見滝原に微笑む刹那(まど☆マギ×ネギま!)

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277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 11:16:23.89 ID:q+WeEqR+0
ネギまとはなつかしなー今UQやってるけども

禁書クロス書いてた人か
今も書いてると知ってなんか嬉しいぜ
278 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/11/27(月) 03:41:35.75 ID:zgiCmC+l0
感想どうもです

>>277
ありがとうございます。
月日が経つのは早いものです。

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>276

「このおっ!!」

わらわらと群がる使い魔を斬り伏せ、美樹さやかは魔女を探す。

(なんか、美術の教科書って感じ?
でも、あの刹那さんがやられそうになったって相当………)

周囲を伺い、
自分のいる結界の状況を把握しながらさやかが心の中で呟く。

(魔力、こっちかっ)

サイズの大きな魔力をさっちし、さやかは駆け出す。

(もしかして、あれ? ………)

魔力の出所に走ったさやかが、
使い魔を片付けながらそれらしいものに見当をつける。

「どけえっ!!」

そして、さやかは行先から一斉に群がって来た使い魔を二刀流で片付け、
跳躍していた。
279 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/11/27(月) 03:45:02.86 ID:zgiCmC+l0

「これで………!?」

跳躍したさやかか、一見すると建物にしか見えない魔女に
渾身の二刀を叩き込もうとマントを翻す。
次の瞬間、さやかの体は弾き飛ばされていた。

「(これ、って………?)このおおおっ!!………?」

空中で魔女を睨み付けたさやかが、
魔力を練って空中に何振りもの剣を発生させる。
後方に弾き飛ばされていたさやかか、
遠ざかる魔女の正面に向けてその剣を一斉に飛翔させた。

「………え、っ?」

違和感、次に痛み。
さやかはとっさに痛覚を遮断する。

(や、ばい?
あんときはヤケだったけど、覚えてて、良かっ、た?)

地面に叩き付けられたさやかは、
左の腿を剣に射抜かれた左脚を引きずり、
胸のど真ん中を貫通して突き刺さり、
墜落の弾みでもう少々肉を抉った別の剣をどうしようか少々思案する。

「!? (ミサイル、って………)」
「さやかあっ!!!」

侮れない雄叫び攻撃で苦しめて来た使い魔を片付け、
佐倉杏子が爆炎上がる戦場に駆け付けた。
280 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/11/27(月) 03:48:11.10 ID:zgiCmC+l0

「た、たた………」
「おらあっ!!!」

直撃に近いミサイル攻撃を受け、
立ち上がろうとするさやかの側で、杏子の槍が使い魔を一蹴する。

「サン、キュー。」
「おっ」

杏子が魔女を見た時、魔女には大量の黄色い紐が巻き付いた所だった。

「ティロ・フィナーレッ!!」

魔女の背後からの爆発音と共に、魔女はその姿を消した。

ーーーーーーーー

「た、たたた………」

魔女の消滅を確認したさやかが、取り敢えず身を起こし立ち上がる。

「おいおい、ひどい有様だって」
「あ、ホント。
ちょっとヤバかったんで痛覚切ってたから」

そして、さやかはずぼっずぼっと体から剣を抜き、
空いた穴やら折れた骨やらを魔法で修復する。

「ん?」

そして、気配に気づきそちらを見る。
281 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/11/27(月) 03:51:31.99 ID:zgiCmC+l0

「あ………」
「さ、やか?」
「あ、きょうす………」
「く、来るな」
「え?」
「来るな、来るな化け物っ!
さやかに化けて僕らを騙すつもりかっ!?」
「ち、ちょっと恭介? 仁美っ………」
「騙されませんわっ、
さやかさんに化けてわたくしたちを騙すつもりですのっ!?」
「おいっ、お前ら………」

杏子が剣呑な眼差しと共に動き出そうとした時に、
さやかは踵を返していた。

「匕首・十六串呂」
「へっ?」

青春の逃避行へと駆け出した美樹さやかは、
気が付いた時には幾筋もの帯の中に絡め取られていた。

「稲光尾籠」
「へ? えええええっ!?!?!?」
「………」

稲光と共に帯が消え、
その場にぱったり倒れたさやかを杏子は少々不思議そうに見下ろしていた。

「さて、あなた達」

百戦錬磨の杏子からしてそうであるからして、
目が点になっていた上条恭介と志筑仁美が振り返ると、
そこでは見覚えのない少女が優しく微笑んで声をかけて来た。

「取り敢えず、逃げたら無事は保障しませんよ」

目の前で野太刀夕凪をすとん、と、地面に突き刺され、
微笑む刹那の前で恭介は左腕の杖を手放し仁美に支えられた。
282 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/11/27(月) 03:55:02.03 ID:zgiCmC+l0

「初めまして、私は桜咲刹那、
最近転校して来た見滝原中学校の三年生です」
「それはご丁寧に、
見滝原中学校二年生志筑仁美です」
「あ、二年生、上条恭介です」

刹那に合わせて丁寧に一礼する仁美を見て、
恭介もそれに倣っていた。
この時仁美は察していた。
この桜咲刹那と言う自称先輩、
少なくとも余所行きの立ち居振る舞いを叩き込まれた人物であると。

「既に、この空間が
あなた達の常識が通じない状況であるとご理解いただけると思いますが」
「それは、確かに」

刹那の言葉に仁美が応じる。

「それを前提に論より証拠から始めましょう」
「?」

言葉と共に刹那が腕を×字に組み、
二人はそれを不思議そうに眺める。

「!?!?!?」

ここにいるほぼ全員、
行きがかり上少し遠くで成り行きを見守っていたマミを含めて目を見張る。

「暴れたら危ないですよ」

そして、気が付いた時には、
距離を飛ばす様に接近していた刹那の両腕に抱えられる形で、
恭介と仁美は空中に浮遊していた。

「非常識な話である事を、実感いただけましたか?」
「はい」

コクコクコクコク首を縦に振る恭介の側で、
刹那の問いに仁美が応じていた。
283 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/11/27(月) 03:58:29.01 ID:zgiCmC+l0

「簡単に言いましょう。
この世界には、あなた達が知らない所で人間を食らう魔物がいる。
そして、それを退治する側の者もいる。
私もそうですし、美樹さやかさんもしかりです」
「さやかが!?」

恭介が驚きの声を上げる隣で、
仁美が力強くこちらを見るのを刹那は見ていた。

「そうです。詳しい事情は申し上げられませんが、
事情により彼女はテレビのヒーローの様な使命、能力を持つ身となっています。
つまり、あの様な魔物を狩る立場です。
ですから、先ほどあなた達が見た様に、
身体や回復の機能が人間離れして強化されている所もありますが、
中身、少なくとも頭の中身は
間違いなくあなた達の知っている美樹さやかさんです」
「………謝らなくては………」

ぽつりと言った仁美に、刹那が小さく頷く。

「そ、そうだ、さっきさやかに、っ………」

恭介が気が付いた時には、その鼻先に夕凪の鞘の底が向けられ、
恭介は腰を抜かしそうになった。

「もちろん人に知られてはならないミッションであり、
今回はその無知と言う事で、むしろこちらの不手際と言う事で聞き流しますが、
私としても、
大切な仲間を侮辱された時為すべき事は心得ているつもりです」
「はい」

一瞬、杏子ですらひやりとする眼差しが向けられたが、
それでも、恭介は精一杯の返答を返す。
刹那は静かに微笑んでいた。

「では、先ほどの私の説明を聞いたと、
美樹さんにはそう伝えて、後は今まで通り接してあげて下さい。
今後、この件に関しては深く関わらず、もちろん他言無用で」
「はい」
「分かりました」
284 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/11/27(月) 04:01:38.48 ID:zgiCmC+l0

「只、少々よろしいですか?」
「はい」

ついっと目で促され、仁美がちょっと恭介を離れて、
歩き出した刹那に接近する。

「そういう訳で、実の所さやかさんがこの役についたのはごく最近の事でして、
あなたに悪気が無いのは重々理解しているのですが、
その事でここ数日些か精神的な負担が大きかったと言う事情がありましてですね。
長くは言いません、私がさやかさんから無理に聞き出した例の案件を
せめて三日だけでも延長していただけないかと。
これは、あくまでお節介な先輩からの勝手なお願いとして、
嫌なら聞き流していただきたいと」

「分かりました。
魔物とやらから助けていただいた事、侮辱してしまった事は本当ですから、
こうした貸し借りを放置するのは余り好きではありませんので」

「ありがとうございます」

「………愛されているのですのね、さやかさん」
「少々面倒ですが、むしろだからこそ好ましい気性だと」
「ですわ」

思わずほおほおほおーっと呼吸する刹那に、
仁美は実に魅力的な微笑みを返し、
刹那の優しい微笑みに見送られて仁美は秘かな想い人の元に戻る。
285 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/11/27(月) 04:05:05.09 ID:zgiCmC+l0

ーーーーーーーー

「さやかっ!」
「さやかさんっ!!」
「ん、んーっ………」

薄目を開き、見覚えのある顔を認識したさやかがガバッと跳ね起きた。

「ここ、って………」
「良かった、気が付いた」

恭介がほっと胸を撫で下ろし、さやかが周囲を見回す。
さやかが横たわっていたのは、公園のベンチだった。

「あ、あの、さやか………」
「桜咲先輩から伺いました」

毅然とした態度で言う仁美に、さやかが目を見開いた。

「詳しい事情は教えていただけませんでしたが、
何やら人を害する魔物を狩る特別なお仕事をなさっていると。
先程は事情も分からず酷い事を言ってしまい、
本当に申し訳ありませんでした」
「ごめん、さやか」

仁美に続き、恭介も深々と頭を下げるのを見て、
茫然としていたさやかもくしゃっと笑った。

「うん、いいよ、分かってくれたんだったら」
「良かった」

「いやー、そりゃあんなのびっくりするよねー」

「うん。よく分からないけど、有難うさやか。
それに、ごめんね」
「有難うございます」
「どういたしまして」
286 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/11/27(月) 04:08:43.32 ID:zgiCmC+l0

「さやかさん、少々女同士のお話を」
「………分かった」

仁美に促され、さやかと仁美が石造りの柱の陰に移動する。

「この様な騒ぎがありましたから、
今日の所は保留させていただきます。
ここは一度、休戦と言う事に致しましょう。
近い内にリミットをお話合い出来ましたら」
「………分かった、仁美がそう言うなら」
「それでは」

魔女退治の作戦会議に匹敵する眼差しで応じたさやかの前で、
仁美がにこっと笑って大きな声を出す。

「そういう訳で、今後もさやかさんはさやかさん、
その事に変わりはないと言う事を」
「うん、そうしてくれるんなら」

仁美の言葉にさやかが言い、恭介も頷いていた。


「いい先輩ですわね」
「うん」
「………白き翼のナイト様………
いえ、サムライですか」
「ん?」

仁美の呟きをさやかが聞き返し、
仁美は可愛らしく微笑んだ。
287 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/11/27(月) 04:13:06.39 ID:zgiCmC+l0

ーーーーーーーー

「余り無理しちゃ駄目よ。桜咲さんは魔法少女ではないし、
私も美樹さんや近衛さん程得意なタイプじゃないんだから。
悪くすると後遺症が残るわよ」
「面目ない」

公園の構造物の陰で、刹那の脚を手で包み込みながらマミが言い、
脂汗を浮かべていた刹那がぺこりと頭を下げる。

「おーおー、無理しないでさやかに頼んどきゃ良かっただろうに」
「………先輩の矜持、ですかね」
「だわな」

佐倉杏子と桜咲刹那が苦笑を交わし、杏子が紙箱を差し出す。

「食うかい?」

==============================

今回はここまでです>>278-1000
続きは折を見て。
288 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/02(土) 03:41:26.71 ID:Yt6D+SED0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>288

 ×     ×

「大きいねー」
「芸術ね」
「芸術、ねぇ………」

巨大なダビデ像を見上げ、
素直な感想を漏らした鹿目まどかに暁美ほむらが続く。
その側にいるまどかの幼馴染美樹さやかは、と言えば、
巨大な芸術には少々思う所があるのか
やや複雑な感慨を漏らす。

「近衛さん」
「こんにちは」

その側で巴マミと近衛木乃香が挨拶を交わす。

「遠路はるばるおおきに」
「こちらこそ、お招きいただいて」
「有難うございます」

丁重に頭を下げる木乃香にマミも礼を返し、
まどかもそれに倣った。

「来てくれたんやなぁ」
「ああ、ご馳走してくれるって言うからな、
作法は期待するなよ」
「おおきに」

不敵に笑って言う佐倉杏子に木乃香がにっこり応じ、
どうにも叶わない、と杏子は苦笑する。
マミの側にいたまどかは木乃香の隣に視線を移す。
289 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/02(土) 03:44:37.68 ID:Yt6D+SED0

「いらっしゃい、麻帆良にようこそ」
「有難うございます」

ふっ、と、まどかと目が合った桜咲刹那が優しく微笑み、
双方丁寧に礼儀を交わす。

(桜咲刹那………)

その様子をほむらが伺う。

「転校生、二つばかり言いたいんだけど」
「何かしら?」
「やっぱり、刹那さんこっちがホームだよね、
特にこのかさんの隣。
の、割には、まどかと目と目で通じ合ってる。
やっぱ、保護欲誘うのかなまどかって」

どうも聞こえそうな声でひそひそ問いかけるさやかの声を聞き、
ほむらとしては変に鋭い青魚の顎の下に銃口を突っ込む事を
一瞬の妄想で済ませて素知らぬ顔を作る。

取り敢えず、週末を利用しての木乃香からのお茶会の誘いが
多少の伝言を経てこのメンバーに齎され、
こうして麻帆良学園都市女子校エリア
ダビデ広場に集合して今に至っていた。

それに合わせて、
見滝原に滞在していた桜咲刹那も一度麻帆良に戻っていたらしい。

「ほな、行こか」
「え、ええ」

木乃香の声に、つと周囲に視線を走らせていたマミが応じた。
290 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/02(土) 03:47:49.86 ID:Yt6D+SED0

ーーーーーーーー

「わあー」

今度こそ、まどかとさやかが感嘆の声を上げた。

「近衛さん素敵」
「おおきに」

マミの言葉に、振袖姿の木乃香が素直に応じた。

「うんうん、マジ可愛いっすよ、
なんか舞妓さんみたいと言うか」
「おおきに」

さやかの言葉に木乃香がにっこり微笑み、
さやかは脇腹に鈍い痛みを覚える。

「何? 転校生?」
「この場合、舞妓さんって言うとちょっと失礼なのよ
京都のお嬢様には」

さやかの囁きに、
肘鉄を打ち込んだほむらに代わりマミが渋い顔で囁く。

「あ、いや、あはは、流石は京都のお姫様、
でもホントに可愛いですよ」
「はい、お人形さんみたいです」
「おおきにな」

そんな挨拶を交わしながら、まどかが視線を動かす。

「て言うか、刹那さんも格好いいですよ」

さやかの言葉に、白小袖緋袴の刹那が小さく頭を下げた。

「そろそろ、始めましょう」

かくして、一同毛氈に移動する。
291 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/02(土) 03:51:23.63 ID:Yt6D+SED0

「でも、学校の敷地にこんな所あるんですね」
「普段は茶道部で使こてるけど、空きがあって申請通ったさかい」

周囲の日本庭園を見回すさやかに木乃香が言った。

取り敢えず、事前にマミから一応の注意を受けていたとは言え、
この庭園で実際がさつ者の自分が見ても溢れる気品が眩しい
振袖姿の木乃香を前にして、
自分の格好を見て上条恭介のコンサートを経験していて良かった、
と美樹さやかは思う。

付け加えると、その点はまどかもおよそご同様、
マミも一応のドレスコードを把握し、ほむらは制服姿で
杏子も、まあ見苦しくはないと言う辺り。
木乃香の一番側に正座したマミと木乃香が言葉を交わし、
マミに合わせて一同もお辞儀をする。

「お先に」
「頂戴します」

まずはお菓子の羊羹が回される。
実際にはマミも丸暗記に近かったが、
それでも、他の面々はこちらで用意されていた懐紙を使い
マミに倣って菓子を食する。
平均的に言って、上品な甘さ、取り敢えず美味しいのは確か、
と言うのがここの面々に辛うじて分かる評論だった。

ここまでの手順も、そして、茶を点てる手前も淀みなく、
木乃香からマミに茶碗が回される。
マミが口をつけ、杏子に続きさやかに。

「………曜変天目………」

ぼそっ、とした杏子の囁きに、さやかの手が止まる。
ダラダラダラと汗を流しながら、
さやかがガチガチガチと主人席に顔を向ける。
そちらでは、木乃香は相変わらず
天然なんだか京女なんだかと言う微笑みを返す。
292 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/02(土) 03:54:53.88 ID:Yt6D+SED0

「悪い冗談よ」

少し叱責する様なマミの囁きが聞こえ、
さやかがようやく茶碗に手を伸ばす。
さやかからまどか、ほむら、最後に刹那。

「結構なお点前でした」
「おおきに」
「有難うございました」

まあ、平均的には、
真面目な素人中学生はこんなものだろう、と言う茶席だった。

「はぁー」
「ウェヒヒヒ」

脱力するさやかにまどかが苦笑いするが、
にこにこ微笑みを向ける木乃香を含め
お互い不快なものではない。
心地よい緊張感と敬意。さやかは、又あの演奏を聞きたい、と思った。
293 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/02(土) 03:58:07.50 ID:Yt6D+SED0

ーーーーーーーー

「ほな、続きは………」
「ごめんなさい」
「え?」

めいめい動き出した辺りで、言葉を遮るマミに木乃香が聞き返す。

「ちょっと、お友達から急ぎの連絡で、先に行っててくれるかしら?
用事が済んだら連絡するから」

片手で謝るマミに、ちょっと困惑しつつも木乃香が頷き一同が動き出した。
一度東屋の陰に入ったマミが、先行した面々を追う様に動き出す。

ーーーーーーーー

(見滝原にもそこそこあるけど………)

日本庭園を出た巴マミは、
女子校エリアの路上で周囲の光景に少々心を奪われる。

(こういう西洋意匠、私は好きだけど………)

次の瞬間には、マミは駆け出していた。
294 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/02(土) 04:01:58.99 ID:Yt6D+SED0

ーーーーーーーー

ヨーロッパ風の建物と建物の間、
黄金に近い黄色の輝きと共にそこに駆け込んだマミは、
耳で追って斜め上を見る。
そちらでは、人影がタンタンターンッと壁を蹴って別の壁へ、と言う形で、
上へ上へと跳躍している。
その時には、マミの肩にはバズーカ的なものが担がれていた。

「!?」

砲弾は跳躍する人影をすり抜けて追い抜き、
上空で弾けて幾筋ものリボンを降らせる。
人影は、跳躍から落下に転じ、地面をジグザグに動き始める。

一瞬、相手がマミを狙った一瞬をとらえ、
マミが右手に握ったアンティーク拳銃を発砲する。
その銃弾は鋭く交わされ、マミの目の前で、
動きにデタラメさが加わったゴム鞠の様な跳躍が弾ける。

ざっ、と、振り返ったマミが左手の拳銃を発砲した時には、
マミは腹の下に気配を感じていた。
路地裏に、ごうっと旋風が一回りした。

「バスケットかしら?
得意のアクロバティックを少し過信したわね」

マミの右手に握られたリボンが、
目の前で魔法拳銃を握る相手の右手を引きつりながら白い首に絡みつく。

「降参して付け回す理由を話すなら綺麗に治癒してあげる。
暴れるなら、死ぬわよ」

魔法アンティーク拳銃を左手に握り見下ろすマミから見えるのは、
ざっとくくった黒髪、地面に赤い血を吸わせている撃ち抜かれた左足の甲。
ビスチェタイプの黒い衣装から
半ばはみ出した白い膨らみその豊かさを示す深い谷間。

==============================

今回はここまでです>>288-1000
続きは折を見て。
295 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/04(月) 03:50:11.63 ID:70vzDXqZ0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>294

「!?」

捕獲した尾行者の右腕と首に絡み付いていたリボンが切断され、
巴マミはざっと飛び退く。
リボンを切断した銃弾が近くの壁にぴしっと着弾したかと思うと、
マミは両手持ちしたマスケット銃を斜め上の空に発砲していた。

「く、っ」
「ちっ!」

その間に、リボンを逃れた尾行者明石裕奈が左足を引きずってその場を逃れ、
マミは飛来する銃弾を避けて裕奈と距離をとる。

(あの隙間から狙い撃ち、っ!?)

魔法でばばっと生成するマスケット銃で反撃を行いながら、
立ち並ぶ建物の隙間を抜ける敵方の銃弾にマミが舌を巻いた。
無論、魔法の力により、
その銃弾は本来のマスケット銃の威力よりも遥か遠くの空を貫く。

「ゆーなっ!?」
「あ、ああ」

表通りに出た所で、裕奈は無理に笑顔を作る。

「どうしたん!? 今治すなっ!」

路地裏では、たんっ、と、後ろに跳躍しながら、
マミが両手のマスケットを発砲する。
その銃弾は地面に突き刺さっていた。
地面に突き刺さった銃弾からぶわっ、と、膨大なリボンが下から上に噴出し、
巴マミはリボンの壁を前にしながら建物の壁から壁へ、
手に持ったリボンをアンテナや鉄柵に絡めながら上へ上へと跳躍していた。
296 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/04(月) 03:53:41.53 ID:70vzDXqZ0

ーーーーーーーー

「!?」

すたんっ、と、巴マミが建物の屋根に着地した所で、
次の瞬間にはスリップして屋根に手をついていた。
マミが、右手に生じさせたアンティーク拳銃で、
自分の右足首に絡み付き引っ張られたピンク色のリボンを銃撃する。

その次の瞬間には、
とんとんーっと弾む動きで急接近して来た相手を認識し、
びゅびゅっ、と、振られた棍棒を交わし、マスケット銃の打撃で弾き飛ばす。
相手が距離をとったためマスケットで発砲したが、
その相手は見事な跳躍で横に交わす。

(バスケットの次は新体操?
魔力も感じるしレオタードって間違いなく魔法で変身の類。
動き自体、跳躍に柔らかさも少し、いや………)

ガンガンガンッ、と、棍棒とマスケット銃が叩き合い、
ぱあーんっ、と、発砲したがその銃弾は彼方へと無為に飛び去る。

(かなり、厄介ね)

空中で、ピンクと黄色のリボンが絡み合い、引っ張り合う。
マミが手を放し、
ピンクのリボンを引く佐々木まき絵が姿勢を崩した瞬間、
マミはばばばんっと屋根に発砲して後ろに跳ぶ。

「わっ!」

屋根に埋まった銃弾からぶわっと黄色いリボンが噴き出し、
たたたっと接近して間一髪リボンに飲まれそうになりながらも
まき絵は一度後ろに跳躍し、迂回していた。
297 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/04(月) 03:56:54.36 ID:70vzDXqZ0

(もらった、あっ? ………)

>字型のステップ跳躍でリボンを避け、
そのまま斜め前方にいるマミに跳躍したまき絵は、
華麗な捻りと共に目の前のマミのベレー帽を棍棒で一撃し、
ぼこんっ、と言う感触がまき絵の手に伝わる。

その瞬間、たんっ、と後ろに跳躍しながらまき絵がリボンを放った。
次の瞬間には、マミの形をしていたリボンがぶわっと解けて膨張し、
ごうと渦巻きまき絵を飲み込まんとした大量の黄色いリボンに
まき絵が放ったピンクのリボンが絡み付き、縛り上げていた。

膨張したリボンがまき絵の手で締め上げられ、
まき絵はその向こうに一瞬、マスケットを構えたマミの姿を見る。
マスケットから放たれた銃弾が、
まき絵の左手から放たれた棍棒を弾き飛ばす。
その時には、まき絵は高々と跳躍していた。

ざざっ、と、双方向き直して対峙する。
まき絵が棍棒を、マミがマスケットを構え直そうとした所で、
マミは一瞬視線を横に向けた。
きらっ、と、遠くの銀の光を目に感じたマミがたんっ、と、飛び退く。

そちらからの銃弾が屋根の上を突き抜け、
マミが両手持ちしたマスケットをだだだんっと屋上に撃ち込みながら、
その銃弾から噴出するリボンの壁に足を止めるまき絵を後目に
マミは屋根から別の屋根へと跳躍した。
298 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/04(月) 04:00:51.59 ID:70vzDXqZ0

ーーーーーーーー

「!?」

麻帆良学園都市女子校エリア内にある取り壊し予定の店舗ビルの屋上で、
龍宮真名は愛銃レミントンM700を置く。

そして、背後に颯爽と現れた巴マミの姿を二挺拳銃で容赦なく撃ち抜き、
その巴マミに化けていた大量のリボンが渦巻いて真名を襲撃するのを
少々高価な爆符で吹き飛ばす。

真名がその身を翻し二挺拳銃を発砲する。
マミは、それを横っ飛びに交わしながら両手のマスケットを発砲する。

「!?」
(今回はコスト割れだな)

高く跳躍していた真名は、
爆符の爆発と共に真名は床に空いた穴へと消える。

「!?」

着地した真実は、
前方の天井が爆発して何かがぶち抜けるのを目の当たりにする。
その天井から瓦礫と共に落下して来た巴マミは、
ぱん、と、柏手を打つ。
外側に開く両手の動きに合わせ、何挺ものマスケット銃が空中に浮遊した。

(威力はある、大量に発生させる事も出来るが
マスケットはマスケット、足利義輝タイプか)

廊下を低く跳躍し、頭上を突き抜ける銃弾を感じながら、
真名は二挺拳銃を発砲する。
双方の銃弾が交わされ、たんっ、と、双方が前に跳んだ。
どんどんっ、と、双方が手にした拳銃、マスケットを発砲し、
双方が身を反らしたそのすぐ前の空中を銃弾が飛び去った。
299 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/04(月) 04:04:08.22 ID:70vzDXqZ0

ーーーーーーーー

「ほら、埒が明かないわ」

取り壊し予定の店舗ビルだった瓦礫地帯で、
一歩程度の距離の龍宮真名にマスケット銃を向けた巴マミが言った。

「ああ、そうだな」

片手拳銃の龍宮真名が、
右手に握るデザートイーグルの銃口をマミに向けたまま低く呟く。
次の瞬間、マミの左手が彼女の首元からリボンを引き抜き、
猛スピードでマミに迫る五百円玉を弾き飛ばす。
たたんっ、と、瓦礫の上で双方距離を取り、
びゅう、と、マミが振り下ろしたリボンの房が
飛来する五百円玉を叩き落とす。

「!?」

そして、双方が銃口を向け直そうとした瞬間、
その足元で衝撃が弾けた。

「どうもー」
「あなたはっ!?」

そこに現れた明石裕奈が二挺の魔法拳銃を手ににへらっと笑い、
それを見たマミが声を上げる。

「うん、色々有耶無耶にして欲しいって言う
ここまでの努力は非常にありがたいんだけど、
ここは一つ私に預けてくれないかな?」

「それは、学園警備からの要請と受け取っていいのか?」
「その辺は、さ。話通しとくから頼むわ龍宮さん」

「………いいだろう」

「って、事で、それぞれみんなここ離れて、
あなたは私に付いて来て。
そうした方がいいと思うよ、この状況見ても」
「そうね、是非納得のいく説明をいただきたいものね」
300 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/04(月) 04:07:20.74 ID:70vzDXqZ0

ーーーーーーーー

「派手にやったねー、
近づいただけでも口ん中じゃりじゃりしてる」

第二体育館のシャワー室で、
土埃を洗い流しながら裕奈が言った。

「シャワーを浴びて、と言うかそれ以前に、
ケガは大丈夫なの?」

その裕奈に案内され、
裕奈の隣のシャワーブースでシャワーを浴びながらマミが尋ねる。

「うん、大丈夫。
身近に治癒魔法使える仲間がいるから」
「近衛さんの事?」
「あれは特別、
あれ程じゃなくてもまあ筋はいいって言われてる私の仲間」

拭いた体を着替え筒に包み、
黒髪をバスタオルで拭いながら裕奈がブースを出る。

「そっちこそ、ケガない?」

同様に、ブースから出て来たマミに裕奈が声をかけた。
301 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/04(月) 04:10:30.72 ID:70vzDXqZ0

「ええ、これからお友達と合流するから、
シャワーを借りて正直助かった」
「どういたしまして」

「もっとも、元はと言えばあなたのせいなんだけど、
一体あなたは何者でどういうつもりなの?
あなたも魔法使いでいいのかしら?」

「最後の質問に就いてはYes、
魔法使いの明石裕奈、よろしく凄腕のマギカさん」
「巴マミよ、魔法使いが私達魔法少女に敵対するつもりなのか、
きちんと説明して頂戴」
「分かった」

真面目に釘を刺すマミに、
少々軽薄にも見えた裕奈も真面目に応じた。

ーーーーーーーー

「マミさん、遅いね」
「何やってんだろ?」

麻帆良学園女子中等部寮643号室で、
テーブルの前に座ったまどかとさやかがひそひそ話をする。

「お待たせ」

そして、台所から木乃香がお盆を持って現れた。

「美味しい」

木乃香が入れた紅茶に、さやかが声を上げる。

「やっぱり、このかさんの紅茶って美味しいわ、
マミさんもそうだけど、
あたしなんかがやるのとは段違いだもんね」
「美味しいです」
「おおきに」

さやか、まどかと木乃香が言葉を交わす中で、
ほむら、杏子と刹那もめいめい紅茶を楽しむ。
302 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/04(月) 04:13:54.84 ID:70vzDXqZ0

ーーーーーーーー

マミは、肩の上からこちらを見る子どもと目が合い、
くすっと微笑んでいた。

裕奈はマミを案内して教会に入り、
ちびっこシスターをおんぶした同年代のシスターと言葉を交わす。

小さなシスターはすとんと着地して、
おんぶしてくれたシスターと共にその場を離れる。
その仲の良さそうな二人をマミは微笑ましく見送っていた。

「そうだね、何処から話そうかね?
取り敢えず、折角麻帆良に来たのに
不快な思いをさせたのは謝る、この通り」
「それは、ここからの説明次第ね」
「そうだね」

裕奈とマミが、中央近くの長椅子に並んで座る。
もちろん油断なく目を配っていたつもりだが、
この時点で、マミはもう余り悪い印象を持ってはいなかった。

この明石裕奈、さっぱりとして見える気性はさやかにも似ていて
憎めない明るさと芯の強い真摯さが見える。

確かに割と本気の攻防はあった訳だが、
利害の衝突で刃物沙汰になりかねない、
そういう日常を送っているのはマミも同じだ。
大体、ダメージ自体は裕奈の方が大きいもので、
譲れないものがあっても、それが常に個人的な好悪に直結するとも限らない。
先程は、湯殿に通せば丸腰の所を襲撃出来る、
と思っているなら魔法少女相手にむしろ好都合だと誘いに乗ったが、
全くそんな事もない善意のお誘いだった。

「さっき、学園警備とか言ってたわね」
「うん、まあー、私の所属、かな?
魔法使いの事は知ってるんだよね?」
「ええ、一応の事は桜咲刹那さんから聞いてる」
303 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/04(月) 04:17:19.01 ID:70vzDXqZ0

「そ。この麻帆良学園そのものが関東の魔法の一大拠点であり
関東魔法協会の中枢って事になるんだけど、
関東魔法協会の正式な組織として麻帆良学園の警備に当たるのが学園警備。
私はそこでエージェントの見習いをしている。
もう少し言っちゃえば、学園警備と3Aの二重スパイってとこかな?」

「二重スパイ、ってそんな事言っちゃっていいの?」

「それじゃあ、パイプ役って事にしとく?
3年A組が独自にあなた達マギカ、
魔法少女と接触して動いているみたいだから、
そっち関係で何かあったら報せる様にって先輩から言われててさ。
そしたら、このかちゃんがあんたらこっちに呼ぶって小耳に入ったから
探り入れてたらこんな感じになったって事で」

ーーーーーーーー

「でも、凄いっスねーこのかさん」
「ん?」

「だって、あんなばっちり野点して、
それで紅茶もこんなに美味しいって。
正に和洋折衷流石はお嬢様」

「ややわー」
「ま、旨いモンは旨い」

さやかの誉め言葉に木乃香がころころ笑い、
楽な姿勢でクッキーを口にしながら杏子が言った。

「ふふっ、うちも知ってたけど教えてもろたからなぁ」

暁美ほむらが一人静かに紅茶を傾け、ちらっと視線を走らせる。

「それはもしかして、この子が関わりあるのかしら?」
「えっ?」
304 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/04(月) 04:20:38.27 ID:70vzDXqZ0

ーーーーーーーー

「3年A組、って、学校のクラスみたいに聞こえるんだけど」
「そうだよ」

マミの問いに、裕奈はあっさり応じる。

「ええと、ごめんなさい。
学園警備が魔法協会の正規の組織なのはいいとして、
学校のクラスとの二重スパイ?
そう言えば、この学校自体が………」

「うん、麻帆良学園と関東魔法協会がイコール、
現実問題としてこう説明しても否定するほど間違っていない」

「それじゃあ、あなた達のクラス、ここの学校は魔法使いの学校か何かなの?
あの、えーと例えばホg………」

「あーごめんちょっと違う。
確かにそれこそイギリスにはガチでそういう学校もあるみたいだけど、
麻帆良学園に関しては微妙に違うんだわ」
「訳が分からないわ」
「そうだね」

微笑み、同意しながら裕奈はスマホを操作する。

「どっから説明したらいいかなーって思ったけど、
やっぱりここからかな?」
「………この子? ………」
305 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/04(月) 04:24:07.16 ID:70vzDXqZ0

ーーーーーーーー

「図書館?」

ほむらが目で指した先、写真立ての写真を見てさやかが言う。

「ではないわね、個人の書庫かしら?」
「うん、ちょっと高い所にあるねこの本棚」
「それに、さっきからよく見かける制服だから、
ここの学校の行事、或いは調べもの」
「ああ、さっきからよく見かける顔が二つ程写ってるな」

ほむらの推測に続き、
杏子が視線を走らせた先で刹那はポーカーフェイス、
このかがにっこり微笑んだ。

(近衛木乃香はとにかく、
桜咲刹那のこの柔らかい笑顔。そして………)

「可愛い」

さやかが、ぽつりと言った。

「何て言うか、国際色豊かなの?
金髪の女の子とか白人の男の子とか」
「いや、ちょっと待て」

そこで杏子が言う。

「子ども、だよなこれ?」
「そうね、明らかに子どもなのに同じ制服を着てる。
男の子の格好も、ちょっと珍しいと言うか」
「あれ? もしかしてこのかさんの紅茶って?」

話を元に戻したさやかに、木乃香がにっこり微笑んだ。

「そうや、一緒によう勉強したなぁ」
「この子って………」
306 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/04(月) 04:27:21.71 ID:70vzDXqZ0

ーーーーーーーー


















ネギ・スプリングフィールド


















==============================

今回はここまでです>>295-1000
続きは折を見て。
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/04(月) 07:54:46.34 ID:fQfvgeXVO
F9 色盲絵師 福島 炎上 業者 まどか☆マギカ マギアレコード アニメ板
https://2ch.me/vikipedia/F9
308 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/09(土) 16:45:04.55 ID:wCTSvUcm0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

ーーーーーーーー

>>306

「白人? 可愛い男の子ね」
「でっしょー」

スマホを手ににへらっと笑った明石裕奈の横顔を、
巴マミは微笑ましく見ていた。
まるで、自慢の弟を誉められた様だと。
そして、裕奈がすっすっとスマホを操作する。

「これが、3年A組、私達のクラス」
「………見知った顔が何人もいるけど………
この子、さっきの男の子よね?」
「うん。ネギ・スプリングフィールド、
私達の担任の先生」

ーーーーーーーー

「これが、うち達のクラス3年A組や」

女子寮643号室で、
近衛木乃香がミニアルバムの集合写真を見せていた。

「あ、このかさんに刹那さん………
さっきの男の子?」
「ますますおかしいわね」

美樹さやかの言葉に暁美ほむらが続いた。

「その辺りの事は、私から」

口を開いたのは、桜咲刹那だった。
309 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/09(土) 16:49:39.57 ID:wCTSvUcm0

「最初に、今私達がいる麻帆良学園。
この学園自体が、関東魔法協会とイコールに近い関係にあります。
表向き普通の学校で、
実際に普通の生徒や教師も少なからず在籍していますが、
その中枢は魔法組織である、そう思っていただいて結構です」

「そういう学校あるんだ」
「丸で秘密結社ね」
「そう考えていただいても構いません」

さやかに続いたほむらの言葉に、刹那が同意を示す。

「そして、この少年、ネギ・スプリングフィールドは、
私達3年A組の担任の先生です。
イギリスの魔法学校を首席で卒業し、
学業成績と形式の上では大学卒業相当の飛び級が認められています。
そして、魔法学校の卒業実習を兼ねて
この学校の私達のクラスに担任教師として着任した」

「子ども、ですよね」
「弱冠十歳です」

やや怖々と尋ねたまどかに刹那が答えた。

「いやいや、幾らお勉強が出来たって………
まさか、魔法で支配してるとか?」
「そんな事は出来ませんよ」

さやかの言葉に、刹那はふふっと笑って言った。

「第一に、そういう魔法の濫用は禁止されています。
第二に、学校自体が魔法組織で、
教室内にはネギ先生を超える実力者がいるぐらいです。
かく言う私も、少なくとも当初の時点ではその中にいました」
「魔法使いの学校、ねぇ」

刹那の説明に佐倉杏子がお手上げした。
310 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/09(土) 16:52:44.20 ID:wCTSvUcm0

「答えを言えば、ネギ先生が才能に恵まれた誠実な努力家だった。
確かに大変な事も多くありましたが、
それを乗り越えるだけの力量も持ち合わせていました」

「………それに、形の上で私立みたいだから、
余り目に余るケースは正式に排除も出来る」
「それも無いとは言いません。
言わば、前提ですね」

ほむらの言葉に刹那が応じた。

「十歳の、先生ねぇ」

「ええ。ですから、少なくとも最初の段階では、
今でも少なからず、クラスの生徒からは可愛い弟扱いもされていますが、
それでも、一生懸命先生としての役目を果たすネギ先生に、
私達もそれに応じて来たと言う事です」

「ふうん」

そんな、さやかと刹那のやり取りをほむらは横目で見ていた。

「あなた達は、その中でも親しかったと言う事かしら?」
「否定はしません」

ほむらの問いに刹那が答える。

「色々あったからなぁ」

木乃香が、そう言って天を仰いだ。

「うん、色々あってな、
ネギ君この部屋に住んでるん」
「は?」

木乃香の言葉に、さやかがぽかんと応じた。
311 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/09(土) 16:56:07.11 ID:wCTSvUcm0

「最初にこの学校に来た時、ネギ君の住む所が決まってのうて、
それでうち達の部屋に住めばいいってお爺ちゃんが」
「このかお嬢様の祖父は麻帆良学園学園長であり、
関東魔法協会の長でもあります」
「魔法世界のザ・お嬢様がここにいる」

刹那の説明にさやかが乾いた笑いと共に言い、
木乃香はにこにこ受け流す。

「ネギ先生は優れた魔法使いであり、この麻帆良は魔法の拠点。
木乃香お嬢様も、本来は一般人としての生活が家の意向でしたが
最終的には魔法に関わる事となりました。
そこで、魔法に関わる様々な事件、出来事があり、
私達、私やお嬢様、ネギ先生、アスナさん、
他の皆さんが関わっていく事になったのです」

「アスナさん?」
「それは、もう一人のルームメイト、と言う事かしら?」

鹿目まどかが聞き返し、すっと周囲を見たほむらが続いた。

「そう、この部屋は今、
うちとアスナ、ネギ君の部屋として使こてるさかい」

そう言って、木乃香はふふっと少し寂し気に微笑む。

「でも、そんな可愛い子で凄い魔法使いって会ってみたいかな?」
「それは、少し難しいですね」

さやかの言葉に刹那が苦笑する。

「魔法の世界で少々大きな出来事がありまして、
ネギ先生とアスナさんはそちらの関係でここを離れる事が多くなりましたから」

刹那の言葉と共に、まどかはちらっと木乃香の顔を見る。
何処か寂し気なのはそのせいか、と。
312 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/09(土) 16:59:18.81 ID:wCTSvUcm0

「ネギ先生が凄いのは聞いたけど、
アスナさんもそれ程の人物なの?」
「そういう事になります」
「………ちょっと、寂しいなぁ」

ほむらの問いに応じた後に刹那が言い、
木乃香がぽつっと口にした。

「京都からこっちに来て、うちがちょっと馴染めんかった時に
最初に友達になったのがアスナやったから。
今言うたみたいに私立の学校で人の異動も少ないさかい、
ずっと一緒やったから、いない事が多くなると寂しいわ。
うちの事もネギ君の事も力一杯引っ張ってくれて。
ネギ君も、ここで一緒になって、弟が出来たみたいで楽しかったからなぁ」

「そうですね」

はんなりと言葉を紡ぐ木乃香と優しい口調の刹那を、
ほむらは静かに見ていた。

ーーーーーーーー

「ごめんなさい、担任の、先生?」
「うん。まあ、付いて行けないのは当然だと思うけど」

教会で、聞き返したマミに裕奈が言った。

「ネギ先生、ネギ・スプリングフィールド。
イギリスの魔法学校を首席で卒業した天才魔法少年。
形の上では飛び級の大学卒業扱いだとかで、
魔法学校の卒業実習もかねてこの学校の先生になったって事。
この学校、麻帆良学園は実質的に魔法使いが作って
裏から仕切ってる学校だからね」

「そういう学校、だったわね」

「そ、関東魔法協会の長が学園の学園長ってぐらいで、
生徒にも教師にもその筋の人間が大勢いるからね。
まあー、私も知ったのはつい最近、
ってぐらい普通の生徒も結構いる訳だけど」
313 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/09(土) 17:03:00.62 ID:wCTSvUcm0

「ちょっと、集合写真をもう一度見せてもらえるかしら?」
「どうぞ」

裕奈が差し出したスマホを、マミは改めて見直す。

「あなたと桜咲さん、近衛さんね。
それから、さっきのスナイパーと新体操の娘もいるわね」

「こっちは佐々木まき絵。
私と同じ時期にこっちの世界に首突っ込んだんだけどさ、
私の親友だから、私が大怪我したの見て
反射的に巴さんに突っ掛かって行ったんだね。
それは私が悪かったし私からもよく話しておくから許してあげて」

「それで、こっちのスナイパーは?
佐々木さんは新体操の技量はとにかく実戦は素人っぽい粗があった。
だけど、スナイパーは尋常な使い手じゃない」

「龍宮真名、巴さんの言う通り魔法使いの凄腕スナイパー。
この人の事は、正直言って私にもよく分からない。
3年A組でも話す機会は少ないし、
依頼で動くタイプだから魔法協会とのパイプはあるんだろうけど、
どういう筋で動いているのかまでは把握出来ないんだ。
さっきのは多分行き掛り上私を助けようとした訳で、
これはどっちかって言うと私のドジで
龍宮さん自身は筋の通らない事はやらないと思う。
それで、こっちから聞くけど、
巴さんはどうして魔法使いの事を知ったの?」

「桜咲さんの方から接触して来た。魔女の結界でね。
あなた達魔法使いは本来私達魔法少女には関わらないとも聞いてるけど、
見滝原の魔女の発生率が高くなってるとかで、
そちらの魔法協会の内内の指示で調査しているって」

「成程ねぇ。それでここに来たのは?」

「近衛さんに招待されたから。
以前に見滝原でも紅茶のお茶会を開いた事があって、
それで、今度は麻帆良で野点に招待したいと」
314 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/09(土) 17:07:10.08 ID:wCTSvUcm0

「ちょっと待って、刹那さんが魔法少女の調査をしていたって?
魔女、って、そっちで狩ってるモンスターの事だよね?」
「ええ、魔女を狩るのが私達魔法少女の使命。
桜咲さんが関わって来る迄は、そこに魔法使いが関わる事は無かった」
「それは、刹那さんとこのかちゃんが?」

裕奈の問いに、マミが首を横に振った。

「近衛さんは桜咲さんを勝手に追いかけて来たみたいね、
桜咲さんも驚いていたみたいだから。
桜咲さん、近衛さんも明石さんのクラスメイト、でいいのよね?」

「うん、3Aのクラスメイト。
只、特に刹那さんに関しては詳しいって程詳しい間柄でもないけどね」

「やっぱり、魔法協会の魔法使いなの?」
「と、言うか、ネギ・パーティーのコア・メンバーだね」
「ネギ・パーティー?」

マミの問いに、裕奈は椅子に指で同心円を描き始める。

「色々あって、特に夏休みにね、
それで3年A組は私も含めてかなりの部分魔法関係に染まっちゃったんだけど、
魔法関係、それ以外含めてネギ先生を中心としたパーティーが出来てるんだ。
参加した時期が幾つかに分かれるんだけど、
はっきりコア・メンバーなのは」

裕奈がスマホの集合写真を指す。

「ネギ君、神楽坂明日菜、近衛木乃香、桜咲刹那。
この四人で間違いないと思う。
元々刹那さんを除く三人は女子寮の同じ部屋に住んでるし」

「ネギ先生も?」
315 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/09(土) 17:12:18.91 ID:wCTSvUcm0

「うん。まだ子どもだからって事で、
成り行きでそういう事になった流れだけどね。
でも、魔法関係の事でもかなり早い段階でこの三人はつるんでたって聞いた。
そして、刹那さんとこのかちゃんは故郷の京都で大親友。
その縁でアスナの剣の師匠で、
刹那さん普段はちょっと冷徹で怖い人に見えるんだけど
特にこの三人には心開いてる感じかな。
それで、ネギ先生からの信望も厚い」

「ええ、私も桜咲さんは信頼に値する人だと思う。
命がけの魔女退治に何度も同行しているから間違いない」
「その辺は間違いないと私も思うよ。
只、こっちの仕事始めて分かったんだけど、
刹那さんって所属が結構複雑でね」

「魔法協会じゃないの?」

「と言うか、近衛家の直属なのかな?
刹那さんが使う剣術は京都神鳴流、
この流派は京都で陰陽師とかと一緒に魔物退治してたそういう流派。
フィクションだとあの狂言の人がやってた映画とかの怨霊退治の裏側に、
って言ったらもっと分からなくなるか」

「大丈夫、ゴ○ラの人がやってたあの映画ね?」

「それで合ってる。
近衛家はその時代からの京都の超大物で、
今でも格式、能力ともに
日本の魔法、呪術のトップに君臨していると思っていい。
だから、青山家を宗家とする神鳴流も近衛家とは密接な関りがあった。
歴史の教科書的に言うと、京都の朝廷の下で魔物を退治していたのが神鳴流で、
その京都の朝廷の権力者で
今でも魔法、呪術の裏側に君臨しているのが近衛家って事になるから」

「やっぱり、エージェントってそういう事を調べるの?」

「まあ、それも仕事ではあるんだけど、
実際これ分かり易く調べて来たのはまき絵。
文字通りの新体操バカで勉強とかさっぱりだったんだけど、
こっちに関わってから、やたらこっち側の歴史とかにドハマリしてね。
まあ、関わったものは仕方がないって事で、
知り合った関係者も支障の無い限りの事は教えてくれてるみたいで」
316 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/09(土) 17:15:57.95 ID:wCTSvUcm0

「つまり、桜咲さんは京都の近衛家と?」

「そっちの影響が強いんじゃないかな?
今の近衛家は、当主の近衛近右衛門が関東魔法協会の長で麻帆良学園の学園長。
近衛近右衛門の娘婿の近衛詠春が京都在住で
関西呪術協会の長で近衛の義理の親子が東西の魔法・呪術の長を務めてる。
近衛詠春の前の名前は青山詠春、
つまり神鳴流宗家青山家の出身で実際めちゃ強い剣の達人。
近衛近右衛門の娘と近衛詠春の間に生まれた娘が」

「近衛木乃香」

マミの言葉に、裕奈が頷いた。

「つまり、今の近衛家は近衛と青山、
西と東、魔法と剣ががっちり絡んだ上に君臨してる状態になってる。
神鳴流の剣士として関東協会に属してる刹那さんが
実質的な直属なのもまあ当然だね。
学園警備から見ても独自の指揮系統で動いてる節があるし、
このかちゃんの護衛でもある訳だし」

「やっぱり」
「そう見えた?」

「ええ、漫画や時代劇でよく見る関係に見えた。
幼い頃からのお付きの者で、お嬢様は友達として心から慕ってる。
お付きは形の上では遠慮してるけど、本当は大切な友達だと思ってて、
お互いにその気持ちは通じ合ってる。
これが執事だったらちょっとしたラブストーリーな関係よ」

「まあねー」

くすっと笑って言うマミに、裕奈がくくくっと笑って答えた。
317 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/09(土) 17:19:02.01 ID:wCTSvUcm0

「そういう事、見りゃ分かるよね。
西と東、魔法と呪術、剣術まで加わって頂点に君臨している、
裏の魔法のスーパーサラブレッド、って、家柄だけじゃなくて、
潜在的な能力も桁違いに高いのがこのかお嬢様」

「知ってるわ、
それは私達から見てもとんでもない魔力を持っているから」

「うん。そして、そのこのかお嬢様が京都にいた時、
護衛としてつけられたのが刹那さん。
いわゆるご学友って奴だね。

流派的にも、この時は関西呪術協会の所属だったのかな?
このかちゃんがこっちの学校に来たのに合わせて
刹那さんもこっちに来て、
それに合わせて関東魔法協会に移籍したみたいだけど、
今の東と西は上で繋がってるからね。

なーんか今から思えばこっち来たばっかの頃は
このかちゃんが色々声をかけても刹那さんの方で素っ気なくしてて
このかちゃんが落ち込んでたみたいな事もあったみたいだけどさ」

「それは、多分護衛の任務を優先したから。
だから物理的にも精神的にも客観的な視座を得るために、
大切だからこそ敢えて距離をおいた。
彼女はそういう人じゃないかしら?」

「ご名答。でも、中等部の修学旅行以来かな、
なんか打ち解ける事があったみたいで、
そっからはもうじゃれつくこのかちゃんを
刹那さんとしても内心嬉しい熱々の幼馴染っぷり。
なんか、その頃に魔法絡みで色々あったみたいで、
それでアスナとも繋がって、
学校ではアスナとこのかちゃんが親友だったからね。
それでこの四人がコアな関係で結びついたって事」

「アスナさん、ね」
318 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/09(土) 17:23:10.82 ID:wCTSvUcm0

「うん、まあ、私立って事で長い事クラスメイトしてるけどいい娘だよ。
自分ではがさつ者って言ってるけど、
なんか馬鹿みたいに楽天的で情に厚くて。

ネギ君とか刹那さんとか、実の所このかちゃんも、
ちょっと重く考え過ぎる真面目なタイプだからさ、
アスナがいて丁度いいバランスになってる。
ネギ君の事とか、正面から止められるのアスナか千雨ちゃんぐらいだし。

ああ、千雨ちゃんってこの娘ね。
普段はちょっと距離取った感じだけど、実は頭もハートもいい奴で。
真面目過ぎて優秀過ぎて、可愛いお子ちゃまなのに一人で抱えすぎなネギ君に、
真正面から向き合っていい感じにブレーキ役になってるのかな。
だから、ネギ君からも相当信頼されてって言うか心が通じ合ってるみたいでさ」

「いい仲間、お友達なのね」

「まあー、この四人は特別かな?
ネギ君がこの学校に来てから、
私達が知らない間にも随分色々あったみたいだけど、
その辺の事をこのメンバー中心で解決してたって言うし、
それで付き合い長かったり同居してたり、
もうファミリーって言ってもいいレベルだわ」

裕奈があははっと笑うのを、マミも微笑ましく眺めていた。

ーーーーーーーー

「マミさん、まだかな?」

643号室でアルバムを見ながらわいわいしている中、
まどかがぽつりと言った。

「折角こちらに来たんですから、一度外に出ますか。
散歩がてらカフェにでも。
巴さんには連絡を入れておきましょう」

刹那が言い、めいめいそれに同意を示す。
319 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/09(土) 17:26:38.72 ID:wCTSvUcm0

「あの、刹那さん」
「はい」

そこで、さやかが刹那に声をかけた。

「仁美や恭介に説明してくれたって。
有難うございました。
お礼、言いそびれてすいません」
「いえ、私も急にこちらに戻って来ましたから。
それで、その後の進展は?」

真面目な顔で尋ねる刹那にさやかは笑って首を横に振る。

「色々あったから一時休戦だって。
いい友達持ったよあたし。
本当に、いい友達、いい仲間を持った、ね、まどか」
「ウェヒヒヒ」
「気ぃ付けろよ」

そこに杏子が口を挟む。

「そういう事に女の友情は無いって言うからな、
案外そう言っといて」
「あー、そう言えばアーニャちゃんもいつぞや言うてたなぁ、
向こうにはちょうどいい諺があるて」
「うん、分かってる」

さやかがにこっと笑い、紅茶の残りを口にした。

==============================

今回はここまでです>>308-1000
続きは折を見て。
320 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 01:41:57.76 ID:zUxBw6DX0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>319

ーーーーーーーー

「なんか、歴史的って言うか」
「うんうん、歴史の重みを感じるね」

麻帆良の西洋風の街並みを歩きながら、
鹿目まどかと美樹さやかが改めて言葉を交わす。

「………おい」
「気が付きましたか?」

佐倉杏子の言葉に桜咲刹那が応じた。

「ねぇ、まどか………」
「何?」

ちょっと口調が変わったさやかにまどかが聞き返す。

「結界?」
「えっ?」

暁美ほむらが発した聞き慣れた単語にまどかが聞き返した。

「まさか、でも、これって………」
「さやかちゃん?」
「だって、人が、他にいない」

さやかの言葉に、まどかがハッとして周囲を見回した。
車が通らないのはとにかく、他の歩行者の姿すら見えない。
321 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 01:45:47.92 ID:zUxBw6DX0

「脱出します。佐倉さん、しんがりをお願い出来ますか?」
「おう」

刹那の冷静な言葉に、杏子が不敵に笑って答えた。

「では、他の人は私について来て下さいっ!」

刹那が建物に向けてダッと走り出し、杏子を除く面々がそれに続いた。

次の瞬間、路地から飛来して来た幾つかの光の塊を
杏子の槍が弾き飛ばす。

(光の矢? 一つ一つがちょっとした打撃攻撃ってか)

そして、杏子は、路地からざざざっと姿を現した
黒いローブ姿の相手を見据える。

「なんだ、てめぇ?」

返答代わりに、又、幾つもの「光の矢」が杏子を襲い、
杏子はそれを苦も無く叩き伏せる。
更に、不意の突風が一瞬杏子の視界を妨げる間に、
黒ローブは杏子との距離を詰めていた。

「おらっ!」

黒ローブが、杏子の横殴りの槍を交わす。

「の、野郎っ!」

二度、三度と槍の打撃、そして突きを交わされ、
いらっ、と来た杏子が、馬鹿長く変化した槍を振り上げた。
そして、杏子の一振りと共に、馬鹿長い多節棍が
杏子の前方の空間を範囲攻撃でもする様に展開した。
322 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 01:50:24.17 ID:zUxBw6DX0

「(これで)どうだ、っ!?」

百戦錬磨の魔法少女佐倉杏子が、締め上げた、
と、その感触まで妄想した瞬間、
黒ローブは集中して巻き付いた多節棍のすぐ横にいた。

(なん、だぁ? 確かに普通じゃねぇがこっちの基準で特別速い訳じゃねぇ、
テレポートや幻術でもない、只、交わしただけに間違いない。
なのにここまで一発も?)

杏子が、再び飛んで来た光の矢を、体を開いてやり過ごす。

「うぜぇうぜぇうぜえっ!!!」

杏子が槍を手元に戻し、
黒ローブを狙って突き、払い、そのどちらもするする交わされる。

(しま、っ!?)

とっさに自分の顔の前で槍を振るった杏子が、その迂闊さを呪う。
杏子の目の前で槍の柄に破砕されたのは、複数の試験管だった。
かくんと膝をついた杏子の瞼が、急速な睡魔に屈する。

ーーーーーーーー

「桜咲刹那、これはどういう事っ!?」
「詮索よりも安全を確保します」
「ああもうっ、雨とか降ったっけっ!?」

路地裏を走りながらほむらの問いを刹那が流し、
さやかが悪路に悪態をつく。

「!?」

ほむらが気配に振り返った次の瞬間には、
そこに存在していた黒いローブの「敵」にほむらは一撃され、
吹っ飛ばされたほむらの背中が近くの建物の壁に叩き付けられていた。
323 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 01:53:55.51 ID:zUxBw6DX0

「ほむらちゃんっ!」
「お嬢様鹿目さん私の後ろにっ!!」
「こ、んの野郎っ!!!」

瞬時に変身して飛び掛かったさやかの一刀を、
黒ローブはすいと交わしてさやかの後ろ首に手刀の一撃を加える。

「さやかちゃん!!」

どうと地面に倒れ込んだ親友の姿にまどかが今度こそ悲鳴を上げた。

「だい、じょうぶ………」
「まどかっ!! ………!?」

さやかが呻きながら身を起こそうとし、
頭を振り、ざっと前に踏み出したほむらは強制的に足を止めた。

「なっ!?」
「なに、これ?」

地面から噴き出した、
大量の紐の様な水に雁字搦めにされているほむらを見て
ようやく身を起こしたさやかが目を見開く。
たっ、と、刹那が一瞬で間合いを詰め、野太刀「夕凪」を抜き放った。
野太刀で居合、と言う物理法則に挑戦する神鳴流剣士ならではの一撃を、
黒ローブはするりと交わして地に潜る様に姿を消す。

「な、何よこれっ!?」
「捕縛結界です」

ほむらの問いに刹那が答える。
324 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 01:58:00.94 ID:zUxBw6DX0

「学園警備とこちらの仲間に救援要請を出します。
美樹さん、それまで暁美さんのガードを、
任せて大丈夫ですか?」

「おーけーおーけー、
杏子や刹那さんに結構ボコられてるからね、
この程度なんて事ないって、ててて」
「冗談じゃないわっ! まどか、っ」

「見た所、直ぐに解除するのも力ずくで突破するのも無理です、
私が安全な所まで誘導しますから大人しくしていて下さい。
ここで無理をしても消耗するか最悪大怪我です」

「って、事だからここはあたしに任せといて。
今度来たらぶった斬る」

コメカミに汗を伝わせながら、
大股開きで正眼に構えたさやかが宣言する。

「それでは、お嬢様はしんがりをお願いします」

刹那の言葉に、近衛木乃香は力強く頷く。

「分かった。まどかちゃん、うちとせっちゃんから離れんといてなっ」
「はいっ」
「大丈夫や、せっちゃん強いんやから!」
325 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 02:02:22.97 ID:zUxBw6DX0

ーーーーーーーー

「もしもし? うん、こっちで確保して………
何、それ?」
「?」

教会で、着信したスマホの通話を終えた裕奈の目が見開かれていた。

「どうしたの?」
「襲撃、された」
「!?」
「こっちに来てる巴さんのお仲間が襲撃されてるっ!」
「襲撃、って、魔法使いなのっ!?」

「質問の答えはイエス、
そうとしか思えないけど誰がやってるのか分からない。
今、刹那さんがガードして安全な所に避難中、私も出るっ!!」

「置いて行くとか言わないでしょうねっ!?」

ーーーーーーーー

路地裏を抜け、行き着いた先は世界樹前広場だった。

「「アデアット!」」

巨大な神木「蟠桃」に向かう巨大な上り階段の幾つもの踊り場。
簡単に言えばそういう作りの「世界樹前広場」にたどり着いた桜咲刹那は、
夕凪と長匕首の二刀で上段から突っ込んで来た斬撃を弾き飛ばした。

「下がってっ!」

まどかを背に隠した水干緋袴姿の木乃香が、
飛来した水晶球を魔法障壁を込めた白扇からの強風で吹き飛ばす。
326 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 02:05:27.11 ID:zUxBw6DX0

「あなた達、ここで、
麻帆良で私達を手に掛けると言う事の意味を理解していますか?」
「何者を敵に回そうが、私の救世を成し遂げる」

呉キリカを前衛に従え、
広場の上段に現れた美国織莉子の宣言だった。

「匕首・十六串呂!」
「とっ!」

ドドドドッとまとめて打ち込まれた匕首手裏剣を
キリカが横っ飛びに交わした。

「アデアット! お嬢様っ!!」
「はいなっ!」

みょんみょんみょん

「おおおっ!!!」

刹那の手で文字通りぶった斬る勢いで振るわれた建御雷を、
キリカが這う這うの体で交わす。
本当の所を言えば、木乃香の魔力供給を受けた建御雷の一撃は、
キリカとしてもチビらなったのを自慢したくなるぐらいの
とんでもない威力の上にスピードだった。

「!?」

織莉子が放った水晶球が、遠くからの銃弾を受けて砕け散った。
織莉子がたたたっと階段を下りながら水晶球を放ち、
銃弾が水晶球や地面に弾ける。

「上ってっ!!」
「はいなっ、まどかちゃんっ!」
「はいっ!!」

刹那が叫び、牽制されている織莉子、キリカを後目に
木乃香とまどかが階段を上り
刹那がしんがりについて二人の敵を牽制する。
327 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 02:09:46.80 ID:zUxBw6DX0

ーーーーーーーー

「正義の使徒、高音・D・グッドマン、見参っ!!!」
「おー」パチパチパチ
「魔法使い? 早速だけどこれ、解いてくれないかしら?」

路地裏で、捕縛結界に拘束されたほむらが
颯爽登場した高音に要請した。

「メイ」
「はい………これは………メイプル・ネイプル・アラモード………
………きゃあっ!!」
「メイっ!?」

ほむらの足元の魔法陣を確認しながら呪文を詠唱していた佐倉愛衣が
すってーんっと転倒した。

「大丈夫、です」
「何やってるのよ」
「いや転校生ちょっと偉そうだから」
「これは、魔法陣で人をとらえる捕縛結界ですね」
「ええ、丸で地雷ね」

「その通りです。基本を踏まえながら幾つか嫌なトラップが仕掛けてある、
手作業でこれを外すのはちょっと、骨ですね」
「今、携帯用の破砕装置を手配してはいますが、それ程のものですか」
「そこそこ手間がかかってますし、よく勉強していると思います」

「あれは魔法使いよね?
まどかが魔法使いに追われて逃げているってどういう事なのかしら?
急がないとまどかが………」

「この結界の中で焦ってもケガするだけです、少しだけ時間を下さい。
桜咲さんと近衛さんが一緒であれば安全な筈です」

「ええ、ここでマギカ、魔法少女を襲撃する魔法使い、
その意味は分かりません、至急究明する必要がありますが、
あの二人が一緒なら大丈夫でしょう」
328 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 02:13:47.98 ID:zUxBw6DX0

ーーーーーーーー

「神鳴流奥義・斬岩剣っ!!」
「くっ!!」

建御雷の一閃と共にすごいばくはつが巻き起こり、
下段から刹那に迫るキリカも後退を余儀なくされる。

「織莉子っ!」
「釘付け、みたいね」

動こうとする先に銃弾が弾けている状態の美国織莉子も苦い口調で言った。

ーーーーーーーー

「ちょっと待って」

裕奈と共に現場に急ぐマミが、
裕奈を引き留めて指輪から変化させたソウルジェムを取り出した。
そして、掌に乗せたソウルジェムの感触を頼りに移動を始める。

「な、何?」
「気づかなかった? 私達は本当に目的地に向かっていた?」

言葉と共に、変身したマミが走り出し、
マミの髪飾りの黄色い輝きが空中に壁の様に広がった。

「オッケー行くわよ」

駆け出したマミが突き抜ける様に到着したのは、
世界樹広場だった。

「マミさんっ!!」
「鹿目さんっ、もう大丈夫っ!!」

広場の最上段近くから叫ぶまどかとマミが言葉を交わした。
329 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 02:17:21.20 ID:zUxBw6DX0

「これって………」
「ちょっとだけ中和したけど、
根本の発生源があるみたいね」
「もしもし、こちら世界樹広場、保護対象者発見、
エリアが人払いの結界に飲まれてる、発生源の特定と排除お願いします」
「お邪魔は嫌われるわよ」

スマホを使う裕奈の前で、マミが両手に持つマスケット銃が
飛び掛かって来た呉キリカの刃爪をギリギリ抑える。

「ちいっ!」

通話を終えた裕奈がどんどんどんっと魔法拳銃を発砲し、
キリカが飛び退いた。

「なんとか、なりそうですね」

上へ上へと進んでいた刹那が、ふうっと一息つく。

「………せっちゃん?」

木乃香の言葉と共に刹那が天を仰ぎ、
裕奈の目も見開かれた。

ーーーーーーーー


「正義の使徒、高音・D・グッドマン、見参っ!!!!!
………馬鹿なっ!?」

「世界樹広場」に飛び込んだ高音が叫び声を上げた。

「どう、して?」
「な、何?」

高音、愛衣、魔法使い二人の反応にさやかが聞き返す。
330 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 02:21:26.49 ID:zUxBw6DX0

「手間をかけ過ぎたライトアップイベント、
じゃなければ魔法的な何か、みたいねその反応」

ほむらが言い、前を見たさやかもようやく異常に気付く。

「さやかちゃんっ、ほむらちゃんっ!!」

その瞬間、視界が真っ白になった。

「まどかあっ!!!」

その場に呆然と突っ立っていたほむらが、肩を叩く感触に我に返る。

「あそこに、いたよね?」

ほむらに尋ねるさやかの声は、震えていた。

「ねえ、さっき、たった今まどかあそこにいたよね、
刹那さんとこのかさんと一緒に?」

「まどか?
まどかああああっっっっっ!!!!!」

==============================

今回はここまでです>>320-1000
続きは折を見て。
331 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 03:48:08.07 ID:QrZnS/zy0
時刻もよろしい頃合いでしょうか。

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>330

「まど、か? ………」
「なんだよ、これ………
まどか? まどかっ!? 刹那さんこのかさんっ!!!」

麻帆良学園都市世界樹前広場では、呆然と突っ立っていた暁美ほむらの横で
美樹さやかが階段を途中まで駆け上って叫び、スマホを取り出した。

「駄目だ、携帯も繋がらなくなってる。
いたよね、さっき絶対いたよね………」
「だ………」
「まどか、まどかどこまどかっ!?」
「黙りなさいっ!!!」

広場を震わす様な一喝に、
一同が肩で息をするほむらに視線を向ける。

「間違いなく魔法、魔法使いの領分の話よね?
説明出来るのは誰っ!?」
「明石さん」

ほむらが叩き付ける様に尋ね、マミが促した。

「魔法、世界だと思う」

裕奈がぽつっと言い、
マミは、苦い顔で小さく首を横に振る高音・D・グッドマンに気づく。
そこに、新たに数人の集団が駆け込んで来る。
今度はスーツ姿の大人が中心だ。

「初めまして、麻帆良学園教師葛葉刀子と申します。
マギカの方々ですか?」
「はい」

その中の一人、魔法少女達も見覚えのある馬鹿でかい棒を手にした
長身の美女が挨拶し、マミが応答する。
332 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 03:51:46.78 ID:QrZnS/zy0

「魔法使い………もしかして神鳴流の方ですか?」
「はい」

マミの問いに刀子が答える。

「学園の魔法教師として、この事態の収拾に参りました」
「まどかは何処? 魔法世界って!?」

噛みつく様に尋ねるさやかに刀子は小さく頷いた。

「不安はもっともです。
魔法に関わる者が住まう別の空間、それが魔法世界です。
まどかさんは出入り口のトラブルでそちらに転移したものと思われます。
只、有能な魔法使い二人が同行していますし世界自体も安定しています。
マギカの皆さんとは言え、
こちらの魔法の世界の事はまだ機密と言ってもいい存在。
こちらで無事に送り届けますので、今日の所はお引き取りいただきたい」

刀子の丁寧な一礼に、
今度こそ噛み付きそうに動いたさやかをほむらが腕で制する。

「分かりました」

ほむらが淡々とした口調で言う。

「まどか、鹿目まどかはあなた達で送り届けてくれるんですね?」
「約束します」
「分かったわ」
「おいっ」

ほむらに続いて同意を示したマミに杏子が声を尖らせる。

「分かりました、それでは必ずお願いします」
「承りました、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

マミと刀子が双方丁寧に頭を下げる。
333 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 03:55:03.93 ID:QrZnS/zy0

ーーーーーーーー

「なーに、まき絵?
見せたいものがあるって………」

その夜、自分も住まう麻帆良学園女子中等部寮に戻っていた明石裕奈は、
自室とは別の部屋を訪れていた。

「!?」

ダッ、と、室内に飛び込み仮契約カードを抜き出す裕奈。
そのカードを持った右手がきつい締め付けと共に引っ張られ、
裕奈は体勢を立て直す間もなく、
ぐにゅっ、と、胸に硬いものが押し付けられていた。

「まき絵、亜子っ!!」

同時並行で、裕奈に同行していた
大柄な少女大河内アキラも玄関からリビングに飛び込む。

「おっと、手を上げな」

すっ、と、無造作なぐらいに槍の穂先を向けられ、
アキラは足こそ止めたが、その目の力はむしろ倍増しになっていた。
334 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 03:58:16.65 ID:QrZnS/zy0

「お、っ」
「何をしている?」

槍の柄を手掴みにしてアキラが低く問う。
槍を向けた佐倉杏子は奪い返そうとしたが、
取り敢えず相手が人間である事を標準に力を込めた槍が動かない。

成程、アキラはこの年頃の女子にしては明らかに長身で
一見するとモデルの様にスタイルがいい。
だが、モデルにしては全体に力強過ぎる。

それは、十分な肉付きを見せるスタイルもそうだし、
豊かな黒髪の美少女と言ってもいい顔立ちは、今は侍の様に凛々しい。
まあ、それにしたって尋常ではない馬鹿力だが。

「!?」

杏子が鼻で笑った、かと思った時には、
槍が尋常ではない長さに変化し、更に多節棍に変化してアキラを縛り上げる。

「降参っ! 他の子は関係ないから手ぇ出さないでっ!」

リボンで縛り上げられリビングに転がされているこの部屋の本来の住人、
佐々木まき絵と和泉亜子を横目に、
右手をリボンで引かれ
アンティーク拳銃の銃口を胸に押し付けられた裕奈が叫ぶ。

ーーーーーーーー

麻帆良学園女子中等部寮大浴場「涼風」では、
忙しい一日も終わりに近づき、
佐倉愛衣が掛け湯代わりにシャワーブースに入っていた。

「!?」

心地よく汗を流していた愛衣が、不意に、
左腕を掴まれ右の脇腹に硬い感触を覚える。
背後から促されるまま回れ右をした愛衣は、
その鼻先に刀の切っ先を見た。

「ちょっと、顔貸してもらえる?」
335 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 04:01:43.99 ID:QrZnS/zy0

ーーーーーーーー

「!?」

女子寮の一室で巴マミ、佐倉杏子に監視されていた明石裕奈は、
突如として増えたキャストに目を丸くする。

「メイちゃんっ!?」
「明石さんも、ですか」

得物を手にした暁美ほむら、美樹さやかの手で
裕奈の側に座らされた愛衣に裕奈が声をかけ、言葉を交わす。

「グリーフシード、あるかしら?
お風呂からここまでだと流石に」

ほむらがマミに囁き、グリーフシードを受け取る。

ーーーー(回想)ーーーー

(引き返すつもり?)
「魔法使いの性質上、テレパシーはむしろ危ない」

世界樹広場を出てから、ほむらが小声でマミに言う。
そして、一同は一度、「図書館島」裏手に移動していた。

「よく、こんな所見つけたわね」
「街の死角を見つけるのはあたしらの日常だからな」

ほむらの言葉に、一度先行して潜伏先を探した杏子が言う。

「大体分かった、情報提供感謝する」
「私が連れて来たんだもの、他人事じゃないわ」

マミから分かる限りの事を聞いたほむらが取り出したのは
複数の小型カメラだった。
336 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 04:05:33.68 ID:QrZnS/zy0

「本来は魔女関係のために用意していたものだけど、
動画をスマホで遠隔視聴できる。
一台は今言った佐々木まき絵の部屋、もう一台は女子寮の大浴場近く、
廊下の天井に設置しましょう」
「お風呂?」

ほむらの言葉にさやかが聞き返す。

「メイ、と呼ばれていた魔法使いを押さえる。
タイプ的に見て金髪の先輩は捕獲しても骨が折れそうだから」
「佐々木まき絵さん、明石裕奈さんの大事な友達みたいね」
「嫌かしら?」

ほむらの問いにマミが首を横に振る。

「状況が状況だから、部屋のドアが開いた瞬間に、でいいわね。
暁美さん、かなりの魔力を使う事になるけど」
「一応グリーフシードのストックは用意して来た」

ーーーー(回想終わり)ーーーー

「!?」

リビングで拘束され転がされていた佐々木まき絵が、
自分の魔法練習杖をしゅっと床に滑らせた。
愛衣がそれを手に立ち上がった瞬間、
マミが首元から抜いたリボンが鞭と化して愛衣の右手を叩き、
そのまま愛衣に絡み付いた。

「手荒な真似をしてごめんなさい」

結論として、体に複雑に巻き付いたリボンで
腕を胴体に縛り付けられた愛衣を前にマミが口を開いた。

「だけど、このままはいそうですか、と帰る訳にはいかないの」

マミの声は、丁寧だからこそ凄味があった。
337 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 04:09:22.02 ID:QrZnS/zy0

「今すぐ私達を解放して下さい。
ここで誰かが大声を出せば、
あなた達は3年A組と関東魔法協会を直接敵に回す事になる。
マギカであっても五人やそこらでどうにかなる体制ではありません。
今なら穏便に、鹿目まどかさんの無事はお約束します」
「巴マミ、ちょっと全員にリボンを」

ほむらの言葉に、マミが小さく頷く。
ほむらに耳打ちされたさやかが、
リビングの一角で床に向けてするりと剣を落とす。

「今、あなた達は止まった時の間にいる。
私達の言う事を聞かないと言うのなら、
この学校の人間はここにいる全員の
両腕両脚を砕かれた白骨死体を見る事になる」
「嘘ですね」

空中で静止する剣を前に、
ほむらの言葉に愛衣が応じた。

「マギカの仕組みを正確には知りませんが、
魔力を使っているのは間違いない。
で、あれば、そんな長時間の時間停止が出来る筈がない、
魔力が持たない」
「ああそう」

ほむらは、敢えて苛立った口調を作り、
青髪ショートカットの少女にざしざしと接近する。

「亜子っ!」

生来色素が薄くショートカットの髪が青っぽく見える和泉亜子が、
米軍制式M9拳銃を手にした
ほむらの急接近にぶるりと震え、裕奈が声を上げる。
338 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 04:13:01.84 ID:QrZnS/zy0

「取り敢えず両腕両脚に一発ずつ、でいいかしら?
他の全員分を見せつけてから直接体験してもらう、
取り敢えずその程度の時間はあるわ」

「分かった、分かってる事は全部話す。
元々、私がそっちの立場だったとしても、
あれで友達がいなくなって納得して帰れとか言える話じゃないから」
「分かりました」

裕奈に続き、愛衣も折れた。

「有難う、そしてごめんなさい。
全部私達が悪いって事でいい。
だから教えて頂戴」

二人の返答にマミが頭を下げた。

==============================

今回はここまでです>>331-1000
続きは折を見て。
339 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 03:43:30.41 ID:NVh912BJ0
年末近くでアニメも最終回。
色んな笑いで観てましたが、
まずは楽しませてもらいました。

時刻もよろしい頃合いですか。

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>338

「そちらの和泉亜子さん?」
「はいっ」

ツインドリルヘアーの少女に名前を呼ばれ、和泉亜子の声が跳ねる。

麻帆良学園女子中等部寮、
その自分の部屋にいた所を二人組のコスプレ少女に襲撃され、
あっと言う間に拘束された。

実の所、亜子も同居人の佐々木まき絵も、
この手のトラブルには多少の免疫がある。

そして、コスプレが只のコスプレではない、と言う事も理解出来る。
その亜子から見ても、二人組のコスプレイヤーは相当な実力者だ。
亜子達の知るトップクラスには及ばないだろうが、その道の素人ではない。

「今、リボンを解くから
バスタオルと着る物とバスルームを借りられるかしら?」
「分かった」

自分が手にしたリボンの震えに気づいたツインドリル少女巴マミが言い、
その事に気付いた亜子もしっかりした声で応じる。
340 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 03:46:32.02 ID:NVh912BJ0

亜子としても状況が状況であり、怖いものは怖い。
だが、夏休みの経験により、
その前とは比べ物にならないぐらいには腹が座っていた。
少なくとも、誰かが傷つこうと言う時に
僅かばかりの覚悟を決められるぐらいには。

もう一つ、これもその時の、絶対的な善悪とは別の
筋の通った者、通らない者、些かの暴力的な世界に触れた経験則として、
既に四人に増えたこの襲撃者達、
多分、対応を間違えなければ余り理不尽な事はしない。
そう亜子は直感した。

「大丈夫? 風邪引いてへん?」
「大丈夫、です」

和泉亜子と佐倉愛衣の拘束が解かれ、
亜子は、マミに横目で見られながら、
マスケット銃の銃口を向けられてその場に座り込んだ愛衣を
バスタオルで包み込む。

ーーーーーーーー

佐倉愛衣の着替えが終わり、
亜子とマミが飲み物を用意してから全員の拘束が解除された。

「乱暴の上に恥ずかしい思いまでさせて、本当にごめんなさい」
「慣れてますからモトイ
全部は肯定出来ませんが、
明石さんの言う通り状況から言ってお気持ちは分かります」

マミが頭を下げ、テーブルの前に座る愛衣が、
亜子から渡されたドクダミ茶のカップを
両手持ちにして啜りながら答える。

「それはごめん、本当に」
「申し訳ないと思ってる」

さやかとほむらが頭を下げ、明石裕奈が頷いた。
その背景では「悪かった」と言っている佐倉杏子に
大河内アキラが小さく頷いている。
341 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 03:52:31.96 ID:NVh912BJ0

「佐々木まき絵さん?
昼間にも会ったわね。巴マミです」

マミがまき絵に声をかけ、
マミに目で促されて他の面々も名乗りを行うが、
まき絵はじっと伺うだけだった。

「この人達は魔法少女、マギカ、って言って、
私達とはちょっと違う魔法を使う人達なんだ。
ちょっと色々あって正直トラブルになってるんだけど、
本当なら私達の敵じゃない。このかちゃんや刹那さんの友達でもあるから」

「そうなん?」

明石裕奈が説明を行い、亜子の言葉にマミが頷く。

「こちらに、魔法使いに何か非があったと言うのか?」

「それに就いては、特にあなた達を巻き込んだ事は本意じゃなくて
重ねて申し訳ない事をしたと思ってる。
だけど、私達の仲間、友達が、魔法に関わって姿を消してる。
だから、こんな形で魔法協会に関わる人達を秘かに引っ張り出して
どうしても事情を聴きたかった」

アキラの言葉にマミが答えて何度でも頭を下げる。

「この子達も、半分行き掛りだけど魔法は使える、
こっち側に関わってて守るべき秘密は守るから」
「それが本当ならきちんと事情を話して欲しい」

裕奈に続き、アキラが言う。

「まどかが、鹿目まどかと言う、
私達と一緒にここに来た同級生がいなくなったのよ。
あの世界樹とか言う大きな木が光って、
そこにいた筈のまどかが姿を消した。
言っておくけど、まどかは私達と行動を共にしていても魔法少女じゃない、
能力的には只の一般人だった」

「それ見た」

ほむらの言葉にまき絵が続き、亜子が頷いた。
342 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 04:00:14.43 ID:NVh912BJ0

「世界樹が光ってるから又、なんかあったのかって」
「又、って何っ!?」
「落ち着いて暁美さんっ」

勢い込んでまき絵を引かせるほむらをマミが嗜める。

「ええ、そうね。
ここからは穏やかに教えていただけるかしら?」
「ええと、鹿目まどかさん? あなた達の仲間の。
彼女は多分魔法世界にいる」

ほむらの言葉に、裕奈が説明を始めた。

「それはさっき聞いた、魔法世界と言うのは何処にあるの?」

「火星」

「オーケー美樹さやか、適当に腕と脚を十本ばかし斬り落として。
あなたなら後で繋げられるでしょう」

「魔法使いと言うのは、宇宙人か何かなのかしら?」
「それに近いのもいる、だから少しだけ真面目に聞いてくれるかな?」

ほむらとマミの反応に、裕奈が応じた。

「位相って言うんだけど、異次元空間って言えば分かるかな?
火星にある異次元空間、別の世界別の次元。
そこが魔法の世界。
その魔法の世界と繋がるゲートがこの麻帆良学園にあって、
ゲートが作動したら地球のこっちの世界から
火星にあるあっちの世界に一瞬で移動出来るんだ」

「じゃあ、まどかはその、火星にある異次元空間にいる、
そう言いたい訳?」

今度は自主的に腕の一本も居合抜きしそうなさやかに、
裕奈は小さく頷いた。
343 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 04:07:46.15 ID:NVh912BJ0

「火星とか異次元とか魔法の国とか言っても、
こちらの世界同様に普通の人間の秩序はあります。
現在は治安やインフラも安定していて、
こちらの世界との通信や交通も整備されています。
一緒に転移したのがあの二人ですから、
あの二人は実力もあってあちらの世界にも明るいですから
滅多な事にはならない筈です」

「それを信じろと?」
「お願いします」

ほむらの言葉に愛衣が頭を下げ、さやかも浮かした腰を下ろす。

「丸で神隠しね」

マミが嘆息して言った。

「鹿目さん達が魔法の世界に、って、
どうしてこんな事になったのかしら?」
「答えなさい」

マミが問い、沈黙する愛衣にほむらが言葉を重ねる。

「分かり、ません」
「分かる事を話して」

苦し気に言う愛衣にほむらが迫る。

「元々、ゲート自体はこの学園の図書館島地下にあるものですが、
今年の夏休みまでは休止、閉鎖状態でした」
「図書館、島?」
「図書館の島」

さやかの言葉に裕奈が応じる。
344 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 04:11:27.76 ID:NVh912BJ0

「湖の中の島が丸ごと図書館になってるんだ、
あれは一種の古代遺跡だね。
実際の所は大昔の魔法使いが作った重要ポイントとかでさ」

「そこにその、ゲートがあると言うのね?
休止中だった、と言ってたけど、今は違うの?」
「半分は」

マミの問いに、愛衣が答える。

「夏休み中の情勢の変化でゲートの再稼働実験はスタートしていました。
その実験中の事故による稼働、それが関東魔法協会の暫定的な見解です」
「物凄く歯切れが悪いわね」

ほむらの言葉の愛衣は頷く。

「あり得ないんです」
「あり得ない?」
「はい、麻帆良、関東魔法協会の魔法は、
科学技術と高度に融合しながら開発が進められています」
「ふーん、科学と魔術とか絶対に交差させちゃいけない
みたいなイメージもあるけど、違うんだ」
「はい」

さやかの言葉に愛衣が答える。

「ですから、備蓄していた魔力エネルギーの流通制御の一部に
コンピューターを取り入れる。
そこで何等かの誤作動が生じて暴発する程の魔力エネルギーが流出する。
その可能性はなんとか理解できます」

「うん」
「只、それでゲートを作動させるとなると、話は別です。
これは、「魔法」なんです」
「魔法?」

愛衣のどこか抽象的、概念的な話にマミが聞き返した。
345 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 04:14:58.55 ID:NVh912BJ0

「術式を組み魔法を発動させる事は、
ゴーストの無い機械には出来ません。
今回の出来事はどう見ても只の魔力漏れじゃない。
そのタイプの暴発であれば
もっと無秩序に物理的な損害、よしんばゲート現象に限定しても
人間三人の消失程度では済まない筈ですから」

「仕掛けた人間がいる、と言う事ね。
その心当たりは?」

ほむらの言葉に愛衣が首を横に振り、
ほむらが米軍M9拳銃を向けても愛衣はその銃口を見据える。

「分かってた事だろ」

リビングの床で体勢を崩していた佐倉杏子が口を挟んだ。

==============================

今回はここまでです>>339-1000
続きは折を見て。
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/19(火) 08:04:29.76 ID:+dwFurMIO
F9 マギアレコード こうへい 同一疑惑 ネット 2ちゃんねる荒らし 嫌儲
https://2ch.me/vikipedia/F9
347 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:15:08.78 ID:NVh912BJ0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>345

「あたし等を襲撃した魔法使いがいるんだ、
そいつらじゃねーの?」
「その正体が分からないんです」

杏子の言葉に愛衣が応じた。

「私達は魔法生徒であり学園の魔法秩序を司る学園警備です。
だからお姉様………
私の先輩の高音先輩は、あの後あなた達を追って事情聴取を、
と言う意見でしたが上から止められました。
魔法世界に関わる事である以上、
これ以上外部の、それも魔法使いでも容易に対処出来ない
あなた達マギカが関わる事は物理的にも情報的にも避けたい、
それが学園の魔法先生魔法教師の方針であると」

「隠蔽かよ」
「もちろん、事件の調査は行いしかるべき対応はする筈でした」

吐き捨てるさやかに愛衣が言った。

「只、あの場では機密保持が優先されて
襲撃事件に関する初動の対応が手薄になった。それも事実です。
だから改めて伺います。
あなた達は一体どういう行動をしていたんですか?
そもそもどういう理由で麻帆良にいたのか?
明石さんからある程度の事を聞いてはいますが」

「私達は近衛木乃香さんのお招きでこちらにお茶会に来た、
それだけの事よ。
桜咲さんとの関係はそちらの明石さんにも説明したからいいかしら?」

愛衣の問いに、まずはマミが説明した。
348 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:18:16.01 ID:NVh912BJ0

「はい、およその事は伺っています。
付け加えますと、今回の事件後、
学園長から学園警備に情報提供がありましたから」

「学園長、って言うと」
「近衛木乃香さんの祖父に当たります」

さやかの言葉に愛衣が応じる。

「桜咲刹那さんによる見滝原での調査に就いては、
学園長マターの予備調査と言う事で、
あなた達の事も含めて学園長に情報が上がっていました。
加えて、今日のお茶会に就いても、
近衛木乃香さん、桜咲刹那さんから学園長に上がっていた情報が、
今回の事件の発生を受けて学園長からこちらに降りてきました。
元々は他意の無い私的な会合、友人関係と言う位置づけでしたから」

「あなた達が把握していた訳ではないと?」

「私達は独自に桜咲さんが見滝原でマギカに関わっていた事を把握しました。
しかし、それはほとんど偶然みたいなもので、
その事に就いて公式な事前連絡はありませんでした」

マミの問いに愛衣が答える。

「それで、野点の後であなた達は巴さんと別れたんですよね?」
「うん」

愛衣の問いにさやかが答えた。

「私は、そちらの明石裕奈さんが私達の事を付け回していたのに気が付いて、
状況を把握するために一度離脱して、後はご存知の通りよ」
「あたし達は野点の後で寮のこのかさんの部屋にいたんだけど、
途中で離れたマミさんからの連絡もないしカフェで待とうって事になって。
それで、表に出て歩いてたらいつの間にか人通りがなくなって」

「………人払い?」

さやかの言葉に、愛衣がぽつりと言う。
349 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:22:14.03 ID:NVh912BJ0

「私達は佐倉杏子にしんがりを任せて、
桜咲刹那の先導で路地裏に逃げ込んだんだけど、
そこでも魔法使いに襲撃されたわ」
「ああ、任されたはいいけど、
そこで襲撃受けて不覚を取って気が付いたら眠り込んでたって事」

ほむらと杏子が状況を説明する。

「その辺だね、連絡入ったの」
「連絡? 誰から?」

裕奈の言葉に、ほむらが質問した。

「刹那さん。元々同じクラスでもそんなに仲いいとかじゃなかったんだけど、
私が学園警備のエージェント始めたから、
その時に仕事用のアドレスとか交換した方がいいって言われてね」

ーーーー(回想)ーーーー

「あなたが動いていたのは分かっています。巴マミさんはそちらですか?」

「今、魔法使いからの襲撃を受けています。
ちびせつなを待機させますから、××丁目の屋上に学園警備を寄越して下さい。
私は保護対象者を連れて世界樹前広場に向かいます」

ーーーー(回想終わり)ーーーー

「それで、明石さんからの要請で
私達が暁美さん、美樹さんを発見したと言う事ですね」

愛衣の言葉に裕奈が頷いた。

「それで、魔法使いからの襲撃を受けたんですね?」
「ああ、魔法少女じゃなけりゃ魔法使いだろうけど、
多分魔法使いだな」
「そうね、なんとなく私達とは違うと思う」

杏子とほむらが愛衣に答える。
350 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:26:13.27 ID:NVh912BJ0

「どんな相手でしたか?」
「黒いローブにフードで顔はよく見えなかったな。
なん、って言うか薄気味悪い」

「薄気味悪い?」

「ああ、スピードはあたしらから見たらそこそこ、
幻術とかテレポートとかそんな感じでもないのに、
なんか上手く攻撃が当たらない。
その内に不覚を取って眠らされたって感じでさ」

「こちらのは単純な強さが尋常じゃなかったわ」

杏子に続き、ほむらが言った。

「テレポートらしき技術を使うけど、
何より単純な実力がかなり強い筈よ」
「あたしもそう思う」

ほむらに続いてさやかが言う。

「刹那さんとかマミさんとか杏子とか見て来たけど、
匹敵するかそれ以上の使い手だと思う。
あたしは全然叶わなかった」
「どんな攻撃を?」
「光だな、曲がって飛ぶ光、殴られるぐらい痛い光か」
「サギタ・マギカ」

杏子の言葉に、愛衣が呟いた。

「それから、理科に使う試験管、
そいつを割ったら睡眠ガスが出たって感じで」
「こっちは体術ね」

杏子に続いてほむらが言う。

「とにかく目にも止まらぬ速さで殴られるわ交わされるわ、
他に言い様がないわ」

ほむらの言葉にさやかも頷いた。
351 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:30:06.92 ID:NVh912BJ0

「もしかして、魔法使いって基本そんなに強いとか?」
「それは無い」

さやかの言葉に裕奈が言った。

「巴さんの強さは私も身を持って味わったけど、
私はとにかく龍宮さんとガチバトルする巴さんレベルが普通とか
それは流石にないわ」

「そう思います。
マギカの強さに関してはさっきのとは別に私も少々体験しました。
むしろマギカの側が反則的に強い部分があるぐらいです。
基本的な考えとして、マギカを簡単に圧倒する魔法使いがいるなら
それは相当強い部類に入る筈です」

裕奈の答えに愛衣も続いた。

「あの、私が縛られた捕縛結界、あれも魔法よね?」

「ええ、あれは風の捕縛結界ですね。
魔法陣を踏んだら発動するタイプの。
基本を踏まえた上で嫌な仕掛けが幾つもしてあって、
解除するのに骨が折れました」

愛衣の言葉に、ほむらが顎を指で撫でて黙考する。

「後、世界樹広場にもなんかいたけど、
あっちこそマギカっぽくなかった?」
「そうね、どちらかと言うと私達に近いものに感じた」
「一応報告は聞いていますが、詳しくお願いします」

裕奈とマミの言葉に、愛衣が要請する。

「白バケツ」

裕奈の言葉に、ほむらが目を見開く。
352 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:33:40.64 ID:NVh912BJ0

「白いふわふわの衣装を着た女、多分あれがメインだね。
白くてふわふわでバケツみたいにでっかい帽子被って。
前衛で黒っぽい、腕に直接刃物を装着したみたいな
やったら速い切り裂き魔がセットで。
多分あれ、白いのが後詰の指揮で黒いのが前衛、
私達魔法使いにとっては典型的なコンビネーションだから」

「暁美さん?」

裕奈の説明の後、マミがほむらに声をかけた。

「魔法少女、間違いないわ」
「知り合いなの?」

ほむらの言葉にマミが尋ねた。

「直接の知り合いではない。
見た事がある、と言う程度かしら。
その、白黒コンビの事で何か分かった事は?」
「それなんですが、少しおかしいんです」

ほむらの言葉に、愛衣が言う。

「ナツメグさん………こちらの仲間が
街の防犯ツールから追跡したんですけど、結論を言えば逃げられました。
世界樹のフラッシュが最も強くなった隙に監視の目を免れて逃走し、
世界樹前広場から逃走するあの二人の姿を
後から街頭の防犯カメラ等から把握しようとしたんですけど、
どういう訳かぷっつりと消えているんです」

「消えた?」

聞き返したマミに愛衣が頷く。

「はい、念のため機材やデータの確認も行われましたが
異常はありませんでした。
ですから、考えられるのはカメラの無い裏道中心のルートを
完全に選択して逃走した、それが偶然なのか必然なのか」

ほむらは、あり得る、と言う言葉を心の中に留める。
353 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:36:59.99 ID:NVh912BJ0

「その、図書館島地下のゲートはどうなってるの?
誰かが魔法を使って動かした、って話だったわよね?」
「理論的にはそういう事になる筈です」

マミの言葉に愛衣が応じる。

「只、あそこは危険過ぎて
その辺の魔法使いでも近づく事すら容易ではありません」
「図書館が危険、って」

言いかけたさやかが、真面目な表情の愛衣を前に言葉を飲み込む。

「先程明石さんも言いましたが、
図書館島は古の魔法使いが作った重要ポイントです」
「それって、呪いの本とかどっかの官能小説家が聞いた天使のお言葉とか
文字が目に入っただけで全身から血が噴き出して死ぬ本とかがあるとか?」

「そう思っていただいて構いません」

さやかの問いに、愛衣が真面目に応じる。

「幸いにしてそんなものに直接触れた事はありませんが、
あっても不思議ではありません。
地上部分を中心に、大半は普通の図書館です。
図書委員とは別に、
図書館探検部と言う大学を本部とする部活動があるぐらいです」

「図書館、探検部?」

マミの問いに愛衣が頷く。
354 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:41:14.93 ID:NVh912BJ0

「図書館を中心とした図書館島自体が一種のラビリンス、迷宮ですから、
その解明を行い図書館島内の探検、研究を行うための部活動です。
それでも、一般生徒が立ち入る事が出来るエリアは
魔法使いによって確実に限定されています。
図書館島で本当の立ち入り制限エリアに無闇に立ち入ったりしたら、
魔法使いでも命はありません」

「どういう図書館なのよ………」

愛衣の説明にほむらが呆れる。

「報告によると、今回の事件に際して、
地上にいた宮崎のどかさんが、
綾瀬夕映さんに世界樹が異常発光していると携帯で連絡して、
図書館島地下で調べ物をしていた綾瀬さんが
直ちにゲート近辺の調査を行っています。
この宮崎さん、綾瀬さんは共に図書館探検部の部員であり、
同時に、3年A組の生徒、魔法使いでもあります」

「ネギ・パーティーの中でも古参だね」

愛衣の言葉に裕奈が付け加え、スマホを操作する。

「かなり早い段階、少なくとも私よりも前から
ネギ君の近くで魔法に関わって、色々修羅場も潜ったって聞いてるよ。
特に本屋ちゃん、この前髪ちゃんね。
この娘が宮崎のどかなんだけど、
前はあんな大人しかったのに愛の力だねー」

あははっと笑う裕奈の側で、魔法少女達は首を傾げていた。
355 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:44:44.56 ID:NVh912BJ0

「で、このでこっぱちが綾瀬夕映。
見た目ちっちゃいけど実際小回りが利いて、
魔法関係でもかなり研究してるって切れ者だよ」

「只、綾瀬さんとしても、ゲート周辺は危険過ぎて
その時も直接は接近出来なかった。
確かに図書館島地下まで伸びる世界樹の根に
魔力の異常流入の形跡を見たが、それ以上の事は把握出来なかった。
そう証言していたと学園警備には報告が上がっています。
実際、学園警備としても迂闊に近づけないので
ゲートの直接調査は後回しになっています」

「そんなに、ヤバイの?」
「そういう事になります」

さやかの問いに愛衣が答える。
その時、一同はノックの音を聞いた。

「明石、こっちにいるか?」

==============================

今回はここまでです>>347-1000
続きは折を見て。
356 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:20:48.62 ID:SQ9kiaXf0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>355

「入れた方がいいと思う、そっちのためにも」
「任せる」

明石裕奈と巴マミが言葉を交わし、裕奈が玄関に向かった。

「どうやら、当たりみたいだな」
「この人………」

新たに入って来たのは三人。
その先頭の、眼鏡の少女を見てマミが呟く。

「そ、長谷川千雨、綾瀬夕映、宮崎のどか。
ま、ネギ・パーティーの中でも結構コアな面子だね」
「誰だ、こいつら?」

紹介する裕奈に、先頭の眼鏡少女長谷川千雨が尋ねた。

「用件は? 今日の世界樹の件?」
「ああ」
「じゃあ、それも含めて説明するから取り敢えず座ってよ」
「うち達の部屋………」

和泉亜子の呟きをよそに裕奈が言い、
女子寮二人部屋の人口密度がいよいよ危機的状態になるが、
その事以外は当面平和に事が進む。

「まず、この人達だけど、
巴マミさん以下、魔法少女、マギカ、そう呼ばれている人達」
「存在は知っているです」
「ああ、裏の情報収集してたら多少はな」

裕奈の言葉に、夕映と千雨が応じる。
357 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:24:49.69 ID:SQ9kiaXf0

「本屋ちゃんとゆえちゃんの事はさっき話したよね、
図書館探検部にしてネギ・パーティーのコアメンバーな
ネギ先生ラブラブコンビ。
それから、ネギ・パーティーの裏番長の千雨ちゃん」
「なんじゃあそりゃあぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」

ぽーっと赤い顔で顔を見合わせるのどかと夕映の側で千雨が絶叫した。

「おい、どういう紹介だよっ!?」

「だってさー、実際問題最初のガチパートナーな
アスナは完全お姉ちゃんモードで
このかもどっちかって言うと甘々お姉ちゃん、
刹那さんは良くも悪くも師匠ポジで図書館二人はこの様。
バランサー的にネギ君にガツンて直言出来るのって千雨ちゃんでしょ」

「だからってなぁ………」
「それで、問題はここからなんだけど………」
「おいっ!?」

身を乗り出した千雨が、裕奈の目を見て浮かせた腰を下ろした。

「千雨ちゃんはどうしてここに?」

「ありゃ、見るからに魔法関係の異常事態だろ。
あんだけ世界樹が光ってて最近学校にいないネギ先生や神楽坂はもちろん、
近衛や桜咲とも音信不通。
いっそ学園警備と繋がってる明石を探してたんだけど、
佐倉がここにいるって事はビンゴって事だな」

「はい」

千雨の言葉に佐倉愛衣が応じた。
358 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:30:55.65 ID:SQ9kiaXf0

ーーーーーーーー

「マギカに絡んだ一般人が目の前で消えた、ってか。
それこそなんだそりゃだ」

裕奈と愛衣から一通りの説明が終わり、
千雨はバリバリ頭を掻いた。

「ナツメグさんを通じて調べましたが、
鹿目まどか、桜咲刹那、近衛木乃香、三人の携帯電話の電波も
ほぼあの時点に合わせて現在に至る迄消失しています」

「つーと、ますます推測通りだろうな」

愛衣の言葉に千雨が言った。

「ゆえちゃんと本屋ちゃんもその用件で?」
「だろうな、私とはそこの廊下で会ったんだけど」

裕奈の言葉に千雨が言った。

「発想はおよそ千雨さんと同じです。
何か分かっている事、出来る事が無いか、
それを確認に来ました」

夕映の言葉にのどかも頷いた。

「ゲートが図書館島の地下にある、と言ったわね?」
「ええ、そうです」

暁美ほむらの問いに夕映が応じた。
359 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:38:25.75 ID:SQ9kiaXf0

「そこまで案内しなさい。
この人達の話を聞く限り、ゲートとやらが発動して
まどか達が火星の異次元の魔法世界に飛ばされた事は確実。
何か分かる事があるかも知れない」

「お勧め出来ないですよ」
「危険だから?」

夕映の言葉に、マミが問いかける。

「その通りです」
「それに、ゲートは魔法使いにとっての重要機密、
部外者、それもマギカの方を無断で案内したと言う事になりますと………」
「部外者?」

愛衣の言葉に、美樹さやかの言葉が剣呑に尖った。

「そういう事よ」

ほむらが続ける。

「その部外者を魔法の国とか言うファンタジーに飛ばしてくれたのは
一体何処の誰なのかしらね?」

「悪いがこっちの方が筋通ってるだろ。
勝手に巻き込んどいて部外者扱いとかさ」

ほむらの言葉に千雨が続いた。

「でも、本当に危険ですよ」
「魔法少女ナメるなってーの」
「調子にのんなよヒヨッコ」
「それでも、美樹さんの言う通り、
私達はかなり危険な状況でも自分の身は自分で守って来たわ。
手がかりがあるなら見逃せない」

のどかの忠告に、最後はマミが言った。
360 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:43:18.73 ID:SQ9kiaXf0

「分かりました。図書館探検部員二名の一存としてご案内します。
可能な限りの事はしますが、
自分の身は自分で守って下さい」

夕映の言葉に、魔法少女達が頷く。

「と、言う事は、私達がついてくのはちょっとまずいんだけど、
千雨ちゃんは?」
「私はパスだ、図書館島の地下とか冗談じゃない」

裕奈の言葉に千雨が身震いして言った。

「言っとくが、その辺のからくり屋敷程度に思ってたらマジで死ぬぞ」
「ええ、気を付けるわ」
「巨大怪獣とかマジでいるからな」
「そういうのあたし達の仕事だし」

マミとさやかの返答に、
千雨は嘆息して手で追い払う。

ーーーーーーーー

「なんだ、こっから入るのか?」

図書館島の図書館裏遺跡群に到着し、佐倉杏子が言った。
他でもない、杏子達がつい先程まで合流場所に使っていた所だ。
そして、夕映、のどかを先頭に魔法少女達が扉の中に入る。

「なかなか、やるですね」

リボンを次々と繰り出して
階段に絡めたリボンにぶら下がりながら降下する巴マミを先頭に、
地下に向かう巨大な螺旋階段を軽々と降下していく魔法少女達に
夕映が感想を漏らす。
361 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:48:57.95 ID:SQ9kiaXf0

「結構、って言うかすっごい深かったねー」

地下通路で、腕で汗を拭いながらさやかが言う。

「気を付けて下さい、この先の通路には侵入者対策の………」

夕映が説明を続けている頃、
さやかの足元ではカチッと音を立てて石畳がへこみを見せていた。

ーーーーーーーー

「広い」
「この先なのかしら?」
「まあ、そういう事になりますが………」

阿鼻叫喚の末に辿り着いた地下の巨大空洞で、
さやかに続いてマミが尋ね、夕映が答える。

「あれって、サイズから言っても世界樹の根っこなのかしら?」
「改めて非常識な大きさね」

壁や天井から突き出している
植物性のオブジェっぽくも見えるものを指して、
マミとほむらが言葉を交わした。

「雨?」

さやかが呟いた次の瞬間には、
さやかと、さやかに飛びついた杏子は岩の地面を転がっていた。

「つーっ、なんだ、よ?」
「は、はは、マジで怪獣? ………!?」

さやかと杏子が見上げた先で、
西洋風のドラゴンが翼で羽ばたきながらガバッと口を開き、
間一髪杏子の張ったバリアが火炎放射の直撃を防いだ。
362 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:52:43.34 ID:SQ9kiaXf0

「ティロ・フィナーレッ!!!」

気が付いた時には、
魔法少女四人組はリボンで繋がれて止まった時の中にいた。

「どう見る?」

ほむらがマミを見て言う。

「硬いわね」

マミが答えた。

「効いてる手応えが全然ない。
硬さ、速さ、攻撃力、
私達四人がかりでも勝てるビジョンが見えないわ」
「同感だ」

マミの言葉に杏子も吐き捨てる様に言った。

「どうするですかっ!?」
「撤収だっ!!」

時間停止が解除され、夕映の叫びに杏子が応じる。
その時には、大量の迫撃砲の砲弾が空中で爆発し、
マミが大量のマスケットを地面に撃ち込みながら後退していた。

「わああっ! もう動いてるっ!!!」

地面から伸びて一時はドラゴンを埋め尽くす様に絡み付いた
大量の黄色いリボンがブチブチブチと容易くちぎられるのを見て、
撤退中のさやかが叫んだ。
363 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:56:28.16 ID:SQ9kiaXf0

ーーーーーーーー

「お帰り」

麻帆良学園女子中等部寮佐々木まき絵・和泉亜子の居室で、
飛び込むなり寝っ転がったり両手を床について
総員荒い息を吐いている面々を見て裕奈が言い、愛衣が大汗を浮かべる。

「はーい、元気が出るお茶入ったよー」
「ああ、サンキュー」
「って、効き過ぎじゃないこれ?」
「なんか、危ないお茶じゃないでしょうね」

亜子が運んで来たお茶を、まず杏子が有難く受け取り、
その強烈な威力にさやか、ほむらが声を上げた。

「で、どうだった?」
「簡単に出入り出来ない場所だと言う事は理解したわ」
「だろうな」

裕奈の問いにマミが答え、千雨が嘆息しながら支度を続ける。

「こっちは、ちょっと分かった事がある」

千雨の言葉に、一同が注目した。

「メリケン帰りのアニメ監督がいてな」

言いながら、千雨がノーパソを操作する。
364 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 03:01:48.33 ID:SQ9kiaXf0

「こっちで魔法と拳と剣と萌えなOVAなんかを監督してから、
長年続いてるミステリーアクションの劇場版監督に抜擢されて、
結果、ミステリー・アクション・ボンバーが
ミステリー・アクション・アクション・アクション・
ボンバー・ボンバー・ボンバー・ボンバー・ボンバー・ボンバー・
ボンバー・ボンバー・ボム・ボンバー・ボンベスト
ぐらいに進化したとも言われている訳だが。
で、そのボンバーマン監督に少し遅れてそっちの映画に合流した脚本家が
十八番にしてるギミックがあってだな。
元々実写の刑事ドラマなんかを長くやってた人だが、
今やこれが出たらこの人だと分かる、ってぐらいの大好物な使い方さ」

千雨の操作がそれまでのせわしない動きから、
カチッ、と、短いクリックが終わり、或いは始まりを告げた事が
素人目にも分かった。
ノーパソに表示されているのは、
裕奈達には見覚えのある地図と大量の顔写真だった。

「たった今あんたらが調べに行った通り、
世界樹と図書館島には密接な繋がりがある。
世界樹が光ってゲートが起動した、って事だからな。
だから、あの時間、図書館島出入り口を中心に、
保存されてた防犯カメラの映像データから
取り出せるだけの人間識別データを取り出して分析に掛けた」

「あー、ホントこういうの科学捜査のドラマとかに出て来そう」
「京都辺りの奴か」

画面の中でパパパパパッと取捨選択される光景に、さやかと杏子が言った。
365 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 03:05:52.87 ID:SQ9kiaXf0

「で、そいつを
他の可能な限りのデータベースとも連動させて分析した結果」

千雨の操作と共に、
画面の中で膨大な顔写真がどんどん減少し、一人に絞り込まれる。

「あすなろ市?」
「あすなろ市の御崎海香」

画面に大きく表示された写真とデータを前に、
マミと千雨が結論を口にした。

==============================

今回はここまでです>>356-1000
続きは折を見て。
366 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/23(土) 15:37:38.39 ID:3X0wuEGD0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>365

「簡単に言えば、麻帆良、特に図書館島周辺の防犯カメラデータを核に、
アクセス出来るありとあらゆるデータをクロスチェック演算して、
今回の事件に関連して怪しい要素が濃い奴を割り出す。
私がやったのはこういう事だ。
問題なのは、何をもって怪しいと言うべきなのか、だけど、
まあ、その辺りの事は話せば長くなる。
で、怪しいと言うべき要素が見過ごせないぐらいに集結してるのが」

「御崎海香、あすなろ市の中学生ね」

長谷川千雨の説明に、巴マミが続けた。

「まず、事件の後で、
図書館島裏口の比較的近くにいた事が防犯カメラで確認されてる。
そして、麻帆良の外の人間。
しかも、ベストセラー作家と来た」

「ベストセラー作家?」

千雨の言葉に暁美ほむらが聞き返す。

「ああ、一応こんな事になってる」

千雨が差し出したのはウェブ辞書のプリントアウトだった。

「現役中学生って事で本人は表立って目立つ事は控えてるらしいが、
こいつらが電子の海で八方手を尽くして一晩かからずやってくれた」

「イエス、ちう様!」

「は? 空飛ぶネズミ?」
「あら、可愛いわね」
「光栄であります」

ふわふわ姿を現した電子精霊に美樹さやかとマミが反応し、
精霊も律儀に返答する。
367 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/23(土) 15:41:16.45 ID:3X0wuEGD0

「これ、千雨ちゃんが使役する電子精霊ね」
「インターネット、電子的な通信、データに関わる事なら
大概なんとかしてくれるです」
「すげー」
「いやー、それほどでも」

明石裕奈と綾瀬夕映の説明にさやかが感心し、
電子精霊が実に嬉しそうに反応した。

「このタイミングで他所から図書館島に、
ってだけでも結構高得点で怪しい上に、
あんたらも関わって来たからな。
あすなろと見滝原は目と鼻の先だ」

「こっち側に関わりがあるってのか?」

千雨の言葉に、佐倉杏子が鋭い声で呟く。

「かもな。その御崎海香先生のあすなろ市での行動パターンを
防犯カメラデータ等から割り出した結果、なんだが」
「魔法少女」

千雨が画面に表示させた地図を見て、マミが呟いた。

「根拠は?」

千雨が尋ねる。

「時刻と場所よ」
「だな」

マミに続いて杏子が言った。
368 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/23(土) 15:48:01.84 ID:3X0wuEGD0

「あー、確かにね。只の夜遊びにしては意味が分からない。
この件の関係抜きにしても
あたしらならそう推測するわこれ」

「ええ、これなら美樹さやかでも分かるわね」

「成程」

背景であたしの動きについてこれる? 根競べなら負けないわドガガガガと
大汗を浮かべる亜子の前で展開する壮絶バトルをおいておいて
千雨が納得した口調でカチカチ操作を進める。

「で、今度は逆にあすなろ市でのデータを収集した。
御崎海香の自宅は夢の印税生活でぶっ建てた御崎海香御殿」

「おおーっ」

画面に表示された豪邸にさやかが声を上げる。

「その周辺にある防犯カメラの映像と
今回の事件前後の麻帆良の防犯カメラ映像、
まずはそいつをクロスチェックすると」

画面に、ぱぱぱぱぱっと複数の顔写真が
防犯カメラ映像とセットで表示される。
何れも、女子中学生と言って矛盾の無い外見だ。

「あすなろ市の御崎海香御殿周辺に常時出没してるこいつら、
今日は近い時刻に図書館島周辺に出入りしてる。
で、このグループのあすなろ市での行動範囲」

「だろうな」

画面に表示された地図の画像に、杏子が言った。

「こん中に一人、見知った奴がいる」
「魔法少女?」

さやかの問いに、杏子が頷いた。
369 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/23(土) 15:51:35.85 ID:3X0wuEGD0

「和紗ミチル、魔法少女だ」

「今の行動範囲と時刻を見る限り、
今のメンバーは御崎海香さんを含めて
一つの魔法少女チームと見るのが自然ね」

杏子の回答に続けてマミも結論を導き出した。

「………転校生?」

そこで、さやかはほむらの様子に気付いた。

「………まどか………
まどかは、魔法の世界にいる、のよね?」
「状況から見てそう考えるのが自然です」

ほむらの問いに、愛衣が答える。

「それは、今から図書館島の地下から行ける所なの?」
「今は無理です」

続けての質問に愛衣が答えた。

「元々、図書館島地下のゲート再稼働作業は
協会内でもトップシークレットの扱いで進められてきました。
何故こんな事になったのか、正確な情報は降りてきていません。
そもそも、ゲートと言うもの自体、その起動には魔力の蓄積が必要ですから
仮に図書館島のゲートが実用化されていても今は難しい筈です」

「冗談じゃ、ない」

愛衣の答えに、ほむらは震える声で言った。

「こんな、訳の分からない状況で、まどかは」
「そうね」

続けたマミの言葉も、明らかに厳しいものだった。
370 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/23(土) 15:55:24.14 ID:3X0wuEGD0

「正体不明の魔法使いに魔法少女のグループまで関わってる。
そんな状況で私達と一緒だった鹿目さんがいなくなった。
とても安心なんて出来ないわ」

「あんたら、魔法の世界に行くつもりか?」
「ええ」

千雨の問いに、ほむらが即答した。

「まどかがそこにいると言うのなら」

「行くに決まってるでしょ、まどかは魔法少女ですらないんだからね。
そんな魔法の国とかに勝手に連れて行かれたって言うんなら、
まどかのお友達、魔法少女さやかちゃんとしては絶対に見過ごせない」

「しかし、稼働したばかりの図書館島のゲートをすぐに動かす事は出来ません」

「かなり突発的な事だったみたいですね。
既に周辺の魔力反応は消失していて、
再稼働のための魔力補給には相当な時間がかかるです」

ほむらとさやかの言葉に、愛衣と夕映が答えた。

「図書館島以外のゲートは? あるんでしょう?」

マミが千雨を見て、千雨がノーパソを操作した。

「ここじゃないとすると、次はウェールズか」

ノーパソを操作する千雨に注目が集まる。

「次にゲートが開くのはウェールズ」
「ウェールズ、って、イギリスの?」
「ああ、大体の時刻は………」

マミの問いに千雨が答え、画面にデータを表示する。
371 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/23(土) 15:59:08.71 ID:3X0wuEGD0

「………無理ね」

マミが言った。

「とてもじゃないけど、今から行ける時間じゃない」

「仮に物理的に可能だったとしても、手続きが間に合いません。
魔法協会内の手続きで許可が出ない限り、
魔法的なセキュリティーに阻まれてゲートには接近できません」

マミに続いて、愛衣が言う。

「無理を、通すか」

千雨か、ぽつりと言ってスマホを取り出した。

「私だ、ああ、こんな時間に悪いな………」

==============================

今回はここまでです>>366-1000
続きは折を見て。
372 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:24:37.33 ID:lDycOOgF0
Happy Merry Xmas!

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>371

ーーーーーーーー

「わあ」

美樹さやかが思わず感嘆の声を漏らした。
さやか達のいる部屋に現れたのは、
同年代の同性が一目でそう感嘆するぐらい、
金髪白人の血縁がありそうなスタイル抜群美少女、
と言う表現がぴたりと当てはまる雪広あやかだった。

「何か、容易ならざる事態が出来したと伺いましたが?」

雪広あやかはきりっとした態勢で長谷川千雨に質問する。
身なりも姿勢も、上品でいて力強い、そういう印象だった。

「ああ、こいつは雪広あやか、3年A組のクラス委員長で、
魔法の関係にもある程度通じてる。
魔法少女、マギカ、って知ってるか?」
「多少の事は。それに、世界樹が光った事も関係が?」
「大ありだ、かいつまんで説明する」

正規に関東魔法協会所属の任務に当たっている佐倉愛衣としては、
本来秘匿事項となっている今回の事件の関係者を勝手に増やされて
正直頭を抱えたい所だった。

しかし、雪広あやかは魔法協会、どちらかと言うと
「英雄」ネギ・スプリングフィールドが進める
巨大プロジェクトに大きく関わるVIP的外部協力者。
本来3Aでもストッパー役の千雨が
予想外のスピードで歩を進める事に飲まれているのも実際だった。
373 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:28:17.23 ID:lDycOOgF0

「その様な事が………」

千雨にマミが加わって、魔法少女の事から今回の事件の経緯まで、
あやかにおよそのあらましを説明した。
その時、電子精霊が千雨に接近し何やら耳打ちする。

「………ヤバイかもな」

改めてノーパソを操作した千雨がぽつりと漏らす。

「これ以上、何が?」
「あすなろ市の件だ」

マミの問いに千雨が言う。

「今まで聞いた話をコアにして、
あすなろ市中心に関連情報をクロスチェック再演算した。
防犯カメラ、学校、携帯電話、
インターネット接続等等の情報をかき集めてな。
佐倉杏子さん?」

「ああ」
「これは、あんたの知り合いか?」
「ああ」

千雨が表示したのは、和紗ミチルのデータだった。

「彼女の特異点は二つ。
まず、御崎海香邸に出入りしている
魔法少女のグループと見てまず間違いないが、
同じ条件のグループの中で彼女だけ麻帆良に入ったデータが無い」

「魔法少女じゃ、ない?」
「あり得るかも」

マミの言葉にさやかが続く。
374 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:31:41.70 ID:lDycOOgF0

「まどかみたいに
魔法少女以外で魔法少女に同行してるケースもあるから」
「そうじゃなくても事情があって今回はパスした?」

さやかの言葉に思案顔のマミが続く。

「そしてもう一つ、和紗ミチルはここ最近学校を欠席し続けてる」
「あたしがあいつに会ったすぐ後からだ」

千雨が表示したデータを見て杏子が言った。

「もう一つ、本格的にヤバイ話がある」
「勿体ぶらないで」

ほむらの鋭い言葉に、千雨が頷いた。

「時期だけで言えば、
この和紗ミチルの不登校の直後から、あすなろ市を中心に、
私らと同年代の少女の失踪事件が続出してるって事さ」
「なん、ですって?」

マミの言葉を聞きながら、千雨がノーパソを操作する。

「まず、さっきの魔法少女の説明にも出て来たが、
正体不明の少女の失踪は、魔女に食われた魔法少女である可能性がある。
そういう話だったな?」
「ええ」

千雨の問いにマミが答える。
375 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:35:10.46 ID:lDycOOgF0

「だとしても、統計的におかしい。
警察が事件性を認知しているケースすら目立ってるから
そこから本格的に警察その他の情報にアクセスして
統計の再演算を実行した訳だけど、
今に至る迄この期間のあすなろ及びその周辺の
同年代の少女の家出、失踪、それも事件性を疑われるレベルのもの、
その発生率が明らかに跳ね上がってる。
そして、やっぱりその事を疑ってる刑事がいた」

「特○係の登場って奴?」
「警察全体の取り組みから見て、そんな所みたいだな」

字面だけは軽口めいたさやかの言葉に千雨が言う。

「関連情報にやたらアクセスしてる刑事のPCをこっちで逆に把握した。
彼女は、この流れを一連の失踪事件と見てリストアップしてる。
もっとも、その刑事は和紗ミチルの不登校の前から追跡していたらしいが、
やはりここ最近で跳ね上がってるらしい」

「………その、失踪者のリストとかって?」
「ああ、今んトコ警察では一連の事件と言う見方をとっていない。
だが、その刑事が独自にリストアップしてたのがこれだ」
「………いた………」

マウスを操作していた杏子が呟いた。

「飛鳥ユウリ、あすなろの魔法少女だ」
「失踪したのは、和紗ミチルさんの不登校の少し前ね」

杏子の答えに、マミが続ける。
376 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:38:52.53 ID:lDycOOgF0

「いいんちょ」

そして、千雨は改めてあやかに向き直る。

「はっきり言って、状況はかなりまずいぞ。
魔法使いに魔法少女、得体の知れない事件が絡んで底が見えない。
今回のテロリストの正体は分からないが、
形の上では魔法使いが魔法少女に宣戦布告した形になっちまった」

「長谷川さんっ!」

千雨の尋常ならざる表現に、愛衣が悲鳴を上げた。

「そうね」

それに続いたのは厳しい口調の巴マミだった。

「この事に就いて納得できない状況が続くなら、
魔法使いから魔法少女に対する敵対の意思ありとして、
この事を私の知る限りの魔法少女に通達する事も考えてる」
「待って下さいっ!」

マミの通告に、愛衣の声が縋り付いた。

「確かに不穏な事は否めませんが、
鹿目まどかさんの事は桜咲さん達に任せて下さい。
あの二人が一緒なら、
一般人である鹿目まどかさんの安全を第一に行動する筈です。
あの人達がガードしている一般人をどうこうするなんて、
魔法使いだろうが魔法少女だろうがまず無理です。
遅くともお二人がガードしている間に
協会で保護して無事送り届けると約束しますから」

戦闘モードに近い眼差しの巴マミに、愛衣は懸命に頭を下げる。

「個人的にはあなた達を信じたいと思ってる」

それが、マミの返答だった。
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