【ヤンデレCD】ヤンデレロンパ〜希望のヤンデレと絶望の兄〜2スレ目

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609 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 22:45:29.77 ID:vCkDR9zS0



マスタ イサム
「何なんだよ、その機械」


ノノハラ レイ
「盗聴器の受信装置。イヤホンから聞こえてくるのは増田クン周辺の音。簡潔に言えば増田クンは朝倉さんに盗聴されていた。
 さて、ついでだ。これを」



|アルバム>



サクラノミヤ エリス
「見たところ普通のアルバムでは……?!」


サクラノミヤ アリス
「なっ、ちょ、ちょっと、これ、何?! 何なの?!」


ナナミヤ イオリ
「……、……」


オモヒト コウ
「伊織? ……立ったまま気絶してやがる」


ノノハラ レイ
「ご覧の通り、増田クンは知らず知らずの間に朝倉さんのストーカーの被害を受けてたわけだ。この盗撮写真を収めたアルバムがその証左なんだけど」


マスタ イサム
「何……だって……?」


コウモト アヤセ
「ごめん、こればっかりは受け入れて欲しいの。信じられられないかもしれないけど、ここまで証拠が出そろってしまっている以上、否定はできないでしょ?」


ユーミア
「……やはりあの悍ましい有機体はもっと前に始末しておくべきでしたか」


マスタ イサム
「……そういうことをいってやるな、……と、言っていい、のか……?」


オモヒト コウ
「とりあえず、だ。被害者をそう論うことに何の意味がある? 朝倉が……、まぁ変態趣味だってことは解った。だがそれが何だって言うんだ?
 この先の議論に進展をもたらすとは到底思えないんだが」


ノノハラ レイ
「被害者の性格、趣味趣向を鑑みたうえで、事件当夜被害者はどこで何をしていたのか。すべての問題はそこに集約するんだよ。
 朝倉さんは別館に連れてこられたのか、それとも自発的に別館へ行ったのか。それが分水嶺なんだ」


610 :♪学級裁判太陽編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 22:52:07.59 ID:vCkDR9zS0



ウメゾノ ミノル
「……君の推理では後者の方を考えてるんだろ?
 確かに動機ビデオとかで呼び出しようは幾らでもあるけど、この場合だと自分から別館に行ったって考えた方が自然だ。
 それなら、事件が別館で起きたって不思議じゃない、か」


ノノハラ レイ
「察しがいいね。ボクが思うに、朝倉さんは自分から別館に向かったんだと思うよ。れっきとした目的を持ってね。
 それがいつなのかは、ひとまず置いておこう。一応、ゴンドラリフトに乗ってきたと考えて23時よりも前だってことは確かなわけだけど」


サクラノミヤ アリス
「目的ってなんなのよ。そのバッグの中身を見る限りだと、もう目ぼしいものは別館に残ってないんじゃない?」


ノノハラ レイ
「ところが、あったんだよ。垂涎のお宝がね。それを知ったのは恐らく、盗聴器で増田クンの零した言葉を聞いた時だと思うけど」


マスタ イサム
「……聞かないわけにはいかないだろうが、ここまで聞きたくないと思うのも初めてだな。
 だが、聞くしかないなら、そうするしかない、か。そのお宝とやらは、何だ?」


ノノハラ レイ
「男子更衣室にキミが忘れておいていった体操服だよ」


マスタ イサム
「……そう言えば確かに、何度か零したな。昨日も、今日持ち帰ればいいかとばかり思っていたが」


ノノハラ レイ
「ストーカー気質のあった朝倉さんにとって文字通り垂涎のお宝な増田クンの体操服が無防備に放置されて朝倉さんの行動は――。
 餅は餅屋だ。同好の士に聞いてみようじゃないか。ねぇ? 小鳥遊さん?」


タカナシ ユメミ
「はぁっ?! 何でそこであたしの名前が出てくるのよ! おかしいでしょ?!」


ノノハラ レイ
「キミと朝倉さん、基質が似てるよね。この証拠品がそれを物語ってる」


コウモト アヤセ
「それって……、これのこと?」



|消えた紙コップ>


611 :♪学級裁判異形編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 23:04:10.02 ID:vCkDR9zS0



ノノハラ レイ
「その通り。シアタールームにゴミとして残っていた紙コップの中に、無くなっていたものが二つあったんだよね。
 まぁどっちも紙コップなんだけどさ。一つはさっき言った通り増田クンのだ。
 で、もう一つは公のなんだけど、公。キミ、それ自分で持って帰って自分で捨てた?」


オモヒト コウ
「いや、普通にゴミ箱に入れてそのままだったが……、なあ、おい、まさかとは思うがな」


ノノハラ レイ
「単刀直入に言おうか、小鳥遊さん。キミ、公の使用済み紙コップ、持ち帰ったでしょ」


タカナシ ユメミ
「はあぁ?! なんの根拠があってそんな言いがかりつけるわけ!?」


ノノハラ レイ
「キミが公に向ける視線が、朝倉さんが増田クンに向ける視線と同じ感じだから、じゃ納得してくれないかな。
 それともキミが公の行動を逐一把握している理由もキミが盗聴をしているから、じゃ駄目かい?」


タカナシ ユメミ
「ダメに決まってんでしょ?! 何考えてんのよ! そこまで言うんだったら証拠を出しなさいよ証拠を!」


ノノハラ レイ
「キミ、公に送られた動機ビデオの中身知ってるでしょ。
 本人の口からちゃんと聞いたボクと、送られた当の本人である公以外は知らないはずの秘密を。
 二人っきりで話せる場所で話した、あの場所での会話を」


タカナシ ユメミ
「ふっ、そんなハッタリであたしを騙せると思ってるの?
 残念でした。ゴンドラリフトの中は電磁遮蔽で電波が届かないの。聞けるわけない、じゃ……、あ……」


オモヒト コウ
「夢見、お前……」


ノノハラ レイ
「ダメだよ小鳥遊さん。そこは嘘でもしらばっくれないと。なんで電磁遮蔽のことをキミが知ってるんだ?
 しかも、話した場所がゴンドラリフトの中だってことも、ねぇ?」


612 :♪学級裁判異形編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 23:25:08.41 ID:vCkDR9zS0



タカナシ ユメミ
「あ、ああ……、うぅ……」


ナナ
「お姉ちゃん、てっきり探偵ごっこでもしてると思ってたのに」


ノノ
「ストーカーさんだったんだねー」


オモヒト コウ
「……夢見、どうなんだ? 本当のことを言ってくれると助かるんだが。あと俺の紙コップ何処にやったのかも」


ノノハラ レイ
「大丈夫だって。多少キミが、その、特殊性癖の持ち主だとしても、さ。公なら受け入れてくれるはずだって。タブン」


タカナシ ユメミ
「……あー! もう! 認めればいいんでしょ認めれば! そうよ! あたしの部屋はあたしの大好きなお兄ちゃんの写真でいっぱいだし!
 お兄ちゃんの使ったものなら他人にとってはゴミでもあたしにとっては宝物!
 居場所も会話もわかるようにGPSとか盗聴器とか! 色々使ってるわよ! ピッキングだってお手の物なんだからね!
 でも夜這いや朝駆けなんて邪道だからよっぽどのことがない限りお兄ちゃんの部屋に入ったりなんかしないわよ! そこまで拗らせてなんかないんだから!」


ノノハラ レイ
「……いや、誰もそこまで言えとは言ってないけど」


オモヒト コウ
「取り敢えず、この裁判終わったら色々お話ししよう、な?」


タカナシ ユメミ
「O・HA・NA・SHI?! お兄ちゃんと?! 二人っきりで!? やっとお兄ちゃんから手を出してくれるようになったのねやったー!」


ナナミヤ イオリ
「……はっ! いや、その、不健全よ!」


オモヒト コウ
「……何をどう解釈したらそう喜べるんだよ。無敵か?」


ノノハラ レイ
「キミの趣味趣向はさておき――、いや、置かないのかな? 話を戻そう。
 仮に、だ。仮に公の脱ぎたての体操服がキミの手の届く場所に放置されていたとする。キミは、どうする?」


タカナシ ユメミ
「そんなの決まってるじゃない! お兄ちゃんの臭いが消えないようラッピングしてから持ち帰って部屋で存分に楽しむのよ!」


613 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 23:50:29.70 ID:vCkDR9zS0



ノノハラ レイ
「うわぁ……」


サクラノミヤ エリス
「あの、えっと……、楽しむっていったい何を――」


サクラノミヤ アリス
「そこまでにしておきなさい慧梨主。それ以上聞き出してもロクなことにならないから。
 あんたもね、自分から聞き出しておいてそんなドン引きしないの。まぁ、解らなくもないけど」


ウメゾノ ミノル
「あー、えー、そうそう。野々原君の考えだと、朝倉さんも増田君の体操服目当てで別館へ行ったってことでいいんだね?」


ノノハラ レイ
「うん……、そうだよ……」


コウモト アヤセ
「ちょっと、いくら何でも、その、その反応はあんまりにもあんまりでしょ。いくら夢見ちゃんのアレが、アレだからって」


ノノハラ ナギサ
「綾瀬さん、それフォローになってないよ?」


ユーミア
「しかし、それはおかしくありませんか?」


マスタ イサム
「どういうことだ?」


ユーミア
「マスターのいうことが確かなら、体操服は別館二階の男子更衣室に放置されていたのですよね?
 使用用途が使用用途なわけですから誰かに頼むこともできません。事実、そのカバンの中から体操服なんて繊維一本見つかりませんよね?
 朝倉巴が男子更衣室に侵入し、マスターの体操服を奪取することなど不可能なのでは?」


オモヒト コウ
「男湯と女湯でも異性が入ろうとすれば警告と共にマシンガンが構えられるからな。更衣室もそうなのか? その辺どうなんだよ、モノクマ」


モノクマ
「不純な異性友好なんて一教育機関として認められるわけないじゃん!
 女子が男子更衣室に入ろうとしたら、その逆の場合でも、温泉と同じ対応を取るよ!」


マスタ イサム
「そうか、なら朝倉には俺の体操服を手に入れる手段もなかったし、実際手に入れられなかったんだよな。そうだよな」


ノノハラ レイ
「――それはどうかな」


614 :♪学級裁判太陽編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/14(月) 00:02:59.47 ID:bhZGwmc90



マスタ イサム
「何だって?」


ノノハラ レイ
「キミは入ってないから知らないんだろうけど、無くなってたんだよ。キミの体操服」


マスタ イサム
「は?」


コウモト アヤセ
「でもそれって勝手に回収されたって――あれ?」


ノノハラ レイ
「そう、ちょっとおかしな話になるんだよ。更衣室に残された体操服には謎が多い」


オモヒト コウ
「どういうことなんだよ。二人だけで通じ合ってないで説明をしてくれよ」


ノノハラ レイ
「それをこれから議論しよう。何がおかしいのか。そして、男子更衣室で何があったのかを、ね」


615 :♪議論 -BREAK- ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/14(月) 00:23:35.92 ID:bhZGwmc90



――議論開始――


|吐瀉物>
|消えた体操服>
|手付かずの体操服>
|梅園穫の証言>



コウモト アヤセ
「女子更衣室にはね、手付かずの体操服が二着あったの」


ノノハラ レイ
「そしてそれは捜査時間中も変わらなかった」


タカナシ ユメミ
「自分のものは自分で管理しろってスタンスだったんでしょ? それがどうだって言うのよ」


オモヒト コウ
「いや、おかしいぞ。男子更衣室にあったあの体操服は、結局【誰も使わないものだから回収された】んじゃないのか?」


ナナミヤ イオリ
「どうしてそう思ったの?」


オモヒト コウ
「球技大会の前に着替えた時にはあった体操服が、終わった後には無くなっていたら誰だってそう思うだろ」


ノノハラ レイ
「捜査時間中に男子更衣室で無くなった体操服はそれだけじゃない。
 増田クンが忘れておいていったはずの体操服も無くなっていたんだよ」


ウメゾノ ミノル
「その回収がモノクマによるものでないとするなら誰かが明らかに持ち去ったとしか考えられないわけだが――」


サクラノミヤ エリス
「どこに行ってしまったんでしょうか? 【誰かが処分した】んでしょうか?」


サクラノミヤ アリス
「それはないでしょ。仮に朝倉巴が持ち去ったとしたら、それを燃やすなんて矛盾してるし」



 使われなかった体操服の処理の仕方が男女で差がある?
 いえ、そうじゃない。この矛盾はわからないけど、確かに解ることが一つだけある……!



616 :同意 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/14(月) 00:25:37.10 ID:bhZGwmc90



サクラノミヤ エリス
「どこに行ってしまったんでしょうか? 【誰かが処分した】んでしょうか?」


  |梅園穫の証言>


 それに賛成よ!


 -BREAK!!-


617 :♪学級裁判太陽編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/14(月) 00:49:05.40 ID:bhZGwmc90



コウモト アヤセ
「焼却炉が今朝から稼働していた。そうよね、梅園君」


ウメゾノ ミノル
「それはそうだけど……、いやいや、確かに増田君の体操服が影も形もないって言うんなら焼却炉で処分したってのが妥当な判断なんだろうけどさ、それって思いっきり矛盾してないかい?」


コウモト アヤセ
「巴ちゃんが、せっかく手に入れた体操服を燃やすのか、ってことでしょ?」


ウメゾノ ミノル
「どんなトリックを使ったのかは皆目見当もつかないけど、そこには苦労があったんだろうぜ。
 そんな艱難辛苦の果てにようやくゲットしたお宝をなんでそう易々と手放せるんだよ」


ノノハラ レイ
「前提からして間違ってるよ。焼却炉が稼働できる時間帯にはもう朝倉さんは死亡してるんだから。
 おそらくは朝倉さんが持って行ったのを犯人が証拠隠滅の為に焼却炉へ投げ入れたんだ」


ウメゾノ ミノル
「あ、そうか。……で、結局それが何だって言うんだ?」


サクラノミヤ エリス
「朝倉さんがどうやって体操服を持ち出したのかはいまだ謎のままですからね……」


サクラノミヤ アリス
「それに犯人の行動もいまだ謎のままじゃない。あそこまで死体を痛めつける理由も何もわかってないし」


ユーミア
「死体損壊に関しては死後八時間以上経過してから――となれば、必然的に候補は絞られそうですが」


コウモト アヤセ
「それってやっぱり……」



|別館に居た澪>



618 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/14(月) 01:24:19.70 ID:bhZGwmc90



ユーミア
「えぇ。その時間帯なら、一連の作業を誰にも見られることなく行うことができます。
 死体なら異性の浴室に持ち込んでも問題はないでしょう。
 それに、貴方なら混浴場経由で女湯に侵入できるのでは?」


ノノハラ レイ
「無理だね。それだと綾瀬の協力が必要になる。此の学級裁判で勝ち抜くのに共犯者のメリットがあるのか?」


ユーミア
「命を懸けてでも貴方を助けたいと河本さんが心底思っているのなら十分な理由になりますよね?」


ノノハラ レイ
「キミの検死が正しいなら、ボクのアリバイは立証されているはずなんだけど?」


ユーミア
「ならユーミアの検死が誤っていたのでしょう。あるいは、困難の分割、とでも言いましょうか。
 小休憩ごとに監視の目は緩むわけですから、一瞬の隙を見て朝倉巴を殺害。しかる後に損壊を施した。
 徹夜なら注意力が散漫になってもおかしくはありませんよね?」


ノノハラ レイ
「それを言われると厳しいねぇ。でも、それはキミの主の言葉を信じないってことにもなるんだぜ?」


マスタ イサム
「……ユーミア。澪の言うとおりだ。いくら徹夜してるとはいえ、二階へ行くにはエレベーターへ行かなきゃならない。
 そんなことをすれば否が応でも目立つ。音も鳴るしな。
 だから、俺達四人のアリバイは成立してしまっているんだよ」


ユーミア
「……。マスターがそう仰るのなら、ユーミアはこれ以上反論いたしません」


ノノハラ レイ
「――さて、ボクの身の潔白も証明されたわけだから、最後の重要参考人に話を聞こうか?
 ねぇ? ユーミアさん? ――別館についてから死体発見までに、キミは一体どこで何をしていたんだい?」


619 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/14(月) 01:25:13.73 ID:bhZGwmc90


   学 級 裁 判


     中 断


620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/12/15(火) 21:57:08.04 ID:TRRj4tZP0
更新してた、続き待っとるやで
621 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 19:58:57.92 ID:0q4noyk20


   学 級 裁 判


     再 開



622 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:00:37.75 ID:0q4noyk20


―――




ユーミア
「と、言いますと?」


ノノハラ レイ
「惚けるなよ。女湯に入れる、別館で綾瀬と別れてから死体発見までアリバイがない、頑なに検死結果を出し渋る。
 これだけ条件が揃ってて怪しまれないとでも思ってるの?」


ユーミア
「二階の掃除をしていただけです。怪しまれるようなことをした覚えはありませんね」


ノノハラ レイ
「具体的には何処を? いや、答えなくていいよ。当ててやろうか? 男子更衣室の前の廊下だろ?」


ユーミア
「無論そこも掃除しましたが、二時間もかかりません。
 それとも、あんなところの掃除でさえそこまで時間をかけないとまともに出来ないと、遠回しに馬鹿にしているのですか?」


ノノハラ レイ
「とんでもない。でも、他の場所をおざなりにしてまであそこを入念に掃除しなければならない理由はあったんだろ?」



623 :反論! ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:01:06.67 ID:0q4noyk20




ユーミア
「完全で瀟洒なメイドに死角などありません」




624 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:03:40.48 ID:0q4noyk20


ユーミア
「先ほどから貴方の質問はどうにも要領を得ない様子。貴方の頭の中だけで完結されてもらっても困るのですが」


ノノハラ レイ
「あくまでも白を切るつもりかい? なら、証拠を列挙してあげようじゃないか」


ユーミア
「受けて立ちましょう」


625 :♪反論―CROSS SWORD― ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:10:32.90 ID:0q4noyk20



 反論ショーダウン・追打


|///野々原渚の証言///>
|///多目的ホール///>
|///食べかす///>
|///掃除用具///>



ユーミア
「確かに、ユーミアが別館二階の掃除をしていたという【アリバイを証明する証拠品や証人】は存在しません。
 それは認めましょう。
 しかしだからと言って、それだけでユーミアが朝倉巴の【死体を損壊させた】理由になりますか?
 6時20分以降なら【他の女性でも朝倉巴の死体を磔にすることは出来た】筈です。
 何故ユーミアだけが疑われなければならないのですか?」


ノノハラ レイ
「正直に言ってさ、怪しすぎるんだよ。君の動向が。
 二階の男子更衣室前は入念に掃除をしたにもかかわらず、他の場所には全くと言っていいほど手を付けていないんだから」


ユーミア
「その発言の【根拠がない】以上話にならないのでは?」


626 :♪反論―CROSS SWORD― ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:13:26.40 ID:0q4noyk20


|///食べかす///>


ユーミア
「その発言の【根拠が//ない】


―発展―


ノノハラ レイ
「シアタールームのゴミ箱にはゴミが残っていた。しかも床に食べかすまであった。
 つまり、一昨日の映画観賞会の後からこれまで一切掃除されてないって事じゃないか。
 だから少なくともキミは今朝シアタールームの掃除を行っていない。違う?」


ユーミア
「えぇ、そうですね。後回しにしようと思っていたので。それよりも昨日の球技大会の後片付けを優先したんです。
 【シアタールームよりも多目的ホールの方が広い】ので、掃除には時間がかかるのは当たり前でしょう?
 だから【多目的ホールの掃除を優先した】んですよ」



627 :♪反論―CROSS SWORD― ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:15:56.77 ID:0q4noyk20



|///多目的ホール///>


【多目的ホールの//掃除を優先した】


―発展―


ノノハラ レイ
「そうかなぁ。確かに粗方奇麗にはなってたけどさ、舞台袖とかは埃が残ってて手付かずだったじゃないか」


ユーミア
「細かいところをこれからといった所で悲鳴が聞こえたんです。急いで駆け付けましたよ、何事かと思ったので。
 無論、きちんと片付けはしましたが」


ノノハラ レイ
「そんな悠長なことしてた割には随分と早かったね。男湯の脱衣所で悲鳴を聞いたボクよりも先んじて駆けつけるなんて。
 ボクが着替えてた分のタイムラグを考慮するにしても」


ユーミア
「それだけユーミアが完璧で瀟洒ということです。
 貴方が主張するような【男子更衣室の前の廊下】の掃除するなど、【時間をかけるまでもない】ことなのですよ」



628 :♪反論―CROSS SWORD― ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:18:56.86 ID:0q4noyk20



|///野々原渚の証言///>
|///掃除用具///>


【男子更衣室の//前の廊下】の掃除するなど、【時間をかける//までもない】



ノノハラ レイ
「そんな言葉は螺子伏せる」



 ―BREAK―



629 :♪学級裁判未来編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:24:08.81 ID:0q4noyk20



ノノハラ レイ
「キミが使った掃除用具には色々あったねぇ。モップやバケツは濡れていたし、消臭剤も結構使ったんじゃない?」


ユーミア
「それがどうかしたのですか? 掃除をすればそうなるのは当たり前でしょうに」


ノノハラ レイ
「そうだね。たださ、どうして消臭剤なんて使ったのかな? 多目的ホールの掃除に使う必要なんてないじゃん」


ユーミア
「……消臭剤など使用していませんよ。言葉の綾と言う奴です。
 言葉尻を捕らえるような真似で吊し上げるのが貴方のやり口のようですが、そういつもうまくいくとは思わないことです」


ノノハラ レイ
「でも確かに消臭剤は使われていた。渚が証言してくれたんだよ。誰かが、男子更衣室の前の廊下で、饐えた臭いを消すために」


ユーミア
「それがどう繋がると?」


ノノハラ レイ
「球技大会まではそんな臭いはなかった。でも、事件当夜からその臭いの元が発生したんだ。
 そしてキミはどうにかして出来る範囲ではそれを絶った。けど、大本までは取り除くことは出来なかった」


ユーミア
「理解できませんね。何が言いたいのですか?」


ノノハラ レイ
「キミがどうしても始末したくて、絶対に出来なかった証拠品。キミが本当に掃除したかったのはこれだろ?」


 |///吐瀉物///>


630 :♪学級裁判復活編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:38:21.65 ID:0q4noyk20


ユーミア
「……なんですかそれは」


ノノハラ レイ
「男子更衣室の隅にぶちまけられていたんだよ。捜査時間の時にはすでに乾いてたから、吐いてかなり時間が経っている。
 さらに、消化具合から考えると食後3〜5時間後ぐらいのものかな」


マスタ イサム
「おいおい、そんなものなかった筈だろ」


オモヒト コウ
「昼食なら15〜17時、夕食なら22〜24時だよな。
 そんな時間に俺達は男子更衣室になんて行ってないことぐらいわからないお前じゃないだろ」


ウメゾノ ミノル
「って言うか、そんな乾くまで放置せずすぐ掃除するって」


ノノハラ レイ
「その通り。ベーコンっぽいかけらが混じってたから、昨日の夕食のマルゲリータだ。
 そしてさっき証明した通り、ボク等四人にはその時間帯にアリバイがある。あからさまに不自然な証拠だ」


ユーミア
「要領を得ませんね。何が言いたいのですか? まさか、その吐瀉物がユーミアの物だとでも?」


ノノハラ レイ
「まさか。でも、キミはこれを絶対に処理しなければならなかったけど、それは叶わなかった。
 キミは女子で、男子更衣室に入ることは出来ないんだから」


マスタ イサム
「おいおい待てよ。じゃぁ、これは一体誰の物なんだ?」


631 :♪学級裁判復活編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:58:57.58 ID:0q4noyk20


ノノハラ レイ
「……一つ、疑問に思ったことがある。女子更衣室の体操服、2着余ったんだよね?」


コウモト アヤセ
「その通りよ。見た通り手付かずで……、待って、おかしいじゃない」


ノノハラ ナギサ
「え、何が?」


コウモト アヤセ
「球技大会の時点で女子は10人のはず。女子更衣室で余った体操服は2着。
 でも、最初来た時には11着あった! 余るのは1着じゃなきゃ変よ!」


ノノハラ ナギサ
「数えてたの?」


ユーミア
「勘違いということは?」


コウモト アヤセ
「違う、そもそもあの2着は死んだ咲夜ちゃんと柏木さんの物だと考えたら……、1着足りないじゃない!」


ノノハラ レイ
「そして男子更衣室で最初にあった体操服は5着。合計16着だ。これはこの合宿の参加者の人数と一致する」


タカナシ ユメミ
「女子の方で体操服が1着足りなくて、男子の方が1着余ったんでしょ、だったら考えられるのは……、誰かが性別を誤魔化してた?」


ノノハラ レイ
「その通りだよ。そしてそれが誰かは、もう明白だよね? そしてこの仮説が真実なら、様々な謎が一気に解決するんだ」


マスタ イサム
「おいおいおい、おいおいおいおいおいおい、まさか、まさかとは思うが、そいつは……」


632 :怪しい人物を指名せよ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 21:03:02.20 ID:0q4noyk20


 ノノハラ レイ

 コウモト アヤセ

 タカナシ ユメミ

 |> アサクラ トモエ

 マスタ イサム

 ユーミア

 ノノ

 ナナ

 オモヒト コウ

 ナナミヤ イオリ

 アヤノコウジ サクヤ

 サクラノミヤ アリス

 ウメゾノ ミノル

 サクラノミヤ エリス

 カシワギ ソノコ

 ノノハラ ナギサ


ノノハラレイ
「この人だ」

633 :♪絶望トロピカル ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 18:29:34.66 ID:/4/swccU0



ノノハラ レイ
「被害者である朝倉巴……、彼女、いや、彼こそが、女のふりをした男だったんだよ。
 だから体操服は女子更衣室に11着で、男子更衣室に5着あったんだ」


マスタ イサム
「い、いやいやいやいや、おかしいだろ。あいつは確かに女のはずで……」


ノノハラ レイ
「主観的な目線で言えば、まず骨格からしてあれは男性のものだ。小柄で華奢だから女性の真似ができただけ。ボクだって今は一時的に骨格を矯正して違和感を消してるだけだし。
 客観的に言うなら、球技大会の時、朝倉巴は最後に更衣室に入って体操服に着替え、最初に更衣室に入っていつもの服に着替えた。
 更衣室に入るところや、自分が入った後の更衣室そのものさえ誰かに見られたら一発で自分が男だとばれてしまうからね」


ウメゾノ ミノル
「……そう、か。だから上下ジャージだったんだ」


サクラノミヤ エリス
「どういうことですか?」


ウメゾノ ミノル
「体操服の下は男子がハーフパンツで女子がブルマ。一人だけハーフパンツをはいた女子がいたとすれば、理由を勘繰られる。
 だからそれを隠すためにジャージで隠さざるを得なかったんだ。色も一緒だったし、多少ずれても気づかれないだろうと踏んだんでしょ」


オモヒト コウ
「朝倉が増田の体操服を手に入れることができたのも、朝倉が男なら問題なく男子更衣室に入れるわけだから、簡単は話になるわけだな」


ユーミア
「それは飽くまで朝倉巴が女装した男性であると仮定した場合でしょう?
 客観的で具体的で決定的な証拠とは言えませんよね?」


ノノハラ レイ
「この期に及んで足掻くつもりなら、聞いておこうか。検死をしたキミ自身に。
 朝倉巴の生物学的な性別は男性か? 女性か? 本当のことを答えてくれると助かるんだけど」


ユーミア
「黙秘権を行使します」


マスタ イサム
「……ユーミア、もしその沈黙が俺を慮ってのことならやめてくれ。正直聞きたくないが、聞かなきゃならない。
 お前が話してくれないと、始められないんだ。……頼むよ」


634 :♪磯の香りのデッドエンド ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 18:34:09.21 ID:/4/swccU0



ユーミア
「マスターがそう望むのなら、そうしましょう。
 ――その通りです。朝倉巴は生物学的に男性です。間違いはありません。
 しかし勘違いしないでください。これは飽くまでマスターを傷つけまいとユーミアが独断で隠していたことです。
 あの悍ましい有機体が、男のくせに女のふりをしてマスターの周りを突き纏っていることを見逃していたのも、ひとえにマスターの心を傷つけたくなかったからです。
 だってそうでしょう? 自分を慕う後輩が実は変態趣味持ちでしかも同性だったなんて。マスターの傷心を想うだけでユーミアは身が引き裂かれる思いをするのです。
 だから、隠していました。それ以上にやましいことなどありません」


マスタ イサム
「……そう、か。そう、なん、だな……」


ノノハラ レイ
「正直に言ってくれてどうも。増田クンはご愁傷様。さて、これで霧が晴れてきたかな?
 被害者の行動とその理由。この二つが解明されたのは大きな進歩だよね。しかも、男子更衣室で嘔吐をしたのが誰なのかも明確になったわけだ」


サクラノミヤ アリス
「ちょっと待ちなさいよ」


ノノハラ レイ
「何さ」


サクラノミヤ アリス
「被害者が男なら、今度はどうやって女湯に入ったのかが謎になっちゃうじゃない。
 男は女湯に入れない。今までもその大前提があって話を進めてきたんだから」


ノノハラ レイ
「死体発見場所が女湯だとしても、事件現場が女湯とは限らないよね?」


サクラノミヤ アリス
「わざわざ殺した後で女湯に入れ込んだってワケ? どうしてそんな手間のかかるようなことをするのよ。
 第一、死体だからって女湯に入れることができるとでも?」


ノノハラ レイ
「その点はモノクマに聞いてみるしかないけど、どうなの?」


635 :♪磯の香りのデッドエンド ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 18:35:58.11 ID:/4/swccU0



モノクマ
「はいはい、その手の質問はもう聞き飽きたから手短に説明するね。一度しか言わないからよーく聞くように。
 “死者は物として扱う”これが基本スタンスだから!」


オモヒト コウ
「なるほどな。つまり、物なら性別は関係ないって事か。これなら死体を女湯に持っていける」


マスタ イサム
「……だが、持って行ったのは女だろ。誰だよ。……巴を磔にしたのは誰なんだよ!」


ノノハラ レイ
「落ち着きなよ、増田クン。――それとも、脳が理解を拒んでいるのかな?」


マスタ イサム
「ほざけ! お前に何が分かるって言うんだ!」


ノノハラ レイ
「状況から鑑みるに一人しかいないじゃないか。そんな人物は。さっき追及したばっかじゃない」


636 :怪しい人物を指名せよ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 18:38:18.07 ID:/4/swccU0



 ノノハラ レイ

 コウモト アヤセ

 タカナシ ユメミ

 アサクラ トモエ

 マスタ イサム

 |> ユーミア

 ノノ

 ナナ

 オモヒト コウ

 ナナミヤ イオリ

 アヤノコウジ サクヤ

 サクラノミヤ アリス

 ウメゾノ ミノル

 サクラノミヤ エリス

 カシワギ ソノコ

 ノノハラ ナギサ


ノノハラ レイ
「キミだよ」


637 :♪磯の香りのデッドエンド ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 19:10:50.79 ID:/4/swccU0



ユーミア
「……成程、つまりこう言いたい訳ですね?
 男子更衣室の前の廊下で朝倉巴を殺害し、後日その痕跡を消すために現場の掃除をし、死体を無関係の女湯に磔にしたのはユーミアだ、と」


ノノハラ レイ
「一連の死体損壊は紛れもなくキミの犯行とみているよ。その一環として男子更衣室前の廊下の掃除をした。
 朝倉巴は恐らく目的を達成してブツを手に入れた後、何らかの理由で吐き気を催し、我慢できずに男子更衣室の隅で吐き出してしまったんだろうね。
 その後何とか外に出ることは出来たけど、そこで息絶えてしまった。おそらく、蹲るような姿勢で倒れていたんだろう。その時に吐瀉物が廊下についたんだ」


タカナシ ユメミ
「そんなこと何でわかるのよ」


オモヒト コウ
「……普通、吐きそうになったら口を手で押さえるだろ? 出ないようにな。結局堪え切れなかったわけだが。
 その時手にもべっとりと付くわけだ。アレが。そしてそれを拭う暇もなく倒れて、その時に廊下に付着したってことだろ?
 なるほどな。全身を串刺しにして女湯で磔にして、シャワーを浴びさせていたのはその痕跡を消すためでもあったわけだ。
 手や服が多少汚れても洗い落とせることができるし、饐えた臭いは血腥さで誤魔化せる」


タカナシ ユメミ
「さっすがお兄ちゃん! 説明が分かり易い!」


ナナミヤ イオリ
「蹲っていたと、どうして思ったのですか?」


ノノハラ レイ
「モノクマファイルの通り、被害者は全身の骨を折られている。さっき話題に出た通り、死後硬直を誤魔化すためだと考えられる。
 単純に倒れていたなら体操服を回収するのは容易だろうけど、それが出来なかったからじゃないかな。だから無理矢理引き延ばした。体操服を握りしめている指ごと折って。
 そして、そんな芸当が出来るのはキミしかいないんだよ、ユーミアさん」


638 :反論! ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 19:12:34.26 ID:/4/swccU0



マスタ イサム
「俺が塗りつぶしてやる!」


639 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 19:17:17.67 ID:/4/swccU0



マスタ イサム
「お前ら揃いも揃って証拠にもなく出鱈目を!」


ノノハラ レイ
「一応、証拠あるんだけどねぇ」


マスタ イサム
「ふざけるな! ただの状況証拠ばかりだろうが! そんな論理破綻させてやる!」



640 :♪V3反論-CROSS SWORD- ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 19:35:31.54 ID:/4/swccU0

―反論ショーダウン・真打―


| 短剣 |=
| 突き刺さった跡 |=
| ガチャの景品一覧 |=



マスタ イサム
「百歩譲って死体損壊の理由はその推理通りだって認めてやるよ。
 だがよく考えてみろ。【事件当時俺達は何処で何をしていた】? 【ユーミアは何処にいた】?
 俺達は言わずもがな。ユーミアは6時のゴンドラリフトに河本と手ぶらで乗り合わせたんだったな?
 そんなユーミアが一体いつどうやって巴を殺せるんだよ」




―発展―




ノノハラ レイ
「問題視すべきなのはそこじゃない。一連の死体損壊の方法が可能なのはユーミアさんだけだってことなんだ」


マスタ イサム
「全身を串刺しにするのは体重をかければ女だってできるだろ。骨を折るのだっててこの原理でも何でも使えばいいじゃないか。
 【ユーミアにしか出来ない芸当なんてないだろうが】!」



 はてさて。知らぬは自身ばかり成り、って感じなのかな?
 それともやっぱり感情が理性を拒んじゃうのかな?
 いずれにせよ、平静を欠いたキミなんて目じゃないんだよね。今もとんでもない失言してるし。


641 :論破 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 19:39:47.39 ID:/4/swccU0



【ユーミアにしか出来//ない芸当なんてない】


  | 突き刺さった跡 |=


ノノハラ レイ
「その言葉、斬って捨てようか」


―BREAK―


642 :♪学級裁判未来編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 19:58:32.67 ID:/4/swccU0



ノノハラ レイ
「身に覚えがないとは言わせないぜ。増田クンと公の二人掛かりでやっと抜けたんだから。
 そんな馬鹿力、女だとユーミアさんぐらいにしか出せないよ」


マスタ イサム
「ガチャの景品でも何でも使えば出来るんじゃないのか?」


ウメゾノ ミノル
「いやぁ、どうだろう。ちょっと無理があるんじゃないか? それに、最後の仕上げは両手を重ねさせたうえで、柄の部分まで深く突き刺すんだろ?
 それってやっぱ道具を使って固定なんて無理だし、貫通させるのももっと無理なんじゃないかなぁ」


オモヒト コウ
「増田、思い出せ。球技大会でバレーの準備をする時だ。俺達二人掛かりで動かしてたポールを、ユーミアは一人で悠々と運んでたじゃないか」


マスタ イサム
「それは……、そうだが……。そうだ、誤魔化されんぞ。ユーミアは事件当夜本館に居た筈だろうが。
 でなきゃ始発である6時のゴンドラリフトに河本と相乗りなんてできやしない!」


オモヒト コウ
「スキー用具一式は、別館のゴンドラ乗り場にもあった。それを使って下ればいい。
 ノンストップで滑り続ければ別館から本館まで5分とかからないだろう。
 ……もっとも、そんな芸当ができるのは相当肝が据わっている奴だけだがな。フィジカルもメンタルも優れた人間はそうはいない。
 完璧で瀟洒を自負するお前のメイドなら、あるいは……」


ユーミア
「そう……ですか。――もはやここまで、ですね。マスター」


マスタ イサム
「ユーミア……?」


ユーミア
「申し訳ありません。どうやらユーミアはここまでの様です。
 ――その通り。全てユーミアのやったこと。しかし一切の後悔もありませんとも。マスターに仇成す害虫を、この身を挺して駆除できたのですから」



643 :♪Rise of Ultimate ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 20:32:46.50 ID:/4/swccU0



マスタ イサム
「何を……、言って……?」


ユーミア
「あのおぞましき有機体は、マスターに10TB以上の嘘をついていたのです。
 性別も、履歴も。あの姿だって。マスターの好みに合わせていただけ。パッドで体系を補正していると気づいたときはいっそ憐みの笑みがこぼれるくらいで」


ノノハラ レイ
「……通りでただでさえ薄い胸が絶壁になったと思った。それも処分したんだ?」


ユーミア
「えぇ。朝倉巴が男性であるという事実を隠蔽する為に、朝倉巴の部屋に入って体操服も一緒に。見つからなかったのはそのためです」


オモヒト コウ
「確かに、それらしい体操服は見つからなかったな……。いやいや、どうやって侵入……、あー、いや、そうだな。夢見がピッキングで入れるくらいだ。同じ要領か」


ユーミア
「まぁ、ストーカーと同一視されるのはメイドとしては甚だ心外ですが、おおむねその通りです。
 構造さえわかれば電子ロックのドアであろうとも突破できます」


ウメゾノ ミノル
「いや、それはそれでどうなのさ」


サクラノミヤ アリス
「方法を知ってれば突破されるなんて鍵の意味がないじゃない。どうにかしておきなさいよモノクマ」


モノクマ
「煩いやい! ボクだってなぁ! 色々忙しいの! 解ったよ! 今後はピッキング行為は校則違反とみなします! それでいいでしょ!」


コウモト アヤセ
「……まぁ、気休め程度にはなったわね」


サクラノミヤ エリス
「とにかく、これで終わり、でいいんですよね?」


ノノハラ ナギサ
「うん、間違いないよ。犯人がこうやって自供してくれたわけだし」


ナナ
「なんだかあっけなかったわね」


ノノ
「ほとんど出番なかったよ」


ノノハラ レイ
「――ああ、茶番は終わった? じゃさっさと本題に入ろうよ」


644 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 20:33:57.24 ID:/4/swccU0




 学 級 裁 判


  中   断



645 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 18:22:39.17 ID:fC5nz8KP0


   学 級 裁 判


     再 開


646 :♪Wonderful Story ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 18:35:53.16 ID:fC5nz8KP0


マスタ イサム
「茶番……、だと?」


オモヒト コウ
「おいおい、ちょっと待て。もう結論は出ただろ。ユーミアも自供して――、待てよ。
 ……そうだな。投票するにはまだ早い」

ナナミヤ イオリ
「どういうこと?」


オモヒト コウ
「具体的な物証もなしに追いつめられたにしては潔すぎる。まして自分の命がかかってるんだぞ?
 普通はもう少し足掻くもんだろ?」


ユーミア
「これ以上醜態を晒したくないのです。介錯だと思って早く投票していただけませんか?」


ノノハラ レイ
「焦ってるね。でも駄目だよ。一度浮上してしまった以上、疑惑は払わなければね」


コウモト アヤセ
「えーっと、理解が追い付かないんだけど……、ユーミアさんが犯人じゃないってことでいいのよね?」


ノノハラ レイ
「より正確に言えばクロじゃない、かな。一連の死体損壊に関しては間違いなくユーミアさんのやったことだ。
 前提条件として間違っていたんだよ。ユーミアさんの狙いは自分に容疑がかからないように工作をしたわけじゃない。逆だ。
 よく調べれば調べるほど、自分に容疑がかかるように工作されている」


647 :♪Wonderful Story ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 18:38:11.26 ID:fC5nz8KP0


ウメゾノ ミノル
「――おいおい、それじゃまるで狂人じゃないか」


サクラノミヤ エリス
「狂人、ですか?」


ウメゾノ ミノル
「人狼ゲームは知ってるだろ? この場合人狼はクロで、ユーミアさんは狂人という配役だとすると……、ユーミアさんの勝利条件は、クロが生き残ることか?」


サクラノミヤ アリス
「ちょっと待ちなさいよ。それじゃ、自分が死ぬとわかっててあえてそんな工作をしたって言うの? そんなの信じられるわけないじゃない」


ノノハラ レイ
「どうかな。この世には利害を超えてまで通すべき義がある。己が命に代えてまで尽くすべき忠がある。
 奇しくもユーミアさんが口走ったことだ。命に代えてまでも助けたいならシロでもクロに協力する理由になると」


ユーミア
「ユーミアが命を賭して尽くすのはマスターだけです。そしてマスターには完璧なアリバイがある。
 他ならぬ貴方方が保証してくれているではありませんか。これ以上の何が不満なのです?」


ノノハラ レイ
「そうだねぇ。強いて言うなら、キミが頑なに被害者の死因を明かさない理由が気になるから、とか?」


ユーミア
「……それになんの意味があると?
 ユーミアが朝倉巴を殺した。それ以上の情報が必要なのですか?」


ノノハラ レイ
「要りまくるよ。まず断言してもいいけど、キミの犯行は衝動的なものだ。コレがそれを物語っている」



|鞘///>



648 :♪Wonderful Story ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 18:40:29.17 ID:fC5nz8KP0



サクラノミヤ アリス
「何よそれ。袋? にしては薄っぺらいわね」


ウメゾノ ミノル
「鞘、かな? 見るからに結構幅のある剣のものとみた」


サクラノミヤ エリス
「ちょっと待ってください、鞘があるなら剣本体はどこに?」


オモヒト コウ
「大きさからして……、そういう事か。朝倉に刺さっていた剣だな?」


タカナシ ユメミ
「その鞘がどうしたって言うのよ。見るからに何の痕跡もない、普通の鞘じゃない」


コウモト アヤセ
「鞘の出所が問題なんでしょ。その鞘、巴ちゃんのカバンから出てきたんだから」


ノノハラ ナギサ
「ってことは……、どういうこと?」


ナナミヤ イオリ
「その剣の持ち主は被害者自身、ということですか?」


ノノハラ レイ
「その通り。普通剣と鞘はセットだ。抜き身のままカバンに入れることなんて考えにくいし、鞘だけを持ち歩く意味はない。
 該当する鞘が朝倉巴のカバンから出てきたということは、同じく剣も朝倉巴の所持品だということ。
 いくら何でも肝心の凶器を被害者の持ち物に任せるのは計画としては杜撰に過ぎる」


マスタ イサム
「いや、いくら何でも安直すぎないか? ひょっとしたら犯人が自分の凶器を巴のものだと思い込ませるためにわざと入れたって線は?」


ノノハラ レイ
「ガチャの景品にそれらしいものがなかったとなると、あの剣は誰かの凶器ってことだ。
 ユーミアさんの凶器は暗視スコープ、キミの凶器は槍、ボクの凶器は筋弛緩剤で綾瀬のは五寸釘と金槌だからさ、かすりもしないんだよね」


ユーミア
「河本さんの凶器は初耳ですが?」


コウモト アヤセ
「ちょっと澪! なんでよりによってこの場で言うのよ!」


ノノハラ レイ
「黙ってるよかマシでしょ。この調子でみんなの凶器も――と、言いたいところだけど、流石に脱線しすぎるからやめておこうか。
 とにかく、この犯行は衝動的なもの。だとしたら不自然だと思わないかい?
 ユーミアさん程の切れ者が、何故計画的に犯行を行わなかったのか」



649 :♪Wonderful Story ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 18:41:30.45 ID:fC5nz8KP0



ユーミア
「学級裁判でクロが生き延びるということは、シロは皆殺しになるということ。このユーミアがマスターを死なせるとでも?」


ノノハラ レイ
「思ってないさ。だからこそキミは朝倉巴に殺意を抱いてもそれを実行に移すわけにはいかなかった。
 学級裁判になればどう転んでもキミの主人である増田クンが不幸になってしまうのだから」


ユーミア
「マスターの幸福こそユーミアの存在理由(レゾンデートル)ですから。……ただ、どうしても我慢ならなかっただけで、つい」


ノノハラ レイ
「殺したって?」


ユーミア
「そうです」


ノノハラ レイ
「それはおかしいなぁ。じゃぁどうして死体発見アナウンスがあのタイミングで流れたのかなぁ?」


ユーミア
「……さぁ?」


オモヒト コウ
「どういうことだ? そういえば、そこら辺のいきさつ聞いてなかった気がするな。
 さっきの議論からして、河本、ユーミア、澪の順番で死体を発見したらしいが」


ノノハラ レイ
「そうだったかな。……そうだったかも。じゃ、その辺も含めて齟齬があるか、議論と行こうか」


650 :♪V3議論-HEAT UP- ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 19:04:42.25 ID:fC5nz8KP0



コウモト アヤセ
「まずわたしが巴ちゃんの死体を発見したのが、7時45分……ぐらいだったと思う」


ノノハラ レイ
「そして綾瀬の悲鳴を聞きつけてボクが女湯に向かおうとしたら、いつの間にか女湯から出てきたユーミアさんに阻まれた」


ユーミア
「河本さんの悲鳴を聞きつけたのはユーミアも同じ事。貴方が着替えている間に駆け付けることなど、ユーミアにとっては朝食の用意より簡単です」


コウモト アヤセ
「……今思ってみたら、ユーミアさん、かなり早い段階で来なかった? 移動距離は澪よりあるのに」


ユーミア
「気のせいでは?」


ナナ
「【順番なんてどうでもいい】んじゃない?」


ノノ
「【三人が死体を発見したらアナウンスが流れる】んでしょ?」


オモヒト コウ
「……裁判の冒頭でモノクマに質問したのはこれが狙いだったのか?」



 さすがは公。ボクの考えてることの予想もついてるみたいだね。



651 :論破 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 19:23:58.97 ID:fC5nz8KP0


ナナ
「【順番なんてどうでもいい】んじゃない?」


 |【三人が死体を発見したらアナウンスが流れる】///>



 それは違うよ


 -BREAK!!-


652 :♪学級裁判未来編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 19:28:22.16 ID:fC5nz8KP0



ノノハラ レイ
「いい? 死体発見アナウンスは三人以上の人間が死体を初めて発見した時に流される。
 そしてその三人の内にクロは含まれない。モノクマに確認した通りだ。
 さて、本題に入ろう。死体発見アナウンスはボクが死体を発見した時に流れた。おかしいね?」


ノノハラ ナギサ
「どこが……あっ!」


ユーミア
「……」


ノノハラ レイ
「渚も気づいたみたいだね。どうしたユーミアさん、顔色が悪いぜ?
 その間ボクと綾瀬とユーミアさん以外その場にいなかったから、ボクが三人目ってことになる。
 当時ボク等以外はみんな食堂に居た、間違いないね?」


マスタ イサム
「……そうだ」


ノノハラ レイ
「ユーミアさんがクロだとしよう。死体発見アナウンスが流れるタイミングがボクが死体を発見した時にするには、ボクと綾瀬の前にもう一人死体を発見した人間がいなければならない。
 無論ユーミアさん以外でね? いるのかな? この期に及んでもまだ死体を発見したにも関わらず叫ばず誰にも言わなかった人間なんて」


オモヒト コウ
「いないだろ。ここまで議論を進めておいて、実はもっと前に死体を見つけてたけど黙ってましたなんて奴は」


ノノハラ レイ
「つまりユーミアさんがクロだと仮定した場合、条件を満たしていないにもかかわらず死体発見アナウンスが流された。
 何故か? ユーミアさんがクロだという仮定が間違っていたからだよ。以上数学でいう背理法により、Q.E.D.(しょうめいしゅうりょう)ってわけさ」


653 :♪学級裁判未来編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 19:41:25.12 ID:fC5nz8KP0



ユーミア
「……モノクマの言うフレキシブルな対応をしただけでは?
 死体発見アナウンスが流れなければ真っ先に容疑者が絞られてしまうのですから」


ノノハラ レイ
「あれれ? 何でそんなことを言うのかな? せっかく自分の身の潔白が証明されそうだっていうのに」


ユーミア
「推理の穴を指摘しているだけです。そのような杜撰な充て推量で勝った気になられるのは癪なので」



ノノハラ レイ
「あっそ。ま、どうだっていいんだけどね。重要なのは、見かけ上キミが二番目の死体発見者になっているってことだ。
 キミはどうしても第二死体発見者を装わなければならなかった。だから綾瀬が死体を発見して悲鳴をあげたときすぐにでも駆け付けられるよう、脱衣所で待機してたんじゃないの?
 他の誰かに見つかったときは“二階の掃除が粗方終わったからここを掃除していた”とか言い訳できるようにも」


コウモト アヤセ
「だから澪よりも早く駆け付けることが出来たって事?」


ユーミア
「話になりませんね。何故ユーミアがそのような真似をしなければならないのです?」


ノノハラ レイ
「本当の第一死体発見者がキミだからだよ」



654 :♪学級裁判未来編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 20:28:08.03 ID:fC5nz8KP0



ユーミア
「……っ!」


ノノハラ レイ
「蒼褪めたね。図星かな? キミは二階の男子更衣室の前の廊下で倒れている朝倉巴の死体を目撃してしまった。叫び声もあげず君は冷静に検死に努めたんじゃないかな?
 そして死因に気付いたとき、キミは凶行に及んだのさ。
 全身くまなく刺したのは死斑をごまかすためで、骨を折ったのは死後硬直で動かなくなった体の姿勢を無理矢理捻じ曲げた痕跡を隠すため。
 そしてそれらの行動すべての本当の理由は、直接の死因を隠すためだね?
 ――後頭部を強く打ったことによる硬膜下出血。頭部に一切刺し傷がなかったのは、誰にも頭部を調べて欲しくなかったから、かな?」


ユーミア
「何を根拠にそのような出鱈目をほざけるのですか?」


ノノハラ レイ
「胃の中が空になるくらいの激しい嘔吐なんて、小脳や脳幹が圧迫されるなりなんなりで機能不全に陥るぐらいしか考えられないからね。
 そしてそれが外傷によるものなら、急性硬膜下出血ぐらいだろうと思った次第さ」


コウモト アヤセ
「硬膜下出血って?」


ノノハラ レイ
「くも膜下出血は知ってるね? 人間の脳はデリケートだから、頭蓋骨だけじゃなくて脳そのものを膜でくるんでいるんだよ。
 硬膜は、くも膜と頭蓋骨の間にある膜のこと。硬膜下出血っていうのはその字の通り、硬膜と脳の間に出血がおこって、たまった血液が脳を圧迫して最悪の場合死に至る。
 そしてこれらの多くは、頭部外傷からなる。今回のようにね」


ウメゾノ ミノル
「じゃぁ、本当の死因は撲殺ってことか?」


ノノハラ レイ
「そう簡単にことは進まない。死体を降ろすときにカツラが取れたけど、頭部に目立った外傷はなかっただろ?
 人を殺そうと物で頭を殴打しようものなら、腐った果実みたいにグニャグニャになっても可笑しくない。力の強いものなら猶更ね」


オモヒト コウ
「人間の頭部は髪の毛に引っ張られてかつ毛細血管が張り巡らされているから、軽くぶつけただけでも頭皮が裂けて大出血とかもままあるからな。
 あのカツラに血痕なんてついてなかったじゃないか」


ユーミア
「返り血の処理は面倒ですからね。加減をしたのですよ。それで納得できませんか?」


ノノハラ レイ
「この手の症状で厄介なのは、脳自体への損傷がなかった場合なんだよね。
 頭を打ったその場では目立った症状は出ないけど、徐々に血が溜まっていって気づいたら手遅れなんてこともざらだし」


マスタ イサム
「……何が言いたいんだ?」


ノノハラ レイ
「クロは増田クン、キミだよ」


655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 18:33:18.97 ID:WuHhitiP0
マスター…
656 :♪絶望トロピカルfancolle [saga]:2021/02/27(土) 17:28:01.03 ID:cMg7GukF0



―――



マスタ イサム
「なっ……!



 空気が凍った。みんなの息をのむ声が聞こえる。その沈黙が長いのか短いのかもわからない。



コウモト アヤセ
「ちょっと澪、何言いだすの?!」


ノノハラ レイ
「皆の大好きな感情論で言えば、ユーミアさんがここまで庇うほどのクロは、ユーミアさんの主人である増田クン以外あり得ない、って所かな」


マスタ イサム
「確かにそうだが、俺はやってないって言ってるだろうが! アリバイだってあるんだぞ!」


ノノハラ レイ
「言ったじゃん。頭部外傷を受けても症状が出るのにはタイムラグがある場合があるって。
 つまりさ、犯行時刻と死亡時刻が一致するわけじゃないんだよ。なら、アリバイも無意味だよね?」


コウモト アヤセ
「それはそうかもだけど、そんなこと狙ってできるわけないじゃない!」


マスタ イサム
「そもそも、動機は何だ? 巴がその……、俺を付けてたって俺が知ったのはついさっきの事なんだぞ!
 それに、俺がクロだとどうやってユーミアは思ったんだ? 死因が分かったところで俺の仕業だと何故わかる?
 言っておくが、そんな指示ユーミアには出してないぞ。……証拠がない以上信憑性ゼロだが」


ノノハラ レイ
「その点に関しては信じるよ。ユーミアさんの犯行はユーミアさん自身の独断専行とみて間違いない。
 朝倉巴の死体を目にしたキミの怒りと悲しみは紛れもなく本物だ。演技ではない。
 でも、だからこそ、ユーミアさんがありもしない罪を被ろうとするのはキミがクロだからだとしか考えられないんだよ。
 クロであるキミを生かすこと。その為なら罪もキミの罵声も厭わない。それがユーミアさんの存在価値なら尚の事ね」


ユーミア
「惑わされないでくださいマスター。この男の妄言に耳を傾けてはなりません。
 証拠がなければただの想像の域を出ないのですから。マスターがクロなど、断じて在り得ません。
 さあ、早くユーミアに投票を。それですべて終わりますから」


657 :♪絶望トロピカル ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 17:33:56.22 ID:cMg7GukF0



ノノハラ レイ
「……これじゃどこまでいっても水掛け論にしかならないか。
 流石は超高校級のメイド候補生さんだよ。忠義のためになりふり構ってられないんだね。
 その見苦しさも醜さも一周周ってむしろ清々しい。
 正直言ってね、凄いと思うんだ。キミの頭の回転の速さにはさ。
 朝倉巴の死体を発見してから死因を把握し、その原因が増田クンにあることがあるということを理解したうえで、自分が何をするべきかを考えすぐに行動に移した。
 突発的な犯行なのに、さも自分が計画的に犯行を行ったかのように偽装して増田クンの身代わりになろうとするなんて、普通じゃできない発想だよね。
 憎まれてでも守ろうとするなんて従僕の鑑だ。感動すら覚えるよ。
 キミがそこまで徹底して抗うって言うなら仕方がない。ボクも本気で相手してあげようじゃないか。
 来なよ。忠義も忠誠も信念も、何もかも、叩き潰して圧し折って螺子伏せてやる」


ユーミア
「受けて立ちましょう。こちらこそそのような無駄口を叩く舌を引き抜き、永遠に黙らせなければならないようですから」


マスタ イサム
「お前ら揃いも揃って好き勝手言うなよ! 頭冷やせ!」



         「クロはユーミアですよ」


「俺はクロじゃない!」


    「クロは増田クンだよ」


658 :♪V3議論 -PANIC- ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 17:51:31.75 ID:cMg7GukF0



  パニック議論 開始


|壊れたゴールポスト>
|ウィッグ>
|二人きりのゴンドラ>



       「一連の犯行は全てユーミアのやったこと。この結論は既に証明された筈です」
       「そのロジックはもう適応されない。【アリバイも軒並み保証をなくした】。振り出しだよ」
       「まだ続くの? さっさと終わらせればいいのに」
       「お姉さま! そんな元も子もないことを言わないでください!」



「俺が巴を殺す動機もないし、チャンスだってない! 第一アリバイだって証明されてるじゃないか!」
「でも死因が澪お兄ちゃんの言うとおりなら、その限りじゃないんでしょ?」
「うまく殴れば出来なくはないんじゃない?」
「そんな器用な真似できるか! 第一俺は【巴に傷一つつけてない】んだぞ!」



   「自分で言っておいてもなんだけど、こんなにも【自分の推理が当たっていて欲しくない】なんてね」
   「頓珍漢なこと言ってないでさっさと要点を言えばいいじゃない!」
   「何故そうはぐらかすのですか?」
   「おい、ちょっと待ってくれ……、まさか、お前、これを見越してあんな質問を……!?」



659 :♪V3議論 -PANIC- ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 17:53:09.92 ID:cMg7GukF0



【巴に傷一つつけてない】


  |壊れたゴールポスト>


  聞こえた……!


 -BREAK-


660 :♪Almost Hell Heaven ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 18:10:54.66 ID:cMg7GukF0


 矛盾は聞こえた……、けど、こんなのって……!



コウモト アヤセ
「……ねぇ、ちょっと待って。増田君」


マスタ イサム
「何だよ。お前も俺がクロだって言うのか?」


コウモト アヤセ
「そうじゃない、けど……。巴ちゃんを傷つけてないって言うのは嘘になるよね」


マスタ イサム
「何言ってるんだよ! 実際俺は一度だって巴に手を――はっ?!」


コウモト アヤセ
「うん。球技大会の時、ゴールポストを壊して、巴ちゃんを下敷きにしちゃったよね?」


マスタ イサム
「確かに、あの時巴は頭をぶつけた。だがあの時は何ともなかったし、そもそもあれは事故じゃないか!」


ノノハラ レイ
「だから最初に確認しておいたんじゃないか。過失致死の場合はどうなるのかって。
 それにボクと綾瀬はモノクマから聞いている。機器の不具合以外で発生したいかなる事故も、自己責任。
 だから、事故死も状況によればクロが出来るんだよ」


マスタ イサム
「嘘……、だろ……?」


ノノハラ レイ
「十歳ぐらいの頃かな、ボクの大好きな声優さんが階段から落ちて死んじゃったんだよね。頭を強く打った結果脳挫傷で、さ。
 この話、キミが事故ったときにも仄めかしたんだけど。覚えてない?
 それにあの時言ったよね。後頭部ぶつけたんだから激しい運動は厳禁だって」


マスタ イサム
「あ……、あぁ……っ! アアアアアァァァァァァ!!!」



661 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 18:11:56.50 ID:cMg7GukF0




ユーミア
「間違っています! 何もかも!」



662 :♪Living in Lazy Parallel World ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 18:25:44.98 ID:cMg7GukF0



ユーミア
「やはり貴方に推理を任せるのは誤りでした」


ノノハラ レイ
「どういうことかな? 最初から不思議に思ってたんだよ。モノクマファイルにはクロが有利になるよう記述されている。学級裁判を公平にする物なのに。
 でも犯行がみんなの前で堂々と行われてたのなら話は別だよね。死因を書けば一発で誰がクロなのか分かってしまう。だからクロが不利にならないよう隠すしかなかった」


ユーミア
「それが大間違いだとまだ気付きませんか。朝倉巴の後頭部を殴りつけることが出来るのは誰でも同じこと。
 マスターの事故は衆目を集めましたが、論拠がそれだけだというなら話になりません。
 朝倉巴の後頭部を殴りつけることが出来たのはマスターだけですか?
 そんな保証はどこにもありませんよね?」


ノノハラ レイ
「増田クンだけだよ。残念ながら。……いい加減キミとの口論にも疲れた。そろそろ止めを刺そう」


ユーミア
「望むところです」



663 :理論武装 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 18:39:45.91 ID:cMg7GukF0



TYPE-SAKUYA A9



「マスターがクロ? 冗談は顔だけにしてくれませんか?」「マスターだけが疑われるなんて」「貴方の品性を疑うべきでしたか?」
「死因が硬膜下血腫であれ、脳挫傷であれ、誰でも朝倉巴の後頭部を殴りつけることが出来るはずです」「無論、ユーミアならどのくらいの時間差で死に至らしめることが出来るのかの調製だって余裕です」



「命に代えてもマスターだけはユーミアがお守りいたします……!」「貴方にマスターの何が分かると?」「マスターの苦しみを理解できるのはユーミアだけ」
「お労しいマスター」「どうかユーミアの勝手をお許しください」「マスターが幸せであればユーミアはそれだけでいいのです」



「貴方の発言には確たる証拠が何一つ存在しない」「このユーミアが決定的な物証を残すとお思いで?」「証拠は全て灰となりました」「残念でしたね」
「しつこいですよ」「異常者の相手はこれだから」「何故ここまでの議論でユーミアに票を入れないのです?」「もうこの話は終わりです」「終わり、終局、犯人決定、閉廷、それでいいじゃないですか」


664 :トドメを刺せ! ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 18:45:11.29 ID:cMg7GukF0



TYPE-SAKUYA A9



                     △
                     ぶ


□こ     「何故マスターをクロと断定するのか、不思議で仕方ありません」      ん○


                     た
                     ×


     た ん こ ぶ


 これで終わりだよ


 -BREAK-


665 :♪学級裁判未来編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 18:54:41.93 ID:cMg7GukF0



ノノハラ レイ
「朝倉巴の後頭部にたんこぶができているのは、ほかならぬユーミアさんも知ってるね?
 本人も当時言っていた。平気だがたんこぶができたって」


ユーミア
「ユーミアのスペックなら、同じ場所を狙うことなど容易です……!」


ノノハラ レイ
「抜かせ。ウィッグが外れたあの時、ちょっと後頭部にも触ってみたけどそれらしいこぶは一つしかなかった。
 朝倉巴の生前にできた頭部の傷は、それ以外一つもない」


ユーミア
「勘違いしているだけでは? 検死を担当したこのユーミア以外に頭部をよく調べた人間がいるとでも?」


ノノハラ レイ
「なら正直に言いなよ。朝倉巴の生前に出来た頭部の外傷がなんなのかを」


ユーミア
「それは――」


マスタ イサム
「もう、いい」


ユーミア
「ま、ます、たー……?」


マスタ イサム
「そうか。そうなんだな。――俺がクロ、なんだな」


666 :♪Almost Hell Heaven ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 19:11:35.80 ID:cMg7GukF0



ユーミア
「待ってくださいマスター! こんな状況、まだいくらでも覆せます!
 ――いえ! そもそもあんな男の言うことなど信じられるものですか! 前の裁判でどれだけ引っ掻き回したのかお忘れですか?!」


マスタ イサム
「こういうのも癪だが、そういう所は真面目なんだよ、そいつは。
 なあ、裁判が始まる前から、俺がクロだって思ってたんだろ? じゃなきゃ、冒頭でモノクマにあんな質問をぶつけるのはおかしいもんな」


ノノハラ レイ
「……正直、認めたく、なかった。捜査時間もずっと、キミがクロじゃない証拠を集めようと躍起になって。
 結局出てきたのは、キミがクロだって証拠と、キミを庇うためのユーミアの偽装工作の痕跡だけだった。
 あらゆる面で消去していって、最後に残ったものこそ、いかにそれが信じがたくとも、真実なんだって。残酷すぎる事実から、目を背けていたかった。
 いっそ、ユーミアさんがクロ認定されないかって、冒頭でモノクマに聞いてみたんだよ。そんな儚い一縷の希望は粉微塵になったけど」


マスタ イサム
「意外だな。そんな風に考えてたのか。てっきり、クロには容赦しない質だとばかり思ってたんだが」


ノノハラ レイ
「心外だよ。ボクは優しいんだぜ? ――どうしてせっかくできた友達を喪うことを望めるんだ」


マスタ イサム
「そっか。なら――終わりにしてくれ。俺が巴に何をして、何をしてやれなかったのか。
 ユーミアに何をさせて、俺は何に気付かなかったのか。
 でないと、俺は俺を許せそうにない」


ノノハラ レイ
「……キミがそう望むなら」


667 :♪クライマックス推理 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 19:30:51.35 ID:cMg7GukF0



――男四人で麻雀をやっている上で……?
  ←男の娘がオタカラGET!

――朝倉巴の身に何が起きた?
  ←被害者の頭の中の爆弾が!

――死体の本当の第一発見者は?
  ←メイドは見た!

――ユーミアの偽装工作とは?
  ←やはり暴力……!! 暴力は全てを解決する……!!

――ユーミアが別館から本館へ移動した方法は?
  ←恐れを知らないメイドの滑走

――ユーミアは証拠隠滅のために何をした?
  ←やることが……やることが多い!!

――朝倉巴の変調、その原因は?
  ←いえお気になさらず。こんなのはただの、不慮の事故ですから。



 これが事件の全容だよ


668 :♪クライマックス再現 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 20:51:19.70 ID:cMg7GukF0




Act.1
 まず、被害者が死亡した前後の話をしよう。まず、ボク等四人は別館のゲームコーナーでTRPGと、夜通しで麻雀を行っていたんだ。
 そして、被害者。朝倉巴は別館の二階、男子更衣室に向かっていた。ボク等が見かけたことはないことからして、22時よりも前の出来事だ。
 何故朝倉巴が男子更衣室に行ったのか、その理由は慕っている人物の、洗っていない体操服を手に入れることだった。この手のものは、その手の人には垂涎のお宝だからね。
 女性のふりをしてはいるが、実際は男である朝倉巴は簡単に男子更衣室に侵入することが出来た筈だよ。もちろん、そんなシーン誰にも見られるわけにもいかないから、シアタールームにでも入って、夜が更けるのを待ったんじゃないかな。
 正直、いつ入ったのかは分からない。普通にゴンドラリフトで帰る気だったのかもしれないし、スキー用具で滑って帰る予定だったのか、あるいは一晩中別館に居座る予定だったのか、今となっては闇の中だけど。
 でも、男子更衣室に入って目的のものを手にしたのは事実だと思う。そして、その瞬間がやってきてしまった。
 朝倉巴は頭の中に爆弾を抱えていたんだ。硬膜下血腫という、いつ爆発するか分からない爆弾をね。それがとうとう爆発してしまったんだよ。
行き場をなくして溜まった血液が脳を押しつぶした時、被害者は激しい頭痛と吐き気に襲われ、男子更衣室の隅に胃の中身を全て吐き出すほどの激しい嘔吐をしてしまった。
ほうぼうの体で辛うじて男子更衣室からは出ることが出来た朝倉巴は、廊下で力尽きて、死んでしまったんだ。
 そうとは知らず、一階にいたボク等は麻雀をしていた。この時異変に気付けていれば結果は変わっていたのかもしれないけど、もう後の祭りだ。
 こうして、誰も朝倉巴が死んだことを知らないまま夜は更け、朝になった。ボクを除く三人は朝一のゴンドラリフトに乗り込んで本館に帰り、ボクは綾瀬と一緒に朝風呂に入るために別館に残ったんだよ。




Act.2
 朝一のゴンドラリフトに乗って別館にやってきたのは綾瀬だけじゃなく、多目的ホールの掃除をするためにユーミアさんもいた。そして、二階に行って目撃したのが、朝倉巴の死体だった。
 その時は傷らしい傷なんて何もなかった筈だから、きっとユーミアさんは倒れている朝倉巴を見ても、まさか死体だとは思わなかったんじゃないかな。でも近寄って調べて初めて、死んでいることが分かったんだ。
 多分、死因も一緒に分かった筈だよ。まったく損傷がない状態なんだから、調べれば一発だ。そしてユーミアさんはそこから誰がクロなのかが分かってしまった。自分の主だ、と。
 メイドであるユーミアさんは主を守るために、信じられない行動に移す。死因を誤魔化すための偽装工作として、体中のあちこちを被害者の持っていた剣で突き刺していったんだ。
 さらに、主が疑われないように、朝倉巴が死んでも離さなかったそれを無理矢理取り出すために、死後硬直で岩のように固く握りしめられた拳を力技でこじ開けた。
 その痕跡を隠すためさらに被害者の全身の骨を折る。蹲るような姿勢から伸ばすためにも。ユーミアさんの力ならではのゴリ押しだ。
 これらの工作は女湯で行われたんじゃないかな。綾瀬に見つかるリスクは高いけど、証拠隠滅のメリットを考えればできる場所はそこしかないわけだし。
 綾瀬が混浴風呂に向かっていることが分かったユーミアさんは最後の仕上げとして、シャワー室で死体を磔にし、シャワーで死体についた諸々を洗い流した。
 これなら、犯人は女湯に入ることのできる女性であると誤認させることが出来るし、被害者の手や服についた吐瀉物とその臭いも洗い流すことが出来る。
 死体の全身を痛めつけ、磔にすることで、ユーミアさんは何重ものカモフラージュをし、容疑が本当のクロではなく自分に向くよう仕向けたんだ。



669 :♪クライマックス再現 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 20:51:58.35 ID:cMg7GukF0




Act.3
 一連の凶行が終わったユーミアさんは、今度は自分が犯人だと思わせるためのミスリードに移行した。
 まず多目的ホールを掃除していたという辻褄を合わせるために一通り多目的ホールを掃除する。でもここで重要なのは廊下に残っていた吐瀉痕の始末だ。こっちを優先するあまり、多目的ホールの方は杜撰になってしまった。
 本当は大本である男子更衣室の吐瀉物も、と行きたかったのだろうけど、生憎ユーミアさんは女性だ。男子更衣室に入ることは出来ない。こればかりは諦めるしかなかった。
 後々被害者の本当の性別が判明したら厄介なことになると踏んだユーミアさんは、被害者の持ち物やその他諸々を処分する為に本館の焼却炉を目指した。
 一刻を争う事態だ。悠長に10分かけてゴンドラリフトで行くより、スキーで滑って行った方が速いと判断したユーミアさんは、減速無しでゲレンデを突っ切り、5分とかからず本館に到着した。
 朝早い時間で、被害者の部屋がエレベーターに最も近いことも幸いして、誰にも見つからないように被害者の部屋に侵入したユーミアさんは、朝倉巴が男性である証拠を全て回収し、そのまま誰にも見られず焼却炉に証拠品を詰め込んで、燃やした。
 しかし、ある程度自分が朝倉巴に殺意を抱いていると見せかけないと動機が怪しまれる。だからわざと被害者の所持品の中から如何にもなものを残しておいたんだ。
 全ての工作が終わると、急いでゴンドラリフトに乗り込んで別館へ向かった。死体が発見される前に別館へ到着していなければならない。こればかりは賭けだったんじゃないかな。ユーミアさんもきっと、天に祈った筈だよ。
 そしてユーミアさんは賭けに勝った。死体が発見される前に別館について、朝倉巴の所持品をカバンごと女湯の脱衣所のゴミ箱に捨て、綾瀬の悲鳴が聞こえるのを待った。
 死体発見アナウンスが不自然にならないようにするためには、ユーミアさんは第二死体発見者に見せかけるしかない。三人目が死体を発見した時にアナウンスが流れるわけだから、ユーミアさんよりも前に二人が死体を発見したらその段階でアナウンスが流れる。
 かと言って二階の多目的ホール……、女湯から結構距離がある所にいたということにしている自分が一番目に死体を発見するというのも不自然だ。
 だから、ユーミアさんは第一死体発見者にも関わらず第二死体発見者を装うために、脱衣所でスタンバイしていたわけだ。
 そして綾瀬が惨たらしい死体を見て悲鳴をあげ、それを聞きつけた形で駆けつけてきたように見せかけ、ボクが入って来るのを足止めしてから、死体を発見させた。そして目論見通り死体発見アナウンスが流れる。
 後は臨機応変に対応して、如何にも自分が犯人だと陰ばかりに主張し、票を自分に集めようとすればいい。すべては、敬愛するべき主の為にね。




Act.0
 では何故朝倉巴は硬膜下血腫を抱えなければならなかったのか。
 それは昨日の球技大会で起きたある事故が原因だ。
 老朽化したバスケットのコールポストに何度もスラムダンクを決めたものだから、とうとう耐えきれずに壊れてしまったんだよ。根元からポッキリと折れてしまったんだ。
 当然その人物は重力に従い落下する。その巨体を受け止めようと無謀な挑戦をした朝倉巴は、その下敷きとなってしまい、後頭部を強打してしまったんだ。
 当時は平然としていた被害者だけど、実際は硬膜下出血が起きていた。これが爆弾の正体だよ。ゆっくりと時間をかけ血が溜まっていき、とうとう限界を迎えてしまったんだ。



 全ては不慮の事故……、でも、朝倉巴の死の原因となったのは、キミなんだよ。
 ――超高校級の画家候補生、増田勇クン。


 -COMPLETE-



670 :♪Wonderful Story ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 20:56:31.51 ID:cMg7GukF0



マスタ イサム
「……そう、か」


ユーミア
「マスター! 出鱈目です! こんな男の言うことなど信じるに値しません!」


マスタ イサム
「ユーミア。もう、いい。もう……、いいんだ」


ユーミア
「マスターァァァァァァ……」


モノクマ
「どうやら、オマエラの結論が出たみたいですね!では、お待ちかねの投票タイムと参りましょう!
 オマエラはお手元のスイッチで投票してください。
 投票の結果クロとなるのは誰なのか?そしてその答えは正解なのか、不正解なのか?」


671 :VOTE ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 20:58:14.35 ID:cMg7GukF0



  マスタ イサム 12票 \GUILTY/

  ノノハラ レイ 1票


672 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 20:58:54.62 ID:cMg7GukF0




学 級 裁 判 

  閉 廷


673 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 21:00:50.42 ID:cMg7GukF0



――本日はこれにて。


674 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 21:30:03.50 ID:Y5IO5UdV0



モノクマ
「だいせいかーい! 朝倉巴クンを不慮の事故で死なせたのは、増田勇クンなのでしたー!」


ユーミア
「こんな裁判は不当です! 事前の説明が全く足りていない!
 それにこんな判例が認められれば、ほんのわずかな接触でも疑心暗鬼の種になるではありませんか! 皆さんはそれでもかまわないとでも?!
 こんな不公平な裁判を認めるわけにはいきません! 告訴します!」


モノクマ
「却下ですぅ……、うぷぷ……、いいのかなぁ? そんなこと言っちゃって。ボクだって最初はこれ、どう処理すべきか迷ったんだけどさぁ、決定打になったのはオマエの行動なんだよ?」


ユーミア
「それは……どういう……」


モノクマ
「あれはただの事故死だった。老朽化したゴールポストを修繕してなかったボクにも落ち度はあったから、校則違反も見逃してあげたんだよ?
 その後はどうなろうが自己責任ってことで放置したのは事実だけどさ。誰がどう見ても事故死なのに学級裁判なんて開いたら面白くないじゃん。
 だけど、オマエが事件性を持たせちゃったから、学級裁判を開かざるを得なくなっちゃったわけ。それを不当と言われるのは心外ですなぁ」


ユーミア
「あ……、ああ……、アアアアアァァァァァァッッッ!!!」


モノクマ
「オマエが何もしなければ増田クンがクロになることもなかったのにねぇ!
 いやー愉快愉快! 矜持も未来も、オマエの全てを捧げて誰によりすがろうと! 主一人さら救えないとは!
 惨めだよねぇ、この上なく惨めだよオマエ。うぷぷ。うぷぷぷぷぷ!
 ぶひゃひゃひゃひゃ!」ゲラゲラゲラゲラ


675 :♪Rise of the Ultimate ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 21:41:54.36 ID:Y5IO5UdV0



マスタ イサム
「その辺にしておけモノクマ」


モノクマ
「おやおや。そっちはそっちで随分冷静じゃない。オマエ本当に解ってる? これから理不尽にオシオキされて、死んじゃうんだよ?
 怖くないの? 恨めしくないの? どうせだ、YOU、本音さらけ出しちゃいなYO!」


マスタ イサム
「……何なんだろうな。多分いつも通りだったら取り乱してただろうさ。だが、ユーミアが俺の為にあそこまで尽くしてくれたんだ。ここで醜態を晒すワケには行かないだろうよ」


モノクマ
「何だい何だい、そんな覚悟決めた漢みたいな顔しちゃってさ。どうせオマエみたいな奴ほど死にたくないとか直前になってビビるんだ!
 ホラホラ怖がれ! 怯えろ! 泣き喚け!」


ノノハラ レイ
「流石にこれ以上は無理なんじゃない? いい加減諦めたら?」



モノクマ
「何だいオマエも!」


オモヒト コウ
「……お前、どっちの味方なんだよ」


ノノハラ レイ
「誰の味方でもないよ。ボクはボクであり続ける限り、ボクのやりたいことをする。それだけ。
 使えるものは全て使う。妨げになるものは全て消す。それが相手にとっての利益や害となるだけだ」


モノクマ
「ムキー! ドイツもコイツもいい気になりやがって! そこまで言うからにはやってやろうじゃねぇかよこの野郎!
 張り切っていきましょー! おしおきターイム!!!」



676 :♪New World Order ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 21:47:17.42 ID:Y5IO5UdV0



マスタ イサム
「……巴を死なせたケジメはつけないとな。だが、ただじゃ死なないぞ、俺は」



 モノクマが槌を振り上げた瞬間、増田クンも懐に手を突っ込んだ。
 取り出されたのは、キャップが外されむき出しとなった矛先と瞬間的に長くなった柄。増田クンの凶器だ。



モノクマ
「うぷぷ、そんなのでオマエに何が出来るのかなぁ? 殺られる前に殺っちゃう? このボクを?
 殺れるもんなら殺ってみなよ! 不可能だからさ! ぶひゃひゃひゃひゃ!!!」


マスタ イサム
「言ってろ。出来る出来ないじゃない。やるんだよ、今、ここで!」



 そう言って増田クンはその槍をおおきく振りかぶって――自らの胸に突き刺した。



677 :♪New World Order ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 21:49:18.25 ID:Y5IO5UdV0



マスタ イサム
「グハッ……」


モノクマ
「はぁ?」



 深々と突き刺した槍は体を貫通し、傷口や矛先から血が滴り落ちている。まぎれもなく致命傷だ。
 その証拠に、増田クンは虚ろな目で立っているのもやっとという状態。今にも膝をつきそうな蒼褪めた顔だ。吐血もしている。



ユーミア
「マスター! 今止血を!」


マスタ イサム
「いや、いい、ユーミア。これで、いいんだ……」


モノクマ
「お、オマエ! 何やってるんだー! まさかオシオキ怖さに自殺する気かー?!」


マスタ イサム
「そんなんじゃ、ない……。巴が死んだのは、俺のせい、だ。だから、俺の死で、償う。
 だが……、お前の思い通りになんて、させない……!
 俺の命は……! お前を悦ばせるためには、絶対に使わせない……! 使わせてやるものか……ッ!!」


モノクマ
「だったら、今から何が何でもオマエを絶対に治してやる! 待ちに待ったオシオキタイムを邪魔させるもんか!」


ノノハラ レイ
「そうはさせないよ、モノクマ。――というより、それは出来ない。の方が正しいかもしれないけど」


モノクマ
「はぁあぁ? 何言ってんのさ。言ったでしょ、ここじゃボクがルールなの!」


ノノハラ レイ
「キミは朝倉巴が硬膜下出血で倒れた時、必要な治療をしなかった。そしてその原因を作った増田クンをクロと判断した。
 ここで暮らす分には病死はありえないとキミが冒頭で明言した以上、増田クンに原因があるとはいえ朝倉巴が倒れた時に何もしなかったのはキミの怠慢に他ならない。
 なら、自分を殺し切り損ねている増田クンの治療は、朝倉巴に対し必要な治療しなかった怠慢と相反することになるよね? いいのかいゲームマスターだからってそんな横暴。
 いくら裁判長とはいえ、公平公正を守ってこその秩序だと思うけど。
 それに、老朽化したゴールの破損の管理不行き届きに関して何もしなかった。これもいけないね。
 あの時点でキミが出てきてくれればしかるべき処置を施せたかも知れない。つまり事件は起きなかった可能性だってある。だがキミはそれを怠った。
 校則違反と老朽化の放置でトントンにしたとして何もしなかったのはおかしいよねぇ?
 その件に関して、しかるべき責任ってものがあるんじゃないかな、モノクマ学園長殿?」


モノクマ
「ムグググ……」



 ごねるモノクマを説き伏せるのは気分がいい。自分が強者だと思っている輩を正論で殴りつけるのは最高だ。



678 :♪New World Order ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 21:54:55.18 ID:Y5IO5UdV0



マスタ イサム
「悪い……、な。迷惑かけて……」

ノノハラ レイ
「別に。ボクもモノクマの思い通りに事が進むのは気に食わないし。それに、朝倉巴の死に関して、責任の一端を感じないわけでもないしね。
 ……あの時もっとちゃんと診てればこんなことにはならなかったかも知れない。そう後悔してる節がないとは言い切れないから」

マスタ イサム
「はは……、もう少し薄情な奴かと思ってたんだがな。違ったか」

ノノハラ レイ
「とんでもない誤解を最期に解けてよかったよ。――なんて、言えるワケないじゃない」

オモヒト コウ
「お、俺の所為、なのか……? 俺が老朽化に気付かないで球技大会なんてやりださなければ……、こんな、こんな事には……」

ウメゾノ ミノル
「そんなこと言ったら、僕だってイベントを開催しようって流れ作っちゃったし……」

ユーミア
「ユーミアが……、ユーミアが……、あぁ、あああ、ああああああ! マスターの為と思って重ねた罪が逆にマスターの首を絞めることになるなんて、そんな、そんな……。
 違う、違うんですマスター。これは何かの間違い、夢、幻、あってはならない事。マスターをお守りすることだけがユーミアの存在意義なのに!
 またマスターを守れないだなんて嘘、嘘。嫌、否、ユーミアがマスターを殺した……? そんなはずは、そんな、はず、は……」

マスタ イサム
「……気にするな。誰も、悪くない。調子に乗ってゴールポストを壊した俺が悪い。それで、いいじゃないか。
 それに、どのみち死ぬんなら、あん畜生に一泡吹かせてやる方が気分がいい、だろ?」

オモヒト コウ
「大馬鹿野郎だよ……、お前は。遺された側の気持ちがこれっぽちも解ってないじゃないか……」

マスタ イサム
「言い返しのしようがないな、それに関しては。……なぁユーミア、この期に及んで図々しいかもしれないが、一つだけ頼まれてくれるか?」

ユーミア
「お任せください! マスターの命は必ずユーミアがお救い致します! こんなところで死なせるわけにはいきません!」

マスタ イサム
「それじゃどのみちオシオキで殺されるだろ……。
 巴には姉がいる。この件について謝りたいところだが、俺はもうこのザマだ。代理、頼まれてくれるか?」

ユーミア
「嫌です! ユーミアはマスターがいないと前を見て歩けません! それに約束したじゃありませんか! ずっと側にいて欲しいと! あの言葉は嘘だったのですか?!
 ユーミアはマスターが見ていてくれないと怖くて先へ進めないのです! もう二度とマスターを喪いたくないんです!」

マスタ イサム
「ゴメンなユーミア。こんな身勝手なマスターで。俺の我儘で余計に辛い思いさせちまうんだもんな。
 ……けど、こうでもしないと俺が死なせちまった巴に示しがつかない。だから、これが俺からお前に向ける、最期の命令だ」

ユーミア
「……わかり、ました。必ずや、その命令、果たして見せます」

マスタ イサム
「あとこれは、完全な個人的な頼みなんだがな……。俺の事も、あの時の約束なんかも全部忘れて、お前はもっと自分自身の幸せを見つけてこい」

ユーミア
「マスターの傍に使えること以上の幸福などありません! マスターがいなければユーミアは……! ユーミアは! ユーミアは……! どうすればいいのですか……」

マスタ イサム
「こんな酷くてみすぼらしい糞野郎なんかよりももっといい主が見つかるさ。ユーミアならきっと引く手あまただ、心配いらない。
 ……さて、モノクマ。これだけは言っておくぞ。お前の正体は必ず、俺の仲間達が、絶対に暴いてみせる。先に地獄で待ってるからな、首洗って待っとけ」

モノクマ
「オマエ、随分と生意気じゃん。ま、ボクが捕まることなんてありえないけどね。中の人なんていないんだから! ぶひゃひゃひゃひゃ! とんだ仇花だよ! 傑作だ!」

マスタ イサム
「言ってろ……。澪、差し出がましいのは百も承知だが、頼まれてくれるか? ユーミアの事」

ノノハラ レイ
「……必要最低限の努力はするよ。結果は保証しかねるけど」

マスタ イサム
「構わん。……よし、もう言い遺すことも思い残すこともないな。
 あぁ、これが死、か。なんだ、存外、怖くないもんなんだな。――いや、俺はここまでだが、俺の遺志を継ぐ奴らに託せたんだ。満足だ。いい……、人生、だった、よ」

ユーミア
「マスター! ダメ! ダメです! 目を開けてください!
 嫌! 体が冷たくなって! もう独りは嫌なんです! マスター! マスター!!」



679 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 21:56:26.94 ID:Y5IO5UdV0



モノクマ
「……ちぇっ。こんなお涙頂戴の茶番劇反吐が出るね。興が削がれちゃったよ。
 じゃ、これで今回の学級裁判は終わったから、そこのエレベーターで帰ってね。バーイクマー」



 こうして二回目の学級裁判は幕を下ろした。
 主の亡骸を抱きかかえ、嗚咽している従者(メイド)を残し、ボク等はエレベーターで上へと昇った。



680 :♪Nightmare in Locker ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 21:58:45.03 ID:Y5IO5UdV0



コウモト アヤセ
「……よかったの、澪? あの二人を残しておいて」


ノノハラ レイ
「梃子でも動かないでしょ、あの状態だと。それに、あの二人の間に水を差すような真似はしないほうがいいし」


オモヒト コウ
「意外だな。てっきり前の裁判同様、増田かユーミアの事を忘れるものかと思っていたが」


ノノハラ レイ
「キミはボクを何だと思っているんだ。一応、人並みの感性はあるんだからね? 増田クンの件に関しては全くの事故だし、ボクにも落ち度がないとは言い切れない。
 ユーミアさんにしたって、やったことは結果的に悉く裏目ったけど、増田クンのことを想っての行動だ。今は憐れみさえ覚えるよ。
 ……そうだ、この際だから言っておこうか。取引について」


ウメゾノ ミノル
「最大7人が外に出られるってあれ?」


ノノハラ レイ
「そうそう。その定員なんだけどさ、一人減ってあと二人になったから」


ウメゾノ ミノル
「――なぁそれ、僕達の誰かが寝返ったんじゃなくて、今生き残ってるのが12人だからかい?」


681 :♪Nightmare in Locker ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:00:24.31 ID:Y5IO5UdV0



ノノハラ ナギサ
「え、どういう事?」


ウメゾノ ミノル
「簡単な話だ。学級裁判の必勝法、それは全員がクロになること。そうだろ?」


サクラノミヤ アリス
「どういうことよ、ちゃんとわかるように説明しなさい」


ウメゾノ ミノル
「最大人数の半数が一人一殺。これで全員クロが確定する。今は12人だからその半分の6人が共謀して残りの6人を殺せば、学級裁判もクソもない。完全犯罪達成だ。
 全員分の票を外せば、それだけでクロの勝利が確定する。学級裁判のルールの穴を突いたいい方法だけど、こうして表沙汰になった以上は何某かの対策をしてくるはずだ」


モノクマ
「んなことされたらツマラナイじゃないか! 後で校則付け加えておくからね!」


ウメゾノ ミノル
「さ、これで君の企み、交渉材料は無くなった。いつまでも自分の思い通りにいくとは思わないことだ」


ノノハラ レイ
「へーぇ」


ウメゾノ ミノル
「おいおい、なんだそのにやついた顔は。君の目論見は全てご破算になったんだぜ?」


ノノハラ レイ
「いやーぁ感心した。前々から思ってたけど、キミ、馬鹿だけど頭は悪くない、いや、かなり良いね、馬鹿だけど」


ウメゾノ ミノル
「二回も言うな! 馬鹿って言った方が馬鹿なんだよ!」


ノノハラ レイ
「これでも褒めてるんだぜ? なんてったって、このボクが最初に思い付いたプランなんだからね。過半数クロ計画は」


ウメゾノ ミノル
「今は違う、って?」


ノノハラ レイ
「もっとスマートな方法を思いついたのさ。最初の裁判の途中にインスピレーションが湧いてねぇ。
 この計画なら、最大7人が同時に卒業可能だ。これ以上は言えないけどね。察せられても困るし」


ウメゾノ ミノル
「やっぱり誰かを犠牲にすること前提じゃないか。誰が乗るかそんな計画」


オモヒト コウ
「ちょっと待て、今の口ぶりだともう既に一人澪の計画に加担する奴がいるってことじゃないか?」


タカナシ ユメミ
「ちょっと誰よ! あんなロクデナシに手を貸す異常者は! 名乗り出なさいよ! 今なら指詰めるだけで勘弁してやるから!」


ノノハラ レイ
「そんなこと言ったら誰も名乗り出ないって。ま、ボクも個人情報をリークするなんて真似は口が裂けてもしないけどね」


タカナシ ユメミ
「へぇ? じゃぁそのべらべらよく回る舌、ちょっとくらい切っちゃっても構わないって事かしら?」


ノノハラ レイ
「おーぉ怖ぁ、戸締りしとこ。――さて、そろそろ地上階だね。じゃ、ボクとの取引に応じたいって人は気軽に連絡してね。早い者勝ちだぜ」



 別館のエレベーターを後にした。


682 :♪亡き王女のためのパヴァーヌ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:03:51.94 ID:Y5IO5UdV0



 別館のゴンドラリフト乗り場の外側。吹雪の中でボクは佇んでいる。
 何をするでもなく、ただ曇天を見上げ、六花の流れに身を委ねていた。
 髪も、裾も、袖も、ただ風にたなびかせるだけ。
 この風と吹きすさぶ雪で、己の罪を洗い流せる気がして。



コウモト アヤセ
「こんなところにいた。探したのよ?」


ノノハラ レイ
「ボクを見つけるの、ホント上手いよね綾瀬。みんなとっととゴンドラリフトで本館に戻ると思ってたのに」


コウモト アヤセ
「こういう時、澪が一人で黄昏ることくらいはお見通しだからね。一人きりになれるとしたら、別館かその近くしかない。そう思って探したの。
 ……まだ引き摺ってる?」


ノノハラ レイ
「否と言えば噓になるね。短い間だったけど、せっかくできた友達、だったんだけどな」


コウモト アヤセ
「わたしは、誰も悪くなかったと思う。悪いのはモノクマよ、誰かに犠牲を強いるこんな合宿を思いついたあいつが全部悪いの」


ノノハラ レイ
「そう思った方が精神衛生上一番いいのかもね。……いけないな、雪が目に入りそうだ。早く、戻ろう」


コウモト アヤセ
「いまさらそんなこと言うの? じゃ、ただでさえ寒いんだから早く帰りましょうよ。体だって冷えて――、澪、その顔……」


ノノハラ レイ
「これは雪、――目に当たって融けた雪ってことに、してくれないかな」


コウモト アヤセ
「……そう、ね。そういうことにするわ」



 そう、ボクには涙を流す資格なんてない。だからこの目から頬を伝う雫は、ただの雪の結晶の残滓なのだ。



ノノハラ レイ
「せっかくだ、レクイエムにトロイメライでも弾いてよ。もう、誰も残ってないんでしょ?」


コウモト アヤセ
「……そうね。こんな悲劇、子供の見た悪い夢よ。目が覚めたらきっといいことばかりだわ」


683 :♪トロイメライ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:05:32.06 ID:Y5IO5UdV0



コウモト アヤセ
「澪、一つだけ、聞かせてくれる?」


ノノハラ レイ
「なぁに?」


コウモト アヤセ
「『野々原澪がコロシアイに参加したのは今回が初めてではない』」


ノノハラ レイ
「……そっか、綾瀬だったんだね。ボクの秘密を知ってたのって」


コウモト アヤセ
「どういうことなの? 澪は前にもこんなコロシアイを経験したってことなの?
 ――だからあんな風に手馴れてたの?」


ノノハラ レイ
「そういう認識で間違いないよ。――そっか、そういう表記をしてくるんだね」


コウモト アヤセ
「ねぇ、教えて? 澪の身に、一体何があったっていうの? わたしの知らない間に何があったの?」


ノノハラ レイ
「――今は言えない、かな。言わないんじゃない。言えないんだ。これで察してほしい。
 でも、これだけは誓うよ。いつか必ず本当のことをキミに伝えるって」


コウモト アヤセ
「そこまで言うなら、信じる。でも、いつか絶対話して。それだけは約束して」


ノノハラ レイ
「うん、約束だ。来るべき時が来たら、ボクはキミに全てを伝える」


コウモト アヤセ
「わかればいいの。……そろそろ、帰る?」


ノノハラ レイ
「いやぁ、ボクはもう少し余韻に浸ることにするよ。綾瀬は先に帰っててくれない?」


コウモト アヤセ
「……乗り場で、待ってるから」


ノノハラ レイ
「わかったよ、じゃぁ早めに切り上げないとね。余り待たせて風邪でもひかれたら大変だ」


コウモト アヤセ
「わかればいいの。……じゃぁ、ね」


ノノハラ レイ
「うん。心配しなくても、早めに行くから、ね?」


684 :♪亡き王女のためのパヴァーヌ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:07:15.13 ID:Y5IO5UdV0



―――



ウメゾノ ミノル
「……これが君の望んだ結末なのか?」



 海千山千犇めく魑魅魍魎の中でも、鯨鯢と恐れられてきた“あいつ”でさえ、増田君の決断は予想できなかっただろう。
 けど、本当に良かったのか? あんなお涙頂戴の最期、見方を変えればただの自己満足じゃないのか?
 遺されたメイドの事を慮っていたのなら、かけるべき言葉はもう少し選んだ方がよかったんじゃないのか?
 ……いけないな。実によろしくない。暗い気分になると、思考も釣られてしまう。
 おっと、誰かの気配だ。隠すもの隠さないと。



サクラノミヤ エリス
「お兄さま! 探しましたよ! ……どうしてまた焼却炉の前にいるんですか?」


ウメゾノ ミノル
「ココだけの話だぜ、監視カメラの死角なんだよ。今僕が立ってるこの位置が」


サクラノミヤ エリス
「わかるんですか? そういうのって」


ウメゾノ ミノル
「見られてるって感覚がこの位置には無いんだ。僕ってばそういう“視線”には敏感だからさ、解っちゃうんだ、監視カメラの死角がどこかってことが、直感的に」


サクラノミヤ エリス
「そう、なんですか。……それで、その、そこで何をやっていたんですか?」


ウメゾノ ミノル
「増田君の追悼だよ。短い間だったけど、それでも仲良くしてきたんだ。感傷に浸りたくもなるさ。
 それに火を使うからここでやってたってだけで、別に深い意味はないけど。ほら、このライター使ってさ」


サクラノミヤ エリス
「あの時のライターですね。……イニシャルが刻んでありますよ。F.M.って。
 誰なんですか? お兄さまの名前じゃないですよね?」


ウメゾノ ミノル
「そろそろ部屋に戻ろうぜ慧梨主」


サクラノミヤ エリス
「えっとその、ライター……」


ウメゾノ ミノル
「このライターは紛れもなく僕の物だ。そこに一切の嘘偽りはない。名前なんてどうだっていい、だろ?
 ――それとも慧梨主は僕の言うことが信じられないって言うのか?」


サクラノミヤ エリス
「え?! いえ、その、そう言うことではなく」


ウメゾノ ミノル
「じゃぁさっさと部屋に戻ろう。ここは冷えるから、な?」


サクラノミヤ エリス
「えぇと、その、はい……」


―――


685 :♪トロイメライ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:09:50.00 ID:Y5IO5UdV0




 シアタールームの隠しチェストに入れたVHDを取りだし、再生する。名前は“クロの章”。永久に封印しなければならない負の遺産。
 興味を持たれるわけにもいかず、かと言って破棄するわけにもいかないから、視界にも入れたくないZ級中のZ級映画のタイトルを書き連ねることにした。
 このまま誰にも見られないようにしなければならない。本当の内容を、ボク以外が知ってしまっては都合が悪い。苦肉の策だったが功を奏した。


ノノハラ レイ
「……言えるワケないじゃん。こんなこと」



686 :♪イキキル ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:13:31.01 ID:Y5IO5UdV0



―――


モノクマ
「超高校級の画家候補生、増田勇クンにふさわしい、スペシャルなオシオキを用意しました!」


マスタ イサム
「こんなことで死ねるか!」


モノクマ
「張り切っていきましょう! おしおきターイム!」


マスタ イサム
「死んでたまるかぁアアアアアァァァァァァ!!」



 あの増田クンが必死の形相で駆け抜けている。そこにあの時の面影は何処にもない。



マスタ イサム
「ウウウゥゥゥゥオオオオオォォォォアアアアアアァァァァァ!!!」



 咆哮空しく、モノクマのガベルが振り下ろされた。



687 :GAME OVER ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:14:26.63 ID:Y5IO5UdV0




マスタくんがクロに決まりました。


おしおきを開始します。




688 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:15:41.37 ID:Y5IO5UdV0




 いつの間にか開け放たれた扉へ向かって増田クンは駆け抜けていく。
 枠に刻まれた、『Lasciate ogne speranza, voi ch'intrate' (汝等此処に入る者、一切の希望を捨てよ)』の文字には目もくれない。



689 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:17:01.24 ID:Y5IO5UdV0




マスターコード


超高校級の画家候補生


増田勇処刑執行



690 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:18:51.90 ID:Y5IO5UdV0



 門をくぐった先は狭い一本道。チェーンソー、鉄球、振り子ギロチン、回転カッターetc.と殺意マシマシなトラップの数々を時には避け、時にはダメージ覚悟でぶつかる増田クン。
 さらにはパズルの様相を呈するような難解な迷路となり、殺人トラップも更に過酷になっていく。
 それでも何とか『EXIT』と掲げられた扉に辿り着き、増田クンは躊躇なく開け放った。
 その先には笑顔で迎え入れる皆――などではなく、



『↑出口
 ↓ブエノスアイレス』の看板と、天井から吊るされた鎖と地面からせりあがる溶岩。

 増田クンは鎖を手繰って昇っていく。しかし、ほぼ満身創痍の増田クンが昇る速さよりも、せりあがる溶岩の方が速く、距離はどんどん縮んでいく。
 最後の力を振り絞ったのか、それとも鎖から伝わってくる熱に焦ったのか、増田クンは急いで鎖に手を伸ばしていく。
 銀色に輝く鎖が、いつの間にか鈍くなっていた。それは増田クンの血が着いたわけでも、溶岩からの照り返しでもなく、鎖そのものの輝きがない。鎖の質が変わったということか。
 それから少しして、増田クンは空中落下をしていた。鎖から手を離したわけでも、力尽きたわけでもないのに、鎖を掴んだまま落ちている。
 鎖は天井に繋がっていたわけじゃない。ウインチによって垂らされていたのだ。そして巻かれていた鎖が尽きた。だから落ちたのだ。質が変わったのはその知らせということか。
 いずれにせよもう遅い。もうほとんど増田クンは溶岩に沈んでいる。
 辛うじて掲げた右手は中指を立てていた。



―――



691 :♪Moon on the Water ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:22:40.90 ID:Y5IO5UdV0



ユーミア
「マスター、ユーミアは諦めが悪いんです。これくらいの我儘は、許してくださいますよね?
 ――ライフインフィニティシステム、起動」



692 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:24:12.45 ID:Y5IO5UdV0



       第二章


  ノーマーダー・ノーライフ


       END



693 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:25:08.49 ID:Y5IO5UdV0



       生き残りメンバー
         12人



         To Be
        Continued



694 :ITEM GET! ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:27:04.62 ID:Y5IO5UdV0




    プレゼント“画材セット”を獲得しました。


     プレゼントメニューで確認できます。



695 :プレゼントメニュー ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:27:57.85 ID:Y5IO5UdV0




画材セット:第二章を解明した記録。
      アメリカンスタイルの屋敷によく似合う。中々値の張る逸品。



696 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:37:20.83 ID:Y5IO5UdV0



――第二章、これにて閉幕でございます。


――はてさて、このスレのまま第三章を始めるか、このスレは後は小ネタ等で埋めて新スレで第三章を始めるか。


――悩みどころではございますが、読者の皆様方にはこれからもヤンデレロンパをよろしくお願いいたします。


――ヤンデレCD Re:Turn 夢乃の章の配信も間近なので、そちらも楽しみですね。


――それではこんばんはこれにて。おやすみなさい。


697 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/03/30(火) 22:37:20.76 ID:Y5IO5UdV0



――第二章、これにて閉幕でございます。


――はてさて、このスレのまま第三章を始めるか、このスレは後は小ネタ等で埋めて新スレで第三章を始めるか。


――悩みどころではございますが、読者の皆様方にはこれからもヤンデレロンパをよろしくお願いいたします。


――ヤンデレCD Re:Turn 夢乃の章の配信も間近なので、そちらも楽しみですね。


――それではこんばんはこれにて。おやすみなさい。


698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/04/15(木) 12:55:02.98 ID:n+90wFMs0
乙です。三章も楽しみにしています。
699 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/04/28(水) 22:13:28.40 ID:iT6CYkPy0


    番外編


    狭間の夢


700 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/04/28(水) 22:15:17.53 ID:iT6CYkPy0
 覆った水は盆に返らない。齧った林檎を吐き戻しても元の形には戻らないように、死んだ人間は決して黄泉帰ったりはしない。
 人生の如何なる道も一方通行の片道切符であり、時計の針を反対に回そうとも、地球の回転を逆にしようとも、流れてしまった時を遡りやり直すことは叶わない。
 親殺しのパラドクス然り、過去に干渉しようとした者には碌な末路が用意されていない。所謂“たられば”など、所詮泡沫の夢物語だ。
 それでも、あの時無理にでも父さんを止めることが出来ていたならば、二人は死ななかったのではないか。その禍根が今でも胸に突き刺さる。
 あれは不運な事故だった。とうの昔にそう整理していたと思っていたはずだった。いつも通りに母さんを迎えに行く父さんを見送ったときに見えた、なんだかいつもと違う父の顔。



「いってくる」
「――いってらっしゃい」



 口から出そうになった違和感も、その決意に圧されてとうとう言えず終いだった。これが今生の別れだともっと早くに気付けたのなら、二人の結末は変わっていたのだろうか。
 あるいは、父は既に己の命運を知っていて、その終焉を受け入れようとしていたのだろうか。ならば何故遺された者の悲哀を、喪失を、慟哭を推し量ってくれなかったのだろう。
 子は親の庇護なしに生きるには余りにも脆弱なのだと、知らないほど浅はかでも無かったろうに。



701 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/04/28(水) 22:16:13.58 ID:iT6CYkPy0



―――



シオザキ ココネ
「みんな元気してる? 天聖院学園お昼の校内放送『汐崎 ここねのCOCOラジッ!』はじまるよー。
 お弁当食べてる人も、部活にいそしんでる人も、図書館で勉強してる人も、恋人とまったりしてる人も、お昼休みのウキウキなこの時間、お付き合いくださいね。
 パーソナリティーは、天聖院学園放送連盟が誇るアイドルアナウンサー、汐崎ここねでーす! 今日も張り切っていっちゃおう!
 本日の放送は、天聖院学園第四出版部の提供でお送りします」



702 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/04/28(水) 22:16:53.18 ID:iT6CYkPy0



 未知を恐れるな。未来を切り開くのは、愛と勇気だ。
 恐怖に向き合い、未来を創れ。
 綾小路重工は、理想の未来を希望する。



703 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/04/28(水) 22:18:31.27 ID:iT6CYkPy0



シオザキ ココネ
「はーい、ということで『汐崎 ここねのCOCOラジッ!』今日も元気に始めていきたいと思いまーす。
 さてさて、いつもとは少し違うCMに戸惑った人もいるかと思いますが、今日はスペシャルなゲストにスタジオにおこし頂いて、色々お話を聞かせていただきたいと思います。
 よろしくお願いします、ミオさん」


ウナガミ ミオ
「MIWOちゃんネルー! と言う訳で今回はニライカナイに出張です、AIのアイドル略してAIdol海神水音でございます。
 初めましての方はどうぞよしなに。二度目以降の皆さんはこれからもよろしゅう。
 これは『汐崎 ここねのCOCOラジッ!』と『MIWOちゃんネル』のコラボと言うことで良いのかな?」


シオザキ ココネ
「はい、ということで本日のゲストは綾小路重工が誇る人工知能、海神水音さんです。今日はいつもと雰囲気が違います?」


ウナガミ ミオ
「わかるかな? せっかく天聖院学園に来たんだもの。その制服を着てみたいと思うのは結構自然なことだと思うんだ。
 絶対数が多い女子制服を快く貸してくれたリスナーさんにはあとで何かお礼あげちゃおうかな、個人的に」


シオザキ ココネ
「なるほど、それで女子の制服なんですね。でも中性的な顔ですし、ミオさんって実は女性なのでは?」


ウナガミ ミオ
「どうだろ、AIには生物学的な性別なんてないからそういう感性は解らないな。
 ちなみにこの体、実は綾小路重工が誇るメイド型アンドロイド――メイドロイドの執事版、バトロイドとでも言うのかな。その試作機なんだ。
 だから体は一応男だよ。服は女だけど。やっぱ心の在り方次第なんじゃないかな、その辺のジェンダー論は」


704 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/04/28(水) 22:19:39.94 ID:iT6CYkPy0



シオザキ ココネ
「うーん、どうなんでしょうねぇ。そもそも、ミオさんって本当にAIなんです?
 かなり人間っぽいですよね、何と言うか、考え方とかが」


ウナガミ ミオ
「そも、何を以って人間とするか、だよ。情緒を持っていれば人間らしいと聞かれれば、感情の起伏が乏しい人間だっている。
 ボクは情緒を持っているけれど、人間じゃないのは明らかだ。体も機械だし、思考だってAIで賄っている。それでもあえて言わせてもらうなら。ボクにはね、心があるんだ」


シオザキ ココネ
「かなーり哲学っぽくなっちゃいましたねぇ。さてさて、では次の質問に参りましょうか。
 ミオさんは綾小路重工で造られたAIということですが、一体どんな技術を使ったんですかね?」


ウナガミ ミオ
「うーん、それはね、企業秘密としか言えないなぁ。でもまぁ、かなり長い時間を要したみたい。ボクが物心ついたの2008年の1月11日だし」


シオザキ ココネ
「それはかなり昔ですね。物心と言うのはやはり、いわゆる“自我”を持った瞬間、ということでしょうか?」


ウナガミ ミオ
「そうだね。“感情”とも言うべきかもしれない。AIが意志を持った日。だから海神水音の誕生日は2008年1月11日とも言えるかもね。
 あ、これオフレコで。公式設定じゃ18歳だから、ボク」


シオザキ ココネ
「アイドルはイメージが大事ですからねー。私も色々気を付けてますよー」


ウナガミ ミオ
「……まぁ、芸名にこだわるのもまた個性だよね」


シオザキ ココネ
「何か言いました?」


ウナガミ ミオ
「いいや? ――あぁ、ボクのチャンネルからも色々コメントが寄せられてるねぇ。いくつかピックアップしていくかい?」


シオザキ ココネ
「そうですねー。私が答えられる範囲でお願いします」


705 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/04/28(水) 22:20:58.52 ID:iT6CYkPy0


ウナガミ ミオ
「その辺はお任せあれ。じゃ、ハンドルネーム『ブロッサムメイズ』さんから、常連さんなんだー。いつもありがとね。
 さて、本文読むよー。『ニライカナイの皆さんこんにちは。そちらには超能力者が集められていると聞きました。実際にはどれだけ凄い人がいるんですか?』だって。
 まぁねぇ。本土の人からしてみればニライカナイってモロにフィクションの世界っぽいし」


シオザキ ココネ
「凄い人というと、最近で言うなら大天聖祭の決勝に進出した四人と乱入した一人でしょうかねぇ。
 外見はとってもキュートなのに驚天動地の怪力無双! 弱冠十二歳で天聖院学園格闘技連合総大将を務める怪力少女、鬼住山鬼火(キズミヤマオニビ)選手。
 天聖院学園錬金術協会会長であり、稀代のアルケミスト。人知を超えた魔術を操る星薙(ホシナギ)フレア選手。
 天聖院学園で唯一“剣聖”の称号を持つ剣豪、九蓮寺早苗(クレンジサナエ)選手。
 ディフェンディングチャンピオンにして五十八代天聖妃、その強さはもはや違法、その気高さは成層圏をはるかに超える! 天聖院麗華(テンショウインレイカ)選手。
 そして、星薙選手と九蓮寺選手に同等以上の戦いぶりを見せた乱入者、ドールマスター朝倉奏(アサクラカナデ)さん。この五人の戦いぶりは見ごたえ抜群ですよ!」


ウナガミ ミオ
「この決勝戦の映像を収めた動画ファイルが今ならなんと五千円から見放題! 見るっきゃないねこれは。
 ――にしても、ボクのこと人知を超えたとか言えないねぇ、これ見た後だと。いつからフィクションがリアルに存在するようになったんだい?
 これがアリなら、ボクの存在って結構有り触れてるんじゃないかなぁ。まだボクの方が物理化学の法則に従っている分十分に科学的なわけだし」


シオザキ ココネ
「その辺の人外ーズについてはこれ以上言及すると後が怖いのでこの辺にしておきましょうかねー。
 次の質問行きましょう、次の質問!」


ウナガミ ミオ
「うーん、とはいえ大抵がニライカナイの実情について聞きたがってるばっかりだからなぁ。
 お、じゃこんなコメントどうだろう。ハンドルネーム『ベリリロイド』さんから、『実際にニライカナイに行きたいのですが、どうすればいいですか?』だって」


シオザキ ココネ
「そうですねぇ、ニライカナイは観光地にもなっていますから、正規の渡航証と宿泊券を利用して高速船で渡航するのが一番簡単で安全な方法ですね」


ウナガミ ミオ
「結構なお値段するんだよね、そのチケット。滞在期間も最大で一週間でしょ? 結構厳重なんだねぇ。
 まぁ、何の能力も持たない一般人が能力者に巻き込まれないとも限らないわけだし、防犯上で言えば妥当とは思うけど。
 それ以外のイリーガルな方法だと、下手すれば拘束されるんだっけ?」


シオザキ ココネ
「そうですね。生徒会副会長であり風紀委員長でもある八雲凍子(ヤクモトウコ)さんが目を光らせていますから、不法入島は即刻対処されちゃいますよ」


ウナガミ ミオ
「タダより怖いものはないってことだろうねぇ。まぁ、一番はまとめた休みを取って、高いチケットを買ってニライカナイを周るのが一番満喫できる方法なのかなぁ?」


706 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/04/28(水) 22:22:12.77 ID:iT6CYkPy0


シオザキ ココネ
「ですです。生々しい話はそこまでにしておいて、何かさわやかなお題はありませんか?」


ウナガミ ミオ
「うーん。ハンドルネーム『ソルトレークシティー』さんからは『せめて宿泊費だけでも安くなるような宿ありませんか?』とか。
 あぁ、あとハンドルネーム『のみやK』さんからは『ニライカナイを車で周りたいんですが、交通事情はどうなってるんですか?』とかあるけど」


シオザキ ココネ
「あー、宿なら民宿もありますよ。町のはずれにあるんですけど、お手ごろな値段でサービスがいいんです。『旅の宿 塩田』って言うんですが。
 車の方はちょっとわかりませんねー。学生の移動手段は大抵が敷地内を走る路面電車か徒歩ですんじゃいますし。
 それにほら、大天聖祭なんかが顕著なんですけど、能力者同士の争いに巻き込まれて……とかもしょっちゅう耳にしますから、余り車やバイクの持ち込みはお勧めできませんね」


ウナガミ ミオ
「損害賠償とか保険とか、そこらへん面倒だしねぇ。ま、何があっても自己責任ってことなのかな?
 あと、ステルスマーケティングはやめなよ。さっき芸名の話したんだから」


シオザキ ココネ
「それはそれ、これはこれです。決してステマじゃありません」


ウナガミ ミオ
「……そう言うことにしておくよ。後は――おっと、『一体いつから俺達はフィクションの世界へ迷い込んだんだ?』だの、『綾小路重工未来に生きすぎぃ!』だの、続々届くねぇ」


シオザキ ココネ
「やっぱり本土とこことじゃ常識が違うんですかね? 私からしてみれば、ミオさんも十分に非常識な存在だと思うんですけど。と言うか、綾小路重工が、ですが」


ウナガミ ミオ
「そうかな?」


シオザキ ココネ
「そうですよ! 意志を持つAIの開発とか、人とほとんど変わらないアンドロイドの生産とか、十分にフィクションじゃないですか!」


ウナガミ ミオ
「フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』って小説、名前くらいは知ってるよね? あれ、書かれたのが1968年なんだけど、舞台設定何年だと思う?」


シオザキ ココネ
「あれって第三次大戦の後の話ですよね、設定上は。具体的に何年かとか書かれてましたっけ?」


707 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/04/28(水) 22:23:24.92 ID:iT6CYkPy0



ウナガミ ミオ
「ふふ、ちょっと意地の悪い質問だったね。小説を基にした1982年の映画『ブレードランナー』じゃ、2019年11月、ロサンゼルスが舞台になってるんだ」


シオザキ ココネ
「……とっくに過ぎちゃってるじゃないですか! あー、でも当時の人たちは、そのころにはアンドロイドが町中を歩いてるって思ってたんですね」


ウナガミ ミオ
「その通り。まぁ、現実には今科学技術の進化はピラトー、つまり停滞しているわけだけど。
 これは目先の利益ばかり追って先行投資を渋る現代の会社と銀行に問題があるとボクは思うね。
 不確定な未来に博打をするより目の前の技術を進展させる方が堅実だって言うのは解らなくもないけどさ。挑戦無くして結果は得られない。
 だからこそ綾小路重工は、科学技術の精鋭に至れたんだ。ボクやメイドロイドといった形で」


シオザキ ココネ
「ダイレクトマーケティングありがとうございまーす。CMの未知を恐れるなってそう言うことなんですね」


ウナガミ ミオ
「その通り。ボク等は未来を変えることが出来るんだ。その為には知らないことを知ることが必要で、未知を既知にすれば、恐れることは何もない。
 現状で満足しているだけじゃ、今までと何も変わらない。将来の自分を決めるのはいつだって今の自分なんだってことを皆に分かってくれると嬉しいな」


シオザキ ココネ
「未来はボク等の手の中ってことですね。名残惜しいですが、本日の『汐崎 ここねのCOCOラジッ!』はここまでです。
 ミオさん、本日はありがとうございました」


ウナガミ ミオ
「汐崎さんとはまた『MIWOちゃんネル』でもまたコラボしたいねぇ。今度はこっちにおいでよ。いつか招待するからさ」


シオザキ ココネ
「それは楽しみですね。それでは皆さんシーユーアゲーイン!」


ウナガミ ミオ
「グッバァイ!」



―――


708 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/04/28(水) 22:27:49.60 ID:iT6CYkPy0



――本日、および番外編はこれにて。


――さて、新しいスレですが、せっかくの機会ですし移転しようと思いまして。


――おーぷん2ちゃんねるの創作発表と言う場にて、
  URLはhttps://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1619614529
  でございます。


――本日以降はここで投稿しようかと。


――読者の皆様方にはご迷惑をおかけするかもしれませんが、今後ともどうかヤンデレロンパご愛好の程を。


――それでは、新スレにてお待ちしております。


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