可奈「ち、千早さんが記憶喪失!?」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 21:38:20.42 ID:F5sOQq1do
レッスン後

可奈「――ふんふ〜ん♪ もっと頑張って〜♪ もっともっと上手になって〜♪
  そしたら褒めてもらえるかな〜♪ 頑張れ頑張れ矢吹可奈〜♪」

静香「もう、可奈ったら……さっきからちょっと喜び過ぎじゃない?」

可奈「だって、千早さんに褒めてもらえたの久しぶりな気がするんだもん!
   あの厳しい千早さんが、上手になったって……えへへっ」

志保「……あまり、褒められたって感じじゃなかったような気もするけど……」

可奈「公演までもうあとちょっと……。
   絶対成功させようね、志保ちゃん、静香ちゃん! そしたら千早さんも喜んでくれて……。
   プロデューサーさんも言ってた通り、記憶も元通りになるよね!」

静香「それはまだ分からないけど……でも、そうね。
   残り数日、みんなでがんばって成功させましょう」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 21:39:46.26 ID:F5sOQq1do
志保「成功させるのは当たり前よ。あとは今よりもっと……」

可奈「? 志保ちゃん、どうしたの……って、あれは……」

静香「千早さんと、プロデューサー?」

志保「なんだか、すごく真剣そうな顔。一体何を……」

可奈「挨拶した方がいいかな? それとも、大事な話だったら邪魔しない方が……」

P「……俺の聞き間違いか、千早。もう一度言ってくれ」

千早「はい。矢吹さんは今回のメンバーから外すべきだと、そう言いました」

可奈「……え?」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 21:42:22.07 ID:F5sOQq1do
可奈(あ、あれっ? 千早さん、今……え……?)

静香(ど……どういうこと? なんで……)

P「一応理由を聞くけど、どうしてそう思うんだ?」

千早「プロデューサーも分かっているはずです。
  彼女は明らかに実力不足。ステージに立って歌うようなレベルではありません。」

可奈「ッ……!!」

静香(……そんな……!)

千早「ここ最近で、多少は上達したようですが、本当に僅かなもの。
  本番までの残り数日で、ステージで披露できる水準には、到底達しません。
  あれではお客さんにも、スタッフにも、歌にも失礼です。
  それに私たちの足まで引っ張られて……。
  はっきり言って、今の矢吹さんでは足でまといです」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 21:43:50.23 ID:F5sOQq1do
P「お、おい、千早。お前、それはいくらなんでも……」

千早「私は、事実を言っているだけです」

可奈(……そう、だったんだ……。千早さん、私のこと、そんな風に……。
  それじゃ、今まで頑張ったのなんて、何の意味も……)

可奈「……ぇぐっ、ぐすっ……」

千早「もう一度言いますが、矢吹さんをメンバーから外してください。
  それが、私たちが一番いいステージを披露するのに必要な……」

志保「それは違うんじゃないですか?」

静香「! し、志保……!?」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 21:46:02.75 ID:F5sOQq1do
P「お、お前たち、聞いてたのか!?」

千早「……何が違うというの、志保?」

志保「あなたが言っていたこと、全てです。
  可奈をメンバーから外すなんて論外です。考えられません」

可奈「……!」

千早「どうして……? あなたも、矢吹さんの歌の質が低いことは認めていたはずよね?
  それに、出来うる最高のパフォーマンスを披露すべきだ、とも言っていたと思うけど。
  なのに矢吹さんを外すべきでないだなんて、矛盾しているのでは?
  私たちは、遊びでステージに立つわけじゃない。
  友達だからと言って、そんなことで……」

志保「わかりませんか?
   私たちが最高のパフォーマンスをするために可奈は必要だと言っているんです」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 21:47:18.50 ID:F5sOQq1do
可奈「し、志保、ちゃん……」

千早「……」

志保「大体、あなたは今記憶がないんですよね?
  可奈のことを何も知らない、ステージを見たこともないくせに、
  よくメンバーから外すべきだなんて言えたものです。話になりません。
  私から言わせてもらえば、寧ろ外れるべきなのは
  そうやってステージの質を下げようとするあなたの方じゃないんですか?」

静香「し、志保、言い過ぎよ! 千早さんに、そんな……!」

志保「あなたが居なくても、私たちはいいステージを作れる自信があります。
   私はダンスはあまり得意ではありませんし、歌でも、まだあなたには敵いません。
   でも、アイドルとして……今のあなたに負ける気は、まったくしない。
   可奈だって、あなたなんかよりずっと……」

P「志保、落ち着くんだ。気持ちは十分に伝わったから」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 21:48:27.97 ID:F5sOQq1do
志保「プロデューサーさんに伝わっても意味はありませんよ。
  この人に伝わらないと」

千早「……静香、あなたも同じ意見なの?」

静香「え……?」

千早「三人の中では、あなたの歌が一番完成されている……。
  そのあなたでも、矢吹さんをメンバーから外すべきではないと?」

静香「……私、は……」

千早「……」

静香「……私も、同じです。可奈は外すべきじゃありません……。
  千早さんは間違ってます……!」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 21:49:42.17 ID:F5sOQq1do
千早「……そう。わかったわ。プロデューサー、今の話はなかったことに。
  ですから、志保はああ言ってましたが、私のことも外さないでいただければと」

P「ああ、どちらにしろ却下するつもりだったしな。
 もちろん千早のことも、外すつもりはないよ」

千早「ありがとうございます。……矢吹さん」

可奈「えっ? は、はいっ!」

千早「正直に言って、どうして静香や志保があなたを必要をしているのか、
   私にはわからないわ。これからのレッスンを通しても、多分わからないと思う。
   だからその理由を、本番のステージで見せてくれるかしら」

可奈「は……はい、頑張ります……!」

千早「……ではプロデューサー、私はこれで。失礼します」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 21:51:58.16 ID:F5sOQq1do
P「……ふう、やれやれ……。ひとまずは落ち着いた、ってことでいいのかな」

静香「そう……ですね。一応は、それでいいんじゃないでしょうか」

可奈「……志保ちゃん、静香ちゃん……本当によかったの?」

静香「え?」

志保「良かったって、何が?」

可奈「私、一緒に公演に出ても……。
   だって私、千早さんにあんなに言われちゃうくらい、歌が……」

P「可奈……」

志保「はぁ……。あなた、さっき私たちが言ってたこと、聞いてなかったの?」

可奈「で、でも、私……」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 21:54:51.06 ID:F5sOQq1do
静香「可奈、あなたの気持ちは分かるわ。
   憧れだった人にあんな風に言われて、すごくショックだったのよね?
   でも……あんなこと、気にしちゃダメ。志保も言ってたでしょ?
   今の千早さんは、可奈の歌の本当の良さを知らないんだから」

可奈「……私の歌の、本当の良さ? そ、それって何なの?
  教えて、静香ちゃん、志保ちゃん……!」

志保「そんなの私たちが今更言うまでもないでしょ?
  今まで何回も褒められてるじゃない。あなたの大好きな『千早さん』に」

可奈「っ……!」

志保「記憶のある千早さんと無い千早さん、
   どっちの評価が正しいかなんて、考えるまでもないんじゃない?」

静香「自信を持って。可奈の歌は、あの千早さんに褒められた歌なんだから」

可奈「う……うん! 静香ちゃん、志保ちゃん、ありがとう……! 私、公演がんばるね!」

P(……言いたいこと全部言われたなぁ……)
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 21:56:27.90 ID:F5sOQq1do



本番当日

P(もうすぐ準備を始めた方がいいんだが……
 朝に一人でレッスンルームに行ったっきり、千早の姿が見えない。
 もしかして、まだ……)

 ガチャッ

P「おーい千早、居るかー?」

千早「! プロデューサー……」

P「やっぱりまだここに居たのか。
 ソロ曲の確認をするって言って、朝から篭りきりじゃないか。
 そろそろやめにしておかないと本番に差し支えるぞ」

千早「大丈夫です。その程度は加減できなければプロとして失格ですから。
  本番に差し支えるほどはやりません」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 21:57:31.94 ID:F5sOQq1do
P「そうか……。でも、時間的にもそろそろ終わりだ。切り上げて準備しよう」

千早「そうですか、分かりました。ではあと30分だけ」

P「随分ギリギリまで粘るな……何か不安でもあるのか? 今日のステージに対して」

千早「いえ、そういうわけではありません。大丈夫です」

P「それにしては少し入れ込み過ぎじゃないか?
 何かあるなら遠慮せず言って欲しい。俺はプロデューサーなんだからさ」

千早「……言ったところで、解決になるとは思えませんけど。
  でも、隠すようなことでもないですね」

P「ということは、やっぱり不安があるのか?」

千早「不安、とは少し違うと思います。ただなんというか、違和感が」

P「違和感?」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 21:58:50.85 ID:F5sOQq1do
千早「はい。今日私が歌う予定のソロ曲、私は完璧に歌えているはずなんす。
   練習の中でミスは一度もありませんし、
   メンバーのみんなに聞いても、特に問題はないと言ってくれました。
   ですが、なぜかどうしても、違和感が拭いきれないんです。
   この曲のすべてを上手く表現できていない感覚というか……上手くは、言えませんが」

P「……」

千早「初めはほとんど無視していい程度の違和感だったと思います。
   あまり歌ったことのない曲調だから、まだ慣れていないだけだと、
   練習すれば解消されると、そう思っていました。
   でも、みんなと練習を重ねれば重ねるほど、
   どういうわけか逆に強まっていく感覚がして……」

P「……そうか。そういうことなら、安心したよ」

千早「え?」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:00:25.50 ID:F5sOQq1do
P「大丈夫だ、何も心配はいらない。
 違和感に気付けたってことは、多分『もうすぐ』だからな」

千早「……? どういうことですか?」

P「それもすぐに分かる。
 それより、プロデューサーとしてアドバイスしたいことがあるんだが、いいか?」

千早「アドバイス、ですか? ええ、もちろんです。よろしくお願いします」

P「なら、一つだけ。
 いいか千早、今日はその違和感を抱えたままステージに上がるんだ。
 そうすればきっと良いステージになる」

千早「違和感を抱えたまま……? あの、それはどういう……」

P「答えはステージが出してくれるさ。
 ……さて、俺はそろそろ行くぞ。
 まだ確認したいならしてもいいけど、遅れることのないようにな」

千早「……」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:01:11.92 ID:F5sOQq1do



静香「! プロデューサー……。あの、千早さんは?」

P「あと30分くらいで戻ってくる。それまでにみんなは準備をしておこう。
 と、その前に、何か気になることはあるか?
 聞けるとすればこのタイミングが最後になりそうだから、今のうちに言っておいてくれ」

志保「私は特に。千早さんの記憶が戻ってないのも想定のうちですし」

可奈「えっと、私も大丈夫だと思います!」

静香「……プロデューサー。それじゃあ一つ、いいですか?」

P「ん、なんだ?」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:02:41.05 ID:F5sOQq1do
静香「プロデューサーの目から見て、
  今の私たちのパフォーマンスは、どのくらいの完成度だと思いますか?」

志保「そんなこと、聞いてどうするの?
  低かったからって今更改善できるわけでもないのに」

静香「い、いいじゃない。ちょっと聞いておきたいだけよ」

P「静香……やっぱり不安か? 千早の記憶がない状態だと」

静香「いえ、そういうわけじゃ……。
  ただ、一応プロデューサーの意見も聞いておこうと思って。
  プロデューサーとして、率直な意見を聞かせてください」

P「うーん、そうだなぁ……。率直に言うと……」

1.100%だ!
2.50%かな
3.0%……

>>55
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 22:14:17.48 ID:VZUqKQb2o
狂犬ちーちゃんには苦労させられたよなぁ・・・(トオイメ
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 22:15:03.80 ID:Q76HMRUIO
2
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:28:33.80 ID:F5sOQq1do
P「50%かな」

静香「50%……ということは、半分程度ということですね」

志保「プロデューサーさん……。聞いた静香に原因はありますけど、
   普通こういう時には不安を煽るような数字は出さないものじゃないですか?」

P「はは、まあ、そうだな。でもお前たちなら大丈夫だろ?
 『今』はまだ50%ってだけなんだからな」

可奈「『今』はまだ……つまり、千早さんの記憶が戻って、そこで初めて100%!
   っていうことですね!」

P「ああ、その通りだ!」

志保「……まあ、そういうことだろうと思ってましたけど」

静香「私たちのステージが、千早さんの記憶を取り戻す助けになるように……!
   今日の本番で、ステージを完成させられるように! 頑張りましょう、みんな!」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:29:41.94 ID:F5sOQq1do



舞台袖

P「もうすぐ時間だな……確認するぞ。
 まずは一人ずつ順番にソロ曲を披露して、最後に4人全員で歌う。
 最初は志保だが、準備は整ってるか?」

志保「はい、問題ありません」

可奈「志保ちゃん、がんばってね!」

静香「トップバッター、頼んだわよ!」

志保「ええ」

千早「……」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:30:43.11 ID:F5sOQq1do
P「じゃあそろそろ……って、志保?」

志保「千早さん……前に私があなたに言ったこと、覚えてますか?
   アイドルとして、今のあなたには負ける気がしないって」

千早「……ええ、覚えているわ」

志保「だったらいいんです。それじゃ、行ってきます」

P「志保……。よし、行ってこい! お前の全部をぶつけてやれ!」

志保「もちろん……そのつもりです!」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:34:41.23 ID:F5sOQq1do



静香「――志保、すごいわね。いつもよりもずっと……」

可奈「なんだかこっちまで、ドキドキしてくるね……!」

P「見とれてる場合じゃないぞ、静香。もうすぐ志保の出番は終わりだ。準備はいいか?」

静香「別に見とれてなんか……。当然、準備はできてます。
   志保に負けないよう、頑張りますから!」

可奈「がんばってね、静香ちゃん!」

静香「ありがとう、可奈。それから……千早さん」

千早「……」

静香「……見ててくださいね。じゃあ、行ってきます!」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:37:51.72 ID:F5sOQq1do



P「――うん、静香もいつにも増して気合が入ってる。すごくいい感じだ。
 さて、次は可奈だけど準備は……って、聞くまでもなさそうだな」

可奈「はいっ! 志保ちゃんも静香ちゃんもいつもよりすごくて、
   準備万端〜、気合満タン〜、やる気満々〜♪ ですっ!」

志保「やる気があるのはいいことだけど、空回りしないようにね」

可奈「だいじょーぶ! ちゃんと私らしいステージにしてくるから!
  だから……千早さん! 見ててください、私のステージ!」

千早「……矢吹さん……」

P「よし、静香の曲も終わったぞ。行ってこい、可奈!」

可奈「はいっ! 行ってきまーす!」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:39:43.39 ID:F5sOQq1do



P「――さて、いよいよ次が千早の番だけど……。
 どうだ、初めて見る可奈のステージは。
 前の二人のステージも、何か感想はあるか?」

千早「……」

可奈『飛び出せ! 全力パワーに込めたメロディーに乗せて♪
  絶対大丈夫そばにいる♪ 優しい歌がある♪』

千早「……相変わらず、音程は外してて、テンポもリズムも崩れて……。
  これではまだ、アイドルではない一般人の方が、ちゃんと歌えていると思います」

P「……」

千早「なのに……分かりません。
   あんな歌なのに、どうして……。どうして、こんなに……」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:42:16.72 ID:F5sOQq1do
P「そうか、良かった。三人の気持ちはちゃんと、千早に届いてるみたいだな」

千早「……はい。三人の歌声から、三者三様の、強い思いのようなものを感じました。
   きっと、私に向けた思いなんだろうということも分かりました……。
   でも……私は、まだ何も……」

P「大丈夫。そこまでくればあと一歩だ」

千早「え……?」

P「あとはお前の歌が、ステージが、光をくれるはずだ。
 そうなればもう、お前が自分の力で踏み出すだけだよ」

千早「プロデューサー……」

P「だから、行ってこい! アイドル如月千早のステージへ!」

千早「っ……はい、行ってきます……!」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:43:19.94 ID:F5sOQq1do
P(……よし、行ったな。ここからは千早、お前次第だ)

可奈「あ、あの、プロデューサーさん」

P「! 可奈……静香と志保も。どうかしたか?」

可奈「千早さん、何か言ってましたか? 私たちのステージのこと……」

静香「私と志保も、離れていたからプロデューサーとの会話は聞こえなくて……。
   わ、私たちの気持ち、千早さんに伝わっていたでしょうか?」

志保「……」

P「ああ、しっかり伝わってたよ。
 そのおかげで、千早が記憶を取り戻すまであと一歩ってところまで来てると思う」

静香「ほ、本当ですか!」

P「ああ。あとは千早次第……っと、曲が始まったぞ。みんなで見守ろう」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:45:53.00 ID:F5sOQq1do
千早(……すごい。これが765プロシアターのステージ……。
  ファンの人達の熱が、想いが、こんなにも強く伝わってくるなんて……!)



P「! 今の歌い出しは……」

志保「……ぎこちない、ですね」

静香「何か、探り探り歌っているような……。
   あんなふうに歌う千早さん、初めて……」

可奈「千早さん……!」



千早(……いえ、違う……。
   この熱も、伝わってくる想いも、ファンからのものだけじゃない。
   これは……さっきまでここで歌っていた、三人のもの……)
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:48:44.92 ID:F5sOQq1do
千早(まだ残ってるんだ……。
   志保の、静香の、矢吹さんの……みんなの想いが、まだここに……!)


P(……そうだ、千早。『あとは自分の力で踏み出すだけ』と言ったが……お前は一人じゃない。
 たとえステージに一人で立っていても、仲間の想いが支えてくれる。
 繋がり続けてくれるんだ)


千早(そうか……やっと分かった。
   やっぱり私は、この歌を完全に表現できていなかったんだ。
   だって、何も知らなかったから。
   でも、分かった……。私は……『今の私』は……!)

千早「――Just be myself!! 信じたい
  手探りの勇気を 本当の自分を
  全力で未完成な明日へ……なりたい私になる!」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:50:34.64 ID:F5sOQq1do
P「っ! 千早……!」

静香「この、歌……!」

志保「……さっきまでと、いえ……練習とも、全然違う……!」

可奈「千早、さんだ……私たちが知ってる、千早さんの歌だ!」

静香「プ、プロデューサー、私たちの思い込みじゃありませんよね……!?
  だって練習とまるで違います!
  今まで気付かなかったことが不思議なくらい……!」

P「慌てなくても、千早が戻ってきたら分かるよ。
 だからそれまで、しっかり聞こう……! 千早の歌を、最後まで!」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:51:50.88 ID:F5sOQq1do



P(その後も千早は、笑顔で歌い続けた。
 聴く者すべてを笑顔にするような、幸せそうな表情で。そして……)

静香「千早さん!!」

千早「!」

可奈「すごかったです……千早さん、すごかったです!
  私、感動しちゃいました! 本当に、本当に……!」

志保「可奈、歌の感想はあとにして。今は先に確認しなきゃいけないことがあるでしょ」

可奈「あっ、そ、そっか! あの、千早さん!
  えっと、私たちのこと……お、思い出してくれましたか!?」

千早「……ありがとう、矢吹さん、静香、志保。
  色々と迷惑をかけて、本当にごめんなさい」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:53:34.33 ID:F5sOQq1do
可奈「あ、あ……!」

静香「そ、それじゃあ……」

千早「ええ……。全部、思い出したわ」

可奈「ち……千早ひゃぁあああぁあああん!! うえぇえええええええん!!」

千早「きゃっ……! 矢吹さん……その、あなたには特に、謝らなければいけないわ。
  記憶がなかったとはいえ、私、酷いことを……」

可奈「良゛い゛んですぅううううう! 千早さんが思い出しでくれ゛ただけでぇええええ!!」

静香「ほ、本当に、よかったです……! ぐすっ……」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:54:41.99 ID:F5sOQq1do
志保「二人とも、感動する気持ちは分かるけどそろそろ切り替えないと。
  まだ四人でのステージが残ってるんだから」

P「おっと、そうだぞ可奈、静香。あんまり泣きすぎるとメイクが崩れ……
 って、もう手遅れな気もするが、とにかく歌の準備だ!」

可奈「は、はい……ひぐっ。ご、ごめんね志保ちゃん。
   千早さんも、いきなり飛びついてごめんなさい……」

千早「いえ、いいのよ矢吹さん」

志保「ほら静香も早く涙拭いて、準備して」

静香「ええ……ふふっ」

志保「何……? 私、何かおかしなことを言った?」

静香「いいえ。すぐ準備するわ」

静香(志保ったら……自分だって、涙目になってるくせに)
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:56:57.08 ID:F5sOQq1do
P「よし、みんな準備はいいな。
 今まで色々あったが……これで正真正銘、100%のステージの完成だ!」

志保「完成というにはちょっと気が早いんじゃないですか?
   まだ終わってないんですから」

P「うっ……そ、そうか、そうだな」

千早「ふふっ……でも、必ず完成させてみせます。
  だって、こんなにも心強い仲間が揃っているんですから」

可奈「ち、千早しゃん……」

静香「可奈、泣くのは我慢!」

P「よし、みんな行ってこい! 四人で最高のステージを完成させてくれ!」

千早「はい! 765プロ、ファイトー!」

四人「おーーーっ!!」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 22:59:25.40 ID:F5sOQq1do



P(――四人でのステージは、もちろん大成功をおさめた。
 そしてその日の夜……)

小鳥「公演大成功アーンド……」

美咲「千早ちゃん完全復活お祝いパーティ、開催ですっ!」

一同「かんぱーい!」

P「……って、まさか本当にパーティを開くとは……」

高木「何を言っとるんだね! 如月くんが復活したんだ、このくらい当然だろう!
  今日は突然のことだから公演のメンバーと我々だけだが、
  後日また改めてアイドル52人全員集めてのパーティを開くつもりだ!」

P「ええっ!?」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 23:00:16.56 ID:F5sOQq1do
静香「……今何か、すごいことが聞こえたような……」

可奈「52人全員だって! すごいね!
   みんな一緒でとっても楽しい〜♪ 千早さんも元通りでとっても嬉しい〜♪」

千早「で、でも流石に全員でパーティは大袈裟じゃ……」

志保「いいんじゃないですか? きっとみんなもお祝いしたがってるでしょうし」

静香「あら、珍しいわね志保。あなたがこういうことに積極的だなんて」

志保「別に。めでたいことは祝ってもいいって思っただけよ」

千早「ふふっ……ありがとう、志保。
  静香と、矢吹さんも……改めてお礼を言わせて。本当に、ありがとう」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 23:01:20.84 ID:F5sOQq1do
静香「い、いえ、そんな! 別にお礼を言われるようなことなんて、何も……」

千早「そんなことはないわ。みんなの想いのおかげで、私は記憶を取り戻せた。
  それに、私が矢吹さんに酷いことをしようとした時……
  静香、あなたが志保と一緒に私を止めてくれたこと、嬉しかったわ。
  普段のあなたは、私の前ではあまり自分の意見を言おうとしないから」

静香「……千早さん……」

千早「だからこれからも、歌やステージついて、
  時々は私に意見をぶつけてくれると嬉しいわ。
  きっとそうすることで、お互いの歌はもっと大きく成長できると思うから」

静香「は、はい! 頑張ります!」

千早「それから……志保にも同じ理由で、すごく感謝してる。
   真正面から意見をぶつけて、私を止めてくれて、ありがとう」

志保「いえ……」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 23:05:13.43 ID:F5sOQq1do
千早「『今のあなたにはアイドルとして負ける気がしない』という言葉……
   すごく印象に残ったわ。
   あんなふうに直接的に気持ちをぶつけてくる人は、あまり居なかったから」

志保「……でも私もあの時は少し感情的になっていたと、今は反省しています」

千早「気にしないで。経験もなく視野も狭かった頃の私より、
  今の志保たちの方がアイドルの実力は上。それは多分、事実だから」

志保「そう、でしょうか」

千早「でも、もちろん今は、私も負けるつもりはないけれど」

志保「! ……そうでしょうね。
  だけどすぐに追い越してみせますから」

千早「ええ。私も、追い抜かれないように頑張るわ」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 23:06:21.65 ID:F5sOQq1do
千早「それと、矢吹さんも……。
   いえ、矢吹さんにお礼を言いたいと思ったのは、今回だけじゃないわね」

可奈「へっ?」

千早「あなたにはずっと、何度も感謝してるわ。本当に、ありがとう」

可奈「あの……な、なんのことですか?
   私、そんなに千早さんにお礼を言われるようなことはしてないような……」

千早「あなたの歌は、いつも私に新しい世界を見せてくれてる。
  同じ歌でも、全く違う表情を知ることができて……。
  歌に対する姿勢も、表現の仕方も、いつも勉強させてもらっているわ」

可奈「ええええっ!? そ、そんな!
  私の方こそいつも、千早さんの歌に勉強させてもらって、感動させてもらって……!
  だから、わたしっ……ひぐっ……ぅええぇええん!」

静香「もう、可奈ったらまた泣いて……」

可奈「だっでぇえ……わたしうれしぐでぇええ……!」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 23:10:24.72 ID:F5sOQq1do
志保「ティッシュあげるから、鼻くらいかみなさい。酷い顔よ」

可奈「う゛ん……ごべんね志保ぢゃん……ぐすっ。
  あ、あの、千早さん……! 私、まだまだ千早さんみたいに上手には歌えません……。
  でもいつかは、千早さんみたいに、
  たくさんの人に私の歌を届けられるようになりたいです!
  だから、その……こ、これからも、たくさん勉強させてください! よろしくお願いします!」

千早「矢吹さん……。ええ、もちろん。
  これからお互いに、学び合っていきましょう」

静香「あ、私も……! 私も、たくさん学ばせてもらいます!
  それから、時々は千早さんと、歌について色々と言い合って……
  一緒に成長させてもらえたら、嬉しいです!」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 23:17:48.66 ID:F5sOQq1do
志保「……私は、一緒に成長なんてするつもりはありませんから。
  千早さんより早く成長して、
  少しでも早くあなたを追い越せるように、これからも努力するだけです」

千早「静香、志保……。ええ、そうね。
  同じ事務所の仲間として、トップアイドルを目指すライバルとして。
  関係のあり方は色々とあるでしょうけど……。みんな、これからもよろしくね」

可奈「は、はい! こちらこそ! あ……そ、そうだ、千早さん!
  突然ですけど私、一つだけお願いが……! 聞いてもらっていいですか!」

千早「? え、ええ。何かしら、私にできることならいいのだけれど……」

可奈「そ、その、えっと……!
   わ、私のこと、可奈って呼んでください!! お願いしますっ!!」

千早「えっ?」



  おしまい
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 23:18:24.82 ID:F5sOQq1do
付き合ってくれた人ありがとう、お疲れ様でした
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 23:42:27.99 ID:aODmMKPA0
おつ
80 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2017/08/19(土) 00:11:20.13 ID:/d1is4je0
素晴らしい!乙です

>>1
如月千早(16)Vo/Fa
http://i.imgur.com/RFRxkra.jpg
http://i.imgur.com/BGsfvrt.jpg

天海春香(17)Vo/Pr
http://i.imgur.com/fI22KIh.jpg
http://i.imgur.com/7nsRbz5.jpg

>>4
矢吹可奈(14)Vo/Pr
http://i.imgur.com/kQHQF7j.jpg
http://i.imgur.com/R0w6Puf.jpg

最上静香(14)Vo/Fa
http://i.imgur.com/7O1s1qQ.jpg
http://i.imgur.com/Czn3H0B.jpg

北沢志保(14)Vi/Fa
http://i.imgur.com/mkabLWJ.jpg
http://i.imgur.com/ZNFva6G.jpg

>>65
Just be myself!!
http://youtu.be/DUAVVN3OSeg?t=81
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/19(土) 00:43:51.37 ID:TKeJO2C2o
おつ
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/19(土) 01:00:52.58 ID:am54jjXv0
おつ 懐かしの抜き身のナイフ千早厳しすぎ 良き話だった
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/19(土) 01:34:13.22 ID:M/4un1RVo

ありそうで見かけなかった話を書いてくれてありがてぇ
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/19(土) 05:11:41.43 ID:svZjGCtYO
>>50で千早がおかしくなった!なんすってちーちゃんにいったい72が……
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/19(土) 06:52:56.45 ID:/NqlAjDkO

ミリマスのちーちゃんはよく笑ってくれて大好き
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/19(土) 13:06:26.94 ID:oC/mm0Wso
ミリシタでちーちゃんセンターにしてSentimental Venusとかイイゾ〜
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/21(月) 13:28:50.69 ID:VBj128gMO
ちはかなとさりげないかなしほが素晴らしかった
狂犬時代のちーちゃんはJbM歌えねーだろうなぁ
56.14 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)