【まほいく安価】プフレ「魔王は倒さなければならない」【魔法少女育成計画restart】

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481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/10(日) 22:59:06.79 ID:QHIQEs9qo
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/10(日) 23:05:16.25 ID:uAS2tSxv0
記憶が逆行したベリーさんはまるで、福本漫画の中年アカギだったのが全盛期のアカギみたいに変貌しちゃったな…
483 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/10(日) 23:09:20.23 ID:YAAlSt+zo

ペチカ「今丁度3日目に入ったところですね」

ユウキ「あと1日か……」

クランテイル「まぁ話しながら色々食べたり、Rで引いたトランプとかしたものな」

ペチカ「なんでトランプがあったんだろう」

クランテイル「食器やらハリセンやらが当たるRでその疑問は無駄だな」


残り1日。何かをするには十分だ


 何をしますか……>>484
 (洞窟内の探索、脱出を試みるなど)
484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/10(日) 23:21:14.73 ID:HRx3uNdyO
ファルに色々聴く
485 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/10(日) 23:27:27.98 ID:YAAlSt+zo

ユウキ「あと1日もあるのか〜暇じゃの」

ペチカ「でもこれでもう皆とは会えなくなる……?」

ユウキ「あ、それもそうか……!」

那子「Nooooo! ペチカ、終わっても会いましょう! オフ会するネ!」

ユウキ「おふかい?」

那子「Yes!」

ユウキ「おふかいってなんじゃ?」

クランテイル「ネットの人達がリアルでも集まる、だったよな」

那子「せっかく生き残ったんだから、また皆と会いたいネ」

ユウキ「そうじゃな……また会いたいな」
486 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/10(日) 23:36:12.20 ID:YAAlSt+zo

ユウキ「そういえばファルと長いこと話してないな。ちょっと呼び出してみるか」


サポートコマンドを使い、ファルを呼び出す

思えばコイツはファヴとうり二つというかまったく同じ外見だ。ちょっと怒りが込み上げてきた


ファル「おひさぽん。それより何やってるぽん!」

ユウキ「お前ファヴと似てるな。殴っていいか?」

ファル「ファヴとかいう極悪野郎と一緒にしないでほしいぽん。それよりも!! 何魔王探さないでこんなことやってるぽん!」

ユウキ「………………は?」


皆、あっけにとられた

ファルはなにを言っているのか、理解ができない


ファル「そんなところで時間潰してないで、早く脱出して魔王を――」

ユウキ「ちょ、ちょ、ちょっと待て!」
487 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/10(日) 23:41:35.49 ID:YAAlSt+zo

アカネを見ると、頷いてすぐにメルヴィルの死体を確認しに行った


アカネ「……」フルフル

ユウキ「メルヴィルは死んでる。魔王は倒したろうが!」

ファル「このゲームは魔王が倒されればすぐに終了になるぽん」

クランテイル「……じゃあなにか? メルヴィルは魔王じゃないと言いたいのか?」

ファル「そう考えるのが……一番ぽん」


ファルの言うことを全部信じられるかと言われれば分からない。こちらを惑わすために嘘を吐いているかもしれない

だがそのメリットが考えられない。ただクラムベリーが合格にした魔法少女を集めた試験で、いじわるをする必要はあるのか


ファル「だから、早く魔王を探し出して倒すぽん……そうじゃないとまた、犠牲者が……」
488 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/10(日) 23:46:56.13 ID:YAAlSt+zo

ユウキ「……………………」

那子「……じゃあ、魔王はだれなんデスか」

クランテイル「……待て。プフレ達は」


クランテイルは魔王城に通じる道がふさがっているのを思い出した

メルヴィルが死んでから、プフレとシャドウゲールは魔王城に引き籠っている。互いの場所が分かる道具で、同じパーティーである2人の場所は分かるのだから


クランテイル「何故魔王城にいる……?」

ペチカ「まさか、あの2人が……?」

ファル「2人共魔王というのはありえないぽん。魔王は1人ぽん」

クランテイル「じゃあ誰が魔王なんだ!!」
489 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/10(日) 23:54:52.74 ID:YAAlSt+zo

ユウキ「生き残りはワシら5人と、プフレ達……」

クランテイル「……あの2人のどっちか片方が魔王だろう。魔王城にいるなんてのがいい証明だ」

ユウキ「プフレと、シャドウゲール……どっちかが…………?」

クランテイル「イメージとしてはプフレだが……分からない。シャドウゲールを守るためにプフレが……?」


プフレとシャドウゲールは元から互いをよく知っているようだった。恐らく2人は現実でも親しいのだろう


ユウキ「(……じゃが、ワシらの中だって)」


いや、考えないようにしよう。共に戦った仲間が、魔王などと思いたくない

クランテイルも同じ思いだろう。だからプフレ達のどちらかだと決めつけようとしている


 ユウキは……>>491
 
 1.洞窟から脱出して魔王城に乗り込む
 2.ログアウトまで待つ
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/10(日) 23:55:32.58 ID:QHIQEs9qo
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/10(日) 23:55:53.16 ID:/a3yiLJDO
492 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:02:38.35 ID:0csDkAlVo

ユウキ「…………ログアウトまで待とう」

クランテイル「なに?」

ファル「何悠長なこと言ってるぽん!」

ユウキ「ログアウト前になれば全員が荒野の街に集まる。その時に聞けばいい。それに、クランテイルが破壊できない壁じゃろ?」

クランテイル「ああ。何かの仕掛けだと思ってできるかぎりの破壊を試みたが結局傷一つつかなかった」

ユウキ「クランテイルが壊せないんじゃワシらにも無理じゃ。勝手に目の前に出てくるまで待とうぞ」

ペチカ「でも……」

ユウキ「ああ。何かできないかとはワシも考えてる。じゃが下手に動き回って各個撃破は映画でよくあることじゃ」

クランテイル「………………クソッ!」

那子「まぁ数ではこっちが有利デース! ペチカはどこかに隠れて見ていてくださいネ!」

ユウキ「っ、戦う気か!?」

那子「もし本当に魔王があの2人のどっちかだったら、先にやらないとやられマス」

ユウキ「……正論じゃが…………」
493 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:07:03.42 ID:0csDkAlVo

ペチカ「あ、あの」

クランテイル「なんだ?」

ペチカ「もう1人、いるはず……」

ユウキ「ッ、ジェノサイ子!」

クランテイル「そうだ、奴はどこに!?」


ログイン時、メルヴィルと戦っている時、まったく姿を現さなかった

多数の魔法少女が戦い、デカいクレーターまで出来た戦いだ。流石に気付かないというのは不自然だ


 ジェノサイ子は……>>直下コンマ一桁
 
 奇数→このエリアにいる
 偶数→魔王城にいる
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/11(月) 00:09:32.61 ID:FoCuoiYxo
495 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:13:45.02 ID:0csDkAlVo

ジェノサイ子はずっと荒野エリアに居た

そして3日目に入り、全ての準備は整った


ジェノサイ子「……よし」


そして、クレーターを前に佇んでいたジェノサイ子はバイザーを下ろし、穴に飛び込んだ


ユウキ「ッ、うおおおお!? な、なんだお前か……」

クランテイル「無事だったか……」

ジェノサイ子「そっちもね」

ユウキ「ああー、ジェノサイ子。記憶は……」

ジェノサイ子「戻ってる」

ユウキ「すまんな、あの時は皆の協力が欲しくて……」

ジェノサイ子「もう気にしてないよ。大丈夫」
496 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:17:26.62 ID:0csDkAlVo

ユウキ「そうか……にしてもいきなり現れるなんて心臓に悪いぞ」


クランテイル達は警戒している。先程誰が魔王か分からないと判明したばかりだ

こんな状況で単独行動しているジェノサイ子が怪しいと思うのは自然だが、彼女の魔法を考えると分からなくもない


ユウキ「じゃがなんでこんな穴に飛び込んで来た? ここ深くてとても脱出はできんというのに」

那子「寂しくなったデース?」

ジェノサイ子「うーん、どうだろう」

ユウキ「…………?」


 知力(14)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→怪しすぎるぞ
 失敗→敵意は無い、のか?
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/11(月) 00:19:02.04 ID:OFw5ormDO
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/11(月) 00:21:30.00 ID:TNqPHlGpO
ここにきてクリティカルとか主人公かな?
499 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:26:21.82 ID:0csDkAlVo

 04……クリティカル!
 クリティカル報酬 知力が1上がった!(15)
 
 
ユウキ「そうか。ところでお前は映画は見るか?」

ジェノサイ子「映画? アニメとかなら」

ユウキ「たまには洋画や邦画も見ろ。名作だっていっぱいあるぞ。コマンドーとか」

ジェノサイ子「それは見た」

ユウキ「流石だ」

ジェノサイ子「それで、それが何か関係あるの?」

ユウキ「映画じゃとな、こういう後半だったりクライマックスだったりで死んだかと思われてた奴がいきなり現れるとな、そういうのは大体敵が化けてたり洗脳されてたりなんじゃよ」

ジェノサイ子「いやいや、私死んでないし」

ユウキ「まぁ何を言いたいかというとな……お前は怪しすぎるんじゃ」

ジェノサイ子「やだなぁ、せっかく会ったのにそんなこと言われるのは」

ユウキ「それにな、素のお前がそうやって気のいい奴なのかは分からんが、今まで敵対ないし仲がよくなかった奴が急に馴れ馴れしいと怪しさMAXじゃよ」
500 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:29:35.67 ID:0csDkAlVo

ジェノサイ子「変な想像しないでよ……別に私が魔王とかじゃないし」

クランテイル「それを証明する方法はあるのか?」

ジェノサイ子「だったらクランテイルが魔王じゃないって証明は? ユウキは? 他の皆は?」

クランテイル「……」

ユウキ「メルヴィルは魔王でもないのに攻撃してきた。魔王でなくても敵はいる」

ジェノサイ子「私が敵だって?」

ユウキ「ああ。敵じゃないなら……そのバイザーを上げてもらおうか」

ジェノサイ子「………………」

那子「早く上げるネ」

ジェノサイ子「………………あー……やっぱ向いてないわ。こういうの」

ユウキ「そうじゃな。ワシもお前も多分今相当恥ずかしいぞ」
501 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:30:47.84 ID:0csDkAlVo

記載忘れがあったのでここで無理やり


 過去を話したことで皆の信頼度が上がった!

 ペチカ:05
 那子:05
 クランテイル:05
 アカネ:09
502 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:34:56.00 ID:0csDkAlVo


ジェノサイ子「じゃあ皆まとめて……ここでお陀仏だね」


ジェノサイ子のその言葉をきっかけに、天井から壁から、何かが響いてきた。まるで爆発音のようなその衝撃にガラガラと洞窟全体が音を立て始める


ユウキ「なっ……!?」

クランテイル「なんだ!?」

ペチカ「ま、まさか……ここを埋めるつもり!?」

ジェノサイ子「察しがいいね。そう。ここで皆死ぬ」

那子「ハァァァ!? 何言ってるデース!」

ジェノサイ子「ここと草原エリアには洞窟の上に地盤があるみたいでね。そこを突けばこの洞窟は一気に無くなるってわけ。面白いステージギミックだよね」

ユウキ「貴様、まさか最初から心中するつもりで……いや、お前ぇッ!」

ジェノサイ子「そ。私は死なない。この無敵のスーツがあるからね。私はここから誰も脱出させないようにするだけ」
503 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:38:20.24 ID:0csDkAlVo

ユウキ「何故じゃ! ワシらは魔王では……!」

ジェノサイ子「知ってるよ。だけど、死んでもらわないと……いけないから」


その瞬間に見せたジェノサイ子の顔は、本心から申し訳ないと思っている顔だった


ジェノサイ子「悪いけど、死んで……!」

ユウキ「黙って死ねるか!」

那子「でもどうするデース!? このままじゃ全員生き埋めデース!」

ユウキ「魔法少女が落石で死ぬか! 何が何でも生き延びるぞ!」

クランテイル「皆、私に捕まれ!」


クランテイルはその下半身をドラゴンにしていた。これなら飛べるだろう


ユウキ「なんでそれ最初からやらなかった?」

クランテイル「…………忘れてた」
504 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:42:21.93 ID:0csDkAlVo

クランテイル「崩れ始めて穴も広がっている! あれなら今まで通れなかったドラゴンの体でも通り抜けられるはずだ!」

那子「今すっごい急な言い訳しましたネ」

クランテイル「うるさい! 乗せないぞ!」

ユウキ「じゃが、それ全員乗るのか?」

クランテイル「分からん、だが乗らなきゃどっちみち生き埋めになるだけだ」

ジェノサイ子「逃がさないと言ったでしょ!」


ジェノサイ子が走ってくる。乗るにしろ乗らないにしろ、迎撃要因は必要だ


ユウキ「くっ……!」

那子「クランテイル、ペチカを乗せて先に行くデース!」

ペチカ「えっ!?」

クランテイル「なにを言っている!」

那子「ジェノサイ子は私が引き受けマース!」
505 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:45:08.30 ID:0csDkAlVo

ペチカ「でも……っ!」

クランテイル「かっこつけている場合か!」


既に洞窟は大きな落石も目立ってきている。もう数分と持たないだろう


 ユウキは……>>506
 
 1.洞窟に残る
 2.クランテイルに乗る
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/11(月) 00:45:38.97 ID:UkKon048O
507 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:49:44.75 ID:0csDkAlVo

ユウキ「若いモンが死に急ぐな! ワシが残る!」

アカネ「!?」

ユウキ「アカネちゃんはクランテイルに乗って先に地上に行け!」

アカネ「!」


アカネは従わなかった。ユウキの横に並び、刀を抜く


ユウキ「オイ!」

アカネ「……」


アカネが見せてきたのは身代わり君だった。自分は大丈夫だと言っているようにも感じる


ユウキ「……そうかい」
508 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:52:20.49 ID:0csDkAlVo

クランテイル「クソッ、崩落が速い……! もう飛んでしまうぞ!」

ペチカ「待って! 私だって、私だって!」

クランテイル「……ペチカ、お前は……駄目だ……!」


クランテイルがドラゴンの手でペチカを掴む

抵抗するペチカだったが、クランテイルのドラゴンの握力の方が強かった


ペチカ「放して! 私だって何か、皆の役に……!」

クランテイル「…………飛ぶぞ!」

那子「ヘッヘッヘ、3対1なら倒せなくても止められるネ」


 ユウキは……>>509
 
 1.那子をクランテイルに放り投げた
 2.3人でジェノサイ子を止めにいった
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/11(月) 00:54:55.68 ID:H76M+FHQ0
1
510 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 00:58:48.10 ID:0csDkAlVo

ユウキ「お前もあっちじゃ!」ガシッ

那子「What!?」

ユウキ「ほれキャッチせい!」


既に上昇を始めたクランテイルに那子を放り投げる。クランテイルは器用に空いた方のドラゴンの手で那子をキャッチした


那子「ちょっと!」

クランテイル「ユウキ……!」

ユウキ「ほれ行けぃ!」

クランテイル「っ……!」
511 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 01:02:52.59 ID:0csDkAlVo

クランテイルが2人を掴んだまま上昇しようとしている

だがジェノサイ子はそれを逃がそうとはしない


ジェノサイ子「させるかぁぁぁぁぁーーー!!」

クランテイル「クソッ、もっと速く上がれ!」


 ユウキとアカネの数値……>>↓1コンマ二桁+10
 (2人がかりのため+10)
 ジェノサイ子の数値……>>↓2コンマ二桁

 ユウキ達の数値が勝っていた場合……クランテイル達が地上に脱出
 ジェノサイ子の数値が勝っていた場合……ユウキ達を振り切りクランテイルに肉薄
 
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/11(月) 01:14:05.30 ID:TNqPHlGpO
とう
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/11(月) 01:14:15.02 ID:UkKon048O

514 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/11(月) 01:19:37.08 ID:0csDkAlVo

今日はここまで
ジェノサイ子にはドラマチックに誰かを道連れにしてほしい所存
というか仲間が早くに死にすぎてしまったかりん先生ごめんね!
515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/11(月) 08:32:57.15 ID:6eR0lvSjO
乙です
516 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 22:19:00.93 ID:1WKD09CXo

 ユウキとアカネの数値……30+10=40
 ジェノサイ子の数値……02
 
 
ユウキ「うおおお!!」


飛び立つクランテイル、その翼でも体でもなんでもにしがみつこうと跳ぶジェノサイ子、そしてそのジェノサイ子の腰にダイブするユウキ

魔法のスーツは攻撃が効かないだけで物理干渉をすべて遮断するわけではない。突き飛ばせば押せるのだからしがみつくこともできる

ジェノサイ子の手はすんでのところで空を切り、2人は地面に突っ込んだ


ジェノサイ子「うっ、くそっ!」

ユウキ「よし、飛んだか!」


見上げるとクランテイルはバサバサと翼を羽ばたかせ、落石を避けながら地上へと向かっていた

クランテイル達を逃してしまったと判断したジェノサイ子の判断は早かった。端末を操作し、手に道具を出現させる。黒い長方形――魔王城のショップに売っていたスタンガンだ
517 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 22:21:11.82 ID:1WKD09CXo

肌が露出した首筋に押し付けられ、ジェノサイ子がスイッチを押す


ユウキ「が、ががが、ああぁぁぁ!?」

アカネ「!」


すぐさまアカネが引っぺがしてくれたが、対魔法少女用のスタンガンの威力は普通のそれとは違う

白目をむきかけ、体は痙攣し、思うように動かない


 精神力(44)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→なんとか気絶せずにすむ
 失敗→意識が朦朧とし、動けなくなる
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/12(火) 22:21:27.21 ID:8A+6FWl+o
519 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 22:33:21.49 ID:1WKD09CXo

 21……成功!
 

ユウキ「ぐ、うう……っ!」

ジェノサイ子「嘘でしょ、これで気絶しないってどんだけゴリラなんだよ……」

ユウキ「は、ははは……気合、じゃよ……」


アカネが両足を切断するつもりで刀を振るう。が、無敵のスーツの前には無意味だ


ジェノサイ子「無駄だって!」


次にジェノサイ子が取り出したのは火炎放射器だった。これも対魔法少女のための武器であり、放たれる炎に焼かれれば魔法少女といえどただではすまない

トリガーを引き、炎が2人を襲う。だがアカネはその炎すら斬り、続けざまの一太刀で火炎放射器を真っ二つにした
520 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 22:43:41.67 ID:1WKD09CXo

クランテイル「よし、地上に出た!」

ペチカ「っ、地面が……!」


クランテイルに掴まれながら上空から見下ろしたペチカが指さす

ジェノサイ子の爆薬は洞窟すべてを破壊するよう設置された。巨大な地下空間が崩れれば、荒野エリアと草原エリアの大半の地形が変わってしまう

没していく地面をよそに、クランテイルは洞窟の上に無い安全な場所を探した。街の方なら大丈夫だろうか、ユウキ達を助けるためにも早く戻らなければと思いながら、ドラゴンの体は街へ飛んでいった


ユウキ「(このままでは、ワシもアカネちゃんも……!)」

ユウキ「(ジェノサイ子と言い争っている暇は無い……無力化して運んでいる暇も無い……くっ!)」

ユウキ「(ワシは、また若い子を……!)」


アカネがユウキの方を向いて頷いてきた。それが意味するものは分からない、任せておけということだろうか

ジェノサイ子が突進してくる。無敵のスーツにものを言わせて肉弾戦をしかけてくるつもりだろう。そうなれば一方的にダメージを受ける側になるこちらに勝機は無い

刀が振るわれる。1度だけだった。それで勝負がついた

ドシャリ、と、前のめりにジェノサイ子が走る勢いそのままに倒れこんだ
521 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 22:47:38.52 ID:1WKD09CXo

ユウキ「え、今のは……」

アカネ「……回復」


アカネが魔法の端末を使い、状態異常回復をユウキにかけてみる。すると動かなかった体が動くようになった


ユウキ「…………これは、刀傷?」


ジェノサイ子を仰向けにし、確認する。魔法のスーツには傷一つついていないが、その顔には斜めに一筋の赤い線が通っていた


ユウキ「…………っ、スマン……!」


手を合わせる

即死であったが、ゲームが終わっていない。ジェノサイ子は魔王ではなかった

いらぬ死だと悔やみ、さらに彼女が襲い掛かって来た理由を考える前に崩落が早まって来た

522 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 22:50:04.06 ID:1WKD09CXo

アカネ「ッ!」ズバッ

ユウキ「クソッ、これでは地面でワシらは下敷きじゃな……! クランテイルはまだか!」


そろそろアカネの斬撃でも処理しきれないほどの崩落になってきた。下手をすればまずすぎる

広がった天井の穴を睨み、そこに影が差すことを祈った


 幸運(46)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→クランテイルが間に合う
 失敗→クランテイル間に合わない
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/12(火) 22:50:29.35 ID:0H5lsxWFO

524 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 22:56:20.13 ID:1WKD09CXo

 35……成功!
 
 
クランテイル「まだいるか!」

ユウキ「っ、おお……! 遅いぞ!!」


ドラゴンが降って来た。その手に2人の姿は無い。おそらく安全な場所に置いてきたのだろう


クランテイル「無事だったか」

ユウキ「ジェノサイ子は、倒した……」

アカネ「……」
 
クランテイル「そうか。無駄口を叩いてる暇は無い。行くぞ!」


クランテイルはペチカ達と同じ要領でユウキとアカネを掴むと、ばさりと再び飛翔する

邪魔な岩はアカネが除去し、なんとか完全に崩れる寸前での脱出に成功。不毛の大地だが地上を愛おしく感じた 
525 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 23:01:28.35 ID:1WKD09CXo

クランテイル「ペチカ達は街に避難させてある。あそこはどうやら大丈夫らしい」

ユウキ「そうか。早く合流せんとな」

クランテイル「だが、何故奴は急に襲ってきた? しかも3日目に」

ユウキ「洞窟を崩す準備をしとったんじゃろう。それにあと丸一日ある……息のできない地中に1日も放置されたら窒息して死ぬな」

クランテイル「動機が分からん」

ユウキ「ワシもじゃ。本当ならふんじばって連れてきたかったが、奴の魔法を前にそれはできんかった……」

クランテイル「そうか……だがよくその無敵の魔法を破れたな」

ユウキ「ああ。アカネちゃんがやったんじゃが……どうやったんじゃ?」

アカネ「……」

ユウキ「無我夢中じゃったか」
526 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 23:03:10.78 ID:1WKD09CXo

・・・・・・

〜荒野の街〜


ペチカ「な、なんで……」

那子「…………っ」


 ペチカの数値……>>↓1コンマ二桁-20
 (相手が那子-20)
 那子の数値……>>↓2コンマ二桁

 ペチカの数値が勝っていた場合……なんとか那子から逃げられる
 那子の数値が勝っていた場合……ペチカ撃破
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/12(火) 23:03:29.68 ID:8A+6FWl+o
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/12(火) 23:03:47.15 ID:zWV/Xb9DO
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/12(火) 23:03:50.48 ID:3TL7lUnb0
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/12(火) 23:05:46.15 ID:0H5lsxWFO
せふせふ
531 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 23:09:18.61 ID:1WKD09CXo

 ペチカの数値……68-20=48
 那子の数値……15
 
 
クランテイルを見送り、ユウキ達の無事を祈る2人の異変はすぐに起こった

いや、正確には那子に異変があった


那子「魔王って、結局誰なんでしょうかネ…………」

ペチカ「……私達のうちの誰か…………でも、皆、いい人で……」


ペチカが俯く。ここで那子の顔を見ればすぐに異変に気付いたかもしれない

那子は青い顔をしていた。怯えたようにペチカを見て、手が伸びていた

その手はペチカの首にかかり、ペチカも驚きに目を見開いた
532 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 23:13:05.55 ID:1WKD09CXo

ペチカ「な、っ……ぐ、なん、で……!?」

那子「ペチカ、私、怖い……!」


那子を支配する感情。それは恐れだった

もし目の前の相手が、ペチカが魔王だったら……殺されるのは自分だ

リオネッタが浮かんだ。その他に、かつて那子の目の前で死んだ魔法少女も浮かんだ

彼女達のように死ぬのが怖い。殺される。その前に殺さないと


那子「kill……have to kill……!」ブツブツ

ペチカ「ぐ、や、やめ……!」


首を絞める手に力がかかる。ペチカは必死になって那子の腕をどかそうとするが、戦う魔法少女の那子との力の差は歴然だった
533 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 23:16:37.09 ID:1WKD09CXo

ペチカ「やめてっ!!」

那子「っっ!」


不意に、那子の手の力がパッと消えた

ペチカが咳をしながら数歩後ずさる

見ると那子はワナワナと震えているようだった


那子「わ、私……今…………! ペチカを……なんで!?」

ペチカ「ゴホッ、ゴホッ……あ……」


那子から殺気が発せられる。手を放した瞬間収まっていた殺気が、再び


ペチカ「ひっ、ぁ…………ぁ……!」

那子「ペチカ…………ここで……!」


その殺気に当てられ、ペチカはたまらず走り出した
534 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 23:20:28.89 ID:1WKD09CXo

すぐに追いかける

殺さないと。殺さないと。あの試験のように。そうしないと死ぬ


那子「っ、うううう……っ!」


だが走り出した足はすぐに止まった


那子「なんで……………………」


自分が分からなかった。何故ペチカを手にかけようとしたのか

ペチカは仲間だ。最初から行動を共にし、何日も一緒に冒険し、彼女の料理を褒め称え、時にリオネッタと彼女を取り合ったりもした

そのペチカを、何故


 那子は……>>直下コンマ一桁
 
 奇数→頭を冷やそうと噴水へ向かった
 偶数→誰にも合わないようどこかへ走って行った
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/12(火) 23:21:01.11 ID:w+is9rbr0
536 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 23:29:34.45 ID:1WKD09CXo

那子「…………頭冷やしましょう……」


確かすぐそこに噴水があったはずだ。水とは無縁の荒野で唯一の水場

喉は渇いてないが、頭を冷やそうと思った


那子「って、あれ?」


だがその噴水は、絶やすことの無かった水を一切吐き出さなくなっていた


那子「今までずっと湧いてたのに、おかしいデース」


少し不機嫌になった

不機嫌なまま、先ほどの怖さを思い出し、那子は大仰に周りを確認した。誰もいない

誰かに狙われているのではないか。メルヴィルだって1人の者を狙ったことがある。魔王だってそうするはずだ

そう思うと止まらなくなり、那子は無限に湧き上がってくる恐怖にその場にうずくまった
537 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 23:39:28.31 ID:1WKD09CXo

クランテイル「確か分かりやすいよう噴水の近くに降ろしたんだ」

ユウキ「なるほど。あとは地下にいたときと同じように時間を潰すか」

クランテイル「もうジェノサイ子はいない。残った魔法少女は私達とプフレ達だ」

ユウキ「うむ……」

クランテイル「どうした?」

ユウキ「いやな。何でジェノサイ子の奴はワシらを殺そうとしたのかじゃ」

クランテイル「死んでもらわないと……と言っていたな。私達が死ねばどうなるというんだ」

ユウキ「魔王が勝つんじゃろ」

クランテイル「ということは、ジェノサイ子は魔王の手先だったと?」

ユウキ「メルヴィルのような奴とは思えん。魔王の……」

クランテイル「っ、まさか……プフレが差し向けた!?」

ユウキ「……考えるのはやめにしよう。今となっては分からぬ」


 ユウキ達が街に入って会ったのは……>>直下コンマ一桁

 奇数→ペチカ
 偶数→那子
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/12(火) 23:45:33.56 ID:eruLyNvGO
539 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 23:51:04.61 ID:1WKD09CXo

クランテイルが噴水広場の上空に来る。これまでログアウト前招集で幾度と見た光景だ

見下ろすと那子がいた。噴水の縁に腰かけ、こちらには気付いていないようだ


クランテイル「ん? ペチカがいないな……」

ユウキ「本当じゃ。おーい那子ー!」

那子「ッ!」


降り立つと那子は目を見開いてこちらを見ていた

カタカタと震え、まるで死神でも目の前にやってきたかのように怯えている


那子「ぁ…………ぁ……!」

アカネ「?」

クランテイル「ペチカはどうした?」

那子「…………な……ゃ……」

ユウキ「? おいどうした。何かあったか」

那子「…………………………っ!」
540 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/09/12(火) 23:58:04.60 ID:1WKD09CXo

今日はここまで
那子って結構後半まで生き残ってたのに短編が無くて悲しい……悲しい……えっちな巫女服なのに……
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/13(水) 00:06:45.00 ID:47QnBUuEo
乙です
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/13(水) 00:24:52.34 ID:94YCTxhY0
乙っす
ペチカ、強く生きるっすよ
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/13(水) 00:52:51.87 ID:sDqTEHDW0
乙諦めんなよ
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 18:13:59.43 ID:Knntqk6A0
保守
545 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 06:33:39.74 ID:NPo1MfWoo

・・・・・・

〜マスターサイド〜


魔法の国IT部門、その部門長である魔法少女キークは、無数のモニターに囲まれた部屋で1人、椅子に座っていた

モニターには複数の魔法少女が映っており、伺える表情は誰もが顔をしかめている


キーク「クラムベリーの子供達……思ったより多く残ったね。まぁ本当に正しい魔法少女なら残って当然なんだけどさ。むしろ今まで死んだのが魔法少女に相応しくなかった奴らだってことかな」


17人の魔法少女をゲームに閉じ込めてから何日も経った。最早殺し合いとなっているその様相に、ファルは何度も反発した。だがキークは止まらない。ゲームという名の殺し合いはいよいよ佳境に差し掛かりつつある


キーク「もうすぐ終わるねぇ。下手したら次のログアウトより前に……良かったねぇファル〜、止めろ止めろと言ってたゲームが終わるんだよ」

ファル「……」


ファルからの返事は無い。それでもキークは喋り続ける
546 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 06:35:30.86 ID:NPo1MfWoo

キーク「そういえば監査部門に通報したって言ってたけど、もう何日経ったっけ? あそこもヒマじゃないだろうから今頃たらい回しだろうねぇ」

キーク「それにあそこにいる魔法少女の中で好きな奴いないし、来ても適当に追い返すだけさ」

ファル「魔法少女相手にそう簡単にいくぽん?」

キーク「いくさ。ここに足を踏み入れれば、すべてはあたしの思うがまま」

ファル「マスターの魔法は確かに凄いぽん。でも、向こうもまた魔法少女ぽん」

キーク「ふぅん、面白いことを言うね」


やれるものならやってみろ。キークの顔に貼り付いた笑顔は如実にそう語っていた
547 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 06:37:48.80 ID:NPo1MfWoo

・・・・・・

〜監査部門副部門長室〜


今日の書類が片付いた。ふぅと息をはき、背もたれによりかかる

魔法の国監査部門副部門長、それが1年前監査部門に入ったばかりの彼女が半年前に与えられた仰々しい肩書きだ


「(少し、疲労が溜まっている……?)」


部門のトップクラスになってくると、自分の担当地域を持つ末端の魔法少女とは違う、ゲートで繋がった世界各地が持ち場のようなものだ

彼女は椅子でふんぞり返るわけでもなく、ひたすら摘発の現場に赴いた。気付けば書類仕事より現場で監査部門の実働部隊のような仕事をしている方が多い

丁度昨日も「悪い魔法少女」を捕まえるために東欧の某国に飛び、日帰りの旅を楽しむ間もなく帰ってきた

体力精神力共に人間を遥かに凌駕する魔法少女であるが、仕事量も人間を遥かに凌駕すれば疲労も蓄積するものだ
548 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 06:39:54.90 ID:NPo1MfWoo

「(明日は休むかな……)」


ふと、彼女から机を挟んで正面に位置する円筒状のドアノブが回るのが見えた

案の定扉が開き、2人の魔法少女が部屋に入ってくる。知った顔だ。同じ監査部門の魔法使いマナとエースと名高い下克上羽菜だ


「何か用が?」

羽菜「報告しておきたいことがありまして、昨日帰ってきたって聞いたので」


唇の動きを見る。これで言っていることは大体分かった

彼女は耳が聞こえないが別に不自由はしていない。読唇で相手の言葉を読み取るために視界外から話しかけられると気付けないという欠点はあるが

それに聞こえないのは魔法少女になっている間だけなので、変身を解けば聞こえる。だから別に彼女が変身して言葉を発する時も変な発音になったりもしない。都合がいいものだ
549 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 06:41:35.79 ID:NPo1MfWoo

羽菜「出所はIT部門からなんですが、肝心の通報してきた本人が分からなくて……」

「ふむ……」


渡された書類を見る。『IT部門長キークが魔法少女を集めて閉じ込めている。なんとかしてくれ』との旨だ


「……………………なるほど」

マナ「いたずらかもしれないからと長いこと放置されてたが、私はどうにも引っかかる。踏み込んだ捜査の許可を」

「いや、2人はもう下がっていい。私が調べる」

マナ「なに?」

「私が直接出向いてキークとやらに2、3聞く。そう言った」

マナ「お前、それは私達の仕事だぞ!」

羽菜「ちょ、ちょっとマナ! 上司だよ!?」
550 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 06:45:48.41 ID:NPo1MfWoo

マナの態度は分からないでもない。彼女はマナ達の上司にあたるが、まだ所属して1年の彼女にとって2人は先輩だ

彼女のスピード出世は異例中の異例だった。監査部門に入り、数ヶ月するとみるみる内に実績を上げ始め、数々の大捕り物を行い、半年もすれば副部門長になっていた。マナでなくとも、普通の感性の持ち主なら彼女のことを訝しむだろう。どう考えても汚い手を使って出世したとしか思えないし、擁護するような友達も彼女にはいない

まぁ彼女自身も周りの自分への感情など最初から気にしていないから些末事だ

だが彼女は極めてまっとうな手段でこの地位に上り詰めた。多少人事部門とお話をしたり上司に色々お話をしたりといったことはしてきたが、叩いても埃は出ない。出世のために必要な実績と人脈を極々短時間に詰め込んだのだから


「いや、別にいい。これは私の気まぐれだ」

マナ「なら3人でいけばいいじゃないか」

「私は常に単独行動だ」

羽菜「でも、昨日帰ってきたばかりでしかもさっきまで書類を片付けてたんじゃ……?」

マナ「そうだ! 欲張るのも結構だが過労で倒れられても困るのはしわ寄せが来るこっちなんだぞ」

羽菜「マナも心配していますし」

マナ「してない!」
551 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 06:47:31.91 ID:NPo1MfWoo

「なんと言おうとこれは決定事項で、覆ることは無い。代わりにこの件を頼みたい」

羽菜「わかりました。ほら行くよマナ」

マナ「チッ、勝手にしろ鉄仮面!」


まだ何か言いたげな2人に適当な仕事を振り、下がらせた。もう1度書類に目を通す


「(鉄仮面、か……)」


彼女は監査部門に入ってから笑ったことが無い。常に鋭い視線を向け、口は真一文字。口調も厳しいかもしれない。お似合いなあだ名と言える


「(休むのはこれが終わってからにするか)」


ゆっくりと椅子から立ち上がる。こうして彼女はまたいつものように自分の足で捜査するのだった
552 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 06:49:19.61 ID:NPo1MfWoo

・・・・・・

〜IT部門〜


まだまだ小さい部門であるIT部門の建物は、監査部門や外交部門などに比べてこじんまりとしていた。確か所属する魔法少女は10人程度だと聞いている

監査部門からゲートで飛び、建物に入り、その変にいた魔法少女に素性と目的を明かし部門長室に案内してもらう


「ここです。キークが何かしたんですか?」

「それをこれから調べる」


ドアをノックする。返事をされても聞こえないので数秒後にノブを回した

が、開かない。鍵がかかっている。キークがこの部屋の中にいることは確認済みなので入室拒否と考えるのが妥当だろう
553 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 06:49:51.96 ID:NPo1MfWoo

「ここの鍵は?」

「電子ロックです。そこのパネルでパスワードを入力して開けるんですけどキークしか知らな――」


言い終わる前に、右の拳がパネルにめり込んだ

「パスワードを入力してね♪」と表示されたモニターとキーボードがグシャリと潰れ、電流がバチバチと迸る

ドアは開かない。もう一発。開かない、もう一発。開かない


「ちょ、ちょちょちょっと何してるんですか!?」

「捜査」

「ここウチの施設なんですけど……」

「これは所謂コラテラルダメージというものに過ぎない。目的のための致し方ない犠牲だ」

「監査部門っていつもこんな暴力的な捜査するんだぁ……」
554 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 06:51:00.16 ID:NPo1MfWoo

結局何発パンチをぶち込んでも扉は開かなかった。仕方ない、今度は扉を破るしかない

まるでチンピラが「オラ出てきやがれ!」と言いながらガンガンやってそうなモーションでドアを蹴りまくる。当の本人は無言で続けているので見ていてシュールな光景だ

マジカル鋼鉄製のドアは頑丈でまだ破れないが、ベコベコになっている


「(……仕方ない、もうこうなったら爆破するしかない)」

キーク『あーーーーうるさぁぁぁい!! 今いいところなんだから邪魔しないでよ!!』

「うわっ、キーク!?」

「どうした?」

「え、聞こえなかったんですか? キークがめちゃくちゃ怒ってて」

キーク『お前が監査部門のか、ったく、これだから野蛮な……今開けるから!』

「キークはなんて?」

「今開けるって……え、これ私にしか聞こえないの?」


建付けが極めて悪くなったドアがギギギゴゴゴと音を立てて開く。部屋の中の様子は見えない。まるで暗闇に包まれているかのようだ

彼女は躊躇うことなくその中へと足を踏み入れた
555 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 06:53:06.60 ID:NPo1MfWoo

・・・・・・


キーク「ようこそあたしの世界へ……と言いたいけど、ぶっちゃけ監査部門なんてお呼びじゃないんだけど。広報部門とチェンジで」

「(世界……そうか、道理で廊下と空気がまるで違う。そういう魔法?)」

キーク「そういう魔法だよ」

「……心が読める?」

キーク「あたしはこの空間じゃあ全知全能の神みたいなもの。だからそちらが何を考えているのかもぜーんぶ分かるんだ。耳の聞こえない監査部門副部門長さん」

「なら話が早い。通報があったから監査に来た。何かしているのか洗いざらい吐いてもらう」

キーク「それならファルが出したやつでしょ」

「ファル?」

キーク「いまや絶版となったFAシリーズの生き残り。あたしのマスコット」

ファル「や、やっと来てくれたぽん! 早くマスターを止めてほしいぽん!」

キーク「はーい勝手に喋らないの」
556 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 06:56:30.16 ID:NPo1MfWoo

「マスコットはどうでもいい。ここで何をしている」

キーク「やれやれ、がっつくなぁ……説明するのが面倒だからあたしの考えをそっちにコピーしてあげるよ」

「そんなことも……」

キーク「言ったじゃないか。あたしはここの神。ほら、ペースト」


彼女の脳内に、データ……と形容すればいいのか、情報が流れ込んでくる

魔法少女育成計画というRPG、参加メンバー、死んだ者と生き残っている者、諸々の経緯がすぐに飲み込めた。便利だ


「…………………………なるほど、言い分は分かった」

キーク「でしょ? あたしは通報されるような悪いことはなーんにもしてない。それより見る? 御世方那子が仲間に襲い掛かるところだ」


一番大きなモニターに目を向ける。そこはどこかの寂れた街の噴水広場のようだった。3人の魔法少女が立っている。立ち位置からして2対1のようだ

2人を前にした那子は今にも襲い掛かろうとしている
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/12(木) 06:59:36.51 ID:Ye9rL6fI0
主おはよう 珍しい時間に再開してる!
558 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 07:02:51.62 ID:NPo1MfWoo

キーク「嘆かわしいことだよ。ちょっと感情をいじられただけで仲間に攻撃をしかけるんだから」

「…………」

キーク「おっと、妙な真似はしないでよ。別にあたしが操ってるわけじゃない」

「どう見ても殺し合いを誘発させているとしか思えないが、何か言い訳は?」

キーク「あたしはただ添えただけだって。殺し合いを始めたのは彼女達。そして魔法少女に相応しくない者だけが脱落し、本当の魔法少女がゲームをクリアできる」

「わざとメルヴィルのようなイレギュラーを紛れ込ませておいてよく言う」

キーク「彼女は最初から相応しくなかったから殺されたじゃないか。それにね、本当の、清く正しく美しい魔法少女なら……殺し合いなんてしないんじゃないかな?」

「普通は誰かに襲われて、自分にやり返す力があればやり返す。それが人間の防衛本能じゃないのか」

「そこが問題だよね。皆魔法少女になり切れないからこうやって殺し合いが起きる」

「………………はぁ……これ以上は時間の無駄か。魔法少女キークに話し合いによる理解は得られず。実力行使に出る」

キーク「ふぅん、今までもそうやって強引に捜査して、何人も殺してきたんだ」
559 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 07:05:53.11 ID:NPo1MfWoo

彼女の眉間にしわが寄る


キーク「ちょこっと記憶を覗かせてもらったよ。酷いねぇ、命乞いする奴も容赦なく殺して」

「殺すのは悪い奴だけだ」

キーク「じゃああたしも同じことを言うよ。このゲームで死ぬのは悪い奴なんだよ」

「自分勝手な」

キーク「お互い様さ。なぁんだ……あたしら、お仲間じゃん」

「………………」

キーク「ははははっ、そんな睨まないでよ。あ、そうそう……これ、映像データとして出力もできるんだよ」


キークがモニターの1つを指さす。そこにはつい最近の、まさに昨日、東欧で魔法少女を殺した映像だった
560 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 07:08:08.23 ID:NPo1MfWoo

キーク「これを監査部門とか、まほまほ動画にアップロードとかしたらどうなるかなぁ? 人権がどーとかの問題になっちゃうかなぁ?」

「………………」

キーク「これ以上とやかく言わないならこのデータも消してあげるよ。分かったら変な気を起こさずに回れ右して帰りな」


下調べも何もなくいきなり乗り込むのは悪手だったかと小さく反省した

叩いても埃が出ない彼女に唯一疑念を抱くポイントがあるとすれば、彼女が担当した事件の結末だ

『攻撃してきたためやむを得ず反撃したら死んでしまった』『追い詰められた末の自殺』――報告書の文末はこれが大半を占めている。実際は彼女は進んで摘発する対象を殺すことが多かった

では何故彼女は「まっとうに実績を積んだ真面目一辺倒が短期間にスピード出世した」という評価を得ているのか、それは誰もが知らぬ内に彼女の魔法にかけられているというのが大きい

それらのすべてを見破ったキークでさえも、この魔法からは逃れられない


「………………また来る」
561 : ◆IPYIJYmMYgAf [saga]:2017/10/12(木) 07:10:28.17 ID:NPo1MfWoo

ここまで
長く空けた上に安価が無かった。だが私は謝らない
また夜にでも
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/12(木) 08:44:43.76 ID:cyaDNtaRO
乙です
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/12(木) 17:59:32.66 ID:dU/Eppwe0
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 14:47:00.16 ID:vhy30aKMO
キノの続きはもうないのですか?
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/11(土) 19:30:56.77 ID:LYCWhfuG0
奈良敬子
566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/07(木) 19:09:28.84 ID:hAPBAe4R0
保守
567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/08(金) 15:54:54.93 ID:Za5tQsqI0
あげ
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/24(日) 19:26:44.79 ID:Sm/NGy3H0
保守
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/27(水) 17:50:24.41 ID:5OrfVsdS0
 同時に飛鳥は、一つの可能性に気付いた。
 いや、先程プレイヤーXの件……寺沢が衣鈴を狙った動機に思い至った時点で、考えるべきことだったのに。

 気付いたのは、別に飛鳥に危機が迫っていることではない。むしろ飛鳥自身は、今日は安全を約束された気がした。今日、久龍に狙われる可能性が高いプレイヤーが分かってしまったのだ。

「お。間もなく時間だーあと十秒ー」
「あ!」

 メアリーが風船ガムを膨らませつつ、ディスプレイに映る時計を指差す。何か対策を取る余裕はないらしい。

 まあ、自分に被害が及ぶわけじゃないんだ、仕方ない。
 一瞬そう考えてしまったことを、強く後悔した。使わないと決めた口癖を、早速頭に浮かべているではないか。

「美里亜……御堂美里亜!」

 飛鳥はブンブンと頭を振り、「マーダータイムスタートー」というメアリーの力の抜けた声を掻き消す。

「え?」

 美里亜の元に駆け寄るとその腕を強引に掴み、「痛いから離して!」と言うのも無視してロビーを後にしていた。他プレイヤーから悪目立ちしていると思ったが、飛鳥は夢中だった。

「ちょっと!」

 大階段を上り、エントランスを見下ろせる二階の吹き抜け部分にやってくると、美里亜に手を振りほどかれた。
570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/27(水) 17:53:55.71 ID:5OrfVsdS0
この、復讐相手がシャッフルされた館で。
作者:DAi
YouTube/ニコニコ動画で、動画版を連載しております。

https://youtu.be/fuJYc9l42jM
http://www.nicovideo.jp/watch/sm32463087

<あらすじ>
他人の魂持ち、魂から記憶が感じられる館。
その魂を介せば、他人と仲間になるのも敵となるのも一瞬だ。

ここでは、頭脳戦ゲームが繰り広げられる。

引き籠りの飛鳥は、主体的に動けない。
そこで、目的を与えてくれた衣鈴と出会い、ゲームの首謀者を突き止めようとする。

だが飛鳥は、次第に復讐の渦に飲み込まれていき、殺人を誓うことになった。
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/27(水) 17:55:16.83 ID:5OrfVsdS0
第一章 魂の奪い合い(1)
第一章 魂の奪い合い
【一】

「お、俺を殺しに来た!?」

 鍵はしたはずだ。だから、インターフォンに応えなければ、何事もなくこの場を終えられるはず。窓がないビジネスホテルのような個室で、天崎飛鳥あまさき あすかは一歩二歩後ずさりをした後、数回深呼吸をした。

 ただインターフォンが鳴っただけだ。それなのに、扉と枠の僅かな隙間や鍵穴から、飛鳥を襲わんとする意思が漏れ出て向かってくるように感じて、さらに後ろに下がった。
 だがそれも仕方ない。部屋に置かれたジェラルミンケースの中に、殺害予告にも似た招待状が入っていたのだから。

“あなた様は、殺し合いの館へ招待されました。どうか大金を手にするため、殺しを行って下さい。
 あなた方は一つずつ、他人の魂を持っております。魂からは他人の記憶を感じられる。仲間にも、敵にも容易になり得るでしょう。
 魂を制した者が、このゲームを制します”

 窓もなく、照明もどこか薄暗い。暗さは簡単に不安に変換される。その上、自分の意志でこんな所に来た記憶はなかった。自室のPCの前で寝落ちしていたはずなのだが、なぜこんな所にいるのか分からないし、かといって部屋から出て散策しようとも思えない。
 あまつさえ、伸び切っていたはずの髪がモデルよろしく整えられ、ジャージだったはずの服装が、いつの間にか白いワイシャツに黒のパンツに着替えさせられているのだ。

「何!?」

 カチャリと音がする。

 鍵はした。それだけは、PCゲームに溺れる引き籠りたる飛鳥は習慣的にしていた。だから間違いない。それなのに、鍵を壊したような音もなく、インターフォンを鳴らしたであろう何者かに扉を開かれてしまったのだ。
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/27(水) 17:56:29.16 ID:5OrfVsdS0
 不安は恐怖に、瞬く間に絶望に。
 どうやら飛鳥は、殺し合いが許されたこの館で、最初の犠牲者として狙われているらしい。

「う、うわあああああ!!」

 すでに部屋の奥にいたが、さらにベッド脇で身を隠すように丸める。一般的な十九歳の男性たる飛鳥の身長では、どれだけ小さくなろうとも隠し切ることは出来なかった。

「!」

 それでも頭を下に下に入れ込もうとして、目に入る。
どうやら後ずさりした拍子に、ジェラルミンケースをぶちまけていたようだ。その中身が、ベッドの下へ潜り込んでいたのだろう。必死でその黒い鉄の塊に手を伸ばした。
夢中で扉の方へ向けるが、拾った拳銃の重量のためか、ひやりとした鉄の温度のせいか、或いは飛鳥の鼓動の激しさが伝わっているのか、あまりに震えて照準が定まらない。

 おかしい。こんな場所に突如来てしまったことではない。着替えさせられたことでも、侵入者が来たことでもない。飛鳥はこの館に来てすぐ、「仕方ない」と呟いたはずだ。口癖だった。

 これはたぶん罰。いや、間違いなく罰だ。
 殺し合いが許された場所で、自分が殺される側に回ることは分かっていた。生きる目的を失った飛鳥には、あまりに相応しい場所だと思った。それなのに、今自分が取っている行動はなんだ?
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/27(水) 17:57:45.63 ID:5OrfVsdS0
 生きようとしている。何者かから狙われている自分を守ろうとするばかりか、逆に相手の命を奪おうとしているではないか。
 まだ自分は、何か目的を得ようと足掻いているのか? 分からない。分かることはただ一つ。自分の指に力がこもり、握ったトリガーが引かれたということだけだ。

「ま、待ってください……!」

 侵入者の声が聞こえた。高い声の女だ。ということは、初発は外したらしい。

「うわああああああ!」

 狙った先など見ていないが、また指に力を入れる。

「あ、あの……」

 まただ。こんな凶器など初めて扱うゆえ仕方ないかもしれないが、未だ震える手を押さえ込んで、今度はしっかりと狙わなくては。
 ようやく、狙うべき、[ピーーー]べき女を見た。リボルバー式の拳銃越しに、その銃口を彼女に向かわせるために、しかと女を見た。

「あの……飛鳥さん……天崎飛鳥さん!」
「え……」

 漏れたのは銃声ではなく、名前を呼ばれたことで出た、ポカンとした小さな驚きだった。
 というより、先程から銃声が響いたことはあっただろうか。少なくとも二発は放ったはずだし、PCのネットゲームでさえ銃声はそれなりにうるさく聞こえるのだから、実物が無音であるはずはない。
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/27(水) 17:59:08.33 ID:5OrfVsdS0
 女が一歩、踏み出した。「落ち着きました……?」と問われても、飛鳥は凝視することしか出来ない。

「私、あなたを殺しに来たわけじゃないです。というより、今の時間はそれが許されていませんから……」

 飛鳥は自分の指を見る。トリガーだと思っていた場所は、ただグリップを強く握っているだけだった。どうやら狙うべき女だけでなく、自身を守る重要な武器さえもしっかりと見ていなかったようだ。

「お……落ち着いた……」

 あまりに小さい、搾り出したような回答は、飛鳥が落ち着いてなどいないことを隠し切れなかった。

 だが、それは恐怖ゆえではない。先程まで死神のごとく迫っていた彼女が、あまりに弱々しく見えたからだ。
小柄で童顔で、ショートカットの頭には大きな白いリボン。服装がセーラー服の所を見ると、女子中学生か女子高生ようだ。
 飛鳥は、自分はこんな女を前に慌てていたのかと、恥じらいからくる落ち着きのなさを抱えていた。

「よかったです……。拳銃を向けられた時はどうしようかと思いましたが、私はあなたを信用していましたから」
「信用? なぜ? 俺達は初対面だろ?」
「あなたの魂を見たのですよ。ルールを読んでいないということですね。それなら丁度よかったです。今から下でルール説明が行われるらしいですよ。飛鳥さんを呼ぶために、私は来たのです」
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/27(水) 18:00:15.65 ID:5OrfVsdS0
「私、井口衣鈴いぐち いすずと言うです。高校二年です。あなたの名前を知っていたのは、ジェラルミンケースの中にリストが入っていたからですよ。このゲームに参加する、プレイヤーの方々が書かれています」

 飛鳥の疑問に気付いていないのか、ペコリと頭を下げた。飛鳥ににこりと笑いかける。

 飛鳥を信用していると言った衣鈴だが、飛鳥は衣鈴を信用出来るはずがない。拳銃を向けてはいないとはいえ、置いてもいない。あまりに無警戒な彼女に、逆に危機感を覚えてしまう。

「その拳銃、置いた方がいいですよ。いえ、部屋に置かなければなりません。……さぁ、ルール説明は間もなくとのことなので、急ぎましょう」
「あ、ああ……」

 なのに、思わず拳銃をテーブルに置いてしまった。

 脅されたわけでもないが、飛鳥にはその選択肢しかなかった。長らく引き籠っていた飛鳥にとって、他人との直接的な関わりなど久しぶりだ。
 ましてそれが、女子高生相手など。衣鈴は、決して誰しも振り向くような美貌を携えているわけではない。だが、知る人ぞ知る食堂の看板娘のような、素朴なかわいさを持っていた。それだけで、飛鳥の思考を奪うのは充分だった。

「行きますよ」

 ここはどこだ。なぜこんな場所に来た。衣鈴はなぜ飛鳥を信用したのか。魂とは何か。数多の疑問は留まることを知らない。しかし、くるりと背を向けた彼女に付いて行く以外、飛鳥に選択肢などなかった。
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/27(水) 18:01:06.33 ID:5OrfVsdS0
 パスワード式の個室の扉を確かに施錠したことを確認した飛鳥は、やたらと長い廊下を歩く。個室内と違って窓はあるものの、すでに夜間となっているのに加え、廊下の照明は頼りなく不気味さしかない。道しるべは衣鈴だけだ。

 開けた所に出ればそこはエントランスらしく、吹き抜けの大階段から、大きな観音開きの玄関が下に見えた。個室は二階にあったらしい。

 一面に赤いカーペットが敷かれていて、手すりは真っ白。階段を降りて辿り着いたここロビーは、何人掛けですかと問われても、即答出来ない程の大きな長方形のテーブルが中心にあり、それ全体を覆う白いテーブルクロスに包まれる。壁にはたぶん有名な画家の絵画が所狭しとあり、天井には煌びやかなシャンデリア。個室内では分からなかったが、豪華絢爛、という言葉以外が浮かばぬ洋館だ。どこをどう見ても、プライスレスの宝庫だった。

「およ、君らで最後っかなー? ルール説明、待ちきれなかったよー」

 飛鳥と衣鈴がロビーに姿を現すと、サイドテールを巻き髪にした女が声をかける。

 飛鳥が遠慮がちに周りを見ると、飛鳥らやその女も含め、この場には十名の男女がいた。飛鳥同様、この場に望んで来たわけではないプレイヤーがいるのは、その自分を見ているような挙動で分かる。
 むしろ、戸惑っている人間の方が多いのではないだろうか。目を覚ませば突然こんな館にいて、訳の分からぬまま、殺し合いゲームをせねばならぬ事態になっているなんて。
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/13(火) 02:22:15.80 ID:7v+76C3y0
あげ
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/07(水) 05:32:43.75 ID:d9hEjf9M0
七原月間&川田の誕生日(7月7日)ってことでこの二人にしてみました。
私が川田を描くと、どうしてもいつも笑っている…なんでだ(笑)
そしてこの七原君はどう見ても腹にイチモツ抱えてるようでアヤしいです。

最初、背景をピンク色にしたんですが、あんまりにもボーイズラブちっくになっちゃって焦り(笑)、慌てて変えたという経緯が。

でも仲の良い二人が好きだなあ。
川田は面倒見がいい方だし、プログラムなかったらそれなりに仲良しになってたと思うんですが。
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/08(木) 17:04:59.75 ID:MPjNERJN0
七原月間&川田の誕生日(7月7日)ってことでこの二人にしてみました。
私が川田を描くと、どうしてもいつも笑っている…なんでだ(笑)
そしてこの七原君はどう見ても腹にイチモツ抱えてるようでアヤしいです。

最初、背景をピンク色にしたんですが、あんまりにもボーイズラブちっくになっちゃって焦り(笑)、慌てて変えたという経緯が。

でも仲の良い二人が好きだなあ。
川田は面倒見がいい方だし、プログラムなかったらそれなりに仲良しになってたと思うんですが。
580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/11(金) 19:31:46.74 ID:EzmRwoHL0
あげ
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