勇者「遊び人と大罪の勇者達」

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129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 12:37:10.99 ID:ypTt4u9i0
戦士が蛇のような動きで近づいた。

戦士「喰らえ!」

男は魔法使いに手をかざした。

魔法使い「『焼き尽くし給へ!!』」

魔法使い「!?」

中断していた呪文が強制的に発動され、火の玉が戦士に浴びせられた。

戦士「ぐぉおお!!!!!!」

魔法使い「戦士!!!」

処刑人「ははは。仲間割れでも起こしたのかな?」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 12:39:48.96 ID:ypTt4u9i0
また誤字…謎の男は処刑人(仮)という認識で。
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 12:40:45.80 ID:ypTt4u9i0
数分の後。

あたり一面の木は倒れ、焼け焦げていた。

戦士と魔法使いは倒れ、暴食の勇者がぼろぼろの姿で立っていた。

暴食「なんてやつだ……最大雷撃呪文が効かないなんて……」

「噂には聞いていたけど、精霊の加護を壊されているんだろう。勇者としての特権をほとんど失ったようなものじゃないか」

「俺がそこにいる仲間を殺してしまうかもしれないよ?そろそろ装備したらどうだ?」

「選ばれたんだろ。暴食の鎧に」

暴食「なるほど、それが目当てか」

「どこにある?」

暴食「……食べちまったよ。デブだからな」

「だったら、全部吐き出しやがれ!!」

男は暴食の勇者を戦闘不能にさせた。

処刑の王国に連れ去り、拷問を加えた。

暴食の勇者達は、全滅してしまった。
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 12:41:21.64 ID:ypTt4u9i0
遊び人「どう、かな?」

勇者「おお」

勇者「おお、おお!」

遊び人「なによ」

勇者「おお、おお」

遊び人「おおってなによ!はいかいいえでいいから答えてよ!」

勇者「はい!はいはい!!」

勇者「似合うじゃん!!」

遊び人「えへへ、どうも」

遊び人 E 皮のドレス(Sサイズ)
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 12:42:39.14 ID:ypTt4u9i0
遊び人「ふんふーん。こんなおしゃれな装備着て冒険できるのいいなぁ」

遊び人「ふふふんふーん」

勇者「楽しそうで何よりだ」

遊び人「あのさ、勇者」

勇者「ん?」

遊び人「今回さ、ご飯我慢してまで戦ってくれてさ……」

遊び人「その、あ……」

勇者「あ?」

遊び人「あ、えーと」

遊び人「あ……」グゥ〜

勇者「ぐふっ!」

遊び人「…………」

遊び人のこうげき

勇者に5のダメージ

勇者「いって!!」

遊び人「お腹鳴ったくらいで笑わないでよ!」

勇者「だからって殴るこたぁないだろ!」

遊び人「虫の居所も悪くなるわよ!」

勇者「それは腹の虫かな?」

遊び人「……こんの馬鹿勇者!!!」

あ、から始まる言葉は、いつも言いづらい。
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 12:43:54.98 ID:ypTt4u9i0
【暴食の勇者の思い出】

〜旅の途中の思い出〜

戦士「またこの乾いたパンもどきか」

暴食「値段が安い。腹にもたまる」

魔法使い「テンションあがんないわー。あんたも抗議しなさいよ」

僧侶「ふふ、私はこれでかまいません。修道院にいた頃も、食事は質素でしたから」

魔法使い「僧侶がそんなんだから、うちらの勇者は食費を全部武器と防具にまわすんだよ」

暴食「必要最低限に全てを振り分けてるだけだ」

暴食「宿も道具も武具も食事も、全て生きるために必要なものだ。それ自体が目的となってはいけない」

魔法使い「はいはい。大人しく食べるわよ」ボリボリ…

僧侶「いただきます」モグモグ
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 12:44:27.03 ID:ypTt4u9i0
〜魔域の思い出@〜

暴食「戦士と魔法使いに仮死草を飲ませた。俺が戦士を背負うから、僧侶は魔法使いを背負ってくれ」

僧侶「わかりました」ニコ

暴食「…………」

暴食「お前はいつもそうだな」

僧侶「なんでしょう?」

暴食「何も文句を言わない。黙って受け入れる。腹が減ったとすら言わない」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 12:45:11.99 ID:ypTt4u9i0
暴食「お前は不思議な存在だ」

僧侶「天然ですか?天然って言われるのは僧侶の宿命です」

暴食「まぁそれもあるんだが」

僧侶「やっぱりありますか」

暴食「お前は不満を言うべきところで言わない。僧侶という職業のものはみんな、不満を吐くべきところで吐かず、悲しむところで何ともないような表情をする義務でもあるのか」

僧侶「人それぞれだと思いますが。あっ、あの紫色の雲、鳥の形みたいですね」

暴食「そういうところだ。わざとらしい。人間らしくしてみろ」

僧侶「人間らしくですか」

暴食「何でも言ってみろ」

僧侶「お腹がすきました」

暴食「焼き焦げたからすの死骸ならある」

僧侶「食べていいんですか」

暴食「魔物の肉もあるが、魔物は食べないんだろ」

僧侶「食べますよ」

暴食「なんだと?」

僧侶「戦士さんと魔法使いさんの体力の減りのほうが早かったものですから。私が食べる分を少し減らそうと思ったんです。魔物の肉はそれなりのエネルギーをたくわえていますし」

暴食「僧侶という職業だから、魔物を入れることに信念上の抵抗があったのかと……」

僧侶「前線で戦う仲間を後ろからただ癒やすだけ。それが僧侶の務めで、できることの限界ですから」
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 12:46:26.02 ID:ypTt4u9i0
暴食「魔物の肉だ。魔法使いの火で炙ってあるから、食べても腹はくださない。多分」

僧侶「では、ありがたく」

僧侶「いただきます」

僧侶は魔物の肉片を口にした。

暴食「どうだ感想は」

僧侶「…………」

暴食「はは、なんだその苦そうな顔は」

僧侶「私は我慢して動物の死骸を食べていたつもりでしたが、みなさんも中々魔物を食すのに我慢されていたようですね。戦士さんの表情を見てある程度察していたつもりでしたが」

暴食「やっぱり我慢してたんじゃないか」

僧侶「食べられるだけでありがたいことです」

暴食「俺はくそまずいと思うだけだがな」

僧侶「そうですか」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 12:47:46.85 ID:ypTt4u9i0
暴食「まずいって言ってみろって」

僧侶「言いたくないことはいえません」

暴食「僧侶だからか?」

僧侶「私だからです」

暴食「死ぬまで不満を言わないつもりか?こんな勇者について来たくなかったって言ってみろ」

僧侶「今日は一段と機嫌がわるそうですね」

暴食「そうだね。でも安心していい。間もなく僕も餓死するだろう。だから、僕への恨みを言うんだ」

僧侶「思ってもないことは、なおのこと言えません」

暴食「本心をさらけ出す相手がいないことは不幸な人生だと思わないか」

僧侶「本心をさらけ出してまで嫌われたくない相手がいる人生は幸せだと思いますよ。本心をさらけ出せることが幸せなことであればこそ」

暴食「……説教がましい僧侶だ」

僧侶「それも僧侶の務めです」

139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 12:51:45.22 ID:ypTt4u9i0
理解してくれる人がいるのなら、他(タ)の人にはむしろ誤解された方がいい。

〜魔域の思い出A〜

僧侶「……勇者様」

暴食「喋るな。酷い掠れ声だ。無駄な体力と水分を使うな」

僧侶「ついに、立てなくなりました。私を置いていってください」

暴食「それはできない」

僧侶「かっこうつけないでください」

暴食「違う。俺も立てなくなったんだ。戦士のやつ、装備を外しても重すぎる。これならもっと飯を節約したほうがよかったくらいだ」

僧侶「そうですか。それじゃあ戦士さんに加えて魔法使いさんを背負っていくことはなおのこと無理ですね」

暴食「ああ」

僧侶「だったら、一人であるき続けて下さい。4人がいなくなるより、1人が生き残るほうが良いでしょう」

暴食「無慈悲な僧侶だ」

僧侶「悲劇が起こった際に『神などいない』と言う者が多くいます。しかし、これはおかしな話です。もしも慈愛や道理や成就した願いで満ちたこの世界であったなら、人が神を信仰することはなかったと思うのです」

暴食「……以前のお前なら決して言わなかったような言葉だな。信仰を捨てたか」

僧侶「いえ、布教活動です。神などいないと嘆きたくなる世界だからこそ、人は神を信仰するのです」

暴食「俺は改宗する気はない」

僧侶「そうですか。嫌なら1人で去ってください」

暴食「無理だ」

僧侶「もしかして、一人でも立てませんか」

暴食「それくらいの体力は残ってる。だが、お前と二人じゃなきゃ立てないんだ」

僧侶「…………」

暴食「勇者という職業の信仰上の問題でな」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:03:41.40 ID:ypTt4u9i0
暴食「俺の両親を殺した恨みを糧に、今まで魔王討伐の冒険をしてきたが」

暴食「糧にするものを間違えたな。こんなことなら、お前らと、もっと美味いものでも食べておけばよかった」

僧侶「魔族に大切な存在を殺されたのはあなただけではないですよ。ここまでたどり着けたのも、あなたが必要なことだけを選んでくれたからです」

暴食の勇者は短剣を腰から抜いた。

暴食「こんな食えないものなんかに金を使うんじゃなかった」

暴食「俺らは、空腹に殺されるんだ」

暴食は諦めたように目を瞑った。

僧侶「…………」

僧侶「……私は、食料をずっと持っていました」

暴食は起き上がった。

暴食「なんだと!?」

僧侶「みなさんの命を救ってまで、私はこの食料を差し出すつもりはありませんでした」

暴食「自分のために隠し持っていたのか?」

暴食は裏切られた思いがした。

僧侶「でも、あなたは無意味なことをしてくれました。自分だけなら助かるかもしれないのに、一緒に残るという、愚かな選択をしました。あなたは命を差し出してくれたんです」

暴食「さっきから何をぶつぶつ言っている!早く出すんだ!」

暴食の勇者は僧侶を見た。

ぼろぼろの服に、痩せた身体に、ペラペラの道具袋がひとつ。

暴食「……僧侶、気でも触れたか」

隠し持つことなど、できるわけがなかった。

暴食は絶望し、再び横になり目を閉じた。

僧侶「喉とお腹を満たしたあなたは力を取り戻し、2人を背負って外まで再び歩き出すのです」

僧侶は1人、語り続けた。

確信した目を以て。
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:09:23.03 ID:ypTt4u9i0
〜魔域の思い出B〜

暴食「…………」

僧侶「…………」

暴食「…………」

僧侶「…………」

暴食「…………」

僧侶「…………」

暴食「…………」

僧侶「…………」

僧侶は何か言いたげに、力なき手を動かした。

暴食「……どうした」

僧侶は掠れた声で言った。

“い き て”

指先で暴食の勇者の唇にそっと触れた後、自身の身体を指差した。

そして、力尽きた。



暴食は、妄言だと思っていた僧侶の言葉の全てを理解した。



これから引きずっていかなければいけない仮死状態の仲間が二人。

命絶えた仲間が一人。

喉の渇きと空腹に飢え動くことのできない自分。

喉の渇きと空腹さえ満たせば動き出すことのできる自分。

一人の勇者はこの日、勇者であることを辞め。

人間であることを辞めた。



暴食の勇者の前に大罪の装備が現れるのは、それから1日後のことだった。
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:10:57.01 ID:ypTt4u9i0
暴食の勇者達 〜fin〜
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:13:09.77 ID:ypTt4u9i0
『英雄色を好む』

性欲のことを”色欲”という言葉で表すこともあるように、性は色で表現できる。

例えば

「愛する者との性の営みは神様からのプレゼント」

ということを表現したければ、2つの色を混ぜれば良い。

1つの色ともう1つの色が混じり合うことで、新たな色が生まれる現象は、2人の男女が重なることで新しい世界が開けるのに似ている。

ヴァージンロードで花嫁が着ているのは、純白のドレスだ。

自分の色を1つの色と混ぜる覚悟の表現だ。

1人と1人が出会うことで、新しい快楽や幸福感が生まれるだけでなく、それこそ、子供が誕生する。


「不特定多数との乱れた性欲は邪(よこしま)だ」

ということを表現したいなら、多数の色を混ぜればいい。

摩擦を繰り返した性器のように色は黒く染まるだろう。

恋愛が桃色で。

愛情が薔薇色ならば。

性欲は、何色か。

一つだけ、わかることは。

どうやら英雄は、邪な色であるということだ。

【第2章:色欲の谷 『快楽を刺激する鞭』】

とある勇者は、モテたくて、強くなった。
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:14:20.10 ID:ypTt4u9i0
遊び人「キャー!!!なに脱衣場に来てるのよ!!覗き!!最低!!!」

遊び人「しかも私の脱いだ服持ってるじゃない!!服泥棒!!変態!!」

勇者「ち、ちがうんだ!!さっき買ってきたバニースーツを置いただけなんだ!」

勇者「強制的にバニースーツしか着れない状況を生み出そうとしただけで、覗きでも服泥棒でも……」

つうこんのいちげき!

勇者に45のダメージ!

勇者「かはっ……」

遊び人「世界を救う勇者を名乗る者が、こんな変態で許されると思ってるの!」

勇者「英雄色を好むというだろ?これは俺の英雄である証明でもあるわけで……」

遊び人「だったら絵の具でも食べてなさい!!」

遊び人は化粧用の染料を勇者の口に突っ込んだ。

勇者「もががが……」

遊び人「そんなにバニーガールが好きなら、そういうお店でもなんでも行けばいいじゃない!!」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:15:18.37 ID:ypTt4u9i0
勇者「お、おはよう」

遊び人「…………」

勇者「街の人に聞いたら、目的の谷は近いそうだ。今日一日歩けばたどり着くって」

遊び人「…………」

勇者「き、昨日は俺もどうかしてたんだって。ちょっと夜外を歩いてたら、旅の商人がいたものだから。気になってみてみたら、それはそれは艶やかな……」

遊び人「…………」

勇者「冒険に出発しようか!!」



勇者と遊び人は途中で立ち寄った町を後にし、谷を登り始めた。

1日中無言であるき続け、日も傾いた時。

谷の中にある、歓楽名所にたどり着いた。
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:17:40.36 ID:ypTt4u9i0
案内人「あおっ///あおんっ!!よ、ようこそ///」

案内人「ここは、おおん!今では///『色欲の谷』と呼ばれているほど、おませな場所だよ///おおん!!!」

案内人「ここでは他人に危害を加えない変態行為や、お互いの合意に基づくありとあらゆる性的な行為が許されているよ!!おんっ!!」

案内人「男だけのパーティや、変態的な欲求を持つ金持ちが、最近ではよく訪れるよ!!オオン!!////」

勇者「……三角木馬に座ってる案内人は初めて見た」

遊び人「ここは無関係そうね。次の街いきましょう」

勇者「いやいや。どう考えても大罪の1つ『色欲』に関係してるだろ!」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:18:36.96 ID:ypTt4u9i0
勇者「ムッチムチの肉体をひけらかすかのように歩く女武道家。透き通るような衣装を着てほほえむ踊り子」

勇者「普通の街では見かけないような大人な店がいっぱいありやがる」

勇者「股間への誘惑が凄過ぎ……。ごほん。性器への刺激が強すぎる谷だぜ」

遊び人「今何を言い直したつもりだったの?前後で発言の酷さが変わってないんだけど?」

勇者「まあ俺は全然女子なんかにキョーミねーけどな」

遊び人「うわっ、出た。童貞呪文『ジョシキョーミネーシ、ダチトイルホウガタノシーシ』」

勇者「わ、わりいかよ。それにドウなんちゃらなんて言ったことないだろ!」

遊び人「ぷぷ。そうでしたね、魔法使い様」

勇者「転職した覚えもねーよ!」

遊び人「勇者も初めて私とあった時はかわいかったなー。ろくに目も合わせてくれなかったし」

遊び人「それが今では……」

勇者「目以外も合わせる仲になるとは」サワ

遊び人「髪の毛一本触れるな変態」ドム

勇者「うごお……」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:19:39.25 ID:ypTt4u9i0
宿屋「2名ですか?」

勇者「はい。同じ部屋で」

宿屋「あいよ。今夜はお楽しみだね」

勇者「はい!!」

遊び人のこうげき!

勇者「ぐはっ!何すんだ!」

遊び人「どうせこのあと回復すんでしょ」

勇者「ドSか」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:20:27.81 ID:ypTt4u9i0
〜夜〜

遊び人「ぎゃあ!!」

半裸の勇者があらわれた!

遊び人「半裸で風呂から出てくるなっていっつも言ってるでしょ!!」

勇者「やべやべ、ついな。でもよく考えてみろよ。服を脱いでわざわざ裸になったってのに、お湯を浴びて出たらまた服を着るってどういうことだよ?せめて半分は裸でいさせてくれよ」

遊び人「わけのわからないことを」

勇者「気持ちいいぞ!!お前にもオススメ……ぐは!!」

遊び人「そんなに半裸でいたいなら、半裸で冒険してなさいよ」

勇者「それは……いいかもなぁ///」

遊び人「教会の神官様にお金渡したら、この人にかけられてる呪いでも落としてくれるのかしら……」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:21:38.00 ID:ypTt4u9i0
遊び人「この余りものの布のシーツで部屋仕切るから。こっから先には立入禁止ね」

勇者「毎度のことながらうるさいな」

遊び人「私は勇者様の中に巣食う魔物が覚醒しないか心配で心配で」

勇者「まぁ夜の街に繰り出すかもしんないけどな」

遊び人「勝手にすれば」

勇者「やきもちやくなって。安心しろ。俺は一人でしかしないよ」

遊び人「キモいから!なにやさしい口調で言ってんのよ!夜の街に出ていっていいから!」

遊び人「はぁ、最初の頃の勇者はかわいげがあったんだけどなぁ」

勇者「またその話かよ」

遊び人「はじめて二人で宿に泊まる時に、部屋を別々にするかどうか聞かれたときよ」

遊び人「顔を真っ赤にして、別々って言おうとしてるあんたを遮って、同じ部屋にしてくださいって言ったらきょどりまくってて」

遊び人「お金の心配のことを話したら、あんた頭下げて、外で寝るなんて言い出して」

遊び人「純朴な勇者様はいずこへ……」

勇者「あの頃と何も変わってねえよ」

遊び人「少しも大きくならないまま?」

勇者「心はな。心の話だから、下半身を見て言うな」
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:23:11.45 ID:ypTt4u9i0
勇者「おはようございます」

宿屋「きのうは おあずけでしたね」

遊び人「何聞き耳立ててんのよ!!変態宿屋!!」

宿屋「ううっ///」

勇者「昨日はちょっと。仕事で疲れてるんだって言って背を向けて拒んでしまったんです」

遊び人「あんたも何いってんの?」




遊び人「今日も凄い景色ね。お店から連れ出してきた女性と手をつなぎながら、半裸で外をスキップしてる住人がたくさんいるわ」

勇者「住人じゃないんじゃないかな。きっと他の街に住んでいる人が多いよ。僧侶とか神官なんか特に、普段自分たちの街で抑えてる分ここで激しくやってるんだろう」

遊び人「失礼よ。あなたみたいな変態とは違うんです」

勇者「俺は大した変態じゃないさ。この谷のお店に入るとしても、普通のバニーガールのいるお店にしか……」

遊び人「あっ、戦士がおもてなししてくれる店があるみたいよ。男性限定で。行ってくれば?行きなさいよ。行きなさいってば」

勇者「押さないで!!押さないで!!」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:24:31.19 ID:ypTt4u9i0
遊び人「もう。何しにこの谷に来たんだか。これからどうするの」

勇者「大罪の装備について情報を集めながら、日銭を稼ごう。ほとんど手持ちもなくなっちまったからな」

遊び人「冒険者用のクエスト依頼が掲示板に張り出されているわね。どれどれ」

【指名手配犯】

・キラーパンツァー:下着どろぼう。四足歩行で人の敷地に入り、干してある下着を口に咥えて去っていくのが特徴。猫型の魔物の被り物をしている

・オナミック:宝箱の中に入り込み、下腹部を露出させた状態で自慰行為をしている。宝箱を開ける冒険者は基本的に男性なため、男色の可能性が高い。宝箱の底に穴を開けており、被ったまま高速で逃げる。

・パンチラの翼:天井の下でスカートを履いた女性に話しかけ、移動の翼を持たせるのが反抗手口。パンチラ目的と思われる。


<解決済>
ヤマタノオロチ?:近隣の街にて村娘が攫われる事案が発生。村娘が定期的に1人いなくなることから、古より伝わる伝説の竜の仕業だと村人は叫んでいる。
結果:近隣の街に済む富豪の息子の色男が女性をはべらせて囲っていただけであった。その人数は8人。八股の愚か者であった。
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:25:14.41 ID:ypTt4u9i0
遊び人「性にまつわる案件ばかりじゃない!」

勇者「他人への迷惑がかかる変態行為は禁止されてるからな。度を越したプレイに手を出してしまったんだな」

遊び人「案内人なんて変な椅子に座ってたけど、あれはいいの?」

勇者「仕事だからしょうがないだろ。痴漢も覗きも関係性によって罪かどうか決まる。夫が妻の尻を揉んでも痴漢にはならない。お客が嬢のエッチな姿を見ても覗きにはならない。だが、通行人が通行人に手を出したら変態行為だ」

遊び人「いつになく真面目に語るわね」

勇者「さて、変態を成敗して、稼いだお金でキャッキャウフフなお店にでも……」

「キャー!!どろぼう!!」

勇者・遊び人「!?」
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:26:10.45 ID:ypTt4u9i0
「ハフハフ!ハフハフ!アオーン!!!」

勇者「全裸の男が下着を咥えて四足歩行で走ってるぞ!!」

遊び人「ギャー!あれどろぼうなの!?それ以上の何かでしょ!!」

勇者「あいつがキラーパンツァーだな!!よし、捕まえるぞ!!」




勇者「止まれ!!」

キラーパンツァー「ガルルルル……」

キラーパンツァーがあらわれた!

遊び人「うう、直視できない……」

勇者「その下着を俺に返してもらおうか!!」

遊び人「あんたのじゃないでしょ!!」

キラーパンツァー「ジュルルルル……」

遊び人「ただの中年のおっさんじゃん……なんでこんなことしてんのよ……」
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:26:53.59 ID:ypTt4u9i0
キラーパンツァー「オハエラハオレノハマヲフルトイフノハ……」

遊び人「下着咥えて喋ってるから何言ってるかわかんないわよ」

勇者「お前らは俺の邪魔をするというのか」

キラーパンツァー「ウハレハハハノフハハヘイヒルノヲホヒトヘフ、オノヘホヒフヲヘイヘヘントシタハホデハフフホノイヒハア」

遊び人「勇者!!こんなわけわかんない変態さっさと倒すわよ!!」

勇者「生まれたままの姿で生きるのをよしとせず、己の恥部を平然とした顔で隠すその生き方」

キラーパンツァー「ヘオホホヒホオホフ。イハホホヒンノフハハヲホヒホホヘ。イヒハイホウヒイヒフホヒハヒハ」

遊び人「露出狂をやめて囚人服でも着るがいいわ!!」

勇者「獣にも劣る。今こそ真の姿を取り戻せ。生きたいように生きる時は来た」

遊び人「なんで下着咥え語がわかるのよ!!」

勇者「読める…読めるぞ!!」

遊び人「誰にも読めない石版を自分だけ何故か解読できるようなかっこよさはないからね!!しかも言ってる内容かなり真面目なんだけど!!」

勇者「ほひふほひはひひひょうひははふは?(こいつの下着に興味はあるか?)」

キラーパンツァー「ハァ、フヘフハハヒハハホウ(まぁ、くれるならいただこう)」

勇者・キラーパンツァー「ふぁっふぁつふぁっ!」ケタケタ!

遊び人「何であんたも話してるのよ!てかこっちなんで見て笑ってんの!?なんて言ったのよ!!」
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:27:52.51 ID:ypTt4u9i0
遊び人「くっ、見ながら戦いたくないという点で幻術魔法をかけられているようなものね……」

勇者「変態同士仲良くしたいが、こっちも日銭を稼ぐ運命を背負ってるんでね!」

ゆうしゃのこうげき!

すてみでたいあたりをした

しかし身をかわされた

遊び人「動きがはやいわね!」

キラーパンツァー「がるるる!!」

キラーパンツァーのこうげき

四足歩行をやめ、遊び人の前で仁王立ちをした。

遊び人「ぎゃぁっ!」

遊び人は咄嗟に目を瞑った!

遊び人「こ、殺すしかない!!殺すしかないわこいつ!!」

勇者「お、落ち着け!!てめぇ、女性の前で裸をさらけ出すなんてゆるさねえ!!」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:28:24.92 ID:ypTt4u9i0
勇者の攻撃!

勇者「れろれろれろれろくちゅくちゅくちゅ……」チュパチュパ…

勇者はキラーパンツァーのブツを直視しながら、口でいやらしい音をたてた。

キラーパンツァー「…………オェエエェエエエエエ!!!」

キラーパンツァーの口から下着がこぼれ落ちた。

キラーパンツァーのブツが縮んだ。

勇者「今だ!!」

勇者はすてみでキラーパンツァーにぶつかった!

キラーパンツァー「ぐぬぬ……!!」

キラーパンツァーは倒れた。

勇者「やっ……たぜ」

勇者「これが新技『精神的すてみ』だ……」

勇者は力尽きた。

遊び人「な、なにが起こったの!?さっきの音は何!?」

遊び人はおそるおそる目を開けた。

遊び人「なにこの惨状……」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:29:38.71 ID:ypTt4u9i0
〜翌日〜

遊び人「勇者、昨日はすごかったね!!谷中の女性から感謝されてたじゃない」

勇者「ふはは。くるしゅうない」

遊び人「下着なんて自分の分身みたいなものよね。それを盗まれたらたまったもんじゃないわ」

勇者「下着は分身か。いいこというなぁ……」

遊び人「そういう言葉でしみじみされても困ります」

勇者「はは、別にいいじゃねえか……!」

ピキン!

勇者「!?」

遊び人「どうしたの?」

勇者「感知した。指名手配犯が近くにいる」

遊び人「えっ?」

勇者「あの洞窟の入り口にある宝箱。人間が入ってる。オナミックってやつだ」

遊び人「凄い!!感知呪文覚えたの!?」

勇者「いや、そうじゃない。そうじゃないんだ……」

勇者は顔を物憂げに伏せ、過去を眺めるような面持ちでつぶやいた。

勇者「俺と同じ、変態のにおいがするんだ……」

遊び人「シリアスな感じで言うのやめてくれる?」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:30:42.74 ID:ypTt4u9i0
勇者「宝箱を上から抑えろ!!」

ガシ!

遊び人「どうすんの!?」

勇者「街まで引きずれ!!」

バタバタ!!

遊び人「ぎゃあー!宝箱が暴れだした!!」

勇者「地面と擦れて痛いんだろう!!だが、こんな変態なやつだ!!じきにその痛みに病みつきになるはずだ!!」

勇者と遊び人は宝箱を上からおさえながら街まで引きずり続けた。

砂利道の上を通った時の阿鼻叫喚は凄かったが、段々喘ぎ超えにかわっていった。
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:31:32.38 ID:ypTt4u9i0
〜さらに翌日〜

「いだぁああいいい!!!」

石でできた架け橋の近くを歩いている時のことだった。

勇者「どうされました!?」

町娘「うう……頭が架け橋の天井にぶつかって……」

町娘「お財布を落とされましたよって、男性に手渡されて。よく見たら羽根みたいなもので。そしたら風が巻き起こって身体が飛んで」

町娘「架け橋の下にいたもので、天井に頭がぶつかっちゃって……いたた……」

町娘「天井にぶつかった時、狂喜している声が聞こえました。痛みを堪えながら、犯人をひと目見ようと必死に目を開けると、一瞬のうちにいなくなっていたんです」

遊び人「パンチラの翼事件よ!!被害者は全員スカートを履いた女性で、渡されるのはいつも天井の下!この人もスカートを履いてる!!」

遊び人「天井に頭をぶつけさせることでパンチラの時間を増やし、ダメージも与えてすぐに追われないようにしているんだわ!」

勇者「…………」

勇者「失礼ですが、そのスカートの中身を拝見できますか」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:32:31.55 ID:ypTt4u9i0
遊び人「何言ってんのよ!」

町娘「いいですよ」バサリ!

遊び人「ちょっと!なにして!」

勇者「やはりな。見せパンだ。少し短いスカートだと、逆に履いている。俺も何度裏切られたことか」

遊び人「はぁ?」

町娘「ええ。見られるのは恥ずかしいもので……短パンを履いています」

勇者「犯人は彼女が天井にぶつかった時点で狂喜の声をあげていた」

勇者「つまりだ。普通なら舌打ちをするような場面で、相手の目的は達成されていたってことだ」

遊び人「どういうことよ」

勇者「考えろ……そして気づけ……共感しろ……全てを見落とすな」

勇者「移動の翼……スカート……天井……見せパン……」

勇者「…………!」

ピキン!
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:34:24.81 ID:ypTt4u9i0
勇者「感知した。そして、真実を捕まえた!」

勇者「そこだ!!!」

勇者は近くでSMプレイに興じていたカップルの鞭を奪い取り、架け橋に向かって叩きつけた。

オナミック「ぎゃあ!!!」

フックのようなものを使い天井に張り付いていた男が落ちてきた。

勇者「お前は、スカートの中身を見たかったんじゃない!!」

勇者「天井に激突し、痛みに悶える女の子を見たかったんだ!!特にスカートの中身が下着の女の子は、手でスカートを抑えるために頭は無防備になるからな!」

勇者「この外道が!!変態紳士の楽園から追放されろ!!」

勇者は青年のふくろから落ちた翼を大量に取り出し、移動の念を込め、青年の腕に抱えさせた。

勇者「翼をもがれた堕天使と成り果てろ!!」

青年は石橋に全身をうち、気絶した。
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:35:29.89 ID:ypTt4u9i0
〜さらに翌日〜


勇者「…………!」ピキン!

勇者「100m先、屋根の上。張り付いている男がいる。やつの狙いはなんだろうか」

勇者「考えろ……考えるんだ。」

勇者「……今日の天気は曇り。そういうことか!!」

遊び人「今ので何がわかったの!?」

勇者「雨の中に紛れて放尿するつもりだ!!きっと好きな女が家の中にいて、家を出た時に傘にかけるつもりなんだ!!現行犯で捕まえるぞ!!」

遊び人「何バカなこと言って……」

捉えられた犯人は、勇者の予測通りの犯行動機を述べた。




勇者「…………!」ピキン!

勇者「変態を感知した。相手は……旅の商人!!」

勇者「若い女性に渡す薬草だけ、脇に挟んでから渡してるに違いない!!」



勇者「……感知した!」ピキン!

勇者「……まただ!」ピキン!

勇者「……また変態がいる!」ピキン!


勇者は今までにないほどの恐るべき観察、想像、気付き、あらゆる力を総動員して輝かしい検挙をあげた。

勇者はこの谷の、英雄となりつつあった。
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:36:14.09 ID:ypTt4u9i0
勇者「…………!」ピキン!

勇者「この近くに変態がいる!!」

勇者「どこだ……どこに……。半歩分以内の距離に……」

勇者「なんだ、俺か」

勇者「わっはっは!!」

遊び人「…………」

「キャー!冒険者さまぁ!!」

「この間はありがとうございます!!」

「よかったら、今度私のお店にきてください!!無料でおもてなししますわ!!」

勇者「くるしゅうない!くるしゅうない!!ふっはは!!」

遊び人「さぞおもてのようですね。変態が許されるこの町で、変態を取り締まることで人気者になるなんて」

勇者「何日でも住んでいたい気分だ」

遊び人「ふーん……」

勇者「お金もだいぶたまったな。ちょっとした小金持ちだ」

遊び人「……何に使うの?」

勇者「そりゃあ、新しい装備買って、道具も揃えて、余った分は……」

勇者「…………」ニンマリ

遊び人「なによ今の顔!!」

勇者「ち、ちげーし!!」

遊び人「何が違うのよ!!」

勇者「じょじょじょ、女子なんてキョーミねーし!!」ドバドバドバ…

遊び人「凄い汗かいてるけど!!目が泳いでるけど!!」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:36:48.92 ID:ypTt4u9i0
〜夜〜

勇者「ふぅー、今日も1仕事終わった。宿に帰って飯でも……」

「勇者様よ!!」

「キャー!!素敵!!」

遊び人「…………」

「私達のお店にいらっしゃらない?」

勇者「で、でも」

「今夜はバニーガールのダンスショーもあるの。せっかくだから観に来てくださいよ!」

勇者「なっ!!?」

遊び人「…………」

遊び人「行ってくれば。私眠いから先に帰る」

勇者「遊び人?」

「ささ、行きましょ!!」

勇者「ちょ、ちょっと!!」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:37:54.06 ID:ypTt4u9i0
〜宿屋〜

勇者「遊び人が心配で途中で抜けてきちった。普通の病気は神官でも治せないからな」

ガチャ

勇者「遊び人、具合は大丈夫か?飯も食べなかったって宿屋のおっちゃんから聞いたけど」

勇者「おーい」

勇者「…………」

スースー…

勇者「寝息が聞こえる。もう寝てるのか。まだけっこう早い時間だけどな」

勇者「それにしても、いい夜だったなぁ。ご飯もスパイシーでうまかったし、バニーガールのダンスショーもすごかったなぁ」ポワーン

勇者「自分でも、いつからバニースーツ姿のとりこになっていたか思い出せないな。俺の故郷の連中は、みんな僧侶だの賢者だの、真面目な職業の女の子にばかりエロイ妄想ぶつけてたし」

勇者「明日もやるから来てねって言われちゃったよ。困ったな。大罪の装備も探さなくちゃいけないのに」

勇者「まあ、あしたのことはあした考えればいいか」

勇者「風呂入ってこようっと」



遊び人「…………」

遊び人「馬鹿勇者」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:42:05.32 ID:ypTt4u9i0

〜数時間後〜

コンコン

勇者「んっ?ノックされてる。こんな時間に誰だ?」

「宿屋の店主です。勇者様にお見えになりたいという方が来ています」

勇者「わかりました!今でます!」

イソイソ…

ハキハキ…

ガチャリ!

勇者「今下着姿だったので、ズボン履いてました!!それで時間がかかったんです!!」

宿屋「はて?それはさておき、お客様がお見えです」

勇者「お客様?」

宿屋「この谷の警護を司る方です。最近の勇者殿の活躍に、褒美を与えたいという人がおるんです」

勇者「クエスト報酬なら既に受け取ってるけど?」

宿屋「直々にとのことで……」

「まだか。あがらせてもらうぞ」

宿屋「す、すみません!勇者殿が一人で営み中だったようで……」

勇者「ほらーやっぱり!内心そう思ってたんじゃん!わざわざ予防線はったのに!!」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:43:53.70 ID:ypTt4u9i0
遊び人「んもう……なんなのよ。こんな遅くに」

「冒険者殿。ここのところの活躍ぶりは王宮にも知れ渡っている。よくぞこの街に住む変態を成敗してくれた」

遊び人「ぎゃあー!!!変態がいる!!兜と軽装の鎧身に付けてるけど絶対中身全裸の変態がいる!!裸メイルよ!!」

「変態とは失敬な。鎧を身に着けてる時点で全裸ではあるまい」

宿屋「失礼ですぞ、遊び人殿。この方は元々この国の罪人だったが、改心されて、今ではこの谷を魔物の残党から守ってくださっている」

「そういうことだ。人をみかけで判断するとは」

遊び人「……そうね、ちゃんと中身まで見なきゃ……!?」

遊び人は裸メイルの男をしっかりと見た。

遊び人「見える!!勇者、この人付いてるわ!!」

勇者「馬鹿!!何言ってんだよ!!」

遊び人「勇者にも付いてるものよ!!」

勇者「や、やめろって!!///」

宿屋「私にもついているものかな?」ニヤニヤ

遊び人「いや、あんたには付いてない」

宿屋「    」

宿屋の主は黙って部屋を去った。

勇者「おい、いくらなんでも暴言過ぎるぞ」

遊び人「何言ってんのよ。私には見えるって言ったじゃない!」

遊び人「あなた!!精霊を宿しているわね!!」

「ほほう、変わった能力の持ち主だな」

遊び人「ということは……」

色欲「ご明察の通り。元勇者だ」

色欲の勇者があらわれた。
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:46:44.16 ID:ypTt4u9i0
【TIPS】

処刑の王国は、他国から嫌われている。

勇者の通報に賞金がかけられた後になっても、勇者を処刑の王国に差し出そうというものは現れなかった。

世界を救うために人生を犠牲にしていた勇者を差し出したことが知れたら、裏切り者のレッテルを貼られることになり、処刑の王国以外では生きられなくなってしまう。

富豪の家に侵入して金品を奪う盗賊も、勇者を捕まえて大量の賞金を得ようなどと、割に合わないことは考えることもなかった。

勇者は、魔王の支配無きあとも世界の役に立つ、

元々戦闘能力が高いため、警護の仕事につく。

冒険で得た人脈や知識やルートを利用し、店を開く者もいる。

処刑の王国に正体を知られぬよう、勇者は己の身分を隠しながら生きるが、周囲の者は只者ではないと薄々気づくことになるのだった。

身を隠しながら生きる勇者もいれば、勇者であることを親しい住人に認めながら生きる勇者もいる。

いかなる場所においても、勇者が勇者であると、真に正体を知る存在は1人。

教会の神官である。
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:48:20.85 ID:ypTt4u9i0
暴食の勇者達を襲った男を、処刑人(仮)としばらく呼びます。
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:54:15.41 ID:ypTt4u9i0
〜とある町にて〜

処刑人「ここに勇者は運び込まれていませんか」

神官「…………」

処刑人「僕の友人がこの付近でなくなったと聞いていて。死体を蘇らせたいのです」

神官:ようけんはなんですか。どくをちりょうしますか。のろわれたそうびをかいじょしますか。

処刑人「聞き飽きたよそのセリフは。勇者に関することを聞くと途端に目が虚ろになりやがる」

処刑人は神官の頭を掴んだ。

神官の頭は混乱した。

処刑人を仲間だと思い込んだ。

処刑人「話せ。精霊の加護で復活させたものはいるか」

神官「御霊を身体に呼び戻したものはおります。勇者と、踊り子と、魔法使いと、僧侶のパーティです」

処刑人「いつだ」

神官「4年前です」

処刑人「くそが」

神官は気絶して倒れた。

処刑人「俺はな、お前ら神官を皆殺しにしたってかまわないんだぜ」

処刑人「お前らは無知だ。神官という職業に選ばれながら、神官のことを何も知らない。精霊殺しの陣を敷かれている魔王城であろうが、神官の元で復活できる方法さえある。お前らは死んだ勇者とメンバーをを蘇らせることしか考えようとしない」

処刑人は教会を去った。

処刑人「王国の魔術師どももまるで使い物にならん。対人間用の洗脳呪文を覚えてるやつなどろくにいない。勇者に限定した感知呪文ともなると、家ひとつ分の距離しか測れないやつもいるざまだ」

処刑人「この俺様が、いつまでこんなことを続ける必要がある」
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:55:23.67 ID:ypTt4u9i0
色欲「さぁ。好きなだけ食事を取ってくれ」

色欲「それとも、あっちのほうがお好きかな?」

長テーブルには、大勢の美女が座っていた。

遊び人「…………」

勇者「こ、これは一体」

色欲「君たちの活躍ぶりは有名だよ。お礼をしないといけないとみんな思っていてね。特に僕達防衛師は、谷の近くに住む危険な魔物の残党処理に手がいっぱいで、町中の治安まで守りきれないのさ。谷の魔物はめんどうくさいのが多いんだ」

色欲「僕個人も興味がある。君たちの話を聞きたい。何のために冒険していて、どうしてこの谷にたどり着いたのか」

勇者「なるほど」

遊び人「この女性の方々は?」

色欲「3人だけというのも味気ないだろう。みんな勇者様をひと目みたいと言っていた」

「勇者さまぁ!!」

「本物に会えるなんて!!」

勇者「えへ、えへへ」

遊び人「…………」ゴホン

勇者「…………」

色欲「さあ、宴のはじまりだ!!今夜は誰も寝かさないぞ!!」

裸メイルの元勇者は立ち上がり、乾杯をした。
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:56:03.35 ID:ypTt4u9i0
遊び人「裸メイルやめてほしいなぁ。目のやり場に困るよ。バニーガールもきわどいかっこうしてるし」

勇者「まったくだ。命を守る装備を舐めてるのか。ムカムカして腹がタちそうだ」ムラムラ…ムクムク…

遊び人「(どうして道具袋をひざの上に置いてるのかしら)」

踊り子「勇者者さまぁ!お話を聞かせて!」

勇者「ええー!聞きたい!?」

踊り子「やーん、こっちの女の子もかわいー!」

遊び人「ど、どうも……」

色欲「女ばかりで退屈か?呼べば男もいるぞ。屈強な男、細身の男、肥えた親父。どれがお好みかな」

勇者「こいつは脂ぎった肥えた親父が好みでしてね」

遊び人「何言ってんのよ!!けっこうです!!」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:56:37.29 ID:ypTt4u9i0
バニーガール「ちょっといい?おとなり失礼しまーす!」

勇者「バ、バ、バババ!!」

勇者「バー!!!!」

勇者「バニーガールだぁああ!!!!」

バニーガールA、B、C、D、Eがあらわれた!

バニーガール「お飲み物お注ぎしますわ」

バニーガールのこうげき!

勇者は胸元に見惚れている。

勇者「すぅううーーーーー」

勇者は大きく息を吸い込んだ。

甘い香りが体内に入っていくのを感じた。

体力が15回復した!

遊び人「あ、あのやろう……」
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:57:26.13 ID:ypTt4u9i0
踊り子「今夜はありがとう。またお話しましょうね」

遊び人「うん。またね」

バニーガール「おやすみ、勇者様」

勇者「にへ……にへへ……」

遊び人「こいつは」

色欲「満足いただけたようで何よりだ。僕も君たちの話が聞けて楽しかった。君たちの馴れ初めの話なんか特にね」

遊び人「馴れ初めというか!!腐れ縁のはじまりといいますか」

色欲「もう夜も遅い。君たちもここに泊まっていったらどうだい?部屋もあいてるよ」

遊び人「宿屋に大事な荷物とかもあるので。今日は帰ります」

色欲「そうか。それじゃあ、手短に。最後に本題に入ろう」

遊び人「本題?」

色欲「優秀な君たちに、頼みがあるんだ」



色欲「大罪の装備というものが盗まれた。君たちに、それを見つけて欲しい」

色欲「褒美として、その『色欲の鞭』をそのままわたそう」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:00:27.34 ID:ypTt4u9i0
遊び人「色欲の鞭、というものに選ばれたあの色欲の勇者様だったのね」

遊び人「それを信頼できる神官に預けていたけど、盗まれたとのことだった」

遊び人「こんな簡単に大罪の装備にたどり着くとはね」

勇者「ああ。でも、元勇者が見つけられないとなると、どうやって探せば良いのか」

遊び人「この谷が性欲に溢れるようになったのは、大罪の装備の影響からだと聞いたわ。元々は戒律の厳しい谷だったって」

遊び人「まだ影響が色濃く残っているということは、この谷に住む誰かがずっと所持しているのよ」

遊び人「色欲の勇者様はその鞭を神官様に預けていたというわ。でも、神官様がある日倉庫の中に入ったら、鞭はなくなっていたそう」

遊び人「鞭は高級な装備の1つだからね。大罪の装備と知らずに盗んだ住民がいるのかもしれないわ」

勇者「どうして色欲の勇者は神官に預けたんだ?暴食の勇者だって大罪の装備との出会いは餓死寸前の時だった。きっと印象深い出会いがあったであろうものを、そう簡単に他人に預けるのか」

遊び人「きっと、遠ざけたかったのよ。それも、色欲とは1番無縁そうな神官様にね。邪な心に溢れてるものは神官という職業につけないもの」

勇者「それは世界のイメージにすぎないと思うけどな」

遊び人「そうかしらね。なんにせよ、色欲の勇者が鞭を手元に置かなかったのは、装備の誘惑に駆られないようにするためだったに違いないわ」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:01:03.65 ID:ypTt4u9i0
遊び人「暴食の鎧はあらゆるものを飲み込み自分の糧とする力を備えていた。色欲の鞭は……」

勇者「色欲の鞭は?どんな効果がある?」

遊び人「なんだろう。色欲を司るくらいだから……」

遊び人「…………」

遊び人「…………」カァァ///

勇者「どうした?今何を想像した?」

遊び人「し、してないわよ!!この変態!!」

勇者「変態?腰を打ったら子宝に恵まれるんだろうなとか、そんな想像をした俺が変態?」

遊び人「あんたにしてはまともな想像を……」

勇者「君は何を想像したんだい!?色欲の鞭は何の効果をもたらすと思ったんだい!?」

遊び人「うるさいなぁ!!もう寝る!!」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:06:28.70 ID:ypTt4u9i0
勇者「それにしてもさ、今回はすぐに手に入りそうでよかった」

遊び人「そうね」

勇者「探すのに10年もかかっちゃったら、この冒険の意味がなくなってしまうからな」

遊び人「…………」

勇者「俺も世界各地の異変を自分の冒険で味わって。冒険譚を自分で書いて。故郷のやつらから尊敬の眼差しを集められる日が待ち遠しいよ」

勇者「この谷に隠れている色欲の鞭を隠し持った犯人を、明日にでも暴いてやらないとな」

遊び人「勇者……」

勇者「ということで、明日もお互い元気に張り切っていこう!おやすみ!」

遊び人「うん!おやすみ、勇者」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:07:05.25 ID:ypTt4u9i0





アン…

アンアン!


アンアンアン!

勇者「…………」

遊び人「…………」

勇者「(気まずい)」

勇者「(両隣の部屋からすごい音が……)」

勇者「(遊び人、起きてんのかな。寝てたらいいんだけど)」

遊び人「…………」

遊び人「…………」グゥ〜…

遊び人「あっ…」ボソ

勇者「(なんでお腹鳴ってんだよ。絶対起きてるじゃん。お腹空いちゃってんじゃん。あっ、とか言っちゃってんじゃん!)」

遊び人「…………」

遊び人「グ、グゴ〜」

勇者「(うわっ!!いびきのモノマネへたくそ!!)」

勇者「(自分が寝ていることをアピールすることと同時に、さっきの腹の音はあくまでもいびきの音だと誤魔化そうとしはじめた!!いびきの音もたいがい恥ずかしいからな!!)」
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:07:37.58 ID:ypTt4u9i0
〜翌朝〜

宿主「きのうは おたのしみでしたね」

冒険者カップル「えへへ///」

宿主「きのうは おたのしみでしたね」

街人カップル「どうも///」

宿主「きのうも おあずけでしたね」

遊び人「…………」

勇者「…………」
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:09:59.84 ID:ypTt4u9i0
勇者、遊び人、色欲、踊り子の四人は広場を歩いていた。

勇者「……だめだ」

遊び人「鞭の持ち主は見つかりそう?」

勇者「変態感知にひっかからない。いつもなら『ピキン!』っていう音が脳内に響くのに」

遊び人「持ち主はただの鞭目当てで、変態な人ではなかったりして」

色欲「そんなことはない。どんなものでもあんな鞭をそばにおいておけば性欲をコントロールされる」イチャイチャ

色欲「やたらと急速に人気が出ている店を中心に見張りを送っている。女性がSMプレイに使っているのであれば、必ず男はその女性のとりこになる。女性があくまで仕事のために使用しているのならば、勇者殿の変態感知には引っかからないかもしれない」イチャイチャ

勇者「その場合はお役にたてなさそうだ」

色欲「消去法の手がかりになるだけでも大いに助かっているよ」イチャイチャ

勇者「どういたしまして」

遊び人「…………」

色欲「今日はここまでだ。明日また捜索を手伝ってくれ」イチャイチャ

踊り子「うふふ、またね」イチャイチャ



遊び人「ずっと踊り子さんのお尻触ってたわね」

勇者「ここにいると性の倫理観がおかしくなりそうだ」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:10:40.41 ID:ypTt4u9i0
〜宿屋〜

勇者「提案。俺もたまには窓際で寝たい」

遊び人「そうしたら夜トイレで起きたときなんか私のスペース通るじゃん」

勇者「通って悪いかよ」

遊び人「寝顔とか寝相見られるじゃん」

勇者「俺もたまには物憂げに夜の窓の外の景色を見たりしたいよ」

遊び人「まあ、たまにはいいけど。じゃあ今日はチェンジで」

勇者「やったー!」

遊び人「子供じゃないんだから。私お風呂行ってくるわね」
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:11:14.70 ID:ypTt4u9i0
遊び人「はぁー。浴槽が修理中だなんて。身体だけ洗ってはやくでてきちゃったよ」

ガチャリ

遊び人「ねえー、聞いてよ。お風呂がさ……」

勇者「……くっ」

勇者「んっ…はぁ、はぁ…」

遊び人「(えっ、えっ?)」

遊び人「(勇者、何してるの?)」

勇者「はあ!……んあ!」

勇者「くっ!!!」

勇者「はぁ……!!はぁ……!!」

勇者「ふぅ……」

バタン

勇者「ん?今ドアの音が聞こえたような。気のせいか」

勇者「最近魔物と戦ってなかったし。鞭の持ち主と戦うことになったときに体力切れはまずいからな。気持ちだけでも身体を鍛えておかないとな」

勇者「さて、俺も風呂に入ってくるか」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:12:04.02 ID:ypTt4u9i0
〜翌朝〜

遊び人「昨晩はお楽しみでしたね」ニヤニヤ

勇者「ん?」

遊び人「精気も養ったし出発しますか。それとも失ったのかな?」

勇者「何のはなしだ?」

遊び人「ささ、今日も張り切っていきましょ!」




〜街中〜

勇者「怪しいやつもいない。今日も見つからなかったな」

遊び人「怪しいやつがいすぎてわからなかったわ」

勇者「こんなに目を凝らして探してるのに」

遊び人「勇者はバニーガールのお尻ばっかり見てたじゃない」

勇者「なっ!!尻じゃねえ!!俺は網タイツをだな……」

遊び人「…………」

勇者「いや、これは男の性というか」

遊び人「本能っていう言葉で何でも許されると世の殿方はみんなお思いのようですね」

遊び人「まったく。どうして男性はこうも……」

遊び人「…………」

遊び人「…………」

勇者「ん?どうした?」

遊び人「え、いや、べつに」

勇者「今通り過ぎた書店に見入ってたよな?なんか欲しい書物でもあったのか?」トコトコ

遊び人「いや、ちょ!べつに!」

勇者「…………」

勇者「ガチムチの戦士(♂)と武道家(♂)がいちゃついてる表紙の娯楽書があるんだが」

勇者「えっ?今まで散々まともなキャラでこちらの批判をしてきてたのに?ええー、そうなんですかー」

遊び人「ち、ちがうって!!」

遊び人「な、なんだろ。ちょっと気になっただけよ!魔が差したというか!今までの街にはなかったじゃない!」

勇者「こんやはおたのしみですね」

遊び人「買わないわよ!!」
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:13:07.40 ID:ypTt4u9i0
〜宿屋〜

遊び人「お風呂入ってさっぱりしたぁ。今日は勇者にいじられて散々だったからなぁ」

遊び人「勇者だってチラチラ大人の書物を見てたくせに。私が気を遣って黙ってあげてたっていうのに」

遊び人「バニーガールがそんなに好きなのか」

遊び人「…………」

遊び人「やっぱり勇者も男の子だし、いろいろ我慢してるのかなぁ」

遊び人「この谷にいる時くらいは、お風呂上がりに半裸でいることくらい多めに見てあげようかな」

ガチャ

遊び人「おまたせ。浴槽の修理も終わってていい湯だったわ」

勇者「えっ……」

遊び人「勇者もお風呂入ってきなよ。なんだかスースーして涼しくて気持ちいいよ」

勇者「あの……」

勇者「その姿……」ボッ///

遊び人「えっ?」

遊び人「べつに、ただの下着姿じゃない」

遊び人「…………」

遊び人「えっ!!!??」

遊び人「わたし!!なんで!!!?」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:14:17.53 ID:ypTt4u9i0
勇者「おーい。布団にくるまって、大防御のつもりか」

遊び人「……ほっといて」

勇者「混浴に入ったものだと思えばいいだろ。薄手のタオル一枚よりはよっぽど厚着だ」

遊び人「女心も知らないで!!」

勇者「だったら水着だと思えばいいだろ」

遊び人「水着でも恥ずかしいのよ!!」

勇者「じゃあバニースーツを着れば……」

遊び人「なんで慰めに乗じてバニースーツ着せようとしてんのよ!!」

勇者「まあまあ。俺の半裸姿もあとで見せてやるから」

遊び人「それでおあいこみたいな雰囲気ださないでよ!!はやくお風呂でもいってきて!!」

勇者「そう怒るなって。俺もわるかったよ。じゃあ行ってくる」

ガチャ…

勇者「…………」

勇者「俺は悪くないよな……」

勇者「…………」

勇者「あいつ、あんな下着身に付けてたのか……」



ゆうしゃは レベルアップ した!
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:18:00.70 ID:ypTt4u9i0
〜翌日〜

勇者「今日も色欲の勇者は魔物狩りで来れないらしい」

遊び人「また?大罪の装備が盗まれてるのよ?何が起きるかわからないわよ。わたしだってこの場所の影響を色濃く受けちゃってるみたいだし……」

勇者「元からそうしたかったとかではなく?」

遊び人「…………」ギロ

勇者「なんでもないです」

2人は捜査のためにあるき出した。

勇者「大罪の装備は持ち主を選ぶんだよな」

勇者「その持ち主以外が使用したら、どうなるんだ?」

遊び人「ふさわしいと思う持ち主の場所に飛んでいくだけみたいなの。使用は誰にでもできるわ」

勇者「そうだよな。だとしたら、新しく手に入れた者こそ、持ち主としてふさわしいとも言えるのかもな」

遊び人「どういうこと?」

勇者「本当に大事なものだったら最初の持ち主は手放さないし」

勇者「それを奪うってことは、最初の持ち主よりもそれを必要としてるってことだから」

勇者「人間でいう、略奪愛みたいなもんじゃないか」

遊び人「勇者の口からそんな言葉が出る日が来るとは思わなかった」

勇者「ふさわしいものはふさわしいところへたどり着く。運命の人は最初じゃなくて最後に出会う。これが俺が、過去の恋愛経験から学んだことだ」

遊び人「なにそれ、初耳なんだけど。どんな恋愛経験したのよ」

勇者「俺だって色々あるぜ。気になってた女の子から、回復呪文をかけて貰ったり。落とした短剣を拾って貰ったり」

遊び人「あちゃー……」

勇者「そんな哀れんだ目で見るなよ!」
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:19:02.74 ID:ypTt4u9i0
〜宿屋〜

遊び人「今日も成果なしだったね」

勇者「ああ」

勇者「そろそろ日にちが経ちすぎてるな。遊び人、俺達の他に大罪の装備を探しているやつは、この谷に近づいてるか?」

遊び人「……まだ大丈夫みたい。全然検討違いの場所を探していると思う」

勇者「そっか。よかった」

勇者「いつまでもってわけにはいかないからな。その特殊な呪いの正体もいつ相手にばれるかわからないんだろ」

遊び人「うん」

勇者「大丈夫。明日こそ、俺が探し出してやるから。今日はもう寝よう」

遊び人「勇者、ありがとう」

勇者「気にすんなって。おやすみ」

遊び人「おやすみなさい」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:20:12.30 ID:ypTt4u9i0
勇者「…………」

遊び人「…………」

勇者「あのさ、質問があるんだけど」

遊び人「私もあるんだけど」

勇者「なんで俺の布団の中に入ってんの?」

遊び人「あんたこそなんで私の布団の中にはいってんのよ!!」

勇者「俺が窓際で寝ていいってことになってたじゃん!」

遊び人「それはあんたが寝たいって言った日限定でしょ!!」

勇者「しかも!!」

遊び人「なによ!!」

勇者「お前、また下着姿なのな」

遊び人「…………えっ」カァァ///

遊び人「ギャー!!」

勇者「ふ、服着ろって!」カァァ///

遊び人「あんたに言われたくないわよ!!」

勇者「じゃあ着ないのかよ!」

遊び人「着るわよ!!てかあんたも半裸じゃない!!」

勇者「えっ?」

勇者「あっ、まじだ。でも俺はいいだろ」

遊び人「よくないわよ!!」

勇者「俺は遊び人がどうしてもと言うならそのままでもいいけど」

遊び人「よくないわよ!!!」

アンアン!!ギシギシ!!アンアン!!

勇者・遊び人「(しかも今日も隣の部屋がうるさい!!)」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:23:25.62 ID:ypTt4u9i0
〜隣の部屋〜

色欲「ふふっ、結局勇者の皮をかぶってもただの雄じゃないか」

色欲「精霊の加護なんてものに守られて、命を永遠に感じているから異性に手を出さないだけだ」

色欲「男が死の際で考えることなんか、性のことだけだ」

色欲「なのに、普段からそうやって、性に無頓着なふりをしていると、今はの際でも自分の性欲に忠実になれない」

色欲「純情なんかを守って。純愛なんかを崇拝して。そうして、肉欲に塗れることを選ばなかった過去を後悔すればいいのさ」

色欲「かつての、僕のように」

「はぁ…色欲さまぁ……もっとご褒美を……」

「わたしもいじめてくださいませぇ……」

色欲「ああ。抱いてやるさ。とことんな」

色欲の勇者は腰を振り続けた。
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:25:30.83 ID:ypTt4u9i0
遊び人「えっ!?見つかった!?」

色欲「ああ。冒険者から情報を集めた。まだ回収はしていないが、持ち主は確実に特定した」モミモミ

踊り子「ああん///」

遊び人「(また踊り子さんのお尻を……)」

勇者「(色欲の勇者さん。今は真剣な話し合いの場ですよ。謹んでください)僕も先日遊んでくれたバニーガールさんのお尻を拝借してもよろしいですか?」

遊び人「はっ?」

勇者「えっ?」

勇者に30のダメージ
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:26:28.29 ID:ypTt4u9i0
遊び人「誰が持ち主だったんですか?」

色欲「それは教えられない」

勇者「俺たちに色欲の鞭をくれる約束じゃ?」

色欲「君たちが色欲の鞭にふさわしい存在ならと言ったはずだ。」

色欲「探す猶予期間を与えたのに、君たちは僕より早く見つけることができなかった」

色欲「そんな者達が、色欲の鞭の誘惑に耐えられるとは思えない」

遊び人「耐えられますよ。大罪の装備の力を封じ込める壺があるんです。それに入れれば……」

色欲「そこの勇者が、その壺を割る可能性は本当にないのか?」

勇者「俺が?なんで?」

色欲「色欲の鞭で叩かれた人間は、性の喜びに忠実となる」

色欲「現在の持ち主も随分楽しんでいるようだよ。自分に忠実な女性を増やしてね」

勇者「!?」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:27:18.16 ID:ypTt4u9i0
遊び人「い、一刻もはやくとめないと!!女性がそんな目に遭ってるのに放置できないわ!!」

色欲「大丈夫だ。相手は老人だ。女性を従えるのに夢中になっているが、直接触れたりはしていない。全く新しい形の、性欲に塗れたプラトニックラブだ」

遊び人「だからって許されるわけないでしょ!!」

勇者「そうか!!」

遊び人「何かわかったの?」

勇者「俺の感知の『ピキン!!』という感覚だが」

勇者「何が『ピキン!!』となっていたか、今わかった気がする」

勇者「その犯人の息子は、もう引退をしていたんだ!!」

勇者「だから俺の感知が反応しなかったんだ!!」

遊び人「…………」

遊び人「あんた確か街中歩いてる時に自分に対して……」
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:49:58.86 ID:ypTt4u9i0
勇者「心配なのは女性だけじゃない」

勇者「大罪の装備は使用者の寿命を削る。それは持ち主ならわかってるはずだ」

色欲「寿命を……削る?」

勇者「他に使用したことがある者も言っていた。そんな感覚を覚えなかったのか?」

色欲「鞭を初めて振るった時のあの消え行く命の感覚は、そういうことだったのか……。てっきり、過去を思い出しただけかと……」

勇者「今の持ち主はそのことに気づいていないかもしれない。一刻もはやくとめないと」

色欲「…………」

色欲「俺が一人で取りに行く」

勇者「なんでだよ!!」

色欲「色欲の鞭に選ばれたのは俺だからだ」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:51:05.67 ID:ypTt4u9i0
遊び人「あなた、何が目的なのよ。やってることがいったりきたり」

色欲「質問は終わりだ。教えてほしかったら持ち主としてふさわしいことを示してくれ」

勇者「どうやって」

色欲「禁欲で勝負をするんだ」

色欲「より長い時間、射精を堪えた者が勝利とする」

遊び人「    」

勇者「なんだよそれ……」

踊り子「んふふ///」
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:55:13.93 ID:ypTt4u9i0
〜怪しい大人のお店〜

遊び人「…………」ソワソワ…

遊び人「……ああ!!」

遊び人「落ち着かない!!なによこの馬鹿げた勝負!!」

遊び人「いやらしい格好をした女性と密室で二人きりになって、性欲を呼び起こすやくそうを飲み込むなんて!!」

遊び人「暴食の勇者といい!!色欲の勇者といい!!自分たちが大好きなものを耐える勝負をどうして持ち出そうとするのかしら!!」

遊び人「この扉に入ってから8分……中はどうなってるんだろう」

遊び人「ああ!!やっぱりこんな谷に来るんじゃなかった!!」

遊び人「勇者は暴食の勇者との断食勝負に、水も飲まないで6日間も耐えたわ。精霊の棺桶に入れられるぎりぎりまで耐えた」

遊び人「一体、この部屋で何日間耐えられるのかしら」

遊び人「こんな気分でずっと勇者が耐えるのを待ってないといけないなんて!!」

遊び人「はやくこんな勝負終わればいいのに!!」

ガチャ…

勇者「…………」

遊び人「えっ?」

勇者「世界を、救えなかった」

勇者のせいしはぜんめつした。
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:55:50.48 ID:ypTt4u9i0
遊び人「…………」

勇者「ごめん……」

遊び人「別にいいよ」

勇者「本当ごめん」

遊び人「怒ってないって」

勇者「媚薬の効き目がものすごくて」

遊び人「どうでもいいってば!!!」

勇者「…………ごめん」

遊び人「だから、謝らなくてもいいって」

勇者「殺してくれ……」

遊び人「蘇らせるのにお金かかるからいいよ」

勇者「……ごめん」
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:57:17.01 ID:ypTt4u9i0
色欲「情けない勇者だ。10分経たずにでケリがつくとは思わなかった」

踊り子「私の魅力が凄かったことは疑わないのかしら?」

色欲「ふふ、それは言えるかもな」

色欲「シャワーを浴びてきてくれ。あんな雑魚に君を抱かれたかと思うと嫉妬で興奮が収まりそうにない」

色欲「勝つものが抱く。これが自然界の摂理だ。さあ、今日は存分に楽しもう」

踊り子「シャワーを浴びる必要はないですよ」

色欲「なんだって」

踊り子「あの人、私に指一本触れてませんもの」

色欲「触れてない?」

踊り子「私の誘惑も、全部拒絶したんですもの。おしゃべりをして、あの人が自分で自分の性欲を部屋の隅で処理しただけよ」

踊り子「私があの勇者に迫って、生まれてから守ってきたものを奪ってあげようとしたの。そしたら言われちゃったのよ」

色欲「なんて」

踊り子「それを すてるなんて とんでもない!」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:59:15.40 ID:ypTt4u9i0
踊り子「ねえ、勇者様。性欲って悪いことじゃないわよね」

色欲「当たり前だ。楽しむためだけの性欲が認められていいに決まってる」

踊り子「そうですよね。でも、その楽しむためだけの性欲以上に。大切なことが、まさか男性の中にもあったりするみたいです」

色欲「…………」

踊り子「際で見せるのがその人の真の姿なら」

踊り子「敗北を確信した時の姿と、勝利を確信した時の姿を比べてもいいのでは?」

踊り子「性欲に勝ち負けなんてないですけどね。それでも、禁欲という勝負においては。たとえあの勇者は勝利していたとしても、そのまま私のところに戻って身体を求めようとはしなかったでしょう」

踊り子「あの勇者にね、私の仕事を否定する気かって尋ねたの。そしたら首を振ってね」

踊り子「あの子に馬鹿にされる自分のままがいい、って言ってきたの」

踊り子「穢れなき性欲に対して、罪悪感を感じてしまうその心」

踊り子「戒律の厳しかったこの谷で、私の身体を買って捕まって、パーティメンバーに泣いて詫びていた」

踊り子「かつての色欲の勇者様、そっくりじゃないですか」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:01:45.50 ID:ypTt4u9i0
(宿屋)

勇者「ムラムラして、すみません」

遊び人「…………」

勇者「バニーガールならともかく、踊り子にムラムラして、冒険の目的を見失ってしまってすみませんでした」

遊び人「…………」カチン

遊び人「もう……ほんと馬鹿」

遊び人「そりゃあ、かなりかなり思うところがあるけどさ」

遊び人「しょうがないわよね。女だからよくわからないけどさ。男の子って大変なんでしょ?」

遊び人「他に手段を考えましょう。四六時中尾行するとか、私達も聞き込みするとかしてさ」

勇者「ごめん……」


コンコン

遊び人「ん、ノック?」

ガチャ

色欲「支度を整えろ」

遊び人「何の用よ!!」

色欲「色欲の鞭が欲しいんだろ。俺が預けた神官が所有している。あの神官が乱用しはじめただけで、誰からも盗まれちゃいなかったんだ」

勇者「えっ……」

色欲「奪いにいくぞ。よりふさわしい者が持つべきものだからな」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:04:08.40 ID:ypTt4u9i0
〜外〜

遊び人「しまった!部屋の中にやくそう袋忘れた!!ちょっと待ってて!」

トットット…

色欲「外で交尾が許される国を俺は知らない」

勇者「二人きりになった時の第一声がそれですか」

色欲「交尾は愛し合うパートナーがいるものであれば誰もがやっている。しかも開放的な場所でやりたいことだろう」

色欲「俺も色んな国をまわってきたが、そこまで性に開放的な国はなかった。獣が外で交尾をするこの世界で、人間が太陽の下で交尾をすることが許される場所は俺は見つけられなかった」

色欲「性欲は、どうして隠されてしまうのだろう。誰もが興味あることなのにもかかわらず、公では隠されてしまうのだろう」

色欲「好きな女の子のためにしか性欲を捧げたくないという気持ちや、好きな女の子だけには性欲を押し付けたくないという男もいる」

勇者「男は四六時中女性の裸を考えているだとか、息子を穴に挿れることばかり考えて生きているとか、それは辞めて欲しいですよね」

勇者「確かにそういうことだけを考えている男は多いし。いや、たしかに全ての男はそういうことを1日中考えているんだろうけど」

勇者「そういうことを考えている男でも、1日のうちのいくらかの時間は、性を完全に拒絶するような純愛を心の中であたためていたりしますからね」

勇者「性欲さえ拒絶する男の子の魂があることを、この世界はあまりにも知らなさすぎますよ。女も知らないし、そして、知らない男もいる」
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:06:48.65 ID:ypTt4u9i0
色欲「俺は、純愛を諦めたつもりになっていた。いや、諦めたふりをしようとしていた」

色欲「かつて、パーティメンバーに愛している女がいた。踊り子だった」

色欲「俺はその踊り子に性欲を向けるようなことを決してしなかった」

色欲「ある時この谷にたどり着いて、女性を買ったことがあった。踊り子という職業だ。それがばれて、仲間の踊り子がどんなに悲しそうな顔で無理して笑ってきても、俺はこれが最善の選択だと思っていた」

色欲「性欲をぶつけないことで、性欲以上の美しい感情があることを示したかった」

色欲「その女を抱きたいと、心の奥底では思っていたさ。けれど決して認めなかった。拒絶されることを恐れたからかもしれないし。今楽しく笑っていられる美しい時間を壊すことを自分で許せなかったのかもしれない」

色欲「やがてこの谷に再び戻ってきた。そして、この谷を魔物から守った。そんな俺を慕う女はたくさん現れた。食事や睡眠を毎日とるように、俺は女を抱き続けた」

色欲「自分の性欲についてさえ、俺は、よくわかっていない。ましてや、女の性欲についてなどわからない。俺が惚れていた女は、どういう性欲を抱えていたのか。性欲をどう認識していたのか。美しい純情を求めすぎていたせいで、何もわからずじまいだった」

色欲「今も答えを探し続けているが、わかりそうにない。女に直接尋ねてみても。美しき女たちと身体を重ねて、何度腰を振っても。何度喘ぎ声を聴かされても。俺は、女を理解してやれない」

勇者「俺もだ」

童貞は頷いた。

色欲「冒険に性欲は付き物だ。なのに、誰も真摯に向き合おうとはしない」

色欲「俺は答えを出せそうにない。だから、勇者。お前がお前なりの答えを出してくれ」

色欲「まずは、色欲の鞭に打ち勝て」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:08:11.06 ID:ypTt4u9i0
〜教会〜

色欲「神官よ!!戻っているか!!」

信徒A「あぁん///神官様ぁ///」

信徒B「強く説教してくださいまし///」

信徒C「あの鞭でもっと強くおしかりになって///」

色欲「なんだこの有様は。ここまで洗脳が強いものだったのか」

遊び人「きっと、色欲の鞭の使い方に慣れてきたのよ。取り憑かれたというべきかもしれないけど」

色欲「神官だけは信じていた。教会に立ち寄った冒険者から噂を聞きつけた時はまさかと思ったが……」

色欲「今はどこにいるんだ……」

勇者「…………」

――ピキン。

ピキピキ……

バキバキバキバキ!!!!!

勇者「!!!!??」

遊び人「どうしたの!?」

勇者「ま、まずいぞこれは!!!」

勇者「神官の神官が蘇った!!!」
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:17:52.08 ID:ypTt4u9i0
遊び人「はぁ!?」

勇者「最近まで教会の秩序が最低限保たれていたのは、モノがなかったからだ。だからこそ、女性は手出しをされずに、鞭で叩かれるだけで済んでいた」

勇者「これからは本当の大罪人になりかねないぞ!!こんなブツ、今まで感じたことがない!!!」

色欲「……非常事態だな。わかった。隣街から最強の魔術師と僧侶を連れてこよう」



〜隣町〜

魔法使い「なによ、今更呼び出して」

僧侶「はぁ。私達を側室にでもする気でしょうか」

色欲「突然すまない。でも、命がけのことなんだ」

魔法使い「命がけねぇ。それで、死んでも精霊の加護で蘇るパーティメンバーの私達を呼んだってわけ?」
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:18:49.61 ID:ypTt4u9i0
【TIPS】

『パーティメンバー』

勇者と魔王撃退の契を結んだもの。

精霊が人間から勇者を選ぶように、勇者が人間から仲間を選ぶ。

勇者は、勇者が認めたものとパーティメンバーを組むことができる。

しかし、魔王が死したという噂が流れてからは、パーティメンバーを組むことができなくなった。

勇者という職業は、魔王撃退のために存在しているようなものだった。

魔王がいなくなったと知った勇者達は、『魔王を倒すために結束する』ことができなくなった。

救いは、契約の更新は効かなくなったが、魔王が消える以前に結んだ契であれば継続することであった。
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:21:56.71 ID:ypTt4u9i0
僧侶「でもそれは、私達があなたをまだ勇者と認めている場合に限りますわ」

色欲「でも君らはこうして来てくれた」

僧侶「…………」

色欲「死んでも教会で復活するという理由だけで君たちを選んだんじゃない」

色欲「今の僕の乱れぶりに君たちがどんなに失望しているかはわかっているつもりだ。それでも、君たちの力が必要なんだ」



僧侶「…………」

僧侶「私は、いけないわ」

色欲「……そうか」

僧侶「あかちゃんが、できたの。」

色欲「なっ!」

僧侶「け、結婚したのは知ってたでしょ!」

僧侶「私自身に精霊の加護があるにしても、お腹の中の子供が刺されたら……」

色欲「おめでとう!!」

僧侶「あ、ありがとう」

色欲「幸せそうで何よりだ」

魔法使い「うう……かつての仲間に嫉妬しそうだわ。私もいい年なのに……」

僧侶「かつての仲間と結婚したらどう?」

魔法使い「やりちんはパス」

色欲「あはは……」

魔法使い「まあ、ちょっくら手伝ってやるくらいならいいけどね」

色欲「魔法使い……」

魔法使い「……あの子のためにもね」ボソ…
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:22:43.07 ID:ypTt4u9i0
勇者「精霊の加護で蘇るかぁ」

遊び人「何か気になるの?」

勇者「今倒そうとしている神官は、まさにこの谷の神官なんだろ?俺達が死んで蘇生したら、どこで蘇るんだ?」

遊び人「あっ……」

遊び人「うーん、運が良ければ、谷からもっとも近い場所であるこの街の教会で蘇るわね」

魔法使い「運が悪ければ?」

遊び人「変態神官の目の前で蘇る」

魔法使い「嫌よ!!」

遊び人「全滅しても蘇るのは勇者だから大丈夫よ」

遊び人「色欲の鞭に支配されていたら、オスメス見境なく何をするかはわからないけど……」

勇者「…………」ゾワッ

遊び人「迷っている時間はないわ。早く捕まえに行きましょ」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:24:40.22 ID:ypTt4u9i0
――ピキン!!ビキビキ!!

勇者「こっちだ。この道を登りきった先にいる」

魔法使い「なんでわかるの?感知呪文も使ってないのに」

勇者「無口詠唱してるのさ」

魔法使い「本当に!?感知呪文ってかなり精神力と集中力を必要とする魔術よ!それを無口詠唱だなんて、あなたすごいのね」

勇者「おだててもポロリしかないぜ」

遊び人「嘘ばっか……」

魔法使い「私はすっかりできなくなっちゃったわよ。誰かさんのせいで」

色欲「…………」

魔法使い「魔王討伐を果たせず、この地にたどり着いて。魔王より遥かに弱い魔物倒して有名になって、モテたら女囲いまくって。まぁモテたのは、あの薄気味悪い鞭のせいだとは思ってたけど」

魔法使い「あんたへの信頼が薄れてから、無口詠唱できなくなっちゃったのよ。元々呪文は得意だったけど、やはり、精霊の加護の恩恵をかなり受けていたみたい。杖無しで呪文なんてもってのほか。右手だけで火炎の玉を出せてたあの頃が懐かしいわ」

色欲「何も言えない……」

勇者「静かに。近いぞ。すぐそこにいる」

谷を登ったさきにあったひらけた地の上に、一人の老人が鞭を持ちながら立っていた。

星明りの綺麗な夜だった。
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:26:50.42 ID:ypTt4u9i0

魔法使い「作戦通り、いきなり仕留めるわよ」

魔法使いは精神を集中し始めた。

魔法使い「『夜の頂きで数えられし無数の羊達よ。朝日を疎いし人間をそのまどろみの誘惑の中に再び引きずり戻し給へ』」

魔法使い「『ネムリン』」

羊の形をした淡いピンク色のシャボン玉が現れ、神官に向かって進み始めた。

神官は気付かず、頬を赤らめながら上の空のままだった。

神官の背後から、泡の羊がぶつかる直前のことだった。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:27:26.47 ID:ypTt4u9i0
バチン!!

勇者「なっ!」

突如、鞭が勝手に動き出し、泡を弾いた。

勇者「弾かれた!」

魔法使い「その程度の防御、散々経験してきたわよ!」

割れた泡は無数に分裂し、無数の小さな羊の群れとなった。

眠りの泡は四方から神官に向かって進み出した。

魔法使い「エロジジイは大人しく寝てなさい!!」

しかし、鞭は物凄い勢いで動き回り、羊の群れをすべて撫でるようにさわった。

小さな無数の泡をつなぎ合わせ、1つの大きな泡の塊をつくりだした。

キノコの形をしていた。

遊び人「ぶふっ!!」

勇者「おい、なぜ笑った」

魔法使い「なによそれ!魔法をそんなに繊細に操れる武具なんて他にないわよ!!」

神官は振り返った。

目が血走っていた。

神官「俺ト……交ワレ!!」

キノコの泡がとんできた。
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:28:12.67 ID:ypTt4u9i0
魔法使い「『マハンシャ!』」

魔法使いはバリアを張った。

神官「ハァ……ハァ……フン!!」

神官の振るった鞭が魔法の鏡の表面をなぞると、震えながらへなへなと崩れ落ちた。

魔法使い「な、なに感じてんのよ!!私のバリアは!」

神官が魔法使いに鞭を叩きつけた。

魔法使い「きゃっ!!」

遊び人「大丈夫ですか!!」

魔法使い「痛い……けど、ダメージは薄いわ」

色欲「次は俺達の番だ」

勇者「ああ!」

2人は飛び出した。

勇者が右足を出した時には、色欲の勇者は神官の目の前にまで迫っていた。
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:29:12.87 ID:ypTt4u9i0
色欲「気絶させる!!」

鞭を払いのけようと、色欲の勇者が凄まじい速度で剣を振るう。

神速のような攻撃を、鞭は全て弾き返した。

色欲「持ち主の寿命を喰らって好き勝手に動いているのか」

魔法使い「準備できたわ!かけるわよ!」

色欲「頼む!!」

魔法使い「『オナモミン!!』」

色欲の勇者の剣に無数の毛が生えた。

勇者「戦いの最中になんつーシモネタを……」

遊び人「敵の装備を絡め取る効果付与呪文だってば!!」

色欲の勇者が剣を振るうと、色欲の鞭が絡みついた。
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:32:14.71 ID:ypTt4u9i0
色欲「このまま鞭を奪い取る!!持ち主から離れれば動けまい!!」

しかし、鞭は必死で抵抗し、持ち主を色欲の勇者の攻撃から避けさせようと抵抗した。

色欲「しつこいやつだな。エロオヤジというよりも、女王様のそれに近い」

色欲の鞭がぶるぶると身体を震わせると、くっついた魔法のトゲがばらばらと落ちだした。

色欲「魔法使い!!追加で呪文をかけてくれ!!もうひと押しだ!!」

魔法使い「…………」

魔法使い「……いや」

色欲「どうした?」

魔法使い「私、あの人攻撃できない……」

色欲「何を言ってる?」

魔法使い「恋の魔法にかかっちゃったみたい……」トロォン///

魔法使いの足には、さきほど鞭で叩かれた痣の跡が残っていた。
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:33:19.43 ID:ypTt4u9i0
勇者「呪文を好きなようにあやつり、結合させたり、離したり」

勇者「鞭の攻撃をくらったものを虜にさせる」

勇者「なるほどな、”愛のムチ”ってわけか!!」

魔法使い「ねえねえ、あんたらもこっちおいでよ///」

魔法使い「『ヌメリン』」

魔法使いの杖の先から、ぬるぬるとした液体が流れ出した。

遊び人「キャー!!」

遊び人の全身と、術者の魔法使いの全身にぬめぬめとした液体がかかった。

勇者「いいぞ!もっとやれ!!」

遊び人「ぶっ飛ばすわよ!!」

勇者「はっ…!鞭の魔力に一瞬洗脳されてしまった!」

遊び人「そんくらいの煩悩いつも抱えてるくせに!」

液体は色欲の勇者のところまで飛び、足元を不安定にさせた。

色欲「くそ。魔法使い相手では分が悪い。一度退くぞ!」

遊び人「逃げるの!?」

色欲「魔法使いは俺がどうにかする!!」

色欲の勇者は神官から距離をおき、魔法使いのもとへと近づいた。

色欲「くそ、ぬめぬめしやがる……」

色欲「勇者!!移動呪文を唱えろ!!全員で谷に飛ぶぞ!!」

勇者「覚えてないけど?」

色欲「なんだと!?勇者の基本呪文だぞ!!」

勇者「移動の翼持ってるからいいだろ!!」

勇者はどうぐぶくろを取り出した。

ベチン!

勇者「いってぇ!!」

どうぐぶくろが地面に落ちた。

色欲の鞭が勇者の腕にあたった。
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:33:46.50 ID:ypTt4u9i0
遊び人「勇者!!」

勇者「…………」

勇者「……あっ」

勇者「あっ、あっ、やばい。これはまずい」

勇者はだんだん前屈みになり、座り込んだ。

遊び人「何ふざけてんのよ!!はやく立ち上がって!!」

勇者「もうタってんだよ!!」

遊び人「いいからふくろを持ってこっちへ!!」

勇者「できないんだって!」

遊び人「なによ!!頭の堅いやつね!!」

勇者「硬いのは頭じゃねえんだよ!!」
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:37:08.21 ID:ypTt4u9i0
勇者「確かに頭といえば頭だけどさ!!」

遊び人「何を言ってるのよ!!」

勇者「いいから俺のことは置いていけ!!3人で移動の翼を使え!!」

勇者は遊び人に道具袋を投げた。

勇者「エロジジイにドキドキする日が訪れるとはな!!」

勇者「どうせする恋なら、2人で添い遂げる恋だ!!心中しやがれ!!」

勇者はすてみで神官にとっしんした。

鞭で強烈に叩かれつつも、神官を転倒させた。

勇者「ぐはっ!」

勇者は力尽きた。
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:38:49.83 ID:ypTt4u9i0
遊び人「いっつも無茶するんだから……」

遊び人「あんた蘇らせるために私は心中しないからね。あの神官が復活地点だったらまずそうだし」

魔法使い「キャー///何すんのよ///やっぱり昔から私の事そういう目で見てたのね」

色欲の勇者は魔法使いを後ろから羽交い締めにしていた。

色欲「早く飛べ!!この絵面はまずい!!」

遊び人「逃げるわよ!!!パーティ2つ分の翼よ!!」

遊び人達は道具袋から翼を取り出した。

神官「……マテ」

遊び人「えっ?」

鞭が遊び人の足首に絡まっていた。

神官「交ワレ……」

遊び人「うそでしょ!!」

遊び人「いやだ!!いやだ!!そんなの絶対イヤだ!!」

遊び人は混乱した。

遊び人はつばさをばらまいた。

色欲「落ち着け!!」

遊び人の周りにすさまじい風が起きた。

鞭はほどけた。

遊び人達は逃げ出した。

色欲の勇者と魔法使いは隣街に飛んでいった。

遊び人と勇者の棺桶は隣街に飛んでいった。
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:42:48.85 ID:ypTt4u9i0
〜隣町〜

遊び人「うぇええん……怖かったよぉお……」ポロポロ

魔法使い「糞野郎!あのおっさんに捧げる羽目になりそうだったじゃんか!!」

魔法使い「変態どもに関わるんじゃなかったよ!!」

色欲「すまない……」

魔法使い「あとは谷の兵士にでも援軍を頼んで。命が関わるような危険はなかったし」

魔法使い「わたし、もう帰るから……」ウズウズ…

遊び人「?」

色欲「わるかった……」

魔法使い「でもまぁ」

魔法使い「最後は助けに来てくれてありがとう」

魔法使い「……じゃ」

魔法使い「さよなら、女性の目も見れなかったウブな勇者様」

ガチャン

色欲「なっ!!!!」

遊び人「えっ!?」

色欲「な、なんでもない!!今のは違う!!」
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:46:01.06 ID:ypTt4u9i0
色欲「俺達も谷に戻ろう。俺の仲間を全軍要請する。こうなったら数で抑えるしか無い」

色欲「神官が動き出す前に。また他の犠牲者が出たらまずい」

遊び人「そうですね」

色欲「この谷史上、最悪の性犯罪者となりかねん。勇者の棺桶もはやく復活させてやれ」

遊び人「気になったんですけど。状態異常って死んだら全部治るものなのかな」

色欲「基本はそうだと思うが」

遊び人「でも、さっきのって状態異常っていうのかな……」

色欲「何が言いたい?」

遊び人「勇者はまだ、ムラムラしたままなのかな……」

色欲「…………」

遊び人「…………」

2人は棺桶を街の教会に残し、谷へと向かった。
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:46:58.66 ID:ypTt4u9i0

カンカン!カンカン!!

ドタバタ!!

色欲「なんだ!この騒ぎは!!」

兵士「色欲殿!!大変です!!」

色欲「何があった!?」

兵士「谷中の女どもが、神官様から鞭で叩かれておかしなことに……」



バニーガール「うふふふふ///」

女戦士「あはははは///」

武道家「誰があそんでくれるのかしら///」

神官「ハハハハ!!ハハハハ!!」

神官「交ワレ!!交ワレ!!」

神官「俺は世界中の女を俺のものにする!!」

神官「男の欲望の全ては女を手に入れるためにある!!強くなるもの!!賢くなるのも!!それが目的ではない!!」

神官「良き女が欲しいからだ!!」

神官は歩きながら、すれ違う女という女に鞭をぶつけていく。

神官が歩く度に神官のとりこになる女が増えていき、巨大な軍団となった。

兵士「くそ、うかつに手をだせん!」
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:48:51.84 ID:ypTt4u9i0
神官「私は、望んでいた!!若き頃の私は、性欲の魔物であった」

神官「教会に祈りに来た美しき女性と、交わることを想像した!!」

神官「私は確かに敬虔深き信徒であった!!誓って言おう!!私は私の穢れた心に常に罪の意識を感じていた!!」

神官「にも関わらず、私は女性の身体を頭の中で求め続けていた!!」

神官「すれ違う女性!初めて見る女性!!いつも見る女性!近くにいる女性!!」

神官「同じ人間として生まれ、違う性別として生まれ。女性という神秘的な存在は、一人一人に神の魂が宿っているほどに価値のあるものだった。美人はやまほどいれど、同じ美人は一人としていない。それだけで、この世界は私に苦悩をもたらすほどに魅力的なものであった」

神官「魔王を倒す喜びなど、この世で1番愛する女と結ばれた喜びには勝らないと、若き頃の私は思っていた」

神官「今思えば、貞操感など馬鹿げていた。何の抵抗もなく、女性と身体を重ねるものがいる。酒を交えながら話す盗賊の色話なんかを聞いていると、私は私が何と戦っているのかわからなくなった。戦う必要のないものと戦っているんじゃないかと」

神官「そんな馬鹿げた潔癖を求めたまま、老人になった。そして、性欲の葛藤という呪縛は解かれないまま、ただひたすら遠ざかっていった」

神官「そんな私に、この鞭は、女王様は、教えてくれた」

神官「禁欲のバカバカしさを!!この世は性であるということを!!」

神官「私は私を捨てる!!あの頃叶えられなかった欲望を今夜満たすのだ!!」

神官「さあ、全ての女よ!!!」

神官「私の身体を、求め……!!?」

遊び「神官の様子が!」
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:50:05.38 ID:ypTt4u9i0
神官「ぐっ……」

神官「うぐっ……」

神官「ううっ…………!!」

神官はうめき声をあげ、倒れた。

色欲「何が起きた?」

遊び人「選ばれしものでもないのに、鞭を多用しすぎたのよ。以前からこっそり使っていたし、今日あまりにも力を借りすぎたのね」

遊び人「寿命が尽きたのよ」

神官は力尽きた。
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:51:00.45 ID:ypTt4u9i0
谷の騒動はなかなか収まらなかったものの、女性たちは時が経つに連れ段々とわれにかえり始めた。

数時間もした後には、悶々とした男たちが、また女性に酒を振る舞う歓楽地の光景がもとにもどっていた。

遊び人「1つ、お聞きしてもいいですか」

色欲「ああ」

遊び人「あの神官の叫びは、全ての男性の叫びですか」

色欲「そうだと思うか」

遊び人「わかりません」

色欲「ならば、まず、そうだと言っておこう」

遊び人「…………」

色欲「理由は細かく述べない。性へのタガを外したこの谷の人々を見ればわかるはなしだ」

色欲「そのうえで、1つ気になったことを言っていこう」

色欲「どうして神官は、あの谷の上にいたのか。女性どころか、魔物も通らぬような開けた地で。何をしていたのか」

遊び人「…………」

色欲「あそこには、神官の亡くなった妻の墓がある」

遊び人「……!?」

色欲「男が死んでもいいと思う瞬間は、美しい女を抱いている時かもしれないが」

色欲「男が生きることを思う瞬間は、好きな女と唇を重ねている時だ」

色欲「男は汚いが、男もちゃんとその汚さを克服しようとする心もあるのだと思う」

色欲「連戦連敗だがな」
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:51:32.18 ID:ypTt4u9i0
〜大人の個室〜

踊り子「どうしたんですか!!!」

色欲「なにがだ」

踊り子「鎧の下に服を着てるじゃないですか!!裸メイルをおやめになったんですか!!」

色欲「服は脱ぐためにあると気づいたんだよ。俺は、より変態に近づいたわけさ」

色欲「お前はあの鞭に叩かれたか」

踊り子「いいえ。魅力もない男に抱かれるなんて嫌ですもの」

色欲「魅力がある相手ならいいのか」

踊り子「そうですね。だから、私には一人しかお客様がいないんですの」

色欲「それは難儀なことだ」
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:52:15.53 ID:ypTt4u9i0
色欲「魅力があればよくて、なければダメか」

色欲「関係性によって、善悪はいとも簡単にかわってしまうんだろうな」

色欲の勇者は踊り子の頭をなでた。

踊り子「うふふ。どうしたんですか」

色欲「初対面の女の頭をなでたら殴られるか牢獄に送り込まれるかのどっちかだ」

色欲「しかしお前は笑ってくれる」

踊り子「笑ってあげます」

色欲「あの神官は自分の言葉を、もっと綺麗な飾ってもよかったのかもしれないな」

色欲「自分は、許される人になりたかったのだと」
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:04:55.65 ID:ypTt4u9i0
踊り子「勇者様自身、許される人になりたかったですか」

色欲「ああ。でも、もう無理だ」

色欲「俺の愛していた人は死んでしまった」

踊り子「勇者様と一緒に冒険をされていたお方。職業は、私と同じ踊り子」

踊り子「この谷で、私の身体を買ったのも、あの人にぶつける性欲を逸らしたかったからですか」

色欲「……魔が差した。そうとしかいいようがなかった」

踊り子「性欲をぶつけないくらいにあの方を愛されていたんですね。それでも、勇者様の身体にも心にも惹かれてしまった私はこう思ってしまうんです」

踊り子「あなたの初めての相手が私でよかった。あなたが人生で1番愛していた人と、身体を交えていなくてよかった」

踊り子「それが性欲を超えるほどの愛情だとしても、やはり実際に身体を交えていたほうが嫉妬していたでしょう」

色欲「女もそうなのか」

踊り子「男は身体の浮気を、女は心の浮気を許さないなんて魔王が人間界を滅亡させるためについたうそっぱちです。女も、身体の浮気の方がよっぽど許せないですよ」

踊り子「絶望的な鬱になりますよ。激鬱です。私みたいな、軽いお尻の女でも。憧れの男性が持つ、他の女性との肉体の夜の思い出は」

踊り子「そろそろ、本命にしてくれないかなぁと思います。二番目でもいいので、世界一大切な二番目にしてくれませんか」

色欲「…………」

色欲「俺だけの女でいてくれるか」

踊り子「はい。あなたも、私だけの男でいてくれますか」

色欲「ああ」

谷中の女を抱いた元勇者。

しかし、この踊り子に対しては、身体をまさぐりあうことはあっても、決して鎧を脱がなかった。

この踊り子も、彼が谷から帰ってきてからというもの、一度も服を脱いだことはなかった。

二人は初めてベッドに入り込んだ。



自分で自分を許す、というのは、口にするのはたやすくとも、実際にできることではない。

それを可能にする方法を、俗世からひとつだけ挙げるとしたら。

自分が認める異性から、身体を許してもらうことだ。

色欲の勇者は、この夜、初めて自分に性欲を許した。

しあわせな一夜。

こんなにも美しい魔法があるのかと、初めて知った夜だった。
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:07:04.11 ID:ypTt4u9i0
勇者「目が覚めたら、全ての問題が解決していた」

勇者「そして、教会で目覚めたときに、何故か遊び人がはるか遠くから見守っていたことがなんだかショックだった」

色欲「世話になった」

踊り子「この人を救ってくれてありがとう」

遊び人「私たちは何もしてないですよ」

色欲「君たちの持つ壺に色欲の鞭も封印された。これからこの谷は、もとの戒律の厳しい谷に戻っていくのであろう」

遊び人「嫌ですか?」

踊り子「もう関係ないしね。この人と旅に出るし」

色欲「俺は良いが、嫌がる連中のほうが多いだろうな。性欲は戦争の引き金になるほど強烈な人間の欲望だからな」

色欲「だが、戒律が厳しいからこそ守られるものもある。俺のいなくなったこの谷を魔物から守る兵士が、鼻の下をのばしているわけにもいかないだろう」

遊び人「そうかもしれないですね」

色欲「それと、言い忘れていたことがある」

色欲「俺も、お前たちを試すような真似をしてわるかった」

遊び人「私達の何を試していたんですか?」

色欲「何もしないことを試していたんだ」

遊び人「?」
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:18:00.89 ID:ypTt4u9i0
勇者「色欲の鞭……」

遊び人「何ものほしそうに壺の中見てんのよ」

踊り子「勇者様、その鞭を取り出せたら何に使いたいですか?」

勇者「そりゃあ、バニースーツを意地でも着たがらない女の子に着衣の命令をするだろうなぁ」

踊り子「着せることに使うなんて、さすが勇者様ですわ……」

遊び人「あんたも壺に封印できたらいいんだけど」


別れの際まで、4人は笑いあった。


遊び人「それじゃあ、私達、もう行くわ」

踊り子「…………」モジモジ…

勇者「お前らも気をつけてな」

踊り子「……あの、こんな時にごめんなさい……」

色欲「トイレだろう。行ってこい」

踊り子「すみません。勇者様、遊び人さん。本当におせわになりました」トットット…

遊び人「さような……もう行っちゃった」

色欲「お腹を下しやすいんだ。生まれつきらしい。自分の身体を呪い、苦労もしたらしいが、そこもまた魅力的に思う。誰もが持っているような悩みで、自分しか持っていないと錯覚する類の悩みだ」

遊び人「ふふ、やさしいですね」

色欲「生理現象だし仕方ないだろう」

勇者「…………」

勇者「生理現象だから仕方ないか」

遊び人「ん?」

勇者「七つの大罪も同じじゃないのかな。生理現象だから仕方ない」

遊び人「色欲に溺れてお尻触って生理現象だから仕方ないなんて言ったら怒るよ?」

勇者「まさか」サッ

遊び人「ねえなんでいま手降ろしたの?ねえ?」

勇者「暴食、色欲、傲慢、憤怒、怠惰、強欲、嫉妬」

勇者「大食いのやつと、すけべなやつと、偉そうなやつと、怒りっぽいやつと、サボりがちなやつと、金好きなやつと、ヤキモチ焼くやつがパーティだったら楽しそうに思うけどな」

遊び人「そんな甘い欲望じゃないことは知ってるはずでしょ」
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