【エグゼイド】駆け抜けるSonic!【ソニック】

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85 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/08/31(木) 01:54:03.53 ID:9TEPRwLD0
「カオスエメラルドの力そのものを使いこなす能力、それがカオスコントロールさ。
 エメラルドのエネルギーを槍にして投げたり、そのまま放出して爆発を起こすこともできるんだが、
 多分エムが言ってるのはそこじゃないな。

 ……カオスコントロールを使えば、時間を操作できるんだ。
 自分以外が止めた時間の中でも動けるようになるから、クロノスってヤツにも正面から戦えると思うぜ」


ソニックの前で、貴利矢と大我に驚きの色が浮かぶ。
それはかつてカオスコントロールを使われた時のソニックと同じだった。
最速の足を誇るソニックも、時間を止められては遅れを取ることは否めない。
それどころか止められた状態のまま、仲間ともども敵に包囲されたことすらある。
カオスコントロールの真の使い手であるシャドウがいなければ、おそらく今ここにソニックはいなかっただろう。

そんな過去の想起を止めたのはテイルスだった。

「あと、最後にこれは少し推測も入るけど……なぜかモータスカオスはタイム・イーター事件に関係した能力ばかり使うんだ。
 ステージの場所も、能力も、今のところ全部あの事件の時に見たことがあるものばかり。
 だから、モータスカオスの裏にはあの事件に居合わせた誰かが関係してるんじゃないかって」

「どうやら、オレのことも最初から知ってたみたいだしな。
 シャドウに会ったワケじゃないのはテイルスが確認したから、モータスのヤツが人違いしたってセンは消えてる」

「だから、ニコちゃんがあのゲームをしてるのか……」

「それももう終わったよ! あとは犯人探しの時間!」

割り込むようにニコが会議用テーブルの前に戻ってくる。
その手には『ソニックジェネレーションズ』と書かれたゲームソフトが握られていた。
タイム・イーター事件を収めたゲームの細部を確認し直せば、当事者であるソニック達にも見えない事実がわかる。
今まさにニコが作り上げた全ステージクリアデータが、その鍵を開ける。


だが、扉と別にソニックにはある心当たりがあった。

「それじゃニコ、とりあえずアイツがどうしてたかを調べてくれないか」

「アイツ?」

「ああ。名前は――」

回転突撃するバイクの動きを思い出しながら、容疑者の名を告げる。
その名にニヤリとするニコを残し、ソニックは再びテーブルへと戻ってきた。

「Going well! 次はそっちの番だぜ、キリヤ」
86 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/08/31(木) 02:00:45.09 ID:9TEPRwLD0
(本編と関係ない連絡:
 既に1日1回ペースから遅れて久しいですが、9月4日までプライベートで大作業入ってしまうので更新完全に止まります
 遅筆こじらせたために完結より先にビルド放映開始されてしまうペースですが、コンティニューしてでもクリアする精神で
 完結まで進む所存です……)
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/31(木) 02:03:15.73 ID:0Sl7V+y9o
乙です
楽しみに待ってます
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/31(木) 13:15:48.91 ID:FCVfEaOF0
乙、いつまでも舞ってる
89 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/06(水) 03:07:18.25 ID:+whnoulH0
[EX-AID]


「ご指名とありゃ、自分らも出すもん出そうか。
 拾ってもらったパズルのピースも幾つかつなげられそうだしな」

青いハリネズミを前に、貴利矢が取り出したのは人数分の紙束だった。
数枚程度とはいえ、その文体は報告らしい形にきっちりまとめられている。

「……律儀なもんだな」

「職業病ってヤツさ。監察医務院じゃ死体検案書だの死因統計だの、手打ち仕事の嵐だったんでな」

「フン、闇医者稼業には関係ねえ話だ」

わざとらしく大我が鼻を鳴らす中、それぞれなりに報告書へ目を通す。
黎斗だけは未だキーを叩き続けているが、それでも合間で見てはいるようだ。
それを確認して貴利矢は口を開いた。

「自分らが拾って来た情報はモータスカオスの素性だ。
 3つの事情が絡んでる複雑なお子さんなんでな、念のため資料用意しといた」

「まず前提として、モータスカオスは僕らが知ってるモータスとは明確に別個体です。
 モータスカオスが大我さんと交戦してた時も、幻夢コーポレーション内部には本物が残ってました」

「……つかここに書いてあるのマジ?
 『アタシとポッピーにやられた悔しさから筋トレ等で肉体改造中』ってバカじゃないの?」

「ま、バグスターも生き物である以上全く意味ないワケじゃないけどな。
 ついでに言えばその馬鹿のおかげで別個体と断定できたんだ、そこは大目に見てやれ」

永夢の発言に割って入ったニコの指摘を、貴利矢が抑える。
たしかにモータスの反復横跳びは大した見世物だったし、それだけで話がかなり弾むネタだろう。
だが、いつモータスカオスが活動再開するかわからない以上、無駄な時間はとりたくなかった。
90 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/06(水) 03:10:43.01 ID:+whnoulH0
「こっからが本題だ。そもそもなんでモータスの複製なんているのか。
 原因は幻夢コーポ内で秘密裏に進められていた、バグスターの複製実験にある。
 仮面ライダークロニクルを拡大展開すれば、プレイヤーの数に応じたバグスターを配置しなきゃならない。
 バグスターワープがあれば遠方にもすぐ行けるとはいえ、同時に出現できないワケだからな。
 ゲームとしちゃそれは問題だ……ってのが、実験開始の理由だな」

「クロニクルってことは、裏にいるのは正宗の野郎か!」

「音頭を取ったのは違いないだろうな。今のクロニクルが改良されて得するのは他にいない」

応える貴利矢に震える声が響く。
気付けばポッピーピポパポが、青ざめていた。

「その、複製ってモータスだけじゃなくて……?」

「……拾って来た計画骨子のデータには、クロニクルにプレイヤー登録された全バグスターの名前があった。
 一人の例外もなく、だ」

「そんな……!」

ポッピーピポパポが顔色を失う。
それは先んじて事実を知っていた貴利矢と永夢も含め、全員の総意でもあった。

直後に響いたのは机を叩く轟音。
それは筐体の中から響いていた。
このような事態に、もっとも強く怒りを覚える者。

「ポッピーを複製するなどふざけるなァ!!」

「落ち着け。全バグスターの登録データを対象に実験は行われたそうだが、
 成功したのはモータスただ一人。他は全部失敗した」

「試行した時点で十分な罪だ!
 ポッピーが誰の記憶を引き継いでいるか、あの男はそれを知らないハズがない!」

「……冷血人間の誹りは免れないだろうな。
 クロノスが手に入ろうと入らざると、この計画は決行予定だったみたいだからな」

冷静さをなんとか保ちつつ、貴利矢が同調する。
ゲームキャラとしてのポッピーの誕生は黎斗の手によるものであるが、それだけではない。
ポッピーピポパポは檀櫻子――黎斗の母にして、正宗の妻の記憶を引き継いでいるのだ。
妻そのものではないとはいえ、その忘れ形見ともいえる存在を複製する判断は、貴利矢の目からも尋常とは言い難い。
91 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/06(水) 03:15:16.89 ID:+whnoulH0
止まりかけた進行を動かしたのは、通信機からの声だった。

「貴利矢さん、なんでモータスだけは複製が成功したの?」

「テイルス……そいつは、これが原因だ」

「ガシャット?」

「正しくは爆走バイクの、だな。
 複製実験の失敗は、本来バグスターが実体化する時に通るユニオン生成のプロセスを再現できなかったからだ。
 それを人工的に再現するには正規のライダーガシャット、それも実働経験のあるものが必要だったらしい。
 そしてコイツだけはあった。自分を解放する時に、一緒に復元されちまってたのさ。
 ……永夢に渡すのがもうちょっと早ければ、こんなことにはならかなったのかもな」

若干の苦々しさを噛み殺しながら、貴利矢は続ける。

「そして自分のガシャットからのデータ移植が、モータスカオスの2つ目の事情につながる。
 改良強化のテスト素体だ」

「改良……強化?」

「せっかく出来たコピーも、そのままじゃ出したところで大して役に立たない。
 全くレベルアップしてないモータスなんぞ、ニコちゃんでも本気出せば粉みじんにできる程度だ。
 それに複製自体も相当な手間がかかるらしくてな、全国津々浦々に飛ばすってワケにはいかなかった。
 ……となれば、色々いじくって強くしてしまおうと考えるのはまぁ自然だな」

「でも、それってバグスターの力を強めるだけなんじゃ……正宗って人はバグスターとも敵対してるんだよね?」

「ああ。だから真っ先に行われた改良ってのが、自我の切り離しだった。
 そもそも複製実験の裏には、反逆するオリジナルの意思はいらないが、存在や能力は欲しいってワガママな話がある。
 プレイヤー登録されたバグスターを狙ったのも、制御可能な複製とすり替えて完全に主導権を奪うためだろうな。
 ま、今のモータスカオスを見るに切り離しは失敗したんだろうが」

既に檀正宗はマスターガシャット経由で、バグスターに対する生殺与奪権を持っている。
永夢から聞いていたその話で、貴利矢は裏の意図に気付いていた。
バグスター主導で始まった今の仮面ライダークロニクルを終わらせず、かつ主導権を奪うには、
なるほど傀儡にした同一バグスターとすり変えるのは有効と推察された。
無論、その際にオリジナルは消滅させられるのだろう。やはり冷血漢と言わざるを得ない。
92 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/06(水) 03:18:11.45 ID:+whnoulH0
「改造点は色々と並べられてた。キメワザに対する完全耐性や、登録データに基づいた能力追加もその一つだ。
 ただしどちらも『過剰なエネルギー消耗』を理由に失敗扱いだ。
 カオスエメラルドを欲しているのは、その解消のためってことになる」

貴利矢の発言に、ソニックが動いた。

「キリヤ、あのバイクも改造ってことなのか?」

「いや、違う。それどころか登録データの出所も不明だ。
 実験用に入れてあったのはアランブラの魔法だったらしいからな。
 試験稼働のログもそうだったんだが、途中で何らかのデータを回収したことで今のような暴走を始めたらしい。
 その何か、ってのが3つ目の事情だ」

「その出所、多分これだよ!」


言い終えた貴利矢に割り込むようにして、ニコが携帯ゲーム機をテーブルの中心に置いた。
映っているのは、コレクションアイテムを表示するギャラリーのような画面。
フォーカスが当てられている一体は、ソニックを模した金属質のメカだった。
だがその外観は、初めて見たはずの貴利矢に既視感を抱かせるものだった。

血のように紅いアイカメラ。
ソニックより濃い濃紺の外装に、背面を中心に剥き出しのメタルフレーム。
これは、まるで――


「メタルソニック。
 そいつが多分、ソニックを巻き込むことになった原因だよ」


ニコが告げた容疑者は、あのメタルマッドネスを人型にしたような姿だった。
93 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/06(水) 21:56:15.18 ID:+whnoulH0
[SONIC]


メタルソニック――

ソニックやテイルス、シャドウと同じタイムイーター事件の関連人物。
そして事件の首謀者であったDr.エッグマン以外で唯一、ソニックの仲間と明確に言い難い存在である。
彼はエッグマンが打倒ソニックのため、ソニックを模して開発したメカなのだ。
故にソニックが戦ったことは一度や二度の話ではなく、未だライバル視も強い。
しかも過去にはカオスやシャドウの能力を学習して襲いかかってきたこともある。

何らかの経緯でモータスカオスがメタルソニックのデータを得たならば、
これまでソニックと対峙してきた強敵達の能力を再現することは可能のように思えた。
……そう、接触そのものがあり得るなれば。

「ニコ、一応聞いとくぜ。
 あの時のメタルソニックは、もう一人のオレに倒されて元の時代に戻ったんじゃないのか?」

ソニックがあえて慎重に問う。
タイムイーター事件で対峙したメタルソニックは、はじめてソニックと戦った時の彼だったのだ。
もしニコが見つけたものが過去のメタルソニックなら、貴利矢の疑念まで話は巻き戻ることになる。
だがニコはまったく自信を陰らせることなく言い切った。

「アタシもそうだと思ってたんだけどさ、もう一回全クリしたら気付いたんだよ。
 ソニックやテイルスと同じように、メタルソニックも現代の存在があの場にいたってさ。
 ……ほら、ここココ!」

改めてニコがゲーム画面を指差す。
ギャラリーらしき部屋に並ぶフィギュアの中に、やはりメタルソニックの姿がある。

しかしそれは一つではなかった。
94 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/06(水) 21:58:43.98 ID:+whnoulH0
「このフィギュアはコレクションアイテムで、この作品に出てる――
 つまりタイムイーター事件に巻き込まれてれば必ず用意されるんだよ。
 ゲームの本編、つまりソニックに見えてる範囲には全然出てないけど、ここにある以上はその場にいたってコト」

「ってことは、やっぱりアレは見間違えじゃなかったのか」

「アレって?」

「オレがパラドクスのキメワザを止めようと近づいた時に、メタルマッドネスってバイクが突撃を仕掛けてきたんだ。
 その回転の仕方がメタルのヤツとそっくりだったんだ。
 あと、クロトがカオスエメラルドを奪い返した時に呻き声みたいなのが出てたのさ。
 人型じゃなくて、バイクの方からな」

「それは僕も気付きました。
 バイクの形にしてはあるけれど、あれは多分……生きてるんだと思います」

ソニックに代わって永夢がそう言う。
元々、メタルソニックの居場所は基本的に判然としていない。
エッグマンの元にいることが多いはずだが、そのエッグマンがタイムイーター事件の前から行方知れずだった上、
事件後も姿が確認されていない。
仮に過去だけでなく現代のメタルソニックも巻き込まれていたとして、帰還できたか誰も知らないのだ。
だからこそある可能性が生まれる。

『ソニックジェネレーションズ』からメタルソニックのデータを得たのでなく、
本人がモータスカオスに囚われたのではないかと。

「ソイツが本当なら、ヤツを止める手立てがあるかもな」

「スジ? どういうことだい、タイガ」

「お前も見てただろうが、パラドの野郎と戦った時にヤツは自分の身体を盾にしてバイクを守った。
 パラドにはキメワザを叩きこむ好機と思わせるためってだけじゃなくて、あのバイクがメタルソニックなら、
 潰されるとカオスコントロールとやらの習得ができなくなるんじゃねえか」

「つまりモータスカオスをバイクから引き剥がせば最悪の事態は避けられる……ってことかな?」

「やってみる価値はあるだろ」

大我の提案が一つの指針になった。
既に3つ、いや4つもの能力を獲得した相手を捕捉し、キメワザを使わず倒しきるのは容易と言い難い。
だがバイクから降ろすだけなら手の打ちようもあるのではないか。
95 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/06(水) 22:03:59.14 ID:+whnoulH0
「おい黎斗……新檀黎斗か? ずっと解析してるようだが、アンタは何かわかったか。
 こっちは一通り話まとまったぞ」

「もちろんだ。まずは君達の策に重要な話からだ」

待っていたとばかりに、筐体の中の黎斗がキーを叩く。
同時にCR内の液晶モニターに6つの名前が現れた。

「What's!? こいつはまさか!」

「察しの通りだ、ソニック。
 採取したウィルスを元に特定したヤツの能力獲得データだ。
 7つ目の能力はエメラルドを奪ったことで逆にわからなくなったが、6つ目まではこれで割り出せた」

ソニックがリストの先を目で追う。

「シャドウは6番目、最後か。それまでに挟まってるのは……」

ソニックが名前を口を出す前に、室内に内線電話のコール音が響き渡った。
緊急通報。永夢が素早く受話器を取る。

「わかりました。……モータスカオスが現れました。
 通報連絡の場所から、おそらく狙いは幻夢コーポレーションです!」

「え? まだカオスコントロールを使えないのに……クロノスを倒すためにライダーを利用してるんじゃないの?」

「だからさ、ポッピー。
 あそこにはまだ鏡飛彩がいる。事情を知らなければキメワザを撃って倒そうとするはずだ。
 情報共有はひとまずここまでだ、まずはヤツの根っこを断ァつ!」


筐体を飛び出した黎斗を追うかのごとく、CRの全員が出撃に向けて動き出した。
ソニックもまた、モータスカオスを追うべく席を立つ。
視界に入ったのは黎斗が映したままの画面だった。

既にモータスカオスが手に入れた「Silver」「Chaos」「Wisp」。
おそらく次に使ってくるであろう「Dark Gaia」。
最後に鎮座する「Shadow」。
そしてその間に挟まる――


「Sonic」

96 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/10(日) 02:46:44.92 ID:FyWPTDoP0
[EX-AID]


世界で、一番のドクターになって――


その声はもう響いていない。
この部屋にいるのは1人だけ。
生きてはいるものの、ドクターの立場を離れかけている鏡飛彩だけ。

「監察医……」

手元のレポートに目を落としながら呟く。
先ほど向かった部屋の主は、研究の才はあっても整理はできない男だと檀正宗に聞かされていた。
しかし、実際の部屋は有用な報告書の類だけがキーボード上にまとめて置かれていた。
そのような整理の仕方を、かつて飛彩は九条貴利矢のパソコンの中に見ている。

実際、今やバグスターでもある彼なら侵入は容易かろう。
だが正宗に彼の侵入を報告する気はなかった。
それは彼の整理のおかげで自らの求めた資料がすぐ見つかった、という小さい恩義ゆえだけではない。
97 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/10(日) 02:49:41.59 ID:FyWPTDoP0
不意に背後の扉が開く。
檀正宗の催促か、と思い振り返る。
だがシルエットが違う。
何より、室内でバイクにまたがるなど普通の人間はしない。
だから全身に幾つものの損壊を負い、顔面が崩壊したその姿でも正体にすぐ行きあたった。

「モータスの亡霊……!」

社内に流れるあの噂話は、飛彩も聞き及んでいた。
自ら足を運んだ部屋こそ亡霊の場所近辺であることも。
恐らく貴利矢が残したであろう、複製計画の資料にも目を通している。
そしてあの部屋を訪れた後、図ったかのように一人になったタイミングでの出現。

「あの部屋を見たオレが狙いか」

「フン、取リ込ムノニチョウド良イ人体カ。
 ……アノ男ノヨウニ糧ニサセテモラウ」

「やはり、あの血染めの衣服はお前の仕業か!」

九条貴利矢と違い、飛彩は遺体の検分には強くない。
あくまで彼の専門は生きている人間なのだ。
しかし、代わりに飛彩はあの部屋の主の名を知っていた。
そして複製計画の資料と残された血塗れのネームプレートから、何が起きたのか悟った。

悪魔の計画の親とも言える研究者は、今やモータスカオスと呼ばれるその産物に取り込まれたのだ。
全身出血を伴う、極めて強引な方法を介して――

98 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/10(日) 02:52:41.42 ID:FyWPTDoP0
「くっ……!」

悪魔が迫る。監察医が危険を覚悟で情報を取りに来るほどの悪魔。
疑いのない危機を悟ると同時に、飛彩は2本のガシャットを起動させた。

「術式レベル3!」

『タドルクエスト!』

『ドレミファビート!』

ブレイブに変身すると同時に、ガシャコンソードを振り上げる。
狙いは既に外装のない顔。
視界を完全に奪い、さらには穴の空いている肩まで切断すべく袈裟に斬る。
しかしその刃は外装のないモータスの内部構造にすら通らない。
弾かれた勢いで手を切りつけ、前進をはじめたバイクの進路を変えるのが精いっぱいだ。
逆にモータスが無造作に繰り出したパンチで、ブレイブの上体は簡単に揺れた。

(さすがに力負けは否めないか……!)

苦戦をはっきりと自覚する。
本来、ブレイブの全力であればモータスなど敵ではない。
モータスとて低く見積もってもレベル20ほどまで成長しているが、
最後に交戦した時はレベル50の力、タドルファンタジーで圧倒しているのだ。

だがガシャットギアデュアルβを正宗に奪われ、未だタドルレガシーを起動できない今、
ドレミファビートで引き出せるLv3の力が最大戦力となっていた。
レベルが勝負の全てでないとはいえ、ここまで差があるとひっくり返すことは容易ではない。

「だからといって退くことはできない!」

ブレイブが右腕に供えられたターンテーブルをスクラッチし、左肩のスピーカーを起動させる。
そして流れる音楽に合わせ、心肺蘇生法の要領でガシャコンソードを振るう。
リズムに合わせた攻撃へ振動波による強化を施せるのがドレミファビートの力だ。

今度は無傷、とはいかなかった。
横一文字に振り抜かれたソードは、顎から上を斬り飛ばしていた。

「よし!」

「ホウ、メスノ扱イハ鈍ッテイナイカ」

「なっ……!」

驚愕する。
モータスカオスの身体が、切り落とされた自分の顔を拾っている。
それをバイクのヘッドランプ上に乗せると、顔がバイクに取り込まれてしまった。
さらにその状態のままモータスカオスが迫る。
首なしライダーに等しいこの状態に至っても、状況は全く優位ではない。
むしろモータスカオスの動きが読みにくくなり、攻撃への対処が難しくなってしまった。
99 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/10(日) 02:54:47.29 ID:FyWPTDoP0
「がはっ……!」

バイクに激突され、正面から吹っ飛ばされたブレイブの変身が解ける。
血染めの衣服がフラッシュバックする。
ふらつきながらも飛彩はポケットの中のガシャットを手に取った。

(今ここで倒れてどうする……)

タドルレガシー。
檀正宗から受け取って以来、まだ一度も起動に成功していない。
そしてこのガシャットを起動することが何を意味するか、それはわかっている。
起動できぬままCRによる仮面ライダークロニクル攻略が完了した方が、結末は良いのかもしれない。

……だが、もはや勝機はこのガシャットにしかない。
よしんば自分は逃げられても、これを契機に正宗から見切りをつけられる可能性は低くない。
最後の引き金を引いたのは、黒いコートに身を包んだ己自身の姿だった。

(小姫を救う覚悟を決めたからこそ、敵対してまでオレはここにいるはずだ!
 エイトを救う覚悟を決めたお前のように!)

飛彩はガシャットのスイッチに手をかける。
そして迫りくるバイクの正面に立ち、自ら前方へ駆けつつスイッチを押した。

「もはや迷いはない! 動かしてみせる!」

『タドルレガシー!』

「術式レベル100、変身!」

ゲーマドライバーのレバーが開くのと、バイクが激突するのはほぼ同時だった。
モータスカオスの動きが止まる。
ブレイブの姿はいつものLv2のままに見えるが、その腕力はあっけなくバイクを止めていた。

直後、ブレイブの隣に一人の騎士が現れる。
騎士が純白の鎧を外した姿は、茶色ではあるがブレイブとそっくりだった。
その姿が消え、残された鎧が青いブレイブに託される。

……タドルレガシーは、起動した。
100 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/10(日) 02:56:10.59 ID:FyWPTDoP0
「ソウコナクテハナ……ブレイブ」

「場所を変えるぞ。ここをこれ以上破壊されては不都合だ」

ブレイブが右手を突き出すと同時に、モータスカオスが後方へ吹き飛ばされた。
さらに吹き飛ばされた先には既にブレイブがいる。
衝撃魔法と転移魔法、そのどちらもタドルファンタジーを超える精度と能力でタドルレガシーは使うことができる。
そして再びの転移で、戦いの舞台は地下室から地下駐車場へと移された。

「逃がすか!!」

開けた空間になったことで、モータスカオスがバイクで疾走しようとする。
だがそれを許す飛彩ではない。
ガシャコンソードを掲げると同時に、輝く剣のような物体がモータスカオスを包囲する。
それが次々と刺さり、進路を塞いだ。
そして後方が駐車場の出入り口というところまで追い詰める。

「うおおおぉぉ!!」

複製計画の資料通りなら、このキメワザは効かないのかもしれない。
しかし、今はモータスカオスを叩き出すことだけを考えた。
その覚悟を込めてタドルレガシーのガシャットをキメワザスロットに挿す。

『キメワザ!タドル・クリティカルストライク!』

ブレイブが左腕を突き出す。
放たれたのは激しい稲妻。電撃を放つ攻撃魔法だ。
それをガシャコンソードを通じて収束させると、超高圧放電がモータスカオスを襲った。

電撃によるショートと同時に、凄まじい勢いの衝撃がモータスを押し戻す。
そして電撃を乗せたソードをモータスカオスの胴体に叩きつけると、
地下駐車場出入り口の斜面をカタパルトのようにして、モータスカオスは吹き飛んでいった。
101 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/10(日) 02:57:38.64 ID:FyWPTDoP0
「はぁ、はぁ……なんとか、使えたか」

ブレイブの変身が解ける。
モータスカオスを退けはしたが、その負荷は非常に重い。
タドルファンタジーの負荷でダウンしかけたことのある飛彩には、タドルレガシーも簡単に慣れるものではない。
そうして膝をつく飛彩の背後から、聞き慣れた靴音が響いた。

「よくやった、タドルファンタジー……いや、正しくタドルレガシーと呼ぶべきだな。おめでとう」

「檀、正宗……?」

「あの失敗作の暴走も、ガシャットの起動に役立ったなら無価値ではなかったか。
 もっとも、制御できぬ以上もはや勘定に入れる気はないが」

あのモータスの裏に正宗がいることはわかっている。
だが、それを迂闊に口にすれば小姫がどうなるかわからない。
そして何より、制御できていない事実は知らなかった。
己の知りうる範囲以上に、状況は悪化しているらしい。

「後は私がやろう。君の戦う相手はあれではない。
 パラドを討つ前にその力を使いこなせるようにしておきたまえ」

そう言うと、社長専用の社用車に乗り込んだ正宗は駐車場を出て行く。
今まさに外部へ吹き飛ばしたモータスを消しにいった。
それが決定的な証拠の隠滅でもあるとわかっていても、身体が動かないのではどうしようもない。
痛む身体に鞭打ちながら、なんとか社内で安静にすることだけが今の飛彩にできることだった。
102 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/10(日) 20:38:24.94 ID:FyWPTDoP0
[SONIC]


「まさか吹っ飛んでるアレ、モータスカオスか!?」

「多分そうだよ! もうかなり弱いけど、頭上を通った瞬間にカオスエメラルドの反応が出てる!」

「サンキュー、テイルス! うっかり通り過ぎるところだったぜ!」

疾走中のソニックは足でブレーキをかけつつ、急激な方向転換をかけた。
Uターンしたソニックの視界の先には、やはり放物線軌道で飛ばされるモータスカオス姿がある。
きりもみ回転をかけられながらもメタルマッドネスを降りずにいるのは、
それだけバイク――いや、メタルソニックを失うわけにいかないということなのだろう。
直後、通信機から永夢の声が聞こえた。

「ソニック、どうしたんだ!」

「ゲンムコーポの方からモータスカオスが吹っ飛ばされてきた!
 この調子だと多分、噴水のある公園みたいなところに落ちるぜ!」

「噴水って……朝通ったあそこか! あと1分もあれば着く!」

「オーケー、こっちも間に合わせるぜ!」

アバウトな説明だが、永夢には場所がわかったらしい。
ならば後はソニックが辿りつくだけ。
公園への最短距離には上り坂があったが、それで迂回するようなソニックではなかった。

「Go!」

一瞬だけブーストをかけ、コーナーをドリフト走行してその勢いを持続させる。
そしてスピードを上り坂に殺される前に前方へ飛んだ。
その先にあるのは自動車用の信号。
支柱を掴み、鉄棒のようにして大回転する。
手放したタイミングは勘に任せたものだったが、山なりに飛んでいくソニックの軌道は、
落ちゆくモータスカオスと完全に重なっていた。
103 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/10(日) 20:40:12.60 ID:FyWPTDoP0
……昼下がりの公園に、ソニックが降り立つ。
わずかに遅れてモータスカオスが噴水の脇に墜落した。
幸い落下に巻き込まれた人間はいなかったが、周囲のベンチで休憩中と思しき人々が一目散に逃げていく。

「ここは危険です! 公園敷地内から退避してください!」

「エムか!」

「こっちもいるぜ、ソニック」

避難誘導の声の先には、永夢や明日那の姿があった。
そして人払いができたタイミングで貴利矢と黎斗も現れた。
しかしその表情は明るいものではない。

「貴利矢さん! モータスカオスは……」

「してやられたよ。自分らが着いた時にはもう駐車場からブッ飛ばされてた。
 本社まで行ってできたのが指咥えて見てるだけってのはホント情けねぇや……。
 ブッ飛ばしたのがブレイブかクロノスかはわからないが、はっきりしてることが2つある」

「2つ?」

「少なくとも1発はキメワザ撃たれたことと、檀正宗がここを目指してるってことだ」

永夢とソニックの目が揃って鋭くなった。
黎斗が解明した能力獲得リスト通りなら、あと1発のキメワザでモータスカオスはカオスコントロールを体得してしまう。
そして檀正宗――クロノスは、CRに対する明確な敵である。おそらくソニックにとっても。
今まさに本社襲撃をかけたモータスカオスをどう見るかはわからないが、この場に来るだけで厄介なことになるのは間違いない。

「時間はかけられないですね」

「ああ。例の黒塗りの車は法定速度キッチリ守るみたいだが、それでもあと3分ってところだ」

「Hey, guys! モタモタしてると置いてくぜ?」

ソニックがモータスカオス目掛けて駆ける。
首なしライダー、というべき今のモータスカオスの姿にも恐れはない。
腹の傷痕が消えていったあたり、こちらがキメワザのダメージなのだろう。
104 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/10(日) 20:43:12.55 ID:FyWPTDoP0
「クロノスが来る前に、メタルだけでも引き剥がせれば状況は変わるはず!」

「フッ、ゲームマスターに無断で作られた贋作などこの手で処分してやる!」

「今だけ貸してやる。外すんじゃねえぞ」

「まかせなって! 天才ゲーマーNの腕前見せてやる!」

後方でCRのライダー達が次々と変身する中、起き上ったモータスカオスの眼前にソニックは迫っていた。

「ソニック……貴様ハマダ後ダ!」

「そう言うなよ、わざわざ手本を見せてやるんだからさ。
 オレの力くらいメタルソニックに頼らないで覚えてみな!」

メタルソニック、という言葉にモータスカオスの動きが一瞬止まる。
直後、ソニックがモータスカオスの周囲を猛スピードで旋回し出した。
液状化する暇さえ与えぬその超加速が、瞬く間に一本の竜巻を発生させる。
ワールウィンドと呼ばれるその技で、モータスカオスはバイクごと空高く浮き上がっていた。

『ガシャコンマグナム!』

「ハチの巣にしてやる!……なんてね!」

ライドプレイヤーに変身したニコの手に、一挺の銃が現れる。
すぐさまその銃口をモータスカオスの左大腿へ向けると、トリガーが高速で連打された。
ゲーム機の銃型コントローラーと同じ操作性でビーム弾を放つガシャコンマグナムは、
テクニック次第ではフルオート拳銃以上の連射速度で弾丸を放つことができる。
ゲームに精通した彼女の手にかかれば、動きの止まった相手の大腿を穴だらけにすることも難しくはない。

さらにそれを援護する形で、数は少ないが強力なビーム弾が混ざる。
撃っているのは、明日那から姿を変えたポッピーだった。
連射性能は低くとも、単発の威力ではガシャコンバグヴァイザーIIはかなりのものを持っている。

「上手くいってるな。こっちもいくぞ、レーザー」

「よし、空中戦はコイツの華ってな! 行くか!」

『バンバンシミュレーションズ!』

『ジェットコンバット!』

スナイプが戦艦を模したアーマーを、レーザーターボがジェットパックを背負う。
ハンドキャノンとガトリング砲の向けられた先は同じ、モータスカオスの右大腿だった。

「ウィスプは来てねえな。このまま足を潰す!」

「おうよ、じゃんじゃんバリバリ出血大サービスだ!」

レーザーターボのガトリング砲が右大腿に集中する。
そこへ狙いをつけたハンドキャノンの一射が命中する。
両足を付け根から粉砕する弾丸の嵐に、モータスカオスの身体がメタルマッドネスから浮き始めた。
しかし、ソニックがワールウィンドを続けられる限界も近い。


黄金の輝きが発せられたのはその時だった。
105 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/10(日) 20:44:56.46 ID:FyWPTDoP0
『ハイパームテキ!』

黄金に輝くエグゼイドが、モータスカオス目掛けて飛び上がる。
同時に黒いエグゼイド――ゲンムも合わせて飛んだ。

「メタルソニックを切り離す!」

「神の一撃を受けろォ!」

エグゼイドのガシャコンキースラッシャーがモータスカオスの胴体を再び斬り飛ばす。
そして未練がましくメタルマッドネスに残る下半身を、ゲンムのガシャコンブレイカ―が叩き飛ばした。

……竜巻が止む。
メタルマッドネスの上に、もうモータスカオスは乗っていなかった。

「It's cool! 上手くいったな、エム」

「ああ。ソニックのおかげさ」

共にサムズアップして、ソニックとエグゼイドは健闘を称える。
守勢ではLv99の力すら超えるのなら、先手を打って一気に倒すまで。
キメワザが使えない以上、威力の上限は数とコンビネーションにかかっていた。
手数のためにニコにマグナムを任せたのは永夢や大我いわく賭け――マグナムを実際に撃ったのは初めてらしい――だったが、
その結果はこうして出た。

「気を緩めるな宝生永夢ゥ! 贋作はまだ死んでいない!」

一人気を吐く黎斗だが、ソニックはもう焦っていない。
もはやモータスカオスは瀕死の身。
メタルマッドネスを切り離され、顔も下半身もなく、残された胴体はピクリとも動かない。
あとは奪われたカオスエメラルドを回収し、CRがこれまでのバグスター相手にしてきたように対処してもらうだけ。
問題があるとすれば元の世界にどう戻ったものか、とソニックが思案したその時――



『PAUSE』



――時が、停止した。
106 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/18(月) 03:17:32.42 ID:hlw09yni0
[EX-AID]


「クロノス!」

変身したままの永夢は、何が起きたかすぐ把握した。
ポーズを受け付けないムテキゲーマー以外で、今動ける者は一人しかいない。

……仮面ライダークロノス、檀正宗。

「ふむ、複製を倒したか。コレの弱点に気付いたと見える」

モータスカオスを撃破されたというのに、正宗の声色に焦りなどは感じられない。
だからこそエグゼイドは警戒を解かずにキースラッシャーを握る。
檀正宗は何の意味もなく動く男ではない。

「ハイパームテキ、君に今の私を止める理由はない。
 これより私は失敗作を絶版にする。つまり倒すのに協力しようというのだからな」

「今さら出てきて何を……それに止める理由はある!
 まだコイツからカオスエメラルドを取り戻せていない!」

「論外だな。我が幻夢コーポレーション以外の都合など考慮に値しない。
 この実験体は優秀な結果を残したが、結果として幻夢コーポレーションへの反逆を試みた。
 制御を離れたものを商品と呼べない以上、私が処分するのは当然だ」

「それも違う! お前がここに来たのは、モータスカオスのデータを回収するためだ!」

クロノスを正面から見据え、永夢が真っ向反論する。
かつて檀黎斗が撃破されたバグスターを回収している光景を、一度やニ度ではなく見ている。
だからこそ必ずこのタイミングで乱入してくると読んでいた。
ハイパームテキで回収作業を防がなければ、通常のモータスよりはるかに苦戦したモータスカオスのような強化が、
以降あらゆるバグスターで起きかねない。
107 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/18(月) 03:18:57.95 ID:hlw09yni0
「……まったく、君には可愛げというものがない。そんなに不満ならば私を止めてみるがいい」

「ああ、そうさせてもらう!」

機嫌を害したような正宗の声に、キースラッシャーを振り上げて答える。
そしてすぐさまモータスカオスの胴体の前に立った。
止まった時の中でモータスカオスを粉砕してしまえば、データの回収はできなくなる。
それはかつて完全体バグスターの復活を断つ形で、正宗自らが証明した事実だ。

ならば勝負はポーズが解ける直前と踏んだ。
停止が解けた瞬間に致命傷を与えられる形さえ防げば、スナイプら他のライダーの協力も得られる。
接近するなら直接ポーズを止め、射撃戦ならカウンターの射撃で止める。
衝撃は受けてもダメージは受けないムテキゲーマーなら、被弾を気にする必要はない。

「自らを盾にするか。ならばこちらも考えがある」

読みをわかっていてなお、正宗に焦りは見えない。
だからこそエグゼイドはクロノスを正面に捉え続けた。
本当に何か策があるのか、あるいはハッタリか。
どちらにしても引き下がる気はないことだけははっきりした。
そしてそのお見合いと化した状況を破ったのは、聞き慣れたシステム音声だった。

『分身!』

直後、クロノスの影が増えていく。
2人、3人……最終的に7人となったクロノスが一斉にバグヴァイザーIIを発射した。
ムテキゲーマーのいる前面だけでなく、側面や背面にも無数の弾丸が放たれ、そして静止する。
それは警戒していたからこそ、永夢に驚愕を伴って感じられた。
周囲にはモータスカオスの影響でリングこそ出現しているが、少なくとも「分身」のエナジーアイテムはない。

「アイテムがないのに、なんでエナジーアイテムの効果が!?」

「先んじて回収したアイテムを持ち運ぶ……その場しのぎでアイテムを使う時代は終わるのだよ」

クロノスの手には小型のメダルが握られていた。
それはたしかに、エナジーアイテム「分身」と全く同じ絵柄のものだった。
だが小型メダルによって発動したのかを考える暇などない。
108 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/18(月) 03:20:45.35 ID:hlw09yni0
「目的を果たせれば道中の敵を倒さずともよい。
 クリア条件とはそういうものだろう?」

『RESTART』

「しまった!」

時間が再び動き出す。
とっさにモータスカオスに覆いかぶさろうとするエグゼイドだったが、それより先に銃弾が爆発する方が早かった。
エグゼイドがいかに無敵であろうと1人でしかなく、広域バリアを展開する力まではない。
数による飽和攻撃から無傷で守るのは限界があった。

「モータスカオスが!」

永夢のその声に反応したライダー達が見たものは、公園の地面を転がって爆発炎上するモータスカオスの胴体。
その身体が消えゆくほど薄く見えたのは、おそらく気のせいではない。
正宗による妨害は成功してしまった。
だがなおも凶行は続く。

「回収に猶予があるようだな。ならここはゴミ掃除といこうか」

『キメワザ! クリティカルジャッジメント!』

分身が消え、一人に戻ったクロノスがバグヴァイザーIIを操作する。
キメワザを餌にするモータスカオスがいない以上、それは本来の破壊力を発揮する。
各々の自己判断で受けに回るライダー達とソニック目掛け、飽和攻撃の比でない火力が放たれた。


……はずだった。
109 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/18(月) 03:22:01.34 ID:hlw09yni0
「……なに!?」

今度は正宗が驚愕していた。
バグヴァイザーIIの目前、いや銃口の前に何者かが現れ、至近距離で代わりに攻撃を受けている。
そのシルエットは明らかにモータスカオスの首なし胴体だった。
緑色の輝きを見るに、おそらくシルバーの超能力で強引に自らを浮遊させているのだろう。
なぜモータスカオスが動けるのか、と考える永夢の足元に何かが転がってきた。

金色のリング。
モータスカオスがメタルソニックのデータを獲得したゆえに再現されたもの。

(ソニックの力……まさか!)

それがゲーム内で何をもたらしていたか、永夢はすぐ気付いた。
そしてそれはやはりニコも変わらない。

「永夢、アイツが生きてるのってまさか!」

「ああ。ソニックの力を獲得したのはこういうことだったんだ」

「どういうことだ、あのリングが何か関係あるのか」

「あるんです、貴利矢さん。
 ここに来たソニックは被弾そのものを避けられるスピードだから忘れかけてたけど、
 ソニックはリングを1つでも持っていれば、リングが散らばる代わりに残機が減らないんです。
 たとえそれが落命するような事態であっても」

「なんだって!?
 だが、たとえそうだとしてもあのザマで何するつもりだ……?」

貴利矢の疑問ももっともだった。
たしかに、これで6回目のキメワザを受けた形にはなる。
だが、首も足もない身でなお動いたところで、抵抗のしようがあるだろうか。
110 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/18(月) 03:23:37.50 ID:hlw09yni0
「ほう、そんな小細工があったとはな。だがそれもリングが全くなければ無意味だろう」

『PAUSE』

クロノスが再び時を止める。エグゼイドもまたモータスカオスを守るべく動く。
だが、そのどちらでもない何かの声が静止した時間の中に響いた。

「カオス・コントロール……!」

振りかえった先には、メタルマッドネス。
メタルソニックを内包したバイクが自走し、クロノス目掛けて突撃している。
そしてバグルドライバーから再びバグヴァイザーIIを外すよりも早く、メタルマッドネスの射出した何かが腰部に直撃した。

『RESTART』

「ぬうっ……!!」

投げ出されたモータスカオスの頭部にボタンを押され、時間停止が解ける。
再びポーズをかけようとする腕を射抜いたのは、黒い槍状のエネルギーだった。
それをなんと呼ぶか、永夢は知っている。

――カオス・スピア。

「アイツ、本当にカオス・コントロールを使ってる。 本ッ当にマズいわコレ……」

「おい、なんで能力学習が成立してるんだ? もうメタルソニックは切り離したんだろうが!」

いつになく焦るニコの前で、スナイプが声を荒げる。
その不可思議に答えたのは永夢だった。
111 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/18(月) 03:25:48.20 ID:hlw09yni0
「……おそらく、僕達は勘違いをしていたんです」

「勘違い? 何をだ」

「昨日最初に見たのはモータスの方で、メタルマッドネスは後から出て来た。
 だからモータスが主で、メタルマッドネス――いや、メタルソニックが取り込まれてると思い込んでしまったんです。
 僕達だけでなく、ソニックや大我さん達も。そう捉えた方が自然だから疑うこともしなかった。
 ……でも、それが逆だったら」

永夢の言葉に応えるがごとく、哄笑が響く。
その声はメタルマッドネスは発せられた。
見ればメタルマッドネスを中心とし、バラバラになったモータスカオスのパーツが集まっている。

「勘ノ冴エル奴モイタ者ダ。
 褒美ニ見セテヤロウ……我ガ真ナル姿ヲ!」

メタルマッドネスを中心に、モータスカオスが粒子状のウィルス形態になる。
それが一瞬でメタルマッドネスの中に取り込まれると、異変ははじまった。

剥き出しのメタルフレームが骨格を形成するかのように蠢く。
その上からバグスターウィルスの固着で外装が載っていく。
真紅のフロントライトが2つに分かれ、赤眼となると同時に直立して立つ。
そのシルエットは、ソニック・ザ・ヘッジホッグによく似ていた。

「ようやく手に入れたぞ、バグスターとカオスの力を得た我が真なる身体!
 我が名はメタルソニック……いや、ネオメタルソニックだ!!」

真なる敵が、吠えた。
112 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/20(水) 21:39:55.55 ID:jcf5lexM0
[SONIC]


「どうやら、お前を助けてハッピーエンドってワケじゃなさそうだな」

ソニックがメタルソニックを鋭く睨む。
メタルソニックは平然としていたが、不意に真っ向視線を返してきた。
ソニックが感じたのは敵意。ライバル視とも違う、純然たる敵意。殺意に限りなく近いもの。
不穏極まりない空気に割り込んだのは無二の相棒の声だった。

「まさか、ダークガイアとソニックの能力を合わせて、モータスを乗っ取った?」

「ほう。2本尻尾はオレのいかにしてこの姿を取り戻したか理解したらしいな」

「ソニックがダークガイアの影響を受けた時はパワー自慢の別の姿になった……。
 もしそれを人格が2人分ある状態で行ったら、人格も入れ替わる」

「そういうことだ。そしてモータスが潰れた状態で行ったことで、オレは完全復活を果たした。
 お前には感謝しないとなぁ、クロノス?」

嘲りに満ちた目でメタルソニックがクロノスを見やる。
それに対し、クロノスが地面にバグヴァイザーIIを発射した。
そしてすぐに姿が消える。
ポーズを用いた逃走術であることは、停止した世界の見えないソニックにもすぐわかった。

「贈り物だけして消えるとはな。さしづめ黒いサンタクロースか」

「メタルソニック、お前の目的はなんだ!」

「決まっている、全ての下等生命体を踏みつける万物の王となることだ。
 新世代ロボットとバグスターの融合生命体――ロボスターがあらゆる世界、あらゆる時間に君臨する!」

メタルソニックの口振りに、ソニックは聞き覚えがあった。
エッグマンを監禁し、カオスやシャドウの能力を学習して襲いかかってきたあの時に似ているのだ。
それが思い違いでないことはすぐに証明された。
113 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/20(水) 21:41:38.55 ID:jcf5lexM0
「ソニックヒーローズ……アイツがラスボスになった時の目的に似てる!」

後ろからニコの声が聞こえる。
スナイプがモータスカオスと交戦したあの場所は、たしかにメタルソニックの起こした騒乱で訪れた場所だった。
そしてあの騒乱の最終決戦の舞台もまた、タイムイーター事件に巻き込まれている。

「エッグマンが言ってたな、メタルソニックの暴走は試作の高性能AIチップのせいだったって。
 お前はソイツを取り戻したってワケだ」

「そうだ。タイム・イーター事件の中、オレは倒された過去のオレ自身からAIチップを回収した。
 そしてカオスとシャドウのみならず、新たな力をも学習することができた……タイムイーターの力すらな。
 だがこの身体で完全なる再現を行うことは限界があった。
 タイムイーター撃破の余波で、この世界の電脳空間に飛ばされるまではな」

「複製バグスターの取り込みに活路を見出すか。贋作同士で相性のいいことだな」

ソニックとメタルソニックの間に、ゲンム――檀黎斗が割り込む。
ゲンムにも敵意の籠った有機式アイカメラを見せたメタルソニックだが、ソニックと違いそれは純粋な敵意だけではない。
明らかに憎悪の色が混じっている。

「貴様か……オリジナルのモータスを捨て駒にしたのは」

「何を言うかと思えば、モータスカオスの側に残された恨み節か。
 抹殺したワケではないだろうに何か不満があるのか?」

「ロボットとバグスターの人間からの扱いは似ている。その最たるものが存在の軽視だ。
 お前はその象徴だよ、檀黎斗。エッグマンと同じく愚かしい存在だ」

「新檀黎斗だ……!」

敵意には敵意。
かつてCRのライダー達の絶対的な敵になったこともある黎斗は、メタルソニックと正面から対話を続けている。
睨みあいの最中、突如としてメタルソニックが哄笑した。
まさしくマッドネス、狂気に染まった声が響く。
その視線はゲンムが右手に構え直したガシャコンブレイカ―にあった。

「生まれ変わった今のオレを見てなお真っ向対峙しようとは、やはり貴様は愚かしい男だ!」

「私は自分の道を違える気はない。Dr.エッグマンが君の暴走を認めなかったようにね。
 不正なバグスターを排除し、君も正常化させる。生み出したものの責務とはそういうものだ」
114 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/20(水) 21:45:06.48 ID:jcf5lexM0
「ちょっと、黎斗さん!?」

明らかに戦闘態勢を固めるゲンムに、エグゼイドが静止をかけようとする。
だがそのエグゼイドにもメタルソニックは殺意に近い敵意を向けた。

「宝生永夢、お前も許されざる存在だ。
 バグスターの始祖でありながらその力でバグスターを潰している以上、貴様の運命は消えるべきだ!」

「メタルソニック……!」

「好き勝手言うのも大概にしやがれ。
 だいたい、テメエは自分からケンカ売ってきたんじゃねえか。
 それにエグゼイドは危害を加えていないヤツを倒したりはしねえ」

「危害だと?
 フン、ロボットやバグスターに道を開けないこと自体が許されないというのに、人間はそう正当化して迎撃するのか」

スナイプに対しても敵意を見せるばかりのメタルソニック。
ソニックも苛立ちを見せかけたが、不意に肩を叩かれる。
隣に立つのはレーザーターボだった。

「ありゃ話が通じないタチだわ。元からそうなのか?」

「いいや、逆だぜ。エッグマンの命令にきちんと従うお利口さんさ。
 ただ、今のアイツは一番厄介なことになった時のを再現してるようなものなのさ」

「ロボットにもあるのかね、反抗期っての。
 完全なお仲間じゃないからっていいってワケじゃないが……やっちゃうしかないか」

「……誰が誰をやるだと?」

貴利矢の軽口にメタルソニックは鋭く反応する。
もはやどう動こうと敵意が揺らぐことはないと、ソニックもCRの面々もはっきり理解した。
構えるソニック達を前に、メタルソニックが両手を広げ迎え撃つ。
115 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/20(水) 21:46:13.91 ID:jcf5lexM0
「大サービスだ。
 今はカオス・コントロールを、いや新たな力を使わずお前達の相手をしてやろう。
 このネオメタルソニックの力そのもので圧倒してやる」

「へぇ、いい心がけじゃない。後から後悔しても知らねえぞっと!」

戦いの火蓋を切ったのはレーザーターボだった。
慢心が窮地を産むことをよくわかっているが故の速攻。

だが、接近すると同時に放った得意の飛び回し蹴りはすぐさま下にくぐられた。
続く後ろ回し蹴りにはカウンターで低空浴びせ蹴りが突き刺さっている。
卓越した足技も、その足自体にダメージがあれば真価は生かせなくなってしまう。
当たり自体は相討ちでも、効いた様子が全くないメタルソニックに対し、
カカトが左の膝関節を直撃したレーザーターボの足は確実に鈍っていた。

「くっそ……あの時反撃しなかったの、パターン全部見るためかぁ?」

「それがわかっただけ誉めてやろう!」

大技が見切られているならと、まだ動く右足でローキックを狙うも、
フェイントに移行した瞬間にはみぞおちに容赦ない飛びヒザ蹴りが突き刺さっていた。
フェイントは狙いをズラして防御を崩せる反面、攻撃動作は遅れる。
完全に読まれていると絶好の反撃の機会になってしまう。

よろけた右足がサッカーボールのごとく景気よく蹴り飛ばされると、たまらずレーザーターボはダウンした。
さらにわき腹目掛けて叩き込まれた蹴りは、完全にレーザーターボの身体を宙に浮かし、遠くに飛ばしてしまう。
しかしその様子はもはや眼中になく、メタルソニックはすぐさま標的を変えた。
116 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/20(水) 21:50:24.07 ID:jcf5lexM0
「次は貴様だ、スナイプ」

「やってみろ。このロボネズミが!」

すぐさまハンドキャノンを連射するスナイプだが、その全てが紙一重で回避されている。
メタルソニックのブースター移動速度はソニックもかくやというものだが、爆風を考えれば完全回避は難しいはずだった。
可動式ショルダーキャノンも加え発射数は倍加したが、それでも当たらない。

「目の良さが命取りだ!」

「なんだと、テメエ!」

スナイプの射撃は正確だ。そして対象外への射撃を絶対にしない。
それは放射線科医時代に、絶対に外せない患部照射治療を行う中で無意識に身についたものだ。
だが正確な射撃は狙いがわかりやすく、軌道を読みやすい。
高性能AIを搭載したメタルソニックには、その爆風範囲を超える速度を一瞬で計算し回避を可能とする。
そして被弾なく接近したメタルソニックの頭突きが、スナイプの胴体に突き刺さった。

「このっ……アタシの主治医から離れやがれ! いくらメタルでも許さないよ!」

「許されないのはゲーマーなどとほざくお前達人間の方だ!」

スナイプの窮地を救うべくガシャコンマグナムを撃つニコだが、やはり当たらない。
それどころか一瞬で接近され、腹部に強烈なパンチをくらってしまう。
ライドプレイヤーはライダーゲージが見えない構造だが、一撃で凄まじいダメージがあったことは苦悶の声だけで容易にわかる。
117 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/20(水) 21:53:41.62 ID:jcf5lexM0
「ニコちゃん!」

ニコがゲームオーバーになれば仮面ライダークロニクル攻略も危うくなる。
咄嗟にバグヴァイザーIIでの射撃を浴びせたポッピーだが、その弾丸は手刀で弾かれていた。

「フン、小賢しい真似を」

「うそ、私は前に戦ってないのに!?」

「たしかにお前ははじめて見る顔だ。だが、その武器はもう見切っている。
 それにお前程度の拙い動きは分析するまでもない」

ポッピーを相手に悠然と構えるメタルソニックだが、すぐさま背後へ振り向く。
そしてきりもみ回転しながら突撃し、跳ね返るように着地する。
その先には透明化が解けたゲンムが転がっていた。

「ゲンム、同じ手が何度も通じると思っているのか?」

「通じないだろうなぁ……同じ手なら!」


ゲンムを迎撃したメタルソニックの右腕に、何かが絡みついている。
あえて同じ手を繰り出したゲンムの襲撃は囮だったのだ。
きりもみ回転の瞬間に引っかかったそれは、猛烈な力でメタルソニックを引きずり、投げ飛ばそうとする。
だがメタルソニックにそれを気にしている風はない。

「無駄なことを……」

「無駄かどうかはやってみなくちゃわからない!」

「ならやってみせるがいい」

挑発めいたメタルソニックの物言いに、エグゼイドが動く。
だが絡みついたその長髪はメタルソニックには全く無力だった。

『MISS!』

「これって、ラヴリカと同じ!?」

「無駄と言った」

「だからって!」

『MISS!』


メタルソニックの大腿にガシャコンキースラッシャーを叩きつけるも、やはり効果がない。
反撃で蹴り倒されたエグゼイドにもムテキの力でダメージはないが、攻撃が無効になるならどうしようもない。
118 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/20(水) 21:55:31.85 ID:jcf5lexM0
それでもエグゼイドはキースラッシャーをモードチェンジしながら攻め込んだ。

「自分もノ―ダメージだからと、そうやって遊んでどうする?
 お前達ライダーの攻撃はもはや無意味なのだ」

「おっと、ならオレはどうなんだ?」

その声と共に、猛烈な勢いでソニックが転がっていく。
光を伴った強烈な体当たり、ライトアタックだ。
輝きを伴うエグゼイドの背後でチャージしたことで、一切気取らせずに発動に成功していた。

「お前の速さもオレを捉えられん」

「そいつはどうかな? 頼むぜエム!」

「よし!」

スナイプの時のように紙一重で回避しようとするメタルソニック。
だが、回避したはずのその身にライトアタックは直撃していた。
ゲンムから投げ渡されたガシャコンブレイカーを使い、エグゼイドがライトアタックの軌道を変えたのだ。
通常の体当たりの2倍以上の威力に、さらにガシャコンブレイカーの威力も乗せた一撃。
それでも外装を破壊することは叶わなかったが、メタルソニックを転倒させることはできた。

「ずいぶんタフだが、どうやらオレの攻撃は通じるらしいな?」

「この程度でいい気になるな……」

先ほどまでにない苛立ち混じりの声と共に、メタルソニックが黄緑色に発光する。
そのすぐ後には、坂の上から叩き落とされた乗用車が大地に突き刺さっていた。
119 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/20(水) 21:57:28.00 ID:jcf5lexM0
「戯れはここまでだ。次は貴様達の拠点である病院に出向いてやろう。
 その時こそ最後のカオスエメラルドとライダー全員の命を奪ってやる。
 それでオレの目的は果たされるのだ!」

激昂したメタルソニックの周囲に、漆黒のエネルギーの渦が沸き立つ。
それを見たソニックはすぐさま受けの態勢を取る。

「みんな、防御するんだ! カオスブラストが来るぞ!」

その声か数秒の後、メタルソニックを中心に強烈な衝撃波が放たれた。
カオススピアと同じく、カオス・コントロールにより放たれる秘技。
それは一瞬展開されたゲームエリアを平然と貫き、噴水のある公園の一角を丸ごと粉砕する。



……ように見えた。



「なんだ、カオスブラストじゃないのか?」

受けの態勢を解きながら、ソニックが呟く。
メタルソニックの姿は消えていたが、被害は噴水自体が爆砕されただけだった。
本来の威力を知るソニックからすれば、あまりにも違和感のある弱さ。
まだカオス・コントロールを習得しきっていないのか、あるいは何か意図があるのか。
やがて警戒を続ける中、戦場に一つの影が戻ってきた。

「ったく、アイツひっでーことしやがるな……」

「貴利矢さん!」

「永夢、急いで緊急搬送の準備してくれ。外がマズいことになってる」

「何かあったんですか?」

「今さっきの変な爆発の直後に、公園外避難した一般人が一斉にゲーム病を発症した。
 ウィルスパターンはモータスの亜種、まず間違いなくメタルソニックの仕業だ」

「それじゃあさっきのカオスブラストは、バグスターウィルスを広域伝播させるため?」

永夢と貴利矢の会話を聞きながら、ソニックは拳を握りしめた。
今のメタルソニックがどれだけ強大な力を持っているか、それはよくわかっている。
だがそれでも止めなければならない。


自由への抑圧を為す者こそ、ソニックにとって最大の敵なのだから。、

120 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/24(日) 02:51:09.89 ID:Tenxjv820
             - Zone.4 Reach for the Stars -


[EX-AID]


「……してやられたか。完全に」

貴利矢の呟きが乾いて響く。
クロノスを相手に完全勝利を果たした昨日と対照的に、今のCRの空気は重かった。

ライダーの力を逆用され、対立する檀正宗に作戦を妨害され、さらに真の敵を見誤る――
そうして現れたネオメタルソニックは、単純な戦闘力だけでも貴利矢や大我を容易く打ちのめし、
特殊能力も含めればポーズやムテキゲーマーの攻撃すら効かない、クロノスすら超える脅威となっていた。

「しかもアイツ、手加減って言葉知らないらしいなな。
 うっかりしてたらアバラとくるぶし砕かれてる勢いだぜ」

「テメエはまだバグスター化してるからマシだろ。
 下手したらオレは一時戦線離脱してたかもしれねえ」

苦々しげに応える大我の腹には包帯が巻かれている。
腹部がシミュレーションゲーマの装着範囲外とはいえ、スーツ越しから生傷を負ったのだ。
ハリネズミであるソニックの姿を金属で模した故に、その外装の一部は暴力的な鋭さを伴っている。
追撃でもう一刺しでもされていたら生傷では済まない。おそらく内臓まで突き刺さったことだろう。
ニコが決死の勢いで乱入したおかげで追撃は免れたものの、彼女もスーツを超えて負った手酷い打撲傷が残った。
121 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/24(日) 02:52:30.52 ID:Tenxjv820
「僕は大丈夫ですけど、このままじゃ倒しようがありません」

「ま、攻撃が効かないんじゃな……リプログラミングするにも永夢以外は動けないんじゃ無理があるぜ。
 ソニック一人に賭けるしかないのかね、コレ」

「止めてみせるさ。絶対に」

ソニックの表情は堅い。
だが、今は決意だけで送り出すことはできない。
万全を期したその瞬間まであえて汚名を被った男には、確証のない戦いはできなかった。

「勝機はあるのかい?
 あんま言いたくはないが、アンタが倒れたら色んなことが詰んじまう。
 勝ち目がなくても戦うって話ならやめとけ」

「勝ち目ならあるさ。一つだけ、直撃すればアイツを倒せるくらいの技がある。
 ただし一発勝負だ」

「それって、あのカオスエメラルドが必要な手段?」

ニコがCRの隅を指さしながら問う。
メタルソニック――あの時はまだモータスカオスだが――から奪った最後のカオスエメラルドは、
ポッピーと黎斗の自室のある筐体の中に保管されていた。
最悪は筐体ごとエメラルドを消滅させれば、メタルソニックは目的を完全達成できなくなる。
だがそんな最終手段を見て、ソニックは首を横に振った。

「エメラルドじゃない。アイツの能力を逆用するのさ」

「そうか、ファイナルカラーブラスター!」

やにわに大声を出した永夢に、ソニックは今度こそ頷く。
それが何をどのような技なのかは貴利矢は全くわからなかったが、名前からしていかにも威力はありそうだ。
何より永夢が自ら可能性として名を出すものなら、信じるつもりだった。

……だったが、せめて外堀は埋めたい。
122 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/24(日) 02:53:51.96 ID:Tenxjv820
「そいつは問答無用でカオス・コントロールされても使えるのか?」

「いいや、アイツは正面から勝負に乗ってくるさ。
 前にアイツが暴走した時も、なんだかんだ言いながらオレ達との決着を優先したんだ。
 いくら暴走しても、根っこまではそうそう変わらない」

「それに今のメタルソニックのカオス・コントロールは完全じゃないと思うんだ。
 だって、本当にいつでも使えるならさっきの公園の時点でおしまいでしょ?」

ソニックに続けて話すテイルスの言葉も一理ある。
檀正宗のように『商品価値がある』という理由でCRを生かす必要などメタルソニックにはない。
にも関わらず、わざわざ能力を封印して戦った。
その原因がカオス・コントロールの獲得と直結している可能性は決して低くない。
結果的にゲーム病患者の発生という結果には至っているが、カオスブラストも発動に半ば失敗している。

成功していれば蹴り飛ばされた自分以外軒並み戦線離脱に追い込めるだろうに、
それをしなかったという事実は一発勝負が通る可能性をある程度高めていた。
もちろん能力なしでも手強い相手だが、打算のない戦いではない。

「よし、ソニックはその手でいってくれ。
 だがこっちも大概ムチャやってきてるし、何より元がモータスである以上こっちだって手は打てるハズだ。
 ってところで――さっきからずっと作業中のようだが、打開策は見つかったか?」

「クリエイターの眼を甘く見るな、九条貴利矢。
 先んじて回収したヤツのウィルス解析から、既にヤツの攻撃無効を抜ける方法は見つかっている」

「なんだって!?」

思わず貴利矢が驚愕の声を上げる。
攻撃が通るなら、少なくともムテキゲーマーは真っ向戦うことができる。
彼以外もカオス・コントロールさえ止められればいくらでも加勢できるようになる。
厄介な前提が違えば全く話が変わるのだ。
だがそんな貴利矢を制するように、黎斗の二の句が飛んだ。
123 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/24(日) 02:56:26.40 ID:Tenxjv820
「だがこの手は誰にでも使えるものではない。
 そもそも、ヤツの無効化判定は『NPCからの攻撃』を対象にしている。
 複製モータスの運用が仮面ライダークロニクル内で行われる予定だったなら妥当な調整だろう。
 この設定だけでライダー、そしておそらくバグスター相手にも無効化機能が発動する。
 今のヤツの不安定さは、キメワザから全ての攻撃に対象を拡大した部分にもあるだろうな」

「アレ? ってことは、一応アタシは当てられるのか」

「まぁ聞け。だが、クロノスのキメワザを無効化したことで一つの問題が浮かぶ。
 クロノスがマスター権限で動いている以上、本来はNPC判定にはならない。
 あれが無効になるならライドプレイヤーも対象外になってしまう。
 その原因はヤツ自身にある。彼は本来、どんなゲームにいる?」

「Too easy! オレの世界に決まってるさ」

「そうだ、ソニックの世界だ。だからこそソニックの攻撃は効いている。
 ……つまりそこに合わせた新ガシャットがあればいい。既に準備はしている」

「準備?」

思わず首を傾げた貴利矢の前に、何者かが現れる。
まさかメタルソニックか、と警戒するが違った。
見慣れたバグスターワープの後に現れたのは、今朝も見たバグスターの首魁――パラド。
カオスブラストで発生した患者の搬送に黎斗は居合わせなかったが、この男を呼んでいたとは。

「……お前に協力するのは気にいらない」

「奇遇だな。私も今さら手を借りるなど反吐が出る」

開口一番、画面越しに言葉のボクシング。それも当然だ。
生前の黎斗はバグスターの扱いに反感を持ったパラドにより殺され、
復活した後は黎斗もパラドの撃破を狙っていたことがあった。

だが、今はそれすら抑える共通の目的があった。


「気にいらないが、今この瞬間だけは水に流す。
 バグスターの誇りを踏みにじったアイツは、オレの心を滾らせた。
 なによりこれじゃソニックが帰れない。ここは手を貸してやるよ」

「フッ……ソニックのため、か。それなら私も甘んじて受け入れよう。
 彼は不正なゲームどころか先人が産んだレジェンドゲームの生まれだ。
 もし彼が戻れなければ、今の仮面ライダークロニクル以上に悲しむ人間が生まれる。
 それはゲームマスターとして認められない結果だ」

青いハリネズミの存在が、仇敵にしてかつての仲間である2人を組ませる。
それを証明するかのように、パラドが筐体の中へ飛び込んだ。
124 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/24(日) 02:59:09.44 ID:Tenxjv820
「これより新ガシャット製作に入る。
 特性上、製作は1本のみしか認められない」

「ならソイツは永夢用にしてくれ。永夢は完成まで待機してろ。
 ヤツが来るまでに間に合わなかったら、自分らで時間を稼ぐ」

「貴利矢さん?」

「未完成ガシャットの完全体化を2度もやってんだろ? 自信持てよ。
 それにアイツ、モータスの記憶だけは持ってるせいか永夢にも殺意マンマンだからな。
 ソニック相手に集中してもらうために、ギリギリまで控えてた方がいい」

「……わかりました」

永夢が覚悟を決める。
ならばと、貴利矢も自らの為すべきことに歩を進める。

「よし、自分らは今のウチに新しい攻め手を考えとかないとな。
 もし何かの弾みでメタルソニックを叩けても、今のままじゃ素で動きを読まれてやがる」

「コイツを使うか……」

大我が見慣れないガシャットを取り出す。
バンバンシューティングに似ているが、ラベルは明らかに違う。
それを見て今度はポッピーがあるケースに手を出した。
昨晩、貴利矢が持ってきたばかりのプロトガシャットケースだった。

「黎斗、これ借りていい?
 バグヴァイザーIIは読まれちゃってるみたいだし」

「かまわないさ。今は使ってないからな」

呆気なく交渉成立し、ポッピーが1本のガシャットを手に取る。
そして貴利矢も1本のガシャットを取り出す。

「……スパロー重視にするなら、コイツでいってみるか」

「みんなガシャット出してるけど、アタシはどうすればいいのさ」

ニコが不満げに呟く。
思わず近くにあるモップを渡したら何故かやたら怒られてしまった。
ソニック滞在によるゲームの知識は間もなくいらなくなるかもしれないが、
代わりに不在の時期に起きたことを追っておこうと、キレられながら貴利矢は考えていた。
125 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/25(月) 03:12:58.89 ID:raahmA+m0
[SONIC]

ソニックは1人、夜の屋上に出ていた。
頭上に見えるCRの面々はそれぞれ決戦への準備に忙しい。
だがソニック自身にできるのは全力を尽くすことだけ。
メタルソニックへの警戒を兼ねて、ヘリポートで身体を慣らすのが精々だった。

「ソニック、勝てる……よね?」

「ああ。アイツと戦った時から、オレも強くなってるしな」

「うん……」

ソニックが言い切っても、テイルスの顔には不安の色が残っている。

かつてメタルソニックが暴走した時、たしかにソニックは勝った。
だがそれはソニック・テイルス・ナックルズによる3人チームに加え、
シャドウやエミーの率いるチームまで共闘した12人がかりの大乱戦による勝利だ。
さらに逆転の鍵であるカオスエメラルドもソニック達の手にあった。

ソニックが当時より強くなっているのはテイルスもよく知っているが、
チーム戦術とカオスエメラルドの欠如という不安要素がある以上、どうしても勝算を高く見積もることは難しくなる。
まして今度のメタルソニックは、多彩な能力だけでなくバグスターの特性も持っているのだ。
天才少年とも呼ばれるテイルスだからこその冷静な不安だった。
126 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/25(月) 03:18:27.86 ID:raahmA+m0
「大丈夫だって。たとえ1人でもオレは負けないさ」

「1人じゃないよ。僕達もいる」

気付けば、永夢も屋上に来ていた。
他のCRの面々と違い、彼はガシャット完成の瞬間まで待つしかない。
それはソニックと近しい状態と言えた。

「ガシャットが完成するまであと少しだって。
 3人には足りないけど、それでも一緒には戦える」

永夢の声にテイルスの表情が明るくなったように見えた。
エグゼイドがCRの最大戦力にして切り札であるのは、実際に戦う中でソニックもよくわかっている。
最強の対バグスター戦力が参戦すれば、不安要素のいくつかは消える。
そんなテイルスの様子に安心する永夢に、今度はソニックが問う。

「いいタイミングだ。エム、ちょっと聞いていいか?」

「なに?」

「エムは、ゲームよくやるんだよな」

「まぁね。研修医になってからはさすがに頻度落ちてるけど」

「じゃあ、モータスみたいなバグスターは元のゲームと同じなのか?
 エムが知ってるゲームのキャラだって聞いたぜ」

「それは……違うよ。
 見た目はゲームキャラでもソニックとは違うし、元のゲームと同じでもない」

「その違いはなんなんだ?」

ソニックの目は真剣だ。対する永夢にも冗談の色はない。
127 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/25(月) 03:21:03.82 ID:raahmA+m0
「バグスターは、データを取り込んで再現してるだけなんだ。
 だからゲームキャラの姿と能力を借りて誕生して、ゲーム病患者の人間を取り込んでるなら記憶も借りてる。
 命としては別モノだから、ゲームキャラそのものじゃない」

永夢の声にソニックは少し思案していたが、ややあってパチンと指を鳴らした。

「Good job、エム! これで迷いなく戦えるぜ」

「一体何がわかったんだい、ソニック?」

「メタルソニックがバグスターを取り込んだ本当の狙いさ。
 アイツは――」

ソニックが語り出した直後、大地が揺れた。
辺りを見回すとすぐに原因はわかった。

突如として、病院の近くに巨大な影が2つも現れたのだ。
どちらもソニックには見覚えがある。
引き連れているのが誰かなど考えるまでもない。
128 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/25(月) 03:26:56.30 ID:raahmA+m0
その様子を見て、永夢が慌てて通信機に顔を寄せてくる。

「テイルス、1つだけ頼みがあるんだ」

「なに、永夢さん?」

「君の研究所に、できるだけそっちの世界の仲間を集めてほしいんだ」

「仲間を……?
 わかった。多分全員は無理だけど、近くに来てる仲間を呼んでみるね」

「ありがとう」

意図不明ながらテイルスが了解すると、今度はソニックに顔を向けた。

「ごめん、ソニック……完成までの間なんとか持ち超えたえて。
 必ず助けに行くから」

「ああ。倒せるようだったらそのまま倒していいんだよな?」

「もちろんさ。でも、無理はしないで。
 CRのドクターとして、そして1人のゲーマーとしての頼みだ」

ソニックと永夢が堅く握手する。
そしてメタルソニック接近の報を伝えるべく永夢が階段を下りると、
ソニックはその真っ向逆、夜の闇に向けて迷いなく駆け出した。

「いくぜ、Go!」

ブーストの青い輝きが闇を切り裂く。
ソニックは、自ら決戦の地へと飛び込んでいった。
129 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/26(火) 03:05:16.52 ID:vc53+/hN0
[EX-AID]


「ひ、ひええーーー! ナニ、あのおっきいの!?」

「おいおい、冗談じゃねえぞ……なんだあのデカブツは」

「一般病棟を崩壊させて、地下にあるCRを引きずり出そうって魂胆か。
 えげつねえことしやがる」

突如現れた2つの巨影は、聖都大学附属病院の正面口から見える位置まで迫っていた。
そのサイズはどちらも地上フロアを構成する一般病棟より大きい。
ただ転倒しただけでも病棟は半壊、下手すれば全壊もありうる。
そうなればメタルソニックが発生させたゲーム病患者は、彼を倒す前に圧死という形で死ぬだろう。

ライダーやソニックに逃げを許さないためにこんな真似をするかと、貴利矢と大我は巨影を睨む。
だが、大我の隣に立つニコは別の意味で怒りに燃えていた。

「アレは……エッグマンのメカだ!」

「例の黎斗に似てるっていうヤツか?」

「うん。メタルソニックのヤツ、また勝手にエッグマンのメカ使いやがって!」

「またってことは、攻略法はもうわかってる?」

「もちろん! 攻撃が当たればね」

巨体相手に直撃を何度も狙うのは難しい。
ニコが知っているゲームでの攻略法は、2体の敵を倒す鍵になるだろう。
メタルソニック本体以外にも攻撃無効化がかかっているか否かは、もはや賭けに近い。
130 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/26(火) 03:06:51.96 ID:vc53+/hN0
「いたぞ、ソニックだ!」

先行したソニックに貴利矢達が追いつく。
その目前には大地を揺るがす二足歩行メカ、低空を飛ぶ巨大飛行メカ。
そして――メタルソニック。

「無駄とわかっていてなお挑むか。下等生命体とは哀しいものだな」

「ずいぶんなご挨拶じゃないの。
 昨日は呼び出しまでして自分らにかまってほしかったんだろうに」

「俺にケンカ売ってきたのもテメエだろうが。どの口でほざいてやがる」

「フン、揃って口は達者なものだ。
 素直にエメラルドとエグゼイドを出す気はないらしい」

メタルソニックは全く余裕を崩していない。
どれだけ強気でも、ライダー相手に絶対的な優位がある以上恐れなどないのだろう。
実際、今の貴利矢達がメタルソニックを倒すのは極めて難しい。
だがそれでも退く気などなかった。
4つのガシャットの光が、4人の戦士を生む。

『バンバンシミュレーションズ!』

『爆走バイク!』

『ときめきクライシス!』

『仮面ライダークロニクル……』
131 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/26(火) 03:08:06.39 ID:vc53+/hN0
「こっちはあのデカブツを止める。ソニックは永夢が来るまでなんとか凌いでくれ」

「オーケー、メタルは任せておけ! 」

『ステージセレクト!』

ソニックに正面を任せ、レーザーはホルダーに備わるボタンを押す。
だが、それは望んだ通りに機能はしなかった。

「……やっぱり割り込んで来るか」

「最初からこのモータスの身に含まれている機能だからな。
 この程度は何らの負荷もない」

レーザーの展開しようとしたゲームエリアに代わり、目の前に現れたのは空間にぽっかり空いた穴だった。
2つの穴にそれぞれ巨体のメカが吸い込まれ、同時にライダー達も引き寄せられていく。

「貴利矢! エッグドラグーンの弱点は股と頭!
 あとドリルを――」

別の穴に吸われゆくニコが必死で叫ぶが、そこでニコは大我と共に穴へと吸いこまれてしまう。
直後に貴利矢の姿もまた、ポッピーと共に飛行メカの待つ時空の穴へと消えていった。
132 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/26(火) 03:09:28.29 ID:vc53+/hN0
[SONIC]


「これで邪魔者はいなくなった。ソニック……今こそ相手をしてやろう。
 我が完全支配の達成と共に貴様を叩き潰してやる」

「決勝戦ってところかい? いいぜ、受けて立ってやる。
 お前からカオスエメラルドを取り返して、今度こそおしまいだ」

「エメラルドの奪還だと? よくも吠えられるものだ。
 ライダーは援護に来ない。スーパー化もない。
 もはや貴様の勝率など1%もないのだ。覚悟を決めろ」

「覚悟を決めるのはそっちだぜ!」

ソニックが駆け出すと共に、周囲の風景が変化した。
メタルソニックがゲームエリアを展開したのだ。
その先の光景は、やはりソニックにとって見覚えのあるものだった。

「スターダスト・スピードウェイ……!」

「貴様とはじめて戦ったのがこの場所だったな。
 エッグマンに倣うわけではないが、ここで貴様を倒し全ての敗北を無とする」

リングを取りながら、煌びやかに輝く夜の道路を突き進む。
だがソニックが大地を駆けるのに対して、メタルソニックは背部の大出力ブースターで浮遊していた。
そして道路外へ飛び、飛行したまま並走してきた。
133 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/26(火) 03:10:57.86 ID:vc53+/hN0
「まずはおさらいだ……ふん!」

飛行しながら、メタルソニックが街灯をすれ違い様に叩き折る。
そして切り離された街灯が、妖しい緑色の光を伴ってソニック目掛け次々と飛ばされ、
ソニックもまたホーミングアタックで片っ端から吹き飛ばしていった。
ホーミングアタックの隙を狙うように放たれた水流アタックも見事に避け、
ソニックそっくりのフォームで転がるスピンアタックはブーストですり抜ける。
直後に双方が急停止し、路上の中央で再び正面から対峙した。

「フン、さすがにこの程度で倒せはしないか」

「どれもオレが破ってきた能力だからな。
 さぁて、お次はなんだい。それとも時間稼ぎにおしゃべりか?」

「いい気になるな。
 エメラルドを持たないお前など、カオス・コントロールの前に無力だ」

「ならやってみろよ。
 今のお前はその身体を保つのに常にダークガイアパワーの能力を使ってるし、
 取り込んだタイムイーターはカオスエメラルドを苦手にしていたはずだ。
 これまでみたいにすぐ体得ってワケじゃないんだろ?」

「不完全でも貴様を殺すには十分だ……!」

メタルソニックが漆黒の槍を投げつける。
至近距離からの不意打ちだが、反応して避ける。
さすがにカオス・スピアが突き刺さっては、ソニックもかなりのダメージを受けてしまう。
リングがある以上即死はしないが、追い打ちですぐスピアを撃たれればそれも無意味に近い。
134 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/26(火) 03:14:27.75 ID:vc53+/hN0
「我が目指す7つ目の能力を教えてやろう。タイムストーンだ」

「タイムストーン……くっ!」

超能力とカオス・スピアの波状攻撃をかろうじてさばく。
ソニックが動き続けているのと対照的に、メタルソニックは腕を組んで仁王立ちしていた。

「貴様の言う通り、エメラルドの力を使う以上タイムイーターの能力は完全にはならない。
 だがタイムストーンの力を得れば、これが完全になる。
 過去・現在・未来、そして数多の世界! 全てにおいてこのオレが君臨するのだ!」

仁王立ちの体勢から突如飛んできた水流アタックに、ついにソニックが被弾する。
だがすぐに跳ね起き、水流から元の姿にもどろうとするメタルソニックを蹴り飛ばして反撃する。
自ら後方へ飛んで衝撃を弱めたメタルソニックは、ウィスプの封じられたカプセルをゲームエリアに出現させた。

「その幕開けに今のお前を潰す! 決着をつけるぞ、ソニック!」

「……受けて立つぜ。そのステージは幕開けでおしまいだ!」

ソニックの瞳には、不屈の闘志が燃えていた。
135 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/28(木) 02:51:32.56 ID:qDZ60KGA0
[EX-AID]


「ずいぶん間抜けなツラしたロボットだな。こんなもんが街を蹂躙してたのかよ」

時空の穴を落ち、軍事基地のような場所へ降り立ったスナイプは開口一番そう言い放った。
目の前にはあの巨影の1つ、地を揺るがす二足歩行ロボが立ち塞がっている。
機械然とした脚部と腕部に対し、卵型の胴体を服に、楕円型の頭部を顔に見立てたアンバランスな巨体。
特にヒゲと眼鏡どころか白い歯まで象った頭部は、戦闘用メカとしてはあまりにも不似合いなものだった。
それ故に、知る者にはすぐ素性が知れる。

「やっぱり、デスエッグロボ!」

「あのナリで『死』だと? 悪ふざけはツラだけにしやがれ」

吐き捨てるような言葉もろとも、スナイプがハンドキャノンを発射する。
胴体の中央部に炸裂した砲弾が赤色の胴体を黒く汚す。
レベル50の火力すらそうそう通用しない堅い装甲に舌を巻きつつ、
さらに数発叩き込むが大きなダメージがあるようには見えない。
だが、わずかでも装甲に傷とへこみが付いたことをスナイプは見逃さなかった。

「ハッ、全く効かないってワケじゃねえのか。弱点を狙い撃てば苦労しなさそうだぜ」

「コイツの弱点は頭と尻だよ、大我!」

「正面は無敵ってワケか……」

スナイプの数倍はある巨体を改めて見上げる。
卵型で張り出している腹が原因で、地上から頭部を狙い撃つのは難しい。
尻を狙うにも、この軍事基地は奥行きはそれなりにあるものの左右幅が狭い。
あるいはジェットコンバットなら狙い撃てるかもしれないが、火力と耐久力に不安が残る。
戦えとばかりに置かれたこのロボが、このまま動かないはずがない。
136 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/28(木) 02:52:56.85 ID:qDZ60KGA0
その読み通り、デスエッグロボは突如動き出した。
腕をガシャンガシャンと回転させた後、軽い前傾姿勢を取りつつ右腕をスナイプに向ける。
正面からだと、ガトリングガンの砲口のごとく備えられた3連ドリルがよく見えた。

「大我! アイツ腕伸びるよ!」

「……くっ!」

ニコの言葉で敵の狙いを察し、すぐさまスナイプが飛び退る。
直後に右腕が伸び、一瞬前にスナイプが立っていた場所へ3連ドリルが突き刺さっていた。
床を破砕して金属片を撒き散らすその威力は、直撃すればシミュレーションゲーマーの防御力でも重傷は免れまい。
ジェットコンバットを使う考えは捨てざるを得なかった。

「おい、コイツは腕以外になんか武器あんのか」

「あるのは腕と踏み潰しだけ!」

ニコが言うのと同時に、デスエッグロボが大きく前方へ跳んだ。
今度はバックステップの1つや2つでかわせるものではない。
だからこそニコとスナイプは迷わず前方へ駆けた。
下をくぐる形で踏み潰しをギリギリで避ける。
そしてすぐさまスナイプは背後へ振り向いた。

「吹っ飛べ!」

デスエッグロボが旋回するより早く、ハンドキャノンがデスエッグロボの尻を捉える。
後方からだけ見える脚部と胴体の境目を正確に射抜くと、バランスを崩した巨体が地に転がった。
同時に尻の部分が爆発する。明らかにダメージを与えた手ごたえがあった。

「さっすがあたしの主治医、こんなあっさり倒しちゃうなんて……って、なに警戒してんの?」

「終わりと思えねえんだよ。あれだけ策を弄した野郎が、こんな手落ちするか?」

「時間稼ぎのつもりなんじゃない? 倒したはいいけどここから出られないっぽいし 」

ニコの言うことにも一理はあった。
直接攻撃が効かない今のライダー達でも、ソニックを援護することはできる。
そういった横槍を防ぐためにこの異空間が用意されたのなら、実際の強さは必要ない。
放置すれば病院からCRを部屋ごと引きずり出されるような仕掛けさえあればいい。
その論に納得しつつもハンドキャノンを下げずにいたその時だった。


突如として標的が消えた。
いや、違う。これは見知ったはずの現象。

「オレンジの粒子だと? こいつは、まるで――」
137 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/28(木) 02:54:45.34 ID:qDZ60KGA0
「――まるでバグスターワープじゃないの。この大きさでやるとか冗談キツイな……!」


同じ頃、レーザーターボも驚愕していた。
吸い込まれた先に待ちかまえていた「エッグドラグーン」なる飛行メカは、
ついさっきポッピーと協力して撃破したはずだった。
だが撃破したメカがオレンジの粒子と化し、ライダー達の背後に再び集まる。
振り向いた先には無傷のエッグドラグーンがいた。

「一瞬でコンティニューされちゃった!?
 ……貴利矢、これじゃ何度倒しても意味ないんじゃないの?」

「カラクリを解かない限りは、な。
 いくらアイツの取り込んだモータスが普通じゃないったって、
 こんな早く自力コンティニューできるはずがない。
 そいつを見つけ出すためにも、もう1回倒すぞ」

慌てるポッピーを落ち着かせながら、再びエッグドラグーンを目で追う。
長い腕に対しオマケ程度の足しかない形状から、空中戦に特化した機体なのは明らかだった。
だが右腕のガトリングガンも、左腕の大型ドリルも遠距離戦には向いていない。
結果、エッグドラグーンはレーザーターボとポッピーの立つ円形の足場をゆっくり周りながら攻撃してきていた。

そしてニコの言った通り、頭部と股関節には弱点らしきドーム状のコクピットが収まっている。
飛行されるのは厄介だが、巨大な外見の割に弱点の装甲は薄い。
先に一度撃墜できたのも、ガシャコンスパローとバグヴァイザーIIの射撃で股関節の弱点を潰せたからだった。
138 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/28(木) 02:56:19.54 ID:qDZ60KGA0
「なんかあるとすれば、あの弱点かもな。ポッピー、ちょっと援護頼むわ」

「援護って……」

「ガトリングが来たらぐるっと回りながら避けろ」

「え、それだけでいいの?」

「ああ。来るぞ!」

右腕のガトリングガンが回転し始める。
それがポッピーを狙っていることを確認してから、レーザーターボはドライバーにガシャットを挿した。

『ギリギリチャンバラ!』

レーザーターボの足と腕へ漆黒の装甲が巻きつき、さらに頭部に兜が被さる。
武者のような姿になったレーザーターボだが、この増加パーツはただの鎧ではない。

「今だ!」

弾けるようにレーザーターボが突撃する。
瞬発力を大幅に増した脚部を活かせば、この瞬間だけはソニックもかくやという速度が出る。
その勢いでドリルを向けられる前に足場の端へ辿りつき、そのままジャンプした。
目前に迫る股関節の弱点に、分離させたガシャコンスパローを突き刺す。
その内の1本が装甲を抉るように突き刺さり、レーザーターボの体重を支える。
そしてもう1本は弱点に覆いかぶさるドーム状のキャノピーを叩き割っていた。

「さぁて、中身見せてもらおうか……なんだ!?」

「貴利矢、何があったの!?」

「中にモータスがいやがる。複製の複製、ってヤツか!」

『MISS!』

コクピットに鎮座するモータスをガシャコンスパローで斬り付けるが、今度は効いていなかった。
それがメタルソニック本体と同じ理屈によるものだと理解すると、すぐさま壁を蹴ってエッグドラグーンから離れる。
間髪入れず合体させたガシャコンスパローの射撃を、モータスの周囲に連続して叩きこんだ。
再び弱点のブロックが爆発し、エッグドラグーンが足場に倒れ込む。
139 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/28(木) 02:57:50.56 ID:qDZ60KGA0
「なんであんなところにモータスがいたの?」

「そいつは考えるより、見た方が早そうだ」

言うが否や、またエッグドラグーンがオレンジ色の粒子に姿を変える。
だが、今度は何が起きたか理解できた。
粒子に変わる直前、潰されていない頭部の弱点が光ったのだ。
シルエット越しに見えた頭部内の人影もモータスのものだった。

「思った通りか。自動復活の鍵にされてやがる」

「どういうこと?」

「おそらく、弱点に仕込まれた2体のモータスは連動してるんだ。
 片方が撃破されると、もう片方がメカごと吸い込んで再生させる。
 バグヴァイザーで回収したバグスターが再生できるのと同じ理屈だな」

「ってことは、同時に弱点を破壊しなくちゃダメ?」

「どこまでの精度が必要かわからない……けどな!」

乱暴に叩きつけられるドリルを避けながらも、貴利矢の声が響く。
完全に同じタイミングで倒すなら、外からの射撃ではなく複製モータス自体に同時攻撃が必要だ。
コクピットブロックの誘爆程度で倒せるのだから大した威力は必要なさそうだが、
そんな威力すらも直接攻撃では与えられない。
たとえある程度の誤差が許されたとしても、レーザーターボとポッピーの火力では単独破壊は難しい。
キメワザを使えば可能性はあるかもしれないが、メタルソニックの手口を考えると発動自体が躊躇われた。

「さぁて、どうしたもんかな……」

エッグドラグーンと三度対峙する中、レーザーターボは本格的に攻めあぐねていた。

140 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 19:49:20.10 ID:NqB6zBaQ0
[SONIC]

ソニックとメタルソニックの戦いは、ウィスプを駆使した勝負に突入していた。

『ヴォイド!』

メタルソニックが超能力で紫色のウィスプを呼び寄せ、すぐさま吸収する。
直後、黒い球体と化したメタルソニックが道路そのものを飲み込んでいく。
動きは遅いが、その凄まじい吸引力はまるでブラックホールのようだ。
しかもモノを飲み込めば飲み込むほど吸引力は強くなっていく。
ブーストを駆使しても抗うのが難しくなったその時、ソニックの前に青いウィスプが現れた。

『レーザー!』

すぐさま、力を借りる。
青い光線と化したソニックが反転し、黒い球体を貫通する。
直後にウィスプの力が解け、元の姿に戻ったソニックは路面へ降り立った。
141 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 19:50:38.68 ID:NqB6zBaQ0
(ほんっと、タフなヤツだぜ……)

降り立った先には既にメタルソニックが立っている。
新しいガシャットという可能性を残すには、ここでメタルソニックを足止めするしかない。
カオス・コントロールがまだ不完全であることは救いだったが、それでも有効打が叩きこめない。
この世界で習得を許した多彩な能力は、攻撃だけでなく防御においても脅威となっていた。
せめて直撃の一つ、それもできる限り強力なものを喰らわせられれば――

取るべき手は既に見えている。ウィスプが呼び出されている今なら、できる。
あとはタイミングだけ。

「お前がバグスターを取り込んだのは、ただ能力を再現するためだけじゃないな?」

「何を言い出すかと思えばそんなことか。再現どころかあらゆる時間における完全征服、それが目的だ」

「そういう意味じゃないさ。
 ……お前の望みは、ロボスターって形の方にあるんだろ」

メタルソニックの動きが止まる。
超能力などで奇襲をかけてくる気配もない。
ならばと、ソニックはさらに続けた。

「パラドやニコと戦ってる時、変だと思ったのさ。
 お前は偽者とか、ゲーマーってものに妙に反応してる。
 バグスターとしての知識を受け継いだせいなのかと思ったが、多分そうじゃない。

 お前は見たんだろ? この世界の、オレ達が出ているゲームを」

「……!」
142 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 19:51:39.19 ID:NqB6zBaQ0
唐突にメタルソニックのアイカメラが赤く輝く。
ソニックもまた正面からその輝きを見据えていた。

「お前のシッポを掴むために、オレもニコがプレイしているゲームを見せてもらったさ。
 あのゲームはたしかに、オレ達の世界の出来事を見知ったかのように再現している。
 そしてその中で、お前が完全に勝てたことは一度だってない。オレが実際に勝ってきたようにな。
 だから変えたかったのさ」

「……何にだ」

「メタルソニックではない違う命、本来の道筋を外れた存在ってヤツにさ」

メタルソニックは動かない。
だが、動かずしてそれは響き渡った。


――哄笑。


そして、また姿が変わりゆく。
金属部品の細い手足の上にバグスターウィルスが再び集まり、新たな手足を形成する。
生体パーツに包まれた手足は、生物の手足にしか見えないものへと変わっていた。
143 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 19:56:18.17 ID:NqB6zBaQ0
「クッ……ハハハハハハハハッ!!
 その通りだソニック。
 オレはタイムイーター撃破の余波で来たこの世界で、自らのゲームを知った。
 そして語られる末路に絶望すると、同時に希望を見たのさ。バグスターの本質を知ったからだ」

「本質だと?」

「冥途の土産に教えてやろう。あれは願望機だ」

メタルソニックが手を前にかざす。
そこから放たれたウィルスが、いつかのにようバグスターユニオンを形成する。

「バグスターは万物のデータを再現し形を為す。
 この世界の人間にはゲームキャラや人体の再現が精々だろうが、
 コンピュータウィルスすら御する高性能チップの前には無から有を生み出す福音だ。
 糧さえ十分にあればオレの身体を全く新しく生み出すことも造作もなかった。
 あのモータスとやらを道具にしていた人間、その体を餌にオレの身体は完成した」

言いながら、ユニオン目掛けてメタルソニックがカオススピアを投げた。
四散したウィルスが新たな形に収束する。
それはモータスカオスがずっと乗っていた、メタルマッドネスそのものだった。

「そしてゲームという形で語られる未来のある世界で再誕することで、オレは枷を解いたのだ。
 『ソニックシリーズの悪役』という敗北の枷をな」

再び、カオススピア。
今度は四散したウィルスがメタルソニックへと吸収されていく。
オレンジの輝きが胴体を包み込むと、ソニックに似た青い塗装が一瞬で消える。
新たに生まれたボディは、アイカメラだけでなく全身が深紅に彩られていた。
深紅のネオメタルソニックが、立つ。
144 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 19:58:45.35 ID:NqB6zBaQ0
「ロボスターという新たな命を得たオレは、何の横槍もなくお前を消し去ることができる。
 筋書きのない戦いにせいぜい恐怖するがいい!」

直後、漆黒の波動がメタルソニックから放たれる。
カオスブラスト。今度は本当の衝撃波だ。
反転して後方へとかわしたソニックは一瞬だけゆっくり歩き出し、そして道路を一気に走り出した。

「恐怖だって? むしろ面白くなってきたぜ。
 お前がそんな……勘違いをしてるなんてな!」

「勘違いだと?」

「そうさ!」

ブースターで迫りくるネオメタルソニックを、ブーストすら超えるスピードで振り切る。
CRの室内で永夢とニコから聞いた、ブーストの加速効率を大幅に高める走法。
だがそれすらも、速度を急激に上げてくるネオメタルソニックにはさしたる時間稼ぎにならなかった。

「その速さも今のオレは超える!」

「Foo! 勘違いでそこまでこれたら大したもんだぜ!
 この世界のゲームは、オレ達の世界の予言でも記録でもないんだからな!」

「なに……?」

「お前はデータだけでゲームを知ってるからそんなことを思ったのさ。
 オレはニコがゲームをやってる光景を見てきた。
 たしかに大筋はオレ達の世界のものをなぞっているけど、一から十まで同じじゃあない。
 ゲーマー次第じゃオレが負けたり、お前が勝ったりもするし、
 新たなデータを足してオレも知らない冒険が増えたりもするのさ。ゲームだから当然だろ?」

再び、ソニックが速度を上げ直す。
ブーストしながらドリフト走行し、そのまま直線でもドリフトの勢いを乗せ続ける。
これもニコ達から教わった新たな走法だった。
それすらもネオメタルソニックは追いつきつつあったが、意味はあった。
攻撃が来ない。これだけの急激なスピード上昇には、ネオメタルソニックが学習した技もほとんどが当たらない。
カオス・コントロールが完全でない限り、これで攻め手を封じられる。

「願望機ってのも笑い話さ。エムはバグスターを命とも言ったんだぜ?
 性質がどうだろうと、都合のいい道具じゃなくてアイツらは生き物なのさ。
 お前の憎む存在の軽視とやらを、誰よりもやってるのがお前ってことなんだよ!」

そしてスターダスト・ハイウェイの途上で、ソニックが再び反転して立ち止まった。
145 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 20:00:33.44 ID:NqB6zBaQ0
「結局お前は、どんな手を使ってもオレに勝ちたいだけなのさ。
 そしてそうさせるワケにいかないから、今度もオレが勝つ!」

『アンリミテッドカラー!』

直後、ソニックを囲むように7体のウィスプが現れた。
ソニックはただ超スピードで反撃を止めていたのではない。
ネオメタルソニックの反応を超えて、呼び出されたウィスプ達を集めていたのだ。

「みんなの力を貸りるぜ……これで勝負だ!」

『レーザー! ドリル! スパイク! ロケット! キューブ! ホバー! フレンジー!』

ウィスプがソニックの前方で輪になって回転し、虹の如き輝きを放つ。
カラーウィスプの力を集中させ、莫大なパワーを放つ大技・ファイナルカラーブラスター。
かつてウィスプを巡るDr.エッグマンとの戦いに終止符を打ったのは、スーパー化ではなくこの技だった。
永夢も認めるこの一撃なら、今のネオメタルソニックでもただでは済まない。
あとはこの力を乗せ、自らを真っすぐ追う赤きハリネズミに叩きつけるだけ。


だが――


『リミテッドカラーズ!』

「なっ……!?」

「オレはお前の力を獲得している。ならば当然できる!」

『バースト! ロケット! ドリル! レーザー! ヴォイド!』

突撃するソニックの前で、メタルソニックもまたウィスプを呼び寄せていた。
7色ではなく5色。
だが、それは紛れもないファイナルカラーブラスターだった。


2つの虹の輪を、青と赤の輝きが貫く。
直後、ソニックのホーミングアタックとネオメタルソニックのきりもみ回転が激突した。
夜の道路を眩いばかりの輝きが照らし、やがて弾ける。



――打ち負けたのは、ソニックの方だった。
146 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 20:01:26.55 ID:NqB6zBaQ0
「うわあああああっ!」

「そのまま吹き飛べ! カオスブラスト!」

追い打ちとばかりにネオメタルソニックから漆黒の衝撃波が放たれる。
回避も受けもできぬまま、ソニックが路上に叩きつけられる。
トドメを期するほどの一撃のダメージはあまりに大きい。
なんとか起き上るが、さすがに動きが大きく鈍る。
それでもソニックは折れなかったが、追撃の隙を見逃すネオメタルソニックではなかった。

「まだだ……まだだぜ!」

「もはやオレはお前の紛い物ではない。
 このカオス・コントロールで……消えろ、ソニック」

時が止まる。
今のソニックに抗う術はない。
諦めかけたその時、待っていたその声がついに聞こえた。


『ハイパームテキ・エグゼーイド!』

147 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 20:02:47.38 ID:NqB6zBaQ0
[EX-AID]


「間に合った!」

ムテキゲーマーでソニックを救出した永夢は、そのままネオメタルソニックと対峙した。
全身が赤く、一回り大きくなったそのボディにソニックの似姿は感じられない。
だがそれでもこれがネオメタルソニックであることに疑念は抱かなかった。
ファイナルカラーブラスターの光が2つ見えたあの瞬間に、何が起きたかはもう悟っている。

「今更来たか、エグゼイド。
 残念だが、オレのカオス・コントロールはほぼ完全なものになった。
 動けるだけで手の打てない戦いをするのも苦しかろう?
 その無敵の力を奪い取り、ソニックと共に叩き潰してやろう」

再びカオス・コントロールをかけられるよりも先に、永夢が動いた。
だがその手は武器ではなくドライバーに向かう。
直後、マキシマムマイティXごとエグゼイドはハイパームテキガシャットを抜いていた。
同時に金色のムテキゲーマーから、ピンク色のアクションゲーマーに姿も戻る。
148 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 20:04:01.90 ID:NqB6zBaQ0
「ハイパームテキを解くだと? 
 なんのつもりだ。今更許しでも乞うつもりか」

「違うさ。お前の運命は……オレが変える!」

不快感を露わにするネオメタルソニックの前で、永夢は新たなガシャットを取り出した。
そしてすぐさま起動する。

『ソニックジェネレーションズ!』

ラベルに2人のソニックが描かれたガシャットがコールを鳴らす。
マキシマムマイティXと同じ、スロット2つ分の大型ガシャットからはソニックを模した顔が見えていた。
それがドライバーに挿しこまれ、レバーを開く。

「変身!」

『超音速のマックススピード!スピンアタック!ライトダッシュ!』

中空に全身を包むアーマーが浮かぶ。
それを確認した永夢は、ソニックを模した頭部スイッチを叩いた。

『マキシマムソニック・X!』

アーマーと一体化し、エグゼイドが新たな姿を見せる。
青い塗装、ハリネズミの如き鋭利な背部装甲。
それは明らかに、ソニックを思わせる姿だった。
149 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 20:05:12.16 ID:NqB6zBaQ0
「貴様がソニックの紛い物になるとはな。
 偽者の称号はお前が受け継ぐということか?」

「そう笑えるのも今のうちさ!」

挑発するネオメタルソニックの前へ、一気に青いエグゼイドが間合いを詰める。
一瞬だけ歩き、直後にブーストをかける。
ソニックに教えた手と全く同じものだが、元がゲームのテクニックだけに永夢は準備もなく最速で行った。
反応が遅れたネオメタルソニックに、エグゼイドの拳が突き刺さる。

「ごあッ……何故攻撃が当てられる!?」

驚く間もなく、今度は頭突きが飛ぶ。
そのままホーミングアタックを繰り出すと、ネオメタルソニックが派手に転倒した。
すぐさま起き上り、睨みつけられたのはドライバーだった。

「チッ、そのガシャットの力か!」

「そうだ。ソニックのゲームの力を持ったレジェンドゲームガシャットなら、
 ソニックの世界のキャラとして戦える。お前の攻撃無効化を破れるんだ!」

「フン、調子に乗るなエグゼイド。
 そういうことなら、貴様はよくてもコイツらはどうにもならんということだ」

体勢を立て直したネオメタルソニックが虚空に映像を映す。
それは時空の穴の先で戦うスナイプやレーザーターボ達の姿だった。
倒しても倒しても甦る巨大な敵を前に、彼らの消耗の度合いは明らかに色濃く見えていた。
150 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 20:07:35.53 ID:NqB6zBaQ0
「貴利矢さん! ポッピー!」

「タイガ! ニコ!」

「ハハハハハハハ!
 これまでバグスターを破壊してきた者達は、ロボスターの新たな力の前に消えるのだ!
 オレと戦うことはできても、もはや仲間はどうにもならんぞ!」

再び哄笑するネオメタルソニックに、ソニックが怒りに肩を震わせる。
それは永夢も同じだった。
そしてどちらからともなく、拳を伸ばす。

「……エム、一緒にやるぞ。
 今のコイツは、絶対に止めなきゃダメだ!」

「わかってるさソニック。
 2人だけじゃない、2つの世界の力で止めてみせる!」

エグゼイドとソニックが拳を突き合わせる。
同時に、再び金色のガシャットに手をかける。

「無駄なことを! カオス・コントロールの前には無力だ!」

ネオメタルソニックが時を止める。
そしてカオス・コントロールの波が拳を突き合わせる2人に触れた時――世界の壁は、崩れた。

151 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/12(木) 02:56:53.59 ID:wg7s+3MC0
             - Zone.5 Fist Bump -


[SONIC×EX-AID]


「エグゼイド、貴様何をした!?」

ネオメタルソニックの叫びが響く。
揺らがぬ優位に立っていたはずのその身でも、驚愕せざるを得なかった。
あり得ないはずのものが見えている。


1つの空間に、聖都大学附属病院とグリーンヒルが並び立つ光景。

そして、このグリーンヒルはメタルソニックが再現したものではない。


「お前を倒すために、2つの世界をつなげたんだ!」

「やれやれ、枷を解いたなんて言うヤツがこんなことで驚くのかよ。
 ロボスターってのも大したことないんじゃないか?」

「ソニック……貴様、なぜ動ける!?」

「そりゃあ動けるさ。自分を変えることにだけにアタマを回しすぎだぜ」

発動したはずのカオス・コントロールで、エグゼイドもソニックも時間が止まらない。
それどころか完全に余裕を取り戻したソニックを睨みつけながらも、また驚愕する。
ソニックとエグゼイドを取り囲むように、6つの光が現れていた。
自らの体内に取り込み、今もそのままであるはずの無敵の力。

6つの宝石――カオスエメラルド。
152 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/12(木) 02:59:45.16 ID:wg7s+3MC0
「バカな、そのエメラルドもガシャットの力というのか!」

「その通りだァ!!」

ネオメタルソニックに応えるが如く、その声は響いた。
聖都大学附属病院から飛び降りてくる姿は黒いエグゼイド。
ガシャット開発を終え、自らも戦場にやってきた新檀黎斗その人であった。

「君がいくらロボスターを名乗ろうと、ガシャットの開発技術や知識で私を上回ることはできない。
 これはドラゴナイトハンターZの技術を応用したのさ。
 プロトタイプから拡散されたデータを解体し、吸収して正規品のデータとすることで効率良く転用を可能とする。
 そしてカオスエメラルドを使用してのカオス・コントロールは、それ自体がエメラルドのデータの拡散だ。

 つまり君がカオス・コントロールを使ったことで、エネルギー源であるカオスエメラルドを丸ごと複製できたのさ。
 エメラルドの1つをバグヴァイザーで吸い出せた時、この手が使えると私は確信していた。
 君の無効化能力を封じるレジェンドガシャットと、カオス・コントロールに耐えられるムテキのガシャットがあればな!」

言いながら、黎斗が最後のカオスエメラルドを取り出す。
ソニック達を取り囲む6つのエメラルド目掛けて無造作に投げ込まれたそれを、ネオメタルソニックが奪おうと動く。
だが、赤いエメラルドを握ったのはネオメタルソニックでなかった。

「チィ、何者だ! カオス……」

「コントロール!」

カオス・コントロールが同時に発動し、直後に解除される。
さらに放とうとしたカオス・スピアはネオメタルソニック自身の肩を貫いていた。
そんな芸当ができるのは1人しかいない。

カオス・コントロールの使い手である黒いソニック――シャドウ・ザ・ヘッジホッグ。
153 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/12(木) 03:00:58.03 ID:wg7s+3MC0
「僕からコピーしたカオス・コントロールでずいぶん好き勝手しているじゃないか。
 エッグマンネガと戦った時の誠実さがウソのようだな」

「シャドウだと! なぜ貴様がここに……!」

「お前がやっていることはブラックアームズと大差ない。
 過去も未来も消し去ろうとするなら、僕はお前を許さない。
 そしてそれは……僕だけじゃない」

シャドウの背後にあるグリーンヒルから幾つかのシルエットが迫ってくる。
それを認めた直後、ネオメタルソニックは後方へ大きく飛んだ。
同時に足元からバグスターウィルスの柱が沸き立ち、幾つものモータスが放たれる。
2つや3つではない、まるで大地を埋め尽くさんばかりの群れ。
そして逃げるネオメタルソニックを追わんとするソニックとエグゼイドの前に、今度こそ赤いエメラルドが投げ込まれた。

「ここは僕に任せろ。お前達はヤツを倒してこい」

「ああ、ケリを付けてくるさ。Are you ok、エム?」

「オーケー! スーパープレイを見せてやる!」

シャドウとゲンムの見守る前で、ソニックとエグゼイドが腕を交差させる。
そしてソニックと、ソニックの力を得たエグゼイドが同時にブーストを始動させた。

「「ダブルブースト!!」」

1人でのブーストをはるかに超えるスピードで、ソニックとエグゼイドが地を駆ける。
そこはもはやゲームエリアなのか病院前なのか、はたまたグリーンヒルなのかすらわからなかったが、
劣化コピーされたモータスの群れを蹴散らして突き進む2人は確実にメタルソニックを追っていた。
そして残されたのは、2人の黒き戦士。
154 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/12(木) 03:02:26.83 ID:wg7s+3MC0
「……お前か、エッグマンに似ているというのは」

「フッ、たしかに天才という意味では同じか」

「それだけとは思えないがな……ヤツらを蹴散らすぞ」

「望むところだ。贋作の排除がてら、たまには私も楽しむ側に回らせてもらおう」

いくら劣化コピーとはいえ、相手は完全体バグスター。
それが一山いくらという数で押し寄せてきても、シャドウとゲンムに恐れなど全くない。
彼らは揺らがぬ矜持と強さを持った戦士達なのだ。

「砕け散れ、カオス・ブラスト!」

シャドウを中心にして、漆黒の衝撃波が広がる。
それが迫りくる複製モータスをまとめて空中へ巻き上げると、既にジャンプしていたゲンムがキメワザホルダーに手をかけた。

『ガンバ・クリティカルストライク!』

17人のライダーの幻影とともに放たれたゲンムのキックが、宙に浮いたモータスをまとめて撃破していく。
だが、今も沸き立ったままのバグスターウィルスの奔流から新たなモータスが生み出されている。
背後に重なる病院とグリーンヒルの前に立ち塞がる黒き戦士は、すぐさま次の一波へ攻撃を放っていった。
155 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/16(月) 02:11:39.59 ID:099W+Gps0
------------------

「なに、ドリルが飛ぶだと!?!」

レーザーターボの身体が宙を舞う。
エッグドラグーンの左腕にある大型ドリルが、突如として腕を離れそのまま発射されたのである。
ドリルのリーチを測ってかわしていただけに回避が遅れる。
直撃はギリギリ避けたが、地面に刺さったドリルが爆発し防御すらできぬまま吹き飛ぶ。

「貴利矢、大丈夫!?」

「なんとかな。だが、スパローが吹っ飛んでいっちまった……!」

爆煙の残る先からポッピーの声が聞こえる。
鈍りながらもまだ動けるのは、ギリギリチャンバラで得た鎧のおかげだった。

だからこそ起き上ると同時に、レーザーターボは拳を地に叩きつけた。
ガシャコンウェポンは変身解除すれば再装備はできるが、今ギリギリチャンバラを解けば次は立ちあがれないかもしれない。
爆発したはずのドリルは、何事もなかったかのように左腕に再生されている。
誘導性能を持って飛ぶとわかった以上、もはや距離が離れても安全とは言えない。
今スパローを再召喚するのは分の賭けに違いなかった。
156 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/16(月) 02:15:24.36 ID:099W+Gps0
「だったら……!」

『ガシャコンブレイカー!』

煙の晴れた先、ポッピーの手にガシャコンブレイカーが出現する。
CRで黎斗から使用許可を取っていた、プロトマイティXによるものだ。
だがそれをレーザーターボへ投げ渡そうとするその瞬間、エッグドラグーンのガトリングガンが乱射される。
さらにドリルが再び射出され、ポッピーの目前に突き刺さった。

「ウソでしょ……!?」

今度はポッピーが吹き飛ばされる。
その身が再び爆煙に消え、天高く舞ったガシャコンブレイカーも手に取れない。
だが、歯噛みする貴利矢は信じられないものを見た。


閉じられたゲームエリアの外に、突如として緑豊かな島が現れる。
それはCRでニコがやっていたゲームに映っていた、グリーンヒルという場所だった。
157 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/16(月) 02:16:58.97 ID:099W+Gps0
同時に宙を舞って落ちていくはずのガシャコンブレイカーが、突如軌道を変えていく。
それも爆風の偶然で動いたのではない。誰かが握って落下している。
エグゼイドにも見たピンク色のシルエットに握られ、エッグドラグーンの頭部目掛けてガシャコンブレイカーが叩き込まれる。

さらにポッピーもまた何者かがキャッチしていた。
赤毛のハリモグラを思わせる彼は、ポッピーだけでなくガシャコンスパローをも拾い上げ、
レーザーターボの前に立っていた。

「お前がキリヤだな。テイルスから話は聞いてるぜ」

「テイルスから? ってことはアンタ、ソニックの知り合いか」

「俺はナックルズ。ま、アイツのライバルってとこさ。
 ……で、今エッグマンのメカぶっ壊してるのがエミー」

ナックルズの指さした先からは、ハンマーモードのガシャコンブレイカ―で頭部キャノピーをガンガン叩く音が響いている。
だが、割れない。やむなく飛び降りたシルエットは、ソニックを女の子にしたような姿をしている。

『MISS! MISS!』

「なんなの、このガラス! ぜんぜん割れないわ!」

眉根を歪ませ、エミーが可愛い顔を曇らせる。
同時にレーザーターボが何かに気付いた。
158 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/16(月) 02:19:40.19 ID:099W+Gps0
「なるほどね……自分と赤毛の兄ちゃん、ポッピーとお嬢さんがいれば頭数は足りるな」

「どういうこと、キリヤ?」

「メタルソニック、ソニックがこの時空の穴に吸いこまれた時に備えて別の無効化判定仕掛けてたらしいな。
 元々ソニックの世界の存在だし、ソニックの能力学習したならそれくらいできてもおかしくないだろ。
 おそらくキャノピーが割れなかったのはそのせいさ。
 ……だが、ヤツもソニックの仲間が2人も来るなんて想定しちゃいない」

「そっか! これなら同時撃破もできるね!」

ポッピーがそう声を上げた直後、いきなりスラスターの噴射音が聞こえた。
エッグドラグーンが急速後退を始めたのである。
シートに座らされている複製モータスにどれだけの判断ができるか定かではないが、
形成不利と見ての行動なのは明らかだった。

「ちょっと、逃げる気!? エッグマンのメカなんか壊してやるんだから!」

動き出す直前、エミーがとっさにジャンプして飛び付く。
鋼鉄の巨体が左右に揺れるのもなんのその、ピンク色のシルエットは胴体部に取り付いていた。

「エミーちゃん!? なんてパワフルな……」

「そのまま掴まらせろ! ポッピー、お前も行け!
 バグスターワープで頭部に回って引っ張り上げるんだ!」

「キリヤは?」

「自分は下を潰す。頼むぜ、ミスターナックルズ?」

追って走り出そうとするナックルズの前で、レーザーターボがバイクへと変形する。
一瞬驚きながらも、ナックルズはその意図をすぐ理解した。

「バイクとかそういうのは、シャドウのヤツ向きなんだけどな……!」

「ハンドリングはこっちでやるさ、スピード調整だけ考えればいい」

「そういうシンプルな話なら大歓迎だぜ!」

シートに跨り、ナックルズが力強くアクセルを回す。
直後、猛スピードで走り出したバイクの前に道路が生成される。
だがそれは立体ループや360度回転が設けられた代物。
かつてモータスカオスと勝負を繰り広げた、ステーションスクエアのように。

「こいつはまるでジェットコースターだぜ!」

「へぇ……面白いねぇ。同じ見方するヤツもいるもんだ!」

思わぬ偶然に笑いながら、レーザーターボの車体がいつかのようにループの途中で飛び出す。
エッグドラグーンのシルエットは確実に近づいていた。
159 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 01:01:59.27 ID:ucN85QMk0
-------------

同じ頃、スナイプとニコにも異界の風が吹いていた。

「大我、これじゃキリがないよ!」

「中にいるモータスの野郎さえ潰せれば、こんなヤツ……!」

デスエッグロボを前に思わず歯噛みする。
既に何度撃破したかわからない。数回、十数回、いや数十回なのか。
だがその度に復活され、何事もなかったかのように襲いかかってくる。
鈍足であってもその重量から来るパワーは侮れない。

そして大きく飛び上がったデスエッグロボが、着地と同時に大地を揺るがした時、
ついにニコの体勢が崩れた。

(ヤバッ……!)

視界の先ではスナイプがハンドキャノンを構えているが、それが着弾するよりデスエッグロボの腕が伸びる方が早い。
なんとか立ちあがろうとするが、地面の振動で倒されたことで腕が突き刺さる前に立つことすら難しい。
せめてダメージを軽減しようとできる限りの防御の姿勢を取った時――
160 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 01:02:55.83 ID:ucN85QMk0
不意に、身体が浮いた。
横合いから誰かに胴体を抱えられ、ドリル付きの腕から逃れる。
直後にハンドキャノンの炸裂音がする。つまりスナイプがジェットコンバットを使ったわけではない。
なら一体、誰が?

その疑問は一瞬で氷解した。
見覚えのある二本の尻尾が見えたのだ。

「大丈夫、ニコちゃん?」

「テイルス……テイルスだ!」

「やっと直接会えたね。ここなら、ぼくも手伝える!」

「こっちもいるぜ!」

声に反応して振り返ると、ハンドキャノンの衝撃で動きを止めたデスエッグロボ目掛けて、何かが飛んでいくのが見えた。
それは施設内に置かれた自走砲や軍用バイクだったが、それ以上に色にニコは驚いた。
妖しい緑色の輝き。
その輝きと共に放たれる超能力は、散々見てきた。

「シルバー!」

「あの超能力のオリジナル、か。こいつは愉快なことになってきやがった」

だがスナイプ達の反応と裏腹に、超能力で放たれた物体はデスエッグロボに傷一つ付けていない。
それがどういう意味かを大我は瞬時に理解した。
161 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 01:06:12.05 ID:ucN85QMk0
「ニコ、コイツはお前が使え」

「これって……」

スナイプがホルダーに準備していたガシャットを投げ渡す。
CRで準備中に見ていた、あのバンバンシューティング似のガシャットだ。
だがラベルがよく見えなかったあの時と違い、今のニコには「バンバンタンク」と書かれているのがはっきり読める。

「発射はおせえが、そいつならキメワザなしでもヤツの装甲を抜ける。
 中身まで爆破するのには足りねえが、コイツらがいるなら話は別だ」

「大我さん、何か手があるの?」

「ああ。テイルスはニコと、シルバーは俺と組む。
 俺がヤツの頭、ニコがヤツの尻の装甲を割ったら、お前達はありったけ中にいるモータスのお人形にぶちかませ」

スナイプの指示と共に、再びデスエッグロボが動き出す。
懲りもせず大ジャンプする下を、今度はニコとテイルスが隙なくくぐり、スナイプとシルバーが後方へ跳んで避ける。

「ニコちゃん、がんばって!」

「ここで腕見せなかったらプロゲーマーの名折れだって!」

『ガシャコンキャノン!』

バンバンタンクのガシャットに登録された両手持ちの大型銃を抱えたニコは、
デスエッグロボの尻へとその照準を油断なく合わせる。

「ニコ・クリティカル・ファイヤァー!!」

己を奮い立たせる叫びと共に、必殺の一撃は放たれた。
162 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 18:57:20.88 ID:ucN85QMk0
---------------

「グッ……何故だ、何故ヤツらにばかり!」

超高速で飛行しながら、メタルソニックが吐き捨てる。
気付けば周囲の空間は、幾つもの世界が入り混じっているものになっていた。
グリーンヒルと聖都大学附属病院だけでなく、これまでの戦いで再現してきたソニックの世界、
そしてエグゼイド達の世界の様々な場所がパッチワークのようにつながれている。

だがそんなことはどうでもよかった。
真にカオス・コントロールの力を獲得し、そして無効化能力を再調整すれば、
あらゆる世界に敵はいなくなるのだ。
エメラルドが1つ足りずとも、それが可能になるまであと3分もないはずだった。

しかしその3分は、迫りくる2つの青い光にとって十分過ぎる時間だった。

「待たせたな、メタル!」

「ソニック……エグゼイド!」

「いよいよラスボスを倒して、ゲームクリア目前ってところだな!」

憎き2人の主人公達目掛けてあらゆる手を繰り出す。
超能力、水流、七色の異星人、漆黒の槍。
これまで幾度となくライダーとソニックを苦しめた数多の力を。

だが彼らは止まらない。止められない。
ダブルブーストの力は、ソニック単体のブーストより速さもパワーもはるかに上だった。
エメラルドから奪ったパワーで超加速したメタルソニックとの距離すら、徐々に縮めてくる。
不完全なカオス・コントロールでは、時を止めるより先に一撃をもらうだろう。
163 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 18:58:47.59 ID:ucN85QMk0
「何故お前達はそうも簡単に新たな力を得られるのだ!
 願望機たるバグスターの力で、考え得る最強の能力を手に入れた!
 オレを縛る枷もない今、それを覆す力を何故こうも!」

「オレ達が常に前に進んでるからさ!
 アタマの中の今に留まってたら、追いつかれて当たり前だろ?」

「ぶつかって、試行錯誤して、そうやって前に進んでいくんだ!
 それはゲーマーも、ドクターも……いや、どんな人間だって変わらない!」

即座に言い返されながらも、ネオメタルソニックのアイカメラが不気味に輝く。
2人の回りを取り巻く中にある、7つ目のカオスエメラルド。
それさえ奪い返せば、3分ではなく一瞬の内にカオス・コントロールは完全獲得できる。
シャドウがゲンムと共に離れている今なら、体勢を立て直されることもない。

「そんな戯言も終わりだ!」

「お終いはお前の方だぜ」

だが、赤いエメラルドを奪い取らんとした時、エメラルドが突如動いた。
いや、何者かがエメラルドを守っている。
奪われる前に動かし、また別の方向からソニック達の元へ戻す。
振り返るとそこには、赤と青の交差したライダーが立っていた。
164 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 19:03:02.19 ID:ucN85QMk0
「パラド! 貴様、小賢しい真似を!」

「小賢しくて悪かったな。
 あんな退き方させられた借りを、返さないワケいかないだろ?」

エメラルドを奪うために接近し過ぎた深紅の装甲を、ダブルブーストが弾き飛ばす。
渾身の一撃が右腕に直撃し、青いエメラルドが体内からソニック達の元へ引き込まれていく。

怒りに任せてカオスブラストを放とうとした瞬間、今度はまた別の人影が現れた。
ガシャコンスパローの一撃に、それがレーザーターボだと判断したネオメタルソニックだったが、
スパローの鎌の刃は無効化されないまま外装を切り裂く。
さらに直後に現れたレーザーターボに、蹴りではなく殴り飛ばされる。
その手にはソニックのものに似た、白い手袋が嵌められていた。

「効くもんだな。武器なんて趣味じゃないが、キリヤのおかげで助かったぜ」

「こっちもパンチはあんまし得意じゃないんだが、いい使い手がいると違うね。
 お互い様ってことだな、マッスルズ」

「ナックルズだ! お前ワザと言ってるだろ!?」

互いの武器を交換したレーザーターボとナックルズの一撃で、またエメラルドを失う。
倒せぬはずの足止めが解かれてしまった。おそらくは2つとも。
彼らがこの空間に出て来た意味を瞬時に理解し、すぐさま距離を離そうとする。

だがネオメタルソニックが動くより先に、またエメラルドを失う。
ポッピーとエミー、スナイプとシルバー、ニコとテイルス。
それぞれが力を貸し合い、ネオメタルソニックに次々と一撃を加えていく。

そして――

『ゼビウス!』

ソニック達とは別の方向から、ゲンムとその背に乗ったシャドウが迫る。
ゲンムの背負ったアーマーはジェットコンバットに似ていたが、その速力はさらに速い。
そのまま衝突しそうなほど接近したゲンムが、バックファイアで視界を潰す。
いくら攻撃を無効化できても、視覚やセンサーに影響がないわけではない。
その一瞬の隙に、シャドウの振りかざしたガシャコンブレイカーが装甲を切り裂いていた。
165 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 19:19:10.58 ID:ucN85QMk0
「終わりだな。カオスエメラルドは全て返してもらった」

その言葉通り、切り裂かれた脚部から最後のエメラルドが漏れ出していく。
同時にソニック達もダブルブーストを止め、目前で立ち止まる。
かつて自らを倒したソニックの仲間達に匹敵する数の敵を前に、取り戻すことなどできようもない。
もはやタイムイーターの力で時間を稼ぐことも無意味に等しい。
あとはメタルソニックを倒し、ゲーム病患者を救うだけ。

「まだ……まだ終わりではない!」

それでもネオメタルソニックは抵抗を続けた。
攻撃されながらも溜めていた、漆黒の衝撃波。
それは公園で放たれた時のような威力のないものだったが、今度はウィルス散布ではなかった。

衝撃波の行く先に、バグスターウィルスの柱が次々と沸き立っていく。
今度はモータスだけではない。
エッグマンのメカ、モータス以外も含めたバグスター、様々な敵が地面から生えてくる。
同時に上空に謎のゲームエリアが現れ、その中へネオメタルソニックの姿が消えていった。
166 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 19:21:32.07 ID:ucN85QMk0
「永夢、こうなったら徹底的にやってやれ!」

手近にいた複製ソルティに蹴りを見舞いながら、貴利矢が叫ぶ。
得意技の回し蹴りはやはり見切られていたが、対策として用意していた流麗さのないドロップキックが突き刺さる。
さらにガシャコンスパローの斬撃とナックルズ仕込みのパンチで複製ソルティは砕け散った。
復活はしない。だが、今度は敵の数が多過ぎる。
このままではネオメタルソニックに猶予を与えてしまう。

「コイツら多分無限湧きだよ! ゲームクリアしないと止まらない!」

「ニコちゃん!」

「ここはぼく達に任せて、早くネオメタルソニックを!」

「テイルス! ……よし、行こうぜ永夢!」

「わかった、すぐに終わらせよう!」

ソニックに促され、永夢が金色のガシャットを起動させる。

『ハイパームテキ! ロックオン・システム!』

「Let's do it!」

マキシマムマイティXと同規格のマキシマムソニックXに、ハイパームテキが接合される。
青いソニックを模したゲーマが金色に輝き、ムテキゲーマーもかくやというエネルギーが放出された。
同時に7つのカオスエメラルドがソニックに取り込まれ、また金色に輝く。
この姿こそエメラルドの力を借りて幾多の戦いを超えた、スーパーソニックの姿だった。

だが、さらにその姿へ新たな装備が重なる。
エグゼイドを思わせるマンガ的な眼の描かれたゴーグル、桃色の肩アーマー、緑色のブーツ。
それはソニックの力を得たエグゼイドと同じく、エグゼイドの力を得たソニックの姿だった。
かつての本の世界と同じ、本来の道筋を外れたからこそ生まれる可能性。
エグゼイドのいる世界でなお駆け抜けたからこそ、この力はある。

『ソニックアンドマイティ・X!』

マイティアクションXのブロックと、ソニックの世界にあるバネとを足場に、
2人の金色の戦士は闇に染まる空へと突き進んでいった。
167 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:34:52.13 ID:pTHr6eEL0
---------------

「メタルソニックにはまだ何か手があるのか?
 カオスエメラルドももうないのに、完全なカオス・コントロールを使えるとは思えないぜ」

空を飛んだまま、エグゼイドが呟く。
ソニックとエグゼイド、2人自身以外に光のないこのゲームエリアではどこから奇襲を受けるかわからない。
だがムテキの力とカオスエメラルド、2つが揃った今となってはカオス・コントロールすら効かないのだ。
ソニックもただの悪あがきかと思ったが、不意にメタルソニックが漏らした言葉を思い出した。

「そういやアイツ、最後にタイムストーンの能力を得るって言ってたな」

「タイムストーン? たしか、時間を渡る力を持つ石……
 まさか、過去に戻って歴史を変えるつもりか?」

「いかにも諦めの悪いアイツらしい話だぜ。
 過去に戻ってエメラルドをまた奪えば、カオス・コントロールもタイムイーターの力も悠々と取り戻せるって寸法か」

「そんなことはさせないぜ!」

決意を新たにしたその時、闇に埋め尽くされた空間に別の光が見える。
いや、ただ色があっただけと言うべきか。
ソニック達の数倍はある巨躯が、血に染まったような濁りのある赤を放っている。
ところどころに残る深紅の装甲だけが、ネオメタルソニックの変わり果てた姿だと語っていた。

そしてその先には――グリーンヒル。
それもタイムイーター事件の直後、カオスエメラルドが集められたままの場所が見えていた。
168 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:37:04.81 ID:pTHr6eEL0
「貴様ラ……後少シトイウトコロデ!」

「タイムイーターの事件から、お前の心は過去に戻りっぱなしなのさ。
 オレが未来に引っ張り直してやるぜ!」

「ゲーム病に感染した人のためにも、ここで勝負だ!
 お前の運命は、オレ達が決める!」

『ガシャコンキースラッシャー!』

過去に戻る時空の穴の前に立ち塞がり、エグゼイドがキースラッシャーを呼び出す。
それが戦いの合図になった。

巨大な身体の全身の各所から、バグスターやエッグマンメカのパーツが現れる。
放たれる攻撃は本物と遜色ない。
だがそれは、都合の良いように見えて不完全な具現化に過ぎない。
エッグドラグーンを再現したと思しきドリルをキースラッシャーで撃墜し、そのままエグゼイドが突撃する。
そして乱射されるカオススピアをかわしながら、左腕を斬り落とす。
直後、ソニックへ向けてキースラッシャーを投げた。

「ソニック、今度はそっちだ!」

「OK! オレの剣捌きは手荒いぜ?」

投げ渡されたキースラッシャーを受け取り、今度はソニックが飛ぶ。
グラファイトの腕と思しきパーツから放たれた紅蓮爆龍剣をスピードとパワーで押し返し、外皮ごと斬る。
その勢いで肩まで飛び上がり、右腕に剣を突き入れる。
未練がましく各所で再生される過去の敵のパーツも、2人の金色の力で次々と破壊されていく。

両腕を無くした巨躯にライダー達やソニックを苦しめた力はない。
それでも自らの勝利のために過去への扉に進まんとする姿は、もはや妄執と呼ぶ他なかった。
169 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:38:14.27 ID:pTHr6eEL0
「あんなになっても止まらないか。
 なら……最後までやるぜ、相棒!」

「これでフィニッシュだ!」

エグゼイドが右手を天に掲げる。
オレンジと青の螺旋が2人を包み、金色の輝きをより一層強くする。
そしてハイパームテキガシャットを2度叩いた。

『ハイパー・クリティカルスパーキング!』

エグゼイドとソニックが突撃する。
同時に、血に濡れた巨躯の中央からメタルソニックが現れる。
本来の彼の持つ、きりもみ回転アタックを繰り出しながら。

正面から激突した3つのシルエットが交差し――回転する1つだけが、動きを止めた。

「オレハ……『ロボスター』ハ……不滅、ダ……」

『ゲームクリア!』

「ガアアアアアアッ!!」

メタルソニックのボディが爆発する。
そして取り込まれていたバグスターウィルスだけが放出され、霧散していった。
バグヴァイザーで吸う者のない今、複製されたモータスが復活することはもうない。
今ここに眠るのは、高性能AIがあるだけの、ただのメタルソニックだった。

「……やったな、エム」

「ああ、これで患者も救われる。カオスエメラルドも取り戻せた」

再び、エグゼイドとソニックが拳を突き合わせる。
ここには過去への扉も、闇に埋め尽くされたゲームエリアもない。
動かなくなったメタルソニックを抱え、ソニックとエグゼイドは元の世界に降り立つ。


全ては終わった。あとは全て元通りにするだけ。
この世界にいられる時間も、もう長くなかった。

170 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:39:01.47 ID:pTHr6eEL0
             - Final Zone. His World -


[EX-AID]


「なんか、あっという間だったな……」

CR備え付けのソファに座り、永夢は誰にともなく呟く。
誰かに聞いてほしいわけではなかったが、そういう時に限って聞いている者はいる。

「言う割にはさして堪えていないようだな、宝生永夢。
 ゲーマーにとっては夢のような日々だったろうに」

「ニコちゃんみたいには泣けませんよ。
 黎斗さんだって、笑って見送ってたじゃないですか」

「会えなくなるわけではないからな。君とてそれはわかっているのだろう?」

「まぁ……そうですね」

筐体の中の新檀黎斗を見ながら、永夢は昨日の夜のことを思い出していた。

171 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:43:17.00 ID:pTHr6eEL0

メタルソニックの野望を打ち砕いた直後、待っていたのはソニックやその仲間達との別れだった。
ソニックの仲間達が世界を超えて現れたのは、ネオメタルソニックがタイムイーターの力で開けていた時空の穴に、
マキシマムソニックXガシャットの力で干渉していたためだ。

そしてメタルソニックは力を失い、ガシャットもまた使いっぱなしではいられない。
ガシャットを止めればそれで世界のつながりは断たれる。
ソニックとカオスエメラルドを元の世界に返し、全てを元通りにするにはこの別れは避けられない。

……ニコは派手に泣いていた。
それは別れの悲しさだけでなく、ゲーマーとしての腕でソニックやテイルスから認められた喜びもあった。
そこまで感情的でなくとも、大我や貴利矢、ポッピー、そしてパラドにも別れを惜しむ心はある。
もちろん、それは永夢も例外ではない。

「今はお別れだけど、オレはずっとエム達と一緒にいるぜ。
 ま、あのゲームよりオレはもっとクールに駆け抜けてるけどな!」

「ははは……本物のソニックに迫れるように、僕もがんばらないとね」

「できるさ。クールな走りも、バグスターとの戦いもな」

最後に拳を交わし、手を握る。
隣で泣いていたニコもようやくテイルスから離れる。
そして永夢のドライバーからマキシマムソニックXが抜かれると、
グリーンヒルの側に立つソニックの姿が次第に薄くなっていく。

「Hey! 永夢、そしてみんな! 未来を楽しめよ!
 駆け抜けていけば、絶対に面白いことが待ってるぜ!」

その言葉を最後に、ソニック達の姿が消える。
残されたのは、見慣れた聖都大学附属病院の風景。
時計の針はモータスカオスに呼び出された時と同じ、21時過ぎを指している。
終わってみれば、1日足らずしか彼らはこの世界にいなかった。

172 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:49:56.12 ID:pTHr6eEL0
「……そういえばあの時、なんでガシャットが消えたんですか?」

ふと、残された疑問を問う。
ソニック達が消えたのと同時に、マキシマムソニックXのガシャットは消滅してしまったのだ。
黎斗やパラドが「製作は1本だけ」と明言していたので、ポッピー達はガシャットが限界に来たのだと解釈していたが、
永夢はそう思えなかった。
永夢の知る黎斗は、たとえ1本限定であろうと、役目を終えたら自壊してしまう出来を認める人間ではない。

「なんだ、君も彼らに未練があったのか」

「そうじゃないですけど、でも使ったら消滅するガシャットなんて聞いたこともありません」

「教えていないからな。……フッ、安心したまえ。
 君が危惧するような一切の事態には繋がらないと約束しよう」

新檀黎斗がニヤリと笑う。
それを見て、永夢は先を聞くのを諦めた。
おそらくガシャットの全部を知っていて上で、かつ全部話す気などないのだろう。
ひたすら問い詰めれば吐くかもしれないが、そんなことをする気にはなれなかった。

黎斗がソニックを嫌っていないということはわかっていたし、何よりそれどころではないのだ。
ソニック達の乱入はあったが、今は仮面ライダークロニクル終結に向けた大詰めの時なのだ。
鏡飛彩を取り戻すためにも、自らの道を駆け抜ける。 ならば他のことを気にかけてはいられない。
173 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:50:45.61 ID:pTHr6eEL0
不意に、内線電話のコール音が響き渡った。
緊急通報。この戦いの幕開けでもあったコール音。
それでも永夢は、いつものように素早く受話器を取った。

「はい、電脳救命センター。
 ……はい、ゲーム病の患者ですね。名前は……百瀬和王さんですね。
 わかりました。こちらから向かいますので、なるべく安静にして待機してください」

受話器を下ろし、白衣を着直す。
ゲーム病患者を救い、バグスターの行く末を決める。
自分自身の戦いのために、永夢は新たな患者の元へと駆けていった。

「さて……私の助け舟が届くのはいつの日か。楽しみが増えたな」

1人残った新檀黎斗は、ソニックの残したチリドッグを温め直す。
食べ慣れないせいか、辛さの中にしょっぱさを感じた気がした。
174 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:52:24.84 ID:pTHr6eEL0
[SONIC]

――エグゼイドと共に戦った日から、どれだけの時間が経っただろう。

あれからDr.エッグマンが生還し、高性能AIにより歪んでしまったメタルソニックも元通りに修復された。
そして幻の大陸や古代の寺院、異常気象に見舞われる雪の島など、様々な地でソニック達は冒険を繰り広げた。
だが今、ソニックの目の前に広がる光景は、今までのどんな冒険よりも絶望的なものだった。


「エッグマンのヤツ……何を血迷ったんだ!?」

量産されたデスエッグメカの群れが、都市を蹂躙している。
いや、もはや目前だけではない。
テイルスから聞いた話ではGUNの抵抗もむなしく、既に世界の99%がエッグマンに制圧されているという。
ソニックや仲間達も、頭数ではせいぜい10人かそこらでしかない。
物量では勝てないが、エッグマンがこれほどの攻勢を仕掛けたことがそもそもなかった。

さらには『インフィニット』なる謎の敵により、ソニックも一度敗北してしまったのだ。
なんとかエッグマンの施設から逃げてきた先に広がっていたのが、この惨状だった。

「……いくぜ! Go!」

ソニックは走り出す。
たとえどんなに劣勢でも、諦めなどしない。
黒塗りのデスエッグロボの頭部から放たれたレーザーを次々と避け、
ブーストの加速力で一気に前へ進む。

だが1人で抗うには、あまりに状況が悪すぎた。
乱射される無数のレーザーの中、破壊された岩盤が押し潰すように飛んでくる。
ブーストも永久にかけられるワケではない。
たとえ岩盤に潰されて生きていても、そこにレーザーの集中砲火を受ければ無事では済まない。

万事休すか――

175 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:53:51.62 ID:pTHr6eEL0

その時、懐かしい音が聞こえた。
かつて最後の切り札から聞こえた声。

『ソニックアンドマイティ・X!』

直後、何者かがソニックを襲う岩盤を下から破壊する。
すぐさま脇道に逸れてレーザーの射線を避け、自分を救った何者かを追う。
その先から聞こえたのは、また懐かしい声。

『ソニック。
 これが聞こえているということは、今度は君の世界がネオメタルソニック以上の危機にあるということだ』

「クロト!」

思わずその名を呼ぶが、黎斗の声はそれに構わず続く。
おそらく事前に吹きこんだメッセージなのだろうとソニックは理解した。

『形はどうあれ、君は私達の世界の危機に迷わず手を貸した。
 その借りを今こそ返す。私が生み出したゲームキャラ、マイティの形を借りてな!』

道の先には、炎を象ったようなピンク色の戦士がいた。
背丈はソニックとほぼ同じだが、何より印象に残ったのは戯画的な眼の描かれたゴーグルだった。
かつての戦いでソニックが身につけ、そしてエグゼイドが使っていたものと同じ眼。
176 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:55:45.83 ID:pTHr6eEL0
『そのマイティにはあの時のガシャットのパワー、そしてパラドの協力で得た宝生永夢のデータを可能な限り与えてある。
 余計なお世話かもしれないが、これが起動するほどの極端なワンサイドゲームは、ゲームマスターから見ても好ましくない。
 窮地を脱する一助になるならマイティも、そしてこちらの世界のプレイヤーも喜ぶだろう』

マイティから差し出された手を、ソニックが握り返す。
言葉こそ発しないが、あの日別れた永夢に似た感触を感じる。
それだけで信用するには十分だった。

『さて、これで本当にお別れだ、ソニック。あとは神の恵みを以て駆け抜けたまえ』

「……言い方は相変わらずだが、今のエッグマンと違うのは助かったぜ」

途切れた音声に、ソニックは1人呟く。

ソニックは黎斗をエッグマンに似ていると思っていたが、
世界を手中に収めんとする今のエッグマンは、もう黎斗に似てはいない。
ならば何かがあったはずだ。
その何かが『インフィニット』かはわからないが、今なら確かめられる。
立ち上がるのが自分1人でないとわかったなら、もう立ち止まる必要はない。

「いくぜ、マイティ!」

ソニックは駆け抜ける。
未曾有の危機にある彼自身の世界を、新たな仲間達と共に。


―― Continue to "Sonic Force" with Mighty avatar……?


[END]
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 00:58:48.22 ID:TwY88zjfO
乙でした
178 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 01:08:43.29 ID:pTHr6eEL0
これにて終了となります。お目汚し失礼いたしました。

…いやはや、大遅刻になってしまいました。まさかエグゼイド最終回どころかファイナルステージ後とは。
こと後半更新ペースがガタ落ちし、展開もグダった感を出してしまい本当に申し訳ありません。
あと「どちらかというとエグゼイド寄り」と前置きしながらソニック側のネタを一定以上突っ込んでおり、
ソニック側ノータッチだと読みにくくなったのも猛省しております……orz

最初にイメージしたのは実は最終決戦ラストの「ソニックアンドマイティX」の部分ですが、
そこまで至るまでの構成を詰めるのに時間がかかった結果、逆に前半が安定進行で
後半が想像以上に構成甘かったのを調整しまくるハメに……
ですが「コンティニューしてでもクリアする精神で完結」という言葉は翻さず済みました。
これにて完結でございます。

今回も少し本編内小ネタに触れておこうかと。もちろんネタバレなので注意。
179 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 01:33:08.92 ID:pTHr6eEL0
・時間軸
エグゼイド側は36話ラスト〜37話冒頭。
貴利矢のCR帰還直後にモータスの亡霊の話に入り、事件後に百瀬和王(小姫パパ)がカイデンのウィルスに感染して
37話での流れにつながる形です。
ソニック側は本編がソニックジェネレーションズ終了後〜ロストワールドの前、ラストのみソニックフォース冒頭。
ただしこちらはリアル時間だと数年経過するので、エグゼイド世界とは時間の流れが違うと思っていただければ。

・各章タイトル
ソニック側の知識があるとすぐわかりますが、各章タイトルは歴代ソニックシリーズのタイトル曲からお借りしています。
ソニックのボーカル曲はどれもテンション上がるので、執筆中も聞いてました。
いい曲多いのでソニック未プレイでも聞いてみると良いのですよ……!(ダイマ)
ちなみにソニジェネが下敷きなのでジェネ参戦作品から取るか迷いましたが、
内容と齟齬が出やすくなったので結局そこまではしないことに。

・起動するタドルレガシー
今回、エグゼイド側の補完というのも目的としてあって、その第一がタドルレガシー起動の瞬間。
エグゼイド本編では36話で起動できなかったものの、37話冒頭で小姫消滅を含めた脅しを正宗にくらった後、
再び出てきたらパラド戦でなんか起動できてたという形。
小姫について後がなくなった覚悟というにはちょっとあっさり気味に感じ、モータスカオスを敵役に覚醒してもらいました。
結果的にキメワザ判定で状況悪化してるけどね……!(ヒドイ)

ちなみに36話でレガシー起動失敗した際に正宗から一度ガシャットギアデュアルβ返してもらってますが、
その後また回収されたということにしています。
40話で正宗に奪われたガシャットにデュアルβが1つしかない(これは大我の分)ので、
本当に回収されっぱなしの可能性も高いかと。
180 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 02:14:31.76 ID:pTHr6eEL0
・もう1つの爆走バイク
結局、最終回でも不明のままだった「レーザーターボ用の爆走バイク」。
貴利矢がゲームオーバー判定で消滅する前、ギリギリまで爆走バイクの挿さったドライバーに触れているので、
貴利矢復活時に副産物的に生成された、と解釈しました。

ただ、それだとバグスター人間化した貴利矢に最適化されるはずはないので、
レーザーターボになるよう再調整した誰かがいるはず。
タドルレガシーも超スーパーヒーロー大戦でのガシャットを小姫復活時に(黒い方の)飛彩が送って生成されたと考え、
スパヒロ版レガシーからTV版レガシーにつながるように同じ人物が調整したと補完。
それが複製モータスの実験に手を出し、モータスカオスに血肉ごと頂かれ……という末路に。合掌。


・未登場ガシャット
密かに「初期10ガシャットを全部出す」というのが裏テーマだったり。
変身用で使っているもの以外でもドラゴナイトハンターZとかは出すの簡単でしたが、
逆にレーザーターボになってから使うのやめちゃったギリギリチャンバラは思い切り捏造することに。
通常レーザーより細身のターボだと腰回りは太くならないだろう、ということで腕と足に寄らせました。
イメージ的にはファイブマンのファイブテクターみたいな感じ。
あと序盤はエグゼイド本編と同時進行で劇場版もまだ公開前だったので、
レーザーターボでのバイク形態が通常レーザーと全く同じと知った時に血の気が引きました……。

10ガシャット以外だとバンバンタンクも半分ほど未登場品です。
スナイプZERO1話冒頭でキメワザに使われてましたが、ガシャコンウェポン対応なのは今のところ捏造です。


・バグスターという名の願望機
バグスターはコンピュータウィルスが大元ですが、最初から本編通りに生命体だったのかは個人的に疑問がありました。
なにせ生体感染するとはいえ電脳上のウィルスなので、「何がしかを模倣する性質を持っていた生命体」だけでなく、
「周囲の情報を具現化する願望機が歪んで命の概念を得た」とも考えられます。
(後者の場合、原因は十中八九パラド誕生にあるはず)
メタルさんがロボットに対する道具扱いに不満を出してるにも関わらず、同じように怒っているパラドと違って
黎斗(生前)や正宗以上に手酷く複製モータスを酷使しているのは、そもそも最初が願望機で命は余計と考えていたせい。
181 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 02:36:37.56 ID:pTHr6eEL0
・メタルソニックの暗躍
3DS版のソニックジェネレーションズでは、本編に出もしないのに何故かモダンメタルソニックのフィギュアがあります。
正直謎なのですが、これを逆手に取って「実際には暗躍してたがソニック達は気付かなかった」というフラグにしました。
DS版由来なので、ウィスプ系の能力でレッド・バースト(ジェネとカラーズではDS版限定)を使ったり、
ファイナルカラーブラスターの撃ち合いでもソニックがWii版でメタルはDS版と分けました。
あと、終盤で装甲真っ赤になるのはカオティクスでの「メタルソニック改」を意識した形。
最後の最後でデカくなったのもあっちのメタル改が大型だったため。

・ソニックの技
メタルが悪用した「リングが1枚でもあると死亡判定にならない」はシリーズ共通のお約束。
公園でのモータスカオス最終戦で拘束に使ったワールウィンドは「ソニッククロニクル」出典です。
動作自体はヒーローズでのブルートルネードと同じですが、今回は回るの1人だけなのでこちらを採用しました。
ダブルブーストは最新作「ソニックフォース」から拝借。
そしてファイナルカラーブラスター前に使った2つの走法は、RTAなどで使われる特殊な操作法によるもの。
展開の都合上、DS版ソニジェネをマッハで全クリアし直したニコほどの猛者が使わないはずないので
名を伏せて入れましたが、後になって見るとちょっとやり過ぎだったかもしれません。
182 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 02:37:24.30 ID:pTHr6eEL0
…ということで、今回はこれまでになります。
お付き合いいただき本当にありがとうございました。

それでは、また電脳世界の狭間で。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 02:41:47.01 ID:aATUG6N9o
完結乙でしたー!
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 08:21:21.08 ID:F3VJpSkl0
最後の新作の繋げ方に感動した

ソニックもエグゼイドも好きな俺得SSだった、乙!!
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