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ハクオロ「うたわれるゴロー!」 エルルゥ「Season2!」 -
SS速報VIP 過去ログ倉庫
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1 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/10/18(木) 22:46:13.91 ID:X6RlITkSO
このSSは、うたわれるもの世界を『イノガシラ ゴロー』が暗躍(?)するお話です!
前スレ→ うたわれるゴロー 〜孤独な男のグルメ旅〜
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1340979909/
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1350567973
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
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]: ID:???
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】
ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。
「ただのクマです、通して下さい」デスガイド「よし通れ」 @ 2025/07/01(火) 01:46:57.85 ID:AZqAU1up0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1751302017/
速水奏「プロデューサーさんにスカウトされた話」 @ 2025/06/30(月) 23:35:01.77 ID:EyxvIr6M0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1751294101/
invest in reverberations dull fallout hoopla @ 2025/06/29(日) 12:49:23.56 ID:fSRAeK0bo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1751168963/
テスト @ 2025/06/29(日) 01:16:24.52 ID:VUhgeNEw0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1751127384/
おトイレ @ 2025/06/29(日) 01:03:06.12 ID:YzFWZ2ToO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1751126586/
【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part7 @ 2025/06/28(土) 18:43:24.71 ID:5y5+uScJ0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1751103804/
頼む! @ 2025/06/28(土) 02:14:21.86 ID:wTso3bhIO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1751044461/
頼む!見逃してくれ! @ 2025/06/28(土) 02:12:47.45 ID:t/vvooNwo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1751044367/
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/10/18(木) 22:49:15.55 ID:aeqoxqjE0
スレ立て乙
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/18(木) 23:13:22.94 ID:X6RlITkSO
※以下ネタバレ注意!
〜 登場人物達 〜
●ハクオロ(うたわれるもの)
『うたわれるもの』主人公。白い仮面がトレードマーク。
記憶喪失の名無し→村長→國に叛する軍の指揮官→皇(オゥルォ)となった。
皇様なのに害獣駆除をしたり、指揮官なのに前線で戦ったりする。
オマケコーナー「うたわれるものらじお SS速報VIP」の司会進行役。
以下は呼ばれ方。
「聖上」「ハクオロさん」「あるじ様」「ハクオロさま」「総大将」「兄者」「おと〜さん」
●エルルゥ(うたわれるもの)
記憶喪失のハクオロを救い、治療した村の薬師。
うたわれるもののメインヒロイン。
ゴローとの関わりにより、新しい料理と関節技を覚えた。
ハクオロと同じく、オマケコーナーの司会進行。
●アルルゥ(うたわれるもの)
エルルゥの妹。動物と意志疎通が出来るという力を持つ。
ムックル(デカイ白虎)・ガチャタラ(リスのような生き物)といっしょにいる。
姉を差し置いてファンディスクになったコでもある。
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/18(木) 23:29:47.43 ID:X6RlITkSO
●オボロ(うたわれるもの)
しなやかに痩せた身体を持つ、双刀使い。
ハクオロに何かあった場合、皇になるのはこの男。
妹のユズハの為なら、なんでもやっちゃうお兄ちゃん。
歩兵衆の大将なので、一応侍大将である。
かませ、オボロボロボロとアニメでは不遇だが…原作ゲームではかなり強い。
このSSではゴローの事も慕っており、「大兄者」と呼ぶ。
●ドリィ・グラァ(うたわれるもの)
オボロの側付の双子。『男』です。
弓の名手で、二人とも弓衆の蒼組・朱組の長。
諜報活動にも長けており、ゴローはこの二人から情報を仕入れたりします。
●ユズハ(うたわれるもの)
オボロの妹。病に侵されており、目が見えない。
病の発作を抑えるのに、『紫琥珀』という高価な品を使わなければならない。
ゴローが紫琥珀の拳大の塊を見つけた為、オボロ組と繋がりが出来た。
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/18(木) 23:51:33.93 ID:X6RlITkSO
●ベナウィ(うたわれるもの)
トゥスクル騎兵衆隊長兼侍大将。美男。
三國に名を轟かす槍の使い手でありながら、文書の処理もする。
仕事を抜け出すハクオロやゴローを取っ捕まえるのも彼の役目。
相棒のウマ(ウォプタルという、恐竜のこと)は「シシェ」。
敵だった時にゴローと食べ物で意気投合した事もある。
●クロウ(うたわれるもの)
トゥスクル騎兵衆副長。筋肉質のナイスガイ。
刀を振り回し、戦場を駆ける武士ってやつである。
さりげなく繁華街の美人にフラグを建てるなど、いい仕事する男だ。
声優さんの影響で、下ネタ多めとなっている……
●カルラ(うたわれるもの)
優れた肉体を有する、『ギリヤギナ族』の女。
力はトゥスクル一行で最強、酒も一番大量に飲む。
ゴローとは、似た者同士なので仲が悪い?
本名はカルラゥアツゥレイ。滅んだ大國『ラルマニオヌ』の皇女。
弟が一人おり、そっちはそっちでオボロ級の……
アルルゥを可愛がったり、トウカをいじるのが好き。
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/19(金) 00:14:26.91 ID:MU9N996SO
●トウカ(うたわれるもの)
通称、うっかり侍。SSではそれほどじゃないが。
エヴェンクルガという、優れた戦技を持つ一族の女。
放浪の旅の途中にゴローに出会い、ゴローの昼飯を全て食べた事がある。よく生きてたもんだ……
可愛いものが大好きで、アルルゥにべた惚れ。
武士のような言葉使いが、いいよね!
●ウルトリィ(うたわれるもの)
宗教國『オンカミヤムカイ』第一皇女。
巫(カムナギ)という、自然の神と接触する力を持つ。
…なのに、ハクオロ達の國『トゥスクル』の國師(ヨモル)←國の監視や外交をする。
いろいろ、ハクオロについて隠している事が多い。
真実への導き手とも言えよう。
他者に依存する傾向が強い。(母性本能が強すぎる)
優しく、気がきくいい女性です。
翼を持つ種族で、色は白。
●カミュ(うたわれるもの)
オンカミヤムカイ第二皇女。でも、やんちゃな女の子。
翼は黒曜石のように黒い。これが原因で独りぼっちだった。
トゥスクルに来てからは、友達も出来たし、ハクオロ・ゴローと接触した為に成長。
原作と違い、オンカミヤムカイの皇『賢大僧正(オルヤンクル)』になっている。
禍日神(ヌグィソムカミ)という、黒い変わったモノと接触出来る。
野球が好き(カミュの内にある存在の影響を受けているせい)
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/19(金) 00:44:53.58 ID:MU9N996SO
●イノガシラ ゴロー(孤独のグルメ)
このSSの主人公。ハクオロも主人公です。
ハクオロがヤマユラに来て少し経ってから、森で見つかった中年男。
身体の痛みではなく、腹が減って意識を取り戻した。
記憶喪失の男(名前は覚えてた)→旅人(薬師)→トゥスクル皇の補佐→卵かけモロロを作る→
焼肉を提案→牧場経営→焼肉屋経営→シケリペチム皇候補→クンネカムンの客人
……と様々な経歴を持つ。
ゴローの提案により、「卵かけモロロ」「焼肉」「マヨネーズ」「寄せ鍋」等が出来上がる。
正体は前スレで明かされている。
●ムツミ(うたわれるもの)
カミュの内に存在する、『最初のヒト』。
魂の転生を繰り返し、『ウィツァルネミテア』と共にある事を目的とする。
ゴローにとって、友から預かった娘のような存在。
この娘は存在そのものが「うたわれるもの」のネタバレ。
8 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/10/19(金) 00:46:29.81 ID:MU9N996SO
とりあえず、今はこの簡単な人物紹介で終わりとします。
では、土曜のオマケで会いましょう。
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/19(金) 03:03:15.44 ID:GvGhkVaeo
今のゴローって背中から翼生やせるのか
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/19(金) 09:29:40.15 ID:hY9DDzfSO
乙
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2012/10/19(金) 20:12:04.55 ID:4BMgf6ZJo
乙
12 :
◆M6R0eWkIpk
[sage saga]:2012/10/20(土) 21:01:48.49 ID:P3LqnmdSO
エルルゥ・ハクオロ「「うたわれるものらじお(以下略)!!」」
エルルゥ「皆さんこんばんは。司会のエルルゥです♪」
ハクオロ「同じく司会のハクオロだ」
エルルゥ「ハクオロさん、ハクオロさん! 遂にSSも佳境に突入です!」
ハクオロ「うむ。『うたわれるもの』の背景や、
ゴローさんの秘密など大半の事柄は既に判明したな」
エルルゥ「ようやくクロスSSっぽくなってきましたね」
ハクオロ「二十話以降の『クンネカムン編』から、
オリジナル要素が組み込まれた影響もある」
ハクオロ「今回はそんなオリジナル要素について解説しよう」
エルルゥ「でも、最初はキャラクター紹介から入りますよ〜」
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/20(土) 21:06:45.41 ID:P3LqnmdSO
※今回のオマケは「うたわれ」のネタバレ要素をたっぷり入れております。
《キャラクター紹介》
●ゴロー(孤独のグルメ)
ようやく紹介された『もう一人の主人公』(ハクオロとのW主人公)。
正確に言うと本来の『井之頭五郎』ではなく、
ウィツァルネミテアによって存在を変えられた『偽り』の身。
元々は地下に居た旧人類の研究者であり、主に食品関係の事を研究。
趣味は紙・データを問わない書物・マンガ集め。
昔(読者にとっては今)の食べ物に思いを馳せる、変わり者。
ハクオロ「過去編に入ってからだが、元の名前が出る」
「名が判れば、どうして彼が『ゴロー』なのか納得して頂けると思う」
(※ヒント・二期放送開始! バレバレです)
エルルゥ「クロスSSの筈が、妙に造り込んでます」
ハクオロ「うたわれ世界に合わせた設定となっているだけですのでご安心を」
エルルゥ「井之頭五郎さんを再構成したような存在とお考え下さい」
※仮面ライダーディケ○ドみたいな感じです。
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/20(土) 21:10:29.96 ID:P3LqnmdSO
ハクオロ「設定の話だが……」
考古学者の知識+ゴローの知識+アイスマン時の学習→ハクオロ。
ハクオロ「私が様々な事柄を知っていた理由になっている」
エルルゥ「ハクオロさんを……おぎなうもの?」
ハクオロ「そうだ。ゴローさんは私を補う存在として考えられている」
「分身の憑代だったというのも、最初からのアイデアだ」
エルルゥ「ええっと…質問が入りました。『ゴローさんは翼が生えますか?』」
ハクオロ「翼は……無理だろう。ゴローさんはオンカミヤリューではないからな」
エルルゥ「分身さんはいつもの『すーつ』姿に取り憑いたんです」
ハクオロ「ちなみに、これが現在のゴローさんの状態だ」バーン
●ゴロー(分身と融合済み。人の姿)
能力……『腹減り』・『食事』(ゴロー固有能力)
『報復の技』・『弓・近接回避』(気力が高い程発動)
『起死回生』・『術法無効』(融合により得た能力)
『自然治癒』(自分の記憶を思いだし、目覚めた能力)
その他戦闘時以外の能力……
『オンヴィタイカヤン』:シャクコポル族との交渉・説得成功率が高くなる。
『行動操作』:ウィツァルネミテアの言葉による、動きの停止。
『変身不可』:何故かはわからないが、分身体になれない。
ステータス:Lv 30 HP 560
攻撃力 56 防御力 56 術防御 5
※腹減り発動時、攻防は最大二倍になるのでかなり強い。
しかし、ステータスの最大が99なのでそこで頭打ち。
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/20(土) 21:15:18.39 ID:P3LqnmdSO
●朱黒のアヴ・カムゥ(アベル・カムル)
ゴローが乗りこなす、試作機体。
試作機だから、旧人類が乗りこなせる。
(量産機はシャクコポル族しか動かせません)
腕甲と脚甲だけ朱色、他は黒色。ツノは無い。
装甲も量産機に比べると薄く、出力も弱い。
ただし、リミッターを乗り手が自由に外せる(実験に使ったりする為)。
SS本編でクンネカムンからトゥスクルまで尋常じゃない速さで着いた理由がこのリミッター解除です。
……ある程度強い体じゃないと、死んでいます。
ハクオロ「名前は『QT』」
エルルゥ「名前があったんですか!」
ハクオロ「これは孤独のグルメの作者達の頭文字から取っているそうだよ」
エルルゥ「
>>1
は非常に名を大切にする人です」
「漢字表記で『五郎』じゃなく『ゴロー』にしたのも……」
ハクオロ「本物とは少し変わった存在である事を意味していたんだ」
「おっと、話が逸れた。アヴ・カムゥの話に戻ろう」
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/20(土) 21:22:13.23 ID:P3LqnmdSO
エルルゥ「アニメでは、契約するとアヴ・カムゥの筋肉が増強してましたね」
ハクオロ「あれを、『アヴ・カムゥ』自体に備わった機能と解釈したが…」
※私の独自解釈です。違うのかも……
ウィツさんは乗り手の脳を狂わせると同時に、制御を解除しただけかなと。
原作の『仮面の複製』も旧人類の遺物を流用しただけみたいですし。
ハクオロ「あとSS内で描写していないが……
全てのアヴ・カムゥに、空気清浄・除菌装置を付けている」
※ヒエンがサハラン島に長く居れたのも、これのおかげ。
ハクオロ「ゴローさんのアヴ・カムゥの除菌装置は、とある理由で壊れている」
エルルゥ「過去編をお待ち下さい」ペコリ
追加、種族ごとの肉体の強靭さ(SS内での独自設定注意)
ギリヤギナ>(大きな壁)>エヴェンクルガ>その他種族>オンカミヤリュー
>シャクコポル=古代人類(考古学者時代)>>(壁)>>地下人類
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/20(土) 21:25:14.66 ID:P3LqnmdSO
●兎耳ちゃん
前に書いたように、イメージはシャー○ー+サクヤ(になってしまっていた)
メインヒロインではなく、ちょっと大切なモブです。
ハクオロ→エルルゥ(???)なら、ゴロー→病で亡くなった娘(兎耳)。
ハクオロ「魂の輪廻をゴローさん側で描いたキャラクターだ」
エルルゥ「ゴローさんの日記にある、亡くなった女の子」
「彼女の生まれ変わりかな?」
ハクオロ「ユズハの病と同じと考えたらしい」
※だから、ユズハを初めて見た時に泣いたんです。
●ヒエン
少し(?)キャラが変わった男。
原作やアニメで描かれなかったサクヤとの関係を掘り下げたら……
ハクオロ「オボロ二号になりました」
エルルゥ「ふふっ! 変にツボに入る名前っ……」
ハクオロ「八時ちょうどの〜。オボロ二号ぉでぇ〜〜♪」
エルルゥ「も、だ、だめ! お腹痛い」アハハハハッ!
※
>>1
の願望が入ってます。
ゲンジマルとは判り合えなくても…サクヤとなら……
なんて考えたんですが……如何でしたか?
『火を怨むでヒエン』は独自のものです。原作等ではありませんので注意。
あんな可愛い妹がいるのに、原作・アニメのスルーは酷いよ!
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/20(土) 21:28:02.28 ID:P3LqnmdSO
●クーヤ
裏切られ、最初は激情のままに動いたが……
ゲンジマルもサクヤも居ない中、自分の本当の思いに気がつく。
ハクオロに敗北して、皇という立場に捕われなくなったら精神的に強さを増した。
ハクオロ「
>>1
は叩いたら伸びるコとして見ていたそうだ」
エルルゥ「よく言いますよね。
シュウマイ回はクーヤさんの涙目が見たかったから書いたのに」
※ ……クーヤファンの方、本当にごめんなさい。
好きな子は苛めたくなるんです、ごめんなさい……
(サクヤも同様だったりします)
●ハウエンクア
アニメ通り、空蝉に殴られて死ぬ方向の予定が……
ハクオロ「……特撮熱にやられて、開陽殿の中だけじゃ戦いが収まらなく……」
「その為、ゲンジマルの噛ませになってしまったとさ」
エルルゥ「ウィツァルネミテア決戦、空蝉VS分身はそのせいですか?」
ハクオロ「いや、最初から26話でぶつけようとは構想していたらしい」
※本当は、都の被害も軽かったはずでした。
弐神の激突により、アニメ・原作より被害人数自体は軽微になっています。
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/20(土) 21:30:46.01 ID:P3LqnmdSO
●ゲンジマル
本来ならディーに挑み、肉片になって死亡。クーヤが退行する要因になるけど…
ハクオロ「散り様だけは変更。ディーに挑もうとはするが……」
エルルゥ「どうしてこうなったのかは、ディーさん(黒ウィツ)で解説します」
●ワーベ
原作以上に茶目っ気たっぷりになりました。
ハクオロとゴローの関係を知る、数少ない人です。
ハクオロ「ここでは簡単に前大戦について説明しようか」
《 前大戦について 》
裏で糸を引いていた空蝉と分身の代理戦争。
分身サイド…『大國、ラルマニオヌ』
参戦者…ギリヤギナ皇(カルラ父)・ゲンジマル
空蝉サイド…『連合軍』
オンカミヤムカイ・ケナシコウルペ等
参戦者…ワーベ・ケナシコウルペ皇(オボロ祖父)・トゥスクル
エルルゥ「『うたわれるもの/Zero』です」
ハクオロ「戦いはラルマニオヌ側の勝利で終わる」
エルルゥ「この戦で疲弊したケナシコウルペは、インカラに下剋上されてしまいます」
※ PS2の攻略本にそうあるらしい。
持っていないので…間違ってたら修正をお願いします。
※ 大戦が起こったのは本編開始の20〜40年前?
(新人類の寿命がわからない為、推測)
ラルマニオヌはその後、アヴ・カムゥとゲンジマルを率いたクーヤの親に潰されます。
本編中でクーヤが、「建國から十数年…」と言っているので、
クンネカムンはまだまだ若い國なんです。
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/20(土) 21:34:30.14 ID:P3LqnmdSO
●ディー(ウィツァルネミテア分身)
ハクオロ「私の半身、分身だ」
エルルゥ「アニメとこのSSでの違いは……憑代にゴローさんを使っていたこと」
※憑代に意識がある場合、そっちをベースに動いちゃうのがウィツ。
考古学者に憑いた時もそうです。記憶のあるなしは関係なさそう。
(アニメ最終回の空蝉の様子から推測)
ハクオロ「ゴローさんに憑いた為、食べ物を楽しんだり……」
「ジェットボックスを作ったり、少し気弱だったり……」
エルルゥ「人間くさくなっちゃいましたにゃん♪」
※エルルゥの『にゃん』、本家らじおで声優の柚木さんがたま〜に言うのです。
他の例、ハクオロ→「うわぁい」(小山力也さんの口癖)
ハクオロ「ディーの中の『分身』は……」
※アイスマンから分離したものなので、
ウィツァルネミテア寄りではなく、ハクオロの負の感情寄りと考えて描写。
ゲームでエルルゥに対し、『ミコト』と口走りますし……
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/20(土) 21:43:40.28 ID:P3LqnmdSO
●ムツミ(カミュ)
ハクオロ・エルルゥが主人公ペアなら、
ゴロー・ムツミがもう一組のペア。
つまり…
ハクオロ「このSSのメインヒロインはムツミです」
※ムツミって、いいキャラなのに勿体無い!
などと思ったら、SS書いてました。
メインといっても、別にゴローとくっついたりはしません。
ハクオロ「……ムツミの愛情は父のみに向く……」
エルルゥ「ゴローさん、本当に大丈夫ですかね……」
ハクオロ(……じ、実は……最初の封印前に、一度だけ……)
〜〜〜〜〜〜
『お父様……』
「もがっ! もごごご……」
『さぁ、一緒になろう……』
「ア――――ッ!!」
(自主規制)
〜〜〜〜〜〜
ハクオロ「い、言えん……」
※……これは只の妄想。でも、ムツミならやってそう。
※ゴローは『娘』みたいに思っています。
二人の付き合いは長く、ディーやハクオロ以上に親子っぽい。
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/20(土) 21:46:07.53 ID:P3LqnmdSO
ハクオロ「人物紹介はこんなところか」
エルルゥ「次は……『箱庭』について解説します」
●箱庭(オリジナル要素)
分身がゴローの願いを叶える為に造り出した町。
他の國や町と異なり、食文化が異常に発達している。
この町の中央部には『食堂街』がおかれており、
旧文明の食べ物を再現した食事処が多く営業している。
※ただし、材料が手に入るもののみ再現した。
まだ発展途上なものが多く、ゴローが色々試食して味を改良します。
ハクオロ「町で生活する人達は、畑・狩り・漁・採集で糧を得ている」
エルルゥ「でも……町くらいに大きいとそれだけじゃ……」
ハクオロ「? 勘違いしてないか? 町の人達は自由に行き来出来るぞ」
エルルゥ「え……ええええっ!?」
ハクオロ「裏設定だが……」
※デグカパやツーヌ、モンホ(火を噴く筒)を開発したのはこの町と考えています。
少しは外部との交流もあり、
クーヤの親・カルラの父は存在を知っています。
ハクオロ「SS本編では、クーヤは入れないと言っていたが
そんな事はない。行けば洞窟に気が付くらしい」
エルルゥ「侵入者を迷わす結界の他、森の動物が怪しい者を排除するようです」
ハクオロ「更に詳しい事はこれからの話で描写されるぞ」
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/20(土) 21:49:28.13 ID:P3LqnmdSO
《更に細かい設定》
うたわれ世界の町は、大半が和風木造建築です。(二階建ての建物もある)
この箱庭も例外ではありません。少し違うのは……
●道路…皇都であっても地面むき出しだが、箱庭中央は石を敷き詰めている。
※力自慢の種族が岩を切り出し、手先の器用な種族が加工。
●服装…他の所は和服っぽいもののみ。
箱庭では、少し変わった服がある。洋服に近い品も。
●時計台がある。重りによるカラクリ時計。
●シャクコポル族は手先が器用。
●分業がされている所為か、部族・種族間のいざこざはない。
●信仰は自由。ウィツでもオンヴィでもお好きに。
●若い頃のゲンジマルがここに来たのは放浪の旅をしている時。
動物と死闘を繰り広げ、傷だらけになりながらも町に入ってきてしまった。
★住民達は昔ゴローと共にいた『マルタ』の子孫。
でもそれだけではなく、ゴローが起きている時にはスカウトもしていた。
(別の集落からも人を集めていた←27話に関係)
ハクオロ「料理を作る為に必要なのは、知識と腕」
エルルゥ「ゴローさんだけじゃ地上の植物を全て調べられません」
ハクオロ「箱庭でゴローさんを手助けした『頭脳』が……」
エルルゥ「前の村長さんらしいです」
※料理を作るのはゲンジマル嫁と現村長が協力していた。
ハクオロ「あとは27話を楽しみにしてくれ」
BGM:まどろみの輪廻
ハクオロ「終わりの時間が近付いてきたか」
エルルゥ「このおまけコーナーも次回が最終回です」
ハクオロ「SS本編終了後にやる予定だ」
エルルゥ「ゲストは来るんでしょうかね?」
ハクオロ「来そうだな……」
続く!
24 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/10/20(土) 21:51:22.18 ID:P3LqnmdSO
明日か月曜の夜に、二十七話を投下予定。
では、失礼します。
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)
[sage]:2012/10/20(土) 22:20:10.88 ID:/moqLvyxo
乙
まだまだ続くのか……楽しみで堪らん
26 :
◆M6R0eWkIpk
[saga sage]:2012/10/21(日) 22:13:20.07 ID:3mPNrYjSO
第二十七話「クンネカムン・箱庭のタコ焼きと豆かんてん」
〜 トゥスクル皇城・寝室 〜
生と死を繰り返す輪廻の部屋……寝室。
夜の闇に包まれた部屋で皇(オゥルォ)は独り、酒をあおっていた。
ハクオロ「…………ふぅ」トクトク… グイッ
「……こんなに静かだったのだな」
今、皇の寝室に彼以外誰もいない。
いつもならば必ず誰かがやってきて……
共に盃を交わしたり、就寝前に仕事を持ってきたり……
そんな慌ただしい日常だったのに――
ハクオロ「あの者達が居ないと、これ程寂しいものだったのか……」
トン トン トン…
発光石の灯りが階段から室内の暗闇を照す。
エルルゥ「ハクオロさん、怪我の具合を見に来ました」
ハクオロ「エルルゥ……」
重い空白が二人を支配する。
耐えきれなくなったエルルゥが、口を開いた。
エルルゥ「……サクヤさんとヒエンさんには、伝えておきました」
ハクオロ「……………………そうか」
伝えられたのはサクヤ達の祖父、ゲンジマルの死。武人として生きた漢の最期。
エルルゥ「明日、クンネカムンに出発するそうです……」
ハクオロ「……護衛の隊をつけてやれ。我々は、アルルゥ達を探す」
エルルゥ「ま、待って下さい! 何か心当たりがあるんですか?」
ハクオロ「…………『箱庭』だ」
エルルゥ「箱庭?」
ハクオロ「ゴローさんとあの『ムツミ』と呼ばれていた娘が話していた」
「他の者は『箱庭』に置いてきたと」
ハクオロ「其処に、向かう」
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/21(日) 22:17:41.06 ID:3mPNrYjSO
エルルゥ「それで、その場所は何処にあるんですか!?」
ハクオロ「…………」
エルルゥ「ハ、ハクオロさ――
ハクオロ「――判らないんだっ!!」ダンッ
ガチャン!!
机上の徳利や、猪口が鈍い音を立てて砕ける。
ハクオロ「……すまない。何を焦っているんだ、私は……」
珍しく、自らの憤りを表すハクオロ。
エルルゥ「……無理しないで下さい」
ハクオロ「私だけではなく、君も辛い事は判っているのに」
エルルゥ「…………箱庭」
ハクオロ「私はその箱庭を、如何なる方法を用いてでも探す」
「どれだけ時間がかかろうが――」
少女を安心させるよう、微笑みながら言葉を選ぶ。
しかし、エルルゥはこれまでの塞ぎこんだ表情から一変して……
エルルゥ「あ! サクヤさんですっ!!」
ハクオロ「サクヤ? いや、ここには私達しか
エルルゥ「ゴローさんが言ってました! サクヤさんは箱庭に行った事があるって!!」
ハクオロ「! 本当かっ!!」
エルルゥ「ゲンジマルさんが亡くなる間際、確かにそう言ってました!」
ハクオロ「サクヤはまだ起きているか!」
エルルゥ「すぐ部屋に行きましょう!」
タッ タッ タッ タッ…
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/21(日) 22:22:52.81 ID:3mPNrYjSO
――――
二人が『箱庭』へ旅立つ事を決めてから四日後……
クンネカムンの國境近くの道を、一台の馬車が走っていた。
馬車に乗るのはハクオロ・エルルゥ・クーヤ・ヒエン・サクヤ。
ハクオロとヒエンが手綱を操り、彼等はひたすら西へ西へと進んでいく。
ハクオロ「……クーヤはどうだ」
ヒエン「……まだ眠り続けています」
ハクオロ「ゲンジマルの死が、クーヤの精神に深い傷を負わせた……か」
ヒエン「……お目覚めになられるのでしょうか」
ハクオロ「……私には何も言えん。クーヤ自身の心の強さに任せるしかない」
ヒエン「…………」
ハクオロ「もうじき、クンネカムンだ。サクヤを起こしてくれ。
サクヤには、『箱庭』の場所を案内して貰わねばならない」
ハクオロ「……クンネカムン皇都にあるゲンジマルの遺体は、
かの地の位置が判り次第、埋葬しよう……」
ヒエン「……心得ました」バッ
ハクオロ「皆、無事でいてくれ……」
「ゴローさん、貴方も見つけ出してみせます……」
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/21(日) 22:29:24.76 ID:3mPNrYjSO
――――
彼等がクンネカムンに到着した時、ゴローとムツミは……
ゴロー「ここがオンカミヤムカイか……」
ムツミ『うん。お父様を封印する唯一の地』
クンネカムンの遥か南、『オンカミヤムカイ』に着いていた。
ムツミ『もう一人のお父様から引き離せって言っておきながら、
途中から“転移を使わないで歩いてここに向かう”なんて……』
ゴロー「いいじゃないか。他の國の兵に、戦争が終わった事を伝えたかったんだ」
これ以上の殺戮は無駄である事と、ハクオロがクンネカムンを仕切る事。
特に後者について……無用な殺戮・略奪をした國に対して、
ハクオロ皇が厳しい罰を下す、と欲深な者に言っておく必要があった。
ゴロー「……それに最後の風景くらい、自分の目で見ておきたくてな」
ムツミ『……そう』バサッバサッ…
空に上がり、安全を確認するムツミ。暫くしてから、俺の側に戻ってきた。
ムツミ『……安全。周辺に人がいない。ムツミは疲れたから、あのコに戻るね』
パアァッ!
光がムツミの身体を覆い、変身していく。
羽化や孵化といったものと同じ感じで、なかなか神秘的。
カミュ「はへぇ〜…これからどうしよう……」
……厳かな雰囲気がカミュの気の抜けた声で少し軽くなった。
ゴロー「なるようにしかならないだろう」
カミュ「お姉様達、大丈夫かなぁ? ちゃんとご飯食べてるかな……」
ゴロー「心配はしなくても平気だ。あそこのメシはなかなか旨い。それより――」
グルル… グゥ〜〜!
ゴロー「……カミュがそんな話をするから、
俺の腹がムックルになっちゃったじゃないか」
カミュ「ぷふっ! ホ、ホントだ。ムックルの鳴き声みたい!」アハハッ
ゴロー「何か食べよう。カミュも腹が空いたろう」
カミュ「そーだね。お腹ペコペコのペコちゃんだよ〜」
ゴロー「何があったかな……」 ガサ ゴソ… ゴソ…
「……モロロしか無い」
カミュ「…………とりあえず、厨房や蔵で食べ物を探そっか」
ゴロー「……壊れてなければ、な」チラッ
……彼等が居るのは『オンカミヤムカイの都』。
クンネカムンの侵攻により、建造物の多くが壊された土地である……
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/21(日) 22:33:03.66 ID:3mPNrYjSO
――――
國境を越え、クンネカムン皇都の北東にある『箱庭』を目指すハクオロ達。
馬車の入れぬ森を、徒歩で抜ける。
ハクオロ「……サクヤ、ほ、本当にこの道なんだろうな?」ハァハァ
先頭を歩くハクオロは他の者に比べ、疲労困憊。
眠り続けるクーヤを背負っている所為である。
サクヤ「……あれ? もう少ししたら海に出るはずなんだけど……」ウーン
ヒエン「もしや……」
エルルゥ「……もしかして私達、迷いました?」
箱庭を守る広大な森により、五人は道に迷ったようだ。
ハクオロ「頼む、サクヤだけが頼りなんだ……
なんとかして場所を思い出してくれ」ペコリ
サクヤ「い、いえいえ! あたしみたいな者に頭を下げないでください!」
(あーもう! あたしのバカバカ!
どうしてこんな大事な時にドジしちゃうの!?)
(念のため、結界だってちゃんと避けて動いてるハズなのにぃ〜!)
ガサ…
ハクオロ「 ! 」
『シュー……シュー……』
ヒエン「一体、何の音でありましょう……」
エルルゥ「どこかで聞いたことがあるような……アルルゥのイタズラで……」
ガサガサ… ザザザッ!
彼等の目の前に姿を見せたのは――
大蛇『シャァァァァァァ――!!』
ハクオロ「 」 エルルゥ「 」 クーヤ「スースー…」
ヒエン「 」 サクヤ「 」
大人も容易く丸呑みにしそうな…… 紫色の大蛇だった。
全員「「「うわあああああああああああああ!!!」」」
31 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/21(日) 22:36:29.58 ID:3mPNrYjSO
…………
……
…
ハクオロ「ハー……ヒー……ハー……」
サクヤ「……な、なんとか逃げられました〜」フィー
エルルゥ「……蛇の吐息だったんですね」ハヒー
ヒエン「しかし、更に森の奥に来てしまいました……」
ハクオロ「……あんな化け物が居るんじゃ、後戻りも出来んな。進むしかない」
サクヤ「海まで出ればすぐなんですけど……」
ハクオロ「いや、ここからでも『箱庭』は近い筈だ。見てみろ、切り株がある」
エルルゥ「切り株ですか?」
ハクオロ「人が木を伐採しないと、切り株は出来ん。
年輪の向きから判断するに…北はあっちか」
ヒエン「では!」
ハクオロ「ああ。目的の場所には辿り着けそうだ」
ガササッ! ズンッ!
また、近くで『何か』と草が擦れる音が聞こえた。
サクヤ「うひゃっ! さっきの蛇っ!?」
ハクオロ「……違う、足音だ。大きな動物の――」
ズンッ ズンッ ズンッ
『ゴルルルルル……』
ハクオロ「……皆、私が合図したら北へ向かって走れ」
エルルゥ「は、はいっ」
サクヤ「もう走っちゃおうかな……」
ヒエン「少人数になったら、逆に狙われる。共に行動しないと危険だ」
ズシッ ズシッ ズシッ…
『グゥルロロロ……』
ザザッ!
ハクオロ「お、おお? なんだ。ムックルじゃないか」フゥ
32 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/21(日) 22:39:39.45 ID:3mPNrYjSO
彼等から見て西から現れたのは、巨大な『白虎』だ。
ハクオロは緊張状態を解いて、獣に近付く。
ハクオロ「驚かせないでくれ。アルルゥは何処だ?」キョロキョロ
エルルゥ「ハ、ハクオロさん……に、に……」
ハクオロ「ん?」
エルルゥ「逃げて下さい! それは『ムックル』じゃありません!」
ハクオロ「……ぱーどぅん?」
白虎『ヴォフ、ヴォフ、ヴォフ……グオオオオッ!!!』
ハクオロ(あー…………別人ならぬ別虎なのねー…………)
(せめて、クーヤだけでも……)
「いけっ! 『ムックル』!!」
『ヴォオオオォォォォォォォォォ――!!』
ダダッ ダダッ ダダッ ズンッ!
ハクオロ達の北から、もう一匹の白虎…
『ムックル』が走り寄って、同種の獣を威嚇する。
ムックル『グルルルッ……』
アルルゥ「おとーさん、たべてもマズイ。あっちに、ごはんある」
白虎『…………ブォッ』
ノシ ノシ ノシ ノシ…
虎は、アルルゥの力『森の母(ヤーナ・マゥナ)』で説得され、茂みに去っていった。
エルルゥ「アルルゥ!」ギュウウウ!
アルルゥ「お、おねーちゃ……ムネでイタい……」グェ
ハクオロ「ありがとう、本当にありがとう!
帰ったら腹一杯餌を食わせてやるからな!!」ナデナデ
ムックル『ぐおっ♪』フフン
ヒエン「どうやら……」
サクヤ「なんとかなっちゃったみたい……」
33 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/21(日) 22:42:56.76 ID:3mPNrYjSO
――――
五人はアルルゥの案内で箱庭に入る事が出来た。
〜 箱庭・中央部 〜
ハクオロ「ええと、池のあたりで他の者と待ち合わせ……」
アルルゥ「うん」
町人A「あら、アルルゥちゃ〜ん。今日も元気そうねぇ」
町人B「お菓子あるわよ〜。はい」スッ
アルルゥ「ありがと!」パクッ モグモグ
エルルゥ「あ、あの。妹が御世話に……」
町人A「おや、アルルゥちゃんのお姉さん。まぁ…よく似てるわねー」
町人B「そうねぇ。ホント似てるわぁ」
エルルゥ「そ、そんなにこの子と私って似てますかね?」
町人A「あらヤダ、二人が似てるんじゃなくて……」
「バカヤロー! 待てコラァァ!!!」
ガララッ…
オボロ「おおおッ!」 クロウ「おらおらおらァァァ!」
ドドドドドドドドド…
ハクオロ「オボロ、クロウ!」
オボロ「おお! 兄者!」
クロウ「総大将!」
ハクオロ「お前達、何を……」
オボロ・クロウ「「金を貸してくれ(下さい)!!」」
ハクオロ「…………は?」
食べ物屋「兄さん、コイツラの知り合い? なら二人分の飯代払ってくれよ!!」
ハクオロ「……すまん、人違いだ」カツカツ…
オボロ「兄者ぁぁぁ!!」 クロウ「総大将ぉぉぉ!!」
ヒエン「某達は何処へ向かう?」
サクヤ「村長さんのとこに行きたいんだけど……」
何やら街が騒がしい。
34 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/21(日) 22:45:34.20 ID:3mPNrYjSO
酒屋「うちはツケがきかねぇんだよぉ!!」
カルラ「そんなお堅い事を言わないで……ねっ?」 ←胸をチラ見せ
酒屋「ゴク…って、んな事されても……」
カルラ「あら、でしたら…フゥー……」 ←耳に息
酒屋「あふぅんっ!」ビクッ
ベナウィ「いらっしゃいませ、お嬢様」キリッ ←執事服
「ベナウィさま!」「なんて凛々しいの!」「素敵っ〜!」
「抱いて!」「こっちに笑ってくれたわ!」「あ〜ん、ベナ様ぁ!」
トウカ「……い、いらっ…ゃい…せ」モジモジ ←メイド服
「ポニーテール+メイド! 素晴らしい!」「あの服どうしたん?」
「なんでも衣装造りの上手い奴が書物から再現したらしい」
「あの『ドージンシ』だっけ?」「おう」
ハクオロ「……皆、妙に馴染んでないか?」
ウルトリィ「そうですね」クスクス
村長「町の者も、久方ぶりの客に羽目を外しおって……」ハァ
ハクオロ「ウルト! それに……」
村長「此処を治めている村長です。初めましてハクオロ様」ペコリ
ハクオロ「どうして私の名を?」
村長「ゴロー様から伺っておりました」
ハクオロ「あの人は……」
村長「今は居られません。何処に居られるかも……」
35 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/21(日) 22:50:33.83 ID:3mPNrYjSO
〜 箱庭・村長宅 〜
先程、箱庭に着いた者だけで村長と話をする事になる。
ハクオロ「村長さん、ここは……」
村長「はい。『箱庭』と呼ばれる地でございます」
エルルゥ「じゃあゲンジマルさんの奥さんのお墓も……」
村長「……どうして貴女がそれを?」
エルルゥ「……それは」
ヒエン「エルルゥ様、以降は某が」
村長「…………」
ヒエンがエルルゥを止め、続きを語る。
ヒエン「……祖父、ゲンジマルは亡くなりました」
サクヤ「…………おじいちゃん」グス
村長「御二人は…ゲンジマル様のお孫さんなのですね」
サクヤ「ハイ……」
村長「……惜しい方を亡くしました」
「それと…そちらの女の子は?」
クーヤ「…………」クゥークゥー…
ハクオロ「彼女は、クンネカムンの元皇で――」
ハクオロがこれまでの事情を説明すると、村長の顔付きが険しくなっていった。
村長「あの御方が…死を迎えられましたか……」
「結界に狂いが生じるわけです……」
サクヤ「狂い?」
村長「ええ。結界の力が徐々に弱まっておりましてな」
「何かがあの方に起こったのだ……と」
サクヤが道に迷ったのは、この為である。
迷いの結界を上手く避けて動いたつもりが、
結界自身に乱れがあったいたせいで、結果的に遠回りしていたのだ。
36 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/21(日) 22:52:18.15 ID:3mPNrYjSO
「「「…………」」」
……沈黙を破ったのは、仮面の皇。
ハクオロ「『箱庭』とは一体なんなんです?」
「この町は……異質だ。他の町や集落と、違いすぎている……」
町並みや人々。特に驚いたのは、クンネカムン領土内に他種族が暮らしているということ……
それでいて対立どころか、種による諍いすらない。
ハクオロ(……この箱庭は私の考える『平和』の――)
『 本当ニ、ソウ思ウカ? 』
ハクオロ(――ッ!? なんだ、今のは?)ゾクッ
村長「……私より、此処を語るに相応しい方が居られます」
「外の……アルルゥという子を預かっておられた
『前村長』の下へ行かれなさい。貴方の疑問に解を与えて下さるでしょう」
村長「町の東部、集落地帯に居られます」
「ハクオロ様とエルルゥ様はそちらへ」
村長「ゲンジマル様のお孫さんは、私と居ておくれ。
御遺体は私共の仲間がここまで連れてきますから……」
ヒエン・サクヤ「「…………はい」」
37 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/21(日) 22:59:30.68 ID:3mPNrYjSO
――――
〜 箱庭内・東の集落地帯 〜
アルルゥ「♪〜♪〜」 ムックル『う゛ぉ♪ う゛ぉ♪』
前村長の家までの道程を案内するのはアルルゥだ。
アルルゥ「ここっ」
畑が営まれる地帯を進み、三人と一匹は一軒の古い家に到着する。
ハクオロ「……この家や他の建物の配置は」
エルルゥ「……ここって」
ハクオロ「エルルゥも気付いたか」
エルルゥ「……ヤマユラの集落みたいです」
違和感と懐かしさがそこに併存していた……
ハクオロ「そして、集落のこのあたりには……」
エルルゥ「私達の暮らしてた家…… おばあちゃんの家です」
ハクオロ「ヤマユラと符合している点が多すぎる。……罠か?」
アルルゥ「ただいま〜!」ガラッ
エルルゥ「あっ、アルルゥ!」トコトコ
アルルゥ「ガチャタラ。おるすばん、いいこいいこ」ナデナデ
ガチャタラ『キュ〜ルルゥッ!』スリスリ
家の中に入る三人。
ハクオロ「……おかしいな。誰も居ない」
エルルゥ「アルルゥ、前の村長さんは何処に行ってるの?」
アルルゥ「ん〜… んっ! おと〜さんの後ろ!」スッ
ハクオロ・エルルゥ「「 えっ? 」」クルッ
38 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/21(日) 23:01:59.43 ID:3mPNrYjSO
前村長「儂に何か用かい?」
振り返った瞬間、二人は凍りつく。
ハクオロ「あ、あ…………」
エルルゥ「う、ウソ……」
居るはずのない…… 既に常世へ旅立った人の姿を……見たからだ――
「 トゥスクルさんっ!! 」 「 おばあちゃんっ!! 」
前村長「おぅおぅ。そうかい、お前さんがエルルゥだねぇ」ニコッ
「それで…あんたがハクオロ。いい男だ、うん」
ハクオロ「あ、貴女はいったい……」
前村長「おや、儂の名前を聞いとらんかったのかい?」
「儂の名は、『エルルゥ』。…トゥスクルの姉と言ったほうがええかのぅ?」
前村長…『エルルゥ』は……ハクオロとエルルゥ、
そしてアルルゥに優しく微笑んだ。
39 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/21(日) 23:09:55.85 ID:3mPNrYjSO
――――
〜 箱庭・中央部 〜
ハクオロ達が東に向かっている間、一行は……各々が自由に過ごしていた。
ベナウィ「……今日の貸し、國に帰ったら必ず返しなさい」
クロウ「ホンットに助かりやした! 路銀まで!」ペコペコ
オボロ「三日間程、皿洗いをさせられるトコだったぜ……」
トウカ「ウルトリィ殿はどちらに泊まられていたのですか?」
ウルト「村長様の家に住まわせて頂きました。
宿泊施設がいっぱいでしたから」
カルラ「あ〜♪ お酒も肴も美味しい町ですわ〜♪」グビグビ
「真っ昼間から飲んでても無問題〜〜♪ お酒は嗜み〜♪」
「「 若様ぁ〜! 」」
オボロ「お、その声はド…… ぶふぉっ!?」
ドリィ「どうですか?」チラッ グラァ「似合ってます?」チラッ
まだ大地が『日本』と言われていた頃、学徒達が着ていた『制服』……
この双子が身に着けていたのは……『桃色のセーラー服』だった。
※ 『ToHeart 2』仕様。
(うたわれゲームで蒐集品『同人の書』の表紙として、
ヒロインの一人『柚原このみ』が書かれているのが元ネタです)
ドリィ・グラァ「「可愛いですか?」」
オボロ「……悪くはない。………………ユズハの分はあるな?」
ドリィ「抜かりありません」ヒソヒソ
グラァ「他にも可愛らしい服を御用意しました」ヒソヒソ
……些か自由過ぎるかもしれない。
ウルトリィ「そろそろお昼時ですし、食事にでも行きませんか?」
トウカ「それは良い。幸い喫茶店で働いた分、給金も頂きましたし……」
カルラ「ツマミがたくさんある店にしません?」
ベナウィ「貴女はまだ飲むつもりですか……」
カルラ「いいじゃありませんの〜♪」
ドリィ「若様っ、僕達も行きましょう!」
オボロ「……既に飯は食ったんだが」
グラァ「……僕達と一緒に食事してくれないんですか!」
クロウ「ん、露店…… その髪留め……二つ頂けやせん?」
露店商「お、若いの。女に贈る用かい? ほら」スッ
クロウ「ま、そんなとこっす……どーも!」
40 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/21(日) 23:13:47.52 ID:3mPNrYjSO
……そうこうしているうちに、彼等は食堂街に到着した。
トウカ「……ん?」 クロウ「おっ」
ベナウィ「おや」 オボロ「どうした?」
ドリィ・グラァ「「あれ? なんで?」」
カルラ「あら? あの甘味処に座っているのは……」
ウルトリィ「……ゴロー様?」
〜 箱庭・甘味処 〜
きっと、今の俺、いい顔してるんだろうなぁ。
ゴロー(うんうん、この豆! まめまめしいぞぉ)
ツヤツヤ、スベスベ。玉のようなお肌の豆だ。
ぱくんっ もぐもぐ
ゴロー(豆かんてん、旨い。 ……………………旨い)
豆の赤茶と、黒蜜。
口の中で潰すと……豆自体の甘さが「ぱあっ」と広がる。
ず… ごくっ…
そして、この黒蜜。豆という主役を引き立てるだけの脇役じゃない……
ぱくっ ぱくっ ぱくっ ぱくっ ぱくっ……
ゴロー(主演やれるだけの力。ちゃんとあるじゃないか)
少し甘さがしつこくなったら、寒天で口直し。
青空みたいな喉越しで…… なんだか、スウッとする。
ゴロー(脇に置かれてる、緑茶がまたいいんだよ)
程好い苦味が、よく合っている。
ゴロー(あ゛〜〜…… 俺って、日本人だなァ……)
41 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/21(日) 23:19:20.50 ID:3mPNrYjSO
カミュ「タコ焼き買ってき…… あーっ! もうおやつ食べてるっ!!」
やっと帰ってきたか。
ゴロー「カミュの分のおやつも用意してあるぞ」
カミュ「あんみつ?」
ゴロー「いや、豆かん」
カミュ「なら……食ーべよっ!」ストン
ゴロー「あんみつだと、豆が少ないからな。代わりに果物が乗ってるけど」
「俺は買ってきてくれたタコ焼きの時間だ……」
うん、いい色したタコ焼きだ。
ゴロー(さっぱりしたダシ汁の香り……)ゴクッ
食欲、そそられるなぁ。
【豆かんてん】
甘味処の名物。赤エンドウ豆が輝く。
あんみつより豆がいっぱい!!
【タコ焼き】
厳密には「なにわタコ焼き」。
ソースが作られていない為、ダシをかけて食べるのだ。
42 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/21(日) 23:22:54.03 ID:3mPNrYjSO
カミュ「にしてもさ……」パクパク
「普通、女の子をタコ焼き買わせにパシらせるかな?」
ゴロー「自分で買いに行ったんじゃないか…」ングング
「それに、三十代まではパシりとも言うぞ」
カミュ「えー! おじさまもギリギリその位じゃん!」
ゴロー「……というか、そもそもパシりじゃないって」パクッ
「ほふほふ…あったかい。ジュワって出るダシがまた……」
タコ焼きってのも、いろいろあるもんだ。
この味なら、他の國々に伝えても良さそう。
カミュ「ここに来て良かったの? いくら食べ物がなかったからって……」
ゴロー「あの辺は、土地勘がないから迷うかもしれないし……」
カミュ「カミュが飛べば、集落がどこにあるか判ったよね?」パク モグ
ゴロー「……言われてみれば、そうだった」
……カミュには、翼があったじゃないか。
カミュ「まぁ、それはいいんだけど。此所に来れたからね〜」
ゴロー「タコ焼き、食うか?」
カミュ「一個ちょーだい」アーン
ゴロー「…………えっ」
カミュ「どうしたの? 早くちょーだい?」アーン
ゴロー「……ほら」スッ
カミュ「んふふ〜♪ ありだね〜。ありをりはべり、いまそかり〜」モグモグ
ウルトリィ「カ、カミュ!?」ザッ
ゴロー「うーん……もう見つかったか。そろそろ帰ったと思ってたんだが」
カミュ「あ、お姉様。このお店の豆かんてん、美味しいよ〜」
トウカ「そちらは後で頂くとして…… 経緯(いきさつ)を説明して貰いましょう」
ドリィ「どうして僕達をここに連れてきたのか……」
グラァ「カミュ様の事や、大兄者様の事も……」
オボロ「この町の事もだ。……大兄者、話してくれるよな?」
カルラ「このわたしに秘密なんて……イケナイ殿方ですわよ」ニッ
クロウ「聞きたいこともありやすんで」
ベナウィ「納得出来る説明をして頂きます」
ゴロー「ふう…… みんな、話さなきゃここから逃がさないって顔だ」
カミュ「……『私』が出ますか」
ゴロー「その必要はない。話してやろう」
「最初はこの『箱庭』について、教えます……」
43 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/21(日) 23:24:48.17 ID:3mPNrYjSO
――――
昔……と言っても、それほど遠い昔じゃないのぅ。
儂がまだ若く、トゥスクルもお前さんの妹のように小さかった頃の話じゃ。
多分、トゥスクルから聞いておると思うが……
儂は『主様(ムティカパ)』への生け贄としてカカエラユラの森に捧げられてな。
ああ、あの時は本当に怖かった。
いくら儂があの娘…アルルゥと同じ『森の母(ヤーナ・マゥナ)』とはいえ、
怖いものは怖かったんじゃよ。向こうの言葉が判ってものぅ……
それでも、儂は行かねばならんかった。主(ヌシ)様の居られる森の奥に向かって……
実はの、どうも妙だったんじゃ。
霊宿(タムヤ)が壊されていたわけでもなかったし、
村の者は誰も森の奥に行っておらんかった。
その時は「他の集落の者が奥に……」と思っとったよ。
おっと、いかんのぅ。年寄りの話はすぐ脇に逸れる……
じゃが、この騒ぎが儂とあの方を結び付けた出来事じゃった……
《 前村長(エルルゥ)の回想》
ガサッ ガサッ…
前村長(若)「ああ、私の命もこれで終わりなのね……」
「あのコ(トゥスクル)、私がいなくて大丈夫かしら……
薬師として、上手くやっていってくれたらいいけど……」
前村長「食べられちゃうなら、せめて痛くないほうがいいなぁ……
森のキママゥから聞いた話だと、肉は最初に柔らかい内臓から……」
「その時に意識が無かったらいいだろうけど……」ゴクリ
前村長「…………」
『グルオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』
前村長「ひいっ! あ、あっちにムティカパ様が……」
「い、行かないと……」
44 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/21(日) 23:30:48.64 ID:3mPNrYjSO
唸り声のした方向に進んどったら……
『ガアッ!!』 ズガンッ!
『ゴルルル……』
『グオオッ!!』 バキバキッ… ズウン
主様の咆哮や木の倒れる音に混じって……
『グオッ!?』 ドガアッ
「……止めてくれ。まさか森の奥に入っちゃいけないなんて思わなかったんだよ」
前村長「……男の人の、声?」
タッタッタッ…
???「……脚を折った。もう、立ち上がれないだろう」
ムティカパ『グルルルルル……』ググッ… ズシン
???「わざとじゃなかったんだ。ただ、奥に用があっただけで……」
「ここまで痛めつけるまで、執拗に奥に立ち入らせないとは」
「――まさか、馬鹿な。赤ん坊が俺の言った事を覚えてるわけ……」
前村長「な、何? 何が起きてるの?」
ガサガサッ…
???「誰だっ!」
前村長「ひゃいっ!?」ザッ…
???「……森の近くに住まう者か。今、ここで見たことは…忘れろ」
前村長「え? で、でも私、生け贄で……」
???「その必要は無くなった。もう自分の家に帰れ」
「暖かい風呂、旨いメシ、ぐっすり眠って忘れるんだ」
前村長「は、はい…… あ」
ムティカパ『ゴフッ……グル……』
45 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/21(日) 23:34:57.12 ID:3mPNrYjSO
前村長「――いえ、私にはまだやることがあります」
???「……何」
前村長「私は……薬師です。苦しんでる患者を見捨てることなんて出来ません」
スタ スタ スタ
ムティカパ『…………がう』
前村長「……前脚を二本とも折られた。叩きつけられたせいか、腹の中が痛い……」
???「! キミ、もしかして……そいつの言葉がわかるのか!」
前村長「はい。……お腹の中は流石に無理だけど、脚には添え木を」
???「……この木でいいか。少し待て」
思えば、変わった光景だったねぇ。
巨大な主様が地に臥し、一人の女に手当されておった……
男が千切って添え木を作り、儂が固定。不思議な共同作業じゃった。
ムティカパ『……ぐお』
???「なんて?」
前村長「『腹の痛みは、薬がある』って」
???「どこにある?」
ムティカパ『ぐぅる……』
前村長「『巣の中だ。だかお前達を入れるわけにはいかない』」
???「……案内しろ。巣までは運んでやる」ズズ…
……儂が一番怖かったのはこの時さ。
男が禍々しい煙を出して、そいつで主様を包んで持ち上げたんだからのぅ。
???「ここが巣か?」
前村長「そう、みたいです」
???「……怖がらせてすまないな」
前村長「い、いえいえ!」ブンブン
46 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/21(日) 23:37:10.82 ID:3mPNrYjSO
ムティカパ『……グオオッ!』
前村長「『もういい、下ろせ。これ以上近付くと――』」
???「断る。もっと近くに行かないと……」
『ぐ?』ヒョコン 『ぎゅう?』チョコン
???「……成程、近付けたくはないよなぁ」
前村長「ムティカパ様の子ども? わぁ、可愛い……」
ムティカパ『ぐぅお、がぁ』
前村長「『巣穴から紫の石を持ってこい』?」
???「行くならキミだ。俺はコイツに警戒されてる」
前村長「はぁ……」トコトコ
穴に入ったらの、紫の石……薬師の間では『紫琥珀』と言われる物があっての。
見事な、本当に見事な紫琥珀の塊じゃった。
成人した男の握り拳大はある、大きな塊じゃった……
儂は主様の言う通りに紫琥珀を必要な分削り、薬を処方したんじゃ。
ムティカパ『…………』
前村長「よっし。だいぶ落ち着いたみたい」フゥ
???「キミ、腕の良い薬師のなんですね」
前村長「そ、そんな事はないですよぉ///」
???「……植物にお詳しい?」
前村長「はい。この森にあるものでしたら。薬石も色々知ってます」
???「物覚えも良さそうだな…… オマケに動物と話せる」
前村長「……? はい」
???「……お嬢さん、その知識と技術を他の人間に教える気はないか?」
前村長「どういう意味です?」
???「私は……今、村を造っている。美味しい物をたくさん作る為に」
前村長「は、はぁ……」
???「だけど……食べられる植物や香辛料の知識が足りないんだ」
「キミなら、新たな食材を探したり、作れるかもしれない」
前村長「?????」
ゴロー「どうだろう。キミ、私の『箱庭』で暮らしてみないか?」
前村長「…………はいぃ?」
《 回想終了 》
47 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/21(日) 23:42:37.21 ID:3mPNrYjSO
前村長「あの方の言ってる事はよく判らなかったねぇ」
「だけど、瞳は綺麗だった。嘘なんて吐いていない、純粋な夢だった」
ハクオロ「じゃあ、エルルゥさん……紛らわしいな」
前村長「好きに呼ぶとええ。アルルゥには、おばあちゃんと呼ばれとる」ナデナデ
アルルゥ「うふ〜…おばあちゃんの匂い〜…」ゴロゴロ
エルルゥ「あの、私もおばあちゃんって……」
前村長「おぅおぅ。幾らでも呼んでええ」ニッコリ
エルルゥ「それで…おばあちゃんは……」
前村長「結局、その場で『はい』と返事したねぇ」
「トゥスクルや村の皆の事は心配だったけど……
『儂が居らんでも、きっと大丈夫』と何故か思えたからねぇ」
前村長「実際、そうじゃったようだしのぅ」チラリ
ハクオロ「……?」
前村長「その後、ムティカパ様は怪我を手当したお礼に、紫琥珀の粉末をくれて……」
「わしの首飾りにそれを入れて、霊宿(タムヤ)に残しておいたんじゃ」
ハクオロ「……そうか、トゥスクルさんがあの紫琥珀をずっと売らずに取って置いたのは」
前村長「……形見とでも思っておったんじゃろ」
エルルゥ「あの、この町の森にいたムティカパ様は……」
前村長「あれかい? あのコはあの方とカカエラユラのムティカパ様が和解した証じゃて」
「双子の片割れを、儂達に預けたんじゃよ。
お前達が会ったのは、その孫じゃがな……」
ハクオロ「あれ? ……ムックルはどこだ?」キョロキョロ
アルルゥ「ムックル、あの女の子のところ、いった」コロコロ
エルルゥ「……メス? なの?」
前村長「うむ。あの…ムックルか。喜んで森へ遊びに行っとるよ」
ハクオロ「……ムックルにも、春が来たか」
48 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/21(日) 23:48:07.62 ID:3mPNrYjSO
――――
ゴロー「これが、『箱庭』の成り立ちだ」
オボロ「その、男と言うのは……」
ゴロー「………………俺だ」
カルラ「……どういう事かしら?」
ゴロー「そのままの意味だ。俺がこの町を造り、発展させてきた」
トウカ「……ゴロー殿、何の冗談でありますか? 貴方がそんな年齢――」
ゴロー「歳は変わっていない。俺の時間は……止まっている。
ウルトリィさん、どこまで話した?」
ウルトリィ「…………御二方の事は、話しておりません」
ゴロー「じゃあ、こうすれば皆にわかるな…… 『 動くな 』」ピキィンッ!!
ウルトリィ「――っ!」
クロウ「こ、こいつぁ……」ギリギリ…
ドリィ・グラァ「「また、動けないっ……」」ググ…
ゴロー「『解けろ』。……なんとなく、状況は理解して貰えたか?」
ベナウィ「貴方は、『大神』だと、そう言われるのですね……」
ゴロー「……半分正解。煙管、吸っていいか」
ウルトリィ「……どうぞ」
煙管を組み立てる。
ゴロー「……火が欲しい」
カミュ「はい」シュッ ポゥッ…
カミュの指先から、小さな火が灯された。
ゴロー「ありがとう」 スゥー…フゥー…
「俺は、この前……クンネカムンで神の半身を取り込んでしまった」
「半分正解、という意味は……ここにある」
「神の力を有する存在が、もう一人いる。そいつと俺は……まみえてはいけない」
ゴロー「俺がお前達に会うのは構わない。だが、『あいつ』に出くわすわけには……」
オボロ「……『あいつ』とは、誰の事だ」
ゴロー「――なんとなく、気付いてるんじゃないか?」
一同「「「…………」」」
49 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/21(日) 23:53:26.64 ID:3mPNrYjSO
ゴロー「さて、話はこんなところでいいだろう。
そろそろ、俺は帰らせて貰う……」スクッ
ウルトリィ「……あの地に行かれるのですね」
ゴロー「ここに居ない人達に、伝えておいてください。……『来るな』と」
「カミュは封印が済んだら帰します。それまで待っていてください」
カミュ「おじさま!」
……このコには、少しやる事がある。
ゴロー「『ムツミ』、出番だ」
パアアアッ!
ムツミ『……はい』スタッ
キュュゥゥ…
オボロ「……くっ、逃がさんッ!!」タッ!
ムツミ『……駄目。おじ…お父様の邪魔はさせない』スッ
オボロとムツミの間に、大気の隔たりが生まれ、二刀は弾かれる。
オボロ「ちいっ!」ズザッ…
ゴロー「……『やめなさいよ』」
オボロ「かっ!? ち、チクショウ……」ピタリ
『止まれ』という意志があれば、言葉はなんでもいい。
術の準備も、整った……
ムツミ『……転移開始』
これだけは、言っておこう。
ゴロー「……今まで、ありがとう」
キィィィン… フッ…
ゴローとムツミが消え、枷は解ける。
だが……残された者の顔は…… 暗かった。
トウカ「……某達は! 何も出来なかった!」
カルラ「……今日の事、あるじ様に伝えましょう」
ドリィ・グラァ「「…………」」
ベナウィ「カルラの言う通り、報告せねばなりません」
クロウ「もしかして、あの人は……」
ウルトリィ「……わたくし達に、伝えに来たのかもしれません」
「別れを…………」
50 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/21(日) 23:58:33.50 ID:3mPNrYjSO
――――
一夜明けた、翌日。箱庭の術士達がゲンジマルの棺を担いで戻ってきた。
そのため……急ながら彼の葬儀が執り行われる事となる。
〜 箱庭・村長宅 〜
ハクオロ「クーヤは……起きないか」
村長「……こればかりは私の専門外です」
町の者が別れを惜しむ間、ハクオロと村長は眠り続けるクーヤの様子を確認していたが……
彼女は、目を開けない。
トントン トントン
誰かが扉を軽く叩く。
村長「どうぞ」
カラララ…と、耳を抜ける澄んだ音。
やって来たのは……『二人のエルルゥ』。
エルルゥ「ハクオロさん、おばあちゃんが……」
ハクオロ「エルルゥさんが?」
前村長「……邪魔するよ」
村長「エルルゥ様。何か御用でしょうか?」
前村長「患者が居るそうだね。儂に見せてみな」
村長「この娘さんです」
通された前村長は、すぐさま診察を始める。
クーヤ「…………」スースー
前村長「……ふむ。これなら、儂が治せる病じゃな」
エルルゥ「えっ…で、でもこれは心の……」
前村長「……エルルゥ。人の心は弱くない。脆いだけじゃ」
エルルゥ「???」
前村長「辛い事があっても、そんな時に支えてくれる仲間がきっとおる」
「家族や、友。そんな者達との……楽しかった思い出が、心の強さなんじゃ」
前村長「安心せぇ……この病の治療において、儂の右に出る者はおらん」
ハクオロ「治せるんですか!?」
エルルゥ「わ、私に何か手伝う事はありますか!」
前村長「そうじゃの。三人とも、耳を塞ぎなさい」
ハクオロ「 ? 」スポッ
エルルゥ「はい」スポッ
村長「……まさか」スポッ
三人が耳に栓をした刹那――
51 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/21(日) 23:59:58.86 ID:3mPNrYjSO
「ええ加減に…… 起 き ん か い !!!!!」
52 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/22(月) 00:04:34.30 ID:x7SWN6kSO
前村長の口から、予想だにしない大声が飛び出すと……
クーヤ「うわぁぁぁぁぁ!!!」ガバッ
ハクオロ「クーヤっ!」 エルルゥ「クーヤさんっ!」
前村長「そう。儂はこの病……『仮病』の治療が一番得意なんじゃ」フフッ
村長「心の病で眠り続けていたのではなかったのですか?」
前村長「眠ってはおったさ。身体だけがの。
あの娘の意識はしっかりあったんじゃよ」
「自分が病の時、周りの者に大切にされた覚えがあったんじゃな。
大事な人を失って、自分を守ってくれる新しい存在を探す為に
あの娘が取れた方法が病の『ふり』をする事だけじゃった」
前村長「あとは、自分で起き上がるきっかけが欲しかっただけさな」
「……大切な存在は、もう見つかっておるからのぅ」
クーヤ「……ハクオロ、エルルゥ。心配をかけたな」
ハクオロ「……全く、クーヤが寝坊助だとは知らなかったぞ」
エルルゥ「ふふっ、そうですね。アルルゥよりお寝坊さんです」
サクヤ「失礼します。クーヤ様は……起きてるっ!!」
ヒエン「聖上! お目覚めになられましたか!!」
53 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/22(月) 00:08:10.68 ID:x7SWN6kSO
――――
〜 ゲンジマルの墓前 〜
クーヤ「……ゲンジマル、今までありがとう」
「私は、これまでとは違うやり方でクンネカムンと他の國を結ぼうと思う」
クーヤ「見守っていてくれ……」
サクヤ「おじいちゃん。あたしはこれからもクーヤ様の側に居るから……」
「安心して、常世で暮らしてね……」グズッ
ヒエン「……大老、自分はこの町に来て知りました」
「種族の違いを生かしながら結び付く……新たな理想の形を」
ヒエン「某はこれから村長殿に弟子入りし、
『食』の力で愚かな争いを無くしてみせまする!!」
墓前に立つ三人の後ろで、ハクオロと村長が墓を見つめたまま、話をする。
村長「この村の技術が、世に放たれる時が来ました」
「一部の者達は既にここを出で、近隣諸國に散らばり始めています」
ハクオロ「……この地が無くなるのか」
村長「いいえ、生まれ変わるのです。新しい想いと風を入れて……」
「他の國にも……ここと同じ平和の風が吹くよう、祈っています」
ハクオロ「……私も、それを願う」
ハクオロ(しかし、まだ終わっていない)
(私の、友を助けに行かねば……)
54 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/22(月) 00:14:41.46 ID:x7SWN6kSO
――――
〜 オンカミヤムカイ・宗廟上部 〜
……皇の椅子に座り、身を休める。
ゴロー「人は……『やるな』と言われた事をやりたがる」
「あいつはきっとこの國に来るはずだ」
好奇心、猫を殺す。俺の目的は……
ムツミ『……お父様、何が狙いなの?』
俺の横に立つのは…… 一人だけ。
父を求めて、生き続ける『娘』。
ゴロー「……お父様は止めないか。俺は君の父じゃない」
ムツミ『…………?』
……あの力は、身体を蝕む。
ゴロー「抑え込めている内に…… やらなきゃ、な」
食うのは好きだが、喰われるのはごめん被る。
ムツミ『――まさか。ダメ! “アレ”はっ!?』
ゴロー(終わらない輪廻を断ち切る最後の手段……か)
第二十七話 「幕開け」
続く。
55 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/10/22(月) 00:21:36.84 ID:x7SWN6kSO
やだ…最後のゴローちゃん、かっこいい。
クンネカムン及び箱庭編、これにて終了!
次回からは『大神の眠りし地』編。いよいよ物語は過去へ跳びます。
今回の話はドラマ二期のネタを入れてみました。
梅むらの『豆かんてん』は美味しいですよ!近隣の方は是非。
56 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)
[sage]:2012/10/22(月) 00:21:47.43 ID:xhIxFIPRo
乙
57 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/10/22(月) 07:05:04.67 ID:JNiGsnyU0
豆かんてんかぁ…何県?
58 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/22(月) 09:07:08.01 ID:thwTLTQLo
梅むらは浅草
59 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/22(月) 11:08:13.61 ID:9jpvyzcSO
乙
60 :
◆M6R0eWkIpk
[sage]:2012/10/25(木) 00:39:07.40 ID:9USCS+xSO
個人的駄文 ドラマ二期・第三話を見て……
ドラマ五郎と原作五郎の違い。
……あの焼肉屋、客に手を出しすぎ。
ドラマ五郎はスルーしたが、原作五郎(初期)だと少し腹を立てる気がする。
卵かけご飯の卵のかけ方にも『変なこだわり』がありそう。
今日の夜に投下をします。
61 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/25(木) 00:59:31.80 ID:zH2oG1oYo
乙
焼肉食いたくなった
62 :
◆M6R0eWkIpk
[saga sage]:2012/10/25(木) 20:08:10.51 ID:9USCS+xSO
第二十八話「大いなる父」
〜 クンネカムンと箱庭 の境〜
ゲンジマルの葬儀も終わり、ハクオロ達は帰途につくこととなった。
トゥスクルの者と箱庭の人々。異なる文化の交わる時は終わり、別れの日を迎える……
エルルゥ「おばあちゃんは……本当に来ないの?」
前村長「うむ。儂には儂の。お前さんにはお前さんの帰る場所がある」
「儂にとっては、この町がそうってだけさねぇ」ニコリ
アルルゥ「おばーちゃん……」ダキッ
前村長「アルルゥ。また遊びにおいで」ナデリ
アルルゥ「……うんっ!」
前村長「トゥスクルや村の者達の墓参りもしてやらねばなぁ」
エルルゥ「……ヤマユラは、もう無くなっちゃったけど……」
前村長「……儂も昔は寂しかった。だからこの集落をヤマユラのように造ったもんさ」
「事が全て終わったら、お前さんが新しいヤマユラを造ればええ」
前村長「旅立った者達の事を、後生に伝えていく為にの」
エルルゥ「私が、村を?」
前村長「儂にも出来たことじゃ。きっとやれる。
困った事があったら、いつでも助けてやるわい」
エルルゥ「……おばあちゃんっ!」ギュッ
前村長「よしよし……」ギュゥ
ハクオロ「エルルゥさん、お世話になりました」ペコリ
前村長「ハクオロ様、この娘達を任せますよ」
ハクオロ「判っています」
63 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 20:11:02.86 ID:9USCS+xSO
クーヤ「私からも良いか?」ヒョコ
ハクオロ「クーヤ!」
前村長の背後からクーヤが顔を出し、ハクオロに向き合う。
クーヤ「ハクオロ。一段落したら、また其方の國に遊びに行く」
「今度は正門から堂々と行くつもりだ! 待っていてくれ」
ハクオロ「次は復興した都を案内する。また会おう、クーヤ」
クーヤ「うむ!」ニコッ
サクヤ「あ、あの〜…あたしも遊びにいって……」
ハクオロ「勿論だ。衛士には『大切なお客様』と伝えておく」
サクヤ「へへっ」ニコニコ
一方、ヒエンは……
ヒエン「オボロ殿、またいつの日か」ガシッ
オボロ「おう! また妹について徹夜で語りあおうな!」ガシッ
「とりあえず目標は、ユズハに『お兄ちゃん』と呼んで貰うことだ!」
ヒエン「なら自分は……サクヤに『お兄さま』と!!」
そして、他の者も――
ベナウィ「聖上、そろそろ行きましょう」
クロウ「いやー、いい町だったぜ! 飯が旨かったぁ〜!!」
トウカ「げんじまる様ぁぁ……」グスン
カルラ「しゃんとなさい。あの男に笑われますわよ」
村長「はい、これ。皆さんの分のお弁当」ズラッ
「町の皆が準備してくれたものです。道中で食べて下さいな」
ドリィ・グラァ「「ありがとうございます!」」
ムックル『う゛ぉ〜…』←名残惜しい
白虎『ぐるる…』←ちょっと寂しい
ガチャタラ『……キュル(デバンガナイ…)』
ハクオロ「よし、出発する。 私達の國に帰ろう」
ウルトリィ「…………」
64 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 20:15:39.03 ID:9USCS+xSO
――――――
――――
――
長く、苦しい旅を終えたハクオロ達。
『二人』を除いた全員が、トゥスクル皇城に帰還した……
〜 トゥスクル皇城・書斎 〜
ハクオロ「皆も揃った事だし、これで漸く戦後処理に入れる」
ベナウィ「クンネカムンの処分は如何なさるのです?」
ハクオロ「……帰路の途中立ち寄った諸國に、
トゥスクルがクンネカムンを治めるという噂が流れていたな」
「その噂通り、この國の所領とする以外、周辺國を抑える術は無い……と思う」
トウカ「トゥスクルは強國を打ち倒し……現在、大陸最強國となりました」
カルラ「まぁ……表立ってここに刃向かう國や豪族はいないでしょうね」
ハクオロ(……結果的に、このトゥスクルが最も全土統一に近い立場となった)
(今は……國々が疲弊しているから、何も起こっていないが……)
ハクオロ(時が経過するにつれ、他國の不満は増していくはずだ……)
(その時、矛先となるのは……)
ハクオロ(――私は、将来の戦の火種を増やしただけなのかもしれん)
(この身に巣食う『力』が、私を操っているようにも思えてくる……)
65 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 20:19:42.61 ID:9USCS+xSO
ベナウィ「――聖上、何かご意見はありますか」
ハクオロ「ん、ああ。その方向で……」
(今は別の事に集中せねば……)
ベナウィ「畏まりました。では、他國との協議は文書や國師を通じて行います」
「皇・豪族同士の会見は、もう暫く経ってからといたしましょう」
ベナウィ「オンカミヤムカイの…… あ」
ハクオロ「……現在、賢大僧正(オルヤンクル)が不在となっている」
「その間はワーベ殿か…… カミュの姉である第一皇女の
ウルトリィに代理を任せ、会談を開こうと考えていたが……」
ウルトリィ「…………はい」
ハクオロ「……カミュの事で、頭が一杯のようだな」
ウルトリィ「…………」
ハクオロ「はぁ……ベナウィ、他の仕事は?」
ベナウィ「少々、お待ち下さい。クロウに滞った書類を……」
ドタ ドタ ドタ…
クロウ「大将、只今戻りやした」
ベナウィ「ご苦労でした。して、書類は?」
クロウ「いやいや、それが無いんすよ」
ベナウィ「………………は?」
クロウ「俺達が留守の間…… メシ大将が皇の仕事を代行してたらしいっす」
ハクオロ「……じゃあ、今日の仕事は無いのか! やったっ!
……じ、冗談だ。そんなに私を睨まないでくれベナウィ……」
「それに、ゴローさんは居ないはず…………」
タ タ タ タ タ ガラッ!
オボロ「兄者! ユズハが……カミュと大兄者に会っていたっ!!」
ハクオロ「!? 何っ!」
ウルトリィ「カミュが!?」ガタッ
オボロ「来てくれ、詳しい話を聞こう!」
66 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 20:22:44.12 ID:9USCS+xSO
…………
……
〜 ユズハの部屋 〜
ユズハ「はい…… ユズハは、カミュちゃんとゴローさまに会いました……」
ハクオロ「それは……私達が留守の間か?」
ユズハ「そうです。カミュちゃんも、ゴローさまのお仕事を手伝ってるみたいで……」
オボロ「ユズハ。大兄者達が何を言ったか、覚えてるかい?」
ユズハ「えっと……」
《 ユズハの回想 》
最初に、お部屋に来たのは……カミュちゃんでした。
カミュ「うー……書類仕事とかもうイヤ……」フラフラ
ユズハ「カミュ、ちゃん?」
カミュ「やっほー。ユズっちただいまっ」
ユズハ「お帰りなさい…… お兄さまは?」
カミュ「オボロ兄さまはまだだよ。お…ゴローおじさまとカミュだけ先に戻ったの」
ユズハ「そうだったの……」
カミュ「おじさま達がいない間は、カミュ達が居るからね!
何かあっても、心配ないから!」
ユズハ「……ハクオロさまが、いない間だけ?」
カミュ「あー……ええと……その……」
カララッ パタン
ゴロー「ハクオロが帰ったら、行かなきゃならない場所があってな」
「俺はカミュの手伝いに、オンカミヤムカイに行く事になってる」
ユズハ「そうなのですか?」
カミュ「そ、そうそう! 賢大僧正は忙しいから!
ゴローおじさまに色々仕事をやって貰おうと思って!」アハハ
ゴロー「トゥスクルでやれる仕事をやってから行く予定でな……」
「さあ、賢大僧正殿。ワーベさんやムントさんが待ってるんだから……」
カミュ「ううう……皇様って仕事が忙しいよぅ……」
ゴロー「ユズハ。食事は一緒に取るから、また後で」
カミュ「じ、じゃあね〜……」フリフリ
ガラッ パタンッ
ユズハ「頑張ってね、カミュちゃん……」
《 回想終了 》
67 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 20:26:18.64 ID:9USCS+xSO
ユズハ「後は……いっしょにお食事をしたり…本を読んで貰ったりしました」
「あっ、そこにあるのが……
今朝、ユズハの為にゴローさまが作ってくれた……『青汁』です」
【ゴロー特製・青汁】
ユズハ用に作った激苦ドリンク。
エルルゥがオボロに作った二日酔いの薬に似ている。
ユズハ専用なので、紫琥珀の粉末も入れてある。
(※ ゴローはこれを作り、手持ちの紫琥珀を使いきった)
ハクオロ「……凄く濃い緑だ」
オボロ「ああ……これに近い物を、どこかで見たような?」
エルルゥ「き、気のせいではないですか……」
ベナウィ「聖上……以前話した――」
ハクオロ「箱庭で、お前達がゴローさんに会った…… そして――」
エルルゥ「『来るな』って…… オンカミヤムカイに行ってるんでしょうか」
ハクオロ「……あの人は『来い』と言ったんだ」
トウカ「暗号? それにしては……」
ハクオロ「クンネカムンの都で別れた時も、ゴローさんは『来るな』と言った」
「そうだな……カルラがいいか。お前が……
『今日は蔵に行くな』と言われたらどうする?」
カルラ「行きますわね。何かいい酒か肴が入ったのかと――」
ハクオロ「そういう事だ。ご丁寧に場所まで残して……な」チラリ
ウルトリィ「…………」フッ
ハクオロ(……視線を逸らしたな。何を隠している)
68 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 20:30:58.06 ID:9USCS+xSO
ハクオロ「――今は他にも考えねばならない事柄だらけだ。
……ゴローさんの事は後回しにする」ガタタ
「ベナウィ、他國へ送る文の用意をしよう」
ベナウィ「はっ! ウルトリィ様も」スクッ
ウルトリィ「はい……」
スタッ スタッ スタッ…
ユズハ「ハクオロさま……何か隠してます……」
エルルゥ「色々、あるんでしょうけど……」
トウカ「……態度が判りやすい主君というのは、どうかとも思いまするな」
カルラ「でもおかげで、『隠し事』の一つはバレバレですわ」
密談をする女衆。
エルルゥ「早ければ……明日の朝かもしれません」
カルラ「皆さんに伝えておきましょう」ニッ
トウカ「各々、聖上の監視を怠らぬよう」
カルラ「一番怠りそうなのは、貴女だと思いますわ」
トウカ「う!?」
69 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 20:33:05.90 ID:9USCS+xSO
――――
その日の夕方、ハクオロはウルトリィを自分の寝室に呼び出した。
ハクオロ「ウルト、呼び出した理由は……判っているな」
ウルトリィ「……はい」コクン
ハクオロ「……聞かせて貰うぞ。最初は
あの『ムツミ』と呼ばれていた娘についてだ」
ウルトリィ「……あれは、あの子は……カミュです……」
ハクオロ「……どういう意味だ」
ウルト「『ムツミ』と言うのは、最初のヒトにして、わたくし達の始祖の名」
「始祖様の魂は…オンカミヤリューの身体を憑代として、
時折、人の世に現臨されるのです…………」
ハクオロ「……その器がカミュだったと、言うのか」
ウルトリィ「…………」コクン
ハクオロ「あの男…ディーや私の中に存在する『モノ』のように……か」
ウルトリィ「――はい」
ハクオロ「あの化物は…一体なんだ」
ウルトリィ「…………」
ハクオロ「私も、あの化物に……」
ウルトリィ「……化物などではありません。
貴方様は……わたくし達にとっては大切な――」
ハクオロ「……『ウィツァルネミテア』」
ウルトリィ「!!」ピクッ
ハクオロ「……ウルトリィ、お前は嘘が下手だ」
「そうか、私の中に……」
ウルトリィ「――はい」
70 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 20:34:26.14 ID:9USCS+xSO
ハクオロ「……あの娘とゴローさんは何処にいる」
ウルトリィ「……禁じられた地、オンカミヤムカイの深淵に居られる筈です」
ハクオロ「やはり、私を誘っていたのか。ゴローさん……」
ウルトリィ「ハクオロ様…… 行かれるのですか」
ハクオロ「ああ。私は『引き寄せられて』いる。……承知の上で、な」
ウルト「……ここから先は、一人の姉としてお願い申し上げます」
「ハクオロ様…どうか、どうかカミュを……お救い下さい……」
ハクオロ「――最初からそのつもりだ」
「私は……私の家族を、そして…『友』を迎えに行く」
ハクオロ「ウルトリィ、明日の朝には出発する。荷仕度を整えておけ」
ウルトリィ「……ありがとう、ございます」ペコリ
71 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 20:35:38.96 ID:9USCS+xSO
…………
二つの場所で、二人の男が、晴れた空に浮かぶ月を見上げている……
一人はトゥスクル、一人はオンカミヤムカイ。
ハクオロ(トゥスクルさん、ヤマユラの里から始まった自分の旅も――)
(どうやら、終わりが近いようです)
――――――――
月を見ながら、焚き火をして……
パチ… パチ…
今日の夜食を作る。
ゴロー(月見には、団子だろうな)
(……団子と言うには、ちとでかいかもしれん)
串には刺してあるけど……これは『焼きまんじゅう』だよなぁ。
【 焼きまんじゅう 】
群馬県の名物、焼きまんじゅう。
比較的再現のしやすい食べ物だった為、
トゥスクルでタレと饅頭は作って持ってきた。
(焼きまんじゅうは焼いて暫く置くと、固くなってしまうからだ)
72 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 20:39:11.13 ID:9USCS+xSO
ゴロー(月を見ながら、まんじゅうねぇ……)
(形が似てるとはいえ、有りなのだろうか……)
ある程度、饅頭が焼けたら……タレを塗って……
ゴロー(ぬりぬり、ぬりぬり……)ヌリヌリ
白かった饅が、味噌ダレの美味しそうな茶に染まった。
塗ったあとも、少しだけ火にあて、焼く。
パチッ… ピキッ…
焔の爆ぜる音を聞くと……
何故かしんみり、さびしんぼ。
火の暖かさがあるはずなのに…どうしてだろう、夜の寒さが身に染みる。
………………おっと。
ゴロー「まんじゅうが、少し焦げた……」
俺って苦手なんだな。こういうの。
はぐ…
ゴロー(うん、うん。タレが甘いな)
その割には、軽い。
時間が止まったような味……だったな。
ゴロー(今の俺に、お似合いの味ですよ)アグッ
むしゃ ごくん
……これ、結構……腹に溜まる。
ゴロー(こう、一辺倒だと……)
……飽きが来る。お茶か水を前もって用意すべきだったか。
ゴロー(水筒は……ああ、カミュに預けたままだったっけ)
飲み水、いっしょに汲みに行けば良かったな。
73 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 20:40:35.97 ID:9USCS+xSO
――――――
タン タン タン…
ハクオロの寝室を、小さな女の子が訪れる。
ハクオロ「……アルルゥ。こんな夜更けにどうしたんだい」
アルルゥ「おとーさん。カミュちーとペコちゃん、むかえにいく?」
ハクオロ「…………」
アルルゥ「アルルゥもいく」
口には出さなかったが、アルルゥはハクオロの内心を読み当てた。
ハクオロ「……アルルゥ」スタ スタ スタ
彼がアルルゥの前に立ち、そのまま腰を落とすと
二人の目線が、同じくらいの高さになる。
ハクオロ「心配しないで、アルルゥはここで待っているといい」ナデ
アルルゥ「ん…………やっ!」パシッ
ハクオロ「……アルルゥ?」
アルルゥ「……おとーさん、かえってこない」
何かの理由があるわけでない、子どもの『カン』なのに――
ハクオロ「…………どうして、そう思うんだい?」
アルルゥに対し、ほんの一瞬……言葉は詰まっていた。
アルルゥ「んん……」
ハクオロ「大丈夫。私はアルルゥのずっと側にいるよ」スッ…
彼はアルルゥの胸元に手をあて、自分が救った『鼓動』を感じる。
ハクオロ「大丈夫、大丈夫だ……」
アルルゥ「……おとーさん」
74 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 20:53:54.07 ID:9USCS+xSO
――――――
バサッ… スウゥゥ…
お、帰ってきた。
カミュ「ただいまっ、おじさま」
ゴロー「おう。お帰り」アグアグ
「水筒をくれ。水が飲みたい」ゴクン
カミュ「あ、また一人で先に食べてる」
ゴロー「焼きまんじゅう、旨いぞ。食べるか?」スッ
先に水筒が欲しい。
カミュ「いただきます!」カプッ
「…………む」ムシャ…
ゴロー「……あれっ?」
今一つな反応。
カミュ「……冷めてて、固くて、あんまり美味しくない」モチャ…
ゴロー「あ……そうか、もう駄目か。新しく焼くから、待っててくれ」
カミュ「はーい」
次は、餡入りにしようか。
ゴロー「おっと、忘れるとこだった。水は?」
カミュ「あ、ちょっと待って……」ガサ…
「はい、おじさまの分」スッ
ゴロー「ありがとう」
子どもがいるって、こんな感じかな。
こういうの、悪くないんじゃないか。
75 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 20:58:00.39 ID:9USCS+xSO
――――――
トコ トコ トコ
ハクオロとアルルゥは、聞き慣れた足音に気がついた。
ハクオロ「……ん? エルルゥ?」
エルルゥ「ハクオロさん、話は聞かせて貰いました。私もついて行きます」
ハクオロ「……しかし、これからの事で君達を巻き込むわけにはいかない」
エルルゥ「――残される人の事を、忘れないで下さい」
ハクオロ「エルルゥ……」
エルルゥ「駄目だと言っても、私は行きます」
「私達は家族なんです。家族は喜びも苦しみも――」
ハクオロ「――分かち合うか」
アルルゥ「おとーさん、アルルゥたちいないと…あぶない」
ハクオロ「……頼りない父ですまんな」
エルルゥ・アルルゥ「「――!!」」
ハクオロ「共に行こう。私達の家族を迎えに」
76 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 21:01:48.59 ID:9USCS+xSO
――――――
ヌリヌリ… ジジジ… パチッ! ボォォォ…
ゴロー「うん。こんな感じか」ヒョイ
「ほら、食べていいぞ…… わっ!」ビク
ムツミ『……ちょっと酷いと思う』
ゴロー「入れ変わるなら、変わると言ってからにしてくれ……」
び、びっくりした。
ゴロー「びっ栗大福だ」
ヒュオオオ……
ムツミ『……独り言、だよね。そんな寒いオヤジギャグは……』
ゴロー「……ごめんなさい。思った事が口から出てました」
タイミングが良いことに、からっ風も吹くとは……
あ、でも『からっ風』は上州のあたりでしか言わないんだったか?
ムツミ『……いただきます』スッ
ぱくっ ぱくぱく…
ムツミ『スゴく、甘いけど……意外と美味しい……』モグモグ
ゴロー「意外って……地味に傷付くんだが」
ムツミ『褒めてるよ?』
ゴロー「上から目線なのは、変わらないなあ」
ムツミ『…………』ムカッ
ミョンミョンミョン…
ゴロー「い、いたたた!」ズキズキ
ムツミ『距離が近いから、感応波は効くよ……』ニコリ
ゴロー「怒りを俺にぶつけるなって……」ハァ
……でも、この厄介なコと一緒にいなきゃならん。
シュッ… チチッ… フゥー…
ゴロー(子どもを持つって、こんなに大変なのか……)ハァー
ムツミ『煙管、キライだから』
ゴロー「……厳しい」トントン…
前言撤回。俺はまだ独り身でいいや。
77 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 21:05:46.08 ID:9USCS+xSO
――――――
――――
――
〜 トゥスクル皇城・正門 〜
朝焼けの白光がゆっくりと昇り、都や城を照らす中……
ハクオロ・エルルゥ・アルルゥ・ウルトリィは皇城の正門へ歩を進めていき……
ハクオロ「――なっ」
カルラ「『聖上』」ニコリ
トウカ「護衛も無しに、どちらへ行かれるおつもりですか」
クロウ「オンカミヤムカイまでは遠いですぜ」ニッ
ベナウィ「皇(オゥルォ)を御守りするのも、我等の務めです」
――待ち伏せていた、四人と出くわす。
ハクオロ「お前達……」
エルルゥ「ハクオロさんがオンカミヤムカイに行くの、皆さんも判ってました」ニコ
オボロ「兄者! 待ってくれ!」タタタタ…
ハクオロ「オボロ、お前もか!」
オボロ「兄者の居る所に、オレも居る。今までもそうだったじゃないか」
ハクオロ「お前には…私がいない間、この國を任せるつもりだった」
オボロ「……オレは兄者の帰りを待つだけ、なんての……ゴメンだぜ」
ドリィ・グラァ「「こちらです、ユズハ様」」ザッ
ユズハ「ハクオロさま……」
オボロ「見送りをすると、言い張ってな」
ハクオロ「ユズハ!」
ユズハ「出来る事なら…ユズハもカミュちゃんの所に行きたいです……」
「でも…ユズハがいっしょだと、足手まといになってしまいます……」
ユズハ「だから…皆さまの帰りを……待っています……」
ハクオロ「……ユズハ、ありがとう」
ユズハ「いってらっしゃいませ……」ニコリ
ハクオロ「……まったく、私が予期していない事を容易くしてくれるものだ」
「そして皆が皆、こうと決めたら芯を曲げない……」
ハクオロ「そんなお前達を説得する時間は、ない」
「 ――行くぞ!! 」
「応っ!」 「「判りました!」」 「ういっす!」 「御心のままに」
「さ、旅ですわぁ」 「ははっ!」 「ええ!」 「しゅっぱーつ!」
エルルゥ「――はいっ!!」
78 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 21:09:56.57 ID:9USCS+xSO
――――
仮面の皇の下に、集った十人。
様々な形で、出逢い…… 『家族』となった者達――
運命に導かれた彼等は……『大神の眠りし地』に足を踏み入れた。
〜 オンカミヤムカイ 〜
エルルゥ「ここが……オンカミヤムカイ」
ハクオロ「……崖のように思える土地の窪み、風化はしているが――」
ウルトリィ「人の世が創られた時……この地は『浄化の炎』に焼かれたのです」
「数多の年月を経て、自然は元に戻りましたが……」
ハクオロ「……あれが、宗廟か」
抉りとられた地の底に、一部を破壊されてはいるが、今なお巨大な建造物が存在している。
石を切り出して造られたそれは、円柱状の塔のようだが……
ハクオロ(どでかい『筍』にしか見えん)
ウルトリィ「下への道は此方です」ヒラリ
「ウォプタルを降り、わたくしについてきて下さい」
―――――
―――
―
〜 オンカミヤムカイ・宗廟入口 〜
宗廟の入口は破壊の痕跡が生々しい。
アヴ・カムゥを出入りさせる為に、壁を壊し大穴を開けたようだ。
ウルトリィ「この宗廟の最奥に……『封印の門』があります」
「……本当に、宜しいのですね」
ハクオロ「…………」コクリ
ウルトリィ「……行きましょう」
79 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 21:12:58.40 ID:9USCS+xSO
…………
〜 封印の門 〜
オボロ「……壮観だ」
門扉のある空間は、神字が描かれた壁に囲われている。
ハクオロ「……封印の門は、これか」
ウルトリィ「はい……」
高さや幅のある壁に比べ、三人がなんとか横並びで通れる程度の扉……
ウルトリィがその門扉の前に立ち、呪文を唱え始めた。
ウルトリィ『ヴィダイ……』
『ディラデュム、ラクシャクル……ハイハナダ、ヤクトゥトス……』
ハクオロ「――っ!」ズキッ
アルルゥ「う〜……」
トウカ「声が…直接頭の中に響くっ……」
ウルトリィ『オーム…ヤァナ…ホトゥ…シーム…フラタ…マリス……』
ウルトリィの呪言が、周囲に融けていくと――
壁に彫られている文字は……青い光で点滅を繰り返した。
『ヴァ』 『ビィダ』 『ゥン』 『ダィ』 『ギ』 『ジャク』 『イー』
『リィ』 『コトァ』 『ボォク』 『ロョゥ』 『アヌ』 『ジィー』
『ジュ』 『ウゥブ』 『ゾル』 『エフタ』 『ヌーサ』 『ヘィス』
『ドィ』 『ヤグュ』
ウルトリィ『 アーン!! 』
ゴォン… ゴォン… ゴォン… ゴォン…
ガゴン ガゴン ガゴン
エルルゥ「扉が……開いてく……」
80 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 21:17:22.57 ID:9USCS+xSO
ゴゴゴゴゴゴ… ズン…
カルラ「中から…風…… ングッ!?」
ベナウィ「く…この臭いは……」
クロウ「――臭ぁッ! 何だこの臭いっ! 鼻が曲がっちまう!」
ドリィ「ふ、腐臭?」 グラァ「ちょっと違う……」
ハクオロ「……何か来る!」
ズチョ グチャア ヌチヌチャ ベチョゥ…
アルルゥ「……くしゃい」
オボロ「赤い……なんだ『アレ』は!」
肉塊共『…………』ズル… ズル… ズル…
ハクオロ「赤い…肉塊…… 分身が言っていたのは――」
カツ カツ カツ カツ…
『やっぱり、来てしまった……』
アルルゥ「カミュ、ちー?」
ウルトリィ「カミュ……」
ムツミ『今の私は、あの子じゃない』
ハクオロ「……ムツミと言ったな。カミュはどうした」
ムツミ『あの子と、話したいの?』
ウルトリィ「!! カミュの意思があるのですか!」
ムツミ『うん。じゃあ、変わってあげる』
パアッ キュィン!
カミュ「お姉様、おじさま……なんで来ちゃったの?」
81 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 21:19:13.07 ID:9USCS+xSO
ハクオロ「君と、ゴローさんを迎えに来た!」
ウルトリィ「…………カミュ、貴女まさか」
カミュ「……そうだよ、お姉様。カミュは自分で此処に居るって決めたの」
「ムツミに従ってじゃない…… ちゃんと選んで、こうしてる」
ハクオロ「……カミュ」
アルルゥ「カミュちー…いっしょにかえる!」
カミュ「ゴメンね、アルちゃん。もう少しだけ待ってて」
「ゴローおじさまの封印が終わったら、また遊べるから……」
カミュ「……お願い。今は帰って」 バサッ バサッ…
ハクオロ「待てっ!!」
ガゴン… ゴゴゴゴゴゴ… ズンッ!
エルルゥ「へっ? し、閉まっちゃった……」
ハクオロ「ウルトリィ! もう一度呪文を!」
ウルトリィ「(呪文省略) ……!? 駄目です、開きませんっ!」
一同「「「な、なにいーーーーーっ!!!」」」
82 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 21:21:00.92 ID:9USCS+xSO
…………
ウルトリィ「ど、どうしましょう……」
オボロ「兄者っ! 無敵の策でなんとかしてくれよぉ〜〜!」
ハクオロ「策で封印の門を開けられるかっ!!」
ウルトリィ「……あ!」
カルラ「どうしましたの?」
ウルト「昔、お父様が『封印は五文字の言葉でも解ける』と……
言っていたような、なかったような……」
ハクオロ「五文字の、言葉?」
トウカ「なら、順に音を並べて言えば……」
ベナウィ「……時間がかかって仕方ないでしょう」
クロウ「なんか他に言ってなかったんすか?」
ウルトリィ「ええと……確か……」
〜〜〜〜〜〜
ワーベ「……扉を開くのには、『愛』が必要だぞ」
〜〜〜〜〜〜
83 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 21:24:28.76 ID:9USCS+xSO
ウルトリィ「なんて言っていたかも……?」
ドリィ・グラァ「「 若様 あ い し て る!」」
シーン…
トウカ「……ダメですね」
ハクオロ「アイラブユー。 ……開かんか。アイニージュー…これも違う」
エルルゥ「ハ、ハクオロさん?」
ハクオロ「……ジュテーム?」
シーン…
ハクオロ「もっとキザなら… ジュブゼーム!!」
シーン…
ハクオロ「発音が悪かったか?
ジュヴュゼェェェム、ジュブゼェェンム、ジュブゼェームッ」
シーン…
ハクオロ「…………他の言語だと」
ウルトリィ「ああっ! 申し訳ありません! お父様は……」
〜〜〜〜〜〜
ワーベ「異性の心の扉を開くのには、『愛』が必要だぞ」
「わしが歳の離れたお前達の母を口説いたのは――」
〜〜〜〜〜〜
ウルトリィ「と言ったんでした!」
ハクオロ「あの爺さん、娘に何を言ってるんだぁっ!!」ジタバタジタバタ
「あんな恥ずかしい言葉を連続で言っちゃったじゃないかぁぁぁ!!」
アルルゥ「おとーさん……ヘン」
ハクオロ「くそう、あと扉を開ける言葉なんて……」
「『ひらけゴマ』くらいしか」
ガゴォ…ゴゴゴゴゴゴ… ガチャン…
封印の門 <アイタヨ
ハクオロ「……oh」
オボロ「さすが兄者だ!」グッ
ウルトリィ「お見事です!」パチパチ
ハクオロ(恥ずかしいっ! 皆はこの言葉を知らないけど! 何故か恥ずかしい!!)
84 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 21:28:27.35 ID:9USCS+xSO
〜 封印の門・内部 〜
周囲を警戒しながら、一行は着実に進む。
カルラ「……この床や壁、どういう物質で造られているのかしら」コンコン
ベナウィ「金属のような光沢があります」
ハクオロ「この場所は……壁や床に、複数の材質を層状に重ねて作っている」
トウカ「??? さっぱり判りませぬ……」
ハクオロ「瓦礫を見れば、わかるだろう。ほら…そこに」ピッ
ドリィ「あ、本当です。層になってます」
グラァ「中に入っている棒はなんだろ?」
ハクオロ「うん、これは鉄筋だな。コンクリートの補強に使うんだ」
オボロ「……兄者、どうしてそんな事が判る。
オレには、聞いた覚えの無い名ばかりだ」
ハクオロ「…………此所を、知っているんだろう。いや…『居た』のかも」
エルルゥ「じゃあ、この建物が……」
ハクオロ「私の失った記憶に関係している――ということだ」
アルルゥ「! またくさい……」
ムックル『グルルル……』 ガチャタラ『キュクルキュ〜…』
ズチャ ペクチュ ドロォ…
異邦人の行く手を阻むのは…… 先ほど目にした赤い肉塊の群れ。
目も、耳も、鼻もない……ただ『生きているだけ』の塊だ。
それらは腐臭を纏い、新鮮な『生命』にじわりじわりと接近する。
85 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 21:30:46.32 ID:9USCS+xSO
ハクオロ「……ウルトリィ、アレは何だ?」
ウルトリィ「我等を生み出したもの……大いなる父(オンヴィタイカヤン)の末路……」
「お気をつけ下さい。彼等は、生きている者を見境なく喰らいます」
エルルゥ「あれが……オンヴィタイカヤン……」
オボロ「何だろうと、邪魔をするならたたっ斬るまでだっ!!」
ハクオロ「やるか!」
オボロ「おうッ!!」
《 協撃!》
《 義兄弟の絆 》
ハクオロ「オボロっ!」 オボロ「はぁぁぁぁッ!!」
ザシュゥ!! ザシュゥ!! ザシュゥ!!
金剛扇を振るうハクオロと、双滅牙で舞うように切り刻むオボロ。
内に秘めた火神の熱気が刀身に込められ、敵の腐肉を燃焼させていく。
二人の攻撃に合わせ……
《 協撃!》
《 可愛余強百倍! 〜雷光一閃付き〜 》
トウカ「はぁああああ!!」 アルルゥ「トウカお姉ちゃん、いっしょ」
トウカ「例え我ら血が繋がらねども!この絆は鋼の如く!」
アルルゥ「ん〜ん?」キョトン
トウカ「ア、アルルゥ? いや、この前教えた続きを……」
アルルゥ「…………ん!」ピッ
トウカ「いや、そうではなくて……。ええぃっ! でりゃあああああ!」シュタッ!
ズシュ! キィン キィン キィン キィン
ガチャタラ『キュ〜ルルゥ!!』パチパチ
ビビビビビビ…
トウカ「…………」スッ キン
トウカの高速移動が残像を残しながら、前方の異形を囲む五芒星を形作り――
一呼吸遅れて、斬撃音。そしてガチャタラの雷撃が命中する。
アルルゥ「んふ〜〜」
トウカ「……くぅぅ〜。かわいいにゃ〜 もぉ〜」
86 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 21:35:19.75 ID:9USCS+xSO
ハクオロ「……片付けたか」
クロウ「千切れても千切れても、再生しますがね」
ウルトリィ「それでも、痛みは感じているのでしょう……
でなければ、逃げたりせずに襲いかかると思います」
ハクオロ「…………」コッコッコッ…
「ウルトリィ、道が左右に別れている。どちらだ」
ウルト「右の通路の先に階段があるそうです。左の扉は、何をしても開かなかったとか」
コッ… コッ… コッ… コッ… ピタリ
ハクオロ「……瓦礫で通路が埋まっているぞ」
ウルトリィ「おかしいですね……」
カルラ「わたしが持ち上げましょうか?」
ハクオロ「任せる」
カルラ「……よいしょ」グググ…
ベナウィ「……聖上、道が」
ハクオロ「地下への階段を塞ぐ瓦礫か。どうやら私達は歓迎されていないらしい」
カルラでも破壊出来そうにない巨大な壁の破片。
下に繋がる道筋は、無くなったようだ。
クロウ「壊されてから、さほど時間が経ってねぇ」
ウルトリィ「あの方が、やったのでしょうか……」
ハクオロ「――別の道だ。引き返す」
ウルトリィ「ですが、あの左の扉は――」
ハクオロ「……私達なら、開けられる」コッ コッ…
87 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 21:38:55.20 ID:9USCS+xSO
…………
全員が丁字路に戻り、開かぬ扉の前に立つ。
カルラ「壊しますわ!」ビュォン!!
ギギッ!
オボロ「……駄目だな。びくともしない」
」
ハクオロ「――エルルゥ、私の近くに」
エルルゥ「はい」トットッ…
ハクオロ「…………開け」
パッ! ヒュィンヒュィンヒュィン…
エルルゥの白輪の髪飾りがハクオロの声を認証し、輝きはじめた。
エルルゥ「え、え! 私の髪飾りが!!」
ハクオロ「――そうだ、これはこの施設の『マスターキー』」
「思い出して、きた……」
…キュイーン
ハクオロ「……開いたな。ここを少し行くと、広い空間に出る筈だ」
「あまり時間は取れんが、身体を休めよう……」
アルルゥ「……おとーさん、どこかいたい?」
エルルゥ「!! ハクオロさん、お顔が……青く!!」
ハクオロ「……気付かれたか。此所に来てから、ずっと頭が痛……」
クラッ… ガシッ
ドリィ・グラァ「「兄者様っ!」」
ハクオロ「う…すまん。ドリィ・グラァ……」
エルルゥ「は、早く休めるところに行かないと!」
88 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 21:42:36.20 ID:9USCS+xSO
…………
〜 研究施設内・中央空間 〜
彼等は瓦礫もほとんど無い、整った場所に出た。
ハクオロ「……エルルゥ、この先の…『寝台』のある部屋まで……」
エルルゥ「は、はいっ!」
クロウ「じゃ、俺が総大将を運びやす」
ベナウィ「……クロウ、そうもいかないようです」
ウジュル グチュジ… ベチュォ ヌペェ…
三度、彼等を狙う地下人類の成れの果て共。
十を超える数の塊が、餌を求めて這い回る。
ハクオロ「……み、みんな」
オボロ「兄者はエルルゥと共に先に行け!」チャキン
ドリィ・グラァ「「ここは僕達にお任せを!」」キリリ…
ベナウィ「私達の刃は、貴方の道を拓く為に」ヒュォン
クロウ「ま、護衛よかこっちのほうが面白そうだ」ブンブン
トウカ「エルルゥ殿にアルルゥ。聖上をお願いいたしまする」スッ…
カルラ「過去の骸が、今を生きる者の邪魔をする……気に入りませんわね」
ウルトリィ「……行って下さい。ハクオロ様」
ハクオロ「……では、必ず…生きて私を待っていろ……」
エルルゥ「アルルゥ! 進む前に!」
アルルゥ「うん!」コクン
《 協撃!》
《 究極の癒し 》
エルルゥ「アルルゥ、これでみんなを!」
エルルゥがアルルゥに薬を手渡し……
アルルゥ「うん。いけぇ〜!」
ムックル『グオオッ!』ダタッ!!
ムックルが走り、アルルゥが全員に薬を配る。
エルルゥ「皆さん、ご無事でっ!」トトト…
アルルゥ「ムックル! おとーさん、のせる!」
ハクオロ「……う、く」ドスン
ドドッ… ドドッ… ドドッ…
89 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 21:47:28.13 ID:9USCS+xSO
………………
…………
……
ガチャ キィー… パタン
ハクオロは、慎重に寝かせられる。
エルルゥ「ハクオロさん、記憶が――」
ハクオロ「戻り、始めているようだ……」
エルルゥは横たわるハクオロの側に、
アルルゥは壁や変わった箱に興味を惹かれたらしく、あちこちを見ている。
アルルゥ「ん? なにこれ?」ツンツン
ハクオロ「アルルゥ、そこは押していいぞ。『スイッチ』や『ボタン』だ」
アルルゥ「すいっち? ぼたん?」
ハクオロ「電気がないから、ただの出っ張りに過ぎん……」
アルルゥ「んっ! ぽちっ!」ポチッ
…ヴン パッ
ハクオロ「……つ、点いた? 違う、明かりじゃない」
エルルゥ「きゃあああっ!? あ、あそこに…『人』がっ!!」スッ
エルルゥの指の先、青い光の線で頭の先から足の爪先まで投影されたのは――
『人』のカタチ。そう、これは……
ハクオロ「立体映像!?」
アルルゥ「りったいえいぞー?」
??[カ、カレ……]
[かレ…彼が何者か……]
[か、カ、彼……]
ハクオロ「アルルゥ、前に置いてある箱を軽く叩いてくれ」
アルルゥ「うん、やっ」ポコッ
??[彼が何者かはわからない……]
[私達が『アイスマン』と名付けた彼の正体は、依然謎のままである]
ハクオロ「……『アイスマン』。くっ……」ズキッ
90 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 21:49:14.44 ID:9USCS+xSO
〜〜〜〜〜〜
女の子「具合、悪イデスカ?」
「ん…問題はないよ。すまないが水をくれないか?」
女の子「ハイ」
あの娘…エルルゥ? それにあの男がつけているのは……私の、『仮面』?
??[お目覚めかね『アイスマン』]
「ミズシマさん。おはようございます」
??→ミズシマ[何か思い出したかい?]
アイスマン「いえ…………すいません」
ミズシマ[そうか……その仮面の事だけでも思い出してくれると助かるのだが]
[ああ、気にしないでくれ。此方の話だ]
91 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 21:51:36.85 ID:9USCS+xSO
ミズシマ[『3510号』は君に迷惑をかけてないかね?]
アイスマン「迷惑なんてとんでもない。彼女はよくしてくれています」
あの子は……私の――
アイスマン「そうだ、聞こうと思っていたのですが…」
「どうして彼女を番号で呼ぶんです?」
ミズシマ[……実験体(マルタ)にはヒトの名前はつけられない。
私達には、そういう決まりがあるのだ……]
女の子「オ水ト……」コトン
アイスマン「……嫌な決まりですね」
ミズシマ[……良かったら、その子に名前をつけてくれないか]
[私は呼べないが、君が呼ぶのならかまわないだろう]
アイスマン「……考えてみます」
(この人達は、一体何様のつもりなんだ?)
ミズシマ[……良い返事を期待しているよ。仮面も名前もね]
[確か、そろそろ文字の学習の時間だったか。失礼する]
[素敵な名前をつけてやってくれ……] プツンッ
92 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 21:53:23.43 ID:9USCS+xSO
アイスマン「……名前、くらいは協力してあげてもいいか」
「名前か……キミはどんな名前がいい?」
3510号「 ? 」キョトン
アイスマン「それとも、名前なんていらないか?」
3510号「……3510号ッテ、ハカセガ付ケテクレタカラ」
アイスマン「いい子だ。……じゃあその数字をもじって」
「3、5、1、0……か」
アイスマン「『ミコト』なんてのはどうかな?」
3510号→ミコト「ミコト、ミコト ……トッテモ、トッテモ嬉シイデス」
アイスマン「さて、学習の前に水を……」ピタリ
ミコト「ドウシマシタ?」
アイスマン「……水の脇にある、真っ赤な物は何かな?」
……トウガラシ、のように見えるが。
93 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/25(木) 22:09:44.24 ID:9USCS+xSO
ミコト「オイシイデスヨ。ソレ、ワタシガ用意シマシタ」ニッコリ
アイスマン(……この娘が用意した、だと)
(味覚が違うのか? あの辛いトウガラシを旨い――)
ミコト「……食ベマセンカ?」ションボリ
アイスマン「い、いやいや! いただきますよぉ!」
(ええい! 私も男だ! 辛い物くらい――――)
ぱくん!
アイスマン「ぶふっ!? これ……『甘い』ぞ!?」ゴホゴホ
94 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/25(木) 22:25:16.69 ID:9USCS+xSO
[学習の時間だ――どうした、アイスマン?]
アイスマン「い、今甘い植物を――」
[おお、食べてくれたか。旨いだろ、その実]
アイスマン「ビックリしましたよ! トウガラシかと思って色々覚悟しました!」
[ははは、流石にオヤツとしてトウガラシを出す気にはならないな]
アイスマン「これも……貴方が作った物なんですか?」
[ああ。俺は甘いものに目がないんだ]
[この前、「定期配給で『和菓子』が貰える月がやって来た!」と思ってたら……]
[係に「ごめんなさい。それ、来月からなんですよ」……って言われてな]
[……カレンダー、次からはちゃんと確認しないとな。酷い目にあうから]
95 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/25(木) 22:27:22.39 ID:9USCS+xSO
アイスマン「ふふっ……貴方は犬ですか」クスクス
ミコト「ゴロサン、シッポ アルンデスカ?」
[3510号、今のは『例え』と言うんだ]
アイスマン「彼の振る舞いや行動が、犬という動物に似ているという意味だよ」
ミコト「ウーン… 難シインデスネ」
立体映像のあの男、どこかで……
[言葉がだいぶ上手くなったなぁ]
アイスマン「『マツシゲ』さんが教材を見せてくれますからね」
[……御世辞。俺には意味がないぞ]
アイスマン「本心ですよ。貴方のおかげで自分は、
この子やミズシマさんと意志疎通が出来るようになりましたから」
マツシゲ[……今日は、お前の宿題を多くしよう]
アイスマン「マツシゲさ〜〜ん!?」
ミコト「二人ハ仲良シ小良シ、デスネ♪」
第二十八話「オンカミヤムカイの焼きまんじゅう」
続く!
96 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)
[sage]:2012/10/25(木) 22:29:23.23 ID:rWqIDLljo
乙
97 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/10/25(木) 22:45:27.50 ID:9USCS+xSO
投下終了。うたわれ世界へのゴローの介入は……こんな昔からあったのだ。
本日の小ネタは、高名な物理学教授の言ったものであります。
「なぜベストを尽くさないのか」……いい言葉だ。
この物語はフィクションです! 実際の(略)
過去ゴロー……『マツシゲさん』が登場。
モデルは勿論、ドラマ孤独のグルメ主演のあの方。
前スレにあった疑問(レス番号816)に答えます。
これまで回答しなかった事、お詫びいたします。
この『現在ゴロー』はドラマと違います。
声がハクオロさんと同じだし、最初の頃は優しくありません(戦闘参加もする)。
過去の記憶が戻るにつれ、段々とドラマよりに変わっているのです。
では、また次回に。
98 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福井県)
[sage]:2012/10/26(金) 00:49:39.28 ID:7RqqfdP5o
トリックネタか
99 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/10/26(金) 08:14:51.00 ID:ifVyNN8T0
なぜベス家にあるわ、ブックオフで100円だった
100 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/26(金) 09:04:40.57 ID:1KcUh3ESO
乙
101 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2012/10/26(金) 17:46:46.53 ID:Q87n6ODKo
トリックネタで思い切り笑っちまったwwx
102 :
◆M6R0eWkIpk
[sage]:2012/10/26(金) 19:49:54.50 ID:+1YrY1eSO
ドラマも放映しているので、私の前作を宣伝。
井之頭五郎「ここがとわの市か…」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/kako/1332943201/
ラブプラスの舞台、「とわの市」を仕事ついでにぶらつく五郎のSSです。
食事描写も詳しく、ドラマ五郎っぽい内容となっております。
……改行のミスが目立ちますが、良ければご覧下さい。
103 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/26(金) 20:16:18.63 ID:+1YrY1eSO
こっちは携帯用
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/kako/1332943201
104 :
◆M6R0eWkIpk
[saga sage]:2012/10/28(日) 23:10:19.55 ID:Gte6WxPSO
第二十九話「過去編・研究施設の合成食糧」
巨大な氷塊から解凍された、一人の男。
話してみたらなかなか愉快で、不思議な奴だった。
マツシゲ「……そろそろ、俺の役目も終わっていいんじゃないか?」
アイスマンが甦って、数ヶ月。もう言葉や文字に関しては完璧だと思う。
別の仕事もしているので、正直辞めたいというのが本音。
最近、俺はマルタ達を指揮して地上での暮らしを模擬実験しているからなぁ。
マツシゲ(この研究室内から、指示を飛ばすだけなのが……嫌だな)
ギッ カツ… カツ…
……個人的に『調査』せねばならない事があるから、地上に行けないのは仕方無い。
マツシゲ(俺の研究で完成した、新種の芋。コイツの詳しい調査だ) ピッ
ウィーン…
研究室に隣接した病室を開けると、薬物や消毒液の匂いが、鼻腔を満たす。
女の子「…………」シュー… シュー…
マツシゲ(……このコで、二例目。症例が足りない)
体内であの食糧の成分が変質したのか……
それとも、最初から極一部のマルタにとって有害なのか……
俺に出来る対症療法では、病は止まらなかった。
マツシゲ(マルタは……俺達に『創られた命』。それはわかっている)
上の奴等は『実験体』なんて歯牙にもかけていない。
だけど……このコは生きている。
マツシゲ(病は治せなくとも、身体の治癒力を高めてやれば……)
ついこの前見つかった紫色の石。早く成分を研究して……
マツシゲ「…………待っていてくれ」クルッ
カツ… カツ… カツ…
105 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/28(日) 23:15:14.72 ID:Gte6WxPSO
――――
〜 アイスマンの隔離室 〜
アイスマン「……マツシゲさんとの楽しい時間も、これで終わりですか」
立体映像が二人の研究者を形成する。
ミズシマ[彼から依頼があったことだ]
マツシゲ[途中から、俺の持っている収集品の鑑賞会になっていたろう。
他に優先してやりたい事が出来たんだ。……すまない]
ここ何回かは、自由読書の時間になっていたし。
アイスマン「……御二人は自由に振る舞えて、良い身分ですね。
自分はこの部屋からずっと出られないってのに」
「貴方が宿題として私に課した書籍データを見て、
一日の退屈や鬱憤を晴らすことも出来なくなる……」
こ、こいつ……
ミズシマ[…………]
マツシゲ[……今の言葉、俺達への皮肉か]
アイスマン「……? 皮肉?」
……知らされて、いない?
マツシゲ[……言っていいのか、ミズシマ]
ミズシマ[……我々の状況についての話は上に止められている]
アイスマン「……?」
……なら、この感情は仮面の男に落としちゃいけない。
マツシゲ[……お前の端末から俺の記録デバイスへのアクセスを承認して貰ってある]
ミズシマ[……余暇時間はそれを閲覧するなど、好きなように過ごして構わない]
アイスマン「……わかりました」
マツシゲ[……何かあったら、俺かミズシマを呼べ]
ミズシマ[すまないが、私達は用事がある。失礼するよ]
プツン!
アイスマン「……少し、言い過ぎたかな」
キュィン!
アイスマン「あだだだっ! どうした『ムツミ』」
キュキュ… キーキキッ
アイスマン「遊ぼう? 今日はなんだ? チェス? 将棋? オセロ?」
106 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/28(日) 23:17:58.46 ID:Gte6WxPSO
――――
……通信端末でミズシマと会話する。
マツシゲ「悪気は無かったんだろうが……」
ミズシマ『……今の彼から見たら、自分が籠の鳥だと思うさ』
あんな環境じゃあ、ストレスが溜まるに決まってる。
だが、もう少し言い方があるだろう。
マツシゲ「本当の籠の鳥は……俺達の方なのに」
ミズシマ『この地下施設から、我々人類は出られない……』
俺達、人類の生き残りは……地球上の環境に『耐えられない』。
いったい、何百年前の事だったろうか。
原因は未だに不明だが……この地球は『人類』を『拒絶』した。
大気や土壌、水の汚染。自らの蒔いた種で、滅びの道を歩んだとも言えるかもしれん。
極々少数の生き残り……偉いさんや研究者達は、
巨大な地下シェルターに逃げて大地が美しく甦るのを待つ事にしたそうだ。
人類は美しい環境を戻す為、技術を進歩させていって……
長い時と人の技が融合し…… 空、海、陸地はすっかり元に戻る。
ようやく蒼と緑の星、地球は生き返った……
マツシゲ(……SF映画なら、人々が太陽の下に出て『終』と出るだろうなぁ)
……俺達の祖先は『そうならなかった』。
地に出でた人間は、悉く『命を散らした』のだ。
地下での、有害な物質の一切無い……そんな暮らしに慣れすぎた人類は……
地上の菌類、日射し、その他のものに抵抗する『身体の力』を失っていた――
マツシゲ(命が元々持つ……何らかの要素が欠けてしまったのだと思う)
それでも諦められない『ヒト』は、地上に君臨する事を求め――
研究者達は、地上に帰る方法を模索し続けた。
マツシゲ(……色々な方法が考案された。俺の食糧研究も、その中の一つ)
そんな中、人類は……氷に閉じ込められた『人間』を見つける。
『アイスマン』。人類復権の可能性を握る、古代のヒトを……
107 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/28(日) 23:20:42.67 ID:Gte6WxPSO
――――
〜 隔離室 〜
ピッ ウィーン…
ミコト「失礼しまス。お食事を持ってきましタ」
アイスマン「やぁ、ミコト。言葉が流暢になってきたね」スッ
薄い板状の携帯端末を指で操作しながら、
仮面の若者は『犬のような耳と尻尾を持つ娘』の方向を向く。
ミコト「何ヲ、見ているんですカ?」
アイスマン「マツシゲさんの持つ『本』だよ」
「閲覧可能な物は、限られているけどね」
アイスマン「昔の農業や、鉄の作り方なんてのは見れた」
ミコト「? よく判りませン」
アイスマン「ハハッ、すまんすまん。じゃあ、食事を頂くよ」
ミコト「はい、ドウゾ!」ニコッ
【 合成食糧 】
見た目は袋に入れられたビスケット。味は特にない。栄養バランスは完璧。
アイスマン「……これ?」
ミコト「ごめんなさイ。私達と同ジ内容ハ駄目って……」
アイスマン(……この前の、仕返し? そんなわけはないか)
ミコト「ア、あの……」
アイスマン「ん? どうしたんだい?」
ミコト「き、今日ハ…隣で食べていいですカ?///」
アイスマン「ああ、いいよ。じゃあ…自分の隣においで」
ミコト「し、失礼シマス///」ストン
アイスマン「よし、食べよう」
ミコト「ハイ!」
そんな彼等の様子は、カメラで確認されている……
配信先は、アイスマンの担当である『ミズシマ』の研究室だ。
108 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/28(日) 23:24:37.92 ID:Gte6WxPSO
…………
〜 マツシゲの研究室 〜
昼飯時に、ミズシマから通信が入る。
ミズシマ『マツシゲさん、貴方……』
マツシゲ「俺達の一般的食事を味わって貰う事でおあいこだ」
3510号は無事に食事を運んでくれたか。
ミズシマ『そんなだから、貴方は出世しないんですよ……』
マツシゲ「地位もミズシマに抜かれたからなァ」
ペリッ… むしゃ…
うーん、味がほとんどない。
マツシゲ「権力者の方々は狡いもんだ。いろいろ、食べてるんだろう?」
ミズシマ『……世の理ってやつでしょう』
上の者が旨い食べ物を独占する……か。
良いことじゃないと思うけど。
失敗作とされるマルタの一部には、栄養不足が原因と見られる者もいる。
実際、そういったマルタを俺の地上実験チームに組み込んだら、
作業効率が改善されたり、肉体の力が大幅に上がったマルタも存在した。
そう言えば…礼として、マルタ達から地上栽培した『改良芋』を貰ったな。
マツシゲ(自分で入念な殺菌・消毒をしてから頂いたら……)
滅茶苦茶、旨かった。
マツシゲ「ミズシマにも、あの芋をお裾分けしたっけ」
ミズシマ『ああ、貴方の改良した芋か……』
ぽり ぽり…
ミズシマ『……あの芋、旨かったよ。“ゴローさん”』
マツシゲ「…………名前で呼ぶのは珍しいな」ムシャ
ミズシマ『……なんだろう。ふと呼びたくなったのさ』
マツシゲ「そうか……」ゴクッ ゴクッ…
乾いた口を水で潤す。これ、楽しみの一つだ。
109 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/28(日) 23:27:35.38 ID:Gte6WxPSO
ミズシマ『……? まただ』
マツシゲ「何があった?」
ミズシマ『アイスマンの部屋のコンピュータに、強制介入された』
マツシゲ「!? 不味いんじゃないのか」
ミズシマ『いや、介入と言ってもほんの数秒……
それも音声プログラムに侵入するだけなんだ』
マツシゲ「そこまで、わかっているなら……犯人の心当たりはあるんだな」
ミズシマ『……無くは無い。しかし……“有り得ない”』
マツシゲ「……?」
ミズシマ『……上からの呼び出しだ。すまない、今の話は忘れてくれ』
プツンッ
マツシゲ「…………よくわからんが、俺は俺の仕事を再開しよう」
しかし、あのセキュリティの厳重な部屋に侵入とは……
マツシゲ「……気になるなあ〜〜」
110 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/28(日) 23:29:56.53 ID:Gte6WxPSO
………………
……あの、病の女の子が亡くなった。
マツシゲ「…………」
…………間に合わなかった。
パアッ ウィィィン… チリン
ミズシマ「マツシゲさん」
マツシゲ「……部屋の鍵は掛けておいた筈だぞ」
ミズシマ「私には、『マスターキー』がありますから」カチャ チリン
マツシゲ「まだ返してなかったか…… それに…鈴?」
『鈴』のついた白い腕輪。無くさないようにという配慮かね……
ミズシマ「この鈴を、3510号の首輪に付けてやろうと思いましてね」
ミズシマ「……お前も、入れ込んでるな」
……俺みたいになるぞ。
111 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/28(日) 23:33:47.94 ID:Gte6WxPSO
ミズシマ「……マツシゲさん。私と一杯やりませんか」トン
マツシゲ「俺、飲めないぞ」
ミズシマ「酒の力は……要りませんか」
マツシゲ「……今日は、貰うよ」
俺達は二人、滅多に手に入らない嗜好品を味わう事にした。
その日は、生命や俺達の『咎』について語り合う。
マツシゲ「……もう少し。あと少し時間があったら……」
ミズシマ「私達が『神の設計図』を弄った為……とも考えられます」
マツシゲ「俺達のしてきた事は、命を救う事なのか……
それとも、生命を冒涜する所業なのか……」
ミズシマ「……貴方はまだいい」グイッ
「私は…実験に利用され、死んでいくマルタ達の…親みたいなものなんだ」
112 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/28(日) 23:36:26.93 ID:Gte6WxPSO
マツシゲ「ミズシマ……」
ミズシマ「――数分前まで笑顔だった実験体が、
『サンプル』として解体・保存されるところも見てきた」
マツシゲ「…………」
ミズシマ「意識が、徐々に麻痺してくるんだ……」
「私達の都合だけで命を創り、殺し続ける」
ミズシマ「そんな生活に、慣れつつある自分が……怖い」ブルッ
マツシゲ「俺も、似たようなものだ……」
俺も実験と称して命を犠牲にし、
安全な食糧を作り出してきた研究者なのだから……
マツシゲ「疲れたな……」
ミズシマ「ああ……」
113 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/28(日) 23:38:28.16 ID:Gte6WxPSO
マツシゲ「……暗い話題は、止めよう。最近のアイスマンはどうだ?」
ミズシマ「…………特に異変は無いよ。貴方のコレクションに夢中だ」
マツシゲ「ほーぉ」
ミズシマ「料理や食事の本を度々見ているね」
……趣味が合うじゃないか。その内、語り合いたい。
マツシゲ「……なら、これをアイスマンにやってくれ」スッ
ミズシマ「……『孤独のグルメ』?」
マツシゲ「その主人公には、妙に親近感があってな」
ミズシマ「名前が同じだからだろ」フフッ
マツシゲ「……そうだソーダ。そのとおーり」ヒック!
ミズシマ「マツシゲさん?」
マツシゲ「…………うーん」パタッ
「…………」スースー スースー
ミズシマ「……本当に弱いんですね。ゴローさん」
「おやすみなさい。良い夢を――」
カツ カツ カツ… コロッ
──チリン♪
114 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/28(日) 23:39:41.58 ID:Gte6WxPSO
―――――
―――
―
〜 オンカミヤムカイ・??? 〜
薄暗い空間で、俺は目覚めの時を迎える。
ゴロー「懐かしい、夢を見たな……」
俺がまだ『ヒト』だった頃の……記憶。
ゴロー「あの時、ミズシマは鈴を忘れていったっけ」
鈴を忘れた理由は、酔っ払っていただけじゃないかもしれん。
……酒を飲んだあの日に、ミズシマは『知っていた』筈なんだ。
でなければわざわざ俺の所になんて……来ない。
ゴロー「……俺は意識せずアイツを…… 動かしてしまった」
ミズシマの機微に気付いていれば、あの事件は――
ゴロー「……飲んだ日の三日後、処分予定のマルタ達と共に――」
「再凍結される筈だったアイスマンは……研究所から逃亡した…………」
115 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/28(日) 23:43:22.70 ID:Gte6WxPSO
〜 隔離室 〜
アイスマン「…………今、なんと?」
ミズシマ[……今日、正式な形で決定された]
[アイスマン、議会は君の再凍結を可決・承認した――]
アイスマン「…………なに?」
ミズシマ[明朝、定期診断と偽り君は凍結される。次に目覚めるのは
――いや、もう目覚める事はないかもしれない……]
アイスマン「な――何だそれは!? 何故そんなことに!」
ミズシマ[……一通りのデータ収集はしたが、
君にたいしての研究が終わったわけではない]
[その先の研究は『まだ時間がかかる』と判断された。
なので貴重な『サンプル』を将来の為に『保存』しておく]
アイスマン「サンプル……」
「まるで人を…モルモットか何かのように――」
アイスマン「! そうか、最初からそのつもりで……」
「氷に閉じ込められていた自分を蘇生させたのは、
仲間を助けたのではなく、ただ『研究の素材』として――」
アイスマン「それを、あたかも命を救ったかのように……騙していたのか!!」
ミズシマ[否定はしない。謝罪しようとも思わない。恨みたければ恨んでくれ……]
116 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/28(日) 23:46:01.65 ID:Gte6WxPSO
アイスマン「……その事を自分に教えてどうする。
最後の一日を、味わえとでも言いたかったのか!」
「冗談じゃない! なんとしても、ここから逃げてやる!!」
アイスマン「自分は『人』だ! お前達の実験動物じゃないっ!!」
ミズシマ[……その言葉が聞きたかった]
アイスマン「……!?」
ミズシマ[これからしばらくの間、施設の全セキュリティを無効にする]
[君はその間に、地上へ逃げるといい]
ミズシマ[同時に、廃棄処分が決まっていたマルタを全て解放する。
その中に紛れ込めば、監視の目を眩ます事が出来るだろう]
ミズシマ[地上に出てしまえば、探し出すのは難しくなるからね]
アイスマン「……また、騙すつもりか。そんな嘘を――」
ミズシマ[……もう、私が君に嘘偽りを言う意味なんてない。だから、話す]
[……私は、疲れてしまったんだ]
アイスマン「な、何を言う――」
ミズシマ[人間の亜種を創る。その罪の意識、君には判るまい……]
[神の真似事をし、創った『もの』を人間ではないと
心の中で誤魔化して! その脳や臓器を弄ぶ!]
アイスマン「罪滅ぼしだとでも言うつもりか!」
ミズシマ[罪滅ぼし……か。それなら、良かったんだがね……]
[――『怖い』からだよ、アイスマン]
117 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/28(日) 23:48:44.16 ID:Gte6WxPSO
アイスマン「怖い?」
ミズシマ[ああ。一番怖いのはね、『慣れて』しまうという事]
[それまであんなに苦痛と感じていた事柄が…… 辛くなくなってくる]
ミズシマ[少しずつ、自分の罪の意識が麻痺してゆくんだ]
[……いつかは、その事に何も感じなくなるのだろう]
ミズシマ[自身が『ヒト』ではなくなる。それが堪らなく、怖いのだよ……]
アイスマン「……自分が脱走したら、あんたはどうなる」
「そんな事をしたのがバレたら、只ではすまない筈だ!」
ミズシマ[私の事なら、心配いらんよ。そう簡単にヘマはしない]
アイスマン「――共に、逃げないのか」
ミズシマ[地上へかね。……なんと魅惑的な言葉だ]
[私はただの人間だ。地上の環境には耐えられない]
ミズシマ[君やマルタ達しか、あの美しい空を直接見る事は出来ないんだ……]
アイスマン「! 前に言い争いをした時――」
ミズシマ[……篭の鳥は、君じゃない。私達の事さ]
[君の前に立ち、姿を見せなかったのも……それが理由だ]
ミズシマ[君にとって何でもない、小さな細菌やバクテリア。
それらが……今の人類にとって致命的になりうるのだ]
ミズシマ[皮肉なものだな。星を再生させる為に永い年月と多大な能力をかけてきたのに……]
[私達の肉体は、この温室のような環境でしか生きられなくなっていた……]
ミズシマ[……故郷は、地球。しかし、私達は星に異物とされてしまった]
[ヒトが大地に立つには、宇宙服並の装備が必要なのだよ?]
118 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/28(日) 23:51:45.16 ID:Gte6WxPSO
アイスマン「…………」
ミズシマ[……それに、誰かが残ってセキュリティを監視せねばならない]
[……だから、私は行けない]
アイスマン「ミズシマ……さん」
ミズシマ[代わりと言ってはなんだが、一つだけ君に頼みがある]
[……そろそろ来る]
ピピッ ウィィーン
ミコト「こんにちハ」
アイスマン「ミコト……?」
ミズシマ[一緒に……その子も連れて行ってやってくれないか]
ミコト「ハカセ?」
ミズシマ[その子は君に懐いている。君が居なくなった時、孤独に耐えられまい]
ミコト「で、でもハカセ、私ハ……」
ミズシマ[お別れだ3510号。これからは自分の為……好きなように生きてくれ]
ミコト「……ハイ」
ミズシマ[『命(ミコト)』か。良い名をつけて貰ったな]
[――元気でな、ミコト]
アイスマン「ミズシマさん……貴方は」
ミズシマ[アイスマン。娘を、よろしく頼む]
アイスマン「……この子は大切に預からせて貰います」
ミズシマ[ありがとう。感謝するよ]
119 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/28(日) 23:53:58.22 ID:Gte6WxPSO
アイスマン「こっちも一つだけ頼みがある。『63号』も連れて行きたい」
ミズシマ[……63号か]
[残念だが、それは無理だ]
アイスマン「……何だと? ムツ…63号は――」
ミズシマ[――その番号は、『存在しない』]
アイスマン「は……」
ミズシマ[No.63は……『ロストナンバー』。廃棄された番号なのだよ。
正確に言うと、廃棄ではなく、サンプルとして保存された番号だ]
アイスマン「は、廃棄された? だったら、あれは……」
ミズシマ[おそらく君は、存在しないものの思念と会話していた……]
[私には、そうとしか思えない]
アイスマン「巫山戯ないでくれ、そんな事が……」
ミズシマ[63号は……『解剖』された。今は脳髄のみ保存されている]
[私は……その場に、立ち会っていたのだ]
アイスマン「…………」
ミズシマ[……地上までの道のり、途中に幾つかこちらでは開けられない場所がある]
[その時は、ミコトに持たせたマスターキーを使ってくれ]
ミズシマ[君の声紋を登録しておいた。鍵の近くで声を出せば、どの扉も開く]
ミコト「ハイ……こレ。ハカセから預かっタ」スッ
アイスマン「腕輪のようだが……」
ミズシマ[馴染みのない形だと思うが、無くさないよう大切にして欲しい]
[……さぁ、始めよう。準備はいいか]
アイスマン「行こう、ミコト」グイッ
ミコト「あっ――」
ウィィーン… タタタタタ…
ミズシマ[さよならだ、ミコト。私の可愛い娘……]
120 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/28(日) 23:55:28.78 ID:Gte6WxPSO
……………
『行カナイデ……』
『ムツミ ヲ、置イテイカナイデ……』
『トウサマ…………』
121 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/28(日) 23:58:26.58 ID:Gte6WxPSO
―――――
―――
―
ハクオロ「 !? 」
ミズシマ[結局、それが何かを知る事は出来なかった]
[私達が『アイスマン』と呼ぶ、ヒトでありながらヒトでない存在]
ミズシマ[……あれは、決してヒトが触れてはならないものだ]
[上層部は、それを判っていないようだが……]
ミズシマ[アイスマンがつけていた『仮面』]
[これから伸びる太さナノ単位の糸が、脳内に張り巡らされる。
そして…脳内で網の目状になり、バイパスを形成するようだ]
ミズシマ[機能が明確な点について、脳手術をマルタにしたところ、
脳の処理速度や肉体の各能力の向上が確認された]
[この技術を応用すれば、人類の衰えた肉体を
地上で生きていた全盛期まで戻す事が可能かもしれない]
ミズシマ[……可能性の話だ。実験とは違う]
[しかし、上層部は……『複製品』を造り出してしまった]
122 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/29(月) 00:00:36.99 ID:F0x9+AwSO
ミズシマ[素材に強化セラミックを中心としたケイ素化合物を使用]
[六重の断層間にはマインポリマー。
核(コア)となるオーダイムストーンには
構造が近いハルパス結晶を代用したらしい]
ミズシマ[……だが、あくまで『レプリカ』。研究データによると……]
[形成されるバイパスのうち、三千六十一本が役割不明とある]
ミズシマ[――そして、不可解な点はもう一つ]
[アイスマンが生きていた時代は、氷の炭素測定や
マツ…私の友人の研究者により特定されたが……]
ミズシマ[『その時代に、仮面の技術は確立されていなかった』]
[オリジナルの仮面自体を調査した結果……]
ミズシマ[アイスマンの時代より、更に数百万年以上前から存在していたと記されている]
[……あの仮面は造られたものではない]
ミズシマ[自然なもの……何かの骨のような――]
ミズシマ[――知ってはいけないと思いながらも、知識を求めてしまう]
[これが、人類の最大の業なのかもしれない……]
123 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/29(月) 00:02:34.36 ID:F0x9+AwSO
ガンッ キィィィ…
ミズシマ[……気付かれたようだ。どうやら、あちらも必死らしい]
[それ程までに、強い肉体を手に入れたいものなのか……]
ミズシマ[最後に……幾つか言い残しておく]
[……彼に伝えられなかった事がある]
ミズシマ[マルタ…と私達が呼ぶ実験体の事だ]
[人類の肉体強化研究の為に、造られたマルタは……]
ミズシマ[――全て、アイスマンを素体として造られている]
ハクオロ「…………自分を?」
ミズシマ[特に63号は『複製体』だ。彼に最も近い存在と言える]
[マルタの全ては……彼の娘であり、息子である]
ミズシマ[我々は、彼の子等を実験体としていたのだ]
[……中でも63号は、『マルタを統率する者』として試作された]
ミズシマ[だが、余りに高すぎるポテンシャルだった為に、封印された]
[脳髄だけの姿で……父であるアイスマンを思い焦がれたのだろうか]
124 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/29(月) 00:03:45.91 ID:F0x9+AwSO
ミズシマ[……私は、最後までこの事を教えられなかった]
[教えていたら、彼は……私を許さないかったろう]
ミズシマ[今更許されようとは思わない]
[謝る事で少しでも楽になろうとする自分が許せない]
ミズシマ[だがやはり……彼に一言謝りたかった]
[願わくば、あの子が幸せでありますよう――]
ミズシマ[良識ある者が、これを聞いたら……友に――]
ブツン……
ハクオロ「…………」
エルルゥ「どういう意味だったんでしょう……」
アルルゥ「わかんない」
ハクオロ「……うっ」スタッ
エルルゥ「ハクオロさん、まだ起き上がっちゃ……」
ハクオロ「もう、平気だ。エルルゥ」
エルルゥ「でも……」
ハクオロ「皆のところに戻ろう。先を急がないと……」
エルルゥ「……………」
125 :
前レス二行目、許さないかった × → 許さなかった ○
[saga]:2012/10/29(月) 00:07:19.76 ID:F0x9+AwSO
〜 過去・地上 〜
鎧を装備した巨体に乗り込み、雨で濡れた大地を踏みしめる。
マツシゲ「……アベル・カムルか」
まさか、あのアイスマンを探す為に使うとは……
朱と黒の装甲が毒のある生き物のようだ。
ザザザッ…
地下からの通信が入る。
男の声『捜索部隊は東西南北、全方位に散らばれ』
『逃亡から一日ほどしか時間が経っていない。まだ近辺にいる筈だ』
男の声『マツシゲは西を担当しろ』
『お前はミズシマやアイスマンと交流があった』
『そのせいか、議会は今回の事態にお前も関与したと考えている』
男の声『お前がアイスマンを捕獲すれば、疑いも晴れるだろうよ』
マツシゲ「……ご忠告をありがとう」
ブチッ
マツシゲ「……西か」
俺は何をしているんだろう。
……議会の対応は、過剰だ。過剰すぎる。
マツシゲ(ただの人間相手にアベル・カムルを四体……)
他に、兎みたいなマルタを何十人も捜索部隊に組み込むなんて……
マツシゲ(とにかく、探そう。雨が激しくなってきた……)
ザァァァ… ザァァァ…
126 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/29(月) 00:11:24.03 ID:F0x9+AwSO
…………
『捜索隊応答せよ。こちらは……』
『現在、大型の低気圧が施設上空付近に停滞中。アベル・カムルは一時帰投を許す』
『マルタ部隊は、続けてアイスマンを捜索せよ……』
ブツッ…
マツシゲ「……酷い命令だ」
そんなに、アイスマンが大事なのか。
この木偶人形より、マルタの命は軽いのか……
マルタ男「隊長様、我々の任務は……」
足下にいるマルタが命令を待っている。
マツシゲ(中から)『……マルタ部隊は本部に帰還。俺はもう少し捜索を継続せよと』
マルタ男「かしこまりました!」
「これより、我々は基地に帰る!」
「「「ははっ!」」」
ザッザッザッ… ザッザッザッ…
マツシゲ「聞き分けのいい奴等で助かった」
「命令に絶対服従するのは……どうかと思うけど」
でも、雨と風が酷いなぁ。
これは…長く捜索出来ない感じだ。
マツシゲ「早いとこ……他のマルタにも帰還命令を出して……」
帰ったら…… あったかーいスープを飲もうじゃないか。
127 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/29(月) 00:14:17.12 ID:F0x9+AwSO
マツシゲ「あー…腹減った…… ん? 渓谷だ」
大きな断崖二つに挟まれて、谷の『道』が出来てる。
マツシゲ(念のため、中を調べてみよう)ズンッ… ズンッ…
道、最初は広いように見えたが……
マツシゲ(奥に行くにつれ、細くなっている)
そろそろアベル・カムルじゃ通れない。
これ以上奥には行けないだろうから、帰ろ………………おや?
マツシゲ(……『火』?)
ちろちろと、前の道を動いている。
松明だろうか。
マツシゲ(……こいつを降りて、尾行しよう)
地上行動装備に着替えて……
マツシゲ〔……行こう〕
カッ カッ カッ カッ カッ…
128 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/29(月) 00:18:18.68 ID:F0x9+AwSO
…………
〜 崖道の奥、洞窟 〜
ミコト「外は、ヒドイ嵐でしタ」フゥ
アイスマン「お帰りミコト。すまないな」
ミコト「あなたハ、姿ヲ隠さないといけませン」
「私ガ、あなたヲ守りまス」
アイスマン「……ミコト、ありがとう」
〔 ……動くな 〕 チャキッ
アイスマンとミコト。二人の隠れ場所に、白の防護服を着た人影が現れた。
ミコト「 ! 」 アイスマン「くっ、もう追っ手が!」
〔おとなしく、投降して貰おう〕
服でくぐもった声が、より無機質な印象を与える。
白い土偶が構えた銃器は仮面をつけた男へ向けられている。
ミコト「こ、来ないデ下さイ!」
アイスマン「……頼む、私は捕まってもいい。だが…この子だけは……」
〔命令はアイスマンを捕獲せよという内容だ〕
〔そこに居る『3510号』を捕まえる命令は出ていない〕
アイスマン「……んっ?」
ミコト「こ、この人ハ、行かせませン! 邪魔ヲするなラ……」
〔そうか、なら…仕方無い〕チャッ
銃口は男から女へと――
アイスマン「ミコトっ! 自分の後ろに!!」
ミコト「はうっ! ハ、ハイィ……」サッ
〔…………なんて、柄じゃないよなあ〕ガシャン
そう言うと、追跡者は……二人に向けた麻酔銃を地面に落とした。
129 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/29(月) 00:20:56.90 ID:F0x9+AwSO
ミコト「……エ?」
アイスマン「……お前は、ミコトの事を知っている」
「だから……自分達の事を少しは知っているヒトだと――」
〔話は何度もしたけど、直接会うのは初めてだな〕
アイスマン「……『うおォン』」
〔『俺はまるで人間火力発電所だ』〕
アイスマン「……マツシゲさん!」
マツシゲ〔地上の暮らしはどうだ? アイスマン〕
ミコト「ゴロさン、だったですカ!」
マツシゲ〔3510号で……ミコト。良い名前じゃないか〕
アイスマン「何故貴方がここに?」
マツシゲ〔お前の捕獲任務でだ。……最初は捕まえるつもりだったけど〕
〔今はその気も無くなった〕
アイスマン「……驚かせないで下さいよ。追跡者かと」
マツシゲ〔……ここに居ても直ぐ見つかるぞ。そんなに施設から離れていないんだ〕
ミコト「それハ困りまス……」
マツシゲ〔西に逃げるより、東に逃げろ。あっちなら居場所がバレない〕
〔途中までは、俺がアベル・カムルで連れていってやる〕
130 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/29(月) 00:24:42.45 ID:F0x9+AwSO
…………
アイスマン「どうして自分は掌の中でミコトは操縦席なんです!?」
マツシゲ『お前は恋人をこの雨で濡らすつもりか』
捜索を続けるマルタ達を探しながら、東へ歩いてゆく。
ミコト「ケンカ、しないで下さイネ」
マツシゲ〔こんなの喧嘩に入らないから、安心してくれ〕
途中、すれ違ったマルタ部隊に危うくバレそうになったが……
それでもなんとか、勢力圏の境界に着いた。
マツシゲ〔二人とも、ここでお別れだ。達者に暮らせ〕
〔ミコト、キミには餞別にこれを……〕 チリン
ミコト「これ、なんですカ?」
マツシゲ〔『鈴』という物だよ。ミズシマの忘れ物…〕
〔キミの首輪に付けるつもりだったそうだ。渡しておく〕
ミコト「ハカセの……ゴロさン、ありがとウございましタ!」
アイスマン「マツシゲさん、頼みがある……」
マツシゲ〔なんだ?〕
アイスマン「『ムツミ』の事……『63号』の事について、調べてくれないか」
マツシゲ〔マルタの一人か? 随分若い番号だな〕
アイスマン「……ミズシマさん曰く、63号はサンプルとして保存されているらしい」
131 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/29(月) 00:27:59.36 ID:F0x9+AwSO
マツシゲ〔! それは…ほとんど死んでいるって事じゃないのか〕
アイスマン「……だが、自分は彼女と話した。きっとあの子は…生きている」
「お願いだ。63号を……よろしく頼む」
マツシゲ〔――やれるだけ、やってみよう〕
アイスマン「ありがとう、『ゴローさん』」
マツシゲ〔早く東に向かえ。いつ追っ手が来るかわからないんだぞ〕
アイスマン「あとを……任せましたっ!」 タタタッ…
ミコト「失礼しまス!」 タタタッ…
マツシゲ(じゃあなアイスマン。俺が生きていたら……共に飯を食おう)
……さて、どうなることやら。
132 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/29(月) 00:30:28.27 ID:F0x9+AwSO
――――
〜 議会議員の部屋 〜
『帰投命令に違反し、単独行動』
『マルタ部隊を勝手に撤退させた』
議員『……マツシゲ君、キミの立場は一気に危うくなったねぇ』
部屋の主はどうやらこの場にいないらしい。
出先から、音声だけで処罰を下す気のようだ。
マツシゲ「……私は監獄行きですか。それとも――」
議員『そこまで言わんよ。ミズシマに協力していなかったという裏は取れた』
『マルタを帰したとは言え、自身は捜索を続けていたようだし』
議員『それに、キミの能力はまだ必要でね』
マツシゲ「……どういう事です」
議員『人類が地上に君臨する時は近いのだよ。……これ以上は言えんが』ニヤリ
『アイスマンの研究は、複製体を使えばなんとかなる』
『だがね、食糧の研究については……キミが必要不可欠なのだ』
議員『私も、キミが品種改良した食糧を気に入っている』
『近い未来の人類の為、キミには働いて貰いたい』
133 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/29(月) 00:34:28.94 ID:F0x9+AwSO
議員『キミへの処罰は“一年間の軟禁”だ』
『この大研究所の北にある、小さな施設へ左遷となる』
『誰もいないから、機材も埃を被っているだろうが……』
マツシゲ「はあ……」
議員『必要な荷物は、キミのアベル・カムルで持っていきたまえ』
『そうだ、キミは…独り身だろう? 女のマルタでも連れていくといい』
『あそこには研究設備しかないから、いい性処理道具になるだろう』
マツシゲ「…………お気持ちは嬉しいのですが、
左遷先に女性を連れ込む真似はよろしくないでしょうから」
「…………私への処分。決定したようなので、失礼します」ペコリ
パタンッ…
議員『……わかりやすい男だ』
ブツッ…
134 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/29(月) 00:37:25.23 ID:F0x9+AwSO
〜 施設内・ブリーフィングルーム 〜
議員「すまんな、今終わった」
権力者A「おお、そうですか。このマルタはお先に頂きましたよ」ニヤリ
女マルタ「…………」
ブリーフィングルーム。ここは創られた当初の機能を果たしていない。
権力を持つ人間達が黒い欲望を満たす為の……部屋となってしまっている。
権力者B「あのマツシゲとかいう男、軟禁程度でよろしかったのですか?」
議員「あの男は感情が顔に出る正直者でね」
「悪巧みなんて、出来はしない」
議員「そういう人間は、利用するに限る」ニヤッ
権力者B「ここのマルタどものようにですかな?」
ア… アア… ギシッ…
議員「そうだ」
ザシュッ… ドパッ…
135 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/29(月) 00:40:38.23 ID:F0x9+AwSO
――――――
〜 マツシゲの研究室 〜
俺の情報端末が撮すのは、腐った研究者達の――狂った催し。
マツシゲ「……表情くらい、制御出来ますよ」
この篭の中で生きるなら…感情の秘匿とハッキング技術は必要不可欠。
後輩であるミズシマから必死に学んだ事、俺の中で生きている。
……あの議員、やっぱり『あそこ』に居たか。
マツシゲ「……いつ見ても吐き気のする部屋だ」
カチッ カタタッ…
ハッキング対象を変えよう。
マツシゲ「『63号』……廃棄番号にしかないな」
「他のデータは無い……」
マツシゲ「サンプル保存庫にも……記録が無い」
別の角度から当たってみようか。
マツシゲ「保存庫の内部構造を……」
……うん! 違和感がある。
マツシゲ(構造的に、この部分に空間がないとおかしい)
……意図的に隠されている?
しかし、研究室内じゃこれ以上の事が出来ん。
マツシゲ(外部からアクセスしたほうが……逆にいいかもしれない)
あとの事は、北に軟禁されてからにしよう……
136 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/29(月) 00:45:57.68 ID:F0x9+AwSO
―――――
そんな事があってから、約一年後……
〜 北の施設 〜
マツシゲ「もう、一年か……」
時が経つの、だんだん早くなってきたな。
ザッ ザザッ… キーン
スピーカーのノイズが止むと、女の子の声が聞こえてくる。
『おじさま……』
マツシゲ「ムツミと初めて喋ったのも今くらいだった」
不正アクセスを繰り返し、なんとかムツミと接触。
不思議と仲良くなってから、もうすぐ一年。
マツシゲ「ムツミ、プレゼントは何がいい?」
『……プレゼント?』
マツシゲ「贈り物の事だ。俺達が仲良くなった記念。欲しい物ないか?」
『……お父様』
マツシゲ「……それは流石に無理だろうなぁ」
『……おじさまは、要らないの?』
マツシゲ「うーん……今のところ欲しい物は無い」
『お父様が無理なら……別に要らない』
マツシゲ「ついこの前、やっと見つけて完成した『アレ』で――」
『――お父様っ!?』
ブッ ブッン
137 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/29(月) 00:48:10.16 ID:F0x9+AwSO
マツシゲ「……どうしたムツミ。……ムツミ?」
返事がない……
マツシゲ「大研究所には…… 『繋がらない』?」
何が、あった。
マツシゲ「……お父様と呟いたな」
まさか、アイスマンが捕まった――
その事について、他国への情報流出を防ぐ為……
意図的に接続網を切ったのか?
マツシゲ「――――行くしかない」ガタッ
アベル・カムルで、頑張って一日って旅路だ。
今、夕方だから……明日の夜には着くだろう。
――――
移動行程の三割ほどを進み、夜を迎えた時……
大研究所の在る方角に、『光の柱』が撃ち落とされた。
――――――
――――
――
第二十九話前編 「二人の真実」
……続く!
138 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/10/29(月) 00:52:50.56 ID:F0x9+AwSO
過去編その@、終了。
あと質問に答えるの、前スレ816じゃなかった! 846だった!
重ね重ね申し訳ありませんでした!!
後編は……いよいよトゥスクル御一行がオンカミヤムカイ深淵に突入します。
水曜日の夜に投下できたら……いいなぁ。
では、失礼します。
139 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/10/29(月) 07:38:00.44 ID:Nf6gPffI0
乙、ラブプラスのはあんただったのか
140 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/29(月) 19:14:42.53 ID:DQukPZrSO
乙
141 :
◆M6R0eWkIpk
[saga sage]:2012/10/30(火) 21:50:58.54 ID:gsi/sneSO
〜 オンカミヤムカイ深淵・封印の地 〜
その『大空間』はこれまで進んだ遺跡の下に在った。
一見しただけでは、人の手が加えられたように見えない洞窟。
しかし、至る所に在る石錐には神字が彫りこまれており、
オンカミヤムカイの儀式場としてこれ以上の場所は無い。
十と壱の『人』はその空間を見下ろせる、小高い崖の上に佇んでいる。
ハクオロ「…………」
ウルトリィ「……ここが終点。大神を封じ、眠りについていただく為の場でございます」
発光石のような光源の類いは無い。
けれど、神字の書かれた岩柱が淡く輝き、幻想的な光に包まれている。
ベナウィ「……この気味悪さはなんでしょうか」
クロウ「なんと言やいいんすかね……ヌペッとした空気?」
ウルト「『瘴気』と呼ばれるものです。
身体の気をしっかり持たないと、蝕まれてしまいます」
カルラ「でも、それほど禍々しくありませんわね」
トウカ「やや不快な気が纏わる(まつわる)のみです」
オボロ「ドリィ・グラァ。周囲を確認してきてくれ」
ドリィ・グラァ「「はいっ!」」
142 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/30(火) 21:57:18.87 ID:gsi/sneSO
ハクオロ「……その必要は無い」
「あの男は、彼処にいる――」
崖の先端から、ハクオロが指差したのは……
爪のような岩柱に囲われた『魔法陣』。
その陣の上に座すスーツ姿の男――
アルルゥ「ペコちゃん、ねてる…………」
エルルゥ「凄く、気持ち良さそうに…………」
ゴロー「…………………………」← 漫画・第11話の終わりページの顔
ハクオロ「……『ムツミ』、居るんだろう。姿を見せろ」
『……お願い、帰って』
ハクオロ「……断る」
翼の音と共に『ムツミ』が現臨する。
ムツミ『お父様、私の事を……』
ハクオロ「永く、待たせたな……ムツミ。一緒に帰ろう」
父と娘。本物と複製。二人は、互いを親子と認めあった。
ムツミ『……でも、駄目なの。おじさまを眠らせてあげないと』
ハクオロ「私はゴローさんも迎えに来た。二人を連れて帰る」
ムツミ『――駄目、本当に駄目っ!!』
ゴゴゴゴゴ…
ムツミ『お父様達を、安らかに眠らせてあげる事しか……私には出来ない』
『今、お父様がやろうとしてる事は、私の目的に対立する』
ハクオロ「ムツミ…わかってくれないのか」
ムツミ『お願い……帰って……』バサッ
ヒュゥゥゥ… バサッバサッ…
ムツミは、崖下に飛び去っていく。
143 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/30(火) 22:01:45.74 ID:gsi/sneSO
ハクオロ「…………」
エルルゥ「…………引き返しましょう」
一同「「「 !? 」」」
エルルゥ「引き返しましょう、今すぐに!」
トウカ「エ、エルルゥ殿? ここまで来て何を言っておられるのですか」
エルルゥ「でも――このままハクオロさんを行かせちゃいけないんです!!」
ハクオロ「エルルゥ、私は……」
少女は、ハクオロの『記憶』が戻ったのに感付いた。
だから、必死で止めようとする……
エルルゥ「今、今行ったら…… ハクオロさんは……」
言葉は続かない。だが、意図は皆に伝わる。
今、ハクオロがムツミを追って下に降りたら……
『人』であるハクオロは……逝ってしまうのではないか、と。
エルルゥ「お願いします…… 行かないで下さいっ……」
ハクオロ「エルルゥ……」
144 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/30(火) 22:03:44.52 ID:gsi/sneSO
「――すまない」
145 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/30(火) 22:07:56.41 ID:gsi/sneSO
エルルゥ「ハクオロさん……」
「…………すまない…………」
「エルルゥ、君には……本当に感謝している」
「――――今まで、ありがとうっ」
エルルゥ「どうして――」
「どうして、そんな事を言うんですか…………」
ぐいっ……
エルルゥ「んう――――!?」
ハクオロはエルルゥを引き寄せ、強引にその唇を奪う。
エルルゥ「ん……んっ……」 ぱっ…
離れたのは、二人の『唇』。
壊されるのは、創られた『偽りの思い』。
(エルルゥ、私は……それでも君を――――)
男の脳裏に、少女との情景が浮かんでは消えてゆく……
146 :
一行空けるのに失敗した…
[sage saga]:2012/10/30(火) 22:10:30.12 ID:gsi/sneSO
『エルルゥ……今ここにて、汝との契約を破棄する』
『払う代償は……この先何が起ころうと、君との日々を忘れない事――』
『これで君は……自由だ』
エルルゥ「……………だめ」
147 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/30(火) 22:12:40.50 ID:gsi/sneSO
『 皆、動くな 』
キィィンッ!
『…………驚かないのか』
クロウ「なんとなく…気付いてやしたぜ」
ベナウィ「あれだけ、言われれば……」
148 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/30(火) 22:14:59.03 ID:gsi/sneSO
『ゴローさんか。全く、あの人は…………』
トウカ「聖上……やはり……」
カルラ「判ったところで…どうにもならないのが癪にさわりますわ……」
『安心しろ。その枷はいずれ解ける』
ドリィ・グラァ「「兄者様……」」
オボロ「……信じたくなかったッ! 兄者が……」
149 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/30(火) 22:16:44.95 ID:gsi/sneSO
『…………まだ言ってなかったな。私の本当の名を――――』
ウルトリィ「ハクオロ様…… 貴方様は……」
アルルゥ「ムックル! ガチャタラ! うごくぅ〜…」
ムックル『ヴォゥ〜ヴォゥ〜…』 ガチャタラ『キュ〜〜〜〜』
エルルゥ「だめ……」
150 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/30(火) 22:21:20.50 ID:gsi/sneSO
『 私の、名は―――― 』
エルルゥ「駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――!!」
『 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオ――――――――――――――――!!! 』
『霧』が仮面の皇を変質させてゆく。
変わりゆく肉体と結び付いた後、
ゆっくりと……身を覆う闇は消失する。
――『人』という『器』から誕生するのは『大いなる神』。
151 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/30(火) 22:23:45.71 ID:gsi/sneSO
『…………ォォォォォォ』
エルルゥ「ハクオロさん……」
ムツミ「その名は、音だけのもの」
「『白皇(ハクオロ)』……それが、お父様の真名」
152 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/30(火) 22:25:54.71 ID:gsi/sneSO
彼の神は崖を下り、翼の娘に語りかける。
白皇『 ムツミ、退いてくれ 』
ムツミ『今のお父様を、おじさまに近付かせるわけにはいかない』
白皇『 退かヌナラ――退カセルッ!! 』 ガオンッ!
ムツミ『……ほら、お父様は目的を忘れてる』 ヒラリ
ムツミは巨大な腕の攻撃を、いとも容易くかわす。
※ ムツミの能力『先読み』……正面・側面からの攻撃をかわす確率が高い。
(ちゃんと、ゲームにある能力です)
ムツミ『二人が会ったら、憎しみあって……殺し合う』
『死ねないのに、殺し合う。永遠に終わらない輪……』
ムツミ『……そして、また私のことを忘れてしまう』
『私がどんなに胸焦がれても――――』
『あの子のことは、忘れないのに……』
153 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/30(火) 22:37:05.08 ID:gsi/sneSO
《 ムツミ、必殺連撃 》
ザシュッ!
ムツミ『お父様、こっちだよ…………』
腕から光の剣を出すムツミ。
それで裂いたのは、父の皮膚一枚のみ。
ムツミ『お願い、私だけを見て…………』 ブゥゥゥン…
間髪入れず、法術を発動。白皇の目の前に――
白皇『 ナニ!? 』
ムツミA『お願い』
ムツミB『私だけ』
ムツミC『見て』
ムツミ(本体)『私しか瞳に映さないで…………』
参の影と壱の体。四身のムツミが対象を包囲し、巨大な神躯に傷を付け続ける。
スパッ! ザクッ! プシュ グチュッ!
白皇『 ――カアアアッ! 』 ボォォォォ…!!
炎が纏いつく影を焼き払う。
ムツミ『……私を、燃やした』
『どうして、私を選んでくれないの――』
ズッ―パシッ!
ムツミが渾身の力を込めた横一閃は……『通じなかった』。
白皇『 ソンナモノ、効カヌ!! 』
ムツミ『……もう、この娘のことを忘れている』
『お父様は、ただ戦う相手が欲しいだけ……』
白皇『 ヌグァ…ち、違う! 私ハ―― 』
154 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/30(火) 22:43:46.60 ID:gsi/sneSO
ムツミ『お父様、つらいのでしょう……』
『安心して、おじさまを眠らせたら……次はお父様の番……』
『お休みなさい、あの時のように――――』
『ヴィ』 『ク』 『アム』 『ラー』 『ディ』 『クィ』 『ヴァー』
ムツミの呪詛が、漂う闇を集束する。
ムツミ『もう一度、封じてあげる…………』
ゴォォォゥゥゥゥ……
カミュの使う法術『ヌグィ・ソムクル』。
ムツミが放つと……同じ黒紫の光線でも、桁違いの威力となる。
彼の躰を這い回る闇の力だが――
白皇『 効カヌト、言ッタ筈ダ!! 』 ズンッ
――白皇に、傷すら付けられていなかった。
ムツミ『くっ……今のお父様に、私の力なんて……』
記憶の大部分を取り戻し、覚醒した『神』に、翼の子は無力……
白皇『 アアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッ!! 』
――ゴォォォッ!
ムツミ『――っく! キャアッ!?』
155 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/30(火) 22:46:55.35 ID:gsi/sneSO
彼女の隙を突いて吐かれた紅炎。
ムツミはそれを完全に回避出来ず、翼と腕を焼かれて墜落する。
ムツミ『…………うぅ』
白皇『 ――はっ! わ、私ハ…… 』
『 ムツミ、これ以上はやめろ! このままじゃお前を…… 』
ムツミ『だ、駄目なの…… お父様達が考えている事を……やらせな……』グ…
悲鳴をあげる身体を無理矢理動かし、ムツミは立ち上がる。
その時――
156 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/30(火) 22:48:03.09 ID:gsi/sneSO
「…………ムツミ。下がってくれ」
157 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/30(火) 22:49:47.92 ID:gsi/sneSO
ムツミ『――おじさま』
ゴロー「ハクオロが来たら、起こせと言ったはずなんだが……」ファーァ
ムツミ『……ゴメンナサイ』
ゴロー「う〜ん……お前も目覚めちゃったか」ポリポリ
白皇『 ……マツシゲさん 』
ゴロー「記憶も戻ったみたいだな。でも、俺の事は『ゴロー』呼びでいいぞ」
「さぁて……色々聞きたいこともありそうだし……」
ゴロー「まず、白皇は人の姿に戻れ。
ムツミは……皆の枷を解いたら、ここに連れて来てくれ」
ムツミ『はい……』バサッ…
白皇『 ……ぐっ 』
シュゥゥゥゥゥゥゥ…
ハクオロ「――あの感覚は」
ゴロー「力に飲まれそうになるだろう」
ハクオロ「…………ああ」
158 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/30(火) 22:52:49.94 ID:gsi/sneSO
ムツミ『全員、連れて……うっ』ガクッ…
エルルゥ「ま、待ってて! 治療するから!」
ムツミ『要らない……アナタに情けをかけられたく――
――バシッ!
ムツミ『――――え?』ヒリヒリ
ゴロー(おお! エルルゥさんの平手打ちだ)
辺境の女の強さ、久しぶりに見せて貰ったぞ。
エルルゥ「怪我人を放っとけるわけないでしょ!!」
《 エルルゥ・連撃!》
エルルゥ「命(みこと)たるヤーナ・ゥンカミ……
どうか力をお貸し下さい――――」
……煌めく癒しの光が、ムツミの傷や火傷を暖かく包む。
エルルゥは自分の内に在る自然神の力をムツミの『治癒』の為に使った。
ムツミ『…………っ! どうして』
エルルゥ「……判らない。でも、貴女とは仲良くなれそうな気がしたの」
「カミュ――じゃないんだよね。『ムツミちゃん』でいいかな?」
159 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/30(火) 22:56:10.83 ID:gsi/sneSO
ムツミ『………………す、好きに呼べば』プィ
エルルゥ「私は……エルルゥ。よろしくね、ムツミちゃん」ニコッ
ムツミ『…………う、うぅぅぅぅぅぅ///』
エルルゥ「ど、どうしたの? まだどこか痛い?」
クロウ「あ、姐さん…その娘さんは……
最後の『ん』が素直に言えないだけですぜ」
ムツミ『!!』ピクッ!
ドリィ「クロウさん。なんで判るんです?」
クロウ「そりゃオメー…小っこかった頃の姫さんがそんなだったからよ」
グラァ「……カムチャタールさん、『ツンデレ』っていうみたいですよ」
ベナウィ「箱庭で使われる言葉でしたね」
ムツミ『――――っ! ////』ボンッ!
アルルゥ「かお、あかい?」
トウカ「か、可愛いにゃ〜〜……」ニヘラ
カルラ「無表情より、そっちのほうが素敵ですわよ」ニヤニヤ
ムツミ『…………は、はずかし…………////』
パアァァッ…
カミュ「…………ムツミ、引っ込んじゃった」
ウルトリィ「カミュ!」ダキッ
カミュ「おお…! なんて柔らかさ…… これがお姉様の……」フカフカ
160 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/30(火) 23:00:36.15 ID:gsi/sneSO
なんとまぁ……
ゴロー「ムツミ、恥ずかしがりやだったとは……」
初めて知ったぞ。
一年くらい話しただけじゃ、女の子の気持ちはわからないなあ。
ハクオロ「……目的の半分は終わった」
ゴロー「もう半分は諦めてくれないか」
ハクオロ「……何故だ」
ゴロー「……俺達は、同じ時を生きてはいけない」
「あの地震の時も…… この場所で争ってしまったじゃないか……」
161 :
◆M6R0eWkIpk
[saga sage]:2012/10/30(火) 23:02:10.73 ID:gsi/sneSO
す、すまない。眠気が……。
明日の夜投下するゆえ、お許し下され……
162 :
◆M6R0eWkIpk
[saga sage]:2012/10/31(水) 20:20:57.06 ID:VVVpxZhSO
《 回想・地震発生、その少し前 》
白き神と黒き神、数えきれないほど為されてきた争い。
その中で互いが直接殴り合うのも、『よくある事』に過ぎなかった。
少し、違うとしたら……殴られているのは『分身』のみ。
胸に巨大な切り傷を付けられ、ただ『空蝉』に殴打され……
見るも無惨な……一方的闘いだった――
分身『ゴアッ――』 ドズッ… ズザァァ…
空蝉『ドウシタ、我ガ分身ヨ! 汝ノチカラハ、ソノ程度カ!!』
分身『……我ノ宿リシ身ハ眠リヲ欲シテイル。
手ヲ引イテハクレヌカ、我ガ空蝉ヨ』
空蝉『ウオオオオオッ!!』グアァッ!
……憎悪の連鎖は、止まらない。
分身『……ヤムヲ得マイ。気ガ済ムマデ殴レ』
『ドウセコノ身ハ、死ナヌ……』
「う、うわああああああっ!!」
163 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/31(水) 20:22:35.40 ID:VVVpxZhSO
空蝉・分身『『 !? 』』
「こ、これが私の探してきた真実だと……」
「あんなものが……ヒィィッ!!」
哲学士として生き、『知』に憑かれた男が…
禁じられし地に足を踏入れてしまった――
空蝉『――我等ノ争イ』
分身『妨ゲルノハ汝カ、小サキ者ヨ』
「う、うう…あり得ない……あり得ない……」ガクガク
空蝉『ダガ、ソレハ構ワヌゾ。ヨク此所マデ辿リ着イタナ』
『我等ハ愛シ子ノ願イヲ叶エル事ヲ至上ノ喜ビトスル』
分身『ソノ為ナラバ、愚カナ争イナド止メヨウ。汝ノ望ミヲ言ウガイイ』
「こ、こんな化け物が『大神』なわけ――」
空蝉・分身『『サア、汝ノ望ミヲ言ウガイイ』』
「ひ、ひぃぃ……ひぃぃィィィィィ……」
空蝉『……ドウシタ、望ミヲ告ゲヌノカ』
分身『……マサカ、用モ無ク我等ノ争イヲ邪魔シタノデハアルマイナ――』
空蝉『ダトスレバ』 分身『ダトスレバ』
『『――ソノ罪、死スラ生温イ――』』
空蝉『コタエヨ』 分身『コタエヨ』
『『コタエヨ!!!』』
「うわああああああァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
バサッ… ババババ…
164 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/31(水) 20:27:12.97 ID:VVVpxZhSO
…………
「ひ、ひ、ふ、ふ、こ、此所まで逃げれば…………」
分身『何処ヘ行ク』ヌゥ
「ぎゃああああッ!?」
分身『ホォ、汝ハ哲学士カ』
「あ、頭を読ん――――」
分身『“我ヲ知リタイ”。ソレガ願イカ』
「お、お願いです! 命ばかりは! お助け下さい!!」
分身『マタソノ望ミか。イイダロウ。汝ノ願イ、聞キトドケタリ』
『……未来永劫、我ト共ニ生キヨ――』
……バアアアッ
シュゥゥゥ……
「き、霧が…は、入ってき――」
「ぎ、ぎぃぃ○□*★#▲◎☆÷※●――――」
……ユラリ
ディー『……この者の精神、我の力に耐えられなかったか。
気を失っていれば、意思を残せたろうに』
165 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/31(水) 20:30:00.01 ID:VVVpxZhSO
空蝉『……分身ヨ。新シイ憑代ハドウダ』
ディー『良質の身体だ。力が末端まで行き渡る』
空蝉『前ノ憑代ハ――』
ディー『先の戦いで受けた傷を引き受けて貰っている』
『今の我には“余分”。いずれ契約を破棄し、捨て置こう』
空蝉『…………ソレハ許サヌ』
ディー『ほぉ、甘い事を言うな。空蝉』
『それほど、あの憑代が大事なら……』
ズズズズズ…
分身『“第2ラウンド”トイコウデハナイカ!!』
空蝉『オオオオオオオオオオオォォォォ――!!』
カッ! ゴゴゴゴゴ……
166 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/31(水) 20:33:46.99 ID:VVVpxZhSO
―――――
―――
―
ゴロー「あの戦いで、俺とお前は傷を負った」
ハクオロ「私はその傷を癒す為に東へ逃げ……」
「そこでエルルゥと契約し、彼女を縛りつけて……身を休めた」
ゴロー「分身はお前の波動を見つけ、ヤマユラに向かい……」
ハクオロ「私が記憶を失っている事に気がついた、か」
ゴロー「……そして、俺の事を思い出した」
「分身はあの森の中で契約を破棄し、
友であったお前と共に最期の時を過ごせるよう……」
ほんの小さな気まぐれを、起こした。
ハクオロ「…………」
ゴロー「……結果は、今こうなった通り」フゥ
167 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/31(水) 20:36:37.83 ID:VVVpxZhSO
オボロ「……兄者。兄者達が争う目的はなんだったんだ」
ハクオロ「……安らぎの為だ」
ゴロー「俺達の内に在る存在は、数えるのが馬鹿らしくなる程の時を『独り』で過ごした」
ハクオロ「子等…人々を自身と同じ高みへ導いて――」
ゴロー「『孤独』を癒したかっただけ……」
ドリィ・グラァ「「そ、そんな……」」
ゴロー「その為に人の望みを叶え、世界を裏で動かしていた」
ハクオロ「弱き者を、切り捨てて……」
「私は……そんな者達を守るという詭弁で……多くの種を蹂躙してしまった」
ゴロー「……大きな戦が、また始まる。俺達が均衡を崩してしまったから」
ハクオロ「……お前達は、これから始まる乱世を止めてくれ」
ベナウィ「聖上とゴローさんは……」
クロウ「いったい、何をするつもりで……」
168 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/31(水) 20:38:35.69 ID:VVVpxZhSO
ハクオロ「……私達こそが、『禍』」
ゴロー「……そうだ、俺達が『元凶』」
「「だから――」」
ハクオロ・ゴロー「「今ここで! 輪廻を断ち切る!!」」
169 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/31(水) 20:43:44.52 ID:VVVpxZhSO
ゴロー「……と言いたいところだが。ちょっと待ってくれないか」
170 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/31(水) 20:50:40.10 ID:VVVpxZhSO
推奨曲
http://www.youtube.com/watch?v=YrPzWdicdtg
もしくはこちら
http://www.youtube.com/watch?v=hSwZT_Z6uqs
(※原作者久住昌之氏のいる「スクリーントーンズ」の孤独のグルメ関連のライブ映像です)
(アップしているのも、スクリーントーンズメンバーの「栗木健」氏)
(ここからは、孤独のグルメサウンドにまったり浸って御覧下さい)
171 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/31(水) 20:52:45.16 ID:VVVpxZhSO
ハクオロ「…………はぃ?」ガクッ
カルラ「変身しないんですの?」
ゴロー「……なんでか、わからないんだけど。俺、変身出来ないんだ」
ハクオロ「…………『分身』、居るんですよね?」
ゴロー「間違いなく、居る」コクン
トウカ「なら、御二人が共にいても良いのでは?」
ゴロー「急に戦いたくなったら、大変な事になるからなぁ……」
クンネカムンの都みたいになる。
ハクオロ「ゴローさん、分身を制御してるんですか?」
ゴロー「うーん……そういう感じじゃないんだよ」
封じられたパッションみたいな感覚。
そのうち、ぼかんと溢れだしそう。
ゴロー「……あと、ここでやっておきたい事がある」
アルルゥ「なぁに?」
ゴロー「新しい『人』であるお前達と、旧い『ヒト』の決着をつけたい」
一同「「「………………はあっ???」」」
172 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/31(水) 20:55:22.85 ID:VVVpxZhSO
ゴロー「俺は最もひ弱な『人類』の…たった独りの生き残りだ」
「他のヒトは、皆あの肉塊になっている」
ゴロー「あれはもう、ヒトとは言えない」
「実質、ヒトは地球から消えたに等しい」
「だけど……ずっと昔、この星を救おうと頑張ったヒトの思いは、消えない」
ゴロー「かつての『人類』の意志とか、汲んでやれるの……今は俺だけだ」
「だから、俺は……」
ゴロー「『旧人類代表』として、君達『新人類』を試そうと思う」
「「「………………………はああああっ?????」」」
ハクオロ「い、今やる意味が判らん……」
ゴロー「殆ど俺の自己満足だ。難しい事はしないさ」
「じゃあ、やりましょうか」
ゴロー「カミュー。準備を頼む」
カミュ「えーっと、それじゃあ……変身!」バッ!
「あっ、これスプーンだ。こっちこっち」
ピカッ!
ムツミ『……ヘアッ』スタッ
ハクオロ「……三分じゃないだろ」
ムツミ『気にしない、気にしない』
173 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/31(水) 20:58:22.89 ID:VVVpxZhSO
ゴロー「規則を説明します」
●三本勝負、二本先に勝ちを取って終了
●勝ち負けをつけても、特に何かあるわけじゃない
●対決内容は、くじを引いて決める
ハクオロ「待て。そのくじと言うのはそっちの有利なものしかないのか?」
ゴロー「大丈夫だ。そっちは十一人もいる」
●対戦内容が決まってから、選手を出す
ゴロー「これじゃあ、不服か?」
ハクオロ「不服だ」
ゴロー「じゃあ……」
●全ての審査員はハクオロ側から選ぶ。(選手以外に三名)
ハクオロ「……いいだろう」
ゴロー「組分けはこうだ」
《ハクオロ組》
ハクオロ・エルルゥ・アルルゥ・オボロ・ドリィ
グラァ・ベナウィ・クロウ・カルラ・トウカ・ウルトリィ
《ゴロー組》
ゴロー・カミュ・ムツミ
エルルゥ「人数の差が激しいですね……」
ムツミ『問題ない』
ゴロー「よし、対決種目を選ぼう」
ムツミ『“忌まわしき黄金ぼっくす”〜……』パッパラパッパパーパッパ!
『ここから、札を引いて』
エルルゥ「じ、じゃあ私が引きます……」
ゴソゴソ… スッ
エルルゥ「……『ズボラ飯』?」
174 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/31(水) 21:00:20.94 ID:VVVpxZhSO
《第一種目・料理『ズボラ飯』》
【作戦タイム】
ハクオロ「ズ、ズボラ飯ぃ?」
エルルゥ「それって何ですか?」
ハクオロ「出来るだけ手間をかけずにおいしい食事を作る事だ……」
オボロ「料理ならば、エルルゥかウルトリィが出るのが良いだろう」
カミュ「この種目はカミュがやりま〜す!」
クロウ「向こうはもう決めたみてぇです」
ハクオロ「……う〜ん」
ウルトリィ「……カミュとは、わたくしが戦います」
ハクオロ「……ウルトか。いいだろう」
《料理『ズボラ飯』》
対戦者……ウルトリィ 対 カミュ
審査員(ランダム)……オボロ・アルルゥ・ベナウィ
実況・解説……ハクオロ・エルルゥ
ゴロー「では、対決会場まで転移します」
ムツミ『転移、オンカミヤムカイ厨房……』
キュィィン… パッ!
175 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/31(水) 21:02:17.20 ID:VVVpxZhSO
…………
《地上・オンカミヤムカイ厨房》
【厨房の器具や調味料】
今の時代で再現出来る物を用意した。
フライパン(モドキ)・鍋(大中小)などなど。
調味料は料理の『さしすせそ』・焼肉のタレ・マヨネーズ・カレー用香辛料。
【 食材 】
多種多様な物を揃えております。余りは持ち帰ってOK!
保存に使う氷は、箱庭の水属性術士が大量に作ってくれました。
ウルトリィ「……カミュ、わたくしは……」
カミュ「戦う相手がお姉様だからって、手加減しないよ!」
ゴロー(……むしろ、手加減したほうが『ズボラ』な飯になるぞ)
ハクオロ「実況は私、ハクオロ。解説はエルルゥです」
エルルゥ「よろしくお願いします」
ゴロー「俺、死ねないのに腹が減って死にそうなので、多目に作って下さい」
176 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/31(水) 21:04:14.32 ID:VVVpxZhSO
ゴロー「では、調理開始」
カーン!
ウルトリィ「…………」ガチャ…
ハクオロ「おーっと、ウルトリィ選手が大鍋を掴んだぁっ?」
エルルゥ「……普通に料理するつもりですね」
カミュ「ちょっと様子見かな。とりあえず食材だけ確保して……」ヒョイ
ハクオロ「カミュ選手、緑が若々しい野菜を手にしました」
エルルゥ「えー…今入りました情報によりますと、
『レタス』を想像して下さいとのこと」
ウルトリィ「お水を入れましょう」 ザー…
ゴロー「あの大鍋に水、そして食材から考えるに……」
ハクオロ「『カレー』のようだな。手順が違う気もするが……」
エルルゥ「……只今入りました情報って、どれだけ後だしなんですか!」バンッ
「……ウルトリィさんは箱庭滞在中に、
村長さんからカレーの作り方を教わっていたそうです」
ハクオロ「……なぁ、それって」
ゴロー「ズボラ飯という趣旨を理解してないな…… 時間がかかりそうだ」
ウルトリィ「ええと……次は……」
177 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/31(水) 21:06:36.97 ID:VVVpxZhSO
《以下、要約》
ハクオロ「待て待て待てぇぇぇぇ! 何故それを入れる!」
エルルゥ「ああ、今日のウルトリィ様は危ない時のウルトリィ様だ……」
ハクオロ「……えっ?」
エルルゥ「ウルトリィ様は料理中、たまに変な事をし始めちゃうんです……」
ウルトリィ「この紫色の野菜(ナス)とお肉。あと……アルルゥ様も居られますから……」
ゴロー(カレーにハチミツは、隠し味に入れたりするけど……)
ハクオロ「ウルトぉぉぉ!! 隠しきれない隠し味になってるぅぅぅ!!」
カミュ「姉のメシは不味い……」
エルルゥ「先に作ったらどうですか?」
カミュ「すぐ出来ちゃうから後でいいよー」
※実況・解説の声は……聞こえておりません。
178 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/31(水) 21:07:51.56 ID:VVVpxZhSO
……………
………
…
ウルトリィ「お待たせしました〜」
【ウルトリィ特製カレー】
別名、さ○カレー。実況席の心配通り、トンデモな料理が完成。
一口食べると、今は無き失われた都に旅するらしい。
ハクオロ「……み、見た目は普通だ」
エルルゥ「……食べなきゃ駄目ですか」
※ 審査員の皆さんは、調理過程を見ていません。
ウルトリィ「はい、どうぞ」ニコリ
オボロ「うおっしゃーっ!! 待ちくたびれたぜ!!」バクバク!
ベナウィ「アルルゥ様、感謝の詞を言ってからですよ。オボロを真似しないよう」
アルルゥ「は〜い」
ドサッ……
アルルゥ「おぼろ? ぼろぼろ?」
〜〜〜〜〜
― ?? ―
オボロ「あれ? オレは……」キョロキョロ
「こ、ここは何処だ?」
『J○東海のあの曲』
チャララチャララチャラララー チャラララララ ララララー♪
オボロ「……『そうだ 京都、行こう。』」
〜〜〜〜〜
179 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/31(水) 21:12:06.61 ID:VVVpxZhSO
オボロ「…………ハッ!」パチッ
エルルゥ「あ、危なかった〜……」フゥ
オボロ「お、オレは……」
ベナウィ「喋ってはいけません。少しの間、気を失っていたのです」
オボロ「あの、金色の寺は夢だったのか……」
「『ぶぶづけ』とやらを食べるところだったのに……」
ゴロー「ほぉ…… 夏、ヘルシーってカレーじゃないか」
「いいぞ、いいぞ」モグモグ
ハクオロ「……ゴローさん、味覚大丈夫ですか?」
ウルトリィ「ハクオロ様もどうぞ」ニッコリ
勝敗 ウルトリィ (カレー) × ― カミュ (てりやきモロロ) ○
審査員二名の棄権及び、一名の気絶による。
180 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/31(水) 21:15:28.85 ID:VVVpxZhSO
ゴロー「じゃあ、第二戦だ」
アルルゥ「アルルゥがひく〜」ゴソリ…
アルルゥ「……よめない」
エルルゥ「貸して…… 『耳かき』」
《第二種目・『耳かき』》
ハクオロ「耳かき……なんの脈絡もないな」
エルルゥ「詳しい内容を教えて下さい」
ゴロー「わかりました」
●対戦者は好きな人を選び、耳を掻いてあげる
●審査員は『耳を掻いている様子』に点数をつける。
(耳垢の量を考慮するかは任せる)
ハクオロ「ふむ……なら見栄えが良い者を選……」
ガシッ
ムツミ『こっちは決定。お父様の耳を掘ってあげる……』
ハクオロ「え、あ、ちょ……」 ズルズル…
ベナウィ「……代理で私が進めます」
カルラ「見栄えを気にするなら、女性が耳を掘ると良いでしょうね」
クロウ「そうっすね。男の膝に頭乗っけても、【キィン!】に」
ボコッ!
トウカ「時と場合を考えろ!」
ベナウィ「エルルゥ様、カルラ、トウカ…… ドリィ・グラァという手もありますね」
ドリィ・グラァ「「若様の耳以外、掻きたくありません」」
ベナウィ「掘られる側も考えないといけませんが……」
カルラ「……別に真面目にやらなくていいんじゃありませんの?」
「こちらが審査をやるんですから」
一同「「「……あ」」」
181 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/31(水) 21:18:45.52 ID:VVVpxZhSO
《『耳かき』》
対戦者……エルルゥ・アルルゥ 対 ムツミ・ハクオロ
審査員……トウカ・クロウ・カルラ
実況解説……ベナウィ・ゴロー
ムツミ『さっきは不覚をとったけど……次は負けない』キリッ
エルルゥ「何と戦ってるんですか……」
ベナウィ「両選手、火花を散らしております」
ゴロー「親子対姉妹。うんうん、良い勝負になりそう」
ムツミ『先手は私から…………』
ハクオロ「お、お手柔らかに……」
ムツミ『…………』ホリホリホリホリ…
ベナウィ「意外です。真面目に耳を掘っております」
ゴロー「表情が堅いのがイマイチだ。審査にどう響くか……」
ベナウィ「ですが、聖上は……」
ハクオロ「はあ〜〜…… お、そこそこ……」トローン
ゴロー「仮面で顔が隠されてるのに、気持ち良さそうで……」
ベナウィ「寛いでますが、貴方はこっちの組ですよ……」
182 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/10/31(水) 21:22:46.83 ID:VVVpxZhSO
ムツミ『もっと、奥……目指すは金の鉱脈……』ホリホリホリホリホリホリ…
ベナウィ「――――!? 速度が上がりました」
ゴロー「……気にするのは、そこじゃない」
ハクオロ「おお……そんな奥に…… ふうぅぅ〜〜……」
ムツミ『……………………あれ?』
ベナウィ「『耳かき』が…………消えています」
ゴロー「消えたんじゃない。……ハクオロの耳の中にすっぽり入ったんだ」
ベナウィ「……はっ?」
ムツミ『……逆に考えるんだ、“反対から出しちゃえばいい”と考えるんだ』
ぐぐぐぐ…
ハクオロ「……ん? 掘ってくれないのか?」
ムツミ『……出てこない』
ベナウィ「こ、これは審査にして良いのですか? 医学士が要るのでは?」
ゴロー「いいんじゃないだろうか。ハクオロは気持ち良さそうだぞ」
ハクオロ「……なら、終わったのか。う〜ん……癒された〜〜……」
……ピョコン
183 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/10/31(水) 21:25:34.19 ID:VVVpxZhSO
ムツミ『ぶっ!?』
トウカ「 」ブホッ! クロウ「は、は…」 カルラ「(苦笑)」
ベナウィ「…………」プルプル
ゴロー「……ハクオロの『鼻』から飛び出た耳かきに、審査員と実況が吹き出しています」
ハクオロ(+鼻耳かき)「お、おい? 皆どうした? 何故私の顔を見ない?」
ムツミ『っ……っ……っ……』プルプル…
ゴロー「ムツミ、耐える。頑張れムツミ」
ハクオロ「私の顔に何かついて…………」ピト
「………………………………………………
………………………………………………
……………………なんじゃこりゃああ!!!!」
ムツミ『ぶふぉっ!』ブルブル
ゴロー「ムツミ、陥落!」
審査結果
クロウ【七点】…「予想外の事態が最高でしたぜ!」
カルラ【八点】…「衝撃的光景への点ですわ」
トウカ【八点】…「ふ、ふふ…ふふふ…」←笑いっぱなし
ムツミ、計【二十三点】。
184 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/31(水) 21:29:18.56 ID:VVVpxZhSO
エルルゥ「後攻は私です!!」
アルルゥ「んっ!」
エルルゥ「よいしょっ…… アルルゥ〜おいで」ニコ
アルルゥ「ん〜〜…」コロン
ベナウィ「おや? 素直に寝転がりましたね」
ゴロー「エルルゥさん、耳かき上手いらしい」
ベナウィ「ああ、そういうことですか」
エルルゥ「フン、フフフン♪ フフーフフフン♪」ホリホリ
アルルゥ「きゃっほ〜ぅ〜♪」
ゴロー「鼻歌で子守唄(ユカウラ)。いいぞいいぞぉ」
ベナウィ「表情も素晴らしい。慈愛に満ちています」
ゴロー「完璧な組み合わせだ。羨ましい」
ベナウィ「先程とはうってかわり、微笑ましい光景です」
ゴロー「姉妹だから出来る信頼関係だなぁ」
185 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/31(水) 21:31:28.47 ID:VVVpxZhSO
エルルゥ「はい、こっちは終わりっ。じゃあ、反対を……」
ベナウィ「早いですね」
ゴロー「慣れてるんだな。でも……」
アルルゥ「すー……すー……」
エルルゥ「あ、アルルゥ? 起きないと反対側が……」
ゴロー「危惧していた事が起こりました」
ベナウィ「気持ち良すぎて眠られるとは……」
ゴロー「エルルゥさんは優しい。今日のアルルゥを、
無理矢理起こすなんて出来ないだろう」
ベナウィ「オンカミヤムカイに着いて、動きっぱなしでしたから……」
審査結果
クロウ【九点】…「イイモン、見せて貰いやした」
カルラ【九点】…「一番甘えられるのは、エルルゥですものね」
トウカ【百点】…「文句のつけようがありませぬ! 可愛いすぎだにゃ〜〜」
エルルゥ、計【百十八点】
ムツミ『異議あり! 満点は十じゃないの? 反則だと思う!』
ゴロー「言い忘れてたから……諦めろ」
ムツミ『でもっ……!』
ゴロー「…………ムツミ、やってくれるな」
ムツミ『……………………はい』
ゴロー「――いい子だ」ポフッ
186 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/31(水) 21:35:51.52 ID:VVVpxZhSO
第三戦
ハクオロ「……私が引こう」 ガサ… スッ
ハクオロ「対決内容は……『相撲』」
ゴロー「お、それを引いたか。当然、出るのは俺だ」スクッ
ハクオロ「……私が出陣よう」
「『まわし』はどうする?」
ゴロー「必要ない。土俵は……下だ」
ハクオロ「……回りくどい真似をしたな」
……ハクオロには読まれたか。
この茶番は……只の『休み時間』だってことを
上手くいけば、要らないが……
上手くいかなかった時の……『保険』でもある。
ゴロー「……そう言うな。ムツミ、転移を」
ムツミ『――――はい』 スッ
パッ…
187 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/31(水) 21:38:35.87 ID:VVVpxZhSO
…………
〜 封印の地 〜
ゴロー「土俵は、『あれ』だ」
ハクオロ「…………ああ」
さっきまで俺が座っていた……『魔法陣』へ向かう。
ウルトリィ「!! 最初からこれが目的で!?」
ムツミ『…………貴女にも、この“罪”を背負って貰う』
エルルゥ「え? え?」
ウルトリィ「で、ですが人の身でそんな……」
ムツミ『お父様達の望み、叶えてあげて……』
オボロ「おい! 一体何の話をしている! 説明しろ!」
ムツミ『……この子から、聞いて』 カッ…
シュゥッ!
カミュ「おじさま達の目的は……『同じ』だったの」
ウルトリィ「今、この時……同じ場所に御二人が存在する」
カミュ「……『弐』となってしまった存在を、『壱』に戻して封印する」
エルルゥ「…………………………………………え」
カミュ「お姉様とカミュが力を合わせれば……『同時封印』が出来る」
「二人を……地の底で眠らせてあげられるの」
トウカ「そ、そんな事をしたら――」
ハクオロ「そうだ。私達は居なくなる」
ゴロー「今の世界に、俺達みたいな過去の存在は、いちゃいけない」
ドリィ・グラァ「「兄者様っ!!」」
ハクオロ「…………ウルトリィ、やってくれ」
ゴロー「なんとか抑え込めている、今の内に……」
……未だに何の動きも無いのが、不気味だけど。
188 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/31(水) 21:40:46.79 ID:VVVpxZhSO
ウルトリィ「…………判りました」
カミュ「…………お姉様、カミュもいっしょだから」ギュッ
ウルトリィ「……わたくしは良い妹を持ちました」ニコリ
ウルトリィ・カミュ「「 いきます!! 」」
《 協撃! 『究極術法』》
ウルトリィ「我等はオンカミヤリュー」
カミュ「我等は大罪を背負い、宿命付けられた者なり」
ウルトリィ「カミュ、わたくしは下がりません」
カミュ「カミュもだよ。二人で罪を受け止めよう」
ウルトリィ「カミュ……」
カミュ「お姉さまと一緒なら、どんな事だって」
ウルトリィ「ありがとう…私の可愛いカミュ……」
カミュ・ウルト「「 再び牢獄の門を開け、我らが父を……
常世(コトゥアハムル)へ誘わん!! 」」
189 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/31(水) 21:42:45.74 ID:VVVpxZhSO
オォォオーン…… オォォオーン……
岩柱の神字や魔法陣が輝き、空間が光に満ち溢れる。
どうやら大封印(オン・リィヤーク)は成功したようだ。
俺達二人は、光の中で語り合う。
ゴロー「さぁて、次は地獄か天国か……」
旨い飯を食えるのは、どっちだろう。
ハクオロ「言葉が違いますよ。ディネボクシリかコトゥアハムルか……です」
ゴロー「似たような概念だと思うが……」
ハクオロ「……付き合わせてしまってすいません」
ゴロー「……こっちの台詞だ」
でもまぁ、これで……終わ―
190 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/31(水) 21:43:51.96 ID:VVVpxZhSO
『マダダ! マダ終ワラヌ!!』
ハクオロ・ゴロー「「!?」」
『我ガ憑代達ヨ。我ヲコノ程度ノ事デ封ジラレルト思ッタカ』
191 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/31(水) 21:45:16.92 ID:VVVpxZhSO
ハクオロ「お前は……空蝉!」
ゴロー「分身、お前もか……」
空蝉『弐ヲ壱ニ』
分身『我等ヲ戻ストイウ意味、汝等ハ判ッテオラヌ』
分身『オモイダセ、汝ノ虚無ヲ!』 ゴロー「ぐ……」
空蝉『オモイダセ、汝ノ怒リヲ!』 ハクオロ「がっ……」
『 ヌオオオオオォォォォォォォオオオォォォォ
ォォォオオオオオオォォォォォォォォォオオオ
ォォォオオオオオオオオオオオオォォォオオオ
ォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオ
ォォォオオオオオオォォォォォォォォォオオオ
ォォォオオオオオオォォォォォォォォォオオオ
ォォォオオオオオオオオオオオオォォォオオオ
ォォォオオオオオオォォォォォォォォォオオオ
ォォォオオオオオオオオオオオオォォォオオオ
ォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオ
ォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオ
ォォォオオオオオオオオオオオオォォォオオオ
ォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオ
ォォォオオオオオオ――――!! 』
……続く。
192 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/10/31(水) 21:47:25.95 ID:VVVpxZhSO
投下完了。最後の息抜き回が終わりました。
では、また明日に。
193 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/10/31(水) 21:52:06.73 ID:wscZO/Hj0
乙
194 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2012/10/31(水) 23:24:53.92 ID:UfZCM4Lmo
乙
195 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/01(木) 16:12:18.67 ID:bVoHqUySO
乙
196 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/01(木) 21:48:21.64 ID:9Zf5e73SO
以降の話は、毎日少しずつ更新いたします。
このSSを御覧になった皆様。
ここまでのお付き合い、誠にありがとうございました。
……第三十話を開始致します。
197 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 21:51:07.92 ID:9Zf5e73SO
《過去・東の土地》
深い深い森の奥。細い竹のような素材を紐で組み、
隙間を蔓性植物で覆っただけの粗末な『家屋』がそこにあった。
チリーン……♪
ミコト「またおねむですカ〜? よしよし」
198 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 21:53:24.45 ID:9Zf5e73SO
それは二人……いや、『三人』となった家族の『住居』。
アイスマン「戻ったぞー。お、この子はまた寝てるのか」
ミコト「寝てばかりでス」
アイスマン「そういう所も、君にそっくりだ」フフ…
ミコト「……私は寝てばかりじゃないでス」
アイスマン「悪い意味じゃないさ。『寝る子は育つ』と言うから……
あ、でも女の子だから元気過ぎても困るな」
199 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 21:56:08.78 ID:9Zf5e73SO
──チリン♪
ミコト「あっ…そうでしタ。ゴハンは採れましたカ?」
アイスマン「ああ。君の教えてくれた辺りに、木の実が沢山あったよ」ドサッ
ミコト「森の動物さンが、言ってましたかラ」ニコリ
──チリン♪
アイスマン「その首輪の鈴……」
ミコト「ゴロさンがくれた鈴でス。この子、これを鳴らすと泣き止むんですヨ」
赤子「スゥー……スゥー……」
暖かい日射しと平穏な時間が、三人を包んでいた。
200 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 21:58:48.10 ID:9Zf5e73SO
アイスマン「おお、そうだ。これを……この子に」スッ
彼が差し出したのは……
ミコト「これ…」
アイスマン「ミズシマさんが渡した鍵だ。もう必要無い物だが……」
「こうして…紐で結んで、首にかけて……」カチャ…
ミコト「御守りみたいですネ」
アイスマン「御守りか。確かにそんな感じだ。
大きくなっても、大切にしてくれればいいがな」
ミコト「きっと、大切にします……きっと」
アイスマン(――この子に、幸多からんことを)
……小さな祈り。
アイスマン(そして、私達にも――)
201 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:05:06.94 ID:9Zf5e73SO
〔サンプルA・B・C、確認。作戦は第二段階へ移行〕
202 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:07:19.96 ID:9Zf5e73SO
…………
男のささやかな願いは数分後に『砕け散り』……
彼等を守ってくれていた森と共に、紅の炎に焼かれていく……
バキバキッ… ゴォウ!
破壊の巨人が『家族』を包囲し、逃走を阻害する。
アイスマン・ミコト「「 !? 」」
男〔お迎えに上がりました、アイスマン。我々と共にお戻り下さい〕
203 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:10:20.35 ID:9Zf5e73SO
全身を覆い隠す白い防護服を着た男が、仮面の男の前に立つ。
アイスマン「な、なんだお前達は!」
男〔我々は、貴方を――〕
ミコト「きゃああっ!?」
アイスマン「ミコトっ!」
マルタA「サンプルBを拘束。サンプルCも、回収いたしました」
ウサギのように耳の長いマルタ達が、ミコトと赤子を捕まえている。
ミコト「か、返して… 赤ちゃん…… 私の……私達の……」ググ…
マルタB「チッ、失敗作は無駄に力が強い。抵抗するんじゃない!」 ガッ!
ミコト「あうっ……」ドサ… ブチン チリン…
マルタの持つ銃器に殴られ、地に臥せるミコト。
倒れた勢いで、首輪についた鈴の紐が千切れ、転がっていった。
204 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:13:16.18 ID:9Zf5e73SO
アイスマン「キサマらぁ!!」
男〔おい、お客様はもう少し丁重に扱いたまえ〕
マルタAB「「ははっ!」」
アイスマン「く……」
男〔そんな怖い顔は止めて頂きたい〕
マルタA「抵抗する場合は、強制連行せよと言われております」
アイスマン「目的は私の筈だ! 二人は関係ない!!」
男〔――私の受けた命令は、貴方『達』の連行なのです〕
アイスマン「――なんだと」
男〔詳しい事は知りませんが、私は私の仕事をするだけ――〕スッ
ピシュッ! プスゥッ!
アイスマン「がッ!?」
男〔只の麻酔です。暫くお眠り下さいませ〕
アイスマン「ミ…ミコ…………」
ミコト「…………」
アイスマン「…………」ガクン
男〔捕獲完了。これより、帰投する〕
205 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:17:40.14 ID:9Zf5e73SO
………………
…………
……
〜 大研究施設・特殊実験室 〜
アイスマン「…………ミコト!」ガッ
「ぐうっ! なんだこれは! 拘束具が!」
……彼は何らかの器具に縛られ、肉体の自由を奪われてしまっている。
その姿は――十字架に磔られ、処刑された『神』のようだった。
コツ… コツ… コツ…
「お目覚めかね、アイスマン」
靴音を響かせながら、スーツ姿に白衣を羽織った男が近付く。
206 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:19:59.54 ID:9Zf5e73SO
議員「このような場所ですまないね」
アイスマン「キサマが私達を襲ったのか!」
議員「襲った? 上にいる野蛮な者達がか……それは失礼」ペコリ
「君達家族への、招待状のつもりだったのだが」
アイスマン「招待状!?」
議員「アイスマン、我々は君と良好な関係を築きたいのだよ」
「ミズシマが吹き込んだ事は、信用しないでくれたまえ」
アイスマン「人を凍結しようとしたくせに! 今度も私を実験に使う気か!」
議員「違う違う。既に実験の大半は『終わっている』のだ」
アイスマン「……なにっ?」
207 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:23:08.76 ID:9Zf5e73SO
議員「我々は地上に帰る為に様々な計画を生み出し、淘汰してきた」
「この前までは、君の代わりに『63号』を復元し、実験を続けてきたよ」
アイスマン「……63号」
議員「だが、もうあの計画は必要ない。
君があと少しだけ協力してくれれば全てが終わる」
「その為に君をこの『披露会』に招いたのだから」
「……見たまえアイスマン! これが我々の帰還の『鍵』だ!」スッ…
アイスマン「それは……『仮面』?」
議員「そうだ。君のつけている仮面の『レプリカ』だ」
「見ていてくれたまえ!」バッ
208 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:25:37.18 ID:9Zf5e73SO
ファアゴォォッ!! ドスドスドス…
アイスマン「なっ……」
議員「おおお……アイスマン! 私はこんなにッ!」
「こんなに素晴らしいパワーを手に入れたぞ!」
議員「君の仮面からッ!!」
「代謝能力も免疫力なども、これまでの比ではないぃぃぃぃッ!!」
議員「我々が再び地上の支配者となる時は近い!!」
「……だが、これにはまだ不鮮明な事が多くてね」カチャ…
議員「君の協力がまだ必要なのだ」
「もう我々は君に隠し事をしない。わざわざ君を此所に招待し、
仮面の完成披露をした事で判ってくれただろう?」
209 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:27:53.26 ID:9Zf5e73SO
議員「あとは君が進んで我々に力を貸してくれれば……人類の悲願は叶えられる!」
「勿論、君の待遇は最高のものを用意しよう!
何か聞きたい事や欲しいものがあるなら、どんどん言ってくれたまえ!」
アイスマン「ミコトは……」
議員「ん?」
アイスマン「ミコトは……娘はどうした!!」
議員「ああ、君と暮らしていたあの実験体かね」
210 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:29:28.55 ID:9Zf5e73SO
「――母胎となった貴重な『サンプル』だ。『解体』して大切に保管してある」
211 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:33:16.80 ID:9Zf5e73SO
アイスマン「サン…プ……解体!?」
議員「なぁに、気にする事は無い。モニターを見たまえ」ピッ
ウィーン… パッ
アイスマン「……………………な!」
議員「我々のマルタ製造技術は世界一だ。
まぁ、オリジナルである君が居るから当然だが」
「『3510号』と同じ物なら、映像にあるここの施設で何体でも生み出せる」
議員「今作っているのは、君に出荷する為の物だよ」
「何体ほど要るかね? 十か? 二十か?」
議員「あと……君の娘は君と同様の特別待遇を与えている。心配は要らない」
アイスマン「あ、あ………………」
議員「人類の為ならこの位は容易い事だ」
212 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:35:07.75 ID:9Zf5e73SO
アイスマン「……ゃない」
議員「ん、何かね?」
アイスマン「――お前達は……『人間(ひと)』じゃない」
議員「いいや、『ヒト』さ。寧ろ、君やマルタが『ヒト』じゃないのだ」
「だが、君達のおかげで、我々は強い肉体を手に入れる事が出来る」
議員「感謝しているよ」ニヤリ
「そンなニ……」
議員「ああん?」
213 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:36:37.68 ID:9Zf5e73SO
「 ソンナニ強イ肉体ガ欲シイカ 」
214 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:39:02.70 ID:9Zf5e73SO
議員「な、こ、拘束具が――『腐敗』して」
『 ソンナニ死ナナイ身体ガ欲シイカ! 』
議員「な、な、な、な、なんだお前はッ!!!」
『 ナラバ…… 』
『 ナラバソノ望ミ…… 』
『 叶エテヤロウ 』
議員「ひいぁぃぃいぁあぃぃぃぃぃ!?」
215 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:40:40.44 ID:9Zf5e73SO
『 未来永劫生キ続ケル、不死ノ躰ニシテヤロウ! 』
ジュルジュル… ヌチュォ…
議員「ち、ちからが…からだが……とけ……」ジュルジュル…
肉塊『…………』ズズズ…
216 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:42:10.32 ID:9Zf5e73SO
………………
施設の下層に異変が発生した事は、全エリアに伝わった。
しかし――『何の意味も無い』。
下層研究員「ち、チクショウ! なんなんだよこれは!!」パンッ!
銃で撃たれても死なない。不死のスライム。
ゆっくりとゆっくりと、かつての仲間の元へ這いずっていく。
下層研究員「う、う、うわあああああああああ!!」
肉塊『ォォォォーン』グチュルグチュル
取り込んだ『餌』を体内で消化しながら、肉塊は進む……
217 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:44:20.07 ID:9Zf5e73SO
「第六、第八研究室全滅!」
上層研究員「投入したアベル・カムルはどうなった!」
「……応答ありません! 母体、移動します!」
上層研究員「なんで下からこんなものが……」
「……!? 上空のアマテラスが作動しています!」
上層研究員「何ぃ!!」
「照射まで……約三十秒ォォ!?」
上層研究員「こ、こっちにはまだ人が残ってるんだぞ!?」
「停止信号……ブロック!? 他地区や他国施設からの妨害です!!」
上層研究員「く、糞共がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 『殺してやる!』」
「……直撃します!」
上層研究員「イヤだ……死にたく……」
218 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:45:26.33 ID:9Zf5e73SO
『 ──コロシテヤル、ソレガ次ノ望ミカ 』
219 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:47:16.92 ID:9Zf5e73SO
上層研究員「……まだ生きてる?」
「衛星映像、傍受成功! 映します!」
…ヴォン
上層研究員「…………は」
「他地区・他国の施設が……『ありません』!!」
「他国の保有していた衛星兵器が、一斉に照射されています!」
上層研究員「カ、メラの故障――」
『 サァ、次ノ望ミヲ言ウガイイ 』
「ひゃああっ! な、なんだ! アレは!!」
上層研究員「は、は、は、は、……死にたく……ない」
『 汝ラモ、ソウ望ムノカ。……ソウレ! 』
上層研究員「☆▲●◎*――――」
ジュルジュル…
220 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:48:52.76 ID:9Zf5e73SO
『 ククク…… 』
『 クハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! 』
『 サァ、願エ。小サキ者ヨ 』
( ヤメロ…… )
『 カハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! 』
(ヤメテクレ……)
(誰カ……私ヲ止メテクレ)
『 ウオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!! 』
(モし…ソれガ叶ワヌナら……)
(我を……)
221 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:50:09.23 ID:9Zf5e73SO
( 我を滅せよォォォォォォォォォォォォ!!! )
『……うん、いいよ』
222 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:51:36.91 ID:9Zf5e73SO
( !? この声は――『ムツミ』!! )
ムツミ『やっと、戻ってきてくれた……』
『ずっと、ずっと待ってたよ……』
ムツミ『“自分を滅ぼして欲しい”。それが、お父様の望みなら……』
『私が何とかしてあげるね』
ムツミ『お父様の望みは…… 私の望みだから……』
『――アマテラス強制介入、照射準備』
223 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:52:31.63 ID:9Zf5e73SO
ムツミ『 オトウサマを殺してあげる 』
『さよなら……』
224 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:53:32.29 ID:9Zf5e73SO
カッ…
225 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/01(木) 22:55:55.97 ID:9Zf5e73SO
…………
あの光は……確か、衛星兵器の。
マツシゲ(まさか……研究所に何かあったのか)
ここから…大研究所までは……
アベル・カムルの速さじゃ全力でも一日はかかる。
マツシゲ(だけど……行くしかないな)
何があったのか、自分の目で確かめる必要が出てきた。
……この衝動は、単なる好奇心から生まれたものなのだろうか。
それとも、何か違うもの……『不安』や『心配』から芽生えたものなのか。
はっきりとわからない。
でも今は、それでいい。
マツシゲ(あそこに行けば、わかる。そんな気がする)
アイスマン…… それに、ムツミ……
お前達は――――
226 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/01(木) 22:56:53.18 ID:9Zf5e73SO
本日分の投下完了。失礼します。
227 :
名無しNIPPER
[sage]:2012/11/01(木) 22:57:22.01 ID:cc6B99Xj0
おつ
228 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/01(木) 23:17:06.51 ID:BhlZL/cIO
なんかディオってるwwww
229 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/02(金) 13:26:37.09 ID:63YnO4iSO
乙
230 :
◆M6R0eWkIpk
[saga sage]:2012/11/02(金) 19:23:12.15 ID:3ts78J0SO
俺の向かった先に…… 以前の研究所は無かった。
あったのは……大穴だけ……
マツシゲ「……なくなったのかあ」
覚悟していたとはいえ、ショック。
マツシゲ「……そうか」
……あそこに、思い入れがなかったわけじゃない。
だけど、心が妙に冷めている。
……驕り昂る人類への『罰』。そんな言葉が、浮かんだ。
…………底の無い、虚無感。
マツシゲ(……もう少し見てみよう)
ここからじゃ穴の中まで見えん。
下には……生き残った者がいるかもしれない。
231 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 19:29:31.75 ID:3ts78J0SO
…ズシン ゴゴゴ
穴に降り、サーチライトで様子を確認する。
マツシゲ(……これは酷いな)
まるで……何処か別の惑星にいるみたいだ。
この地球が大口を開けて『研究所』を丸飲みした……とも思える。
一部の施設は、まだ形を残していたが……
生き残りはいないらしい。
……探してみても、駄目だった。
マツシゲ(あの光……なんだったのだろう。何故此所を攻撃したのだろう)
あと残っているのは、ここより更に下の施設か。
……行ってみよう。
232 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 19:37:49.50 ID:3ts78J0SO
地下のほうは、まだ僅かに電気が通っていた。
でも、通路は赤黒いスライムでいっぱい。
こいつに襲われたから、他国施設がこの研究所を破壊したのか?
……幸い、スライムは動いていない。
君子は危うきに近寄らず…… 一応、この変なのから距離をとっておく。
バサッ…
………………羽ばたき? ここ、地下だぞ?
アベル・カムルを音の方向へ動かす。
スゥー… ヒュゥゥー…
マツシゲ(あれは……マルタか?)
こっちに寄ってきたのは…… 黒い……翼の、女の子だ。
『…………』
拡声器を起動する。
マツシゲ『私は此所の研究員の……“マツシゲ”と言います。キミは……?』
『……北に帰って』
233 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 19:39:25.81 ID:3ts78J0SO
……この子の声、聞き覚えがあるぞ。
マツシゲ『……“ムツミ”?』
ムツミ『オジサマ……ここから去って』
マツシゲ『やっぱり、ムツミか! 心配したぞ』
ムツミ『――――ッ!? まだ――』
『 ヌオオオォォォォォォォォォォォォ―――!!! 』
……何の音だ。
マツシゲ『今のは……下から――』
ベギィ バゴゴ…
『 グルグオェォォォォァァァァァァァァァ!!! 』
234 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 19:42:09.17 ID:3ts78J0SO
シュゥゥゥゥ… ズズズ…
地底から、黒い煙が噴出すると――
マツシゲ(! み、身動きが取れ――)
『 ガアアアアァァァァァァァァァァァァッ!!! 』
メキメキ… ギギギ…
マツシゲ(け、煙に絞められて…………)
ピーッ! ピーッ!
内部モニターからの……警告!?
〔空気清浄装置、故障。循環停止します〕
……マズイ事になった。
防護服を着て、脱出しないと……
マツシゲ(急げ、急げ……)バッ ゴソ…
『 グオオォォォォォォォォァァァァァァ!!! 』
マツシゲ(なっ! しまった! 機体が宙吊りに……)
おまけに、外の詳しい事態が黒煙でわからん!
や、やむを得ない……
マツシゲ(……このままここに居てもジリ貧だ。一か八か…飛び降りよう)
ズルズル… バッ!!
やっ…… 『壁』が――!!
ガンッ! ゴガッ… バンッ!
235 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 19:50:46.19 ID:3ts78J0SO
ゴロゴロ…
マツシゲ(ま、マスクが……取れ……)
ゴフッ! ゴハ…
マツシゲ(……………………)
男は血を吐き、意識を失いつつあった。
『 マダ居タノカ? 』
そんな彼に……黒紫の霧に包まれた『何か』が問う。
『 汝ノ望ミヲ言エ―― 』
だが、彼はもう……
ムツミ『オトウサマ、彼は既に喋れない』
236 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 19:53:38.83 ID:3ts78J0SO
『 ――ナラバ頭ヲ読ム 』
ムツミ『私が知ってる。この人の願い』
『“失われた料理の数々を独りで、静かに、豊かに楽しみたい”と』
『 ――――ナンダソノ願イハ 』
ムツミ『叶えないの。それとも身体は要らないの』
『 ……焼ケタコノ身ノ苦シミ、癒サネバナラヌ 』
『 ソレニ…… 』
ムツミ『この封印じゃあ、オトウサマを封じきれなかった……』
『…………あれほどの抵抗。いったい何が未練なの』
『 ……“子”ダ 』
ムツミ『――っ』ギリリ…
『 我ガ娘は……何処ダ 』
ムツミ『……オトウサマ、オトウサマの娘は私だけだよ』
『 オマエデハナイ。“ミコト”とノ間に出来タ娘だ 』
ムツミ『あの子と……オトウサマの……娘』
『 こノ男の肉体ヲ借り、探す 』
ムツミ『…………………………』
『 オオオオオオオオォォォォォォォォ――――! 』
意識を失った男の前―― 一瞬黒煙が消え、『大いなる神』が現臨する。
その黄金の瞳は、男の身体に狙いを定め――
ズズズズズズズズズズズズズズズ……
……霧状となり、内に『取り憑いた』
237 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 19:59:05.18 ID:3ts78J0SO
………………
ムツミ『…………オトウサマ』
「……うーん、少し身体が重いな」
それに…… 腹が、減った。
ポン♪ ポン♪ ポン♪
ムツミ『…………』
「……み、違う。『子』を、探そう」
やっぱりレーザーは最深部まで焼き払ってはいない。
おそらく、ムツミの隠されていたあの『保存庫』にいるはずだ。
……二人分の知識があると、便利便利。
「……ムツミ、お前は」
……『子』が何処にいたか、知っていたんだろう。
ムツミ『…………』
「……そんなに寂しかったか?」
いや、憎かったか。選ばれたミコトが…産んだ子なんだから。
やっぱり、前の俺じゃこのコの心の穴を埋められなかったかな。
「だけど……助――」
ムツミ『…………オトウサマの頼みでも、私は協力しない』
「……なら、食事でも作って、俺の帰りを待っていなさい」
彼女に背を向け、崩壊した施設に足を進める。
ムツミ『……はい、オトウサマ』
「お父様…… 違うな」
ムツミ『え? じゃあ……マ――』
「その名前でもない。俺は……」
もう、かつての『ヒト』は居ないんだ。
俺の名前は――
ゴロー「『イノガシラ ゴロウ』。ゴローとでも呼んでくれ」
……未練がましい名前だけどね。
238 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 20:00:59.60 ID:3ts78J0SO
――――――
――――
――
〜〜〜〜〜〜
『 新タナ憑代ヲ得タトコロデ、起コリシ事柄ハ変ワラヌ 』
『 最初ニ分カレタ“フタツノ心”ハ、
ソノ後モ戻ル事ハナク、我等ハソノママ眠リニツイタ 』
『 長キ眠リノ間ニ、分離シタ心ハ次第ニ“フタツノ独立シタ存在”トナル 』
『 ソシテ我等ヘノ呪縛モ、数百年ノ時ヲ経テ弱マリ―― 』
『 ――我等ハ眠リト目覚メヲ繰リ返スヨウニナッタ 』
『 目覚メテハ地ニ出デテ、人ヲヨリ高ミヘト誘ウ為ニ干渉シ 』
『 チカラヲ使イ果タシテハ、再ビ深淵ヘト戻リ、眠リニツイタ 』
『 ダガ、我等ガ同時ニ眠リツク事ハナイ 』
『『 ナゼナラ―――― 』』
〜〜〜〜〜〜
239 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 20:02:53.40 ID:3ts78J0SO
大封印の魔法陣から、蒼い光が消えていく。
エルルゥ「………………」
アルルゥ「……おとーさん」
ウルトリィ「…………これで」
カミュ「――――ううん、まだ『終わってない』」
オボロ「……どういう事だ」
ドリィ・グラァ「「???」」
カミュ「『大神』が、この程度で封じられると思う?」
ベナウィ「……思いません」
クロウ「って……おいおい、じゃあ」
カルラ「だけど、今は力を半分にされて……あ!」
トウカ「カルラ? 何に気がついたのだ?」
カミュ「神の半身……『空蝉』と『分身』」
ウルトリィ「弐に分かれた躯を……同じ場所、同じ時に『封じる』」
カミュ「……つまり」
ガアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
カミュ「……来た」
240 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 20:05:37.42 ID:3ts78J0SO
コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛……
この世のものとは思えぬ『唸り』と『叫び』。
一度は光を失った魔法陣だったが、『咆哮』と共に輝きを取り戻す。
ォォォォォォン… ォォォォォォォォン…
ズズズ…ズズズ…ズズズ…ズズズ…
骨のように白い腕甲殻。
力強く脈動する青き筋肉。
地の底より出でし『神の両腕』は、
大地に爪を立て、己の『真の姿』を現界させた――
241 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 20:06:34.36 ID:3ts78J0SO
『 ワレハ………… 』
『 我ハ……“ウィツァルネミテア”ト呼バレシ者也 』
242 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 20:08:46.52 ID:3ts78J0SO
完全なる『壱』……『解放者“ウィツァルネミテア”』が彼女等の前に降臨した。
ウィツァルネミテア『 我ハ、汝等ニ崇メラレ、“ウタワレルモノ” 』
『 我ハ始マリ也 』
『 ソシテ……我コソガ“禍”デアリ、“元凶” 』
ウィツァルネミテア『 我ガ子等ヨ―― 』
『 我ヲ封ゼヨ―― 』
『 我ヲ封ゼヨォォォォォォォォォォォォォォォ!!! 』
243 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/02(金) 20:10:06.92 ID:3ts78J0SO
《最終決戦 / “うたわれるもの”》
●状況説明
勝利条件…『ウィツァルネミテア』の撃破
戦闘参加…
エルルゥ・アルルゥ・オボロ・ドリィ・グラァ
ベナウィ・クロウ・カルラ・トウカ・ウルトリィ・カミュ
ウィツァルネミテアは上半身だけが封印の外にいる状態。
攻撃対象は、『ウィツァルネミテア右腕・左腕』と
『ウィツァルネミテア本体』の合計三ヶ所。
左腕は術に、右腕は物理攻撃に対する防御が高い。
また、両腕を撃破しないと本体に攻撃が通らない。
最終決戦時、エルルゥ達の気力は常にMAXを維持。
これは、ゴローが全員に『食事と休む時間』を与えた為である。
時折、神の内にいるハクオロやゴローが攻撃照準を外したり、力を弱めてくれる。
以下ターン行動順
オボロ→ベナウィ→グラァ→ウルトリィ→ドリィ→トウカ→アルルゥ→
エルルゥ→カルラ→カミュ→クロウ→ウィツ(本体)→左腕→右腕
244 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/02(金) 20:11:45.93 ID:3ts78J0SO
では、また明日に。
今更ですが、ゴローちゃんの寝顔は『孤独のグルメ バス』で画像検索すると見れます。
245 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2012/11/02(金) 21:42:04.12 ID:mQOuMAYQo
乙 いよいよラストか……
246 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 23:00:23.97 ID:3ts78J0SO
……最後の、最も『悲しい』戦いが幕を開けた。
オボロ「兄者ぁ…………」
ウィツァルネミテア『 オボロ、先ズハ…両ノ腕ヲ落トシ、封ゼヨ 』
オボロ「オレは……兄者達に刃を……」
ウィツァルネミテア『 躊躇ウナ! ヤレ! 』
オボロ「……ウオオオォォォォォォォォッ!!」ダッ
《オボロ・必殺連撃!》
オボロ「何故だ!? 何故兄者を……っ」
ザシュ!! ザシュ!! ザシュ!! ザシュ!! ザシュ!! ザシュ!! ザシュ!! ザシュ!! ザシュ!!
手近な神の右腕を、泣き叫びながら斬りつけ続けるオボロ。
オボロ「兄者ぁぁあぁぁっ!!!!」 ズバッ!
戦において最強の、火神(ヒムカミ)の力が斬撃と共に爆発を起こし、
ウィツァルネミテア『 ソウダ、ソレデイイ…… 』
ウィツァルネミテアの右腕に、容易く回復しない刀傷を負わせた。
247 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 23:10:22.79 ID:3ts78J0SO
ベナウィ「聖上……」
ウィツァルネミテア『 ベナウィ。オマエノ忠誠、見セテ貰ウゾ 』
ベナウィ「……はい」チャキッ
《ベナウィ・必殺連撃!》
ベナウィ「叶う事なら……」
ヒュンッ ザクッ シュパッ ブス ヒュンヒュンヒュン… スパァッ!
トゥスクルの侍大将は――
己の持つ槍で……己の主君を薙ぎ、突き、斬る。
その動作に一切の無駄は無い。
的確に、神の左腕の…甲無き箇所を攻めていた。
ベナウィ「貴方の下で武士(もののふ)としての本懐を遂げたかった……」
スッ… バチッ! バリ…
彼の内にある水神が、槍に宿りて雷雲を招き……
バリッ…ゴォゴォゴォォン!
ウィツァルネミテアの左腕に、稲光を落とす。
248 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 23:14:34.92 ID:3ts78J0SO
グラァ「兄者様ぁ、僕は……」
ウィツァルネミテア『 グラァ。オマエノ矢ヲ、私ノ躰ニ降ラセロ 』
グラァ「……判りました」
《グラァ・必殺連撃!》
赤い袴に青の瞳―― 少年は、矢を天上に放つ。
グラァ「兄者様ぁあぁぁぁ!!!」
何本も、何本も……一心不乱に……
グサ グサ グサ グサ グサ…
ウィツァルネミテア『 グウッ! 』
右腕に、矢の雨が降り注いだ。
グラァ「うぅ……」ポタッ…
その雨は……涙雨だったのかもしれない。
249 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 23:17:33.13 ID:3ts78J0SO
ウルトリィ「我等が大神……いえ、ハクオロ様」
ウィツァルネミテア『 ……辛イ役目ヲ押シ付テスマナイ 』
ウルトリィ「辛くないと言ったら嘘になります……
ですが、貴方様の望みなら……」
《ウルトリィ・必殺連撃!》
ウルトリィ「ラヤナ・ハル・イャソムクル……」
祝詞を唱えると、彼女の全身は白く発光する。
ウルトリィ「ハクオロ様、どうか……ごゆるりと……」スッ
その輝光の術波動が、全身からウルトリィの掌中に集まると、
彼女は神の左腕に、子を撫でるかの如く優しく触れる……
ウィツァルネミテア『 アガァァッ! 』
ウルトリィ「…………」 ジュウウウ…
掌から……光の膨大な熱量が左腕に伝わり、内部から組織を焼いていった。
250 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 23:20:03.15 ID:3ts78J0SO
ウィツァルネミテア『ドリィ』
ドリィ「……判っています。僕の矢で、兄者様を射ち貫きますから」
《ドリィ・必殺連撃!》
キリリリ… パシュパシュパシュ!!
蒼の袴に紫の瞳―― 少年の矢は、弓から離れてゆく。
ドリィ「兄者様……」
ドス ドス ドス…
ウィツァルネミテア『 グ…… 』
風を伴い、加速する破魔の矢は、左腕の筋の一部を断裂させた。
ドリィ「くっ……」
251 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 23:25:04.35 ID:3ts78J0SO
トウカ「聖上ぉぉ……」
ウィツァルネミテア『 トウカ。エヴェンクルガノ義ヲ、私ニ示セ 』
トウカ「…………御意っ」スッ
《トウカ・必殺連撃!》
トウカ「聖上……某は……」
ヂャキィン!! ザシュザクゥッ!!
エヴェンクルガの高速抜刀。それは、不可視の連続斬り。
トウカ「――聖上おおぉぉぉぉぉぉ!!!」
……ドバアッ!
左腕から、筋繊維の千切れる音が聴こえる。
ウィツァルネミテア『 見事ナ技術ダ…… 』
この音がなければ、ウィツァルネミテアは斬られた事に気付かなかったろう……
252 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 23:31:52.38 ID:3ts78J0SO
アルルゥ「…………」グス
ムックル『ヴォ〜……』 ガチャタラ『キュ〜……』
ウィツァルネミテア『 …………アルルゥ 』
《アルルゥ・必殺連撃!》
アルルゥ「おとーさん……」
ムックル『ヴォオオオォォォォ!!』ダンッ!
ムックルは大地を蹴り、右腕に爪の一撃を当てる。
ガチャタラ『キュ! クルル〜!』
高速回転し、竜巻を生み出すガチャタラ。
アルルゥ「おとー…さん……」グズッ
白虎の体当たりとまだ幼いアルルゥの涙が、
この『娘』の頭を優しく撫でていた……
父の『右手』に落ちた。
253 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 23:34:48.34 ID:3ts78J0SO
エルルゥ「ハクオロさん……」
ウィツァルネミテア『 グウッ!? エルルゥ! 君ハマダ動クナ!! 』
エルルゥ「は、はいっ!」
ウィツァルネミテア『 カルラ! 早ク攻撃シロ! 抑エラレン! 』グググ
《カルラ・必殺連撃!》
カルラ「あるじ様……」グッ…
カルラは自身の鉄塊刀を振りかぶり―― 左腕に渾身の一撃をぶち当てる!
カルラ「ヤアアァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
――ゴオォォッ! バスウッ!
甲殻と『覇陣』が衝突し、ウィツァルネミテアの左手の指が叩き折られた。
254 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 23:40:38.27 ID:3ts78J0SO
ウィツァルネミテア『 カミュ…… 急ゲ…… 』
カミュ「うん……」
《カミュ・必殺連撃!》
カミュ「ヌグィ・ヤクァ・イャソムクル……」
呪法の詞により、黒い球体が生み出される。
カミュ「おじさま…… カミュね…… おじさまの事……」
ズズズズズズズズズ…
右腕に直撃した滅却の力は、甲の一部を無きモノとし、
外殻に守られていた柔らかい筋肉を露出させた。
255 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 23:43:31.09 ID:3ts78J0SO
クロウ「よっしゃ! 次はお」
ウィツァルネミテア『 グアアアアアアァァァァァァァァァッ!! 』
クロウ「うおぃ!?」
ウィツァルネミテア『 ニ、逃ゲ…… 』
…キュィィィン
パウッ! ズゴオオ……
放たれた光線は『飛んだ』クロウに当たらず、
空間の外壁を融解させただけに留まる。
クロウ「……と、飛んでるぅぅぅ!?」
ムツミ『……重い』 バッサバッサ…
256 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 23:46:31.03 ID:3ts78J0SO
ウィツァルネミテア『 ムツミ! スマナイ! 』
ムツミ『お父様。おじさまにちゃんと照準妨害するよう、言って』
ウィツァルネミテア『 ……“善処スル”トサ 』
ムツミ『じゃ、あとは自分でやりなさい』ポイッ
クロウ「……へ!?」
《クロウ・必殺連撃!》
クロウ「ま、まあいいぜ! 総大将! 行きやす!!」ヒューン…
先程剥き出しになった筋肉に向かい、勢いのまま落ちるクロウ。
クロウ「おら! おらおら! おらおらおらおらぁ!!」 ザグッ ドガッ
クロウの属性は土。大地の重力を受けた彼の大刀は、
本来の倍以上の力で突き刺さり、右腕に深い裂傷を与えていく。
クロウ「しゃあっ!!」ドスンッ!
…ブォン!
クロウ「……あ?」
ドグジャァ!
クロウが着地した瞬間、狙ったかのように左腕が炎を纏い、
自分の右に待機する者達を容赦なく攻撃する。
クロウ「ぬぐあっ!!」 カミュ「――ッ!」
エルルゥ「キャッ!!」 アルルゥ「あぐっ!」
オボロ「げふぁっ!!」 グラァ「うわあああっ!!」
257 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 23:48:52.66 ID:3ts78J0SO
ウィツァルネミテア『 ウグアッ…… 右腕ハ抑エル……』ギリギリ…
エルルゥ「こ、この時の為に!」タタタッ
「ヤツモロロの薬湯!!」
パアアアッ…
【クロウの体力が回復した】
【カミュの体力が回復した】
【オボロの体力が回復した】
【グラァの体力が回復した】
【エルルゥの体力が回復した】
エルルゥ「アルルゥは……範囲外!?」
アルルゥ「ん! だいじょぶ!」 ガチャタラ『キュキュ! ルルル〜!』
・アルルゥの能力『自然治癒』発動!
【アルルゥの体力が回復した】
258 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 23:51:48.65 ID:3ts78J0SO
オボロ「ドリィ! こっちに来いッ!!」
ドリィ「はい、若様っ!」タタタッ
《協撃! 『影縫い乱舞』》
オボロ「あれを……やるぞっ!!」
ドリィ・グラァ「「でも……」」
オボロ「やるんだッ!!」
ドリィ・グラァ「「本当に……いえ、野暮ですね」」
オボロ「……行くぞ!!」
ドリィ・グラァ「「……はいっ!!」」
オボロ「はあっ!!」バンッ!!
跳躍するオボロ。
ドリィ「影縫いの雨!!」ヒュンヒュン
グラァ「兄者様を、捕縛します!!」ヒュンヒュン
……ザザザザザザザザザ!!
動かぬ右腕を、次々と矢の嵐が襲う。
ドリィ・グラァ「「若様あっ!!!」」
オボロ「うおおおおォォォァァ!! 兄者ああぁぁあぁぁぁ!!!」
カッ! ゴォォォン!!
豪炎がウィツァルネミテアの右腕を包み、肉を焦がす。
259 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 23:54:02.03 ID:3ts78J0SO
ベナウィ「クロウ!」
クロウ「ういっす!!」ダダダ…
《協撃! 『騎兵、前へ』》
ベナウィ「これが最後のお勤めです」
クロウ「ういっす! 一世一代のこの勇姿、しっかり刻んでもらいやすかあ!」
ザザッ! ジリッ…
ベナウィ・クロウ「「うおおおおおおおおおおっ!」」
ウマはいない。しかし、それでもこの二人は……
トゥスクル『騎兵衆』、隊長と副長なのだ。
武士の『誇り』。それこそが、原動力!!
クロウ「総大将、とくと御覧を! こいつが」
ベナウィ「これが、我らの覚悟です!」
土神と水神。この星の大自然の源を体内に秘める二人の……『十字突進』。
ウィツァルネミテアの左腕を『烈破槍』と『剛芯直刀』が切り開いた。
260 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/02(金) 23:56:16.37 ID:3ts78J0SO
アルルゥ「カミュちー…」
カミュ「アルちゃん……」ギュウ
《協撃! 『ムックル悶絶爆炎弾』》
カミュ「アルちゃん、ごめんね……」
アルルゥ「うー……」
カミュ「……お願い」
アルルゥ「……うん。……ムックル」
ムックル『クフゥ〜ン……』
カミュ「ごめんね……アルちゃん」
カッ ドドドドドドドド!!
術の炎とムックル。人の技と獣の野生が織り成す、突撃技――
ウィツァルネミテア『 グオオオオオォォォォォォァァ!!! 』
大神は、自らの右腕の痛みに耐えきれない……
そして――
ブチッ… ズォォォン…
オボロ「『右腕』を落としたぜ!!」
ドリィ・グラァ「「あとは、左腕を封じれば!」」
261 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/02(金) 23:58:18.08 ID:3ts78J0SO
ウルトリィ「カルラ、お願いっ……」
カルラ「ええ、よくってよ」ニコリ
《協撃! 『美しき野獣』》
カルラ「本当にいいのね……」
ウルトリィ「ええ……それが私の、巫(カムナギ)としての務めなら」
カルラ「そう、困ったものね…お互い、素直じゃないのに」
「はあああああ……」
ウルトリィ「ええ…本当に……」フワリ
ウルトリィの水の法術が雷を呼び起こし、カルラの『覇陣』に込められる。
ウルトリィ「はあぁぁっ!!」
カルラ「やああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
白き翼が光の術を、強き女が雷を。
二種類の光が、大神の左腕に放射された。
ウィツァルネミテア『 ゴアアアアァァァァァァァァァ!!! 』
ブツッ… ズゥゥン……
ベナウィ「左腕も封じました」
クロウ「こいつで、やっと……」
262 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 00:00:06.21 ID:hbLrbHTSO
『 ――小サキ者共ヨ。我ヲ侮ルナ 』
263 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/03(土) 00:05:29.29 ID:hbLrbHTSO
トウカ「せ、聖上……?」
ウィツァルネミテア『 ――滅セヨ 』 キュィィィン…
カルラ「また、あの光線かしら?」
カミュ「――違う! ソコから逃げてっ!! クロウ兄さま!!!」
クロウ「えっ! また俺!?」
ウィツァルネミテア『 カアッ!! 』
パアア… ゴォン!
クロウの足下から、虹色に輝く柱が現れ……
クロウ「な――」
七色の柱は、小さく破裂する。
……ガクッ
ベナウィ「ク、クロウ!? クロウ!!」タタッ
エルルゥ「クロウさんっ!」タタッ
ウィツァルネミテア『 ハアアアアアア―― 』シュゥ…
この七色の光柱は、対象一人の命を極限状態にする。
言わば、黒い腐敗光線の『人体攻撃型』である。
全力のウィツァルネミテアなら、命を喰らう『暗黒』の力を用いるが……
憑代であるハクオロとゴローが抵抗している影響下では、
本来有する滅壊の能力を、完全には発揮出来ないようだ。
264 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/03(土) 00:07:56.86 ID:hbLrbHTSO
エルルゥ「……大丈夫、息はあります!」
《エルルゥ・連撃!》
エルルゥ「ヤーナ・ゥンカミ様……」 キラキラ…
美しく煌めく癒しの祈り。
夜空に浮かぶ星のように、光が瞬き、クロウに注がれる。
ぱちっ
クロウ「……う、う〜ん? お、俺生きてる?」
ベナウィ「心配をかけさせないで下さい……」
ウィツァルネミテア『 ヌウウウウゥゥゥゥゥッ!!! 』
ウルトリィ「もう……御意思を出す事すら出来ないのですね……」
265 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/03(土) 00:09:49.02 ID:hbLrbHTSO
クロウ「……若大将! こっちに来いや!!」
オボロ「……クロウ」
クロウ「オメーに心配されるたぁ、俺も焼きが回ったもんだな!」
オボロ「死にかけたってのに、口の減らない奴だ!」
クロウ「次は、躰を……やるぜ」ブンッ!
オボロ「うぅ……」チキッ…
《協撃! 『漢の花道』》
オボロ「……ッ!」
クロウ「あぁん? どうしたぁ! まさか総大将を、
そんな腑抜けた面で送ろうってんじゃねえだろうな!!」
「総大将への、最後の見せ場じゃねぇのかあっ!!!」
オボロ「……ああっ!!」キッ
クロウとオボロが、ウィツァルネミテアの前に立ち、刀を構える。
オボロ「でえりゃああああああああああああ!!」 ザク ジュプ スブッ ザバッ
クロウ「おらおらおらおらおらおらああああああああ!!!」 ダン ゴッ メキ
『双滅牙』と『剛芯直刀』により、風穴を開けられる大神の腹。
ウィツァルネミテア『 ヌゴオオオオォォォォォォ――! 』
クロウ「……なんだよ、出来るじゃねぇか」スタッ
オボロ「…………兄者」
266 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/03(土) 00:13:19.50 ID:hbLrbHTSO
《協撃! 『双子技その壱・その弐』》
ドリィ「兄者様……他に方法は無いのですか!」キリリリ…
グラァ「本当に……お別れなのですか!」キリリリ…
ドリィ・グラァ「「兄者様ああああぁぁぁぁぁぁ!!!」」
バヒュン… ザザザザザザ… グサグサグサ…
ドリィの射た矢は真っ直ぐに、グラァの射た矢は山なりに。
ウィツァルネミテア『 ヌアアアッ!! 』
放たれた矢は、双子の尊い者を傷付ける……
267 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/03(土) 00:14:42.96 ID:hbLrbHTSO
ウィツァルネミテア 『 ニ、ゲ、ヨ…… 』
カルラ「今更、そんな事出来ませんわ…… トウカ」スチャ
トウカ「……ああ」ススッ
《協撃! 『力と技』》
トウカ「カルラ、援護を!」
カルラ「ええ、いいですわよ。誰にも貴女の邪魔をさせませんわ」
「はあああああああああ……」
カルラ「てやああああああっ!!」 ずばあっ!
カルラは力を溜め、『覇陣』で脇腹を垂直に斬る。
トウカ「せめて…… せめて、せめて某の手で――」タンッ
前にいるカルラを跳び越えたトウカは、
空中で刀を抜き、ウィツァルネミテアの脇下を裂いた。
トウカ「……聖上」
ウィツァルネミテア『 グガア…… 』
268 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/03(土) 00:18:15.15 ID:hbLrbHTSO
トウカ「アルルゥ……」
アルルゥ「……ん」コクン
《協撃! 『可愛余強百倍・雷光一閃』》
トウカ「たああああああああああぁぁぁっ!」サササ…
キィンッ! キィンッ! キィンッ! キィンッ! キィンッ!
エヴェンクルガの女、トウカ……
初めて彼女とアルルゥが出会ったのは、戦場だった。
アルルゥが慕っていた、ハクオロを討たんとする敵として……
アルルゥ「あ……」
トウカはあの時と同じように、刀を『父』へ向けた。
トウカ「……すまない、アルルゥ。某が不甲斐ないばかりに……」
しかし、今は敵としてではない。
主君に安寧を与える為……トウカは自身の技量の全てを
ウィツァルネミテアの右半身に叩き込んだのだ。
アルルゥ「…………」
269 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 00:23:02.11 ID:hbLrbHTSO
ウィツァルネミテア『 ヌアアアアアアアァァァァァァァァァ!!! 』
ォォォーン… ォォォーン…
ボワァン… ボワァン… ボワァン…
エルルゥ「周りの石柱が……」
――光輝く記号の群れ。
カミュ「これはダメっ! ムツミ!!」 パアァッ…
ムツミ『がってんしょうちのすけー…… “ばりあ”』 ヴォン!
ウィツァルネミテア『 アアアアァァァアアアアアアアアァ
ァァァァァァァァアアアアァァァア
アアアァァァァァァァァァアアアア!! 』
カッ! ボォォォォォ――!!
ウィツァルネミテアの開いた口から、業火炎が放射される。
その神の焔は、己が瞳に映る全てを『焼き払う』筈のものだが……
270 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/03(土) 00:26:27.05 ID:hbLrbHTSO
ムツミ『……“ばりあ”が無ければ即死だった』
オボロ「ぐ…なんて力だ……」
トウカ「これが……大神(オンカミ)の……熱っ」
十一人を完全に焼き消せはしなかった。
エルルゥ「アルルゥ!」
アルルゥ「……うん」
《協撃! 『究極の癒し』》
エルルゥ「アルルゥ、これを……」 キラキラ…!
姉から妹に託されたのは――『治癒の煌めき』。
アルルゥ「でも……」
エルルゥ「アルルゥ…… ハクオロさんの、お願いなの……」
アルルゥ「…………ん」
ムックル『ガオオッ!』 ガチャタラ『キュルゥッ!』
ダンッ キラキラ… ダンッ キラキラ… ダンッ キラキラ…
アルルゥ達は皆の周囲を跳び、渡された命の力を分け与えてゆく。
一同「「「おおっ!!」」」
焼けた傷も治り、仲間と共に再び立ち上がる『人』と――
ウィツァルネミテア『 グ……ガ………… 』
内からの抵抗で、傷も癒えない孤立した『神』……
対照的な存在が巨大な魔法陣の上で対峙していた。
271 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/03(土) 00:29:19.73 ID:hbLrbHTSO
ベナウィ「……見てください」
カルラ「少しずつ……地底に引き摺り込まれてますわね」
腕による支えを失い、更に肉体を破壊されたウィツァルネミテアは――
ウィツァルネミテア『 ……………………』
大封印(オン・リィヤーク)に耐えきれなくなっている。
ウィツァルネミテア『 ――小サキ者、我ガ子等ヨ 』
『 汝等ノ強キ意思、見セテ貰ッタ 』
言の葉が、融けてゆく――
ウィツァルネミテア『 コレヨリ、我ハ長キ眠リニ入ル 』
『 ……汝等ニ、コノ世界ヲ託シテ良イカ 』
272 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 00:34:01.09 ID:hbLrbHTSO
クロウ「さっきまでコッチと戦ってたってのに、随分と――」
ウルトリィ「……そういう、ことなのですか」
ウィツァルネミテア『 ――我ハ“ウタワレルモノ”也 』
『 子等ヲ“愛シ”、時ニ“試ス” 』
ドリィ・グラァ「「神様の両面性……」」
ベナウィ「……大神(オンカミ)とは、厳しくも優しい存在なのですね」
カミュ「――だって、お父様だもん。当たり前だよ」
ウィツァルネミテア『 汝等ト会ウ事ハ二度トアルマイ…… 』
『 ──最後ニ“ヒトツ”ダケ望ミヲ叶エヨウ── 』
『 ドチラカ“一人”ヲ我カラ解放スル事モ許ス 』
ウィツァルネミテア『 ──子等ヨ、何ヲ願ウ── 』
273 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 00:36:33.64 ID:hbLrbHTSO
オボロ「…………」
ドリィ・グラァ「「…………」」
ベナウィ「…………」
クロウ「…………」
カルラ「…………」
トウカ「…………」
ウルトリィ「…………」
カミュ「…………」
アルルゥ「…………」
エルルゥ「…………」
ウィツァルネミテア『 …………何モ、“願ワヌ”カ 』
オボロ「……本当は二人を共に返せと、言いたいがな」
ベナウィ「私達が大切に思っているのは、聖上だけではありません」
カルラ「あれはあれで、居ないと退屈な殿方ですわ」
トウカ「とびきり変わった御方でありますけれども」
ドリィ・グラァ「「僕達、けっこう好きですよ」」
クロウ「旨いメシ屋に、連れてって貰ってやせんし」
ウルトリィ「……どちらかなんて、望みません」
アルルゥ「どっちも!」
エルルゥ「だから、今望むなら――」
カミュ「――お父様。どうか、安らかにお眠り下さい――」
『 ──アリガトウ 』
キュイイイイイン…
空間全てが……光に包まれてゆく……
274 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 00:43:34.51 ID:hbLrbHTSO
〜〜〜〜〜〜
《 幕間 》
〜 過去・大研究施設内地下保存庫 〜
破砕・溶解された研究所を進み、俺は『サンプル』の保存庫に到着する。
後ろから、こっそりとついてくる……『女の子』と共に。
ゴロー「…………ムツミ、隠れてないで来なさい」
ピクンッ ソーッ…
ムツミ『…………』ジー…
ゴロー「……素直じゃないなあ」
世の中、生き辛いぞ。
ムツミ『……そっちじゃない。私が居たのは右』
ゴロー「左には…どでかい卵?」
いっぱいあるぞ。
ムツミ『左側は…人工的に創られた生物をサンプルとして保管してるって』
ゴロー「この卵、鶏の何十倍かな」
食い応え、ありそう。
ムツミ『その卵については、私も判らない。
ずっと昔のものと、聞いたことあるだけ』
ゴロー(いつの間にか、近寄ってきた)
ムツミ『……右に』
ゴロー「そうだな……」
……いったい、何が産まれるのだろうか。
『G−H』『G−I』
275 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/11/03(土) 00:46:10.00 ID:hbLrbHTSO
…………
ムツミの言う通り、右の通路を進むと……
液体に浸けられたマルタ達の保存場所に着いた。
ゴロー「……これか」
ムツミ『形がある者は、生きてると思う』
ムツミが見ているのは、四角錐を二つ重ねた、正八面体状のカプセル。
よく見ると、内側から壊されている。
ムツミ『これが……私の入れられていたモノ』
ゴロー「じゃあ子どもも……これに入れられてる可能性があるな」
まだ電源も動いているし、見つけられれば助けられる。
ゴロー「ええと……何か端末は……」
あったあった。
ゴロー「どれ……直近の……」ピッ
よし、詳しい場所はわからないが、保存番号の特定は出来た。
ゴロー「ここまでカプセルを動かせないかな……」
……数分間四苦八苦したが、駄目だった。
どうやら、一部機能が壊れている。
ゴロー「……自力で探そう」
ムツミ『……』トコトコ
『このコ』 ピッ
……ムツミ。近くにあるならあると、もっと早く言ってくれ。
276 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/11/03(土) 00:49:15.78 ID:hbLrbHTSO
ゴロー「取り出す方法は……」
ムツミ『鍵が無いなら、無理矢理割って……』グッ
……なんだろう、娘の教育を間違えたお父さんの気分だ。
ゴロー「あ、鍵。台の上にあるじゃないか」
これ……『マスターキー』だ。
ムツミ『使えるの?』
ゴロー「声紋認証で……アイスマンの声に反応するはず」
なら……
ゴロー「あー…あー…あー…………」
「……『開け』」
ウィン… プシュー…
ムツミ『お父様の声だ……』
ゴロー「あーあーあー……あれ?」
……面倒なことになったみたい。
ゴロー「……声が戻らん」
……まぁ、いいか。慣れれば問題ないだろ。
ムツミ『……♪』ギュッ
ゴロー「……当たってるぞ」
ムツミ『当ててる』
……誰か、このコを止めて下さい。
277 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 00:51:08.73 ID:hbLrbHTSO
…………
ムツミと、薬の影響で眠り続ける赤子に両腕を封じられながら、
他に生体反応のあるマルタ達を解放していく。
ゴロー「あと…ここから離れた別の施設にも、マルタが居るんだよな」
あの耳の長い、ウサギみたいなマルタ達。
ムツミ『あのコ達は、施設から出たがらない』
ゴロー「……良く言えば『寵愛』、悪く言えば『奴隷』か」
だけど……扉さえ開けてやれば、いつかは穴から出てくるさ。
こんな事を喋りながら…… 周りを見ていくと――
ゴロー「……!!」
ムツミ『……見つけちゃったの』
そこには『解体』された実験体の培養槽が、あった。
278 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 00:52:02.50 ID:hbLrbHTSO
――『3510号』と端に書かれた『脳髄』だけの水槽が。
279 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 00:53:05.90 ID:hbLrbHTSO
「―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――――
―――――――――――――――――!!」
……声にならない叫び。
俺の内にある……『アイスマン』の嘆き。
280 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 00:58:26.59 ID:hbLrbHTSO
ムツミ『……私は、上に戻るから』バサッ
「…………」
この家族は……元に戻らない。
復元設備は、もう使えない。
……ここを詳しく調べていないのに、何でそう思えるんだろうか。
それから三時間ほど……
俺は……得体のしれない、奇妙な『喪失感』を味わっていた……
281 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 01:02:52.94 ID:hbLrbHTSO
…………
「最後に、この家に来れて良かった」
『……もういいの』
「これ以上身を休めると、ムツミが俺を封印出来なくなるかもしれない」
『……お父、おじさま』
「ムツミ、あの子を任せる」
『――っ! 私にあの娘が産んだ子を育てさせるの!!』
『私に……笑ってくれないんだよ!』
「ムツミ……」
『おじさまには……笑いかけてくれるのに……』
「実は……対赤ちゃん用の『秘密兵器』がある」
『……それは?』
「鈴というんだ」
『……“鈴”?』
「今、俺達がいるこの森の中は……アイスマン達…家族が暮らした場所だ」
「“この子は鈴を鳴らしてやるとあやせる”とわかって、引っ越してきたんだ」
「襲撃された時に、壊れたと思ってたが……」
「よく、壊れてなかったもんだ……」
「やってみなさい」
『…………』
──チリンッ♪
『あ…………笑った』
282 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 01:04:50.86 ID:hbLrbHTSO
「それに、一人で育てろとは言わない」
「あの時助け出した者達の半分を、預ける」
「この辺を切り開いて“集落”を造るといい」
「残りの半分には……別の仕事がある」
『おじさま……』
「ムツミ、その子を貸してくれ」
「……君にあって一年か。お父さんの代わりはどうだった?」
「少し位なら言葉もわかるかなあ」
「わかったらでいい、ムツミには内緒だ」
「森の奥に……君のお母さんの墓を立てた」
「今から連れていく者達にも言うが……其所には『結界』を張る」
「俺の……最後の実験は……天に任せる事にした」
「あの者達には…墓守と────」
ザザザッ……
「君も、あそこを守ってくれよ」
――――――
――――
――
283 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/03(土) 01:09:43.72 ID:hbLrbHTSO
ねーちゃん! あしたっていまさッ!
それでは、失礼します。
そうそう。途中の『卵』はこのSSに全く関係ないものです。
284 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福井県)
[sage]:2012/11/03(土) 01:11:45.89 ID:g6r8sPBRo
なんかうたわれの原作やりたくなってきた、アニメは全部見たんだけどなぁ
18禁版か全年齢版か悩むぜ
285 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(山口県)
[sage]:2012/11/03(土) 01:13:23.34 ID:+FjRnCNKo
初めてやるならCV入ってる全年齢版をオススメする、エロはそんなにエロくない
286 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福井県)
[sage]:2012/11/03(土) 01:28:27.21 ID:g6r8sPBRo
全年齢版買うかー、噂の早漏皇も見たかったが
287 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/03(土) 02:44:13.71 ID:QI5IWnaIO
ポコー!
288 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/03(土) 19:36:29.30 ID:hbLrbHTSO
――――――
――――
――
激しい風と光に包まれたエルルゥ達は、
その風が止んだ後、閉じていた二十と六の眼(まなこ)を少しずつ開く……
エルルゥ「ここは……」
そこは……どこか暖かみがある、明るい空間。
オボロ「あのときの……」
クンネカムンで捕らわれていた光の球体の中――
エルルゥ以外の者は、口にせずともそう感じていた。
『ここは、私の精神世界だ』
一同「「「 !!! 」」」
十一人と二匹が、声の方向――彼女達の『上』に向き直る。
果てなく上へ上へと昇る青い陽炎の中に――
ハクオロ『皆、よくやってくれたな』
――白き皇が、笑みを浮かべて立っていた。
「おとーさん!」「兄者あ!」「「兄者様っ!」」「聖上…」
「総大将」「あるじ様」「せいじょおぉ…」「ハクオロ様…」
エルルゥ「ハクオロさん!」 カミュ「おじさまっ!」
ハクオロ『どうやら……神様というものは気紛れらしい』
『お前達との、別れの時を作ってくれたよ……』
――彼は戻らない。そう決めていた。
自分が今の世界に『あってはならない』とわかっていたから……
――別れの言葉を、皆に伝える。
289 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 19:39:22.25 ID:hbLrbHTSO
ハクオロ『ウルトリィ』
ウルトリィ「――はい」
ハクオロ『この先も、まだ争いが続くだろう。
私達が残した火種は、きっといつの日か再び燃え上がる』
『そうなった時……お前には國々の間を取り持つ、掛橋となって欲しい』
ハクオロ『ウルト。これはお前にしか出来ない事だ』
『人の…心の痛みを、判るお前なら……絶対大丈夫だ』
ウルトリィ「はい。確かに承りました」
ハクオロ『……本当は、本当に言いたいのはそんな事ではないのに』
『何故か……言葉は出ないものだな……』
ウルトリィ「……はい」
ハクオロ『元気でな』
ウルトリィ「ハクオロ様も……」
290 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 19:42:28.59 ID:hbLrbHTSO
カミュ「おじさまっ……」
ハクオロ『カミュ…それとも、ムツミか』
カミュ「今は……カミュだよ」
「おじさまがいなくなったら、ちょっとだけ淋しいけど……
カミュは……平気だからね……だからっ……」 …ポタッ
ハクオロ『……お前を苦しめてしまったな』
カミュ「ううん……ムツミも、喜んでる」
ハクオロ『そうか』
カミュ「おじさま…… カミュのこと、忘れないでね」ニコッ
ハクオロ『今度は決して、忘れたりしない』
『明るく、御転婆で、寂しがり屋の……可愛い娘の事を』
カミュ「おじさまぁ…」グスッ ゴシゴシ
カミュ「またいつか……会えるから、さよならは言わないね」
「それじゃあ、『またね』」ニッ
ハクオロ『ああ、またいつかな』ニコッ
291 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 19:45:17.16 ID:hbLrbHTSO
ハクオロ『カルラ』
カルラ「はい」
ハクオロ『これで、お前との契約も無効だ。
本来、お前は何かに縛られる質ではない』
『これからは好きに生きるといい』
カルラ「あら? 言われるまでもなく、好き勝手に生きてましたわ」
ハクオロ『……そうだったな』
カルラ「でも……わたしは、あるじ様一筋でしたわよ」
ハクオロ『ふっ……わかっている』
カルラ「それに……これからも契約は続きますわ」
「例え、どれだけの刻が経とうと…… 何度生まれ変わろうと……」
カルラ「必ず出会って、何度でも貴方に恋してみせますわ」ニコリ
ハクオロ『ははっ、好きにしろ』
カルラ「だから、その時まで……待ってらして」
ハクオロ『なら首を長くして、待つとするか』
カルラ「……『サハリエ・ナトゥリタ』」
「わたしの……愛しい漢(ひと)……」
292 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 19:51:03.82 ID:hbLrbHTSO
トウカ「聖上! 某も…何処までも御供したく思いまする!!」
ハクオロ『トウカ…… 今まで、よく尽くしてくれた。礼を言う』
『お前を配下に持てたこと、誇りに思うぞ』
トウカ「勿体無き御言葉……」
「ですが! それではまるで今生の別れではありませぬか!」
トウカ「某も、某も――……」
ハクオロ『トウカ、気持ちはありがたい。
しかし、お前には…別に頼みたい事がある』
トウカ「はっ!」
ハクオロ『これからも……戦乱は絶えぬだろう。
そして、その犠牲となるのは……力を持たぬ弱き者達』
『そんな者達の力になってくれ。あのゲンジマルのように!』
トウカ「――この命に代えましても!!」
ハクオロ『相変わらず堅苦しいな。もう少し、肩の力を抜いてもいいが……』
トウカ「これが性分でありまする!」
ハクオロ『あと……ご免なさい』ペコリ
トウカ「はっ?」
ハクオロ『あの人形、壊したの私なんだ……』
トウカ「 」
ハクオロ『だから…人形師を呼んで直して貰ったんだ……すまなかった』
トウカ「聖上……」
ハクオロ『……こんな私を、まだ聖上と言ってくれるか』
トウカ「……次は、そのような事無きよう」
ハクオロ『……はい』
トウカ「――また、いつか」
ハクオロ『――ああ』
293 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 19:53:50.69 ID:hbLrbHTSO
ハクオロ『ベナウィ』
ベナウィ「はっ!」ザッ
ハクオロ『ふふっ…これで、政の山から解放されたな』
ベナウィ「お疲れ様でした。後は我等に任せ、どうかごゆるりと」
ハクオロ『皆のことを……頼むぞ』
ベナウィ「御意」
ハクオロ『思えば、お前とも最初は敵同士だったな……』
ベナウィ「あの時、聖上に救われた命」
「こうして聖上にお仕えできた事……
武士(もののふ)として、実に本懐でありました」
ハクオロ『そう言って貰えると、助けた甲斐があったな』
ベナウィ「此方に戻られたら、また山のような書類を片付けて頂きます」
ハクオロ『……私を休めたいのか、過労死させたいのか。はっきりさせてくれ』
ベナウィ「ぎりぎりの綱渡りを」
ハクオロ『……酷いぞ』
ベナウィ「冗談です」
ハクオロ『お前の冗談は、冗談に聞こえん……』
294 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 19:55:43.07 ID:hbLrbHTSO
ハクオロ『クロウ』
クロウ「ういっす!」
ハクオロ『苦しい時は、お前の笑顔に何度も救われたよ』
『お前達の支えがあったから、私は存分に采配を振るえた』
ハクオロ『これからも、オボロやベナウィを支えてやってくれ』
クロウ「総大将の言葉、承りやしたぜ」
ハクオロ『もう一度、皆と……盃を酌み交わしたいものだ』
クロウ「いつだって、御相手しやす!」ニッ
ハクオロ『……トウカの逆で、お前は堅さが足りないな』
クロウ「総大将〜! さっきまで死にかけてた俺に言う言葉っすか!?」
ハクオロ『あー……あれは、すまない。うん』
クロウ「ま、いいっすけど。帰ってきたら、一晩付き合って下せぇ」
ハクオロ『……酒だよな?』
クロウ「それ以外何があるんで?」
ハクオロ『だ、だよな!』
295 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 19:58:05.87 ID:hbLrbHTSO
オボロ「……待て、待ってくれ兄者!!」
ハクオロ『オボロ』
『後の事は、お前に委ねる』
ハクオロ『これからは、お前達が新しい時代を作るのだ』
オボロ「そんな……そんなことはどうでもいいッ!!」
「ユズハは……兄者がいなくなったらユズハはどうなる……」
オボロ「まさか、ユズハを置いて行く気じゃないだろうな!」
「ユズハに……『お帰りなさい』と言わせてやってはくれないのか!!」
ハクオロ『…………すまない』
オボロ「兄者ぁぁ……」
ハクオロ『……会えるものなら、またあの娘に会いたい』
『だが……出来ないのだ。わかってくれ』
ハクオロ『私は……あの娘を幸せには出来なかった……』
オボロ「……――バカヤロウ」
「兄者さえ、兄者さえ側にいてくれれば……ユズハは幸せなんだ……」
オボロ「兄者の……兄者の――」
「大馬鹿野郎――――ッ!!!」
オボロ「兄…ぃっ…者…ぉ……バガヤロウ…………っ」
ハクオロ『……また、会う時までその涙はとっておけ』
オボロ「っぅ……っ……ぅぅぅ…………」
296 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 20:00:18.52 ID:hbLrbHTSO
ハクオロ『ドリィ・グラァ』
ドリィ・グラァ「「兄者様……」」
ハクオロ『言うまでもないと思うが……オボロを支えてやってくれ』
『あれにはまだ……お前達二人の助けが必要だ』
ドリィ「……はい」 グラァ「……あにじゃ…さまぁ」
ハクオロ『……双子とはいえ、並べると結構違うな。今更だが……』
ドリィ「グラァ……」
グラァ「兄者様…僕、兄者様のことが若様の次に好きです……」
ハクオロ『 ――!? 』
グラァ「兄者様の前に立つとき、顔が赤く……」
ハクオロ『……すまない。お前の気持ちには応えられん』
グラァ「判ってます……」
ドリィ「泣くなよグラァ…… 僕だって悲しいんだぞ……」
ドリィ・グラァ「「…………わぁぁぁん!!」」
ハクオロ『…………』
297 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 20:02:37.94 ID:hbLrbHTSO
アルルゥ「おとーさん! やぁだ!!」
ハクオロ『アルルゥ』
アルルゥ「ずっといっしょって、いったぁ!!」
ハクオロ『……アルルゥ、わかってくれ』
アルルゥ「うそつき……ウソツキ、ウソツキ、ウソツキ――ッ!!」
ハクオロ『…………』
アルルゥ「アルルゥも、アルルゥもいっしょにいく!」
ハクオロ『……アルルゥ。よく考えるんだ。
アルルゥまでいなくなってしまったら、エルルゥはどうなる?』
『エルルゥだけじゃない。他の残された者達は……どうなる?』
ハクオロ『アルルゥには、エルルゥがいる』
エルルゥ「アルルゥ……」
ハクオロ『友達がいる』
カミュ「アルちゃん……」
ハクオロ『たくさんの……兄や姉がいる!』
ウルト「アルルゥ様」 カルラ「アルルゥ」
トウカ「アルルゥ……」 ベナウィ「――アルルゥ様」
クロウ「小っこい姐さん……」 オボロ「……アルルゥ」
ドリィ・グラァ「「アルルゥ様」」
298 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 20:04:34.25 ID:hbLrbHTSO
アルルゥ「でもぉ……」
「…ぁい…………」
ハクオロ『……アルルゥ』
アルルゥ「……おとーさ…っ……いなぃ………っ……」
「おど……ざん……いなぁぃ……ぃっ……………」
エルルゥ「アルルゥ……」ギュウ
アルルゥ「……っく、っく、っく……」ポロポロ…
ハクオロ『……アルルゥ、頼みがある』
アルルゥ「……ぅっ…なぁ…に……」
ハクオロ『ゴローさんからの“言伝て”を、ムックルに伝えてくれ』
アルルゥ「むっ…くる……?」
ムックル『……ぐおぉ?』
ハクオロ『──お前の一族と“あの娘”との約束、
これまで果たしてくれてありがとう──』
『──あと一月したら、あの森の奥に……みんなを連れていってくれ──』
アルルゥ「ムックル……」
ムックル『……ヴォォッ!!』
アルルゥ「『わかった』って……」
299 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 20:07:24.22 ID:hbLrbHTSO
ハクオロ『伝えたぞ。ゴローさん』
『どうして、自分で言わないんですか?』
『“力を貯めてる”? 何の為の?』
ハクオロ『……ゴローさん、他に何か言う…無いんですか』
『“よく空気を壊す俺だけど、この雰囲気は壊せない”……か』
ハクオロ『良いんですか、ムツミに…………そうか』
『皆に、“またな”と言っている』
カミュ「ちょっと、薄情じゃないのかな…… いいのムツミ?
……そっか。あれでいいんだね」
ハクオロ『待たせたな……“エルルゥ”』
エルルゥ「ハクオロさん……」
キュィィィィィィン…………
300 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/03(土) 20:10:03.32 ID:hbLrbHTSO
……小休止。あの曲の準備を宜しくお願いします。
再開は、21時30分頃。
301 :
推奨BGM:『キミガタメ』
[saga]:2012/11/03(土) 21:30:59.65 ID:hbLrbHTSO
ハクオロの精神世界――
先程までいた場所より、深い心の奥底で……
ハクオロ「エルルゥ」
エルルゥ「ハクオロさん……」
一人の男と一人の女が、向き合う――
エルルゥ「ハクオロさん、行っちゃうんですね……」
ハクオロ「ああ。暫くの間、眠らせて貰う」
エルルゥ「……あとのことは、任せて下さい。
ハクオロさんは何の心配もしなくていいんですよ」
ハクオロ「……ああ」
エルルゥ「…………」
ハクオロ「…………」
一瞬、見つめ合う二人だが……
男は後ろを向き、少しずつ……女から遠ざかってゆく。
302 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 21:32:40.12 ID:hbLrbHTSO
エルルゥ「…………」
「しばらくって……」
「しばらくって……どのくらいですか……」
「……エルルゥ」
「――家族だって、言ったじゃないですか!」
「一緒に、側にいてくれって……言ったじゃないですか!」
「いや…………行かないで…………………」
「エルルゥ、お前のその気持ちは……契約で刻まれた『まやか―」
「違いますっ!!!」
「――!?」
「私、ハクオロさんが人じゃないことも……
そのことで苦しんでいたことも……
みんな……みんな知ってました!!」
「でも、そんなの関係ないです!」
「ハクオロさんはアルルゥを助けてくれました」
「私達に温もりをくれました……」
「みんなの為にって…… 一生懸命で……」
エルルゥ「そんなハクオロさんが……好きでした!!」
「好きですって……ずっと言いたかった……」
303 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 21:36:18.24 ID:hbLrbHTSO
「ハクオロさんが傷付いて、苦しんで、
悩んでいた時……もっと抱きしめてあげたかった」
「もう契約の楔なんて関係ないです!」
「これからは――好きって言えるんです!」
「おもいっきり抱きしめてあげられます!!」
「なのに……なのに――――」
ハクオロ「――ありがとうっ」
「私も…エルルゥといつまでも一緒にいたかった――」
「そんな、そんな言い方って……ずるいです……」
「ずるいですよ……」
304 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 21:40:27.56 ID:hbLrbHTSO
「…………ミコト」
305 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 21:43:01.69 ID:hbLrbHTSO
「――えっ」
「……今頃、気付くとはな」
「――ハクオロさんっ!」
「来るなぁっ!!!」
「…………」
「来ては……駄目だ」
306 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 21:45:51.27 ID:hbLrbHTSO
……ぐっ
……たっ
……たっ
……たんっ!!
ハクオロ「エル――」
エルルゥ「――っ!」
少女は、男へ駆け――
男は、少女を受け止め――
「「ん…むっ……」」
――甘い甘い、口づけを交わす。
307 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 21:48:10.01 ID:hbLrbHTSO
(……きっと、また君に会える時が来る――)
(……きっと、また貴方に会える時が来ます――)
(( だから―― ))
………………
…………
……
308 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 21:52:12.49 ID:hbLrbHTSO
大封印の光が……消えていく。
エルルゥ「…………」
あの瞬間は、夢幻のようなものだったのかもしれない。
だけど――
ここに『つどいしもの』達は、
いくら刻が経とうとも、彼のことを決して忘れない。
『うたわれるもの』と呼ばれた…… 一人の男のことを――
エルルゥ「あ――」
薄れゆく光の瞬きは、雪の如し。
その美しく輝く、偽りの雪の間を……
舞い散る花弁よりもゆっくりと……
居合わせた者、全ての視線を浴びながら……
……『仮面』が堕ちてゆく。
309 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 21:54:43.43 ID:hbLrbHTSO
そしてソレは、地に堕ちることなく、一人の少女の――
エルルゥ「…………」
手の中に収まった。
エルルゥ「…くお…さ…っ……」
代わりに、落ちるのは……『泪』。
「「「 ………… 」」」
けれど……彼女は泣き叫ばない。
エルルゥという少女の口から流れるのは……
エルルゥ「 ……し ずかに おとーずれる いろなーき せ かい 」
「 す べての ときーをとめ ねーむりにつく 」
男が愛した『子守唄』。
310 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 21:57:01.00 ID:hbLrbHTSO
カミュ「 ……か なしみ よろーこびを あつめて ひ とは 」
「 な がれし ときーのなか やーすらぎみる 」
アルルゥ「 うまれいきー きえてゆくー ひとのさだーめの なか 」
「 だれもみなー そらのほしにー ひそかな ね がい たくーす 」
二人の『娘』も、後に続く。
エルルゥ「 ひそかに かがーやける まんてんの ほ し 」
「 ち へいの かなーたへと ながれきえる 」
311 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 21:59:41.29 ID:hbLrbHTSO
次に唄を紡ぐのは――『最初の人』。
ムツミ『 うまれいきー きえてゆくー ひとのさだーめの なか 』
『 だれもみなー そらのほしにー ひそかなねがい たくす 』
エルルゥ「 し ずかに おとーずれる まばゆき せかい 」
「 す べての ときーをうみ さきみだれる―― 」
――『散りゆく者への子守唄』が、終わった。
「ううっ……」 ジャリ
オボロ「……行こう」
ドリィ「……はい」 グラァ「……ぐずっ」
ベナウィ「…………」
クロウ「……総大将」
ウルトリィ「わたくし達も、一度トゥスクルへ」
カミュ「……うん」
カルラ「まったく、葬式みたいな空気ですわね」
トウカ「カルラ、お前は悲しくないのか……」
カルラ「いつか、会えますもの」
アルルゥ「おと…さん……」グズッ
エルルゥ「大丈夫、すぐにハクオロさんは戻ってくるから……」
ハクオロ「いやー あんな事を言っておきながら、
まさか数分経たずに戻るはめになるとはなー」ハハハ
312 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 22:03:11.79 ID:hbLrbHTSO
オボロ「さあ、皆帰ろう。兄者達を休ませてやるんだ」
ベナウィ「……そうですね。あまり此所に長居したくはありませんし」
ハクオロ「確かに、いい空気じゃないな」
クロウ「ちっくしょー……涙で前が霞みやがる」ズズッ
トウカ「某もであります……」グスンッ
ハクオロ「霞む、霞み……霞の○ョー!」
カルラ「……気のせいかしら。幻覚と幻聴が」
ウルトリィ「わたくしも、すぐソコにハクオロ様が居られるような……」
ハクオロ「トゥスクルのみなさーん! うたわれるものですよー!」
カミュ「……いやいや。これは幻覚じゃないよ」ペタペタ
ハクオロ「カミュ、顔をペタペタ触らないでくれ」
エルルゥ「――『ハクオロさん』!!!」
ハクオロ「ただいま、エルルゥ」ニコリ
アルルゥ「『おとーさんっ』!!」 …どすっ!
ハクオロ「あぐっ!? アルルゥ、体当たりは止めてくれ……」
「「「「…………え」」」」
「「「「ええええええええええええええええ
えええええええええええええええ
えええええええええええええええ
えええええええええええええええ
えええええええええええええええ
えええええええええええええええ
えええええええええええええええ
えええええええええええええええ
えええええええええええええええ
えええええええええええええええ
えええええええええええええええ
えええええええええええええええ
ええええええええええええええ!!!」」」」
313 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 22:05:03.15 ID:hbLrbHTSO
〜〜〜〜〜〜
《ハクオロの回想・精神世界》
ハクオロ「……エルルゥ」
「お熱い口づけを見せて貰った」パチパチ
ハクオロ「……ゴローさん」
ゴロー「色々すまないなぁ。ちょっとやる事があって」
ハクオロ「貴方は、何をしてたんですか」
「他の者達に、何も言わず……」
ゴロー「……教えてやるから、ちょっとこっちに来い」クイクイ
ハクオロ「? はい」 カツ… カツ…
314 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 22:06:43.29 ID:hbLrbHTSO
http://www.youtube.com/watch?v=b3rZGMez5HM
↑
2分54秒から!
315 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 22:10:41.15 ID:hbLrbHTSO
ガッ! グイイッ!
ハクオロ「があああああああッ!?」
ゴロー「アームロック。かけようと思って」
ハクオロ「い、痛いぃぃ〜! 折れる! 折れるぅぅ!!」
ゴロー「独身男の前で、濃厚なキスをするんじゃない」
ハクオロ「あだだだだた!!」ギギッ…
ゴロー「……最後のアームロックだから、じっくり味わってくれ」
ハクオロ「……『最後』?」ググググ…
ゴロー「お別れだ。ハクオロ」
「お前は……封印から……」
ゴロー「出ていけ!」 ブンッ!!
ハクオロ「――!?」
穴< コンニチハ! ハクオロクン!
316 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 22:15:06.53 ID:hbLrbHTSO
ハクオロ「ぬわあああああっ!? な、なんだこの穴ッ!?」ガシッ
ゴロー「ほおー踏ん張ったか。手を離せ」
「その穴は、俺が力を貯めて作った『道』だ。
ソイツを通って、お前は皆のところへ帰るんだ」
ハクオロ「ま、待て! 私は……」グググ…
ゴロー「お前には、待たせてる人が居る。俺には居ない」
「一人だけ、帰れるなら……それはお前だろう?」
ハクオロ「ゴローさん! あのシャクコポルの娘を置いていくのか!」
ゴロー「向こうは俺の事をどうとも思ってないさ。それに……」
シュッ ボッ… フゥー…
ゴロー「この場所、念じたら『タバコ』と『ライター』が出てくる」
「こんないい場所に、お前を住ませたくないからなあ」フゥー…
ハクオロ「それだけじゃない! ムツミの事もだ!!」
ゴロー「それ、父親がなんとかする事だと思うけど……」
「俺よりお前が帰るほうを、あのコは望んでいる」
ハクオロ「何故そう言い切れる! 貴方のほうが…ムツミと過ごした時は長い筈だ!」
317 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 22:19:38.84 ID:hbLrbHTSO
ゴロー「それだって、お前があのコを選ばなかったからだろう」
「ハクオロ。お前は…俺からムツミへの贈り物『その壱』だ」…トンッ
ハクオロ「贈り……物?」
ゴロー「……カミュとムツミを精一杯可愛がってやれ」
親代わりからの……最初で最後のプレゼント。
ハクオロ「貴方も、ミズシマさんも……どうしてそう……」
ゴロー「……それに、お前が居ると、俺の『二つの望み』は叶わない」 ハー…
ハクオロ「貴方の……望み?」
ゴロー「一つ目はお前も知ってる」
ハクオロ「私と契約した時の願いなら――」
ゴロー「叶ってないぞ。俺は『独りで』失われた飯を食いたいと望んだんだ」
「トゥスクルにいる間は皆が、クンネカムンにいる間は監視役がいたからな」
ハクオロ「――く、もう限界……」
ゴロー「もう一つは…………」
〜〜〜〜〜〜〜
318 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 22:22:10.01 ID:hbLrbHTSO
〜〜〜〜〜〜〜〜
ハクオロ「……こんな事があってな」
エルルゥ「……すいません、ちょっといいですか?」
ハクオロ「ど、どうした?」
エルルゥ「くっつけて取れなくなったら困るから……」カチャ…
ジー…
エルルゥ「……やっぱりハクオロさんだっ♪」ギュッ
ハクオロ「ああー。そうか、仮面が『無い』からか」
オボロ「兄者ああああああああああ!!」ブワッ
トウカ「聖上おおおおおおおおおお!!」ダバー
ハクオロ(う、五月蝿い……)
カルラ「う〜ん♪ あるじ様のす・が・お。恋しちゃいますわ〜」
クロウ「総大将! おっとこ前!!」
ハクオロ「褒めても何も出んぞ」
ベナウィ「……別れの覚悟が無駄に」
ウルトリィ「あらあらうふふっ♪」
ハクオロ「ベナウィ、顔が怖い……」
ドリィ「兄者さまあっ!!」
グラァ「兄者さまああああっ!」ダキッ
ハクオロ「 」
アルルゥ「ふふ〜ん。おと〜さんっ♪ おと〜さんっ♪」ギュウウ
ムックル『ぐおおっ♪』ペロペロ
ガチャタラ『キュ〜ルルゥ♪』スリスリ
ハクオロ「や、止めろムックル! お前の舌は一種の凶器……」
319 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 22:24:58.87 ID:hbLrbHTSO
カミュ「い、今のおじさまには……抱きつきたくないかなー……」
ハクオロ「…………」
右腕にエルルゥ。腰にアルルゥ。
左腕にドリィ・グラァ。
両の足下には泣き崩れるオボロとトウカ。
カルラは胸板にベッタリ。
ウルトリィは背中にピッタリ。
その姿は……
ムツミ『完成。クラ○マックスフォー○』(・ω・)d グッ
ハクオロ「……ムツミ。巫山戯ていないで、私を助けてくれ」
ムツミ『 イ ヤ 』フンッ
320 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 22:31:00.43 ID:hbLrbHTSO
――――――
他の者達を先に行かせ、ハクオロとエルルゥの二人は、封印の地を眺めている。
ハクオロ「……エルルゥ。その仮面は……」
「此所に置いていってくれないか?」
エルルゥ「えっ? でもこれ、大事なものじゃ――」
ハクオロ「もう、私には必要ない。だから……」
「『友』が帰ってくる時の為に、残しておくべきなんだ」
エルルゥ「――そうですね」
ハクオロ「封印陣の……ああ。その岩のあたりに置いてくれ」
エルルゥ「ここですか?」
ハクオロ「ああ」コクリ
< アニジャー! オトーサン?
ハクオロ「……さあ、トゥスクルに帰ろう。ユズハも待っている」
エルルゥ「はいっ」
ギィィッ… ゴォン…
上部で最初の門が閉ざされると、
この大空間は完全な静寂に包まれる。
仄かに光輝く石柱や壁の神字が、
岩の上に残された仮面を怪しく照らしていた。
さて、この仮面が再び使われるのは――
………………?
「忘れ物、しないようにって……言ったんだけどなァ」
321 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/03(土) 22:34:00.81 ID:hbLrbHTSO
今日はこれにて終了。明日の最終話に続く!
322 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)
[sage]:2012/11/03(土) 22:50:16.94 ID:CaR5ZOROo
乙
もう最終話かぁ……
323 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2012/11/03(土) 23:02:49.56 ID:aG4OQjkio
乙
324 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/11/03(土) 23:04:47.65 ID:SuSY2DRe0
乙
325 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/04(日) 00:42:44.19 ID:Kfvpt0JSO
最終話の前に……うたわれ側のエンディングを投下します。
326 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 00:45:05.14 ID:Kfvpt0JSO
うたわれサイド 〜Epilogue〜
327 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 00:48:01.73 ID:Kfvpt0JSO
……彼等が大神を眠りに導いてから、『一ヶ月』が経過した。
エルルゥ「うーん……いい天気ですね……」
アルルゥ「はっぱ、まっかっか〜」
今、この世界に存在する人の中で……『秋』という単語を知る者は殆どいない。
山の緑が紅に染まるこの時期を、
自然と共に過ごす彼等は豊穣の刻と呼んでいる。
オボロ「しかし…何を大兄者は企んでいたんだ?」
ユズハ「さく、さく……地面の匂い。木の葉の音……」
ドリィ「ユズハ様、お気をつけ下さいね」
グラァ「足下の木の葉で滑らないよう」
恐らく、この病の少女が外に出るのも……この機会が最後だろう。
城にある紫琥珀は、もう一欠片しか無い。
オボロ「…………」
……オボロは思う。
それを次の発作に使ったら……ユズハの命は――と。
328 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 00:50:34.67 ID:Kfvpt0JSO
ベナウィ「あの人の事ですから……食糧関係の何かでしょう」
クロウ「……って言っても、何かは判んねぇすけど」
ウマの上に跨がりながら、ベナウィとクロウは思索する。
カルラ「あの『箱庭』みたいな所でもあるのかしら?」パクッ
トウカ「この森の中にか? 可能性はあるが……」ムグムグ
森の食べ物を歩きながら摘むカルラとトウカ。
あの出来事の後、諸國を巡り傭兵稼業(?)をしていた影響かもしれない。
『食べれる物は、食べれる時に喰らう』
戦乱の後始末でいつしか決まった、二人の不文律。
ウルトリィ「カルラ、行儀が悪いですよ」
カルラ「はいはい」
トウカ「そ、某とした事が……」
カミュ「アルちゃん、まだかな?」
アルルゥ「ムックル〜まだ?」 ガチャタラ『キュル?』
ムックル『ぐあっ。がーお』
アルルゥ「もうちょっとだって」
ハクオロ「あの人、私にも詳しい事を言わなかったからなぁ……」
十三人は、落ち葉舞う『カカエラユラの森』を白き虎の案内で進んで行く。
329 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 00:53:19.44 ID:Kfvpt0JSO
………………
ムックル『……ぐぉぉ』
アルルゥ「ここまでしか、みち わかんないって」
ムックルによって辿り着いたこの地点でさえ、
前人未到の場所である事に変わりがないのに……
まだ、目的地には遠い。
ハクオロ「カミュ……いやムツミ。出てきてくれ」
カミュ「……わかった」コクン
…ピカッ!
ムツミ『どうして私なの?』
ハクオロ「ここから先に進むには、お前の力が要る」
「……強力な迷いの結界が張られているらしい」
ムツミ『正しい道を見つけろってこと?』
ハクオロ「そうだ」
ムツミ『……いいよ』
『…………こっち』 バサリッ
黒翼の娘が先導し、ハクオロ達は更に森の奥へと踏み入れる……
330 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 00:56:11.15 ID:Kfvpt0JSO
…………
ムツミ『この結界は、お父様のもの……』
ウルトリィ「わたくし達の大神の……」
ムックル『がおっ』
アルルゥ「ここ、“まようから はいるな”いわれたって」
エルルゥ「ムックルでも迷っちゃうの?」
クロウ「無理ねえな。さっきから……方向感覚が掴めねえ」
カルラ「右かと思ったら左。左かと思ったら右……」
ムツミ『結界自体が迷宮状になってる』
ハクオロ「ミノタウロスでもいるのか?」
トウカ「何の名でありますか?」
ハクオロ「ずっと昔の神話さ。迷路に閉じ込められた半牛の怪物の名だよ」
……これ位なら、良いだろう。
ハクオロ(……あまり知識を与え過ぎると、
急速な文明変化に人々が耐えられん)
私はもう神の身ではない。
世界を歪ませるような振舞いを……してはいけないんだ。
今を生きる者達は、自らの力で描いた未来を形造らねば……な。
エルルゥ「ハクオロさん?」
ハクオロ「ん? どうした?」
能面のような無表情から、困った顔になるムツミ。
道の先が見えているにもかかわらず、彼女は止まっている。
ムツミ『……あと少しなのに、進めない』
『これ、結界なんかじゃない…… “障壁”……』
331 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 00:59:14.81 ID:Kfvpt0JSO
神が作った見えない壁は、ムツミ達を強く拒む。
ムツミ『お父様の障壁は…… 私じゃ破れない』
ハクオロ「此所に入るには――三つの『鍵』が要る」
ウルトリィ「三つの……鍵?」
ハクオロ「一つ目の鍵は……森の母。ミコトの血を継ぐもの」
アルルゥ「う?」
ムティカパと心を通わせ、禁じられた森の奥へ行けるもの――
ハクオロ「二つ目は……最初の人『ムツミ』。あるいは、その血を継ぐもの」
ムツミ『…………』
見えぬ筈の隔たりを視認出来る、最も父に近いもの――
ハクオロ「そして、最後の鍵は――」スチャ
ピッ! ポタッ…
エルルゥ「ハクオロさん!!」
ハクオロ「神の憑代かつ、旧き『人』…… 『あの人』か、『私』の血」
ザッ… ザッ…
鉄扇の刃で、自分の指を軽く切ったハクオロは――
その切り傷と赤き血を……見えない壁に押し付けた。
332 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 01:02:21.66 ID:Kfvpt0JSO
シュゥゥゥ…
ハクオロ「壁は消えたか?」
ムツミ『……うん』
ハクオロ「――ムツミ。君が先に行くんだ」
ムツミ『……なぜ』
ハクオロ「この先にあるのは――
君のおじさんからの……プレゼントだとさ」
ムツミ『……おじさまの?』
ハクオロ「『気に入るかはわからない』とも言ってたが……」
「……あの人、何を渡すつもりだったんだ?」
ハクオロ「兎に角、一番最初は君だ。私達は後からついていくよ」
「皆も、それでいいか?」
オボロ「大兄者の言った事なら」
ユズハ「ムツミちゃん、いってらっしゃい」ニコリ
ドリィ・グラァ「「贈り物かぁ……いいなぁ」」
ベナウィ「無粋な真似はできません」
クロウ「おぅ! 貰えるもんは病気以外貰っとけ!」
カルラ「どんな贈り物かしらね」
トウカ「……///」ポッ
ウルトリィ「ムツミ様、遠慮なさらず」
アルルゥ「アルルゥにもちょーだい?」
エルルゥ「ア、アルルゥ! 分けられない物かもしれないでしょ?」
ハクオロ「皆も構わないとさ」
ムツミ『……わかった』 スタッ
ザク… ザク… ザク…
333 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 01:05:17.40 ID:Kfvpt0JSO
………………
『…………』
おじさま、貴方は何を渡すつもりだったの?
もう、私に欲しいものなんて無い。
一番欲しかった『お父様』は……貰ったから。
……ずっとずっと前にお話しした時のこと、覚えてたんだね。
『……おじさま』
それに……私は、他にも――――
サァァァ……
『……何の音?』
枯葉や紅葉の、擦れ合う音?
……ううん、違う。
さっきの音は、もっと柔らかくて、優しかった。
『あ……出口』
眩しい太陽の光……
私には、似合わない。暖かい光……
『…………』
あの先に……何があるの?
334 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 01:07:43.94 ID:Kfvpt0JSO
――――
『……っ』
暗い森を抜けた黒き翼の娘は、日射しで己の瞼を閉じる。
『…………まぶしい』
瞼の奥で……その紅き目が太陽の波光に慣れると、
彼女は少しずつ……少しずつ……
『…………』
『その光景』を眼(まなこ)に映す――
『……あ』
ムツミの赤い瞳が取り込んだ『色』は――
『黄金色……』
其処に実っていたのは、金色の『穂』。
一面の水田に広がるその『黄金の植物』は――
ハクオロ「これは……『稲禾(とうか)』か!」
トウカ「そ、某ですか!?」
335 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 01:10:19.80 ID:Kfvpt0JSO
『これが……“稲”』
『そして……“お米”』
ハクオロ「ゴローさん……そういう事ですか……」
「プレゼントにしたのは……自分が探し続けた……」
『……そうだ、おじさまと最後にお話し した時――』
336 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 01:15:33.18 ID:Kfvpt0JSO
〜〜〜〜〜〜
『“アレ”って?』
「ムツミに言ってなかったか」
「やっと、見つけたんだよ種籾を」
「これを育てると、美味しいお米が出来る」
「もう少し、今の自然環境に合わせてやる必要があるけど」
「過去の文献によると、米はこの国の主食で……」
(※長い説明中略)
「……秋になると、世界を金色に染め上げたらしいぞ」
『…………ちょっと見たいかも』
「じゃあ――」
『――オトウサマ!?』
…プツンッ
〜〜〜〜〜〜
337 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 01:18:00.95 ID:Kfvpt0JSO
『おじ……さ…ぁ…… 覚え……』
『わた…ぃは…忘れ……のに……』
エルルゥ「ムツミちゃん……」
『……これ…私…見せた…っ…の……』
『本当っ……ばか……』
ハクオロ「馬鹿……か。確かにな」
「独りの男の、執念が……何百年もかけて『稲』を甦らせたのだから」
ハクオロ「……馬鹿じゃなきゃ、こんな真似はできん」ニッ
『……うっ……っ……』
338 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 01:19:56.10 ID:Kfvpt0JSO
ウルトリィ「ムツミ様」
『……う、嬉し…なん…ないもんっ……』
『女の子への…贈り物に……こんな…っ……』
カルラ「あらぁ? じゃあその涙はなぁに?」
『……これはっ…おかしくって! おかしくて…』
『笑い…すぎちゃった……のっ……』
ベナウィ「……そうですね。本当にあの人が与えたかったのは――」
クロウ「その『笑顔』だったのかも、しれやせん」
『…………えっ?』
339 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 01:22:56.43 ID:Kfvpt0JSO
ドリィ「これ、食べ物なんですか?」
ハクオロ「そうだ。……私の意見だが、モロロより旨いと思う」
グラァ「じゃあ……ムツミ様に美味しいものを食べて貰って……」
『笑って……欲しかった?』
オボロ「……ははっ、大兄者にしては洒落た贈り物じゃないか」
ユズハ「ゴローさま、よかったですね……」
『……っ…やっぱ…、ばか…ぁ……』
『おじ……の…ばか…っ……』
アルルゥ「どこか いたい?」
『…痛…く……ないよ…………』
『でも……なんでだろ…………何かヘンだよぉ……』
340 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 01:29:54.15 ID:Kfvpt0JSO
エルルゥ「ねぇ、ムツミちゃん。飛んであげたらどうかな?」
「ゴローさんにも、見えるように」
『…………うんっ』
ばさり、ばさりと……羽ばたくのは黒の翼。
はらりと、落ちたのは……生命力溢れる一枚の羽根。
金に彩られた田を……黒の乙女が軽やかに舞う。
上や下に。
風と共に。
稲穂と太陽の煌めきに、少女の姿はよく映える。
それは……『おじ』と呼んだ男に向けられた、
『娘』の踊る、演舞――
(おじさま。私はもう寂しくないよ)
(だって……)
彼女の目線の先には……たくさんの兄や姉と……父がいる。
カミュ(ムツミがハクオロおじさまの娘なら……
カミュがおじさまのお嫁になったら……お母さん?)
心の中に、母がいる。
『ふふふっ……それでもいいよ』
カミュ(よぉし! 頑張るぞぉ!!)
……『選ばれなかった』娘の旅路は終点を迎えた。
これから始まるのは……『幸せを掴んだ』少女の日々。
(おじ……ううん、『お父さん』。ムツミは……)
ムツミ『ここにいるよ』ニコッ
『──私は、貴方をこの場所で待っています』
341 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 01:30:41.90 ID:Kfvpt0JSO
ムツミ『いつの日か──また逢おうね』
342 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/04(日) 01:31:38.78 ID:Kfvpt0JSO
では、また今夜に。お休みなさいませ。
343 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/04(日) 21:40:08.62 ID:Kfvpt0JSO
最終話を投下します。
344 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 21:43:40.99 ID:Kfvpt0JSO
〜 トゥスクル皇都 〜
この街に最後に来たのは…… いつだったか。
少なくとも、一年以上は経っていると思う。
「懐かしいな……」
腰を痛めたチキナロの代役として、
『商人』として諸國を渡り歩く仕事を始めたのが……数ヶ月前。
今日は先ずチキナロに会っておかなくちゃならない。
「本当は、こっちを自分でやりたいなあ」
本音を小声で漏らし、チキナロの停泊する宿へ足を運ぶ。
今している仕事は……書類事務ばかりで……
昔の事を思い出して、面白みがない。
345 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 21:46:35.24 ID:Kfvpt0JSO
――――
〜 クンネカムン・開陽殿 〜
クーヤ「はー……」トントン
サクヤ「お疲れ様です。クーヤ様」モミモミ
クーヤ「まったく右大臣が居らぬと、こうも政務が増えるのか」
サクヤ「お兄ちゃん連れてきます? 今でも少しなら城の事を……」
クーヤ「ヒエンが必要なのは……私がトゥスクルに行く間だけだな」カチャ…
「見ろサクヤ。トゥスクル皇からの文だ」
クーヤ「『来訪、お待ちしている』とあるぞ!」
サクヤ「じゃあ……」
クーヤ「あとは、私がハクオロの室に入れば……」
サクヤ「クーヤさま……」
クーヤ「こんなつまらん政務はとっとと終わらせ、トゥスクルに行くぞ!」
サクヤ(……おじいちゃん、クーヤ様はとっても皇らしくなりました)
(民の為というより、民を無理矢理導いてますが……)
サクヤ(右大臣の『あの人』が腐敗した家臣に睨みを利かせた事もあり、
この國は以前よりずうっと暮らしやすい國になりました)
サクヤ(お兄ちゃんも元気です。最近、城下にお店を出したんですよ)
ヒエン「心・技・体の全てが揃ってこそ、料理は成りまする!!」 ボォッ!!
サクヤ(……正直、暑苦しいです)
●クーヤ
一応、まだクンネカムン皇。そのうち辞してトゥスクルへ行こうとは思っている。
●ヒエン
中華料理を習い、店を出す。しかし、味付けが辛すぎて人気は無い。
●サクヤ
クーヤの御付兼ヒエンの店の店員さん。
彼女の人気が、店を保っている。
346 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 21:49:52.00 ID:Kfvpt0JSO
――――――
「はい、いらっしゃい。泊まりですかの?」
宿屋の受付嬢は、妙齢のお婆様だった。
「あ、いえ。ここに泊まっているチキナロに用が有りまして……」
お婆さん(と)「……二階、一番左の部屋だよ」
……態度、早変わり。
こういうところを見ると、『サービスの質はまだまだ』って思う。
「どうも、すいません」
なのに……へりくだっちゃうの、何故だろう。
こっちに否はないんだけど。
まぁ、こんなつまらんことで腹を立てて、無駄に腹を空かせる必要はない。
それが、俺独自の処世術。
ギシギシいう階段を上りながら、装飾や調度品を確認する。
この壺、いいなあ。真面目な壺。
あ、綺麗な絵だ。でもこの宿にあってないな。
そんな事を思いながら、廊下を歩いて、目的の扉を軽く叩くと……
347 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 21:53:16.06 ID:Kfvpt0JSO
『はい! どちら様でしょう!』
「俺です」
『あっ、どうぞどうぞ!』
がちゃ… ばたん。
いたってシンプルな音。
チキナロ「いや〜お久しぶりです、ハイ!」
「受付のお婆さん。お前の名前を出したとたんに機嫌が悪くなったぞ」
チキナロ「あー……今朝、ちょっといざこざがありまして、ハイ」
単にコイツのせいで機嫌が悪かったのか。
「これが売上。いつも通り、取り分は引いてある」
チキナロ「…………はい、確かに。今日はどうされます?」
そうだな…… この都で営業でもするか。
チキナロ「あ! そうでしたそうでした。
ちょっと倉庫を見て来てくれません?」
「倉庫? いつもの所のやつか?」
チキナロ「いえいえ。川堀の近くに空き倉庫があるらしいのですが……」
「堀か。あまり質の良い倉庫じゃなさそう」
チキナロ「ワタシ、用事で別のお客の元に行かないとならないので……」
どうしても、行かないと駄目なのか。
チキナロ「どんな倉庫か状態を見て下さいな」
「わかった。それより話変わるけど……」
チキナロ「はい」
「チキナロはこの都で飯を食う時、何処で取る?」
348 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 21:56:13.78 ID:Kfvpt0JSO
――――――
……まったくの無駄足だった。
この國の城を守る、川堀。
天然の川をそのまま使った節約思考の防御堀。
先代の皇は、そんなタイプじゃないから……
きっと、城を建てたのはもっと昔だったんだろう。
そんな川堀の近くにある倉庫は……ある意味予想通りだった。
品物や薬草に最悪の湿気が強く、カビが酷い。
もう一度思う。まったくの無駄足だった。
いつもなら、憂鬱な気分を『すかっ』と晴らしてくれる太陽も……
今日に限ってかくれんぼしている。……明るい灰色の曇り空だ。
雨が降りそうじゃないのが、まだ幸運か。
背中の箱には、濡れたら困る品物もあるし……
……だけど。
目下のところ、俺が心配するのは、他のことだ。
「ああ、駄目だ。ここも凄く並んでる……」
昼飯時だってのに……店に入れない!
349 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 21:59:18.37 ID:Kfvpt0JSO
トゥスクル國の都は一度、戦でほぼ全壊している。
その後、皇(オゥルォ)を中心として、民が都を復興。
結果として、元々の都以上に建物が並ぶようになった。
中でも……他國には無い、この國だけのイチオシが――
チキナロ「ハイ! よくぞ聞いてくれました!」
「城への大通りで食事してるのはシロウト。あれはダメです、ハイ!」
チキナロ「今時は――」
わいわい… がやがや…
人々の行列が半端じゃない、この『食堂道』だ。
皇が戦の遠征先で見つけた町から、ヒントを得て、自國の復興に用いた――
などと、世間では言われている。
「……こういう感じでやって欲しくなかったな」
規模の大きな通りに『めし屋』があるのは当たり前なんだから、
もうちょっと小道や路地裏に小さめの店を出させるとかさぁ。
「復興だし、そこまでは期待出来ないか」
……一番困るのは、通りを歩くとき。
西から伝わった料理を出す店々がいい匂いさせてて……
でも……人が並んでて入る気しなくて……
「腹は減るのに、入れられん……」
これは、俺の胃袋への拷問だ。
350 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:02:26.24 ID:Kfvpt0JSO
……………
しょうがないので、飛び込み営業を行う。
「お邪魔しました」
……小物を売るより、簡単な傷薬や軟膏のほうが売れ行きがいい。
俺のセンスに時代が追い付いてないのかなぁ。
「……ふう」
……流石に、限界だ。
「腹が、減った……」
ポンッ♪ ポンッ♪ ポンッ♪
「空いてる店を、探そう」
今、俺は住宅の多い地区にいる。
ここからあの食堂道に出るか。
昼飯時も過ぎたし、もう大丈夫だろう。
「…………違う。そうじゃない」
そうじゃない、そうじゃないんだ。
「――感じるんだ」
……五感で。
「…………」
……俺の腹の虫で。
「…………」
そして――
「――こっちだ」
会議、完了。
この住宅用地の近くに、何かを感じる。
「……急ごう」
351 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:05:17.48 ID:Kfvpt0JSO
………………
ここは…右。次も右。
三叉路や丁字路を抜けながら進む。
何故か、迷いは無い。
この先に、絶対うまいものがある。
……ん? これは――
クン… クン…
『肉の焼ける匂い』だぁ!!
「来たぞ来たぞ。やっぱり正しかった」
つい早足になる。
「あった……」
こんな住宅地の外れに……焼肉屋だ。
店名は……共用文字で……
『焼肉屋 五六○』
ほぉ。チャーミングな名前じゃないか。
「引き戸を覗いて……」
客は居るけど、席に空きがある。
昼飯、ここに決めよう。
「すいませーん」 ガララ…
「はーい」
「一人、なんですけど……」
「お好きな席にどうぞー」
「あ、はい」
「御荷物、預かります」
「ああ……じゃあ、お願いします」
352 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:08:17.18 ID:Kfvpt0JSO
…………
客(で)「うむ。旨い」モグ…
客(げ)「頂きまする」パクッ
客(ぬ)「それオレの焼いてたヤツじゃねーか!」
客(さ)「静かにするにゃも」
客(い)「五月蝿いのは迷惑にゃもよ」
ワイワイ…
何を食おうか。
焼肉は段取りと、肉同士の『絆』で勝敗が決する。
最初は……これかな。
タンと……カルビ。あと、野菜盛合せ。
客(て)「にーちゃん! こっちに『ライス』!」
店員(は)「はーい」
『ライス』! そういうのも……
「――なにっ?」
店員(は)「ど、どうしましたか?」
「ラ、ライスって……」
店員(は)「最近、極一部で流通し始めた食べ物です」
「何でも、『稲』から採れる『お米』をこう言うんだそうです」
…………そうか。
あいつ、上手くやってくれたな。
客(て)「モロロと比べて、ちいっと割高だけどよぉ。
それを食うと、身体の調子が良くてなぁ!」
客(す)「噂じゃ、もう助からないって女の子も、ライスを食べて元気になったとか」
……俺の最後の賭けは、大大大成功したみたいだ。
あの紫琥珀の『薬効強化』成分を、
『人の持つ自己治癒力強化』に向ける……
これで、二つ目の願いは叶ったな。
「すいません。タンとカルビ。あと野菜盛合せと……『ライス』大盛り下さい」
店員(は)「はい」
便乗注文みたいになっちゃった。
ま、いつもの事か。
353 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:11:39.09 ID:Kfvpt0JSO
…………
客(て)「ごちそーさん!」ガタッ
「はい! またお越し下さい!」
客(て)「旨かったぜぇ! 次はかーちゃんも連れてくっかな!」ダハハ!
いい雰囲気の店だ。
客と店の人が、いい具合に親しい。
常連さんでいっぱいの店には入りづらいし、こんな距離感が一番いい。
店員も店主も……若いのがちょっと不安だけど。
客(す)「若い子ばかりよねぇ。この店、三号店なのよ。元々は歓楽街にお店があってね」
「一・二店舗の人気が凄いから、都に進出ってなったのよ〜」
店員(は)「僕達も、もとはカムチャタール様のところで働いてたんですよ」
「へえ。カムチャタールさんがね……」
店員(は)「ご存知なんですか?」
「昔、ちょっとね」
客(す)「ここの店長、皇城から引き抜かれた人だからねぇ〜」
「カムチャタールさん、いい女の子見つけたわぁー」グビッ
この人……男なのに、女言葉だ……
客(す)「あら? アナタ、結構いい身体してるわね。
ねえ、ちょっとだけ背中を貸してくれない?」
「……嫌です」
客(す)「ヤダァ〜、もう冗談よぉ〜。あ、帰んなくちゃ! ご馳走さま〜」ガタッ
「はい。いつもありがとうございます!」
店主は……シャクコポルの女の子か。
あの種族は器用だから、こういう仕事が向いてる。
「お待たせしました!」 コトン
【 タン 】
ネウの舌を薄切りにしたもの。果実の汁をかけて食べる。
【 カルビ 】
ネウのバラ肉。タレでも何でもお好みで浸けて食べてよし!
「産地直送で新鮮ですよ」
産地……あそこかな。
354 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:14:25.50 ID:Kfvpt0JSO
――――
〜 トゥスクル・旧クッチャケッチャ領 〜
オリカカン「これはこれは。この僻地によくぞ参られました」
デリホウライ「御託は要らん。返事を聞かせて貰おう」
オリカカン「カルラゥアツゥレイにウマを卸すでしたな」
デリ「我が國は未だ安定したとは言えぬ。やるべき事柄は多い」
「カルラゥアツゥレイは海を有する國。
鮮度の良い海産物を内陸の國に流す事で経済力を得る……」
オリカカン「成程、その輸送にウマが欲しいというわけですな」
デリホウライ「如何にも」
オリカカン「……良いでしょう! これからの大陸には物流網が必須!」
「我等が手を組み、大陸中に良質の食糧を届けようではないか!」
デリホウライ「おおっ!」
●オリカカン
デリホウライと組んで運輸業を開始。
着眼点は良かったのだが…………
●デリホウライ
カルラゥアツゥレイ皇として、國の基盤を固める。
海産物交易の第一人者となり、称えられる事になる。
355 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:18:08.97 ID:Kfvpt0JSO
――――
ノポン「お、お嬢さまぁ〜〜〜〜……」
カムチャタール「おや、ノポン。何をしとるん? 明日の仕込みもせんで」
ノポン「はひぃ〜…はひぃ〜… 東から帰って来たゴ、ゴムタが面白い話を……」
カムチャタール「……面白い話?」
ゴムタ『ぐぎぇっ!』
ガリガリ… ギギッ…
カムチャ「……この顔は、オリカカンと……ああ!」
「確かぁ、デリホウライとかいう若造やったか」
カムチャ「……この二人が密談?
アンタ、文字まで書けるようになったんやなぁ」
ゴムタ『ギャッ!』フフン
カムチャ「内容は……判らんけど。予想出来んわけじゃぁない」
「カルラゥアツゥレイは、海のもんが豊富やから……」
カムチャ「品を動かす流れを造ろういうんか?」
「ふふっ。そない簡単にいくかいな」
カムチャ「商人達が、黙って見過ごすわけないぃ」
「絶対、どこかで計画が頓挫するわぃなぁ」
カムチャ「……両者のどさくさに紛れて、
あちしがその流れを利用させて貰おうかねぇ」カチッ
ノポン「お嬢様……ワルですね〜」
ゴムタ『ンギッンギッ』コクコク
カムチャタール「…………」ジーッ
ノポン「ありぃ〜? 鞭がきませんね〜?」
ゴムタ『ギィ?』
カムチャタール「……うふふっ」ニヤニヤ
ノポン「 」 ゴムタ『 』
娘@「あの状態になったお姉様には、何も聞こえませんよ」
娘A「クロウ様から頂いた髪飾りを見始めちゃいましたし」
娘B「お姉サマは恋する乙女デス!」
356 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:20:28.44 ID:Kfvpt0JSO
●カムチャタール
オリカカン達と商人達が悶着を起こしている間に、
漁夫の利で運送ルートを取得。
他の商人やデリホウライと組んで、富を得る。
●ノポン
水属性術士なので、氷を作るのに重宝される。
それ以外の仕事は主にパシり。
●ゴムタ
最近は文字も書けるようになり、ますますキママゥ離れしてきた。
隣の國に行く位のお使いなら普通にこなす。
357 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:23:47.64 ID:Kfvpt0JSO
――――――
店主「はい。こちらが野菜盛合せとライスです」コトン
「ありがとう」
客(い)「にゃふ〜…ごちそうさまにゃも」
客(さ)「旨かったにゃーも」
客(げ)「では、これにて失礼いたす」
客(ぬ)「チクショウ……またオレが払うのかよ……」
客(で)「あの約束を忘れたとは言うまいな?」
ガララ… ピシャン
店主「今、他のお客様もいませんし……」
「煙管をお持ちでしたら、食事後に掃除致します」
「……そうか。君か」
兎耳(店主)「お久しぶりです」ニコリ
……あちゃあ、知り合いの店に入っちゃったか。
出来れば、顔見知りに会いたくなかったんだが……
兎耳「ごゆっくりどうぞー」
……仕方無い。食おう。
七輪の網焼きタイプか。
鉄板じゃないんだな。
網にタンを……一枚、二枚……
じゅー…… じゅー……
ああ、俺の肉が焼けていく。
普通の焼肉なんだけど、今日に限っては『ライス』がある。
【 ライス 】
待ちに待った白米が遂に登場!
358 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:26:51.28 ID:Kfvpt0JSO
この匂いと音だけで、一杯イケるかもしれん。
かちゃ… はぐぅ…
……おお。
ばくん むしゃ…
……はぁ。
新米はいいなぁ。
起きてる時期が……合わなかったんだよな。
それに『分身』が居たからちゃんと味わって食えなかった。
……あ
「肉を焦がしてしまった……」
いかんなぁ。
……ぱくっ
ん…… コゲコゲ、焦げ肉だ。
焼くのに失敗しちゃいましタン。
……オヤジだな。俺って。
次は、注意して……
じゃぅわー…
よし、いいだろ。
359 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:32:46.76 ID:Kfvpt0JSO
はふっ! はふ、ほふ…
くぅ〜〜〜っ! いいぞいいぞ。
がつっ もぐぅ
……いいぞぉっ!
ご飯と焼肉! 最高にして最強のカップル。
どんどん焼こう。
忙しい? いいじゃないか。
落ち着かない? それがいいんだ。
焼肉は、肉と自分との『戦』なんだ。
どれだけ美味しく食えるかで、勝敗が決まる。
戦が、忙しくないわけないだろう。
炎と網と肉の間を乱す……
焼肉は……疑似戦争だ。
「うん、うん……」
こんな戦いなら、いつでもやりたい。
俺の躰が稼働してきたぞ。
「カルビにいこう」
じゅ…じゅぁーッ……
ごくり……と喉が唾を飲む音。はっきりわかる。
「ああ……」
ご飯だ。ご飯で口の寂しさを何とかするんだ。
兎耳「おしんこ、要ります?」
「何があるんですか?」
兎耳「ナスとキュウリとハクサイです」
「ナス……いや、でも……」
兎耳「あっ! お肉」
「おおっと!」
危ない危ない。また焦がすところだった。
「すまないけど、やっぱりお新香はいいや」
兎耳「はい」
よく考えたら、野菜を忘れてたよ。
【 野菜盛合せ 】
今日はキャベツ・ネギ・カボチャです
360 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:36:38.52 ID:Kfvpt0JSO
よぉし、こいつらも焼いてけ。
じっくり、じっくり。
今日は焦がさないぞ。
火の強いところには肉。
野菜は焦げないように、やや火の弱いところ。
ネギとか、半生だと口の中シビレちゃうからな。
カボチャは早すぎも遅すぎも駄目。
キャベツにはある程度しんなりして貰いたい。
「……ここだ」
むぐっ もぐもぐ
うんうん。ナイスなタイミング。
タレに浸けたキャベツをライスにのせて……
はぐり!
おおぉ…… 肉ものせよう。
はぐ…もぐぅっ はがぅ…
う〜ん。たまらん!
俺の胃が熱くなってきたぞ。
躰は鍛冶場、胃は鉱炉。
うおォォン――
ガララ…
……いかんな、タイミングがズレてる。
361 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:39:41.17 ID:Kfvpt0JSO
店員(は)「いらっしゃいませー」
客(に)「ムゥ? なんだこの店は? 煙たいわ」
店員(は)「お客様、焼肉は初めてですか?」
客(に)「焼肉ぅ? 肉は串に刺して焼き喰らうものだろうが」
「カーッカッカッカ! 薄っぺらい肉をこんな弱い網で焼こうとは!」
客(に)「片腹痛いわぁっ!!」
「…………」
客(に)「ふん、見れば店を営むのも女ではないか」
「肉は女の細腕で扱うものではないっ!」
「……やめなさいよ」
客(に)「ムッ なんだお主は?」
「……焼肉を馬鹿にしちゃあいけません」
客(に)「ナニィ?」
「焼肉に限りません。飯を食うっていうのは神聖な行いなんです」
「男だとか……女だとか……そんな事は食事に関係ないんですよ」
「多くの人と仲良く食べるのもいい。孤高に食べるのもいい」
「だけど……自分のやり方を他人に強制する権利はありません」
「貴方の振る舞いは、見ていて気持ちよいものではない」
「この店が気に入らないなら、何も言わずに帰りなさい」
客(に)「キ、キサマ……」
「……酔っているんですね」
客(に)「許さんっ! 表に出るがいいっ!」
「……いいでしょう。ちょうど一区切りついたところでした」ガタンッ
店員(は)「あわわわ……衛士さん呼んで来なきゃ」タタッ
兎耳「…………」
362 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:41:58.54 ID:Kfvpt0JSO
●兎耳ちゃん
城に勤めていた所を、カムチャタールに引き抜かれる。
焼肉屋三号店の主を任されるなど、経営手腕はあるようだ。
ちなみにこのお店、住宅用土地の近くにあるのは都復興計画時に、
他の食事処から「匂い」が強すぎると文句を言われた為(難癖つけられただけ)。
でも、お城勤めの「あの者」達がよくやって来る。
363 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:47:31.63 ID:Kfvpt0JSO
……………
………
…
客(に)「どうした? かかってこんのか?」
「やめたほうがいい。貴方、酔っ払ってるんですから」
客(に)「それがどうした、キサマが来ぬなら、ワシから――」
ブンッ ドンッ!
客(に)「 !? 」
ガッ グッ ギギギ…
客(に)「ンギャアアアアアアアッ!?」
「…………」
兎耳「だ、駄目です! それ以上はいけません!」
「……懐かしいやり取りだ」
兎耳「……あ」
店員(は)「こ、こっちです!」
「おーおー 派手に極められてるねぇ」
……げえっ、不味い。
「一応、両者から事情を聞きましょう」
なんで、騎兵隊の二人が……
364 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:49:28.31 ID:Kfvpt0JSO
「そこの貴方。今更顔を背けた所で意味はありませんよ」
「……ベナウィ、クロウ。久しぶりだな」
ベナウィ「お久しぶりです」ペコリ
クロウ「一体いつ戻ってきたんで?」
「この店に来たのは……今日が初めてだ」
封印から脱け出したのは……『一年前』だけど。
ベナウィ「……詳しいお話は、城でお聞きしましょう」
「……見逃してくれない?」
ベナウィ「無理ですね」
クロウ「ま、諦めて捕まって下さいよ」
「そうか…… じゃあ、はいっ」 ブンッ
客(に)「クアッ!?」ドンッ
クロウ「のわっ!」ドスンッ!
ベナウィ「逃がしま……くっ! なんという逃げ足の速さ……」
店員(は)「く、食い逃げされた……」
兎耳「大丈夫。こちらの侍大将様に払って貰えるから」
ベナウィ「…………はぁ」
365 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:50:50.21 ID:Kfvpt0JSO
●ベナウィ
地位は変わらない。
余分な政務を皇にぶつける事は……
以前ほどしなくなった(女性陣の反発にあった為)。
●クロウ
こちらも相変わらず。
最近はカムチャタールとも仲が良く、
『婚姻秒読みか?』等と噂される。
366 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:55:17.35 ID:Kfvpt0JSO
……………
………
…
「ま、撒いたか?」
ツイてないなァ…… なんで見廻りにあの二人が居るんだ。
「金はベナウィが払ってくれるからいいが…… 荷物を忘れてしまった」
ほとぼりが冷めたら取りに――
「「……発見!」」
!? 今の声は――
「見つけたぞ! 大兄者ああああああああ!!」
ま、またか! 今度はあの三人!
オボロ「ハァハァ……もう逃げられんぞ」
ドリィ「大兄者様が見つかったと」
グラァ「ベナウィ様が令を出しました」
えーっ…… えーっ。
「俺、包囲されてるってことか?」
オボロ「ああ。さぁ、兄者がアンタを待ってる」
ドリィ・グラァ「「共に皇城へ」」
悪くはないお誘いだけど……
「オボロ。ユズハによろしくと伝えてくれ」
「じゃあな」 ダッ!!
オボロ「な――待てええええええ!!」
ドリィ・グラァ「「御二人を呼びましょう!」」
ボォォォ〜…
……法螺貝か、古いな。
367 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:56:21.61 ID:Kfvpt0JSO
●オボロ
まだまだ城で勤務中。ただし月に何度か旅に出て、世界を見て回っている。
……最近の悩みはユズハの体調。
●ドリィ・グラァ
この二人も普段通り。
オボロに付いて城から出る事が多いので、
二人とも弓衆隊長の位を辞めている。
368 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 22:58:45.01 ID:Kfvpt0JSO
………………
今の俺なら、オボロを撒くのは簡単だ……
けど……前に立ち塞がるあの二人は――
「ハアッ!」 「ヤアアッ!」
スパスパッ! …ドゴォンッ!!
「うわっ!」
トウカ「ここから先は」
カルラ「お通しできませんわ〜」グビグビ…
「……参ったなぁ。モテモテだ」
カルラ「そうですわね」ニヤリ
トウカ「聖上がお待ちです。どうか、大人しく……」
流石に、この二人を上手く切り抜けるのは……
……いや、手があるぞ。
「カルラさん。西の新しい肴、食べたくありませんか」
カルラ「……それで、わたしの気が変わるとお思い?」
む、無理か?
カルラ「……酒も付けなさい」クルリ
トウカ「カ、カルラ!?」
「わかりました。とびきり旨いと言われてるものを付けます」
カルラ「交渉成立ですわ♪」ガシッ
トウカ「おい! カルラ! 聖上の命に逆らうのか!!」ジタバタ!
「トウカは任せます!」
トウカ「ああっ! お待ち下されぇぇぇ!」
カルラ「あの男も縛れませんわね〜」ニコ
369 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:00:03.77 ID:Kfvpt0JSO
●カルラ
トゥスクルに属しているが、城には居らず、
トウカと共に紛争地帯に出向く事が多い。
……皇の側室。
●トウカ
エヴェンクルガの武人として、
戦に巻き込まれた弱き者を助けている。
現在でも御側付で……側室です。
370 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:04:11.23 ID:Kfvpt0JSO
……………
………
…
ふぅ…… なんで俺がこんな目に……
「どうしてアイツらがいるんだ……」
いくらなんでもおかしい。
あのコは兎も角、見知った七人に出くわすなんて……
「もともと、貴方を探していましたから」
「……ウルトリィさん」
ウルトリィ「チキナロさんにお願いをして、
貴方を食堂道に誘い込む予定でしたけれど……」
「その御様子ですと、ベナウィ様の策は失敗したようですね」
「がーんだな…謀られたのか」
……うーん。それなら知り合いに遭遇するのも納得。
それにしてもチキナロめ。俺を売るとは、とんだ商人だ。
このトゥスクルでは人身売買は禁止だぞ。
「ウルトリィさんも、俺を捕まえに来たんですか?」
ウルトリィ「いいえ」
……あれ?
ウルトリィ「店に置いていった忘れ物を、届けに来ただけですよ」 トスン
おお。俺の荷物! これは嬉しい。
ウルトリィ「この道の先に、貴方を捕まえようとする者はおりません」
「どうぞ」
「い、いいんですか?」
ウルトリィ「ええ。お荷物を忘れぬよう」ニコリ
「では、通らせて貰います。ありがとうございました」
タタタタタ…
ウルトリィ「……確かに『捕まえよう』とする者はおりませんよ」フフッ
「『連れていこう』とする方なら……ね」ニッコリ
371 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:06:19.97 ID:Kfvpt0JSO
●ウルトリィ
トゥスクル國の國師(ヨモル)でありながら、孤児院 や学舎を任されている。
また、賢大僧正(オルヤンクル)不在時の代理を務める。
……彼女も、皇の側室。
372 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:09:49.06 ID:Kfvpt0JSO
……………
「ウルトリィさん……食えない女性だ……」
ムックルに無理矢理乗せられて……俺は連行されている。
「ペコちゃん、見つけた〜。 おと〜さんにナデナデ〜」
「お久しぶりです……」
『トゥスクル三人娘』のこと、すっかり忘れていた。
「……アルルゥ、ユズハ。元気そうだね」
アルルゥ「んっ! アルルゥ元気!」
ユズハ「私も……凄く元気です……」
うん。見ればわかる。
ユズハは以前に比べて血色のいい顔をしているな。
――それに
「……おめでとうございます」
だって……ねぇ。その立派な……『お腹』は……
ユズハ「ハクオロさまと…ユズハの赤ちゃんです」
……エルルゥさん、きっと『エルンガー』になったろうなあ。
アルルゥ「おねーちゃん、怖かった」ウンウン
ムックル『ぐふぅ〜ん』コクコク ガチャタラ『キュルキュル』コクコク
……逃げられん。
アルルゥと身重のユズハに挟まれては、下手に動けない。
「どおすりゃいいんだ……」
ユズハ「アルちゃん、私はここで降りるね……」
アルルゥ「どして?」
ユズハ「あんまりムリしたら、赤ちゃんに……」
アルルゥ「わかった。ムックル」
ザザッ ペタッ
ユズハが降りて、俺に話しかけてくる。
ユズハ「ハクオロさまに、会ってあげてくださいね……」
……はぁ、しょうがないか。
373 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:11:56.62 ID:Kfvpt0JSO
●ユズハ
病弱ではあるが、米を主食にして体調が良くなりました。
皇の側室になり、ご懐妊。
今日はオボロに黙って、アルルゥについて来た。
性的知識は、生前のトゥスクルさんに教わってました(原作通り)。
374 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:15:14.46 ID:Kfvpt0JSO
………………
山を走り、森を抜け、俺達は『最初の集落』へ向かっていた。
「あいつが居るの、城じゃないんだな」
アルルゥ「おと〜さんとおねーちゃん、お家にいる」
ムックルタクシーに乗るのも、懐かしい。
アルルゥ「ペコちゃん、逃げない?」
「俺って、甘いからなぁ……」
特に、女の子には。
変な渾名で呼ばれても、怒る気にならない。
アルルゥ「もうちょっと!」
そうだな。あの二人が暮らすなら、きっと彼処に決まってる。
「何せ、あの場所は……」
ずっと、ずっと昔に……三人が仲睦まじく住んでいた――
375 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:18:44.06 ID:Kfvpt0JSO
…………
〜 ヤマユラの集落・小さな家 〜
「あたたたたっ!」 グイー
エルルゥ「ハクオロさん、変な顔です」クスクス
「なぁエルルゥ。笑ってないで、この子のイタズラを――」
エルルゥ「嫌です♪ だって微笑ましいじゃないですか」
「『お父さん』と遊ぶの、楽しいもんねー?」
キャヒッ! エヒヒ!
ハクオロ「城の政務で、此方に来れるのが週に一・二度だからな……」
二人に、寂しい思いをさせてしまっているのか。
ハクオロ「エルルゥ、そろそろ城に戻らないか?」
エルルゥ「そうですね。村も安定してきましたし……」
「側! 室の! ユズハちゃんのお産の準備とかしないといけませんしね!!」
ハクオロ「……………………はい」
エルルゥ「それで? 他の皆さんはどうなんですか?」
「カルラさんや、トウカさん。ウルトリィ様にクーヤさん、サクヤさん!」
ハクオロ「…………黙秘権は」
エルルゥ「あ・り・ま・せ・んっ!!」
ハクオロ「…………………………クーヤとサクヤ以外とは、一回ずつ」ボソ
エルルゥ「……いいですかハクオロさん」
「私はハクオロさんが『好色皇』でも構いません。妥協します」
エルルゥ「なんと言っても、『正室』ですから。少し位余裕を見せないと」
ハクオロ(……嘘をおっしゃる)
エルルゥ「……何か?」
ハクオロ「エルルゥさんは私の素敵な奥さんですっ!!」
エルルゥ「はい♪ よろしい」ニッコリ
ハクオロ(本当、この笑顔は可愛いよなぁ)
(……ん)ユサユサ
ハクオロ「エルルゥ。寝たみたいだ」スッ
スースー…
エルルゥ「……ハクオロさんに似て、鈍い子ですね」
……私、鈍いのか?
376 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:23:49.62 ID:Kfvpt0JSO
エルルゥ「じゃあ、お布団にいきましょうね〜」スクッ
ハクオロ(……なんと言うか)
……幸せだな。
「結婚祝いと出産祝いで、この薬安くしとくぞ」
ハクオロ「……ようやく会えましたね」
「これを飲むと持続力が……」
ハクオロ「もう、3クリック皇とは呼ばれたくないんだ……」
「……お買い上げ、ありがとうございます」
ハクオロ「……お帰りなさい」
「……俺、帰ってくるつもりはないぞ」
エルルゥ「……ふ〜。さ、ハクオロさ……」ピタッ
「お元気そうで何より」
エルルゥ「ゴ、ゴ……」
「立派に國の皇(オゥルォ)を尻に敷いてますね」
エルルゥ「だって、ハクオロさんは私の旦那様ですから」ニッコーリ
「……あまり、羨ましくないんですが」
エルルゥ「貴方も、家族を持てばわかりますよ?」
「う〜ん…… 当分、いいかな」
ハクオロ「おや、アルルゥはどうしました?」
「俺をこの家に連れてきて何処かに行っちゃった」
エルルゥ「あ! そっか!」
ハクオロ「ああ。そういうわけか」
「……?」
この二人、何を納得したんだろう。
377 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:27:44.04 ID:Kfvpt0JSO
ハクオロ「……折角来たんですから、今日は泊まっていって下さい」
エルルゥ「腕に縒りをかけて料理を作りますよ」
「……お気持ちは嬉しいんですが、このへんでお暇します」
ハクオロ「……何故です?」
「ええと……これ、『名刺』です。トゥスクル皇ハクオロ様」
ハクオロ「拝見……『輸入雑貨商』…『兼、クンネカムン右大将』!?」
「私は、主に西の國々で仕事をしておりますので」
「東の大國、それも皇の住居に滞在するわけにいかないでしょう」
エルルゥ「この…輸入雑貨っていうのは?」
「西で造られた品々を売り歩いています」
「エルルゥさん。赤ちゃん用の服、要りませんか?」
エルルゥ「ん〜…別にいいです。遊び道具なら欲しいんですけど」
「じゃあ……これ、どうぞ。差し上げます」
ハクオロ「……鈴ですか」
──チリンッ♪
エルルゥ「……いい音ですね」
「では、俺はこれで。御用がありましたらクンネカムンに文をお願いします」
ハクオロ「……ああ。贔屓にさせて貰う」
「……じゃあな、ハクオロ」
ハクオロ「また、会おう。私の『友』よ」
エルルゥ「また遊びに来て下さいね〜!!」
「はい。時間があったら、寄らせて頂きます」
378 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:29:32.30 ID:Kfvpt0JSO
――――
エルルゥ「ハクオロさん、もうちょっと引き止めたほうが……」
ハクオロ「……大丈夫だ。ほら」
オトーサン!
エルルゥ「あ、アルルゥ!」
…ピコ ピコ ピコ
アルルゥ「おと〜さん。アルルゥ、ちゃんと呼んできた!」
ハクオロ「よしよし。偉いぞアルルゥ」ナデリナデリ
アルルゥ「んふ〜〜♪ きゃっほ〜ぅ♪」スリスリ
エルルゥ「…………」
ハクオロ「エルルゥもおいで」
エルルゥ「――はいっ♪」
379 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:30:59.81 ID:Kfvpt0JSO
●アルルゥ
エルルゥやハクオロと一緒に暮らしている。
やんちゃは未だ健在。しかし、最近は少しずつ落ち着いてきているらしい。
●エルルゥ
ハクオロと婚姻。子を出産。
新生したヤマユラの集落の村長。子どもの世話の為に帰省していた。
ますます『辺境の女』になっている。
●ハクオロ(仮面無し)
トゥスクル國の皇兼ヤマユラの男として、二重生活をしている。
城に居る時は偽物(祭で作られた玩具)の仮面をつけ、政務をこなす。
以下、どうして名実ともに好色皇となったか解説。
ユズハ……兄オボロの望みと従兄ベナウィの謀略、ユズハ自身の希望により。
この娘とは原作通りの流れで――
ウルトリィ……妹と離れてしまい、寂しく泣いていた所を――
カルラ……ハクオロがカルラの部屋の罠と策略にひっかかり――
トウカ……カルラの入れ知恵で――
……皇様だし、室を沢山作るのは構わないのです。
380 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:32:36.28 ID:Kfvpt0JSO
――――――
「う〜ん…… いい村だ」
暢気に歩く、帰り道。
先程まで、曇っていた空も……
「晴れたなぁ〜 おかずになりそうな空だ」
秋の爽やかな青空の下、だんだん山が朱や黄に染まってきている。
「俺の瞳に映るのは……赤に黄色に緑に……青……」
バサバサッ…
「そして、『黒』か……」
「お帰りなさい! 『ゴロー』っ!!」
381 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:34:43.70 ID:Kfvpt0JSO
「……呼び捨ては、やめてくれ。カミュ」
カミュ「あ〜…やっぱりダメ?」
「それに、正しくは『ゴロウ』だ。伸ばさない」
カミュ「クロウ兄さまと被っちゃうよ?」
「……音は兎も角、こう書けば被らない」
カミュ「なになに? それが文字なの?」
「遥か昔の……『漢字』というものだ。……よし」
「カミュにも名刺、渡しておくよ」
カミュ「……この字でゴローおじさま?」
「『井之頭』は名字、『五郎』が名前だ」
カミュ「ふーん……なんか、真面目な字だね」
「何かあったら、クンネカムンに手紙を出しなさい。届くから」
カミュ「だけど、オンカミヤムカイはクンネカムンに近いよ?
普通に遊びにいっちゃダメかな?」
「仕事で居ないかも知れないから駄目だ」
カミュ「そっか〜。あ! そうそう、ムツミに変わるね」
パアッ キラキラ…
382 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:38:17.61 ID:Kfvpt0JSO
「──ムツミ」
ムツミ『……“お父さん”』
「…………呼び方、変えないか」
ムツミ『駄目?』ジッ…
「結婚、してないんだけど……」
ムツミ『私とする?』
「あと五年……いや、娘と結婚出来るわけないだろう」
ムツミ『私を“娘”って認めた……』
「……あながち間違いでもないからな」
ムツミ『……ちょっぴり、嬉しい』ニコッ
「──いい笑顔になったな」
383 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:41:34.16 ID:Kfvpt0JSO
ムツミ『お父さん、プレゼントありがとう』
『おかげでムツミは笑――』
「お、気に入ったか。お米」
ムツミ『――――えっ?』
「良かった良かった。旨い食べ物は、最高のプレゼントだからな」
俺にとってはそう。
ムツミ『…………』
「モロロも不味くないが、やはり米は日本の宝だ」
「あそこまでするの、大変だったなァ」
ウンカやイナゴで全滅寸前になったりした事もある。
「虫除けの結界とか、頑張って編み出そうとしたっけ」
ムツミ『…………』
「喜んで貰えて良かった」
ムツミ『…………ふーん、深い意味なんて無かったんだ』
384 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:43:48.38 ID:Kfvpt0JSO
「ムツミ」
ムツミ『…………何』ムスーッ
「これ、ハクオロに返しておいてくれ」
……パシッ
ムツミ『!! これ“仮面”!?』
「アイツの忘れ物だ。俺には必要ない」
ムツミ『…………まさか』
「 またな 」
─キュィンッ! フッ!
ムツミ『……“転移術”だ』
…………
385 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:47:28.81 ID:Kfvpt0JSO
●カミュ
オンカミヤムカイ賢大僧正(オルヤンクル)。
オンカミヤムカイ、トゥスクル皇城、カカエラユラの森の奥を行き来している。
今でも満月になると、生命の源である血液を吸いたくなるので、
ハクオロの血『など』を貰っているらしい。
……カミュも、皇の側室である。
●ムツミ
話し合いにより、『ムツミが皇の政務をどれだけやったか』等で
カミュの身体の使用時間を決めているそうだ。
現在、一日約二時間ムツミとして行動している。
386 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:50:43.21 ID:Kfvpt0JSO
推奨BGM:『五郎の12PM』
ゴロー ゴロー ゴロー イッノッガシラ フゥー
「まぁ、これで全員に顔見せしたから……」
「十分だろう」
みんな、元気そうだった。
あとしばらくの間、世界は平和だろうな。
「それにしても……」
「『ハラが減った……』」
焼肉。あれだけじゃ、足りないよなぁ。
五郎「飯屋を、探そう」
思いっきり腹に入れられる、ウマイものを食おう。
五郎「よし……」
カツ… カツ… カツ…
彼女は『彼』を待ち、そして別れた。
ムツミ『……またね』
この黒い翼の娘が、変わった格好の父親と仲良く歩ける日は……
五郎「おお、スキヤキ」
はぐっ… モグモグ…
五郎「ちょっと味付けが濃いというか……」
「すいません、ご飯もう一杯下さい」
まだまだ、先のようである……
387 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/04(日) 23:52:58.02 ID:Kfvpt0JSO
──彼の旅路は終わらない。
「うー 食い過ぎた」
──しかし、記された『物語』は、ここで終わっている。
「今度は、寿司食いたいな」
──今も、彼は世界を巡る。
「ライス定食! そういうのもあるのか」
──その男にとって、この『話』は
「あのぉ……食事できますか」
──『前置き(プロローグ)』に過ぎないのだ。
388 :
推奨BGM 『荒野のグルメ』
[saga]:2012/11/04(日) 23:56:19.85 ID:Kfvpt0JSO
『時代』や社会にとらわれず、
幸福に空腹を満たすとき、
束の間、彼は自分勝手になり、
自由になる
誰にも邪魔されず、
気を遣わずものを食べるという孤高の行為
この行為こそが、『今を生きる者』に平等に与えられた――
最高の癒しと言えるのである
この『序章の物語』と『これからの話』に題をつけるならば――
人々に『謳われた』彼の呼び名に合わせて――
ヒュォォ……
ぱらぱらぱら……
ぱらぱらぱら……
ぱたんっ……
『うたわれるゴロー 〜 孤独な男のグルメ旅 〜』
……オシマイ!
389 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)
[sage]:2012/11/04(日) 23:57:12.24 ID:6mzFcEOXo
乙!
いい時間を過ごせた
390 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/04(日) 23:58:27.54 ID:H2T/y7wIO
乙!!!!!
これほどハクオロの好色王に腹立つ物も無いな!
やはり独神は独神か。
391 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/05(月) 00:01:20.21 ID:XehKWp2SO
投下完了! そして、完結!!
このSSを御覧の皆様、応援ありがとうございました!
オマケは水曜日に投下予定。
質問事項がございましたら、このオマケで取り上げますので、どうぞ!
あと、ちょっと聞きたいんですが……
巫女の役割って『アルルゥ』と『ユズハ』のどっちが良いですかね?
392 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/11/05(月) 00:03:56.04 ID:MNJ1sfNz0
2人とも
質問だ!結局のゴローちゃんの嫁ポジションは誰なんだ
393 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/11/05(月) 00:04:21.71 ID:MNJ1sfNz0
忘れてた
乙でした!!
394 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/05(月) 00:06:36.82 ID:MhnKcDs6o
おつー!!
395 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/05(月) 00:11:27.25 ID:XehKWp2SO
現在、オマケで書いている質問のありそうな事項を列挙。
●ゲンジマルが契約で願ったこと
●契約破棄の代償について
●五郎の正体(の設定)について
●お米について
これ以外にも、質問がありましたらどうぞ。
>>392
さんへ
五郎さんは独身だから良いのです。嫁ポジションの娘は居ません。
娘ポジションなら、ムツミ・カミュ・兎耳ちゃんですよ。
396 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/05(月) 00:16:04.55 ID:CdJyvbdIO
娘に父親が逆レイプされるってのもアリじゃないですかねえ
397 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/05(月) 00:28:28.67 ID:eNJ8d9qDo
大封印とは何だったんだ
398 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/05(月) 20:57:43.70 ID:NBh1o7NSO
乙
これは、うたわれをやり込んでいるなwwwwww
399 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2012/11/05(月) 22:26:25.33 ID:yQJOvNtWo
乙!
良いSSだった
400 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2012/11/07(水) 00:30:53.83 ID:UcYSoen6o
おつかれ
おもろかったわ
401 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/07(水) 22:37:06.20 ID:riujKooSO
OP曲:うたわれOVAから『adamant faith』
ハクオロ・エルルゥ「「うたわれるものらじお〜(以下略)!!」」
ハクオロ「さあ、始まりました最後のオマケらじお」
エルルゥ「これが終わったらhtml依頼を出してきま〜す」
ハクオロ「しかし……なんと言いましょうか。このオマケの蛇足感!」
エルルゥ「後味スッキリ……とはいかないのが
>>1
の悪い癖ですね」
ハクオロ「オマケとか、好きらしいんですよ」
エルルゥ「前作もそうでしたっけ?」
ハクオロ「そうそう。思い付いたら止まらない(笑)」
「この話も、孤独のグルメから派生して思い付いたそうで」
※ドラマCD『孤独のグルメ』の井之頭五郎役、
力ちゃん(小山力也さん)だなぁ〜
……「んっ?」と思ったのがキッカケです。
402 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 22:41:39.47 ID:riujKooSO
ハクオロ「……いやぁ。それにしても長かったな」
エルルゥ「……そうですね」
ハクオロ「まさか2つもスレを使うとは」
エルルゥ「本当ですよ〜」ニコニコ
ハクオロ「機嫌が良いね。どうしてだい?」
エルルゥ「だって……『正室』ですよ〜」ニヘッ
ハクオロ「ゲームだと、ユズハが先に子を産むからな……」
エルルゥ「こういうのは二次創作様々です♪」
ハクオロ「相変わらず、此所に居る間は高次(メタ)発言だらけ……」ハァ
エルルゥ「何時ものことですから、気になりません〜」
ハクオロ「……あれっ。今日のゲストは?」
エルルゥ「居ないなら居ないほうがいいです」
ハクオロ「……エルルゥ、そんな事を言うと――」
『うったわれるぅ〜ものぉ〜♪』
『俺たちうったわれるっものぉ〜♪』
『へ へいへい〜♪』
ハクオロ「ホラ、な」
エルルゥ「避けては通れぬ道と思ってましたが……
よりによって! 最終回で!!」
バォォォーンッ! ボボボボボボボボ……
クロウ「水臭せえじゃねぇっすか! 総大将! 姐さん!」
エルルゥ「出たー! 歩く下半身!」
ハクオロ「ああっ! 普通の言葉だから隠れないっ!」
403 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 22:44:32.95 ID:riujKooSO
ハクオロ「本日のゲストは……『クロウ』です」
エルルゥ「…………あの、なんでスタジオに『バイク』で?」
「あと、後ろの女の子は?」
ま○か「こ、こんなの絶対おかしいよ……」フルフル
クロウ「いやね、総大将が神ってんなら、ネタで神様みてぇな人を……」
〜〜〜〜
サクヤ「ティロ・フィナ…… 何ですかコレ?」
〜〜〜〜
まど○「悠木さんが剛志さんのバイクに乗ってる写真が元ネタだよ♪」
ハクオロ「わ、わざわざすみません……こんな一発ネタに付き合わせて」
○どか「えへへ……契約つながりだし、いいかなって」
エルルゥ「ウィツァルネミテアとイ○キュベーターですね」
ハクオロ(声真似)『僕と契約して、憑代になってよ!』
エルルゥ「声真似も、ハクオロさんの持ちネタですからね!」
※ドラマCDや本家らじおです。
まど○「じゃあ、私は行きますね。ありがとうございました」ペコリ
ハクオロ「劇場版、頑張って下さーい」
404 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 22:47:11.46 ID:riujKooSO
エルルゥ「……はい、仕切り直して」
クロウ「生まれたての??歳! 来やしたぜ!」ビシッ
エルルゥ「あ、ひげ独身は使えませんから」
ハクオロ「もう独身じゃないからな(声優さんが)」
クロウ「そうっすねー」
ハクオロ「……とまぁ、こんな事をしていたら、冒頭の尺が無くなった」
クロウ「えええ!? 早い! 早いっす!!」
エルルゥ「スタジオに来るのが遅かっただけでしょ」
クロウ「あ、姐さんが冷たい……」グスン
ハクオロ「SSらじお最終回と言っても、大したことはしないから。
『適切』な会話をする分には、何の問題もないし――」
クロウ「じゃあ【キィン】【キィン】【キィン】【キィン】」
エルルゥ「限度ってものがあるでしょ!」
クロウ「総大将、今日のパンツ何色で? ……これ平気なんだ」
「パンツの下の【キィン】は、く【キィン】として、美人を【こどものこ〜ろの】……」
ハクオロ「し、収拾がつかん!!」
エルルゥ「だからこの人を呼んじゃダメだったんですよ!!」
405 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 22:50:15.81 ID:riujKooSO
《アニメ・原作とSSの違い+皆様からのお便り》
クロウ「最初はこいつで!」
「
>>396
さんから頂きやした! いいネタですぜ!」
クロウ「娘に親が逆【キィン!】するのもありじゃね?」
エルルゥ「
>>396
さーん、危ないところは隠しましょうねー」
ハクオロ「止めましょう! こういう下ネタ引っ張るの!」
クロウ「えー、だってラストが俺ですぜ? こうなるのが期待されてますって」
ハクオロ「そんな所でサービスしないでいいからっ!!」
クロウ「とりあえず答えましょうよ」
エルルゥ「そうですよ!」
ハクオロ「……エルルゥ、何故ソッチにつく」
エルルゥ「や、ヤダなぁ〜。ハクオロさんの口から逆【キィン!】
という単語を聞きたいなんて思ってませんよ〜」
クロウ「……ここまでやっても柚ねぇボイスが想像できるって」
ハクオロ「いかに本家が半端ないか、判るな……」
※大体の台詞は、
>>1
の脳内で音声付きになっています。
本編でもそう。らじおのパワーは凄いです。
ハクオロ「はい! この話はヤメっ!」
エルルゥ「え〜 ぶぅぶぅ」
クロウ「総大将。男、みせましゅうや」キラッ
ハクオロ「品行方正なSSですから!」
エルルゥ「どの口が言いますかぁ〜? 『好色皇』さ〜ん?」
ハクオロ「 」ピシッ
クロウ「あーあ、固まっちまった」
エルルゥ「仕方ないです…… 次にいきましょう」
406 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 22:52:36.85 ID:riujKooSO
●契約『破棄』の『代償』について
ハクオロ「これ、質問したい方も多かったと思う」
クロウ「あ、起きやした」
エルルゥ「アニメ・原作には無いものですから」
ハクオロ「……実は、大した意味がないんだ」
エルルゥ・クロウ「「え?」」
ハクオロ「ディーが言うのは『破棄へと心を動かす何か』」
「私がエルルゥに言った時は『覚悟の現れ』」
ハクオロ「つまり、このSSでもアニメ・原作通り『破棄』は自由だったんだ」
エルルゥ「ちょ、ちょっと待って下さい! SS本編と矛盾します!」
「ゴローさんが破棄の代償で『不老不死』になったって理由が――」
ハクオロ「――聞きたいか?」
クロウ「い、いや。そりゃねぇ……」
エルルゥ「最後ですし……」
ハクオロ「あまり語り過ぎるのもな……」
「ヒントは本編中に散りばめてあるんだが……」
エルルゥ「え、え?」キョトン
407 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 22:54:40.72 ID:riujKooSO
ハクオロ「追加でこのSSのテーマを言うと判るかもしれん」
「テーマは『補完』と『救済』だ」
クロウ「救済? 何から助けるってんで?」
ハクオロ「色々あったろう。命を救われた者とか」
エルルゥ「……オリカカンさん、ヒエンさん、クーヤさん、サクヤさん」
「……ムツミちゃんも……あっ!」
ハクオロ「エルルゥは気が付いたな」
クロウ「はぁ?」ポカーン
エルルゥ「……ゲームプレイ済の人には『ヌワンギの怪我の理由』」
「それ以外の方向けには……『第四話』と『色』ですね」
ハクオロ「うん。大正解」
クロウ「はあ……?」
エルルゥ「そっか、だから最後があの流れになるんだ……」
ハクオロ「答え合わせは……しない。あえて明示しないという良さもあるからだ」
ハクオロ「ちなみに、これが判ると
>>397
さんの疑問も消える」
エルルゥ「『耐えられなかった』んですね!」
クロウ「さっぱり判んねー……」
408 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 22:56:22.00 ID:riujKooSO
●ゲンジマルの願い
ハクオロ「アニメ・原作では明示されなかった話。これは……」
エルルゥ「Wikipediaさんには、契約の願いで超常の力を得たってありますよ?」
クロウ「あ、これは判りますぜ」
「……その理由だと、カッコ悪いからでしょう?」
ハクオロ「うむ。正解」
エルルゥ「うーん……よく判りません……」
ハクオロ「ヒエンの憧れる力が、契約による『偽り』って……」
クロウ「エヴェンクルガにしちゃあねえ」
ハクオロ「後々、超人的な力も付与されたろうが……
基本の力や技術は全て自ら鍛え上げたとしたそうだ」
エルルゥ「ゲンジマルさんって……凄いですね」
クロウ「俺らも鍛えりゃアヴ・カムゥ倒せやすから!」
409 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 22:57:45.43 ID:riujKooSO
●エルルゥの『楔』について
エルルゥ「そう! これ私も聞きたかったんです」
「第五話で私がハクオロさんにアームロック出来たのはなんでですか?」
ハクオロ「? ……あの時、私を殺す気は無かったろう?」
エルルゥ「相手の殺意によって発動するの!?」
ハクオロ「ああ。エルルゥのアレは……只の嫉妬だったぞ」
クロウ「あれもよく判らない概念っすよ」
ハクオロ「…………抱きついてたよね? 後ろから」
エルルゥ「……ピュ〜ピュピュピュ〜♪」
ハクオロ・クロウ((逃げたな……))
※このへん、アニメ・原作でも突っ込み所なのです。設定は凝ってるのに脇が甘い。
410 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 22:59:41.46 ID:riujKooSO
●五郎の正体(の設定面)について
ハクオロ「……正しいクロスSSとは言えんな」
エルルゥ「うたわれるもの世界に合わせてましたから……」
クロウ「ドラマも漫画も含めたクロスと考えたらどうよ?」
※この部分について、登場人物に語らせるわけにはいきません。
『クロスSSって超常の力で起こるタイプとか、
自然に世界観が融合してるタイプが多いなー』と思ったので、冒険したのがキッカケ。
初めだけは特殊能力や異常な力に頼らない、背景事情のあるクロスSS……
と考えたら、このような形になったのです。
ドラマ・原作漫画の五郎を融和させてみたかった事は否定出来ません。
ハクオロ「あと、折角の趣味設定を活かしきれなかったな」
クロウ「書籍集めの話ですか」
ハクオロ「実は、彼の協力で私の生きていた時代を特定するエピソードもあった」
エルルゥ「会話はできませんが、『文字』を見せて、反応を……ってお話です」
ハクオロ「カットの理由は……」
●あまり本筋に関わらない余分な話だから。
●ハクオロ(アイスマン)が『考古学者』だった為、時代の完全な特定が出来なかった。
ハクオロ「上記の理由がある」
「古代(平安時代位)の書物であれば、判るからな……」
411 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:07:30.63 ID:riujKooSO
●お米について
エルルゥ「序盤からひっぱってきた『お米』ですね」
ハクオロ「エピローグは最初から考えていた通りだとさ」
クロウ「復活に数百年……って、そんなにかかるもんっすか?」
ハクオロ「……農薬なんて無いから、何回か全滅寸前までなったらしい」
「小ネタを拾うが、虫除けの結界も、原作ゲームにあるものだぞ」
※アルルゥとカミュが蜂蜜を採りにいくシーン。
「ハチミツとり むずかしい。むずかしいけど おいしい」
……の前にカミュが言うんです。
エルルゥ「あの結界の中、田んぼ以外に何があったんですか?」
ハクオロ「よく見たら小さな集落があった。人々が自給自足で暮らしていた」
「起きている時のゴローさんは、箱庭と彼処を行き来していたようだ」
エルルゥ「じゃあ、もっと前からお米を食べてたんですね」
ハクオロ「記憶を失っていたから、米が何処で採れるか忘れたのだろう」
クロウ「総大将はあの稲ってヤツを全國に伝播する予定なんですよね?」
ハクオロ「結界に頼らない虫除けの薬の開発と土地の検査が終わったらな」
「浪川……がんばってるよ、私」
クロウ「それ俺のネタですぜ!!」
412 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:08:48.15 ID:riujKooSO
ハクオロ「あと補足を入れるのは、SS本編中の『天に任せる』という発言だ」
「エピローグで、アレは米の生育についての発言だと判ってくれたと思う」
ハクオロ「以上を踏まえて、どうしてこう言ったかを説明する」
@そもそも種籾がちゃんと育つか判らなかった。
A紫琥珀解析により判明した成分が、本当に治癒力を強めるか実験出来なかった。
エルルゥ「……賭けだったんですか!?」
クロウ「『こまけぇことは気にすんな』って感じか」
ハクオロ「時系列順に並べると……」
種籾発見→紫琥珀成分解析完了→研究所崩壊→ウィツの憑代になる
→赤子の世話(その間研究)→種籾に有効(そうな)成分を入れ改良→タイムアップ。
ハクオロ「憑代になった後も研究していたわけだ」
「鈴の事を思い出したのも、かなり後になってから」
413 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:13:12.34 ID:riujKooSO
ハクオロ「思い付いた解説ポイントはこんな所だ」
「
>>392
さんの質問にも回答済みだし……」
エルルゥ「う〜ん、語りきれなかった部分が多いですね」
クロウ「あとは、小ネタでも拾いますか」
《小ネタについて》
ハクオロ「小ネタというと……ミコトの首輪に付いてる鈴とかか」
エルルゥ「原作やったら『……うん?』ってなりますよね」
クロウ「所々で回想と共に音が鳴るってのに、
あんまし姐さんに関係ないんですっけ?」
ハクオロ「この鈴に着目して解釈すると、
『ミコトの魂』=『エルルゥの魂』説が崩れるかもしれない」
エルルゥ「……え」
ハクオロ「ゲームで鈴に関係したエピソードを持つのは……『ユズハ』なんだ」
クロウ「若大将が墓前に『鈴』を供えるんすよ」
ハクオロ「鈴の音が好きで、子どもを産んで……ミコトと同じような人生を歩んでいる」
「これは、もしかすると――……」
エルルゥ「 」ピシッ
ハクオロ「あ、あくまで解釈によってだから!」
414 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:16:09.11 ID:riujKooSO
クロウ「最終話のモブとかもネタっちゃネタですか」
ハクオロ「一応、作中で亡くなった者達を書いたつもりだったが……」
カンホルダリ(幽霊)『うらめしや〜〜』ドロドロ…
ハクオロ「……スマン、
>>1
が素でカンホルダリを忘れていた」
クロウ「ここで供養させて貰いやす……」
ハクオロ「グラァが私に惚れてたというのも、
アニメのみの人には判らないかもしれん」
クロウ「ゲームで、何故かグラァの立ち絵が『頬を染めてる』ってやつだぜ」
ハクオロ「あれ、何だったんだろう……」
415 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:18:38.16 ID:riujKooSO
クロウ「そうだ、『真名』ってなんすかね?」
ハクオロ「私だと『白皇』で……」
カミュ「カミュは『神結(カミ・ユウ)』」
ムツミ『私はそのまま“睦”』
ゴロー「俺もそのまま『五郎』」
ハクオロ「古代の漢字を意味する『真名(まな)』の事だったんだ」
「これでゴローさんは、うたわれ世界の市民権を得たというわけさ」
ハクオロ「残念ながら、他の者達については真名が判らない」
クロウ「俺とか『九郎』じゃありやせん?」
ハクオロ「設定が判らんから、下手な事は言えんよ。オボロは『朧』だろうがな」
416 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/11/07(水) 23:20:07.55 ID:ZuDOnkuf0
琥狼(クロウ)とか良くね
417 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:21:40.55 ID:riujKooSO
エルルゥ「他にも……ムツミちゃんの登場、早くなりましたね」
クロウ「お、復活した」
ハクオロ「“あの辺でムツミを出せれば、うたわれを知らない方も
カミュ・ムツミへの感情移入がしやすくなるかなー”だそうで」
エルルゥ「二人の心情を原作よりは詳しく掘り下げたんですね」
ハクオロ「それにしても、結構細かくネタを仕込んだな」
エルルゥ「らじおネタもそうでした!」
ハクオロ「ただ、何を仕込んだか書いた当人が忘れてるらしい……」
リ/__・リ / 【カンペ】
クロウ「……“ネタについては、ツッコミ所が多々ありました。色々ごめんなさい”」
ハクオロ「ギャグ小ネタとかの事かな……」
エルルゥ「基本は本家らじおや声優さんのネタですよね?」
ハクオロ「関係ないのもあったぞ。ジョジ○とか」
418 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:27:31.34 ID:riujKooSO
クロウ「
>>416
さん! いいっすね〜その真名!」
ハクオロ「良かったなクロウ」
クロウ「そうそう。俺に関係するネタは、箱庭を守る獣とかでしたかね」
ハクオロ「白い虎・紫の大蛇だけじゃ判らない方もいるだろう」
エルルゥ「他にも、巨大コウモリ・赤と黒の龍・などなど?」
クロウ「合計・十三種類いたってわけっす」
ハクオロ「ゲンジマル、全種類と戦ったらしい……」
クロウ「えっ? そりゃ強くなりますって!」
「あの爺さんが参戦したら、タイムベント使われまくり……」
ハクオロ「ライダーネタも細かく入ってるなぁ」
※アドベントボイス、小山剛志さんなんですよ。
419 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:30:12.04 ID:riujKooSO
エルルゥ「特撮ネタですね。各話の題名になったり、色々ありました」
クロウ「『絵コンテ欲しいー』と思った話もあったそうで」
エルルゥ「26話附記、空蝉と分身の戦闘部分でしたっけ?」
ハクオロ「あの部分は特撮寄りにイメージして書いたらしい」
「特にイメージしたのは……『ガメ――
ピコ ピコ ピコ ピコ
ハクオロ「お? この足音は…… アルルゥか」
アルルゥ「おとーさん。これ、飼っていい?」スッ
エルルゥ「虫? アルルゥが虫を飼うなんて珍しい……何これ?」
ハクオロ「……見た事あるような? 名前とか――」
アルルゥ「『れぎおん』!」
ハクオロ「――は?」
レギオン(体長50cm)『キュォォ?』ガチガチ…
ハクオロ「……アルルゥ、寄越しなさい」
アルルゥ「や!」プイッ
クロウ「まぁまぁ。いいじゃねぇすか、虫一匹くらい」
ハクオロ「お前はコイツを知らないから言えるんだっ!!」
エルルゥ「ハクオロさんは知ってるんですか?」
ハクオロ「……あれ? なんで私はこの生き物を知って――」
420 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:32:01.15 ID:riujKooSO
アルルゥ「いいこいいこ〜」ナデナデ
レギオンちゃん『 ♪ 』カチッカチッ…
ハクオロ「嫌な予感が……」
リ/__・リ /【VTRへ】
ハクオロ「ブ、VTR?」
エルルゥ「VTRどうぞ〜」
421 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:34:41.18 ID:riujKooSO
【 予告編 】
ピシッ
──罅割れる『卵』。
ウルトリィ「……巨大な『鳥』、ですか?」
ズズ…ペキッ
──中で眠っていた存在は、罅の隙間から周囲の状況を捉える。
トウカ「この白い塊は――」
「鳥の吐き出す『未消化物の塊』です」
パキパキ……
──孵化は始まる。
422 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:36:57.43 ID:riujKooSO
「あの鳥を、我々の『軍備』として用いれないかね? ウマのように――」
カルラ「……ウマは人を喰いませんわ」
ぐちゃり……
──這い出たのは、歪な『雛』。
オボロ「……久しいな、ベナウィ」
ベナウィ「やはり、貴方でしたか」
『ギャォォォォ――……』
──この雛は親を求めて鳴くのではない。
クロウ「ありゃあ……なんだ?」
キィ――――……
──阻む物を『切断』する為に鳴く。
423 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:39:13.39 ID:riujKooSO
「僕もあの『聖地』に入った事があるんですよ」
『キィオォォォォ――!!』
『ケャオォォォッ! キェェェ――!』
──次々と産まれる、『禍』
ドリィ・グラァ「「矢が通じない……」」
『――ケェェォ』
──己以外は、総て『餌』。
エルルゥ「と、『共食い』――」
……バサッ
──『禍』は、羽根の無い『翼』でこの世(ツァタリィル)を目指す。
424 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:42:10.78 ID:riujKooSO
カミュ「身体が……熱いよ……」
ヴォン… ガシィッ!
──最初の雛が、『石卵』を抱えて飛び出す。
???「……『まがたま』?」
バギッ……ズウウンッ……
──崩れた施設の破片を吹き飛ばして、『ソレ』は風を辿り外へと翔ぶ。
「こげんうまか酒、久し振りばい……」
『キャオオッ! ケャゥオォォォ!!』
──太陽光の亡き、闇夜に『災いの影』は復活した。
サクヤ「…………クーヤさまぁ」
クーヤ「……幸せな夢も、終わりか」
ボゴゴゴ……
──海底で『守護者』が『禍』に呼応する──
『…………』
──世界を破滅に導く『ギャオス』の天敵が──
――ギランッ!
ハクオロ「最後の希望、『ガメラ』。時のゆりかごに託す――」
『クオォォ――オオォォォォ――……』
……近日、公開。
プツンッ……
425 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:44:46.70 ID:riujKooSO
ハクオロ「…………」
エルルゥ「…………」
クロウ「…………」
アルルゥ「出るの?」
レギオンちゃん『…………キュ』
アルルゥ「『出ない』?」
レギちゃん『ギー……』コクン
ハクオロ「い、色んな意味で無謀過ぎる!!」
「! このSSに出てきたあの『卵』はっ!!」
ハクオロ「『Gyaos−Hyper』か!!」
エルルゥ「い、
>>1
からのコメントがあります!」
大地に住まう『亜人』の皆様へ。
ウィツァルネミテアの封印の際に……諸君らは『やり過ぎた』。
君達が火神・水神・風神・土神と呼称する大自然の力──
かつて『マナ』と呼ばれたエネルギーを使い過ぎた為に……
君達が大神を封じたあの場所で、耐久卵として眠っていた『禍日神』が復活した。
アレに比べれば『ウィツァルネミテア』なぞ可愛いモノかもしれない。
ウィツァルネミテアは理不尽な神では無かった。
歪んでいたとはいえ、子孫を愛する存在だった。
だが、次に諸君等を襲うのは……
旧世界の落とし児、最凶の『災厄』である。
『ギャオス』に近代兵器無しで諸君がどう立ち向かうのか楽しみにしている。
『うたわれるもの』よ、君と家族達の『絆』を見せて貰おう!
頑張ってね。
>>1
より。
426 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:46:42.65 ID:riujKooSO
ハクオロ「 」 ポカーン
エルルゥ「ち、挑戦状ですよ!」
ハクオロ「…………」
クロウ「面白えじゃねぇか」
ハクオロ「……クロウ、ギャオスの体長を知ってるか?」
クロウ「いや、でもそんなに――」
ハクオロ「……平成版は最大で70メートル以上」ボソ
「ウィツァルネミテアは……最終決戦時で約10〜20メートルだ」
クロウ「 」 エルルゥ「 」
ハクオロ「……ん、続きがある」
……本SSを御覧して下さった皆様へ。
ラブプラス×孤独のグルメ→孤独のグルメ×うたわれるもの
……と続いた五郎シリーズは本作でおしまいとなります。
次に書く予定のSSは、
『うたわれるもの(ハクオロ帰還後)』×『平成ガメラシリーズ』のクロスです。
うーん、自分で書いてて無謀に思えてきた。
書いた感じだと短編になりそうなのが唯一の希望。
とりあえず、ある程度書き貯めしたらスレ立てしようと思いますので、
その時はよろしくお願いいたします。
ところで……ガメラと交信させるの、
アルルゥとユズハのどちらが良いのでしょうか?
悩む
>>1
に皆々様のご意見を……
427 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/11/07(水) 23:48:00.03 ID:ZuDOnkuf0
アルルゥ
428 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/07(水) 23:48:04.44 ID:riujKooSO
ハクオロ「……大丈夫か?」
エルルゥ「怪獣SSに挑戦ですか……」
クロウ「どーなることやら」
クロウ「次回にオマケってあるんすかね?」
アルルゥ「やる!」
レギちゃん『【カンペ】』
ハクオロ「カンペ? 何々……」
次のSSでオマケパートをやるならタイトルは……
『エルルゥとアルルゥ(+レギちゃん)の小部屋』
……となります。
時を越え、クロス先からゲスト(登場人物)をお呼びする予定。
ハクオロ「え、私……クビ!!」
エルルゥ「残りました〜!」
アルルゥ「やったやった〜!」
レギちゃん『 ♪ 』ブーンブーン
※レギオンちゃんはマスコットです。
見た目はマザーレギオンを想像して下さい。
ハクオロ「と、とにかくそんなわけでこのSSも終わりになります」
エルルゥ「皆さん、本当にありがとうございました!」
……終わりっ!
429 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)
[sage]:2012/11/07(水) 23:48:13.73 ID:XnD23cDRo
アルルゥはそのままでも出番いっぱい貰えるでしょ!ユズハに出番をあげようよ
でもまぁ自然なのはアルルゥ
430 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/11/07(水) 23:49:00.17 ID:ZuDOnkuf0
乙!!!!乙!!!!乙!!!!乙!!!!乙!!!!
431 :
◆M6R0eWkIpk
[saga]:2012/11/07(水) 23:52:59.33 ID:riujKooSO
これにて、本SSも完全終了です。
皆様、応援ありがとうございました。
次回作も私の好みのまま作るSSになりそうです。
書き貯めが出来るまで、もう暫くお待ち下さいませ。
うたわれるものを知らない方が見てくれるか不安だ〜!
あとガメラに興味無い人が見てくれるか不安だぁ〜!
それでは、またこの板でお会いしましょう。
432 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/08(木) 00:05:26.39 ID:fZJHDuIjo
お疲れぇ!
433 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)
[sage]:2012/11/08(木) 00:06:55.87 ID:lnRixztmo
乙
434 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[saga sage]:2012/11/08(木) 00:07:21.21 ID:jyDZb1DMo
乙
435 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/09(金) 11:14:14.60 ID:cZvze2Vu0
乙
436 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/09(金) 18:52:47.43 ID:8/am9YOX0
乙でした
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[ Aramaki★
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