用心棒「派手にいくぜ」

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52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/21(木) 20:30:02.24 ID:afyGBDLB0

?「……」コソッ

?(もし油商人が手勢を集めて館にこもるようだったら、どうにかして妨害しなければならなかったが……)

?(そんな知恵はないようだな、馬鹿どもめ……よくもこれほどこちらの想定通りに動いてくれるものだ)

?「ンッフッフッフ……」


武士「むっ?」クルッ

?(おっと)サッ

武士「……」

武士(今、邪な気配を感じたように思ったが……気のせいだったようだな)

武士(どんな手練の忍だろうと、館の最深部であるこの部屋までたどり着くことはできやしない)


武士(一つ。この館は高い壁と警備の浪人たちに守られている。門以外から入ることはできないが、門の警備は特に厳重だ)

武士(浪人たちの目を逃れて館に入れる秘密の入口は、作った大工と俺たち四天王、それに油商人しか知らんだろう)


武士(二つ。この館は迷路のような構造だ。八幡の藪知らずだ)

武士(たとえ秘密の入口を見つけて忍び込んだとしても必ず迷う)


武士(三つ。館の中も大勢の浪人が巡回している……)

武士(順路は厳密に定められていてやり残しはありえない。侵入者は即、殺されるのだ)


武士(……あーあ。それにしても、ヒマだぜ……)

武士(どうせ用心棒は、槍使いには勝てねえだろう)

武士(だがその槍使いも、俺の相手じゃあない……)

武士(俺の血を沸き立たせてくれるような好敵手が現れないものか……)
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/21(木) 20:30:34.51 ID:afyGBDLB0
今日はここまで
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/06(金) 20:01:57.84 ID:/VWLkDYp0


少年「ごちそうさまでした……」

少年「……用心棒さんはどちらにいらっしゃったんです?」

相棒「……」

少年「……?」


相棒「……」

相棒「さあ?」

少年「……はあ」

相棒「……」

少年(相棒さん、なんか様子がおかしいな……ずっとぼうっとしてるし)


 ガラッ

用心棒「今戻った」

少年「あ……今までどこに?」

用心棒「お前を鍛えるのに手頃な道具を拾いに行っていたんだ」スッ

少年「……それ、ただの棒じゃ?」

用心棒「たかが棒、されど棒……」グッ

少年(用心棒さんはそう言って、棒を槍のように構えた)

少年(そして突然天井を向き、棒を天井に突き刺した!)

 ドガッ!

<ギャッ

用心棒「……」スッ

少年(引き抜かれた棒の先端には――)

少年(べっとりと血がついていた)

用心棒「……と、このように使い道がいろいろあるわけだが、それを教えるのはまた今度だ」ポイッ

少年「……えっ!?あっ、これ、どうすればいいんですか!?」パシッ

用心棒「持ってろ」

用心棒「……外に妙な目つきのやつらが居る。全部で四人……宿を取り囲むように立っていた」

少年「!」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/06(金) 20:02:35.69 ID:/VWLkDYp0

用心棒「その中の一人は槍を持っていた。十文字槍だ」

少年「『槍使い』……!」

用心棒「……しかし……」

相棒「少ない」

用心棒「ああ」

相棒「天井裏のゴミムシを含めても、五人」

用心棒「ゴミ……」

用心棒「……とにかく。剣士が三人がかりで襲い、しくじったことは奴らも知っているはずだ」

用心棒「それにしては少なすぎる。奴らの狙いがわからない」ジャキッ


少年「……どうするんです?」

用心棒「出て行くと待ち伏せを食う恐れがある。少し様子を見る」

用心棒「伏兵がいるなら出て行かない」

用心棒「いないなら出て行く……速やかにな。奴らは増援の到着を待っているのかもしれない」

用心棒「踏み込んできたら部屋の前の狭い廊下で迎え撃つ」

用心棒「……ないとは思うが、宿に火をつける奴や爆薬を仕掛ける奴がいたら窓から撃って阻止する」

用心棒(……本当に、これでいいんだろうか?可能性はこれだけなんだろうか……?)

用心棒(何だか嫌な予感がするな……)


相棒「もし」

用心棒「え?」

相棒「もし槍使いと戦うなら……私に、やらせてほしい」

少年「!」

用心棒「……それは、駄目だ」

相棒「なぜ?」

用心棒「お前は怪我人だ。それに、今のお前は冷静じゃない」

相棒「私は冷静」

用心棒「冷静じゃない!」

相棒「……」

用心棒「……お前と俺とは長い付き合いだろう。今回だけは、俺の言うことを聞いて欲しい……」

用心棒「わかってくれるな?」

相棒「……」


相棒「わかった」

用心棒「後で団子でも奢ってやるから、な」

相棒「……」ジロッ

用心棒「……冗談だ」


少年「……」

少年(きっとこの人たちは、こうやってバカを言ったり、諌め合ったりしながら生き抜いてきたんだろうな……)
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/06(金) 20:03:19.29 ID:/VWLkDYp0

用心棒「……さて、外の奴らはどうしているのか」

少年(そう言って用心棒さんは窓に近づくと、障子を細く開けて外の様子を窺った)


用心棒「……」

用心棒「……まずい、かもしれない」

少年「!?」

相棒「増えた?」

用心棒「……いや、減った。三人しかいない」

少年「減ったなら、別に……」

用心棒「さっきの俺の想定のどれかが当たっているなら、人が減るなんてことは有り得ないんだ」

少年「……!」


 ……ドン……


用心棒「っ!?何だ、今の音は!?」

少年「太鼓?いや、こんな時間に……」


 ズドォンッ
グラグラ


用心棒「な!?」

相棒「っ!?」

少年「い、今のは一体……」


 メキメキ パリーンッ

<キャアアアア!
<カミナリカ!?
<ブツバツダ!ブツバツダ!


用心棒「……まさか!」


 ……ドン……


用心棒「あ、あの音は……やはり!」

用心棒「くそっ、何てことだ!伏せろっ!」バッ

相棒「坊主!」バッ

少年「い、一体、何が――」バッ


 ズドォンッ
グラグラ

 ガラガラ…
ゴゴンッ

ズズンッ
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/06(金) 20:04:17.68 ID:/VWLkDYp0


 ドン… ズドォンッ


部下甲「西に逸れた。東に修正させろ」

部下乙「『東に修正』はこの振り方だったな……」ブンブン

部下丙「砲撃班への合図とはいえ、提灯を振り回すのは何だか馬鹿らしいな」


 ドン… ズドォンッ


部下甲「次は北に逸れたぞ」

部下乙「『南に修正』っと……外しすぎじゃないのか?」ブンブン

部下丙「さっきドンピシャだっただろう。夜中でこれなら抜群の腕だ」


 ドン… ズドォンッ

ギギイッ キャーグシャ


部下甲「おっ!当たったぞ!」

部下乙「『修正なし』っと」ブンブン

部下丙「……それにしても、槍使いさん」

槍使い「『二人を始末するのに大筒とはあまりにも大げさだ』と言いたいんだろう?」

部下丙「えっ……は、はい」

部下丙(相変わらず人の言いたいことを読むなあ……)

槍使い「それだけ油商人はあの二人が怖いのだろう」

槍使い「臆病なあの男らしいことだ。大げさな対策をとるのも無理はない」

部下丙「まあ……そうですね」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/06(金) 20:05:17.89 ID:/VWLkDYp0

槍使い「しかし……そいつらが怖いというそれだけの理由で……」ゴゴゴゴゴ

部下丙「……?」


槍使い「私を夜中に呼びつけ、こき使うとは!」ビュンッ

部下丙「ヒイッ!?」

槍使い「この!私は!人束いくらの浪人とは違うのだ!」ブンッ

槍使い「日々人の暮らすそれならざる世界より形なき文を受けその内容のすべてを代行者としてこの世へ生み出す宿命を神仏すら超越する大いなる存在より受けた人であって人ではない私を個人の恐怖心を由に軽々しく呼びつけるなど許されんのだぁああ!」ビューンビューンビューン

部下丙「わ、わかりました!わかりましたから、落ち着いてください!」

槍使い「……」ピタッ

部下丙(……本当に落ち着いた?)

槍使い「……おい、下郎ども……今すぐ、砲撃班に加勢しに向かえ」

部下甲「え?」

部下乙「へ?」

部下丙「な、なぜです?」

槍使い「……砲撃班が、奴らの片割れに襲撃される」

部下甲「ええっ!?奴ら、もう死んだのでは!?」

部下乙「たとえ襲撃が行われるにしても……片割れということは、一人でしょう?」

部下丙「たった一人なら、砲手たちと、さっき伝令に向かった部下丁で充分に始末できるのでは?」

槍使い「無理だ。襲撃者は女だが、砲撃班は撫で斬りにされる」

部下達「「「!?」」」

部下甲「や、槍使いさん!そんなこと起こるわけが……縁起でもない!」

槍使い「……『視えた』んだよ」

部下達「「「……?……」」」

槍使い「とっとと行け。今私は気が立ってるんだ」

槍使い「二度同じことを言うくらいなら、手前らを全員この槍の錆にするぞ!」

部下達「「「今すぐ向かいますっ!」」」ピュー
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/06(金) 20:06:27.86 ID:/VWLkDYp0

槍使い(……面倒だが、もう一人は私が相手せざるをえないな)

槍使い(もうあの宿屋から脱出し、攻撃を仕掛けてきてもいいことだが……)

槍使い(……!)


――――――――

――――

――


 ズドンッ!

槍使い『ぐっ!?』ガクッ

槍使い『う、撃たれ……あ、あそこの木の裏からか……!』ジャキッ

 ……ザッ

用心棒『……お前が〈槍使い〉か』

槍使い『……〈用心棒〉……』スック

用心棒『クックック……無茶するな。傷が広がるぞ……』ジャキッ

槍使い〈――短銃だと!?〉

 ズドンッ!


――

――――

――――――――


槍使い(……『視えた』)

槍使い(浪人とはいえ武士だろうに、短銃とは……)ジャキッ

槍使い「……まあ、外道はお互い様だな」ボソリ

槍使い「そこだ、短銃使い!」ビュンッ!

 ジャララララララララ…

用心棒「何ッ!?くっ!」ゴロゴロッ

 バキャアッ!

槍使い「……避けたか。中々の身のこなしだ」


用心棒(何故だ……完璧に気配を消していたはずなのに、見つかるとは……)

用心棒(――それよりも……あの槍は、一体何だ?)

用心棒(柄と穂先が鎖で繋がっている……なるほど、鎖鎌のようにも使える仕掛けか)

用心棒(夜闇で遠くが狙えず弱体化している短銃が相手なら、引けを取らぬ得物……)

用心棒(いや、発射炎で現在位置を露呈する短銃より強力か――?)


槍使い「……フッフッフッフッフ。思ったより私を楽しませてくれるようだな」

槍使い「だが、それだけだ。どうあがいても私に勝つことなどできんぞ……」

槍使い「――私には全てが『視える』!」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/06(金) 20:07:41.02 ID:/VWLkDYp0
今日はここまで
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/30(月) 22:48:10.25 ID:1nYG07UH0


 ドンッ!

砲手甲「ヒュウ……これで弾は最後だったな?」

砲手乙「ああ。宿屋は用心棒ごと木っ端みじんさ」

砲手甲「いや、何だか知らんがしばらく修正の合図が無いから、後半は外したかもしれん」

<ザッザッザッ

砲手甲「うっ!?敵か!?」ジャキッ

砲手乙「待て、合図に使う提灯を持っているぞ。味方だ」

砲手甲「何?……じゃあ、合図を中断したのはこっちに移動するためだったのか?」

砲手乙「だろうな」


部下甲「大筒はこのあたりだったか?」ザッザッ

部下乙「たぶん……おっ、居たぞ」ザッザッ

部下丙「無事か砲手ども!」ザッザッ

砲手甲「はっ、無事です!」

砲手乙「一体何故こちらにお越しになったんです?」

部下甲「あ、いや……槍使いさんが、お前らが襲撃を受けると言ったものだからな」

部下乙「しかし、このぶんでは外れだな。珍しいことだ、博打でも外したことはないのに」

部下丙「いや、すでに敵は近くまで来ているのかもしれん。急いで撤収だ!」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/30(月) 22:49:09.23 ID:1nYG07UH0


<ガチャガチャ ゴトゴト

<アブラショウニンサンハ、ドコカラオオヅツナンテモッテキタンデショウ?

<サアナ


少年「敵が増えましたよ」ヒソヒソ

相棒「……見ればわかる」ヒソヒソ

相棒(短銃を持っているのが二人と、腕が立ちそうなのが三人……)

相棒(坊主を抱えたままでは持て余す……)

相棒(……しかし、坊主を一人にするのは心許ないような)

少年「……相棒さん、僕に何かできることはありませんか?」ヒソヒソ

相棒「!」

少年「……戦いたいんです。いつまでも守ってもらうなんて嫌だ」ヒソヒソ

少年「家族の……家族の仇を、討ちたいんです!」ヒソヒソ

少年「……それに、僕は用心棒さんの弟子でもあります」ヒソヒソ

相棒「……」

相棒「……」

相棒「……」ゴソゴソ

相棒「ん」スッ

少年「これは……短銃?」パシッ

相棒「浪人どもから奪った洋式短銃……これが早合」ヒソヒソ

少年「ずっと持っていらっしゃったんですか?何故使わずに……」ヒソヒソ

相棒「元々は用心棒が持っていた。団子屋の話をしたら護身用にと渡された」ヒソヒソ

少年(団子屋……?)

相棒「……坊主。お前はこの短銃を持って山から下り、街道を南へ向かえ」ヒソヒソ

相棒「大きな楠にぶつかったら、右の脇道を上れ。そこに隠れ家がある」ヒソヒソ

少年「あ、相棒さん!僕も一緒に……」

相棒「坊主。お前の仕事は、何としても生き延びることだ」

少年「……!?」

相棒「……万に一つもないことだが」

相棒「もし私たちも死んだら、誰が仇を討ってくれる?」

相棒「誰がお前の家族の仇を討つ?」

少年「……」

相棒「……お前は何としても生き延びるんだ、坊主」

相棒「分かったら行け。静かに、な……」

少年「……」

少年「待ってますからね……これでお別れなんて、いやですからね!」ダッ


相棒「……」

相棒「……さて」スッ

短刀「ジャキッ」
短刀「ジャキッ」
短刀「ジャキッ」
短刀「ジャキッ」

相棒「……始めるか」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/30(月) 22:49:57.62 ID:1nYG07UH0


砲手甲「そっち引っ張れ!」

砲手乙「待て、車輪がつかえている……」ゴソゴソ

部下甲「ええい、何を手間取ってるんだ、大筒を牛に繋ぐだけだというに……」

 ヒュッ

部下甲「ッ」ブスリ

部下乙「……?おい、どうした、甲……」トンッ

部下甲「」ドシャッ

部下乙「な……!?せ、背中に短刀が……」

部下丙「どうしたッ!」バタバタ

 ヒュッ

部下丙「ぐおっ!」ブスリ

部下丙「う、腕が……短刀を投げやがったのか!」

部下乙「用心棒の手の者か!?」スラッ

 ヒュッ

部下乙「馬鹿め、そうそう何度も通用……」カキインッ

相棒「……」シュザッ

部下乙「何ッ!?」

相棒「……」スラッ

 ヒュパッ! ドバッ!

部下乙「」ドシャッ

部下丙「お、おのれ……!」スラッ

砲手乙「このアマがァ!」

相棒「……」ザッ

部下丙「喰らえッ!」ビュッ

相棒「……」ヒョイッ

砲手乙「風穴を開けてやるッ!」ジャキッ

相棒「……」グイッ

砲手乙「うおっ!?」ブンッ グッカチッ

部下丙「馬鹿野郎どこを狙って……」

 バアンッ!

部下丙「」ドシャッ

砲手乙「ひっ……」

相棒「ご苦労」チャキッ

 ズバッ! ドヒュッ!

砲手乙「」ドシャッ

相棒(残り一人は……居ない?逃げたか?)

砲手甲「うおおおおッ!」ザザッ

相棒(し、茂みの中に――!?)

砲手甲「死ねぇ――ッ!」ジャキッ


 バアンッ
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/30(月) 22:50:35.10 ID:1nYG07UH0
今日はここまで
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/06/26(日) 13:10:34.11 ID:uaF9AQpT0
>>1です
更新しようと思ったのですが忙しく無理そうです
とりあえず生存報告をば
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/09(土) 22:21:16.78 ID:Vx89296x0

 ザザザッ

 ズドンッ

 シュザザッ パキパキ

 ズドンッ ズドンッ

 ザザッ ジャラランッ バキャッ

 シュザザッ


用心棒「……」ザッ

用心棒(槍使いはどこに隠れた……?)キョロキョロ

用心棒(くそっ、夜のうえに森の中だから隠れられると見つからん……!)

用心棒(森に逃げるあいつに取り合わず、宿屋の跡地に居座るべきだったんだろうが……)

用心棒(砲台の敵と合流されると相棒が危険になるから、奴を自由にするわけにはいかなかったんだ……仕方ないことだ!)


槍使い「喰らえ!」ジャララッ

用心棒「うおっ!?」サッ

用心棒「そこか!鼠野郎!」ズドンッ ズドンッ

槍使い「フン、視えてるぞ……」サッ サッ

槍使い「これならどうだ、鼠野郎!」ジャラランッ

用心棒「くそっ!」サッ チュインッ

 バキャアッ!

用心棒(――くっ、腕にかすったが、何とかかわしたぞ)

槍使い「……」ニヤリ

 メキメキ

用心棒(ハッ!?槍が刺さった木が――!)

 メキメキッ ズドッ


槍使い「そしてこれは、大筒用の火薬を少々失敬して作ったものだ……」ゴソゴソ

槍使い「とっておきな!」シュバッ ポイッ

 バチバチ… 

 ドゴオンッ!
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/09(土) 22:21:56.08 ID:Vx89296x0

 メラメラ… パチパチ…

槍使い「……流石に、死んだか?」

槍使い「――!」

槍使い「ハッ!」バッ

 ドゴオンッ! チュイーンッ

用心棒「……チッ」

槍使い「……フフッ。あの一瞬で……私の後ろに回り込むとは……」

槍使い「剣士が敗れたのも無理はない、といったところか……フフフ……」

用心棒(……再装填……)スッ

槍使い「おっと、再装填なら急がなくていいぞ」

用心棒「!……親切なことだな」ガシャッ

槍使い「フフフ……相模くんだりまで追ってきたんだからな、もう少し楽しませてもらう」


槍使い「ところで、もうわかっているだろう?」ゴソゴソ

用心棒(野郎、銀の櫛を出して……髪を整え始めたぞ……)

槍使い「私に攻撃は通用しない……『視え』てるんだ、全部な……」サッサッ

用心棒「フン、面白い目なんだな。目薬をやろう」ドゴオンッ

槍使い「いらないな」サッ

 バキイーンッ!

用心棒(――!こ、こいつ、櫛で銃弾を弾きやがった!)

用心棒(まるで弾丸の軌道がわかっていたかのような――ハッ!?)

槍使い「フフ、フ、ようやくわかったようだな」

槍使い「そう、私の目は未来が視える面白い目なのさ……」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/09(土) 22:22:37.91 ID:Vx89296x0

槍使い「『無意識のうちに相手の体の小さな動きを見て、しようとしていることを読み取っている』……」

槍使い「外国で医学を学んだ医者はそう予想していたな……フン」

用心棒「……」

槍使い「この力は神が私に分け与えた神通力ゆえ、一介の医者風情にはそのようにしか定義付けできまいよ」

槍使い「神通力というのは人の言葉では説明できないのだ。言葉は神通力の産物なのだから、な……」

槍使い「鏡に鏡を写すことができないのと同義よ」

用心棒(……なかなか頭がイってる鼠野郎だな)

用心棒(しかしこのままでは俺がジリ貧だ……ならば……)

槍使い「おい、何とか言ったらどうなん……」

槍使い「――!」


用心棒「視えたな?避けてみろッ!」ジャキッ

ドゴンッ
 ドゴンッ
  ドゴンッ
   ドゴンッ
    ドゴンッ


槍使い「――ハッ」

槍使い「考えが!」サッ

槍使い「安易だ!」バッ

槍使い「鼠野郎!」シュバッ

槍使い「視えててもかわせないほど攻撃すればいい、なんてな……!」

槍使い「次はこっちの番……」ジャキッ


用心棒「うおおおおお」ダダダダダ


槍使い「な!?アイツ逃げやがった!?」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/09(土) 22:23:56.04 ID:Vx89296x0

槍使い(あれほどの戦闘力を持ちながら……逃げるだと?)

槍使い(どこまでも安易な……いや……なめているのか?私を?)

槍使い(私を……私を……オレを馬鹿にしてるってのかッ!)

槍使い「……ふ」

槍使い「ふざけんなゴミが――ッ!」

槍使い「槍の射程内だ!その無防備な背中にぶち込んでやる!」ジャキッ


用心棒「出てこい!木の陰から!」ガシッ ズルッ

部下丁「わっ!?ば、ばれて……!?」スラッ

用心棒「当たり前だ!オラァ!」バシッ

部下丁「ひいい――っ!」カランッ

用心棒「行け!」ゲシッ


槍使い「チッ……」ヒョイッ

部下丁「うわあっ!」ドタッ

槍使い「何をやっていやがる、役立たずめ!」

部下丁「た、た、た、大変なんです!砲台が!砲台班が全滅です!」

部下丁「私は命からがら逃げて、槍使いさんに合流するためにここまで来たのですが……」

部下丁「戦闘中で割り込めなくて隠れていたらあんなことに……」

槍使い「砲台班が全滅……?増援をよこしたのに……」

槍使い「チッ、奴の相棒も手練ってのか?オレの想定外だってか?」

槍使い「どこまでもオレをコケにしやがって……」

槍使い「――!」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/09(土) 22:24:22.83 ID:Vx89296x0

用心棒「刀を返すぞ!」ブンッ

槍使い「よけろボンクラ!」バッ

部下丁「ひいっ!」ドタッ

 ビューンッ

部下丁「あ、ありがとうございますっ」

槍使い「なに、大事な盾だからな」ガシッ

部下丁「はっ?」

用心棒「こいつはおまけだ!」ドゴオンッ

槍使い「それも視えてる!」グイッ

部下丁「や、槍使いさ――グハッ!」バスッ

部下丁「」ガクッ


用心棒「チッ、便利な目だ……!」ダッ

槍使い「逃がさん……絶対に逃がさんぞ……!」ダッ
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/09(土) 22:26:32.46 ID:Vx89296x0
短いですが今日はここまで
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/10(日) 13:27:33.44 ID:UXH0gM6/o
まってたぞ
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/10(日) 16:36:40.62 ID:KJkx82pM0
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/12(火) 23:01:00.18 ID:zaCv112a0


 シュザザザザ…

用心棒(チッ、道が崖でドン詰まりになってやがる……回り込んで崖をよけるか)ダダダ

用心棒(しかし……さっきのひと悶着で少し引き離せただろう)ダダダ

用心棒(そうだ、この隙に弾倉を交換しなければ……)カシャッ

<ビューンッ

用心棒「っ!?」サッ

 ズバッ

用心棒「ぐうっ!」

用心棒(くそっ、左腕が……奴の『槍』か!)

用心棒(弾倉交換のために少し速度を緩めたところを狙われたか……)

用心棒(しかし何故だ!?奴は俺の後方に居たはずだ、何故左から槍が……!)

用心棒「――!そこかッ!」ドゴオンッ

 チュイーンッ

槍使い「当たらねえな、そんな攻撃は」ザッ

用心棒「……貴様……」

槍使い「『どうやってそこに移動した』と聞きたいんだろう?」

用心棒「!」

槍使い「……フフフフ、ウッフフフ……誰が手前に教えるかよ!」

用心棒「……」ジャキッ

槍使い「おーおー、勇ましいな。だが手前は間抜けだぜ」

槍使い「逃げ続ければ良かったものを、動揺して無駄な攻撃を試みた結果……槍の射程内から逃れられていないッ!」

用心棒(……!し、しまった!)

槍使い「そしてこれからは二度と逃さない!槍を喰らえ!」ブンッ

用心棒「チッ……!」

用心棒(……むっ?槍の穂先の速さが……宿屋の跡地で対峙していたときより、落ちている?)

用心棒「これなら……撃ち落とせる!」ドゴオンッ!

 カキインッ!

 ガシャッ

槍使い「くっ、小癪な……」ジャラジャラ
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/12(火) 23:02:28.47 ID:zaCv112a0

槍使い「――!……これならどうだ!」ビュンッ!

用心棒(近くの木を狙っている?また倒木を引き起こす気か……だが、遅い)

用心棒(――そうか、わかったぞ)

用心棒(奴は、俺がよけたあの崖を飛び降りてきやがったんだ。だから先を行く俺に追いつけた)

用心棒(そのとき足を痛めたせいで、槍を振るとき十分踏み込めず、その結果攻撃が遅くなっているんだ)

 バギャッ

 メキメキメキ…

用心棒(倒木の当たらないところに移動しよう)サッ

用心棒(そして奴に反撃を――)ジャキッ


用心棒「――ハッ!?あいつはどこに行った!?」


槍使い「手前の後ろだッ!喰らえ!」ブンッ

用心棒「ぐはっ!?」ポロッ

用心棒(うっ、短銃が!)バッ

槍使い「取らせん!」ビュンッ

用心棒「ぐふぅっ」ドタッ

用心棒(し、しまった……俺が倒木に気を取られるのを視ていやがったな!)

用心棒(その隙に後ろへ回り込み、槍の柄で攻撃してきたのか!)

槍使い(穂先を回収……)ジャラジャラ

用心棒(――はっ!槍使いの後ろの、木の陰に……!)


相棒「……」コソッ

用心棒(やっと……合流できた!)

用心棒(俺が槍使いから逃げたのは、砲台の敵を排除して戻る相棒といち早く合流するためだったんだ!)

相棒「……」チャキッ

用心棒(槍使いはこれから俺にとどめを刺すため、槍を振りかぶるだろうが……)

用心棒(その瞬間、すなわち隙が生じた瞬間、相棒が後ろから短刀を投げて奴の心の臓を突き通す!)


槍使い「――!……」

槍使い「……さて……これでとどめだッ!」グッ

用心棒(今だ相棒!)

相棒「ッ!」ビュンッ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/12(火) 23:03:49.98 ID:zaCv112a0

 カキインッ!

用心棒「……!?」

相棒「……!?」

槍使い「……」

用心棒(ば……馬鹿な!)

用心棒(槍使いがッ!槍を振りかぶると見せかけて、飛んでくる短刀を叩き落としやがったッ!)


槍使い「フッ……フハハハ……ハーッハッハッハァ!」

槍使い「全部視えてんだよクソボケどもがあああッ!」

用心棒「ぐ……!」

相棒「……!」ゴソリ チャキッ


槍使い「雑魚が一匹増えたところで何も変わらねえよ……転がる死体が一つ増えるだけだ」

槍使い「さて……順番は、用心棒からかな?」チャキッ

相棒「ッ……!」ダッ

槍使い「手前はおとなしくしてろッ!」ポイッ

相棒「!」

 ドガアンッ!

用心棒「あ、相棒――ッ!」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/12(火) 23:05:06.74 ID:zaCv112a0

槍使い「おいおい!向こうを気にしてる暇があるのか用心棒?」チャキッ

用心棒「ぐッ……!」

槍使い「ヒッハッハッハッハ!そう睨むなよ、できるだけ苦しんで死ねるように取り計らってやるから――」

 ピシッ

槍使い「――あ?」

用心棒(……地割れ?)

 ピシッ ピシピシッ ピシッ ピシッ

 ズズズズズズズズズ… グラグラグラグラ

槍使い「おっ?うおおっ?」

槍使い「な、な、な、な、な、何だこれは――っ!?こんなの視えなかったぞッ!?」

用心棒(地震!?……いや、違う!)

用心棒(『土砂崩れ』だ!今いる場所は、崖の上だったんだ!)

用心棒(この前の雪で土が緩んでいたから、爆発の衝撃で崖が崩れ始めたんだ……!)

用心棒(好機ッ!この隙に短銃を手に入れる!)ダッ

槍使い「――!させるか!槍を喰ら――」グッ

 ミシミシミシ グラグラグラ

槍使い「うおっ!?」スポッ

 ガキッ

槍使い(しまった!足元が揺れて狙いが狂って――槍の穂先が木に突き刺さっちまった!)

槍使い「ぬ、抜けない……!」グッグッ

用心棒(もう少し!もう少しで短銃に手が届く――)
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/12(火) 23:06:27.42 ID:zaCv112a0

 ゴゴゴゴゴゴゴ

 ガラガラガラガラガラッ

用心棒「うおっ!」ドタッ

用心棒(や、やばいぞ!地面が傾いて……!)

 ゴゴゴゴゴゴガガガガガガッ

槍使い「お、落ちる――ッ!」ズルッ

用心棒「うおあああ!?」ズルッ

槍使い(――ハッ!槍が!木に突き刺さった槍が手がかりになってくれているッ!)プラーンッ

槍使い(用心棒!滑ってこい、こっちに!槍は使えないが、爆弾で爆殺してやる!)ゴソッ

槍使い(――!)

用心棒(ま、まずい!このまま槍使いのほうに落ちていくと爆弾の餌食だ!)ズルズル

用心棒(何かに捕まらなければ!くそっ、手がかりが無い――)ズルーッ

 ガシッ

用心棒「!?お、お前は――」

相棒「……」ギュッ

用心棒「相棒――ッ!」

槍使い(くそっ!やはり生きていた――さっきの爆弾を紙一重でよけていやがったな!)

槍使い(視えてはいたが、崖からぶら下がっているこの状況では対応できん……!)

 グワン ガラララッ ズズズズズ

相棒「あ」ズルッ

用心棒「おい」ズルッ

槍使い(来たッ!傾斜が酷くなって、奴らこっちに落ちてきやがった!)

槍使い(あと六尺落ちてこい!そうすれば投げた爆弾が届く!)
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/12(火) 23:08:19.30 ID:zaCv112a0

用心棒(踏ん張るッ!ぐぐぐぐぐ)ズザザッ

相棒「……」ズルーッ ゴソゴソ

槍使い(あと四尺!……――!)


用心棒(ダメだ!傾斜がきつすぎる!)ズザザッ

相棒「フンッ!」ズルーッ ビュンッ

槍使い「また短刀を――だが、視えているぞッ!」ピシッ

用心棒(し、真剣白羽取り!)ズルーッ

相棒(……もう打つ手は……!)ズルーッ

槍使い(あと二尺!……――!)


 ヒュウーッ

用心棒「!落ちてきた!短銃がッ!」パシッ

用心棒「喰らいやがれ槍使い――ッ!」ドゴオンッ ドゴオンッ ドゴオンッ

槍使い(視えていた!視えていたが――避けられん!この姿勢では!)

槍使い(俺の――俺の取るべき行動は――最も生き残る可能性の高い方法は――!?)


槍使い「これだ――っ!南無三!」ピョーンッ

用心棒「何ッ!?」

用心棒(崖から飛び降りた!?何て奴だ!)

用心棒(――だが、後から落ちてくる土砂に生き埋めにされてお陀仏は確実……)

用心棒(俺の勝ちだ、槍使い!)


用心棒「俺たちまで落ちてはたまらん!奴の槍に掴まれ!」ズルルーッ パシッ

相棒「はっ」パシッ


 ガラガラガラ……

 ズズンッ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 ……

 ……


用心棒「……ひゅう……」プラーンッ

相棒「……」プラーンッ
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/12(火) 23:10:03.47 ID:zaCv112a0


 付近の山中


闇商人「……終わったようだな」

忍「熾烈な戦いになったようですな」

闇商人「ああ……偶然に味方されて用心棒が勝ったものの、油商人四天王は強者ぞろいのようだ……」

闇商人「残り二人はおそらく槍使いよりも強いのだろう……用心棒は勝てんだろうな」

忍「……では」

闇商人「……」

闇商人「俺は油商人につくことにする」

忍「……はっ」


闇商人「……用心棒と相棒の姿が消えた。土砂崩れの跡へ行くぞ」

忍「槍使いを探すのですか」

闇商人「ああ。四天王の一人である奴を救助したとなれば、俺は油商人から信頼されるに違いない」

闇商人「まあ、槍使いが生きていればの話だが……さあ、行くぞ」

忍「御意」

 ザッ ザッ ザッ ザッ……
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/12(火) 23:10:42.44 ID:zaCv112a0
今日はここまで
地の文は入れたほうがいいでしょうか?
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/13(水) 00:03:44.90 ID:O0EsQoapo
ここまで説明するなら使った方がスッキリすると思うけど
向き不向きもあるし入れたら入れたでどれ位入れるかも難しいからねぇ
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/16(土) 10:22:17.95 ID:XgxsD8UaO
俺は地の文ないままでも楽しんでるぜ
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/17(日) 08:44:38.15 ID:zvADAokLO
土砂崩れの描写は、よく台本形式で書いたなと感心
引き込まれたよ

しかし>>51でやられる悪役のフラグ立ちすぎでワロタ
次鋒とか言ってる時点で負ける気マンマンじゃねーかwww

ま、時代劇だとそれくらいベタな悪役のが良いかー
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/19(火) 00:53:42.75 ID:+ArWUsz1O
面白いのにコメ少ないな

相棒たんカワユス
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/28(木) 01:23:50.23 ID:JSF4qZgp0


 隠れ家


少年「……」ハラハラ

少年「……」ソワソワ

少年「!」スック

少年「……」ストン

少年「……」ハラハラ


<…パカラ パカラ パカラ


少年「!」スック

少年「……!」ソワソワ


 パカラ パカラ パカラ…>


少年「……?……?」オロオロ

少年「……」ストン


少年「……」ソワソワ

少年「……」キョロキョロ

少年「!」スック

少年「……」スタスタ

少年「……」ゴトゴト

少年「……」ガサガサ

少年「……」ギュッギュッ


<…パカラ パカラ パカラ パカラ


少年「!」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/28(木) 01:24:39.72 ID:JSF4qZgp0


用心棒「居るか坊主ゥ!」ガラッ

相棒「生きてるか坊主」


少年「ああっ!用心棒さん!相棒さん!よくご無事で……!」

用心棒「は、は、は。俺にかかれば槍使いでさえも……」

用心棒「……何で蓑なんか着てるんだ?」

少年「あ、これは……手持ち無沙汰で、何となく……」

用心棒「……お、おう」


 ガパッ

用心棒「よーし、闇商人はちゃんと食料も用意しておいてくれたな」

少年「何で床下に食料保管庫が?」

用心棒「さあな。あいつの用意する家ってのは大概床下に仕掛けがあるんだよな……たぶん闇商人の趣味じゃないか」

少年「ふうん……変わった趣味ですねぇ」

用心棒(……これでとりあえず、食料の不安はないが)

用心棒(――弾薬が残り少ないな……剣士と槍使いに散々使わされてしまったからな……)

用心棒(隠れ家を出て調達するわけにもいかん……どうしたものか……)


少年(……用心棒さんは何だか難しそうな顔をして考え込んでしまったな)

少年(そういえば、相棒さんは……)クルッ

相棒「……」キョロキョロ

少年「?どうされました?」

相棒「……風呂……」

少年「お風呂ですか?」

少年(改めて見れば相棒さんは、至近距離で爆裂弾が爆発したかのようにススだらけだった)

少年「向こうにありましたよ。この廊下の突き当たりに」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/28(木) 01:25:30.19 ID:JSF4qZgp0

相棒「……用心棒」スッ

用心棒「……ん?」

用心棒「……ああ。おうよ……勝ったほうが薪割り、負けたほうが水汲みだ」スッ

二人「じゃーんけーん……」

少年「あ!お風呂の準備なら出来てますよ」

用心棒「ほう?よく気が回るやつだな!」

少年「……手持ち無沙汰で」

用心棒「……お、おう」

相棒「……坊主」

少年「はい!沸かすのもやります、少しだけお待ちを!」ダッ

 ガラッ ピシャリ


相棒「……」

相棒「……手ぬぐいは……」キョロキョロ

相棒「!」ヒョイッ

用心棒「ん?どうした?……おい、それは」

相棒「坊主に持たせた……洋式短銃」

用心棒「……俺たちが帰ってきたとはいえ、暴発すりゃ人死が出る凶器を置きっぱなしにして行くとは」

用心棒「あの坊主……気が回るんだか、そそっかしいんだか……」

用心棒「なんにせよ俺たちみたいな仕事は向いてないな」

相棒「……全く」

用心棒「……短銃なんて持たせておいて大丈夫なのか?」

相棒「……」

相棒「……護身用」

用心棒「まあ、そうだが……」


用心棒(……おっと。馬と荷車を外に置きっ放しだった)

用心棒(油商人の追っ手に見つからないとも限らん。裏手の厩に移動しておかなければ……)

用心棒「馬を移動してくる」

相棒「ん」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/28(木) 01:25:59.39 ID:JSF4qZgp0

 ガラッ ピシャリ

用心棒(しかし、寒いな……このあたりはまだ雪が融けていないのか)

用心棒(考えてみれば、あの馬も悪運が強いな。あの砲撃の中でも無傷だった)スボッ スボッ

用心棒(おかげで箪笥を捨てずに済んだ……)スボッ スボッ


用心棒(……?)スボッ…

用心棒(何だ……馬の近くに……人影が……)

用心棒「……!?」


覆面の男「……」

覆面の男「……おや、用心棒」


用心棒「……貴方は……何故、ここに」


覆面の男「……全く、無用心が過ぎるな」

覆面の男「これこれこういうものが借りた、ということが知れ渡っている馬を繋いでおけば」

覆面の男「これこれこういうものはその近くにいる、ということは猿でもわかる……」

覆面の男「……さて。勉強代として茶の一杯でもいただけるかな」

覆面の男「手土産は持ってきたのでね……」


用心棒(そういえば……覆面の男は、大きな袋を背負っている。あれが手土産なのだろう)

用心棒(……それよりも)


用心棒(――何故この男は、俺がこの街道沿いに居るとわかったんだ……?)

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/28(木) 01:27:53.83 ID:JSF4qZgp0


 同時刻 江戸

 油商人の館


油商人「や、や、や、槍使いまでも敗れ去るとは……虎の子の大筒も持たせたにも関わらず!」

油商人「用心棒とは一体どれほどの実力を持っているというのだ……!」

油商人「恐ろ……いや!いやあ!恐ろしくはない!まずいんだ!まずいだけだ!」

油商人「そうだ、まずい、まずい、まずいんだ!私は死にたくない……もとい……死んではならない人間だ、この国にとって!」

油商人「武士!館の防備は十分なのか?固めろガチガチに!死んでからではどうにもならん!」

武士「落ち着いてくだされ油商人殿……」

武士(チッ……面倒くせえなあ……)ボリボリ

武士(こういうとき剣士がいると押し付けやすかったんだが……今この場にいるのは……)チラッ

大男「ああー……うう」

武士(……こいつではなあ……)


武士「聞くところによると、用心棒が槍使いに勝利したのは単に偶然が味方したためのようです。何ら恐れることは……」

油商人「何だ!?何を言っているお前は!?」

油商人「お前は江戸から動いていないではないか、戦いの顛末などわかるものか!」

油商人「私にとりいりたいのか騙したいのか知らんが出鱈目を言うんじゃあないッ!」ブンッ

武士(!ボケが、香炉を……)ゴソッ

 ドキューンッ

 バキーンッ ゴトッ ゴロロ…

油商人「ひいっ!?き、きさま、短銃を……まさか……きさま……」ブルブル

武士「……落ち着いてくだされ油商人殿」

武士「父上が朱印船貿易で手に入れたとかいう、『まにら』の煙草でもお吸いになったらいかがです」

油商人「『まにら』の煙草……?」ブルブル
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/28(木) 01:28:33.07 ID:JSF4qZgp0

油商人「……」ブルブル ゴソゴソ

油商人「……」ブルブル スパーッ

油商人「……」スパーッ

油商人「……」スパーッ

油商人「……」コトッ

油商人「……ふ」

油商人「ふふふふふ……ははははは」

油商人「すまんな武士よ。私ともあろうものが何を取り乱していたのか……」

武士(……あの煙草、何が入ってるんだろうか)


油商人「にして……武士よ……何故貴様が用心棒と槍使いの戦いについて知っているのか……」

武士「全てを見ていた『協力者』から文が届いたからです油商人殿」

油商人「『協力者』……とな?」

武士「はい。文にて、用心棒の抹殺に関して油商人殿に協力したいと申し出た男にございます……『闇商人』と名乗っておりました」

武士「現在用心棒が身を隠している隠れ家を用意した男らしく」

油商人「ほう……」

武士「現在相模からこの屋敷へ向かっているそうです」

武士「到着次第、隠れ家の位置と用心棒に関する情報、『とっておきの襲撃手段』を油商人様に全てお伝えするほか、襲撃にも自分の部下を加勢させるとのことです」

油商人「……ふむ。隠れ家の位置に……『とっておきの襲撃手段』……」

油商人「それにしても、隠れ家を用意しておきながらこちらに協力するとはなかなか良い根性をしているな」

武士(そういう話を世間話でもするような顔でできるあんたも大概だけどな……)

油商人「まあ……協力の申し出を受けることに損はあるまい。返事は?」

武士「そう仰ると思い、既に返事を出してございます」

油商人「良い良い……ふっふっふ……その協力者から情報を聞き出し次第、隠れ家の襲撃を決行するとしよう」

油商人「襲撃の音頭は大男、お前にとってもらう……存分に刀を磨いておくのだぞ」

大男「う……」

大男「……」


大男「御意」

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/28(木) 01:29:02.73 ID:JSF4qZgp0
今日はここまで
地の文は無しでいきます
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/28(木) 08:22:32.63 ID:tXQ+bLl7O
待ってた
乙りんちょ
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/29(金) 18:14:46.78 ID:YTf0iuRao
キェァァァァシャベッタァァァァァ
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/28(日) 13:58:29.17 ID:SvyB9sBB0


 ホーッホーッ ホッホーッ

 ホーッホーッ ホッホーッ……


少年「……」

少年「……」

少年「……」パチリ


少年「……」ムクリ

少年「……」

少年「……」キョロキョロ


用心棒「グゴゴゴゴ……グゴゴゴゴ……」

相棒「……ワガダンゴケンハムテキ……ムニャムニャ」


少年(……癖で、早く起きてしまった)

少年(毎朝、父上に剣を教えてもらっていたから……)

少年「……」

少年(いかん、いかん、こんな弱気では!)フルフル

少年(……顔を洗おう)スック

少年(水は土間の瓶にあるけど……桶と手ぬぐいは……あ、あった)パシッ

少年(うう……寒い……)スタスタ


 ガサゴソ スタスタ

 カタッ…ザパッ バシャバシャ バシャバシャ ビシャッ…カタン


少年「つ、冷たい……目が覚めたぞ……!」ブルリ

少年(しかし……あまりにも寒すぎるような。昨日は囲炉裏の火をずっと燃やしていたのに……)ゴシゴシ

少年(……隠れ家のどこかに大穴でも空いてるんじゃあないか?)キョロキョロ

少年(……ないか)


少年(ひょっとして、昨晩僕が寝た後に雪が降ったんだろうか?)

少年(少し外の様子を見てみよう……)
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/28(日) 13:59:02.50 ID:SvyB9sBB0


 ホーッホーッ ホッホーッ

 ホーッホーッ ホッホーッ…

 ガラッ  バササササ…>


少年(寒い……けれど、新しく積もった様子はないな……)

少年(なぜ隠れ家の中はあんなに寒かったんだろうか……?)

少年(……気のせいかな)


少年「……」

少年「……」クルッ


<グゴゴゴゴ… グゴゴゴゴ…


少年「……」

少年「……」キョロキョロ…

少年(……おや)

少年(雪の重さで折れたのか、太い木の枝が落ちている……ちょうど、打刀ほどの長さだ)


用心棒『たかが棒、されど棒……』


少年「……」

少年「……」


 スボッ スボッ スボッ ヒョイッ


少年「……」グッ


少年「フンッ!」ブンッ


少年「フンッ!」ブンッ


少年「フンッ!」ブンッ



97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/28(日) 13:59:46.38 ID:SvyB9sBB0
今日はここまで
たった2レスですが生存報告も兼ねて
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 17:30:55.36 ID:3HEetugtO
オツリヌス
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/25(日) 14:03:17.87 ID:LS1aj/Lk0
>>1です。ちょっと投下ができそうにないので、生存報告だけさせていただきます。
完結させることが目標なのですが……ままならぬものです。
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/09(日) 16:11:02.95 ID:L2WaXWO80


少年「はあ……はあ……」

少年(少し休憩しよう……どこか座るところは……)キョロキョロ

少年(おや、戸口の近くに岩が雪から突き出しているぞ……雪の下には庭があるんだろうか)

少年(何にせよ丁度いい、あそこに腰掛けよう)


少年「……ふう」

少年「……」

少年(雪の上には、ついさっきの僕のもののほかに幾筋かの足跡が伸びている)

少年(そのうちのほとんどは僕と用心棒さん、相棒さんのものだが……二筋だけは違う)

少年(それは……あの得体の知れない覆面の男が往復したときのものだ……)

101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/09(日) 16:11:38.38 ID:L2WaXWO80


 昨晩


 スボッ スボッ スボッ…
  スボッ スボッ スボッ…

覆面の男『ほう……なかなか立派な隠れ家をお持ちだな……』

用心棒『しばしここでお待ちいただきたい』

覆面の男『……』

用心棒『……?……』

 スボッ スボッ…


 ガラッ サッ ピシャリ

用心棒『相棒』ボソッ

相棒『!』ガシッ

少年『え?何がモガモガ』

相棒『来い』ヒソヒソ

 ズルズル…

 ピシャリ
 ガラッ!

覆面の男『失礼する』ダッ!

用心棒『!?』

相棒『!』

覆面の男『……』キョロキョロ

覆面の男『……』

覆面の男『中の造りも……ご立派だな』

相棒(坊主は……見られなかっただろうな……)
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/09(日) 16:13:28.99 ID:L2WaXWO80

用心棒『……嫌ですな、〈なにがし〉殿。お待ちいただきたい、と申し上げたはずですが……』

覆面の男『ふむ。私は待つとは一言も申していないが……や、申し訳ない』

覆面の男『裏の世界を生きている用心棒殿の暮らしがどのようなものか伺いたく……気持ちがはやってな』


用心棒(適当なこと言いやがって……クソッ)

用心棒(不気味なヤツだ。こういう何を考えているのかわからない奴が一番手に負えない)

用心棒(こいつに坊主の存在を察知されるのは危険だぜ……)


覆面の男『まあそう怖い顔をしないでいただきたいな……この手土産を差し上げよう。機嫌を取っていると受け取ってもらって構わない』スッ

用心棒『……』パシッ

用心棒『開けても?』

覆面の男『どうぞ』

用心棒『……』ゴソゴソ

用心棒『……!これは!』

覆面の男『コ式短銃の弾と玉薬……それに脇差やら匕首やらもかき集めて詰めてある』


覆面の男『……だが……』

覆面の男『……不必要だったかもしれないな?』
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/09(日) 16:14:27.06 ID:L2WaXWO80

用心棒(……実のところ、この手土産は有難い……が……)

用心棒(……こいつは何を言っているんだ?)

用心棒(何か勘違いしているのか……それとも……)

用心棒(……俺でも見抜けていないことを見抜いているのか)

用心棒(とりあえず、無邪気に喜んでおいて損はないか……)


用心棒『いや、必要ですよ。すごく必要でした。全く有難い差し入れですな。有り難く頂きましょう』

用心棒『……ただし油商人暗殺を引き受けるかは別問題ですよ』

覆面の男『……ンフ。もちろんだ。フッフフフ……』

覆面の男『では私は失礼する。私が居座っていて都合の良いことはないしな……』

用心棒『……』

 ドスドス ガサゴソ スタスタ ガラッ

覆面の男『ではまた』

用心棒『……今度はこちらから伺いますよ』

覆面の男『!……左様か。フフフフフ……』

覆面の男『楽しみにしている』

 ピシャリ

<スボッ スボッ スボッ…


用心棒『……とは……言ったが』

用心棒『奴は一体……』

相棒『……用心棒』

用心棒『何だ?』

相棒『あいつ、どこかで……会ったことがない……?』

用心棒『……いや……俺は知らないと思うが。まさかとは思うが、お前の剣道場時代の先輩とかじゃあないのか?』

相棒『……気のせいかも……しれないけれど』

用心棒『……チッ……とことん得体の知れない奴だぜ……』
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/09(日) 16:15:02.88 ID:L2WaXWO80


 チュンチュン ピチチチチッ

 バタタタタタ…


少年「ふわぁあ……」

少年「……」


少年(……押入れの中から聞いたその男の声はくぐもっていて聞き取りづらかった)

少年(後から聞いた話では、その男は頭巾のような覆面で顔を隠していたのだという……)

少年(……この騒動には、油商人と僕たちのほかに、あの覆面の男の思惑も絡んでいるのだろうか……)


 ガラッ

相棒「坊主」

少年「わっ!?起きておられたんですか?」

相棒「ん……飯だ」


 スタスタ ピシャリ

少年(いつの間にか三人分の朝餉の用意が出来ていて……すっかり身支度を済ませた用心棒さんと相棒さんが座った)

用心棒「朝が早いな坊主」

少年「あ、はい、体に染みついているもので……」

用心棒「実に健康的だ、実に……さあ、頂くとするか」


 カチャカチャ パクパク ズルズル

少年(おいしい……)モグモグ

用心棒「……それと、坊主」

少年「ゴクン……何でしょう?」

用心棒「お前の剣はそこそこ形になっちゃいるが、いかんせん『剣道』だな。実戦じゃあ刀は振り抜かなきゃ斬れん」

少年「み、見ていたんですか……?」

用心棒「ああ……この後、もう一本棒を拾ってこい。どうせやることもなし、お前に本物の剣ってのを教えてやる」

少年「……!はい!お願いします!」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/09(日) 16:15:38.51 ID:L2WaXWO80


 江戸 油商人の館


 ザワザワ ガヤガヤ


武士「火薬の積み込みを急げ!これで用心棒どもを焼き殺してやるんだからな!」

浪人甲「はっ!」

浪人乙「おーい!車をもっと持って来い!全然足りんぞ!」

浪人丙「すぐ持ってくる!おい、誰か馬を厩から出してきてくれ!」タタタ

大男「うう……ぶ、武士……」

武士「ああわかってるさ大男。俺が仕切るのはここまでだ……用心棒を仕留めるのはお前に譲るさ」

武士(奴は俺の相手になる人物かもしれんが……どっちにしろこの脳足りんに負けるようでは仕方がないしな)

武士「……むっ?あいつは……」


油商人「貴様が闇商人か……」

闇商人「はっ。隠れ家の情報と援軍、それにもう一つ情報を届けに参りました」

闇商人「こっちが腹心の忍、こっちの二人も私の部下にございます」

忍「よろしくお願い申し上げます」

闇部下甲「我々二人は鉄砲を帯びたままであることをお許しください」

闇部下乙「用心棒が刺客を送り込んでくるやも知れませんので……」

油商人「……フフ、構わんよ」

武士(あの二人……そこそこの手練れだな)

闇商人「早速ですが……これが隠れ家の情報にございます」スッ

油商人「ふむ……思ったより街道に近い位置にあるのだな……」パラ

闇商人「そして……忍を油商人様にお預けします。道案内もさせますので、迷うことはないでしょう」

忍「……」ペコリ

油商人「そうか……して、『とっておきの襲撃手段』とは?」

闇商人「おそらく一人も傷つくことなく用心棒を仕留められる手段にございます……」

闇商人「しかし、放置しておけば用心棒の起死回生の一手ともなりえます。差し向けた者たちが全滅することもあり得るかと」

油商人「ほう、物騒だな。どんな手段なんだね?」

闇商人「それについては忍に伝えておりますので、現地で忍にお聞きになってください。それまではお楽しみ、ということで……」

油商人「……フフッ、ハハハハハ。そうか……よろしい」

武士(……闇商人とかいう奴、切り捨てられないように二重に手を打ってやがる。若いがなかなかキレる奴だぜ……)
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/09(日) 16:16:27.93 ID:L2WaXWO80

闇商人「あと、もう一つ情報を持って参りました。江戸に居る、用心棒の協力者です」スッ

油商人「!何だと……?」パシッ パラッ

油商人「……『鍛冶屋』?聞いたことがあるぞ、お天道様の下を歩けない者の刀を打っているのはこいつだとか」

闇商人「そいつは用心棒と長い付き合いのようで……その上、最近何か怪しい動きをしております」

闇商人「もしかすると……奴の逆襲のために何か武器を造っているやも」

油商人「……よく知らせてくれた。こちらで手を打とう」ゴソッ


武士「油商人様。用心棒討伐隊、準備完了致しました」

油商人「む、そうか……忍とやら、隊に加われ」

忍「はっ」ササッ

油商人「夜には向こうに着けるだろう。今度という今度は用心棒も最期だ……出発せよ!」


 ザワザワ バタバタ ガラガラ ザワザワ……


闇商人(……ヘッ。用心棒……お前は俺が今まで出会った中で最も馬鹿だぜ)

闇商人「では我々はこれで失礼します」

油商人「ああ。良い知らせを待っているがよい」


 スタスタ… スタスタ… スタスタ…


武士「……油商人殿。あやつ、どうするおつもりで?」

油商人「つい最近まで用心棒とズブズブだった奴を放置しておくのは危険だな」

油商人「まずお前はこれから鍛冶屋を始末しにいけ。用心棒討伐の知らせが届き次第、あいつも処分しろ」

油商人「まさかとは思うが、あの二人の護衛が邪魔だなどと言うまいな?」

武士「全く問題ございません……では早速鍛冶屋を始末して参ります」

油商人「ああ、適当に金目のものも盗ってこい。奉行所が騒ぐと耳障りだ、強盗の仕業に見せかけておけ」

武士「御意」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/09(日) 16:17:40.81 ID:L2WaXWO80
今日はここまで
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/11(火) 21:51:21.57 ID:2r/Y/BDsO
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/17(月) 13:05:02.86 ID:nMRwCfTuO
おっ、やってるね
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 17:00:14.49 ID:13WzSuNF0


 …スタ スタ スタ スタ

覆面(おや……もう夕方か)

覆面(朝、用心棒の隠れ家から出た後……近くの町に向かい、昼飯をとり、夕食の握り飯を調達して……)

覆面(すぐに隠れ家のほうへ引き返して、近くの山をここまで登る……思ったより時間がかかってしまったな)

覆面(このあたりに腰を据えよう。ちょうど座りやすそうな岩もあるな)スタスタ ドッカリ


覆面(思った通り、この山からは用心棒の隠れ家がよく見える)

覆面(ではここで……これからやってくるであろう油商人の兵と用心棒の戦いを見物するかな)

 グッ パサッ

?「ふぅ……」

?(この覆面は息苦しくてかなわんが……誰かに顔を見られると私の計画が破綻するかもしれん。仕方がないな)

?(……鍛冶屋のやつはちゃんと用心棒の武器を作っているかな)

?(用心棒のやつはとぼけていたが、宿屋で密会していたのはわかっているのさ……そのときに武器の依頼をしたのは想像がつく)

?(すぐには届きそうになかったから私が差し入れをしておいてやったが、今回の戦いでまた武器を切らして鍛冶屋のもとへ向かうだろうな)

?(そこで先回りした私が事前に鍛冶屋を殺しておくと、用心棒は『油商人に突然恨まれ、刺客を送り込まれるようになった末に長い付き合いの仲間を殺された』と思い込み……)

?(鍛冶屋の作った武器を持って油商人の館へ殴り込むというわけだ)

?(はあ、やれやれ。用心棒が何もかも金で動く男だったらこんな面倒くさいことしなくて済むんだがなあ)

?(誰か鍛冶屋を殺しておいてくれると助かるんだが……)


?(おっと、そういえば……鍛冶屋を殺したあと、作った武器の中に『強すぎるもの』がないかどうか点検しておかなければ……)

?(用心棒が強くなりすぎないようにな……)
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 17:00:50.75 ID:13WzSuNF0


 夜

<グゴゴゴゴ… グゴゴゴゴ…
<スー… スー…

少年(風呂で修行の汗を流してきたら……お二人はもう眠ってらっしゃる)

少年(休むときは思い切り休むというのも生き残る秘訣なんだろうか……)

用心棒「グゴゴゴゴ… グゴゴゴゴ…」

少年(……別にそういうわけでもないんだろうか)


少年(でも、お二人は僕の分の布団も敷いておいてくださっている……なんとありがたいことだろうか)ゴソゴソ

少年(……)


 …  …


少年(……ん?)

少年(……)


 …ウ …ウウ


少年(布団に……横になったら)

少年(……何か聞こえるような……)


 …ヒュウウ ヒュウウウウウウウ


少年(!?)

少年(な、何だこの音は?風の音みたいだ……)

少年(床下から……聞こえてくる……?)
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 17:02:07.97 ID:13WzSuNF0


 …


少年(……止まった)

相棒「……」スック

少年「!」

相棒「……」シャキンッ

 ドガッ! バキャッ! バキッ!

少年(あ、相棒さんが急に起き上がって、床をめったざしに……)

相棒「……」

相棒「気のせいか」モゾモゾ

相棒「……スー……スー……」

少年(……じゅ、熟睡していたのにあの微かな音を聞きつけたのか……すごい方だ)

少年(……でも床が穴だらけだ……)


少年(しかし、妙だな……ついさっきまで確かにしていた音が、今では少しもしないぞ……)

少年(……風、か……)

少年(……)

少年(……)

少年(……!)

少年(妙に寒かった室内……闇商人の床下からくり趣味……風の音……ま、まさか……)


少年(この隠れ家の床下には、外へ通じる抜け道が……!?)


 …


少年(!!)

少年(きょ、鏡台の鏡ごしに見える……僕の背後で……)

少年(床板が『ずれて』……ぽっかりと穴が空いた!)

少年(……その中から……黒い……人くらいの大きさの……何かが……)


 …


忍「……」


少年(あいつは……!?)

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 17:02:43.46 ID:13WzSuNF0
短いですが今日はここまで。
のろのろとひっそりとやっていきます
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/25(火) 19:16:51.37 ID:+ta5FXWxo
 _∧_∧ _
/ (・ω・ )/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

  ∧_∧
  (・ω・ )
 _(====) _
/ ( ⌒)) /
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ∧_∧
  (・ω・ )
  (====)
  ( ⌒))
  [U]
 _/  /ヽ_
/|農| |/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ∧_∧
  (・ω・ )
  (====)
  ( ⌒))
  [J]
  /  /ヽ
 |農| |
 |協| |
 |牛| |_
/|乳| |/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:19:59.19 ID:pW7Xt/n00


少年(敵……明らかに敵だ……!)

少年(それに、動くとき布擦れの音一つ立てない……明らかに手練れ……!)


忍「……」… …


少年(用心棒さんたちのほうへ近づいていく……!)

少年(用心棒さんたちは……!?)


用心棒「グゴゴゴッゴ……ゴグッ」

相棒「スー…スー…」


少年(駄目だ……すっかり眠り込んでいる!)

少年(どうしよう、どうしよう、どうしよう、このままじゃ何もかも……)

少年(でも下手に動いて気づかれれば、すぐさまお二人を殺して、返す刀で僕も殺され、すべてがパーに……)


少年(ーーハッ!座卓の上にーー脇差しが置きっぱなしになっている!)

少年(あれを取って、不意打ちを仕掛ければ……どうにかなるかもしれない!)


忍「……」…


少年(ば、抜刀した!もう一刻の猶予もない!)

少年(やるしかない、あの脇差しでーー)

少年(ーー本当にそれでいいのか?)

少年(本当に、そんな方法しかないのか?)

少年(用心棒さんは木の棒で敵を倒していたぞ……探せばなんだって武器になるはずだ)

少年(短刀で斬りかかるなんて無謀なこと以外にも、選択肢はあるはずだ!)
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:20:43.21 ID:pW7Xt/n00


用心棒「グゴゴゴゴ…グゴゴゴゴ…」

相棒「スー…スー…」

忍(フフフ……起きる素振りもみせぬ。他愛もない……)

忍(恨みはないが、こちらも生活がかかっているのでな……せめて一撃で……)グッ


 バ ッ !

忍「!」ビュンッ!

 バサッ

忍「クッ!?」

忍(これは!?布団かッ!)バサッ

少年「……」

忍「き、貴様は……!?」


 ザシュッ!

忍「がふっ!?」

相棒「……寝かせろ。呆けが」

忍(し、しまった……!布団を振り払うとき、音を……)

忍「うおおおお!」ビュビュンッ!

相棒「……」サッ

用心棒「このッ!」ジャキッ

忍「!」


 ドゴオンッ!


忍「」ドシャッ

用心棒「……入り込んできやがったのか」

相棒「……危なかった」

用心棒「……坊主、お前が……」

少年「……」


少年(……嬉しく……ない……)

少年(……こんな……)


用心棒「……」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:21:39.34 ID:pW7Xt/n00


用心棒「この穴は……抜け道か。そしてこの刺客は……」

用心棒「……おい!よく見たらこいつは闇商人の手の者だぜ」

相棒「……闇商人」

用心棒「裏切ったんだろうな……だからこの抜け道の存在も、俺たちに黙っていた……」

相棒「……」

相棒「殺す」


用心棒(……しかし、この隠れ家は既に取り囲まれているとみるべきだろうな)

用心棒(抜け道を通じて送り込んだ刺客が帰ってこないとなれば、力ずくでねじ伏せるべく包囲の輪を縮める……)

用心棒(……あるいは……)


 ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ!

用心棒「!」

相棒「!」

少年「!この音は……?」

用心棒「火薬だ!隠れ家を取り囲むように爆ぜた!」

用心棒「畜生、奴ら火薬と油でこのあたり一帯ごと俺たちを焼き尽くすつもりだ!」

少年「そんな無茶苦茶な!」

用心棒「相手は宿屋に大筒ぶち込むような奴らだぞ……!」

少年「じゃあ抜け道から……!」

相棒「待ち伏せが怖い……」

少年「で、では……」


用心棒(クソッ……だが、こんなところでくたばる俺様じゃあないはずだぞ!)

用心棒(どうする……考えろ!ここにあるものだけでなんとかするんだ!)

用心棒(このまま坊主まで巻き添えにして死んでたまるか……!)
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:22:23.22 ID:pW7Xt/n00


 隠れ家の外


 ゴオオオオオオオオオアアアアアアアアア
メラメラ… パチパチ…


浪人甲「お、おい……こんなに燃やして大丈夫なのか?」

浪人乙「相手は剣士さんと槍使いさんを倒すような奴らだろ。これくらいで十分だ」

浪人丙「ハハハハ、しかし炎に囲まれちまえばどんな剣豪も形無しだぜ」


大男「……」


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
パチパチ… バチッ パチパチ…


大男「……」

大男「……」ピクッ

大男「……」キョロキョロ
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:23:02.48 ID:pW7Xt/n00


 山中


?(炎の光と陰に彩られた山々もまた、乙なもんだな……)

?(……おっ?大男のやつ、やけに辺りを見回していやがるな)

?(俺に気づいたのか?野生の勘かな……とんでもないやつだ)

?(だが、用心棒も……こんなことでくたばるような奴じゃあないぜ……)

120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:23:44.63 ID:pW7Xt/n00


ドゴオンッ!


浪人甲「ぎゃう!」ビシッ

浪人甲「」ドサッ


大男「……!」

浪人乙「おおっ!?」シャキンッ

浪人丙「な!?まさか……そんな、まさか!」ジャキッ


用心棒「そのまさかさ……!喰らえッ!」ドゴオンッ!


浪人丙「うあっ!俺の種子島が!」バギャンッ


相棒「……」シュザッ

浪人乙「おのれッ!」ビュンッ

相棒「……」カキインッ

相棒「刻む」ヒラッ


 ザシュッ! ズバッ! ドウッ!

浪人乙「」ドシャッ

相棒「……」カチンッ
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:24:56.01 ID:pW7Xt/n00

用心棒(まったく、天才的な思いつきだったぜ……)ザッザッ

用心棒(『風呂の残り湯でずぶ濡れにした布団をかぶり、炎の包囲網を突破』!)ザッザッ

用心棒(坊主は近くに隠してきたし……あとは心おきなく、こいつらを片付けるだけだな!)ザッザッ

浪人丙「あ、あ、あ……!」ガタガタ

用心棒「よくも焼き殺そうとしたな……」

用心棒「もう一発くれてやるぞ……怯えろ……!」

浪人丙「ひ、ひいいーーッ!」ダダダッ


 ヒュンッ


浪人丙「」ズシャッ

用心棒「!?」

相棒「!?」


大男「……」ノシッ ノシッ


用心棒(今のは……あいつがやったのか?)

用心棒(しかし、あいつと浪人の間には距離があった……刀なんて届きそうにない距離が……)

用心棒(それなのに、浪人の骸にはーー『切り傷』しかないッ!)

用心棒(……こいつ、四天王か……!)


大男「……」


大男「おまえらを殺す」

122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:26:04.95 ID:pW7Xt/n00
今日はここまで
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 22:41:40.17 ID:n0u6XnuUo
おつおつ
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/04(金) 01:34:09.37 ID:psRWwtN80
こんなに素晴らしいスレを今まで見逃していたとは
乙、頑張って続けてくれ
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/05(土) 15:14:41.38 ID:7ixi6Rbd0


用心棒「……チィッ!」ドゴオンッ!ドゴオンッ!

大男「!」シュバッ

用心棒(早い……!)

大男「うおあああッ!!」ビュンッ

用心棒「ッ!」サッ

 ドカンッ!

用心棒(奴の剣で地面が割れた……!?凄まじい威力ッ!)ドゴオンッ!

大男「しいっ!」サッ

大男「あうっ!ええーーっ!」ビュウンッ!ブオンッ!

用心棒(!まずっ……)


相棒「ふっ……!」シュザッ

 カキインッ!キインッ!

大男「ああ……?おしぇっ!」ゴオッ!ブンッ!

相棒「……我が草薙流は柔の極……」キュインッ!カキインッ!

用心棒「……ひゅう。さっすが」


相棒「味わえ」ビュンッ

大男「ううん!」ガギインッ!

相棒「……」ヒュオッ

大男「……あ?」

用心棒(うまい!敵の払いの力を利用して、一瞬で後ろに回り込んだ!)


相棒「はっ!」ビシュッ!
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/05(土) 15:15:33.51 ID:7ixi6Rbd0


大男「む」ガギイン


相棒「ーー!」

用心棒(完全に入ったのに、弾かれた!?)

大男「ほっしゃーーッ!」ブンッ!

用心棒「おっと!」ドゴオンッ!

大男「んんんー……」ガキイン

相棒「……」サッ


大男「……んんん……」ユラユラ

用心棒(銃弾までも……これは……)

相棒「鎖帷子……」

用心棒「ああ。それも特別頑丈な」


用心棒(常人ならそんなものを着ていたとしても、銃弾を受ければ吹っ飛ぶんだが……)

用心棒(あいつの体格なら、踏ん張れば済むってわけだ)

用心棒(そのうえ手足も、金属の籠手と脛当てでがっちり防御していやがる)
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/05(土) 15:17:03.15 ID:7ixi6Rbd0


大男「めええーーんッ!」ビュン!

相棒「……」カキインッ

用心棒(だが、頭はむき出しだ!)チャキッ

用心棒「受けてみろ!」ドゴオンッ!

大男「おおう!」シュザッ! ガキインッ!

相棒「逃さん……」シュビッ!

大男「いやあーー」スパッ ブオンッ!

相棒(!顔を切られたのに……!)ゴロッ

大男「みゃーー……」チャキッ

相棒「……」


用心棒「おっと。そんなに近くていいのか?」スッ

大男「!?」

用心棒(相棒の体の陰からの奇襲……!)

用心棒「喰らいな!」チャキッ

大男「!ーー」


大男「『飛閃』」ブンッ!

 シュバアーーッ

用心棒「うおおっ!?」サッ

用心棒(何だこれはーー風の刃!?駄目だ、よけきれん!)

用心棒「ぐふうっ!」ズバッ

相棒「……!」ビュンッ!ブンッ!

大男「……」ガキン ガギン

大男「『飛閃』!」シュバアーッ

相棒「!」ダッ ゴロゴロッ


相棒「……怪我……」

用心棒「……だ、大丈夫だ、この程度……問題ない」

用心棒(再装填……)ゴソゴソ

用心棒(……奴は、刀で空を切り裂きーー風の刃を作り出しているのか……?)

用心棒(これが……さっきの浪人を斬った技か!)
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/05(土) 15:17:50.41 ID:7ixi6Rbd0

大男「はひゃひゃひゃひゃーーっ!」ダダダ

用心棒「チッ、化け物め!」ドゴオンッ!

大男「お?」ガキイン

相棒「……!」シュザッ ビュンッ!

大男「きえーーっ!」ブウーーンッ

相棒「!」サッ

相棒「短剣ッ……!」ヒュッ!

大男「しいっ!」バキーンッ

用心棒「このッ!」ドゴオンッ!

大男「むむむー……」サッ

大男「『飛閃』!」シュバアーッ

用心棒「くっ!」サッ

相棒「……」シュザッ

大男「うああんっ!」ビュンッ!

相棒「!」


 パキインッ!

129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/05(土) 15:19:36.59 ID:7ixi6Rbd0


 カランッ


相棒「……!」

用心棒(あ、相棒の仕込み杖が……折れた……!)

大男「……」ニイッ

大男「『飛ーー』」グッ


相棒「五月蠅い」ヒョイッ ドスッ

大男「がばっ!?」ブシュウッ

用心棒(やったッ!さっき防がれた短刀を、拾い上げて奴の首に押し込んだッ!)


大男「が、ぎ、ご……」ブシュウウウウ

相棒「……」サッ

用心棒「とどめだッ!」ドゴオンッ!

大男「ぐごばああああああああああッ!」ガキインッ!

用心棒「うっ!?」

用心棒(あいつ、まだ動けるのか!?)


用心棒「地獄に落ちろッ!」ドゴオンッ!
大男「『飛閃』ッ!」シュバアーッ


 ガギインッ!

130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/05(土) 15:20:35.63 ID:7ixi6Rbd0


 付近の山中


?「……終わったな」


?(さて、もうこの景色にも飽きた……次の場所に向かうとするか)スック

?(馬も近くに隠してある。ぬかりはない)スタスタ

?(江戸……鍛冶屋のところへ……)スタスタ

131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/05(土) 15:21:24.31 ID:7ixi6Rbd0


大男「……」

用心棒「……」


大男「……無念……」ズズウンッ…

用心棒「!」カランッ

用心棒(奴の死に際の飛閃で……俺のコ式短銃が、真っ二つに!)


相棒「……」フー

用心棒「……全く、面倒な奴だったな。お前の仕込み杖も俺の短銃も真っ二つだ」

相棒「……それに……」コクリ

用心棒「ああ、俺の怪我か……忘れてたぜ。新しい短刀を貸してくれ」

相棒「……」スッ

用心棒(羽織を適当に切り裂いて、っと……)ビーッ

用心棒「こいつを俺の傷口に巻いておいてくれないか」

相棒「承知……」グイグイ

用心棒「後で闇医者にでもかかればよかろう……」

用心棒「……残った得物はお前の短刀くらいか?それに、俺もお前も傷だらけときてる……絶体絶命だな、ええ?」

相棒「……」グイグイ

相棒「終わり」パシンッ

用心棒「いってッ!」ズキーンッ

相棒「……縁起でもない……」ブツブツ

用心棒「そういうなよ……もちろん死ぬ気なんてさらさら無いって」

用心棒「この後坊主をタンスに入れて馬車に乗せて、一っ走り鍛冶屋のところまで……」


 ゴオオアアアアアアアアアアアアアアア
メラメラ… パチパチ…


用心棒「……あ。タンスも馬車も、馬ごと焼けちまってるなこりゃ。覆面野郎の持ってきた脇差しも使い物になるまい」

相棒「……」

用心棒「……よ、よし。そこらへんの浪人の死体を二つほど、滅茶苦茶に切り刻んでから火の中に放り込んでおこう。短銃と仕込み杖も落としていけば完璧さ」

用心棒「そのうえで俺たちが姿を消してしばらく静かにしていれば、油商人は俺たちが大男と相討ちになったと勘違いするに違いない……」

用心棒「俺たちはゆっくりと江戸に戻るとしよう」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/05(土) 15:22:24.21 ID:7ixi6Rbd0


 江戸


 路地裏の小さな鍛冶屋

 
鍛冶屋「隣のうちの千兵衛が〜煎餅喰って屁をこいて〜♪」カーン カーン

<ガラッ

鍛冶屋「ん?悪いなあ、今日はもう店仕舞いやねん……」クルッ


武士「いや、問題無い。俺は商談じゃなく、あんたに用があってきたんだからな」

鍛冶屋「……え?」


 ドキューンッ…

133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/05(土) 15:23:55.59 ID:7ixi6Rbd0
今日はここまで
温かいレス、励みになります
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/06(日) 00:28:57.44 ID:WiJZogIQ0
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/04(日) 15:15:50.38 ID:1ygEF4+e0
生存報告です
近々更新します
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/20(金) 22:41:53.83 ID:hOv2BwwB0


 数日後


 江戸


 ピヨピヨ チュンチュンチュン チピピピ…
<バサササ


 ガラッ

大工「ふああ……」ノソノソ

大工「……ううーん!」ノビー

大工(いやあ、今日は暖かい……小春日和だな!)

大工(……)

大工(これで腹一杯朝飯を食えれば幸せなんだがな……)ハア

番頭「よう、お早う」

大工「ひゃあ!?番頭さん!?」ビクーンッ

番頭「なんだよ幽霊でも見たような顔して……」

大工「い、いやあ、何でも……」オドオド

番頭「そんなにビクビクしなくったっていいんだよ。金はきっちり返してもらったから」

大工「ははは……でもこっちはケツの毛までむしられて、朝飯だって……」

番頭「博打辞めてから言いな」

大工「ハイ……」


番頭「そういえば、聞いたかい?」

大工「?……何をです?」

番頭「相模のほうで大きな山火事があったらしいんだよ。江戸からの旅行者の夫婦が犠牲になったらしいね」

大工「ひええ、おおこわ、なんばんだぶなんばんだぶ!」

大工「どうせ焼け死ぬなら江戸で華になりたいもんだ……」


用心棒「……フン」コソッ

相棒「……」コソッ

少年「……」コソッ

137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/20(金) 22:42:48.73 ID:hOv2BwwB0


 ガヤガヤ ワイワイ ザワザワ

<ヤスイヨーアジガヤスイヨ!
<エチゴノタンモノイカガッスカ!
<カワラバンデゴーザーイ!オッダンナ、マイドアリ!


用心棒「……」バサッ

用心棒「……瓦版も同じか。まったく恐ろしいもんだ、油商人のやつあんな派手な人殺しを山火事ってことにしちまいやがった」

少年「とすると……奉行所は……」

用心棒「はん、奉行所なんてハナからあてにしてないさ……」グシャ…

相棒「読む」

用心棒「ん?ああそうか」スッ

相棒「……」バサッ


少年「このあと鍛冶屋さんのところへ行くんですよね?」

用心棒「ああ。クソッタレの油商人に一泡吹かせるには武器が必要だ」

用心棒「鍛冶屋に頼んだ武器はとっくに完成しているはずだ……しかし……」

少年「……しかし?」

用心棒「……奴らの勘が、ちょっぴり冴えていたとしたら……」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/20(金) 22:43:38.01 ID:hOv2BwwB0

相棒「……」

相棒「……」パラリ

相棒「……!用心棒ッ!」

用心棒「!?何だ!?」

少年「!」

相棒「この記事……!」


『鍛冶屋の店舗兼住宅に盗人か?店主負傷』


用心棒「……これは……!?」

少年「た、大変です!急いで行かなくては……!」

用心棒「……」

用心棒(これは……罠か?)

用心棒(いや、道中俺を探すような動きは見られなかった)

用心棒(これが罠だとすると、俺を生存を想定していることになる。やってることが丸っきりチグハグだ)


少年「……用心棒さん?」

用心棒「……」

用心棒「……行くぞ。ただしそこらへんで武器を調達してから、だ……」

少年「はあ……あっ!では僕の短銃を!相棒さんから預かったんですが、僕が持っていても仕方ありませんし……」

用心棒「いや、それはお前に預けておく」

少年「え……?しかし……」

用心棒「……」

用心棒「いいから持っておけ」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/20(金) 22:44:28.42 ID:hOv2BwwB0


 鍛冶屋前


用心棒「……」コソッ

相棒「……」コソッ


用心棒(調達できた武器は……俺の持っている旅人の護身用の脇差と、相棒の持つ包丁だけだが)

用心棒(金も尽きてきた今じゃあ、それが精一杯だ……いや、弘法筆を選ばず、という……)

用心棒(そもそも、これは念のための用心だし構わんだろう)

用心棒(ここで奴らが待ち伏せしているという確率は低いのだ)

用心棒(坊主を隠してきたのも、あくまで念のためだ……)


用心棒「……」チョイチョイ

相棒「……」コクリ


用心棒「ッ!」ガラッ シュタッ!

相棒「ッ!」シュタッ!


用心棒「……!?」

140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/20(金) 22:45:11.60 ID:hOv2BwwB0


浪人甲「!来たなッ!」スック

浪人乙「用心棒に相棒……!間違いない!」スック

鎧武者「クカカカカカカカカ……予想通り予想通り予想通り予想通り……」スック


用心棒「チッ……何たることだ……!」シャキンッ

相棒「……」シャキッ


鎧武者「我が名は油商人近衛四天王が一角『武士』……」ジャコン

用心棒「!よけろッ!」バッ

相棒「!」バッ

鎧武者「 こ れ よ り 貴 様 ら を 抹 殺 す る ! 」ドゴオンッ!


 バキイッ!グシャンッガラガラ……

141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/20(金) 22:46:23.24 ID:hOv2BwwB0


 カキインッ! キインッ! ドゴオンッ キューンッ ガシャーンッ


浪人甲「せえいっ!」ビュンッ

相棒「……」ガキンッ

浪人乙「はあっ!たあっ!」ブンッ ブオンッ

相棒「ッ!」サッ

相棒「そこッ!」ヒュンッ

浪人乙「おっと!」カキンッ

浪人甲「このアマ!」ブンッ

相棒「くっ……!」サッ

相棒(こちらは手負いな上数で不利……そのうえ得物がこれでは……!)


鎧武者「かあっ!」ブオンッ!

用心棒「くっ!」サッ

鎧武者「ええい!ちょこまかと!」ブオン!ブオンッ!

用心棒「おっとッ!」ガキインッ!

用心棒(し、痺れる……)ジーンッ


用心棒(この野郎、ばかでかい種子島を棍棒みたいに……)

用心棒(四天王と名乗ってはいたが、こいつ……戦法も技量も明らかに今までの三人より劣る)

用心棒(クソッ、短銃さえあればこんな奴……!)


鎧武者「ハエが……」ガチャガチャ

用心棒「ッ!」

鎧武者「堕ちろ!」ドゴオンッ!

用心棒「うおおおっ!!」サッ

 キュイーンッ ガシャーン…

用心棒(な、なんとかかわし……)

鎧武者「うおっしゃああああッ!」ブオンッ!

用心棒「がふうっ!?」ドカッ ズダアン

142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/20(金) 22:47:38.22 ID:hOv2BwwB0


用心棒「……クッ……」

用心棒(ま、拙い……今の一撃は……少し、拙い……立ち上がれん!)


鎧武者「……クク、ク」

鎧武者「クカカカカカカカカカカカカカカカカカ」

鎧武者「まともな武器がないとはいえ……こんなものか、用心棒よ」ガチャガチャ

鎧武者「引導を渡してやろう」ジャキッ


用心棒(いよいよ拙い……!くっ、武器は……どこかに、武器は……!)

用心棒(ーー!)


鎧武者「死ねッ!」ドゴオンッ!

用心棒「うおおっ……!!」ググーッ


 キュイーンッ バキャッ!


用心棒「ハア、ハア、ハア……」

鎧武者「這って避けたか……」

鎧武者「だがまだ立ち上がれまいて。刀で首を掻き切るまでよ……!」シャキンッ

用心棒「……へ、へへへ」


用心棒「じゃあ俺はその前にお前を撃つだけさ」ジャキッ

鎧武者「!?貴様ーー」


 バアンッ!
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/20(金) 22:49:53.38 ID:hOv2BwwB0


鎧武者「……な、なぜ、短銃、を」

用心棒「……鍛冶屋も闇社会に生きてきた人間だ、殺されるかもしれないのは弁えている」

用心棒「俺は……鍛冶屋が、自分が殺されても商品まで奪われぬよう、箪笥の中に商品を隠した可能性に賭けた」

用心棒「そして箪笥を壊せるよう、お前の銃弾を誘導したんだ……!」

用心棒「あいつの趣味……仕込み箪笥にな……!」

鎧武者「……ク、カカカカカカカカカ……」

鎧武者「その、胆、力……見事……!」

鎧武者「」ドシャッ

用心棒「……刀、借りるぜ」ヒョイッ

用心棒「相棒ッ!」ビュンッ


相棒「!」パシッ

浪人甲「はっ!鎧武者がやられたのか!?」

浪人乙「何っ!?」

相棒「私から……」シャキンッ

浪人甲「あっ、きさーー」

浪人乙「こいつーー」


 シュパッ! ザシュッ!


浪人甲「」ドシャッ

浪人乙「」ドサッ

相棒「目を反らすな」チャキンッ

144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/20(金) 22:50:34.97 ID:hOv2BwwB0
今日はここまで
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/21(土) 10:38:38.93 ID:Oo8eqgwA0
乙です
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/21(土) 10:54:35.28 ID:1oMTOnNgo
かっこいいー
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/12(日) 23:56:29.84 ID:XhvtTbv00

用心棒「……はああ……し、死にかけたぜ……あやうく」

相棒「……こいつらは……」

用心棒「おそらくは……闇商人から鍛冶屋のことを聞きつけた油商人が差し向けたんだろう」

用心棒「鍛冶屋を殺し……あわよくば、訪ねてくるかもしれない俺たちも殺そうとしていたわけだ」

 ガラッ

用心棒「!」

相棒「!」

少年「はあ、はあ、よかった!ご無事ですか!」

用心棒「……なんだ、坊主か……どうしたんだ、薪なんか持って」

少年「ああ、いえ……銃声が聞こえたので、何か武器を持って行こうと思ってそのあたりの家から……」

用心棒「……」

用心棒「はっ、遅えんだよ」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/12(日) 23:57:46.15 ID:XhvtTbv00

相棒「……二人共。引き揚げを……」

用心棒「んっ?ああ……ドタバタ騒ぎを聞きつけた野次馬が集まってくるかもしれんしな」

少年「あ……そういえば、向かいの家が騒がしかったような」

相棒「大変だ。急ごう」

少年(淡々としてて全然大変そうじゃないなあ)

用心棒「心配しなくていい。こういう後ろめたい奴の家には、決まって……」ウロウロ ガチャガチャ

 バチッ バクンッ!

少年「あっ!」

少年(壁がばね仕掛けで開いた!奥には暗い通路が続いている……!)

相棒「よし。早速」

用心棒「待て、持って行けるものは持って行こう。風呂敷は……あった」ゴソゴソ

用心棒「まず仕込み箪笥の中にあった武器弾薬……」ガチャガチャ

相棒「提灯……それに火……」カチャカチャ

少年「えーと、えーと……あっ、櫃にご飯が残ってます」カパッ

用心棒「おお良いな、適当に握って、何かに包んでおいてくれ」ガチャガチャ

相棒「浪人どもの武器は」

用心棒「重いからやめておこう。一応使えないように壊しておいてくれ」

用心棒「多分鍛冶仕事用の鎚がそのあたりにあるはずだから、それで強かに打てばいい」

相棒「……」コクリ

 スタスタ ガチャガチャ

 ガキーンッ! バキャッ! ガキンッ!

用心棒(四天王が全滅したとはいえ、いつ追手が襲ってくるかわからん。欲張って大量の武器を抱えて疲れるのは悪手……)

用心棒(……四天王が、全滅……か)


用心棒「よし、武器はこれでよし」ギュッ

相棒「終わった。準備万端」

少年「こっちも終わりました!」

用心棒「俺も今……ん?」パラッ

用心棒(これは……手紙?)
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/12(日) 23:59:09.56 ID:XhvtTbv00


 ……


 ザワザワ ガヤガヤ


魚屋(んっ?なんだ、もう日も落ちたっていうのにこんな裏通りに人込みが……)

魚屋「あっチョウさん!反物屋のチョウさんじゃないか!」

反物屋「おお、あんた魚屋の」

魚屋「何ですこの人込みは、一体何があったっていうんです?」

反物屋「うんにゃ、私もよくわからんが、どうも斬り合いがあったようだよ」

魚屋「斬り合い!」

反物屋「なんでも鉄砲も使われたとか」

魚屋「鉄砲!」

反物屋「それに、騒ぎを起こした奴らがまだ中にいるようでね」

魚屋「ヒエーッ!」

反物屋「おっと、しかしもう安心だ。見なよ、奉行所の連中が来た」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/13(月) 00:01:01.15 ID:pbQc97HN0

町奉行「全員整列ッ!」

侍甲「はっ!」
侍乙「はっ!」
侍丙「はっ!」
侍丁「……はっ」

町奉行「よしッ!これより状況を説明する!」

町奉行「この鍛冶屋で斬り合いがあったとの情報が入ったッ!鉄砲も使われたらしい!」

町奉行「更に!下手人どもはまだ中にいるらしい……これに収集をつけるのは楽ではない」

町奉行「しかし商人の胡散臭い私兵や尊王攘夷の馬鹿どもに我々の力を示すには絶好の機会だッ!」

町奉行「これより突入する!さすまたァ!」

侍甲「準備よし!」ガチャッ

町奉行「十手ェ!」

侍乙「準備よし!」カチャッ

町奉行「提灯ッ!」

侍丙「準備よし!」スチャッ

町奉行「特別装備!竹束ァ!」

侍丁「……準備よーし」ガサッ

町奉行「行くぞァ!……スウーッ」
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/13(月) 00:02:31.31 ID:pbQc97HN0


町奉行「 御 用 だ − ッ ッ ! !」ズバーンッ


侍甲「御よ……うおっ死体!」

侍乙「なんという……」

侍丙「……ウップ」

侍丁「…………」


町奉行「下手人は?下手人はどこだ?」ウロウロ

町奉行「ここか?」ガラッ

町奉行「ここか?」ガラッ

町奉行「それともここか?」パカッ

侍甲「さすがに櫃の中に隠れる奴はいないと思います町奉行」

町奉行「実に綺麗に食べ切ってある」


町奉行「?……参った、下手人がどこにもいないぞ」

侍乙「向かいの住人は『銃声が鳴った後は注目していたので出入りを見逃すことはない』と言っておりましたが……」

侍丙「『子供だったりしたらわからないが』とは言っていたが……子供がやったとは思えないしなあ」

町奉行「……?????」


侍丁「……」コソコソ
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