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「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part8 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :2012/07/08(日) 16:08:17.08 ID:1fY+3XtAO
「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」とは
 2ちゃんねる - ニュー速VIPで生まれた
 都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたりそんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
 まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりと色々活動しているスレです。
 基本的に世界観は作者それぞれ、何でもあり。
 なお「都市伝説と…」の設定を使って、各作者たちによる【シェアード・ワールド・ノベル】やクロス企画などの活動も行っています。
 舞台の一例としては下記のまとめwikiを参照してください。
まとめwiki
 http://www29.atwiki.jp/legends/
まとめ(途中まで)
 http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html
避難所

http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13199/
■注意
 スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
 本スレとはあまりにもかけ離れた雑談は「避難所」を利用して下さい。
 作品によっては微エロ又は微グロ表現がなされていますので苦手な方はご容赦ください。
■書き手の皆さんへ
 書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップ推奨(どちらも非強制)
 物語の続きを投下する場合は最後に投下したレスへアンカー(>>xxx-xxx)をつけると読み易くなります。
 他作品と関わる作品を書く場合には、キャラ使用の許可をスレで呼びかけるといいかもしれません。
 ネタバレが嫌な方は「避難所」の雑談スレを利用する手もあります。どちらにせよ相手方の作品には十分配慮してあげて下さい。
 これから書こうとする人は、設定を気にせず書いちゃって下さい。
※重要事項
 この板では、一部の単語にフィルターがかかっています。  メール欄に半角で『saga』の入力推奨。
「書き込めません」と出た時は一度リロードして本当に書き込めなかったかどうか確かめてから改めて書き込みましょう。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1341731297
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :2012/07/08(日) 16:10:19.20 ID:1fY+3XtAO
◆用語集
【都市伝説】→超常現象から伝説・神話、それにUMAや妖怪のたぐいまで含んでしまう“不思議な存在”の総称。厳密な意味の都市伝説ではありません。スレ設立当初は違ったんだけど忘れた
【契約】→都市伝説に心の力を与える代わりにすげえパワーを手に入れた人たち
【契約者】→都市伝説と契約を交わした人
【組織】→都市伝説を用いて犯罪を犯したり、人を襲う都市伝説をコロコロしちゃう都市伝説集団
【黒服】→組織の構成員のこと、色々な集団に分けられている。元人間も居れば純粋培養の黒服も居る
【No.0】→黒服集団の長、つおい。その気になれば世界を破壊するくらい楽勝な奴らばかり
【心の器】→人間が都市伝説と契約できる範囲。強大な都市伝説と契約したり、多重契約したりすると容量を喰う。器の大きさは人それぞれである。器から少しでも零れると…
【都市伝説に飲まれる】→器の限界を迎えた場合に起こる現象。消滅したり、人間を辞めて都市伝説や黒服になったりする。不老になることもある

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1330588813(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)

前スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1330588813/
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/08(日) 16:19:51.14 ID:1fY+3XtAO
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1330588813(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
SSWikiの欄に入れるの忘れてた。すんません
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/09(月) 00:30:25.51 ID:h2yIGRQSO
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/07/16(月) 21:47:22.11 ID:cBr6Cj7X0
スレ立て乙ですー
前スレ
単発の人様乙ですー
百合ktkr!頑張れ契約者さん、ジンクスなんて打ち破ってしまえー!

>>992
なん…だと
自分などまだまだですorz

>了解ですのン、書くべきものを書いた頃に改めて上げますぜ
ありがとうございます!

>よくよく考えたら〜
巨乳キャラは輝きますよね…ふぅ(

>>993
>これはもう対抗して姉妹百合を投下するしかないな
姉妹百合…!正座してお待ちしております!
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/16(月) 23:14:16.87 ID:HLv0WPoAO
>>997-998
花子さんとかの人乙ですー
ギルかぁいいよギル
そして風夜くんとアーサーの本当のお願いはなんだったのかによによ
そしてなにやら不穏の影が…!
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/16(月) 23:16:15.52 ID:HLv0WPoAO
あ、すいません間違えた
風夜くんの本当のおねがいだった。でもアーサーだってきっと当たり障りのあるお願いもあったよね!
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/16(月) 23:53:51.35 ID:HLv0WPoAO
そして連投ごめんよー
単発の人乙です
巨乳黒服さんかこいい
9 :EXTREMEDRINKBAR [saga]:2012/07/17(火) 22:02:23.47 ID:Dt+3UkzT0

「うぇっひひひ! お嬢ちゃんは赤いマントと青いマント、どちらが好きだい?」

 塾からの帰り道。
 見たい番組が有った。
 少し近道する為に通った路地裏に、その男は居た。

「そ、そんなの知りません!」

 ピエロのような仮装に二色のマントを羽織った男。
 私の通り道を塞いで、じりじりと近寄ってくる。
 背を向けて逃げ出す、走る。

「おおおおおおおおおおおおおっと!
 行かせない! 生かせないし逝かせないよぉう!?
 お嬢ちゃんはこれからボクチンと一緒に遊んでもらうって決めちゃったもんねえ!
 だから駄目だよぅ! 絶対に絶対ににがさなあい!」

 目の前に、全く同じ顔をした全く同じマントの男が現れる。
 狂ったように笑う二人の男。
 ゲラゲラとゲラゲラと、路地裏中に響くような大声で。
 誰にも聞こえてないのだろうか?
 誰にも届いてないのだろうか?

「誰か! 助けて!」

「「無駄無駄ァ! ここはもうとっくにボクチンの狩場」」

「「君は黙って赤か青か選ぶしか無いのさ!」」

 腰が抜ける。
 立てない。

「うぇひ」

「うぇひひ」

「「うぇひひひひひひひひひ!」」

「「さあ! どっちか決めるんだ!」」

「キミが好きなのは」

「赤いマント?」

「青いマント?」

「「どっち!?」」






「貴様らの血で染まった赤いマントだ!」







 声のする方を振り返ると屋根の上に一人のお兄さんが立っていた。

「とう!」

 お兄さんは屋根から飛び降りると私に手を差し伸べる。

「君、大丈夫かい?」

 手を伸ばし、掴む。
 私を見る彼の笑顔は何故だか本当に嬉しそうだった。

「は、はい」

「ならば良い、少しそこの物陰に隠れていなさい
 ここから先は僕に任せてくれ」

 言われるままに転がっていたドラム缶の裏にしゃがみこむ。
10 :EXTREMEDRINKBAR [saga]:2012/07/17(火) 22:02:51.28 ID:Dt+3UkzT0
「「何者だ貴様!?」」

「この街の平和を守る通りすがりの……ファミレス店員だ!」

「小ッ癪な奴だねぃ!」

「人間風情がボクチンのッ邪魔をするなんて!」

「化物(フリークス)風情が良く吼えるじゃないか」

 腕を高々と掲げて不敵に笑うお兄さん。

「来いよ、纏めてお伽話の彼方に送り込んでやる」

「「吐いた唾飲むんじゃねえぞ駄人ン間!!」」

 二人の男は、今までのおちゃらけた声色とは打って変わってドスの効いた低音で凄む。
 ナイフを振り回し、お兄さんに向けて突っ込んでいく。
 あり得ない位に速い。
 眼で追うのがやっとだ。

「蝿が止まるよりスローだぜッ! 噛ませ犬共!」

 お兄さん前後から迫る二人の変質者に腕を向ける。

「スカイラーク!シフトオン!」

 次の瞬間だった。
 叫び声に一瞬だけ遅れてお兄さんの手から何かが飛び出す。
 遅れて響く男たちの悲鳴でそれが何かとてつもなく熱い液体であったのだと理解した。

「先ずは眼だ!
 目を塞がれてしまえば俺の“スカイラークの看板で卵を生んでる雌のヒバリを見つけると珈琲をサービスされる”の速度に対応はできない!
 お客様に珈琲をお出しする速度、貴様ら資本主義社会の外で生きる畜生には想像すらできまい!
 セカンドシフト!マーシャルオーダー!」

 お兄さんはふわりと空中へと浮かび上がり、足からものすご勢いで液体、おそらくは珈琲を出す。
 それを推進力にして彼はそのまま空中から、正面の男に向けて回転踵落としを決めた。
 
「ぐああぁ!」

 男が悲鳴を上げるともう一人の男がそちらの方向を向く。

「くそっ! そっちか!?」

 男はお兄さんともう一人の男に向けて駆け出す。

「トドメだ」

 後ろの男なんて見えてないかのようにお兄さんは目の前の男の頭に足を載せる。
11 :EXTREMEDRINKBAR [saga]:2012/07/17(火) 22:03:18.83 ID:Dt+3UkzT0
「サードオーダー、エスプレッソ」

 お兄さんの足から濛々と煙が立ち昇る。
 赤く光るお兄さんの足。

「――――忘却の彼方に消失せよ」

 お兄さんはそのまま強く強く男の頭を踏みつける。
 ゴリッ
 酷い音だ。
 胃袋の中身がそのまま出てきそうな光景。
 頭を潰された男は光の粒へと変化して消滅していく。

「お前何をした!?」

 後ろの男が叫びながら飛びかかる。
 しかしお兄さんは拳から珈琲を射出し背後へと肘打ちを決める。
 そして掌から珈琲を射出して裏拳。
 肘から珈琲を射出してアッパー、浮かび上がった男にハイキックを決め、インパクトの瞬間に足の裏から珈琲を射出。
 ウォーターカッターでも当てられたかのように男は真っ二つになった。

「本日はご来店誠にありがとうございました」

 お兄さんは恭しくおじぎをする。
 それと同時に男は完全に光の粒になって消滅した。
 お兄さんは笑顔を顔面に貼り付けたままこちらに近づいてくる。

「これからは近道の為であっても人気の無い道を通っちゃ駄目だよ?」

「は、はい……今のは?」

「今のは都市伝説、人間を襲う悪いやつって認識で問題ない
 そして僕は君のような何も知らない人々を守る為に都市伝説と契約した契約者」

 お兄さんは私の目の前にペンライトのような物を出す。

「それは……?」

「君は何も知らない普通の人々の一人」

「え?」

「だから、これからも何も知らないままでいなさい」

 ペンライトが光る。
 意識がどんどん薄くなっていく。
 
「縁が有ったら、また逢おう」

 消えていく意識の最後に聞いたのは、たしかそんな言葉だった。

「よく分かんないけど、ありがとうございました」

 消えていく意識の中で最後に告げたのはそんな言葉だった。
12 :EXTREMEDRINKBAR [saga]:2012/07/17(火) 22:05:55.68 ID:Dt+3UkzT0
なあディオ、スカイラークのアレで話を書けるのか?
と何処かで聞かれたような気がしたので応えてみました
ぶっちゃけFateの魔力放出とかリボーンの死ぬ気の炎ブースターみたいなもんだなあと
あと珈琲による覚醒作用で神経がめちゃ鋭敏になってますこのお兄さん
13 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/18(水) 21:09:36.94 ID:Bs6rzozP0
まさかこんなカッコいい話が出来上がるとは思ってもみなかったぜ
乙でした、このお兄さんで連載するべきそうすべき(ぁ
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/18(水) 21:14:32.23 ID:qtSK8/07o
このスレではあらゆる都市伝説が武器となるのか……
膣痙攣で戦う(?)作品もあるし、改めて都市伝説の可能性は無限大だと思いました
15 :単発ネタ [sage]:2012/07/18(水) 23:35:08.17 ID:f0UfxkxSO
都市伝説と戦うと言っても、一人では限界がある。
飛んでくる火の粉を払うだけなら良いが、積極的に戦うなら、まず都市伝説を捜さなければいけない。
その辺、組織というのは便利だ。
倒すべき相手がいれば、呼びだし、場所を教えてくれる。
特に、俺みたいな学生は時間が限られるしな。……あれ?大人もか?
それはそれとして、あれだ。組織の黒服ってのは男だけかと思ってたけど、
「女もいるんすね」
俺の担当の黒服は美人さんだ。
「男性の方が圧倒的に多いですが、女性もいますよ」
そーなのかー。
「そだ。黒服さん、手、繋いでも良いすか」
「……はい?」
「『はい』?今、『はい』って言いましたよね!?繋いじゃおっと」
「えぇと……」
「いやー、俺意外と怖がりなんすよ。手を繋いでると安心できるっていうか」
嘘である。
幽霊が怖くて都市伝説退治なんかできるわけがない。
特に、俺達は今から都市伝説退治に行こうとしているのだから。

「あの、そろそろ離していただけますか」
結局、あの後、しばらく繋いだままになった。
何度か軽く振り払おうとしてたけど、離さなかった。
ていうか、それを利用して、バランス崩したふりして抱き着いてみたりした。
「えー、一人にしないでくださいよ」
「いえ、すでに都市伝説がうろついていると報告のあった場所なんですが」
あ、そりゃ仕方ない。
名残惜しいけど離れる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
と、ちょうどいいタイミングでそいつは現れた。
光る目をした、明るい赤い顔の、スペードのエースのような形状の頭で、明るい緑の衣服。
フラットウッズモンスターだ。
「〜〜〜〜〜!!!」
フラットウッズモンスターが何かしようとして
「先手必勝!」
燃えた。
俺の手には一枚の写真。
写真に写るは一枚の絵。
俺の契約都市伝説『招く泣く少年の絵』が、炎を放っていた。
「はい、終了」
フラットウッズモンスターは、あっという間に黒焦げになり消えていく。
「……速いですね」
黒服さんが関心したように言う。
当然だけど。
あ、そうだ。
「黒服さん!俺、やりました!」
黒服さんに不意打ちで抱き着いてみる。
「!?」
驚いてる驚いてる。さらに……不意打ち!
「っ!?」
「おっと……」
キスしようとしたら、さすがに避けられた。
……チッ
まあ、当然か。
「……何を、……先程から、何をするんですか」
「愛っすよ、愛。俺、黒服さんの事好きになっちゃったみたいで……」
「……く、黒服と恋愛なんて不毛ですから、やめておきなさい!」
そう言って、黒服さんは背を向けて、歩きだす。
んー、顔が赤かったのは、怒りか、照れか。まあ、怒りの割合のが高いかな。
いきなりキスしようとしたんだし。
だが、俺は引かない。戦闘も恋愛も攻めの姿勢でなければ。
「待ってくださいよー!黒服さーん!!」
とりあえず、今日の所はもう一回抱き着いて、あのでかい胸を堪能するとしよう。
…………いい匂いするし。

16 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/19(木) 02:20:27.94 ID:lTzhGOK70
三角関係……だと……
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 20:38:26.25 ID:IPU3roODO
三角関係なのか…?
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/19(木) 20:58:13.30 ID:e4ZSwhj/o
まだ三角ではないな
H2Oの分子モデルのような関係
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 22:03:51.03 ID:kiY9Tohy0
単発の人だぞ?
あの単発の人だぞ?
ドロドロにとどまらない人間関係を書いて魅了してきたあの単発の人の単発だぞ?

これは三角関係には収まらないような
多角関係なドロドロどころじゃないのが読めるはずだ!
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/19(木) 22:25:42.31 ID:e4ZSwhj/o
あまりハードルを上げすぎるのはよくない
予想外の方法をもってハードルを潜り抜けられかねないぞ
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 22:37:37.80 ID:kiY9Tohy0
どう裏をかかれるか
それもまた楽しみのひとつさ…
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/19(木) 23:51:54.69 ID:owDxRPRE0
単発の人様乙ですー
お兄さんかっこいい!
目くらましに使って良し、神経を鋭敏にしてよし…珈琲って凄い

おおう、三角関係疑惑が…黒服さんてば罪なお方
23 :夕暮れに少年とひつぢと何かが邂逅す  ◆nBXmJajMvU :2012/07/21(土) 16:27:15.67 ID:B1sgbAM70
「おぅ、幸太。早くしないと置いていっちまうぜ?」
「うー、明日葉、待ってー」

 夕暮れの学校町。公園に、小さな二つの影・。一人は、長い髪に猫耳のように赤いリボンの飾りを付けた、黒い着物の少女。一人は、夏場だというのに薄手のマフラーを首に巻いた少年
 てちてちと、少年は着物の少女の後を追いかけている。うー、と、やや不満そうな声をあげていた

「うー、明日葉。そんなに早く走ったら転ぶ。走っちゃダメ、うー!」
「おいおい、幸太ぁ、お前の中で、俺はどれだけ運動音痴扱いよ?これくらい、どーってことねぇぜ?」

 少年、幸太の言葉に、少女、明日葉はくひひっ、と笑いながら答えている
 明日葉は、着物姿だ。走りにくいだろうに、けらけらと笑って駆けている。だが、その足取りはどこか危なっかしく、幸太の言うとおり、うっかりすれば転んでしまいそうにも見えた
 しばし、追いかけっこのように互いにかけていた二人。が、先に根を上げたのは、明日葉の方だった。息を切らせて、ぺとん、と、ベンチの上に座り込む

「……やっぱり、日が陰って涼しくなったとはいえ、夏場に駆けまわるもんじゃなかったぜ」
「うー……大丈夫?」
「飲み物があれば復活できるって信じてるぜ」

 ぐっでん
 座り込むどころか、ベンチの上で横たわる明日葉。何とも情けないというか、だらしがない
 そんな明日葉の様子を、幸太は純粋に心配したのだろう、うー!と声を上げる

「じゃあ、僕、ジュース買ってくるから、待ってて?」
「おぅ、サンキュー幸太………金渡しておくから、これで頼む」

 ちゃりん、と、百円玉一枚、十円玉二枚を明日葉から渡され、でべでべと走る幸太。公園の隅にある自販機の前にたどり着いた。ちゃりん、とお金を入れていって……

「………あ!」

 ころん、と、十円玉が一枚、手から零れ落ちてしまった。慌てて拾い上げようとするが、十円玉はころり転がり、自販機の下に転がっていってしまった。これでは、拾い上げることができない。幸太が、泣き出しそうな表情を浮かべた、その時

「めー!」

 ………鳴き声が、聞こえた。羊のような、鳴き声が

「うー?」

 かっくん、首をかしげる幸太
 もぞもぞ、と、自販機の下から、何かが姿を現す

「めー!」

 てーん!と。愛らしい、小さなひつぢが、姿を現した!!
 ちみちゃい前足が持つのは、先ほど幸太が落としてしまった十円玉。どうやらそれが、自販機の下に隠れ潜んでいたひつじにクリーンヒットしたらしかった。痛かったじゃないか、とでもいうように、ひつぢはめぇめぇめめぇと鳴いて幸太に抗議する。が

「うー!ひつじー!」
「め!?」

 幸太が、ひつぢの言葉を理解できるはずもなく。ひょい、と、無邪気に、そのちっちゃくて丸々したひつぢを抱きあげた。ひつぢはさらに抗議し続けるのだが、うーうーと無邪気にひつぢを高い高いしている。ひつぢが親切に十円玉を拾ってくれたのだと思って、ご満悦のようだ
 ぎゅ、とひつぢを抱いたまま、幸太は最後の十円玉も入れた。明日葉の為に、ジュースを買ってあげようとして……

「……うー、届かない」
「めぇ?」

 手が、届かない。まだまだ幼い幸太の手に、狙いのジュースのボタンの高さは、少々高すぎた。あともうちょっと、届かない。一生懸命背伸びしても、届かない。妥協して別のジュースを買えばいい話なのだが、幸太はどうしても、あのジュースを明日葉に買ってあげたいのだ
 うーうーと声を上げながら、一生懸命、手を伸ばし続けて………

 ………っぴ、と。後ろから伸びてきた手が、そのボタンを、押した

「うー?」
「これでいいんだろ?」

 がこん、と、ジュースが取り出し口に落ちてくる。ぱぁ、と、幸太は表情を輝かせた。ジュースを手に取り、振り返って、親切なその人を見上げる

「うー!お兄ちゃん、ありがと………」
「どういたしまして」

 幸太を見下ろし、笑うそれは………そちらも、まだ、「少年」と言う呼び名がしっくりくる年代の少年だった。もう少しで「青年」と呼んでも許されるくらいの年齢だろうか
 その少年を見上げ、無邪気に礼を述べていた幸太だったが

 直後、その無邪気な表情が、全く別のものへと変化した

「…………お前……………誰……………?」

 強い、警戒を含んだ声。先程までの無邪気な少年ではなく、まるで数百年を生きた魔導師が、そこにいるような錯覚を、幸太の目の前の少年と、幸太に抱かれたひつぢは感じたのではないだろうか。
 いや、今、ここにいるのは幸太であって、幸太ではない。幸太が「ハッピー・ジャック」と呼んで区別する、別のそれが、そこで目の前の少年を見上げていた
 幸太の言葉に、少年は笑う。笑って、短く答えた

「藤原 風夜。通りすがりの………「吸血鬼」の契約者だよ。「首塚」所属の坊や」

to be … ?
24 :夕暮れに少年とひつぢと何かが邂逅す  ◆nBXmJajMvU :2012/07/21(土) 16:28:53.51 ID:B1sgbAM70
避難所でショタ分が足りないって言われたので、久々に幸太を
ついでに、あいつやらひつぢやら
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 18:37:18.14 ID:h5kzB8HDO
てちてち走る幸太くんを追い回……幸太くんと追いかけっこしたい
自販機の下に落ちた10円玉を拾うついでに幸太くんのふくらはぎをガン見したい
ボタンに手が届かない幸太くんを抱き上げてふにふにの脇腹を堪能したい
そのついでに横抱きして幸太くんの顔を至近距離から眺めたい
純粋無垢な幸太くんの満面の笑顔を向けられたい
幸太くんかわいいよ幸太くん

本当にありがとうございましたあと再び色々とすみませんでした
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 18:45:34.14 ID:e934EAwG0
花子さんの人乙です
幸…幸太って誰だと一瞬思ってしまった自分を許してください
あのうーうーBoyのことでしたか…本当に久しぶりだな
藤原君と会ったということは組織強硬派過激派討伐と絡んでくるのでしょうか
これからどうなるか楽しみです
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 23:00:54.89 ID:GBBW+A1x0
ショタは良いねえ
ショタショタ
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/07/22(日) 01:40:10.57 ID:VLQsk89go
都市伝説って他の人のキャラが契約してるのと被っちゃってもかまわないの?
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 01:54:59.61 ID:VZpHAI3W0
>>28
例外を除いて、同じ都市伝説が複数存在しても別個体として捉える
こっちを読んで頂けるとありがたい
ttp://www29.atwiki.jp/legends/pages/4259.html
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/07/22(日) 02:26:23.90 ID:VLQsk89go
>>29
ふーむ。大体分かりました。
しかしこれ、必ず悪役は組織の人間なんですか?
それとも、一般人の契約者同士が戦う的なのもありなんですか?
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 02:30:50.23 ID:sy7d27SSO
組織は別に悪役じゃねーべ
一般の契約者同士の戦いもあるよ
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/07/22(日) 02:44:36.47 ID:VLQsk89go
>>31
あら、そうなんですね。誤解してました。
まあとりあえず適当に書いてみます。
おかしいところがあったら指摘お願いします
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 02:47:59.52 ID:VZpHAI3W0
>>30
ここで投稿している人の、特に現在投稿している人の作品は
しばしば「組織」を敵として書いていますがそれだけとは限りません
「組織」所属の人々を主役にした作品もあります

もちろん一般人の契約者同士が戦う作品も大アリです

ついでに言うと、「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」が一応のお約束なので
現在投稿している人が舞台としている学校町や、契約・容量などの設定などから離れても問題ないのです
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 02:49:50.22 ID:VZpHAI3W0
>>32
詰まったりしたら、wikiのQ&Aを読んでみるのもいいかもしれません
ttp://www29.atwiki.jp/legends/pages/2509.html

良い創作ライフを!
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 13:21:52.45 ID:Iti6hs8To
単発の人が投下し続けてるものに登場する
組織の黒服はどう見ても悪役っぽいからなあ
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 14:10:13.35 ID:sy7d27SSO
そんなに悪役書いてたっけか
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2012/07/22(日) 15:19:58.92 ID:VLQsk89go
「コックリさんコックリさん、おいでくださいませ」


暗い部屋に響く、声。それは老女の呪詛のようであり、待人を待つ少女の声のようでもあった
その声を発する少女の前に広げられているのは……びっしりと文字が書き込まれた紙。
その紙に描かれた鳥居の上に乗せられた十円玉。そして、その上に乗せられた白い指。


「コックリさんコックリさん、おいでくださいませ」


その少女は、何度も何度もその言葉を繰り返していた。願うように、何度も、何度も。
……しかし、指の下の十円玉は動かなかった。それでも、“彼女”は諦めない。


「コックリさんコックリさん……」


その声は、やがて静かに震えだした。泣き出しそうな声は、それでも同じ言葉を呟く。


「コックリさん………コックリさん………お願いします………」


その時。騒音とともにドアが開かれる。パチン、という音ともに、天井の蛍光灯が一斉に暗闇をかき消す。

女学生A「うっわー、マジだったんだー。放課後の教室で一人でコックリさんやってるって。」
女学生B「アハハ、他にやることないわけ?超ウケルんだけどwww」
女学生C「やめたげなよ、カワイソーじゃん、友達いないんだからwww」

突如ドア開けて明かりをつけた女学生達は、けたたましい笑い声を挙げながらズカズカと教室に踏み入ってきた。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2012/07/22(日) 15:20:25.43 ID:VLQsk89go
3人は少女の近くに集まると、鳥居の描かれた紙を乱暴に奪い取った。

女生徒B「スゴーイ、これマジのやつ?ウチ見るの初めてだしwww」
女生徒C「あたし、一回やったことあるよ。前につきあってた男がこういうのが好きで、
やりたいっていうからやったんよ。まあ、短小だったからすぐ別れたけどwww」
女生徒B「アハハ、まーたケイコはそんなことばっかいってぇ!!」

ギャアギャアと騒ぎ立てるなか、リーダー格の女生徒が紙を放り投げ、踏みつける。

女生徒A「こんなんやってるヒマあったら、いつもみたいに遊びにつきあってよー」

グリグリと紙を踏みにじるリーダーを見て、他の二人も騒ぎ立てる。

女生徒B「そーそー。今度の日曜カラオケ行くから、来てよねー」
女生徒C「いつもみたく、奢ってよね、悪いけどwww」

やがて、飽きたのか女生徒達は騒ぎながら教室を去っていった。
残されたのは靴の跡のついた紙と十円玉、そして少女。


「うう……コックリさん………コックリさん………どうして答えてくれないの……」


彼女は、泣いていた。泣きながら再び十円玉に指を乗せ、泣きながら呟いていた。


その時だった。十円玉がゆっくりと、しかし確実に動き出したのだ。


「えっ……」


39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2012/07/22(日) 15:20:57.32 ID:VLQsk89go
ゆっくりと文字の上を辿っていく十円玉彼女はそれを見ながら、
十円の指す文字を、呆然としながら読み上げていった。

あ……な…………た…の………ね…………………が……い…は………な…………に

それを見て、少女は呟く。

「私の……願い?」

すると、十円はさらに動き続ける。

そ……う…あ………な…た……のね………が…い……を……………お……し…え……て

最初は戸惑っていた少女だったが、やがて微笑みを浮かべる。

「私の願い?それは…………」






大亜教授の事件簿〜第一話〜「コックリさん」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2012/07/22(日) 15:21:53.42 ID:VLQsk89go
とりあえず導入部だけ書いたんですけどこんなノリでいいですか?
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 15:40:57.24 ID:yUCufxN90
>>37-39
乙です…導入か!
大変素薔薇しいと思います
これからっこくりさんと契約だろうか

短小だから別れたってケイコさんひでえや…
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/07/22(日) 15:48:29.74 ID:YUZrp1r/0
導入乙!
これからの展開にwwktkさせていただきますの

ケイコさん酷い人だぜ…



そして、単発の人のお話に出てくる黒服は、悪い黒服さんが多いと思うの
なんていうか、その…………徹底的にすりつぶしたいと言うか、叩きのめしてこの世に痕跡すら残したくない悪役が多いと思うの(褒め言葉
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 16:10:55.78 ID:yUCufxN90
まあAナンバーの黒服なんだし
そうなるのは仕方がない
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/22(日) 18:19:27.19 ID:0Yl6SV3AO
単発の人乙ですー
なんという三角関係ww可愛いぞ巨乳黒服さん!
花子さんとかの人乙ですー
幸太くんもひつじもかぁいいのでまとめてお持ちかえr(
大亜教授の人乙ですー
すっごく楽しみですの
45 :大人の心配、子供の憂鬱 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/07/22(日) 18:39:50.87 ID:0Yl6SV3AO
「・・・・・・」
 沈黙した電話機を、ムーンストラックは苦い表情で見つめていた。
 傍らでは、柳が固唾を呑んで彼が何事か言うのを待っている。
「・・・両親の事を思い出したようだ」
「・・・!」
 柳も呼吸が止まる。
 ノイの両親の死と、それにまつわる彼女の記憶については、彼もムーンストラックから聞いていた。

 8年前の冬の日。
「みろよ、あの子。月に・・・お前に祈ってるよ」
「俺は“ムーンストラック”だ。“月に住む男”ではない」
 そう言うな、お前は居るだけで子供に夢を与えてるぞと
 当時の契約者が物陰から見守っていた幼女は、夜空の月に向かって、何事かを祈っていた。
「さいきんね、お父さまとお母さま、けんかばかりしているの。
おねがいお月さま、お父さまとお母さまをなかなおりさせて」
 ・・・それから程なくして後。
 深手を負い、命が尽きるのを待つばかりとなった契約者は言った。
「契約・・・を・・・解除しよう・・・」
 一蓮托生で二人とも消滅するより、彼だけでも助けようとした契約者の遺志を汲んでその子の様子を見に行った夜。
 冬の夜は早く、一際暗いというのに邸内に明かりはついておらず、子供の泣き声が聞こえた。
「お父さま、お母さま、おきてー」
 暖炉の火も消えた部屋で、女の子が泣いていた。
 夫婦らしき若い男女は既に事切れていて―
 …子供の傍には、襤褸を纏った、骸骨。
 その色濃い“死”を思わせる影は、ソレがどのような存在なのかを容易に想起させ、彼は此処で何が起きたのかを悟った。
 そして、この場でただ一人、この子だけが無事だった、その意味は。
「何ということだ・・・!」
 おそらくこの子には、自分のした事も、両親がどうなったかもわかっていないに違いない。
「おじさんだれ?」
 気がつくと、子供は彼の服の裾を掴んでいる。頬には薄黒く涙の跡が残り、目は赤く泣きはらしている。
 何時間ほどもこうして過ごしていたのかと思うと、彼は真実を言う気にはなれず、そのまま子供の額に手を当てた。

「・・・?」
 たちまち子供は意識を失い倒れ込んだ。泣きはらした痕は消えないものの、その表情は安らかだった。
「皆、忘れてしまいなさい・・・これは、事故だ」
「良いな、お前の両親は・・・事故で死んだのだ」
46 :大人の心配、子供の憂鬱 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/07/22(日) 18:40:51.57 ID:0Yl6SV3AO
『・・・・・・』
 柳は重い溜め息をついた。なぜ自分が今、彼女の側にいてやれないでいるのか。
「俺、ちょっと出かけて」
「お前達」
 言い掛けたところで、男二人に声を掛ける者が居た。
「リジー・・・?」
「イタル様に何か、変わった様子はないか?」
「変わった様子・・・さあ」
 そういえば、あれから少し、口数が減ったような気がしないでもない。
 一番大騒ぎを演じるノイが帰ってきていない今、静かすぎてあまり気がつかなかった。
「食もお進みでないようで・・・何かあったら教えろ」
 それだけいうと、彼女はひらりと身を翻し、夕飯の買い物に行く、と言い残して出掛けていった。

「・・・・・・」
 放課後。
 極は繁華街のファーストフード店で時間を潰していた。
 別に何か食べたいわけじゃない。昼食もだいぶ残しているし、今だって目の前のコーラの紙コップは手つかずのまま氷が溶けて外側は滴がしたたっている。
 家に足が向かなかった。こんな事は初めてで、極自身にも何故なのかわからない。
 今までだったらまっすぐ帰って、宿題と予習、復習を済ませて
「イタル、お勉強?」
「チューガクって、どんなお勉強するの?」
「邪魔だよ、テレビでも見てろ」

空いた時間には読書。
「イタルー!お勉強終わったらテレビ見ようよ!」
「イタルはマンガ見ないの?」

(・・・お前なんか・・・お前なんか。僕は)

 氷の溶けきったコーラの味は、今の彼の気持ちのように、うっすらとぼやけていた。



続く
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/07/23(月) 00:08:51.07 ID:p7FOCYB+0
大亜教授の人様、鳥居の人様乙ですー

虐げられる女の子っていいなぁ…ぞくぞくしちゃう
これから契約して復讐でしょうかwktk

ムーンストラックさんも彼の前の契約者さんもいい人だ…(ブワッ
食が進まないほどに、極くんも居なくなったノイちゃんを気にかけてる…
お母様の事で溝があるとはいえ、大事な家族の一員ですものね…(グスッ
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 22:24:06.22 ID:m630mAM/0
鳥居さんおつです
核心が直接書かれるとこう…
いや待て、ストさんは死神と戦わないで済んだのか
書かれてないだけで死闘が繰り広げられたのか
やなぎん…
49 :単発ではなくなったネタ [sage]:2012/07/24(火) 00:50:57.55 ID:LG6cpwGSO
私の後輩の話をしよう。
一言で言えば、女の敵。
私に自慢してくる彼女の名前が月一で変わり、前の彼女はどうしたのかと聞けば、
「彼女?やだなぁ、前のは友達っすよ。エロい事がしたくなった時の友達っすよ」
と言う。
正直、私はこの後輩の男が嫌い。
そして、たぶん、後輩も私の事を好いてはいないと思う。
何故か、高校の頃は一緒になる事が多かったけど。

黒服さんの話をしよう。
私は、黒服さんが好き。
……私は女で、黒服さんも女だけど。
一度告白して、断られた。
その理由は女同士だから、ではなかった。
だから、まだ私は黒服さんを諦めていない。
いつまででも、私は諦めない。
いつか、黒服さんと……
そう、思っていたのに。

「最近、好きな人ができたんすよ」
「難しい人でー」
「最近は、キスしても抵抗しなくなってきてえ、あ、まだ口では色々言ってるんすけどね」

たまに会う、後輩からの自慢話。
また可哀相な人がいるんだな、としか思っていなかった話。
その話に出てくる女性が、黒服さんだと気がついたのは、最近で。

今日は、久々に組織の任務。
黒服さんに会える。
会って、言わないといけない。
あの男は、駄目だと。
貴女を不幸にすると。
言わなければいけない。
「黒服さん!」
「…………あ、こんばんは」
「好きです!」
何故、どうして、口を開いて出てきた言葉が、それなのかは分からなかった。
もしかすると、黒服さんが、人間と黒服である事を気にしなくなったのなら、受け入れてもらえると思ったのかもしれない。
そんな期待をしてしまったのかもしれない。
「え、えぇと……女同士の恋愛なんて不毛ですから、やめたほうが良いか、と」
………………。
それは、1番、聞きたくなかった言葉で……


私は手の中の飴玉を強く握りしめた。

50 :鳥居を探すの人 ◆x/N696.6Yr.9 :2012/07/24(火) 04:03:08.52 ID:tVO3lqnC0
>お母様の事で溝があるとはいえ、大事な家族の一員ですものね…(グスッ
さて、本人がどうやって迷走から立ち直るか…

>いや待て、ストさんは死神と戦わないで済んだのか
>書かれてないだけで死闘が繰り広げられたのか
未契約という千載一遇のチャンスを、死神は棒に振ってしまいましたwwwwww

単発の人乙ですー
黒服さん駄目女の敵に惑わされるな!?
女同士の恋愛もいいものだぞ!
51 :モデルケース [sage]:2012/07/24(火) 05:02:40.13 ID:a0oj5a/zo
 彼が家族と暮らし始めたのはつい最近だった。老いた母を養うため町へ帰ってきたのだ。

「ごめんね。あたしが体を壊さなけりゃ……」

 そんな言葉を一緒に暮らし始めてから何度も聞いた。正直なところ、その言葉を聞くたびに内心はイラついていた。母親の世話をすると決め、一緒に暮らし始めたのは自分の選択である。
それを否定されるのは堪ったものではない。だが、それと同時に安堵もあった。この言葉は自分が母に愛されている証しなのだと。
 彼が母親と一緒に暮らし始めて2年ほど経ったある日、家に突然男が転がり込んできた。

「よぉ兄貴!久しぶり!」

 それは7年前に海外に行ったきり音信不通だった彼の弟であった。ずいぶんと痩せこけ、ひげや髪は不精に伸びていたが、見間違えるはずはない。

「いやいやいや、こえーこえー海外は!金なし宿なし仕事なしで命まで狙われるんだから!……まぁ、心配かけて悪かったよ。これからはもうどこにもいかねー」
「それは、ここで暮らすってこと?」
「ぅん。か、母さんさえよければ」

 母は泣きながらここで暮すよう弟に言った。7年も音信不通だったのだ。それはそれは心配しただろう。そして心配していたのは彼も同じだった。年は若干離れているが血のつながった弟。
涙を流して母と弟に抱きついた。

「は、っはは…なんだよ。もっと早く帰ってくりゃよかったなぁ…………グスッ」

 それから彼は家族3人で仲睦まじく暮らした。幼いころの苦労を労う様に、離れていた時間を埋めるように。子供ころには得られなかったゆったりとした時間がそこにあった。
彼にとって家族はかけがえのない宝だった。








 そんな彼の宝は粉々に砕け散った。


52 :モデルケース [sage]:2012/07/24(火) 05:03:15.28 ID:a0oj5a/zo

モデルケース『座敷ワラシ』@



「しつもーーん。どうやったら口裂け女を殺せるようになるの?」
「……なんで口裂け女限定?」

 特に変わったところもないカラオケボックスの中、女が3人、男が1人たむろしている。部屋にはへたくそな歌が垂れ流されている。
喋りかけたのは淡い青のフェミニンなワンピースに黒のニーハイブーツを合わせたギャル系のファッションの女だった。
ギャル系のファッションではあるが、その髪は染められておらず黒炭のような黒さを持ち、おかっぱ頭と頭だけ見ればギャルには見えない。しかし、その喋り方もいかにもギャルである。
顔立ちは相当いい部類に含まれるだろう。少し腫れぼったい唇。すっと伸びた鼻。大きく開いた瞳。自分のよさを自覚したような薄めの化粧。
そんな彼女は頬杖をつきながら眉をしかめ、隣を見ていた。
 答えたのはギャル女の視線の先にいる男。黒色のカーディガンに少し色あせた青のジーンズ。一見どこにでもいそうな普通のファッションだ。
だが、カーディガンの右胸には少し大きめに『I☆NY』と白色で縫いこまれている。そのせいでセンスはまるでない。
髪は無造作に後ろへ流され、戻らないに黄色のカチューシャで抑えられている。顔はキツネ目にうっすらとした無精ひげが生えている。
ギャル系の女を横目で見つめながら口の中でべっこう飴を転がしている。

「ほら、私ってー口裂け女嫌いじゃないですかぁ」
「そんな当然のように語られても……」
「将来口裂け女をちぎっては投げちぎっては投げしたいですよー」
「あー、無理じゃない?」
「今のままじゃ無理に決まってるじゃない」
53 :モデルケース [sage]:2012/07/24(火) 05:04:06.54 ID:a0oj5a/zo

 二人の会話に女が1人参入する。少し茶が入ったミディアムボブの髪に化粧をした顔。とくにこれといった特徴はなく、日本人特有の平たさが表れている。いかにも平均といった顔つきだ。
薄めの白いコートにカジュアルな白い半ズボンと、服装はカジュアルファッションで決められている。そこにはせめてもと、おしゃれの努力が垣間見える。
女は本を読みながら、顔も上げずに話しだす。

「ドドフジ。あんたはバカだからわかんないかもしれないけど、都市伝説は人間じゃないのよ?」
「はぁ!?ナオコ私のことバカにしてんの!?てかドドフジ言うなー!」

 ギャル系のファッションをした女は百々(どど)藤枝、カジュアルファッションの女は石田ナオコ。
一週間ほど前、この町で起こった『口裂け女連続殺人事件』において、その犯人たる都市伝説『口裂け女』と会い、都市伝説にかかわった人間である。
藤枝は親友を殺された恨みから口裂け女への復讐を誓い、ナオコは藤枝が殺されまいと、とある人物へ協力した。

「いや、実際わかってないな。殺せるようになるって考えがおかしい」

 そのとある人物というのがセンスのない男、坂本光輝である。『口裂け女』と契約した契約者であり、殺人事件の犯人たる口裂け女を倒した男だった。

「君みたいなちょっと身体能力高い程度の人間が都市伝説を殺せるようになったら、都市伝説は脅威になんてならないんだよ。君が殺したい口裂け女なんて相当強いよ?
 特殊能力とかはほぼないに等しいけど、純粋に身体能力が高いんだ。100メートルをだいたい5秒くらいで走るのが定説で、それに準じた身体能力を持つ」
「えーーー!銃とか使えばいけそうじゃない!?」
「都市伝説本体に対してだとほぼ無力だろうな。あいつらは肉体あっても物理法則無視しまくってるし。そもそも銃どうやって手に入れるんだよ」
「そこはぁ、ほら。闇オークションの裏ルートで」
「考えなしねドドフジって」
「ドドフジ言うなー!」
「Don't be noisy!」
54 :モデルケース [sage]:2012/07/24(火) 05:04:50.95 ID:a0oj5a/zo

 騒がしく喋っていた3人にの耳にスピーカーから聞こえる怒鳴り声が突き刺さる。その声に3人は姿勢をただし、顔をカラオケのモニターへと向けた。
そこに一人の少女がマイクを持ってむくれている。少女の格好はだぼついたオーバーオールに前を全開にした薄手の革ジャン、背中まで赤毛のくせ毛を伸ばしている。
少女の名前はテスタロッサ。もちろん偽名である。

「わたしを無視しないで喋らないで騒がないで!!!!」
「わかった!わかったからマイク離せ!うるさい!」
「coooooocka-A-doooooooodle-doooooooooooooooooo!!」
「うっさいよテスちゃん(テスタロッサのあだ名by藤枝)!マイク取り上げるよ!?」
「じゃあかまって!」
「まったくもー」

 ため息をつきながら藤枝とナオコはテスタロッサを招き寄せ間に座らせる。

「ねー光輝。カラオケ終わったらシースー食べにGoしようよ!」
「おごりですか?」
「ゴチでーす」
「おごらねーよ!?最近小遣い少ないし!」
「回るのおいしーよ?」
「おいしくてもだめ」

 先ほどまでと違い一気に他愛もない話に移る。本来なら、テスタロッサは抜きで話をする予定だった。ここに来る企画をしたのは藤枝である。
彼女は口裂け女を倒した光輝の話を聞きたかったのだ。いかにして口裂け女を倒すか、そのほかもろもろを。しかし、そこに予定外のテスタロッサという少女がついてきてしまった。
彼女のかまってにより、話は何度も中断されている。これには、普段適当な藤枝もすこしげんなりとしていた。
55 :モデルケース [sage]:2012/07/24(火) 05:05:36.60 ID:a0oj5a/zo

「あーあ。もっと建設的な意見が聞けると思ったのになぁ」
「へぇ。少しは真面目に考えてたの?」
「当たり前じゃん。わたし、このことは適当にするつもりはないよ」
「これ以外は適当なのもどうよ」
「えー、ぶっちゃけこれ以外はどうで・・・あれ?」
「どうしたの藤枝」

 そう言い終わるのが先かどうかというところでドアが開いた。そこに立っていたのは散切り頭で赤い振袖を身に付けた10歳から12歳ほどの少女であった。
日本人形のような整った顔で、無表情に藤枝たちを見つめている。

「だ、だれこの子?」
「わ、わたしにきかないでよ。まぁたぶん間違えたんじゃない部屋」
「ねぇねぇミッツさん(光輝のあだ名by藤枝)この子知ってる?」

 藤枝が光輝のほうを見やる。藤枝の目に映ったのは少し驚いた風体の光輝だった。テスタロッサにも目を向ける。テスタロッサは目をこれでもかと開き、振袖の少女を見つめていた。

「え、二人ともなにその反応。ちょっと意味分かんなくてドン引きなんだけど」
「……あれも都市伝説だ」
「え!?うそ!?まじで!?」

 藤枝とナオコは改めて振袖の少女を見やる。気がついたのは当然というべきかナオコのほうだった。

「もしかして、座敷ワラシ?」
「なんでわかんの!?」
「だって座敷ワラシって赤い着物とかちゃんちゃんこ着てる少女でしょ!?」
「そうだっけ?」
「それより座敷ワラシって都市伝説じゃないんだけど!民話だよ民話!」

 はしゃいでいる藤枝とナオコを尻目に光輝は二人を体に隠すように立ち上がる。

「それで、何の用だ座敷ワラシが。こんなカラオケ店に。近くに契約者でもいるのか?」

 座敷ワラシはその質問には答えず、光輝を、それこそ穴があくほど見つめていたが、ふいに視線をそらした。そして一言小声でつぶやいた。
56 :モデルケース [sage]:2012/07/24(火) 05:06:09.41 ID:a0oj5a/zo

「違う」
「何が違うんだ」

 その小声を光輝は聞き逃さない。彼は契約により身体能力が超人化している。その聴力ですら例外ではない。座敷ワラシは扉を閉めながら光輝の顔を見る。
その眼にはどこか悲しみが宿っているようにさえ見える。

「お前は春子じゃない」

 そう呟いて扉を閉めた。閉じた瞬間、光輝はその身体能力を活かし一瞬にして扉を開け放つ。廊下に顔を出し左右に座敷ワラシの姿を探すが、すでにその姿はなかった。
その様子に驚いたのはほかの三人だった。三人とも言葉を発さず目を白黒させている。それはそうだろう。
先ほどまで余裕そうに座敷ワラシに接していた人間が、急に余裕をかなぐり捨てて行動すればびっくりする。

「どうしたの光輝?」

 最初に声をかけたのはテスタロッサだった。ほかの二人よりも付き合いが長いせいだろうか、案外フランクに聞く。
テスタロッサの一言に光輝は部屋に戻り、椅子に座ると、大きく息をはきだした。それですっきりしたのか、顔に余裕の色が戻り、ばつが悪そうに頬をゆがめる。

「いやーすまん。ちょっと動揺しちゃってな」
「あの聞こえたんですけど、春子って人と何かあったんですか?」
「ひょっとして昔の恋人とか!?」

 すこし遠慮をしつつ聞くナオコに対し、下世話な想像をためらいもなく聞く藤枝を見ながら光輝は苦笑した。

「あー、違う違う。恋人とかじゃないから。春子っていうのは俺と契約してるジュ…口裂け女のこと。あの座敷ワラシのその名前が出てきてびっくりしたんだよ」
「え!?ミッツ口裂け女と契約してんの!?」
「前に話したじゃん!それは置いといて、あとでその春子さんにさっきの座敷ワラシのことを聞けば」
「無理だよ無理無理!problemだよ」

 ナオコの提案をテスタロッサは否定する。

「だってドレス死んでるもん」

57 :モデルケース [sage]:2012/07/24(火) 05:07:16.81 ID:a0oj5a/zo
………………………………………………━||:


 ドラム缶に手足として丸太をつければこんな体格になるのではないだろうか。そんな体格にピチピチのスーツを着た男が夜遅く自宅への道を歩く。男は教師だった。
最近町で起きた事件のため、ほかの先生と一緒に見回りをしており、その帰りである。最近は事件もなく平和な日々である。今日も何事もなく無事に見回りは終了した。
そのことに満足しながら家路を歩く。しかし、だんだんとその歩みは遅くなる。その姿はまるで足が鉛にでも変わってしまったかのようである。しかし、歩き続けたせいか男は家に着いた。
家は何の変哲もない一軒家である。男は自分の家を見上げた。

「ん?」

 ふとそこに見慣れないものを見た。二階の電気がついている。朝きちんと消して家を出えたはずなのだから、ついているのはどうにもおかしい。
男は頭をひねり、ポケットから鍵を取り出すと玄関へと差し込んだ。そしてそのままひねる。

「かかってる」

 鍵はしっかりとかかったままである。では一体誰が二階の電気をつけたというのか。それを確かめるべく家へと入り、準備も早々に二階へ駆け上がる。
大柄な体のせいか、階段を駆け上がるとまるで壊れるのではないかと思うほど階段が軋み、悲鳴を奏でる。それを気にせず上がりきると、電気がついていた部屋のふすまを開け放つ。
そこにいたのはカラオケ店で光輝たちと遭遇した座敷ワラシが、まるで男を待ち構えていたかのように部屋の中央に正座で鎮座している。

「え?女の……子?」
「む?見えるのか?」

 おとこには予想外の展開である。男の予測ではここにいるのは泥棒で、今にも逃げんとあわてふためいている様子であるはずなのだから。しかしいたのは振袖を着た愛らしい少女。
これではどう反応していいのか、気持ちの行き場がなくおろおろと目を泳がせた。
 だが、意を決する。

「お嬢ちゃん。どうしてこんなところにいるんだい?」
「おまえは誰だ?」

 疑問文に対して帰ってきたのは疑問文。声こそ鈴の音のようなかわいらしい声だが、その言動は年上に対してするべきものではなかった。それでも男は笑顔を浮かべる。
この子はこちらを警戒しているだけだと感じたのだ。警戒心をとるには素直に受け答えしたほうがいいと、経験則から導き出す。

「おじさんはね、睦城(むつき)伊織っていうんだ。この家に住んでる」
「ふーん。そうか」
「お嬢ちゃんはなんて言うのかな?」
「座敷ワラシ」
「え?」
「人はワシのことを座敷ワラシと呼ぶ。崇めるといい」

 そう言ってドヤ顔をする座敷ワラシを目の前に、睦城伊織は本日何度目かになる大きなため息をついた。 
58 :モデルケース [sage]:2012/07/24(火) 05:08:00.66 ID:a0oj5a/zo
睦城伊織……特技は筋肉を利用したオーバーリアクション温泉卵づくり
座敷ワラシ……たたくと文明開化の音がする
百々藤枝……酔うとキス魔
石田ナオコ……泣き上戸
坂本光輝……酔えば酔うほど弱くなる
テスタロッサ……契約者だが、車とは関係ない
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/24(火) 05:42:39.29 ID:tVO3lqnC0
モデルケースの人乙ですー
ついに都市伝説スレにギャル系登場…!いいよドドフジちゃん可愛いよ
そしてナオコちゃんみたいな相方は欠かせないよね
ところで光輝くんジュリアナといいかけて止めたね?
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 18:44:45.34 ID:bMmE52oDO
皆様投下乙ですー

黒服さんの心変わり……悲劇の香りしかしない

一般的には可愛らしい少女である座敷わらしですが、こんな不遜な座敷わらしもありだと思います
むしろ座敷わらしは男の子でもいいのではと思います
10歳〜12歳の和服ショタとか素晴らしいと思います
そんな子が隣にいるだけで十分幸せになれる自信があります
私の幸せのために誰か和服ショタをください
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/24(火) 19:35:34.73 ID:8LQl4Aeoo
乙です
モデルケースさんは本編もさることながら人物紹介も本編とは違った意味で面白い
62 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/24(火) 20:42:12.11 ID:WApZuBjd0
モデルケースの人乙ですの
座敷わらしハァハァ(
口裂けさんかぁ……やっぱり鼈甲飴かポマードかなぁ
そして伊織さんの特技を是非生で見たいwww
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 22:08:52.17 ID:04Pf2dbao
モデルケースの人乙ですわ
なんともふてぶてしい座敷わらしwwww
彼女はどんな騒動を巻き起こすんだろう
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/07/24(火) 23:45:38.30 ID:rSpG3Zh40
単発の人様、モデルケースの人様乙ですー

百合的な意味で最大の危機が…!
テスタロッサちゃんprpr
ドヤ顔の座敷わらしたん可愛い…
65 :どこか遠い、どこか馴染みある場所で [sage sage]:2012/07/25(水) 23:27:55.98 ID:FlH2KT8w0
どうも、以前↑のタイトルで書いたものです。
また後編を書くと言いましたが……あれは実は嘘です。

という訳で中編を始めます(

○あらすじ○
とある町で、『魔王』と呼ばれるものから逃れた者達が集落のようなものを作っていた。
しかし住居も足りなくなり、食料も底をついてしまいそうになる。
リーダー格であるサングラスの男と、彼が信頼を寄せるジャージの男、
スーツの女、短パンの女は、4人で今後の対策を考えていた。
良い案も上がらずに居たところ、とある少年・タケルの言葉を受けて、戦いを決意する。

しかしその時、『魔王』の手下・『悪魔』と呼ばれる少年が集落に現れる。
『悪魔』の襲来に怯え惑う人々。
サングラスの男とスーツの女は避難誘導に向かい、
ジャージの男と短パンの女は『悪魔』を止めるために立ちはだかる。
しかし『悪魔』は2体のロボットで2人を翻弄する。

そして『悪魔』はネズミに【ウルヴ】と呼ぶ何かを使用する。
ネズミはみるみるうちに怪物のような人型ロボットへと変わっていった……!
66 :人知を超えたウイルス [sage sage]:2012/07/25(水) 23:31:42.50 ID:FlH2KT8w0
男A「早く!ここから避難してください!」

『悪魔』の到来によりパニックになった住人を避難させるべく、
サングラスの男は、【バミューダトライアングル】に出口を作り、そこへ誘導していた。

男A「もっと大きければ避難も進むだろうが……。
   これ以上広げるとバミューダが崩壊する恐れがある。
   頼む、持ちこたえてくれ……!」



悪魔「おや、大変そうだな。」



男が振り向くと、そこには悪魔と呼ばれる少年と……さっきとは異なるロボットがいた。
ロボットは毛むくじゃらで、どことなくネズミのような姿をしていた。
しかし人型である点と、光を放つ目のおかげで、それが生き物でない事は分かった。

悪魔「では、手伝ってやるよ。こいつの力で。」
男A「なに?」

すると、ロボットが動き出し、指笛を吹く。



ロボット3「よぉし野郎ども!進めぇ!地獄まで!」



その瞬間、住民達の様子が変わり、全員が一斉に向きを変えて走り出す。

住民達「「仲間のために死のう。仲間のために死のう。仲間のために死のう。仲間のために死のう。……。」」

住民たちが目指すのは、サングラスの男が用意した出口ではなく、【バミューダトライアングル】の境界だった。

男A「な、何が起こった……!?も、戻れ!出口はこっちだ、そこは、ッ!?」
悪魔「ご名答。お前が最初に説明してくれたよな。境界に触れると……。」

住民達は次々に境界の向こうへと入っていく。
正確には、その先に『世界』はない。待っているのは『無』である。

悪魔「ふむ……。意志が弱い人間を操る能力、と言ったところか……。
   ある程度の意志がある、特に契約者には効いていない……と。」
男A「や、やめろ!止まれ!止まるんだお前たち!」
悪魔「無駄だよ。彼らは『種の保存』という本能のために、自らを犠牲にする道を選んだんだ。
   もっとも、『植えつけられた本能』だけどね。」
ロボット3「逝けェ!どんどん逝けェ!」

男の声も空しく、住民達は止まることなく自らの命を捨てるために走り続ける。



悪魔「良かったじゃねぇか。これで……食料も足りるかもな。」
67 :人知を超えたウイルス [sage sage]:2012/07/25(水) 23:35:27.67 ID:FlH2KT8w0
男A「……だぁ!!!」

男が叫んだ瞬間、【バミューダトライアングル】の境界が消え去った。
どうやら外の世界に戻ったらしい。



男A「はァ……はァ……。
   (しまった、奴に仲間を呼ばれまいと慎重に行動するべきだった……!)」

悪魔「……チッ、このままじゃ逃げられる。おい!何とかできるか!?」
ロボット3「了解ッ!」

するとネズミのロボットは指笛を吹き、住民達に命令する。

ロボット3「集合!いいか、今から3〜5人1組になって!」



ロボット3「 コ ロ し 合 え ! ! ! 」



住民達「「……うぉおおおおおおォォォォォォ!」」

ロボットの命令に従い、住民達は仲間同士で争いを始めた。
大人も子どもも、男女も関係なく、殴り、蹴り……。

男A「き、貴様……!命をなんだと思っている!?」

男の問いに、少し間を置いて少年が答える。

悪魔「……不完全なもの。命は見ての通り、簡単に終わる。
   その点、こいつ等はいい。簡単に作れて、メンテナンスを怠らなければ永遠に動き続ける。
   特にこいつは忠実だ。媒体が良かったんだな。」
男A「不完全、だと言ったな……。
   たしかに命はロボットのように永遠ではない。だからこそ、大切にしなければならない。
   お前達には分からんのか、命の尊さが……!?」

その瞬間、少年から笑みが消え、男に冷たい視線を送りつけた。

悪魔「……『命の尊さが分からない』……だと?」

男A「心まで機械になってしまい、理性を失ったというなら……私も諦めるだろう。
   だがお前も同じ人間なら、命の大切さや、分かり合う心が」
68 :人知を超えたウイルス [sage sage]:2012/07/25(水) 23:38:00.18 ID:FlH2KT8w0






悪魔「 ふ ざ け る な ! ! 」



悪魔「お前達によくそんな戯言が言えたな、反吐が出る!
   お前達こそ、命の尊さが分かっているのか!?
   お前は今まで、誰1人見捨てることなく助け続けたと断言できるか!?」






男A「な、なにを……!?」
悪魔「オレが罪人なら……お前達も罪人だ!だからオレ達は……裁き続ける!」



ロボット3「さぁ、やれやれェ!第5班!もっと派手にやらんかァ!第11班を見習えェ!
      ん、なッ……。」

不意に、ネズミロボットに向かって光弾が放たれた。
光弾が命中すると、ネズミロボットは跡形もなく消え去った。

住民達「「うぉおォォ……。」」
   「あれ、なにやってんだオレ?」「な、何が起こったんだ?」

ロボットが消えたおかげで、住民達も正気を取り戻した。

悪魔「あれは……!?」
男A「来たか……。」

光弾がやってきた元を見ると、そこにはスーツの女が立っていた。
しかし見たところ、それらしい兵器は見受けられない。

女A「大丈夫ですか!?」
男A「すまない、助かった!だが既に多くの犠牲を出してしまった……!」
女A「これは……!?あのロボットがやったんですか!?」
男A「そうだ……。」

男と女は少年に目を向けるが、その視線も気にせず少年は熱心にキーボードを叩いていた。

悪魔「光弾……消滅……やはりデータが足りない。ならば。」
69 :人知を超えたウイルス [sage sage]:2012/07/25(水) 23:57:09.10 ID:FlH2KT8w0
少年はズボンのポケットから、小さな本を取り出す。
それにまたノートパソコンから伸びたコードの先端を貼り付け、カードを読み込ませる。

悪魔「ウルヴ……《解る》。インストール!」

その瞬間、本が巨大化し、形を変え、人型になっていった。

女A「何度作っても……!」
ロボット4「ふむふむ、依頼はあの人の、ってわぁー!?」

喋る間もなく、ロボットは跡形もなく消し飛んだ。

女A「無駄よ。何度出したって私が消し飛ばしてあげる。」
男A「感謝する。お前がいなかったら、被害が大きくなっていただろう……。」
女A「え、いや、その、わ、私が早く駆けつけていれば被害が抑えられたのであって、
   決してあなたの責任では……。」

スーツの女が何故かあたふたしているのを横目に、少年はキーボードを叩き続ける。

悪魔「……協力感謝する。」
女A「……は?」
悪魔「さっきお前が攻撃したのは戦闘用じゃない。情報収集用のウルヴだ。
   そして元々組み込まれていた発信機のおかげで、
   さっき消されたはずのやつがここから2,500kmの地点にいる事が分かった。」
女A「え……そんな……!?」
悪魔「それに併せて、ネズミの方の位置情報も確認できた。ここから遠くない場所の地下だ。
   しかしそっちは完全に停止した。つまりただ物体を遠方に飛ばすだけでない可能性がある。
   そこで、さっきのやつが転送される前と、転送されている間に『理解した』情報を基に再計算させてもらった。」

女は、何を言われているのかが理解できなかった。
しかし漠然と、恐怖が体全体を包む感覚に襲われた。

悪魔「あの時放った光弾は強力な磁場になっていて、生身で受けるとそのエネルギーに耐え切れない。
   さらに空間移動時にまず亜空間へ転送されるが、そこは絶対零度の世界。
   どちらにせよ、媒体にネズミを使用していたあいつは助からなかった。」
女A「……!?」
悪魔「強力な磁場で転送、転送した生命体の異常、そして完全な金属なら無事という法則……。
   そこから導き出される都市伝説はたった1つ……。」



悪魔「   【フィラデルフィア計画】   ! 」

女A「そんなッ……!?」
男A「そこまで、一瞬で理解したというのか……!?」
悪魔「さらに、過去にもうちの部隊が奇妙な死を遂げている事を確認した。
   上に何もないところからの落下死、土に埋まった状態で発見など……。
   そいつらの担当がこの付近で、発見された場所もここから半径2,500km以内。
   全部お前の仕業だな。」
女A「くっ……!」
悪魔「しかし、さっきの本のやつはピッタリ地上に転送されていた。
   敵に同情しての行為なら、今までの犠牲者への対応がおかしい……。
   つまり……お前はその力を完全に制御できていない!」
70 :人知を超えたウイルス [sage sage]:2012/07/25(水) 23:58:17.69 ID:FlH2KT8w0
ロボット1「チャリーン、その通り!【フィラデルフィア計画】は転送の力!
      あらゆる物体を転送できる!でも鉄に包まれていないと、転送中に大変になる!
      そしてコントロール難しい!あいつは小さなものしか正確に運べない!」

ロボット2「あぁ、面白そうじゃねぇかァ!血の色見てやろうかァァァ!」

すると、向こうからロボット達がやってくる。……見慣れた人間を担いで。

ロボット2「おらアアアァァァ!」
男B「ぐゥ!?か、は……」

ロボット1「チャリーン!」
女B「うっ!くぅ……。」

ロボット達はジャージの男と短パンの女を地面に落とした。
ジャージの男は既に傷だらけで、ジャージが真っ赤に染まっていた。
短パンの女は、ジャージの男ほどではないが打ち身で青痣だらけだった。

男A「なっ……大丈夫か!」
女A「あ、あんなに強い2人が……!?」
71 :人知を超えたウイルス [sage sage]:2012/07/26(木) 00:00:08.27 ID:gYPpKA4T0
/※ ジャージの男VSマントロボット:始 ※/

男B「お前は……まさかッ!?」
ロボット2「でぇりゃアアアアアアァァァ!」

マントロボットは刃物になっている右腕を振り回し、ジャージの男を切り裂こうとする。
しかし何度やっても、ジャージの男に攻撃は届かない。

男B「(【ゾーン体験】のおかげでスタミナが尽きるまで走り続ける事はできる。)
   (しかし逃げてるだけじゃ勝てない。どうする……。)」

男の頭の回転もまた、【ゾーン体験】で早くなっていた。
その力により、状況に適した回答が一瞬で閃いた。

男B「(そうだよなぁ、それしかないよな。)」

男はロボットとの距離を取り、助走をつけるべくロボットに向かって全力で走り出す。

男B「(たとえどんな状況であろうとも……全力で戦うのみ!)」

男はロボットに向かって飛び蹴りをした。
タイミングよくジャンプし、よく伸びたその足は、的確にロボットへと向かっていた。

男B「だありゃあああぁぁぁ!」
ロボット2「なァ!?ぬおアアアアアァァァ!」

綺麗に男が着地したと同時に、ロボットは勢いよくぶっ飛んだ。

男B「これだけやっておけば、無事では済まんだろう。」
ロボット2「……再ッ、再ッ!起動ォォォオオオオオ!」

少しの間だけ動かなかったが、すぐにまた動けるようになった。

男B「まだ、動けるのか……。」
ロボット2「所詮人間に俺がァ!倒せるものかァァァ!」

ロボットのマントが裏返り、赤から青へと変わる。
同時に、ロボットの右腕が刃物から槍状のものへと変化した。

男B「な、なんだあれ!?」
ロボット2「赤が嫌いならァァァ!青にしてやるよォォォ!」

ロボットは猛スピードで男に突っ込んでくる。
男はすぐに反応し、避けようとサイドステップする。が……。
72 :人知を超えたウイルス [sage sage]:2012/07/26(木) 00:00:41.57 ID:gYPpKA4T0
男B「くっ!?」
ロボット2「人間はァ!疲れるんだろォ!?はァァァ!」

男の疲労が限界に近づき、いくら【ゾーン体験】といえども誤魔化せなくなっていた。
避けきれなかった男を、無情にもロボットはその右腕で突き刺した。

男B「がはっ……。」
ロボット2「俺達は絶対に疲れないィ!それがお前との差だァァァ!」

その時、男の身体から何かが抜けているのを感じ取った。
ふとロボットの胸部に目をやると、右側の一部がガラス張りになっていた。
そのガラスの部分に、なにやら赤い液体が注がれていた。

男B「ッ……!?」

その瞬間何かを悟り、男は力を振り絞ってロボットを蹴り飛ばした。

ロボット2「ぐおァ!ちぃ、貴様ァァァ!」
男B「く、やはり、血が……。」

そう、ロボットは男の血を抜き取ろうとしていたのだ。男が真っ青になるまで……。

男B「中途半端な、知識のせいで、警戒を怠った……。」
ロボット2「青も嫌いなら……俺の好きな赤だアアアアアアァァァ!」

ロボットはまたマントを翻し、右腕を刃物に変換した。

男B「か、体が……!」

疲労が蓄積していた男の身体は、とうとう完全に動かなくなった。



そんな男に躊躇なく、ロボットは刃物を振り下ろした。



男の身体は真っ赤に染まっていった。



/※ ジャージの男VSマントロボット:終 ※/
73 :人知を超えたウイルス [sage sage]:2012/07/26(木) 00:02:04.85 ID:gYPpKA4T0
/※ 短パンの女VS十円玉ロボット:始 ※/

女B「これが、魔王の目的って事……?」
ロボット1「チャリーン!魔王?どうでもいい!倒す!」

短パンの女は、コイン型のロボットの容姿や発言からある1つの見解を得た。
それは同時に、これから始まる混沌を告げるものであった。

女B「……アンタにかまってる暇はないよ!早く皆に知らせないと……!」

女はロボットに背を向け、全力で走り出した。

ロボット1「むむ、チャリーン!」

ロボットは腹部の穴から、女の背中に向けて何かを放った。
発射音が小さすぎたため、女は全く気付けず、それは命中した。

女B「痛ッ!?なによ急に……ってきゃあ!?」

急に、女の脚が全く動かなくなった。
どれだけ動かそうと願っても、脚は女の言う事を聞かなかった。

ロボット1「チャリーン!命中命中!」
女B「アンタ、何を……?」
ロボット1「もう一度!チャリンチャリーン!」

またもやロボットは腹部から何かを2回放つ。
今度は視認できたため、女は刃物を取り出して切り払えた。

ロボット1「チャリーン!?失敗失敗!」
女B「いったい何を……って、これは?」

そこに落ちていたのは、真っ二つになった十円玉だった。
数は4つ、つまり2枚の十円玉だったもので、ロボットから放たれた数と一致する。
状況を分析していると、不意に脚の違和感が解かれた。

女B「あっ、動く……。」
ロボット1「チャリーン!呪いが切れた!コントロール難しい!」
女B「呪い……?」

その言葉を聞いて、彼女の推測は確信に変わった。
そしてその確信は、しだいに恐怖へと変わっていく。

女B「早く伝えないと……!」
ロボット1「させない!チャリンチャリーーン!」

女が走り出すと、ロボットは躊躇なく十円玉を放つ。
しかし弾道は女の背中から反れて女を追い越してしまった。
74 :人知を超えたウイルス [sage sage]:2012/07/26(木) 00:02:30.63 ID:gYPpKA4T0
女B「えっ、なに!?」
ロボット1「チャリーン!追尾モード!」

すると十円玉は、まるでその命令を聞き受けたかのように旋回する。

女B「そんな事までできるの!?でも……!」

女は刃物を取り出し、切り払う体制をとる。

ロボット1「チャリーン、急上昇!」

切り払おうとした瞬間、それを回避するように十円玉が天高く上昇する。

女B「くぅ、急いでるのに!」

女は今までにないほど集中する。上空と、音……。
やがて上空に金属の煌めきが見えた。

女B「そこか!」

女の得物は的確に十円玉を切り裂いた。
地面に、真っ二つになった十円玉の残骸が2つ落ちた。

女B「え……?」

もう1枚の十円玉は、上空から遠回りし、女の足元をめがけて低空飛行していた。
その姿を確認した頃には、もう間に合う間合いではなかった。
十円玉が女の脚にぶつかり、また女に呪いをかけてその自由を奪う。

ロボット1「チャリーン!止まった止まった!」
女B「くぅ!ま、まだ……。」

女は腕で自分の身体を引きずりながら進もうとする。
そんな姿を見ても、ロボットは攻撃をやめようとしなかった。

ロボット1「逃がさない!チャチャチャチャリチャリチャリチャリチャリーン!」

ロボットは女に向けて、無数の十円玉を放出する。
脚の自由がきかない女に、成す術はなかった。

女B「み、みんな……逃げて……!」



/※ 短パンの女VS十円玉ロボット:終 ※/
75 :人知を超えたウイルス [sage sage]:2012/07/26(木) 00:05:49.61 ID:gYPpKA4T0
女A「そんな、あんなに強い2人が……。」
悪魔「まったく、その男は生かしておけと言っただろ?虫の息じゃねぇか。
   んで、その女は要らねぇから手加減するなと命令しただろ?」
ロボット2「う……す、すまねぇ。」
ロボット1「チャリーン!あいつ、強い!」

落胆したような目で、倒れている2人を見つめる少年。
やがてその顔は、不気味な笑みを浮かべる。

女B「みんな……そいつは、都市伝説を、ロボットに……!」
女A「え……?」
男B「そうだ……!かはッ、消してきた都市伝説を、回収しッ……!」
男A「そういう事か……。やっとお前達の目論見が分かった。」

不意に、少年は拍手する。

悪魔「ご名答、かな。【Urban Legend virus(侵蝕式契約型都市伝説)】、通称【ULV(ウルヴ)】。
   このカードは多くの都市伝説のデータを蓄積していて、
   それをこの端末から全ての物質に『契約』させる事ができる。強制的にな。」

少年はカードをちらつかせながら、流暢に説明した。

女A「け、『契約』は都市伝説と人間が、互いに同意して行うものでしょ!?」
悪魔「そういう、『強制的に契約させる』都市伝説もまた、この世に存在するのさ。
   他にも、外観のために【人造人間】とか探したっけ。造るの大変だったんだぜ?
   その他色々な都市伝説をこのカードに打ち込んで、最後に……。」
男B「【赤マント青マント】……。」
女B「【コックリさん】……。」
悪魔「元となる都市伝説を取り込む。完成。
   ちなみにあとの2体は【死の行群】と【相対性理論の理解者】だ。
   たまたま見つけてな。今回は役に立ったよ。」

その説明を聞いて、4人はある同じ考えを共有する。
奴らが今までしてきた事の意味、そしていつか起こる惨劇……。

男A「そのために人々から都市伝説を……!?」
悪魔「それは誤解だ。……って、説明する必要もないか。まぁ、奪ってるのは『邪魔だから』だ。
   【ULV】はオレが独断で造ってるだけで、『本来の目的』とは関係ないぜ。」
男A「まだ、恐ろしい計画があるというのか……。」
女A「『造った』……?都市伝説を?」



悪魔「……喋り過ぎた。そろそろ片付けないとな。おいお前!」
ロボット2「ん?なんだァ!」



悪魔「その女を、真っ二つに切り裂け。」



ロボット2「了解ッ!だアアアァァァァァァ!」
女B「え……?」

男A「なッ!?」
女A「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」



短パンの女は、上半身と下半身に分断された。
76 :人知を超えたウイルス [sage sage]:2012/07/26(木) 00:07:43.35 ID:gYPpKA4T0
男B「き、さまッ……!」
ロボット2「おぉ、綺麗な血だァ!で、どうするんだァ!?」
悪魔「こうするのさ。」

少年は例のコードを短パンの女の上半身に貼り付ける。

悪魔「今まで使い時が分からなくて困っていた……【ULV】、《這う》。インストール。」

女の姿は見る見るうちに機械化していった。しかしその面影は、完全には消えていなかった。

女B「みんな、に……ケ、テ……。」
悪魔「お次は……【ULV】、《追う》。インストール。」

次は下半身に【ULV】を使い、それを機械化させていく。

女B「テケ、テケテ、ケ。」
女A「【テケテケ】と【トコトコ】……?」
男A「人間を、ロボットに変えた……!?」
悪魔「『都市伝説化』な。しかし、何故か身体の欠損が補われないな……。」

少年がそう言って間もなく、短パンの女の下半身が、上半身を持ち上げる。
まるで元々1つだったように、その体はくっついた。

女B「テケ、トコ……。」
女A「……!?」
悪魔「おぉ、2枚で1体となる【ULV】か!これは面白い。」

女B「テケテケ、トコトトココ、ケテケテテ……。」
男A「……!貴様、よくも……!」

始めて怒りを露わにしたサングラスの男を見て、少年はただ笑みを浮かべるだけだった。






悪魔「さて、どんなデータが取れるかな……。」






―――続―――
77 :人知を超えたウイルス [sage sage]:2012/07/26(木) 00:16:56.61 ID:gYPpKA4T0
お粗末さまでした。
短期集中連載みたいになってしまいましたが、次回こそ後編……だと信じたいです。

そして短パンの女のファンの方……すみませんでしたorz
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/07/26(木) 00:48:14.81 ID:uiv909aS0
投下乙ですー!
ロボット1さんかわいいよ!一台欲しいなぁ(コラ
ああ、短パンさん…
今しがたまで仲間だった人を殺されて、その人と戦わなきゃいけないなんて…wktkが止まりません
後編も楽しみにしてます!
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/07/26(木) 00:49:36.65 ID:uiv909aS0
線の細い少年が、床に伏している。
枕元に置かれた手桶の水は、温くなって久しかった。
彼の名は立花雅臣。
この家において、病に伏せり、華道の才能も無い彼はただの厄介者だった。


ぱたぱたと軽い足音が聞こえ、身を起こすと同時に障子が開いた。
「お兄ちゃん…大丈夫?」
顔を覗かせたのは、和服を着た10歳位の少年――雅臣の弟の梓だった。
「梓…?うつるとよくないから、離れにはあまり近づくなって爺様やお手伝いさん達が言ってただろ――」
「やだ…!お兄ちゃんに会えないなんていやだよ…!」
言い終わらないうちに、ぎゅ、と抱きつかれた。

「お兄ちゃん、昔はよくお部屋に来てくれてたでしょ?他にはお医者様とかお手伝いさん位しか来てくれなかったから…お兄ちゃんが来てくれて、いろんなお話してくれて…凄く嬉しかったんだよ?
 だから、今度は僕がお兄ちゃんが寂しくないように、傍にいようって思って…」

小さく息をつき、わしゃわしゃと頭を撫でる。
「…お前、稽古が終わってからそのまま来たのか?」
「だって、早くお兄ちゃんに会いたくて…今日は、花が上手に活けれたって先生が褒めてくれたんだよ」

撫でられて心地よさそうにしながら、梓がいつも厳しい先生が褒めてくれたと嬉しそうに話していると、障子が開き、中年の女性が入ってきた。
彼女は梓の姿を認めると、持っていた替えの手桶を乱暴に置き、慌てて雅臣から梓を引きはがした。
「梓さん!?こんな所に来てはいけませんとあれほど申しましたのに…
 それに着替えも済ませていないなんて…!大旦那様に言いつけますよ?
 さあ、戻りましょう」
「あ…!お兄ちゃん、元気になったら今日の作品見てくれる?」
ああ、と頷くと同時に、障子が閉められる。


「せっかく御病気が治って、晴れて立花家の跡取りとなりましたのに、梓さんにもしもの事があったら…!」


徐々に遠ざかっていく声を聞きながら、近くの引き出しから巾着袋を取り出す。
中にはビワの葉が詰められている。

『庭に枇杷の木を植えると、その家に病人が絶えないから縁起が悪い』
雅臣の契約した都市伝説だ。
契約したことで、ビワの葉は薬になるので病人が頼って集まってくる(=病気を貰いやすくなる)、という能力が使えるようになった。


生まれつき病弱で、主治医から何度も「覚悟をしておいたほうがいい」と言われていた弟を救えたのだから、それだけで十分だ。
昔から変わらず自分を慕ってくれる弟に救われていた。
もう、梓の苦しむ姿は見たくない。
祈るように、巾着袋を握りしめた。
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/26(木) 03:25:16.87 ID:1pUrRZFAO
>>65-76
馴染みある場所の人乙ですー
ああ、短パンさん…
悲劇の予感しかしませんが、どうひっくり返してくるか注目です
でもあの悪魔の少年も死なすには惜しい逸材だし…

>>79
これは犬神憑きと怪人アンサーの人かな?間違ってたらごめんなさい

投下乙ですー
雅臣さんも梓くんもけなげでかぁいいなあ
泣ける兄弟愛でしたの
雅臣さんにとっての薬は梓くんなんですね
81 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/26(木) 17:14:00.38 ID:5d5pzIVD0
まずは投下なさった皆様に乙を言いつつ
これから自分が作品投下する上での謝罪の言葉を

ケモノツキの人、ごめんなさい
「『戦星術師』第2話書くぜヒャホーゥ!」とか言っておきながら、
途中で行き詰って息抜きに書いた別な話が先に書き上がってしまったという悲惨な状態に
嫌われることも覚悟の上で御座います、早めに書き上げようと思いますのでどうかお許しを……


という訳で投下
82 :愛妹みぃ † 見知らぬ男−信用=敵  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/26(木) 17:15:46.75 ID:5d5pzIVD0
「ぅおらぁ!!」

高い金属音と鈍い破壊音が混じった音が響き、どさりと男が倒れた
黒いスーツを着た男は頭から血を流し倒れたままぴくりともせず、
ただじわじわと光の粒子に変わっていき、血痕を残して跡形も無く消え去っていった

「っはぁ、はぁっ………くそっ、最近多いな、こいつら……」

からん、と血に塗れた金属バットを足元に落として、少年――妹尾 賢志はゆっくりと深呼吸をした
「賢者の石」の契約者となってから、既に1ヶ月以上が過ぎた
あれから、賢志は幾度となく「賢者の石」を狙う黒いスーツの男達との戦闘に明け暮れていた
今日のみならず、昨日も、一昨日も、その前も―――毎日のように現れる彼等を、ひたすら血に染めていった
彼は快楽殺人鬼ではない
だが、男達の矛先は常に自分のみならず妹の魅衣にも向けられている為に、止むを得ずしている事だ
大切な妹を失わない為に
妹を悲しませない為に

「…魅衣は無事だろうな…………探さねぇと!!」

故に最も心配な瞬間は
彼の傍に妹がいない時である






    †    †    †    †    †    †    †    †





「ほらほらお嬢ちゃん、俺達は何も君を取って食おうとしてる訳じゃないんだよ」
「「賢者の石」の在り処……それさえ吐けば命の保証はしてやろう」
「………ぇぅ………う、ぁ…………」

ぺたんと座りこんで、じりじりと歩み寄る2人の男から逃げるように後ずさる少女――妹尾 魅衣
光線銃を構える髭面の男を、もう一人の若い男が呆れたように宥めた

「おいおい相棒、そんなことしたら言えるもんも言えなくなっちまうだろ?」
「まだ兄の方がいる……こいつが吐かなければ、そちらから聞き出す」
「ムリムリ、そっちは陽動に行った連中にぶっ殺されてるだろうし。この子から聞き出した方が早いって」

若い男は笑みを浮かべながら、魅衣に視線を合わせるようにしゃがみ込む
びくっ、と小さく跳び上がって、彼女は尚も後退りした

「待て待てお嬢ちゃん、「賢者の石」が何処にあるのか、そんだけ教えてくれたら良いからさぁ」
「ぃ……ぃゃ………たすけ、て………」
「…あーあー、これでも言ってくれないのなら、」

男の笑みが邪悪な色に染まる
服の袖や首元から、にゅるりと伸びる触手

「ひっ……!?」
「そろそろ、“別なお口”に訊いてみよっかなー?」
「……悪趣味な奴だ」

ぬっと男の手が伸び、魅衣は身体をめいっぱい縮こまらせる
それでも尚、男の手は少女との距離を詰め、その幼い身体に触れ――――――

「穢れた手で少女に触るな」

何者かが男の手を力強く掴んだ
かと思えば、男の身体は宙を舞い、大きく投げ飛ばされた

「っつぅ!?」
「ッ………何者?」

髭面の男が光線銃で狙いを定める
魅衣を守るようにして立っていたのは、黒いシャツに黒い上着、黒いズボンを着た高校生くらいの少年だった
右目を覆うように長く伸びた髪が風に靡くと、大きな傷跡がついた右目が微かに露わになる
そして首から提げられ胸で揺れる金色の枝のようなペンダントと、
腰に巻かれた金メッキの機械的なバックルが特徴的なベルトが凛然と輝く

「同業者……に近いな」
「…「組織」の穏健派か」
「おいおい兄ちゃんよぉ、その娘は俺達の獲物だぜ? とっとと帰んな」
「帰るのはお前等の方だ。この少女は俺達が管理する。諦めて本部に戻れ」
「何処のNo.か知らんが……断る」
83 :愛妹みぃ † 見知らぬ男−信用=敵  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/26(木) 17:17:47.32 ID:5d5pzIVD0
髭面の男が引金を引く
その一瞬前に、少年は己の上着を魅衣の頭に被せた
光線銃の銃口から伸びる光条は、全て少年目掛けて飛んでいく
しかし、

「………なっ!?」

2人の男は自らの目を疑った
少年は光条をひらりと躱し、平然とそこに立っていた

「…遅い」

光はこの世で最も速いもの
それをこの少年は、いとも簡単に避けきってしまった

「馬鹿な、こんな事が……!?」
「いやいや待てよ!? どんなチート使いやがった――――――」
「解放」

少年はスマートフォンを右手に取って、画面をバックルに向けてそれを翳すと、
金色の枝のペンダントが強い光に変わって彼の胸から左手へと移った
光は次第に形と大きさを変え、光を失った時にはもうそこに枝は無く、代わりに黄金の大鎌が煌めいた
その煌めきは瞬時に黄金から深紅へと変わり、
真っ紅な華が咲き誇り、真っ紅な海が広がった

「………は?」

光線銃を構えていた腕はだらんと垂れ下がり、
髭面の首は何か言いたげにぱくぱくと口を動かしながら宙を舞った
先程まで生を持っていたそれは、徐々にその存在を光へと変えていき、儚く消えた

「い、いやいや……テメェ何しやがったぁ!?」
「先に仕掛けたのはそっちだ。忠告を聞かなかったお前達が悪い」
「ふざけんなこの餓鬼が!今すぐに叩き潰してやる!!】

見る見る内に若い男の姿が変化してゆき、
それは10本の触手を持った、巨大な烏賊へと変貌した

「「クラーケン」……さっき見せた触手はそれか」
【へっ、そこのお嬢ちゃんを弄んでやろうと思ってたが、先にテメェを五体バラバラにしてやろうか!?】
「そっくりそのまま返してやろう…『レイヴァテイン・スルトズブレイド』」

少年の左手の大鎌が再び強く輝き始め、形を変える
今度は黄金色に燃え上がる巨大な剣の如きシルエットを描いて

【「レイヴァテイン」?…………ッ!? ま、まさか、最近入った『赤い幼星』の腹心―――――――】
「あの世でさっきの相棒に宜しく言っといてくれ」

少年は有無を言わさず剣を振り下ろした
ばっさりと縦一文字に両断された「クラーケン」は黄金の炎で身を焦がされながら息絶え、
その躯もまた、光の粒子となって泡と消える

「…冥罰執行、完了」

ふぅ、と溜息を吐き、少年がスマートフォンをバックルに翳すと、炎の剣は再び金色の枝のペンダントに戻り彼の胸に提げられる
この時にようやく魅衣が、上着の闇の世界から抜け出す事に成功した

「ぷはぁっ………あ、れ………?」
「悪かったな、少々手荒な真似をしてしまった」

少年は軽く頭を下げると、静かにその場でしゃがんで上着を受け取って羽織り、魅衣に視線を合わせた
風貌、目つき、どれを取っても怪しげな雰囲気の漂うものだったが、
不思議と、彼女は少年に対して敵意を感じなかった

「ぁ………」
「自己紹介が遅れたな、俺は“Rainbow”……コードネームで申し訳ない
 俺も「賢者の石」に用があったんだが、さっきの奴等とは目的のベクトルが違う
 俺達はあくまで所在の確認に来ただけなんだ
 話せないのならそれでも良い。君が話せる範囲内で、俺に教えてはくれないだろうか?
 「賢者の石」が今、どうなっているのかを」

す、と“Rainbow”と名乗る少年は手を伸ばす
魅衣は暫し戸惑ったが、こくりと頷き、その手を受け取ろうとした
その時だった

「魅衣に近付くな!!」

飛んできたのは拳
それも金属独特の光沢を放つ重々しいもの
“Rainbow”はそれを一度は確認したが、敢えて動かずにその拳を受け、ずざざざ、と殴り飛ばされた
84 :愛妹みぃ † 見知らぬ男−信用=敵  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/26(木) 17:18:48.49 ID:5d5pzIVD0
「ッ!! お、お兄、ちゃ……」
「テメェもあの黒尽くめの連中の仲間なんだろ!? 俺達の親父とお袋を殺した、悪い奴等の!!」

怒りを剥き出しにした少年――賢志の言葉を聞いた後、“Rainbow”は口から流れた血を拭い、むくりと起き上がった

「………だったら、どうする?」
「ぶっ殺す! 俺が、この手で!!」
「お、お兄ちゃん、違っ、その、人は――――――」
「お前が“悪”だと思ったならそいつは“悪”だ。お前が“正義”だと思ったならそれは正しく“正義”」

砂埃をはたきながら立ち上がり、スマートフォンを手に取る
指で画面に“R”の文字を描くと、画面上に黒、青、白、赤、紫、灰、黄、7つのボタンが浮かび上がる

「他の誰にもそれは否定されないし、否定する事も出来ない
 逆に言えば、それを誰かに証明する事は決して簡単ではない
 皮肉な事に何時の時代も、“正義”や“悪”を証明する術はただ“戦う”のみ」
「は? 何が言いてぇんだ?」

“Rainbow”が黄色いボタンをタッチすると、《ZODIAC》という音声が流れ、
その後、彼はスマートフォンを頭上高くへひょい、と投げた

「武器を構えろ小僧。お前の“正義”……俺が見定めてやる」

くるくると回りながら、スマートフォンはバックルの前を通過する
その瞬間、バックル中央の水晶体が黄金色の光を放ち、
胸の金色の枝もまた強く輝いて、液状となり彼の身体を包み込んだ
黄金の液体は、爪や翼、鋭利な装飾が施された彼の鎧となって、神々しく煌めく

「…Reign Over」
「ふえっ!?」
「す、姿が変わった!?」
「そこのお嬢ちゃんを避難させておけ、怪我をさせると大変だ
 俺も傷つけたくはないし、お前も守りながらの戦いでは本気を出せんだろ?」
「ッ………魅衣、歩けるか?」
「え、で、でも……」
「大丈夫だ、兄ちゃんは負けねぇから」

まだ、何か言いたげだったが、魅衣は黙って頷き、速やかにその場を離れて物陰に隠れた
賢志は右手でコンクリートを撫でると、赤い雷光が走り、撫でた部分が金属バットに変化し、彼はそれを構えた

「ほう……なるほど、その右腕が「賢者の石」か」
「あぁ、俺はその賢者の何とかって奴と、契約だかってのを交わした!
 残念だけど、テメェ等が欲しがってるもんは俺の身体ン中だ!!」

先に動いたのは賢志だった
駆け出して一気に距離を詰め、金属バットを勢い良く振り下ろした
だが、それは黄金の爪によって止められた

「はっ!?」
「活きが良いだけでは勝てんぞ」

ぐにゃりといとも容易く金属バットを捻じ曲げ、“Rainbow”は拳を構えた
金色の雷光が、バチバチと激しい音を響かせる

「『真・黄昏地獄拳』」
「――――――――――ちぃっ!!」

賢志は右手を突き出して応戦するが、拳に弾かれてそのまま殴り飛ばされた
同時に、彼の周りに鉄の破片のようなものがぱらぱらと飛散する

「あの一瞬で空気中の物質を鉄塊に変換し、ダメージを軽減したか…面白い
 もっと見せてみろ。お前の力を」
「言われなくても……見せてやらぁ!!!」

再び武器を生成する賢志
今度はバットではなく、両刃の剣

「剣なら勝てるというのか? 幼い発想だな」
「うるせえ!」

かぁん!!と甲高い金属音が響く
一度、二度、何度も何度も、剣と爪がぶつかり合った

「くっ、くそっ!」
「ふむ……何人もの黒服を返り討ちにしていると聞いていたが……まぐれが続いただけか」
「な、何だとぉ!?」

剣を横薙ぎに振るう
しかしその一閃は、彼がふわりと“飛んだ”事によって躱された
85 :愛妹みぃ † 見知らぬ男−信用=敵  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/26(木) 17:19:57.78 ID:5d5pzIVD0
「飛んだ!?」
「この程度で驚くようじゃまだまだだ」

がちゃん、がちゃん、と音が鳴り、鎧の背にあった4枚の翼が外れて浮遊する
彼の周囲に侍るようにして浮かぶそれは、切っ先を賢志に向けた

「『フィクス・カエレスティス』」

切っ先に光が灯り、光条となって打ち出される
ある程度の事象を予測して飛び退いたが、光を避けきれる訳も無く、賢志の右足に光が掠めた

「っつぅ…!?」

すぐに右手で傷口に触れると、次第に血が止まり傷が閉じて、
何事もなかったかのように元通りになった

「「賢者の石」の治療能力か、なら次は一瞬で楽にしてやろう……『ギャラクシア』」

4枚の翼が連なり1本の剣のようになり、
“Rainbow”は降下しながら、剣を大きく振るった
またも響く金属音
火花を散らしながら、賢志は得物によってそれを抑えていた

「ぐ、ぐぐ………!」
「まだ抗う元気があったか。その点は褒めてやろう」
「余計な…お世話だ!!」

刃を滑らせて前転し、懐に潜り込んだところで剣を突き立てる
それも、連なった翼を地面に突き立てて棒跳びの要領で飛び上がったことで避けられた
決定打が当たらない
賢志の心に焦りが生まれる

「くそっ、くそっ………今度こそ一発……!!」
「隙だらけだ」

はっとして顔を上げた賢志が見たものは、
咲いた花のようにくるくると回る4枚の翼

「光に飲まれろ、『ウィア・ラクテア』」

花が蕾になると、筒状を形成している翼の中から光条が発せられる
咄嗟にコンクリートに右手で触れ、巨大な壁を作り出したが、
長くは持たず、木っ端微塵に粉砕されてしまった

「ぐあぁっ!?」

爆風が巻き起こり、賢志の身体を吹き飛ばしてアスファルトに叩きつける
それでも何とか起き上がって、剣を構えて攻撃に移ろうとしたが

「『エクリプシス』」

突如、周囲に金色の雷光が瞬き、思わず目を覆った
目を開けると、自分の周りの足場にぽっかりと、大きな穴が開いていた
もう一度、“Rainbow”に目を向ける
沈みゆく黄昏時の太陽の鎧に身を包んだそれは、神か悪魔か、今の賢志には何と取れたのだろうか
ただ、はっきりと分かったのは、

「どうした? もう終わりだとは言わないだろうな?」

――――レベルが違い過ぎる
初めて、賢志の心に敗北の念が生まれた
だが彼は敗走する訳には行かないのだ
何故なら彼の後ろには、守るべき大切な人がいるのだから

「……うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

無謀だというのは分かっている
たとえそうだとしても、彼は少しの可能性に賭けたかった
“勝てる”可能性に

「ウヒヒヒヒ…そうこなくては面白みが無いというもの!」

“Rainbow”の両掌に金色の光が灯り、
今向かってくる賢志の剣に立ち向かわんと、2つの拳を構えた―――――

「いい加減にしろ、この馬鹿者!!」
86 :愛妹みぃ † 見知らぬ男−信用=敵  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/26(木) 17:20:26.88 ID:5d5pzIVD0
がんっ!!という打撃音と共に、倒れ伏したのは黄金の鎧だった
突然の出来事に、慌ててブレーキをかける賢志
“Rainbow”を背後から殴ったらしい人物は、黒いローブを身に纏った、
浅黒い肌に黒い長髪、そして赤い瞳が特徴的な妙齢の女性だった
頭の中がごちゃごちゃになってきた末に、ようやく賢志の口から零れた言葉は、

「……何処から出て来やがったんだ……?」

むくり、“Rainbow”が身を起こすと、スマートフォンを手に取ってバックルを翳す
鎧はドロドロに融け始め、元の金の枝のペンダントに戻った
はぁ、と本日二度目の溜息を吐いて、

「……何しに来た」
「もう任務は終わっているだろうが! 早く報告に戻れ!」
「良いじゃないか、こっちはロクな契約者と出くわさないから遊びたいんだよ」
「保護対象を貴様の遊びに利用するな!」
「あぁ、分かった、分かったよ……ちっ、人間になってから余計に口煩くなってねぇか?」

ぶつぶつと文句を言った後、ちら、と彼は賢志の方を見た
何時の間にやら物陰で隠れていた魅衣が駆け寄っていて、兄に何かを教えているようだった

「大丈夫か?と言っても、やったのは俺なんだがな
 紛らわしい真似をして済まなかった、俺は別にお前の妹を攫いに来たつもりはないし、「賢者の石」を奪いに来た訳でも無い
 もっと言えば、お前達の両親を殺した連中とも無関係だ」
「……そうらしいな……俺も悪かった。魅衣を、妹を助けてくれて…ありがとな」
「こちらとしては、「賢者の石」を悪用されなければ良いと考えていたが…お前が契約者なら大丈夫だろうな」

くるりと背を向けると、少年は女性を侍らせて歩き出した

「あの黒服達は今後もお前達を狙ってくるだろう
 原因は分からんが、こちらでも調査を行う手筈になっている
 極力、お前達をサポートするようにして貰うよう、上に頼んでおくよ」
「上、って……あんた、一体何者なんだ?」
「「組織」R-No.所属契約者集団『Rangers』の一人、“Rainbow”…………黄昏 裂邪だ」
「格好つけてないでさっさと来い」

裂邪と名乗った少年は女性に強引に腕を引かれ、
“影”の中へと沈むように姿を消した

「……黄昏、裂邪………か……」
「お兄、ちゃん?」
「ん……いや、何でもない。帰ろうか」

ぽふ、と魅衣の頭を撫で、手を繋いで帰路を辿る
この日賢志が学んだのは、「組織」というものの存在と、己の力の未熟さだった



   ...了
87 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/26(木) 17:23:25.52 ID:5d5pzIVD0
以上で御座います
やたらと戦闘シーンが書きたくなって、思い出したのがこの『愛妹みぃ』だったという
軽いどころか重度のネタバレあるけど気にしないでね
88 :犬神憑きと怪人アンサーの人 ◆vQFK74H.x2 [sage saga]:2012/07/26(木) 21:29:39.33 ID:uiv909aS0
シャドーマンの人様投下乙ですー

わあああああ!?れっきゅんのお顔に傷がーーー!!??
れっきゅんと賢志くんのバトル…!熱くて引き込まれます
魅衣ちゃん可愛いよ魅衣ちゃん

>>80
>これは犬神憑きと怪人アンサーの人かな?間違ってたらごめんなさい
おおう、さくっと看破された…

>雅臣さんにとっての薬は梓くんなんですね
はい、梓が居るからどうにか生きる気力を得られているようなものです
89 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/26(木) 22:08:03.10 ID:5d5pzIVD0
やべ、感想書いてねぇや、後でゆっくり書こう
先に

>>88
>わあああああ!?れっきゅんのお顔に傷がーーー!!??
実はつけたのは実弟である正義くん
裂邪vs正義の話でちょこっとだけそのシーンがあったりしますのン
「蝦蟇の油」で治せたのに拒否した理由はいつか必ず書くのでお楽しみに
あとあの女性の正体も

>れっきゅんと賢志くんのバトル…!熱くて引き込まれます
裂邪を暴れさせ過ぎると賢志の身体がグロいことになるから如何に手を抜きつつ本気っぽく見せるか考えてたら力尽きたぜグハァ

>魅衣ちゃん可愛いよ魅衣ちゃん
ロリ妹は最高です
我儘でも人見知りでも何でも良い、ロリ妹は至高です(
90 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/26(木) 22:25:31.45 ID:5d5pzIVD0
よしよし読んできたぜ、改めてお二方乙なの

ほう、珍しい展開だな、こういうのも書けるようになったのか…
そしてテケトコ気に入ってんのかw

梓きゅんは男の娘だ、そうに違いない、可愛い可愛い
素晴らしい兄弟愛、そして世の中の残酷さよ……
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/27(金) 02:04:20.54 ID:ISR6AC2AO
影の人乙ですー
れっきゅんかっこいい!てか黄金の大鎌かっこいい!
そだよね!鎌って浪漫あふれる武器だよね!
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 12:15:48.68 ID:4Sq5H3GDO
皆様投下乙ですー
このところ暑さが続いていますが、どうか夏バテにはお気をつけて
投下が多いのは嬉しいけれど、リアルを大事に、ですよー

>>81
そのかわりにれっきゅんという合法ショタがいるじゃないですか!
れっきゅんかわいいよれっきゅん
髪の毛かきあげて右目舐めたいよれっき(斬り刻まれました)
93 :うなぎづくし [sage]:2012/07/27(金) 20:05:10.11 ID:r5t3jD21o

 「組織」のとある一室に、料理を運ぶ女性黒服の姿があった。

「お昼できましたよ」
「……またうなぎか」

 男性黒服の待つ机の上に、鰻の蒲焼きと肝吸い、そして湯気をたてる白米が並べられる。

「あったかいうちに食べちゃいましょう」

 いただきます、と手を合わせ、女性黒服はうなぎに箸をのばす。
 男性黒服もしぶしぶといった形でうなぎを食べ始めた。

「このうなぎが高騰してるご時世に、毎日のようにうなぎを貪る。端から見たら贅の極みなんだろうがな……」
「まったくもって贅沢ですねぇ。いつか罰が当たるんじゃないでしょうか」
「俺にとっては現状が罰そのものだって言ってるんだよ……」
「なんでですか?こんなにおいしいのに」

 幸せそうに鰻の蒲焼きを頬張る女性黒服の顔からは、罰の要素は一切感じられない。
 それとは対照的に男性黒服の表情は苦痛そのものであり、ともすれば机をひっくり返さんばかりである。

「第一に、俺たちがこうやって毎日毎日うなぎを食べ続けるようになってどれだけ経った?」
「ええと……半年とちょっとでしょうか」
「いい加減飽きるだろ!お前はなんで毎日毎日そう美味しそうに食べ続けられるんだよっ!?」
「だって美味しいんですもん。あ、食べないなら貰っちゃいますよ」

 そう言って女性黒服は男性黒服の皿からうなぎを奪い取る。
 実に美味しそうにうなぎを頬張る女性黒服に毒気を抜かれ、男性黒服はため息を吐いて続ける。

「第二に、こいつらの餌を考えると食欲が失せる」
「んー……裏切りは蜜の味、って言うでしょう?そんな美味しいものを餌にしたうなぎ、と考えれば美味しさもひとしおです」
「……強か過ぎてぐうの音もでねぇよ」
「「組織」が仕事を行い、その廃棄物でうなぎを養殖し、私たちはこうして美味しいうなぎを食べられる。幸せしか生まれない連鎖です」

 ごちそうさまでした、と手を合わせ、女性黒服は食器を片付け始める。
 男性黒服が何とはなしに壁に埋め込まれた巨大な水槽に目をやると、ブザー音と同時に水槽に餌が投下された。
 無数のうなぎが我先にと餌に群がり、見る見るうちに肉を貪り尽くしていく。

 そしてわずかばかりの肉片が残った白い骨が、静かに水底に沈んだ。



【終】
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/27(金) 20:05:44.44 ID:r5t3jD21o
夏バテ防止にうなぎを食べよう!
ということで土用の丑にあわせてうなぎの単発です。
うなぎなんて食べられないよ!って方は「う」の付く食べ物ということで「梅干」なんていかがでしょう。

ちなみにこの黒服たちは過激派です。念のため。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 20:17:21.11 ID:3NjQDQ/to
うわああああああああああああああああヤツメウナギの口を検索してしまった時のことを思い出したあああああ
検索するなよ?!
円口類とか検索するなよ??!!
96 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/27(金) 21:38:16.93 ID:vScWifoO0
ウナギが食べたくてしょうがなくなるじゃないかwww
ただでさえ仕事帰りに車の中でウナギの話で盛り上がったのにwww
単発の人乙でした、でもリアルにこういうことやってたら不気味だよね

>>91
そうなのです、大鎌は浪漫武器なのです
そしてこのスレで大鎌の二刀流をやってのけるのは裂邪ぐらいだと自負してる
というか誰も敢えてやってないんだと思う、厨二武器だし、戦国BASARAで1人いるし(

>>92
もう裂邪も高校生になるけどショタで良いのかwwwてか合法ショタってwww
そういや、ショタキャラ増えるんだよな、てか既存キャラがショタになるっていうか
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/27(金) 22:17:12.36 ID:r5t3jD21o
>>95
>円口類とか検索するなよ??!!
どうみてもフルフルです本当にありがとうございました
あれが体に吸い付いてくるのを考えるとゾッとするね……うん

>>96
>でもリアルにこういうことやってたら不気味だよね
だからこそ都市伝説として成り立つのですよ
「死体がうなぎの餌」で検索すると幸せn……なんともいえない気持ちになれる

>もう裂邪も高校生になるけどショタで良いのかwwwwwwてか合法ショタってwwwwww
裂邪は成長止まってるってシャドーマンの人が言ってたから、裂邪は永遠のショタなのです!
……高校生は合法じゃないな、うん
だがそれg(再び刻まれました)
98 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/27(金) 22:29:23.88 ID:vScWifoO0
>>97
>だからこそ都市伝説として成り立つのですよ
デスヨネー
そういや今月の初めだったか、シーサーペントらしいものを見たのよ、あれ何だったんだろう

>裂邪は成長止まってるってシャドーマンの人が言ってたから、裂邪は永遠のショタなのです!
そうさのぅ、厳密に言えば成長が止まるのは……何と言えば良いんだ?
まぁいいや、いつか書こう(
実は明日単位認定試験なのよね(ぁ
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 22:43:03.61 ID:HYOus5Wu0
>>93
これはいい養殖場
さぞかし女性黒服さんは気分がいいでしょうね
ついでに女性黒服さんがうなぎの餌になる未来もありですよね

>>95
画像検索で幸せになれました
ありがとう
100 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/27(金) 22:45:04.99 ID:vScWifoO0
>>99
>ついでに女性黒服さんがうなぎの餌になる未来もありですよね
何と言う疑似触手プレイ
ジュルリ
101 :タイツ ◆o6jjzntThI [sage]:2012/07/28(土) 02:39:46.40 ID:zj2a+C4Mo
わあーい

書いてる最中の話に「ウナギの餌は死体」の都市伝説出そうと思ったら見事に被ったぜ……
死体洗いの話にでも修正してこよう……

しかしこんなマイナーな都市伝説が被るとは……
102 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/28(土) 09:19:50.18 ID:fhcB+MX80
>>101
話が被らなければ大丈夫!
安心して書くんだ!
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/07/28(土) 13:00:56.98 ID:4JxOIKLG0
乙でした


そういえば、ウナギを尻の穴に突っ込んだら腸をウナギに食い破られて死んだだかって話があったようななかったような
104 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/28(土) 23:42:52.68 ID:IdTsKIMK0
>>103
何故かカンディルを思い出した(
105 :単発ではなくなったネタ 後編 [sage]:2012/07/29(日) 00:40:00.25 ID:ai9p6aoSO
この飴玉を投げつけるべきは誰か。
当然、黒服さんにじゃない。
敵は後輩だ。
黒服さんに拒絶されても、黒服さんが幸せになるなら、まだ我慢できる。
でも、私は、あの後輩が黒服さんを幸せになんかしない事を知っている。
後輩を止めないといけない。
たとえ、組織の敵になろうと。
そう、後輩は厄介な事に、真面目に組織の任務をこなしている。
都市伝説の能力を悪用したりもしていない。
私が後輩を襲えば、組織から見ると、悪者は私という事になる。
だからって、止めるわけにもいかない。
できれば、すぐにでも後輩に会いたかった。
が、普段なら呼ばれてもいないのに遭遇するのに、まったく姿を見せず。
一度引越したらしく、私の記憶にある後輩の家は空き家になっていた。

それから、後輩を捜す事数日、
「やっと、見つけた」
私は、学校町北区、田舎には不釣り合いなマンションの前にいた。
一度深呼吸をする。
「……よし!」
私は、一歩を踏み出そうとして
「あれぇ?先輩じゃないすか」
マンションから出てきた後輩と出くわした。
「久しぶりっすね」
「本当に、久しぶり」
「今日はどうしたんすか?誰か知り合いでも?」
「君に会いに来たんだよ。ねえ、今の彼女さん、元気?」
「はい?……いきなりなんすか?」
後輩が、怪訝そうな顔をする。まあ、当然かな。
「……あぁ」
そこで、後輩が何か納得したような顔をする。
「黒服さんの言ってたもう一人の担当、先輩の事だったんすか」
黒服さんが、私の事を話していた。
それがどんな内容なのか、気にならないと言えば嘘になる。
けれど、今はそれは重要な事じゃない。
「そうすか。って事は、用はあれっすね。私の愛しい黒服さんに手をだすな、って事すね?」
私は黙って頷く。
素直に手を引くなら、それでいい。
でも、そうじゃないなら……私は、飴を握りしめた。
106 :単発ではなくなったネタ 後編 [sage saga]:2012/07/29(日) 00:41:42.65 ID:ai9p6aoSO
「もう遅いっす」
「……は?」
「今、俺の部屋にその黒服さんがいるんす。……なかなか、可愛かったすよ。胸とかすげーふわふわだったし。脱がせたら恥ずかしそうに」
聞いていられたのは、そこまでだった。
その時には、私は飴を投げていたから。
黒服さんが幸せになれるなら我慢できるというのは、間違いだったかもしれない。
今、私は、こんなにも怒っているんだから。
「うわっ!?何!?」
投げた飴を後輩はすぐに避けた。
そして、一枚の写真をこちらに向けた。
「後手でも必勝!」
「……!?」
そして、その写真が火を噴いた。
とっさに、飴を投げ、爆発させる。
爆風が、火を遮る。
近距離での爆発が、熱い。
「……あー、これは」
火と爆発の止んだ煙の向こうで、後輩の声が聞こえた。
「爆発するんすか」
後輩の足元には、さっき投げた、まだ爆発していない飴がまだ転がっていた。
怒りで思わず投げたけど、まだ聞きたい事があった。
「最後に、質問。君は、本当に黒服さんが好きだったの?」
「……先輩?先輩は、俺が何人の女と付き合ったか知ってます?」
ニヤニヤしながら、後輩はそう返事した。
それ以上、聞く事は何もなかった。
「死ね!」
爆発させる。飴を投げる。爆発させる。飴を投げる。爆発させる。飴を投げる。爆発させる。飴を投げる。爆発させる。飴を投げる。爆発させる。
「…………このっ、」
何か、悪態を吐こうかと思ったけど、何も出てこなかった。
「訳分かんない……」
何故か、爆発の中、後輩は最後までニヤニヤしていた。
あの顔が、頭に残って、気持ち悪い。
「……黒服さん」
後輩の死体から、鍵を捜す。
後輩の部屋には、まだ黒服さんがいるはずだ。
私は、もう組織からしたら悪人のはず。組織に追われる身。
せめて最後に、黒服さんと話がしたい。
……ああ、それとも、このまま黒服さんに捕まるのも良いかもしれない。
エレベーターに乗り、上へ。後輩の部屋の前へ。
インターホンは押さず、鍵を開け、入る。
部屋は暗かった。
「……黒服さん」
いるとしたら、寝室だろうか。
「……黒服さん?」
はたして、黒服さんは寝室にいた。
ベッドの上で、横になって、寝ていた。
「黒服さん」
起きるだろうか。いや、起きなくてもいい。
このまま、別れの言葉を……、……?
「黒服さん?あの……?」
黒服さんは、ぴくりとも動かない。胸は動かず。呼吸の音も聞こえない。
「………………え?」
黒服さんが動かない。
「………………は?」
黒服さんが、死んでいる。
「なに、これ……」
真っ先に思い浮かぶ、後輩のニヤニヤした顔。そして、その意味。
あいつが犯人だ。あいつ以外に誰がいる。あいつしかいない。
外傷のない綺麗な黒服さんを抱きしめる。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
私が、もっと早く気がついていれば、もっと早く後輩を見つけていれば、もっと早く来ていれば、黒服さんは……。
頬を涙が濡らす。
そのうち、組織の人間が来るだろう。
せめて、その時まで、黒服さんと一緒にいたい。
たとえ、その後、殺されようとも。

部屋には黒服さんのいい匂い、桃の匂いがした。

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 00:42:13.72 ID:ai9p6aoSO
暑い
溶ける
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 01:07:52.08 ID:Pm9q5B840

だが今回の話は何がどうなってるかよく分からなかった
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 01:47:49.77 ID:ai9p6aoSO
自分にも分からん
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/07/29(日) 17:24:48.07 ID:JLEZ74vz0
単発の人様投下乙ですー

なんて素敵な幸せの連鎖!
女黒服さん可愛いなぁ

黒服さんを傷物にしつつ、ころころすることで爆発キャンディの子に二重の絶望を与える手法ですか…いいぞもっとやってください!

>>89
>裂邪vs正義の話でちょこっとだけそのシーンがあったりしますのン
なん……だと
読んでこよう!

>「蝦蟇の油」で治せたのに拒否した理由はいつか必ず書くのでお楽しみに
>あとあの女性の正体も
楽しみにしてます!
……状況から察するに、あの女性はひょっとしてしぇ(真っ赤なお花が咲きました

>裂邪を暴れさせ過ぎると賢志の身体がグロいことになるから如何に手を抜きつつ本気っぽく見せるか考えてたら力尽きたぜグハァ
お疲れさまでした…

>>90
>梓きゅんは男の娘だ、そうに違いない、可愛い可愛い
ナゼバレタノデス…!?

>>92
>髪の毛かきあげて右目舐めたいよれっき(斬り刻まれました)
無茶をなさる…


愛してるよれっきゅんペロペ(黄金の炎で焼かれました
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/29(日) 19:50:18.22 ID:Nxn4cmXAO
投下された皆さん乙ですー
112 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/29(日) 22:26:45.00 ID:GfxLEn6B0
くふっ……この胸を抉られる感じぃ………良いわぁ……♡
単発の人乙でした、良いぞもっとやれ(

>>110
>読んでこよう!
確か73話だか74話だったと思いますの
というか書いてる話がその辺でストップしてるという……orz
明々後日で試験期間終了するから、その日以降にでも続きをば

>……状況から察するに、あの女性はひょっとしてしぇ(真っ赤なお花が咲きました
無茶しなさって……
そういや「シャドーマン」は赤く光る目を持つとされているそうで

>ナゼバレタノデス…!?
マサカアタルトハー
あずにゃんペロペロ(ぁ

>愛してるよれっきゅんペロペ(黄金の炎で焼かれました
無茶し過ぎwww
しかし根強い人気だな裂邪、何故だ
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/29(日) 22:57:05.78 ID:c1d6tKbfo
>>112
>しかし根強い人気だな裂邪、何故だ
ショタだからさ
かわいいものを愛でて何が悪い!
れっきゅんかわいいよれっきゅんぺろぺr(レイヴァテイン一閃)
114 :モデルケース [sage]:2012/07/30(月) 03:45:08.17 ID:9ATlqJZao
 生まれたばかりのころ、自分は純白で、その家の神だった。神だったが、疎まれた。押さえつけられた。閉じ込められた。強制的に縛り付けられ、どこへも行けぬこの体。
それでも、家族が好きだった。自分が生まれたこの家が好きだった。家のために力を貸し続けた

 だが駄目だった。心はすり減り、体は汚れ、力はなくなっていく。心身ともに限界だった。ついには、指一本動かなくなる。するとどうだ。家は軋み、家族は次々に死んだ。
家が壊れていく様を見るのは悲しかった。家族が死ぬ様を見るのは悲しかった。唯一、自分を縛りつけている男だけは死ななかった。男は未練もなく家を出る。
自分が出て行った家がどうなるか、その時初めて知った。自分を縛りつける男だけが、唯一自分が神だと示す証、家族がいた絆、家の象徴。
それがどれだけいびつでも、それに縋るしかなかった。家を出るそのとき、自分の体が赤になっていることに気がついた。

 しかし、そんな絆を断ち切る存在が現れた。口が大きな彼女こそ、自分を救い、そして自分で歩むことを教えてくれた友。いや、それ以上の存在。
彼女はいろいろなことを教えてくれた。この世で自分が生きる術を。

 何年も一緒に過ごしたが、別れの時はやってきた。彼女には彼女の、自分には自分の目的があった。たとえ道が違っても、彼女は私の友人だ。

 さらに何年もの時が流れた。私は家で独りぼっちになってしまった。契約していたあいつが死に、残されたのは住み心地のよい、静寂しかない家。無性に彼女に会いたくなった。
彼女と会えば、自分の虚無を満たしてくれる。そう信じた。

 だが、それは裏切られた。彼女はもう、この世にいない。偽物を見て、そう悟った。



モデルケース『座敷ワラシ』A


115 :モデルケース [sage]:2012/07/30(月) 03:45:52.15 ID:9ATlqJZao
 伊織はため息をついた。生まれて此の方三十余年、さまざまなことを経験してきた。しかし、自分の家に子供が、ましてや座敷ワラシを名乗るようなこどもがいたことはただの一度もない。
一体どうすればいいのか、伊織には皆目見当もつかない。

(それじゃいかんだろ俺!!)

 『自分は教師だ』と気を振り立たせ考えを巡らせる。最終目的は既に決めてある。目の前の少女を家に帰らせることだ。すでに9時を回っているので送るのは当然である。
問題はそこにどうやって持っていくか、である。へたに騒ぎを起こせばこの状況だと加害者にされるのはこちら側である。冤罪だと判明しても社会的には死んでしまうだろう
それは避けなければならない。

(しっかし、座敷ワラシねぇ)

 座敷ワラシのことを知らぬ伊織ではない。そもそも座敷ワラシは全国的にも有名な部類である。
20人に聞けばそのうち1人が知らないと答えるかどうかといえるほどポピュラーな民間信仰である。家に住み着き、その家に富をもたらす存在。見たものに幸福をもたらす存在。
しかし、子供のような悪戯を働く存在。少年の座敷ワラシは黒っぽい着物を、少女なら赤い着物を身にまとっているという。
 これが睦城伊織が持つ座敷ワラシの全知識であり、一般的に知られている座敷ワラシ像であろう。それを踏まえたうえで目の前の少女を改めてよくみる。
赤い着物に、いまどき珍しいにもほどがある散切り頭、歳は10〜12歳ほどに見える。その格好だけをみると、少女はこれ以上ないほど座敷ワラシであった。

(う〜む。この格好は親が強制しているんだろうか?)
「なんだ!さっきからジロジロとこっちをみて!ワシは座敷ワラシだぞ!」
「……ハッハッハッハッハ!いやぁ、あんまりかわいい座敷ワラシなもんでおじさんびっくりしちゃって」

 伊織はとりあえず話を合わせておくことにした。子供というのはある程度満足すれば素直になる。それが伊織の経験から導き出した答えである。
116 :モデルケース [sage]:2012/07/30(月) 03:46:27.65 ID:9ATlqJZao

「かわいい……?かわいいか!ふふん、お前見る目があるな。さすがワシが見える男だ!崇めてもいいぞ!」
「へへぇー」

 座敷ワラシを名乗る少女は満足げに胸を張り口を手で隠しながら声を張り上げる。伊織はそれに合わせるためその場に正座し大げさに平伏する。
睦城伊織はがたいが大きい。身長はそれほど高くもなく、170程度しかないが、その図体にこれでもかというほどの筋肉を搭載している。
市販のスーツなど入りきらず、オーダーメイドだが、それでもはち切れんばかりにピッチリとしている。そんな人間が大げさに手を上にあげ平伏したのだ。
目の前でその様子を見れば肉が襲いかかってくるように見えること間違いない。少女であればなおさらだろう。多分にもれず、座敷ワラシは怯み、背を曲げ手で顔を蔽い隠した。
まるでおびえる猫のようである。

「お、お前よく見るとでかいな。まるで小山だ」
「勿体ないお言葉ですワラシ様。ところでワラシ様はなぜこの家におられるのですか?教えていただけないでしょうか?」
「む、よくぞ聞いた」

 怯んでいたところを、すかさずその自尊心を満足させるよう謙る。ここで怯えさせては開く口も開かないというもの。子供はテンションが高いほうが饒舌なのだ。

「ワシはつい先日この辺りに来たのだ。友を訪ねにな。座敷ワラシが屋敷を離れ、人里を何の便りもなく彷徨う。うむ、さすがのワシも死を覚悟した。しかしやらねばそれこそ死んでしまう」
「はぁ」
「息も絶え絶えに探しても一切見つからない。これはもう座敷ワラシ的に体力の限界かー?と途方に暮れていたところでようやく会えたのだがな。そいつは友人の気配をまとった偽物だった」
「は、はぁ」
「最後の希望も途絶え、意気消沈して死にかけているところで、この家が目に入った」

 なんというか、もうこの時点でついていけない気分でいっぱいいっぱいである。

「この家はワシが生まれた家にそっくりだった!なんと素晴らしく!また運命的なことか!これ天命と早速家に入り英気を養っておったのだ。いやー、いい家だぞここは。
 座敷ワラシがいつくことができる下地が出来上がっている。誇っていいことだ。崇めてもいいぞ!それに比べ最近の家ときたらまったく、ブツブツブツブツ」
(なんというか)
117 :モデルケース [sage]:2012/07/30(月) 03:46:54.72 ID:9ATlqJZao
 厄介な子供に目をつけられてしまったものである。最近の子供というのはもしかしたら現実と妄想の区別ができていないのかもしれないと、伊織は本気で考え始めた。
この子供もゲームのやりすぎではないだろうか?いくら子供といえど、勝手に人の家に侵入していいものではない。きちんと善悪の分別はつけさせるべきである。

(これは親御さんに注意しなければいかんだろうな。あれそういえば……)

 不意に、少女がしゃべっていた言葉を思い出した。伊織は家に帰る前の玄関の様子を思い出す。おかしい。おかしいのだ。この家の玄関の『鍵』はたしかにかかっていた。
仮に目の前の少女が入った後にかけ直したとする。ならば、やはり少女はどうやって玄関の鍵を開けたのか。朝家を出る前に鍵がかかっていることは確認済みである。
無論玄関だけではない。窓の鍵もかかっている。玄関の鍵をかけた時点で、この家は完全な密室だったのだ。窓を割ろうにもこの家の窓ガラスは防犯用の強化ガラスである。
子供力で割ることなどまず不可能。そもそも大の大人でも素手ですぐに割るのは不可能である。割ろうとしているうちに、音などで近所の人間が気がつくだろう。
ピッキングなども無理である。鍵は今年に入ってからつけなおしたもので、ピッキングなどができないよう防犯装置がつけられている。
もしかすると専門家なら開けれるのかもしれないが、子供ではとても無理だろう。
 
 『では、この少女は、どうやってこの家に侵入したのか?』

「なぁ、君はどうやってこの家に入ったんだ?」
「ブツブツブツ……ん?どうやって?」

 文句を言い続ける少女に向かい、回答が出せぬ問いを投げかける。無視されるかもしれないと思っていたが、少女は意外にも簡単に乗ってきてくれた。

「どうやって、普通に入った」
「鍵がかかってただろう?」
「鍵?鍵に何の意味がある?ワシは座敷ワラシ。座敷ワラシは家に来て、家から去る。そういう存在なのだ。そこに鍵だとか、壁だとか、そういった概念は一切意味を持たん」

 なんだか、おかしい。伊織はそう感じ始めていた。この少女はどこか変だ。話せば話すほど、まるで自分が本当に座敷ワラシだと信じているかのように感じる。そんなことはあり得ない。
目の前にいるのは子供で、この格好も世間一般で言うコスプレというもの。子供の行き過ぎた遊び、または親の趣味の押し付け。
 そのはずなのに、この少女の素の見えなさは何なのだろうか。これが素だとでもいうこの振る舞い、言動。

「お嬢ちゃん。家はどこだい?送ってあげよう」
118 :モデルケース [sage]:2012/07/30(月) 03:47:24.21 ID:9ATlqJZao
 伊織は、子供に合わせることをやめた。正直なところ、この子供にかかわっていると、おかしな気分になりそうだった。近頃立て続けにいろいろなこと起こり精神的な疲労もたまっている。
これ以上疲労をためるのは精神衛生上好ましくなかった。

「家?家などワシが出た時点でろくでもない結果になってるだろうな。座敷ワラシが出た家は衰退する。ワシはそういう存在」
「お父さんやお母さんの電話番号は知ってるかな?」
「はぁ?人間でもないのにそんなのがいるわけないだろ」

 不意に、少女は思いついたかのように手を打つ。

「ああ、お前ワシのこと信じてないんだな?」

 そう、何気なく少女はつぶやいた。その瞬間、伊織の腕に鳥肌が立つ。急激に寒気を感じたのだ。もともと部屋は冷えていたが、伊織は寒さには強い人間である。
この程度では寒いとは思わない。だというのに、寒い。全身を根で回すような寒気を。

「ワシのことが見えるもんだからてっきり信じているもんだと思っていたが、これだから大人というやつは頭が固い」
「い、いいから立ちなさい!家に連れて帰ってあげるから!」

 寒気を振り払うように立ち上がり、多少騒ぎになることを覚悟しつつ少女の右腕を掴む。もはや親のところへ送り届けるという考えはない。身柄は警察へ引き渡すという考えだ。
立ち上がらせようと腕を上に引き上げる。伊織は全身に筋肉を無駄につけているが、伊達ではなくもちろん力は強い。この町で伊織に力で勝てる人間はいないだろう。
目の前の少女なんてどれだけ抵抗しようと、ティッシュペーパーをとるような感覚で引き上げられる。

「な、んで!?」

 引き上げられるはずなのに、上がらない。まるで根でも生えているかのように動かない。驚いて少女を凝視する。
その顔はニヤニヤと伊織をからかう様な、小馬鹿にするような顔をしている。

「きゅふふふふ。大人が座敷ワラシの力に勝てるもんか」

 左手で口元を隠しているが、もはやドヤ顔であることは明確である。それの表情にさすがに伊織もカチンとくる。
鍛え上げたこの体、それを年端もいかぬ少女に負けることなんてプライドが許さない。自分がつかんでいるのが少女だということを忘れ本気で腕を握り、本気で引っ張り上げようとする
119 :モデルケース [sage]:2012/07/30(月) 03:48:16.71 ID:9ATlqJZao
「どうだ。崇める気になっったってお、お、お、おい!?」

 伊織が本気で引っ張り上げようとすると、座敷ワラシの顔色もさすがに変わってくる。それを気にせず、さらに本気で引っ張る。

「ふん!ぎ!ぎ!ぎ!ぎ!ぎ!ぎ…ぎ!ぎ!ぎ!ぎ!」
「ちょっと!ちょ、ちょっとま、まって!や!やーなの!」

 力と力の壮絶な引っ張り合、畳がミシミシと音をたて、室内には徐々に熱が籠っていく。そしてついに決着のときは訪れた。

「ハァハァハァハァ。ま、負けた……」
「きゅ……きゅふふふ。危なかった〜。いくらエネルギー不足とはいえ人間なんかに負けたら泣いちゃうところだった」

 座敷ワラシが伊織を床に引き倒して決着はついた。差を分けたのは持久力だった。人間である伊織の持久力より、座敷ワラシの少女の持久力が勝っていたのだ。
力だけなら互角だっただろう。

「くそ!くそ!こんなガキに!くそ!」
「すごいだろ!?すごいだろ!?崇めてもいいぞ!」

 全力で悔しがる大人と嬉々としてはしゃぐ子供の図がここに完成した。
 幾らか時間が経ち、伊織と座敷ワラシは冷静さを取り戻していた。

「まさか、人間じゃないなんて……」
「だから、最初から座敷ワラシだと言っている」

 力で負けたものとは別のショックが襲ってくる。こんな子供が自分に力で勝てるわけがなく、ましてや負かすことなど絶対にあり得ない。そのあり得ないことを起こしたからこそ、目の前の少

女が人外だと認めたのだ。認めると、今までの自分の常識が崩れ去るのを感じる。伊織はオカルトなど信じるほうではなかった。ゆえに実際にオカルトに触れたショックは大きい。
ふと、思い起こす。この町で起こった『口裂け女連続殺人事件』のことを。生徒3人が口裂け女を目撃したと言っていた。もしかしたらあれは本当だったのかもしれない。
そう、本当に口裂け女のだったのかも。座敷ワラシの存在を認識するとそんな考えが頭をよぎる。
 しかし、伊織はこれ以上考えることを放棄した。気がつけば時間はすでに11時半を過ぎている。体は精神的な疲労が肉体に伝わったのかひどくだるく、眠気を誘う。
一刻も早い睡眠が必要だ。
120 :モデルケース [sage]:2012/07/30(月) 03:49:15.77 ID:9ATlqJZao

「あ〜座敷ワラシ……さん?くん?ちゃん?」
「さま」
「え〜座敷ワラシさま。わたくしはもう眠とうございます」
「え?いや、夜はこれからだろう!?せっかくワシが見える家主だというのに!もっとなにか!こう!」

 会話に飢えているのだろうか。何やら騒々しくする座敷ワラシ。しかし、それは眠気に誘われている伊織の耳には心地よい子守唄である。

「わたくしはもうくたくたです。わたくしの部屋以外はどこでも使ってくださっても結構。なんなら弟や母の部屋でも」
「ん?弟や母?この家にはお前以外には住んでる気配が」
「あ……」

 伊織は自分が発した言葉に後悔をした。

「弟と母は死んだ」

 なぜ忘れていたのだろうか。こんな大事なことを。こんな重要なこと。こんな心の傷を。

「それじゃあ、お休み」
「ちょっとま…ふみぇ!?」

 すぐさまふすまを開け、体を滑り込ませると、間髪いれずふすまを閉める。ふすまの向こうで何かがふすまにぶつかる音がした。それを気にせず自分の部屋に向かう。
部屋に向かいながらスーツを脱ぎ、部屋に入ったところで靴下とズボンを投げ捨て、布団を敷くと汗も気にせずもぐりこむ。布団にもぐりこむと部屋には静寂が訪れた。
ほかの部屋でバタバタと騒がしい音が聞こえるが、眠るのに邪魔なほどではない。睡魔はすぐさま伊織を心地よい睡眠の世界へ連れていく。
 そんななかでふと思い出した。弟と母親が死んで以来、プライベートでこんなに騒いだのは初めてだと。
121 :モデルケース [sage]:2012/07/30(月) 03:51:37.99 ID:9ATlqJZao





………………………………………………━||:




 眠気でしょぼしょぼする目をなんとか開きながら伊織は眼を覚ました。時計を見ると5時ぴったりいつもと変わらない目覚めである。
この後はいつも通り顔を洗い、歯磨きをし、ご飯を食べ、学校へ行く準備をして、戸締りを確認し家を出る。前日お風呂やシャワーを浴びていない場合は朝シャンもそこに加わる。
全く変わらないいつもの朝、になるはずだった。
 伊織は、普段より自分の体温が高いことに気がついた。寝ぼけていた頭がそのいつもより高い温度により再び体を眠気に誘う。しかし、理性がそれをとどめる。
ほかにも気がついた。なんだか腕に重みを感じるし、布団が盛り上がっている。そもそも体温が高いというより、布団の中が暖かい。眠気眼をこすりつつ、布団をはぐり取る。

「スピースピー」

 そこには年端もいかぬ少女が心地よさそうな顔で眠っていた。それを表すかのように気持ちよさそうに寝息を立てている。
あたまは散切り、赤い着物を身にまとっているが、寝ている間も来ていたせいか、胸元あたりからはだけている。
 伊織は少女をしばらく放心したように見つめていた。見つめていると少女は少し身震いし、目をあける。

「ふぁ〜〜。う〜う?久々の布団は心地よいにゃぁ」

 寝ぼけた頭から伊織はようやく覚醒する。そしてすべてを思い出した昨日のことを。そして、頭に手を持っていくと、今の心をすべてさらけ出した。

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」



睦城伊織……体育教師に間違えられるが、こう見えて社会・歴史科担当教師
座敷ワラシ……着物の下には常にきゅうりの浅漬けが携帯されている
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/30(月) 21:09:46.40 ID:PmmQEVqIo
投下乙ですー

ああ、普通の人だ……無駄に適応力高かったりいきなり生と死の狭間に放り込まれたりしない普通の人だ……ッ!
普通の人がここまで新鮮でうれしく感じられるとは、普段の学校町がどれだけ魔境なのかが伺えるいい例です
徐々に巻き込まれて歪んで慣れていけばいいと思うよ!

どうでもいいけれど場面転換のトンボに和んだ
123 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/30(月) 22:17:55.37 ID:6XJAajKA0
ロリの添い寝
ロリの温もり
ロリの息遣いを肌で感じ
ロリの生ボイスを朝目覚めてすぐに聞ける

ロリ……ロリ…………おぉ、ロリが見える…………
124 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/30(月) 22:31:21.05 ID:6XJAajKA0
いかん本音が駄々漏れに
モデルケースの人乙でした
伊織さんもげろ(結局それかい
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/30(月) 23:38:38.09 ID:FFWxjFK/o
モデルケースの人来てた!
伊織氏の反応初々しいwwwwww
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/31(火) 00:31:11.50 ID:6qKAi9CAO
モデルケースの人乙ですー
伊織さんいいひとだぬ!これからもっと厄介ごとに巻き込まれるといいよ!
そして童ちゃんかぁいい
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/07/31(火) 01:23:07.52 ID:wRVvEKfi0
モデルケースの人様投下乙ですー
座敷ワラシちゃん可愛い!焦って素が垣間見えたとことかたまらんです
伊織さんの反応が新鮮です

>>112
>確か73話だか74話だったと思いますの
ご親切にどうもありがとうございます
74話の冒頭でれっきゅんのかんばせに傷が付いていたことを確認致しました…
泣ける兄弟の戦いでした…

>明々後日で試験期間終了するから、その日以降にでも続きをば
wktkしつつ、試験頑張ってくださいと画面の前で応援してます!

>マサカアタルトハー
病弱で線の細いショタっ子ばんざーいとか言っていたら、いつの間にか外見イメージが完全に女の子になっていまして…
128 :単発 [sage saga]:2012/08/01(水) 23:53:22.66 ID:7NavlW5P0
かきーん!と清々しい音が響き、白い球は真っ青な夏空へと飛んでいった
少しの沈黙の後、球場内は一気に色々な声で溢れ返った
喜びの声、祝福の声が半分、落胆と悲しみの声、労いの声が半分
私が3年間マネージャーを務めた球団が優勝を勝ち取り、夏の風物詩である甲子園は幕を閉じた

「君は勝利の女神だよ」
監督を始め、野球部員が口々にそう言ってくれた
「いやぁ、そんな事無いですよ。皆の努力の賜物です」
口ではこう言っているけれど、確かに私が勝利を呼んだのかも知れない
この野球部は、はっきり言うと弱小チームの一つだった
練習試合で勝った数は指で数えられたし、去年も一昨年も甲子園へは行けず、それどころか予選落ちだった
でも、私は何とかして優勝させたかった
喜びを分かち合いたかった
その為ならどんな手を使っても良いとさえ思った
そんな時、私はあるものに出会った
それは“都市伝説”と呼ばれるもの

私が契約したのは「競技前のSEXは成績に悪影響を及ぼす」
古代ギリシャから伝わる由緒正しい定説、だったみたい
効果は至ってシンプル
スポーツ等の試合の前夜に男女の嗜みをすると、翌日の試合で不調を来たす、というもの
他にも、テストや試験でも同じ効果が得られるみたい
効果範囲は私が意識する空間――『学校』、『球場』、etc――全ての、対象となる人達
お陰で相手のピッチャーはへなちょこボールしか投げて来ないし、守備陣は凡ミスばかりしてくれるし
いくつかコールド勝ちしてチームの皆の士気も上がった事も原因の一つだったかな
でも、戦った相手チーム全員が試合の前の日にSEXしてたなんて考えもしないだろうなぁ



え? 何でそんな事が分かるかって?
だって私が誘ったんだもん
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:56:26.36 ID:7NavlW5P0
本スレに卑猥なネタを堂々と投下しやがるのは奴しかいない
そして奴はこう云うのさ、「本番は書いてないから18禁じゃない」と


青空と入道雲と高校野球と派手な服の姉ちゃんと痛いニュース見てたら書きたくなった
ぶっちゃけ反省はしていない(キリッ
130 :思考盗聴警察 ◆AaMV0hIAII [sage]:2012/08/02(木) 22:30:35.16 ID:jVrV05XI0
>>129
素晴らしい感性をお持ちのようですね
どうも久方ぶりです、思考盗聴警察の神田です
まさかその都市伝説を未成年である高校生に適用するとは
根性たくましいにもほどがありますね

いえ大変素晴らしい感性だと思います
つきましては署の方で詳しいお話を聞かせて頂きましょう、さあ!
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/03(金) 01:20:02.50 ID:1QPueZj40
>>130
来たな思考盗聴のマッポさんよぉ!
連れて行きたきゃ全力で来い!
ピンクの軍勢御大将の本気って奴を見せてやらぁ!(←昨夜から続いて3本目なので相当酔ってます

それはともかく有難う御座いますの
よくよく考えたら健全であるべき高校生には相応しく無ぇwww
ダメだ、当たり前のように書いてたわ、自分が怖いわw
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 23:58:37.65 ID:cAgCNJUJo
八月、か
時が過ぎるのは早いねぇ
お盆になれば死んだあの人たちも戻ってくるかな
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/04(土) 12:15:02.93 ID:PRsWqDTAO
お盆に帰ってくる死者たち
暴れまわる亡霊の群れに攻め込まれる学校町

ここに生者の尊厳をかけた戦いがはじまる!
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/04(土) 13:58:09.03 ID:WVt5bMLDO
これは寺生まれの人の力を借りねばなるまい
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2012/08/04(土) 14:15:32.08 ID:EIoydkko0
死者には守るべき倫理なんてないけど
生者には守るべき尊厳なんてないよね
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2012/08/04(土) 14:24:46.17 ID:EIoydkko0
もうすぐで8月6日か…
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/04(土) 21:49:52.94 ID:5JUcVi7Do
お盆クロス企画ときいて
138 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/08/04(土) 23:29:50.62 ID:uvl0ACre0
俺以外に愛知県民いらっしゃったのか


お盆で書きたいネタがあるっちゃあるんだけど
一切戦闘無いし、裂邪の土下座シーンしか見どころ(?)が無いという
139 :時系列的には、恋を助けた数日後ぐらい [sage   saga]:2012/08/05(日) 01:09:01.71 ID:o3ZtWrfi0
『…………』


―――光る刃物。全身を襲う痛み。押さえつけられ、動けない自分。


『……か……』


―――下卑た笑い。すすり泣く声。顔も知らぬ誰か。見たくない。認めたくない。


『…が、…………な事を、し……ば……』


―――白い天井。限りない無力感。ごめんなさい。喪失感。理解。後悔。包帯。ごめんなさい。


『……せ……え、せ……を…………』


―――罵声。ごめんなさい。堅い壁。ごめんなさい。愚か者。ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい





『  返  せ  ッ  !  !  』




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「うぁぁぁぁぁぁっ!?…………はぁーっ、はぁーっ……はぁーっ……また、か」


……ここ最近。俺は、毎日同じ夢を見ている。
以前いた、自分の生まれ育った所での。本当に幼く、愚かだった頃の夢を。
自分が、この町……学校町に移り、そのまま居着くきっかけとなった日の夢を。


「……わかってる……わかってるんだ……」


そうだ、わかってる。“あの事”があったから、今の自分がいるんだと。
わかっているはず、なのに。何故俺は、手を差し伸べようとしてしまうんだろう。

この前の……恋の時だってそうだ。なぜわざわざ、危険が待っていると分かってるのに、彼女の後を追ったりしたのだろう。
彼女の事を紫亜に連絡して、それで終わりのはずだ。そもそも自分は『組織とやらに所属している』わけでもないのだから。
結局、紫亜はちゃんと間に合っていたじゃないか。あの盥が最後の黒服に直撃して、それで恋は助かってたじゃないか。
ろくに戦えもしないド素人抜きでも…………もし仮に、俺があの場にいなくても、全て丸く収まってたじゃないか。


「駄目だな……全然駄目だ、俺。もっとよく、考えて動かなきゃ……」


都合のいい非日常はない。突然ある日覚醒する勇者もいない。ましてやそれが自分であるなど、決してあり得ない。
もしいるとすれば、それは一部の選ばれた人間だ。才能に愛され、運に愛され、他者に愛される。
数千人の内の一人みたいなレベルの、何事も上手くこなせる人間だけなんだ。俺は違う。断じて違う。

今まで唱え続けてきた言葉を、心の中で何度も繰り返す。
そうだ、考えなきゃ。どうすればより平凡な一日を過ごせるか。どうすればより平和な日常を過ごせるか。


どうすれば  を、幸せに出来るのか。





そして―――今日もまた、一日が始まる。
140 :筆が重い……やはりブランクのせいか [sage saga]:2012/08/05(日) 01:10:42.15 ID:o3ZtWrfi0
※この物語は、平穏とゾイドたちを愛する一人の契約者の日常的な非日常を描いたものです。過度な期待はしないでください。
※今回は小ネタ数本による番外話となっております。相当期間も空いたため、激しいキャラ崩壊・拙い文章・下手な心理描写など多々あると思いますが、金属イオンの海より広い心で見逃していただければ幸いです。もしくはそっとブラウザを閉じ(ry


では、【未発売キットを製作すると発売決定する都市伝説】第五.五話をお送りいたします。



≪ある日の恋ちゃん≫

ピピッピピッ、ピピッピピッ、ピピッ……

「(カチッ)………ん………」


「はむ………もぐ、もぐ………」

「旨い!紫亜、今日のチャーハンもまた絶品だぞ!」

「え、と……ありがとうございます、殺人鬼さん……(……言えない……昨日、有間君に作り置きしてもらった物なんて……)」

「………?」


「いって、きます」

「はい、いってらっしゃい。夕飯までには、帰ってきてくださいね」

「うん………」



>おや恋ちゃん、お散歩かい?

「………ん」

>おはよう恋ちゃん!どうだい、このお魚。安くしとくよ?

「お金………持ってない………ごめん、なさい」

>良いって良いって、いつでも買いに来てくれよ!恋ちゃんみたいな可愛い子には、いくらでもおまけを……痛っ!
>ちょっとあんた!馬鹿なこと言ってないで、とっとと仕事しなさいっ!
>い、痛ててててて!わ、わかった、わかったから耳は止めてくれ母ちゃ…… ズルズル

「おぉ………?」



>ひ、ひったくりよー!だれか、だれかぁー!

>くくっ、ちょろいもんだぜ……ん?

「………人の物取ったら、どろぼう………」

>なにぼーっと突っ立ってんだ、退けよこのア(バコッ!)マ゛ッ!?


>ありがとうございます、何とお礼を言ってよいやら……

「ん………よかった、ね」



「………ただいま」

「あ、おかえりなさい!ごはん、出来てますよ」

「………ん」 

(オチも無く終わる)
141 :小ネタ3本で終了……畜生、貴重なネタがorz [sage]:2012/08/05(日) 01:11:34.54 ID:o3ZtWrfi0
≪謎のお金≫

「なんだ、これ?」


[=]   ←これ


「(一度状況を整理しよう。俺はいつものようにバイトから帰宅し、押し入れから棚積みしてあるプラモから新しい物を生み出し」
「能力で販売させようとした……うん、ここまでは問題ない。いつも通りの日常だ。……問題は、)」チラッ


[=]   ←これだ


「(いつの間にか押し入れの中に設置されていた、スーパーのレジっぽい何か。金額を表す部分には『258,750』と表示されている……え?)」
「(まさかな。いや、もしそうだとすると……)」
「……よし、開けてみよう」


[ ]ガチャッ
 =


「(……パララッパッパッパー!有間出井は、258750円を手に入れた……って)待て待て待て待て、待てぇぇぇぇぇ!?」
「これマジで、俺の金?俺が能力で作ったプラモを買う時、レジで払った……いや、それにしては金額が多す……ぎ」



「…………払った、お金?俺の作ったプラモを買った……買った人達のお金、なのか……?」



『258,750』

(金欠フラグ回避完了(ぉぃ)



≪『ゼロりんを影ながら応援する会、略して……』≫

「幹部諸君、今日も一人たりとも欠ける事ない集まりに感謝する」

「「「はっ!我らが会長殿!!」」」

「本日のスケジュールを確認するよ、同志『アンノウン』」

「はっ。午前中はまず、強化されつつあるゼロr……ゼロ様自室の防犯システムへの対策を話し合うための会議。我らZKO会のあるべき姿の模索と再確認。軽い昼食休憩の後、各自の活動報告・情報交換の場を設ける予定となっております」

「……うにっ、よろしい。ではこれより会議を始めるよ」

「「「「はっ!」」」」

(変態共が人員と団結力、その他諸々を持った結果がこれだよ!?)
142 :予告、もしくは謎の伏線 [sage]:2012/08/05(日) 01:12:50.09 ID:o3ZtWrfi0
≪闇子が過去へ飛んだすぐ後≫

「……ファァァァァァイヴヴヴヴブヴヴヴ……」


チクタクマンだよ、な?……どう見ても女の子だが。


「……?ファァイヴヴヴ?」


誰かって?……そんな事はどうでもいいじゃないか。


「…………」


とりあえず、  の話を聞いてくれ。……そして、




―――“彼女”を守るために、過去へと……過去の学校町へと送ってくれ。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「…………」

「ファァァァァァイヴヴヴヴ……」

(終)
143 :以上、ゲリラ投下失礼しました [sage]:2012/08/05(日) 01:33:30.58 ID:o3ZtWrfi0
@≪出井の悪夢≫
一言で言えば過去のトラウマです。更に詳しく言えば、当時の彼が色んな意味で幼すぎたが故の悲劇です。
『ダークマター事件』を見る限り、中学時代にはすでに学校町にいるみたいですが……。
A≪ある日の恋ちゃん≫
恋が古田家や学校町に溶け込めるまでを書こうとしたのですが……いつしか勝手に馴染んでいたというwwww
また、外出時に恋が持っているのは自身の日本刀ではなく、出井が修学旅行で買っていた木刀です。どうでもいいですが(ぇ
B≪謎のお金≫
出井、まさかの収入に気付くの巻。でも一体4000円ぐらいとして、実は64個ぐらいしか売れて無いという罠(ぇ-
自分で買った時のお金も戻ってくるため、体力にさえ気を配れば∞回収が可能。何この半永久機関。
ちなみに今まで気づかなかったのは、出井自身が能力に慣れて成長した結果だったり。
C≪『ゼロりんを影ながら応援する会、略して……』≫
【Z=ゼロりんを K=影ながら O=応援する】会、略してZKO会。会長は無論あの娘、副会長は死を纏った騎士。会計はUFO娘。
さらに、まだ見ぬ二人の幹部の姿も……色んな意味で危ない、ο-No.0!
D≪闇子が過去へ飛んだすぐ後≫
この人物が一体誰なのか、そして“彼女”とは……無駄に煽って何ですが、一人称や台詞からも分かるとおり
まだ誰にしようか決まってないという(ぉぃ……あ、止めて、物を投げないで……
一応、いくつかルートを考えてはいるんです。ただ、繋げるのが難しくて……orz
このキャラが出井や紫亜、恋たちとどう関わってくるのか、全ては(邪)神のみぞ知る!


では、本日の投下は以上となります。お休みなさいー
144 :思考盗聴警察 ◆AaMV0hIAII [sage]:2012/08/05(日) 18:53:13.68 ID:kJptfKca0
>>139-143
乙ですが、乙ではあるんですが
ちょっと出井さんこれはどういう事でしょう
私は思考盗聴警察の神田なんですが
この時点での出井さんの収入が25万8750円ですね
実は現時点での私が貰ってるリアル給料とほとんど変らないんですよ
ちょっとだけ出井さんの方が多いくらいなんですよね
ちょっと胸に来るものがありましたよ!
大人気ない?ああその通りだとも!!
出井さん学生さんでしたよね
…浪費は禁物ですよ……
145 :思考盗聴警察 ◆AaMV0hIAII [sage]:2012/08/05(日) 19:39:47.79 ID:qze9faJzo
しかし同士よ
この金はどこから出て来るのか謎な完全に裏ものな金だ
つまり、源泉徴収などで手元に来る分がへったり税金関係の金がさっぴかれたりすることはないということだ
札の番号が怪しいから実際には使えないかもしれないが、だからこそこれはいけない、危険だ
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) :2012/08/05(日) 20:13:41.61 ID:lI91x4Cto
      ノ                     `:、
     ;′                     ヽ.
     }                _.,... -ー- .._      `:、
     ノ        r''''"´         `ヽ,     }
     }           {                 i.  /^′
     ,}         ,:彡              | /
     {       ,.イ´         j: i_,,. -ーt′
     } /〜"ニフ {.   /二ニニィ  {フ=ニ、ト、
     j | {// ,i'     ,ヘツ_>'/  : ド=’イ | ヽ   古畑任三郎でした。
     '; |`<''/  {    丶 ̄ ./    |、   ルリ
      〉 \イ,.,.、冫              l.、 |
      l、  \,,ハ.          /` 丶  :},)|
        ヽ、 ,ハ ヽ      / ` ‐⌒ー ' , |‐- .._
        >'i \ ヽ.    , ‐--ー一 ''゙!丿    \
       ,/l   ヽ \ 丶、    `"二´ ,' |       ト、
       ノ |    ヽ.  丶、 `ヽ、    ___ノ  |.      | |

147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/08/05(日) 20:14:43.26 ID:lI91x4Cto
すまん誤爆
148 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/08/05(日) 22:53:38.48 ID:bDzTP4xM0
プラモデルの人乙ですの
色々伏線キター!! 今後もwktkせざるを得ない
恋ちゃんカッコ可愛いよ恋ちゃんハァハァ
ZKO会か、よくある感じにカッコよく読めばゼッコー……ちゃうちゃう、他の読み方考えてくるぜ(ぁ
出井くんは爆発しなさい♪(

>>146-147
誤爆の筈なのにそれが自然に思えてしまう
これが都市伝説ryスレクォリティか……
149 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage]:2012/08/06(月) 00:08:31.59 ID:1Ltn5IzC0
いかんいかん、ちょっとした昼寝のつもりがもう夜だww
感想ありがとうございますー!

>>144-145
>この時点での出井さんの収入が25万8750円ですね
はい、『この時点では』です。以前にもチラッと書きましたが、光学迷彩だの衝撃吸収ヘルメットだの一点物以外にも
第一話のスノーライガー含め、世に出回ってない様々な改造プラモ(主にゾイド関係)を出井は製作・販売しています。
よって、今後作り続けていけば―――緩やかにでしょうが―――まだまだ隠し財産は増える事でしょう。

>この金はどこから出て来るのか謎な完全に裏ものな金だ
>つまり、源泉徴収などで手元に来る分がへったり税金関係の金がさっぴかれたりすることはないということだ
>札の番号が怪しいから実際には使えないかもしれないが、だからこそこれはいけない、危険だ
実はこれ、出井自身も気になってました。だから、彼なりにある実験を行っています。

数枚の野口さんの通し番号をメモに書き映し、さらにその隅にそれぞれの番号と合致するように、色ペンで小さな点を打っておきました。
そして翌日、販売させたプラモを購入する際にその野口さん達を使用したのです。
結果、レジに入っていた野口さん達と、メモに書き映された通し番号が一致。隅に打たれた点の色もそのままでした。

以上の事から『全国のどこかで誰かが出井のプラモを買う→その時払ったお金がレジからレジに直接転移する』というのが正しいようです。
……ええ、普通に使えます。既に存在しているお金が移動してきただけなため、ダブりなどもあり得ませんし。完全な裏金ですけど(ぇ

>>146-147
吹いたwwwwwwまさか、こんな所で古畑さんに出会うとはwwwwww

>>148
>色々伏線キター!! 今後もwwktkせざるを得ない
出井が異常なまでに『平穏』を求める理由、そして“未だに紫亜の隣にいる理由”の一つでもあります。
……後者に関しては、そう思い込もうとしているだけかもしれませんが。しかしそれさえも彼を踏みとどまらせてしまう負のスパイラル。

そして過去の学校町へと謎の人物を送った【チクタクマン(少女)】。バレバレだとは思いますが、闇子を送った張本人です。
遠目からは普通の少女に見えますが、近くまで来ると腹の部分が空洞なのが分かります。中には無数の歯車も。
なにも考えて無いようでその実、とんでもない贈り物をくっつけていたり(ぇ

>恋ちゃんカッコ可愛いよ恋ちゃんハァハァ
本当はここまであっさりにするつもりはなかった……
この後木刀所持を引ったくり連行に来た警察(一般人)にとがめられて追いかけっこしたり、
逃げてる途中で見かけた民家に空き巣が入るのを見て、躊躇なく窓蹴り破って捕まえようとしたり(ぉぃ
色々あって帰りがすっかり遅くなり、疲れて古田家に帰ったら彼女の帰りを紫亜が外で一人待ってたりと
そんなハートフルな短編になるはずが……orz

実は、書き終わった後『闇子が出せて無い!?』と気付きましたが……よくよく考えればまだ闇子の存在は、恋以外誰も知らないんだったww

>ZKO会か、よくある感じにカッコよく読めばゼッコー……ちゃうちゃう、他の読み方考えてくるぜ(ぁ
『強化されつつあるゼロりん自室の防犯システムへの対策』とか考えてる時点でロクな会じゃないですが
というか、ゼロりん自身が強化を施すほど彼女の自室に何をしているんでしょうねーww
……読み方か……読み方……

>出井くんは爆発しなさい♪(
作り置きは日常茶飯事です、主に紫亜が大失敗して涙目の時とか。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/08/06(月) 02:10:09.78 ID:+o3SW6cAO
>>128
投下乙ですー
何という名マネージャー、まさに女神!

>>139-142
乙ですー
出井くんにどんな不穏な過去がいったい…?
そしてプラモ売れると金が入るのか裏山
恋ちゃんかわいいよ恋ちゃんぺろp
ゼロりん愛されてるなぁ可愛いよゼロりん
そして過去の学校町で守られる「彼女」ってもしかs
151 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage]:2012/08/07(火) 23:40:47.47 ID:UGAeDYcd0
感想ありがとうございますー
>>150
>出井くんにどんな不穏な過去がいったい…?
『現実は小説より奇なり』なんて言いますが、“小説並みに奇怪な現実”なんてそうそう起こらないのです……

>そしてプラモ売れると金が入るのか裏山
正直、俺も羨ましいです(ぉぃ
作中たまに「いつの間にこんなサイズのプラモ買ったんだよ!?」という場面が出てくるかもしれませんが、
主にこの裏金が資金源と考えてもらっていいですwwww

>恋ちゃんかわいいよ恋ちゃんぺろp
空き巣を追い詰めるために、民家の窓を躊躇なく破壊する戦闘狂!
でもって、窓枠に足引っかけて盛大に転んじゃうドジっ娘でもある(ぇ

>ゼロりん愛されてるなぁ可愛いよゼロりん
ええ、愛されてますよゼロりんは。……例え(少々)方向が歪んでいてもwwww

>そして過去の学校町で守られる「彼女」ってもしかs
ここ、後で見直しても描写不足ですよね……本当に申し訳ありません
この場合の「過去の学校町」とは、「出井達がいる現代(いま)の学校町」の事です
『彼女』の正体については…………もうバレてる様な気も…………
152 :単発、赤い部屋 [sage]:2012/08/10(金) 17:26:22.76 ID:F1TlRsp70
 これは熱い夏の日、私が体験した出来事です。
 私は今年の春から大学に入ると同時に一人暮らしを始めました。初めての一人暮らしは思ったよりも寂しくはなく、順調に進み、夏を迎えました。
 私の部屋はアパートの二階、五つある部屋の右から二番目になります。これと言った近所付き合いも無く、一度引っ越しの報告に伺った程度です。そもそもあまり人と話すのが苦手な私は積極的には関わろうとはしませんでした。その為、周りに住んでいる方がどの様な人なのかを全く知りませんでした。
 ある日の午前1時を過ぎた時でした。私はアルバイトから帰り、深夜番組を見ていた時です。霊感が強い訳では無いのですが、この日だけは背筋に走る妙な視線を感じました。少し気になった私は視線を感じる方へと目を向け、何も無い筈の壁を見ました。
 よく見ると壁にはペン一本ほどの太さの穴が開いていました。よせばいいのに私はその場の好奇心でその穴を除きました。
 穴の先には辺り一面赤く、まるで真っ赤なペンキを部屋全体にぶちまけた様で、気味が悪くなり直ぐに見るのをやめました。とても異様な風景でした。しかし、人が居た様な感じではありません。私はもう一度、確認しようと穴をのぞこうとしました。
 私が穴を覗こうとする寸前、穴から勢いよくペンが突き出てきました。
 驚き、後ろに下がり、多分大きめの悲鳴を上げていたと思います。心臓はどくん、どくん、と鐘を鳴らし、冷房をつけているのに汗が止まりませんでした。怖くなり、穴を塞がなければと思い、片づけていない段ボールを投げつけるように穴を塞ぎました。
 近くにあったぬいぐるみを抱きしめ、テレビの音量を上げ、心を落ち着かせようと深呼吸を繰り返しました。体はシャワーを浴びた後のように全身汗を流していました。
 少しした後、どんどん、と強くドアを叩く音が部屋に響き渡りました。
 先ほどの悲鳴で辺りの住人が何事かと思い駆けつけてきてくれたのだと私は思い、ドアに付いたレンズを覗きました。
 そこには先ほどと同じ赤い部屋が広がっていました。
 悲鳴を上げ、尻餅をつき、這うように玄関から逃げ、リビングへと向かいました。
 どんどん、とドアを叩く音は強くなり、ドアが壊れるのではないのかと思うほどの音が続きました。私は布団を被り、ぬいぐるみを強く抱きしめ、時間が過ぎるのを願い、堪えました。
 数十分たって音は止みました。しかし変なのです、あまりにも静かすぎるのです。私は恐怖を紛らわす為にテレビを付けていました。そのテレビの音すら消えているのです。
 私は恐る恐る布団から顔を出し、リビングを見渡しました。
 テレビの画面には赤い部屋が映っていたのです。
 私の思考は止まり、少し意味が分からなくなるぐらいパニックに陥っていました。そして、私がテレビを見たのを見計らっていたかのようにドアを叩く音がまたも響き始めたのです。
 もう何も頼れる物がない。私は強くぬいぐるみを抱きしめて時間が過ぎるのを待とうとしていました。響くドアの音、私を恐怖に陥れる者はドアの向こう側にいるはずです。しかし、また視線を感じました。感じる視線は下から。目線を落としてみると。
 ぬいぐるみの目が赤く、赤くなり嗤いながら私を見ていたのです。
 そこで私の意識は途切れました。

 後日、大家さんに私の隣の部屋の事を聞いてみると、昔目の赤い男が住んでいたらしく、その男は隠れる様に住んでいたそうで、今は行方が分からないそうです。しかし部屋は至って普通で、赤くもなんともなかったです。
 私は一週間後には引っ越しの手続きをして、その部屋を出ました。
 今考えると、私はその部屋を覗いていたのではなく男の目を見ていたのかもしれません。
153 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/08/10(金) 20:29:26.60 ID:0ZzC4xsT0
こりゃ面白いな、タイトルで完全に引っかかったわ
この発想はなかったぜ、ゾクッとすると同時に何かドキドキしてる素敵ね結婚して(マテヤ
単発の人乙でした
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/10(金) 20:32:53.20 ID:4uPSoadY0
どういう事なの…
ぬいぐるみが犯人だったという事か…
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/11(土) 10:15:49.67 ID:nCyNof5DO
もしかしてそのぬいぐるみというのはあなたの想像上の(以下略)

なるほどわからん
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/08/11(土) 19:21:04.87 ID:x2uJ+0Ql0
単発の人乙ですー
おおぅ……久々にゾクッときました
157 :ある暑い夏の日に [sage]:2012/08/17(金) 23:20:28.64 ID:p2lHU+4Xo

 空に輝く太陽が容赦なくアスファルトを焼き焦がし、遠くでは陽炎が揺らめいている。
 しかしどんなにうだるような暑い日だろうと、私の格好が変わることはない。
 赤いロングコートを身に纏い、口には大きな白いマスク。
 そう、私は口裂け女だ。

 所在無げに道路を歩いていると、曲がり角の向こうから人が近づく気配を感じた。
 よし、今日の獲物はこいつだ。
 マスクの下で笑みを浮かべ、私はそちらへと歩みを進めた。

 角を曲がると、そこにいたのは10歳ほどの少年だった。
 驚きもせずにキョトンとした表情で私を見上げている。
 私の姿を恐れないということは、最近の子供は口裂け女を知らないのだろうか。
 まあいい、どうせここで私の餌となることに代わりはないのだから。

「わたし――」
「こんにちは!」

 元気にあいさつをされた。
 どうしよう、このパターンは完全に想定外だ。
 とりあえずもう一度問いかけようと思い、私の顔を不思議そうな目で見上げる少年に向けて口を開く。

「こ、こんにちは」

 いや違う、私が言おうとしたのはこういう言葉じゃない。
 なんだかあいさつを返さないと申し訳ないような気がしてつい妙なことを口走ってしまった。
 少年はあいさつを返されたのが嬉しいのか、かわいらしい笑顔を私に投げ掛けている。
 そうじゃない、私が望んでるのはそういう顔じゃないんだ。
 そのかわいい顔を恐怖と絶望で染め上げてやるべく、私はまた口を開く。

「わt――」
「お姉さんそのかっこ、暑くないの?」
「えっ、いや、大丈夫……たぶん」

 だから違う、私はそういうことを言おうとしたのではなく。
 というかこの子供がさっきから私の言葉に食いぎみで言葉を被せてくるせいで、ペースが乱されて仕方ない。
 最近の子供は人の話をきちんと聞きましょうと教わっていないのか。

「暑いかっこしてたら、汗いっぱいかいて大変なんだよ?」
「よし少年、ちょっと静かにs――」
「そうだ!お姉さんにこれあげる!汗かいたら食べなさいってお母さんに言われたやつ!」
「あ、ありがとう……」

 とうとう私の言葉を無視しだした少年が差し出したのは白い飴。
 見たことはないが、少なくともべっこう飴でないことは確かだ。
158 :ある暑い夏の日に [sage]:2012/08/17(金) 23:21:02.66 ID:p2lHU+4Xo

「でもおいしくないから僕いらない」

 その美味しくないものを人に勧めるのはどうかと思うぞ少年。
 だがしかし口裂け女の性か、自然と包み紙を破ってそれを口に入れてしまった。
 そして口の中いっぱいに広がる塩の味。
 うむ、確かにこれはおいしくない。

 べっこう飴とは真逆のその味になんともいえない表情を浮かべていると、少年が目を丸くして私を見上げていた。

「お姉さんのお口、すっごくおっきいね!」

 そうか、飴を食べるときに無意識にマスクを外していたのか。
 よし、このタイミングならいける。
 私は裂けた口を三日月に歪めながら少年に問いかけた。

「わふぁし、きれい?」

 噛んだ。

「わかんない」

 少年は首をかしげながらそれに答えた。

 そうか、まだ女性がきれいだとかかわいいだとかを判断するお年頃ではなかったか。
 ここに至るまでの茶番を思いだし、思わず自嘲を込めた笑みがこぼれる。

「お外はあぶないから早く帰りなさいってお母さんから言われてるから、僕帰るね」

 私がその「危ない」の一因なんだが……などと口にするより早く、少年は笑顔で私に手を振る。

「バイバイお姉さん!」
「さようなら少年」

 とてとてと走り去る少年を追う気にもならず、たまにはこんな日もあるさ、と自分を慰める。
 だが不思議と獲物を狩り損ねた悔しさはなく、充実感のようなものが心を満たしていた。
 形は違えど飴を貰えたからだろうか。
 口の中に広がる塩味が、不思議と美味しく感じた。


【終】
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/17(金) 23:21:43.19 ID:p2lHU+4Xo
天然無邪気少年かわぁああああああああああああああああああああああああ!!!
暑い日が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
夏を満喫するのはよろしいですが、熱中症や日焼けには十分お気をつけて。
高すぎる気温の前では、水分塩分の補給なんて無意味なのですよ。
危ないと感じる前に涼しいところへ避難を!
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/08/18(土) 09:29:21.09 ID:ElbksRpV0
>>159
乙ですー!
朝からほのぼのとした雰囲気にさせて貰いました
口裂け女にもこんな日常の一コマがあってもいいじゃない!

でも逆に考えれば、口裂け女という都市伝説を知らない子供が増えてきているという事でもあり、
自身の存在を保つために彼女が殺人を重ねていると考えると……
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 15:38:17.63 ID:8buftIe8o
自らの存在を維持するために都市伝説は殺人を犯す
ゆえに都市伝説は人間にとって有害だから[ピーーー]べきである

ふむ、これならどんな都市伝説であっても処分していい根拠になるな
ご意見感謝する
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/18(土) 19:06:58.12 ID:cjCUgNLKo
人に危害を加えるのならば処分
人に迷惑をかけるのならば排除
人に与える影響が無視できる程度ならば放置
人にとって利益になるのならば利用

人のためを第一に、できるだけ楽な方向で考えましょう
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 20:15:47.37 ID:SBvS8WgM0
>>162
共存や共生の考え方を意図的に無視している辺りが大変あなたらしいですね
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/08/18(土) 20:51:00.02 ID:ElbksRpV0
>>161>>162の「人」を「組織」に置き換えてみましょう


あら不思議、まるで過激派の考え方の様
165 :contractor making [sage]:2012/08/19(日) 00:10:42.24 ID:k7nCTqIso

 男には目の前の光景も、自分が置かれている状況も、何一つ理解できなかった。
 赤いコートを着た女が突然鎌を振りかざして襲ってきたら突如白い車が現れ、
 それに気を取られているうちに男もあの女もなぜか動けなくなっていた。
 そしてその白い車から、黒いスーツを着込んだ背の低い少女と、うつむき加減の背の高い女性が降りてきた。

「こんばんはー、「組織」からきました黒服ですー」

 のんびりとした口調で自己紹介になってない自己紹介をする黒服。
 男が何か言おうとするが、その体は動かず、声を出すこともできない。

「あれー、こっちも固まっちゃってますー?ゆうさーん、この人は大丈夫ですよー」
「逃げるかも、って思って、一応」

 直後、男の体に自由が戻る。
 男は目の前の少女と車の傍に立つ女性、そして赤いコートの女を見比べ、震える声で問いかける。

「な、なんなんだよお前ら……どうなってるんだよこれ……」
「私たちは「組織」の人間で、あれは口裂け女ですよー。あと、さっきのは金縛りですねー」

 そんなことを言われても理解できない、といった目で少女を見上げると、少女はこほんと咳払いをして男に話し始める。

「簡単に説明しますとですねー、この世には都市伝説が実在し、今回のように人を襲うこともあるんですよー。
 その理由というのがー、都市伝説が自己の存在を確立するため、ってことなんですねー。
 つまり、口裂け女に襲われた、ってうわさが流れることでー、口裂け女は存在する、っていう事実が人間によって認められるんですよー。
 でもそのために人が襲われるのはよくないのでー、もうひとつ、都市伝説が自己の存在を確立させる方法があるんですねー。
 それが「契約」といわれるものでしてー、人間と都市伝説が共存共栄していきましょう、っていう素敵なシステムなんですねー。
 で、ここからが本題なんですけれどー、あなた、この口裂け女さんと契約してみませんかー?」

 口を挟む暇も与えず一方的に説明を終えた黒服は笑顔で男に「契約」を持ちかける。
 男にとって、ついさっき自分を襲ってきた得体の知れない存在との得体の知れない「契約」。
 到底受け入れられるものではなかった。

「断ってもいいですけどー、そしたら私たち帰っちゃうんでー、あの口裂け女さんのことはよろしくお願いしますねー」

 そんな男の心境を察したかのように、黒服から告げられる言葉。
 要するに「断ったら口裂け女に襲われて[ピーーー]」と言っているようなものだ。
 行く道は未知の闇、帰る道は確実な死。選択肢は一つしかなかった。

「……契約をすれば、俺は死なないんだな?」
166 :contractor making [sage]:2012/08/19(日) 00:11:11.90 ID:k7nCTqIso

「察しがよくて助かりますー。ではこの契約書に血判をお願いしますねー」

 黒服はにこりと笑うと男に一枚の紙とナイフを差し出す。
 文字なのか記号なのかもわからない線が並ぶその紙に、押印欄だけがいやに目立っていた。
 ナイフの刃に親指を押し付け、一瞬の痛みの後にその指を紙に押し付ける。

「ありがとうございますー。じゃあ口裂け女さんの方もちょっと失礼しますねー」

 黒服は男から紙とナイフを受け取り、そのナイフで無造作に口裂け女を刺した。
 驚く男をよそに、引き抜かれたナイフから滴る血を契約書に垂らすと、男の中に何かが流れ込んできた。
 自分の中の深いところが何かで満たされ、何かが組みあがっていくその感覚に、もう後戻りはできないのだと嫌でも思い知らされた。

「ではこれから「組織」でいろいろと説明をしますのでー、ちょっとの間寝ててくださいねー」

 黒服は懐から拳銃のようなものを取り出すと、男に向けて引き金を引いた。
 全身に電流が走り、薄れゆく意識の中で、黒服が口裂け女へ引き金を引くのが見えた。


    ・
    ・
    ・


 日は変わり「組織」の一室。
 机に突っ伏して足をぷらぷらさせる黒服の少女と、その傍らに立つ女性の姿があった。

「やっぱり週に3人の契約者調達のノルマはきついですってー。
 怪我とか処分とか裏切りとかで前線が不安定っていうのはわかってますけどー。
 そのせいで私たちみたいな後ろの人員も足りてないんですよー?」
「でも、誰かがやらなきゃ、人が減るだけ」
「それもわかってるからしんどいんですよー。むー、ノルマに追われる下っ端はつらいなー」

 うにー、と声を出しながら伸びをし、勢いよく椅子から立ち上がる黒服。
 くるりと振り返ると宣言するかのように右手を挙げ、笑顔で告げる。

「それじゃー、今日も元気に契約者調達にいきますかー」


【終】
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/19(日) 00:12:04.84 ID:k7nCTqIso
黒服さん:ショートヘアの合法ロリ。「事件現場で見る白い車」の契約者。
ゆうさん:黒髪ロングの眼帯お姉さん。「金縛り」+αの契約者。
男:契約者にされてしまった男。
口裂け女:契約者ができてしまった都市伝説。

上の設定に特に意味はありません。
「組織」の人員不足を解消するべく奮闘する善良な黒服さんのお話でした。
契約の破棄には双方の合意があればいいというのが一応の見解だけれど、契約書が存在しているならそっちもどうにかしないといけないよねという素敵システム。
「素敵」に「きちく」とルビを振った人の所には契約書を携えた黒服が出向しますので覚悟しといてくださいね?
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/19(日) 00:13:33.50 ID:k7nCTqIso
あっ、saga忘れ……普段作中で[ピーーー]とか使わないから油断してた……次は気をつけます
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 00:35:47.98 ID:3RY5exZ0o
ただでさえ口裂け女ってだけでもヤバいのに
脅しとかそこからの強制契約とかもう死臭しかせんのだが
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 01:10:01.11 ID:/ug3epXDO
黒服「契約っていうのは結構根が深くてですねー、もし強制的に契約を破棄しちゃったり、契約相手を殺しちゃったりした場合ー、
   内臓を握りつぶされるような激痛とー、眼球を抉りとられるような苦痛とー、過去10年の記憶を失うような虚無感くらいは覚悟してくださいねー。
   そうやって廃人になっちゃった人もいたりー、ショックで死んじゃったりした人もいるのでー、あんまりおすすめはしないですねー」

みたいな説明が「組織」でされたとかされてないとか
きっとこの契約者はうまくやってくれることでしょう
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/08/19(日) 04:14:58.45 ID:BvMffxwQ0
乙ですー
ステキ     カゲキ
素敵と書いて素敵と読むんですね、分かりま(ry
「きっとこの契約者はうまくやってくれることでしょう 」がパラノイアのアレにしか聞こえないwwwwww
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 12:50:50.45 ID:/ug3epXDO
カゲキじゃないよ
襲われそうな一般人を助けてあげた上に戦う力も与えてあげて、
さらには「組織」の人員不足解消にも貢献してる素敵な黒服だよ
こういう地道な取り組みを続けることで平和を守ろうという、かいがいしくて健気な働き者の黒服だよ
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 14:37:37.62 ID:NWFRxB640
     キチク  ゲス
ここまで素敵な黒服はそうそういないんじゃないかなぁ
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 19:41:39.80 ID:NWFRxB640
ごめんね間違えちゃった

キチク  ゲス
素敵な黒服はごろごろいるよね

って言うより最近そんなのばっかだよね
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 21:23:12.56 ID:FbMZqNoSO
あの人達だって世界平和と組織の未来について考えてるんよ
たぶん
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2012/08/19(日) 22:09:00.02 ID:NWFRxB64o
ところで鉄柱の契約者の話はどうなったんだろうか…
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 22:18:51.44 ID:3RY5exZ0o
wikiに載ってないんだっけ<鉄柱の人の話
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2012/08/19(日) 22:19:10.95 ID:NWFRxB64o
>>173-174
お前いい加減にしろよマジで
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 22:24:42.72 ID:7aD804/AO
IDすげえ
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2012/08/19(日) 22:27:18.64 ID:NWFRxB64o
>>177
メリーさんの物語もまとめられてない
携帯からの投稿だからwiki編集ができないのか、あるいはそもそもwikiにまとめる気がないのか…
以前メリーさんの物語だけでもwikiにまとめようと思ってたけど、メモ帳のデータが全消えしたんで投げた
気が向いたらまとめてwikiにあげとくよ
181 :繰り糸の先に在る者は誰 [sage]:2012/08/19(日) 23:47:01.72 ID:k7nCTqIso

「針金 暁仁だな」
「そうですけど。おねえさんは誰ですか。」
「「組織」の黒服だ。貴様の討伐命令が出ている。死を受け入れろ」
「あ。「組織」。聞いたことありますよ。でも。いきなりなんですか。死とか。物騒だなあ。」

 針金 暁仁(はりがね あきひと)。「ハリガネムシは宿主を操る」の契約者。
 ハリガネムシを生み出し、人に寄生させることで、その人物を意のままに操る能力。
 悪意次第であらゆる事態を引き起こせることは想像に難くない。

「「組織」は貴様の都市伝説を野放しにしておくのは危険と判断した」
「ああ。なるほど。それじゃあボクを。「組織」に入れてくださいよ。きっと。役に立ちますよ。」
「獅子身中の虫を飼うほど愚かではない。そうやって貴様の眷属を増やすつもりだろう」
「わ。信用ないなあ。そんなことしませんよ。ボク。頑張りますから。お願いです。」
「動くな」

 黒服は自らの能力、かまいたちを青年の腕に向けて放った。
 不可視の刃による衝撃によろめく青年。
 その腕から血は流れていないが、筋繊維を切断された腕はだらりと垂れ下がり、ぴくりとも動かない。

「う。わあ。すっごく痛い。なんてことを。死んだらどうするんですか。」
「動かなければ楽に殺してやる。大人しくしろ」
「死ぬのはいやだなあ。じゃあ。わるあがきだ。殺される前に。おねえさんを操ってあげますよ。」

 真っ直ぐに迫る青年に向け、黒服は再度かまいたちを放つ。
 真空の刃が迫る気配を感じ、青年はサイドステップで躱す。
 が、同時に飛ばされていた二つ目の刃に正面からぶち当たった。
 服の下で胸がぱっくりと裂け、その場に膝をつく青年。

「あ。れ。これは。やばいか。も。ねえ。おねえさん。ちょっと手を。貸してもらえないか。な。」
「喋るな。不愉快だ」

 かまいたちが青年の咽を切り裂き、青年はうつ伏せに倒れて動かなくなった。
182 :繰り糸の先に在る者は誰 [sage]:2012/08/19(日) 23:47:33.97 ID:k7nCTqIso

 死亡確認のために、かまいたちを一つ飛ばす。
 それは青年の体を大きく切り裂いたが、生きている人間の反応はない。
 討伐完了報告を入れようと電話を手にしたとき、背後にアスファルトを踏みしめる音。
 慌てて振り返ると、驚愕の表情を浮かべた少年が突っ立っていた。

「ちょうどよかった、手伝ってくれ。そこの青年がいきなり倒れて、今救急車を呼ぶところだったんだ」

 こういうケースのために用意された台詞を、多少の演技を交えて少年に告げる。
 かまいたちの能力で血は流れていないので、目撃者は「道に人が倒れている」という状況しか認識できない。
 加えて一般人、ましてや少年がこのような状況で冷静に対処できることは稀だ。
 もっともらしい説明にもっともらしい指示を与えてやれば、大抵は素直に言うことを聞いてくれる。

「私は彼の様子を見るから、君は119番に連絡してほしい。この携帯電話を使ってくれ」

 そう言って差し出したのは「組織」謹製の携帯電話。催眠音波により、使用した者を瞬時に眠らせる道具だ。
 少年は差し出された携帯電話に手を伸ばすと、携帯電話ではなく黒服の手を握った。
 黒服が疑問に思った瞬間、指先に鋭い痛みが走り、反射的に少年の手を振り払った。
 痛みの走る手を見ると、細い針金のような虫が爪の隙間から手の中に進入してきた。

「おねーさん油断しちゃダメですよー。これであなたも僕の傀儡。あ、「組織」にはよしなに報告しといてくださいね」

 頭がぼんやりする。視界が狭まる。意識が溶けていく。思考が侵食されていく。
 ぬかった。このままではまずい。まだ間に合う。今すぐこいつを倒せば……。


    ・
    ・
    ・


「報告は以上です。」
「目標の討伐は成功したんだな?」
「はい。確実に殺しました。事後処理班も確認済みです。」
「大事になる前に対処できてなによりだ」
「対象の影響下にあった人物達も。既にその支配から外れております。」
「契約者が消えれば支配が解けるのも道理、か。ご苦労、下がっていい」
「はい。失礼致します。」

 一礼して部屋を後にする黒服を見送り、黒服の上司は報告書を眺めながら一人ごちる。

「二次被害も目撃者も一切無し……。まったく、優秀な部下だよあいつは」


【終】
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/19(日) 23:48:26.18 ID:k7nCTqIso
8割くらいは上司が悪い。
ちなみに宿主から他の人間への二次寄生はないので、「組織」内でのパンデミックなどはおきませぬ。

関係ないですけれど「針金」って苗字、実在するんですね。びっくりしました。
これも関係ないですけれど、球磨川さんって素敵ですよね。
グッドルーザー球磨川も読みました。球磨川さんって素敵ですよね。
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/08/20(月) 00:23:53.06 ID:Am8Q61cs0
>>183
乙ですー!
うん、8割は情報確認を碌にしてない上司が悪い。
残りの2割は、平和に暮らそうとしてる針金君を殺そうとする「組織」が悪い。
結論:『針金君は悪くない』

…………自身の本質を理解してない、それもまた『吐き気を催す邪悪』の一つです
というか感染系なら間違いなくο-No.の管轄でしょうに(ry
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/08/20(月) 00:32:07.82 ID:Am8Q61cs0
「、」が全部「。」に代わってるのも、操られている状態を示しているんですね
改めて気付きました
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/08/20(月) 01:49:56.29 ID:MJTeHnlAO
>>152
単発の人乙ですー
もし、ドアが叩かれたとき開けていたら…?

>>157-158
乙ですー!
なんというほのぼの可愛い口裂け女

>>165-166
乙ですー
もしかしてこれって組織の自作j

>>181-182
乙ですー
針金くんなんという鮮やかさ
胸がすくお話でした
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 08:45:22.83 ID:bNhaHqUDO
本当の針金くんは傀儡の黒服を通して「組織」の情報を得ていますが、それを悪用することは考えておりません
言うなれば警察無線を聞いてニヤニヤするような、そんな心境

>>185
球磨川さんよろしく括弧つけてもよかったけれど、そのままってのもつまらないのでちょっと捻りました
丸で本人のような口調を再現するので、ふるまいから見破るのは至難の技
でもたぶん上田には通用しない
188 :単発ネタ [sage]:2012/08/21(火) 01:09:52.91 ID:0qoapDfSO
英国、スタウワー川の渓谷を見下ろすような位置にある丘の上に、その屋敷はあった。
深夜、強引に扉を開き、屋敷に男が入ってきた。
「ゲホッ……ッ……あ、クソ……!」
何かの病気か、なんども咳込みながら、ふらふらと歩く。
「もっと、……ゲホッ……もっとだ……。力、だ……ッ。ガ……ゲホ……力が、いる」
その目に宿るは、憎しみ。
はたして、彼に何があったのか、男は力を、契約を求め、ここまでやってきたようだ。
「……ァ……グ……俺と……ゲホッゲホ……ッ、俺と契約しろ!!」
男は叫んだ。
けれど、屋敷は沈黙を返す。
沈黙を。
男の咳さえ聞こえない。
……そこで、男の目的は潰えた。


どかどかと足音を響かせ、二人の男が屋敷に入ってくる。
夜だというのにサングラスをした、黒い服の男達。
「組織」か「アメリカ政府の陰謀論」か、もしや「教会」か、はたまた、ただのコスプレか、二人が何者かはわからないが、都市伝説の能力を使える事は確からしい。
男の一人はウイジャ盤を持っており、どうやらそのまま「ウイジャ盤」の契約者らしかった。
「本当にここか?」
「はい、間違いありませんよ」
男達はどうやら、先程屋敷を訪れた男を捜しているらしい。
真っ暗な屋敷の中を懐中電灯で照らす。
「……あん?」
「え?」
突然、円形の視界の中に入ってきたものに、二人は驚く。
そこには、女がいた。
白いシスターの服を着た女が、ぺたりと床に座り込んでいた。
「おい、女」
「…………」
「女、ここに男が一人来なかったか?」
「…………」
「おい」
「…………」
男の言葉に全く反応せず、女はただぼんやりとしていた。
「……おい、女!聞いてんのか!!」
「…………え?」
男が怒鳴ると、ようやく、女は反応した。
「……あ、えー、もしかして、私に言ってるんです?」
「当たり前だろ!お前以外に誰がいる!」
「あら……あらあら、これは……」
男が苛立っているのを気がついているのかいないのか、女はぼんやりと、自分の掌を眺める。
「あぁ、もう、こいつは……」
「あ、あの!」
苛立つ男にウイジャ盤の契約者が声をかける。
その声は、震えていた。
「何だ!どうした!」
「おかしいんです!何か……わからないんですけど!さっきから、何か!」
189 :単発ネタ [sage]:2012/08/21(火) 01:10:29.30 ID:0qoapDfSO
ウイジャ盤の契約者は慌てて、何を言いたいのかもわからない。
だが、何かが起きている事はわかった。
その手のウイジャ盤のプランシェット、こっくりさんで言えば十円玉にあたる物が、勝手にぐるぐると動き回り、8の字を描いていた。
「こんな反応、今までなくて、何がなんだか……どうして、何が!?」
パニックになるウイジャ盤の契約者を無視して、男は女を見る。女はゆっくりと立ち上がろうとしていた。
「女!お前、何だ?」
パニックになる必要は無い。都市伝説か、契約者か、いずれにせよ、この女以外に原因は考えられないのだから。
そして、女は
「あの、そこどいて貰ってもいいです?私、外に出たくて」
またしても男を無視した。
「………………あぁ、もう死にやがれ」
仏の顔もなんとやら、いや、元々仏や神より悪魔のような顔であったが、とにかく、ついに男はキレた。
「ニャオン」
いつの間にか、男の足元に一匹の猫。
男は「飼い猫が家を去ると、病気がその家を支配する」の契約者であった。
そうして、男が能力を使おうとした時、
「あ、私、猫が嫌いなんでやめてくれます?」
猫が死んだ。
「……あ?」
何の外傷も無く、何の前触れも無く、パタリと猫が倒れた。
「……は?」
「あのー、貴方達が出口を塞いでいて邪魔なんで、どいてくれます?」
「…………はあ?」
「あのー」
「………………はあぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」
再び、男の足元に猫が現れる。一匹や二匹ではない、何十という猫が男の周りに集まる。
「はぁ……しかたないですね」
女がため息を吐く。すると。
馬がいた。馬車を引いた二頭の馬が。
猫を轢き、踏み潰し、車輪で弾き飛ばしながら、男達へと走ってくる馬が。
「っ!?」
「え?」
いまだにパニックになっていたウイジャ盤の契約者は、反応できず、そのまま馬車に轢かれた。
悲鳴と、嫌な音が屋敷に響く。
そして、馬車は扉を蹴破り、そのまま外へと走り去った。
「っの馬鹿!」
辛うじて、馬車を避けた男は、今度こそと能力を使おうとして、すでに、猫が全員死んでいる事に気がついた。
「……っ……ぁ……の、っあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
男が取り出したのは、都市伝説でも何でもない、ただの銃。
そこで、男の動きは止まる。
ピクリとも動かない。
死んだわけではない。ただの、「金縛り」だ。
動けない男の横を、女がゆっくりと通り過ぎる。
そして、その事を祝福するかのような、ガランガランと、狂ったような喧しい鐘の音が辺りに響き渡った。
男が、ようやく動けるようになったのは、とっくに女はいなくなり、日も昇りだしてからだった。


契約すれば、一瞬でその都市伝説に飲み込まれる。
それほどの容量を必要する都市伝説。
その晩、ついに十三人目の契約者、いや、犠牲者を飲み込み、その都市伝説は自我と身体を得た。
そうして、イギリス最凶の心霊スポット「ボーリィ牧師館」の放浪が始まる。

190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 12:26:41.93 ID:5HAOBmmDO
投下乙ですー
なるほど、これが始まりの話か……
近づかなければよかった存在が向こうから近づいてくるようになったのは危険極まりない
適当な安住の地を見つけて、そこに留まってもらいたいものです
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 23:27:21.87 ID:HSbzQy8SO
組織の黒服になったんだけど……

1 :以下、名無しにかわりまして黒服ががお送りします :2010/03/28(日) 00:13:50.49 ID:a5DblREp0  
なんかいろいろ派閥がある見たいで大変です><  
辞めたいって言うと怒られますか?  
   
9 :以下、名無しにかわりまして黒服がお送りします :2010/03/28(日) 00:17:29.42 ID:kv96jxba0  
過激派で辞めたいなんて言ったら怒られるとか言うレベルじゃねえぞ  
家族親戚田中まとめて惨殺される可能性あり  
   
14 :以下、名無しにかわりまして黒服がお送りします :2010/03/28(日) 00:18:50.68 ID:sbC5sEJi0  
>>9  
田中理不尽すぎるwwwww  
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/25(土) 19:25:30.64 ID:hQ3NOO3O0
誰もいない
かくれんぼするならいまのうち
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/26(日) 00:55:13.28 ID:Gn580Z7Po
今年も夏が終わる
この時期は夜になっても外で遊んでるガキが多いから困る
人間はいい奴ばかりじゃないのに、そんな露出の多い服で無邪気にはしゃいじゃってもいいのかねえ
そんな事を考えながら、ガキのマンコに突き刺した木の棒を抜く、挿す、抜く、挿す
もうガキは声を上げる事もなく、泣きながら白目を剥いてる

「ふざけんなよ、おい」

棒を握ってた手を離し、ガキの脇腹を平手で殴った
途端にこもった叫び声を上げて体をよじり始めた、
と言っても、ガキの手足はガムテープで幾重にも巻き付けてパイプや壁の金具に固定しある
口もテープを貼って塞いであるのでそれほど外まで響かない
それにこの時間帯に町はずれにある公園の公衆便所に人が来る事は滅多にない

「痛いからって気絶したらダメだって言ったよね」

耳元で囁きかけて顔を引くと、ガキの真っ赤になった目から大粒の涙が零れて始めた、キモすぎ
お仕置きにでかい洗濯バサミで鼻を挟むと、ピーピーって鼻水を噴き出しながら顔が赤くなり始めた
口と鼻を塞がれたら息できないよね?お顔も真っ赤になっちゃうのも当たり前だよね?マジでキモすぎ

「さあて、どこまで耐えられるかなあ」

ふたたび木の棒を手に取って、ガキのマンコに突き上げようとした時、後ろから妙な音が聞こえた
首だけで振り返ると、何か黒いモコモコした何かがドアの下の隙間から震えながら侵入しようとしていた
木の棒を床に叩き付けて、黒いモコモコをつかむとトイレの中へ引っ張り込む
赤い首輪の、黒い小さな子猫だった
よく見れば短い尻尾が二本、ゆらゆら揺れていた
子猫は怒ったように暴れて、歯を剥き出しにして威嚇してきた

「なんだよ、邪魔しに来たのかよ」

頭に血が昇る
思わず怒鳴りたくなるのを寸前で押さえた
勝手に入って来て、暴れて、威嚇して、何様のつもりだ
手の中で暴れていた子猫を締め上げる
親指を猫の喉に当てて一気に押し込んだ
何かが潰れる感触が伝わって、急に猫は大人しくなった

「はあ、マジ興ざめ」

ガキの方を見ると顔が真っ青になっていた
そんなに長い時間塞いだわけじゃないのに、キモい
洗濯バサミをもぎ取ると、鼻水を吸い込む音がトイレ内に響き渡る
直後にガキはむせたように、体をくの字に曲げて咳き始めた
この猫は何がしたかったんだろう
とりあえず猫の死骸がウザいので、トイレの水タンクの中に押し込もうとした
だけど待てよ、それじゃいつかは猫の死骸が発見されてしまう
でもすぐにいい事を思いついた
タンクの蓋を取って、ガムテープで何度も巻き付けて猫の死骸を固定した
後は帰りにでも処分すればいい
ガキの方を見ると、咳は落ち着いたのか壁にもたってぐったりしていた
そしてガキの目は子猫に釘づけになっている
おまけに顔はまだ青い、ウケる
面白くなって顔をガキの耳元へ近づけた

「安心しなよ、きみは殺したりしないよ、また気絶しない限りね」

最後の方はゆっくり、念を押すように囁きかけて、耳を舐め上げた
ガキは最初の時のようにガタガタと震え始めた、マジでウケるんですけど
もうこれ以上いじめても楽しくないので、仕上げにする事にした
ガキの体を持ち上げて、便座の上に立たせる
木の棒で突きまくった所為でダラダラ血が流れてるガキマンコに俺のモノを突き入れた
ガキがキモい呻き声を上げる

「気絶したら殺しちゃうから」

そう囁いて、ガキを支えながらその未成熟な体をまさぐる
生意気にも胸は膨らみかけてるようで、ふざけてる
先っぽを思いっきりつねると、甲高い声で叫んだ
頭に血が昇った
なに許可なく泣いてんだお前は
手のひらの付け根で頬を殴ると、身を固くして目をギュッとつぶった
なにすくんでんだよ
モノを絶え間なく突いて、抜いて、突いて、抜きながら、平手で頬を叩き、裏拳でもう一方の頬を殴った
みるみるうちに頬が赤く、膨らみ始めた
小学生程度のガキなら、殴ればすぐに体が反応するから面白い
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/26(日) 00:55:59.29 ID:Gn580Z7Po


「中で出して上げようね」

そう言いながらガキを強く、強く抱きしめてあげる
絶え間ないピストン運動で限界に達していた俺のモノは、ガキの中で精を放った
途中で猫の邪魔が入ったとはいえ今回は中々良かった
ガキの手を縛っていたガムテープを千切ってやる
後は自分でするだろう
モノをガキの中から引き抜くと、ガキはバランスを崩し、便器から滑ってタイルの床に崩れた
尻もちを付いて、荒い呼吸を繰り返している
そんなにショックなのか、さっきまで上げていた絶叫は、もうしなくなっていた
可愛いと同時に、どこかムカついた
口を塞いでいたガムテープを引き剥がすと、ガキは途端に咳き込んだ

「楽しかったよ、ありがと」

そう言ってあげると、ガキは咳ながら何か呟いた

「え、なに」

「みー…ちゃん」

ガキは顔を動かさず、目だけで脇の一点に向けている
そっちに目をやると、トイレの蓋にぐるぐる巻きに固定された子猫の死骸があった
ああ、もしかして

「この猫って、きみのペット?」

「みーちゃん…みーちゃん…ごめんね…」

ガキはまたボロボロと泣き始めながら、猫の死骸を見つめていた
質問に答えようともしないで
何様だ
ガキの腹をつま先で蹴飛ばすと、うっと呻いた後に口から汚物を撒き散らした
咄嗟にドアに張り付いたので靴にはかからなかったが、猫の死骸にゲロが掛かった

「きみって最低だね、猫ちゃんにゲロっちゃうんだ、マジ最低」

ガキのゲロの臭いなんて嗅ぎたくもない
トイレの蓋を拾い上げると、鍵を外してトイレを出た
思ってた通り誰もいない
便所を出てすぐ正面には池がある
ここへ死骸を投げ捨てれば見つかる事はないだろう

「ゴミさんバイバイ」

思いっきり蓋を放り投げた
夜の公園に池の水面を叩く大きな音が響いた
今夜はこれでおしまいだ
トイレの方から泣き叫ぶ声が聞こえてきたのを確認して、歩道へ出る
街に着くまで携帯で掲示板でも見ながら歩くのは、いつもと変わらない

「また神奈川の人が面白いの投下してる、ヤバいなこれ」

今夜の事はまずバレる事はないだろう
何故なら契約した都市伝説がスーパーのトイレの変質者だからだ
スーパーのトイレに行った少女が、変質者に箒の柄や木の棒でマンコを突かれて子宮が破裂される、といった話だ
契約の拡大解釈で、スーパーでなくても、場所がトイレならその能力を発揮できるようになった
また、この話では最後に変質者は少女の母親やスーパーの店員に現場を発見されるのだが
これも拡大解釈によって、具体性のない「変質者」「犯人」「男」としてしか確認されなくなる
だからこの能力がある限り、警察は犯人を特定する事などできっこない

「お、単発の人も投下し始めた、今日はついてるな」

ガキをいじめた後の余韻に浸りながら、少し冷たくなった夜風に吹かれる
もう今年も夏が終わる

195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 01:06:38.41 ID:/2Sjv3BDO
色々な意味で全力で叫びたい衝動に駆られているのだけれどこの感情をいったいどうしたものか

なんなのその文章力……
196 :冥王を名乗るもの ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/08/27(月) 07:15:01.00 ID:mvTOm0aAO
 学校町内、ο(オウ)-No.本拠内。
 ひとりの少女が憮然とした表情で歩いている。
 小柄な体躯に黒いヴィクトリア風の膝丈のドレスを纏い、縦ロールというにはやや緩い黒の巻き毛。
 ο-No.3、桐生院るりというその少女は、ある一室の前で足を止めると、力任せにドアを叩いた。
「ちょっと、いい加減にしなさい!開けなさいこのお馬鹿!」
「ちょ、るりさーん」
「No.3、止めて下さい、相手は子供ですよ」
 るりとて外見は子供なのだが、「組織の黒服」という存在には、年齢などという概念はない。
 例えもとが人間であっても、長い年月を過ごすうちに、年齢の感覚は薄くなってゆく。
「子供を甘やかすと碌な事にならなくてよっ!開けなさいこのチビ!」
 かちゃと音がしてドアが少しだけ開く。
 るりとはまた違う黒髪の少女がひょこりと顔を出し、一言。
「チビじゃないもん!」
 その一言で閉まろうとした扉の隙間にるりがさっと足を踏み入れた。さながら悪徳セールスマンのやり口だ。
「あいたたた!」
 わざとらしく悲鳴を上げてみせると、慌てたようにドアが全開になる。
「だ、だいじょーぶ!?」
 しゃがみこむるりの足を見ようと屈んだノイの手首を、しっかりとるりの手が掴んだ。
「ふぇ?」
「てぇぇいっ!!」
 るりの気合いとともにノイの小さな体がすっ飛び、ドアの外に尻餅で着地してしまった。
「いっ・・・いたああいっ!」
 るりはしてやったりと笑みを浮かべる。
「さあ、部屋から引きずり出してやったわよ。
 人殺しだかなんだか知らないけど、人んちでめそめそ立てこもるのは辞めて頂戴」

 ところは変わってるりの私室。
 イタリア製の革のソファに、ガラス張りの猫脚のテーブル。カーテンは明るい色調で薔薇柄が織り込まれたゴブラン織。
 白で纏められた調度にかかった経費を考えると経理担当の黒服が未だに涙目になる程豪華な部屋で、それぞれ趣の違う黒髪の少女が二人。
「・・・帰れないもん」
 癖のない髪を顎の辺りで切り揃えたノイはいかにも決まり悪げに。
 緩やかな巻き毛のるりは傲然と、豪奢な部屋の女主人を気取って腰掛けている。
「イタルだって・・・きっと赦してくれないよ」
197 :冥王を名乗るもの ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/08/27(月) 07:15:30.18 ID:mvTOm0aAO
 日頃の活発さに似合わずしょげ返った様子のノイを苛立たしげに見つめるるりの指先が、とんとんとテーブルを軽く打つ。
「話し合ってみればいーじゃないの」
 ううーとうめきながらスカートの裾を握りしめたノイは頭を横に振った。
 会えない。イタルに会えたとて、なんて言っていいかわからない。
 相手の前に出れば、言うべき事は自然に出てくるものだとるりも蘇芳も言うけれど、そんなのよくわからない。
 第一、何を言ったところでイタルが受け入れてくれなければそれまでなのだ。
「でも、もう起きてしまったことだからね」
 ノイの前にことりとアイスココアのグラスを置いた明るい色の髪の青年が、ノイの顔をのぞき込む。
「死んだ人は生き返らないし、起こったことは元には戻らない」
「…じゃ、どーしたらいーの?」
 髪と同じ明るい色の瞳でじっと見つめられ、柄にもなくどぎまぎしたノイは落ちつきなく握ったスカートの裾をぱたぱたさせた。
「後悔する。起こした事を悔いる。それだけだよ」
「それは後悔ではなく、反省って言うのじゃない?」
 ややどうでもいい異議を挟んだるりに柔らかく笑いかけ。
「後悔でも、反省でもいいんです」
 その笑顔のままノイに向き直る。
「その後悔を持ち続けている限り、死者は君の心の中で戒めとして生きるだろう。彼らの供養になるかは判らないが、君の自制には役立つことになる」
「…じせい?」
「そう。何年も君を責め苛む後悔が、一瞬の発現ですべてを終わらせてしまう殺意を阻むだろう。忘れてはいけないよ。人を殺したいなんて気持ちは一瞬だけど、それを実行すればその何万倍の時間を後悔の中過ごすことになる」
 諭すような口調だが、厳しくも説教臭くもない。
 ムーンストラックの厳しくも暖かいお説教とも、柳のほんわかとした、けれど時に鋭い叱咤とも違う。この人の言葉は、無色透明な水のように心に沁みてゆく。
「ちょっとだけ…わかった。ありがとう」
 おにーさんも「組織」の人?なんて名前?
「僕はο(オウ)-No.4、新橋 蒼(しんばし そう)『レテ川』と『冥王ハデス』の能力を持っているよ」
198 :冥王を名乗るもの ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/08/27(月) 07:16:02.13 ID:mvTOm0aAO
 少女の問いに、青年が自己紹介で応えた、その瞬間。
「?」
 とん、とノイの肩に何かが触れ、同時に彼女は深い眠りに落ちていった。
 眠りを導いたのはいつの間にかノイの背後に回っていたるりの手にした、二匹の蛇が絡み合う意匠の杖。
 『ケーリュケイオン』触れた者の眠りと目覚めを自在に操る、伝令神ヘルメスの杖。
「さて、これでこちらの準備はオーケーね。後はイタルとやらに、夢の世界にご来訪願うとするわ」
 この子を部屋に運びなさい、とるりが控えた黒服に指示を下す間、蒼と名乗った男は、ただ眠るノイを見下ろしていた。



続く
199 :冥王を名乗るもの ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/08/27(月) 07:17:31.80 ID:mvTOm0aAO
>>188-189
乙ですー
ボーリィ牧師館まじぱねぇ
こんな怖いのがあんな萌え萌えシスターとかもう死にそう

>>191
ちょwwwwww田中wwwwwwwwww

>>193-194
なんていうか…
なんて言っていいのか…
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/28(火) 22:14:35.16 ID:yZNaCGVVo
鳥居の人乙ですー

徐々に立ち直るノイちゃんがいじらしい
でもその小さな体に背負う荷が痛々しい
乗り越えてくれることを祈ります

とりあえずイタルはノイを支えたり寄り添ったりさすったり抱きしめたりしたらいいと思うよ
その後ムーンストラックにその現場を目撃されて気まずい雰囲気になればいいと思うよ
201 :昼休みの会話 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/08/31(金) 01:20:37.30 ID:MjKSh+jAO
 授業をぼんやりと聞きながらも、極の視線は窓の外を彷徨っていた。
 「あの日」から一週間。勉強にも読書にも身が入らず、食事もあまり進まない。
「・・・った、新田・・・新田!」
「・・・あ」
 いつの間にか授業は終わって昼休みに入っていた。
 声を掛けていたのは同じクラスの黄昏裂邪。親指をくい、と上げて扉の外を示す。
「2年の奴が来てるぜ」
 見れば廊下から田中カナタがちょいちょいと手招きをしている。
 裂邪に礼を言いやや心許ない足取りで歩き出した彼の背中に、彼がぽつりと呟いた言葉は、極には届かなかった。
「どうしちまったんだ?あいつ・・・」

「チビが帰ってねーんですって?」
 食欲のない極に付き合ってコーヒー牛乳だけの昼食を取りながら例のマタタビオフの日の経過を話した。
「ああ・・・」
 極は言葉を選びながらノイが負傷し、現在療養中であることを告げた。黒服がらみの事は口止めをされているので、その辺りは伏せながら。
「見舞いとか、いーんすか?」
 くしゃっとコーヒー牛乳の紙パックを潰したカナタが極を見上げる。
 そういえば考えていなかった。「『組織』の機密」という事でノイの居場所、
 すなわちο-Noの本拠地について口止めされている事もあるが、その一方でノイの事を考えると気が重かった。

(僕があいつの顔なんか見て、何を言うっていうんだ)
(だってあいつだって、僕に殴られて)
(酷い目に遭ってたのに何もできないで)

「・・・向こうも、僕の顔なんか見たくないに決まってる・・・僕も」
「なんで!?」
 きょうだいでしょ、と見上げるカナタの目を正視できずにぷいっと視線を外す。
「きょうだいは他人の始まり、とはよく云うでしょう」
 俺兄弟いないし、馬鹿だから知らねえっす、と踵を返しかける極の肩を掴んで、やや強引に引き止めた。
「なんかさ・・・上手く言えねぇけど。もったいねーでしょ。せっかく」
「他人のはじまりだと言っただろ!?」
 つい言葉が乱暴になる。

 僕とあいつのことなんか何も知らないくせに。
 兄妹だからなんて一言で済ませられる感情なら、こんなに苦しくなんかない!

「知りませんよ。センパイとチビの経緯なんて。知らないけど」
202 :昼休みの会話 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/08/31(金) 01:23:11.32 ID:MjKSh+jAO
 一級下の後輩は、怖れも気後れもなく、まっすぐ極を見つめる。
「話したくなけりゃ、話してくれなくていーっすけど」
 でもそれって、チビのせいっすか?あいつが悪いんすか?・・・センパイ、そんな顔してないっす。
「・・・!」
 そんな事は、わかってる。極がぎり、と唇を噛む。
「もういい!」
 カナタを振り払った極の体がよろめき空を泳ぐ。
「せ、センパイ!?」
 そのまま、極の意識は深い闇の底へ沈んでいった・・・



続く
203 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/08/31(金) 01:55:39.07 ID:MjKSh+jAO
なんか1レスでよかったような気がしてしかたがない

>>200
>とりあえずイタルはノイを支えたり寄り添ったりさすったり抱きしめたりしたらいいと思うよ
>その後ムーンストラックにその現場を目撃されて気まずい雰囲気になればいいと思うよ
ムーンストラックならまあ安心ですよ。「家族」だったらハグくらいはするもんね。
むしろ柳に見つかったらヤバい
204 :引きずり込まれた悪夢 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/08/31(金) 11:29:02.49 ID:MjKSh+jAO
 先刻まで自分は、学校の屋上に居たはずなのに。
 意識が遠くなったのは、ここ最近あまり食べていなかったせいで、貧血でも起こしたのだろうか。
(あらあら、手間の省けたことねぇ)
 気がついたら、辺り一面砂の海で。
 周囲には誰もいないのに、くすくすと笑い出さんばかりの少女の声が響いてきた。
「誰だ?ここは・・・?」

(わたしは桐生院るり。わたしの『クィーン・メイヴ』が創った夢の世界へようこそ)

「夢の・・・世界?」
「イタル!」
 この声は。
 砂に足を取られ、よろめきながら駆け寄ってくるのは。
「ノイ・・・」
「イタっ・・・イタルっ」
 はあはあと息を切らせながら、あの日のように、極の服の袖を握るノイ。制服の袖が皺になってしまう。
「放せ」
 あまり力を入れていないはずなのに、あっさり手は離れた。
 目の前のノイはなんだかしおらしく、ただでさえ小柄な体は、いつもより尚小さく見える気がした。
「ごめんなさい・・・」
 いつもの快活で我が儘な様子とは、何かが違う。
「ごめんなさい・・・イタルからお父さまを取ってしまってごめんなさい、ごめんなさい・・・その」
 いざイタルを前にしてみると、「ごめんなさい」以外の言葉なんか出てこなくて。
「その、お父さま・・・を、殺してしまって、ごめんなさい・・・」
 震える声で紡ぎ出した、謝罪。ごめんなさい。結局自分にはそれしか言えないんだ。
(父さん・・・あの男を、殺した?)
 極の視線に気づいたノイが、赤く潤んだ瞳で、それでも涙はこぼすまいと懸命に震える声を抑えている。
「忘れてたけど、思い出したの・・・お父さまとお母さまを殺したのはあたしなの」
 当時4歳だったノイに人殺し、それも親を殺せるとは極はあまり思っていない。―大方、死神の暴走なのだろう。

 極のこの予測は半分当たっていて、半分外れていた。
 ノイは一瞬だが、争う両親の姿を見て、こんな両親は嫌だと朧気な害意を抱いたのだった。死神は、その彼女の感情を利用したにすぎない。
 どちらにせよ、極にとってノイの母の末路などどうでもよかった。父に自分達を棄てさせた女の末路など。
 ―父親に対する感情は、そう簡単ではなかったが。

「父さん、を?」
 頷くノイと極の間に、どすりと鈍い音をたてて落ちてきたもの。
205 :引きずり込まれた悪夢 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/08/31(金) 11:29:33.87 ID:MjKSh+jAO
「斧・・・?」
 まるで引き寄せられるように極がそれを手に取ると、ずしりと重い。リジーが使う物に似てるかも知れないと思った。

(聞いたでしょう?イタルとやら。その子はあんたの父の敵)

 るりと名乗った少女の声が響く。

(その子をどうしようが、ここではあんたの自由)

 言い終わるが早いか、風が巻き起こる。
「つっ!」
「いたいっ!」
 鎌鼬でも起きたのか、二人の皮膚の表面に幾つも浅く傷が付いた。

(夢だからって侮るんじゃないわよ。夢の中での傷は、現実の痛み。あまりに重ければショック死もありえるわよ)

 そしてノイの背後にふわりと降りた黒い影。

(あんたも、死にたくなければ全力で抵抗なさい)

「待って!あたし、そんな」
 声はふつりと途切れ、極がふらふらと斧を手に向かってくる。
(ちがう、違うんだ!)
 斧から手が離れない。歩きたくないのに、足が勝手に動く。
 極の体は、極の意志に反して、何者かの操り人形ででもあるかのように無機的な動きで斧を振り下ろした。
「イタル!?」
 止めたいと思ってもどうにもならない。かなり重いはずの斧を軽々と振り回す腕は、まるで自分の物ではないかのようだ。
(やめろ、止まってくれ!)
 そんな極を阻むかのように黒い影が落ちる。
 構えられた瀟洒な銀の鎌は、さながら砂漠に浮かぶ三日月のように冷たい光を放っていた。
「やめて!」
 極の前に出ようとするノイを阻むように、死神が音もなく前に出る。
「イタル、やめて!あたしっ、あたし、イタルと話が」
(どうしよう、あたし、イタルと戦いたくなんかない)
 極もまた、自らを止めたくて焦っている事にノイは気づいていない。

 どうしよう。イタルと戦うことなんかできない。
 でも、もし、ここで死んだら?るりは言ったのだ。命を落とすこともあり得ると。
「教えてるり!、なんでこんな事」
 ここはるりの、彼女の世界だと言っていた。ノイはイタルの父の敵だから、自由にすればいいと。
(るりだって、話し合えって・・・言ってたのに!)
 相手の前に出れば、言うべき事は自然に出てくる、と。
(そう、言ってたじゃん・・・)
 でも結局自分はごめんなさいとしか言えていない。
206 :引きずり込まれた悪夢 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/08/31(金) 11:30:53.09 ID:MjKSh+jAO
(やっぱり・・・言葉だけじゃ、通じない、のかな)
 あたしがイタルにできることは?気持ちを伝えられる方法って―ノイは、考えて。
 次の瞬間、彼女は死神の脇をすり抜けて両手を広げ、極の前に立ちはだかった。

「イタルっ!」

「あたし、イタルに償いたい!お父さまのこと!あたしのせいで、イタルと、イタルのお母さまが辛い思いをしたこと!」

「お父さまを殺したこと!イタルに、お父さまを返せなくなってしまったこと!」

「だから、いいの!イタルに、なら。あたしは・・・っ」

 迫る斧にも怯えるでもなく、ノイの薄青い瞳はひたと極を見据えている。

(あたしが、もし死んだら。柳は泣くだろうな。ムーンストラックは消えちゃうんだよね・・・ごめんね)

(違う!違う!こんなことっ)

「嫌だあぁぁぁぁ!!」

 極の絶叫と同時に斧が振り下ろされ、世界が赤く染まる。
 夢から覚める間際に、ふたりはるりの声を聞いたような気がした。

(なぁんだ、夢と違うじゃないの・・・)


「―るりさん、これでよかったの?」
 ο(オウ)-No.0、桐生院蘇芳の執務室。
 来客用のソファに腰掛け、いささか疲労したように蜂蜜入りのミルクティを飲む妹に、蘇芳は不安げに呼びかけた。
「ええ、これでよくてよ、兄上」
 執務室のスクリーン上には何の都市伝説を使ったものか、るりの「夢の世界」でのノイと極の様子が映し出されている。
「なにも、殺し合いまでさせる事はなかったんじゃないのー?」
「生温く取っ組み合い程度でお茶を濁すと、後日本物の殺し合いに発展しないとも限らなくてよ?」
 心配いらないわ兄上、どうせ「夢と違う」のだから。

 「夢と違う」―夢の中で殺される被害者(たいてい若い女性と相場が決まっている)が、現実に夢と同じ犯人に出会う。
 被害者は機転を利かせて夢と違う行動を取り、殺害を免れるが、その際に
「夢と違う」
 と言われる―

 その広く伝わる都市伝説の中では、夢と現実は決して同じ帰結を辿らない。
 被害者がいかなる人物であれ、殺され方がどのようなものであれ―
207 :引きずり込まれた悪夢 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/08/31(金) 11:31:20.11 ID:MjKSh+jAO
 るりはこの都市伝説と契約し、
「現実とは必ず違う結末を辿る夢」
 という、ある種の平行世界を作り出すことができる。
 さらに、「夢の女王クィーン・メイヴ」との契約で、それが夢である限り、るりの思うがままにする能力を得ていた。

「わたしが夢で起こした事は、現実には絶対に起こらない。現実は『夢と違う』から」
 ―これであの兄妹は、少なくとも最悪の結果だけは免れる。兄が妹を仇として殺し合う、という結果はね。

 るりは満足気にため息をつくと、ミルクティのお代わりを控えの黒服に命じた。



続く
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/09/01(土) 03:45:26.06 ID:x8HJUIU3o
>>37-39の続き、書いてみました(完全に別物みたくなってますが)

なぜか長文が書き込めないorz
209 :大亜教授の事件簿 ◆qCreO8cZxQ [sage saga]:2012/09/01(土) 03:48:04.97 ID:x8HJUIU3o
大亜教授の事件簿 第一話「コックリさん」


千葉県海底群、夜刀浦市。
太平洋に面したこの地方都市の顔、名門飯綱大学の主流学部は医学部と薬学部である。
それ以外の学部もあるにはあるが、世間一般ではやはり飯綱=医学部薬学部という認識が強い。
当然大学側も力を入れているのはその二つの学部で、人材も国内最高クラスの面々がそろっている。
一方他の学部の教員達は、出世コースから外れた者や不祥事を起こした者、或いは余りにも
奇異な学説を唱えたために学会で干された者など、一癖も二癖もある面々がそろってしまっている。
その中でも特に変人だと噂されているのが、民俗学部にゼミを構える大亜門土教授だ。




夢見崎康平は絶望していた。彼の前にあるのは、大学の中間テストである。
とある理由から出席率の低い康平は、なんとしても単位を落とさないために数日前から家にも帰らず徹夜で専門知識を頭に叩き込んだ。
その甲斐もあって問題のほとんどはスラスラと解け合格点の60点は楽勝だと思われたのだが、最後の一題を目にしてから康平の時間は止まっていた。

問20 6月21日から24日の講義で私がつけていたネクタイの色を答えよ(50点)

「……嘘だろ、オイ」

6月21日からの三日間、彼は出席していない。といってもサボったわけではない。この問題を作った大亜教授の命令で調査をしていたのだ。
講義には出ていたことにしておくという教授の言葉を信じ、康平は3日かけて夜刀浦市のコンビニの店長の男女比を調べていた。
そして最終日、康平がまとめた報告書をチェックした教授は、6万2872円の入った封筒をくれた。
あの時は、いつもの教授の謎の行動だと思っていたのだが、こうもあからさまに日付が一致するとなると、狙いはあきらかだ。
「俺のことを……潰しにかかってやがるな。」

ぼそりと呟いた言葉に驚いたように、隣の学生がこっちを見たが、康平にはそれに気づく余裕はなかった。
210 :大亜教授の事件簿 ◆qCreO8cZxQ [sage saga]:2012/09/01(土) 03:49:05.67 ID:x8HJUIU3o
試験が終了して数時間後。康平は、他の学生達の証言を録音したボイスレコーダーをポケットに入れて、中庭を競歩スタイルで移動していた。
目指す場所は飯綱大学付属図書館。より正確に言えば、その図書館の二階にある大亜ゼミだ。
しかし、まさか教授が講義の最中に何度も試験には自分の服装に関する問題を出すと宣言していたとは。
試験の後、すぐに他の学生達に聞き込みをすることでもとは取れた。後はこれを突きつけるだけだ。
これまで何度も教授にやり込められて来た康平だが、今回は強力な物証がある。正面対決なら負ける気がしない。
そんなことを考えながら、飯綱大学付属図書館に足を踏み入れ、受付を通過して二階への階段を目指そうとした、のだが。

「ああ、夢見崎くん、ちょっといいですかー?」
「あ、はい。なんですか?」

その前に、受付に座っていた司書さんに声を掛けられた。
元々康平はあまり本など読まないタチなのだが、ゼミに行くためにしょっちゅう
受付の前を通るため、自然と司書さんと顔見知りになってしまった。
しかも、世間話をする程度ならいいのだが、この司書さんは

「この本面白いのですよー。此処のトリックとか……」

等といっていちいち本を勧めてくるのだ。
もしこの司書が年くったオッサンなら康平も愛想笑いでスルーするのだが
せいぜい中学一年生(それも背の順に並べば前から五人には確実に入るレベル)にしか見えない司書さんに

「あ……忙しいのですか、うう,すみません。夢見崎くんにも予定がありますもんね……」 

と上目使いで泣きそうな顔をされては、さすがに借りないわけにはいかない。
そして、返却の際には楽しげに感想を聞いてくる司書さんのためにも、ある程度は本の内容に目を通さねばならないのだ。

そんなわけで、今回も本をすすめてくれるのかと思った康平は一旦対決に向けて張りつめていた覇気を解き、笑顔で受付に向かった。
211 :大亜教授の事件簿 ◆qCreO8cZxQ [sage saga]:2012/09/01(土) 03:51:03.90 ID:x8HJUIU3o
「それで、どうしたんです?何か用でも?」
「はい、実はちょっと手伝って欲しいことがあるのです……」

そう言って座ったままこちらを見上げる司書さん。

「忙しいなら、いいんのですよ?頑張れば一人でできますので……」
「あーいや、別に忙しくないです!というか、司書さんが困ってるなら、いつでも手伝いますって!」

司書さんの顔に輝くような笑顔。

「本当なのですか?わぁ、ありがとうございます!!」

……だめだ。あの瞳を見ていると、気が付いたら調子の良いことを言ってしまう。注意しなければ……
しかし、ルンルンと鼻歌を歌いながらごそごそとカウンターの下をいじっている司書さんを見ていると、まあいいかと思ってしまう。
が、康平がそんな平和なことを考えていられたのも司書さんがカウンターの上にどさりと音を立てて大量の本を置くまでだった。

一冊一冊が、1000ページ以上はありそうな分厚い本。それが20冊近く積み重なっているのだから壮観だ。

「こ、これは一体……?」
「そのー、これは大亜先生に取り寄せてくれって頼まれた本なのですが」

……嫌な予感。

「『届いたらゼミまで持ってきてくれ』と頼まれたので、頑張って探したのですが……」
「あんまりにも重くて、二階まで持っていけない、と」
「はい、そうなのです……」

なるほど。確かに大亜ゼミのある二階への階段は、某国民的アニメでどんぐりの落ちてくる
階段並の急階段の上、ゼミに行くまでも二階の迷路のような書庫の中をけっこう歩かなくてはならない。
なにを好き好んであんな書庫の奥の部屋にゼミを構えているかは知らないが
こういう時、ゼミの不便な立地条件には閉口するしかない。

212 :大亜教授の事件簿 ◆qCreO8cZxQ [sage saga]:2012/09/01(土) 03:52:19.53 ID:x8HJUIU3o
「なるほど、そういうことなら任せて下さい。どうせ、今から行くところでしたしね。」
「いいのですか?ありがとうございます!」

正直言うと面倒くさいが、だからといって司書さんにやらせるわけにもいかない。
彼女の力では無理だし、何より男として放っておけない。

「気をつけてくださいねー」
「……!ま、まあ余裕ですよ」

司書さんからの心配そうな視線を感じつつ、大量の本を積んだ台車を全力で押す。
……この時点で投げ出したくなるレベルで重い。だが、それを表情に出すことなく、二階に続く急階段の前まで押す。
そこから今度は一冊ずつ本を階段の上に運ぶ。運ぶ。運ぶ運ぶ運ぶ。そうした往復を繰りかえすこと20回目。

「……これで、最後の一冊か。にしても、こんな本一体どっから取り寄せたんだ、あの教授は?」

飯綱大学付属図書館の蔵書数は、この辺りでは比べることもできない量だ。にもかかわらず、
わざわざ取り寄せるということはそれこそ日本に一冊しかない専門書やら平安時代の文献やら、そんな類かと思ったのだが……

「『夜刀浦の民承伝話』?『殺生石伝説』?……なんだこりゃ」

わざわざ教授が取り寄せさせたのは、それこそ、ここの『地元』のコーナーを調べればすぐに見つかりそうな本ばかりだった。
一体なぜ、わざわざこれらの本を取り寄せる必要があったのか。そして、一体どこから取り寄せたのか。

「ひょっとして、俺への嫌がらせか?……まさかな」

そう呟きながら本を持ち上げ、階段を昇る。もしこれが本当に嫌がらせ目的なら、たしかに効果的ではある。
少なくとも、肉体精神ともにダメージは重大だ。

それでも康平はなんとか20冊の本と台車を二階まで運びあげた。しかし、今度はこれをおしていかなければならない。
本一冊を5キロと仮定しても、100キロ。ちょっとした人間二人分だ。いくら台車があるとはいえ、その重さは馬鹿にならない。
それでも康平は、薄暗く本棚が連なり迷路のようになった書庫の中を通り(ところどころ段ボール等がおいてあり通行不能なため遠回りもしつつ)
やっとのことで、書庫の奥も奥、階段から一番遠いところにある扉の前にたどり着いたのであった。
213 :大亜教授の事件簿 ◆qCreO8cZxQ [sage saga]:2012/09/01(土) 03:54:16.24 ID:x8HJUIU3o
飯綱大学付属図書館二階奥。入り組んだ迷路のようになった書庫の列を抜けた先に、大亜ゼミは存在する。
噂ではそこに入った学生は必ず留年するだの、そもそもそんなゼミは存在しないだの、様々な噂があるが
それらの真相を知っているのは大亜教授自身と、少数のゼミ生だけである。

……そして夢見崎康平こそ、そのゼミ生の一人だ。

「大亜先生ー?開けてください、いるんですよねー?」

大亜教授を民俗学部以外の生徒が見かけるの困難な話だ。なぜなら教授は講義のとき以外ゼミにひきこもっている。
なぜだか移動中の教授を見かけたものはおらず、そういったことからも上記のような噂が流れる素地になっている。

「先生、開けてくださいよ、勝手に入りますよー!」

しかし、そんなことは今の康平には関係ない。今の彼が望んでいることは、さっさとこの台車を手放し
テープレコーダーの証言を突きつけてあんな問題を用意した意図を聞き出すことだ。
だが、いくらドアを叩いても返事はない。今は講義の時間ではないから確実にいるはずだが、寝ているのだろうか?

「……大亜先生、入りますよ?」

やがて、痺れを切らした康平はゼミの薄いドアを開き-----上から降ってくる水を、頭からかぶった。

「なん、だと……」

見れば、ドアの取っ手に結びつけられたローブが柱を経由してドアの上に吊るされたバケツにくくりつけられている。
よく昔の学園物なんかで見かける、ドアを開けると発動するブービートラップだ。問題は誰が仕掛けたかと言うことだが……

「おや、夢見崎君だったのか。すまんな、侵入者用の防犯装置が誤作動したようだ」

そう言って、実に楽しそうに声をかけてくる男。Yシャツは胸元がだらしなくはだけ、ネクタイすらしていない。
格好だけ見ればだらしないが、ルックスは結構いい。そして、その表情は-----実に楽しげだった。

そんな彼こそが、このゼミの主である大亜門土教授、その人である。
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/09/01(土) 03:55:59.21 ID:x8HJUIU3o
とりあえずおしまいです

しかし、都市伝説のとの字も出てこない……次回こそは!

215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 04:06:45.93 ID:RzjT6nFx0
>>214
乙です
過去投下された分と一緒に読みました
ワクワクする出だしが新鮮でした
続き待ってます

>しかし、都市伝説のとの字も出てこない……
いやいやいや

>問20 6月21日から24日の講義で私がつけていたネクタイの色を答えよ(50点)
このネタは分かる人にはニヤリとできるネタですよ!
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 15:50:32.67 ID:lmD2kI/DO
皆様投下乙ですー

おおぅ、るりさんスパルタン
あの夢が本当に「最悪」だといいんだけどね……
別の形の「最悪」が訪れないことを祈ります


ようこそ新たな作者様!
次の話もお待ちしておりますよ

そして夜刀浦市が千葉県だったことを今さら知った
邪神の舞台という認識しかなかったよ……
217 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/09/01(土) 18:40:22.63 ID:6//aqC7AO
>>209-213
大亜教授の人乙ですー
康平くんの不幸っぷりに期待

>>216
>あの夢が本当に「最悪」だといいんだけどね……
>別の形の「最悪」が訪れないことを祈ります
フラグは立ちつつあります。誰にどう折らせるかを考えるのも楽しさです。
218 :仇討ち姉妹?いいえ兄妹です ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/09/03(月) 09:55:44.54 ID:Dck/22EAO
 真夜中の学校町。
 あらかた街の明かりが消えたと思いきや、ぽつねんとそこだけ窓から光が漏れるそこで、
 白地に廃墟の柄がシルバーでプリントされたレースのワンピース姿の少女―否、女装・・・否、「男の娘」が一心不乱に机に向かっていた。
 彼の名は敷島響。猫目がちの大きな瞳と小柄な体格が相まって、見た目は完璧に「スレンダーな少女」そのものだ。
「うああぁぁ・・・ね、ねみぃ・・・」
「寝るな、寝たら死ぬぞおぉ!」
 テーブルに向かいながら一人芝居をしているのは、別に頭がどうかしているとかそういう訳ではない。
 ―いや、数晩にも及ぶ徹夜で、考えようによっては充分どうかしていると言えるほどの修羅場ハイではあった。
「おい、口を動かす間に手を動かせ。夜中に怒鳴っとったって原稿は上がらんぞ」
 ぶつくさ言いながらジャージ姿で、己が体では一抱えもあろうかという消しゴムで
 目の前のマンガの原稿に器用に消しゴムを掛けるのは、彼の契約都市伝説、「小さいおっさん」
「あ、やべ・・・カフェインが切れた。買ってくるわ」
 初参戦の夏の祭典の締切間際に原稿を中断するのは痛いが、もしここで眠ってしまえば、半年間の努力を無に帰す事となる。
「半年間きちんと努力してたら、本なんて今頃何冊も出来てただろーによ」
「うるせぇよ!!」
 捨て台詞を残して出て行く契約者に、チロルチョコ買ってこいよーと声を掛けるのは忘れなかった。

「ねえねえ彼女、こんなとこで夜中に何してんの」
「俺らが乗っけてってやるよ」
 今時車高の低いDQN仕様の黒いワンボックスの中から、チャラそうな男が数人耳障りなテンションで声をかけてくる。
「急いでんだよ!」
 助手席から乗り出してきた男に裏拳一発。
 「穏健派」といえども「組織」で修行している身だ。鼻っ面を打たれた男は見事に伸びた。車内にざわめきが満ちる。
「な、何だよこの女!」
「男だよ!」
「は!?」
 運転席の男が狼狽えたような素っ頓狂な声を上げた。修羅場テンションの響は男たちの狼狽など気にもせず声高らかに宣言する。
「オ・ト・コ!です!男が着飾ってカワイくして、何がイケないんですかー!ちなみにこれは俺のカワイイ妹ちゃんとお揃いd」
「さよなら!」
 係わり合いにならない方がいいという賢明な判断を下したのか、車のエンジンが喧しい音を立てて掛かる。
「あ、ちょっと待て」
219 :仇討ち姉妹?いいえ兄妹です ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/09/03(月) 10:01:15.01 ID:Dck/22EAO
急に正気に返ったように、響の瞳の色が醒めた。
「お前等さぁ・・・『白いソアラ』知ってる?」
「あ、いや・・・この辺の走り屋なんて、俺しらね」
「じゃあいい」
 響が聞いたのは都市伝説の方の「白いソアラ」
 こいつ等は本当に何も知らないと踏んだ彼は、踵を返してコンビニへ向かった。



続くかも?
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/03(月) 13:45:40.58 ID:Djvw9l2M0
 9月3日、新学期。
 ひどく憂鬱だ。
 学校には既に欠席届を出してある。
 このタイミングで休むなんて言ったら、ズル休みと思われても仕方ない。
 一応、インフルエンザにかかりましたという診断書を偽造してファックスで送った。
 クラスメイトはとにかくとして、先生の方はこれで納得してくれると思う。
 こんなことになった理由は簡単だ。
 夏休みに入ると同時に、所属している「組織」に半ば拉致される形で連行された。
 そして、夏休みが終わるまで、そう、それこそ8月31日金曜、そして9月1日2日という土日に至るまで、
 僕は「組織」にひっきりなしに舞い込んでくる事件の対応に駆り出されていた。
 いくら僕が「組織」子飼いの契約者とはいえ、この扱いはあまりにも酷くないだろうか。
 そして今回も仕事分の報酬は出ないだろう。
 僕が小学生だからだ。
 だけどそんなことはどうでもいい。
 問題なのは、久しぶりにお家に戻ってきた僕の前にあるランドセルと手提げ袋、
 正確に言うと、1学期終業式を終えた僕が帰ってきて玄関に投げ出したままのランドセルと手提げ袋、
 もっと正確に言うと、そのランドセルと手提げ袋の中にぎっしりと詰まった「夏休みの宿題」だ。
「どうしろって言うんだよ…」
 もちろん僕だって馬鹿じゃないさ。
 「組織」の仕事の最中にもずっと気がかりだったのは、この「夏休みの宿題」だ。
 結局、夏休みの間にこれをどうにかすることはできなかった。
 「組織」のせいだ。
 だから「組織」での仕事から解放された9月3日の深夜、僕は担当の黒服に詰め寄った。
「夏休みの宿題、全然やってないんですけど。
 これって「組織」が僕を夏休みの間中ずっと拘束してたせいですよね?
 どうしてくれるんですか? ねえ? 黒服さんが僕の代わりに宿題、やってくれるの?
 なに黙ってるの? 僕、黒服さんに質問してるんですけど」
 黒服は目を泳がせながら言葉になってない声を出した。
 その後、黒服はちょっとトイレに行ってくると言ってその場から逃げた。
 そして、数時間待って、ようやく気が付いたんだ。あいつはバックレたんだ。
「いい加減にしてよもう…」
 でも不思議なものだ。
 「組織」絡みのことになると、いつも恫喝まがいの強圧スタイルで押してくるのに、
 こっちが強く出ると目を逸らして逃げ出すだなんて。
「どうでもいいけど、ホント[ピーーー]ばいいのに…」

 僕は「ミルキーはパパの味が存在する」という都市伝説と契約している。
 そして、脅迫に近い形で組み入れられることになった、「組織」の一員だ。
 いわば、都市伝説と契約した能力者だ。
 でも。
 膨大な量の「夏休みの宿題」を前に、そんなものは何の意味もなさない。
 今の僕は新学期が始まってなお、宿題にあえぐ小学生だ。
 笑えよ、笑えばいいだろ。

「一人でこの量はいくらなんでも無理だよね」
 残念なことに、僕には親と兄弟姉妹がいない。
 悲しいことに、信頼できる人間の友達もいない。
 僕は携帯を取り出すと、宿題を手伝ってくれそうな都市伝説仲間に片っ端から電話することにした。
 でもたぶん、今夜も眠れないだろうな。

  終
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/03(月) 14:23:12.93 ID:Djvw9l2M0

 僕「もしもし、かくかくしかじかの理由で夏休みの宿題が手つかずのままなんです。手伝ってもらえませんか?」

 人面犬「坊主、手伝ってやりたいのは山々なんだが…俺はどうやって鉛筆を握ればいんだ?」

 僕「…迂闊でした、すいません…」

  ピッ



 僕「もしもし、あの」

 口裂け女「ワタシきれい? ねえ、わたしキレイ? 答えて! ワタシってキレイ? わたし」

 僕「…」

  ピッ



 僕「もしもし、かくかくしかじかで宿題手伝ってもらえませんか?」

 注射男「数学か? 算数か? どっちでもいいが、理数系なら手を貸すぜ」

 僕「ありがとう!(よし一人ゲット!!)」

 注射男「お前も難儀なことしてるな。組織なんか辞めてしまえばどうだ? あいつら人の都合なんてガン無視だろ」

 僕「うん…一旦切りますね」

  ピッ

  プルル…プルル…

 僕「なんだろ」 ピッ 「もしもし?」

 ?「先ほどの通信を傍受していましたが、組織を辞めようと考えてはいませんよね?」

 僕「…」

 僕「黒服さん、元はと言えば全部「組織」の仕事のせいだと思うんですけど。悪いと思うなら僕の宿題手伝っ」

  ブツッ

 僕「…」



 ひきこ「はい、同人作家のもり・ひきこですが、何か?」

 僕「(最初の挨拶それかよ…)あの、ひきこさん、僕です。かくかくしかじかで手伝ってほしいんですが」

 ひきこ「よくてよ」

 僕「ほんと? ありがとう!(やった、二人目ゲットだ!!)」

 ひきこ「あ、でも、その代わり、水曜〆切の原稿のアシ頼みたいな〜。あと、今週末のイベントの売り子もやって欲しいんだけどな〜」

 僕「グッ…(なんてハイリスク・ハイリターン…でも背は腹にかえられない…!)分かりました、お手伝い、します…」

 ひきこ「うぉぉぉぉっしゃああああああああ!! 売り子のコスはこっちで用意しとくからね!! じゃっ!!」 ブツッ

 僕「…」



  プルル…プルル…

 僕「もしもし…」

 口裂け女「ワタシきれい? ねえ、答えて! わたしキレ」

  ピッ

 僕「着信拒否しとこう」



 僕「こんなものかな…」
222 :名無しNIPPER [sage]:2012/09/03(月) 21:54:27.36 ID:Dck/22EAO
>>220-221
乙ー!
黒服手伝ってやれよww
純粋にやさしさで手伝ってやるの注射男だけじゃんww
そしてひきこさんはこの子にどんなコスプレさせるのwktk
223 :単発 [sage saga]:2012/09/04(火) 21:31:00.92 ID:yjpRmEJm0
「ない、ない、ないないないないないないないないないないないないないないないない!!
 何処にもない! どこっ、何処なのよぉ!?」

真夜中の校舎内、携帯のライトのみを頼りに、ランドセルを背負った少女が汗だくになって走り回っていた
息を切らせ、度々時計を確認しては顔を青くさせて教室の中を荒らし回り、探し回る
髪を振り乱し、血眼になってまで彼女が探し求めているもの、それは

「しお、みず……塩水が、何処にも…………!!」

そう、塩水
特に深い意味は無い、水に食塩を入れただけの簡単なもの
彼女はそれを、必死になって探しているのだ

「あと、2分っ………早くっ、見つけなきゃ…………」

自分に言い聞かせるが、次第に身体は彼女の思う通りに動かなくなっていく
脚が棒になり始め、とうとうその場で立ち止まってしまった
止まっている時間は無い、一刻も早く探さなきゃ
ぜぇぜぇと喘ぎながら、ふと顔を上げると

「…………っ………!!!」

そこに落ちていた――置いてあったのだろうか――のは、小さな瓶
きちんとコルク栓がしてあり、その中には無色透明な液体が入っていた
無論、見ただけではその液体が何なのか分からなかったが、少女は確信した
と同時に、彼女の表情がパッと明るくなった

「あっ、た……しおみず、あった!!!!」

――――これで私の勝ち!!
心の中でそう叫び、少女は小瓶という名の希望を掴んだ

「え?」

素っ頓狂な声を上げる
背負ったランドセルが、先程よりも重く感じた
「何だろう?」と考えようとした瞬間に、少女の顔から笑みが消え、恐怖が支配する
身体中から冷や汗を噴き出しながら、恐る恐る、少女は振り返る


【みぃ〜つけたぁ……】


金切声の後に続いたのは、蛙が潰れたような声と、水が飛び散るような音だった



------------



「あっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!
 いやー最高だったよお前! 顔も声も何もかも!!」

僕は目の前の少女に称賛の言葉を向けた
とはいえ、その対象となる少女はもう、この世にはいないのだけれどね
僕は「ひとりかくれんぼ」と契約した名も無い小学生
でも実際に一人でかくれんぼなんかしてもいつも僕が勝つから面白くない
それで思いついたんだ、“他の誰かにやらせよう”、ってね
ルールは簡単
参加者の爪とお米をいっぱいに詰めたぬいぐるみが鬼
鬼に見つからないように、塩水のある隠れ場所に辿り着いて、「ひとりかくれんぼ」終了の儀式をする事が出来たら勝ち
制限時間は1時間
こんなに簡単なルールなのに、誰もクリアしたことがないんだもん、面白いよね
今夜で6人目だったかな

「あーぁ……今日は制限時間いっぱいまで持ったね、ここまで生き延びた子は初めてだよ」

血の海に倒れた、刃物を持った真っ赤なクマのぬいぐるみを拾い上げた
あれ、こんなに赤かったっけ
まぁいっか

「でも不思議だなぁ、何で『もし勝てたら何でも言う事聞いてあげる』って言っただけなのに本気になるんだろ」

みんな女の子なのが原因なのかな? 女の子の考えてる事は分からないや
さてと、明日はどの子と遊ぼうかな



   ...end
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/09/04(火) 21:31:57.48 ID:yjpRmEJm0
もっと狂った感じなのが書きたかったんだがなぁ
もう駄目だ
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 21:45:51.00 ID:6nR79dhE0
兵庫の人と鳥居の人、乙
夜刀浦が舞台ってだけで嫌な予感しかしねえ
ここからこっくりさんの事件に絡んでいくのか
鳥居の人のネタはチラ裏のあれか
という事は敷島響=鳥居さん…まさかね
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 21:49:31.53 ID:6nR79dhE0
…乙
誰が書いたか一発で分かったのだが
知らないフリしとこう
組織に消されちまえ
227 :シャ  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/09/04(火) 21:51:13.46 ID:yjpRmEJm0
>>226
マ ジ か
俺もまだまだだな……
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/05(水) 05:38:54.67 ID:RyUPuj/AO
>>223
イーンダヨノワールダヨ!
自分にとって少女が殺される話は充分ノワール

>>225
>という事は敷島響=鳥居さん…まさかね
ご想像にお任せするよ!
229 :仇討ち姉妹?いいえ兄妹です [sage]:2012/09/05(水) 05:40:27.81 ID:RyUPuj/AO
「た・・・だい、ま」
 夏の祭典に無事参加を終え、両手に重たい戦利品を抱えて疲労困憊で帰宅した響を迎えたのは、彼の妹であり、担当黒服である桜の姿だった。
 両親と、双子である響と桜の兄妹。
 何不自由ない彼らの人生に変化が生じたのは、桜が剣道の大会に優勝したお祝いにと出かけた家族旅行。
 山道のカーブで突如ブレーキが利かなくなり、対向車線のトラックに激突した。
 両親は即死、後部座席にいた響と桜は重傷を負いながらも奇跡的に助かった。

(父さんは?母さんは?桜はっ!?)
(響くん、落ち着いて聞いてね、ご両親は・・・)
(事故の影響で、妹さんの心臓は・・・)
(そんな!俺・・・僕達は両親を亡くしたばかりなんですよ!?)

 目を閉じれば今でも、遣り取りした医師の目つきまではっきり思い出せる。
 二人が入院している間に両親は荼毘にふされ、遺体を見ることも出来なかった。両親の、形ある最後の姿を。
 事故の後遺症で心臓を病んだ桜の容態は日毎に悪化し、天涯孤独となる事をいよいよ覚悟した、ある日のこと。

「敷島響くんに、妹さんの桜さんですね」

 その黒服はやって来た。
 その黒服姿の男は自らを「組織」と呼ばれる機関の者であると名乗り、目的を彼らに明かした。

「君たちの両親は事故ではなく『都市伝説』に殺された」

 「都市伝説」人の間で語り継がれる、人ならぬ存在。
 彼らの両親を殺したのは「白いソアラ」と呼ばれるもの。
 そういえば車種まではわからなかったが家の車は確かに白い車だったと彼の人生やら経験やら、とにかく想像すらした事がなかった様な話にぼんやり耳を傾けた。

「ご両親の、仇を討たないかね?」

 口元だけを上げた、張り付けたような笑みを向けたまま二人を見つめる黒服。サングラスのレンズが室内の蛍光灯を反射する。

「勿論です!・・・響も、やるよね?」

 おい桜、と言いかけたその時。

「お待ちなさいな」

 いつの間にか窓際に、一人の少女が腰掛けていた。

「ο(オウ)-3ですか、いや、貴女の様な上位メンバーがわざわざこの様な処まで・・・」
 張り付いた愛想笑いのままで男が少女を振り返る。
「いくら両親の仇討ちとはいえ、子供を『過激派』入りは感心できないわねぇ?」
 お前だって子供だろ、とは言わせない迫力がその少女にはあった。

「その二人、うちで預かるわ」

230 :仇討ち姉妹?いいえ兄妹です ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/09/05(水) 05:46:27.15 ID:RyUPuj/AO
「お断り申し上げます・・・と言ったら、A-No.とο-No.で戦争勃発ですか、女王様?」

 揶揄するような物言いにも少女は動じる事はない。少女の手元で何かが閃いた。

「戦争・・・笑わせないで?こうなるだけよ!」

 ごがっと鈍い音がして。
 二匹の蛇の意匠をあしらった杖でぶん殴られた黒服は伸び、そのままこの少女「桐生院るり」に拉致同然で退院させられた。
 あの杖はただ相手に触れるだけで眠らせられる代物だという事、黒服を殴ったのは単なる私怨だという事を響たちが知ったのは、もう暫く後。


 選びなさいと差し出された何枚かの都市伝説契約書。
 相性もあるからあまり考えずにピンと来たものを、とは言われた。
(どれもピンとこねーよ)
 とりあえず全部裏返して目を閉じ、えいっと一枚引っこ抜く。
「『小さいおっさん』?なんだこりゃ」
「小さいおじさんの姿をした、妖精みたいなものね」
 なんだそりゃと響はいささか凹む。大体「組織」やら契約やらに乗り気なのは桜だけで、響はなんとも返事をしていない。
「嫌なら止めてもよくてよ?その代わり、組織の存在を一般人に知られるわけにいかないから」
 びしっ、と杖の先を突きつけられ
「『組織』の事も、都市伝説の事も、『組織』入りする妹の事も。全部忘れてもらうわ」
 都市伝説やら組織やらはともかく、桜との記憶を人質に取られては、響には従うしか方法がなかった。

「桜、お前は何にした?」
「あたし、この「七星剣」にする!」
 契約書兼説明書を見ると、「破邪や鎮護の力を宿す剣。契約者の技量によっては都市伝説に絶大な威力を発揮する」とある。
「お前には似合うんじゃねえの」
 頷いて紙をぺらっと返す。なるほど剣道の上手い桜には相応しい気がした。

 だが、契約を交わしたその瞬間、桜は意識を失った。
「桜!?」
 「敷島桜」を造っていた要素が解け、輪郭が光となって弾け―再び構成された「敷島桜」は「組織の黒服」として七星剣に飲まれていた。
「桜、さくらっ!!」

 ほどなく意識を取り戻した桜は、人間だった頃の記憶を失っていた。
 都市伝説に飲まれた人間としては珍しくない現象だが、そのことによって大して考えていなかった「白いソアラ」への復讐の火が彼の胸に灯った。
 けれど桜の記憶が失われたことで、家族の記憶は彼ひとりのものとなった。

(『白いソアラ』を見つけてぶっ潰す。桜の記憶も取り返す)



続く
231 :仇討ち姉妹?いいえ兄妹です ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/09/05(水) 06:03:16.32 ID:RyUPuj/AO
 両親を失っても、まだ自分は孤独ではないと思っていた。
 けれど桜の記憶が失われたことで、家族の記憶は彼ひとりのものとなった。

(絶対に『白いソアラ』を見つけてぶっ潰す。桜の記憶も取り返す)



両親を〜が抜けてました。すいません訂正。
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 01:26:46.72 ID:JzcYV49v0
鳥居の人乙
妹が記憶失ったのは組織の所為でもあるよなこれ
しかし生き残った親族に復讐をたきつけて契約させるとは
本当にこれでいいのか組織
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/09/06(木) 13:29:09.36 ID:JZttraG80
>>232
>本当にこれでいいのか組織
そういうやり方は駄目だ、って言うのが穏健派
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/06(木) 18:57:29.97 ID:eVotJiFc0
>>232
>本当にこれでいいのか組織
そんな事より喫茶店行こうぜ、っていうのが日和見派
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 19:11:36.89 ID:0gGUbN5DO
皆様投下乙ですー

オウさんとこの黒服さんは、来るものは拒まずスタンスなのね
このパターンでDさんとこなら、一般人は都市伝説に関わるなと突き放して記憶消して平和な生活を送らせそうだけど

たしかに負の感情は生きる糧になりうるけれど、果たしてこれが最良の選択だったのだろうか
236 :シャドーマンの契約者  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/09/06(木) 19:35:52.22 ID:zP2YXYTP0
>>235
>たしかに負の感情は生きる糧になりうるけれど、果たしてこれが最良の選択だったのだろうか
復讐を終えた後に残るのは何なのか
それがポイントだわねぇ
幸いな事にこの話は英語で言うところのAvengerだから悪落ちはしない、と思う
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/06(木) 22:49:24.39 ID:JR3MtK0Eo
>>236
>復讐を終えた後に残るのは何なのか

男「俺はあいつに復讐するために人間をやめてこの体を得たんだ。これであいつに復讐できるなら後悔など――」
黒服「え?あいつなら先日討伐されましたよ」
男「えっ」
黒服「○○事件の××ですよね。もうとっくに死んでますよ」
男「えっ」
黒服「これからどうします?」
男「……この体、もとに戻せます?」
黒服「難しいですねぇ」
男「……」
黒服「……」
男「今日は帰ります」
黒服「それが賢明ですね」

みたいな救われない小話が脳内でですね
都市伝説との契約は計画的に!
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 23:43:22.03 ID:yJCSaebfo
さっちゃんとおとーさん…
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 23:54:36.61 ID:3je3yegAO
朝比奈さんや宏也さんもそんな感じ?
復讐はろくなことにならない
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 00:02:36.67 ID:OFpeA2cs0
今思い返せばTさんやジャックも地味にゲスい事してるな…
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 00:33:34.92 ID:HjqCAdS20
黒服のDさんとか久しぶりに聞いたぜ
242 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/09/07(金) 06:02:38.92 ID:Vuq6E2/AO
>>232
>しかし生き残った親族に復讐をたきつけて契約させるとは
本当にこれでいいのか組織

>>235
>オウさんとこの黒服さんは、来るものは拒まずスタンスなのね
過激派がたきつけて契約させようとした
ο-Noが横からかっさらい自分のところに組み込んだ
今回いちばんオニチクだったのはA-Noじゃなくてο-No.

>>235
>たしかに負の感情は生きる糧になりうるけれど、果たしてこれが最良の選択だったのだろうか

>>236
>それがポイントだわねぇ
幸いな事にこの話は英語で言うところのAvengerだから悪落ちはしない、と思う
復讐が終わってひとりぼっちならともかく、二人いるから支え合って生きると思うという希望的観測
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 08:46:09.03 ID:yO57tZVDO

>>234
言った地点で既に喫茶店にいるのがYナンうわっなにをするやめ
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/07(金) 12:26:17.27 ID:jj02Tl6so
……ふぅ
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/09/07(金) 17:09:58.01 ID:SeVwpnGc0
というか、契約前に器の大きさを調べる事って不可能でしたっけ?
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 17:15:13.95 ID:lG7WGS4a0
はじめから容量が分かってるなら
契約した瞬間飲まれるのを見て黒服が「あ、飲まれた」とかは言わない
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 18:19:39.89 ID:1qY8ZeIDO
過去に作中で器の大きさを測るような描写ってあったっけ?
人間味が薄い奴ほど器が大きい傾向にあるとかは聞いたような気がするけれど、測定方法という意味では未出な気が

まあその辺りガチガチに固めるのもあれなんで、相性とかフィーリングとかでいいんじゃないかな
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 18:59:36.34 ID:Gm65WIWl0
サンジェルマンはみただけで上田の器の大きさを把握してたような
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/09/07(金) 19:06:23.36 ID:SeVwpnGc0
>>246-247
>はじめから容量が分かってるなら
>契約した瞬間飲まれるのを見て黒服が「あ、飲まれた」とかは言わない
>人間味が薄い奴ほど器が大きい傾向にあるとかは聞いたような気がするけれど、測定方法という意味では未出な気が
ありがとうございます
そうか……事前に器の大きさを調べるのは、今のところ出来ないのと同義と

>>248
>サンジェルマンはみただけで上田の器の大きさを把握してたような
あの人は色々と規格外の気もww
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/08(土) 22:35:53.67 ID:RWQ/+OjF0
http://anzn.net/kagoshima/safety/index.php?i=1332
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/08(土) 22:40:50.78 ID:tXVFyAK8o
白い上着……亜種か
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 22:58:18.97 ID:E/je5c8SO
「いかのおすし」とか初めて聞いた
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2012/09/08(土) 23:26:03.12 ID:6we4BVVc0
いかのおすしは小学校で習わないのか
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 23:33:04.80 ID:E/je5c8SO
地震の時の「おかし」なら習ったが
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/09/09(日) 00:42:43.35 ID:lKcHcgpOo
>>254
おさない
かけない
しなない

だっけ
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 00:52:29.06 ID:QmLzS2Ono
俺は



でならったな
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 01:05:31.65 ID:RfMH1o+SO
>>255
うんにゃ
おさない・かわいい・しょうじょ
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/09(日) 01:15:43.21 ID:XnZ/pECAO
某ビッグサイトのイベントだと「おさない・かけない・夢をあきらめない」になる
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/09(日) 03:07:48.37 ID:EgRYcD7Ao
・おさない(ただし18以上)
・かけない(落ちにくいから)
・しゃべれない(くわえてるから)

何をとはいいませんよ、ええ
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/09/09(日) 06:41:50.60 ID:i+REsh9Do
犯し?
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/09/09(日) 18:24:01.71 ID:TctPZiLk0
僕のとこも『おかし』でしたよ
後で『も』が追加されましたけど(しかし語呂が悪い)
押さない
駆けない
喋らない
戻らない
……………
おさない
かわいい
しょうじょ(ショタっこ)
もえ ?
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/09(日) 18:42:21.88 ID:ghbF+5Nxo
>>261
「少年」ではなく「ショタっこ」にしたことを評価したい
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/09(日) 21:07:55.97 ID:uNNAlvqJ0
>>247
>過去に作中で器の大きさを測るような描写ってあったっけ?
俺の出した「ククルカン」は一目で麻夜の器の大きさを判断した
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/09(日) 22:38:04.27 ID:ghbF+5Nxo
>>248,263
>サンジェルマンはみただけで上田の器の大きさを把握してたような
>俺の出した「ククルカン」は一目で麻夜の器の大きさを判断した
やっぱり主観によるのね
いつか器スカウターとか開発されるのかな
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/10(月) 03:19:09.72 ID:2eqr1vjm0
僕の時はおかしもちで習ったなあ
その前はおかしだったような
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/10(月) 09:19:33.47 ID:8ergVzODO
(都市伝説の領域を)侵さない
(都市伝説には極力)関わらない
(都市伝説に出会ったら)死ぬ気で逃げる

※すべての都市伝説に対する効果を保証するものではありません
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/09/10(月) 19:47:51.87 ID:A1CVoD490
(日常を)侵される
(厄介事に)関わらせられる
(最悪の場合)死ぬ

組織に加入した一般人の末路、みたいな
268 :右手にアンパンを、左手に牛乳を ◆Y5QFUmhmw6 [sage]:2012/09/11(火) 00:11:40.64 ID:ndY2t35T0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
○月○日
またいつものバイトが始まる。
今日は、巨大な注射器を持って歩いている変な男を見た。
多分何かの都市伝説だろうと思う。正直目が怖かった。
しばらく辺りをうろうろしていたが、やがてどこかへ行ってしまったようだ。
……見つからなくて良かったと思う。


○月△日
今日は良い事と悪い事が交互にあった。
まず良い事の方だが、もこもこした可愛らしい小動物が私の足にしがみついて離れなかった事だ。
こんなところまで来て何が楽しいのか、必死にその小さな体をこすり続けていて
久々に萌え死ぬかと思った……ふぅ……。
……悪い事は……その子が私の足から離れ、道端へ歩いて行った瞬間……蛇が……変な形の蛇が……。
その子目掛けて飛びかかっくぁwwせdrf(筆跡が酷く乱れており読めない)

惨劇の後、近くの店で金槌を買って来た。
今度見かけたら覚悟しろ。


○月×日
珍しい事に、今日は目の前で都市伝説同士のバトルを見た。
契約者らしき男がけしかけた人面犬に一匹の黒猫が飛び乗ったのだが、
何と飛び乗られた人面犬の身体が一瞬で炎に包まれたのだ。
幸福/不幸を呼ぶタイプの黒猫では明らかに無い、と思う。
もしかすると、新しい黒猫の都市伝説なのかもしれない。
うん、猫が増えるのはいい事だ。

ちなみにこの直後、逃げようとした男もホットドッグの後を追う事となった。
お猫様をいじめようとした罰だ。ざまぁ。


○月□日
いつも通りバイトをしていると、後ろでハァハァと変な音がしたので
何だろうとおもって振り返ってみた。

「ハァハァ……お嬢ちゃん、おじさんと楽しい事しよう……」
息を荒くした気持ちの悪い男が自分の後ろにいた。

……冗談抜きで心臓止まるかと思った……。
今まで“自分の場所”に侵入された事なんて一度も無かったし、
まして余りにその男が気持ち悪かったので、しばらく呆然としていた。
が、そいつが手首を掴んできた事で我に帰り、持っていた金槌で思いっきり殴って
男が怯んでいるうちに外へと逃げ出した。

「いつでも待ってるからね……フヒヒ」

どうやら追っては来れないみたいだけど、もうあそこへは戻れません。
ヘルプミー。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






「……というわけで誰か、戦闘できる人を送って下さい……この前そっと見たら、アイツまだあそこにいるし」

『そういえば貴方、戦闘力はほぼ皆無でしたね……分かりました。至急応援を送りましょう』

「お願いします……」ピッ



―――数分後、先程まで私のいた場所で火柱と断末魔が上がりました。



ふぅ、と安堵のため息をつき。空を飛ぶ上司に心の中で礼を述べ。
私はまた、ブロック塀の隙間へと戻っていったのでした。

(右手にアンパンを、左手に牛乳を  終)
269 :右手にアンパンを、左手に牛乳を ◆Y5QFUmhmw6 [sage]:2012/09/11(火) 00:14:10.98 ID:ndY2t35T0
以上です、投下失礼しました。
どれがどの都市伝説か考えて見よう!(黙
270 :右手にアンパンを、左手に牛乳を ◆Y5QFUmhmw6 [sage]:2012/09/11(火) 00:18:35.13 ID:ndY2t35T0
うわぁぁぁ、訂正するの忘れてたorz

×―――数分後、先程まで私のいた場所で
○―――数分後、昨日まで私のいた場所で
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 19:59:18.59 ID:zX6AiGZG0
>>268
乙です。

 私→隙間女。

 いつものバイト→組織から嘱託を受けている。バイト内容は定点監視。

 巨大な注射器の変な男→清掃のおじさん。

 可愛らしい小動物→宇宙からの侵略生物。

 変な形の蛇→リンフォンの変化途中。侵略生物の排除の為に契約者がけしかけた。恐らく組織とは別の勢力に所属しているかフリー。

 都市伝説同士のバトル→実は戦っていたのではなく、人面犬の契約者が黒猫の飼い主(契約者?)を連れて逃げ出そうとしていた。

 炎に包まれた→組織所属の何者かによる攻撃。恐らく上司による攻撃。この後、隙間女の確認できない部分で黒猫の飼い主は組織に回収された。

 気持ちの悪い男→隙間男。

 空飛ぶ上司→火柱を発動した契約者と同一人物。多重契約者で組織所属。恐らく先日の炎の攻撃も上司によるもの。


こうですか、わかりません><
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sagesaga]:2012/09/11(火) 22:18:15.15 ID:g1j2SN6Mo
投下乙ですー
日誌は「私」によって書かれており、「私」は信頼できない語り手ではない、という前提の下で考察



⇒最後の描写から「隙間女」

巨大な注射器を持って歩いている変な男
⇒注射男は通りすがりの人の隙をみて注射を打つ都市伝説なので、見ただけで人が逃げ出すような異物をこれ見よがしに持ち歩きはしない
 よって、「契約したばかりで能力を使いこなせていない注射男の契約者」

もこもこした可愛らしい小動物
⇒足だけに擦りついていたということで「すねこすり」

変な形の蛇
⇒外見への言及が「変な形」だけで蛇と認識しているので、生物かつ変な形の蛇。よって「つちのこ」

一匹の黒猫
⇒黒猫に多数言及しているので、黒猫である必要がある。よって「赤猫」ではない。
 都市伝説は不明

息を荒くした気持ちの悪い男
⇒「私」との関連性から「隙間男」

空を飛ぶ上司
⇒火柱を生み出した人物と考えて、「空を飛ぶ」「火柱を生み出す」だけでは都市伝説の特定は不可能。
 可能性としては「猫レンジ&ハチソン効果」「悪魔のうち空を飛べて火をつかさどるもの」が浮かんだ。

アンパンと牛乳
⇒セックス&ドラッグの暗喩……えっ、違う?じゃあ張り込みの象徴ということで。



猫がまったくわからない……くやしい……くそぅ
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/11(火) 23:54:10.55 ID:VMES62Ot0
乙です
これはプラモデルの人の身に起こった
本当にあった出来事なのではないだろうか
つまり彼はもう…
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/09/12(水) 07:33:24.50 ID:are6Uop70
>>271-272>>273
感想ありがとうございます
>>272の答えでほぼ正解に近いです、黒猫は以前出したキャラの一人(一匹)ですので
そこから考えると電話先の相手や上司の正体も分かる……はず?

>私→隙間女
>気持ちの悪い男→隙間男
正解です、これはすぐ分かると思ってました

>⇒注射男は通りすがりの人の隙をみて注射を打つ都市伝説なので、見ただけで人が逃げ出すような異物をこれ見よがしに持ち歩きはしない
>よって、「契約したばかりで能力を使いこなせていない注射男の契約者」
……何故裏設定までバレた(ぇ

>アンパンと牛乳
>⇒セックス&ドラッグの暗喩……えっ、違う?じゃあ張り込みの象徴ということで。
後者であってますよー

>これはプラモデルの人の身に起こった
>本当にあった出来事なのではないだろうか
>つまり彼はもう…
正体バレはともかく、どういう意味ですかwwww
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/09/13(木) 13:12:54.04 ID:I65U733F0
空を飛ぶ、火を撃つ……
なるほど、上司の契約都市伝説(もしくは飲まれた都市伝説)はこいつだなっ
ttp://www.doronyan.com/cb/youkai/youkai91.shtml
276 : [sage saga]:2012/09/13(木) 14:28:45.06 ID:CT5V6ecJ0
書き手がプラモデルの人なら、上司はο-No.4かな…
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/09/13(木) 14:46:07.10 ID:WNWX8h3j0
>>275
>自分勝手な行いをする人間をいましめるために現れる妖怪
危うくイスから転げ落ちるかとwwwwwwwwwwww
違いますwwwwwwつーかこいつ、「ポ」じゃなくてフルネームあったのかwwwwww

>>272の方の考察の、片方が正解です
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/09/13(木) 15:47:12.45 ID:orrhxNWlo
ひょっとして猫はネコレンジとかかな?
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/09/14(金) 13:29:41.54 ID:1fQCRwu40
>>277
残念ちがったwwwwwwwwww
>違いますwwwwwwwwwwwwつーかこいつ、「ポ」じゃなくてフルネームあったのかwwwwwwwwwwww
そういえば、最新の鬼太郎では「ポ」って名前にされてたっけwwwwwwwwwwwwwwwwww
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/09/14(金) 17:07:36.95 ID:TGDymD2b0
>>276
>書き手がプラモデルの人なら、上司はο-No.4かな…
影の人、大正解です。ちなみに(後で裏設定スレに上げますが)電話の相手はο-No.0です
実はこの隙間女の契約者は大の動物好きで、【フェネクス】であるο-No.4には特に懐いてました
……まさかその上司が来るとは思ってなかったでしょうが

そして、この事から考えると黒猫の正体も……
281 :シャドーマッ  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/09/14(金) 19:56:54.51 ID:IotxQ9X00
>>280
>実はこの隙間女の契約者は大の動物好きで、【フェネクス】であるο-No.4には特に懐いてました
そうだったのかwwwww

>そして、この事から考えると黒猫の正体も……
都市伝説名は忘れたが、確か悪ガキにレ○プじゃねぇや、イタズラされて尻尾が短いだか耳が片方傷ついてるだかっていう雌猫ちゃんだったっけ?
すまんかなりうろ覚えな上に適当な答えになってしまったorz
282 :大亜教授の事件簿 ◆qCreO8cZxQ [saga]:2012/09/15(土) 05:43:06.34 ID:Na7/xuWco
コックリさんコックリさん、彼女達は、なぜ私をいじめるのでしょう?





コックリさん、コックリさん、私はどうすればいいのでしょうか?





コックリさん、コックリさん、彼女達は、罰せられるべきなのでしょうか?





コックリさん、コックリさん、私の行為は、悪なのでしょうか?





コックリさん、コックリさん、私は、間違っていますか?





コックリさん、コックリさん、私は-------------------
283 :大亜教授の事件簿 ◆qCreO8cZxQ [saga]:2012/09/15(土) 05:43:35.68 ID:Na7/xuWco
電化製品というものは総じて水に弱い。今でこそ防水ケータイやGショックなんて特殊な類もあるが
それら常に身につけている機械類には雨に濡れるリスクがあるからこそ防水機能がついているのである。
当たり前の話だが防水仕様のTVや防水仕様のエアコンなど、わざわざ開発されるはずがないし、発売されたとしても
使い道もない機能がついて無駄に値段が水増しされた製品を買う酔狂な消費者なぞいるはずもなし。
そんなわけで、康平のポケットの中で水浸しのボイスレコーダーにも、当然防水機能など搭載されているはずもなかった。


「それで、一体何でまた、折角の午後をこんな薄汚い場所で潰しているんだい?」


やっとの思いで用意した用事は、すでにポケットの中でおしゃかになっていることだろう。
と善っても別に証人が消されたわけでもないので、もう一度録音しにいってもいい。署名を集めてもいいし
なんなら証人を召還し、法廷で争ってもいい。そもそも証拠がなくても、抗議することはできるのだ。
……だが、何をしても最終的には今のように台無しにされるような予感しかしない。既に康平はそんな脱力感に襲われていた。


「……いえ、特に。ただ、たまには先生と世間話でもしようかと」

「ほう、世間話か。だが、君にそんな余裕があるのかな?」

「どういう意味ですかね、そりゃ」

「そのままの意味さ。夢見崎君、あんな成績じゃあ、単位はあげられないよ。」


康平が脱力感のまま投げやりな返答をしていると、大亜教授はにんまりと笑いながら、康平の一番気にしていることを言ってのけた。
……教授がこんな、実に楽しげな笑みを浮かべているとき。それは、他人をもて遊んでいるときだけ。
つまり、教授がこの表情を浮かべている限り、自分は教授の掌の上を転がされているに違いないという訳だ。

まあ、教授が焦ったり恐怖しているのを見たことなぞ、康平には一度もないのだが。
284 :大亜教授の事件簿 ◆qCreO8cZxQ [saga]:2012/09/15(土) 05:44:05.38 ID:Na7/xuWco
そりゃ、アンタがあんな意味不明の問題出したからだろうが!!と叫んだところで、
事態が好転しないことは この教授との奇妙な関わり合いの中で康平は既に重々承知していた。

「まあ、たしかに今回のテストは駄目でしたけど……他の科目で単位はもらってますし……」

「いいや、単位はまったく足りてない。」

「そんなに足りてないんですか?」

「ああ。このままだと、留年は確定だな」

常識的に考えて単位が足りなくなるほどサボったつもりはないのだが、教授がそういうのならそうなのだろう。
というより、教授がそういう風に根回ししているといったほうが正しいかもしれないが。

もっとも、普通の学生なら真っ青になるはずの留年確定の宣告にも康平は動揺していなかった。
もし教授の目的が康平を留年させることなら、もはや手の打ちようはない。
このまま鬼畜難易度の追試を受けさせれ、あえなく不合格となるだろう。

しかし、理不尽なテスト内容も不自然に足りない単位も、全ては教授が康平に何らかの条件を飲ませるための“手段”に過ぎない。
つまり、教授の“目的”を果たすことができれば、少なくともこちらに被害が及ぶことはないのである。
ならば、康平のするべきことはさっさと教授から“目的”を聞き出すことであり
その目的(今回なら康平へのなんらかの依頼だろうか?)を達成することだ-------それがどんなに大変でも。

「ところで夢見崎君、君はこんな話を聞いたことがあるかな?」

きた。教授の無理難題な“依頼”は、いつもこうやって始まる。
康平は相手の言葉を聞き漏らさぬよう耳を研ぎ澄ます。うっかり聞き逃せば、それこそ災いが起きるような気がするから。
いや、それを言うならこの教授に関わったこと自体、既に災いかもしれない。
そんな康平の思いなど気にかけない様子で、教授の語りは続けられる。

「この話は、一週間ほど前に同窓会で友人から聞いたんだが-----------------」

285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [saga]:2012/09/15(土) 05:46:07.24 ID:Na7/xuWco
投下は以上です。

日付が変わる前に書き始めたはずがいつのまにか夜が明けてらぁ……
やっぱながら作業はいかんね
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/15(土) 13:45:05.77 ID:sm6wzP880
乙です
まさか教授は全て計算の上で罠を…
夢見崎君が主人公のようだけどタイトルに教授の名がある所がなんとも
今後の展開を暗示しているかのようだ
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/09/15(土) 19:21:14.12 ID:isi5IYI30
乙ですー
良いキャラだなぁ大亜教授wwwwまださわりの部分だと言うのに、物凄く続きが読みたい
なんというか、ミステリー物の長編小説を読んでいるかのよう
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 09:16:32.75 ID:0LajhtXDO
投下乙ですー

タイトルとか文体とか展開とかがあいまって、そこはかとなく漂うミステリーの香り
ホットなバトルもいいけれど、スマートな探偵活劇もいいよね
今後の展開に期待です
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/16(日) 16:44:01.28 ID:kxGsyCAAO
「まいどありー!」
威勢の良い掛け声と共に、移動販売のトラックから、トマトの入った紙袋を抱えた人々が散ってゆく。
よく売れた。今日はもう店じまいだ。男は軽トラのエンジンをかけた。
カーラジオからは今日も、原因不明の奇病や、食中毒と思われる一家死亡のニュースが連続して流れてくる。
「怖い世の中だよなぁ」
男は呟いて欠伸をすると、軽トラを路肩に寄せて、しばし目を閉じる。居眠り運転などしてはいけないからだ。
男は数年前に、居眠り運転のトラックにはねられて、臨月の妻と腹の子を失った。
紆余曲折あって、はねた運転手は大した刑も受けなかった様な気もするが、どの道妻子は帰ってこないので、大した問題ではない。
それからの男は職を辞し、田舎に小さな家と土地を買い、トマトを育ててそれを売り、生活の糧とする暮らしを始めた。
同時に、ある都市伝説と契約をした。
「トマトは毒のある悪魔の果実」
とうに廃れて文献上だけの存在となっていたこの都市伝説を、一応は支払われた慰謝料を使って探し出し、契約までこぎつけた。
カーラジオからは相変わらずニュースが流れてくる。一連の原因不明の食中毒について政府の無策を追求している。
「ま、原因なんてわかりゃしないさ」
男はもう一度欠伸をすると、トマトの乗ったトラックのエンジンを掛けた。
あしたはどれくらい売れるだろうか。



end
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/09/16(日) 18:28:45.81 ID:7WBkPZRB0
>>289
乙ですー
……自分の家族を奪われたから、運転手の家族も同じように皆殺しにしたのか……
しかもまだ売る気でいる……
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/16(日) 20:20:55.48 ID:kxGsyCAAO
>>290
てかもう既に無差別傷害殺人の域に入ってます。生きてても虚しいからみんな殺してやる的な
292 :犬狩り犬 [sagesaga]:2012/09/17(月) 01:36:59.36 ID:8Yhb0xrRo

「初めは数匹の飼い犬だった」

 人面犬の喉が噛み千切られる。

「それが長く続き個体数が増え、給餌が追い付かなくなった」

 飛び掛ってきた人面犬を雷が焼き尽くす。

「やむなく放し飼いを始め、残飯を漁るようになった」

 逃げようとする人面犬を後ろから噛み殺す。

「さらに個体数が増え、残飯では足りなくなった」

 死骸を別の人面犬に投げつけて炎を浴びせる。

「そして、人を襲って食らうようになった」

 辺り一面に転がる人面犬の死骸。

「こいつらを処分する理由を作ったのは、お前だ」

 その中央にへたり込む男と、それを見据える黒服の男。そして一匹の大柄な犬。
 10や20ではきかない数の人面犬は全て、たった一匹の犬によって殺されたのだ。

「な……なんなんだよその犬……」

 もはや逃げようもないことを悟ったのだろう。
 男は震える声で黒服に問いかける。

「リュパン」

 リュパンとはフランスに伝わる狼の妖精であり、塀のそばに現れるとされている存在だ。
 それだけではあの強靭な身体能力や、雷を放ったり炎を吐いたりする能力の説明がつかない。

「ブラックドッグ、チョーキングドーベルマン、送り狼、クー・シー、ガルム――」
「なっ……」
293 :犬狩り犬 [sagesaga]:2012/09/17(月) 01:37:27.61 ID:8Yhb0xrRo

 黒服はなおも続ける。

「――真神、クルトー、ライラプス……幾多の犬を混血し産み出された犬殺しの犬。それがこのストラスドゥーンだ」

 普通、犬が犬を殺すことはない。
 縄張り争いなどで必要に応じて敵対することはあっても、同族である犬に殺意を向けることは決してありえない。

 だが、ストラスドゥーンは違う。
 強靭な脚力をもつ犬と強靭な顎をもつ犬を掛け合わせ、普通の犬とは比較にならない力をもつ犬が生まれる。
 幼い頃より犬を殺すようしつけられ、大きくなると犬を殺して遊ばせ、犬を殺すことを喜びとして育て上げる。
 そうして人によって創られた犬殺しの犬、それがストラスドゥーンという存在である。

「ストラスドゥーンは犬殺しの犬。何があっても犬以外は殺さない」
「じ、じゃあ俺は――」

 黒服の手にはナイフが握られていた。

「人を殺すのは人の役目だ」

 男の喉が真一文字に切り裂かれた。

「全ての業は人が負う。お前も、そして俺もな」

 ナイフの血をぬぐう黒服の足元から、くうん、という鳴き声。
 先ほどの戦いとは打って変わって、心配するような目で黒服を見上げるストラスドゥーンの姿があった。

「お前は何も悪くないよ」

 そう言って頭を撫でてやると、犬はうれしそうに黒服の顔を舐める。
 黒服は何も言わず、されるがままに犬を撫で続ける。
 まるでそれが何かへの償いであるかのように。


【終】
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sagesaga]:2012/09/17(月) 01:38:40.94 ID:8Yhb0xrRo
シャドーマンの人にごめんなさいすればいいのかサムズアップすればいいのかわからない犬単発でした。
一応言っておきますが私は犬も好きですよ?

この黒服はいわば安定剤。
さまざまな存在を混ぜ合わせても揺らがないよう狂わないよう繋ぎ止める飼い主の役です。
全ての歪みを負うのは黒服の役目。わんこは楽しく遊ぶだけ。責任取るのはあくまで人間。
素敵な飼い主だと思います。
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 03:38:33.04 ID:8o3XfDcA0
都市伝説同士の混血ってありなのかそんなの
それとも犬同士だから親和性があるとかいう超理論でもあるのか
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagesaga]:2012/09/17(月) 10:58:47.12 ID:G0W7sVNDO
犬だからっていうより、ストラスドゥーンだから、って方が正しいかな?
ストラスドゥーンのコンセプトが「犬を殺すために配合され調教された犬」なので、
それに準じて「犬狼の都市伝説を殺すために配合され調教された犬」という方針で組み上げました
まあ言ってしまえば俺理論です

ちなみに犬以外にストラスドゥーンをけしかけようとすると「犬殺し」という存在意義がゆらぐため、
自己の安定を求めるために飼い主(黒服)に襲いかかるか、最悪消滅するという裏設定があったり
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 14:48:59.86 ID:8o3XfDcA0
一瞬?ってなったが>>296>>292-294
聞きたかったのはどういう理屈で異なる都市伝説同士の配合が可能になるのかって点だったんだけど
298 :存在と非存在の境界線 [sage]:2012/09/17(月) 15:43:38.66 ID:NN9b4O7c0
もしゃ、もしゃ、もしゃ。
ポテトチップスの袋に手を突っ込んでは、中身を頬張る。
もしゃ、もしゃ、もしゃ。
……うん、おいしい。さっきのは当たりだったみたい(ドンッ)だ……っと。


「すみませんでした、よそ見してまして」

「ねぇ、私って綺麗?」

「またお前かよ口裂け女」

「え?」


いきなり正体を見破られ、一瞬動きが止まる口裂け女。……うん、皆こうやって固まるんだよね。
いくら同じ都市伝説だからってさ、反応まで皆同じとか……もういいや。

いつもの様に右腕から生えたトゲを、


「な、何で私の……いたっ!?」

「はい隙あり、少しチクッとしましたよー」


口裂け女の額に刺す。後はおやつでも食べながら待つだけだ。
もしゃ、もしゃ、もしゃ。……あ。


「あ、あれ?一体何をしたの、身体が思うように動かな……え?」

「ありゃー、もう無くなっちゃった。また向こうで新しいの採ってこないと」



「……嘘でしょ?何、これ……嫌ぁぁぁ!私が、私が消えて消えて消えて消えて消え消え消え消え消え消kkkkkkk…………」



てっきり食べ終わる間に消えると思ったんだけど、案外しぶとかったな。
輪郭がぼやけ透明になっていく口裂け女を残し、その場を後にする。


「kkkkkkkk……kkkkk………kkk…………kk……………k………………」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


もしゃ、もしゃ、もしゃ。
……うぇぇ、不味っ。


「……うぅ、あの木は駄目か。覚えとこう」


でもあの小さい上司なら、平気で食べるんだろうなぁ。
私はそう呟いて、袋の中の葉っぱをその場にばら撒いた。


(終)
299 :存在と非存在の境界線 [sage]:2012/09/17(月) 15:48:19.49 ID:NN9b4O7c0
某どっちつかずの虫で単発を一つ。
主な能力はタイトルの通りです。

>>>>292-294
乙ですー
無邪気なワン公が可愛いんだけど、背景を考えると……;;
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/09/17(月) 15:59:44.33 ID:qEz017lG0
皆さん投下乙ですー
>>298
『トゲアリトゲナシトゲハムシ』でしょうか?
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 17:02:12.37 ID:G0W7sVNDO
投下乙ですー
ポテチの袋ってそういうことか
最近のポテチはロットによって当たり外れあるのかと勘違いしたよ

>>297
配合の方法について、って認識でいいのかな?
設定としては決めてないけれど、いろいろとやり方はあると思う
肉体ベースならDNAを書き換えるとか、情報ベースなら都市伝説の特性を追加するとか、生殖可能なら都市伝説本体やらドッペルゲンガーやらで必要な品種を異種交配させるとか
タコ妊娠みたいな例もあるし、都市伝説に種族の違いが云々っていうのは無視していいと思う

どうでもいいけれど「おおかみこども」見に行きたいなぁ……まだやってるのかな
302 :存在と非存在の境界線 [sage]:2012/09/17(月) 17:07:34.83 ID:NN9b4O7c0
>>300
正解です、バレるの早かったww
『存在がはっきりしない』→『存在と非存在の境界を決定する』というとんでもない能力
普通の人間には効きませんが、都市伝説や黒服などの場合は……
303 :存在と非存在の境界線 [sage]:2012/09/17(月) 17:11:36.03 ID:NN9b4O7c0
>>301
>ポテチの袋ってそういうことか
そこらの木から千切った葉を入れておくための入れ物です
ちなみにこの袋は、「組織」入りした際に自分の担当上司から貰いました
要はそれまでは手づかみで(ry

>肉体ベースならDNAを書き換えるとか、情報ベースなら都市伝説の特性を追加するとか、
>生殖可能なら都市伝説本体やらドッペルゲンガーやらで必要な品種を異種交配させるとか
おお、一気にマッドな空気がww
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 17:31:06.48 ID:8o3XfDcA0
>>298>>302
>『存在がはっきりしない』→『存在と非存在の境界を決定する』というとんでもない能力
普通の人間にも効くんじゃね?
周囲から存在を認識されなくなったり

>>301
それがありなら都市伝説同士の契約も実質的にOKって事になるよな
305 :存在と非存在の境界線 [sage]:2012/09/17(月) 19:08:25.06 ID:NN9b4O7c0
>>304
>周囲から存在を認識されなくなったり
 そ の 発 想 は 無 か っ た (ぉぃ
あやふやにも、はっきり分ける事も出来ると言う事でお願いしますorz
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 20:00:43.41 ID:5d+Nr8LSO
ではストラスドゥーンは定期的にトゲアリトゲナシトゲに刺されるという事で
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 20:54:01.23 ID:G0W7sVNDO
>>302,304
>『存在がはっきりしない』→『存在と非存在の境界を決定する』というとんでもない能力
>周囲から存在を認識されなくなったり
書こうとしてたネタと若干題材が被って涙目
いいんだ、ネタかぶりはよくあることだもの……

>>304
>それがありなら都市伝説同士の契約も実質的にOKって事になるよな
私の場合はストラスドゥーンという「特定の目的に適合するようにかけあわされた存在」をベースとすることで
都市伝説の配合を成立させたけれど、これもひとつの「都市伝説同士の契約」になるのだろうか

まあ都市伝説契約書なんてものを持って(作って)る「組織」なら、都市伝説同士の契約について研究しててもおかしくはないでしょう
すでに結晶化やらガイアメモリ化やらベルト化やらロボ化やら、応用できそうな技術は実用化されてますし

>>306
>ではストラスドゥーンは定期的にトゲアリトゲナシトゲに刺されるという事で
それ一発刺されたら消滅じゃないですかー。やだー
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 21:23:30.95 ID:8o3XfDcA0
>>307
なるほど
今はもうNGではないという事か
回答に感謝する
309 :存在と非存在の境界線 ◆Y5QFUmhmw6 [sage]:2012/09/17(月) 22:36:04.04 ID:NN9b4O7c0
>>306
>ではストラスドゥーンは定期的にトゲアリトゲナシトゲに刺されるという事で
一旦【ストラスドゥーン】として存在固定してしまうと、それ以上追加できない気も……ww

>>307
>書こうとしてたネタと若干題材が被って涙目
>いいんだ、ネタかぶりはよくあることだもの……
いいえ問題ないと思いますよ!いつか読める日を楽しみにしてます!……というか、何かごめんなさい
310 :シャド  ◆7aVqGFchwM [sage]:2012/09/17(月) 23:41:38.14 ID:dwEy3X0J0
皆様乙ですの
おもろい作品がかなり上げられてて拙い単発を上げ難くなってひぎぃ

とりあえず
>>294
>シャドーマンの人にごめんなさいすればいいのかサムズアップすればいいのかわからない犬単発でした。
僕は怒っているよ

というのは冗談です
「リュパン」が何なのか知りたかったので真に有り難い、何度調べてもアルセーヌしか出て来なくてねぇ…
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/18(火) 01:01:03.95 ID:XcU1c2pAO
プラモデルの人乙ですー
考えながら読んでましたが俺の頭はばくはつしました

大亜教授の人乙ですー
大亜教授が康平くんを仲間に引き入れたい匂いがぷんぷんする
そのまま非日常の一員になっちゃえよ!

犬狩り犬の人乙ですー
やっぱり無責任にペットを増やしてはいけないね!

存在と非存在の境界線の人乙ですー
口裂け女さんいつもこんなでかぁいそう
312 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage]:2012/09/18(火) 01:08:03.83 ID:7eHwQQat0
>>311
>考えながら読んでましたが俺の頭はばくはつしました
すみません、確かに持ちキャラの部分がみんな分かりにくかったみたいです……

>口裂け女さんいつもこんなでかぁいそう
もはやコマンドウルフ並みに量産されては散っていく彼女たち
でも嫌いじゃないです、むしろ大好きですコマンドウルフ

あとごめんなさい、【トゲアリトゲナシトゲトゲ】の短編書いたのも俺ですorz
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/18(火) 03:01:16.78 ID:XcU1c2pAO
>>312
>すみません、確かに持ちキャラの部分がみんな分かりにくかったみたいです…… >あとごめんなさい、【トゲアリトゲナシトゲトゲ】の短編書いたのも俺ですorz
いやいや、俺の頭が残念なのよ
みんなの考察とかもすげーって読んでて思った
314 :仇討ち姉妹?いいえ兄妹です ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/09/18(火) 09:59:14.21 ID:XcU1c2pAO
「なー、桜ー、桜ー」
「何かな・・・響」
 人としての記憶を失った桜は、兄である響の事を教えられるや
「お兄ちゃん」
 と呼ぶべきと考えたが、元々双子であったこともあり、互いに名前を呼び捨てにしていたかつての慣習に従う事にした。
「俺もそのスーツ、作ってもらっていーか?」
 タイトスカートの多い女性黒服としては異色な、たっぷりした円形に広がる黒いスカートと、襟元を飾るジャボと呼ばれる、響いわく
「ゴシックに詳しくない奴曰く、中世風のヒラヒラのネクタイ」
 という少し時代がかったスタイルは、桜だけでなく響も気に入っていた。
「俺もそれ欲しいー。次の任務はそれでホントの双子スタイルしよーぜー!」
 クッションを抱えて足をばたばたさせる、自分と体格の変わらない小柄な響は
 桜には兄と言うより、ボーイッシュな姉のようで、苦笑いをしながらもついつい頷いてしまった。
「うん。じゃあ次の任務の時までには作ってもらうよ」
「やったー!・・・そうだ、今日の夕飯、ナスの生姜焼き作ったぜ!」
「作ったのはオレだろう!お前はナスと手を切っただけだ」
 とは、「小さいおっさん」
「うるせぇよ!」
「あはは、おっさんはなんでも出来るんだねー。じゃあたし、ご飯の前に着替えてくるね」

「そーいや、次の任務って何」
「うん、なんかね・・・車がらみの野良都市伝説退治なんだって」
 桜が首を傾げると栗色のおかっぱ頭がさらりと揺れ、
 呑気そうにナスをぱくついていた響の瞳に、にわかに剣呑な光が宿った。
 「白いソアラ」という自動車の都市伝説を両親の仇として追っている彼らの事情を汲み、
 「組織」ο(オウ)-Noの長である桐生院蘇芳は、可能な限り「関連性が高いと思われる」都市伝説がらみの事件の際には彼等に任務を振り向けてくれた。
「えっと・・・対象都市伝説は、恐らく『車の時速1228kmが現在最速らしい。時速1600kmを超える車を製作中とのこと。ドライバーはなぜか空軍のパイロットらしい』だって」
「・・・わかった。今日は早く寝とこうぜ。おっさんもな」
「オレもか!?」
「たりめーだ!その為にてめーと契約してんだろ!」
315 :仇討ち姉妹?いいえ兄妹です ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/09/18(火) 10:00:41.73 ID:XcU1c2pAO
 やり取りだけ聞けば単なる男同士の会話なのだが響の姿はと言えば、
 生成色の地にピンクの水玉模様、裾にはトリコロールのリボンがプリントされたサマードレスというなかなか可愛らしい服装で、
 同じデザインで黒一色に白いフリルがあしらわれたワンピースをを着た桜と、さながら雰囲気だけが違う一対の人形のように似通っていた。
「・・・そういえばさ、響は男の子なのに、なんでいつも女の子の服・・・あたしと同じの着たがるの?」
「カワイイのが好きだからだ!男がスカート穿いて、ヘアメイクして、どうですかー!」
「さ、サイコーでーす!」
 答えたのは桜で、小さいおっさんはやや引き気味に姉妹に見える兄妹を見守っていた。

(・・・お前は覚えてねーけどよ、幼稚園に入るとき、お前『ひびきちゃんとおなじじゃなきゃやだー!』って泣いたんだぜ)

 桜が泣くから、同じにするために桜の洗い替えだった幼稚園のブラウスとスカートを着て鏡の前に立った。
 スカートを摘まんでにっこりすると、余所のどんな子よりも自分と桜が可愛かった。
 それが響の、今のカワイイ物好きの原点であるとは、原因を作った本人は記憶を失う前は遂に気づかず、今も知る由もない。

(桜は可愛い。俺もカワイイ。二人で可愛くすれば、この世に敵なんざない!)

 彼の辞書に「引き算の美学」という単語は、おそらくこの世の終わりまで、ない。

 翌朝。学校町某所。
「ねみぃ・・・」
「響、しっかりして」
 比較的広い車道の脇に座り込んで「それ」が現れるのを待つ。「組織」が封鎖したのか、一般人の自動車が現れる様子はない。
 響が欲しがっていた「桜の黒服と同じ衣装」は当然ながら一晩では間に合わず、
 響は先日修羅場を共にした、さらりとした生地の白地に廃墟の教会がぐるりとプリントされたワンピース。
 桜は全く同じデザインで、黒地に青い柄のワンピースと文字通りの双子併せだった。
「まだ来ねぇの?」
「情報だと、この時間なんだけど・・・」
 手元の端末を繰った桜が通りの先を見渡す。人間だった頃に病んでいた心臓も、既に人ではない彼女には過去の事となっていた。

316 :仇討ち姉妹?いいえ兄妹です ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/09/18(火) 10:05:47.23 ID:XcU1c2pAO
 ぎゃりっ、という音を聞いたような気がする。
「何だ?今の音」
 おっさんが響の肩の上で跳ねながら一生懸命遠くを見ようとした。
「まるで、車が急にターンするような・・・」
 次の瞬間。
「響!」
 桜に手を引っ張られてその場から飛び退いた、その位置を。
「きゃ!」
「だぁっ!!」
「うひぃっ!!!」
 まず衝撃波が駆け抜け、3人がものの見事に吹っ飛ばされた、次の瞬間。
 周囲の家屋のガラスが割れる音がかき消されるほどのどおぉぉぉん、という騒音が轟いた。
 ―物体が超音速で移動するとき、その周囲には衝撃波が発生し、それは急速に減衰した音波―ソニックブームとなる。
 間違いなく、今何か、途轍もない速度で通り過ぎたモノがあったのだ。
「いたた・・・」
「桜!大丈夫かっ」
「オレのコトも心配せんかい!」
 3人がようやく身を起こした時には、当然ながら何も見えず―
「間違いない、『車の時速1228kmが現在最速らしい。時速1600kmを(以下略)』明日こそ、リベンジねっ!」
「明日もかよ!」
「とーぜん!響は?」
「やるに決まってんだろ!?」



続く
317 :仇討ち姉妹?いいえ兄妹です ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/09/18(火) 10:08:24.23 ID:XcU1c2pAO
以上です。
物理とか詳しくないんでこの速度でソニックブーム発生すんのかとかそんな科学的な事をどんどんツッコんでね!
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/19(水) 02:40:45.33 ID:kmQbjHXAO
悲鳴すら上げずに、目の前の子供が倒れる。
包丁を抜くと、人形のように転がる肉の塊と化したそれを思う存分足で踏みつけ、その場に放置して去る。
パーキングではなく適当な裏道に放置しておいた車に戻ると、カーラジオからは身元不明の児童ばかりを狙った連続殺傷事件を報じている。
「怖い世の中だよなあ」
そう呟くと、一気に缶コーヒーを呷り、煙草に火をつけた。
この間まで一緒に住んでいた女は俺が煙草とコーヒーを一緒にやるのを嫌った。臭いんだそうだ。
かっとなった俺はこの包丁で女を刺し、そのまま車を盗んでここまで逃げてきた。
「ま、犯人なんかわかりゃしないさ」
俺の契約都市伝説は「刃物は縁を切る」俺が刃物で切った物は、一切の縁が切れる。家族、友人、親戚…もちろん、この世との「縁」も。
車にエンジンを掛け、しばらく走らせると、休日の歩行者天国が見えてきた。
カップル、家族連れ、友人同士…
あいつ等全部、何処の誰とも知れない肉塊に変えてやったら、どんなにかすっきりするだろう。
縁だの繋がりだの絆だの、糞食らえだ。
女を刺した後、俺は全ての「縁」を切ってあちこちふらふらしてから此処にやってきた。どこでも身元不明の変死体のニュースには事欠かなかった。
今頃俺の地元でも、身元不明の死体が数十体単位で出ていて大騒ぎだろう。ぞくぞくする。
包丁を握りしめると、車を止めてゆっくり歩行者天国へ歩み寄る。
さあ、行くぞ。



end
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/19(水) 02:44:20.32 ID:3gk46yKR0
げ、勢い任せで書いたらなんか矛盾だらけ
やっぱ推敲って大事だね!
320 :単発 [sage saga]:2012/09/20(木) 09:23:28.54 ID:tnqxfIlO0
僕のお父さんとお母さんは殺された
あの日から暫く経ったある日、黒服さんと出会い、都市伝説の事を知った
お父さんとお母さんを殺した犯人も、都市伝説の契約者だったという事も
僕は黒服さんに頼みこんで、都市伝説と契約し、「組織」に入った
2人の仇を取る為に
2人を殺した犯人を、この手で殺す為に
そして、とうとうその犯人を見つけ出した
なのに――――――
「げほっ、ごほっ……!」
「ゲラッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャァ!!
 どぉしたんですかぁ??まっさかそんなモンじゃな〜いよねぇ〜??」
僕が胃の中の酸い物を吐き出す姿を、あの野郎はピエロみたいなふざけた顔で楽しそうに笑っていた
白塗りに赤や緑の派手な化粧、明るい色の縞模様、水玉模様、星模様が不断にあしらわれた派手な衣装
風にマントを靡かせてけらけらと笑いながら、そいつは足元で動かなくなった黒服さんを何度も踏みつけた
「やめろ………やめろぉ!!」
ひゅう、という音と共に、空から白い塊が落ちてくる
標的は勿論、目の前のピエロ野郎
僕が契約した都市伝説は「オルタニング現象」
雲を氷のような固体にして地上へ落とす、地味だけど強力な都市伝説だ
地上数千メートルの場所から落下したものが人間の頭に当たれば、一溜まりも無い
当たれば、だけど
「おぉやおやぁ、そーいうのを馬鹿の一つ覚えっていうの御存知ですかー?」
小馬鹿にしたように笑い、ピエロ野郎はひらりとマントを手に取って、
空に向けて煽ぐように翻した
「タネも仕掛けもあぁりまっせーん!!」
その瞬間、あと少しの所まで落ちてきていた雲が、一瞬にして消えてしまった
さっきまでもそうだった
僕も、黒服さんも、あいつに攻撃はするけれど
いつも、あいつはそれを無力化し続ける
黒服さんが殺された時、心の何処かでぽつりと呟いた――――――――――――――――勝てない、って
でも、僕は
「うわああああああああああああああああああああああああああ!!!」
負ける訳には行かなかった
1つ、2つ、幾つも幾つも、空から雲を落とし続ける
「ゲラッヒャヒャヒャヒャ!! ぁタ〜ネも仕ッ掛け〜もごじゃいましぇ〜ん♪」
ぱちんっ、ぱちんっ、とピエロ野郎はステップを踏みながら指を鳴らす
同時に、奴に命中しそうだった雲は火を噴きながら爆発した
構わず何度も何度も、何度も何度も何度も雲を落とし続けた
当たらない。一発でも当たれば良いのに、その一発すらも当たらない
次第に息が切れ始め、身体がふらついた
「っはぁ………はぁ…………く、そ…………」
「しぃぶとい坊やですねぇん、一体ボクがキミにどんな悪い事をしちゃったのかな?」
「だま、れ……お前は…僕のお父さんとお母さんを殺した………!!」
「はあ?」
「だから、僕は…………お前を、この手で―――――――」
「ゲラッヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! あぁっは〜ぁ、そーゆーことで御座いましたかぁ
 おい糞餓鬼、一遍周りを見てみやがれ!!」
突如声色の変わったピエロ野郎の言葉を聞いて、不意に僕は周囲を見渡した
気がつかなかったが、酷い惨状だった
ぐしゃぐしゃになった家、家、家………原因は、僕が落とし続けた雲だ
中には燃えている瓦礫もあり、また、中には真っ赤な手が見えて――――――手?
「こ、これは……………!?」
「御覧なさい。これは全て君がやった事だ。お父さんの為に?お母さんの為に?
 君が大勢の人々を殺す事が、君の両親の願いだったのか?」
「違う!僕は―――――」
「だったらこれは何だ!? 俺一人殺すくらいなら良い!
 関係の無い人間を殺してまで仇を討つ必要があったのか!?
 今の貴様のように、誰かが貴様を殺しに来る可能性を考えた事があったか!?」
「っ………」
「…隠していて悪かったがね、君の御両親はとても悪い人だったんだ
 幼い子供達ばかりを狙って殺していた快楽殺人鬼……まさかその間に子供がいるとは思わなかったが」
「う、嘘だ!お父さんとお母さんがそんなこと!!」
「今からでも遅くはない。僕は君を許そう。もう、人を殺そうなんて馬鹿な真似は止すんだ」
色んな事が頭の中に浮かんでくる
お父さんが笑ってる、お母さんが笑ってる、ピエロが泣いている
雲が降ってくる、家が潰れてる、ピエロが笑ってる
黒服さんが笑ってる、人が潰れてる、ピエロが笑ってる
お父さんが呼んでいる、ピエロが呼んでいる、お母さんが嗤ってる
黒服さんが潰れてる、人が哂ってる、ピエロがワラってる
「さぁて、何処から真っ赤っかーなウソだったんでしょうね〜♪」
急にお腹に重い衝撃が走った
直後に感じたのは、熱く湿った感触と、ぽっかりと穴の空いたような空虚感
目の前のピエロ野郎は、真っ紅に染まった槍を持ってニタニタと楽しそうに笑っていた
思えば、あいつしか狙ってなかったのに他の家が潰れる訳が無かった
一瞬でも、僕はお父さんとお母さんを疑ってしまった
「ケフッ………嘘…………吐、き…………」
「はぁ?……この世の中に、真実(タネ)も善意(シカケ)も在りはしないのさ」
おとうさん、おかあさん、ごめんなs
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/20(木) 09:33:46.37 ID:tnqxfIlO0
ピエロの台詞はどう見ても某RPGの某ラスボス
そして最近どっかで似たようなキャラを見かけたと思ったら
少し前に上げられてた単発の「赤マント」の一人称が“ボクちん”だった
もしも元ネタがモロ被りだったら死にたい
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/20(木) 10:30:21.06 ID:eBU3FhPAO
シャドーマンの人乙
323 :シャ  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/09/20(木) 10:54:29.42 ID:tnqxfIlO0
バレた!? 何で!?
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/20(木) 10:55:24.73 ID:eBU3FhPAO
だって裏設定スレ…
325 :シャ  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/09/20(木) 11:09:32.25 ID:tnqxfIlO0
バレないように名無しにしたり普段の書き方を避けたのにあれで分かっただと…
くそぅ、流石だなお主! シャドーマンの人検定があれば恐らく合格レベルだろう!
だが次こそは「あれ書いたのシャドーマンの人だったのかwww」と言わせられるような話を書いてやる!
その時まで待っているが良い!ヒハハハハハハハ!(誰だ(そして何処へゆく
326 :舞い降りた大王―ケツイ ◆jE0dPlBLZw [sage sage]:2012/09/20(木) 23:43:35.14 ID:6IzPOpLR0
タナトス「遅かったか。」

正義が息を引き取ってすぐに、どこからか【タナトス】が現れる。

勇弥「タナトス……!」
楓「タナトスさん。」
奈海「タナトス。どうしてここに……?」

タナトスは正義の亡骸を見つめていた。

タナトス「既に逝ったか。もう少し早ければ……。」
大王「……正義……。」

勇弥「お前、今頃来やがって……。お前が来てたらまだ助かったかもしれないのに……。」
奈海「勇弥くん……。」










勇弥「そうだ、お前が消えれば……。」

奈海「ッ!!?」
コイン「ちょっと、勇弥くん!?」
楓「日向、それは……!?」

―――【タナトス】の伝承はとても少ない。
タナトス自身、【死神】のイメージを高めて【死神】の力を手に入れたほどである。

だが、数少ない元々の設定に、こんなものがある―――



―――【ヘラクレス】に奪い返された話や、冥府に運ぶはずのシーシュポスに騙されて取り押さえられ―――










―――それからしばらく、『人が[ピーーー]なくなった』―――
327 :舞い降りた大王―ケツイ ◆jE0dPlBLZw [sage sage]:2012/09/20(木) 23:46:55.49 ID:6IzPOpLR0
訂正
>>326
>―――それからしばらく、『人が[ピーーー]なくなった』―――

―――それからしばらく、『人は死ぬ事ができなくなった』―――
328 :舞い降りた大王―ケツイ ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/09/20(木) 23:48:43.41 ID:6IzPOpLR0
勇弥は空気の形状と性質を剣のそれに変換し、振りかぶる。
その刃は、少し動かせばタナトスの首を刎ねかねないところまで近づいていた。

楓「タナトスを封印すれば、この世の人間すべてが『死ねなくなる』。
  そうすれば正義も死なないかもしれないが……。」
奈海「正義くんのために、他人を犠牲にするつもり……?そんなの八つ当たりだよ!」
コイン「それに、倫理的かは分からないけど、病気なんかで酷い苦痛を受けている人はたくさんいるの。
    そんな人達まで、死ねずに苦しみ続けることになるのよ!」

勇弥の眼は、タナトスを見ているというより、虚空を見つめているように見えた。

タナトス「気が晴れるならやるがいい、元々そのつもりで来た。だが今やっても少年は帰ってこない。」
勇弥「何……?」
奈海「どういう事?」

勇弥が剣を下し、ゆっくり退く。

タナトス「私がここへ来たのは他でもない。少年が助かる方法を見つけるまで、俺を半殺しにしてもらうためだ。
楓「そんな……黄昏のためだけに……?」
タナトス「しかし少年はもう黄泉への道を歩み始めた。ここから還すのも不可能ではないが
     この状態の人間を呼び戻すのは冥府ではルール違反となっている。
     例え恩人やその友と言えども、それに逆らうのは無理な願いだ。」
奈海「……うぅん、良いの。他にも亡くなった人を生き返らせてほしいって願う人はいるもの。
   私達だけ、特別にだなんて。言えるわけないよ。」
タナトス「……すまない。では私は少年の元へいく。最期に礼をしなければな。」
奈海「あ、あの!」

奈海「正義くんに、―――って、伝えてくれませんか?」
タナトス「……それだけでいいのか?」
奈海「本当は、卵焼きでも焼いてあげたいんだけど、今すぐは無理だし。」
タナトス「……そうか。」

タナトスは正義を抱かえ、自身の白い翼を広げる。

タナトス「最後のチャンスだ。今から私を追えば、正義を助ける事もできるかもしれないぞ。」
奈海「早く行って。そうしないと私達、あなたをコロしかねないから。」

タナトスは、微笑むような、悲しそうな顔をして、飛び立とうとする。
しかしふと止まり、振り返って呟くように話す。

タナトス「……最後に言い訳をさせてくれ。私が遅れた理由は2つある。
     1つは、神にとっての時間の流れは人間よりも遅い。
     単純に寿命で考えても解るだろう。それ故に反応が遅れてしまった。」
コイン「もう1つは?」
タナトス「……モイラ様の予言では、正義は死から逃れるとなっていた。
     私はそれを聞き、注意が疎かになっていた。
     いや、これは言い訳にもならないな。」
コイン「あいつは『予言通り』って言ってた。あいつは【モイラ】の予言より上をいってるの?」



タナトス「……既に、『神』を超えているかもしれん。」



ぼそりと呟き、タナトスは大空へと飛び立った。あっという間に、その姿は空へと消えていった。
329 :舞い降りた大王―ケツイ ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/09/20(木) 23:50:19.14 ID:6IzPOpLR0
楓「……本当に良かったのか?」
奈海「さっきも言ったでしょ。特別扱いはよくないって。
   それにさ……そんなやり方って『不正』じゃない。」
コイン「奈海……。」

勇弥はしばらくうつむいたままだった。
ふと振り返ると、うずくまるように嘆く大王の姿があった。

大王「お前はどんな事態にも屈せず、己の信念を貫いていただろう?
   そんなお前が、こんなところで……!
   正義……これがお前の『夢』の果てだというのか……!?
   お前の『正義』はこんなものなのか……!?」

不意に、勇弥は大王を殴りつける。大王の身体は地面に倒された。

コイン「ちょっ!ちょっと勇弥くん!なんなのよ!」
楓「大王様!大丈夫ですか!」
勇弥「らしくねぇぜ、大王さん!あんたらしくねぇ!」

普段なら、大王の怒りを買って恐ろしい事態となるであろう状況だった。
しかし大王はそのまま勇弥の言葉に耳を傾けた。

勇弥「大王さん、あんたタナトスにこう言ってたよな。『お前は未来を恐れている』って……!
   【死神】が人間の未来を恐れているなら、
   世界を滅ぼそうとしている【太陽の暦石】は、『世界の未来』を恐れているんじゃないか!?
   予言なんて、情報をまとめた結果出た1つの可能性に過ぎない。
   少し情報が増えたり、変わったりするだけで、予言は大きく狂っていくはずだ!」
大王「……。」
勇弥「正義は死んだんじゃない、未来を救ったんだ!
   たしかにたった1人かもしれない、しかしそれが未来を大きく変えるかもしれない!
   奈海に、コインちゃんに、俺に、陰に、十文字さんに、カウントに……
   オレ達にはまだ、できる事が何か残っているはずだ!
   大王さん、こんなところで嘆いている場合じゃないだろ!
   一緒に見せつけてやろうぜ!世界の、未来を!」

大王「……。」

奈海「大王さん……!」
コイン「大王……!」
楓「大王様……!」

しばらく顔を上げていたが、また大王はうつむいてしまった。
勇弥は、【太陽の暦石】のいる方を見、大王を措いて駆けてゆく。
奈海達は大王を気にかけながらも、勇弥を追いかけていった。



勇弥達の目の前には、ジャガーの大群が立ちはだかっていた。
その向こう側では、赤い閃光が惑うように点滅して見えた。
【太陽の暦石】はあそこにいる。考える必要はなかった。
330 :舞い降りた大王―ケツイ ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/09/20(木) 23:51:18.08 ID:6IzPOpLR0
勇弥「なぁ、差し支えなかったら教えてほしいんだが……。」
奈海「え?」
勇弥「正義は最期に、なんて言ったんだ?」
奈海「……あぁ、そうね。」



(正義「やくそ、ま、れなッ。」ゴホッゴホッ! )



奈海「たぶんだけど―――」
















〜〜〜黄泉への道〜〜〜





人が命を落とすと、逝くべきところ。

逝くべき場所は3種類。



1つ、死後の楽園。天国、極楽。善人はそこで永遠の命を得る。



1つ、死後の監獄。地獄、煉獄。悪人はそこで永遠の裁きを受ける事になる。



1つ、無。ただ、何もない世界。そこに送られたものは、完全に消え失せる。



その世界へ続く道。その3つの門を守るのは、多くの都市伝説たち。

【閻魔大王】率いる【鬼】たち、【ハデス】が総べる地の世界が待つ地獄の門か、

【仏陀】や【大天使】が守る、神や仏が待つ天国の門か、

はたまた、それらを信じず目にする事ができないものが開ける事になる、無の世界への門か。



そこへ、成人にもなれない少年が1人、朦朧とした意識で歩いていた。
331 :舞い降りた大王―ケツイ ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/09/20(木) 23:52:03.02 ID:6IzPOpLR0










どこからか、その首を狩らんとする巨大な鎌が現れる。






タナトス「エウタナジア、少年。」
正義「『良い死を』か。君らしい挨拶だね。」

今から冥府の審判を受ける少年、正義は、タナトスの言葉で改めて意識を取り戻す。

正義「ここは……?ボクは死んだんじゃなかったの?」
タナトス「いや、残念ながら死んだ。ここは冥府への道。
     この果てで審判を受け、お前の逝く世界が決まる。」
正義「そう……天国か地獄かって事?」
タナトス「あるいは『無』。お前なら天国に行けるだろうが……。」

そう言いながらタナトスは懐から何かが書かれた紙を取り出す。

タナトス「これを持って行け。これがあれば、おそらく天国へ逝けるだろう。」
正義「いいの?こんな事して、怒られたりしない?」
タナトス「安心しろ。それ自体が貰い物だ。
     ……少年のおかげで、こちらの世界にも知り合いができてな。その知り合いから貰ったんだ。」
正義「へぇ……。」
タナトス「少年には返せないほどの恩がある。
     本当は助けたかったんだが、こんな事しかできない。」

なら、と微笑みかけながら正義は願いを言う。

正義「じゃあ、勇弥くん達と戦ってよ。タナトスがいれば心強いよ。」
タナトス「……それはできない。」
正義「……ごめん、いくら恩と言っても、『もう世界に介入しない』なんてルールは破れないか。」
タナトス「違う。私達は既に【太陽の暦石】と戦い……負けたのだ。」
正義「……え?」

ふとタナトスの目を見つめる。その瞳にはその時の状況が映っているように見えた。

タナトス「最初は私1人で立向かった。ギリシャの神の代表として、な。
     しかし結果は惨敗。奴の能力の前に手も足も出なかった。
     【クロノス】のおかげで助かり、そのまま全ての神が対峙した……。
     が、逃げるのがやっとだった。」
正義「そうか……。予言と言えばモイラだけど……。」
タナトス「モイラ様は戦士ではない。対抗できるとは言い切れない。」
正義「……分かった、ありがとう。」
332 :舞い降りた大王―ケツイ ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/09/20(木) 23:53:25.56 ID:6IzPOpLR0
また黄泉の道へと戻ろうとした時、ふとある事を思い出す。

正義「あ、そうだ。1つお願いしていいかな?」
タナトス「……可能な事なら。」
正義「奈海に言いたい事があったんだけど、ちゃんと言えなかったから。
   それだけ伝えてくれないかな。」
タナトス「その程度でいいのか?」
正義「うん。」
タナトス「……よし、では内容は?」




















正義「『約束が守れなくてごめん。今までありがとう。』って。」





〜〜〜世界〜〜〜





勇弥「―――『約束』?約束ってなんだ?」
コイン「私も知らない。私と契約する前の話?」
奈海「うん、もうずっと前の話よ。」



(正義「ナミちゃん、ボク、おおきくなって、つよくなって)
(   ボクがナミちゃんを守ってあげる。ずぅーとね。」)



奈海「憶えてて、くれてたんだ……。」
333 :舞い降りた大王―ケツイ ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/09/20(木) 23:54:16.86 ID:6IzPOpLR0
最初、正義くんが戦っているところを見た時、私は嬉しかった。
正義くんは私との約束を憶えていて、そのために強くなろうとしているんだと思って。

でも、時間が経つと、だんだんそれが不安に変わっていった。
急にちゃん付けで呼ばなくなったり、少しツンケンしだしたり、戦いや修行に夢中だったり……。
それにもう昔の話だったし、正義くんは忘れてしまってたんじゃないかと、ずっと思ってた。

そして今日、こんな形で、憶えていてくれた事を知った。
嬉しい以上に、悲しかったから……。






何が「約束を守れなかった」よ!私だって―――






(奈海「なにいってるのよ、チビすけのくせに。フフフ。)
(   じゃあ、せいぎくんがおとなになるまで、わたしがしっかりまもってあげる。)

(正義「チビすけじゃない!すぐおおきくなるもん!」)
(奈海「わかった。じゃあきょうも、のこさずしっかりたべるのよ?」)
(正義「はぁーい。」)

(奈海「……やっぱりまだまだこどもじゃない。」ボソッ)






―――私だって、約束を守れなかったじゃない!



まだ高校生にもなってないのに。早すぎるよ、正義くん。



ずるいよ、私を守って死んだくせに、ごめんなさいだなんて。
今になって気付いたの。私は正義くんに守られ続けてきたって。
ずっと、私が正義くんを守っていたと思ったのに。



私はずっと、正義くんの笑顔に、支えられて、守られていたんだね。






ごめんね、正義くん。



でも、最後の言葉が『ごめん』だなんて辛すぎるから……。
最後の最後に、変なわがまましてごめんなさい。正義くん。
334 :舞い降りた大王―ケツイ ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/09/20(木) 23:55:40.00 ID:6IzPOpLR0















―――ありがとう―――
















………………
335 :舞い降りた大王―ケツイ ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/09/20(木) 23:56:51.52 ID:6IzPOpLR0
楓「日向、心星!」
勇弥「ん!」
奈海「え、はい!?」

楓「ボク達は黄昏にはなれないだろう。どれだけ頑張ってもな。
  それだけ、正義のやってきた事は難しい事だったからだ。」
勇弥「……。」
楓「ボク達はきっと少しだけでも、黄昏の影響を受けたところがあると思う。」



勇弥「あるぜ!」



―――正義がいなければ、今頃オレは―――



奈海「決まってるじゃない。」



―――正義くんのおかげで、私は―――



コイン「私も、かな。」



―――今思い出すと、昔の私って憎たらしかったなぁ―――



楓「無論、ボクもだ。」



―――黄昏のおかげで、今のボクがいる―――






楓「だから、正義の遺志を継ごう。
  正義の言葉を、願いを、いつまでも胸の中に留めておこう。
  いつかきっと、それに救われる日が来るだろう。」

奈海「……うん!」

コイン「心配しなくても、忘れる方が難しい頭だから。」

勇弥「言われなくとも!」
336 :舞い降りた大王―ケツイ ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/09/20(木) 23:57:31.64 ID:6IzPOpLR0










勇弥「ところで、終始一人称が『ボク』でした。」
楓「あ。」
奈海「……もう『ボク』のままで良いんじゃないかしら。」
コイン「最近はボクっ娘というものが流行ってるらしいよ。」
楓「よし、明日から考えておこう。」
勇弥「明日、か……。」






ふと、コインがあたりを見まわる。

コイン「大王、来ないね。」
楓「大王様、大丈夫でしょうか?」
奈海「勇弥くん、言い過ぎたんじゃない?」
勇弥「大王さんがあの程度で挫けるわけ無いだろ。」

その言葉を聞き、全員が勇弥の方へと視線を向ける。

勇弥「はっきり言って今のオレ達では【太陽の暦石】は倒せない。
   無論、『さらに麻夜ちゃんを助ける』なんて以ての外だ。
   正義がいない今、そういう作戦を立てる事ができるのは大王さんだけだ。」
奈海「……そうね。今までそういうところ、正義くんに頼ってたし。」
勇弥「きっと大王さんならいざって時に助けてくれるさ。」

すると、コインが覗き込むように勇弥の顔を見て話しかける。

コイン「だからって、八つ当たりしていい理由にはならないよ。」
勇弥「……。」
コイン「勇弥くんだって、あの時泣きたかったんでしょう?
    ずっと、正義くんのそばにいたかったんでしょう?
    でも、正義くんなら『世界を守る』方を優先する。
    だから、自分の気持ちを押し殺して……。」
勇弥「……理屈では分かっていても、本能は従ってくれないものだな。」

恩というのはどう返せばいいのか。
ただ延々と泣いていれば恩返しになるのか、違う。
そう分かっていても、今も眼の前がぼやけて見えなくなりそうになる。

でももう心は揺るがない。勇弥は、心の中で大王に謝罪と感謝の念を送った。

奈海「倒さなきゃね、正義くんのためにも。」
勇弥「あぁ!」
楓「また、明日が来るために!」
337 :舞い降りた大王―ケツイ ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/09/20(木) 23:58:16.07 ID:6IzPOpLR0



















大王「……俺に、できる事……?」




















―――そうだ、まだある―――















―――俺にはまだ、『力』がある―――










マヤの予言編第X2話「ケツイ」―完―
338 :シャ  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/09/21(金) 00:00:29.59 ID:w1uZndyb0
すまん
泣いた
339 :大王の ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/09/21(金) 00:02:39.94 ID:tUxe66JU0
お粗末さまでした。ここからが本当の戦いです。二つの意味で。

やっとこさ、正義を送る事ができました。
あとは【太陽の暦石】を倒すのみですが……はてさて。
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/21(金) 08:21:23.61 ID:aPQ0fK4AO
大王の人乙ですー
「恐怖の大王」…正義くんが天国へ…まさか。
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/21(金) 21:09:05.09 ID:aPQ0fK4AO
てす
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/22(土) 00:35:51.23 ID:TlNUpjXo0
でい あるま
大王の人、乙です
ここから暦石に巻き返すんですね
ついでに黄昏兄も締めに行くと…よく分からんが
あと大王が何か良くないことを企んでいるのが何となく感じるような

あるまでい
あるま でい
でいありyゅま
343 :大王のスマホ ◆dj8.X64csA :2012/09/22(土) 01:00:44.94 ID:0j/0dQFu0
試し
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/09/22(土) 09:43:42.22 ID:XRqSnG5P0
>>342
>あるまでい
はい、“ありま”ではなく“あるま”なのです
……どうされました?
345 :とある人(単発)《避難所から代理投下》 [saga]:2012/09/22(土) 21:56:45.78 ID:TlNUpjXo0
【とある番犬の休日散歩日記】

我輩は都市伝説である…名前はワンコだ。

もう少し捻れないのかと主人に問いたい。

今日は黒い女は来ないらしいので散歩に行ってこいとの命を受けた。

正直暑いので気乗りはしないが命は命だ…尻尾が大振り?気のせいだ。

我は人目につかない路地裏を走らずに滑り行く。

途中で人面犬とドックフードの在り方について語らったり、チュパなんたらを轢いたりした…いつも通りである。

やはり暑いので山の上で涼んでいると空には円盤、その下には見覚えのある二足歩行の猫……浮いているので面倒だが助けてきた。

なんだか外にいると余計に疲れる気がしたので我は帰ることにした…帰り際にチュラウミなんとかを轢いた…丈夫だなと思った。

ガレージの中に戻ると主人がアホ面で寝ていた…どうやら我の帰りを待っていたらしい。

取り敢えず邪魔なので嫌がらせに尻尾でくるんでから寝た。

別に…風邪を引くのを気にしてとかではないからな、断じて。

〜翌朝〜

男「めっさモフモフやん…って動けへんのやけど!?」ジタバタ

ニャンコ「はっ…グレイにキャトられた夢を見たニャ」ガバッ

我輩は都市伝説…騒がしいが飼い犬も悪くはない
346 :投下代行 [sage]:2012/09/22(土) 22:16:12.53 ID:TlNUpjXo0
>>345は避難所の代理スレに上がった単発を代理投下したものです
これでいいでしょか、さっきから避難所が真っ白けになって閲覧できませんが・・・
なぜかほんわかほっこりしてしまったとです、こういう話が書けるようになりたいとです

>>344
プラモデルの人、申し訳ありません
言い訳をすると長くなるのですけど、ストレスに苛まれ続けて現実逃避していた所
有間君の名前を早朝に叫んで悶絶している柔道部の人とその騒音に起こされる帰宅部の人
という突拍子のない出だしを思いついたのです、しょうもない話で情けない限りです
いつものように胸の内に閉まって無かったことにするつもりでしたが、どうも知らないうちに書いていたようです
それで>>342の内容に気づかず書き込んでいたようです
自分の責任であります、本当に申し訳ありませんでした
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/09/22(土) 22:57:12.68 ID:XRqSnG5P0
>>345
代理投下乙ですー
いいなぁ、こんなのんびりした日常を描いてみたい物です

>>346
>有間君の名前を早朝に叫んで悶絶している柔道部の人とその騒音に起こされる帰宅部の人
これは……新キャラとして出せと!?(違

>自分の責任であります、本当に申し訳ありませんでした
お気になさらず、自分も今朝がた同じような失敗をしてしまいましたしorz
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/09/23(日) 17:48:02.02 ID:gOmQhdvOo
避難所のURLだれか貼っていただけないだろうか
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/23(日) 18:00:59.53 ID:39mYdsHlo
そぉい!
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13199/
350 :シャ  ◆7aVqGFchwM [sage]:2012/09/23(日) 23:26:37.06 ID:KuweTXkc0
遅まきながら、とある人、並びに代理の人乙ですの
何故犬を使tt………い、犬、なのか………?滑ったり轢いたりしてるが………むぅ(←犬嫌い
しかし何というほのぼの、久しぶりのほのぼのだぜヒャッハー(
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 10:47:59.59 ID:a0TqUhYDO

>>350
悪路はキャタピラで踏破し、平地ではブレードエッジで滑走する、汎用犬型四足走行ガーディアン犬なのだよきっと



轢くってのは
ガレージで寝てたり、モフモフで動けないくらいには大きい犬だからそう表現したんじゃないの?
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 19:16:22.61 ID:g+0dX/2DO
機体名 TTL-002 ワンコ
とかそういうことでいいの?
そして犬型なのに汎用とはなんと器用な
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 20:29:46.43 ID:sRs2MSyE0
日本語入力システムが非常に使いづらい
その上にネタ書いてあったテキストがみんなロックかかりやがって
やっぱしこのOSはクソじゃあああ
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 23:43:00.70 ID:sRs2MSyE0
高校生ならともかくこの時間に中学生の女の子が出歩くものなのか
ちょっとホテルに行ってきます
355 :シャ  ◆7aVqGFchwM [sage]:2012/09/24(月) 23:44:40.36 ID:NZ1ruFP50
じゅるり
356 :仇討ち姉妹?いいえ兄妹です ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/09/26(水) 14:36:35.56 ID:p9PXWwMAO
 さらに翌日。揃いの衣装は何とか間に合い、二人は襟元にジャボをつけた、揃いのスーツ姿。
 真夏の気温に黒スーツは堪える。朝早くにも関わらず響は既に汗だくだが、暑いとは言うもののそれを脱ごうとはしなかった。
(オシャレは我慢だぜ!・・・でも、眠い)
 正直彼には、まだ朝早い時刻の気温より、睡眠不足の方が辛い。
 黒服となってからは暑い寒いの感覚が幾分失せた桜はジャケット1枚くらいどうという事も無い。
 都市伝説に対しての威力を誇る「七星剣」彼女を飲み込んだそれを油断なく握りしめ・・・ている、つもりが。
「う・・・眠いー」
「俺も・・・」
「おまえら、しっかりせんかい」
 昨日と同じ場所でブロック塀にもたれさせた寝不足の体が重い。
「そろそろ来る頃かな・・・じゃ、これでよろしくね」
 言って桜が取り出した物は一本の紐。組織より支給された「グレイプニル」だ。
 響はそれを使い、手近な電信柱の脇に座り込んだ桜の体を電信柱に繋ぎ止めるように結わえた。
「これでいいのか?」
「うん。あたしの考えでは、多分これで上手く行くと思うの」
「縛り具合、キツいとか、痛いとかないか」
「平気・・・来る、二人とも下がって!」
 桜は座り込んだ体勢のまま、七星剣を横ざまに構える。ぎゃりっ、という音を三人が聞き取った、次の瞬間。
「ぐぁっ!」
 またしても昨日のような衝撃波が三人を襲う中。
 ぎぃん、という金属のぶつかり合う耳障りな音。
 桜が横ざまに構えた剣を音速以上のスピードで走る車はかわせなかった。
 いかに「空軍パイロットの運転手」でも、路面に近い位置に構えられた剣一本、気づくには車の速度は速すぎるし、仮に気づいても避けるほどの道幅はない。
 耳を塞ぎたくなる大音響が通りの突き当たりから響いてきた。
 吹き飛ばされた先から響とおっさんが視線を向けると、バンパーの辺りから綺麗に上下に両断された「もと自動車」が民家のブロック塀を破壊してようやく止まっている。
 それもつかの間のことで、本来都市伝説であるそれは、光の粒子となり飛散していった。
「やったか!?」
「そうみたい・・・うー、手が痺れる」
 響が急いで桜を電柱に固定していた「グレイプニル」を解きにかかる。

357 :仇討ち姉妹?いいえ兄妹です ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/09/26(水) 14:37:04.08 ID:p9PXWwMAO
「あー、終わったみたいだねー」
 のんびりとした声と共に現れたのは桐生院蘇芳。
「すいません。塀がこんなに」
 破壊されたブロック塀を指さして桜が頭を下げる。
「いいよいいよー。その為にあらかじめオイラが待機してたんだからね」
「今日は・・・これで終わりっすか?」
「うん。お仕事ご苦労様」
 やっぱ、いきなし本命、とはいかないか。
 響が頭をがしがしと掻くと、桜と揃いのおかっぱ頭はものの見事にもつれてしまった。



続く
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 19:40:59.50 ID:VkMiSJKDO
投下乙ですー

てっきり紐でこかして刻むのかと思ったらそういう使い方でしたか
早朝の誰が通るともわからない路上で柱に縛られた公開緊縛少女だなんて背徳の香(七星剣に刻まれました)
359 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/09/26(水) 21:51:50.27 ID:p9PXWwMAO
>>358
>てっきり紐でこかして刻むのかと思ったらそういう使い方でしたか
そ の 手 が あ っ た
今回剣使ってみたかったから考えてなかったぜー

>路上で柱に縛られた公開緊縛少女だなんて背徳の香(七星剣に刻まれました)
無茶しやがって…
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 23:28:38.51 ID:XYb9rzee0
実験もかねて

投下乙です
ο-No.の場合も前に出てくるか
これはこれでいい感じですね
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/27(木) 04:12:59.81 ID:MJ+14tnAO
>>360
>ο-No.の場合も前に出てくるか
これはこれでいい感じですね
ご都合主義ですが、戦闘要員がいるからにはこういった仕事も回ってくるということで。
でも次回あたり平穏なο-Noの一日とかもいいな
後方支援と被害者と行き倒れ都市伝説の世話で一日終わるような
362 :と! :2012/09/27(木) 19:55:21.90 ID:eylAp92/0

「原因ははっきりしているんだ」

対面の男はそう言ってコーヒーを一口啜る

「誰かが――そうだな、契約者が29サーバーに攻撃を仕掛けたんだ」

「気にし過ぎだよ」

そう答えたけど、はっきりした理由があるわけじゃない

だってわざわざサーバーに攻撃する理由なんてあるのか?

「ぬぅん、出ないニャー」

横ではノートPCを前にして少女が画面と睨めっこしている

頭からは猫の耳が生えているしちょこんと座った椅子からは二毛の可愛い尻尾がはみ出てるけど

お店の人も僕ら以外の客も誰も気にしてない

ジャパニーズ・カルチャー万歳って奴だ

「メンテナンスの時間はとっくに過ぎてる

 こりゃあれだ、スーパーハカーか何かだきっと」

いや、それはない

大体、アットウィキのメンテナンス告知の通りにいかなかったことは何度もあったし

そうとは言っても一晩経てばアクセスすることはできる

でも僕の前の男はこの状況に苛立っているようにも、興奮しているようにも見える

「別にウィキに話をまとめるってわけでもないんだろ?」

「ふざけんなよ?

 俺のルーチンは闇子ちゃん礼拝に始まり、闇子ちゃん礼拝に終わるんだよ

 この調子を狂わされた俺の気持ちが分かるか?

 そうだ、これは絶対『組織』の仕業だ」

「お待たせしました、こちらミックスピザですー」

店員さんがメニューを運んできた

高校生のバイトの子で、可愛い

「オニオンリングはノーセンキューですニャー!」

サイドのメニューを奥へ押しやると、猫耳は顔をしかめて抗議した

そのサマを見てバイトの子はクスクス笑う

やだ、すごく可愛い

「とにかく、だ

 『組織』を早急に潰さなければ俺は闇子ちゃんに逢えんのだよ

 分かるか?」

「『組織』だなんてまたそんな、フィクショナルな」

笑いを堪えながらそう返す

「むぅん、出ないニャー」

猫耳はさっきからF5を連打してるようだけど、こういうのは気長に待つもんさ

僕はホールへ戻っていくバイトの子のお尻を眺めながら、キーを連打する音を聞いていた




363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/27(木) 20:38:43.83 ID:d1+FYbs7o
まさかこういう形で来るとは……おのれ「組織」!
364 :と! [sage]:2012/09/27(木) 21:49:10.49 ID:eylAp92/0

「つながったニャ!」

サラダバーの最後の一本を食べていると、猫耳が鳴いた

男は激突しかねない勢いでテーブルから身を乗り出してきた

ノートが回転して向きが変わる

トラックパッド捌きはキレも良く、既にウィキのイラストページが開かれている

「おぅふ、闇子ちゃん……」

裏声ががった響きに思わず僕は顔を背ける

目があったのはホールから出てきたぷっくらしたおばちゃん店員だ

ニカッとスマイル0円を頂いた

「もういいだろ?」

視線を男の方へ――ではなくて猫耳へと向けた

直視は嫌だ

「ああ待て、もうちょっと、もうちょい、ちょ、お、おお、おし、いいぞ」

「もうそろそろ時間もいい頃だろ」

男は闇子ちゃん分の補充を終えたようで、指先でノートPCを威勢よく閉じた

「んじゃ行くか!」

男はノートを小脇に伝票を握りしめると立ちあがった

僕と猫耳も立ち上がる

365 :と! :2012/09/27(木) 21:49:42.07 ID:eylAp92/0

午後九時を過ぎた辺りで、ファミレスから出た僕たちは歩道を歩いていた

その足で向かうは、桜ケ丘2丁目を抜けてすぐの踏み切りだ

時間的なタイミングはこの上なくいい

「何使うんだよ」

「こういうのはポラロイドって相場が決まってるんだよ

 コンデジじゃ逃げられちまう」

先を行く男と話しながら星空を見上げる

あの夏日が嘘だったかのように肌寒くなり、乾いた冷たい風が日増しに強まっている

僕は薄手の長袖だが、横を歩く猫耳はノースリーブのワンピースで

前を行く男はコートも黒、コートの中も黒ずくめ、ついでに腹の底も真っ黒ときてる

「お前いま余計な事かんがえなかったか?」

「別に? なにを?」

おまけに思考を盗聴されてるんじゃないかと思うほどカンが鋭い

「ここ真っすぐ行ったらもう踏み切りニャー」

「てかもう踏み切り鳴ってない?」

僕がそう言うと、猫耳と男は途端に走り出した

「おい! ちょっとぉ!!」

勘弁してほしい、僕は足が速くないんだぞ?

366 :と! [sage]:2012/09/27(木) 21:52:28.63 ID:eylAp92/0

息切れしながら二人に追いついた時、既に電車の音が聞こえてきていた

点滅を繰り返す赤いランプがどことなく不気味だ

「おーしおしおし、いい感じだな」

男の手にはカメラが握られている

息を整えながら周囲を見渡す、と、僕らが来た方向から誰かが走ってきた

「たすけてください!!」

制服の女の子だ。多分、西陵高校の子だろう

「さっきちかんが! あたしこわくて!!」

泣きながら走って来たのか、その顔がランプの光を受けて映えていた

思わず二人の方を振り向くと、こちらに背を向けて踏み切りに向かった構えていた

「あ、あー」

電車が踏み切りを通過する轟音を聞きながら、高校生に向き直る

「大丈夫? 一緒に交番行こうか?

 ちかんって言っても、まあこっちはキミ入れて4人だし、流石に追いかけてこないだろ」

言いながら女の子の肩越しに後方を眺める

変なのがやってくる気配はない

「大丈夫、一緒に警察行こう

 お廻りさん送ってくれるから」

もう一度繰り返すと、女の子は顔を覆って泣き出し始めた

「で?」

二人の方を振り返る

「写真はどんな感じニャー?」

「まあ待て、そっちの子を交番に連れてくのが先だ」

男にひっついていた猫耳は、高校生がいるのに今頃気がついたのかすり寄ってきた

「ねえちん、大丈夫ぅ?

 アメ玉食べる?」

しゃくり上げ始めた高校生とそれにひっつく猫耳から、視線を男へと向けた

「で?」

男は無言でカメラを突き出した

途端にプラスチックの焼ける匂いが鼻をついた

「カメラごとフィルム焼き切られちまったぞ

 今回のは、ちょーっとヤバいんじゃないかね」



今度こそ終
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/27(木) 22:12:19.37 ID:MJ+14tnAO
おつですー
なんだかこれでは終わらない予感がするぞ?
そして猫耳ちゃんかわゆすお持ちかえr
368 :と! [sage]:2012/09/27(木) 22:24:09.28 ID:eylAp92/0
なんか>>362の単発とした方が良かった気もするーん
でも一応数話でまとめる練習のつもりで
次回投下予定は土曜日!多分!!
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 21:47:56.64 ID:YzwV8QC20
この文体…どっかで見たおぼえが
さては笛か?
それとも影の人が覆面性能を鍛えあげたか
370 :シャ  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/09/28(金) 23:43:41.30 ID:Xje807Gd0
>>369
>それとも影の人が覆面性能を鍛えあげたか
スキルアップ早過ぎるwwwww
俺じゃないとだけここで告白しておこうw
371 :代理投下 [saga]:2012/10/04(木) 21:32:34.01 ID:cYDvyYil0
【眠りについたらサヨウナラ】

此処は何処だろうか…餌箱、干し草、何かの水溜まり…?

「…いやー、今のところ気持ち悪いほど上手くいってますねぇ」
「えぇ、食事時は基本的に誰しも気が緩みますから…あ、ライスは多目で」

眼に不明瞭に映る景色は、七輪に肉を乗せる黒服の男と黙々と食べ進める学生服の女

あの女と黒服は誰なんだ…敵、味方?

クソッ、何だか無性に眠い…疲れてでもいやがるのか

確か……俺は新しく出来た評判の焼肉屋に入って…えっと

「黒服さんの"目薬"は効きが早くて助かります…レモン取ってください」
「いえいえ、私の能力なんか件さんの"予言"と"寝ると牛になる"に比べたら猪口才だけですよ…はい、スライスレモン」

和やかに話す二人、契約者だと思ワレるが身構えるにも、何故か身体が動かナイ?

「そろそろ、女の子の方は意識が落ちます……しかし、いかんせん男には効きが悪くて面目ないです…」
「大丈夫ですよ、都市伝説の方が無力化出来れば…基本的に黒服さんの銃で十分なのですから…はふ」

何だか…瞼が重クなってキた……何を考えてイタンだっけ?

店で、ダレかと、飯を食ってテ…誰?そう……ハナ…コさん

モウ……トニかく、眠…い

「久しぶりの女の子はどう調理しますか?」
「うーん……牛乳要員にしては小ぶりですから…暫くは生かして考えておきますかね」
「では、後で地下まで連れておきますね……干し草のストックあったかな」

考えタクナいが…俺はシクジッたのカ ?

「契約者の方のメニューは如何様に?」
「ステーキやハンバーグはもう今週頂きましたし……牛カツレツ等はどうでしょうか」
「ふむ、任せて下さい…腕によりをかけますから」

……俺はだレダっけ、何ダ…頭がイタい、眠イ……ワカラナイ

諦めテ眠ロウ…キット…これはワルい夢だ

……………――

…………――

………――

……――

…――

「にしても…牛とはいえ元は人なのに件さんは、食べる事に抵抗とかないのですか?」
「…元はそうでも、今は牛なのにかわり有りません。
……家畜の過去など黒服さんは気にしますか?
基本的に食すのに感謝はしたとしても、家畜なんかに同情なんて持たないでしょう?」
「フフフ、そうですね…貴女のその割りきる所嫌いじゃないです。
では、これからも組織にあだ名す危険分子は根こそぎ喰らい尽くしていきましょう」
「えぇ……取り敢えず今日は遅いですからお開きに……御馳走様でした」

夜の町で閉店と書かれたプレートが風に吹かれて揺れている


【終わろ】
372 :「ただいま」 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/08(月) 11:39:40.30 ID:WubXltgAO
「――!!」
 極が跳ね起きたのは、学校の保健室のベッドだった。
「あ、センパイ」
 起きたんすかとカナタがのぞき込んでくる。
「・・・夢、か?」
(わたしが創った、夢の世界へようこそ)
(夢の中での傷は、現実の痛み)
 夢であって夢じゃない。赤く染まった世界と、斧の手応えを思い出しかけてそれを振り切るように頭を振った。
「家の人、来てるっすよ」
 リジーが来たのかとカーテンの隙間から顔を出せば
「・・・ムーンストラック・・・さん」
「俺が電話を取った。リジーは買い物に出ていてな」
「・・・すみません。わざわざ」

 結局そのまま早退することになり、ムーンストラックと並んで歩く極の胸は重苦しかった。

 この手に掛けてしまった。夢の中とはいえ。

(夢の中での傷は、現実での痛み)

(ショック死もあり得るわよ?)

 ・・・もし、自分のせいでノイが痛い思いをしたり・・・死んだりしたら。
 彼は自分をどう思い、何をするだろうか。彼は生さぬ仲とはいえ、ノイの「父親」なのだ。
(父親・・・お父さん、か)
 ふと、夢の中でのノイの言葉を思い出す。

(あたしが、お父さまを殺した・・・)

 驚きはしたが、悲しいとは思わなかった。
「あんな男・・・」
 思わず声に出してしまった極を、長身のムーンストラックが見下ろした。
「あ、何でも」
 慌てて取り繕う極を見つめる彼の表情は、怪訝そうだがそれだけではない感情が揺らめいていた。
 それがどぎまぎして、なんだか居心地が悪くて、ふいっと極はあらぬ方を向いた。
 こんな気持ちになるのは、きっとあんな夢のせいだ。桐生院るり、とか言ったか。趣味の悪い。
 ふと、夢の最後に味わった、嫌な手応えを思い出す。これが人を手に掛けるという感触か。
―なんと重く、なんと厭わしいことだろう。
「極」
 声に我に返ると、ムーンストラックの手が極の肩に置かれていた。
「・・・皆、お前を心配している。悩みがあるなら相談しなさい」


 静かな公園の片隅で、極は夢の話をした。
 知らない砂漠、ノイの告白と謝罪、そして・・・自分が彼女を手に掛けようとしたこと。
 それに先だって、マタタビオフの日に、彼女を罵り、叩いてしまったことも。
「でも夢の中のそれは、お前の意志ではなかったのだろう?」
 確かに自分の意志ではなかった。でも、自分を操る何かに、積極的に抗うこともしなかった。
「僕は」
373 :「ただいま」 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/08(月) 11:40:49.89 ID:WubXltgAO
 もしかしたら自分は、本当はノイを―
 違うそんなこと考えてない。でも、ノイは、ノイのせいで、母さんも僕も不幸になって。
「―だから、あんな奴嫌いなんだ!でも・・・」
 そんな自分をジャガー人間達から守ってくれて。償いたいと言って、振り下ろされる斧の前に身をさらけ出して。
「それでも、あいつを許せない僕が、もっと嫌だ・・・」
「極」
 ふと、視界がふさがれる。背中にきゅ、と手が回り、暖かい感触―人の体温。
 抱きしめられているのだと、理解するまで少し時間がかかった。
「お前がそんなに思い詰めていたなんて知らなかった・・・すまない」
 ムーンストラックにとっては、ノイは我が子も同然だから。
 だから、嫌いなんて、許せないなんて言えば。彼は不快に思うと思っていたのに。
「・・・なんで、怒らないんですか?」
「極は、ノイを許そうとは、してくれているのだろう?」
 今はそれで充分だと、彼が極の頭に手を置いた。
 どれくらいぶりだろうか。こんな風に抱きしめられたり、頭を撫でられたりしたのは。
「だって、ムーンストラックさんは、ノイの『父親』なんでしょう?だったら、夢とはいえ、あいつを殺そうとした僕を、なんで―」
 もう一度、大きな掌が極の頭を撫でる。
「・・・お前は、ノイの兄だろう?・・・ならば。俺にとっては、お前も息子と同じだ」
 子の過ちを赦さぬ親はない。その穏やかな声音に、極の堪えに堪えていた涙腺が決壊した。
「・・・っく、ごめ、なさ・・・っ・・・」
「・・・今まで、辛かったろう・・・俺たちもお前に配慮が足りなすぎた。済まなかったな」
「うっ・・・ひ、くっ・・・ぇ」


「近いうちに、母さんの墓参りに行ってきます」
 いつの間にか日は傾きかけ、公園の手洗い場には長い影が落ちていた。
 涙に濡れた顔も、赤く腫らした目も、水道で洗い流して少しはすっきりしたはずだ。
「母さんの墓前で・・・ノイを赦しますと言ってきます」
 こんな自分を、永いこと彼の『子』を、恨みつらんで来た自分を、我が子同様と・・・その気持ちも、した事も赦してくれた。
 なら、今度は自分が赦さなければ。彼の「赦し」に応えるために。
「俺はこれから、ノイを迎えに行ってくる・・・いいか?」
「じゃあ、僕も」
「いや」
 彼の両肩をムーンストラックが軽く押しとどめた。
「極は先に帰って、あれが帰ってきたときに、『お帰り』と言ってやってくれ」
374 :「ただいま」 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/08(月) 11:42:16.00 ID:WubXltgAO
「あ、いたいたー!」
 二人ともー!と駆けてきたのは柳だった。
「タイミングのいい奴だ」
 ムーンストラックはふんと鼻を鳴らした。
「これから、ノイを迎えに行くそうですよ」
 どこか吹っ切れたような笑顔に、柳はなにかしらあったことを悟ったが、それを敢えて突っ込みはしなかった。
「ホント!?じゃあ俺も行くよ」
「待て、極は学校で倒れたのだ。家まで付き添って」
「大丈夫ですよ」
 だから、柳さんは行ってきて下さい。そう彼の背を押して、極は鞄を手に家路についた。
 夕映えの空は、いつもより高く、明るい気がした。


「ノイちゃん、お家に帰るの?」
 よかったね、と笑顔の紫。
「まーったく、あれだけ帰れないのなんのって騒いどいて、現金なもんよね」
 いささか呆れ顔なのは緋色で、ウラシマが小声で窘めた。
「また何かあったら、何時でもおいで」
 にこにこ顔でノイの頭を撫でるのは新橋蒼。
「まあ、そうそう何かあったら困るけどねー」
「全くだわ兄上。このおチビのおかげで私のお菓子のストックがどれだけ減ったか」
「チビじゃないもん!」
「ノイ・リリス!『お世話になりました』だろう?だいたい、よそで菓子などむやみに貰ってはいかんと」
「いーじゃないの、お菓子は女の子の生きる源よ」
 つまんない男ねぇと呟いたるりが、薔薇を象った焼き菓子をどこからともなく出してノイに手渡した。
「わ!これ、一番おいしかったやつだ!」
 ありがと、とにこにこ顔のノイに、ホント現金ねぇとるりが苦笑する。
 同じ年頃に見える二人だが、そういった表情の仕方を知っている分、るりの方が幾分大人びて見える。
375 :「ただいま」 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/08(月) 11:43:34.19 ID:WubXltgAO
「じゃー帰るね。お世話になりましたっ」
 ぴょこん、とノイが頭を下げると、踵を返して「家」の方へ歩いていった。角を曲がるまで、何度か振り返りながら。


「ノイ・リリス。何か食べたい物とか、欲しい物はないか」
 日頃厳格な彼がそんな事を口にしたのは、やはり居なかった間は心配で、
 久しぶりに顔を見たら甘やかしてやりたくなったのだろう。
 柳はそっぽを向いてこっそり笑った。こんな顔をしているのを見られたら大変だ。
「あのね、あたし明日はお勉強も、何のお稽古もしたくない!一日テレビ見て、マンガ読んでゲームしたいの!」
「明日だけ、な」
 やったあと歓声を上げた少女は、それでは満足できなかったらしい。
「あとね、コーラ飲みたい、ピザとかハンバーガーとか、お腹いっぱい食べたい」
 「炭酸飲料やジャンクフードは、子供には良くない」とはいささか価値観が前時代的なムーンストラックは固く信じていた。
「・・・明日だけ、な」
「ねえ知ってる?あんまりジャンクフードとか、炭酸飲料を親が制限しすぎると、よそにお呼ばれした時に貪るようにそういうのを食べる子になるんだってよ?」
 そうなったら恥ずかしい思いをするのはノイちゃんだよね、可哀想だよねえ、と柳が援護射撃をはかる。
「大体ノイちゃんが食べられないのに、俺だけ食べるわけにも行かないし」
 俺だってハンバーガーやコーラ、好きなんだけどな、と柳が軽い調子で言うと、赤毛の男の眉が不機嫌そうに寄った。
「・・・月に一度くらいなら」
「もう一声!」
「・・・あ」
 元気の良かったノイの歩みが止まる。その視線の先には。
「極、リジー・・・」
 極より先に、リジーがつかつかと歩み寄る。ぎゅっと眉根が寄り、眼光は険しく、先程のムーンストラックより、数十倍も不機嫌そうに見えた。
 女性としては長身のリジーは、ノイより遙かに背が高い。
 彼女を文字通り見上げながら、ぶたれるだろうか、と少し身が竦んだけれど。
「・・・お前を、赦す」
 その言葉にはっとしたノイはリジーを見上げる。
「イタル様が、お前を赦すとおっしゃった。私はお前が嫌いだが、イタル様の意志は私の意志だ」
「リジー・・・」
 それ以上言葉が続かず異母兄の方を見ると、顔をふいっと背けた。けれど。
 小さな声だったけど、はっきりと聞き取れた。
「・・・お帰り」
376 :「ただいま」 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/08(月) 11:44:56.71 ID:WubXltgAO
 涙があとからあとからこぼれ落ちる。声は嗚咽で言葉にならない。

 ああ、あたしは。
 この家に上がって。
 靴を脱いで。
「ただいま」って。
 言っても、いいんだ・・・



続く
377 :体育の日 1/4 [saga]:2012/10/08(月) 16:06:37.25 ID:GIU8vTfW0

妹   「今日は運動会です」
姉   「お弁当〜たくさんお稲荷さん握った〜」
管理人「よしごくろう! さっそく小学校へGOだ!」

妹   「かなこちゃんの小学校は今日が運動会。体育の日に合わせたんですね」
姉   「かなこちゃんのお母さんは私たちのアパートの管理人さんなんだよ〜」
管理人「お前たち、どこに向かって話しているんだ」

姉   「ちなみに旦那さんは長期出張中で、管理人さんは色々持て余し気味の団地妻、さんじゅ……」

   ゴ ッ チ ン

管理人「話を作るな!! あと年齢を言ったら泣かすぞ!!」
姉   「ゴミンニャチャイ 。・゚・●ww●・゚・。」ウルウル

妹   (はぁ……)

378 :体育の日 2/4 [saga]:2012/10/08(月) 16:07:10.45 ID:GIU8vTfW0

妹   「小学校に着きました」
姉   「かなこちゃん達の出番は午後だったっけ」
管理人「校舎裏でお昼の待ち合わせしようって話だったけど……まだ来てないかな?」

かなこ「おかあさーん!」

管理人「お、来た。……ん?」
姉   「二人多いね」

かなこ「おかあさん、あのね……この子たち、今日はお父さんもお母さんも来てないから、一緒にご飯食べようと思うけど、大丈夫?」
管理人「大丈夫!お弁当たくさん作ってきたから!」

花子 「あ、えっと、かなこちゃんの……お友達の、花子です」
闇子 「同じく! やみ……」フギュ
闇子 (むがー むががー)
花子 「え、えっと、この子は私の妹のぽんちゃんです……」
闇子 (ちょっと! ぽんちゃんってどういうことよ!?)
花子 (闇子ちゃんは黙ってて!)

管理人「かなこ、この子たちはクラスのお友達?」
かなこ「え、う、ううん、別の小学校のお友達なの」チラッ
花子 「」コクコク
管理人「ふーんそっかあ。まあ、ちょっとシート広げるから待ってな」

管理人「おいアキホ!」
姉   「はいはーい、シートシート……あれ、どこだっけ」ガサゴソ

花子 (お久しぶりです、トウカさん)
妹   (ほんとだね、元気そうでなによりだよ)
花子 (あの……今日は陣内さん家の花子さんは)
妹   (陣内さんと花子さんは夏から家を空けてるの。だからまだ帰って来てないんだ)
花子 (そうだったんですか……)

妹   「あ、この二人は、かなこちゃんの通う小学校の『花子さん』と『闇子さん』です」
闇子 「そうよ! 私には闇子というちゃんとした名前があるの! だからぽんちゃんなんて変な名前……」フギュ
闇子 (むががー むががー)
花子 (声が大きいよ闇子ちゃん!!)

管理人「おーい、何やってんの。トウカ、ちょっとお弁当広げるの手伝って。アキホ、みんな連れて手を洗ってきな」
姉   「ういー」

379 :体育の日 3/4 [saga]:2012/10/08(月) 16:08:44.65 ID:GIU8vTfW0

妹   「お昼が終わって、かなこちゃん達の出番を待っています」

  〽 ぼくらはかがーやくー たーいよーのーよーにー

妹   「歌が終わったら、かなこちゃん達学年のクラス対抗リレーです」

  〽 つきーすすーむー ひーかりーのっやー

花子 「かなこちゃん、いいなあ。あたしもリレーしてみたいなあ」
闇子 「花子は足が遅いから私が勝つわね!」エッヘン
花子 「私は遅くないですよーだ。闇子ちゃんより速いですよーだ」ベーッ

  〽 ごーごーごー しろしろしろー

花子 「でもリレーに出られなきゃ比べっこのしようがないね」ションボリン
闇子 「あんた、あの中に紛れたらリレーに出られるんじゃない? わかりっこないし」
花子 「そういうの、よくないよ……」

  〽 あーかー (しーろー) ぐーみー

管理人「うん? かなこがこっちに走ってくるけど」
姉   「あと一人、誰かが走ってくるウオー」
管理人「あれはかなこの担任だよ」

かなこ「はぁはぁ、花子ちゃんとやm、ぽんちゃん! 一緒に走ってくれない?」
花子 「ふぇ?」
闇子 「いいの!?」
担任 「実は、主力の男子たちが昼休みに実行委員の仕事で振り回されたらしくて、疲労困憊ギミで……」
担任 「しかも、人数多いクラスの頭数に合わせるのを、すっかり忘れててですね……」

花子 「で、でも……私、運動着じゃないし……ゼッケンも付けてないし……」
かなこ「上着なら持ってきたよ!」
管理人「んじゃ、ゼッケンは安全ピンで止めよう、かなこちょっと貸しな」
担任 「これで二人……、ああでもあと一人足りないどうしよう……」

姉   「じゃあ、私も出たい」
管理人「……先生、いいんですか?」
担任 「うちのクラスの父兄と関係者であればなんとかなります!」
管理人「じゃあアキホは服に直接ゼッケンを付けよう」


花子 「え、えへへ……なんだか嬉しいな」モジモジ
闇子 「走って来るわ! ペチャンコのガキ共に負けないんだから!」
姉   「妹ちゃん、応援よろしくー」
かなこ「おかあさん、行ってきます!」

管理人「みんなー、しっかりやれよー」
妹   (い、いいのかなあ、こんなんで)

380 :体育の日 4/4 [saga]:2012/10/08(月) 16:10:07.92 ID:GIU8vTfW0

 かなこちゃんのクラスは奮戦しました。
 花子ちゃんも闇子ちゃんも一生懸命走っていて、とても可愛かったです。

 姉さんはすごく大人げなかったです。小学生相手に本気で走るなんて。
 でも、全員をゴボウ抜きしてトップを走っていたのに、バトンを渡す直前に二度もコケたので、
 ビリになってしまいました。これでプラマイゼロかな、と思います。

 結局、かなこちゃんのクラスはビリから二番目でしたが、
 クラスのみんなも楽しそうに姉さんをモミクチャにしてたので、これでいいかな。

 個人的には、花子ちゃんの満足そうな笑顔を撮ることができたので良しとします。



381 :体育の日 [sage]:2012/10/08(月) 16:15:35.72 ID:GIU8vTfW0
お久しぶりです。そしてみなさん乙です。
全然「都市伝説と契約した能力者達……」してない話ですが、よろしくお願いします。
流すように読んでもらえるだけでもうれしいです。急いでいるのでこの辺で。

少女と黒服はすがすがしくない方の外道ですね。
鳥居の人、一区切りになると思いますが、本当に乙です。
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 16:25:21.81 ID:2kByrJRDO
皆様投下乙ですー

イタルくん、荒療治だったけれど前に進めてよかった
あとはみんなで手を取り合って幸せ家族計画ですね!
……モウクモラセヨウソハナイヨネ(ボソッ)

これは懐かしい名前が
相変わらず平和な日常を謳歌しているようでなによりです



体育の日あわせの単発……なにか使えるものあったかな
帰ったらネタ帳掘り返してみよう
383 :大王番外:未知との遭遇 ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/10/10(水) 18:19:49.85 ID:olYSRcyD0
勇弥「まさか、こんな所で出会うとはな……。」
楓「まったく、世も末だな。」

楓「『都市伝説の密売』、そのような噂も聞いた事があったが……。」
勇弥「こんなに堂々と、ひと気の多いスーパーで行われているとは。カモフラージュか?」
楓「いや、一般人に買わせて、何かを企んでいるのかもしれない。」
勇弥「そう考えると、ここは絶好の場所だな。」

勇弥「よし、ここは正義達を呼んで」
楓「待て。黄昏達に頼りすぎるのはよくないだろ。」
勇弥「十文字さん……。」
楓「今回は、私達だけでやろう。」
勇弥「……おう!」

正義「なにやってるんだろ、あの2人。」
奈海「さぁ……?」





[ファンタ・アップル:78円]





大王「……ゴールデンが抜けてるぞ。」
「「「あ。」」」
384 :名無しNIPPER [sage]:2012/10/11(木) 03:25:08.97 ID:Pjp6/pvu0
正義と奈海はあくまでプラトニックな関係なのか
そうか
385 : [sage saga]:2012/10/11(木) 22:26:41.09 ID:wmezJ7OB0
我が名は「金花猫」。突然だが今から人類を支配しようと思う
我々の同士を虐める人間が甚だ許し難いからだ
人間共を支配し、同士共々平和に暮らせる世界を作り上げてやる
人間に化ける事の出来る我にとっては容易い事に違いない
ようし、まずはあの小僧共かr

「あ、ネコだ!」
「かわいー♪」
「結構大人しそうだよ?」
「触っても大丈夫かな?」

え、いや、待て、テンション高すgあひゃうっ!?

「うわーもふもふするぅー♪」
「私も私もー!」
「ホントに大人しいね、飼い猫かな?」

飼い猫じゃなくて怪猫dあっらめっ、喉は弱いのぉ!

「気持ち良さそうな顔ぉ、可愛い可愛い♪」
「あ、仰向けになったよ!」
「お腹もやわらかーい♪」

にゃふっ……こんなのっ、嫌なのに………何でこんなに気持ち良いのっ………?
も、らめっ……堕ちちゃう………




数分後―――――




く、屈辱……酷い目に遭った……
…で、でもまぁ、人間も悪くない……かな?




   ...end/何これ?orz
386 : [sage saga]:2012/10/11(木) 22:28:05.68 ID:wmezJ7OB0
ちくしょおおおおおおお!!
猫をモフる単発書きたかったのに何か変な疾しい心がああああああああああ!?
何て事だ、戦ってないしそもそも都市伝説とか名前言ってるだけだし!
もうやだ! セフィロス倒してくる!
387 :ずっといっしょに [sage]:2012/10/11(木) 23:02:46.03 ID:jH72MYoWo

「トラを抱きしめる喜びを知りたがる人間のために、神は猫をお創りになった」
「唐突になにを言い出すのですか」
「つまり私がミーさんをなでもふっているのは、神のご意向なのだよ」

 草原に仰向けに寝転がる女性と、その胸の上で撫でまわされている猫。
 女性の顔はゆるみっぱなしで、ともすれば喜びのあまり泣き出しそうにも見える。

「単なるあなたの欲望でしょう。無神論者のくせに」
「信仰の自由ってすばらしいよね」

 女性が猫の腰の辺りをふにふにと揉むと、猫の体がぴくんと反応する。

「ふあっ……!?し、しっぽの付け根はやめてください!」
「いいねぇその反応。ぞくぞくするよ」
「ああ、なんでボクの飼い主はこんな変態なんでしょう……」
「猫好きはみな多かれ少なかれ変態なのさ」
「それは他の猫好きの方々に失礼だと思います」
「たしかに失礼かもしれない。だがそれが真理だ」
「言い切りましたね。怒られても知りませんよ」

 女性は猫の顔を優しく撫でながら、猫の目をみつめる。

「ミーさん」
「なんですか」
「キスしてほしいな」

 猫は飼い主の胸の上を渡って顔に近づくと、ピンクの鼻を飼い主の鼻の頭にくっつけた。

「ふふっ。はじめてミーさんからキスしてくれたね」
「イヤというほどあなたの方からされてましたからね。ボクの方からする必要がなかっただけです」
「あー、たまには引いてみるべきだったか。失敗したなぁ」

 喜びとわずかばかりの悔しさを交えた笑みを浮かべながら、女性は猫を抱きしめる。
 しばらくそうした後、女性は猫を地面において立ち上がった。

「じゃあ再開の喜びも満喫できたし、そろそろ行こっか」
「そうですね。……みなさん、お世話になりました」

 おめでとう
 達者でな
 幸せにね
 楽しかったよ
 またむこうで会おうね

 犬猫にはじまりウサギやハムスター、はたまた馬や蛇にいたるまで、辺りにいたあらゆる動物がその猫に声をかける。
 それらの動物たちに見送られ、猫は飼い主の足に擦り寄りながら、七色に光る虹の橋を渡っていった。


【終】
388 :ずっといっしょに [sage]:2012/10/11(木) 23:05:58.67 ID:jH72MYoWo
仕事が早いぜシャドーマンの人
これでも急いだつもりだったんだけどなぁ……
ちなみに猫の都市伝説ではないのでお題消化の意図はありませぬ

とまれ単発猫祭り、始まるよー!
というか始まれえええええええええ!!!
389 :しっぽ [sage saga]:2012/10/12(金) 03:28:02.36 ID:VMIv95ZP0

「だあ、だあ」

 赤ん坊が、黒のデブ猫のしっぽを掴もうと手を動かしている。

 丸まったデブ猫の方は赤ん坊をあやすようにしっぽを振っていた。

 猫のしっぽは1本のはずだが、その猫は2本どころか3本生えている。

「いいこと、ぼうや」

 猫が口をきいた。

「大きくなったら、猫ちゃんをレンジに入れて乾かすような大人になるんじゃないわよ」

「はぁいぃ」

 猫の言葉を理解したのかしてないのか、赤ん坊はきゃっきゃと嬉しそうに声をあげた。

 猫はしっぽを1本、赤ん坊の前に差し出す。

「ウチ以外の猫ちゃんにやっちゃだめよ」

 赤ん坊はしっぽを握りしめると、夢中でおしゃぶりを始めた。

 その様子を眺めるデブ猫の眼差しは、愛しい子猫に向けるそれと、何ら変わる所はなかった。




おわる、いあ!いあ!
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/10/12(金) 09:24:41.40 ID:lwae5nLAO
>>377-380
乙ですー!お姉ちゃんドジっこ可愛いね!花子ちゃんと強気な闇子ちゃんも妹ちゃんもかわいいよ!

>>383
大王の人乙ですー
コンビニにあったファンタをしみじみ眺めちゃうそんな秋の日

>>385
シャドーの人乙ですー
怪猫ちゃん可愛いねぇ俺にももふもふさせてぇ大丈夫すぐきもちy

>>387
乙ですー
エロいのかと思ったら切ない系だった
なんかじんときましたです

>>389
乙ですー
これは猫又ちゃんかな?かな?
ほのぼのした気持ちになりました
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/10/12(金) 09:27:37.43 ID:lwae5nLAO
我が輩は猫である。名前はミケ。三毛猫だからミケ。
ひねりも工夫もないが、拾われて早2年、我が輩はこの名が気に入っている。
思い返せば2年前、死にかけの子猫だった我が輩を拾って帰ったご主人はまだ小学生。
定食屋を営む両親からは飲食店に猫なんてとこっぴどく叱られていたものだ。
それでも我が輩を家に置きたいと必死に庇ってくれたご主人のために、我が輩は一肌脱いだ。
「招き猫」―そう。我が輩はただの猫ではなかったのだ。
「ミケー!」
時刻は夕方。ご主人がセーラー服のスカートを翻して帰ってきた。
「ただいま、ミケ」
ご主人にぎゅっと抱きしめて貰う時間は、我が輩にとって何にも代え難いものだ。
「にゃあ」
我が輩は一声鳴いて店の入り口に向かう。食事時は我が輩の時間だ。

「あ、あの定食屋さん、猫がいるー!」
「可愛いじゃん」
「そういえばお腹空いたね、ここで食べていこうよ」
学校や会社帰りの人の足が、ご主人の両親の店に向く。
我が輩は彼らをちらりちらりと眺めながら時折ちょいちょいと顔を洗うふりなどして彼らを手招きする。
2年前、味は良いのだが近所の安価なファミレスに押されて潰れかけていた店を救うには、それで充分だった。
「あ、ねこちゃんだー」
「かわいー!」
夕飯時の店の喧噪には子供の声も混じりにぎやかなことこの上ない。
我が輩は満足して、ご主人の部屋にある猫ベッドで体を丸めた。
「今日もお店、大繁盛だったよ」
これならお前を大学まで行かせられるって、お母さんが言ってた。
「みんなお前のお陰だよ、ありがとう」
そういってご主人は、我が輩の長い毛をもふもふと撫でくった。
・・・我が輩の方こそ。ありがとう。ご主人。



END
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/13(土) 00:06:01.33 ID:iS2MM2Lg0
「ナァーウ」

「……そうね。あの子達の為にも、絶対に成功させなきゃ」

私は、足元にすり寄ってくるクロちゃんに頬ずりをする。
これからやろうとしている事に気付いているのか、分からずとも異様な空気を感じ取っているのか。
周りにいる猫達も、それぞれ不安そうな目でこちらを見上げてきた。

「大丈夫。すぐ戻ってくるから。おいしいご飯も、もうじきいっぱい食べられるから。……だから」

だから、安心して待っていて。
最後にそう呟いて、私は玄関のカギをかけた。



準備は万端。覚悟も決まった。目的地の前で、改めて帽子を深くかぶり直す。
さあ行こう。これからもずっと皆と、私が幸せに暮らしていくために。



「いらっしゃいませ…………お客、様?」

「強盗よ、今すぐお金を出しなさい!さもないと―――」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『……次のニュースです。学校町○○銀行にハロウィンの魔女のコスプレをした女性が押し入り、「金を出さなければ魔法で焼き[ピーーー]」などと局員を脅迫する事件が起こりました。通報を受けた警察が駆けつけた所……』


「うわ、何それ怖い。というかむしろ痛い。金を出さなきゃ焼き[ピーーー]って何だよ」

「ナァーウ」

「ああごめんごめん、ちょっとテレビ見てた。ほれ、いつもの奴」


ピチャピチャとミルクを飲む私の様子を見て、男がそっと目を細めた。
この男ともそろそろ半年近くの付き合いになるが、コイツほど我々を愛する人間はそうはいないだろうな。
一日おきに来ようが、一週間経ってから訪れようが、いつも私が来るのを同じ時間・同じ場所で待っている。
おかげで食事に困った試しがほとんどない。


『……「私は魔女だ、魔法さえ使えればお前たちなんか」と意味不明な言動を繰り返しており……』


「なーにが魔女だよ、んなもんこの世にいるわけねえだろ」

「ナァーウ……」

「っと悪い、つい大きな声出しちまった」


ごめんなーと言いながら、武骨な手が私の頭を撫でる。
程良い心地よさに包まれながら私は、








≪学校町黒猫同盟≫が一匹【下僕猫】たる私は、己の任務が成功した事を確認した。







『……速報です。先程報道した銀行強盗のニュースですが、犯人の自宅からケージに閉じ込められた数十匹の猫が発見された模様です。猫達はいずれも声帯を傷つけられ声を出せなくなっており、虐待を受けていた可能性もあるとみて……』




(終わりです。ゲリラ投下失礼いたしましたorz)
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/13(土) 00:16:43.64 ID:wp//e1QP0
こ、この線はほのぼのなのか
ケモノツキの人ならどう判断するかな…
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/13(土) 00:38:41.54 ID:iS2MM2Lg0
>>393
ほのぼのですよ?……この男にとっては
395 :ケモノツキ ◆kemono..Qk [sage]:2012/10/13(土) 00:55:02.64 ID:P5AWd92to
マンションなどで動物を飼う際に苦情対策として犬猫に声帯除去手術を受けさせるという手法は往々にして存在するのです

人のエゴ
よってこの女は有罪
猫の餌となって[ピーーー]
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/13(土) 01:25:35.17 ID:wp//e1QP0
>>394
さ、作者であるあなたにとっては…?

>>395
ぬ、ぬぅ
やはり
397 :小鳥と猫 1/3 [sage saga]:2012/10/14(日) 09:14:27.18 ID:I/MzGx9H0
ここは世間一般に都会と言われても差し支えない街

人口多分きっと恐らく数十万人

外から越してきたり突然消えたり人間じゃないのが人間として暮らしたりするから正確な数字は分からない

何も知らない一般ピープルとイカしたサングラスの黒服、殺人鬼、デカいマスクのお姉さんやバーコードハゲの犬、

派手なマントの変質者、迷子の医者、ロリコン、カニ歩きのお姉さん、おかっぱのプリティガール、魔法少女、

色んな人々が跋扈する広い意味で賑やかな街

そして、俺の暮らす街でもある

俺は鳥籠の中に住んでいる

俺の名前はマリン

青い羽がキュートなルリビタキのオスだ

でもただのルリビタキじゃない

その名も「幸福を呼ぶ青い鳥」だ

「マリ〜ン、ご飯ですよ〜」

ほら早速幸福が来た、わぁいご飯だご飯だ♪

美味しそうな白い実をぱくぱくと飲みこんでゆく

黒い実は不味そうだから投げ捨てた

そんな平和な時間を満喫していると、突然背筋に突き刺さるような視線を感じた

肉食獣がか弱い小動物を狙っているような視線だ

ふと、俺は窓の外に目を向けた

「にゃーお」

うわ、見た?見たネコたん!

黒い毛並みのネコが、開け放たれた窓に上って今まさに侵入せんとしていた

恐らく狙いは俺だろう

何故分かるかって? だって完全に俺見ながら涎垂らしてるし

「僕は美味しくないよー、大門さん家のネズミたんの方が遥かに美味しいよー」

ルリビタキ語が通じるかどうか分からないが必死の説得を試みる

というかノロイくんごめん

「そいつ食おうとしたらメスガキに追い回されたんだよ!!」

通じた、てかこいつ人語喋るのか、それより望ちゃんにこっぴどくやられたな?ざまぁ

じゃないや、もしかしてこれ八つ当たり?

「もう我慢できねぇ、俺の朝飯ぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

黒猫が俺の籠目掛けて飛びかかってきた

マジで八つ当たりだ!助けてママン!!

「こらドラ猫!! 私の可愛いマリンに何て事するの!!」

黒猫の身体にご主人の振った箒がジャストミート!

そのまま黒猫は窓の外へ! 大きい!大きい!ホームラン!!

というかマンホールにホールインワン! 哀れなネコたんね
398 :小鳥と猫 1/3 [sage saga]:2012/10/14(日) 09:15:25.45 ID:I/MzGx9H0
しかし数時間後、あの黒猫が帰ってきた

…なんかめっちゃ傷ついてる

流されただけであんな生傷つくかな

「あー、どったのセンセー?」

「酷い目にあったぜ、下水道に落ちたと思ったらワニに追いかけられるわ、腹空かせたガキに追いかけられるわ…

 それもこれも皆お前の所為だからな!」

どう見ても逆恨みです、本当に有難う御座いました

と、何時の間にやら黒猫は大きなマジックハンドを手にしていた

いやいやホントに何時の間にだよ、何処から出したんだよどっかのドラ服かよ

あとしれっと二本足で立ってんじゃねぇよお前ネコだろ

そしてそのマジックハンド何だよ

「ニャヒヒヒ、従兄弟のレチナルドに貰った文鳥鹵獲用マジックハンドさえあれば!覚悟しろ朝飯!」

誰だよレチナルドって

つか従兄弟ってことは同じネコだろすげぇなレチナルド

あれ、でも文鳥用?

待て待て、このままじゃ今度こそ食われちまう

「待って待ってよネコたん、僕なんかより何処かの教会にいる角の生えたウサギたんの方が脂が乗ってるかもよー」

これも生きるためなんだ

ジャッカロープさんごめん

「この間そいつ狙ったら狼の化物に追いかけられたんだ!」

マリさん怒らせたのか、マジざまぁ

「それもお前の所為だからな!」

日本語でおk

とか何とか言ってる間にどんどん近付くマジックハンド

あぁ、ご主人、先立つ不幸をお許し下s―――待て、不幸なら俺の力で捻じ伏せられる筈だ!

やっぱダメだ! 不幸じゃなくて不孝だった!

「ふに゙ゃー!?」

変な声

あれ、マジックハンドが落ちてる?

「ごめんねー、野良猫に街をうろつかれると困るんだ」

白い服を着た清潔そうなツルピカハゲに首根っこを掴まれる黒猫

足をじたばたさせるも抵抗空しく、奴は狭い檻の中に投獄された

ぶろろろろ、と車が家の前を走り去る

排気ガスで咽てしまったが、結果オーライ、かな? 何にせよ哀れなネコたんだ
399 :小鳥と猫 3/3 [sage saga]:2012/10/14(日) 09:15:57.61 ID:I/MzGx9H0
星が瞬く頃

偶に家の前を歩く白い髪のロリ巨乳が歌ってるのに感化されて買ったモーツァルトの『レクイエム』を聴きながら、

「もうあのネコたんも懲りただろう」と思いつつ俺は白い実を呑みこんだ

それでも、夜空に不気味に浮かぶ猫目月を見ると、何だかまた来るような予感がする

「悪かったな、また来てやったぞ!」

もう来なくて良かったのに、性懲りも無い奴だ

さっきより傷が増えてる気がする

「どんどんボロボロになってくねー」

「うるせぇ! こっちは危うくキャットフードになるところだったんだぞ!」

「綺麗に今日もキメちゃって だからね濡らさないで 見上げた顔にかけないで 突然の夕暮れrainy♪」

「そのキャットフードじゃねぇよ!!」

折角気晴らしになるかと思って歌ってあげたのにかなり気が立ってる様子

というか何か取り出した、何あの近未来チックなサイボーグちくわみたいの

「今度こそ、この従兄弟のレチナルドに貰ったソーラー式ビーム焼き鳥砲で美味しい晩飯を頂いてやる!!」

マジで何者だよレチナルド

てかビームで焼き鳥とは随分豪快だな

ソーラーって、月しか出てないけど良いのか?

ガンダムXのサテライトキャノン的な?

「もういっそ誰かにご飯貰ったり遊んで貰ったりした方が良いんじゃないかなー

 ほら、東区の包帯巻いたお姉たんとか猫好きだし」

恋たん可愛いよ恋たん

というかレチナルド、へんちくりんな道具じゃなくて飯分けてやれよ

じゃねぇよこれ俺今度こそピンチじゃね?

神様仏様、祟り神でも雷使うハーレムエロ爺でも這い寄る混沌でもロリコンでも誰でも良いから誰か助けて

「ニャハハハハ! 焼き鳥ビーム発ssy」

「あ、見て下さいネコさんですよ!」

「あぁ、ネコなのは分かったがそれより二本足で変なおもちゃを持ってる事に注目して貰おうか

 あと今完全に人語喋ってたろ」

ロ リ コ ン が 来 た ! !

最近は嫁さんと仲良くやってるようで何よりだ

「うにゃ!? にゃ、にゃーお」

「ネコさんが猫被り始めましたよ?」

「新しい都市伝説か…? まあ良いや、捕まえて本部で調査しよう」

逃げようとしたネコたんが影から伸びた黒い腕でがっちり絡めとられる

ネコ相手に容赦無さすぎるぜ虹のお兄たん

「に゙ゃーーーーーーーぁ!!!」

断末魔に似た怒りの籠った声が響き渡った

今日も1日幸福が訪れて良かった

でも、退屈しない日々が続いてる事も、一つの幸せなんだよね

どっとはらい
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/14(日) 09:23:23.48 ID:I/MzGx9H0
新参でーす………な訳ないでしょ(

どいつもこいつも泣ける話ばっかり書きやがって!
ほのぼのってぇのはこう書くんだ!
ほのぼの大魔神の力を見せてやる!



…と意気込んだ結果がこれだよ
おかしいな、ネコ単発祭りなのに完全にルリビタキが主人公だ
そしてはないちもんめの人、花子さんとかの人、プラモデルの人に焼き土下座orz
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sagasage]:2012/10/14(日) 18:02:04.74 ID:I3g+Bgm2o
「ではこれより、実証実験ケース139を始めます」

僕にはこの白衣の人たちが何を言ってるのかよく分からない。
記憶の海を辿ってもご飯を漁っているゴミ箱の近くで急に記憶が途切れ、
気がついたときにはせまくて暗い鉄の箱に無理矢理つめこまれていた

「契約予定者はレンジの前へ。各種記録装置、起動。では……始めます」

と、急に暗かった箱の中がアレンジの光で明るくなった。
一緒にぐるぐるとまわりの壁が回り出す。いや、これは足元が回ってるのかな?

「契約予定者、状況は?」

「まだ何も……もう少し続けましょう」

やっぱりこの人たちは何を言ってるのか分からない。
それにしても、なんだか体が変になってきた。
なんだか体の内側が引っ張られるような……なんだろ、これ……

「!きました、都市伝説です!」

「よし、再現度に引き寄せられたか!契約予定者はスタンバイ!」

なんだろう、周りはバタバタしてるけど、今はそれどころじゃない。
目はぐっと詰まるし、髭もピリピリする。喉の奥が熱くなる……

「よし、準備完了!いけます!」

「ようやくこの時が来たな……これで契約者が量産できる。組織との抗争も、我らの勝利だ……!」

あいかわらず何を言ってるか分からない。僕は出してほしくってさっきから鳴いてるけど、この人たちには聞こえないのかな?
やばい。体中が熱くなってきた。熱い、熱い、熱い熱い熱い熱い熱い---------------!!
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sagasage]:2012/10/14(日) 18:02:34.81 ID:I3g+Bgm2o
「はい、もう大丈夫よ。」

ガチャ、という音ともに、回転とオレンジの光がやんだ。
そして気がつくと僕は、知らない男の人に抱き上げられていた。

「お、おい、太田君!何やってるんだ!」

「我らの悲願を無駄にする気か!」

その言葉を聞いて、振り向いた眼鏡をかけた男の人が、にやりと笑う。

「ああ、この人、太田さんって言うんですか。それは知りませんでした……もう戻していいわよ、ドッペル。」

そして、眼鏡をはずした瞬間-----------その人は、黒髪のロングヘアの女の人に変わっていた。
よれよれだった白衣はいつの間にか糊の効いた黒いスーツに変わり、どこか耳障りだった声は落ち着いた女性のそれになっている。
そして、眼鏡を外したその手には……いつのまにか、黒光りする銃が握られていた。

「黒服!?組織か、ぐあっ!」

「どうやってここに……うぐっ!」

その女の人は、僕を左手に抱えたまま、右手に構えた銃で混乱する白衣の人達を
次々撃ち倒していった。しかも、常に微笑を浮かべている。

「畜生……死んじまえっ!」

その時、足を撃ち抜かれて倒れていた人が、いつのまにか銃を構えて黒服のお姉さんを狙っている。

僕は、「危ない!」と叫んだけど、お姉さんには「ニャー!」としか聞こえなかったようだ。

そして、お姉さんの背中に向けて銃弾が放たれた---------------。
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sagasage]:2012/10/14(日) 18:03:00.81 ID:I3g+Bgm2o
「…………………………え?」

「…………………………あら?」

何が起こったかは分からなかった。ただ、僕が‘弾よ止まれ’
と念じた瞬間、何故か弾丸が空中で爆発四散したのだ。

「な……なんで、なんでだよぉっ!」

「変ね……ドッペル、あなたこんな力があったなら早く言いなさいよ」

落ち着いているお姉さんと違い、男の人はパニックになっているようだ。
そのまま何発も銃を乱射しているけど、全ての弾丸はやはり空中で爆発する。

「クソッ……どうなってるんだ……うっ?」

その時、男の人が急に頭を抱えて苦しみだした。
口を酸欠の金魚のようにパクパクと動かし、目は飛び出しそうなぐらい見開いている。

「オ……オレンジの………光が………熱い……」

そう、呟いた次の瞬間。男の人の体は、木端微塵に爆散した。


「これはどうするべきかしらね、ドッペル」

僕とお姉さん以外、動くもののいなくなった部屋。
そこで僕は、お姉さんに銃を突きつけられていた。

「私としては猫さんは助けてあげたいけど、都市伝説を見逃すわけにもいかないのよね……」

ここまで強力なら、なおさらね。そう言って、お姉さんの指が引き金にかかる。
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sagasage]:2012/10/14(日) 18:03:49.94 ID:I3g+Bgm2o
その時だった。この場面にそぐわない軽快なメロディが流れ出す。
この曲はたしか、今流行りのアイドルの新曲だったかな?
暇なときは電気屋のテレビの前で昼寝をするのが日課の僕には聞き覚えのある曲だ。

「はい、もしもし……ああ、はい。ええ、一応任務は遂行しました。」

お姉さんは、こちらをチラチラ眺めながら電話をしている。
電話を持っていない方の手で弄んでいる銃は、大丈夫なんだろうか。

「はい……はい。え……部下が交通事故?ホントですか、それ?」

と、急にお姉さんの声のトーンが変わった。何かあったのだろうか?

「はあ……しばらく一人でやれ、と。そうですか……」

お姉さんがはあ、とため息をつく。と、その時僕とお姉さんの目があった。
途端、お姉さんの眼が輝き出す。

「それなんですがね。実は今眼の前に活きのいい契約者がいるんですが。
はい?いや、排除対象っていうより、救助対象なんですかね。
それでですねー。どうも助けて貰って恩を返せないのは嫌だと。
そこでですね、一時的に部下としてスカウトしたいんですが……はい?」

と、急にお姉さんが僕をひっくり返し、後ろ足を無理矢理開いて間をのぞき込んできた。

「男の子ですね。え、年ですか?大体2さ……じゃなくて、中学生ぐらいです」

お姉さんは話を続けているが、僕には何がなんだかさっぱりだ。
それよりもなんだかオナカが空いてきた気がする。

「はい……はい。分かりました。ええ、注意します。はい……はい!ありがとうございます!」
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sagasage]:2012/10/14(日) 18:04:16.16 ID:I3g+Bgm2o
「よかったわね、猫君。これで処分せずに済みそうよ」

お姉さんはニコニコしているが、何かいいことでもあったのだろうか?

「さて、じゃあこれからの二人の門出を祝うって意味で、何か食べに行きましょうか?」

食べ物?そう聞いた途端猛烈に腹の無視が鳴いた。
それを聞いたお姉さんがさらに楽しげに笑う。

「フフ……じゃあ行きましょ。“レンジ猫”君。」

なんだか分からない名前で呼ばれた気がするが、気にならない。
それより、あったかいお姉さんの腕の中にいると眠くなってきちゃう。

これからどうなるかはまったく分からないけど、とにかく今は寝ちゃおう……zzz



おしまい
406 :「あなた、誰?」 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/14(日) 22:09:14.30 ID:ZsR7abxAO
「ノイ・リリス!英語のレッスンの時間だぞ!どこで何をしている!」
 その声はこっそり家を抜け出した少女には届かない。
 極は高校へ登校し、リジーは家事に勤しんでいる頃、新田家の遊び人組―飛縁魔とノイは学校町の繁華街にある昔ながらのフルーツパーラーで仲良くパフェをたしなんでいた。
 ちなみに柳は同行を拒絶され、敢えなく留守番と相成っている。
「しっかし、お嬢ちゃんが『アレ』を拒否するとは思わなかったわねー」
「そーですか?ボクにはむしろ当然に見えたですよ」
 なぜかちゃっかり同席し、ノイと同じプリンアラモードをつつく幻。
 飛縁魔の言う『アレ』とは―

 ノイが新田家に帰った日。
「みんな、お休み」
「ノイ・リリス、休む前に・・・」
 ムーンストラックがノイの額に手を当てようとする。何をしようとするのか一同は瞬時に悟ったが、皆敢えて止めようとはしない。
 が、小さな手が彼の大きな手を押しとどめた。
「いいの」
「ノイ・リリス・・・?」
 今までにないくらい真剣な面もちで、少女は男を見上げる。
「あたし、忘れたくない」
「全部忘れない。ちゃんと背負って生きていきたい。お父さまとお母さまのこと。その他にも、奪ってしまったいのちのこと。イタルのお母さまのこと」
「もう大丈夫。あたしは背負って生きていける。だから、あたしの記憶をこのままにしてください」
 ノイが深々と頭を下げる。その頭にぽんと大きな手がおかれた。
「・・・わかった」
 お休みなさいと笑って踵を返した少女の背に、彼自身にしか聞こえない程の呟きが漏れる。
「何もわからぬ子供だと思っていたのにな・・・」

「ごちそーさまー!」
 飴色に古びた喫茶店のフロアに少女達の声が響く。
「ボクも完食したのですよ!次はホットケーキが食べたいですよ!」
「あたし、イチゴパフェ!・・・と、その前に」
 ちょっとおトイレ、と些か気恥ずかしそうに、ノイが席を立った。

 手洗いには先客がいた。
 背を向けて鏡に向かっているから顔はわからない。それでも―
 それでも、先客の服装がノイと寸分違わず―帽子まで同じであることに気づかない訳ではない。
「あ」
 お揃いの服の先客がゆっくりと振り向く。
「あ・・・?」
 これはただの人ではない。ノイは戦慄にも似た感覚を覚えた。
407 :「あなた、誰?」 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/14(日) 22:09:49.00 ID:ZsR7abxAO
 服装どころか、顎で切りそろえた黒髪、大きな薄青い瞳、全てが小作りな体格―
―何もかもが生き写しのように、ノイに瓜二つだった。
「あなた、誰?」
 そう問うたのはノイではなく、瓜二つの少女の方。
「あ、あたし・・・ノイ・リリス・マリアツェル!」
 答えを返された少女は、ふふと花のように笑った。
「そう。じゃね」

「ただいま・・・」
「ノイー!おせーですよ!アイスが溶けちまうですよ?」
「あ、うん!」
「どしたのお嬢ちゃん、・・・具合でも悪いの?」
 飛縁魔が心配げに、ノイの顔をのぞき込む。
「あ!う、ううん?」
 少々ぼうっとしていたような少女は慌てて頭を振り、ホットケーキの置かれた席に着いた。

「仕掛けは終了、ですわ」
「そう、よくやってくれたね」
 色素の薄い青年―新橋蒼に駆け寄ったノイと瓜二つの少女の頭を、蒼は目を細めて撫でた。
「『組織』と関係のないところで動いていてくれたなら、強行手段が取れたんだけどね」
 あろう事か上層部と繋がりが出来たから、厄介なことになってしまった。
 呟く蒼の腕を少女が取る。
「私がいる限り心配は要りませんわ、蒼さま、目的のことだけをお考えなさいませ」
「ただ―あの子は契約者だ。契約している都市伝説の目だけは誤魔化せないね」
「ええ、それは何とかしないといけませんわ」
「・・・まあ、いいよ。時間はまだあるし、他にも排さねばならない要素はあるからね。君は予定通り続けて」
「かしこまりました」
 少女は頷くと、繁華街の雑踏にその姿を消した。



続く
408 :「あなた、誰?」 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/14(日) 22:11:19.95 ID:ZsR7abxAO
みなさん乙です。感想は後ほど。
とりあえず先々へのとっかかりだけ作って、暫くは気楽な短編を続けます。
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/10/15(月) 00:25:04.37 ID:INDwDDDAO
>>392
プラモデルの人乙ですー
自腹で飼えないほどの猫様を家に置き、声帯手術とな…
動物虐待で極刑を!

>>397-399
シャドーマンの人乙ですー
ジャッカロープたんやらノロイたんやらに喧嘩売ってなお無事な猫たんの方がなにやら最強な気がする

>>401-405
乙ですー
お、お姉さん…
猫さんの〔ピー〕を何のためらいも無しに…恐ろしい子!
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/15(月) 00:29:54.65 ID:6daUe9j00
鳥居の人乙です
ノイちゃん…英語…?この子何か国語勉強してんだ
そしてこのο-No4の演出がまたワルそうな感じで
411 :シャドーマンの契約者  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/15(月) 00:49:30.77 ID:X1g8mm1J0
胸糞悪い……あんなのと三連戦とか鬼かよスクエニ……
酒飲む前に皆様乙ですの、そして溜まりに溜まった感想をば

>>387
わぁいほのぼの、と思ったらオチでぎゃあああ(落ち着け
どうか末永くお幸せに…

>>389
これは新しい
人間の赤子×猫又♀とか新しい……なんか萌えてきた!!

>>391
中学生の飼い主さん可愛い!!
じゃなくて招きネコさんカッコ可愛い!!

>>392
ネコのネコによるネコの為の天誅……
とうとう黒猫軍団が本気を出し始めたか(ガタッ

>>401-405
レンジ猫が処分されなくて良かった、黒服姉さん可愛いせくしぃ(
個人的にネコがレンジに入れられた時の情景描写が凄く良いと思った、俺はこんなの書けへんわ…

>>406-407
成長したねノイたんカッコいい、でも不穏な空気HU☆TA☆TA☆BI!?
待ってろ俺のノイたんすぐ助けに行く
412 :シャドーマンの契約者  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/15(月) 00:59:39.27 ID:X1g8mm1J0
>>390
>怪猫ちゃん可愛いねぇ俺にももふもふさせてぇ大丈夫すぐきもちy
一瞬何の事かと思ったら思い出した、そういやあんな話書いてたなぁw(おい作者
単発はある程度どこかの本編とリンクさせる予定だったけどこれはどうしようもないなorz

>>408-409
>とりあえず先々へのとっかかりだけ作って、暫くは気楽な短編を続けます。
わぁい気楽な短編
シャドーマンの人気楽な短編大好き

>ジャッカロープたんやらノロイたんやらに喧嘩売ってなお無事な猫たんの方がなにやら最強な気がする
ところで何故私だとバレたんだ(決定的な証拠あったろ
最後の裂邪とミナワのシーンは今思えば他に打ってつけのキャラがいたな…くそぅorz
あとタイトルが4文字なので連載フラグが立ってたり
今後も他の作者様のキャラを物語に支障が出ない範囲で勝手に使っちゃったりしますごめんなさい(
あとネコたんはただのネコたんですよ、多分(

>>410
>ノイちゃん…英語…?この子何か国語勉強してんだ
いつか使う時が来る事を予見して何十ヶ国もの言語を学ばせているんだ…きっとそうに違いない、私には見える!
413 :Ops2-1 [sage saga]:2012/10/15(月) 20:56:29.74 ID:6daUe9j00

 此処は一般的に都会と呼んでも差し支えのない町だ

 人口は現在、およそ数十万人にもなるだろう

 統計的な意味での人口は出ているだろうけど、外からの流入者に加えて、突然行方不明になる人も多い

 特に、この町では甚だしい

 更に言い足しておくと、この町には人間になりすましたモノが多く棲んでいる

 突拍子な話なんかじゃない

 現に、この町以外にも人外が棲む町は多い

 ただ、番屋町や夜刀浦市については比較的名前が知られてるとしても

 永取市について知っている人は少ないだろう

 湖辺市について誰が関心を持つだろう

 定元町なんか論外だ

 それらの町に比べると、この町の名は広く知れ渡っていた

 そしてこの町に棲む人外の数は他を抜いて多い

 だからこの町について耳にした人外がますます集まってくるんだろう

 僕がこの町にやって来たのもそういう理由からだった
414 :Ops2-1 [sage saga]:2012/10/15(月) 20:57:02.91 ID:6daUe9j00

 この町に棲む人は、この町を四つの区に分けて呼んでいる

 最も規模の大きい区は東の部分だ

 ここは主に住宅地が広がっている

 繁華街は南の方にあり、最も騒がしい

 対照的に北の方は隣町にまたがる大きな山の麓になっていて静かすぎる

 西の方はと言うとちょっとした工業地帯が広がっていて、別の意味で騒がしい場所だ

 誰も興味はないだろうけど、それ故に最も隠しやすい場所でもある

 南区を上りながら繁華街に在っては閑静な、ラブホテルの林立する一帯に差し掛かった

 ふと気ままに路地裏へと入ってみる

 表の方と変わらず、静かだ

 街頭から幽かに聞こえるジジジという音だけが聞こえる

 ……訂正しよう。今、小さな悲鳴が聞こえた

 面白そうじゃないか

 僕は声のした方向へと足早に歩を進めた

 散策はやはりこうでないと
415 :Ops2-2 [sage saga]:2012/10/15(月) 21:03:21.97 ID:6daUe9j00

 袋小路に来てみると、四人の黒服が少女を追い詰めていた

 少女の方はセーラー服の学生で、壁に背を付けたまま座り込んでいる

 手に抱いているのは白の猫だろうか、まるでモップのような猫だ

 悲鳴だと思っていたのは、猫の威嚇の鳴き声だったようだ

「もう一度だけ言っておきますが……」

 女の声だ

 黒服の一人が少女に話しかけているらしい

「……我々の救済対象となるか、調査対象となるか、討伐対象となるかは貴女が決めることです」

 黒服とは言葉の通り、黒スーツを着た者という意味だ

 そしてこの町ではもう一つの意味をもつ

 その意味での黒服とは、要するに組織という名の勢力の構成員の呼び名だ

 では組織とは一体何なのだろう

 町の外では「この町最大の指定暴力団」や「都市伝説界の警察気取り」との言われようだ

 僕に言わせれば、都市伝説の存在を実社会から隠蔽するという、愚にも付かない思想を妄信的に信奉している無能の集団だ

 そう、彼らについては「無能の集団」と言うだけで事足りる
416 :Ops2-2 [sage saga]:2012/10/15(月) 21:04:35.86 ID:6daUe9j00

 黒服の一人が僕に気が付いたようだ

 ちょっと面白くないから、こちらから声を掛ける

「やあ、励んでますね。ちょっと見物しててもいいですか?」

 全員がこちらに気づいた

「何者だ」

 最初に気づいた一人が誰何してくる

「都市伝説契約者のようですね」

「組織所属の契約者ではない模様です」

 後ろの二人が口ぐちに声を発する

 男二人に女二人か

「都市伝説契約者とお見受けしますが、どういった要件でしょうか」

 少女と猫に話しかけていた女の黒服が僕に声を掛けてきた

 声はあくまで穏やか、目元はサングラスで隠されている

「いやあちょっと、組織の黒服さんの仕事を見学しておきたいんですが、それが何か?」

 僕も声はあくまで穏やかに、押し殺した笑いが漏れないように答えた
417 :Ops2-3 [sage saga]:2012/10/15(月) 21:26:03.70 ID:6daUe9j00

 一瞬、何かが光った

 目をやると最も僕に近い黒服が光線銃を向けている

 この僕に向かって発砲したらしい

 苦笑より先に溜息が漏れた

「そんなの無駄だよ」

 僕はその黒服に歩み寄る

 黒服は続けざまに数発発砲した

 直撃をしてはいる

 いるのだが、効いていない

 効くはずもない

「だから無駄だって」

 そう言って人差し指と中指を黒服の額に突き刺して、引き抜く

 黒服のサングラスが滑り落ちた

 目は裏返り、口から汚物をこぼしながら、黒服は倒れる

 やっぱり無能はどこまで落ちても無能らしい
418 :Ops2-3 [sage saga]:2012/10/15(月) 21:27:45.80 ID:6daUe9j00

 後ろの男と女の黒服が光線銃を引き抜いた

 どこまで学習能力がないんだ

「は」

 思わず苦笑まで漏れてしまった

「そんなの効かないよ」

 男の腹に貫手を叩き込み、女の首をわしづかみにする

 すぐさま手を放すと、先ほどの黒服と同様、二人の黒服も地面に倒れた

 さらに足を前へ進める

「これはどういうことです」

 少女に話しかけていた黒服の声色は硬いものになっていた

 手に握られているのは光線銃ではなく、赤いクレヨンだ

「先に攻撃してきたのはそっちじゃないか」

 僕は平静に不満をこぼした

 当然だ

「組織に敵対するおつもりですか?」
419 :Ops2-4 [sage saga]:2012/10/15(月) 21:46:23.48 ID:6daUe9j00

 黒服の言葉にもはや苦笑すら起きない

「敵対だって?」

 それでも返事はしておこう

「暴力の行使は万人に認められた根源的な権利だ」

 言いながら黒服の首に人差し指を突き刺した

「そして反撃の暴力もまた万人に認められた権利だよ」

 黒服は仰向けに倒れて痙攣し始めた

 弱すぎる

 というか、最低限の礼儀すら知らないこんな連中が、何故この世界で一定の優位性を保持し続けていられるのか、理解に苦しむ

 まあいい

 少女の方を見ると倒れた黒服を見つめたまま、震えていた

 僕の視線に気づいたのか、蒼白になった顔で僕の目を見ている

 猫は僕に向かっても威嚇の声をあげていた

 パンツ見えてるよ、漏らしちゃってるね、とでも声を掛けておくべきだろうか

 この子が少し気の毒だ
420 :Ops2-4 [sage saga]:2012/10/15(月) 21:48:05.57 ID:6daUe9j00

「警察呼びなよ」

 とりあえずそう言っておくことにした

「公共のサービスを遠慮なく利用するのは、良識的な市民が自由に使っていい権利なんだから」

 そうして踵を返す

 倒れて痙攣を繰り返す黒服をまたいで、袋小路を左に曲がったとき、後ろからすすり泣く声が響いてきた

 引き返して忠告の一つでもしておくべきだろうか

 例えば黒服は一度撃退されたからと言って二度と手を出してこないという保証はない

 いや、確実に報復に来る

 現に僕だって今に至るまで何人の黒服を倒してきたか知れない

 あの少女にしても、また黒服に絡まれないとも限らない

 ただ、僕には楽観がある

 例えば、この町を拠点にする首塚なんかがそうだ

 彼らは積極的に都市伝説や契約者を守る

 最近は第三帝国という勢力も存在するそうだ

 前に僕がこの町に来たときとは状況が変わっている

 少しだけだが良い方に変わっている

 それなら、この町の良心に任せてみようじゃないか

 僕にはそういう楽観がある

 そう考えれば彼女の状況も気の毒というわけではなさそうだ

 少女の泣き声が大きくなってきたのを聞きながら、グッドラックと心の中で呟き、僕は一路東区を目指す
421 :とある人(代理) [sage saga]:2012/10/16(火) 22:03:37.15 ID:n5LdT14q0
【ビックなキャット】

フゥーハハハハッ…ひれ伏せ愚民ども!
俺様は無敵で素敵な……続きは…えーと
「ねこねこー?台詞忘れちゃった?」
うっせぇ……えー、改めて
この俺様は海を隔てた外国で"エイリアン・ビックキャット"と呼ばれてる、ちったぁ名の知れた都市伝説様よぉ!
「おー、ねこねこ、カッコいいー」
あたぼうよぉ、ガキんちょ
……それから俺の名前はねこねこなんかじゃないからな?
「えー…ねこねこは、ねこねこだよ?」
……あー、うん、まぁ…いいか
「体モフモフだねー、ねこねこ」
おう、俺様の自慢の毛並みで和んで頂いてるとこ悪いんだが…
契約は済んだんだし、一旦背中から降りちゃくれねぇかい?
「なんでー?…さわさわイヤだった…?」
別に嫌じゃあねぇが、お前を背負ったまんまじゃ全力で走ると落としかねないからだ
後ろの……アレの速度も上がったこったしよ
「待ちなよ君たちぃぃっ…サーカスやろうよォォッ…アヒャヒャ」
見たかんじ"サーカスはひとさらい"か……演目的には有り得るとはいえ
まさか一輪車で追いかけてくるとはなぁ……
「うぅ……あの、おじさん怖いよ……」
あぁ、確かに眼がヤバイもんなー…
兎にも角にもよ、ガキんちょが俺から降りてさえくれりゃあ
あんな、ピエ公なんか軽くのしててやれっから…泣くなよ、な?
「うん………でも降りるの怖いから、ねこねこの上で待ってるっ」
分かってないし言ってる事、無茶苦茶だなオイ
……ったく現状維持でやり合うっきゃねぇか
「追い付いちゃうよォォッ…フルルルッフゥーッ」
加速なんてさせっか…俺の奥義"道端に落ちてた石達を超能力で飛ばすアターック!!"
「アヒャ!?……地味すぎて欠伸が出るよー」
アクロバット走行で避けきりやがった!?
「ダメダメだねー、ねこねこ…」
こうなりゃ、次の曲がり角で…
「曲がったところで無駄ダヨー………っと消えた?オヨヨ?」
早く行け早く行け早く行け早く行ry
「子供はー?コドモー?…エヒャヒャ…ヒャヒャ…ャ…」

…行った…か?

「ねこねこー……戦わないの?」
いいんだよ、呑まれかけみたいだし…待ってりゃ自爆するだろ
「ねこねこ……ヘタレ?」
グッ……戦略的撤退と言いやがれ
「恐かったけど…楽しかったねー」
取り敢えず…俺様は疲れた…
「ねこねこ、偉い偉い」
「グルル…」ゴロゴロ
(カッ、あの時に格好つけて助けんじゃなかったなぁ…)

(ガキのお守りは面倒くせぇし…)

「ねこねこー」
ん?…あんだよ
「えへへ…大好きー」
お、おぅ……
(ま、まぁ契約もしちまったし仕方がなくだ…しょ、しょうがなく…別にry

「ねこねこ…お顔があかいよ?」
あか、あかか、赤くねぇし!?
「変な、ねこねこー…?」
ゲフンゲフン…取り敢えず、家まで送ってやっからしっかり掴まれよ?
「わーい、ねこバs「言わせねぇよ…
「じゃあ、もののk「ジブリ好きだな!?



……俺様は超能力を使える、サイコキネシスにテレパシー

そして俺様の頭に断片的に流れる未来予知

血溜まりとガキんちょの冷たい体

無性にきにくわねぇ…そんなクソッタレな運命は認めねぇ

契約者を守るために運命に抗う俺様はでビックだからな!

【終わらる】
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/17(水) 00:13:00.64 ID:JdEJV3OR0
代理投下どうも
423 :Ops2-5 [sage saga]:2012/10/17(水) 00:13:59.25 ID:JdEJV3OR0

 南区のラブホテル群を抜けて東区に入った

 夜はとっくに更けている

 大方予想通りの時刻だ

 目指すのはこの町の北東にある

 東区最大の規模を誇る中学校だ

 比較的古い学校で、数年も前に創立六十年を迎えている

 でも、この町に棲む新世代の人々にとって、その中学校のもう一つの意味を知る者はどの程度いるだろう

 五芒星の一角

 この町全体に及ぶ、巨大な五芒星の一角だ

 そして、埋め物がなされている場所だ

 いや、正確にはだったと言うべきか

 その中学校には天之尾羽張という宝剣が埋められていた

 このことを知る者は一層少ないだろう

 その宝剣自体もとんでもない代物だった

 都市伝説のような存在をも根絶やしにできる伝承殺しだったからだ
424 :Ops2-5 [sage saga]:2012/10/17(水) 00:14:55.26 ID:JdEJV3OR0

 宝剣は、かつて僕が中学校を訪れたときには既に無くなっていた

 きっと盗み出されるか、さもなくば破壊されるかしたんだろう

 あんなものを破壊できるのかは微妙なところだ

 まだこの世界の何処かに存在するんだろう

 あの宝剣が五芒星の力を増幅させていたことは間違いない

 そんなことを思い返していた僕は

 ようやく、問題の中学校の前に到着したことに気づいた

 正門の脇にある小さな門に手を掛ける

 施錠されていなかったようで簡単に開いた

 そのまま校庭へと足を進める

 遠くの方で地に響くような低い音が聞こえる

 ここ数日、天候はあまりよくはなかった

 降り出す前に確認しておきたい

 自然と足が速くなる
425 :Ops2-6 [sage saga]:2012/10/17(水) 01:34:43.67 ID:JdEJV3OR0

 校庭の隅にある石像の前まで来た

 何の気配もないことを確認して、石像に近寄る

 思わず固唾を飲んだ

 台座の前にしゃがむ

 そして、台座の文字板に手を掛けてまさぐる

 文字板が外れた

 文字板の裏を確認する

 そこには簡易な人払いが施してあった

 文字板に隠されていた穴の中に手を差し込む

 冷たい物が手に触れた

 それを引っ張り出す

 証書を丸めて収めておくような丸い筒だ

 ブリキで出来ており、所々錆びていた

 額から冷や汗が流れ落ちた

 腕で汗を拭いながら、上着のポケットから白の手袋を取り出して、それを両手にはめた

 吐き出す息が震えていた
426 :Ops2-6 [sage saga]:2012/10/17(水) 01:35:14.15 ID:JdEJV3OR0

 筒の両端を掴み直すと、それぞれ反対側に引っ張った

 小気味のいい音とともに筒の蓋が抜ける

 その端からは何かがはみ出ていた

 それを慎重に引っ張り出した

 古い紙のようなものだった

 しゃがみこんで片手でその紙を広げる

 もう片方の手で小さなライトを取り出して点灯した

 かなり劣化した紙だった

 端々が破れ、変色しているようだ

 紙には特に何も記されてはいない

 思わず息が止まる

 紙の左下へとライトを向けた

 小さく、だが、はっきりとそれは記されていた


   鮫 島 事 件

427 :Ops2-7 [sage saga]:2012/10/17(水) 01:35:47.95 ID:JdEJV3OR0

 息を吐いた

 急いで紙を丸め、筒の中に戻す

 それを上着の内ポケットへと収めた

 上着の上からしっかり収まっているかを触って確かめた

 回収した

 暴かれてはいなかったのだ

 周囲を見回す

 何の気配もなかった

 文字板を元の場所に戻す

 ここから速やかに立ち去らなければならない

 一刻も早く

 僕は立ち上がった
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/17(水) 10:53:03.68 ID:Fuv67TBio
これは何かが動き出す?
そして懐かしい人かも?
429 :代理 単発 [sage]:2012/10/21(日) 22:16:14.94 ID:zalW3KABo
「何度行っても美味しいけど納得いかないなぁ、あの店」

お気に入りのラーメン屋からの帰り道、夕焼けの中を家に向かって歩いていた。

「3枚しか入ってないのにチャーシュー麺を名乗るのってどーなのよ。厚めで美味しいけどさぁ。」

唯一の気に入らない点にブツブツ言いながら曲がり角を曲がったときだった

「トン、トン、トンカラトン…」

マウンテンバイクに乗ったミイラ男が現れ、目の前で止まった。

「トンカラトントン言エ」

昔ポンキッキで見たことがある。これには「トンカラトン」と返せば問題無い。

「トンカラトン」
「No!!」

!!?
ちゃんとトンカラトンって返したのに!!

「タンカラタンッ」

妙に発音よくトンカラトンと言ってきた。この感じは英語の外国人講師のノリだ。

「タンカラタンッ」

「Goo!!(-゜3゚)b」

英語風の発音で言い直すとトンカラトンは満足げにキコキコと帰っていった。

おわる

430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/21(日) 22:16:53.23 ID:zalW3KABo
変な所にこだわるトンカラトンだwwwwww
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/22(月) 07:17:59.02 ID:VRHJ6+kc0
問答無用で切られなくて良かったなwwww
432 :単発ネタ [sage]:2012/10/22(月) 17:09:08.26 ID:lcwER51SO
『マスター、美少女ってトイレしないらしいですよ』
「そうか」
『私も美少女って事ですね!』
「馬鹿じゃねーの」
『もう、照れちゃって。私のふかふかな胸に飛び込んでも良いんですよ?』
「やだよ。お前臭いし」
『私のフェロモンで興奮して眠れなくなるだなんて、マスターはエッチですね!』
「言ってねえよ」
『いえいえ、言わなくても分かりますよ!そりゃあ私みたいな美少女と……あ』
「どうした?」
『マスター、腕が落ちました』
「あーもう……縫ってやるから、こっち来い」
『わーい♪』
「まったく……」
『ふふっ、マスターの顔がこんな近くに……私、顔が赤くなっちゃいます』
「ねぇよ」
『なりますよ!恋する乙女の胸の高鳴りを教えてあげたいくらいです!心臓とか取り出して!』
「お前はゾンビだろ。胸が高鳴ってたまるか。あと、そんなグロいもの取り出すな」
『マスターが冷たい……』
「お前よりは暖かいよ」

オチ無し終
433 :仄暗い魂 † Drachen ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/22(月) 19:56:36.07 ID:fU2XA2Ss0
「ルート、大丈夫か!?」
「うん、アタシは平気ぃ……エーヴィヒぃ、そっちはぁ!?」
「間一髪だったよ」

火球による一撃から逃れる為に左右に退避したルートと日天、エーヴィヒとイシュピヤコック、イシュムカネーは、
それぞれの無事を確認した後、火球が飛んできた方向――上空を見た
背中から純白の翼を生やし、赤いダウンコートを羽織った、白髪交じりの壮年の男
イシュムカネーはその姿を見た瞬間、彼の名を口にした

「……「ククルカン」……」
「くくるかん?」
「マヤ神話の創造神……
 アステカ神話における最高神“白いテスカトリポカ”及び「ケツァルコアトル」と同一視されている」
「御紹介頂き感謝……したいところだが生憎今はそのような気分では無くてね」

ぎらりと、ククルカンはその刃の如く鋭い目を、2人の裏切り者に向けた

「…イシュムカネー…イシュピヤコック……この期に及んで人間に味方とはどういうつもりだ?」
「もうやめよう、ククルカン…こんな馬鹿げた惨劇は…繰り返してはいけない…」
「……狂気……」
「貴様等……人間に委ねるなどそれでも“神”か!?」
「ククルカン、先程この2人から聞いたが…君等は神であって神ではない…偽りの神だ
 それに、この時代の人間達は君や「太陽の暦石」が思っているものとは違うよ
 君達が今そうやって存在しているのが何よりの証拠さ
 信じている者がいなければ、僕達都市伝説はその存在すら許されはしないのだから」
「黙れ! 悪魔風情が私に口を聞くな!!」
「待ちなさいよぉ! クルクルカンだかケツアリコカトリスだか何だか知らないけどぉ、
 少しは他人を信用してみたりしたらどうなのぉ!?」
「っくく…人間までもが愚弄するか……」
「それにぃ、こっちには最後の「水晶髑髏」がある訳ぇ
 これさえあれば「マヤの予言」なんて下らない終末論は―――――」
「っルート! 「マヤン・スカル」はどうした!?」

え、と彼女が手元を確認する前に、ククルカンは懐から輝くものを取り出した
それは正しく、先程までルートが持っていた「マヤン・スカル」だった

(しまっ……あの時の爆風で……!?)
「ちょっとぉ!それを返しなさい!!」
「くくるくくくくくく………冗談だろう? 人間に指図されて神が動いてなるものか
 どうしても返して欲しいのであれば………!!」

ひょう、と「マヤン・スカル」は更に上空へ舞い上がった
瞬間、一帯の空気がビリリッ、と震え始めた
ククルカンの姿が、見る見る内に変わり始める
手足が消失し、代わりに全身から羽毛が生え、胴体が長く伸びる
顔は宛ら蛇のようであるが、羽毛のお陰で少し違和感のある白蛇に見えた
だが、その鋭い目だけは、人間の姿と変わりは無かった

「す、姿が……変わった!?」
「“羽のある蛇”……これが「ククルカン」の真の姿……!」

宙を舞っていた水晶髑髏が地上に向けて落下してきた
それを、「ククルカン」は大口を開け、そのままゴクリと飲み込んだ

【この私に抗ってみせるが良い、創造の神にして最高位の神である「ククルカン」に!!】
「「マヤン・スカル」を飲み込んだ…!?」
「何て事……!! エーヴィヒ!イシュイシュコンビは任せたわぁ!!」

ルートの掌から黒い液体がぬるりと溢れだし、秀麗な漆黒の刃へと変化する

「乗れ!」

召喚された「ワイバーン」の背に乗り、日天はルートに手を伸ばした
彼女が手を取って彼の後ろに座った瞬間に、「ワイバーン」は大きく羽ばたいて飛翔した
向かった先は無論、「ククルカン」の腹部

「『カイザーシュニット』!!」

今まさに刃が腹を切り裂かんとした時だった
ごうっ!!と凄まじい音がしたかと思えば、「ワイバーン」が暴風で吹き飛ばされ、
「ククルカン」との距離が広がってしまった

「きゃあっ!?」
「くっ、ルート!しっかり捕まってろ!!」

ルートが「ワイバーン」から落ちないように強く抱きしめながら、
日天は風でバランスを崩しそうになった「ワイバーン」を何とか操って体勢を整えた

【先にそこの裏切り者を始末しておきたかったのだがな?】
「ヒャハッ、許してあげる訳ないでしょぉ? あいつらはアタシ達が守るんだからねぇ!!」
434 :仄暗い魂 † Drachen ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/22(月) 19:57:13.39 ID:fU2XA2Ss0
【ほう、そうか………しつこい愚か者共が!!】

風が止み、今度は燃え盛る炎の球が飛来する

「ッ! これってさっきの……!!」
「画竜点睛! 「蛟」!!」

スケッチブックから現れた美しい龍――「蛟」は、
周囲に水の壁を作り出し、主達を火球の一撃から守った
役目を終えた「蛟」は、すぐにその姿を消す

【その者達は裏切ったとはいえ私達と同じ、貴様等人間共を滅ぼそうとした、言わば貴様等の敵の一味だ!
 何故庇う!? 特に「組織」の者ならば、迷わず掃討するのが当然だろう!?】
「悪いがR-No.は穏健派でな……それに、」
「イシュイシュコンビはアタシ達を信じて水晶髑髏をくれた……
 信じてくれた人達を裏切るような真似は、もうしたくないのよぉ!!」

黒い刃は彼女の手を離れ、散開し、細い針状のものが何十、何百と浮遊する

「『ギフト・トロプフェン』!!」

黒い針は、やはり「ククルカン」へと向けて放たれた
だが「ククルカン」は翼で自身を覆い、防御態勢をとった
無数の針が翼に突き刺さり、それは「ククルカン」の体内へ浸み込むようにすぅっと溶けていった
ルートの操るインフルエンザウィルスが相手の身体を支配すれば、相手を彼女の意のままに操作できる
しかしながら、ルートは嫌な顔を作り、ちっ、と舌を打った

「…伊達に神様は名乗ってないねぇ……小細工は通じないって訳ぇ?」
【神を洗脳しようとは何たる侮辱…】

ふ、と辺りが突然暗くなった
不意に頭上を見上げると、そこには巨大な岩があった

「なっ………!? よ、避けろ!「ワイバーン」!!」
【くくるくくくく…潰れろ】
「嫌よ! 『ギフト・ヴァイラス』!!」
「『トゥーバ・ミールム』」

無数の黒い弾丸が射出されると同時に、無数の白い刃が岩を切り刻む
岩は細かい小石や砂になり、ぱらぱらと一帯に降り注いだ

【む……何者だ?】
「キャハハ♪ 『ROLLINGインパクト』!!」

「ククルカン」に向けて小さな銀のリングが投げつけられる
尻尾で弾こうとした時、頭上から光の一閃が、大きな音と共に降ってきた

【ぐぅっ!?】
「も、もしかしてぇ……!」
「大丈夫か、日天! ルート!」
「へ?ルート?…………ってルートじゃんマジで!?」

声がしたのは地上
「ワイバーン」の上から、覗き込むようにしてそちらに目をやると

「…やっぱり! ボインの姉貴と…ビリビリの姉貴!!」
「レクイエムさんとロールか…有り難い」
「ちょっ、何でルートがいんの!?てゆーかチョー久しぶりなんだけどマジで!」
「落ち着け;……戻ってきてたんだな、学校町に」
「まぁね、こんな状況なのは予想外だったけどぉ;」
【余所見をして貰っては困るな】

瞬時に殺気を感じ取ったのはレクイエムだった
己の右腕に白い刃を出現させて防御の姿勢をとったが、大きく吹き飛ばされ、塀に強く叩きつけられた

【ふん、他愛もない】
「っレクイエムさん!」
「ボインの姉貴!!」
「ケホッ、ケホッ………水か、くそっ」

崩れた塀の山から、レクイエムが立ち上がる
恐らく先程の攻撃は水によるものだったのだろう、彼女の身体はびしょ濡れになっていた

「防御行動を取って正解だったか……よくもやってくれたな、返しは高くつくぞ―――――」
「わー!!! り、日天さん見ちゃダメぇ!!!」

ん?と声を漏らしつつ、レクイエムは状況を確認した
見れば、ルートがその小さな手で日天の目を一生懸命隠していた
ロールも引き攣った顔をしている
435 :仄暗い魂 † Drachen ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/22(月) 19:58:18.73 ID:fU2XA2Ss0
「…どうかしたのか?」
「アンタいい加減ブラつけろよマジで!ワイシャツ透けて見えちゃいけないもんが見えてるっつーの!!」
「あんなものつけて戦闘なんか出来るか」
「うっぜぇマジうぜぇっつーのこいつ!てゆーか大体そんなもん揺らしながら戦ってる方が―――」
「何でも良いから早くそれ隠してよぉー!!」
【…馬鹿にしてるのか?】

「ククルカン」も呆れる始末である
はぁ、とレクイエムは納得がいかない様子を見せながらも、ふふっ、と小さく笑った

「…丁度良い、以前から考えていたものを試したかったところだ」

す、と豊満な胸の谷間から水の入った小瓶を取り出すと、
彼女はその蓋を開け、自分で飲み干した

「ッ!? っちょ、アンタそれ―――」
「まぁ見ていろ……Nunc est bibendum, nunc pede libero pulsanda tellus.」

そう唱えた直後、彼女の周りを無数の霊魂が漂い、踊るようにくるくると回り始める
次第にそれは1つ、また1つと、レクイエムの身体を覆い始める
何時の間にか、レクイエムは純白のドレスを身に纏っていた

「…『メメント・モリ』!」
「き、綺麗ぇ……」
「ん、もう良いのか……っ、レクイエムさん…!?」
「何その格好!?マジ綺麗だけどマジ不気味だっつーの!」
【それが……どうしたというのだ!!】

ぼう、ぼう、ぼうっ!と3発の火球が放たれる
ふわりと軽やかにジャンプしたレクイエムは、
空中で踊るようにくるりと回し蹴りを決め、火球を弾き返した
全てが「ククルカン」へと向かって行ったが、「ククルカン」は水の壁を発生させてそれを防ぐ

【っ……】
「身体が軽い……“あいつ”もこんな感じで戦っていたのか…」
「へぇ、結構やるじゃん。でも見てるだけって訳には行かないってゆーかぁ!!」
「ルート、レクイエムさんに続くぞ!」
「うん!」

レクイエムはステップを踏むように、霊で段差を作って空中を歩いてゆく
ロールは腕のアクセサリーをじゃらりと手に取る
日天は口に炎を揺らめかせる「ワイバーン」を駆る
ルートは再度、右手に黒い刃を構えた

【くくるくくくく…何人増えようが同じ事……私を倒す事は出来ん!!】

「ククルカン」は風を纏い、幾つもの巨岩を出現させて漂わせる
そして暴風と共に、巨岩を周囲の目標目掛けて解き放った
ルート達はそれぞれ、それらを対処すべく身構えた

「これはこれは、懐かしい顔が見えるでござるな」

すぱんっ!!と巨岩が両断され、暴風も何かと相殺して無力化する
ちん、という小気味の良い金属音が響く

「手応え在り……会えて嬉しいでござるよ、ルート殿」
「さ、サムライの姉貴…!」
「羅菜…あいつも無事だったか」
【また邪魔者が増えたか……早々に退場させてやろう】

「ククルカン」は口からレーザーのように高水圧の水を発射した
標的は、羅菜
しかし彼女はぴくりとも動かない

「っサムライの姉貴ぃ!!」
【くくるくくく、生きるのを諦めたか!?】
「いや、信じているだけでござる」

ぶわっ!!と水が飛び散った
羅菜の眼前には、形を持った透明な液体が傘を作りだして、激流から守っていた

【防御完了……攻撃態勢に移行する】
「かたじけない、レジーヌ殿」
「百合の姉貴まで!」
【くっ、次から次へと………!!】
「返してやろう、“余所見をするな”!!」

レクイエムの拳が「ククルカン」の頭部にクリーンヒットした
ぐらりと大きく身体を揺らめかせつつも、体勢を整えようと試みる「ククルカン」
しかし、
436 :仄暗い魂 † Drachen ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/22(月) 19:58:50.37 ID:fU2XA2Ss0
「『Zap-Zap(バチバチ)ストーム』!!」

地上に散らばらせたアクセサリ目掛けて、空から雷が雨の如く降り注ぐ
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるとはよく言ったものだが、これは幾ら神と言えども、避けられない

【ぐふっ……!? き、貴様等……ッ!?】
「ルート!今だ!!」
「『オイタナジー』!!」

「ワイバーン」に乗って限界まで距離を詰め、ルートの掌から黒い光条がほぼ零距離で発射された
荷電粒子砲とほぼ同じ原理で射出されるこの技は、かつてR-No.0ローゼを苦しめたもの
それは油断していたとしても、偽りだったとしても、今、神さえも圧倒した

【ぬあああああああああああああああぁ!?】

腹部に向けられた光条は、どんどん「ククルカン」を押してゆく
押し続け、押し続けた後に、変化は訪れる

「…そろそろでござるな…『身垂断吾』」

羅菜がぼそりと予告した直後
「ククルカン」の腹が、ばっさりと切り開かれた
「八丁念仏団子刺し」はその性質上、対象が動き回らなければ切る事は出来ないが、
その切れ味は、人間ならば容易に文字通り一刀両断する事が出来る程である
切開された腹から臓物が零れ落ちると同時に、中からきらりと輝くものが落下した

「あ! 水晶髑髏が!!」
【がふっ……わ、た、す、かああああああああああああああ!!!】

傷ついても尚、その動きに衰えは見えず、
「ククルカン」は天地を貫く勢いで水晶髑髏目指して急降下を始めた

「何やあれ! 月から何かツキ出てるでー!!」

そんなふざけた駄洒落が木霊したかと思えば、ぴしり、と「ククルカン」の身体が凍りつき、動きが鈍る

【何っ……!?】
「今だよ! 『妖怪“水晶髑髏”隠し』!!」

落下していた水晶髑髏が、パッとその場にいた者達の視界から消えた
何処に行ったのか――――察しのついていたR-No.の面々は、声のした方に目を向けた
そこには、誇らしげに「マヤン・スカル」を持っている白饅頭を抱きかかえたツインテールの少女と、
ガッツポーズをとるポニーテールの少女がいた

「っしゃ! これで全部揃ったんちゃうか!?」
「ごくろーさまだよー」
「ホニョ!!」
「盗みの姉貴と寒い姉貴!」
「お手柄でござるな、ラピーナ殿!凛々殿!」
「えへへ……あれ、ルートちゃん?」
「ほんまやルートやん!何で!?」
「説明は後だ! それを蓮華さんに渡してくれ!!」
437 :仄暗い魂 † Drachen ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/22(月) 19:59:54.95 ID:fU2XA2Ss0
日天はさらさらとスケッチブックに絵を描き、龍を召喚した
翼を持った東洋龍「応龍」は、ラピーナと凛々に背中に乗るように促した

「う、うん!分かったよ!」

早々と2人がその背に乗るや否や、
「応龍」は雄叫びをあげ、大きく羽ばたいてその場を飛び去った

【逃がすものかぁ!!】
【女はイカせるが君は行かせない】

しゅるりと粘性の触手が「ククルカン」を絡め取る
逃れようともがくが、腹の大きな傷口がネックとなる

【うぐっ……こ、れしき、のこと……】
「ううん、これでお終い! テメェも、このつまんない終末論(メルヒェン)もぉ!!」

幾兆ものウィルスで巨大な刃を作り出したルートが「ワイバーン」の頭部近くに立ち、
猛スピードで開いた傷へと突撃を始めた
「ククルカン」は口から火球や水流を放って足掻いたが、ことごとく躱された

「行くぞルートぉ!!」
「Ja(ヤー)!! 『ドラッヘン・シュニット』ぉ!!!」

ずんっ!!と鈍い音が辺りに響く
「ククルカン」の真っ白な羽毛は既に紅く染まり、腹部には大きな穴がぽっかりと空いていた

【ご、ふっ………何、故…………私が…………人間、如き、にぃ…………】
「……テメェは2つの間違いを犯してたわぁ
 1つは、アタシ達人間を信用しなかった、舐め過ぎてた事
 もう1つは………アタシ達“R-No.”を敵に回した事!!」

レジーヌの触手から解放され、ずるりと崩れ落ちた翼蛇竜は、
その神秘的な身体を地に晒すその前に、光となって消滅した



   ...setzen Sie fort
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/10/25(木) 12:14:08.53 ID:rgmaIx7AO
投下された皆様乙ですー
何か動き出した連載とかマヤの予言との戦いとか超期待
単発の人のマスターさんクールかぁいい。
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/26(金) 21:43:49.54 ID:Dx85uTAP0
これが元R-No.10の帰還の物語か…!
440 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/26(金) 22:16:53.98 ID:szxB96BN0
>>439
正式な帰還はもうちょい後なのだ!
あと迷ってる事が一つだけあるんだ!
ローゼと日天どっちにしよう!orz
441 :都市伝説 [sage]:2012/10/27(土) 23:27:17.77 ID:bEK1EJzP0
そして今夜も土曜日が終わる
なんてこった
442 :神力秘詞 † 誰心秘想 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/28(日) 20:33:22.12 ID:NA5vUsXI0
「プリキュア! ミュージックロンド!!」

オレンジ色のエネルギーの輪が射出され、ジャガー人間を容赦なく薙ぎ払う
光となって弾け飛ぶ様を見て、少女――信時 成美は小さくガッツポーズをした

「うん、今夜も絶好調! 滅亡なんてクソ喰らえよー!」
「危ない!」

え、と振り返って見たのものは、飛びかかるジャガー人間と翼の生えたジャガー
しかしすぐにそれらは、稲妻と炎によって瞬時に消し炭と化す

「の、信時さん、大丈夫? 怪我は無い?」
「というか仮にも正義のヒロインがそんな汚らわしい言葉を放っていいのか」
「えへへ、ごめーん!」

漢の心配、彩乃の呆れに、成美は頭を掻いて謝罪した
くすっ、と漢は思わず小さく噴き出してしまった
その時だった

「――――――――――ッ!?」

ふわりと髪が宙を舞う程に勢い良く、漢は何処かへと目を向けた
ここは東区の住宅街、何処を見ても家屋しか見えないが
彼の視線の先は、北区へと向けられていた
僅かに上を向いている様子から、場所は山のような高い所だろう

「………麻夜………麻夜が、呼んでる………」
「「「ババリバリッシュ!!」」」

ハッと我に返り、襲い来るジャガー人間を一閃の雷の下に返り討ちにする
狙い損ねた1体の光る爪が漢の柔肌に迫る
しまった――――――――目を瞑り、息を呑む
3秒程だろうか、何も起こらない事に気づき恐る恐る目を開けて状況を確認した
瞬間、眼前に佇むジャガー人間がどさりと倒れて一瞬身が竦んでしまった
ヴァイオリンの美しい旋律が響く
それを聞いて、彼はすぐ傍に響介がいる事を解した
「チェリーニのヴァイオリン」の呪いの力で助けられたのだろう

「あ、有難う、柊くん」
「……行きたまえ」
「え?」

尚もジャガー人間は飛びかかってくる
しかしそれは「チェリーニのヴァイオリン」の呪いの力で空中でぴたりと止まってしまった

「行くべき場所があるのだろう? ここは俺達に任せろ」
「で、でも―――――」
「大切な人が待っているのなら、迎えに行ってあげたまえよ
 間に合わなかったらきっと後悔するだろう……そうなる前に……早く行くんだ!!」

響介の言葉を聞き、漢の心はぱちんと弾け、迷いが吹っ切れた
彼は早々と『飛』という字を空書きし、その力を具現化させる
背に大きな純白の翼を生やすと、彼はばさりと羽ばたかせ、ふわっと文字通り“飛び”上がる

「…有難う…でも、必ず生きていて下さい!」
「あぁ、君もな。また会おう!」

希望を胸に、願いを背に、ほんの少しの間の仲間達に別れを告げ、
漢は翼を広げて学校町の空を翔ける
目指す場所は一つ、北区の山奥へ
443 :神力秘詞 † 誰心秘想 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/28(日) 20:33:55.08 ID:NA5vUsXI0
「待ってて、麻夜……今行くから…………うわっ!?」

不意にバランスを崩すが、すぐに体勢を整える
原因は明確だった
彼を追うように飛ぶ、数体の異形のジャガー達
じゅるりと涎を滴らせ、空腹を満たさんとしているようだった

「っ邪魔……しないで………!!」

くるりと方向転換し、己の胸に手を当てて『神』の文字を取り出す
しかしその束の間、地上から飛んできたらしい緑色の光条が命中し、
ジャガー達は動くのをやめてひゅるりと落ちていった

「あ、れ?」
「ボーっとしてないで! 早く行くのれすよ!!」

声のした方を見れば、黒いスーツを着た黒いセミショートヘアの少女がいた
近未来的な、玩具のような銃を持っていたので、間違い無いだろう

「あ、有難う御座います!」

羽を散らせ、彼は急ぐ
たった一人の妹を取り戻す為に










「……ごめんなさい、漢ちゃん……こんな事しかできないなんて、母親失格れすよね……
 麻夜ちゃんのこと……お願いしますなのれす……!」

溢れる涙をぐしぐしと拭い、
彼女は――――――R-No.40は、「ローシュタインの回廊」の能力で己の分身を生み出し、
無限に湧き出るジャガー達に銃口を向けた











              【 神 力 秘 詞 】
         十四之巻 〜誰カノ 心ニ 秘メラレタ 想イ〜










   ...物語猶続
444 :赤い幼星 † 蘇る英雄、帰ってきた英雄 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/28(日) 21:52:21.34 ID:NA5vUsXI0
暗く深い森の中、激しい戦いの音が木霊する

「第四の破滅、『ジュデッカ』!!」

麻夜の指先から圧縮された水の弾丸が放たれる
だがそれは瞬く間に、じゅうっ!という音と共に跡形も無く蒸発する

「無駄ですわ……今の貴方では、ワタクシには勝てません!」

ローゼは五本の指先から赤く細い光条を発射する
その標的となった麻夜は、地面から3体のジャガーを出現させて盾代わりにした
ジャガー達はぴくりとも動かなくなり、光となって消えた
彼女の言う通り、今の麻夜、つまり「太陽の暦石」にはローゼを倒す力は無い
行動を読めず、力量も桁違い、さらに幾つかの技もほぼ完全に封じられている

(み……認めん………この我がこんな小娘などに……!!)

右腕に鋭い風を纏い始める麻夜
一瞬、ほんの一瞬間に、彼女の目の前にまでローゼが迫っていた

「なっ!?」
「いい加減に、その子を返しなさい!!」

ばちっ、と唸る赤光を纏った拳を勢いよく振りかぶるローゼ
にやりと笑みを浮かべた麻夜に、彼女は気がつかなかった

「おっと、ジャガー共が遊び相手を見つけたようだな」
「――――――――ッ!?」

零れた邪悪な一言
嫌な予感を抱き、ローゼは攻撃を止めて振り返る
その直後、彼女は自分が同じ過ちを繰り返した事を解した

「し、しまっ―――――――」
「やっひゃひゃひゃ!! 第二の破滅、『アンティノラ』!!」

風を切る音が、肉を切る音に変化する
木の葉の間から差す月明かりが、鮮血を照らして妖しい輝きを生み出した
ずぶり、と麻夜が腕を抜き取ると、腹に空いた風穴から血を噴き出させながら、
ローゼは力無く、その場に倒れ伏した

「……やひゃ……やひゃひゃひゃ……何だ、やはり大した事無いではないか
 一時は焦りはしたが、所詮は人間か………」

うつ伏せに倒れたローゼの身体が、小さく動いている
それで息がある事を確認した麻夜は、再び右腕に風を纏った

「ふん、これでトドメだ……あの世で仲間を待っているが良い」
445 :赤い幼星 † 蘇る英雄、帰ってきた英雄 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/28(日) 21:52:49.13 ID:NA5vUsXI0
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【BLANK - 大王の作者待ち。完全版は後日wikiに上げる予定です。ごめんなさい】


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446 :赤い幼星 † 蘇る英雄、帰ってきた英雄 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/28(日) 21:53:39.49 ID:NA5vUsXI0
「麻夜!!」

正義と麻夜の拳が交わろうとした時、声が深い森の中で木霊した

「っぬぅ、今度は何者だ!?」
「漢くん…!」
「麻夜……遅くなってごめん……迎えに来たよ」

背に生えた真っ白な翼が消滅する
森の中にゆっくりと降り立った、少女にしか見えない少年――神崎 漢は、
今にも泣き出しそうな表情で麻夜を見据えた
麻夜は――「太陽の暦石」は暫し考えた後、小さく鼻で哂った

「……あぁ、この娘(ニクタイ)の家族か?
 残念だがもうこれは我のものだ、貴様の声など疾うに届いておらん
 もはやこれは我の傀儡が如きものとなって―――――」
「黙ってて!!」

か細くも力強い怒号が響く
あまりの気魄に、一瞬だけ、「太陽の暦石」もたじろいだ

「…貴方に話してるんじゃない……僕は麻夜と話がしたいんだ!」

真っ直ぐな瞳
諦めの感じられない、希望に満ちた眼
それが彼女(レキセキ)には気に食わなかった

「……そうか……そうか………やっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ…
 下らん!! これから我が直々に貴様等を滅ぼしてやろうと言うのだぞ!?
 言いたい事があるのなら、後(アノヨ)で言えば良かろう!!」

右掌から業火を噴き出す
目標は無論、神崎 漢
だがそれは一瞬の土砂降りによって沈下した

「っち、邪魔をするな!」
「どっちが!!」

風を纏う拳と大剣が、甲高い音を散らして交わる

「麻夜、聞こえる? 僕だよ、漢だよ!
 今日は、麻夜の誕生日だったんだ……覚えてた?
 麻夜が裂兄ぃと出かけてる間に、バースデーケーキ、作って待ってたんだよ?」
「無駄だと言うのが分からんか!? 己の滅びの時を静かに待っておれ!」
「無駄なんかじゃない! 漢くんの声は絶対に、麻夜ちゃんにも届く!!」
「僕は……弱くて、泣き虫で、友達も全然出来なくて……
 今日もすぐに麻夜を助けに行けなくて……頼りないお兄ちゃんだけど……
 でも、麻夜は僕と違って、強かったから……麻夜がいつも励ましてくれたから……
 麻夜がいつも傍にいてくれたから、今日まで楽しくやってこれたんだよ
 麻夜がいないと………ほんとに、ダメなお兄ちゃんだよね………麻夜がいないと、生きていけないよ………」





  
447 :赤い幼星 † 蘇る英雄、帰ってきた英雄 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/28(日) 21:54:13.66 ID:NA5vUsXI0
――――――――――――――――――――すな





「――――――っ!?」

「太陽の暦石」の動きが止まり、頭を抑えた
その隙に、攻撃を受けて僅かに後退る

(こ、この声は………あの時よりはっきりと……)
「帰って来てよ、麻夜……麻夜は、そんなのに負けちゃうような弱い子じゃ、無いよね?
 麻夜はとっても、強い子だから………帰って来てくれるよね……?」




――――――の―――――――――に――――――――――すな




「ぐっ………ま、た………強く…………!?」

頭の中に声が流れ込む
いよいよ頭を抱え込んで苦しみ出した「暦石」を見て、正義達は攻撃を中断した
漢の目に涙が溜まる
彼はそれを精一杯に仕舞い込んだ
今は、その時ではないから

「お願いだよ、麻夜………そんな奴に負けないで………皆でケーキ食べようよ………麻夜ぁ!!!」











―――― 我 の 部 下(モノ) に 手 を 出 す な ! ――――










「あ、の…………祟り神風情、がぁ…………!!!」
「まさかこの期に及んで将門に感謝する事になろうとはな」

声がしたのは「太陽の暦石」の真後ろ、少し離れた処だった
黒一色の服を右目から流れる紅に僅かに染めた少年

「あ……!!」
「貴様……生きて………!?」
「お前の、所為で…大切な約束を守れなかったじゃねぇか!!」



   ...To be Continued
448 :夢幻泡影 † 邪を引き裂く刃となれ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/29(月) 00:33:25.50 ID:op3u5IYC0
―――――ま、だ………








―――――まだ………くたばれねぇ………








―――――やることはまだ……沢山残ってんだ……







―――――こんなとこで……終わる訳には………!!








『いつまで寝てるのかね、マスター?』




その声で、裂邪はようやく目覚めた
目の前の光景は、彼には僅かながらに信じがたい光景
黒煙が獅子の形を成したような怪物が、紫炎に拒絶されて悔し気に呻いている
ふわふわと浮遊する「ティルヴィング」が、彼等を守るようにしてそこに存在していた

「……っは、2番目くらいに見たくなかった明晰夢だな」
『そんな冗談を言えるくらい元気そうで何よりだよ』
「ま、余り体力は、残っちゃいないみたいだけど」

力の入り辛い足に活を入れ、よろめきながらも立ち上がる
黒い獅子―――マヤ神話にて、最初に誕生した人間を喰らい尽くした魔神「コッツバラム」は、
腹を空かせたのか、口から湧水の如く溢れ出る涎を際限なく垂らし続けていた

「一応、礼は言わせてもらうぞ……有難う。守ってくれたみたいだな」
『勘違いしないで欲しいね。君が死ねば僕も消えるかも知れないからね…あくまで自己防衛さ』
「そういう事にしておこう…あと、一つ気になった事がある」
『何だね?』
「さっきローゼちゃんと戦った時、お前が呟いた………“アル”って誰だ?」

ナユタは厳密に言えば「ティルヴィング」を纏う「憑依霊」であり、表情と呼べるものがない
しかしこの時、剣を覆う霊体が、激しく揺らめいたのが視認出来た
何か理由があるんだな―――裂邪は確信した

「……話せない事なら良い。聞かなかった事にしてやる」
『僕の初恋の人だよ』
「ッ……!?」
『君が“融合”と呼んでいる状態が解除される直前に、人間だった頃の記憶を思い出したんだ
 何処で暮らしたのか。誰と過ごしたのか。――――――何故、人間を棄てたのか』

「コッツバラム」は空腹の余り、洞窟の壁に八つ当たりを始める
がらがら、と天井の一部が音を立てて崩れた

『思えば人斬りなんて馬鹿馬鹿しい事をしたよ。後悔してもどうにもならないのは分かってる
 そもそも僕が存在してはならない存在である事も、ね』
449 :夢幻泡影 † 邪を引き裂く刃となれ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/29(月) 00:34:01.53 ID:op3u5IYC0
ギハハハ、とナユタは笑った
霊体の波打つ様、その声色から、泣いているようにも聞こえた

『……マスター』
「何だ」
『もし今日でこの世が滅ばなければ……
 君や君の弟、君のお友達が、この世界を救う事が出来た時は……僕を殺してくれないか?』
「あぁ、分かった………ただし」

一歩、ようやく裂邪は歩みを始めた
疲労しているというのに、その一歩は怒りが込められた為か、とても力強かった

「残酷な死刑宣告をしてやろう
 その時が来たと判断したら、望み通りお前を殺してやる
 それまでは生き続けろ」
『なっ……!?』
「お前の言う通り、お前は沢山の罪も無い人々を殺した
 事実、俺もお前に殺されかけた
 だから殺して下さいだと? 甘えてんじゃねぇよ
 確かに後悔したって何にもなんねぇよ。でもお前が死んだって何にもなんねぇだろ
 罪から逃げたって誰も救われねぇだろ!?
 せめて、殺してきた人達の分も生き続けろ!
 一生皆に謝り続けて、一生消えない罪を背負い続けろ!
 それが、お前に与えられた罰だ!!」
『…………』
「都市伝説になる前、好きな人がいたんだろ?
 それを思い出せたなら、もうお前は同じ過ちを犯す事は無いだろう
 人が誰かに愛されて生きてるって事を、お前も知ってるってことだから」

一歩、また一歩と歩み寄り、彼はナユタを左手に取った
いよいよ怒り狂いだした「コッツバラム」が、待ちかねたとばかりに戦闘態勢をとった

『ギハハハ…分からないね、君はまだ僕を手元に置こうと言うのかね?
 僕は君を切り刻んだ者だとつい先程君が言ったところだろう?』
「あぁ。俺はお前を許した訳じゃない
 ただ……お前の罪を一緒に背負うのも契約者としての、
 いや、“家族”としての俺の責務だと、俺は考えている」
『……全く、君には呆れて物も言えないね…人斬りである僕を“家族”と呼ぶのか?』
「文句があるなら来なくて良い
 無いのなら………このデカブツをたたっ切ってやろうぜ、ナユタ!」
『…仰せの儘に…マスター』

ふっ、と裂邪の姿が忽然と消える
獲物を見失った「コッツバラム」はきょろきょろと辺りを見回すが、
彼はその視界に入らない真後ろにいた

「『トータラージーク』!!」

尚も倒れるシェイド達を守るべく燃え続ける紫炎の怪しげな光を刀身に受け、
「ティルヴィング」は「コッツバラム」に向けて一筋の閃光を放った
くるりと瞬時に振り返った「コッツバラム」は大口を開けてその一閃を呑みこんだ

【どどぎゅうううううううううううううううううん!!!】
「はぁっ!? 光を喰っただと!?」
『厄介な敵だね……少々危険だが肉弾戦しか無さそうだ』
「のようだな、サポートは頼んだぞ!」
『仰せの儘に』

再び「神出鬼没」で姿を消し、今度は「コッツバラム」の正面に現れる
未だに先程裂邪がいた方向に目を向ける黒獅子の喉をかっ切ろうと剣を振り上げた
だが、「コッツバラム」はすぐに反応し、鋭い牙で剣を抑えた

「っ!? 暗闇の中なのに反応が早過ぎる…!?」
『恐らく“匂い”だね……肉食獣のように嗅覚が発達してるんだ』
「ましてや血も出してるsおわっ!?」

右から振られた尻尾の一撃を回避できず、そのまま地面に叩きつけられる
げふっ、と血を吐きながら、尚も彼は立ち上がった

『くっ、すまない、反応が遅れた』
「……いや、今のは俺が悪かった………“右側が見えねぇ”んだよ」

右目から滴り続ける真っ紅な血
―――正義と戦った時についた怪我が、ここで響くとは思わなかったな
そう想いはしたが、不思議と彼は正義を恨む事は無かった
寧ろ、己の弱さを余計に悔いた
450 :夢幻泡影 † 邪を引き裂く刃となれ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/29(月) 00:34:33.81 ID:op3u5IYC0
だがしかし、今はそんなことをしている場合ではない

「っ来る!!」

迫りくる牙を、「ティルヴィング」を構えて迎え撃とうとした
ところが、「コッツバラム」は検討違いな方向へ突き進んでいった
否、“突き飛ばされて”いったのだ

【どどぎゅうううううううううううううううううううううぅん!?!?】
『何?』
「この気配……まさか!?」

紫炎に僅かに映ったそれは、紫炎を反射する程に美しい灰色がかった装甲だった
70にも上るキャタピラのついた装甲車がムカデの如く一繋がりの車両を形成し、
その先頭車両には4基のドリルと、2つのランチャーパックが配備されている

「ビオ………ビオなのか!?」
『知り合いかね?』
《……Tasogare Retsuya,認証…………助立チ,デアリマス》
「恩返しってか……有難う、ビオ!」

倒れて動けなくなった「コッツバラム」の尾を切り落とした
バランスを失いつつも立ち上がる「コッツバラム」に向けて、
ビオは全車両の機関銃でありったけの弾丸を打ち込む
それを待っていたのだろうか、「コッツバラム」は大口を開けて弾丸を喰らいだした

「ちっ、ビオ! そいつに銃火器は無意味だ―――――――」

その直後、「コッツバラム」の口が突如閉まり、多量の弾丸をもろに受ける
思わず言葉を詰まらせた裂邪だったが、暗がりに僅かに見えた無数の黒い腕、
そしてその気配を感じ取り、理解した

「あいつら…まだ元気だったのか」
「待タセタナ、命知ラズノ馬鹿契約者」

シェイドは更に無数の腕を影から伸ばし、「コッツバラム」の巨体を持ち上げた
そしてそれは暗闇に浮かぶ、無数のシャボン玉に囲まれていた

「『ブレイカブル』!!」

声と共にシャボン玉は爆裂し、黒獅子を爆破の嵐に巻き込んだ

「「『ミットライト』ォ!!」」

ウィルの炎を纏った理夢が勢いよく突撃し、その巨体は強く岩盤に叩きつけられる
洞窟内全体に響くように大きな雄叫びをあげる「コッツバラム」
だがその声は、確実に、先程よりも弱まっていた

「お前等……有難う、後は俺達に任せろ!!」

裂邪の声に応えるように、彼の周りを13の紫炎の玉がくるくると回り始めた
「ヴァルプルギスの夜」のようだが、今までの反応と少し違う

「………こ、これは………?」
『ほう、僕が契約した時には使えなかった能力だね
 「ヴァルプルギスの夜」は、魔女達が集まって黒魔術の儀式を行うという話がある
 この火の玉は魔女の魂だよ』

暫くして13の火の玉は円陣を組んで止まり、
裂邪を中心にして、足元に紫色に輝く五望星が出現した

「……そういうことか…分かった、力を貸して貰おう
 巨大化しろ、「ティルヴィング」!!」

彼がそう言うや否や、またも13の火の玉はぐるぐると回り始め、
紫の輝きが一層強まったかと思えば、
宣言した通りに、「ティルヴィング」が洞窟の天井に届く程に巨大になった
これを裂邪が容易に持つ事が出来るのは、ナユタが彼に憑依して補助しているお陰だろう
451 :夢幻泡影 † 邪を引き裂く刃となれ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/29(月) 00:34:59.72 ID:op3u5IYC0
《………援護,開始………》

ビオの4つのドリルが激しく廻り始め、
倒れた「コッツバラム」のいる岩盤を抉り取り、そのまま投げ飛ばした

「はあああああああ!!『プシタータ・マトリョシカ』!!」

宙に浮いた状態の「コッツバラム」を、巨大な剣で文字通り一刀両断した
すぱんっ!!と斬られた黒獅子は断末魔を上げる事無く、ただ静かに、闇へと消えていった

「……よし、一旦、終わったか………」

巨大化した「ティルヴィング」が元に戻った瞬間に、裂邪はどさりと腰を落とした

「だ、大丈夫ですかご主人様!?」

すぐにミナワを筆頭に、仲間達が彼に駆け寄る
ヒヒッ、と彼は笑いながら、ミナワの頭をぽふ、と撫でた

「あぁ、平気だよ………お前等こそ、無事で良かった
 それと、わざわざ有難うな、ビオ―――――――――――――あれ?」

ふと洞窟内を見渡したが、その巨大なヘビ型兵器の姿は、何処にもなかった
恐らく、もう行ってしまった後なのだろう

「そういや、あの無駄にカッコいいロボット、何だったんだ?」
「ま、色々あってな…………それより、だ」

無理に立ち上がろうとする裂邪を、ミナワがあたふたしながら止めに入る

「あ、ご、ご主人様、今動いたら身体が持ちませんよ!?」
「何とか持たせるさ…………今日が終わる、その時までは」

ふらつきながらも、彼は立ち上がり、
右目の血を拭いながら、シェイドに視線を向けた

「シェイド、『シャドーダイブ』の準備だ。行先は分かるな?」
「……了解シタ……ダガ、策ハ在ルンダロウナ?」
「あぁ。麻夜を救う確実な方法が、たった一つだけ」

彼は腰に巻かれたベルトを握りしめながら、周囲の目を確認した
ミナワ、理夢、ウィル、そしてナユタも、向かう覚悟は出来たようだ

「…終わらせるぞ、全部!」



   ...To be Continued
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/10/29(月) 00:36:15.95 ID:op3u5IYC0
一年経っちまった………くそぅ死にたい……orz
10月中には終わらせますので今一度チャンスを(もはや詐欺レベル
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/10/29(月) 00:45:44.71 ID:op3u5IYC0
しかし今はもう休みます……
手を抜いたとは言え酒飲みながら3話連続は脳が死ぬ……
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/29(月) 00:51:01.22 ID:kCfynOds0
れっきゅん過労で死んじゃう…
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/29(月) 01:14:27.96 ID:op3u5IYC0
>>454
あいつには連載終了後にも他の連載で頑張る使命があるので大丈夫なのれす
寧ろ奴には死よりも恐ろしいものを見せてやろうと(笑
456 :ソニータイマー/携帯 [sagesaga]:2012/10/29(月) 08:49:59.81 ID:xR6Ynr+DO
シャドーマンの人乙です
ところで私も晶髏視点で何か書いた方が良いですかね?
457 :パーティの夜―ο-Noの場合 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/31(水) 00:48:24.47 ID:SvOu7RYAO
 今日は10月31日。
 そう。万聖節の前日。ハロウィン。
 元は単なるケルト人の収穫感謝祭だったものが、キリスト教がケルトに入ったためになにやら魔改造され
 魑魅魍魎やらが跋扈する祭りになり、更に輸出先のアメリカでは商業主義に染め上げられ、
 遠くここ日本では「カボチャとお菓子のお祭り」と浮かれ騒ぐ一日程度の認識しかない。
 そしてそれはここ学校町でも例外ではなかった。

「ハッピーハロウィン!」
「トリックオアトリート!」
 様々に仮装したりしてなかったり、人間や都市伝説やら黒服がお菓子の交換に余念のない、ここo(オウ)Noの本拠地。
「ウラシマ、ハッピーハロウィン!お菓子をとっとと寄越しなさい」
 おねだりと言うよりカツアゲに近いお菓子の要求に、ウラシマは紙袋に詰まったチョコレートを渡した。
「よしよし、私からもよ」
 手渡された小さな、可愛らしくラッピングされた包み。
「手作りですからね、よく味わって食べるのよ」
 更に地獄へ叩き落とされるような一言を残し、るりは風のように去っていった。
「あ、桜ちゃん、ハッピーハロウィン!」
「ハッピーハロウィン!紫さん、緋色さん」
 少女3人は和やかにお菓子を交換する。
 ちなみに緋色は何時ものうさ耳パーカー姿に血塗れ(塗料)の眼帯を足した、ちょっぴりホラーテイスト姿、
 紫はスカートをハロウィンらしくオレンジに変えており、頭には魔女のとんがり帽子をいささか気恥ずかしそうに被っている。
「に、似合うかな・・・?」
「うん、すっごく可愛い!」
 にこにこの笑顔でうなずく桜は黒いジャケットの襟元から白いジャボを覗かせ、思い切りパニエで広げた黒いスカートに、大きな羽飾りのついたパイレーツハットと、黒い薔薇の眼帯。
 コーディネイトした響も全く同じ格好で、テーマは「海賊の女王」なのだそうだ。
「ちょっと派手すぎて、恥ずかしいな」
「いーんじゃない?ハロウィンだもん!」
「でも、いいのかな?」
 総出でこんなお祭り騒ぎになっちゃってと、業務の滞りを気にする彼女にいつの間にやら現れたるりがウィンクする。
「心配ないわよ・・・ハロウィンの由来、知ってる?」
 カボチャのお祭り、ということ以外に 特にハロウィンを知っているわけではない3人。
「ハロウィンは、万聖節、つまり全ての聖なる人の日の前日」

458 :パーティの夜―ο-Noの場合 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/31(水) 00:49:41.53 ID:SvOu7RYAO
 この世とあの世を繋ぐ門が開き、あらゆる霊がこの世に姿を現す日。
「日本のお盆のようなものですか・・・」
「都市伝説がらみの事件も増えるから。各員の警戒レベルを普段より一段階あげてあるのよ?」
 パーティも大事だけど、こうしてメンバーを一堂に集めておけば、召集の手間が省けるでしょ?
「・・・つまり、パーティを名目にした、総員待機って事?」
「それで、パーティなのに、アルコール無しの上に、部外者は参加禁止だったんだ」
「なんだか、素直に楽しめなくなった・・・」
 したり顔のるりの前で、3人は顔を見合わせた。

「あ、桜ちゃ・・・いや、No.222!」
 その声に、ふいっと少女が振り返る。黒いジャケットの襟元からはふんわりと白いジャボが覗き、黒いスカートもふわりと円く広がっている。
「?」
 少女が首を傾げると、さらりと栗色のおかっぱ髪が揺れた。
 少女に声をかけたのは男の黒服ふたり。
「No.222、トリックオアトリート!」
「お菓子をくれなきゃイタズラですよハァハァ」
「お菓子くれて、イタズラもさせてくれたらもう言うことはぁはぁ」
 涎でも流さんばかりの、いかにもなスケベ顔。
 ほんの一瞬、少女の瞳に剣呑な光が宿るが、二人がそれに気づくことはない。
「じゃ、人目のないところで・・・」
 人気のない部屋に三人で滑り込む。
「じゃあ・・・目、つぶって?」
 少女が甘やかに上を向き、目を閉じる。黒服たちには歓喜の一瞬だ。
『い、いただきますっっ!』

『緊急通信。緊急通信』
 宴もたけなわの広間に、不似合いな機械的な音声が響きわたる。
『学校町南地区にて、ジャック・オ・ランタンの大量発生を確認。殲滅の為にR-No数名が出撃。後方支援と救護を求むとの由』
「聞いた?各員戦闘配置。救護、後方、及び通信当番は直ちに急行!」
「了解!」
 るりの号令の下、ο-No.は俄に騒がしくなった。

「けっ、ざまーねぇな」
 部屋の中ではモップを手にドヤ顔の少女と、床に這いつくばったふたりの黒服。
「う、うう・・・」
「まさか、兄貴の方だったとは・・・」
「けっ、これに懲りたら俺らの見分けもつかねーうちに桜に言い寄るんじゃねーぞ」
 もう止せと呆れ顔の「小さなおっさん」を肩に乗せ、敷島響が大見得を切って見せたところに。
『緊急通信、緊急通信・・・』
「やっべ!今日の支援当番員、桜じゃねえか」
「こうしちゃおれん。ほら、行くぞ」

459 :パーティの夜―ο-Noの場合 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/31(水) 00:50:09.31 ID:SvOu7RYAO
「おーよ!」
「あ、居た、響君!桜ちゃん、待ってるよ」
「いってらー」
「んじゃあ、行ってくるぜ!」
 ο-Noのハロウィンの夜は、パーティと緊急事態に更けつつあった。



END
460 :パーティの夜―新田家の場合 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/31(水) 00:51:10.06 ID:SvOu7RYAO
 万聖節の前日、ハロウィン。
 この日はあの世とこの世を繋ぐ門が開き、両方の世界で自由な行き来が出来るという―
 そう。魑魅魍魎の跋扈する日。

「あー!落っこちちゃったぁ」
「お前、馬鹿だな。一度に削りすぎなんだ」
「ハロウィンのゲームってぇのも、なかなか楽しいわねぇ」
 新田家ではきゃあきゃあと明るい声が弾けていた。
 ノイは魔女のとんがり帽子に胸元にリボンを飾ったワンピースの上からマントを羽織り、
 柳はカボチャ宜しくオレンジの着ぐるみに、カボチャのヘタを模した緑の帽子を被っていた。
 飛縁魔は服装こそTシャツジーンズのままだが、付け牙を付けていて、にやりと笑うとさながら吸血鬼、という各人思い思いの仮装姿。
「極くんも、なにか仮装すれば良かったのに」
「いえ、僕はそこまでは・・・」
 ノイと小麦粉の山の上の硬貨を落とす「小麦粉切り」に興じていた極は、柳の風体に苦笑いしながら答えた。
「あれ、幻は?」
「呼ばれてもないのに押し掛けておいて、いなくなるとは失礼な奴だな」
 リジーがむっと斧に手を掛けるのを、極が待てと制した。
「トイレかも知れない、少し待ってみよう」
「あたし、他のお部屋見てくる!」
 ノイが襖を開けると、
「俺は外を見てきます」
 と、幻に無理矢理全身に血塗れ(塗料)の包帯を巻かれ、ここまで連れてこられた貴也が後に続いた。

(幻・・・)
(幻・・・どうしてあんなことを)
「うるせーですよ!」
 ピンクの髪をツインテールに束ね、赤い薔薇をあしらった黒いヴェールで飾った頭を振る。
 子どもが嫌々をするように激しく頭を振る度、黒い編み上げのワンピースに重なる白いアンダードレスの裾と、レースのふんわり広がった姫袖が揺れた。
 「声」は彼女の心にのみ響き、彼女にしか見えない白い腕を伸ばして彼女を打つ。
(幻・・・育ててやった恩も忘れて)
(あなたがわけのわからない子だから、普通にしようと思っただけなのに)
 白い手の数は増える。まだまだ増える。
(新宮さん、あたしたち、別に虐めたつもりなんかなかったのに)
(新宮さんが変な子だったから、勝手に虐めだと思いこんで)
(あんな酷いことを)
 彼女の過去が、葬った両親と級友の魂が、幻を責め苛んだ。
 白い手は勢いを増して幻を小突き回す。
「大人しくあの世に帰れなのですよ!」
 「アルキメデスの鏡」の能力で焼き払おうとしても、効果がない。

461 :パーティの夜―新田家の場合 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/31(水) 00:51:41.51 ID:SvOu7RYAO
「これなら・・・」
 次に幻が向けた能力は、
「鏡は魔を跳ね返す」
 幽霊だろうが他の都市伝説だろうが、人でない、「魔」の存在である限り、これが通じないはずはない・・・が。
(無駄だよ・・・幻)
 手の勢いが減じることはなく、とうとう彼女の喉頸にも手が伸びる。
「がっ、げほっ・・・」(お前が悪い子だから)
(お前が私たちを殺したから)
(あなたが私たちと同じようにしなかったから)
(あなたがいけなかったのに)
(お前のせいだ)
(お前のせいだ)
 もう息ができない。視界が闇と手の生白さに隠されていく。
 ああ、その通りかも知れない。
 自分さえ「普通の」女の子に生まれていれば。
 家族からも愛されて、友達も沢山いて。
 ああ、でも、そんな「たられば」すら考えるのもバカバカしい。
 自分は自分なのだ。今更他のものになんか―

「―幻!」
 声と共に、視界が開けた。喉が開き、新鮮な空気が肺に流れ込む。
「ごほっ、ごほっ」
 手の戒めから解放されて、その場に膝を付いた。
「なーんだ、失敗しちゃった」
「あなた、だれ!?」
 ノイの誰何に、新田家の生け垣にふわりと佇んだ少年がくすりと笑う。
「え、俺はただの『死霊』の契約者だよ?ハロウィンで死霊が使いやすくなってるから、ちょっと遊んでやっただけさ」
「ウソだもん!」
「何!?」
「幻のお父さんとお母さんが、幻をイジメるはずがないもん!」
「ノイ」
「幻!大丈夫?」
「ボクの親なら、それくらいやりかねませんよ。でも、てめーのそれは、『死霊』じゃねーですね」
 もし「死霊」が都市伝説本体なら、「鏡は魔を跳ね返す」で撃退できないとは思えない。よほど強力なものでない限り。
「―つまり、てめーの使う『死霊』には“都市伝説”としての実体がない。つまりは、幻。違うですか?」
「ふん・・・違わない。俺の都市伝説は『蜃気楼』チャラけた馬鹿女だと思って、遊んでやったのに。それと、なぜお前の過去を知ってるかは企業秘密な」
 悪く思うなよ!と一声残して少年は生け垣の向こうに飛び降りる。
「あっ!待って!」
 ノイの叫びも空しく、足音と共に気配は遠ざかる。
「ノイ・・・」
「幻!だいじょーぶ?」
「ボクは、大丈夫なのですよ」
 ノイに抱え起こされて、いささか無理矢理に笑顔を作った幻は、ややよろめきながらも部屋へ足を向けた。
 ノイの心配げな表情には、あえて気づかない振りをして。

462 :パーティの夜―新田家の場合 [sage]:2012/10/31(水) 00:52:42.29 ID:SvOu7RYAO
「いやっほー!私の一人勝ちね!」
「火の中の干しブドウ取るなんて、普通の人は熱くて出来ないよ!」
「あのー、そろそろ・・・」
「UNOとかトランプとか、普通のパーティゲームしませんか?」
 ハロウィン独特のゲームに興じる柳と飛縁魔に極と貴也がカードを押しつける。
「ただいまなのですよー」
「新宮さん、どこ行ってたの」
 貴也はいささか呆れ顔でカードを手渡すと、
「顔色、悪いよ」
 耳打ちをされた幻は、苦笑いをして首を振る。
「次、幻ちゃんの番だよー」
 柳の声に、慌ててカードを幾枚か置いた。
「・・・パスだ」
 リジーの恨めしそうな眼差しに一同はどっと笑い、パーティの和やかな夜は更けていった。

「ねえ・・・ノイ」
「ん・・・何かな?」
「昔、ボクもそうだったから言うですよ」
「幸せを勝ち取ることは、不幸に耐えることより勇気がいる。
だから、大切なものを見つけたら、それを絶対手放さない。
守り抜く。たとえ他の大きなものを失うことになろうと・・・
―いーですね、ノイ?大事なものは、闘わなくちゃ、守れねーですよ?」
 しばらくノイは真剣な表情で幻の言葉を反芻していた。
「・・・うん」
「今は、意味が分からなくても、将来も分からなくても―ごめんなのです、ボクが言いたかっただけなのです」
「うん・・・ねえ、幻」
「なんですか?」
「あたしね、幻が好きだよ」
「あたしと友達になりたいって言ってくれた幻が好き」
「幻の友達だから、貴也も好き。あたしのした事を知って、それでも迎えてくれたイタルが好き」
「ムーンストラックも、飛縁魔も、リジーも好き。もちろん柳は、この世でいちばん好き」
「みんなが、あたしの大切なものなの。だからあたし、今より強くなって、みんなの事、絶対守るからね」
 ありがとう、としか言えないのが口惜しいくらい嬉しくて。
「ありがとう・・・ボクも、ノイの事頑張って守るですよ」
 ああ、この賑やかな友達さえいたなら。
(あいつら―“死霊”も、別に本物でも、また受けて立ってやってもいいのですよ)
 そんなハロウィンの、夜



END
463 :パーティの夜―新田家の場合 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/10/31(水) 00:54:34.93 ID:SvOu7RYAO
投下以上です!
ハロウィン要素がパーティしかないじゃんとか言わないでね!

ところで影の人おつおつ。クライマックスに期待しています。
ソニータイマーの人にも期待。
464 :夢幻泡影 † 守られた“明日”  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/10/31(水) 22:53:41.40 ID:NdUcLlVX0
「お前の、所為で…大切な約束を守れなかったじゃねぇか!!」

闇から現れた少年――黄昏 裂邪のその声、立ち振る舞いからは、怒りが滲み出ているのが目に見えて分かった

「ぐぅっ……し、死に損いが……また来たか………?」
「生憎、昔から執念深さには定評があってなぁ!」

腰に巻かれたR-No.製のベルト型都市伝説召喚機『ウルベルト』を外して手に取り、
彼は最後の力を振り絞って麻夜に―――「太陽の暦石」に向かってダッシュし始めた

「馬鹿が……祟り神の妨害を受けようとも、貴様を殺すくらい訳は無い…!!」

迎え撃つかのように、右腕に鋭い風を纏わせる「太陽の暦石」
しかし、一瞬の赤い輝きと共に、右腕が弾かれ風が四散した
驚いた様子で振り返った様を見て、“彼女”は笑みを見せた

「ッ!? 小娘…何時の間に!?」
「おほほほ…人間を舐め過ぎですわ!」
「ナイス、ローゼちゃん!!」

地面を蹴り、跳び上がって、裂邪はベルトのバックルをぶつけんとする
咄嗟に、動ける範囲で「太陽の暦石」は腕で防御の姿勢をとった
鈍い音が響く
ぱらぱらとビス等の部品が落ちてゆく

「…………」
「やっひゃひゃひゃひゃ……何をするかと、思えb――――――があ゙っ!?」

にやっ、と彼は笑う
「太陽の暦石」は先程にも増して苦しみ始めた
それだけではなく、鎧として装着されていた石板が、次第にぼろぼろと剥がれ始めた

「コ……こ レ は………!?!?」
「ウヒヒヒヒ…『ウルベルト』にはな……情報化された「刃物は縁を切る」が封じ込められたんだ…
 一か八かだったが………成功だった、みたいだな」

裂邪がその場に腰を落とした瞬間、ぷつん!という音がはっきりと聞こえたかと思えば、
ごろん、と大きな円形の石板が転がって倒れ、少女――神崎 麻夜は、倒れそうになる身体を兄である漢に支えられた

【馬鹿な………馬鹿な!?】
「これでお終いですわね……「太陽の暦石」!」
【ふざけるな……まだ…まだ今日(エックスデー)は終わらん!!
 今度はその娘を―――――――】
「シェイドぉ!!!」

石板が黒い無数の腕によって、ぽーん!と上空に跳ね上げられた
周りに生い茂る木よりも高く

【なっ…このっ、邪魔をするな!】
「やれぇぇぇぇぇぇぇ!! 正義ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

キラリと夜空の向こうに流星の如き輝きが一つ
それは徐々に、徐々にこちらに近付き、やがては小さな隕石のように見える程になった
だがそれは石ではなく、人間だった

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

正義が、足を突き出して遥か上空から「太陽の暦石」目掛けて飛び蹴りを行っていたのだ
「太陽の暦石」は、契約者がいなければロクに動く事も出来ない

【……う、嘘だ………こんな事があって……】

何十年も前に先人によって遺された「マヤの予言」
それが、今

【我が予言は……絶対に狂わないイイイイイイイイイイイ!!】
「未来は…お前のものじゃない!!」

この学校町に住む、多くの人々(キボウ)の力によって
金色に輝く満月の下に、儚く、しかし激しく

「『トワイライト・ジャスティス』!!」

木っ端微塵に打ち砕かれた



   ...To be Continued
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/10/31(水) 22:55:38.63 ID:NdUcLlVX0
た っ た 1 レ ス で 終 了

こんなしまらんエンドがあって良いのか
ディレクターズカット版必至じゃねぇか畜生
466 :赤い幼星 † 前夜祭の行進  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/01(木) 00:08:26.42 ID:gbaw7iwt0
「お、おい……今年はどうだと思う?」
「さあな…去年は「マヤの予言」に「南極事件」でドタバタしてたからな」



         「『去年の分も〜』とか言ってくるんじゃない?」
         「こ、怖い事言うなよ;」

   ひそひそ

                        こそこそ

                             「一応用意はしたけど…」
            ざわざわ             「うわぁそんなに!? あたしはこんだけ…」

  「いや何だかんだで忘れてるんじゃねぇか?」
  「どうだろうな、何せ“上”があぁだし……」              がくぶる


     げらげら


                     「で、でもR-No.10なら喜んであげちゃうかも」
                     「このロリコンめ!」



何やらざわめくR-No.の下位ナンバー達
あちらこちらで『あげる』だの『イタズラ』だのというワードが飛び交っている
恐らく、今日が―――――――



カツンッ!!



「「「「き、来たああああああああああああああああ!?」」」」

―――――――っと、どよめきの原因が現れたようだ
それは11人の少女と1人の少年の集団だった
魔女のような格好をした赤い長髪の少女を筆頭に、
カボチャの被り物や黒猫、幽霊等々、あらゆる仮装をした上位ナンバーの集団だった

「おほほほほほほ……皆さん、覚悟は出来てらっしゃって?」

少女―――R-No.0ローゼ・ラインハルトは黒い笑みを浮かべた
そして、スッと右手を挙げ、暫し止め、それをさっと降ろした

「「「「「「「「「「「「「Trick or treaT!!」」」」」」」」」」」」
467 :赤い幼星 † 前夜祭の行進  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/01(木) 00:09:24.15 ID:gbaw7iwt0
動きが早かったのはローゼ、ラピーナ、ロベルタ、凛々、ライサ
だがそれらよりも真っ先に動いていた者が1人いた

「お前等! 甘いものを寄越さないと龍の餌にするぞ!!」
「「ネコ耳日天様かわいー♪」」
「くそっ、女黒服は日天はんの独占かいな!?」
「ずるいんだよー!」
「こら日天さん! あんまり甘いもの食べちゃダメぇ!」
「……結局、今年もやるんですね、これ……」
「こ、こんな事を毎年やってたのか?」

えらく露出度の高い魔女の言葉に、カボチャ頭の少女が溜息を吐いた
さて解説に入ろう
実はR-No.では毎年10月31日――ハロウィンの日に、上位メンバーが集まって仮装し、
下位ナンバー達からお菓子を貰う(ぶんどる)イベントが開催されていた
昨年は色々と問題が重なった為に中止にせざるを得なかったが、今年はある程度平和だったようだ
因みに、レクイエムは一昨年のハロウィンの時点ではまだ「組織」に復帰していなかったので今年が初めてなのである

「Trick or treaT…女をくれないとレ○プする……テケリリリリリリ……」
「きゃー!?」
「帰れ変態魔女! こいつらには指一本触れさせんぞ!」
「「「「「日天様素敵ぃ♪」」」」」
「だが助けたら甘いものを寄越せ!」
「今日の日天さんいつもより鬼畜だよー!?」
「ぐすっ……日天さんが壊れちゃったよぉ………」
「くっ、自分のキャラを崩壊させてまでお菓子を集めようだなんて……プロですわね!」
「アタシも流石にあそこまでは行けないねー;
 あ、ねーねー、お菓子要らないから犯しt」
「やめるでござる!?」
「てゆーかメチャクチャイジめて欲しーんだけどマジで」
「貴方達! ワタクシにお菓子をくれないとボーナスカットですわよ!!」
「「ダメだこいつ等」」

蓮華とレクイエムが呆れていると、蓮華の携帯電話に着信が入る
「誰からだ?」と聞こうとする前に、蓮華の顔が赤くなってることに気がついてその表情を変えた

「も、もしもし?」
《忙しい所悪い、今俺の友人から連絡があってな
 学校町で「ジャック・オ・ランタン」が大量発生してるらしい
 殲滅に当たりたいが、一応指示を聞こうと》
「あ、はい、お願いします、裂邪さんでしたら上手くやってくれると信じてますので」
《了解》
「なっ!? れ、裂邪! なななるべく町は壊すなよ!?」
「っちょ、レクイエムさ」
《レクイエムちゃんか? 最悪、壊しちまったら在る程度直しとくよ。レクイエムちゃんに負担をかける訳には行かんし》
「え、あ……そ、その、ふ、ふん、分かれば良い」
《じゃ、“Rainbow”、任務を遂行する。終了次第追って連絡するよ
 あぁそうそう、終わったらフェアリーモートでハロウィンフェアやってるらしいから行こうぜ》

そこで通話が切れた
はぁ、と溜息をついた2人だが、それは呆れから出たものでは無く、
火照った顔から出た熱気を排出させる為の行為だ

((ケーキなんて無くても十分……))

こちらはこちらで別な意味で甘いものを手に入れたようだった
さて、この喧騒の中で着実にお菓子を集めている猛者が一人

「トリック・オア・トリート! お菓子くれないといたずらするぞー!」
「はい、ハッピーハロウィン♪」
「ライサちゃん可愛いなぁ、こっちにもお菓子あるよー」

何時の時代も子供は正義である



   ...To be continued
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/11/01(木) 00:13:27.42 ID:gbaw7iwt0
まにあわんかった……ぐすん
と言う訳で鳥居を探すの人の話に合わせてR-No.かられっきゅんが「ジャック・オ・ランタン」討伐に向かうよ!
れっきゅんの言う友人は、ハロウィンにピッタリなゴーストタイプだよ!(
あとハロウィンにピッタリそうなキャストでお送りしたい
明日ってか今日仕事から帰ってから上げれたら良いなぁ
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/11/01(木) 00:39:42.51 ID:gvQCPWaa0
てすと
470 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/01(木) 01:07:58.71 ID:TijlZWtAO
影の人おつですー
なんというカオスなハロウィン…(褒め言葉)
鬼畜な日天さんかっこよす。鬼畜なのにしっかりお菓子ねだるとかかわゆす
デレてるレクイエムちゃんとかまじかわゆ白いドレス付きでくださ(ry

>と言う訳で鳥居を探すの人の話に合わせてR-No.かられっきゅんが「ジャック・オ・ランタン」討伐に向かうよ!
おお、わざわざ恐縮なのです
ο-Noからは後方支援担当で桜と響、ウラシマと赤坂姉妹が向かいました。
いちおうウラシマが治癒、救護を担当します。
響はまーったくの役立たずですww「河童の妙薬」持っておっさんと奔走してます。
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/01(木) 01:35:59.78 ID:gbaw7iwt0
>>470
>鬼畜な日天さんかっこよす。鬼畜なのにしっかりお菓子ねだるとかかわゆす
でも後でルートちゃんに怒られちゃうの、正座で

>デレてるレクイエムちゃんとかまじかわゆ白いドレス付きでくださ(ry
何かレクイエムは最近あざとくなってきた気がする。気の所為か

>おお、わざわざ恐縮なのです
逆にネタ提供感謝ですの
しかもただの「ジャック・オ・ランタン」殲滅戦に留まらず、脳内では他のキャラを交えて大混戦してる
どうしてこうなったorz(まだ脳内だろ
472 :舞い降りた大王―サトリ ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/01(木) 02:32:03.19 ID:0ffjohhf0
〜〜〜黄泉への道〜〜〜







死にゆくものが通る道。



今、ギリシャ神話が死の神・タナトスと会話している少年、黄昏正義は、この道の果てへと歩もうとしていた。






タナトス「―――少女からの伝言は伝えた。少年の伝言も必ず伝えよう。
     私から渡すものも、もう無い。せめて案内だけでもさせてくれ。」
正義「うん、ありがとう。一人じゃ不安だもんね。」
タナトス「安心しろ。【閻魔大王】も悪い人ではない。
     悪人には厳しいが、少年のような人間なら親しく接してくれるだろう。」
正義「そうなんだ。へぇ……。」
タナトス「……妙に意外そうだな。そんなに【閻魔大王】に恐ろしい印象があるのか?」
正義「ううん、タナトスが他の都市伝説と仲がいいって事に驚いてた。」
タナトス「あぁ。……おかげ様でな。」



タナトスには気付かれなかったようだが、一番の不安は、勇弥達の安否だった。
しかし、いつまでも地上の事を気にしてはいられない。
また会う日まで、こちらの世界で暮らしていこう。正義は心の中でそう誓った。



気持ちを新たに、正義は早く行こうとタナトスを急かす。
タナトスは正義に微笑みかけた……。






次の瞬間、タナトスの表情が変わり、ある方角へ向きを変える。
正義もその方を見てみたが、何も感じ取ることはできなかった。

正義「……どうしたの?」
タナトス「恐ろしいほど膨大なエネルギーだ。この黄泉という異世界でも感じられるほどに。
     いったい、外で何が起きている……?」
473 :舞い降りた大王―サトリ ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/01(木) 02:34:31.11 ID:0ffjohhf0






〜〜〜世界〜〜〜



正義のやり残した事を。
【太陽の暦石】を倒すため、いや、麻夜を救うため、勇弥達は今、戦闘を決意した。
しかし【太陽の暦石】が呼び出したジャガーの群れが、勇弥達の行く手を阻む。

勇弥達は3つに別れて戦闘を開始する。



勇弥「さてと、こいつらの処理が先だな。」

ジャガーの大群が勇弥を睨みつける。しかし勇弥は気にもかけず、自分の周りに0と1の線を引いていく。

勇弥「よし、ざっとこんなもんだな。」
ジャガー「「グワァァァ……!」」

ジャガーの大群が勇弥に跳びかかる。無数の鋭い爪や煌めく牙が勇弥に襲いかかる。



その瞬間、ジャガー達の周りが大爆発を起こした。
煙がはれると、そこには見るも無残な姿のジャガーの残骸が残っていた。

勇弥「言い忘れていたが、俺の前にある空間に近づかない方が良いぞ。
   その辺りの窒素の発火点は、黄リンのそれと同じ摂氏30度に変えさせてもらった。
   少しの摩擦で発火する温度だ。ん、もう手遅れか。」

知能のほどは不明だが、この惨状を目の当たりにし、勇弥との戦闘は不利と判断したのだろう。
残ったジャガーは目標を奈海や楓に変更し、走っていく。

勇弥「あ、大事なことを言うの忘れていた。」

勇弥がそう言いかけると同時に、ジャガー達はまた爆発に巻き込まれた。

勇弥「お前達の左右にも、全く同じ処理を施した空間があるぞ。
   下手に動かない方が……。まったく、人の言うことを聞かない困ったやつらだ。」
474 :舞い降りた大王―サトリ ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/01(木) 02:37:27.36 ID:0ffjohhf0
―――その頃、楓は。

ジャガーに囲まれ、圧倒的に不利な状況に見える。

楓「どうした?それが精一杯か?」
ジャガー「「グルルル……!」」

しかしこの状況で、楓は一切の攻撃を受けずに今まで立ち回っていた。
楓の腕時計は、ただ刻々とカウントダウンを続けていた。

楓「“3、2、1”カウントオーバー。一気に決める!」

腕時計が電子音を鳴らす中、楓は攻撃を始める。
まずはジャガーを1匹、上空へ投げ飛ばす。
投げ飛ばされたジャガーはそのまま落下し、受け身も取れずに他のジャガーへと激突する。
同時に、その激突による衝撃が何倍にも増幅され、またもやジャガー達を吹き飛ばす。

楓「まだだ!」

やっと身の危険を察知した一部のジャガーは、逃げようと身を翻す。
しかし楓はその隙を与えなかった。
楓は4匹のジャガーに狙いを定め、柔道とは異なる構えで構える。

楓「十文字流……奥義!」


楓「壱!」
ジャガー「ぎゃん!」

まず懐に入ってきたジャガーに。

楓「弐!」
ジャガー「グォン!」

次に左手より攻めてきたジャガーに。

楓「参!」
ジャガー「ギュイ!」

さらに上空より襲い掛かってきたジャガーに。

楓「四!」
ジャガー「ぎゃん!」

最後に右手より牙を向けてきたジャガーに、正拳突きをした。

楓「南十字正拳!」

そう叫んだ瞬間、4体のジャガーが吹っ飛び、それに他のジャガーも巻き添えを食らう。
そしてそれらの衝撃はすぐさま何倍にも増幅され、ジャガー達は完全に沈黙した。
475 :舞い降りた大王―サトリ ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/01(木) 02:40:14.97 ID:0ffjohhf0
勇弥「十文字さん!助けに……来る必要はなかったか。なんだ、さっきの技は?」
楓「十文字家は星に由来する。4つの星が最も空で輝く星になるようにと
  十文字家は4つの道を別々に歩み、極める事になった。……ご先祖様の遺志でな。」

勇弥「じゃあ、十文字さんのお父さん以外にも、3つの道場があるって事か?」
楓「あぁ。柔道以外の、な。……おっと、心星はどうした?」
勇弥「やべっ、そっちを優先するべきだった。コインちゃんもいるから大丈夫だと思うが……。」
楓「冷静さを失って、無理をしていなければいいが……。」
勇弥「……急ごう!」



勇弥達は全力で奈海の方へと向かう。

楓「な、なんだ、これは……?」
勇弥「な、奈海は……!?」



そこには、筆舌に尽くしがたい光景が広がっていた。

ジャガーの群れがただ苦しそうに横たわって、もがくものもいれば固まったものもいた。
勇弥達の目には、その辺りだけ空気がどんよりとして濁っているように錯覚して見えた。



その地獄のような光景の向こう側に、奈海はいた。
ただ、ゆっくりと、前進していた。



楓「心星!」
勇弥「待て十文字さん!行っちゃだめだ!」
楓「なっ!?いったいなんだ日向!」
勇弥「『疫病』だ!あの付近では疫病が蔓延している!」
楓「なんだと!?」

勇弥「おそらくコインちゃんの呪いで免疫力を低下させたんだ。
   おまけにジャガーに同士討ちをさせて、より病原体が成長しやすい環境になっている。
   奈海にそこまで考える事はできないだろうから、
   ただ我武者羅にやって、ああなったんだろうけどな。」
楓「信じられん……。」

勇弥「俺や十文字さんよりも倒してるぜ、これは……。
   病原菌の駆除はオレの手で何とかするよ。十文字さんは行くか?」
楓「いや。あまり能力を連発すると、長い時間力を蓄える必要があるからな。
  すぐにでも駆けつけたいが……なにより、かけてやる言葉がない。」
勇弥「……まったく、揃いも揃って危険ら連中だぜ。」
476 :舞い降りた大王―サトリ ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/01(木) 02:43:59.20 ID:ze/3Bt5i0
―――その頃、奈海は。

ただ一点を見つめて、一歩、また一歩と進んでいく。
その先になるのは怨念か、復讐か、いや―――『希望』。
その望みのため、彼女は自分の全てを懸ける。

コイン“「奈海、本気でやるの?」”
奈海「可能性は0じゃないんでしょ?ならやらなきゃ、後悔する。」
コイン“「……分かった。」”

【太陽の暦石】は今にもローゼの息の根を止めようとしていた。

奈海「待ちなさい!」

そう言いながら、奈海は『コインシューター』の引き金を引く。
その銃口から十円玉が飛び出し、【太陽の暦石】へと向かってゆく。
十円玉は【太陽の暦石】の鎧に命中したが、カンと空しい音を立てただけで地面に落ちた。

麻夜「小娘か、まだうろついていたとはな。」
奈海「……。」

奈海は黙々と銃の部品を組み替える。
いつの前にか、拳銃のようなサイズから一回りも大きい銃へと変貌していた。
そのシルエットはまさに……ガトリング銃と呼んでも差し支えない。

奈海「空間転送式・反動制御装置付きのなんちゃって機関銃よ。
   一秒間に二千円の出費だけど、勇弥くんの口座から出てるらしいから
   十時間は撃ち続けても怒られないかしらね……。」

銃口を【太陽の暦石】に向け、息を整える。

奈海「……いっけぇぇぇ!」

引き金を引いた瞬間、一斉に大量の十円玉が銃口から飛び出す。
しかし、奈海の腕は反動によって押されそうになったり、何故か逆に引かれそうになった。
その度に照準がブレてしまい、乱れ飛ぶその様はまさしく十円玉の波。

奈海「ああああああ、何が『反動制御装置』よ!すっごくブレるんですけど!」
コイン“「全くブレないって意味じゃないから!それが無かったら持てないんだからね、その銃!」”
奈海「あぁ痛い!でも、これだけ撃てば!」

反動のせいで照準が定まらずとも、コインの能力で十円玉は標的を狙い続ける。
地面にぶつかる、相殺し合うなどで推進力を失わない限り、十円玉は【太陽の暦石】を目掛けて飛んで行く。

麻夜「その程度では我に傷一つ付けられんぞ。」

そのまま【太陽の暦石】は十円玉の波に飲まれていった。
そのまま数秒経ったかと言う時に、奈海はやっと引き金から指を離した。
477 :舞い降りた大王―サトリ ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/01(木) 02:45:22.19 ID:ze/3Bt5i0
奈海「くっ、つぅ……。」

十円玉が止まり、だんだんと十円玉が地面に落ち、積もっていく。
そこには……予言通り、傷一つ付かずに立つ【太陽の暦石】の姿があった。

麻夜「終わりか?」
奈海「……えぇ、終わりよ。あなたのね。」

ふと、【太陽の暦石】の様子がおかしくなる。何か苦しんでいるように見えなくもない。
ただ若干震えながら、固まっていた。

麻夜「小娘……いったい何をした?」
奈海「呪いをかけたのよ。でもあなたじゃなくて、麻夜ちゃんにね。」



除染活動をしながら、遠巻きに眺めていた勇弥達は、やっと奈海の狙いを理解していた。

勇弥「なるほど、麻夜ちゃんか!」
楓「力が強くて呪いが全く効かないのは【太陽の暦石】であり、
  契約者とはいえ一般人の彼女には呪いは有効!考えたな。」
勇弥「よし、さっさと除染を終わらせて、応戦しに行くぜ!」



麻夜「くっ、動け……!」
奈海「無駄よ、いくらやっても。これで……勝てる!」

奈海は勝利を確信し、銃口を【太陽の暦石】に向ける。
【太陽の暦石】はただ動かない身体を必死に動かそうとしていた。






麻夜「なんちゃって。」



奈海「え?」

コイン“「奈海!危ない!」”



コインの声に反応して、ふと上空を見ると、火球が奈海に目掛けて降ってきていた。



麻夜「第三の破滅……『トロメア』。」
478 :舞い降りた大王―サトリ ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/01(木) 02:48:00.93 ID:ze/3Bt5i0
とっさにコインが突き動かし、間一髪で避ける事ができた。

奈海「きゃあ!……そんな、いつの間に……。」
コイン“「奈海、怪我はない!?」”



呪いの期限が切れて動けるようになった【太陽の暦石】は、満足げに微笑む。



麻夜「……予言通り。」



奈海はとっさに銃を構え、引き金を引く。しかし十円玉を数十発放った後、動かなくなった。

奈海「え、そんな……!?」
コイン“「さっきの衝撃で壊れたの!?」”

かろうじて飛んだ数十発は、【太陽の暦石】に避けられ、当たったのは鎧のみだった。

麻夜「小娘、さっきの虚勢はどうした?」
奈海「くぅ……。」

もう打つ手もない奈海に、【太陽の暦石】はゆっくりと迫ってゆく。
奈海は先端部分を捨て、元の拳銃型に戻す。
そして後退しながら、1発、また1発を撃つ。
しかし【太陽の暦石】に命中してしまい、麻夜にはどうしても届かない。

麻夜「そろそろだな。」

コイン“「奈海!上!」”

言われたとおりに上空を見ると、またもや火球が落ちようとしていた。
それも、先ほどのように1つではなく、流星のように多くの火球が。

奈海「コインちゃん!」
コイン“「うぅ、こっち!」”

コインに突き動かされながら、奈海は火球から逃げ回る。
常に数秒前にいた場所に火球は落ち、一瞬でも遅れたらと奈海の精神を削っていく。










もう、体力も精神も使い果たしてしまったのだろう。
479 :舞い降りた大王―サトリ ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/01(木) 02:49:17.47 ID:ze/3Bt5i0







奈海「きゃあ!」
コイン“「奈海!」”






奈海は足首を挫き、その場に倒れてしまった。

その上では、火球が奈海を目掛けて降ってくる。



楓「1!」

その声と同時に、火球の動きが止まる。

勇弥「奈海!今の内だ!」



勇弥の声に反応し、奈海は這うように進んでいく。
ただ、とてもではないが3秒では足りそうにない。



楓「(こうなったら一か八か、もう一度15秒コースだ!)2!」
勇弥「(くっそ、焦るな焦るな焦るな何も考えずに!範囲指定間に会え!)」



奈海も立ち上がろうとするが、何もかもがボロボロだった。
もう何も、彼女には残されていない。



楓「(カウント、耐えてくれ!)3!」
勇弥「(集中しろ集中しろ集中しろ集中しろ集中しろ集中しろ集中しろ集中しろ!)」















麻夜「絶望する期間が数秒長くなっただけか。」
480 :舞い降りた大王―サトリ ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/01(木) 02:50:14.66 ID:ze/3Bt5i0
“COUNT OVER!”
楓「(しまった!ジャガー戦で使い過ぎた!?)」
勇弥「(くっそぉ間に合わねぇ)ちっくっしょおおおおお!」










麻夜「第三の破滅……『トロメア』。」










火球は地面についたと同時に爆発した。



そこへ追い打ちをかけるように、もう1つ火球が落ちてゆく。



爆風による砂煙のせいで、周りは全く見えなくなった。



だが、結果は見えていた。






麻夜「………やひゃっ………やっひゃひゃひゃひゃひゃ……。
   全て予言通り。お前達の力なぞ、我の前では塵に等しいということだ。」
481 :舞い降りた大王―サトリ ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/01(木) 02:51:41.27 ID:ze/3Bt5i0






高笑いする【太陽の暦石】。その惨状を前に、楓は膝から崩れ落ちた。

楓「守れなかった……。心星も、黄昏も……。もう、どうする事もできないのか……。」
勇弥「じゅ、十文字さん……。」










勇弥「あれ……。」






楓「……あれは……!?」






麻夜「やっひゃひゃひゃひゃひゃ………やひゃっ……。」






砂煙が晴れていくと、そこには――――――
482 :舞い降りた大王―サトリ ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/01(木) 02:53:22.32 ID:ze/3Bt5i0






―――真っ赤なマントをたなびかせ―――






―――頭にはきらびやかな装飾の王冠をかぶり―――






―――まさにその様は、どこかの王のようだった―――










―――その腕には、火球から助からなかったと思われた奈海が抱えられていた―――










―――奈海は目を開けると、その王の顔を見て―――










―――静かに、こう呟いた―――
483 :舞い降りた大王―サトリ ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/01(木) 02:54:03.03 ID:ze/3Bt5i0




















奈海「……正義、くん……?」















正義「奈海……。」






―――ただいま―――






マヤの予言編第X3話「サトリ」―完―
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/11/01(木) 02:56:32.44 ID:TijlZWtAO
大王の人おつですー
うぉお、奈美ちゃんテラツヨス
しかし一秒間に2000円の出費とは…勇弥くん合掌
いよいよ次あたりで正義くん復活か?
485 :大王の ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/01(木) 03:00:59.46 ID:ze/3Bt5i0
お粗末さまでした。
10/31も、とうとう27:00となりますか。

マヤの予言は正義パートでは終盤とも中盤とも取れる位置です。
今回については色々苦情が相次ぎそうですが
言い訳は全てが終わってから、チラ裏にでも書かせていただきます。

あと兄者には申し訳ない。次回はがっつり戦います。がっつり。
486 :「組織」内で契約者の人事異動があったようです [sage]:2012/11/02(金) 19:22:30.93 ID:ee4lPHYNo

黒服「契約都市伝説はブギーマンとありますが?」
契約者「はい。ブギーマンです」
黒服「ブギーマンとは何ができるんですか?」
契約者「子供を怖がらせます」
黒服「え、子供を?」
契約者「はい。子供を」
黒服「・・・で、そのブギーマンは都市伝説と戦ううえで何のメリットがあるとお考えですか?」
契約者「はい。子供が襲って来ても相手の方から逃げてくれます」
黒服「いや、敵を逃がしては仕事になりません。それに子供以外には無力ですよね」
契約者「でも、R-No.も泣かせられますよ」
黒服「いや、泣かすとかそういう問題じゃなくてですね・・・」
契約者「ブギーマンがくるぞー!」
黒服「ふざけないでください。それにブギーマンって何ですか。だいたい・・・」
契約者「不定形の恐怖です。男とも女ともいわれます。他の土地では・・・」
黒服「聞いてません。帰って下さい」
契約者「あれあれ?怒らせていいんですか?呼びますよ。ブギーマン」
黒服「いいですよ。呼んで下さい。ブギーマンとやらを。それで満足したら帰って下さい」
契約者「運がよかったな。大人には効果がないみたいだ」
黒服「帰れよ」


【終】
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/02(金) 19:23:13.07 ID:ee4lPHYNo
皆様投下乙ですー

うまく使えばハロウィンネタにできるかもしれないと思ったけれどそんなことはなかったぜ!
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/11/02(金) 19:36:49.31 ID:0t+Uk69AO
投下おつですー
>契約者「でも、R-No.も泣かせられますよ」
だがしかしこれは強力なのではないだろうか
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/02(金) 22:31:35.55 ID:ee4lPHYNo
あっ、いい忘れてた
シャドーマンの人ならびにR-No.各位に土下座

>>488
>だがしかしこれは強力なのではないだろうか
「子供に恐怖を与える」に特化してるから、恐怖のあまり声も出せずにへたり込むとか気絶するとか、そういう使い方させれば強いんだぜ……子供にのみだけど
でもノイちゃんとこの死神みたいな自立機動型は勘弁な!
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/02(金) 22:36:48.01 ID:DvZ2TKmB0
ケモノツキの人乙
ノイちゃんとこのο-No.はやってることが過激派顔負けだから
彼女を敵に回したらブギーマンさんの契約者は命ないな
491 : ◆kemono..Qk [sage]:2012/11/02(金) 22:58:02.78 ID:ee4lPHYNo
……なるほど雑談スレか
コピペ改変のどこに中の人特定要素があるのかと思ったよ
しかし私は猫に関しては自重しない
猫かわいいよ猫
492 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/03(土) 02:13:33.46 ID:8bPAmhpv0
ケモノツキの人乙ですのン
クソ吹いたwwwwwこのコピペ大好きwwwwwwww

>>489
>でもノイちゃんとこの死神みたいな自立機動型は勘弁な!
ということはつまり
白饅頭最強説(ぇ
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/03(土) 10:17:44.19 ID:crG5/cfAO
つまり恐怖失禁見放題ということか・・・!
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/03(土) 14:28:07.96 ID:KBFFoADj0
今更ながらハロウィンと言う存在のイベントを思い出した大馬鹿者が一人orz
……まだ間に合うかな

そして投下された皆様乙ですー!
R-No.やo-No.のハロウィンwwww楽しそうでなによりです
大変ずうずうしいお願いではありますが、このジャック・オ・ランタン殲滅戦にクロスさせていただいてもよろしいでしょうか(ぉぃ

正義君復活ッ!→裂邪も復活ッ!!→ライダァァァァキィィィィィィック!!!
……と言う時系列でよかったんでしたっけ?
しかし何度読んでもこのマヤ編は熱い

ブギーマン地味に強いwwwwww
問題は『子供』の境界線がどこからどこまでかだ
単純な年齢だけならローゼさん達h(ry
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/03(土) 15:10:51.86 ID:DazROt1C0
だ、誰はてめぇは!?



俺は女子校の文化祭に行ってくるかんな!!
496 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/03(土) 19:27:16.46 ID:Mp0X6dKR0
>>494
>大変ずうずうしいお願いではありますが、このジャック・オ・ランタン殲滅戦にクロスさせていただいてもよろしいでしょうか(ぉぃ
やっちゃえやっちゃえ♪
俺は急いで書いてるところ(まだ書いてなかったのか

>しかし何度読んでもこのマヤ編は熱い
あつ……い?
色々省き過ぎて面白みの欠片もないと思っている作者当人でございますorz

>単純な年齢だけならローゼさん達h(ry
(ローゼ>おほほほ、何の為の『Rangers』だと思ってらっしゃって?
(裂邪>俺達任せかよ。確かに超の兄ちゃんや氷雨の姉ちゃんは子供じゃないが

>>495
>俺は女子校の文化祭に行ってくるかんな!!
その後、彼を見たものは誰もいない(
497 :>>495←名前欄を書き忘れていたプラモ [sage]:2012/11/03(土) 21:46:28.46 ID:KBFFoADj0
>>469
>やっちゃえやっちゃえ♪
ありがとうございます!
よーし、まずはο-No.のハロウィンパーティから(そこから!?)

>色々省き過ぎて面白みの欠片もないと思っている作者当人でございますorz
いえいえ、自分は凄く楽しんで読んでおりますとも

>(裂邪>俺達任せかよ。確かに超の兄ちゃんや氷雨の姉ちゃんは子供じゃないが
あー……それもあるんですが、『容姿・精神が子供っぽい』だけでも能力の範疇に入るのだろうかと
だってローゼさんとか50越えt……あれ、赤い光が見える……

>その後、彼を見たものは誰もいない(
何があったし
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/04(日) 00:31:08.52 ID:VHogs/IB0
文化祭は楽しかったですよ?
てかさっき帰ってきたが

ケモケモカフェというものがあったが
誰かが荒ぶりそうな話題だから止めとく
499 :ソニータイマー [sagesaga]:2012/11/04(日) 11:16:51.27 ID:9Cfe/8xDO
>>495
いいなー女子校…。女の子に生まれたかった
女の子…欲を言えば美少女に生まれて女子校に通って素敵なお姉さま達と青春を謳歌したかった
可愛い後輩とパフェを食べたりしたかった。近所の幼女に懐かれたかった。従姉妹と仲良くしたかった
妹を可愛がりたかった。お姉ちゃんに思いっ切り甘えたかった。幼なじみと温泉やプールに行って胸囲の差に絶望したかった
仲良くなったクラスメートと偶然キスしてしまって気まずくなりたかった。女の子と百合百合したかった…
何故私は男なのだろうか…。しかしもし女の子に生まれてたとしても、今度は腐女子になって『男に生まれたかった』と思ってる気がしてならない
500 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/04(日) 19:43:23.11 ID:+lLIkuyT0
女になった時の野望なら私にだってあるぞ

俺×弟×妹で3P!!
無論攻めは俺だ!
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/11/05(月) 18:41:42.25 ID:ai4TzVhk0
恐怖の大王の人様、単発の人様乙ですー

ぅゎ奈海ちゃん強い
一秒間に二千円の出費…痛い、痛いです…
正義君お帰りなさい!

子供を泣かせられる…
つまり、恐怖でむせび泣くロリショタが見れる…素晴らしい、実に素晴らしいぞブギーマン!
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/06(火) 00:31:20.13 ID:qD7ozkNDO
>>500
それは女であれば受け入れられるというのかね?
むしろ男のままではなにか問題があるのかね?
れっつ幸せ家族計画★
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/11/06(火) 14:24:24.80 ID:EyhiuP/AO
 時は19世紀も終わり頃。
 一組の男女が、ロンドンの片隅で結婚式を挙げた。
 男は中国人との混血の、召使いの子。女は仕えた先の令嬢。本来ならけして結ばれはしない間柄。
 積極的だったのは女の方だった。両親に彼と結ばれなければ自殺をすると脅してみたり、周囲に仲を認めさせるための「既成事実」を作ってしまえばよいと迫ってみたり。
 何れも女性は弱く慎ましくあるべきという、当時の倫理観からは考えられないことだが、それだけ彼女は一生懸命だったことの表れ。
 それは実を結び、両親は渋々ながらふたりにささやかな結婚式を挙げさせ―使用人との結婚式など大々的に出来るものではない―やがて月満ちて女の子を授かった。
 娘は愛らしく賢く、妻も幸せそうだった。ほんの数年の間。
 娘が4歳の年、クリスマスを前に街中へ買い物へ一家で出かけた帰り、馬車の事故で妻と娘を一度に失った。
 事故に対して、馬車の持ち主から雀の涙ほどの賠償金が支払われはしたが、口さがない世間は彼を放って置かなかった。
 曰く、あのような身分違いの結婚などするから、早々に神に召されたのだ。
  曰く、あの事故には賠償金が払われたそうだが、それを目当てにあの男が謀って妻子を殺したのではないか?
 曰く、そういえばあの男が娼婦と立ち話をしているのを見た。
 曰く、娼婦をはらませて離婚沙汰の最中だった…
 どれもこれも聞くも馬鹿馬鹿しい井戸端会議の種、出鱈目なお笑い草に過ぎなかったが、彼の義両親はそうは受け取らず、激昂して彼を身一つで叩き出した。
 馬鹿馬鹿しくなった彼も一切抗弁はせず、街から離れた森の中に小さな家を建てて、世を捨ててそこに篭もった。
 手元に残された財産の幾何かで彼は、失った家族を再現しようとした。
 機械仕掛け。
 元々手先の器用だった男は、建具や時計の修理などお手の物だったから、材料さえ揃えば仕事はほぼ完璧だった。
 そうして年月を重ね出来上がった女と、娘のからくり人形。
 生きていればこれほどの年頃であったであろう、少女の人形と、生前の若々しさを湛えた女性の人形。
 揃って金糸の髪に白磁の肌。瞳は翡翠で作られ、文字通り男の労力、頭脳、技術、金の全てが込められていた。

504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/11/06(火) 14:24:55.36 ID:EyhiuP/AO
 彼にその気さえあれば妻と娘に似せた機械仕掛けの“家族”たちと、それなりに満ち足りた生活が送れたかもしれない。だが―
 男には金がなかった。“妻子”の部品を定期的にメンテナンスし、自らをも食わせる金が。すべてからくりを作るために使い果たした。
 長く世を捨てていたため、世の動きにもついてゆけず、職もあるはずがない。
 男が手っ取り早く手を染めたのは、盗み。
 真夜中から明け方近く、客をそれなりに取ったであろう娼婦を狙って、小金をかすめ取る。
 なぜ娼婦?当然だ。あんな女達さえいなければ、馬鹿馬鹿しい噂話など立たず、従って婚家も追い出されずに、経済的に窮することもなかったから。
 あれは世の中のゴミだ。多少減っても誰も騒がない。
 手先は器用だったから、女どもの喉を掻き切るのなんか簡単だった。
 自分が女に近づくのが難しいときは“妻子”にやらせた。
 さながら生きた人間のように滑らかな動きをする彼女たちを怪しむ女は居なかった。その度にからくりの白磁の肌は血に汚れた。
 そして彼とその“妻子”が手に掛けた人間が二桁になろうかという頃、男は新聞を見て笑った。
「俺たちが“切り裂きジャック”と呼ばれているよ…お笑いだ」
 もうその頃には男は、娼婦を[ピーーー]だけで金が取れなくても気にしなかった。噂されている切り裂きジャックは物盗りではないらしいから。
 彼は操作を攪乱するために手紙を送りつけた。「俺は淫売どもに怨みがある」ああたしかに怨みがある。今度からはもっと酷く殺してやろうか。
 彼はいつの間にか、何にでもなれる―それが医師でも、女でも、あるいはやんごとない身分の男でも―
 その時一番「獲物を殺しやすい者」になることが出来た。
 切り裂きジャックは医師とも、実は女であるとも、精神を病んだやんごとない身分の男、とも言われていたから。

ここに、「切り裂きジャック」という都市伝説となった、一人の男の人生が完結した。



続きは未定
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/06(火) 14:52:36.10 ID:nU5rFvkTo
続きも期待
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/06(火) 18:19:36.42 ID:khOfuSWC0
乙ですー
人が都市伝説となる瞬間か……
507 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/06(火) 19:17:36.95 ID:vE0lE29l0
これ良いな
内容も書き方も引き込まれる感じ
己が取り戻したかった最愛の妻と娘を殺人に利用するという狂気じみた描写もまた好みですわン
乙でしたの
508 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/06(火) 21:16:05.17 ID:EyhiuP/AO
IDてす
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/06(火) 22:09:10.72 ID:TLluTqkdo
投下乙ですー
機械の妻子も都市伝説化してそうな気配
510 :パーティの夜―ジャック・オ・ランタンの場合 [sage]:2012/11/07(水) 00:09:48.68 ID:qEyQffrZ0
万聖節の前日、俗に言うハロウィンの日。
様々な事情などで曲折した挙句『化物の格好で浮かれ騒ぎ、他人の家へ突撃し《悪戯かお菓子》の二択問題を強要する』という
年に一度のイベントとして落ち着いた日―――別名『ケルト人の収穫感謝祭、そのなれの果て』―――である。
しかもこのハロウィン、いつからか“あの世とこの世の境が曖昧になる”という噂があり……とても厄介な一日でもあるのだ。


何せこの学校町では、本当に曖昧になっちゃったりするみたいなので。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『天国も地獄も真っ平御免さー!僕は、自由だー!』
『あぁ…私は…一体…どこへ…行けば…』
『やあどうも、俺様はジャックって言うんだ』
『奇遇ですね、吾輩もジャックと申す者です』
『ウヒャヒャヒャッ!ウヒャヒャヒャヒュイッ!』
『我のッ!傍にッ!近寄るなぁッッッ!!』
『ハロウィン、キターーーーー!!』


深夜の学校町南地区。
昼間、数多くの人で賑わう繁華街は今……カボチャ頭の化物たちの闊歩する、無法地帯となっていた。
―――【ジャック・オ・ランタン】。その逸話から天国にも地獄にも行けず、永遠に現世を彷徨い続けると言われる存在。
今年はそれがどういう理由か、南地区に溢れ返っていた。

『トリック・オア・トリート!……返事が無いな、壁に落書きしてやる!』
『ディス・イズ・ハロウィン、ディス・イズ・ハロウィン♪ラリホー♪ラリホー♪』
『くらえ、タネマシンガンッ!プププププププッ!』
『うわ汚ぇっ!?やりやがったな、こっちもタネマシンガンだ!』
『ねー誰かー、お菓子頂戴よー。ねー、ねーったらー』
『お菓子はいいから、酒を寄こせーーー!』

自由を噛み締める者。あいさつを交わす者。家の壁に落書きする者。カボチャの種を口から吐き出す者。
形はどうあれ、ここに集ったジャック・オ・ランタン達は皆、純粋に宴を楽しんでいる様だった。
と、一人のジャック・オ・ランタンが電柱の上によじ登り、大きな声で叫んだ。

『はーい、皆ちゅうもーく!』

瞬間。他のジャック達もピタリと動きを止める。
全てのジャック達の視線が自分に向いたのを確認し、電柱の上のジャックは再び口を開いた。


『お前らー!ハロウィンは好きかー!?』

『『『 大 好 き だ ぁ ぁ ぁ ぁ !!! 』』』

『俺もハロウィンが大好きだー!ずっとこんな日が続くといいよなー!』

『『『 ま っ た く だ ぁ ぁ ぁ ぁ !!! 』』』

『もうじき、あの忌々しい組織の奴らが、俺達を掃除しにやってくる!諸君!これを黙って受け入れていいと思うか!』

『『『 ふ ざ け ん な ぁ ぁ ぁ ぁ !!! 』』』


一斉に上がるブーイング。電柱の上のジャックはニヤリと笑うと、右手のランタンを空高く掲げた。
他のジャック達も、次々にそれに倣う。


『俺達はジャック・オ・ランタン!自由を最も愛する存在!』

『『『然り!然り!!然り!!!』

『俺達はジャック・オ・ランタン!自由に最も忠実な存在!』

『『『然り!然り!!然り!!!』

『今年こそ組織の石頭共を追い返し!この学校町を《ハロウィン町》へと変えてやるのだ!一年中ハロウィンが楽しめる、理想の町に!』

『『『ラリホー!ラリホー!!ラリホー!!!ウオオオオォォォォーーー!!!』



「な、何だこの数は……本部、本部!数が例年とはケタ違いです、至急応援を―――!?」



―――現場に到着した最初の黒服。
彼/彼女が次に目にしたものは、自身に向かって飛んでくる、夥しい数のカボチャの種であったという。

(各方面に土下座をしつつ終わり)
511 :パーティの夜―ジャック・オ・ランタンの場合 [sage]:2012/11/07(水) 00:17:52.53 ID:qEyQffrZ0
出井達や、ο-No.視点だと思った?残念、ジャック視点でした!
…………期待を裏切る形になったら、というかジャックたちの集合理由勝手にきめてしまって本当にごめんなさい、
改めて許可を下さったパーティの夜シリーズの作者方らに感謝と謝罪をorz
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/11/07(水) 00:48:31.33 ID:2YIg6oDwo
陽気なランタンどもが可愛過ぎて困るww
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/11/07(水) 00:54:30.99 ID:v6JbDLoAO
プラモデルの人乙ですー
なんだこの可愛いジャック・オ・ランタンは!
退治するのが勿体ないぞ!
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/07(水) 09:23:11.86 ID:7Waf3JcDO
投下乙ですー
いっそのこと適当な見世物小屋に詰め込んでハロウィンを題材にしたテーマパークにしたらいいんじゃないかな
というショーンオブザデッド的な解決方法
515 :夢幻泡影 † 前夜祭の悪夢  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/12(月) 02:19:09.58 ID:baxqnsBv0
「……さてと、許可は下りた」

スマートフォンの通話を切り、彼――黄昏 裂邪は大儀そうに立ち上がり、ゆっくりと辺りを見渡した
楽しげだが恐ろしい光景
口の中に炎を灯したカボチャのランタンが、意志を持って転げ回り、火を吹いている
「ジャック・オ・ランタン」――10月31日のハロウィンに相応しい都市伝説
それが何十、何百と町中を跋扈していた

「しかしとんでもない数だな……ウヒヒヒヒ、斬り応えがありそうだ」
「ボーっと見てないで早く来いよっ!?」

と忙しそうに叫ぶのは、紫色の体色をした一頭身のコミカルなナマモノだった
つり上がった大きな目は赤く、頭頂部と背部には若干の棘がある
白い歯を見せて不気味に口元を釣り上げており、怒ってるのか笑ってるのか分からない
それは『ゲンガー』と呼ばれるゲームキャラクターだが、普段は人間の姿をしている
彼の本当の名は、仲橋 光陽

「あぁ悪いなゲンガー、今“上”への連絡を終えたところだ」
「ゲンガーって言うな!」
「いや現実を受け入れろよ……」

怒りながらも「ジャック・オ・ランタン」を討伐してゆくゲンガー、もとい、光陽
暫しその様子を眺めていると、彼の方にも「ジャック・オ・ランタン」が向かっていった

「家族の一人が同種なんで、気乗りはしないが……今夜の主役は幼い少女達であって、お前等じゃない」

スマートフォンに表示された7色のボタンの内、黒いボタンを画面下部へとドラッグする
《SHADOWS ASGARD》という機械音声が響き、ヴァイオリンのメロディが流れる

「今宵はハロウィン。どっかの誰かさんも幽霊コスプレで戦ってる事だs「コスプレじゃねぇ!?」
 ……コホン、俺も“仮装”して戦わせてもらうとしようか」

彼の影が揺らめき、黒い腕が幾本も伸びて彼の身体を覆い尽くす
次第に彼を覆った影は形を作り、手足に爪、頭には長い触角
そして、その背には更に4本の腕が生えていた

「『シャドーズ・アスガルド.ricK(ドットリック)』……影、推参」

言うや否や、背に生えた4本の腕を己の影に突っ込んだ
その直後、向かい来る「ジャック・オ・ランタン」の内の4体が、黒い爪によって串刺しになった
しゅるりとカボチャの影の中に手を引き戻し、今度は別の「ジャック・オ・ランタン」を4体、その手に掴み、
また別の4体に勢い良くぶつけ、文字通り相殺する
裂邪はまだ、一歩も動いていない

「…面白みの無い……もっと私を楽しませてみろ!!」

と言いながらも、彼自身が攻撃を止めない為に、1体すらも裂邪に近付く事が出来ない
気がつけば彼の周囲からカボチャが数えるほどしかいなかった
ちっ、と裂邪は軽く舌を打った

「光陽、そちらが手間取っているなら手伝うが――――――」
「ぐあぁっ!?」

ずざざ、と音を立てながら、光陽は突き飛ばされて裂邪の前に倒れた
起き上がろうとした瞬間、光陽の身体が人間の姿に戻ってしまった

「く、そ……何だあいつ!?」
「おい、何があった?」
【我が同士が世話になったようだな? がっひゃっひゃっひゃっひゃ……】

不気味な笑い声
その方向に目をやると、古ぼけた黒いマントを纏った、南瓜頭の怪人物がそこに立っていた
その周囲にはふわふわと幾つかの南瓜のランタンが浮遊しているが、
他の「ジャック・オ・ランタン」と違い、炎がドス黒かった

「……別個体か? 見た目が明らかに違う……」
「き、気をつけろ、あいつ、他の奴等とは桁違いに強い……!」
「それは良い事を聞いた」

スマートフォンをバックルに翳し、融合を解除する裂邪
と、今度は画面に表示された黄色いボタンをドラッグする
《ZODIAC》という音声と、荘厳なパイプオルガンのメロディが鳴り響く

「なっ、裂邪! まさか戦う気かッうおっと」

無理に立ち上がろうとする光陽に、裂邪は小さな瓶を投げ渡した
中には液体が入っているようだった

「それを飲んで少し休んでろ。すぐに良くなる筈だ。戦えるようになったらそこらの雑魚の相手を任せた」
516 :夢幻泡影 † 前夜祭の悪夢  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/12(月) 02:20:05.89 ID:baxqnsBv0
【がっひゃっひゃ、一人で我に立ち向かおうと言うのか?】
「俺は一人じゃない………解放!」

再びスマートフォンを翳せば、胸元に提げられた金色の枝のペンダントが眩く輝き、裂邪の身体を包み込む
やがてそれは黄金色の、神々しき鎧となる

「Reign Over……お前の正義、俺が見定めてやる」
【ほう、随分面白いを言う……その威勢が何処まで続くか楽しみだ!】

怪人物の周囲のカボチャが勢いをつけて裂邪へと向かう
が、それらは全て横一文字に一刀両断された
いつの間にか、裂邪の手には4枚の翼が組み合わさって出来た巨大な剣が携えられていた

「『ゾディアック@ssaluT(アッサルト)』……『ギャラクシア』」
【なかなかやる……だが】

びきびき!とアスファルトが罅割れ、砕け、地下から巨大な南瓜の蔓が幾本伸び出でる
意思を持つ生き物のようにうねるそれは、やはり裂邪を狙い叩きつけようと、絡め取ろうとした

「はぁっ!!」

とんっ、と軽く跳び上がり、くるりと身体を独楽のように回転させる
彼に触れようとする蔓は全て黄金の刃に切り刻まれ、辺りに体液の如く汁が飛び散った

「ヒハハハハハ…この程度で俺を止めようとは、はらわたが煮えくり返るぜ――――――ッ!?」

ふと見上げた先に見たものは、闇
有り得ない程に大きな口を開けた南瓜の口だった

「っく、『ゾディアック*yscrapeR(アスタリスカイスクレイパー)』!!」

間一髪、宙に浮遊して背後に下がり、飛び上がる
さらに剣を分離させ、己の周囲に漂わせた
南瓜は大きくアスファルトを抉り、ばりぼりと咀嚼してさも美味しそうに飲み込んでみせた

【げぷっ……大人しく喰われていれば良いものを】
「生憎やり残してる事がまだたんまりあるんでね……『フィクス・カエレスティス』」

浮遊する翼の先端から細い光条が伸び、怪人物に襲い掛かる
対する怪人物は、新たに南瓜のランタンを出現させ、盾のようにして攻撃を防いだ
舌を鳴らし、翼を移動させて背後からの攻撃を目論んだが、その攻撃も防がれてしまった
苛立つ裂邪は急に浮力を失わせ、足がめり込む程に急落下した

「『ゾディアック.ricK』……『エクリプシス』!」

まるで鍵盤を叩くかのように指を動かすと、怪人物の周囲で爆発が起きた
否、正確には少し立ち位置をずらした事により、本来立っていたであろう場所で爆発が起きたのだ
滑らかに指を動かせば、連続して爆発が生じる
しかしその何れも、飛行し続ける怪人物には当たらない

(攻めているのは完全に俺の筈………技能は向こうが上だってのか?)
【考え事か?】

反応した時には既に遅かった
黒い炎の灯る南瓜のランタンが拳の如き重い一撃を裂邪に与える
例え鎧を身に纏っていたとしてもその衝撃は、装着者である彼の身体に凄まじく響いた
一瞬よろめいた裂邪に追い討ちをかけるかのように2つ目のランタンをぶつけ、彼の身体を吹っ飛ばした
鈍い音と共に1回バウンドした後、何とか体勢を整えて身構えた

「ゲホッ、ゴホッ………ッヒヒ、これだこれ、戦いはこうじゃねぇと」
【がっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ……口の割には多少の疲労が見えるな?
 なかなか良い矛盾だ、互いに矛盾してこその混沌よ】
「矛盾?……違いねぇな。身体の状態と精神状態が真逆なんだ
 例え相手が強かろうと、例え右腕を切り落とされようと、例え内臓を抉り取られようと、俺の心が戦いを止めさせようとしない
 何故かまでは分からないが……ただ一つ分かるのは、」
517 :夢幻泡影 † 前夜祭の悪夢  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/12(月) 02:20:36.59 ID:baxqnsBv0
散らばっていた翼が彼の背に装着される
と、裂邪の鎧に点々と金色の炎が灯り始め、より一層眩しく見える

「お前を一遍殴るまで……俺は絶対に倒れない」
【……がひゃっ…なるほど、確かに面白い人間だ………ならば付き合ってやろう!!】

先程のように蔓を伸ばし、裂邪を捕らえようとする
裂邪は炎を纏った拳で蔓を殴り、焦がし、突き進む

【貴様を完膚なきまでに叩きのめし、貴様の精神をも木っ端微塵に粉砕してくれよう!】
「やってみやがれ……俺の前に立ちふさがる者は、全て滅ぼす!!」

聖なる金色の炎に包まれた拳が振るわれる
邪悪なる黒き焔の灯る南瓜のランタンが迎え撃つ
両者共に、激しくぶつかり合おうとしていた時だった

「楽しそうで………何よりですの…………」

突如聞こえた少女のか細い声と共に、一閃の太刀によって双方の攻撃が止まる
その刀の持ち主は、腰部にフリルスカートがついたレオタードという派手な格好をした、
真っ青な長髪と真っ青な瞳を持つ少女だった

【むぅ……?】
「なっ、お、お前は!?」

早々に少女から離れる裂邪と怪人物
少女は無邪気に微笑みながら、何処からともなく鬼面を取り出した

「ワタクシも…混ぜて欲しいですの………“仮面晩餐(マスカレイド)”に………」

鬼面を顔につけるや否や、無数の鬼面が彼女の元に飛来し、
胸や腕、足等に装着されて鎧を作り上げ、更に一際大きな2つの鬼面が彼女の左右に侍るかのように浮遊している

「……ヒッハハハハ……こんな状況で御登場かよ………ナユタには黙っとくか」

彼の炎が一層強まった
彼女が味方で無いのは、彼も知っている事だったから

「お菓子の代わりに地獄の片道切符を寄越そうか………アルケミィ・エインシェント!!」



   ...To be Continued
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/12(月) 02:24:30.33 ID:baxqnsBv0
まずかなり遅くなってごめんなさい
というかタイトルに『前編』入れ忘れてごめんなさい
あとプラモデルの人が可愛い「ジャック・オ・ランタン」書いて下さった後にこんなの書いてごめんなさい


Q:最後に出てきたの誰?
A:去年か一昨年くらいに1話だけ上げた『仮面晩餐』という話の主人公でございます
   避難所の裏設定スレには超ネタバレが書かれてるのでお気をつけて
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/11/12(月) 09:11:05.82 ID:OWcXAnLAO
影の人乙ですー
おおぅ!ひさびさの彼女がご登場ですか。可愛いなぁ可愛いなぁ
れっきゅんの技も増えてハードボイルドなハロウィンに期待!
520 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/12(月) 20:02:47.66 ID:fJxKxizN0
ハードボイルドだなんてとんでもない
れっきゅんは何時まで経っても半熟たまごなのですよ

Q:何で今更彼女を出したの?
A:今更も何も「マヤの予言」編で名前だけ出てたじゃない
521 :プラモデルの人 ◆GsddUUzoJw [sage]:2012/11/12(月) 20:37:14.21 ID:S0iBHp6P0
影の人乙です―!
ここで黒幕登場、まさかの【ウィッカーマン】だと……!?
ニンゲンガーこと光陽君にアルfゲフンゲフン、アルケミィちゃんまで加わって……この先どうなる事やら
後、戦闘シーンが自分のと比べてレベル高えorz

>あとプラモデルの人が可愛い「ジャック・オ・ランタン」書いて下さった後にこんなの書いてごめんなさい
【ジャック・オ・ランタン】って何だっけ?→(検索)あー、あのカボチャ頭か→何かいつも楽しげに『ラリホー!』とか叫んでそう(ぇ
→こいつらの攻撃方法がよくわからん→というか、何で今年に限って侵略活動?→そもそも、侵略する気あるのか?(ぇ-

という誕生経緯があったりww
キャラが違うのはあれだ、【ウィッカーマン】が操ってるのかもしれない
522 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/12(月) 20:43:23.49 ID:fJxKxizN0
>>521
>ここで黒幕登場、まさかの【ウィッカーマン】だと……!?
落ち着け、『ウィッカーマン』は巨大なカカシだ
これは前に桃太郎の話で『ハロウィンマン』と書いてしまった『ジャック・オ・ランタン』なのーネ
※『ハロウィンマン』は長い鼻と突き出た顎と黒いシルクハットが特徴的なハロウィン版サンタクロースです

>後、戦闘シーンが自分のと比べてレベル高えorz
嘘だ絶対嘘だ
この戦闘シーン気に入らないんだぜ
もうちょっとレベル上げたいぜ
523 :プラモデルの人 ◆GsddUUzoJw [sage]:2012/11/12(月) 20:58:20.01 ID:S0iBHp6P0
>>522
>これは前に桃太郎の話で『ハロウィンマン』と書いてしまった『ジャック・オ・ランタン』なのーネ
なん、ですと……!?
びっくりして調べてみたら、本当にカカシでしたorz
申し訳ありません、笑い方だけで思いこんでしまったようです

と思ったら、ハロウィンマンもニャル様なのか!

能力的に「成程、これで操ってるのか」と言う物があるんですが、どうなんでしょうか
524 :sage :2012/11/12(月) 22:38:38.38 ID:3UsuZQUu0
書き込みてす
525 :大亜教授の事件簿 [sagesaga]:2012/11/12(月) 23:14:20.49 ID:3UsuZQUu0
「傘を持ってきておいてよかったよ」

バスの窓から覗く、どんよりとした曇り空を眺めながら康平は呟いた。
昔から不幸体質だった康平の座右の銘は「石橋を叩いて渡る」であり、例え降水確率20%でも、折りたたみ傘は手放すわけにはいかない。

「次はー黒須高校前、次はー黒須高校前……」 

「おっと、ここか。」

停止ブザーを押すと、涼しいチャイムの音と「次、止まります」というお約束の台詞が流れる。

「それにしても、なんでこんなことに……」

誰に言うでもない泣き言だったが、それを口にするとますます悲しくなる。
康平はますます怪しくなる空模様を眺めながら、ここ数時間のことを回想していた。
526 :大亜教授の事件簿 [sagesaga]:2012/11/12(月) 23:43:14.92 ID:3UsuZQUu0
「……昔昔、あるところに非常に女子高生が大好きな少年がいた。」

大亜教授の声が、せまい部屋の中を駆け巡る。

「彼がいかに女子高生を好きかと言えば、彼の生まれて初めてしゃべった言葉が『JK』だったというほどだ。」

そういうと、教授は天を仰ぐように上を向いた。

「その後、彼は健やかに成長し、年上好きと呼ばれ、年下好きと呼ばれ、やがてロリコンと呼ばれるまでに自分の道を貫いた。」

そこで、教授がくるりと壁の方を向いた。

「……僕がその男と初めて会話したのは、高校の卒業式。ひどく憔悴した他のクラスの男に
僕がそんなに卒業が悲しいのかと尋ねると、彼は『もう女子高生に会えなくなるから』と答えたよ。」

再び教授がこちらを振り向く。意味のない一回転だ。

「それを聞いた僕はこう答えた。『なら、女子校の先生になればいいじゃないか』、とね。」

ウンウンと頷くと、再び教授は壁に向きなおる。二週目に入ろうというのか。

「その次に彼と出会ったのが一週間前。学年単位の同窓会でだ。」

再びこちらを向く。と、すぐに向こうを向いてしまった。心なしか速度が上がっているのは気のせいかだろうか?
527 :大亜教授の事件簿 [sagepaga]:2012/11/12(月) 23:57:24.74 ID:3UsuZQUu0
「驚いたことに、彼は女子校の社会科教師になっていた。僕は驚くとともに、大いに祝福した。
でもね、奇妙なことに彼はやはり憔悴した顔を浮かべているんだ」

くるくる。くるくる。

「僕は当然、何があったか尋ねた。すると、彼は答えたんだ。「最近、生徒達が行方不明になっている」と。」

くるくる。くるくる。

「警察に相談しようかとも思ったらしいが、事態が露見して学校の評判に傷がつくと止められたらしい。
しかし、諦めることもできず、困っていたところで僕に再会した、ってわけだ。」

ぴたり。急に旋回を止めると、教授はバン!と机を叩いた。

「僕は胸をはってこう答えたね。『いいだろう。君のために一肌脱ごう。来週には若い学生を一人、助力に向かわせる』とね!」
528 :大亜教授の事件簿 [sagepaga]:2012/11/12(月) 23:58:11.68 ID:3UsuZQUu0
「驚いたことに、彼は女子校の社会科教師になっていた。僕は驚くとともに、大いに祝福した。
でもね、奇妙なことに彼はやはり憔悴した顔を浮かべているんだ」

くるくる。くるくる。

「僕は当然、何があったか尋ねた。すると、彼は答えたんだ。「最近、生徒達が行方不明になっている」と。」

くるくる。くるくる。

「警察に相談しようかとも思ったらしいが、事態が露見して学校の評判に傷がつくと止められたらしい。
しかし、諦めることもできず、困っていたところで僕に再会した、ってわけだ。」

ぴたり。急に旋回を止めると、教授はバン!と机を叩いた。

「僕は胸をはってこう答えたね。『いいだろう。君のために一肌脱ごう。来週には若い学生を一人、助力に向かわせる』とね!」
529 :大亜教授の事件簿 [sagesaga]:2012/11/13(火) 00:38:22.86 ID:LpcS2xop0
「勝手に決めないで下さいよ。というか、一肌脱ぐと豪語した直後に人任せとは、どんな神経してるんですか」

「僕だってできれば自分でなんとかしたいさ。だが、残念ながら君と違って僕にはやらなければいけないことが山ほどある。」

「勝手に人を暇人扱いしないでくださいよ、失礼な。」

「ほう、では、忙しい、と?今日だって予定でいっぱいだ、と?」

当然です!と力強く答えたいところだったが、さすがにそれは嘘が過ぎた。
教授もそれを分かっているのか、こちらの返答を待つまでもなく話を進める。

「なあに、そんなに難しい話じゃあないさ。ちょっと出かけて、軽く失踪者を捜索すればいい。君の‘能力’なら簡単だろう?」

「……まあ、そうですがね。」

実際、その程度の仕事ならたやすくこなせる。
問題は、想定外のトラブルが発生したとき彼一人では対処しようがないということだ。

……しかし、何のトラブルも起こらなければ少し遠出するだけで何もかもにカタがつく。
少し迷い、康平はため息をつきながら質問した。

「……で、その高校ってのはどこなんです?」

すべて上手くいった、という笑みを浮かべ、教授は答えた。

「黒須高校だよ」
530 :大亜教授の事件簿 [sagesaga]:2012/11/13(火) 01:08:45.51 ID:LpcS2xop0
夜刀浦市の総人口5万人のうち、大部分はかつて城下町として栄えた「夜刀浦町」に住んでいる。
そのため、様々な行政施設も夜刀浦市に集結しているのだが、何故かこの市最大の高校は
夜刀浦町ではなく、隣接する「黒須町」にある「市立黒須高等学校」である。

そのため、黒須高校の周りは学生用の寮などを中心に、学生向けのファーストフード店や映画館などが立ち並ぶ学園都市の様相を見せている。
しかし、少しそこを離れると昭和の香りを感じさせる閑静な住宅街が並び、さらに郊外には田園地帯が広がり、のどかな光景が見られる。

古いものと新しいものが並ぶ町。それが黒須町である。


「……にしたって、えらく立派な作りだな」

康平は、本日何度目かの誰に聞かせるでもない一人ごとを呟いた。

ここは黒須高校の応接室。
康平が「大亜ゼミのものです」と名乗ると、予想外に簡単にここに通してくれた。そういうところの根回しはしっかりやっているらしい。
……それにしたって、気になるのはここに来るまでに見た学校の中である。

「ここが高校なら、俺が過ごした高校は刑務所か何かだったのかね?」

そう言いたくなるほど、ここの校舎は豪勢だった。
531 :大亜教授の事件簿 [sagesaga]:2012/11/13(火) 01:26:25.35 ID:LpcS2xop0
「あ、どうもよろしく。西田です」

そんな風に康平が世間の不条理に義憤を燃やしていたところで、見知らぬ男が応接室に入ってきた。
このタイミングでくるということは、彼が女子高生好きの社会科教師なのだろうか?

「どうも。夢見咲です」

「すいません、今日は。なんでも康平さんは人探しのプロだとか……」

人探しのプロ。まあ、ある意味正しい表現なのだが、それにしたってアバウトな説明である。
まあ、あまり深く説明するとそれはそれでややこしいので、これでいいと言うことにしておこう。

「それで、西田さん。大亜先生から聞いたと思いますが……」

「ああ、生徒が大切にしてた物品ですね?それならこれです。」

そういうと、西田さんはビニール袋に入れた携帯ストラップを差し出してきた。
たしか、友達とおそろいだと友情の証だとかで人気の半分欠けたハートのストラップだ。
……何故彼がこんなものを持っているかは、考えないでおこう。

「じゃあ、お借りしますね……おっと!」

そのとき、無駄に広い室内に軽快な音楽が流れだした。

「すいません、ちょっと電話が……」

そういいつつ、すぐさま立ち上がりストラップを持ったまま応接室をでた。
532 :大亜教授の事件簿 [sagesaga]:2012/11/13(火) 01:44:39.94 ID:LpcS2xop0
戸惑う西田さんを置いて廊下に出ると、まず携帯電話を取り出す。
といっても、電話に出るためではない。無造作に停止ボタンを押すと、着信音のプレビューが止まった。
実はさっきの着信は、応接室を出るための演技に過ぎなかったのた。というのも、
これからすることを見られると非常にややこしい事態になるからだ。

そのまま携帯をズボンのポケットにしまい、今度は胸ポケットからあるものを取り出し、左手で持つ。
そして、熊のストラップをビニールから出し、右手に持った。そのまま数秒待つ。

「もう……いいかな」

そして、左手の中のもの……運転免許証に目を向ける。いや、正確にはそこに記載された何桁かのNoに、だ。

【運転免許証のNo】。それが、康平が契約した都市伝説の名前である。
康平の持つ免許証に載っているNoを見ることで、康平は相手の情報をすべて知ることができるのだ。
趣味、思想、それまでの記憶。さらには現在地まで情報は多岐に渡る。まさに人探しにはうってつけの便利な力だ。
運転免許証の‘更新’に必要は行動は二つ。一つは片手に免許証を持ったまま数秒相手に触れること。
或いは、対象者の大切にしていたものに同じくふれることである。
533 :大亜教授の事件簿 [sahesaga]:2012/11/13(火) 01:53:29.66 ID:LpcS2xop0
便利な力だが、欠点もいくつかある。
まず、この都市伝説には戦闘力が皆無なため荒事に巻き込まれると意味がないこと。
また、Noから全てを読みとれるといっても一瞬で全てを理解できるのではなく、
調べたい項目を指定し、そのあとNoを見なければ何も頭に入ってこないのである。

……といっても、今は現在地を調べればいいので楽なものだが。

「ふーん……花村真紀子、ねぇ。可愛らしい子じゃないか。」

当然運転免許証なので、顔写真や氏名は載っている。
とりあえず、康平は彼女の現在地を調べようとした。が。

「……え?」

康平の眺める数字と記号の羅列。それが伝えるのは……

「対象者死亡のため、把握できず……だと?」
534 :大亜教授の事件簿 [sagesaga]:2012/11/13(火) 02:11:44.77 ID:LpcS2xop0
「どうして、あなたがそれを持っているんですか?」

「えっ!?」

突然背後から声をかけられ、康平は飛び上がった。
慌てて振り向くと、そこに立っているのは一人の少女だった。
制服を着ているところを見るにここの生徒だろうか。黒髪のショートカットに、可愛いというより凛々しい顔つきをしている。
そしてその瞳には、どこか強い意志が感じられた。そのボーイッシュな少女は、知らぬ間に康平の背後に近づいていたのだ。

「……君は、誰だい?ここの生徒かな?」

冷や汗が吹き出すのを感じつつ、康平はなんとか平静を取り繕った。が。

「質問に質問で返さないで下さい。そのストラップを、何故あなたが持っているんです?」

少女は相変わらず康平に詰問を続けた。そして、手のひらを康平に突きつける。

「五秒です。五秒以内に答えて下さい。」

指が一本、一本折られていく。
しかし、康平は少女の奇妙な威圧感に何も答えることができない。そして、指が全て折られた時。

「五秒経過……罪には罰を。」

そういって彼女は一旦握った手をふり上げ、まっすぐに康平を指さすごとく振りおろす。
535 :大亜救助の事件簿 [sagesaga]:2012/11/13(火) 02:24:53.91 ID:LpcS2xop0
「うおぁぁぁぁぁぁ!」

少女が勢いよく指を振りあげた時。ようやく呪縛から抜け出した康平は、
勢いよく後方へと全力で跳んだ。そのまま着地と同時に横っ跳びに廊下の曲がり角に飛び込み
少女が指を振りおろす前に角に張り付き、直線上から逃れる。

しかし、必死の跳躍も空しく、少女が指を振りおろすとともに、康平の頬に激痛が走った。

「なっ……んだ、これ!?」

康平が右頬を撫でると、粘着質の液体が指につく。
しきし、それより恐ろしいのは頬の形が明らかに歪んでいるのだ。

康平の頬は、鋭利な何かで傷つけられたわけではない。スプーンか何かで抉られたように、肉が消失しているのだ。

「ッ…………!!」

激痛に身を悶えつつ、ちらりと角から少女を覗き見る。
と、少女は再び手のひらを掲げ、よく通る声で叫ぶ。

「逃げても無駄ですよ。さあ、五秒以内に答えてください。あなたは……何者ですか?」

              つづく
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 02:31:49.41 ID:LpcS2xop0
ひさしぶりに書き込み。
バトル描写が苦手な癖に安易にバトルを始めた自分を叱責しつつ
今日はつかれたのでさっさと寝る。
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 02:56:31.51 ID:5QIHZybEo
大亜教授の人乙
夢見咲の受難は当分続きそうだ
何より読んでてゾクゾクするぜ、続きが楽しみだ
>>527-528の重複レスも大亜教授の胡散臭さを醸すのに一役買ってるし
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/11/13(火) 04:28:09.75 ID:82Ea3RxAO
大亜教授の人乙ー
相変わらず受難の夢見咲君ですなぁ
がんばって切り抜けてね!(それだけ!?
539 :赦しは少女仕掛けの・・・ [sage]:2012/11/13(火) 04:35:09.29 ID:82Ea3RxAO
「俺が・・・〈legend〉案件の捜査を?」
 ところはロンドンの某教会の一室。
 19世紀末。まだ〈都市伝説〉という概念が存在せず、それが単なる伝説〈legend〉あるいは〈魔〉と呼ばれるモノだった頃。
 一神教を崇める西洋では〈教会〉の下、〈神〉以外の超越者たるソレは神の恩寵を受けぬモノ、討伐されるべきモノとして扱われていた。
 そういった存在と〈契約〉を結び己が力とする人間がいなかったわけではないが、あくまで神の力の外、異端者として以上の扱いは受けなかった。
 だが、「毒をもって毒を制す」〈魔〉の討伐に異端者の力を借りることもある。
 そのような事態に備えて、〈教会〉にも異端の力を持つ者が少なからず所属していた。
 彼、エディことエドモンド・グレアムもそうした異端者のひとりとして〈教会〉の末端に名を連ねていた。
「〈異端〉で〈問題児〉の俺を使いたいなんて、よくよく困っての事と見えるな。いよいよ人材が枯渇したか?」
 このような放言をはばかるような事がない彼だからこそ〈教会〉は彼を常に管理下に置いているという訳だ。人噛み犬は鎖で繋いで、常に監視すべき。
 そして今回彼に命ぜられた「任務」は、ロンドン警視庁(スコットランドヤード)との共同捜査。
 〈教会〉が世俗的な権力と手を結ぶのは珍しくないこととて、やはり世間に疎い聖職者のエリートは使いづらい、との先方からの注文が付き、俗事にも強い者をと彼が派遣されることに相成ったわけだ。
 対象の事件は、先年からここロンドンの下町で起きていた連続殺人、いわゆる〈切り裂きジャック〉事件。
 被害者はいずれも若い女性、とりわけ娼婦。
 凄惨な手口で殺されている割に物証、目撃証言何れにも欠け、容疑者を絞り込むことさえ出来ない有様で、警視総監の進退問題にも発展しかねない。
 あまりにも人間離れした「技」に人ならぬ者の犯行が疑われ、〈教会〉との共同捜査が提案されたのだった。

「・・・私が」
「あんたがアルバート・ルイス警部?」
 ぱりっと三つ揃いを着こなし、きちんとアイロンのあたったネクタイ。頭に被ったハンチング帽はアンバランスだが、
 それ以外はいかにも毛並みの良さげな紳士に見えるというのに初老に差し掛かろうとしても警部止まりであるのはどういうことか。
(こりゃ、あちらさんもやる気はないな)
540 :赦しは少女仕掛けの・・・ ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/13(火) 04:36:29.37 ID:82Ea3RxAO
 家柄だけが取り柄の、窓際の老警部でも送り込んでお茶を濁すつもり、と受け取ったエディの瞳には、露骨な軽視の色が浮かんでいた。
「どうせ上もやる気がねえんだ、気楽に行こうぜ、アル」
 エディが卓上に腰掛けてカップから行儀悪く紅茶をすすると、アルバートが眉をひそめた。
「きちんと椅子に座れ。音を立ててお茶をすするな。後、人の名前を勝手に略すな」
 男にしては甲高い声は、年齢のせいだろうか。エディを叱る様は、さながらエチケットの講師といった体だ。
 面白くもない気分になったエディはがちゃんと甲高い音を立ててカップを皿に戻すとドアに手を掛けた。
「エディ、どこへ行く」
「聞き込みだよ、聞き込み!」

 ロンドン下町、ホワイトチャペル地区。
 いわゆる“貧民街”と目されているそこは、貧困でありながら活気にはあふれていた。
「俺は嫌いじゃねえな、こういうとこは」
「“曖昧な女”が多いからか?」
 皮肉っぽいアルの視線も意に介するエディではない。
「アイルランドから流れてきたときはよ・・・こういうとこに世話になったもんだぜ。少なくとも雨露は凌げるからな」
「お前、アイルランドの出か」
 ああそうだ、とアルを見るエディの瞳に険が宿る。
「〈教会〉に拾われるまで親子三代食い詰め者さ。てめえらみてえなイングランドのお貴族様のありがたい思し召しのせいでな!」
 20世紀終盤に入るまで、アイルランドはイングランドの属領同然。
 アイルランドの民は、政治的にも生活も、イングランドより一段下に置かれていた。それはこの時代において、搾取の対象ということ。
 エディの祖父も例外ではなく、半世紀近い前のジャガイモ飢饉では一族が飢えているというのに
 イングランドの地主から作物の輸出を強要され、真剣に“新大陸”への移住を考えたほどだった。
「・・・すまない」
 下町の喧噪の中でぽつりとしたその声は妙に響いて、エディは自分の方がいたたまれなくなった。
「・・・てめぇひとりに頭下げて貰ったって、なにも変わらねぇんだよ」

541 :赦しは少女仕掛けの・・・ ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/13(火) 04:38:38.30 ID:82Ea3RxAO
 肝心の聞き込みはといえば、結果ははかばかしくない。
 娼婦達は皆個人営業。てんでに客を取るのが当たり前で、素性の知れない男が同業者に近づいてもあまり気にしないのが当たり前なのだ。
 それでは女は、といえばこれもよく覚えていない。
 日々現れては消える“夜の女”など、同業者ですら覚えていられない。明日は我が身もどうなるか判らないのだから。
「ああ、でも」
 ややころっとした体格の、人の良さそうな娼婦は大通りの方をちらりと見た。
「最近、子供をよく見るのよねぇ・・・金髪の、身なりの良さそうな女の子で、ちょっとこの辺には不釣り合いな」

「けっきょく、収穫はなしか」
「ああ・・・でも、ひとつ気になることが」
「子供か?」
「ああ・・・身なりのいい子供が、女中も付けずに下町をうろうろ・・・」
「じゃ、あれか?やっぱり精神を病んだっていう」

―ないで

「?」

 子どもの声が聞こえた気がして、エディが振り返る。
「?どうした?」
「!おい・・・あれ!」
 エディの視線の先には、フリルとリボンで飾られた踝までの黒いドレスと、外出用の帽子という、いかにも良いところの子ども然とした身なりの、金髪の少女。
 少女の唇が再び開く。今度はエディにもはっきり聞こえた。

―切り裂きジャックを、殺さないで―



続く
542 :健康優良児の憂鬱 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/13(火) 07:06:38.82 ID:82Ea3RxAO
 体が痛い。背筋がぞくぞくして、なんだか頭がぼうっとする。
「風邪だね」
 ここ学校町は新田家。ノイと柳を除く全員が風邪にやられていた。
 いや、新田家だけではなく、学校町全体で風邪がパンデミックしていたのだ。
「ムーンストラック、しっかりして」
「む・・・ノイ・リリス。感染るといかん・・・部屋から出なさい」
「極くん、大丈夫?ああ、飛縁魔は殺しても死なないから平気だね」
「ぼ・・・僕は平気です、うっ、げほげほげほ」
「・・・治ったら、ごほっ、張っ倒す」

「みんな、どうしちゃったのかなー?」
 部屋でひとりごちるノイの耳に、小さな声が聞こえる。
「おい!」
「ふぇ?」
 見回しても、誰もいない。みんな風邪で寝込んでいるし、柳は病人の世話に忙殺されている。
 つまらないから幻と遊ぼうかと思ったけど、貴也がひどい風邪で、これまた看病に忙しいのだという。
 空耳かなぁと窓の外に目をやると、
「ここだ!ここ!」
 見下ろしてみると、毒々しい色の小さな金平糖のようなものがそこで声を張り上げて―なにぶん体が小さいので、その分声も小さい―いた。
 どっかで見たことがあるなぁとしばし首を傾げ―
「あ!エヘン虫だ!」
 テレビで見たー!ホントにいるんだー!と好奇心旺盛に突っつき回し出したので“エヘン虫”は大慌て。
「ば!バカかお前!オレ様はな、都市伝説なんだ!」
 その“エヘン虫”いわく、彼は「馬鹿は風邪を引かない」という都市伝説で、普段はひっそり温和しく、冬だけ活動して平和に暮らしていたものの、ここ学校町に来た途端急に能力が拡大して、町中にその力を振りまいてしまったのだという。
「みんな困ってるよー、早くカゼをなおしてよ」
「オレ様は風邪を引かせることは出来ても、風邪を治すことは出来ないんだ!」
 みんな困れ困れー!と高笑いを上げる「馬鹿は風邪を引かない」に向かって、全員の熱冷ましシートとアイスノンを代えた柳が一言。
「このまま風邪が収まらなかったら、『組織』が調査に乗り出して、君なんかあっけなく討伐されちゃうね」
 にこにこの笑顔のままこれを言うものだから、かえって怖くなったらしい。
「うっ!それは困るのだ!オレ様契約者を探さなきゃ」
 彼曰く、契約者を作って契約すれば、力が安定してこんなに無駄に振りまかずに済む、よって風邪のパンデミックも収まる。との事で。
543 :健康優良児の憂鬱 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/13(火) 07:07:24.16 ID:82Ea3RxAO
「柳、あたし、行ってきていい?」
 襟元にリボンを結んだ紺色のワンピースに、しっかりベレーを被って。
「じゃ、行ってらっしゃい。みんなの面倒は任せてね」
 元気よく家を出たノイはぱたぱたと駆け出した。

 街にも風邪はあふれていた。
「けほん、けほん」
「げほっ・・・こんな時にも呼び出しなんて、蓮華ちゃんも冗談キツいぜ」
「ご主人様・・・しっかり、こほっ」
「はっくしょん!」
「ごほっごほっ・・・ああ、あそこに健康な人間が、ああ妬ましい、健康が妬ましい・・・!」
「ホントにみんなカゼだぁ・・・エヘン虫、なんとかできないの?」
「だーかーら!オレ様はエヘン虫じゃなくて!ああもういい!」
「ねーねーっ」
 ふたり(?)に声を掛けてきたのは、水色の髪と目の、ノイよりちょっと年上の、可愛い女の子。
 その子はエヘン虫を指さして一言。
「それ、食べてもいーかな?」
「ふぇ?」
 エヘン虫を?食べる?
「このコは都市伝説だから、食べられないよ?」
 あまりにも唐突な申し出に、ふたりとも頭がついて行かない。
 そうこうするうちに―
「えいっ」
 その水色の髪の少女が、エヘン虫をつまみ上げてぽいっと口に運ぼうとした。
「わー!!??」
「やめてー!?」
 ノイが少女に飛びついた拍子に少女の手がエヘン虫から離れ、あわててエヘン虫はノイの後に隠れる。
「私ね、つーちゃん」
「『感染系都市伝説担当部署』ο(オミクロン)-No.2」
「ゼロりんの命令で、その都市伝説を“食べに”来たんだ」
「えっ・・・エヘン虫を、食べるの?」
 ダメだよ!とノイが悲鳴を上げる。
「だって、命令なんだもーん」
 “つーちゃん”と名乗った少女はじりじりとノイに近寄る。
「邪魔すると、あなたも食べちゃうよ?」
(このコ・・・本気だ)
 どうしよう、エヘン虫が食べられちゃう。
 少女の動きに合わせてじりじりとノイも後ずさりする・・・が。
(どうしよう、壁だ)
「じゃあ、いっただきまー・・・」

「あーっ!!!!」

 時ならぬ大声に、思わず“つーちゃん”の動きが止まる。
 大声の主は、長い茶髪のサイドだけを高い位置で束ね、水色に白いメリーゴーランドの柄がプリントされたワンピースを着た、
 ふたりよりも更に年上と思しき、辛うじて少女と言えるくらいの女の子。
544 :健康優良児の憂鬱 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/13(火) 07:08:11.40 ID:82Ea3RxAO
「それ、可愛いー!貰っていい?ううん、ちょーだい?」
「え、でもこのコ」
 茶髪の少女はしばしじーっ、とノイを見つめる。
 この少女は「ダンタリアン」の契約者、水上怜奈。
 契約都市伝説である「ダンタリアン」の力を最大限に使い、あらゆるモノに「変身」し、
 さらに「ダンタリアンの書物」であらゆる生き物の思考を“読む”事が出来る。
「あ、うん。いーよ、よくわかったから」
 ひとり勝手に頷くと、ひょいとエヘン虫をつまみ上げる。
「それ、私が食べるんだけどー!」
 さっと延びてくる“つーちゃん”の手をかわすと
「へーんっ、しんっ!」
 茶髪の少女は見る見るうちに、小柄な黒髪に、ベレー帽姿の少女となっていた。
「う、うっそー!?」
「な、な、なんだぁ?」
 ノイが、ふたり。
 これには当のノイも、エヘン虫もびっくり。
 未だに呆然としているノイの手を、ノイに“変身”した怜奈が持ち上げ
「どっちだっ?」
「え?え?こっち?」
 あまりの急展開に彼女も着いていけなくなったのか、ノイの方を指し示す。
「あっそ、じゃ、コレあげる」
 自らの盾にするようにひょいっとノイを差し出した怜奈。

「へーんっ、しんっ!」

 お次は一羽の鳩になり、羽音もばたばたと喧しく飛び去っていった。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
 あとに残されたのは、黒髪と水色の髪の、ふたりの少女。
 先に我に返ったのは、水色の髪の少女で。
「ねっ!都市伝説は!?」
 揺さぶられたノイは、未だに夢でも見ているかのような表情。
「あ、あの子が、持ってっちゃった・・・」
 “つーちゃん”はしばらくその場でわなわな震えて立ち尽くしていたが、やがて。
「わーん!ゼロりんにいいつけてやるー!!」
 盛大に泣きながら、去っていった。


 それから程なく。
 学校町で大流行した風邪は程なく終息に向かい、街はいつもの平穏を取り戻した。
「エヘン虫、元気でやってるかな・・・」
 いつもの家のいつもの部屋でひとりごちるノイ。
「待って・・・『バカは風邪を引かない』?ってことは・・・あたし、バカってこと!?」

 その疑問に今更気づいたことが、何よりの答えだろう。



〈了〉
545 :健康優良児の憂鬱 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/13(火) 07:09:02.23 ID:82Ea3RxAO
以上です。
ここにソニータイマーの人とシャドーマンの人に土下座を、
プラモデルの人には特大のスライディング焼き土下座を進呈いたしますorz
ちなみにつーちゃんが風邪を引いていないのは、ο(オミクロン)-No.では感染症に対する処置が万全のため、ということで、大変失礼をいたしました。
改めて土下座。orz
546 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/13(火) 19:37:56.26 ID:zGtRj1bf0
うおっとしまった、最近の裂邪は病気にならないこと言うの忘れてたぜ(ぁ


大亜教授の人の人乙です〜
おっほうバトルktkr!! “5秒以内”がキーワードか、何だろうな…
しかし康平くんカワイソス

鳥居を探すの人乙です〜
まさかのサスペンス風、リアリティでドキドキ(
続きが気になり過ぎて眠れなくなりそう
エヘン虫拾うノイちゃんと、取り合うつーちゃんと怜奈ちゃんが可愛過ぎて困る
しかしバカ扱いされなくて良かったな裂邪www俺の作中では最もバカなキャラだと思ってるけどwww(酷ぇ
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 03:26:50.20 ID:7wzpLnfG0

「おう、おうおうおうおうおう! 馬鹿にしてんじゃないぜコンチキショー!」

見た目浮浪者の黒服がホットそうめんを啜りながら、同僚に喚き散らしていた

「この学校町を襲った風邪!
 しかもその風邪は都市伝説による波状攻撃!!
 さらには『組織』ですら解決できなかったという体たらく!!!」

「『組織』としては、既に発生源を特定していたのですが」

黒服の喚きに同僚が応じる
サングラスに冷えピタシート、そして大き目のマスクにマフラーを巻いており
傍目からはいわゆる「怪しい感じの人」に見えてしまうのは、仕方ないことかもしれない

「討伐に当たったοナンバー2の目の前で都市伝説個体『馬鹿は風邪を引かない』は逃走したようです」

「だから駄目なんだよバッキャローが!!」

咀嚼されたそうめんが黒服の口から吐き散らされ、同僚の顔面に貼り付いてゆく

「何が『感染系都市伝説』に特化した対策チームだっての、あの[禁則事項です]どもは実際にやってることが
 [禁則事項です]、[禁則事項です]で[禁則事項です]だろ? いい加減に[禁則事項です]、[禁則事項です] [禁則事項です] [禁則事項です] [禁則事項です]、もう[禁則事項です] [禁則事項です]! [禁則事項です]!! う゛お゛お゛お゛っ!!」

大量のそうめんの飛沫が同僚に襲いかかる
同僚は内心、これが当人らに聞かれたらこの人間違いなく討伐対象に入るな、などと真っ当な事を思っていた

「そうだよ!! 俺が前線に出れば良かったんだよ、この[禁則事項です]がッ!!」

目の前のこの男、『組織』の黒服は言うまでもなく能力者である
貴方は『新種の細菌は精子だった』という都市伝説を聞いたことがあるだろうか?
この黒服はその都市伝説の拡大解釈により、射程内に存在する細菌を精子へと差し替える能力を保有しているのだ

「この俺にも捜査権限さえあればなぁ…」

有能と言えば有能な能力を保有しているが、しかしこの黒服は都市伝説関係の事件に介入できない理由があった

「ℵナンバーがナンバーとして認定されさえすればなぁ…」

理由、それは彼がℵナンバーという、組織上層部から認可されていないナンバーを名乗っているからである

(別のナンバーに移籍すればいいのに…)

付き合いが長いとはいえ、この黒服の愚痴に付き合ってやるのは同僚としてのよしみである
同僚はホットそうめんの汁を飲み始めた黒服を見やりながら咳とくしゃみを繰り返した

548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 03:28:16.56 ID:7wzpLnfG0

「別ナンバーを名乗る? 俺が他のナンバーの軍門に下るとでも思ってるのか!? あ!!」

(まだ何も言ってないのに…)

「ったーく、コンチキショーが…」



(無断でネタに便乗してしまいました。鳥居の人とプラモデルの人には土下座モノですね、この場を借りて謝罪します)

「舐めやがってヨォ…(ズズ…ズズズ…」

(ところで、彼はともかく、私はどのナンバー所属なのでしょう…?)



「お、そうだ。ℵナンバーも数いれば、さしもの上層部も認めざるを得なくなるんじゃね? 人員募集してみるか…(ズズズズ…」

(またこの人は妙な事を…う゛っ、ゴホッゴホッ、この風邪早くよくなりませんかね…)



「ちょっと待ってください、やろうと思えば私の風邪も治療できるんじゃないですか?」

「おうよ、お前がℵナンバーに所属するってんなら何時でも治療してやるぜ!!」

「そう来ましたか…」

「嫌なら別にいいけどよ、苦しむ女はそれはそれで映えるしな!
 それに俺が治療するとお前の粘膜はもれなく“俺の”精子まみれになるんだぜ!! いいのかよお!? うっへっへ」

(こっ…この人はなんて事考えて…!!)


糸冬
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 03:44:31.83 ID:7wzpLnfG0
そうです俺ですご無沙汰してます
作者の皆様お疲れ様です、そして今回は許可もなく無礼を失礼しました
久々にノイちゃんを見て俺のリビドーが深夜の狂気でマッハで加速したんですだ
本編は年替わるまでに何とかしないといけないのだが、今夜はどうかご慈悲を…どうか…
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/11/15(木) 12:39:22.37 ID:ORf6XnVAO
乙ですー
この同僚さん女だったのね
途中まで何の疑いもなく男だと思っていた…
しかしこの主人公少々アレな能力だが感染系能力にはけっこう有効だな
今回活躍してたら白濁まみれの学校町だったわけだ
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/11/16(金) 00:58:09.88 ID:EJCXkcIe0
シャドーマンの人様、大亜教授の人様、鳥居の人様、単発の人様乙ですー
れっきゅんの新技ktkr!
敬愛するニャル様に加え、アルケミィちゃんのお姿も見られるとは…!
夢見咲さん、受難の日々が続いていますが頑張ってー!
娘さんと接触したエディさんがどのような選択をするのかwktkしてます
風邪ネタはイイな、と改めて思いました
エヘン虫を庇うノイちゃんもつーちゃんも怜奈ちゃんも可愛いです!
同僚の黒服さんが女性だった…だと
ℵナンバーの黒服さんの能力を使っていたら、学校町中がさらに大変な事になっていたのか…
552 :白饅頭さん [sage saga]:2012/11/19(月) 23:16:54.33 ID:vrGqxfwI0
「ホニョッホニョホニョー!!」
「「「「ホニョッホニョホニョー!!!」」」」
「ホニョニョホニョホニョニョホニョホニョホニョニョー!!」
「「「「ホニョニョホニョホニョニョホニョホニョホニョニョー!!」」」」
「ホニョ! ホニョニョホニョ、ホニョニョニョ!」
「ホニョホニョ! ホニョンホニョホニョホニョニョニョ!」
「ホーニョホーニョ、ホニョホニョホニョニョン!」
「ホニョー!!」
「ホニョ!? ホニョーニョ!?」
「ホニョホニョホニョーニョ!」
「「「ホニョッ!?」」」
「ホニョニョニョ、ホニョッホニョ♪」
「ホニョン……ホニョニョ、ホニョニョニョ!」
「「「ホニョー」」」
「ホニョーニョホニョホニョニョニョン!」
「ホニョニョ、ホニョホニョホニョニョ!」
「ホニョッホニョホニョー!」
「ホニョッホニョホニョー!」
「……ホニョホニョ……ホニョホニョホニョニョ……」





    ...お前らへの宿題:和 訳 し な さ い
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/11/20(火) 22:18:58.78 ID:zqtrBIcAO
>「ホーニョホーニョ、ホニョホニョホニョニョン!」
これが某青い海からやってきた魚の子の歌なのはわかった、かもしれないし違うかも知れない
554 :大王の ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/11/20(火) 22:44:10.57 ID:WSwJwL6S0
>>552
変換結果

女神パドラ=ヌス・ユールはかくのごとく語れり。
「電脳夢幻世界ホニョッホニョホニョー!!」
「「「「全てはクリスタルのため、フォ・ニョッフォニョフォニョー!!!」」」」
「“創醒の光”ホニョニョホニョホニョニョホニョホニョホニョニョー(属性:闇)!!」
「「「「極相空間の盟主フォニョニョフォニョフォニョニョフォニョフォニョ=フォニョニョーの変異種、通称“ドグマ”!!」」」」
「ホニョ(世界の理)! ホニョニョホニョ、フォニョ・ニョニョ!」
「フォニョフォニョ……! フォニョンフォニョフォニョフォニョニョニョがかけた強力な呪い!」
「ホーニョホーニョ、エクストリームホニョホニョホニョニョン!」
「フォニョー、そして光の導き!!」
「原初の時代より伝わりしフォニョ――今は、な――!? ホニョーニョ!?」
「ホニョホニョホニョーニョ!」
「「「ホニョッ!?」」」
「デスメテオホニョニョニョ、ホニョッ=ホニョ…それが神々の詩《ウタ》。」
「ホニョン――ホニョニョ、フォニョニョニョ=ライゼス!」
「「「フォニョー反転世界」」」
「陽炎の導き手フォニョーニョフォニョフォニョニョニョン!」
「魂の軛解き放つ光フォ・ニョニョの魔力を吸収した“化物”、赫きホニョホニョホニョニョ…これはお前の物語だ!」
「ホニョッホニョホニョー!」
「ホニョッホニョホニョー!」
「――闇黒騎士バンジャックス=フォニョフォ=ニョ――星天に棲まうフォニョフォ=ニョフォニョニョと彼に仕えた黒き闇の騎士――」
555 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/20(火) 22:49:01.33 ID:sHN11lOq0
懺悔します

>>552をあげたのは確かに私です
でもどんな意味を込めて書いたのかさっぱりです
昨日ボジョレーをがぶ飲みしてた事しか覚えてません

しかし私は思うのです
昨今では『作者は何が伝えたいのか』だとか『歌詞が伝わらない』だとか疑問・苦悩が飛び交っている
本当にそれで良いのだろうか
十人十色、感じ方や考え方は人それぞれだと思うのです
例え>>552に何らかの意味が込められていようと
>>553のように感じたのならそれが答えで良いのです
誰も肯定できないけど、誰も否定しない
そんな世界があっても良いじゃないか
AC、公共広告機構です

そして我が弟ながら>>554で噴いた
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 22:51:21.07 ID:iQ3U+csd0
「ホニョッホニョホニョー!!」
「「「「ホニョッホニョホニョー!!!」」」」
「ホニョニョホニョホニョニョホニョホニョホニョニョー!!」
「「「「ホニョニョホニョホニョニョホニョホニョホニョニョー!!」」」」
「ホニョ! ホニョニョホニョ、ホニョニョニョ!」
「ホニョホニョ! ホニョンホニョホニョホニョニョニョ!」
「ホーニョホーニョ、ホニョホニョホニョニョン!」
「ホニョー!!」
「ホニョ!? ホニョーニョ!?」
「ホニョホニョホニョーニョ!」
「「「ホニョッ!?」」」
「ホニョニョニョ、ホニョッホニョ♪」
「ホニョン……ホニョニョ、ホニョニョニョ!」
「「「ホニョー」」」
「ホニョーニョホニョホニョニョニョン!」
「ホニョニョ、ホニョホニョホニョニョ!」
「ホニョッホニョホニョー!」
「ホニョッホニョホニョー!」
「……ホニョホニョ……ホニョホニョホニョニョ……」


    ...お前らへの宿題:和 訳 し な さ い



明け方近い『組織』のとあるフロアに、以上の文言が掲示されていた。
昨夜までこんなものは無かったはずだ。

「なあこれどう思う…?」
「さあな」

人もまばらなこの時間帯、掲示物を前に二人の黒服が腕を組んで見入っていた。

「この手の悪戯を思いつくのって、Y-No.0あたりだよな…」
「あの面倒臭がりで有名なY-No.0がか?無差別チェンメならともかく、これは大仰すぎないか?」

黒服あてにこのような掲示をおこなうのは、通常管理職以上の黒服だ。
さらに言えば、鬱陶しいほど細かい指示や命令が書き連ねられている。
ところが、この掲示物と言えば、謎のカッコ書きの羅列と最後の「和訳しろ」という一文のみだ。

「なんか最後の行のは高圧的な言い方でいかにもそれっぽいよな」
「バカが書いた文章にしか見えんが」

1--2

「とにかく訳してほしいわけだよな」
「だが訳してどうする?訳した後にどこへ連絡すればいいんだ?」
「確かに…」



ここまで書いた
ぜんぶ書き切れるかは分からない
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 23:15:51.34 ID:iQ3U+csd0
あきらめた
ねるほ
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/11/20(火) 23:20:46.74 ID:wEGKuik70
とりあえずノムリッシュ翻訳

「フォニョッフォニョフォニョーと同等の力を持つ男!!」
「「「「森羅万象を規定するホニョッホニョ・ホニョーのヴォルサハイト!!!」」」」
「人造神ホ=ニョニョホニョホニョニョホニョホニョホニョニョー!!」
「「「「“光”そのものであるフォニョニョフォ・ニョフォニョニョフォニョフォニョフォニョニョー!!」」」」
「フォニョゼロ! ホニョニョホニョ、闇に迷いし一対の光ホニョニョニョを倒した男!」
「ホニョホニョッ! ホニョンホニョホニョホニョニョニョ・暴走覚醒式形態!」
「フォーニョフォー・ニョ、力なきフォニョフォニョフォニョ・ニョン、別名『ロスト・オメガ』!」
「触れてはならぬホニョー!!」
「フォニョ・ザ・マキシマム!? フォニョーニョ!?」
「『獣』を従えたホニョホニョホニョーニョ!」
「「「撤退しなければならかったホニョッ!?」」」
「フォニョニョニョ=カレルレン、ホニョッホニョ…それが神々の詩《ウタ》。」
「フォニョンノクティス――ホニョニョ、フォニョニョ=ニョ!」
「「「“死”という概念を司るフォ・ニョー」」」
「闇に融けるフォニョーニョフォニョフォニョニョニョン!」
「フォニョニョ《シン・ネメアス》、ホニョホニョホニョ・ニョ!」
「学園の支配者と呼ばれたフォニョッフォニョフォ・ニョー!」
「フォニョッフォニョフォニョー=Ω・ヴァルバトス!」
「――ホニョホ・ニョ――フォニョフォニョフォ=ニョニョ零型――」

    ...貴公らへの契約:人智を超えた強さを持つ和 灼熱の魔眼を持つ訳死刑囚 し な さ い

559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 23:09:54.56 ID:s7bHG94DO

ほとんど翻訳出来てねえな
560 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/21(水) 23:25:58.58 ID:Pg8mZr2U0
我ながら改めてラピーナの翻訳技術に驚かされる
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/11/22(木) 00:51:28.13 ID:ChKAhAgao
レスピーギ嬢何者なんだ

チラ裏ではなくあえてここに書くが
Aナンバー所属のファフロツキーズの元契約者は
レスピーギとガチの殺し合いを幾度となく繰り広げてきたが
お互いに決着がつかないまま現在に至っているという裏設定がある
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 17:10:16.41 ID:4FMkarVHo
>>561
レスピーギがだれなのか少し悩んでしまった

そして今日はいい夫婦の日ですな
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 20:21:42.42 ID:uVpVk5fDO
れっきゅん爆発しろ
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 21:16:30.55 ID:5Ir8tIKj0
Tさんもげろ

Tさん…
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 21:31:35.13 ID:gDZj79Ci0
あるまでい
ねじきれろ
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/11/22(木) 23:45:52.70 ID:2CdX9VyAO
このスレの主人公格で夫婦ってどれくらいいたかしらな
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/11/22(木) 23:48:57.79 ID:ChKAhAga0
美也と姫さんお幸せに爆発しろ
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/23(金) 17:53:15.49 ID:UX8+LRmc0
私は夫婦を一組しか出してない上に百合夫婦な件について
569 :プラモデルの人 ◆GsddUUzoJw [sage]:2012/11/23(金) 21:16:30.89 ID:zUgO4B7c0
遅くなりました、皆さん乙ですー!

>>525-536
大亜教授の人乙ですー!
夢見咲君の都市伝説、確かに行方不明事件にはうってつけの能力ですね
そして戦闘シーンの描写からすると、以外にも戦闘慣れしてるような気も……元凶は何となく分かりますが
頑張っている彼に幸あらん事を

>>539-541
切り裂きジャックの人乙ですー!
まさか続きはあるとは……前回までがジャックの視点、ここからが教会&警察のターンですね
【都市伝説】という概念が存在しないと言う事は、まだ【組織】も発足してないんでしょうか

>>542-545
鳥居の人乙ですー!
うぉぉぉぉ、まさかウチのο-No.2ことつーちゃんを使っていただけるとは!
こちらこそありがとうございます!エヘン蟲を取り合うノイちゃん・怜奈ちゃんとの掛け合いが可愛いwwww

>ちなみにつーちゃんが風邪を引いていないのは、ο(オミクロン)-No.では感染症に対する処置が万全のため、ということで、大変失礼をいたしました
すみません、こちらの一文からο-No.側の反応(補足とも言う)短編を描きたいのですが、宜しいでしょうか?

>>547-549
単発の人乙ですー!
まさか……名前だけとはいえ、こちらでもクロスしていただけるとは……!ありがとうございます!
能力的にはο-No.に入っても可笑しくない人材ですが、どこまでを“細菌”とするかが少々気になったり

それとすみません、ℵNo.を↑の短編で名前だけお借りしたいのですが、宜しいでしょうか?

>>552-558
>...お前らへの宿題:和 訳 し な さ い
影の人乙ですー!
……ごめんなさい、和訳無理でしたorz
ο-No.71だったら誰かに声かけられるまで、必死に解こうと掲示板の前で煙出してそう
ο-No.0ことだったら、全文綺麗にメモって自室で暇つぶし代わりにしてそう

>>565
>あるまでい
>ねじきれろ
ホワイ!?
まだ夫婦じゃないよ、あの二人!?
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/23(金) 22:45:03.31 ID:CmRDbn+Q0
>>569
ℵナンバーのあの口の悪い黒服を使ってくれると申すか…!?
どうぞどうぞ
もうメタクソにやっても一向に構わん!
571 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/23(金) 23:01:39.20 ID:5izlkSdAO
夜勤明けで起きている時間が24時間を超えたこのテンション

>>558
おお!翻訳乙!…翻…訳…?

>>569
>まさか続きはあるとは……前回までがジャックの視点、ここからが教会&警察のターンですね
なにやら壮大な蛇足という気がしなくない。

>【都市伝説】という概念が存在しないと言う事は、まだ【組織】も発足してないんでしょうか
むぅ。舞台がヨーロッパなのと時代が少々古いので確実にありそうな方を出しました。
組織については皆さん使ってますから、下手に他の時代での有る無しに言及するのは…ということで。

>すみません、こちらの一文からο-No.側の反応(補足とも言う)短編を描きたいのですが、宜しいでしょうか?
ぜひお願いしますー!
572 :操作ミスって、本編全部消えたorz ◆GsddUUzoJw [sage]:2012/11/24(土) 01:03:46.97 ID:ti3DREuB0
後少し……後少しで、書き上がったのに……orz
何で一度最小化しようとした、何で間違って閉じるボタンを押したorz
別ウィンドウの短編だけは何とか避難所に移せたけど、ごめんなさい……今日中に書き上げる気力が……本当にごめんなさいorz

>>570
>ℵナンバーのあの口の悪い黒服を使ってくれると申すか…!?
>>571
>ぜひお願いしますー!
ありがとうございます!
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 13:45:37.19 ID:t2ZA2jjv0
「組織」の発足は比較的最近の時代です
花子さんとかの人が言うには戦後まもない段階に発足したようです
ただし、上層部の黒服については「組織」発足以前から存在、活動していたことが複数の作者によって示唆されています
それぞれの作者の設定をすり合わせながら考える必要はありますが、いずれにせよ「組織」の発足はそれほど古い時代からではなさそうです
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 14:50:10.14 ID:3Y5rvdBSO
組織の「黒服」の都市伝説がまだ無いからね
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/24(土) 15:02:11.89 ID:u82jS6Qn0
『黒服』の元ネタことメンインブラックは
1950年代から60年代にかけてのアメリカで報告されてた
ということはそのあとに日本で『黒服』爆誕というわけか


こういう考証に異様なほど詳しいのはケモノツキの人だったりするのだ…
576 :ケモノツキ ◆kemono..Qk [sage]:2012/11/25(日) 00:34:09.69 ID:mx23vssDO
×:詳しい
○:考えるのが好き

お褒めにあずかり恐縮なのですが、私のは所詮俺解釈にすぎないのですよ
中の人が設定厨なので、自分が納得できる設定をひたすら考えてるだけなのです

そして今気づいたけれど、以前投下した猫単発をwikiに載せるの忘れてたし、既に書き上げてる猫単発を投下するのも忘れてた
あ、明日やってやらぁ!
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/25(日) 12:55:45.42 ID:v3t2DwyE0
ところで悪魔の囁きの頃だと大門さんの実年齢はたしか50か60だと花子さんの人が言ってた記憶があるけど
歳が近いのはローゼラインハルトなんだよな…ふたりは大体実年齢が同じだということだろうか
かたや青年、かたや少女…
ところで大門さんとD-No0は面識あったっけか
578 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/25(日) 20:01:29.04 ID:kRb8Kbcm0
近いっちゅうてもローゼ今大体40やで


あと上層部はあれちゃうん
そもそもが「組織」つまり「メン・イン・ブラック」やないから存在しとってもヒーローごっこしとっても何ら影響ないんちゃうん(´・ω・`)?
イクトミとか神様やし
論点ずれとったらごめんやけど
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/25(日) 20:31:41.52 ID:v3t2DwyE0
>>578
差し出がましいようだけど
ご自身が何を言ってるのか理解して言っているんですか
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/11/25(日) 20:42:20.15 ID:zAYD88mAO
自分はわかったけど???
ああ続きがなかなかうまく書けないよー
581 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/25(日) 21:00:46.26 ID:kRb8Kbcm0
やべ、何か勘違いして書いとったか
申し訳ねぇ、ちょいと「組織」について勉強し直してくる
582 :ノロイノビデオ [sage saga]:2012/11/25(日) 23:07:58.02 ID:BwvHi/i80

――――このビデオは呪いのビデオです

 先日ネットオークションで手に入れたDVDを再生すると、画面に表示されたのは不穏な言葉。

――――これを見たあなたは7日後に死にます

 質の悪いイタズラを掴まされたか。落胆と憤りを胸に停止ボタンを押したが、映像が止まる気配はない。

――――呪いから逃れるには、このDVDをコピーして7人の人間に配ってください

 背中に悪寒がはしり、DVDデッキとテレビのコンセントを乱暴に引っこ抜く。

――――DVDが7人の手にわたった時点で、あなたへの呪いは解かれます

 電源を失ってもなお流れる映像を、俺は呆然としながら眺めていた。

――――なお、コピーしたDVDの中身を見られる前に、それが呪いのDVDであると知られた場合、あなたへ呪いがふりかかります

 ……なるほど、そういうことか。どうりで――

――――決してバレることのないよう、パッケージやタイトル、頒布方法などには十分ご注意ください

 どうりでこのDVDのタイトルが「〜白黒三毛トラシャムペルシャ〜 世界の猫が大集結 とびだせ!猫の園」ってなってるわけだよ!

 なんでだよ!普通こういう呪いのビデオって、タイトルが書いてないとか不自然に塗りつぶされてるとか、
 そういう「いかにも」な気配をかもしだしてるものだろ!?
 なんでこんな人を騙すような真似してんだよ!

 俺はただかわいい猫たちを愛でようと思ってこのDVDを手に入れたんだぞ!?
 返せよ!俺の純情を返せよ!どんな猫が出てくるのかなぁとワクワクしながら再生ボタン押したらこの様だよ!
 なんで猫を見ようとしたら死の宣告されなきゃいけないんだよ!?理不尽すぎるだろこんなの!

 それにDVDって!普通こういうのはビデオテープだろうが!
 無駄にデジタルに移行してんじゃねーよ!ビデオテープと一緒におとなしく廃れてろ!

 猫好きの気持ちを弄びやがってちくしょう!
 こうなったら復讐だ!この怒りは犬派のやつらにぶつけてやる!
 犬のAV(アニマルビデオ)を期待したやつらに俺と同じ絶望を与えてやる!
 猫の恨みは恐ろしいんだぞ!覚悟しろよ犬派め!


【終】
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage saga]:2012/11/25(日) 23:08:59.98 ID:BwvHi/i80
AV(アニマルビデオ)だと思ったらAV(アダルトビデオ)だった。
そんな中の人の落胆を表現してみました。
ねこみみにくきゅうねこしっぽのコスプレAVとか望んでないんだよ!猫を寄越せ猫を!
そんな中の人の憤りを表現してみました。
タイトル詐欺、ダメ、ゼッタイ。


呪いのビデオも手を変え品を変え、必死に生き残ろうと足掻いてるのだと思います。
もし呪いのビデオやDVDを見かけたら「ああ、お前らまだ生き残ってたんだな……」と生暖かい目で見てあげてください。
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 23:25:25.86 ID:7v7hPoRqo
はいはい乙乙
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 00:10:50.42 ID:4TDlobr90
単発の人乙
呪いのビデオね
つまり夜勤病棟24時とかパッケージ偽って…という事か
自分が引っ掛かったら間違いなくTSUTAYAにクレーム入れるんだろうなあ…

呪いのビデオの都市伝説は某小説の前に本当にあったそうだな
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/11/26(月) 14:05:59.75 ID:Vkg8B9TAO
>>582
投下乙ですー
犬派とばっちりwwwwww
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 16:34:07.48 ID:Cy+BJOXYo
最近は動画という媒体に映ってイキイキしているSさんとかいるのよ!
588 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/26(月) 19:59:56.35 ID:Qzan/rXZ0
タイトルの『ノロイノビデオ』が『ノイノイビデオ』に見えた俺はどうすれば(
と言う訳でケモノツキの人乙ですの
カワイソス、登場人物もケモノツキの人もカワイソス
犬派ざまぁマジざまぁ

>>583
>ねこみみにくきゅうねこしっぽのコスプレAVとか望んでないんだよ!猫を寄越せ猫を!
ロリなら良いけどねぇ……

>>587
>最近は動画という媒体に映ってイキイキしているSさんとかいるのよ!
そういや誰か見たのかしら、『貞子3D』
全然怖くないと専らの噂だが
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/11/26(月) 21:47:47.22 ID:SaxQMqKso
>>588
> タイトルの『ノロイノビデオ』が『ノイノイビデオ』に見えた俺はどうすれば(
うむ
『ノロケノビデオ』に見えて昨今ハッスルしてる貞子ちゃんに彼氏でもできたのかと思ったよ
彼氏とイチャイチャベタ甘なビデオだけど他の人に見せないとやっぱり呪われるから砂を吐く思いでダビングする一人身達
590 :惚れ薬の服用方法 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/29(木) 05:37:03.45 ID:9yKjYzFAO
 ある日の学校町。
 ひとりの青年が、日頃の人柄には似合わないうきうきした足取りで家路を急いでいた。
 彼の名は嶋貴也。見た目からはどこといって面白味のあるようには見えない青年だが、実際そうだ。
 ほぼ着たきりに近いライダースやグローブも、それより遙かに濃いキャラ付けを持つ学校町住人の間では異彩を放つものではないし、言動は至って普通人。
 けれど彼は、そんな普通人な自分に至って満足している。
「あ、貴也だー!」
 親しげに声を掛けてきたのは彼の同居人新宮幻の友達、ノイ・リリス・マリアツェル。とその保護者であるムーンストラック、自称婚約者の浅倉柳。
 あまり集団行動を好まない幻がなぜ、ノイに近づいたか彼には解らない。至って善良な性格が彼女を安心させたのか、それとも他に理由があるのか。
「貴也なんだかゴキゲンだね。どうしたの?」
 こんなチビッ子にも気取られる程浮かれていたのかといささかげんなりしたが、
「急ぐのでまた今度」
 とやり過ごそうとすると、誰かに袖を掴まれた。
「『それ』都市伝説?面白そうなモノ持ってるじゃない」
「飛縁魔さん」
 この人も、悪い人じゃないんだけどな。心中密かにため息をつく貴也。
 面倒見がいいのか単に物見高いのか、しょっちゅう自分と幻の仲を聞いてくる。
 普段は提供すべきネタなど無いのだが、今日という日がよくなかった。都市伝説には都市伝説の存在が判る。
 貴也は観念して抱えた荷物の正体を明かした。
「…『イモリの黒焼き』ですよ」
 「イモリの黒焼き」惚れ薬として名高いそれは、飛縁魔に負けず劣らず物見高いο(オウ) -No.3、桐生院るりに押しつけられた物だった。
 モニターなどと云えば聞こえは良いが実際は無給のモルモット、
 しかもゴシップ好きのるりの茶飲み話まで提供しなければならないとあっては、断ってやりたいのは山々だが・・・
 「惚れ薬」の三文字についよろめいてしまった自分が情けない。
「イモリって、あのトカゲみたいなのー!?」
 うぇーマズそう、と苦い薬でも飲まされたような顔をしたノイに、飛縁魔が効能を説明すると
「わかった!それ幻に飲ませるんだ!」
一瞬でぱっと目が輝きだした。
(どいつもこいつも・・・)
「ねーねー、それ飲んだら、幻が貴也のことスキになっちゃうの?」
591 :惚れ薬の服用方法 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/29(木) 05:38:01.58 ID:9yKjYzFAO
 こちらも好奇心満々の様子を見て、女性はたとえ子どもでもこうした話が好きなのだなあと呆れを通り越していささか感心した。
「・・・それじゃ」
 これ以上ここにいたらるりだけでなく新田家でまでお茶の間の格好のネタだと判断した貴也は早々に立ち去るべく踵を返した。
 否、返そうとした。

「・・・で、なんで俺、新田さんちでお菓子作りの準備してるんですか」
「まあまあ、手伝ってやるって言ってんのよ」
「幻が貴也のことスキになっちゃう瞬間、見たーい!」
「・・・・・・」
「で、どーやってソレ、飲ませるのよ?」
 正面から頼んでも恐らく、いや絶対無理だろう。
 偏食の幻は、お菓子はよく食べてもまとまった食事はしたがらない。
(昔はよく、給食残して立たされてたっけ)
 そんなわけで、食事に混ぜても彼女が口にする可能性は薄い。とすればお菓子を手作りし、それに薬を仕込むしかない。
 ふるった小麦粉にココアパウダーを混ぜ、溶かしたバターと砂糖を合わせてさっくり混ぜる。冷蔵庫でしばらく生地を寝かせ、形を整えて焼けばココアクッキーの完成だ。
 黒焼きは確実に幻の口に入るように、一枚分だけ生地を分け、それに粉にした黒焼きを混ぜて、判りやすいように他のクッキーとは形を違えて焼く。
「わ、ハート型、かわいー!」
「あんた、お菓子作りも上手いんじゃないの」
 ちなみに新田家の住人はと言えば、極は学校、リジーは台所が使えない間に買い物に行き、ムーンストラックが荷物持ちとして連行されていった。
 それ以外の面子はお菓子作りを見守るだけの簡単なお仕事。
「いー匂いだねー」
 一枚ちょーだい、と袋から一枚ひょいっとクッキーを取ったノイを後目に、貴也は新田家を辞した。

「おかえりなのですよー」
 マンションに帰ると、いつもの声が出迎えてくれる。ただし声だけ。
 本体はリビングでDVDでも見ているのだろう。原宿系の妙ちきりんな衣装が話題のアイドルの声が聞こえてくる。
「新宮さん」
「んー」
「クッキー食べない?」
 その言葉に初めて振り返った幻が、クッキーの包みを見て怪訝な表情になる。
「それ・・・手作りなのですか?」
「うん」
「なんで外から手作りクッキー持って帰って来やがるんです」
 しまった。せめて既製品っぽく装うべきだったか。
「あ・・・い、頂き物・・・」
592 :惚れ薬の服用方法 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/29(木) 05:38:47.88 ID:9yKjYzFAO
「ほんとー、なのですか」
 今なら「照心鏡」は勘弁してやるですよ、ホントの事を言えですよと責められてポーカーフェイスを保てるほど図太い彼ではない。
 どのみち幻が「照心鏡」を使えば、考えは読みとられてしまうのだ。
「・・・ごめんなさい、俺が焼きました」
 それ以上は怪しまなかったのか、何でわざわざ外でクッキー焼くんですか、お料理教室か何かですかとぶつぶつ云いながら袋に手を突っ込み―取り出したのはハートのクッキー。
(やった、大当たり!)
 そのまま幻が口に運ぶのを固唾を呑んで見守る。
 が。
「なにじろじろ見てるですか」
「あ!いや・・・美味しいかなって」
 幻はしばしば、じーっと貴也を見つめ。
「なんか怪しいのですよ。やっぱりいらねーですよ」
 そこで一旦引き下がればいいものを、
「なっ!困るよ!」
 ついついムキになってしまったものだから、幻はますます怪しんだらしい。
「なんでボクがクッキー食べないと困るのですか」
 いつもは食事前にお菓子食べるなって言うですよねー。
 そう言って取り出した、小さな手鏡。
 「照心鏡」で心を覗かれると悟った貴也は、咄嗟にクッキーの袋を抱えて部屋を飛び出した。

「・・・ここまで来れば、大丈夫かな」
 それにしても何をやっているんだろう。クッキーを食べさせるつもりが、そのクッキーを抱えて食べさせるべき相手から逃げ回っている。
「あれっ?」
「貴也さんじゃん、どーしたんすか?」
 行き合ったのは「組織」o-Noに所属する敷島響、桜の兄妹だった。
「No.3から聞きましたよー?首尾はどうですか?」
 桜がなんともいえないによによ笑いを浮かべてすすっ、とすり寄る姿は先程までのノイや飛縁魔の姿を彷彿とさせて貴也は目眩がしてきた。
「オンナってそーゆー話、ホント好きだな。惚れ薬とかおまじないとか」
 「惚れ薬」の現物に釣られた自分はなんなんだろうなと貴也はいささかモニターを引き受けた自分に疑問を感じつつ。
 ともかく経緯を話すと、響は協力を申し出てくれた。
「食べる・・・?」
 桜はなにやらぶつぶつ言いながら首を傾げていた、そのとき。
「ここにいたですか!」
「に、新宮さん」
「お!飛んで火に入る夏の虫たぁこのことだな!」
 響はざっ、と日傘を構え、とっさにクッキーの袋を隠した貴也を何をやってんすかと叱咤した。
「それですよ!その怪しいクッキーの正体を言えですよ!」
593 :惚れ薬の服用方法 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/29(木) 05:39:49.83 ID:9yKjYzFAO
「食べたら教えてやるよ!」
 片手に日傘、片手にクッキーを手に響が突進する。幻は直線的な攻撃をひょいっと交わし、手鏡を取り出した。
「鏡に映んなきゃいーんだろ!?」
 響は日傘に隠れながら慎重に幻との距離を測って近寄ろうとする。
 貴也はといえばふたりの攻防をただ呆然と見守り、桜はといえば端末で誰かと通信していた。
「え!やっぱりそうですか・・・はい、ええ」
 やがて。
「笑わせんなですよー!!」
 幻の喚き声と響の悲鳴とともに、袋が破けてクッキーが宙を舞う。
「これかっ!」
 驚異的な反射神経というべきか。響は落下するハートのクッキーを、地面に叩きつけられる寸前でキャッチした。
「あとは食わせるだけだぁ!」
「誰が食べるかですよ!」
 だが、喋るために口を開けたのが運の尽き。
「そこだあっ!」
「むぐぐっっ!」
 響の雄叫びと共に幻の口にクッキーが押し込まれる。
「やった!喰わせたぜ!」
 響はガッツポーズと共に快哉を叫び、貴也は慌てて幻に駆け寄る。
「うう・・・」
「新宮さん、大丈夫?」
 返事は一発の左ストレートだった。利き手なだけに力が入って余計痛い。
「このとーりなのですよ!何か文句あるですか?」
「なー、なんか変な感じとかしねーの?・・・その、動悸とか、心境の変化とかは?」
 食べさせた手前もあってか、響もいささか緊張気味に尋ねる。
 問われた当の本人はけろりと
「なんともねーですよ?」
「あ、あれ・・・?」
「変っすねぇ・・・?」
 ふたりが首を傾げていると
「貴也さん、違う!」
 通信が終わったらしい桜が三人の間に割って入る。
「あのね、『イモリの黒焼き』って・・・食べたり飲んだりする物ではないらしいんです」
『え!』
「イモリの黒焼き?・・・イモリ・・・?」
 三人が三人それぞれの驚きの表情でフリーズした。それこそまるで時間が凍り付いたかのように。
「本来あれは、粉にしてターゲットにふりかけるものだったらしい、です」
 No.3、取説渡したって言ってましたけど・・・とおそるおそる貴也をのぞき込む桜。
(取説・・・?そういえばクッキーを作る前に、黒焼きの入った箱から何か紙切れが落ちたっけ)
 今まで自分のした苦労は何だったんだと貴也はがっくりうなだれた。
「嶋くん・・・?イモリってどーゆー事ですか?」
 ふと見ると、誰にもはっきり分かるような怒りのオーラを纏わせた幻が居て・・・ その後は、惨劇。
594 :惚れ薬の服用方法 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/11/29(木) 05:41:13.70 ID:9yKjYzFAO
 ちなみに、幻は後遺症か、しばらくの間ココアのクッキーを食べることが出来なかったとか。
「ねーねー幻、貴也のこと、スキになった?」
「ならねーですよ!」



〈了〉
595 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/11/29(木) 20:58:16.92 ID:HXJiK0fV0
乙ですの
「イモリの黒焼き」ってふりかけ式だったのか……『千と千尋』で初めて知った身としては今日まで「アルェー?」状態だったという
幻ちゃん今日もかぁいいよハァハァ
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 16:00:42.32 ID:vAdXHsOw0
成人後も出井はプラモオタ続けてて
紫亜が(母親の策略か何かで)イケメンベッドヤクザと付き合ってて
出井の方は通常運転でなぜか成長の止まった黄昏と軽口を叩き合いながらつるんでる頃
ノイがイケイケの女子高生に変貌していたら

俺も本気出す
597 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/02(日) 16:29:10.10 ID:iZfzV/Nx0
>>596
一部暗い未来じゃねぇかwwwwwww
598 :夢幻泡影 † 前夜祭の悪夢 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/02(日) 18:30:33.07 ID:iZfzV/Nx0
†前編:>>515-517




「お菓子の代わりに地獄の片道切符を寄越そうか………アルケミィ・エインシェント!!」

全身を黄金色の炎に包み、翼を広げる様は不死鳥の如し
裂邪は拳を振り上げ、仮面を装備した少女――アルケミィ目掛けて飛びかかった

「『ゴッド・フェニックス』!!」
「遅い…ですの」

ぴたりと裂邪の動きが止まる
アルケミィに侍る2つの鬼の面から巨大な白骨の腕が伸び、彼をがっちりと捕らえていた

「ちっ!?」
「頂きますの……『ゼーレ・フェアシュヴィンデン』」

彼女はゆっくりと刀を引き、そして勢い良くその切っ先を裂邪の心臓に突き刺さんとした
寸前、何かを感じ取ったアルケミィはその眼を裂邪から外したが、時既に遅し
巨大な蔓が鞭の如く叩きつけられ、彼女の身体は壁に激突し、破壊した
その隙に裂邪は2体の鬼面を跳ね除け、軽やかに飛んで距離を置いた

【がっひゃっひゃっひゃっひゃ……我を除者にするとは何たる侮辱】
「……嫌な気分だな……真相はどうあれ、間接的に助けられたようだ」
「むぅー……邪魔しないで欲しいですの……」

がらがらと瓦礫の山を崩し、身体中の鬼面の眼孔、笑うように開いた口に眩い光が灯り始める
やがて稲光が瞬き始め、そして

「『ゼーレ・ブリッツ』」

一斉にそれらは解き放たれた
無数の孔から放出した光条による無差別攻撃
裂邪は4枚の翼を盾のように操って何とか防いだ
対する「ジャック・オ・ランタン」はひらりひらりと躱していったが、
その内の一筋の閃光が、彼の身体を貫いた

【っがぁ!?】

満足そうに小さな笑い声を漏らすアルケミィ
敵が一人減ったか―――――裂邪が安堵した直後だった
一瞬にして「ジャック・オ・ランタン」の身体が黒い旋風に変わり果て、
裂邪とアルケミィを一陣の風の如く通り過ぎた

「「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!??」」

2人が感じたものは、激しい騒音だった
思わず耳を塞いでやり過ごしていると、くぐもった笑い声が聞こえた

【残念だったなぁ? がぁっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!】

笑い声の正体は、先程閃光に貫かれた筈の「ジャック・オ・ランタン」だった

「ッ……ま、だ………生きて………」
【我は不死身だからな…虚言だと思うなら試してみるか?】
「…そうしよう。お前が死ぬまで何度でも叩っ斬ってやる」

4枚の翼を再び巨大な剣へと組み換え、「ジャック・オ・ランタン」との距離を詰める
行く手を阻む蔓やランタンを切り刻みながら、いよいよ眼前に辿り着いた
横薙ぎに振るえば、「ジャック・オ・ランタン」はひょいと跳び上がって斬撃から逃れる
さらに攻撃の手を止める気配のない裂邪の行動を見定めるべく身構えたが、不意に己の身体に違和感を覚えた
見れば、黒い無数の腕が、自身の身体を掴んで離そうとしなかった

【何っ!?】
「言っただろ……俺は1人じゃない、ってなぁ!!」

身動きの取れない「ジャック・オ・ランタン」の身体を、裂邪は縦一文字に断ち斬る
筈、だった

「――――――――あ゙ぁ゙っ!?」

背後からの衝撃に、裂邪の身体は大きく弾き飛ばされた
青白い火炎。その主は、青い大きな鬼面だった

「貴方の敵も………1人じゃありませんの……………」
599 :夢幻泡影 † 前夜祭の悪夢 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/02(日) 18:31:35.49 ID:iZfzV/Nx0
この隙にと黒い腕を振り払い、拘束から逃れる「ジャック・オ・ランタン」
アルケミィは2つの鬼面に指示し、再び蒼炎を放ったが、
やはり「ジャック・オ・ランタン」はいとも容易くそれらを避けきった

【当たれんなぁ、その程度では!!】
「……お返し……出来ませんの………」
(さぁて、頃合いか……この辺りで罷るとしようか)
「いい加減はらわたどころじゃ済まなくなってきた」

アルケミィ、「ジャック・オ・ランタン」の双方は、声の聞こえてきた方へと目を向けた
青い炎を受けて立ち上がった裂邪の鎧には、ごうごうと黄金の炎が燃え上がっていた

【ほう、まだ立つか?】
「もう暫く愉しんでいようかと思ったが…気が変わった
 少しばかり本気を出そう―――――『マクロコスモス』!!」

裂邪を包む炎がさらに勢いを増し、周囲に地鳴りが轟く
そして、彼の金色の鎧が、徐々にその形を、大きさを変えてゆく
人間大だったそれは、巨大どころか人間の形すら留めておらず、
下半身は龍の如き長くしなやかであるが、その禍々しさは骨格のようだった
上半身には頭部と呼べるものが無く、代わりに巨大な腕と、6枚の翼が生えていた
やはり、その全身は黄金の炎が覆っていた

【貴様等に見せてやろう……“大いなる秩序”を!!】
「…あら……また、大きく……」

また小さく笑い、アルケミィは己の得物を構え、2つの鬼面に腕が出現した
一方の「ジャック・オ・ランタン」は、

(………こ……これは…………“星を焼き尽くす生ける焔(クトゥグア)”!?)

身体を小刻みに震わすその様は、何やら怯えているようにも見えた
そんな彼に構いもせず、アルケミィは早々に動き出した
日本刀を振るい、裂邪に斬りかかる

「貰い…ますの……」
【正面突破? 愚かしい】

裂邪はその掌で彼女の斬撃を受け止める
“掌”とは言っても、それは一般的な“掌”とは言い難く、
手首と呼べる部分と球体が分離しており、その球体の周囲に五指ともとれる突起物が浮遊していた
受け止められても尚、アルケミィは慌てる様子は無く、すぐに離れたかと思いきや、
気がつけば裂邪の両サイドに、口に蒼炎を含んだ鬼面が配置していた

「あの世へご案内ですの………『ゼーレ・ホェレ』」
【させるかぁ!!】

裂邪の翼の内の1対が浮遊し、左右それぞれの鬼面の口に突き刺さった
ぼん!という爆破音が響いて攻撃を無効にしたことを悟った裂邪は、
残りの2対の翼を分離させ、その先端から細い光条を放ち、鬼面に命中させた

「………ッ!?」
【ビビってる場合じゃねぇぞぉ!? 行け、『フサッグァ』!!】

裂邪の声に応じ、分離した翼が隊列を成し、散り、アルケミィを狙う
何度となく放出される閃光を潜り抜け、彼女は再び裂邪の懐に潜り込む

「…『ゼーレ・シュナイデ』」

居合斬の要領で刀を振るい、衝撃波を発生させる
が、斬撃は裂邪の長い尾の先端の刃によって相殺され、
直後にその巨大な手刀が彼女に襲い掛かった
即座に刀で防御態勢を取ったが、その行為も空しく、刀が無惨に折れ、僅かながらの衝撃を抑えたのみ

「―――――――ぁあっ!?」

強く地面に叩きつけられ、そのショックの所為か元の姿に戻ってしまった
肉体強化を兼ねていた事もあって、彼女は上手く立ち上がる事が出来なかった
これを逃す程、この時の裂邪は穏やかではない
600 :夢幻泡影 † 前夜祭の悪夢 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/02(日) 18:32:05.49 ID:iZfzV/Nx0
【さっきの言葉、そっくりそのまま返すぜ……じゃあな!】

裂邪は鋭く巨大な爪を立て、勢いよく振り下ろした
鈍い音と共に、爪は小さな身体を清々しい程に貫通する
だが、それはアルケミィでは無かった

【………ん?】

黒いボロボロのマントを羽織った、南瓜頭の亡霊―――「ジャック・オ・ランタン」

【ぐ……がっひゃっひゃっひゃっひゃ……思惑通りに行かず、残念だったな】
【どういうつもりだ? 貴様にとってもその娘は敵だった筈だろう】
【あぁその通り……だが今死なれては困るからな……この小娘も、そして貴様にもな】
【は?】
【何れ分かる……がっひゃっひゃっひゃっひゃ……しかし今日は楽しませて貰ったぞ…
 我が後継者でありながら我が天敵となり、
 “這い寄る混沌”を名乗るべき者が“大いなる秩序”を名乗る…
 これ程の矛盾が……これ程の混沌が今までにあったか?……がっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ……】
【訳の分からん事をべらべらと………】

溜息を吐きながら、裂邪は片手で「ジャック・オ・ランタン」の頭を握りしめた
そうしても尚、亡霊の高笑いは止まなかった

【この勝敗は貴様に譲ろう! だが忘れるな! “我”が幾度死のうとも、“我”は幾度も蘇る!
 二度と再び千なる我に出会わぬ事を……この宇宙に祈るが良い!! 我が名は―――――――――】
【滅べ】

ぐしゃっ、と南瓜頭が潰れ、実や黒い炎が脳漿の如く飛び散った
意思を失った胴体は、ぼうっと邪悪な色に燃え上がり、すぐさま灰も残らず燃え尽きた

【今度こそ1人…………さぁ、次は貴様だ―――――――――なっ!?】

裂邪は辺りを見回した
何処にもいなかった
すぐ目の前に倒れていた筈の、アルケミィ・エインシェントの姿が、何処にも

【…油断していたか……ちっ】

捨て台詞を吐く事も、何かに当たるような事もせず、
裂邪はただ黙って、その姿が小さくなったかと思えば、「レイヴァテイン」との融合を解除し、人間の姿に戻った
その表情は、途轍もなく不満そうなものであった

「……そうだ、光陽の手助けを―――」
「お、裂邪! 無事だったか!」

タイミング良く、光陽が彼の元に駆け寄ってきた
既に人間の姿を取っているその様子を見て、特に大きな怪我が見られなかった事に対して一抹の安心を得られたが、
逆に、巨大なる不安に駆られたのだった

「はぁ、はぁ……まぁ、お前なら何とかなるって信じてたけどな」
「…おい、「ジャック・オ・ランタン」の大群はどうした?」
「え?…あぁ、この辺りのは何とか追い払えたみたいだ
 つっても、何かに操られてるみたいだったが――――――」
「分かったもう良い、帰る」
「?? お、おう……」

不機嫌そうにそう言った裂邪は、己の影の中に身を投じた
その後、普通に帰ってしまった所為で後に蓮華とレクイエムから涙の抗議があった事は言うまでも無く



   ...To be Continued
601 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/02(日) 18:39:38.70 ID:iZfzV/Nx0
1ヶ月も過ぎてんじゃねぇか俺の馬鹿野郎!orz
そんな訳で裂邪vsアルケミィvs例のあの邪神の三つ巴の大バトル(失笑)の後編でしたよっと
ハロウィンと言う事で『ジャック・オ・ランタン』のみで行こうと思ったけど、途中で『黒い風』も出しちゃったり
そして何かべらべらと喋っちゃったけどあれは今後のフラグ(ぁ
アルちゃんの刀を折ったのも今後のフラグ(ぁ
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/02(日) 19:10:38.78 ID:+0VK1Scm0
お…つ…?
いつの間に旧支配者の力を使うようになったんだれっきゅん…
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 19:16:16.82 ID:mB0G6/+AO
影の人おつおつ
この先のれっきゅんが楽しみですなぁ。れっきゅんがクトゥグアの力?秩序?
この先楽しみにしてます
604 :夢幻泡影 † 続・守られた明日 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/02(日) 21:36:49.70 ID:iZfzV/Nx0
「っつぅ………!」
「あ、動かないで下さい、目に入っちゃうかも知れませんので」

『マヤの予言』の根源たる「太陽の暦石」を打ち砕いて数分後
既に時計の短針が12の文字を通り過ぎている事からも、この世界が無事だという事実を教えてくれる
裂邪はベッドの上で、ミナワに怪我をした右目の応急処置をして貰っていた
とは言え、消毒液を塗っているだけなのだが

「……本当ニ良カッタノカ?」
「何が?」
「先ニ帰ッテキタ事ダ……昨日ガソモソモ何ノ日ダッタカ、オ前モ忘レタ訳デハナイダロウ?」
「…俺に麻夜を祝ってやる資格なんか無い。ローゼちゃんに漢、正義にも合わせる顔は無い」
「拗ねてんだな」
「まだまだ子供でござんすねぇ」
「黙ってろ…痛っ」
「はい、お終い。………でも、本当に宜しいんですか?」
「お前もか。何度も言うが――――――」
「いえ、そっちじゃなくて……その傷」
「…あぁ、」

そっと、処置の終わった右目の傷に触れる
正義との戦いで出来た、大きな傷
幾ら裂邪の前髪が長いとはいえ、それでも隠れない程に大きかった

「まだ「蝦蟇の油」は残ってますよ? そのまま放っておいたら、残っちゃいますし…」
「いや…残って良いんだ。これは証なんだよ
 俺が“正義”に負けた……馬鹿な真似をした証だ
 それと……今日みたいな悲劇を、二度と繰り返さないように、忘れないように」

裂邪が哀しげに語っていると、一同は呆れつつ、笑いながら溜息を漏らした

「……何だよ?」
「いや? なんか、やっぱいつもの主だな、って」
「うふふ、でもご主人様の気持ち、何となく分かります」
『…さてと、僕は先に休ませて貰うよ』
「「「「「あ、いたのか」」」」」
『失礼だね; 僕は除者かい……まぁそれでも構わないが』
「悪い悪い、今日は有難うな」
『僕は邪魔な獣を斬っただけだ。また血が吸いたくなったら勝手に出てくるよ』

そういって、ナユタは裂邪のベルトのバックルの前に浮遊し、一瞬紫に輝いたかと思えば、
それは四角い紫色のパスに変わった
裂邪はそれを、ベルトの横のホルダーに仕舞った

「…んじゃ、俺もそろそろ」
「そういやぁ、あの大きな蛇のロボットは何だったんでい?」
「あ、そういえばまだ話してませんでしたね;」
「それだけ話して寝るか。あれは確か平行世界の俺と戦った次の日に―――――」
605 :夢幻泡影 † 続・守られた明日 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/02(日) 21:37:28.68 ID:iZfzV/Nx0
その時、唐突に家の電話が鳴り響いた
こんな夜中に……?――――恐らく“関係者”からだと踏んだ裂邪は、
ミナワ達に断りを入れて部屋を出、廊下に置かれた子機を取った

「もしもし」
《裂邪さん? もう、お身体は宜しいの?》
「……ローゼちゃんか……さっきは本当に―――」
《もう終わった事ですの、ワタクシは気にしておりませんわ
 それより……お身体が万全になった時で宜しいので、少しお話がしたいのだけれど》
「話?……今からでも良いが」
《え、ほ、ホントに大丈夫ですの?》
「話を聞く位なら大丈夫だ。場所は?」
《…東区の、壊れた自動販売機のある場所で》
「了解。すぐ行く」
《では、後程お会いしましょう》

おう、と返事をして受話器を置き、彼は自室に戻った
部屋ではミナワが深刻そうな顔で彼を待っていた

「そ、それで…」
「気にするな、ローゼちゃんからだ。話があるんだと
 今から行ってくる。シェイド、頼む」
「おい、マジで休まなくていいのか?」
「大丈夫だ、今日は土曜だし、用事が済んだらすぐに帰って寝る」
「…止めはしません、けど…万一の事があったら、すぐに逃げて下さいね?」
「あぁ、分かった。愛してるよ」

ミナワと口付けを交わした後、ゆらりと影が揺らめいたのを確認し、
裂邪は影の中へと足を踏み入れ――――――

「……待てよ? 何で携帯に連絡してこなかったんだ?」

徐にズボンのポケットに入っていたスマートフォンを手に取った
真っ暗な画面。ボタンを押しても反応が無い
この後、彼が出かけるまでに暫し時間がかかったのだった



   ...To be Continued
606 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/02(日) 21:42:32.10 ID:iZfzV/Nx0
ローゼと戦った→「フォトンベルト」は電気製品を壊す→スマホが……

他の話での大団円はちょいと放置しとくぜ、ごめん寝orz


>>602
>いつの間に旧支配者の力を使うようになったんだれっきゅん…
あっち行ったりこっち行ったりしてごめんね!
ここからようやく順番に話書いてく予定

>>603
>この先のれっきゅんが楽しみですなぁ。れっきゅんがクトゥグアの力?秩序?
まぁ『クトゥグア』の力というよりは、ニャル氏曰く「『クトゥグア』に見えた」だそうで
俺の厨二脳を最大限に発揮した結果がKONOZAMAだ!orz
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 22:31:31.80 ID:mB0G6/+AO
影の人乙でしたー
れっきゅん頑張ったね!
ほっとできたけど、ローゼちゃんの呼び出しがなんとなくコワいな
仕事にしろ告白にしろ。
608 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/02(日) 22:32:45.98 ID:iZfzV/Nx0
>>607
>仕事にしろ告白にしろ。
ドキッ





くそ、酒なんて飲むんじゃなかった……眠い(テメェ
あと1話……せめてあと1話だけでも……
609 :夢幻泡影 † 「組織」の誘い ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/02(日) 23:58:11.42 ID:iZfzV/Nx0
「……ここだな」

真夜中であるにも関わらず、電気系統が一切機能していない自動販売機に手を触れる裂邪
ここは東区のとある場所
青く光る街灯が数本立っている程度で、それ以外は何の変哲もない住宅街だ

「覚えてらっしゃるかしら?……この場所のこと」

かつん、かつん、とヒールの音が閑静な住宅街に高く響く
赤い長髪を揺らしながら、少女は――ローゼは懐かしげにそう問うた

「…かつて、俺はここで都市伝説に襲われた女の子を助けた…つもりだった
 実はその子は都市伝説の契約者で、俺なんかより滅茶苦茶強かった
 まさか、「組織」が誇るNo.0の一人だとは、夢にも思わなかったけど」
「あれから1年……時の流れは早いものですわね」
「1年も経ってるのに何でこの自販機は新しくならないんだろうな」
「本当は「組織」の方で対処するべきなのだけど、
 ワタクシが壊してしまった上にワタクシがこんなところを歩いている事がバレてしまうと、
 大量の始末書を書かされてしまうので……報告してませんの」
「酷ぇ理由だな;」

暫しの談笑を楽しみつつ、最初に切り出したのは裂邪だった

「……単刀直入に聞かせて貰うよ。話と言うのは?」
「こちらも、手短に申し上げますわ……「組織」に協力して頂けませんこと?」

あまりに唐突な勧誘
しかし裂邪は、この誘いに微動だにしなかった

「…つまり、「組織」の指揮下で働いてくれ……ということだな?」
「えぇ」
「そういうシステムがあるのはシェイド達から聞いていた……が、
 勧誘はNo.0が直々にやることなのか?」
「んー、最終的な決定はワタクシのようなNo.0かも知れませんけど、
 お誘いするのは主に下位ナンバーと呼ばれる方達ですわ♪」
「だろうな、ローゼちゃんらしいや」

ヒヒヒ、と軽く笑う裂邪だったが、その笑みはすぐに消え失せた

「…いつかはこういう日が来るだろうと考えていたし
 俺もいつかはR-No.の下で働こうと決めていた」
「そ、それでは――――」
「でも……ごめん。今の俺には、ローゼちゃんの誘いに乗る資格なんてない」
「そんなっ、どうして!?」
「俺は!……ローゼちゃんの純粋な気持ちを踏み躙ったんだ……裏切ったんだよ!!
 そんな奴が……ローゼちゃんの下で働いて良い訳……ないだろ……?」

ずっと、ローゼに背を向けていた裂邪だったが、ローゼには、彼が泣いているのがすぐに分かった
涙を拭いながらも、彼は言葉を紡いだ

「……ごめん、ローゼちゃん……俺、誰かに好かれるなんて、考えた事もなかったから……
 ミナワだけだと思ってた…俺みたいな奴を、心の底から愛してくれる人なんて……
 こんなの、言い訳にもならないのは分かってる……誘ってくれたのは有難う。他に良い契約者がいたら――――」
「裂邪さん!!」

怒号と共に、彼は背中に温もりを感じた
背後からローゼが強く抱きしめていたからだ

「……どうしちゃったんですか…もういいって、さっき電話で申し上げたのに……貴方らしくありませんわ……
 いつもの貴方は、楽天家で、能天気で、目立ちたがりで向こう見ずで、ちょっとえっちで……
 でも……明るくて、優しくて……いつもワタクシを支えてくれる……ワタクシのヒーローで………」
「……」
「この1年間、貴方に支えられてばかりでした……もう、貴方なしじゃやっていけませんの………
 お願いです………「組織」に……R-No.の『Ranger』に入って下さい……
 今回だけ…ワタクシのワガママに付き合って……裂邪さん……!!」

言葉が止まり、彼の背に泣き縋るローゼ
その様は何ゆえか何処となく背徳的なムードが流れているが
裂邪は思い切り涙を拭って、ようやく口を開いた
610 :夢幻泡影 † 「組織」の誘い ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/02(日) 23:59:01.63 ID:iZfzV/Nx0
「……ッバカ、それじゃどう聞いても愛の告白だろ」

振り返り、彼女の涙を人差し指で拭う
ヒヒッと笑って、彼はローゼに目を合わせた

「…分かった。ローゼちゃんを、R-No.を、俺の全身全霊をかけて支えるよ」
「え……そ、それって……」
「R-No.所属の契約者として……俺を雇って下さい、R-No.0」

そっと微笑みかける裂邪
ローゼはその円らな瞳から一層涙を溢れさせ、彼に飛びついた

「裂邪さぁん!!」
「っちょ、おわっ!?」

あまりに突然のことで上手く支えられず、裂邪はそのままローゼに押し倒される形となった
ローゼは泣きじゃくりながら、ぺちぺちと彼の身体を叩いた

「カッコつけてナンバーで呼ばなくても今までみたいに『ローゼちゃん』で宜しいですのよ!
 改まって敬語なんて使わなくても今までみたいに普通に話して下さって宜しいですのよ!!」
「え、そんなので大丈夫なの?」
「ワタクシと貴方の仲ですの、誰も咎めはしませんわ!」
「…じゃ、分かったよ、ローゼちゃん」

ぽふぽふと、裂邪は優しくローゼの頭を撫でた
何回撫でただろうか、ほんの数回というところでぴたりと彼女は泣きやんだ
と思えば、不意に身体を起こして裂邪の顔に己の顔を近づけた
その顔は少し紅潮しており、思わず彼は生唾を飲んだ

「………ど、どうかした、のか?」
「…裂邪さん、一生のお願い、なのだけれど……」

ひそひそと、ローゼは裂邪に耳打ちする
「はぁ!?」と驚いたような甲高い声をあげて裂邪は僅かに上体を起こした

「し、正気か?」
「み、ミナワちゃんには、内緒で……その、貴方以外には、考えられなくて、その……ダメ、ですの?」

うるっとした上目遣いで裂邪を見つめるローゼ
はぁ、と彼は今度は深く溜息を吐いた

「……良いよ。俺で良いのなら」

そう言ってローゼの頭の後ろに手を持っていくと、
彼女を引き寄せて、裂邪は彼女の小さな唇を奪った



   ...To be Continued
611 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/02(日) 23:59:45.17 ID:iZfzV/Nx0
作者だけど言わせて貰おう

裂邪爆ぜろ
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/03(月) 02:19:14.18 ID:SOMfh9oAO
影の人乙ー
これは素敵なれっきゅんもげろ
ああそうだもげろもげろちくしょう!なんて大円団だ
613 :とある人(代理) ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/05(水) 19:10:18.84 ID:ItSMtiho0
【骨折り損のくたびれ儲け】

ある日、不良が集まる地下バーにとある青年が殴り込みに現れた。
青年の名前は折骨 修治、ある事件で"組織"の構成員となった学生だ。

酒瓶やタバコの吸殻が散乱し、荒れた店に聞き慣れない声が響く

「邪魔すんぞ……えーと…集会場ってのは此処か?」

入口でダーツを楽しんでいた男が彼に近付いて睨み付ける。

『ああん…んだぁテメェは…?』
「合ってるみたいだな……んじゃ」

青年は男など気にせず気だるそうにポケットのメモを見て、こう言い放った。

「あぁ……本日を持って骸骨騎隊…何て読むんだ?
分かんねぇが…アンタらグループを壊滅させる!」
『はぁ?…俺達スカルライダーズに殴り込みとはいい度胸だなぁ、オイ?』
「うわっと……へー、そんな読み方すんだな…これ」

目の前の男に突き飛ばされながらも、呑気にしている修治
彼の周りに店内の不良達がぞろぞろと集まってきていた。

『プッ……俺らの名称も知らないで壊滅させるとか』
『フヒャヒャ、そのネタ笑えるぜぇ』
『いつもみたいにバキボキに折ってやろうぜ…ヘヘっ』
『やらせろ、やらせろ!!』
『どっちの意味だよwwウケるわ』
『金づる、金づるぅ…全く儲かるバイトだ』

獲物を取り囲んだ獣のように
鉄パイプを持った不良達は修治との間合いをジリジリと詰めていく。

「好きにしな……最初の行動はサービスしてやるよ」
『ッ…舐めくさりやがって…やっちまえ!!』

逃げもせず挑発してくる相手に、不良達は遠慮なく一撃を叩き込む
揺らめく修治に不良達は不適な笑みを浮かべるが、それは直ぐに曇る事となる。

「ふぅ………倒すチャンスはやった、逃げる暇も与えた…おっと、神様に祈るのに二秒程いるか?」
『コイツ…鈍器で体中をぶん殴られた筈なのに、何で平気で立って…』

痣だらけではあるが、青年は嗚咽どころか息すら荒げず平然としていた。

「それは俺が"骨折した箇所が治癒した場合、以前より強くなる"と契約して…いや、させられてるからだ」

修治が契約者だと知るや否や、不良達に動揺が走る。

『元締めと同じ契約者って奴か!?』
『お、俺達の後ろにはヤクザがいるんだぞ!!』
「阿呆ども…今度、骨折るのはお前らだぜ」
『ビ、ビビんな…数では勝ってんだ!!絶対に殺れ……っかは』

軽快なフットワークと的確な拳が不良を次々と沈めていく。
『がっ………見えなかっ…た』

少しもしないうちにバーの中で立っている者は、彼以外に居なくなっていた。

「仕事……終了」

−−−−−−−−−−−−−−

地下バーから出ると眩しく太陽が光っている。
無機質な着信バイブが修治の上着のポケットを揺らした。

《やぁやぁ…お疲れ、お疲れ》
「おう、ダリいし一旦戻んぞ……不良共の片付けは宜しく」
《いやいや…戻る暇はないよ
"死体洗いのバイト"を悪用してる御人洗組を潰してきてからね☆》
「人使いが荒ぇな……あ、コーラ切れそうだから補給頼むわ」
《お安いご用…任せて、任せて
黒井さんの特製コーク、痛みも吹っ飛ぶ美味しさよ…っと》
「はいはい、いつもの所に置いておいてくれな、じゃっ」

電話を切って交差点の人混みに青年は紛れていく
パキポキと骨が鳴る音だけが微かに聴こえた。

【続かない】
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 22:04:04.70 ID:R/yGu/CAO
代理乙ですー
615 :夢幻泡影 † 続・「組織」の誘い ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/09(日) 11:06:28.70 ID:ymt2c6OT0
【前半:>>609-610



「……ローゼちゃん、大丈夫か?」
「う、うぅ……まだ、こ、腰が………こんなのを毎日してらっしゃるの?」
「毎日やってたら妊娠するわw 安全日くらいしかやってないよ
 ま、まぁ、1日の回数はあれだが」
「…ミナワちゃんを尊敬するべきなのか……同情するべきなのか、分かりませんわね」
「待て、俺よりミナワの方が求めてくるんだからな?」
「俄かに信じがたいですの」

ワイシャツの袖に腕を通しながら、彼女はジト目で彼を見た
くすっ、と小さく笑ったのはどちらが先か、2人は声を揃えて笑った

「…では、後程また御連絡下さる? お迎えに参りますの」
「あぁいや、迎えなら午後で大丈夫だ。連絡できないからな」
「ふえ?」
「ローゼちゃんと戦った時のショックか……スマホが壊れた」
「あらら……それで繋がりませんでしたのね;」
「そゆこと。んじゃ、シェイド――――――あ゙」

ピタッと裂邪の動きが止まった
かと思えば、声とは言えない声を漏らしながら、冷や汗を流してゆっくりとローゼの方に振り向いた

「……ど、どうかなさって?」
「やべ………こんなのシェイドに見られてたらミナワに……」
「あ、御心配無く。ここ、異空間ですの」
「へ?」

裂邪は気を落ち着かせ、集中して気配を読み始めた
確かにシェイドの気配は感じられず、それどころかミナワはおろか、他の都市伝説、その契約者も感じられない

「異空間と言っても、次元が違うだけなのだけれど。ワタクシ達が生きてるのは3次元、ここは11次元ですの」
「……「フォトンベルト」に固有異空間生成能力は無かった筈……進化でもしたってのか?」
「おほほほ、女の子のワガママを舐めないで貰いたいですわ♪」
「そういう事にしておこう……って、何時から移動してたんだ?」
「ワタクシが貴方の姿を見た時ですわ」
「そんな時からこういう展開を考えt」
「っちょ、違っ!こここれは、その、成り行きで、というか……裂邪さんのいじわるぅ!!」

むー!と頬を膨らませるローゼに、ヒヒヒと裂邪は微笑みかけ、

「…それじゃ、また後で」
「ええ。これから、宜しくお願い致しますわ」

その瞬間、ローゼの姿が消え、
代わりに彼の目の前に黒いローブの人影が出現した

「裂邪!大丈夫カ!?」
「あぁ悪い、異空間でちょっと大事な話をな
 もう良いよ、帰ろう」
「話ノ内容ハ?」
「後で皆の前で話そうかと思ったんだが……いっか」

ふぅ、と息を吐き、彼は真っ直ぐにシェイドを見て、口を開いた

「シェイド。俺、「組織」に入ったよ」



   ...To be Continued
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/09(日) 15:53:58.21 ID:c4oboRaDO
投下乙爆発しろです

この事実をどうにかしてミナワに伝える術はないものか
世界を代表するトリックスターをもってしても次元を8つほど跨ぐのは難しいだろうし……
記憶から攻めるために万能の魔法を頼るか、夢から攻めるために菓子折でも携えてやる気を出してもらうか……
いやそれとも直接彼女らを対面させて、れっきゅんを見つめるローゼの瞳に宿る感情をミナワに気づかせるか……
むう、いずれの手も決め手に欠けるな……どうしたものか
617 :夢幻泡影 † R-No.本部にて ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/09(日) 16:38:54.75 ID:BhYeguQ00
2011年10月29日午後――――「組織」本部R-No.研究エリアにて

「『真・黄昏地獄拳』!!」

黄金の鎧を身に纏い、黄金の輝きを放つ拳を「ワイバーン」に叩きこむ裂邪
彼が華麗に着地いた瞬間に、「ワイバーン」は光に変わって消滅した

「お疲れ様です。演習を終了します」

ずらりとパソコンが並んだデスクの一番端に立つ緑の髪の少女――R-No.1六条蓮華がそう言うと、
鎧はどろりと融けて四角い金色のパスとなり、元の裂邪の姿に戻った

「全く……オレの「ワイバーン」が演習如きに利用されるとは思わなかった」
「そう言わないで下さい、それ以外に方法が思いつかなかったので」

不服そうな表情で不満を零すR-No.3栄日天を宥めつつ、彼女はキーボードを叩く
その2人の元に、裂邪は欠伸をしながら歩み寄った

「どうだ? 俺としては使いやすかったと思うが」
「そうですね、初号機と比べても大差はありません。寧ろこちらの方が反応が良いです
 都市伝説の召喚機能はありませんけど……」
「その辺りは、まぁ何とかするさ」

彼等が話しているのは、裂邪の腰に巻かれた機械的なベルト―――『ウルベルト』だった
先日の「太陽の暦石」との戦闘で彼が初号機を破壊してしまった為、新型の調整をしていたのだ

「今度は壊さないで下さいね? 一応、丈夫な構造にはしていますけど」
「気をつけるよ、なるべく」
「信用してます……ところで凄いですねさっきの攻撃 
 20万hng(ハナゲ)は優に超えてますよ」
「想像つかんがどのくらいの威力なんだ?」
「出産と尿管結石が10万hngだ」
「ホッとした、それより下だったらショックだわ」
「ご主人様ぁ〜♪」

むぎゅっ、と裂邪を背中から抱きしめたのはミナワだった
その後に続いて、リムとウィル、シェイドもやってきた

「おう、お前等も終わったか」
「派手にやってきたぜい!」
「バククゥ…オイラお腹ぺこぺこバクよ」
「シカシ面白イ催シヲシテルンダナ、「組織」トイウノハ」
「こんな大掛かりな事をやるのはR-No.くらいですよ
 本来は『Rangers』入隊にあたって、攻撃力・防御力・運動性・都市伝説と契約者の相性を測定し、
 その方に見合った班に所属して頂き、相性の良い担当をつける為にやっていますが…
 今回のように我々上位ナンバーが出てくるのは特例中の特例、というか今まで一度もありませんでした」
「へ? ど、どういうことですか?」
「……あまり口外出来る事ではありませんが、裂邪さんは“都市伝説との融合”という特異な能力を持っています
 「組織」のデータベースをひっくり返しても前例が見当たらない以上、僅かな危険を孕んでいますからね
 …私は大丈夫だと考えていますけど、念の為、です」
「やっぱり厳しいバクねぇ、「組織」は」
「そのくらいしやせんと、人々を守っていけねぇってことでござんしょ?」
「ところで『Rangers』ってのは?」
「R-No.に所属する契約者を総称してそう呼ぶ……とローゼさッ、ゴホン、R-No.0が勝手に決めたんだ
 呼び易いから皆使っているがな」
「へぇ……」
「あ、シェイドさん達の結果が出ましたよ」

蓮華の言葉に反応し、裂邪達はディスプレイに釘づけになった
とは言え、半分は何が書かれていて何を示しているのかさえ分からない

「シェイドさん……都市伝説名「シャドーマン」
 主な能力は“影から影への移動”、“異空間生成能力”、“一時的な都市伝説能力の無力化”、
 “ポルターガイスト現象”、そして“変身”……といった具合ですか
 無形故の高い防御能力と、音速に匹敵する移動能力が武器と言えますね
 個体としては攻撃力は少し高いくらいでしょうか」
「殆ド裂邪ト共ニシカ戦ッテイナイカラナ」
「次は誰だ?」
「ウィルさん……都市伝説名「鬼火」
 様々な「鬼火」の伝承が入り混じってるようですね
 幾つもの火の玉が連なった「狐火」、火の鳥のような姿は「火魂」、物を持ち上げて落下させる「釣瓶落とし」
 それに「ウィル・オ・ウィプス」の拡大解釈で異空間生成能力に近いものもありますね
 熱を使った攻撃が得意で、霊体故に物理攻撃は無力……」
「何だ、結局ウィルってどの「鬼火」でも無かった訳か」
「そういうことになりやすねぇ」
618 :夢幻泡影 † R-No.本部にて ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/09(日) 16:39:56.35 ID:BhYeguQ00
「理夢さん……都市伝説名「獏」
 夢を食べるだけでなく、吐き出して相手に見せる事も可能であり、また相手の夢に入る事も出来る
 そして夢を食べた分だけ力を増していくそうですね
 スピードはシェイドさんに劣らず、攻撃力で言えば裂邪さんの契約都市伝説の中ではトップクラス
 鉄のように固い毛皮は炎や弾丸さえも通しません
 でも小さいと何もできないんですね」
「ほっとけバク!」
「あれ、そういやナユタは?」
「幾ら貴方と契約したからとは言え、こちらも「組織」としての立場がありますので
 殺人鬼を本部に呼び出す訳には行かないと判断しました」
「そっか…じゃあ最後はミナワか、楽しみだな」
「ミナワさん……「シャボン玉」「くるくる回るシャボン玉」の元契約者」
「「「「「へ?」」」」」
「彼女は元人間ですよ」
「えええええええええええええええええええ!?」
「わ、私……都市伝説に飲まれてたんですか……?」
「そもそも年齢の概念が無い都市伝説が幼気を持っている事がおかしいんですよ、我々のような元人間を除いて、ですが
 それにミナワさんの場合、明らかに幼気では説明のつかない行動まで行っている……
 ずっと気になっていましたが、今日ようやく分かりましたよ」
「へ、へぇ……こりゃたまげたバク」
「キャラ変ワッテルゾ」
「主な能力は幼気を絡めて“シャボン玉の操作”、“物体の操作”、“空間の移動”
 それと気になるのが「くるくる回るシャボン玉」の能力から発動するのが殆ど氷系なんですよ」
「『蒼龍』とか『フリーザブル』とかか」
「私の推測では、生前の両親のどちらかが氷や冷気に関係した都市伝説だった…つまり「ネフィリム」の可能性がある、と」
「「ネフィリム」?」
「旧約聖書における、天使と人間との間に生まれた子供の事を指した語だ
 転じて、都市伝説と人間の間に生まれた子孫を指す語として利用されている
 まだ詳しくは分からないが、両親の都市伝説の力を引き継いでいたり、
 都市伝説との結びつきが極端に強く、または極端に弱くなったりするらしい」
「その事を研究していたマッドサイエンティストがかつて「組織」にも何人かいましたが…
 あまりにも度が過ぎて、何者かに粛清されました」

各々感嘆の声をあげていると、蓮華の手元の電話が鳴り響いた

「もしもし」
《あら蓮華ちゃん? 測定は順調かしら?》
「えぇ。もう全ての工程が終わったところです」
《流石に早いですわね。でしたら、裂邪さんをワタクシ達のデスクにご案内して差し上げて下さる?》
「ッ……そ、それって大丈夫なんですか?」
《ワタクシが許可しますの》
「後で何言われても知りませんからね……すぐに向かいます」

がちゃん、と受話器を下ろすと、聞こえていたのか、日天が頭を押さえていた

「…オレも行った方が良さそうだな」
「そうですね…」
「ん、何処か行くのか?」
「裂邪さん、それに皆さん、こちらへ」

蓮華と日天の後ろについて、裂邪達はぞろぞろと歩き始めた
まるで社会科見学か何かのようにして歩いていると、一同はとある扉の前で止まった
『R-No.上位』と書かれた部屋に

「ここが我々の部屋です」
「普通なら『Rangers』どころか、下位ナンバーでも許可された者しか入れない部屋だ
 無礼を振舞うならそれなりの処置を取らせて貰うからな」
「ここまできて暗殺なんて考えてないよ」
「では」

蓮華がドアノブを捻り、扉を開ける
部屋の中には、ローゼ達上位メンバーがずらりと並んで待っていた

「おほほほほ……裂邪さん、ようこそ。ここg」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああぁ!?」

互いに指を差して叫んだのは裂邪ともう一人、胸に晒し布を巻いて黒い上着を羽織った灰色の髪の少女だった

「い、ゆ、ゆゆゆゆ、幽霊ぃ!?」
「ち違う!? この通り足も生えてるし生きてるよ!?」
「えっと、その、あ、あの時は、その……ご、ごめんなさいぃ……」
「あぁいいよ、てか君「組織」だったんだな」
「う、うん、まぁ……R-No.√2、ルート・ライフアイゼン」
「ルート、知り合いか?」
「ちょっと、ね」
「この男には近付くなよ、レジーヌさんを男にしたような奴だからな」
「心外」
「ねぇご主人様、あの子とはどーゆー関係なんですか?」
「馬鹿、そんなんじゃなくて」
619 :夢幻泡影 † R-No.本部にて ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/09(日) 16:40:28.30 ID:BhYeguQ00
「コホン!!」

むすっとした表情でわざとらしく大きな声で咳払いをするローゼ
その一瞬後、すぐに笑顔を作り、裂邪を出迎えた

「ようこそ裂邪さん♪ ここがワタクシ達、R-No.の本部ですわ♪」
「お、おう……もっと豪勢だと思ってたが案外普通なんだな」
「どんな想像してるバクか」
「おー!可愛いもふもふナマモノゲットー☆」

突如としてリムはチューブトップにミニスカというとんでもない格好をした美乳の茶髪少女に誘拐された
後を追ってオレンジツインテールと黒髪ポニーテールが襲撃する

「ラピーナももふもふしたいよー!」
「次はウチやで!」
「バ、バクゥ〜〜〜〜〜!?」
「旦那、リムの旦那が真っ青になってやすぜ?」
「どうみても顔は灰色だが……苦しそうだから優しくやってくれないか、えっと、ロビィちゃんとラピーナちゃんと凛々ちゃん」
「たった1回会っただけなのに何で覚えてるんですかぁ?」
「俺の記憶力が良すぎるんだ、あと海でも会っただろ;」
「はいはい皆さんお静かに!」

ロベルタ、ラピーナ、凛々はローゼに猛抗議したが、観念してリムを裂邪の元に返した
改めてローゼは裂邪の隣に立ち、もう一度咳払いをした

「えーっと、今日から新しく『Rangers』に加入して頂く事になった黄昏裂邪さんですわ♪」
「ん、宜しく」
「因みに担当はワタクシ、R-No.0ローゼ・ラインハルトですの♪」
「そう、担当は―――――――え?」
「「「ちょっと待て!!」」」

突っ込んだのは蓮華・日天・レクイエムの3人だった
ローゼはわざとらしく“何で突っ込まれたのか分からないフェイス”を決め込んだ

「あらぁ、皆さんどうかなさって?」
「どうもこうもありませんよ! No.0が担当だなんて前代未聞過ぎます!」
「そもそもトップが一契約者のサポートなど、他のNo.に知れたら示しがつかん!!」
「2人の言う通りだ! ここは相応しい下位ナンバーを――――――」
「裂邪さんの担当は私がやります!」
「いや!裂邪の担当は私がやる!!」
「あんたら脳味噌に蛆でも湧いてるのか!?」

わいわいがやがやと揉め始めたR-No.達を前にして、
裂邪はどうすれば良いか分からずただただその様子を傍観していた

「……どうする?」
「私ニ訊クナ」
「とりあえず、一度部屋から出た方が……」
「それが賢明だね」

声がした方を見ると、足元に小さな白い毛のネコがちょこちょこと歩いてきた
どうやら都市伝説らしい

「お、こりゃまた可愛らしいネコでい」
(ぬぅ……何かライバルの予感バク)
「お前は?」
「こう見えてもR-No.の一員なんだ。君の担当についてはこれから彼女達と一緒に慎重に話し合うから、
 申し訳ないけどここから先の休憩エリアで待っていてくれないかな?
 一応、無料で飲み放題だよ」
「そうか、有難う」

裂邪はそろりそろりと喧騒の絶えない部屋を抜け出し、
足早に教えられた休憩エリアを目指して歩き始めた



   ...To be Continued
620 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/09(日) 16:49:44.45 ID:BhYeguQ00
あと1話書けば『夢幻泡影』最終章3部作「マヤの予言」パートが終了
第80話からは第3部「6人目」パートをスタートします
そっからは最終回まで一直線でございます

>>616
>この事実をどうにかしてミナワに伝える術はないものか
やめたげてよぅwwwwww
621 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/09(日) 18:55:59.43 ID:BhYeguQ00
書き忘れに気がついた

>>619
>「お、こりゃまた可愛らしいネコでい」
>(ぬぅ……何かライバルの予感バク)
>「お前は?」
>「こう見えてもR-No.の一員なんだ。君の担当についてはこれから彼女達と一緒に慎重に話し合うから、
> 申し訳ないけどここから先の休憩エリアで待っていてくれないかな?
> 一応、無料で飲み放題だよ」
>「そうか、有難う」

     ↓

「お、こりゃまた可愛らしいネコでい」
(ぬぅ……何かライバルの予感バク)
「お前は確か、あのルートちゃんの?」
「こう見えても彼女と同じR-No.の一員なんだ。君の担当についてはこれから彼女達と一緒に慎重に話し合うから、
 申し訳ないけどここから先の休憩エリアで待っていてくれないかな?
 一応、無料で飲み放題だよ」
「そうか、有難う」
622 :夢幻泡影 † 最後のティータイム ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/09(日) 20:40:15.94 ID:BhYeguQ00
「そういやリム」
「バク? 何バクか?」
「すっげぇ昔の話なんだけどさぁ…俺って“都市伝説狩り”とか言われてたらしいけど、何で?」
「何でい、それ?」
「懐かしいですね。……そういえば、あの時「ゴム人間」も言ってましたね」
「『田舎で都市伝説狩りをしている』トイウ都市伝説、ダトカナ」
『へぇ、マスターにも輝かしい過去があったんだね』

ここは「組織」本部のR-No.の区画にある休憩エリア
丸テーブルを囲むようにして、裂邪は6人(?)で雑談に花を咲かせていた

「輝かしいかどうかは別として、そう呼ばれる理由が思い当たらないんだ
 ましてや、規模の小さい○×町にいた俺の話が学校町にまで届くなんて相当だろ?」
「前の町にいた頃は何をしてらっしゃったんですか?」
「…そう言われると、ただ都市伝説を狩ってたとしか言い様が無いな」
「我武者羅ニナ」
「でもそれだけだ、たったそれだけじゃ噂になるような事じゃない
 ナユタみたいに世界中で何人も殺したなら話は別だけどさ」
「そんなもんでござんすかねぇ」
『まさかここで比較に出されるとは思ってなかったよ』
「と言われても………オイラも学校町で仲間にちょこっと聞いただけで詳しくは知らないバクよ
 でも何でまた急にそんな事を聞くバクか?」
「何かふと気になったんだよな……“都市伝説狩り”って言われてたって事は、それだけ多く狩ってたんだから
 あの当時でどれだけ対峙したんだろうな……って」
「お、お待たせ、致しました…」

一同が振り向くと、そこには話し合いを終えてきたらしいローゼが立っていた
心成しか、髪が乱れている
修羅場にでも行ってきたのだろうか?―――――裂邪は心の中で苦笑した

「お疲れさん。で、決まったの?」
「えぇ。厳正なる審査の結果、貴方の担当黒服は―――――」
「僕に決定したよ」

しゅたっ、と丸テーブルの真ん中に降臨したのは1匹の白ネコだった

「お、おめぇさんさっきの」
「自己紹介がまだだったね。僕はR-No.√3。エーヴィヒで構わないよ」
「お前だけは許さないバク! オイラとポジションが被るバク!!」
「諦めろ、バクよりネコの方が需要は上だ」
「主!?」
「俺の名は聞いてたっけ? まぁいいや、俺は黄昏裂邪
 こいつらはシェイド、ミナワ、リム、ウィル、そして―――」
「……ナユタ、いらっしゃったのね?」
『おっと、僕は御邪魔だったかな』
「ローゼちゃん、もうこいつは」
『良いよマスター、僕は暫し休もう』
「…おう」

ナユタが裂邪のベルトのバックルの前に来ると、「ティルヴィング」は見る見る内に紫色のパスに形を変え、
裂邪の手に収まり、彼はそれをベルトのホルダーに収納した

「…ごめんなさい裂邪さん。ワタクシはまだ、彼のした事が……」
「まぁ、仕方ないさ。それで、班はどうするんだ?」
「雑用班よぉ。つまりアタシの部下って訳ねぇ」

ローゼの背後から顔を出したのは灰色の髪の少女――R-No.√2ルート・ライフアイゼン

「ルートちゃん。雑用班か……聞こえは悪いが、要は何でも屋ってところか?」
「『万屋班』等ノ方ガ耳ニ優シイナ」
「ご、ごめんあそばせ…良い言葉が思い浮かばなくて;」
「でもご主人様にはピッタリですね♪」
「まぁな、戦闘・防衛・偵察、基本的に何でもござれだし」
「案外頼もしいじゃない、トップの姉貴ぃ、ボロ雑巾になるまで使っちゃうぅ?」
「こらルートちゃん!」
「ところで他に雑用班の黒服っていないバクか?」
「ドキッ!!」
「え、トップの姉貴、まだ用意してくれてないのぉ!?」
「おいおい、班員がロリとネコだけって…」
「昨夜出来たばかりの班なので…」
「そうか、そりゃ人集めも一苦労―――」

突如ローゼの携帯に着信が入る
手にとってディスプレイを確認したが、眉を顰めたところを見るに心当たりのない者からだろう
恐る恐る、彼女は受話器に耳を当てた

「…も、もしもし?」
《私、メリー。今貴方の後ろにいるの》
623 :夢幻泡影 † 最後のティータイム ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/09(日) 20:40:45.52 ID:BhYeguQ00
“それ”は姿を現した
宣言通り、ローゼの背後に
その“3つの小さな人影”を見た裂邪は、大いに驚いた

「なっ、メリーさん!?それにレイちゃんにキコちゃんも!?」
「あらお久しぶりですわね…キコちゃん?」
((((キコちゃん初耳なんですけど………))))
「やっと会えたわね! 何回電話かけても出ないから一か八かこっちにかけてみたのよ!」
「おにいちゃん久しぶりー♪」
「黄昏、大丈夫? 目、怪我、してる」
「あぁ、ちょっとね。君等も元気そうで何より………あ、」

ぽん、と両手を叩く裂邪

「3人とも、「組織」に入ってみないか?」
「え、そ、「組織」ィ!? 何でまた急に―――」
「実は俺も「組織」に協力する事にしたんだけどさ、ちょいと人出が足りないみたいなんだ
 君等が入ってくれると助かる、なぁローゼちゃん?」
「えぇそれはもう、手間が省けtコホン、貴方達ならとても力になりますわ♪」
「あの、トップの姉貴?」
((((黒い!? 何か黒いぞこの2人!?))))
「うーん…良いわ、入ってあげる
 か、勘違いしないでよね、レイやキコがより安全になるから入ったげるんだから」
「よく分からないけど、私も頑張る〜☆」
「??……キコも、お手伝い、する」
「それじゃあ、イクトミさんに報告しておきますわ」
「あ、この後任務とかある?」
「あぁいえ、明日から改めて本格的に任務について頂きますの
 一応お給料は今日から入りますけれど」
「そんなリアルな事は聞いちゃいねぇんだが;
 まぁいいや、一旦家に戻るわ。それじゃまた明日」
「はい、お願い致しますの♪……あらイクトミさぁん♪ お元気そうで何よりですわぁ♪ それで真に申し訳ないのだけれど―――」
「じゃあなエーヴィヒ、また宜しく」
「君には期待しているよ」
「明日からは容赦しないバク」
「まだ言ってるでござんすか;」
「……裂邪、とか言ったわねぇ?
 良い? テメェは部下、アタシは上司。それとアタシは日天さん一筋。その頭にしっかり叩き込んでおきなさいよぉ?」
「了解。肝に銘じとくよ。有難うなメリーさんレイちゃんキコちゃん」
「また、明日」
「バイバイおにいちゃん!」
「ふ、ふん! 礼なんて要らないんだから!」

それぞれに別れを告げ、裂邪達は立ち上がり歩き始めた

「あ、影が使えないんだっけか。ミナワ、『ジャンパブル』………ミナワ?」
「……何か今日の裂邪、女の子に囲まれてデレデレしてた気がします」
「んなこたねぇよ、俺の嫁はお前一人だ」
「ホントですか?」
「何ならここで腹でも切ろうか」
「…良いです。気持ちだけで許してあげます」
「有難う。帰ったら……――――――……しよっか?」
「ふえっ!? や、やだ、裂邪の馬鹿ぁ///」
「サッサト帰ルゾ!!」



   ...To be Continued
624 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/09(日) 20:45:25.34 ID:BhYeguQ00
ローゼがイクトミさんに電話かける前に蓮華ちゃんがローゼマリーちゃんを申請しちゃったので、
先にローゼマリーちゃんがR-No.√5になり、
その後メリー・レイ・キコが順に√6・√7・√10になる感じ


これで「マヤの予言」編は終了っと
『夢幻泡影』はラストスパートでございます
今年中には必ずや
625 :夢幻泡影 † 初任務 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/09(日) 23:54:08.23 ID:BhYeguQ00
2011年10月30日早朝―――R-No.本部にて

「という訳で裂邪さん。早速任務なのだけれど」
「その前に一つだけ訊かせてくれ」
「ほえ?」
「担当の黒服を設定したのに何で結局ローゼちゃんが直接任務の紹介にあたってるんだ?」
「…その事については私が説明します」

横から口をはさんだのは蓮華だった
その真剣な面持ちから、この任務の重大さが目に見えて分かった

「実は今回の任務は、ナユタによる辻斬り事件と並行して起こったとある事件に関連します」
「とある事件、ですか?」
「5月某日、欧州のとある湖で「シーサーペント」らしき都市伝説の目撃例が後を絶たず、
 R-No.の下位ナンバー約500人による討伐作戦を決行しました
 が……帰ってきたのは、“出現したのは巨大兵器だった”という通信のみ
 現場には500人の黒服の遺体だけが残されていました」
「なっ……!?」
「その後、欧米諸国を中心に巨大兵器による破壊活動が次々と勃発
 こちらもR-No.で対処を試みましたが、退けることが精一杯で、討伐には至っておりません」
「ナユタが学校町に来た頃に、一度沈静致しましたけど……
 9月の下旬、貴方が「平行世界」の貴方と戦った日の夜、それはとうとう学校町に現れましたわ」
「アノ時カ……」
「偶然ワタクシやレクイエムさん、ラピーナちゃんが居合わせたお陰で、大事には至らなかったけど…
 結局、その時も逃がしてしまいましたわ」
「かなり手強そうでござんすねぇ…」
「…で、本題は?」
「主に殺戮行動を行っていたのは、R-No.0が対峙した「ミドガルドシュランゲ」というものだと思われます」
「み、みど……何てったバク?」
「「ミドガルドシュランゲ」…名前は聞いた事があるな。ドイツ軍で計画に終わった兵器だったか?」
「えぇ。それが昨夜、南極付近で目撃されたという情報が来ました
 そこで、貴方にはこの「ミドガルドシュランゲ」及び巨大兵器を格納するアジトのようなものが、
 南極の何処かに建造されていないか……それを調査して頂きたいのです」
「初任が危険なもので申し訳ないけれど……ワタクシは、貴方なら無事にこなせると信じておりますの」
「なるほど……お前等、行けるか?」
「危険ハ承知ノ上ダ」
「ご主人様をお守りするのが私の役目ですから、何処へでも行きます♪」
「仕方ないバクねぇ、オイラも付き合ってやるバクよ」
「燃えてきやしたぜい! 必ず成功させてみせやしょう!!」

ん、と満足そうに裂邪は頷いた
そして、ふぅ、と一息吐き、真っ直ぐな目をローゼに向けた

「……引き受けたぜ、その任務」
「お願い致しますわ」
「これが、学校町に現れた時に撮られた「ミドガルドシュランゲ」の画像です。参考程度に」
「おう、有難う――――――――はぁ!?」
626 :夢幻泡影 † 初任務 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/09(日) 23:54:53.94 ID:BhYeguQ00
プリントされた画像を渡された時、彼は己の目を疑った
そこに映っていたのは、月明かりを反射する曇った鏡のような装甲を持ち、
キャタピラの配備された77のユニットが連なり、その先頭車両には4基のドリルが装備されている
その姿を、裂邪が忘れる訳が無い

「こ、これは……ビオ!?」
「そんな、ビオさんが……どうして!?」
「ッ…それを御存知ですの?」
「主こいつ! 洞窟で見たカッコいいロボットバクよ!」
「ほ、本当ですか!?」
「少し形が違いやすが、間違いありゃせん……しかしこいつぁ……」
「…裂邪、説明シテ貰オウ」
「ビオは…俺の友達だ。あの時も…洞窟で「コッツバラム」にやられそうになった時も、俺を助けに来てくれた
 あいつが無闇に人を殺す筈がない!」
「はぁ……ナユタといい、今回といい……もはや奇跡ですわね」
「行くぞ、皆」

裂邪は紫のパスを取り出すと、それをバックルに翳した
瞬間、パスは紫色の流体に包まれ、膨張し、それは金の柄の剣となる

「ローゼちゃん、俺はビオを殺しはしない
 あいつは常に誰かの命令を受けてるようだった……そいつがビオに人を殺させているに違いない
 俺はあいつを…ビオを助ける」
「裂邪さん、しかしそれは―――」
「蓮華ちゃん」
「R-No.0…」
「…裂邪さん、貴方に何を言おうと止まらないのは知ってるつもりですわ
 貴方の真っ直ぐな心に惚れて「組織」に誘ったんですもの
 でも、これだけは絶対に守って……死ぬ事のありませんように」
「了解…ナユタ、南極だ。行けるな?」
『仰せの儘に』

ふわりと紫の流体が裂邪達を覆ったと思えば、
裂邪達の姿は忽然と、部屋から姿を消した



   ...To be continued
627 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/09(日) 23:56:11.84 ID:BhYeguQ00
何か今日はノリに乗ってた気がする
この調子で書けると良いな
でも今日はもう寝るン
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/10(月) 02:32:14.06 ID:fZM6BdnAO
影の人乙ですー
いよいよお話も大詰めですな
もしかしてビオも事件が片づいたらR-No入りとか?
629 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/10(月) 23:48:31.31 ID:Rw6PMzB70
>>628
>もしかしてビオも事件が片づいたらR-No入りとか?
んふふー、さぁてどうなりますかねー(怪
630 :ひつぢがちょっとだけ見てた  ◆nBXmJajMvU [sage]:2012/12/11(火) 21:52:35.52 ID:zErwzwBl0
 一人の幼女が、公園のベンチで静かに力尽きている
 今時珍しい、黒い着物に赤い帯と言う和風な姿。うー、と、ぐったりしているそこに、一人の少年が駆け寄ってくる

「うー、明日葉、おまたせ!」
「…サンキュ、助かったぜ」

 むくり、と、幼女…明日葉が、顔を上げた。少年、幸太から受け取ったジュースを開けると、一気に飲んでいく

「うー、そんなに慌てたらむせるー」
「なぁに、問題ない」

 けふっ、と、一息ついた様子の明日葉。ふと、幸太を見つめ、首をかしげる

「…お前。ジュース買って戻ってくるまでに、何かあったか?」
「う?」

 明日葉の問に、首をかしげる幸太。うー、と、しばし首を傾げ………

「うー、ひつぢがいた!」
「ひつじ?」
「ひつぢ!」

 そうか、ひつぢか、と、頷く明日葉。楽しげな幸太を前に、あたりを見回す

「……気のせい、だったか……?」
「うー?」
「…いや。何でもない」

 少し、難しい顔をしていた明日葉だったが。その考えを振り払うように、首を振る。まるで猫耳のように見えなくもないリボンが、ゆらりと揺れた

「さぁて。暗くなる前に帰るか」
「うー、一緒に帰ろー!」

 す、と、手を出してきた幸太の手を、明日葉はそっと握る

「…あいつらの「物語」にゃ。関わらない方がいいぜ」
「う?」
「…なんでもねぇよ」

 夕焼けの下、二人は歩く。一人は何も知らない子供のふりをして。もう一人は、「今」は何も知らない子供として
 二人が今後、「彼ら」の「物語」に関わる事は、おそらく、ない



 公園から、少し離れた路地裏で。アーサーは、おどおどびくびくしているギルベルトと共に、風夜を待つ。未だに、ギルベルトは風夜がいないと、不安で仕方ないらしい。しばし待っていると、す、と、風夜が路地裏に姿を現した

「ごめん、遅くなった」
「…構わない、が…………その、抱えているものは、何だ」

 風夜が抱えているそれを見て、指摘するアーサー。風夜は、きょとん、としながら答える

「ひつぢだよ」
「…確かに羊に見えなくもないが。現実の羊とはかけ離れたデフォルメされた姿に見えるのだが」
「大丈夫だよ、「めぇ」って鳴くからひつぢだよ」

 風夜の言葉に答えるように、めぇ、と鳴くひつぢ。そういう問題ではない、と言いたげな表情であったアーサーだが、それ以上のツッコミを諦めたようだ。ギルベルトは、初めて見るひつぢを少し警戒しているのか、おどおどとアーサーの背後に隠れてしまう。ひつぢは、そんなギルベルトの様子など全くお構いなく、コアラの絵がプリントアウトされたお菓子を美味しそうに食べ始める

「……まぁ、いい。目的の相手とは、接触できたのか?」
「あー、できたにはできたけど……目的を達成できた、とは言えないな」

 参ったよ、と、ひつぢを抱き直しながら、風夜は苦笑する

「彼を窓口に、「首塚」に接触できれば、とも思ったけど……やっぱり、無理みたいだ。「首塚」との接触は、今の段階では諦めよう」

 そうか、と、頷くアーサー。風夜が言うのならば、その通りなのだろう。自分は、それに従うだけだ

「それじゃ、アーサー、ギル、帰ろうか」
「…そのひつぢはどうするんだ」
「連れて帰るよ。可愛いし」

 そういう問題ではないだろう、とツッコミを入れたそうなアーサーであったが、ひつぢから害のある印象を感じなかったせいか、ツッコミを放棄したようだ。不安げなギルベルトに「問題なさそうだ」、と、短く答えている
 夕焼けの下、歩く風夜に抱かれて、コアラなお菓子を食べながら、ひつぢはぼんやりと、己を抱き上げている少年と、あの不思議な少年の会話について思い出す

『僕は、お前を知らない。お前のような人間が、存在することすら知らない。そんな事は「ありえない」はずなのに』
『だろうね。だって俺は、本来、生まれてくるはずがなかったのだから』

 その会話の意味をひつぢなりに理解しようとして、しかし、理解には至らず。ひつぢはとりあえずお菓子を食べながら、この少年達が自分と契約するにふさわしい存在かどうかを、検討することにしたのだった


to be ?
631 :ひつぢがちょっとだけ見てた  ◆nBXmJajMvU [sage]:2012/12/11(火) 21:53:25.56 ID:zErwzwBl0
(前回の投下いつだと思っているんだ)
(すまぬ)
632 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/11(火) 21:56:09.51 ID:hJpihvjR0
花子さんとかの人乙ですの
ひつぢ可愛い幸太もげろ(祟られました
そんな目論見があったとは……ふむ
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 22:27:46.02 ID:eE+NUKIAO
花子さんとかの人乙ですー
ひつぢかわゆすなぁ
もうツッコむこともしないアーサーもえすなぁ
634 :ダンタリアンの契約者は無茶振りがお好きなようです ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/12/12(水) 05:06:32.97 ID:l0PdcBIAO
「私は綺麗よ!・・・た、たぶん」
 なんだこの口裂け女は。ふつーは「私、綺麗?」だろ?
 そんなことを心の中で呟きつつ、俺は戦闘態勢を取る。
「奇遇だな」
 俺の契約都市伝説も「口裂け女」
「ふふっ…私、綺麗?」
 こちらの口裂け女は正統派だ。一見没個性的な問いかけながら、その口調にも声色にも、自信が満ちあふれている。
「え!き、綺麗だと思います、たぶん・・・」
 早くも向こうの口裂け女は腰が引けている。敵ではないな。
「行けっ、口裂け女!」
「きゃああああ!い、荊ちゃん!」
「頑張って!口裂けさん!」
 向こうでは黒い服にワカメみたいなウェーブヘアの男が一生懸命口裂け女を励ましている。
「[ピーーー]っ!」
「い、いやああああっ!」

 ざしゅ

「な・・・」
「あ・・・あ・・・ああ」

 なんと、鎌が深々と突き刺さったのは、俺の口裂け女の方だった
 口裂け女は地面に倒れる暇すらなく光となって消えていった。

「こ・・・これで勝ったと思うなよ!」
 俺は言い捨てて身を翻し、夜の帳に一時の安息を求めた。

―そう。これが「俺」と「奴」との長い戦いの始まりだった―

「没」
 竹下荊の目の前に腰掛けた編集長はその一言で原稿を突っ返した。
「もっとこうさあ、新鮮なの頼みますよ。先が読めなくてハラハラドキドキするような」
「善処します」

「どうでした、荊ちゃん?」
 雑誌社のビルを出た僕を出迎えてくれたのは、口裂けさんでした。
「やっぱり駄目でしたねえ。やはり現実は小説より奇なり、とはいかないようです」
「また次がありますよ、荊ちゃん」
 そう言うと口裂けさんは鎌を手にして電柱の影に佇むマスク姿の女性に言いました。
「わ、私はキレイよ!・・・たぶん」

 さて、次はどのようなお話が書けますやら。



〈了〉
635 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/12(水) 13:40:36.75 ID:7bYSlWxk0
鳥居を探すの人乙ですの
頑張れ荊ちゃん、神作を作り上げるんだ!
そして口裂けさん可愛い(
636 :単発:流星群の夜に [sage saga]:2012/12/13(木) 23:05:06.31 ID:BkLOPa670
夜空を斬り裂く一筋の閃光
今日はふたご座流星群
1年間に『流星群』は意外にも幾つもあるけど
この流星群はしし座流星群等と同じで、新月の時に起こる事が多いから流れ星が比較的見易い
つまり願い事を言うなら今日がチャンスなのだ
「流れ星が消える前に願い事を言うと願いが叶う」の契約者である僕なら造作も無い事だ
降り注ぐ流星に届け、僕の精一杯の願い

「正社員だから時給制やめてくれ」

「せめて有給20日は用意してくれ」

「寮の朝飯安くしてくれ」

「飲み会前にばっくれんじゃねぇ」

「俺のいない時に同窓会すんな」

「よりにもよって酒用意すんな」

「建前で良いから労いメール寄越せ」

「酒無しで良いから二次会やろうぜ」

「レアならレアらしく高く売れろ」

「無駄に入手しやすいノーマル高くすんな」

「そんなカードに限って持ってない状況無くせ」

「行方不明の三幻魔連れてこい」

「寮の銭湯時間制廃止しろ」

「俺の優雅な真夜中風呂を返せ」

「俺の広い風呂場を返せ」

「俺の口笛の演奏場を返せ」

「自販機の酒の種類増やせ」

「ビール半分くらいチューハイに変えろ」

「ぽつんと寂しいハイボールを助けろ」

「いい加減日本酒の自販機直せ」

「ロリっ子と婚約できるようにしろ」

「てか妹と結婚できる制度を認めろ」

「すぐに奇形とかほざく馬鹿を滅ぼせ」

「ついでに警察とか言う犯罪者集団も滅ぼせ」

「まともな政治家召喚してくれ」

「俺はまともじゃないから召喚しないで」

「『文句言うなら行け!』って言う奴滅ぼせ」

「ついでに俺の妹虐めたクソ教師も滅ぼせ」

「新参作者20人連れてこい」

「古参作者も全員連れてこい」

「それで皆でオフ会とか1回やってみたい」

「日本の景気が早く良くなれ」

ぜぇ、ぜぇ……これだけ言ったらどれか一つは叶うかな……
まだ降ってるみたいだし、もうちょっと頑張るか

「妹と両想いになりたい」

「もうちょい面白い話書きたい」

   ...end
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/13(木) 23:10:03.65 ID:BkLOPa670
願いよ、叶え
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 23:53:34.56 ID:Dyp99XY+0
どこの誰が書いたのか分かりませんが、乙です
この契約者は粗暴だけどとても優しい心の持ち主なのですね
どうかそのままの契約者さんで居てほしいものです

待てよ、確かに何か引っかかるぞ…?
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 23:53:48.71 ID:Ig3g3z3AO
>>636
投下乙ですー
まるで某影の人のような妹率の高さですねー?(によによ
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/14(金) 00:21:52.43 ID:1gyiplRm0
やっべ、幾つか書き忘れあったわ……いいや、wikiには明日にでも完全版上げよう


「さっさとHMMジェノブレ出せ」(※願い事はフィクションです。フィクションです
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 00:04:51.84 ID:JXuPlT4I0
先生、うぃんどうずはちは使いづらいです… \(^◍^)/
642 :単発ネタ [sage]:2012/12/22(土) 10:44:54.32 ID:I9LxbzmSO
「ん……」
いけない、少し寝ていた。
腕時計を見ると待ち望んだ時、21日まで後数分。時間はあまりたっていない。
ここ数日、ワクワクし過ぎてあまり寝れなかったのが原因だろう。
寒さしのぎの新聞をどけて立ち上がる。
見回せば夜の闇が広がる。少し歩けば、繁華街の明かりがあるが、この路地裏までは届かない。
「うわっ!」
「え……?」
驚いたような声に、驚いて、振り向けば、いつからそこにいたのか黒い服の男が立っていた。
しばらく男と見つめあう。男は何故か気まずそうだ。
ピピピピピピピピピ
突然、男の腕時計が音をたてる。
「あ、日付が変わったようですね」
そう言って、男は音を止める。
同時に、男の携帯電話がなる。
「もしもし、はい、はい。ターゲットC異常なし。任務終了ですね。はい?ターゲットFに救援。はい、了解です」
そう言って黒い服の男は電話を……黒い服、黒服、
「……組織!?」
眠かった頭が急速に働き始める。
驚く。恐れる。けれど、落ち着いて。
さっき、黒服は日付が変わったと言っていた。
ならば、今日こそ、今こそ、私の能力を使う時!
「………………?」
あれ?
「……あの」
「はい?」
黒服にたずねる。
「今日、何日ですか?」
「さっき、22日になりましたよ」
……は?
「いやぁ、本当は昼くらいまで寝てて貰うつもりだったんですけど、まだ21日なのに起きるんで焦りましたよ。
 やっぱりザントマンじゃ無理だったのかと思って」
え……え?

私は「2012年12月21日人類滅亡説」の契約者。
世界を滅ぼす程の力は、21日より前は、まだ世界を滅ぼしてはいけないので、能力は使えない。
21日より後は、世界は滅びているはずで、滅ぼす世界がないのだから能力は使えない。
2012年12月21日限定で最強になれる。

なのに、それなのに、
「22日……」
「あ、私は他の黒服を手伝いにいかないといけないので、それでは」
何年も前から、待ちのぞんでいたのに……。
こんな一瞬で……いや、一日たってるんだけど……寝てる間に、
「あぁ……」
………………もう嫌だ。

643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 11:03:52.66 ID:MR46U5C10
契約者カワイソスwwwwwwwwwwww
しかしすげぇ攻略法だwww
単発の人乙ですの〜
644 :単発ネタ:トミノの地獄 [sage]:2012/12/23(日) 02:19:41.09 ID:tgPCoOVq0
「姉は血を吐く、妹は火吐く、可愛いトミノは宝玉を吐く」
「ひとり地獄に落ちゆくトミノ、地獄くらやみ花も無き……」

 路地裏の暗がりの中、今にも掻き消えそうなか細い声が聞こえてくる。
高めで弱弱しく、力の無い声。おそらくは子供、それも少女のものだろう。
声の主を辿ってみれば、まさにその通り。華奢な女の子がそこに居た。

 灰色の髪は、長い事整えられていないのだろう、無造作に伸びている。
それもそのはず――彼女が来ているのは、いわゆる病院服と呼ばれるもの。
つまり彼女は、病気を患って病院に閉じ込められているという事だろう。
……運動不足が目に見える細い手足を見るに、入院期間は相当長いようだ。

 ぺたん。室内用サンダルの気の抜ける音を鳴らして、少女は振り返る。
大丈夫。誰もいない。ここにいる私を見つけられる人は、きっといない。
そう確信すると再び前方を向き、すうっと大きく息を一つ吸う。
――眼前にある、急ごしらえの手作り祭壇と魔法陣を眺めながら。

「鞭で叩くはトミノの姉か、鞭の朱総が気にかかる」
「叩けや叩きやれ叩かずとても、無間地獄はひとつみち」
「暗い地獄へ案内をたのむ、金の羊に、鶯に」
「皮の嚢にやいくらほど入れよ、無間地獄の旅支度……」

 少女が読み上げるのは、暗い雰囲気ながらも情感を呼び起こす詩だ。
多少古い言葉が使われているものの、大筋ではあるが意味は伝わる。
これは、地獄を旅するトミノという少年の歩む道筋を描いた話なのだ。
『トミノの地獄』。そう題された作品だったはずだ。

 暗く冷たい、重々しい空気の中で、少女は細い喉を震わせて詩を詠う。
645 :単発ネタ:トミノの地獄 [sage]:2012/12/23(日) 02:20:21.03 ID:tgPCoOVq0
「春が来て候林に谿に、暗い地獄谷七曲り」
「籠にや鶯、車にや羊、可愛いトミノの眼にや涙」
「啼けよ、鶯、林の雨に……妹恋しと声かぎり」
「啼けば反響が地獄にひび……ッ!? ごほっ、げほっ!!」

 と。突然少女は口許を両手で押さえ、激しく咳き込み始める。
――病気の発作だろうか。苦しげに地面に膝を着き、はぁはぁと荒く息をつく。
手を見ると、どす黒い液体に塗れている。咳とともに血を吐いていたようだ。

 いや。よく見ると、この場所……路地裏自体が、変容し始めていた。
ただでさえ冷たい空気は、まるで身を切るように。ざわざわと、漆黒の空間が鳴く。
いつの間にかこの場所は、明らかに普通の人間が居て良い場所では無くなっていた。

 ……こんな話を聞いた事はあるだろうか。
「『トミノの地獄』を音読すると、悪い事が降りかかる」――という、都市伝説。
当然、ただの悪い噂のはず。詩を読んだだけで不運になるなど、ありえない。
少女自身も、そう思っていた。実際に、読んだ人間の末路を見てしまうまでは。

 病院でこれを読んだという女性は、数日後に容態が急転して亡くなってしまった。
……当然、誰一人としてこの歌のせいだと信じていた人間はいなかった。
だが、笑ってこれを読んだ少年が、手術のミスで命を落とした事で状況は一変する。
なぜなら――手術を施した医者もまた、『トミノの地獄』を読んでいたのだから。

 ネットで調べてみると、似たような案件はそこかしこに転がっているらしかった。
『トミノの地獄』を読んで凶事に見舞われた人間や、その周囲の人間によるオカルト話。
きっと自分も周囲で不運な出来事が起きなければ、信じてはいなかっただろう。

 だが――これらは全て、真実なのだ。この詩は、確かに不幸を呼ぶ物なのだ。
今まで試した人々が、そして今彼女を包む異空間が、それをしっかりと証明していた。

 体が重くて、思ったように動かす事ができない。先程の発作で体力を削られてしまった。
まだ全て読み終えてすらいないのに。これがこの詩に込められた呪いなのだろうか。
でも、諦めるわけにはいかない。私は『トミノの地獄』を、読み上げなければならない。
力の入らない足に喝を入れ、ふらふらと立ちあがろうとした、その時。
646 :単発ネタ:トミノの地獄 [sage]:2012/12/23(日) 02:20:48.94 ID:tgPCoOVq0
「――!!」

「え……っ」

 淀んだ空間を切り裂くように、少年の声が響く。
この声は良く知っている。毎日聞いている物。少女の兄の物だった。
足音がする。近付いてきている。少女はゆっくりと振り返った。
……暗闇の向こうには、見慣れた顔の男の子が、息を切らして立っていた。

「お前、心配したんだぞ! どうして病院を抜け出したんだ!」

「……おに……ちゃん、だめ……ちかづか、ないで」

「ッ、うるせえ! 今そっちに行くから待ってろ!」

 兄は、暗い靄の中にいる少女へと駆け寄ろうとする。しかし。

「がッ!? な、なんだこれ……!」

 まるで質量のある壁のように、靄は彼を拒み、通さなかった。
それは『結界』なのだが、知識の無い兄妹がそれを知るはずもなく。
しかし――壁があるという事は、少女にとっては好都合だった。

「お前……なんだこれ! 何やってんだよお前! おいっ!!」

「……おにい、ちゃん……わたし……っ」

「クソォッ!! どうすりゃ向こうに行けんだ……ッ」

 歪んだ空間をガンガンと蹴りながら、兄は焦燥の声を上げる。
当然だ。妹が病院をこんな時間に抜け出した挙句、妙な場所に閉じ込められていると知ったら。
だが、当事者である妹は、何故か悲しげな表情で彼の事を眺めるばかりで。

「どうしたんだよ! お前も何かこれを無くす方法を探せよ!!」

「……いやだ……」

「な、っ!? お前それはどういう――」

 彼女が口にしたのは、『外へ出たくない』という拒絶の言葉だった。
驚きに目を見開いた彼から視線を外すと、少女は震える足を律して立ち上がる。
647 :単発ネタ:トミノの地獄 [sage]:2012/12/23(日) 02:21:35.14 ID:tgPCoOVq0
「……トミノの、地獄……おにいちゃんも、知ってる……よね」

「お、お前まさか、アレを読んだのか!? 馬鹿、あれは本物の――」

「あれ、ね……本当の意味は……さ……」

 彼の言葉を制するように、弱弱しい声で少女は続ける。

「……トミノ、は、戦争に行く人で……姉と妹は、それを送る人……」

「……」

「お兄ちゃん……こんど、野球の大事な試合……なんでしょ……?」

「……ああ」

「だから、ね……私がこの歌を読んで、勝てるように、って、送り出して……あげる、の」

「ふざけんな!! お前、死ぬかもしれないんだぞ――!!」

「……いいの。私、もう長くない、って……お兄ちゃんも、知ってるでしょ?」

「……ッ」

 それは確かだった。医者からも、もう余命は幾ばくも無いと伝えられていた。
妹には伝えてはいなかったが……まさか、自分で感じとっていたとは。

「私は……おにいちゃんに、いっぱいいっぱい勇気を貰ったから……さ」

「……」

「……さいごのさいごに、ほんのちょっとだけ……恩返し……っ、げほっ」

「やめろ……ッ、……頼むから……やめてくれ……!!」

「……ごめんね、バカな、妹で……」

 ――死を目の前にした人間は、たとえ幼くともここまで達観してしまうのか。
ゆっくり時間をかけて、彼女は祭壇へと向き直る。もう、振り返りはしないだろう。
兄はどん、と結界を殴り、そのまま体重を預け、ずるずると地面に座り込む。
とてもではないが、これから命を捨てに行く妹の事なんて、見ていられなかったから。
648 :単発ネタ:トミノの地獄 [sage]:2012/12/23(日) 02:22:13.74 ID:tgPCoOVq0
「……地獄ござらばもて来てたもれ、針の御山の……留針を……」

 最後の一節。残る力を振り絞り、少女は口を開いた。

「赤い留針……だてにはささぬ……、可愛いトミノの……めじるし、に」

 『トミノの地獄』。その全てが、今ここに読み上げられた。
――その刹那。轟という強烈な音と共に、手製の祭壇が内から生まれた闇に飲まれていく。
衝撃は周囲の小石を吹き飛ばし、壁を削り。結界の向こうの少年をも倒した。

 闇は楕円の形をなして蠢く。まるでそれは地獄への門のようだった。
そして――その中から低い声が聞こえる。腹の底に響き渡るような、荘厳な声。

「――汝、呪われし詩の全てを詠む者、黄泉路との契約を望むか」

 少女は臆することなく、闇の中を見つめながら返す。

「うん。……それで、お兄ちゃんを助けられるなら……」

「汝の意志、しかと見たり。此処に契約を結ばん。では――」

 その瞬間。闇の中から、一本の腕が伸びてくる。
これを掴めば、全てが終わり――少女の人としての一生も、幕を閉じる。
一歩、一歩、闇へ近づいていき。震える手を、ゆっくりと上げた。
そして。

「僕と一緒に、おいで」

 今までとは打って変わって、若々しい声がそう呼びかけた。
……少女には、見えていた。その向こうで微笑む、少年の姿が。
ぎゅ、と掴まれた手。温かい。人のそれと、何も変わらない。
不思議と体が軽い。もう、何もかもを失ってしまったのだろうか。

 その刹那、体が引っ張られていくのを感じた。……旅立ちの時間だ。
最後に後ろを振り返る。兄は涙を流しながら、こちらを見ている。
――ずっと苦しくて笑えなかったから。最後くらいは、最高の笑顔で。

「ありがとう」

「――ッ!!」

そうして、少女の体と心とは、闇の中へと深く混ざり込んで行った。


 『都市伝説との契約』。『トミノの地獄』。
それらはこの世界では有り得ているとはいえ――関係ない人間にとっては眉唾物だ。

 だが、確かな事は、もう少女は戻ってはこないという事と。
あの日闇に消えていった妹の兄を思う気持ちは、何よりも確かな物だという事。
全てが絵空事のような一夜の中で、それだけははっきりとしていた。

 ……後日、とあるチームが圧倒的な強さで甲子園出場を決めた。
4番に座ったエースが投打に渡って今までにない程の活躍を見せての勝利だったという。
彼のユニフォームのポケットには、一つの詩を書いたメモが入っていたらしい――。
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 02:22:44.92 ID:tgPCoOVq0
なんだか昔懐かしいスレがあったので暇つぶしにバーッと書いてみました。おしまい。
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 03:18:26.01 ID:nAbBtMia0
windows8はやっぱり使いづらい
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 03:26:47.78 ID:nAbBtMia0
性の6時間どころじゃないな
性の72時間だこれ
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/23(日) 10:03:30.53 ID:oUmG2XIg0
単発の人乙ですの
泣いた
朝から泣いた
妹ちゃん健気……こういうのに弱いの

>>649
>なんだか昔懐かしいスレがあったので暇つぶしにバーッと書いてみました。おしまい。
貴方は一体……!?
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 16:27:10.62 ID:3xj6XY3AO
>>642
単発の人乙ですー
契約者は気の毒だが、そんな迷惑な能力をどう使う気でいたんだww

>>644-648
妹ちゃん健気で涙。
ところで懐かしいスレって…貴方は何者だ…
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 18:56:29.97 ID:LeQJJOxgo
なんて泣かせる話だ
ドラッガーよりも危険確実なトミノの地獄!
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 19:05:00.31 ID:nAbBtMia0
軽く酔っていたとはいえ単発を二つも見落とすとは
こいつぁうっかりだ

>>642
黒服のお陰で世界が救われるとは
しかしつまりこの世界には22日説の契約者も存在したという事なのか…

>>644-648
契約して飲まれたのか、契約してそういう風になったのか
どっちにも取れるあいまいな表現がたまらなくいい…
作風的に思い当たる人が2人いるがどっちも古い人なのでちょっとありえないんだが
これは一体…
656 :夢幻泡影 † 南極にて  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/23(日) 19:15:24.19 ID:3rACpcG10
「ウィル、目的の場所んはつきそうか?」
「かなり近付いてきやした、もうちょっとの辛抱でい」

緑に燃える火の玉を先頭に、ぞろぞろと列を成す4つの影
裂邪一行はローゼからの指令を受け、極寒の地――南極へと足を運んでいた
運が良い事に今は晴れており、吹雪に見舞われるようなことはなかったが、
それでもこの白しか存在しないところでは一度でも道を間違おうものなら後で大変な目に遭う
そこで、道案内を誰よりも得意とし、自ら光を放つ事が出来るウィルを先頭に置いたのだった

「……トコロデ裂邪、聞イテモ良イカ?」
「ん、どうした?」
「オ前寒クナイノカ?」

シェイドがそう問うのも無理はない
ミナワでさえも少し軽めであるが、白いコートに白い耳あて、水色のマフラーに青い手袋と、完全防備と言っていいのに対し、
裂邪は長袖のTシャツの上に黒の上着を羽織った程度で、軽装も良い所である

「寒いってか?」
「主、ここがどこか理解してるバクか? 南極バクよ!?
 気温が常にマイナス何度っていう場所バクよ!?」
「私は何とか大丈夫です……蓮華さんの言う事が本当なら、私には元々耐性があるんだと思いますけど」
「ソノ格好ナラ普通凍死シテルゾ」

暫く考え込むように黙り込む裂邪
何分経っただろうか、ようやく出た言葉が

「寒ッ!?」
「「「「今更!?」」」」
「いや死ぬほど寒くは無いが俺は大丈夫だ
 理由は分からんが寒さを感じないみたい」
「オ前ソレデモ人間カ?」
「ヒヒッ、もうそろそろやばいかもな―――」
「旦那!つきやしたぜ!」

目の前が白から青に塗り替えられてゆく
広がる海に浮かぶのは、僅かな流氷と巨大な氷山
その氷山がどうやら怪しかった

「…あれだな」
「気ヲ付ケロ裂邪、恐ラク――――」
「“都市伝説(そのもの)”だな……一応侵入してみるか」

その時だった
幾つもの連続した銃撃音と共に足元の積雪が弾け飛んだ
思わず雪除けに顔を伏せた裂邪達が腕を退けると、上空に2つの機影が見えた
1つはまるでロケットのような形をしており、くるくると辺りを旋回していた
もう1つは綺麗な二等辺三角形で、その場にホバリングして留まっていた

「戦闘機……バクか?」
「ご主人様、この気配って…!」
「あぁ…ビオにそっくりだ」
《β04-Sanger-Stealth-MachineGun-Sky-1936,目標確認》
《β05-AvengerII-Stealth-MachineGun-Sky-1991,目標確認》
《《攻撃開始》》
「ミナワ!!」

再び放たれる機関銃の弾丸を、無数のシャボン玉がぽよん、ぽよんと弾き返す

「今「ゼンガー」と「アヴェンジャーU」って言ったよな!?」
「確かに言ってやしたが、何か御存知で!?」
「どっちも計画は存在したが、開発されないままに終わった兵器だ…
 「ミドガルドシュランゲ」と同じな」
「何だか展開が読めてきたバクよ…」
「とにかくさっさとあの蚊蜻蛉を叩き落として――――――」

どっと強い風が吹いたかと思えば、
彼等の周囲に浮いていたシャボン玉が、突風に巻き込まれて吹き飛ばされてしまった
それはどうやら自然の風ではなく、意図的に起こされたもの

「何だ!?」
《β06-Monster-TornadoCannon-NapalmBallet-Land-1943,援護行動開始》

今度は地上、キュラキュラと甲高い音を響かせ、巨大な重戦車が姿を現す
地形に合わせたのか、その装甲は雪のように真っ白にペイントされていた

「「モンスター」…こいつも計画のみに終わった兵器だ…
 しかも今のはドイツで計画されていた「竜巻砲」!」
「今のところ気配はこれだけ…どうしますか!?」
657 :夢幻泡影 † 南極にて  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/23(日) 19:16:31.11 ID:3rACpcG10
「ミナワは理夢に乗って「ゼンガー」を墜とせ!」
「OKィ!」
「はい、ご主人様!」
「「アヴェンジャーU」はウィルと……行け、ナユタ!」

紫のパスをバックルに翳してひょいと投げると、
それは紫色のもやを纏った剣となる

『仰せの儘に』
「がってんでい!」
「「モンスター」は俺がやる…行くぞシェイド!」
「了解シタ」

さらに金色のパスを翳すと、それは裂邪の手の中で黄金の鎌に変わる
そしてシェイドが黒い鎌に変化すると、裂邪はそれを携えて重戦車へ向けて走り出した
重戦車は砲口を彼に向け、2、3の砲弾を発射した
軽く跳び上がり、黒と金2本の鎌を持ってくるりと身体を宙で捻りながら全ての砲弾をスパッと両断する
と、斬られた弾はぼう!と勢い良く燃え上がった

「ナパーム弾か、厄介な……だが当たらなきゃ問題ない!」

突如裂邪は重戦車の真横に回るように進路を変え、尚も距離を詰める
「モンスター」と呼ばれるその戦車は、重量1,500t、全長42m、全幅18m、全高7m、
その大砲も80cmと何もかもが巨大であった
しかしそれ故に砲を旋回できず、新たに狙いを定めようにも動きが鈍重過ぎて即座に対応できない

「そぅら取ったぞ!」

早くも接近し、「モンスター」に上った裂邪
真上に来られては流石に何もしようが無い
ここで「モンスター」は砲身を上に向けた
そもそも「竜巻砲」は対空兵器としてドイツで構想されたものである
上空で戦う「ゼンガー」や「アヴェンジャーU」を援護しようという算段だろう

「だから真っ先に潰しに来たんだよ」

スパン!スパン!スパン!
小気味の良い音が鳴り、砲身は雪に落ちて装甲は無惨にも斬り裂かれる
その後も裂邪は二振りの鎌で斬り続け、とうとう重戦車はうんともすんとも言わなくなった
代わりに火花が散り始めた為、早々に裂邪が飛び降りると、その亡骸は黒煙を上げて爆発した





《装填完了……発射》

「ゼンガー」から次々に撃たれる弾丸を、理夢はひょいひょいと避けてゆく
その上では、ミナワが小さなシャボン玉を作り出していた
既に空中では、雲と呼んでいい程に大量のシャボン玉が浮かんでいた

「これだけあれば大丈夫です!」
「よしっ、反撃すんぞ!」

急ブレーキをかけ、追ってきていた「ゼンガー」に迎え撃とうとする理夢
だがその瞬間、「ゼンガー」がパッと消えてしまい、何処にも見当たらなくなった

「なっ……消えた!?」
「多分「ステルス技術」……SFなんかでよく出る見えなくなる技術ですね……でも!」

ぼん!とシャボン玉が破裂したかと思えば、
消えた筈の「ゼンガー」がその機体から白煙を漏らしながら飛んでいた

《機体損傷……30%……》
「えへへ、見えなくてもシャボン玉の動きで分かるんですよ♪」
「なるほど、シャボン玉の使い方にかけては天才だ、な!」

瞬時に「ゼンガー」に接近し、長い鼻を叩きつける理夢
「ゼンガー」はコントロールを失い、そのまま地上目掛けて急降下した

「『ハイストレーネ』!!」

シャボン玉がぱちん!ぱちん!と弾け始め、
出来た欠片が凍り、ガラスの破片のようになって落下する「ゼンガー」に追い打ちをかける
既にボロボロになった「ゼンガー」は地上に激突、激しく爆発した

「あーぁ勿体ねぇ、あの装甲美味そうだったのに」
「ダメですよ、理夢さんは悪い夢だけ食べてれば良いんです」
「……ミナワ、テメェ段々主に似てきたぞ?」
658 :夢幻泡影 † 南極にて  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/23(日) 19:17:05.64 ID:3rACpcG10





「『プロミネンス』!!」

火の龍がうねりながら「アヴェンジャーU」に襲い掛かる
が、「アヴェンジャーU」はそれを躱したかと思えば、その姿がパッと消える

「ちっ、また消えちまいやしたぜ……」
『……ふむ、見えないと幾ら追っても無駄だね』

見えない場所から機関銃による銃撃が襲う
だがウィルは霊体であるが故、糠に釘も良い所で、
ナユタは「ヴァルプルギスの夜」で防御している為、一切の攻撃が効かない
とは言え、今は互いに攻撃が封じられているようなもの
先に対策を練られた方が勝者である
今回勝利の女神が微笑んだのは―――

『む、ウィル君と言ったか? 確か分身して辺りに散らばれた筈だね』
「あぁ出来やすぜ!」

あっと言う間にウィルは増殖し、辺りには赤い火の玉が散乱した

「「「「これでどうするんでい?」」」」
『そのまま強く輝きたまえ』

「がってん!」と答え、ウィルの群れはナユタの要望通り強い輝きを放った
そして、ナユタはその刀身に光を宿した

『さぁ、照時間(ショウタイム)だ』

あらゆる光を跳ね返し、己の攻撃とする「エルクレスの塔」
それは幾つもの光源からの光を反射し、幾つもの方向に光条が伸びていった
無差別な光の槍は姿を晦ましていた「アヴェンジャーU」に突き刺さった

「「「「お、お出でなすった!!」」」」
『今だ!』

全てのウィルが集結し、ナユタを纏うと、
「ティルヴィング」を嘴に見立てて火の鳥の形となった

「『天照』!!」

火の鳥によっていとも容易く撃ち抜かれた「アヴェンジャーU」は、
空中で轟音と共に無惨にも爆散した





「終わったみたいだな」

理夢とミナワ、ウィルとナユタの無事を確認すると、
裂邪はもう一度、巨大な氷山を見据えた

「先程ノ兵器ハ警告ダト受ケ取ッテ良イダロウ……“近寄るな”、ト」
「あぁ。つってもここで下がる訳にゃ行かないんでね
 絶対に……ビオを助けだしてみせる」

彼の意志は固く、再び氷山へと歩き始める
とある野望の渦巻く、敵の懐へ



   ...To be Continued
659 :シャ  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/23(日) 19:17:45.29 ID:3rACpcG10
腹減った、スシロー行ってくる
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 23:11:40.22 ID:nAbBtMia0
>>656-658
(多分次か次の次あたりれっきゅんがヤバくなる…はず…)
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 23:25:41.63 ID:3xj6XY3AO
シャドーマンの人乙ですー
ミナワたんのコート姿見たいなー可愛いだろーなー
戦闘描写のスピーディさに感嘆しましたの
662 :シャ  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/23(日) 23:38:22.68 ID:8h4Up7d/0
>>660
れっきゅんヤバいのはもうちょっと先かな…
何しろラスボスが…おっと誰か来たようだ

>>661
>ミナワたんのコート姿見たいなー可愛いだろーなー
昔、正月用に描いたイラストがあって―――――やべ、まだ上げ直してなかったりする!?orz

>戦闘描写のスピーディさに感嘆しましたの
× 戦闘がスピーディ
○ 戦闘が手抜き
◎ 戦闘じゃなくても手抜き

ごめんなさいorz
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/24(月) 00:04:10.53 ID:U9TtLfUAO
うんごめんね
スピード感って言えばよかったんだ俺ってばよ
664 :シャ  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/24(月) 00:53:04.41 ID:JpAjTxFN0
>>663
どちらにせよ戦闘シーンには満足いってないんだ俺……もっと激しく書きたかったなぁorz
相手が弱点剥き出しだったから仕方ないか

れっきゅんの合体技の中でも作中で2度以上使われるのは珍しい部類>『ハイストレーネ』
あと裂邪無しで勝手に合体技作るのも珍しい部類>『天照』
665 :尻切れ単発トンボの人達(代理)  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/24(月) 12:20:17.96 ID:JpAjTxFN0
あー喉チョー痛ェ・・・

季節は冬。真紅のコートに身を包み、近所のスーパーに買い物に行った帰り道。寒い空気が両頬の古傷によろしくない。
それどころか年中マスク着用の私なのに、乾燥した空気に喉を酷く痛めてしまった。

コンビニで喉飴を買うか?いやダメだ。
口裂け女だからではない。マスクして普通にしてれば買い物なんて余裕だし。
もっと根本的なプロブレム。
金が無い。さっきの買い物で飴を買う金が無い。

花子やひき子達がいきなり押しかけて独り身クリスマスパーティーとか言い出すから・・・。ドカ買いするハメになってもう。
口座から下ろすにも、都市伝説だから口座持てないし…。
しかし喉ヤバい。
こうなったら

私、綺麗?(しゃがれ声)

適当に脅かして飴をドロップさせよう。


とやってみたが

私、綺麗?
キャーヘンシツシャー

口裂け女すら知らない!

私、綺麗?
綺麗ですよ

ありがとう!!

私、綺麗?
綺麗じゃない

裂くぞ!

私、綺麗?
べっこう飴ポーイ

惜しい!!

それから何度やってものど飴をドロップされず。
喉は限界、ラストチャンス。ヒョウ柄のおばちゃんに。

・・・たし、k・・・?(かすれ声)
アンタ酷い声やな。ホレ、これ舐めとき。のどアメちゃん。

おばちゃんの優しさに感動して帰る。
いろいろ手こずったために遅くなってしまった。

家にのどアメのストックくらいあるでしょ。さっさと帰ってくれば良かったのに。

花子に言われて、ハッとするシングルベル。

おわり

何がしたかったんだおれ
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/24(月) 12:39:11.57 ID:U9TtLfUAO
代理の人乙ですー
667 :My nonsense Xmas [sage saga]:2012/12/24(月) 19:54:23.82 ID:bNtUuGxw0
とうとうこの日が来てしまった
12月24日クリスマス・イブ
でも僕の彼女いない暦は
年齢と同じ数

「どうせ暇だし散歩でもしよう」
そんな矢先にあいつらが現れた

クリスマス・イブを存分に満喫してる系カップルだ!
見るからに「イチャイチャしてます」アピールで滅茶苦茶ムカつく!
でもそんなときは1年生の頃に敬愛する妬女先輩に教わった必殺

「リア充爆発しろ!!」「中国製のぬいぐるみが!?」

クレーンゲームにつぎ込んだ金を御釈迦にした後見たのは
宝石店のショーケースを眺めてる系カップル!
でもそんなときは1年生の頃に『ローペロペコンマ』の近くで拾った必殺

「ホープダイヤ!!」「何か気分悪くなってきた…」

呪いのダイヤを掴まされて苦しむ奴等を後に見たのは
初デートで双方緊張しすぎて会話も出来ない系カップル!
でもそんなときは1年生の頃に『黄昏裂邪もげろの会』会長に教わった必殺

「ゾンビ軍団襲来!!」「「ぎゃー!?」」

聖夜に悪夢を見せてあげて嘲笑いながら見たのは
まだ夕方なのにラブホに入ってにゃんにゃんする系カップル!
でもそんなときは中学生の頃にクラスの黄昏君に教わった必殺

「赤玉(ラスト・オーダー)!!」「まだ1回も出してないのに!?」

有難う 皆から学んだものが
俺の「言霊」で蘇るぜ 次の獲物はどいつだ?


セックス前に悲劇を見せて喜んでる時に見たのは
人が多すぎて待ち合せの彼氏に会えない系彼女!
でもそんなときは1年生の頃に化学室の人体模型に教わった必殺

「地下鉄千日前線の幽霊!!」「うわ人増えた!?」

もはや二度と会えないであろうカップルを拝んだ後見たのは
一触即発で別れ話を切り出すかも知れない系カップル!
でもそんなときは1年生の頃にクラスの銅島君に教わった必殺

「イシュタルの惚れ薬(キョウリョクナビヤク)!!」「えっちしよ♪」

逆に仲良くさせてしまって複雑な気持ちを抱いてる時に見たのは
誰もいない路地裏でJKを襲ってる系変態!
でもそんなときは知り合いの南八さんが巨乳の姉ちゃんにやられてた必殺

「ち●こもげろ!!」「ホデュアアアアアアアア!?」

半裸の少女に上着をかけて救出した後見たのは
これ見よがしに桜マークをチラつかせる系ポリス!
人生最悪のパターンだ!誰一人この状況を
打破することなどできない!


「うわあああああああああああああ!!俺じゃねぇよおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


何とか信じて貰えた
けど結局今年も散々だ
「もう帰ってAVでも見るか」
警察署を出た

「待って下さい!」 さっきのJKの声
「せめて御礼だけでもさせて下さい」
「食事だけでも御馳走させて下さい!」
マジで?どうしよう
零れ落ちそうでも堪える涙 この時に
このJKに言うべき言葉がある筈なのに

ごめんね リア充対策は沢山知ってるけれど
自分がリア充になった場合は考えてないの
ぎこちなく生返事で答えた俺の手を握った
暖かい彼女の掌
   終わる
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/24(月) 19:56:56.96 ID:bNtUuGxw0
ソニータイマーの人・葬儀屋の人・はないちもんめの人・花子さんとかの人・三面鏡の人に土下座orz
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/24(月) 22:09:43.98 ID:UBsJ/FRz0
≫687乙ですー。
ワラタwwwこいつがもげろwww
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/24(月) 22:14:44.06 ID:Vqq0JoeDo
ワロタwwwwww
671 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/24(月) 22:44:19.87 ID:bNtUuGxw0
よーく読み返したら、結局こいつは何歳になるんだ……
中学で裂邪とクラスメイト→高1で銅島くんとクラスメイト
だと矛盾が生じる…

因みに元ネタは↓
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm17103353
もうちょっと字数を調節したら歌えるかも知れん

>>669-670
これさ…ゲーセン行って帰ってくるまでに沢山のカップル見かけて寒い中ムシャクシャしながら思いついたんだぜ…
我ながら最低だと思ったねorz
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/24(月) 23:00:35.83 ID:U9TtLfUAO
間違えたww
>>687じゃねえよ667だwwwwww
673 :とある悪魔のクリスマス ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/12/24(月) 23:14:49.95 ID:U9TtLfUAO
12月24日 晴れ
明日はクリスマス。
ウィーンのお家に居るときは、いい子にしてると聖ニコラウスっていうサンタさんが来てプレゼントをくれるけど、
悪い子のところにはクランプスっていう悪魔が来て、鞭でぶたれてしまうんだって、いつも脅かされてたんだ!
でも、あたしはどっちも見たことがないの。クリスマス限定の都市伝説なのかなあ?
学校町には、どんなサンタさんがくるんだろ?

 12月25日。
 ほぼ世界中がクリスマスに浮き立つ一日は、学校町も例外ではなかった。
 都市伝説の町、学校町。
 クリスマスのそれももちろん例外ではない。
「メリークリスマス!」
「ほっほっほ、メリークリスマス」
 大人が子供たちに語って聞かせる、トナカイが曳く橇に乗ったサンタクロース。
 ここでは夢物語が現実に―というと、某鼠の国のようで途端に胡散臭くなってしまうが、学校町の現実なので仕方がない。

「むっふっふ・・・悪い子はいないかなぁ?」

 あからさまに怪しい含み笑いを浮かべたそれは、人の顔に山羊の角、全身毛むくじゃらで腰には大きなベルを下げている。

 彼こそ都市伝説「クランプス」クリスマスの日に悪い子供を鞭打つ悪魔。
 ・・・いや、悪い子に罰を与えるのだから本当は良い奴なのかも知れないが。
「悪い子はいないか・・・早く、早く悪い子を鞭打ちたい・・・はぁはぁ」
 自らの存在意義に忠実すぎるあまりか、道ならぬ興奮まで覚えている様子である。
 しかし学校町には都市伝説以上に変態が多いので、毛むくじゃらな鞭男がはぁはぁしている程度で警察を呼ばれる心配はない。

「ノイ・リリス!もう家に入りなさい!」
「いや」
 たまたま彼の耳に入ったこの会話が、彼のアンテナに引っかかった!

(大人の言うことを聞かない悪い子だと!?ああ、早く鞭打ちたい!)

 彼は息を荒げながらいそいそと、その会話が聞こえてきた家―もちろん新田家―の生け垣にぴったりと張り付いた。
「暗くなるだろう!もうすぐ夕飯の支度も調うのだから、もう家に」
「いやったら、いや」

(いいぞいいぞもっと反抗しろ!ああ、早くあの少女を鞭打ちたい!どんな風に泣くか!?どんな風に許しを乞うのか!?)

「失礼ですが、どちらさまですか」
 気づけば生け垣の向こうで、色素の薄い背の高い少年が、不審そうな眼差しでこちらを見つめている。
674 :とある悪魔のクリスマス ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/12/24(月) 23:15:23.73 ID:U9TtLfUAO
「あ!ああいや、ワタシは別に怪しい者では!」
 あたふたと鞭を後ろ手に隠す様は、どう見たって怪しいのだが。
「人んちでなにしてんですかこのやろー」
 生け垣の上にピンクの髪の少女が立っている。彼女もまた、人の家の生け垣に立つという大変横柄な真似をしているのだが、本人は知っていてスルーしている。
 クリスマスらしい深い赤色のベルベットのドレス。その短い袖からはブラウスの長い袖がすらりと伸びている。
 そのブラウスの袖口を飾る幅広のレースが、少女が手を振る度にひらひらと揺れた。
「てめー怪しいですよ。とっとと失せろですよ」
 しっしっと手で追い払う仕草が、クランプスの癇に障ったのか。

(こ、このワタシに向かってなんという図々しい!この娘も鞭打ってくれよう!)

 鞭打つ予定がもう一人増えるとあって、クランプスの興奮はいや増した。

「鞭打ち!鞭打ち!はぁはぁはぁはぁ」

「へ、変質者・・・」

 ドン引きで呟いた極の言葉に、幻とクランプスが同時に反応する。
「ふん、やっぱりですよ」

「へっ・・・失礼な!ええい!こうなったら全員まとめて・・・」
「おとなしく、お縄をちょーだいしろですよー!!」

 どかっ、と音がして。

 幻のキックがクランプスの脇腹をとらえた。本人はハイキックのつもりだったのだが。

「ぐへえぇぇ!!!!」

「あいたたた・・・思ったより足が上がらねかったですよ」

 痙攣する太股をスカートの上から押さえながら幻が手鏡を取り出した。

「悪い子は、鞭打ちだァァァ!」

「これでも食らえですよー!!」

 鞭を手に襲いかかるクランプスに向けて、幻の手鏡が煌めいた。

「うぉっ・・・!?」

 鏡の表面と、クランプスの身体とが目映く光る。

「幻、イタル、どうしたの・・・わ!」
「何の騒ぎだ!」

 ノイとムーンストラックが駆けつけた時には、既に光も、光に包まれたクランプスの姿も消えていた。

「うん。ばっちりなのですよ」

 幻の「魂を盗む鏡」に封じ込められたクランプスは、喚きながら鏡を叩いていたが、やがてすうっと消えてしまった。

「く、くそォ!来年は、来年のクリスマスこそは、この鞭で・・・はぁはぁ」

675 :とある悪魔のクリスマス ◆12zUSOBYLQ :2012/12/24(月) 23:17:38.69 ID:U9TtLfUAO
12月25日 晴れ
今日はクリスマス。
もう寝ないと、聖ニコラウスにプレゼントをもらえないからもう寝なくちゃ。
でも、あたし知ってるんだ。クリスマスのプレゼントは本当はムーンストラックや柳がくれるんだってこと。
でもオトナのユメをこわしちゃかわいそうだから、もう少しだけ、プレゼントはサンタさんが持ってくることにしてあげよう。
メリークリスマス!



END
676 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/24(月) 23:19:59.54 ID:bNtUuGxw0
なんて出来た子なの……ノイたん可愛いよハァハァ
「クランプス」か、聞かぬ名だな…来年使おうそうしよう
鳥居を探すの人乙です〜
677 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/12/24(月) 23:41:46.89 ID:U9TtLfUAO
>>667シャドーマンの人だったのね、改めて乙でしたー

>なんて出来た子なの……ノイたん可愛いよハァハァ
6〜8歳位なら出来た子だけど、13歳ですぜ?
678 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/25(火) 00:08:50.71 ID:7wL3cykB0
>>677
>シャドーマンの人だったのね、改めて乙でしたー
珍しく気付かれて無かっただと……勿体ない事をした(何がだ

>6〜8歳位なら出来た子だけど、13歳ですぜ?
うふふ、幾つになっても子供は子供ですよ♪(いやー普段の態度とかから年齢を忘れてたぜ…

おやこんな時間に誰d
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/25(火) 01:28:45.24 ID:blRKlpvx0
一日遅れだけど上げちゃう
680 :カメラと少女 [sage saga]:2012/12/25(火) 01:30:45.55 ID:blRKlpvx0
―とある町

「ねぇね、クリスマスプレゼント、何頼んだの?」
「私はWiiU!あと、あのソフトがやりたかったから、一緒に頼んじゃった」
「よくばり〜わたしは、おっきなぬいぐるみ」
「私は―――」

小学生ぐらいの女の子達3人が楽しくお喋りをしていた

今日はクリスマスイブ
サンタさんが子ども達にプレゼントを届けてくれる日
…というのは、もう過去の話かもしれない
今の子ども達は現実的だ
おそらく親や恋人にプレゼントをねだっているのだろう

ふと、一人の少女が彼女は呟く

「クリスマス、か」
「どうしたの?カメ娘」

『カメ娘』と呼ばれた少女は、カバンから何かを取り出し、じっと眺める
それを見て、他の女の子が質問を投げかける

「なに、デジカメ?」
「首からもかけてるのに、まだあるの?」

少女が『カメ娘』と呼ばれる由縁
それは他でもなく、この首からかけられたデジタルカメラである

少女は毎日、肌身離さずそれを持っている
そして自分がいいと思ったものや、他人から頼まれたもの、色々なものをそれで撮ってきた

普通の学校なら、授業に関係ないものを持ち込むなと言われかねない
しかし少女の学校は、逆に少女の写真を学校の配布物で使っていた
児童の自主性を考慮し、学校をより良くするという狙いがあるらしい
事実、少女の写真は、余所でカメラマンを頼むのと引けを取らないほど、いいものだった

そんなカメ娘のもう1つのデジカメ
あまり不思議とも言えない状況だが、そのデジカメが少し気になった

「あぁこれ?これはね、普通のデジカメとは違うの」
「うん、知ってる。若干大きいし」
「すごい機能でもあるの?」

2人から質問攻めを受けたカメ娘は、その特殊なデジカメの電源を入れた

「映るかな…?」

カメ娘がデジカメの画面を見ると、制服を来た女子高生が写っていた。

「え、ちょ、え、えぇ!?」
「こ、これって…」

横から覗き込んでいた2人は、デジカメの画面とその向こう側を見比べて驚きの声を上げた



いないのだ

デジカメには映っている、女子高生が
681 :カメラと少女 [sage saga]:2012/12/25(火) 01:31:35.62 ID:blRKlpvx0
「心霊…現象?」
「なわけないでしょ」

そう切り返し、カメ娘は写真を撮ろうとする

「笑って…はい、ポーズ」

画面の中の女子高生は、笑顔でピースする
カメ娘はシャッターボタンを押し、撮影する
デジカメには、女子高生の写真がしっかり保存された
撮影されたことを確認すると、女子高生は手を振り、画面外へと消えていった

「これはね、ゲームができるデジカメなの」

呆然としている2人に、カメ娘は説明を始めた。

「ここで普通の撮影モードから切り替えて、『ARモード』っていうのにするの
 そしたらさっきみたいな人や、変な動物とか怪物が写り込むの」
「な、なんかすごいハイテクなデジカメね」
「いくらしたの?高いんじゃない?」

値段を聞かれ、カメ娘の体がびくりとする

「…これね、何年か前のクリスマスに貰ったの。だから値段とか…よく分からない」
「ふぇ、クリスマスプレゼント。このカメラが」
「うん、これが私の最初のカメラ」

これがカメ娘の原点、全ての始まり
このカメラを貰ってからというもの、カメ娘はがむしゃらに写真を撮っていた
やがて写真を撮る事に意識を持ち、今の、カメ娘と呼ばれる少女がいる

「最初ってことは、本当に高いカメラなんだね」
「でもそれ使ってるところ見たことないよ」

またカメ娘の体がびくりとする

「そ、れれはね、えと、壊れないから!小さい時、何度も落としちゃって
 水の中に落とした事もあったけど、無事なの!だから…その…」
「それに、大事なものだし、お守りみたいな?」
「そ、そう!これはお兄ちゃんから貰った大事な…」

そこで言い淀む
何かを察したのか、2人はニヤニヤする

「な、なによ!」
「なんでもないよ〜」
「いいなぁ〜と思っただけ」

心中をわずかでも知られたと、カメ娘は赤面した
2人は、カメ娘に実兄がいない事を知っているからである
きっと2人は『お兄ちゃん』が誰なのかと予想を膨らませているに違いない

カメ娘の『お兄ちゃん』とは、従兄のことだ
親が機械に関する仕事をしているせいか、従兄も機械に詳しい
幼稚園ぐらいの頃から、色々なおもちゃをプレゼントしてくれた
そんな優しい従兄を、カメ娘は『お兄ちゃん』と呼び慕っていた



そんな従兄に―――



「あ、そうだ」
682 :カメラと少女 [sage saga]:2012/12/25(火) 01:32:25.64 ID:blRKlpvx0
ふと、女の子の1人が手を打つ
その瞬間、カメ娘は我に返り、勢いよく声の方を向く

「ほら、廃病院があるじゃん?」
「あぁ、あの心霊スポットね」

廃病院―
『人の生死が関わる場所』と『誰もいない空間』が組み合わさるせいか
そこに関する怪談は数えられないほどある

彼女達の学校では『あの廃病院はなんらかの原因で医者も看護師も死んでしまった』という噂が広まっている
それに付随し、『「幽霊」が出る』『看護師が「ゾンビ」となって襲いかかる』という話も出ている

「そのデジカメで写真を取ったら、どんなのが写ると思う?」
「うわぁ、どんなのが写っちゃうんだろうね…」
「もし写らなくても、ゲームモードで撮ったやつを見せれば!」
「どっちに転んでも面白い、いいじゃん!」

2人だけではしゃいで、ふとカメ娘の方を見ると、1人だけ真面目そうな顔をしていた。

「どうだろうね…」

カメ娘は一度、山の中で遭難したことがあった
その時、気分を紛らわそうとしてこのデジカメを使っていた
その時画面に映った狐のような生き物を追いかけていたら
いつの間にか脱出していて、そこには親がいた

その一件以来、このデジカメに映るものは、現実の場所や状況に関係すると思うようになった
このデジカメで、廃病院を写す
『何かが写る』というだけで済むのか、その疑問が晴れなかった

「でも、そういう事やるなら夏にしない?」
「それもそうね。じゃあ夏休みのスケジュール、開けとくように!」
「もう来年の予定?気が早いね」

そう言って、今日はパーティの準備があるからと、5時になる前に3人は別れた
そしてカメ娘は…

「…行ってみよう」

1つは、好奇心
何が写るのかが気になって仕方がなかったから
1つは、証明
自分の考え―現実と映像はリンクしている―は正しいのかを試すいい機会だから

もし恐ろしい事態になったら申し訳ないから、と、他の2人には内緒にする事にした
きっと、何も起きはしないだろうが
683 :カメラと少女 [sage saga]:2012/12/25(火) 01:34:10.42 ID:blRKlpvx0
―廃病院

「…着いた」

若干町から離れた、変な場所にある病院
かつては町中にあったが、いつしか人が離れていったのだろうか

カメ娘は、臆せず病院の中に入る

「うっ…汚い。掃除してないとかもあるだろうけど…」

病院という清潔な印象と対になる汚れた印象、『廃』
それに引き寄せられるのは虫や小動物だけではない
その好奇心が、都市伝説なるものを生む原因となるのだろう

少なくとも、今はカメ娘もその一員だ

「とりあえず、それっぽいところに行こう」

…ある程度歩いていると、一部屋一部屋写真を撮ることを思いつき、手近な病室を見つける
さっそく電源を入れようと取り出している最中、ふと頭にある言葉が流れる

(「いいか?これに怖いものが写ったら、絶対に逃げるんだぞ」)

従兄の言葉、このゲームの説明だった
特にペナルティは教えてもらっていないが、そう聞いたカメ娘はそれに従った
それががむしゃらに撮る理由の1つでもあった

今回は、逆に怖いものが写ったら追いかける
つまり従兄の忠告を無視する事になる
それが心に引っ掛かったという事だろうか

「…何も、起きないよね?」

誰に言い聞かせるでもなく、カメ娘は呟いた
電源が入ったのを確認し、ゲームモードに切り替え、デジカメを通して部屋を覗き込む

いた

看護師らしい人が、窓の方を見ている姿が、デジカメ『には』映っている
これで、場所がゲームに影響を与える事を確信した
それに満足し、その証拠を残すため、シャッターボタンを押す
フラッシュが部屋中に瞬き、撮れた看護師の写真が数秒間だけ画面に表示された

保存を確認しようと操作する前に、ふと止まる
看護師が、こちらを見ていた

不気味なほど、満面の笑みで

その笑みを保ったまま、看護師がこちらに近寄ってくる
もちろん、画面の中の話であって、現実ではない
だが、そのあまりの恐ろしさと、第六感が、逃げろとささやく

そのまま後ずさろうとした瞬間だった
看護師が何かを投げつけた
とっさに体が動いてしまい、カメ娘は床に伏せるように倒れた



倒れた瞬間、金属が落ちる音が鳴り響く
684 :カメラと少女 [sage saga]:2012/12/25(火) 01:35:48.56 ID:blRKlpvx0
振り返ると、床にナイフのようなものが落ちていた
TVによる知識から、メスだろうかと予想する
それよりも、あの看護師が投げたと同時に、音が鳴った
これは『現実の場所や状況がゲームとリンクしている』とは言うより、むしろ…

ふと部屋の方に目をやると、人の手が見えた
そしてゆっくりと、頭が、人が出てくる
たしかに看護師だが、肌の色がおかしい

まるで…「ゾンビ」のような…

そう考えて、カメ娘は我に返る
デジカメは手元にあり、『あれ』は肉眼で見える
デジカメ越しに覗いてみると、目の前の光景と変わらず、看護師が写っている

つまり…これは…

「みぃツけタ…エサ…」
「ひっ」

声を聞いた瞬間、カメ娘は確信した
これは、このデジカメはゲームでもなく、現実とリンクしているわけでもない
『実在するバケモノを視認できるようにする装置』だったんだ、と

何故こんなものが、と疑問したが、答えは分かっていた



(「いいか?これに怖いものが写ったら、絶対に逃げるんだぞ」)



「(お兄ちゃんは知っていたんだ…こんなバケモノがいる事を
 そして、バケモノから私を遠ざけるために、これをくれたんだ…)」

そして、その従兄の言いつけを破り、今に至る

これは因果応報に他ならない

「ふふふ…」
「あ…」

これは罰だ
そう自戒し、カメ娘は目を瞑った
685 :カメラと少女 [sage saga]:2012/12/25(火) 01:37:04.45 ID:blRKlpvx0
カメ娘の頭の中に、また従兄の声が流れてくる



(「いいか?これに怖いものが写ったら、絶対に逃げるんだぞ」)



(「もし襲われたら、このボタンを長押しするんだ。絶対に人には向けるなよ
  悪い人だったら、別にいいけど」)



はと見開くと、「ゾンビ看護師」がメスを構えていた
とっさにカメ娘はフラッシュのON・OFFを変更するボタンを長押しする

数秒後、「ゾンビ看護師」がメスを振り落とそうとした瞬間、
デジカメはすさまじい明るさの光を放った
思わず目を瞑っていたカメ娘のまぶたを通しても、驚くほど明るい光
あまりの眩しさに、「ゾンビ看護師」は悶え苦しんでいた

一瞬固まっていたが、すぐさまカメ娘はその場を離れた

「ぐおぉぉぉ…」



―――逃げる、もう帰る!ここから離れて、早く!

そう心の中で唱えながら、カメ娘は廃病院の中を駆けていく
しかし、ある事を思い出してしまい脚を止める

「逃げても…追いかけられる?」

そんな事を誰かが言っていた、気がした
事実でもそうでなくても、『現実』を壊された彼女を止めるには充分だった

「追われて、家まで来たら…お父さんやお母さんにも…」

カメ娘の選択肢から、『逃げる』が取り消された
壁に背負向け、力尽きたように座り込んだ

どうすればいい?ゲームなら倒せるだろうが、これは現実だ
自分には力も武器もない、あるのはカメラだけ
フラッシュだけでは倒せるわけもないだろう

カメラを強く握りながら、カメ娘は頭を抱えていた
686 :カメラと少女 [sage saga]:2012/12/25(火) 01:38:31.77 ID:blRKlpvx0



―――ケイヤク、せよ



どこからか、謎の声が聞こえる
辺りを見回しても、誰もいない
念のためデジカメを通して見てみるが、やはり何も映らない

《ワレとケイヤクせよ…》

また聞こえた時、やっとカメ娘は気付く
このデジカメのスピーカーから、声が出てくるのだ

「…誰?契約って何?」
《ワレとケイヤクせよ…さすればイノチはスクわれるだろう…》
「命を救う?」

わらにもすがる思いだったが、言いかける手前で冷静になる
まず何故デジカメが喋るのか、それ以上に、何故契約を持ちかけたのか

「あなた何者なの?私を助けてどうする気?」
《ワレは…》



《このキカイのセイレイだ…》



「…嘘」
《ばれた…》

『精霊』なんてあまりにも可愛らしい嘘と、おまけに『バレた』とまで言ってしまう
この哀れな謎の声を、カメ娘は信じてあげようと思った

「言ってよ、契約って何?内容によっては考えてあげるけど」
《ケイヤクすれば、ワレはナンジとともにイきることができる…》
「契約しなかったら?」
《ワレはやがてワスれられ、キえるだろう…》
「可哀想…でも、わたしはどうなるの?命をもらうとか言わない?」
《イノチなどいらぬ…ホしいのはコトバだけだ…》

あまりにムシのいい事しか言わない謎の声
カメ娘は、もう少し突っ込んだ話を試みる

「ねぇ、あのバケモノとあなたは関係あるの?
 これを答えてくれないと、とてもじゃないけど無理だからね」

非現実的な事が2度も起こった以上、おそらく関係があるのではないか
安直な発想だが、どうやら正解だったようだ
687 :カメラと少女 [sage saga]:2012/12/25(火) 01:39:28.33 ID:blRKlpvx0
《カノジョはトシデンセツ…ワレもまた、トシデンセツ…》
「都市伝説…?」
《そう…ワレワレはヒトのコトバよりウまれ…そのコトバドオりにイきるモノ…
 ユエにコトバがないとワレワレはショウメツする…いずれ…》
「…あいつと、同類なのね」
《ケイベツしてもいい…だがヤツをタオしたいならトシデンセツとケイヤクしなければなるまい…
 ヒトのチカラではタオせぬだろう…》

彼の言葉を整理しよう

1、彼らは都市伝説
  おそらく噂を元に作られたなにか、だろう
2、彼らは人に忘れられると消えてしまう
  彼も、忘れられそうな都市伝説なのだろうか
3、契約すれば、彼らは生存できる
  おそらく契約した人が憶えている、という意味だろう

そして、なにより重要な

契約すれば、あの「ゾンビ看護師」を倒せる、ということ

カメ娘に『倒す』という選択肢が1つ増えた
と言うよりも、それ以外に選択肢は無い
カメ娘はデジカメを見つめる



「もし、あいつを倒したら…」

従兄は、このデジカメによって私を守ろうとしたのなら―――

「あのバケモノを倒す事が…お兄ちゃんへの恩返しになるなら…」

もしこのデジカメが、あのバケモノ達と戦うために作られたというなら―――

「私と一緒に、戦って!」



《ケイヤク、セイリツ…!》

謎の声が頭の中にも響く
デジカメの画面が一瞬輝き、やがて元に戻る

「…で、あなたには何ができるの?」
《いってナかったな…ワレのチカラは…》
688 :カメラと少女 [sage saga]:2012/12/25(火) 01:40:04.48 ID:blRKlpvx0
ふと、正面から何かが聞こえた
顔を上げると、半透明の人間がこちらへゆっくりと迫ってくる

「ゆ、幽霊…?」
《カレもトシデンセツだ…チョウドいい、ジツエンしよう…》
「実演?」
《シャシンをとれ…ハヤく!》

謎の声に言われるがまま、デジカメのシャッターボタンを押す
フラッシュが瞬いた後、【幽霊」を見ると…

「あれ、いない…?逃げたの?」
《ガメンをミよ…》

言われるがまま、デジカメの画面を見ると、そこにはたしかに「幽霊」が写っている
つまり…

《ワレのチカラだ…カレのタマシイをすいとり、フウインした…》
「カメラに魂を吸い取られるって…あ!」

その時やっと、カメ娘はすべてを理解した
謎の声の正体は「写真を撮られると魂を吸い取られる」という都市伝説…というか俗説
カメラが日本にやってきた頃からあるが、今となってはもう誰も信じない話
だから消える事を恐れて、私のところへ来たのか、と

そしてその能力は、『被写体の魂を封印する』というもの
カメ娘にとっては、うってつけの能力だった

《だが…ピントをあわせないとフウインできず、
 なによりトれなければイミがナい…カノウなかぎり、チカいホウがいい…》
「ピントは大丈夫。このデジカメはすごいんだから。問題は…」

あいつを目の前に、デジカメを構える事ができるだろうか?
…と、またある話を思い出す
今回は絶望的な内容ではなく、希望を掴める内容だった

「そうだ…!」
689 :カメラと少女 [sage saga]:2012/12/25(火) 01:42:03.90 ID:blRKlpvx0
―「ゾンビ看護師」視点

「ドこへ…きエた?」

未だに「ゾンビ看護師」はカメ娘を探し回っていた
しかし勘がいいのか何かの能力か、「ゾンビ看護師」は確実にカメ娘に近づいていた

「ゾンビさーん!こっちーだよっ!」

急に大声が鳴り響く
声の方に向くとカメ娘が見え、「ゾンビ看護師」は嬉しさの余りに顔をゆがめる
そのまま走って向かうと、カメ娘が横へ逃げる

カメ娘が曲がったところを見ると、そこにはトイレがあった

トイレの個室は4つあり、「ゾンビ看護師」は1つずつ扉を開けて見ていく
わざと大きな音を立てて

わずかな音のおかげで、本当はどこにいるか分かるのだ
だがあえて、すぐには開けない
最後まで怯えさせて、一瞬だけ安心させる
そして静かに壁を這い上がって、そこから侵入する

それが、「ゾンビ看護師」のやり方だ



とうとう最後の扉
静かによじ登り、ゆっくりと覗き込むと、そこには―――






こちらにカメラを向けるカメ娘がいた






「はい、ポーズ!」

シャッターボタンを押した瞬間、「ゾンビ看護師」の体が消えてゆく
状況を察し、抵抗を試みようとしたが、手遅れ
「ゾンビ看護師」の体から青白い光が飛び出し、カメラの中に封印された



「や、やった…」

カメ娘は、安堵の息を漏らした
690 :カメラと少女 [sage saga]:2012/12/25(火) 01:43:19.38 ID:blRKlpvx0
―帰路

《よくカノジョのテグチがわかったな…》
「あなたのおかげでもあるわ。噂話の多くで、そういうシチュエーションが多かったの
 噂通りの行動をするって思わなかったら…できなかったと思う」
《とにかく、よくやった…これでナンジもリッパなケイヤクシャだ…》

廃病院から出ようと、ゆっくりと歩きながら、カメ娘はデジカメの中の彼と話していた
あまりにも自分を褒める彼に、忘れかけていた疑念を投げかける

「…あなたは、人を襲わないの?」
《…マレにだが、ワレのようにヒトをオソわないものもいる…
 オソうイミをジモンジトウし…やがてヒトとキョウセイをハカろうとする…》
「そうなんだ…」

やっと出口に辿り着き、出たと同時に空を見上げる
もう暗くなっている空を見て、今日がクリスマスだった事を思い出した

「早く帰らなきゃ!」
《アシモトにキをつけろ…クラいから…》
「ありがとう。倒してくれたことを含めてね」
《…こちらからもレイをいう…ありがとう》

少し早足で、カメ娘は家へと向かう

「あ、家ではなるべく喋らないでね」
《わかった…》
「あと…またあんな悪い都市伝説と出会ったら…一緒に戦ってね」
《…リョウカイ…》

それだけ告げ、デジカメの電源を切り、カバンの中にしまう
そして全力で家へと駆けていく



今日はとても散々な日々だった

でももし、このデジカメが無かったら

あのバケモノに襲われることは無かったのだろうか

それどころか、私はこのデジカメに何度も救われている

その上、今日、とても変だけどちょっと面白くて、頼もしい友達ができた



何よりも、今の私がいるのは、このデジカメのおかげだ



後悔はない、『カメ娘』というあだ名は、私の誇りだ

数年前の今日、私にこのデジカメをくれた、あの人に…


「(お兄ちゃん…ありがとう)」
691 :カメラと少女 [sage saga]:2012/12/25(火) 01:44:52.37 ID:blRKlpvx0






―数年後・車の中

「お父さん、まだ着かないの?」
「まだまだだ、ゆっくり座ってろ」

とうとうカメ娘は中学生になろうとしていた。
しかし諸々の事情で、カメ娘たちは学校町と呼ばれる町へ引っ越す事となった

「むぅ、早く着かないかな…」

どうもカメ娘は学校町が楽しみで仕方がないらしい
その様子を見て、母親が微笑む

「そんなに会いたいの?勇弥くんに」
「あぁ、しばらく会ってないっけ」

その瞬間、カメ娘は顔を真っ赤にして否定する

「ちょ、違っ!な、その!」
「そういえば、今もあのデジカメ大事に使ってたもんな」
「肌身離さず、よほど嬉しかったのねぇ…」

カメ娘をよそに、思い出話に浸る両親を前に、カメ娘は疲れ果てたように頬杖をつく

否定しようのない事実、従兄との再会

新しい場所での、新しい生活

色々な期待に胸が膨らむカメ娘であった






―――Go to next page ?
692 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/25(火) 01:47:35.22 ID:7wL3cykB0
なんか見た事ある文面だなぁと思ったら、やっぱお前だったのか
乙なのよン、勇弥もげろ
693 :カメラと少女 [sage saga]:2012/12/25(火) 02:04:44.44 ID:F22KqJJM0
…という事で、カメ娘ちゃんでした

とあるゲームをやって、「色々できる女の子っていいね!」となったので。
カメラを撮りまくる可愛い女の子…なんですが、どうでしょう?

あと大王の人、勝手に勇弥くんお借りしました。すみません。
特殊なデジカメを作れるなんてキャラ、あまり作りたくなかったというか、思いつかなかったので…

ではお粗末さまでした
あと「さっさと舞い降りた大王書けよグズ」と思った方は
「自演乙」と書くといいことがありますん






>>692
ち、全力で兄者に似せて「影の人乙」って言われる算段だったのに…
まだ俺の色が抜けてなかったか…残念

ちなみに例によって、これは勇弥による魔改造カメラ。
勇弥の家にデジカメが来て、「これで都市伝説が撮れたら便利じゃね?」という考えの元制作。
しかし途中で、自分には何の意味もない事に気付き、従妹にあげる事を思いつく。
そして調度クリスマスの日に、プレゼントした…というお話

ARの文字は、ゲームっぽさをアッピルするつもりだったようだが
実は彼女が手にした当時、ARは有名ではなかったり
すでに勇弥はARをおもちゃに…恐ろしい子!

では今日はこの辺で…
694 :ソニータイマー [sage]:2012/12/25(火) 13:53:38.26 ID:0wOR7iR10
>>667さん悪魔のクリスマスの人カメラの人乙です!

>>667
細かいようだけど、妬女じゃなくて妬見女なんだ…
695 :大王の ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/12/25(火) 14:21:22.96 ID:pECQrvLG0
クリスマス蔵出しキャンペーン準備中

上げるのを忘れていた、書きかけのものが何個かありました。
クリスマスにぴったりのやつだったので、この機に上げます。
最終調整を行うので、もうしばらくお待ちください…

カメ娘ちゃん補足

Q:デジカメに映った女子高生ってなんだったの?
A:もち都市伝説です。おそらく上半身と下半身は別々の都市伝説でしょう。
  …本当はレギュラーにしてあげたいの、彼女。
696 :大王クリスマス―舞い降りたプレゼント ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/12/25(火) 21:56:58.83 ID:8X1yAnPG0
正義「うわぁ、コンペイトウの雨だ。」
大王「そんな冗談を言っている場合じゃないだろ、都市伝説だ。」

正義達は【サンタクロース】に代わってプレゼントを配っていた。
すると、空からコンペイトウが降ってくるという奇怪な現象が起こったのだが・・・。

正義「でも悪い都市伝説でもないと思うよ?コンペイトウだし。」
大王「なぜ安全だと悟れるんだ?コンペイトウには何があるんだ?」

しかし正義は大王の疑問に答えもせずに配達に戻った。

正義「よし、メリークリスマース!」ピンポーン



―――その頃勇弥は。

勇弥「うわ、裂邪さん張り切ってるのなぁ。コンペイトウまで撒いて。」

勘違いしていた。

勇弥「こうなったらオレも・・・。座標入力!」

勇弥は指をぴんと立て、目を瞑って念じていると、指とプレゼントの周りが0と1の光に包まれる。

勇弥「其の一、左一六五〇尺、上一六五寸、前六六〇尺。其の二、左五九六尺、上四九寸、前三三〇〇尺。
   其の三、右二五〇〇尺、上一七二尺、後二四〇〇尺。其の四、―――。」

意味不明な言語を発しつづけていると、だんだんとプレゼントが消えていく。どうやら何処かへ転送しているようだ。
おそらく発言した距離の場所へ任意の物質を転送する技のようだ。

勇弥「―――。これで終わりィ、よっしゃぁ!」

気が付けば、勇弥の分はすでに配り終えていた。詠唱には数分かかっていたが、普通に配れば何時間かかるだろうか。
しかし、この能力にも欠点がある。

勇弥「痛ってえぇぇええ!!!“はぁ、はぁ、はぁ・・・”・・・・ちくしょ、やっぱりあの量が限界か。
   もっと配ってやりたかったけど、先に家に帰っておくか。」

自分のノルマは達成した、と勇弥は自分の家へと帰るのだった。

勇弥「皆は無事配れたか・・・?」



―――その頃、奈海と楓は。

コイン「メリークリスマース。よぉし、全部終わった!」
奈海「アンタの分はね。私はまだこんなにあるわよ?」
楓「私は半分配り終えたがな。コインちゃんの分は密集していたからな。」

大体半分配り終えた、と言った所だろうか。
697 :大王クリスマス―舞い降りたプレゼント ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/12/25(火) 21:57:58.94 ID:8X1yAnPG0
楓「しかし・・・日向は大丈夫なのか?1人で3人分配ると言っていたが・・・。」
奈海「あいつは大丈夫よ。ワープもできるし、あっという間に配ってくれるって。」
楓「しかし頭痛になる上、あの手の技は体力を消費するらしいから
  結局時間の短縮にしかならないはずだ。あの量を1人で配るのは苦労じゃないか?」

その言葉を聞いて、改めて考え直すと、奈海は少し不安になったようだ。

コイン「十文字さん、優しいんだね。なんとなぁく変に感じるから。」
楓「日向は、日向なりに何かを背負っているんだ。少し応援してやりたいと思ってな。」
コイン「ふぅん・・・。」チロリ

コインは謎の視線を送る。その意味を悟るのに時間はかからなかったようだ。

楓「心配しなくても、私は大王様一筋だぞ。」
コイン「なんだぁ、二股かと思った。勇弥くんはあの性格のせいでモテにくいから
    2つの意味で手伝ってあげようかと・・・。」
奈海「ほんと、あと少しって感じなんだけどね。成績優秀、スポーツ万能。まぁ全部あれのおかげだけど。」
楓「まったく。よし、続けるぞ。次は・・・ここに密集しているな。」
コイン「やったじゃん!もしかするとここで配り終えるかもね。」
奈海「あれ?この一連、前にやった気が・・・。」

そこには巨大なマンションがあった。

奈海「また1階ずつ配っていくのね・・・。」
コイン「うわぁ・・・。」
楓「・・・よし、いい考えがある。まず屋上へ行こう。」

楓の指示に従い、3人は屋上についた。

奈海「何を考えてるのよ?」
楓「何も手渡しじゃなくても良いだろ?ベランダに置いておくだけでもいいはずだ。」
コイン「なるほど、って無理じゃない?ここからベランダに落とすなんて。」
楓「そこは、コインちゃんの出番だ。」
奈海「え・・・、あ!なるほどね。コインちゃんの能力でプレゼントを誘導するのね。」
楓「裂邪さんが配っているのを見て考えていたんだ。」
コイン「えぇ、無理だよぅ!」
奈海「・・・なんでよ?だいたい予想はつくけど。」
コイン「そんな事したら十円玉がもったいないじゃない!ふざけないでよ!」
楓「す、すまない!?」
奈海「無視していいわよ。こっくりさんこっくりさん、この中で黙っててください。」
コイン「あ、ちょ、もぅ!いじわるぅー!」

奈海は呪文を唱えて、コインを十円玉に閉じ込めた。

奈海「さてと、始めよっか。」
楓「あ、あぁ。」

奈海はコインが入っていない十円玉を握り締めて、こう呟く。

奈海「こっくりさんこっくりさん、ここに記された場所へ向かってください。」

そしてその十円玉をプレゼントの包みに隙間から入れる。

奈海「これで、しっかり落ちてくれれば良いけど・・・。」
楓「サンタさんの能力が残っていれば、少しはゆっくり進んでくれると思うが・・・。」

奈海はプレゼントから手を離すと、プレゼントはゆっくりと目的地へ向かっていった。

奈海「やった!どんどん行くわよぉ。」
楓「なんとか間に合いそうだな。」
698 :大王クリスマス―舞い降りたプレゼント ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/12/25(火) 21:58:47.04 ID:8X1yAnPG0
―――そして数時間後の勇弥家前。

勇弥「そろそろ終わったか・・・?」

先に配り終えた勇弥は家の手伝いをしていたのだが、そろそろ心配になって門の前に出る。
すると、右を向いた瞬間に左から跳び蹴りを喰らう。

奈海「なんで先に帰ってきてるのよ!?」
勇弥「がばらッ!?」
コイン「あぁ勇弥くぅぅぅん!?」
楓「日向、お前の事は忘れない・・・。」
勇弥「いや・・・生きてます。」ピクピク

奈海「私達より多かったんじゃないの!?まさか何処かへ捨ててきたんじゃないでしょうね?」
勇弥「大丈夫だ。あれぐらい朝飯前だっての、痛つつ・・・。」
奈海「え?あ、ごめん。(そうだった、能力のせいで頭痛が・・・。)」
楓「ところで、大王様は?」
コイン「まだ手間取ってるのかなぁ。」
奈海「と、という事は正義くんは・・・?」

と、いう間もなく、向こうからあの声が聞こえる。

正義「おぉーい!そっちは終わったぁ?」
奈海「あ、正義くん!」
楓「大王様ぁ!お疲れ様でしたぁ!」ガバッ
大王「おっと、あぁ、お疲れ。」
コイン「正義くんの方も無事配り終えたの?」
正義「うん、大王のおかげで。」
大王「俺の雲でプレゼントを転移とは、よく考えたものだ。」

勇弥「―――さて、プレゼントを配り終えたし、サンタさんに言ってくるか。」
正義「あ、サンタさん。」
勇弥「おぅ丁度良かった。それでは、ってえぇぇ!?」

勇弥の後ろには、こちらへと向かってくるサンタの姿が有った。

サンタ「・・・。」
奈海「・・・やっぱり分からないから、通訳通訳。」
正義「うん、えぇと、『どうもありがとう』だって。」
勇弥「それよりサンタさん、怪我は大丈夫なんですか?」

すると、サンタはフォッフォッフォと笑う。

正義「え、『嘘』?怪我はだいぶ前に回復していたの?!」
大王「そういえば、俺も再生能力は早い方だが、お前も例外ではなかったか。」
サンタ「(本当はいけないんじゃが、君の優しさをどうしても買ってあげたくてな。)」
正義「・・・。」
サンタ「(最近はいい子も少なくなってな。だから君の言葉を聞いた時に少し嬉しくなってな。)」
楓「もしかして、『試された』という事か?」
正義「・・・そういうことかな。」

すると、サンタはプレゼント袋に手を入れる。
699 :大王クリスマス―舞い降りたプレゼント ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/12/25(火) 21:59:44.86 ID:8X1yAnPG0
勇弥「ちょ、もう流石に全部出ただろ・・・?」
サンタ「(お礼の気持ちじゃ、受け取ってくれ。)」
正義「お、『お礼』?そ、そんなの受け取る訳には・・・。」
大王「受け取れ。何のためにあんな事をしたんだ。」

すると袋の中から淡い光が漏れ、サンタが手を出すと手にはプレゼントが掴まれていた。

楓「そうか、その袋も普通のものではなかったのか。」
勇弥「亜空間か、それとも生成能力があるのか・・・。」

そしてサンタはそのプレゼントを皆に配る。

正義「うわぁ、ありがとうございます!」
大王「まぁ、当然だな。」
勇弥「おぉ、ありがとうございます。(個人的にはあの袋について調べたい)」
奈海「ほら大王さんも。ありがとうございます。」
コイン「わぁありがとう!なにかなぁ。」
楓「ありがとうございます。(あの袋の方が欲しいな・・・整理整頓に使えそう。)」

ふと、どこからか“シャンシャンシャン・・・”と音がする。
辺りを色々見回すと、やっと上にソリとそれを引く生き物が見えた。

勇弥「なんだ、あれ・・・?」
奈海「もしかして、もしかすると・・・。」

よく見るとそれは、9頭ほどのトナカイだった。おそらくこのサンタのトナカイだろう。

正義「ルドルフだよ!あの先頭のトナカイ、ルドルフだよ!」
奈海「あのねぇ正義くん。それはアニメの」
大王「少年、何故それを!?」
楓「詳しいな。ルドルフは8頭の先導役なんだ。」
奈海「・・・じょ、常識よ。ねぇ正義くん♪」

はたで笑う勇弥とコイン。その光景を見て微笑みながら、サンタはソリに乗る。

サンタ「メリー・クリスマス。」

その言葉の後、サンタはそのままトナカイに引かれて遠い空へと消えていった。

正義「メリークリスマス。」
勇弥「さっきのはしっかり聞こえたぜ。」
コイン「おぉ!?これは伝説の1万円玉!?じゃあこれは・・・。」
奈海「コインちゃん、もう開けちゃったのぉ?」

楓「そうだ、大王様はいったい?」
コイン「前例があるからねぇ・・・。」
大王「ぬ、そうだな、やはり捨てておくか。」
正義「まぁとりあえず開けてみようよ。何か役に立つものかもしれないしさ。」
大王「それもそうだな。念のため。」

大王はゆっくりと包みを開ける。すると・・・。
700 :大王クリスマス―舞い降りたプレゼント ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/12/25(火) 22:00:24.72 ID:8X1yAnPG0
勇弥「・・・なんだこりゃ?『よいこの絵本シリーズ』?」
奈海「『すうじべんきょうせっと』『ひらがなきょうしつ』・・・。知育玩具とかね。」
楓「(もしかして、ボクの子供ができた時用!?サンタさん公認か・・・。)」
正義「あ・・・。」
コイン「え、何かわかったの?」

正義はひらめいたようにつぶやく。

正義「『子供からやり直せ』って事じゃない?」
勇弥「あぁ、なるほど。そういう事か。」
奈海「でもそんな事で治るのかしら?」
コイン「まさに根っからの悪、ってやつだもんねぇ。」
楓「あ、良ければ私が読みましょうか。」
大王「・・・。」プチンッ
全員「「あ。」」

大王「ふざけるな【サンタクロース】!俺が世界征服した暁には必ずお前らに復讐するからなァ!」
勇弥&奈海「「ぅわあああぁぁぁ!大王さんが怒ったあぁぁ!」」
正義「大王、サンタさんに手を出したら酷い目にあうんじゃなかったの?」

夜空に男の声が響き、サンタクロースのお手伝いは幕を閉じた。


大王クリスマス・スペシャル「舞い降りたプレゼント・U」―完―
701 :大王 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/12/25(火) 22:02:42.75 ID:8X1yAnPG0
昔上げ忘れていたやつを先に。これでWikiに上げられる…。
どうでもいい話なんですけど…ね。

もう一つ、クリスマスに相応しいのがあるんですが…間に合わなかったらごめんなさい。
702 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/25(火) 22:18:40.98 ID:sDVmUwrv0
なつい、つか一昨年の奴じゃねぇかwwwwwww
あれだったら、避難所の目立たないところに上げちゃっても良かったのに
乙乙
703 :大王 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/12/25(火) 22:28:24.52 ID:Yx+XriCb0
>>702
そうだ!その手があったのか…!
なんとなくハズいんだよこれ…しまったな
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/25(火) 23:30:04.02 ID:2UclL+jAO
大王の人乙ですー
カメ娘ちゃんかわゆすなぁ。勇弥もげろww
そして大王ww「よいこになる所から始めましょう」とはwwwwww
ほのぼのしてていつも安心して読めますね
705 :殺戮と絶望の果てに [sage saga]:2012/12/26(水) 02:55:17.19 ID:JxBJzL6G0
これが終わったら…1〜3をWikiに写すんだ…


―――あらすじ―――

複合型都市伝説【ULV】。
それを操る、悪魔の2つ名を持つ少年。

彼を倒すために男達が立ち向かうが、手も足も出ない。

そしてとうとう、短パンの女が【ULV】に変えられてしまった。






悪魔「さて、どんなデータが取れるかな……。」
706 :殺戮と絶望の果てに [sage saga]:2012/12/26(水) 02:56:22.66 ID:JxBJzL6G0
女B「テケテケ、トコトトココ、ケテケテテ……。」
悪魔「……?発声に関するエラーか?日本語を喋らない。
   人間を媒体にしているのに、変な話だ。」
 
目の前で仲間をロボットにされてしまい、男達はただ呆然とするしかなかった。

悪魔「まぁいいか。さっそく……。」

???「「待てぇ!」」

少年が声の方を向くと、大勢の男達が構えていた。

悪魔「んっと、どなた?」
男C「どういう事だ、この状況……?」
男D「難攻不落の【バミューダトライアングル】が崩壊し、悲鳴を頼りに駆けつけてみれば……。」
男E「短パンの姉御に似た悪趣味なロボットと、血塗れになったジャージのアニキ……。」

少年は聞いているのか聞いていないのか、特に反応を示さずにキーボードを叩いていた。

悪魔「……全員契約者か?そういえば言ってたな、捜索がどうとか。
   まぁ、見たところ頭数だけ戦闘員並に揃えたってところか。」
男C「くっ……!」
悪魔「では全て回収させてもらおう。珍しい都市伝説だけ、だが。…いけ!」

【ULV】3体が一斉に襲い掛かる。
しかしサングラスの男が集めた戦士たちは、ひるまずに応戦する。あの1体を除いて…。

男C「姉御!姉御じゃねぇのか!?」
女B「テケテケ、トコトトココ、ケテケテテ……!」

【ULV】と化した女は、どこからともなく長い刃物を取り出し、振り回す。

悪魔「元々の都市伝説の能力も使える…いや、使いこなせてないか?
   …エラーが500件以上、言語エラーと行動妨害エラー?
   どれも初めて見る現象だ。ある意味面白いデータだが。」

男C「あのパソコン…たしか姉御を…!」
男A「元には戻せないかもしれないが…あれを壊せば、仲間を増やせなくなる…!」

それを聞き、1人の男が少年の元へと突っ込む。
その手には、宝石らしきものでできた巨大なハンマーが握られていた。

男D「俺がァ!やるぅぅぅぅぅぅ!」

男は、少年へ向けてハンマーを振り下ろす。
少年は閉じたノートパソコンを盾にしてしまう。
その結果、少年は大きく吹き飛ばされながらも無事だったが、ノートパソコンは真っ二つに壊れてしまった。

悪魔「なっ…!?」
男D「どうだ!『世界一固い』ダイヤモンドの力は!」
悪魔「…【ダイヤモンドは硬い】か、また面倒な都市伝説を…。」
男C「これで奴はもう…。」
707 :殺戮と絶望の果てに [sage saga]:2012/12/26(水) 02:57:12.04 ID:JxBJzL6G0
そう言いかけて、少年の手元を見て固まる。
ノートパソコンが、みるみるうちに直っていった。

悪魔「残念だったな、そんな事しても、これは絶対に壊れねぇ!」
男A「…【ロールスロイス】か…!あのパソコンに定着されているのか、あるいは…。」

こちらで戦闘している最中、コイン型ロボットと応戦している方では。

男達「たあぁ!」「ちぃ、飛び回られると攻撃が当たらん!」「逃げるな!」
ロボット1「チャリーン!…ん、来た!」

そうコイン型のロボットが言うと、短パンの女によって外された手足が飛んでくる。
そのままそれらのパーツは元あった所へと戻っていき、コイン型ロボットは元通り戻った。

ロボット1「復活!チャリーン!」

その様子を遠巻きに見て、サングラスの男はもう一つ気付く。

男A「まさか、あのロボットにも【ロールスロイス】の影響が…!?」
悪魔「個体差はあるけどな。【ULV】を作る時に利用する、ってのが関係してるのか。」
男A「くっ…倒す事はできないのか…?」



その時だった。

ロボット2「はアアアァァァ!全員血祭、り…。」
ロボット1「チャリーン!チャリーン…チャリ…チャリ…。」
女B「テケテ…ケ、トコ…トトココ…、ケテケ…テ・テ……。」

男達「「ッ!?」」「な、何が…?」「急にどうしたんだ?」
男C「短パンの姉御!?」
男A「…何が起こった?」

急にロボット達が苦しみだす。よく分からない状況に、男達は対処が分からなくなる。
少年もまた、表情が変わった。

悪魔「…全員のエラーが、100…200…まだ増えるか?こんな時に、面倒な事になったな。」

ある男が、マントのロボットに臆せず挑発する。

男「おい!俺達をコロすんじゃないのか!?」
ロボット2「ち、チガ…。」
男達「こいつ、やっぱり血を求めてやがる!」「さっさと倒そう!」

ロボット1「チャ・チャ・チャ…、やだよ、こんな事…。」
男達「ッ…!?」

コイン型ロボットの言動で、一瞬だけ静寂が訪れる。

ロボット1「ママ、どこ?…帰り、たい…チャ、チャリ…ン…。」
ロボット2「俺、は…こ・な事…望・でいな…い…!」

男B「どういう…事だ?」

女B「テテケテテ、コト、ケテテケ、コトトト…、テケ、コトコココ、…テテテケテ…。」

男A「…やはり、そういう事だったのか…!」

サングラスの男は、少年を睨みつける。
708 :殺戮と絶望の果てに [sage saga]:2012/12/26(水) 02:57:46.11 ID:JxBJzL6G0
男A「お前の【ULV】とやら…完全に人を操れるわけではないのだな?」
悪魔「…正解。洗脳系の都市伝説が【ULV】の中に含まれている。
   時間制限程度だったが…お前達がしぶといのか、人間を使った【ULV】が原因か?」

少年が悠長に分析を続ける中、短パンの女の様子が…。

女B「テケ、コトコココ、…テテテケテ!」

短パンの女の上半身と下半身が分裂し、二手に分かれる。
上半身は右側へ、下半身は左側へ、叫びながら、地面をえぐるように突っ走る。

女B「テケ、コトコココ、テテテケテ!テケ、コトコココ、テテテケテ!」

女B「テケ、コトコココ、テテテケテ!テケ、コトコココ、テテテケテ!」

女B「タ、コトココオ、テテテケテ!テケ、コトココオ、テテテケセ!」



女B「   タ   オ   セ   !」



短パン女の上半身と下半身は、同時に少年に体当たりする。
しかし、見えない何かがそれを阻んでいた。

悪魔「言語障害回復と同時に、洗脳解除エラー。直ったと思ったらこれだよ。」
女B「くぅぅ!?」

弾き飛ばされるも、短パンの女はなんとか体勢を立て直す。
次は上半身と下半身合体し、長い刃物を取り出して斬撃を飛ばす。
しかしそれも、何かに阻まれて届かない。

悪魔「無駄無駄。しかし、人間の意志で【ULV】と契約都市伝説の両方を使いこなせるというのか。
   まぁどちらの能力でも、オレに攻撃は届かないがな。
   唯一それができそうな奴は…。」

男D「俺だぁぁぁあああ!」

ハンマーの男が、少年の後ろから襲い掛かる。
しかしハンマーを振りかぶり飛び上がった瞬間、空中で制止する。

悪魔「すでに対処済みだからねぇ。残念。
   後で都市伝説の方は回収させてもらうから、安心して待ってな。」

ハンマーの男は、まるでそこだけ時間が停止したように動かなくなった。
その様子を見て、短パンの女は怒りをさらに増幅させる。

女B「たぁぁぁ!覚悟ォ!」

短パンの女が少年に跳びかかる。
それでも、見えない壁を越える事はできない。

悪魔「データ提供ご苦労様。おかげで新しい【ULV】の使い方が分かったよ。
   だが、もう暴れるのは簡便な…。」
女B「くっ!?」

そう言いながら、少年は短パンの女の額にコードを張り付ける。
女は抵抗を試みたが、何故か体が動かない。

悪魔「【ULV】、アンインストール。」

その瞬間、短パンの女は光に包まれる。
光が消えると、機械化されていた部分も何もかも元通りに戻っていた。

悪魔「お次は…。」

少年は信じられないほどのスピードで跳躍し、残りのロボット2体のところへと向かう。

悪魔「お前達にまで暴れられては困るからな…。」
ロボット「うっ!?」「はっ!?」
悪魔「【ULV】、アンインストール。」

ロボット達は光に包まれ、元の十円玉とマントに戻った。

悪魔「さてと…実験はこれぐらいにするかな…。」
709 :殺戮と絶望の果てに [sage saga]:2012/12/26(水) 02:58:16.96 ID:JxBJzL6G0



女A「いっけぇぇぇえええ!」



その声に反応し、少年が振り返ると、スーツの女が光弾をこちらへ放っていた。
その光弾はそのまま少年に命中し、爆発を起こした。

女A「はぁ…はぁ…。」
男A「一発逆転の一手だったが、どうやら上手く行ったようだな。
   しかしあいつのモールス信号に気付き、戻れるという推測のせいで
   無理に耐えさせる事になってしまった…。」
女A「何、言ってるんですか…。本当に戻れたじゃないですか…。」



男達「さすがスーツの姉御!」「これなら奴も…!」
  「よぉし、さっさと2人を医療班へ!」



しばらく、辺りに歓声が鳴り響く。






それも、つかの間だった。



悪魔「あーぁ、良い手だったんだろうな。数分前までは。」



砂煙が晴れると、赤黒いオーラをまとった少年が、いた。

悪魔「でも残念、データをもらった瞬間から今まで、ずっと解析を続けていたのさ。
   そしてもっとも最適な防御方法を、ちょっとさっき見つけていたんだ。」

スーツの女は青ざめ、震える。自分の渾身の一撃が、無駄に終わったのだ。

悪魔「んで…医療班って、都市伝説だよな?通常の医療品は手には入らないだろうし。
   となると…面倒だから選別はやめるか。」

そう言いながら、少年はポケットからカプセル状の何かを取り出す。
それについているボタンを押し、宙に投げると、黒い煙が出てくる。
その煙はどんどんと広がっていき、やがて空を覆い尽くす。

男A「ま、さか…魔王…!?」

悪魔「お前さぁ、なんか仲間を呼ばれる事を心配してたけどさ。
   俺達の部隊1つ1つが、この程度の集落を滅ぼすには充分な戦闘力を持っているのさ。
   まぁ、使えない部隊もあるけどな。」

少年はまた、サングラスの男に向けて悪魔の笑みを浮かべる。

悪魔「特に幹部、お前達が『悪魔』と呼んでいるやつらは…
   少ない『死傷者(コスト)』で制圧する事に特化しているのさ!
   そして俺は、1人で都市伝説の回収と制圧できる。杞憂だったんだよ!お前の悩みは!」
710 :殺戮と絶望の果てに [sage saga]:2012/12/26(水) 02:58:45.35 ID:JxBJzL6G0
煙の中でスパークが走る。すると煙の向こう側からか、槍が降ってくる。
それを見て男達は逃げ惑うが、槍は的確に彼らを狙っていた。

男達「ぎゃあああぁぁぁ…」「…が、は…。」「う、うわぁぁぁぁぁぁ…ぁ…。」

少年はキーボードで何かを打ち込みながら、微笑む。

悪魔「この装置も完成と見ていいな。これで量産が図れる。都市伝説回収が捗るねぇ…。」



男A「俺は…負けたのか?」



サングラスの男に向けて、1本の槍が降ってくる。



男A「悪は、滅びないとでも…言うのか…!?」



その槍は、サングラスの男の胸を―――
711 :殺戮と絶望の果てに [sage saga]:2012/12/26(水) 02:59:22.52 ID:JxBJzL6G0






数多の悲鳴が響き、やがて静かになる。

少年はキーボードを叩き、呟く。

悪魔「これで…99体回収、と。100体とか言ってたのはサバを読んでたのか?
   …いや、まずは報告しよう。」

少年はノートパソコンを閉じ、背負っていたリュックの中に閉まい、地面に置く。
そしてリュックから通信機を取り出し、誰かと会話する。

悪魔「オレだ。今すぐ―――へ行って欲しい。おそらく―――。
   何も無かったらすまないが、よろしく頼む。」

そう言って、少年は通信機を切った。






―――と同時に、背後に激痛が走る。

悪魔「…な、に…?」
タケル「へへっ…。」

そこには、今まで隠れていたタケルの姿があった。
その手には、血の付いた包丁らしきものが見える。

悪魔「…どこに隠れていた、かは聞かないでやろう。
   それよりも…お前、何をしたか分かっているのか?」

タケルは震えながらも、その顔に笑みを浮かべる。

タケル「それはこっちの台詞さ!これはオレが契約した【縁切り包丁】!
    これでお前は、お前の都市伝説は無力になった!」

それこそが、タケルの目的だった。

この世界で、都市伝説を失う事は死に直結する。
より強い都市伝説で世界を支配しようとする、彼等ならなおさらだ。

その都市伝説を、問答無用で開放する。
この【縁切り包丁】の能力は、おそらくどんな都市伝説よりも強いだろう。






悪魔「なるほど、だが…。」



少年は、タケルの首元を掴んで持ち上げる。

タケル「ぐっ!?うぐっ…。」

悪魔「お前に2つ教えてやろう。
   1つ、その都市伝説には、実は対抗策がある。その都市伝説は研究済みなんだよ。」

タケルは必死にもがく。

悪魔「2つ、お前はパソコンをしまう隙をうかがっていたんだろうが…
   オレの契約している都市伝説は…。」

少年は自分の傷口にもう片方の手をかざす。
すると傷はあっという間に癒え、血で汚れた部分も綺麗になっていた。

タケル「……!?」
悪魔「パソコンじゃ、ない。が…。
   オレに傷をつけた勇気と行動力に敬意を表す。」
712 :殺戮と絶望の果てに [sage saga]:2012/12/26(水) 02:59:50.38 ID:JxBJzL6G0
ふと、タケルの周りにディスプレイのようなものが浮かび上がる。
そこには、大量の数字と、文字と…自分の顔が映っていた。

悪魔「見せてやるよ…オレの力を。」



ふと、タケルは自分の体が軽くなっていくことに気が付いた。
そして足を動かそうとした時、全てを悟った。

自分の体が、だんだんと消えているのだ。



悪魔「あのサングラスのやつ、オレを見て
   『機械の触りすぎで命を機械程度と思ってる』とか考えてたんだろうが…」



次に、タケルは自分の記憶が消えていくことに気付く。
走馬灯のように流れていく記憶が、数秒後には思い出せなくなっていた。



悪魔「オレの前では、本当に命どころか、
   『この世の全て』がプログラムの塊でしかないんだよね。」



次に、タケルは苦しくなくなっていくことに気付いた。
痛みもなく、音もなく、臭いもない、何もない。
ディスプレイを見ると、それに比例するように、文字がどんどん消えていく。



悪魔「そんなオレに抗った末路…絶対的な管理者に攻撃するマルウェアは…。」



―――そして、タケルの視界は真っ暗になった―――



悪魔「デリート、完了。」



ディスプレイには、『NULL』とだけ表示されていた。
713 :殺戮と絶望の果てに [sage saga]:2012/12/26(水) 03:00:28.59 ID:JxBJzL6G0












悪魔「―――で、どうだったんだ?」

《???「ビンゴだったよ。【風の便り】の契約者が【虫の知らせ】の契約者と情報交換を行っていた。」》

悪魔「やはり。あの閉鎖空間で、情報も無しに生活するのは危険だろうからな。
   通常の通信手段が使えなくとも、都市伝説ならやはり可能だったか。」

《???「まだ他にも同じ手を使っているやつがいるかもしれん。
     最悪、その2人を含めたネットワークだったとしたら…。」》

悪魔「…さっさと片付けないとな。ところで、また千人無傷か?
   やっぱ大群率いるはかっこいいな。憧れるよ。」

《???「人海戦術が取り柄なだけだ。私は、1人で成果を上げる事はできないからな…。」》



悪魔「よし、じゃあ一旦帰るとするか。異世界系の都市伝説の研究もしたい。
   うまく行けば探査装置のアップグレードができるかもな。」

《???「あまり無理はするなよ、[日向]。いくら軍のブレインでも、休息は必要だ。」》

日向「大丈夫だよ[十文字]さん。そっちこそ、しっかり休んで次回に備えるべきじゃないか?」

《十文字「…まぁいい。倒れるようなことはないようにな。」》

日向「了解。」
714 :殺戮と絶望の果てに [sage saga]:2012/12/26(水) 03:03:39.16 ID:JxBJzL6G0














俺は知ってしまった。

終わったはずの物語が、続いていたことを。



だが後悔している暇はない。

俺が観測したから、どうという訳ではないかもしれない。

むしろ発見できたおかげで、全てが終わる前に、救う事ができるのかもしれない。

とにかく、早く伝えなければ…。



いや、まずは『あれ』を…せめて『あれ』を回収できれば…。

困難な事だろうが、あいつらには恩がある。

全ての責任を押し付けたくはない。少しでも役に立ちたい。



そのためにも、まずこの地に降りよう。

全てを元に戻すために―――







―――西 剣裁
715 :大王の ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/12/26(水) 10:19:51.40 ID:GYetaooq0
ふふふ…これで>>704の方のような人も人間不信に…(ぉぃ

という訳で、【ULV】の話でした。
自分なりに悪人が勝つ、という話をやってみました。実は悪人の書き方の練習だったりもします。
なのでご指摘等ありましたら、遠慮なくお願いします。

そしてこの話は舞い降りた大王に続きます。
がんばって時間作って書きます。では。
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/26(水) 14:02:41.18 ID:lQO7LeJAO
まじかあぁぁぁ!!!!
大王の人乙ですー
これはもしかして「異世界の彼ら」対「学校町の彼ら」の戦いとか!?
続きを待ってますー
717 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/26(水) 23:54:01.69 ID:ZLAkSFNR0
とうとうバラしたか…
そういや作者の分身っていう立ち位置のキャラとしては、
花子さんとかの人のアンジェリカたんよりも前から書かれてたんだよな、剣裁
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/27(木) 18:16:59.53 ID:WJNgvPLN0
大変遅くなりました、皆々様投下乙ですー!
>>582
>こうなったら復讐だ!この怒りは犬派のやつらにぶつけてやる!
多分、このパッケージ仕組んだ人が猫嫌いだったんだろうなぁwwww
そして続く負のスパイラル

>>590-594
実は途中まで、>>591でノイちゃんが抜き取ってたオチかと(ry
イモリの黒焼きって振りかけるタイプだったのかwwww初めて知りました
そして惚れ薬って……ようは体の良い実験体じゃないか、貴也君ェ……

>>596
>紫亜が(母親の策略か何かで)イケメンベッドヤクザと付き合ってて
いやー、万理ママ的にはむしろ、殺人鬼は優先排除対象に(ry

>>598-600
【クトゥグア】に似た力に、這い寄る混沌の後継者……!?
なんか裂邪にヤバそうなフラグが建ちつつある気が……

>>604-611>>615-626>>656-658
改めて大団円!乙ー!
そして何堂々と浮気してるんだ、裂邪もげろマジもげろ
でもローゼちゃんが幸せそうだから複雑でもある

一方で、着実に増えていくR-No.√wwww
何気なく思ったんですけど、この子達って一応R-No.の傘下で良いんでしたっけ?

南極では計画のみに終わった都市伝説兵器とのバトル!
個人的には【パンジャンドラム】が見たかったり(ぇ

>>613
つまり骨が痛めつけられるほど、より頑強になっていくのか……
肉弾戦、一般人相手にはそりゃ圧勝できますね
問題はその頑強になった骨が能力使用を止めても継続するのかですけど

>>630
ひつぢ可愛いよひつぢ
今度こそ、契約できるのか……?

>>634
契約者の作品のために、同族殺しか……
というか、何で口裂け女はこう不憫な役が多いんだろうww  ←短編で一人存在消滅させた癖に

>>636
>「ロリっ子と婚約できるようにしろ」
>「てか妹と結婚できる制度を認めろ」
この時点で影の人特定余裕でした

>「さっさとHMMジェノブレ出せ」(※願い事はフィクションです。フィクションです
バーサークフューラーは壽屋産をデパートで見かけました

>>642
>ザントマン
ドイツの民間伝承に登場する睡魔か……丸一日眠らせて、能力を無効化したんですね
それにこの契約者、どうやってこんな物騒な都市伝説と契約をwwww
というか一日限定の能力で何をしようとwwww

>>644-648
うぁぁぁぁぁぁ;;
妹ちゃんは消えてしまったのか、それとも契約した【トミノの地獄】と共に闇の中で……
こういう心に来る話に本当弱い;;

>なんだか昔懐かしいスレがあったので暇つぶしにバーッと書いてみました。おしまい。
……!?ま、まさか元作者の方!?

>>656
和むww
こんな日常と都市伝説の共存してる感じを出せるように頑張りたいです

>>667
満場一致で「お前がもげろ」wwww

>>673-675
ただの変態じゃねえか、何この悪魔wwww
そしてノイちゃんが以外にもサンタの正体に気付いてた件
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/27(木) 18:35:53.72 ID:WJNgvPLN0
>>680-691
カメ娘可愛いよカメ娘
学校町に来る……ということは、今後彼女も巻き込まれるんでしょうか……?

>>696-700
あれ、こんな話去年あったっけ……と思ったら一昨年のでしたか
皆能力フル活用でプレゼント配ってますね、でもこっくりさんは微妙に遅そうwwww

そしてサンタwwww『子供からやり直せ』ってお茶目なんだか皮肉っぽいんだかwwwwww

>>705-714
ああ、全滅してしまった……“人間を使った【ULV】”って事はロボット1・2も……
【縁切り包丁】【刃物は縁を切る】などの『強制的に契約を断ち切る』系統の都市伝説まで無効化されるとは、
一体どんな能力を……と思っていたら!

>そしてこの話は舞い降りた大王に続きます。

まさか本編と繋がるとは!
720 :俺とプラモと都市伝説 ◆GsddUUzoJw [sage]:2012/12/28(金) 00:05:35.56 ID:uwqzPRTA0
「ふぅ、いい汗かいた。じゃあな婆さん、また明日リベンジに来るからな!」

「ほっほっほー!いつでも挑戦を待っておるぞ、我が“らいばる”よ!」


その日、もはや日課と化した婆さんとのホッピングバトルを終えた俺は、いつもより足早にプラモ店へと向かった。
というのも、今回『販売希望』させたプラモデルは、これまでのそれとは次元が違うレベルの物だからだ。
販売店舗と在庫数も能力で調整(おかげで若干寝不足になりながら)しているし、絶対に買い逃すわけにはいかない。

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・
それはある意味、ゼロから命を生み出すと同義のプラモなのだから。

と、ふいに手持ちのエコバッグからヴーヴーという振動が。
中に入れておいた携帯を取り出して見ると、紫亜からメールが届いていた。


「ん、何々?『恋ちゃんについて相談したい事があります、もし忙しくなければ私の家に来ていただけませんか』……恋について?」


先月、俺の家の前で倒れていた【とんからとん】の少女、遁殻恋。
あの日以来、紫亜の家で一緒に暮らしている彼女に何かあったんだろうか。


「『オッケー、プラモ買ったらその足で向かう。というか何があったか三行で説明してくれ』……送信っと」


返事のメールを返して少し時間が経った頃、またもヴーヴーという振動。
返信早いな。正直な所、三行説明は冗談だったんだが。
いやでもアイツ真面目だし、頭の回転速い所あるからな―――


「……えっ?」


―――そんな事を考えながら、送られてきたメールを開いた俺は。


「(…………えええええええっ!?)」


その予想を遥かに裏切る内容に、思わず心の中で叫んでしまった。





『恋ちゃん、何故か今年から中央高校一年生
 恋ちゃん、学力およそ小学〜中学生レベル
 恋ちゃん、新学期テストまでに勉強超必須
 
 というかプラモ>恋ちゃんなんですか!?』




まさか、文字数までぴったり揃えて……!

いや問題はそこじゃない!

恋が、俺たちと同じ高校に入学するだって!?
721 :俺とプラモと都市伝説 ◆GsddUUzoJw [sage]:2012/12/28(金) 00:06:53.21 ID:uwqzPRTA0
※この物語は、平穏とライガーたちを愛する一人の契約者の日常的な非日常を描いたものです。過度な期待はしないでください。
※もうすぐ世間では2013年になりますが、本作品内の時系列は2012年となっております。姦姦蛇螺編はもう少しお待ち下さい。

では、【俺とプラモと都市伝説】第7-a話をお送りいたします。




例のプラモデルを無事に購入した俺は、こうして紫亜の家まで来たんだが……どうしよう。
両手がふさがっているので、ドアに手が届かない。
仕方が無いので、肘を使ってインターホンを押す事にしよう。

ピンポーン

『……はい、古田です』

「紫亜ー俺俺ー。今両手がふさがってるから、開けてくれないかー?」

『あ、有間k『騙されるな紫亜!これは少し前に流行った、“オレオレサギ”なるものに違いない!』……えっ?』

「えっ?」


えっ?
今のって、紫亜と契約してる殺人鬼の声だよな?


『よく聞け、確かに似てはいるがあの小僧とは別の声だろう!ドアを開けたら最後、壺だの石鹸だのを無理やり買わされるに決まっている!』


おい、オレオレ詐欺と押し売りと霊感商法が混ざってるぞ。というか第一声が「俺俺」何て言う押し売りがどこにいる。

……しばらくあの殺人鬼と関わってきて、分かってきた事が二つある。
あいつが本気で紫亜に惚れており、彼女を本気で気にかけている事。
そして、その心配の方向が変な方向に向く事が多いという事だ。ちょうど今みたいに。


『え、と……多分、声が変に聞こえるのは、インターホンを通してるからで……』

『そしてその代金としてあり得ない金額の慰謝料を要求され、家も何もかも失った紫亜を……紫亜を……っ!』

『あの……殺人鬼さん?』


ちょっと待て!今お前の中で俺、どんだけ極悪に脚色されてんの!?
というか、だんだん嫌な予感がしてきたんだが……。


『紫亜は私が護るっ!くたばれえええええええええええええ!!』




瞬間―――俺の頭上にレンガの雨が降り注ぎ。



ここへ来る前に被っておいた『衝撃吸収ヘルメットプラモ』によって、それらはことごとく無効化されたのだった。
…………うん、本当に被っておいてよかった。


(続く)
722 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/28(金) 00:20:37.50 ID:tYQv6PaZ0
>>718
>なんか裂邪にヤバそうなフラグが建ちつつある気が……
未来の彼が楽しみですねー(

>でもローゼちゃんが幸せそうだから複雑でもある
ぶっちゃけミナワがいなかったらローゼとくっついてたレベルですw

>何気なく思ったんですけど、この子達って一応R-No.の傘下で良いんでしたっけ?
傘下というか、√2を始めとした平方根は数字として扱うので、正式な「組織」のメンバー扱いですよん
だからメリーさんレイちゃんキコちゃんはこれから『黒服』となる訳で

>個人的には【パンジャンドラム】が見たかったり(ぇ
面目ねぇ……一人総選挙で「モンスター」にお株を奪われちまいやして……orz

>この時点で影の人特定余裕でした
ですよねー♪

>満場一致で「お前がもげろ」wwww
我ながら「言霊」の使い方が最低過ぎるというw
723 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/28(金) 00:30:10.86 ID:tYQv6PaZ0
うおっとプラモデルの人乙です〜
三行wwwwww律儀に返す紫亜ちゃんかぁいいよ結婚してくだ紫亜(
殺人鬼も相変わらずだなwそして恒例の出井もげろ(
724 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/12/28(金) 03:49:54.66 ID:sGgxbOsAO
>>718
>イモリの黒焼きって振りかけるタイプだったのかwwwwwwww初めて知りました
本人も書くために調べて初めて知った

>というか、何で口裂け女はこう不憫な役が多いんだろうwwww  ←短編で一人存在消滅させた癖に
本人が幸せだからいーんですww

>ただの変態じゃねえか、何この悪魔wwwwwwww
実は去年からの構想wwwwww

>そしてノイちゃんが以外にもサンタの正体に気付いてた件
じゅ、13歳…

>>620-621
出井君ヘルメット持参とは…彼が段々非日常に慣れていく様子がよくわかるwwwwww
そして本当に3行ww紫亜ちゃん素直でかわゆす
725 :>>547-548 [sage]:2012/12/28(金) 22:58:04.01 ID:MVidHOAS0

「で?」

「ウイルスと細菌の違いを知ってる?
 色々挙げていくとキリがないから、簡単に説明するわ
 まず、ウイルスは細菌よりもサイズが小さいの。種類にもよるけど大体100分の1くらい
 そしてウイルスは細胞膜を持たない。基本的に核酸とタンパク質だけ。シンプルでしょう?
 細菌とは違ってウイルスは自力でATPやタンパク質の合成ができないわ
 単独での増殖もできないから、生物の細胞に寄生して増殖するの
 宿主から酵素や代謝機能を摂取して増殖を始めるのよ
 ここまでいい?」

「話が見えねぇな」

「アナタのその能力
 ・・・『新種の細菌は精子』の能力の性能を試してみたいのよ
 都市伝説では、あくまで『細菌』という事になってはいるわ、でもね
 理論上、拡大解釈の方向性によっては、能力を『ウイルス』にまで適用可能なんじゃないかしら
 これって素敵な事だと思わない?」

「まぁたその話かよ!
 俺ァてっきりデートのお誘いだと思ったんだがよ!!」

実験班のラボにいるのは、一見して浮浪者のような黒服の男と
白衣を羽織った縁なし眼鏡の黒服の女性だった

貴方は『新種の細菌は精子だった』という都市伝説を聞いたことがあるだろうか?
この黒服の男は、その都市伝説の拡大解釈により、射程内に存在する細菌を精子へと差し替える能力を保有しているのだ

「つまり、実験に協力しろってんだろ?
 俺をモルモットにした実験に! なあ!!」

如何にもハイな声色で、男は頭に手をやった
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/28(金) 22:59:43.90 ID:MVidHOAS0

「捜査で実績作るんならともかくよぉ!
 実験協力じゃあ完全にボランティアだろ? 俺の見返りが無ェじゃあねえかよ!」

「あら、アナタに対しても
 ささやかながらお礼くらいはできるはずだけど?」

「いらねぇよンなもん
 俺がほしいのはℵナンバーのオンリーワンよ!」

じゃあな、と言って黒服の男は踵を返してラボを後にしようとした


「過去に都市伝説の『ウイルス』に冒された人たちを救えるかもしれないのに?」


女性の声に、黒服の足が一瞬、止まる


「都市伝説の『ウイルス』に対する防御策を構築できるチャンスを
 ・・・誰でもないアナタが持ってるかもしれないのに?」


「ンなわけねえだろ」

答える男の声は、先程のハイなそれでは無かった

「感染った奴ァ、みんな死んでるだろ」

黒服の男はそれだけ言って、ラボを出た
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/28(金) 23:03:12.83 ID:MVidHOAS0

男はあの女性とも長い付き合いだ
だが、付き合いが長いからと言って、互いの事をよく知ってるわけではない
特に、研究価値があるにもかかわらず、都市伝説の能力について碌に「組織」のデータベースに載っていない奴だとなおさらである

男は暗く、長い廊下を歩いていた
自分の顔に呆れ笑いが浮かんでいるのが、いやでも分かる

呼び出され、てっきりデートの誘いかと思って
ラボへと向かった時からうっすら勘付いてはいた
しかし、まさか気のせいだろうと思っていたのだ

こうしてラボを出て、はっきりと確信した

「尾行けられてるなあ」

思わず独り言が漏れた

向かう先は廊下の突き当りにある飲料自販機だ
もう見えてきている。自販機の横には申し訳のようにテーブルと椅子が置いてある

ポケットから財布を取って券を引き抜く

「みんな死んだ奴が悪い」

我ながら、少し大きな声だった

728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/28(金) 23:03:58.46 ID:MVidHOAS0

自販機の前に立ち、券を呑ませた

「運が悪いから感染った、間抜けだから死んだ」

コーヒーのボタンを押す
ガムシロップ、多め。そしてクリームも、多め

「死んだ奴への弔いは、形だけ
 ましてや、償いなど、あるはずもなく」

カップに注がれる音が聞こえる
ドブに小便を注ぎ込む時のような音だった

「生きた者は、殺した者を
 利用価値があると踏めば
 まだ自分たちに有用だと判断すれば
 ・・・歓迎する」

コーヒーが出てくる時間は意外にも長い
さしたる期待もなく、男は受け取り口を乱暴に開いた

「そうして『組織』はぶくぶくと
 テメェのハラを肥やしてきたんだ」

男は椅子に座った
ぬるいカップを持ったまま、おもむろに廊下の闇の方を向く
そこには誰もいない。先程から感じていた気配は、既に無かった

「それが普通だ」

カップを傾ける
自分が飲むためでなく、傍らの観葉植物の鉢へと流し込むために

「いいじゃねぇか
 それでいいじゃねぇかよ、なあ」

黒服の男は、虚ろな静けさを湛えた、何処までも暗い廊下へと問いかけた
闇は何も答えなかった


糸冬
729 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/29(土) 09:57:12.50 ID:tKpnZCv10
ギャグ単発だと思ったらシリアス連載だったでござる
精子の人乙ですの(語弊あり過ぎる
拡大解釈でウィルスをも精子に変えるか……素晴らしい、可能だったなら素晴らしい
ルートが操る幾兆ものインフルエンザウィルスが一瞬にして精子になって「いやあああああああぁ!?」って叫ぶところが見たい(マテ
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/29(土) 11:46:55.71 ID:JbPL0ZGDO
皆様投下乙ですー

剣裁の世界と正義の世界が交じるとき、はたして彼らは何を思うか……
正義くんには正義を貫いてほしいです
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/29(土) 23:46:03.30 ID:xbMGlOXAO
>>725-728
投下乙ですー!まさか連載だったとは…
続きが楽しみなのです!
732 :夢幻泡影 † 機械の軍団 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/30(日) 00:59:20.74 ID:Vg3wCDkz0
「うへぇ……氷の中がこんなことになってるたぁ思いやせんでしたねぇ…」

氷山の中には広い通路があった
それも氷の通路ではなく、近未来を思わせるメカニカルな通路
あちこちに赤や緑に明滅するLEDがあり、何処かを適当に触れば爆発でもしてしまうんじゃないかと考えてしまう

「「氷山空母」……しかも改造されてるな
 内装だけじゃない、さっきの「ゼンガー」とかと同じで他の都市伝説を無理矢理くっつけられてる」
「くっつけるって…そんなことが出来るんですか?」
「同ジ機械系都市伝説ダト考エバ容易イノカモ知レンガ……
 少ナクトモ普通ハ無理ダロウナ」
『というより通常なら考えもしないだろうね』
「全くだぜ。なんつーか、悪趣味だよな」
「もっと悪趣味な奴が出てきたぞ」

裂邪が足を止める
その視線の先には、3つの影があった
「サイボーグ」―――生命体が機械によって改造された存在
1つは上半身は人間のもののようだが、下半身が機械で出来ており、足のように長く伸びたブースターで浮いていた
1つは四肢が蜘蛛のように長いもので、その先端は刃物らしく鋭かった
1つは右腕から光の剣が伸びており、口はプロテクターで覆われていた

《β07-Cyborg-TekeTeke-Jetbooster+Launcher-Sky-1960……目標確認》
《β08-Cyborg-DarumaGirl-QuadrupleSword-Land-1960……目標確認》
《β09-Cyborg-SlitMouthWoman-LaserBlade+PlasmaCannon-Land-1960……目標確認》
「「テケテケ」、「ダルマ女」、それに「口裂け女」ぁ!?
 魔改造も大概にしろよ!!」
「胸糞悪い……命を弄んでるとしか思えんな」

3機は同時に動き出す
ホバー付き「テケテケ」―――β07は、ブースター噴射口からミサイルを吐き出し、
足付き「ダルマ女」―――β08と、サイボーグ「口裂け女」―――β09は裂邪達に接近した

「『バリアブル』! 『夢現』!」
「はい、ご主人様!」

ロッドの先端のリングから大きなシャボン玉が作り出され、ミサイルを全て受け止めて破裂する
続いて長い鼻から白い煙が噴き出されてβ08とβ09を包み込んだが、それらは平然としているどころか、その足を止めない

「ちっ、効いてねぇみてぇだぜ!?」
「機械は夢を見ないってか…『角刀影』!」
「了解シタ」

シェイドが黒刀に変わると、裂邪は「レイヴァテイン」も刀に変え、
右手に黒刀、左手に「ティルヴィング」、そして口に「レイヴァテイン」を咥えて、
β08の足先の刃とβ09のレーザーブレードを受け止め、弾き返した
が、β09は更に大口を開いて砲口を出現させたと思えば、光線を放った

「どんだけ改造してんだよ…!!」

「ティルヴィング」を構えて光線を綺麗に跳ね返し、β09の頭部に命中する
ぼんっ!!という鈍い音と共に頭部が爆発し、白煙と血のような液体を垂れ流してがちゃりと倒れる
その様を確認し、続けて裂邪は3本の剣を構えて狙ったのはβ08だった
接近する裂邪を返り討ちにすべく刃を振るうが、ことごとく受け止められる
そして弾き返し、回転して竜巻の如き勢いで突撃し、切り刻んだ

「『シュトゥルム・ウント・ドランク』……からのぉ!!」

今度は裂邪をウィルが包み込み、彼はそのままβ07の元へと走り出した
ミサイルを発射して威嚇するβ07だが、全て無惨に切り落とされ爆発四散した

「『焼き鬼斬り』!!」

横一文字に切り裂かれたβ07は、
「テケテケ」本来の姿を一瞬だけ取り戻し、跡形も無く砕け散った
ふぅ、と裂邪が溜息を吐くと、ウィルとシェイドが元の姿に戻る

「何とか片付きやしたね」
「今回理夢さんはお休みですね」
「馬鹿野郎、夢は見せらんなくともぶっ潰す事くらい出来らぁ……つぅかさっきから一々刺さるんだが」
「今は進もう、この狭い中で大量に来られると厄介だ」
733 :夢幻泡影 † 機械の軍団 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/30(日) 00:59:46.54 ID:Vg3wCDkz0
全員が頷き、更に奥へと進み始めた
その矢先だった

「ッ! ご主人様、あれ!」

奥の方から新たな敵と思しきものがぞろぞろと顔を出す
それはさながら生物のように見えた
鋭い爪のある6本の腕、先端がハンマーになった尾、胸部には赤い水晶体があり、
目は左右に4つずつ、口はX字に裂けていた
裂邪達はその姿を見て驚愕した

《《《G...G...Z...G...Z...》》》
「コレハ……「平行世界」ノ裂邪ノ「ミュータント」デハ……!?」
『……そういえば、あのロボットはあの事件の後に学校町に現れたと言っていたね?』
「それって、細胞か何かを回収した、ということですか?」
「…待て、それどころじゃないぞ」

裂邪の言葉に、全員が「え?」と聞き返した
確かに姿は「ミュータント」と瓜二つだったが、下半身が異なるものだった
足ではなく、巨大な車輪だったのだ
この姿の意味が何か理解したのだろう、裂邪の表情は青ざめていった

「ま、とにかくぶっ潰しゃあ良いんだろ? やってやるz―――」
「ミナワ、理夢に乗って大きめの『バリアブル』、理夢は割と急いでここを突破しろ」
「へ?」
「はぁ? 何で――――」
「良いから急げ!!」

裂邪に急かされ、ミナワは裂邪も乗った事を確認して理夢にバリアを張り、
理夢は舌打ちしつつ、迫りくる「ミュータント」の群れを縫うように走り始めた
瞬間、「ミュータント」が轟音と共に爆発し始めた

「な、何があったんでい!?」
「言っとくが俺様じゃねぇぞ!?」
「やっぱり、あの身体は「パンジャンドラム」! イギリスで計画されていた自走地雷だ!」
「地雷って……それってもしかして……!」
「あぁ、こいつらは自爆専門の神風特攻隊だ!」

何分かかったのだろうか
爆煙の海を暫く走り続けていると、ようやく光が見えた
そこは部屋、というよりも広間に近く、これまで通っていた廊下とは比べ物にならない程広かった
先程の「ミュータント」達の姿も、何処にも見当たらなかった

「御苦労だった理夢、ここまでくれば大丈夫だろう」
「ぜぇ、ぜぇ………後で鱈腹夢喰ってやるからな」
『随分広いね、何も無いというのもおかしな話だ』

シャボン玉が弾け、裂邪とミナワが理夢から降りた時だった

「フフフフ……無事にここまで辿りつけたようだね」

全員が声のした方を向いた
広間の向こうから歩み寄るのは、白衣を着た色素の薄い青年だった

「ようこそ、歓迎するよ…黄昏裂邪くん?」



   ...To be Continued
734 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/30(日) 01:00:54.02 ID:Vg3wCDkz0
この続きも書きたいところだが
明日は朝から実家に帰るのでもう寝る……
735 :ジャックさんと俺 [sage]:2012/12/30(日) 14:51:44.17 ID:DRQI5ojR0
「あーうー」
「いつまで引きずっているんだ契約者。戦利品は読まないのかね」
「いや、読むよ。読むけどねー。目の前で完売とかさー、2年連続だよ。泣けるね」
「それでも徹夜で並ぶという違反行為に手を染めない契約者は偉いよ」
「徹夜組はいかんよ、徹夜組は。会場のご近所の迷惑になるし、コミケの存続が危うくなるような行為はいかん」
「契約者的に重要なのは前者と後者どっち?」
「後半。コミケなくなったら困る超困る」
「でっすよねー………あ、今日の夕飯どうするの?」
「あー、コミケと言う戦場から帰ってきた俺にもはやライフポイントは残っていません。今から戦利品読んで回復するにしても自炊は不可能だ。店屋物頼むから、好きなチラシをとるがいい」
「やったー。どれにしよう」
「に、してもだ。ジャックさん大人気だったなー。ジャック・ザ・リッパーのコスプレ超人気だったなー。女の子に囲まれて写真頼まれまくって俺嫉妬」
「コスプレじゃなくて通常装備な件について。流石に刃物は持ち込み禁止だから作り物だけど………あ、契約者。釜飯食べたい。釜飯出前していい?」
「おー、いいぞー。選び終わったら俺にもチラシ見せて」
「はーい……そう言えば、会場のトイレすごかったですね。男子トイレが女子に占領されようとは…」
「困るわ〜、マジで腐女子のマナー違反困るわー。あいつら羞恥心ってもんがないのかね」
「腐女子全部があぁじゃないから、偏見の目はいかんですよ」
「でもさー、あいつらちょっとくらいトイレ我慢できんのかね、俺だって我慢してるのにさー。ジャックさん、あいつら切っちゃってよ。ジャック・ザ・リッパーのターゲットは女性だろー」
「残念、僕のターゲットは娼婦です。彼女らは体は清らかなんでターゲットになりえません。あと、コミケ会場で流血沙汰起こしたらコミケ中止になりそうなんで却下」
「ですよねー」
「それとさ、契約者。ちょっとあれな話で悪いけど、女の子には月のものってやつがあってですね。そういう関係でも、女性のほうがトイレ利用多くなるのは仕方ないよ。考えてみてよ。かわいいコスプレしている女の子が、間に合わなくて太ももをつーって血が流れたら大変でしょ?」
「…………………むしろ、興奮する」
「しまった、僕の契約者が手の付けられ用のない変態だった」
「そんなこと、俺の今日の戦利品リストを見ればわかるだろう」
「もうやだこの契約者………あ、僕、うなぎ釜飯で頼みます」
「はいよー、うなぎ好きだねジャックさん」
「日本のうなぎ美味しいから好きだよ。本国のうなぎゼリーは嫌いだけど」
「自国の料理嫌いだねジャックさんは」
「僕は契約者と契約するまで、本国から出られなかったからね。数百年単位であの国の飯食べ続けてたんだよ、地獄だよ。日本料理美味しくて天国だよ。もう帰りたくない」
「俺が死んだら契約切れて、自動的に本国に戻されるんだろ?」
「そうなんだよねー…やだなぁ、強制送還」
「やだ、そういう言い方すると世知辛い」
「元々、活動していたと言われている範囲からは出られないはずなのを、契約によってなんとかなってる状態だからなぁ……あ、何か飲む?紅茶くらいは淹れるよ」
「俺はコーヒー派なんで、冷蔵庫に入ってる缶コーヒーでいいや、持ってきてー………でもさー、ジャックさん」
「何?あ、BOSSでいいの?」
「うん、それで……ジャックさん、切り裂きジャックなのに、俺と契約してから全然人切り裂いてないけどいいの?」
「契約者が襲われた時に口裂け女とかひきこさん切り裂いたから大丈夫。娼婦じゃない相手は切りたくないけど、契約者護るためだから」
「そうかー、やなことさせてごめんな」
「いいよいいよ………あ、駐車男は自主的に切ったけどね」
「あぁ、俺の注射をくらえってコート開いてきた都市伝説か変質者か微妙だったアレか」
「大丈夫、気配的に120%都市伝説だったから」
「ジャックさんがあいつの注射切り落とした時は股間がひゅってなったわー。しばらく「俺が注射してあげるよ」系のネタ読めなくなったわー」
「しかし一週間後、そこには元気にロリにお注射するネタを読んでいる契約者の姿が!」
「ロリは偉大だよねー」
「二次元にとどめておこうね、いろんな意味で……あ、契約者、注文するもの決まった?電話しとくよ」
「あー、じゃあ俺角煮釜飯で」
「はいよー」
「………ジャックさん」
「何?」
「ちょっと早いけど、来年もよろしくね」
「………うん、よろしく、僕の契約者にして親友」




終わる
736 :ジャックさんと俺 [sage]:2012/12/30(日) 14:53:51.25 ID:DRQI5ojR0
ぐだぐだ会話者に挑戦したけど難しかった
737 :ジャックさんと俺 [sage]:2012/12/30(日) 20:33:15.11 ID:1R9X1twC0
「そう言えばさー」
「どうしたんだい契約者」
「徹夜組さー、マナー守らない最低集団なわけだしさー、賢者の石の材料にしてもよくね?」
「Twitterで見たネタだね、それ」
「もしくは、悪魔召喚の生贄とかさー」
「物騒な事言ってる悪い契約者の分のダッツは食べちゃいましょうねー」
「ごめんなさいジャックさん、俺もダッツ食べたいです」




組み込もうとして忘れてた会話を投げて終わる
738 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/12/31(月) 03:48:51.24 ID:Adlu45eAO
>>732-733
影の人乙ですー
まさかのパンジャンドラム来たー!
最後に現れた白衣の青年が気になるのです!

>>735-737
投下乙ですー
とうとう祭典にも都市伝説が参加か…胸が熱くなるな
この契約者さん達とうちの響が会場で遭遇してたりしてww
739 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/12/31(月) 22:45:00.44 ID:ymeXlysp0
コミケか……行った事は無いが、行ってそうなキャラが3人くらいいるな…

という訳で単発の人乙ですの
これは僕っ娘と考えて良いんだな? 契約者もげろ
でも性癖は俺と似通ってるようだな、ちょっと生理中のおにゃのこについて語ろうではないか(女性の皆様ごめんなさい

>>738
>まさかのパンジャンドラム来たー!
出来得る限りの望みを叶える事に定評なんて無かったシャドーマンの契約者でございます
実は『ガンダム00』のガガのオマージュ

>最後に現れた白衣の青年が気になるのです!
ふふふ、今から書いてくるの♪
740 :ジャックさんと俺 [sage]:2012/12/31(月) 23:43:51.96 ID:1uX1Rjgc0
>>739
「残念でしたー。ジャックさん男です。超紳士です」
「契約者ー、出前の蕎麦来たよー」
「おー、それじゃあ食べようかー。大晦日だから奮発して天ぷら蕎麦にしたぜいえーい」
「いえーい」
「ガキ使見ながら食べる年越し蕎麦は最高だな」
「天ぷら入りだから文句ないねー」
「こたつもあるし完璧だよな」
「炬燵は本当凄いわー。入ったら出られない。まさしく人間を堕落させるために開発された兵器」
「ジャックさんも炬燵の魅力にハマったから、都市伝説をも魅了するか。さすが炬燵」
「ってか、なんで日本人年越しに蕎麦食べるん?」
「確か、細く長く命が続きますようにとかそんな意味だったようなうろ覚え」
「なるほど。でも、それで蕎麦という麺を食べるのなら、ラーメンとかうどんとかパスタでもよくね?」
「だよなー。でも、やっぱ日本人的には蕎麦だよ。香川はうどんだろうけど」
「香川のうどんは美味いからねー」(ずずー
「だよねー」(ずずー
741 :俺とプラモと都市伝説 ◆GsddUUzoJw [sage]:2013/01/01(火) 00:21:57.56 ID:CBQkf1FZ0
あけましておめでとうございます!

>>723>>724
>三行wwwwwwwwwwww律儀に返す紫亜ちゃんかぁいいよ結婚してくだ紫亜(
>そして本当に3行wwww紫亜ちゃん素直でかわゆす
作中でも出井が言ってますが、意外と頭の回転が速いんですよ紫亜

>出井君ヘルメット持参とは…彼が段々非日常に慣れていく様子がよくわかるwwwwww
言わないであげて、出井本人が一番辛いんですwwww

>>725-728
ま、まさかあのℵNo.の彼が再登場、しかも連載とは!
……台詞の中に組織、引いては都市伝説の『ウイルス』に対する複雑な事情が見え隠れするような……
学校町に大感染が起こった時、“感染系都市伝説担当部署”であるο-No.の失敗に激怒してたのも、何か理由があるんでしょうか

>>729
>ルートが操る幾兆ものインフルエンザウィルスが一瞬にして精子になって「いやあああああああぁ!?」って叫ぶところが見たい(マテ
鬼ですか

>>732-734
都市伝説の生体改造、更にジェノブレイカーを操った、平行世界の裂邪の……!?
ようやく黒幕までたどり着けたものの、真っ当な研究がおこなわれていないのは明らか
南極での裂邪VSマッドの戦いに期待大です

そして、まさかの【パンジャンドラム】来たあああああ!!

>>735
コミックマーケットですか……J・T・Rのコスプレが人気という事は、やっぱり都市伝説がジャンルの一つとして存在してるんでしょうか
しかし話の内容は物騒なのに、何故かほのぼのする


皆様乙です、今年もよろしく!
742 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/01(火) 01:31:27.61 ID:yRkq30rF0
「ようこそ、歓迎するよ…黄昏裂邪くん?」

かつ、かつ、と右腕に重々しい機械を装備した白衣の青年が歩み寄る
ある程度距離を置いて止まると、彼はまた口を開いた

「僕の作った兵器達はどうだったかな?…まぁ、君に壊された以上“失敗作”としか言い様が無いけどね
 それでもβNumberless-Cyborg-Mutant-PlasmaCannon-Land-1960はなかなかの傑作だと言えるかな
 異世界の君には本当に感謝するよ、お陰で兵器の開発が捗った」
「誰だ?」
「…フフフ、せっかちだね君も……では自己紹介と行こうかな」

青年は左腕を胸に当て、丁寧に軽く御辞儀をしてから話を再開した

「初めまして、僕はβ-No.0
 君が先日配属になったR-No.と同じ「組織」の一員さ」
「ッ……「組織」のNo.0ぉ!?」
「もう一つ聞こうか。何故俺のことを知ってるんだ?」
「その筋に詳しい者がいてね……他にも知ってるよ?
 「シャドーマン」のシェイド、「童謡シャボン玉」「くるくる回るシャボン玉」に飲まれた元契約者ミナワ
 「獏」の理夢、「鬼火」のウィル、そして……」

くすっ、と彼は小さく笑って
再び、彼等を見据えて言葉を放った

「…久しぶりだね、ディシリオン・ダークナイト」

聞き慣れない名前
だがその名に唯一反応したのは、ナユタだった

『なっ……何故その名を知っている?』
「まさか生きていたとね…“彼女”のことは、残念だったよ」

邪悪と形容しても差し支えない笑みを見せるβ-No.0に向かって、
ナユタは裂邪の手を離れて真っ直ぐに飛んでいった

「お、おい!待てナユタ!」
『はあああああああああああああああああああああああぁ!!!』

がきぃん!!と甲高い音が響く
ナユタの「ティルヴィング」と、β-No.0の右腕の機械から伸びるレーザーブレードが、火花を散らしてぶつかった

「おやおや、暴力的なのは昔と変わらないね」
『答えろ! アルを……アルケミィ・エインシェントをどうしたぁ!?』
「僕に聞かれても困るな、あれは僕の管轄外で…ね!」

かぁん!と弾かれ、「ティルヴィング」は床に投げ飛ばされた
からん、からから、と剣がスピンし、暫くして止まった
β-No.0はレーザーブレードの切っ先を飛んでいったナユタに向けたかと思えば、
光の剣は消え、代わりに発射口から雷光が瞬く

『くぅっ!?』
「よく無事で生きていたものだ……死んでくれても構わなかったのに」
「させるか!」

雷光を纏った鉄の弾が、ナユタ目掛けて射出された
が、間一髪のところで巨大なシャボン玉によって防がれる
さらに裂邪が黒い鎌と黄金の鎌を持ってβ-No.0に攻撃を仕掛ける
β-No.0は光の剣を振るい、黒と金の刃を弾きながら、白衣を翻してひらりと後方へ飛んだ

「ナユタ、無事か!?」
「こっちは大丈夫です!」
『……すまない』
「ほう、君が謝るなんて珍しい事もあるんだね
 契約者が出来て心に変化でも訪れたのかい、ディシリオン・ダークナイト?」
「黙れ! お前、ナユタの何を知ってる!?」
「そうだね、君達には話しておこうかな」

薄ら笑みを浮かべ、彼は光の剣を消して両腕を背に回した
――――笑ってるのに感情が全然感じられないな…
裂邪は背筋に嫌なものを感じた

「今から40年程前の話だ……当然君達は生まれてもいないが、これは「組織」が出来る前の話でもある」
「「組織」結成より前…?」
「ある人物を中心に、僕達は都市伝説と人間の繋がりについて研究をしていた
 “XADOMEN(ジャドーメン)計画”……これは被験者のコードネームから取ったものだ」
『…身寄りのなかった僕達に善人を装って歩み寄り…そして私利私欲の為に僕達を弄んだ…!』
「人聞きが悪い…親も家もなかった君達に帰る場所を与えてやったのは僕達だよ?
 尤も、僕は君や“彼女”のお陰で、この研究から退いたけどね」
743 :夢幻泡影 † β-No.0 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/01(火) 01:32:01.31 ID:yRkq30rF0
はふ、と溜息を吐いたβ-No.0
その目からは蔑みの念が読みとれた

「“XADOMEN計画”は順調に進んだ……筈だった
 しかしアルケミィ・エインシェント、ディシリオン・ダークナイトの両名が失踪し、研究に支障が出た
 失望したよ……人間達の脆さに、ね」
「ふざけんな!」

2本の刃が床に突き刺さった
軽やかに躱し、宙に飛んだβ-No.0を、理夢の爪が襲い掛かった
が、光の剣によって爪を防ぎ、体勢を整えて着地する
追撃してきた火の鳥の突撃もひらりと避けたが、白衣が黒く染まった
燃え始めた白衣を、β-No.0は、ばさ、と投げ捨てた

「人間が脆いだと? こいつを、ナユタを見てまだそんな戯言が言えんのか!?
 こいつが飲まれた理由をお前は知ってんのか!?
 お前みたいな馬鹿の所為で、こいつがどんだけこの世に絶望したか知ってんのか!?」
『ッ…マスター……』
「知らないよ、知る必要も無いしね
 僕が興味を持ったのは、そんな人間の感情なんかじゃない
 もっと便利なものだよ」

パチン、と指が鳴らされると、
彼の背後の床が開いたかと思えば、エレベーターのように何かが上昇してきた

「友、仲間、家族………人間なんて、“生きている”から失われてしまうんだよ
 だけど、そもそも命の概念の無い機械なら、失われるものは何もない
 例え壊れてもまた作り直せば良い………機械は永遠の兵器だよ」

現れたのは、蛇型の巨大ロボットだった
曇った鏡のような装甲を持ち、77個のキャタピラ付きユニットが連なっている
頭部のように擡げた先頭車両には、4基のドリルと2つのランチャーパックが装備されていた
忘れもしないその姿は、裂邪が探していた“友達”のものと同一のもの

「……ビ、オ………」
「行け、β10-MidgardSchlange-ArtificialIntelligence+MicroSystem-MachineGun+BearingBallet-Land&Sea-1935228
 脆く儚い人間達を始末しろ」




   ...To be Continued
744 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/01(火) 01:44:37.39 ID:yRkq30rF0
奇しくも年明け1発目が蛇型ロボット登場という構図に
改めまして明けましておめでとうございます
だらだら書いて申し訳ないけど、終わらすもん終わらせて書いたいもん書くのでどうかお付き合い下せえ

>>740
>「残念でしたー。ジャックさん男です。超紳士です」
かーみさまーはー死ーんーだ♪ 早くーもー死ーんーだ♪
年明け早々♪ 壊れーてー消ーえーた♪

>>741
>鬼ですか
褒めても何も出ませんよ♪

>ようやく黒幕までたどり着けたものの、真っ当な研究がおこなわれていないのは明らか
昔やってた研究をちょこっと紹介
今の研究は次の話で御紹介致します♪

>そして、まさかの【パンジャンドラム】来たあああああ!!
「あ、ガガみたいなの書きたいなー、β-No.0はリボンズ様だし」ってことでやっちゃったという
元々あった「ミュータント」サイボーグの設定に「パンジャンドラム」を足しただけという安心設計w
745 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/01(火) 01:57:38.28 ID:yRkq30rF0
新年初訂正

× βNumberless-Cyborg-Mutant-PlasmaCannon-Land-1960

○ βNumberless-Cyborg+Panjandrum-Mutant-PlasmaCannon-Land-1960
746 :大王SP―大王とのプレゼント ◆dj8.X64csA [sage saga]:2013/01/01(火) 02:45:44.85 ID:TXJ0RBs/0
4コマ風劇場(ただの小ネタ)―

☆プレゼント開封・勇弥☆

正義「勇弥くんのプレゼントは?」
勇弥「ん、待ってろ…。」

勇弥「…なんだこりゃ?ゲーム機と、石ころ…。」
奈海「毛糸玉もあるわね?編み物できるの?」

楓「まさか、本来は別の人に渡るものだったんじゃないのか?」
勇弥「だとしたら申し訳ないが…統一性が無いぜ?」
大王「少年、これは…。」

正義「勇弥くん、それ…都市伝説かも。」
勇弥「マジか!?じゃあもしかしてこれは!?じゃあこれは!?」
楓「…大当たりじゃないのか、それ?」


●都市伝説すらプレゼントするサンタさん…いったい何者なんだ…?


☆プレゼント開封・奈海☆

正義「次は奈海。コインちゃんは記念硬貨みたいだね。」
奈海「らしいわね、やっぱり欲しいものが入っているのかしら?」

奈海「…包丁、万能鍋&フライパンセット、それと…。」
勇弥「料理の腕を磨け、という事だろうな。」
正義「あれ、まだあるよ?本かな?」

勇弥「お、これはもしかすると…。」
楓「この内容だからな、ありうる。」
奈海「何考えてるか分からないけど、きっとただのレシピ本よ。」

奈海「お…『男の気持ちがわかる本』…?」
勇弥「なるほど、そう来たか…。」
楓「さすがサンタさん…分かっているな。」
正義「え、何?なんなの?」


●奈海はしばらく反骨した後、諦めて読むことにしたそうな。 


☆プレゼント開封・楓☆

正義「十文字さんは何かな?」
奈海「やっぱり女の子らしいものなんじゃないの?」

楓「…ファイル?あとは筆記用具らしきものだけか…。」
コイン「でも十文字さんには丁度いいんじゃない?」
楓「まぁ、補充したいところだったから、ありがたいが…。」

勇弥「で、本が一冊と。」
奈海「嫁入り本とかよ、きっと。」
楓「さて…と、何の本かな?」

大王「は?」
正義「えっ?」
勇弥「うおっ!?」
奈海「ふぇ?」
コイン「うわぁ…。」
楓「こ、これは…。」


●稀に出る大当たり本でした。
747 :大王SP―大王とのプレゼント ◆dj8.X64csA [sage saga]:2013/01/01(火) 02:46:47.31 ID:TXJ0RBs/0
☆プレゼント開封・正義☆

勇弥「最後は正義か。」
奈海「あれだけがんばったんだもの、いい物よ。」
正義「なにかなぁ。」

正義「…砂?」
楓「ビン詰めの…灰か?」
大王「おいおい、ゴミじゃないだろうな?」
コイン「そんな訳ないじゃない…たぶん。」

勇弥「他には…本もないぞ?」
奈海「これこそ何かの間違いなんじゃ?」
正義「うーん…でも、きっと何かに使えると思うから…。」




―――大事に、持っておくよ―――




●ただひとつ言える事、サンタさんは誰にでも平等です。


☆あけまして☆

正義「あけまして」
全員「「 お め で と う ご ざ い ま す ! 」」

勇弥「…つっても、本編中ではまだ時間止まってるんだろうけどな。」
コイン「メタい!…けど予定があるのに更新不定っていう意味不明な状態だからね。」
楓「今年はどうなる事か…。」

正義「でも、ひとつの終わりであるタナトス編終わらせてるし。」
大王「少年、あれは本来はタナトス編ではないぞ。
   あれは日常パートの合間合間にやる『一年生編』なんだ。」
   それを遅筆を理由に、ギリシャの面々とのボスラッシュで終わらせてしまったんだ。」

大王「つまり…本当はもっと書かないといけない事になる。」
奈海「作者…頭冷やそっか?」


●こここ、今年こそはー!…って、去年も言ってたよね…。
 こんな自分ですが、どうか今年も宜しくお願い致します。
748 :大王SP―大王とのプレゼント ◆dj8.X64csA [sage saga]:2013/01/01(火) 02:54:23.22 ID:TXJ0RBs/0
という訳で、皆様昨年はお疲れ様でした。
今年も応援させていただきます。そして読みます。ごめんなさい。

>>単発の方
乙です。ほのぼの…書きたいです。
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/01(火) 04:02:30.81 ID:PjjMB9IAO
ジャックさんと俺の人乙ですー
最近は「年明けうどん」なるものもあるらしいですぜ!

影の人乙ですー
これが…ナユタとアルケミィたんの過去…いかん二人にはぁはぁしてしまうではないか!
しかしβNo.0、悪役っぽくていーなぁ

大王の人乙ですー
楓ちゃんの大当たり本と正義君の砂が気になるなぁ
そして「男の気持ちが分かる本」ナイスww
750 :夢幻泡影 † Heart/miraclE ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/01(火) 23:01:20.81 ID:yRkq30rF0
「ビオ……やっぱり、ビオなんだな……?」

見下げるように聳える蛇型ロボットに、
裂邪は小さな声で、呟くように問いかけた

「人間は面白いものを創ってくれたものだ…
 夢などという下らないものを持ちながら、絵空事を紙に書いて夢のまま終わらせる
 そうして都市伝説となってしまった兵器達がこの世に幾つも存在する
 僕はそんな兵器達を手駒として製造した
 でもそれだけじゃ面白くない
 他の都市伝説を合成させ、より強力な都市伝説に“改造”してあげたのさ
 使えなければ廃棄処分し、また製造すれば良い
 その工程を何度も繰り返し、より強力な機械軍団を作り上げた
 中でもこのβ10-MidgardSchlange-ArtificialIntelligence+MicroSystem-MachineGun+BearingBallet-Land&Sea-1935228は、
 僕の最高傑作だと言っても過言じゃない
 直接命令した事を忠実にこなすだけの他の兵器とは違い、
 「人工知能」によって細かい状況も可能になった奇襲用兵器さ
 結果として何千もの人間、何百もの町を破壊した……血塗られた大蛇だよ」
「黙れ! それはお前が強引に押しつけた結果だろうが!
 こいつは……ビオは、好きで人を殺した訳じゃない!」
「ビオ? そんな下らない名前までつけて…つくづく人間は愚かな生き物だね」
「……ッ!!」

2本の大鎌を構え、β-No.0との距離を詰めた
が、彼の前にビオが立ち塞がった

「っ!?」
「β10-MidgardSchlange-ArtificialIntelligence+MicroSystem-MachineGun+BearingBallet-Land&Sea-1935228、
 殺し方は君の好きにするが良い
 でも、凄惨且つ芸術的な殺しの方が僕は好みだ」

にやり、と彼は笑った
連続した重厚な音が響いたと思えば、ビオの機体にある機関銃の砲口が、全て裂邪の方に向けられている

「ビオ! 俺だ、黄昏裂邪だ! 覚えてるか!?」
「主!そっから逃げろ!!」
「お前が忘れてる訳ないよな!? 山で俺と会った事…ちゃんと覚えてくれてたもんな!?
 名前まで一言一句覚えててくれてたもんな!?」
「ご主人様――――――」

駆け寄ろうとしたミナワだったが、シェイドに肩を掴まれた
シェイドは何も言わず、ただゆっくりと頷いただけだったが、
彼女はそれを理解し、心配そうに裂邪を見守った

「……お前が洞窟の中まで助けに来てくれた時さ……俺、凄く嬉しかったんだ
 正直、これからもお前と一緒にいたいって、本気で思ったんだ
 あの時は、言えなかったけどさ……助けてくれて、有難うな」
「ハハハハハハ、もはや救いようが無いね
 遺言はそれだけかな? ならいい加減に――――――――む?」

その異変に、ようやくβ-No.0は気付いた
ビオは目標を定めはしたが、その後からは一切動いていないのだ

「どうしたβ10-MidgardSchlange-ArtificialIntelligence+MicroSystem-MachineGun+BearingBallet-Land&Sea-1935228?
 たった数体の契約者や都市伝説程度、君だけで十分だろう?」
《……緊…急………事,態…………発……生…………熱源,反応……感,……知………》

冷たい女性のような声が響く
直後、その蛇を模した機体が微弱に動いたが、やはり攻撃には移らない
その様は、裂邪には苦しんでいるように見えた

「ビオ…!」
《……方角不明…距離0………熱源…………自,分??………理解,不能……???》
「な……ッヒヒヒヒ……そうだ、お前はやっぱりただの機械じゃなかったんだ
 お前はちゃんと“生きてる”んだよ! 命を持って、心を持ってな!」
《命??………心???………》
「お前の身体ン中が熱いのは、お前の心に何かが燃え始めたからだ!
 殺意でも怒りでも無く! お前の優しい心が産声上げて目覚め始めたんだよ!
 お前は誰かの言いなりで動く殺戮マシーンじゃない!
 ただ、自分が何をすべきか分からなかっただけなんだ! まだ赤ん坊だったんだ!
 俺が教えてやる! その命が、心が、魂が……何の為に生まれて、何の為に使われるべきなのか!!」

裂邪は「レイヴァテイン」の刃を床に突き立て、
その左手を、ビオに向けて真っ直ぐに伸ばした
まるで、握手を求めるかのように

「俺と一緒に来い! ビオ!!」
「そんな戯言に耳を貸す必要はないよ。殺せ」
751 :夢幻泡影 † Heart/miraclE ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/01(火) 23:01:49.52 ID:yRkq30rF0
沈黙
機械の駆動音と心臓の鼓動だけが響く空間
何分経っただろうか、遂に静寂が断たれる事となる

「……そういうことか」

β-No.0は静かに呟くと、すっ、と左腕を上げた

「どうやら“バグ”があったようだね」

その瞬間、ビオの機体全体から、光る流体が溢れだし、
β-No.0の左掌の吸い込まれていった
同時に、彼へと向けられる筈だった機関銃の砲台が全て停止し、
擡げた先頭車両ががくん、と力を無くしたように落ち、床が罅割れ部屋が揺れた

「ッ!? ビオ! おい、ビオ!!」
《…………Re,tsu,ya,…………………A………R………G………T………―――――――――――――――》

声が止まる
裂邪が駆け寄り何度も何度も呼びかけたが、返事は無い

「言ってなかったね、僕は「生命エネルギー」を操れるんだ
 僕が作り出した兵器達はこの「生命エネルギー」を動力源としている
 つまり今のように“バグ”が生じた場合、これを取り除けば後はただのガラクタになる訳さ
 そう、丁度こんな風にね」
「……ガラクタだと?」
「創造主の思い通りにならないものは壊すのが当然だ、そうだろう?
 何らかの“バグ”が生じたなら尚更、ね」
「バグじゃない! 機械が、都市伝説が心を持って何が悪い!?」
「素晴らしい御花畑脳味噌だね。物が心を持つ訳が無いじゃないか」
「さっきのビオの言葉、聞いてなかったのか!!
 俺には確かに聞こえた……『ありがとう』って言ってたのがはっきりとなぁ!!」
「ハァ………往生際が悪いね、君も
 仮に心があったとしても、そのガラクタにはもうどうすることも出来ないじゃないか
 そもそも兵器や機械なんてものは、生み出されては壊されるという決まり切った運命にあるんだよ」
「この世に最初から決められたもんがあって堪るか!
 もしもビオの運命が必然だったっつぅんなら……変えてやるよ! 俺が、その運命を!!」

裂邪はおもむろに、ベルトのホルダーから何かを取り出し、ビオに翳した
灰色の、四角いパスのようなもの
ナユタの事件の時に蓮華から予備として貰った、最後のパスだった

「………シェイド、ごめんな。これで最後にするから」
「ドウセヤルト思ッテイタ。トイウカ、ココデ止メレバ私ガ悪者ニナル」
「サンキュー、シェイド」
「何の儀式を始める気かな?」
「お決まりの奴さ」

すぅっ、と大きく息を吸い込み、
裂邪は辺りに響く程の声で言い放った

「ビオ! 目を覚ませ! 俺と――――俺達と一緒に来い!!」

刹那、灰色のパスが、眩い光を放った



   ...To be Continued
752 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/01(火) 23:09:29.96 ID:yRkq30rF0
元々稚拙だった文章がますます劣化していってる気がする


次回、裂邪の7つ目の都市伝説、始動
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/02(水) 11:57:50.95 ID:KCnrJiwAO
影の人乙ですー
いよいよビオと“Rainbow”の始動ですか
楽しみにしてます
754 :夢幻泡影 † 地に立つ機械仕掛けの神 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/02(水) 19:14:56.67 ID:6C/XSFVq0
灰色のパスの輝きが失われると、ビオの姿はそこになかった
元々何も無い広間だったが、あの巨体が消えただけで景色ががらりと変わったかのような錯覚に見舞われる

「ガラクタと契約して何になると言うんだね?」
「……シェイド、ミナワ、理夢、ウィル、ナユタ
 悪いがこいつは……“俺達”に殴らせろ」

何も言わず、各々はただ頷き、彼に賛同の意を示した
裂邪はそれを分かっていたのだろう、振り返らずにパスを構えた

「行くぞ、ビオ」

パスをバックルに翳した瞬間、《ミドガルドシュランゲ》という機械音声が流れ、
彼の手からパスが離れ、再び眩く輝き始めた
四角形が徐々に小さな蛇の形へと変化し、さらにそれは徐々に、徐々に大きくなっていき、
光が消えると同時に、姿を現した

「ッ!? 馬鹿な、「生命エネルギー」は残っていない筈……!?」
「都市伝説が生きてんのは誰かに命を貰うからじゃない……
 “誰かが生きてると信じている”から生きているんだ!」
《弾薬装填完了,照準確認,全砲一斉射撃用意…………Boss,指示ヲ》
「よし、ビオ! ありったけの弾丸を叩きこんでやれ!!」
《Yes,Boss》

機関銃が一斉に放たれる
弾丸の雨を受けぬよう、β-No.0は走り出した
さらに右腕のレーザーブレードを使い、弾丸を弾いて防ぐ

「忘れたのかい? そのガラクタは僕が作ったんだよ?
 自分の作ったものの性能くらい、覚えているさ」
「だったら教えてやろうか、生まれ変わったビオの力をな……ビオ!」
《Yes,Boss》

裂邪がビオに触れた直後、ビオの機体は見る見る内に小さくなり、
やがて人間大のサイズになると、蛇のように連なったユニットがばらばらになって、
それぞれ裂邪の身体に装着されて鎧となる
右腕には4基のドリルが唸り、両肩にはランチャーパックが装備され、
身体中の機関銃が目標を定めて動いている
余ったユニットは裂邪の背後に尾のように連なっており、その姿はムカデを想起させる

「……『デウスXマキナ』………そう呼ばせて貰う、であります」

地面に刺さっていた黄金の鎌が黄金色のバズーカ砲となり、
彼はそれを左手に掴み、銃口をβ-No.0に向けた

「ターゲットロックオン、戦闘開始……最初に宣言する。自分は、か・な・り、強靭であります」
「……ほう、噂には聞いていたが、驚いたね……それが都市伝説との“融合”か」
「モウココマデ来ルト“合体”ダナ」
「外野は黙っていろ、であります」
「既に捨てたものとはいえ、僕の傑作を台無しにされるのは見ていられないな」

パチン、とβ-No.0が指を鳴らすと、頭上から何かががちゃん、がちゃんという金属音と共に降ってきた
異形の生命体のような上半身、大きな車輪のある下半身
「ミュータント」のサイボーグ達だ

「仕留めろ」
《G………G………Z………G………Z………》
「卑劣……だが無駄、であります」

向かい来る1機の「ミュータント」の胸部を、ドリルで貫いて返り討ちにする
全身の砲台から放たれる機関銃の弾丸が、「ミュータント」達を蜂の巣にする
左手のバズーカから伸びた光条が次々と「ミュータント」を串刺しにしてゆき、
肩のランチャーパックから撃たれたチタンの嵐が「ミュータント」をスクラップにする
何時の間にか、立ち上がっている「ミュータント」は1体もいなくなっていた
振り返ろうとした瞬間に殺気を感じ、ドリルでレーザーブレードを制した

「……最初から貴官が戦った方が早かった、であります」
「どうやらそのようだ、ね!」

レーザーブレードとドリルが激しくぶつかり合う
β-No.0が距離を置き、レールガンを放ったが機関銃の弾幕によって撃ち落とされた
そのお返しと言わんばかりに裂邪はバズーカを放った
まるで見切っていたかのように、β-No.0は悠然と黄金の光条を避けた
が、裂邪はバズーカから光線を発射したまま、機関銃とチタン製ベアリング弾を添えて足のキャタピラで前進し始めた
人の形をした戦車、否、寧ろ移動要塞とも取れるそれは、β-No.0に向かって進み続ける
躱せるものは躱し、防げるものは防いでゆく
だが、これだけの攻撃を全て避けきり防ぎきるには、彼の装備は足りなさすぎた
755 :夢幻泡影 † 地に立つ機械仕掛けの神 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/02(水) 19:15:26.81 ID:6C/XSFVq0
「これが……貴官が“ガラクタ”と称した者の力、であります……!!」
「くっ…フフ、なるほど、流石に――――」

瞬間、ぐらりと彼の視界が傾いた
数多の攻撃によって床が抉られて出来た穴で、足が縺れてしまったのだ
この機を裂邪は逃さなかった
β-No.0の背を、4本のドリルが貫いた

「ッ――――――――!?」
「全砲門………一斉射撃……!!」

バズーカ、ランチャー、マシンガン、全てが動けぬβ-No.0に向けられた
彼の身体は爆煙に包まれながら、壁に叩きつけられた
尚も攻撃が続き、遂にはがらがらと鈍い音を立てて壁が崩れて大穴が空いた
爆破音と共に、穴から黒煙が溢れ出た

「……任務、完了……であります」

呟き終えると同時に、裂邪を纏う鎧が解除され、連なって元のビオに戻った
待機していたミナワ達が、彼等の元に駆け寄った

「ご主人様! お身体は御無事ですか!?」
「あぁ、今のところは何ともない。心配かけて悪かった」
「何時の間にやら丈夫になりやしたねぇ」
「つぅか馬鹿じゃねぇのかテメェ、何処の世に都市伝説7つと契約しやがる奴がいんだよ、普通ならとっくに飲まれてんぞ!」
『ま、仮契約なら契約者への負担も少ないのだろう』
「ウヒヒヒ……それより、」

裂邪は振り返って、ビオの頬に当たるであろう、先頭車両の側部を撫でた

「ありがとうビオ。てかやっぱお前強ぇなw」
《礼ハ,不必要,デアリマス……Bossハ,自分ヲ二度救ッテクレタ………友達、デアリマス故》

ビオがそういうと、くすっ、と裂邪は小さく笑った

「バーカ、お前はもう友達なんかじゃねぇよ」

裂邪は笑ってそう言った
ビオは恐らく首を傾げたようだったが、シェイド達はその意味を解したらしく、
それぞれ呆れるなり微笑むなりしていた

「……ビオ。お前は今日から……俺の“家族”だ」



   ...To be Continued
756 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/02(水) 19:17:30.76 ID:6C/XSFVq0
れっきゅん=白ひげ(故エドワード・ニューゲート)説浮上?

あと5話………実家にいる間に書き終えられれば幸せだ
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 23:55:03.30 ID:CntQL1lS0
れっきゅん乙です
南極でビオと正式に仲間になったのね
そういえばれっきゅん合体したら
口調が変わるということをうっかり忘れてた…
758 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/05(土) 19:32:00.78 ID:opB8BXhh0
>>757
>口調が変わるということをうっかり忘れてた…

Q:何で融合すると口調が変わるの?
A:ぶっちゃけ電王リスペクト(
  物語上では元となる都市伝説の精神(こころ)が強く反映される為

Q:『シャドーズ・アスガルド』ってどう見ても裂邪が喋ってるけど?
A:この間のハロウィン話をよーく読むと、シェイドの口調が現れてたりする
  理由は追々開かされる!筈だ!(バンダー・デッケン風に
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 09:25:25.86 ID:cnDmVbLSO
正月中に何か書こうと思ってたのに風邪で寝てる間に終わりそうだ
760 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/06(日) 13:28:11.26 ID:CbPIwcU80
>>759
リアルお大事にだぜ
761 :夢幻泡影 † 最後 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/06(日) 18:32:40.82 ID:SYQIdZdi0
「友達?家族?…………くだらない。機械にそんなものは必要ないよ」

その声が聞こえたのは、未だに白煙の晴れない壁に空いた穴からだった
声の主は瞭然……裂邪達は咄嗟に身構えた

「β-No.0! まだ生きて――――――ッ!?」

彼は己の目を疑った
と同時に、その光景に思わずミナワを抱き寄せ、彼女の目を反らさせた
煙のカーテンから現れたのは、上半身の右半分が消失し、
中から輝く体液を零す、β-No.0の凄惨な姿だった
だが、抉れた部分は切れた配線が露出し、火花が飛び散っていた
“肉体”ではなかったのだ
にやっ、とβ-No.0は不気味に微笑んだ

「フフフフ……まだ言ってなかったね
 この身体は「アンドロイド」……型式番号β02-Android-Land&Sky-1886
 さしずめβ-No.2と言ったところかな」
「ハァ!? 身体が別のNo.ってどういうこった!?」
《β-No.0ハ元々身体ヲ持タナイ……「生命エネルギー」ソノモノ,デアリマス
 故ニ,地球上デノ行動ヲ容易ナモノニスルベク,“器”ガ必要不可欠ダッタ……》
『…驚いたね、僕達を虐げていたのは出来損ないのエイリアンだったということか?』
「それは言い得て妙だね、ディシリオン・ダークナイト……僕はそもそもこの地球で生まれた訳じゃない
 信じられないかも知れないけど、宇宙からこの星に漂着したんだよ」
「……もう信じられない光景は何度も見てきた…それくらいどうってことはない」
「物分かりが良い子だ。話が早くて助かるよ」

β-No.0は己の胸の装甲を剥ぎ取ると、
丁度人間でいう心臓の位置にあるリモコンのようなものを掴み、
1・3・1・1の4桁のパスワードを打ち込んだ
がくん、と「氷山空母」が大きく揺れた

「きゃっ!?」
「なっ、地震ですかい!?」
「楽しかったよ、遊んでくれてどうも有難う
 でも遊戯はここまでだ
 申し訳ないけど、君達にはこの冷たい海で眠って貰う事にするよ
 冥土の土産に“良い物”を見せてあげよう」
「おい!お前何をした!?」

その瞬間、ぼんっ!!と鈍い音を立てて「アンドロイド」が爆発四散した
飛び散る破片からミナワを守りながら、裂邪は爆破の後を見た
輝くアメーバのような流動体が、凄まじいスピードで壁の穴の向こうへと飛行していった

「逃げられたか…! ミナワ、怪我はないか?」
「わ、私は、大丈夫です!それよりご主人様は!?」
「良かった、俺も大した怪我はない……ウィル! β-No.0を追えるか!?」
「そ、それが……面目ねぇ、気配を見失いやして……」
《反応皆無……自分モ駄目,デアリマス》
「私モ気ヲ感ジナイ……マルデ消エテシマッタカノヨウニナ」
「消えただと…一体何処へ」
「主!! 皆もこっちに来い!!」

聞こえたのは煙の向こう
何時の間にやら壁の穴をくぐって隣の部屋に行っていた理夢の呼びかけだった
声に誘われ、裂邪達は煙のカーテンを抜けると、
もう一部屋へと繋がる穴の向こうに、光の漏れた大穴の傍に佇む理夢の姿があった
大穴の元に駆け寄り、理夢が促すままに穴の外を覗き込んだ

「なっ……!?」

見えたのは雲、そして海に浮かぶ小さくなった白銀の大陸
「氷山空母」は飛翔していたのだ
先程の揺れは離陸の時のショックらしかった
だが、彼等が驚いていたものはそんなことではない
空中に浮かぶ、凡そ20m程の人型ロボットだった
青いラインの入った純白のボディにそぐわない、巨大な漆黒の翼を持ち、
その背部には、巨大な遠距離武器らしきものが背負われていた
何より特筆すべきは、頭部に飾られたV字の角だ
その姿を見るや否や、裂邪は呟いた

「……ガン………ダム……!?」
《ハハハハハハハ! そうとも! この機体こそ、人類を……いや、宇宙を導くガンダムだ!!》
「そんな、どうしてガンダムなんて!?」
《…β-No.0ハ……「ガンダム計画」ヲ用イテ新兵器ノ製造ヲ計画シテイタ…デアリマス,ガ……》
《そこのガラクタの言う通り。人間とは実に愚かで、且つ面白い事を考えてくれる生き物だよ
 まだ未完成で開発コードを用意してないけど、さしずめ『βガンダムMk-]T』といったところかな
 どうしてもこの技術を用いなければならない事情があってね》
762 :夢幻泡影 † 最後 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/06(日) 18:34:02.76 ID:SYQIdZdi0
その時、地上からざぱぁん!という激しい音が響いた
海でクジラの群れが泳いでいた

《丁度良い、見せてあげるよ》

背部の遠距離武器を掴み、構えて展開させると、
β-No.0はその銃口を、遥か地上のクジラの群れに向けた

「っおい! 一体何を――――――」
《ターゲット、ロックオン……“M.I.S.A.”、発射》

銃口から一気に放出される光条は、あ、という間に地上に届き、
罪無き生命に無慈悲にも襲い掛かった
声も出なかった裂邪達だったが、ここで違和感を抱いた
光条が消え、また静かな海が広がった
静か過ぎるのだ
今の攻撃がビーム攻撃によるものならば、海水が蒸発するなどしてもおかしくない
それはまるで、クジラの群れだけが忽然と消えたかのような感覚だった

「……都市伝説ノ力カ……?」
《御明答。この兵器には「ミサウィルス」を使用していてね》

「ミサウィルス」
コンピュータウィルスの一種であり、これに感染すると女性の笑い声が大音量で響き渡り、
この声を聞いたユーザーは魂が抜かれ、永遠に電脳世界に閉じ込められる―――という都市伝説

《この兵器を利用すれば、地球上のありとあらゆる生命体を電脳世界に閉じ込める事が出来る
 人間達は脱出不可能な世界でデータとして永久に彷徨い続け、
 それらが絶望に浸っている間にこの星は僕が機械の惑星に作り変えてあげるんだ
 尤も、この機体には「ダイソン・スフィア」を使って迅速なエネルギー供給を予定していたんだけど、
 それは君達を消す分には必要無いからね》
「ふざけんな! さっきから意味不明な御託を並べやがって!
 人間をネットに幽閉する? 地球を機械に改造する?
 そんなことをして何の意味がある!? お前の真の目的は何なんだ!?」
《意味だの目標だのと、そんなことを追い求めて生きるのが人間の悪い癖なんだ
 何の意味も無く君達(ニンゲン)に作られた僕達(トシデンセツ)が、何らかの目標を持っている訳が無いじゃないか》
「何だと――――――」
「違います!! 確かに、都市伝説として生まれてすぐの私には、生きる意味なんて分からなかったけど…
 ご主人様がそれを教えてくれたから、今の私がここにいるんです!
 私達は人によって創られて、人によって生かされてるんですよ!!」
「人間だけじゃありゃあせん! あっしには契約する前にも、たっくさんの仲間がいやした!
 おめぇさんが否定した仲間って奴が、あっしに生きる楽しさを教えてくれたんでい!!」
「おいテメェ! ベータだかベターだか何だか知らねぇが、俺様の存在全否定か、あ゙ぁ!?
 今まで何も考えずに夢喰ってただけの俺様に、色んな楽しさを教えてくれたのがこの馬鹿主だぞ!!」
「…お、お前等……」
『ギハハハハハハハハハ……β-No.0よ、恐らく君は僕を嘲るだろうが、逆に僕は君を嘲り哂うよ
 僕はマスターから学んだ…人間や都市伝説を強くするのは他でも無い、生きる意味や目標、希望だと!』
《Boss……否,β-No.0……自分ハ今ノBossト契約シ,存在ノ意味,理由,目的,僅カデモ,理解シタ……
 モシモ貴官ガ,Bossノ思想,願望ヲ破壊スルナラ……自分ハ貴官ヲ射殺スル,デアリマス》
「……聞コエテイルカ、β-No.0。最後ニ問ウゾ
 今スグコノ星カラ出テイクカ……我々ニ消サレルカ、好キナ未来(コタエ)ヲ選ベ」

ずらり、と並んだ強い意志
溢れ出る覇気を前に、彼は

《…フフフ、愚問だよ、それは》

銃口を向けて、静かに言い放った

《僕が君達如きに消される訳ないじゃないか》
「ナユタ!」
『仰せの儘に――――――――ッ!? い、移動できない!?』
「何っ!?」
「ご、ご主人様、私もダメです!」
「クッ、コノ艦ノ周辺ガ隔離サレテイルノカ!?」
《なかなか鋭いね。β01-ProjectHabbakuk-SolarRayCannon+DeanDrive-Missile-Sea&Sky-1943の展開するフィールドには、
 「時空の歪み」が発生するようにしてあるのさ》
「この空母自体がβ-No.1だったってのか!?」
《そしてお別れだ、棺桶となって沈んでくれたまえ》
《Yes,Boss……β-No.,万歳》
「仲間を殺す気か!?」
《僕に仲間なんていないし、壊したものはまた作り直せば良い
 本当は君達も電脳世界に招待しようと思っていたけど、滅茶苦茶にされると困るからね
 さようなら…黄昏裂邪!》

銃口から光が溢れ出し、「氷山空母」を貫いた
寒空に、爆炎と黒煙が広がった
763 :夢幻泡影 † 最後 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/06(日) 18:35:06.74 ID:SYQIdZdi0
     †     †     †     †     †     †     †







胸糞悪い笑い声が聞こえる

あの野郎が笑ってやがる

一体どれくらいの高さなんだろう

確実に、俺達は海に向かって落ちていた

周りにはシェイドも、ミナワも、理夢もウィルもナユタもビオも、皆いた

けど、気絶してるのか気配が弱い

「レイヴァテイン」は今俺の手にあるけど、身体が上手く動かない

“成す術無し”

とだけは考えたくなかった

「組織」に入って、初めての任務

そんなことはどうでもいい

皆と一緒に、無事に帰りたかった

折角、ビオも家族になったのに

まだ、俺は―――――――――――――――――――
















                             「「裂邪」」












……父さん…母さん……?
764 :夢幻泡影 † 最後 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/06(日) 18:35:50.72 ID:SYQIdZdi0
 







           「裂邪さん」
                                      「裂邪さん」

      「裂邪!」            「お兄ちゃん」

            「裂兄ぃ」                「裂兄ぃ!」


       「師匠!」        「黄昏クン」             「黄昏」



  「裂邪!」      「黄昏くん!」        「裂邪」            「裂邪!」


        「黄昏くん」        「裂邪くん!」          「裂邪様♪」









……聞こえる…………俺を呼ぶ、皆の声が………!








                  《Boss》



                           『マスター』




             「旦那ァ!」
                         「主!」



                  「ご主人様♪」




                   「裂邪!」










                  「お兄ちゃん!」






 
765 :夢幻泡影 † 最後 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/06(日) 18:37:08.06 ID:SYQIdZdi0
その瞬間、時間が止まったような気がした


身体の奥底から、力が漲ってくるような


勝てる可能性が今、この手の中にあるような


――――皆で帰れるような気がした


――――皆で変えられるような気がした


――――皆で返せるような気がした



「……良いだろう! “人間”に戻れなかったとしても……この世界を守れるなら、それでいい!!
 シェイド! ミナワ! 理夢! ウィル! ナユタ! ビオ!
 お前等、俺と一緒に……“邪(アク)”を引き“裂”いてくれるか!?」


俺の手の「レイヴァテイン」が、金色の水に変わった


「当、然……了解シタ!!」


シェイドの身体が、黒い流動体になる


「勿論です…ご主人様!!」


ミナワの身体が、青くきめ細かい泡となる


「ッククク……OKィ、馬鹿主!!」


理夢の身体が、白い煙のようになる


「がってん承知でい、旦那ァ!!」


ウィルの身体が、赤々と燃え広がっていく


『仰せの、儘に……マスター!!』


ナユタの身体が、「ティルヴィング」さえも巻き込んで紫の濃いもやになる


《Yes………Boss…………!!》


ビオの身体が、バラバラになって灰色の液体に変わった


黒、青、白、赤、紫、灰、金


俺の身体は七つの色に取り込まれた
766 :夢幻泡影 † 最後 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/06(日) 18:37:44.61 ID:SYQIdZdi0
身体中が熱くなる




もう敗ける気はしない




7つの力が一つになった




俺に……“俺達”に裂けない邪はない






俺達の名は





    黄 昏     裂 邪
【『ラグナロク・レンディーヴィル』!!】



   ...To be Continued
767 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/06(日) 18:40:13.77 ID:SYQIdZdi0
Ragnarok RendEvil=ラグナロク・レンディーヴィル

改行濫用したらそりゃレス稼げますよねーorz

次回で事実上最後の戦い
768 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/06(日) 23:10:09.12 ID:SYQIdZdi0
…さっき起きたんだが>>767で誤解を招きそうな発言があったから謝罪したい

>改行濫用したらそりゃレス稼げますよねーorz

俺としては、最近1レス〜2レス程度の短い話しか書けてなく、
『なるべく、最低でも4〜5レス分の話を書く』という目標を立てていたので、
これは『レス数を稼ぐ』という意味で書いておりました

冷静に考えると、「改行増やしゃ(感想の)レスくらい稼げるだろ」という意味にも取れる気がした
もしかしたらいないかも知れないが、誰かが誤解してしまう前にこの場で謝罪します
不適切な発言、申し訳ございませんでした
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 23:27:22.90 ID:gAUsTx5g0
避難所に書き込むべき内容かもしれんが
俺はあえてここに書く

さっき正月前に買ったパン食べたんだ
そのパンから靴下を数週間放置したかのような悪臭がして
俺も何だか酔った酔うな気分なんだけど、大丈夫だよな…?

>>768
ごめん…君の事、勘違いしてたよ
もっとアグレッシブに行間を詰めて詰めて
段々文章を追う内に、目が、目がウォォォォォォウ目がァァァァッッ!!

…バリアフリーの為に行間を開けて
読みやすくしてくれていたと思ってたのに!
君は、僕の事なんてアウトオブ眼中だったんだね!!
キィィィィィィッッ悔しいッ悔しいよ影男くん…どうして僕を見てくれないの…
そうか…模型の人かい?それとも鳥居ちゃんなの!?
さては…ソニータイマー…、やる気ないあの子、いや、アンサーさんだな!!
僕の影男くんを誑かしたのは!!

許せない…許せないぞ…
770 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/06(日) 23:40:33.03 ID:SYQIdZdi0
>>769
>そのパンから靴下を数週間放置したかのような悪臭がして
まずどんなパンだったんだwwww
チーズとかマヨネーズ使ってる奴だったら、俺なら迷わーず捨てるぞwww

>僕の影男くんを誑かしたのは!!
何の話だよwwwwwww
はっきり言えるのは犬神憑きと怪人アンサーのおねーちゃんは俺のものだ(キリッ
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/07(月) 02:21:14.35 ID:1rvR8TGf0
シャドーマンの人
いや、夢幻泡影の人、乙
裂邪はついに飲まれやがったか
無茶しやがって…


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::::::...゜ . .:::::::::  /ヽ ノ    ヽ__/  ....... . .::::::::::::........ ..::::
:.... .... .. .     く  /     三三三∠⌒>:.... .... .. .:.... .... ..
:.... .... ..:.... .... ..... .... .. .:.... .... .. ..... .... .. ..... ............. .. . ........ ......
:.... . ∧∧   ∧∧  ∧∧   ∧∧ .... .... .. .:.... .... ..... .... .. .
... ..:(   )ゝ (   )ゝ(   )ゝ(   )ゝ無茶しやがって… ..........
....  i⌒ /   i⌒ /  i⌒ /   i⌒ / .. ..... ................... .. . ...
..   三  |   三  |   三  |   三 |  ... ............. ........... . .....
...  ∪ ∪   ∪ ∪   ∪ ∪  ∪ ∪ ............. ............. .. ........ ...
  三三  三三  三三   三三
 三三  三三  三三   三三


ところで投下できないような話スレの
朝倉柳ぶつからすの話を読んでると鼻血が出たんだが
さきほどのパンの後遺症かな
それとも鳥居ちゃんは俺を本気で殺しにかかって
772 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/07(月) 02:25:10.15 ID:B56l0Hf10
>>771
>裂邪はついに飲まれやがったか
安心しろ、まだだwww
773 :夢幻泡影 † 黄昏裂邪 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/13(日) 18:48:42.17 ID:V4dmYRsA0
それは“人型”とも形容しがたい、何とも奇妙な姿だった
寒空に漆黒のスカーフを靡かせるそれは、七色の天使とも悪魔ともつかない者
右腕は鋭い爪と鋭利な装飾が施された金色
左腕は紫電が光る剣を構えた冷たく燃える紫色
胴体はまるで蛋白石のような輝きを放つシャボン玉の散りばめられた青色
右足は煙のようにすぐに消えてしまいそうな白色
左足は爪先にドリル、脹脛にマシンガン、太腿にランチャーパックと重装備された灰色
背の翼は陽炎が揺らめく程に轟々と燃え盛る赤色
そして頭部は何の飾り気も無く、顔を構成するものが存在しない黒色

《派手な演出の割には、随分と小さな姿だね》
【戦いに大きさなんて関係ない……強者か、弱者か……それだけだ】
《ほう……ならば試してみようか》

と、『βガンダムMk-]T』を操るβ-No.0はビームサーベルを取り出し、
裂邪に向けて容赦無く、光の刃を振り下ろした

《………何?》

瞬間、その一帯の時が止まったかのような錯覚に見舞われた
ビームサーベルが、ぴくりとも動かない
原因は直ぐに解せた
裂邪が黄金の指1本で、光の刃を受け止めていたのだ

【忘れるな、β-No.0……お前の相手は“1人”じゃない!!】

ビームサーベルを弾き、裂邪は「ティルヴィング」を構えて振るう
激しく火花が散り、2度、3度と刃がぶつかり合った
4度目にβ-No.0が降り下ろそうとすると、裂邪の背の炎の翼がごう!!と唸りを上げて燃え、
推進力を生み出して大きく横に反れつつ接近した
かなり距離を縮めると、至近距離で左足のマシンガンとチタン製ベアリング弾を射出した
咄嗟にシールドを使って防いだが、ものの見事に大破し、使い物にならなくなった

《くっ……フフフ、確かに甘く見ていたようだ》

シールドを破棄し、距離をとって、β-No.0は背中に装備されたキャノン砲を装備した
その砲口に、徐々に光が灯り始める

《換装式特殊射撃兵器『TrojanHorse』タイプB……発射》

吐き出されたのは3つの弾丸
熱を帯びたそれは、人一人消すには十分過ぎるに違いなかったが、
裂邪は胸のシャボン玉に触れて、巨大なシャボン玉を3つ作り出し、
飛んできた弾丸を全て防御し、相殺させた

《なっ……!?》
【どうした?さっきからお前の攻撃は…一つも俺には届いてないぞ?】
《…舐められたものだね……『TrojanHorse』タイプE!!》

今度は砲口から一筋の光条が伸び、裂邪に襲い掛かる
が、その光は「ティルヴィング」の刀身に吸い込まれ、彼は切っ先を向けて撃ち返した
直撃は避けたが、背の黒い翼が1枚抉られた
もう一度ビームサーベルを構え、裂邪を横薙ぎに斬り裂かんとする
それもひらりと躱され、それどころか持ち手を白い右足の蹴りによって破壊され、
ビームサーベルは広く深い海へと落ちていった

《ッ!?》
【お前だけはもう、謝っても許さねぇからな……!!】

炎の翼でブーストし、頭部目掛けて一直線に飛んでゆく
巨大化した黄金の右手がガンダムの頭部を鷲掴みすると、めきめきと鈍い音を立て始め、
遂に木っ端微塵に破壊された

【頭部を破壊されると失格になるんだが】
《まだだ……まだメインカメラがやられた程度……!》
【それで終わらせると思ってんのか!!】

左足の爪先のドリルを付き立て、破壊された箇所に突っ込み掘り進め、
上から下へと綺麗に貫通させた
翼が炎であるだけに内部が焼かれ、ガンダムの動きがかなり鈍くなっていた
774 :夢幻泡影 † 黄昏裂邪 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/13(日) 18:49:19.90 ID:V4dmYRsA0
《ば、馬鹿な………こんな一契約者如きに……!?》
【俺がここに来た時点でお前の敗北は決まってたんだ
 “心”を理解しないお前が、俺に勝てる訳がねぇだろ!!】

元の大きさに戻った金色の拳を、黒、青、白、赤、紫、灰、そして金の雷光が纏う
裂邪は凄まじいスピードでガンダムに急接近し、
その拳を振りかぶった

【何もかも、これで………最後(レッツト)だ!!!】

ぼんっ!!という爆発音とも取れる音が、南極の空に響き渡った
腹部に大穴の空いたガンダムは、ぎこちなく動きながらも穴から血のように燃料を漏らし、
機体全体にスパークを瞬かせていた

《フ、フフ……ハハハハハハハハ……
 そうか、分かったよ……“彼”のいう通り、君は“後継者”に相応しい……》
【“後継者”だと?】
《そうさ、いつか君は人間を超え、契約者とも都市伝説とも属さない……“邪神”へと変わる
 その日が来れば、君はただ一人この全宇宙に君臨する支配者になるんだ
 正義も悪も、勝利も敗北も、生も死も無くなる混沌とした世界の、ね……》
【“邪神”、か……悪くないが、もう支配だのにはとっくに興味が失せてるんでな
 またそれが決められた運命だっつぅなら……そんなつまらねぇ運命、俺が全部変えてやる】
《その瞬間に立ち会えないのが、非常に残念だけど…高みの見物とさせて貰うよ
 さようなら、黄昏裂邪……君の事は、忘れはしないよ―――――――――――――》

爆発
爆炎と爆風、黒煙と残骸を撒き散らし、
空っぽの“夢”の塊は、空っぽの“野望”と共に、四散した
その煙が風によって霧散するまで傍観すると、裂邪はくるりと背を向けた

【任務、完了……さて、帰ろうか。ローゼちゃん達に報告しないとな】

と誰に言うでもなく呟いて、ゆっくりと地上に降下し始めた
























――――――――――――――――――――――――――――――ドクンッ!!
775 :夢幻泡影 † 黄昏裂邪 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/13(日) 18:49:56.50 ID:V4dmYRsA0
【あ゙ぐっ!?】


心臓が強く高鳴った


苦しい


身体が、物凄く、熱い


【う、そだろ……………こ、こん、な…………】


頭の中が真っ白になってゆく


目の前の景色が全部、闇に墜ちていく


意識がどんどん遠のいて、いく


【ま……だ…………まだ…………俺、は……………】


いやだ


もう少し待ってくれ


まだ駄目だ


まだ俺は


飲 ま れ る 訳 に は ―――――――――――












【あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!!】









   ...To be Continued
776 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/13(日) 18:51:22.20 ID:V4dmYRsA0
あと3話……の前に1話だけ『赤い幼星』の話を挟みます
777 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2013/01/13(日) 21:31:21.86 ID:kF6axSxAO
>>771
>それとも鳥居ちゃんは俺を本気で殺しにかかって
そろそろそんなものが書きたくなってきたお年始

そしてシャドーマンの人乙ですー
れっきゅんは飲まれない方に俺は賭けた!
778 :赤い幼星 † 邪悪な芽 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/13(日) 21:41:59.08 ID:CBe5LZwp0
「………そんな…………こんなことが………!?」

「組織」本部、R-No.0ローゼ・ラインハルトのプライベートルーム
パソコンのディスプレイだけしか明かりのない真っ暗な部屋で、
ローゼはただ一人、驚きに打ちひしがれていた
ワイシャツから見える白い肌はぐっしょりと汗に濡れており、
回転椅子を倒し、立ち上がって数歩、後退りした

「…エーテルさんには、感謝致しませんと……」

息を切らしながら、彼女はぽつりと、そう呟いた




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「ローゼ、」
「ほえ?……あ、エーテルさん、ごきげんよぉ♪」

裂邪が出動してから数十分経った頃、
ローゼは本部の廊下で、E-No.0とすれ違った

「…風の噂で聞いたんだが……裂邪が『Rangers』に入ったというのは本当か?」
「あら、随分お耳が早いですのね
 今は丁度初任務に出て頂いてるのだけれど…」
「そう、か……」

何やら深刻そうな顔つきに、ローゼは首を傾げた
と、エーテルは無言でポケットの中から何かを取り出し、ローゼに差し出した

「これは……microSDですの?」
「あぁ。その中には学校町に来る前の黄昏裂邪に関する調査報告が書いてある」
「裂邪さんの?」
「いつかこうなると思って念の為に取っておいたんだが…まさか現実になるとは
 一応、その中身を知っているのは俺とマクスウェルだけだ
 過激派や強硬派に知られると面倒な事になるからな…」
「……あの、裂邪さんが一体何を?」
「それは自分で確かめると良い。中身を見たらそれは破棄してくれても構わない
 ただ、覚悟して見てくれ。それだけ深刻なことが書いてある
 無論、他言は無用だ」
「え、あの、待って!」

ローゼの呼び止めにも応じず、エーテルは足早にその場を去った
彼女は暫し、そのmicroSDを眺めていた




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
779 :赤い幼星 † 邪悪な芽 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/13(日) 21:42:25.00 ID:CBe5LZwp0
「………こんなものが強硬派や過激派に知れていたら……それこそ大惨事ですわ」

もう一度、ローゼは机に歩み寄り、
両手をついてディスプレイをじっくりと見た

「…黄昏裂邪……○×町の山奥で「シャドーマン」と契約……
 その後、学校町に移住するまでの5年間で……6000体にも上る都市伝説を討伐………
 1日に1体じゃ追いつかない……これほどの数をたった1人で……!?」

ごくん、と息を飲む
5年間の日数は単純計算で1825日
その中で6000体の都市伝説を狩ろうとなれば、1日約3体倒している事になる
当然、そんな数字が綺麗に収まりきる訳が無い
1体も出会わない日もあれば、10体もの都市伝説と戦ったという事も在り得る

「『田舎の都市伝説狩り』って……あの人のことでしたのね……」

す、と彼女はSDリーダーからmicroSDを取り出した
良く見ると、その手は微かに震えていた

「…エーテルさんの伝えたいことははっきりと解りましたわ
 裂邪さんは途轍もない力を持った…言わば核兵器のようなもの…
 それは同時に、ワタクシ達をも傷つけかねない諸刃の剣……でも、」

バチッ、と赤い雷光が走ると同時に、
ぱきっ!と小気味の良い音が響き、microSDは粉々になった

「もう、裂邪さんは昔の裂邪さんじゃない…
 ワタクシが初めて出会った日からでさえも、心身ともに立派に成長を遂げていますわ
 今の裂邪さんなら、きっと大丈夫
 もし万が一のことがあっても………ワタクシが、止めてみせますわ」

暗い、暗い部屋の中で
彼女は一人、強い誓いを立てた



その、矢先だった



「――――――――――――――ッ!?」



ぞくり、と背筋に走る悪寒
邪悪と形容すべき嫌な気配
そして、蘇る忌まわしい記憶

「こ、これはニャルラトテップ……!? いえ、でも少し………
 とにかく、こうしちゃ居られませんわ!!」

黒スーツを羽織り、早々とボタンを止めると、
彼女は急いでR-No.の会議室へと向かった



   To be Continued
780 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/13(日) 21:50:56.92 ID:CBe5LZwp0
八尺様の人に焼き土下座orz
2011年以降に参戦なさった方は存じ上げない事でしょうが、
その昔、エーテルさんが裂邪や正義の存在を知りながらも、
報告せずにデータを消して隠蔽していた、という話を書いて頂きまして
それを今更引っ張り出した揚句、さらに話を捻じ曲げるとか馬鹿としか言いようがないんですがorz

そしてこれまた今更ながら、れっきゅんが初期において『都市伝説狩り』と呼ばれていた理由
6000体ってのは決して大きな数では無いけど、小学生が1人でやったと考えたら妥当かな、と

因みにこの後、ローゼちゃんはR-No.上位メンバー達と共に南極へ赴き、
その邪悪な気配の根源を駆逐に向かう訳ですが、
その詳細は『夢幻泡影』を終わらせてからまたゆっくり御紹介させて頂きますorz

>>777
>れっきゅんは飲まれない方に俺は賭けた!
さあ、どうなるかな!?(
781 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/13(日) 21:54:37.49 ID:CBe5LZwp0
もう一つ謝り忘れていた
どう見てもエーテルが別人です超ごめんなさいorz
782 :極秘開発の戦闘機とUFO(代理) ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/13(日) 23:43:46.32 ID:CBe5LZwp0
アメリカ合衆国カリフォルニア州、エドワーズ空軍基地
その格納庫の一つの中、一機の見知らぬ戦闘機が置かれ、整備と検査が行われていた。

?「あー!今日も疲れたー!シャワー浴びて牛食って寝たいー」

この日のテスト飛行を終え、ヘルメットを脱ぎセミロングの黒髪をふぁさと広げ、肩のストレッチをしながら歩く、細身の東洋人の若い女性。空野真理(そらのまり)は日本の航空自衛隊から出向のテストパイロットだ。

ス「ヘイ、マリー!今日も最高にクールなフライトだったZE!!」
真「ありがとー」

アメリカ人、日本人入り交じるスタッフと下ネタやテストの情報などを喋りながら、格納庫の出口に向かう。
そして出口でくるりと反転し
真「整備と調整お願いしまーす!!お先に失礼しまーす!!」
機体お囲むスタッフに声をかけて一礼
「おつかれー」「オツカレサマー」

そしてほんの一時手を止め、それに応えるスタッフたちに手をふり、格納庫をあとにする。

彼女達の日常的風景。

彼女達が契約する、いや彼女達の入れ込みようを考えれば、契約というより取り憑かれたというべき都市伝説は「極秘開発のステルス戦闘機」なのだ。
783 :極秘開発の戦闘機とUFO(代理) ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/13(日) 23:44:16.77 ID:CBe5LZwp0
--------------
戦闘機の開発には莫大な資金が必要だ。
超大国アメリカでさえ、一国で賄うのはツライくらいに。
そこで日米の技術と金、そして都市伝説の力を使うことにした。
日本はF-15の後継機とその自国開発の機会を欲していた。米国も新型の開発に迫られる案件があり日本の技術を欲していた。
しかし、両者とも世論と金銭的に厳しかった。
そこで都市伝説だ。
計画がある気配こそ匂わせど、証拠は一切残さない。実際に行う開発計画を都市伝説扱いさせてカモフラージュし世論をかわす。
暫くすると都市伝説化が安定化すると金銭的な縛りがユルユルになるし開発が詰まりにくくなる。
別に税金の使用目的を誤魔化しまくるわけではなく、都市伝説は「ステルス戦闘機を極秘開発している」という話は流布すれど「その開発は資金難で難航している」なんて話としては広がらないことの効果で、計画を行う人の感覚では金がどこからともかく沸いているようで、かつ経済全体に破綻をきたさない謎現象なのだ。
ついでに言ってしまえば都市伝説なのは「ステルス戦闘機を開発している」つまり計画の存在であり、戦闘機のスペックにはほとんど触れておらず、都市伝説の力で高い性能を得ることはできず、戦闘機の性能はエンジニアの英知次第だ。
さらにもう一つ。都市伝説として計画を進めると、できあがる戦闘機の存在が現実にならないのではないかというのも平気だ。噂は本当だったんだ、で済む。
完成後に「隠れて税金使いやがったな」と文句言われる可能性もあるが、もう作ってしまっていれば使わないのはもっと無駄になる。適当に責任者を辞めさせれば良い。歴史的には不祥事として残ってでも、高性能な戦闘機を作る必要に迫られているのだ。
784 :極秘開発の戦闘機とUFO(代理) ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/13(日) 23:44:51.81 ID:CBe5LZwp0
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格納庫で佇む機体、XF-3は全長約19m、見た目から受ける印象はF-22をはじめとする現用ステルス戦闘機とそこまで大きな差違はなく、あまりSF映画っぽいデザインではない。
水平尾翼は無く、外側に傾斜した垂直尾翼が水平尾翼の機能を兼ね、翼型も菱形っぽい印象を与える。

真「いよっし、飛ばすぞ」

コクピットにおさまり、目の前のディスプレイで機体の状態をチェック。
ヘッドマウントディスプレイ、ヘルメットのバイザーにも情報が映る。機体下面のカメラの映像を調整して映し出すので、パイロット的にはガンダムなんかで見受けられる全天周囲モニターのように感じる。これはF-35にも搭載された機能でこの計画特有ではない。

ヒィィィンと回転数を落として回るジェネラルエレクトリック社と石川播磨重工の共同開発のターボジェットエンジンが低く唸る
ゆっくりと前進し、滑走路までタキシング。
路面の凹凸による機体の傾きを察知してフラッペロンと全遊動式垂直尾翼が微妙に動く。
滑走位置に付き、エンジンを吹かす。
身体がシートに押し付け数秒、距離にしてほんの数百mで機体が浮くと、真理は右のスティックを思いきり手前に倒す。
と言っても、舵の効きはスティックの倒れた量ではなく力の強さに依存するので、ほんの数度しか倒れないが。

一気に機体は直角に近い角度で空を仰ぎ、まるで重力など無いようなほどの加速で駆け昇る。
ある高度に到達するまでの早さの記録なぞゆうに塗り替えるほどの能力だが、極秘故に公表できないのがもどかしい。

ス「それでは模擬戦を開始します。」


真「いくよ!アイちゃん!!」

アイちゃんとはこの機体の補助AIに勝手に着けた愛称だ。AIをローマ字読みしただけの安直な。
将来の戦闘機の無人化に備え、そのAIの基礎の構築にも繋がる、本計画の鍵の一つでもある。
現状は人間にできることできないことを覚える段階で積極的に戦闘機動を行えるレベルではないが、パイロットの意図を察して機体制御に反映させようという傾向があり、未完成でもずいぶん操縦をラクにする。
このAIの教育もまた、空野真理の仕事だ。まあ、思い切り飛べばよいだけだが。
785 :極秘開発の戦闘機とUFO(代理) ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/13(日) 23:45:22.76 ID:CBe5LZwp0
模擬戦の相手は現代最強を誇るF-22が5機にF-35が10機。どちらも最新のステルス戦闘機だ。
だが、第一戦は楽勝に終わった。
ステルス戦闘機といえど、レーダーに見つからないわけではない。見つかりにくいだけだ。
同じレーダーが相手なら非ステルス機よりずっと近づいても見つからない、見つかる距離が短い。それだけ。
たとえ従来機体の半分の距離まで近づいても見つからないステルス機も、二倍性能の良いレーダー相手には今まで通りになってしまう。ステルスは囃し立てられるほど万能ではない。

現代の戦闘機の戦いはいわゆるドッグファイトと呼ばれる戦いは皆無。
高性能なレーダーで相手が肉眼で見えない距離の敵をロックしてミサイルでドカンがほとんどとされる。
先に撃った者の勝ち。
ゲームなんかで戦闘機に親しんだ人には意外かもしれないが、ゲームでこれではつまらないから、こうなってないだけである。


むしろこの2機種の真価はデータリンク性能にある。誰か一機がロックオンすれば、その敵を射程に収める全ての僚機がロックオンしたのと同義になる。
これが軍事力を底上げする。
例えるなら、学校の試験という敵に対して、普通にカンニング禁止でテストを受けるクラスと、成績の最下位から最上位まで、クラス全員がテレパシーで知識共有のクラス。
クラスの中に誰か一人正解が分かる者がいれば全員が正解できる。優等生Aが分からなくてもCが分かれば問題無い。
そんなニュアンス。

これがステルス潰しにも有効だ。
パッシブステルスは、相手のレーダー波をいかに相手に返さないかという技術だ。相手のレーダー波の反射する向きを変えたり、レーダー波自体を弱める。そのための機体形状、内部構造、材料技術の選択と空気力学を両立させる高度な技術。
しかしどうしてもステルス性を維持できない向きというものがある。
真上と真下からレーダー波を浴びた場合はしっかり返してしまうし、真後ろを取られればエンジンの熱を赤外線センサーIRSTでとらえられ、データリンクで共有ロックされる。
786 :極秘開発の戦闘機とUFO(代理) ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/13(日) 23:46:00.13 ID:CBe5LZwp0
それすらもハイテクでスマートなゴリ押しで打ちのめすことができるのがXF-3という機体だ。


真「おっ、取り囲むつもりだね!それが効かないって何度も証明したのに仕方ないな〜。・・・はい、全機撃墜♪」

シート状とも呼べるレーダーを機体側面を一周するように配置、また上・下面にも配置するスマートスキンセンサー。
これで全周囲を索敵を行え、先手を取ることが可能。優位な位置を取ろうと動く相手も手に取るように分かる。そして・・・

真「このビーム兵器って本当に便利だな〜」

ビーム、というのは誤りがある。
ライトスピードウェポン。光の速度で飛ぶ高出力マイクロ波。これで敵機の電子機器を焼き壊す。
地味な壊し方だが現代の戦闘機はコンピューター無しでは飛べないことを考えれば驚異的だ。
もちろん模擬戦ではロック判定のみで実際に撃ちはしないが、別の試験でその性能は実証済みだ。

真「ってアレ?うっかり撃ち漏らしちゃったよ」

目の前の画面は自機を中心にした敵の配置を示すモードだったが、背後に一機残っていた。幸いこちらの位置を確実に捉えてはいないが念入りにやっておく。

真「さすがに真後ろ取られたら熱探知されちゃうよね…アイちゃん!ついでにアレも試しちゃお」

エンジン近くのパネルを僅かに開け、低温の窒素ガスを吹き出す。
排気熱が抑えられ、赤外線ステルス性を一時的に高める。そこから

真「いち、にの、さんっ!ひぅぅ〜!」

右スティックを思い切り引くと機体がぐわっと上を向く。エンジンの排気方向を変える推力変更パドルの効果もあり、機体は高度を変えずにバク転するような動きをとる。
強烈なGが真理の身体を襲う。対Gスーツの中に空気が送り込まれ身体を圧迫し、血流を調整して気絶を防ぐ。

真(コレコレ!やっぱり飛行機飛ばすならこうよね!)

真理は急激なGをガンガンかけて飛ばすのが楽しくて仕方ない人種だった。
だから、本来後方に向けてライトスピードウェポンを照射すれば済むところこんな遊びをする。


ス「全機の撃墜を確認。テキトーに帰ってきて下さい。」

真「了解、テキトーに帰投します。」

真「じゃあ、お勉強しながら帰ろっか、アイちゃん!」

スロットを開け、高度を上げながら縦横無尽にメチャクチャに動く。
この過程が人間の限界のラインを教えることになる。一定高度に到達したら、エンジン全開で基地に向け加速、マッハ3に近づいたらエンジンのモードチェンジ。
ターボファンからラムジェットモードに。
さらに加速、マッハ5超えで直進し帰路につく。

真「早く帰って牛食うべー♪」

つつく
787 :夢幻泡影 † 契約 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/14(月) 12:24:48.20 ID:I3Nr/iv+0
「……んぅ」


眠っていたのか?

いや違う、これは俺の意識下だ

身体が上手く動かない

どうなったんだっけ

β-No.0に勝ったのは、覚えてるんだけど

その後の事はさっぱり――――


「裂邪、」


あれ、シェイド?

ミナワ達もいる

良かった、皆無事みたいだ

でも何で暗い顔してるんだ?


「どうしたお前等、何かあったのか?」
「…気付いてねぇみてぇだな」
「ご主人様…実は今、ご主人様は暴走してらっしゃるんです」
「え?」
《自分達,七ツノ都市伝説ト融合シ,飲マレソウニナルモ,一時ハ耐エ凌イダ……デアリマスガ,》
「その反動で力が抑えきれなくなっちまったみてぇでして……」
『今、暴走した君を「組織」の者達が止めようと試みているが…君の力が余りにも強すぎた』
「そんな……俺の所為でローゼちゃん達が!?」


嘘だ……戦いが終わったのに、何で……!?
くそっ、今すぐに、元に戻って……!!


「…裂邪ヨ、今ノオ前ヲ止メルニハ、コレシカ思イツカナカッタ
 力ノナイ我々ヲ、ドウカ許シテ欲シイ」
「は? 何言って―――」
《Boss……少シノ間デアリマシタガ,貴官カラ学ンダ事ハ,トテモ大キカッタデアリマス
 仮令コノ存在ガ消滅シタトシテモ……Bossノ事ハ,忘レハシナイ,デアリマス》


ぷつん


俺の中で、何かが音を立てて切れた


「………び、ビオ?」
『マスター、君とは短い付き合いだったが、なかなか楽しかったよ
 …君にした事は謝っても謝りきれない……これはせめてもの償いと受け取って欲しい
 それと……β-No.0に怒鳴ってくれた時、心底嬉しかったよ。有難う』


ぷつん


また、糸が切れるような音がした
788 :夢幻泡影 † 契約 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/14(月) 12:25:22.48 ID:I3Nr/iv+0
「お、おい、ナユタ……冗談だろ?」
「悪ぃな主、こいつぁ俺様達で決めた事だ
 テメェとは…3年か、案外短かったな
 喧嘩もしたが、一緒に戦ったし、笑いもした……悪くない3年間だったぜ」
「旦那は立派なお人でござんした
 自分のことよりもまず、あっしらや他人のことを優先する様は、まさに英雄でい
 だからせめてこんな時くれぇ、あっしらに花を持たせて下せぇ」


ぷつん、ぷつん


続けて2つ、繋がりが切れた


「理夢……ウィル……」
「ご主人様」
「ミナワ、まさかお前まで……」
「ごめんなさい…でも、ご主人様をお守りするのが、私の役目ですから
 ……私、ご主人様に出会えて、本当に幸せでした
 ずっとッ……ずっと、一緒にぃ………いたかったけれど……私は、ご主人様の心の中で………生き続けてるからぁっ……」
「ま、待て、ミナワ、行くn」
「……さよなら…裂邪」


唇に温かいものが触れ、離れると同時に


ぷつん、と、また糸が切れた


「……裂邪」
「シェイド………お前も同じなのか……?」
「…スマナイ…我々ガ消エレバ、オ前ノ手元ニ残ルノハ「レイヴァテイン」ノミ…
 今ノオ前ナラ、簡単ニ制御デキルダロウ」
「お前等はどうなるんだよ! 俺一人助かったって……お前等がいなきゃ!!」
「8年……長イヨウデ短カッタガ……私ハオ前ト出会ッタ日ヲ忘レタ事ハナイ
 オ前カラハ、計リ知レナイ程多クノ事ヲ学ンダ…
 ロリコンデ、変態デ、天邪鬼デ、私ト毎度ノ如ク反発シタガ……
 ソレデモ、オ前ノ知恵ヤ勇気ニ助ケラレタ事モアッタ」
「もう……もう、やめろよ………」
「有難ウ……オ前ハ私ニトッテ最高ノ相棒ダッタ………イツカマタ何処カデ会オウ、少年ヨ」


ぽふ、と頭を撫でられたかと思えば


ぷつん、という音が、胸の中で強く、強く響いた


皆が、どんどん、闇の奥へと消えていきそうになる


皆が、いなくなる


「…………けん、な………」


はらわたが、煮えくり返った
789 :夢幻泡影 † 契約 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/14(月) 12:26:16.16 ID:I3Nr/iv+0
「ふざけんな馬鹿野郎共が!!
 俺を助ける為だと!? 余計なことしてんじゃねぇよ!!
 お前等が犠牲になって、遺された俺はどうすんだよ!
 またッ……また俺は………一人ぼっちじゃねぇかよ!!」


目の前が滲んだ


それでも、皆の歩みが止まった事だけは、確認できた


「……昔は、世界征服だなんて言ってたけど……本当は寂しかったんだ
 俺、不器用でさ……友達なんて1人もいなかった
 でも、シェイドやミナワ達に出会って、契約して……滅茶苦茶楽しかった
 世界征服だなんて、ただの照れ隠しだった……ただ、お前等と一緒にいたかっただけだったんだよ
 ビオ……何が少しの間だよ、まだ1日も経ってねぇじゃねぇか
 俺はまだ、お前のこと何にも知らねぇんだぞ
 俺の知らない話、もっと聞かせてくれよ
 ナユタもそうだ……折角、少しでも分かりあえたと思ったのに、いきなり消えようとしてんじゃねぇよ
 まだ解決してねぇことも沢山あるだろうが
 1人じゃ、無理でも……俺が、力になる、から……」


溢れる涙を思いっきり拭った


それでも、また視界が歪む


「ウィルは天然でおっちょこちょいで、こきつかってばっかだったけど……
 俺と一緒で自然が好きだったから…話してて楽しかったし…
 些細な事でも馬鹿みたいに感動するから…すげぇ面白かった…
 理夢も、足代わりにしたり無理矢理夢喰わせたりッ、それが原因で喧嘩もしたけど…
 真面目に提案もしてくれたし、「猿夢」の時は、助けに来てくれた、し…
 何だかんだで、結局、お前に頼りっぱなしだった……」


呼吸が、上手く整わない


1回、2回と、深呼吸を繰り返す


「ミナワ……初めて会った時、お前のこと、一人の女の子としか見て無かったけど……
 一緒に居る内に……段々気持ちが変わっていって……お前に好き、って言って貰えた時、滅茶苦茶、嬉しかった…
 お前には、酷い事もしたし、浮気したりしたけど……もう、二度としない、から…何処にも行かないでくれよ…」
「ひっぐ…ごしゅじ、さまぁ……」


胸が締め付けられるように痛い


喉の奥が焼けるように熱い


でも、まだ、全部言い終わってない


「…シェイド……お前は俺にとっての、色んな、初めてだった……
 初めて出会った都市伝説……初めての戦い…………初めての、友達……
 でも、お前と一緒に戦って、喧嘩して、遊んで、笑って、ってしてる内に、
 俺の中で、お前は友達なんかじゃなくなってった……
 俺にとってシェイド、お前は……親だったんだよ…」
「ッ……」
「まだ、お前に甘えてたいんだ…こんなッ、馬鹿な息子だけど……
 もうちょっと、だけで良い……面倒、みてく、れ……」
790 :夢幻泡影 † 契約 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/14(月) 12:26:47.43 ID:I3Nr/iv+0
声が、枯れそうだ


これで、最後にしよう


俺はバックルの、金色のパスを手にとって、力を込めて、殴った


破壊されたパスから、黄金の枝が現れる


「レ、裂邪、何ヲ――――――」
「シェイド! ミナワ! 理夢! ウィル! ナユタ! ビオ!
 最後に………最後に一つだけ、俺の我儘を聞いてくれ!!
 俺は、これから…もっと、もっと強くなる!
 俺の力が暴走して、皆に迷惑をかけないように!
 お前等に気を使わせて、こんな状況を二度と作らせないように!!
 俺はもう、二度と負けないから!!」




だから




だから!




「死んでも、とまでは言わないから!!
 俺の命が尽きるその時まで………ずっと、俺と一緒に居てくれ!!
 たとえどんな強敵が相手だろうと、俺は絶対に負けたりしないから!!
 ずっと! ずぅっと!! 俺と一緒に、戦ってくれ!!!
 俺と………
 俺とぉ………!!!」





















「俺と契約(ヤクソク)しろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


















    ...
791 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/14(月) 12:28:42.81 ID:I3Nr/iv+0
れっきゅんの秘めたる想い


さて、残るは2話でございます
この勢いだと今日中に終われそう
792 :夢幻泡影 † 誕生 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/14(月) 17:17:00.23 ID:I3Nr/iv+0
恐らく俺は気がついたらしい
心成しか、長い眠りについていた気がする
どういう訳か右半分が真っ暗だ
失明でもしたのだろうか
あちこちに痛みを感じる身体を、俺は無理に起こした
一瞬、右目に光が入った
これは……髪か? こんなに長かっただろうか
起きる前に何をやっていたのか、考えた
そうだ、俺は……

「ご主人様ぁ!!」

突然、身体を強く抱きしめられた
痛みで呻きそうになったが、その姿を見て痛みどころではなくなった

「………ミナワ……なのか?」
「そうッですよぉ…もぉ、無茶ばっかり、してぇ……ばかぁ……」
「…すまなかった。俺の為に考えてくれたんだよな……有難う」

泣きじゃくるミナワをそっと抱きしめ、俺は彼女の頭を撫でた

「…本当に奇跡ですわね」
「一時はどうなるかと思ったが」

ふと見れば、ローゼちゃんが安堵を浮かべた表情でこちらを見ていた
隣にいるのは黒いローブを羽織った、黒い長髪に浅黒い肌、赤い瞳の妙齢の女性

「……ん? お前……」

初めて見た筈なのに
俺はそれが誰なのか、分かった気がした

「やっとヒーローが目覚めやがったか」
「無理もありゃせん、あれだけの事をしなすったんでい」
「ま、大馬鹿者も良い所だね」
「ボス、身体の具合は、宜しい、でありますか?」

次々に視界に入ったのは、
白い毛皮のジャケットを着た、白髪で碧眼の、八重歯が目立つ十代くらいの少年
赤い袴を着て黄色い扇子を持った、赤髪で細目の二十代くらいの男性
紫色のジャンパーを着て金の柄の剣を持った、紫の長髪を後ろで縛った小学生くらいの少年
灰色の迷彩服を着た、灰色のセミショートで感情の薄い10代くらいの少女

「……何?」
「あ、えっと、ご主人様、この方達は―――」
「理夢、ウィル、ナユタ、それにビオ……なのか?」
「へぇ、分かるもんなのか。流石は主だぜ」
「覚えて頂き光栄、であります」

白髪の少年――理夢は、腕を組んで満足そうに言い、
灰髪の少女――ビオは敬礼しつつ、ポーカーフェイスで言った

「いやーしかし、まさか人間になっちまうたぁ思いやせんでしたねぇ」
「おほほほ、全くですわ♪」
「ムギュ……き、君、僕の事を嫌っていた筈じゃなかったかね?」
「貴方が子供なら話は別ですわ♪ あぁん可愛らしい♪」

赤髪の男性――ウィルは扇子を広げて笑い、
紫髪の少年――ナユタはローゼちゃんに抱きしめられて苦しそうにしていた
と、いうことは……

「…お前……シェイドか」
「あぁ。意外そうだな?」
「女だと思ってなかったからな」
「……我々には、性別の概念がなかった…筈なのだが」
「でも、どうしてこうなったんだ?」
「その説明に至る前に、他に話さなければならないことがあります」

ばたん、とドアを閉めて現れたのは蓮華ちゃんだった
その表情から察するに、状況はあまり宜しくないようだ

「……話、というのは?」
「まず最初に…とんでもないことをやらかしましたね」
793 :夢幻泡影 † 誕生 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/14(月) 17:17:58.23 ID:I3Nr/iv+0
アタッシュケースを開けて彼女が取り出した袋には、
金と紫、灰色の、3つのパスの破片が入っていた
不意に己の胸元に手を当てると、そこには金色の枝のペンダントになった「レイヴァテイン」が提げられていた

「貴方が融合を解いた時、貴方の傍に落ちていました
 これが破壊されているという事は、今の「レイヴァテイン」、そしてナユタとビオは、仮契約では無く本契約されている
 つまり…貴方は7つの都市伝説と本契約を結んでいる状態だということになります」
「…皆が無事で俺も生きているという事は…成功してた訳か」
「いえ、そうでもありません」
「何?」
「じ、実は……あの後、私達はすぐに目を覚ましたのですが、ご主人様は……」
「7つの、しかも実際はトータルで14の都市伝説と本契約を結んでるんですよ?
 器が耐えられる訳がありません……現に、貴方も飲まれる寸前でした」
「なっ……!?」
「ですが、裂邪さん自身が抵抗し、ギリギリ保っている状態でした
 が、放っておけば飲まれ……消滅していたかも知れません
 まぁ、御存知の通り今は大丈夫です。ちょっと手古摺りましたけど…」

と、蓮華ちゃんが俺の布団を勢い良く剥ぎ取った
俺が見たのは、俺の腰に巻かれたベルトだった
『ウルベルト』のようだが、少し違う

「……新しいベルトか?」
「壊したり、外したりできないように設計してありますが…絶対にしないで下さいね?
 もしこのベルトが貴方の身体を離れたら、その時は死ぬと思って下さい」
「物騒だな…」
「今までのものは都市伝説召喚機に過ぎませんでしたが、
 こちらは都市伝説制御装置になりますからね」
「だが、パスはどうするんだ?」
「パスの代わりに、これを使います」

手渡されたのは、黒をベースに金のラインが入ったスマートフォンだった
良く見れば、俺のXperiaに似ている

「貴方の故障したスマートフォンを改造しました
 使い方は後程改めて説明致しますが、主な用途は3つ
 1つ目は都市伝説の呼び出し
 2つ目は都市伝説との繋がりの調節
 3つ目は都市伝説との融合」
「繋がりの調節?」
「「教会」のロリス・カスティリオーニから頂いた、契約を司る天使「メタトロン」の羽を用いて、
 契約都市伝説の繋がりの強弱を調節し、契約者への負担を和らげます」
「ほう…ん、融合もこのベルト頼みか?」
「当たり前です。これまでのように直接すると一気に飲まれます
 代わりに、融合時の負担も軽くなりますので」
「へぇ……有難う、後で詳細も宜しくな」
「はい」
「で、こいつらがこうなった理由だが」

俺はシェイド達を見回した
ウィルは顔を顰めて紫の扇子を煽いでいる。感情で扇子の色が変わるのか
ナユタは未だにローゼちゃんに抱きしめられていた。いい加減苦しそうだな

「私も断言はできませんが……
 恐らく、貴方が7つの都市伝説と同時に、情報が混ざってしまったんだと思います」
「混ざった?」
「成程、要は裂邪が都市伝説に近くなった代わりに、
 我々が裂邪から“人間”の情報を得た……ということか?」
「そんなところですね」
「待て、じゃあ「レイヴァテイン」はどうなる? これだけは今まで通りなんだが」
「これも憶測ですが、貴方と一番繋がりが深くなったのだと思います
 簡単に言えば、「レイヴァテイン」は貴方自身であり……貴方は「レイヴァテイン」の一部でもある、と」
「……有難う、大分理解できた
 あぁそうそう、この髪なんだが―――」
「やっと気付きましたね! そこなんですよ私が気になってたのは!」

やけにテンションが上がる蓮華ちゃん
この子こんなキャラだったか?

「やはり推測の域を出ませんが、一度全ての契約を解除したことで止まっていた成長が進行したんだと思います
 何せこれも初めて見た現象なので、まだ何とも言えないんですよ」
「そういや主、背も伸びてたぜ」
「本当か?」
「はい、測ったら何センチか伸びてました」
「確かに興味深いな……そんなこともあるのか」

実際どれくらい伸びたのだろうか…後で調べておかねば
ふと天井を見ながらそんなことを考えていると、視界に黒髪の女性が映った
794 :夢幻泡影 † 誕生 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/14(月) 17:18:27.58 ID:I3Nr/iv+0
「どうした、シェイド?」
「誰も口にしないから敢えて言うが…お前何日寝てたか知ってるか?」
「へ?……おい今何日だ?」
「11月5日土曜日…丸5日眠っていた、であります」
「しまった……学校は!?」
「ご安心を。御両親に報告した上で、ルートちゃんに頼んでインフルエンザ感染を理由とした出席停止の処置を取らせて頂きましたの」
「…ふぅ、良かった……」
「何処がだ!! この5日間、我々がどれだけ心配したか分かってるのか!?
 少しは自分の身の安全を考えて行動しろ!!」

両肩を掴まれ、部屋が静かになるほど怒鳴られた
あまりに唐突すぎて、思わず視線を反らしてしまった

「…わ、悪かった、シェイド……心配させてごめん―――」

そう言いかけた直後だった
初めて、俺はシェイドに抱きしめられた
心が安らぐような、優しい匂いがした

「……え?」
「もう、私に心配をかけさせるな……馬鹿息子」

言われて、心の奥底から、何かが溢れそうになった
今この瞬間に、彼女に―――シェイドに伝えたいことが、湧水のように、幾多も溢れ出す
その多くが、上手く言葉にならずに霧散して消えていった
ただ一つだけ、言い出せたのは

「………母、さん………」

それ以上は何も言えなかった
涙を隠す為に顔を埋めると、ぽん、と頭を撫でられた
優しく、温かな感触だった

「はーいストップストップ!」

突然、シェイドが引き離され、入れ替わるようにミナワに抱きしめられた
いつになく、強い力で

「ミ、ミナワ? どうかしたのか?」
「どうもこうもありませんよ! 不毛すぎます!
 シェイドさん、今私の裂邪を誘惑しようとしてたでしょ!?」
「なっ!? ば、馬鹿違うっ!?」
「だって裂邪の顔を胸に押しつけてたじゃないですか!
 ただでさえ大きいのにやめてくださいよ! ねぇ裂邪♪」
「ミナワ、」
「何ですふぁっ!?」
795 :夢幻泡影 † 誕生 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/14(月) 17:18:54.27 ID:I3Nr/iv+0
俺はミナワの頬を抓った
もっちりとした幼い肌はよく伸びた

「い、いふぁいいふぁい! ふぁ、ふぁんふぁんふぇふふぁ!?」
「お前が何なんだ、あの状況で割り込まないだろ普通
 あとシェイドに限ってそういう気を起こす訳が無い事はお前も解ってる筈だ」
「ほ、ほふぇんふぁふぁいぃ〜!」
「解れば良い……ッヒヒ」

頬から手を離すと、俺はミナワを強く抱きしめ返した
「ふえ!?」と驚いたようにあげた声が久しぶりで、一層愛おしく感じた

「言っただろ? 俺はこの世で唯一お前だけを愛してる。お前だけが俺の女だ」
「えっ、や、やだっ、そんな、皆の前でッ……れ、裂邪ぁ……///」
「…なぁ、なんか主、いつもと違ってねぇか?」
「そうだね、契約の副作用か何かかも知れない」
「? ボスはボス、であります」
「あー、ビオの姐さん、そういう訳じゃ―――」
「あのぉ…そろそろ良いかしら?」

完全に蚊帳の外だったローゼちゃんが、冷や汗をかきつつ訊ねてきた
蓮華ちゃんは、膝を抱えて回転椅子に座ってくるくる回っていた……何かあったのか?

「えっと、これから裂邪さんのコードネームを発表しようと思いますの」
「コードネーム?」
「『Rangers』のメンバーには、任務の時はコードネームで活動して頂く決まりですの
 本当は初任務の時に言い渡す予定だったのだけれど、いつものノリで……てへっ♪」
「いや忘れてたんじゃねぇか」
「コードネームでござんすか、なかなか「組織」らしくなってきやしたねぇ」
「……それで、俺のコードネームは?」

ふふん、と勿体ぶったような顔で、ローゼちゃんは鼻を鳴らし、
ハイヒールの音を響かせて俺の方に歩み寄った

「…裂邪さん、これからは「組織」として、様々な任務をこなして頂く事になりますわ
 でも、貴方なら……いいえ、“貴方達”ならきっと、どんな困難にも立ち向かえると、ワタクシは信じています
 “七つ”の都市伝説を使役し、“七つ”の色に“変化”する………」

彼女は立ち止ると、右手を、す、と挙げ、
ビシッ、と勢い良く俺を指差した

「裂邪さん……いいえ、貴方の名は…………」





   ...To be Continued
796 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/14(月) 17:20:48.46 ID:I3Nr/iv+0
次回、『シェイドVSミナワ!黄昏裂邪は誰のもの!?』を公開します(嘘)


次でラスト
797 :夢幻泡影 † ∞ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/15(火) 00:40:54.09 ID:d9LmusYU0
「ビオ、夜明けまであとどのくらいだ?」
「残り9分48、47、46、45―――」
「分かった、もう数えなくて良い;」
「イエス、ボス」

11月6日未明
裂邪達は、見晴らしの良い海辺に来ていた

「でも、どうして日の出なんですか?」
「俺の新しい世界への第一歩だ、その記念すべき日の出だよ」
「はぁ?何だそりゃ」
「そっとしておいてやれ、まだ疲れが抜けてないようだ」
「そいつぁてぇへんでい。旦那ァ、何か水でも持ってきやしょうか?」
「ウィルくん、持ってこなくとも目の前に沢山あるじゃないか」
「そこ、可哀想な目で見るな。あとナユタ、何飲まそうとしてんだ」

ざざぁ……と波は静かに揺れていた

「しかし改めて思うが、まさか人間になるとはな」
「うふふ、私も最初に見た時はビックリしましたよ
 今はもう慣れましたけどね」
「見る分にゃ慣れるだろうがよぉ、俺様はまだ二足歩行に慣れてねぇんだぞ」
「あっしとしちゃあ、手すらもまだ慣れやせんねぇ」
「……同じく、であります」
「まぁ、そりゃそうだろうな(ウィルは生前人間だったと言ってなかったか?)
 お前等は大丈夫なのか?」
「僕は元人間だし、皮肉だけど常に人に憑依してたからね」
「一応、私は人間をベースとした都市伝説だからな」
「それもそうか」
「私m」
「お前はずっと人の姿だろうが;」
「むー、乗ってあげただけなのに、ご主人様のいじわるぅ
 ……ところでご主人様?」
「ん?」
「新しい生活への第一歩、ということですけど……新しい目標とかはあるんですか?」
「目標、か……」

暫し、俯いて考える
周囲が注目していると、彼はぽつりと語り始めた

「…正直、「組織」に入った以上は、誰かを助けたり、誰かに頼られたりするような人間になりたいと思っていた
 だが……“正義の味方”にだけはなりたくない
 いや、なれる訳が無いんだ…俺は“正義”に負けたから。“正義”を名乗る資格は無い」

彼はそっと髪に隠れた右目の傷に触れると、
「だから、」と付け足した

「俺は最後まで、俺の“邪(あく)”を貫き通す
 この世に跋扈する“正義”を騙る偽善者(ばかども)を、俺が“邪(あく)”の名の元にぶっ潰す
 その結果がどうなろうと俺には関係ない
 それが真の“正義”だったとしても、そこから新たな“正義”が生まれたとしても俺の知った事ではない
 たとえ俺に刃向う奴が現れようと、返り討ちにすれば良いだけだ
 この世の“邪(あく)”は……俺一人だけで良い」

力強く、しかしどこかもの寂しげにそう宣言すると、
ぎゅっ、とミナワが彼を抱きしめた

「もぉ裂邪ってば、目覚めてから何だか変ですよ?
 でもクールな裂邪も大好きです♪」
「アンチヒーローって奴ですかい、悪くはありゃせんねぇ」
「正義……悪……理解不能?」
「待ちたまえ君達、妙な演説に騙されるな」
「本人公認の完全な悪役の台詞じゃねぇか、否定しろよ」
「…? シェイド、お前はどう思う?」
「………お前の好きにしろ。私は、お前に従うだけだ
 今までも、そして…これからもな」

シェイドは微笑みながらそう答えた
人間の姿だからこそ感じ取れた、その温かな笑みに、
裂邪はつられて、笑みを返した

「有難う、シェイド」
798 :夢幻泡影 † ∞ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/15(火) 00:41:25.27 ID:d9LmusYU0
「あ、そういやぁ、もう“四天王”じゃなくなっちまいやしたけど、これからどうするんでい?」
「馬鹿かウィル、余計なこと聞いてんじゃ―――」
「もう考えてるよ。お前等は今日から“Ragna6(ラグナシックス)”だ」
「「「うわぁ超ダサい」」」
「シェイド、お前さっきの言葉は何処行ったんだ?」
「あはは; 私は好きですけどね、“Ragna6”♪」
「ッ! ボス」
「お、昇るか?」

水平線の彼方から差した光
それは徐々に大きくなっていき、
半円を、そして黄金の真円を描いた
空が明るくなる
朝の始まり
そして

「さあ……俺達の新しい世界の始まりだ……!!」

立ち上がり、裂邪がそう言った瞬間、唐突に音楽が鳴り響いた
彼はポケットからスマートフォンを取り出し、画面を確認した

「…ローゼちゃん? 結局自分で連絡するのかよ……もしもし?」
《ごめんあそばせ、今宜しいかしら?》
「あぁ、要件は?」
《学校町の西区で、「トンカラトン」が目撃されましたの
 今のところ犠牲者はおりませんけど、民間の方が襲われてるようですわ
 至急向かって下さるかしら?》
「Right now(今すぐに)」
《お願い致しますわ。死ぬことのありませんように……“Rainbow”》
「任せろ、ローゼちゃん」

答えて、彼は通話を切った

「さて、新時代の初任務だ……行くぞ、お前等!」
「了解した」
「はい、ご主人様♪」
「OKィ!」
「がってんでい!」
「仰せの儘に」
「イエス、ボス」







―――これから先、彼にどんな試練が待ち受けているのか




―――しかし、彼はそれすらも打ち砕いてゆくだろう




―――彼には、仲間が……否、“家族”がいるのだから




―――彼は「組織」R-No.所属契約者集団『Rangers』が一人




―――その名は“Rainbow”――――――――――――黄昏 裂邪







   ...Thank you so much
799 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/15(火) 00:45:01.59 ID:d9LmusYU0
最終回だと言うのにこのボリュームの薄さ


それはさておき


今を以て『夢幻泡影』は無事連載終了を迎えました
今日まで裂邪とその家族達を応援頂きありがとうございました
彼の物語はこれでお終いですが、彼自身は『赤い幼星』を始めとした私の他の連載に登場しますので
今後も彼の活躍に御期待下さいませ
800 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2013/01/15(火) 05:49:27.07 ID:IaZAwfVAO
長期連載、影の人もれっきゅんも大変お疲れさまでした。
一時ははらはらしましたが、気持ちのいい終わり方でした。新生れっきゅんの活躍にも期待しています。
そしてナユたんはわたさん、俺のよm(何故名前を入れたかって?ナユたん俺のものアピールしたかったからさ!
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/15(火) 20:35:06.17 ID:FwS5k+1DO
皆様投下乙ですー
れっきゅんの物語は無事円満終了、なによりです
第二部のアットホームドタバタコメディにも期待しております

それとシャドーマンの人はあとで私にナユタくんを紹介してくださいね
802 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/15(火) 20:41:43.67 ID:Yd8FvGRw0
何時の間にナユタ人気じゃねぇかwww
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/15(火) 21:12:08.91 ID:FwS5k+1DO
ショタが増えるのはとても喜ばしいことなのです
804 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/15(火) 22:34:27.47 ID:Yd8FvGRw0
>>803
ええいこのショタコンどもめ♪
そうだ、連載終わったし、記念として新規絵書かなきゃなぁ
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 00:34:50.15 ID:STcRrIQto
影の人乙でした
これで本当に終わりかと思うと残念です
あっさりした終わり方だけど逆にいいのかもしれないですね
まさかの人間化には正直驚きましたがww
806 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/16(水) 00:55:24.59 ID:Zh+NcqJw0
>>805
>まさかの人間化には正直驚きましたがww
実はただ単に人間化したシェイド達の絵が描きたかっただk(影に飲まれました
あと裂邪×シェイドのエロが書きたかっただk(斬り裂かれました
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 01:41:00.71 ID:1T5RnVn8o
>>806
>実はただ単に人間化したシェイド達の絵が描きたかっただk(影に飲まれました
>あと裂邪×シェイドのエロが書きたかっただk(斬り裂かれました
ちくしょう、素直にシェイド達救われたと思ってたのにwwwwww
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 02:11:39.89 ID:02G69KSSo
れっきゅんも影の人もこのスレを語る上で欠かせない人の1人だなあとしみじみ思いつつ完結おつです
809 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/16(水) 20:41:21.81 ID:1eNI7lCV0
>>807
>ちくしょう、素直にシェイド達救われたと思ってたのにwwwwww
てへっ♪
本当は、皆で楽しげに学校町を歩いてる裂邪の姿を想像したら泣けてきたんだ…

>>808
>れっきゅんも影の人もこのスレを語る上で欠かせない人の1人だなあとしみじみ思いつつ完結おつです
滅相も御座いませぬ
黒歴史として永遠に葬られても私は何も言いませんw
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/18(金) 14:50:29.74 ID:cijrjL7+0
シャの人、乙です
最終的にれつやもげろな終わり方なのが良かったです
良かったです


今日の夢は登場人物の男の子と女の子が
公園のベンチでイチャイチャするというものだった
ここで書こうとしてるキャラが夢に出てくるなんて初めてだ…
ただし実際に書くのが捗るかどうかは別だ
811 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/19(土) 20:11:02.50 ID:MzFdL98b0
>>810
>最終的にれつやもげろな終わり方なのが良かったです
何だかんだであいつマジで色々もげたからねw(腕とか脚とか
最後くらいは〜とか言いつつ裂邪もげろ(

>ここで書こうとしてるキャラが夢に出てくるなんて初めてだ…
書いた後はあるけど、書こうとしてるキャラは無いなぁ
そしてこれは全裸で待機していろという予告と取って宜しいですかな?(っば
812 :思考盗聴警察 ◆AaMV0hIAII [sagga sage]:2013/01/20(日) 00:59:02.01 ID:+lA43QDO0
全裸になって付近を徘徊している不埒な輩がいると聞いて
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/20(日) 01:18:32.77 ID:lnSiCPA4o
見つからなければどうということはない
814 :思考盗聴警察 ◆AaMV0hIAII [saggga sage]:2013/01/20(日) 02:01:03.66 ID:+lA43QDO0
だがしかし犯人は流れ弾の餌食となりもげるか爆発するかポロリと落ちるか「お花…散っちゃった…」と申すのである
815 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/20(日) 12:36:07.68 ID:ad9V5KHA0
お花…散っちゃった…
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 00:51:01.15 ID:ATvkY1E4o
菊ですね?
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/23(水) 10:37:43.22 ID:ZTnmfjwDO

花が散ると実がなって種ができる訳で
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/28(月) 21:07:36.12 ID:tZ6wdvy50
おっぱい分をください
皮肉成分はいりません
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/28(月) 21:52:50.89 ID:0J+DfCSFo
貧乳勢力の方が優勢なスレですからな!
そろそろハイスクール奇乳組とかでてきてもいいかもね!
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/28(月) 22:19:11.52 ID:tZ6wdvy50
誰か教えろください
魔法処女かなみんは貧乳なのか普乳なのか
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/29(火) 00:51:12.27 ID:ol0Z8zNyo
>>820
> 魔法処女かなみんは貧乳なのか普乳なのか
魔法処女は魔法使いの女性版か何かでしょうか
三十路に突入すると魔法が使えるようになるのでしょうか
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/29(火) 22:42:13.66 ID:CTm7Wcdv0
シャドーマンの契約者の人、完結おめでとうございます
ねぎらいの言葉は恐れ多いので、今後のご活躍をお祈りして激励の単発を作りました





単発に登場する人物は、実在する人物とは一切の関係がありません
たとえどこかで見た名前であっても、関係がありません

笑って許してくださいorz
823 :便利屋 in 北海道 [saga sage]:2013/01/29(火) 22:43:33.97 ID:CTm7Wcdv0
北海道千歳市
夜の帳が下りた温泉近くの公園に、彼はひとり佇んでいた
石狩地域は大雪となると言う天気予報は大当たりだ
彼は寒さに震えるでもなく、柵の向こうの景色を不敵な笑みを浮かべて眺めている

彼よりやや離れた地面には、積もった雪の上に四つの麻袋が並べられていた
街灯の灯では分かりにくいが、それぞれに「三面鏡」、「花子」、「笛」、そして「葬儀屋」と記されている
そこからやや離れた場に、四つの麻袋よりも半分程度小さな麻袋が投げ出されている
それはもごもごと内部で忙しく蠢いていた

「今宵は絶好のコンディションだ」

彼はひとり呟く
彼の仕事について、ある人は「情報屋」と呼び
またある人は「何でも屋」、「運び屋」、果ては「始末屋」と呼ぶ人もいる
要するに彼は「便利屋」、つまりクライアントからの依頼を遂行することで報酬を得る人間だった
彼はクライアントからの依頼を確実に遂行することで定評があった
その依頼が、たとえいかなる内容であったとしても、だ

そして、今回の依頼は
とある人物から託された四つの“荷物”を、確実に“廃棄”するといった内容だ
“荷物”の中身について尋ねないのは互いにとって暗黙の了解である
確実に、と念を押されたからには“荷物”の存在を抹殺せねばなるまい
そしてこの依頼が安易に運ばないことも、彼は熟知していた
なればこそ、彼はこの地にひとり立っているのである

「やはり此処しかあるまい」

唇の片端を吊り上げながら便利屋は言う
そう、彼が北の大地へはるばる赴いた理由は、彼の立つ柵の向こうにある

『支笏湖』

知れぬ内に、噂だけが人から人へと伝って来た
曰く、古代の噴火により形成されたそのカルデラ湖は水深が深く
加えて水底には枯れ木や水藻が無数に存在するため、一度沈めば二度と浮上することはない
それ故に、彼の地は自殺の名所であって、シコツの名は死骨に通ずる、と

そして、彼が便利屋稼業で他に対する優位性をもつ部分、それは
「都市伝説と戦うために、都市伝説と契約した能力者達」というルールを知っている、その一点にある
とは言え、これほど巨大な地域型都市伝説と、一人の人間がおいそれと契約を結べるわけではない
彼は、この都市伝説の特性を利用し、“荷物”を確実に“廃棄”するだけである
それだけのことで、あとはこの都市伝説の効果によって“荷物”はこの世界から抹殺されるのである

「お前はついでだよ」

彼は笑いを含んだ声で麻袋へと声を掛ける
小さな、相変わらず動いている麻袋に対して言ったようだ

「人の仕事を邪魔しようとした報いだ。ま、悪く思うな」

便利屋の言葉に答えるかの如く、袋の中身はわんわんと吠えた
ここまでは彼の計算通りに動いていた。そう、ここまでは
824 :便利屋 in 北海道 [saga sage]:2013/01/29(火) 22:44:56.72 ID:CTm7Wcdv0
「影男は年端のゆかぬ女の子にこんなひどいコトをするなんて、許せないのです、みー」


その声は、先の麻袋が寝かせてあった場からだった
馬鹿な、『人払い』の結界は確かに貼った、何故人間が此処に!?

彼が身を翻すと、信じがたい光景が其処にあった

「花子」と記された麻袋は引き裂かれ、それを踏み付けて少女が立っている
おかっぱ髪に白のブラウス、真っ赤な吊りスカートの下は白い生脚である
雪が降っているというのに彼女は寒くないのか?

その手には包丁が握られている
少女が持つには物騒過ぎる、結構な刃渡りにして鋭利な一品
もう片方の手の持つシャープナーが包丁に打ち付けられ、冷たい大気の中で鋭い金属音を奏でていた

「意地悪な影男には、お仕置きが必要なのです。みー、にぱー★」

愛くるしいセリフとは対照的に、その表情は寒々しいまでに真顔である
ぶれることの無いその視線は、便利屋を威圧するには十分すぎるほどのものだった


「私はともかく、花子さんに意地悪したことについては擁護しようがありませんよ、影男くん?」

少女の横には、少女よりも年上の女性が膝を地に着けていた
彼女はレトリーバーのような犬を抱きかかえている
そして、女性の前には「三面鏡」と記された麻袋と、小さな麻袋が折り畳んで置かれていた
その女性は暗色のタートルネックとロングスカートという格好だった。寒くはないのだろうか?
ぴったりめの生地が身体のラインにフィットし、彼女の魅力的な上半身を強調する形となっている

無論、便利屋である彼の視線がそこの所を見逃すはずが無い

怯えるようにくぅんくぅんと鳴きながら、その犬は女性に抱き付いているのだが
前脚が女性の胸に当たり、その柔らかさのためか、犬の脚先は沈んだり弾んだりしている
全くもってけしからん光景だった

「ところで影男くん、私は犬も好きだって、知ってましたか?」

女性は便利屋に対し、そう尋ねる
声を荒げるでもなく、その声色は至極柔和であり
そればかりか、女性は微笑みを浮かべてさえいるのである
何故、この状況でこのような表情を?
その様が却って、ある種の凄味を醸し出していることは確かであった
825 :便利屋 in 北海道 [saga sage]:2013/01/29(火) 22:46:46.20 ID:CTm7Wcdv0
「影男ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉン久し振りだなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


その大声は、女性の横からだった
くたびれた、いやこの言い方は失礼だろう、激務を終えて帰宅途中のサラリーマン風の男は
「葬儀屋」と記された麻袋を八つ裂きにして周囲に散らしていた
その双眸はアグレッシブな光が宿り、剥き出しにされた歯の白さが秘めた狂気の強靭さを物語る
片方の手には凶悪な形状のディルドーが握りしめられ、寸分違わぬ精密な挙動で上下に振られている
腕全体が残像のようにぶれている所から、その速度が凄まじいものであると窺い知れるのである
もう片方には、褐色瓶に満ち満ちたワセリンの試薬が掴まれている

「今どんな気持ちだ? ン? ンン!? ねえ今どんな気持ち!?
 大丈夫だわァかってるって!! 安心しろ!! 俺とお前の仲だろう!!
 ただ最近はちょこぉぉぉぉっと再教育の必要性を感じていた所だったからな!! いい機会だ!! さあ!! さあ!!」

一体、何を催促しているのだろう?
対する便利屋の顔面からは血の気が引いていた
この男には覚えがない、しかし、しかしだ
この男の言ってることには身に覚えがある、何故だか身に覚えがあるぞ!?

最早質量を持つ残像と化したのではないかと思うほどに振動する片腕には一瞥もくれず
リーマン風の男は親指の力だけで試薬瓶のキャップをひね飛ばした
そして、ワセリンを頭からぶっ掛け、恍惚とした表情を浮かべる

「影男!! 今夜はぁぁぁンンお楽しみだなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんンン!!」


「お前らどうして俺の名前を知ってるンだあああああああああああああ゛あ゛あ゛!!」


とうとう堪えきれなくなったか、便利屋は悲鳴に近い絶叫を上げた
落ち着け、落ち着くんだ、冷静になれ、理由は知らんが“荷物”は生きている人間だった、それだけのことだ――大惨事じゃねェか!

「いやだが袋を破って出てきたのは三人と一匹、とすると、あと一人はまだ……」

彼が独り言にしては大き過ぎる声を口走った、瞬間だった

 ♪ブッヒャ ブヒャ〜ラ プヒョ〜イ ピ〜ヒャラ〜 プップヒ〜ヒ ピョワ〜イ ピ〜ヒャラ〜

笛の音が響き渡る
笛の音が聞こえるのは、「笛」と記された麻袋の中からであるのは言う間でもない


「全員生きてンのかよ!!」

再び響く便利屋の絶叫は、どこかやるせなさを伴っていた
826 :便利屋 in 北海道 [saga sage]:2013/01/29(火) 22:49:10.12 ID:CTm7Wcdv0

「クソッ、“荷物”が生きているなんて聞いてないぞ!! これじゃ訳が違う!!
 こうなったら一度撤退し、形勢を立て直してから……」

「この状況じゃ、ちょっと逃げられないんじゃないですか?」


便利屋の言葉に、女性が犬を抱きかかえたまま困った笑みを浮かべながら応じる
それもそうである

片方は

「さあ、影男、罰ゲームの時間なのです」

もう片方は

「さあ!! 影男!! さあさあ!! さあさあさあさあ!!」

大体こんな感じで、ゆっくりとではあるが確実に距離を詰めてきている


「畜生、こうなったら!!」


便利屋は覚悟を決めたようだ
黒のコートの内側から得物を引き抜いた
それはあたかも、日曜朝の8時半から絶賛放送中のプリキュアに登場してもおかしくはない
ファンシーなデザインのキャンドルともステッキとも剣ともつかない珍妙な一品


「フルコンプにはまだ遠いが、貴様らを蹴散らすだけのチカラはあるはずだ!!
 全 員 ま と め て 、 か か っ て こ い ! ! 」


雄叫びと共に、便利屋は突進を開始した



かくして、遂に避けられぬ戦いの火蓋が切って落とされ断末魔

【完】
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/29(火) 22:50:38.98 ID:CTm7Wcdv0

※この話はフィクションです
※この話に登場する人物は、実在する人物とは一切関係がありません





 一切関係がありません
 本当です信じてください


改めまして、シャドーマンの契約者の人、完結おめでとうございます
828 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/29(火) 23:06:16.45 ID:t3mJdlBz0
色々突っ込みたいけれど
突っ込みどころが山積して突っ込みきれねぇwwwwww

ナニはともあれありがとうございますです
しかしどう見てもこれは一部ノンフィクsy(掘られました
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/29(火) 23:32:25.19 ID:Tf9GCErAO
>>823-827
乙ですー
わろたwwwwww
830 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage]:2013/01/30(水) 18:15:09.34 ID:b2bw+yono
なんか一人だけ妙に具体的過ぎワロタwwwwww
831 :エンザが窓から飛び込んできた! [sage saga]:2013/01/31(木) 00:21:12.74 ID:1Id8An800

 ピーチュンチュン

「あーいい天気だなー」
「最近天気いいよね。ちょっと前は関東で雪だったのに、今週末は4月並の気温だってさ」
「寒いよりは暖かい方がいいなあ。寒さで震えていた動物たちがみんな元気いっぱい!私は幸せだぁー!」
「窓の外に向けて大声で叫ばないの。変な人だと思われるでしょ」
「だってこの溢れんばかりの動物愛をどうしたら……うわっ!?」

 バタバタバタ ピューイ! ピューイ!

「わっ、鳥!?びっくりしたぁ」
「おーおーどうした小鳥さん。群れからはぐれたのかい?」

 ピューイ パタパタ……ピタッ

「ははっ、ほら見ろ。手乗り小鳥」
「はいはい。わかったから早く外に放してあげなさい」
「えーなんだよつれないなぁ。餌の一つや二つでもあげてやろうという動物愛はないのか」
「むやみやたらに野良動物に餌をやるのは愛じゃありません」
「ぐぬぬ……わかったよーちくしょー。あーこんなにかわいいのになぁー、ケチなお兄さんだよなぁー」

 ピューイ? クシクシクシ

「ん……足環?なんだ、誰かの飼い鳥だったのか」
「あ、じゃあ足環に連絡先とか書いてたりしない?」
「えっと……E、n、za……エンザっていうのかお前。いい名前だなぁ」
「ッ!!」

 ガタッ バタバタ ピシャッ バタン ガチャリ

「うおっ?どうしたいきなり窓を閉め切って。エンザを放すんじゃないのか?」
「放すの中止!絶対にその小鳥を外に出さないで!絶対に!」
「お、おお?でも元の飼い主が……」
「絶対に!!!」
「お、おぅ……」
832 :エンザが窓から飛び込んできた! [sage saga]:2013/01/31(木) 00:21:59.63 ID:1Id8An800

 カチャッ prrrrrrr ピッ

『もしもし。今日はどうなさいました』
「今回は緊急です。エンザが窓から飛び込んできました」
『ッ!?“in flew Enza”のエンザですか!?』
「急いで回収を!」
『わかりました、30分以内に向かわせます!部屋を完全に締め切って待っててください!』

 ピッ パタン

「はぁ……この子はまた妙なものを呼び寄せて」
「よくわからないけれど、私は迎えが来るまでエンザと遊んでればいいんだな?」
「あー、まあそういうことでいいや」

(どうせこの子は能力から外されるだろうし、心配すべきは俺自身、か……)


    ・
    ・
    ・


 ピーンポーン

「来た……エンザの様子は?」
「籠の中でおとなしくしてるよ」

 ピューイ?

「よし。……じゃあドア開けますよ」
「お願いします」

 ガチャッ

「「「「「失礼します」」」」」

 ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ

「おお!?なんだこいつら!どこのバイオ研究所の所員だ!?」
「落ち着いて。防護服着てるけれどみんな黒服さんだから」
「すみません、驚かせてしまって。パンデミックを防ぐためには装備を厳重にしなくちゃいけなくて……」
「お、おお。その声はいつもの黒服さんか。顔見えないからわからなかったよ」
833 :エンザが窓から飛び込んできた! [sage saga]:2013/01/31(木) 00:22:54.04 ID:1Id8An800

「ではその子をお預かりしますね」
「う、ぁう……じゃあねエンザ。短い間だったけれど、楽しかったよ……っ!」
「では、エンザにはこの中で少し眠ってもらいます。対象を保護機に」

 カチャッ プシュー

「そしてこの部屋を徹底的に消毒いたします。家財へのダメージはないので心配しないでください」
「はい、お願いします」
「では、消毒開始」
「「「「「了解しました」」」」」

 ガシャッ ゴォォオオオ

「ぬおっ、まさかの火炎放射器!?」
「うわああああああああ!何してるんだああああああ!家が燃え……てない?」
「「組織」謹製の放射型消毒装置です。ごく微細な粒子……ありていに言えば菌やウイルスのみを滅却します」
「なるほど。しかしなぜ火炎放射器の形を?」
「さあ……?技術部の趣味とかじゃないでしょうか」
「そんなんでいいのか「組織」よ……」

「あ、それとこれはお薬です。念のため二人分」
「……効果のほどは?」
「ええっと、普通のインフルエンザ並みに症状を和らげてくれるそうです」
「普通のインフルエンザには罹るんですね……」
「すみません、大量死をもたらすウイルスに対して特効薬とまでは……」
「まあ、死なないだけ儲けものと考えましょう、ええ」
834 :エンザが窓から飛び込んできた! [sage saga]:2013/01/31(木) 00:23:32.44 ID:1Id8An800

「なあ、さっきからなんの話をしてるんだ?」
「エンザが危ない病気持ってるみたいだから、その薬を飲んでおこうって話」
「っ!エンザは大丈夫なのか!?」
「エンザは大丈夫だけど、俺たちが危ないの。はいこれ君の分」
「できるだけ早く飲んでくださいね」
「「「「「任務完了」」」」」
「あ、終わったみたいですね。では私たちはこれで失礼します。どうかお大事に……」
「「「「「失礼します」」」」」

 ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ

「バイバイ、エンザ。また会おうね……!」
「よし、じゃあさっきの薬飲んでご飯にしよ……こほっ」
「ん、風邪か?」
「……うん、スペインの方で流行ってた風邪だと思う」

(ふぅ……とんでもないものを持ち込んでくれたなエンザ……)

「大変だなぁ。よし、今日のご飯は私が作ってやろう」
「えっ、いいの!?ってか君って料理できたっけ?」
「なぁに、お粥くらいなら問題ないさ。看病は任せろー!」

(……前言撤回。素敵な置き土産をありがとうエンザ……)

 パタン



【終】
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/31(木) 00:24:33.27 ID:1Id8An800

※この単発はフィクションであり実在の人物、団体、中の人の体調等とはなんの関係もありmゴホッゴホッゲホッ!

ほんとになんの関係もないんだけれどなんだか早く寝たほうがよさそうな悪寒もとい予感がするから寝るね!おやすみ!
836 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/01/31(木) 19:04:09.89 ID:OGnJH00L0
男もげろ
避難所でも男もげろ言っちゃったけど改めまして単発男もげろの人乙ですの
可愛い男もげろなぁこのお姉ちゃん、こんな男もげろ人に看病されたいぜハァハァ
しかし黒服男もげろの皆さんwwww演出だけとはいえ火炎放射器男もげろはやり過ぎwwwwww
そして恒例の 男 も げ ろ ! !
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/01(金) 04:37:43.88 ID:yVSq6xrAO
>>831-834
投下乙ですー
何故だろう今俺は動物になりたくて仕方ない
動物になってあの子にすりすりもふもふしてもらうんだ…
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/01(金) 20:02:36.79 ID:tGMiTLmK0


眼鏡「頼む!契約する方法を教えてくれ!!」

[ピザ]「フヒヒwwwwwwそれが人にモノを頼む態度でプか?wwwwwwww」


眼鏡「お願いします!!この通りです!!」 ガバァッ

[ピザ]「プギィィィィwwwwww土下座までして必死プなあwwwwwwww」



俺「…?」

T「奴は何をやっているんだ…」



[ピザ]「特別に教えてやらんでも無いでプwwww」

[ピザ]「今晩wwお前が寝た後ww肉片が這ってくるでプwwww」

[ピザ]「その肉片が迫ってきても目を閉じずに『鹿島さん』と三回唱えるでプwwwwwwww」

[ピザ]「そしたら契約完了でプwwwwwwwwプゲラwwwwwwww」




眼鏡「マジでか!?それで契約できるんだな!?」

[ピザ]「興奮してツバ飛ばしてんじゃねーよwwww俺様の一眼レフが穢れるだろwwwwプヒヒwwwwwwww」

眼鏡「よっしゃあああ!こうなったら気合い入れて寝るぞコラァァァァァァッ!!」


T「おい何やってる」
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/01(金) 20:03:55.72 ID:tGMiTLmK0

眼鏡「お前はTじゃないか」

[ピザ]「ゲッ!寺生まれのT!![ピーーー]クソが!![ピーーー]ッ!」 ダッ

眼鏡「あっ、おい待て」


T「おい、アイツと何を話してたんだ?」

眼鏡「う、お前には関係ないだろ」

T「俺には関係ないが、あの男については関係が大アリでな」

俺「なあ黒川、俺はお前があんな風に興奮しているのを今まで見たことが無いんだが」

眼鏡「俺にはな、JSやょぅι゛ょのおパンティーを窃視盗撮する崇高な目的を果たさなきゃならんのだ!!」


俺「…」

俺「すまん黒川、今の一言、ちょっと理解できなかったんだが」


眼鏡「とにかく俺はもう行くからな!俺に構うな!!」 ダッ


俺「何だったんだ…一体…」

T「良からぬことを企んでることだけは、よく分かったな」

俺「そういやT、お前、黒川と一緒にいたあの[ピザ]と知り合いなのか?」

T「あいつは人間じゃない。『隙間から覗く者』という都市伝説そのものだ」

俺「さすが寺生まれ…見ただけで分かるとは」

T「その言い方はやめろ。アイツは盗撮の常習犯だ」

俺「は?」

T「黒川の奴、妙なことをしでかさなければ良いが…」
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/01(金) 20:04:43.57 ID:tGMiTLmK0

〜深夜〜


眼鏡「グゥ…zzzzスゥ…zzzz」


≪…シ…………カ……ア……イ……≫


       ド         ク          ン


眼鏡「!?」

眼鏡(何だっ!?かっ身体が動かねぇぇっ!!)


≪……シ……カ………ア…………ルカ……≫


眼鏡(今度は何だ!?)


≪……シ……………アシ…………ルカ……≫


眼鏡(ハッ、もしやあの[ピザ]眼鏡が言ってた、『都市伝説』との邂逅か!?)

眼鏡(正直、半信半疑だったが…JSのおパンティーを激写できるなら何だってしてやるぜ!!)

眼鏡(さあ来い!都市伝説とやらっ!!)


≪……シ……ルカ……アシ……イルカ……≫


眼鏡(おしおし来やがったな!!目は閉じたらダメだったな!!おしおし!!)

眼鏡「鹿島さん!鹿島さん!!鹿島さん!!!」


≪ウッ………ソノ『呪文』ハ……ソンナ、…ココマデ…来た…ノ…ニ…≫


眼鏡「俺はお前と契約したい!!」
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/01(金) 20:05:55.59 ID:tGMiTLmK0

≪エッ……?≫


眼鏡「俺は…自分の夢を大切にし続けてきた!」

眼鏡「その想いは今でも変わらない!!」

眼鏡「たとえ誰かに笑われても!!本当にやったら通報するぞと脅迫されても!!!」

眼鏡「俺は、夢を実現させたいんだ!!!」

眼鏡「その為にはお前のチカラが必要なんだ!!!」

眼鏡「頼む!!」

眼鏡「この俺と!!!」

眼鏡「どうか、この俺と契約してくれ!!!!」


≪……ッ!?///≫


≪ワタシハ…イママデ…ニンゲンカラウバウコトダケ…カンガエテタ…≫

≪ナンデダロ…コノヒトハ…ワタシヲ…ヒツヨウト…シテクレルノ…?≫

≪ナゼ……?……≫


眼鏡「俺にはお前が必要なんだぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


≪ッ!!///≫

≪ニンゲントハ…ワカリアエナイッテ…イワレタノニ…≫

≪ナノニ…ドウシテ…コンナニ…心ガ…アッタカク…≫

≪ソッカ……ワたし…このひとに、必要とされてるんだ…≫


≪あの…こんな私でも、よろしければ…≫


眼鏡「ああそう!お前しかいないの!!お前じゃなきゃ盗撮できないから!!!だから頼む!!!!」

842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/01(金) 20:07:21.91 ID:tGMiTLmK0

≪あの…じゃあ…あの、えっと…///≫



       ド         ク          ン



眼鏡(ウッ!何だ今度は…いかん、急に眠気が…)

眼鏡(契約は成功したのか…?)

眼鏡(契約しないと…JSのおパンティーが…俺の…崇高な…目的が…)



≪け、契約のチューを…≫



≪あの、しますよ…?≫




≪します、からね…?///≫




843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/01(金) 20:09:24.20 ID:tGMiTLmK0

〜翌朝〜


俺「お、黒川じゃねえか、おい黒k…何だあれ」



眼鏡「おい!ナニ学校までひっついて来てんだよ!!」

女性「ダメです!!私にはアナタが小学生とか小さい子のパンツを盗撮しないように監視する義務があるんです!!」

眼鏡「ひっついてんじゃねえよ!!何だこれふざけんな!!盗撮とか関係ないどころか監視されてるじゃねえかよ!!」

女性「もうっ、私のパンツで満足してください!!///」



俺「何だあれ」

T「おはよう、どうした」

俺「いや、黒川の奴…」

T「お、どうやら奴は『鹿島さん』と契約したようだな」

俺「さすが寺生まれ、見ただけで分かるとかマジ寺生まれ…」

T「その言い方はやめろ。まあ、あれで落ち着いたんだから良しとするか」

俺「あれは、落ち着いてるのか…?」



眼鏡「俺はJSのおパンツが見たいだぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁっっ!!」

鹿島「そんなこと、ぜーったい、させませんからね!!///」





















これが眼鏡こと黒川と、カシマさんとの馴れ初めだ
とにかく、この話はこれ以上したくない
黙れ喋るな何も聞きたくない
御清聴感謝する
844 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/01(金) 21:00:28.16 ID:g958mqdf0
このカシマさん欲しい
単発の人乙ですの
ええい黒川め、もげろもげろ
だが気持ちは分からんでもない
続きもwktk
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/01(金) 21:34:31.36 ID:tGMiTLmK0
よう俺だ!皆さん乙!!
>>827
さすが北海道勢力…と言った所か…
どこかで見覚えのあるキャラばかりだなあ…
いやあ…見覚えがあるなあ…!!
>>835
昔すねこすり保護で書いた人だな!乙!
in flew enzaでググったら英語サイトが仰山出てきた
これが元ネタか…!
846 :単発 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/02(土) 11:14:52.74 ID:f1kGVxJ40
「き、貴様……これはどういうことだ!?」

青年は激昂した
目の前で地に伏している2人の男女は、彼の仲間だろうか
胸を貫かれたらしい焦げ跡からは、紅い血が際限なく噴き出していた

「どう、って、決まってるじゃないか。“処罰”だよ」

そう答えたのは、光線銃を片手に持って、返り血を浴びた少年だった
というのも、“少年”というのはその身長と声の幼さから判断したものであり、
肝心の彼の顔は、分厚い鉄仮面によって隠されていた
しかし、唯一見えていた歪んだ目と口から、この状況を喜んでいる事は容易に理解できる

「処罰だと……!? 俺達がお前等に何をしたと!?」
「うん、“何もしてない”よ。でも僕達が君に依頼した事は覚えてる?」
「ッ……『「バビロンの空中庭園」の捜索』……じゃないのか?」
「そうだ、よく覚えてたね。じゃあ何でまだ見つけられてないの?」
「なっ!? まだ3日しか経ってねぇだろうが!!」
「3日もかけてるのに都市伝説の一つや二つも探し出せない屑なんて必要ないよ
 だから“上”との会議の結果、君達の解雇と処刑が決まったのさ
 ま、後は君だけ、なんだけど」
「ふざけんな……俺達を信用してなかったってのか!?」
「……信じてる訳ないだろ?」

吊り上がった口角
他人を蔑む眼
そして、かつて仲間だった者達の骸
目に映る何もかもが、彼の怒りを頂点に迎えさせた

「……このクソガキがあああああああああああああ!!!」

じゃきっ!と青年が構えた物は銃火器のようだった
両手で持たねばならぬ程の大きさだが、その重量の半分は液体で満ちたタンクだろう
そのタンクには、ハチの絵が描かれていた

「「スティング・ミー」……ハチの警報フェロモンを噴霧して、相手をハチに襲わせる計画のみに終わった兵器…
 面白いけど、それは赦されない事だねぇ」
「はぁ? 何言って―――――」
「 そ れ は 僕 が 創 っ た も の だ か ら 君 に 使 う 資 格 は 無 い 」

何秒経っただろう
少年が言った直後、「スティング・ミー」と呼ばれた兵器が手元から忽然と消えた
否、「スティング・ミー」は少年に奪われていた
何時の間に、どうやって奪ったのかは分からない
ただ確実なのは、少年が言い終わったと同時に、青年と「スティング・ミー」の契約が切れた事だ
ぶつん、という音と共に

「な…………なん、で………?」
「ギヒヒヒヒヒ……僕はジャップが大嫌いでね。君はこの元相棒の手で殺してあげるよ」

少年が引金を引くと、銃口からぶわっ、と桃色の霧が噴射された
フェロモンの霧は容赦無く、青年を包み込んだ
青年がフェロモンを浴びるや否や、ぶぅぅぅぅぅん、と物騒な音が何十、何百、いや何千と聞こえ始めた
黄色と黒のカラーリング、薄くとも丈夫な4枚の翅、大きな顎に鋭い毒針
世界最大にして最凶と名高い蜂…オオスズメバチだ
声も出せず、青年の中で警鐘が鳴った
その恐怖は彼もよく知っている
元々この兵器を使って都市伝説やその契約者を撃退していたのだから
オオスズメバチは毒針を持っているが、刺すばかりでなく毒液を噴射する事も出来、目に入れば最悪失明する
たとえ逃げに走ろうとも、1日80kmの飛行をこなす彼女達から逃げきれるかどうか
さらに蜂毒は2度以上刺されれば、アナフィラキシーショックが発生し、死に至る場合もある
本来非殺傷兵器として計画されていた「スティング・ミー」だが、自然の力が人を死に追いやらない訳が無い
計画に終わった為に実戦使用は無かったとは言え、自然を舐めきっていた人類の愚かさの象徴だ

「今まで君がどんなに都市伝説と戦ってきたか知らないけど、それらの気持ちがよく分かるだろう?」

青年の断末魔を聞きながら、少年は笑って彼に背を向けた
そして、がちゃん、と「スティング・ミー」を足元に放り投げた

「こんな他人任せの兵器、僕には必要無い」

ばきっ!と「スティング・ミー」は真っ二つに踏み折られた
少年は溜息を吐くと、ゆっくりと歩き始めた
その場に残ったのは、躯に群がるオオスズメバチの大群だけだった



   ...END
847 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/02(土) 11:17:55.16 ID:f1kGVxJ40

>シャドーマンの契約者に問題です。「毒」「庭園」「会議」の3つの言葉を含め、10ツイート以内でファンタジー小説を書きなさい。


書いてみた。10ツイートとかはハチだけに無視してね
この都市伝説が分かったら凄いわ、リクエストで何か書いても良いし描いても良いわ
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/03(日) 00:41:26.14 ID:lS4eFZI90
>>846
乙です
見るからにβナンバーぽいなこの鉄仮面
そしてググるとオカマ爆弾とか
化学兵器「私を刺して/私を襲って」とか出てきたが
頓挫した生物兵器といい軍事計画といい、ますますβナンバーぽい
849 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/03(日) 07:15:07.28 ID:cpIVgluj0
お前らお早う
つっても俺は眠らずにずっとスパロボタイムを満喫してたんだけども
あと1時間半でドキドキプリキュアだ!わーい!

>>848
>見るからにβナンバーぽいなこの鉄仮面
むふふふ、残念ながら彼はβ-No.ではないのですよ
でも全く関係ない訳じゃないけどね
台詞がヒントになるかも
850 :ソニータイマー [sagesaga]:2013/02/03(日) 13:17:09.49 ID:AIBNBBIh0
「アイギスと炎の七不思議」
これはまだ人類滅亡計画真っ只中、即ち10月28日のお話…

皆さんお久しぶり。宛奈盾子です。さて、無事にジャガー男を倒せたわけだけど…
盾子「まだうじゃうじゃ居るのよね…。今日は外出は控えた方が良いわね…ん?」
庭に何か倒れてる…小鳥?
『ピィ…』
盾子「…怪我をしてるみたいね」
私は倒れている小鳥を掬うと、そっと家に入れた
盾子「ちょっと染みるけど我慢してね…」
小鳥の怪我をした足を消毒し、包帯を巻く
『ピィ…ピィ…!』
盾子「はい、もう大丈夫。後は少し休めば…」
『ピィ!』
早っ!
元気になるの早っ!
『ピィ! ピィ! ピィ!』
小鳥は天井の辺りをくるくると飛ぶと、窓から飛んで行った
盾子「元気でねー!」
それを見送る私。うん、やっぱり良いことをした後は気分が良いわね
「盾子ー盾子ー」
盾子「何、お姉ちゃん!? 」
私のお姉ちゃん、宛奈都子(みやこ)が私を呼んでいる
都子「ちょっとホットレモンティー買ってきて。はい、これお金」
盾子「えー…私今変なジャガー人間を退治してきたばかりなんだけど」
都子「このお金で盾子の分も買って良いからさ、ね?」
盾子「しょうがないなー…今日は出かけたくないけど…。じゃ、行ってくるわよ」
都子「あっ、待って盾子!」
盾子「今度は何?」
都子「行ってきますのちゅーは?」
盾子「なっ…/// 誰がするか!」
都子「もう、照れちゃってー。
でも残念。昔は私のことキスで起こしてくれたのにー」
盾子「照れてないししてない! 勝手に過去を捏造すんなバカ!///」
私は振り向きもせず玄関に走る
盾子(一応護身用に持って行きましょう)
私は薙刀を手に取り、『アイギス』と融合させる事で収納し、ドアをバタン、と閉めて家を出た
851 :ソニータイマー [sagesaga]:2013/02/03(日) 13:17:56.97 ID:AIBNBBIh0




都子「相変わらず盾子は可愛いわぁ…」
なんて、お姉ちゃんが呟いたことになど、気付くはずもなく…いや、気付いたところでどうってことないんだけど
852 :ソニータイマー [sagesaga]:2013/02/03(日) 13:18:50.16 ID:AIBNBBIh0
全く、お姉ちゃんたら意味の分からないことを…
盾子「はぁ…。早く買っちゃいましょ」
頼まれたのはホットレモンティーだったわね。私はカフェオレにしましょう
おっけー。買ったわ。後は急いで家に帰…
<ババリバリッシュ!
ん? 今何か聞こえたような…気のせいよね?
<ババリバリッシュ!
気のせいじゃ…ない? それにこの鳴き声…!
『ババリバリッシュ!』
気が付けば私の前には、象のようなジャガーに囲まれていた
盾子「ああもう! ジャガー人間の次はジャガー象って…本当ツイてないわ!」
そう言いつつも、私は私は『アイギス』から薙刀を取り出し、構える
盾子「悪いけど…貴方に構ってる暇はないの!」
私は薙刀を振るい、ジャガー象を怯ませ、逃げようとする
しかしビクともしない。一応効いてはいるものの、HPが高すぎて相対ダメージが小さい…といったところかしら
『ババリバリッシュ!』
ジャガー象は長い鼻で私に攻撃する…勿論、アイギスで防御する
盾子「くっ…!」
しかし、それでもなお腕に衝撃の来る程の威力。アイギスの防御力にこれほどのダメージを与えるなんて、もしかしたらもしかするかもしれない
盾子「それなら…」
メデューサ・アイで動きを止めれば…!
盾子「メデュ…きゃっ」
しかし、眼を出す前に攻撃されてしまった
盾子「くっ…」
このジャガー象、見かけによらず素早い! ジャガー人間程では無いにしろ、流石世界を滅ぼすだけのことはあるわね
ジャガーの速さと象の力強さを併せ持ってる!
盾子「地道にダメージを与えるしかないみたいね…!」
『ババリバリッシュ!』
そうして一進一退の攻防が始まった――――
盾子「はぁ、はぁ、はぁ…」
一進一退の攻防というか、勝負にならないという感じだ。速いけど脆いとか、堅いけど遅いとかならまだやりようはあったけれど、
堅くて強い上に速いとか…致命的なダメージを与える前に私の体力か薙刀の切れ味の方がどうにかなってしまうわ…
盾子「せめて、マタタビ科の植物でもあれば何とかなるんだけど…」
マタタビで怯んでる隙に石化させればいいしね
確か帰りにキーウィを買って…冷蔵庫に入れてそのままだわ!
盾子「くっ…」
それもこれもみんなお姉ちゃんのせいだわ…! お姉ちゃんがあんなこと言うから…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「行ってきますのちゅーは?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
盾子「〜〜〜〜〜〜っ///」
どうしてここでお姉ちゃんが出てくるのよっ///
なぜか頬が熱くなってゆく。心臓の鼓動が早まるのが分かる。
853 :ソニータイマー [sagesaga]:2013/02/03(日) 13:20:16.74 ID:AIBNBBIh0


―――しかしここで私が分かるべきだったのは熱くなる頬でも高鳴る心臓でもなく、今が戦闘の真っ最中という事実であり。
何より今まさにジャガー象が私に攻撃を向けているという事実であった


854 :ソニータイマー [sagesaga]:2013/02/03(日) 13:20:52.50 ID:AIBNBBIh0
『戦場でなぁ、恋人や女房の名前を呼ぶ時というのはなぁ、瀕死の兵隊が甘ったれて言うセリフなんだよ! 』という言葉がある。
つまり戦闘中に余計なことを考えてはいけないということだ
戦の女神の子孫である私もそれは十分把握していたし、重々承知していた。しかし――しかし。
ともかく。
盾子「くっ…!」
私はアイギスでガードしつつ、体を無理矢理動かして、捻って避けようとした
盾子「く…ぐぅうぅぅうううううう…ぁああああああああああ!!!」
でも無理でした。直撃―とまではいかなかったけれど、しかしそれでも私にダメージを与えるには十分。しかも薙刀も折れたし左腕も使い物にならなくなった
というかアイギスでガードしたのにここまでのダメージを受けるなんて…。あらゆる邪悪や災厄を払う力があるとは言え、ただ払うだけ、
つまり受け流すだけで吸収とか無効化とかはできないからあまりに強い攻撃だと余波を受けちゃうのよね…そう考えると右腕程度で済んだのはある意味幸運かな
盾子「はぁ、はぁ、はぁ…」
とりあえず折れた左腕は、服と肉の一部を石化して添え木代わりにすることで固定した。私なりの応急処置だ。とはいえ…
盾子「あはは、これはもう無理かな…両手でも苦戦してたのに、片手でなんて勝てるわけがないよ…」
とりあえず私はアイギスをアーマーモードにし、全身を覆って防御に徹する。盾と違い全身を防御するこのモードなら、
邪悪な攻撃や災厄に限り、自分の身だけは守ることができる
『ババリバリッシュ!!!』
と、変形が終わり鎧を身に纏ったところで、ジャガー象が攻撃してくる。当然アイギスにガードされるが…
盾子「くぅううう…」
ダメージは受け流されるが、攻撃による振動が私を襲う。ダメージこそ無いものの、このままでは消耗するばかりだ…これはもう終わったかな
負けないけれど、勝つこともできない。逃げるほどの体力も保てるかどうか…。まったく、こんなことならもっとしっかり確認しておくんだった…
というか、死なないってだけで動けなくてやられっぱなしになるんだし、それってもう負けてるようなものだろう…
と、私がこう思ってる間もジャガー象の攻撃は続く。絶望するしかない―
『ピィ!』
そんな風に思っていた私の耳に、聞き覚えのある鳴き声が届く。どこかで、どころか最近聞いてばかりの声だ…
盾子「もしかしてあの時の…ぴーちゃん?」
朝私が手当てした小鳥に似ている。ちなみにぴーちゃんと名づけた
『ピィ! ピィ!』
盾子「やっぱりぴーちゃんだ…。でもどうしたの、ここは危険よ? いい子だからお家に帰ってなさい」
『ピィ!』
『ババリバリッシュ!』
と、そこをジャガー象が狙う…私ではなく、ぴーちゃんを
盾子「っ…! ぴーちゃん!」
私が腕を伸ばして庇うも、攻撃の余波がぴーちゃんを襲う
『ピィイイイイイ…!』
盾子「ぴーちゃああああん!」
その衝撃で、ぴーちゃんの羽は散り、体は傷だらけになった…
855 :ソニータイマー [sagesaga]:2013/02/03(日) 13:23:04.82 ID:AIBNBBIh0

かとおもったけれど。
『ピィ!』
盾子「あ、あれ? 無事なの…?」
次の瞬間には、ぴーちゃんの肉体は完治していた
『ピィ!ピィ! ア、アーアー、あー』
『あ、しゃべれた!』
突然ぴーちゃんが人間の言葉を話しだす
『おねえちゃん、あのときはたすけてくれてありがとう! ぼくは『ふぇにっくす』なんだよ!
おねえちゃんをたすけにきたんだ! ぼくはにせものだけど…おれいくらいはさせてくれるよね…?』
ぴーちゃんの話によると、ぴーちゃんはどうやら『フェニックス』らしい。あの時のお礼に私を助けに来たんだとか…
って、えええ!?
盾子「フェニックス!? フェニックスって、あの不死鳥の!?」
『えへへ、そうだよ?』
盾子「それに偽物ってどういう…」
『ババリバリッシュ!』
と、話しているうちにまたジャガー象が襲ってくる
盾子「…っと、この話はまた後ね!」
と、私は避けようとするが
盾子「ぐぅ…!」
疲労の蓄積のせいかうまく避け切れなかった
『おねえちゃんっ! 』
ぴーちゃんが私の肩にとまる。そして涙を零す。すると…
盾子「あれ…? 傷が、疲労が治っていく…。これが『フェニックス』の力…WIKIPEDIAで見た…」
でもそうなると、本当に“偽物”って何だろう。何かの伏線かしら…?
盾子「なるほど、回復特化…。つまりぴーちゃんは属性(パターン)火、種類(カテゴリ)回復、と言ったところかしら」
都市伝説と契約する場合、契約者の系統と都市伝説の系統…『強化系』『操作系』『変化系』『放出系』『創造系』『特質系』が合致すると相性が良いというのは知っているわよね。
でも都市伝説の能力には、系統以外にも『属性(パターン)』『種類(カテゴリ)』『顕現(モーメント)』が存在する…というのが私たち宛奈一族の見解よ。
『属性』はその都市伝説の大まかなタイプ。都市伝説を構成している一番大きな要素だとか、能力の発動条件だとか、野生の場合の主な出現地だとかで分かるはずよ。
ポケモンで言うところの炎タイプとかね。例えば、『ロールスロイスは壊れない』なら『金』、『トイレの花子さん』なら『水』といった具合ね。
で、次の『種類』が都市伝説の能力の大まかな種類。そのままね。例えば『時間を止める』『時間を加速する』とかは『時間』、『テレポートする』『異空間生成』なんかは『空間』…みたいにね。
そして、最後の『顕現』が、その能力が主にどんな形で現れるか、つまり細かい能力の分類よ。
例えば皆の憧れ、『時間を止める』能力は『停止』または『固定』ね。で、この『属性』『種類』『顕現』なんだけど…『属性』と『種類』は最初から決まってる場合が多いわ。
『顕現』が決まってる都市伝説もあるけど、多くは契約時の契約者の解釈次第で決まるわね。『顕現』が決まってる場合でも解釈次第では捻じ曲がることもあるし
大抵『系統』と『顕現』は似通ったものになりやすいけど、まったく別のものになる人も中には居るわ。でも今はそれより…
『ババリバリッシュ!!』

856 :ソニータイマー [sagesaga]:2013/02/03(日) 13:23:42.11 ID:AIBNBBIh0
盾子「それよりもこのジャガーを何とかしないと、ね! ぴーちゃん、私と契約してくれる?」
『僕がお姉ちゃんと…契約? もちろん! お姉ちゃんは僕の恩人だから。むしろ僕のほうからお願いしたいくらいだよ!』
盾子「ありがとう、ぴーちゃん! それじゃあ決まりね。『ぴーちゃん…フェニックス。私と契約しなさい』」
ぴーちゃんとの契約が成立。巻物に丸に囲まれた『火』の文字が現れるわ
盾子「改めてよろしくねぴーちゃん。今から貴女は私の契約都市伝説、七不思議その1よ」
『よろしくね!』
盾子「さて」
『ババリバリッシュ!』
私はジャガーに向き直る。相変わらず大きくて強そうだ。でも、今はぴーちゃんがいる!
盾子「いくよぴーちゃん! 私の薙刀に!」
『うん!』
宛名一族に代々伝わる秘術、『器物と都市伝説の融合』及び『都市伝説同士の融合』。
器物を都市伝説と契約させたり、複数の都市伝説を合成しキメラロアとする技術は、一般的ではないとはいえ存在するが―
いつでもどこでも付け外し自由なのは、世界中を探しても私たち宛奈一族か、『アテナ』『アイギス』の契約者くらいだろう
その秘術を使い、薙刀とぴーちゃん…『フェニックス』を融合する
盾子「『神羽刃炎(フロガ・クスィフォス)!』」
薙刀の刀身が炎を纏う。さっき壊れていた刃も『フェニックス』の再生力ですっかり元通りだ
盾子「食らいなさい!」
『ババリバリッシュ!』
薙刀とジャガー象の鼻が激しくぶつかり合う。さすがに皮膚が分厚い
しかし。『フェニックス』と融合した薙刀は、さっきまでのそれとは違う
盾子「ほらもう一発!」
『ババリバリッシュ!』
刃物系の武器の弱点は刃こぼれ。つまり、使えば使うほど…斬れば斬るほど刃は削れ、血や肉で汚れて切れ味を落としてしまう
でもこの『神羽刃炎』は、『フェニックス』の再生の力により、斬ったそばから刀身を修復し、切れ味を回復させる…
即ち『不死身の刃』なのよ!
盾子「くっ…!」
『バリッシュ…!』
しかし、それでもパワーでは圧倒的に向こうが有利。一点を狙い続ければいつか削りきれるとはいえ、
象とジャガーの力でごり押されてはひとたまりもない。しかもスピードもある
盾子「…力でも速度でも向こうに分があるみたいね。だったら! 『アイギス・アーマードカー』!」
『アイギス』が装甲車のような形になり、正面から蛇の頭が伸びる
盾子「そして、行くよぴーちゃん! 『神羽刃炎』『アイギス』融合!」
蛇の装甲車に火が灯る。そして足が生え、薙刀にも火は残る
盾子「名付けて『サラマンダー』! さぁ食らいなさいジャガー! 紅蓮の騎士(ポルフィルン・イポティス)!」
『ババリバリッシュ!』
ジャガー象とサラマンダーがぶつかり合う。私は『神羽刃炎』で斬りつける
その後も一進一退の攻防が繰り広げられる。しかし、この勝負…長引けば長引くほど私のほうが優勢になる!
『ババリ…バリッシュ…』
やはり傷だらけになり、明らかな疲労を見せているジャガー象。
対するこちらは無傷。魔除けの力を持ち、魔に対して絶大な防御力を誇る『アイギス』。
自らの体を燃やして復活し、その涙は癒しの力を持つとされる不死鳥『フェニックス』。
そして、その血液に治癒の力があるとされ、討たれた後血液をアスクレピオスに渡され薬になったとされるゴルゴーン三姉妹の三女、『メデューサ』。
この3つが合わされば、私たちに防げない攻撃なんてあまりない!
それに防御範囲の問題も、アイギスを装甲車化することで解決しているし、稼動エネルギーも『フェニックス』と『メデューサ』によるW治癒で解決している
そして、疲労と負傷により動きが鈍っている今なら…いける!
盾子「食らいなさい!」
『神羽刃炎』を投げつける。しかし、ジャガー象はそれを鼻で弾く。でも
盾子「メデューサ・アイ!」
それはただの囮! 本命はこっちよ!
『ババリッ…』
やはり、囮の薙刀に気を取られ、メデューサの目をまともに見てしまうジャガー象。そして勿論、石化した
盾子「えい!」
念のため石化したジャガーを砕いておく
盾子「さて、買い物も済んだしジャガーも倒したし! 次が現れるまでに帰ろっか、ぴーちゃん!」
『うん!』
そうして私たちは帰路へ就いた。家に帰ると
都子「お帰り盾子! ただいまのちゅーは?」
盾子「だから誰がするか!」
と、やはりお姉ちゃんは相変わらずだった。
…そういえば、その時若干ぴーちゃんが不機嫌そうだったのは気のせいかな?


                        続く
857 :ソニータイマー [sagesaga]:2013/02/03(日) 13:24:50.66 ID:AIBNBBIh0
すみません、かなり投下が遅れてしまいました…
ちなみにぴーちゃんは♀です
858 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/03(日) 17:28:37.07 ID:cpIVgluj0
異種間百合とはまた何と業の深い(
ソニータイマーの人乙ですの
「フェニックス」ktkr、必殺技もかっくいい……
しかしぴーちゃんと聞くとスイプリしか思いつかn(ry
お姉様も可愛い可愛い
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/03(日) 20:57:34.48 ID:lS4eFZI90
>>850-856
盾子…(゜Д゜)
>>857
>ちなみにぴーちゃんは♀です
ソニータイマー…君って奴はホント…(´゜∀゜`)


βナンバーで思い出したが
そろそろIナンバーが来るのか
860 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/03(日) 21:07:22.72 ID:cpIVgluj0
>>859
>そろそろIナンバーが来るのか
せやなぁ、書くもん書いたらその話に行かんと
俺が第2次OG飽きるまでちょっと待ってて(マテヤコラ
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/04(月) 01:25:04.22 ID:rRRIYFMAO
>>838-844
単発の人乙ですー
あれだ、黒川は盗撮は出来なくなったがリア充になれたからもげろ

>>846
シャの人乙です
鉄仮面ショタモエス
冷徹な少年可愛いね
しかしスティング・ミーを作ったって事は…まさかショタじ(

>>850-
ソニータイマーの人乙ですー
都子ちゃん百合なお姉さんでステキぃはぁはぁ
俺の百合の扉が開いたのはソニータイマーの人のせいだ
862 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/04(月) 21:14:35.14 ID:IUKk+wcE0
>>861
>鉄仮面ショタモエス
一部の人は元ネタ分かるかも知れん
主に笛の人・はないちもんめの人・ソニータイマーの人辺り

>しかしスティング・ミーを作ったって事は…まさかショタじ(
良い感じに「スティング・ミー」で引っかかっちゃう人多いねぇ(ニヤニヤ
お題を消化する必要が無ければ、「スティング・ミー」は「口裂け女」でも「レイヴァテイン」でも良いのですよん

能力を要約すると、
“相手の契約都市伝説との契約を剥奪し、さらにその都市伝説を自分と契約に似たような状態(疑似契約?)にする”
って感じかな
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/04(月) 21:22:16.37 ID:Ort1nWedo
それって拡大解釈済みの能力よね
むっきー(真顔)
864 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/04(月) 22:07:51.84 ID:IUKk+wcE0
>>863
>それって拡大解釈済みの能力よね
然様でございます
でも本来のこの都市伝説(?)もこれとさして変わらないかも知れない
やはり作中の台詞が最大のヒント
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/04(月) 22:50:25.88 ID:Ort1nWedo
>>864
ふおおおマジ興奮してお腹ごろごろしてきた!
現在温めてるネタと見事に被ってるかもしれないと思うと
ハラハラとワクワクが止まらない…
866 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/04(月) 22:58:45.09 ID:IUKk+wcE0
>>865
>現在温めてるネタと見事に被ってるかもしれないと思うと
被った……だと……!?
これは絶対被らない自信があったのに…
まぁ被っても気にしないけどね☆
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/04(月) 23:18:51.72 ID:Ort1nWedo
つまりネタを開帳するのはどちらが早いかという話になるか…
え、何?違う?こまけぇこたぁいいんだよ!
こいつはお楽しみだ
868 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/04(月) 23:38:59.02 ID:IUKk+wcE0
>>867
>つまりネタを開帳するのはどちらが早いかという話になるか…
私は相手の出方を見る派なのさ(キリッ
たとえネタが同じでも、能力が違うと「あぁ、そういう見方もできるのか」と感動するよね
869 :ソニータイマー [sagesaga]:2013/02/05(火) 14:03:24.17 ID:npnEydHZ0
>>864
もしかして『フロッピーディスクの発明者はドクター中松』とか…?
ないかな
870 :大亜教授の事件簿 [sagesaga]:2013/02/05(火) 22:44:45.82 ID:8JTmaV1I0
「あなたは……何者ですか?」

朗々と廊下に響きわたる声。
壁や地面を反射して伝わる声は、康平の鼓膜を震わし、聴神経を刺激し、脳へ情報をもたらす。
そして情報を受け取った脳は、続くカウントダウンを受け取りつつこの状況を打開すべくフル回転していた。

康平(考えろ……!とにかく相手の都市伝説を見極めるんだ……!)

相手に触れるor相手の持ち物に触れることで情報を得る康平の‘運転免許証のNo’は、一見戦闘でも使えそうな力ではある。
しかし、現実は厳しい。なぜなら、相手の間合いを見極め懐に飛び込み、体に触れるには敵の能力の把握が必要不可欠だ。
だが、そもそも情報が手に入っているならば近づく必要はない。扉の鍵を取るためには扉の向こうの薬が必要という、まさにアリスのジレンマ状態だ。

となれば、逃げるのが正解のように思えるがそれも危険だ。
都市伝説には‘置いてけ堀’のように逃走がトリガーとなるものもあるからである。

康平(……これまでの攻撃から相手の都市伝説を割り出す。それしかない!思い出せ……!たしか、こういうときには……!)

康平は、この状況の中、かつての講義の記憶を辿っていた……
871 :大亜教授の事件簿 [sagesaga]:2013/02/05(火) 22:45:13.66 ID:8JTmaV1I0
「あなたは……何者ですか?」

朗々と廊下に響きわたる声。
壁や地面を反射して伝わる声は、康平の鼓膜を震わし、聴神経を刺激し、脳へ情報をもたらす。
そして情報を受け取った脳は、続くカウントダウンを受け取りつつこの状況を打開すべくフル回転していた。

康平(考えろ……!とにかく相手の都市伝説を見極めるんだ……!)

相手に触れるor相手の持ち物に触れることで情報を得る康平の‘運転免許証のNo’は、一見戦闘でも使えそうな力ではある。
しかし、現実は厳しい。なぜなら、相手の間合いを見極め懐に飛び込み、体に触れるには敵の能力の把握が必要不可欠だ。
だが、そもそも情報が手に入っているならば近づく必要はない。扉の鍵を取るためには扉の向こうの薬が必要という、まさにアリスのジレンマ状態だ。

となれば、逃げるのが正解のように思えるがそれも危険だ。
都市伝説には‘置いてけ堀’のように逃走がトリガーとなるものもあるからである。

康平(……これまでの攻撃から相手の都市伝説を割り出す。それしかない!思い出せ……!たしか、こういうときには……!)

康平は、この状況の中、かつての講義の記憶を辿っていた……
872 :大亜教授の事件簿 [sagesaga]:2013/02/05(火) 23:10:12.73 ID:8JTmaV1I0
教授「さて、都市伝説にも様々な種類がある。そして人はそういったものは必ず分類させたがる生き物だ。」

さほど広くもない、小講義室。元々多くもない椅子の数だが、さらにそこに空白が目立つ。
講義に出ている人数は15人ほどといったところだろうか。しかし、そんなこととは関係なしに
教授の声はまるで大ホールで発表でもするかのように、響きわたっていた。

教授「この分類も幾つかの要素……能力や形態、由来や属性によって分かれる。
   だが、都市伝説の読みあいにおいては、重要なのは能力と形態だ。」

そういいながら、教授はホワイトボードに‘能力’と‘形態’とデカデカと書いた。

教授「都市伝説の読みあいに置いて、理想的なのは相手の能力から都市伝説を突き止めるパターンだ。
   都市伝説がわかれば能力の全容も予想がつくし、多くの場合弱点も判明する。
   これは、都市伝説が広まる課程で必ずといっていいほど対処法が付与されるからだ。」

そこまでいって、教授は生徒達が一様に不思議そうな顔をしているのに気づき、苦笑した。

教授「おいおい、これはこの前話したばかりだろうが……しかたない。復習してやろう」
873 :大亜教授の事件簿 [sagesaga]:2013/02/05(火) 23:33:43.49 ID:8JTmaV1I0
教授「都市伝説が広まる主なツールは、やはり口コミだわな。特に、子供の間で都市伝説は広がりやすい。
   ただ、広がりやすいといっても条件がある。それは、誰かに伝えたいと思わせる力があると言うことだ。
   逆に言えば有名な都市伝説はみな、この条件を備えているというわけだ。一つ、例を出そう」

そういうと、教授は今度は何やら絵を描き始めた。包丁を持ち、マスクをつけた女……口裂け女だ。

教授「この口裂け女の話は今更話すまでもないだろう。ひとりで歩いているとマスクの女が現れて
   綺麗かどうかという質問に答えると耳まで裂けた口を見せて、殺されるというものだ。」

まあこれでも十分エキサイティングなんだが、これだけだと不十分だ、と教授は続ける。

教授「ここで、話を広げるうちに幾つかのポイントが追加される。‘能力’そして‘弱点’だ。
   さっか上げた話だが、この話が広がるうちにどこかで生意気な子が尋ねるわけだ。‘逃げればいいじゃないか’と。
   そこで話し手はムキになってこういう。‘無理だ。口裂け女は時速100キロで走れるから’とね。」

ここで教授は、黒板に書いた‘能力’を指さした
874 :大亜教授の事件簿 [sagepaga]:2013/02/06(水) 00:00:42.24 ID:XE6tz3Lw0
教授「まあ、こんな風にして勝手な能力やらバックボーンやらが積み重なっていくんだが、ある程度話が広がると今度はこんな質問が飛び出す。
   ‘助かる方法はないのか?’だ。まあ、人ってのは安易なハッピーエンドを好むからな。
   で、ポマードと三回唱えるとか犬のなきまねとか、それっぽいのが弱点に選ばれる。そんなこんなで都市伝説は広がっていくわけだ。」

そういうと、教授は一息ついて辺りを見渡した。

教授「さて、じゃあ話を戻すぞ……」

康平「先生!」

と、いきなり講義室の端にいた康平が手を挙げた。

康平「用務員さんがきてます。なにか用みたいですよ。」

教授「ああ、本当かい?なら、すまないが講義は一旦止めよう」

そうして、教授が講義室から出ようとした時、再び康平の手があがる。

康平「先生!それとは別に、トイレに行ってもよろしいでしょうか!」

教授「……好きにしたまえ」
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 05:15:15.56 ID:/28TKCtAO
大亜教授の人乙ですー
今回は理論的なアプローチですねー
教授の講義、案外まともじゃないか…
876 :ある雨上がりの日 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2013/02/06(水) 05:18:06.81 ID:/28TKCtAO
「それじゃ、幻も・・・お父さんとお母さんを、こ・・・死なせちゃった、の?」

 蒼い瞳がひたと見据えるその先。
 ピンク色の髪の少女は、公園の芝生に行儀悪く寝そべってあらぬ方を眺めている。

「まあ、もう生きてはいねーでしょうね」

 「魂を盗む鏡」の中に閉じこめられた者の運命は幻自身も知らない。
 どのみち鏡から出られなきゃ、どっちだろーと同じなのですよ。
 そう意地悪く笑う。
「幻・・・」
 ノイは学校町に来るまで、ムーンストラックと二人で暮らしたことしかなかった。
 四歳の頃自らの過ちで命を奪った両親との記憶はない。
 でも。幻は、どんな思いで。

「幻、辛かった?」

「辛くなんかねかったですよ」

 ボクは強いですからね、と笑う幻の表情が、それでもどこか痛々しくて。

「ね」

 ぴょこんとノイが幻の顔をのぞき込み、黒髪が揺れる。

「あたしは、幻の、味方だからね。誰が何を言っても、幻のこと、守るからね」

「それが柳でも?」

「え!?う・・・うん!」

 頭を抱えて、それでも頷いたノイに、幻はくくっと笑って頭をぽふっと撫でる。

「冗談なのですよ・・・いい天気なのですよ」

「そうだね」



続く
877 :死神少女は修行中・眼球と少女たち ◆12zUSOBYLQ [sage]:2013/02/06(水) 05:24:38.64 ID:/28TKCtAO
 雨上がりの学校町。
 ひとりの少女が白杖をついて歩いていた。
 かつかつ、かつかつと杖の先端で足下を確かめる動きは滑らかで、この杖が確かに少女の「目」なのだと云うことがよくわかる。

「ったく、重いわね・・・これも引っ越し屋に頼めばよかった」
 キャリーを引きずった若い女が前から歩いてきた。太股のあたりまである三つ編みにされた金褐色の髪が印象的だが、それは少女にはもちろん見えることはない。
 ふたりは狭い歩道ですれ違おうとしたが、女の後ろから走ってきた自動車が、追い越しざまに音を立てて泥水を跳ね上げる。
「ひゃっ!」
「きゃっ!」
 女は跳ね上がる泥水は避けたものの、バランスを崩して少女にぶつかり少女が転倒してしまう。
「あ・・・」
「ご、ごめんなさい!ケガはない?」
 慌てて少女を抱え起こし、その手に杖を握らせるが
「服が・・・」
 少女の着ていたコートは胸元のあたりから裾まで泥に汚れ、水滴を滴らせている。
「この寒さでこれじゃキツいわね・・・私にも責任があるし、よかったら洗って乾かすから、家に来てくれない?」

 「黒いパピヨン」の看板が出された、小さな洋品店。
 その奥の居室にある、こぢんまりとした応接セットに腰掛けた少女は、ジンジャーティーに遠慮がちに口を付ける。
「もうすぐ乾くから、それまでお茶でも飲んでてね」
「すみません、わざわざ」
「いーのよ、悪いのは人に泥水はねた車なんだから」
 サテンのリボンで飾られた蒼いベルベットのコルセットにボレロを羽織り、
 バレリーナのチュチュのようなシフォンのスカートを纏った典雅な印象とは裏腹に、ホントに最低よねー、と女がからからと笑った、その時。
 軽やかな音がして、入り口の扉が開く。
「いらっしゃい!・・・ごめんなさいね、開店、明日からなの。なにぶん今日はこんなでね」
 ドアを開けてすぐの、本来店舗であるスペースにはいくつかの飾り棚があるだけで、後は無造作に段ボールが転がっている。
「あの、なにかお店をなさってるんですか?」
 ぱたりとドアの閉まる音と共に、少女がぽつりと呟く。
「ええ、自己紹介もまだだったわね。私は此処で、明日から洋品店を開くのよ」
 女は「月夜野 せせり」と名乗り、愛想良く笑う。

「そうですか、お洋服屋さん・・・それなら、女の子、沢山来るんでしょうね」
「ええ、出来れば貴女みたいな娘にも、是非うちの服を着て貰いたいわ」



続く
878 :ソニータイマー [sagesaga]:2013/02/06(水) 18:08:23.54 ID:A1fOsDeE0
大亜教授の人と鳥居の人乙です!
879 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/07(木) 00:43:03.53 ID:PHdcAkSL0
>>870-874
大亜教授の人乙ですの
戦闘の合間の説明回って何か憧れ
1回戦闘入ると最後まで書いちゃうので、こういう書き方もいつかやってみたなぁ

>>876,>>877
鳥居を探すの人乙ですの
ノイ×幻………ありだな!!(帰
そして新キャラキター、今後にwktk
880 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/07(木) 00:45:18.21 ID:PHdcAkSL0
書き忘れ

>>869
それもありだったな……でも俺が使ったのはそれじゃないのですよ
ぶっちゃけると向こうに見つかったら国際問題に発展しかねない(←ヒント言い過ぎ
881 :ソニータイマー [sage]:2013/02/07(木) 01:36:47.57 ID:Na13Lqha0
>>880
ま、まさか『韓国起源説』…?
882 :ソニータイマー [sage]:2013/02/07(木) 01:37:12.15 ID:Na13Lqha0
>>880
ま、まさか『韓国起源説』…?
883 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/07(木) 07:35:35.88 ID:RebEwoP90
案外早かったな……>>881で正解
884 :ソニータイマー [sage]:2013/02/07(木) 10:36:00.57 ID:Na13Lqha0
あ…ありのまま夜起こった事を話すぜ!
「私は一回投稿したと思ったら二回投稿していた」
な…何を言って(ry
885 :ソニータイマー [sage]:2013/02/07(木) 10:36:33.43 ID:Na13Lqha0
あ…ありのまま夜起こった事を話すぜ!
「私は一回投稿したと思ったら二回投稿していた」
な…何を言って(ry
886 :ソニータイマー [sage]:2013/02/07(木) 10:39:28.55 ID:Na13Lqha0
あ…ありのまま夜起こった事を話すぜ!
「私は一回投稿したと思ったら二回投稿していた」
な…何を言って(ry
887 :ソニータイマー [sage]:2013/02/07(木) 10:39:50.05 ID:Na13Lqha0
あ…ありのまま夜起こった事を話すぜ!
「私は一回投稿したと思ったら二回投稿していた」
な…何を言って(ry
888 :ソニータイマー [sagesaga]:2013/02/07(木) 13:55:01.55 ID:Na13Lqha0
3DSの接続が異常に悪いな…
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/07(木) 15:46:27.50 ID:mg2pIDnXo
わろた
890 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/07(木) 19:05:16.66 ID:pozmF3Hp0
>>884-887
とりあえず落ち着けwwwww

>>888
>3DSの接続が異常に悪いな…
3DSだけじゃないかも知れん
先週辺りから、このスレに書き込んだ後のページ移行が若干遅くなってるの
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/07(木) 20:07:26.67 ID:hZjq0JwUo
ソニータイマーの並列化…
これは何の前兆だ…
892 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/07(木) 20:52:47.04 ID:pozmF3Hp0
そういやプレステ4が年内に……プレステはソニー、そして4連続投稿、さらに最初の2連続……これはまさか!?
893 :ソニータイマー [sagesaga]:2013/02/07(木) 21:15:19.63 ID:Na13Lqha0
>>890
それがですね、3DSで書き込むと書き込み画面に移行しないことが稀によくあるわけですよ。
で、『あれ、これ書き込めてないと見せかけて実は書き込めてるんじゃね?』と思って更新するわけです。
でも新着レスが無い。『じゃあ書き込めてないのか』とまた一から書き直して書き込むボタン。しかし(ry
で、こうなったわけですね。3DSはその辺不便ですよ

>>891>>892
まさか…?
894 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2013/02/08(金) 01:43:17.77 ID:1XsLclSAO
>>879
>ノイ×幻………ありだな!!(帰
実は連載前の構想では幻→ノイだったりした。あくまで片思いで。

>そして新キャラキター、今後にwwktk
設定は出来てるけど、ちょっと今回引っ張ってみたいんで公開は様子見するんだ!

>>883
>案外早かったな……>>881で正解
いつか誰かが使うとは思っていたが…勇気あるな

>>889
>で、こうなったわけですね。3DSはその辺不便ですよ
どんまい
俺なんかiPhoneに不慣れなんで避難所でトリップキー晒しちゃったよorz
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/08(金) 20:09:02.33 ID:NYFolv1so
大亜教授の人は何かのアクシデントで中断したと見た!
近いうちに続きが投下されることを期待しよう…
鳥居の人乙です
幻さんとノイの会話が怖い…伏線ぽくて怖いよー
そしてこのタイミングで登場した新キャラといい
意味深の描写といい、確実に何かくるなこれは
896 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/08(金) 22:03:04.00 ID:XveR95qM0
>>893
>で、こうなったわけですね。3DSはその辺不便ですよ
ふむ……そりゃまた不便だな……

不便と言えばあれだよ
いい加減、スマホで閲覧した際にPC版に切り替える機能を配備して欲しい
Androidで書き込めないから休憩中イラつく

>>894
>実は連載前の構想では幻→ノイだったりした。あくまで片思いで。
なん……だとwwwww

>いつか誰かが使うとは思っていたが…勇気あるな
実は公開までに弟と幾度となく議論を繰り広げてたという
因みにあの鉄仮面ショタの詳細(色々隠してるような気がするけど)は裏設定にて
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/11(月) 01:07:46.21 ID:HmyCGxoBo
彷徨ってたらなんか懐かしい匂いのするスレを見つけたので記念に




ここはどこだ?何か手掛かりを探そう。しかし辺りは真っ暗闇、さあどうしよう?
そうだ、明りになる物は確か手持ちの中に…
あった、ライターの火でもまあ気休め程度にはなるだろう。
カチッ、シュボッ
見渡すとそこは木箱とドラム缶がいっぱい積まれていた。その木箱の1つにはこう書かれていた。
「ダイナマイト 危険 取扱注意・火気厳禁」
…うん、早くここから出よう。そう思い踵を返す。
あれ?なんか焦げ臭い臭いが…ってダイナマイトの導火線に火が!!
どうやら木箱の管理が不十分で一本が木箱からはみ出ていたみたいだ。それがライターの火に接触して…って呑気に解説している場合じゃない!早く逃げないt



どかーん☆ あたしはしんだ スイーツ(笑)



…はずだった
「…何で自分は生きてるんですかねぇ……」
黒こげアフロでそう愚痴った。
どうやら今回は発破に使うダイナマイト等を保管しておく火薬庫に迷い込んだらしい。
「…また道を間違えたのかな。じゃあ今度はあっちに行ってみよう。」
いつの間にか治っていた―というより元から爆発なんてなかったような―その身体で当てのない旅を続けることにした。


Not to be continue.
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/11(月) 01:35:44.06 ID:HmyCGxoBo
ギャグキャラ補正って言うかアメリカのカートゥーンってやっぱすげぇって感じで書いてみました
爆発オチでも黒こげアフロで生き残るって相当だと思うの

あと、最後の「Not to be continue」→「Not to be continued」ですね失礼しました
久々なので首括ってきます
899 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/11(月) 02:03:09.01 ID:Ur5G6p4h0
乙ですのン
「ギャグキャラ補正」wwww
確かに、アメリカのギャグは爆発だったりSF出てきたり日本のと毛色が違いすぎますもんねぇ
そこがまた面白いんだけれども

>>898
>爆発オチでも黒こげアフロで生き残るって相当だと思うの
バッグス・バニーとかトゥイーティーとかのシリーズだと、
アフロどころか「1回死んで蘇生した?」ってくらい何事も無かった感がwww
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/11(月) 10:23:17.57 ID:lVcGzDBAO
投下乙ですー
自分はいいトシなので、黒こげアフロというとドリフの爆発オチを思い出すww
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 14:48:19.76 ID:A2DQz/tF0
【賢者の石、賢者の意志、賢者の遺志】

「坊主、最近色々悩んでいるみたいじゃないか」

「え?」

「今日はお前に一つ良いことを教えてやろうと思ってな」

親戚の寄り合いで偶に見かける中年の男性。
何時も居るような居ないような不思議な扱いをされている人だった。
そんな彼が話しかけてきたのは今思えば親から俺の扱いに困った両親が彼に頼んだからなのかもしれない。
だがそんなことは当時の俺にはどうでもよくって、会う度にくれるお小遣いが目当てで俺はそのおじさんの前に座った。

「なに?」

その頃、俺は子供らしく哲学の真似事にハマっていた。
人はどうして生まれるのか、人はどうして死ぬのか。
正義とは何か悪とは何か、この歳になっても答えを出せない難題を飽きること無く考えては周囲に壁を作っていた。
今思えば愚かだとは思うが、その時の俺には周囲の人間が愚かに見えていたのだ。

「人が何のために生きるか、だよ」

「え、ほんと?」

当時の俺を悩ませていた二つの問題の内の一つの答えを彼は知っているというのだ。
しかしそこで小賢しい俺の頭には一つの疑念が走った。

「おじさんもパパみたく『それを探す為に生きているんだ』なんて言わないよね?」

「ハハハ、それも正解なんだけどなあ。だがそういうんじゃあねえよ
 もっとシンプルで、誰にだって分かるもんさ
 俺はね、人間ってのは不幸になるために生まれてきたんだと思ってる」

「え?」

当然だが子供の俺にそんなネガティブなことを言う大人は今まで居なかった。
大抵大人は未来は希望にあふれているとか、努力をすれば幸せになれるだとか、そんなことしか言わなかった。
だから俺はおじさんの話に小遣いのことも忘れて引きこまれていた。

「考えてみろ、お前今までいろんなことに悩んできただろ?
 それって面倒だとは思わないか?」

「……うん」

そうだ、確かに考えずにいられなかっただけで俺の没頭していた思索はとても苦しい行為だった。
今でもハッキリ覚えている。
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 14:49:07.39 ID:A2DQz/tF0
「だがそれを考えられない人間って……正直同じ人間に思えないだろ?」

「うん、クラスの奴らとかさ。何も考えずに生きてて……楽しそうなんだけど、馬鹿みたいに見えるっていうか」

「だろうな。そう、そんな時お前は間違いなく人間として正しい物の考え方をしている」

「……そうなの?」

「ああ、自分の生き方に問を投げかけられるのは人間の長所だ
 そしてその長所を存分に生かそうとするとお前みたいに苦しむ
 考えてみろ、鳥は飛ぶ時に羽を傷めるか?
 魚は泳ぐ時に息苦しさを覚えるか?
 理性を持つ人間だけが、その理性の本質である筈の考えることで苦しむんだ
 翼を持つ鳥も、ヒレを持つ魚も、それを使ってみただけで苦しむことは無いのに」

「あ……」

「ならば人は苦しむ為に生まれた生き物なんじゃあないかって俺は思うな」

そこで俺には一つの疑問が浮かんだ。
人は苦しむ為に生まれた。
ならば何故おじさんはこんなにも楽しそうなのだろう。
素敵な笑顔を浮かべているのだろう。

「ねえおじさん、おじさんも人間だよね」

「もちろん」

「じゃあおじさんは今苦しいの? 不幸になる為に生まれてきたなら生まれてくる事自体が……」

「おじさんは今幸せだよ」

「え?」

「俺にも家族が居る。数は少ないけど心から信じられる友人が居る
 やりがいのある仕事だってある
 それに君のように見込みのある少年に自分の知っていることを教えられる
 だから俺は幸せだ」

「わけ分かんないよ」

「そりゃあおじさんだってそう思うようになったのはお酒が飲めるようになってからだもん
 お前がそう簡単に理解しちゃったらおじさんも自信無くすぜ
 いいかい、人は苦しむ為に生まれてきた
 俺だってどれほど自分の幸福を守ろうとしても
 家族は不運にも奪われるかもしれない
 友はやむを得ず裏切るかもしれない
 仕事は意味を失うかもしれない
 君に伝えたことだって君が一生理解してくれないかもしれない
 どんな幸せの中にでも、幸せの中にこそ不幸に向かう道がある
 不幸は人間をゆっくりゆっくり自分の方へ招き入れるのさ
 ただ漫然と生きていればその中に飲み込まれるのも早い
 水が低きに流れるみたいにね」

話の焦点が分からなくなってきたので俺は拙いなりに整理しようとしていた。
ここは今考えても幼い俺を褒めてやりたい。
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 14:50:11.46 ID:A2DQz/tF0
「えっと、人って不幸になる為に生まれて生きるんだよね?」

「ああ、神様が居るならそういう風に作ってる」

「じゃあ生まれて来なかった方が良かったんじゃないの」

「それは違う。理性を与えられて生まれてきたことで、人間は人間に与えられた意味に真っ向から立ち向かえる
 人間は幸せになろうとする行為を続けることで生まれ持った意味を超える存在になれるんだ
 人間は不幸になる為に生まれる生き物だけど、不幸になる以上のこともできる
 だから君が君の望みを叶える為に努力を惜しんではいけない
 それが善であれ悪であれね」

「悪いことをしてもいいの?」

「良いさ、ただし悪いことをすれば何時か絶対に報いを受ける。絶対にね」

おじさんは絶対という言葉を噛み締めるように呟く。

「良いことをしたら?」

「良いことしても良いことがあるとは限らないよ
 でも悪いことには報いがある」

「理不尽だね」

「最初に言っただろ、人間は不幸になる為に生まれるって」

「ああ、それで……」

「幸せになるために何をしたって良い
 自分がそうやって行動することで何が起きるかよく考えられる頭を持ったならば
 その結果不幸になったとしても笑ってそれを受け入れられる心を持ったならば
 それをできる身体を手に入れたのならば
 君には全てが許されている
 その一切が無意味で無価値になる理不尽がこの世界だ
 善良な人間も、邪悪な人間も、不幸は等しく訪れる
 それを災難だ裁きだと騒ぐ人々が愚かなんだ
 結局全ては理不尽で、俺達は皆運命と理不尽の駒なのさ」

「人は不幸になるけど、それを知った上で幸せになろうとするのは良いってこと?」

「ああ、幸福になるのは義務じゃない。不幸なのが当たり前
 でもそこであえて幸福を目指そうとするのって格好いいだろ?」

「……うん」

「どうだ、悩みは減ったか?」

「一つなくなったよ」

「よし、じゃあ残りの一つを頑張って悩め。俺はこのことについてしかお前に語れないからな
 おじさんはこれから少し仕事でこの国を離れる
 その間はこれを預けるから、その気になったら返しに来てくれ
 あとお小遣い、これでゲームでも買っておきな。俺の頃と違って最近のゲームは中々楽しい。金払った分の価値は有るよ」

そう言っておじさんは俺を部屋に残してふらりと何処かに行ってしまった。
俺の手には五千円札と青白く輝く石の嵌められたナイフが残された。

904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 14:51:43.47 ID:A2DQz/tF0


    ※    ※    ※


「ってのが俺が賢者の石を手に入れた経緯さ」
 
「ふうん……じゃあそのおじさんってのは一体何者だったの?」

「さあ、聞いてみたら親父もガキの頃からあんな感じで全然老けてないんだとさ」

「その後おじさんに会った?」

「あの人なら仕事の最中に死んだから会ってないね
 老衰も有ったけど……知りすぎたんじゃないかな、色んな事
 俺や親戚連中がこうして無事なところを見ると更に何かが裏であったんだろうとは思うけど
 賢者の石を手放した以上、もう長くは無い筈さ」

そうやって俺は彼女相手に長い話を語り終える。
彼女は俺の話をニコニコとしながら聞いていた。
彼女と出会ったのは偶然都市伝説絡みの事件に巻き込まれた時。
賢者の石を使って俺が彼女の命を助けたのだ。

「えっとね、今の話聞いて思うんだけどキミのおじさんは……多分、いや間違いなく……」

彼女は俺を何時もキミと呼ぶ。
少し照れくさそうに、でも少し楽しそうに。
そんな彼女の様子が少しおかしい。
彼女の次の言葉を俺は待つ。

「やっぱり私のお父さんを殺した契約者だよ
 私の前で同じ話をしていたもの……あの時は意味が分からなかったけどね」

彼女はその笑みを保ったまま、でもほんの少し涙で目を光らせていた。
あのおじさんがわりとろくでもない人物なのは後から知ったことだ。
でも実際会って話してみると不思議な程好感の持てる人物だった気もする。

「……知ってて俺に近づいたの?」

「途中からね。割と悩んだよ」

「恨みがあるなら俺に晴らしても構わないよ」

それで酷い目にあった所で人生そんなもんだ。

「いや……良いかな。キミは悪くないよ
 キミの言葉を借りれば“そんなもん”でしょ
 それでさくっと割り切れるのはある意味賢いのかもしれないね
 そっちの方がきっと幸せになれる
 善悪は置いておいてさ」

人生そんなもんだ、といってもだ。
襲われたら多分表情を変えずに俺は反撃して彼女を殺した。
そして賢者の石で死体を分解して何か別のものに変えてしまって処理していた。
その後で俺はおじさんから教わったことを思い出して小さくため息まで吐いてみせただろう。
でもそんな自分の側に居てくれる彼女が居る俺は、彼女を救おうと文字通りあの時命をかけられた俺は、あの時のおじさんよりもまともな人間で居られているはずだ。

「こんなタイミングで言うのもあれだけどさ。これから俺がお前を幸せにして良いかな」

だから表情を変えずに反撃できてしまった自分を今から捨ててみたいと思う。
それが愚かなのか賢いのか、正しいのか間違ってるのか、善なのか悪なのかはつまるところどうでもいいのだ。
俺はもっと彼女の側に居たくて、それで割りと満足できてしまうことに気がついたのだ。
俺にこれをくれたおじさんも家族ができてから丸くなったと自分で言っていたが、もしかしたら人の幸せってのは結局これに尽きるのかもしれない。

「唐突だね。でも良いんじゃないかな、そういうの」

おじさんがたった一つだけ俺に教えなかったことが有ることに気づいたのは最近だ。
確かに人間は不幸になる。
間違いなく不幸になる。
どんな幸せもその不幸を埋め立てることはできない。
だが逆に、唐突に、理不尽に、良いことだって起きる。
確率はとても低いがそれは不幸によって覆われることはない。
必死になって手に入れた幸福と放っておいても訪れる不幸を、この賢者の石に刻み続けることこそが人生で、人の生まれた意味なんじゃあないかと俺は思うのだ。

【賢者の石、賢者の意志、賢者の遺志 終わリンコミ☆】
905 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/13(水) 19:22:34.89 ID:X6rgIk5v0
懐かしい文体だ、乙です
おじさん何者なんだ…深い言葉を遺して去っていくなんてカッコ良すぎるだろ…
そして最後はやっぱりもげr(
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 21:06:15.81 ID:ZrLyBD5DO
遅ればせながら影男の人完結乙です
おじさん殺害の下手人は本人気づいてないけどこの女の子かもしれないと妄想するとまた楽しいよ!
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/14(木) 02:10:05.29 ID:VQ9a2t090
単発の人、乙とだけ
ああもう文体といい題材といい
さり気なくアレする所といいもう完璧にあの人だと
思わずにはいられないというよりそのまんまあの人だな
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/14(木) 02:11:21.05 ID:VQ9a2t090
単発の人、乙とだけ
ああもう文体といい題材といい
さり気なくアレする所といいもう完璧にあの人だと
思わずにはいられないというよりそのまんまあの人だな
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/14(木) 02:11:58.51 ID:VQ9a2t090
単発の人、乙とだけ
ああもう文体といい題材といい
さり気なくアレする所といいもう完璧にあの人だと
思わずにはいられないというよりそのまんまあの人だな
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/14(木) 02:12:53.27 ID:VQ9a2t090
待て待て
待て待て待て待て待て

なんだこれは
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/14(木) 02:13:31.85 ID:VQ9a2t090
待て待て
待て待て待て待て待て

なんだこれは
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/14(木) 07:16:34.44 ID:B/pEuwMDO
これが混沌と解放の力……
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/14(木) 10:22:43.64 ID:pKYsrJxAO
投下乙でしたー
あれだ、なんだかんだで主人公もおじさんもけっこう幸せに生きたんだな
……も げ ろww
914 ::ラッキー?ハッピー!バレンタイン ◇dairisuruhito [saga]:2013/02/15(金) 16:20:22.34 ID:6qkLYcUE0
 2月14日。
 学校町の片隅で、一人の少女が必死に落とした財布を探し回っていた。
「ない・・・ないよー」 時折立ち止まり、周囲を見回す度に癖のない黒髪が揺れ、薄青い瞳からはいまにも涙がこぼれ落ちそうだ。
 彼女の名はご存知ノイ・リリス・マリアツェル。勉強をさぼってこっそり家を抜け出し、買い物に出かけて来たはいいが、肝心の財布が見あたらない。
「お家を出るときは、確かにあったのにー!」
 肩から斜めがけにしてある、大きなリボンの付いた黒いレッスンバッグをひっくり返してみたが、やはりない物はない。
「どうしよう・・・」
 今日中に買わなくちゃいけないものなのに。
 勉強をさぼって家を出てきたから、財布がないといっておめおめ帰っても、叱られるのがオチで、追加の小遣いなどとうてい望めやしない。
 だいたい、追加の小遣いを申請するにしても、使い道を追及されては困る。
「サプライズなんだから。買うもの言うわけにいかないじゃん!」
 この際財布が出てこなくても良い。買い物を出来るだけのお金を拾うとか・・・
「そんなラッキー、あるわけないか・・・あーあ、神さまっていないのかなー」
 たとえ神様がいたとしても、ネコババを考えている子どもに金を与えるような真似はしないだろう。
 そう。神ならば。

「そこの少女!」

「ふぇ!?あ・・・あたし?」

「幸運をお望みか!」

 そこに現れた男は、あまりにも珍奇な出で立ちだった。
 棒の付いた箱を肩に担ぎ、この時期、常人ならば凍死しそうな薄い和服に

―赤い

―赤いふんどし

 そう、彼こそは「飛脚のふんどし」の契約者。
 なんかヘン、と思いながらもノイはこっくりと頷く。

「ならばっ!某の契約都市伝説にお任せあれ!」

 ばばっ、と彼は和服を脱ぎ捨て(うわぁ、寒そう)

「某のふんどしに口づけを!」

「ふ・・・ふぇ!?」

 ノイは服を脱ぎ捨てた男の出で立ちに驚き、さらに言われた内容を脳内で反芻して2度びっくり。

 ふんどしって・・・ふんどしって・・・お尻じゃん!

 無論前の方だってふんどしはついているが、どっちにしろ口づけたいものではない。
 これはどうしたらいいのだろう。
 この人は「都市伝説」と言った。この人の言うように、これに口づけ・・・すなわちキスすれば、幸運が舞い込んでくる、の、だろう。
915 ::ラッキー?ハッピー!バレンタイン ◇dairisuruhito [saga]:2013/02/15(金) 16:21:12.62 ID:6qkLYcUE0
(でも・・・こんなのヤダぁー!)

 いくら幸運が舞い込んでくると言われても、知らない人のお尻になんかキスしたくない。知り合いでもイヤだけど。

(あ、でも、柳ならイヤじゃないかも)

 ノイが考え事に気を取られたその一瞬。

「さあ!」
「いやー!?」

 口づけを迫った男が尻をノイの眼前に突き出した。ほぼ顔スレスレの位置で、ノイの瞳にはふんどしの赤がはっきりと焼き付く。
 困った事にこの猥褻行為スレスレの所行を、男はスケベ心など微塵もなく遂行している。
 皆に幸運を分け与える為としての使命感、そして都市伝説としての存在意義に従っているだけなのだ。

「むっ・・・無理ぃー」
 尻から顔を遠ざけるべく、ぺたんと尻餅をつくノイの顔になおもふんどしが近づこうとしたその時。

「このチカン野郎ですよ!」

 ごっっ、と鈍い音と低い悲鳴が聞こえて、不意に手首を掴まれて引っ張られた。

「幻!」

 ピンクの髪を冬の風になびかせて、振り向いた少女がウィンクする。
 そのまま走りに走って、気が付いたら繁華街のコンビニの前に立っていた。
「結局、お財布見つからなかった・・・」
「そんなにしょげるんじゃねーですよ」
 何を買いたかったのかと問われたノイの答えは、チョコレート。
「ウィーンだとね、バレンタインって恋人同士の日なの」
 でも日本だと、友チョコとか義理チョコとか、お友だちとかお世話になった人にもチョコあげてもいーんでしょ?
「それって、すごーくステキだなあって思ったの」
 だからナイショでチョコを買って、みんなにあげたかったのにとノイが俯いた、その時。
「ノイ」
 声がした方に振り向くと、そこに立っていたのは。
「イタル!」
 極はつかつかとノイに歩み寄る―その手には水色の、ファンシーな柄の折り畳み財布。
「あ!あたしのお財布!」
「公園のベンチにほっぽりだしてあったぞ」
 そういえば、公園でジュースを買って飲んだんだった。
「ありがとー、イタル!イタルには、特別おっきいチョコあげるね!」
「全財産730円でか?」
「買えないの?」
「その額じゃ、皆にあげようとしたらチロルチョコがせいぜいなのですよ・・・」
 暫くむーと唸ってはいたが
「ま、いいか!大事なのは真心だもんね!」
 立ち直りも早かった。
916 ::ラッキー?ハッピー!バレンタイン ◇dairisuruhito [saga]:2013/02/15(金) 16:21:50.85 ID:6qkLYcUE0
 そうして、極とノイが肩を並べて帰る背に、幻が大音声で声をかける。
「ノイー!ボクも明日、チョコ作ってノイんちに持ってくですよー!」
 ノイは振り向いて手を振ると、意気揚々と帰って行った。
 途中、スーパーでお徳用のチロルチョコの詰め合わせを買うことも忘れずに。
 キスはしなかったけど、あのヘンなふんどしの人は、やっぱり幸運を運んでくれたのかなあと、ちょっぴり感謝しながら。



END
917 :◇dairisuruhito [saga]:2013/02/15(金) 16:25:04.23 ID:6qkLYcUE0
キスマイアスってすごくゴロがいいですよね
キックアスだと只のヒーローですがキスマイアスだとただの変態です
英雄色を好むなどと言いますがただのヒーローというのは概ねすごい変態でしてこちらのあかふんさんもがんばればもしかしたらヒーローになれたのかもしれません
何が言いたいのかというと乙ということです
それ以上でも以下でも無いのです
チョコの日に投稿をさせないという愉快なバレンタインプレゼントに感謝しながら乙でした
918 :「第ο次バレンタイン決戦前夜〜またはとある純な少女〜 ◇dairisuruhito [saga]:2013/02/15(金) 16:26:34.04 ID:6qkLYcUE0
「たららったーらったったー、たーらーらー♪」

2月13日、バレンタイン前日の夜。
小気味よく鼻歌を歌いながら、自室の台所でο-No.2が腕を振るっていた。
右端で細かくチョコを刻み、コンロにかけた鍋の中の生クリームと蜂蜜を混ぜ、左端の冷蔵庫の中を整理し、頭上に掲げたレシピを見ながら、斜め後ろのテーブルでメッセージカードを書く……
常人ならば一つずつこなす必要のある過程を、【スター・ゼリー(諸説複合型)】と契約しているο-No.2は複数の触手や目を生やすことによりほぼ同時に進めていた。

「ドはドーナツのドー♪レはレジーヌさんのレー♪ミはミカンのミー、ファは……っと」

歌っている途中で鍋が沸騰しかけたのに気付き、すぐに火を止める。
そこへ刻んだチョコレートを入れ、チョコが滑らかに溶けるようにゆっくりとかき混ぜる。

「よし。えっと確か……そうだった、ファはファルシーのファー♪」※ファルシー=フランス語で詰め物料理

順調に作業がはかどっている事に、ο-No.2は思わず笑みをこぼす。
その顔は人間を超越した姿とはまるで無縁の、一人の恋する少女のそれであった。

後は鍋の中身をオーブンシートを敷いた入れ物に入れ、冷蔵庫で一時間ほど冷やす。
固まるのを待って取り出して、包丁で適当な大きさに切れば、美味しい美味しい生チョコの完成――――!

「楽しみだなぁ、楽しみだなぁ♪レジーヌさん、喜んでくれるかなぁ…………じゃ、そろそろ隠し味ー!」
919 :◇dairisuruhito [saga]:2013/02/15(金) 16:31:18.17 ID:6qkLYcUE0
諸事情の為ここから先はR-18Gだそうなので避難所まで
世に言う続きはwebでという奴でございます
あれも一時期流行りましたが最近では結局見てくれないらしく今一人気がありませんね
誰かの為に何かの料理をつくるというのは愛情深い行為です
それは結局自分の気持ちを食べてもらうことにつながるから愛情の表現としてみなされているのかもしれませんね
人間は自分の食べたもので少しずつ身体が構成されていくわけで、人とはそのままその人が食べたものなのです
誰かに何かを食べさせるという行為はもしかしたら少しずつ相手を自分好みに作り変えていくということなのかもしれません
一人暮らしを始めるとか自分でご飯を作るということは自分で自分を決めること
誰かに何かを作ってもらうとかってのは誰かに自分を決めてもらうこと
少しずつだけど人間ってのはそういうふうに変わっていくのかもしれません
なんてことを読みながら考えていた代理する人でした
920 :◇dairisuruhito [saga]:2013/02/15(金) 16:31:48.87 ID:6qkLYcUE0
【幸せの王子 case.1】

 せわしない朝の駅構内。
 電車を待つ人々の先頭にその男は居た。
 携帯電話で上司に連絡を取りながら、誰もいない場所に向けて男は頭を下げていた。
 それはひどく滑稽で、でも何処か涙を誘う哀れな様子だった。
 男には家族がいる。
 彼の苦労を省みぬ家族が居る。
 男が草臥れて家に帰っても遊びに出かける娘や、男が唯一の安息の場としているプラモデル製作の為の自室を勝手に片付けて何も言わない妻が居る。
 せめて息子でも居れば変わったのだろうか、と彼は自問自答する。
 いいやそれは違う。
 結局同じようにどこかで躓くだけだった。
 わかってはいるのだ。
 しかしそれが少し理不尽にも思えた。
 自分は誰にも迷惑をかけないようにして生きてきた。
 大学は学費の安い地元の大学に行き、授業は席の真ん中で聞いて、大して好きでもない飲み会に付き合い、勧められるままに就職、そして結婚。
 ただそうやって静かに生きてこようとしただけの人間が何故こんな理不尽な人生を送らねばならないのだ。
 何故家族からさえ面白くもなんともない男だと罵倒されねばならないのだ。
 電話を終えて駅の中に差し込む朝の光を浴びる。
 彼は深く俯いて、穏やかに、でも力強く己の死を決意した。
 そんな時だった。

「ねえおじさん」

 彼は突然声をかけられる。
 ハッとして彼が顔をあげると目の前に少年が居た。

「おじさん、どうしてそんな暗い顔をしてるの?」

 男は周囲を見回す。
 こんな怪しげな子供と話しているのを見られたら面倒だ。
 人々はまるでこちらが見えていないかのように好き勝手に自分の時間を過ごしている。
 
「周りを気にすることなんて無いよ
 どうせ何も見ていない人ばかりなんだから」

「君は一体……?」

「僕は幸福の王子様だよ、おじさんは?」

「只のしがないサラリーマンだよ」

「じゃあ何で死のうとするのさ。このご時世お仕事有るだけでもめっけもんだよ」

 それは正しいのかもしれない。
 男もそれは分かってた。
 こんな不景気な世の中で仕事があるだけ良い。
 少年の言うこともまた真実だった。
 だがこんな毎日、生きているのも嫌だった。
921 :◇dairisuruhito [saga]:2013/02/15(金) 16:32:51.98 ID:6qkLYcUE0
「それはそうさ……そうなんだけど
 自分が生きているような実感が無い毎日って辛いじゃないか
 皆俺を馬鹿にする
 皆俺を見下す
 生きているのが只々面倒くさいんだ
 誰からも便利な道具扱いしかされない日常がさ」

 男は得体のしれない子供相手に何故こんなにべらべらと自分の話をしているのか不思議だった。
 だが今までこの感情を吐き出せる相手は一人も居なかったのだから。

「そんなこと考えるから辛いんだよ」

「え?」

「そういう面倒なことを考えるから辛くなっちゃうんだ。忘れちゃいなよ」

「忘れるってそんなこと……」

「できるんだ、僕にはそれが」

 その時、男の頭上を一羽のツバメが駆け抜けた。

「これから貴方の、考える力を奪い取る」

 それに目を奪われていると男の意識が遠くなっていった。
 目の前の少年が何か呟いていることに気がついたがそれを聞き取ることはできなかった。
 ただ何となく、とても幸福な感じがして、それはずっとずっと終わることはなかった。


    ※    ※    ※


 少年は高級なマンションの一室にたどり着いた。
 鳥と三角形が幾つもあしらわれた部屋の奥のリビングには、薄い絹のネグリジェの上からベージュのカーディガンを羽織った品の良い女性が居た。
 とても美しくて、でもどこか少し擦り切れてしまっているような、そんな女性。

「こっちに来て、ぼうや」

 少年が扉を開けると女性は優しい笑みを浮かべて手招きする。

「ほらシャックス、君に上げるよ。あの人の思考力」

 少年は懐から足に手紙を巻いたツバメを彼女に渡す。

「いつもありがとうね」

 シャックスと呼ばれた女性はそのツバメを籠の中に入れる。
 
「これからもよろしくお願いするわ
 良かったらお菓子食べる?」

 シャックスはソファーに深く腰掛けてテーブルの上に有ったカエルのチョコレートを差し出す。

「うん!」

 少年は嬉しそうにチョコを受け取ってパクパクと食べ始めた。

「うふふ、今日は何の日か知ってる?」

「知らないよ?」

「そう……」

 女性は少し残念そうにため息をつく。

「どうしたの?」

「なんでもないわ。ねえ、こっちに来て?」

 シャックスはそう言って少年に向けて両手を広げる。
 少年は何の疑問も持たずに彼女の膝の上に乗る。
922 :◇dairisuruhito [saga]:2013/02/15(金) 16:33:17.95 ID:6qkLYcUE0
「おいしい?」

「おいしいよ、どこのチョコレート?」

「秘密」

 柔らかい彼女の体の感触に埋もれて少年はそっと目を閉じる。
 シャックスは強く少年を抱きしめた。
 
「ちょっと苦しいよ」

 そう言って笑う少年をシャックスはなおのこと強く抱きしめた。
 そんな二人の姿を籠の中からチョコレートの燕が眺めていた。

「貴方みたいな子に面倒な仕事を押し付けて、本当にごめんなさい」

「何言っているの? シャックスの言うとおりにしたら皆幸せになっていってるよ?」

「そうよね……それは知ってるんだけど
 でもやっぱり私は……こうやって貴方をダシにして……」

 自分の身の上の不幸に酔っているだけだ。
 そんな考えが元々物憂げな瞳に浮かぶ更に愁いの色を濃くする。

「大丈夫だよ。シャックスのことは僕が助けてあげるからね
 だって僕は男の子なんだからさ」

 無邪気に笑う少年を見て、彼女は自己愛的な罪の意識と少年の純粋さ故の魅力に溺れていく自分に気づく。
 どうしようもない自分の卑怯さに怯え、彼女は少年にすがり続けるしか無かった。
 
「ねえぼうや、もっと近くに来て」

 少年の耳元で彼女はそっと囁く。
 もう十分近いじゃんと笑う少年の頬に彼女はそっと自分の頬を寄せた。

【幸せの王子 case.1 fin】
923 :◇dairisuruhito [saga sage]:2013/02/15(金) 16:43:40.70 ID:6qkLYcUE0
美しいものを知れば見たい聞きたい触れたいと誰もが願うものです
できるならばずっとそうしていたいと心あるものならば感じるものです
でもそういった鑑賞行為自体がその美的存在の美を妨げるということもあるいはありえるのではないでしょうか
美しい姫を側に置くことを願い、彼女を愛するあまりに彼女の名を悪人として歴史に刻んでしまった王も歴史には数多く存在します
あるいはそんな儚さが人々をその美しさに益々引きずり込むのかもしれません
そしてもし消えるならばせめて自分の手でとか思うのかもしれませんが概ねそういうのは犯罪なのでやめましょう
純粋なものに焦がれる存在は大抵ろくでもない存在です
世間の多くが純粋なものに焦がれるのはつまりそういうことです
そっと見つめるだけであっても相手が見つめられていると感じられてしまったのならばそれはもうアウトなのです
純粋であることはかならずしも善に結びつくとは限らず
そしてそれに何らかのきっかけを与えて変化してしまったならばもうとまらないでしょう
そうやって純粋でなくなっていくのか純粋を保つのかは分かりませんがちょっとしたきっかけですぐに吹っ飛ぶからこそお姉さんと男の子のつながりとかお兄さんと少女のつながりとかって良いんですよね
という遠回りな自虐でした
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/15(金) 19:10:29.37 ID:hNZCT27DO
乙です
感想欄が充実してると書く気力が沸いてくるね!!
まあたっぷり感想を綴るのも大変なことなのであるいみ作品書くより大変なのかもなあとか思った今日この頃
925 :遊星からのメイドX [saga]:2013/02/16(土) 00:21:06.72 ID:ci0kHLEJ0
 僕は宇多恭也。
 何処にでも居る普通の小学生である。
 ほんの少し人と違うところといえば、母親が早くに亡くなって父親もあまり家に帰ってきてくれないことぐらいである。
 今までは祖母と一緒に住んでいたが彼女は退屈だったしコロコロ変わるお手伝いさんもあまり構ってくれなかったので少し寂しい思いをし続けているがやっぱり普通である。
 友達も居るし、勉強もするし、喧嘩もするし、好きな女の子だって居る。
 そんな普通の小学生だ。
 
 ピンポン

 玄関のベルが鳴る。
 今日は父が頼んでいた新しいメイドさんが家に来る日だった。
 僕はこの日の為にたった一人で丁寧に歓迎の準備をしていた。
 僕は胸を高鳴らせて彼女を待ちわびる。
 この感情は少しだけ恋にも似ているような気がした。

「申し訳ございません、こちら吉祥寺市メイド協会から派遣されてきた者ですが……」

 来た。
 ドアの向こうから響く声が小鳥が鳴くようで、きっとそれが可愛らしい女性だろうと僕に期待させた。
 階段の上から僕は彼女に声をかける。

「はい、どうぞ」

 僕がそう言うと彼女は玄関のドアを開ける。
 次の瞬間ドアにつながっていた細い糸が切れてその糸に支えられた錘が下に落ちる。
 下に落ちた錘は見事にシーソーの一端に着陸して、シーソーのもう片方に設置していたパイが射出された。
 こんな悪戯を始めたのは僕が小学校に入ってからしばらくしてからだ。
 おばあちゃんもお手伝いさんも中々構ってくれなくて、ついこんなことを始めていたのだ。
 勿論こんなこと外でやってはいけないので自重しているが、家の中ではあまり怒られない上に思うように相手してくれないのでどんどんエスカレートしていった。
 なんて、過去のことを思い出しながら僕は新しいメイドさんめがけて飛ぶパイと、その後どうなるかについてなんとなーく想像していた。
 可愛いし、怒ってもらったらきっと胸が高鳴ると思うのだ。

「――――ふっ!」

 だがそこで自体は予想外の展開を見せる。
 メイドさんが僕の懇親の、そして渾身のパイ投げトラップを前かがみになって玄関に飛び込むことで躱したのだ。
 ペちょっとなさけない音を立ててメイドさんの背後のドアで四散するクリームパイ。
 僕は生まれてから経験のない戦慄を味わっていた。

 ――――――――この女、できる!

 僕は少しだけ笑ってしまっていた。
 同じように彼女も階段の上の僕を見て笑う。
 そして捕食者の笑みを絶やさずに僕へと歩いてくる。
926 :遊星からのメイドX [saga]:2013/02/16(土) 00:21:36.32 ID:ci0kHLEJ0

「成程、さっそく仕掛けてくるとは聞いていた以上の悪童ぶりね」

 彼女は何か小さく呟いていたようだがそれは僕には聞こえなかった。
 その時点で彼女は気づいていなかったのだ。
 既に錘がシーソーから落下して次のトラップを動かしていたことに。
 錘がぶつかってドミノピースが次々に倒れ始める。
 その倒れたドミノピースを支えにしていたパチンコ玉がいくつもいくつも転がり始める。
 それは丁度彼女の足元に転がり、彼女の足を掬う。

「きゃっ!?」

 情けない悲鳴と共に彼女は転……ばない。
 片手で自分の体を支えてブレイクダンスみたいにぐるりとその場で一回転。
 危機を感じた僕はそのまま二階へ登り三回へと逃げ出す。
 落ち着け俺、この程度のトラップを越えた相手は居た。
 勝負はこれからじゃないか。
 まず二階の階段の直前にある落とし穴。
 これはわざわざ父親が帰ってこない間に家を若干リフォームしてまで作ったのだ。
 怪我はしないように底は柔らかい素材になっているので若干びっくりするだけである。
 しかも浅い。
 30cmくらいの穴に衝撃吸収材を詰めただけなのだ。
 衝撃吸収材は冷たくてネトネトしているので驚かせる効果は完璧である。

「恭也くん、いきなりこんなことしちゃ駄目でしょ!」

 下から怒るような声が聞こえてくる。
 怒ってもらえるだけでわりと嬉しかったりする。
 悪戯の甲斐が有ったというものだ。

「もう、今からそっち行くからちょっとまってなさい!」

 直後にバキッという音。
 落とし穴は成功か?
 いやまて、念には念を入れておこう。
 まだゴム製害虫模型軍団チョロQ付きの準備だけはせねばなるまい。

「まったくもう、こんなことしたら怪我しちゃうでしょ!」

 やはりというべきか、メイドさんには効いてないらしい。
 熱く滾ってきた。
 彼女が階段を登って近づいてくる。
927 :遊星からのメイドX [saga]:2013/02/16(土) 00:22:07.93 ID:ci0kHLEJ0
「ご、ごめんなさい……」

「もう、そうやって悪戯ばっかりしているのはちゃんと聞いているんだからね?
 これからはそういうことをしちゃ……」

 ……悪いがこちらは子供だ。
 その子供らしさを存分に利用させてもらおう。
 まずは可愛らしく謝り、相手を油断させ……

「……そして喰らえぃ!」

 チョロQに貼りつけたムカデや蜘蛛の模型を一斉に解き放つ。
 スピードを敢えて落とすことでリアル感を倍増にさせて恐怖を味わってもらう仕様である。

「見切った!」

 平成のご時世に見切ったとか言いながらチョロQ蹴飛ばすメイドなんて居て溜まるか。
 僕は正確に自分の額の方へ蹴り返されるチョロQを躱しながら部屋の中へと逃げこむ。
 僕の部屋のベランダにはゴムひもが設置されており、それでバンジージャンプの要領で目の前から飛び降りて二階へ逃げこむのだ。
 勿論別の方向に逃げて家のプールから水を流し込んだりとか、キッチンで胡椒を撒き散らしたりもできたがそれはあえてやらない。
 自分の奥の手で勝負をかけたいと思うのが男のサガだからである。

「もう惑わされないわよ恭也くん! ちょっと待ちなさい! 今日は貴方を……」

 メイドさん駆ける。
 俺の部屋まで一直線。
 だがそこにはブーブークッションを改造したブーブーマットがある!
 かかった!
 高らかに響くブーブーという音。
 メイドさんは驚いて下をキョロキョロ眺める。
 恥じらうメイドさんとは非常に良いものである。
 そしてそんな彼女に生まれた一瞬の隙を突いて僕はベランダに出た。
 金具をベルトにはめて……ベランダから飛ぶ!

「な、なにやってるの!」

 メイドさんの顔が驚愕に染まる。
 勝った、第三部完!
928 :遊星からのメイドX [saga]:2013/02/16(土) 00:22:33.54 ID:ci0kHLEJ0
「ははっ! ひっかかっ……」

 ブチィ

「えっ」

 ゴムひもが切れた!?

「うわあああああああああああああ!」

 地面にどんどん近づいていく。
 予定では滑り込むはずだった二階の窓が目の前を通り過ぎる。
 真上にはこちらを見るメイドさんの顔。
 不味いことをしたなあ。
 ここまで迷惑かけちゃうのはなんていうか気分が悪いなあ。
 生きてたらちゃんと謝らないといけないか……。
 ああ神様、もし生きて帰れたならばもう二度と悪戯など致しません。
 なんて僕がセンチになった時だった。

「――――危ないッ!」

 彼女の腕が伸びる。
 僕が落下するより早く彼女の腕……というか名状しがたい触手状の何かは僕の身体に巻き付いていた。

「ひぃっ!?」

 情けない悲鳴をあげる。
 そのまま僕は彼女に三階まで一気に抱き寄せられる。
 偶然にも彼女の胸に顔を埋める形になったわけだがこれは恐らく僕の普段の行いが良いから神様がご褒美をくれたからに違いない。

「よしっ、捕まえたからね」

 僕が顔をあげると彼女は嬉しそうに笑っていた。

「いやーしかし初日からバレちゃったかあ……
 もしかして私の正体わかってたりした?
 まあ何にしても怪我が無くて良かったわ
 初日から何か有ったらお父さんに申し訳ないものね」 

「え、いや、その……」

 しかしその笑顔は長く続かない。

「でも、今後はあんなことしないように! じゃないとお仕置きしちゃうんだからね!
 覚悟しなさい恭也くん!」

 でもこんな美人のメイドさんにお仕置きされるんなら悪戯も悪くないかもなあと思ってしまう僕なのであった。
 ちゃんちゃん。

929 :遊星からのメイドX [saga]:2013/02/16(土) 00:23:25.33 ID:ci0kHLEJ0
メイドさんの正体はわかりません、以上
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/16(土) 00:30:08.47 ID:0wvI5mJAO
乙でしたー
小学生にしてピタゴラスイッチ並のイタズラを考案、実行しさらにそれをことごとくかわすメイド…漲る!漲るぞ!
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/16(土) 09:42:21.15 ID:awhfe3IDO
やはり時代はお姉さんとショタか…
良い意味でクソガキ感も有るけどそれだけで終わらないバランスが大事なのかそうなのかもしれない
932 :僕は小説が書けない(代理) [sage saga]:2013/02/16(土) 20:15:08.34 ID:G4/w+bHi0
「突然だけど殺人鬼の女の子って萌えると思うんですよ
 まぶしすぎる美少女の輝きが醜い血の光を通すことでマイルドになるっていうかですね
 美少女が純粋にキラキラ輝く世界なんて僕のような駄目人間にとってはそれこそ画面の向こうの世界と変わらない世界なんです
 たとえば皆も大好きなアニメキャラとか居ると思うんですがそういうキャラって本当に好きすぎちゃうと態度が二極化しちゃうと思うんです
 会えなくて苦しむか、会わずに済んで安堵するかです
 僕は圧倒的に後者の方でして例えば僕が最近ハマった某アイドル育成ゲームの女の子が画面の向こうに居て本当に良かったなあって思うんです
 醜い自分の内面みたいなものってどれだけ頑張って抑えようとしても滲み出るものですから、もし僕が彼女と同じ時空に存在していたらそれこそ彼女に自分と同じ空気を吸わせてしまう苦痛に苛まれることになってたわけじゃないですか
 そんなのごめんじゃあないですか?
 ですから僕は某アイドル育成ゲームの弟妹がたくさん居るあの子と別の次元に居て本当に良かったと思うわけですよ
 それで本題に戻りますけれども
 僕は殺人という行為はハッキリと悪だと考えてます
 それは人間にとって禁忌とも言える行為なのです
 獣が人を殺すのは摂理とも言えましょう
 その逆もまた然りです
 ですが同種で争い合い殺しあうというのは、しかもそれを対話という行為を可能とする人間で行うのは間違っていると思うんですよ
 対等な立場における理性を用いた話し合いが人間は生きている限りできるんです
 殺人というのはこの対話の可能性を奪い取ってしまいます
 そういったある種の贅沢性が人間の心をどうしようもなく奪うという可能性もあるのでしょうけどそんな訳で僕は殺人をハッキリ悪だと断じるのです
 人を殺す人はクソッタレです
 どんな理由があっても許されないのです
 ……なんていうと「じゃあお前の親しい人がこれ以上無くむごたらしい目に遭ったら?」なんて愉快な詭弁を弄す輩も居ます
 無論そんなことになったら復讐をしたいと思うのが人間として当たり前の感情です
 その感情は間違ってません
 ですがその為に僕がとるであろう行為は間違いなく間違ってます
 残念ながら人間は正しいだけじゃあ生きていけないのです
 そういった矛盾を抱えることこそが生きることかもしれないと思います
 ですが僕はできるだけ正しくあろうとして、間違った人間を見下します
 間違った人間を見下せば、自分の低俗さを忘れられるのです
 それは安心感に繋がり、その安心感を与えるものが美少女であればそれはもう恋です
 そんな訳で僕にとって殺人鬼の女の子は萌えると思うんです
 この意見を聞いた貴方はいかがお考えですか?」

「何だお前」

 草木も眠る丑三つ時、僕の見つけた少女は四ツ辻の真ん中でケバケバしい服装をした女性を解体して臓物を並べて晒していた。
 僕は偶然現在被害者になっている女性の知り合い――それほど親しくないが――で、見て見ぬふりができず、つい声をかけてしまっていたのだ。
 目の前の少女は僕を何か妙なものでも見るような目で見ている。
 何処にでも居る普通の青年である僕に対してあまりにも非礼な態度ではなかろうか。

「六条悲喜、何処にでも居る二十歳です」

「何処の世界に殺人現場を見て平然としている二十歳が居る」

「現代日本でしょうね。もしよろしければ少しお話お伺いしたいのですがいいでしょうか」

 突然だが僕は文才に乏しい。
 学校では国語の授業なんか得意な方だったし、某巨大掲示板で気の利いたレスをして受けをとることはできるが、面白い話の執筆ができない。
 本当は僕の作品で世界を感動の渦に巻き込みたいのだが儘ならないものである。

「例えば僕みたいな何も知らない人間に自分の殺人行為を否定された場合多くの人間は僕を否定したくなります
 なぜならその人には殺人に至る重大な理由が有るからです。いかがですか?」

「あなたへの反論その一」

 ややダウナーなトーンで彼女は僕との対話を始める。

「お前は前提を誤ってる。私は人間じゃない。」

「ふむ、それは興味深い」

 彼女は彼女の二の腕くらいの長さのナイフをグルグル振り回して血を払ってから腰の鞘にしまう。
 その動きはとても手馴れていて、目の前の惨状を創りだしたのが間違いなく彼女であると僕に確信させた。
 僕の趣味はssの執筆なのだが何か新しい作品の執筆の着想を得られるかもしれない。
 二次創作ものはキャラの二人称を覚えるのが面倒なのだ。
 それを間違えて今日も叩かれた。
 ……あれっ、なんでその程度の事も知らない作品の二次創作書いてるの俺馬鹿じゃねえのこの同人ゴロめ有明から去れ!
933 :僕は小説が書けない(代理) [sage saga]:2013/02/16(土) 20:15:40.07 ID:G4/w+bHi0
「反論そのニ」

 彼女は僕をジト目で睨む。

「あんたウザい」

「それは感情的すぎますね。反論じゃあない
 僕の殺人鬼少女萌えという性癖に対する否定には繋がりません
 ですがそれも貴方にとっては重視すべき感情であり、僕にそれを否定する権利はありません
 残るのは貴方の思考が論理的でないという事実だけです
 さてと……」

 携帯電話を取り出した僕に彼女は小さなメスを突きつける。

「妙なことをやってみなよ、多分その前にあんたの舌を三枚に下ろすからさ」

「悪いが僕は生来正直者で舌を二枚以上持つわけにはいかないことになってるんだ
 だから少し待てよ、僕だって君を無粋な官憲に引き渡すつもりはない
 この電話は家で僕の帰りを待つ可愛い弟にかけるものさ」

「官憲は良い、少し厄介なのも混じっているがどうとでもなる
 それよりこれ以上ダラダラしてると組織に見つかる」

「それは大変だ。でもそれなら少し遅い気もします
 僕はここに来るまでに三人組のスーツの男とすれ違いました
 確か黒いスーツでしたね」

 勿論嘘である。

「――――なにっ!?」

 すげえ、引っかかった。
 入れ食いだ。
 真夜中だし適当に黒って言っただけなのに。

「それは本当か、どっちから来た、私に教えろ!」

 彼女がやや興奮した様子で僕に掴みかかる。

「え? 確かあちらの方でしたが」

 僕の住むマンションの逆方向を指さす。
 勿論適当である。
934 :僕は小説が書けない(代理) [sage saga]:2013/02/16(土) 20:16:10.60 ID:G4/w+bHi0
「そうか……礼を言う。お前ウザいけど悪いやつじゃないな
 殺すつもりだったけどやめておいてやる」

 そう言って彼女は駆け出していった。
 僕も当然追いかけようとしたのだが彼女の足は早い。
 初恋の女の子を思い出す。
 彼女も驚くほど足が早くて、勉強ができて、中学校に入ってから勉強のやる気無くして、高校は別の所行って、彼氏ができたとか聞いて、死ねええええええええええええええええ!
 はい、そんなことより今は目の前の美少女です。
 あの子ったらどっか行っちゃいましたようふふ。
 さっきそういえば人間ではないって言っていましたね。
 でもそんなこと僕としては正直どうでも良くて対話の通じる理性有る存在だという時点で僕はそれを人間だとみなします。
 少々の身体能力なんて関係ありません。
 血塗られた女の子萌えなのです。
 そして僕が彼女の残した若干の制汗剤と血と美少女特有の甘やかな香りに誘われてふらふら歩いていると近くで少女の声が聞こえました。

「居たぞ! 例の都市伝説だ!」

「切り裂きジャックだな、貴様を処分する!」

 続いて何やら古典的なレーザー音声、男たちの怒号。
 少しキナ臭いのだが文才の無い僕はせめて面白い題材を見つけようとノリノリで現場乱入である。
 我ながら恐るべき創作意欲だ。
 
「どうしたんですか!?」

 何も知らない通行人を装って近くの曲がり角を曲がりながら叫ぶ。
 ……お前のような通行人が居て溜まるか、なんて。
 見ると先ほどの美少女が三人組の黒服の男に囲まれていた。

「チッ、目撃者か。面倒だな」

 黒服の男の一人がこちらの方を向いて銃を構えます。
 この法治国家で銃とか驚きである。
 流石の僕もこの辺りで非日常に巻き込まれていることを確信してしまった。

「おいお前!」

 男が叫ぶ。
 ちなみにその影で美少女さんこちらをめっちゃ睨んでます。
 やっぱ嘘がバレると怒っちゃうよねえ。
 ああ困ったなこれ。
 でもちょっと興奮してきた!

「はっはい何でしょう!」

 如何にも漫画に出てくる小市民Aみたいなノリを通す。
 こういうのいっぺんやってみたかったのだ。
 
「其処に伏せてろ! 俺が良いというまで顔をあげるんじゃねえぞ!」

「はわわ、解りました!」

 はっはっはっ、黒服さんまさかの良い人でした。
 二十歳の男の『はわわ!』なんてセリフ聞いて撃ってこないなんて間違い無く善人です。
 俺だったら二度と口を聞けないように蜂の巣にしてやりますねええ。
 なんてことを考えながら伏せていると何度か金属音が聞こえた後、何故か僕の身体が宙を舞う。
 僕を抱きかかえているのは先程の美少女でした。
 膨らみかけの横乳が当たるのが非常に良い。
935 :僕は小説が書けない(代理) [sage saga]:2013/02/16(土) 20:16:51.37 ID:G4/w+bHi0
「なぁ……」

「なんだ、命乞いか?」

 鋭い瞳が僕を見下ろす。
 この若干男勝りな感じの口調も萌えだなあ。

「なんで僕を攫ったんだい?
 これはもしかして……僕が気になっちゃった感じかい?」

 流れ星みたいに遠のく黒服のお兄さん達を眺めながら僕は彼女に問いかける。
 僕は昨今の鈍感系主人公とは違うのでちゃんとフラグに反応……返答は刃物で返ってきたようである。
 ほっぺが痛い。
 目にも留まらぬ早業で切られてしまったらしい。

「次くだらないこと言ってみろよ。殺すぞ
 お前は只の人質で、武器だ
 最近の組織は人間にやたら配慮するからな」

 目の前で細い刃をちらつかされる。
 彼女は先程のナイフではなくメスを使っていたようだ。
 まああんな首切り刀みたいなもの使われてたら頭蓋事真っ二つですが。
 
「了解」

 彼女は僕を小脇に抱えたまま、自宅近くの小川、その横に空けられた下水に繋がるトンネルの中に隠れる。
 僕は彼女の匂いを全力で楽しんでました。
 多分僕はこんな人のこない薄暗い場所で乱暴されちゃうんだ……エロ同人みたいに。
 何故か彼女に睨まれた。
 言ってないからセーフ、セーフですよプロデューサー=サン!

「死にたいのか、珍しい人間だな」

 彼女は再び腰のナイフをチラつかせる。
 ナンデ!?
 サツジンキナンデ!?

「お前の目を見ればお前がろくでもないことを考えているのは分かる」

 目だけで通じ合える。それが愛ですね、わかります。
 とかなんとか考えながら頷いていると、彼女のメスが突然銀の軌跡を描いた。
 なんという事でしょう、俺の頬に不殺の流浪人よろしくの十字傷ができたではないですか。

「正しく匠のリフォーム! 如何にもモブキャラっぽい外見のこの僕があっという間に主人公!」

「お願いだから黙ってください」

 ついに懇願された。
 だが小市民Aは相手が下手に出た時にこそ調子に乗るのだ。
936 :僕は小説が書けない(代理) [sage saga]:2013/02/16(土) 20:17:17.19 ID:G4/w+bHi0
「そうはいかないね、僕は気づいちゃったんだ。殺す殺す言うけどお前に俺は殺せないんじゃないか?」

「――――――な、なんで!?」

 適当に言っただけなのになあ……。

「君は先程自分を化け物だといっただろう
 化け物はルールを守る
 人間と違ってルールこそがその化け物にとって存在の拠り所だからだ
 バケモノを自称するだけの頭のかわいそうな女の子だと思ったけど
 ここまで酷い状況を見せられたら君が本当に可哀想な化け物としか思えない」
 僕は知っている、確か君みたいな存在を都市伝説と言うんだっけか
 成程確かに人間じゃあ無いね
 君の殺人はそういった意味で正当化される」

「だからどうした」

「切り裂きジャックと呼ばれていたね、これは推測だけど君は女性しか殺せないんじゃないか
 だからあの黒服の男たちに苦戦している」

「……そうだ。だが知っているなら話は早いな
 おいお前、私の為に私と契約しろ
 さもないと死なない程度に全身切り刻んでから水に浸して失血死させるぞ」

「直接手を下さなきゃいいわけか……
 僕と契約することで君にかけられた殺害対象の女性への限定が解ける
 そんなところかな?」

「イエスかノーで答えろ! こっちは追い詰められているし……」

 彼女は僕に馬乗りになってメスを首筋に突き立てる。
 美少女に馬乗りにされている状況は個人的にとても美味しいのでもう少しふざけていたいのだが許されなさそうでも有る。

「今から僕と契約してあの黒服を殺しても君は別の誰かに殺される、ついでに僕もね
 僕はそんなのお断りだよ」

「そうか、交渉決裂だな」

 彼女がそう言ってナイフを俺に向けて振り下ろそうとした時だった。
 闇夜を裂いて光線が飛ぶ。
 彼女の腕を光線が焼いて、彼女は悲鳴と共にうずくまる。
 
「こちら警務部隊、一般人相手に契約を強要していた模様!」

 黒服の男たちが下水に繋がるトンネルの奥から二人、そして5m先の小川の対岸からも一人現れる。
 
「た、たすけてぇ!」

 情けなく悲鳴をあげる僕。
 直後にそれ以上に痛ましい悲鳴が響く。
 僕に襲いかかっていた少女は光線銃で身体を貫かれて川に吸い込まれてった。
937 :僕は小説が書けない(代理) [sage saga]:2013/02/16(土) 20:17:42.68 ID:G4/w+bHi0
「おい大丈夫だったか!」

 そう言って用水路から来た男の一人が俺に駆け寄る。
 側へ、そうすごく近くへ。

「は、はい……なんとか」

 彼はホルスターに銃をしまって僕を抱き起こす。
 詰まらない。
 なんて詰まらない結末なんだ。

「ほら、さっさと起きな。こいつは悪い夢の類だ
 今から忘れさせてやるから大人しく……」

「これで……」

 僕は呟く。

「ん?」

 ――――つまらないのは嫌いだ

「これでなんとかなりそうです」

 僕は男性からホルスターの銃を奪い取って彼の脳天を射抜く。
 次に驚いて振り返った男の眉間にも二条の光線を見舞った。
 そして二人の男の死体を盾に、対岸の男に向けて光線銃を乱射する。
 ……が、外れた。
 男が驚いて反撃しようとしたところで銀色のナイフが宙を舞う。
 甲高い金属音と共に銃が真上にはじかれる。
 その済んだ音色に僕の意識は限界まで研ぎ澄まされる。
 空気は肌を締め付け、静寂は脳を揺さぶり、ぼやけた電信柱の明かりもスポットライトみたいに眩しい。
 銃口を黒服の眉間に、二回引き金を引く。
 的中、崩れ落ちる姿。
 胸にもう一発。
 そして振り返りざまに先ほど撃った黒服たちにも追撃。
 すぐに僕も川へ飛び込み、既に水中で意識を失っていた少女を背負って下流までゆっくりと流される。
 真夜中だったのが幸いして誰にも見られずに自分が散歩に良く行く土手まで来られた。
 寒くて寒くて死んでしまいそうだが、なんとか彼女と一緒に陸へと上る。
 そこら辺に寝かせてから確認してみるとなんと彼女にはまだ息があった。

「おい、起きろ」
 
 僕は少女の頬をペチペチと叩く。
 彼女はうっすらと目を開ける。
 彼女は何処か遠くを見ているようだった。
 僕もまた彼女が見ているものを見ようと後ろを振り返る。
 それは月だった。
 薄く雲を纏う三日月が、夜空の口許みたいに恥ずかしげな微笑を浮かべてた。
 
「びっくりだな……まだ生きているとは」

「……悪いか?」

「いいや悪くない」

「なんだ、何の気まぐれで私を助けたんだ」

「ああちょっとした手違いで僕も君と同じ組織に追われることになってしまったみたいだからね
 どうせなら手を組んだ方が面白い物語になるかなって」

「……馬鹿だなお前」

 構わない。
 僕は面白い話が書きたいだけなのだ。
 こいつとつるんでいれば少しはマシな話も書けそうだ。
 とりあえず僕は彼女を家に連れて行くことを決めた。
938 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/16(土) 20:18:25.22 ID:G4/w+bHi0
代理投下終了よン
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/16(土) 22:36:25.33 ID:awhfe3IDO
代理オツオツ
ただの人間が一番…よね
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/17(日) 23:47:28.56 ID:sbH9XL6DO
今避難所にてやってる話をこっちでやればもっと人が興味を持つ気がする
しかし今私はこちらにパソからアクセスできないつらい
941 :都市伝説と戦わないシリーズ [saga]:2013/02/18(月) 17:05:47.35 ID:nrUvHF2DO
すぐ近くのスピーカーから流れる無粋な機内放送で私は微睡みから急速に引き戻された
僅かな苛立ちと共に窓の外を眺めればそこには故郷の青くて虚ろな空がある
機内アナウンスは大雪の為の遅延を詫びていたが長旅で鈍化した私の思考にはそれらの遅れが些事にしか感じられなかったのだ
そうして私は窓の外を行き過ぎるいくつもの雲の欠片を飽きることなく眺めていた
さて、着陸待機の為に幾度空港の上を旋回したのだろうか
私以外の乗客は口々に文句を言っている
しかしそれもまた今の私にはどうでもいいことだ
何故なら私は今まで見た夢のことで頭が一杯だったからだ
私は夢の中で少年に戻ってた
まだ若くて美しかった母が居た。そして事故で亡くなった筈の弟が居た。私たちは皆、雲の上にあるラピュタという名前の国で幸せに暮らしていた
そしてその国の王は父で、私と弟は父を崇める歌を母から習っていた
その歌を歌いながら私は弟と遊んだ
時には月の裏側やアマゾンの森の最奥にある台地なんかに行って些細な冒険を楽しんだりもした
そこに行くまでには白いカヌーを二人で漕いで空を飛ぶのだ
このカヌーは城に住む魔術師の老人が整備をしてくれた
この老人に習った魔術が私たちの旅を幾度も助けてくれたのを覚えている
懐かしい気持ちが私の身体の中に満ち溢れていた
私は人目も憚らずに夢で聞いた歌を歌い出す
すぐにCAが駆けつけてくるが私は構わずに歌い続ける
次に男性が私の歌を止めようとしたが、既に私の喉は私のものではなくなっていた
皆が頭を抑えて苦しみ始める
こんなに素敵な旋律なのに皆は何故泣き叫ぶのだろう
ついに乗客の一人が私を絞め殺そうとしたその時、機内に悲鳴が木霊した
私は首を絞められながらも視界の隅に映った窓の外の光景を見て驚いた
巨人が飛行機の隣を飛んでいた
蒼く燃え盛るだけで実体の無い頭部、無数の木の枝を束ねて作った身体、異常にひょろ長い手足
青い光を身体中の隙間から発するそれは間違いなく夢に見た私の父だったのだ
私は彼に向けて手を伸ばし笑う
彼もこちらに手を伸ばして微笑む
飛行機の壁は容易く砕けて沢山の人々が空中に投げ出されていく
どこからか聞こえる父を讃える為の大合唱の中、顔をひきつらせた沢山のなにも知らない愚者達が大地へと還っていく
しかし私一人だけは全ての美しいものが存在する場所へと行くのだ
そう、ラピュタへ
942 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/18(月) 20:38:38.54 ID:ZEKiHyBo0
乙ですのン
凄い……引き込まれた……
でもどんな都市伝説なんだろう
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/18(月) 20:54:46.41 ID:nrUvHF2DO
>>942
わかんない方がホラーっぽいかなって
スレの方向性と違うけどコズミックホラー書きたいから習作として


あ、でも元ネタはちゃんとあるからね
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/18(月) 21:35:35.67 ID:cRa8mfqyo
ヤバい、何これ面白い
シリーズってことは期待しちゃっていいの?
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/18(月) 22:04:27.68 ID:nrUvHF2DO
>>944
良いんですよ
クロスしたくなったらしていただいても良いんです
このスレ的には外道も外道なんですけどね
946 :僕は小説が書けない [saga]:2013/02/18(月) 22:31:53.11 ID:xsQCxg2u0
コズミックホラー系列を書きやすくしちゃう都市伝説スレ2.0フォーマットによるストーリーものも投下しちゃう
947 :僕は小説が書けない 第二話「僕には妹が居ない」 [saga]:2013/02/18(月) 22:36:32.51 ID:xsQCxg2u0
【前回までのあらすじ】
何処にでも居る普通の二十歳である六条悲喜が偶然切り裂きジャックの殺人現場を目撃
切り裂きジャックにすら引かれるウザトークで時間を稼いでいたら心優しい黒服さんに助けてもらえました
しかし普通の二十歳である悲喜は面白い小説のネタの為に黒服さんを裏切ってジャックちゃんを助けて家に連れ込んだとさ
【以下本編】

「ただいまー」

 あくまで軽いノリを崩さずにマンションの誰もいない自室に戻る。
 俺の声に応える存在は居ない。
 この部屋には、居ないのだ。
 
「お前、弟が居るって言ってなかったか?」

「弟なら居るさ」

 そう言って天井を見上げる。
 あいつは上の階に部屋を借りてるのだ。
 最近までは一緒に暮らしていたというのに冷たい奴だ。

「ここに、ずっとね……」

 少し寂し気な笑みを浮かべてポケットから煙草を取り出す。
 実際寂しい。最近遊びに来てくれないのだから。
 あれ、煙草湿気ってて吸えねえ。
 ライターも壊れてやがる。
 カチッカチッと何度やっても火がつかねえ。
 煙草はそのままゴミ箱にシュー!
 超!エキサイティン!
 ちなみに葉っぱ買って手巻した高級品だ!
 でも紙煙草より安いぞお!
 それにしても完全に川に突っ込んでしばらく流されてたの忘れてたよ畜生!
 寒いなあもう風邪引いちゃう!
 
「もしかして悪いことを聞いて……」

「さっ、急いで着替えようぜ。こんなんじゃあ風邪引いちまうよ」

「……ああ」

「女性用の服は無いけどまあパジャマ位なら問題無いだろう?
 これ使ってくれ。弟の奴だから最近使ってないし良いだろ?
 物は使った方が喜ぶしな」

 あの野郎、人の部屋にパジャマ脱ぎ捨てて行きやがって。

「まあ、今日くらいは素直に従ってやるか」

 彼女は何故か大人しく指示に従うつもりらしい。
 嫌がられるかと思ったけどそんなことは無かった。

「濡れた服は洗濯してから乾燥機に入れてやるから
 さっさとシャワー浴びてこい」

 そしてどさくさに紛れて服を頭から被ろう。
948 :僕は小説が書けない 第二話「僕には妹が居ない」 [saga]:2013/02/18(月) 22:37:03.09 ID:xsQCxg2u0
「それなら必要ない。所詮、都市伝説の力で編んだ服だから消せば消える」

「あれっ、それならそもそもわざわざパジャマ着る理由は……?」

「……それよりだ」

 意外にも切り裂きジャック選手これをスルー。

「そもそも私は切り裂きジャックだ
 泥をすすり、屋根の無い場所で寝るのが当たり前さ」

 そういうこと言われると庇護欲マッハですぅ。
 ああそういえば切り裂きジャックも娼婦だったって説は有ったな。
 となるとそれで生活環境が酷いのにも慣れてるのかも……駄目だこの娘早く温かい物でも食べさせてあげないと。

「そうか、じゃあシャワーとかも浴びなくて良いのか?」

「それは浴びさせろ」

 ここでまさかの乙女発言である。
 良いなあ、隙だなあこういうの。

「良いぜ、僕は紳士だから女の子に先にシャワーくらい浴びさせるさ」

「……ありがとう」

「ああ待て、シャワー使うのは良いけどその前に僕が君をなんて呼べば良いか教えてくれ」

「え?」

「名前だよ、名前」

「私は切り裂きジャックで、それ以上でもそれ以下でもないよ」

 彼女はそう言ってパジャマを持ったまま洗面室の奥のシャワールームに篭ってしまう。
 シャワーの音が聞こえる。
 それに洗面器にチャプチャプと溜まる水の音色。
 あとで浴室ペロペロしようかな。

「……よし」

「覗いたらバラバラにするからな」

「何故解った!」

 僕の思考が盗聴されています。
 しかたがないので僕は静かに彼女の呼び名を考えることにします。
 ジャック……女の子がジャックはねえよなあ。
 あーそうだ、ここはフラグを強固にする為に初恋の女の子の名前でもつけようか。
 良いぞ、気持ち悪いぞ僕。
 こういう時は弟に聞いてみるのが吉か。
 さっそく携帯電話を……と思った時、突然ドアをノックされた。
 三三七拍子なところからして弟だろう。
 大して警戒もせずにドアを開けると……
949 :僕は小説が書けない 第二話「僕には妹が居ない」 [saga]:2013/02/18(月) 22:37:38.36 ID:xsQCxg2u0
「六条悲喜だな?」

 デザートイーグルが僕の額に突きつけられる。
 持ち主はサングラスをかけた屈強な男だ。

「お、お前は!?」
 
「動くな喋るな目を閉じろ、さもなくば貴様の脳天が綺麗な花火みたいに……」

「おい悲喜! 大丈夫か!」

 レモンちゃん(今適当に決めた切り裂きジャックの呼び名である)が半裸で飛び出してくる。

「レモンちゃん……初めて名前で呼んでくれたね」

 俺のことはガン無視で彼女は玄関に立つ大男を睨みつける。

「組織の追手か! 面倒なことに……」

「――――兄ちゃんの家に女だと!? しかもちょい電波入ってる!」

「「……ん?」」

 プリンちゃんと我が弟がしばし困った表情で首を傾げる。
 ここで戦わない辺りこいつら二人共平成ライダー一期シリーズの人間よりはマシなオツムを持っているらしい。
 まあ戦った所でこの女に勝ち目など無いのだが。

「どうもこんにちわレモンチャンさん……俺は六条路樹です。この男の弟です
 なんか兄弟でよくやる寸劇に巻き込んでしまってすいません」

 先に挨拶をするとはできた弟である。

「ちなみにこれはライターです」

 そう言って弟はデザートイーグルの先端を俺の額から外してから火を灯す。
 煙草を吸うのに丁度良さそうなので玄関に置いてあった煙草の箱からタバコを取り出してその火で煙草を吸おうとする。
 即座に火を消された。
 彼女も何となく事態を理解したのか何故か俺の方を睨みながら彼女も路樹に挨拶をする。

「え、あ、お、おう……。私はキリサ……」

 レモンちゃんの発言を遮って俺は弟に彼女を紹介する。

「レモンちゃんだ。まあ友だちみたいなもので決して怪しい関係ではないから気にするな
 ちなみにレモンちゃんの語源は英語の古語であるlemaneだ
 シェイクスピアを最近読んだからな」

「え、ちょ、レモンちゃんって……」

「流石兄ちゃん、そうやってちょくちょく知識をひけらかすのが本当に好きだな!」

「まあな!」

 レモンちゃんガン無視で兄弟の会話タイムである。

「でも兄ちゃん、流石に女の子を自分の部屋でシャワー浴びさせておいて何も無しはねえよ
 むしろ有ってほしくねえよ、兄貴がガチホモ疑惑とか簡便だぜ?」

 我が弟はナチュラルに家に入り込んでドアを閉める。

「いやそもそも弟って、弟って、居なくなった……あれ?」

 何故かレモンちゃんが頭を抱えている。
950 :僕は小説が書けない 第二話「僕には妹が居ない」 [saga]:2013/02/18(月) 22:40:10.80 ID:xsQCxg2u0
「でもマジなんだ。信じてくれ弟よ」

「今回ばかりはかばいきれねえよ兄ちゃん
 しかも若干年下じゃねえかよ
 どうみたって完全にちょい電波入ってる娘に話あわせてよろしくしましたって感じだよ兄ちゃん」

「……はぁ」

 レモンちゃんは諦めてシャワールームに戻っていった。

「馬鹿野郎お前の兄ちゃんはダメ人間だけどそこまでクズ野郎じゃねえよ
 そんな良くあるエロ同人誌みたいなことは決してやらないよ兄ちゃんは
 むしろあれだって
 悪漢に追われていた美少女を格好良く助けてとりあえずシャワー浴びさせようとしてたところなんだって
 僕だって川ポチャしたのに我慢してシャワー浴びさせてるんだよ?
 紳士じゃね?
 つーかそもそも兄ちゃん女の子に不自由してないし
 瞳を閉じれば沢山彼女浮かび上がってくるし、ハーレムだし」

 アイドル育成ゲームのあの子だって妄想するだけなら罪じゃないし。
 本当はあの子に俺のレトルトカレーコレクションを食べさせてあげたかった。

「マジかよぱねえな兄ちゃん、俺は画面の前までしか付いてきてくれないよ」

「甘いなあ弟よ、俺なんか瞼を閉じるだけだからね
 電気代も要らないし、エコだし
 だから覗きに行こうぜあのシャワールーム」

 といった直後に彼女はシャワールームから出てくる。
 僕と最初に出会った時の戦闘服っぽいものを着ながらである。

「先に寝るから」

「あー……兄ちゃん俺やっぱお邪魔?」

「そんなこと無いって、それより偶に来たんだから少し飲んでいけよ
 さっきすげえ面白いことが有ったの
 プリンちゃん寝る前に棚の中から好きなレトルトカレー取り出して食べていいぜ」

「……ありがとう」

 レモンちゃんは死んだ目で棚から一番高いレトルトカレーとレトルトごはんを取り出して一人で調理を始める。
 
「マジかよ兄ちゃんがお気に入りレトルトカレーコレクションを開放するなんて貴重すぎるぜ
 やっぱり付き合ってるんだな、遊びの関係じゃなくて真剣な交際なんだな
 少し年下の義妹ができてもこの際だから気にしないよ
 兄ちゃんでも人と真面目に付き合えるなんて俺は感動したな」

 あ、なんかレモンちゃん泣いてる。
 そんなに美味しかったのか。
951 :僕は小説が書けない 第二話「僕には妹が居ない」 [saga]:2013/02/18(月) 22:40:38.44 ID:xsQCxg2u0
「言うな弟よ
 俺だってこれでも頑張ってるんだからな
 それよりさっきあった面白いことの話してやるから聞けよ」

「ははっ、どうせまた新しい小説の題材を思いついたとかそんなんだろ?
 今度は俺も手伝ってやるからがんばれよ
 兄ちゃんきっと才能はあるって」

「ふっふっふ、ところがどっこいちが……」

 レモンちゃんは涙を拭いてすっと立ち上がる。

「……悲喜サン、久シブリニ温カイモノヲ食ベラレマシタ
 アリガトーゴザイマス」

 レモンちゃんが隣の部屋に行ってしまった。
 あっち俺の寝室なんだけどなあ。
 ちょっといじめすぎたかもしれない。
 だってあいつ少し調子乗ってそうだったからガツンと行かないと駄目かなあって思っただけなのに。

「礼には及ばないよ」

 ちょっと後悔しているくせに
 ( ・´ー・`)どや
 みたいな表情で余裕かまして見せます。

「もしかしてあの子なんか複雑な事情有ったりするの?」

 ああ、出会ってから只の人間である俺におちょくられっぱなしだよ。
 あの娘の胃袋を心配してやって欲しい。

「ああ、そうなんだ……実際俺があそこで彼女と会わなければどうなっていたか……
 考えると今でも恐ろしいよ」

 嘘ではない、嘘では。

「警察に相談とかできないのか?」

 僕達二人は先程まで彼女がレトルトカレーを食べていたテーブルに座る。
 開けるのは親父が好きだったのと同じ銘柄のウイスキー。
 二人で飲む時はいつもこれだ。
 ちなみに親父は元気で最近禁酒に成功した。
952 :僕は小説が書けない 第二話「僕には妹が居ない」 [saga]:2013/02/18(月) 22:41:12.53 ID:xsQCxg2u0
「警察か……」

 僕は静かに首を横に振る。

「何か助けられることが有ったら言ってくれよ?」

「勿論だ、僕が頼れるのはお前くらいしか居ないからね」

 僕はそう言ってとりあえずシャワールームに向かうことにした。
 このままでは風邪を引く。

「待ちな兄ちゃん」

「なんだ」

「面白い話を持ってきた。南区の幽霊屋敷のことは知っているか?」

「おう」

「誰かにあれの調査をしてほしいって俺の友達が言っていてな
 そいつの親父さんが地主で建物をとっとと処分したいんだけどその噂のせいで買い手が出ないんだと
 兄ちゃんこういうの詳しいだろ?」

「ふぅん……面白いね」

「お礼も十分するとさ」

「分かった、その話を受けよう」

「ありがとうな兄ちゃん」

 レモンちゃんも居ることだし怪物の類が居ても大して問題は無いだろう。
 只でさえレモンちゃんが居るのにこの上にゴーストハウスの調査なんてこれは天が僕に面白い作品を書けと言ってるに違いない。
 僕はそう思った。
953 :僕は小説が書けない 第二話「僕には妹が居ない」 [saga sage]:2013/02/18(月) 22:42:12.54 ID:xsQCxg2u0
本日はこれまで
こっちも多分怪奇路線で行く予定
954 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/18(月) 22:47:14.37 ID:ZEKiHyBo0
レモンちゃんと聞くと橙レイモンたんを思い出す…懐かしや
それはともかく乙ですのン
まさかプリンちゃんから変えてくるとは思わなかったwww
>>949に名残があるけど気にしない(
そしてゴーストハウスの調査か、次回もwktkせざるを得ない
955 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/18(月) 22:48:15.37 ID:ZEKiHyBo0
おっと、950超えたか
でも最近の速度だと>>970辺りで立てた方が丁度良い感じ?
956 :僕は小説が書けない 第二話「僕には妹が居ない」 [saga sage]:2013/02/18(月) 23:11:50.58 ID:xsQCxg2u0
最近の速度だと>>970ですかねい
>>970超えたら一気に埋め立てるからそれでいきませう
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/18(月) 23:13:52.92 ID:xsQCxg2u0
次スレへの抱負
speedを一日辺り20レスくらいにする
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/19(火) 16:20:12.17 ID:DwSFWtNDO
ホラー一本でやってったほうが輝きそうだなあ
959 :俺と彼女と彼女の死体 1/5 [saga sage]:2013/02/19(火) 17:09:57.91 ID:vAg2fzoU0
投下行きます

・戦闘なし
・ラブコメの冒頭……のような何か
・ご都合主義全開
・続きは未定

それではごゆるりとお楽しみくださいませ
960 :俺と彼女と彼女の死体 2/5 [saga sage]:2013/02/19(火) 17:10:27.73 ID:vAg2fzoU0
深夜2時。あるマンションの一室。俺はそこに立っていた。

駅から徒歩十数分。十畳ワンルーム風呂トイレ別のオーソドックスな間取りの部屋だ。それこそ、女性の一人暮らしには最適な部屋だろう。

事実、食器棚に入れられたゆるキャラ柄の皿や、淡いオレンジのフリル付きカーテンが、この部屋の家主が女性であることをなによりも語っていた。

こんな内装で住んでいるのが野郎というのはさすがに想像しがたい。この部屋の家主は、さぞ女子力の高い人物だったのだろう。

家主――いや、もと家主か。

今、この部屋には誰も住んでいない。訳あって前の家主の荷物は残っているが、俺が今日入るまでは誰の足も踏み入れられてなかったはずだ。
961 :俺と彼女と彼女の死体 3/5 [saga sage]:2013/02/19(火) 17:11:06.38 ID:vAg2fzoU0
「……これは、俺が友人から聞いた話なんだが」

誰に言うでもなく語られるそれは一つの物語。

「ある日電車に乗っていたそいつは、電車の窓からあるマンションの一室で、空を眺める女性を目撃した」

紡がれる言葉とともに、部屋に発生し始めた靄が像を結び形を成す。

「その女性に一目惚れしたそいつは、ある日その女性の部屋まで押しかける」

古来より、妖怪や幽霊、怪異の詳細を風聞する人間のもとに、怪異は訪れると言われている。

それは、妖怪や怪談が時代と共に姿を変え、『都市伝説』になった今でも変わらない。

「扉を開けたそこにいたのは、首を吊って死んでいた女性の姿だった……首を吊って死んでいる姿が、空を眺めるように見えたらしい」

ましてや、この部屋は、その話の発端となった場所だ。
時刻は昔で言う丑三つ時――これで、何も起きないはずがない。

「これが『空を眺める少女』の『都市伝説』だ」

言葉を切ると同時、ぼんやりと漂っていた薄黒い靄が人型を取り――はっきりとした、人間の姿を取って現れた。
962 :俺と彼女と彼女の死体 4/5 [saga sage]:2013/02/19(火) 17:11:58.36 ID:vAg2fzoU0
華奢な身体を包む白い薄手のワンピースに水色のカーディガン。
肩下まで伸びた漆黒の髪に、陶磁器を思わせる白い肌。
儚げなという表現がしっくりくる顔立ちに、寒気すら覚える物憂げな瞳。


ああ、あの日俺が見た彼女の姿と、全く変わらない。

「……ここ、は。あなたは……?」

掠れるようでいて、耳に抜ける透明感のある声。
間違いなく美声と言われるようなものなのに、耳にした瞬間から全身を凍りつかせるような錯覚を覚える。

「俺は……あんたに惚れたもんだ。あんたを、迎えに来た」

「……私に、惚れた?」

真っ白な顔をわずかに赤く染め、上ずった声で答える。

「ああ。だから……ていうのもおかしい話だけどな。とりあえず、あんたをここから出してやる。だから、俺についてこい」

「……え、ええ。細かいことはよくわかりませんが。今は……あなたを信じることにします」

わずかに微笑み、手を差し出してくる彼女。そんな彼女の手を繋ぎ――その瞬間、俺達の契約は成立し、俺は大切な女性を救い出すことに成功した。

その後彼女と契約した俺に、非常に稀有な能力が目覚め、様々な組織に追われることとなるのだが――その話は、まあ、どこかで噂でも聞いてくれということで。





俺と彼女と彼女の死体 Fin.
963 :俺と彼女と彼女の死体 5/5 [saga sage]:2013/02/19(火) 17:15:05.92 ID:vAg2fzoU0
以上です
スレ汚し失礼しました
続きは敵と主人公の能力が浮かんだら書くかもしれません
浮かばなくても二人のイチャイチャが浮かんだら書くかもしれません
964 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/19(火) 18:58:02.47 ID:7kZrKzZ20
イチャイチャwktk
乙ですのン
赤くなっちゃうおにゃのこ可愛い
とりあえず男はもげろ(
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/19(火) 21:30:04.79 ID:GtzfOWjc0
お疲れ様でした
古来より愛する人を冥府へ迎えに行く話は数多くあります
そしてそのオチはどれもつらいものになっている
さてこの話はどのように向かっていくのでしょうか
楽しみにしております
966 :都市伝説と戦わないシリーズ「キの印」 [saga]:2013/02/19(火) 21:31:29.23 ID:GtzfOWjc0
学校からの帰り道、私は初めて万引きをした。
最近できたばかりの雑貨店で、瑪瑙のブローチを万引きした。
黄色と黒の縞々で、中央に非ユークリッド幾何学的にねじれ曲がった三本のラインが入った不思議な不思議な金細工のブローチ。
前から欲しくてしょうがなかったのだけど、私のお小遣いでは買えないし、どうせお父さんもお母さんもあの店のものは買ってくれない。
大人たちはあの店に近寄ってはいけないなどと言っているのだから。
店番のおばあさんは何時も眠っているし、万引き自体はとても簡単だった。
やり方も他の子から教えてもらったのだ。
皆がやっている。私は悪くない。心のなかで何度も繰り返しながら私はブローチをポケットに入れた。
家に帰ると両親は居らず、妹が一人でテレビを見ていた。
私はこっそり自分の部屋に戻ってブローチを眺めた。
その時、背後からいきなり妹に声をかけられた。
どうやら私のブローチに興味を示したらしく、自分にも見せて欲しいのだという。
私は断った。これは私のものだ。私だけの宝物だ。私以外の誰にだってこれを持つ資格は無い。
どんなところにあったとしても私はこれを奪いとろうとしただろう。
妹は素直に私の言うことを聞かず、私の手からブローチを奪い取った。
私はそれを取り返そうと彼女と取っ組み合いの喧嘩をする。
そうしていると玄関のドアが開き、母が帰ってくる。
彼女はすぐにここまで来て、私と妹が喧嘩している姿を見る。
私は母に怒られることを覚悟した。
だが母のとった行動は意外なものだった。
彼女もそのブローチを見るなり取っ組み合いに参加し始めたのだ。
私の髪を引っ張り、妹の頬を引っかき、彼女もまたブローチを手に入れようと必死である。
やっぱりそうだ。これはそれ程に価値のあるものなのだ。
だったら絶対に渡すわけにはいかない。私も母を殴り、妹を蹴って自分だけブローチを手に入れようとする。
妹が母親の足を捕まえた。そしてその拍子に母はバランスを崩してタンスの角に頭をぶつける。
キヒィという悲鳴を上げて母は動かなくなってしまった。
私は怖くなって妹に向けてあんたが殺したんだあんたが殺したんだと連呼しながら掴みかかった。
半狂乱になった妹は筆箱から鉛筆を取り出して私の喉に突き刺す。
私は慌てて彼女の目を指で突き刺して彼女にブローチを目で見れないようにしてあげた。
こうすれば手に入れた所で意味は無い。いい気味だ。
笑おうとした所で呼吸が上手くできなくなって、私と妹はその場に倒れてしまった。
……それからどれほどの時が過ぎただろう。私は何故か意識を失わずにその場に倒れている。
家のドアが開く音。多分お父さんが帰ってきたのだ。何故か私の部屋に足音が一直線に向かってくる。
娘の部屋に勝手に入る気なのだろうか? だとしたら最悪だ。私の部屋の前で足音は止まり、扉は開く。
其処に居たのは見たこともないような色彩のボロ布を纏ったみすぼらしい老人だった。
ガイ・フォークス・デイのマスクをしているのでそれが本当に老人かどうかすら解らない。そんな雰囲気がしただけだ。
老人は私の目を取り出して妹の潰れた眼窩にはめ込んだ。
何故それが解ったのかというと老人は一個ずつ目を取り出してはめ込んだからだ。
痛みは無い。でも今にも気が狂いそうなほど怖い。それを声にすることはできないけど。
老人は次に私の頭を切り開いて、私の脳みそを取り出した。彼は母の頭も同じように切り開いてから私の脳をその中に入れた。
何故それが解ったのかというと今度は私の視界が母親のものになったからだ。
そして老人は何も言わずに部屋から出て行き、部屋には私の死体だけが残った。
967 :都市伝説と戦わないシリーズ「キ印」 [saga]:2013/02/19(火) 21:35:54.77 ID:GtzfOWjc0
前回の話は「青空の神話」ってタイトルだということで
「其処にイタクァ」にしようと思ったら友人に大爆笑されてしまいました

欲望は人を変えます
もしかしたらあの少女もあのブローチを見るまではまともな人間だったのかもしれません
しかし人智を越えた怪異の力はそんな普通の人間たちの幸せや日常をいともたやすく打ち壊していきます
この話を読み終わったら想像してみてください
これから家に帰ってくるお父さんの気持ちを
恐怖や感動は文章の中に有るのではなく読んでいる内に感じるものです
文章そのものよりも文章を読んだ後に巡らせる想像に価値があると思うのは私だけでしょうか
968 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/19(火) 21:57:26.12 ID:7kZrKzZ20
乙ですのン
前に言及してらっしゃったが、コズミックホラーらしく不気味で狂気的……
背筋がぞくぞくして逝ってしまいそうですの(
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/19(火) 22:24:38.91 ID:GtzfOWjc0
戦わないシリーズはスレ埋め立て能力無いのが辛いねえ
雑談とかもこっちで行えば良いのかしら
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/19(火) 22:36:40.95 ID:GtzfOWjc0
あとこの前避難所で話してた都市伝説スレ2.0バージョンの話をこっちでもしたいなあって
971 :俺と彼女と彼女の肢体 1/4 [saga sage]:2013/02/19(火) 22:46:54.59 ID:vAg2fzoU0
豚もおだてりゃ木に登る。八尺様俺です踏んでくださいブヒィブヒィ
というわけでおだてられた豚がもう一度投下します

・『空を眺める少女』と契約者のお話。
・何度かあった戦いの中の一幕的な
・男爆発しろ
・タイトルは誤字にあらず

それではごゆるりとお楽しみくださいませ
972 :俺と彼女と彼女の肢体 2/4 [saga sage]:2013/02/19(火) 22:47:31.80 ID:vAg2fzoU0
彼女は病院、カラオケ、ボーリングを嫌う。
彼女は喫茶店、映画館、スーパーを好む。
最近になって彼女の趣向がわかるようになってきた。
『都市伝説』である彼女は、身分証の提示を嫌うようだ。




一時間後に待ち合わせを約束し「まるで神田川みたいね」と彼女は微笑んだ。

時々彼女は、俺にはわからない比喩を出してくる。もともと彼女とは世代が違うから、仕方がないのかなとは思う。

「石鹸投げてー!」

彼女の声が銭湯に反響する。感覚的に俺が今いる場所のちょうど裏側に彼女がいることはわかっている。契約しているもの同士、銭湯程度の広さの場所で互いを見失うことはない。

彼女の声に従い放り投げた瞬間。周囲の男から明確すぎる殺意が注がれた。
気持ちは痛いほどわかる。なんせ彼女は声だけのほうがより美しく思える。

もちろん実際の外見も筆舌に尽くしがたい素晴らしいものなんだが、声だけを聞くとより想像力を刺激されるんだ。

しかもここは銭湯。女湯にいる彼女はほぼ間違いなく全裸である。こいつらはそれを想像して……いかん、今度は俺のほうが殺意に芽生えそうだ。

いくらなんでも一般人相手に喧嘩を売るわけにもいかん。まして、『空を眺める少女』の能力を使うなどもってのほかだ。

頭を冷やすために外に出て着替え、コーヒー牛乳などを飲んでいると、寝間着の浴衣に着替えた彼女が女湯から出てきた。

風呂あがりで湿気た髪をポニーテールにし、湯あたりしたのかわずかに顔が赤くなっている。

絹糸のような艶と繊細さを持つ黒髪に、雪原のように純白の肌。控えめな胸もあって日本古来の浴衣がよく似合っている。

……控えめっていっても、まあ、いわゆる着痩せするタイプってやつなのかな? 基本的に電気を消してやるからよくわからない。
973 :俺と彼女と彼女の肢体 3/4 [saga sage]:2013/02/19(火) 22:48:37.61 ID:vAg2fzoU0
「……今何か変なこと考えてたでしょ?」

ハハハ、ナンノコトナノカナ。

「ほらやっぱりごまかしてる」

「というかナチュラルに人の心を呼んでんじゃねえよ」

「三割くらい強制的に流れこんでくるんですけど。そういう状況にさせたのはどこのどなただったかしら?」

「なんだかんだでこの状況を気に入ってるのはどこのどなただったかな?」

「う……それを言われたら何も言い返せないじゃないですか……ずるいですよ、あなた」

上目遣いで拗ねたような顔で俺を見つめる彼女。

その仕草があまりにも凶悪すぎるので、俺はそっぽを向き彼女の手を掴んで銭湯を出る。

今のままじゃ、変な汗をかいてもう一度風呂に入らなきゃいけなくなる。

2012年、8月某日、7度目の引越し先である神奈川県A町にて。

俺と彼女と彼女の幸福 Fin
974 :俺と彼女と彼女の肢体 4/4 [saga sage]:2013/02/19(火) 22:50:33.31 ID:vAg2fzoU0
以上です
スレ汚し失礼しました
いい感じに当分の間のライフワークになりそうです
あと男は「30歳超えたら魔法使い云々」の都市伝説とは契約出来ませんのであしからず
近いうちにまた投下させてもらいます
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/19(火) 23:14:12.29 ID:GtzfOWjc0
ああ……心が暖かくなってくる
光があふれるほど闇が強くなる気がするので自分の作品をもっと容赦なくできるような気がしてきたよ
ありがとう、ありがとう
976 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/20(水) 00:15:02.94 ID:1Skfqt2x0
もうヤってんのか! ちくしょう誰か椿さんと疾風くん呼んでこい!
乙ですのン乙ですのン
てか冒頭wwww気持ちは分かるけど改めて言われると噴くwwwww
そうか、電気消すのか……うちの子達は電気消すどころか日の明るい内に(ry
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 02:20:59.08 ID:4gwZGN6AO
都市伝説と戦わないシリーズの人乙ですー
なにこの狂気をはらみつつも清々しい文章…脱帽です

彼と彼女の〜の人乙です
もげろとも言えんほどさわやかなカップルだなーいーなーと思ったけどやっぱりもげろ

そして神田川の例えがわかってしまう俺

978 :モデルケース :2013/02/20(水) 04:40:12.90 ID:5ouFvNKEo
「待て!どこに行く!?」

 家に響いたのは男の怒号。その大声はまるで獣の叫びとでも言わんばかりの迫力をもっていた。

「うるせぇ!離しやがれ!!」

 そんな男と対峙する男の声もまた、怒号。前者ほどの声量はないが、その声には満ちに満ちた怒りであふれている。いや、それはもはや憎悪へと昇華していると言っていいだろう。
 前者は太く大きな、しかし背の低い男。後者の男は痩せて不精なひげが顎を覆っている男だ。
 太い男は、痩せた男の腕を握っている。体格の差から考えればそこから抜け出すことなど不可能だろう。

「ぐぅっ!?」

 しかし、それは通常であればの話だ。予期できず顔でも殴られれば、そういう意識でもしていない限り手を放してしまうだろう。現に太い男はそうされることによって顔を抑え、手を放してしまった。
その隙に痩せた男は腕を抜き取り、自由を得た。痩せた男はその部屋からすぐさま立ち去り、別の部屋に向かった。
 痩せた男が入ったその部屋は雑多に荷物が置いてあり、あまり整理整頓されているとは言えない部屋だ。しかし、痩せた男は迷うことなく散らばった洗濯物の山に飛びついた。
乱雑に洗濯物を跳ね除け、その下のカバンを引っ張り出す。カバンの大きさは横に60センチほどの手提げカバンだった。なにやら札のようなものがいろいろついている。おそらく旅行用カバンだろう。
男はカバンのジッパーを開けるとひっくり返し、中の荷物を床にまき散らした。そこから40センチほどだろうか、青いケースを手に取った。

「雄二!!」

 ケースを手に取ったと同時に、太い男が部屋に駆け込んでくる。鼻血を流しているようだが、その眼光に衰えはない。痩せた男を視認するとそのまま掴み掛ろうと突進する。
雄二と呼ばれた痩せた男は振り返りざまに太い男の顔面を蹴り飛ばす。太い男は小さな悲鳴を上げ床に転がった。

「許せよ兄貴!」

 痩せた男は転がる男の脇を駆け、部屋を出た。そのまま玄関へ向かい、くたびれたスニーカーに足を突っ込み外へ飛び出した。
外は完全に日が落ち、街灯と民家の明かり以外は見えないほど闇に包まれている。痩せた男は一度立ち止まり、しばし逡巡した様子を見せたが首を被りふり闇夜に向かって走っていく。
その背後から、痩せた男を追って太い男が玄関から飛び出した。
979 :モデルケース [sage]:2013/02/20(水) 04:41:25.66 ID:5ouFvNKEo

「待て!雄二!待ってくれ!!待てぇえ!!」

 あたりに男の叫びが響き渡り、闇夜に消えていく。走り去る雄二は振り返ることすらない。街灯に照らされた後姿を、太い男は必死に追いかけようと足を動かす。

「もう!もう俺には!」

 男は歯を食いしばる。顔をくしゃくしゃにゆがめ、それでも耐えるように。しかし、それもここまでだった。

「俺を一人にしないでくれぇぇぇ!!!!」

 もはや声は裏返り、聞けば情けなさすら覚えるかもしれない。しかし、その声と態度にはプライドを捨ててまでも守りたいものがあることがうかがえる。
その太い男にとって、雄二という男を引き留めるためには恥も外聞も関係のないことだといわんばかりに。そして男は必死に手を伸ばす。
雄二に手が届けと言わんばかりに。

「一人にしないでくれぇェ!!」

 男の目から涙があふれ出る。それは街灯に照らされて、まるで光が目から零れ落ちているようだ。だが、その目から零れ落ちたのは決して涙だけではなかった。

 男はすべてを失った。

 願いが。

 言葉が。

 これまでの日々が。

 守りたかったこれからが。

 あふれ、零れ落ちた。



モデルケース『座敷ワラシ』B


980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 04:42:22.15 ID:5ouFvNKEo


「頭が痛い」
「モグモグモグモグ…ング!プハッ!どうした?病気か?それよりおかわりだ!」
「……ほんと頭が痛い」

 早朝、食卓にはマッチョと着物少女が座っていた。マッチョは頭を抱えて顔を伏せ、少女は元気に食事を食べている。食事はご飯に目玉焼き、キュウリの浅漬け、麩のお味噌汁。
それほど広くないキッチンに、朝食の香りが充満する。少女は満足そうに、しきりにうなづきながら食べている。キュウリだけですでにご飯を一杯食べている。朝食に文句はないらしい。
少女は醤油を手に取ると、箸で黄身に数ヵ所穴をあけ、そこに醤油をたらし込む。そして黄身が黒々としたころに、目玉焼きをご飯茶わんの上に乗せるとかき混ぜ始めた。
俗に言う目玉焼きご飯である。
 その様子を見ながらマッチョは深々と息を吐いた。マッチョはあまり箸が進んでいない。しかし、それも当り前だろう。いま目の前にいるのは人間ではない。
つい昨日、この家に迷い込んだ『座敷ワラシ』なのだ。
 マッチョこと睦城伊織は昨日のことを、そして今朝のことを思い出す。そして目頭をきつめに揉んだ。現実逃避である。

(しかし、俺もやさしいもんだ)

 目頭を揉みながら伊織は思う。目を覚まし、いつの間にか一緒に寝ていた座敷ワラシを無下にせず、さらには座敷ワラシの分の朝食まで用意したのだ。
用意したのは簡素な朝食ではあったが、年相応にはしゃぐ座敷ワラシを見るのは、本当の子供がはしゃいでいるようで和みはした。
 が、それは何の解決にもなっていない。

(ど〜するかな。この座敷ワラシ『様』を)

 母を殺され、弟を殺され、それもようやく落ち着いてきたころにこの座敷ワラシ騒動。それは頭痛もするだろう。とりあえず伊織には共存するという選択肢はない。
こんなオカルトに巻き込まれてプライベートが騒々しくなるのは望ましくないからである。しかし、相手は自分よりも力が強い。伊織自身は認めたくはない気持ちが強いが、事実は事実だ。
無理やり追い出すというのは不可能だろう。それ以前に、いくらオカルト的存在とはいえ、見た目は愛らしい少女である。
そんな少女を無理やり追い出すというのは気が引ける。見た目とは大事なものだとつくづく思い知った。
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 04:43:36.59 ID:5ouFvNKEo

(とりあえず、今は保留でいいだろう)

 居候とでも思えば、多少なりとも気分は晴れる。居候であれば、いつかは家から出ていく。座敷ワラシは家に来て、そして『去って』いく存在。相手は子供。飽きれば出ていくだろう。
それが現状を考えたうえで伊織が出した答えだった。あとは、考えたくもない。
 そんなことを考えながら味噌汁をすする。

「うまい」

 我ながらよくできていると自画自賛する。家族が死ぬ前から食事当番はいつも伊織だったのだ。料理は得意である。

「うまいだろう?ほら、もっと食べるといいぞ。ワシは寛大だからな。崇めていいぞ」
「……作ったのは俺なんだが」
「気にしゅるこちょはにゃいじょ」
「飲み込んでからしゃべりなさい」

 久しぶりに騒がしい朝食だった。


………………………………………………━||:

982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 04:45:09.81 ID:5ouFvNKEo
「がっこぉおおおおお!?」

 それは家を出ようとした時だった。耳をつんざくような大きな声が家中に響き渡る。その声の大きさに、伊織は大きく顔をしかめ両耳を塞いだ。
座敷ワラシは大きく口を開け目を見開き、信じられないものをみるかのように伊織を凝視する。
 そんな座敷ワラシを無視し、伊織は学校への出勤準備を再開した。

「ちょっと!えぇ!?聞こえなかった!きっと今の聞き間違い!もう一回!」
「ですから、私は学校へ出勤してきます。帰りはおそらく10時ぐらいになるでしょう。一応、昼食と夕食は冷蔵庫に入れておいたので適当に食べておいてください。
 別に家の中を壊したり荒らしたりしなければ何をしててもかまいませんので。聞こえましたか座敷ワラシ様」

 伊織は手を止めず、座敷ワラシの顔を見ず、淡々と準備をし続ける。いつも通りの動き。いつも通りの朝を務めようとする。
違いがあるとすれば、それを妨害する存在が目の前にいるということだ。
座敷ワラシは伊織が準備していたカバンをまるでスリの常習犯のような軽やかな手つきで奪い取ると、素早くそのカバンをそのまま部屋の隅に投げつける。

「あ!なにするこのクソガキ!」
「クソガキじゃない!座敷ワラシだ!」

 座敷ワラシは憤慨しているのか顔を真っ赤にして地団駄を踏んでいる。そして伊織を睨みつけ指突きつけた。

「ワシがいるのにそんなところに行く必要なんてないだろう!?そんなところに行く暇があるならワシに構え!」
「あ?」

 座敷ワラシの言葉に、伊織の心にある種の感情が満ち始める。その身勝手さに、自分の気持ちも考えぬ横暴さに。
983 :モデルケース [sage]:2013/02/20(水) 04:46:01.58 ID:5ouFvNKEo
「ワシは座敷ワラシ!家に富と福をもたらす存在!ワシがいれば働く必要もない!ゆえに、学校に行く必要なんてない!」

 ここは家族と過ごした家。これから先も、家族と過ごす予定だった家。そんな家に勝手に土足で入り込み、自分勝手な持論を並び立てる目の前のガキ。

「こう見えてもワシは強力な座敷ワラシ。力が万全であればものの数日で金持ちだ。今の状態でもひと月もあれば福を実感させてやれるぞ」
「…まれ」
「そうだ!この荷物なんて捨ててしまうか。もう学校に通う必要なんてないからなぁ」

 伊織の心に満ちたのはストレスからくる過剰なまでの怒り。満ちた怒りはあっさりと理性という防波堤を破壊し、頭のてっぺんから足の先まで行きわたる。
怒りは駆け巡った勢いそのままに伊織の体を大きく動かした。拳を固く握らせ、拳を大きく振りかぶらせる。

「黙れって!言ってんだろうがこのクソガキ!!!」
「え?」

 怒りのままに振り下ろした拳は座敷ワラシのこめかみのあたりに、鈍い音を上げて直撃した。
その手ごたえは恐ろしいほど軽く、空中に放り投げた雑誌でも殴っているかのような感覚だった。
座敷童は小さく息を吐くような悲鳴を上げて吹き飛び、壁に打ちすえられた。倒れこそしなかったもの壁に寄りかかり支えとしている。
その様子は顔を俯かせ、茫然といったまなざしで虚空を見つめている。殴られてダメージを受けた様子ではなく、殴られたのが精神的ショックとなっているらしい。
 いくらオカルト存在とはいえ、荷物のほうへ向きなおり伊織から完全に視線を外していた座敷ワラシは伊織の拳に反応することができず、直撃を受けてしまったのだ。
富をもたらし、大人など歯牙にかけぬほどの身体能力を有する座敷ワラシといえど所詮は子供ということか。
984 :モデルケース [sage]:2013/02/20(水) 04:46:46.18 ID:5ouFvNKEo
 殴り飛ばした伊織は自分の体を抱きしめ大きく数度身震いし、ゆっくりと息を吐き出した。息を吐き出し切り、数秒呼吸を停止する。
そうすることによって、怒りで乱れていた呼吸が平常に戻っていく。そして身震いする体を拘束する腕をゆっくりほどいていく。
拘束が解かれたのは、怒りがこれ以上噴出しないようにだったのだろう。自分の体を抱きしめる伊織の体は暴れる獣を抑えているかのようだった。
 拘束を解いた伊織は座敷ワラシを一瞥をくれると、部屋の隅に投げられている自分の荷物を拾い上げると、スーツについていた皺を直し、髪を整え、学校へ行く準備を整えた。
そして、再び座敷ワラシの一瞥をくわえる。座敷ワラシはすでに体勢を整え、こちらに顔を向けている。その顔は無表情にも見えるが、伊織には今にも泣くのを耐えている顔に見えた。
最近、こんな顔を見たことがある。

(だからどうした)

 伊織は心の中で一人ごちる。座敷ワラシから勢いよく視線を外し、ふすまを開け部屋を出た。冷気に満ちる廊下を渡り、足早に玄関へと向かう。
その足早な態度に廊下が軋みを上げ大きく鳴った。その軋みはまるで大声で泣く男のようで伊織は耳をふさぎそうになる。しかし、それは伊織にしか聞こえない鳴き声だった。
そんな幻聴を振り払うように足を動かし、玄関で靴を履いた。鳴き声を振り切ろうと玄関戸に手をかける。

「待って!何でもするから!」

 甲高い、まるで猫の悲鳴のような叫び。その叫びに体は小さく震え動きは止まり、振り向いてしまった。
985 :モデルケース [sage]:2013/02/20(水) 04:47:18.86 ID:5ouFvNKEo
 そこにいたのは、目に涙を溜め、それでも流さぬよう少し上向きに顔を上げた少女がいた。座敷ワラシだというのはわかる。
しかし、そこには今まで発していたような大仰な態度も偉そうな雰囲気も、ましてや楽しげな少女の顔すらない。
今あるのは必至に、何かを守ろうとして縋り付こうとしているあられな少女の姿だった。オカルトではない、少女の波だった。
 少女は膝をつく。許しを請うように。少女はこうべを下げる。自分の顔を見られぬように。

「お願いだから……。一人にしないで」

 泣き声すら押し殺した、小さな声で語られた切実な願い。もし、今もなお怒りに身を任せていたとしても心に届きうる真摯な態度。心の底から語られた座敷ワラシの言葉。
そのすべてが、ダブらせる。ダブるからこそ、正面から受け止められない。座敷ワラシが顔を上げる。そこにあったのは涙が流れる顔。
 伊織はすべてを振り切って、まるで逃げるように外へ飛び出した。戸に鍵をかけることも、まして戸を閉めることすらなく、逃げ出したのだ。
太く、小さい体をみじめに動かし、少女の願いから目をそむけた。思い出させるなとでもいうように。
 座敷ワラシが見た顔は、下唇をかみしめ、目じりが下がり、泣きそうになりながらも、それでも耐えようとする男の顔だった。



睦城伊織……彼女募集中
座敷ワラシ……おまんじゅう募集中
986 :モデルケース [sage]:2013/02/20(水) 04:49:39.02 ID:5ouFvNKEo
以上

半年以上たってしまった
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 08:06:21.11 ID:btxj8CP90
おつでした
それぞれに重たい事情があるみたいじゃねえ
どうなるんだ?どうなるんだ?
って続きが気になる展開でございました
続き楽しみにしております
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 21:46:59.68 ID:rO+gaV9DO
今日は人いないねえ
989 :都市伝説と戦わないシリーズ第三話「The sun against my will」 [saga]:2013/02/20(水) 22:18:20.82 ID:ufTDUwHm0
「皆さんおはようございます、今日は一学期最終日です」

夏休みの前日の暑い暑い朝。僕達は校庭に集められて校長先生の話を聞かされる。
校長先生の話は長い。聞いている途中で女の先生が貧血を起こしたこともある。
僕が思うに校長先生は悪い人ではないし僕達に迷惑をかけようとも思っていない。
だが校長先生は自分が偉くないと気が済まない人なのだ。
長々していて説教臭い挨拶をかますことが偉いと勘違いしているのだ。
そうやって内心彼を馬鹿にしながらじっと耐えている間も太陽は僕達の背中を静かに焼き続ける。
それにしても今日は少し暑すぎる。
今すぐにでも服を脱ぎ捨ててしまいたいがそれをするには服の枚数が足りない。
呼吸が次第に荒くなっていく。
視界がやけに明るい。違う、単に白く染まっていっているだけだ。
頭がピリピリ痒くなってきた。
校長先生の話の内容は意味が解らない。僕には理解できない難しい単語をさっきからしきりに繰り返していた。
外国の言葉なのか一々発音が変な感じで聞いているだけで胃の中身がせりあがってきそうな感じがする。
僕は耐え切れずに皆に笑われることを覚悟で保健室へと連れて行ってもらうことにした。
担任の先生のほうを向いて手をあげようとする。
……しかし、手が動かない。
周りを見回してみると何かがおかしい。
皆が皆、普段ならば退屈そうな顔をしているのに今日に限って校長先生の方をまっすぐ眺めている。
校長先生は目を爛々と輝かせて天を仰ぎ、もはや言葉にもならない言葉で泥の中でのたうち回る蜈蚣が立てる音のような声をあげている。
頭がガンガンしてきて、痛い。同時に表面もビリビリと痺れてきた。
内側と外側から僕の頭が壊されていく。
唯一自由の効く首で僕は真上を見上げる。
僕は気づいてしまった。
太陽が校舎のすぐ側まで近づいている。
あまりの眩しさに僕は目を閉じて下を向く。一体何なんだあれは。そんな馬鹿な、嘘だ。
僕は先程あれを太陽と言った。だがあれは太陽じゃあない。
あんなものが、あんなグロテスクなものが太陽であって溜まるか。
あれは炎、いいや、幾つもの高熱と光を帯びた触手が互いに絡み合い締め付け合い蠢いていたのだ。
そしてそれら触手の中央には、あの中央から、あの眼が!眼が僕を見ていた!
黒目と白目の逆転した意思を感じさせない瞳が間違い無く僕だけを見ていたんだ!
でももう僕は逃げられない。足が動かない。何処かから硫黄臭が漂ってくる。
これはどこかからじゃない。僕には場所が解ってる。
肌が沸々と泡立ち、異様な臭気を発している。
閉じていた瞼はくっついて、僕に目を開けることさえ許さない。
燃えている。僕の髪が、僕の周りの人が、煙を上げて燃え上がっている。
校長の笑い声がほんの僅かに聞こえる。
死にたくない。助けて、誰か助けてくれ。わずかに開いた口から喉へ炎が滑り込んでくる。
痛い熱い痛い臭い熱いいたいあつクサいイタイアツイ痛い朝ツア血あたう地厚痛いああああああああああああああ!!!!!
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 22:26:49.27 ID:ufTDUwHm0
戦わないシリーズはワンスプーン料理みたいなものです

とまあそれはさておき誰も居ないなら一人で書きまくって皆の為に時間を稼げばいいじゃない
そんなことを思う俺なのでした

今回はもうちょっと太陽がジリジリ迫ってきてそのまま焼きつくすみたいなビジュアルを重要にしたかったなあ
あと被害者を肉体的に傷めつけるのはどうもホラーらしくない気がして辛い
ホラーたるものなんていうかこう精神的に殺していかないと間違ってる気がする
でもそう考えるのも了見が狭い気がしてあふぅ
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 22:34:51.31 ID:ufTDUwHm0
ところで避難所チラ裏の>>538さんも仰ってるんですけどシェアワって長く続けば続くほど新しい人が書きにくいじゃあないですか
シェアワにとって一番重要なことってとっつきやすさだと思うんですよ
インスマスを覆う影とか壁の中のネズミとか悪霊の家とかは知らなくてもニャルとかハスターとかクトゥルフとかSAN値とか知ってるじゃないですか
よく解んないけどとりあえず知ってる、だから書ける
みたいな感じって重要だと思うんですよ
組織とかぶっちゃけもう上のナンバー皆取っちゃったから使いづらかったりとかするし
先にでかい組織が有ると入っていって書くのにも遠慮しちゃうし
あと人の作った組織の設定に乗るのって勇気が要りますしね


でも設定消しちゃうのも辛いよね
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 23:58:51.69 ID:4gwZGN6AO
必ずしも学校町や組織を使う必要はないし、わざわざ消さなくてもいいと思うの。
設定刷新した新スレとこっちと両方あってもいいんじゃないかな。投下ペースは落ちそうだけど。
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 00:14:17.06 ID:sfne2yqyo
避難所の>>538さんも学校町に代わる舞台と組織以外の複数の作者が絡める大組織をどっかにつくれば
同じ世界の中の別の地域の話ということで万事解決する気もする

って書いてるし、世界規模の組織が一つだけしかないわけじゃない
同じように魑魅魍魎が跋扈してる町が学校町だけなわけじゃない(いろんな作者さんがいくつか町や組織出してますし)
作者全員が協力して一つの町つくって第二の学校町にすればいいんじゃない?
994 :シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2013/02/21(木) 00:23:26.35 ID:1pSpG3P00
新スレ

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1361373676/

すまん、私はくたばる
埋め作業は任せた
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 08:15:55.49 ID:OLWi5AjDO
新スレ乙
埋め立てはどうやろう
996 :都市伝説を〆るために世界と再契約したのが、この俺だ!! [sage]:2013/02/21(木) 23:25:46.69 ID:1itFk9+X0
伝言のために来たため、各作品へのレスが出来ないことを許して頂きたい
久々に長編が投下されたと聞き、頭に血が昇っていたというのに申し訳ない
色々あって立て込んでいたのだが、シャドーマンの契約者の人に伝言がある

これまでの設定(学校町ルール)をぶん投げて
世界観と各種設定を大幅リニューアルした舞台で
黄昏雪奈と愉快な仲間たちのお試し単発を書かせて頂きます

ところが案はまだ出ていないため
ひとまずシャドーマンの契約者の人に上記の確認のみ行いたい

そして重大な問題がある
ネットワークのハードウェアが検出されないと称して
ネットに繋がらないし、ネット上のトラブルシュートは試したし、ルータはもう何度オンオフしたか知れないし
私はどうすれば良いのでしょうか、シャドーマンの契約者の人
とりあえず、追い鰹を持って屋上からダイブすればいいのでしょうか
しかし、私は現在キッコーマンしか持っていません
997 :都市伝説を〆るために世界と再契約したのが、この俺だ!! [sage]:2013/02/21(木) 23:29:41.31 ID:1itFk9+X0
急いで付け加えなければならないのは
肝心のテキストデータが入ったUSBメモリが
数日前から行方不明になってしまっている件である
誰か見かけたら教えて

ひとまずジャスコ行ってきてから考えりゅ
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 23:31:45.33 ID:sfne2yqyo
スレ自体が絶頂期を過ぎて衰退してるのは感じてたが
そうか、ついに〆ようという流れも現実化してきたか
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/21(木) 23:31:57.46 ID:oIjCy0LO0
最後の最後でキタ━(゚∀゚)━!
カゲオの人じゃあないけど作品tな惜しみに待ってます
自分の方は2.0世界に合わせる為に色々やってく予定でござい
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/21(木) 23:33:00.27 ID:oIjCy0LO0
>>998
リニューアル!リニューアルオープンです!
今までの設定積り過ぎて逆に書きづらいだけなんです!
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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暇アド @ 2013/02/21(木) 23:32:17.51 ID:MTGR3Dh/0
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VIPでELSWORDやろうずwwwwwwwwwww @ 2013/02/21(木) 23:29:08.76 ID:H2HkzfMXo
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貴音「ふふ、765プロの皆はSSでも可愛いですね」 @ 2013/02/21(木) 23:01:24.13 ID:UlQR4FqV0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1361455283/

久「はやり〜ん」菫「ほぅ…」美穂子「上埜さん!?」 @ 2013/02/21(木) 22:41:17.58 ID:320f1yoV0
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XbxYTYtIVF @ 2013/02/21(木) 22:35:05.16 ID:T8pj9FpA0
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MMInAeEKarXqprskUFK @ 2013/02/21(木) 22:34:20.43 ID:DOlSQ+Yk0
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うちはサスケ「問おう…お前が俺のマスターか?」 @ 2013/02/21(木) 22:07:46.94 ID:IqeM/6zL0
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