【エグゼイド】駆け抜けるSonic!【ソニック】

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135 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/28(木) 02:51:32.56 ID:qDZ60KGA0
[EX-AID]


「ずいぶん間抜けなツラしたロボットだな。こんなもんが街を蹂躙してたのかよ」

時空の穴を落ち、軍事基地のような場所へ降り立ったスナイプは開口一番そう言い放った。
目の前にはあの巨影の1つ、地を揺るがす二足歩行ロボが立ち塞がっている。
機械然とした脚部と腕部に対し、卵型の胴体を服に、楕円型の頭部を顔に見立てたアンバランスな巨体。
特にヒゲと眼鏡どころか白い歯まで象った頭部は、戦闘用メカとしてはあまりにも不似合いなものだった。
それ故に、知る者にはすぐ素性が知れる。

「やっぱり、デスエッグロボ!」

「あのナリで『死』だと? 悪ふざけはツラだけにしやがれ」

吐き捨てるような言葉もろとも、スナイプがハンドキャノンを発射する。
胴体の中央部に炸裂した砲弾が赤色の胴体を黒く汚す。
レベル50の火力すらそうそう通用しない堅い装甲に舌を巻きつつ、
さらに数発叩き込むが大きなダメージがあるようには見えない。
だが、わずかでも装甲に傷とへこみが付いたことをスナイプは見逃さなかった。

「ハッ、全く効かないってワケじゃねえのか。弱点を狙い撃てば苦労しなさそうだぜ」

「コイツの弱点は頭と尻だよ、大我!」

「正面は無敵ってワケか……」

スナイプの数倍はある巨体を改めて見上げる。
卵型で張り出している腹が原因で、地上から頭部を狙い撃つのは難しい。
尻を狙うにも、この軍事基地は奥行きはそれなりにあるものの左右幅が狭い。
あるいはジェットコンバットなら狙い撃てるかもしれないが、火力と耐久力に不安が残る。
戦えとばかりに置かれたこのロボが、このまま動かないはずがない。
136 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/28(木) 02:52:56.85 ID:qDZ60KGA0
その読み通り、デスエッグロボは突如動き出した。
腕をガシャンガシャンと回転させた後、軽い前傾姿勢を取りつつ右腕をスナイプに向ける。
正面からだと、ガトリングガンの砲口のごとく備えられた3連ドリルがよく見えた。

「大我! アイツ腕伸びるよ!」

「……くっ!」

ニコの言葉で敵の狙いを察し、すぐさまスナイプが飛び退る。
直後に右腕が伸び、一瞬前にスナイプが立っていた場所へ3連ドリルが突き刺さっていた。
床を破砕して金属片を撒き散らすその威力は、直撃すればシミュレーションゲーマーの防御力でも重傷は免れまい。
ジェットコンバットを使う考えは捨てざるを得なかった。

「おい、コイツは腕以外になんか武器あんのか」

「あるのは腕と踏み潰しだけ!」

ニコが言うのと同時に、デスエッグロボが大きく前方へ跳んだ。
今度はバックステップの1つや2つでかわせるものではない。
だからこそニコとスナイプは迷わず前方へ駆けた。
下をくぐる形で踏み潰しをギリギリで避ける。
そしてすぐさまスナイプは背後へ振り向いた。

「吹っ飛べ!」

デスエッグロボが旋回するより早く、ハンドキャノンがデスエッグロボの尻を捉える。
後方からだけ見える脚部と胴体の境目を正確に射抜くと、バランスを崩した巨体が地に転がった。
同時に尻の部分が爆発する。明らかにダメージを与えた手ごたえがあった。

「さっすがあたしの主治医、こんなあっさり倒しちゃうなんて……って、なに警戒してんの?」

「終わりと思えねえんだよ。あれだけ策を弄した野郎が、こんな手落ちするか?」

「時間稼ぎのつもりなんじゃない? 倒したはいいけどここから出られないっぽいし 」

ニコの言うことにも一理はあった。
直接攻撃が効かない今のライダー達でも、ソニックを援護することはできる。
そういった横槍を防ぐためにこの異空間が用意されたのなら、実際の強さは必要ない。
放置すれば病院からCRを部屋ごと引きずり出されるような仕掛けさえあればいい。
その論に納得しつつもハンドキャノンを下げずにいたその時だった。


突如として標的が消えた。
いや、違う。これは見知ったはずの現象。

「オレンジの粒子だと? こいつは、まるで――」
137 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/28(木) 02:54:45.34 ID:qDZ60KGA0
「――まるでバグスターワープじゃないの。この大きさでやるとか冗談キツイな……!」


同じ頃、レーザーターボも驚愕していた。
吸い込まれた先に待ちかまえていた「エッグドラグーン」なる飛行メカは、
ついさっきポッピーと協力して撃破したはずだった。
だが撃破したメカがオレンジの粒子と化し、ライダー達の背後に再び集まる。
振り向いた先には無傷のエッグドラグーンがいた。

「一瞬でコンティニューされちゃった!?
 ……貴利矢、これじゃ何度倒しても意味ないんじゃないの?」

「カラクリを解かない限りは、な。
 いくらアイツの取り込んだモータスが普通じゃないったって、
 こんな早く自力コンティニューできるはずがない。
 そいつを見つけ出すためにも、もう1回倒すぞ」

慌てるポッピーを落ち着かせながら、再びエッグドラグーンを目で追う。
長い腕に対しオマケ程度の足しかない形状から、空中戦に特化した機体なのは明らかだった。
だが右腕のガトリングガンも、左腕の大型ドリルも遠距離戦には向いていない。
結果、エッグドラグーンはレーザーターボとポッピーの立つ円形の足場をゆっくり周りながら攻撃してきていた。

そしてニコの言った通り、頭部と股関節には弱点らしきドーム状のコクピットが収まっている。
飛行されるのは厄介だが、巨大な外見の割に弱点の装甲は薄い。
先に一度撃墜できたのも、ガシャコンスパローとバグヴァイザーIIの射撃で股関節の弱点を潰せたからだった。
138 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/28(木) 02:56:19.54 ID:qDZ60KGA0
「なんかあるとすれば、あの弱点かもな。ポッピー、ちょっと援護頼むわ」

「援護って……」

「ガトリングが来たらぐるっと回りながら避けろ」

「え、それだけでいいの?」

「ああ。来るぞ!」

右腕のガトリングガンが回転し始める。
それがポッピーを狙っていることを確認してから、レーザーターボはドライバーにガシャットを挿した。

『ギリギリチャンバラ!』

レーザーターボの足と腕へ漆黒の装甲が巻きつき、さらに頭部に兜が被さる。
武者のような姿になったレーザーターボだが、この増加パーツはただの鎧ではない。

「今だ!」

弾けるようにレーザーターボが突撃する。
瞬発力を大幅に増した脚部を活かせば、この瞬間だけはソニックもかくやという速度が出る。
その勢いでドリルを向けられる前に足場の端へ辿りつき、そのままジャンプした。
目前に迫る股関節の弱点に、分離させたガシャコンスパローを突き刺す。
その内の1本が装甲を抉るように突き刺さり、レーザーターボの体重を支える。
そしてもう1本は弱点に覆いかぶさるドーム状のキャノピーを叩き割っていた。

「さぁて、中身見せてもらおうか……なんだ!?」

「貴利矢、何があったの!?」

「中にモータスがいやがる。複製の複製、ってヤツか!」

『MISS!』

コクピットに鎮座するモータスをガシャコンスパローで斬り付けるが、今度は効いていなかった。
それがメタルソニック本体と同じ理屈によるものだと理解すると、すぐさま壁を蹴ってエッグドラグーンから離れる。
間髪入れず合体させたガシャコンスパローの射撃を、モータスの周囲に連続して叩きこんだ。
再び弱点のブロックが爆発し、エッグドラグーンが足場に倒れ込む。
139 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/09/28(木) 02:57:50.56 ID:qDZ60KGA0
「なんであんなところにモータスがいたの?」

「そいつは考えるより、見た方が早そうだ」

言うが否や、またエッグドラグーンがオレンジ色の粒子に姿を変える。
だが、今度は何が起きたか理解できた。
粒子に変わる直前、潰されていない頭部の弱点が光ったのだ。
シルエット越しに見えた頭部内の人影もモータスのものだった。

「思った通りか。自動復活の鍵にされてやがる」

「どういうこと?」

「おそらく、弱点に仕込まれた2体のモータスは連動してるんだ。
 片方が撃破されると、もう片方がメカごと吸い込んで再生させる。
 バグヴァイザーで回収したバグスターが再生できるのと同じ理屈だな」

「ってことは、同時に弱点を破壊しなくちゃダメ?」

「どこまでの精度が必要かわからない……けどな!」

乱暴に叩きつけられるドリルを避けながらも、貴利矢の声が響く。
完全に同じタイミングで倒すなら、外からの射撃ではなく複製モータス自体に同時攻撃が必要だ。
コクピットブロックの誘爆程度で倒せるのだから大した威力は必要なさそうだが、
そんな威力すらも直接攻撃では与えられない。
たとえある程度の誤差が許されたとしても、レーザーターボとポッピーの火力では単独破壊は難しい。
キメワザを使えば可能性はあるかもしれないが、メタルソニックの手口を考えると発動自体が躊躇われた。

「さぁて、どうしたもんかな……」

エッグドラグーンと三度対峙する中、レーザーターボは本格的に攻めあぐねていた。

140 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 19:49:20.10 ID:NqB6zBaQ0
[SONIC]

ソニックとメタルソニックの戦いは、ウィスプを駆使した勝負に突入していた。

『ヴォイド!』

メタルソニックが超能力で紫色のウィスプを呼び寄せ、すぐさま吸収する。
直後、黒い球体と化したメタルソニックが道路そのものを飲み込んでいく。
動きは遅いが、その凄まじい吸引力はまるでブラックホールのようだ。
しかもモノを飲み込めば飲み込むほど吸引力は強くなっていく。
ブーストを駆使しても抗うのが難しくなったその時、ソニックの前に青いウィスプが現れた。

『レーザー!』

すぐさま、力を借りる。
青い光線と化したソニックが反転し、黒い球体を貫通する。
直後にウィスプの力が解け、元の姿に戻ったソニックは路面へ降り立った。
141 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 19:50:38.68 ID:NqB6zBaQ0
(ほんっと、タフなヤツだぜ……)

降り立った先には既にメタルソニックが立っている。
新しいガシャットという可能性を残すには、ここでメタルソニックを足止めするしかない。
カオス・コントロールがまだ不完全であることは救いだったが、それでも有効打が叩きこめない。
この世界で習得を許した多彩な能力は、攻撃だけでなく防御においても脅威となっていた。
せめて直撃の一つ、それもできる限り強力なものを喰らわせられれば――

取るべき手は既に見えている。ウィスプが呼び出されている今なら、できる。
あとはタイミングだけ。

「お前がバグスターを取り込んだのは、ただ能力を再現するためだけじゃないな?」

「何を言い出すかと思えばそんなことか。再現どころかあらゆる時間における完全征服、それが目的だ」

「そういう意味じゃないさ。
 ……お前の望みは、ロボスターって形の方にあるんだろ」

メタルソニックの動きが止まる。
超能力などで奇襲をかけてくる気配もない。
ならばと、ソニックはさらに続けた。

「パラドやニコと戦ってる時、変だと思ったのさ。
 お前は偽者とか、ゲーマーってものに妙に反応してる。
 バグスターとしての知識を受け継いだせいなのかと思ったが、多分そうじゃない。

 お前は見たんだろ? この世界の、オレ達が出ているゲームを」

「……!」
142 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 19:51:39.19 ID:NqB6zBaQ0
唐突にメタルソニックのアイカメラが赤く輝く。
ソニックもまた正面からその輝きを見据えていた。

「お前のシッポを掴むために、オレもニコがプレイしているゲームを見せてもらったさ。
 あのゲームはたしかに、オレ達の世界の出来事を見知ったかのように再現している。
 そしてその中で、お前が完全に勝てたことは一度だってない。オレが実際に勝ってきたようにな。
 だから変えたかったのさ」

「……何にだ」

「メタルソニックではない違う命、本来の道筋を外れた存在ってヤツにさ」

メタルソニックは動かない。
だが、動かずしてそれは響き渡った。


――哄笑。


そして、また姿が変わりゆく。
金属部品の細い手足の上にバグスターウィルスが再び集まり、新たな手足を形成する。
生体パーツに包まれた手足は、生物の手足にしか見えないものへと変わっていた。
143 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 19:56:18.17 ID:NqB6zBaQ0
「クッ……ハハハハハハハハッ!!
 その通りだソニック。
 オレはタイムイーター撃破の余波で来たこの世界で、自らのゲームを知った。
 そして語られる末路に絶望すると、同時に希望を見たのさ。バグスターの本質を知ったからだ」

「本質だと?」

「冥途の土産に教えてやろう。あれは願望機だ」

メタルソニックが手を前にかざす。
そこから放たれたウィルスが、いつかのにようバグスターユニオンを形成する。

「バグスターは万物のデータを再現し形を為す。
 この世界の人間にはゲームキャラや人体の再現が精々だろうが、
 コンピュータウィルスすら御する高性能チップの前には無から有を生み出す福音だ。
 糧さえ十分にあればオレの身体を全く新しく生み出すことも造作もなかった。
 あのモータスとやらを道具にしていた人間、その体を餌にオレの身体は完成した」

言いながら、ユニオン目掛けてメタルソニックがカオススピアを投げた。
四散したウィルスが新たな形に収束する。
それはモータスカオスがずっと乗っていた、メタルマッドネスそのものだった。

「そしてゲームという形で語られる未来のある世界で再誕することで、オレは枷を解いたのだ。
 『ソニックシリーズの悪役』という敗北の枷をな」

再び、カオススピア。
今度は四散したウィルスがメタルソニックへと吸収されていく。
オレンジの輝きが胴体を包み込むと、ソニックに似た青い塗装が一瞬で消える。
新たに生まれたボディは、アイカメラだけでなく全身が深紅に彩られていた。
深紅のネオメタルソニックが、立つ。
144 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 19:58:45.35 ID:NqB6zBaQ0
「ロボスターという新たな命を得たオレは、何の横槍もなくお前を消し去ることができる。
 筋書きのない戦いにせいぜい恐怖するがいい!」

直後、漆黒の波動がメタルソニックから放たれる。
カオスブラスト。今度は本当の衝撃波だ。
反転して後方へとかわしたソニックは一瞬だけゆっくり歩き出し、そして道路を一気に走り出した。

「恐怖だって? むしろ面白くなってきたぜ。
 お前がそんな……勘違いをしてるなんてな!」

「勘違いだと?」

「そうさ!」

ブースターで迫りくるネオメタルソニックを、ブーストすら超えるスピードで振り切る。
CRの室内で永夢とニコから聞いた、ブーストの加速効率を大幅に高める走法。
だがそれすらも、速度を急激に上げてくるネオメタルソニックにはさしたる時間稼ぎにならなかった。

「その速さも今のオレは超える!」

「Foo! 勘違いでそこまでこれたら大したもんだぜ!
 この世界のゲームは、オレ達の世界の予言でも記録でもないんだからな!」

「なに……?」

「お前はデータだけでゲームを知ってるからそんなことを思ったのさ。
 オレはニコがゲームをやってる光景を見てきた。
 たしかに大筋はオレ達の世界のものをなぞっているけど、一から十まで同じじゃあない。
 ゲーマー次第じゃオレが負けたり、お前が勝ったりもするし、
 新たなデータを足してオレも知らない冒険が増えたりもするのさ。ゲームだから当然だろ?」

再び、ソニックが速度を上げ直す。
ブーストしながらドリフト走行し、そのまま直線でもドリフトの勢いを乗せ続ける。
これもニコ達から教わった新たな走法だった。
それすらもネオメタルソニックは追いつきつつあったが、意味はあった。
攻撃が来ない。これだけの急激なスピード上昇には、ネオメタルソニックが学習した技もほとんどが当たらない。
カオス・コントロールが完全でない限り、これで攻め手を封じられる。

「願望機ってのも笑い話さ。エムはバグスターを命とも言ったんだぜ?
 性質がどうだろうと、都合のいい道具じゃなくてアイツらは生き物なのさ。
 お前の憎む存在の軽視とやらを、誰よりもやってるのがお前ってことなんだよ!」

そしてスターダスト・ハイウェイの途上で、ソニックが再び反転して立ち止まった。
145 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 20:00:33.44 ID:NqB6zBaQ0
「結局お前は、どんな手を使ってもオレに勝ちたいだけなのさ。
 そしてそうさせるワケにいかないから、今度もオレが勝つ!」

『アンリミテッドカラー!』

直後、ソニックを囲むように7体のウィスプが現れた。
ソニックはただ超スピードで反撃を止めていたのではない。
ネオメタルソニックの反応を超えて、呼び出されたウィスプ達を集めていたのだ。

「みんなの力を貸りるぜ……これで勝負だ!」

『レーザー! ドリル! スパイク! ロケット! キューブ! ホバー! フレンジー!』

ウィスプがソニックの前方で輪になって回転し、虹の如き輝きを放つ。
カラーウィスプの力を集中させ、莫大なパワーを放つ大技・ファイナルカラーブラスター。
かつてウィスプを巡るDr.エッグマンとの戦いに終止符を打ったのは、スーパー化ではなくこの技だった。
永夢も認めるこの一撃なら、今のネオメタルソニックでもただでは済まない。
あとはこの力を乗せ、自らを真っすぐ追う赤きハリネズミに叩きつけるだけ。


だが――


『リミテッドカラーズ!』

「なっ……!?」

「オレはお前の力を獲得している。ならば当然できる!」

『バースト! ロケット! ドリル! レーザー! ヴォイド!』

突撃するソニックの前で、メタルソニックもまたウィスプを呼び寄せていた。
7色ではなく5色。
だが、それは紛れもないファイナルカラーブラスターだった。


2つの虹の輪を、青と赤の輝きが貫く。
直後、ソニックのホーミングアタックとネオメタルソニックのきりもみ回転が激突した。
夜の道路を眩いばかりの輝きが照らし、やがて弾ける。



――打ち負けたのは、ソニックの方だった。
146 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 20:01:26.55 ID:NqB6zBaQ0
「うわあああああっ!」

「そのまま吹き飛べ! カオスブラスト!」

追い打ちとばかりにネオメタルソニックから漆黒の衝撃波が放たれる。
回避も受けもできぬまま、ソニックが路上に叩きつけられる。
トドメを期するほどの一撃のダメージはあまりに大きい。
なんとか起き上るが、さすがに動きが大きく鈍る。
それでもソニックは折れなかったが、追撃の隙を見逃すネオメタルソニックではなかった。

「まだだ……まだだぜ!」

「もはやオレはお前の紛い物ではない。
 このカオス・コントロールで……消えろ、ソニック」

時が止まる。
今のソニックに抗う術はない。
諦めかけたその時、待っていたその声がついに聞こえた。


『ハイパームテキ・エグゼーイド!』

147 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 20:02:47.38 ID:NqB6zBaQ0
[EX-AID]


「間に合った!」

ムテキゲーマーでソニックを救出した永夢は、そのままネオメタルソニックと対峙した。
全身が赤く、一回り大きくなったそのボディにソニックの似姿は感じられない。
だがそれでもこれがネオメタルソニックであることに疑念は抱かなかった。
ファイナルカラーブラスターの光が2つ見えたあの瞬間に、何が起きたかはもう悟っている。

「今更来たか、エグゼイド。
 残念だが、オレのカオス・コントロールはほぼ完全なものになった。
 動けるだけで手の打てない戦いをするのも苦しかろう?
 その無敵の力を奪い取り、ソニックと共に叩き潰してやろう」

再びカオス・コントロールをかけられるよりも先に、永夢が動いた。
だがその手は武器ではなくドライバーに向かう。
直後、マキシマムマイティXごとエグゼイドはハイパームテキガシャットを抜いていた。
同時に金色のムテキゲーマーから、ピンク色のアクションゲーマーに姿も戻る。
148 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 20:04:01.90 ID:NqB6zBaQ0
「ハイパームテキを解くだと? 
 なんのつもりだ。今更許しでも乞うつもりか」

「違うさ。お前の運命は……オレが変える!」

不快感を露わにするネオメタルソニックの前で、永夢は新たなガシャットを取り出した。
そしてすぐさま起動する。

『ソニックジェネレーションズ!』

ラベルに2人のソニックが描かれたガシャットがコールを鳴らす。
マキシマムマイティXと同じ、スロット2つ分の大型ガシャットからはソニックを模した顔が見えていた。
それがドライバーに挿しこまれ、レバーを開く。

「変身!」

『超音速のマックススピード!スピンアタック!ライトダッシュ!』

中空に全身を包むアーマーが浮かぶ。
それを確認した永夢は、ソニックを模した頭部スイッチを叩いた。

『マキシマムソニック・X!』

アーマーと一体化し、エグゼイドが新たな姿を見せる。
青い塗装、ハリネズミの如き鋭利な背部装甲。
それは明らかに、ソニックを思わせる姿だった。
149 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 20:05:12.16 ID:NqB6zBaQ0
「貴様がソニックの紛い物になるとはな。
 偽者の称号はお前が受け継ぐということか?」

「そう笑えるのも今のうちさ!」

挑発するネオメタルソニックの前へ、一気に青いエグゼイドが間合いを詰める。
一瞬だけ歩き、直後にブーストをかける。
ソニックに教えた手と全く同じものだが、元がゲームのテクニックだけに永夢は準備もなく最速で行った。
反応が遅れたネオメタルソニックに、エグゼイドの拳が突き刺さる。

「ごあッ……何故攻撃が当てられる!?」

驚く間もなく、今度は頭突きが飛ぶ。
そのままホーミングアタックを繰り出すと、ネオメタルソニックが派手に転倒した。
すぐさま起き上り、睨みつけられたのはドライバーだった。

「チッ、そのガシャットの力か!」

「そうだ。ソニックのゲームの力を持ったレジェンドゲームガシャットなら、
 ソニックの世界のキャラとして戦える。お前の攻撃無効化を破れるんだ!」

「フン、調子に乗るなエグゼイド。
 そういうことなら、貴様はよくてもコイツらはどうにもならんということだ」

体勢を立て直したネオメタルソニックが虚空に映像を映す。
それは時空の穴の先で戦うスナイプやレーザーターボ達の姿だった。
倒しても倒しても甦る巨大な敵を前に、彼らの消耗の度合いは明らかに色濃く見えていた。
150 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/08(日) 20:07:35.53 ID:NqB6zBaQ0
「貴利矢さん! ポッピー!」

「タイガ! ニコ!」

「ハハハハハハハ!
 これまでバグスターを破壊してきた者達は、ロボスターの新たな力の前に消えるのだ!
 オレと戦うことはできても、もはや仲間はどうにもならんぞ!」

再び哄笑するネオメタルソニックに、ソニックが怒りに肩を震わせる。
それは永夢も同じだった。
そしてどちらからともなく、拳を伸ばす。

「……エム、一緒にやるぞ。
 今のコイツは、絶対に止めなきゃダメだ!」

「わかってるさソニック。
 2人だけじゃない、2つの世界の力で止めてみせる!」

エグゼイドとソニックが拳を突き合わせる。
同時に、再び金色のガシャットに手をかける。

「無駄なことを! カオス・コントロールの前には無力だ!」

ネオメタルソニックが時を止める。
そしてカオス・コントロールの波が拳を突き合わせる2人に触れた時――世界の壁は、崩れた。

151 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/12(木) 02:56:53.59 ID:wg7s+3MC0
             - Zone.5 Fist Bump -


[SONIC×EX-AID]


「エグゼイド、貴様何をした!?」

ネオメタルソニックの叫びが響く。
揺らがぬ優位に立っていたはずのその身でも、驚愕せざるを得なかった。
あり得ないはずのものが見えている。


1つの空間に、聖都大学附属病院とグリーンヒルが並び立つ光景。

そして、このグリーンヒルはメタルソニックが再現したものではない。


「お前を倒すために、2つの世界をつなげたんだ!」

「やれやれ、枷を解いたなんて言うヤツがこんなことで驚くのかよ。
 ロボスターってのも大したことないんじゃないか?」

「ソニック……貴様、なぜ動ける!?」

「そりゃあ動けるさ。自分を変えることにだけにアタマを回しすぎだぜ」

発動したはずのカオス・コントロールで、エグゼイドもソニックも時間が止まらない。
それどころか完全に余裕を取り戻したソニックを睨みつけながらも、また驚愕する。
ソニックとエグゼイドを取り囲むように、6つの光が現れていた。
自らの体内に取り込み、今もそのままであるはずの無敵の力。

6つの宝石――カオスエメラルド。
152 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/12(木) 02:59:45.16 ID:wg7s+3MC0
「バカな、そのエメラルドもガシャットの力というのか!」

「その通りだァ!!」

ネオメタルソニックに応えるが如く、その声は響いた。
聖都大学附属病院から飛び降りてくる姿は黒いエグゼイド。
ガシャット開発を終え、自らも戦場にやってきた新檀黎斗その人であった。

「君がいくらロボスターを名乗ろうと、ガシャットの開発技術や知識で私を上回ることはできない。
 これはドラゴナイトハンターZの技術を応用したのさ。
 プロトタイプから拡散されたデータを解体し、吸収して正規品のデータとすることで効率良く転用を可能とする。
 そしてカオスエメラルドを使用してのカオス・コントロールは、それ自体がエメラルドのデータの拡散だ。

 つまり君がカオス・コントロールを使ったことで、エネルギー源であるカオスエメラルドを丸ごと複製できたのさ。
 エメラルドの1つをバグヴァイザーで吸い出せた時、この手が使えると私は確信していた。
 君の無効化能力を封じるレジェンドガシャットと、カオス・コントロールに耐えられるムテキのガシャットがあればな!」

言いながら、黎斗が最後のカオスエメラルドを取り出す。
ソニック達を取り囲む6つのエメラルド目掛けて無造作に投げ込まれたそれを、ネオメタルソニックが奪おうと動く。
だが、赤いエメラルドを握ったのはネオメタルソニックでなかった。

「チィ、何者だ! カオス……」

「コントロール!」

カオス・コントロールが同時に発動し、直後に解除される。
さらに放とうとしたカオス・スピアはネオメタルソニック自身の肩を貫いていた。
そんな芸当ができるのは1人しかいない。

カオス・コントロールの使い手である黒いソニック――シャドウ・ザ・ヘッジホッグ。
153 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/12(木) 03:00:58.03 ID:wg7s+3MC0
「僕からコピーしたカオス・コントロールでずいぶん好き勝手しているじゃないか。
 エッグマンネガと戦った時の誠実さがウソのようだな」

「シャドウだと! なぜ貴様がここに……!」

「お前がやっていることはブラックアームズと大差ない。
 過去も未来も消し去ろうとするなら、僕はお前を許さない。
 そしてそれは……僕だけじゃない」

シャドウの背後にあるグリーンヒルから幾つかのシルエットが迫ってくる。
それを認めた直後、ネオメタルソニックは後方へ大きく飛んだ。
同時に足元からバグスターウィルスの柱が沸き立ち、幾つものモータスが放たれる。
2つや3つではない、まるで大地を埋め尽くさんばかりの群れ。
そして逃げるネオメタルソニックを追わんとするソニックとエグゼイドの前に、今度こそ赤いエメラルドが投げ込まれた。

「ここは僕に任せろ。お前達はヤツを倒してこい」

「ああ、ケリを付けてくるさ。Are you ok、エム?」

「オーケー! スーパープレイを見せてやる!」

シャドウとゲンムの見守る前で、ソニックとエグゼイドが腕を交差させる。
そしてソニックと、ソニックの力を得たエグゼイドが同時にブーストを始動させた。

「「ダブルブースト!!」」

1人でのブーストをはるかに超えるスピードで、ソニックとエグゼイドが地を駆ける。
そこはもはやゲームエリアなのか病院前なのか、はたまたグリーンヒルなのかすらわからなかったが、
劣化コピーされたモータスの群れを蹴散らして突き進む2人は確実にメタルソニックを追っていた。
そして残されたのは、2人の黒き戦士。
154 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/12(木) 03:02:26.83 ID:wg7s+3MC0
「……お前か、エッグマンに似ているというのは」

「フッ、たしかに天才という意味では同じか」

「それだけとは思えないがな……ヤツらを蹴散らすぞ」

「望むところだ。贋作の排除がてら、たまには私も楽しむ側に回らせてもらおう」

いくら劣化コピーとはいえ、相手は完全体バグスター。
それが一山いくらという数で押し寄せてきても、シャドウとゲンムに恐れなど全くない。
彼らは揺らがぬ矜持と強さを持った戦士達なのだ。

「砕け散れ、カオス・ブラスト!」

シャドウを中心にして、漆黒の衝撃波が広がる。
それが迫りくる複製モータスをまとめて空中へ巻き上げると、既にジャンプしていたゲンムがキメワザホルダーに手をかけた。

『ガンバ・クリティカルストライク!』

17人のライダーの幻影とともに放たれたゲンムのキックが、宙に浮いたモータスをまとめて撃破していく。
だが、今も沸き立ったままのバグスターウィルスの奔流から新たなモータスが生み出されている。
背後に重なる病院とグリーンヒルの前に立ち塞がる黒き戦士は、すぐさま次の一波へ攻撃を放っていった。
155 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/16(月) 02:11:39.59 ID:099W+Gps0
------------------

「なに、ドリルが飛ぶだと!?!」

レーザーターボの身体が宙を舞う。
エッグドラグーンの左腕にある大型ドリルが、突如として腕を離れそのまま発射されたのである。
ドリルのリーチを測ってかわしていただけに回避が遅れる。
直撃はギリギリ避けたが、地面に刺さったドリルが爆発し防御すらできぬまま吹き飛ぶ。

「貴利矢、大丈夫!?」

「なんとかな。だが、スパローが吹っ飛んでいっちまった……!」

爆煙の残る先からポッピーの声が聞こえる。
鈍りながらもまだ動けるのは、ギリギリチャンバラで得た鎧のおかげだった。

だからこそ起き上ると同時に、レーザーターボは拳を地に叩きつけた。
ガシャコンウェポンは変身解除すれば再装備はできるが、今ギリギリチャンバラを解けば次は立ちあがれないかもしれない。
爆発したはずのドリルは、何事もなかったかのように左腕に再生されている。
誘導性能を持って飛ぶとわかった以上、もはや距離が離れても安全とは言えない。
今スパローを再召喚するのは分の賭けに違いなかった。
156 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/16(月) 02:15:24.36 ID:099W+Gps0
「だったら……!」

『ガシャコンブレイカー!』

煙の晴れた先、ポッピーの手にガシャコンブレイカーが出現する。
CRで黎斗から使用許可を取っていた、プロトマイティXによるものだ。
だがそれをレーザーターボへ投げ渡そうとするその瞬間、エッグドラグーンのガトリングガンが乱射される。
さらにドリルが再び射出され、ポッピーの目前に突き刺さった。

「ウソでしょ……!?」

今度はポッピーが吹き飛ばされる。
その身が再び爆煙に消え、天高く舞ったガシャコンブレイカーも手に取れない。
だが、歯噛みする貴利矢は信じられないものを見た。


閉じられたゲームエリアの外に、突如として緑豊かな島が現れる。
それはCRでニコがやっていたゲームに映っていた、グリーンヒルという場所だった。
157 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/16(月) 02:16:58.97 ID:099W+Gps0
同時に宙を舞って落ちていくはずのガシャコンブレイカーが、突如軌道を変えていく。
それも爆風の偶然で動いたのではない。誰かが握って落下している。
エグゼイドにも見たピンク色のシルエットに握られ、エッグドラグーンの頭部目掛けてガシャコンブレイカーが叩き込まれる。

さらにポッピーもまた何者かがキャッチしていた。
赤毛のハリモグラを思わせる彼は、ポッピーだけでなくガシャコンスパローをも拾い上げ、
レーザーターボの前に立っていた。

「お前がキリヤだな。テイルスから話は聞いてるぜ」

「テイルスから? ってことはアンタ、ソニックの知り合いか」

「俺はナックルズ。ま、アイツのライバルってとこさ。
 ……で、今エッグマンのメカぶっ壊してるのがエミー」

ナックルズの指さした先からは、ハンマーモードのガシャコンブレイカ―で頭部キャノピーをガンガン叩く音が響いている。
だが、割れない。やむなく飛び降りたシルエットは、ソニックを女の子にしたような姿をしている。

『MISS! MISS!』

「なんなの、このガラス! ぜんぜん割れないわ!」

眉根を歪ませ、エミーが可愛い顔を曇らせる。
同時にレーザーターボが何かに気付いた。
158 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/16(月) 02:19:40.19 ID:099W+Gps0
「なるほどね……自分と赤毛の兄ちゃん、ポッピーとお嬢さんがいれば頭数は足りるな」

「どういうこと、キリヤ?」

「メタルソニック、ソニックがこの時空の穴に吸いこまれた時に備えて別の無効化判定仕掛けてたらしいな。
 元々ソニックの世界の存在だし、ソニックの能力学習したならそれくらいできてもおかしくないだろ。
 おそらくキャノピーが割れなかったのはそのせいさ。
 ……だが、ヤツもソニックの仲間が2人も来るなんて想定しちゃいない」

「そっか! これなら同時撃破もできるね!」

ポッピーがそう声を上げた直後、いきなりスラスターの噴射音が聞こえた。
エッグドラグーンが急速後退を始めたのである。
シートに座らされている複製モータスにどれだけの判断ができるか定かではないが、
形成不利と見ての行動なのは明らかだった。

「ちょっと、逃げる気!? エッグマンのメカなんか壊してやるんだから!」

動き出す直前、エミーがとっさにジャンプして飛び付く。
鋼鉄の巨体が左右に揺れるのもなんのその、ピンク色のシルエットは胴体部に取り付いていた。

「エミーちゃん!? なんてパワフルな……」

「そのまま掴まらせろ! ポッピー、お前も行け!
 バグスターワープで頭部に回って引っ張り上げるんだ!」

「キリヤは?」

「自分は下を潰す。頼むぜ、ミスターナックルズ?」

追って走り出そうとするナックルズの前で、レーザーターボがバイクへと変形する。
一瞬驚きながらも、ナックルズはその意図をすぐ理解した。

「バイクとかそういうのは、シャドウのヤツ向きなんだけどな……!」

「ハンドリングはこっちでやるさ、スピード調整だけ考えればいい」

「そういうシンプルな話なら大歓迎だぜ!」

シートに跨り、ナックルズが力強くアクセルを回す。
直後、猛スピードで走り出したバイクの前に道路が生成される。
だがそれは立体ループや360度回転が設けられた代物。
かつてモータスカオスと勝負を繰り広げた、ステーションスクエアのように。

「こいつはまるでジェットコースターだぜ!」

「へぇ……面白いねぇ。同じ見方するヤツもいるもんだ!」

思わぬ偶然に笑いながら、レーザーターボの車体がいつかのようにループの途中で飛び出す。
エッグドラグーンのシルエットは確実に近づいていた。
159 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 01:01:59.27 ID:ucN85QMk0
-------------

同じ頃、スナイプとニコにも異界の風が吹いていた。

「大我、これじゃキリがないよ!」

「中にいるモータスの野郎さえ潰せれば、こんなヤツ……!」

デスエッグロボを前に思わず歯噛みする。
既に何度撃破したかわからない。数回、十数回、いや数十回なのか。
だがその度に復活され、何事もなかったかのように襲いかかってくる。
鈍足であってもその重量から来るパワーは侮れない。

そして大きく飛び上がったデスエッグロボが、着地と同時に大地を揺るがした時、
ついにニコの体勢が崩れた。

(ヤバッ……!)

視界の先ではスナイプがハンドキャノンを構えているが、それが着弾するよりデスエッグロボの腕が伸びる方が早い。
なんとか立ちあがろうとするが、地面の振動で倒されたことで腕が突き刺さる前に立つことすら難しい。
せめてダメージを軽減しようとできる限りの防御の姿勢を取った時――
160 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 01:02:55.83 ID:ucN85QMk0
不意に、身体が浮いた。
横合いから誰かに胴体を抱えられ、ドリル付きの腕から逃れる。
直後にハンドキャノンの炸裂音がする。つまりスナイプがジェットコンバットを使ったわけではない。
なら一体、誰が?

その疑問は一瞬で氷解した。
見覚えのある二本の尻尾が見えたのだ。

「大丈夫、ニコちゃん?」

「テイルス……テイルスだ!」

「やっと直接会えたね。ここなら、ぼくも手伝える!」

「こっちもいるぜ!」

声に反応して振り返ると、ハンドキャノンの衝撃で動きを止めたデスエッグロボ目掛けて、何かが飛んでいくのが見えた。
それは施設内に置かれた自走砲や軍用バイクだったが、それ以上に色にニコは驚いた。
妖しい緑色の輝き。
その輝きと共に放たれる超能力は、散々見てきた。

「シルバー!」

「あの超能力のオリジナル、か。こいつは愉快なことになってきやがった」

だがスナイプ達の反応と裏腹に、超能力で放たれた物体はデスエッグロボに傷一つ付けていない。
それがどういう意味かを大我は瞬時に理解した。
161 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 01:06:12.05 ID:ucN85QMk0
「ニコ、コイツはお前が使え」

「これって……」

スナイプがホルダーに準備していたガシャットを投げ渡す。
CRで準備中に見ていた、あのバンバンシューティング似のガシャットだ。
だがラベルがよく見えなかったあの時と違い、今のニコには「バンバンタンク」と書かれているのがはっきり読める。

「発射はおせえが、そいつならキメワザなしでもヤツの装甲を抜ける。
 中身まで爆破するのには足りねえが、コイツらがいるなら話は別だ」

「大我さん、何か手があるの?」

「ああ。テイルスはニコと、シルバーは俺と組む。
 俺がヤツの頭、ニコがヤツの尻の装甲を割ったら、お前達はありったけ中にいるモータスのお人形にぶちかませ」

スナイプの指示と共に、再びデスエッグロボが動き出す。
懲りもせず大ジャンプする下を、今度はニコとテイルスが隙なくくぐり、スナイプとシルバーが後方へ跳んで避ける。

「ニコちゃん、がんばって!」

「ここで腕見せなかったらプロゲーマーの名折れだって!」

『ガシャコンキャノン!』

バンバンタンクのガシャットに登録された両手持ちの大型銃を抱えたニコは、
デスエッグロボの尻へとその照準を油断なく合わせる。

「ニコ・クリティカル・ファイヤァー!!」

己を奮い立たせる叫びと共に、必殺の一撃は放たれた。
162 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 18:57:20.88 ID:ucN85QMk0
---------------

「グッ……何故だ、何故ヤツらにばかり!」

超高速で飛行しながら、メタルソニックが吐き捨てる。
気付けば周囲の空間は、幾つもの世界が入り混じっているものになっていた。
グリーンヒルと聖都大学附属病院だけでなく、これまでの戦いで再現してきたソニックの世界、
そしてエグゼイド達の世界の様々な場所がパッチワークのようにつながれている。

だがそんなことはどうでもよかった。
真にカオス・コントロールの力を獲得し、そして無効化能力を再調整すれば、
あらゆる世界に敵はいなくなるのだ。
エメラルドが1つ足りずとも、それが可能になるまであと3分もないはずだった。

しかしその3分は、迫りくる2つの青い光にとって十分過ぎる時間だった。

「待たせたな、メタル!」

「ソニック……エグゼイド!」

「いよいよラスボスを倒して、ゲームクリア目前ってところだな!」

憎き2人の主人公達目掛けてあらゆる手を繰り出す。
超能力、水流、七色の異星人、漆黒の槍。
これまで幾度となくライダーとソニックを苦しめた数多の力を。

だが彼らは止まらない。止められない。
ダブルブーストの力は、ソニック単体のブーストより速さもパワーもはるかに上だった。
エメラルドから奪ったパワーで超加速したメタルソニックとの距離すら、徐々に縮めてくる。
不完全なカオス・コントロールでは、時を止めるより先に一撃をもらうだろう。
163 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 18:58:47.59 ID:ucN85QMk0
「何故お前達はそうも簡単に新たな力を得られるのだ!
 願望機たるバグスターの力で、考え得る最強の能力を手に入れた!
 オレを縛る枷もない今、それを覆す力を何故こうも!」

「オレ達が常に前に進んでるからさ!
 アタマの中の今に留まってたら、追いつかれて当たり前だろ?」

「ぶつかって、試行錯誤して、そうやって前に進んでいくんだ!
 それはゲーマーも、ドクターも……いや、どんな人間だって変わらない!」

即座に言い返されながらも、ネオメタルソニックのアイカメラが不気味に輝く。
2人の回りを取り巻く中にある、7つ目のカオスエメラルド。
それさえ奪い返せば、3分ではなく一瞬の内にカオス・コントロールは完全獲得できる。
シャドウがゲンムと共に離れている今なら、体勢を立て直されることもない。

「そんな戯言も終わりだ!」

「お終いはお前の方だぜ」

だが、赤いエメラルドを奪い取らんとした時、エメラルドが突如動いた。
いや、何者かがエメラルドを守っている。
奪われる前に動かし、また別の方向からソニック達の元へ戻す。
振り返るとそこには、赤と青の交差したライダーが立っていた。
164 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 19:03:02.19 ID:ucN85QMk0
「パラド! 貴様、小賢しい真似を!」

「小賢しくて悪かったな。
 あんな退き方させられた借りを、返さないワケいかないだろ?」

エメラルドを奪うために接近し過ぎた深紅の装甲を、ダブルブーストが弾き飛ばす。
渾身の一撃が右腕に直撃し、青いエメラルドが体内からソニック達の元へ引き込まれていく。

怒りに任せてカオスブラストを放とうとした瞬間、今度はまた別の人影が現れた。
ガシャコンスパローの一撃に、それがレーザーターボだと判断したネオメタルソニックだったが、
スパローの鎌の刃は無効化されないまま外装を切り裂く。
さらに直後に現れたレーザーターボに、蹴りではなく殴り飛ばされる。
その手にはソニックのものに似た、白い手袋が嵌められていた。

「効くもんだな。武器なんて趣味じゃないが、キリヤのおかげで助かったぜ」

「こっちもパンチはあんまし得意じゃないんだが、いい使い手がいると違うね。
 お互い様ってことだな、マッスルズ」

「ナックルズだ! お前ワザと言ってるだろ!?」

互いの武器を交換したレーザーターボとナックルズの一撃で、またエメラルドを失う。
倒せぬはずの足止めが解かれてしまった。おそらくは2つとも。
彼らがこの空間に出て来た意味を瞬時に理解し、すぐさま距離を離そうとする。

だがネオメタルソニックが動くより先に、またエメラルドを失う。
ポッピーとエミー、スナイプとシルバー、ニコとテイルス。
それぞれが力を貸し合い、ネオメタルソニックに次々と一撃を加えていく。

そして――

『ゼビウス!』

ソニック達とは別の方向から、ゲンムとその背に乗ったシャドウが迫る。
ゲンムの背負ったアーマーはジェットコンバットに似ていたが、その速力はさらに速い。
そのまま衝突しそうなほど接近したゲンムが、バックファイアで視界を潰す。
いくら攻撃を無効化できても、視覚やセンサーに影響がないわけではない。
その一瞬の隙に、シャドウの振りかざしたガシャコンブレイカーが装甲を切り裂いていた。
165 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 19:19:10.58 ID:ucN85QMk0
「終わりだな。カオスエメラルドは全て返してもらった」

その言葉通り、切り裂かれた脚部から最後のエメラルドが漏れ出していく。
同時にソニック達もダブルブーストを止め、目前で立ち止まる。
かつて自らを倒したソニックの仲間達に匹敵する数の敵を前に、取り戻すことなどできようもない。
もはやタイムイーターの力で時間を稼ぐことも無意味に等しい。
あとはメタルソニックを倒し、ゲーム病患者を救うだけ。

「まだ……まだ終わりではない!」

それでもネオメタルソニックは抵抗を続けた。
攻撃されながらも溜めていた、漆黒の衝撃波。
それは公園で放たれた時のような威力のないものだったが、今度はウィルス散布ではなかった。

衝撃波の行く先に、バグスターウィルスの柱が次々と沸き立っていく。
今度はモータスだけではない。
エッグマンのメカ、モータス以外も含めたバグスター、様々な敵が地面から生えてくる。
同時に上空に謎のゲームエリアが現れ、その中へネオメタルソニックの姿が消えていった。
166 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/18(水) 19:21:32.07 ID:ucN85QMk0
「永夢、こうなったら徹底的にやってやれ!」

手近にいた複製ソルティに蹴りを見舞いながら、貴利矢が叫ぶ。
得意技の回し蹴りはやはり見切られていたが、対策として用意していた流麗さのないドロップキックが突き刺さる。
さらにガシャコンスパローの斬撃とナックルズ仕込みのパンチで複製ソルティは砕け散った。
復活はしない。だが、今度は敵の数が多過ぎる。
このままではネオメタルソニックに猶予を与えてしまう。

「コイツら多分無限湧きだよ! ゲームクリアしないと止まらない!」

「ニコちゃん!」

「ここはぼく達に任せて、早くネオメタルソニックを!」

「テイルス! ……よし、行こうぜ永夢!」

「わかった、すぐに終わらせよう!」

ソニックに促され、永夢が金色のガシャットを起動させる。

『ハイパームテキ! ロックオン・システム!』

「Let's do it!」

マキシマムマイティXと同規格のマキシマムソニックXに、ハイパームテキが接合される。
青いソニックを模したゲーマが金色に輝き、ムテキゲーマーもかくやというエネルギーが放出された。
同時に7つのカオスエメラルドがソニックに取り込まれ、また金色に輝く。
この姿こそエメラルドの力を借りて幾多の戦いを超えた、スーパーソニックの姿だった。

だが、さらにその姿へ新たな装備が重なる。
エグゼイドを思わせるマンガ的な眼の描かれたゴーグル、桃色の肩アーマー、緑色のブーツ。
それはソニックの力を得たエグゼイドと同じく、エグゼイドの力を得たソニックの姿だった。
かつての本の世界と同じ、本来の道筋を外れたからこそ生まれる可能性。
エグゼイドのいる世界でなお駆け抜けたからこそ、この力はある。

『ソニックアンドマイティ・X!』

マイティアクションXのブロックと、ソニックの世界にあるバネとを足場に、
2人の金色の戦士は闇に染まる空へと突き進んでいった。
167 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:34:52.13 ID:pTHr6eEL0
---------------

「メタルソニックにはまだ何か手があるのか?
 カオスエメラルドももうないのに、完全なカオス・コントロールを使えるとは思えないぜ」

空を飛んだまま、エグゼイドが呟く。
ソニックとエグゼイド、2人自身以外に光のないこのゲームエリアではどこから奇襲を受けるかわからない。
だがムテキの力とカオスエメラルド、2つが揃った今となってはカオス・コントロールすら効かないのだ。
ソニックもただの悪あがきかと思ったが、不意にメタルソニックが漏らした言葉を思い出した。

「そういやアイツ、最後にタイムストーンの能力を得るって言ってたな」

「タイムストーン? たしか、時間を渡る力を持つ石……
 まさか、過去に戻って歴史を変えるつもりか?」

「いかにも諦めの悪いアイツらしい話だぜ。
 過去に戻ってエメラルドをまた奪えば、カオス・コントロールもタイムイーターの力も悠々と取り戻せるって寸法か」

「そんなことはさせないぜ!」

決意を新たにしたその時、闇に埋め尽くされた空間に別の光が見える。
いや、ただ色があっただけと言うべきか。
ソニック達の数倍はある巨躯が、血に染まったような濁りのある赤を放っている。
ところどころに残る深紅の装甲だけが、ネオメタルソニックの変わり果てた姿だと語っていた。

そしてその先には――グリーンヒル。
それもタイムイーター事件の直後、カオスエメラルドが集められたままの場所が見えていた。
168 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:37:04.81 ID:pTHr6eEL0
「貴様ラ……後少シトイウトコロデ!」

「タイムイーターの事件から、お前の心は過去に戻りっぱなしなのさ。
 オレが未来に引っ張り直してやるぜ!」

「ゲーム病に感染した人のためにも、ここで勝負だ!
 お前の運命は、オレ達が決める!」

『ガシャコンキースラッシャー!』

過去に戻る時空の穴の前に立ち塞がり、エグゼイドがキースラッシャーを呼び出す。
それが戦いの合図になった。

巨大な身体の全身の各所から、バグスターやエッグマンメカのパーツが現れる。
放たれる攻撃は本物と遜色ない。
だがそれは、都合の良いように見えて不完全な具現化に過ぎない。
エッグドラグーンを再現したと思しきドリルをキースラッシャーで撃墜し、そのままエグゼイドが突撃する。
そして乱射されるカオススピアをかわしながら、左腕を斬り落とす。
直後、ソニックへ向けてキースラッシャーを投げた。

「ソニック、今度はそっちだ!」

「OK! オレの剣捌きは手荒いぜ?」

投げ渡されたキースラッシャーを受け取り、今度はソニックが飛ぶ。
グラファイトの腕と思しきパーツから放たれた紅蓮爆龍剣をスピードとパワーで押し返し、外皮ごと斬る。
その勢いで肩まで飛び上がり、右腕に剣を突き入れる。
未練がましく各所で再生される過去の敵のパーツも、2人の金色の力で次々と破壊されていく。

両腕を無くした巨躯にライダー達やソニックを苦しめた力はない。
それでも自らの勝利のために過去への扉に進まんとする姿は、もはや妄執と呼ぶ他なかった。
169 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:38:14.27 ID:pTHr6eEL0
「あんなになっても止まらないか。
 なら……最後までやるぜ、相棒!」

「これでフィニッシュだ!」

エグゼイドが右手を天に掲げる。
オレンジと青の螺旋が2人を包み、金色の輝きをより一層強くする。
そしてハイパームテキガシャットを2度叩いた。

『ハイパー・クリティカルスパーキング!』

エグゼイドとソニックが突撃する。
同時に、血に濡れた巨躯の中央からメタルソニックが現れる。
本来の彼の持つ、きりもみ回転アタックを繰り出しながら。

正面から激突した3つのシルエットが交差し――回転する1つだけが、動きを止めた。

「オレハ……『ロボスター』ハ……不滅、ダ……」

『ゲームクリア!』

「ガアアアアアアッ!!」

メタルソニックのボディが爆発する。
そして取り込まれていたバグスターウィルスだけが放出され、霧散していった。
バグヴァイザーで吸う者のない今、複製されたモータスが復活することはもうない。
今ここに眠るのは、高性能AIがあるだけの、ただのメタルソニックだった。

「……やったな、エム」

「ああ、これで患者も救われる。カオスエメラルドも取り戻せた」

再び、エグゼイドとソニックが拳を突き合わせる。
ここには過去への扉も、闇に埋め尽くされたゲームエリアもない。
動かなくなったメタルソニックを抱え、ソニックとエグゼイドは元の世界に降り立つ。


全ては終わった。あとは全て元通りにするだけ。
この世界にいられる時間も、もう長くなかった。

170 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:39:01.47 ID:pTHr6eEL0
             - Final Zone. His World -


[EX-AID]


「なんか、あっという間だったな……」

CR備え付けのソファに座り、永夢は誰にともなく呟く。
誰かに聞いてほしいわけではなかったが、そういう時に限って聞いている者はいる。

「言う割にはさして堪えていないようだな、宝生永夢。
 ゲーマーにとっては夢のような日々だったろうに」

「ニコちゃんみたいには泣けませんよ。
 黎斗さんだって、笑って見送ってたじゃないですか」

「会えなくなるわけではないからな。君とてそれはわかっているのだろう?」

「まぁ……そうですね」

筐体の中の新檀黎斗を見ながら、永夢は昨日の夜のことを思い出していた。

171 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:43:17.00 ID:pTHr6eEL0

メタルソニックの野望を打ち砕いた直後、待っていたのはソニックやその仲間達との別れだった。
ソニックの仲間達が世界を超えて現れたのは、ネオメタルソニックがタイムイーターの力で開けていた時空の穴に、
マキシマムソニックXガシャットの力で干渉していたためだ。

そしてメタルソニックは力を失い、ガシャットもまた使いっぱなしではいられない。
ガシャットを止めればそれで世界のつながりは断たれる。
ソニックとカオスエメラルドを元の世界に返し、全てを元通りにするにはこの別れは避けられない。

……ニコは派手に泣いていた。
それは別れの悲しさだけでなく、ゲーマーとしての腕でソニックやテイルスから認められた喜びもあった。
そこまで感情的でなくとも、大我や貴利矢、ポッピー、そしてパラドにも別れを惜しむ心はある。
もちろん、それは永夢も例外ではない。

「今はお別れだけど、オレはずっとエム達と一緒にいるぜ。
 ま、あのゲームよりオレはもっとクールに駆け抜けてるけどな!」

「ははは……本物のソニックに迫れるように、僕もがんばらないとね」

「できるさ。クールな走りも、バグスターとの戦いもな」

最後に拳を交わし、手を握る。
隣で泣いていたニコもようやくテイルスから離れる。
そして永夢のドライバーからマキシマムソニックXが抜かれると、
グリーンヒルの側に立つソニックの姿が次第に薄くなっていく。

「Hey! 永夢、そしてみんな! 未来を楽しめよ!
 駆け抜けていけば、絶対に面白いことが待ってるぜ!」

その言葉を最後に、ソニック達の姿が消える。
残されたのは、見慣れた聖都大学附属病院の風景。
時計の針はモータスカオスに呼び出された時と同じ、21時過ぎを指している。
終わってみれば、1日足らずしか彼らはこの世界にいなかった。

172 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:49:56.12 ID:pTHr6eEL0
「……そういえばあの時、なんでガシャットが消えたんですか?」

ふと、残された疑問を問う。
ソニック達が消えたのと同時に、マキシマムソニックXのガシャットは消滅してしまったのだ。
黎斗やパラドが「製作は1本だけ」と明言していたので、ポッピー達はガシャットが限界に来たのだと解釈していたが、
永夢はそう思えなかった。
永夢の知る黎斗は、たとえ1本限定であろうと、役目を終えたら自壊してしまう出来を認める人間ではない。

「なんだ、君も彼らに未練があったのか」

「そうじゃないですけど、でも使ったら消滅するガシャットなんて聞いたこともありません」

「教えていないからな。……フッ、安心したまえ。
 君が危惧するような一切の事態には繋がらないと約束しよう」

新檀黎斗がニヤリと笑う。
それを見て、永夢は先を聞くのを諦めた。
おそらくガシャットの全部を知っていて上で、かつ全部話す気などないのだろう。
ひたすら問い詰めれば吐くかもしれないが、そんなことをする気にはなれなかった。

黎斗がソニックを嫌っていないということはわかっていたし、何よりそれどころではないのだ。
ソニック達の乱入はあったが、今は仮面ライダークロニクル終結に向けた大詰めの時なのだ。
鏡飛彩を取り戻すためにも、自らの道を駆け抜ける。 ならば他のことを気にかけてはいられない。
173 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:50:45.61 ID:pTHr6eEL0
不意に、内線電話のコール音が響き渡った。
緊急通報。この戦いの幕開けでもあったコール音。
それでも永夢は、いつものように素早く受話器を取った。

「はい、電脳救命センター。
 ……はい、ゲーム病の患者ですね。名前は……百瀬和王さんですね。
 わかりました。こちらから向かいますので、なるべく安静にして待機してください」

受話器を下ろし、白衣を着直す。
ゲーム病患者を救い、バグスターの行く末を決める。
自分自身の戦いのために、永夢は新たな患者の元へと駆けていった。

「さて……私の助け舟が届くのはいつの日か。楽しみが増えたな」

1人残った新檀黎斗は、ソニックの残したチリドッグを温め直す。
食べ慣れないせいか、辛さの中にしょっぱさを感じた気がした。
174 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:52:24.84 ID:pTHr6eEL0
[SONIC]

――エグゼイドと共に戦った日から、どれだけの時間が経っただろう。

あれからDr.エッグマンが生還し、高性能AIにより歪んでしまったメタルソニックも元通りに修復された。
そして幻の大陸や古代の寺院、異常気象に見舞われる雪の島など、様々な地でソニック達は冒険を繰り広げた。
だが今、ソニックの目の前に広がる光景は、今までのどんな冒険よりも絶望的なものだった。


「エッグマンのヤツ……何を血迷ったんだ!?」

量産されたデスエッグメカの群れが、都市を蹂躙している。
いや、もはや目前だけではない。
テイルスから聞いた話ではGUNの抵抗もむなしく、既に世界の99%がエッグマンに制圧されているという。
ソニックや仲間達も、頭数ではせいぜい10人かそこらでしかない。
物量では勝てないが、エッグマンがこれほどの攻勢を仕掛けたことがそもそもなかった。

さらには『インフィニット』なる謎の敵により、ソニックも一度敗北してしまったのだ。
なんとかエッグマンの施設から逃げてきた先に広がっていたのが、この惨状だった。

「……いくぜ! Go!」

ソニックは走り出す。
たとえどんなに劣勢でも、諦めなどしない。
黒塗りのデスエッグロボの頭部から放たれたレーザーを次々と避け、
ブーストの加速力で一気に前へ進む。

だが1人で抗うには、あまりに状況が悪すぎた。
乱射される無数のレーザーの中、破壊された岩盤が押し潰すように飛んでくる。
ブーストも永久にかけられるワケではない。
たとえ岩盤に潰されて生きていても、そこにレーザーの集中砲火を受ければ無事では済まない。

万事休すか――

175 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:53:51.62 ID:pTHr6eEL0

その時、懐かしい音が聞こえた。
かつて最後の切り札から聞こえた声。

『ソニックアンドマイティ・X!』

直後、何者かがソニックを襲う岩盤を下から破壊する。
すぐさま脇道に逸れてレーザーの射線を避け、自分を救った何者かを追う。
その先から聞こえたのは、また懐かしい声。

『ソニック。
 これが聞こえているということは、今度は君の世界がネオメタルソニック以上の危機にあるということだ』

「クロト!」

思わずその名を呼ぶが、黎斗の声はそれに構わず続く。
おそらく事前に吹きこんだメッセージなのだろうとソニックは理解した。

『形はどうあれ、君は私達の世界の危機に迷わず手を貸した。
 その借りを今こそ返す。私が生み出したゲームキャラ、マイティの形を借りてな!』

道の先には、炎を象ったようなピンク色の戦士がいた。
背丈はソニックとほぼ同じだが、何より印象に残ったのは戯画的な眼の描かれたゴーグルだった。
かつての戦いでソニックが身につけ、そしてエグゼイドが使っていたものと同じ眼。
176 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 00:55:45.83 ID:pTHr6eEL0
『そのマイティにはあの時のガシャットのパワー、そしてパラドの協力で得た宝生永夢のデータを可能な限り与えてある。
 余計なお世話かもしれないが、これが起動するほどの極端なワンサイドゲームは、ゲームマスターから見ても好ましくない。
 窮地を脱する一助になるならマイティも、そしてこちらの世界のプレイヤーも喜ぶだろう』

マイティから差し出された手を、ソニックが握り返す。
言葉こそ発しないが、あの日別れた永夢に似た感触を感じる。
それだけで信用するには十分だった。

『さて、これで本当にお別れだ、ソニック。あとは神の恵みを以て駆け抜けたまえ』

「……言い方は相変わらずだが、今のエッグマンと違うのは助かったぜ」

途切れた音声に、ソニックは1人呟く。

ソニックは黎斗をエッグマンに似ていると思っていたが、
世界を手中に収めんとする今のエッグマンは、もう黎斗に似てはいない。
ならば何かがあったはずだ。
その何かが『インフィニット』かはわからないが、今なら確かめられる。
立ち上がるのが自分1人でないとわかったなら、もう立ち止まる必要はない。

「いくぜ、マイティ!」

ソニックは駆け抜ける。
未曾有の危機にある彼自身の世界を、新たな仲間達と共に。


―― Continue to "Sonic Force" with Mighty avatar……?


[END]
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 00:58:48.22 ID:TwY88zjfO
乙でした
178 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 01:08:43.29 ID:pTHr6eEL0
これにて終了となります。お目汚し失礼いたしました。

…いやはや、大遅刻になってしまいました。まさかエグゼイド最終回どころかファイナルステージ後とは。
こと後半更新ペースがガタ落ちし、展開もグダった感を出してしまい本当に申し訳ありません。
あと「どちらかというとエグゼイド寄り」と前置きしながらソニック側のネタを一定以上突っ込んでおり、
ソニック側ノータッチだと読みにくくなったのも猛省しております……orz

最初にイメージしたのは実は最終決戦ラストの「ソニックアンドマイティX」の部分ですが、
そこまで至るまでの構成を詰めるのに時間がかかった結果、逆に前半が安定進行で
後半が想像以上に構成甘かったのを調整しまくるハメに……
ですが「コンティニューしてでもクリアする精神で完結」という言葉は翻さず済みました。
これにて完結でございます。

今回も少し本編内小ネタに触れておこうかと。もちろんネタバレなので注意。
179 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 01:33:08.92 ID:pTHr6eEL0
・時間軸
エグゼイド側は36話ラスト〜37話冒頭。
貴利矢のCR帰還直後にモータスの亡霊の話に入り、事件後に百瀬和王(小姫パパ)がカイデンのウィルスに感染して
37話での流れにつながる形です。
ソニック側は本編がソニックジェネレーションズ終了後〜ロストワールドの前、ラストのみソニックフォース冒頭。
ただしこちらはリアル時間だと数年経過するので、エグゼイド世界とは時間の流れが違うと思っていただければ。

・各章タイトル
ソニック側の知識があるとすぐわかりますが、各章タイトルは歴代ソニックシリーズのタイトル曲からお借りしています。
ソニックのボーカル曲はどれもテンション上がるので、執筆中も聞いてました。
いい曲多いのでソニック未プレイでも聞いてみると良いのですよ……!(ダイマ)
ちなみにソニジェネが下敷きなのでジェネ参戦作品から取るか迷いましたが、
内容と齟齬が出やすくなったので結局そこまではしないことに。

・起動するタドルレガシー
今回、エグゼイド側の補完というのも目的としてあって、その第一がタドルレガシー起動の瞬間。
エグゼイド本編では36話で起動できなかったものの、37話冒頭で小姫消滅を含めた脅しを正宗にくらった後、
再び出てきたらパラド戦でなんか起動できてたという形。
小姫について後がなくなった覚悟というにはちょっとあっさり気味に感じ、モータスカオスを敵役に覚醒してもらいました。
結果的にキメワザ判定で状況悪化してるけどね……!(ヒドイ)

ちなみに36話でレガシー起動失敗した際に正宗から一度ガシャットギアデュアルβ返してもらってますが、
その後また回収されたということにしています。
40話で正宗に奪われたガシャットにデュアルβが1つしかない(これは大我の分)ので、
本当に回収されっぱなしの可能性も高いかと。
180 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 02:14:31.76 ID:pTHr6eEL0
・もう1つの爆走バイク
結局、最終回でも不明のままだった「レーザーターボ用の爆走バイク」。
貴利矢がゲームオーバー判定で消滅する前、ギリギリまで爆走バイクの挿さったドライバーに触れているので、
貴利矢復活時に副産物的に生成された、と解釈しました。

ただ、それだとバグスター人間化した貴利矢に最適化されるはずはないので、
レーザーターボになるよう再調整した誰かがいるはず。
タドルレガシーも超スーパーヒーロー大戦でのガシャットを小姫復活時に(黒い方の)飛彩が送って生成されたと考え、
スパヒロ版レガシーからTV版レガシーにつながるように同じ人物が調整したと補完。
それが複製モータスの実験に手を出し、モータスカオスに血肉ごと頂かれ……という末路に。合掌。


・未登場ガシャット
密かに「初期10ガシャットを全部出す」というのが裏テーマだったり。
変身用で使っているもの以外でもドラゴナイトハンターZとかは出すの簡単でしたが、
逆にレーザーターボになってから使うのやめちゃったギリギリチャンバラは思い切り捏造することに。
通常レーザーより細身のターボだと腰回りは太くならないだろう、ということで腕と足に寄らせました。
イメージ的にはファイブマンのファイブテクターみたいな感じ。
あと序盤はエグゼイド本編と同時進行で劇場版もまだ公開前だったので、
レーザーターボでのバイク形態が通常レーザーと全く同じと知った時に血の気が引きました……。

10ガシャット以外だとバンバンタンクも半分ほど未登場品です。
スナイプZERO1話冒頭でキメワザに使われてましたが、ガシャコンウェポン対応なのは今のところ捏造です。


・バグスターという名の願望機
バグスターはコンピュータウィルスが大元ですが、最初から本編通りに生命体だったのかは個人的に疑問がありました。
なにせ生体感染するとはいえ電脳上のウィルスなので、「何がしかを模倣する性質を持っていた生命体」だけでなく、
「周囲の情報を具現化する願望機が歪んで命の概念を得た」とも考えられます。
(後者の場合、原因は十中八九パラド誕生にあるはず)
メタルさんがロボットに対する道具扱いに不満を出してるにも関わらず、同じように怒っているパラドと違って
黎斗(生前)や正宗以上に手酷く複製モータスを酷使しているのは、そもそも最初が願望機で命は余計と考えていたせい。
181 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 02:36:37.56 ID:pTHr6eEL0
・メタルソニックの暗躍
3DS版のソニックジェネレーションズでは、本編に出もしないのに何故かモダンメタルソニックのフィギュアがあります。
正直謎なのですが、これを逆手に取って「実際には暗躍してたがソニック達は気付かなかった」というフラグにしました。
DS版由来なので、ウィスプ系の能力でレッド・バースト(ジェネとカラーズではDS版限定)を使ったり、
ファイナルカラーブラスターの撃ち合いでもソニックがWii版でメタルはDS版と分けました。
あと、終盤で装甲真っ赤になるのはカオティクスでの「メタルソニック改」を意識した形。
最後の最後でデカくなったのもあっちのメタル改が大型だったため。

・ソニックの技
メタルが悪用した「リングが1枚でもあると死亡判定にならない」はシリーズ共通のお約束。
公園でのモータスカオス最終戦で拘束に使ったワールウィンドは「ソニッククロニクル」出典です。
動作自体はヒーローズでのブルートルネードと同じですが、今回は回るの1人だけなのでこちらを採用しました。
ダブルブーストは最新作「ソニックフォース」から拝借。
そしてファイナルカラーブラスター前に使った2つの走法は、RTAなどで使われる特殊な操作法によるもの。
展開の都合上、DS版ソニジェネをマッハで全クリアし直したニコほどの猛者が使わないはずないので
名を伏せて入れましたが、後になって見るとちょっとやり過ぎだったかもしれません。
182 : ◆oZuontUvSM [sage saga]:2017/10/19(木) 02:37:24.30 ID:pTHr6eEL0
…ということで、今回はこれまでになります。
お付き合いいただき本当にありがとうございました。

それでは、また電脳世界の狭間で。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 02:41:47.01 ID:aATUG6N9o
完結乙でしたー!
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 08:21:21.08 ID:F3VJpSkl0
最後の新作の繋げ方に感動した

ソニックもエグゼイドも好きな俺得SSだった、乙!!
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