卯月「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝完結編】

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276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/25(月) 21:47:04.29 ID:Z45gPPLi0
乙です!

いよいよという感じですね
本編に出てきたクインケ「シマムラ」があるから卯月の言葉が辛い
あれは実は卯月ではなく卯月の家族かもしれないけどそれはそれで
アイドルのみんなには極力1人でも多く生き延びて欲しいし、
特に人間のアイドルにはこれ以上犠牲になってもらいたくない
そして346プロの職員とありすの母親には相応の因果応報を

期待しています!
277 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:21:25.97 ID:wXlrPCRN0

――――――――――――――――――――





そして、幻想の壊れる時が来る





――――――――――――――――――――
278 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:26:15.71 ID:wXlrPCRN0

〜346プロダクション本社付近 『キャッスル』殲滅部隊〜


望元「ンン……橘ボーイ」

望元「結局、ワイフと市原レディは今回の作戦に参加しないんだね?」

実「ええ。妻の役目は終わりました、これ以上美樹に仕事を押し付けるわけにはいきません」

実「あとの実戦くらいは、夫の私がやらないと」

望元「エクセレンッ! 妻想いのいい夫じゃないか、だが生き残って初めてよきハズバンドとなりパパとなるのだ」

望元「それを忘れちゃいけないよ」

実「ええ。分かっています」


実「ありすのためにも、生きて346プロを……『キャッスル』を殺しつくします」



ザザッ


丸手『田中丸特等。伊集院二等から連絡が来ました。8時55分、予定通り放送が終わったようです』

丸手『あとは向こうの要求通り……』


望元「ナイスジョブ伊集院くん! と伝えておいてくれ!」

望元「確かこの後は、『346プロ所属のプロデューサー4匹が帰還するまで待て』だったね?」

望元「そしてマンキー4匹が本社に入ったのを確認次第……」


丸手『はい、作戦開始です。帰ってこなかった場合は黒井達に任せて作戦決行します』


望元「OK! それと偵察隊からの報告も受けているよ!」

望元「奴等の資料に記載されている346プロ職員は、例外を除いてほぼ全員、今日までに346プロに入ってから一切外出していないようだ」

望元「数日の偵察の間、本社には徒歩で進入し、その際なにかおかしいものを運搬している様子もなかった」

望元「大人しく狩られに戻って来たのは確かだね」

丸手『例外ですか? 俺は聞いてないんですけど、4人のプロデューサー以外にも誰か戻ってきてない奴がいるんです?』

清子「『今西』という男と『佐久間まゆ』の担当プロデューサーよ」

清子「この2匹と佐久間まゆは美城常務の密告前から姿を消して、一度も本社に戻ってきていないわ」

清子「例外はそれだけね」

丸手『誰だよ報告サボりやがったの……まあいいか、後だ後』

丸手『346の周辺組織は既にマークしてる……プロデューサーや役員ひとりでどうにかできるとも思えませんし』

丸手『そいつらは無視して作戦を進めます』

清子「了解」
279 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:28:39.16 ID:wXlrPCRN0

――――――――――――――――――――


丸手「……」

丸手(――あと1分で9時か)

丸手(――くそっ)


丸手(――キャッスルの奴等の思い通りにことが進んでるからか)

丸手(――どうもイライラしてきやがる)


丸手(――いや、それだけじゃねえ)

丸手(――何だこの……何か見落としてるような感覚は)

丸手(――まだ奴らが、何か切り札を隠してるような……)


丸手(――大体、何かおかしくねえか)

丸手(――奴等は資料にこう書いてた)

丸手(――『アイドルを確実に逃がすため、人間と喰種を混ぜこぜにして避難させる』と)

丸手(――こんなもの、簡単に対処できる)


丸手(――一旦アイドルを逃がした後で『喰種の疑いがあるからRc検査するぞ』と日本全国に散らばったアイドル共へ通達すりゃ済む話だろうが)

丸手(――無実なら出てくりゃいい、わざわざ"喰種"と勘違いされて殺されたい人間がいるはずもねえ。いるとしたらよっぽどのバカだ)

丸手(――所属アイドル183人の名簿くらいどこからでも手に入る)

丸手(――来た奴は人間、で検査に来なかったアイドルを"喰種被疑者"として捜査すればいい)

丸手(――喰種を庇うやつも出そうだが、全員ってわけでもねえだろう。証言を引き出すことも不可能じゃない)

丸手(――時間がかかるのは変わらねえだろうが、それでも確実に捜査は進む)


丸手(――こんなもの、一時しのぎにしかならねえ筈だ)



丸手(――346プロは老舗だ。今まで俺達の目を逸らしてきた奴らだ、それぐらい分かってるはず)

丸手(――じゃあ何でこんな穴だらけの方法を……)


ザザッ



『―――えー。マイクテス、マイクテス』

『会場にお越しのみなさーん。こーんばーんはー!』


丸手「……あ?」

丸手(――放送? どこからだ?)


丸手(――346プロのスピーカーからか!?)
280 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:31:30.18 ID:wXlrPCRN0

『本日は346プロダクションにお越しいただき、誠にありがとうございます』

『私、事務員の千川ちひろと申します』

『「笑顔の橋」のライブ放送は見ていただけましたかー?』

『とっても素敵な舞台でしたね!』


実「……千川ちひろ?」


『喰種対策局の皆さん』

『本日まで私達の準備を待っていただき、本当にありがとうございました!』

『おかげでアイドルの皆さんの避難もほぼ無事完了しました!』

『感謝感激です! ゆかりちゃん達の苦労も報われるというものです!』


宇井「……どの口が……!!」ピキ


『……ところで』



『お察しの良い捜査官……たとえば、対策U課の方はお気付きかもしれませんが』

『実は私達のやり方、結構な穴があります』

『人間と喰種を一緒に逃がしても、検査の通達をして人間を呼び戻せば』

『検査に来なかった子は"喰種"って分かっちゃうんですよね』

『もちろん、来ないでくれる人間の子がいないとも限りませんが……』


丸手(――気付いてる?)


『……そ、こ、で!』

『346プロダクションの先輩方は、本社にある改装を施しました!』


『知ってましたか? 346プロの地下にはたくさんの部屋や通路があること』

『皆さんが突き止めた「保管所」だけでなく、あらゆる建物への抜け道が存在することを』


丸手(――抜け道!?)


『ああいえ、職員の我々は一人たりとも逃げてませんよ?』

『……失礼。まゆちゃんのプロデューサーと今西部長は例外ってことで』

『ただ、ここ数日は「あるもの」を運ぶためにこの地下通路を利用していました』


『何を運んでいたか、分かりますか?』
281 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:32:32.52 ID:wXlrPCRN0

丸手(――まさか)


丸手「……おい。大至急、本局に待機させてる戦力でもう一個部隊を編成しろ。任務は潜入と救助だ」ザザッ

丸手「あ? いきなりすぎる? うるせえぞ緊急命令だっつってんだろ!」

丸手「そうだよ、救助用の部隊だ!」


丸手「あいつら……最初から『見逃す』気なんか無かったんだよ」



『実はですね。その346の地下通路が繋がってる建物、ちょっとしたゲストが来ておりまして』

『私達はゲストを捕まえて、地下から346に戻ってもらったわけです』

『ああ、ゲストって言い方じゃ分かりづらいですねごめんなさい』

『要するに、「人質」ってことですよ』


『ほら。皆さんにご挨拶してあげてくださいよ』



『関裕美ちゃん?』


282 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:33:21.77 ID:wXlrPCRN0

「「「―――――!!!」」」



裕美『っ……やだっ! 離して! 触らないでっ!』


『分かりますよね?』

『そう。避難したはずの関裕美ちゃん本人です』

『この子だけは正体を話しておきますが……ちゃんと人間ですよ?』

『検査していただければ、私の言っていることが本当だと分かってもらえるはずです。……まあ』


『生きて取り戻せれば、の話ですけどね』


実「……まさか、他にも」


『そう! 今「まさか」と思っていただけた方は大正解です!』

『私達はロケと称して人間、喰種問わず指定した建物に向かってもらいました』

『そして関ちゃんのように、こちらの方々だけを捕まえて……こっちに連れ戻した』



『ですよねえ!』パチンッ





『―――人間アイドルのみなさん!!!』




283 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:37:43.50 ID:wXlrPCRN0

ザザッ



『ンーっ!』


『ンウー!』


『むっ……うー、うー!』


『んむー!!』





『喋られては困るので、猿轡ごしの御挨拶となりましたが!』

『こちらでもがいていらっしゃる方全員、当346プロダクションの人間アイドルとなっております!』

『その数、実に50匹以上! そちらで保護されていないほぼ全員です!』

『誰が人間アイドルかまではお話できません! だって目的に反してしまいますから!』


『ん? 目的は何ですって……? よくぞ聞いてくれました』

『目的は3つ! 口封じ、あなた方喰種捜査官の殲滅、そして目くらまし!』


『まず検査で呼び出した人間アイドルにシンデレラのことを喋られては困るので、口封じに殺します』

『次に、我々は人質を取っており……ついでに報道ヘリも呼ばせてもらってます』

『つまりここで逃げれば……CCGは人質を見捨てたクズとしてニュースに載る!』

『そうしてこの子達を取り返すしかなくなったあなた達を、我々がホームで迎え撃ち殲滅する……これが二つ目』

『100%とはいかないでしょうが、大打撃を与えることはできるでしょうね』


『そして3つ目の目くらましですが』

『これが関ちゃん以外の名前を出せない理由です』

『我々は最終的には、人間アイドルの皆を!生きたまま!残さず!食べてしまいます!!』

『私達の胃袋に収まってしまえば、それがどのアイドルだったかまでは分からない……』

『そうして残ったシンデレラたちが行方をくらましてしまえば、誰を追えばいいかすら分からなくなる……』


『最高の夜明けになりますよね!』
284 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:44:49.10 ID:wXlrPCRN0

『さて、前置きはここまでにして―――――』

『とりあえず、あなた方には1時間あげましょう』

『こちらの時計で午後10時になったと同時に、まずは関ちゃん含む4人をいただきます』

『あとは、夜明けちょうどに全員平らげられるようペースを調整して人間アイドルを食べていきます』

『そうならないためにも! 捜査官の皆さんは死ぬ気でかかって来てください!』


『迎え撃つは我が346プロ自慢の一級・準一級プロデューサー、またまた50名以上!』

『少ないと思いますか? いえいえ、その分実力は保証しましょう』

『なにせ一人一人が最低SSレート! すくなくとも特等単体と互角に渡り合える猛者の方々です!』

『でも100人もいないのは確かですからねー……もしかしたら勝てるかも知れま』ズレロオォォ


裕美『ひいっ……やっ……嫌っ……!』ズリュゥ


『……あー、失礼しました。今のは一級Pのひとりが耐えきれず関ちゃんの丸いやつを舐めた音です』

『よりにもよって舐めるのがそこですか……流石に引くわぁ……』


『じゃあ、気を取り直しまして』

『大事な人間アイドルが殺されないように、頑張って戦ってくださいね!』

『では……これより「最終隠匿プロトコル」を開催いたします』


『会場の皆さんが素敵な魔法に包まれますように』ブツッ


――――――――――――――――――――
285 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:45:21.10 ID:wXlrPCRN0

――――――――――――――――――――


丸手「っ好き勝手言いやがって……!!」ビキビキ

望元『……どうする、丸手ボーイ? 私は奴らへの怒りで自慢のヘアスタイルが爆発しそうだ』

丸手「…『死んでもいい優秀なヤツ』で隊を組み、346本社へ先行させてください」

丸手「最大でも死者が隊の2割を切ったら帰還、こっちで相手の戦力と攻略法を割り出します」

望元『分かった。では私が隊長を務めよう、実ボーイとは違って独身だからね』

丸手「頼みます」ブツッ


丸手「……てめえらの思い通りにいくと思うなよ……!?」ギリギリ


――――――――――――――――――――


ちひろ「……ふう」プツッ


ちひろ(――さてさて始まりました『最終隠匿プロトコル』)

ちひろ(――とりあえず、ここまでは予定通りですね)


ちひろ(――一級Pの皆さんは、自分の担当アイドルを守るために喜んで仕事してくれる)

ちひろ(――準一級Pの皆さんについては担当アイドルを、たとえ人間であっても例外として本当に避難させている)

ちひろ(――『準一級Pの担当する人間アイドルは、例外として財産の候補および最終隠匿プロトコルの殺害対象から除外する』)

ちひろ(――個人的には癪だけど、それが準一級Pの正式な権利であり人間に惚れたPの反逆を防ぐための策だから大目に見ましょう)

ちひろ(――その条件を飲む以上、担当外の人間アイドルには我関せずでプロトコルに協力してくれますしね)
286 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:48:18.17 ID:wXlrPCRN0

ちひろ(――そして人間アイドル担当の、二級Pは―――――)



乙倉P「―――出せ! ここから出せえ!!」

ビートシューターP「聞いてないぞこんなの! 話と違うぞ!」

響子P「言ってたじゃないか!『最終隠匿プロトコル』の時は人間アイドルも一緒に逃がすって!!」

GBNSP「さっき裕美のこと舐めやがったクソ野郎出せコラア!! ぶっ殺してやる!! その舌引っこ抜いて口の中串刺しにしてやる出てこいオラア!!」

メロイエP「……」

セクギルP「……」



ちひろ(――彼らは所詮、精々Aレートの弱い喰種から選んだ方達)

ちひろ(――カモフラージュのため探させた人間に情がうつり、惚れこんで全てを捧げる喰種が出るのはいつの世も同じ)

ちひろ(――でも、この世は弱肉強食)

ちひろ(――勝手を振る舞えるのは強者の権利)

ちひろ(――二級Pを捕らえて一か所に放り込むのも、一級Pなら容易くできる)


ちひろ(――彼らがどれだけ人間を愛しても)

ちひろ(――その脆い爪は私達には届かない)
287 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:49:51.61 ID:wXlrPCRN0

ちひろ(――すべて計画通り)

ちひろ(――ただ懸念があるとすれば)



ちひろ(――『隻眼の喰種』、高垣楓の乱入)



ちひろ(――彼女には特別遠くへと避難してもらった)

ちひろ(――だけどもし、楓さんがこの中継を見ていたなら)

ちひろ(――楓さんが、気まぐれで人間アイドル達を助けようと思い至ったなら)

ちひろ(――何の対策も無ければ、少なくとも日が変わる前に)

ちひろ(――かつての『隻眼の王』が降臨して、状況はひっくり返される)

ちひろ(――作戦は確実に潰される)


ちひろ(――この状況を予想して、近くで待機していないとも言い切れない)


ちひろ(――彼女に対抗できるのは、私達の側で彼女を封殺できるのはただ一人)


ちひろ(――高垣楓の到着に、『彼』が間に合わなければ全て終わる)



ちひろ「……だから、あまり余裕が無いんです」


ちひろ「はやく『お仕事』を終わらせて帰って来てくださいね……?」



ちひろ「プロデューサーさん」



――――――――――――――――――――
288 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:51:11.17 ID:wXlrPCRN0

一旦ここまで。

まゆPが人間だという訂正を一切していないのは単なるちひろの嫌がらせです。
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 18:13:10.46 ID:Lo9MI3+GO
フリスクは無事で良かった(震え声)
劇場型犯罪者グールって原作だと思い当たらないから新鮮
ピエロはただの享楽主義だし
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 19:13:51.89 ID:Lo9MI3+GO
このちっひなら爆弾とか地雷も躊躇なく使いそう
アニメグールでアオギリがやってたみたいに

そもそもこのプロデューサー達もスタドリエナドリで無限回復しそう
291 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:01:18.52 ID:wXlrPCRN0

〜同日午後8時57分 TOKYO MIX スタジオ出口〜


武内P「―――これで、本日のお仕事は終了です」

P「皆さん、本当にお疲れさまでした」

「「「ッ……」」」

美穂「お、お疲れさまでした! 来年のライブも頑張りましょうね!」

飛鳥「ああ、お疲れ様。初めて蘭子と立った舞台だが……愉しかった」

飛鳥「ライブ本番では何が見れるか、期待してるよ」

夏樹「アタシも今日は全力を出し切った!」

夏樹「……楽しかったぜ、だりー。皆もな」


蘭子「……!!」

蘭子「我が友っ……プロデューサー……飛鳥ちゃん……!」タッ


グイ


李衣菜「…ダメだよ、蘭子ちゃん。もう皆全力でライブして、疲れてるんだから」

李衣菜「あの、プロデューサー! 今日は本当にありがとうございました!」

李衣菜「なつきちも! 今日はすごく楽しかった!」

李衣菜「……」


李衣菜「……またねっ!」


夏樹「!」

夏樹「……ああ。アタシが紹介したバンド、ちゃんと聴いとけよ?」

李衣菜「うんっ!」


アーニャ「……行きましょう、ランコ」

アーニャ「プロデューサー」

P「はい」

アーニャ「やみに、のまれよ!」パッ

P「!」

アーニャ「……ほら、ランコも。挨拶、しましょう」

蘭子「アーニャ、ちゃん……」


蘭子「っ……我が友よ。そして共鳴者よ」

蘭子「我が授かった翼はいずれ進化をとげ、この世界を支配するものとなろう」

蘭子「それまでしばし別れの時ッ!」


蘭子「―――闇に呑まれよ!!」


P「……ええ」

P「私の翼を、あなたに授けます」

P「アナスタシアさんにも。もちろん、多田さんにも島村さんにも、アイドルの皆さんすべてに」


飛鳥「……? 別れの時とは、随分と変な例えをするな」

飛鳥「まあいい。君の翼の進化とやら、楽しみにしているよ」ニヤ
292 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:01:47.05 ID:wXlrPCRN0

卯月「プロデューサーさん」

卯月「本当に、本当に……ありがとうございました」

P「こちらこそ」

P「……」


P「とても素敵な、あなただけの笑顔です」

P「どうか忘れないでください」


卯月「はいっ!」


卯月「美穂ちゃんも……またね!」

美穂「うん! またね!」


P「……それでは」

P「私は本社に戻ります。シンデレラプロジェクトの皆さんは、新田さんと城ヶ崎美嘉さんのご指示に従って移動してください」

「「「はいっ!」」」



李衣菜(――私達は"喰種"だってバレちゃいけないから)

李衣菜(――お別れの時に、泣くことは出来なかった)

李衣菜(――これで、プロデューサーとはお別れ。なつきちとも)

李衣菜(――プロデューサーとは、もう二度と会えなくなるかもしれない)


李衣菜(――でも)

李衣菜(――私、頑張りますよ。頑張りますから)

李衣菜(――プロデューサーからもらったもの、346プロでもらったもの、全部持って)

李衣菜(――前に進んでいきますから)

李衣菜(――だから……メソメソしてるなんて、ロックじゃないよね!)


李衣菜「……行こっか。みんなが待ってる」


李衣菜(――また会おうね、なつきち)

李衣菜(――また二人で組んで……)

李衣菜(――どこかにいるかも知れないプロデューサーに、今度は私達の歌を届けるんだ)


――――――――――――――――――――
293 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:02:15.14 ID:wXlrPCRN0

――――――――――――――――――――


P「……さようなら」


美穂「え? 何か言いましたか?」

P「いいえ。ただの独り言です」


P(――シンデレラプロジェクトのプロデューサー)

P(――その仕事は、今終わった)

P(――最後に、皆さんの笑顔を見られてよかった)

P(――本当は、全員に登場してほしかった)

P(――……)


P(――せめて)

P(――私の事は恨んでくれていい)

P(――ただ、あの笑顔が……渋谷さんと本田さんの元へと、届いて欲しい)


P(――それだけは、願わせて欲しい)



P(――あとは)

P(――皆さんの命を守るため)


P(――ひとりの"喰種"として、仕事をするだけだ)
294 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:04:25.22 ID:wXlrPCRN0

P「小日向さん。二宮さん、木村さん」

P「本日のライブに協力していただいた皆さんに、担当プロデューサーからお伝えしたいことがあるようです」

P「機密事項のため、下の防音設備が整った収録スペースを借りています」

P「皆さんのプロデューサーには、私も連絡事項がありますので……どうかそちらで待機していてください」


飛鳥「? そうなのかい?」

美穂「わ、分かりました」

夏樹「! ……分かった。待ってるぜプロデューサー」


美穂P「?」

飛鳥P(――なんだ? 機密事項?)

夏樹P(――そんなの予定にないぞ。たしかこの後は、4人そろって346に戻るんじゃ……)

美穂P(――このまま何も言わずに別れるつもりだったんだけどな)


P「担当プロデューサーの方々は、こちらに」


――――――――――――――――――――


美穂P「……なあ、シンデレラプロジェクトの担当さん」

美穂P「もしかして俺達に気を遣ってくれたのか?」

夏樹P「! 最後に正体を明かす時間と場所をくれたってことか?」

武内P「……」

夏樹P「だったら余計なお世話だぞ。罪滅ぼしのつもりかもしれないが、別に346を恨んでるわけじゃないしな」

飛鳥P「同感。今まで犠牲になった子達のことは悲しいけど……結局は担当アイドルに関係のないことだ」

美穂P「俺達は別れを言う気も秘密を話す気もないよ。美穂をこっちの事情に巻き込みたくない」

武内P「……」



武内P「余計なものかどうかは」
295 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:04:58.39 ID:wXlrPCRN0







「あなたたち『弱者』が決めることではありません」






296 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:06:19.60 ID:wXlrPCRN0

〜TOKYO MIX 収録スペース〜


美穂「言われるままに来ちゃったけど……」

飛鳥「プロデューサーの話って何だろう?」

夏樹「……」


夏樹「……アタシもよくわかんないけどな」

夏樹「ただ、今のうちに思い出しておいた方がいいんじゃないか」

夏樹「プロデューサーと出会って、一緒に歩いてきた道を」


美穂「プロデューサーさんと?」

飛鳥「おいおい……君も何を言うんだ、夏樹さん?」

飛鳥「まあ、初めて出会った時のことは思い出しておくにこしたことはないが……」


ガチャ


飛鳥「おや。噂をすれば」





ギイイイイイイイ


美穂「プロデューサーさん!」

美穂「あの、お話って一体……」

美穂「……え?」


美穂(――少し時間が経って、待っていた防音ルームに入って来た人は)

美穂(――私のプロデューサーさんじゃなくて、卯月ちゃん達のプロデューサーさんでした)


美穂(――そして、何かがおかしいと思いました)


美穂(――心なしか、瞳が濁っているように見えました)

美穂(――まるで深い闇のように)


美穂(――目線を少し下にずらして、ようやく何がおかしいのかに気付きました)


美穂(――真っ黒なスーツに、なにか赤いものが飛び散っていたんです)


美穂(――これは、何?)
297 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:06:45.42 ID:wXlrPCRN0

P「……本日は、シンデレラプロジェクトの皆さんにご協力いただき」

P「本当にありがとうございました」


P「……そして、申し訳ありません」ギョロ

P「皆さんには、CPの皆さんのために―――――」バキキ





P「今ここで、死んでいただきます」





――――――――――――――――――――
298 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:11:59.50 ID:wXlrPCRN0

今日はここまで。

ユニットはモバやデレステに色々あるためどのユニットが同一のPに担当されているか全てをハッキリ決めているわけではないのですが、
とりあえず設定上フリスク、ブルナポ、KBYDの三つが準一級P担当の混合ユニットだと確定させています
299 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/27(水) 00:14:25.97 ID:MI53UYkP0

――――――――――――――――――――


李衣菜「……ふー」

李衣菜(――終わっちゃったなあ)

李衣菜(――346プロでのアイドル活動も)

李衣菜(――プロデューサーとのアイドル活動も)


李衣菜(――やっぱり、ちょっときついなあ)


≪―――9時になりました≫


李衣菜(――ん)


李衣菜「もう9時か、皆のとこに急がなきゃね」

アーニャ「シトー? リーナ…時間、分かるんですか?」

卯月「時計なんてありませんよね?」キョロキョロ

李衣菜「あ、そっか。これ聞こえるの私だけなんだ」


李衣菜「前に話したでしょ。私は周りより耳がいいみたいでさ」

李衣菜「たぶん、↑の部屋でテレビのアナウンスか何かが聞こえたんだと思う」

李衣菜「……あっ。今、何か中継やってるみたいで―――――」



≪―――えー。マイクテス、マイクテス≫

≪会場にお越しのみなさーん。こーんばーんはー!≫



李衣菜「……えっ?」
300 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/27(水) 00:15:25.20 ID:MI53UYkP0

蘭子「…李衣菜ちゃん?」

李衣菜「い、いや何でもないよ? ちょっとびっくりしただけ」

李衣菜「何か、ちひろさんのアナウンスが聞こえてきてさー」

李衣菜「おっかしいなー。私達が最後の仕事だって聞いてたけど、何やってるんだろね? あはははは」


≪―――ですよねえ!≫


≪―――人間アイドルのみなさん!!≫


李衣菜「は、はは……」


李衣菜「…は?」


李衣菜(――え、なにこれ)

李衣菜(――人質? 口封じ?)

李衣菜(――これって、今の346プロの中継ってこと?)

李衣菜(――『最終隠匿プロトコル』? 何の話をしてるの?)


李衣菜(――人間アイドルを全員……殺す?)


卯月「あの、李衣菜ちゃん? 皆のところに……」


李衣菜「……待ってよ」


李衣菜「なに、やってんの? ちひろさんも、プロデューサー達も」

李衣菜「アイドルみんなで避難するって言ってたじゃん」

李衣菜「なのに、人間アイドルだけ連れ戻したって……」

李衣菜「アイドルのみんなを食べる、って……?」

李衣菜「……!?」



李衣菜(――ニュースの内容がよく分からない私の耳に)

李衣菜(――今度は、別の声が飛び込んできた)

李衣菜(――くぐもった声だった)

李衣菜(――私は、こんな響き方をする音を知ってる)


李衣菜(――みくちゃんや未央ちゃんがレコーディングしてる時)

李衣菜(――外にいた私の耳には、ちょうどこんな風にくぐもった歌声が届くんだ)

李衣菜(――防音設備の整った部屋から、聞こえてくる時の声だ)


李衣菜(――でも、今聞こえてきた声は歌声なんかじゃなかった)

李衣菜(――なにかケガをしたときのような、叫び声だった)


李衣菜(――そして、声にも聞き覚えがあった)





李衣菜(――なつきちの声だった)




301 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/27(水) 00:16:33.23 ID:MI53UYkP0

ちょっとだけ追加。
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 01:01:04.64 ID:cVOnZQ9L0
>>257
あー…ある意味常務も被害者だったんだな
常務が一番キツい立場になりそうだな地位があるだけに中途半端に逃げることも出来ず、一族の軋轢と財産が貰えなくなる喰種組織、それこそ生き残ってたら元職員にも狙われかねんし
とりあえず凛達から恨まれなさそうってことが分かっただけでもマシな気分だ
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 02:38:16.30 ID:1tGEhWsV0
乙です!
平日なのにこんなに進めてくれて感謝

346プロは原作のアオギリの樹や嘉納や和修家や旧多が可愛く見えるレベルの悪逆非道っぷりだなぁ
かと言って原作同様CCGを応援出来るわけでもないというのがもどかしいところ
つまり楓さんの活躍に期待!
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 04:05:45.08 ID:CuaCaAWJO
笑顔の橋などと綺麗事を宣いつつ人間のアイドルは利用するだけ利用して[ピーーー]武内Pのクズっぷりにはもはや草生えるわ

ちひろの言葉が本当なら346プロの戦力はCCGを余裕で越えてないか?
有馬ポジションの舞さんが無双でもしない限りは勝ち目無いよな
そしてSSSレートの楓に対抗どころか「封殺」出来るとの武内Pヤバすぎww
305 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/09/27(水) 23:19:43.90 ID:owAJtE020
今日はちょっと更新無理そうです。

>>303
大学生にとっては夏休み最後の1週間なのでいつもより気張って書けるだけ書いてますね!
今月中は無理かもしれないけど来週には完結できそうかなあ出来たらいいなあ
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/28(木) 01:03:25.01 ID:kOBNoIbe0
こちらは20日から授業始まったので羨ましい
その分後期は少し長めなのでしょうけど

外伝の346プロを見ていて1つ質問なのですが、
本編の765プロの高木社長や小鳥さんも裏で非道な振る舞いをしているのでしょうか?
307 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/28(木) 21:01:27.43 ID:xuTUYJ3U0
今日もちょっと更新できなさそうです。多分明日は書ける。ラピュタ始まる前に更新なかったら察してください。

>>306
346プロは長年の成長と資産により、こういった財産制度を基にした運営を可能としているので
765プロのような弱小事務所の規模では真似したくても出来ないと思います。

あとピヨ子はちひろと違って人間が好きな喰種であり、偶像喰種でも本質は間違いなく善人です
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 22:30:21.89 ID:yRHx+wuh0
>>304
P「『笑顔の橋』も、神崎さんの願いを最大限(ここ重要)尊重したい一心で企画しました」 とか言ってるし、本心じゃそんなんやりたくねーっての表れてるしな
しかし今西も一件冴えない風貌してながら超極悪任務任されたり見かけによらんもんだな、まあ実際人じゃない訳だけども
309 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/29(金) 19:31:39.23 ID:aBqgUD9y0

〜TOKYO MIX 楽屋〜


莉嘉「……終わっちゃったねー」

みりあ「終わったねー」

きらり「みんな綺麗だったねえ」

智絵里「……うん」

みく「…これからどうする?」

美嘉「どうするもこうするも、まずは生き抜くだけだよ」

美嘉「大丈夫! 生き方はちゃんとアタシが教えたげるから」

かな子「……きっと、また戻れますよね」

美波「戻れる、はちょっと違うかな。少し時間はかかるかもしれないけど……必ずここに来れるよ」

杏「……ま、生きてりゃ何でも出来るでしょ」


杏「……」



杏(――今は9時か)
310 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/29(金) 19:33:16.48 ID:aBqgUD9y0

≪―――えー。マイクテス、マイクテス≫

≪会場にお越しのみなさーん。こーんばーんはー!≫



杏(――あー。結局、最終隠匿プロトコルは予定通り始まるんだ)

杏(――でも杏たちは皆、今この放送を見る手段がない)


莉嘉「ちゃんと皆、蘭子ちゃん達のライブ見てくれてるのかなー?」

かな子「感想、気になるよね……」

きらり「でもスマホはPちゃんに預けちゃったから、きらり達は見れないにぃ……」


杏(――杏たちのスマホは、プロデューサーに没収された)

杏(――『足がつく可能性があるから処分する』)

杏(――『代わりに出演組に、こっちで用意したスマホを持って行ってもらう』)

杏(――って建前だったかな)


杏(――よく言うよ)


みりあ「蘭子ちゃん達まだかなあ。迎えにいっていい?」

杏「やめときなよ。蘭子ちゃん達、もうスタジオ出てこっち来てるよ」

杏「入れ違いになると思うし、待ってた方がいいんじゃない?」
311 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/29(金) 19:33:46.51 ID:aBqgUD9y0

杏「……それに」

杏「すぐそこを全裸の男がうろうろしてるみたいだよ」


かな子「ええっ!?」

莉嘉「なにそれヤバくない!?」

杏「あははウソウソ」

みく「杏ちゃん! 変な冗談はやめるにゃあ!」

杏「ゴメンゴメン。怪しい人は誰もいないよ」


杏(――いないよね?)

杏(――うん。白鳩も敵対する喰種もいないはず)


杏(――あとは、杏たちの近くの楽屋でスマホ弄ってる子が気になるけど……)



翔太「……」スッスッ


翔太『ねー北斗君。もうキャッスル討伐作戦は始まってるんでしょ?』

翔太『まだ楽屋組殺しに行っちゃダメなの?』

北斗『少し待ってくれ。CPと離れたエンジェルちゃんとそのPが移動してる』

北斗『確保・駆逐・保護は同時だ』

北斗『俺はエンジェルちゃんの保護に向かうから』

北斗『冬馬はCP4人の確保を頼む』


翔太「……」プツッ

翔太(ヒマだなー)ウロウロ



杏(――足音からして、まだ子供。…男?)

杏(――出演者の親戚とかかな)

杏(――白鳩にこんな子供がいるとも思えないし……)





杏(――それより蘭子ちゃん達だよね)

杏(――早く戻って来てよ)

杏(――みんなが真実知りそうでヒヤヒヤす……)



李衣菜≪なのに、人間アイドルだけ連れ戻したって……≫

李衣菜≪アイドルのみんなを食べる、って……?≫



杏(――げっ)
312 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/29(金) 19:37:47.36 ID:aBqgUD9y0

李衣菜≪なつきちっ!≫

アーニャ≪リーナ!?≫

蘭子≪い、何処へ向かう!?≫


杏(――あー)


李衣菜≪なつきちがケガしてる!≫

李衣菜≪よく分からないけど、なつきちが叫んでるのが聞こえた!≫

李衣菜≪下の収録スペースに行ってくるから、みんなは先に戻ってて!≫


杏(――あーあー)


蘭子≪まっ……待って! 私も行く!≫

アーニャ≪私も行きます!≫

卯月≪じゃ、じゃあ私も……!!≫


杏(――あーあーあー!!!)



杏(――あんのバカプロデューサー!)

杏(――焦るのも分かるけどさ! 李衣菜ちゃんの耳の良さ分かってなかったな!?)


みりあ「ねー、迎えに行っちゃダメ?」

杏「ダメ。絶対出ないで」

みりあ「…杏ちゃん? どうしてピリピリしてるの?」

杏「……何でもないよ」


杏(――あーもー……杏知らないからね)

杏(――蘭子ちゃん達が凛ちゃん達みたいに真実を知ろうと、それでショック受けようと杏なにも出来ないからね)

杏(――せめて楽屋の皆には何も知らせないようにしてあげるから)



杏(――そっちはプロデューサーが何とかしなよ)


――――――――――――――――――――
313 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/29(金) 19:55:04.28 ID:aBqgUD9y0

短いけど今日はここまで。

李衣菜は耳がいいけど、杏と違って346深部の様子は聞こえてません。
ちょっと説明に無理があるかもしれないけど、
李衣菜の聴力は開けた空間中なら遠くの小さい音でも拾って聞き分けられる代わりに
密閉された空間から地面など固体を伝わって届く振動を聞き取るのが苦手って感じに考えてます。
加えて346では地下スペースと地上スペースに大きな階層の隔たりがあるためコツを掴まないと何が起こってるか聞き取れない、
せいぜい「地下にも部屋があるんだなー、集めた自殺死体でも保管してるのかな?」と疑問に思う程度です。

今回は聞きなれた人の声、防音設備があるとはいえ比較的近場、あと単純で大きな悲鳴だったから聞き取れました。
314 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:09:02.08 ID:tOgUoRhE0

〜収録スペース〜


李衣菜「……あ……」


李衣菜(――収録スペースへの分厚い扉を開けると)

李衣菜(――そこにはさっき別れたばっかの4人がいた)

李衣菜(――プロデューサー、なつきち、美穂ちゃん、飛鳥ちゃん)

李衣菜(――なつきちたちのプロデューサーは見当たらない)


李衣菜(――美穂ちゃんと飛鳥ちゃんは、部屋の隅で震えていた)

李衣菜(――追い詰められて、それ以上逃げ場がないって感じだった)


李衣菜(――なつきちは、プロデューサーの目の前で蹲ってた)

李衣菜(――左手を押さえてて……)

李衣菜(――なつきちの足元には血が垂れてる)


李衣菜(――プロデューサーは、赫子を出してた)

李衣菜(――鋭くて分厚い甲赫の刃)

李衣菜(――先っぽには、赤い血が付いてた)



李衣菜(――プロデューサーが、なつきちを殺そうとしてた)



李衣菜「……プロデューサー……」


李衣菜「……な、に……」





李衣菜「―――何やってんですかっ!?」


315 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:11:37.35 ID:tOgUoRhE0

蘭子「我が、友?」

卯月「プロデューサーさん……?」

アーニャ「プロデューサー……」


武内P「……!」

P「なぜ皆さんがここに……!?」


P「……」


P「……新田さん達に合流してくださいと、言ったはずですが」

P「どうしてここに?」


李衣菜「聞こえたんですよ、なつきちの叫びが……!」チラ

李衣菜「…防音設備で防いだつもりですか? これくらいの距離なら聞こえるんですよ」


李衣菜「そんなことより、これはどういうことですか!?」

李衣菜「ワケ分かんないですよ、何でプロデューサーがなつきちたちを殺そうとしてるんですか!?」

李衣菜「最終隠匿プロトコルって何ですか」

李衣菜「人間アイドルの皆を集めて、殺そうとしてるって……」


李衣菜「全部説明してくださいっ!!」


蘭子「……!?」

蘭子「人間アイドルの、みんなを?」


P「……」


P「皆さんの命を守る為です」

P「どうか、このまま新田さん達のところへ戻ってください」

P「皆さんはもう、逃亡する身である自覚を持ってください」


P「……いえ、多田さんは勘違いをしています」

P「私は木村さん達を殺すつもりはありません」
316 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:12:44.21 ID:tOgUoRhE0

李衣菜「いやですっ!!」

李衣菜「そんな見え見えの嘘までついて……殺す気がないなんて、信じられるわけないじゃないですか!!」

李衣菜「なつきちから離れてくださいっ!」

李衣菜「離れないなら、力づくでも引きはがします……!」ジリ


蘭子「っ……!」ジリ

蘭子「…プロデューサー。飛鳥ちゃんから離れてください」

アーニャ「……」ジリ


卯月「プロデューサー、さん……」



P「……そうですか」

P「……申し訳、ありません」グッ




李衣菜(――そこからのプロデューサーの動きは、まるで見えなかった)

李衣菜(――足に力を込めたかと思うと、いつの間にか私の真横に立っていて)

李衣菜(――目で追う前に、右目に焼けるような痛みが襲った)


李衣菜(――そしたら力が抜けて、立っていられなくなって)

李衣菜(――やっと後ろを向けたと思ったら)

李衣菜(――卯月ちゃん、アーニャちゃん、蘭子ちゃんまでもが、同じように倒れこむのが見えた)


李衣菜(――あとはプロデューサーの両手に、合計4本)

李衣菜(――空っぽの注射キットが握られているのが見えた)


李衣菜(――どう動くことも出来なかった)



P「……Rc抑制剤です。"喰種"に打てば、赫子だけでなく身体能力をも抑えられます」

P「これでもう、皆さんは私を止めることが出来なくなりました」


P「……申し訳ありません。皆さんには、まだ夢から覚めないでいて欲しかった」
317 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:14:10.45 ID:tOgUoRhE0

P「すぐに終わります」

P「すべてが終われば、皆さんを楽屋へとお連れします」

P「せめて、目を瞑っていただけませんか」



李衣菜(――身体が動かない)

李衣菜(――プロデューサーが、なつきち達に歩み寄っていく)

李衣菜(――立てない)

李衣菜(――甲赫を振り上げて、なつきちを叩き切ろうとしてる)

李衣菜(――息もまともに出来ない、苦しい)

李衣菜(――なんで。どうして?)

李衣菜(――プロデューサーは、人間と喰種を繋ぐために)

李衣菜(――こんな仕事を持ってきてくれたのに)

李衣菜(――ずっと、応援してくれたはずなのに)

李衣菜(――なのに、人間みんなを殺すって)

李衣菜(――私の大事な人まで)

李衣菜(――なんで)



李衣菜(――全部、嘘だったの?)
318 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:16:17.52 ID:tOgUoRhE0

(――やめて)


(――お願いやめて)


(――殺さないで)


(――立ってよ)


(――お願い動いてよ)


(――このままじゃ殺される)


(――やだ)


(――やだ)


(――そんなのやだ)



(――大切な人なの)



(――お願い)





(――飛鳥ちゃんを殺さないで)





李衣菜(――その瞬間だった)


李衣菜(――何かが、プロデューサーを横から殴りつけた)


李衣菜(――プロデューサーは咄嗟にガードして、それでも壁に叩きつけられ)


李衣菜(――壁を破って、隣の部屋に落ちていった)


李衣菜(――『それ』は、大きな赤い翼に見えた)




李衣菜(――すぐに羽赫だと分かった)


李衣菜(――だれの?)
319 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:17:22.92 ID:tOgUoRhE0

P「かっ……!?」


P(――赫子?)

P(――誰か、また来てしまったのか?)

P(――違う。神崎さん達以外はここの事に気付いていない)

P(――じゃあ、誰が……)


P「……?」


P(――今破った壁を乗り越えて、誰かがこちらに歩いてくる)

P(――いったい……)


P「―――――!!」


P(――そうか)

P(――Rc抑制剤は、確かに全員に打った)

P(――だが、『彼女』には効かなかったんだ)

P(――彼女があまりにも強い赫子を持つから)



P「……神崎さん……!!」



P(――神崎さんが、『隻眼の喰種』だから)



蘭子「……プロデューサー」


蘭子「もう一度伝えるわ」ビキ



蘭子「飛鳥ちゃんから離れてください」



――――――――――――――――――――
320 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:25:56.32 ID:tOgUoRhE0

〜収録スペース付近〜


北斗「……」

北斗「」スッスッスッ


北斗『冬馬。今どこにいる?』


北斗『冬馬?』


冬馬『悪い。LINEを開くのが遅れた』

冬馬『もう観客席から退場して、今玄関にいる』

北斗『分かった。エンジェルちゃん達とCP出演組は今一緒に行動してる』

北斗『俺達も合流しよう。一階の収録スペースだ』

冬馬『了解。すぐ行く』

北斗『急いでくれ、ちょっと余裕がない』

冬馬『どういうことだ?』



北斗『CPのプロデューサーが、思ったよりずっと強そうだ』

北斗『今は仲間割れが起きてるらしく時間がありそうだが、いつまでもつか分からない』

北斗『冬馬が間に合わなかった場合、俺一人でエンジェルちゃん達の救助に向かう必要がある』


北斗『俺は死ぬかもしれない。死んだらごめんよ』


――――――――――――――――――――
321 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:27:36.22 ID:tOgUoRhE0

一旦ここまで。

次回、隻眼のらんらんvsSSSレート武内P
322 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 19:59:25.67 ID:tOgUoRhE0

――――――――――――――――――――


飛鳥(――神崎蘭子)

飛鳥(――自身を『魔王』と称し、ゴシックに身を包む少女)

飛鳥(――ボクと同じ、セカイを切り取る者)


飛鳥(――しかし、共に食事や遊戯を重ねるうちに)

飛鳥(――これはただの人懐こい少女だと気付くようになった)

飛鳥(――言葉を組み換えて空気を飾る)

飛鳥(――よく言えばデザイナー、悪く言えば臆病者)


飛鳥(――表層こそ異質だが、その根は至極単純な存在)


飛鳥(――それが神崎蘭子だと思っていた)


飛鳥(――彼女が"喰種"かもしれないとは、考えたこともなかった)

飛鳥(――ボクだって"喰種"について全くのド素人というわけじゃない)

飛鳥(――かつてはそのヒトと異なる存在に興味を持って、ボクなりに調べたこともあるんだ)

飛鳥(――だから、"喰種"はヒトやコーヒー以外の食物を拒絶することぐらい識っている)


飛鳥(――奏さん達が"喰種"として指名手配された時、ボクは)

飛鳥(――『ああ、確かに』と思った)

飛鳥(――あのような『孤高』の字が似合う人のそれこそ、"喰種"が持つ特徴なのだろう……と)

飛鳥(――呪いを持って生まれた存在を、ボクはただ憐れんだ)


飛鳥(――一方、ハンバーグやプリンを蕩けた笑顔で頬張る彼女の姿は"喰種"の姿と一致するはずもなく)

飛鳥(――それが演技とも思えず、ボクは当然、喰種容疑者から彼女の名前に×を引いた)


飛鳥(――蘭子は悲劇とも、血の匂いとも無縁の、ただの等身大の14歳と思って付き合っていた)
323 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 19:59:56.33 ID:tOgUoRhE0

飛鳥(――だから)

飛鳥(――だから、ボクは目の前の光景を信じることが出来なかった)


飛鳥(――神崎蘭子の衣装は首筋にヒビが生じ、赫い翼が噴出していた)

飛鳥(――ボクから見えた左目は、ただの赤い瞳だったから、あれは"喰種"とはまた別の存在なのかと思った)

飛鳥(――だが蘭子がボクに振り向いた時、それは違うと直ぐに分かった)


飛鳥(――黒い眼球)

飛鳥(――赤ではなく、赫い瞳孔)

飛鳥(――無機質な恐怖がにじみ出るような右目と)

飛鳥(――ヒトとして光を反射する優しい左目の両方で)

飛鳥(――蘭子はボクを、ボク達を見つめていた)



蘭子「……飛鳥ちゃん」

蘭子「今まで隠してて、ごめんね」


蘭子「飛鳥ちゃんは、皆の事は殺させないから」


飛鳥(――微かに震える声で、彼女はそう言った)


飛鳥(――そして壁に空けた穴に手をかけ、乗り越えようとする姿は)



飛鳥(――このまま蘭子が、どこか別の場所に消えていくように見えた)


飛鳥(――ボクはただ、蘭子の言葉に返事も出来ず)


飛鳥(――黙って見つめることしかできなかった)



――――――――――――――――――――
324 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 20:03:31.48 ID:tOgUoRhE0

とりあえずここまで。

評判いいみたいなので実写版亜人見て来る
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 00:53:48.24 ID:dYtGvjMcO
おつ
326 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:34:44.25 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――


美嘉「……なんか、音しなかった?」

美波「うん……遠くで何かぶつかった音……かな?」


杏「スタッフさんがケンカしてるみたいだよ」

杏「うわー激しい殴り合いだー」


みく「ええ……?」


杏「聞いてる限り、大したことじゃないよ。待っとこうよ」



杏(――蘭子ちゃん、派手にやるなあ……)

杏(――ちょっと皆も怪しみだしてるじゃんか)


杏「……」


杏(――もう話しちゃおうか?)

杏(――どのみち報道されてるなら、遅かれ早かれ皆真実を知る)

杏(――知ったころには問い詰める相手が死んでるってだけだ)

杏(――それに蘭子ちゃんが戦ってくれるなら、みんなで加勢すればあるいは……)



杏(――いや、ダメだ)

杏(――蘭子ちゃんでもプロデューサーには勝てない)


杏(――プロデューサーはただの"喰種"だ)

杏(――ただの喰種なのに、隻眼の王って呼ばれてる)


杏(――それはプロデューサーが、『元』隻眼の王を)

杏(――高垣楓を倒してスカウトした、ただ一人の喰種だから)


杏(――そんなプロデューサーと蘭子ちゃんとじゃ、実力が違いすぎる)


杏(――蘭子ちゃんは勝てない)


――――――――――――――――――――
327 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:35:23.15 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――


P「……神崎さん」


P(――引き離されてしまった)

P(――今は私と小日向さん達の間に、神崎さんが立ち塞がっている)

P(――彼女達を殺すには、神崎さんをどかさなければいけない)


P「それは、できません」

P「離れるのは貴女です」


P(――難しく考えることはない)

P(――ただ近付いて、押しのければいい)

P(――戦う必要など、何処にも―――――)


蘭子「ッ!!」ビキキ


ゴッ


P「ッ!?」ズサ


P(――近づけない)

P(――今のは、神崎さんの羽赫だ)


P(――なんだあの量は)

P(――まるで大河のようだ)

P(――一度にあれだけの赫子を放出して、私を近づけさせない)
328 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:35:53.90 ID:McMGTohp0

P(――羽赫の弱点は長期戦)

P(――歩を止めず、神崎さんに赫子を出させ続ければ、あるいは―――――)

P(――いや)


P(――時間がないのは私も同じ)

P(――時間をかければ、多田さん達が抑制剤から回復する)

P(――異変に気付いて、新田さん達が合流するかもしれない)

P(――そうなれば、皆はきっと小日向さん達を逃がしてしまう)


P(――そして、また―――――!!)



P「……神崎さん」

P「お願いします。そこをどいてください」

P「私の最後の仕事を、妨害しないでください」


P「あなた達のためです。……きっと小日向さん達は、いずれ恐怖に負けてあなた達を売ってしまう」

P「もしくは、人間にとって重罪の圧に負けて」

P「そうなる前に、手を打たないといけないのです」


蘭子「そんなわけない!」

蘭子「飛鳥ちゃんも美穂ちゃんも夏樹さんも、大事な友達だもん!」

蘭子「私達のことを売るわけない!!」


P「……」


P「……最終警告です」

P「そこをどいてください」


P「さもなくば、私は神崎さんを傷つけてでも無力化しなくてはいけない」


蘭子「どかない!!」


P「……」



P「わかりました」

329 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:36:34.06 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――


李衣菜「……!」


李衣菜(――私はただ、聞こえてくる音で2人の様子を掴んでいた)

李衣菜(――蘭子ちゃんが、プロデューサーの『最終警告』を断った瞬間)

李衣菜(――プロデューサーの雰囲気が、変わった気がした)


李衣菜(――ビキビキバキバキと音が聞こえてくる)

李衣菜(――この音を知ってる。赫子……甲赫を出す時の音だ)

李衣菜(――でも、なにかおかしいと思った)

李衣菜(――音が長いんだ。あまりにも長い時間、甲赫を変化させる音が聞こえてくる)


李衣菜(――そして)

李衣菜(――何かを切る音が聞こえた)

李衣菜(――何かを二本、たぶん肉と骨。切り離されて飛んで行った)


李衣菜(――すぐ後に、何か重いものがドサリと落ちる音が聞こえた)



李衣菜(――蘭子ちゃんの両足が切り飛ばされた音だと気付くのには、しばらく時間がかかった)

330 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:37:52.76 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――


杏(――遂にやったか)

杏(――ああもう、蘭子ちゃんパニックになってんじゃん)

杏(――プロデューサーはプロデューサーで、精神的にダメージ受けてるの丸わかりだし)


杏(――蘭子ちゃん)

杏(――こっからじゃ何も言えないけど、大人しく引いた方がいい)

杏(――つーか普通は戦えなくなる。お願いだから戦えなくなって)

杏(――もしかしたらとは思うけど、そこから再生できるようなら)

杏(――蘭子ちゃんは更に地獄を見ることになるよ)


杏(――だって)


杏(――プロデューサーは)



杏(――『赫者』だ)


――――――――――――――――――――
331 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:38:45.23 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――


蘭子「えっ? あっ、え……」

蘭子「あし、私の、あし……どこ……」

蘭子「……あ……」


蘭子「あ、あ、ああ、……あああああああああああ!!!」



P「『甲赫』で『羽赫』の喰種を貫けば、再生が効かなくなります」

P「個人差こそありますが、食事なしで足は再生しないでしょう」

P「……申し訳ありません。仕事が終わればすぐに、回復を……」グジュリ


P「…!?」


蘭子「あっ……あっ、あっ……!」ジュグ

蘭子「うあっ、痛、つ、うああああ」ズズズ

蘭子「はっ、はあっ、はあ……ふー、ふー、ふー……」ズル



P(――なんだと?)


P(――何もなかったかのように、神崎さんの足が再生した)
332 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:40:02.15 ID:McMGTohp0

P「神崎さん」

P「お願いです、もう止まってください」

P「立ち向かわないでください」

P「また、貴女を傷つけなければいけなくなります」

P「もうやめてください」


蘭子「ああ、あ……!」

蘭子「……い」

蘭子「いや、だ……」


蘭子「飛鳥ちゃんは、わたしがまもるんだ」

蘭子「ともだち、なんだもん」

蘭子「みすてるなんて、できないもん」

蘭子「だから……あ、ああああ、あああああああ」



蘭子「―――ああああぁぁああああぁぁああ!!!」ビキキキキ



P「―――――ッッッ!!!」


P(――なんだ、この赫子の『量』は!?)

P(――こんなの、普通じゃない)

P(――神崎さんが、『隻眼』だから……ば……)


P(――今なにを考えた!?)

P(――違う、違う違う違う!!)

P(――神崎さんを化け物扱いするな!!)

P(――何も変わらないと言ったはずだ!)

P(――神崎さんも、私の大切なアイドルには変わらないと!)

P(――島村さんや、アナスタシアさん達となにも変わらない筈だと理解したはずだ!!)
333 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:40:51.58 ID:McMGTohp0

P(――それで、どうする?)

P(――また、足を切り落とすのか?)

P(――それで神崎さんが止まるのか?)

P(――そんなはずがない)

P(――なら、どうしろと?)

P(――刻み続けろとでも言うのか?)


P(――やるしかない)


P(――何度も何度も切り続けろというのか!?)

P(――守ると決めた相手を?)

P(――見ただろう、あの苦しむ姿を)

P(――何があっても守ると決めた筈のアイドルが、目の前で足を失い痛みに泣く姿を!!)

P(――あれをやり続けろと言うのか!?)


P(――だがやるしかない)

P(――何をしてでも、アイドルの命を守ると決めた)

P(――どんな犠牲を払ったとしても、生きてさえいれば、笑顔を取り戻せると知った筈だ)

P(――あの三人みたいな目に、神崎さん達を遭わせたいのか?)


P(――嫌だ)

P(――絶対に嫌だ)

P(――もう、死んでほしくない)


P(――もういなくならないでほしい)


P(――なら、やるしかない)

P(――大切な命のために、手を汚し続けろ)


P(――傷つけろ。踏みにじれ)


P(――神崎蘭子の心が折れるまで、あるいは再生力が尽きるまで)


P(――彼女を切り刻み続けろ)


――――――――――――――――――――
334 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:41:43.87 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――



『彼はとても可哀想な男だ』


『最初から彼は、アイドルの幸せを一番に願って行動し続けた』

『はじめに担当したアイドルに対しても、それは変わらない』

『だが、彼や彼の大切な人が生きるには……世界は残酷過ぎた』

『強者が弱者を喰らう世界で、彼の大切な子達はいとも容易く命を消し飛ばされた』


『彼は力を求めた』

『力を求めて、人も喰種も関係なく、他者を喰らい、他者から奪い続けた』

『今度こそ自分の大切な人たちを奪われないように』


『346プロのプロデューサーは、皆そうだ』

『彼らが見つけたシンデレラを、その輝きを、その幸せを一番に想い……そして、守るには奪うしかないと気付いてしまう』

『そしてみんな狂っていく』


『自分が一番に想っていたはずの命の重さを、忘れてしまう』


『……どうすれば良かったんだろうね』


――――――――――――――――――――
335 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:42:43.39 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――


P(――正面から神崎さんが来る)

P(――右腕と右足を切り飛ばして、蹴飛ばす)

P(――すぐに再生し、また私に飛びかかる)

P(――今度はタイミングを合わせ、達磨にした)

P(――首を掴んで、地面に叩きつける)

P(――手足が生える前に、赫包を狙う)

P(――一つは残さなければいけない。数を正確に把握する)

P(――赫子の噴出口は、赫包は4つ。なら3つ抉り出せばい)

P(――羽赫の一斉掃射を受けた。距離を取られてしまった)

P(――もう肘、膝のところまで再生している)

P(――もう一度だ。もう一度くりかえせ)

P(――両腕を切り飛ばす)

P(――切り飛ばしたと同時に、また羽赫を受ける)

P(――量が衰える気配はない)

P(――それどころか、甲赫の鎧を剥がされかけた)

P(――神崎さんはボロボロと涙をこぼしている)

P(――口を引き結んで、私をまっすぐににらみつけ、痛みに耐えて私と戦っている)

P(――意識が飛びそうなのを必死に堪えて、私の前に立ち塞がり続ける)

P(――そんな顔をしてまで戦わないでくれ)


P(――なにが貴女をそこまで駆り立てる)

P(――そんなに傷ついてまで、なぜ二宮さんに執着する)

P(――自分を大切にしてくれ)

P(――もう嫌だ貴女と戦うのは苦しいんだ)

P(――なぜ守りたかった人を痛めつけ続けなければいけないんだ)


P(――はやく折れてくれ)

P(――頼むから)


P(――誰かのために苦しむのはやめてくれ)
336 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:44:27.95 ID:McMGTohp0







ドスリ






337 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:45:08.70 ID:McMGTohp0

P(――?)

P(――神崎さんじゃない)

P(――神崎さんは前にいる。今の攻撃は後ろからだ)


P(――誰だ?)


「……はは……」


「……気持ちは分かるが……」


「……あんた、焦りすぎだ」


「……とどめを刺すのを忘れてたぜ……」



P(――あなたは)

P(――いや、それどころじゃない)

P(――踏み潰してでもこいつを退かせ)グッ


ゴギッ


「かっ……!」
338 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:54:34.82 ID:McMGTohp0

(――ああ。やっぱり、俺の力じゃ、一級Pには叶わないか)

(――その中でも、『隻眼の王』だもんなあ)

(――俺に出来たのは、ほんの数秒、気を逸らすくらい……)


(――でも、それで十分だ)



(――すごいな、あの神崎蘭子って子)

(――赫子の相性をひっくり返して、あの隻眼の王の鎧を剥いだ)

(――大量の羽赫に晒されて、中身も一撃でボロボロだ)

(――あっちは無傷。…いや、再生したのか)

(――どっちにしても化け物だ)

(――一分も持たずに死ぬだろう俺とは大違いだ)



(――『あの子』は……)

(――そうか。壁の向こうか)

(――ここからじゃ見えない。もう這いずって顔を見に行く力も残ってない)

(――ただ音を聞けば、無事だってことだけは分かる)


(――なあ、シンデレラプロジェクトのプロデューサーさん)

(――あんたには同情する。あんただって、アイドルを守りたかっただけなのは分かる)

(――気付いてたかな。あんたの表情が、蘭子ちゃんとそっくりだったこと)


(――でも、俺だってそうだ)

(――俺にとっても、あの子は俺が見つけたシンデレラだ)


(――初めは、仕事として『財産』のために適当にスカウトしてきたのは確かだ)

(――こんな所に連れてきてから、大切な人になってしまった)

(――悔やんでも遅かった。俺には力が無くて、あの子を逃がすことが出来なかった)

(――ただ逃げ切れることだけを祈り続けた)

(――力のない自分が悔しかった)



(――人間も喰種も関係ない)

(――プロデューサーなら、誰だって同じだ)

(――飛鳥Pや夏樹Pも同じだ。だから、俺に託して肉をくれた)


(――俺だって)



美穂P(――俺だって、美穂に幸せになって、生きて欲しいのは同じなんだ)


美穂P(――守れて、よかった)



美穂P(――――――――――)



――――――――――――――――――――
339 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:55:41.60 ID:McMGTohp0

一旦ここまで。

亜人面白かったよ。ストーリーは大幅に端折ってたけどバトルアクション特化の魅力があった
340 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/10/01(日) 23:17:44.30 ID:McMGTohp0

ジュピター生放送見てきた。やっぱジュピターのアイドルやってる姿いいなあ、捜査官じゃなくてアイドルの立場で喰種に関わらせた方が良かったかも知れない

でもあまとうと亜門すごく合うんだよなあ


人工半喰種や半人間は寿命短いって言われてるけど、結局天然の半喰種って寿命はどうなんでしょうね?

天然隻眼は体の半分、人間の部分を削ってるから強くても短命だと思ってたけど、
なんか原作では長生きしてる隻眼が地下深くに暮らしてるとか言われてますし…
341 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/10/01(日) 23:21:38.82 ID:McMGTohp0

あんま自分で動かしてるキャラクターを自分でフォローするのは恥ずかしいからしたくないけど

翔太に「まだ殺しちゃダメなの?」とか言わせちゃったけど

あの子をファッションキチガイとして書きたいわけじゃないんですよ……
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 20:13:43.01 ID:satsCMIO0
>『自分が一番に想っていたはずの命の重さを、忘れてしまう』 ←おま言う
半喰種が短命はまず設定自体が後付け感あるし原作者もそこら辺深く考えてない可能性も否めないからスルーで良いかと
343 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/10/02(月) 21:07:13.25 ID:GZXcOG7g0

――――――――――――――――――――


〜346プロ本社前 車内司令室〜


丸手「……―――……」ブツブツ

丸手「被害は―――抜け道は―――戦力は―――――…」ブツブツブツ


丸手「…クソッ」


丸手(――完全にマウント取られた)

丸手(――相手は最低SSレートの集団、戦場もあっちのホームだ。守備が盤石すぎる)

丸手(――現在9時30分、人質の最初の殺害まであと30分……)

丸手(――だが、奴らが律義に時間を守る筈もねえ)


丸手(――アイドルの犠牲者をひとりも出さず作戦遂行は不可能だ)

丸手(――畜生)


PRRRRRRR


丸手「……なんだ?」


丸手「もしもし……何だお前か」


丸手「何の用だ、崇男?」


――――――――――――――――――――
344 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:08:55.37 ID:GZXcOG7g0

――――――――――――――――――――


武内P「……」


P(――ここは……)

P(――ああ、そうか)

P(――私は、神崎さんに赫子を剥がされて……)


P(――私は、収録スペースの床に寝そべっている)

P(――人間アイドルの方達が、私を取り囲んでいる)


P(――小日向さんは、担当プロデューサーの亡骸を抱えて涙を流している)

P(――私が殺した)

P(――二宮さんは、少し離れた壁に寄りかかりこちらを睨んでいる)

P(――殺されかけたのだから当然だ)

P(――木村さんは、右手だけで器用に左手を止血している)

P(――左手の指が動いていない。抵抗された時に私が斬った影響だろう)

P(――3人とも、つい先ほどまで私が殺そうとしていた)

P(――今は出来そうにない)

P(――身を起こす体力も、まだ回復していない)


P(――多田さんは、木村さんから離れて蹲っている)

P(――島村さんは……)



P(――そこで初めて、自分の頭が何かに乗せられていることに気が付いた)

P(――気付いた直後に、顔に水滴が滴り落ちたのを感じ取った)

P(――意識を真上に向けると)


P(――島村さんが、私に膝枕をしていて)



P(――そして私の顔を覗き込みながら、涙を流していた)
345 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:11:15.23 ID:GZXcOG7g0

P「…島村さん? なぜ、泣いて……」


飛鳥「なんで泣いてるか、だって? よくものうのうと言えたものだな」

飛鳥「ボク達のプロデューサーを殺しておいて」

飛鳥「…今まで散々、ボク達人間を虐げておいて」


P「! なぜそれを……」


夏樹「…全部、親切なヒトが教えてくれたんだよ」

夏樹「財産の事も、キャッスルの事も、最終隠匿プロトコル…だっけ? の事も」

夏樹「アンタら……裏でとんでもなく悪いことしてたらしいな」


夏樹「安心しなよ、楽屋で待ってる子達は多分まだ知らない」

夏樹「チクるつもりもない。そんなのアタシらが決めていいことじゃない」


夏樹「その代わり、だりーと卯月はアンタがなんとかしろ」

夏樹「さっきからずっと、自分のことばっか責めて泣いてるんだよ」


P「自分を……せめて……?」
346 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:13:55.66 ID:GZXcOG7g0

夏樹「…頼むから、なんとかしてくれよ」

夏樹「アタシらじゃ何言っていいか分かんねえよ……」



卯月「グスッ……ヒグッ……」

P「島村さん……どうして、ご自分を責めるのですか」

P「島村さんは、何も悪い事をしていないのに」


卯月「……だって……だって……!!」

卯月「私がアイドルになりたいなんて言ったから……」

卯月「プロデューサーさんは、そのためにっ、たくさんの人を殺したんですよね……?」

卯月「私のせいで……みんなが死んだのも、全部私のわがままが原因で……!!」


P「!!!」

P「…ち、違います。どうして島村さんが悪いと言えるのですか」

P「島村さんは、ただ当たり前の願いを持っただけです。罪は全部、それを奪わせないために手を尽くした私のものです…!」

P「私は、皆さんが心の底から安心してアイドルを続けてもらうために……!!」



卯月「―――――友達を殺してまでアイドルなんてやりたくないっ!!!」



P「……え」
347 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:14:56.98 ID:GZXcOG7g0

卯月「私がアイドルやりたいなんて言わなかったら、プロデューサーさんに拾ってもらえなかったらっ……」

卯月「まだっ、死んだ誰かは、死んだアイドルの人は、まだ生きていられたんですよね……!?」

卯月「それなのに、私がアイドルやってることでっ……」

卯月「なにもわるくないのにっ、プロデューサーさんや、周りの喰種の人にっ、アイドルが殺されて……ひどいことされて……」

卯月「プロデューサーさんにっ、たくさん人殺しさせてしまって……」


卯月「どうやって、償ったらいいんですか……?」


卯月「もう、私のせいで死んだ人は帰ってこないのに……」


P「……あ……」


李衣菜「……プロデューサー」

李衣菜「私、喰種に生まれたからって大人しくしてるのが嫌で」

李衣菜「せっかく生まれたんだから、ロックなアイドルになりたいって、好きなものになりたいって」

李衣菜「そう思って、アイドルになったのに」

李衣菜「なのに、何も考えないでみくちゃんとケンカして、みんなと仲良くなって」

李衣菜「少しは、お客さんとか、仲間の皆に何かあげられたかなって思ったのに」


李衣菜「私がアイドルやるために、何人も死んだんですよ」

李衣菜「なつきち達の、大切な人まで」

李衣菜「もう少しで、私がアイドルやってることでなつきちまで死んじゃうところだったんですよ」


李衣菜「何が『笑顔の橋』ですか」


李衣菜「こんなことになるなら、アイドルなんてやらなきゃよかった……!!」
348 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:16:07.34 ID:GZXcOG7g0

P「……そんな」

P「…わ、私は、ただ」

P「皆さんに、違う世界を見て欲しくて」

P「それで、これからも、生きてさえいてくれば」

P「また、笑顔を取り戻してくれると……」


P(――あれ)

P(――その結果、私は何をした?)

P(――『笑顔の橋』などと言っておきながら、アイドルの皆さんの、大切な人を殺そうとした)


P(――そして、多田さんを苦しめて)


P(――島村さんを泣かせた)


P(――笑顔でいてほしかった、だけなのに)



P(――挙句、そのために神崎さんにまで苦痛を与えて―――――)


P「……あ」


P「……神崎、さんは?」

P「それに、アナスタシアさんは……」


飛鳥「出ていったよ」

飛鳥「アーニャは、蘭子にしがみついて無理やり付いて行った」


飛鳥「……『私がやらなきゃ』って言いながら」

飛鳥「ボクから逃げるように出ていった」

飛鳥「自分を化け物扱いして、泣きそうな顔でいなくなった」


飛鳥「ボクは声をかける事すらできなかった」



飛鳥「蘭子は……」
349 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:17:38.78 ID:GZXcOG7g0





「346プロへ人間のみんなを助けに行った」





「まるで罪滅ぼしをしに行くようだった」







飛鳥「……止められなかった、蘭子に何も言ってやれなかったボクの気持ちが分かるか?」



――――――――――――――――――――
350 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:23:30.06 ID:GZXcOG7g0

今日はここまで。

あと一週間でラストまでいけそうでいけなさそう

351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 23:06:16.68 ID:sJ1FJFx40
歯茎むき出しでおなじみ鉢川準特等の顔の傷は、速水奏にキス&喰いちぎりを食らった過去のせいだと考えると滾る
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/03(火) 02:19:32.01 ID:8fvEuvIt0
乙です
蘭子強いな
たぶん楓も乱入するだろうし、1人でも多くアイドル達を救って欲しい
353 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:26:24.01 ID:fRPw4LRD0

〜346プロ本社 内部〜


ちひろ(――現在、9時45分)

ちひろ(――人間アイドルの最初の殺害まであと15分……)


ちひろ(――プロデューサーさんはまだ戻ってこない)

ちいろ(――楓さん、来るなら今のうちに来て欲しいんだけどなあ)


藍子P「……ちひろさん」

藍子P「何か白鳩のやつら…捜査官の一部が移動してますが」

藍子P「……特等捜査官も、何人か移動しています」

ちひろ「えっ? ……本当ですね。ここを放棄して何処にいくつもりで……」


ちひろ(――もしかして『あっち』に?)

ちひろ(――人質を諦めてまで、実利を取りにいきましたか?)


ちひろ(――あくまで念のための『保険』とはいえ)

ちひろ(――智絵里ちゃん達に手を出されるのは気持ちのいいものではありませんね)

ちひろ(――プロデューサーさんはまだ向こうに残っているはず)

ちひろ(――それなら皆の護衛を任せられるし、そもそも予定ではアイドルの皆ももう移動している筈だし)

ちひろ(――よほどのことが無ければ、シンデレラプロジェクトの皆が死ぬことはないはず……)


ちひろ(――ごめんなさい、プロデューサーさん)

ちひろ(――貴方には説明しなかったけど……智絵里ちゃんが"喰種"って、白鳩にはとっくにバレてるんです)



ちひろ「白鳩がTOKYO MIX スタジオを狙いにいく危険性があります」

ちひろ「人質の殺害予定を早めて警告を入れましょう」


ちひろ「……それで向こうが留まらないようなら、智絵里ちゃん達に殿を押し付けた意味があったというだけです」
354 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:28:42.75 ID:fRPw4LRD0

ちひろ「関ちゃんをここに」


藍子P「はい」グイッ

裕美「うっ……」


ちひろ「残念でしたね、裕美ちゃん」

ちひろ「捜査官達があなたを見捨てなければ、あと15分は生きていられたのに」

裕美「えっ……え?」

ちひろ「ご安心を」


ちひろ「出来るだけ醜い跡をつけて殺してあげますから」グッ

裕美「……え」


裕美「やだ」

裕美「た たすけて」



ちひろ(――これで後戻りはできなくなる)

ちひろ(――『あの人』が来ても、言い訳が効かなくなる……)

ちひろ(――プロデューサーさんが戻ってきていない今、かなり危ない橋を渡ろうとしている……)

ちひろ「……」


ちひろ(――来ませんよね?)

ちひろ(――裕美ちゃんを殺した直後に来るとかナシですよ?)

ちひろ(――来るなら今のうちですよ?)

ちひろ(――ここまで待ったんですから、もう殺しても来ませんよね?)グググ



夕美P「! 来ました! ビルの上を跳ねて異動しています!」

夕美P「ちひろさん! 羽赫の喰種がこっちに向かってきてます!」



ちひろ「―――――あっぶなああ!!!!」パッ


裕美「ッ!? かはっ、はあっ……!」


ちひろ「ほんっとにギリギリに来ますねあの人は!」

ちひろ「もう少しで怒りを買うところだったじゃないですか! 助けるつもりならもっと早く来てください!」

ちひろ「美優Pさん、迎えに行ってあげて!」



ちひろ「―――人質の解放を条件に、楓さんを説得して白鳩を殲滅してもらいます!!」
355 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:31:20.22 ID:fRPw4LRD0

ちひろ「藍子Pさんは裕美ちゃんを皆の部屋に戻して! 念のためまだ拘束は解かないでくださいね!?」

ちひろ「ああもう殺されなくて良かったですね裕美ちゃんは! 死ねば良いのに!」


藍子P「ほら、立ちなさい。君も俺達も運が良かった」グイッ


裕美「…え、あ…」

裕美「……たす、かった……?」


――――――――――――――――――――


ちひろ「…もう、本当に心臓に悪い……」


ちひろ(――最初の人質を殺さず、時間を置いたのにはちゃんと理由がある)

ちひろ(――それは『隻眼の喰種』の楓さんが救助に来た時、取り返しがつくようにしたから)


ちひろ(――もし楓さんが人間アイドルを助けに来て、数人でも私達がアイドルを殺していたなら)

ちひろ(――間違いなく、私達は彼女の怒りを買って容赦ない殲滅を喰らったでしょう)

ちひろ(――そうなれば完全に詰み)

ちひろ(――実際、プロデューサーさんはまだ到着していなかった)


ちひろ(――でも、プロデューサーさんの遅れを考慮して一時間待ち)

ちひろ(――それで誰も殺していないうちに楓さんが間に合ったのなら)

ちひろ(――交渉と説得で、楓さんを白鳩と戦う味方にできる望みがある)

ちひろ(――先ほど放送で言った通り、白鳩の殲滅だって目的の一つ)

ちひろ(――『アイドルを守るため』なら、協力してくれる可能性がある)


ちひろ(――人間アイドルを全員解放することが協力の最低条件になるだろうから、目くらましと口封じは出来なくなるけど)

ちひろ(――楓さんなら……救助のために集まってくれた白鳩の大隊を容易く蹴散らせる)


ちひろ(――解放した人間アイドルだって……確実性は下がるけど、あとから殺しに行くことだってできる。職員が無事なのだから)

ちひろ(――手間がかかるから、出来れば来てほしくなかったんですけどね)


ちひろ(――ああでも、CPの皆のところに白鳩を行かせずに済むからある意味良かったのかも)

ちひろ(――でもすごく複雑な気分)


ちひろ「……あーもー。こんだけ悩むことになるから嫌なんですよ」

ちひろ「楓さんと言い日高特等といいかつてのリトルバードといい、規格外の存在……」


ちひろ「『化け物』って言うのは」
356 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:32:31.62 ID:fRPw4LRD0

捜査官「なんだ……?」

捜査官「何か飛んできたぞ」

捜査官「――!! 羽赫の喰種!?」

捜査官「奴等の増援か!?」


ザザッ

美優P『楓さんが到着したようです』

美優P『暴れられる前に、中に入れて事情を説明します』


ちひろ「ええ。よろしくお願いします」

ちひろ(――はあ。ちゃんと交渉に乗ってくれればいいけど)


美優P『楓さん。まずは中にどうぞ』

美優P『お話したい事があって―――――』


美優P『……ん?』

美優P『……あれ?』



美優P『楓さん、なんでそんなに身長が縮んでるんですか?』



美優P『……いや違う。どう見ても楓さんじゃない。だれだ、おま―――――』



美優P『ぐあああああああああっ!!!』ブツッ


357 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:34:36.81 ID:fRPw4LRD0

ちひろ「!!!?」ガタッ


ちひろ「玄関近くを担当してるプロデューサーさんに緊急の連絡です!」

ちひろ「謎の羽赫喰種を相手に美優Pさんの通信が途切れました!」

ちひろ「羽赫喰種の素性確認をお願いします!!」


ちひろ(――楓さんじゃない!?)

ちひろ(――それなのに、今のは―――――)

ちひろ(――美優PさんだってSSレートの喰種ですよ!?)

ちひろ(――それを、こんなにもあっさりと……)


輝子P『ウグッ!』

留美P『ま、待ってくれ! せめて話を聞いて……うがああああああ!!?』

日菜子P『ちひろさん! 正体が分かった! あの子はシンデレラプロジェクトの……っうわあああっ!!』


『―――――』ザザッ


ちひろ「……シンデレラプロジェクトの?」


『―――――通信機? だれか、聴いてるんですか』


ちひろ「……この声は」



『―――安心してください。殺してはいません。……殺したくもないです』

『でも、プロデューサーにやったように……少し回復まで時間のかかるケガをしてもらってます』


ちひろ「あなたは……」


『傷つけてごめんなさい。でも……』





ちひろ「蘭子ちゃん?」


蘭子『みんなを返してもらいます』
358 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:36:44.99 ID:fRPw4LRD0

ちひろ(――通信機は、それが放り投げられる音を立てて)

ちひろ(――あとはもう、だんだん遠くなっていく爆発のような破裂音と、悲鳴だけを響かせていました)


ちひろ(――蘭子ちゃん?)

ちひろ(――なんで、蘭子ちゃんがここに?)

ちひろ(――プロデューサーさんはどうしたの?)

ちひろ(――万が一、CPの誰かに計画がバレた時は)

ちひろ(――プロデューサーさんが無力化する手はずだった)

ちひろ(――それは蘭子ちゃんが相手だったとしても同じこと)

ちひろ(――むしろ蘭子ちゃんがいたからこそ、あの人はCPの担当に回ったのに……!!)


ちひろ(――楓さんを封殺できる人ですよ?)

ちひろ(――『隻眼の王』とまで呼ばれる喰種ですよ?)

ちひろ(――まさか勝ったと言うの?)



ちひろ(――蘭子ちゃんが、『隻眼の王』に?)


――――――――――――――――――――


NWP「ぎゃっ!」パアンッ

ガルパP「ぐえっ!」ドオンッ

JKTP「何だよこのっ……ぐはっ」ガシャアアア



アーニャ「……」

アーニャ(――ついて行くって、無理やりしがみついたものの)

アーニャ(――本当について行くだけで精いっぱい……)

アーニャ(――ランコ、本当に強かったんですね)



「うっ……」

「なんて無茶苦茶な子だ」

「この様子じゃ……一級Pと二級Pの区別すらついてないな」

「強くてもまだ、何も知らない子供ってことか……」

「目についた端から……俺にまで赫子を撃ち込みやがった……」

「…まあ、いいか……」



アーニャ「?」
359 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:37:20.15 ID:fRPw4LRD0

アーニャ「……ニキュウ?」

「! あんたは、蘭子ちゃんと同じシンデレラプロジェクトの……」

アーニャ「……アーニャも、あなたを見たことあります」

アーニャ「だれかの、プロデューサー」


アーニャ「……本当に、346プロのプロデューサーは……人間のアイドルを、殺そうとしていたんですね」


「……」


「……ちがうさ。いや、確かに最初はそのつもりだったが」

「よく見ろ、ここは檻の中だ。喜んで担当アイドルを殺そうとしてる奴が、こんなところにいるもんか」

「たとえ人間でも……担当したアイドルを危険に追いやりたいプロデューサーなんか、この346プロにはいない」


「笑いたいなら笑ってくれ。俺たち二級Pは、弱いから」

「弱い奴に喰種アイドルのプロデュースはさせられない。二級Pは人間のオーディションやスカウトに回される」

「周辺組織へのエサ探しだ」

「その子へのプロデュースだって、ただのカモフラージュ」

「いつか出荷されるだけだってのに、必死こいてレッスンやってるのを見守って」

「ムダになるって分かってるのに、仕事みつけるために走り回って」


「それでな。皆いつの間にか、担当アイドルに情が湧いてくるんだ」

「自分に守ってやれる力もないのに、どうかこの子が財産に選ばれませんようにって、毎日祈るようになるんだ」

「だから……蘭子ちゃんだったか。あの子が来てくれて、このクソみたいな組織を潰してくれて、二級Pの皆は感謝してる」

「実際は俺達も一緒に痛めつけられたが……これは何もしなかった罰だと思うことにする」

「むしろ、お釣りをあげたい気分だ」
360 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:38:21.90 ID:fRPw4LRD0

アーニャ「……アーニャの、気のせいですか?」

アーニャ「あなたは……ぜんぜん、嬉しそうじゃないです」


「嬉しいさ。一級Pのクソ野郎どもが、為す術なく転がされるのを見るのは」

「一矢報いたんだ……嬉しいに、決まって……」


「……」


「……畜生……」

「なんで、もっと早く助けてくれなかった」

「こんなに強いなら、なんでもっと早く気付いてくれなかった」

「こんなに簡単に立ち向かえたなら、あんな事させやしなかったのに……!!」


「……ゆかり……」

「……法子ぉ……!!」


「ごめん……何もしてやれなくて、助けてやれなくて……!!」


「何でもっと早く、あの子に助けを求めなかったんだ……!!」


――――――――――――――――――――
361 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:42:19.44 ID:fRPw4LRD0

――――――――――――――――――――


メロイエP『……ごめん。いい大人が、愚痴ってるところ見せてしまった』


メロイエP『人間アイドルの皆が監禁されてる場所は音で大体わかるだろう』

メロイエP『だが無理に助け出さない方がいい。この状況なら、待たせてれば白鳩の奴らが勝手に救助してくれる』

メロイエP『周囲の一級Pさえ排除すれば、自分で脱出させるよりむしろ部屋の中にいた方が安全かも知れないしな』


メロイエP『……君が付いてきた理由は何となく想像がつく』

メロイエP『蘭子ちゃんが心配で仕方なかったんだろ。ちらっと見たが、あれは罪の重さから逃げたくて仕方がない奴の顔だ』

メロイエP『……あの子は、この先どうなるんだろうな』


メロイエP『大事な人なら守ってあげてくれ。失ってからじゃもう遅いからな……』


――――――――――――――――――――


アーニャ「……」

アーニャ(――プロデューサーが、倒れた後)

アーニャ(――現れた『あの人』に、真実を聞いてから)

アーニャ(――ランコ、すごく苦しそうでした)

アーニャ(――私も、つらかった。でも、ランコは、もっと)


アーニャ(――ミナミ、ごめんなさい。何も言わないで、出ていって)

アーニャ(――でも、あんなランコを、ひとりにしたくなかった)
362 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:42:57.07 ID:fRPw4LRD0

早耶P「うう……」

雪美P「無茶苦茶だ、あんなの……!」



アーニャ(――ランコが走って行ったあとは)

アーニャ(――プロデューサーのみんなが、倒れています)

アーニャ(――強い人ばかりだと、聞きました)

アーニャ(――それを、こんなに簡単に……)



アーニャ(――ちひろさんも)



ちひろ「……うう」


ちひろ「最初は……隻眼とはいえ、なんで、こんな……」

ちひろ「戦ったこともない子供がと、思いましたが……」

ちひろ「その、赫子の使い方を、見て……実際に喰らって……やっと分かりました」


ちひろ「無尽蔵の刃」

ちひろ「止まることのない、洪水のような羽赫の波で、まるごと飲み込んで……」

ちひろ「……そうですよね。津波に勝てる戦士なんか、いるわけないですもんね」

ちひろ「『隻眼の王』も、そうやって……」

ちひろ「…いえ。こうなってしまえば、あなたが新しい『隻眼の王』になるのか……」


ちひろ「そんなのを、50人以上を相手に、わざわざひとりひとり……本当に無茶苦茶……」

ちひろ「その体のどこに、そんなものが……ああ。命を削れば……」
363 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:43:53.98 ID:fRPw4LRD0

ちひろ「……台無しだ」

ちひろ「お前のせいで、全部台無しだ」

ちひろ「用意した策も、かき集めた屈強なプロデューサー達も、こんなのがひとりいれば全部台無しにされる」

ちひろ「いつもいつも、強い人は勝手ばかり……自分の都合で、全部ぐちゃぐちゃにして持って行ってしまう……」

ちひろ「くだらないワガママを、力づくで押し通して……」

ちひろ「暴虐に付き合わされる、身にも、なってくださいよ……!」



ちひろ「……化け物め……!!」



アーニャ(――本当に)

アーニャ(――みんなを逃がすために、ここの人たちを倒して、本当に……)


アーニャ(――本当に『あの人』が言った通りに、なりますか?)


アーニャ(――みんなランコを、怖がらずにいてくれますか?)



蘭子「……」

蘭子「……行こっか、アーニャちゃん」

蘭子「大丈夫。これでみんな、助かったから……」


蘭子「これを見れば、黒井さんの言った通り……」



蘭子「捜査官のみんなも、私達"喰種"を見直してくれるから……!!」


364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/03(火) 23:48:39.63 ID:hOsUw4PE0
はい絶望
365 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:49:29.21 ID:fRPw4LRD0

今日はここまで。

BLEACHの破面編読んでた人なら
「白哉の吭景・千本桜景厳を一級Pひとりひとりに連続でぶっぱした」と言えば
蘭子のやった事のヤバさを分かってもらえると思います
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 08:42:36.54 ID:WRDUIj6MO
数年後
エロいバトルスーツを着て、メリケンサック型のクインケを振るう中野有香捜査官の姿があるんだろうなぁ
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 12:16:33.09 ID:N/cHD4on0
黒井…ああ…うわぁ…
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 16:04:30.46 ID:eyKGJ1/c0
騙して共倒れさせる狙いとか…えげつな
一方でちひろの言葉のこのブーメラン感も凄い
369 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:53:22.27 ID:4Qn4Dpkl0

――――――――――――――――――――


「……あんた、焦りすぎだ」

「……とどめを刺すのを忘れてたぜ……」



北斗「……」スッ



〜個人 北斗⇔黒井〜


北斗『CPのプロデューサーが無力化されました』

北斗『二宮飛鳥ちゃん達を巡って、CPメンバーの神崎蘭子と衝突したみたいです』

北斗『動画も撮影しましたから、載せておきます』


黒井『報告ご苦労。私も到着した』

黒井『ざっくりとだが、動画も確認した。神崎蘭子は隻眼か』

北斗『隻眼って2年前のですか?』

黒井『あれは左が赫眼だ。2匹目ということだろうな』

黒井『我々で対処できる相手ではない。奴には立ち去ってもらう必要がある』


北斗『どうやるんですか?』

北斗『あと、まだ来てませんけど冬馬どうしましょうか』

黒井『長年培った業を見せてやる。耳を塞いでおけ』
370 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:54:58.05 ID:4Qn4Dpkl0

〜グループ『jupiter』〜


冬馬『悪い! 何か火事がおきたみたいで、他のスタッフや出演者がパニック起こしてやがる!』

冬馬『人込みでそっちに行くのは時間がかかりそうだ……!!』

北斗『こっちの問題はしばらく気にしなくて良さそうだよ』

北斗『内部分裂を起こしてCPプロデューサーが自滅した』

黒井『私も合流したからお前の仕事はまだない』

黒井『だがCPのプロデューサーが復活した時は冬馬の出番だ』

黒井『その時に備えて、お前には避難者の誘導を任せる』

冬馬『分かった』


翔太『さっきの火災ベル、なんかすごく大きくなかった?』

翔太『黒ちゃん何か弄った? けっこー耳痛いんだけど』


黒井『喰種の聴覚対策だ。昨日忍び込んでやった』

黒井『聴覚に優れた喰種がまともに聞けば、耳が使い物にならなくなる』

黒井『コクリアで実証済みだ』


黒井『これで出演者組と楽屋組は互いの様子が察知できなくなる』

黒井『安心して任務に移れ』


翔太『了解〜』



黒井「……さて」
371 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:55:46.26 ID:4Qn4Dpkl0

〜収録スペース〜


ジリリリリリリリリ……



蘭子「はっ……はっ……はっ……」


アーニャ「ランコ! 大丈夫、ですか?」

蘭子「…大丈夫。大丈夫だよ」


蘭子「それより、李衣菜ちゃん。さっきの『最終隠匿プロトコル』って、どういう……?」

李衣菜「ッ……!!」

蘭子「……李衣菜ちゃん?」

李衣菜「……ごめん。さっき打たれた注射のおかげなのかな」

李衣菜「耳が悪くなってるみたいだから、まだマシなんだけど……」

李衣菜「……頭がガンガン言ってる……」

卯月「李衣菜ちゃん……」

李衣菜「……大丈夫、話せるよ。今はもう聞けないけど、さっきニュースじゃ……」





黒井「そこから先は私が説明しよう」


「「「!!!」」」
372 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:56:19.82 ID:4Qn4Dpkl0

黒井「ウィ、346プロのアイドル諸君」

黒井「私は黒井崇男、こっちは伊集院北斗だ」

北斗「チャオ☆」


黒井「ともに、喰種捜査官だ」


夏樹「!」

飛鳥「……喰種、捜査官」


卯月「え……!?」ジリ



黒井「ノンノンノン、心配はいらないよ喰種のアイドル諸君」

黒井「殺そうと思ってここに姿を現したわけじゃない」


黒井「私は君……蘭子ちゃんだね? 君の仲間を守らんとする姿に感銘を受けてね」

黒井「君に『あるお願い』をしに来たんだ」



黒井「まずは全てを教えよう」

黒井「キャッスル、財産、最終隠匿プロトコル……私達CCGが掴んだ情報を」

黒井「君達のいた346プロの正体と、その目的について」


――――――――――――――――――――
373 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:57:31.91 ID:4Qn4Dpkl0

――――――――――――――――――――


卯月「『キャッスル』の正体が、346プロのプロデューサー……?」

李衣菜「『財産』は人間のアイドルの事で……協力してる組織に売ってるって・・・・・」

アーニャ「最後は、人間のアイドルをみんな、ころす……」

蘭子「……プロデューサーも、裏でずっと……」



黒井「……彼らも、仕方のないことだったのかもしれない」

黒井「ああでもしなければ、君達アイドルの秘密を我々から隠せなかっただろうからね」



黒井「すべて君達のためにやったことだ」

黒井「特に、蘭子ちゃん。君の存在はとても珍しい」

黒井「君のような隻眼の喰種がいると分かれば、もみ消しも簡単なことではなくなる」

黒井「君の正体を隠すためには、益々多くの犠牲を払う必要があっただろう」


蘭子「……!」

蘭子「そんな……私の、せいで……?」


黒井「……悲しい事だ。皆が君を憎んでいる」

黒井「君のためと言って、彼らがどれだけ多くの命を弄んだことか……」

黒井「犠牲になった人にも、家族がいたはずなのに」


蘭子「……あ……」


黒井「……だからこそ、君に頼みたい」

黒井「これは君の、君達の名誉を取り戻すためのお願いでもある」





黒井「346プロで戦って、人間アイドルの皆を救ってはくれないか」





黒井「そうすれば、君はきっと……みんなの英雄になれる」


――――――――――――――――――――
374 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:58:37.08 ID:4Qn4Dpkl0

〜9時50分 346プロ正門前〜


捜査官「おい、降りて来たぞ!」

捜査官「さっきの羽赫喰種だ!」


実「……カメラの様子だと、あの喰種が中の職員たちを片付けたらしい」

実「本当にやるとは……」


蘭子「……」スタッ



蘭子「―――待たせたわね。我が片翼よ」


蘭子「御覧の通り、我が半身を為す少女達はその命を脅かされず」

蘭子「魂を救済したわ」

蘭子「我が名は神崎蘭子。ヒトの身と喰種の牙を共に持って生まれし存在」


蘭子「―――我こそは、ヒトと喰種を繋ぐ『隻眼の王』!!」


蘭子「さあ、同胞たちよ。こちらは我が盟友アナスタシア」

蘭子「此度の救済を以て、我等は其方の下に親愛の橋を架ける……」


蘭子「今こそ祝杯を挙げる時よ」



蘭子(――黒井さん)

蘭子(――私、やったよ)

蘭子(――みんなを助けられたよ)

蘭子(――だれも死んでないよ)


蘭子(――私、知らなかっただけなの)

蘭子(――私のことを隠すために、プロデューサーたちが人を殺して)

蘭子(――私のせいで人がたくさん死んでるなんて、分からなかっただけなの)


蘭子(――だから、その分私は人を助けるから)

蘭子(――今まで悲しませたぶん、今度は私が皆のために戦うから)


蘭子(――もう、いいんだよ)

蘭子(――もう、喰種も人間も、泣くことなんか無いんだよ)


蘭子(――もう、人間と喰種は仲良くなれるんだよ……!!)



実「……君が、346プロを倒してくれたんだな」

蘭子「うん!」

実「人質も、全員無事なんだな」

蘭子「はい!」


蘭子「―――さあ! この手をとりなさい!!」



実「……ああ」
375 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:59:08.77 ID:4Qn4Dpkl0







実「攻撃準備」







実「撃て」







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