隠しながら、兄君と妹さんが駅に現れるのを密かに待っていた。

 やがていつもの時間になると兄君と妹さんがホームに入ってきた。別に昨日の出来事によって兄君と妹さんが不仲になったようには見えなかったけれど、いつもと違って妹さんは兄君の手を握ったり腕に抱きついたりしていなかった。普通に話をしながら並んで電車待ちの列についた二人を確認したあたしは、彼らから少し離れた隣の車両の電車待ちの列に並んだ。それはもう二人の会話を確認することはできない距離だけれども、二人の様子を覗うことくらいはできた。やがて電車が着くと二人は混み合った車内に入っていった。あたしは隣の車両に入って何とか吊り輪にぶらさがれる位置を確保すると、混み合った車内にひしめく乗客の隙間からかろうじて二人の様子を覗うことができた。

 いつもの妹さんの兄君に対する身体的接触がないことを除けば、普段と変らないように二人は話をしているようだった。話の内容はわからないけど、昨日あたしが兄君に勇気を出して話しかけたことによって、この兄妹の関係が微妙になったという感じはしなかった。あたしは、昨日妹さんがあたしの方を見ていたあの歪んだような視線を思い出したけど、結局それはあたしの思い過ごしかもしれないと、あたしは思った。

 次の駅でいつものとおり兄友君と幼馴染さんが電車に乗り込んできたため、兄妹の二人組みは再びいつもの仲良し四人組になった。声は聞き取れなかったけど、普段と変らず朝のあいさつを交わしているようだった。でもその時。兄友君が普段と違う行動を取ったのだった。
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/14(水) 22:30:46.79 ID:DYqHHDgwo
 きっかけは幼馴染さんが兄友君に何か話しかけたことだった。それを聞いた兄友君は渋っている兄君の腕を引っ張るようにして隣の車両に移動して行ってしまった。つまり男二人と女二人に別れて別々に登校する状況になったのだ。あたしは最初、兄君たちの後を追おうと考えた。あたしが関心があるのは兄君なのだからその考えは自然なものだったけど、あいにく兄君たちはあたしの乗車している車両と反対側の車両の方に移動していってしまった。彼らを追うためには妹さんと幼なじみさんのすぐ側を通り過ぎなければならない。それは昨日妹さんのじっとりとした目で見詰められているあたしにとってはリスキー過ぎる選択肢だった。あたしは兄君の後を追うことを諦めた。ただ、この四人に何が起きたのかは知りたかった。あたしは危険を冒すことに決め隣の車両に、つまり妹さんと幼馴染みさんが二人きりで残っている車両に移動することにした。

 混みあった通勤通学客の間を縫って、あたしはその二人の近くに移動した。ただ、あまり近くに寄って気がつかれる訳にもいかなかった。あたしは人込みを利用してこの二人に発見される心配がないであろうぎりぎりの距離まで近づいた。幸い二人は周囲の様子など全く気にしないで話しに熱中しているようだった。あたしは周囲の雑音の中から何とか二人の会話を拾い出して聞き入った。
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/14(水) 22:32:09.51 ID:DYqHHDgwo
「お兄ちゃんはただのクラスメートだって・・・・・・けど、その割には・・・・・・気にし過ぎてるって言うか・・・・・・」
 妹さんが幼馴染さんの方を見て何かを訴えている言葉が途切れ途切れに聞き取れた。

「何か怪しい・・・・・・こんなの初めてだし・・・・・・そうじゃないけど」
 妹さんの訴えに真剣で親身な表情を見せていた幼馴染さんが口を挟んだ。

「・・・・・・だしさ、妹ちゃんの気のせいじゃないのかな。兄って・・・・・・だし」
 幼馴染さんの話しも半分以上聞き取れなかった。

「そんなことないと思う。それは・・・・・・だけど、あたしはずっとお兄ちゃんのことは・・・・・・だから」
 妹さんが反論しているようだった。その時、幼馴染さんが妹さんに答えた言葉が、電車の走行音や周囲の人たちの発する声に邪魔されず奇跡的にあたしの耳に届いた。それはおそらく思わず幼馴染さんが感情を高ぶらせて声を大きくしたせいだと思う。
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/14(水) 22:33:46.04 ID:DYqHHDgwo
「そんなことあり得ない! 妹ちゃんの思い過ごしだって。あいつが一番気にしてるのは妹ちゃんなんだからもっと自信持ちなよ」
 声を大きくした幼馴染さんの声があたしの耳にはっきりと届いた。

「だいたい、女さんってクラスで孤立しているぼっちだよ? そんな子が積極的に兄に言い寄るはずなんてないじゃん」
 幼馴染さんは続けた。

「仮に女さんが兄に気があるとしたって、そんな友だちもいないぼっちの女なんかに兄が気を惹かれる訳ないでしょう。妹ちゃんが身近にいてこんなにも兄を慕っているのに」

 やはり話題はあたしのことだった。普段は人を差別せずどんな人とも笑顔で接している幼馴染さん。生徒会の役員でもあり、三年生の生徒会長にも一番信頼されていると言う評判の幼馴染さん。その彼女が顔を高潮させて、あたしのことをぼっちだとか、兄君があたしに気を惹かれる訳がないとか大声でまくし立てている。大概のことは気にせずに流せるようになっていたあたしだけど、さすがにここまではっきり言われると気分が落ち込んでいくのを感じた。幼馴染さんのようなリア充の美少女がそう言うのだからきっとそれは本当のことなのだろう。あたしなんかが兄君を好きになるなんて、やっぱり身の程知らずの行動だったのかもしれない。
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/14(水) 22:36:15.08 ID:DYqHHDgwo
 興奮した様子の幼馴染さんに、妹さんはやや驚いたように幼馴染さんを見詰めて言った。

「お姉ちゃん、それちょっと言い過ぎだよ。それはあたしだって女さんがお兄ちゃんに話しかけてきた時はびっくりしたけど・・・・・・でも、女さん綺麗だし、少し謎めいているというか不思議な感じだけど、お兄ちゃんは普通に女さんと話ししてたし。ぼっちとか言ったら駄目だよ」
 それを聞いても幼馴染さんの方は一向に矛を収める様子はなかった。ただ、前より少し声を低くしたので、あたしは幼馴染さんの次の声を聞き取るために耳を澄ませなければならなかった。

「あんたは昔から兄を甘やかせ過ぎだよ。あいつに浮気されてるかもしれないのに、あいつに手を握られたり頭を撫でられたりしたくらいで、いつも兄のこと許しちゃってるじゃん」

「お姉ちゃん、お兄ちゃんは女さんなんかに気を惹かれないって言ってたのに・・・・・・浮気されてるってどういうこと?」

「う、うるさいわね。とにかく学校についたら兄に説教するから。妹ちゃんは兄友と一緒に教室に行ってね」

「そういうのやめようよ・・・・・・あたし、そんなつもりでお姉ちゃんに相談したわけじゃ」

「いいから。あと今日はお弁当を兄に渡しちゃ駄目だよ。少し懲らしめないと。あいつめ、よりによってぼっちの、友だちさえいない暗い女なんかと」

 もうこの辺があたしにとって限界だった。これ以上ぼっちだとか友だちがいない暗い女とか呼ばれたら、あたしの方が登校する気力をなくしてしまう。でも、仲の良いグループに波乱を呼び起こしてしまったことに関して、あたしが少しだけ感じていた罪悪感はこの幼馴染さんの言葉ですっかり払拭されていた。ここまで言われているなら、あたしはもう遠慮することはないのだ。あたしは駅に到着した電車からいち早く降車して教室を目指した。兄君が教室に入ってきた時に、おはようと話しかけられるようにしておかなければならなかった。
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/14(水) 22:39:06.46 ID:DYqHHDgwo
今日はここまでです。明日も会社の飲み会があるので投下できないと思いますが、金曜日は代休なので週末までにはそれなりに話を進めたいと思います

>>343
このスレのどこかにレスしましたけど、妹手握はこのスレの前に投下したSSです。ご愛読ありがとうございます

ではまたお会いしましょう。おやすみなさい
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 22:52:44.75 ID:u5VdyCtko
乙!おやすみー
続き待っとる
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/15(木) 10:58:53.29 ID:U2Ezwkkl0
乙、やっぱりか。
前のも良かったし楽しみにしてる。

>>345
すまぬ、最初の方に過去作書いてたな、見逃してた……。
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/15(木) 18:03:03.97 ID:Kf4x0qJMo


いつも遅刻ギリギリってあったけど
毎日じゃなかったのか
遅刻ギリギリじゃない日は聞き耳をたててたわけだ
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/16(金) 23:40:13.03 ID:33/y7SfIo
 でも、実際にはそんなに急いで教室に行く必要はなかった。あたしが2年生の校舎に入り階段を上ろうとしたところで、兄君たちが校門のところで少し揉めていることに気づいた。やがてその揉め事は決着したようで、四人は彼らのことをよく知る人にとっては、奇妙な組み合わせに分離した。兄友君は妹さんに寄り添って一年生の校舎の方に向かって歩き出した。妹さんもしぶしぶといった様子で兄友君に着いて行く。幼馴染さんはいきなり兄君の手を引っ張るようにして、中庭の方に歩いていった。もちろん彼らの会話は距離がありすぎて一言も聞き取れなかったけど、ついさっき電車の中で、幼馴染さんと妹さんの会話を聞いていたあたしには、何が起きているのか察しがついた。幼馴染さんが兄君に「説教」とやらをしようとしているのだろう。あたしは、もう彼らのことを眺めるのをやめて教室に向かった。朝のホームルームまではもう15分くらいしか時間が残されていなかった。
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/16(金) 23:42:40.55 ID:33/y7SfIo

 あたしが自分の席について10分くらいすると、兄君が一人で教室に入ってきた。朝からひどく疲れた感じだったけど、朝っぱらから見に覚えのないことで幼馴染さんに説教されればこういう表情をしても不思議はないとあたしは思った。そして、今でこそ彼にとっては見に覚えのないことだろうけど、あたしは幼馴染さんの妄想を実際に実現させようと考えていた。兄君を好きになった理由は依然明確なものではなかったけれど、兄君を好きという自覚だけはもう疑いようがなかった。でも、この恋は結構ハードルが高い。妹さんや幼馴染さんに勝たなければいけないのだから。ぼっちでリアルではコミュ障扱いされているあたしなりに頑張らないといけない。

「兄君」
 あたしは精一杯女の子らしい声で兄君に話しかけた。こんな甘い声を出すのは高校入学以来初めてだった。というか中学時代に彼氏がいた頃でもこんな声を出したことはなかったような気がする。

「おはよう。昨日はありがとね」
 あたしは兄君に向かって微笑んだ。

「あ、女さんおはよう」
 何か考え事をしていた顔を上げて、兄君があいさつしてくれた。一瞬、悩んでいるように見えた兄君の表情が明るくなったように思えた。

「兄君、大丈夫?」
 あたしは彼らを観察して把握していたインサーダー情報を目一杯活用しようと思っていた。普通にあいさつできる知り合いから始めたのでは、妹さんや幼馴染さんにはとても敵わないだろう。

「大丈夫って何が」
 案の定、兄君はあたしの言葉に戸惑ったようだった。

「何か一日の始まりから消耗してるって感じ」

「ああ。ちょっと登校中にいろいろ会ってね」
 やっぱりそうだった。あたしはもうためらわずに次の言葉を口にした。

「幼馴染さんと喧嘩でもした?」

「いや、そんなじゃねえけど」
 兄君は少し慌てたように言った。何でこいつがそんなこと知ってるんだろうて考えているような不思議そうな兄君の表情。

「何であたしなんかがそんなこと知ってるんだよって、今考えたでしょ」
 あたしはまた微笑んで言った。

「いや。でも何でそう思ったの?」
 兄君は気を取り直してあたしに質問した。

「あたし、ぼっちだからさ。やることないし、自然とみんなのこと観察するようになっちゃってね」
 これは嘘ではない。ただ、「みんなのこと」というのは言いすぎで、兄君たちだけを観察してきたわけだけれど。

「ぼっちって・・・・・・。女って自分から一人を選んでる感じだけどな。その気になれば友だちできるだろうに」
 兄君の評価はあたしの自己評価より高いようだ。あたしはそのことに少し興奮した。兄君のあたしへの評価は自分で思っているより高いのかもしれない。
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/16(金) 23:45:19.39 ID:33/y7SfIo
 あたしは、少し踏み込んでみることにした。あたしは兄君たちの人間関係を兄君と率直に話し合えるようになりたかった。そして、できれば兄君から相談を受けてアドバイスしてあげられるような関係になりたいとあたしは考えた。それはあながち無謀な考えではない。あたしは中学の頃は人の話を聞いてあげることが得意だったのだから。兄君さえその気になってくれれば兄君のいい相談役になれる自信はあった。

「あたしのことはいいの。それよか幼馴染ちゃんって兄君のこと好きなんだね」
 そのためには隠し事なく会話ができるようにならなければならない。あたしはもう少し踏み込んだ話を始めた。

「な、何言って」
 驚いている兄君の反応は期待通りだった。兄君は幼馴染さんが兄友君のことを好きだと思っていたに違いない。だから。それなのにあたしと言葉を交わしたことくらいで激怒した幼馴染さんに、兄君も怒ったのだろう。幼馴染さんは兄君に「説教」するに当たって、間違いなく妹さんのためということを前面に押し出したはずだった。

「友達がいないっていいこともあってさ、人間関係がフラットに見えるって言うか」
 あたしはどうでもいい話でいったん間をあけた。ここからが難しかった。兄君は幼馴染さんに好意を持っているはずだった。その兄君にあたしは幼馴染さんの好意が兄君に向けられていることを口に出した。それは兄君の気持が幼馴染さんに一気に走っていってしまうかもしれないことを、承知の上でのことだった。でも、兄君と幼馴染さんがお互いの気持に気がつけば二人の恋が成就するというわけではない。この二人の間には妹さんと兄友君の想いが絡みついていて、そんなに単純に相思相愛になれないような構図が出来上がっていたのだから。

「はあ?」
 兄君は何言ってるんだ、こいつ的な目であたしを見た。あたしは構わず続けた。

「要は中立的な立場で観察するとわかることもあるってこと」
 そして、次の兄君が口に出した冒頭の言葉はあたしには嬉しい言葉だった。兄君がに人に言えないことを、あたしに話してくれるようになってくれることがあたしの第一段目の目標だったけど、それは思ったより早く成就しそうだったから。

「・・・・・・ここだけの話だけどさ」
 兄君はそう言ったのだ。 あたしは、少し踏み込んでみることにした。あたしは兄君たちの人間関係を兄君と率直に話し合えるようになりたかった。そして、できれば兄君から相談を受けてアドバイスしてあげられるような関係になりたいとあたしは考えた。それはあながち無謀な考えではない。あたしは中学の頃は人の話を聞いてあげることが得意だったのだから。兄君さえその気になってくれれば兄君のいい相談役になれる自信はあった。

「あたしのことはいいの。それよか幼馴染ちゃんって兄君のこと好きなんだね」
 そのためには隠し事なく会話ができるようにならなければならない。あたしはもう少し踏み込んだ話を始めた。

「な、何言って」
 驚いている兄君の反応は期待通りだった。兄君は幼馴染さんが兄友君のことを好きだと思っていたに違いない。だから。それなのにあたしと言葉を交わしたことくらいで激怒した幼馴染さんに、兄君も怒ったのだろう。幼馴染さんは兄君に「説教」するに当たって、間違いなく妹さんのためということを前面に押し出したはずだった。

「友達がいないっていいこともあってさ、人間関係がフラットに見えるって言うか」
 あたしはどうでもいい話でいったん間をあけた。ここからが難しかった。兄君は幼馴染さんに好意を持っているはずだった。その兄君にあたしは幼馴染さんの好意が兄君に向けられていることを口に出した。それは兄君の気持が幼馴染さんに一気に走っていってしまうかもしれないことを、承知の上でのことだった。でも、兄君と幼馴染さんがお互いの気持に気がつけば二人の恋が成就するというわけではない。この二人の間には妹さんと兄友君の想いが絡みついていて、そんなに単純に相思相愛になれないような構図が出来上がっていたのだから。

「はあ?」
 兄君は何言ってるんだ、こいつ的な目であたしを見た。あたしは構わず続けた。

「要は中立的な立場で観察するとわかることもあるってこと」
 そして、次の兄君が口に出した冒頭の言葉はあたしには嬉しい言葉だった。兄君がに人に言えないことを、あたしに話してくれるようになってくれることがあたしの第一段目の目標だったけど、それは思ったより早く成就しそうだったから。

「・・・・・・ここだけの話だけどさ」
 兄君はそう言ったのだ。
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/16(金) 23:46:36.48 ID:33/y7SfIo
「うん」
 あたしは平静にうなづいたけど、内心はここだけの話という彼の言葉に舞い上がっていた。

「幼馴染には好きな相手がいるだ」
 兄君は声をひそめてあたしに言った。ぼっちのあたしに「ここだけの話」をしてくれた兄君の態度に勇気付けられ、あたしは少し性急だけど次の段階の目標に向かうことにした。それは、兄君にあたしのことをたよりになる相談役として認識してもらうことだった。それに加えて、できればあたしのことに関心を持ってもらいたかった。なので、少しミステリアスなほど事情通であることもアピールしなければいけない。

「・・・・・・兄友君、それ違うから」
 あたしは兄君に答えた。

「え?」
 断定的に否定したあたしに、兄君は戸惑っているようだった。あたしは続けた。

「兄友君は幼馴染さんのこと好きだと思うけど、幼馴染さんの好きな人は兄君だよ」
 兄君は黙ってしまった。
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/16(金) 23:48:00.54 ID:33/y7SfIo
「・・・・・・おまえ何者なの?」
 ようやく兄君があたしを見て言った。少しはあたしのことに関心を持ったのだろうか。

「ぼっちの生徒」
 あたしは答えたけど、兄君の次の言葉はあたしへの関心から出た言葉ではなかった。

「とにかくあの二人は相思相愛なの! 余計な波風立てるな」
 やはり兄君は兄友君に遠慮していたのだ。兄君の言葉があたしへの関心からではなく、兄友君と幼馴染さんの仲を心配していることから口を出たものであることにあたしは少しがっかりしたけど、それでも兄君の気持を確認できたことは収穫だった。

「そんなことするわけないじゃん。あたしは観察してるだけだもん」

「・・・・・・何でそんなに人のことに興味あるの? 自分は人と関らないようにしてるくせに」
 ようやく兄君はあたしのことが気になったようだった。

「関らないようにはしてないよ。相手されないだけで」
 あたしは答えた。兄君が次に口にした言葉は予想外のものだった。

「嘘付け。おまえくらい可愛ければその気になれば友だちだって取り巻きだって彼氏だってできるだろう」

 ・・・・・・兄君はあたしのことを可愛いと言ったのだった。
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/16(金) 23:48:31.53 ID:33/y7SfIo
今日はここまで

また明日再開します

おやすみなさい
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/16(金) 23:57:01.01 ID:l+En92AIO
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/17(土) 01:14:56.13 ID:VtlKu7xNo
すいません。>>358の投下失敗しちゃいました

次レスと置き換えてください。興ざめですいません
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/17(土) 01:17:41.53 ID:VtlKu7xNo
 あたしは、少し踏み込んでみることにした。あたしは兄君たちの人間関係を兄君と率直に話し合えるようになりたかった。そして、できれば兄君から相談を受けてアドバイスしてあげられるような関係になりたいとあたしは考えた。それはあながち無謀な考えではない。あたしは中学の頃は人の話を聞いてあげることが得意だったのだから。兄君さえその気になってくれれば兄君のいい相談役になれる自信はあった。

「あたしのことはいいの。それよか幼馴染ちゃんって兄君のこと好きなんだね」
 そのためには隠し事なく会話ができるようにならなければならない。あたしはもう少し踏み込んだ話を始めた。

「な、何言って」
 驚いている兄君の反応は期待通りだった。兄君は幼馴染さんが兄友君のことを好きだと思っていたに違いない。だから。それなのにあたしと言葉を交わしたことくらいで激怒した幼馴染さんに、兄君も怒ったのだろう。幼馴染さんは兄君に「説教」するに当たって、間違いなく妹さんのためということを前面に押し出したはずだった。

「友達がいないっていいこともあってさ、人間関係がフラットに見えるって言うか」
 あたしはどうでもいい話でいったん間をあけた。ここからが難しかった。兄君は幼馴染さんに好意を持っているはずだった。その兄君にあたしは幼馴染さんの好意が兄君に向けられていることを口に出した。それは兄君の気持が幼馴染さんに一気に走っていってしまうかもしれないことを、承知の上でのことだった。でも、兄君と幼馴染さんがお互いの気持に気がつけば二人の恋が成就するというわけではない。この二人の間には妹さんと兄友君の想いが絡みついていて、そんなに単純に相思相愛になれないような構図が出来上がっていたのだから。

「はあ?」
 兄君は何言ってるんだ、こいつ的な目であたしを見た。あたしは構わず続けた。

「要は中立的な立場で観察するとわかることもあるってこと」
 そして、次の兄君が口に出した冒頭の言葉はあたしには嬉しい言葉だった。兄君がに人に言えないことを、あたしに話してくれるようになってくれることがあたしの第一段目の目標だったけど、それは思ったより早く成就しそうだったから。

「・・・・・・ここだけの話だけどさ」
 兄君はそう言ったのだ。
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/17(土) 01:18:13.95 ID:VtlKu7xNo
本当にごめんなさい。コピペミスです

すいませんでした
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/03/17(土) 07:37:19.03 ID:XLwnNxwEo

>>359
訛ってて吹いた
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/17(土) 09:51:32.59 ID:suEw358Eo
気にすんな!
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/17(土) 12:26:21.61 ID:bX4x/Zn0o
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/17(土) 23:18:00.67 ID:VtlKu7xNo
 こうして自分で考えていたより兄君と仲良くなれたあたしだけど、授業が始まると少し一度に話し過ぎたかなという後悔が心に浮かんできた。自分のことを兄君に認めてもらいたいという欲求に突き動かされ、自分がどれだけ事情通かわかってもらうために、あたしは何もわざわざ今朝話
さなくてもいいことをペラペラと兄君に喋ってしまった。考えてみれば、偶然兄君に財布を届けてもらったあたしにお礼を言われたくらいのことで、幼馴染さんに理不尽に責められた兄君は今日は混乱し嫌な思いをしたはずだった。その兄君に、あたしは幼馴染さんが兄友君ではなく兄君の方が好きだということを教えたのだった。それは兄君を混乱させるだけではすまないかもしれない。

 授業中、兄君は授業には一向に身の入らない様子で何かを考えこんでいるようだった。あたしが余計な情報を伝えたせいで悩んでいるのだろうけど、俯いて考えこんでいる兄君の姿は別な不安をあたしに抱かせた。やはり兄君も幼馴染さんのことが好きだったのだろうか。幼馴染さんが本当に好きな相手は兄友君ではなく自分だと聞かされて、兄君の中で今まで諦めていた幼馴染さんへの恋が再び蘇っているのだろうか。

 あれこれ悩んで授業に身が入らないのは、兄君だけではなかった。あたしもまた悩んでいるであろう兄君の心情を探ることばかりに夢中になっていて、授業には全く集中できなかった。

 そして、昼休みになった時、兄友君が兄君に話しかけた。
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/17(土) 23:19:57.27 ID:VtlKu7xNo
 兄君とあたしの席は近かかったので兄友君との会話が聞けるのではないかと期待したけれど、周囲の生徒たちが遠慮のかけらもなく大声で騒いでいるせいで、彼らの会話を聞くことはできなかった。あたしはつまらない話題に大声で興じている生徒たち恨んだけれど、そのうちに二人の会話は終ってしまい兄友君は一人で教室を出て行った。いつもなら兄君は妹さんとの待ち合わせの場所に向かうはずだった。でも兄友君との会話を終えた兄君は席についたまま、ちょっと険しい表情で何かを考えているようだった。次の瞬間、兄君が顔を上げたせいで兄君を見つめていたあたしは兄君ともろに視線を合わせてしまった。あたしは心臓が止まるかのような、体が凍りつくような感覚を覚えたけれども、それでもあたしは精一杯冷静を装って兄君に話しかけた。

「兄君」

「お、おう」
 兄君はなぜか少しうろたえたように返事をした。

「今日は妹さんと一緒にお昼食べないの」
 あたしはまず一番気になっていることを聞いた。そして、偶然今日はお母さんではなくあたしがお弁当を作ってきたこと、そしてあたしが作ると分量をよく間違えるせいで今日のお弁当は二人分近い量になっていることを思い出した。

「あいつ、今日はお弁当作らなかったみたい」
 兄君はあっさりと答えてくれた。

「じゃあ兄君、学食行くの?」
 あたしは次に誘う言葉を考えて、どきどきしながら聞いた。あたしがこれだけ緊張していることなど何も知らない兄君は、あさっりと答えてくれた。

「学食か購買か空いている方にしようかと」
 あたしは一瞬躊躇したけど、それでも思い切って考えていた言葉を口に出した。まるで口から心臓が飛び出してしまいそうなくらい激しい動悸を感じながら。
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/17(土) 23:21:27.76 ID:VtlKu7xNo
「よかったら一緒にお昼食べない?」
 あたしの誘いを聞いた兄君は、一瞬けげんそうな表情をした。あたしは、これ以上はないと思っていたくらいに激しかった胸の動悸が更に激しくなるのを感じたけど、それでも何とか言葉を続けた。

「本当によかったらだけど・・・・・・今日お弁当作りすぎて来ちゃったから。よかったら食べてくれない?」
 兄君は少し迷っているようだった。あたしは無理に微笑んで見せた。

「残すのももったいないしね」
 そして微笑んでいるにも関らずあたしの次の言葉には、どうしても少し心配そうなニュアンスが滲み出ていたに違いない。

「迷惑?」
 その後、ぼっちらしくあたしは我ながら卑屈な感じで兄君を誘ったのだ。幼馴染さんや妹さんならこんな卑屈な言葉を兄君にかけることなんて、思いもしないだろう。

 あたしに気を遣ってくれたのかもしれないけど、結局兄君はあたし一緒に中庭であたしのお弁当を食べてくれた。
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/17(土) 23:23:41.03 ID:VtlKu7xNo
 放課後、兄君は幼馴染さんと目も合わせず、何か話しかけようとしている幼馴染さんを無視し、兄友君にだけ別れのあいさつをするとそそくさと教室から出て行ってしまった。

 兄君が教室を出る前に、あたしは何とか兄君にあいさつすることができた。

「兄君さよなら」

「え? ああ、女。またな。つうかお昼ありがとな」
 幼馴染さんに当てつけるように兄君は笑顔まで見せてあたしに礼を言った。あたしも笑顔で彼に答えた。

「別にいいよ。また食べてくれる?」

「おお。作りすぎちゃった時はいつでも声かけてよ」
 相変わらず兄君は、教室の端で自分を見守っている幼馴染さんと兄友君の方をちららりとも見ずに言った。

「うん、そうする。じゃあね」
 あたしは兄君を見つめて微笑んだ。

「おう、またな」
 兄君はあたしに言って教室を出て行こうとした。あたしはその時初めて幼馴染さんの方をそっと覗った。その時、彼女の必死で切なそうな視線は、あたしにではなく自分を無視して去って行こうとしている兄君に向けられていた。

「・・・・・・ちょっと待ってよ、兄」
 幼馴染さんが声を振り絞って兄君に話しかけた。その声は兄君に届いていたと思うけど、兄君はそれを無視して兄友君にだけあいさつした。

「じゃあな。兄友」

「おい待てって・・・・・・」
 慌てた様子の兄友君が兄君を引きとめようとしたけど、兄君は最後に兄友君にだけ言葉を残して教室から出て行ってしまった。

「また明日な」
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/17(土) 23:27:13.58 ID:VtlKu7xNo
 帰宅したあたしは今日の出来事を振り返ってみた。お母さんの帰宅は今日も遅くなるみたいで、家にはあたし一人だった。こういう夜は女神になるのに好都合なのだけれども、あたしはそんな気にはなれなかった。それであたしはシャワーを浴びるとベッドに横になった。

 客観的に言えば、今日は兄君と急速に仲良くなれた日だったと言ってもいいだろう。普通に会話できる知り合いを通り越して、たった一日で二人で一緒にあたしの作ったお弁当でお昼を過ごす仲にまでなれたのだから。でも問題は、放課後教室から出て行くときの兄君の態度だった。あの時兄君は自分に何か必死で話しかけようとしている幼馴染さんを無視して、「兄君さよなら」とあいさつしたあたしの方に笑顔を向けてくれたのだった。兄君のことが好きになったと自覚しているあたしにとって、それは有頂天になってもいいできごとだったけれども、あたしは全然そんなに単純には考えられなかった。これまでの兄君と幼馴染さんの登校時の様子を考えると、幼馴染さんが兄君のことを好きなのは間違いなかった。そして、そんな幼馴染さんを時折ちらちら眺めていた兄君も、幼馴染さんのことが好きなのではないかとあたしは疑っていた。そう考えると、今日の教室での出来事の持つ意味は逆転してしまう。兄君は幼馴染さんよりあたしのことを優先して言葉を交わしてくれたのではなく、幼馴染さんに見せつけるためにあたしに笑顔を向けてくれたことになる。

 ・・・・・・あれこれ悩んでいてもしかたない。とにかくあたしは兄君をあたしの方に振り向かせたかった。あたしの存在を知ってもらいたいという控えめな欲求は、今やあたしに関心を持ってもらいたい、そしてあたしを認めて欲しいという欲求に成長していた。かつてあたしが、自分がなぜ女神行為にのめり込むのだろうと考えていた時に、いろいろネットで調べて知った知識では、こういうのを心理学的には「承認欲求」とか「認知欲求」というようだった。もう少しそのあたりの自分の心の動きを調べた方がいいのかもしれない。あたしは兄君に恋をしたのかもしれなかったけど、自分の心の動きが自分でもわからないまま、まるで霧の中にいるみたいな状態でやみくもに行動するのは嫌だったのだ。我ながら面倒くさい女だとも一瞬思ったけれども。

 その頃にはもう眠気は限界に近かった。今日の出来事を思い出し始めてから既に4時間以上が経過していた。あたしは兄君が最後にあたしに向けた笑顔を思い浮かべながらいつのまにか寝入ってしまったようだった。
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/17(土) 23:30:29.71 ID:VtlKu7xNo
 翌朝、あたしはいつもの時間より少し早い時間に最寄り駅のホームに着いた。そこでふと思い立ったあたしは駅の構内にあるコンビニでサンドイッチを一つ買って行くことにした。昨晩あたしが寝た後に帰宅したお母さんが朝作ってくれたお弁当は持参していたので、サンドイッチなんて買う必要はなかったのだけど。

 あたしはいつものベンチに座り、スマホのブラウザで検索サイトを開いた。

『承認欲求』
 あたしはそう入力して検索してみた。そして、ずらりと並んだ検索結果の一番上位に表示されているリンクをあたしはクリックした。



『人間は他者を認識する能力を身につけ、社会生活を営んでいくうちに、「誰かから認められたい」という感情を抱くようになる場合が多い。この感情の総称を承認欲』



「よ、よう」
 承認欲求についての記事を読み始めたあたしに、兄君が突然声をかけた。兄君がいることに気づいていなかったあたしは慌ててスマホの画面を隠して兄君に答えた。

「兄君・・・・・・おはよう。兄君ってもう一本遅い電車じゃなかった?」
 あたしは狼狽を隠してかろうじて兄君に微笑むことができた。でも、どういうわけか兄君は少し顔を赤くした。

「ちょっとわけがあってさ」

「まだ幼馴染さんと仲直りしてないの?」
 あたしはストレートに聞いた。昨日、あそこまで踏み込んだ話をした以上もうこの程度の話題を兄君に振ることに、あたしは全くためらいをかんじなかった。

「・・・・・・何でおまえがそれを」
 でも、相変わらず兄君はこの程度の話に狼狽しているようだった。

「そういや妹さんもいないね」
 あたしは話を続けた。

「あいつは幼馴染たちと一緒に登校するってさ」
 その時電車が騒音とともにホームに滑りこんできて、兄君の声を掻き消してしまった。
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/17(土) 23:33:38.67 ID:VtlKu7xNo
「じゃ、一緒に行っていい?」
今朝は妹さんや幼馴染さんと一緒に登校しないという兄君の話を聞いたあたしは、兄君に頼んでみた。

「・・・・・・おまえいつもベンチで座って、この3、4本後の電車でぎりぎりの時間に教室に駆け込んでくるじゃん」
 兄君は別に迷惑そうではなかったけど、不審そうに普段のあたしの行動を口にした。あたしは兄君が意外とあたしの朝の行動を把握していたことに驚き、そして嬉しさを感じた。

「・・・・・・あたしのこと、見ててくれたんだ」
 あたしは兄君の微笑みかけた。

「まあ、毎朝のことだからね」
 兄君はあっさりと答えた。

「見てたのはあたしの方だけじゃなかったのね」

「おまえ、朝いつもスマホで何かやってるけど、それはいいの?」
 そこまで見られていたのか。これではあたしだけが兄君たちの事情に詳しいというわけではないのかもしれない。そして、兄君はあたしのスマホの話題を口にした。それであたしは承認欲求について検索していたことはともかく、兄君と親密になりたいというあたしの気持に偽りがないのなら、いつかは兄君に話さなければいけないことがあることに、あたしはその時初めて意識した。

「うん。別にリアルタイムである必要はないし、それに朝はレスを確認してるだけだしね」
 あたしはとりあえず事実の一部分だけを話した。嘘ではないけれど、これでは何のことかさっぱりわからいことは承知の上だった。案の定兄君は戸惑っているようだった。
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/17(土) 23:35:00.98 ID:VtlKu7xNo
 兄君と一緒の電車に乗り込み、兄君と並んで吊り輪に掴まったあたしは、兄君が一人のときは一緒に学校に着いて行ってもいいか、兄君に聞いた。

 ちょっとがっかりしたことに、兄君はそれには直接答えず、逆にあたしに質問した。

 「・・・・・・おまえさ、前にも聞いたかもしれないけど、そこまで積極的に友だち作れるのに何でクラスのやつらとは話しねえの?」

「何でって言われても。別に話すことないし」
 あたしは突然の質問に戸惑っていた。

「俺とは話すことあるのかよ」

「わかんないけど、一緒にいたいとは思うから」
 少なくてもその返事だけは素直なあたしの気持だった。そして、一緒に登校してもいい? という質問をはぐらかされたように感じて失望していたあたしは、ふと兄君のこの反応はあたしのことをもっとよく知りたいという欲求なのではないかと気がついた。そうだとすると、あたしは順調に兄君と親しくなるプロセスを踏んでいることになる。そのことに勇気付けられたあたしは、再び精一杯の勇気を振り絞って言った。

「ねえ」

「うん」

「携帯の番号とメアド交換しない?」

「・・・・・・別にいいけど」
 兄君はあっさりと答えた。まだ少し戸惑っている様子だったけれども。
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/17(土) 23:35:31.81 ID:VtlKu7xNo
今日はここまで

また明日投下します

おやすみなさい
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/17(土) 23:49:18.57 ID:NC4lBL3Io
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/18(日) 07:19:22.77 ID:ZeP6/Atbo
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/18(日) 21:15:33.30 ID:olpOq4Lro
 こうしてあたしは、初めて兄君と並んで駅から教室まで歩いたのだった。兄君に並んでいるのがいつもの妹さんや幼馴染さんではないことに、周りの生徒たちが奇異な視線を向けて来る。まして、兄君と一緒にいたのがぼっちのあたしだったのだからそれは無理もなかった。昼休みになると、兄君は兄友君と少しだけ何か話し合った後、一人で教室を出て行ってしまった。今日は屋上か中庭で妹さんと待ち合わせなのかもしれなかった。あたしは席を立って教室を後にした。もちろん、兄君を尾行するつもりはなかった。兄君の行動は気になるけど、幼馴染さんや妹さんに
彼らの平穏な日常をかき乱した異質な人間としてあたしは意識されてしまっていた。そんなあたしが兄君の後をつけるのはリスキー過ぎる。あたしは、とりあえず2年生と3年生の校舎を結んでいる渡り廊下に向かった。

 その渡り廊下の窓からは、昼食の人気スポットになっている噴水のある中庭を見下ろすことができた。噴水を囲むように配置された古びた木製のベンチには、既に生徒たちが腰かけてそれぞれ持参したお弁当や購買で購入した調理パンで賑やかに食事をしていた。あたしは渡り廊
下から中庭を見下ろした。幼馴染さんと兄君は、噴水から離れて校舎の壁沿いに配置されているベンチに並びあって腰かけ、何かを話し合っていた。その場所は噴水を囲んだベンチと異なり秋から冬は日陰になるため、あまり生徒たちには人気のない場所だったけど、人気が少なく内緒話やゆっくりと人を気にせず話をするにはいい場所だった。幼馴染さんはわざとその人気のない日陰のベンチを選んだのだろう。二人の間には綺麗に包まれたお弁当らしきものが置いてあったけど、二人はそれを開こうともせずに真剣に話を続けていた。二人が何を話しているかはもちろんあたしには聞くことができなかった。何か淡々と幼馴染さんが兄君に話しかけ、それに兄君が答えているようだった。そして、内心あたしが期待していたような緊迫感はあまり感じられなかった。幼馴染さんが告白して兄君がそれを断るという感じでは全しくなかったのだ。もう少し二人を見ていたい気はしたけど、あたしは渡り廊下を後にして2年生の校舎に戻った。今度は屋上を覗いてみるつもりだった。
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/18(日) 21:18:59.25 ID:olpOq4Lro
 屋上の扉をそっとあけると、やはり広い屋上のあっちこっちで食事をしている生徒たちの姿が目に入った。あたしは踊り場の周囲に人気がないことを確認してから、扉の陰に半ば身を隠すようにして屋上を眺めた。もう肌寒い季節になっていたせいで風の強い屋上で食事をしている生徒はそれほど多くはなかったから、妹さんと兄友さんがいる場所はすぐにわかった。二人は並んで座ってお弁当(多分妹さんが作ってきたものだろう)を食べていた。結構距離があるせいで二人の会話は全くあたしには聞こえなかったけれども、それはとりあえずどうでもよかった。というのは、見ている限りでは二人は全く会話を交わしていなかったからだった。妹さんと兄友君は話そうと思えばそれなりに世間話くらいはできる間柄だったはずだ。少なくともここ最近は、兄君と幼馴染さんと一緒に四人で登校する仲なのだったから。でも、妹さんはずっと俯いたままで、時折箸を動かす以外は全く喋る気配がなかったし、兄友君も妹さんの手作りのお弁当を食べながら時折妹さんの方を眺めて何か話しかけようとはしていたみたいだけど、結局諦めたように黙々と箸を動かしているだけだった。

 まあ、無理もないのかもしれない。妹さんも兄友君も、自分たちが好きな相手が今一緒に中庭で話をしていることを知っているのだろうから。自分たちが失恋するのかどうかが、今この瞬間に決定されているのかもしれない。そう考えるとまるでお通夜かお葬式みたいな二人の雰囲気も納得できるものだった。それにしても、兄友君はなぜ兄君を幼馴染さんのところに行かせたのだろう。昼休みになった時、兄友君が兄君に話していたのは幼馴染さんが中庭で待っているということを伝えていたに違いなかった。幼馴染さんの理不尽な怒りに反発している今の兄君が、直接幼馴染さんに誘われたくらいで、幼馴染さんと二人きりになるはずはなかった。昨日の放課後、兄君はあんなにうろたえて切なげに話しかけてきた幼馴染さんを無視して、まるで幼馴染さんに見せ付けるようにあたしに微笑みかけた。そんな兄君らしからぬ行動を取るくらいに、兄君は幼馴染さんに憤っていたのだから。

 この四人の感情のうち、あたしにとって一番理解し難いのは兄友君の感情だった。幼馴染さんを選んだ兄友君にとってはこの状況はある意味チャンスではないのか。それなのになぜ兄君と幼馴染さんの仲を取り持つようなことをしているのだろう。兄君への友情のせい? それとも幼馴染さんを愛するあまり、自分が失恋するにも関らず彼女の恋を応援しているのだろうか?
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/18(日) 21:20:31.93 ID:olpOq4Lro

 でも、兄友君はそういうタイプの男性ではない。イケメンで人気があり成績もいい兄友君。彼が自分にふさわしいと思って選んだ女の子が幼馴染さんなのだろう。幼馴染さんへの好意を隠そうともしない兄友君。そういう行動ができるのは、彼がこれまで振られるとか片想いで終るような辛い恋愛をしてこなかったことを意味する。つまり、兄君は恋愛に関しては自分に自信がある男の子そのものだった。そんな兄友君が兄君を自分が好きな幼馴染さんの待つ中庭に行かせ、自分は黙って妹さんと二人で食事をしていることがあたしには腑に落ちなかった。

 ・・・・・・そろそろ教室に戻らないとあたしが食事をし損ねてしまう。結局、兄友君が何を考えているのかはわからなかったけど、あたしはその場を去って教室に戻った。

 あたしが自分の席でいつものとおり一人ぼっちでお弁当を食べ終わった頃、兄君が教室に戻って来た。昼休みが終るまでにはまだ時間があったのに。兄君は悩んでいることが誰が見ても明らかなほどやつれた様子だった。

「ひょっとして落ち込んでる?」
 あたしは兄君に話しかけた。

「酷い顔してるよ」

「腹減ってるだけだよ。今日昼飯食い損ねたし」
 兄君は取り繕うようにして言った。やはり食事ができるような状況ではなかったようだった。あたしは今朝必要のないサンドイッチをわざわざ買ったことを思い出した。こんなこともあるかもしれないと思って買ってきたものだったけど、こんなに早く出番があるとは思わなかった。

「そうか。まあ、いきなり幼馴染さんにあんなこと言われたら食欲もなくなるよね」

「・・・・・・おまえ、何言ってるの」

「何って、単なる推測だけどさ。今日二人きりで中庭にいたみたいだし、妹さんと兄友君は屋上で二人きりで何だかお葬式みたいに黙りこくって食事してたしね」

「おまえ、ひょっとして俺たちのこと探ってるのか」

「あたしがっていうか、兄友君声大きいしさ。昼休みのあんたと兄友君の会話ってクラスの半分くらいは気にしてちらちら見てたよ」
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/18(日) 21:22:24.23 ID:olpOq4Lro
 それに対して兄君は言った。

「おまえもそんなとこまでよく観察してるな。よっぽど暇なんだな」

「本当はあたし、普段は観察するというより皆に見られる人なんだけどね」
 あたしは、この恋を希求するかぎりいつかは言わなければいけないことを小出しにして仄めかした。でも当然ながら兄君にはピンとこないようだった。

「ああ? おまえちょっと自意識過剰なんじゃねえの。ぼっちなんて本人が気にしてるほど周りは気にしてねえよ。だからぼっちなんだろうが」

「そういう意味じゃないよ。学校ではあたしが空気なのは自覚してるし、見られるっていうのは別な場所の話」

「・・・・・・おまえ、本当に変ってんのな。しつこいようだけどさ、こんだけ人と話そうと思えば話せるならクラスで友だちなんかいくらでも作れるだろうが」
 兄君は自分の悩みをいったん置いて、あたしのことを話し出した。あたしは、あたしのことに関心を持ったらしい兄君のこの言葉に正直どきどきしながら、でも何気なく聞こえるように答えた。

「別に不便感じてないもん」

「・・・・・・よくわかんねえけど」

「兄君、結局幼馴染さんの手作りのお弁当食べなかったの?」
 兄君は黙ってしまった。

「お腹空いてるでしょ。まだ15分くらいあるし、よかったらこれどうぞ」
 あたしは無駄になるかもと考えながら買ってきたサンドイッチを兄君に差し出した。

「何? サンドイッチ?」

「コンビニのね。手作りのお弁当には敵わないけどお腹ぐらい塞がるんじゃない?」

「いいの?」

「うん。余ったやつだし捨てるよりいいし。食べて」
 あたしは微笑んで兄君の方を見上げた。

「じゃ、遠慮なく」
 兄君はどういうわけか少し顔を赤くしてサンドイッチに手を伸ばした。
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/18(日) 21:23:59.86 ID:olpOq4Lro
 その日の放課後、あたしは兄君と一緒に学校を後にすることができた。授業が終った途端、校内のどこかに出かけてしまった兄君を、あたしは校門の前で待ち続けた。黙って校門の前でたたずんでいるあたしに帰宅する生徒たちは奇異な視線を投げかけていったけど、ぼっち歴の長いベテランのぼっちであるあたしはその種の視線には慣れていた。一時間くらい待った後、兄君が一人で校舎から出てくる姿が見えた。あたしは兄君に一緒に帰らない? と話しかけた。

 簡単にその願いをOKしてくれた兄君と肩を並べてあたしたちは下校した。今日兄君と幼馴染さんの間にどんな話し合いが行われたかはわからない。妹さんと兄友君が今どういう心境なのかもわからない。でも、どういうわけか兄君は自分の身におきていることよりあたしの方に関心があるようだった。それは、並んで歩いている時にあたしの方にさりげなく向けられる視線でわかったのだけれど、駅の近くまで来ると兄君はもっと直接的な質問をあたしにしてきた。

「あのさあ、おまえって兄弟いるの」
 兄君は最初に無難な質問をぶつけてきた。

「一人っ子だよ」
 こんな質問で時間を浪費してもしょうがない。あたしは兄君に微笑みながら畳み掛けるように自分のことを語った。

「あと、お父さんは普通の会社員で、お母さんも普通の会社員。つまり共働きね。だからあたしはいつもは学校でも家でもぼっちなんだよ」
 そして、ある意味わくわくしながらあたしは兄君に問い返した。

「あたしのことなんか本当に知りたいの?」
 兄君は黙ってしまったけど、あたしは構わずに話を続けた。

「兄君が知りたいなら別に隠すことなんかないしね」

「これでも中学の頃は親友もいたし、信じないかもしれないけど告られて付き合った彼氏もいたんだよ」

「でも、この高校に入った時にクラスに同じ中学出身の子がいなくてさ。何となくぼうっとしてたら周りはもうグループが出来ちゃってて、気づいたらぼっちになっちゃってた」
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/18(日) 21:26:20.50 ID:olpOq4Lro
 兄君はあたしの話に納得していないようだった。この時兄君が何を考えていたのか、あたしにはよくわかった。

「自分から周りを拒否してるんじゃないのかとか思ってるんでしょ」
 あたしは微笑んで言った。

「まあ、そうね。あたしあまり学校とかに関心なくてさ。男君と全く同じことを1年の時の担任にも言われたことあるんだけど」
 兄君は戸惑ったようで、居心地が悪そうだった。でも、ついにこの時が来たのだ。兄君たちの状況は流動的だったし、あたしの兄君への恋が報われるかどうかもわからない。それでも兄君が誰かを選ぶ前に、あたしは自分のことを兄君にはっきり晒しておかなければならなかった。後から知ってこんな女だったのかと思われるのが一番嫌だったから。

「あたし、去年から自宅でネットの掲示板にはまっててさ。2ちゃんねるって知ってる?」

「うん。たまに見るよ」
 兄君はそう答えた。

「それでね。学校で交流がなくてもあたしはそこで十分に人とコミュニケできてるからさ」

「はあ? そんなの実生活の上で人と交流するのとは別じゃん」
 これに対してあたしは少し黙っていたけど、少しして胸の動悸を抑えながら、兄君の目を見つめながらようやくこの言葉を口にしたのだった。

「男君・・・・・・女神行為って知ってる?」
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/18(日) 21:26:52.80 ID:olpOq4Lro
今日は以上です

また明日再開します

おやすみなさい
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/18(日) 22:49:06.15 ID:N5eCyxdwo
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/18(日) 23:16:24.89 ID:60x/bWASO
おやすみんか
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/18(日) 23:26:33.79 ID:KvYBe/LQo
おっつ
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/19(月) 13:08:02.96 ID:9BnP+Lzio
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/19(月) 22:05:05.61 ID:60dg43tro
すいません、今日は持ち帰り仕事があって投下できません

明日はオフなので投下できると思います

休載申し訳ありません
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/19(月) 23:41:02.42 ID:wK+X121IO
無理せず余裕できたら書けばよいやさ
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/20(火) 21:13:55.06 ID:ISmFl2u9o

 女神行為用の撮影から始って最後は初めて女と結ばれたあの夜以降、俺と女の交際は不思議なほど順調だった。最初の頃、俺と女を追いかけてきた周囲の奇異なものでも見るような視線は、すぐになくなってしまった。女が周りの生徒たちと打ち解けようと決めた後、驚いたことに女は実際にまるでぼっちだったことなどなかったかのように普通にクラスに溶け込んでいた。初めてできた俺の彼女は、ぼっちの女神だったはずだけど、少なくとも女はぼっちではなくなっていた。それで、俺と女の関係は普通のカップルとして学校でも認められることになった。

 妹と幼馴染とは以前のようにいつも一緒に行動するということはなくなった。朝の通学や休み時間、そして下校時間まで俺と女はいつも一緒だったから、そうなることは当然だったけど。妹は俺にお弁当を作ることはなくなったけど、朝食と夕食はこれまでどおり用意してくれていた。ただ、前なら夕食後(場合によっては寝るときも)俺にべったりと寄り添って離れようとしなかった妹は、最近では食事が終ると自分の部屋に入ってしまうようになっていた。別に口を聞かないとか話もしないということはなかったけど、今まで二人きりで長い時間を過ごしてきただけに、その変化は俺にとって少し寂しく感じられた。でも、これが普通の兄妹の仲なのかもしれない。俺はそう思ってこのことについてはこれ以上考えるのやめたのだ。

 幼馴染は、あの屋上の日以来、俺に対しては今までどおり接するように努めているようだった。俺のことは諦めないし、女は俺にふさわしくないと言い切った幼馴染のことを思い出すと、幼馴染のその態度は拍子抜けするほど穏やかなものだった。幼馴染は俺とだけではなく、女にも普通に話しかけてもいたのだ。

 そういうわけで、久し振りに俺の生活はそれなりに落ち着いてきたのだけれど、兄友との関係だけは全く改善していなかった。クラスの中で女が普通に人気のある生徒になっても、兄友だけは女に話しかけようとはしなかったし、相変わらず俺に話しかけることもなかった。そればかりか俺とは目すら合わせようとしなかったのだ。
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/20(火) 21:15:18.02 ID:ISmFl2u9o
 朝の登校時は俺は女と一緒だったけど、妹は相変わらず女と一緒に登校していた。そればかりか、ある日こいつらが同じ車両にいた時に見かけたのは、兄友が再び妹や幼馴染と一緒にいる姿だった。幼馴染は兄友と仲直りしたのだろうか。あいつは俺と付き合えなくても兄友とは付き合わないと言っていた。兄友はそれを承知でまた幼馴染の側にいることを選んだのだろうか。気にはなったけど、俺はそのことには関心を持たないように努めた。というか今では俺は女に夢中になっていたし、女といる時にはあまり他の人間のことを深く考える余裕なんてなかったのだ。

 女は相変わらず謎めいた言動を取ることはあったけど、体の関係ができてからはそういう不思議な部分は少なくなり、むしろ前からは考えられないほど俺に甘え、じゃれかかってくることが多くなった。そしてそういう女の姿は可愛らしく、俺はその頃本当に女に夢中になっていたのだ。兄友とまだ仲直りできていないことすらあまり気にならないほどに。
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/20(火) 21:19:18.54 ID:ISmFl2u9o
 女の女神行為は、以前ほどの頻度ではなかったけど今だに続いていた。vipに立つ単発スレにうpする時は、女は今でも即興でスマホで撮影した画像をうpしていたけれど、女神板で「モモ◆ihoZdFEQao」のコテハンを使用してうpする時は、必ずその画像を撮影するよう俺に頼むのだった。俺が撮影した画像はスレでは評判が良かった。画像が前より全然良くなったねというレスが溢れるほどだった。俺も嬉しくないわけはなかったけど、こういう場所で写真の腕を誉められても何か微妙な気持ではあった。あと、俺が撮り出すと、本当に自撮りなのかというもっともな疑問も出始めていた。モモは処女で彼氏のいない大学生ということになっていたから、女は新しいカメラのセルフタイマーで撮ってますという言い訳でその疑問を凌いでいた。

「処女厨ってやっかいなのよ。ある意味単なる荒らしよりたちが悪いの」
 ある夜、女は俺の前で、モモの処女性に疑問を抱いたスレの住人を何とか宥めるレスをしながら言った。

「女神にもいろいろあってね。経験者であることがマイナスにならない女神も多いんだけど」
 女は話し続けた。

「あたしの場合は、処女で彼氏もいない、清純で可愛い子が肌を晒しているという点でモモに興味を持ってる人たちが多いみたい」
 女は自分のことを平然と可愛いと言い放ったけど、確かにこれだけ可愛ければそのことについては反感すら覚えなかった。今でも俺はこの可愛い子が本当におれの彼女なのだろうかと、心のどこかでこの境遇を疑うことすらあったくらいだし。

「アイドル的な声優のファンの心理みたいなもんかね」
 俺はふと思いついて言った。

「そうかもね、それに近いかも。でもそれより自分勝手かもね。一方では娼婦のように体を晒すよう要求しながら、一方ではリアルでの処女性を要求されるんだもん」
 女のその言葉は妙に俺を納得させた。

「そう考えると、俺って結構羨ましがられる立場だったんだな。アイドルと隠れて交際しているってことだもんな」

「ふふ。でも、そうね。不思議だけど、学校ではあたしたちの関係は皆が知ってるのに、ネットでは秘密にしているなんて」
 女は笑ってそう言うと、貧乳スレにお別れのレスを投下し、パソコンの前から離れた。

「ねえ、今日も変な気持になってきちゃった・・・・・・しようか」
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/20(火) 21:21:06.22 ID:ISmFl2u9o
 その晩遅く女と別れを惜しんだ後、俺は自宅に帰宅した。結構遅い時間になってしまっていた。

 俺は自分の鍵で玄関のドアを開け、ただいまと言いながらリビングに入った。1階は電気が落ちていて暗かった。妹はもう自分の部屋に戻っているのかもしれなかった。ダイニングのテーブルを眺めると、食事の支度がしてある様子はなかった。最近ではそれなりに妹と会話をするようになっていたし食事も必ず用意されていたので、俺は夕食がないことに少し戸惑いながらも2階に上がって妹の部屋をノックした。返事はない。

 俺は声をかけながら妹の部屋のドアを開けた。部屋は暗く妹の姿もなかった。

 ・・・・・・どうしたんだろう。俺は自分の携帯を念のために確認したが、妹からはメールも着信履歴も残っていなかった。俺は諦めて再びリビングに戻った。こんなことなら女に誘われたとおりあいつの家で手料理をご馳走になるんだった。俺はその時自宅で夕食を準備しているであろう妹に遠慮して女の誘いを断ったのだった。今日はカップラーメンでいいや。俺はお湯を沸かしている間に、リビングのパソコンを起動した。しばらく待っていると見慣れないメッセージが表示された。

『直前のセッションが強制的に終了されました。セッションを復元しますか?』

 なんだ、これ。どうもブラウザを終了させる前にパソコンを強制終了すると出てくるメッセージらしいなと俺は考えた。この種のパソコンやネットで疑問がある時に、今までは兄友を頼っていたのだけど、今ではそういうわけにもいかない。俺はとりあえず「はい」をクリックした。少しの間があって、ブラウザは強制終了される直前に表示していた画面をゆっくりと表示し始めた。



【貧乳女神も】華奢でスレンダーな女神がうpしてくれるスレ【大歓迎】
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/20(火) 21:26:17.72 ID:ISmFl2u9o
 え? 俺は目を疑った。確かにこのスレは女と知り合って以来よく見るスレだけど、このスレを開きっぱなしでこのパソコンを強制終了した記憶はなかった。それに最近では女の画像を弄っただけで、ここでは女神スレは見ないようにしている。携帯の画面で画像を閲覧するのは厳しいのだけど、自分の彼女の秘密を扱っている以上、こんな家族共用のパソコンでは危険は冒せないと判断したからだ。パソ関係に疎い俺でも閲覧したサイトのキャッシュがパソコンに残ってしまうくらいは知っている。だから、最近では自室で携帯でしか女神は見ていなかったはずなのだ。

 まさか妹が? 妹には急いでパソコンを終了する時にいきなり電源をオフにする悪い癖がある。何度も注意したのだけど、妹に言わせると今までこれで一度もパソコンが壊れたことはないよ、とのことだった。あいつが、妹が俺が以前閲覧したキャッシュを辿って女の女神行為を発見したのだろうか。女は個人情報は一切晒していないけど、親しい人間が目に線を入れて隠しただけだけの女の画像を見れば、それが女だと気がつくのはそんなに難しいことではない。俺は狼狽した。どうすればいいんだろう。

 もちろん画像は即デリされるのだし、たとえ妹がこのスレを後から見ても画像は見られない。画像さえなければこれが女だとは気がつかないだろう。それでも可能性が少しでもある以上、これを見過ごすわけにはいかなかった。

 しばらく混乱した思考を続けた結果、俺が辿りついた結論は妹に正直に聞くということだった。どんなに軽蔑されても怒られてもいい、とにかく女を守ることが最優先だった。女は俺を信頼して女神行為のことを明かしてくれたのだ。それが、俺のせいで女の女神行為のことがバレることがあってはならなかった。俺は妹に電話した。でも、妹が電話に出ることはなかった。
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/20(火) 21:29:31.66 ID:ISmFl2u9o
「これって画像見れないの?」

「どうもアップしてすぐに削除しちゃうみたいだね」

「じゃあ顔も見れないし、これが本当に女さんかどうかなんてわかんないじゃん」

「まあ経緯からいって間違いないんだろうけど」

「少なくとも証拠にはならないよね、これじゃ。名前があるわけでもないし」

「ちょっと待ってて」

「・・・・・・何してるの?」

「うん、ちょっと。あ、ヒットした」

「?」

「何々? えーとミント速報だって」

「何よそれ」

「まとめサイトみたいだね。それも結構エッチな」

「・・・・・・何でそんなもの見る必要があるのよ」

「ちょっと黙ってて・・・・・・あ、これだ」



『今春入学したばかりの処女のJD1が大胆な姿を露出!!』



「ほら画像が残ってる。さっきのスレッドをまとめてあるんだね」

「これって・・・・・・」

「目は隠してあるけど・・・・・・顔つきや体格からいってどう考えても女さんだな、これ」

「・・・・・・なんで、一体何であの人、こんなことを」

「さあ? それはわからないけどさ。少なくとも兄にふさわしい女じゃないよね」

「・・・・・・うん」

「もう少し画像を探そうか。これだけ無防備ならいくらでも出てきそうだね。バカな女」

「・・・・・・バカって」

「だって、バカじゃん。つうか情弱っていうのかな」

「・・・・・・」
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/20(火) 21:30:04.96 ID:ISmFl2u9o
本日は以上です

明日もできるようなら投下したいと思います

おやすみなさい
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/20(火) 21:56:54.17 ID:F4zaNA1yo
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 22:02:16.61 ID:hw5Ia95SO
妹・幼馴染・兄友の連合か?

あれ?妹手握よりシリアスになりそうな予感が……
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 22:11:18.95 ID:f272mLZW0
妹手握と作者さん一緒なのか?
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/03/20(火) 22:42:39.77 ID:M3CWPtM6o
乙です。

>>402
こういう前のレスをまったく読まない奴は正直うざいよな
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 23:14:46.70 ID:jrLrbKEO0
読んだからこそのレスじゃないのかな?

>>1
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 20:50:41.69 ID:LdPZw/92o
ドロドロしてきたね期待
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/21(水) 22:13:28.58 ID:BXJ4de4vo
翌朝


兄(・・・・・・あれ)

兄(朝? 俺何でリビングにいるんだろ)

兄(・・・・・・そうか。妹を待っている間に寝落ちしちゃったのか。って、毛布がかかってるな。妹か?)

兄(妹に女神スレのこと、聞かないと)

兄(・・・・・・7時45分?)

兄(やべ。遅刻しそうだ。妹はどうした)

兄(とりあえず学校に行こう。つうか女との待ち合わせ時間に間に合わん)

兄「妹? いねえの?」

兄(やっぱ先に行ったのか。あいつが俺を起こさないで登校しちゃうなんて初めてだ)

兄(・・・・・・やっぱり何かおかしい)

兄(とにかく早く駅に行こう。女が待っててくれてるかもしれないし)

兄(そんで休み時間にでも1年生の校舎に行って妹と話そう)

兄(よし、朝食、洗顔、歯磨き省略。制服はもともと来たまま寝ちゃってたし)

兄(急ごう)
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/21(水) 22:15:44.04 ID:BXJ4de4vo
自宅の最寄り駅


兄(いつものベンチには・・・・・・やっぱ女はいないか。そりゃそうだよな。いつもより30分以上遅刻してるもんな)

兄(つうか次の電車に乗らないと完全に遅刻だ。これって昔女がよく乗ってた時間の電車だ)

兄(あの頃は女はぼっちだったけど、今では立派なリア充だよな。最近クラスでは話しかけられまくってるし。しかし、あいつがあんなに愛想よく振る舞えるなんてな)

兄(あいつ、おれにふさわしい彼女にならなきゃって言ってたけど、どっちかつうと俺の方がそう思わなきゃいけないのかも)

兄(俺があいつに勝っているところ、つうかあいつにしてやれることって、女神行為用の写真撮ってやれるくらいだもんな)

兄(・・・・・・まあ、あとベッドでは女を満足させられるかも)

兄(・・・・・・いや、違うな。多分俺の方があいつの体に溺れてると言った方が事実に近いだろう)

兄(・・・・・・)

兄(・・・・・・そんなことより妹のことだ)

兄(本当に妹はあのスレを開いて見てたのかな。仮にキャッシュかなんかを辿ってあのスレに辿りついたとしても、画像は見れないしもちろん本名なんて書いてないし)

兄(冷静に考えれば妹がモモのことを女のことだとわかるはずがないんだ)

兄(だとすると妹を問い詰めるなんて逆効果というか、自分の首を絞めるようなものかもしれない)

兄(・・・・・・少し様子見の方がいいか)

兄(・・・・・・)
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/21(水) 22:17:11.29 ID:BXJ4de4vo
教室


兄「おはよ」

同級生女1「ああ。兄君おはよ。今日は女さんお休みなの?」

兄「(え? あいつ来てねえのか)いや、どうなんだろ」

同級生女2「どうなんだろじゃないでしょ。いつも一緒に登校してるのに」

兄「いや、今日は俺、遅刻しちゃってさ。女とは会ってないんだ」

同級生女1「まさか、女って駅で兄君のこと待ってるんじゃないでしょうね」

兄「それはないだろ。あいつ、待ち合わせ場所にはいなかったし」

同級生女2「じゃあ体調でも悪いのかな」

兄「うーん。あとでメールしてみる」

同級生女1「つうかメールすんなら今しろよ」

兄「だってもうホームルーム始るじゃんか」

同級生女2「本当に使えないなあ兄君は」

兄「何でだよ!」

同級生女1「あ、先生来ちゃった。ちゃんと女に連絡しておきなよ」

兄「ああ(お前らに言われるまでもないっつうの)」
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/21(水) 22:18:56.66 ID:BXJ4de4vo
授業中


兄(それにしても、ぼっちの頃だって皆勤賞狙えるくらいに律儀に登校だけはしていた女がなぜ突然休んだんだろう)

兄(それに、毎日待ち合わせして一緒に登校している俺に、メールも電話もなくいきなりだぞ)

兄(風邪でも引いたのかな。昨日は結構冷えたし、あいつは撮影中はずっと下着姿だったし、その後は・・・・・・)

兄(まあ、休み時間にメールしてみよう。返事があるかはわからないけど)

兄(・・・・・・あいつと連絡取れないなんて付き合い出して初めてだな。何か寂しい)

兄(いつの間にか俺ってこんなにあいつに依存しちゃってるのな)

兄(・・・・・・早く授業終わんねえかな)

兄(・・・・・・)

幼「・・・・・・」チラ
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/21(水) 22:20:54.17 ID:BXJ4de4vo
休み時間


?「おい」

兄「(へ?)あ、兄友・・・・・・」

兄友「ちょっと話があるんだけどよ」

兄「話って何だよ(何だこいつ。今まで俺のこと無視してやがった癖に)」

兄友「・・・・・・ここじゃちょっとな」

兄「・・・・・・おまえ、俺とは話しないんじゃなかったのかよ」

兄友「俺だっておまえなんかと話なんかしたくねえよ」

兄「(何なんだ)何が言いたいの? おまえ」

兄友「いいから喧嘩腰になるなよ。大事な話なんだって」

兄「・・・・・・今まで俺のこと嫌ってたおまえが何でそんなに必死なんだよ」

兄友「話聞きゃわかるよ。屋上行くぞ」

兄「屋上って、昼休みじゃねえんだぞ。そんな時間あるか(女にメールだってしなきゃなんないのに)」

兄友「・・・・・・授業なんてどうだっていいよ。とにかく一緒に来い」

兄「おい・・・・・・」

兄友「行くぞ。授業なんてサボっちまえばいいって」

兄(一人でさっさと屋上に向かって行っちゃった。あいつ、いったい何がしたいんだ)

兄(・・・・・・やっぱ幼馴染の話だろうな、こいつがこんなに必死になるのは)

兄(サボるって、どうやって先生に言い訳すればいいんだよ)

兄(・・・・・まあ、幼馴染のことで・兄友が必死なのはわかるしな。仕方ない付き合うか)
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/21(水) 22:22:06.17 ID:BXJ4de4vo
屋上


兄友「おまえ、来るの遅せえよ」

兄「てめえ、ふざけんな。何日も無視してたくせにいきなり声をかけて授業までサボらせやがって」

兄友「そんなことはどうでもいいんだよ」

兄「何言ってるんだよ」

兄友「・・・・・・俺さ、今朝授業開始前に佐々木に呼び出されてさ」

兄「・・・・・・またかよ。おまえ前から佐々木に何注意されてるんだよ」

兄友「うるせえよ。俺と馴れ合ってるような口きいてんじゃねえよ」

兄「・・・・・・いったい何なの? おまえ」

兄友「おまえが勘違いしないように言っておくけどよ。俺は幼馴染の気持ちをあれだけひどく弄んだおまえのことを許したわけじゃねえんだぞ」

兄「・・・・・・」

兄友「だからおまえと女のことなんかどうなってもいいって思ってたんだけどよ」

兄「・・・・・・(何なんだよ)」

兄友「今日、朝の結構早い時間に佐々木に呼び出されてよ。職員室に朝の7時前に行ったらまだ佐々木が来てなくてさ。そしたら担任が職員室の片隅でひそひそ電話してたんだけどよ」
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/21(水) 22:29:02.72 ID:BXJ4de4vo
 それは女の親への電話だったそうだ。佐々木先生を待つ間、兄友は聞くともなしに担任が電話しているのをぼんやりと聞いていたそうだ。夢中になって電話をしている担任は、兄友のことに気づいていなかったのか、声をひそめつつもかなり興奮した様子で電話をかけていた。その中に女という単語が聞こえたらしい。兄友はそれを聞くと担任の低い声に気持ちを集中した。

『当校としてもネット上の誘惑や危険に関しては、これまでも専門家を招いたりして生徒たちには注意喚起してきましたけど、最近の風潮からして多少のことは見逃してきました。でも、さすがに今回の件は許容範囲を超えています。他の生徒たちに与える影響が大きすぎるんですよ』
 担任の教師は額の汗を拭いながら、声をひそめながらもまくし立てるように話をしていたそうだ。

『女子の高校生が下着姿の際どい写真をネット上で公開してたんですからね。女さんは学校では友だちこそ少ないようでしたけど、これまで成績も素行も何も問題はなかったのに。もちろんいじめられているということもなかったし』

『とにかく、投書に書いてあったURLをそちらにお送りします。ご自分の目で娘さんかどうか確認してみてください。まあ、誰が見ても女さんであることは間違いないと思いますが』

『はい。当然校長には報告してあります。誰が投書したのか? それはわからないですね。というか、私の携帯のメールに投書してあったのでうちの学校の関係者、おそらくは生徒だと思いますけど、WEBメールからのメールだったので特定は無理でしょうし、特定する必要もないでしょう』

『はい。会社のアドレスでいいですか? ああ、携帯に。わかりました。そろそろ女さんも家を出る時間だと思いますけど、今日は自宅で待機するようにお伝えください。頭ごなしに怒らないようにしてください。事情を聞く前ですし、何か無茶な行動をされても困りますし』


 兄友がそこまで聞き取った時、佐々木先生が職員室に入ってきたため、兄友はその後の担任と女の親とのやりとりを聞くことはできなかったそうだ。




兄(これって・・・・・・)

兄友「そんで、教室に戻ったら女が来てないじゃんか。いったいあいつ何をしでかしたんだよ。下着姿ってまさか・・・・・・」

兄「ああ(女神行為がばれたんだ。いったい何でこんなことに、つうか誰が)」

兄友「ああじゃねえよ。俺はおまえらなんか大嫌いだけど、でも何つうかよ。女も大変なことになりそうだから」

兄「・・・・・・悪い(担任にちくったのって、まさか妹なのか?)」

兄友「おまえらのしたことを、別に許したわけじゃねえぞ」

兄「・・・・・・」

兄友「まあ、ネットとか下着とかってだけでも、何が起こってるのか察しはつくけどな」

兄「・・・・・・ああ。今は俺の口からは言えねえけど」

兄友「別に聞きたかねえけどよ、そんなどろどろしてそうな話。でも、おまえら何馬鹿なことやってんだよ」

兄「悪いな、兄友。俺、女の家に行くから」

兄友「え?」

兄「今日は学校サボるから」

兄「(これはやばい。女と会って善後策を話し合ねえと)じゃあ、俺はこれで」

兄友「・・・・・・しょうがねえなあ」

兄「何だよ」

兄友「しょうがねえから担任にはおまえも体調が悪くなったって話しといてやるよ」

兄「・・・・・・兄友、悪い」

兄友「うるせえ。黙って早く行けよ。きっと女も悩んでると思うぜ」

兄「ありがとな」

兄友「俺に礼を言うな。助けたくてしてんじゃねえよ。でも、おまえが落ち込むと幼馴染とか妹ちゃんが悲しむんだよ。察しっろよクズ」

兄「ああ。じゃあな」

兄友「おう」
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/21(水) 22:30:05.49 ID:BXJ4de4vo
今日はここまでです

明日また投下予定です

おやすみなさい
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 22:33:45.02 ID:a582IwLSO
おおう、兄友ェ…
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 22:34:30.38 ID:8OtOWnhGo


いい感じにドロドロしてきたぜ
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国・四国) [sage]:2012/03/21(水) 22:45:39.80 ID:VuSCB70AO
もし犯人の一人が妹なら、一緒に暮らしたくなくなるな……
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 22:52:37.04 ID:T/SI04v5o
妹▽
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/03/21(水) 23:30:01.04 ID:+vY+nXkuo
兄友いい奴過ぎて濡れた
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/21(水) 23:42:04.03 ID:GnxYOq1do
告げ口した奴減点だ減点
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/22(木) 00:26:43.85 ID:x8I6nq9p0
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/22(木) 13:29:07.05 ID:L9w85L6Ro
告げ口と言うと聞こえが悪いけど実際身内がそうゆう人と付き合ってるってなると心配じゃね?
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/22(木) 20:06:03.21 ID:Zh8u7bRso
本人に言うならともかくいきなり匿名で学校宛はないだろ
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/22(木) 20:58:14.41 ID:WN4kQKsbo
作者です
今日は諸事情あって投下できません
明日再開しますのでご了承ください
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/22(木) 22:52:25.60 ID:vbCr1toIO
待ってるぞい
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 00:07:43.46 ID:Mz0YpgBxo
報告おつ

>>422
リスクある事をしていたのだから学校に匿名で宛てられようが自業自得。
身内の犯行だろうとね。
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 01:37:35.53 ID:oT3Qq6yLo
あれ?
こう言う形で告げ口するやつってどうなのさって話だと思ってたら
なんで女が自業自得って話になってるの?
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 06:08:42.28 ID:00xA87UFo
>>426
言葉足らずだったようですまぬ。
自分でリスク背負うような事を蒔いていた訳だし、その情報を第三者(告げ口した人)がどう扱おうと第三者に対して疑問の余地は生まれないでしょ、と言いたかっただけ。別に法に触れるような事をしていないしね。
弱味を見せた方が負けという2ch的な考えかもしれんが俺はそう思ってしまう。
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/23(金) 08:07:13.82 ID:uRjuzD4so
なんか夜道を歩いたレイプ被害者が悪いみたいな話になってるな
自業自得では有るけど
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 08:43:28.97 ID:U9rWJm8wo
>>428
それ例えになっとらんよ。法に触れている内容だし。
それに状況分からんと自業自得とも言い切れん。
あと自分から進んで飛び込むリスクと実生活で伴う可能性のあるリスクを一緒にされても困る。
まあ、一番言いたいのは感じの悪い例えを出すために、レイプ被害者で例えるのは如何なものかと思うよ。

こんなんで議論ぽくなられてもどうせ平行線というかスレ汚しになるので、このレス以降俺はもう触れません。
お目汚し失礼しました。
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/03/23(金) 09:29:43.19 ID:QYCVAdero
うるせー童貞どもだな。
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 16:22:58.24 ID:tuBuZamIO
スルー検定開催中
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/03/23(金) 18:49:49.47 ID:L+UWBa8eo
黙って読むのはとても難しい事なんですね
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/23(金) 22:30:45.59 ID:ObZUNLRqo
兄(何とか担任が来る前に学校から抜け出せた。とりあえずあいつの家に向かいながら電話かけてみよう)

兄(・・・・・・)

兄(出ねえ)

兄(これからあいつどうなるんだろ。とりあえず自宅謹慎、先生から事情聴取かな)

兄(それから下手すれば停学か)

兄(女が停学になるにしても、何で停学になったかを学校が生徒に公表したりしないだろうな。そんなことになったら本当に女はお終いだ)

兄(いや、女神行為をしてたから停学なんてそんなことを公表するわけがない。生徒にショックを与えることになるし、何より学校の評判も落ちるし)

兄(・・・・・・ああ、もう頭が混乱して今俺は何をすればいいのか考えられねえ)

兄(とにかく、女と連絡を取ろう。それに撮影したのは俺なんだからある意味俺にも責任があるんだ)

兄(・・・・・・)

兄(早く駅まで行って電車に乗ろう。電車の中でメールすればいい)

兄(・・・・・・よし)

兄(下りの電車に何とか間に合った・・・・・・と、とにかくメールを)

兄(・・・・・・)





fron:兄
sub:無題
『とにかく携帯に連絡してくれ。女神行為が担任にばれたのか? ・・・・・・すごく心配している。連絡くれ』
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/23(金) 22:33:57.10 ID:ObZUNLRqo
休み時間 携帯電話での会話


『うん、わかった。とりあえずうまくいったんだね』

『と思うけど。とにかく今朝は女は登校してない。それに、それとなく兄を観察したんだけど、朝のホームルーム前にすごく慌てた様子でどこかに飛び出してったし。学校が動き出していることは間違いないと思うな』

『・・・・・・』

『どうしたの?』

『こんなことしてよかったのかなあ』

『何を今更。自分だって例の下着姿の画像を見た時は、女のこと殺してやりたいとまで言って泣いてたくせに』

『それはまあ、そうは言ったけど』

『当然の報いでしょ。単なるぼっちかと思ったらビッチでもあったとはね』

『・・・・・・それ、洒落のつもり?』

『・・・・・・うるさいなあ。とにかくこれで少し様子見だね』

『ねえ』

『何?』

『こうなったことはあの人の自業自得だとしてもだよ』

『うん』

『これって、あの二人を別れさせることにはならないんじゃない?』

『うん、多分そうだろうね』

『じゃあ・・・・・・いったい何のために学校にこんなことちくったの?』

『これで終わりじゃないし』

『え?』

『学校だって本人に厳重注意して停学くらいはするだろうけど、犯罪を犯したわけじゃないから、今回はそれ以上はね』

『・・・・・・』

『だからさ、校内の生徒全員に女が何をしていたかを知らせなきゃ意味ないと思う』

『まさか・・・・・・』

『うん。やり方はこれからよく考えるけど。そこまでやれば彼女だって、というか彼女の両親だってこのまま何もなかったことにはできないでしょ』

『・・・・・・』

『少なくとも転校、場合によっては引越しするくらいには追い詰められるんじゃない?』

『・・・・・・もう止めようよ。何か怖い』

『あの二人を別れさせたいんでしょ?』

『・・・・・・それは』

『それが兄のためなんでしょ? もう始めてしまったことだし、今更引き返かせないでしょ』

『・・・・・・』
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/23(金) 22:36:53.02 ID:ObZUNLRqo
 結局、その日俺は女と会えなかったし女から連絡が来ることもなかった。女はメールに反応しなかったし、女の家まで行って恐る恐るチャイムを鳴らしてみたものの、静まり返った女の家からは何の反応もなかった。

 俺は途方にくれた。いったいこの先どうすればいいのだろう。女の家の前にいても仕方がないけど、今更女のいない学校に戻る気はしなかった。俺はそのまま自宅に向かって混乱した感情を持て余しながら歩き出した。ひどく混乱していた俺だったけれども、歩きながら考えているとすこしづつ疑問点が思い浮んできた。兄友が担任の鈴木先生の言葉を正確に覚えているとすると、鈴木先生は女の親にこう言ったのだ。



『女子の高校生が下着姿の際どい写真をネット上で公開してたんですからね。女さんは学校では友だちこそ少ないようでしたけど、これまで成績も素行も何も問題はなかったのに。もちろんいじめられているということもなかったし』
『とにかく、投書に書いてあったURLをそちらにお送りします。ご自分の目で娘さんかどうか確認してみてください。まあ、誰が見ても女さんであることは間違いないと思いますが』



 兄友の記憶が正しいとすると、鈴木先生は緊急時の連絡網に記載してある自分の携帯のメアドに送られてきたメールを開き、そこにあるURLを踏んで女の下着姿を確認したことになる。だけどよく考えれば女は女神行為をする時は、自分のうpした画像を15分くらいで削除しているのだ。削除が早すぎて即デリ死ねよとか叩かれるくらいに徹底して。

 昨日と今日は女は女神行為はしていない。昨晩、俺の撮影した画像が自撮りじゃなくて彼氏とセックスした時に彼氏が撮影したんじゃないかという疑惑に答えるレスはしていたけど、その時は画像そのものはうpしていなかったのだ。それなのに鈴木先生が女の画像を見られたはずがない。俺は何だか嫌な予感がした。額から汗が滲んでくる。俺は足を早めて自分の家に駆け込むようにして入った。そして、リビングのパソコンを起動した。
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/23(金) 22:40:54.71 ID:ObZUNLRqo
 パソコンが起動すると、俺はすぐ検索サイトを開いて女のコテトリを入力した。以前も同じワードで検索したことがあったのだけど、最初のほうに女神板のスレがヒットしたのでそれ以降の検索結果は確認していなかった。でも今日は違った。検索結果が表示されたディスプレーを眺め、俺は女神板以外にヒットしたサイトを確認し始めた。あの時、何で検索結果を確認しなかったんだろうと思うほど、ヒットしたサイトは少なかった。その上位にヒットしたのは当然ながら全て女神板のスレだった。


【貧乳女神も】華奢でスレンダーな女神がうpしてくれるスレ【大歓迎】
【緊縛】縛られた女神様が無防備な裸身を晒してくれるスレ【被虐】
【女神も】女神様雑談スレ【住人もおk】


 その下にあるリンクには見慣れないタイトルが表示されていた。


『今春入学したばかりの処女のJD1が大胆な姿を露出!!―ミント速報過去ログ』


 俺はそのリンクをクリックした。そこはミント速報とかいうサイトで、やたらに有料動画とかの宣伝リンクが連なっており、ページ全体が女性のあられもない裸体で埋め尽くされているようなアダルトサイトだった。でも、そこに浮かび上がったメインの記事はよく覚えているものだった。


モモ◆ihoZdFEQao『こんばんわぁ〜。誰かいますか』
モモ◆ihoZdFEQao『人いた。最近恋に落ちたせいか痩せてますます貧乳になりました(悲)』


 そして、そこには画像を開くまでもなく最初から女の画像が表示されていた。それは、俺が女にメールを貰って初めて見た時の、女神板にうpされていた女の際どい姿の画像だった。

 ・・・・・・女があれほど気を遣って削除していた女神板の画像は、こうして半永久的に他のサイトに転載され、誰でも閲覧できるようになっていたのだ。
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/23(金) 22:41:51.82 ID:ObZUNLRqo
短いですけど今日は以上です

明日また投下予定ですが、しばらく辛いシーンが続くと思います

ではお休みなさい
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 23:27:35.41 ID:hEfvKTPzo
おやすみー
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/24(土) 04:18:23.41 ID:vFsdxgzyo
幼馴染と妹に殺意ががががががが(´Д` )
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 08:31:46.59 ID:6JJtEyS1o
男は、女の浮気で女自身を責める
女は、男の浮気で浮気相手女性を責める

男女心理の違いがここにも
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/03/24(土) 10:14:40.12 ID:YppB8/cHo
辛いシーンやめてくださいお願いします

というか幼馴染黒すぎるぞ
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 10:26:58.93 ID:iKptrNjIO
ストーリーに関わる作者への要望やめてくださいお願いします

というか>>441痛すぎるぞ
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 15:18:25.05 ID:9wLDvyYQo
自治ですか(笑)
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/03/24(土) 15:25:04.71 ID:1ENrkEIso
ケンカはやめて!(切実)
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 21:56:09.04 ID:LPHlJQcIO
うるせー童貞どもだな。
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/24(土) 23:09:51.43 ID:36WXtLi1o
 もう間違いなかった。鈴木先生が確認したのはこの画像だろう。そして、目に線が入っているとはいえ女をよく知っている人には、その画像が女のものであることはすぐにわかったと思う。女は、いや女ならネットとか詳しいのだからこいつが大丈夫というなら大丈夫だろうと安心していた
俺も、今思えば本当にバカだった。まとめサイトのことは知っていた。そもそも女の話では、2ちゃんねるに入り浸るようになったきっかけはまとめサイトだったはずだ。それなのに自分がうpした画像やレスしたスレが転載される可能性があることに全く気がついていなかったのだ。

 俺は今自分がどうすればいいのかわからなかった。女との連絡は相変わらず取れない。女はこの先どうなるのだろうか。

 それについて考えているうちに、俺は次第に落ち着きを取り戻してきた。女の女神行為が学校に知られたことは大変なことだったし、今頃女はどこかで学校側から事情聴取をされているかもしれない。だけど、女がしたことは犯罪ではないことは確かだし、おそらく、直接的な校規違反ですらないはずだった。学生としてふさわしくない行動を取ったということで、停学くらいにはなってしまうかもしれないが、それ以上の処分はないだろう。

 俺は女の処分の程度に思いが至ったせいで、更に落ち着きを取り戻した。女にとって最悪なのは周囲の生徒に自分の女神行為を知られることだろう。そうなったらもう、元のようにぼっちに戻るくらいでは済まない。噂に耐えかねて学校は中退することすらありそうだった。ただ、
学校側が女の処分の理由を公表することは考えられない。教師の不祥事ではないのだから、過ちを犯した生徒の将来への配慮ということは必ずなされるだろう。それに、学校の評判を落とすということも考慮されるに違いない。女が停学処分で自宅謹慎していることについて、クラスの同級生には家庭の事情でしばらく女は休みだと言うように伝えられるに違いないだろう。

 女にとっては自分の両親に自分が親に隠れてしていたことを知られてしまったことは辛いだろう。両親との関係はぎくしゃくするだろうし。そして女の処分が軽かったとしても、当然ながら女の女神行為はこれで終わりだろう。もう、ネット接続すらさせてもらえないかもしれない。当然、俺が女の肢体を撮影することもなくなるわけだ。

 でも、それはもう仕方ないことだった。女が登校してきたら二人で話し合って最初からやり直そう。俺たちは、俺と女神ではなくなった女は、この機会に普通の高校生らしい交際だってできるはずだ。
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/24(土) 23:11:22.61 ID:36WXtLi1o
 それに、その時もう一つ心が軽くなる思い付きが俺の心に浮かんだ。このパソコンの履歴にはこのまとめサイト、ミント速報は見当たらない。仮に妹が女神板でモモのレスを見かけたとしても、ミント速報まで見つけたという痕跡はないのだ。それに妹が普段からこんなアダルトサイトを見ていたとは思えなかった。

 うちの学校はマンモス校で生徒数がやたら多い。各学年ごとに3階建ての校舎が別れているのもそのためだ。それだけの数の生徒がいれば一人くらいミント速報を普段から閲覧しているやつがいても不思議ではない。多分、その誰かがこの画像の主が女であることに気がついて、担任
の鈴木先生にちくったのだろう。俺が兄友からこの話を聞いた時、最初に頭を過ったのは妹のことだった。でも、これなら妹のことを疑わなくてもいいのかもしれない。なによりこのミント速報というアダルトサイトはいかにもアクセス数が多そうだった。俺は念のためにこのサイトの名前で検索してみることにした。

 検索結果は膨大だったけど、とりあえず俺は最初の方にヒットしていた「ネットスラング用語集」とかいうサイトを開いてみた。
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/24(土) 23:13:08.02 ID:36WXtLi1o
『ミント速報(みんとそくほう)』

『誰でも無料で閲覧できるアダルトサイト。2ちゃんねるの女神板に貼られた画像、動画を無断転載しているまとめサイトの最大手』

『女神のレス、画像、動画の転載を繰り返すことで巨大化し現在では毎日数十万のアクセスを稼ぎ十万人規模の利用者がいると言われている』

『過去にミント速報に転載されたことにより、女神の素性が割れて、氏名、年齢、学校や職業、更には住所までネット上で大々的に晒された事件が何度も起きている札付きのサイト』

『通常は女神板に貼られた画像は身バレや転載防止のために即座に削除されるが、ミント速報を含むアダルトサイト管理者は、女神板に貼られた画像、動画を自動で回収するツールを使っているとされている』

『また、複数の協力者が女神板に常駐していて、画像が削除される前に女神の画像を回収し、アダルトサイトの管理者に提供しているとも言われている』
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/24(土) 23:14:35.76 ID:36WXtLi1o
 これが事実なら俺と女はこれまで無防備過ぎたのだろう。でも、そのことを今更後悔しても仕方がなかった。それより、このミント速報は毎日数十万のアクセスがあると記されている。これだけの利用者がいれば、その中に女をよく知っているうちの生徒がいても不思議はない。

 女のことは心配でたまらなかったけれど、それでも俺は女を陥れた犯人が妹ではなかったことに安堵していた。というより俺は、妹が犯人でないと思い込みたかったのかもしれない。そのため妹が犯人であることに否定的根拠が見つかったことに安堵していたのかもしれなかった。その時、俺はふと妹が突然購入したノートパソコンのことを思いついた。もしあのパソコンの閲覧履歴にミント速報があったとしたら。

 ・・・・・・再び心が重くなってくるのを感じながら、俺は壁にかかっている時計を眺めた。まだ、昼の12時30分だった。学校では今昼休みの最中だ。

 妹の留守中に妹の部屋に勝手に入り妹のパソコンを調べることに、俺は少しためらいを感じたけど、妹の行動の真実を解き明かす方が優先だと、俺は自分に言い聞かせた。俺はリビングのパソコンを終了させて、2階の妹の部屋に向かった。
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/24(土) 23:16:45.97 ID:36WXtLi1o
 見慣れた妹の部屋に入ると、机の上に置かれているノーパソを開いて電源を入れた。一瞬、パスワードがかかっていたらどうしようかと思ったけれど、妹のパソコンはしばらくして無事に起動を終えた。俺はブラウザをクリックした。

 ブラウザの起動時に表示されるホーム画面は、このパソコンのメーカーが運営するポータルの画面だった。今のところ怪しいところは何もない。まず俺はブックマークを開いてみた。

 ・・・・・・その結果は微笑ましいというか、健全な女子高生そのものだった。


『お手製お惣菜のヒント』
『お弁当に使えるレシピ』
『ガールズ・スタイル―女子中高生のためのファッションブログ』
『ツィンクル・スター:携帯小説ブログ』
『読モになろう!』


 俺はブクマされているサイト名を確認しながら、ブックマークの画面をスクロールしていったけど、別に不審なサイトは見当たらない。


『恋占い』
『新作電子書籍のご紹介「鬼畜な兄貴:お兄ちゃんもう許して」』



 鬼畜な兄貴じゃねえよ。俺は思わず心中で舌打ちした。でもまあ、妹のこの手の趣味は昔からだ。俺は次に閲覧履歴を開いた。3週間前からの履歴が残っている。これはサイト名が表示されずURLだけが羅列されているだけだったので、俺は時間をかけてURLをクリックして妹が閲覧したサイトを確認していくしかなかった。これには結局1時間以上かかってしまった。

 ・・・・・・そしてほっとしたことに、その閲覧履歴の中にミント速報はなかったのだ。
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/24(土) 23:19:56.86 ID:36WXtLi1o
 思い切って妹のパソコンを調べてみてよかったと俺は思った。妹は女を陥れた犯人ではなかったのだ。そして俺は、女とは女が登校してきたらよく話し合ってこれからは慎重に普通の高校生のカップルとして、女と付き合えばいい。今朝の衝撃的な出来事に遭遇し動揺しまくっていた俺が、それからわずか半日程度でここまで考えをまとめられたのも、兄友のおかげかもしれないな。俺はぼんやりとそんなことを考えながら、妹のパソコンを閉じようとした。

 その時、俺はふと妹の閲覧履歴の中に残っていた掲示板のことを思い出した。それはミント速報ではなかったので、調査を急いでいた俺は、その時はその掲示板を見もしないで次のURLをクリックしたのだった。けれども、こうして少し安心した気持になっていた俺は、その掲示板を見てみようと思いついた。その掲示板に俺が惹かれたのは、掲示板のタイトルにうちの学校の名前が書いてあったからだった。


『××学園の生徒集まれ〜』


 これはいわゆる学校裏サイトってやつだろうか。まだ、妹の帰宅までには時間は十分にあった。俺は少し心が軽くなっていたこともあり、好奇心にかられてその掲示板を見ることにした。レスの大半は教師の悪口やテストや宿題の愚痴だった。あと、自分が気になっている女子のことを書き込んでいるレスもあった。誰々がキモイとか、よく聞くいじめの様なレスは見当たらず、裏サイトというほどのものじゃねえなと俺は考えた。もちろん教師の悪口がある時点で学校には知られたらアウトなんだろうけど。

 全てのレスは匿名だったので、誰がレスしているのかはわからないけど、一度うちの担任の鈴木先生のことを、自分の担任の鈴木がうざいとか書いてあるレスがあった。少なくともそいつは俺のクラスメートだろう。

 レスを読んでいるうちに飽きてきた俺がそろそろ読み止めようかと思い始めたその時、突然、女の実名が書き込まれているレスに辿りついた。
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/24(土) 23:20:37.28 ID:36WXtLi1o
 それは最近のレスだった。一瞬、嫌な予感がした俺だったけれども、そのレスを読んでいるうちに何だか心が温かくなっていくのを感じた。



『2年2組の女さんって、最近感じよくね?』

『あ〜。うちもそう思った。初めは人間嫌いな人なのかなって思ってたんだけど。最近良く話すけどいい子だよ。成績いいけど偉そうにしないし』

『うちも女から本借りちゃった。つうか今度一緒にカラオケ行くんだ☆』

『つうか女って可愛いよね。俺、告っちゃおうかな』
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/24(土) 23:22:05.17 ID:36WXtLi1o
 これだけ女は同級生に受け入れられている。これなら女神行為ができなくなっても、女の言う「承認欲求」とやらは十分にリアルでも満たされるだろう。この掲示板を見てよかったと俺は思った。掲示板のレスはあと少し残っていたから、俺は最後まで読んでしまうことにして、画面をスクロールした。




『誰よあなた。もしかして2組のイケメン?』

『違うよ。俺2組じゃねえし。つうか2年ですらねえよ』

『・・・・・・女って兄と付き合ってるんだよ。知らないの?』

『嘘。マジで!?』

『マジマジ』

『でもさ、兄と兄友って幼馴染さんを取り合ってたんでしょ? 兄は幼馴染さんを諦めちゃったのかな』

『まあ、兄友が相手じゃ勝ち目は(笑)』




 ・・・・・・それは少しへこむ内容のレスだった。そして語尾に(笑)がついているレスが一番最後のレスだった。

 まあ、いいいや。女は今ではリア充だ。学校側が今回の処分を公表しない限り、これ以上事が大きくなることはないだろう。

 俺は妹のノーパソを閉じ、階下に降りた。そう言えば朝から何も食べていない。俺はキッチンに行って冷蔵庫を漁ることにした。
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/24(土) 23:22:39.62 ID:36WXtLi1o
本日は以上です

また明日再開します

おやすみなさい
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/25(日) 00:00:41.31 ID:catOxtR9o
乙です
女が気になるなぁ
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/03/25(日) 01:15:30.40 ID:GmsaUx2no
惰性で見てるけどなんだかねえ
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/25(日) 06:11:45.60 ID:1YFLNvZSO
惰性で見てるとかダセエ
なんつって
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/25(日) 11:19:49.93 ID:MQ0ThUMDO
山田くぅーん、座布団全部やぶいちゃってー
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/25(日) 14:47:55.57 ID:KijFCuWIO
惰性野郎も読ませる魅力があると言う事だな、うんうん
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/25(日) 23:28:30.78 ID:XJtVe7gno
妹「・・・・・・お兄ちゃん」

兄「おう・・・・・・おかえり(こいつを疑って悪かった。少し優しくしてやらないとな)」

妹「・・・・・・ただいま」

兄「早かったな。短縮授業とかだった?」

妹「・・・・・・」

兄「どうした?」

妹「別に。どうもしてないよ」

兄「そんならいいけど」

妹「・・・・・・お兄ちゃんこそどうしたの?」

兄「(うん?)どうしたって何が」

妹「今日、学校早退したんでしょ」

兄「ああ、それか。ちょっと体調崩してさ。あ、家に帰ったら良くなっちゃったんだけどね・・・・・・まあ、サボりみたいなもん?」

妹「それならいいけど」

兄いや、サボりだとしたらよくねえだろ」

妹「・・・・・・お兄ちゃん?」

兄「うん?」

妹「お兄ちゃんは今日早退したから知らないだろうけど」

兄「うん」

妹「お姉ちゃんから聞いたんだけど、女さんってお家の事情でしばらく学校をお休みするんだって」

兄「(やっぱりそうか)・・・・・・うん」

妹「お兄ちゃん、知ってたの?」

兄「・・・・・・聞いてはいなかったけど、そうなるかもとは思っていた」

妹「そか」

兄「おまえ、さっきから何を言いたいの?」

妹「うん、わかんないよね。ごめん」

兄「・・・・・・」

妹「あたし、やっぱりブラコンなんだろうね」

兄「はぁ?」

妹「ブラコンだから、あたし。たとえ学校中がお兄ちゃんの敵になっても、あたしだけはお兄ちゃんの味方だから」

兄「・・・・・・」

妹「お兄ちゃん、女さんのこと本当に好き?」

兄「(今更何言ってるんだこいつ)ああ」

妹「そうだよね・・・・・・うん、そうだよね」

兄「おまえ、さっきから何を」

妹「お兄ちゃんが好きなら、女さんがどんな人でもあたしも女さんの味方になるよ」

兄「おまえ、いったい俺に何を言いたいの?」

妹「・・・・・・うん。これだけじゃ、わかないよね」

兄(何か凄く嫌な気分、嫌な予感がする。胃が痛い・・・・・・)
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/25(日) 23:31:46.55 ID:XJtVe7gno
妹「リビングのパソコンのメールって、共用じゃない?」

兄(あ・・・・・・!)

妹「それで前にメーラー開いたら、女さんからお兄ちゃんあてのメール見ちゃって」

兄「(画像は削除したのにメールは放置しちゃってたんだ。俺ってどうしようもねえな)・・・・・・おまえ」

妹「うん。最初は何のことだかわからなかったけど・・・・・・URLがあったから」



from :女
sub  :無題
本文『じゃあ、そろそろ始めるね。今のところ他の子がうpしてる様子もないから、見てても混乱しないと思うよ。念のために繰り返しておくけど、女神板はうpも閲覧も18禁なんであたしは19歳の女子大生って名乗ってるけど間違わないでね。』

『モモ◆ihoZdFEQaoのがあたしのレスだから。あと結構荒れるかもしれないけど動揺して書き込んだりしちゃだめよ? 兄君は今日はROMに徹して』

『ああ、そうそう。これは余計なお世話かもしれないし、あんまり自惚れているように思われても困るんだけどさ。今日うpする画像はすぐに削除しちゃうから、もし何度も見たいなら見たらすぐに保存しといた方がいいと思うよ』

『じゃあ、下のURLのスレ開いて待っててね。8時ちょうどに始めるから』

『やばい。何かドキドキしてきた(笑) 女神行為にドキドキなんかしなくなってるけど、あんたに嫌われうかもしれないって思うとちょっとね。でも隠し事は嫌いなので最後まで見て感想をください。あ、感想ってレスじゃないからね』

『じゃあね』



兄「・・・・・・見たのか?」

妹「うん。画像は見れなかったけど、付いてたレス読めば女さんが何をしていたかはわかった」

兄(まじかよ。つうか、まさかこいつが鈴木先生に。いや、それは違うことは今日確認できたんだ)

妹「正直、ショックだったよ。お兄ちゃんに初めてできた彼女が、誰にでも裸を見せるような人だったなんて」

兄(女はそんなんじゃねえ・・・・・・でも、普通の人間の反応としてはきっと正しい反応なんだろうか)

兄(俺と女の関係は、女の女神行為なんて超越してるって思ってたけど。今更ながら、こういうのって人にわかってもらうのは難しい)

妹「でもね。あたしはそれでもお兄ちゃんの決めた人なら理解しようと思ったの」

兄(・・・・・・え?)

妹「誰にでも体を見せられるような人でも、たとえ水商売をしている夜の女の人でも、お兄ちゃんが決めた人なら反対はよそうと思った」

兄「・・・・・・おまえ、さっきからいったい何が言いたいんだよ!(これ以上は俺のメンタルが持たねえ)」

妹「お兄ちゃん」

兄「・・・・・・何だよ」

妹「明日も学校休んで」

兄「・・・・・・え?」
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/25(日) 23:34:05.87 ID:XJtVe7gno
兄「おまえ、何言ってるんだ。女が休んでるからって俺まで学校を休む理由はねえだろ」

妹「体調不良なんでしょ? 念のために休んで」

兄「何でだよ? もう大丈夫だってえの」

妹「どうせ今日だってサボったんでしょ? それならしばらく休んでた方がそれっぽいって」

兄「別に一日くらいサボったことがばれたっていいよ。むしろ何日もサボる方が問題だろうが」

妹「・・・・・・お兄ちゃんが学校休みづらいなら、あたしも付き合って一緒に休んであげるけど」

兄「だから何でそこまで俺を休ませようとするんだよ!」

妹「・・・・・・」

兄「女が、女神行為をしてたのは事実だよ。おまえが見たとおりだ」

妹「・・・・・・うん」

兄「でもよ、人間関係なんて、恋愛関係なんて人様々だろ? 俺は女の女神行為なんて承知の上で付き合ってるんだよ!」

妹「お兄ちゃん・・・・・・」

兄「俺は学校に行く。女のことは別に恥じてねえし、女の停学中だって俺がこそこそする理由なんてねえよ」

妹「・・・・・・停学ってどういうこと? 女さんって家庭の事情で学校を休んでるんじゃないの?」

兄(あ・・・・・・)

妹「・・・・・・そういうことか」

兄「おまえ、本当に知らなかったのか」

妹「うん。だけどそうか。学校には裸の画像を掲示板に貼ってたことがわかっちゃったんだね」

兄「(こいつ、本当に知らなかったのか。女がなぜ今日登校しなかったその訳を)

妹「そうだったんだ。それは初めて知ったけど。さっきも言ったけど、女さんとお兄ちゃんのことは応援するよ。でも」

妹「それなら、なおさらお兄ちゃんは明日学校に行かない方がいい」
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/25(日) 23:38:41.08 ID:XJtVe7gno
 俺にはその時の妹の言葉が理解できなかった。妹は女が女神行為をしていたことに気づいていた。そして、それは俺の不注意のせいだった。画像の削除とかには注意していたのだけど、俺は不注意にも携帯からパソコンに転送した女からのメールをそのまま放置してしまったのだ。妹はそのメールから女神板に辿りつき、女のレスを読んだのだった。あのメールには女のコテトリも明確に記されていたので、誤解する余地は全くなかっただろう。

 妹が俺の彼女が女神だということに気づいていたことは、今日明白になった。それでも、妹には女の画像は見られなかったはずだった。妹がミント速報に辿りつき女の画像を見た形跡がないことは、今日一日でわかっていたし、鈴木先生に女の女神行為をちくって女を窮地に陥れたのがこいつではないことも、わかっていた。

 それに、こいつは俺と女の交際に反対しないと言ってくれた。それはブラコンなこいつにとっては最大限の譲歩だったはずだ。それなのに、なぜこいつは俺に明日登校することを止めさせようとするのだろう。こいつは、何か俺が知らないことを知っているのだろうか。

「何で俺が明日登校しちゃいけねえの」
 俺は妹に聞いた。

「俺は女神の女と付き合ってることを恥かしいなんて思ってねえよ。それに、そもそも学校の奴らには女が女神行為をしてるなんて知られてねえし」

「今日はね」
 妹は暗い表情で言った。

 俺はこれまで、妹のことは何でも知っていると思っていた。幼少の頃から、両親が不在がちなこの家で俺はこいつと二人きりで生きてきたのだから、こいつのことは何でも知っていたつもりだった。こいつが初潮を迎えた時さえ、うろたえながらもこいつにいろいろ説明し、幼馴染の助けを借りながらドラッグストアに生理用品を死にそうな思いで買いに行ったのだって俺だったのだから。

 でも、この時の妹の表情を眺めてもこいつが何を考えているのかはよくわからなかった。

「今日はそうだったけど」
 妹は繰り返した。

「明日も学校のみんなが何も知らないでいる保証なんてないんだよ」
 妹は俯いたままで続けた。

「何言ってるのかわかんねえよ。おまえ、何か知ってるなら教えてくれよ」
 俺は混乱しながら妹に言った。

「あたしにもお兄ちゃんに説明できるほど、知ってるわけじゃないよ。でも、明日学校で何かあったら、お兄ちゃんはきっと傷つくと思う」
 妹は一瞬だけ、俺の目を真っ直ぐに見つめてそう言った。

「あまり楽観的に考えない方がいいと思う。女さんのことも、お兄ちゃん自身のことも」
 元気のない声だったけれど、それでも妹は俺を見つめながら話を続けた。

「そうなっても、あたしだけはお兄ちゃんの味方だけど」
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/25(日) 23:39:44.58 ID:XJtVe7gno
短くてすいません。今日はここまで

明日また投下します

おやすみなさい
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/26(月) 00:23:11.18 ID:3U9vQWrU0
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 00:44:47.95 ID:fvStItsVo
どう展開するかwktk
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/26(月) 09:40:08.46 ID:Wa0k8BpBo
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/26(月) 20:55:31.18 ID:IAevmUR2o
作者です

すいませんけど、仕事が終らないので本日は投下できません。明日も微妙な感じですが、投下できない時はその旨告知させていただきます

申し訳ありません
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 22:21:02.04 ID:cGFqXHGDO
無理無いようにね
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 22:33:58.07 ID:Hwl0Z7YIO
おつかれんこん
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/27(火) 22:56:02.26 ID:Cuop5T9bo
翌日朝


妹「・・・・・・本当に今日、学校行くの?」

兄「休む理由なんてないからな。おまえ、何で俺が休まなきゃいけねえのか話してくれないし」

妹「話してくれないって・・・・・・自分にだってよくわかってないんだもん、話しようがないよ」

兄「だから、それがよくわかんねえって言ってるんだよ」

妹「直感的に不安になる時ってあるじゃん。お兄ちゃんはそういうことってないの?」

兄「ないとは言わねえけど、今は別にそういう感じはしない」

妹「まあ、あたしの思い過ごしならいいんだけど」

兄「・・・・・・」

妹「お兄ちゃん、今日は女さんもいないいんだし、あたしたちと一緒に登校してね」

兄「たちって・・・・・・」

妹「お姉ちゃんだよ」

兄(やっぱり)

妹「女さんと付き合い始めたからって、いつまでもお姉ちゃんや兄友さんと気まずいままでいてもしょうがないでしょ」

兄「いや、兄友はともかく幼馴染とは別に・・・・・・」

妹「それならいいじゃん」

兄「まあ、別にいいけど。でも、最近は兄友も一緒なんだろ?」

妹「よく知ってるね。兄友さんと一緒はいや?」

兄「俺は別に気にしねえけど、兄友がいやがるんじゃね?」

妹「そんなことないと思う。多分、兄友さんもお兄ちゃんと仲直りするきっかけとか探してるんじゃないかな」

兄「・・・・・・そうかなあ」

妹「とにかくもう行こ。遅れちゃうし」

兄「・・・・・・ああ」
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/27(火) 22:57:34.37 ID:Cuop5T9bo
隣の駅


妹「あ、お姉ちゃんおはよう」

幼「妹ちゃんおはよう」

兄「よ、よう」

幼「・・・・・・ようじゃないでしょ。やりなおし」

兄「お、おはよ」

幼「おはよう兄」クス

妹「兄友さんおはようございます」

兄友「おはよう妹ちゃん」

兄「・・・・・・」

兄友「・・・・・・」

幼「あんたたちさあ」

妹「二人ともあいさつうくらいしたら?」

幼「そうだよ」

兄「・・・・・・よ、よう」

兄友「・・・・・・お、おう」

幼「あんたたちはまた・・・・・・ちゃんとあいさつしなよ」

妹「まあいいじゃん、お姉ちゃん。照れ屋の男の人なりの精一杯のあいさつなんだよ、きっと」

兄「・・・・・・」

兄友「・・・・・・」

幼クス
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/27(火) 22:59:32.73 ID:Cuop5T9bo
教室内


兄「おはよ」

同級生女1「幼馴染おはよう」

兄「うん?」

同級生女2「兄友君おはよ」

幼「・・・・・・おはよ」

兄友「おはよう」

兄(こいつら俺のことは無視?)

兄(何なんだ。昨日の朝は女の休みのことを気にしてたくせに)

兄(女が停学だってばれたのか? いや、そんな訳ないな。幼馴染も女のことは、別に何も言ってなかったし)

兄(生徒で女の事情を察しているのは、妹と兄友だけのはず)

兄(じゃあ、いったい何んでこいつら俺のこと無視してるんだろ)

兄(考えすぎなんだろうな。たまたま俺に声かけなかっただけだろ。単なる偶然だよ、偶然)

兄友(・・・・・・)


昼休み


兄友「おい」

兄「・・・・・・何だよ」

兄友「女さん休みだし、おまえどうせ飯食う相手いねえんだろ」

兄「だから何だっつうの」

兄友「一緒に飯食わねえ?」

兄「(こいつ、本当に俺と仲直りしようとしてるのかな?)・・・・・・別にいいけど」

兄友「じゃあ購買で弁当かパン買って中庭で食おうぜ」

兄「(こいつ、幼馴染とはもう昼一緒に過ごしてねえのかな)学食でよくね」

兄友「・・・・・・いや、あそこで話すると周りに聞かれちまうしな」

兄「え?」

兄友「じゃあ行こうぜ」


中庭


兄友「とりあえずよ」

兄「ああ」

兄友「おまえが幼馴染にした仕打ちは腹立つけど」

兄「・・・・・・ああ(俺は別に悪いことはしてない自信があるけど、ここで反論してもまた前と同じことだろうな)」

兄友「でもよ、幼馴染も妹ちゃんもおまえのこと悪く思ってないようだし、このままじゃ俺だけ馬鹿みたいだからよ」

兄「・・・・・・それで?」

兄友「だから、とりあえず休戦にしようぜ」

兄「・・・・・・おまえはいったい何と戦ってたんだよ。俺は別におまえと戦ってたつもりはねえよ」

兄友「とにかくそういうことだから」

兄「ああ・・・・・・わかった」

兄友「そんで本題なんだけど」
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/27(火) 23:02:50.93 ID:Cuop5T9bo
兄「本題?」

兄友「何か教室の雰囲気、変じゃねえか? みんながっつうわけじゃねえけど」

兄「(ああ、確かに)変っていうより、俺が話しかけても無視するやつが結構いたな。全員に無視されたわけじゃねえけど」

兄友「それだよ」

兄「朝は気のせいかなって思ったんだけどよ。休み時間中もずっと無視されていたような(ぼっちの気持ちが少しだけ理解できちゃったもんな)」

兄友「絶対、女の停学と関係あると思うぜ」

兄「女がああいうことして停学になったっていうのは、学校側しか知らないはずだろ?」

兄友「ああいうことって一体何をしたんだよ。女さんは」

兄「・・・・・・(今のこいつになら相談してもいいか)ここだけの話だぞ?」

兄友「ああ」

兄「女神行為をしてた」

兄友「何だって?」

兄「だから女神行為だよ。おまえ、ネットとかそういうのに詳しいだろ?」

兄友「女神って、あの2ちゃんねる的な意味の女神か?」

兄「ああ」

兄友「・・・・・・鈴木が女の親に話してたのってそういうことだったのか。そういや下着姿がどうこう言ってたもんな」

兄「・・・・・・まあ、そういうことで、女は多分停学で自宅謹慎になったんじゃないかと」

兄友「ないかとって、おまえ女さんと連絡取れてねえの?」

兄「あいつ、電話もメールにも返事しねえよ。女の家に行ったけど、誰もいないっぽい」

兄友「そうか・・・・・・。まあ、おまえも女さんのことは心配だろうけどさ。でも、女さんの停学が何日間かわかんねえけど、停学期間が終ったらまた女さんと会えるさ」

兄「うん。俺も自分にそう言い聞かせてる」

兄友「それにしても変だよな」

兄「変って何が?」

兄友「おまえは昨日のホームルームの時、教室にいなかったから知らねえだろうけどさ、鈴木は女さんは家庭の事情でしばらく学校を休むってみんなに説明したんだよ」

兄「うん、そりゃ鈴木だってとても本当のことは言えないだろうからな」

兄友「そんでみんな一応は納得してたみたいなのによ、今日になっておまえと話をするのを避けるやつが出てくるって、おかしいだろ」

兄「まあ、そう言われりゃそうだな」

兄友「何か嫌な予感がするな」

兄「どういうことだよ?」

兄友「・・・・・・どっかから女の女神行為の噂が流れてるとしか思えねえじゃん」

兄「まさか・・・・・・いったい誰が」

兄友「鈴木にチクったやつじゃねえの。そいつくらいしか、真実を知ってたやつはいないはずだし」

兄「「(まずい。兄友の言うことが本当なら、女にとって最悪の結果になるじゃねえか)どうしよう」

兄友「俺が探ってみる。俺はおまえと違ってシカトされてるわけじゃねえし」

兄「兄友、悪い」

兄友「女子高校生の女神行為とかって、正直俺には理解できねえけどよ。女が傷付くとおまえも傷付くだろ。そうすっと幼馴染とか妹ちゃんも辛い思いをするからな」

兄「・・・・・・悪い」

兄友「だからおまえとか女さんのためにするんじゃねえよ」
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/27(火) 23:08:56.51 ID:Cuop5T9bo
自宅


兄(まずい。兄友の言ってることが本当ならすげえまずい。これが本当だったら、女だって自分の秘密が知られてる学校なんかに復学できるわけがない)

兄(噂だけならまだしも、学校のやつあらにミント速報の画像を見られたら・・・・・・)

兄(自分のああいう姿を同級生に、いや下手したら全校生徒に見られてるかもしれないってことだもんな)

兄(ちくしょう。気ばかりが焦ってて、何も前向きな考えが浮かばねえ)

兄(とにかく兄友に期待するしかねえな。あいつ、授業が終ったあとで)


回想

兄友『俺は少し探ってみるから、おまえはまっすぐ家に帰った方がいいぜ』

兄友『おまえがいたら、間違いなく知ってることを話してくれるやつなんていねえだろうし』

兄友『後でおまえに電話かメールで報告してやるから、自宅に戻ってろよ』

兄友『あと、幼馴染と妹ちゃんにも事実を話して協力してもらっていいな? あいつらなら秘密をペラペラ喋ったりはしないだろうし・・・・・・まあ、内心どう考えるかは別にして』

兄友『じゃあ、後でな』

回想終了


兄(妹もまだ帰ってこないし、三人で情報収集してくれてるのかな)

兄(落ちつかねえ。まさか、このまま二度と女と会えないんじゃねえだろうな)

兄(それは嫌だ。せっかくあいつと結ばれたのに、こんな風にあいつとの仲が自然消滅するのは嫌だ)

兄(俺が学校でシカトされたって仕方ないけど、女とこのまま会えなくなるのは絶対に嫌だ)

兄(・・・・・・何でこんなことになったんだ)

兄(・・・・・・)


ブルルル


兄(携帯だ・・・・・・メールか)パカ

兄(兄友だ)カチ


from:兄友
sub:人に聞かれるとまずいからメールで
『やべえよ。女さんの女神行為もろにばれてるつうか、どんどん知ってるやつが増えてるぜ』

『まとめサイトの画像の場所がみんなに知られちまってるぞ』

『おまえ、うちの学校の裏サイト知ってるか? URL貼っておくからとりあえず見てみろ』

『いいか、落ち着けよ。慌てたって何の解決にもならねえんだからな』

『また、家に帰ったら電話する』


兄(ま、まさか)

兄(このURLをクリックすると)ドキ
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/27(火) 23:09:27.26 ID:Cuop5T9bo
『××学園の生徒集まれ〜』


『おい・・・・・・2年2組の女のやつ、ミント速報ってとこで裸の写真をアップしてるぞ』
『マジだ! これ、女子大生とか言ってるけど、どう見ても女じゃん』
『釣りだと思ったらマジじゃんか!』
『これはアウトだろ』
『つうか、うち2組だけど今日担任が女はしばらく休みだって言ってた』
『学校にばれたんじゃねえの?』
『ぼっちかと思ったらびっちだったでござる』
『これはきついわ。兄もショックだろうな』
『変な女だと思ってたけど、ここまで酷いとは』
『前にさあ、援交がばれたやついたじゃん? あれより酷いよね』
『しかも何、この媚びたレス』
『手っ取り早くミントの女のレス張っておくね』


モモ◆ihoZdFEQao『こんばんわぁ〜。誰かいますか』
モモ◆ihoZdFEQao『人いた。最近恋に落ちたせいか痩せてますます貧乳になりました(悲)』
モモ◆ihoZdFEQao『画像は15分で削除します。ごめん』
モモ◆ihoZdFEQao『あと乳首はダメです。需要ないかなあ』
モモ◆ihoZdFEQao『リクに応えてみました。乳首はダメだけどM字です。15分で消します』
モモ◆ihoZdFEQao『ほめてくれてありがとうございます。じゃ最後は全身うpです。乳首なしですいません。15分で消します』


『うわぁ・・・・・・』
『・・・・・・きも』
『まじかよ・・・・・・俺、結構あいつのこと好きだったのに』
『兄もかわいそうだよね。初めてできた彼女がこれじゃさ』
『だから幼馴染にしときゃよかったのに』
『幼馴染には兄友がいるからなあ』
『うち、もう女と普通に話す自信ないよ』
『あたしも。つうか目も合わせられない』
『俺もそうだな』
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/27(火) 23:10:01.97 ID:Cuop5T9bo
本日は以上です

またできるようなら明日投下します

おやすみなさい
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 23:45:07.14 ID:1p/UG1xDO
いちおつ
胃が痛くてもう…早く続きが読みたいです
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/28(水) 01:34:33.31 ID:SE9VLJ0J0
乙、日本人の悪い所がよくわかる
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/28(水) 07:25:34.19 ID:0s+Cn6rIO
裏サイトまじこわい
ソースは私
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/28(水) 09:51:52.29 ID:SDVdnozbo
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/28(水) 22:52:51.75 ID:bCzAKQpio
兄(・・・・・・学校のやつらのこの反応・・・・・・これは酷すぎる)

兄(別に女は法律に違反したわけでもないし、誰に迷惑をかけたわけでもないじゃんか)

兄(昨日までは女を誉めていたのに、今日はみんなで女のことを貶しているなんて)

兄(女が下着姿の画像を誰かに見せただけで、何でここまでいじめみたいなことされなきゃなんねえんだよ)

兄(・・・・・・ちくしょう)

兄(百歩譲ってミント速報で女に気がついたやつが鈴木先生に報告したのはいいとしても、裏サイトでみんなにばら撒いて、晒し者にすることはねえだろうが)

兄(これは正義感からじゃねえ。面白半分にこんな残酷なことをしたやつがいるんだ)

兄(だいたいミント速報で女に気づいたってことは、そいつだってこんなエロなサイトを閲覧してったてことじゃねえか。普段からブクマでもしてるんだろう)

兄(そんなやつが、女の画像をばら撒いて、偉そうに気持悪いとか言う権利があるのかよ)

兄(・・・・・・面白半分・・・・・・でも、本当にそうか?)

兄(最初先生にチクって次に裏サイトで晒すとかってやり方には面白半分ではなくて、悪意のようなものを感じる)

兄(純粋な悪意・・・・・・)

兄(女は、学校じゃ目立たないただのぼっちだったはずだけど、実は女に恨みを持っているやつがいるのか?)

兄(考えたってわかんねえ。どっちにしても、これじゃ女が復学したとしても、とても学校で過ごせるような状況じゃない)

兄(どうすりゃいいんだ。女はこの裏サイトのこと知ってるのかな)

兄(・・・・・・)

兄(女と話がしたい。携帯・・・・・・)パカ

兄(女からは、やっぱ着信もメールもねえ)

兄(見るの辛いけど、裏サイト更新してみよう)カチ
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/28(水) 22:57:49.66 ID:bCzAKQpio
『おい。女のことでVIPにスレ立ってるぞ』
『マジで? URL貼ってくれ』
『これね』


 俺は更新した「××学園の生徒集まれ〜」の新着レスを見て、体が凍りつくような感覚を覚えた。裏サイト以外にも女の画像のことが拡散しているのか? 裏サイトの最新のレスにはVIPのスレへのURLが貼り付けられていた。俺は一瞬躊躇してから、観念してそのURLをクリックした。

 それはVIPのスレで、しかも俺が開いた時点でレス数は700越えていた。それだけでなく、スレタイの最後についている「3」という数字はそのスレがパートスレで、3スレ目であることを示しているのかもしれなかった。とりあえず、最初の数レスに「今北用ガイド」という解説みたいなレスが乗っていた。俺は震える手を何とか制御して画面をスクロールしながら、それを読んだ。




『【祭りに】高校2年の女の子が女神行為で実名バレwwwww3【乗り遅れるな】』



『今北用ガイド』

『女神板にjk2が緊縛画像をうp』

『即デリ安心(はあと)って思っていた情弱()なjkの甘い考えを裏切り、この子のレスと下着緊縛画像がミント速報に転載』

『暇なやつがその画像のexifデータを解析』

『携帯に登録されていたプロフィール情報がexifに記録されているのを発見、vipにスレ立て』

『流出したプロフィールは次のとおり』

『機種名称:○○のスマートフォン、実名:女、自局電話番号:090-×××―○○○○、メアド:×××.ne.jp』

『その後現在までに判明した女のプロフ:××学園2年2組』


 俺にはもう何も考えられなかった。vipに女の個人情報が晒されている。そればかりか、それに続く数レスを読んだだけでも、このスレは単に女の個人情報を晒しだそうとしているだけではなく、女に社会的制裁を加えようとしているスレだったのだ。

 以前も、時折この手のスレを見かけることはあった。でも、それは犯罪や公衆道徳に反して反社会的行為を犯した、そしてそのことをブログ等に自慢げに書いていた人が追求されていたはずだ。 女のしたことは、生理的に受け付けない人はいるだろうけど、誰に迷惑をかけたわけではないはずだ。女神板のスレの住人は感謝し、うpした女の承認欲求は充たされる。そのことのどこに犯罪行為や反社会的影響があるというのだろうか。

 それなのにこのスレのレスには、女を追い詰めようというレスで溢れていた。中には別に犯罪じゃないしいいじゃんという常識的なレスもあったけど、それらのレスは瞬殺され、面白半分に女を懲らしめようというレスがこのスレの大多数を占めていた。
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/28(水) 22:59:55.15 ID:bCzAKQpio
『××学園のホームページに、問い合わせ用の電話番号とメアドが乗ってるな』
『学校に電凸していいか』
『今日はもう遅いからな。明日朝一斉にやろうぜ』
『女のメアドにもメールしたけど反応なし』
『女の携帯電話もつながんねえな』
『誰か、××学園の関係者いねえのかよ』
『いるぞー。俺、××の3年だけど。こいつ、この前までぼっちだったけど最近彼氏ができたんだぜ』
『スネーク発見。自分が実名バレしてること、こいつもう気づいてるのか?』
『つうか女休んでるみたいだ。もう学校にバレてるんじゃね?』
『おい、まずいぞ。学校がこのことを知ってるとすると、もみ消しに走るぞ』
『つうか、これって最終目標は? 停学に追い込むでおk?』
『甘い。こんな破廉恥なことをしてたんだ。退学に追い込んでこそメシウマ』
『情弱ってだけで別に犯罪をしてた訳じゃないんだし、凸る必要なくね?』
『確かにな。飲酒喫煙とかじゃねえもんな』
『黙れ。こういう破廉恥な行動で未成年に衝撃を与えた影響は大きいだろうが』
『おまえらって、自分たちは女神を煽ってなるべくうpさせようとするくせに、こういう時だけ態度変えるのな』
『彼氏がいるリア充jkに嫉妬してるんだろ。このスレの童貞どもは』
『まあ、彼氏が可愛そうだから、女を追い詰めて別れさせてあげるのが俺たちのジャスティス』
『明日一斉に学校に抗議メールと抗議電話で凸るでおk?』
『おk。それで行こう。急がないともみ消されるぞ』
『××学園のやつ、スネークよろ』
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/28(水) 23:02:35.41 ID:bCzAKQpio
 俺の頭は真っ白で何も考えられなかった。退学に追い込む? 俺が可愛そうだから女を追い詰めて別れさせてやる? こいつらは何を言ってるんだ。真っ白だった俺の頭に次第に怒りの感情が漲ってきた。こいつら、面と向かって話すならともかく匿名掲示板であることをいいことに、好き勝手なことを言いやがって。俺は、実際にこいつらを目にしたら即座に殴りかかっていただろう。だけど、匿名の誹謗中傷の恐ろしさは反撃を許さないことだ。ここで女のことを追い詰めようとしてスレをお祭り状態にしているやつらは、自分たちが絶対に安全な立場にいることを承知して騒いでるのだ。

 俺はこのスレにレスしそうになる気持を必死で抑えた。こんなところで反撃のレスをしても無視されて終わりだ。それは数レスくらいはあった常識的で穏健な意見に対して、黙れというレスが即座にされたことからも明らかだった。

 もうこれ以上このスレを見続ける気力は俺にはなかった。俺は、スレを閉じてぐったりと椅子の背もたれに寄りかかった。




 ・・・・・・その時、俺は背後から包み込むように優しく抱き締められたことを感じた。

 妹の湿った優しい声が俺を宥めるように背後から響いた。

「お兄ちゃん・・・・・・大丈夫?」

 俺はそこで初めて声を出して泣くことができたのだった。俺がみっともなく無様に泣き続けている間、妹は黙って俺を後ろから抱きしめてくれていたのだった。
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/28(水) 23:03:27.65 ID:bCzAKQpio
短くてすいませんが今日はここまで

明日可能なら再開します

おやすみなさい
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/28(水) 23:07:15.04 ID:wyLQJoOSO
すいません、俺も泣きたいです
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/03/28(水) 23:08:18.46 ID:gIt14UGko
胃の痛さがMAXレベル
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) [sage]:2012/03/28(水) 23:11:01.47 ID:gmPm7ymoo
胸糞悪いなばらしたのが妹であれ幼馴染であれ一発ぶん殴ってほしい
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 00:05:46.93 ID:dWe6RwAQo
乙乙
これはキツイ
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 00:15:23.55 ID:OfFcdGc5o
きついか?
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/03/29(木) 00:29:26.73 ID:bvQIM5sHo
まあだいたい男がグズのヘタレなのが問題だわな
そもそも悪者にするのは書いてる奴の都合
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/29(木) 01:51:20.90 ID:QXY/K/E/o
やっと追いついた乙
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 06:02:34.80 ID:a6bAKEuDO
お、オウフ…
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/29(木) 08:36:27.24 ID:ZpeOxfUio
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/03/29(木) 20:54:48.99 ID:GbfI491AO

胃が痛くて三日ほどこのスレ放置したらさらに胃の痛い展開に…

続きはよ
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/29(木) 23:07:40.55 ID:5aXeq4LLo
 翌朝の教室で、時間になっても鈴木先生は姿を見せなかった。普段滅多にない出来事に生徒たちはざわめきながら、自分の席を立って思い思いのグループにまとまって何が起きたのかを推測しあっていた。

 登校中も、校内や教室に入ってからも、俺は自分に向けられた周りの生徒たちの視線を痛いほど感じていた。それは、好奇心からだったり憐憫からだったり嘲笑からだったりと、いろいろな関心が込められた視線だった。こうして周囲の関心を一心に集めている割には、俺に挨拶したり話しかけてきたりするやつは誰もいなかった。こうなることは、昨日の夜の時点で察しはついていた。

 それでも俺が登校し、教室に入って今自分の座席についていられたのは、妹と幼馴染、それに兄友のおかげだった。

 あいつらは、俺に向けられている含みのある視線に対抗するように、いつもより賑やかに声を出して俺に話しかけた。妹は、昨晩以来片時も俺のそばを離れようとせずに俺にぴったりと寄り添っていたし、幼馴染と兄友もその様子を気にすることもなく、まるで俺に向けられた視線から俺
を守るように俺のそばを離れなかった。2年生の校舎の前で、妹は名残惜しそうに俺の手を離し、そしてまるで俺の保護者であるかのように俺の手を幼馴染に託したのだった。

「お姉ちゃん、お願い」
 幼馴染もためらうことなく俺の手を取った。「うん、わかってる。任せて」

「じゃあ、あたし行くね。兄友さんもお願い」
 妹はそういい残して1年生の校舎に向かって去って行った。

「じゃあ行こうぜ」
 兄友は、幼馴染が俺の手を握っていることに気づいていないように、まるでこんなことは当たり前のことだから気にするまでもないさとでも考えているようにさりげなく言った。



 ホームルームの時間が無為に過ぎ去り、1時限目の授業が始まる直前に学年主任の先生が息を乱して教室に駆け込んできた。

 先生は教室の無秩序ぶりに一瞬苛立ったようだったけど、特に声を荒げることもなくみんな席につけと言った。慌てた生徒たちが自分の席に戻ったころを見計らって先生は出席を取り始めた。途中で、女の名前が呼ばれずに飛ばされたことに俺は気づいた。

「鈴木先生はちょと急な仕事があるので、先生が代わってホームルームに来ました。あと、そういうわけで一時限目の鈴木先生の授業は自習になります。みんな真面目にやれよ」
 慌しく事情を説明すると、学年主任は質問を受け付けずに再び早足で教室出て行ってしまった。
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/29(木) 23:10:36.36 ID:5aXeq4LLo
昼休みの中庭


兄(こうしてこの4人で一緒に昼飯食うなんて久し振りだ)

兄(幼馴染の俺への告白や、俺と女が付き合い出して、俺たち4人はばらばらになっちゃったけど、こうして俺がピンチになって悩んでると、こいつら黙って俺のことを助けてくれるんだな)

兄(女のことが一番好きで一番気になって一番心配だけど・・・・・・やっぱり、この4人の関係っていいな。本当に救われる。こいつらがいてくれなかったら、今日は途中で家に帰っていただろうな)

妹「お兄ちゃん、食欲ないの?」

兄「(これ以上こいつにも心配かけるわけにはいかねえ)いや、そんなことないよ。おまえの弁当久し振りだけど、やっぱりおまえ料理上手だな」

幼「今更何言ってるの。妹ちゃんは今すぐ結婚して奥さんになっても大丈夫なほど料理は昔から上手だったじゃない」

妹「お姉ちゃん、やめてよ」

兄「・・・・・・いや、それは本当にそうだし、俺も前からよく知ってるけど。何か、最近妹の弁当とか食ってなかったから新鮮で」

兄友「妹ちゃんに惚れ直したか」

兄「・・・・・・」

妹「・・・・・・」

幼「あんたはこんな時に・・・・・・ばか」

兄友「悪い。変な冗談言ってすまなかった。今はそんなこと言ってる場合じゃねえよな」

兄「いや、俺は別に」

兄友「謝るよ兄。悪かった」

兄「もうわかったって」

妹「気にしないで、兄友さん」

兄友「ああ。もう言わねえよ。それよかさ、女さんのことだけど」

幼「兄友、それは・・・・・・」

妹「・・・・・・」

兄「うん。そんなに気にしてくれなくていいよ。みんな知ってるんだろ?」

妹「・・・・・・うん。裏サイトに書かれてたし。2ちゃんねるでも」

幼「あたしも読んだ」

兄友「っていうか今日の教室の雰囲気だと、大部分のやつらが既に知ってそうだな」

妹「・・・・・・言い難いんだけど、1年生の教室でも噂になってる。というか女さんの、その」

兄友「何?」

妹「お兄ちゃんごめん。女さんの下着だけの写真とか」

兄「・・・・・・」

幼「妹ちゃん・・・・・・」

妹「女さんが縛られてるみたいなポーズの写真とか、男の子たちが携帯で見せあって・・・・・・」

幼「・・・・・・妹ちゃん、泣かないの」

妹「・・・・・・ごめん」
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/29(木) 23:15:03.48 ID:5aXeq4LLo
兄「・・・・・・ちく」

幼「兄?」

兄「・・・・・・ちくしょう。どうして女だけがこんな目に会わなきゃいけないんだよ」

妹「・・・・・・お兄ちゃん」

兄「あいつは誰にも迷惑なんてかけてなかったんだよ。何も悪いことなんてしてなかったのに。何で女がここまで追い詰められなきゃなんねえんだよ」

幼「兄、落ち着いて」

兄「あいつの生活を・・・・・・あいつの人生を壊す権利なんか誰にもねえはずなのに」

妹「・・・・・・」

幼「・・・・・・」

兄友「おまえの気持ちもわかんないわけじゃねえけどよ」

兄「・・・・・・え」

兄友「女さんが何にも悪いことをしなかったっていうのは、おまえの惚れた欲目じゃねえかな」

兄「・・・・・・何だと」

幼「ちょっと兄友、何言ってるの」

兄友「ここの生徒の大半は、特に1年生の女子は、女さんがしていたことを知ってショックを受けたはずだぞ」

兄(・・・・・・あ)

兄友「女さんがしたことは普通の高校生のすることじゃねえだよ。どうしておまえはそこを考えねえんだよ」

兄友「女さんの女神行為でトラウマになるほど傷付く子だっているんだぞ。女さんのことを心配するのはいいけど、女さんのしたこと矮小化しようとするな。女さんはそれだけのことやらかしたんだってことをちゃんと見つめろ」

兄「・・・・・・それは」

幼「・・・・・・あたしもね」

兄「幼馴染・・・・・・」

幼「女さんと兄のことすごく心配だし気の毒だけど」

兄「・・・・・・」

妹「お姉ちゃん・・・・・・」

幼「本当はあたしも兄友の言うとおりだって思う。っていうかあたし自身今だに信じられないし、最初に女さんのああいう姿を見た時、トイレで吐いちゃったくらいショックだった」

妹「・・・・・・お姉ちゃん、何で今そんなこと」

幼「ごめん妹ちゃん。でも、あたしも兄には嘘はつけない」

兄友「そういうことだ。厳しいこと言ってるみたいだけど、それくらいのことを女さんはやらかしたんだよ」

兄「・・・・・・」

兄友「それをちゃんと認めたうえで、どうするか考えないと、おまえらまた間違うぞ」

兄「・・・・・・」

兄友「こんな時に厳しいこと言って、悪いとは思うけどよ」

兄「・・・・・・」

妹「お兄ちゃん?」

兄「・・・・・・すまん」
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/03/29(木) 23:17:23.03 ID:5aXeq4LLo
 ・・・・・・携帯とかスマホと違って、デジカメのexifには個人情報は残らない。

 だけど、この画像は絶対に自撮りでは撮影不可能だ。モモとか名乗っているコテはコンデジのタイマーで撮影とかって言い訳をしているけど、的確な被写界深度やばっちりと被写体に合わせたピント、それに何よりもこれまでの女の画像と異なり解像度が高くコントラストも鮮明で、背景が綺麗にボケたこの画像は、コンデジのタイマー撮影などで撮影できるものではない。

 改めてexifデータを眺める。撮影時のカメラの設定データなどどうでもいい。

 カメラの機種だけがわかればいい。




Exif:
[IFD0]
画像入力機器のメーカー名:×××
画像入力機器のモデル名: ○○XZ-1





 携帯で呼び出す。

 『ああ悪い。ちょっと聞きたいんだけど』

 『何』

 『×××製のの○○XZ-1ってカメラ知ってる?』

 『何でそんなこと聞くの? そのカメラ兄がいつも持って歩いてやつだけど』

 『やっぱりね』

 『?』

 『もうすぐ終わりも近いかな』

 『それって・・・・・・』

 『お察しのとおりかな』

 『・・・・・・』
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/29(木) 23:19:08.87 ID:5aXeq4LLo
短くてすいませんが、本日は以上です

明日は飲み会なので投下できないと思います。というか、人事異動で職場が変わるので投下量や投下間隔は減るかも

それでは、また再開します

おやすみなさい
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/03/29(木) 23:32:51.69 ID:8i75fWISo
乙。登場人物が増えてる、、、、だと?

503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 23:49:48.39 ID:CZ1QaWwSO
いや、兄友だと思う
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/30(金) 00:13:41.17 ID:JxxufWv4o
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/31(土) 02:37:11.33 ID:nt0sZZeD0
勝手に知って勝手に気持ち悪くなるのか女子は
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/03/31(土) 15:59:02.39 ID:8a+VRLPNo
乙乙!
実際VIPって個人情報バレて電凸だとか言ってるけど実際はしないっていうwww
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/31(土) 20:01:18.37 ID:LEbveJpYo
作者です。今日も業務多忙のため投下来ません

明日は何としても再開しようと思います

次回投下が終れば、第3部に入ります

申し訳ありません
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/31(土) 21:02:48.61 ID:L1+m06tCo
報告乙です
リアルが大事
現実の生活があってのSSですから、私生活に障りのないペースで
じっくりとお願いします
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/01(日) 22:13:54.11 ID:5l+9nT/0o
 教室に戻ると、主を失った女の机に、何かの文字がマジックのような物で黒々と記されていた。


『モモ◆ihoZdFEQao(笑)』


 その文字を見て俺が呆然としてクラスの連中を眺めた時、どこからともなくクスっと嘲笑うような悪意のある声が俺の耳に届いた。思わずかっとなった俺が、声のした方にいるやつの首を見境なく掴もうと体を動かした時、兄友が俺の体を羽交い絞めにした。

「落ち着け。こんな低級な嫌がらせに反応するな。おまえが反応するとこいつらますますいい気になるぞ」
 兄友は俺を押しとどめながら大きな声でそう言って、周囲の生徒を睨みつけた。教室内の生徒たちは一様に下を向き、兄友と目を合わせないようにしていたが、その時でもまたクスクスという笑い声がどこからか小さく響いた。

 どこかからか雑巾を持ってきた幼馴染は、女の机の文字を拭き取り始めた。油性のマジックのような物で書かれたらしく、その文字は汚れを広げるだけで一向に消えようとはしなかった。それでも、一生懸命に女の机を拭き続けている幼馴染の目には、涙が浮かんでいた。兄友の言葉を聞き、幼馴染の目に光っている涙を見た瞬間、俺の体から力が抜けた。兄友はようやく俺の体から手を離した。

「すまん」
 俺は何とか声を口から絞り出すことができた。それはまるで自分の声ではないかのように掠れた小さな声だった。

「俺、今日は家に帰る。これ以上ここにいると自分でも何をしでかすかわかんねえし」

「・・・・・・その方がいいかもしれねえな。わかった。鈴木には俺から話しておくから」
 兄友が言った。

「一緒に付いていってあげようか?」
 幼馴染が目に浮かんだ涙をさりげなく拭きながら言った。

「おう、それがいいよ」
 兄友もそれに同意した。「気分の悪くなった兄を幼馴染が送って行ったって、鈴木には言っておけばいいな」

「・・・・・・いや、いい」
 俺は断った。「家に帰るだけだし、お前らを付き合せちゃ悪いしな」

「大丈夫か」
 兄友が言った。

「ああ。平気だよ。じゃあな」
 俺はカバンを取り上げた。

「二人ともいろいろありがとな」
 俺が教室を出て行く時、再び小さな嘲笑めいた声が教室の中から俺の背中に届いた。
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/01(日) 22:16:38.47 ID:5l+9nT/0o

 まるで夢遊病者のように歩いていた俺は、自分がどうやって電車に乗ったのか、どうやってどんな経路で歩いたのか全く記憶になかったけれども、気づいたら俺はいつの間にか女の自宅の前に立っていたのだった。相変わらず女の自宅には人の気配がなかった。俺は試しにチャイムを鳴らしてみたけれども、もちろん家の中からは何の返事も返ってこなかった。俺は女の家を離れて自宅に戻ろうと歩き出した瞬間に、ふと何か違和感を感じて足を止めた。

 俺は再び女の家の門まで戻った。いつもと違う感じはどんどん大きくなっていった。俺はもう一度まじまじと女の家を眺めた。その時その違和感の正体がわかった。女の家からは、女の苗字が記された表札が外されていたのだ。



 ・・・・・・ついに一家で引っ越すくらいまで追い込まれたのだろうか。俺の想定していた最悪のシナリオは、女の転校だった。ここまで来てしまった以上、女がうちの学校に戻ってくることは難しいだろう。しかし、転居までは必要ないではないか。この家から通える範囲に、中途での編入を認めてくれる学校がないのであれば別だけども。

 さっきの教室の出来事で混乱していた俺だけど、再び心の中で新たな不安が芽生えて来ていた。俺は走るようにして自宅に戻ると、リビングのパソコンを立ち上げ、VIPのスレ一覧を眺めた。

 ・・・・・・スレが多すぎる。俺は昨日のスレタイの一部でタイトルを検索した。すぐに探していたスレタイが表示された。



『【祭りに】高校2年の女の子が女神行為で実名バレwwwww9【乗り遅れるな】』


 もう9スレ目に突入していたそのスレの最初のレスを読んだ時、俺は凍り付いた。



『今北用ガイド』


『その後に不注意からか、スマホのGPSをオフにせずに撮影した画像を発見。exifから、女の住所が判明』

『スマホ以外で撮影に用いられたカメラも発覚。×××製のの○○XZ-1という高級コンデジ。ちなみに女の同級生で彼氏でもある兄というやつが持っていたカメラだと思われる』

『つまり女の女神画像は彼氏とのはめ撮りだったことが判明 ← 今ここ』


 俺の実名が晒されたのはともかく、そこには女の住所がはっきりと記されていたのだった。
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/01(日) 22:19:35.27 ID:5l+9nT/0o
兄友『あのさ、ちょっと話が、つうか頼みがあるんだけどさ』

幼『・・・・・・うん』

兄友『最悪の場合さ、多分兄と女ってもう会えないことも考えられるんじゃねえかなと思うんだ』

幼『・・・・・・いつかは噂だって収まるんじゃないの?』

兄友『いろいろ腹は立つけどさ、女さんって兄のこと本当に好きだったのかもな』

幼『何でいきなりそんなことを・・・・・・』

兄友『女から兄に何の連絡もないだろ? 普通なら電話とかメールとかしてくると思うんだよな』

幼『ご両親にスマホとかパソコンとか取り上げられてるんじゃない?』

兄友『それにしたって家電とか公衆電話とか手段はあるはずだよ。女さんが兄と接触を取らないのは、これ以上兄を巻き込まないようにしてるんじゃねえかな』

幼『兄のことを考えてわざと連絡しないようにしてるってこと?』

兄友『何だかそんな気がする』

幼『・・・・・・兄がそれを知ったら余計に苦しむね』

兄友『あいつにはとても話せねえよ』

幼『それで頼みって?』

兄友『おまえ、兄のそばにいてやってくれ』

幼『そんなことは言われなくたってそうするよ』

兄友『そんで、兄の兄の気持ちをおまえの方に向かしちゃって、女のこと忘れさせてやってくれ』
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/01(日) 22:20:16.75 ID:5l+9nT/0o
幼『・・・・・・どういうこと?』

兄友『女さんから兄を奪っちゃってくれってこと』

幼『・・・・・・何でそんなこと言うの?』

兄友『女さんはもう兄の前には現れねえと思う。あんだけ意志が強くて頭のいい子がそう決心したら、必ずそれを貫くよ』

幼『・・・・・・それで?』

兄友『兄が女のことを忘れるには新しい恋人ができる以外にはないと思う』

幼『兄には、妹ちゃんがいるのよ』

兄友『もちろん、妹ちゃんの存在が兄の心の安定に繋がっていることは間違いないけど』

幼『・・・・・・』

兄友『でも、妹ちゃんじゃ駄目なんだよ。女さんと付き合う前は、兄はおまえのことが好きだった』

幼『・・・・・・』

兄友『おまえが兄のこと好きだったのも間違いないよな』

幼『兄友・・・・・・待って』

兄友『そのおまえなら兄の気持ちを惹きつけられるよ。兄だって弱ってるし、女の記憶だって薄れていく時だって来るし』

幼『・・・・・・そんなの』

兄友『正直、俺だって辛いんだぞ』

幼『・・・・・・兄友』

兄友『俺さ、おまえのこと好きだ』

幼『・・・・・・』

兄友『けどさ、今、兄に必要なのはおまえなんだよ』

幼『・・・・・・(兄に必要なのはあたし・・・・・・)』





女神 第2部おしまい
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/01(日) 22:23:13.79 ID:LQbIQLZHo
・・・・・ツラい。ツラすぎる。何もかもが。

514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/01(日) 22:24:11.54 ID:5l+9nT/0o
短くてすいませんが、明日から新しい職場に転勤なんで余裕がないのです(悲)
短くてもなるべく毎日投下しようとは思いますが、業務や歓送迎会とかで投下できないときは告知だけはしようと思います

次回から第3部です。例によって視点が変わります

最後までこういう暗い感じになると思うので、苦手な方にはお勧めしません
それでも付き合ってやるよという方がいるなら、頑張りますのでお付き合いいただけると嬉しいです

それではおやすみなさい
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/01(日) 22:28:59.00 ID:Xu3XmJxMo
おつです。
職場もSSも気負わないでやれば良いのです。
しかし、最後まで暗いのか・・・
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 22:34:19.82 ID:UuKRk8mco
おつおつ
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/02(月) 02:14:01.40 ID:0U8AWrtCo
転勤は大変だろうなぁ
お疲れ様!
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/02(月) 07:33:03.54 ID:hxiUlyVIO
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/02(月) 07:37:46.93 ID:9fdMWgoIO
おつ
転勤もおつ
それでも付き合ってやるよ
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/02(月) 09:39:50.87 ID:T6uC1ZZIO
うちの職場に一人転勤してくるんだけど、まさか、、、、な、
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/02(月) 12:10:17.50 ID:9fdMWgoIO
それだ!
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/02(月) 22:37:26.74 ID:GMMAKfgao
作者です

今日と明日は投下できません
明後日に再開予定です

申し訳ありません
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/02(月) 23:16:29.85 ID:UKD/QET6o
>>522
報告乙です
みんな言ってるけどリアルの方が大事

謝る事は無いと思う
何の音沙汰も無しで間を空けて、また何事も無かったかの様に
ポチポチと投下する人もいるんだからさ
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/02(月) 23:38:56.53 ID:GMMAKfgao
>>523
ありがとうございます

つうか、思ったより早く帰宅できました

明日もわからないので、週末に書き溜めておいた分をこれから投下しいてしまいます

と言っても4レスだけですが

では再開します。今日から第3部です
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/02(月) 23:41:14.62 ID:GMMAKfgao
 あたしたち三人はお互いのことを知りすぎるくらいに知っている。兄と妹ちゃんの兄妹は、幼い頃から両親が仕事で留守がちな家庭で、二人きりで寄り添うようにして毎日を過ごしていた。その頃から隣の家で暮らしていたあたしは、自分が一人っ子だったこともあって、仲の良い隣の兄妹のことを妙にうらやましく思っていたものだった。もちろん、よく考えれば家には常にお母さんがいてくれたあたしの方が一般的には恵まれていたと思うけど、それでも兄弟というものに憧れていたあたしには、仲の良いお隣の兄妹に憧れの気持ちすら抱いていたのだ。

 あたしが引越ししてきてからしばらくは、あたしは二人のことを羨ましく思いながら眺めているだけだった。普通で考えれば年が近く隣同士なのだから、すぐにでも仲良くなれそうなものだけれど、兄妹のあまりの仲の良さに怖気づいたあたしは中々この兄妹に声をかけられなかったのだ。

 そんな風だったから、子どもたちよりあたしたちの親同士の方が先に仲良くなって、そのおかげであたしは兄妹とも話ができるようになった時は本当に嬉しかった。そうして知り合ってみると、この兄妹はあたしが勝手に思い込んでいたような排他的な性格では全くなくて、むしろ仲のいい
仲間が増えることを歓迎してくれた。特に妹ちゃんの方は、いつも兄と一緒にいたせいで女の子の友だちが少なくて寂しかったみたいで、あたしたちはすぐに仲良くなった。

 それ以来今に至るまで、あたしたちはずっと三人で一緒に過ごしてきた。朝はあたしが二人の家に兄妹を迎えに行き、近くの小学校まで三人で登校する。帰りは必ずしもいつもという訳ではなかったけど、それでも時間が会えば一緒に下校もした。その頃から、兄では対応できない種類
妹ちゃんの相談に乗るのはあたしの役目だった。兄は男の子にしてはよく妹ちゃんの面倒をみていたと思うけど、それでも洋服や下着や水着のことなどはお手上げだったらしい。特に小学校も高学年になる頃には、兄妹のお母さんも本格的に仕事を再開していたから、妹ちゃんのこの手
の悩みには、(時にはあたしのお母さんにも相談しながら)あたしが妹ちゃんの面倒をみていたのだった。あたしは妹ちゃんが初潮を迎えた日まで知っていたほどだった。
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/02(月) 23:42:48.82 ID:GMMAKfgao
 あたしたち三人のこうした関係は、あたしと兄が揃って中学生になっても何も変わらずに続いた。あたしたちが通う中学校は小学校と隣り合わせに建っていたから、相変わらず朝の登校は三人で一緒だった。あたしにとっては、三人でいることが居心地よかったけれど、一年後に妹ちゃんがあたしと兄の後を追って同じ中学に入学した頃から、あたしたちの中にも多少の不協和音が響くようになってきていた。

 中学生になると、周囲の子たちも異性のことをあからさまに意識するようになる。異性を意識したり噂したり、異性に告白したり告白されたり、当たり間に周囲で行われていたそういうことが、あたしたち三人の関係にも影響を及ぼすようになったのだ。

 ・・・・・・それは兄が同級生の子に告白されたことから始った。兄に告白した子は、はきはきした物怖じしない喋り方が特徴的なボーイッシュな女の子で、クラスの男の子の間でも密かに憧れている子が多いらしいという噂の女の子だった。その子に告白された兄は、人気のある女の子に思いを寄せられて、悪い気がしなかったのだろう。兄はその子の告白を受け入れた。つまり兄に初めての彼女ができたのだ。
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/02(月) 23:43:57.25 ID:GMMAKfgao
 あたしは、告白された兄からそのことを相談されていたので、兄とその子が付き合い出したことには別段驚くことはなかったけど、むしろ大変だったのは妹ちゃんの方だった。妹ちゃんがブラコンなことはよく知っていたけど、その後の妹ちゃんの行動によって、妹ちゃんがここまで兄のことを慕っていることを、あたしが改めて思い知らされた。

 妹ちゃんは意外にも兄と彼女の付き合いには反対しなかった。ただ、妹ちゃんは兄に彼女ができた後も、自分と兄の関係が変わることは絶対に拒否したのだった。

 具体的に言うと、兄は最初はあたしたちと一緒に登校せず、やはり近所に住んできた彼女と待ち合わせして彼女と二人で登校しようとした。でも、妹ちゃんは渋るあたしを引き摺るようにしてその待ち合わせ場所に押しかけ、四人で一緒に登校しようとした。別に妹ちゃんは兄の出来立ての彼女に攻撃的な態度を見せたわけではない。ただ、自分と兄の関係が疎遠にならないようにしていたのだ。

「勘弁してくれよ」
 そういうことが続くと、兄はあたしに泣きついた。「おまえらが朝一緒だと彼女が不機嫌になるんだよな」

「あたしのせいじゃないもん」
 あたしは兄に反論した。「妹ちゃんが兄と一緒に行くって、そう言い張るんだからしようがないじゃん」

 あたしの話を聞いて、兄は困ったように俯いてしまった。

 ・・・・・・結局、兄の初めての彼女はわずか一週間で兄に別れを告げたのだった。
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/02(月) 23:45:54.06 ID:GMMAKfgao
 そういことがあっても、兄は妹ちゃんを甘やかすことを止めようとはしなかった。どんだけ妹に甘いんだろう、この男は。あたしは、妹ちゃんのことは自分の実に妹のように思っていたけれでも、さすがにこれは行きすぎではないかという気持ちがした。いくら両親が不在で二人きりで日々を過ごしているにしても、この先ずっとこのままというわけにも行かないではないか。あたしはため息をついた。

 その後は何事もなかったように、再び三人で登校する日々が続いた。兄と妹の共依存に近い関係のことはあたしの密かな悩みとして心の奥に密かに沈潜していたけど、それでも慣れ親しんだこの関係は中毒のように再びあたしたちを蝕んでいった。永遠にこのまま三人で過ごせるならそれはそれで幸せかもしれない。兄と妹のことを心配していたあたしだったけど、時にはそう思うほどこの関係は居心地が良かった。

 それに、自分で言うのもなんだけど、あたしたち三人の関係は校内ではひどく羨ましがられてもいたのだ。妹ちゃんは可愛らしい子だった。そして、叩かれるのを覚悟で言うと、あたしもまた校内では目立っている方だったと思う。告白してくる男の子も一人や二人ではなかったし(異性と付き合うということがまだぴんとこないあたしはその全てを断っていた。そして、それは妹ちゃんも同じだった)。

 そういう女の子二人にしっかりとガードされている兄に対して、果敢にアタックする子はもういなかった。最初の彼女の失敗で、兄は付き合うには面倒な男という烙印を校内の女の子たちから押されてしまったらしかった。




 そんなあたしたち三人の関係が初めて本格的に変化したのは、あたしと兄が同じ高校を受験し合格した後のことだった。

 こればかりはさすがの妹ちゃんもどうしようもなかった。あたしと兄が通うことになった高校は電車に乗って40分くらいかかる。そして、あたしたちの出身中学は自宅の最寄り駅とは反対方向だったのだ。

 4月に入り初めてあたしたち三人一組ではなくなった。妹ちゃんは一人で中学登校し、あたしと兄は二人きりで電車に乗って新しい生活に向かい始めたのだ。

 兄と二人きりの登校。それが高校の同級生たちの噂になるのは早かった。あたしと兄は、高校の友だちから即座にカップル認定されてしまったった。




 ・・・・・・そして、これまで兄に対しては異性という感覚を持ったことがなかったあたしが、初めて兄を男として意識しだしたのは二人きりで登校を始めたこの頃からだった。
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/02(月) 23:46:57.64 ID:GMMAKfgao
今日はおしまいです。何とか日が変わらないうちに帰れたので投下できました

もう書き溜めはないので、明日も今日くらいの時間の帰宅だったら投下できません

それではお付き合いどうもです
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/03(火) 01:53:11.42 ID:3HmnurTNo
乙乙!
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/03(火) 06:31:11.39 ID:hxjl4Y4SO
ちくせう…
兄だって十分リア充じゃないか
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/04(水) 23:20:28.70 ID:SUY6RYA7o
「そんなことないって」
 クラスの友だちや生徒会の役員の人たちから「幼馴染って兄君と付き合ってるでしょ?」と聞かれるたびに、あたしは赤くなってそれを否定した。

 でもどういうわけか、あたしが兄との仲を否定すればするほど、あたしを問い詰めてきた友人たちはにやにやするだけで、あたしの言っていることを真面目に取り合ってはくれなかった。そして、正直に言うとあたしもそれ以上兄との関係を友人たちにしつこく否定したりはしなかったのだ。

 その頃は兄も同じような問いかけをされ、同じようにそれを否定していたそうだけど、それを信じてもらえなかったのはあたしと同じだった。兄とあたしは登校こそ二人きりでしていたものの、別に校内でベタベタと一緒に過ごしていたわけではない。放課後は、あたしは生徒会の活動があったし兄は帰宅部だったので、周囲にカップル認定されたとしても、それは「疑惑」のレベルに留まっていた。


 「兄と幼馴染は怪しい」
 つまりはその程度のカップル認定だったのだ。でも、あたしは校内のその微妙なうわさを嫌いではなかった。むしろ、兄と今まで以上の関係に踏み込んでいるようで、何かどきどきするような奇妙な興奮を感じていたのだった。

 まるで麻酔を打たれてうとうととしているように居心地はいいけど、生産性のない行き止まりのようだった兄と妹ちゃんとあたしの三人の関係を惰性で続けるよりは、兄とあたしの二人だけの時間は、この先何かめくるめくような展開が先に待っているようだった。その頃のあたしには、こんな曖昧な関係でも、十分に満足だったのだ。
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/04(水) 23:21:02.49 ID:SUY6RYA7o
 休日には、兄なしで妹ちゃんとショッピングに出かけることがよくあった。もちろん妹ちゃんは毎回兄を誘っていたようだったけど、女の服の買物は勘弁とかでいつも兄から断られていたようだった。

 その頃、妹ちゃんが兄なしであたしと出かけることに対して、あまり文句を言わなかったことを最初あたしは不思議に思ったけれども、すぐにその疑問は氷解した。

 一通り兄に対して駄々をこねた妹ちゃんは、実際にあたしと二人で出かける段になると兄が一緒にいないことをあまり気にもせず、というか兄がいないことをいいことにあたしに対して、兄が高校でどういう風に過ごしているのか、兄にはどういう友だちがいてどういう付き合い方をしているのか、兄に言い寄ってくる女の子はいなのかどうか、そういうことをしきりにあたしから聞き出そうとした。

 あたしにもブラコンの妹ちゃんの気持ちはよくわかった。自分の知らない兄が、自分の知らない場所で自分が知らない人間関係を築いていくことに対して不安を感じているのだろう。

 あたしは、買物の途中で一休みしていいるファミレスやスタバとかの店内で妹ちゃんと向き合って座りながら、妹ちゃんにあたしの知っている限りの兄の情報を伝えた。兄の話になると妹ちゃんの食いつきは物凄いと言っていいくらいによく、まだ買物の途中のはずが話し込むと平気で2時間くらいは経過してしまった。それで、妹ちゃんは途中で時間に気づいて慌てて話を終らせ、服とかの買物を中断して夕食の買物のためにスーパーに走るということがよくあった。
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/04(水) 23:25:50.89 ID:SUY6RYA7o
 そういう小休止の時間に、あたしが妹ちゃんに伝えた兄の学校での日常の話は、何も嘘はなかった。特に兄の女性関係については、正直に妹ちゃんに伝えたと言うことは今でも自信を持って言える。

 その頃の兄には、兄狙いで近づいてくる女の子はいなかったから、あたしは「兄に告った女の子はいないし、兄が気になっている女の子もいないみたいだよ」と妹ちゃんには話した。それは正真正銘真実の話で、少しの嘘もその中には混じっていたかった。

 ただ、嘘は言ってはいなかったけれど、あたしが知っている真実を全て妹ちゃんに伝えたわけではなかった。

 なぜ、兄にアプローチする女の子がいないのか。うちの学年の生徒なら多分誰でも簡単に答えられたであろうその事実を、あたしは妹ちゃんには話さなかった。仮に妹ちゃんがうちの学年の子に、「何でお兄ちゃんはもてないの?」と聞いたとしたら、それに対する答えはすぐに返ってkただろう。



 「・・・・・・だって、兄には幼馴染がいるじゃん」



 あたしは肝心な事実を、うちの学校内では兄とあたしと付き合っているのではないかという噂が流れていることを妹ちゃんには話さなかったのだ。嘘を言っているわけではない、ただ曖昧なことだけを話さなかっただけ。

 ・・・・・・あたしは自分にそう言い聞かせた。無駄に妹ちゃんの不安を煽ることはない。それに、兄とあたしが付き合っているというのは事実はないのだ。事実でないことを話す必要はない。

 妹ちゃんは兄に女の影がないことに安心すると、次に兄の交友関係の質問を始める。これは答えやすい質問だった。兄には同じクラスの男の子の親友がいた。兄友君というその人は、成績は学年でもトップレベルで容姿にも恵まれている上に、性格はさっぱりとしていて男女問わず人気があるという、まるでアイドルになってもおかしくないような人だった。

 どういうわけか、その兄友君と兄が意気投合してしまったようで、いつのまにか二人は親友といってもいいくらいの間柄になっていた。
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/04(水) 23:37:15.13 ID:SUY6RYA7o
 多分兄友君は、親友を作るのにも自分にふさわしいレベルの人を慎重に選ぶような性格なのだろうとあたしは考えていた。兄友君に擦り寄ってくる男の子はいっぱいいたけれど、兄友君が親しくなろうと決めたのは兄だった。

 前にも話したかも知れないけど、周りの生徒たちの目からは兄は超リア充に見えていたはずだった。毎日女の子と二人きりで登校する兄。それでいてそのことが何も特別なことではないかのように自然に振る舞って、自慢したりしない兄。イケメンでリア充中のリア充といってもいい兄友君も、兄のそういう自然な行動とか、あたしばかりではなく、どんな女の子とも気負わず自然に対応できるその行動には人目置いていたようだった。兄のそういうところが、兄友君の琴線に触れたのだろう。兄友君は兄によく話しかけるようになり、やがて二人は親友と言ってもいい間柄になった。

 そういうわけで兄と兄友君はしょっちゅうつるんで一緒に学校生活を過ごすようになったのだった。

 そういうことを妹ちゃんに話しながら、あたしはよく兄友君のことを考えた。兄と親友になった兄友君は、必然的に兄から紹介されたあたしとも仲良く話をする間柄になった。そして、どういうわけか兄友君はあたしにも興味を持ったようだった。

 正直に言うと、その頃のあたしは兄友君のあたしに向けられた意味深な視線に気づくようになっていた。朝のホームルーム前の教室で、兄と兄友君とあたしが他愛のない話に興じている時、兄に話しかけながらも時折あたしの方を覗うような兄友君の視線にあたしは気づいた。それがいったいどういう意味があるのか、あたしは当時それほど深刻にではなく、暇つぶしのように気軽に考えたものだった。

 兄友君が自分に対するプライドがとても強いということは、兄に紹介されて兄友君と知り合いになってから常々あたしが感じていたことだった。

 そして、あたしは学年の女の子の中でも、男の子に人気がある方だったと思う。そのあたしが兄と毎朝一緒に登校している。兄と付き合っているという噂のあるあたしに、兄友君は興味があったのだろう。逆に言うと、女の子に人気がある兄友君が、兄に気があるらしいという噂があるだけのあたしのことを気にするのは、それだけ兄友君が兄のことを気にしていたからなのではないか。
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/04(水) 23:38:46.21 ID:SUY6RYA7o
 兄は、兄友君ほど高スペックというわけはない。自分で言うのも生意気だけれども、あたしという女と自然に毎日一緒にいいるという一点で、兄は周囲の生徒から一目置かれていたのだと思う。

 兄友君は、兄にいつも寄り添っているあたしに興味を持ったのだろう。兄と無関係な単なるあたしという女の子のことに興味を持ったわけではない。つまり、兄友君は兄のことをすごく気にしていたのだ。兄をライバル視していると言ってもいいかもしれない。そして、それが兄友君が兄と親しくしている理由なのだろう。

 もちろん、そういう話を妹ちゃんにすることはなかった。当時のあたしは、兄のことが異性として気になリ始めてはいたけど、兄友君のことはそれほど気にしていたわけではなかったし、もちろん異性として意識もしてはいなかったのだから。
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/04(水) 23:39:26.21 ID:SUY6RYA7o
本日はここまで

明日また可能なら投下します

おやすみなさい
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/04(水) 23:50:17.64 ID:4tDHXSDHo
おつ

一瞬ホモかと思って二度見してしまった
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/04(水) 23:50:54.81 ID:l0cYl37so
乙乙!
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/05(木) 10:51:53.71 ID:NR5zsKEio
お疲れ様
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/05(木) 11:20:32.22 ID:bmEcfEOxo
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/05(木) 22:14:47.02 ID:ytbW8Rqoo
 妹ちゃんはあたしのことをお姉ちゃんと呼んで慕ってくれている。そしてあたしも、今では妹ちゃんのことは本当の妹のように考えていた。だから、兄への心の傾斜をとっさに妹ちゃんに隠してしまった時、あたしはこの兄妹と付き合い出してから初めて妹ちゃんに罪悪感を感じたのだった。

 それと同時に、自分がそういう風に感じなければいけないこの状況に対して、あたしは不公平感のようなものも感じていた。

 なぜあたしは、自分の初恋を隠さなければならないのだろう。普通に考えれば幼馴染同士の男女の恋愛なんてすごくありふれた話ではないか。そして、学校ではあたしと兄とは付き合っているのではないかと普通に噂されるような関係だった。

 でも、それは考えるまでもないことだった。あたしは、いや、あたしと兄の間には昔から暗黙の了解のような約束事があった。




 両親が不在がちの家で育った妹ちゃん。

 兄にしか頼る家族がいない状態で暮らしてきた妹ちゃん。




 そういう生活を強いられててきた妹ちゃんは、結果的に過度に兄に依存するようになった。そしてそれは、世間一般で言うようなブラコンとか、異性として兄を愛する近親相姦とか、そういうステレオタイプな言葉ではくくれないような関係だった。

 寂しかった妹ちゃんが、兄を独り占めしたい、自分が兄の一番でいたいという気持ちを強く抱くようになってしまったことを、いったい誰が非難できるのだろうか。少なくともあたしには、妹ちゃんのそういう感情を非難することはできなかったし、ブラコンの妹ちゃんに手を焼きながらも兄だってあたしと同じように考えていたことは間違いなかった。




 そういうわけで、あたしと兄とは、いつも妹ちゃんの気持ちを第一に考えて行動するようになった。それは兄から頼まれたわけではない。いつのまにかそういう風に振る舞うことが当たり前のようになっていただけだった。
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/05(木) 22:19:02.28 ID:ytbW8Rqoo
 かといって妹ちゃんがあたしと兄に過保護に守られて、わがままな女の子に育ってしまったというわけではなかった。妹ちゃんの気持ちを第一に考えようとするあたしたちに、妹ちゃんの方もいつだって遠慮気味に振る舞っていた。妹ちゃんが、大好きな兄の気持ちを優先しようとするだけならこの兄妹の関係からその行動は理解できたけど、それだけではなく、妹ちゃんはあたしの気持ちにも気を遣うような優しい子だった。

 つまり過保護な兄とあたしの接し方にスポイルされることなく、妹ちゃんは素直ないい子に育ったのだ。

 育ったと言うと、まるで兄とあたしが子育てしたみたいだけど、あたしの感覚としてはまさにそんなところだった。妹ちゃんのことを心配していろいろあたしと兄が相談しあっているところは、まさに子育てをしている夫婦のようだったのかもしれない。お互いのことより妹ちゃんのことを最優先して考えるところは、まさに子育て中の若い夫婦そのものだった。ただひとつ本当の夫婦のようにお互いに恋愛感情はなかったことだけは、本当の夫婦と違っていたけれども。

 そういう風にして過ごしてきたあたしが、朝の登校時間だけとはいえ、妹ちゃん抜きで兄と過ごす時間が増えたことにより、兄のことを異性として妹ちゃん抜きで意識するようになってしまった。そして、そのことを妹ちゃんに話すことができなかったあたしは、妹ちゃんに罪悪感を感じたの
だけれども、それと同時に妹ちゃんが来年うちの高校に入学したら兄とあたしの関係はどうなってしまうのかということも気になっていた。

 今でもあたしの恋は片想いだ。そして、妹ちゃんが入学すれば、あたしと兄との二人きりの時間は失われ、以前のように妹ちゃんを含めた三人で登校するようになる。そして、三人で登校する時の主役は以前と同様に妹ちゃんになることは間違いなかった。

 ・・・・・・その心配は杞憂ではなかった。妹ちゃんは成績がよく、あたしたちの高校より偏差値の高い学校を受験し公立の第一志望校に合格した。それなのに、妹ちゃんは滑り止めに受験したあたしたちと同じ私立高校に入学したのだった。




 兄とあたしは、一生懸命に妹ちゃんを説得した。それは多忙のあまり妹ちゃんの受験をほとんどサポートできなかった妹ちゃんの両親の意を受けた行動でもあった。お兄ちゃんとお姉ちゃんと同じ高校に行くと頑固に主張する妹ちゃんに、第一志望校に入学しないと将来後悔するよっ
て必死で説得する兄とあたしは、まさに娘の進路を心配する夫婦のようだった。でも、妹ちゃんは結局意思を曲げなかった。

 こうして、あたしたちはその4月から再び三人で登校するようになったのだった。
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/05(木) 22:22:36.24 ID:ytbW8Rqoo
 再び三人で登校するようになると、あたしと兄との仲が怪しいという校内の噂はすぐに静まってしまった。それは妹ちゃんの精神衛生上はいいことではあったけど、一方であたしは密かにそのことを残念に感じていた。もう、あたしと兄との仲をからかう友人はいなくなった。

 兄は相変わらず可愛い女の子二人といつも一緒にいるリア充認定はされており、そのせいか誰かに告られるということはなかったので、妹ちゃんが兄に対して嫉妬して不安定になることもなかった。同時に、兄とあたしの噂も完全に消え去ってしまっていたから、そのことで妹ちゃんが悩むこともなかったのだ。つまり、再びあたしたち三人は、ぬるま湯に浸かるように気持ちよく将来の見えない関係に戻ってしまったのだった。そして、妹ちゃんはそういう関係に戻れたことに満足だったようで、相変わらず兄とあたしに甘えながら日々を過ごしていた。

 このぬるま湯のような居心地の言い関係を、兄がその頃どう考えていたのかはわからない。妹ちゃんが満足していたので、妹に甘い兄もこの関係に満足していたのかもしれない。

 でも、その頃からあたしは奇妙な視線に気づき、悩むようになっていた。以前と同じように三人で登校する日々。電車の中で賑やかに話をするあたしたち。これまではそういう時に兄の視線は、可愛らしく喋っている妹ちゃんを慈しむように彼女に向けられていた。ところが、その頃、兄の視線が突然妹ちゃんを離れ、あたしの方にじっと向けられることがあった。それは、一年生の時に兄と二人きりで登校していた頃でさえ感じたことのないような熱っぽい視線だった。

 兄に片想いをしているせいで、自分に都合よく兄の行動を解釈しているんだ。あたしはそう考えて有頂天になる心を引き締めた。兄の一番は、恋愛感情はないとしても妹ちゃんだ。兄とあたしは共に手を携えて妹ちゃんを守ってきた戦友に過ぎない。あたしは無理にそう考えようとしたけ
ど、そう思って済ませるには、兄のその視線には粘着性があり、あたしは兄の視線に晒されていると、まるで電車の中で裸にされているような感覚を覚えた。それほど、その視線は長くあたしのあちこちを眺め回していたように感じられたのだった。
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/05(木) 22:25:44.24 ID:ytbW8Rqoo
 その頃のあたしは混乱していた。もし、もしも万一兄があたしのことを女として欲しているなら、あたしはその想いに答えたかった。兄が妹ちゃんの気持ちを傷つけることを承知の上であたしのことを求めているのだとしたら、あたしも妹ちゃんのことを考えずに兄の腕の中に飛び込ん
でいきたかった。でも、そういう考え自体が、あたししたちがこれまで過ごしてきた妹ちゃんを支えて行くという生き方を裏切るものだった。

 もちろん全てあたしの勘違いかもしれない。兄は直接あたしに好きだと告白したわけではない。そのことがあたしにはもどかしかった。

 兄の気持ちを知りたい。

 あたしは妹ちゃんや兄と普通に笑顔で接しながらも、心の中ではそのことばかりを考えていた。どうすれば兄のあたしに対する気持ちを知ることができるのか。

 いつのまにかあたしは、そのことばかりをいつも心の中で考えるようになってしまった。
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/05(木) 22:27:46.42 ID:ytbW8Rqoo
 妹ちゃんが入学してから二月くらい経った頃、両親はそれまで住んでいた家を処分し、今までよりだいぶ広い家を購入した。つまり、あたしは引越しをしたのだった。

 この引越しによって兄や妹ちゃんのお隣ではなくなってしまったのだけど、引越し先は一つとなりの駅のそばだったので、あたしはそのこと自体をそんなに気にすることはなかった。毎朝一緒に兄妹と登校できることに変わりはなったし、最初は寂しいと言って泣いていた妹ちゃんも、毎朝隣の駅からおはようと言って同じ電車に乗ってくるあたしを見て、いつの間にかそのことに慣れてしまったようだ。

 それでも、その引越しはあたしにとって凄く大きな意味を持っていた。偶然から生じたことではあるけれども、今にして思うとこの引越しがなければ、この後の兄と女さん、そして兄友と妹ちゃんとの悲劇は生じなかっただろう。



 ・・・・・・あたしの引越し先の隣には、兄友の家があったのだ。
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/05(木) 22:28:49.59 ID:ytbW8Rqoo
本日はここまで

明日は投下できないと思いますので、再開は週末になる予定です

駄文にお付き合い感謝

それではおやすみなさい
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/05(木) 23:17:36.19 ID:qMsk7WD5o
おつおつ
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/05(木) 23:40:17.36 ID:0IYM9VQKo
乙乙!
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/06(金) 07:20:12.83 ID:7nXezdgzo
おつ!
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/06(金) 09:47:06.97 ID:i2OhWScVo
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/08(日) 00:35:57.68 ID:LIMgG2zro
 引っ越した日の次の朝、あたしは何だか落ち着かない気分でいつもより早く家を出ようとした時だった。新しい家の最寄り駅は今までの家の最寄り駅より学校に近かったから、あたしは、兄と妹ちゃんと一緒に登校するにしても今までよりも遅い時間に自宅を出ればよかった。

 それでも自宅から三人で一緒に通っていた今までと違う朝に落ち着かないあたしは、何を考えたのかそんな必要もないのに、いつもより早い時間に家を出てしまったのだった。

 あたしが自宅を出て早足で駅の方に向かおうとしたその時、隣の家のドアから同じ学校の制服を着た男の子が出てきたことに気付いた。よく見るとそれは兄友君だった。

 同時に兄友君もあたしに気付いたようで、一瞬驚いたあたしたちの視線が無意味に絡み合った。

「よう」
 兄友君はすぐに自分を取り戻してあたしに話しかけてきた。

「おはよう」
 あたしも兄友君に答えた。

「おはよ・・・・・・って、あれ? おまえの家って兄の家の隣じゃねえの?」
 不審に感じたのだろう。兄君は問い質すようにあたしに質問した。

「昨日まではね。今日からは違う。今はあんたの家の隣みたいだね」
 あたしは答えた。まさか、兄の隣から兄友君の家の隣に引っ越すとはあたしも意外だった。

「そういや、引越しするとかって聞いたな」

「うん。よろしくね」

「ああ、よろしく・・・・・・ええと」
 兄友君は困惑したように口ごもった。

「どうしたの? あ」
 あたしはそこで兄友君が戸惑っているわけをようやく理解した。ここからあたしと一緒に登校すべきなのか、じゃあお先にとあたしに言って別々に登校すべきなのか、兄君は何かそういうことで困惑しているのかもしれない。あたし自身も一瞬躊躇したけれど、兄友君は兄の親友だったし、
四人一緒に登校するのが自然かもしれない。

 それにあたしは今までどおりの三人だけの関係に変化が欲しかった。兄友君があたしたち三人に加わることは、静かでゆらぐことすらないこの小さな池の水面に小石を投じるように、多少なりとも波紋を呼び起こすかもしれない。もちろん、それによって兄のあたしに向けられた視線の意
味とか、兄の本当の気持ちがわかるわけではないだろう。それでも、何もしないよりはよかった。兄友君と隣同士のあたしが兄友君と一緒に登校しても不自然ではないし、兄の親友である兄友君が電車で兄妹に会ったにも関らずあたしたちと一緒に登校しないほうが不自然だった。

「一緒に行かない?」
 あたしは気軽に兄友君に言った。

「兄と妹ちゃんとも待ち合わせてるんだ」

「妹ちゃん? 幼馴染と兄っていつも二人で登校してるんじゃねえの?」
 兄友君は不思議そうに言った。

「妹ちゃんが入学してからは三人で登校してるよ。もともと中学の頃から三人で登校してたし。知らなかったの?」

「おまえらいつも二人でいるってからかわれてたから、てっきり今でもそうかと思ってたよ」
 兄友君は戸惑ったように言った。そして、少し考えこんでから再びあたしにこう言った。

「何だ、そういうことかよ。じゃあ、一緒に行っても大丈夫だな」

「大丈夫って・・・・・・どういうこと?」
 あたしは兄友君の言葉の意味を図りかねていた。

「いや。兄の邪魔はしたくなかったんだけどさ、別にそういうことじゃないのな」
 それに対して、兄友君は真面目な顔であたしに答えた。
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/08(日) 00:39:38.60 ID:LIMgG2zro
 その朝、無事に兄妹と合流したあたしたちを、二人は不思議そうに眺めた。

「何で幼馴染が兄友と一緒にいるんだよ」
 これは兄の素朴な疑問らしかった。

「お姉ちゃん、引越ししてすぐに彼氏ゲットしたの?」
 わくわくしているような声で聞いてきたのは妹ちゃんだった。「やっぱりいつもお兄ちゃんと一緒にいるから、お姉ちゃんには彼氏ができなかったのかあ」

「違うよ」
 あたしはあわてて、兄の顔色を覗いながら言った。「たまたま引越し先のお隣に兄友君がいただけだよ」

「え、何々? 兄友とおまえの新しい家って隣り合わせなの?」
 兄が言った。

「お兄ちゃん、この人知り合いなの?}
 妹ちゃんは兄の親友の兄友君とは初対面のようだった。

兄と妹が同時に話し出したため、一時は会話に収集が付かない状態だったけど、その間兄友君は面白がっているような余裕そうな表情で兄妹の疑問を聞き流して言った。
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/08(日) 00:41:41.77 ID:LIMgG2zro
「妹さん、こんにちは。俺、兄の同級生の兄友ね。あと、今日から幼馴染のお隣さんね」

「お兄ちゃんのお友だちですか。兄の妹です。よろしくお願いします」
 妹ちゃんは、兄の友だちと知って慌てたように礼儀正しくお辞儀した。

「よろしくね」
兄友君は笑いながら妹ちゃんに答えた。

「何だ、おまえら隣同士になったんだ。じゃあ、これからは四人で一緒に登校できるな」
 兄が呑気な声で言った。

「そうだね。まるでダブルデートしいてるみたい」
 こういう余計な感想を、というか自分の願望を隠さずに喋るところがいかにも妹ちゃんらしかった。

「何でそうなるのよ」
 あたしはからかうように気軽な口調で妹ちゃんに突っ込んだけど、心中は複雑だった。まさか、兄に誤解されないだろうか。この頃兄に淡い恋情を抱き始めていたあたしには、そのことだけが気になっていた。そして、そんなあたしの気持ちを考えず無神経にダブルデートとか話している妹ちゃんに、あたしは初めてイライラしたのだった。
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/08(日) 00:46:51.18 ID:LIMgG2zro
 学校に着いて、妹ちゃんと別れて三人だけで教室に向かう途中、同級生に呼ばれて一瞬だけ兄があたしたちのそばを離れた時、兄友君があたしの方を真面目な顔で見た。

「おまえ、相当無理してたんだなあ」

「・・・・・・どういう意味?」
 あたしはドキッとして兄友君に言った。

「どうって・・・・・・そのままの意味だけど。おまえもいろいろ我慢してるんだな」

 あたしは突然の兄友君の指摘に狼狽した。まさか、彼はあたしのこれまで秘めていた兄への気持ちに気付いたのだろうか。わずか1時間くらいの出来事を聞いただけだというのに。

「俺さ」

兄友君が何でもない世間話をするように続けた。

「そういう幼馴染って可愛くて好きだぜ」
・・・・・・あたしをからかって楽しいのだろうか? この男は。

「あんたさあ、いい加減にしなよ。あたしをからかって楽しいの?」
 あたしは半分逆上気味に、後の半分はこんなことを気軽に言う兄友に飽きれ気味に答えた。

「別にふざけて言ってるんじゃないよ。俺、おまえのことが気になってるんだよね」
 あたしの言葉を遮って続けた兄友君の口調からは彼が真面目なのかふざけているのか、あたしにはよくわからなくなった。

「まあ、兄のシスコンって前から感じてはいたけどさ。あんだけ可愛い、つうか守ってあでたいような女の子が身近にいたら、たとえそれが実の妹だとしても、兄が他の女に興味がないのも無理ねえよな」
 兄友は苦笑しながら続けた。
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/08(日) 00:48:24.43 ID:LIMgG2zro
 ・・・・・・違うよ。それはぜんぜん違うよ。
 あたしは心の中でそう叫んだ。実際に声には出せなかったけど、そんなことはあたしはこれまで何年間も考えてきたことだったから。ここ最近は、兄の視線は妹ちゃんよりあたしの方に向けられていたはずだ。妹ちゃんを守りたいという兄の気持ちとは別な次元の感情が、兄からあたしには向けられていたはずなのだ。

 そういうあたしの混乱した気持ちを知らずに、兄友君はあっさりとあたしに告白した。

「幼馴染さ、そういうことなら俺と付き合わない?」
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/08(日) 00:49:28.81 ID:LIMgG2zro
今日は以上です

ここからは今まで溜めていた分、一気に展開させたいと思います

・・・・・・ただ、更新は遅いと思いますのでご了承ください
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 00:53:28.00 ID:NzDgSxQ5o
乙です
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 01:25:47.81 ID:yMnPIJgro
おつー

一気に進むのか
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 07:39:18.12 ID:BmglvQJSO
どうなるんだろうな
wktk
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/04/08(日) 09:22:17.33 ID:d+Y1UclGo
一気にどうなるんだろう
楽しみに待ってます
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 11:37:52.45 ID:0S7y4WvIO
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/08(日) 22:00:59.62 ID:LIMgG2zro
 あたしは兄友君のあからさまで、照れる様子すらないその告白に一瞬呆然となった。我に返ったあたしが兄友君に真意を質そうとした時、用事を済ませた兄が戻ってきたため、話はそこで終ってしまった。

「悪い。待っててくれたのか」
 兄はあたしたちを見てそう言った。

「もういいのか? じゃあ早く教室行こうぜ」
 兄友君はもうあたしに告白したことなんてなかったかのように普段どおりの声で言い、兄と並んでさっさと教室の方に向かってしまった。混乱した思考を持て余しながらあたしは二人の背中を追いかけた。

 午前中の授業の内容はほとんどあたしの頭の中に残らなかった。今朝の兄友君の「告白」のセリフがあたし頭の中で無限にループしていたせいだった。



『幼馴染さ、そういうことなら俺と付き合わない?』



 彼はどういうつもりであたしにそう言ったのだろう。あたしは今までたまに感じた兄友君の、あたしに向けられた意味深な視線を思い出した。それは、朝のホームルーム前の教室で、兄と兄友君とあたしが他愛のない話に興じている時のことだった。兄友君は兄に話しかけながらも時折あたしの方を覗うような視線を向けることがあった。

 それはあたしに興味があるというより、兄とあたしの関係がどうなっているのか探っているのだろうとあたしはその時考えていた。周り中の生徒たちが、毎朝一緒に登校している兄とあたしの関係を知りたがっていたのだから、兄の親友の兄友君がそのことを気にしてあたしの方を見るこ
とがあっても決して不思議ではなかったから。

 でも、あの視線の意味はそうではなかったのだろうか。兄友君は当時から異性としてあたしに興味を持っていたのか? あれは去年のこと、まだ妹ちゃんがうちの学校に入学する前のことだった。もしかして、あの頃から今までずっと、兄友君はあたしのことが好きだったのだろうか。

 あたしはため息をついた。兄友君が自分に興味を持ってくれるというだけで喜ぶ女の子はいっぱいいるだろうけど、あたしの胸の中には兄がいた。今のところ実現する見込みはない恋だけど、兄の方もあたしのことを気にしているのではないかという期待はまだあたしの中にはあった。

 昼休みは兄は妹ちゃんと一緒に過ごすだろうから、その時に今朝の言葉の意味を兄友君に聞こう。そして、それがあたしが心配しているとおりの答えだとしたら、あたしは兄の親友である兄友君の告白を断らなくてはならない。そのことを考えだけでもあたしは気が重くなった。
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/08(日) 22:04:44.05 ID:LIMgG2zro
 昼休みを告げるチャイムが鳴り終るのを待たずに、兄は教室を出て行ってしまった。それはいつもの兄の習慣だった。妹ちゃんは兄が遅れて自分が待たされるのを嫌がるのだ。

 あたしがどうやって兄友君を誘おうかと迷うまでもなく、兄が教室からいなくなるとすぐ、彼の方からあたしに声をかけてきた。

「一緒に学食行かねえ?」
 兄友君は顔を赤くすることもなければ照れもしないで、あたしを誘った。これだけイケメンだと女の子を誘うのに緊張なんてしないのだろう。あたしはそんなことを考えながら、兄友君の誘いを受けた。

「よかった。さっきの話の続きをしたかったからさ」
 兄友君はそう言って、あたしを促して学食に向かった。

 運良く空いていた窓際の丸テーブルを確保できたあたしたちは、向き合って座って食事を始めた。といっても、これからどんな話になるのか緊張していたあたしには全然食欲なんてなかった。

「さっきも言ったとおりだけどさ、おまえ俺と付き合わねえ?」
 兄友君は口の中に入れたハンバーグを咀嚼し終わってから、普通にあたしに言った。相変わらず緊張も照れもせず、普段どおりの表情で。

「それはさっきも聞いたよ。いきなり付き合わねえ? じゃないでしょ――普通はその前に好きだとか言うのが礼儀じゃないの?」
 相変わらず何を考えているのかわからない兄友君に少しイライラしたあたしは言い返した。

「ああ、ごめん。普通はそうだよな」
 兄友君は水を一口飲んで言った。「そういう意味で言うとさ、俺、別に幼馴染のこと好きじゃねえんだよな」

 ――いい加減にしてよ。あたしはイライラを通り越して怒りすら覚えた。からかっているのか。面白い冗談でも言っているつもりなのか。あたしが言い返そうとした時、兄友君がまた口を開いた。

「それに、幼馴染だって好きなのは兄のことだろ? だからさ、俺と付き合ってみようぜ」

「・・・・・・ごめん。あんたが何言ってるのか全然理解できない」

「俺さ、今日始めて兄と妹ちゃんと一緒に話してて思ったんだけどさ、妹ちゃんって本当に可愛いよな。何を犠牲にしても守りたくなるような感じがするね」

「妹ちゃんは可愛いよ、確かに。でも」

「あんな子が妹だったら、俺だって妹ちゃんが嫌がることはやりずらいだろうな」
 あたしの言葉を遮って兄友君は続けた。いったい兄友君の話はどこに着地するのだろう。言いたいことはあったけど、あたしはもう兄友君の話を遮るのをやめ、黙って話を聞くことにした。
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/08(日) 22:08:48.36 ID:LIMgG2zro
「俺、さっき言ったじゃん? おまえ相当無理してるんだなって。あと、おまえのことが気になるってさ」
 兄友君は器用なことに、話を続けながらもいつのまにかハンバーグ定食を完食していた。

「だからお節介なようだけど」
 兄友君は卓上の紙ナプキンで口を拭ってから続けた。

「普通に兄のこと好きになっても、妹ちゃんのことを気にしている兄の本心を知るのって難しそうじゃんか? 兄って、妹ちゃんのことを気にして本心なんてそうそう自由に言えなくなっちゃってるだろうしね」

 そこまで聞いて、あたしはだんだん兄友君が何を考えているのか察しがついてきた、けれど、わからないのはなぜ兄友君がそんなことをしようとするのかということだった。

「だから俺と付き合ってみようぜ。あ、付き合うって言ったって振りだぞ? 何も本当に俺と付き合えって言ってるわけじゃねええからな」

「・・・・・・要は兄があんたと付き合い出したあたしを見て、嫉妬するかどうか確かめろってこと?」
 そんなにうまく行くのだろうか。あたしには半信半疑だった。

 確かに三人が穏やかに浸りきっているこのぬるま湯に一石を投じてみたいという誘惑は、あたしが常に感じていたことだったけど、それで兄が素直にあたしに嫉妬してくれるどうかを考えると心もとなかった。

「おまえだってそう考えてたから、今朝、俺をあいつらと一緒に登校させたんじゃねえの?」

 ――そのとおりだった。あたしは兄友君の洞察力に密かに舌を巻いた。これくらい人の感情を読み取れる人が言っていることなら、思い切ってこの話に乗ってみようか。諸刃の刃のような話ではある。兄に普通に祝福されればそれで終わりだ。ぬるま湯にさえ兄と一緒に浸かることがで
きなくなってしまうかもしれない。それでも、こんな関係は一生続くとは思えない。情けないことに、あたしがこんな関係を続けながら抱いていた密かな希望は、兄とあたしが同じ大学に入るということだった。そうすれば去年と同じく少なくとも一年間は妹ちゃんは付いてこれずに、あたしと兄
は一緒に過ごすことができる。

 でも、そんな情けないささやか過ぎる希望にかけるより、今、勝負した方がいいのではないか。あたしの心は兄友君に提案に傾いたけど、あたしには依然として、兄友君がなぜあたしに協力しようとしているのかがわからなかった。そこを知らないでこの話に乗ることはできない。

「でも何で兄友君があたしに協力してくれるの?」
 あたしは兄友君の目を正面から見つめながら聞いた。「あんた、あたしのことは別に好きじゃないって言ってるのに」

「恋愛感情はないよ。それに、あったとしたら兄の気持ちを知る機会なんておまえに与えるわけねえじゃん」
 落ち着いた声で、兄友君は言った。

 確かにそれは正論だった。でもあたしの疑問の答えにはなっていない。

「だから、おまえのこと気になるって言ってるじゃんか。それに恋愛感情じゃねえけど、おまえのこと嫌いじゃないし」

「――あんたの言ってること、全然理解できない」
  あたしは彼の言葉を一蹴した。自分にとっては大きな決心を強いられることをしようとしている以上、ここを曖昧にしておくことはできなかった。
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/08(日) 22:11:12.77 ID:LIMgG2zro
 兄友君はここに至って初めて困惑したような表情を見せた。

「やっぱりこれじゃ納得しないよな」
 彼はため息をついた。どういうわけか困ったような彼の表情は、あたしにとって今日初めて共感できるものだった。あたしは思わず微笑んだ。

「そうだよ。何をたくらんでるのかさっさと白状しちゃいなさい」

 兄友君は少しためらい、そして心なしか顔を赤らめてようやく話し出した。

「実は、その。俺も好きになっちゃったみたい」

「好きになったって・・・・・・誰が?」
 あたしはこの話の意外な展開に驚いて兄友君に聞いた。

「その・・・・・・妹ちゃんのことが」
 彼は小さく呟くように言った。

「え? ええ?」
 あたしはうろたえて論理だって考えることができなくなった。その瞬間、あたしにとって妹ちゃんは兄を巡る恋のライバルではなく、あたしが母として姉として見守ってきたあたしの大切な妹と娘になったのだ。

「ちょっと待ってよ。あんたの噂は聞いてるのよ。これまであんたが女の子と付き合っては、すぐに他の女の子に乗り換えるようなことを繰り返してきたことだって」
 あたしは自分の恋愛のことを忘れ、兄を睨みつけた。妹ちゃんを弄ぶことはあたしが許さない。あたしはこれまで自分の気持を抑え、自分より妹ちゃんを守ることを優先してきたのだった。

「おい、ちょっと待て」
 でも、兄友君も負けてはいなかった。

「どこから聞いた話か知らないけど、人聞きの悪いこと言うなよ」
 兄友君が冷静さを失って大きな声で反論したせいで、近くのテーブルに座っていた生徒たちが興味深そうにこちらを覗っていた。それに気付いた兄友君は声を抑えて話を続けた。

「俺は女の子を弄んだことなんて一度もねえよ。それは付き合った女の子はそれなりにいるけど、浮気して一方的に振ったことなんて一度もねえし。それに、妹ちゃんて何ていうかさ・・・・・・すごく守ってあげたいと思わせるような子じゃん。そんな子を仮にも弄ぶとか考えられねえよ」
 少なくとも、この瞬間の兄友君は真剣な表情だった。あたしは兄友君を疑ったことを彼に悪いことをしたとは思ったけれど、後悔はしていなかった。妹ちゃんはそれほど、あたしにとって大事な存在なのだった。これまで兄と二人で妹ちゃんを守ってきたあたしにとって。
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/08(日) 22:16:21.28 ID:LIMgG2zro
「変なこといってごめん」
 あたしはとりあえず兄友君に謝った。

 それにしても。兄友君が真剣に妹ちゃんのことを好きになったのだとしても、やはり疑問は残る。

「でも、それがあたしと付き合う振りをすることとどう関係するのよ」
 あたしは少し冷静になって聞いた。

「まあ簡単に言っちゃえば、幼馴染と兄が付き合えば、俺にも妹ちゃんと付き合うチャンスができるかもしれないだろ?」

「・・・・・・何かずいぶん単純に考えてるのね」

「複雑そうな関係だって、本当に突き詰めれば単純な姿が残るものだぜ」
 兄友君は少し余裕を取り戻したのか、気取った口調で言った。

「結局、おまえたち三人の関係って、安定しているようで、実はそれぞれ違うことを考えているみたいだしさ。同床異夢っつうの? そこに一石を投じてみればまた何か動き出すかもしれないじゃん」
 格好つけて言っているけど、とりあえず何か行動してみようというだけの話じゃない。でも、あたしがぬるま湯をかき回したいという願望だってこれと同じことだった。

「兄友ってもてるんでしょ? 普通に妹ちゃんに告ってみればいいじゃない?」
 あたしは嫌がらせのように言った。

「・・・・・・今のままじゃ誰が告ったってだめだろ。兄に依存しまくりだもんな、妹ちゃん」
 そういうところにも惚れたんだけどさと余計な一言を付け加えた後、兄友君は話を戻した。

「俺は考えていることを全部話したぜ。どうする? 話に乗るか?」

 世界史で習ったルビコン河を渡るというのはこういう場合の比喩に違いない。失敗すれば、今の三人の関係すら壊してしまうかもしれない。それでもあたしはこの時、自分の心がこのまま何もしないことにもう耐えられないぎりぎりのところまで来ていたことを初めて自覚した。

「わかった。やるよ。兄友君と付き合っている振りをすればいいのね」

 兄友君は好意的な表情で笑った。
「それでこそ幼馴染だ。今日からは『君』なしな。よろしく幼馴染」

「こちらこそよろしくね、兄友」

 こうしてあたしたちの仕掛けた作戦が始ったのだった。
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/08(日) 22:19:25.68 ID:LIMgG2zro
本日はここまで
明日可能ならまた再開します

>>520
もしあたながわたしの上司なら、あまり仕事を廻さないよう配慮していただけると、SSが進んで助かります

ではお付き合い感謝です
おやすみなさい
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/08(日) 22:52:21.18 ID:muWulyo5o
乙乙!
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/08(日) 22:56:29.68 ID:taqTZ6o1o
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2012/04/08(日) 22:57:47.74 ID:2x19Tc15o

兄友はなんか好きに成れん
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 23:07:01.83 ID:IrciOc8DO
おもしろいれす、実に実に
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 23:13:10.51 ID:BmglvQJSO
どっちにしろ兄友報われてないな
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/09(月) 23:11:53.73 ID:2i56dX9Oo
 それからしばらくの間、あたしと兄友の「交際」は順調だった。いつも一緒に電車に姿を現すあたしたちに対して、はっきりと口にはしなかったけど妹ちゃんは興味津々の様子だった。この分ならあたしと兄友がいないところでは、妹ちゃんはきっと兄に対してあたしと兄友の噂をしているに
違いない。

 あたしと兄友はよく作戦を練ってからこの演技を始めた。やりすぎてはいけないというのが兄友の意見だったし、それにはあたしも同感だった。既に出来ている恋人同士と思われてしまうと、たとえ兄があたしに気があったとしても、兄はあたしたちに遠慮してかえって自分の気持を押し殺してしまうだろう。

 だからあたしたちは、あたしたちの関係をお互いが気になっているけど、まだ正式に告白していない段階の微妙な関係として設定することにした。そしてこの演技を始めてみると、兄友とあたしはお互いに恋愛感情こそなかったものの相性は悪くなかったのだろう、兄友とあたしは演技を意識するまでもなく、仲の良い男女として自然に行動することが出来た。

 そして、別に兄と妹の前でばかりではなく二人きりでいる時まで、特に意識することなく外見はあたしたちが設定したとおりの関係の男女として行動することができたのだった。

 もちろん、あたしたちが気が合うからといって目的と手段ははっきりと区別できていた。あたしは兄友といる時は、兄妹と一緒にいる時と違って自分に素直に振る舞える。兄が好きなことを黙って胸に秘めなくてすむ。そういう意味では、あたしは兄妹と一緒にいる時も演技をしていたようなものだった。

 でも、兄が好きなこと隠すための演技と兄の気持ちを探るための演技では、あたしのモチベーションが全然異なる。自然と、あたしは兄友といる時のほうが明るく饒舌で活発に振る舞えるようになった。そして、そんな時、兄は気のせいか少し思い詰めたような表情であたしのことを目で追うようになったみたいだった。

 兄友の言っていたとおり、何となく前よりあたしに向けられる兄の視線は熱っぽくなってきたことを、あたしは感じ取っていた。あたしはそのことに満足し密かにわくわくもしたのだけれど、この先どうすればいいのかはよくわからなかった。

 理想的な展開は、このまま放置するとあたしと兄友が付き合い出してしまうことを懸念した兄が、勇気を奮ってあたしに告白してくれるのが理想的だった。でも、そんなにうまく行くはずはない。兄は妹ちゃんのことをあれだけ気にかけているのだから。
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/09(月) 23:16:59.83 ID:2i56dX9Oo
「まあ焦らない方がいいよ」
 兄友はあたしと二人だけでいる時に呑気に言った。「放って置いたって、妹ちゃんのことが心配な兄が、誰かと付き合い出すことなんかないんだし」

「まあ、俺たちが正式にお付き合いしましたってあいつらに報告しない限りは、兄がおまえのことを諦めることもないだろうしな」
 兄友は付け加えた。「ここまで来たらじっくり行こうぜ・・・・・・いや、おまえが俺と仲の良い振りをするのが苦痛でしょうがないって言うなら別だけど」

「そんなことないよ」
 あたしはそれを否定したけど、それは別に兄友に気を遣ったわけではなく、本心からの言葉だった。実際あたしは兄友といると気が楽だった。それでも、永遠にこうしているわけにはいかない。これは目的を持ってしていることなのだから。

「でも、いつまで続ければいいの?」
 あたしは兄友に聞いた。

「そのうち、兄だって我慢できなくなる時が来るって」
 兄友があたしに説明した。

「まあ、そのうち少しづつ兄にも特別な好意があるようなないような、そういう思わせぶりな行動を始める必要はあるけどな。そうやって兄の気持ちを少しかき乱してやるんだ」

「・・・・・・妹ちゃんのことは?」
 こんなことを始めてしまった今でなお、妹ちゃんはあたしとって大切な女の子だった。でも、兄友はあたしの言葉の意味を誤解したようだった。

「もちろん、妹ちゃんにもわかるようにね。妹ちゃんだってエゴイストじゃないんだから、兄とおまえの仲を自分が引き裂いてるって妹ちゃんが考え出したら、おまえの勝ちだと思うよ」

「勝ち負けの話じゃないよ」

「大丈夫。そうなっても妹ちゃんは俺が慰めるよ。お互い振られたもの同士慰めあっているうちに、意外とうまく行くんじゃね?」
 相変わらず兄友は気楽に考えていた。よほど自分の魅力に自信があるらしい。

 こうして事態は長期戦の様相を呈してきたのだけれど、さすがの兄友にも予想できなかった出来事が起こった。

 ・・・・・・学校でいつも孤立しいている女さんという少女が、突然兄に接近し始めたのだ。
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/09(月) 23:20:00.89 ID:2i56dX9Oo
 その頃、もう兄の気持ちが完全にあたしに向いていると確信したという兄友は、兄の気持ちを更に煽るような言葉を兄にかけ始めていた。

 兄友が言うには、兄友があたしと仲の良いアピールはもう十分なので、あたしに好かれている(と兄が思い込んでいる)兄友自身の口から、かなりしつこく兄と妹ちゃんの仲を疑ったりからかったりするような言葉を兄にかけるようになったのだ。


 兄友の話では


 兄友「真面目な話さあ、おまえと妹ちゃんってどうなってるの?」

 兄「死ね」

 兄友「よせ、痛いって。だっておまえらいつもべったりと二人きりじゃん」

 兄「んなことねえよ。あいつが俺がいないと寂しがるから」

 兄友「・・・・・・この間、同じこと妹ちゃんにも聞いたんだけどよ」

 兄「・・・・・・何って言ってた? あいつ」

 兄友『あたしが一緒にいてあげないとお兄ちゃんがすぐ拗ねるから』

 兄「・・・・・・死ね」

 兄友「だから痛いだろうが。俺が言ったんじゃねえって。妹ちゃんがそう言ったんだって」

 兄「・・・・・・」

 兄友「まあいじゃんか。あんな可愛い子がおまえのことを一途に慕ってるんだしよ」

 兄「可愛いって・・・・・・実の妹だっての」

 兄友「はいはい」


とか


 兄友「・・・・・なあ」

 兄「うん?」

 兄友「前から聞きたかったんだけどさ」

 兄「おう」

 兄友「おまえと妹ちゃんってどうなってんの?」

 兄「どうなってるって何だよ」

 兄友「だからさあ」

 兄「・・・・・・」

 兄友「普通兄妹で手を繋いで登校したりとか、いつも兄妹二人きりで昼飯食ったりしないじゃんか?」

 兄「そうか?」

 兄友「そうだよ。何、おまえ妹ちゃんとできてる・・・・・・おい痛てえって。よせ」

 兄「おまえ言うに事欠いて何てことを想像してるんだよ」

 兄友「・・・・・・だってよ」

 兄「何だよ」

 兄友「・・・・・・まあ、いいや。」


 とかという会話が兄との間であったそうで、兄は実際に言葉には出さなかったものの『幼馴染とうまくやってるおまえが言うな』という雰囲気を態度から醸し出していたそうだ。

 兄にしてみれば腹立たしい気持ちだったのだろう。妹ちゃんのことを気にしてあたしにアプローチできない(と兄友は信じていた)自分に追い討ちをかけるようなセリフ。しかもそのセリフは、あたしと良い雰囲気の兄友からかけられたのだから。

 もうそろそろかもしれない。疑い深いあたしでさえ、兄友の言うように兄の気持ちが自分に向けられていることを信じ始めていた。
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/09(月) 23:25:30.69 ID:2i56dX9Oo
 女さんの落とした財布を、兄がスーパーで拾って女さんに渡してあげたことがきっかけだった。妹ちゃんが暗い表情で語ったところによると、女さんはそれをいいきっかけにして積極的に兄に近づいたそうだ。


「兄君ってこれまでお話したことなかったね」
「これからは教室で話しかけてもいいかな」
「よかった。これからはよろしくね」


 そう言って兄に微笑みながら話しかける女さんを、兄は呆けたようにじっと見つめていた。



 ・・・・・・最初に妹ちゃんからその話を聞いたときには、あたしは正直それほど危機感を感じなかった。

 女さんはいわゆるぼっちで、教室で常に孤立しているような子だった。つまり彼女は、あたしや妹ちゃんに囲まれている兄が気を惹かれるような存在感のある女の子ではなかったのだ。確かにぼっちらしからぬところは、彼女には多々あった。

 容姿は正直美少女の域に入っている。服装も決してぼっちに有りがちのように地味というわけではなかった。結構短めのスカート、ブラウスの第二ボタンまで外している胸元にわざと緩めに結んだリボンタイ。

 見た目では十分お洒落で活発な印象の女の子だった。それに彼女は成績も良かった。これは兄友が話していたのだけれど、女さんの成績の傾向を見るに、彼女はあまり勉強していないのではないかということだった。それでも彼女の成績はクラスで十番以内から下がったことはない。つまり女さんは地頭の良さだけでその成績をキープしているのだ。

 これでぼっちでなければ思い切り強敵だったけど、それでもあたしには彼女はコミュ障にしか思えんなかった。これだけ高スペックなのにクラスで孤立しているのだから、女さんはやはり人とコミュニケーションを取れない性格なのだろう。そんな彼女が精一杯の勇気を振り絞って兄にアプローチしたとしても、基本的に明るい性格の活発な女の子が好みの兄が本気で彼女を意識するとは思えなかった。

 当時のあたしはそれくらい思い上がっていた大ばか者だったのだ。

 そして当時のあたしの考えとは裏腹に、妹ちゃんの本能的な危機感はそんなに甘い状況ではないと妹ちゃんに警告していたようで、兄と女さんが出会った翌日の電車の中で、あたしは妹ちゃんからそのことを詳しく聞かされたのだった。
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/09(月) 23:26:00.55 ID:2i56dX9Oo
短くて申し訳ないけど今日はここまで

また投下します

おやすみなさい
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/09(月) 23:30:25.15 ID:IvLgbf0wo
おつ
偽装Cが好きなんですかね
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 23:37:31.30 ID:2d4223tJo
おつおつ
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/10(火) 23:02:10.96 ID:dhQK7eMko
 とりあえず、あたしは兄と兄友に妹ちゃんと話しがあるからと言って二人を隣の車両に追っ払った。兄は何かぐたぐた言ってこの場を離れることに抵抗したけど、あたしの意図を察したのか兄友が半ば引き摺るように兄を連れて行ってくれたので、あたしは無事に妹ちゃんと二人きりになることができた。

 妹ちゃんの話では、兄は女との関係を問い詰めた妹ちゃんに対して、ただのクラスメートだよって答えたのだけれど、長年兄のそばで過ごしてきた妹ちゃんにとって、この時の兄の態度は女さんに対する関心を伺わせるように感じられたのだと言う。

 「何か怪しいの。お兄ちゃんが慌てたように話題を強引に変えるなんて初めてだし。別に女さんがお兄ちゃんのことを好きだという証拠があるのかと言われればそうじゃないけど」

 妹ちゃんを宥めながら、延々と続く妹ちゃんの愚痴交じりの心配を聞いているうちに、だんだんあたしもいらいらしてきた。自分でも何でこんなに心がざわめくのか理解できなかったけど、とにかくあたしはその時冷静さを欠いていた。

 それは、あたしが勇気を振り絞って始めた一世一代の作戦に、外から気楽に余計な邪魔をしてくれた女さんへの苛立ちだけというわけではなかった。むしろあたしは妹ちゃんと知り合って初めて、いつまでもつまらない嫉妬心と独占欲を丸出しにして、女さんと兄の関係への不安をあたし
に訴える妹ちゃんに対して苛立ちを感じていたのだった。あたしはそう気がついて更に混乱した。

 この分では、仮に妹ちゃんが兄があたしを好きだということに気がついたとしたら、妹ちゃんはどうなってしまうのだろう。あたしに対しても女さんに向けてるのと同じような嫉妬心と敵愾心を向けるのだろうか。そう考えると、あたしは女さんに対するよりむしろ妹ちゃんに対して苛立ったのだった。

 あたしは兄への気持ちを成就させたくて兄友の誘いに乗ったのだけど、それでも妹ちゃんのことは気にはなっていた。なるべく妹ちゃんを傷つけずに願いを成就したい。あたしはそんな虫のいいことを考えていた。

 もちろん考えるまでもなく、妹ちゃんを傷つけずに兄と付き合うなんてことができるとは思えなかったのだけど、そこは兄友の俺に任せろ的な勢いに乗っかってしまっていた。兄友は妹ちゃんに一目惚れしたそうだし、あいつの何というか男子力(?)ならひょっとしたら妹ちゃんをも振り向かせられるかもしれないとあたしは自分に言い聞かせていた。

 でも、ぐずぐずと泣き言を話し続ける妹ちゃんを見ていると、あたしはやはり妹ちゃんの兄に対する想いは普通ではないと考えざるを得なかった。
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/10(火) 23:05:00.54 ID:dhQK7eMko
 それをストレートに妹ちゃんにぶつけるわけにはいかなかったけど、ただ、妹ちゃんを慰め宥めてこの場を収めて終るだけでは、あたしの気持ちが収まらなかった。

 そういうわけで、あたしのやり場のない苛立ちは兄と女さんにぶつけるしかなかった。

「そんなことあり得ない! 妹ちゃんの思い過ごしだって。あいつが一番気にしてるのは妹ちゃんなんだからもっと自信持ちなよ」
 あたしは声を荒げて妹ちゃんに言った。

「だいたい、女さんってクラスで孤立しているぼっちだよ? そんな子が積極的に兄に言い寄るはずなんてないじゃん」
 こんな言葉は女さんに対して公正ではない。あたしは心の隅ではそう考えたけど、もう勢いで口を出てしまった言葉は止まらなかった。

「仮に女さんが兄に気があるとしたって、そんな友だちもいないぼっちの女なんかに兄が気を惹かれる訳ないでしょう。妹ちゃんが身近にいてこんなにも兄を慕っているのに」

「お姉ちゃん、それちょっと言い過ぎだよ。それはあたしだって女さんがお兄ちゃんに話しかけてきた時はびっくりしたけど・・・・・・でも、女さん綺麗だし、少し謎めいているというか不思議な感じだけど、お兄ちゃんは普通に女さんと話ししてたし。ぼっちとか言ったら駄目だよ」
 女さんに対するあたしの配慮を欠いたひどい言葉を聞いて、初めてあたしの勢いに少しひるんだ妹ちゃんが言った。

「あんたは昔から兄を甘やかせ過ぎだよ。あいつに浮気されてるかもしれないのに、あいつに手を握られたり頭を撫でられたりしたくらいで、いつも兄のこと許しちゃってるじゃん」
 でももうあたしの言葉は止まらなかった。

「お姉ちゃん、お兄ちゃんは女さんなんかに気を惹かれないって言ってたのに・・・・・・浮気されてるってどういうこと?」

「うるさいわね。とにかく学校についたら兄に説教するから。妹ちゃんは兄友と一緒に教室に行ってね」

「そういうのやめようよ・・・・・・あたし、そんなつもりでお姉ちゃんに相談したわけじゃ」

「いいから。兄は少し懲らしめないと。あいつめ、よりによってぼっちの、友だちさえいない暗い女なんかと」
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/10(火) 23:07:12.32 ID:dhQK7eMko
 もう後には引けなかった。校門の前で兄と兄友に追いついたあたしは、兄友に妹ちゃんと先に校舎に行くように頼むと、驚いている兄の手を引き摺って中庭に引っ張って行った。

 あたしは中庭に着くと、妹ちゃんの話に乗った振りをして、その実単に今朝感じた自分の苛立ちを兄にぶつけた。




「・・・・・・あんたさ、何考えてるのよ」

「妹ちゃんの気持ちとか、あんた真剣に考えたことあるの」

「あれだけ一途にあんたのことを慕っている妹ちゃんの気持ちを何で弄んだりできるの?」

「だってそうでしょ。妹ちゃんから聞いたけど、昨日だって妹ちゃんの前で見せつけるように女さんとイチャイチャしてたんでしょ」

 あたしは誤算していた。これまであたしがどんなに厳しいことを兄に言ったとしても、ことそれが妹ちゃんへの心配から出ている限り、兄は怒ることもなくあたしの言葉を真面目に受け止めてくれていた。あたしたちは妹ちゃんを共に守り育てている戦友で夫婦で家族なのだったから。でも、その時の兄の反応はいつもと全く違うものだった。
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/10(火) 23:10:51.80 ID:dhQK7eMko
「本当は俺のことが気に入らないだけなんだろ? だったら俺に話しかけるな」
 兄はむっとしたように答えた。それは、これまで兄の口からはあたしに対してかけられたことがない厳しく冷たい声だった。

「ち、違う」
 あたしはこれまで自分の苛立ちを厳しい言葉に置き換えることで感じていた高揚感が見る見るうちにしぼんで行くのを感じて、口ごもった。そんなあたしを思いやる様子もなく、兄はさらに厳しい言葉を続けた。

「おまえは兄友と二人で仲良くしてればいいじゃねえか。何で俺のことなんかそんなに構うんだよ。そんなに気に入らなけりゃもう俺には話しかけないでくれ」

「何で・・・・・・」
 何で今兄友の話をあたしにするの? あたしはそう聞きたかったけど、それは言葉にはならなかった。

 恐ろしい想像が突然あたしの脳裏に浮かんだ。兄があたしに気があるということが兄友と仲良しの振りをするという今回の行動の前提だったのだけど、ひょっとしたらそれ自体があたしの妄想だったのだろうか。兄友と付き合い出しそうなあたしのことなど、兄は本当は気にもしていなか
ったのだろうか。

 それ以上何も喋れなくなって凍り付いてしまったあたしに、兄は遠慮なく厳しい言葉を続けた。

「何でじゃねえよ。おまえは大好きな兄友のことだけ気にしてりゃいいだろ。もう俺と妹のことは放っておいてくれよ」

「じゃ、もう行くから」
 最後に兄はそういい捨てる、とあたしに構わず教室の方に向かおうとした。

「あ・・・・・・」
 ちょっと待って・・・・・・と言おうとしたけど、結局あたしはそれ以上何も言うことができなかった。

「おまえも早く行かないと遅刻するぞ」
 兄はそれだけ言い捨てると、それ以上もうあたしのことは気にせずに中庭を早足で去って行ってしまった。
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/10(火) 23:15:17.23 ID:dhQK7eMko
 一時限目が終った時、まだ、混乱する気持ちを持て余していたあたしはもう兄の目を気にせず兄友を廊下に呼び出して、朝の電車の中での妹ちゃんの話と、中庭での兄とあたしのやりとりを早口で伝えたのだった。兄友にも今更どうしようもないだろうと考えないではなかったけど、誰かに話さないとこの辛い気持ちの収めようはなかったし、かといってそれを妹ちゃんに話すわけにもいかなかった。

 拍子抜けしたことに、兄友はあたしの早口の訴えを聞いても全く心配する様子はなかった。

「ああ、よかったじゃん」
 兄友は人の気も知らずに気楽に言った。

「よかったって・・・・・・最悪だよ。あんたの誘いになんか乗らなければよかった」
 それは兄友への八つ当たりだとわかっていたけど、呑気な彼を見ているとあたしにはそう言わずにはいられなかった。

「いや、予想どおりじゃんか。兄のやつ、俺と仲が良いおまえに嫉妬してるんだろ?」
 兄友は意外なことは言い始めた。「要はさ、兄は自分はおまえへの気持ちを、俺への遠慮とか妹ちゃんへの遠慮とかで自分の中に押さえ込んじゃってるんだと思うよ」

「え?」

「それなのに、自分がクラスメートの女さんと少し話をしただけで、おまえや妹ちゃんから責められたんだろ? そりゃおまえへの気持ちを我慢している兄としては切れたくもなるし、嫌味の一つや二つは言いたくなるだろ」

 確かにそいいう見方もあるのかもしれない。兄友の気楽な言葉に半信半疑だったあたしだけど、このまま絶望するよりはその言葉にすがりたかった。あたしは兄友にこれからどうすればいいの? と尋ねた。

「このまま怒ってる振り、つうか振りじゃないかもしれないけど、とにかく始めたことを最後までしようぜ」

 兄友は言った。「とりあえず、今日は兄を昼休みにぼっちにしちゃえよ。そんだけおまえも妹ちゃんも怒ってるんだということを兄に気がつかせようぜ」

「・・・・・・よくわからないよ」
 もうこの辺で兄友の作戦はあたしの理解を超えていた。

「ああ、説明するのも面倒だな。とにかく、昼休みは妹ちゃんと二人で過ごしな。妹ちゃんも兄とおまえの朝の話を知りたがってたしさ。兄には俺からうまく伝ええておくから」

 とりあえず少しだけ希望が繋がったのかもしれなかった。兄友の話どおりなら、兄はあたしに嫉妬していることになる。全てが終ったという絶望感に苛まれていたあたしだけど、兄友が正しければ実はもっと前向きな結果が出る可能性がまだ残っているのかもしれなかった。
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/10(火) 23:16:00.41 ID:dhQK7eMko
今日はここまで

また投下します

おやすみなさい
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 23:27:42.80 ID:X/3Ha2XJo
乙乙
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/10(火) 23:29:51.78 ID:VNOTlm4Qo
乙乙

兄友はシロなのかクロなのか
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 23:33:16.58 ID:BG2qF87SO
黒幕は兄友
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/11(水) 17:13:53.46 ID:Zp+vk+xao
なんだか、策士策に溺れる、ということわざが真っ先に浮かんだ
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/11(水) 23:07:07.85 ID:oRm9cHC4o
 やはり兄友の言うことなんか聞かなければよかったんだ。昼休みが終った頃になると、あたしは自分の決めたことを後悔した。素直に兄に謝ってしまい、兄友との決め事はなかったことにすればよかったのだ。

 兄友の勧めに従って昼休みを妹ちゃんと二人で過ごそうとしたあたしだったけど、妹ちゃんは兄友の言っていることと違って今朝のあたしと兄との会話を知りたがるどころか、自分が用意したお弁当を兄に渡せないことばかり気にしていた。挙句の果てにとりあえずお兄ちゃんにお弁当だけは渡して来るって言い放った妹ちゃんは、あたしを一人残して兄を探してお弁当を渡しに行ってしまった。

 何であたしは屋上で一人、購買で買ったパンを食べているんだろう。自信に満ちた兄友の言葉に縋るように信じ込もうとしたあたしだったけど、さすがにこの状況を省みると兄友の提案はさっき思ったほど正しいものではないのではないかと思えてきた。

 ・・・・・・やがて兄に渡すはずのお弁当を手に抱えたまま妹ちゃんが、泣きそうな表情で戻って来た。

「お兄ちゃん、女さんと二人で」
 妹ちゃんはあたしの方を向いて震えた声で言った。

「女さんの作ったお弁当食べてる。何か凄く親密そうで、とても声かけられなかった」

 あたしのせいだ。あたしが兄に厳しく当たったせいで、兄と女さんが親しくなるきっかけを与えてしまったのだ。あたしはショックを受けた。そしてその時は自分の気持よりも、まず妹ちゃんがどう思っているかが気になった。きっと妹ちゃんも、あたしのせいで兄と女さんの仲がより接近してしまったと思っているだろう。でも、今更妹ちゃんに対して弱気なことを言うわけにもいかなかった。

 あたしは妹ちゃんが弱気になるのを諌めた。あんたは兄を甘やかしすぎだよ。あたしは妹ちゃんにそう言ったけど、もうこの頃には自分でも自分の言葉に全く説得力がないことに気付いていたし、妹ちゃんはあたしをはっきり責めこそしなかったけど、もうあたしの言葉なんかに従う気がないことはその態度からして明らかだった。

 妹ちゃんは兄にどう謝ろうかと考えているのだろう。あたしも最後には黙ってしまい、妹ちゃんと同じく兄に謝って仲直りすることだけを考えるようになってしまっていた。
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/11(水) 23:09:57.80 ID:oRm9cHC4o
 昼休みが終って女さんと連れ立って教室に戻って来た兄は、もうあたしの方を見ようともしなかった。そんな兄の態度に焦ったあたしは、とにかく放課後家に帰る前の兄を捕まえて今朝の態度を謝り、何とか兄との関係を修復することばかりを考えていた。

 その時、ふと兄友がいつものように気楽な態度で授業を受けていることに気付く。兄友は自分で思っているより状況を見極められていたわけではなかったのだけど、そのことをあまり気にしている様子はなかった。それはそうだろう。兄があたしや妹ちゃんに対して怒りを感じたとしても、兄友の目的、つまり妹ちゃんと付き合う目的に対しては別に邪魔になるわけではないのだし。利害関係が一致した同士としてこの企みを一緒に始めたのに、あたしばかりがダメージを受けているではないか。これは不公平だった。

 いや、ちょっと待て。

 よく考えれば、兄友はダメージを受けていないどころか、事は彼の目的に向かって前進しているのではないのか。あたしはふとそんな疑念に囚われた。

 兄とあたしが付き合い出し、フリーになった傷心の妹ちゃんを兄友が慰めてそのうちにもっと親しい仲になる。単純に言ってしまえばあたしと兄友の利害が一致した計画はこういうことだった。突っ込みどころがいっぱいありそうだけど、兄友は兄に彼女さえできてしまえば、妹ちゃんを落すことに関しては自身を持っていたようだった。

 ただ、それだと兄の彼女は別にあたしでなくても兄友にとっては別に困らないのではないか。自分でも間抜なことにようやくあたしはそのことに気がついた。兄友の余裕は、兄の気持ちを把握していることから生じていたわけではなく、単純に兄と女さんが付き合い出してしまい、あたしが失恋したとしても、それでも兄友の目的は遂げられるということがわかっていたからではなかったのか。

 あの男。

 あたしはもう怒る気にすらならなかった。もう兄友との共同戦線は終わりだ。もうあいつの指示は受けない。とりあえずあたしは兄に謝ることにした。そして、その先どうすればいいのかは全く思いつかなかった。兄友と一緒にこれを始める前は、ひょっとしたら兄はあたしのことが好きだったかもしれない。でも女さんという新しい登場人物が加わった今、事態は前よりはるかに複雑に、そして悪い方に向かっていたのだった。
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/11(水) 23:11:37.61 ID:oRm9cHC4o
 結局、兄とは仲直りどころか話をすることすらさせてもらえなかった。

 放課後の教室で兄に話しかけようとしたあたしを、兄はあからさまに無視した。兄友は今となっては何を考えているのかわからなかったけど、とりあえずあたしのために兄を引きとめようとはしてくれた。でも兄はそれには全く反応しようとせずに、あたしを無視して教室を出て行ってしまった。

 兄が教室を出る直前に、それまで黙ってこちらを覗っていたらしい女さんが兄に話しかけた。

「あ、兄君さよなら」

「ああ、女。またな。つうかお昼ありがとな」
 兄はそれまでの無表情だった様子を一変させ、女さんに笑いかけた。

「別にいいよ。また食べてくれる?」
 女さんも兄に微笑み返した。

 そのやり取りはあたしの胸を締め付けた。

「おお。作りすぎちゃった時はいつでも声かけてよ」

「うん、そうする。じゃあね」

「おう、またな」

 兄は女さんに手を振ると教室を出て行ってしまった。

 これがぼっちでコミュ障の女さんなのか。これではまるで男慣れしているリア充の少女ではないか。あたしは自分のしたことを棚にあげ、女さんに対して黒々とした嫉妬心が沸き起こってくるのを感じた。
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/11(水) 23:13:29.13 ID:oRm9cHC4o
 次の日は休みだったから兄とは会えなかった。週明けまで悶々とした気持ちを抱えて後悔しながら過ごすことを覚悟していたあたしに、その朝兄友から電話がかかってきた。

「どっかで昼飯食わねえ? いろいろ作戦を練り直さなきゃいけねえしな」
 電話の向こうでは相変わらず呑気な声がした。

 ちょうどいい。兄友のこの行動がわざとかどうか確かめてやる。そして、わざとでも天然でもどちらにせよ、もう兄友と親密な振りをするのは止めることをはっきりと彼に言おう。それには休日の今日はいい機会だった。

「じゃあ、最近できたパスタ屋さんに行こう。一度行ったんだけどすごく美味しかったし」
 あたしは兄友への怒りや不信感を抑えて普通に話した。

「どこでもいいよ」
 兄友は食事自体には興味がないようだった。それはあたしも同じだったのだけど、どうせ行くなら美味しいところがいい。こんなに追い詰められても女子の食欲というのは根深い欲求のようだった。

「じゃあ、レストランの前で待ち合わせね」
 あたしはそっけなく言った。

「一緒に行かねえの?」
 兄友が不思議そうに言ったけど、それについてあたしは、電話で説明する気はなかった。どうせ店で話をすれば伝わるんだし。

「じゃあね」
 あたしは一方的に電話を切ると、おあたしは、母さんにお昼は外食することを伝えてから、出かける支度を始めた。
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/11(水) 23:16:02.37 ID:oRm9cHC4o
 ショッピングモールの中にテナントとして入居しているそのレストランの窓際の席に向き合って座りオーダーを済ませると、もうあたしは兄友への不信感を隠さず、そして兄友には喋る隙を与えず、自分の疑問を彼にぶつけた。

「正直に言いなよ。あんたは兄に彼氏ができさえすれば、その相手があたしでも女さんでもどっちでもいいんでしょ」

「何言ってるの・・・・・・俺は幼馴染と兄をくっつけようとしてこんなことしてるんだろうが」

「でもあんたにとっては、妹ちゃんが兄離れすればいいんだから、その相手は誰でもいいはずじゃない」
 あたしはまだ冷静に話せていた。

「その証拠に昨日はどうよ? あんたの言うことに従ったばかりに兄と女さんが前より接近しちゃったじゃないの」

「それは俺のせいじゃねえだろ。おまえが兄のこと過剰に気にするからこうなったんだろ? 俺は兄はおまえにヤキモチを焼いてるだけだって話したのによ」

「じゃあ、何であたしと妹ちゃんと二人きりで食事させようとしたのよ」
 あたしはついに声を荒げて兄友に詰め寄った。

「それも俺のせいじゃねえだろ。おまえが妹ちゃんを炊きつけようとしたんだろうが。妹ちゃんがいるのに兄は何を考えてるだの、妹ちゃんは兄を甘やかせ過ぎだのって」

「・・・・・・それは」

「それはじゃねえよ。おまえは兄のこと気にし過ぎなんだよ。一々兄の行動に一喜一憂してんじゃねえよ。だいたい、百歩譲っておまえが兄のことを気にするのはわかんねえでもねえけど、何で妹ちゃんまで炊きつける必要があるんだよ。おまえのライバルは女さんじゃなくて妹ちゃんだろうが。履き違えてるんじゃねえよ。兄のこと好き過ぎて、不必要なほど気にしてるんだろうけど」

 ここら辺でもうあたしには歯止めが利かなくなっていた。それにあたしは兄への嫉妬から昨日の行動を取ったことは確かだったけど、実の妹のように実の娘のように慈しんできた妹ちゃんへの心配という感情だってなかったわけではないのだ。こんなに一方的に兄友に責められるいわれはなかった。あたしはもう周囲をきにする余裕もなく大声で兄友に反論した。
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/11(水) 23:17:47.06 ID:oRm9cHC4o
「兄には妹ちゃんがいるの! あの二人は昔から両親がほとんど家にいなくてずっと二人きりで寄り添って暮らしてきたんだよ。あたしがそれを応援してるのがそんなに気に食わないの?」
 今にして思えばあたしはこの言葉を兄友に言わされたのだった。

 兄友はあたしの大声を聞くと、何かを確かめるようにちらっと店内に視線を泳がせた。





「だからそうじゃないって。おまえが妹ちゃんを気にするのはいいよ。でもよ、それとは別におまえ兄のこと気になってるだろ」

「昨日だってそうじゃねえか。兄とクラスの女が一緒にいただけで逆上してだろ」

「だからそれは妹ちゃんが可愛そうで」

「それだけには見えなかったけどな、俺には」





 ここまでは兄友も大声を出していたけど、ここでどういうわけか兄友は声を潜めて話を続けた。
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/11(水) 23:19:47.54 ID:oRm9cHC4o
「兄と女のことなんかで一々冷静さを失ってるんじゃねえよ。昨日の放課後兄が女さんに笑いかけたのだって、おまえに見せつけるためだって。もっと自信を持てよ」

 もうこれ以上、こいつの話は聞きたくない。あたしは自分がみっともないことを兄と妹ちゃんにしたことは自覚していたけど、兄友がそんなあたしをけしかけたことも間違いなかった。それなのに、こいつは今になってあたしを非難している。今のあたしには兄友の言動は全く理解できなかった。


「・・・・・・もういい。あたし帰る」


「おい」
 兄友が慌てたように再び大声を出した。何でこんなに大きな声を出すのか。これではわざわざ店内の注目を引いているようなものだ。

「じゃあ。これであたしの分払っておいて」
 あたしは千円札を二枚テーブルに置くと席を立って、もう兄友の方を見ずに店を出た。

「おい、ちょっと待てって!」
 兄友の相変わらずの大声があたしを追いかけてきたけど、もうあたしはそれに構わずにその場を離れたのだった。
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/11(水) 23:20:20.27 ID:oRm9cHC4o
本日は以上です

できるようならまた明日再開予定です
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/11(水) 23:20:54.59 ID:fhyKZwgNo

兄友は兄狙いだなこれはきっと
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/11(水) 23:24:43.03 ID:fV4DdbmSO
もう何が何やら…
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/11(水) 23:50:11.55 ID:ehkhC36DO
救いは無いんですか!
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/12(木) 00:18:44.65 ID:h86JLcAQo
この兄友は罪深いな、いろいろと
すべてが兄友のシナリオどおり・・・・なのか?
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/12(木) 01:55:17.17 ID:W10fGiw4o
幼馴染が暴走し始めたのは予想外でも作戦自体は兄友の狙いどおりじゃない?
表面上、妹狙いと言っておきながら幼馴染狙いっぽいし
とりあえず兄友もあんまいい性格ではないな
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/12(木) 09:26:48.15 ID:sGeHDpggo


>「正直に言いなよ。あんたは兄に彼氏ができさえすれば、その相手があたしでも女さんでもどっちでもいいんでしょ」

アッー!
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/12(木) 12:52:26.81 ID:rGBjc5YIO
ザッピングがいい感じだ
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/12(木) 23:59:00.33 ID:b/wSgrnTo
 でもこの日は、これで兄友と別れられたわけではなかった。ショッピングモールを飛び出して外に出たところで、あたしは後ろから腕を掴まれた。

「ちょうどよかったな。これで兄も完全におまえの気持ちに気付いたんじゃねえかな」

 あたしの腕を掴んだのは兄友だった。あれだけあたしに反発され非難されたことなどなかったかのように、兄友はあたしに言った。あたしはもうこいつと話すことは何もなかったし、無視して家に帰りたかったけど、こいつがあたしに平然としながら話した内容があたしの心に引っかかった。それに腕を掴まれていたため、このままでは動きが取れなくもなっていた。

「ちょうどよかったって、あんた何言ってるの」

「あれ? 気付いてたんじゃねえの?」
 兄友はあたしの腕を離して、不思議そうに言った。「気付いてたら話を俺に合わせたんだろ?」

「・・・・・・どういうこと?」
 兄友がそこでこれまで掴んでいたあたしの腕を開放したため、そのまま兄友を振り切ってこの場を去ろうと思えば去れたのだけど、あたしは兄友の意味ありげな言葉が気になってしまっていた。

「兄がってどういうことよ」

「何だ気付いていなかったのか。さっきの店に兄と妹ちゃんが後から二人で入ってきたじゃん。わりと近い席に座ってたぜ」
 兄友が意外そうに言った。

「あの席だと、声が大きくなった時の俺らの会話は完全に兄たちに聞かれていたと思うぜ」

「・・・・・・うそ」

「嘘じゃねえって。あいつら、俺たちがいたことに気付いてたし俺たちの会話だって、少なくとも声がでかくなったところは聞いていたと思うな」
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/13(金) 00:00:12.04 ID:Lr+AzdLto
「・・・・・・最悪」
 では、今度こそ本当にもうおしまいだった。あたしと兄友が兄と女さんのことを巡って言い会いをしているところを兄に聞かれてしまったのだ。そして、妹ちゃんにも。

「・・・・・・何で最悪なんだ? 兄がおまえは本心から自分のことを好きなんだってわかったのに」

「そんなわけないじゃん。あの会話を聞かれたとしたら・・・・・・」

「だから何度も言わせるなよ。俺たちの会話の全部は聞かれてないって。声がでかくなったとこだけだよ。それに俺、ちゃんとコントロールしたんだから、さっきの会話」

 そして兄友は自分の声で、ついさっきのやり取りを棒読みするように抑揚のない声で再現し始めた。
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/13(金) 00:00:42.90 ID:Lr+AzdLto
「いったいさっきから何言ってるのよ! あたしは兄のこと何か全然気にしてないのに、あんたの方が兄のことばっかり気にしてるんじゃないの」

「そうじゃねえよ。ただ俺は。おまえがあいつのことを」

「兄には妹ちゃんがいるの! あの二人は昔から両親がほとんど家にいなくてずっと二人きりで寄り添って暮らしてきたんだよ。あたしがそれを応援してるのがそんなに気に食わないの?」

「だからそうじゃないって。おまえが妹ちゃんを気にするのはいいよ。でもよ、それとは別におまえ兄のこと気になってるだろ」

「昨日だってそうじゃねえか。兄とクラスの女が一緒にいただけで逆上してだろ」

「だからそれは妹ちゃんが可愛そうで」

「それだけには見えなかったけどな、俺には」

「・・・・・・もういい。あたし帰る」

「おい」

「じゃあ。これであたしの分払っておいて」

「おい、ちょっと待てって!」
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/13(金) 00:05:04.32 ID:Lr+AzdLto


「とまあ、兄と妹ちゃんにはこういう風に聞こえたと思うんだけど、おまえがあの二人の立場ならこれを聞かされたらどう思う?」

「・・・・・・」
 確かに冷静にそこだけ切り取って聞き返せば、それは兄に好意を持つあたしと、そんなあたしに嫉妬している兄友との会話の一部のようにも聞こえる。

「でしょ? 俺と幼馴染が何かたくらんでたなんて考えないよね。むしろ、俺が兄のことを気にするおまえに嫉妬してるようにしか聞こえないでしょ」

「・・・・・・」

「言葉って不思議だよな。一部を切り取ると全く意味が違ったように聞こえるんだね」

 再びあたしは混乱し始めたのだった。兄友の言うとおりなら偶然にしろ兄友が狙ったにしろ、まだあたしは兄のことを諦めるには早いのかもしれなかった。それでも、もうあたしはこれ以上兄に対して、この欺瞞の関係を見せ付けるこの作戦を続けていくつもりはなかった。

「もうやめる」
 あたしは言った。

「いいよ、わかった。無理に勧めることじゃないしな」
兄友は意外にもあっさりと言った。「でも兄に謝りたいんだろ? せめて最後にその手伝いだけはさせてくれよ」

「・・・・・もう、あんたの助けは借りないよ」
 あたしは兄友のほうを見ないようにして言った。こいつの目を見るとまた惑わされてしまう。

「でもさ、さっきの俺たちの会話を聞いて兄が少しはおまえのことが気になってるとしてもだよ、おまえから兄に話しかけるのって辛いだろ?」

 それは兄友の言うとおりだった。でも、それでも兄に謝りたい。いや、むしろ散ってもいいから最後に兄に自分の本心を告げたい。あたしは今では余計なことは考えず、それだけを考えていた。

 たとえ兄に振られて、長年の幼馴染という居場所を失うのかもしれないけど、それでももう兄友と変な演技をしたり女さんのことを嫉妬したり妹ちゃんに罪悪感を感じたまま、この先を過ごして行くよりはよほどいい。
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/13(金) 00:07:26.42 ID:Lr+AzdLto
「わかったよ。俺が週明けに兄におまえと二人で昼休みを過ごしてくれって頼むから」
 兄友は言った。「もうこれで最後のお節介だからさ。幼馴染に迷惑なことをしたつもりはないけど、おまえにそんなに嫌な思いをさせたのならせめてそれくらいはさせてくれよ」

「・・・・・・」

「つうか、謝るくらいならいっそ告っちゃえよ。そこまでおまえが思い詰めてるならいっそ」

「・・・・・・」

「これはマジで言うんだけど、妹ちゃんのことは気にするな。誓って俺がケアするから」

「・・・・・・」

 結局あたしは兄友の言うとおりにすることにしたのだった。これが最後だと自分に言い聞かせながら。







 ・・・・・・週明けの昼休み、兄友はどんな手段を使ったのかは知らないけど、兄にあたしと昼休みを一緒に過ごすように説得してくれた。そしてあたしはその日、兄に初めて告白したのだった。
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/13(金) 00:07:57.13 ID:Lr+AzdLto
今日はここまで

明日可能ならまた投下します
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/13(金) 00:39:34.47 ID:G8pvEeN8o
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 08:24:49.65 ID:kQTOMHRIO
この先どうなるんだ
兄友の真意がまだ分からん
救いはあるのかな、、、、
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 08:47:18.00 ID:Tm4NkNmIO
続きがwktk
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/13(金) 23:11:37.30 ID:Lr+AzdLto
 あたしは兄と二人で中庭のベンチに並んで腰かけた。一応兄の分のお弁当も持参していたけど(実は結構時間をかけて丁寧に作ったものだった)、今は食事をするより兄に謝りたかった。




 ・・・・・・兄への謝罪については、兄は受け入れてくれたと思う。もともと昔から兄は他者への怒りをしつこく抱え込むようなタイプではなかった。

 「・・・・・・もう気にしてねえよ」
 兄はそう言ってくれた。そして今日のあたしはもうこれだけで終らせる気はなかった。

 兄友に微妙に煽られたせいもあったかもしれない。あいつはいっそ告っちゃえよってあたしに気軽に言っていた。あたしに勝算があると信じているみたいに。

 でも兄友は否定していたけど、やはり彼にとってはあたしが兄の彼女になっても女さんが兄の彼女になっても、あるいはこの学園の女の子の誰が兄の彼女になっても別にいいのだろう。それが妹ちゃん以外の女の子なら。

 だから、あたしは兄友の励ましを真に受けたわけではなかった。それでもあたしはもう正直になろうと思った。せっかく仲直りできた兄ともう話をすることすらできなくなってしまうとしても。

 あたしは心の奥を探って自分の決意を確かめた――うん大丈夫。今はもう迷いはない。そしてあたしは気を緩めると体や言葉が震え出しそうなほど緊張していたけれど、兄友と二人で仕掛けたあの茶番劇を演じている時のような嫌な感情は一切感じなかった。
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/13(金) 23:15:37.51 ID:Lr+AzdLto
「正直に言うとね」
 あたしはついにそれを口にした。もう後戻りはできなかった。

「あんたが女さんと仲良くしているのを見て少しむかついて、それで妹ちゃんにかこつけてあんたに文句を言ったのかも」

「あんたの今の気持ちはわからないけど、中学生のころはあんた、あたしのこと好きだったでしょ」
 もうあたしはためらわずにその言葉を口にした。無意識に力を込めて自分の手をぎゅっと握って。そうしなければ話も出来なくなるほど震えが襲ってくるようだったから。

「お、おまえ何言って」
 兄は驚いたように顔をあげた。

「あたしもバカじゃないからあんたの好意には気づいてたの」
 そんな兄の様子に構わずにあたしは続けた。

「あんたはあの頃優しかったし、あたしが頼んだことは何でもしてくれた」

「・・・・・・」

「あたしも本当はあんたのこと好きだったから、その気持ちに応えたかったんだけど」

「・・・・・・」

「でも、ご両親がいつもいない家で、あんたに頼りきって暮らしていた妹ちゃんのことを考えると、あたしはあの時あんたの気持ちに安易に応えるわけにはいかなかったの」

「・・・・・・」

「でもあの頃から今までずっと、あたしはあんたのことを好きだった・・・・・・」

「・・・・・・マジかよ」
 ようやく兄が反応してくれた。戸惑っている兄のその様子はいかにも昔からあたしが馴染んできた兄らしい態度だった。こんな時なのに、あたしは兄のその様子にすこしだけ何か過去への郷愁のような懐かしさを覚えた。

「うん、マジ。あたしね、妹ちゃんの気持ちとかいろいろ考えちゃってたんだけど、もう遠慮するのは止めようって思った」
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/13(金) 23:20:47.84 ID:Lr+AzdLto
 その先を続けて本題に入ろうとした時、突然兄があたしの言葉を乱暴に遮った。

「・・・・・・兄友は?」

「え?」
 それは正直意外な言葉だったから、あたしは一瞬困惑してすぐには答える言葉が浮かばなかった。でも困惑して黙ってしまったあたしに構わず兄は続けた。

「兄友はどうなるの? あいつ、一応俺の親友だし」

 ようやく兄の意図するところが理解できた時、再びあたしはこの場にいない兄友を心の中で罵った。

 ・・・・・・あのばか。何が、兄を嫉妬させあたしのことを気にさせようだ。冷静で全てを見透かしていたようだった兄友だけど、兄に関して全く読み違えていたのだった。

 あいつは、兄とあたしの間の障害は妹ちゃんだけだと考えていたのだった。だからあたしと兄友が付き合い出しそうな雰囲気を兄に見せれば、いくら妹ちゃんを大事にしている兄でも妹を振り切ってあたしの方だけを見るようになるだろうというのが兄友の狙いだった。でも実際は、兄友とあたしの演技を眺めてきた兄は、あたしの告白に対して兄友の気持ちを忖度していたのだった。

 混乱する思考を持て余しながら、とりあえずあたしはこう言うしかなかった。我ながら苦しい言い訳だったけれども、まさかあれは兄の気を引くための演技だよなんて言えるわけがない。

「兄友には悪いことしちゃったと思う。あんたを忘れようと彼とベタベタしたし。でも、兄友とは付き合ってはいないよ、本当に」
 これだけは真実だったけど、これを聞くと兄は再び黙ってしまった。

「あたしはあんたのことが好き。小さい頃からずっと」

「もう、自分に正直になるって決めたの。あたしはあんたが好きなの。あたしと付き合って」

 あたしはもう強引に自分の言いたいことを言ってしまうことにした。言わないで後悔するより言って後悔する方が、ここ最近のあたしたちの状態のまま過ごすより何百倍もいい。そして、少なくともこの言葉だけはあたしの心からの真実だった。

 でも兄はやはり兄友とあたしの関係にこだわっていた。

「・・・・・・兄友はさ。さっき必死な顔で俺に言ったんだよな。おまえと一緒に昼休みを過ごしてくれって」
 あたしは黙ってしまった。この話になると何も言い訳する言葉が浮かばない。

「おまえ、あいつに何て頼んだの?」

 ・・・・・・違う! あたしはあいつに何も頼んでなどいない。むしろあいつにけしかけられたのだ。でもそれは口にしてはいけない。あたしは兄友に無理強いされたわけではないのだから、全責任を兄友に押し付けるわけにはいかなかった。

「今は返事できねえ。少し考えさせてくれるかな」
 兄はやがてゆっくりと言った。

 意外なことに、兄はあたしの告白をその場で断ったりはしなかった。やはり兄もあたしのことを好きだったのだろうか。そして兄友の誤算のせいで、今や兄は兄友の気持ちを考えてあたしを受け入れてくれないのだろうか。

「・・・・・・うん」
 あたしは兄に小さく返事をした。この場で兄に振られなかったことが、あたしにとっていいことなのかどうかさえ、もはやあたしには判断すらできなかった。
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/13(金) 23:23:30.33 ID:Lr+AzdLto
 兄と中庭で別れた時、昼休みはまだ半分も終っていなかった。あたしは結局開きもしなかった二人分の弁当を持て余しながら校舎の入り口から薄暗い校舎内に入った時、そこに兄友がいることに気がついた。

「・・・・・・屋上で妹ちゃんとお昼食べてたんじゃないの?」
 あたしは入り口に突っ立っていた兄友に話しかけた。その声が冷たい声だったとしてもそれはあたしにとっては仕方のないことだった。

「いや」

 どうしたんだろう。兄友は真っ青でいつものイケメン振りが台無しになるような酷い顔だった。それはこいつらしくなく緊張しているような、これから死刑宣告でも受けるような表情だ。

「体調でも悪いの? 顔が真っ青だよ」
 兄友の判断の甘さから生じたこの結果について兄友を詰ろうとしたあたしは、思わずそれをとりやめて兄友を心配する言葉をかけた。いったい兄友はどうしたのだろう。さっきまでの冷静で陽気な彼の片鱗はまるで失われていた。

 ・・・・・・まさか。

 「あ、あんた。まさか屋上で妹ちゃんに迫ったんじゃないでしょうね」
 あたしは思わず声を震わせて声を荒げた。

「違うよ。今日の昼は妹ちゃんとは会ってさえいねえよ」
 兄友はそう答えてからようやく顔をあげあたしを見て続けた。

「・・・・・・どうだった?」

「はい?」

「兄に告ったんだろ? 兄は何と答えたんだよ」
 何で兄友はこんな必死な表情で必死な声であたしを問い詰めるのだろう。いくら兄のことが、自分が妹ちゃんと付き合うにあたって障害になっているとしても、これではこれまでのクールな態度と違いすぎではないか。

「保留された。少し考えさせてくれって」

「そうか・・・・・・。まだ脈はあるようだね。よかったな」
 少しだけほっとしたように兄友は言った。ほんの少しだけ、彼の表情が明るくなったようだった。

「よかったなじゃないよ」
 そこで再びあたしは兄友の見通しの甘さを思い出して彼を睨んだ。

「あんたと仲のいい振りなんかしない方がうまくいってたんじゃないかな。兄はあんたのこと気にして返事を保留したようなもんだよ」
 あたしは手早く兄の言葉を兄友に伝えた。

「そうか。やっぱりそうだよな」

「やっぱりって・・・・・・あんたまさか、知ってて」

「んなわけないだろ。でも結果的におまえの邪魔をしたなら謝るよ」
 兄友は再び暗い顔に戻って言った。あたしは彼を責めようと思っていたのだけれど、こんな顔を見せられたらこれ以上言葉を口にすることはできなかった。

「もう邪魔はしねえから。もう二人でベタベタするのも終わりだし」
 兄友はそう言って教室の方に去って言った。
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/13(金) 23:27:53.79 ID:Lr+AzdLto
 教室に戻ると、兄と女さんが一緒にいた。兄はコンビニのものらしいサンドイッチをかじりながら女さんと低い声で何か話をしていた。あたしは無理に視線を二人から引き剥がした。兄に待ってくれって言われた以上、あたしには待つことしかできない。

 放課後、あたしもう兄と女の方を見ようともせず生徒会室に向かった。今日は役員のミーティングのある日だったし、テーマは年間で最大のイベントである学園祭のことだったから、いくら悩んでいたとしても欠席するわけにはいかなかった。

 生徒会室の前で、あたしは生徒会長に呼び止められた。あたしにはそれちょっと意外な出来事だった。正式な役員交代は学園最後というしきたりになっていたとはいえ、この時期の3年生は受験で忙しいため生徒会や学園祭の実行委員会の運営には1、2年生があたることになっていた。だから3年生が今日のミーティングに顔を出すはずはないのだった。

 何で先輩がいるんだろう。そういう疑問を感じたあたしに構わず、先輩は思い詰めたような顔であたしを生徒会室前の廊下で呼びとめて、2階に続いている階段の踊り場にあたしを連れていった。兄や兄友のことで悩んでいたあたしには、これ以上脳の容量オーバーで考えたくもない出来事が胸をよぎった。でもこういう勘だけはよく的中するものだ。

・・・・・・その踊り場で、あたしは先輩から告白されたのだった。
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/13(金) 23:31:25.06 ID:Lr+AzdLto
「・・・・・・迷惑だったら謝るよ。でも幼馴染さんのこと前から気になってたんだ。今まで君に振られるのが怖くて言えなかったけど」
 先輩は、先輩らしい生真面目な表情であたしに早口で言った。早口すぎて最初は何を言われているのかわからないくらいだった。

「・・・・・・え?」

「幼馴染さん、好きだ。僕と付きあってください」
 あたしが生まれて初めて昔から想いつづけていた男子に告白したその日に、あたしは逆に考えてもいなかった人から告白されたのだった。




「駄目・・・・・・かな」

「・・・・・・先輩」
 自分が振られることを考えると、先輩の気持ちを傷つけることがすごく怖かった。男の人に告白されて断るのはこれが初めてではないけど、その時あたしは初めて断られる男の子の感情を思いやったのだった。でも、こういう場で嘘はつけない。あたしは正直に話すことにした。

「ごめんなさい。あたし好きな人がいるんです」

「先輩のこと、生徒会長としては本当に尊敬してます。でも、あたし片思いだけど好きな人がいて・・・・・・彼のこと諦められません。だからごめんなさい」

「・・・・・・そうか。わかったよ、君を困らせて悪かった」
 あたしは冷静さを装ってそう言った先輩の顔を直視できなかった。傷つけずに告白を断ることなんてできないんだ。あたしはその時、本心では先輩のことではなく兄のことを考えていた。兄に振られるとき、あたしも目の前で先輩が浮かべているような切ない表情をするのだろうか。上辺だけは平静な振りをして。

「先輩に勘違いさせたとしたら本当にごめんなさい」

「いや。僕が勝手に思い込んだだけだから。君の好きな人って」

「・・・・・・あ」

「何となくわかる気がするよ」

「え?」

「彼なら祝福するしかないね。僕なんかじゃ全然敵わない。彼は成績もいいしスポーツも万能だし何よりイケメンだしね」

「え・・・・・・え?」
 あたしは困惑した。兄へのあたしの想いは先輩の耳に届くほどあからさまなのだろうか。それにしても成績もいい? スポーツ万能? イケメン??

 あたしの困惑に構わず、というより先輩にも余裕がなかったのだろう。多分先輩の言葉は精一杯の強がりのはずだった。

「君を困らせて本当に悪かったよ。もう二度とそういうことは言わないからこれまでどおり生徒会の役員でいてくれるか」

「はい」

「ありがとう。まあ、ライバルが兄友君なら負けてもしかたないか」

「え?」
 ・・・・・・こんなところまで兄友の策略が成果を上げていたのだった。肝心の兄に対しては何の効果もないというか、あたしの想いを邪魔する方向で効果があったわけだけれど。

「じゃあ、僕は今日は生徒会活動サボるから。振られた日くらいサボっても許されるだろう」

「あ、はい」

「じゃあ、あとはよろしくね」
 先輩はそう言って背中を丸めるようにして立ち去った。
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/13(金) 23:31:57.80 ID:Lr+AzdLto
今日は以上です

おやすみなさい
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 23:35:24.31 ID:e3wr/rmvo
乙です。
幼馴染の兄友への制裁が楽しみだ。
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 23:36:29.60 ID:vOQ8UqlKo
おつ
もろ兄友の作戦通りじゃない
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 23:51:54.62 ID:8jlWYJpSO
お疲れ
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/14(土) 00:11:18.13 ID:IeizOm5Qo
兄友が青ざめていたのか・・・。ふむ。
あとは出てきたことすら忘れていた生徒会長だけど・・・・。うーむ。
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/14(土) 01:47:28.83 ID:4985pPab0
やっぱり兄友って……

そんなのに恋愛潰されたって知られたら兄友殺されるかもしれんね。
愛する人に殺されるなら本望だろうが。 ……だけに。
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/14(土) 11:42:16.29 ID:PHw0FNv0o
さすがイケメン外道wwww
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/14(土) 21:04:45.20 ID:0S0BGx4Wo
乙乙!
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/14(土) 23:05:02.98 ID:E4sj86WMo

 その後あたしは生徒会のミーティングに参加したけど、正直その場の内容はほとんど頭に入っていなかった。あたしは今日告白したことと告白されたことをミーティングの間中ずっと考えていた。ミーティングが終った後、いつもなら他の役員の子たちとしばらく生徒会室でおしゃべりしながら過ごすのが習慣になっていたけど、今日はそんな気になれなかったあたしはすぐに生徒会室を後にした。

 今日起きた出来事は兄への告白を保留され、先輩の告白を断ったというだけのことだ。あたしは自分に言い聞かせた。悩むことも混乱することも別にない。兄への想いは保留中で今更どう悩んでも仕方がない。あたしに告白した先輩には申し訳ないことをしたとは思うけど、あたしは正直先輩の事を恋愛の対象として見たことは一度もなかった。

 つまり今日の出来事はそれだけのことなのに、どういうわけかひどく混乱していたあたしは誰かに今日の出来事を相談したくて仕方がなかった。

 よく考えればあたしには妹ちゃんを除いて、本当に親しくしている女友だちはいなかった。こういう時に何でも相談できる女友だちがいたらどんなにいいだろうとあたしは思ったけど、もちろん今更どうしようもないことではあった。かといって妹ちゃんに相談するのもどうだろう。

 あたしが今日兄に告白できたのも、実は妹ちゃんが背中を押してくれたからだった。

 今朝登校する際の電車には、いつもと違って兄と兄友の姿はなかった。そして二人きりで登校する途中、妹ちゃんは突然あたしに言ったのだった。


「お姉ちゃん・・・・・・」

「もうあまりあたしのことは甘やかさなくていいよ」

「お姉ちゃんももう自分に素直になって」

「でないと本当に女さんにお兄ちゃんを盗られちゃうかもよ」
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/14(土) 23:11:08.40 ID:E4sj86WMo
 あたしは妹ちゃんの姉であり母親であるという自負をこれまで常に持っていたのだけれど、あたしが考えていたより妹ちゃんは成長していたようだった。あたしは無意識のうちに妹ちゃんのことを甘えん坊のブラコンと決め付けていたけど、あたしが考えていたよりはるかに深く妹ちゃんは兄とその周囲の人間関係を考えていたようだった。

 それで、とにかくこの妹ちゃんの言葉に背中を押されたであたしは、昨日兄友に宣言したように兄ときちんと話すことを決心したのだった。

 それでも、今日の出来事を妹ちゃんに愚痴交じりに相談することを考えると、あたしは気が引けた。兄のことを好きになったあたしの背中を押すだけでも妹ちゃんにとっては気が重いことだったに違いない。その上兄に返事を保留されただの上級生の生徒会長に告られただの、そんなことで妹ちゃんの気持ちを乱すことは、あたしにはできなかった。妹ちゃんだって長年の兄への自分の気持を整理しているところに違いなかったから。

 ・・・・・・その時、あたしの心にふと兄友の顔が思い浮んだ。あの時兄友はあたしに謝ったあと、「もう邪魔はしねえから。もう二人でベタベタするのも終わりだし」とだけ言って姿を消したのだった。兄からの返事を保留されているあたしとしては、ここで今までのように兄友と一緒にいるわけには行かなかった。兄の疑念を払拭するのであれば、これからは以前のように兄と妹ちゃんと三人で過ごすべきだし、兄友と二人きりで会うなんてことは問題外の選択肢だった。

 それなのに、こうして思い悩んでいるあたしが相談役として唯一心に思い浮かべることができたのは、兄友だった。

 考えてみれば兄友と偽装カップルを演じ始めた頃から、あたしの相談役は常に兄友だった。戦友だった兄友にしか言えない悩みを抱えていたのだからそれは必然だったのだ。その結果として兄友の見通しが大甘だったことがわかった今でもあたしが相談できる相手は依然として兄友しかいなかった。それにあたしは自分のことで精一杯なようでいて、さっき別れた時の兄友の暗い表情が心の中のどこかで気になっていたのかもしれない。

 兄友はもう下校してしまったのだろうか。あたしは携帯の着信履歴から兄友の電話番号を呼び出した。それは実に容易なことだった。あたしの最近の着信履歴は兄友の電話番号で埋め尽くされていた。考えてみればここ最近は毎晩兄友と電話でやりとりをしていたのだし、メールも頻繁に送りあっていたのだから、それは当然のことだった。作戦決行中のあたしたちはそんな関係だったのだ。
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/14(土) 23:13:27.66 ID:E4sj86WMo
 いつもならワンコールもしないいうちに電話に出る兄友だったけど、この日はあたしが諦めて電話を切ろうとした瞬間に、ようやく兄友が応えた。

「・・・・・・何だ幼馴染か」
 やっと電話に出た兄友はそれだけ言って沈黙してしまった。

 何よこいつ。あたしは兄友のそんな態度にむかついた。あれだけ面倒見がいい振りをしていたくせに、共同作戦が終ってしまえばもうあたしには用はないとでも言いたげなこの態度はいったい人としてどうなんだろう。

「迷惑だった? それなら電話切るし、もう二度とあんたには電話しないけど」
 あたしはむっとして言った。兄があたしの告白に応えなかったことで、兄友はもうあたしには利用価値がないと判断したのかもしれなかった。でも、そもそもの作戦ミスの責任は兄友にあるのに。

「別にそんなこと言ってねえじゃん。何突っかかってるんだよおまえ」
 兄友は相変わらず低い声で返事した。「おまえ兄友の返事待ちなんだろ。俺なんかと話してていいのかよ」

 兄友は本気で落ち込んでいるようだった。その声を聞いてあたしは自分の言ったことを後悔した。

「・・・・・・そんなの兄にはわからないでしょう。つうかあんたマジで落ち込んでる?」

「ああ。割とマジでな」

「あたしもさっきは言い過ぎたよ、ごめん。あたしだって納得した上でしたことだったのに、全部あんたのせいにしたのはフェアじゃなかったよ」
 あたしは今までこいつに言うつもりはなかった言葉を思わず口にした。そしてその言葉が口を出た瞬間、あたしはそれが本当に正しい答えであることに気がついた。

 誰のせいにもしてはいけないことを、自分の気持がすぐに兄に受け入れてもらえなかったことで生じた苛立ちや不安を、あたしは兄友のせいにしていたのだった。

「本当にごめん」
 あたしは続けた。「あたし自分のことだけ考えてた。あんただって妹ちゃんのとことは全然進展していないのに、あんたはあたしと兄のことだけを考えてくれてたのにね」

「・・・・・・別にそんなんじゃねえよ。で、どうした?」
 兄友はようやくあたしの話を聞く気になったようだった。
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/14(土) 23:18:58.11 ID:E4sj86WMo
 それであたしは、先輩に呼び出され告白されそれを断ったことを兄友に話した。

「あたしは先輩のこと尊敬はしているけど、恋愛の対象とかには全然考えられないし」

「だったら悩むことなんてないだろ? 先輩だって納得してくれんだから」
 それは正論だった。何か落ち込んでいる様子ではあるけれど、相変わらず兄友は判断に迷うことなく一瞬で回答してくれた。

 ・・・・・・それは何か兄とあたしと兄友がこういう複雑な迷路に迷い込む前の、あたしが兄友の作戦に乗った最初時のように、まだ希望を持っていたあの過去のことを思い出させるような口調だった。

「おまえはもう普通にしてろ。俺と演技でベタベタすることもねえし、先輩のことも気にするな」
 兄友はそう言った。さっきまで暗く低い口調だったのが嘘のようにはっきりとした口調だった。「そんで兄のことを信じて待つしかねえだろ」

「・・・・・・」
 あたしは黙ってしまった。兄友はそんなあたしの沈黙にまた過剰に反応した。

「悪かったと思うよ。兄がそんなにおまえと一緒にいる俺のことを気にしてるとは思わなかった」

「それはもういいよ。あたしだって納得してしたことだし・・・・・・」

「俺、とりあえず俺のことを兄が気にしないように、兄に働きかかけてみるわ。具体的にどう言えばいいのかはわからんけど」

「・・・・・・だからそういうのはもういいって」
 それはあたしの本心だった。ことここまで来てしまった以上、もう小細工を弄することはなかった。ただ、兄の本心をドキドキしながら待つだけしかなかった。

「わかってる。もうお前の邪魔になることはしない。でも、これは俺と兄の間の話しだから」

 もうそのことについてはこれ以上話しても無駄なようだった。落ち込んでいても頑固で自分に自信がある兄友の片鱗はまだ十分残っているようだった。

「あたし、先輩のこと傷付いたかな?」
 あたしは兄友にそう聞いた。これは純粋に兄友には関係のないことなのだったけど、今のあたしにはこの種の相談ができる相手は兄友しかいなかった。

「そりゃ傷付いてるだろ。先輩、今夜は眠れないかもな」
 兄友はあっさりと言った。

「でもそれはおまえのせいじゃねえし、おまえが先輩の告白にOKする気がないなら、これ以上考えたってどうしようもねえことだな」

 兄友の言うとおりだった。

 こうして兄友と話しているとあたしは気が楽になった。人に話すのは悩みの特効薬とは言うけど、あたしを救ってくれようとしてその結果あたしを窮地に追い込んだ兄友に、あたしは今でも依存しているような気すらしてきたのだった。

「じゃあな。明日はおまえと一緒に登校しねえから、俺の家に迎えに来なくていいからな」

「え?」
 あたしは一瞬戸惑ったけど、すぐに兄友との恋愛演技はもう終わりにしたことに気がついた。明日は久し振りに兄と妹とあたしの三人で登校するのかもしれない。

 ・・・・・・兄友はどうするのだろう。あたしたちより早い電車か遅い電車に乗って一人で登校するのだろうか。あたしは今の家に引っ越してから、毎日兄友と駅まで二人きりで登校していたことを思い出した。それは共同作戦を始める前も始めた後もずっと続いていて、今では自然な習慣になってしまっていた。そしてその習慣ももう終わりのようだった。

「じゃあ」
 兄友はそう言って電話を切った。
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/14(土) 23:19:48.74 ID:E4sj86WMo
本日はこれでおしまい

また投下します

おやすみなさい
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/14(土) 23:21:22.37 ID:+/mx8Aqvo
はい
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/14(土) 23:32:55.12 ID:6xY6yhxto
おつおつ
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/15(日) 22:49:07.01 ID:u6a8MR0go
 そういうわけで兄友との電話を終えた時、あたしはずいぶんと心が軽くなっていた。兄に告白の返事を保留され先輩の告白を断って先輩を傷つけたその夜だというのに、兄友に電話する前の悩みはあらからた消え失せていた。

 兄友の言うとおりだ。ベッドにもそもそと入りながらあたしは考えた。兄のことはもう待つことしかできない。ただ、兄の心がこれ以上揺らがないようにもう兄友と一緒に過ごすべきではない。兄友が言っていることは正しいとあたしは思った。それに先輩のことだってこれ以上悩んでもどうしようもない。あたしは先輩の告白に対して正しく行動したのだ。あそこで先輩に同情して下手に返事を保留していたら、結果としてもっと先輩を傷つけていただろうから。

 そういうことは全て兄友と電話で話してわかったことだった。兄友との共同作業は成功したとは言い難いけど、それでも作戦中のあたしはすごく充実していたのかもしれない。これでもう明日から兄友と一緒に行動できなくなることを、あたしは少し残念に思った。あたしが好きな人が兄ではなく兄友だったらどうなっていたのだろう。あたしは戯れに考えた。きっと、燃えるような情熱的な関係にはならないことは確かだけれど、多分落ち着いた関係に、それこそ互いのことを知り尽くした熟年の夫婦のような安定した関係になったかもしれない。

 こんなことを考えるのも、きっと明日から兄友とはあまり一緒に過ごせなくなるからだろう。あと、兄が保留したあたしへの返事のことをあまり考えたくなかったからかもしれなかった。

 いずれにせよ、明日は久し振りに兄友抜きの登校になるはずだった。あたしはあたしがずっと前から好きだった兄のことを考えようとした。

 ・・・・・・それなのに眠るにつく前にあたしの心に浮かんだのは、兄に告白した後に出会った時の兄友の真っ青でどこか傷ついているような表情だった。
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/15(日) 22:51:26.69 ID:u6a8MR0go
 翌朝、あたしは隣の兄友の家を素通りして、最寄り駅で電車を待った。兄友は約束どおりこの電車には乗らないようで、兄友の姿は駅のどこにも見当たらなかった。いつもの電車のいつのも車両のいつものドアから車内に入ると、奥の方で妹ちゃんがあたしに向かって手を振ってくれた。兄妹にあいさつしたあたしは、兄と話すのが照れくさかったこともあって、いつものように妹ちゃんにじゃれかかった。あたしと妹ちゃんのじゃれあいが一段落ついた時、兄があたしに話しかけた。

「あのさ」

「・・・・・・うん」
 あたしは辛うじて兄に返事をすることができた。まさか兄はこんな時間のこんな場所で、しかも妹ちゃんの目の前で昨日の告白の返事をしようというのだろうか。

 でも兄の次の言葉は予想外のものだった。

「・・・・・・今日は兄友は一緒じゃねえの?」

「うん」

「あいつ、寝坊でもしたの?」

「・・・・・・さあ」
 兄は何を言いたいのだろう。

「さあって何だよ。いつもみたいに兄友の家まで迎えに行ったんだろ?」
 兄の声が少し険しくなった。妹ちゃんも兄の不機嫌を敏感に感じ取ったみたいだった。

「・・・・・・お兄ちゃん?」
 妹ちゃんが不安そうに兄の方を見上げた。

「・・・・・・兄友の家には行ってないよ」
 あたしは正直に答えた。これは昨日兄友と打ち合わせたとおりの行動で、それを兄にアピールしなければならなかった。でも兄はあたしと兄友が一緒に登校しないことを喜ばなかったばかりか、兄友のことを心配しているようなことを言い始めたのだ。

「・・・・・・おまえ、今日は迎えに行かないって兄友に連絡とかした?」

「してない」

「あいつ、ずっとおまえのこと家で待ってるかもしれないじゃんか!」
 兄が突然声を荒げた。

「メールとか電話とかなかったのか? 兄友から今朝」

「・・・・・・ないみたい」
 あたしは兄の剣幕に少し怯えながら、震える手で携帯を確認する振りをした。兄友からの着信なんてなかったことはわかってはいたけれども。

「黙って置いてけぼりとか普通するか? これまでいつも二人で登校してたのに。ずっと家でおまえを待ってるかも知れないだろ。可哀想だろうが兄友が」
 兄が再びあたしを非難する言葉を口にした。この辺であたしは我に返った。兄の言葉に萎縮していてはだめだ。言うべきことは言わないと。

「兄友に酷いことしてるのかもしれないけど・・・・・・あたしもう決めたの」

「・・・・・・決めたって何をだよ」

「昨日あんたに話たことを。あたしもう迷わないし後悔もしないから」

「お姉ちゃん・・・・・・」
 その時、妹ちゃんがあたしの手を握ってくれた。

「あんたの返事はせかさないしずっと待ってる。でも、あたしはもうこれまでみたいな4人仲良しの関係じゃ嫌だから」
 あたしの言葉に気勢を削がれたように兄は黙ってしまった。
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/15(日) 22:53:43.58 ID:u6a8MR0go
 教室に入ってからは、兄はあたしには話しかけようとはしなかった。まだ兄友は登校していない。兄は自分の席に座ると女さんと少し話をしていた。やがてぎりぎりの時間になって兄友が教室に入ってきたけど、その表情は憔悴しきっていた。

 いったいどうしたのだろう? 昨夜の電話の時は兄友はここまで落ち込んではいなかったはずなのに。あたしは兄友に話しかけたかったけど、兄が返事をしてくれるまでは兄友と親密にしてはいけないことになっていたことに気がついた。あたしが兄友に話しかけることを躊躇している間に、兄が女さんとの会話を切り上げて兄友の席に近づいていった。

 あたしは兄と兄友の会話に聞き耳を立てた。


「よう、今日は遅いじゃんか」
 兄は兄友に話しかけた。

「・・・・・・ああ」

「寝不足か? 夜更かしでもしたのかよ」

「まあ、ちょっとな」

「今日は学校サボって寝てた方がよかったんじゃねえの」

「おまえじゃあるまいし、そんなに簡単に学校をサボれるかよ」

「さすが学年で1、2を争う秀才は言うことが違うな」

「・・・・・・そんなんじゃねえよ」

「だいたいおまえスペック高すぎだろ? 部活もやってないくせに体育まで成績いいんだもんな、おまえ」

「そんなことねえって」

「いいよなあ。学校で肩身狭い思いしたことねえだろ? おまえ」

「・・・・・・おまえにだけは言われたかねえよ」

「え?」

「何でもねえよ」

「・・・・・・おまえ、本当に大丈夫か」

「大丈夫だよ。それより昨日幼馴染と仲直りはできたのか?」

「・・・・・・一応」

「一応ってどういう意味だよ」

「仲直りしたよ。一応」

「・・・・・・」

「おまえさ、前から思ってたんだけど、無駄に考え過ぎるとこ、おまえの悪い癖だぞ」

「別に考え過ぎてなんかねえよ」

「あとさ、大事なことを決めようって時にはあんまり余計なこと考えんなよ」

「意味わかんねえよ」

「人のことばっか気にしてんじゃねえよってことだよ」

「・・・・・・」
 兄は兄友の言葉に戸惑ったように黙ってしまった。
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/15(日) 22:56:16.04 ID:u6a8MR0go
『俺、とりあえず俺のことを兄が気にしないように、兄に働きかかけてみるわ。具体的にどう言えばいいのかはわからんけど』



 昨日の電話で兄友があたしに言ったのはこういうことだったのか。こんなに不調そうな時なのに、兄友はあたしに言ったとおりあたしのために兄に対して説得じみたことを試みてくれていたるのだった。

 どうして彼はこんなに必死にあたしのために行動してくれるのだろう?

 兄友が妹ちゃんと付き合いたいという気持ちからあたしに協力しているのだとしても、今ではそれは非常に効率の悪い話だった。何せあたしは兄に告白したのに保留されているような状態だったし、むしろ兄が今付き合い出す可能性が高いのは客観的に見て女さんの方なのではないか。それなら兄友は兄と女さんを応援すればいい。

 それに妹ちゃんだって、少しづつ自分から兄依存を卒業し克服しようとし出している。すぐに兄以外の男の子と親密な関係になるつもりはないにしても、もう絡め手ではなく妹ちゃん本人にアプローチしてもいい段階なのではないか。もともと兄友は女性関係に自信を持っているようだったのだから。

 それでも兄友は頑なにあたしを兄とくっつけようとしてしていた。いったい何で彼はここまで必死なんだろう。

 この時あたしには再び兄友が何を考えているのかわからなくなっていた。
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/15(日) 23:00:23.44 ID:u6a8MR0go
 昼休みになると、兄友が兄を学食に誘っているようだった。そう言えばあたしはこれまでお昼は常に兄友と二人きりで過ごしていたから、今日から昼休みをどう過ごすか考えなければいけなかったのだ。

 兄と兄友が昼休みにどんな会話をするか気になったけど、まさか二人を尾行するわけにもいかない。かといってクラスの女の子たちにはもうグループが確立していたから、今更どこかのグループに入り込むのも気が引けた。あたしは女さんと違ってコミュ障のぼっちではないから、入り込もうと思えばどこかのグループに混ざれたとは思うけど、そこまでして誰かと一緒に食事なくてもいいかとあたしは考えた。

 今晩家に帰ったらまた兄友に電話しよう。あいつはきっと共同作戦が終ったのにしつこく電話してくるあたしを、うざいと思うだろう。でも、今日のあたしには兄と兄友との会話を聞きだすという口実がある。あたしには堂々と兄友に電話をする権利があるのだ。



 ・・・・・・え? 何であたし、兄友に電話する口実を探しているの?

 というか、あたしは何でこんなに必死に兄友と話をしようとしているのだろう。

 兄のあたしについての考えを探るためか? それとも兄友のあの暗い表情に対してあたしが感じているいわれのない罪悪感を解消したいからか。



 この時あたしにはもうほとんどわかっていたに違いない。きっと、近い将来兄には振られることを。でも、そのことはもうあまりあたしを悩ますことはなかったのだ。あんなに長い間兄に恋焦がれていたあたしが、今気になっているのは兄友のことだった。




 ・・・・・・自分でも信じられないことに、あたしの一番気になる男の子は兄ではないようだった。

 今あたしが一番気になっている異性・・・・・・。それは今や兄友なのだった。
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/15(日) 23:00:59.20 ID:u6a8MR0go
今日は以上です

おやすみなさい
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/15(日) 23:05:29.91 ID:glm62tMSO
おおう、乙
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 00:04:26.26 ID:bC3am7dio
おつおつ
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/16(月) 00:48:05.43 ID:NgBeLtDQo
乙乙!
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/16(月) 01:00:27.24 ID:Dp63E3I6o
やっぱりか
あーあー
おつ
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 01:30:47.72 ID:ktJuXnYCo
おつおつ
兄友と幼の方は結果が知れたようなものだな
あとは兄と女がどうなるか…
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/16(月) 23:16:49.03 ID:/BkVXDgio
その日の夜 幼馴染の自宅


幼(・・・・・・もう9時だ。兄友に電話したいけど、何か気が引けて・・・・・・)

幼(何で電話できないんだろ。今日兄と何話したの? って電話で聞くくらいおかしなことでも何でもないはずなのに)

幼(もうあたしと兄友が親密そうに見せる演技は止めることになったけど、電話で話す分には兄とか妹ちゃんに知られることもないんだし)

幼(でも、今更あたしが電話したら、兄友も迷惑かな・・・・・・)

幼(兄友は今でも妹ちゃんのことが好きなのかな)

幼(あたしが見てきた範囲で考えると、とても妹ちゃんに夢中になっているようには見えなかったけど)

幼(もう、何で兄友があたしと兄のことを応援してたんだかよくわからなくなっちゃった)

幼(・・・・・・)

幼(もしかして・・・・・・自分に都合のいい考え方だけど、兄友もあたしのことを気になっていたんだろうか)

幼(でも、あたしが兄のことを好きなことを知って、身を引いたっていうかあたしのことを応援する気になったのかな)

幼(・・・・・・それはいくら何でもあたしに都合良すぎる解釈でしょ。あれだけ自分に自信がありそうな兄友なら、もしあたしのことが好きになったのならもっと正攻法で口説いてきたはず)

幼(そうしてくれていたら、ひょっとしてあたしだって)

幼(馬鹿だなあたし。いったい何考えているのよ)

幼(・・・・・・本当に電話しても平気かなのかな)

幼(・・・・・・)

幼(あたしって最悪だ。兄に告白して返事もらう前なのに、もう他の男の子が気になってるなんて)

幼(兄友には応援してもらって、妹ちゃんにも励まされたのに。こんな気持ちがばれたら、二人とも絶対あたしのこと許さないだろうな)

幼(・・・・・・あ)プルルルル

幼(着信だ)ドキ
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/16(月) 23:19:41.02 ID:/BkVXDgio
幼(あ)ドキドキ

幼(兄友から)ピ

幼「はい・・・・・・」

兄友『兄友だけど。今話しても大丈夫か』

幼「う、うん」

兄友『うん? 今まずかったか?』

幼「・・・・・・別にそんなことないよ」

兄友『・・・・・・』

幼「・・・・・・」

兄友『あのさ。もう演技も終ったことだし、俺と話するのうざいならもう話しないようにするけど』

幼「・・・・・・」

兄友『幼馴染? 聞いてるのか?』

幼「・・・・・・」グス

兄友『え』

幼「何で・・・・・・」

兄友『うん?』

幼「何でそんなこと言うの?」

兄友『何でって・・・・・・おまえに迷惑かけてたら嫌だし』

幼「何でそんなにあたしに意地悪するの」

兄友『え・・・・・・意地悪?』

幼「あ・・・・・・ごめん、何でもない。別に迷惑とかじゃないから(何で泣いて駄々をこねたりしたんだろ、あたし)」

兄友『大丈夫かおまえ』

幼「大丈夫だよ。ごめんなさい(こんなところで兄友への気持ちを気付かれるわけにはいかないのに)」

兄友『まあ無理ねえか。幼馴染も兄が返事してくれなくて中途半端な状態で放置されてるんだもんな』

幼「・・・・・・うん」

兄友『親友じゃなきゃぶん殴ってるところだぜ。兄のやつ、受け入れも断りもしないでずるずると時間稼ぎしやがって』

幼「・・・・・・心配してくれてありがと」
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/16(月) 23:20:14.37 ID:Dp63E3I6o
幼馴染はふ振られることで兄への執着を思い出す
まだワンチャンある(震え声)
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/16(月) 23:20:51.34 ID:Dp63E3I6o
おっとこれは失礼
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/16(月) 23:22:59.24 ID:/BkVXDgio
兄友『それでさ、少しは幼馴染の気が楽になることを話してやるれると思うんだけどよ』

幼「・・・・・・うん」

兄友『今日さ、学食で兄と一緒だったんだけど。あいつ、おまえのことはっきりと好きだって言ってたぜ』

幼「・・・・・・そう(あたし、それを聞いても嬉しいという感情は浮かんでこないのね)」

兄友『・・・・・・兄がおまえを好きって言ったのに、嬉しくねえの?』

幼「そんなことないけど」

兄友『まあ、たださ。兄のやついいやつ過ぎるというかさ』

幼「うん」

兄友『あいつ、やっぱり俺のこと気にしちゃってるみたいだ。一応。俺のことは気にするなよとは言っておいたけど』

幼「そうか」

兄友『・・・・・・』

兄友『・・・・・・おまえ、やっぱり俺と話するの気が重いんじゃねえの』

幼「違うよ!」

兄友『何かあったのか?』

幼「あんたは」

兄友『え』

幼「・・・・・・あんたは今でも妹ちゃんのこと好きなの?」

幼(何言ってるんだろあたし)

兄友『・・・・・・何でそんなことを聞くの?』

幼「だって、あんたあたしのことばっか気にしてくれてるけど、もともとお互いに自分のために始めたことじゃない」

兄友『・・・・・・それは』

幼「何でそんなに優しくしてくれるの? こんなことしてたって、妹ちゃんとの距離なんて縮まらないのに」

兄友『だから、おまえが兄と付き合えば妹ちゃんは』

幼「それだけなら、兄と女さんが付き合ったとしても結果は同じでしょ」

兄友『・・・・・・何か、おまえ怒ってる?』

幼「怒ってなんかいないよ。ごめん、変なこと言って」

兄友『そうか。それならいいけど。じゃあ、話はそれだけだから。また、何かわかったら電話するよ』

幼「ありがと。電話待ってるね(待ってるって・・・・・・そんなこと言ってたらあたしの気持ちを兄友に気付かれちゃうじゃない)」

兄友『じゃあ、おやすみ』

幼「おやすみなさい」ピ

幼(あたしって最低だ・・・・・・)
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/16(月) 23:26:43.96 ID:/BkVXDgio
 兄友と電話で話をした翌日の朝、あたしは兄妹と一緒に登校した。兄はどういうわけか寝不足のようで、ひどい顔をしていた。あたしが兄のことをを心配すると、妹ちゃんが意味ありげな言葉を口にした。


「お姉ちゃんお姉ちゃん」

「どしたの? 妹ちゃん」

「今お兄ちゃんは悩んでるの。わかるでしょ?」

「あ・・・・・・」

「もう。当事者のお姉ちゃんが気が付いてあげなくてどうするの」

「ごめん。そうか、そうだよね」

「もう寝不足には突っ込まないであげて」

「うん、わかった」


 あたしはどうにか妹ちゃんの意味深な言葉に合わせて会話したけれども、心を占めていたのはあたしと兄との関係を心配してくれている妹ちゃんや兄友、そしてあたしが真剣に告白してしまった兄への罪悪感だった。

 兄が本当にあたしのことで悩んでいるかどうかはわからないけど、たとえ兄があたしと兄友のことを気にして憔悴くらい悩んでいるのだとしても、正直に言うと今のあたしには兄のことより兄友のことの方が気になっていた。

 ・・・・・・本当に最悪の女だ。あたしは兄妹の前で落ち込んでいる姿を見せるつもりはなかったから表面は取り繕っていたけど、内心は罪悪感や後悔で埋め尽くされていた。せめて兄に告白する前に自分の本当の気持に気付いていたらよかったのに。

 でもそれは今さら考えても仕方のないことだった。


 更にその翌日の昼休み。

 あたしは兄友に一緒にお昼を食べようと誘われた。それは偽装カップルを演じることを止めてから久し振りの誘いだった。

 兄友にお昼を誘われる。今までなら日課となっていたようなそれだけのことで、あたしは罪悪感や後悔を一瞬忘れるほど胸がときめくのを感じた。屋上に向かって歩く兄友の隣に寄り添って歩くのも久し振りで新鮮だった。あたしは顔を赤くしながら神妙に兄友と並んで歩いて行った。今ではもう兄と一緒にいても感じることのないどきどき感が、兄友と二人きりでいるとあたしを襲ってくるようだった。

 でも、もう肌寒い屋上で兄友が険しい顔で切り出したのは意外な話だった。
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/16(月) 23:27:59.08 ID:/BkVXDgio
今日は以上です

また可能なら明日再開します

お付き合い感謝です
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/16(月) 23:29:33.53 ID:Dp63E3I6o
おつ
あーあー
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 23:32:59.57 ID:gBXgABGSO
だから鬼放置やめろとあれほど……
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 23:33:48.41 ID:mOBLRwH40

裏でこんな状態なのに、なんで女はあんな目にあわなければならなかったのか……
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 23:34:21.18 ID:bC3am7dio
おつおつ
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/17(火) 00:22:32.56 ID:1m7pjRZwo
次回あたりなんか核心に迫りそうな気がする
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/17(火) 00:22:53.42 ID:Pb5qJFUDO
胸の奥に黒いもんが…
取ってぇぇ!!これ取ってぇぇぇぇ!!!!
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2012/04/17(火) 00:45:32.46 ID:vf1ZNjA0o
もう鬱でもなんでもいいや・・・
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/17(火) 06:58:40.72 ID:NjcGoCmVo
おつ
この時点で幼は兄友に傾いているけど、このあと兄と女が付き合った事知った時の幼が兄対してした発言がイミフになるな。それもすぐに分かると思うけど。
あとは最初兄友は幼を狙っているのかと思ったが何度か読み直したしているとよく分からなくなってきた
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/17(火) 08:47:44.01 ID:ev8TSw1ro
果たして兄友の兄への想いは成就するのか?
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/17(火) 09:17:24.06 ID:SuuhboxSO
お前はそればっかりだな
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/17(火) 09:55:47.35 ID:J86HpEhAO
>>663
兄友の態度をみる限り順当な推測だと思うが?

予測書くことの良し悪しは別として
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/18(水) 22:31:28.72 ID:k3Go/f9qo

 今のあたしには兄に告白の答えを保留された時に思い悩んでいたような、兄に振られたらどういしようという心配は全くなくなってしまっていた。だから、兄友が話し出した出来事は確かに意外な話ではあったけど、兄友が心配しているようにそのせいであたしがこれ以上落ち込むということはなかったのだ。

 兄友は今朝、兄と女さんが電車の中で仲良く手を繋いで一緒に登校しているところを目撃したというのだった。

 兄友は相変わらず険しい表情で、もはや兄への遠慮の欠片もない口調で吐き捨てるようにその朝の話を続けた。

 手を繋いで寄り添っている二人を見かけた兄友は、思わず感情的になって兄を責めたそうだ。



「おまえ、最低だな」

「おい・・・・・・何か勘違いしてるぞおまえ」

「幼馴染の気持を知りながら返事もしないであいつを悩ませておいてよ。自分は他の女と浮気かよ」

「だから違うって。話を聞けよ」

「女さんが好きなら何ですぐに幼馴染のことを振ってやらねえんだよ。おまえ、自分が好かれてるっていう気持を楽しみたいから幼馴染への返事を引き延ばしてるんだろ」

「・・・・・・てめえ怒るぞ」

「怒るって何だよ。誤解だとでも言いてえのかよ。登校中の電車の中でしっかりと女さんの手を握りやがって」

「・・・・・・」

「じゃあな。おまえとはもう話さねえから。あと幼馴染にも全部今朝のこと話すからな。もうおまえなんかに遠慮したり気を遣ったりするのはやめだ」

「・・・・・・」

「・・・・・・言い訳すらなしかよ。まあいいや。じゃあな」



「兄のこと見損なったよ。」
 兄友が続けた。「結局あいつはおまえにはっきり返事をしないでずるずると期待を持たせていたくせに、その間女さんと仲良くやっていたわけだ」

 まるであたしのことで怒っているというより、自分のことみたいな兄友の激しい怒りにあたしは少し戸惑って兄友の顔を眺めた。

 ――確かに、兄が女さんと手を繋いでいたことは意外ではあった。女さんはぼっちで友だちのいない子だった。見た目はそれなりに可愛いことは認めるけれど、どちらかというと明るい社交的な女の子が好みのはずの兄が興味を惹かれるような子ではなかったのだから。

 それに兄と女さんには、前に兄が女さんの落した財布を拾ってあげたことくらいしか接点はなかったはずだ。いつのまにこんなに急速に仲良しになったのだろう。そういう意味では兄友の話は意外性のある話だった。

 でも、そのことであたしがショックを受けたり傷付いたりしたかというと、もうそういうことは全くなかった。今までも薄々と気付いていたことではあったけど、この瞬間にあたしは心底から自分の正しい気持ちを確信したのだった。
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/18(水) 22:34:26.72 ID:k3Go/f9qo
 あたしの過去の気持ち、兄への長い片想いは嘘ではなかっただろう。昔から兄を見つめてきて、兄のことを好きになり、それでも妹ちゃんのことを考えて自分の気持を隠してきたそのこと自体はあたしの誤解でも勘違いでもなかった。だから妹ちゃんに背中を押されたあたしの兄への告白は必然だった。

 でも、今の自分の想いが兄の方に向いていないこともまた事実だった。もうそれは間違いではなかった。兄友と二人で「演技」をして兄の気持ちを自分に向かせようとしていた日々の間に、あたしはいつの間にか兄友のことが好きになっていたのだった。

 「・・・・・・幼馴染?」
 兄友は自分が話し終えても返事をしないあたしを心配しているようだった。さっきまで険しかった怖いような表情が、心配そうな表情に変わっていた。

 「話してくれてありがと」
 あたしは兄友に微笑んだ。「そしてあたしのために兄に怒ってくれてありがとう。でも、もう平気だから、あたし」

「あのさあ」
 兄友はあたしの表情を覗うようにしながら言った。「俺の前でまで無理するなって」

「ありがとう」
 あたしは再び兄友の方に微笑みかけようとしたけど、どういうわけか不意に涙が浮かんできてしまい、口に出そうとした言葉まで突然の正体不明の嗚咽に飲み込まれてしまった。それは兄を失った後悔の涙ではないと思う。でも、少なくとも長かったあたしの兄への想いが終ったことだけ
は確かで、もう兄と妹ちゃんと三人で寄り添って過ごしてきた今までの日々が永遠に終ってしまったことだけは間違いのないことだった。なので、それはあたしが否応なしに過去と決別することになってしまったことへの郷愁から生じた涙だったのだろう。

 でも兄友はそれを誤解したようだった。

「・・・・・・それでいいよ。今は好きなだけ泣いてればいいさ」

 兄友はあたしの肩を抱き寄せた。兄友のその行為はあまりにも自然に感じられたため、あたしは驚くこともなく兄友に抱き寄せられながらしきりに泣きじゃくっていたのだった。
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/18(水) 22:37:22.91 ID:k3Go/f9qo
 しばらくして泣きやんだあたしは、きっと酷いことになっているだろう自分の顔が気になってとりあえず涙を拭おうとしたところで、自分がまだ兄友に抱き寄せられていることを初めて意識した。

「・・・・・・離して」
 あたしは小さく言った。兄友はあたしの肩を抱いていた手を緩めた。

「悪い。つい」

 あたしはこんな時だったけど、悪びれた様子さえない兄友の態度に思わず小さく笑ってしまった。「本当に女に慣れてるんだね」

「でもありがと。もう平気だし兄のことも割り切れると思うから」

 あたしの言葉に一瞬赤くなった兄友の表情は、後半の言葉を聞いて真面目なものに変った。

「おまえ、絶対に兄を許そうなんて思うなよ。そんなのあいつらの思いどおりになっちまうだけだからな」
 兄友はあたしに厳しい口調で言った。「兄に何て言われても納得するなよ。あんなぼっちのコミュ障女なんかに負けることはねえんだからさ」

 兄友の気持ちは嬉しかったけど、もうあたしはこの茶番劇を終らせたかった。

 あたしはもう兄のことが異性として一番好きな相手ではない。そして兄ももうあたしのことが異性として一番好きな相手ではない。だからもう終わりにしてもいいのだ。

 ・・・・・・一歩間違えれば悪いのは兄ではなくてあたしになっていたはずだった。兄が兄友に責められているのは、あたしが兄友への気持ちを隠していたことと正反対に、女さんへの気持ちに忠実になったからだった。多分それは兄友のあたしへの気持ちを計りかねているあたしと違って、
兄は女さんの気持ちを知ったからに過ぎないのだろう。

 だから心で考えていることは兄もあたしもどっちもどっちだのだった。そういう意味ではあたしはたまたま被害者のように同情される立場になったけど、自分の心情を見つめてみれば兄のことを悪く言える立場では決してなかったのだ。

 ただ、それを兄友に納得させるのは難しかった。今ここで兄友が好きと言えればどんなに気が楽になることか。でもここまであたしのことを考えて行動してくれている兄友に対して、今あたしの気持ちをぶつけることはあたしの勇気の限度を越えていた。あたしは兄友の気持ちを知ることが怖かった。兄友が自分が言っていたように妹ちゃんのことが今でも好きなら、あたしの気持ちはそこで終わりだ。そして兄に振られることは気にならなくても、兄友に振られたらあたしはきっと立ち直れないくらいのショックを受けるに違いなかった。
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/18(水) 22:40:45.21 ID:k3Go/f9qo
 そういうわけで、この時はあたしと兄友の気持ちは最初から最後まで食い違ったままだった。

 兄があたしに断ってきても安易に兄を許さずに粘るよう、兄友はあたしにしつこく食い下がった。あたしはもういいよと兄友に答えていたのだけれど、そこで兄友は妹ちゃんの気持ちはどうなるんだよと話しはじめた。

「妹ちゃんはおまえになら兄を任せてもいいって、ようやくそこまで思えるようになったんだろ? 兄と女が付き合うなんて、おまえが納得しても妹ちゃんが納得しねえだろ」
 兄友は真剣な表情でそう言った。あたしは兄友のその言葉に顔を曇らせた。やはり彼は妹ちゃんの気持ちをこんなにも気にしているのだろうか。

 妹ちゃんとあたしってどっちが女として魅力的なんだろう。一瞬、兄友の話から意識が逸れたあたしはそんなことを考えた。

 きっと校内で守ってあげたい可愛い女の子選手権が行われたら優勝は間違いなく妹ちゃんなんだろうな。ではあたしには兄友を惹きつけられるような魅力は全くないのだろうか。

 あたしだってこれまで男の子に告白されたことは何回もある。最近では生徒会長の告白を断ったばかりだった。でも女の子らしい可愛らしさで言うと妹ちゃんには負けてしまうのかもしれない。あたしがそんなことを考えている間、兄友は何か延々と熱心に話しているようだった。

「・・・・・・なんだって。だから、妹ちゃんの気持ちとか考えるとあっさりとおまえが手を引かない方がいいって。だいたいおまえ好きなんだろ? 兄のことが。先輩の告白だってそれで断ったんだろうが」

 再び兄友の声が脳内に入ってきた。そういえば先輩はあたしが兄友のことを好きなんだと勘違いしたんだっけ。

「兄もそのうちあのコミュ障女と付き合うなんて馬鹿げてると気がつくよ。友だちすら一人もいない女なんかとあの兄が学校で付き合えるわけがねえよ」
 兄友は力説した。「だからおまえは兄のこと諦めるな。それが兄のためだし妹ちゃんのためだ」

 妹ちゃんの気持ちについては、兄友の言うとおりかもしれなかった。あたしにもそれはよく理解できた。それでもあたしは気が進まなかった。

 一つにはもうこんな欺瞞は止めたかったから。もう一つはあたしのためだと言いながら、その実妹ちゃんの気持ちを優先しているような兄友に微妙に反発を感じていたから。

 でもそれは、あたしの自分への気持ちを知らない兄友に責任を押し付けられるようなことではなかったのだ。そして、兄友は自分の主張を諦めようとはしなかったので、最後にはあたしの方が根負けしてしまった。



 ・・・・・・結局あたしは兄友に押し切られた。兄に振られても少しは粘ってみるよ。

 あたしは結局最後には兄友にそう約束させられたのだった。
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/18(水) 22:42:27.20 ID:k3Go/f9qo

 兄の行動は思ったより早かった。

 その日のうちに再びあたしは屋上に呼び出された。今度は兄によって。そこで、兄はあたしとは付き合えないとはっきりあたしに言ったのだった。

「わかった。でも一つだけ教えて」
 あたしは念のために兄に聞き返した。「もしかして、あたしと付き合えない理由って兄友のことがあるから?」

「それもあるけど」

「それもって?」

「最初は兄友のことばかり気になってたんだけど」

「・・・・・・うん」

「でも、正直に言うと今は兄友のことが理由っていうより、他に好きな子がいるから」

「だからおまえとは付き合えない。本当にごめん」

 やはり兄友の言ったとおりだったようだ。でもあたしは別に動揺もせず話し続けることができた。

「・・・・・・女さんだよね?」

「・・・・・・うん」

 もうこのあたりで兄を開放してあげたかったけど、兄友との約束もあったし妹ちゃんの気持ちのこともあった。あたしはしばらくは振られて傷心な演技を続けざるを得なかった。もうこんなことは本当にやめたかったのに。

「女さんを好きになる前って・・・・・・あんた、あたしのこと好きでいてくれた?」
 何を言っているのだろうあたしは。でも幼馴染の男の子に振られた女の子はきっとこういうことを聞くのだろう。兄は戸惑っていたけど、最後に正直に答えてくれた。

「昔からずっとおまえのことだけが好きだったよ。女のことを好きになる前は」
 その後に続いた兄とのやりとりに、どういうわけか少しだけあたしの胸が痛んだ。でも、もう過去への感傷はこれくらいでいい。あたしは兄友への約束を果たすことにした。妹ちゃんのために兄を諦めない振りをすること。

 あたしは振られた幼馴染の振りを続けながら最後にこう言ったのだった。



「・・・・・・ねえ?」

「これからも友だちっていうか、幼馴染でいてくれる?」

「よかった。あたし、これ以上あんたを困らす気はないけど」

「心の中でさ、彼女ができた好きな人のことを想い続けるのはあたしの自由だよね?」

「あんたのこと諦めないって言ってるの」

「あんたと女さんの関係を邪魔したりはしないいよ。でもあんたのことを好きでいることはあたしの自由でしょ」
 戸惑っていた兄はあたしのことが理解できないようで、最後にはもう黙ってしまった。



 こうしてあたしの最後の演技は終ったのだった。兄友との約束どおり兄にはこう言ったけど、実際に兄のことを待ち続ける気なんてなかった。そういう意味では兄には理不尽なプレッシャーを与えてしまったのだけど、兄友との約束と妹ちゃんへの義理を考えるとあたしにはこうするしかな
かったのだった。

 これで終わりだ。あたしは兄と別れて屋上から校舎内に戻りながら考えた。明日からは自分に素直になろう。とりあえず、今度は演技ではなく兄友と本当に仲良くなることから始めてみよう。たとえ兄友が本当に妹ちゃんのことが好きなのだとしても、あたしはもう自分の気持に素直になっ
てもいい時期だった。というかむしろ遅すぎるくらいだったのかもしれなかった。
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/18(水) 22:43:09.33 ID:k3Go/f9qo

 明日から素直になろうとあたしは考えたのだったけど、自分の意地っ張りな性格もありそして兄友の何を考えてえいるのかよくわからない態度もあり、兄友に対して素直に好意をぶつけて彼ともっと仲良くなれたかというと、結果は微妙だった。

 兄に振られた日の夜、あたしは兄友に電話をしてその日の兄との会話を報告した。兄友はあたしが自分のアドバイスのとおり、兄のことを諦めない宣言をしたことに満足したようで、すぐに電話を切ってしまった。そして電話を切る前に、兄のこと本当に諦めるんじゃねえぞとあたしに念を
押したのだった。あたしは相変わらずあたしと兄の仲を応援している兄友の言葉に失望した。これではもっと彼と仲良くなるどころの話ではなかった。

 それでもあたしは兄友のことを諦めるつもりはなかった。少なくとも兄友が本心では誰が一番気になっているのか、そしてそのために何をしようとしているのかを理解するまでは。あたしは再びこの恋が長期戦になることを覚悟したのだった。

 翌朝、あたしはお隣の兄友の家の前で、彼が家から出てくるのをじっと待っていた。いつもより早い時間に自宅を出たのだから、最近はあたしより遅い時間に学校に来ていた兄友を逃がす心配はなかった。

 15分待っても兄友は自宅から姿を現さなかった。いつも相当時間をずらしていたのだろう。あたしはとりあえずスマホで電車の時刻表を確認した。遅刻ぎりぎりまで待とう。あたしがそう思った時、電話がかかってきた。それは妹ちゃんからだった。

『お姉ちゃん?』
 妹ちゃんが呼びかけた。『朝早くからごめんね』

「おはよう妹ちゃん」

『お姉ちゃん、あたし今日から学校に早く行かなきゃならないんでお姉ちゃんと一緒に登校できないの。ごめんね』

「今日からって・・・・・・これからずっと?」

『うん。部活始めたから』

「部活?」
 あたしは驚いた。兄のために家のことを最優先してきた妹ちゃんが部活とは。「一体どこの部に入ったの?」

『お姉ちゃん・・・・・・ごめんね。あたしがお姉ちゃんをけしかけたせいで』
 妹ちゃんはあたしの質問に答えずに言った。

 では、妹ちゃんはあたしが兄に振られたことをもう知っているのか。そのこと自体は気にならなった。妹ちゃんのせいではないし、もうあたしは兄に告白した頃の自分の気持は整理できていた。

 むしろ気になるのは妹ちゃんが兄が女さんとのことを知っているのかどうかだった。でもそれをあたしの方から聞くわけには行かなかった。妹ちゃんがそのことをまだ知らないのなら、あたしの口から告げ口みたいに妹ちゃんに兄と女さんのことをばらすわけにはいかない。

「妹ちゃんのせいじゃないよ。あたし、もう気にしてないから妹ちゃんも忘れて」
 あたしは無難にそう彼女を慰めた。「でも何で突然部活なんて始めたの? 朝早くって朝練か何か?」

『あたしもお兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒にいるだけじゃ駄目だから』
 妹ちゃんはポツリと言った。妹ちゃんも、もうこれまでのような生温い仲良しの関係は続かないということに、いち早く気がついていたのだろう。妹ちゃんも彼女なりに自立しようとしているに違いない。あたしは甘えん坊だった妹ちゃんの、そんな健気な気持ちを考えると心が痛んだ。

『じゃあね、お姉ちゃん』
 あたしが再び何か言う前に妹ちゃんは電話を切った。ちょうどそのとき、兄友がようやく自宅から姿を現した。
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/18(水) 22:45:54.32 ID:k3Go/f9qo

 こうして再び兄友と二人きりで過ごす日々がまた始ったのだった。兄のことを諦めるなと兄友は言っていたけど、彼もとりあえず兄を気にしてあたしと距離を置くことは止めたみたいだった。この頃になると兄と女さんの仲はクラス公認のようになっていたし、二人は傍目に見てもいつも仲よさそうにべったりとくっついていたから、兄にとってはあたしと兄友が一緒にいようがいまいが全く気にならなかっただろう。兄友もそれは感じていたのか、あたしが誘えば朝も二人きりで登校してくれたしお昼も以前のように一緒に過ごしてくれるようになっていたのだった。

 妹ちゃんとは全く会わなくなってしまっていた。そして兄も朝から晩まで女さんと二人きりでいることが多かったみたいだったから、妹ちゃんは全くひとりぼっちかあるいは同学年の友だちと過ごしていたに違いない。妹ちゃんがもうあたしと兄友と一緒に登校することはなかった。

 そして女さんは、昔クラス内で囁かれていたようにぼっちでもコミュ障でもないことを自ら証明した。彼女がその気になればできることってどれだけあるのだろう。兄と付き合い出してからの女さんは、これまでとは打って変って同級生の女の子たちと気軽に話し合うような仲になっていた。
つまりもともとコミュ障でも何でもなく、彼女はこれまでは好き好んで孤立していたのだろう。一度女さんがその気になると、彼女はあっという間にクラスの女子たちと打ち解けたばかりか、兄との関係をよく知らない男子たちに言い寄られたりもするような典型的なリア充の女の子に変っていた。



 いろいろあたしの周囲ではめまぐるしく環境は変化していたようだったけど、傍から見たらあたしと兄友の関係だけは以前と何も変っていないように見えたに違いない。相変わらず校内ではあたしと兄友が怪しいという噂は根強く残っていたようだったし。

 あたしは、兄友と一緒にいても以前のように気軽な気持ちには慣れなかった。今ではあたしは自分に向けられる兄友の視線や言葉から必死になって兄友の気持ちを知ろうとしていたのだった。表面上は兄友は以前と何も変らないようだったけど、あの頃のあたしの関心は主に兄に向けられていたのだ。ようやくこうして兄友のことを注意して観察するようになると、あたしは兄友の行動にいろいろ気になることがあることに気づいたのだった。

 同じ2年生の校舎の同じクラスにいるのだから、あたしたちは兄と女が仲良く寄り添っている様子を頻繁に見かけた。そんな時、兄友はあたしの話にうわの空になって兄と女さんのこと気にしている様子だった。隠しているつもりかもしれなかったけど、昔と違って兄友の行動に敏感になっていたあたしには、兄友が気にしている対象はよくわかった。

 ・・・・・・それがあたしのために(そして妹ちゃんと自分が仲良くなるために)、兄と女さんの様子が気になっているならそれは不思議なことでも何でもなかった。でも、この頃兄友だけを見つめていたあたしは、更にあることに気付いたのだ
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/18(水) 22:54:58.82 ID:k3Go/f9qo

 兄と女さんがいくら四六時中べったりと一緒にいるといっても、実際には別々に行動することも多かった。それは男女別の授業のときだったり、女さんか兄がトイレに立つ時などがその一例だった。

 そういう時、たまたま二人が別々に行動をし始めた時、兄友は、兄ではなくて女さんの方を目で追っていることにあたしはふと気付いたのだった。そして一度気がついてしまうと、そういうことは一度や二度のことではなかった。

 ・・・・・・もしかして兄友が気にしていたのは兄ではなく女さんの方なのではないのか。あたしは辛い気持ちで考えるようになった。そうだとするといつからだろう? そしてそうして考えると、あたしと兄を付き合せたがっている兄友の目的は全く違う姿を見せてきた。兄とあたしが付き合えば、妹さんだけではなく女さんも当然フリーになる。兄友の狙いは妹ちゃんがフリーになることではなく、女さんがフリーになることだとしたら。

 冷静に考えると、腑に落ちない点はいっぱいあった。そもそも兄友があたしを応援し始めたのは、兄と女さんが財布の一件で知り合う前からだ。それではいろいろと兄友の行動原理に矛盾が生じる。

 それでもあたしの中に生じたその疑念は日を追うごとに大きく育って行った。そしていろいろ兄友の行動の動機に説明がつかないということは思いながらも、ある時からあたしの中でそれは確信に近いところまで膨れ上がったのだった。

 あたしと一緒にいる時でも、兄友は兄と女さんのことを気にしていた。最初はあたしへの配慮かと考えた兄友のその視線は、全然そんなものではない。そして、兄友は兄を気にしているわけでもない。一度そのことに気がついて兄友のことを観察すると、兄と女さんが一緒にいる時でも兄友が眺めているのは、女さんの方のようだった。



 兄友が好きな女の子。

 それはあたしでも妹ちゃんでもなく、実は女さんなのではないのか。

 あたしはここで再び悩ましい疑問に直面したのだった。
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/18(水) 22:56:04.71 ID:k3Go/f9qo
今日は以上です

しばらくは目まぐるしく展開すると思います

それでは次回の投下でお会いしましょう
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/18(水) 22:58:23.77 ID:yxpId6HPo
おつ

まだだ
まだ男を慰めてる間に兄への執着を思い出すかもしれないしワンチャンあるし(涙声)
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/18(水) 23:06:55.68 ID:/mxPNV4SO
兄友の心情が掴めないのはともかく、妹の行動が意外と謎だな
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/18(水) 23:10:12.08 ID:AXthwY7E0
兄友の為に計算通り……のAAを用意しておきたいと思う
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/18(水) 23:28:28.19 ID:84erHgkto
妹が部活ってのは予想外
兄友が女狙いってのも意表を突いてきた
これはアツくなってきた
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 08:36:42.78 ID:hLzxK5rDO
妹が一番可愛いんだが?
女神スレだから、女が中心なんだろうけど
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/19(木) 23:33:14.40 ID:kvrXPfm+o

 その後に続いたあの出来事のせいで、あたしをあれだけ悩ませた兄友の気持ちは結局何一明白になることなかったし、あたしの兄友への想いも少しも前進することないままで、あたしたちはもっと深刻で混乱した出来事に飲み込まれ、悩まされることになったのだった。

 その時のあたしは何も冷静に考えることができず、ただ兄友を頼り兄友の言うとおりに、事件の渦中で傷付き混乱していた兄に寄り添い、必死で慰めていただけだった。

 後になって、ようやく冷静になったあたしが、いろいろ当時の出来事を振り返って整理してみると、兄と女さんを傷付け、引き剥がしたその一連の出来事は以下のような経過を辿って生じたのだった。


 まず、担任の鈴木先生の携帯に一通の匿名メールが届いた。差し出した先のアカウントは大手ポータルサイトの運営するWEBメールのもので、つまり捨てアカだったから、鈴木先生にメールを出した人物は謎のままだった。

 その内容は、女さんが不特定多数の人たちに対して、裸同然の姿をネット上で晒しているというものだった。メール本文の最後に記されていたURLにより、ミント速報というアダルトなまとめサイト上で女さんと思われる女性のセミヌードの画像を確認した鈴木先生は、それを校長や学年主
任に報告した上で女さんの両親に連絡し、女さんを自宅待機にした。

 その日は女さんが登校しないことを除けば、一応学校は平穏だった。翌日、兄と妹、あたしと兄友は久し振りに朝の電車で顔をあわせた。今日も女さんが兄との待ち合わせ場所にいなかったせいで、兄は久し振りで妹ちゃんに引っ張られてあたしたちと一緒に登校することになったのだ
った。そして、兄と兄友は互いに微妙なそっけないあいさつを交わしていたけど、この分ではもう少しで仲直りできるのではないかと、二人を眺めてあたしは思った。相変わらず兄友の女さんへの気持ちはまだはっきりとはわからなかった。

 その時は、あたしにはまだ何が起こっているのか承知していなかった。でも、教室に入るとクラスメートたちの様子が明らかにおかしかった。あたしと兄友にはあいさつしてくれる彼らは、どういうわけか兄からは視線を逸らして声もかけようとはしなかったのだ。あたしは思わず兄友と顔を
見合わせた。何かがこの教室で起こっているようだ。でも何か変だとは感じていても、それが何なのか誰も語ろうとせず結局あたしは不安を抱えたまま授業を受けることになったのだった。
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/19(木) 23:36:50.10 ID:kvrXPfm+o
 昼休みになり、兄友はあたしに今日は一緒に飯食えねえからと言い残して兄と一緒に教室の外に出て行ってしまった。

 ・・・・・・兄友も教室の何か異常な雰囲気に気がついていただろうから、それについて兄と相談でもする気になったのだろうとあたしは思った。何か心当たりでもあるのだろうか。あたしは、今は兄と兄友のことはそっとしておこうと思った。兄友が知っていることは、放課後にでも聞けるだろう。

 放課後までの間に兄友は知り合いや伝手を辿りまくって、この嫌な雰囲気の原因を突き止めた。放課後になって兄友は突き止めた事実を兄にメールした。兄はその前にあたしにあるURLを示してそこを見るように言ったのだった。あたしがスマホでその掲示板を開いてその内容にショッ
クを受けている間、兄友は兄にメールでその事実を伝えていた。

 いわゆる学校裏サイトに、ミント速報へのリンクが張られ、と言うか直接引用までされていたのだった。つまり、女さんの女神行為(ネット上で自分の裸身を見せることをそう言われているらしかった)が、学校の生徒で裏サイトを知っている人なら誰でも知ることができるようになってしまっ
ていたのだ。あたしは裏サイトのログを震えながら読んだ。読むにつれ吐き気とか悪寒が体内に生じてきた。そして、女さんの裸に近いひどい画像が目に入った時、あたしは吐き気を感じてトイレに駆け込んだのだった。




『××学園の生徒集まれ〜』


『おい・・・・・・2年2組の女のやつ、ミント速報ってとこで裸の写真をアップしてるぞ』
『マジだ! これ、女子大生とか言ってるけど、どう見ても女じゃん』
『釣りだと思ったらマジじゃんか!』
『これはアウトだろ』
『つうか、うち2組だけど今日担任が女はしばらく休みだって言ってた』
『学校にばれたんじゃねえの?』
『ぼっちかと思ったらびっちだったでござる』
『これはきついわ。兄もショックだろうな』
『変な女だと思ってたけど、ここまで酷いとは』
『前にさあ、援交がばれたやついたじゃん? あれより酷いよね』
『しかも何、この媚びたレス』
『手っ取り早くミントの女のレス張っておくね』


モモ◆ihoZdFEQao『こんばんわぁ〜。誰かいますか』
モモ◆ihoZdFEQao『人いた。最近恋に落ちたせいか痩せてますます貧乳になりました(悲)』
モモ◆ihoZdFEQao『画像は15分で削除します。ごめん』
モモ◆ihoZdFEQao『あと乳首はダメです。需要ないかなあ』
モモ◆ihoZdFEQao『リクに応えてみました。乳首はダメだけどM字です。15分で消します』
モモ◆ihoZdFEQao『ほめてくれてありがとうございます。じゃ最後は全身うpです。乳首なしですいません。15分で消します』


『うわぁ・・・・・・』
『・・・・・・きも』
『まじかよ・・・・・・俺、結構あいつのこと好きだったのに』
『兄もかわいそうだよね。初めてできた彼女がこれじゃさ』
『だから幼馴染にしときゃよかったのに』
『幼馴染には兄友がいるからなあ』
『うち、もう女と普通に話す自信ないよ』
『あたしも。つうか目も合わせられない』
『俺もそうだな』
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/19(木) 23:37:40.15 ID:kvrXPfm+o
 口を濯いでまだ目に涙を浮かべて兄友のところに戻ったあたしに、兄友は再び自分のスマホ差し出した。

「わずか数分でこれだよ」
 兄友は乾いた感情の感じられない口調であたしに言った。あたしは、もうこれ以上は自分のメンタルが持ちこたえそうになかったのに、それでも吸い寄せられるように兄友のスマホのディスプレイに目を落したのだった。

 再び胸のむかつきを感じる。それは更新された裏サイトのログだった。


『おい。女のことでVIPにスレ立ってるぞ』
『マジで? URL貼ってくれ』
『これね』


「見るか・・・・・・?」
 兄友はあたしの様子に気を遣ったように言ったけど、そのリンクを見なければ今夜は眠れないだろう。そんなあたしの様子を悟ったのか兄友は無言で次の画面を開いた。それは2ちゃんねるのスレのようだった。


『【祭りに】高校2年の女の子が女神行為で実名バレwwwww3【乗り遅れるな】』

『今北用ガイド』
『女神板にjk2が緊縛画像をうp』
『即デリ安心(はあと)って思っていた情弱()なjkの甘い考えを裏切り、この子のレスと下着緊縛画像がミント速報に転載』
『暇なやつがその画像のexifデータを解析』
『携帯に登録されていたプロフィール情報がexifに記録されているのを発見、vipにスレ立て』
『流出したプロフィールは次のとおり』
『機種名称:○○のスマートフォン、実名:女、自局電話番号:090-×××―○○○○、メアド:×××.ne.jp』
『その後現在までに判明した女のプロフ:××学園2年2組』
『××学園のホームページに、問い合わせ用の電話番号とメアドが乗ってるな』
『学校に電凸していいか』
『今日はもう遅いからな。明日朝一斉にやろうぜ』
『女のメアドにもメールしたけど反応なし』
『女の携帯電話もつながんねえな』
『誰か、××学園の関係者いねえのかよ』
『いるぞー。俺、××の3年だけど。こいつ、この前までぼっちだったけど最近彼氏ができたんだぜ』
『スネーク発見。自分が実名バレしてること、こいつもう気づいてるのか?』
『つうか女休んでるみたいだ。もう学校にバレてるんじゃね?』
『おい、まずいぞ。学校がこのことを知ってるとすると、もみ消しに走るぞ』
『つうか、これって最終目標は? 停学に追い込むでおk?』
『甘い。こんな破廉恥なことをしてたんだ。退学に追い込んでこそメシウマ』
『情弱ってだけで別に犯罪をしてた訳じゃないんだし、凸る必要なくね?』
『確かにな。飲酒喫煙とかじゃねえもんな』
『黙れ。こういう破廉恥な行動で未成年に衝撃を与えた影響は大きいだろうが』
『おまえらって、自分たちは女神を煽ってなるべくうpさせようとするくせに、こういう時だけ態度変えるのな』
『彼氏がいるリア充jkに嫉妬してるんだろ。このスレの童貞どもは』
『まあ、彼氏が可愛そうだから、女を追い詰めて別れさせてあげるのが俺たちのジャスティス』
『明日一斉に学校に抗議メールと抗議電話で凸るでおk?』
『おk。それで行こう。急がないともみ消されるぞ』
『××学園のやつ、スネークよろ』


 その後。気持悪さとか動揺を通り越して放心していたあたしを、兄友はじっと見守っていたようだった。

「大丈夫か」
 やがて兄友があたしに話しかけた。
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/19(木) 23:43:23.89 ID:kvrXPfm+o

 翌日、あたしは昨日の放課後兄友と話し合ったとおりに、そして昨晩半泣きの妹ちゃんを宥めつつ妹ちゃんに言い聞かせたとおりに、兄と妹、兄友とあたしの4人で登校したのだった。

 兄友の言うことは正しい。一時はあれだけ混乱したあたしだったけど、今あたしたちのすべきことは、女さんの愚かで馬鹿げた行動の巻き添えになりつつある兄をを守ることだった。

 もうこの4人の中の愛憎模様とかに現を抜かしている場合ではなかった。

 今や落ち込んでいて思考停止になっている兄を除いた三人は、奇しくも心を一つにして兄を守るため、巨大な悪意に立ち向かおうとしていたのだった。兄友が本当は誰を好きかなんて今だけはどうでもいい。あたしはこの兄妹の家族のようなものだったのだから、たとえ全校中を敵に廻したとしても兄妹を守らなければならないのだ。そしてそんなことはあたしが真先に考え付かなければいけなかったことなのに、あたしはそれを兄友に教えられたのだった。

 あたしたちはあたしたちの心がばらばらになる前のように、兄を囲んで登校した。それは周囲の悪意に満ちた、または悪意はなくてももっとたちの悪い好奇心に満ちた視線から兄を守るためだった。さいわい、兄友やあたしは校内でも一目置かれていたようだから、そんなあたしたちが兄に寄り添っていることは、校内の悪意を押さえることには一定の成果をあげているようだった。でも、悪意のない単純な好奇心となると話はまた別だった。噂は相当早く校内に拡散していたようだった。

 妹ちゃんは電車の中から2年生の校舎の前に至るまで、まるで以前のように兄にぴったりと寄り添っていた。きっと妹ちゃんもあたしと同様、愚かな女さんに対して怒りしか感じていなかったと思うけど、それを今の落ち込んで傷付いている兄に対して口に出すことはなかったのだった。

 2年生の校舎の前で、妹ちゃんは名残惜しそうに兄の手を離し、そしてまるで彼女が兄の保護者であるかのように兄の手をあたしに託したのだった。

「お姉ちゃん、お願い」
 あたしはもうためらうことなく兄の手を取った。「うん、わかってる。任せて」

「じゃあ、あたし行くね。兄友さんもお願い」
 妹ちゃんはそういい残して1年生の校舎に向かって去って行った。

「じゃあ行こうぜ」
 兄友は、あたしが兄の手を握っていることに気づいていないように、まるでこんなことは当たり前のことだから気にするまでもないさとでも考えているようにさりげなく言った。

 その時一瞬だけ、あたしは兄の手を握りながらも兄を守ることを忘れた。兄友はやっぱり女さんが好きなのだろうか。兄友の動揺は、あたしと妹ちゃんのように兄のことを気遣っているからではなく、女さんの不幸を気遣っているからなのだろうか。だから、兄友はあたしが兄の手を握って
も、何も感じていないような様子だったなのだろうか。
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/19(木) 23:47:05.86 ID:kvrXPfm+o
 その日の昼は久し振りに四人そろって食事をした。兄のことは気の毒だったけど、女さんのした行為があたしたちや校内の生徒たちに与えた影響については、兄に被害妄想を抱かせてはいけないのだろう。そのことは別にあらかじめ打ち合わせをしたわけではなかったけど、兄友も
あたしも、そして兄には限りなく甘い妹ちゃんでさえ、同じ考えだったから、落ち込んでいる兄を目の前にして言いづらかったのだけど、女さんのした行為は愚かなことであり、女さんはある意味自業自得であることを、あたしたちは兄にはっきりと言ったのだった。

 兄はうつむいて、すまんとだけ答えた。女さんの愚かさを指摘しただけで、別に兄を責めるつもりはなかったのに。


教室に戻ると、主を失った女の机に、何かの文字がマジックのような物で黒々と記されていた。


『モモ◆ihoZdFEQao(笑)』


 その文字を見てかっとなった兄が、声のした方にいる生徒の首を見境なく掴もうと体を動かした時、兄友が兄の体を羽交い絞めにした。

「落ち着け。こんな低級な嫌がらせに反応するな。おまえが反応するとこいつらますますいい気になるぞ」
 兄友は兄を押しとどめながら大きな声でそう言って、周囲の生徒を睨みつけた。教室内の生徒たちは一様に下を向き、兄友と目を合わせないようにしていたが、その時でもまたクスクスという笑い声がどこからか小さく響いた。

 あたしは自分のロッカーから雑巾を持ち出して、黙って女さんの机の文字を拭き取り始めたけど、その文字は汚れを広げるだけで一向に消えようとはしなかった。

 こんなことをしでかした女さんの机なんてどんなに汚されてもあたしにはどうでもよかった。それなのに、あたしは一生懸命に女の机を拭き続けている。いつのまにか目に浮かんでいた涙をあたしは片手で拭った。

「すまん」
 兄が掠れた小さな声であたしにともなく、兄友にともなく言った。

「俺、今日は家に帰る。これ以上ここにいると自分でも何をしでかすかわかんねえし」

「・・・・・・その方がいいかもしれねえな。わかった。鈴木には俺から話しておくから」
 兄友が言った。

「一緒に付いていってあげようか?」
 あたしは思わず兄に声をかけた。

「おう、それがいいよ」
 兄友もそれに同意した。「気分の悪くなった兄を幼馴染が送って行ったって、鈴木には言っておけばいいな」

「・・・・・・いや、いい」
 兄は断った。「家に帰るだけだし、お前らを付き合せちゃ悪いしな」

「大丈夫か」
 兄友が言った。

「ああ。平気だよ。じゃあな」
 兄はカバンを取り上げた。

「二人ともいろいろありがとな」
 それだけ言って兄が教室を出て行く時、再び小さな嘲笑めいた声が教室の中からさざめくように沸き起こった。
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/19(木) 23:49:04.49 ID:kvrXPfm+o
 兄が肩を落して自宅に帰ってしまったその放課後、あたしと兄友と妹ちゃんは何となく校門の前で佇んでいた。一刻も早く兄の近くにいたかったのだろう。あたしと兄友が帰宅の準備をしている二年生の校舎に、妹ちゃんが姿を現したのだった。

 兄が途中で帰宅したことと、その原因を聞かされた妹ちゃんは何も言わずに節目がちに下を向いて唇を噛んでいた。このままここにいても好奇の視線に晒されるだけだった。そう思ったあたしたちが校舎を出て校門のところまで来た時、突然思い詰めたような口調で兄友があたしに話し始めた。それも妹ちゃんの目の前で。

「あのさ、ちょっと話が、つうか頼みがあるんだけどさ」
 兄友は冷静そうに言ったけど、その顔は妙に赤くなっていた。

「・・・・・・うん」

「最悪の場合さ、多分兄と女ってもう会えないことも考えられるんじゃねえかなと思うんだ」

「・・・・・・いつかは噂だって収まるんじゃないの?」
 あたしは希望的観測で返事した。

「いろいろ腹は立つけどさ、女さんって兄のこと本当に好きだったのかもな」
 あたしは息を呑んだ。そして今まで俯いていた妹ちゃんまでが、顔を上げて兄友の話を聞こうとしていたようだった。

「何でいきなりそんなことを」

「女から兄に何の連絡もないだろ? 普通なら電話とかメールとかしてくると思うんだよな」

「ご両親にスマホとかパソコンとか取り上げられてるんじゃない?」

「それにしたって家電とか公衆電話とか手段はあるはずだよ。女さんが兄と接触を取らないのは、これ以上兄を巻き込まないようにしてるんじゃねえかな」
 兄友が女さんの話をするとき、少しだけつらそうな表情を浮かべたことにあたしは気がついた。

「兄のことを考えてわざと連絡しないようにしてるってこと?』

「何だかそんな気がする」

「・・・・・・兄がそれを知ったら余計に苦しむね」

「あいつにはとても話せねえよ」

「それで頼みって?」

「おまえ、兄のそばにいてやってくれ」

「そんなことは言われなくたってそうするよ」





「そんで、兄の気持ちをおまえの方に向かしちゃって、女のこと忘れさせてやってくれ」
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/19(木) 23:53:50.97 ID:kvrXPfm+o
 兄友のその言葉を聞いたとき、今まで兄のことが心配なあまりあまり考えないようにしていた自分の兄友への想いがあたしの中で蘇った。

 同時に妹ちゃんも厳しい目であたしと兄友を睨むようにした。

「・・・・・・どういうこと?」
 あたしは細い声で言った。やはり兄友はあたしのこと何か何とも思っていないのだろうか。そんなあたしの動揺に構わず兄友は続けた。

「女さんから兄を奪っちゃってくれってこと」
 兄友はあたしから目を逸らして言った。

「・・・・・・何でそんなこと言うの?」

「女さんはもう兄の前には現れねえと思う。あんだけ意志が強くて頭のいい子がそう決心したら、必ずそれを貫くよ」
 兄友は意外なことを言った。愚かで考えなしの行動をした挙句、兄まで巻き込んだ女さん。その女さんのことを兄友はまるで彼女がいい人であるかのように評価する言葉を口にしたのだった。兄友に関してはあたしほど思い入れのない妹ちゃんも、意外なことを聞いたというように兄友を見上げた。

「兄が女のことを忘れるには新しい恋人ができる以外にはないと思う」
 兄友はそんなあたしたちの気持ちを知ってか知らずか言った。

 ・・・・・・つまり、兄友はあたしに再び兄を誘惑しろと言っているのだ。一度兄に振られたあたしに対して、兄が弱っている今なら女さんから兄を奪えると唆すように。

「兄には、妹ちゃんがいるのよ」
 あたしは思わず妹ちゃんを気にして言ったけど、妹ちゃんは相変わらず無言だった。

「もちろん、妹ちゃんの存在が兄の心の安定に繋がっていることは間違いないけど」
 兄友も妹ちゃんを気遣うように取り繕ったけど、妹ちゃんはやはり押し黙っているままだった。

「女さんと付き合う前は、兄はおまえのことが好きだった」

「おまえが兄のこと好きだったのも間違いないよな」

「兄友・・・・・・待って」
 彼には話していないあたしの気持ち。あたしは最後の方では兄のことではなく兄友が好きだったのに。でもあたしがこの期に及んでその言葉を口にするより一瞬だけ早く、兄友が畳み掛けた。

「そのおまえなら兄の気持ちを惹きつけられるよ。兄だって弱ってるし、女の記憶だって薄れていく時だって来るし」
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/19(木) 23:57:06.08 ID:kvrXPfm+o

 あたしの兄友の告白は、兄友の言葉に遮られて不発に終ったのだけど、それでもこんなあたしの気持ちを無視した提案に従うつもりはなかった。

 あたしが兄友にこの馬鹿げた提案を断ろうとしたその時。兄友がポツリと言った。

「正直、俺だって辛いんだぞ」
 あたしはそれを聞いて再び黙ってしまった。こんなに緊迫した時なのに、兄のピンチなのに、期待と密かな興奮に胸がときめく。

「・・・・・・兄友」
 あたしの声は掠れていた。そしてその場に兄のことに胸を痛めている妹ちゃんがいることさえ、あたしは忘れていた。

「俺さ、おまえのこと好きだ」
 あたしの心は一瞬だけ天国に届いたようなひたすら暖かい歓喜に充たされた。でもそれは一瞬のことだった。

 兄友は残酷に言葉を続けた。

「けどさ、今、兄に必要なのはおまえなんだよ」

 その時、妹ちゃんが顔をあげあたしを見つめてこう言ったのだった。



「お姉ちゃん・・・・・・あたしからもお願い。お兄ちゃんを救ってあげて」
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/19(木) 23:58:11.80 ID:kvrXPfm+o
今日は以上です

また投下します

無駄に長い変則SSにお付き合いいただいてありがとうございます
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/20(金) 00:01:41.08 ID:x4/GNpVZo
おつおつ

まだだ
まだ兄を慰めている間に気持ちを思い出す可能性も無いわけではない
ないわけでなはい(泣き声)
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/20(金) 00:27:58.25 ID:x+GEGc0Go
早く真相がしりたいね
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 07:01:00.62 ID:qFKXSWkDO
NTRモノふんじまうより辛いのは何故か、何故なのか(目から汗)
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 07:56:18.87 ID:TcsYjZqIO
今週末何かが起こる!物語的に
続きが読みたいけど読みたくない
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 08:13:02.74 ID:7/IszweIO
ほんと凄い文章力に脱帽
待つ間、読み返してる
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 12:13:47.46 ID:vVev4gUHo
追いついた・・・ヤバイ
女がどうなってるのか非常に気になる
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 22:39:53.89 ID:s17+A4Uuo
女が叩かれる理由がわからん
学校の対応とか噂されるのはわかるんだが
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 23:18:11.02 ID:ZSvlcMASO
ノリとか集団心理とか展開の都合上とか
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/20(金) 23:22:11.03 ID:0NaTbm4ao

 中学生の頃までは、僕は欲しいものには何でも手が届くのだろうと考えていたものだった。

 僕の成績は学年でもトップクラスだったし、学校の授業と関係ない雑学的な知識や文学的な素養、そしてパソコンやネット関係のスキルまで僕には備わっていた。学業を除けばそれらのスキルは苦労して習得したものではなく、日々の生活の中で自然に身に付いたものだった。

 とは言っても僕にも弱点はあった。スポーツ関係の能力だけは人より劣っていたし、腕力的喧嘩的な意味でも平均以下の能力しか持ち合わせていなかったのだ。

 そういう僕に対して、どういうわけか中学の時はみんなが僕に一目置いていた。その頃の僕の交際範囲は広かった。僕の知り合いには成績優秀な同級生もいたし、反対に半ば学校生活を諦めていて乱暴な態度によってしか自己表現できないやつらもいたのだけれど、そういう乱暴者たちにも僕は人気があったのだ。

「あいつはただ頭いいだけのやつじゃねえよ。俺たちみたいな出来損ないのこともよくわかってるしな」
 こういう乱暴な連中と付き合うことも、その頃の僕には負担にならなかった。
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/20(金) 23:24:43.39 ID:0NaTbm4ao

 品行方正成績優秀な同級生も粗暴で教師から将来を心配されている連中も、彼らに共感し彼らの話しを聞いてあげられる僕に対しては、双方ともまるで借りてきた猫のように大人しくなり、僕に懐いてきたものだった。
った。

 もちろん僕のことを嫌う同級生はいなかったわけではない。その中でもどういうわけか僕を目の敵にしていたそいつは、ある日僕の胸元を掴んで乱暴な声で威嚇するように言った。

 「自分のことを僕なんて呼ぶやつが本当にいるんだな。おまえ、きめえよ」

 僕のことを嫌っていた不良じみた同級生の一人は、僕にそう言い放って僕に殴りかかった。でも、その時彼は、僕がよく相談に乗っていたクラスのアウトローの親玉みたいなやつに制止されぼこぼこにされたのだった。

「おまえ大丈夫だったか」
 僕を助けたやつは、床に這いつくばってうなっているそいつには構わず僕に話かけた。その一件以来、暴力で僕の相手をしようという生徒は一人もいなくなった。
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/20(金) 23:28:51.73 ID:0NaTbm4ao

「あんたっていい子ぶってるけど、実際は不良みたいな知り合いばっかと仲良くしてるよね」
 やはり僕のことを嫌っていた成績優秀な女の子は、ある時僕をひどく責めたものだった。なぜ彼女が僕のことをそこまで嫌ったのかはわからない。

 でも、その翌日から彼女は、それまで親しくしていた頭のいいグループの女の子たちから仲間はずれにされた。

 あんな一生懸命で他人のことを構ってくれるあんたのことを一方的に誹謗中傷する彼女とはもう付き合えないよ。僕を慰めるようにそう言ってくれた子はクラス委員をしているやはり成績のいい女の子だったのだ。

 こういう状況は僕にとって凄く居心地がよかったけど、それでも僕は次第に、どうしてこんなに僕の都合のいいようにこの世界は回るのだろうと考えるようになった。

 僕の成績がいいからではない。成績のいいやつは他にもいっぱいいた。知識が豊富だからでもないだろう。僕の得意としていたPCスキルなんて、不良じみた同級生も品行方正なクラス委員の女の子も等しく興味がないようだった。そう考えて行くと、僕が同級生に人気があるのは人の話を親身に聞いてあげられるというスキルのせいではないのだろうか。僕はそこに気が付いた時、密かに興奮した。

 人の話を聞くスキル。ネットで検索すると正確かどうかはともかく、かなりそのあたりの理論が記されているサイトがヒットしたので、僕はそれらの記述を読み漁ったものだった。

 傾聴という用語がある。どんなにくだらない心情の発露であっても、とりあえず自分の価値判断を保留し相手の主張を受け止めてあげる技術だった。確かに僕は人の話を聞くことが好きだったし、どうして相手がこういう行動を取るに至ったのかという動機に興味があったから、別に無理
しているわけでもなく、相手の話をとことん聞くことは苦ではなかった。

 そして、承認欲求。それは、どんな人でも自分を理解して欲しいという感情がある。自分のことを話したい聞いてもらいたい、そしてその内容を他者に理解して欲しいという欲求だそうだ。

 そして僕は期せずしてクラスメートのその需要に応えていことに気付いた。

 そう考えていくと、僕はまるでコンサルタントのようだった。人の話を親身に聞いてあげられるというその一点で、僕は中学で人気のある生徒という立場を確保していたのだろうか。不良も優等生も等しく、僕自身に興味があるのではなく自分に興味を持って親身に話を聞いてくれる僕のことが大切なだけだったのだ。
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/20(金) 23:33:24.89 ID:0NaTbm4ao

 それに気づいても、僕にとっては人から信頼され頼られているという感覚はまるで麻薬のように心地よかった。それで、中学時代の僕はそういう自分の役割に満足していたし、そこから得られる見返りも当然だと思って享受していたのだった。そんなある日、僕は不思議な少女の噂を聞いたのだった。




 僕より一年下級生のその女の子はやはりクラスで人気があるらしい。そして、その子は見た目も可愛らしいし成績もいいのだけれど、クラスのみんなから慕われていたのはそれだけの理由ではないというのだった。

 僕はその話を僕に心酔してくれていた学級委員の女の子から聞いたのだった。その子が人気のある下級生の女の子をほめる言葉はひどく抽象的で、とにかくいい子なのというレベルの話だったのだけれど、その時僕は直感したのだった。

 その下級生の女の子も僕の仲間ではないのか。同級生の持つ承認欲求をていねいに聞いてあげることで人気があるのではないのだろうか。

 その子に興味を覚えた僕は、その子のことを聞いて回るようになった。そしてその探索の結果では、彼女は僕と同類の優秀な「コンサルタント」ではないかと思い始めた。

 僕はその子に声をかけてみようと思った。もちろん、その子の気持ちを聞いてあげようというよい「コンサルタント」として。

 そういうわけで僕はある日、その女の子に気軽に声をかけたのだった。この子の心のケアも僕がしてあげようというくらいの気軽な気持ちで。




 ・・・・・・ところが想定外なことに、僕はその子のケアをするどころか彼女に心を奪われてしまったのだった。
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/20(金) 23:34:25.72 ID:0NaTbm4ao
今日は以上です

また明日再開します

駄文にお付き合い感謝です
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/20(金) 23:45:48.03 ID:x4/GNpVZo
おつはあ
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 23:47:47.77 ID:ZSvlcMASO
予想外デス
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/21(土) 00:34:42.94 ID:vOJKH7czo
そうだよな。どうして出てこないのかと思ってたんだよ
こいつが物語の上でどう絡んでくるか・・・
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/21(土) 10:16:45.51 ID:dCi8P6lIO
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/21(土) 10:32:25.58 ID:NErG0V+/o
会長か
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/21(土) 19:03:07.95 ID:qljqQWkIO
兄友じゃないの?
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/21(土) 20:27:01.32 ID:NErG0V+/o
運動能力
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/21(土) 20:52:07.88 ID:vOJKH7czo
昔、女に告ったやつだから兄友じゃねーな
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/22(日) 00:03:15.64 ID:2WLqNd23o
 学級委員の女の子に下級生の女さんという子を紹介してくれるように頼んだ時、僕が考えていたのは例によって僕に救える子は救ってあげようという程度の傲慢な気持ちからだった。そしてその時にもう少し自分の心を掘り下げて考えていたなら、僕は下級生の少女を救いたいという自
分の気持ちに裏に、もう少し別な欲求が潜んでいたことに気が付いていたかもしれない。

 この頃になると自分でも気付いていたのだけれど、校内での僕の特異な立ち位置というか優位性は、僕が中学生離れした傾聴の能力を身につけていたからこそ得られたものだった。誰だって人の話をひたすら聞いて相手に共感し、その相手を励ますよりは、自分の気持ちを吐き出した方が楽に決まっている。それでも敢えてこんな、一見自分にとって特にならいようなことをしたのは、逆説的になるけど傾聴によって自分の評判を高めるためだった。つまり動機は完全に自己中心的なものだったのだ。

 単純な承認欲求は、人に話を聞いてもらい聞き手に認めてもらえれば簡単に成就する。でも僕はそれだけでは不満だった。いつのまにか多数の信者が僕を崇めてくれる。そういう状況を作り出すためには、単純に声高に自分の感情を吐き出すよりもっといい手段がある。それは手間と時間がかかり面倒だけれど、コンサルタントに徹するということにコストはかかるのは承知の上だった。そしてその効果は疑り深い僕が満足するほど絶大だったのだ。
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/22(日) 00:06:08.17 ID:2WLqNd23o
 僕は、成績は悪くはなく判断力も持ち合わせていると思うけど、そんな生徒なら他にもいっぱいいる。さらに言えば運動音痴で腕力にも自信がない僕が、校内でここまで心地よい居場所を築けたのは、人の相談に乗るという地道な活動の成果なのだった。

 そのせいで、僕には真面目な子から乱暴な先輩までいろいろな友人がいたし、一部の教師たちにさえ僕の能力を認められてもいた。そして、ここまで敢えて言及しなかったことを語れば、僕の容姿は決して人より抜きん出ているものではなかったけれど、そんな僕に愛を囁いてくる早熟な同級生の女の子もかなりの数がいたのだった。

 その僕と同じように周囲の信頼を勝ち取っている女の子がいると言う。僕でさえこういう活動は辛いときもあるのだから、下級生のその子も辛いだろう。同業者としてサービスで彼女をケアしたあげたい。僕はその時そう考えたのだったけど、この時自分の心の奥底を探っていれば、また違う考えが見えていただろう。

 たかが中学生の分際で、いっぱしのコンサルタントやケースワーカーのように傾聴の技術を持つ小ざかしいガキはこの学校には僕一人でいい。本当のところ僕は心の奥底でそう考えていたのだった。だから僕はこの小ざかしい下級生の子の悩みを聞いてあげるつもりだった。そして、
人の話を傾聴するより、自分の悩みや主張を誰かに吐き出せる方がよほど気楽で甘美なものであることを経験をさせてあげようと思ったのだ。そうすれば、彼女は人の悩みを聞くより自分の悩みを吐き出すほうがどんなに楽か理解するに違いない。しかも、彼女の話を聞いてくれる相手
は、100%彼女の味方になってあげられるこの僕なのだから。
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/22(日) 00:08:51.80 ID:2WLqNd23o
 学級委員の女の子は、女さんを紹介してくれない? と頼んだ僕に向かって複雑そうな表情を向けた。

「あなたが女の子を紹介してくれなんて頼むのって珍しいね」

 半ばからかうように半ば複雑そうな表情を思い浮かべた彼女を見て、僕は初めて少しだけ失敗したなと考えた。

 僕に告白してくれた複数の女の子の一人が彼女だったことに、今更ながら僕が気付いたのだった。その時も今も、僕は複雑な人間関係を神様のような視点で俯瞰することが好きだったから、誰か一人の女の子とより親密な付き合いをする気はなかったのだけれども。

 そして僕のように人間関係を築いていくタイプにとって、より個人的に親しくなろうとする相手が一番対応が難しかった。

 傾聴は、とりあえず自分の価値判断を意識的に停止して、相手の言う言葉を全人格的に肯定するところから始まる。たとえば相談を持ちかける相手が話す内容に対して、こいつ何自分勝手なこと考えてるんだと感じたとしてもそれを表情や口に出してはならない。後々少しづつ相手の考えを矯正してあげるとしても、相談当初は全てを認知し許容してあげなければならないのだ。

 そういう対応をすると、相手は僕のことを意識的に信頼するようになる。そこまでは計算どおりなのだけど、自己愛が強すぎる相手だと稀にそれが行き過ぎる場合があった。相手が男なら大した問題ではないけれど、その相手が女性だと時にやっかいな問題が生ずることがある。つまり僕に自分の全人格を認めてもらったという確信を抱いた女の子が、僕に恋心を抱くようになることが多々あったのだ。そういう相手は手ごわい。下手してその子を拒否すると、それだけでこれまで築き上げてきたその子との信頼関係が崩れることになるからだ。

 よく自分の担当の精神医に恋する患者がいるというけど、まさにそれと同じことだった。
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/22(日) 00:11:33.71 ID:2WLqNd23o
 クラス委員の彼女に思い詰めた表情で告白された時は、僕は全能力を動員して必死になって彼女を宥めたのだった。君のことは大好きだけど、僕は大好きな女の子と結ばれて自分が幸せになるより多くの友だちの悩みを聴いてあげたいんだと。当時僕に心酔していた彼女はそれで納得してくれたけど、今になって下級生の、それも人気のある女さんを紹介してくれと言われた彼女は、その時の僕の言葉を思い出したのかもしれなかった。クラス委員というそれなりに影響のあるクライアントに不信感を抱かせるくらいなら、僕は女さんと接触するのを思いとどまった方がいいとも一瞬だけ思ったけれど、このままライバルを放置できないという危機感の方が心の戦いに勝利した。

 ・・・・・・ライバル?

 ようやく僕には自分の気持の闇が理解できたのだろう。僕は女さんを救いたいわけではない。邪魔な同業者を廃除したいというのが僕の本音なのだった。

 僕にしては切れの悪いセリフでもごもごと彼女の疑惑を否定しながらも、僕は彼女に何とか女さんを紹介してもらうことができたのだった。そしてその代償としてに、クラス委員の子の心のうちに僕に対する疑念を生じさせてしまったことは、もはや疑いようもなかったけれども。
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/22(日) 00:13:48.25 ID:2WLqNd23o
「・・・・・・こんには先輩。はじめまして」


 放課後の図書室に現れた女さんは、あらかじめクラス委員の子に聞いていたのだろう。それほど緊張している様子もなく僕に挨拶したのだった。そして意外なことに女さんはすごく可愛らしい女の子だった。

 こんな小ざかしい技術を駆使してまで校内で人気を得ようという女なんて、容姿が優れているわけがない。僕は何となくそう考えていたのだった。それは自分を考えればよくわかることでもあった。傾聴なんて小ざかしいことをしなくても人気があるような容姿や性格を備えていたら、僕だっ
てこんな面倒なことはしない。でも、その考えを裏切って僕の前に現れた少女は、今まで会ったこともない美少女だった。

・・・・・・まるで女神のようだ。

 僕は一瞬自分が彼女を呼び出した理由も忘れて、呆けたように彼女の艶やかな姿を見つめていた。

「はじめまして。突然呼び出してしまってごめんね」
 少しして、ようやく我に返った僕は彼女に挨拶をした。実はここからもう彼女との戦いは始っていたのだから、僕は精一杯の笑顔を作って彼女に話しかけた。

「いえ。全然大丈夫です」
 女さんはにっこりと微笑みながら気後れする様子もなく、図書室の椅子に座っていた僕の斜め前の椅子に腰掛けた。正面ではなく真横でもなく斜め前に。

 それは傾聴する際に必要になる基本的なポジションだった。人は正面に座られると入試の面接のようなシチュエーションに緊張して簡単には心を開いてくれない。かといて真横に座るのはもっと親しくなってからが望ましい。初対面の段階では真横のポジションはかえって逆効果になるこ
ともある。そういう意味では彼女の選んだ位置は、ベストポジションということになる。僕は彼女の美少女ぶりに動揺した分、いろいろと女さんに後れを取って、しょっぱなから主導権を握られたように感じた。その考えは僕を密かに動揺させた。

 それでも僕は心を引き締めて体勢を立て直した。今日は是が非でも彼女に正直に悩みを打ち明けさせて、その悩みを傾聴してやり彼女の信頼を勝ち取らなければならなかった。

「同級生のクラス委員から君のこと聞いたんだ。君が悩んでる人の相談に乗っているすごくいい子だって」
 僕はとりあえず彼女を持ち上げることにした。とにかく彼女の方から積極的に自分のことを話させなければいけないけど、初対面の男にいきなりそんなことをする女の子も普通はいない。だからまず彼女の信頼を勝ち取らなければならない。

 ・・・・・・でも僕の最初の言葉はどういうわけか彼女の心には全く響かず不発に終ったようだった。
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/22(日) 00:17:35.97 ID:2WLqNd23o
「はい?」
 女さんは何か理解不能なことを言われたように、不審そうに首をかしげた。

「ごめんなさい。いったい何の話ですか」

 それは演技ではないようだった。ひょっとして僕は彼女のことを買い被りすぎていたのか? だけど、クラス委員の子の話が嘘でないとすると、この子は少なくとも同級生のいい相談役のはずだった。そしてその一点で女さんは同級生たちに人気があるはずだったのだ。

「君が同級生の悩みをよく聞いてあげるって聞いたんだけど」
 僕は少し気弱になりながら聞いてみた。すると彼女は少し複雑そうな表情で、でも思い当たることはあるような曖昧な口調で答えた。

「ああ。もしかして、××ちゃんのことですか? あれは別にそんな」

 ようやくとっかかりができた。もう勘違いでも何でもいい。とにかく彼女の話を傾聴するのだ。

「君の話を聞きたいな。別に興味本位じゃないよ。でも、友だちの悩みを解決できるって凄いと思うし、僕にも同じような悩みを持っている友だちがいるんで参考にしたいな」
 それは僕に相談したがっている連中に話しをさせる時と違って、ひどく無様な誘いだった。僕はコンサルタントとしてのプライドをいたく傷つけられたけど、それでも何とか彼女に話をさせないといけなかった。

「あれは別にそんな・・・・・・。でも相談されたんで話しを聞いてあげただけで」
 女さんはようやくありがちな女友だち同士のトラブルの相談に乗ったエピソードを話してくれたのだった。

 ・・・・・・女さんの話はありきたり過ぎて正直興味を抱けるような話ではなかった。僕はむしろ彼女の話を聞きながら、彼女の傾聴の技術が思ったより高そうなことに驚いた。

「女さんって人の話を聞くの上手みたいだね」
 彼女の友人のエピソードは無視して、僕は敢えて核心に触れてみた。その時、初めて彼女は動揺して迷っている様子で僕の方を覗った。

何かある。僕は直感したけど、ここは敢えて口を開かずに彼女が自分から話をするのを待った。

 そして、女さんはついに少しづつ自分のことを語り始めたのだった。
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/22(日) 00:21:22.25 ID:2WLqNd23o
「あたし、これまで転校ばっかしてたんです。だから友だちができてもすぐにお別れだったんですね。それで転校を繰り返しているうちに友だちを作る方法とかわかちゃって」

 僕は内心しめたと思った。自分語りを始めさせればもうこっちのものだ。あとはどれだけ親身になって彼女の話をきいてあげられるかが勝負だった。

「先輩、あたしが必要に迫られて習得したテクニックって、何だかわかります?」
 彼女は淡々と話を続けた。

「う〜ん、何だろ」
 僕は傾聴の基本どおり彼女の目を見つめて真面目に悩むふりをした。

「あたしね、自分の話したいことを2割くらいしか喋らないようにして、残り8割の時間は相手が話すことを聞いてあげることにしたんです」
 彼女は僕の答えを待たずに自分から言った。傾聴テクニック的にはいい傾向だった。

「本当は相手の話になんか興味はなくても、親身に聞くことに徹したんですね。そしたら友だちはできるし、クラスでも評判がよくなって」




 人というのは例外なく自分のことや自分の知っていること、考えていることを話したがる。そして、話した内容から自分を評価して認めてもらいたがるものなのだということを、度重なる出会いと別れの間に彼女はあたしは学んだそうだ。誰も別彼女の考えていることなんかに深い興味はない。

 行きずりの友人たちも自分の話しを聞いてくれて評価してくれた女さんに親しげに振る舞ったみたいで、その一点だけで引越しと転校を繰り返していた彼女には、何度新しい環境に放り込まれても、友だちが出来ないということはなかったそうだ。

 そしてもちろん、人とそういう接し方をしている限り、普通の友だちは出来ても心を許しあえる親友は女さんにできることはなかったのだった。
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/22(日) 00:23:58.95 ID:2WLqNd23o
 それは辛い話だったけど、正直その時僕は有頂天になっていた。この同学年に人気にある美少女が、僕に素直に心情を明かしてくれたのだ。最初に考えていたように彼女は好きで傾聴をしているのないらしいことは理解できた。それはこれまで過ごしていた環境から彼女が自然に身に
つけたテクニックだったのだ。とりあえず僕にはもう彼女は脅威でもライバルでもないことはわかっていたけど、このまま話を聞いてあげて彼女を精神的に楽にしてあげようと僕は思った。「学校コンサルタント」の意地にかけて。



 ふと気付くと彼女は話を終え僕の方を見ていた。恐ろしいほどに澄んだ黒い瞳。

 こんなことは初めてだったけど、僕は傾聴中に初めて内心相手の話以外のことを考えてしまっていたようだった。



 やがて彼女は僕を見つめたまま再び話し出した。

「それで先輩は何であたしの話を親身に聞いてる振りをしてくれてるんですか? あたしたち同級生でもないし初対面なのに」

 女さんは僕に向かって軽く微笑んだ。
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/22(日) 00:24:37.59 ID:2WLqNd23o
今日はここまで

明日可能ならまた再開します

ここまでお付き合い感謝です!
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/22(日) 01:29:16.34 ID:Nu33ndQuo
はいぃ
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/22(日) 07:07:05.09 ID:pUkS+7lSO
ああ、幼馴染と女のことを混同してたわ

なるほどなるほど…
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/22(日) 08:29:20.50 ID:ghMDDSoPo
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/22(日) 23:23:55.97 ID:jTENuPFEo
女さんかわゆす!
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/23(月) 22:00:00.31 ID:EKNIh09oo
作者です

すいませんが、今日も諸事情につき投下できません

なるべく明日は再開したいと思います
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/23(月) 22:12:20.70 ID:lULbywLio
あらまあ頑張って
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/23(月) 23:04:02.76 ID:eaf9hFcSO
なんということでしょう
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/24(火) 00:20:46.03 ID:r1uzLf4qo
ファイトファイトー!
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/24(火) 21:12:50.57 ID:azk/wMq6o
作者です。今日と明日は投下できないっぽいです

中途半端なとこで中断してすいません
この分じゃいつになったら終るのか

そもそもこのスレで収まるのかあやしくなってきたし
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/24(火) 22:20:07.14 ID:afpZp05IO
次スレでいいと思うよ
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/24(火) 22:50:37.63 ID:vtPgkeoVo
今年中に終わってくれれば問題ないよ
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/25(水) 00:15:43.25 ID:a5jrmoRk0
ま、慌てず行こうや
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/25(水) 06:46:25.42 ID:fPXGtUrPo
のんびりのんびり
内容充実で
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 18:18:04.50 ID:HwPpxF4Fo
作者です
今日も泊まりで残業だわーい

すいません
明日は必ず再開しますので
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 22:21:38.79 ID:havxBtxIO
無理すんなわーい
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 22:31:20.61 ID:2iYlYJ5Ho
今日もまだ職場です
明日は再開しますので

ごめんなさい
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/28(土) 15:49:23.96 ID:L1ofvFbro
待ってるからハッピーエン・・・・げふんげふん
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/28(土) 21:28:05.99 ID:sCvB1nNco
仕事でかつかつなのは分かってるから焦らないでなー
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/28(土) 23:16:47.26 ID:ueIFFSbVo
 これが、僕と女さんの最初の出会いだった。

 好奇心から女さんに接近した僕だけれど、彼女と話していると彼女に対する好奇心とか、彼女へのライバル心、それに彼女のいい相談役になってあげようという当時の僕の傲慢な考えは、いつのまにか失われてしまった。そして、その後に残っていたものは、女さんの感情が掴みきれていないという憔悴と、そこから生じた女さんをもっと深く理解したいという衝動だけだった。

 最初、僕は彼女の心を掴んだと思っていた。このまま自分語りを続けさせれば、他の多くの生徒たちと一緒で、女さんも僕の数多いクライアントの一人となるだろうと。

 でも、僕に心を許していたように見えた彼女は、突然、僕の目をその澄んだ瞳で見つめ、今まで自分の境遇と感情の確執を語っていたのが嘘のように冷静な表情で、言い放ったのだった。しかも、ご丁寧に微笑みかけることまでしながら。


「それで、先輩は何であたしの話を親身に聞いてる振りをしてくれてるんですか? あたしたち、同級生でもないし初対面なのに」


 この時、僕の優位性は突然揺らいだ。それは、女さんの心情を理解でき、これからその悩みを軽減してあげようと考えていた僕にとっては、青天の霹靂のような言葉だった。彼女は、これまで自分の行動を語っていた時のような、素直な表情を一変させ、まるで小悪魔のように可愛らしく、ずる賢く、そしてからかうような表情で、僕を見つめたのだった。

 「何言ってるの? 僕は、誰にでも親切に話を聞く君に興味があるだけで」

 僕は、彼女の不意打ちにしどろもどろになりながら、かろうじて反論した。自分でもその言葉の説得力の無さは、痛いほど理解していた。

「ふーん。先輩こそ、噂どおり誰にでも親身になるんですね」

 女さんは、優しい微笑を浮かべながら、でも、油断できない冷静な口調で言った。
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/28(土) 23:18:55.39 ID:ueIFFSbVo
「先輩は、どうして人の悩みを聞いてあげてるんですか?」
 女さんが無邪気な口調で言った。

「お節介だとか言われませんか?」

「まあ、結局、自分のためにやってるようなものだし」

 その時、僕は彼女のあけすけな口調に思わずつられ、自分でも意外なことに思わず本音を語っていたのだった。

「人ってさ。結局、誰でも自分のことを認めてほしいものなんだよね」

「承認欲求ですね」
 すかさず女さんが言った。「でも、先輩にだって承認欲求はあるんでしょ? 人の話を聞いてばかりだと、先輩の承認欲求は充たされませんよね?」

 どこまで小賢しいのだろう、この女は。この間まで小学生だった、たかが中学女子の分際で、何を悟ったようなことを言っているのだろう。僕は自分のことを棚に上げてそう思った。でも、この時にはもう僕の言葉は止まらなくなってしまっていた。

「もちろん、僕にだって人に認められたいという欲求はあるよ」

 僕は、いつのまにか、これまで誰にも話したことのないことを、ペラペラと喋っていた。

「逆説的だけど、人の話を聞いてあげて、その人の承認欲求を充たしてあげる。そのことで、僕は人に評価されてるんだ」

 ・・・・・・僕は後輩に、いったい何を話しているのだろう。

「何か変なの」
 そう言った女さんの笑顔は、僕をこれまで以上に幻惑させた。

「変じゃないよ。僕は、生徒会とかの役員でもないし、運動部のキャプテンでもないけど」
 僕はむきになって話し続けた。

「それでも、こう見えても僕は人気があるんだよ」

「先輩、女の子にもてるそうですね。今までいっぱい告白されたのに、先輩は誰とも付き合わないみたいって、クラスの子が言ってました」
 またしても、女さんの可愛らしい表情。

「コンサルタントは、一人の女の子に縛られちゃいけないし、そもそもクライアントに恋するなんて、学校コンサルタントの資格はないよ」
 僕は胸を張って言った。目の前の可愛い女の子に、もてると言われるのは正直気分が良かった。
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/28(土) 23:21:58.72 ID:ueIFFSbVo
「先輩って、そうやって人の悩みを聞いてあげて、自分は何の得があるの?」
 女さんが、続けて聞いてきた。これまでよりくだけた口調だった。

「得って・・・・・・」

「無償奉仕のボランティアなんですか?」
 からかうような彼女の言葉を聞いて、僕は少しむっとして答えた。

「人を救うと、いい気持ちになれるよ」

「そして、みんなから誉められ信頼されるってこと?」

「まあ、そうだね」
 僕は、僕のことを嫌っていたやつらが、僕のことを攻撃してきた時、僕に心酔する不良やクラス委員の女の子が僕を守ってくれた話をした。

「すごいなあ。みんな先輩のことが好きなんですね」

「・・・・・・好きかどうかはわからないけど、話を聞いてあげたやつらからは信頼されてると思ってるよ」

 僕はこの時、ふと気がついた。

 僕は、女さんの質問に誘導され、これまで人に話したことのなかった僕の秘密を、得意げに、気分よくぺらぺらと喋っていたのだった。

 いや、僕は彼女に喋らされていたのだ。

 僕は、ようやく、そこで気がついたのだった。今まで、自分が人に仕掛けてきたことを、僕は女さんによって身をもって体験させられたのだった。

 さっきまで、僕は女さんに自分語りをさせることに成功したと思っていた。

 でも、実際は彼女は全て理解した上で、僕を惹きつけるための最小限の自分語りを意識的にしていたに過ぎなかったのだ。そして、その後、彼女は今度は彼女の持つ傾聴能力を僕に向けて、仕返しとばかりに発してきたのだった。

 つまり、いつの間にか僕は、彼女にコンサルティングされていたのだった。
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/28(土) 23:23:23.54 ID:ueIFFSbVo
「・・・・・・もう、やめようぜ」
 最後の最後に女さんの意図に気がついた僕は、辛うじて女さんの意中の策から抜け出すことができた。

「お互い、化かしあっててもしょうがないでしょ」

 女さんは、一瞬驚いた表情を見せたけど、それが本当に驚いたのか計算どおりに驚いて見せたのかは、僕にはよくわからなかった。

「・・・・・・何だ。わかっていたんですね」
 彼女も笑った。

「勝手にコンサルされて悔しかったから、お返しに、あたしも先輩に試してみたんですけど」

「さすがに、先輩には通用しないか」
 女さんは残念そうに笑って言った。

 ・・・・・・これが、女さん、いや、その後、彼女のことは呼び捨てにするようになったので、彼女のことは女と呼ぶけど、その女と僕が親しくなった日の出来事だった。
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/28(土) 23:24:52.68 ID:ueIFFSbVo
今日はここまで

連休中はカレンダーどおりに休めるので、最近滞った分を投下したいと思います

励ましのレス、本当にありがとうございました
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/29(日) 00:43:05.93 ID:rI260AKSO
小賢しい、会長は小賢しい
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/29(日) 10:09:28.42 ID:ZzrQW+JIO
中学からとか、会長しぶといと言うか粘着だな
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/29(日) 11:05:41.10 ID:FbpHTscIO
男に連敗したってことか。
逆恨みはまあ分からんでもないがそれはそれで痛い
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/29(日) 11:08:59.88 ID:xtOEn0jco
会長なのか、ホントに?
別キャラのような気がしてる
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/29(日) 12:41:53.65 ID:SBxw7i8lo
会長じゃないだろコレ
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/29(日) 13:41:11.62 ID:FbpHTscIO
じゃあ新キャラなのかな?
まあ続きを楽しみに待つか
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/29(日) 15:08:29.84 ID:yPJwaoVwo
兄友だと思うけど学年が違うのがナー
でも兄が女と付き合ってから様子がおかしかったしその理由が昔から気にかけてたって話なら分かる
あとは名前とかで女が気づきそうだけど気づいてたそぶりがないからなー

「女さんはもう兄の前には現れねえと思う。あんだけ意志が強くて頭のいい子がそう決心したら、必ずそれを貫くよ」
 兄友は意外なことを言った。愚かで考えなしの行動をした挙句、兄まで巻き込んだ女さん。その女さんのことを兄友はまるで彼女がいい人であるかのように評価する言葉を口にしたのだ

こことか何でこんな女を良く見てるのか謎だったし
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/29(日) 22:28:55.77 ID:9RmGifzGo
「それで、先輩。まだ質問に答えてくれてないですよ」
 女は僕を上目遣いに眺めながら、話を蒸し返した。そう聞いてきた女の表情はとても可愛らしく見えた。

「・・・・・・君に関心があったから」
 僕は、女相手に駆け引きをすることを諦めて白状した。普通なら、自分の意図するところがコンサルの対象にばれるなんて、僕にとっては屈辱的な出来事だったはずけど、女の笑顔を前にすると、その時はそんなことはどうでもいいかと思えてきていたのだった。

「あたしが親切に友だちの悩みを聞いてあげるから、あたしに興味を持ったんじゃないですよね? どうして、あたしなんかに会いたかったんですか」

「僕と同じようなスキルを持っていて、僕と同じようなことをしている小賢しい中学生って、いったいどんなやつか見てやろうと思ってね」
 僕は続けた。「でも、君と話してたら、そういうことはどうでもよくなっちゃった」

「え?」
 女は、僕の意図が読めず、少し戸惑っているようだった。

「君のこと、もっとよく知りたくなってきた」

 その時の僕は、上級生らしく余裕があるような振りをしていたけれど、内心では胸はどきどきし、緊張で額は汗ばんでいた。これまで女の子に告白された時でも、こんなに緊張したことは一度もなかったのに。

 どうやら、僕は初めて本気で女の子が好きになってしまったみたいだった。

 その時、女が僕の方を見て、今までで初めて他意が感じられない素直な微笑を向けてくれた。そして、彼女は言った。

「先輩・・・・・・本当に、あたしなんかに興味があるんですか」
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/29(日) 22:31:35.74 ID:9RmGifzGo
 それから、僕と女は校内で一緒に過ごすようになった。僕はその頃、彼女に夢中になっていた。この年まで本気で女の子に夢中になったことのなかった僕だけど、実際に女と親しくなってみると、これまで自分が築いてきたカウンセリングだの傾聴だのとかは、どうでもよくなってしまった。
その頃の僕にとって一番の関心は、女が何を考えているのか、女がどういう人物なのかということだけだった。情けない話だけど、それは恋している他の中学生の男と同じレベルの感情なのだった。

 ただ、一点だけ他の男子たちと違っているところがあるとすれば、それは、僕は幻想を抱いていないということだった。僕には自分のことがよくわかっていた。イケメンでもないしスポーツ全般が苦手。成績はいいし同級生より大人びた論理的な思考回路を持っているとは自負してはいた
けど、そんなものは中学生同士の恋愛においては全くアドバンテージにはならないだろう。

 それに、女の外見は可愛らしかった。惚れた欲目ではないことは、彼女に向けられる男たちの熱っぽい視線が証明していた。そんな彼女と僕では、普通なら釣り合わない恋愛だった。

 確かに僕は、これまでも悩みを聞いてあげていた女の子たちから、言い寄られたことはあった。その中には人気のある女の子もいた。でも、僕はそのことに幻想を抱いてはいなかった。あれは、専門用語で言うと「陽性転移」という現象に過ぎない。彼女たちは、僕自身を好きになったわけではなく、僕の言動に映し出された自分自身を好きになっただけなのだ。

 女が僕と一緒に過ごしてくれる意味を、僕はよく考えたものだった。最初に会った時の彼女の告白は嘘ではなく、僕が観察している限りでは、彼女には確かに親友や心を許せる知り合いは、男女を問わずいないようだった。
750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/29(日) 22:33:32.34 ID:9RmGifzGo
 そういう意味では、僕と彼女は同類だった。僕も彼女も、人の話を聞いてあげることはできる。しかも、中途半端にではなく、話を聞いてもらった相手が自分に心酔してしまうくらいに親身になって。そのせいで僕は好きでもない女の子に告白されたりもしたのだった。

 ある時、僕は彼女に聞いたことがあった。いわゆる陽性転移みたいなことに、困ったことはなかったのかと。

「う〜ん。あたしはもともと男の子の相談にのったことはないし」
 彼女は苦笑して答えた。「転入したばかりで男の子と親密に話してるところを見られたら、女の子たちと仲良くなれないしね」

 そのおかげで、彼女を密かに熱っぽく見つめている視線は感じても、僕が深刻にライバル視せざるを得ないような男は現れなかったのだ。

 彼女には、僕と同様に人の話を受け止めてあげられる技術がある。そういう意味では、僕は彼女と同類なのだった。でも、彼女と過ごしているうちに、彼女の傾聴スキルの高さを裏切るように、彼女にはもっと自分を認めて欲しいという欲求があるらしいことに僕は気づいた。
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/29(日) 22:34:55.25 ID:9RmGifzGo
 その頃、僕と女は校内でお昼を共にしたり、放課後の図書館で一緒に勉強したりしていたけれど、僕と彼女がはっきりと恋人同士になったというわけではなかった。上級生の男と下級生の女がいつも一緒にいたのだから、あいつら付き合ってるという噂はあったらしいけど、僕自身ははきり彼女に告白したわけでもないし、女だって僕のことが好きなんて一言もいったことはなかった。

 僕はもうコンサルタントじみたことをすることを止めていた。いや、厳密に言えばそうではない。僕は自分のスキルを放棄したわけではなく、むしろそのスキルをただ一人の女性にだけ向けたのだ。今の僕の傾聴の対象者は、女だけだった。

 女が僕と同じくらいのスキルを持ちながらも、好きでコンサルティングをしているわけではないことに、当時の僕は気づいていた。それは、転校を繰り返していた彼女の自己防衛のようなものだった。そのスキルを駆使している限り、彼女はクラスで一人ぼっちになることはなかったのだ。逆に言うと、そのスキルを同級生に発揮している限りは、女には真の意味での友人ができることはなかった。女の知り合いは、女自身に興味があるわけではなく、女の言葉に反射される自分を見つめていただけなのだから。

 当然ながら、女にも承認欲求はある。皮肉なことに、ぼっちを回避しようとして彼女が発揮したスキルは、逆に彼女にストレスを与えているのだった。つまり、表面的な知り合いは多くても、本質的には彼女は孤独なままだったのだ。これでは、実質的にはぼっちであることと同じだった。
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/29(日) 22:36:39.60 ID:9RmGifzGo
 そんな彼女の承認欲求を受け止めたのが、僕だったのだろう。僕は彼女が好きだった。そして、その当然の帰結として、僕は彼女のことをもっと知りたかった。

 そして、女にも自分のことを認めてほしいという欲求がある。女は最初にこう言った。


「それで、先輩は何であたしの話を親身に聞いてる振りをしてくれてるんですか? あたしたち同級生でもないし初対面なのに」

「先輩・・・・・・本当に、あたしなんかに興味があるんですか」


 僕は、今まで培ってきたスキルを、全力で女にだけ向けた。そしてそれは、義務感からでなく本気で彼女のことが知りたいからだった。その思いは彼女にも伝わったようで、校内で一緒に過ごす間、彼女は僕の質問に答え、自分のことをいろいろ語ってくれたのだった。そういう、女の承認欲求を満たしてあげられる相手としてのみ、僕は彼女のそばにいる資格を得られたのだった。

 それでも僕は満足だった。僕の人生は、自分の傾聴スキルによってのみ自己実現してきたのだ。 彼女の隣にいられる理由が、彼女が僕のことを好きになったからではなく、自分の承認欲求を満たしてくれる男が他にいなかったからだということは、僕にもわかっていたし、それに対して満足していたわけではないけど、今の僕が女と対等に付き合うにために、その他の手段がなかったのも事実だった。
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/29(日) 22:38:42.81 ID:9RmGifzGo
 女にだけ夢中になっていたせいもあり、僕は僕を頼ってくれる生徒たちの需要に応えられなくなっていた。女と会う時以外は、なるべくみんなの話を聞くように努めていたけれども、次第に女と過ごす時間が増えていくと、それすらままならなくなってきていた。それで、僕には一時期のような人気はなくなっていた。そのこと自体は後悔しなかった。それくらい僕は女に夢中だったから。でも、女に恥かしい思いはさせたくなかった。せめて彼女には、人気のある先輩とつきあっているという評判をあげたかったのだ。

 以前ほど、他人のコンサルタントに時間を避けない僕は、結構悩んだ末に、生徒会長に立候補することにした。これなら運動神経が鈍くてもハンデにはならない。成績がいいこともアドバンテージになった。

 僕が生徒会長に選出された時、女はいつもより不機嫌だった。生徒会長の彼女(と言っていいかどうかは微妙だったけど。何せお互いに自分たちが恋人同士なのかどうかさえ曖昧にしていたから)になることには、女は全然関心がないようだった。

「先輩は生徒会長になって何がしたいの?」
 女は放課後の図書室で不機嫌そうに言った。「あたしと一緒にいるだけじゃ、つまんないでしょうね。悪かったわ、これまであたしなんかに付き合わせちゃって」

「そうじゃないよ」
 僕は困惑しながら言い訳した。女が望むなら、ずっと肩書きなんてないままで彼女の隣にいられるだけでよかったのだ。でも、彼女の評判を考えると、彼氏が生徒会長という方が格好いいに決まっている。

「僕は、君のために」

「あたしのために? 先輩もあたしの話ばかり聞かされて飽きちゃったんでしょ」

「だから、違うって。僕は君のことが好きだし、君のことをもっとよく知りたい。でも、君だって自分の彼氏が人気のないただの男じゃ嫌だろ?」

「え?」
 女は僕を責めるのをやめ、少しだけ顔を赤くした。

 ・・・・・・僕は、これまではっきりと女に告白してはいなかったし、まだその勇気もなかった。その時は、僕を責める彼女に言い訳をしようとしていただけだった。でも、その時、僕は期せずして初めての愛の告白を彼女にしてしまったようだった。

「・・・・・・本当?」
 女が小さく聞いた。

「先輩、あたしのこと本当に好きなの?」

  それは、女からは今まで聞いたことのないほど、湿っていて感情のこもった声だった。

「うん」

 僕はそう言って、女の手を握り、彼女を自分のほうに引寄せた。少しだけ抵抗していた女は、最後には僕の腕の中に入ってきた。
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/29(日) 22:39:14.19 ID:9RmGifzGo
本日の投下は以上です

また、明日再開予定です
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/29(日) 22:58:26.93 ID:rI260AKSO
な・ま・ご・ろ・し☆

相変わらず引っ張るよな
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/29(日) 23:00:18.37 ID:DmLI5o4oo
誰が誰だかわからんわ
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/29(日) 23:29:25.57 ID:FbpHTscIO
先輩以外は分かるだろ
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/30(月) 19:05:52.95 ID:CpvZ0CXIO
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/30(月) 22:19:54.00 ID:wyfAJa3Xo
 翌日から、僕と彼女は恋人同士になった。それは、女に慣れていない僕の勘違いではなかったと思う。僕のことをはっきりと好きと言葉にしてくれたたわけではなかったけど、女の態度は、昨日までとは明らかに異なっていた。彼女は、僕が狼狽するほど僕に密着し、僕の時間の全てを自分と一緒に過ごさせたいというような態度を、あからさまに示していたのだった。

 当然、僕にだってそのことが嬉しくないわけはなかった。当時の僕は普通に恋する男に過ぎなかったから、気まぐれに彼女が示してくれる好意のかけらにだって、僕は夢中になって飛びついていたのだった。

 彼女が言葉で明白に僕への好意を示してくれることは一度もなかったけれども、図書館での逢瀬の終わりに、いきなり手を繋いでくるとか、生徒会の活動で遅くなって女を待たせてしまった僕に不機嫌になるとか、そういう態度によって、間接的に僕への関心を示してくれることはよくあった。当時の僕にはそれで十分だった。
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/30(月) 22:20:26.19 ID:wyfAJa3Xo
 それでも、 女との付き合いが深まると、僕には女の態度に不満を感じることが多くなってきた。それは、生徒会活動より自分を優先するように要求する女の束縛とか、いつまでたってもはっきりと僕に愛を囁いてくれないとか、そういう不満ではなかった。僕にとっては、今では女と一緒に過ごすことが、自分の生活の中で一番大切な時間になっていたから、彼女の束縛は、僕を喜ばせこそすれ、を僕困惑させることはなかった。

 一方で、女が僕自身に対する気持ちを曖昧にしていたことは、僕にとってストレスになっていたことは確かだった。でも、もともと釣り合わない関係なのだ。僕は、その点に対しては幻想を抱いていなかったから、女が僕に対して気まぐれに見せてくれる好意のかけらだけでも十分だった。

 そして、仲が深まってきてからの僕たちの肉体的な接触は、手を握ることくらいだった。僕は、彼女のことをまるで女神のように崇めていたから、自分から彼女に手を出すなんて考えもしなかった。最初の告白のときに彼女の手を引いて彼女を抱きしめたけど、それが最初で最後の僕のアクションだったし、そのことについても、僕には特段の不満はなかったのだ。何より僕たちは中学生なのだし。
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/30(月) 22:20:59.99 ID:wyfAJa3Xo
 不満というのは、もっと別の次元のことだった。僕は彼女が好きで彼女のことが知りたかったから、別に義務感からではなく本心から彼女の話を聞くのが好きだった。だから、僕たちが共に過ごしていた時間のほぼ全ては、彼女の話を僕が聞いてあげることに費やされていた。最初はそれで満足だった。僕は、彼女が僕にだけは本心を隠さずに話してくれることを嬉しく思っていたし、彼女が何を考えているのか、友だちに対する想いや両親に対する想いなどを知ることができることにわくわくしていた。それは、恋人同士が最初に辿る、正しい道筋だったと思う。

 でも、いつまでたってもその関係は変化せず、僕は常に聞き役だった。彼女の話を聞くのが嫌になったわけではないけど、延々と話しを聞かされるだけで、逆に僕のことを何も聞こうとしない女の態度に、僕はだんだんと不安になってきたのだった。

 普通、好きな相手のことは少しでも知りたがるものではないのか。恋人が自分といない時にどう過ごしていたのか。恋人が自分と出会う前にどんな人生を送ってきたのか。恋人は今何を考えているのか、自分のことをどう考えているのか。

 女は、僕が頼むと自分語りを続けてくれた。そこに隠しごとはなかったと思う。でも、最後まで彼女は僕のことを、僕の気持ちを尋ねてくれることはなかったのだ。僕にも承認欲求があるのだという当たり前のことに、この時僕は初めて気がつかされた。僕は、彼女のことを知りたいとのと同時に、僕は自分のことを彼女に知ってもらいたい、自分の想いを彼女に話したいと気持ち言うがだんだん強くなってきたことを悟ったのだった。人の話しを聞くコンサルタントの僕にとって、こんなことは初めてだったけど。

 そういう意味では女に不満を感じていた僕だけど、かといって、そのことで彼女を責めようとは思わなかった。ただ、自分が今何をしているのだろうと心もとなく感じることは、正直に言えばしばしばあった。
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/30(月) 22:21:53.23 ID:wyfAJa3Xo
 今更振り返るまでもなく、僕はこれまで人の話しを聞いてあげることによって、自分のアイデンティティを保って生きてきた。そのことで、校内でも居心地のよい場所を確保してきてもいたのだった。でもこの頃になると、女にかまけて他人のお世話を焼かなくなったせいもあって、結果として僕は、今までとは違う立ち位置を手に入れていた。

 最初は、自分の箔を付けるために始めた生徒会活動が、その頃からだんだんと面白くなってきていた。これまで僕は個人を対象にコンサルタントのようなことをしてきていたから、複数の役員に指示し、組織を動かして目標を実現するようなことには、あまり興味がなかったのだけど、生徒会長になって必要に迫られて組織を管理する立場になってみると、それは意外と面白かったし、何より自分には向いているようだった。

 つまり、女に夢中になってはいたけど、女抜きの学校生活の方も、以前とは違った意味で充実してきていたのだった。そうなると、その頃には陽性転移的な意味ではなく、僕のことを好きだと言ってくれる女の子も現れるようになった。

 ・・・・・・てきぱきと生徒会の役員の指示する先輩は、大人びていて素敵です。一学年下の副会長は、真っ赤になって僕にそう言った。彼女は、女と同じクラスだったから、僕と女の子の関係はよく知っていたにも関らず、敢えて僕に告白してきたのだった。でも、女に夢中になっていた僕はそれを断った。その告白と僕が副会長を傷つけたという噂は、他の生徒会役員を通じて校内に広まった。その噂は、当然女の耳にも届いたようだった。
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/30(月) 22:22:23.85 ID:wyfAJa3Xo
「先輩、何であの子の告白断ったの?」

 久しぶりの彼女の方から僕への質問は、それだった。僕はその質問は予想していたので、あまり動揺せずあっさり答えることができた。

「僕は、君のことが好きだからね。副会長と付き合うなんて考えられないよ」

「ふーん。そうなんだ。副会長ちゃん、可哀想」
 女はそれだけ言って、もう副会長のことはどうでもいいとばかりに、自分が最近考えていることを話し始めた。その時の女の反応があまりにも淡白だったせいで、珍しく僕の中に彼女への反発心が湧き出してきた。

 それでも、僕はしばらくの間は彼女の話にあわせていたのだけど、いつもと違ってその内容は全然僕の心に響いてこなかった。僕は副会長の緊張して泣き出しそうな顔を思い出していた。

 これでは、あんまりだ。僕の気持ちも副会長の気持ちも救われない。だらだらと続く女の自分語りは、今では僕にとって意味のないお経の詠唱のように意味を失っていた。

 この時の僕は、本心からいらいらしていた。これが女以外の相手だったら、僕の本心に気づかれることはなかったろう。僕は表情をコントロールすることができたのだし。でも、相手は女だった。僕と同じようなスキルと性格を持つ女だったのだ。

 一応、その時僕も軌道修正しようと試みたのだ。これでは、僕の持つ傾聴のスキルがすたる。女の言動がどんなに自分勝手でも、僕は彼女に惚れているんだし。そう思って、僕は副会長の泣き出しそうな顔の記憶を振り払い、再び身を入れて女の話しを聞こうと思い直した時だった。

 女が自分語りを中断して僕に言った。

「先輩。あたしの話、聞いてるの?」
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/04/30(月) 22:24:17.92 ID:wyfAJa3Xo
 女は自分語りをやめ、真面目な表情で僕を見つめて言った。

「やっぱり、こうなっちゃうのね。先輩、あたしの話を聞くのが嫌になってきたんでしょ」

「そんなことないよ」
 僕は驚いて言った。実際、僕のことには全然興味を示さない女にじれったい思いをしてはたけど、彼女への関心を僕からは失われてはいなかった。副会長の告白への無関心は女の冷たさを思い知った感じがして、そのことに少し悩んではいたけれど、女への恋情や関心が無くなるなんてことは、全くと言っていいほど考えられなかったのだ。

「ううん、いいの」
 女は妙に悟ったように言った。

「結局、こうなっちゃうの、あたしは。人の話しを聞いてあげずに自分のことだけ話してばっかりのあたしなんか、やっぱり誰にも関心を持たれないのね」

「ち、違う。話を聞いてくれよ」
 嫌な予感が脳裏を締め出した僕は、必死で彼女の話しを遮った。

「先輩ならあたしの話しを聞いてくれる。先輩に対しては、素直に自分のことを全部話せると思ったんだけど」

 女の澄んだ黒い瞳から一筋の涙が流れ落ちた。

「ごめんね、先輩。今まで迷惑だったでしょ」

「おい・・・・・・」

「もう、先輩を困らせることはないから。副会長ちゃんの気持ちを邪魔することもないし」

「・・・・・・ちょっと、待ってくれ。僕は本当に君のことが」

 その時女は僕の言葉を遮って、唐突に、一方的に別れを告げたのだった。

「さよなら、先輩。今までありがとう」
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/30(月) 22:25:35.41 ID:wyfAJa3Xo
今日は以上

最近投下量少なくてすいませんが、当分こんな感じになると思います

あと、長くなりそうです。次スレも検討しているところです
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/30(月) 23:46:24.98 ID:K5FXiROpo
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 12:21:18.64 ID:c2CiEQMIO
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 18:13:26.19 ID:C7mAf1WIO
素晴らしい
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/02(水) 00:00:17.72 ID:ubUBDJEVo
 僕は狼狽した。女の僕への無関心とか副会長への冷淡な態度とか、いろいろ僕が抱いていた不満なんか、女の涙を見た瞬間にどうでもよくなってしまって、このまま彼女に振られたくないという焦りだけが僕の脳裏を占めていった。

「ちょっと待ってよ。君の話しを聞くのが嫌になったなんて、君の誤解だよ」
 僕は冷静に言おうと努めたけれど、僕の声は僕の意図を裏切って振るえ、そしてかすれていたから彼女には聞き取りにくかったに違いない。「め、迷惑なんてそんなことは一度も思ったことないよ」

 女は、まだ涙を浮かべたままで、何も言わずに僕の方を見返した。まだ、彼女を説得するチャンスはあるのかもしれない。僕は必死になって続けた。

「僕は君が好きだし、君のことをよくもっと知りたい。だから、君の話しをもっと聞きたい。だから、君が素直に自分のことを話してくれてすごく嬉しかったんだ」

 女はまだ沈黙していたけれど、その表情には柔らかさが戻って来たように感じられた。

「今、ちょっと他のことを考えちゃったのは悪かった。副会長を傷つけたかもしれないって思ったんだけど、だからと言って君の話がどうでもいいなんてことはないよ」

「・・・・・・本当?」

 ようやく女が小さい声で言った。

「本当。だから、僕に迷惑とか僕をもう困らせないとか言わないでよ。副会長のことだって、僕は彼女と付き合う気なんてないんだし」
 僕は早口で続けた。もう、なりふり構ってはいられなかった。「僕は君が好きなんだ。これまでどおり、僕と付き合ってほしい」

 女はようやく納得したようだった。それで、彼女は僕の方を上目遣いに見つめて言ったのだった。

 「変なこと言ってごめんね、先輩。あたしの誤解でした。あたしのこと、許してくれる?」

 僕はほっとした。これで女との付き合いを続けることができる。

「もちろん。僕の方こそ誤解されるような行動してごめん」

 女は、僕の手を握った。

「あたし、先輩のことが好き。あなたとお別れしなくてすんで本当によかった」

 女が僕にはっきりと好きと言ってくれたのは、女と付き合ってから初めてのことだった。
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/02(水) 00:03:41.31 ID:ubUBDJEVo
 副会長との一件で僕は危うく女を失いそうになったのだけど、結果としてみればこの出来事のせいで、彼女は僕に対して初めて好きと言ってくれたのだった。この後の僕たちの交際は、しばらくは順調そのものだった。

 もちろん、女が僕を好きと言ったくらいで、僕と彼女の関係が劇的に変化したわけではない。相変わらず、僕は女の話のいい聞き手だったし、彼女が僕のことを以前より知りたがったわけでもなかった。それでも外形的には、以前よりはずっと僕たちの関係は深まっていたように見えていたようだった。女は以前より直接的なスキンシップを求めるようになった。それは手を握るとか、僕の乱れた髪形を彼女が手で直してくれるとか、その程度のものだったけれど、それでも僕はそんな関係の深化に満足だった。

 今では昼休みだけではなく、僕に生徒会活動がない日は、放課後一緒に帰るようになっていた。僕たちは手を繋いで低い声で話し合いながら帰宅した。そういう僕たちを眺めてひそひそと話す周囲の生徒たちの噂話でさえ、当時の僕には心地よかった。

 こうして、しばらくは平穏な日々が戻ってきた。女に別れを切り出されるという危機を乗り越えた僕は、もう女が僕のことに興味を示さないとか、そういうことに不満を感じることを意識的に抑えるようにした。そういう感情を女に気が付かれたら、今度こそ僕たちの関係は終ってしまう。僕は彼女のことが大好きだったから、もう小さな不満なんてどうでもいいと思うようにした。女の一番近いところに僕がいて、女も一番僕を信頼してくれる。それだけで十分じゃないかと、僕は考えるようになった。

 それに、僕のことを女ははっきりと好きと言ってくれたのだ。それは、自分のことに関心を持ち、自分の承認欲求を満たしてくれる存在としてのみ好きということなだったのかもしれないけど、それでも僕には女の気持ちが嬉しかった。そして、言葉で僕に質問してくれない女も、スキンシップ的な意味では僕を求めてくれるようになったのだし。
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/02(水) 00:06:18.65 ID:ubUBDJEVo
 やがて僕も三年になり、受験を考えなければいけない季節が巡ってきた。この地域では通学可能な範囲にあまり学校は多くないため、僕の学力を鑑みると選択肢はあまり多くはなった。学年で十番以内の偏差値を保っていた僕に対して、進路指導の教員は学区内で一番レベルの高い公立高校の受験を勧めた。それは妥当な選択肢だったけど、僕には別な思惑があった。

 女とは学校公認の仲になってはいたものの、この先も僕らの関係が永遠に続くなっていう保証は何もなかったし、そのことについては僕も楽観視したことはなかった。特に、僕が高校に入学すれば、女とは普段一緒にいられなくなる。僕はそのことに対して、結構まじめに悩んだけれども、女が同じ悩みを抱いているようには思えなかった。

 女は確かに僕のことが好きとは言ったけれども、その度合いは、僕が彼女を好きな気持ちより、大分熱意が低いのではないだろうか。僕たちがこの先も付き合っていくためには、僕が積極的に手を打っていくしかないのだ。

 僕はいろいろと考えるようになった。

 女の成績はいい方だった。彼女はいろいろ考えすぎることはあるし、その関心は学業以外に向けられることが多かったけれど、基本的な思考力や学習能力は十分だった。なので、あまり家で勉強しているようには見えなかったけど、成績は常に学年で二十番以内をキープしていた。
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/02(水) 00:08:36.52 ID:ubUBDJEVo

 僕が学校側の勧めどおりに公立高校に受かったとしても、今の彼女の成績ではその高校には合格できないだろう。毎年、うちの中学からその高校に進学するのは、十人以内の生徒だったから。通学可能な範囲で考えると、次に偏差値の高い高校はうちの中学から比較的近い場所にある私立高校だった。そこも進学校としては有名で、より上位の公立高校の滑り止め校として成績上位の生徒を集めていた。

 女の成績が受験時まで変わらないとすると、女にとっての実力相応な高校はその私立高校だろう。そして、上位の公立高校はチャレンジ校ということになる。女が僕に合わせて、僕と同じ高校を受験してくれる保証はないので、僕のほうが将来を先読みして高校を決めるしかなかった。僕にとっては、僅かな偏差値の差などどうでもよかった。女が入学してくる可能性の高い高校に入学したかっただけなのだった。

 私立高校に入学しようと僕は決心した。今の女の成績を考えると、女が上位の公立高校に合格するのは厳しいだろう。可能性から考えれば順当に私立高校に入学する確率の方が高いはずだ。もちろん、三年生になった女が受験に集中すれば、もともと地頭のいい女のことだから上位校に合格するくらいの偏差値になっても不思議ではない。でも、女はそういうことには淡白のようだった。可能性を比較すれば、私立高校に入学してくる確率の方が高いはずだ。

 僕は決心した。進路指導の教員や両親からは思い直すように説得されたけれど、僕は決心を変えなかった。この学校は課外活動とかが豊富で僕に合ってると思います。僕はそう言って、上位校を目指すように説得する大人を納得させた。もともと、偏差値的には公立上位校と偏差値のさは僅差だということもあり、最後には両親も学校側も僕の選択に納得してくれた。
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/02(水) 00:09:29.92 ID:ubUBDJEVo
 進路に対して僕がここまで悩んでいたことを、女は知らなかったと思う。と言うか、僕が中三の秋になって受験塾に日参するようになっても、彼女は相変わらず自分語りを続けていて僕のことなど聞こうともしなかったし。

 それでも、受験勉強があるからしばらく会えないと僕が彼女に話した時、彼女は驚いたように僕に言った。

「そういえば、先輩もう受験じゃない。こんなところであたしと時間を潰していていいの?」

 僕は苦笑した。この子は本当に悪気がなくこういう性格なのだ。

「家とか塾では勉強してるからね。それに、志望校は今のままの偏差値なら間違いなく受かるし」

 そこまで話して、ようや女は僕の志望校を聞いてくれたのだった。

「そこって、私立だよね。先輩はもっと上位の公立高校狙いかと思ってた」

 彼女は順当な反応を示した。僕は、自分勝手な僕の想いに彼女を縛るつもりはなかったから、親や教員向けの言い訳を彼女に繰り返した。
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/02(水) 00:10:17.30 ID:ubUBDJEVo
「そうかあ」
 女も納得してくれたようだった。

「君は?」
 僕はどきどきしながら、さりげなく女に聞いた。

「君はどの学校を目指しているの」

 その時、女は少しだけ表情を暗くした。でも、思い直したように僕を見つめて言った。

「あたしは、先輩と同じ高校に行きたいな」

 期待すらしていなかった女の好意的な言葉に、僕は驚き、固まり、そして最後には身体中に幸福感が溢れてきた。

 僕の志望校選びは独りよがりではなかったのだ。彼女も僕と同じ高校に行きたいと考えてくれていた。僕はこの時、本当に幸福だった。この後に続く彼女の言葉を聞くまでは。

「でも、あたしは親の転勤次第でここの高校に入れるかわからないからなあ」

 女は諦めたような口調で、苦笑しながら僕に言った。
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/02(水) 00:11:26.33 ID:ubUBDJEVo
今日の投下は以上

少なくとも連休中はこのペースで投下する予定です

それではおやすみなさい
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 01:14:21.57 ID:GZfsBLhSO
女はオニか
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 08:15:15.31 ID:85uZBv5IO
まだ見えてない面も語られていない点もあるとは思うが、現状では容赦ないな

恋愛は惚れたら負けだよな
…うっ
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 09:25:49.42 ID:i3snFxdIO
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 17:59:39.59 ID:xNhW9RsWo
実は兄友が先輩だったりして
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/05/02(水) 19:11:29.44 ID:yOe01+zFo
どこをどう読んだらこの先輩がイケメンでスポーツ万能の兄友になるんだよ
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 19:17:13.97 ID:xNhW9RsWo
>>780
先輩退学→一年かけてブラッシュアップ→イケメン化
見違える容姿になり、女と同じ高校に入り直す
その変貌ぶりは女も気づかぬ程の……
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/02(水) 23:20:54.32 ID:ubUBDJEVo
 彼女は僕にとって、初めて好きになった異性だった。そして、彼女も僕のことを好きといってくれ僕と同じ高校に進学したいとも言ってくれた。彼女がその種の踏み込んだ、ある意味自分を裸にしかねない剥き出しになっている好意を他人に見せない性格であることは、この頃には僕には
よく理解できていた。親の仕事の関係で転校を繰り返していた彼女が身に付けたのは、人に信頼されるテクニックだった。そして、それは成績と雑学以外にこれといったアドバンテージを持たない僕が、校内でのステータスを上げるために意識的に駆使したテクニックと全く一緒だったのだ


 こういうテクニックを駆使する人は、擬似的に周囲の知り合いから信頼を得ることはできるけど、逆に自分の真意を晒すことができなくなる。それはそうだろう。私は本当はあなたなんかに興味がある訳ではないけど、あなたの信頼を得るために、あなたのことに興味があると自分に言い
聞かせてるんですよ。そんなことを言えるわけがない。

 でも、彼女は僕には自分の考えや感情を隠すことなく伝えてくれた。最初は、彼女は僕の傾聴テクニックを信頼して僕のことを自分の主治医のように考えてるのではないかと疑ったこともあった。でも、最後には彼女は僕のことを好きだと言ってくれたのだ。これが同じスキルのない相手
の好意なら、それは陽性転移という現象で君は本当に僕が好きなわけではないんだよということになる。でも、彼女もまた僕と同じスキルの持ち主だったから、その彼女の告白は真実に違いない。僕はそう思った。

 志望校を安全圏の高校に下げた僕にとって受験勉強はそれほどハードではなかったから、相変わらず昼休みと放課後は女と過ごすことができた。受験勉強でしばら会えないと偉そうに彼女に宣言してしまった僕には少し気恥ずかしいことではあったけど、彼女はそんなことは全く気にせ
ず、僕の手を握りながら僕に話しかけてくれた。もちろん、僕自身の細かな感情の動きになんか全く興味はない様子で、もう自身の境遇や正確について語りつくしいてしまった彼女は、今では日常の出来事やそれに関する自身の感情や感覚をぽつぽつと話してくれたのだった。

 僕は、半ばは好きな人に対する関心から、半ばはコンサルタントとしての義務感から彼女の話しをずっと傾聴していた。別れの危機を乗り越えた僕は、そのことにを不満に思うことはなかったけれど、僕たちの将来の展望を考えると、たまにこの先どんな発展があるのだろうかと不安に
なることはあった。発展などないのかもしれない。この先、彼女と付き合っていてもずっとこんな感じが続くかもしれない。でも、結局のところ僕だってまだ中学生なのだった。この先、身体の関係とか婚約とか結婚とか、そういう人性の段階を踏んで成長して行くことによって、僕たちにはま
だ見えていない新しい出来事が起こるのかもしれなかった。
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/02(水) 23:23:03.14 ID:ubUBDJEVo
 僕は志望校に無事に合格した。念のために受験したより偏差値の高い高校にも合格したけれど、僕は最初の予定どおり私立の高校に入学することにした。公立高校の方には入学する気はなかったから、もともと受験しなくてもいいくらいではあったけど、変則的な滑り止めのつもりだっ
た。入試には何が起こるかわからないのだ、し公立高校の方も偏差値的には十分に合格圏に入っていたこともあった。

 僕は本命の合格発表を見て、職員室に寄って担任にその旨報告した後、二年生の教室に向かった。女に報告しなければいけない。僕は二年生の教室の前まで来て、まだ授業が終っていないことに気づいた。仕方がない、図書室で時間を潰していよう。考えてみればもうしばらくは勉強のことを考えなくてもいいのだった。元々受験についてはあまりストレスを感じていなかった僕だけど、やはり合格というお墨付きを得ることは心の安定に繋がっているようだった。僕は冷静な表情を浮かべて担任に合格の報告をしたけれども、今実際に自分の心を探ってみるとそこにはやはり大きな安堵感が生じているようだった。

 僕はリラックスして図書室の椅子に腰掛けた。これで中学を卒業するまでの間は女とまたいつも一緒にいられるな。僕はそう思った。もちろん、僕が高校に進んだらもう女とは昼休みばかりか、登下校の際さえ一緒にいられなくなる。それは、考えただけでも辛かった。合格した喜びや安堵感が半ば吹き飛んでしまうほどに。でも、それは仕方のないことだった。僕らの学年が違う以上、そして中高一貫校に在籍しているわけでもない以上、どんなに仲の良いカップルにだって生じることなのだ。
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/02(水) 23:24:59.76 ID:ubUBDJEVo
 少なくとも、来年からまた女と一緒の学校に通えるだけの布石は打った。彼女の成績なら僕の進学予定の高校には合格するだろうし、仮にもっと彼女の偏差値が上がったとしても彼女は僕と同じ高校に進みたいと言ってくれたのだ。

 僕は、来年彼女と一緒に過ごせるように、打てる手は全て打ったつもりだった。あとは、当面この一年間をどう乗り切るかだった。校内で一緒に過ごせないことは明らかだったけど、放課後にどこかで待ち合わせするとか週末にも会うようにするとか、そういうことを僕は勇気を振り絞って
彼女に提案するつもりだった。まさか、来年まで会わないというわけにはいかない。そんなことには僕が耐えられないし、多分彼女のメンタルも持たないだろう。彼女は僕に毎日自分の思いを吐き出すことで、、自分のメンタル面の正常さを保っていたのだから。自分のことをケアする僕が
いなくなって、ひたすら同級生の相談を受けるだけの毎日なんて、彼女には我慢できるはずはないのだから。

 ふと時計を見ると、もう午後の最後の授業が終る時間だった。僕は立ち上がり二年生の教室の方に再び歩いていった。階段を上って二年生の教室が並ぶ二階のフロアに足を踏み入れた時、副会長が僕を呼び止めた。

「先輩」
 彼女は偶然出会った僕に対して、少し照れたように微笑んだ。「もう会えないかと思ってました」

「やあ。久しぶりだね」
 僕は生徒会活動から引退していたから彼女と話すのは久しぶりだった。

「あの。先輩、今日合格発表だったんですよね?」

 僕に振られたのに、彼女は僕の合否を心配してくれていたのだろうか。僕は少しだけ暖かい気持ちになりながら答えた。

「おかげさまで、第一志望校に合格したよ。心配してくれてありがとう」

「おめでとうございます。本当によかったです」

 考えてみれば女とは違ってこの子は僕のことだけ気にしてくれているんだな。一瞬そんな感想が浮かんだけれども、もちろん今自分が焦がれるほど求めている女の子が誰なのかについては、今更勘違いする余地はなかった。

「じゃあ、僕はちょっと用事があるので」
 僕は言った。

「はい。またです」
 彼女は名残惜しそうに言ってくれた。彼女に別れを告げた僕は、ドアが開きっぱなしの女の教室を覗き込んだ。
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/02(水) 23:27:03.88 ID:ubUBDJEVo
 ・・・・・・ざっと見た限り女の姿は見当たらないようだった。おかしい。

 今日が僕の合格発表の日だと言うことは彼女も知っているはずだった。約束していたわけではないけど、受験生が今日の結果を担任に報告しに学校に来ることは、校内の人間ならみんな知っていたはずだった。その日の放課後に女が教室にいないなんて。図書館で待っていることはありえない。僕自身がさっきまで図書館にいたのだから。きっと、彼女はちょっと席を外しているだけなのかもしれない。僕は女の席の机を見た。その席は完全に片付けられていて、机の上にカバンがおいてあることもないどころか、机の中にも物一つ入っていないようだった。

 どうしたのだろう。少し不安になった僕は背後から話しかけられた。

「先輩」

 副会長だった。まだ、ここにいたのか。僕が返事するより早く彼女が言葉を続けた。

「もしかして、女ちゃんを探してるんですか」

「あ、ああ」
 僕は口ごもった。副会長はなぜ自分の告白に僕が応えなかったのかを知っていたのだから、その時の僕の心境は複雑だった。


「・・・・・・先輩、もしかして女ちゃんを探してるんですか」
 遠慮がちな小さな声で副会長は言った。ここで誤魔化してもしょうがない。僕は素直に答えた。

「うん」

「あの、先輩。ご存知ないんですか」
 おどおどとした副会長の声。一体何が言いたいのだろう。言いたいことがあるなら早く言えよ。僕はその時、理不尽にも八つ当たり気味な感想を彼女に対して抱いた。

「・・・・・・何が?」

「女ちゃん、一昨日転校したんですよ。確か、東北の方二転校するって言ってました」
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/02(水) 23:30:50.63 ID:ubUBDJEVo
 僕は、高校に入学するとまず生徒会に入った。新入生なので、もちろん選挙の必要がない平役員からのスタートだった。同時に、これまでの雑学的な趣味の対象の一つだったパソコン関係の部にも入部した。

 クラスではもう傾聴やコンサルタンティング関係のスキルを発揮させなかったから、僕は目立たない生徒の一人だった。それでも成績が良かったことと一年生ながら生徒会のメンバーになったことで、ある種の秀才生徒的な位置は確保できていた。僕は生徒会活動と部活に打ち込んだ。生徒会では庶務から初めて会計や書記を経験したけど、どの仕事にも能力の全てを注ぎ込んだせいで、先輩たちの受けはとてもよかった。一年生の半ばで、僕はもう次期生徒会長と目されるようにまでなっていた。

 平行していたパソコン部の方は、廃部寸前の過疎部だった。もともとは、学校側の肝入りでIT教育の一環として設立されたらしいのだけど、当時のパソコン部は学校側の期待を裏切りネトゲ廃人の巣窟と化していた。部室には高スペックなPCが溢れていたけれど、そのPCで行なわれていたのはネトゲのプレイはもとより、萌え絵の制作や初歩的なゲームのプログラミング、そして極めつけは単なる2ちゃんねるなどのネット閲覧だったのだ。

 僕はその両方を楽しむことができた。退廃的なパソ部の先輩たちも健全な高校生には不要なはずのITスキルだけにはやたら詳しかったから、僕はずいぶんとここでネット事情の勉強ができたのだった。そして、生徒会に続いてここでも僕は来年の部長候補に祭り上げられた。そもそも部長なんてやりたがる部員は皆無に等しかった部だという事情もあったけど。

 こうして僕の一年生の生活は過ぎて行った。もともと僕は、高校一年生の生活なんかに期待していなかった。それは次年度に下級生として同じ高校に入学してくる女を待つだけの退屈な時間に過ぎないはずだったのだ。でも、もういくら待っても女が僕の後を追って入学してくる可能性はないのだ。

 当時の僕は抜け殻のように定められた日課を機械的に消化していた。もちろん、こんな僕に話しかけてくれる友だちもいなければ、以前のように言い寄ってくる女の子もいなかった。


 なぜ、僕はあの時気がつかなかったのだろう。あの時の恋も陽性転移の一種である可能性を。女の僕への好意だけが特別だなんて理由は何もなかったのに。そして、逆転移という言葉がある。これは、コンサルタントがクライアントに親しく接して過ぎた結果、クライアントに対して過度に感情移入してしまう現象のことを言う。僕の女への恋もそれかもしれなかった。どうしてあの時僕はあんなに自信満々だったのだろう。

 生徒会で活発で前向きに活動していてもパソ部で退廃的な活動をしていても、その考えは僕の脳裏を占め一向に去っていってくれなかった。
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/02(水) 23:31:26.60 ID:ubUBDJEVo
本日は以上。

また、明日再開予定です
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/03(木) 00:48:04.89 ID:qd1F7Emgo
乙です
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/03(木) 06:53:14.61 ID:v4CiPo0SO
ようやく全貌が見えてきたな
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/05/03(木) 07:43:41.08 ID:y8K8bcO6o
え?俺にはまだまったく見えんが。
とりあえず先輩は会長と同一人物じゃなさそう
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/03(木) 23:46:51.82 ID:wdme9Ea1o
 どんなに辛い出来事でも、時間という治療法に勝るものはないらしい。何も言わず僕から離れていった女のことであんなにも傷付いていた僕だけど、二年に進級する頃にはさすがに女のことを思い出して悩むことも少なくなってきていた。

 うちの学校は公立上位校をライバルにしていたから、受験や進路指導に相当力を入れていた。その一環として定められたいたルールの一つに、生徒会や部活のトップは二年生が勤めるというものがあった。平たく言うと生徒会長や各部の部長は二年生が就任する。三年生の生誓いや部活への参加までは禁止されていないけれども、受験生にとって負荷の高い役員や部長への就任は禁止されていたのだ。

 それで、実感としては二年生になった今でも、まだついさっき生徒会や部活に加入したばかりのような意識だった僕だけど、まずパソ部の部長にさせられることになった。こちらは手続きは簡単だった。前部長の鶴の一声で話はあっさっりと決まってしまった。もともと集団行動が苦手な部員たちが集まっていただけに、部長なんて面倒くさい仕事をしたがるようなやつはいるっはずもなく、部長の提案に全部員一致で僕が部長に選ばれたのだった。

 生徒会の方は、もう少し面倒だった。生徒会長は全校生徒の中から選挙で選ばれることになっていたから、前生徒会長は僕にその職を譲ると決めたようだったけど、一応選挙という手続きを踏む必要があった。
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/03(木) 23:47:22.95 ID:wdme9Ea1o
 部活と生徒会の先輩の勧めのどちらも、僕は二つ返事で引き受けた。女を失って他に熱中することが見つからない僕にとっては、それは好都合な提案だった。僕はもう、同級生たちのカウンセリングはしていなかったし、かといってあの幸せだった日々のように女といつでも一緒にいるわけでもなかったjから、せめてこういう活動の場に自己実現をしようと考えたのだった。


 形ばかりの選挙が行なわれ、その結果僕は生徒会長に選出された。これで僕は、パソ部部長と生徒会長との二つの肩書きを持つことになったのだった。

 そしてその頃、三年の先輩たちが引退する代わりに、一年生たちが生徒会や部活に入ってきた。パソ部の方は相変わらずといっていいだろう。女子はゼロ。まじめにプログラミングを勉強したいやつもゼロ。自宅以外でもネトゲとか2ちゃんねるとかしたやつくらい男しか入部希望者はいなかった。

 生徒会の方は、それよりも前向きな後輩たちが希望してくれていた。うちの学校では、生徒会長と副会長はセットで選挙で選ばれるけど、それ以外の役員は生徒会長が承認すれば就任できるシステムになっていた。副会長は、同学年の真面目な女子だった。僕が希望したわけではなく、前会長と副会長が勝手にカップリングしたコンビだった。彼女に個人的な興味はなかったけど、生徒会を運営するには格好のパートナーだった。

 一、二年生に向けて公開で募集していた役員ポストは、監査、会計、広報、庶務、そして人数不定の書記だった。まじめな学校ということもあり結構な応募者がいた。僕と副会長は手分けして面接した。実はポストの半分以上は前年度からその役職についていた二年生が継続することが普通だったから、全校の選挙で選出された会長と副会長以外のポストは毎年公募するといっても、実は前任者がほぼそのまま選ばれるという出来レースのようなものだった。それでも、昨年度の役員が今年はもう続けたくないと言って応募しない例も少なからずあった。僕は一年生で生徒会の役員になったのも、そういう自主引退した先輩の後釜としてだった。

 そういうポストだけはしっかりと面接しなくてはいけない。僕はそういうポストへの応募者の半分を面接した。特に印象に残る生徒はいなかったけど、とりあえず無難な生徒を役員として選んだ。副会長の選んだ役員は数人だった。僕は直接面接していないので、その生徒たちとは改選後の最初の役員会で出会うことになったのだ。

 その中に、幼馴染さんという一年生の綺麗な女の子がいた。
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/03(木) 23:48:28.88 ID:wdme9Ea1o
 十人前後の生徒会の新役員が集った席上で、僕は生徒会長としてあいさつしたのだけど、視線は幼馴染さんという新入生の書記に奪われたままだったかもしれない。女に突然姿を消され要するに女に黙って振られたに等しい僕は、一年間異性に惹かれることはなかった。女々しいかも知れないけど、異性のことを考えるときには常に女の笑顔が頭に浮かんでいたのだった。

 その僕が幼馴染さんを見た時、一瞬目を奪われるほど彼女の姿がまぶしく見えた。まるで、女に好きと言われた時のような戸惑いが僕を襲った。でも、僕はすぐに体制を立て直した。たかが可愛い下級生を見たくらいで動揺するとは情けない。女みたいに内面からも僕を魅了するような女じゃないと、僕は動じないんだ。そう思ってその時の僕は同様を抑えて、先輩らしく新たち人にあいさつしたのだった。

 幼馴染さんが生徒会の役員に加わると、何となく男の役員たちが彼女を巡って微妙な駆け引きを繰り広げるようになった。僕は内心不愉快だった。ここは生徒活動を自主的に管理する組織なのに、恋愛とかに現を抜かしていてどうするのだ。僕は中学生の時の自分を棚にあげて憤った。これで幼馴染さんが有頂天になり男たちを操っていたりしたら、僕も断固として男共や幼馴染さんに注意したと思うけど、幼馴染さんは男たちの誘いに全く興味がないようで、むしろ自分を巡るそういう男たちの争いに無邪気に戸惑っているようだった。
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/03(木) 23:50:08.36 ID:wdme9Ea1o
 幼馴染さんを争っている役員たちの確執に手を焼いた僕は、副会長に相談した。意外なことに、副会長は結構幼馴染さんのことを知っているようだった。

「心配することはないと思うよ」
 彼女は言った。「幼馴染さんって、同じ学年の兄君っていう子と付き合ってると思うし」

「そうなの? でも、何で君がそんなことまで知っていて、あのバカどもはそれすら知らないで一生懸命なのさ?」

「たまたま駅が一緒なのよ」
 副会長は言った。「で、その駅で毎朝幼馴染さんと兄君っていう男の子がツーショットで登校しているのを見ているから」

 それなら間違いないだろう。うちの役員のバカどもは報われない争いを自分勝手に繰り広げているだけなのだった。

「まあ、既に幼馴染さんと兄君って噂になってきてるから」
 副会長は続けた。「あいつらがそれを知ったらこの騒動ももうすぐ治まると思うよ」

 結果としては彼女の言うとおりだった。役員たちは幼馴染さんと兄と言う同級生の存在を知り、不承不承幼馴染さんに言い寄ることを諦めたようだった。
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/03(木) 23:52:01.47 ID:wdme9Ea1o
 幼馴染さんは仕事が出来る子だった。最初は目立たなかった彼女だけど、一学期が過ぎる頃には既に生徒会の主要戦力といっていいくらいの存在に成長していた。僕はその頃まだ女との破綻を引き摺っていたから、幼馴染さんがどんなに可愛いとはいえ彼女ことはよく仕事をしてくれている下級生としか認識していなかった。そのまま、僕にとっては何も進展しないままで一年間が過ぎた。僕は三年に進級し、この学校の通例どおり生徒会長からもパソ部の部長から引退する時期となった。

 ところがこの年、いろいろと学校の制度改革が断行されたのだった。他校と比べて生徒会や部活の引退時期が早いことなどが、高校を受験する生徒たちには不評だとして、改革の槍玉にあがっていたようだ。当時は進学実績も悪くなかったことから、そういう改革をする余裕があったのかもしれなかった。結局その改革案は学校法人の理事会でも承認され、僕は三年生になってもパソ部の部長と生徒会長を続投することになった。そして三年生の学園祭終了後が、新たな三年生の任期終了とされた。

 三年生になった時、僕にも転機が訪れていた。あれほど女に執着し女と別れた後、好きな子ができなかった僕にもようやく気になる女の子ができたのだった。それも、同時に二人も。

 一人は、生徒会の役員の幼馴染さん。もう一人は、女の子としては五年ぶりくらいにパソ部に入部してきた新入生の妹さんという子だった。
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/03(木) 23:52:32.34 ID:wdme9Ea1o
今日は以上です

明日また再開予定です
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/04(金) 00:27:10.11 ID:qj9Tv3vIO
あれ?あれれ?どうなってるんだ?
続きが早く読みたい、、、
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/04(金) 01:05:38.50 ID:VncLR9Mdo
乙です
女転校→再入学?
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/04(金) 01:24:27.59 ID:VncLR9Mdo
あ、女二股、か?
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/04(金) 08:24:09.20 ID:0hSHzdUko
兄女
兄友幼馴染
会長妹
で大人しくくっついてればハッピーエンドだった訳か
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/04(金) 10:17:37.52 ID:tZeHVIlno
んなわけない
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/04(金) 10:41:55.85 ID:853P1Ftxo
妹がパソ部とか初耳ww
意図的に隠されていたってことか
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/04(金) 22:09:26.53 ID:LI2+RjaSO
妹が部活入ったと言ってた時点でパソコン関係だとは予想してた

女、幼馴染、妹の三人がよりによって兄一人に懸想してたら会長もそりゃキレるわな
メインターゲットが女なのか兄なのかわからんが
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/04(金) 23:25:50.02 ID:n+mpdq76o
 もちろん、最初僕は妹さんとは面識もなかった。うちの学校は有名なマンモス校だったから学年によって校舎が異なっていたし、何より自分の同学年にだって知らないやつがいっぱいいるような有様だったので、学年が違う女の子と面識がないこと自体は不思議でも何でもなかった。

 幼馴染さんはよく気がつく子だった。見た目も可愛いし人気もあるのだけど、それを周囲にひけらかすことなく自然に生徒会に溶け込んでいた。きっと頭がいい子なんだろうな。僕は一年生にして役員の中心となって働くようになっていた彼女を眺めていて、よくそう考えたものだった。自分が可愛くて人気があることに気がついていないような天然の女の子では絶対ない。自分の人気を誇らないように意識して行動しているに違いない。その行動のせいで彼女は、可愛いけど全然それを鼻にかけないいい人という評判を生徒会内で勝ち取っていた。多分、クラスの中でもそれは同じだったのだろう。

 僕は当時はまだ成就しなかった失恋を引き摺っていたから、彼女のことが恋愛的な意味で気になるということはなかったけど、ここまで意識して自分の行動を律する彼女には少し関心を抱いたのだった。それはある意味女と同じだった。彼女も昔周囲の生徒に面倒見のいい女の子という演技をしていたっけ。でも、女は相当自分に嘘を言い相当無理をしてそうしていたのだけど、幼馴染さんの行動は何か自然だった。そういう意味でも僕は彼女に関心があったのだ。
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/04(金) 23:27:58.73 ID:n+mpdq76o
 僕が三年生になりしばらくたったある日、幼馴染さんと兄君という男子生徒が付き合っているらしいという情報を教えてくれた副会長が、また新たな情報を仕入れてきた。副会長の話によると、今まで二人きりで登校していた幼馴染さんと兄君という男は、今では四人で一緒に登校しているというのだ。今まで二人きりだった幼馴染さんと兄君に加わったのが、兄君の妹だという妹さんという一年生の子と、兄友君という幼馴染さんと兄君の同級生の生徒だという。

「何人で通っていてもいいけどさ。どっちにしたって幼馴染さんて兄君と付き合ってるんだろ?」
 僕は副会長に聞いた。ところが副会長が話してくれたのは意外な話だった。どうも、幼馴染さんと兄君が付き合っているというのは単なる噂らしいと言うのだ。

 それどころか二年生の、幼馴染さんたちをを知っている生徒たちの噂によると兄君と兄友君は幼馴染さんを巡って三角関係のようになっているらしい。そして、幼馴染さんの気持ちはどちらかというと兄友君の方に靡いているのだと副会長は続けた。

「その妹ちゃんって子も極めつけのブラコンなんだって」
 副会長は楽しそうに話した。こいつは前から恋愛関係の噂話が大好きなのだ。でも、僕が妹さんのことを知ったのはこの時が初めてだった。そして、実は僕は兄友君のことは知っていた。
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/04(金) 23:30:23.44 ID:n+mpdq76o
 マンモス校ゆえに下級生のことなんて部活でも一緒でない限り知り合う機会なんてないんだけれど、彼のことは噂でよく聞いていた。何しろ無茶苦茶成績がいいらしい。それも、何でこんな学校にいるのか不思議だといわれるレベルで。ある先生が話してくれたことによると、彼は受験直前にこの町に引っ越してきたそうだ。それで、あまりこの地方の高校事情を気にすることなくとりあえず受験できる高校を受験したらしい。僕だってこの学校より高いレベルの学校に入学できたのだけど、話に聞く兄君とはレベルが違うようだった。僕は偏差値とか学校の成績にそれほどには重きを置く主義ではなかったけれど、兄友君の模試での偏差値を聞いたときはさすがに嫉妬心のようなモヤモヤ感を感じたものだった。

「会長は知らないだろうけど、兄友君ってすごく成績がいいんだって」
 副会長が言った。「そのうえ、超がつくほどのイケメンだし」

 では成績がいいだけではなく顔もいいのか。外見に関してはコンプレックスを抱いている僕にはそれは少し不愉快な情報だった。要は全ての点において僕は兄友君に劣っているということではないか。

「兄君っていうのはどういうやつなの?」
 僕は聞いてみた。副会長の話のとおりなら、彼は古くからの知り合いで、一時付き合っていると噂されるほど仲がよかった幼馴染さんを、兄友君に取られたことになる。その時僕は、何となくネトラレという単語を頭に浮かべだ。

「普通だよ、普通。顔も普通だし成績も普通」
 副会長はあっさりと兄君のことを切り捨てた。

「じゃあ、さぞかし幼馴染さんを奪われて落ち込んでいるんだろうなあ」
 僕が男に同情するのは珍しかったけど、その時は自分の成就しなかった苦しい恋愛経験のことが、兄君が今陥っている状況に重なったのだった。もちろん僕は寝取られたわけではなかったけど。

「確かに最初は三角形ぽかったらしいんだけどね。それがね、最近はそうでもないみたいなの」
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/04(金) 23:32:12.06 ID:n+mpdq76o
「・・・・・・どういうこと? ひょっとして彼は重度のシスコンだとか」

「そうじゃなくて・・・・・・兄君、最近ちょっと変った女の子と仲がいいんだって」

 なんだ、兄君と幼馴染さんはお互いにその程度の関係だったのか。去年一年間副会長の情報を信じていた僕は、ずっと幼馴染さんは兄君と付き合っているものだと思っていた。でも、お互いにそれほど深い関心はなかったということか。この辺で僕はこの話題に飽きてきていた。もともと幼馴染さんにだって深い興味があるわけじゃなかったし。

「変った子って誰? 二年生?」
 一応僕は聞いた。

「うん、幼馴染さんと兄君と兄友君って同じクラスなんだけど、その同じクラスの女の子だって」

「ふ〜ん。まあ、丸く収まりそうでよかったってことか」

「まあ、そうかもしれないけど。でも、兄君と最近仲のいい子がちょっと問題で」

「問題?」

「会長は知らないでしょうけど、その子の名前は女さんと言って」
 副会長はそこで、その子のフルネームを告げた。






 ・・・・・・それは、かつての中学の時の僕の恋人の名前だった。同姓同名の別人でない限り、彼女は僕の知らない間にこの学校に入学していたのだった。そして彼女の姓はすごく珍しいものだったのだ。

 僕と同じ学校に入学していた女は、そのことを僕に知らせようともしなかったのだ。僕がこの学校にいることは知っているはずなのに。
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/04(金) 23:34:01.23 ID:n+mpdq76o
 僕は二人の女の子に興味を抱いた。それは嘘ではなかった。でも、幼馴染さんに対しては恋愛感情はなかったのだ。

 その時僕は、驚いている表情の幼馴染さんを生徒会室の近くの人気のない階段の踊り場に連れ出し、君が好きだと告白した。計画通りに彼女に振られるならいいけれど、万一彼女が僕のことを受け入れたとしたら、僕は彼女に対して酷いことをすることになる。それでも僕は女のことを知るためにはそうするしかなかった。

「・・・・・・迷惑だったら謝るよ。でも幼馴染さんのこと前から気になってたんだ。今まで君に振られるのが怖くて言えなかったけど」
 僕は用意していたセリフを言った。それは演技ではあったけど、それでも女の子を前に告白するという状況に緊張し、結構な早口になってしまった。

「・・・・・・え?」

「幼馴染さん、好きだ。僕と付きあってください」
 生徒会長である先輩の僕に告白されるなんて夢にも思っていなかったのだろう。彼女は純粋に驚いているようだった。

「駄目・・・・・・かな」

「・・・・・・先輩」
 彼女にとってイケメンでもなんでもない僕なんかを恋愛対象として考えたことはなかったのだろう。彼女は言いよどんでいたけど、結局はっきりと答えた。

「ごめんなさい。あたし好きな人がいるんです」

「先輩のこと、生徒会長としては本当に尊敬してます。でも、あたし片思いだけど好きな人がいて・・・・・・彼のこと諦められません。だからごめんなさい」

「・・・・・・そうか。わかったよ、君を困らせて悪かった」
 僕はそう言った。ここまではある意味わかりきった展開だった。ここからが本番だった。僕は気を引き締めた。

「先輩に勘違いさせたとしたら本当にごめんなさい」
 幼馴染さんが申し訳なさそうに言った。こいつも結局自分に自信があるのだろう。僕に勘違いさせてってどういうことだよ。僕は君なんかの言動に惑わされたわけじゃないぞ。一瞬、作戦を忘れてリア充な人種への憎悪が沸き起こったけど、僕はそれを抑えた。今はそんなことでエキサイトしている場合ではなかった。
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/04(金) 23:39:40.64 ID:n+mpdq76o
「いや。僕が勝手に思い込んだだけだから。君の好きな人って」
 僕は緊張しながらも幼馴染さんの恋愛関係を探るための言葉を口にした。

「・・・・・・あ」

「何となくわかる気がするよ」

「え?」

「彼なら祝福するしかないね。僕なんかじゃ全然敵わない。彼は成績もいいしスポーツも万能だし何よりイケメンだしね」

「え・・・・・・え?」
 どういうわけか彼女は当惑しているようだった。

「君を困らせて本当に悪かったよ。もう二度とそういうことは言わないから、これまでどおり生徒会の役員でいてくれるか」

「はい」

「ありがとう。まあ、ライバルが兄友君なら負けてもしかたないか」
 僕はついにその名前を口にして、彼女の反応を覗った。

 そうじゃありませんと否定するか。あたしが好きなのは兄ですと言うのか。僕は固唾を飲んで彼女の返事を待ち受けたけれど、結局この作戦は失敗に終ってしまった。

 幼馴染さんは否定も肯定もせずに、自分の好きな男をうやむやにしてしまったのだった。



 この日の努力もむなしく、結局僕は兄君は幼馴染さんに好かれているのか、それとも幼馴染さんとはもう何の関係もなく副会長が聞いてきた噂のように、僕の昔の彼女といい関係にあるのかを知ることは出来なかった。
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/04(金) 23:40:16.45 ID:n+mpdq76o
短いですけど今夜はおしまい

また明日可能なら再開したいと思います
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/04(金) 23:57:00.48 ID:tZeHVIlno
おつ
男幼馴染
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 18:09:51.76 ID:Z7VtxD3po
なるほど
続きwktks
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/05(土) 22:57:44.12 ID:wMLLgnF4o
 僕の幼馴染さんへの告白は失敗に終った。表面的な意味では、彼女は好きな男がいるからといって僕を拒否したので、客観的に見れば僕の告白は空振りだった。そして実質的な意味で言っても、告白することによって明らかになると思っていた女と兄君、幼馴染さんと兄友君の関係は相変わらず曖昧なままだった。

 幼馴染さんは僕が兄友君の名前を出した時少し戸惑っているようだったから、ひょっとしたら幼馴染さんと兄君が付き合っている、あるいは幼馴染さんが兄友君ではなくて兄君のことが好きなのではないかという推測は成り立った。でも、それは証拠のない単なる推論に過ぎなかった。結局のところ僕は、副会長から聞かされた曖昧な噂話以上の情報を入手することができなかったのだ。

 女が同じ高校に入学していたことは、それからまもなく確認することが出来た。ある朝、僕は早めに登校して一年生の校舎の入り口を遅刻ぎりぎりまで見張ったのだ。

 自分が目立つのはまずいと思った僕は、中庭の噴水の陰から一年生の校舎に吸い込まれていく多数の一年生たちを必死で眺めていた。見張りを初めて一時間経っても女の姿は見つからなかった。そのまま、そろそろ自分の校舎に行かないと僕自身が遅刻してしまうくらいの時間になってしまっていた。女を見落としたはずはなかった。僕は瞬きすら我慢するほど集中して登校する一年生たちを見つめていたのだから。

 もう諦めて自分の教室に走って戻ろうとした時だった。校門から一年の校舎に走っていく女性の姿があった。遅刻ぎりぎりになって教室に張り込むだらしない生徒。でも、よく見るとそれは女だった。

 中学の頃の女は周囲から浮くまいと、目立つ行動は避けていたはずだった。少なくとも遅刻ぎりぎりに駆け込むような姿は一度も見かけたことがなかった。それでも、今の僕の目の前で校舎に駆け込んでいったのは女に間違いなかった。

 昔より少し髪が伸び、スカートも短くなってブレザーの下の白いブラウスの胸元のボタンも結構外していて、それは今時のお洒落な女子高生そのものだった。外見は変っていたけれど、僕にはそれが僕の中学時代の彼女だとすぐにわかっ
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/05(土) 22:59:11.38 ID:wMLLgnF4o
 やはり同姓同名の他人ではなかったのだ。僕は胸を痛めた。彼女にとっては僕なんて過去の思い出に過ぎないのだろう。だから、同じ学校に入学してもそのことを僕に知らせる気にすらならなかったのだ。それは僕にとっては厳しい発見だった。ある意味、女が黙って転校したことより厳しかった。

 あの時は、僕たちは家庭の事情というやつに振り回された悲劇のカップルだと思い込むことが出来た。彼女が黙って転校して行ったのも、僕に話したとしてもどうにもならなかったのだからだと。

 でも、こうして同じ学校に入学したことを、女が僕に話そうという発想がない時点で、僕と女に起こった出来事は僕が思い込んでいるようなロマンティックな悲劇などではなく、単に女が僕のことなんか気にしていなかったということになる。それも、おそらく彼女が転校した時から。いや、もしかしたら僕と付き合っていたときから。
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/05(土) 23:02:03.05 ID:wMLLgnF4o
 僕の告白に応えなかった幼馴染さんだけど、その後の生徒会活動には普通に顔を出してくれていた。学園祭が近かったので、今では主戦力となっている彼女が僕のことを気にして生徒会や実行委員会に顔を出しづらくなったらどうしようと思ったのだけど、責任感が強いせいか彼女は普通に活動に参加してくれていた。

 ただ、僕が堪えたのは幼馴染さんがやたらに僕のことを気にするような行動を取るようになったことだった。僕を振ったことを気にしていたのだろうか。彼女は告白を機に僕とよそよそしくなるより、今まで以上に僕に親しく話しかけることによって、僕の告白は気にしてませんよ、今までどおりいい先輩後輩でいましょうと訴えているようだった。

 でも、そんな彼女の行動はかえって生徒会役員たちの好奇心を刺激してしまった。

「会長と幼馴染さん、最近妙に仲良くない?」

「幼馴染さんって本当は先輩狙いだったのかな」

 そんな噂が流れているよと僕に教えてくれたのは、副会長だった。

「ばかばかしい」
 僕は切り捨てた。「だいたい幼馴染さんには、兄友君だか兄君だかがいるんだろ」

「でも最近の彼女、妙にあんたに話しかけたりあんたのそばに擦り寄ったりしてるからなあ」
 副会長は例によってこの手の話題が大好物のようだった。

「あんたのこと、実は好きだったりして」

 そんなことはないことは僕が一番よく知っていた。そしてこの噂を鎮めるには、僕が幼馴染さんに告白し振られたという事実を明かせばそれで澄むことだった。でも、女の彼氏を知ろうとして仕掛けた告白とはいえ、そんな事情まで話すわけにいかないから、それだと世間に出回る事実は僕が幼馴染さんに振られたということだけになる。それは、プライドだけは無駄に高い僕には耐えられなかった。

 なので、無念ながらこの噂は放置するしかなかったのだけど、その後も幼馴染さんは僕に気を遣うあまり、今までより僕に近づき僕に優しく接することをやめなかった。それは、僕の精神状態に微妙な影響を与え始めた。僕はあくまで作戦の一環として幼馴染さんに告白する振りをしただけなのだけど、幼馴染さんが僕をこれ以上傷つけまいと、告白前と変わりないというか告白前より親密に接してくれるようになると、僕は何だか本当に彼女に振られたような気分になってきた。

 ただでさえ、女の僕に対する本心を知った後なのに、幼馴染さんに本気で恋して、そして振られた気になっていった僕は、だんだんといつもの冷静さを失うようになっていった。
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/05(土) 23:05:31.64 ID:wMLLgnF4o
 そのうち、どういうわけか僕が幼馴染さんに告白して、幼馴染さんがそれを断ったという噂が生徒会内に流れ始めた。それは噂ではなく事実だったのだけど、僕は本気で幼馴染さんが好きになったわけではない。でもその噂はその部分は抜きで、本気で僕が彼女を好きになり告白して、そして幼馴染さんに振られたということになっていた。僕は噂をやはり副会長から聞かされたのだった。

「幼馴染さんがあんたのことを好きなんじゃなくて、逆だったか」
 副会長は遠慮会釈なく僕に言った。「幼馴染さんって、あんたのことが好きだから最近あんたに接近してるんじゃなくて、振ったことが後ろめたくてあんたにも気を遣って欲しくなくて、今まで以上にあんたと接するようにしてたのね」

「・・・・・・」

「元気だしなよ。そもそも幼馴染さんには兄友君がいるってあたしが教えてあげたのに、あんたはだめもとで告ったんでしょ」

 僕が幼馴染さんに告白した場所には誰もいなかったはずだ。それを知っているのは僕と幼馴染さんだけなのだ。そして、幼馴染さんは僕に告白されそれを断ったことを自慢げに周囲に話すような子ではなかった。いったい誰がこんな話を広めているのだろう。僕は必死に考えたけど、そんなことをする人間のことは思いつかなかった。

 僕はもう副会長に返事をする気すらなくしていた。それから、僕は生徒会では幼馴染さんを避けるようになった。そんな僕に幼馴染さんは戸惑っていたようだけど、周りの役員たちはやっぱりねという視線で僕を見ているようだった。

 やがて僕のプライドは、僕を気遣うような、そして僕をからかうような役員たちの視線に耐えられなくなっていった。
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/05(土) 23:09:09.76 ID:wMLLgnF4o
 生徒会に居辛くなった僕は、会長としての最低限の仕事を済ますと、僕が部長を務めているパソコン部で時間を過ごすようになった。ここは気楽な場所だった。僕は部長だったけど、ここの部員を組織として動かすとかみんなで一丸となって何かをやり遂げようなんて無駄なことを考えたことは一度もなかった。

 この部は極度な個人主義的な雰囲気が特徴であり、部員たちはデスクトップPCの前で思い思いに勝手なことをして放課後の時間を過ごしていた。まるでネカフェのようだったけど、それがパソ部の部活の実態だったのだ。一応僕はこの部の部長なのだけど、ここに逃げ込むとそういうことは別にどうでもいいやと感じられるような雰囲気の場所なのだった。

 ある日、生徒会のミーティングで戸惑っているような幼馴染さんや、からかい混じりの役員たちに最低限の指示を与えた後、僕は逃げるようにパソ部の部室に来た。いつもは静かにPCの前で好き勝手なことをしている部員たちが、どういうわけか困惑したように一人の女の子を囲んで何やら話し合っている姿が僕の目に入った。

「どうした」
 僕は誰にともなく声をかけた。何で男だらけのこの部室の真ん中に、こんな部に似合わない一年生らしき女の子が目を伏せて座っているのだろう。

「ああ部長。ちょうどよかったです」
 二年生の副部長が心底助かったという表情で言った。「彼女、入部希望者なんですけど」

 それで、こいつらは困惑した様子だったのか。僕は少しだけおかしかった。僕はイケメンでもリア充でもないけれど、こいつらのように女の子が部室に来たというだけでこれほど面食らってどうしたらいいのかわからなくなるということはない。僕はその女の子を見た。

 それではこの女の子はパソ部に入りたいといういうのだろうか。個人的にアドバイスするならば止めておいた方がいいよといいたところだけど、部長としてはそうもいかなかった。

「僕が部長なんだけど、君はパソコン部に入部希望なの?」
 よく見ると、その子はすごく可愛らしい子だった。女とか幼馴染さんのように、きれいで可愛らしい外見だけど実は意志が強いという感じはせず、か弱く守ってあげたいという外見の少女だった。徽章を見ると一年生だ。
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/05(土) 23:11:28.35 ID:wMLLgnF4o
「はい。いろいろネットのこととか勉強したくて」
 その一年生の女の子はきれいな顔を上げて僕の方を見て言った。意外としっかりとした口調だった。

「そうか。入部はいつでも歓迎するけど・・・・・・でも、うちって女の子は一人もいないんだけどそれでも平気なの」
 僕はまず気になっていることを確認した。

「あ、はい。女子でも入部させてもらえるなら」
 彼女はあっさり答えた。

 そこまで言うなら、彼女の入部を断る理由はなかった。僕は彼女に聞いた。

「じゃあ、名前と学年とクラスを教えてくれる?」

「はい。名前は妹といって学年は一年でクラスは」

 僕はそれを聞いて呆然とその美少女を眺めた。では、この子がブラコンだという、兄君の妹なのか。

  その時、ふと僕の心に次の作戦が浮かんできた。幼馴染さんから聞き出せなかった情報も、妹さんからなら聞き出せるかもしれない。僕はその思いを隠して僕は精一杯の笑顔を浮かべて彼女に言った。

「パソコン部にようこそ。君を新入部員として歓迎するよ」

 その時、黙って妹さんに見蕩れていたらしい副部長以下の部員たちが拍手を始めた。リアルな女性は苦手なはずの部員たちも、妹さんの可愛らしい容姿に無関心ではないようだった。

 ・・・・・・今度はうまくいくかもしれないな。部員たちと一緒になって拍手しながら僕はそう思った。
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/05(土) 23:12:04.29 ID:wMLLgnF4o
今日は以上です

明日また投下予定です
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 23:16:31.66 ID:B/BpPzLIO
乙乙
会長も会長だよなあ
こりゃ男と女が心底かわいそう
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/05/05(土) 23:18:23.64 ID:tmWUxnRX0
乙!
会長ちょっと黒いな
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/06(日) 00:58:11.69 ID:2JGVGOZ8o
おつ
男と幼馴染
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/06(日) 01:05:26.56 ID:HUn4FHxao
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/06(日) 06:06:10.04 ID:O3IDrebSO
>>813
女は二年生だろ?
なんか時系列がごちゃごちゃしてないか?
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/06(日) 07:14:10.05 ID:dQHlEwhso
>>824
作者です
ご指摘のとおり二年生の校舎の間違いです。時系列と言うより単純なミスでした

失礼しました
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/06(日) 08:41:04.41 ID:M08LXnB6o
かなり女に同情しちまうよ
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/06(日) 10:50:54.26 ID:+RhRi6Qso
女の心理描写がもう一回欲しくなるな
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/06(日) 11:38:25.64 ID:JKTljIRIO
同意
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/06(日) 22:19:59.55 ID:dQHlEwhso
 その日から僕は、幼馴染さんと顔をあわせて一緒に仕事をすることに対して気が重く感じていたこともあり、生徒会では最低限の指示をするだけで残った時間はパソコン部に顔を出すようにした。副会長はこれまで僕が生徒会活動に打ち込んでいたことを知っていただけに不思議そうで
はあったけど、結局のところ幼馴染さんに振られて僕がいたたまれないのだろうという解釈に落ち着いたようだった。そしてそれは他の役員たちの共通認識でもあるようだった。

「あんた考えすぎだと思うけどな」
 学園祭に向けた作業を分担して開始した生徒会役員と学園祭実行委員たちを尻目に、生徒会室を去って行こうとする僕に副会長は話しかけた。

「幼馴染さんと一緒に居づらいんでしょうけど、告って振られることなんて別に恥かしいことじゃないじゃん。あんた変なところでプライド高すぎだよ」

 彼女の言葉は僕の胸に突き刺さった。確かに僕は幼馴染さんのことを本気で好きなったわけではなかった。それでも、彼女に告って彼女に振られたことは事実だったし、そのことが生徒会で噂になり哀れむよう視線で僕がみんなに見られていたこともまた事実だった。そして、真実
はどうあれ、そういう状況に僕のプライドは耐えられなくなっていたのだ。

 僕はそのことについて副会長に言い訳することすらできなかった。

「何を考えているのか知らないけど、僕は部活に行かなきゃいけなくなっただけだよ」
 僕は彼女に言い訳した。

「あんたの部活ってパソ部でしょ? 部長なんかいてもいなくても同じでしょうが」
 副会長は僕の言い訳なんか頭から信じていないようだった。

「新入部員が入部したんだよ。一年生だし唯一の女の子だからあいつらには任せられないんだ」

 僕はその新入部員が兄君の妹であることは副部長には話さなかった。僕はそれだけ言い訳すると、副部長の追及を逃れパソ部の部室に向かったのだった。
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/06(日) 22:23:13.89 ID:dQHlEwhso
 僕が部室に入った時、妹さんは部室で一人ぽつんと取り残されていたようだった。彼女は落ち着かなげにあてがわれたPCの前で一人座っていた。

 どうやら副部長や部員たちは情けないことに彼女を指導するどころか世間話さえすることができず、とりあえず彼女にPCをあてがってそのまま放置したようだった。もっとも、ちらちらと彼女の方を盗み見している部員はいたようだけど。

 本当にどうしようもないやつらだな。僕はそう思ったけど、よく考えるまでもなく兄友君たちのようなリア充よりパソ部の部員の方がより僕と同類なのだった。それでも部長として彼女を一人放置する訳にはいかなかった。そして、今の僕には誰にも言えない秘めた目的もあったのだ、

 僕は妹さんに歩み寄り声をかけた。

「妹さん、こんにちは」

 妹さんはあてがわれたパソコンを操作するでもなく俯いていたけど、僕のあいさつを聞くと慌てた様子で顔をあげた。僕の方を上目遣いに見上げた妹さんの白く綺麗な顔に、僕は一瞬ドキッとした。

「あ・・・・・・部長。こんにちは」
 緊張しているのか、か細い声で妹さんが言った。

「妹さんは今何をしてたのかな」
 僕は彼女に話しかけながらデスクトップのディスプレイをちらっと眺めた。画面は真っ黒で起動すらしていないようだった。

 こいつら本当に新入部員を放置したのか。僕は少し飽きれた。男の部員だったらあれほど専門知識をひけらかしながら最初の面倒だけは見ていたこいつらも、リアルで美少女である妹さんに話しかけて面倒を見る勇気はなかったようだった。生徒会で振られた男として見られていた僕も、この部では女性関係に関してはこいつらより数段上のようだった。
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/05/06(日) 22:23:15.30 ID:PtIl6n4AO
むむ
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/06(日) 22:25:37.99 ID:dQHlEwhso
「いえ。特に何もしていません。よくわからなくて」
 妹さんは言った。

 ・・・・・・やばい。この子本当に可愛いな。彼女の表情を見て彼女の弱々しい言葉を聞いたとき、僕は思わずそう思ってしまった。今でも僕は女への恋情を抱えているはずなのに。

「よくわからないって言うけどさ」
 僕は気を取り直して彼女にレクチャーを始めた。

「まあ、うちの部はパソコン部って言うだけあって、パソコンとかネットとかIT関係ならなんでもありな部だからさ」

 妹さんは頷きながら僕の言うことを聞いてくれていた。

「だから、部員たちもそれぞれ好き勝手に活動してるんだよね」

「・・・・・・はい」

「例えば、隣のブースにいるあいつ」
 僕は彼女と同じ一年生の部員を指差した。こいつは他の部員たちと異なり妹さんをチラ見することなく一心不乱にディスプレイ上を埋め尽くしたコードを睨んでいた。

「彼は、CGIスクリプトを勉強中なんだよ。勉強中っていっても基礎を覚える段階じゃなくて、実際に応用的なプログラムを組んでるんだけどね」

「それから、反対側にいるあいつ。あいつは、Second Lifeっていうバーチャルワールド内で実装されている言語、リンデン・・スクリプト・ランゲージっていうんだけど、それを使って仮想世界内で通用するプログラムを毎日組んでる」

「はあ」
 妹ちゃんにはぴんと来ないようだった。

「じゃあ、部室の反対側にいるあいつ」
 僕はもっとわかりやすい作業をしている二年生の部員を指し示した。

「彼は3Dモデリングを練習しているんだ。SHADEというソフトなんだけど・・・・・・ほら、画面が見えるでしょ」

 そいつの作業中のディスプレイにはリアルな3Dのオブジェクトがでかく映し出されていた。これなら彼女にも理解しやすいだろう。

 ・・・・・・だが、僕は彼の作業中の画面を妹さんに紹介したことを一瞬で後悔した。その画面上には、3Dでリアルに描写された幼女のヌードが大写しに描かれていたのだ。

 ・・・・・・おい。おまえはこの前まで確か人類初の恒星間移民船とやらの3Dグラフィックを製作してたんじゃなかったのかよ。
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/06(日) 22:27:49.92 ID:dQHlEwhso
 こうして部員それぞれが好き勝手に作業している様子を紹介していると、だんだん妹さんは元気がなくなっていく様子だった。

「どうかした?」
 僕は妹さんに声をかけた。妹さんはしばらく俯いていたけど、やがて細い声で話し出した。

「あの・・・・・・。あたし、パソコン部ってちょっと勘違いしていたかもしれません」

「勘違いって?」

「あたしは本当に初心者で、家のパソコンでたまに天気予報とかニュースとかミクシーとか見るだけで」

 まあそうだろうな。僕は最初から彼女のPCスキルに期待なんてしていなかった。でも、そう考えていたわりには僕は彼女に部内でもスキルの高い部員が何をしているかを紹介してしまったのだった。

 何でだろう? 僕は自己分析した。この可愛らしい守ってあげたいという欲望を刺激する一年生の少女に、うちの部の凄さを自慢したかったからかもしれない。つまり僕は彼女に対してうちの部のレベルを感心させたかったのだ。それは、そうすることでスキルの高い部員を擁する部の部
長である僕を妹さんによく見せたかったからだろう。僕はこの兄君大好きだという美少女に、僕に対して関心を持ってもらいたかったのだろうか。

 僕はそれどころではないはずだった。妹さんから女と兄君がどういう関係なのかを聞き出さなければならないのに。そして、あわよくば女がいつうちの学校に転入してきたのか、女は今でも同級生の話しを聞いてあげているのか、そして、兄君のことはともかく女は今でも本当は孤独なの
か、そういうことを彼女から聞き出したかったのだ。

 当初の目的を忘れ少し混乱しだした僕だけど、僕の最初の部活レクチャーが失敗してしまったことはは理解していたので、まずそれをフォローすることが先決だった。
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/06(日) 22:29:25.76 ID:dQHlEwhso
「ああ、ごめん」
 僕はなるべく明るい声で彼女に言った。

「君はネットのこととか勉強したいと言っていたね」
 僕はなるべくさわやかな微笑みになるよう努めながら、妹さんの可愛らしい顔を見た。

「うちの部はいろんなやつがいるからね。例えば・・・・・・」
 僕はすぐ近くのブースで何やら作業している一年生のディスプレイを指し示した。「例えばこいつなんかは」

 ・・・・・・げ。おまえは何で堂々と校内ででエロゲしてるんだよ。ネットどころかそもそもオンラインでさえないだろうが。僕はあわてて違うデスクのPCの方を指差した。

「違った・・・・・・こいつね」
 何をしていようとエロゲのしかもムービーシーンを一心不乱に眺めているやつよりはましだろう。

 僕が指差した部員は三年生だった。彼は、無関心を装いながら僕らの方を気にしていた他の部員たちと異なり、僕と妹さんの方なんか気にせずに一心不乱にキーボードに向かって何やら長文を打ち込んでいた。

「この先輩は何をされているんですか」
 妹さんが聞いた。そういやこいつは何をしているんだろう。僕は、とりあえずエロゲのセックスシーンを彼女に見せないためにこいつを指差しただけで、こいつが何をしているのかなんて考えてもいなかったのだ。あらためてこいつの画面を覗くと、そこには2ちゃんねるの専用ブラウザが
表示されていた。

「ああ、妹さんって2ちゃんねるって知ってる?」
 僕は聞いた。

「あ、はい。たまにお兄ちゃんが見てましたから」
 妹ちゃんはすぐに答えた。そういえばこの子はブラコンなんだっけ。僕は副会長に聞いた噂話を思い出した。

「こいつは2ちゃんねるに入り浸ってるんだよ。いつも見ているのは、アニキャラ総合っていうところだけどね」

 それから僕はもう少し普通の活動をしている部員を紹介した。フォトショップとかイラストレーターを使用して画像製作をしているやつや、DTMソフトを使って音楽を作っているやつ、HTMLやFLASHでサイト製作をしているやつとか。でも、最後に僕が妹さんに感想を聞いた時の反応は印象
的なものだった。
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/06(日) 22:32:01.42 ID:dQHlEwhso
「で、ネット関係を勉強したい言っていってたけど」

 僕は妹さんに聞いた。

「うちの部員の活動を見てさ、具体的にどんなことを覚えたいの?」

「あの」
 彼女は遠慮がちに言った。

 正直に言うと、この時の僕は妹さんに気を惹かれだしていた。あれだけ恋焦がれていて結果的に裏切られた女とか僕が振られたことになっている幼馴染さんのことが、この瞬間には僕の脳裏から忘れ去られているほどに。

「あたし、2ちゃんねるとかって詳しくなりたいです」

 妹さんは僕の質問にそう答えた。

 ・・・・・・いったい妹さんは何を考えているのだろう。僕にはよくわからなかった。でも、僕が今では彼女のことを気にしていることだけは確かなようだった。当初の女のことを調べたいという目的に加えて、妹さんのことを知りたいという新たな目的が僕にはできたのだった。僕は実は気が多
いのかもしれない。僕は初めてそういう感想を抱いた。そして、ここの部員たちと同じく年下属性というか、ロリコン的な美少女属性の持ち主だったのかもしれない。僕はこの間まで中学生だった妹ちゃんの幼くも可愛らしい容姿を好ましく思いながら言った。

「僕もそんなに詳しくないけど、よかったら一緒に2ちゃんねるとかネットのこととか勉強しようか」
 僕は精一杯優しく妹さんに言った。こんな気持悪いことを言ったら妹さんにドン引きされて嫌われてしまうかもしれない。でも、僕はそう口に出してしまったのだ。

 しばらくして、妹さんは僕にぺこりと頭を下げた。

「はい。部長、よろしくお願いします」
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/06(日) 22:32:54.86 ID:dQHlEwhso
本日は以上
そしてGWも終了

明日残業にならなければまた再開します
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/06(日) 23:13:05.79 ID:2JGVGOZ8o
ぐぬう おつおさお
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 08:32:08.49 ID:d5UbgyEDO
パソ部の人数が思ったより多かった
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 12:28:29.78 ID:WgfUWgPIO
かなり大所帯だな
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 12:44:50.61 ID:DqUUxboIO

俺がパソコン部のころはBM98してたなぁ
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/07(月) 23:11:40.06 ID:9JkBy+dco
 次の日から僕は妹さんをPCの前に座らせ、自分は妹さんの横に置いた丸椅子に腰掛けて妹さんを指導することにした。指導といっても妹さんの希望は抽象的でネットとか2ちゃんねるとかに詳しくなりたいというものだった。

 正直、これが可愛らしい妹さんでなければそんな希望に応える気すらしなかったろう。うちの部は確かに生徒会と違って非リアな部員の集まりだったけど、部員の資質はそれなりに高かったし数少ない新入部員でさえVBAを覚えたいとかC++やJavaをもっと自由に使えるようになりたいと
か、そういう希望者が多かった。正直に言えばうちの部のドアを叩いて、街中のパソコン教室の初心者クラスに初めて通うお年寄りのような希望を堂々と述べたのは、僕の知る限りでは妹ちゃんだけだった。

 周りの部員たちもてっきり飽きれて彼女に冷たくするかと危惧したのだけれど、やはり彼らも美少女の艶やかな容姿の誘惑には勝てなかったようで、だんだんと彼女がパソ部の部室にいることに慣れてきた部員たちは、おどおどしながらも彼女に話しかけたり彼女を助けたがるような様子を見せ始めたのだった。

 部員たちが彼女を受け入れたのはよかったけれど、妹さんへの彼らの関心や干渉は正直迷惑だった。あからさまに言えばこいつらの妹さんへの関心は、僕にとって二つの理由から邪魔だった。

 一つには、彼女は女と兄君、幼馴染みさんと兄友君の関係者だったから、僕は妹さんと仲良くなりさりげなく彼らの交際事情を聞きだしたかった。中学時代の切ない想い、僕の人生で唯一の恋愛のことは僕の心の中でまだ生きていて、女の気持ちを今更知ったからといってそれが復活
するわけではないことは承知していたけれど、それでも真相を知りたいという気持ちはまだ薄れてはいなかった。

 二つ目は、すごく単純に言ってしまうと僕が妹さんに惹かれ出していたからだった。女のことを引き摺っていたり、幼馴染さんに仕掛けた偽装告白と彼女の拒否が思ったより自分の心に打撃を受けたこととか、そいうことはこの頃にはあまり自分の心に思い浮ばなくなっていた。つまり僕と妹さんが二人きりで過ごす時間に介入しようとする部員たちは僕にとって邪魔だったのだ。

 そういう理由から僕は彼女を独り占めしていていたかったのだ。
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/07(月) 23:14:20.06 ID:9JkBy+dco

 妹さんは、女とか幼馴染さんとか、昔僕に告白してきた女の子たちとはタイプが全く違っていた。どういうわけか僕が好きになる、あるいは僕を好きになる女の子は容姿は様々だったけど基本的にはしっかりとした性格の女の子が多かった。でも、妹さんはちょっとタイプが違っていたのだ。

 妹さんは守ってあげたいという気持ちを男に起こさせるような女の子だった。そういう彼女の控えめで可憐な姿に、正直僕は惚れてしまった。そして、それは僕だけではなく他の部員たちも同じようだったけど、僕は見苦しくも部長権限を振りかざして妹さんの教育係の座を確保したのだった。

「妹さんって自分の家にパソコンないの?」
 最初に、僕は彼女のあまりの初心者ぶりに驚いて聞いた。

「リビングにパソコンはあるんですけど、おにい・・・・・・兄がいつも使っているんであたしはあまり触ったことはないです」
 彼女はそう言った。

「それでも、スマホとかでネット見たりしない? それと学校の授業でもネット関係の講座があるよね?」

「あたし普通の携帯しかないですし、IT関係の授業も以前はあまり興味がなくて」

 いったい彼女はなぜ今更パソ部の扉を叩いたのだろう。僕は疑問に思った。うちは妹さんのような女の子が思いつきで入部するようなクラブではない。パソ部は校内の評価は最悪で一般の生徒たちからはキモヲタの巣窟のように目されていたのだし、女性すら一人もいないようなそんな部に中途でわざわざ勇気を出して入部希望をした意味は何なのだろう。
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/07(月) 23:18:07.29 ID:9JkBy+dco
 僕はその時久しぶりに自分の「傾聴」スキルを発動しようと思いついた。高校に入ってからはほとんど思い浮かべたことがなかったスキルだったけど、今こうして妹さんと二人でPC前に座っていると、彼女のことをもっとよく知りたいという欲求が僕の心に浮かんできた。

 そうすれば、多分単なるいい部長という立場で表面的な会話をしているよりてっとり早く彼女の心に入り込めるだろう。そして、今までの実績でいうと僕がコンサルタントを成功した女の子たちはかなりの高確率で僕を好きになったのだった。それは単なる陽性転移に過ぎないのだけれど。そういうクライアントの感情に流されえてはいけないというポリシーのもとで、僕はそういう告白は全て断っていた。

 その僕が今やあえて妹ちゃんに陽性転移的な感情を覚えてもらうように仕掛けようとしている。コンサルタントとしては最低の行動だった。それは人の相談にのる仕事の倫理規範に真っ向から反する態度だった。クライアントに献身的にコンサルタントした結果として、相手から好意を抱かれてしまうのはしかたながない。その場合術者はその好意を穏便に断るべきだ。

 それに対して最初からクライアントの好意を目当てに行うコンサルタントなんて普通ならあり得ない。でも、僕は今そのあり得ないことをしようと考えていたのだった。

 僕の横で当惑したようにパソコンと格闘している妹さん。まだ新しい制服に身を包んで華奢小さな身体で僕の隣にちょこんと座っている妹さん。彼女の髪からふと匂う甘くさわやかな香り。そういう彼女の様子は、今まで経験したことのない妹さんに対する保護欲と征服欲を僕の心に掻き立てたのだった。
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/07(月) 23:20:18.50 ID:9JkBy+dco
 「じゃあ専ブラのインストールからしてみようか」
 僕はマウスを持つ彼女の細く華奢な手をじっと見つめながらも、なるべく冷静に聞こえるように言った。「2ちゃんねるを閲覧したいならIEよりもいろいろ便利だし快適だし」

「専ブラって何ですか」
 当然ながら妹さんは聞いたけど、その聞き方は少し首をかしげて僕の方を見上げるという僕にとっては破壊力抜群なものだった。この子は本当に可愛すぎる。僕は彼女の無邪気な疑問の表情にどきどきしながら答えた。

「2ちゃんねるの掲示板を閲覧したり投稿したりするための専用のブラウザのことだよ」

「見やすいとか投稿しやすいとかもあるけど、掲示板そのものへ与える負荷が低いんだ」

 そう言っても彼女にはよくわかっていないようだった。

「IEとかだとHTML全体を読み込むんだけど、専ブラは掲示板のDAT、データだけを読み込むからね」

「はあ」

「わからなくてもいいよ。とりあえず使いやすいから専ブラを使う方がいいと考えてくれれば」

 僕はとりあえずJa○eとV○CをDLした。使ってみて使いやすい方をこの先彼女が選べばいい。インストールが終ると、僕は改めて彼女に質問した。僕はこの先の彼女の答えによっては久しぶりの傾聴スキルを駆使して、彼女の抱えている問題を解明しようと思っていた。
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/07(月) 23:23:46.19 ID:9JkBy+dco
「さあ、これで準備完了だよ」
 僕は妹さんに話しかけた。「2ちゃんねるに詳しくなりたいって言ってたけど、とりあえずどういうスレを見たいの?」

「あの・・・・・・」
 妹さんは僕の方を見て言い淀んだ。今の僕には彼女のそういう表情さえ可愛らしく感じた。これが男の新入部員だったら即座にうちの部から追い出していたかもしれないけど。

 ・・・・・・こんな子が本当に僕の彼女だったらなあ。僕はその時、そう考えた。そうだったとしたらもう僕が不毛なコンサルティングをすることもないだろうし、女みたいな複雑な性格の子に対して報われない想いを抱えることもないだろう。普通に仲の良い普通にリア充の同級生たちと同じような恋愛ができるのかもしれない。自分よりか弱い妹さんという女の子を守りつつ、その対象の子から頼られ愛されることができたのなら、相手の気まぐれな感情に翻弄された中学時代の女との交際とは全く違う恋ができるのだろう。

 僕がそう思って純情で可憐な妹さんの悩ましい表情を眺めたときだった。妹さんが僕の質問にようやく返事をした。そして、それは純情でも可憐でも何でもない言葉だった。

「部長、女神行為って知ってますか? 何だかネット上で自分のヌード写真とかを公開しているスレがあるらしいんですけど」

 僕は彼女の言葉に呆然として、そのきょとんとした可愛らしい顔を眺めていた。僕も女神板とかVIPとかの女神スレとかは知っていた。でも目の前の小さないい匂いのする華奢な美少女からその名前を耳にするとは思ってもいなかったのだった。
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/07(月) 23:27:35.06 ID:9JkBy+dco
今日は以上です

明日以降は少し時系列の整理をしたいと思うので投下をお休みさせていただきます

できれば明後日以降にまた再開しようと思います

ここまで駄文にお付き合いくださった方、本当に感謝してます
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 23:41:36.08 ID:rr0dOqcSO


妹はこの時すでにノーパソ持ってたような
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/07(月) 23:48:11.05 ID:kRlrOIIZo
おつ
妹と男と幼馴染
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 00:02:36.11 ID:J6URpO+IO
おつん

まあ、整理するってんだから整合性も取るだろ
楽しみに明後日を待つぞ
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 00:52:24.91 ID:OPNaINGvo
ってか、会長がアスペっぽい
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 08:26:11.54 ID:DPe8MftDO
会長がイライラする
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 15:17:57.65 ID:OjDyD+NIO
会長が面白い
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 18:58:42.74 ID:XRxjR2rIO
会長はイタい
兄友は黒い
どう考えても兄と女が幸せになれなさそうで辛い
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/08(火) 20:00:28.70 ID:OeZzAG28o
兄幼馴染妹で終われば文句ない
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/09(水) 23:31:36.44 ID:RB72Yf4Io
 2ちゃんねるで女神行為を見ること自体は、うちの部では別におかしなことではない。部活と称してエロゲをしたり部費で購入したPOSERを使って少女の裸体を3Dモデリングしているような部員がいるのだから、部長の僕でさえ顧問にばれない程度ならそういうスレを閲覧することを禁止しようなんて思ったこともなかった。でも、目の前の一年生の少女が女神スレを見たいと言うとは僕の想像の範疇をはるかに超えていた。

「えーと。知っているか知らないかで言えば知っているけど・・・・・・君、本当にそれが見たいの?」
 とりあえず僕はドキドキしながら聞いてみた。目の前のおとなしい美少女の容姿に対して、女神行為が見たいという彼女の言葉は全くふさわしくない言葉だった。心の中に卑猥な妄想めいた考えが浮かんできたため、僕は慌ててそれを打ち消すように聞いたのだった。

「はい。というか、もう見たことはあるんです。でも、画像は削除されてるみたいで一枚も見られなかったんですけど」
 妹さんは相変わらず真面目な表情でとんでもないことを話し続けた。「ああいうのってどうしたら画像とか見られるんでしょうか」

「どうしたらって、削除される前に見るしかないと思うけど」
 正直に話すとこの時の僕は妹さんが何を考えているのかわからなかったのだけど、それはそれとして僕は下級生の少女と女神画像の話を普通にしているという奇妙なシチュエーションに興奮し出していた。具体的に言うと下半身が人様にお見せできる状況ではなくなっていたのだ。

「そうですか」
 妹さんがため息をついた。「やっぱりリアルタイムでスレを見張っていないといけないんですね」

 その時、僕は自分の下半身の状況のことを考えていたせいか、ふとあることを思い出した。つまり、自分が自宅で密かにオナニーするときに閲覧したことのあるサイトのことを思いついたのだ。でも僕はそのことを口に出すべきかどうかためらった。
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/09(水) 23:33:28.20 ID:RB72Yf4Io
 ・・・・・・みんなから信頼されている生徒会長の僕があんなサイトを見ていることを誰かに知られるなんて、ただでさえ自分に自信がないくせに無駄にプライドだけが高い僕にとっては屈辱的なことだったけど、この時の僕は下級生の可憐で清純そうな少女と女神行為の話を普通にしているという奇妙な状況に流されてしまっていたのかもしれない。

「まあ、他にも手段はあることはあるよ」
 僕は少しためらってから口にした。

「はい? 削除された画像を見ることってできるんですか」

 彼女は顔をあげて僕の方を見た。沈んでいた表情が一瞬明るくなったようだった。

「あることはある。でも、女神板と一緒で18禁のサイトだけど」
 いったいおまえは何歳なんだよ? 僕は自分に自嘲的に問いかけた。もちろん、まだ18歳未満だった。

「部長、そのサイトってどうすれば」

「ちょっと待って」
 僕はようやく我に帰って体勢を立て直した。いつの間にか下半身も正常な状態に戻っているようだった。

「ちょと待ってくれ」
 僕は彼女に繰り返した。

「・・・・・・はい」

「とりあえず、君がパソコン部に入部した目的をもう一度詳しく教えてくれるか? あと、何で女神の画像なんかを見たがっているのかを」
 ようやく僕は部長らしい言葉を妹さんに対して口にすることができたのだった。
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/09(水) 23:36:14.19 ID:RB72Yf4Io
 妹さんは僕の言葉を聞き再びうつむいてしまった。その時初めて僕には周囲のことを気にする余裕が生じてきた。

 改めて周囲を気にしてみると、近くにいる部員のほとんどがそれぞれ作業をしているふりをしながらも、僕と妹さんの会話に聞き耳を立てているようだった。このままこのヤバイ話をここで続けるのはまずい。僕はそう考えた。

「あのさ」
 僕はこの頃には完全に落ち着きを取り戻していた。

「君の話を聞かせてもらっていいかな? 何か事情があるんでしょ」
 妹さんはうつむいたまま何も返事をしなかった。

「無理とは言わないけど、18禁サイトの紹介なんかさせられるんだったら事情くらいは聞いておきたいな」

 僕は妹さんにそう言った。この時、さっきの性的な興奮は既に僕の中では鎮まっていて、むしろ妹さんとの仲を深めるのにはいいチャンスなのではないかという考えが心の中に浮かんできていた。高校一年生の女の子が素人の裸身画像に執着するなんて、何か事情があるとしか考えられない。そして何か事情や悩みを抱えている相手に対して、僕の傾聴スキルはこれまでほとんど無敗に近い成果を誇ってきたのだから、妹さんの相談に乗ることで彼女の信頼を勝ち取り仲良くなると共に女や兄君たちの情報も仕入れることができるかもしれない。

 妹さんは顔を上げて何か話そうとして、そこで周りを見渡してまた黙り込んでしまった。そういえばコンサルタントをするにはここは最悪の環境だった。僕たちの周囲は妹さんの容姿に見蕩れている部員たちに囲まれていたのだから。
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/09(水) 23:39:39.05 ID:RB72Yf4Io
「女さん、ちょっと付き合ってくれないかな」
 女性を誘うのが苦手な僕だったけど、悩みを持つ相手に対してはまた別だった。高校に入学してから二年以上こういうことをしていなかったのだけど、中学時代に駆使したスキルはまだ身体に残っているようだった。

「よかったら、どこか別な場所で話しをしようか。事情さえ話してもらえれば力になれることもあると思うよ。なんで女子の裸の画像なんか見たいのかは知らないけど、見る方法もあることはあるし」
 僕は妹さんに餌をちらつかせて言った。彼女は少しためらっていたけど、結局は僕の誘いに同意してくれたのだった。

 ・・・・・・中学生の頃、僕が人の相談を聞いていた場所は校内の人気の無い場所が多かった。放課後の中庭とか屋上とか、あまり人がいない時の図書室とか。でも、高校生になった今では校外のカフェとかの方がより知り合いに遭遇する危険は少ない。中学の頃は入りづらかったスタバとかにも今では自由に入れるのだし。

 僕は妹さんを促して部室から立ち去った。背中には多数の部員の無言の視線を感じていた。

 部室から離なれ校門の外に出ても、並んで歩いている僕たちに下校する周囲の生徒の好奇の視線が向けられた。

 それはそうだろう。美少女の妹さんと連れ立って下校する僕なんかを見かければ、いったいどういうカップルなのかと不審に思われても不思議はない。周囲の視線を自分に集めることに日ごろから慣れているかのように、妹さんには全く動揺する様子はなかった。むしろ、これから僕に対して話そうとしていることの方が彼女の心に負担になっていたようだった。

 僕はといえば、これから妹さんの話を聞きだせるということへの期待感や不安よりも、むしろ自分が可愛い女の子とデートしているような状況に不覚にも心をときめかせていたのだった。これから二人で向かうのは駅前のスタバ。可愛い女の子と二人きりでスタバに寄り道するそんなシチュエーションは僕にとって初めての経験だった。中学時代に女と手を繋いで下校していた時だって、カフェとかに寄り道した経験などなかったのだ。
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/09(水) 23:40:34.64 ID:RB72Yf4Io
短くてすいません
今日はここまで

また投下します

つうか時系列整理したら複雑になりすぎててワロタ
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/09(水) 23:55:43.81 ID:FDZAZmY8o
はいおつ
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/10(木) 00:28:45.94 ID:rB1g5Xtwo
おつおつ

<<858の「女さん」は「妹さん」だよな?この段階で女と会長が再接触してるとなると話がまったく変わってくるし
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/10(木) 05:34:28.77 ID:9CBSQsp4o
>>861
作者ですがご指摘のとおりです
すいません
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 08:25:54.49 ID:7rlZ0Z1DO
作者朝早いね

妹は良いものだ
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 13:44:34.28 ID:NwH8LuMIO
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 21:31:03.69 ID:6MfQsmoIO
長編スレで誤字の脳内補完スキルが自然と身についた自分に隙はない
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/10(木) 23:40:46.33 ID:9CBSQsp4o
 奥まった目立たない席に着いて彼女と向き合って座った時になって、ようやく僕は浮かれた気分を抑え、少し本気で彼女の話しを傾聴するスキルを発動すべく体勢を整えた。単に彼女のいい相談役になるだけではなく、できれば女の情報を聞き出し更に妹さんと親しくならなければいけ
ない。さすがの僕にとってもこれは敷居の高いミッションだった。それに何より人の悩み事をコンサルティングするのはすごく久しぶりだったということもあった。こういうことは場数を踏んでいないといけないし、間が空くとすぐに体がスキルを忘れてしまい一々次の言葉を考えながら相談に乗るようになってしまう。これではクライアントが白けてしまい、思っているように内心を話してくれなくなることも考えられた。それでも、これだけはやり遂げなければいけない。

 僕は妹さんに話しかけた。

「僕が何で君の話しを聞こうとしているか不思議に思っているでしょ」

 彼女は意外なことを聞いたとでもいう様子で顔を上げた。

「そう思われても無理はないよね。君はただネットのことを調べたくてパソコン部に入ってきたのに、いきなり部長に理由とか事情とかを問い詰められたんだもんね」

 僕はその時、とっさに少し変則的な方面から攻めて行くことに決めた。昔のクライアントと違って彼女は自分から僕に相談しに来たわけではない。彼女にとって僕は単なる入りたての部活の部長に過ぎなかった。普通に彼女を問い詰めたところで彼女が心を開いてくれる可能性は少ない
と思ったからだ。それで僕はまず自分のことを話し始めた。

「まず言っておきたいんだけど、僕は君のことがすごく気になっている」
 僕は思い切って言った。

「・・・・・・はあ」

 妹さんの反応は芳しくなかった。それはそうだろう。パソ部みたいなオタクの巣窟みたいな部に、目的があるために入部した妹さんが部の先輩にいきなりこんな告白まがいのことを言われたら、彼女だってドン引きするに違いない。ましてこれだけ容姿や雰囲気に恵まれている彼女なら、男からの告白になんか慣れていただろうし。

 でも僕はこの時もう一段の切り札を切るつもりだったので、妹さんが次の言葉を喋りだす前に僕は話を強引に続けた。

「あとさ。僕はパソ部の部長だけど生徒会長もしていてね」

 それを聞いて、拒絶的な雰囲気で僕の言葉を遮ろうとしていた妹さんは気を変えたようだった。僕はそんな彼女の様子に構わず話を続けた。

「だからという訳じゃないけど、僕は人の相談に乗ることが多いし結構それでみんなから感謝されてるんだ。相談してくる人の秘密は完全に守るし、どんな悩みを聞かされても飽きれたり驚いたりしないで相談に乗るようにしているからね」

 少しは妹さんの心を掴んだようで、とりあえず彼女は僕の話を聞くことにしたみたいだった。

「それが一つ。あと、君って幼馴染さんの知り合いでしょ」

「あ、はい。お姉ちゃんとは小学生の頃から」
 僕は彼女の意表をついたようで、突然幼馴染さんの名前を聞かされた彼女は驚いたように答えた。

「幼馴染さんは大切な生徒会の仲間だし、君のことは他人とは思えない。だからどんな事情があるかは知らないけど、君の力になりたいと思ったんだ」
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/10(木) 23:45:26.64 ID:9CBSQsp4o
 妹さんはそこで初めて僕の方を見つめて首をかしげた。

「あの、先輩・・・・・・あたしのこと気になるってどういう意味ですか」

「そのままの意味だよ。幼馴染さんの知り合いとして君を助けたいと思うけど、それとは別に君のことが異性として気になっている」

 今にして思えば、その時の僕はよくもそんな恥かしいことが平気な表情と口調で言えたものだと思う。兄友君のようなイケメンならともかく、普通ならこんな低スペックな僕が可愛い女の子に対して言うことが許されることではない。でもこのときの僕は必死だった。女に振られた真相を知ること、そして目の前の少女と仲良くなること。僕はその二つの目的だけは何としてでも成就させたかったのだ。

 とはいえこんなセリフを聞かされた妹さんの反応は気になったから、僕は少し話しを中断して彼女の反応を覗った。

 でも、妹さんは僕なんかがこんな告白めいたセリフを言ったことを別に滑稽に感じたりはしていないようで、馬鹿にするようでもなく真面目な表情で僕を見ていた。

「先輩。あたし、今のところ誰かと付き合うとか考えていなくて」

「うん、わかってる。それにどっちみち僕なんかじゃ君と釣り合わないこともわかってる。僕なんかが君みたいな子と付き合えるなんて考えてもいないよ。だから僕のことは気にしないでいいんだけど、それでもよかったら相談してくれないかな」

 その時、知り合って初めて妹さんがおかしそうに微笑んだ。

「先輩っておかしな人ですね。付き合いもしない女の子なんかに親切にしたって仕方ないのに」

 僕は彼女の微笑を呆けたように眺めた。その微笑みには僕に対する嘲笑めいた感情は少しもないように思えた。少しだけ飽きれている感じはあったけど。

 僕はその期を逃さず慌てて口を挟んだ。

「君が僕のことなんか相手にしてくれなくてもいいんだ。でも気になる女の子の力にはなりたいし、力になれるとも思う」
 その時、僕はもっと彼女の心配を取り除いた方がいいと思いついた。

「それと。僕が君に夢中になってストーカーみたいになることは絶対にないから。何だったら幼馴染さんとかに聞いてくれてもいい。僕はそういう男じゃないから」

 それからしばらく沈黙が続いた。僕はもう言えることは言ったのであとは妹さんの返事を待つだけだった。そして少しして妹さんがその沈黙を破った。
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/10(木) 23:48:33.11 ID:9CBSQsp4o
「先輩って変な人ですね」
 再びくすりと笑ってから妹さんが言った。「でも、生徒会長をしてるだけあって本当にいい人なんですね」

「生徒会長であることはあんまり関係ないけどね」

「あたし、せっかくだから先輩に話しを聞いてもらおうかな」

 やっと僕は彼女にここまで言わせることができたのだった。

「妹さん、僕を信じてくれてありがとう」
 僕は穏やかに言った。僕は冷静に話していたようだけど、やはり内心では相当緊張していたようだった。そしてその緊張がようやくほぐれ出すのを感じていた。

「何で先輩がお礼を言うの? 何か変なの」
 妹さんは僕をからかうように言った。これではどっちが年上なのかわからない。

「あと、妹さんって言うの止めませんか。後輩なんだからあたしのこと、妹って呼び捨ててください」

「君が溜め口で話してくれるならそうしてもいいけど」
 僕はこの時緊張が去って行ったせいで少し調子に乗ってしまったかもしれない。妹さんに僕のことなんか相手にしてくれなくてもいいと言ったばかりなのに、こんな調子のいいことまで言ってしまうなんて。

 案の定、彼女は少し警戒した様子たように見えた。でもそれは僕の誤解のようだった。再び彼女は笑った。

「それでいいよ、先輩。そのかわりあたしのことも妹って呼び捨ててね」

「わかった」
 僕は最高な気分になってもいいはずだったけど、ここまでうまく行き過ぎると逆に不安な気持ちが湧き上がってくるのを抑えることができなかった。礼儀正しい正統的な美少女だと思い込んでいた妹だけど、この反応はどうなのだろう。いきなり親しげに僕に話しかけるなんて。

 彼女は意外と男と遊びなれた子だったのだろうか。その時僕は少し不安に思った。

 それでもその疑念は、眼の前の美少女から気安く話しかけられたという喜びや優越感には勝てなかった。とりあえず今は妹と仲良くなれたことだけ考えよう。

「じゃあ、早速だけど君の話を聞きたいな」
 僕は彼女に言った。
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/10(木) 23:51:34.04 ID:9CBSQsp4o
「先輩には全部お話しするけど、どこから話せばいいのかなあ」
 妹は、ついさっきまでの僕に対する疑念を完全に払拭したような親しげな口調で話し始めた。そして僕はそのことに密かに興奮していた。僕は最初の難関を突破したのだった。それも予想していたよりスマートな方法で。

「先輩、とりあえずこれを読んでもらっていい?」
 彼女は自分のスマホのメーラーを開いて、それを読むように僕を促した。

 それはどこかからか転載を繰り返されたメールみたいだった。


from :女
sub  :やっほー
本文『さっき始めたばっかだけどもう200レス超えちゃった。今日は流れが早いみたい。兄君が本当にあたしに興味があるなら下のURL開いてみて。今日は人多過ぎだから早めに画像消しちゃうし。じゃあ、もし気に入ってくれたらレスしてね。そんでさ、もしレスしてくれるならレスの中に、
制服GJって書いてね。それで兄君だってわかるから。じゃあね』


 これだけでは全く意味の通じないメールだった。でも僕は凍りついたよう差出人の名前欄を見つめていた。僕の昔の彼女の名前がそこにあった。そして、本文中には兄君の名前もあったのだった。
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/10(木) 23:52:05.30 ID:9CBSQsp4o
今日は以上です

また明日再開予定です
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/11(金) 00:08:48.92 ID:5v5nj2M2o
はいおつ
妹幼男
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/11(金) 05:45:19.74 ID:nHn4VERSO
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/11(金) 07:07:30.60 ID:r5yqlzrIO
女には幸せになって欲しい
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/11(金) 12:37:58.93 ID:aSTQW7GIO

もしかして携帯のメール転送機能を予めセットして日々監視してたのか?
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/11(金) 21:48:54.46 ID:ZNdUCQ6Mo
「先輩、どうしたの」
 ふと気づくと僕はずいぶん長いことそのメールを眺めて凍りついたようだった。さっきまで感じていた妹と親密になれそうだという期待感や喜びは僕の中で影をひそめ、何か得体の知れない不安感が湧き上がってくるのを僕は感じていた。

「どうしたのって―――これだけ見せられても何が何だか」
 女と兄の関係がどうなっているのかは置いておくとしても、このメールのどこに妹を悩ませる問題があるのか僕にはわからなかった。

「これだけじゃないの。こっちも」
 妹はスマホを僕から取り返して少し操作してから再びメールが表示された画面を僕の方に示した。僕は妹に促され次のメールを読んだ。


from :女
sub  :無題
本文『じゃあ、そろそろ始めるね。今のところ他の子がうpしてる様子もないから、見てても混乱しないと思うよ。念のために繰り返しておくけど、女神板はうpも閲覧も18禁なんであたしは19歳の女子大生って名乗ってるけど間違わないでね。』

『モモ◆ihoZdFEQaoのがあたしのレスだから。あと結構荒れるかもしれないけど動揺して書き込んだりしちゃだめよ? 兄君は今日はROMに徹して』

『ああ、そうそう。これは余計なお世話かもしれないし、あんまり自惚れているように思われても困るんだけどさ。今日うpする画像はすぐに削除しちゃうから、もし何度も見たいなら見たらすぐに保存しといた方がいいと思うよ』

『じゃあ、下のURLのスレ開いて待っててね。8時ちょうどに始めるから』

『やばい。何かドキドキしてきた(笑) 女神行為にドキドキなんかしなくなってるけど、あんたに嫌われうかもしれないって思うとちょっとね。でも隠し事は嫌いなので最後まで見て感想をください。あ、感想ってレスじゃないからね』

『じゃあね』
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/11(金) 21:50:44.79 ID:ZNdUCQ6Mo
 女神板。18禁。十九歳の女子大生。メール本文に散りばめられた単語が僕の不安を煽った。それにこの文面からは女と兄君はずいぶんと親しい仲であることがうかがわれた。

 何よりこのメールの趣旨が、女が女神行為をこれから実行しその様子を兄君に見てもらいたがっていることにあることは明らかだった。

 ・・・・・・女神行為? あいつが何でそんなことを。僕と別れていた僅か二年余りの間にいったい彼女に何が起きたのだろう。そして女と兄君はやはり付き合っているのだろか。

 僕は混乱していた。妹と親しくなれたら、その後は彼女の相談を真摯に受け止める予定だったのだけど、今の僕はそれどころではなく女の変貌にうろたえていたのだった。女はいったいいつからこんなことをしていたのか。女の女神行為と僕が女に振られたことには因果関係はあるのだろうか。いくつもの疑問が同時に僕の心の中でせめぎあった。

 それでも、しばらくすると僕は何とか自分の心を制御することができた。今は自分にとって何が大切なことかを考えるべきだ。それは妹と親しくなることと、女に何が起きているのかを知ることだった。そしてそのために何をすべきかを考えた時、ここで僕が女のメールの内容にいくら悩んでいても結果は出ない。僕の目的のために今すべきことは妹さんの話を傾聴することなのだ。

 僕はようやく混乱する思考を鎮めて改めて妹を見た。

 ―――彼女は僕が混乱している間、黙って僕を観察していたようだった。僕の混乱振りに飽きれるでもなく、助け舟を出すでもなく、自分の話を強引に進めるわけでもない妹。その表情からは何やら僕のことを見極めようとしているような冷静さが感じられた。

 僕は、自分で勝手に思い込んでいた妹の印象を改めざるを得なかった。この子は決して甘やかされた可愛いだけの幼い少女ではない―――女といい妹といい僕が魅力を感じる女性はなぜ例外なく複雑な思考を持っているのだろうか。かつて僕は女のことをとても中学生とは思えない
ほどしっかりと自分を冷静に見つめていると思ったことがあったけど、一見幼い甘えん坊のような、そして大人しそうな妹さんも実は女と同じような複雑な考えを秘めている少女らしかった。

 僕はため息をついた。僕は何でこういう面倒くさい、自分の考えを心に固く秘めているような女の子に惹かれてしまうのだろう。今にして思えば幼馴染さんが僕を傷つけまいとして取った単純でひたむきな行動が懐かしく思えるほどだった。その行動に結果的には僕は傷付いたのだけど、少なくとも彼女が何を考えて僕に接近したのかは簡単に理解できたのだから。
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/11(金) 21:51:17.47 ID:ZNdUCQ6Mo
「まあ君が見たがっているスレがどれなのかはわかったよ。URLも記されていたし」
 僕は気を取り直してそれまでじっと僕の反応を見ていたらしい下級生に話しかけた。「でも、何で見たいのかという動機は全然わからないね。最低でもそれくらいは話してもらえないかな? 前にも言ったけど下級生に18禁の画像の見方を教えるんだったらそれなりの理由は聞きたいな。
僕の生徒会長としての立場もあるし」

「・・・・・・それはこれからお話しします―――そうしたら先輩、あたしのこと助けてくれる?」
 妹は表情を一変させ再び頼りないけど可愛らしい下級生らしい表情になった。

「―――あたしの味方になってくれる?」

 僕くらい人間観察ができて僕くらい人が何を考えているのかわかるのなら、こんな単純な手にひっかかることはないはずだった。でも僕の目的に近づくためには妹と親しくなる必要があるのは自明の理だったし、何より僕は彼女に本気で惹かれていたのだった。女とか兄とかの関係を知
りたいという目的が、妹と対面して話を重ねるにつれ次第に薄れてほどに。

「そうするよ」
 僕は頼りない守ってあげたい女の子を装いだした妹に返事した。「君を助けたいし、何より僕は君のことが好きだから」

 僕はこの時、この段階で口にするのは危険なことまで喋ってしまっていた。君のことが気になるではなく君のことが好きだと僕は宣言してしまったのだった。それは妹に引かれるかもしれないという意味からも、妹に弱みを握られて先導を奪われるかもしれないという意味でも最悪のタイミ
ングの告白だった。でもその告白を口にした途端、それが今の僕の真の想いだということに気がついた僕は逆に気が楽になったのだった。

 そして妹はその言葉を聞いてもドン引きすることもなく勝ち誇る様子も見せなかった。彼女は淡々と話を再開した。
878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/11(金) 21:53:22.51 ID:ZNdUCQ6Mo
「先輩、お姉ちゃんとは親しいの?」
 妹は予想外の方に話を進めた。

「特に親しいというわけでは・・・・・・生徒会で一緒だからよく話はするけど」
 妹は僕が幼馴染さんに告白して振られたことを知っているのだろうか。小学生の頃からの知り合いで、副会長の言うように最近まで毎日一緒に登校する間柄なら、僕なんかに告白されて困惑した幼馴染さんが妹に相談したとしても不思議はない。でもそれは確実な話ではなかったから、
とりあえず僕は無難な返事をしたのだった。


「そうか。じゃあお姉ちゃんは何も言わなかったかもしれないけど―――先輩、あたしお兄ちゃんのことが大好きなんです」

 幼馴染さんからは妹の話は聞いたことがないのは確かだったけれど、妹の極度のブラコンぶりについては副会長から聞いたことがあったから、そのこと自体には僕は驚かなかった。ただ、どうしてそんなことをわざわざ僕に話すのだろうという疑問は感じた。妹は女と兄君との付き合いに不満を感じているのだろうか。

「あたし昔からお兄ちゃんが好きで、今まで何度も男の子に告白されてもいつもお兄ちゃんと比べちゃって」
 妹は続けた。

「あたしももう高校生なんだし、実のお兄ちゃんと恋人同士になれるわけなんてないってわかってるんだけど」
 もうか弱い少女の振りをする余裕は彼女にはないようだった。この告白は嘘ではない。そう直感した僕はいろいろと混乱している自分の心を静めて、クライアントの話に没頭する姿勢になった。過去の経験が生きていたのか僕はそれを自然に傾聴する体勢に移行することができたのだった。

「続けて」
 僕は彼女の目を見ながら言った。

「お姉ちゃんが昔からお兄ちゃんのことが好きだったことは知っていたの。そしてお姉ちゃんがあたしのお兄ちゃんに対する気持ちを知っていて自分の気持を無理に抑えていたことも」
 妹は冷静に話を続けていたようだったけど、テーブルの下で握り締めていた手の震えが彼女の装った冷静さを裏切っていた。

「君は幼馴染さんのことが大好きなんだね」
 僕は穏やかに口を挟んだ。

「・・・・・・うん。お姉ちゃんは昔からあたしのことを気にしてくれて、うちは昔から両親の仕事が忙しくて普段家にはいなかったんで、お兄ちゃんとお姉ちゃんがあたしの両親のようだった」

「君はいいお兄さんといい幼馴染のお姉さんに恵まれたんだね」
 僕は彼女に話をあわせた。彼女はそうやってこの二人に甘やかされ守られて成長してきたのだろう。

「うん。お兄ちゃんとお姉ちゃんには本当に感謝してる。でも・・・・・・そんなお姉ちゃんにあたしは辛い想いをさせてたんだなって思ったら、お姉ちゃんに申し訳なくて」

「それで君はどうしたいの」

「どうしたいというか、この間お姉ちゃんに言ったの。もう自分に正直に素直になってって。あたしのことはもう気にしないでって」

「君はそれでよかったの?」
 ブラコンという言葉では言い表せないほど兄君に依存してきた彼女にとってはそれは思い切った、辛い選択だったろう。

「うん。あたしもそろそろお兄ちゃんを卒業しなきゃって思った。今でも一番好きなのはお兄ちゃんだけど、あたしがお兄ちゃんと結ばれることなんてなんだから、それなら二番目に好きなお姉ちゃんにお兄ちゃんの恋人になってほしいって」
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/11(金) 21:55:00.93 ID:ZNdUCQ6Mo
 その頃になると妹は僕の様子を気にする余裕もなくなったみたいで、手が震えるどころか全身を震わせ目にはうっすらと涙を浮かべるようになっていた。

 僕は次の言葉を催促せず彼女が落ち着きを取り戻すのをじっと待った。心情的には妹の手を握るか肩を抱くくらいはしたかったけど、それはせっかく心を開いた彼女を警戒させてしまうかもしれない。それにこの頃になるとだんだん僕は落ち着きを取り戻してきていた。むしろ今では取り
乱しているのは妹の方だった。僕は心理的に妹より優位に立ったということもあり、彼女が再び話し出すのを余裕で待つことができたのだった。

「あたしがお姉ちゃんにそう話したとき、お姉ちゃんは最初は驚いていたの」
 しばらくして自分の袖で涙を拭いた妹が話を再開した。

「だから、あたしは最初はお姉ちゃんがお兄ちゃんのことを好きだと思っていたのは勘違いかなって思ったんだけど・・・・・・そうしたらお姉ちゃんが、妹ちゃんありがとうって言って」
 ここで彼女はまた俯いて涙を浮かべたけど、今度はそれほど取り乱すことはなかった。

「それで、その後何が起きたの?」
 僕は興味本位の質問と取られないよう努めて静かな口調で聞いた。

「お姉ちゃん、お兄ちゃんに告白したんだけど・・・・・・お兄ちゃんにすぐには返事できないって言われて」

「保留されたってこと?」

「うん・・・・・・。一応、親友の兄友さんがお姉ちゃんのことが好きみたいでそのことを気にしてるらしいんだけど」

「一応ってどういう意味かな」
 僕はそこがかなり気になったので、本当はまだひたすら話しを聞きだしていなければいけない段階なのだけれど、思わず突っ込んでしまった。

「あたしね、お兄ちゃんに好きな人ができたんじゃないかって思った。それでお姉ちゃんの気持ちに応えなかったんじゃないかって」
 妹はそう言った。いったん収まった体の震えが再び彼女を襲ってきたように見えた。

「それがこのメールの『女』なんだ」
 僕はそう言った。妹は一瞬ためらったけど、結局はゆっくりと頷いた。
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/11(金) 21:56:01.20 ID:ZNdUCQ6Mo
短くてすいませんが今日はここまで

多分明日も投下できると思います

ここまで無駄に長い駄文にお付き合い感謝です

おやすみなさい
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/11(金) 22:20:45.02 ID:5v5nj2M2o
おつ
いおお
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/11(金) 23:55:31.02 ID:1XQOeaP8o
おつおつ
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/13(日) 00:13:20.99 ID:ngk7TrFdo
おつ
これが駄文なら最高に素敵な駄文だ
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/13(日) 23:39:16.47 ID:DZQ2v8yTo
 女と兄君は帰宅途中のスーパーで初めてちゃんと話をしたらしいけど、その際の女の態度はとても積極的だったそうだ。単なる同級生だよと兄君は妹に言い訳したけど、妹の女の子の勘では女が兄君に気があることは明らかだったと言う。そして妹には兄君の方も女のことに興味がある様子に見えた。

 兄君のそういう態度に傷付いた妹を見かねて幼馴染さんが兄君に注意したそうだけど、結果的にそれは兄君を意固地にしただけに過ぎなかった。

「今にして思うとお姉ちゃん、あたしのためというより自分の気持を素直にお兄ちゃんにぶつけたんじゃないかなあ」
 妹はそう言った。

 その後、妹は兄君への依存から立ち直ろうと努力を始め、一方でそんな妹に励まされた幼馴染さんは兄君に告白したのだった。結果として幼馴染さんは兄君に返事を保留されたのだけど、その理由は幼馴染さんを好きである兄友君への遠慮だったそうだ。

「あたしはお兄ちゃん離れしようって決めたから、お姉ちゃんのことが気の毒だったの。でも、ちょっとだけほっとしたかもしれない。お兄ちゃんとお姉ちゃんが恋人同士にならないで今までみたいに三人で一緒に仲良くいられるかもって」

「今はそういう状態なんでしょ? それなら問題ないよね」
 妹の暗い表情から目を逸らしながら僕はわざとそう言った。もちろん問題なんてあるに決まっていた。それは女の問題だった。ただ、ここまでの妹の話では兄君が女に好意を持っている、あるいは兄君と女が付き合い出したという証拠はないはずだった。

 あのメールのことを除けば。

「お兄ちゃんは女さんが好きなんじゃないかと思うの。そして女さんもお兄ちゃんを」
 妹が答えた。

「・・・・・・それはメールのことでそう思ったの?」

「うん」

「そもそもこのメールって、どうして君が見れたの?」
 それは多分妹を追いつめるであろう質問だったけど、ここまで来たら聞きづらいところだけを避けて通るわけにはいかなかった。

 案の定、妹は真っ赤になって俯いてしまった。

「あの・・・・・・いけないことだとは思ったんだけど、お兄ちゃんがお風呂に入ってる間にお兄ちゃんの携帯を」
 妹は小さな声で告白した。それ以上言わせるのはかわいそうだったので、あとは僕が補足してあげることにした。

「お兄ちゃんが気になってお兄ちゃんあてのメールを見ちゃったわけだね。それで女からのメールを2通見つけて自分のアドに転送して送信履歴を消した」

「・・・・・・」

「僕は責めてるわけじゃないよ。もちろん普通ならエチケット違反だけど、君にも辛い事情があったわけだし」

「・・・・・・ありがと」
 妹は小さく呟いた。
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/13(日) 23:41:59.50 ID:DZQ2v8yTo
「それでこのメールを見てどう思った?」
 答えなんてわかりきっていたけど、相談役の口からではなく自分から語らせる方がコンサルティングする上では効果的だったから、僕は作法に従って続けた。

「どうって・・・・・・こんなメールやりとりするくらいだもん。まだ付き合ってないにしても、お互いに十分その気があるとしか思えないよ」
 妹が言った。

「そう言えばこのメールに兄君は返信していなかったの?」

「うん。どっちも受けただけで返信してなかった」

「じゃあ次の質問だけど、この二つのメールにはURLが貼ってあるけど、君はそれを踏んだ?」

「踏むって? ああクリックしたってことね。うん、見てみたよ」

「どうだった?」

「最初のメールにあったURLは、このスレッドは過去ログ倉庫に保管されていますとかって出て・・・・・・何かよくわからなかった」

「二つ目のメールのURLはどうだった」

「うん・・・・・モモっていう名前の人がM字とか乳首はだめとかレスしてて」

 妹は辛そうだったけど、このあからさまな破廉恥な言葉に僕の方もダメージを受けていた。女は変った性格だったけど性的に奔放というわけはなかったはずだった。それが女神板でM字だの乳首は駄目だの娼婦まがいのレスをしている。正直、女神板のことはよく知っていたのだから、最初に女のメールを見せられた時にこうなることはある程度予想はしていたのだけど、実際にその言葉を妹の口から聞くと僕は再び気分が暗くなっていくのを感じた。

 僕と女が付き合っていた頃だって手を繋ぐくらいが精一杯だった。でも性的な面では奥手な僕はそれだけでも十分嬉しかったのだ。逆に女がそれ以上の接触を求めていたら僕は戸惑っていただろう。2ちゃんねる的に言うと僕は典型的な処女厨だったから、僕は手を繋ぐことで満足している女が好きだった。でも、それは僕の勘違いで、女は相手が僕だったから手を繋ぐ以上のことをしようとはしなかったのだとしたら。現に、女は女神行為をしている。そしてあろうことか兄君に自分の女神行為を見るように勧めているのだ。

 同じ高校に進んだことを連絡してこなかったことや、僕には手を繋がせただけなのに兄君にはそれ以上に積極的な好意を示している女のことを考えると、中学時代の僕の大切な思い出は全て僕の錯誤だったのかもしれなかった。
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/13(日) 23:46:07.99 ID:DZQ2v8yTo
「先輩?」
 妹が黙り込んだ僕の方を見て言った。「顔色悪いけど大丈夫?」

 僕は妹の柔らかい声で瞬時に自分の役割を思い出した。いろいろ混乱していたけれど、今は妹のケアに専念しないといけない。僕は気を取り直して言った。

「ほら、このURLにmegamiってあるでしょ。このスレは女神板のスレだよ。自分の裸とか際どい下着姿とかをスレで不特定多数の閲覧者に見せることを、女神行為って言うんだ。そして見せる人は女神と呼ばれている・・・・・・乳首は駄目は、そういうリクエストを断ったレスだろうね」

「前にも言ったけど画像は見られなかったの。何かすぐに削除されちゃうみたいで」

「ネットって不特定多数の人が見てるからね。画像をそのままにしておくといろいろ女神にとっては危険なんだよ。だから自衛のためにすぐに画像は削除するんだ。たまたまリアルタイムで遭遇した人だけが画像を見ることができるというわけさ」

「・・・・・・先輩、削除された画像を見ることができるって言ってたよね」

「正確に言うと見ることができる可能性はあるってことだけど」

「その方法を教えてくれる?」

「僕は君に言ったよね?18禁のサイトを下級生に紹介するなら、何でその下級生がそんなにその画像を見たいのか知りたいって」

「・・・・・・それは」

「言いづらいなら僕が聞くよ。君は兄君に過度に依存することから卒業しようとしたそうだけど、兄君に彼女ができるのは許せるわけ?」

「だからそれは言ったでしょ? お姉ちゃんにもうあたしのことは気にしないでって話したって」

「聞いたけど、それは僕の聞きたいことじゃないよ―――幼馴染さんと兄君が付き合い出したとしても、多分それはこれまでの君たち三人の仲良し関係の枠内の変化に過ぎないだろ? ほら、君だって比喩的に言ってたじゃん。兄君と幼馴染さんは君の両親のようだったって。それが現実になるだけでしょう」

「・・・・・・どういう意味?」

「兄君と幼馴染さんが付き合ったとしたら君は辛いかもしれないけど、それでも仲良し三人組でいられることには変わりないわけだ」

「・・・・・・」

「僕が聞きたかったのは幼馴染さん限定ではなくて、その他の女の子とが兄君と付き合うことまで許せるのかってこと」

「・・・・・・お兄ちゃんの恋愛を邪魔する気はないの」
 妹は再び涙を流し始めた。これではコンサルやカウンセラー失格だった。でも、ここだけははっきりとさせておかないといけない。僕は敢えて挑発的な言葉を口にした。

「たとえそれが女さんでも?」
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/13(日) 23:48:55.88 ID:DZQ2v8yTo
 しばらくの沈黙のあと妹は顔をあげ僕の方を真っ直ぐに見て言った。

「お兄ちゃんが好きな人ならあたしは許せるよ」

「でも、お兄ちゃんにふさわしくないような破廉恥で汚い女だったら絶対に許さない」
 その時の妹の目の光に僕は少しぞっとした。自分以上に大切な相手という概念を僕はこれまで抱いたことはなかったのだけど、彼女にとっては兄君はそういう存在なのかもしれなかった。

「メール見る限りだと、女さんが女神であることは間違いなさそうだけど」
 その言葉は妹を傷つけたかもしれない。でも同時に僕の心も自分のその言葉に痛みを感じたのだった。

「あたし、お兄ちゃんが好きな人なら大抵のことは許せると思うの」

「そうか」
 ようやく僕は妹の心情を掴んだようだった。この子が画像を見たがるのは、女の女神行為が妹が許せる「大抵のこと」の範囲内なのかを知りたいのだろう。

 僕は腕時計を見た。もうかなりいい時間になってしまっていた。窓の外は夕暮れを通り越して暗くなっている。

「まあ、だいたいはわかったよ」
 僕は言った。「さっきも言ったとおり僕は君のことが好きだから君に協力する」

「先輩」

「いろいろくどく聞いて悪かったけど、女さんがどういう人か一緒に確かめよう。画像だけじゃなくてもいろいろと手段はありそうだし」
 僕にはこの時もう気がついていた。僕のしようとしていることは僕が心を惹かれるようになった眼の前の少女を助けることになるのかもしれないけど、僕のかつての彼女だった女を傷つけることになるかもしれない。

「明日また部室で話そう。その時にいろいろ教えるから」

 それでも妹と親しくなりたいという欲望、僕の中学時代の一番大切な思い出が、その中心人物だった女によって汚されたという想い、そしてそれを確認したいという欲求。それらを考えあわせるとると、この時の僕にはもう他の選択肢は考えられなかったのだ。

「うん・・・・・・先輩、ありがと」
 妹は細い声でようやくそれだけ言ったのだった。
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/13(日) 23:55:40.01 ID:DZQ2v8yTo
「こんな時間になっちゃったけど、家は大丈夫?」
 僕は今更ながら心配になって妹に聞いた。

「うん。最近はお兄ちゃんのご飯の支度とかしてないし、家にいても自分の部屋にいるようにしてるから」
 だから心配しないでと彼女は少しだけ泣いた跡を残している顔で微笑んだ。

「じゃあ帰ろうか。駅まで送っていくよ」
 僕は立ち上がった。

「ありがと」
 妹は男のこういう親切には慣れているようで、三年生で生徒会長で部長の僕の申し出にも恐縮することなく自然に礼を言った。

 そうして僕と妹は二人並んで駅の方に歩いて行ったのだった。もう下校時間はとっくに過ぎていたはずだけど、それでも数人の学校の生徒たちが駅の方に向かって歩いている姿を見かけた。

 逆に言うと僕と妹が寄り添って歩いている姿も彼らに見られているはずで僕はそのことを少し心配したけれど、妹は他の生徒たちの視線など全く気にしていないようだった。

 駅の改札まで来たところで妹は僕を振り返り、僕の片手をその華奢な両手で握った。

「先輩ありがと。あたし、人に感情を見せるのが苦手だからそうは見えないかもしれないけど、先輩にはすごく感謝してる」

 ふいに僕の心臓がごとっていう粗雑で大きな音を立てたように感じて僕は狼狽した。妹に聞かれなかったろうか。

「まだ、僕は何もしてないよ。感謝するならもっと先だろ」
 僕は何とか辛うじて冷静に返事をすることができた。

「ううん。今でも先輩には凄く感謝してます―――こんなことお兄ちゃんにもお姉ちゃんにも相談できないし」

 状況的に言っても利害関係的に言ってもそれは彼女の言うとおりだった。彼女には兄君への想いを相談できる相手は身近にはいなかったのだ。

 客観的かつ全人格的に彼女の相談を受け止めてあげられる人。傾聴者とはそういう人間のことを言う。彼女にとってはそれは僕なのだった。

「いいよ。何度も言うようだけど、そして僕は君の好意とかは全然期待していないけど・・・・・・それでも僕は君のことが好きだから君を助けたい」

「先輩・・・・・・」
 その時、急に妹は僕の手を握りながら背伸びをして僕の頬に唇を軽く触れた。

「じゃあ、また明日ね。さよなら先輩」

 僕は頬に残る妹の唇の感触を感じながら彼女に手を振った。

 ・・・・・・客観的かつ全人格的に。僕がそうでないことは今の僕が一番よく知っていた。妹のことを考えているようで、実はこれは僕にとって極度に自分勝手なゲームだった。

 僕の思い出を踏みにじった女。

 僕の(偽装だけど)告白を断った幼馴染さん。

 僕が今惹かれている妹。

 女、幼馴染さん、妹。その全員が兄君への想いを抱え込んでいるのだった。僕の周囲の女の子を独り占めしている兄君。これが兄友君なら僕はいっそ気が楽だったろう。成績優秀でスポーツ万能でイケメンの彼なら。

 僕の心に副会長の兄君への評価が思い浮んだ。あの時彼女は兄君のことを一言でばっさり切り捨てたのだった。


『普通だよ、普通。顔も普通だし成績も普通』


 女や幼馴染さんのことは仕方がないけど、僕にはまだ唯一の希望として妹がいる。妹を手に入れ、兄君には相応の罰を下そう。そのために女が巻き込まれてもそれは僕を裏切った彼女の自業自得というものだった。

 僕はその日、頬に残る妹のキスの感触を何度も思い出しながら帰宅の途についた。その時の僕には、おぼろげながらこの先すべきことはだいたい見当がついてきていた。
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/13(日) 23:56:50.98 ID:DZQ2v8yTo
本日は以上です。昨日は投下できずにすみません

明日も可能なら再開したいと思います

あと長くなりそうです。いろいろ申し訳ない
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/13(日) 23:57:24.36 ID:AtmoJa9Xo
おつおつ
幼馴染男妹……
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/05/14(月) 00:00:30.71 ID:Kp5s9lRp0

会長病んでるな
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/14(月) 00:01:10.42 ID:PZ8Qhpdao
乙です
兄友兄コンビ+妹幼馴染みコンビによる会長攻撃が楽しみだ
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/14(月) 00:41:27.58 ID:Oa7CGG1no
なかなか女が再登場してくれなくてツラい
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/14(月) 06:58:47.39 ID:D8xtzeMIO
会長は幸せ?になるぬかな
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/14(月) 23:03:48.86 ID:+QyIqOOCo
 帰宅して風呂に入り食事を終えた僕は、自室のPCの前に陣取り別れる前に妹から転送してもらった女のメールをスマホからPCに転送した(ちなみに妹にメールを転送させる過程で僕は妹のメアドをゲットしたし、妹にも僕のメアドを教えることができたのだった)。

 今日はいつも習慣になっている授業の予習や受験に向けた対策は諦めるつもりだった。宿題は出ていないから作業に専念できる。まずはVIPのスレを開こう。当然、DAT落ちしているので妹はスレを見れなかったようだけど僕は●を持っている。僕は専ブラを立ち上げ女の最初のメー
ルに記されているURLをコピーしてそのスレを開いた。

『暇だからjk2が制服姿をうpする』)

 予想していたことだけどレスの多さに少し困惑した。これは女が立てたスレなのだから>>1のIDでレスを抽出すれば話は早いのだけど、僕は怖いもの見たさに突き動かされ時間をかけて最初からスレを追っていったのだった。


『とりあえず顔から。目にはモザイク入れました』
『制服のブラウスとスカート。鏡の前で撮ってます』

 もちろん画像は見れるはずもなかったけれど、女のレスには自分の格好の簡単な説明が入っていたから彼女がどんな姿を晒しているのかはだいたい想像がついた。

 外野のレスも当時のこのスレの盛り上がりをうかがわせるようなものだった。


『女神きたーーーー!!』
『ここが本日の女神スレか』
『かわいい〜。もっとうpして』
『ふつくしい』
『ありがとうありがとう』
『光の速さで保存した』
『セクロスを前提に結婚してください』
『これは良スレ』
『つか全身うpとか制服から特定されね?』


 そして女も律儀にレス返していた。


『>>○ 特定は大丈夫だと思います。よくある制服なので。心配してくれてありがと』


『>>○ ならいいけど無理すんなよ。校章とかエンブレムとかはぼかしといた方がいいぞ』
『つうかお前らこれって転載だぞ。前にも見たことあるし』
『何だ釣りか。解散』


『>>○ 今撮ってるんだけど。前にも何度かうpしてるんでその時見たのかな? とりあえずID付きで手と腕』


『おお。確かにIDが』
『俺は信じてたぞ』
『つうかexif見りゃ今撮影してるってわかるじゃんか。お前ら情弱かよ』
>>1のスペック教えて』


『首都圏住みの高校2年です』


『彼氏いる? 年上はだめ?』
『処女?』
『可愛いよね。これだけ可愛いとやっぱイケメンしか眼中にない?』


『>>○ 彼氏はいません。年上でも大丈夫ですよ〜』
『>>○ 処女です』
『>>○ 顔よりか優しくて頭がいい人がいいです』


『30代のリーマンだけど対象外?』
『アドレス交換しない?』
『出合厨は氏ねよ』
>>1も全レスしなくていいからもっとうpして』


『次は足です。太くてごめん』


『むちゃ綺麗な足だな』
『全然太くないっつうかむしろ細いじゃん』
『なでなでしたい』
『パンツも見せて』
『何という神スレ』
『もっと、もっとだ』
『もっと顔みたい』


『パンツはダメです。つ横顔』
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/14(月) 23:08:00.80 ID:+QyIqOOCo
 僕はスレを追っていくごとに次第に重苦しい気分に包まれていった。中学時代の女はクラスで浮いているわけではなかったけど、それは彼女自身の、人の話しを聞く人の相談に乗るという努力に立脚して得た立場に過ぎなかった。だから、僕と知り合った女は自分が密かに持て余していた人に認められたい、人に関心を持ってもらいたい、人に話を聞いて欲しいという欲求を、僕を利用することで解消していたのだった。そしてそんな役割を担った僕がいたからこそ、彼女は転校するまでの間学校内で「いつでも相談の乗ってくれるいい子」という役を演じきることができたのだった。

 そして愚かな僕は、自分が彼女にとっての精神安定剤だということは理解していたけれど、それでもあの頃僕はそういう役割を果たしている僕のことを女は好きなのだと思い込んでいたのだ。

 でも今なら理解できる。自分でも認めるのは辛かったけど、僕には当時の女のある意味利己的な心の動きがわかったような気がした。校内で一緒にいる時の女の僕への好意は嘘ではなかったと思う。ただ、転校することが決まった女はもう僕には利用価値がないことに気づいたのだ。遠く離れてしまい、女の承認欲求を常に一緒にいて満たすことができない僕に、引越し後の彼女は今までと同じ価値を見出さなかったのだろう。

 そうして僕は女に見捨てられたのだ。

 僕は自分の傷を自らかき混ぜるような、鋭い苦痛の伴う想いを回想しながらレスを読み進めた。


『みんな構ってくれてありがとう。ちょっと用事が出来たのでうpはおしまいです。みんなまたね〜』


 これで女の女神光臨は終了のようだった。


『楽しませてもらったよ。気をつけて行ってらっしゃい』
>>1乙 良スレだった』
『うpありがと。またな』
『今日は冷えるから上着着とけよ おつかれ〜』
『またうpしてね』
『コテ酉付けてよ』
『転載されるから画像ちゃんと削除しとけよ』
『帰ってくるまで保守しとこうか』


『制服GJ』


『みんなありがと。保守はいいです。今日は帰宅が遅くなるのでこのスレは落としてください』
『>>○ 制服をほめてくれてありがと。どうだった?』


 制服GJ。これはメールで打ち合わせていたとおりのキーワードだから、多分これは兄君のレスなのだろう。そして僕はそのレスに対する「どうだった?」という女のレスに、女が兄君へ微妙に媚びているような雰囲気を感じた。
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/14(月) 23:09:50.30 ID:+QyIqOOCo
 僕は次のメールに記されたURLを専ブラで開いた。megamiという単語からもこのスレが女神板のスレであることは明らかだったので、僕は少し警戒してそのスレを開いた。その途端にその恥知らずで猥褻なスレタイが目に飛び込んできた。


 【貧乳女神も】華奢でスレンダーな女神がうpしてくれるスレ【大歓迎】


 確かに女はどちらかというと細身の体つきをしていたからこのスレの需要にはあっているのだろうけど、女は決して華奢というほどではない。華奢で守ってあげたいというのは妹のような子のことを言うのだ。その時、僕の頬に妹がしてくれたキスの感触が蘇った。その感触に勇気付けられた僕は気を取り直して再びスレを追い始めた。

 そのスレは何年か前に立っていたものなので、これまでにもいろいろな女神が光臨していた。一からスレを追っていくことの不合理さに気がついた僕は、一気に先月くらいのレスまでスレを飛ばした。それからまたレスを確認して行くと、兄君へのメールに記されていた女のコテトリがあった。


モモ◆ihoZdFEQao『こんばんわぁ〜。誰かいますか』

『いるぞ〜』
『モモか。久しぶりだね』
『モモちゃん元気だった?』
『ちゃんと大学入ってる?』

モモ◆ihoZdFEQao『人いた。最近恋に落ちたせいか痩せてますます貧乳になりました(悲)』

『美乳じゃん』
『美乳なんだろうけど手で隠すくらいならうpするなボケ』
『乳首も見せないとか何なの』
『モモちゃんの乳首みたいです』
『美乳というより微乳かもしれん。こんなんに需要ねえよ』
『>>○ スレタイも読めんのか。モモ、ナイス微乳。手をどけようよ』
『肌綺麗だな。こないだまで女子高生やってだけのことはある』
『乳首見せる気ないなら着衣スレいけよ』
『ふざけんな。削除早すぎるだろ』
『即デリ死ねよ』
『のろまったorz』
『次の画像うpしてくれ』

モモ◆ihoZdFEQao『画像は15分で削除します。ごめん』
モモ◆ihoZdFEQao『あと乳首はダメです。需要ないかなあ』

『ねえよ帰れ』
『需要あるよ。乳首なくてもいいから次行ってみよう』
『モモの身体綺麗だからもっと見たいれす』
『次M字開脚してみて』

モモ◆ihoZdFEQao『リクに応えてみました。乳首はダメだけどM字です。15分で消します』
モモ◆ihoZdFEQao『ほめてくれてありがとうございます。じゃ最後は全身うpです。乳首なしですいません。15分で消します』
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/14(月) 23:13:03.27 ID:+QyIqOOCo
 例によって画像は確認できない。でも女と外野のレスの応酬から女がどんな感じの画像を貼ったのかはだいたい理解できてしまった。VIPのスレと違い兄君はメールで女に指示されたとおり何もレスしていないようだったから、女が自らうpした卑猥な画像を見てどんな感想を抱いたのか
は窺い知ることはできなかった。本当はそこがわかると妹の悩みにも応えやすくなるのだけれど。

 僕はスレを閉じた。多分、女神板を女のコテトリで検索すればこんなものではないくらいに女の愚行の証拠は押さえられるだろう。女がコテトリを自ら白状しているメールがあり、一方でそのコテトリで女が自分の意思で行っていた破廉恥な行為のスレも残っているのだし。

 問題は画像だった。テキストの羅列ではインパクトは薄い。女が晒した画像を押さえなければ決定的な行動は起こせない。僕は今日妹と別れて自宅に戻る時、おぼろげながらこの先すべきことはだいたい見当がついたと思った。それは確かにそのとおりなのだけど、やはり画像そのも
のがあるのとなのとではインパクトが全く違う。それについては僕には心当たりはあった。多分少し検索すればすぐにでも画像を辿れるだろう。

 僕は自室の壁にかかっている時計を見た。既に深夜の一時を越えている。

 その時僕にはもっといい考えが頭に浮かんだ。今、女の画像を見つける必要なんてない。明日、妹と一緒にいるところで、妹の眼の前で女の卑猥な画像を発見し妹に見せればいい。その方が妹も衝撃を受けるだろう。自分の兄が惹かれている女の、誰にでも裸身を見せる娼婦のようなその姿を目の当たりにすれば、妹はきっと落ち込むに違いない。

 そして、その妹を慰めて救い出せるのは今や僕だけなのだった。僕は再び頬に妹の唇の感触を感じた。ビッチの女には社会的制裁を与えよう。妹を傷つけた罪もあるのだし。

 さっき僕が考えていたのは僕の個人的な嫉妬から、兄君に罰を与え結果的に女が巻き込まれてもそれは女の自業自得というものだったけど、今の僕のターゲットは恥知らずな女に変っていた。そして兄君がそれに巻き込まれてもそれは僕の責任ではない。僕はようやく自分がしようとしている行為を正当化する理由を見出したのだった。

 それはかわいそうな妹の心の救済だった。これは決して女にコケにされた僕自身の個人的な復讐劇ではないのだ。

 僕はパソコンの電源を落としてベッドに横になった。いろいろ興奮しているため僕はなかなか寝付けなかった。この時、女と知り合う前の中学時代の僕のような冷静な傾聴者がいて僕をコンサルタントしてくれていたら、この時の自分の行為の動機の利己的な性格を炙りだしてくれていた
かもしれない。でも、もうそんなカウンセラーはその時の僕のそばにはいなかったのだった。
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/14(月) 23:15:09.90 ID:+QyIqOOCo
「僕は君が好きだし、君のことをよくもっと知りたい。だから、君の話しをもっと聞きたい。だから、君が素直に自分のことを話してくれてすごく嬉しかったんだ」

「今、ちょっと他のことを考えちゃったのは悪かった。副会長を傷つけたかもしれないって思ったんだけど、だからと言って君の話がどうでもいいなんてことはないよ」


「・・・・・・本当?」


「本当。だから、僕に迷惑とか僕をもう困らせないとか言わないでよ。副会長のことだって、僕は彼女と付き合う気なんてないんだし」

「僕は君が好きなんだ。これまでどおり、僕と付き合ってほしい」


 「変なこと言ってごめんね、先輩。あたしの誤解でした。あたしのこと、許してくれる?」


「もちろん。僕の方こそ誤解されるような行動してごめん」


「あたし、先輩のことが好き。あなたとお別れしなくてすんで本当によかった」


 シーンが暗転した。もう薄暗くなった放課後の駅前。


「いいよ。何度も言うようだけど、そして僕は君の好意とかは全然期待していないけど・・・・・・それでも僕は君のことが好きだから君を助けたい」


「先輩・・・・・・」

「じゃあ、また明日ね。さよなら先輩」

 急に僕の手を握りながら背伸びをして僕の頬に軽く唇を触れた妹。



 翌朝、僕は遅刻ぎりぎりの時間に目を覚ました。僕は全身にじっとりと嫌な汗をかいていた。何でこんな夢を見たのだろう。それは、女と一番距離が縮まった時の甘美な記憶だった。そして次のシーンは、妹が背伸びして僕の頬にキスしてくれた昨晩の記憶だ。

 かつて付き合っていた女の、まるでAV女優のような姿を見て気が弱くなってるんだろう。僕は自分の見た夢について考えるのを止めて階下に下りた。遅刻寸前だから朝食は省略でいいけど、出社する前の父親を掴まえなければならなかった。


 ・・・・・・僕が家を飛び出した時、僕のバッグはいつもより重かった。その中には父から借りたモバイルノートとモバイルルータが入っていたからだ。
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/14(月) 23:15:43.73 ID:+QyIqOOCo
本日は以上です

明日可能ならまた再開したいと思います
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/05/14(月) 23:18:52.65 ID:RoRcu+gR0
乙よ
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/14(月) 23:26:15.93 ID:PZ8Qhpdao
乙です
かいちょ〜アスペ街道まっしぐらw
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2012/05/14(月) 23:36:46.38 ID:UgUG0zXno
こんな軽々しくキスするか普通?
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/14(月) 23:42:16.81 ID:PZ8Qhpdao
>>903
会長の妄想だったりして
女の事も自意識過剰で自分の行為を過大評価してるとか
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/14(月) 23:53:24.72 ID:SLH0Espxo
おつおつよ
幼馴染と妹と男がね
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/15(火) 07:53:47.79 ID:0z713QoIO
うんうん。大体わってきたぞ

後は兄友の不可解な行動の意味だな
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/15(火) 23:28:33.13 ID:Bk01SXm7o
 その日の放課後、僕は生徒会室に顔を出した。時間が早すぎたせいで室内には副会長と幼馴染さんが何やら雑談しているだけで、他に役員の姿は見当たらなかった。二人の会話を邪魔することに少し気が引けたけど、僕は急いでいたので副会長に話しかけ必要な指示を彼女に伝えた。それだけ済ませて僕が部屋を出ようとすると副会長はあからさまに不服そうな顔をした。そして僕に向かって何かを話そうとしたけど幼馴染さんのことを気にしたのか、結局彼女は何も言わなかった。

 そのことにほっとして僕が生徒会室を出ようとした時だった。それまで黙って僕と副会長のやりとりを聞いていた幼馴染さんが口を開いた。

「あの、先輩」
 それは副会長ではなく僕にかけられた言葉だった。

「うん―――どうしたの」

「先輩、最近生徒会にいないでパソコン部の方にばっかりかかりきりになってますけど・・・・・・ひょっとしてあたしのせいですか」
 幼馴染さんは思い詰めたような表情で言った。

「君のせいって・・・・・・何でそうなるんだよ。こんな時期だけどパソ部に新入部員が入ってきたから指導しないといけないだけだよ」
 僕はどぎまぎして答えた。いったい幼馴染さんは急に何を言い出したんだろう。しかも副会長が聞いているところで。

「でも先輩、あのことがあってから学祭の準備に加わらないし、あたしのことも避けてるみたいだし」

「だからそうじゃないって」

「あの・・・・・・生徒会には先輩は必要な人ですし、先輩が気になるならあたしが役員を辞めても。先輩の態度が変になっているのはあたしの責任だし」

 何を言っているのだ―――この上から目線の勘違い女は。僕はその時彼女を憎んだ。彼女は、僕が彼女に振られたために彼女を避けて卑屈な行動を取っているのだと断定し、それなら僕を振った自分が身を引くというご立派なことを提案しているのだった。

 僕をコケにするのもいい加減にしろ。

 僕はこの時幼馴染さんをというより、幼馴染さんや兄友君に代表されるような他者から好意を持たれて当然と考えている類いの人種に激しい憎悪を抱いた。幼馴染さんは自分が僕にとって高嶺の花だということを前提に、その高嶺の花である自分が僕のようなゴミと付き合えるわけはないけど、それでもそのことによって僕を傷つけたことをすまないと思っているということを言っているのだった。

 それは、自分は優しい女だから例え自分にとってゴミクズのような男を振ったとしても、そのことに対してきちんと罪悪感を感じられる優しさを持っているのだとアピールしているのと同じだった。



「あんたさあ、ガキみたいに拗ねるのはいい加減に止めなよ」
 それまで黙っていた副会長までそこで口を挟んだ。「いつまでも振られて傷付いた自分をアピールされると本気でうざいんだけど。会長の癖に下級生に心配させてどうすんのよ。しかも、あんたの方が幼馴染さんに告って始めたことでしょうが」

 幼馴染さんへの憎悪を募らせていた僕に対して副会長は説教するように言った。そうじゃないのに。僕はもう反論する気すら失って、この場の雰囲気が自分にとって想定外の流れになったことに忸怩たる想いを抱いた。

「前にも言ったけど誰だって振られることなんかあるんだし、あんただってそんなことは承知でこの子に告ったんでしょ。別に失恋とかは全然恥かしいことじゃないけど、失恋したことに拗ねて構ってちゃんやってるあんたの姿は正直痛いよ」

「副会長先輩、もういいんです。悪いのはあたしだし」
 幼馴染さんが副会長の話に割り込んだ。

「あんたも会長を甘やかすのやめなよ。あんたが役員を辞める必要なんて全然ないよ」
 副会長は今度は矛先を幼馴染さんに向けた。

 僕はもうこれ以上、この場の雰囲気に耐えられなかった。
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/15(火) 23:31:15.71 ID:Bk01SXm7o
 僕はようやく乱れる心を静めてできるだけ冷静に話すよう努めながら言った。

「正直、何で僕がこんなに非難されなきゃいけないかよくわからないけど、ここの役員はみんな優秀だし学祭の準備に必要な指示は不足なく出してるでしょう」

 僕はなるべく感情を抑えたトーンで喋ることに腐心しながら続けた。

「でもパソ部の方はそうは行かないんだよ。新入部員の面倒もろくにみようとしない奴らばっかりだし、大切な新人だから僕が面倒を見ないと」

「パソ部の新人ってどうせオタクなんでしょ? 放っておいたって好きなネトゲとか勝手に始めるんじゃないの?」
 僕の言うことを頭から信用していない副会長は言った。「あんたの言うことは全然信用できないんだよね」

「嘘じゃないよ。しかも一年の女の子だしなおさら部員たちには任せておけないというか」

「一年の女の子?」
 妙なところに副会長が食いついてきた。「あんたが幼馴染さんへの面当てでこんなことをしてるんじゃないというのが本当だとしたら、あんた今度は一年生を狙っているのかよ」

「そうじゃないよ。とにかくそういうことだから、僕はもう行くよ」

 その時、幼馴染さんが僕の方を見て言った。

「もしかしてその新入部員って、妹ちゃんって子じゃないですか?」

 間抜なことに僕は今まで幼馴染さんと妹が親密な仲であることをうっかり忘れていたのだった。これからしようとしていることを考えると、妹さんがパソ部に入部したことは女や兄君の関係者には伏せておきたかったのだけど、今さらここまで明白な事実に対して嘘をつくことはできなかった
。そうじゃないよと否定して後でそれが嘘だとわかった場合のダメージの方がはるかに大きいだろうし。

 なぜ幼馴染さんがパソ部の新入部員を妹だと見抜いたのかはわからなかったけど、とにかく僕はこの場を離れたかった。

「そうだよ」
 僕は短くそれだけ言って、これ以上彼女たちの制止の言葉に耳を貸さず半ば強引に話を打ち切って生徒会室を後にしたのだった。
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/15(火) 23:32:43.52 ID:Bk01SXm7o
 部室に入ると妹はもう既に部室に来ていて、相変わらず所在なげにぽつんと座ったまま俯いてスマホを弄っていた。

「やあ」

 僕は妹の別れ際のキスを意識してしまい、少しぎこちない声で妹に声をかけた。

「あ、先輩」

 顔を上げた妹の表情にぱっと笑顔が灯った。彼女は初対面の時とはうって変わったように親し気な態度を僕に示した。

「昨日はありがとう、先輩」

「いや、僕の方こそ」
 僕の方こそとは変な切り返し方だった。これではまるで僕が妹のキスに感謝しているみたいじゃないか。僕は少し狼狽したけど、妹の笑顔を見ているとさっきの部室での屈辱的な会話でささくれ立っていた心が癒されていくように感じた。

「ここじゃまずいから、部室を出て場所を変えよう」
 その言葉の意味は彼女にもすぐに伝わったようだった。

「うん。どこに行くの?」
 彼女はもう僕のことを信用しているようで、すぐに自分のバッグを持ち上げて立ち上がった。

「この時間なら屋上には人気がないだろうし」

「そうだね。人目があったらまずいよね」
 妹は言った。僕に人気のないところに連れられて行くこと自体には警戒心すらないようだった。
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/15(火) 23:34:16.77 ID:Bk01SXm7o
 目論見どおり放課後の屋上には人気は全くなかった。僕たちは屋上に設置されている古びた石のベンチに並んで腰かけた。寄り添って座っていたわけではないので、僕と妹の間には空間がある。僕はモバイルノートをバッグから取り出して僕と妹の間に置いた。

 僕は黙ってノートを起動し、専ブラを立ち上げてブクマしておいたスレを開いた。今日のところは淡々と妹に事実だけを伝えるつもりだった。この先すべきことは見えていたけれど、とにかくまずは客観的なデータを妹に見せることから始めるつもりだった。彼女が動揺したとしてもそれはこの先避けては通れない道だった。僕はまず、妹が見ようとしたけどDAT落ちして見れなかったVIPのスレを開いた。

「女さんの最初のメールに記されていたスレがこれだ。今日は読めるようにしておいたから見てごらん。僕はずっと待っているから時間かけて読んでみて」

「・・・・・・わかった」
 妹は緊張した表情でディスプレイに表示されているスレを読み始めた。


『暇だからjk2が制服姿をうpする』)


 僕は真剣にスレを読んでいる妹の姿をじっと眺めていた。じっと眺めるに値する容姿の女の子だったし妹はスレに没頭していたから、僕が彼女をどんなに眺めてもそのことに気まずい思いをすることはなかった。でもその時の僕は一年生の美少女を鑑賞していたわけではない。むしろスレを読む彼女の反応を観察しようとしていたのだ。途中妹は画像へのリンクを踏もうと無駄な努力をしていた。

「これって画像見れないの?」
 妹はスレの途中で僕の方を見て聞いた。

「どうもアップしてすぐに削除しちゃうみたいだね」
 僕は答えた。

「じゃあ顔も見れないし、これが本当に女さんかどうかなんてわかんないじゃん」

「まあ経緯からいって間違いないんだろうけど」
 男へのメールの内容とそこに記されたスレがこのスレであることを勘案すると、当然これらの画像には女の姿が写っていたずだった。

「とにかく画像は無視して最後までスレを読んでみたら」

「・・・・・・わかった。先輩の言うとおりにする」
 妹は再びディスプレイに目を落として画面をスクロールし始めた。
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/15(火) 23:37:52.36 ID:Bk01SXm7o
 途中スクロールするスピードが速くなった。さすがに雑談みたいなレスは適当に読み飛ばすことにしたのだろう。二十分ほどで妹は全レスを読み終わったようだった。

「・・・・・・制服GJっていうレスがあった」
 妹が画面から目を外して暗い声で言った。

「うん。兄君のレスだろうね。兄君はやっぱりリアルタイムでこのスレを見てたんだろうね。もちろん画像も」
 僕は言った。彼女を誘導しないこと、今日の僕はそれだけは気をつけようと思っていた。これからすることは全て妹の自主的な意思で始めなければならないのだ。そうでなければこれは僕の個人的な意趣返し、個人的な復習劇になってしまう。

「女神板の方は見れたんだよね?」
 僕は妹に聞いた。

「うん。全部は見てないけど、メールの日付のあたりのレスでモモっていう名前の人が画像を見せてたみたい」

「まあ、画像は見れないんだけどね。でも、これで女さんが誰にでも身体を見せるような女であることはわかったわけだ」
 僕は話を進めた。「で、どう思う? 君は兄君の交際には反対しないと言ってたけど、こういう女神が君のお兄さんの彼女でも許せるのかな」

 妹は少しためらった。

「わからないよ・・・・・・でも、少なくともこれじゃ証拠にならないよね。名前があるわけでもないし」

 ここからは待ったなしの一発勝負だった。女の画像を妹に見せなければならない。かといってVIPや女神のスレがまとめられていなければそれで計画は止まってしまう。

「ちょっと待ってて」
 僕は妹に言って、女のコテトリで検索を開始した。検索結果の上位は2ちゃんねるのものだったけど、少しスクロールするとURLが2ちゃんねるのものではないサイトがヒットしていた。僕はざっと検索結果を眺めた。

「・・・・・・何してるの?」
 妹が不安そうに聞いた。

「うん、ちょっと。あ、ヒットした」

「?」

「何々? えーとミント速報だって」
 ミント速報は2ちゃんねるのエロ系のスレをまとめている大手まとめサイトの一つだ。計画どおりだった。スレがまとめられているなら多分ここだろうと思っていた。

 そこで僕は少しためらった。ここはアダルトサイトだった。この間まで中学生だった妹にこんなサイトを見せていいのだろうか。そこは割り切ったつもりだった僕だけど、実際にミント速報の過去ログを開こうとする段になって急に僕は怖気づいたのだった。そもそも僕は童貞な上に女性に対して免疫がない。そんな僕が妹と肩を並べて裸だらけのミント速報を見る勇気はなかったのだった。こんなことを危惧している間も、妹は興味津々な様子で僕が画像を表示するのを待っている様子だった。

「何よそれ」
 ミント速報自体がぴんとこないであろう妹が質問した。

「まとめサイトみたいだね。それも結構エッチな」
 僕は顔を赤くして言った。みたいだねではない。僕は実はこのまとめサイトのことは以前から知っていたのだ。

「・・・・・・何でそんなもの見る必要があるのよ」
 妹が不思議そうに聞いた。僕は腹をくくった。もともと僕と妹をこんなエロいシチュエーションに導いたのは、僕のせいではない。全ては女のアブノーマルな嗜好から始ったことなのだ。僕は妹を黙らせた。とにかく女の画像が残っているログを探そう。

「ちょっと黙ってて・・・・・・」
 検索結果のURLをクリックするだけではお目当てのログにダイレクトに辿りつけないのがこの手のサイトの特徴だった。目的を達するまでにはいくつもの画面を別ウィンドウで表示させられる。僕は集中して目当てのログを追い求めた。

 しばらくして僕はようやくそこに辿りついた。

「あ、これだ。タイトルはミント速報の管理人が勝手に扇情的なやつをつけてるけど、さっきの貧乳どうこうというスレの、女が女神行為をしていたところのログだよ」」
 僕は妹に言った。
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/15(火) 23:41:38.59 ID:Bk01SXm7o
『今春入学したばかりの処女のJD1が大胆な姿を露出!!』


「ほら画像が残ってる。さっきのスレッドをまとめてあるんだね」
 僕はもう妹のことを考慮することなく一枚目の画像を妹に示した。クリックするまでもなく該当レスの部分に最初から画像は表示されていた。


 一枚目は、女の上半身裸身の写真。左手で胸の部分を隠している。目の上に線を重ねているけど、その表情は女のものに間違いなかった。

 二枚目は、鏡に写した女自身を撮影したもので、女はスカートを脱いで床に座りこんで足をMの形に開いている。開いた足の中心部にはブルーで無地のパンツがくっきりと写っていた。

 三枚目は、姿見に正面から自分を映した全身の画像で、その体にはブルーのパンツ以外何も身に纏っておらず胸だけは左手で隠している。


 その時は妹と二人で同じ学校の女子のヌードを見ているという異常な状況だったのだけど、僕はまず自分の元カノのはずだった女のヌードに嫉妬しつつ欲情していた。僕の下半身は冷静に駒を進めなければいけないこの時、僕の理性を裏切っている状態だった。その状態のまま女へのどす黒い感情と欲情に身を任せていた僕に、妹が泣きそうな声で話かけた。

「これって・・・・・・」
 おどおどした様子で妹は女のヌード写真から目を背けた。僕は気を取り直して妹に答えた。今は女に欲情したり怒りを感じたりしている場合ではない。

「目は隠してあるけど・・・・・・顔つきや体格からいってどう考えても女さんだな、これ」

「・・・・・・なんで、一体何であの人、こんなことを」

「さあ? それはわからないけどさ。少なくとも兄君にふさわしい女じゃないよね」
 僕はさりげなく妹に言った。妹は少しためらっていたけど、結局僕の方を見て頷いた。

「・・・・・・うん」

 ここまでは作戦通りだった。自分が途中で思わず動揺してしまったことは想定外だったけど、何とかリカバリーすることはできたようだ。

「もう少し画像を探そうか。これだけ無防備ならいくらでも出てきそうだね。バカな女」
 女をバカと言い放った時の僕の言葉は心から真実だった。・・・・・・バカな女。僕と付き合っていればこんな娼婦まがいのことをして承認欲求を満たす必要もなく、成績のいいクラスでも評判のいい女でいられたのに。これは女の自業自得以外の何物でもなかった。

「・・・・・・バカって」
 妹は、生徒会長の僕は人を非難することを言わないと思い込んでいたのだろう。その僕の暴言に驚いて妹は言った。

「だって、バカじゃん。つうか情弱っていうのかな」
 僕はもう女に同情するつもりはなかったから、僕の言葉はさぞかし冷たく聞こえただろう。
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/15(火) 23:45:44.89 ID:Bk01SXm7o
 その後も僕はミント速報を検索し続けた。VIPのスレは結局まとめられてはいないようで画像も発見できなかったけど、女がこれまで女神板で繰り返していた女神行為の画像はかなりの数を回収することができた。僕も妹もその頃にはこの異常なシチュエーションに頭が慣れてきてしまったので、一々女のセミヌードを見るたびに動揺することはなくなっていたけれど、最後に見つけたスレの画像を見た時は妹だけではなく僕でさえ泣きそ出しそうなくらいのショックを受けたのだった。


『【緊縛】縛られた女神様が無防備な裸身を晒してくれるスレ【被虐】』


 元スレのタイトルはこれだった。モモのコテトリのレスに張られた画像を一目見て妹は顔を背けて泣き出した。


 一枚目は、女が床に座り込んでいる画像だけど、後ろ手に縛られてカメラの方を怯えたような表情で見ている女が映し出されていた。

 二枚目は、一枚目とポーズは全く一緒だけど、女はブレザーを脱いでいてブラウスの前ボタンが全部外されているので女の肌が露出していた。スカートもめくられていて白く細い太腿があらわになっている。線が入って目を隠しているけどやはり女は怯えたような表情をしている。

 三枚目は、二枚目とポーズは一緒だけど、女はブラウスを脱いで上半身はブラしか着用していなかった。スカートは完全に捲くられてパンツが見えている。


 その怯えたような女の表情は、まるで女が拉致されて無理やり犯される寸前のように見えた。今までのあっけからんとしたヌードと異なりこの画像の女はまるでAV女優のように拉致されて犯される少女の演技をしていたようだった。

 収まっていた女への欲望が僕の中で再び沸き起こってくるのを感じたその時、妹が顔を上げて女の画像を厳しい視線で見つめた。

「どうしたの」
 僕は自分の興奮を抑えて妹に声をかけた。高校一年生には見るに耐えない画像だったろう。ショックも受けているはずだった。さすがに今日一日でやりすぎたかと思った僕が妹をケアしようと話し出した時。

「女さん・・・・・・殺してやりたい」
 妹は低い声でそれだけ言って再び泣き出した。

 僕が妹の肩を抱いてそっと引き寄せると、妹は逆らわずに僕の胸に顔を押し当てて泣きじゃくった。
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/15(火) 23:46:57.39 ID:Bk01SXm7o
今日はここまで

明日できればまた再開したいと思います

あと間違いなく次スレに突入しますので、次スレを立てたら誘導させていただきます
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/15(火) 23:51:03.19 ID:qf60NWEvo
おつやね
男に幼馴染に妹に
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/16(水) 00:04:09.07 ID:GN2S6Q2Wo
「妹さん・・・・・・殺してやりたい」
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/16(水) 12:28:24.52 ID:ovImYMpIO
「妹さん・・・・・・殺してやりたい」
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/16(水) 23:49:57.76 ID:QOIFkwBSo
 しばらくして泣き止んだ妹は僕の腕の中から身体を離して、うつむき加減に泣き濡れた瞳をハンカチで拭いた。

「ごめん先輩・・・・・・ありがと」

「・・・・・・うん」

 焦らす気ではなかったけど、この後どうするかについては僕の方から切り出すつもりはなかったから、僕は妹が落ち着くのをじっと待っていた。妹が僕から身体を離したせいで中途半端に置き去りにされた自分の腕を僕はモバイルノートの方に戻して、そっとミント速報の女の裸身が表示
され続けていた画面を閉じた。屋上には人気はないようだったけど用心するに越したことはない。

 そのまま妹が話だすのを待っていたけれども、妹はうつむいたまま黙ってしまってた。

 そのまましばらく沈黙が続いた。これからしようとしていることはある意味人の人生を左右することになるのだから、それを切り出すのは妹の方からでなければならなかった。僕の方からそれを積極的に切り出すわけにはいかない。

 それでも沈黙が続くと僕は少し焦り始めた。妹だってもう何をすればいいかは理解できているはずだ。どうすればいいかはわからなにしても、そうするという意思さえはっきりと口に出してくれれば方法論は僕が考えてあげることができる。そもそも妹だってそれを期待して僕に近づいたのだろうから。

 だけど、妹は何も喋り出そうとしない。妹もこの先に取るべき手段について僕の方から切り出されるのを待っているのだろうか。そうすることによって僕を共犯にし、結果に対する責任を僕と共有することによって自分の罪悪感を薄めようとしているのだろうか。
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/16(水) 23:52:16.72 ID:QOIFkwBSo
 そんなことはないだろう。僕は時分の考えを否定した。女の卑猥な緊縛画像を見てショックを受けている妹にはそんな回りくどいことを考える余裕があるとは思えなかった。

 僕はためらった。これから開始するかもしれないゲームは女の人生を変えてしまうかもしれない。仮にその実行犯が僕であるならその結果責任は取らざるを得ないのだけど、少なくとも自分の動機だけはみっともなくないものにしておきたかった。女の心変わり(というか最初から僕なんか女に相手にされていなかったらしいけど)への復讐心、あるいは女と兄君の仲への嫉妬心が行為の動機だったら、それではあまりにも僕が惨め過ぎる。たとえ誰かにばれなかったとしてもそれでは自分のメンタルがもたいないだろう。

 そう考えて僕は妹の方から話を切り出すのを待ったのだけど、相変わらず妹はうつむいて沈黙したままだった。事を始めてからはかなり僕も精神面に打撃を受けるであろうことは最初から覚悟していたけれど、始まる前から妹相手に神経戦になることまでは全く予想していなかった。

 このままだとせっかく勝ち取った妹の信頼までが揺らぎだしそうだった。

 ・・・・・・仕方ない。少なくとも話のきっかけくらいは僕の方から切り出そう。クライアントが黙りこくって行きどまってしまった時、こちらから方向性をアドバイスすることはよくあることだった。それだけのことだ。僕無理には自分を納得させた。決して妹の術中に陥ったというわけではない。妹には今や僕しか頼る相手はいないのだし。
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/16(水) 23:56:58.75 ID:QOIFkwBSo
「女さんの画像を見たわけだけど」
 僕は観念して自分の方から妹に話を振った。「殺してやりたいとか穏やかじゃないことまで言ってたけど、兄君の彼女として女さんは許せそう?」

 許せるわけがないから妹も黙っているのだろうけど、とりあえず僕は妹に聞いてみた。

「許せるわけないよ。あんな・・・・・・あんな姿を堂々と不特定多数の人たちに喜んで見せているような女なんて。お兄ちゃんの彼女じゃないとしたって理解できない」

 うつむいたままでようやく妹は声を出してくれた。小さな声だったけど妹の考えはストレートに僕に響いた。

「じゃあ、君はこれからどうしたい?」

「どうしたいって・・・・・・」

「つまり、女に女神行為を止めさせたいの?」

「え?」

「え、じゃないよ。君は何をしたいの? 僕は君のことが好きだから君がしたいと思うことなら手伝うけど、それにはまず君が何をしたいのかをはっきりさせてくれないとね」
 僕はやむなくききっかけは作ってあげたけど、それでも本当に肝心な部分は妹に言わせたかった。

「君はどうしたい? 繰り返すけど女に女神行為を止めさせたい?」
妹は黙っていた。僕はやむなく話を続けた。

「女が女神行為を止めれば兄君との仲は許せるの? それとも女が女神行為をするなんてことはどうでもいいけど、そういう女が兄君の彼女になることは許せない?」

「うん。女さんはお兄ちゃんにはふさわしくない。お兄ちゃんが好きな子と付き合うことにはもう反対はしないけど、家族として考えたら女さんなんか論外だよ」
 妹はようやく顔を上げてはっきりと言った。「今さら女さんが女神じゃなくなったって無理。パパとママだって・・・・・・お姉ちゃんだって、この画像を見たら同じことを言うと思う」

「じゃあ、話は簡単だね」
 僕は妹ににっこりと笑いかけた。「女さんと兄君を付き合わないようにさせればいいんだね」

「う、うん」
 妹は戸惑ったように答えた。「でもそんなことどうすればできるの?」

「難しいだろうね。僕が兄君の前に突然現れて、女神行為をするようなビッチは君にはふさわしくないよ。妹さんも心配してるよ、なんて言っても兄君は聞き入れないだろうし」

「先輩、あたしのことからかってるの?」

「違うよ。でも兄君は女の画像を全部見ているし女の女神行為のことは全部承知のうえで女さんに惹かれてるんでしょ」

「・・・・・・そうかも」

「だったら、正攻法で行っても兄君が女さんのことを嫌いにさせるのは無理じゃんか」

「・・・・・・じゃ、諦めるしかないの?」

「そうは言っていない。兄君と女さんが付き合わないようにする、あるいはもう付き合っているんだったら別れさせることは可能だよ」
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/16(水) 23:59:21.83 ID:QOIFkwBSo
「どうするの?」
 妹は細い声で言った。

 本当に気がついていないのだろうか。それともわざと僕の口から提案させようとしているのだろうか。僕は迷った。僕は自分が当初想定していたシナリオから逸脱し、いつのまにか僕の方から積極的に作戦を提案するような立場に追い込まれていた。

 ここに至って再び躊躇したけれど、結局妹への執着心が僕の理性を制圧してしまった。妹は僕の第一印象よりは清純な女の子ではないかもしれないけど、女とは違って複雑な思考の結果、僕を利用としようとするような子ではないに決まっている。盲目的な妹への執着が僕の心の中の小さな葛藤に勝利したようだった。僕はその手段を妹に話し出した。

「言っておくけど、これをやれば兄君と女は別れるだろうけど、そのかわり女さんには相当ダメージがあるし兄君だってそれなりに傷付くと思うよ」

「・・・・・・いったい何をする気なの?」
 何をする気なのって。

 妹は完全にことが僕主導で運ぶものだと思い込んでいるような口調で言った。でも妹に執着していた僕は心の中の妹の言動への疑問は押さえつけてしまっていたから、僕はその続きを話すことにしたのだった。

「何をって、簡単なことだよ。女の女神行為を先生にばらせばいいんだよ。ミント速報のURLを担任に送付するだけじゃん」

 そのことが意味することは妹にも理解出来たろう。それはある意味女の人生を、少なくとも女の高校生活を破壊することに繋がる行為なのだった。

 妹は黙り込んだ。ここまで深入りしてしまった僕だけど、妹のゴーサインがはっきりと示されなければこれを実行するつもりはなかった。今度は僕も妥協する気はなかった。妹が何か話出すまではもう自分も黙っているつもりだった。
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/17(木) 00:02:36.40 ID:5/LK2Ndho
 屋上から見下ろす町の建物からは灯りがあちこちに点き出していた。空も薄暗くなってきていて、完全下校時刻ももうすぐだった。これで妹が決断しないなら今日はここまでにしよう。

 下校時間のアナウンスが流れだした。僕は妹の方を見ないで立ち上がった。

「今日はもう帰ろう。校門も閉まっちゃうし」
 僕はそう言ってモバイルノートをカバンにしまおうとしたその時だった。

 妹が立ち上がって僕の方を見つめたた。

「あたしが頼めば、先輩は協力してくれるの?」

 ようやく妹がそう言った。協力してくれるのと。そう、これはやるとしたら妹のために僕がすることではない。妹のために僕が協力して妹がこれをやるのだ。

「君に協力するよ。女さんにはひどい仕打ちになるだろうけど、僕は君のことが好きだから」

 妹は僕の手を握った。

「先輩、あたしに力を貸して。あたし決めた。女さんがどうなってもいいから、女さんからお兄ちゃんを引き剥がしたい」

 僕は僕の手に重ねられた妹の小さな手を握り締めた。それはすごく冷たい感触だった。

「じゃあ、明日から始めようか」

 妹は小さく頷いた。
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/17(木) 00:03:07.86 ID:5/LK2Ndho
今日は以上です

おやすみなさい
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/17(木) 00:04:10.63 ID:L/drC3GHo
おつかれちゃん
幼馴染と男だな
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 00:17:16.07 ID:FX+StSHAO
おつー

会長のこの矮小なキャラがなんか憎めない。
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2012/05/17(木) 02:52:49.29 ID:53dFo2Y3o
これで妹が会長と付き合ったら笑もんだな
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 07:10:31.91 ID:zyt9toYIO
妹×会長は念願成就じゃん
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 07:57:45.94 ID:4G1R/LsIO
こういう会長みたいなすへてを読み切ってます系のやついるよな。
だいたいコンプレックスが強いことが多い
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/17(木) 22:59:08.41 ID:5/LK2Ndho
 その日、僕はもう日が落ちて薄暗い通りを駅まで妹と一緒に帰った。彼女はもう何も言わなかったけど、校舎から出ると黙って僕の手を握った。完全下校時間になっていたので、周囲には先生に注意される前に校門を出ようと下校を急ぐ部活帰りの生徒たちで溢れていたし、校門の前には急いで生徒たちを校内から追い出そうとしている先生の姿もあったけど、妹はやはり何も言わずに僕の手を握ったままだった。

 昨日に引き続き僕と妹が寄り添って薄暗い道を歩いている姿は、きっと下校中の生徒たちに目撃されていたはずだった。こんなことを繰り返していればそのうち僕と妹の仲が噂になるのは時間の問題だったろう。そういう可能性に気がついていないのか、あるいは気づいていてもどうで
もいいのか、妹は周囲を気にする様子もなく自然に僕の手を握ったままゆっくりと駅の方に歩いていった。どちらかというと僕のほうが周りの視線を気にして挙動不審になtっていたから、他人から見たら二人の様子は寄り添うというより、妹に手を引かれた僕が後ろからついて行っているように見えたかもしれない。

 妹にとってこれは恋ではない。僕は好奇心に溢れてた周囲の視線に戸惑いながらも、恥かしい勘違いをしないよう自分に言い聞かせた。妹と親密になることが今の僕の目標だけれども、それはこんなに簡単に成就するものではないはずだった。今の妹には僕のほかに相談する相手がいないし、僕には傾聴スキルがあったから妹にとっては僕は唯一の相談相手、それも信頼できる相談し甲斐のある唯一の相手だった。もともと年上の相手に自然に甘えることができる妹なのだから、信頼している相手に手を預けるくらいで妹の恋愛感情を推し量ることはできない。

 それに、今の僕は中学時代よりももっと自分に対して自信を持てなかった。手を繋いで一緒に帰るというだけなら女とだって同じことをしていた。そればかりか一度だけ、女は僕に向かって直接僕のことを好きと言ってくれたことさえあったのだ。でも結局女が僕のことを好きだということは僕の勝手な思い込みに過ぎなかった。そう考えると妹が頬にキスしてくれたり手を握ってくれる行為自体を過大評価してはいけない。

 有体に言えば妹にとって、僕は臨時のお兄ちゃんになったに過ぎないのではないか。僕はそう考えた。妹が今からしようとしていることは兄君を女から救うということだから、妹はこれまでのように兄君を頼るわけには行かない。それに対して僕は妹の意向を全人格的に尊重する態度をしつこいくらいに示してきた。そのことに安心した妹は、彼女の心の中で僕を臨時のお兄ちゃんに任命したのではないだろうか。
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/17(木) 23:03:57.53 ID:5/LK2Ndho
 そう考えると僕には、下級生の少女と手を繋いで暗い帰り道を一緒に歩いているこの甘い状況に、感傷的に浸りきる贅沢は許されていなかった。明日からはもっといろいろと仕掛けないといけない。そのためには妹を傾聴者である僕にもっと依存させていかなければならない。そのための布石は打ったし結果も今のところ予想以上だった。でもここで満足してしまっても何にも意味はない。この先に打つ手はだいたい思い浮んでいたのだけれど、もう少し体系的に整理しておいた方がいい。・・・・・・ただそれは妹と別れて自宅に戻ってからでもいいだろう。僕は少しだけ自分を甘やかした。この状況に浮かれさえしなければ、少しだけ、ほんの少しだけこの恋人同士のデートのようなシチュエーションに浸ってもいいかもしれない。それが僕の勘違いであるにしても。

 妹に手を握られながら、そんな考えをごちゃごちゃと頭の中で思い浮かべていた僕は、ふいに妹に話しかけられた。

「先輩、さっきから何を考えているの」
 妹が僕の方を見上げながら不思議そうに言った。妹もこの頃には自分の考えが整理できたようで、さっきまでの泣きそうな表情は見当たらなかった。その不意打ちに僕は少しうろたえた。僕はとても彼女に告白できないようなことを考えていたのだから。

「いや・・・・・・別に」
 僕は我ながら要領を得ない答えを口にした。でも彼女にはそれ以上僕を追求する気はないようだった。

「そう・・・・・・先輩?」

「うん」

「先輩って最近あたしに構ってくれてるけど、学園祭前なのに生徒会とかは顔を出さなくていいの?」

「ああ。それは大丈夫」
 妹の件がなかったとしても、そもそも生徒会にはい辛いのだけど、それは妹に言う話ではなかった。

「副会長とか幼馴染さんとか、みんなしかっりしているから。僕なんかがいなくても大丈夫だよ」

 どういうわけか妹は僕の答えを聞くと黙ってしまったけど、次の瞬間僕の手は彼女の冷たい小さな手によって今までより強く握りしめられたのだった。

「先輩、本当にありがとう」
 妹は僕の手を離して少しだけ僕の方を見てから、ちょうどホームに入ってきた電車に間に合うよう急いで改札の方に吸い込まれて行った。電車に乗る前に一瞬僕の方を見て手を振った彼女は、気のせいか少しだけ僕と別れることを名残惜しそうに思っているかのように見えた。
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/17(木) 23:09:01.44 ID:5/LK2Ndho
 自宅に戻った僕は、自分を捉えて離さない甘い感傷や将来へのはかない希望のような僕の心を乱す要素を自分の心の中から排除して、なるべく冷静に今後取るべき手段を考え始めた。

 僕たちの目標は、女神行為を繰り返している女から兄君を引き剥がすということだった。それに対してとりあえず採用できる最初の行動は、女の女神行為を画像付きで学校側に通報するということだ。それを実行したら、学校側は女に対して女神行為を止めて自分の行動を反省するように指導するかもしれないし、場合によっては女に停学処分くらいは言い渡すかもしれない。でも、それによって兄君と女が疎遠になることは期待できなかった。屋上で妹に話したように、兄君は既に女の女神行為を知っている。そして妹の言うように兄君が女のことが好きなのだとしたら、それは女の女神行為を承知のうえで彼女に惹かれていることになる。そう考えると女の女神行為が学校側に知られただけでは、妹の望んでいる結果は出ないだろう。

 次の行動を考えると、もはや選択肢はあまり多くなかった。こうなると兄君と女を別れさせるには物理的に二人を隔離するしか方法はない。普通ならそんなことを仕掛けることなんて不可能だ。まして彼らの知らないところで妹と僕がそんなことをできるわけがなかった。

 ただ、一つだけ方法があった。それにはやはり女の女神行為を利用する方法だった。

 普通なら許されることではない。それは人の人生を変えてしまってもいいというくらいの覚悟がなければできないことだった。それを実行するかどうかは別として、その考えが理論的に成立するかどうかだけ検証しておこう。僕はこれ以上考えたくないとしり込みする自分に鞭打ってシミュレーションを始めた。

 まず女の女神行為を校内に広く知らせること。これは、パソ部の副部長が管理運営している学校裏サイトを使えば造作もない。それだけで、普通の神経なら女は不登校になるはずだった。

 さらに2ちゃんねるで女の身バレスレを立てれば、女の実名が全国に晒されることになる。これがうまくネット上で広まれば、女は学校に来れなくなるばかりではなく社会的にも抹殺されることになる。

 僕はその状態を想像してみた。検索サイトで女の実名を入力すると、女の恥知らずな女神行為が画像付きでヒットするのだ。まとめサイトのようなのもできるかもしれない。つまり、女の将来の進学や入社の際、試験官や採用担当者が数分だけ時間と手間を費やしてネットで検索するだけで女の将来は閉ざされることになる。そしてここまでいけば女は姿を隠さざるを得ないから、兄君とはもう接触することすらできなくなるだろう。

 普通は知り合いに対してここまでできるものではない。僕だって女には恨みはあったけどここまでするつもりはなかった。ただ、妹がそれでもそれを望んだとしたら僕はそれを断れるだろうか。

 ・・・・・・とりあえずシミュレーションはここまでだった。もう少しひどい状況を考えることもできたのだけど、そういうことを生徒会長の僕が考えているというだけでもストレスを感じていたから、僕はもうこのあたり脳内シミュレーションを止めることにした。あとは明日、妹と話し合ってどこまでするかを考えよう。

 これから勉強をする気力なんてとても残されていなかった。僕は今日も勉強を放置して眠ることにした。そうすると、浅い眠りの夢の中に再び僕にキスし僕の手を握る妹の可愛らしい姿の甘美な記憶が現れてきたのだった。
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/17(木) 23:10:32.37 ID:5/LK2Ndho
短くてすいませんけど今日はおしまい

最近投下量が減ってますけど、しばらくはこんな感じになると思います

できればまた明日再開したいと思います
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/17(木) 23:13:32.89 ID:UyizexFpo

短いとかは感じないけどね!
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/17(木) 23:27:24.22 ID:ddfmWEZ9o
兄友なのか・・・?やっぱり兄友なのか・・・・??
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/17(木) 23:42:30.48 ID:L/drC3GHo
おつんつん
幼馴染と男で
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 23:57:24.08 ID:GzjDxZXIO

いつも満足のクオリティ
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 19:34:36.08 ID:kOw8GNNAO
ふえぇ……会長に爆発して欲しいよぉ……
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 20:00:25.82 ID:bm876CSIO
当事者に話を聞きもせず、一報的に加害対象としての悪と決めてかかってるしスゲーな
とても、これまで無数の人の話を聞き、人それぞれにはそれぞれの理由がある様を見続けてきた奴とは思えん
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/18(金) 20:22:50.06 ID:JDT8oYEwo
わいせつ物陳列罪は立派な犯罪ですよ
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/18(金) 20:26:03.51 ID:1N7J1cPNo
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/18(金) 23:24:01.81 ID:yfasADApo
 翌日、僕は学校に向かう坂道を歩きながら昨日の夜考えていたことを思い返していた。昨夜は自分では冷静に考えていたつもりだったけど、朝の明るい陽射しの中で自分が今後行うかもしれないことを改めて冷静に考えると、僕は次第に怖くなってきた。妹と仲良くなれたのは僕にとっ
て望外の喜びだったけれど、この後妹が実際に僕に行動を求め、僕がその要求に応じた後に僕を待っていることは何なのだろう。

 妹との要求を満たせたとしても、それで妹と恋人同士になれる保障なんて何もない。むしろ、せっかく兄君から卒業しようとしている妹はこれまでのように兄君に依存する状態に戻ってしまうかもしれない。そこまでは今までも僕が繰り返して考えていたことだった。そして、万一僕たちが仕
掛けるかもしれないこの作戦が外に漏れたとしても、ネット上で自分の裸身を餌に自らの承認欲求を満たすなんていうはかなくも愚かな行為を繰り返して、そうなる原因を作ったのは女だった。匿名の掲示板上で責められるのは女だけだろう。僕はこれまでそう考えていたのだった。

 ただ、朝になって今改めて冷静に考えると、これからするかもしれない行為は実は自分にとって結構危険な行為であることに今初めて僕は思い至ったのだった。

 女の実名を晒して女を追い詰めるということ。それは匿名の名無しのレスによって生じたことなら、その発端を作ったレスを誰がしたかはあまり問題にはされないだろう。

 でも、万一そのレスにより女が身バレする原因を作った人間が特定されたらどうだろう。移ろいやすいネット上の無責任な批判は、女を身バレさせた僕にも向かうことになるかもしれない。そうなれば、ある意味では女と同じく僕の将来もそこで終ることになるかもしれなかった。

 真面目な生徒会長が、同じ学校の後輩の秘密をネット上で大々的に暴く。そのこと自体にもスキャンダルな要素があるし、その原因まで追究されていくと僕と女の中学時代の付き合いまで晒されるかも知れない。

 僕がしようとしていることは、それくらい僕自身にとってもリスクの高いことだということに僕はその朝初めて気がついたのだった。
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/18(金) 23:26:21.66 ID:yfasADApo
 妹が示してくれた好意に有頂天になっていた僕は、妹を助けている自分自身に生じるかもしれないリスクについてはこれまであまり考えてこなかった。でも一度それに気がつくと、今まで冷静に女を破滅させる手段について考察していた自分が、いかに考えが甘かったか理解できるように
なった。これまで妹の甘い好意の片鱗に夢中になっていただけだった僕は、女を破滅させることによって生じる自分のリスクに初めて戦慄とした。

 僕は、女と兄君を別れさせることに協力すると妹に約束してしまっている。妹が求めれば、それがどんなに危険な道であっても僕にはもう断れないだろう。せめて、その手段が女に与えるダメージの大きさに妹がためらって、そこまでするのは止めようよと言ってくれるのを期待するしかなかった。

 その時、突然僕は誰かに頭を叩かれた。

「こら。あんた何で昨日話の途中で生徒会室から逃げ出したのよ」
 暗い考えから我に帰ると、副会長が僕を睨んでいた。

「あの後、幼馴染が落ち込んで大変だったんだよ」

「悪い。部活があったから」
 僕はもう何度目になるかわからないその言い訳をもごもごと口にした。

「本当に情けないなあ、あんたは。別に生徒会の役員の子に告るのは自由だけど、告られた幼馴染さんに生徒会をやめるとか言わせるなよ」

「僕はそんなつもりは」

「じゃあ何で生徒会室に来ないのよ。何で幼馴染さんをあからさまに避けて彼女に気を遣わせてるの? あんた彼女が好きなんでしょ。振られたとしても彼女の気持ちを考えてあげなさいよ、先輩なのに情けない」
 副会長も相当僕に言いたいことが溜まっているようだった。確かに無理もない。こいつは僕の代わりに学園祭の実行委員会を仕切ったり、僕を振って傷つけたと思い込んで落ち込んでいる幼馴染さんを宥めたりさせられていたのだろうから。

 自分の悩みで精一杯だった僕も、その時は副会長に申し訳ない気持ちがあった。今の僕は自分の義務を放棄して妹のことしか考えずに行動していたのだから。

「君には悪いと思っているけど・・・・・・」
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/18(金) 23:29:48.82 ID:yfasADApo
 そうして僕が副会長に謝ろうとしたその時、僕の片腕は誰かに抱きつかれ急に重くなった。僕はいきなり抱きついてきた妹に気がつき言葉を中断した。そして、僕を更に責めたてようと意気込んでいたらしい副会長も驚いたように黙ってしまった。

「先輩は何も悪くないです」
 妹は僕の左腕に自分の両手を絡ませながら、おそらく面識もないであろう副会長を睨んでそう言った。

「あんたは」
 副会長が言った。面識はないかもしれないけど、校内の男女関係の噂が好きな彼女は妹のことは知っていたようだった。

「たしか、幼馴染さんの知り合いの妹さんだっけ」

 妹はそれには答えなかった。

「先輩は悪くないです。あたしがパソ部に入部して、それで何もわからないでいることを心配してくれて面倒見てくれてるだけで」

「・・・・・・」
 副会長はとりあえず僕への悪口を中断し、むしろ当惑したように僕の方を見た。副会長には、僕の腕に抱き付きながら自分を睨んでいる妹の姿が映っているはずだった。

「あんたさ・・・・・・」
 副会長はとりえず妹を相手にせず僕に向かって吐き捨てるように言った。

「やっぱり女を乗り換えてたのか。幼馴染さんに振られたからって、すぐに下級生に言い寄るとか最低だね」

 僕はそれに対して何も言い訳できなかった。本当は幼馴染さんなんて好きじゃなかった。女と兄君と幼馴染さんとの関係を知りたいために、僕は幼馴染さんに告白する演技をしたのだ。でもそれを告白すれば僕はもっと最低の人間として認識されてしまう。そして、どんなに否定しよう
が僕は妹に惹かれてしまったことも事実なのだった。

 僕はその時はもう、硬直していて何も言い訳できる状態ではなかった。妹にまで僕が幼馴染に告白したことを知られてしまった。僕は、僕の腕に抱き付いている妹がこの時どんな表情をしていたのか確認する勇気すらなかった。

「言い訳もなし? あんたいっそもう生徒会長やめたら?」
 副会長は妙に落ち着いた声で僕に言った。こいつがこういう声を出すときは本当に怒っている時なのだ。これまでの生徒会での付き合いで僕はそのことを知っていた。

 どちらにしても、もう僕には副会長に言い訳できなかった。生徒会長であることとパソコン部の部長であることだけが、中学時代と違って無冠では全く人気のない僕の唯一の拠りどころだったのに、それさえ僕は失おうとしていたのだった。
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/18(金) 23:33:58.77 ID:yfasADApo
 その時、僕の腕に抱きついていた妹はそのままの姿勢で副会長に言った。

「副会長先輩って、もしかして会長のことが好きなんですか」

 妹のその言葉にその場が一瞬で凍りついた。

「あ、あんた、何言って」

 僕は副会長がここまで狼狽した姿を見るのは初めてだったかもしれない。彼女の表情は蒼白になり、そしてすぐに紅潮した表情でになった。

 僕は、この時初めて僕の腕にくっついている妹を見た。まだこの間まで中学生だった幼い外見を残した彼女は、一年生にとっては自分よりはるかに大人に思えるだろう副会長を前にして、少しも臆した様子がなかった。そして、妹は僕の方など振り向きもせず真っ直ぐに三年生の副会長を見つめていた。

「あたしに嫉妬してるんですか? だったらお姉ちゃんのことを心配してるような振りをするのはやめて、先輩に『あたしとこの子とどっちか好きなの?』ってはっきり聞けばいいんじゃないですか」

 副会長も今や紅潮した顔のままで妹を睨んでいた。僕はいたたまれない気持ちを持て余して、結局黙って下を向いてなるべく早くこの修羅場が終ることだけを心の中で祈っていた。それに校門の前に近いこともあり、みっともない三人の男女の様子はすでに相当の生徒たちの視線を集めているようだった。

「あと、副会長先輩は勘違いしてますよ」
 妹は平然と続けた。「先輩はお姉ちゃんに振られたからあたしに乗り換えたわけじゃないですよ」

 いったいこの子は何を言おうとしているのだろう。そして何が目的で僕をかばっているのだろう。僕は混乱していた。

「先輩があたしのことを好きだとしても、それはお姉ちゃんとは関係ない先輩の純粋な気持ちでしょ。そのことを非難する資格が副会長先輩にあるんですか」

「・・・・・・あんたさあ。調子に乗ってるんじゃないわよ、ブラコンの癖に」
 追い詰められた副会長はついにそれを口にした。でも、苦し紛れの反撃は相応に効果があったようで、妹はそれを聞いてこれまでの元気を失ったようにうつむいてしまった。

「・・・・・・それこそ、君には関係ないよな」
 僕は思わず妹をかばって口走った。「僕のことを責めるのはいいけど、それは妹のプライバシーの侵害だろ? ブラコンとかって全然今までの話と関係ないじゃないか」

 その時、僕は自分の腕に抱きついていた妹の手が更に力を込めて僕にしがみつくようにしたのを感じた。視線を妹のほうに逸らすと、今まで気丈に振る舞っていた妹が僕の方を潤んだ目で見つめていることに気がついた。
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/18(金) 23:36:37.31 ID:yfasADApo
 妹が僕の援護に元気づけられたのかどうかはわからない。でも、ブラコンと決め付けられて一瞬黙りこくってしまった彼女は再び副会長に向かって果敢に反撃した。

「とにかく、先輩が生徒会に出ないことと、先輩がお姉ちゃんに振られたこと、それに」
 そこで妹はちょっと言いよどんだ。

「・・・・・・それとあたしと先輩の仲がいいことを一緒にしないでください。もし先輩とあたしが恋人のように見えるとしたら、それは先輩じゃなくてあたしのせいですから」

 それはどういう意味なんだ? 僕は再び混乱した。

「そんなことを言ってると、それこそ副会長先輩があたしに嫉妬してるようにしか見えないですよ」

妹は顔を赤くしたけど、きっぱりと最後まで言いたいことを話し続けたのだった。

「もういい。あたしはこれからはあんたのことには関らないから」

 副会長はもう妹とは目を合わせず、僕に向かって捨て台詞のような言葉を吐き捨てて去って行ったのだった。
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/18(金) 23:37:12.07 ID:yfasADApo
今日はここまでです

お付き合いいただいてありがとうございます

おやすみなさい
947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/18(金) 23:37:53.80 ID:JDT8oYEwo
おやすみ
おさおと
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/19(土) 00:12:54.77 ID:sG+si/WYo
乙です

うーん、正直展開がよく分からなくなってきたっす
949 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/19(土) 00:40:12.03 ID:q1+pzl5DO
オレ イモウト キライ
950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/19(土) 05:05:41.29 ID:G3jRXSl9o
話の展開のまとめ的な何かが必要なのかな。
まぁ男が出番少ないのでさみしいなw
951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/19(土) 09:35:49.21 ID:av3kIDLDO
妹が一番策士な気ガガガ
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/05/19(土) 09:55:55.02 ID:sG+si/WYo
登場人物がみんな少しずつ性格悪いよな
兄友、幼馴染、妹、会長、女
主人公の兄が一番まともかも
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/19(土) 23:06:54.27 ID:PkPM/mEHo
 その日の昼休み、僕はこれでさっきから何度目かわからなくなっていたけど、朝の出来事を思い返してそのことの持つ意味を考えていた。朝の校門の前で、どうして妹はあそこまで僕に肩入れしたのか。副会長と僕のトラブルなんか彼女には全くかかわりのない話だった。妹は副会長とは面識すらなかったのだし。副会長が僕が生徒会室に顔を出さないことで責めていた言葉を聞いて、妹は罪悪感を感じたからだろうか。

 でも、それも不自然だ。僕はそう思った。副会長は直接的には僕が部活にかまけていることを責めたのではなく、僕が幼馴染を避けようとして生徒会活動に参加しなくなったことを責めていたのだ。だから妹が副会長の言葉を聞いたとしても、その言葉に彼女が罪悪感を感じる必然性はないのだった。

 妹が僕のことが好きで、その僕が副会長に責められていることに我慢ができなかったからか。そう考えたい気持ちは僕の心の底に根深く存在していたけど、冷静に考える癖がついている僕の心の他の部分によってその希望は明確に否定された。

 妹が僕を頼っているのは自分のしようと考えていることを実現するのに僕を必要としているからだ。確かに最近の妹は僕の手を握ったり、別れ際に頬にキスしたり、腕に抱きついたりという思わせぶりな行動をしている。でも、それは男として異性として僕を意識しているわけではなく、臨
時のお兄ちゃんとして僕のことを認識しているからだろう。そして最近よく理解できてきたのだけど妹の身びいきはすごく激しかった。妹が兄君や幼馴染さんに対して捧げる愛情は無限大だった。それに比べて周囲の生徒たちへの彼女の関心は、中庭の花壇に這っている虫に対する関心
とほとんど変わらないくらいだったのだ。その虫たちの中には妹に対して熱い視線を向けている男子もいたと思うけど、彼女はそんな視線に気がついたとしてもそれにはまったく無関心に近い態度を取っていたようだった。

 ついこの間までは僕もその虫たちの一人に過ぎなかった。それが、女と兄君を別れさせるという目標を妹と共有し出してから、僕も臨時のお兄ちゃんとして妹の意識の中では身内扱いされるようになったのではないだろうか。

 そう考えると、今朝の妹の言動は何となく理解できる気がした。僕のことなんか、男としては意識していない彼女だけど少なくとも今は彼女の意識の中で僕は彼女が守るべき身内のカテゴリーに入ったのだろう。

 そして僕は最初に妹に協力を持ちかけた時の彼女のセリフを忘れてはいなかった。


『君のことが異性として気になっている』
 そう言った僕に対して妹は真面目な口調で釘を刺したのだった。

『・・・・・・先輩。あたし、今のところ誰かと付き合うとか考えていなくて』

 そうだ。僕は出だしで一度彼女に拒否されているのだ。最近の妹の言動に惑うと最後には彼女を困惑させ自分も傷付くことになる。

 恋人にはなれなくても、妹が見知らぬ三年生の先輩に噛み付くほど僕のことをかばってくれただけでも十分じゃないか。少なくとも僕は妹にとって地面を這う虫ではなくて、身内の仲間入りを果たしたのだから。
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/19(土) 23:10:04.52 ID:PkPM/mEHo
 ふと気がつくと教室内にはもうあまり生徒たちは残っていないようだった。学食や購買に行く生徒たちは昼休みのベルと共に教室を出て行ってしまったから、ここに残っているのは教室の机を寄せ合わせて何人かのグループでお弁当を広げている生徒たちだけだった。今日は秋晴れの
陽気だったから弁当持参の生徒たちも中庭や屋上に行っているのか、教室に残って食事をしている生徒は数人くらいしかいなかった。

 あまり食欲はないけど午後の授業中にお腹が鳴ったりすると恥かしい。僕は購買で余り物のパンでも買うことにして席から立ち上がった時、教室のドアから誰かを探しているように室内を覗き込んでいる下級生の姿に気がついた。

「先輩、まだいてくれてよかった。間に合わないかと思っちゃった」
 妹は教室内で食事をしている上級生たちを全く気にせず、僕に向かって大きな声で話しかけた。

「どうしたの」
 妹の方に近寄りながら、僕は周囲の生徒の視線が気になって低めの声で返事した。普通、学年によって校舎が別れているうちの学校では下級生の生徒が上級生の教室を訪れることは滅多にない。そのうえ妹のような少女が僕のような冴えない男を訪ねてきたのだから、その姿に教
室内の注目が集まったのも無理はなかった。

「これからお昼でしょ? 一緒に食べない?」
 妹は周囲の上級生を気にせず平然とした態度で言った。

「別にいいけど。急にどうしたの」

「急じゃないの。先輩、いつも購買でパン買ってるみたいだから今日は一緒に食べようと思って先輩のお弁当を作ってきたんだけど」

「え」
 さっきまで期待する理由がないと自分で結論を出したばかりの僕は再び動揺した。女の子が僕のためにお弁当を作ってくれるなんて生まれて初めての体験だった。

「今朝、先輩に話そうと思ったんだけど副会長先輩に邪魔されて言えなかったよ」

「そうだったの」
 妹に恋焦がれている僕としては天に昇っているような幸せな気持になってもよかったはずなのだけど、やはり僕はどこまでも卑屈にできているのだろう。同級生たちの面白がっているような表情に僕は萎縮してしまっていた。

 妹はそんな僕の手を握った。

「天気がいいから屋上に行きましょ。中庭はさっき見たらもうベンチは空いてなかったしね」

 僕は呆けたように妹を見つめながら彼女に手を引かれるまま教室を後にした。
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/19(土) 23:11:42.36 ID:PkPM/mEHo
 屋上のベンチにも結構人がいたけど、どういうわけか前に妹と一緒に座ってモバイルノートで女神スレを見た時のベンチが空いていたので、僕たちはそこに腰かけた。妹は持参していた可愛らしい巾着袋を開けてお弁当が入ったタッパーを取り出した。

「先輩、どうぞ。美味しくないかもしれないけど」

 僕は妹に勧められるままに小さなおにぎりや、ちまちまとした綺麗な色彩のおかずを食べたのだけど、もちろん味わって食べる余裕なんてその時の僕にはなかった。

「美味しい?」
 妹が無邪気に聞いた。

「うん」
 僕はとりあえず頷いた。

「あ、そうだ。先輩に教えてもらいたいんだけど」
 食事中に急に思いついたように妹が言った。

「あたしも自分の部屋にパソコンが欲しくて・・・・・・どんなのを買ったらいいと思う?」

「どんなのって」
 突然思ってもいなかった話題を振られて面食らった僕だけど、これは考えるまでもなく返事できるような質問だった。

「正直、ネットを見るだけならどんなのでもいいよ。普通に量販店で売っている安いノートとかでも十分でしょ」

「それがよくわかんないから聞いてるのに」
 妹はふくれた様子で言った。そしてそんな彼女の表情すらとても可愛らしかった。

「だから部屋でネットするだけならどんな機種だって大丈夫だって。それともうちの部員たちみたいに何かやりたいことが別にあるの?」

「・・・・・・先輩が教えてくれた女神板とかミント速報とかが見れればいいんだけど」

 やっぱりそこか。

「・・・・・・だったらデザインが可愛いとか値段が安い方がいいとか、ノートかデスクトップとか」
 僕は無難に返事した。「その辺はどうなの」

「ノートで可愛いい方がいいな」

 僕はスマホで何機種かの画像を検索して彼女に見せた。パソ部部長としては腹立たしいほど簡単なミッションだった。何しろ、ノートで可愛くてネットに接続できればいいというのだから。
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/19(土) 23:14:36.36 ID:PkPM/mEHo
 いくつかのパソコンの画像をチェックしているうちに彼女はある機種が気に入ったらしかった。

「これすごく薄くていいなあ」

「別に可愛くはないよね。あと、それマックだし」

「これは駄目なの?」

「駄目じゃないよ。でも可愛いというより格好いい方に近いかな。それにAirって大学生とか社会人とかがよく持ってるんだけどね」

「それでもいい。これ欲しい」

 驚いたことに彼女はその場でそれを購入するよう僕に頼んだ。用意周到なことに彼女は父親のカードの番号やセキュリティコードをメモに控えてきていた。

「お父さんにお願いしたらこのカードでネットで買っていいって。本当はお兄ちゃんに頼むように言われたんだけど」

 まあ、今の妹と兄君の関係なら気軽にそういうお願いはできないだろう。これでは本当に僕は臨時のお兄ちゃんだった。

 二十万円以下ならいいらしい。僕はメーカーの直販サイトでそれを注文した(僕は妹の住所をこの入力過程で手に入れた)。あとはギフト扱いにして妹の父親の名前でなく彼女宛てに届くようにした。

「明日には届くみたいだよ」
 僕は彼女に言った。僕は彼女のために必死でパソコンを購入していたのに、彼女自身は僕が黙ってスマホでオーダーに必要な項目を入力していることに飽きてきたようだった。

「まだ終らないの」
 妹は不服そうに言った。「これじゃ、パソコンを注文しているだけでお昼が終っちゃうじゃん」

「もう少しだから」
 僕は答えた。こういうわがままを自然に、かつ無邪気に言えるところも僕が彼女に惹かれた理由の一つなのだろう。

「せっかく初めて先輩とお昼一緒なのに、これじゃあ何も話せないじゃない」
 僕の昼休みを多忙にさせた原因を作った妹は無邪気に文句を言った。
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/19(土) 23:15:50.70 ID:PkPM/mEHo
短い上に何も進展していない・・・・・・

辛抱強くお付き合いくださっている方に感謝します

できればまた明日更新したいと思います

おやすみさない
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/19(土) 23:47:17.75 ID:zyfkPX3so
はいおつおやすみ
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/20(日) 04:14:44.01 ID:Q6kduw6+o
三日分纏め読みした。
妹ちゃん、兄の為なら形振り構わないって感じだな。
無意識に会長の自己中見抜いて利用している感じ。
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/20(日) 23:50:55.22 ID:bkFoiF+Fo
 その夜、僕はうちの部の副部長が密かに開設し管理人をしている裏サイトを覗いてみた。そのサイトはくだらない校内の噂や、どうでもいい悪口で盛り上がっている低レベルの掲示板だと僕は断定していたから、このサイトを見るのは久しぶりだった。

 とりあえず最近のレスの付近を中心に見て行くと、探していた女と兄君関係のレスが付いているのを見つけた。


『××学園の生徒集まれ〜』


『2年2組の女さんって、最近感じよくね?』

『あ〜。うちもそう思った。初めは人間嫌いな人なのかなって思ってたんだけど。最近良く話すけどいい子だよ。成績いいけど偉そうにしないし』

『うちも女から本借りちゃった。つうか今度一緒にカラオケ行くんだ☆』

『つうか女って可愛いよね。俺、告っちゃおうかな』


『誰よあなた。もしかして2組のイケメン?』

『違うよ。俺2組じゃねえし。つうか2年ですらねえよ』

『・・・・・・女って兄と付き合ってるんだよ。知らないの?』

『嘘。マジで!?』

『マジマジ』

『でもさ、兄と兄友って幼馴染さんを取り合ってたんでしょ? 兄は幼馴染さんを諦めちゃったのかな』

『まあ、兄友が相手じゃ勝ち目は(笑)』


 やはり女と兄君は既に付き合っているらしい。

 予想していたこととはいえ、このことを妹が知ったらと思うと僕は気が重かった。女と兄君の仲が急接近しているであろうことは妹だって予想しているだろうけど、実際にそれが確定的に真実だと知ればやはり彼女は相応に傷付くに違いなかった。そして女の女神行為にひどく拒否反応を示している妹は、次のステップに進むことを僕に要求するかもしれない。

 今まで僕は女に対して実際には何の手出しもしていなかった。妹の相談に乗りつつ妹と親しくなって行っただけだった。でも妹が本気で女と兄君を別れさせようと思い詰めたら、僕はその手段を提供せざるを得なくなるだろう。それが女の人生を変えてしまうほどひどいことであっても、ここまで妹に惚れ深入りしてしまっている僕には妹の要求を断ることはできないだろう。
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/20(日) 23:53:00.89 ID:bkFoiF+Fo
 翌朝、僕は登校中に妹と出会わないかと期待したのだけど、彼女の姿は見当たらなかった。そしてこれは幸いなことに僕は副会長にも遭遇することなく教室に辿り着いたのだった。

 昼休みになって今日は学食か購買かどっちにしようかと迷いながら教室を出たところで、僕は教室の前で所在なげに佇んでいる妹に気がついた。

 昨日の裏サイトのレスを思い出して気が重くなった僕は、無理に笑顔を装って妹に声をかけた。

「やあ。もしかして今日もお弁当を作ってきてくれたの」

 妹は俯いたまま黙っていた。僕は慌てて言葉を続けた。

「ごめん・・・・・・冗談だよ。何か用事があった?」

 妹は黙ったままだった。今にも泣きそうな彼女の表情が僕の目に入った。

 僕は何か自分にもよくわからない衝動に駆られて妹の肩を抱き寄せた。後になって考えてみると、ヘタレの僕が同級生たちに好奇の視線に囲まれている状況でこんな思い切った行動を取ったことは自分でも信じられなかったけど、その時は目の前で震えている小さな姿の少女を泣かせてはいけない、誰かが守ってあげなければいけないという思いだけが僕をやみくもに突き動かしていたのだった。

 典型的なリア充の妹を守ってあげるのは普通なら僕なんかに割り振られる役目ではなかった。でも、女と兄君や幼馴染さんと兄君の複雑な愛憎関係に巻き込まれている妹は、多分今ではこんな情けない僕しか頼る相手がいなかったのだ。

「屋上でいい?」
 僕は周囲の好奇心に満ちた視線を自然に無視して、僕は黙って抱き寄せられている妹に話しかけた。妹は何も反応してくれなかったけど、僕は彼女を引き摺るように屋上に向かう階段を上り始めた。
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/20(日) 23:54:17.67 ID:bkFoiF+Fo
 僕たちは黙って屋上のベンチに座っていた。僕は相変わらず妹の肩に手を廻して彼女を抱き寄せていた。妹は別に抵抗する素振りを見せるでもなく俯いているままだった。

 そのまま数分が過ぎた頃、妹はようやく顔を上げて言った。

「ごめんなさい、先輩。せっかくの昼休みなのに心配させちゃって」

「いいよ。僕のことなんて気にしなくてもいいから」

 僕は彼女の肩に廻した手に心もち力を込めた。妹はそれに逆らわず素直に僕の方に身を寄せた。

「今朝ね」
 ようやく妹が消え入りそうな声でぽつんと話し始めた。

「お兄ちゃんと女さんが手をついないでた」

「・・・・・・そうか」

「それで・・・・・・お兄ちゃん、あたしに自分は女さんと付き合ってるって言った」

「兄君が君にそう言ったの?」

「うん。お兄ちゃん、お姉ちゃんのことも振ったみたいで」

 妹は裏サイトを見るまでもなくリアルで女と兄君がいちゃいちゃしているところを目撃してしまったみたいだった。

 僕はもう小細工じみた慰めの言葉を口にしようとは思わなかった。妹の兄君に対する深い想いは身に染みて感じていたから。

 それは僕のこの先の人生にも影響するような決断だったと思うけど、その時の僕は妹を傷つける女や兄君から彼女を守りたい一心だったのだ。
963 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/20(日) 23:57:28.73 ID:bkFoiF+Fo
 僕は泣きそうな表情で僕に寄りかかって俯いている妹に改めて話しかけた。

「じゃあ、予定通り女さんの女神行為を暴いて、女さんを兄君から引き剥がそうか」

 妹ははっとした様子で顔を上げた。

「最初からそうしたかったんでしょ? 君が決心するなら僕も最後まで付き合うけど」

「・・・・・・先輩」

「君が本気なら僕もいろいろ準備する。こういうことは衝動的にやってもうまく行かないし、よく計画を練らないとね」

 妹はまた俯いてしまった。

「それとも君が兄君と女の付き合いを認めて祝福してあげられるなら、僕はもう何も言わないし何もしない。君もパソ部を止めて今までどおりの生活に戻れるよ」

 一応、僕は妹に退路を示してあげることにした。妹が女と兄君の仲を認めれば、こんな危険なゲームを始める必要はない。その結果、僕は妹を失うかもしれないけど僕の将来に対するリスクも無くなるのだ。妹がどう判断することを僕は望んでいたのだろう。この時はもうそれすら
わからなくなっていた。僕は黙ってただ妹が結論を出すのを待っていた。

 妹は僕の腕の中から抜け出して、身体を真っ直ぐにして僕の方を見た。

「お兄ちゃんの相手が女さん以外の人なら誰でもいい。でも裸で縛られてる姿を誰にでも見せるような女さんがお兄ちゃんの彼女なのは許せない」

「・・・・・・うん」

「先輩、あたしを助けてくれますか」
 普段から馴れ馴れしい妹にしては珍しく敬語で僕に頼んだ妹の表情は、日ごろから動じない彼女が始めて見せるような緊張したものだった。

 僕はその瞬間に心を決めた。

「僕は君を助けたい。君がやるなら僕もやるよ」

「ごめんね先輩」

 この時、どういうわけか妹は僕に謝ったのだった。それから妹は黙って再び僕に寄り添って、僕のシャツの胸に顔を当てたまま静に涙を流した。
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/21(月) 00:01:03.40 ID:iifmGXKho
 僕は、その日はもう放課後に妹と会わないことにした。結局昼休みの間中、僕は僕にくっついて泣いている妹の頭をずっと撫でていた。

 午後の授業が始まる前に僕は妹に注意した。心を乱している彼女にうまく伝わるか不安だったけど、案外妹は冷静に僕の指示を理解してくれた。

「今日は部活は休みにしよう。君は真っ直ぐに家に帰るんだ」

「うん」

「そして今日家に帰って兄君に会っても、兄君のことを責めちゃだめだよ」

「・・・・・・うん」

「兄君と女さんの交際に理解を示す必要はないけど、二人の交際は許さないみたいな態度は絶対取っちゃ駄目だ」

「わかった」

「これからすることが君の差し金だったなんて兄君に知れたら、彼が君のことをどう思うかわかるよね?」

 妹もそのことは十分理解しているようだった。

「わかってる。お兄ちゃんにはなるべく普通に接するようにする」

「くれぐれも嫉妬心を表わし過ぎないように。そうでないと女を陥れたのは君だと疑われるかもしれない」

「心配しないで」
 妹は言った。大分落ち着いてきたようで、その頃には彼女の言葉は柔らかいものになっていた。

「先輩の言うとおりにするから」

 そこで妹は再び僕を潤んだ瞳で見つめた。

「大袈裟かもしれないけど、先輩の恩は一生忘れないから」

「本当に大袈裟だよ。誉めるなら全部うまく言ってから誉めてくれよ」

 妹はくすっと笑った。昼休み時間の最後になって、ようやく僕は妹に笑顔を取り戻させることができたようだった。それが僕には嬉しかった。

「じゃあ、もう行かないと」
 妹はそう言ってった立ち上がった。昼休みも残り僅かになっていた。

 妹が僕の腕から抜け出して先に立ち上がったせいで、まだベンチに座っていた僕は妹を見上げる体勢になった。

「じゃあ、また明日」

 妹が不意に少し屈んで僕にキスした。前のキスとは違ったところに。

 僕は自分の唇に少し湿った小さな柔らかい感覚を覚えながら、早足で屋上から去っていく妹の姿を見つめていた。



 ・・・・・・今日は早く家に帰って準備をしないといけない。とりあえずWEBメールで捨てアドを作るところから始めよう。
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/21(月) 00:02:16.57 ID:iifmGXKho
今日はここまで

明日できれば投下したいです

タイミングを見て次スレを立てようと思います
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) :2012/05/21(月) 00:33:58.12 ID:XRBAfv6ho
おつちゃん
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 07:03:56.05 ID:vSzoNZeIO
おつん
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 15:13:01.10 ID:VGbsNTDDO
おつ
このあとを考えるといたたまれない
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/21(月) 21:15:53.22 ID:iifmGXKho
作者です

諸般の事情により本日は休載します

ごめんなさい
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/21(月) 23:27:57.79 ID:XRBAfv6ho
あらまあ
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/05/22(火) 01:02:46.59 ID:roP0AAdPo
乙です 無理なさらぬよう
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/22(火) 06:54:58.70 ID:+rEw1qkIO
乙乙ん
応援しとる
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/22(火) 07:06:59.34 ID:aBiwTla+o
作者さん、いつも乙です。

お忙しい用でしたら、本日の投下が終わったら
次スレを立てるだけ立てて
少しお休みになっては如何ですか?

毎日投下は結構キツイと聞きます。
リアルの事情とお身体を第一に。
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/22(火) 14:54:45.29 ID:ub1fBhbIO
めいれい
 がんがんいこうぜ
→りあるをだいじに
 いのちをだいじに
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/22(火) 23:44:18.94 ID:zPJD6ADzo
 その夜、妹にキスされた興奮ともう引き返せないところまで踏み込んでしまったというストレスとが僕の中でごちゃごちゃに交じり合っていて、僕にはその感情を制御することができず結局捨てアドの作成すら手がつかない有様だった。

 僕は答えの出ないことはわかっている疑問について考え込んだ。一つは妹が今僕のことをどう考えているのかということ。僕は臨時のお兄ちゃんとして兄君と幼馴染さんに代わって妹を守っているつもりだった。最初は女のことが気になって妹に接近したのだけど、妹に惹かれるようになってからは、僕は妹の願いをかなえてあげることに目的を変更したのだった。そして傷付くことを恐れた僕は自分の行為に対して何も見返りを求めてはいけないと自分に言い聞かせてきた。僕なんかとと妹がカップルとして釣り合わないことは自分が一番よく知っていたから。それに一番最初に妹のことが気になると白状した僕に対して彼女は、誰とも付き合う気がないと正直に話したことだし。

 その後、妹が人目を気にする様子もなく僕の手を握ってたり、寄り添って歩いたり、更には頬にキスしてくれたりしても僕は勘違いはしなかった。

 でも。昼休みに妹は僕にキスした。唇と唇が触れ合った瞬間には何も考えられなかった僕だけど、こうして少し間をおいてそのことの意味を考えると、今まで自分に対して禁止していた妹の好意への期待がどうしても浮かんできてしまった。もしかしたらこれまでの一連の付き合いを通じて妹が僕に愛情的な意味での感情を抱いてくれるようになったとしたら。

 これは考えても結論の出ることではなかったけど、それでも僕は妹の気持ちを推し図ることを止められなかったのだ。

 そしてしばらくしてこうした無益な思考からようやく抜け出た瞬間、僕は自分がしようとしていることを思い出し今度は得体の知れない恐怖心や不安感を感じ出した。
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/22(火) 23:47:48.36 ID:zPJD6ADzo
 泣き出しそうな顔で俯いていた妹の姿を見下ろした時、僕はそのことが自分にもたらすリスクは承知のうえではっきりと決断したはずだった。でも、あらためて自分がしようとしている行為が女や、場合によっては兄君の人生に及ぼす影響と、そしてそれを仕掛けたのが僕であるというこ
とが本人たちや世間に知られた時に僕が失うかもしれない物の大きさを考え出すと、やはり今でも僕は体が震えだすほど怖かったのだ。

 妹の好意の予感と、妹に好意を抱かれるおおもととなったであろう、僕が仕掛けようとしている行動への恐怖。僕は何度もそれらを天秤にかけてみた。昨日までならまだ引き返せたかもしれなかった。こんなにも妹を求めている僕だったけど、その僕の恋情さえ諦めさせるほどの恐怖が僕を襲っていたのだから。でももはや手遅れだった。昨日までなら止められたかも知れなかったことも、今日の妹のキスによって、もはや僕は引き返せないところまで連れて来られてしまったみたいだった。

 僕を怖気づかせまいと、妹が計算して僕にキスしたとしたら、彼女は恐ろしい女だった。でもそれは考えられなかった。女と兄君が付き合出したことを知り泣きそうになるほど動揺した彼女にそんな複雑な行動を取れたはずがない。そして何より、妹は甘やかされて育った自己中心的な思考の持ち主だったけど、それでも決して他人を顧みない思考過程や行動しか取れない子ではなかった。

 多分、兄君と幼馴染さんは妹を甘やかしつつも、根本的な部分では彼女に正しく接したのだろう。基本的には芯がしっかりした子だったせいか、どんなに甘やかされても妹はスポイルされなかったのだ。その証拠に彼女は自分の兄君への気持ちを抑えて、兄君と幼馴染さんの仲を応援している。そして、女の女神行為さえなければ、女と兄君との仲だって応援していたかもしれなかった。

 結局その夜は何も手がつかないまま、僕はいつの間にか寝てしまったようだった。結構冷え込んだ夜だったけど、興奮状態の僕は布団に入らずベッドに仰向けになったままいつの間にか重苦しい眠りに引き込まれていたのだった。
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/22(火) 23:50:27.88 ID:zPJD6ADzo
 そのせいか、あるいは妹にキスされて興奮していたせいか、翌日目を覚ました時僕は自分の身体に異常を感じた。体が妙に重くそして気だるかった。喉にも痛みを感じる。それでも僕は時間を確認すると慌てて身支度をして登校しようとした。既に遅刻ぎりぎりの時間になっている。

 朝食をパスして自宅から出ようとしたところで、僕は母さんに捕まってしまった。母さんは僕を呼び止めるとリビングに連れて行き体温を測るよう僕に言った。完全に失敗だった。母さんに呼び止める前に登校していれば、今日も妹と会えたはずなのに。

 案の定、僕がしぶしぶと差し出した体温計を見た母さんは今日は休むように僕に言い渡した。さすがにこの体温で登校すると言い張ることもできず、僕はしぶしぶ自分の部屋のベッドに逆戻りさせられたのだった。

 ベッドに横になると目の前がぐるぐると回り始めた。確かにこれでは登校しても何もできないだろう。それでも僕は学校に行きたかった。昨日僕にキスしてくれた妹に会いたいという自分の願いはさておき、妹は今日から作戦が決行されるものと期待し、または覚悟して登校してくるに違い
ない。

 それのにその期待に僕は応えられないのだ。昼休み、あるいは放課後に僕を捜し求めて校内を歩き回る妹の姿が思い浮んだ。きっと彼女は僕の不在に困惑するに違いない。それどころか彼女は、僕がこれから行おうとすることにびびって学校をサボったのだと誤解するかもしれない。

 僕はぐるぐる回る部屋の天井を眺めながら焦燥感に駆られていた。妹に誤解される。またはそこまでいかないまでも、たたでさえ不安定な心理状態にある妹をさらに不安にさせてしまうかもしれない。

 今ならまだ授業が始まる前だった。僕はとりあえず妹にメールすることにした。自分が熱を出したこと、登校しようとして母親に止められたこと、作戦が延期になって申し訳なく思っていること。

 そして最後に、妹の期待を裏切ってしまったけど登校できるようになったら必ずこれはやり遂げるからと記して僕はそのメールを送信した。
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/22(火) 23:54:15.77 ID:zPJD6ADzo
 僕の不調は単なる風邪のせいらしかったけど、熱はなかなか下がらなかった。僕は結局その週は学校に行くことができなかった。授業については全く心配していなかったし、今では生徒会活動にも参加していない駄目な生徒会長だったから、学校での活動を心配する必要は僕にはなかった。ただ妹のことだけがひたすら気がかりだった。

 僕のメールに対して妹からの返信は戻って来なかった。僕なんとはメールする必要があるほど親しくないと判断されたのか、それとも作戦を決行しようという日になって約束を破って休んでしまった僕に対して怒っているのかはわからなかった。そして妹の気持ちがわからないことが僕を不安にさせた。返事すら来ないのに更にメールを重ねることは僕の無駄に高いプライドが許さなかったから、最初のうちは僕は横たわったままで答えの出ないことと知りつつ妹の気持ちを推し図ろうと無駄な努力に時間を費やしていた。でもこんな無駄なことをしていても仕方がないと僕の理性が主張するようになったので、僕は週の後半は体調を誤魔化しつつ作戦を練ったり女の女神行為の監視に努めるようにした。机に座ってPCを操作するのはまだ辛かったから、僕は父さんに借りっ放しになってなっていたノートをベッドに持ち込み無理な姿勢で女神スレの監視を始めた。

 モモのコテトリで検索する前に、とりあえず女がよく出没していたスレを開いてみた。スレンダーな女神云々というスレには女は現れていないようだった。次に僕は以前妹が閲覧して泣き出した縛られた女神云々というスレを見始めた。しばらくして、僕はモモのレスを発見した。

 相変わらず画像は削除されていたので女が今度はどんな緊縛画像を貼ったのかはわからなけったけど、モモのファンだと思われるスレの住人のレスの中に気になるレスがあることに僕は気がついた。最初は、相変わらずモモへの賞賛が続いていて、いつもより画像が綺麗だとかいつもより表情が真に迫っていて迫力があるとかそういうレスが多かったけど、そのうち女の画像に関して疑問を呈する住人がレスし出したのだった。
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/22(火) 23:58:16.11 ID:zPJD6ADzo
『モモGJ! いつもありがと。でも、後姿の画像見たらちゃんと後ろ手に縛られてるけど、どうやって撮影したん?』
『いいね。何か写真の腕前上げた? 今までより全然画質いいじゃん』
『画質というか、構図とかプロっぽい。まさか・・・・・・』
『モモ、ひょっとしてこれ彼氏が撮影したりしてる?』
『これは自撮りじゃねえだろ』
『写真は最高なのに何かショックだ。モモって彼氏いない処女って言ってたじゃん。ハメ撮りだったのかよ』


 これらの疑義に対して女はセルフタイマーで撮影したとか、後手縛りも縛られているように見えるだけだとか言い訳してスレの住民を宥めていた。

 まさか、兄君なのだろうか。僕は妹から兄君の数少ない趣味の一つが写真撮影だということを聞いたことがあった。妹はそれを楽しそうに微笑みながら僕に語ってくれた。兄君の被写体はほとんど妹で、妹自身は面倒で嫌なのに兄君に言われて仕方なくポーズを付けたりカメラに向かっ
て微笑んだりさせられるそうだ。彼女はそれを嫌というよりはむしろ幸せそうに言ったのだった。

 僕はミント速報を開きモモのコテトリで検索した。すぐにヒットしたその過去ログを開くと、女の緊縛写真が今までとは違って相当な枚数が表示された。

 その画像はどれを取っても今までの女の自撮り画像とは次元の異なるものだった。写真のことは余り詳しくない僕でもそれはすぐにわかった。今までの女の画像は素人くさく、でも逆にそれは生々しく素人っぽい感じを醸し出していてそれを目当てに彼女のファンが群がっていたのだったけど、この新しい画像は非常に扇情的な仕上がりで、画質も今までとは比べ物にならないほどくっきりと女の表情や肌の透けるような白さを生々しく映し出していた。つまり良くも悪くもプロっぽい仕上がりなのだった。女の緊縛裸身や怯えたような表情が繊細に映し出されている反面、女の部屋の様子は綺麗に大きくボケている。それは今までの女の自撮りのように生活感あふれる部屋の様子まで映し出されていた画像とは全く質が異なる出来映えだった。
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/23(水) 00:01:36.11 ID:ekos52i6o
 もうこれは兄君が女を撮影したことで間違いないだろう。僕が病気になったせいで作戦の決行が遅れたのだけど、結果的にはそのおかげでより破廉恥な画像を公開することができる。それに女の自撮りのぼやけた画像では、最悪女がこれは自分ではないと開き直る可能性もあった。わかる人にはわかるとは思うけど、本人が強く否定すれば決定的な証拠はない。でも、この鮮明な画質であればいくら目に線が入れてあるとはいえ、もはや言い逃れはできないだろう。これはどこから見ても女そのものだった。

 その時、僕はまた別なことに気がついた。最初に女の女神行為の画像を見た時に感じたな胸をえぐられるような嫉妬心を、僕はこの扇情的な画像から感じなかったのだ。

 やたらプロっぽいできだからだろうか。僕は最初はそう考えたけどやはりそうではないなだろう。僕は女への未練をついに捨てることができたのだった。古い恋を忘れるには新しく恋することが一番の特効薬のようで、妹に恋焦がれ始めた僕はこれだけ衝撃的な女の画像を見ても今や全く嫉妬心を感じないでいられたのだ。

 今日はもう土曜日だった。妹がメールに返信してくれないことが再び僕の心を蝕み始めていた。本気で妹に嫌われたのだろうか。最後に見た妹の姿は僕にキスして屋上から去って行った後姿だった。まさかこれで終わりなのだろうか。妹に約束した作戦の決行はこれからなのに。

 この頃になると、堂々と兄君に撮影させた緊縛画像を誰にでも見せている女の人生を狂わすことへのためらいはだいぶ消えてきていた。もちろん、それが自分にはね返ることへの恐怖はまだ残ってはいたけど、それよりも自分が妹に見捨てられたのではないかという不安の方が大きかった。

 明後日は月曜日だしこの体調なら月曜日は登校できるだろう。熱もほとんど平熱に近くなっていた。

 登校したら何をするよりもまず妹を探し出そう。恥かしさや妙なプライドが邪魔してて僕はこれまで彼女の教室を訪れたことはなかったけど、妹は平気で上級生の校舎に入り込んで僕を訪ねてくれていたのだ。僕ももう周囲を気にしている場合ではない。月曜日になったらもっと積極的に行動しよう。そう考えて僕は自分を納得させた。

 ところが意外なことに翌日の日曜日の朝、僕は突然母さんに起こされたのだった。時間は既に午前十時を越えている。

「お友だちがお見舞いに来てくれてるわよ」
 母さんは妙ににやにやしながら僕を起こした。

「妹さんっていう下級生の子だけど、部屋に通してもいい?」

 母さんはそこでまた笑った。「可愛い女の子ね。あんたの彼女?」
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/23(水) 00:05:47.31 ID:ekos52i6o
>>970-974

ご心配ありがとうございます
昨日はちょっと職場でトラブルがあったので投下できませんでしたけど、多分明日からは平常ペースに戻れると思います

次回か次々回の投下終了後に次゙スレを立てようと思います。前作ほど感想レスが多くないのでぎりぎりまでこのスレで粘るつもりですが万一誘導できなかった場合は、「女神」で検索してもらえればと思います

それではおやすみなさい
982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/23(水) 00:29:40.77 ID:A3T+x7dAO
>>981


携帯だと「女神」で検索かけるとバグってリンク辿れないんだよね……

だから、早めに建てて誘導してくれると有り難い
余りは埋めればいいだけだし
983 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/05/23(水) 00:41:40.14 ID:aaV/Tc+5o
おつおつよ
幼馴染と男がね
984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/05/23(水) 00:56:03.02 ID:ogqqgZSHo
乙です
もう980超えてるから新スレ行ってもいいと思うのよね
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/23(水) 04:32:22.98 ID:P6VNu/dIO
会長に関してはなんかもうため息しか出ないような感じだけど、妹の狡猾さにゾッとしてきたわ
しかし、ここまで「誰が悪い訳でもない、とかじゃなく、兄以外全員悪い」みたいな展開にビックリだぜ
乙!
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/23(水) 09:12:33.89 ID:OxwLSecKo
乙です

妹(お兄ちゃんの為ならキモオタとキスするくらい何でもない!)
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/23(水) 18:06:57.50 ID:4SIuYtAIO
妹△
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/05/23(水) 19:28:51.43 ID:ekos52i6o
作者です。次スレ立てました

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1337768849/

続きはこちらで

また後で可能なら心スレに投下します
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/23(水) 20:06:00.65 ID:b2AkXLM0o
うめ
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/05/24(木) 01:41:32.91 ID:0BcsQEZAo
おつ
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/24(木) 06:34:41.94 ID:3iZ6JXowo
うめ
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/24(木) 07:25:10.16 ID:f/ASxH9oo


続きは次スレで絶賛再開中!
作者さんマイペースでガンバレ

次スレ
女神・2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1337768849/
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/24(木) 08:21:50.86 ID:67QV2m4ho
うめちゃっていいのかな?
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/24(木) 09:09:04.81 ID:UHlImNWso
埋め
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/24(木) 12:48:15.45 ID:uuEnRdBYo
うめ
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/24(木) 12:55:30.85 ID:utMQ3aFDO
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/24(木) 12:55:58.85 ID:utMQ3aFDO
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/24(木) 12:56:34.63 ID:utMQ3aFDO
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/24(木) 12:57:06.57 ID:utMQ3aFDO
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/24(木) 12:57:59.35 ID:utMQ3aFDO
>>1000なら
妹の一人勝ち
1001 :1001 :Over 1000 Thread
       / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       | アパム!アパム!次スレ建てて来い!アパーーム!
       \_____  ________________
                ∨
                      / ̄ ̄ \
      /\     _. /  ̄ ̄\  |_____.|     / ̄\
     /| ̄ ̄|\/_ ヽ |____ |∩(・∀・;||┘  | ̄ ̄| ̄ ̄|
   / ̄ ̄| ̄ ̄| ̄|  (´д`; ||┘ _ユ_II___ | ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|
   / ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄|( ” つつ[三≡_[----─゚   ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|
  / ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄| ⌒\⌒\  ||  / ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|   SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
 / ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄] \_)_)..||| | ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|     http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/


1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
擦れたて @ 2012/05/24(木) 12:53:46.42 ID:QQCu6gvCo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/zikken/1337831626/

まどか「ほむらちゃんとの日々」 @ 2012/05/24(木) 10:31:59.66 ID:XrUawc3d0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1337823119/

携帯で動物物語やろうずwwwwww @ 2012/05/24(木) 09:23:09.11 ID:9XaFBDrSO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1337818989/

乳と乳首とクリトリス @ 2012/05/24(木) 08:40:36.84 ID:tEx5w9Nco
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1337816436/

おまんこ @ 2012/05/24(木) 08:31:56.94
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澪「まにゅう!」 @ 2012/05/24(木) 06:48:57.23 ID:+h0PWtzy0
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何でもいいけどさ @ 2012/05/24(木) 06:36:16.85 ID:gdCiY15AO
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安価で小説書いて電撃大賞狙おうぜwwwww @ 2012/05/24(木) 05:21:53.99 ID:zxUS7eTd0
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