八幡「神樹ヶ峰女学園?」

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228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/24(金) 21:17:45.06 ID:fWPMiKoq0

よくあるミスだけど"千"導院ね
辞書登録しとくといいんじゃない?
229 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/25(土) 06:43:31.71 ID:MPODaahDO
本編2-8


楓「美味しかったですわ!また食べに来ましょうね」

ミシェル「ミミはしばらくいいかなぁ…」

楓「先生は?」

八幡「俺もしばらくは来ない。ああいうのはたまに食べるから美味いんだ。俺だって毎度毎度食べてるわけじゃない」

楓「そうですか…」

八幡「…ま、まだ他にも美味いラーメン屋はある。今度はそこに行けばいいんじゃないか」

楓「はい!」

ミシェル「で、先生、次はどこ行くの?」

楓「次は先生の行きたいところでしたわね」

八幡「俺の行きたいところは…」

ここで「1人で家に帰る」、と言えれば一番いいんだが、それはできない。こいつら下手したら家に押しかけて来そうだし。さて、そんなぼっちな俺も心安らぎ、かつ中2の女の子たちも楽しめるところといえば、

八幡「ショッピングセンターだ」

ショッピングセンターなら色々な店があるからどんな人でも楽しめるし、それゆえ人から離れて1人で行動しても問題ない場所だ。ゲーセンにボウリングで俺のHPは瀕死状態だ。これ以上リア充っぽいイベントをされたらたまったもんじゃない。ここらへんで俺はフェードアウトさせてもらおう。

楓「お買い物ですわね!」

ミシェル「ミミ買いたいものいっぱいあるんだ〜」

八幡「よしじゃあ行こう、すぐ行こう」

ミシェル「先生もお買い物楽しみなんだね!」

楓「庶民のお店をたくさん見られるチャンスですわ!」

ふ、もう今日の俺の役割も終わりが見えてきたな。ショッピングセンターに着いたらするっといなくなってやる。そして帰ってやる。ステルスヒッキーの本領発揮だ!
230 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/25(土) 06:45:00.56 ID:MPODaahDO
>>228の通り誤字でした。次から気をつけます。教えてくれてありがとうございます。
231 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/25(土) 07:47:59.28 ID:MPODaahDO
本編2-9


そうして俺たちは駅前のショッピングセンターに移動した。

さぁ、切り出すなら早いに越したことはない。さっさと別れていざ帰路へ。

八幡「よし、ここからはひとつ自分の見たい店に別々に行くというのは…」

ミシェル「先生!楓ちゃん!かわいいお店がいっぱいあるよ!」

楓「ええ!どのお店も見て回りたいですわ!」

あれー、なんでこの2人俺の話聞いてくれないのぉ。勝手に盛り上がっちゃってるし。

ミシェル「じゃあじゃあ端から順番に見て行こうよ!」

楓「そうですわね!そうと決まれば早速行きますわよ」

ミシェル「うん!ほら先生も早く!」

八幡「え、いや、俺他に見たいものあるんだけど」

楓「先生にも選んで欲しいものがあるんですの。さぁ行きましょう」

八幡「ちょ…引っ張らないで…」

俺は千導院と綿木の2人にファンシーショップに連れられてしまった。

ミシェル「かわいい小物がいっぱーい!」

楓「ミミ、このクッションとってもかわいいですわ!」

ミシェル「それかわいいよね〜、ミミ、その種類のクッションいっぱい持ってるよ」

楓「そうなんですの?」

ミシェル「今度見せてあげるね!」

楓「待ってますわ!」

八幡「あの〜」

ミシェル「どうしたの先生?」

八幡「その会話、俺を挟んでする意味ある?」

店に入ってからも、綿木と千導院が俺の両脇をがっちりキープして逃げ道を塞いでいる。なんなら物理的にすごい密着されてて、身動きしようにも2人の身体の色々なところに当たりそうでそれもできないし、周りの視線も痛い。

楓「こうでもしないと先生逃げてしまいそうなんですもの」

俺の魂胆バレてました。

ミシェル「だからこうやって楓ちゃんとミミで先生をキープしてるの!」

八幡「…わかった。もう逃げないからせめてこんなに密着するのはやめてくれ」

楓「どうします、ミミ」

ミシェル「う〜ん、ミミはもう少しこのままがいいかなぁ」

楓「ワタクシもそう思いますわ」

ミシェル「じゃあごめんね先生、もう少しこのままでいさせてね」

八幡「…はぁ」

もう俺に選択権はないのね。まぁいつものことなんだけど…
232 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/25(土) 22:41:26.55 ID:9tq8XnZY0
番外編「エヴィーナの誕生日前編」


どうしてこんなにイライラするのかしら…最近ずっとイライラするけど、今日は特にひどい。何か原因があったかしら…いえ、思い出せない…

あぁ、とにかくイライラする。何かして発散しなければ…そうだわ。星守の誰かにイロウスをけしかけようかしら。でもそれを倒されてしまったらイロウスのムダになるわね。

ん、あれは、

八幡「ふぅ…」

確か最近神樹ヶ峰に来た比企谷、だったかしら。1人で歩いてるわね、ちょうどいいわ。あいつで少し遊ぶとするか。

エヴィーナ「ねぇ、そこのあんた」

八幡「…」

エヴィーナ「ねぇったら!」

八幡「え、俺ですか?」

エヴィーナ「あんた以外周りにいないじゃない」

なんなのこいつ、私の声が聞こえててあえて無視したっていうの。いい度胸じゃない。

八幡「はぁ、なんか用ですか」

エヴィーナ「えぇ。ちょっと私と遊ばない?」

八幡「は?」

エヴィーナ「文字通りの意味よ。ここじゃなんだから移動するわ」

八幡「へ、いや、何を言ってるんですかあんた…」

ごちゃごちゃうるさい奴ね。ま、私の部屋に入れちゃえばこっちのものだしさっさと連れ込んじゃいましょう。
233 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/25(土) 22:42:05.51 ID:9tq8XnZY0
番外編「エヴィーナの誕生日後編」


八幡「ここは…?」

エヴィーナ「ここは私の部屋。これから楽しいことを始めましょう、比企谷八幡」

手始めに手足を縛っときますか。反抗されたら面倒だし。

八幡「痛っ、なんだいきなり…」

エヴィーナ「お遊びよ、星守と仲良くしてるあんたが私は気に入らないの。これ以上調子に乗らないようにしてあげる」

八幡「あんた誰だよ…」

エヴィーナ「私はエヴィーナ。イロウスの親玉だとでも思ってくれればいいわ。つまりあんた達の敵よ」

ふふ、さぁ恐れおののくがいいわ。

八幡「待て、俺は別にあんたの敵ではない」

エヴィーナ「どういう意味よ」

八幡「確かに俺は星守たちと同じクラスで生活しているが、だからといって俺とあいつらが同じとは限らないだろ」

エヴィーナ「何が言いたいのかしら」

八幡「つまりだ、俺は仕方なく星守たちの手伝いをしているだけであって、俺自身はイロウスに手をかけてるわけではない。それに、あんた達と言われたが、俺はあいつらと同じ空間にいて同じことをしているだけだ。一緒の存在にされるのは不服だ」

エヴィーナ「なんて屁理屈を並べるのかしら…」

八幡「そういうことなんでそろそろ解放してもらってもいいですかね」

エヴィーナ「そういうわけにはいかないわ」

八幡「ですよね…でも俺を縛ったところでこれ以上面白いことなんて起きないですよ」

エヴィーナ「どうだか」

八幡「ほんとですよ。俺は何を言われても働かない専業主夫を目指す人間ですから」

エヴィーナ「ならなんで男子のあなたが神樹ヶ峰にいるのかしら」

八幡「俺の高校の先生と神樹ヶ峰の先生たちの飲み会の席で勝手に話が進んだ結果ですね」

エヴィーナ「ぷっ、なにそれ、意味がわからないわ」

八幡「はぁ、でも当事者の俺もよくわかってないんで」

エヴィーナ「ふふ、いいわ。今回はその状況に免じて解放してあげる。せいぜい学校生活楽しみなさい」

八幡「皮肉かよ…」

エヴィーナ「ほら、出口も作ったからさっさと出ていきな」

八幡「…どうも」

そうして比企谷八幡は部屋から出ていった。

なんで私はあいつを逃がしたんだろう。ここで始末したほうが星守たちへの打撃にはなったはずなのに。別にあいつの状況に本当に同情したわけじゃない。じゃあ、どうして?

まぁ、ただの気まぐれかしらね。なんだかんだ暇つぶしにもなったし、イライラもなくなったから今日は意外と良い日かも。
234 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/25(土) 22:47:08.20 ID:9tq8XnZY0
エヴィーナさん誕生日おめでとう。twitterで今日が誕生日だと知ってなんとか書きました。Aqoursのライブ物販待ちのおかげで時間があって助かりました。
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/25(土) 23:00:27.93 ID:+PsA0tVjo
乙です
236 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/28(火) 01:40:33.05 ID:7LIrVPUN0
本編2-10


ミシェル「次はあのお洋服屋さんに行きたい!」

楓「こ、こんな服見たことないですわ!」

八幡「おい、俺こんな店入りづらいんだけど」

ミシェル「ミミたちのそばにいれば大丈夫だよ!」

八幡「だからそれもいやだって言ってんだろ…」

そんなことを言ってるとポケットの中でスマホが鳴りだした。ディスプレイに表示される名前を見ると「小町」とある。

八幡「悪い、ちょっと電話」

そばにいる2人に声をかけて、少し離れたところで電話に出る。

八幡「なんだ小町」

小町『おにいちゃん!いつもより電話出るの遅いから小町心配しちゃったよ』

八幡「お前は俺のヤンデレ彼女か。で、なに」

小町『いやぁ、そういえばおにいちゃんに今日のお土産をお願いするのを忘れちゃったな、と思って』

八幡「そんなことくらいメールで連絡すればいいだろ」

小町『でもおにいちゃん、メール見ないこと多いじゃん』

八幡「まぁ、確かに」

小町『せっかく神樹ヶ峰の女の子たちと遊んでるんだもん、小町にもその楽しさを少しでも分けてほしいしね!』

八幡「俺は振り回されているだけだ、で、何が欲しいの」

小町『話が早くて助かりますねぇ、小町は…』

ん?小町の声が聞こえなくなった。どうしたんだ?

八幡「おい小町、どうした」

すると別のポケットに入っている通信機が鳴りだした。こんなタイミングでかかってくるということはまさか…

八幡「はい、もしもし」

樹『あ、比企谷くん?大変なの、千葉駅付近で突然イロウスが大量発生しているの!』

八幡「マジですか…」

樹『それで、今比企谷くんの近くにミミと楓がいるはずよね?急いで3人には現場に向かってほしいの』

八幡「それは良いんですが、なんで俺が2人と千葉にいること知ってるんですか」

樹『ここ数日、あの2人その話ばかりするんですもの、嫌でも耳に入るわ。とにかく、事態は急を要します。すぐイロウスのところへ向かってください』

八幡「わかりました…」

そう返事をすると通信は切られた。

おいおい、なんでイロウスがこの千葉に出現するんだよ…でも不幸中の幸いか、こいつらがいるからな。まだなんとかできるかもしれない。

ミシェル「あ、先生!」

八幡「2人とも。かなりやばいことになった」

楓「イロウスが近くに現れたのですよね。今ワタクシたちのもとへ御剣先生から連絡が入りました」

八幡「なら話は早いな。すぐイロウスのところへ向かうぞ」

ミミ「ミミたちのお買い物の邪魔をするイロウスは許さないんだから!」

楓「それに一般の方々も大勢いますから、早く助け出さないと」

八幡「あぁ、そうだな」

千導院の言う通り、今は一般人の避難も考えなくてはならないだろう。そのためにもまず状況把握をしなくてはならない。

八幡「急ぐぞ」

楓、ミシェル「はい!」
237 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/02(木) 00:14:13.12 ID:IJ5WQkJh0
本編2-11


俺たちが外に出てみると、まだ町の人たちに混乱している様子は見られなかった。

八幡「まずはどうやってここらへんから一般人を遠ざけるかだが…」

楓「ワタクシの家の者にやらせますわ。呼べばすぐ大勢の人が来ますから、彼らに任せれば大丈夫だと思います」

頼もしすぎるぞお嬢様パワー。

ミシェル「じゃあミミたちはイロウスを探せばいいんだね!」

八幡「あぁ、そしたら一般人の保護は千導院家の人に任せて、俺たちはイロウスの種類の特定と、大型イロウスの殲滅に向かおう」

楓「わかりましたわ」

八幡「それから、これからは一人一人別れて捜索しよう。大型イロウスを見つけたらお互いの通信機で連絡をすること。いいか」

ミシェル「わかった!」

八幡「よし、じゃあいこう」

こうして俺たちは別れてイロウスを探すことになったのだが、

八幡「時間がないとはいえ、俺1人になったのはまずかったな…」

こうして1人でイロウスを探して、もし出くわしたら逃げられる自信がない。今日は午前中から2人につき合わされて疲れているんだ。遅い小型イロウス相手でも危ないかもしれない。

ヒューン

と、突然何かが飛んできて、俺の前に小さなクレーターのような穴が出来た。

八幡「なに…?」

飛んできた方向を見ると、道の真ん中で植物のようなものがユラユラ動いているのが見えた。

八幡「あれが今回のイロウスか…」

あれは確か、シュム種だな。幸か不幸か小型イロウスは発生した場所から動かない。つまりあいつの射程距離外にいれば俺が攻撃されることはない。ここはまだ安全なはずだ。今のうちに2人にも伝えておこう。

八幡「俺だ。この付近に現れているイロウスはシュム種だ。2人とも、気を付けてくれ」

楓『わかりましたわ』

ミシェル『ミミやっつけちゃうよ!』

八幡「倒すのもいいが、最優先は大型イロウスの発見と殲滅だ。小型イロウスは少々ほっといてもそこから動くことはない。避難した人に害を与えそうなら倒してほしいが、それ以外は無視していい」

ミシェル『は〜い』

八幡「それと、大型イロウスを見つけたらすぐに連絡してくれ。1人で戦うのはダメだ」

楓『もちろんですわ、では切りますね先生』

ミシェル『また連絡するね先生』

そうして通信は切れた。俺も大型イロウスを探さないといけない。倒せない分、せめて発見くらいはして役に立たないといけないだろう。

八幡「まずはあのイロウスを超えないと…」

自分とイロウスとの距離感を測り、息を整えてから

八幡「いざ…!」

猛ダッシュでイロウスの横を駆け抜け、種が飛んでこない距離までなんとか離れることができた。

八幡「あと何回こんなことやらなくちゃいけないんだ…」

シュム種相手でもめちゃめちゃ走るじゃん、やっぱイロウス討伐きつすぎる…
238 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/05(日) 01:50:35.79 ID:1iahUa8o0
本編2-12


こうして俺は千葉駅周辺を走り回りながら小型イロウスの発生頻度を見ていく。

八幡「キツイ…」

すでにかなり体力を消耗してきている。だが俺が3人の中で1番ここらへんの土地勘を持ってるし、2人には危険な小型イロウスも倒してもらわないといけないから捜索は俺が率先してやらないといけないことだろう。

そうやって考えながら俺はなんとか大型イロウスがいそうな場所を絞り込んできたのだが、どうしても見つけることができない。

八幡「いったいどこにいるんだ…」

だが立ち止まって考えているとすぐに小型イロウスが出現してきた。

八幡「くそっ、また逃げなきゃ」

この数分、こうしてずっと通りをグルグル回っているのだが一向に姿を見ることができない。

ミシェル「あ、先生!」

さらに移動していると綿木に会った。

八幡「おう、大型イロウス見つけられたか?」

ミシェル「見つかんないよぉ〜、絶対このへんにいると思うんだけど…」

八幡「そうだよな。だけどもうどこにもいないぞ…」

大型イロウスだからすぐに見つかるような大きさだとは思ったんだが違うのか。もっと細い路地も探す必要があるな。仕方ない、この道を入ってみるか。

八幡「ん?おかしい」

ミシェル「先生どうしたの?」

八幡「この道は向こうの大きな道まで続いてるはずなんだが、途中で何かが邪魔している」

ミシェル「ほんとだ〜」

八幡「……まさか」

ミシェル「先生?」

俺は行き止まりまで走っていき、一瞬その行き止まりに触れ、また綿木のもとに戻ってきた

八幡「綿木、あの行き止まりが大型イロウスだ」

ミシェル「むみっ、アレが??」

八幡「そうだ。路地の中で隠れてて一部しか見えてないんだ。だから全体像をイメージして探してた俺らには発見できなかったんだろう」

ミシェル「よーし、じゃあミミやっつけてくる!」

八幡「おい待て。千導院が合流してから攻撃しないと、やられるだけだぞ」

ミシェル「むみっ、そうだった。楓ちゃん呼ばないと!」
239 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/08(水) 23:49:04.06 ID:gwbJA+j30
本編2-13



楓「つまり、大型イロウスはあの路地の中にいるということですか?」

八幡「そうだ。だが、まずはあいつを路地の中から大通りにおびき出さないといけない」

ミシェル「どうして?」

八幡「そもそも全体が見えてないとどうにもならないだろう。それにあいつは自分のツタを使って、俺たちの真下から攻撃を仕掛けてくる。見えてないと対処のしようがないだろ」

ミシェル「なるほど」

楓「ではどうやって大型イロウスを大通りに誘い出すのですか?」

八幡「それなんだが、ガンなどの遠距離攻撃が出来る武器を使い、なるべく大通りに近いところから攻撃をして注意をひきつけていくしかないだろうな」

楓「そうですわね」

八幡「そして大通りに誘い込めたらソードで一気に倒してしまおう」

ミシェル「わかった!」

八幡「よし、じゃあ始めるぞ」

楓、ミシェル「はい!」

こうして2人は俺の指示通り、ガンで狙えるギリギリの距離から攻撃を始めた。

楓「さぁ、こっちへ出てきなさい!」

ミシェル「ミミの攻撃をくらえ〜!」

だが、攻撃をはじめてすぐに、2人の真下からツタが出てきて反撃されてしまう。

楓「あぁっ」

ミシェル「大丈夫、楓ちゃん?」

楓「えぇ、まだいけますわ。でもあのイロウス、ワタクシたちを正確に攻撃してきましたわね」

ミシェル「どうしよう、やっぱりこのまま路地に入っていくしか、」

八幡「いや、それだとイロウスの攻撃を避けられない。なんとかして広い場所へ誘い込まないと」

楓「でも今のままではどうしようもないですわ」

さっきの作戦ではダメだったか。あんなに2人のことをうまく攻撃してくるとは想定外だった。もっと慎重にいかなければ。

八幡「そういうことなら、こっちは動き続けながら撃っていこう」

ミシェル「動き続けながら?」

八幡「止まって攻撃していると、どうしてもツタの標的にされやすい。だから動き続けながら攻撃することで、こっちの居場所の把握を困難にさせておびき出すんだ」

楓「わかりました、やってみますわ」

八幡「だが、やみくもに動いたらダメだ。この大通りからは外れないように、『こっちにいるんだ』とイロウスに悟らせるんだ」

ミシェル「わかった!」
240 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/13(月) 10:19:19.31 ID:dMvpeeOy0
本編2-14


楓「はぁっ」

ミシェル「やぁっ」

2人は指示通りに走りながら大型イロウスを打ち続けていく。ときおりツタが地中から出てくるが、動いている2人には当たらない。

八幡「まだか…」

かなり動きながら打ち続けているために、俺たちはかなり疲労していた。というか、俺がただ単純に疲れてるだけなんだが…

とその時、突然地面が大きく揺れだした。

八幡「これは」

楓「きますわね」

ミシェル「むみぃ〜」

大通りの地面が大きくヒビ割れ、大型イロウスが姿を現した。

八幡「デケェ…」

顔の半分以上が口だし、そこから俺の背と同じくらい長い舌が気持ち悪く動いている。ツタはもっと長くて、俺の背の数倍はありそうだ。それが5本くらいウネウネしている。

ミシェル「ここからが本番だね!」

楓「いきますわよミミ!」

そう言って2人がガンで攻撃し始めると、大型イロウスの口が大きく開いて、そこから紫色のガスが出てきた。

ミシェル「うわぁー!」

楓「きゃっ」

八幡「大丈夫か??」

少し離れたところにいた2人だが、ガスがかなり広範囲に広がってきたために、当たってしまった。

楓「一応は大丈夫ですが」

ミシェル「むみぃ、なんだか体力が減っている気がするよ…」

八幡「毒か…」

毒状態になるとどんどん体力が削られていってしまう。このまま遠距離からチマチマ攻撃していてはこっちの体力がなくなってしまうだろう。一か八か短期決戦に持ち込むしかない。
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 02:35:17.78 ID:fOwRzSuBo
乙です
242 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/15(水) 00:32:26.48 ID:0uF/a5pn0
番外編「みきの誕生日前編」


八幡「そっちのトマト取ってくれ」

みき「これですか?」

八幡「あぁ、サンキュ」

俺は星月に取ってもらったトマトを使いサラダを作り、隣では星月がフライパンで食材を炒めている。

今、俺たちは家庭科室で2人、料理を作っている。なぜそうなったかというと……


数十分前、教室

みき「先生!今から時間ありますか?」

八幡「あ?時間はないぞ。俺は今から帰って、溜まっているラノベやアニメを消化しないといけないんだ」

みき「つまりヒマってことですよね?それじゃあ私に付き合ってください!」

八幡「話聞いてた?俺ヒマじゃないんだけど」

みき「先生、今日何の日か知ってますか?」

八幡「お前の誕生日だろ?昼にクラスで祝ったじゃないか」

みき「そうです!そんな私のお願いを、先生は聞いてくれないんですか?」

そう言って星月は顔を赤らめながら、大きな目を潤ませて俺を見上げてくる。

八幡「わかったよ、聞くよ…」

そんな顔されたら断れるわけないじゃないかよ…

みき「ホントですか!?そしたら家庭科室に行きましょう!」

八幡「え、今なんて言った?」

こいつの口から聞こえてはいけない場所の名前が聞こえた気がしたんだが…

みき「家庭科室ですよ!これから私が腕によりをかけた料理をふるまうので、それを先生に食べてもらいたいんです!」

八幡「いや、普通誕生日の人は作ってもらうものじゃないのか?」

みき「私は誕生日だからこそ作ってあげたいんです!ほら先生、早く行きましょう!」

俺はこうして強引に星月に引っ張られて家庭科室に連行されてしまった。すでに中には星月が準備したと思われる食材と調理器具が並んでいる。いくつか怪しいものが見えた気がするが、気のせいだと思いたい。

みき「♪〜」

星月はというと、制服の上からこれもまた準備してきただろうエプロンをつけている。うん、やはり制服エプロンは素晴らしいですね。制服だけ、エプロンだけ、だとそんなでもないのに、制服エプロンになると一気に背徳感が増したように思うのは気のせいですか?

八幡「で、何作ってくれるの」

みき「今日は私の特製オムライスを作ります!」

オムライスなら別に俺も嫌いではない。むしろ好きな部類に入るのだが、いかんせんこいつの「特製」オムライスになると話は別だ。全力で避けなければならないものである。だが、今日はもう付き合うと宣言してしまった以上、退くことは許されない。ならばせめて自分の傷が最小限になる道を進まなければ。

八幡「わかった。だがお前だけに料理させるのも何か申し訳ない。俺も一緒にやる」

みき「先生料理作れるんですか?」

八幡「まぁ、簡単なものならそれなりに作れる。一応お前の誕生日だしな。少しは協力させてくれ」

みき「先生がそう言うなら。是非お願いします!」

八幡「おう」

よし、なんとかこっちの誘導に乗ってくれたな。これでこいつが余計なことをしないかどうか見張りやすくなった。

ピーピー

みき「あ、ごはんが炊けました!わぁ、おいしそう。先生、これ見てください!」

八幡「ん。ん?ナニコレ」

みき「ごはんに決まってるじゃないですか!」

八幡「これが、か?」

炊飯器の中には何故だか黒いご飯が湯気を出している。百歩譲ってオムライスだから赤いごはんなら納得できるが、黒って何?
243 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/15(水) 00:32:59.72 ID:0uF/a5pn0
番外編「みきの誕生日後編」


みき「よし、そしたらフライパンで先に他の食材を炒めないと」

星月は食材の山からウインナーとピーマンをとってくる。いったいこいつは何を作ろうとしているんだ…せめてお腹に優しいものを作らなければ。

八幡「星月、俺はサラダを作るから野菜を取ってくれ」

みき「野菜ですか?」

八幡「そっちのトマトをとってくれ」

みき「これですか?」

八幡「あぁ、サンキュ」

あとはテキトーにレタスやキュウリやなんかを盛りつければいいだろう。

みき「さぁ、そろそろ卵を焼きますよ!」

先ほど炒めたウインナーとピーマンを黒いご飯と混ぜ合わせた星月は卵をボールに入れて素早くかき混ぜている。

八幡「手際良いな」

みき「料理は練習してますから!お菓子もよく作って遥香ちゃんや昴ちゃんに食べさせてますし」

そう言いながら星月はフライパンに卵を流し込んでいく。でも星月の作ったお菓子を食べるなんて味覚音痴の成海はいいにしろ、若葉はかわいそうだな。ナマンダブナマンダブ。

みき「そろそろ完成ですよ!」

フライパンで卵がいい感じに半熟になったのを確認して、黒いご飯を包むように乗せていく。

みき「仕上げに」

星月はケチャップで大きくハートを書いて満足げに頷く。

みき「さ、先生。特製オムライスの出来上がりです!熱いうちに食べてください!」

八幡「あ、あぁいただきます…」

とりあえず一口食べてみるか。いざ、参らん!

八幡「…うまい」

みき「やった〜!」

八幡「正直、おいしくないと思っていたが、ほんとにうまい」

みき「えへへ。な、なんか新婚さんみたいですね。2人で料理して一緒に食べるなんて…」

八幡「ごふっ、げほげほ」

みき「だ、大丈夫ですか先生?これ水です」

八幡「ぷはっ。いきなり変なこと言うんじゃねえよ。むせちまったじゃねえか」

みき「ご、ごめんなさい…」

そんなこんなしていると、俺たちはオムライスを食べ終えた。

八幡「御馳走さん」

みき「先生。私、先生がおいしそうに私の料理食べているところ見るの好きなんだって気づいちゃいました…」

八幡「え?」

みき「で、できれば、毎日こうしてそばで見てみたいなって思います…」

そう言う星月の顔はケチャップ並みに真っ赤になっている。

八幡「…」

みき「あ、私、何言ってるんだろ、あ、あの、今の発言に他意はないといいますか、深い意味で言ったわけではなくて、でも軽い意味でもなくて、」

八幡「あの、」

みき「あぁ!私用事思い出したので帰りますね!さようなら先生!」

言うや否や荷物をもって星月は廊下へ飛び出していった。片付けの終わってない状況に残されたのは俺1人。あんなことをあんな顔で言われて今さら追いかけることなんてできるはずもない。自分で言っといてあの反応はないだろ。言われた俺もめちゃくちゃ恥ずかしんですけど。

八幡「はぁ。片付けるか…」
244 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/03/15(水) 00:35:45.38 ID:0uF/a5pn0
以上で番外編「みきの誕生日」終了です。みき、お誕生日おめでとう!

キッチンみきのカードは手に入らなかったので妄想100%で話を考えました。オムライスはサイトに載っているレシピをそのまま使いましたが、実際に作ってはないので今度やってみたいです。
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 01:16:24.61 ID:LyA48pzjo
乙です
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 04:58:37.84 ID:uu4qbLui0
おつ
誕生日話を挟んでくれるのは愛が感じられていいね
247 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/21(火) 16:56:04.58 ID:rrYb2f7OO
本編2-15


未だイロウスに攻撃を続けている2人を一旦近くに呼び戻した。

八幡「このまま時間をかけていると俺たちがやられちまう。だからこれから一気に勝負を付けたいと思う」

楓「確かに早めにどうにかしなければなりませんわね」

ミシェル「そしたらソードでどんどん斬っていくしかないよね!」

八幡「それはそうだが、無闇に突っ込んでもあのツタにやられるだけだ」

ミシェル「むみぃ…じゃあどうするの?」

八幡「あのイロウスのツタは数こそ少なくないが、全て同じ行動をする。だからその隙を突く」

楓「具体的にはどのようにするのですか?」

八幡「まずは遠距離から攻撃を仕掛けて地下にツタを潜らせる。ツタが地下から出てきた瞬間に無防備になった大型イロウスに接近してソードで攻撃だ」

ミシェル「でもでもソード使ってもすぐには倒せないと思うけど」

八幡「なるべく大型イロウスの後ろから攻撃を加えてくれ。あいつは見えてる前方への攻撃パターンは豊富だが後ろや横に攻撃することはない」

楓「なるほど、背後を取っている限りこちらに攻撃はこないということですわね」

八幡「そうだ。もうお前たちは少しのダメージも許されない。絶対に失敗しないでくれ」

楓「任せてくださいまし」

ミシェル「ミミたちのお買い物を邪魔したイロウスは絶対倒すんだから!」

八幡「頼む」

楓「じゃあミミ、いきますわよ!」

ミシェル「頑張ろうね楓ちゃん!」
248 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/26(日) 00:58:54.17 ID:RCw2eeVQ0
本編2-16


千導院と綿木はお互いに気合を入れてから、改めて大型イロウスに立ち向かう。

ミシェル「まずはミミたちのほうにツタをおびき寄せるんだよね」

楓「えぇ、もうしばらくの辛抱ですわ」

八幡「2人とも、そろそろ来るぞ!」

そうこうしていると、大型イロウスがツタを高く挙げて、地中へ潜らせた。そして、

八幡「今だ!」

ミシェル、楓「はい!」

ツタが地上へ出てきたことを合図に、2人は全速力で大型イロウスに突っ込んでいく。

楓「ミミは右へ!ワタクシが左に回り込みますわ!」

ミシェル「わかった!」

そうして2人は左右に分かれて大型イロウスと間合いを詰める。

楓「さぁ、ミミ、ここからが勝負ですわよ!」

ミシェル「うん!」

2人は武器をシュム種に有効なソードに変更し、ダメージを与えていく。

楓「はぁっ!」

ミシェル「やっ!」

よし、2人の攻撃はかなり効いてそうだ。予想通り大型イロウスは横や後ろからの攻撃には対応するのに時間がかかるみたいだし、このままいければ勝てそうだ。

ヒューン

ん、なんだ?何か後ろから飛んできたような…

八幡「ま、まさか」

恐る恐る後ろを振り返ると小型のイロウスがうじゃうじゃ地中から生えだして、俺に向けて種のようなものを飛ばしてきている。幸い、コントロールが悪く俺には当たらなかったが、このままここにいるとやばい。確実に死ぬ。

八幡「逃げなきゃ…」

俺はイロウスから逃げるように走り出した。綿木も千導院も大型イロウスと戦っている今、俺のことを守ってくれる人はいない。自分の体は自分で守らないといけない。

まずはイロウスに見つからないように細い路地に入って時間を稼ぐ。イロウスは俺たちのことを認識しない限り攻撃はしてこない。ならばイロウスの視野から外れることが一番の防衛策だろう。

八幡「さながらリアル鬼ごっこだな」

俺は佐藤でもないし、なんならろくに名前も覚えてもらえない存在だが、今のこの状況はあのデスゲームと同じような感じがする。だけど主人公の佐藤翼って陸上部の設定だったよな。引きこもり高校生の俺が逃げ切れるんだろうか…

って何考えてるんだ俺は。疲れと緊張で頭が混乱しているようだ。こういう時こそ冷静に、だ。イロウスと戦っている2人のためにも、このぼっち歴17年で鍛えた頭を使って絶対逃げ切ってやる。
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 02:18:47.67 ID:wR8r9fVRo
乙です
250 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/27(月) 00:34:22.92 ID:QvEIm6Ak0
番外編「桜の誕生日前編」


ひなた「桜ちゃんお誕生日おめでとう!」

サドネ「おめでとう!」

桜「ありがとう」

ひなた「ほら先生も!」

八幡「あぁ、おめでとう…」

今は昼休み、1人で気楽なランチタイムを過ごそうと思っていたら、南とサドネに捕まってしまい、学校の中庭で藤宮を入れて4人で飯を食べている。そこ、今は春休みなんじゃないの?とか余計な詮索はやめてくれ。

八幡「てか俺がここにいる必要ないだろ。3人でご飯食べればいいんじゃねえの」

ひなた「3人じゃだめだよ!チームが組めないじゃん!」

八幡「チーム?」

サドネ「えへへ、ヒナタと2人でサクラを楽しませることを考えたの」

桜「ほぉ、それは楽しみじゃな」

ひなた「でしょ!?で、せっかくだから先生も入れて2対2で遊ぶゲームをしようと思ったの!」

八幡「いや、その理屈はおかしい」

桜「はは、もう諦めろ八幡。今日はわしらと一緒に遊んでおくれ」

くっ、藤宮にこう言われたら断れない。ま、ちょっとくらい付き合ってもいいか。どうせ食べ終わっても寝るだけだし。

八幡「わかった。で、何するの」

ひなた「それはね〜、バドミントンだよ!」

八幡「は?なんで?」

サドネ「だってサドネ、バドミントンやったことなかったからみんなとやってみたかった」

ひなた「ひなたも!」

な、なんてテキトーな考え…普通藤宮のやりたそうなことをやるんじゃないの?あ、でも藤宮のやりたいことって昼寝とかそういうものか。俺はいいけどこの2人はぜったいやりたくないだろうな。

桜「ほぉ、ではわしは八幡と組むかのお。ひなたにサドネ、手加減はせんぞ」

あれ、意外と藤宮がやる気になってるな。いつもなら自分から運動をするなんてありえないのに。

ひなた「よーし、こっちだって負けないよ!」

サドネ「がんばろう、ヒナタ!」

桜「ほれ八幡、早くラケットをもって準備せい」

八幡「あ、あぁ」

ということで、バドミントンが始まったのだが、

ひなた「やぁ!」

サドネ「あ、あ、えぃ!」

南は持ち前の運動神経ですぐコツを掴み、時には強力なショットを打ってくる。サドネもまだ不安定だが、ラリーをするには問題ないレベルである。だが、

桜「むぅ…」

聞くだけでなんでも覚え、見ただけでダンスを完璧に踊る藤宮がまったくラケットにシャトルを当てることが出来ていない。

桜「ん?なんじゃ八幡。わしの顔になにかついとるのか」

八幡「いや、別になにもついてないけど…」

おかしい…いつもの藤宮ならいやいやながらやりながらも圧倒的な力を見せつけるはずなのに、今はその真逆だ。

桜「はぁ、はぁ…」

息も上がってるし、よく見たら顔も赤い。

八幡「なぁ藤宮、どうした?いつものお前らしくないぞ」

桜「何言っとるんだ。わしはいつだってわし…」

そう言いながら、藤宮はその場に倒れこんでしまった。
251 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/27(月) 00:36:33.53 ID:QvEIm6Ak0
番外編「桜の誕生日後編」


桜「ん」

八幡「おう、起きたか」

桜「は、八幡?ここは…」

八幡「保健室だ。お前俺らの前で倒れたからな。急いでここまで運んで来たんだ」

桜「そうだったのか、迷惑をかけたのお。ひなたとサドネにも謝りたいのじゃが」

八幡「もう放課後だからな、2人も心配してたが先に帰らせた。明日にしとけ」

桜「そ、そんなにわしは眠っておったのか…」

八幡「まぁな。それより、昼休みはなんか様子がおかしかったよな、大丈夫か?」

桜「うむ、横になって寝ることが出来て体調も戻った感じじゃ」

八幡「そうか、ならよかった。でもなんで体調良くないのにバドミントンなんてやったんだよ」

桜「ひなたもサドネもわしのことを楽しませようと考えてくれたのじゃろ?そんな2人の好意を無駄にしたくはなかったんじゃ」

八幡「そうか…」

こいつ、周りの人のことをきちんと考えてるんだな。俺の中一の時とは比べ物にならないくらいしっかりしてる。

八幡「てかそもそもなんで体調悪くなったんだ?昨日はなんともなかったよな」

桜「…なかったのじゃ」

八幡「え?」

桜「た、誕生日が楽しみで寝られなかったのじゃ!」

え、うそ?そんな子供っぽい理由?

八幡「くく…」

桜「わ、笑うな!わしも恥ずかしいのじゃ!」

八幡「いや、お前は普段がしっかりしすぎてるからな、そういう子供っぽいところがあってもいいんじゃないか?くく…」

桜「笑うなと言ったろう!もういい、わしは帰る」

八幡「悪かったって」

桜「ふん、どうせわしは子供じゃよ」

むすっとしながら藤宮はベッドから起き上がって制服を整えている。

桜「そういえば先生」

八幡「ん?」

桜「さっき、今は放課後と言っておったが、もしかしてずっとそばにいてくれたのか?」

八幡「…まぁ、午後の授業は実技だったから俺出なくてよかったし、保健室の先生は出張でいなかったからな、それに…」

桜「それに?」

八幡「目の前で見てたのに体調悪いことに気づかなかった責任もあるから、せめて起きるまでは見てようかと…」

そう、仕方なくだ。俺の目の前で倒れられて、「運びました。じゃあ帰ります」っていうのも後味悪いし。

桜「…そうか」

藤宮は出入り口まで歩いたが、ドアに手をかけたままでじっとしている。

桜「先生、わしは今日寝てしまっておったが、いい誕生日だったぞ、ありがとう」

振り返った藤宮は年ごろの女の子が見せる明るい笑顔でそう言い残し、ドアを開けて帰っていった。

1人残された保健室の窓の外を見ると、もう外は暗くなりかけている。春分の日を過ぎ、日の入りも遅くなってきたことを考えると、かなり長い時間俺は藤宮に付き添っていたようだ。だけどまだ外は寒い。あいつ1人で大丈夫かな。

八幡「心配だし、近くまで送るか」

俺は保健室を出て急いで藤宮を追った。
252 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/03/27(月) 00:38:47.76 ID:QvEIm6Ak0
以上で番外編「桜の誕生日」終了です。桜誕生日おめでとう!なんか桜のキャラがブレブレですけどそこは許してください。
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 00:59:00.21 ID:v/D1k/Tio
乙です
254 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/03/27(月) 01:03:56.89 ID:QvEIm6Ak0
今さらながら、後編で桜が八幡を「先生」と呼んでいるのはミスです。
大事なセリフをミスってしまった。ごめんなさい桜。
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 07:11:30.65 ID:4ajIJe6V0
いいぞいいぞ〜
誕生日おめでとう
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/03/27(月) 18:05:27.13 ID:WwZknZ9DO
乙です。
これ見てるとバトガやりたくなってくるな。

そういや名前呼びなのって何気にサドネだけだよな。
それ関連で何か小ネタ無いかなー何て。
257 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/29(水) 01:54:09.83 ID:MtNwVsOY0
本編2-17


小型イロウスよりも遠く離れた位置にいれば俺が攻撃されることはないはず。だったらまずはひたすら遠くへ逃げればいい。ならこの千葉駅から離れることがベストなんだが、そうすると俺はあいつらを置いていくことになる。こんな戦いの場で女の子2人、曲がりなりにも自分の生徒を置いていけるほど俺は腐っていない。

だとすると俺はあの大型イロウスを視界に入れられる場所にいなければならない、かつ小型イロウスからは隠れられる場所を探す必要があるのだが、果たしてそんな好都合なところがあるのだろうか…

ヒューン

八幡「おわっ」

やばい、小型イロウスの数がだんだん増えてきている。早く何とかしないと。なにかいいところは、

八幡「あ、あった」

そうだ。ここらへんにはいくらでもあるじゃないか。都合のいいところが。

八幡「ここだ!」

俺は急いでとあるショッピングモールの中へ逃げ込んだ。

そう、別に外にいなくてはいけないなんてことはなかった。他のイロウスとは違い、移動をしてこないシュム種相手ならいったん隠れてしまえば攻撃されることはない。それにここからなら窓から周りの状況がある程度は把握できる。万全を期して2階に上がっておくか。

カツンカツン、カツン

なにか一階で音がするな。なんだ?

窓から離れて1階を覗いてみると、小型イロウスが外から種をまき散らしていたのが見える。だけどあの位置からだと俺には絶対届かない、よね?

カツンカツン

それにしても種が散らばるな。何がしたいんだイロウスは。

ピキッ、グググ

え、まさか、嘘だろ?なんで種からイロウス出てくるの?一瞬で小型イロウスの大きさになっちゃうし、

ヒューン

俺の居る方へまっすぐ種を飛ばしてきた。ということは、種で増殖しつつ俺のところまで到達しようとしているのか。

八幡「やばい…」

このままここにいたら巨大な密室空間に閉じ込められることになってしまう。すぐにここを出なければ。目の前の出入り口はイロウスに封鎖されているから別のとこを使わなきゃ。

八幡「てかなんで俺ばっかり狙われるんだよ…」

まぁ周りに他の人はいないからですよね、ほんとみんな避難出来てよかった。千導院家の人には感謝しないと。

で、外に出たのはいいけどいったいどこに行けばいいのか。建物の中入ってもまたこんな状況になったら意味ないし。いや、道は一つしかなかったですね。

八幡「右しかない」

だって左側イロウスがうじゃうじゃいるのが見えたんだもん、もうこっちしかないよね。

八幡「ってやば」

正面にイロウスがいるのが見えた。次の角を左に曲がらないと。

八幡「ま、またかよ…」

今度は正面と左にイロウスが見えた。今度は右に曲がらないと…

八幡「あれ、この道ってもしかして」

イロウスに追い立てられながら走った先に見えたのは、大型イロウスの姿と、それと戦う2人だった。

ミシェル「先生!」

楓「ど、どうなさったのですか?」

八幡「はめられた…」

俺は逃げていたんじゃなく、逃がされていた、そしてまんまとこの場所へ戻されたわけだ。くそっ、頭使って逃げるどころか逆にイロウスに捕まっちまったじゃないか…
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 06:36:52.15 ID:hNu/05KL0
種で増殖はおもしろいな
実際やられたらめんどくさそうだけどww
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 10:31:05.28 ID:Qsy4E2YJo
乙です
260 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/30(木) 00:10:30.87 ID:LFw+m70b0
本編2-18


八幡「いや、まぁ、小型イロウスから逃げようとしてたんだが、ちょっとな…」

ミシェル「?」

綿木は何が何だかわからない様子で首をかしげている。

八幡「そんなことより、大型イロウスをなんとかしないと」

楓「あれ?」

八幡「どうした千導院」

楓「いえ、先生がいなくなってからはしばらく小型イロウスは見なかったのですが、またチラホラ向こうの方に姿が」

ミシェル「あ、ほんとだ」

見渡すと確かにどの方向にも小型イロウスがうごめいているのが見える。多分、俺が連れてきましたゴメンナサイ。

八幡「このままだと挟み撃ちにされるぞ」

楓「ミミ、今こそスキルを使うときですわ!」

ミシェル「そうだね楓ちゃん!ミミに任せて!」

八幡「スキル?」

楓「ミミのスキルは広範囲にダメージを与えられるんですの」

ミシェル「いっくよー『フル♪フル♪ラビッツ』!」

綿木がスキルを発動させた瞬間、彼女の周りにウサギのぬいぐるみが現れ、それと一緒に綿木は踊り出す。すると上空から大量のウサギがイロウスの居る方向へ降り注いでいく。当然、俺たちのいるところにも降ってくる。

八幡「やべえ、当たる…」

俺はその場でしゃがみ込み頭を抱えて防御態勢をとる。が、ぬいぐるみは見事に俺をスルーしていく。

楓「先生、何やってるのですか…」

八幡「いや、俺にも当たるんじゃないかと思って…」

ミシェル「スキルはイロウスしか攻撃しないから先生は大丈夫だよ!」

八幡「そ、そういうものなのなのね」

できればもっと早くそのこと教えてほしかったなぁ。まぬけな姿晒しただけじゃん…

八幡「で、スキルの効果は?」

ミシェル「見てのとおり、小型イロウスは全滅だよ!」

確かに、ぱっと見小型イロウスは視界には入らない。

八幡「上出来だ綿木。あとは大型イロウスだけだな」

できればこの流れのまま一気に倒してしまいたい。時間をかけるとまた小型イロウスが湧いてくるかもしれない。

楓「先生、今度はワタクシがスキルを使いますわ」
261 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/31(金) 00:15:36.49 ID:/qZ45Qtf0
本編2-19


楓「『クルーエルスクラッチ』!」

千導院はスキルを唱えると、大型イロウスに向かって素早く近づいてまるで切り裂くかのように攻撃を加える。大型イロウスはまともに攻撃を受けたためにその場に崩れ落ちるように倒れた。

楓「ふぅ、これで大型イロウスも討伐できましたわ」

ミシェル「やったよ楓ちゃん!」

楓「ミミが周りの小型イロウスを倒してくれたおかげで、ワタクシは大型イロウスに攻撃を集中できたんですのよ」

なんとか倒せたか。今回も疲れたなぁ、なんもしてないけど。

八幡「2人ともお疲れさん」

俺の声に反応して2人がこちらへやって来るが、その背後でゆっくりと大型イロウスのツタが動いているのが見えた。

八幡「伏せろ!」

だが俺の叫びは2人には届かない。こうなったら強硬手段だ。

八幡「うおお」

イロウスのツタもかなり2人に迫っている。だがこの攻撃を体力が無い2人が受けるとヤバい。もう体ごと突っ込んで2人を抱え込んで回避するしかない。一度回避できれば、まだ戦えるかもしれない。

八幡「間に合え!」

俺は2人を両腕で抱きかかえて、そのままの勢いで横へ跳びのいた。間一髪間に合ったが、今の衝撃で俺はもちろん、2人も体を強打してしまった。

ミシェル「いたた」

楓「な、なにが起こったんですの」

八幡「まだ大型イロウスは動けてて、今、ツタが後ろからお前らに向かってたんだ」

楓「では先生はワタクシたちを助けるために…」

八幡「あぁ、だけど一回しか助けてやれそうにない。もう俺は動けないし、2人も限界だろ」

ミシェル「でも、限界とか言ってられないよ!なんとかしなきゃ!」

楓「そうですわ!」

八幡「やめろ、今のうちに逃げろ…」

2人は今にも倒れそうにふらふらになりながらもイロウスと対峙する。

ミシェル「今、ミミたちが逃げるわけにはいかないの!」

楓「だってワタクシたちは星守だから!」

そう言って構える2人に向かって大型イロウスのツタが襲いかか、

らなかった。2人の目の前でツタは落ち、そのまま大型イロウスとともに消えていった。

ミシェル「消えた…」

八幡「なんでだ?」

楓「もしかして、ワタクシのスキルでイロウスは猛毒にかかっていたのかもしれませんわ」

八幡「猛毒?」

楓「えぇ、スキルの攻撃自体ではダメージが足りませんでしたが、猛毒を与えることには成功できたようで、そのダメージで倒せたんだと思いますわ」

ミシェル「楓ちゃんのスキルが猛毒を与えるもので助かったね」

八幡「あぁ。だな」

大型イロウスから毒をくらってピンチだったのに、最後は逆に猛毒で倒すとはな。ちょっと思うところがあるな。

楓「今連絡がありまして、周囲の小型イロウスも消滅したらしいですわ」

ミシェル「よかった〜、ミミたち勝ったんだ!」

2人は抱き合って喜んでいる。その笑顔をなんとか最後は守れたのはよかったけど、今は俺のことも気にしてほしいなぁ。もう全身痛くて動けないから早く助けて。
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/31(金) 01:08:39.02 ID:6rKFjyJCo
乙です
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/31(金) 14:09:50.90 ID:y5JICni20

そういえば回復や支援効果付きのスキルは八幡にも効くんかな?
264 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:33:09.48 ID:r/WNV3U20
本編2-20


千葉で壮絶な戦いを繰り広げた(綿木と千導院が)次の日の朝、やっと俺は待ち望んだ平和な休日を家で堪能していた。

プルルル

小町「はいはい、今でますよーっと」

こんな朝早くに電話か、珍しいな。

小町「もしもし、あっ、いえ、こちらこそお世話になってます。え、はい、大丈夫です!はい!お待ちしてます!」

そう言って小町は受話器を置いて、俺に不敵な笑みを浮かべながら話してきた。

小町「おにいちゃん、急いで出かける支度して」

八幡「え、なんで。今日は家から一歩も外出ないぞ。たとえ小町の頼みでも」

小町「いやぁ、小町の頼みじゃないんだよなぁ。とにかく急いで!来ちゃうから!」

八幡「誰が、」

その時、ピンポーンと玄関のベルが鳴った。

小町「ほらおにいちゃんがもたもたしてるからもう来ちゃったよ!今ドア開けまーす!」

小町が小走りで玄関のドアを開けると、いつぞやの千導院家の黒スーツ軍団が乗り込んできた。

黒スーツ「さ、比企谷先生。楓お嬢様とミシェルさんがお待ちです。すぐに千葉駅までご同行願います」

やだ!小町助けて!と小町をすがるような思いで見つめると

小町「あ、兄は強引に連れてってくれて構いませんので、力ずくで連れ出してください」

黒スーツ「わかりました」

小町、兄への扱いが虫けら同然なんだけど?それにスーツの人、小町の意見わかっちゃだめでしょ。なんていう心の叫びは聞こえるはずもなく、ましてや抵抗などできないまま、俺は車に乗せられた。うん、犯罪を犯して逮捕された人が移送されるときってこんな感じなんだな。なんて思っていると車は千葉駅に到着した。

黒スーツ「さ、比企谷先生、お降りください」

最後だけやたら丁寧に車を降ろされると、遠くから2人の少女が走り寄って来た。

楓「先生!遅いですわよ!」

ミシェル「ほら早く行こ!」

八幡「どこにだよ、つかなんで俺は強制連行されたんだ」

ミシェル「昨日のお出かけの続きだよ!まだショッピングセンター全部回れてないし!」

楓「それに昨日の所以外のおいしいラーメン屋も連れてってくれると言ってくれたではありませんか」

八幡「え、いや、確かに言ったし、言ってたのも聞いてたけど、今日やるの?」

楓「当たり前です!昨日イロウスに邪魔されて不完全燃焼だったのですから」

ミシェル「だから今日はほんとに1日中、3人でお出かけするの!」

こう、中学生ってほんと元気だな。昨日の疲れなどまるでないかのように、ましてやイロウスが出現した場所にも関わらず楽しそうにしている2人をちょっと尊敬した。

八幡「はぁ、わかったよ、行けばいいんだろ行けば」

ミシェル「やった!」

楓「では早速買い物から始めましょ!」

八幡「おい、昨日のショッピングセンターはこっちだ。勝手に行動するな。はぐれるぞ」

勝手にどっかに行こうとする2人に俺は声をかけた。すると2人はこっちへ戻ってきてから俺の両脇に密着する。

ミシェル「なら先生とくっついてれば大丈夫だね!」

楓「ワタクシたちの引率、お願いしますわね先生」

暑い苦しい歩きずらい恥ずかしい。でも

八幡「今だけな」

口に出した言葉はそのどれでもなかった。
265 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/04/02(日) 23:36:15.28 ID:r/WNV3U20
以上で本編2章終了です。次は番外編投下します。

>>263一応八幡はただの人間なのでスキル効果はかからないつもりで書いてます。後になって変えるかもしれませんが。
266 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:37:03.08 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所@」


八幡「合宿所の見回り?」

樹「えぇ、ここ最近忙しくて私たち教員の目が行き届いていないのよ。だからお願いできない?」

八幡「別にいいですけど、俺行ったことないんですよね合宿所」

樹「学校の敷地内にあるし、ここからそんなに遠くないわ」

八幡「はぁ、てかなんのためにあるんすか、そこ」

樹「一応、星守たちのためにって建てられたけど、全然使われてないのよね。設備自体は今でも時々追加されてるからかなりいい施設なのだけれど」

八幡「へぇ」

ま、今は使われていない、しかも見回りだけっていう仕事なら楽そうだな。なんならこれをダシにして雑務をサボることもできそうだな。

八幡「ま、そういうことならとにかく行ってみましょうよ。早く行くことに越したことはないですし」

樹「そうね。では行きましょうか」

そうして歩くこと十数分、それらしき建物が目に入ってきた。

八幡「けっこうきれいですね」

樹「えぇ、建てられたのはかなり最近だから」

八雲先生はポケットからカギを出してドアを開けると俺に中に入るよう促す。

八幡「失礼します」

中は暗く、がらんとしていて人の気配はない。すぐ右手には上と下に続く階段とミーティングルームがあり、左手にはトイレや風呂などがあるようだ。奥に進むと4つのドアがある。これがここに泊まる人の部屋だろう。

八幡「かなりしっかりしていますね」

樹「2階もすごいわよ」

八雲先生に促され2階に上がってみると、すぐのところに大きな遊戯室があり、その向こうには音楽室、そして1階と同じように部屋のドアが4つ見える。

八幡「すげぇ」

樹「極めつけは地下のフロアよ」

これよりすごい設備があるのか?いったいなんだろうか、と少しワクワクしながら階段を下りてみた先に広がっていたのは大きなプールだった。

八幡「なんなんだこの施設…」

使わないのがもったいない。使わないなら俺がここに住みたいくらいだ。ここに住めば学校近いから遅くまで仕事できるしな。…はっ、今の俺の思考回路、完全に社畜のそれだった。まさか八雲先生、俺を社畜に洗脳しようとここに…

樹「うん、特に異常はないわね」

八幡「まぁどこも埃っぽいですけど」

使われていないためか掃除はされていないのでかなり汚い。拭いたり掃いたりすれば落ちそうな汚ればかりだが。

樹「それもそうね。あ、そうだわ。比企谷くん、せっかくだからここの掃除、お願いしてもいいかしら」

八幡「え」

樹「星守クラスの子たちにも協力してもらうから。もともとあの子たちの合宿所としてここは建てられたのだし」

八幡「なら別に俺がやらなくても、あいつらにやらせれば、」

樹「ダメよ。比企谷くんはあの子たちの担任なんだから。掃除監督として、お願いね」

これはもう断れるものじゃないな。ならさっさとテキトーに終わらせて帰るとするか。

樹「あ、任せたとは言ってもしっかりやってるかどうか確認には来るから、サボろうなんて思わないでね」

八幡「ももも、もちろんですよ」

やべ、この人俺の心の中読んでるの?

樹「なんでそんな慌ててるのよ。とにかく、頼んだわ」

八幡「…はい」

さて、どうしたものか。
267 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:37:46.19 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所➁」



次の日、朝のHRで合宿所の掃除についてみんなに話すことにした。

八幡「昨日、八雲先生と合宿所に行ったんだが、予想外に汚くてな。今日の放課後に掃除をすることになった。星守クラスのための合宿所みたいだから、俺たちで掃除するぞ」

俺がこう言うとところどころから不満の声が上がってきた。

ひなた「ひなた掃除きらーい」

うらら「うららたちが汚くしたわけでもないのに、なんで掃除やらなきゃいけないのよ」

あんこ「今日の夕方からイベント走らなきゃいけないんだけど」

うんうん、みんなの不満はよくわかる。だが、そんなことで俺はお前らを自由にはしない。面倒な仕事はなるべく分担して早く済ませるのが俺流。悪いが犠牲になってもらうぞ。

明日葉「みんな、そんなこと言うな。私たちのために学校が建ててくれた合宿所だ。これを機に一度しっかりきれいにしよう」

みき「明日葉先輩の言う通りですよ!」

よしよし、ナイスアシストだ楠さん、星月。

昴「でもアタシたちで掃除しても、使わないんじゃ意味ないよね」

楓「そうですわね。学校の施設なら千導院家の人を使って管理させるのも無理ですし」

八幡「確かに…」

掃除をするのはそこを綺麗に保つ必要があるからだ。だが合宿所はこれまで使われていない。だったら汚いままでもいいのかもしれない。別に汚いことで迷惑は掛かってないわけだし。

蓮華「ふふ、先生、それなられんげに考えがあるんですけど」

八幡「なんですか芹沢さん」

蓮華「その合宿所ってれんげたちのためにあるんでしょ?なら、掃除して綺麗にしたられんげたちに自由に使わせてほしいの」

心美「合宿所を自由に使うってどういうことですか?」

蓮華「文字通りの意味よ。今使われてないってことは普段の特訓なんかでは必要ない施設ってことよね。だかられんげたちで好きなように使っちゃおうってことよ。どう先生?」

八幡「さすがに俺1人の考えではどうにも言えない。放課後までに八雲先生や御剣先生から許可を得られたらそうしよう」

桜「おお、これで昼寝の場所が増えるわい」

望「アタシもちょうど、服を置くスペースも欲しかったんだぁ」

八幡「おい2人とも、まだ使えると決まったわけじゃないぞ。とにかく、放課後に合宿所の入り口に集合だ。いいか?」

みんな「はーい!」

268 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:38:14.62 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所B」


八幡「全員いるか?」

みんな「いまーす!」

放課後になり、俺たちは合宿所の前にやってきていた。掃除後にここを使う許可については「いいんじゃない?あんたたちで自由に使いな〜」という御剣先生の一言で言質が取れた。それにしても軽いよなぁあの人。

明日葉「では行きましょう先生」

八幡「えぇ、でもその前に一つ確認したいことがあるんですけど」

くるみ「なんですか先生」

八幡「どうしてみんな体操服なんですか…?」

そう、まだけっして暖かいとは言えないこの時期になぜかみんな体操服なのだ。俺にしては、別にスカートひらりを期待していたわけでは全然ないのだが、やはり気になる。

遥香「合宿所はかなり汚れていると先生が言ってましたので、汚れてもいい服のほうがいいのではないかと蓮華先輩が」

ミシェル「制服が汚れちゃったらイヤだもんね、さすが蓮華先輩!」

…いや、あの人がそんな親切心だけで服装の提案をするわけがない。それにこの合宿所を自由にする、という案も芹沢さんが言い出したことだ。何か裏があるはず。

蓮華「あら、先生、れんげをそんなに見つめて、何かご用ですか?」

八幡「いえ、別に」

ま、今は考えなくてもいいか。

花音「ねぇ、寒いんだけど、早く中に入れてくれないかしら」

八幡「あ、すまん。今開ける」

ガコーン

詩穂「へぇ、中はずいぶん広いわ」

みき「ここを私たちで使っていいんですか?」

八幡「あぁ。掃除したらな」

ひなた「すごいすごい!2階には卓球台とかバンドの楽器とかあったよ!」

サドネ「ここ面白い!」

ゆり「2人とも、まずは掃除だぞ。遊ぶのはあとだ」

ひなた、サドネ「えー」

あんこ「そういうゆりもなんかそわそわしてない?」

ゆり「わ、私は風紀委員としてみんなが掃除をしっかりやるかどうか見張るんです!けっして楽しみなわけではありません!」

あんこ「はいはい、そういうことにしておくわよ」

八幡「よーし、じゃあとっとと掃除始めようぜ」

ミシェル「ミミほうきで掃く〜」

うらら「うららもほうき!」

昴「じゃあアタシはぞうきんで…」

詩穂「みなさんストップ!」

うらら「詩穂先輩、どうしたんですか?」

詩穂「みなさん、掃除は心をこめて、かつ効率的にやらないと綺麗にはなりません!まずはきちんと役割を決めるところから始めましょう」

八幡「すごい気合の入りようだな、おい」

花音「こうなった詩穂は止まらないわ。私たちも本気でやるわよ」
269 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:38:52.56 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所C」


そうして俺たちは国枝総監督の下、掃除を始めた。

詩穂「藤宮さん、もっとぞうきんは固く絞らないと余計な水分がついてしまうわ」

桜「おぉ」

詩穂「天野さん、埃は上から落としていかないと取り残しがでてくるから気を付けて」

望「はい!」

詩穂「芹沢さん、みんなのことを見てないで掃除してください…」

蓮華「やぁ〜、体操服での掃除姿なんて貴重だから少しくらいいいじゃない」

この人、それが目的か…まぁ、掃除と体操服は確かに珍しい組み合わせだから見たい気持ちもわからなくない。

くるみ「先生、あの」

八幡「ひゃい、な、なに?」

くるみ「先生の周りのゴミをとりたいので少し避けてもらってもいいですか?」

八幡「あ、あぁ」

突然話しかけられたから思わず噛んでしまった。なんかぬるっと現れるよな常磐は。心臓に悪い。

遥香「先生」

八幡「お、なんだ成海」

遥香「ちょっとこっちを手伝ってもらえませんか?重くて運べないものがありまして」

八幡「任せろ」

ここらへんでひとつ俺のすごさを見せておくのも悪くないかな。少しばかり、力を解放させてもらうとしよう。

遥香「これなんですけど…」

八幡「なにこれ…」

目の前には埃を被ったスロットマシーンが置いてある。どうしてこんなところにこんなものが置いてあるんだ。

八幡「これを運べばいいんだな…」

ってめっちゃ重いんですけど!全然動く気配がしない。腰がやられる…

遥香「せ、先生?」

八幡「ダメだ、重くて俺も動かせない…」

そんな時、後ろから声が聞こえた。

風蘭「おぉ、懐かしいな。こんなところにあったのか」

遥香「御剣先生、これご存じなんですか?」

風蘭「知ってるも何もアタシが持って来たんだ。学生時代にバイトしてたラーメン屋の大将が持っててな、卒業する時記念にってくれたんだよ」

八幡「それがどうしてここに」

風蘭「いやぁ、家には持って帰れなくて仕方なく」

八幡「なるほど、てか御剣先生はどうしてここに」

風蘭「アンタたちの様子を見にな。それより比企谷、こんくらいのものも運べないのか、情けないな」

そう言って御剣先生は軽々とスロットマシーンを持ち上げる。

風蘭「遥香、これどこに持っていけばいいんだ?」

遥香「あ、それは一度廊下に出しておいてください」

風蘭「ほーい」

3,40キロはあるものを軽々持ち上げるなんて、さすが御剣先生。いや、それより持ち上げられなかったことが情けないな。筋トレでもしようかな…
270 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:39:19.76 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所D」


八幡「だいぶ片付いたかな」

みんながせっせと働いたおかげで日が暮れる前には大体の掃除を終えることができたようだ。

明日葉「では、そろそろ解散にしようか。下校時刻も迫っているし」

蓮華「ちょっと待って、明日葉。れんげたちがここを掃除したのはここを自由に使うためよ。明日からはここの模様替えを始めなきゃ!」

ミシェル「模様替えってどういうことですか?」

蓮華「だってこのままだといかにも『合宿所』って雰囲気で全然可愛くないもの。どうせならもっと可愛くしたくない?」

望「賛成!家具とか色々工夫したい!」

昴「お、女の子っぽい可愛い家具なんていいですよね…!」

花音「そもそもモノがあんまりないしね。色々買ってきてアレンジするのも悪くないわ」

サドネ「チョコのベッド欲しい!」

ゆり「いや、流石にチョコは無理なんじゃないか…?」

ひなた「じゃあ明日はここの模様替えをみんなでやればいいんだね!」

蓮華「えぇ、もちろん先生も」

八幡「なんで俺もなんですか…」

うらら「だってうららたちだけじゃ外に買い出しとか行けないし」

楓「発注は千導院家を通じてすぐ出来ますが、実際運ぶのはワタクシたちでやらないといけないので」

八幡「マジか…」

あんこ「いい加減諦めなさいよ。何しても逃げられないわよ」

八幡「はぁ」

もうイヤ。奴隷のように扱われてる。俺の人権は何処に。

みき「それじゃあ、明日から模様替え頑張ろう!」

みんな「おー!」
271 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:39:52.89 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所➅」


こうして次の日の朝、またしても俺たちは合宿所にやってきていた。

八幡「でも模様替えって言っても1人用の部屋だらけじゃできることも限られてるんじゃないか?」

桜「確かにそうじゃな。まぁわしは寝られる場所があればなんでもいいんじゃが」

くるみ「その心配は無用ですよ先生」

心美「今日御剣先生に聞いてきたら、個人用の部屋は壁を壊して合体できる作りになってるらしいんです。だから壁を外せばみんなで使える広さも確保できると思うんです」

ゆり「へぇ、便利な作りになってるんだな」

詩穂「せっかくだからみんなで使えるようにしたいわよね」

明日葉「よし、ならまずは部屋の壁を撤去するか」

しばらくしてなんとか壁の撤去を終えることができた。それにしてもみんな、俺のこと使いすぎじゃね?分担してやってたはずなのに、結局俺がどの壁も撤去する羽目になったんだが。

ミシェル「それで、どんなお部屋を作ればいいの先生?」

八幡「俺に聞くな…」

蓮華「ミミちゃん、れんげがちゃーんと考えてあるから安心して」

明日葉「なんか怖いな…」

蓮華「あら明日葉、今回はれんげ真面目に考えたんだから大丈夫よ」

遥香「どういうものですか?聞かせてください」

蓮華「ふふ、まずは1階はキッチンの部屋と、くつろぐ部屋の2つを作るわ」

みき「どうしてその2つなんですか?」

蓮華「まずこの施設にキッチンがないから、これは必須よね。それと、一応『合宿所』なわけだし、プールやお風呂なんかもここにはあるから、体を休める場所があってもいいと思うの」

花音「そしたら2階はどうなるんですか?」

蓮華「2階は1部屋まるまるみんなの共有スペースに使うわ。遊技場、音楽室があって騒がしいから、どうせなら全部騒がしくしちゃったほうがいいと思うの」

あんこ「れ、蓮華がものすごく真面目に考えてた…」

サドネ「わぁ、レンゲすごい!」

他のみんなも芹沢さんの案に賛成しているようだ。

八幡「じゃ、芹沢さんの考え通りにアレンジしてみますか」

みんな「はーい!」
272 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:40:25.96 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所➆」


そうして芹沢総監督の下、合宿所の大リフォームが始まった。まずは1階の模様替えである。部屋は2つなので、俺たちも自然と2つに分かれて作業することになった。俺は立場上、両方の部屋をブラブラ見て回ることにした。

八幡「まずは休憩室のほうを見てみるか」

中はまだがらーんとしていて、壁は打ちっぱなし、家具も一つもない状態である。そんな部屋の中に千導院と粒咲さんがあーだこーだ言い合っていた。

あんこ「あれ先生。1人でどうしたの?」

八幡「いや、みんなの様子を見周ろうかと思いまして」

あんこ「今ワタシたち、家具をどう配置するか考えてるところなの」

楓「先生、もし手が空いてましたら、外にワタクシが頼んだ家具が来てると思いますので運んでいただけませんか?」

八幡「まぁ、少しなら」

楓「お願いいたしますわ」

そう言われ外に出てみると、とんでもなく高級そうな家具がずらっと並んでいる。そこには若葉、南、サドネ、火向井、朝比奈、天野、楠さんがいた。

昴「あ、先生、ちょうどよかった。これ運ぶの手伝ってください!」

八幡「もしかしなくても、これをさっきの部屋に運び込むの?」

ひなた「うん!ひなた、早くこのベッドに寝てみたいなぁ。フカフカだもん!」

天野「うわ、このタンスすごい高級品だよ…」

心美「さすが楓ちゃんですぅ」

明日葉「なんだか運ぶのにものすごく神経を使いそうだな」

ゆり「同感です…」

サドネ「カエデたちが待ってるから早く運ぼおにいちゃん!」

八幡「わかったわかった」

じゃあ、この重くなさそうなシェルフを…

ひなた「ハチくん!こっちのベッド運ぶの手伝ってよ!」

昴「さすがにアタシたちだけじゃ無理だから、お願いします!」

八幡「えぇ、だってそれ重いじゃん」

ゆり「お言葉ですが、先生に頑張ってもらわないと私たちでは運びきれなのですが…」

望「そうだよ!少しは男らしいところ見せてよ!」

明日葉「お願いします先生」

八幡「はぁ、わかりました…」

こんなに言われたらやるしかないよなぁ。頼まれたら断れない男なんで。

八幡「じゃあおれここの角持つから、火向井と若葉と南は他の角持ってくれ」

3人「はーい」

八幡「せーのっ」

うっ、重い重い重い。指がちぎれる…

ひなた「意外と重くない!」

昴「たしかに」

火向井「これくらいなら早く運べそうだな!」

え、これ重くないの?話と違うじゃねぇか。これ持てるならもう俺いらないでしょ。
273 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:40:54.62 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所G」


どうにか家具を運び入れ、次はキッチンの方を見ることにしたのだが。

詩穂「絶対入れたほうがおいしいわよ花音ちゃん」

花音「いくら詩穂がそう言っても絶対入れない!」

めずらしく国枝と煌上が言い争いをしている。

八幡「どうしたんだ」

くるみ「あ、先生。私たち一通り準備が終わったので、お昼ご飯を作ろうとしていたんです」

うらら「それでメニューの一つで酢豚を作ることにしたんだけど、それにパイナップルを入れるかどうかでしほっち先輩とかのかの先輩がお互いに譲らないの」

八幡「えぇ…」

予想外に細かいことで言い争いを繰り広げていた。なにやってるんだあの2人は。

桜「ま、あの2人は放っておいてわしらも料理を作るとしようぞ」

遥香「ふふ、そうね。たくさん作ってたくさん食べないと午後からの作業にも集中できませんしね」

ミシェル「美味しいものたくさん作ろうね桜ちゃん、遥香先輩!」

そうして言い争いをしてる2人以外は順調に料理を進めている。

みき「先生先生!私、頑張っておいしい料理作るのでたくさん食べてくださいね!」

八幡「え、あ、」

ここにいてはいけない人物ナンバーワンが目の前にいた。その危険人物はボールの中で何か得体のしれない物体をこね回している。

八幡「おい、星月。今すぐその手を止めろ。そしてお前はキッチンに入るな」

みき「まさかの立ち入り禁止ですか!?大丈夫ですよ先生!今回の料理は自信があるので!」

八幡「いや、その自信が怖いんだ…」

蓮華「はーい、みきちゃん。れんげも手伝うから、一緒に頑張りましょ?」

みき「蓮華先輩!はい、お願いします!」

蓮華「うふふ」

そうして芹沢さんはうまく星月から料理の主導権を奪うことに成功した。

八幡「芹沢さん、ありがとうございます」

蓮華「かわいいみきちゃんとはいえ、流石に食べられないものを作らせるわけにはいかないもの…」

八幡「確かに…」

これでひとまず安心かな、と思って周りを見渡すと

桜「くるみ、それはなんじゃ」

くるみ「これですか?シャドークインという中が紫色のじゃがいもです。こっちはアンティチョークといって、健康にいいお野菜なんですよ」

相変わらず常磐がおかしな野菜を持ってきていたり、

うらら「さ、マシュマロをいれるわよ!」

ミシェル「むみぃ、うらら先輩、パスタにマシュマロは合わないと思う…」

蓮見がやたらめったらマシュマロを入れようとしていたり、とどこもかしこも危ない料理が出来上がりそう。それにまだ国枝と煌上は言い争ってるし。ちゃんとお昼食べられるのかな、俺…
274 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:41:27.77 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所H」


どうにか出来上がった昼飯をみんなで食べたのち、俺たちは2階へ移動した。

八幡「ここの部屋もかなり広いな」

花音「ま、午後は全員で作業をするしそんなに時間もかからないんじゃない」

遥香「2階は共有スペースにするんでしたよね」

蓮華「えぇ。そしたらここにみんなが置きたいものを1つずつ置いていってほしいな〜」

え、何それ聞いてない。そこのプロダクションの事務所ですか。

八幡「俺何も持ってきてないんですけど」

みき「あ、先生に連絡するの忘れてました」

八幡「おい、俺のこと忘れないで」

昴「でも先生、アタシたちのグループラインにいないんですもん」

うらら「そうだ、これを機にハチくんもグループに入ってよ!」

八幡「え、やだよ。個別に連絡してくれれば済む話だし」

ミシェル「でもみんな忘れてたら今日みたいなことになっちゃうよ?」

望「それに、正直個別に連絡するのメンドイし…」

サドネ「だからおにいちゃんもグループに入って!」

八幡「わかったよ…」

そう言って俺はポケットからスマホを取り出した。その瞬間、何本もの手が伸びてきて一瞬で俺のスマホは拉致されてしまった。

八幡「ちょっと、いくら俺のスマホだからって雑に扱わないで?」

だが俺の言葉は届かず、それどころかスマホのロックも外されてしまった。

楓「先生の履歴、女の人ばかりですわね」

遥香「この『小町』っていう名前は先生の妹さんの名前ですよね」

くるみ「でもそれ以外にも『☆★ゆい★☆』とか『平塚静』とか『戸塚彩加』とか他にも色々あるわ」

ひなた「八幡くん、モテモテだね!」

あんこ「ここにある人のアカウントを調べればどんな人か特定できるわね」

八幡「やめください、返してください、お願いします」

ゆり「ほら先生も困っているだろ、みんな、返すんだ」

みき「でもゆり先輩も興味津々で先生のスマホ見てましたよね?」

ゆり「そそそ、そんなことはない!」

火向井は叫びながらスマホを奪い、俺に押し付けてどっかに行ってしまった。

詩穂「ふふ、でもこれで先生も私たちとラインが出来ますね」

心美「これからよろしくお願いします、先生」

桜「そろそろ始めようぞ。わしはもう眠いのじゃ」

蓮華「あらあら、桜ちゃん、れんげが膝枕してあげるわよ」

明日葉「こら蓮華ふざけるな。今日はお前がみんなをまとめるんだぞ」

蓮華「はーい。じゃあみんな〜、持ってきたものをどんそん置いていきましょう〜」
275 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:41:56.75 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所I」


ひなた「ひなたはね〜遊ぶためのトランプ!」

桜「わしは枕じゃ」

サドネ「サドネはお菓子!チョコがいっぱい!」

ミシェル「ミミはお気に入りのウサギさんのぬいぐるみ〜」

楓「ワタクシは絵を描くためにキャンパスや絵の具を」

うらら「うららはダンスの練習のための大きな鏡!」

心美「わ、私は神社で御祈祷したお守りを持ってきました…」

みき「私はお料理のレシピ本です!」

遥香「みんなが落ち着ける音楽のCDをいくつか」

昴「アタシは筋トレグッズです!みんなでやりましょう!」

ゆり「私は練習用の竹刀を。決して罰を与えるためのモノじゃありません!」

くるみ「私は幸福をもたらすというガジュマルの鉢植えを」

望「アタシもみきと似ててファッション雑誌を何冊か!」

花音「私はダンスの練習用にスピーカーを。うららと被らなくてよかったわ」

詩穂「私は花音ちゃんの歴史が詰まった特製アルバムです」

あんこ「ワタシはノートパソコン。ここ、なぜかWi-Fi飛んでるのよね」

明日葉「私も本で被ってしまうが、おすすめの小説を何冊か」

蓮華「で、れんげはカメラ〜」

何人かおかしなものを持ってきてるような気がしたが、つっこむべきなのだろうか。いや、俺が怪我しそうだし黙っておくか…

八幡「とりあえずみんな置けたな」

改めて見るとなんとも統一感の無い空間が出来上がった。人数分とは言えないまでもテーブルやイスがいくつかある他に、無造作にみんなのものが所せましに置かれている。

でも、こういう個性がバラバラで、でもみんな近くで支え合っている星守クラスを象徴しているような気がして不思議と違和感は感じない。

蓮華「みんな〜、れんげのカメラで写真撮りましょうよ〜」

昴「いいですね!」

遥香「でもその写真、悪用しないでくださいね」

蓮華「もちろんよ、今から撮る写真は使わないから」

桜「ということは他に撮った写真は悪用する気じゃな」

なんだかんだ言いながら結局みんな一つにまとまっていく。合宿所の本来の使い方からは間違っているが、これもこれでいいのかもしれない。

みき「ほら先生!撮っちゃいますよ!」

八幡「あぁ、今行く」

この日撮った写真も後日、この2階のお守りの隣に飾られた。いや、さすがにもう少し違うところに飾ってほしいんですけど…なんか縁起悪いみたいじゃん。
276 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/04/02(日) 23:46:20.78 ID:r/WNV3U20
以上で番外編「合宿所」終了です。もっと短くするはずがIまでいっちゃいました。実際合宿所はみなさんどのくらい使ってるんでしょうか。個人的に合宿所は教室同様全員入居できないのが寂しいところです。
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 09:57:25.29 ID:UilpYTKlo
乙です
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 19:02:28.26 ID:WnnZkv2UO
おつおつ、めっちゃレス増えてて見間違いかと思ったw
合宿所は経験値貯めたい子をトロフィー部屋にぶちこんでるだけという現状
279 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/09(日) 00:06:52.55 ID:7WQX1+Fa0
本編3-1


小町「へ〜。ふ〜ん。あ、おにいちゃんおはよー」

八幡「おう、おはよう」

俺は小町と挨拶を交わしてテーブルに座り、コーヒーにミルクと練乳を入れたものを飲みつつ、小町が作ってくれた朝ごはんを堪能する。

俺が神樹ヶ峰に行くようになって以来、家を出る時間が早くなったのだが、小町もなぜか俺と同じように早く起きてくれる。全く出来た妹である。だが、小町は早く起きても朝ごはんを作るとやることがなくなるので、こうして暇を持て余してるのだ。今日は女子中高生に人気そうな雑誌を眺めている。そういう雑誌の記事って何一つ信用できないよね。なんで売れるんだろう…

小町「うーん、すごいなぁ」

八幡「なにが」

小町「いやね、この雑誌の『輝くティーンエイジャー!』っていう特集に載ってる子たちってみんな小町とかおにいちゃんとかと年は変わらないのにすごい人ばっかりだなぁって」

八幡「ふん、そういう記事に載るような人ってのは『頑張ってる私、ステキ!カワイイ!みんな褒めて!』とか思ってるような奴ばかりだからな。注目されたいっていう魂胆が丸見えなんだよ」

小町「うわぁ、出たよおにいちゃんの捻くれた思考回路。そりゃそういう人もいるだろうけど、例えばこの子みたいな純粋な子もいるんだよ!」

八幡「小町、それは『純粋を装った目立ちたがり屋』だぞ。勘違いするな」

小町「なんでそうやってすぐ否定するかな…いいからこの子の記事だけでも読んでよ!」

そう言って小町は俺に雑誌を押し付けてきた。まぁ読みもせず批判するのはダメか。しっかり読んでこの記事をメッタメタにしてやろう。

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特集「輝くティーンエイジャー!」

今回の「輝くティーンエイジャー!」は中学3年生ながら〇〇神社で巫女さんとしても頑張る朝比奈心美ちゃんへの直撃インタビューを掲載しちゃうよ!

インタビュアー(以下、イ)「心美さんは中学生と巫女を両立して頑張ってると思うんだけど、大変だよね?」

心美ちゃん(以下、心)「い、いえ、どっちも私にとっては大事なことなので、大変ですけど、だ、大丈夫、です…」

イ「それに学校では部活動にも取り組んでるんだよね?天文部、だっけ?」

心「は、はい。星を見るのは大好きなので…」

イ「うんうん、とっても素敵だと思うよ!じゃあ、そんな心美ちゃんにこの記事を読んでる同年代の女の子たちへメッセージをお願いできるかな?」

心「え、そんな、私なんかが言えることなんて、ありませんよぉ…」

イ「心美ちゃんは謙虚なんだね、ますます好感度が上がっちゃったよ!今回は本当にありがとう!」

心「あ、ありがとうございました…」

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うん、もういつもの朝比奈だよね。文面でもあのちょっと怯えてる感じが表れてるなぁ。同じページには明らかに緊張してる巫女姿の朝比奈の写真もあるし。って

八幡「これ朝比奈じゃん…」

小町「え、なになにおにいちゃんこの子知ってるの?」

八幡「知ってるもなにも俺のクラスの生徒の1人だよ…」

なんでこいつ雑誌のインタビューなんか受けてるんだよ。明らかに人選ミスでしょ…

小町「すごいすごい!てことはこの子も星守なの?」

八幡「まぁそういうことになるな」

小町「小町と同い年で星守も巫女さんもやっちゃうんだ。すごいなぁ」

まぁ確かに傍目から見たらそう映るのかもしれない。現にこうして雑誌で取り上げられて、読者の小町も感心してるし。

小町「ほらおにいちゃん、みんながみんな目立ちたがり屋な女の子なわけじゃなかったでしょ?」

すごい憎たらしく微笑しながら小町は俺に言ってくる。妹じゃなきゃ殴っててもおかしくないが、言ってることは正しい。

八幡「ま、そうだな。そこは訂正する」

小町「これを機に少しは捻くれた考え方も直したら?あ、もう時間だよおにいちゃん。早くしないと遅刻するよ」

八幡「おう、じゃ行ってくる」

小町「いってらっしゃい!」
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 01:49:07.84 ID:pmqHPkM3o
乙です
281 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/11(火) 13:02:02.20 ID:UOYZX4ALO
本編3-2


学校での朝の作業が終わってしまい、手持ち無沙汰だったので早めに教室に行くことにした。

八幡「うす」

心美「せ、先生、助けてください…」

俺が教室に入るや否や朝比奈が俺に駆け寄ってきた。

八幡「なんだよいきなり」

心美「あの、みんなが雑誌のことで私を質問責めに…」

うらら「ここみ!まだ話は終わってないわよ!」

そう言って蓮見も俺たちのところへやってきた。教室の後ろの方では何人かの生徒たちが机の上にある雑誌をあーだこーだ言いながら眺めている。

心美「だってうららちゃんの雰囲気ちょっと怖いんだもん…」

うらら「うららより先に雑誌のインタビュー受けるなんて…もっとその時のことを詳しく教えなさい!」

どうやら小町に今朝読まされたインタビュー記事のことが話題らしい。

八幡「あぁ、あの記事か」

うらら「え、ハチくんあの雑誌読んでるの?それはさすがに…」

八幡「俺じゃねぇ。妹が読んでるんだ。それで今朝読まされた記事がちょうど朝比奈のやつだっただけだ」

心美「せ、先生あの記事読まれたんですか?」

八幡「まぁ、一応」

心美「うぅ…恥ずかしいです…」

うらら「なに言ってるのよここみ!ハチくんでさえ読んでるのよ!今こそ世間への知名度アップのチャンスじゃない!」

心美「私は別に知名度はいらないよぉ」

うらら「甘い、甘いわよここみ!アイドルはいつチャンスを与えられるかわからないの!与えられたチャンスは最大限生かさないと、いつまでたっても有名になれないわよ!」

心美「私アイドルじゃないのに…」

八幡「おい、朝比奈も嫌がってるしそこらへんで」

うらら「でもでもハチくんもあのインタビューは物足りなかったでしょ?」

八幡「ん、まぁ、正直もう少ししっかり受け答えできるようになってもいいとは思うが」

うらら「ほらここみ!ハチくんもこう言ってるわけだし、インタビューの特訓よ!」

心美「えぇ、私にはムリだよぉ、うららちゃん…」

うらら「うららより先にインタビューを受けといてその態度は許さないわ!早速お昼休みから始めるわよ!」
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 14:30:39.27 ID:MSAyqMNdo
乙です
283 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/14(金) 18:40:19.19 ID:7foyU3WJ0
本編3-3


昼休みになり俺が孤独にランチをしていると、蓮見が朝比奈の腕を引っ張りながらこちらへやってきた。

うらら「さ、ここみ。早速インタビュー特訓を始めるわよ!」

心美「え、う、うん…」

八幡「待て、なんでここでやるんだ。俺は1人で昼飯を食べたいんだ。あっちでやれ」

うらら「だってハチくんいるところじゃないとここみやらないって言うんだもん」

そう言われた朝比奈は俺に近づいて耳打ちしてきた。

心美「先生がいたほうがうららちゃん抑え気味にしてくれるかなって…迷惑ですか?」

八幡「いや、迷惑じゃないけど…」

それよりも腕に当たってる柔らかい感触が迷惑かもしれないです…

俺の返事を聞くと朝比奈は顔を遠ざけ、その表情は幾分か柔らかくなったように思える。

心美「あ、ありがとうございます…」

うらら「さ、じゃあやるわよ!まずは記事を見ながらダメだったところを見直すわよ」

八幡「そんなことからやるのかよ」

うらら「当然!うらら、インタビュー記事の直したほうがいいところにチェックしてきたから、これ参考にしてね」

そう言って蓮見が出した雑誌のインタビュー記事のページには付箋とマーカーと赤ペンとでびっしり埋まっている。どんだけこの記事読み込んでるんだよ…

心美「す、すごいねうららちゃん…」

八幡「もう何が書いてあるかさっぱり読めん」

うらら「これでもかなり少なくしたわよ」

八幡「……さいですか」

うらら「まずは最初よね。『大変ですけど、だ、大丈夫、です』なんて言っちゃダメよ!もっと可愛く自分をアピールしなきゃ!」

心美「ぐ、具体的にはどうするの?」

うらら「そーね、『でもうららは〜学生生活も、アイドル生活も、どっちも大好きなので〜、大変ってよりもむしろ今の状況が幸せです!』みたいな感じかしら」

八幡「おい、もうそれ蓮見の考えになってるぞ」

心美「うららちゃんはそうかもしれないけど、私はそんな風には言えないよ…」

うらら「甘いわよここみ!大事なのはこれを読んでくれる人にどう思われるのか。そのためなら自分を捨てる覚悟をしなさい!」

八幡「大袈裟だな…」

うらら「ハチくんも甘い!今の業界は本当に厳しいんだから!そもそも〜」

そうやっていつの間にか蓮見のアイドル論、業界論が始まり、俺と朝比奈はただ聞いてるだけしかできないうちに昼休みを終えるチャイムが鳴った。

心美「う、うららちゃん、もう昼休み終わっちゃうよ」

うらら「そうね、でもここみのインタビューについて全然話せてないじゃない!」

八幡「いや、お前が勝手に自分のこと話してたから終わらなかったんだろ」

うらら「しょうがないわね、続きは放課後やるわよ」

八幡「まだやるの?もうよくね?」

うらら「ダメよ!ここみにもきちんとインタビューくらいこなせるようになってほしいもん!」

心美「うん、私もインタビューに慣れたい」

うらら「よく言ったわここみ!ということだからハチくんも協力してね」

心美「私からもお願いします、先生」

八幡「…わかった」

妹と同じ年の女の子たちからのお願いなので断ることもできないどうも俺です。ほんと甘いな、俺。MAXコーヒーと同じくらい甘い。…はぁ、面倒なことを引き受けてしまった。
284 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/15(土) 00:14:43.41 ID:cXq54sKu0
番外編「ひなたの誕生日前編」


八幡「くぁっ、あー」

俺は今、学校の中庭を散歩している。ここは晴れた時の昼休み、爽やかな風が吹いて常盤が世話している植物が揺れるのを見るのがとても心地いい。何より人があんまりいない。騒がしい教室や職員室なんかよりよっぽど中庭のほうが気分転換に向いている。

ただ、今日は少々状況が異なっていた。

ひなた「うーん、うーん。ちょっと待っててね〜、今助けるからね〜」

見ると向こうの方にある1本の木の下で南が何かに話しかけながら上に向かって手を伸ばしている。何してんのあいつ。儀式?

関わりたくないなぁ、と思ってそれとなく回れ右をしたら突然大きな声が背中に飛んできた。

ひなた「あ、八幡くん!ちょうどよかった、ちょっと手伝って!」

八幡「いや、そんなわけのわからない儀式に付き合うほど俺は暇じゃない」

ひなた「違うよ!この木の上にネコがいるんだけど下りられなくなっちゃってるの。だから手伝って!」

あぁ、だから気に向かって手を伸ばしてたのね。そうならそうと早く言ってよ。

八幡「まぁ、そういうことなら別にいいけど」

ひなた「じゃあひなたのこと肩車して!」

八幡「はっ?」

ひなた「だって手伸ばしてもネコまで届かないんだもん」

八幡「つか俺には無理だから、多分」

ひなた「やってみないとわかんないでしょ!ほら早く屈んで!」

八幡「いたっ、肩を押すなよ…」

俺は渋々体を屈めて南を肩の上に乗せる。

八幡「ちゃんと乗れたか?」

ひなた「大丈夫!」

八幡「よし。ふんっ」

我ながら情けない声を出しながら俺は南を肩車する。思ったより南は重くないが、それでもキツイものはキツイ。

ひなた「おぉ!高い高い!」

八幡「そういう感想はいいから、早く猫捕まえて…」

ひなた「わかった!さぁ、おいで〜ネコちゃ〜ん」

南はゆっくり手を伸ばしてネコを捕まえようとする。その時突然猫が南の顔に飛び付いた。

ひなた「うわぁー、前が見えない〜!」

八幡「ちょ、動くな…」

そう言って南が俺の上で暴れ、それにつられて俺も右に左に揺れてしまう。

ひなた「八幡くん、動かないで!」

八幡「お前こそ動くな、って」

次の瞬間、俺の足は地面を離れ盛大に転倒してしまった。

八幡「いってぇ…」

ひなた「大丈夫?」

顔を上げると南がネコを抱えながら俺を心配そうに見つめている。

八幡「俺はまぁ平気だけど、お前は?」

ひなた「ひなたはちゃんと着地したからどこもケガしてないよ!ネコも大丈夫!」

ネコ「ニャー」

相変わらず抜群の運動神経なことで…
285 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/15(土) 00:16:24.97 ID:cXq54sKu0
番外編「ひなたの誕生日後編」


ひなた「それで、このネコどうしよう。何かエサもってきたほうがいいかな」

八幡「いや、ひとまずこのままそっとしておくのが1番だろ。見た所子猫のようだし、多分親猫がこいつを探してるだろ。むやみにエサあげて懐かれても、この後ずっと俺たちが世話してあげられるわけじゃないしな」

ひなた「そっか。じゃあ昼休み終わるまではひなたたちと一緒に親ネコ待ってようね」

ネコ「ニャ」

そう鳴くと子猫は座っている俺と南の隙間に入り丸くなって寝始めた。

ひなた「ふふっネコ寝ちゃったね」

八幡「いくらなんでもくつろぎすぎだろ…」

ひなた「ひなたと八幡くんの間にいるから、じゃない?」

八幡「まぁ俺は人間以外には好かれるからな。それにウチにも猫いるし扱いには慣れてる。俺からしたらお前が落ち着いてるのが意外だ」

ひなた「あ、ひどーい。今日はひなたの誕生日だからね。『オトナ』な女性になったんだよ」

八幡「そのセリフがもう子供っぽいわ…」

ひなた「もう子供じゃないもん!って、あれこの子の親ネコじゃない?」

南が指差した方には確かに子猫と似た毛並みをした親猫が歩いていた。

ひなた「ほら、お母さんかお父さんが迎えに来たよ」

南が優しく揺らすと子猫はすぐ起きて親猫のほうに歩いて行った。そして一度こっちを振り向いて「ニャー」と一鳴きした。

ひなた「うん、またね!」

そう言って手を振りながら子猫を送り出す南の横顔が、いつもの南とは全く違うように見えた。

ひなた「子ネコいっちゃったね」

猫が歩いていった方向を見つめながら南がつぶやいた。

八幡「あぁ。てかお前、もっとさびしがるかと思ってたけどそうでもないんだな」

ひなた「だってあの子ネコ、八幡くんの言う通り親ネコと会えたんだもん。これであの子も安心でしょ?」

八幡「…お前、意外とちゃんとしてんだな」

俺がそう言うと、南は頬を膨らませながら俺のことを軽く睨んでくる。

ひなた「またそうやってひなたを子供扱いする!ひなたは『オトナ』な女性なんだってば!」

八幡「だからそのセリフが子供っぽいんだっつの…でも、ま、お前ももう少し年を重ねたら、立派な『大人』な女性になれるんじゃねえの」

ひなた「ほんと?」

八幡「確証はできんがな。お前の努力次第ってとこだ」

実際、子猫を送り出すときの南の表情はあどけなさは全くなく、むしろ「美しい」ともいえるものだった。でもその表情も一瞬だったし、こうやって褒めるとまた南が調子に乗りそうだから言わないけど。

ひなた「じゃあ、ひなた頑張る!頑張って八幡くんに認められるような『オトナ』な女性になる!」

そうやって宣言する南の顔は、いつもの無邪気な笑顔に戻っていた。

八幡「でも今のままじゃまだまだだな」

ひなた「え〜、そんなことないってば!」

俺たちはそうやって言い合いながら教室へ戻っていった。
286 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/04/15(土) 00:18:17.13 ID:cXq54sKu0
以上で番外編「ひなたの誕生日」終了です。ひなたお誕生日おめでとう!正直、エヴィーナの次に考えるの難しかったです…
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/15(土) 02:03:15.39 ID:lJZcpRQFo
乙です
288 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/18(火) 20:26:50.56 ID:guKBuReR0
本編3-4


放課後、ところ変わって俺たち3人はとあるカフェにいる。てっきり俺は学校で特訓とやらをやるのかと思ってたのだが、蓮見の「せっかくだから3人でケーキを食べたい!」という発言を受け、移動したのである。

で、このカフェがまた見事に若い女性客ばかりで現在進行形で視線が痛い……入り口で店員に人数を言った時も「本当に3名様で宜しいですか?」とか聞き返されたし。まぁ、麗しい制服姿の女の子2人と、目が腐ってるスーツ姿の男1人でいたらそりゃ怪しまれますよね、はい。とりあえず席にはついたが、相変わらず居心地が悪い。

八幡「ねぇ、この店女性客ばっかりじゃない?」

うらら「だってこの雑誌に紹介された店だもん。当たり前でしょ」

そう言って蓮見は件の雑誌を開く。そこには「今話題のオシャレカフェ!」と題して、今いるカフェの店内の写真と紹介文が載っている。

八幡「つまり、このページ見て来たくなったのね…」

うらら「うぅ、だって女の子なら惹きつけられるのよ!ほら、ここみだって夢中じゃない」

俺の対角線上、蓮見の隣に座る朝比奈はそんな俺たちの会話が聞こえてないのか、メニューをじっと見て「これも美味しそう、でもこっちもいいなぁ」とブツブツ呟いている。

まぁ俺もさっさとメニュー決めるか。うーん、なんかここのケーキ、名前だけ凝っててどんなものか全然わからん。無難なものだと、

「無難なのだとこれがいいんじゃない?」

後ろから指さされたのはチョコケーキだった。

あぁ、確かに普通のチョコケーキとかなら味も予想つくな。って、後ろから指?

ガバッと振り向くとそこには俺と同じアホ毛が揺れる、ニコニコ笑う美少女が立っていた。

八幡「……小町、こんなとこで何してんの」

小町「お兄ちゃんのいるとこ、必ず小町もいるのです。あー、今の小町的にポイント高い?」

てへぺろっとしながら小町は空いている俺の隣に座る。ホントいちいちあざとい。

八幡「うぜぇ、で実際のとこは?」

小町「雑誌でこのお店を見て来たくなりました。ていうか、そういうお兄ちゃんこそ何してるの、女の子2人も連れて」

八幡「あぁ、それは、まぁ」

何て説明するのがいいのだろうか、と思っていると向かいの蓮見が俺に問いかけてきた。

うらら「ねぇ、ハチくん、この人誰?」

八幡「ん?俺の妹だ」

小町「はーい!お兄ちゃんの妹小町でーす!兄がいつもお世話になってます!それでお兄ちゃん、このお二方は?」

八幡「神樹ヶ峰の生徒の、」

うらら「蓮見うらら、中学3年生よ!よろしくねこまっち!そっか〜、ハチくんの妹か〜可愛い〜、なんかあんまり似てないね♪」

八幡「うるせぇ……」

蓮見は俺の言葉を遮って自己アピールをしつつ、俺をけなしてきた。まぁ、こんな兄に似ず、可愛く成長したのは奇跡だろう。ほんと似なくてよかった。特に目とか。てかこまっちって何?もしかしなくてもあだ名?

小町「おおっ、小町も中3なんだ〜!よろしくね!」

八幡「で、こっちが、」

小町「も、もしかして朝比奈心美ちゃん?」

小町は身を乗り出して朝比奈に迫る。対して朝比奈は少し身を引いて答える。

心美「は、はい、朝比奈心美です、よろしくね、小町さん…」

小町「わぁ!本物の心美ちゃんだぁ!雑誌で見るよりすごい可愛い〜!ていうか同い年なんだから小町でいいよ!」

心美「じゃ、小町ちゃん、で…」

小町「きゃー可愛い!もう、お兄ちゃん、こんな可愛い子たちとカフェでお茶とは、なかなかいい御身分ですなぁ」

八幡「俺はただの付き添いだ」

うらら「うららたち、今から心美のインタビューの特訓をやるの。こまっちも一緒にどう?」

小町「楽しそう!小町も参加していい、お兄ちゃん?」

八幡「……勝手にしろ」
289 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/19(水) 18:23:47.80 ID:uAWsROAo0
本編3-5


うらら「こまっちはここみのインタビューどう思った?」

心美「な、なんでも言って?」

小町「うーん、失礼かもしれないけど、なんだかすごく受け身だなって思った」

心美「受け身って、どういうこと?」

小町「なんて言えばいいのかな。ただ質問に答えてるだけっていうか、心美ちゃん自身の伝えたいことが何なのかよくわからなかった。それも可愛かったけどね!」

うらら「確かにそうね。ここみはもっと主体性を持つべきだわ!」

心美「しゅ、主体性?」

うらら「そうよ!自分が思ってることをもっと外に出していかないと!」

八幡「おいおい、いきなり主体性なんて言ってもそう簡単に身につくものじゃないだろ」

小町「え〜、そうかなぁ?」

うらら「うららは主体性持ってるよ!」

八幡「……確かにお前らは主体的すぎる。少しは遠慮しろ」

心美「や、やっぱり私がダメなのかな」

八幡「……ま、俺は朝比奈のそういう大人しいところも一つの個性として成り立ってると思うし気にしなくていいと思うけどな」

心美「そうですか?」

八幡「あぁ。俺を見てみろ。働きたくない、学校行きたくない、って常々言ってるだろ。それに比べたら全然大丈夫だ」

小町「いや、そりゃお兄ちゃんに比べたら人類のほぼ全員が良い人になっちゃうよ」

うらら「でもハチくんもなんだかんだキャラが立ってるのよね〜。それこそ主体的に『働きたくない』『早く帰りたい』って言ってるもん」

……確かに俺も一般的な人間とは口が裂けても言えない。まぁ小町や蓮見とは方向性が違うけど。

小町「あ、そうだ!小町閃いちゃった!」

そんな時突然小町が何か思いついたらしく声をあげた。

八幡「なに?」

小町「小町たちで心美ちゃんの魅力を見つけれてあげればいいんだよ!きっと自分の魅力がわかれば主体的になれるはず!」

うらら「それ名案!」

小町「でしょ?名付けて『心美ちゃんをプロデュース大作戦!』」

心美「そ、そんな、悪いよぉ」

朝比奈は遠慮がちに言うが、小町と蓮見はおかまいなしに話を続ける。

うらら「安心しなさいここみ。うららたちが必ずここみの魅力を見つけ出してあげるわ!」

小町「小町も全力でサポートするから!」

心美「あ、ありがとう」

なんだか話がおかしな方向に進んでないか?ここらで切り上げないとさらに話が脱線しそうだ。

八幡「そろそろいい時間だし帰るぞ、小町。じゃあな2人とも、気をつけて帰れよ」

小町「あ、ほんとだ。じゃあうららちゃん、心美ちゃん、またね!」

うらら「うん!またね、ハチくん!こまっち!」

心美「せ、先生、小町ちゃん、さようなら」
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/19(水) 23:28:36.03 ID:HjBF9Yhio
乙です
291 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/20(木) 18:03:12.34 ID:utF8+NEZ0
本編3-6


八幡「ただいまー」

小町「あはは、もううららちゃん面白い〜!あ、お兄ちゃんお帰り〜」

カフェの帰り際に小町は蓮見と朝比奈と連絡先を交換し、それ以来よく2人と電話するようになった。まぁ学校が違うから会えないってのはあるとは思うが、そんな電話することあるの?

小町「うん、うん、そうだね〜、それなら〜」

相変わらず電話を続ける妹を無視して俺はご飯をよそう。すでにテーブルの上には今日の晩ご飯のおかずが準備されている。たまに俺が帰るのが遅くなる時もあるのだが、そんな時でも小町はご飯を食べるのを待ってくれている。良い妹だ。絶対よそには行かせん。

八幡「ほら小町。飯食べるぞー」

小町「はーい!じゃあうららちゃん、こっちは任せてね。じゃあね!」

小町は電話を切って俺の向かいに座ると、わざとらしく咳払いを一つする。

小町「いやぁ〜、小町中3で受験生じゃん?家でも学校でも勉強してるからストレス溜まっちゃって。だからお兄ちゃん、週末小町のストレス発散に付き合って?」

えー、今の今まで楽しそうに電話してたじゃん。ホントにストレス溜まってるのかこいつは?と、思っても俺は言わない。何故かというと、言っても無駄だからだ。

八幡「まぁ、いいけど」

小町「ほんとに?」

八幡「小町がそう言うなら俺に拒否権はない」

小町「わーい!ありがとうお兄ちゃん!」

八幡「で、どこでなにすんの」

小町「そ、れ、は、当日のお楽しみでーす!」

こいつしばいたろか、と思う心を俺はぐっと抑える。

八幡「ふーん」

小町「テキトーだな。まぁいいや。とりあえず、週末は朝早く出かけるつもりだからよろしくね」

八幡「え、休日くらいゆっくり寝かしてくれよ」

一番楽しいのが次の日が休日の夜に死ぬほど無駄な時間を過ごして夜更かしして、次の日遅くまで寝ることじゃないのか。で、起きても結局夜まで何もせず「俺今日何やってるんだろ」って思って次の日の平日に絶望するまでがお約束。

小町「ダメ。寝るだけの休日なんて体に悪いよ。たまには外にも出ないと!」

八幡「はいはい、わかったよ……」

俺の反応を見て小町は満足したのか、ごはんを食べ始める。

小町「じゃ、よろひくねお兄ひゃん!」

八幡「食べながらしゃべるな、汚い」
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/21(金) 03:24:47.62 ID:q2Ns2skOO
期待
293 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/21(金) 20:55:43.23 ID:fmvzb7dp0
本編3-7


迎えた休日。俺は早朝に小町に起こされ、今電車の中にいる。休日の、しかもまだ朝早いためか、そこまで人も乗っていない。

こうして空いてる電車に兄妹2人で乗ってると、なんか逃避行みたいで少しワクワクする。本当に現実から逃げられないかなぁ。最近の神樹ヶ峰との交流からは特に逃げたい。

小町「なーに朝から目腐らせてるのお兄ちゃん」

八幡「俺は悪くない。社会が悪い。つか、これどこ向かってるの」

小町「んー、まだ内緒〜」

今はこんな理解できない状況からも逃げ出したい。

小町「でももう着くから!ほら、ここで降りるよ」

小町に促され電車を降りたものの、周りにはこれといって目立つ建物は見当たらない。

八幡「小町、こんなところで何するつもりなんだ?」

小町「行けばわかるから!ほら行くよ〜」

そう言って意気揚々と歩く小町の後ろを付いて歩いていく。しかし、見渡してもストレスが発散できそうなスポットは見えない。強いて言えば緑豊かな景色くらい。

すると唐突に小町が立ち止まった。

小町「はい、到着!」

八幡「は?ここ?なんもないんだけど」

小町「え、あるじゃん鳥居」

八幡「なに、鳥居巡りでも始めるの?」

小町「小町そんな趣味は持ってないよ…ここで待ち合わせすることになってるの」

八幡「待ち合わせ?誰と?」

うらら「うららとだよーん!ハチくん、こまっちおはよー!」

心美「うららちゃーん、1人で行かないでよぉ」

突然の蓮見と朝比奈が神社の中の方からこちらへ走って来た。

小町「あ、うららちゃん、心美ちゃんおはよ!約束通りお兄ちゃん連れてきた!」

うらら「さすがこまっち!」

心美「き、今日はよろしくお願いします」

八幡「……あの、状況が全く飲み込めてないんですけど」

心美「実は雑誌にインタビューが載って以来、平日でも参拝客が増えちゃったんです。だから休日はもっと増えると思って、うららちゃんと小町ちゃんにお手伝いをお願いしたんです」

うらら「で、それに合わせてこの前カフェで言ってた『心美をプロデュース大作戦』も実行するの!」

八幡「……はぁ、なんとなく状況はわかった。で、なんで俺も連れてこられたの?」

小町「少しでも人手あったほうがいいと思って連れてきちゃった。どうせヒマでしょ?」

八幡「いや、ヒマだけどさ。それならそうと言ってくれよ」

小町「でもお兄ちゃん、神社でお手伝いって言ったら絶対来なかったでしょ」

八幡「……確かに」

心美「あの、迷惑だったでしょうか?」

八幡「ま、来ちゃったからには、俺にできる範囲で手伝うわ」

余計逃げ出したくなったのが本音だが、今さら帰るとも言えないし……

心美「あ、ありがとうございます」

うらら「よーし、そしたら心美の神社のお手伝いアーンド『心美プロデュース大作戦』決行よ!」

小町「おー!」

心美「お、おー」

八幡「はぁ……」
294 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/22(土) 23:44:40.47 ID:Jg67jXwl0
本編3-8


朝比奈に連れられ、俺たちは神社の奥の控え室に案内された。

心美「で、では先生。ここが先生の控え室です。着替えをして少し待っててください」

八幡「着替えって、これにか?」

俺は机の上に置いてある袴を見ながら尋ねる。

心美「は、はい。一応、それなりの格好をしてもらわないといけない決まりになってるので」

八幡「……了解」

小町「もしかして小町の服もあるの?」

うらら「もちろん!こまっちの服は隣の控え室にあるわよ」

小町「おぉ!やった!」

心美「じゃ、じゃあ私たちも着替えてくるので失礼します、先生」

八幡「おう」

でも1人になって改めて考えると、これ着るのけっこう恥ずかしいな。てかこれどうやって帯しめるの?

悪戦苦闘してると隣の部屋から声が聞こえてきた。

小町「お兄ちゃんー、小町たち着替え終わったよー」

八幡「おー、俺も終わったぞ」

結局帯の結び方がよくわからず適当に結んでしまった。ま、着れてればいいでしょ。

小町「じゃ入るねー」

襖が開くと、そこには3人の艶やかな巫女が立っていた。

3人とも真っ白な白衣を上半身に纏い、下半身には鮮やかな赤い緋袴を身につけている。髪もみんないつもと違い、後ろで一つにまとめていて清楚な雰囲気を醸し出している。

うらら「どうどうハチくん?」

小町「小町たち、似合ってるでしょ?」

八幡「あぁ。まぁ、いい感じなんじゃねぇの」

ついぼーっと眺めてしまい、そんな感想しか口に出せなかった。

小町「ありがとー!でもお兄ちゃんはそんなに似合ってないね」

八幡「うっせ」

心美「あ、あの、先生。結び方が間違ってます。直すので動かないでください」

そう言うと朝比奈は膝立ちになって、俺の腰の帯を結び直そうと腰に腕を回してくる。……なんかこの状況そこはかとなくいかがわしくない?

心美「はい、結べました。先生苦しくないですか?」

朝比奈は少し心配そうに上目遣いをしながら聞いてくる。そんな表情すんなよ、ちょっとドキッとするだろうが。

八幡「え?おう、大丈夫大丈夫。助かった」

心美「よかったですぅ」

安心したように笑顔になる朝比奈とは異なり、小町は不敵な笑みを浮かべ、蓮見は拗ねるようにそっぽを向いている。

八幡「おい、どうした?小町、蓮見」

小町「思わぬダークホースの登場かな?」

うらら「……ここみには負けないもん」

2人はなにかぶつぶつ言っているがよく聞こえない。

八幡「なんだって?」

小町「べつに〜」

うらら「なんでもないわよ!」
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/23(日) 10:28:28.52 ID:iH7JofyDO
つC
296 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/23(日) 14:31:09.31 ID:yZ6uxURGO
本編3-9


うらら「はーい家内安全お守りは800円でーす!」

小町「おみくじはこっちですよ〜!」

着替え終わった俺たちは境内で手伝いを始めた。小町と蓮見は売店で売り子さんをしている。売店はたちまち盛況になり、「売り子さん可愛いよね」みたいな会話がたまに聞こえてくる。で、そんな俺は

八幡「……」

売店に並ぶ長蛇の列の整理役をやらされている。それも『こちらが列の最後尾です』という看板を持って立ってるだけ。列に割り込もうとする人に声をかける以外は無言である。なにも面白みはないが、心のスイッチを切れば耐えられないこともない。

そして朝比奈はというと

少女A「めっちゃ可愛い〜!」

心美「あ、ありがとうございます」

少女B「一緒に写真撮ってもらってもいいですか?」

心美「は、はい」

本殿のほうでちょっとした人気者になっていた。朝比奈の周りには同年代の女の子たちが群がり、遠くから怪しいおっさんが数人、その光景をカメラに収めている。おい、おっさん。それ犯罪だぞ。やめろよ。

男「すんません、トイレどこっすか?」

八幡「あ、トイレなら絵馬掛けの向こう側にあります」

男「あざーす」

俺に声をかけてくる人はこんなもんしかいない。それでも大変なのに、3人とも大勢の人に笑顔で対応してすげぇな。俺には絶対できない。

そうして突っ立ってしばらく経った昼ごろ、小町と蓮見が俺のところへやってきた。

小町「お兄ちゃんお疲れー」

八幡「おう、そっちは休憩か?」

うらら「うん。うららとこまっちの可愛さでお守りが飛ぶように売れちゃって大変!」

八幡「そいつはよかったな」

小町「ほらお兄ちゃん。もうそんなに列も長くないし、本殿のほう行こ」

八幡「本殿でなんかあるの?」

うらら「心美が舞うの!」
297 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/04/23(日) 14:39:15.48 ID:yZ6uxURGO
うららの喋り方のコレジャナイ感がすごい…
どうすればうららっぽい喋り方になるんだ…
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/23(日) 20:11:02.51 ID:d/K9nV+A0
乙。
別にそう違和感はないよ、脳内再生余裕
「ここみ」がいつの間にか漢字になってるけど
299 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/04/23(日) 23:10:01.65 ID:yZ6uxURGO
>>298うららの心美への呼び方が違ってました。これから先は気をつけます
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/24(月) 02:01:05.16 ID:OO3I0VXxo
乙です
301 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/24(月) 22:26:02.71 ID:JbfaqJzS0
本編3-10


俺たちが本殿に行くとすでにかなりの人だかりができていて、舞台には朝比奈が立っていた。

放送「これより当神社の巫女、朝比奈心美が舞を披露いたします。参拝客の皆さま、美しい舞を是非ご覧ください」

放送が終わると、神楽が鳴り始める。朝比奈はその音楽に合わせてゆったりと、優雅に舞う。手にある扇も使いながら美しく舞う姿からはいつもの臆病な雰囲気は全く感じない。

小町「キレイ……」

うらら「やるわね……」

小町や蓮見はもちろん周りの人たちも朝比奈の舞に魅力されているようで、ため息や囁き声があちこちから聞こえる。

小町「心美ちゃんすごいねお兄ちゃん」

八幡「あぁ」

小町「でも舞台が黒いのがもったいないよね。ちゃんと掃除しなきゃ。せっかく舞が綺麗なのに」

八幡「あ?床?」

注意して見てみると、確かに木が黒くなっている箇所がある。あれって、

八幡「……!おい蓮見。舞台の床を見ろ」

うらら「え?ん〜、あっ。これってまさか……ここみ!床!!」

蓮見の声が聞こえたのか、舞台上の朝比奈も床の異変に気付き舞を中断する。

その時床の黒い魔法陣が光り、そこからイロウスが出現した。

うらら「イロウス!」

心美「皆さん!今すぐここから逃げてください!」

蓮見はすぐに武器を出しイロウスへ飛びかかる。朝比奈は舞台上から大声で呼びかけるが、その途端に参拝客は我先に走り出し、本殿は混乱している。このままだと参拝客が危ない。それを防ぐには、

八幡「小町。お前は神社にいる人の避難を指揮してそのまま逃げろ」

小町「え?でもお兄ちゃんは?」

八幡「俺はここに残る。曲がりなりにもあいつらの先生だからな」

小町「なら小町も残る」

八幡「ダメだ。参拝客には完全に避難してもらわないと戦いづらい。それに、もし小町の身に何か起こったら俺が親父に殺される。俺の命のためにも逃げてくれ」

小町「目的が半分お兄ちゃんのためになってるよ……でもそう言うならわかった。お兄ちゃんの言う通りにするよ」

八幡「頼む」

小町は一度大きく頷いて人混みの方へ駆け出していった。

八幡「蓮見、なんとか小町が参拝客を避難させるまでここで持ちこたえてくれ」

うらら「わかった!」

心美「あの、私は何を」

八幡「朝比奈は参拝客が残っていないか神社を見回って、誰もいないのが確認できたら連絡してくれ」

心美「わ、わかりました。待っててねうららちゃん!すぐ戻ってくるから」

うらら「足止めは任せときなさい!」
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/25(火) 00:38:39.21 ID:tUQrPHfXo
乙です
303 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/25(火) 20:44:38.28 ID:wURqF/Kd0
本編3-11


八幡「じゃあ俺たちはこいつらをどうにかするか」

改めて俺と蓮見はイロウスに向き合う。

うらら「どーにかするのはうららでしょ♪」

八幡「……確かに」

うらら「いや、そんな意味で言ったんじゃないからね。元気出して!」

八幡「別に落ち込んでねぇよ。ほらイロウスに集中しろ」

うらら「大丈夫!小型イロウス数匹くらいなら余裕よ!」

蓮見はそう意気込んで杖を構える。魔法陣から出てきたところを見ると、こいつはレイ種ってやつか。

うらら「星守うららのステージ開幕よ!『炎舞鳳凰翔』!」

たちまち炎に包まれた蓮見は飛び上がり、上空からイロウスに向かって突撃する。その攻撃で周囲のイロウスはたちまち消滅する。

うらら「どうどうハチくん!うららの勇姿!」

八幡「ご苦労さん。あぁ、まぁ良かったんじゃねえの」

うらら「うわー。こまっちに聞いた通り、褒めるのも素直じゃないなぁ」

八幡「うるせ。つかまだ大型イロウスを倒せてない。油断すんな」

小型イロウスをいくら倒しても大型イロウスを倒さないと意味がない。絶対近くにいるはず。

その時通信機が鳴り出した。多分朝比奈からだろう。

八幡「もしもし」

心美「せ、先生!助けてください」

予想に反してかなり切羽詰まった声色だ。

八幡「どうした」

心美「神社全体にイロウスが出現していて、私1人では倒しきれないです。ど、どうすれば」

八幡「わかった。蓮見とすぐそっちに向かう。今どこだ」

心美「い、今は売店前の参道にいます」

八幡「すぐ蓮見と向かう。俺たちが行くまで無理はするなよ」

心美「わ、わかりました。お願いします」

そうして通信は切れた。くそ、すでに神社全体が襲われてるのか。

八幡「おい蓮見。ここだけじゃなくて神社全体にイロウスが現れてると今朝比奈から連絡があった」

うらら「ここみは大丈夫なの?」

八幡「無理はしないように言っといた。だが早く合流しないとマズイ」

うらら「すぐ行くわよ!」
304 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/27(木) 23:19:42.34 ID:dn6LpICn0
本編3-12


俺たちが参道に着くと、朝比奈が多数のイロウス相手に孤軍奮闘していた。

うらら「ここみ!」

心美「うららちゃん!先生!」

八幡「大丈夫か?」

心美「は、はい。でもイロウスが多すぎて対処しきれなくて……」

小型イロウスばかりだが、いかんせん数が多いのと散らばってるのとで効率的に倒せていない。

うらら「ハチくん!うららのスキルで一網打尽にするわ!」

八幡「でもさっきのスキルじゃせいぜい周り数メートルのイロウスしか倒せないだろ」

うらら「ふふん、うららを甘く見ないでよ!さ、ステージ第二幕の開演よ、『パンプキンクイーン』!」

蓮見が叫ぶと上空から大きなかぼちゃが降ってきた。かぼちゃ?

八幡「は?なにこれ?」

心美「うららちゃんのスキルです。あのかぼちゃが時限爆弾になってるんです」

八幡「時限爆弾?」

うらら「でもただの時限爆弾じゃないわよ!」

何がだ、と言いかけた時異変に気づいた。どの小型イロウスもかぼちゃに吸い寄せられていくのだ。

八幡「もしかしてこの爆弾」

うらら「そう、かぼちゃがイロウスを引き寄せてくれるの。さ、ここみ!今のうちにイロウスを叩くわよ!」

心美「う、うん!」

そうして2人は外からイロウスを攻撃してその数を減らしていき、

うらら「そろそろ爆発するわ!」

時間が経ったかぼちゃは周りに残ったイロウスを巻き込んで爆発した。

八幡「よし、これでかなり数が減ったな」

心美「でもまだ残ってます」

うらら「もう一回かぼちゃをやればいいだけの話よ!『パンプキンクイーン』!」

再びかぼちゃが降ってきて、イロウスが引き寄せられていく。

うらら「いくわよここみ!」

心美「うん!」

だが次の瞬間、かぼちゃが爆発した。

八幡「な、なにが起こった?」

うらら「うっ。実はあの爆弾、一定以上のダメージを受けても爆発する仕組みになってるの」

八幡「てことはまさか」

心美「た、多分出てきたんだと思います。大型イロウスが」

煙が晴れてくると、朝比奈の言う通り大型イロウスの輪郭が見えてきた。高さは4,5メートルほどで全身骨だが、角としっぽがあるぶんさらに巨大に感じる。

八幡「こいつがおそらく親玉だな」

心美「お、大きいよぉ」

うらら「しっかりしなさいここみ!大丈夫、うららたちならできる!」
305 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/05/01(月) 00:57:32.71 ID:UaigGRmc0
本編3-13


蓮見と朝比奈は杖を構え大型イロウスへ攻撃を仕掛けようとする。しかしその攻撃を次々と湧いてくる小型イロウスが身代わりとなって受け、大型イロウスに攻撃が届かない。

うらら「もうっ!なんなのよあの小型イロウスは!」

心美「し、しょうがないようららちゃん」

八幡「攻撃し続ければ隙が生まれるはずだ。そこを逃すな」

そうして攻撃を続けると小型イロウスが湧いてこない瞬間ができた。

八幡「今だ!」

うらら「はあっ!」

心美「やぁ!」

2人はすぐさま攻撃するが、大型イロウスは地中へ潜って攻撃をかわす。

うらら「今度は隠れるのね」

心美「ど、どこから現れるんだろう……」

マジか、また地中に隠れるのか。千葉に現れたシュム種といい、イロウスって地中が好きなの?そのまま地中に潜っていなくなってくれるとありがたいんだが。

などと考えていると蓮見の足元に大きな黒い魔方陣が出現した。

八幡「蓮見!足元に注意しろ!」

うらら「わかってる!」

すぐに魔方陣が光りだし、そこから大型イロウスが腕を振り回しながら現れる。だが、蓮見は素早く緊急回避のためにローリングして攻撃をかわす。

心美「うららちゃん!」

うらら「うららは大丈夫!早く大型イロウスに攻撃を!」

心美「うん!」

朝比奈は大型イロウスを攻撃する。しかし大半の攻撃はまた湧き出した小型イロウスが身代わりに受けたため、ほとんど大型イロウスにダメージを与えられない。

心美「ま、また小型イロウスが……」

うらら「もうどうすればいいのよ!」

八幡「どうするもなにも、こうなったら小型イロウスもまとめて攻撃するしかないんじゃないか」

心美「それならスキルを連発するしか……」

うらら「なら連発すればいいじゃない!」

そう言うと蓮見は矢継ぎ早にスキルを連発していく。

うらら「『チャーム・アイズ』!『エレクトロサポート』!」

蓮見のスキル攻撃でダメージを大型イロウスに与えることに成功した。

うらら「『チャーム・アイズ』でマヒさせて、『エレクトロサポート』でパワーアップしたうららの攻撃を受けなさい!『炎舞鳳凰翔』!」

だが蓮見がスキル名を唱えてもさっきみたいな炎は出てこない。

心美「うららちゃん……?」

八幡「……お前もしかして」

うらら「SP使い切っちゃった……」

八幡「なにやってんだ。スキル使えなくなるってかなりやばいぞ」

うらら「だ、だって参道に来た時に『パンプキンクイーン』何回も使っちゃたんだもん!それに小型イロウスもまとめて攻撃しろって言ったのハチくんじゃん!」

八幡「いや、確かにそう言ったけど、ここまでするとは思わないだろ」

自分でできること減らしてどうするんだよ。でも今さら後悔してもどうしようもない。まずはこの状況を打開することを考えないと……
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/01(月) 02:43:43.76 ID:7O88FGMMo
乙です
307 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/05/02(火) 01:25:05.61 ID:CeRDX9tz0
本編3-14


心美「あ、あの」

朝比奈が胸の前で手をもじもじさせながら話しかけてきた。だから、その胸の前に手置くなよ。見ちゃうだろ。小町や蓮見にはないものを。

八幡「どうした?」

心美「わ、私のスキルでうららちゃんのSP回復してあげられますけど」

八幡「ほんとか?」

うらら「さすがここみ!」

心美「で、でもスキルの攻撃力はそこまで高くないんですけど」

八幡「蓮見のSP回復が最優先だ。すぐ頼む」

心美「じゃ、じゃあ、先生。私のそばに来てくれませんか?」

八幡「え、なんで?」

心美「そうしないとスキルが発動できないんです……」

なにその発動条件。回復対象の蓮見が近づくならわかるけどなんで俺?

うらら「ほらハチくん!早くここみに近付いてよ!」

俺が朝比奈に近付かないことに見かねて、蓮見が俺の背中を押した。そのせいで朝比奈との距離がほぼゼロ距離になり、朝比奈からうっすらシャンプーのいい香りがするっていうどうでもいい知識を身につけた。てかめっちゃ近いんですけど。色々女の子らしいものが目の前にあって視線が泳ぐ。

八幡「あ、悪い」

心美「い、いえ」

……なにこの沈黙。あれ、てかなんで俺朝比奈に近付いたんだっけ。

うらら「ほらここみ!早くスキル発動させなさいよ!」

心美「あ、うん。じゃあ先生」

そう言って朝比奈はハンカチを出して、それを俺の顔に向けてくる。自然とそのハンカチを目で追っているとその向こう側の朝比奈と目が合う。

心美「ブ、『ブラッシュアプローチ』!」

その瞬間、朝比奈はハンカチを引っ込めて顔を赤らめて横を向いてしまう。そんな朝比奈から大量のハートが飛び出して降り注ぐ。

……ていうか何この状況、どうすればいいの?なんか朝比奈の顔、真っ赤になってるし。こういうときって俺がフォローすればいいの?いや、そんなことして朝比奈が全然気にしてなかったら俺恥ずかしいだけだし。でも相手は朝比奈だぞ?絶対男の人にこんなことしたことないだろ。やっぱり何か一言言うべきか。

八幡「あ、」

うらら「ありがとうここみ!SPも回復できたし早く大型イロウス倒すわよ!」

俺が口を開く前に、蓮見が朝比奈に声をかけた。

心美「う、うん!そうだねうららちゃん」

蓮見の声掛けによって朝比奈も落ち着きを取り戻したらしい。むやみに俺が話しかけなくてよかった。

と思ったら蓮見が俺の腕をつかんでそのまま強引に引っ張ってきた。おかげで顔と顔がめっちゃ近くなって、蓮見の髪から朝比奈と同じシャンプーのいい香りがするっていうどうでもいい知識を身につけてしまった。蓮見はそんな俺にはおかまいなしに耳元で囁いてきた。

うらら「ここみに変な感情抱かないでよ」

八幡「んなわけないだろ。持たねぇよ」

うらら「でも赤くなってた」

八幡「あれは、まぁ、不可抗力だ」

うらら「ま、そうだね。今も赤くなってるし♪」

八幡「なっ」

恥ずかしくなって俺は蓮見の腕を強引に振りほどく。蓮見は残念そうに「あぁ〜」とか言ってる。

八幡「おい、からかうなよ」

うらら「しょうがないでしょ。ここみには負けたくないんだもん……」

最後の言葉がよく聞こえなかった。何がしょうがないんだ。聞こえないんだよ。

八幡「なんだって?」

うらら「なんでもない!」
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/02(火) 21:05:08.87 ID:eoaofe1Zo
???「え!?なんだって!!??」
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/03(水) 05:31:43.09 ID:VeiXW3NAo
乙です
310 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/05/04(木) 00:06:31.97 ID:JglSceBy0
番外編「昴の誕生日前編」


5月4日。本来ならゴールデンウイークを家で謳歌しているはずなのだが、今日は若葉と出かけることになっている。しかし、ゴールデンウイークというのは本当に素晴らしい。長い連休は普段のせわしない生活からの脱却を可能にし、自分の時間をゆったり過ごす余裕を与えてくれる。反動として連休明けの戻って来た日常への反抗心もまた大きなものになるのが悩みどころだが。

さて、集合場所に来たのはいいものの、すごい人だな。さすがゴールデンウイーク。で、若葉はどこ?いない?ならしょうがない。帰るか。

昴「あ、先生!こっちです!」

声のする方を見ると、若葉が両手をぶんぶん振って俺にアピールしている。服装はいつもの制服やジャージではなく、白のTシャツの上に黄緑色のノースリーブのパーカーを重ね着している。下は黒のホットパンツでいかにも若葉らしい健康的な印象を受ける。

八幡「うす、よく俺の事見つけられたな」

昴「先生見つけやすいですから」

八幡「俺そんな悪目立ちしてる?」

昴「そ、そういう意味で言ったんじゃないですよ!とりあえずここから移動しませんか?」

八幡「あぁ、でもちょっと休ませて。普段こんな人込みの中にいないから今の状況ツライ」

昴「まだ会って何分も経ってないじゃないですか!ほら行きますよ!」

俺は若葉に引っ張られ今日の目的地、サッカースタジアムまで歩き出した。

八幡「つか、今更だけど別に一緒に行くの俺じゃなくてもよかったろ。星月とか誘ったら絶対付き合ってくれるんじゃないの」

昴「いえ、色々声をかけてみたんですけどさすがにサッカー観戦までは付き合ってくれなくて。ホントはもともと先生と行きたくて誰にも声かけてないけど」

最後のほうが周りの雑音のせいでよく聞こえなかった。何、誘っても断られるとかちょっと同情しちゃう。

八幡「ま、せっかくチケットもらったんだから有効活用しないともったいないか」

実は数日前、くじで当てたとかで御剣先生からサッカーの試合のチケットを2枚もらった。俺はあまり興味がなかったからフットサル部の若葉にチケットを譲ったのだが、一緒に行く人がいないということで俺が付き合うことになったのだ。

昴「そうですよ!アタシ、この試合ずっと生で見たかったんです!でも人気なのでなかなかチケット手に入らなくて」

八幡「へぇ、そんなに人気なのか」

昴「はい!両チームとも毎年優勝争いを繰り広げる強豪なんです!だからこの対決はその年の優勝チームを決める上で毎年大事な一戦になるんです!」

八幡「ふーん」

昴「あの、先生。もしかしてあまり乗り気じゃないですか?反応が薄いような」

八幡「ま、正直そこまで乗り気ではない。サッカーの試合なんてテレビでしか見たことないし」

昴「正直すぎますよ……でも生で見るサッカーはテレビよりも何倍も楽しいですから!アタシが保証します!」

八幡「でも俺サッカー見ても何がすごいのかイマイチわからないんだけど」

昴「それなら試合が始まるまでアタシが教えてあげますよ!今日の2チームはその特徴がはっきりと分かれていて、注目の選手がそれぞれ……」

途中から何を話しているか理解できなくなったが、若葉は試合が始まる直前まで話を止めなかった。

八幡「若葉、そろそろ試合が始まる時間なんだが」

昴「あ、もうそんな時間なんですね。気づかなかったです」

八幡「あぁ。ま、途中からお前喋っててばっかりだったもんな」

昴「す、すいません。でもとにかく今日の試合は盛り上がること間違いなしなんです!」

八幡「わかったわかった。ほら、選手入場だとよ」

いつもテレビで聞く名前がわからない音楽が流れると、選手が入場してきた。

昴「わぁ!先生!本物の!本物の選手たちですよ!」

八幡「わかったから少し落ち着け、な?」

昴「落ち着いてなんていられませんよ!この対戦を見られるなんて夢みたい!」

八幡「そうですか……」

若葉はそんなハイテンションのまま、試合終了までまさに全身全霊で試合を楽しんでいた。
311 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/05/04(木) 00:18:03.77 ID:JglSceBy0
番外編「昴の誕生日後編」


試合は両チームとも見せ場があり、素人の俺でもそれなりに楽しめる内容だった。

八幡「ほら若葉。試合終わったから帰るぞ」

昴「は、はい」

だが俺たちの負けられない戦いはここから始まったのだ。帰りの電車に乗るために観客が一斉に駅に移動する。最寄り駅は一つしかなく、それもまた大きいとは言えなかった。そこにこの数万の観客が一気に押し寄せるのだ。必然、スタジアムの出口付近から大混雑が始まる。

八幡「おい、若葉。大丈夫か?」

昴「大丈夫です!」

押し合いへし合いながら、俺たちは時々声をかけ合い駅まで進んでいった。しかし、スタジアムと駅の中間地点くらいからまずます混雑が激しくなってきた。

八幡「若葉?いるか?」

当然いるものだと思って声をかけたのだが返事がない。

八幡「若葉?返事しろ!?」

もう一度声をかけても返事がない。……はぐれたか。ま、あいつなら一人でも帰れるか。俺より頑丈そうだし。

昴「先生……」

その時、かすかに、でもはっきり若葉の俺を呼ぶ声が聞こえた気がした。

八幡「若葉!」

俺がなんとか体を入れて流れに逆らって歩いてきた道を戻ると、道のすみで膝を抱えてうつむきながら座り込んでいる若葉を見つけた。

八幡「若葉、お前何やってるんだよ」

昴「先生?ほんとに先生?」

俺が声をかけると、若葉は顔を上げて俺を見つめてくる。その目はうっすら潤んでいる。

八幡「いくら目が腐ってるからとはいえ、幽霊扱いはさすがに傷つくぞ」

昴「幽霊なんて言ってないですよ。はは、でも本当に先生だ」

若葉ははにかんでそう言うが、声に力がない。それこそ幽霊みたいに見えてもおかしくない。

八幡「……はぁ」

仕方なく俺も若葉の隣に座ることにした。こんな状態の若葉を放っておけないし、かといって無理やり動かすのも気が引ける。

しばらく無言のまま座っていると、若葉がぽつぽつと語りだした。

昴「アタシ、今日浮かれてたんです。誕生日にずっと見たかったサッカーの試合を先生と見ることができるんだって」

八幡「……」

昴「でも、帰る途中に先生とはぐれて思ったんです。今日楽しんだのはアタシだけだったんじゃないか。先生は無理にアタシに付き合ってくれたんじゃないか。だからアタシは先生とはぐれちゃったんじゃないかって」

八幡「ま、確かにサッカーに関してはあまり興味はなかったな」

昴「そうですよね……」

八幡「でも、なんだ。今日はお前の誕生日なんだから、お前が楽しめたならいいんじゃないのか?それに、俺も今日若葉と過ごせて、悪くはなかったかなって思ってる」

その言葉に嘘はない。なんだかんだ楽しめた気がする。若葉の話のおかげで試合の見るポイントもわかったし、試合が見れたから若葉が楽しむ理由もわかったのだ。だから若葉が自分で自分を責める必要は全くない。俺1人で見てたら絶対ここまで楽しめなかった。いや、1人だったら見には来ないか。

昴「……ありがとう先生。やっぱり先生と来られてよかったです」

八幡「そうか」

昴「さ、帰りましょうか。もう人もだいぶ減りましたし」

八幡「あぁ」

そう言って俺たちは立ち上がって歩き出した。ふと空を見上げるとどの星も瞬いているように見える。普段の夜空と変わらないはずなのに今日に限っては普段より綺麗な感じがする。

そんなことを考えながら歩いていると、ふいに若葉が数歩走ってから立ち止まり、こっちを振り返った。その顔は今日見た中で一番の、若葉らしい眩しい笑顔だった。

昴「先生!来年もまた2人でサッカー見ましょうね!」

八幡「……チケットがあれば考える」

昴「言いましたね!絶対手に入れますから!」

そんなことを言い合うと俺たちはまた駅に向かって歩き出した。
312 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/05/04(木) 00:28:34.18 ID:JglSceBy0
以上で番外編「昴の誕生日」終了です。昴誕生日おめでとう!自分も昴とサッカー観戦したい。
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/04(木) 16:32:26.32 ID:BIHD/P4To
乙です
314 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/05/05(金) 17:41:55.56 ID:xi67hfcp0
本編3-15


うらら「『炎舞鳳凰翔』!」

朝比奈にSPを回復してもらった蓮見は再びイロウスに対しスキル攻撃を行う。そして数回スキルを使った後、

うらら「ここみ!回復お願い!」

心美「う、うん!『ブラッシュアプローチ』!」

うらら「よし!まだまだいくわよ!」

こうして蓮見がイロウスを攻撃し、朝比奈が蓮見のSPを回復するという役割分担が自然と出来上がった。俺はと言えば、スキル発動のために毎回毎回朝比奈と顔を近づけているだけである。さすがに何回もやれば慣れるだろうと思ったが全然そんなことはない。むしろ毎回ドキドキしすぎて心臓が過労死しそうなレベル。

心美「な、何回もすみません先生」

八幡「い、いや、スキルのためだもんな。しょうがないしょうがない」

朝比奈もまたこの状況に慣れないのは俺と同じらしく、毎回動作がぎこちない。

うらら「もうここみもハチくんもいい加減慣れてよ!初心なカップルみたいな光景を見せられるうららの気持ちも考えて!」

何回目かの朝比奈のスキル発動ののち、蓮見がしびれを切らして文句を言い始めた。

八幡「いや、そう言われても慣れないものは慣れないし」

心美「ご、ごめんねうららちゃん」

うらら「まぁ百歩譲ってここみは普段男の人と関わりないからいいとして、ハチくんはなに?高校生でしょ?こういうことの一つや二つ経験あるでしょ?」

八幡「俺をなめるな蓮見。今まで俺の恋愛が成就したことなんて一度もない。それどころか失敗ばかりが積み重なっていき、結果が今の俺だ」

そう、誕生日にアニソンセレクトを送ったり、やたらメールをしてみたり、話しかけられただけで勘違いしたり。負けることに関しては俺最強。

心美「せ、先生も大変なんですね。わ、私は男の人に話しかけることなんてできないのですごいと思います」

うらら「こまっちの話だと高校で何かしらあってもいい感じだったのに。意外とそうでもないのね」

そんな俺の発言に2人は意外にも好意的な反応を示してくれた。

八幡「ま、そういうことだ。だから蓮見、俺たちがぎこちなくても許せ。どうしようもないことなんだ」

うらら「ならここみ!うららと役割変わって!」

八幡「は、お前何言ってんの」

うらら「だって、このままじゃいつまでたってもぎこちないままでしょ?ならうららがハチくんに色々教えてあ・げ・る」

八幡「いやいらないから。それにこれはイロウス倒すために仕方なくやってることなの。わかってる?」

心美「し、仕方なくですか……先生は私に近付かれるのが嫌ですか?」

八幡「別に好きとか嫌いとかの話じゃなくて。つか、そしたらイロウスには誰が攻撃するんだよ」

うらら「ここみがやればいいじゃない」

心美「でもうららちゃん、SP回復スキル持ってないよね?」

うらら「う、それはあれよ。ほら、気合でなんとか」

八幡「できるわけないだろ。てか話してる暇なんてないだろ。2人ともイロウスに集中しろ」

うらら、心美「はい……」

そうこうしてるとまた蓮見のSPが切れたため、朝比奈のスキルを使うときがきた。しかし朝比奈がなかなか近づいてこない。

八幡「あの、朝比奈?早くしてくれない?」

心美「あ、あの、私も早くしたいんですけど、先生も私と同じで経験がないってことがわかって余計意識しちゃって」

なんでそんなに顔赤いんだよ。俺まで余計に意識しちゃうだろうが。

その時、朝比奈の背後から大型イロウスが現れ、朝比奈の足元に黒い魔方陣が現れた。だが朝比奈はゆっくりこっちに歩いたままそれらに気づかない。

八幡「朝比奈!危ない!」

心美「え?」

俺は走り出しながらそう叫んだ。朝比奈はようやくイロウスや魔方陣に気づいたが、もう回避行動をとるには遅すぎる。すでに足元の魔方陣は光り出している。

心美「あ、あぁ」

朝比奈は恐怖のあまりその場から動けないでいる。だが俺も助けるには走っても位置的に間に合わない。
315 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/05/08(月) 18:45:27.16 ID:WuUQBt0z0
本編3-16



うらら「ここみ!」

その瞬間、蓮見が目にも止まらないスピードで朝比奈向かって飛び込み、魔法陣の中から身を呈して救い出した。

八幡「大丈夫か⁉︎」

俺は参道に倒れたまま動かない2人の元へ駆け寄る。

うらら「うん、うららは大丈夫」

そう言って蓮見は立ち上がろうとする。だが朝比奈はまだ起き上がれず何か呟いている。

心美「私、私……」

うらら「ここみ、起きなさいよ」

心美「……」

うらら「ここみ!」

そう言って蓮見は強引に朝比奈の顔を持ち上げて強烈な平手打ちを食らわした。

うらら「ここみ、あんた何してんのよ」

心美「うららちゃん……」

うらら「うららたちのやるべことは何?早くイロウスを倒してこの神社を守ることじゃないの?それをいつまでたってもスキルにもたついて、さらには動けなくなる?いい加減にしてよ!」

八幡「おい蓮見」

うらら「ハチくんは黙ってて」

八幡「はい……」

怖っ、蓮見怖。こんな人を突き放すような声も出すのかこいつ。

うらら「ここみはうららのライバルなんだよ?それなのにこんなみっともない姿晒さないでよ!」

そう言って蓮見は朝比奈をそっと抱き寄せる。

うらら「だから、一緒に頑張ろ。ここみ」

心美「うん、うん。ごめんね、うららちゃん」

涙声になりながら朝比奈も蓮見と抱き合う。この光景を近くで見るのはかなり罪悪感というか、見てはいけないものを見てる気がしてドキドキする。が、今はそんな風に眺めていられる場合じゃない。

八幡「あの、お2人さん。けっこうヤバイ状況なんだが」

そう、この一連の流れの最中に周りを小型イロウスに囲まれてしまった。ガイコツが四方八方で浮いてるのホント不気味。

うらら「安心してハチくん。うららたちにかかれば朝飯前よ!」

心美「そ、それは言いすぎだようららちゃん。でも、絶対倒します。私たちで」

2人の宣言を聞いて、絶望的な状況なのにこいつらならやってくれるっていう確信めいた何かを感じた。

八幡「もう大丈夫なんだな」

うらら「もちろん!じゃあここみ。うららのSP回復お願い」

心美「うん」

俺を見上げる朝比奈の目は決意を固めた目をしていた。……そんな目されたらこっちも覚悟決めるしかねぇじゃねぇか。

心美「いきますね先生。『ブラッシュアプローチ』!」

これまでよりもハートが多く降り注いでいる気がするのは気のせいですかね。そんなハートが周りの小型イロウスを攻撃する。

心美「うららちゃん!」

うらら「わかってるわよ!『エレクトロサポート』!」

蓮見の放つ大量の電撃が小型イロウスをまとめて撃破していく。気づけば周囲のイロウスはほとんど姿を消していた。

うらら「一気にいくわよここみ!ついてきなさい!」

心美「うん!」
316 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/05/12(金) 12:59:35.82 ID:OlOvuVhO0
本編3-17


それからの2人の勢いは凄まじかった。次々に湧き出て来るイロウスを無双シリーズ並に蹴散らしていく。そんな光景を俺はただ眺めることしかできなかった。
いや、たまには敵の位置教えたりはしたよ?でも俺何もできないし、完全にいらない子状態である。

だがしばらく攻撃してもなかなか大型イロウスを倒すところまではいかない。ダメージを与えてはいるものの決定打に欠ける感じだ。

うらら「はぁはぁ、しぶといわねあの大型イロウス」

心美「はぁはぁ、体力が多いんでしょうか」

八幡「体力もあるだろうがおそらく防御力も高いんだろう。だからこっちも攻撃力を上げて一気に大ダメージを与えないと厳しいと思う」

うらら「でもうららは攻撃力を上げてるわよ!」

八幡「あぁ、だが朝比奈は主に補助に回ってるからそうじゃないだろ」

心美「でも補助もしないと長期戦には耐えられません」

八幡「ここまでの朝比奈の働きは間違ってない。確かに長期戦において回復スキルは必須だ。だが、どこかで波状攻撃をしかけないとジリ貧になる」

ドラクエのボス戦とかな。まずはスクルトとかフバーハ。ダメージくらったらベホマ。で、その合間にバイキルドからのはやぶさ斬り。

うらら「ということはうららとここみが2人で大型イロウスにスキルを直撃させないといけないわけね」

心美「で、でももし失敗したらピンチですよね?」

うらら「今はそんなこと考えないの!絶対成功させるの!」

八幡「蓮見の言う通り、これは絶対成功させないといけない」

心美「先生……」

八幡「だが根性だけでなんとかなる話でもない。成功率を上げるためにできることはしないとな」

うらら「じゃあどうするの?」

八幡「流れの確認だ。まず2人の攻撃力を高めるスキルを朝比奈が使う。そののちすぐに蓮見が与えられるだけダメージを与える。そしてとどめはもう一度朝比奈だ。この流れで大事なのは攻撃力が上がっているうちにいかにダメージを与え続けられるかだ。大型イロウスに守る隙を作らせるな」

心美「素早く攻撃ってことですか」

八幡「あぁ。小型イロウスに防御されたり、大型イロウスに地中に潜られたりするとどうしても攻撃が滞るだろ。せっかくの攻撃が散発的なものになりかねない」

うらら「ということは心美が攻撃力を上げるスキルを使ってからは時間勝負ってわけね」

八幡「そういうことだな。だから2人にひとつ約束してほしいことがある」

心美「なんですか?」

八幡「この作戦中は大型イロウスにダメージを与えること。これだけに集中してほしい」

うらら「?そんなの当たり前じゃない」

八幡「違う。極論を言えばどっちかが危険な状態になっても攻撃をやめるな」

俺の言葉に朝比奈が顔を引きつらせた。

心美「つまりうららちゃんを助けるなってことですか?」

八幡「あぁ。攻撃力を上げられる時間は限られている。その間は大型イロウスだけを見ていろ。さらに言えば自分が小型イロウスから攻撃を受けても気にするな。攻撃を続けろ」

うらら「……そうね。そのくらいの覚悟は必要ね」

心美「覚悟、ですか」

……ちょっと言い過ぎたかな。緊張でガチガチになられても困るしフォローしとくか。

八幡「まぁそれくらいの心持ちでいてくれって話だからあんまり気負わないでくれ」

心美「わ、わかりました」

うらら「やってやるわ!」

2人は力強く返答した。

八幡「そしたら攻撃開始のタイミングを合わせて作戦開始だ」

うらら、心美「はい!」
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/13(土) 01:57:30.92 ID:MNSzZMOo0
有能な司令塔やってるな八幡くん
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/14(日) 15:12:38.72 ID:uV9/QN8to
乙です
319 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/05/16(火) 00:33:52.04 ID:2gmheKoN0
本編3-18


心美「じゃあいくようららちゃん!『ウォーミングカイザー』!」

朝比奈がスキルを唱えると下から温泉が湧き出して2人を包み込む。蓮見はその状態のまま大型イロウスのほうへ突っ込んでいく。

うらら「はぁぁぁ!『ラバブル・フィースト』!」

大きな誕生日ケーキが突然現れ、それに触れた小型イロウスが次々に消滅していく。小型イロウスが消えたことで大型イロウスに攻撃を与える隙が生まれた。

八幡「よし、朝比奈!いけるぞ!」

心美「は、はい!」

そうして朝比奈は杖を大型イロウスに向けた。

心美「『ハニカミ桃色パルス』!」

にわかに閃光がほとばしってあたりに爆発が起こる。

うらら「やったわ!案外ちょろいわね」

八幡「あ、バカ。お前それ死亡フラグ」

俺がツッコミを入れた瞬間に爆煙の中から大型イロウスが現れた。見るからに荒れ狂っている。

うらら「ちょ、あの爆発でまだ消滅しないの!?」

八幡「やべぇ……」

うらら「ちょっと!どうすんの!」

八幡「お前があんなこと言わなければよかったんだよ」

うらら「うららのせいって言いたいの?」

八幡「いや、別にそこまで言うつもりはないけど」

心美「先生、うららちゃん。私に考えがあります」

俺とは蓮見があほな言い争いをしていると朝比奈が声をかけてきた。

八幡「なんだ」

心美「あの大型イロウスは多分体力がほぼないはずです。あと一押しすれば倒せます。だから最後の勝負を仕掛けたいんです」

八幡「具体的にはどうすんだ」

心美「もう私の攻撃力はもとに戻っていますが、うららちゃんは『ラバブル・フィースト』の効果でまだ攻撃力が上がってるはずです。うららちゃんが攻撃できれば倒せると思います」

うらら「でもあんなに暴れてるあいつにどう近づけって言うのよ」

心美「……私が攻撃を引き付けるから背後からうららちゃんが攻撃して」

うらら「待ってここみ。それは危険すぎる!」

心美「でも先生とさっき約束したよね。どっちかが危ない状況になっても攻撃を止めるなって」

うらら「そ、それはそうだけど」

確かに蓮見の言う通りこの作戦は危険すぎる。だが時間がないのも確かだし、なにより朝比奈がこれまでにないくらい凛とした表情をしている。なら俺が確認することは一つだけだ

八幡「朝比奈。大丈夫なんだな」

心美「はい。大丈夫です」

八幡「だとよ蓮見。これはもうやるしかねえだろ」

うらら「うぅ、ハチくんもここみもそこまで言うならやるわよ!」

心美「がんばろうね、うららちゃん」

うらら「当たり前よ。それとここみ」

心美「なに?」

うらら「絶対うららがあいつ倒すから。それまで倒れないでよ。絶対」

朝比奈は一瞬はっとした顔をしたがすぐにっこり笑って答える

心美「うん」

うらら「じゃあうららとここみの最終ステージ開演よ!」
320 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/05/17(水) 23:30:45.67 ID:YYJy4cRe0
本編3-19


心美「いやぁぁ!」

朝比奈は杖をかざして大型イロウス相手に正面から突っ込んだ。

だが、動きを止められるまでには至らない。

八幡「くそ、だめか」

朝比奈は依然大型イロウスの攻撃を引き付けている。と、その時朝比奈が杖を落とした。

八幡「何する気だあいつ」

大型イロウスはそれを見てすかさず腕を振り上げる攻撃を仕掛けてくる。それが朝比奈にクリーンヒットする。

心美「きゃぁ!」

八幡「朝比奈!」

だが朝比奈は倒れなかった。それどころか大型イロウスの腕を捕まえている。

心美「うららちゃん!今だよ!」

だが小型イロウスの群れが蓮見の行く手を阻む。

うらら「ここみ……くっ、この、こんなときに邪魔だよ!」

……こうなったら一か八か、こうするしかないか。

八幡「どけ蓮見。んで、俺の後から突っ込め」

うらら「え、そんなことできるわけ、」

八幡「俺にはこれくらいしかできないんだからやるしかねぇんだよ!」

困惑する蓮見をよそに俺は小型イロウスに向かって体ごと飛び込んだ。骨ばかりな見た目通り、さほど重くはない小型イロウスは俺ののしかかりで何体か倒れこむ。

八幡「ほら!いけ!」

蓮見は一瞬驚いた顔をしたが、すぐ俺が作った隙間を飛び越えて朝比奈の所へ向かう。

うらら「ここみ!」

蓮見は魔法弾を放つが、攻撃力がもとに戻っているのか大型イロウスにダメージが通らない。

うらら「あとちょっと、あとちょっとなのに」

なにか使えるものはないか。今すぐダメージ量を増やせるもの……そうだ。

八幡「蓮見!朝比奈の杖も使え!」

心美「うららちゃん!私の杖も使って!」

俺と朝比奈はほぼ同時に叫んだ。

うらら「わかった!使わしてもらうね」

蓮見は落ちていた朝比奈の杖を拾い大型イロウスに向き直る。にわかに両方の杖の先が光り出してきた。

うらら「ここみもこまっちも参拝客も危険にさらしたことは許さない!はぁ!」

そう言って蓮見は魔法弾を連発し、大型イロウスを見事消滅させた。

うらら「ここみ!大丈夫?」

心美「うん、大丈夫。ありがとうららちゃん」

うらら「それはうららのセリフよ。ありがと、ここみ」

倒れこむ朝比奈を優しく蓮見が抱きかかえる。美しい光景だ。べ、別に、俺も体張ったのになんも言われてないなぁとか、それどころか最後の蓮見の発言の中に俺が登場しなかったなぁなんて全然気にしてないんだからね!

八幡「お疲れさん」

心美「先生。ほんとうにありがとうございました」

八幡「ちげぇよ。お前らが頑張った結果だ」

うらら「そうだよね〜。ハチくんが今日やったことと言えば、列の整理とここみにドキッとしたのと小型イロウスに倒れこんだくらいだもんね」

八幡「うっせ」

まぁ蓮見の言うことに間違いはないので反論はしない。ひとまずこれでもうこの神社も大丈夫だろ。小町に連絡して帰るとするか。
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/18(木) 14:38:57.60 ID:BHCOuKxc0
ツインロッド…熱いっすね
322 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/05/19(金) 10:27:22.17 ID:+JmIImL60
番外編「風蘭の誕生日前編」


俺は今、雑用を押し付けてくる権化が巣くうラボの前に立っていた。はぁ。今日は何の実験台にされるんだろうか。この前やった武器改良の試し撃ちの的にされたときは死ぬかと思った。あんな体験は二度としたくない。でもここで何を言っててもしょうがない。行かないとさらにヤバいことが起こりそうだもんな。

俺は半ばあきらめの境地に入りながらラボのドアを開けた。

風蘭「おぉ比企谷。待ってたぞ」

八幡「どうも。で、今日は何をするんですか?また俺は犠牲者になればいいですか?」

風蘭「今日はただアンタとゆっくり話がしたくて呼んだだけだよ。今飲み物持ってくるからそこらへんに座って待っててくれ」

あ・や・し・い

いつもなら飲み物はおろかろくな説明もなしに実験を始める御剣先生が俺とゆっくり話したい?ありえない。絶対に何か裏があるはずだ。

座って少し待っていると飲み物とお菓子を持って御剣先生が戻って来た。

風蘭「お待たせ。ほれ比企谷」

そう言って御剣先生は飲み物を手渡してくる。だが俺にそんな手は通じない。ここはあえて渡されない方をとる!

八幡「あ、俺こっちがいいんでそれは御剣先生が飲んでください」

風蘭「え?いや、それは」

八幡「見た感じどっちも同じジュースですよね?ならどっち選んでもいいじゃないですか」

風蘭「う、」

おぉおぉ。あからさまに動揺してるな。ここはダメ押しだ。

八幡「俺待ってて喉渇いちゃったんですよね。早く飲みましょうよ先生。はい乾杯」

風蘭「うぅ……」

俺が飲み物を口につけたのを見て御剣先生も観念したのか、コップの中の飲み物を一気に飲みほす。ふ、計画通り。

八幡「で、ゆっくり話すって何話すんですか」

風蘭「……バカ」

八幡「え?」

風蘭「八幡のバカ!」

ちょっと待て落ち着け俺。なんで俺は今顔を赤らめた御剣先生から下の名前で呼ばれ、あまつさえ可愛く「バカ」と言われた?

八幡「あの、御剣先生?」

風蘭「風蘭って呼んで?」

八幡「いやそれはさすがに」

風蘭「今だけでいいから。お願い」

俺の先生がこんなに可愛いわけがない。なんだこの変わりようは?やっぱあの飲み物に何か入ってたんだろう。飲まなくてよかった。

八幡「ふ、風蘭はなんでこんな変わっちゃたんですか?」

風蘭「実はあたしが飲んだジュースの中に自分の気持ちに嘘をつけなくなる薬を混ぜてたの。本当は八幡に飲んでもらって普段の捻くれた言動の裏に何を考えてるか知りたかったんだけど失敗しちゃった」

八幡「なるほど。てことは今この状態がみつ、風蘭の本性ってわけですね」

風蘭「うん」

八幡「それにしては普段と違いすぎやしませんか?」

風蘭「だって学生の時から喧嘩ばっかりしてたから自然と男っぽい話し方になっちゃったんだよ。それに、そもそも男の人と話すの慣れてないし……」

八幡「あぁ、神樹ヶ峰の卒業生って言ってましたもんね。女子校出身で女子校勤務だと出会いなさそうですし」

風蘭「う、うん。でもそれだけが理由じゃないっていうか、その、」

八幡「それだけが理由じゃない?」

風蘭「じ、実はあたし男の人にすごく興味があるの……」

御剣先生はいかにも乙女っぽく顔を赤らめながらそんなことを口にした。
323 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/05/19(金) 10:28:17.56 ID:+JmIImL60
番外編「風蘭の誕生日後編」


なん、だと。御剣先生が男に興味があるだって?イメージと違いすぎて頭が追いつかない。

八幡「そ、それはつまり異性として男性に興味があるってことですか?」

風蘭「うん。だ、だってあたしの将来は、お、お、お嫁さんになることだから!」

八幡「……」

風蘭「八幡?何か言ってよ」

八幡「あ、あぁ。い、いいんじゃないですか」

おいおい、こんなことまで言っちゃうのかよ、素直になる薬すげぇな。いや、それより心でははこういうこと考えてるのに普段の言動に一切出さない御剣先生もすげぇ。

風蘭「だからホントは八幡に薬を飲ませてあたしのことどう思ってるか聞こうと思ってたんだ」

八幡「へ?」

我ながら間抜けな声が出てしまった。さらには御剣先生は座ってた向かいの席から立ち上がり、俺の隣に接近してくる。

風蘭「ねぇ、八幡。あたしのことどう思ってる?」

八幡「そ、そうでしゅね。いい先生だと思ってますよ」

風蘭「そうじゃなくて」

御剣先生はさらに俺に近付いてくる。体触れちゃってますよ先生!い、意外と柔らかいんだなこの人。ってそんなこと考えていい状況じゃない。

八幡「あの、御剣先生。とりあえず離れてもらえないですか?」

風蘭「風蘭って呼んでよ!」

そう言って盛大に肩を叩かれた。めっちゃ痛いんですけど。素直になっても筋力は変わらないんだな。

八幡「わ、わかりました。だから叩かないで」

風蘭「わかればいいの。で、八幡は、あ、あたしのことどう思ってるの?」

八幡「俺は、」

正直そんな目で見たことなんて一度もなかった。いつもよくわからない発明品の実験台にされたり、雑用させられたりと大変な思いばかり味わってきた。でも、別にそれが嫌だったかと言われればそんなことはない。めんどくさいことをさせられるってわかってても次は何をするんだろうかと楽しみにしてる自分もいる。

八幡「俺は、風蘭とこうして色々やるの別に嫌いじゃないですよ」

風蘭「……」

八幡「まぁなんていうか、少し自重してほしいこともありますけど、いつもの感じも、今の感じも悪くないですよ」

風蘭「……」

八幡「あの、風蘭?」

さっきから俯いてこっちを見ない御剣先生に顔を近づける。

風蘭「近い!」

八幡「うっ」

盛大に顎にパンチをもらってしまった。

風蘭「いや、アタシが変なこと考えたとはいえ空気に流されて変なこと言う比企谷もおかしいぞ!もっと自分の言動に責任を持て!」

八幡「ちょっと待ってください。いつの間に元に戻ってるんですか」

風蘭「ひ、比企谷がアタシの印象について語りだしたあたりから」

八幡「ならすぐに言ってくださいよ。わざわざあんなこと言う必要なかったじゃないですか」

風蘭「いや、でもせっかく言ってくれるなら聞いとこうかなって。と、とにかく。アタシとあんたがこんな状況になってたと知れたらマズイ。だから強硬手段を使わせてもらう」

そう言って御剣先生は何かごそごそと機械の山から何物かを取り出した。

八幡「なんすか、それ」

風蘭「これは特殊な電波を流して人の記憶を1時間消すことのできる機械だ。なかなか使う機会がなかったが絶好のタイミングだ。さぁ、比企谷こっちにこい」

俺が何かアクションを起こす前に御剣先生は俺の頭をがっちり捕まえ、持ってる機械を装着してくる。痛い痛い。やばい、頭がつぶれる。

風蘭「おとなしくしろ。さ、スイッチオン!」

俺はそこで意識を失った。
324 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/05/19(金) 10:31:22.40 ID:+JmIImL60
以上で番外編「風蘭の誕生日」終了です。ふーちゃんお誕生日おめでとう!これまでで一番キャラ崩壊させてしまいました。こういう風蘭もありかなと思ったんですが強引だったかもしれないです。
325 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/05/19(金) 17:32:11.52 ID:+JmIImL60
本編3-20


神社での戦いの数日後。朝比奈のもとには雑誌やら新聞やらのインタビューが何回かあったらしい。読む限り、完璧な答えではないが最初の雑誌のインタビューよりかは数段まともになった印象を受ける。

星守クラスでも朝比奈のインタビュー記事が出回っていてここ数日の話題の中心だ。

朝のHR前、そんなクラスの光景をぼーっと眺めてるとなぜかドヤ顔の蓮見が話しかけてきた。

うらら「ふふん、やっぱりうららたちの『ここみプロデュース大作戦』のおかげで、ここみのインタビューも少しはマシになったみたいね」

八幡「そういやお前らそのなんとか作戦言いながら何やってたの」

うらら「うららは徹底的にウケのいい答えを教えててわ。特によく聞かれそうな質問にはテンプレを作って暗記するくらいにね。で、こまっちがひたすらここみのいいところを列挙してくって感じ」

八幡「なにそれ、なんかの拷問?」

うらら「しょうがないじゃない。ここみってば全然自分に自信がないんだもん。こっちからどんどん魅力を言ってあげないとダメなの」

八幡「へぇ。そういえば朝比奈はどうした?」

うらら「ここみなら職員室に呼ばれてたわ。なんか悪いことでもしたのかしら」

八幡「お前じゃあるまいし、それはないだろ」

うらら「うららのことなんだと思ってるの」

蓮見はジト目で俺を睨んでくる。

八幡「だって昨日も宿題忘れて八雲先生に呼び出し食らってたろ」

うらら「あ、あれは、そうよ!ニ◯ニ◯動画ですCOLO GIRLSの一挙放送が深夜にあったからしょうがないの!」

八幡「完全に自業自得じゃねぇか」

うらら「そういうハチくんこそ授業中に寝ててよく八雲先生に怒られてるじゃん!」

八幡「仕方ないだろ、眠いんだから」

うらら「開き直った!?」

俺と蓮見がくだらないことを言い合ってると教室のドアが開いて朝比奈が戻って来た。その表情はいつにもまして不安そうだ。

八幡「どうした朝比奈」

心美「じ、じつは明日インタビューが来るらしいんです」

うらら「何よ、インタビューくらい別に今さら不安になることないじゃない」

心美「それが、テレビのインタビューなんだって……」

うらら「テレビ!?」

八幡「マジか」

心美「は、はい。だからどうしようかすごく不安で」

確かに雑誌とテレビじゃ話が違うな。顔とか話し方とかも全部映像になって伝わるぶん大変そうだ。

すると蓮見が何か思いついたように不敵な笑みを浮かべた。

うらら「これは『ここみプロデュース大作戦』臨時会議が必要ね」

そう言うと蓮見は携帯を取り出して誰かにメールを送った。するとすぐ俺の携帯がメールの着信を告げた。開いてみると小町からだった。

小町『こまちも今日うららちゃんたちと会うことにしたから!お兄ちゃんも来てよ。絶対帰っちゃだめだからね』

……こうやって俺の退路をすぐ断つあたりまじ蓮見さん策士。

うらら「こまっちも来れるっていうし、放課後この前のカフェに行くわよ!」

心美「うん!ありがとううららちゃん!」

朝比奈もヤル気だ。多分またあのカフェ行けるのが楽しみなんだろ。ま、あそこのケーキ割と美味しかったしそう思う気持ちはわかる。俺の財布の中身が心配になるが。

心美「先生も、あ、ありがとうございます」

朝比奈がやわらかい笑顔で俺にお礼を言ってきた。

……そうやって笑顔で接してくるあたりまじ朝比奈さん策士。違うな。俺がチョロイだけでした。
326 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/05/19(金) 17:35:37.97 ID:+JmIImL60
以上で本編第3章終了です。やっと中学生組が終わりました。次回からは高校生組の話になっていきます。
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/19(金) 18:08:32.00 ID:Qdbl3zNDO
乙です。
次はようやくヒッキーがみきの料理を食べるのか。
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