勇者「遊び人と大罪の勇者達」

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1 :踏切交差点 ◆uw4OnhNu4k [saga]:2017/08/01(火) 22:38:59.54 ID:ZQcnUKE60
【TIPS】

『大罪の力』

短命な寿命で生まれつく、賢者の一族がいた。

彼らは人間に巣食う7つの欲望を元に、禁忌の呪文を発動した。

儀式は失敗し、欲望は分裂し、7人の勇者の元に装備の形となって届けられた。

暴食の鎧
色欲の鞭
傲慢の盾
憤怒の兜
怠惰の足枷
強欲の腕輪
嫉妬の首飾り

欲望に応じた能力をもつこれらの装備の伝説は広まり。

7つの大罪、と呼ばれるようになった。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1501594739
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 22:41:18.23 ID:ZQcnUKE60
遊び人「良いニュースと悪いニュースがあるの」

勇者「良いニュースから話してくれ」

遊び人「1試合目の賭けには勝って全所持金200Gが400Gになりました」

勇者「もう悪いニュースは話すな」

遊び人「……では、もう一つ良いニュースがあります」

勇者「なんだ」

遊び人「雨風を凌げそうな良い洞穴を見つけたの!」

勇者「でかした」

遊び人「えへへ」

勇者「えへへじゃねえ!!何全所持金使って遊んでるんだ!!今夜も野宿じゃねえか!!」

遊び人「ずびばぜん!!」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 22:44:00.15 ID:ZQcnUKE60
勇者「今度こそ財布係は俺がやるからな」

遊び人「そしたらギャンブルができなくなっちゃうよ!!」

勇者「だからだろうが!」

遊び人「財布なんて持ってたら戦闘に集中出来ないよ?」

男「関係ないだろ」

遊び人「敵にジャンプして斬りかかろうとしてる時に」

遊び人「『やべ、財布落としちゃうかも……』」

遊び人「って心配になっちゃって空中で後ろ振り返ってる間に返り討ちにされちゃうかもしれないんだよ?」

勇者「混乱呪文もかけられてないのにわけわからないことを言うのはやめてくれないか」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 22:45:27.02 ID:ZQcnUKE60
勇者「もう俺が管理するからな」

遊び人「ええー!!」

勇者「しつこいな!」

遊び人「勇者が管理することになって、勇者が寝てるスキに私がこっそりお財布取ってギャンブルしに行ったら本当に信頼関係終わるじゃん?」

遊び人「私が管理してれば、ギャンブルに行ってもまぁ私の管理の元だからセーフじゃん?」

勇者「それもはや管理してないからな。あとその発言でもはや信頼関係終わりかけてるからな」

遊び人「だ、大丈夫だって。次こそは必ず倍にして信頼を取り戻すから……」

勇者「ちっとも懲りてねえな!!」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 22:47:07.62 ID:ZQcnUKE60
〜ほらあな〜

遊び人「ふぅー、よっこいしょっと」

勇者「確かに寝心地はよさそうだ。町からそう離れてもいないし。魔物には気をつけないといけないが」

遊び人「町の片隅で寝た方がよかったかなぁ」

勇者「盗人の多い街だ。治安も悪い。ここの方が一夜を凌ぐには安全かもしれない」

遊び人「たしかに。お財布の中身もすっかりスラれてしまったし……」

勇者「お前がギャンブルでスッたんだろうが!!」

遊び人「ひぃっ!」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 22:52:23.08 ID:ZQcnUKE60
遊び人「洞窟の中は暗いね。身体も寒いなぁ。特に懐が寒いなぁ」

勇者「こっちのセリフだ」

遊び人「どうにかならないかなぁ」

勇者「ったく、しょうがねえな」

勇者は立ち上がり剣を構えた。

遊び人「勇者様、何を」

勇者「『太陽を追い求めし夜の女王よ。その黄金の輝きの一部を我が剣に授けよ!!』」

勇者「『アカリン』!!」

勇者は洞窟照らしの呪文を唱えた!

遊び人「…………」

勇者「しかし全く明かりは伴わなかった」

勇者「こんなの子供でも使えんのに。これだから呪文は嫌なんだよ」

遊び人「いや、ちゃんと発動しているみたいだよ。剣の先を見て」

勇者「ほんとだ。蛍光性の昆虫並に微かに光ってる」

遊び人「暗いだなんてわがまま言ってごめんね。勇者の気持ちだけで太陽に照らされたような気分だよ」

勇者「そういうやさしさは心が曇るからやめて」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 22:56:07.49 ID:ZQcnUKE60
遊び人「洞窟の中に魔物はいないようだけど、草原からは生き物の気配がするね」

勇者「交代で見張りをするか?」

遊び人「私は多分寝ちゃうよ」

勇者「俺も多分寝ちゃうと思う」

遊び人「詰んだね。全滅だ。タラララタラララタラララタララターラララー」

勇者「まあそんなに危険な魔物もいないだろ。どこぞの勇者様が魔王を葬ったこのご時世だしな」

遊び人「誰も魔王の亡骸を見ていないそうだけど」

勇者「亡骸よりも生体だよ。人間の住むどの場所にも現れなくなったし、実際瘴気も随分晴れたじゃないか。魔物の数もずっと少なくなった」

遊び人「そうだけど……」

勇者「死んでるかニートしてるかわからん魔王の話より、今は目下の心配をしよう。小さな魔物でも寝込みを襲われたらどうしようもない」

勇者「なんなら、今日いた町で俺に声をかけた商人の女の子が寝込みを襲ってくるかもしれん。やくそう買った時にめっちゃ俺の手握ってお釣り返してきてたもん」

遊び人「うわっ……男性って常に惑わしの呪文をくらってるの?というか、やくそう余ってるのに買ったのはそういうわけだったのね!」

勇者「なんだよ。やきもちかよ」

遊び人「はぁ……感心するわ」

勇者「なんだよ。お前こそどうなんだよ」

遊び人「私こそ心配が付き物ですよ。私の魅力にあてられた男性が、夜の魔物となって襲ってこないか心配で心配で。たった今もそばにお釣りニギニギ男Aがあらわれていますし」

おつりニギニギ男Aがあらわれた!

しかし、かんちがいをしている!

勇者「何エンカウントした風にしてるんだよ。かんちがいってどんな異常状態だよ」

遊び人「商人の女の子はにげだした!」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 22:57:26.20 ID:ZQcnUKE60
勇者「何言ってんだ。俺はその辺は紳士だからな、大人なバニーガール様にしか手を出さないと決めてるんだ」

遊び人「ふーん」

勇者「お前もどうしても俺に身も心もニギニギされたくなったら、バニースーツを着るんだな」

遊び人「絶対着ないし!!」

勇者「いつも思うんだが、どうして村娘みたいな格好をしてるんだ!!」

遊び人「恥ずかしいから着ないって出会った時に言ったじゃない」

勇者「どうして遊び人という職業でありながら、バニーガールの格好をしないんだぁあああああ!!!!」ドン!!

遊び人「いきなり激昂しないでよ!!」

勇者「一度でいいからバニーガールの格好をしてくれ!!頼むぅううう!!!」

遊び人「懇願に変わってるじゃない!!」

勇者「拝むだけ!!拝むだけだから!!さきっちょ拝むだけだから!!」

遊び人「とかいって全部拝む気でしょう!!絶対イヤ!!恥ずかしい!!」

勇者「恥じらいがあるバニーガールは加点だぞ!!」

遊び人「そんなに好きなら勇者が着ればいいじゃない!!」

勇者「……ハッ!」

遊び人「なに気づいたみたいな顔してんのよ!!それこそ絶対やめてよね!!」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 22:59:12.75 ID:ZQcnUKE60
遊び人「はぁ…はぁ…」

勇者「バニースーツ論争の続きはまた明日だな……」

遊び人「もうしません」

勇者「疲れたし俺は寝る。見張りは頼んだ。そして明日論争の続きをしよう」

遊び人「そしたら私は意地でも二度寝するからね」

勇者「だったら俺は三度寝してやるよ」

遊び人「じゃあ私は四度寝するよ」

勇者「どうぞどうぞ!!」

遊び人「本当にするよ?」

勇者「言ったからにはやるんだからな」

遊び人「わかった」

勇者「まあ四度寝してる間にバニースーツを着せるけどな」

遊び人「…………」

勇者「おやすみ」

遊び人「…………」

勇者「…………」

遊び人「…………」

勇者「いや、着せないよ?」

勇者「冗談だって!!ごめんって」

遊び人「…………」

勇者「わかった!着せないし二度寝していいから!!」

勇者「だからそんなに怒らなくても……」

遊び人「……zzz」

勇者「もう寝てんのか!」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:00:26.28 ID:ZQcnUKE60
勇者は見張りをした。

勇者は眠気をこらようとふんばっている。

勇者は考えた。

この眠気で魔物に襲われたら、どうせまともに戦えまい。

だったら寝ても変わらない。

寝てしまおう。

いや、寝ては駄目だ。

仲間を守る使命がある。

しかし、眠るのは気持ちがいい。

寝て体力を休めて、全力で魔物と戦おう。

そうしよう。

勇者「……zzz」



魔物の群れがあらわれた!

遊び人はのどをくいちぎられた!

勇者ははらをひきさかれた!

パーティは全滅してしまった!
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:03:35.88 ID:ZQcnUKE60
遊び人「ぶはっ!!」

遊び人「はぁ……はぁ……」

勇者「生き返ったか」

神官「お目覚めですね」

遊び人「あれ、昨日たしか洞窟で寝て……」

遊び人「うわっ!この神官めちゃ身体でかい!!」

神官「ふふふ」

遊び人「昨日寝て、そして、たしか、ええと……」

勇者「いったん外に出るぞ。遊び人が死んでいた3日間について話す」

遊び人「3日間!?」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:04:49.55 ID:ZQcnUKE60
TIPS

精霊の加護。

勇者の身体の中には精霊が宿っている。

勇者一行のパーティメンバー(4人まで)は、戦闘・事故などで死んだ瞬間、身体が棺桶の中に即座に保管される。

その間、パーティの魂が現世を離れぬよう、精霊が魂を勇者(生体・死体問わず)の近くに束縛し続けてくれる。

パーティーメンバーが全員死亡した際には、魂は神官のもとに届けられ、精霊の宿りし肉体を持つ勇者のみ肉体を再生、魂と肉体の結合をさせられ蘇る。

蘇った勇者は、金銭を神官に支払い、仲間の蘇生を依頼する。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:08:01.88 ID:ZQcnUKE60
勇者「俺が見張りをしていたあの夜、見たこともないほどの巨大な魔物が現れた。必死で戦ったんだが、あらゆる剣技も呪文も通用しなかった」

勇者「もしかしたら、あれが行方をくらませた魔王だったのかもしれない……」

遊び人「勇者……」

勇者「俺だけ教会で復活し、遊び人の蘇生代金を貯めながら旅を続けた。目的の村にたどり着き、またこうやってお前と無事再会できた。これからもよろしくな!」

遊び人「……そうだったのね。ごめんね、勇者」

勇者「気にすんなって。失敗や寝落ちは誰にでもあるさ」

遊び人「ありがとう。勇者、やさしいね」

勇者「へへ、まぁな」

遊び人「ところでさ、どうしてさっきから目を合わせないの?」

勇者「へへ、まぁな」

遊び人「…………」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:10:09.08 ID:ZQcnUKE60
遊び人「それにしても、この村すごいね!!」

遊び人「巨漢しかいないよ!!」

勇者「ああ。あそこの武器屋の前でケバブを食ってる商人もデブ、宿屋の前で飯食ってる魔法使いもデブ、飯屋に並んでる間に飯を食ってる村人もデブだ」

遊び人「そしてここで寝転びながら話を聞くナイスバディなレディ」ゴロン

勇者「そして逞しいボディで寝転ぶダンディーな勇者」ゴロン

遊び人「もう一度聞いていい?私が死んでる間に何があったの?」

勇者「一緒に洞窟で死んで、教会で俺だけ蘇ったあと、たまたまこの村に向かう商隊を見つけたんだ」

勇者「夜で暗かったのもあって、最後尾の馬車に遊び人の棺桶をくくりつけてな。俺もその上に座って、優雅に星空を眺めながら」

勇者「いや、その商隊のあとを見失わまいとお前を必死で引きずりながらこの村に向かったんだよ」

遊び人「今の言い直しは聞き逃せないんだけど?」

勇者「なんにせよ、よかったな。早速最初の目的地について」

遊び人「なんだかモヤモヤするけど……」

遊び人「あのさ、勇者。もしかしなくても、この村って」

勇者「ああ。俺達が目指していた最初の地」

勇者「『暴食の村』だ!!」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:11:25.14 ID:ZQcnUKE60
お斎(オトキ)。

ある東洋の国では、僧侶は飲食を謹んで心身を清め、神事を行っていた。

口にするのは精進料理という、殺生や煩悩への刺激を割けることを目的とした質素な食事であった。

七七日(なななぬか)法要の際の食事においても、お斎が振る舞われる。

亡くなった者は七日ごとに閻魔大王の裁きを受け、四十九日目に極楽浄土に行けるかどうかの判決がくだされる。

法要終了後、遺族は僧侶や参列者に対する感謝を示し、また故人を偲ぶ目的をもって、お斎を振る舞う。

生死・宗教を象徴する場においても、食事は重要な意味を持つ。

食すだけが食事ではない。

食事を控えることでしか、避けられない罪があるのは、この国だけの話ではない。

【第一章 暴食の村 『胃袋を開く鎧』】

いただきますと、ごちそうさまを、忘れない。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:12:47.14 ID:ZQcnUKE60
遊び人「ここはなんて名前の村ですか?」

案内人「ここは…モグモグ……ムシャムシャ…」

案内人「このお肉は……ラム肉!!」

遊び人「あの、この村はなんて名前の村ですか?」

案内人「このラム肉は……モグモグ……ゴクリ……」

案内人「この肉は、ラム肉!!」

遊び人「ラム肉じゃなくて!この村の名前は!?」

案内人「このラム肉の名前は……」

遊び人「だーかーら!」



勇者「おう、遊び人。道具買っておいたぞ」

遊び人「ねえ勇者。この村の人常に何かしら食べ物口にしてない?あの道具屋も、武器屋も、宿屋の店主も何か頬張ってたし」

勇者「そうだなぁ」ムシャムシャ

遊び人「勇者もじゃないの!なんなのよ!」

勇者「この豚肉はハムといってな……」

遊び人「もうその下りいらない!!」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:15:12.26 ID:ZQcnUKE60
遊び人「ここは今では暴食の村よ呼ばれる場所でしょ!自分が何を口にしてるかわかってるの!?」

遊び人「7つの大罪の一つ『暴食』に関わる大罪の装備によってこの村の食物に影響が起きたのよ」

遊び人「この村の人を見てよ。みんなぶくぶくぶくぶく不健康に肥ってる。数年前まではこんなんじゃなかったって聞いたよ?寿命に影響をあたえるほど不健康なものが生み出されてるに違いないわ!」

勇者「まあまあ。お前にはこれやるから」

勇者は乾いたパンを手渡した。

勇者「大罪の力は寿命を削る。忘れちゃいねーさ。だから、お前は安心してこれを食え。3つ前に寄った村で買ったものだ」

ボロボロ…

遊び人「…………」

遊び人「……勇者はどうすんのよ」

勇者「この村の飯は、美味いくせにかなり安いんだ。普通にここのを買って食うよ」

遊び人「どれだけ身体に作用を及ぼすかも知らずに?」

勇者「俺は酒も飲まないし、葉巻っていうやつも吸わない。あれだって健康に悪影響与えるって話だぜ?」

勇者「それらをやってないんだから、ちょこっと飯食うのも変わりないだろ」

遊び人「駄目よ!!」

勇者「食料だって限られてるんだ。以前の村で入手した食料は全部お前にやる。俺の分はない」

勇者「俺がここで飲まず食わずで餓死して死んだらそれこそ意味ないだろ?空気を吸って死ぬより毒を食らって生きるさ」

遊び人「でも……」

勇者「話してたらまた腹減ってきた。あの飯屋に入るぞ」

遊び人「ちょっと!!」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:16:25.85 ID:ZQcnUKE60
勇者「うわぁ、うまそう!!なんだよこのコッテリと乗った油は!この肉たったの30Gだぜ?」

遊び人「…………」ゴクリ

勇者「そんじゃ、いただきまーす!」

遊び人「いただきます……」

勇者「う、う、うめぇ!!!」モグモグ

遊び人「…………」パサパサ

勇者「こりゃあ。こりゃあ酒とか葉巻がやめらんないやつの気持ちもわかるぜ!!やめたくてもやめられねーんだな!」

遊び人「…………」パサパサ…

勇者「くぅー!!最高!!大罪の力バンザイ!!!」

遊び人「…………」

勇者「わ、わりぃ。今のは、不謹慎だったな。わりぃ……」

遊び人「一口」

勇者「えっ?」

遊び人「ひとくち!」

勇者「あー、どうぞ?」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:19:17.25 ID:ZQcnUKE60
遊び人「う、うう!?」

勇者「うう?」

遊び人「うっ!!」

遊び人「うんまいぃいいいい!!!なんじゃこりゃ!!」

勇者「だろ?」

遊び人「うう……おいしいよお……」モグモグ…

勇者「旅の時はひどいもん食ってたからな」

遊び人「こんな美味しい食事食べたのいつぶりだろう」

勇者「ああ。俺も2日ぶりくらいかもしれん」ムシャムシャ

遊び人「めっちゃ近いじゃん……何私が死んでる時にうまい飯食べてるの……」ムシャムシャ

勇者「…………」ムシャムシャ

遊び人「蘇生代金たまるの遅れたのって……」

勇者「マスター、こんばんは。ここのご飯最高ですね」

遊び人「話を逸らすな!」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:19:56.80 ID:ZQcnUKE60
店長「へへっ、どうも。あんたら冒険者か。この村に来るのは初めてか?」

勇者「はい。商人の見習いとして今は色んな街を巡っています」

店長「へー、珍しいね。だったらこの村に来たのは幸いかもな、食料ビジネスならすぐに手をつけられるぞ」

勇者「こんな美味しいご飯を食べたのは初めてかもしれません」

店長「しばらく前まではこの村も普通の質素な飯しかない街だったよ」

遊び人「食物が異常に成長をし始めたとお聞きしました」

店長「そうなんだよ。みんな不思議がってたな。魔王がいなくなって瘴気が薄れたからだってみんなは信じてる」

店長「でも俺は変だと思うんだよな。この村以外じゃそんな話聞かないからな」

店員「タイミングとしても、魔王が姿を消す前から飯は異常に美味く、育つようになりはじめていた。家畜も野菜もな。人間もぶくぶく肥えてきはじめてた。俺自身野菜を栽培してるからわかるんだ」

店員「俺は思うんだ。あいつらが来てから、この村に変化が起き始めたって……」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:20:38.61 ID:ZQcnUKE60
遊び人「あいつら?」

店員「窓の外を見てみろよ。あそこに豪邸があるだろう?」

勇者「富豪が住んでるんですか?」

店員「農家の家だよ」

遊び人「農家ってそんなに儲かるんですか」

店員「実は、元商人の旅人だったんだ。数年前にこの村にやってきたんだ」

店員「肥沃とはいえないこの土地で、やつらが食物を育て始めた時はみんなが笑ったよ。けれど、この村で育てたものは途端にぶくぶくと育ちはじめた」

店員「ガリガリのあばらの浮いたやつばかりだったこの村も、今じゃぶくぶくの人間ばかりだ。これじゃあどっちが家畜かわからんね」

店員「今では冒険者もよく訪れるようになった。そしてみんなここが気にいって居座っちまう。本来の旅の目的も後回しにしてな」

店員「生きるために食べるか、食べるために生きるか、それが問題だ。って話だよ」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:21:57.45 ID:ZQcnUKE60
遊び人「勇者、間違いないね」

勇者「ああ」

遊び人「この村が7つの大罪の地の1つ『暴食の村』と化してしまったのは、富豪が持つ大罪の装備による影響のせい」ムシャムシャ

遊び人「暴食の装備を持つ者があの屋敷にいる。そして、装備はこの村の食料に影響を与え始めた」ムシャムシャ

勇者「ああ。そしてこの村の食べ物をたべた者は飯中毒になる」ムシャムシャ

勇者「自分の食欲もコントロールできず豚となり下がる」ムシャムシャ

遊び人「哀れな末路だね」ムシャムシャ

勇者「自分が食べているものが麻薬だとも知らずに」ムシャムシャ

遊び人「寿命を減らすような危険なものだとも知らずに」ムシャムシャ

勇者「きっと知っても尚やめられないほどに中毒になってるのだろう」ゴクリ

遊び人「胃袋に理性を支配されてしまうのね」ゴクリ

勇者・遊び人「おかわり!」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:22:49.44 ID:ZQcnUKE60
勇者「今すぐにでもあの屋敷に行こう」

遊び人「なんて言って入れてもらうの?」

勇者「大罪の装備をください」

遊び人「私なら断る」

勇者「それじゃあどうすりゃいんだよ」

遊び人「記事書きのふりをして、商売成功までの道のりをインタビューするとか?」

勇者「本人たちは、自分が持つ装備がどんな影響を与えるか知っていて商売をはじめたに違いない。聞かれたくないんじゃないか」

遊び人「こっそり屋敷に入って、盗むしかないのかなぁ」

遊び人「それにしても、どうして食料ビジネスなんか始めたんだろうな。金持ちになりたかったのかな」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:23:51.15 ID:ZQcnUKE60
勇者「わかった!」ポロ

遊び人「ご飯が口からこぼれてるよ」

勇者「富豪は、世界征服を目論んでいるんだ。暴食の装備の強大な力を使って食物を育て、人々の胃袋から支配し始めたんだ」

遊び人「嫁志願者みたい」

勇者「それか、極度の肥え専で、痩せてる人を根こそぎ世界から消すつもりなんだ」ポロ

遊び人「また食べ物こぼしてるよ」

勇者「目的は何にしろ、まずはストーキングをして正体を見極めないとな」

遊び人「それしかないかぁ」

勇者「ああ。やっと冒険らしくなってきたな」ムシャムシャ

遊び人「うーん?」ムシャムシャ
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:25:07.85 ID:ZQcnUKE60
勇者「飯を食い終わったらさっそく行こう」

遊び人「えー、いきなり?」

勇者「いや、食べたあと動くのはきつい。食べて寝たあとに出発するぞ」ムシャムシャ

遊び人「それには賛成!」ムシャムシャ





〜数日後〜

遊び人「ムシャムシャ」ムシャムシャ

遊び人「ムシャムシャ」ムシャムシャ

遊び人「ムシャムシャ」ムシャムシャ

勇者「よお、交代の時間だ。調子はどうだ?」

遊び人「やっぱり森の奥に行ってるみたい。ところでさ」ムシャムシャ

勇者「ん?」

遊び人「これ見張りっていうのかな?屋敷の近くに寝転んでご飯食べながら眺めてるだけじゃん」

勇者「まあまあ、事前調査が何より大事だ」

遊び人「確かに行動パターンは読めてきたね。屋敷に住むのは召使を除いて、男二人と女一人」

遊び人「あいつらの向かっている森の奥に行ってみましょ。農園や牧場以外に、何かあるかもしれない」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:26:02.17 ID:ZQcnUKE60
勇者「ああ、出発の時だな!!」

勇者「よいこらしょっと!」ドデン!

勇者「うう、きつい……」

遊び人「勇者、ちょっと肥った?」

勇者「なんだよ。そういうお前こそふと」

遊び人「なんですってえええ!!!」

遊び人「今なんて言おうとしましたぁあああ!!!?」

勇者「えっと、ふとっ……」

遊び人「言っちゃダメでしょおおおお!!!!」

勇者「理不尽!!」

遊び人「3大女性に言っちゃだめワードがなんですからね!!」

勇者「覚えておくよ……」

遊び人「さ、出発するよ!!」ドデン

遊び人「うぐっ……」

遊び人「な、なんのこれしき!」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:28:26.65 ID:ZQcnUKE60
勇者「あっ、その前に、準備を整えないと」

遊び人「準備?もう道具もってるじゃん」

勇者「お前の装備がもうぼろぼろだろ。ずっと同じのを着まわしてる。これじゃ貧しき村娘Aにしか見えん。新しい防具を買ってこい」

遊び人「でも、私の蘇生にも使ってもうほとんどお金ないんじゃ」

勇者「飯屋の手伝いを少ししてたんだ。だから手持ちにちょっと余裕ができた」

遊び人「えっ……うそ……」

勇者「さあ、行ってこい」

遊び人「勇者……」ジーン…

遊び人「本当にありがとう!!」

勇者「いいってことよ」

遊び人「行ってくる!!」タッタッタ…

勇者「さっき見つけた防具屋に、格安のバニースーツが売っててな。値段の割に艶がいい感じで……おーい!!そっちじゃない!!そっちは普通の防具屋だ!!おーい!!」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/01(火) 23:29:58.08 ID:ZQcnUKE60
遊び人「見張りの交代をしてる時に、そんなことしてたんだね。情報収集だけじゃなかったんだね。まぁ私も薬草とか拾い集めたりしてたけど」

遊び人「ふふっ、うれしいなぁ。おじゃましまーす」

防具屋「いらっしゃい」

遊び人「(……巨漢の女主人だ)」

遊び人「どうしようかな。安くて、頑丈で、ちょっとおしゃれなのがいいな」

遊び人「うーん、迷うなぁ」

遊び人「…………」



遊び人「よし。この皮のドレスください」

防具屋「あいよ」

遊び人はお金を支払った。

防具屋「さっそく装備していくかい?」

遊び人「はい!」

遊び人は皮のドレスをそうびすることができない!

防具屋「おっと、装備できないようだね」

遊び人「えっ」
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