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平凡女と平凡男 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/27(水) 20:10:15.09 ID:PSCXMJxg0
悩みがないのが悩みだよ〜

―――何て言ってみたくなる。

可愛げのない天井、白色がちょっと黄ばんだ色

視界を占めるはそれだけで、両手に感じるは

抱きなれたうさぎの人形

うなだれる、うさぎに顎を沈める

力んだ体がベッドに沈む。

「うぉー!どーん!!!」

勢いよく起き上がる、ベッドがキシッと音を立てる。

うさぎの短い両手を掴んでパタパタさせる、

大きな耳が揺れて、私の鼻に擦れる。

憂鬱だ、ゆううつだ、悩みがないわけがない。

他人が聞いたら小首を傾げる

自分にしか分からない

「もぉ〜…、うさちゃん慰めてよ…」

でも、分かっていても

自分でも小首を傾げたいくらいに

馬鹿らしかった。

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VIPでTW ★5 @ 2024/03/29(金) 09:54:48.69 ID:aP+hFwQR0
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小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
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満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
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旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/27(水) 20:35:33.76 ID:PSCXMJxg0
昨日はよく眠れなかった

ずっとベッドの上でうさぎを弄りまわしていた。

別に弄れば気が晴れる訳では無かったけれど、

特に趣味もないので、それ以外やることがなかった。

重い瞼をこする、今なら寝れそうだったけれど

あと五分くらいで次の授業は始まる。

「休み時間なのに、何ぼ〜っと座ってるの。」

そんな事をボーっと考えていると声がかかった。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/27(水) 21:06:47.33 ID:PSCXMJxg0
そのハッキリとした口調の声の主は、ボーイッシュな私の幼馴染みだった。

スラッと長くのびた足が特徴で、可愛いというよりカッコいいが似合う女の子、

私とは幼稚園の時からの付き合いだ。

返事に迷っていると

教室の窓から強めの風が吹いた、夏なので気持ちが良かった。

幼馴染も私も風の吹く窓の方に顔を向けた。

その後すぐにボーイッシュがこっちを向いてしゃべりかけた。

「風、気持ちいいね。…で、何でぼ〜っとしてるの?」

「え、えっと、次の授業は何かなぁ〜って」

私の言葉を聞いた幼馴染は少しだけ呆れたような表情を見せると

「次は、理科総合でしょ。移動教室だし…。」

移動教室と聞いて当たりを見まわすと、もう殆ど生徒が残っていなかった。

「あらら…、気付かなかったや。」

「ほら、早く行こう。」

私が、教科の準備をやり終える前に

幼馴染は背を向けてそそくさと歩き始めた。

準備を終えて、幼馴染に追いつく

「ねぇねぇ、もしかして、私と一緒に行くために待ってたの?」

「ん?あ〜…、違う違う、日直の鍵当番よ。」

ほんのちょっとショックだった。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/27(水) 22:06:12.26 ID:PSCXMJxg0
その後の昼休みもぼ〜っとしてた。

「また、ぼーっとしてるでしょ。大丈夫?」

「(窓の外眺め)」

「…。」ジィ〜

「(窓の外眺め)」

「…彼方のお弁当の卵焼き貰うわよ?」ササッ

「え…、だめっ。それ私のだからっ!だめだよっ!!むん!」パシッ

「何だ、元気じゃない。」ホッ

「(卵焼き見つめ)」

「だ、大丈夫…?。」アセアセ


ボーイッシュの心配の声が聞こえなくなっていた。

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/27(水) 22:16:27.71 ID:PSCXMJxg0
放課後に帰るときも


「じゃ、私は部活があるから、また明日。今日はよく寝なさいよ?」

「ふぁ〜ぃ、じゃね〜っ。またあしぶっ!」ガツンッ!

「きょっ、教室のドアにあたった…。」


行動がこんがらがりっぱなしだった。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/27(水) 22:49:56.15 ID:PSCXMJxg0
次の日の朝も

幼馴染「おはよう、今日は大丈夫?」

平凡女「うん、今日は元気元気ですっ」ムン!

幼馴染「そう…?本当に大丈夫?」

キーンコーンカーンコーン

幼馴染「あ、予玲だ、一時限は数学ね…。」ガソゴソ

平凡女「数学すうがく…、あれ…」ガサゴソ

平凡女「…」ガサゴゾガサゴソ

幼馴染「ないの…?」チラッ

平凡女「…昨日の用意のままだった…」

幼馴染「もう…、大丈夫?私隣の席だし、教科書は見せてあげる。」

平凡女「ありがとっ、遠慮なく見させてもらうねっ!」

幼馴染「これくらい、お安いご用…」

平凡女「あ…」

平凡女「筆記用具も貸してっ!」

幼馴染「…!」

キーンコーンカーンコーン



そんな感じでボーイッシュ、こと幼馴染に心配をさせる事が増えた。

自覚はあったけれど、全然自制ができなかった。

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/27(水) 23:11:16.62 ID:PSCXMJxg0
夏が元気になっていくとともに、私の悩みも元気になっていった。

そんな日が続くなか、ホームルームでクラスの委員長が前に出た。

大事な話がありますので、聞いてください

それからクラスが静かになるのを待つと

「まだ先の話ですが、聞いてください。文化祭の話です。」

少しだけ、クラスがざわつく

「みんな知っていると思いますが。うちの高校の二年生は模擬店3クラス演劇3クラスで活動をします。」

また、さっきよりもざわつきが大きくなる

「そのそれぞれの3クラスを決める方法は、各クラスの委員長によるくじ引きです。
 
 その、くじ引きは昨日行われましたが。」

委員長がお固い喋りを続ける。ざわつきはもっと大きくなる。

「うちのクラスは演劇に決まりました。」

わっ、とクラスが五月蠅いくらいにざわめいた。

頑張ろうとか嫌だとか、楽しみとか、俺は照明係だっ!とか

ざわざわざわざわ――――――

私はそのざわめきに混じらず

演劇か、誰か人気者の人に良い役が回って終わりだろうな。

私にくるのは、きっと背景の木の中身とかだ…。

平凡で、特に人気者要素のとりえもないし。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/27(水) 23:15:33.18 ID:PSCXMJxg0
ふと隣の席から視線を感じた。

幼馴染だった。

気付いた時、目が合ったけれど。

すぐに幼馴染は他の子と話し始めてしまった。

私、またボ〜っとしてたかな…

そう考えてるうちに、またざわめきに流されて

同じような思考を巡らせた。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/27(水) 23:21:32.84 ID:PSCXMJxg0
ホームルームのざわめきが終わった後の下校道。

私の隣にはいつもなら部活で居ないはずの幼馴染がいた。

私の遅い足に合わせて歩いてくれる。

初めはたわいもない会話をしていたが、

気になっていたが聞き忘れていたことを思い出した。

「ねぇ、今日は部活はどうしたの?」

「あー…、今日は休んだ。」

「えぇっ、何でっ?ずっと頑張ってるのにっ」

「何でって、そりゃぁ…」

質問を二回連続で投げかけると、幼馴染は困った顔をして見せたが、

しばらくすると、何か自分で納得したような表情に変わって

「あなたが最近元気ないから、理由を聞きだしてやろうと思ってね。」

笑って見せて、そう言った。

ボーイッシュは、真っ直ぐこっちを見つめてくる。

私は何故か見つめ返せない、何かが喉に詰まる感じがして、

それが出てきちゃいそうだったから。

二人とも歩みを止めない。横目に移るのは、何度か見た事のある、真剣な表情だ。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/27(水) 23:34:04.05 ID:PSCXMJxg0
今日はここまででお暇いたします。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/29(金) 19:48:17.71 ID:x1fUeowO0
とぼとぼと歩くアスファルトの上、車道を通り過ぎる車の音がやけに五月蠅く聞こえた。

歩くたびにうつむき加減になる私は口を開けない。

横目には相変わらずこちらを見ている幼馴染がうつる。

また、車が通った。青い車で、やっぱり音が大きく五月蠅く聞こえた。

無意識のうちに、私は他のことに集中しようとしていた。

だから

背を伸ばし過ぎて垂れた雑草も

涼しい風に揺れる木の葉も

歩道に捨てられたゴミも

歩行者マークの標識も

全てが、鮮明に見えてしまった。

「何も言わないってことは何かあるのね?」

「うん。」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/29(金) 20:02:27.90 ID:x1fUeowO0
私が、うんとだけ答えると、

また静かになってしまった。

私が幼馴染に顔を向けると、もう歩いてる方に向いてしまっていた。

横顔から見える表情はさっきよりも和らいでいて、可愛いというよりカッコいいが似合った。

「私にも言えない様なこと?・・・無理しなくていいけど、話した方がいいんじゃない?」

「・・・じゃぁ、話そうかな。」

話そうかな、そういっても前を向きっぱなしの幼馴染は、

多分、これからの私の話をしっかり聞くために、耳に意識を集中してるんだな。

何て、付き合いが長いからか分かった。

口を開く
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/29(金) 20:16:08.80 ID:x1fUeowO0
どうして話す気になったのか、それはきっと相手が幼馴染だからで

内容がほんとに馬鹿らしいからだ。

「私、ほら、とりえって言う感じのがなくって・・・。」

返事は来ない、やっぱり聞くのに集中してるみたいだった。

思考がめぐる。いつもと同じ、じめじめとまとわりつく重い考え

そのまま口を開く

「これといって、その・・・他人からひいでる事がなくって、

 特徴って言うのかな・・・。」

返事はない。

さっきと違い、周りのことは意識に入らない。

まだ口を開く。

「ほら、私、勉強得意じゃないし、運動だって言うほどだし、顔も可愛いくないし、スタイルもよくないし・・・
 
 パッとするものって、なくって・・・。」

口を開けばひらくほど、喋ればしゃべるほど、

歩く速さがどんどん落ちて、私の視界もどんどん落ちた。

二人の足音がちょっと時間差をつけて少なくなっていく。

私のさきに足音が止まった。

そして、情けない声は続けていった。


「平凡なんだよ。私って・・・ドがつくほどの、平凡女なんだよ。」


幼馴染の足音も続けて止まり、私の方に振り向いた。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/29(金) 20:18:43.99 ID:x1fUeowO0
私のさきに足音が止まった ×

私の足音がさきに止まった ○

申し訳ないです(´ノω・)・・・
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/29(金) 21:21:24.20 ID:x1fUeowO0
振り向いた幼馴染と、バッチリ目が合った。

「あは、ははは。」

自分の悩みの程度の低さに思わず気の抜けた笑いがこみ上げた。

幼馴染は笑わず、あのねと言い私の名前を呼んだ。

「平凡っていけない事なの?」

スカイブルーの夏空と長い歩道を背景に、幼馴染はこっちを見つめる。

私には問いの答えが返せない。

「私は、別にいいと思うよ。」

幼馴染は私の代わりに答えを告げる。

彼女の短い黒髪はスカイブルーの夏空にくっきりと輪郭線をつけていた。

心地いい風が吹いて、二人の紺色のスカートがたなびく。

幼馴染の言葉は、私の悩みを全部解消してくれるようなものではなかったけれど、

さっきのホームルーム中のどんよりした感じよりはマシになった気がした。

「私、上手く言えないけど・・・」

少し間が空いた。

だけど、他の事には集中できなかった。

背を伸ばし過ぎて垂れた雑草も

涼しい風に揺れる木の葉も

歩道に捨てられたゴミも

歩行者マークの標識も

何も鮮明には見えなかった。

目の前の幼馴染だけが、鮮明に見えた。


「こういうことって、ある日パッと変わっちゃうんじゃないかしら。」


少しはにかむ幼馴染はそう言うと、

普段から不安な事があるなら、無理せずちゃんと言ってね。

そう私に促した。

私は、悩みが全部解消しなくても、

私の馬鹿らしい悩みに真剣に向き合ってくれる相手が居ることで、

少しだけ、それでもいいかって思えるようになった。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/29(金) 22:16:10.50 ID:x1fUeowO0
文化祭でのうちのクラスが演劇だと公表された次の日

昼休み、

弁当を持たない生徒が集まる食堂で、昼飯を食べる俺の前の席に、

小さな可愛らしいお弁当を持ち、俺のことをじっと見つめる男子生徒がいた。

「何だ、何か言いたいことがあるのか?」

目がくりっとしたその男子生徒は俺の中学時代からの旧友だった。

旧友は小さな肩幅を更に縮めた。なに恥ずかしがってるんだ。

「あのさ、僕さ、劇の台本を書こうと思うんだ。劇の台本。」

何で二回言ったんだ、何てツッコミは入れないまま、俺はカレーを混ぜ始める。

「お前が?台本・・・、そういうの得意だっけか?」

カレーを口に入れる、思ったよりも熱く、水がほしくなった。

「小説とかの読み書きは好きだけど・・・、台本は今回が初めてだから、得意かどうかは・・・」

「大丈夫かよ、やれるのか?」

ゆっくり水を飲んでから、旧友に視線を向ける。

「だ、大丈夫。昨日悩んだんだけど、決めたんだっ。やりきってみせるよ。」

言っていることは力強かったが、外見はカッコいいというより可愛いらしい感じだった。

「そうか、じゃあ応援してるぞ?」

そうねぎらいの言葉をかけると、俺はすぐにカレーを口に運んだ。

「うん、ありがとう、がんばるねっ。」

目の前の旧友は、可愛らしく笑顔を作ると、

小さな弁当の包みを外し始めた。


17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/29(金) 22:19:13.91 ID:x1fUeowO0
今日はそろそろおいとまします。(´・ω・)ノシ
18 : ◆gO9QdRWdUw [saga sage]:2012/06/30(土) 16:12:56.68 ID:sM6NxQ9y0
乙です
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/30(土) 23:03:19.14 ID:6+G33VjK0
勉強机が部屋の角に、その上のガラガラのCDラックに好きなアーティストのCDが数枚。

不器用にたたまれた敷き布団の上には低反発の安眠枕。

壁から下がるハンガーには洗ったばかりの私服がかけられている。

かなり面白みに欠ける部屋、思春期の男の部屋なんだから、

アイドルやらグラビアのポスターが1・2くらい貼られていてもいいのだろうが、

生憎まだ幼い妹と、大学生の姉が居るので、堂々と貼る気にはなれない。

更に、これといった趣味もないので、部屋には特徴が生まれない。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/30(土) 23:05:01.19 ID:6+G33VjK0
さて、この簡素で平凡な思春期男児の狭い部屋に、少し不釣り合いな奴がいた。

そいつは、俺が入れてきたオレンジジュースを飲んでいた。

小柄、華奢、童顔、色白、さらさらヘアー、くりっとした目、長いまつ毛。

女の子か?いや、いや違う。

だが女の子だったら嬉しいな。たまにそう思う。

「んぐ…、喉乾いてたから、飲みきっちゃた。」

そいつは、まだ声変わりしてないような声でそう言って空のコップを置いた。

「まぁ、今日は結構熱かったからな…。」

俺も自分で入れた分のオレンジジュースを飲む。

そいつというのは、俺の中学時代からの旧友で、男だ。

男だと思ってみれば男に見えるし、女だと思えば女に見える。

しかし、今は制服だから、思わなくても男には見える。

「今日はお邪魔してごめんね。あと、手伝わせることになっちゃって…。」

旧友は頭を撫でるように掻きながら軽く笑った。

「別にいいぜ、俺は、直接台本製作を手伝う気はないしな。
 
 あれだろ?編集者みたいに、書けた分をいやらしくチェックする

仕事すりゃいいんだろ?」

俺がオレンジジュースを半分くらい飲んでからそう言うと、

旧友は驚いたような顔を見せた。

「え、やってほしいこと分かってたんだ…。」

まぁ、付き合い短くないしな、と思いつつ口には出さない。

旧友が続けて言う。

「あ〜…、でも今日はアイデアを借りたいかな…。方向性というか、舞台受け、高校生受けがいいような、テーマとか題材とか…。」

窓からの日差しの光に頼って、電気をつけていない部屋で

俺はうーんと唸った。

「方向性…、舞台・高校生受けね…。」

唸りながら、ない頭を絞って考えた。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/30(土) 23:09:04.68 ID:6+G33VjK0
お互いに考え込んだり、意見を交わしたりしていると、

時々、違う話題にそれたりした。

一応は、ちゃんと台本の方向性の思考には戻るのだけれど、

総合的にみると、関係ない話題での会話の方が長かった気がした。

そんな感じで時間はあっと言う間に過ぎてしまった。 /

まだぎりぎり日差しの光に頼っていても平気かなと思える頃に

旧友が今日はここらへんで、と切り出した。

俺はよく脱線した今日の話し合いの結果を確認した。

「んじゃぁ、笑いあり、感動ありの内容で、笑いが6割くらいで、感動が4割くらいだな?」

もう自分の鞄を持って立ちあがっていた旧友は、

座っている俺を見降ろしながら言う、

「うん、そうそう。まだ決定じゃないけどね…。」

旧友は自信なさげに続けて言う、

「最初は笑いで注目を集めて、最後に分かりやすい感動で攻めるんだ。」

他にも決まっている様なことはあったが、あえて確認はとらなかった。

一応ちゃんとは話しあえたのだけれども、殆どが旧友の意見だった。

俺が出せたまともな意見は2・3個程度で、

俺は旧友の出す、なるほどなと納得できる意見に、

いいな、とかどうだろうとしか言えなかった。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/30(土) 23:11:54.78 ID:6+G33VjK0
少しだけ情けなくなったが、別に気にならなかった。

ちょっとだけ敬意の意味を込めて旧友に笑いかけてやる。

「えっと、確か、台本は先生に提出すればいいって、委員長が言ってたんだよな?」

「うん、そうだよ?…なんか、緊張するなぁ…。」

「ばか、まだ書き始めてもないだろが。」

えへへ、と旧友が笑う。そして、そのまま玄関へと歩き出したので

立ち上がり、俺はそれの後に続いた。

旧友は靴を履き、玄関のドアを開けて外に出ると、こちらを見た。

旧友が右の掌を俺に向けた。

「じゃあね、また明日。今日はありがとう。」

俺もそれを見て右の掌を向ける

「おう、いいぜ。また明日だな。」

俺はドアを閉めて部屋に戻ると、畳まれた敷布団に仰向けで体を沈めた。

ふぅ〜と息を吐く、ため息じゃない。

畳まれた敷布団は厚いから、俺の体を一層深く優しく沈めた。

脇にある安眠まくらを腹に乗っける。

まだ、日差しは明るい。

まだ、電気はつけない。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/30(土) 23:18:15.59 ID:6+G33VjK0
>>18
あ、見てくれている方居るんですね。嬉しいです(*´ノω・)

>>21
/ の所で切るつもりが…つなげて投稿してしまいました(´・ω・)…。

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/30(土) 23:37:52.43 ID:6+G33VjK0
平凡男「スカァアァア〜…」

幼妹「お兄ちゃん〜っ」トテテテテ

幼妹「お兄ちゃん〜っ、起きて、お母さんがご飯だってっ」ユサユサ

平凡男「うー…」ウトウト

幼妹「今日はハンバーグだよ?」

平凡男「…」

平凡男「スカァアアァ〜…」グッスリ

幼妹「おきぃてぇええぇっ!」ユサユサ

平凡男「…」スヤスヤ

幼妹「…」サササッ

幼妹「とおおおっ!」ピョン!

幼妹「ボデェー…プレス!!!」ズドガン!!!!!

平凡男「」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/30(土) 23:58:37.11 ID:6+G33VjK0
次の日

姉「朝だぞ、学校だぞ…?」

平凡男「…」スヤスヤ

姉「起きろ。もうパン焼けてるぞ?」ゲシゲシ

平凡男「ジャムトォストー…」ゴロゴロ

姉「自分でヌレ。起きろってば…。」

平凡男「スカァアァアァァ〜…」

姉「おい…起き」

スカァァァァァアアァアァ〜

姉「いびきいでかいな…」イライラ

姉「…」ガシッガシッ

姉「揺すれば起きるだろうが…、昨日無駄に夜更かししてた罰だ…。」ス――――…

姉「電気…あんまー!!!!」グリグリグリグリイ゛イ゛!!!!



ググググガガガガガガガ!!!!

平凡「すk、いってぇ!!!んぎゃっ!死ぬっ、やめっ」

――――――プッチィ



平凡男「」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/01(日) 00:08:12.87 ID:Df7b9h8B0
スピード遅くてすみません(´ノω・)…

今日はこのへんで失礼します(´・ω・)ノシ
27 : ◆gO9QdRWdUw [saga sage]:2012/07/01(日) 07:50:59.85 ID:Soj/RYzq0
ぜんぜん関係ないですが最初「電波女と青春男」を連想してしました

乙です
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/01(日) 08:17:29.33 ID:nUviekb2o
>>27
同じく
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/07/05(木) 00:01:44.64 ID:RtWbihxV0
>>1です

すみません、色々あって更新遅れてます。

今週中に続きはあげます。

すみません(;´・ω・)…
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/09(月) 17:53:38.16 ID:FQsz2o680
旧友が台本を書くと言ってから一週間たった。

この一週間の放課後は二時間くらい、土日の午後はずっと俺の家に来て作業をしていた。

とは言っても、ちょくちょく妹の乱入があってしっかりとは集中できなかったが。

今はざわつく昼休みの食堂にいる。

俺はいつものように辛口のカレーを食べていた。

「台本…、もうちょっとで完成だよ。一週間も付き合わせてごめんね・・・。」

何て言う旧友はいつものように可愛らしい弁当の包みを外した。

「いや、一週間も作業してたのは、うちの妹のせいだろうーが。」

一緒に遊んでやるのは全然構わなかったが、

妹がお茶を原稿の上にこぼしたときは最悪だった。

「いやいや、妹さんと率先して遊んでたのは僕だし…。」

弁当の蓋をあけながら、旧友は笑って見せた。

俺がカレーを口に入れたせいで会話が途切れる。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/09(月) 17:54:10.59 ID:FQsz2o680
「ありがとね、いろいろと…。」

旧友が唐突に俺に礼を言った。

改まってなんだ、とカレーを急いで喉に流した。

「ん…、唐突に改まってどうした。」

旧友は短い箸でたこさんウィンナーをつんつんしていた。
何恥じらってんだよ。

「僕…君がいなかったら、台本なんて書こうとすら思わなかったと思う…。」

顎を引いたまま、上目でこちらを見る旧友からは

彼なりの強い意志みたいなのを感じた。

「何だよ、別に俺がいなくても書けるだろ。お前ならさ。」

俺の言葉を聞いた旧友は、血色のいい頬を更に赤く染めた。

今日のカレーはいつもより甘い。

「やっぱり、そんな風に言ってくれる君のおかげかな…。」

「お、おぉ…、そか。どういたしましてだな…。」

素直な言葉をバンバンぶつけてくるので気恥しくなった俺は

カレーに集中することにした。

旧友も恥ずかしくなってきたのか、ようやく弁当を食べ始めた。

しばらく、沈黙が続いた。

が、その沈黙は机をとんっと叩く音で破られた。

「お二人さん、ちょっといいかな。」

ホームルームで聞きなれた女子の声だった。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/09(月) 17:57:43.49 ID:FQsz2o680
「委員長じゃないか。」

声の主の方へ視線を移すと、

肩くらいまである綺麗な黒髪と、太くきりっとした眉毛が

特徴的なうちのクラス委員長が立っていた。

委員長に何か用か、と聞こうとした時、

委員長の後ろに居る小さな女子の存在に気付いた。

「…、ど、どうも…。」

視線が合ったその子は、白い肌と対照させるように頬を紅潮させた。

学年で薄子と呼ばれている女子で、由来は独特の弱々しさと、

放っておけないような雰囲気かららしい。

薄子さんは、色素自体が薄いのだろう、肌は色白で、

髪の毛は黒髪と言えないくらい茶色かった。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/09(月) 17:59:56.10 ID:FQsz2o680
「あ〜…、二人とも何か用か?」

一応委員長の背に隠れる薄子さんにも声をかける。

「あ、用があるのは私。この子は着いてきただけ。」

薄子さんの肩に委員長がぽんっと手を置いた。

それに対してビクッと薄子さんが反応する。

そういえば、薄子さんはいつも委員長について回っている。

仲が良いんだろうか。良いのか…?

「ふーん、じゃぁ、委員長の用事ってなんだよ?」

薄子さんに視線を合わせようとすると、今度は逸らされた。

旧友は自分には関係ないと思っているのか、弁当を食べている。

カレー、冷めちまったな…。

「台本を見せてほしいの。二人が書いてる劇の台本。」

台本を見せてほしいの?

二人が書いてる劇の台本?

書いてるのは俺じゃなくて旧友だぞ。

旧友に視線を合わせると、口の中に卵焼きを入れたまま

固まっていた。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/09(月) 18:32:59.49 ID:FQsz2o680
――――その頃の平凡女――――


平凡女「ねぇねぇ、ニンジンって好き?」チラッ

幼馴染「嫌いじゃないけど…?」

平凡女「じゃぁ、あげるねっ、どうぞぉ」ササッ

幼馴染「ちょ、ちょっと、勝手に入れないで。」

平凡女「おねがい、お母さん何度言っても入れるから…」シュシュン…

幼馴染「…苦手なのは分かるけど、ちゃんと食べないと、ほら。」アーン

平凡女「いっ、わっ、無理っ」プイッ

幼馴染「ちゃんと食べなさいっ」キッ

平凡女「ゴメンナサイ…」モグモグ

幼馴染「よし、よく食べました。」ニコッ

平凡女「うん…(お母さんみたい…)。」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/09(月) 18:35:19.76 ID:FQsz2o680
今日はこの辺で失礼します(´・ω・)ノシ
36 : ◆gO9QdRWdUw [saga sage]:2012/07/09(月) 18:37:54.35 ID:P7F+sM6I0
乙です
37 : :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 13:59:32.88 ID:L1Ia8NAw0
>>1です

長期間放置してすみません。

都合により続ける事が難しくなっていしまったので、中断します。

中途半端な形で申し訳ありません。

もしも、見てくださっていた方がいらっしゃっていたら、

短い間でしたが感謝です。
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